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1988-05-17 第112回国会 参議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  五月十七日     辞任         補欠選任      小野  明君     梶原 敬義君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         名尾 良孝君     理 事                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大城 眞順君                 野田  哲君     委 員                 岩上 二郎君                 大島 友治君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 永野 茂門君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 梶原 敬義君                 久保田真苗君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   河原崎守彦君        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   宮脇 磊介君        内閣法制局長官  味村  治君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     中島 忠能君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        内閣総理大臣官        房参事官     平野 治生君        社会保障制度審        議会事務局長   花輪 隆昭君        総務庁恩給局長  石川 雅嗣君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        大蔵大臣官房審        議官       尾崎  護君        大蔵省主計局次        長        篠沢 恭助君        大蔵省国際金融        局長       内海  孚君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        人事院事務総局        公平局長     網谷 重男君        厚生省年金局年        金課長      松本 省藏君    参考人        軍人軍属恩給欠        格者全国連盟副        会長       赤間 清吉君        全国軍恩受給        者連盟代表理事  富永  勝君        全国戦後強制抑        留補償要求推進        協議会中央連合        会副会長     青木 泰三君        全国抑留者補償        協議会会長    斎藤 六郎君        引揚者団体全国        連合会理事長  結城吉之助君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○平和祈念事業特別基金等に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○昭和六十二年度における国家公務員等共済組合法年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  平和祈念事業特別基金等に関する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人方々から御意見を聴取することといたしております。  御出席いただいております参考人は、軍人軍属恩給欠格者全国連盟会長赤間清吉君、全国軍恩受給者連盟代表理事富永勝君、全国戦後強制抑留補償要求推進協議会中央連合会会長青木泰三君、全国抑留者補償協議会会長斎藤六郎君、引揚者団体全国連合会理事長結城吉之助君、以上五名の方々でございます。  この際、参考人方々一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ、本委員会に御出席いただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  それでは、議事の進め方について申し上げます。  まず、各参考人に十分以内で順次御意見をお述べいただき、その後各委員質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお、恐縮ですが、時間が限られておりますので、簡潔にお答えくださるよう、そうして時間を厳守していただくよう、お願いを申し上げます。  それでは、まず赤間参考人お願いいたします。
  3. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) 私は、軍人軍属恩給欠格者全国連盟会長赤間清吉でございます。本日、恩欠者運動内容につきまして意見を申し上げます機会をいただきましたことを、厚くお礼と感謝を申し上げる次第でございます。  諸先生方も御承知のように、本連盟は、軍人軍属軍人恩給法による軍歴十二年末満の恩給欠格者五十万、そしてその妻等婦人部三十万、合計八十万の会員をもって構成しております。この運動は、昭和五十二年の三月から発足をしておりまして、満十一年と二カ月の長期にわたり、恩給欠格者個人補償救済を目的といたしまして陳情請願をいたしてまいりました。この恩欠者に関する救済につきまして各都道府県の連合会はそれぞれ県知事あるいは議長あて請願書を出して要請をいたしておりましたところ、現在四十七都道府県ございますが、そのほとんどの議会で採択をしていただきまして、政府それぞれの関係大臣意見書として提出していただいております。また、我々の運動につきましては四百十三名に上ります国会議員先生方の御賛同をいただいており、全国的にまた社会的に共鳴を得ておりますことは先生方既に御承知のことと思うわけであります。  以下、本連盟内容につきまして申し上げます。  第一点は、官民格差是正であります。実例を申し上げて参考にさせていただきたいと思います。私の同年のAという人は、終戦後役場に入りまして三十年勤め、退職されて共済年金軍歴年数も通算加算されて受給されており、またある県の連合会会長Bさんは市の助役さんを十二年務められ、この方も外地戦務加算を含めて年金受給されておるわけであります。このように、公務員公社職員、官公庁の常勤特別職、いわゆるそれぞれの自治体の長、助役あるいは収入役等の方方につきましても、それぞれ軍歴年金に通算加算されておるわけであります。我々のような国民年金、そして厚生年金受給者等には何ら通算されていないことは、明らかに官民格差であります。  第二点は不公平の是正であります。軍隊は俗に運隊ともよく言われておったわけでありますが、軍人恩給法の十二年に一カ月または一日足りなくとも、そういう人はこの軍人恩給法受給資格が閉ざされておるわけであります。また、同年兵でも前の船で復員した者は恩欠者であり、後の船で帰還された者は恩給受給資格者となった、こういう実例がたくさんあるわけであります。これは法律でありますが何とかできないものか、こういうことが言われております。また、昭和十六年ごろまでに帰還あるいは除隊なされた人は一時金等が給付されておるわけであります。  幸い、戦後四十二年たった日本が世界に冠たる経済大国に復興いたしましたことは、民主主義政治のもと先生方各位の御尽力と、生を得て帰還祖国日本の復興に努力した我々恩欠者の功績であると考えております。過日、ある新聞に出ておりましたのですが、諸外国の戦後処理の状況を見ますと、米、英、仏、西ドイツ等につきましては、一般に軍人は国防の担い手として尊敬され、社会的評価は極めて高いものであります。軍人軍属従軍者につきましては、軍歴が一定の基準に満たない場合でもそれぞれ年数に応じて減額年金が支給されており、非常に優遇されておるわけであります。それに対しまして我が国の対応は遅きに失している、こういうぐあいに言わざるを得ないわけであります。  幸い、三つの戦後未処理団体のうち引揚者救済につきましては、御承知のとおり、昭和三十二年と四十二年の二回にわたりまして救済されております。そして、戦後強制抑留者につきましては、昭和六十一年十二月の戦後処理問題懇談会報告に基づき特別基金を創設し、関係者労苦に対して慰藉する等の特別事業として贈呈するとし、自由民主党四役、政府側と合意なされ、恩給受給者を除く帰還者まで拡大されて了解事項として救済されることは、まことに喜ばしいことでございます。そうした点から考えますと、昨六十二年十二月の了解事項恩欠者に対する慰藉事業として我我救済を盛り込んだ措置であると考えておるわけであります。しかしながら、この法律案の中には我々の最も望んでいる恩給欠格者個人救済に関する明文がありません。まことに残念であります。  これまでの御審議で明らかになったように、我我恩欠者への救済事業はこれから発足する基金運営委員会にゆだねられることになっておりますが、衆議院附帯決議にもありますとおり、恩欠者に対する慰労個別的措置すなわち個人補償も含めた救済措置をぜひとも実現していただきたく、心からお願いを申し上げる次第でございます。以上申し上げましたように、官民格差、不平等が明瞭であります。この運動に対する社会的共感を得ておりますことを信じておりますので、我我恩欠者に対する個人補償法案成立後直ちに措置くださるよう要請を申し上げまして、私の意見申し立てを終わります。  本当にありがとうございました。
  4. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ありがとうございました。  引き続いて、富永参考人お願いいたします。
  5. 富永勝

    参考人富永勝君) 私は、本委員会参考人として陳述するようにお招きいただきましたことを大変感激をしております、全国軍恩受給者連盟代表理事富永勝と申す者でございます。よろしくお願いいたします。  さて、主題の件でありますこの法律案につきましては、昨日委員会の諸先生方にはそれぞれの事務所を訪問いたしましてあらかじめ私が申し上げる意見を進呈いたしておきました。そこで、御一読いただいたものと判断するわけでございますが、時間に制限がございますから私は急いでこれを朗読させていただきます。お聞き苦しい点は御容赦をお願いいたします。  我が連盟としては、本法律案第一章総則第一条における「旧軍人」の三字を削除するように要請します。したがって、この法律案とは別個に個人給付を明示した特別立法制定要請する次第であります。この結論に至りました理由について今から申し上げます。  大変恐縮で唐突な感じを与えるかしれませんが、私は長崎チャンポンの話から序論を始めたいと思います。私は九州の長崎県民でございます。長崎県には大変おいしいチャンポンがございます。このチャンポンは豚肉その他の魚介額をたくさん入れまして、そして野菜もいろいろと多種多様に入れまして油でいため、めんを入れて独特の味つけをしたスープをこれに混入しさっと熱を通して仕上げるのでありますが、まことにおいしい長崎チャンポンができ上がるのでございます。これに必要なのはやはり独特のスープだと思うのでございます。最近、東京や大阪でもチャンポンを見受けますが、形だけは長崎チャンポンに似ておりますけれども、肝心の味が本場のものとは違いますので、まずくて私ははしをつける気持ちがいたしません。やはりチャンポンは独特の味を持つ長崎チャンポン最高であります。  さて、我々に提示されたこの法律案ですが、形は一応長崎チャンポンに似て各種のものを混合してあります。だが、肝心の味つけであるスープがまずくて、私ははしをとって食べる気がいたしません。この法律案の適用される者は、戦争中の旧軍人軍属シベリア地区等の被抑留者海外引揚者の三者であります。これらは元来いずれも次元が全く違うものであります。しかるに、これらを混合して平和祈念事業という味つけをして、チャンポンに似たものをつくってあります。だが、次元の違うものにはその次元にふさわしい独特の味つけスープを使わなければおいしいチャンポンにはならないと思います。しかるに、このチャンポンにはそのような味つけがない。だから、まずくて食べる気がしないのであります。  次元の違うことの一例を申し上げましょう。この法律案第一章総則第一条に「旧軍人軍属」と、同じような意味にとられる表現がございます。しかし、この軍人軍属次元が全く違うものであります。軍人については歩兵操典の綱領第一に次のように明示してありました。軍の主とするところは戦闘なり。ゆえに百事皆戦闘をもって基準とすべし。これが軍人の任務、性格であり、定義だと思います。これに対し、軍属とは軍人の補助的なものにすぎないのでありまして、後方勤務が主であり戦闘は全く行わず、サラリーマン的性格があったのでございます。  このため、軍人たる武官はいずれも恩給受給権を付与されておりましたが、軍属たる文官は判任官以上にこれを認めて、雇員、傭員軍属には付与されておりません。また、武官恩給加算軍歴十二年以上の服務期間が必要であり、文官恩給は十七年以上の服務期間となっております。これは軍人軍属が本質的に異なるために生じたものと考えます。したがいまして、戦争中の軍人軍属さえこのように次元が違うのでありますから、戦後のシベリア抑留者あるいは海外引揚者方々の問題を我々と全く同じ次元においてチャンポンにしておられるということは、まずいチャンポンができる原因になっておる証拠であると私は考えます。  そこで、我々に提示されている法律案たる軍人チャンポンはなぜ独特の味つけが全く示されておらないのだろうか。我々の独特な味つけというのは個人給付という味つけでございます。そこで、この個人給付が適用されるこの法律案は、そもそも昨年十二月二十七日の政府自民党了解事項によって作案されたものであります。そして、さらにその淵源を探すならば、この了解事項昭和五十九年十二月二十一日公表の戦後処理問題懇談会答申に由来していると申すことができましょう。したがって、私はどうしてもこの処理懇答申について一言言及せざるを得ません。  処理懇の七名委員軍歴皆無がその資格条件一つでありました。したがって、各委員はいずれも戦争の経験がなく、また軍人をよく理解できなかったと言えるでありましょう。この結果、この方々はとんでもない結論をまとめて政府答申されました。それは旧軍人にも個人給付はしないという内容であったのでございます。そして、政府はこの答申を尊重する建前から、終始一貫して我我の切望たる個人給付を拒否し続けてまいられました。中曽根内閣竹下内閣の二代に及んで処理懇答申が引き継がれて今日に至っております。しからば、その処理懇答申とはそれほどまでに権威があり、金科玉条のごとく重みがあるのでありましょうか。  私はこれについて、六十一年十月六日午前十一時ごろだったと思いますが、NHKのテレビをたまたま見ておりましたときに、この参議院の委員会における次の質疑応答を観覧することができました。それを簡単に紹介しますと、多分野党の先生だったと思いますが、懇談会答申審議会答申とはどのように違うかという質問をされたのであります。これに対し政府委員の御答弁は、懇談会答申とは各委員が個々の立場から単に参考意見る述べるもので、必ずしも統一見解を出す必要はなく強制力はない。これに対し行政法第八条による審議会答申とは各委員統一見解を出す義務があり、その答申強制力がある。この見解に従いますと、戦後処理問題懇談会答申は単なる参考意見を述べたにすぎないのであり、金科玉条のごとき権威あるものではないのであります。政府はこのようなものを個人給付を拒否する盾に使うのは全くおかしいと私は考えます。しかも、その答申は今までも私ども戦友たち個人給付をしておる事実を忘れて、我々のみ差別して個人給付をしないという憲法違反内容を含んでおります。絶対にこの答申を容認はできません。  そこで、処理懇答申直後、当時の自民党政調会長藤尾正行代議士ほか各国会議員先生方特別陳情書を呈上し、我が連盟はこの答申を断固否定する意思であることを表明したのでありました。そして、政府戦争中の旧軍人個人給付するのは当然の義務であり、今日まで我々のみを放置しているのは政府の重大な怠慢であると強調し、恩給制度の根幹に触れない特別立法制定を訴えたのであります。その結果、いろいろな経過を踏まえながら六十一年五月十五日、自民党要綱案という我々への個人給付額を明示した法律案公表が行われるという成果を挙げ得たのでありました。  なぜしからば戦争中の旧軍人には個人給付する義務があるかという主張について申し上げます。我々旧軍人は、戦争召集令状等国家至上命令により、強制的に軍服を着用させられました。そのために、家族、仕事、財産を放棄し、さらに命もささげるという最大最高犠牲を甘受して各戦線に出征、強敵と戦い幾たびも死線に直面しながら、ひたすら祖国のためにと国難に殉じたのであります。このような旧軍人であるから、我々を除く戦友たち各種の恩典によって国の優遇を受けておるのであります。すなわち、普通恩給傷痍恩給終身慰労給付金軍歴評価共済年金加算制度など、すべて旧軍人のみに付与されている特典であります。しかるに、我々はわずかに年数が不足しているために恩給受給できず、また敵弾が当たらないために五体健全で復員したゆえに傷痍恩給ももらえず、民間人で生活してきたために共済年金加算金受給できず、戦後四十三年の間社会谷底に放置されてきたのであります。同じく旧軍人でありながらこのような冷遇は絶対に許されるべきことではなく、我々にも政府個人給付を行うのは当然なる義務であると主張を続けてまいりました。  我々はついに自民党要綱案の誕生にこぎつけましたが、昨年七月ごろから突然特未連案という全く別個の個人給付案が浮上いたしました。我々は、この案が非常に改悪された案でありましたから、断固阻止と反対を表明いたしまして、自民党要綱案の実現に全力を傾注したのであります。かくて、自民党要綱案支持者、特未連案支持者二つ立場によって熾烈な戦いを敢行しながら政府・与党に迫ったのでありました。しかるところ、昨年十月二十七日、両者の争いに終止符が打たれて、政府自民党了解事項という判決が公表されたのであります。これによると、残念ながら結果はけんか両成敗となり、両案とも切り捨てられて我々への個人給付案は行方不明となってしまったのであります。  そこで、私どもはこの個人給付案がどこに行ったのか一生懸命探すべく、重大決意をいたしました。それは、政府自民党緊急質問状を提出し期限つき文書回答を求め、納得できない場合には裁判所に提訴して闘うというのがその内容であります。言葉をかえますと、我が連盟重大決意のもとに敵の本陣に特攻隊となって切り込み、真剣勝負最後の決戦を挑んだのでありました。  質問状は七カ条に分かれておりますが、最後期限ぎりぎりに政調会より回答をいただきました。その末尾三行に、軍恩受給者救済に関する各種意見に対しては、現行制度との問題、他の戦争犠牲者との関係を考慮して今後も最大限の努力を傾けたいと存じますとありました。この特記事項は、抽象的ではありますが、大変前向きな回答だと判断いたしました。したがいまして、昨年末、了解事項によって行方不明になりました我々への個人給付案は再び浮上いたしまして、脚光を浴びるであろう基本線が出現し始めたものと判断しておるものであります。このように現状を認識しておりますので、せっかくの今次法律案ではありますが、旧軍人たる我々には無関係と判断いたします。したがいまして、この法律案第一章総則第一条における「旧軍人」の三文字を削除していただき、我々には別に個人給付を明示した特別立法制定を強く要請いたしまして、私の陳述を終わります。  ありがとうございました。
  6. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ありがとうございました。  次に、青木参考人お願いいたします。
  7. 青木泰三

    参考人青木泰三君) 私は、現在全国戦後強制抑留補償要求推進協議会中央連合会の副会長をいたしておる者でございます。本日の内閣委員会参考人として出席を求められ、長年にわたりまして私たち要求してまいりました補償要求に関して尋おねを賜ることに心からお礼を申し上げる次第でございます。  最初に、長年にわたりまして私たち補償要求に対して国会議員の諸先生の温かい御支援、御協力を賜りましたことに対して、心から厚くお礼を申し上げたいと思います。  私たちは、戦後ソビエト社会主義共和国連邦の支配のもと、しかも酷寒の地において国家賠償肩がわりとして言語に絶する強制労働に服してまいりました者であります。その強制労働に対しまして、国家にその補償要求してまいった者であります。しかしながら、いまだかつて一度も我々の強制重労働に対しては国において何ら認めようとせられなかったのであります。このたび国会において初めて、我々の要求にはまことにほど遠いものがありますが、その労苦に対して国の名において慰労意味をあらわす書状、慰労品及び慰労金が支給される運びとなりましたことについて、一言たち意見を申し述べたいと存じます。  我々全抑協の要求は、一つには、国において戦後我々がシベリア酷寒の地で飢餓と戦いつつ強制重労働に服してまいりましたことは何であったのか、その意味することを国において解決をしていただきたいと思うものであります。  二つには、その強制労働に対して、戦後の捕虜待遇に関するジュネーブ条約昭和二十四年制定され、我が国昭和二十八年批准をいたしております。この条約の中には、捕虜待遇に関して抑留国、被抑留国、すなわち当該国にその補償義務があると書かれてあります。しかし、昭和三十一年鳩山総理の訪ソに際し、その補償請求日本政府は放棄いたしております。しかしながら一方において、英国軍によるところの南方域に抑留された者には、個人計算カードを提示すれば補償がなされております。同じ抑留者でありながら、酷寒の地において過酷な強制労働を強いられたシベリア抑留者の我々にはこの個人計算カードソ連軍より発行されておりません。これは国家賠償肩がわりのためと考えるものであります。当時の状態としてはこれを受けることができなかったのであります。この事実は余りにも差別であり、公平の原理を欠くものであると思うのであります。  このようなことからして、シベリア補償問題は他の戦後処理問題とは内容を異にいたしております。ジュネーブ条約の精神に基づいて、当該国たる我が国にその補償の責任があると信ずるものであります。南方その他の地域から引き揚げてまいりました人たちにおける労務補償と同様に、我々にも国において労務補償をしていただくことが当然であろうかと考えるものであります。  この意味を御理解いただいた議員の諸先生方におかれては、昭和六十年六月に労務補償に関する法律案をまとめて国会に提案をしていただく運びとなっておりましたが、突然それがさたやみとなりました。しかしながら、今国会に提案されているものは平和祈念事業特別基金等に関する法律でありまして、真に私たち酷寒の地での強制重労働を御理解いただくのであれば、少なくとも抑留者全員に対して同じ扱いがなされるべきであろうと思います。また、それが当然ではなかろうかと思うのであります。  しかるに、あの酷寒の地で祖国を思い帰らぬ人となった戦友を思うとき、これが除外されていることは断腸の思いがいたします。あの苦しさが四十数年の歳月がたつと忘れ去られ、今日の国会においては認めていただくことができないとなればまことに残念であり、亡き戦友に申しわけがなく、私たちだけがその労苦を慰藉していただいても、いただくことすら心苦しく、素直にいただく気持ちにはなれない心境であります。願わくば、真っ先にシベリアで亡くなった戦友に支給のできるよう、御配慮が願いたいのであります。  また、生存者の中で恩給受給者が除外されていることでありますが、あの強制重労働に対しての労務補償であればいざ知らず、労務補償でなく慰労意味をあらわされるものであれば、恩給受給者を除外されることに疑問を感ずるものであります。生存者に対して甲乙の区別なく全員に支給されることを特に願うものであります。同じ苦しみを味わって恩給受給者のみ除外されることは、慰労という意味合いからすれば合わないのではないかと思うのであります。慰労金である以上、ぜひとも全員に支給をされるよう、御配慮のほどを希望いたします。  次に、政府出資による平和祈念事業でありますが、野村総合研究所の調査の結果にも報告されてありますように、抑留に関する記念館の建設、慰霊碑の建立及び資料収集、保管、展示等、また抑留に関する調査研究は一日も早く実施をしていただきたいのであります。我々は高齢者であるために、その実現を見ることすらできないのではないかと思うのであります。また、墓参や遺骨収集は我々抑留者でなければ現地の実態を知る者がいないのであります。その他の野村総合研究所の言われておりまする各種事業を速やかに実施されることを切に要望いたします。また、戦後処理問題と申してもおのずから内容を異にしておりますので、各種団体に分割して事業を積極的に推進されることをお願いいたします。  本日は、我々が長年要望いたしてまいりました内容をお聞き届けいただきましたこと、まことにありがとうございます。  以上をもちまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
  8. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ありがとうございました。  次に、斎藤参考人お願いいたします。
  9. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) 全国抑留者補償議会会長をいたしております斎藤六郎であります。きょうは参議院の先生の皆々様の前で全抑協の考え方を申し述べる機会に恵まれましたことを非常に喜んでおります。  去る四月二十六日には、衆議院内閣委員会で同じような趣旨のもとに約二時間ほど国会先生の御質問をいただき、いろいろ答弁いたしました。その際に、関係者といたしましては私が主として答弁に当たりまして、それに対する形で政府の方の条約局長それから内閣の法制局長官が答弁に当たられたわけであります。きのう国会の方に参りましてその際の議事録を読ませていただきましたら、やはり問題はまだ煮詰まっていないようであります。重要なことでまだ煮詰まっておりません。この問題は、私どもといたしましては司法の府、それから国会つまり立法府、それから行政府、三者三様に提訴、請願陳情という形で運動を進めてまいりましたが、司法の方は既に問題が煮詰まっておりまして、昨年の二月十日の日に法務省側も我々側の方もこれの立証手続は全部済み、争っておるところの争点も明らかになりまして、裁判所にあとは御裁決を一任しておる今の段階であります。この七月にも判決が出るかと言われておるときであります。しかし、残念なことには立法府において私ども意見を申し述べる機会がなくて非常に残念でありました。四月二十六日の会議の際の不十分な点をきょうこれから述べさせていただくことによりまして、私の意見にかえさせていただきたいわけであります。  まず最初に、国が日露戦争の直後に加盟いたしましたヘーグ条約、これには捕虜には必要な経費、衣食住の経費を除いて余るものがあれば捕虜に渡して帰しなさいと、こういう規定があるわけであります。これには日本政府も拘束されておるわけであります。それから第一次欧州大戦の後につくられました一九二九年捕虜に関する条約があるわけであります。この条約はヘーグ条約をさらに一歩前進せしめたものでありまして、その条約には帰るときにどのような手段でもってその労働賃金を与えるかそれを決めなさい、規定すべしということになっております。それからいま一つは、従来は捕虜の労働賃金から衣食住の経費を差し引くとなっておりましたが、二九年条約では差し引かなくてもよいということになっておるわけであります。  そういう状況のもとに私どもはソ連の捕虜になったわけでありますが、ソ連はもちろんヘーグ条約の加盟国でありますから、このヘーグ条約というものは一応は守る立場に立ったわけであります。具体的な手続を定めた二九年条約につきましては、ソ連もこれを遵守するというところの声明を国際赤十字に言明しておりまするし、日本の外務省も大東亜戦争の開始に当たって、国際赤十字からの求めに応じて日本政府はこれを準用するということを述べておるわけであります。追っかけこれに関しましては、そのころの外務大臣を兼ねておりました東条英機さんの名前で、国際赤十字に対して次のような書面が出されておるわけであります。これは昭和十七年の九月十二日でありますから、大東亜戦争米英開戦の直後の文書であります。スイスの特命全権大使にあてたものでありまして、「帝国政府ハ各交戦国ニ依リ支給セラレタル捕虜ニ対スル給養額ハ戦争終了後捕虜ノ兵役ニ服シタル国ニ依リ返済セラルルモノト了解ス」と、つまり日本が二九年条約を準用することによりまして、二九年条約に定められて改善されたところの捕虜の労働賃金は差し引かないでそっくり渡してくれるように、日本政府もそのように理解しましたという公文書を国際赤十字に発したわけであります。  本来ならば、この規定というものが第二次大戦の結果捕虜となってソ連から帰ってきた我々に対して適用せられるべきものであります。すなわち、ソ連で私どもが働きまして賃金の代替に差し押さえられておりますところのその給養費というものは、日本政府が支払うべき義務があったわけであります。この義務は今日も解消されておらないわけであります。しかし、日本政府は残念ながらこの戦争で敗北という結果を招き、また国内というものがアメリカ軍の占領下に置かれまして外交権も喪失する、そういうさなかにあってはこの問題というものはいわば棚上げにされた形で今日に至っておる。このため、シベリア抑留者が現在政府にこの支払いを求めておるというのが現状であります。  ところで、問題になりました外務省の見解と私ども見解はどうであるかと申しますと、こういうことであります。外務省の見解といたしましては、そういうことは認める、南方から帰った捕虜に対して日本政府が労働賃金を払ったことも東条さんのそういう捕虜の食費、給養というものを日本国が持つということを言明したことは認める、しかしそれは任意であって、国が国家義務として考えたものではないと。つまり、二九年条約はどこまでも準用であってこれは国家義務として拘束されるものではない、自由裁量の問題である、こういうことが私どもの間と違うわけであります。私どもはこれを自由裁量の問題ではなくて日本政府はこれに拘束されておるという立場から、そういう問題に当たってはやはり国家の三つの機関、すべての機関にお願いしないことにはこの解決は無理だろうということで、当参議院の請願は通過いたしましたけれども、あえて司法府にもこの問題を提訴しておるわけであります。  なぜ私ども国家義務だと申しますかというと、捕虜に労働賃金を払うということは何も二九年条約で初めて決まったことではなくて、十九世紀の当初から捕虜というものはもはや奴隷ではないんだと、牛や馬のように働かせて賃金を払わないで済むということではなくなってきたというのがジュネーブ条約の発端であると思います。捕虜も人間である、働いたら給料払わにゃならぬ、この大原則が最初にヘーグ条約にありまして、それがだんだん変わって今の四九年条約に至っておるわけであります。そういう流れから見ますと、確かにヘーグ条約は基本法でありますから、事詳細にはわたっておりません。二九年条約になりまして初めて渡す方法を規定しなさい、それからその労働賃金は帰るときに支払いなさいと。  これは何を意味するかということでありますが、これは明治から今日まで何ら変りありません。日本人が外国に行く場合に、外国人が日本に来る場合に、その原国の現貨を持って入るということはできないわけであります。これは当然のことであります。第一次欧州大戦の捕虜の交換の場合もそうであります。したがって、原国の現貨を持ち帰ることはできませんから何でそれじゃ支払ったかと申しますと、それはいわゆるカードでありあるいは証明書でありあるいはチケット、小切手で払ったわけであります。これが米英軍の二九年条約の履行の方法であったわけだし、世界的にもこれは一つの国際慣習法としての成立を見ておった。だから、米、英、豪州から帰ってきた第二次大戦の日本軍の捕虜に対しましてはこの規定が適用されまして、アメリカ軍もイギリス軍も豪州軍も決して現貨を払ったわけじゃありません。その現地の将校が名前を書いた、サインした紙切れを持たせたわけであります。この紙切れを日本国が落札するという方法でもってこの債務にこたえたわけであります。  しかしながら、日本国は悲しいかなこの関係を四九年の六十七条の解釈におきまして、支払いすべき原国というものを抑留国であるか所属国であるかという点で、結局日本政府はどっちともつかない「当該国」ということで条約日本語文を官報記載したわけでありますが、この辺にそもそも問題があるわけであります。当時の日本政府はこの辺の問題をきっちり煮詰めることをしなかった。しないままにこの問題は、南方から帰ってきたところの者に対しては、アメリカ軍、英軍あるいは豪州軍の証明書があったから金を払う、ソ連の方には払わないという方法をとったものだろうというふうに思われるわけであります。こういうことは決して日本政府の任意でやったことではなく、日本政府の発想になかったことを米英軍、占領軍のいわば国際法の規定を守ってくださいということの義務履行を迫られて日本国がこの義務にこたえたものであって、外務省が言うところの趣旨、つまり任意で日本政府がやったのですというのとはちょっと趣が違うのではないだろうか、このように思うわけであります。  その証拠はどこにあるかと申しますとなると、南方日本政府がお支払いになったのは昭和二十年、二十一年の年であります。四九年条約日本が加盟したのはその十年後であります。その十年前になぜそのような連合国つまり捕虜をつかまえた国々の出した小切手、クレジットあるいは証明書というものを日本国が落札せざるを得なかったかというのは、それは法律にはそういう明文はありませんけれども、しかしそれが国際慣習法として成立しておればこそ日本政府はこの履行を行ったのであって、決して日本政府の発想に基づいて捕虜はそうすべきものだと理解したわけではありません。  そこで、日本のこの問題につきましては、占領軍費、それからその当時の日本国内で一部通用しましたアメリカ軍の軍票の処理の問題及び日本国の世界各国に対する債権の問題、債務の問題、これらをずっと戦後一貫して通覧されたものに、大蔵省がつくられたところの「昭和財政史」があるわけであります。この財政史はごく最近に完結いたしまして、たしか昭和五十九年だと思いますが、合計都合二十巻という非常に大部の労作としてこれが大蔵省の財政史室で編集されて社会一般に出されておるわけであります。その中では日本政府が第二次大戦の後、米、英、豪に払った労働賃金について、このような公的見解を明らかにしておるわけであります。  その中で「捕虜労賃カード等」といたしまして、「連合軍の捕虜として収容された日本軍兵員が労役に服して交付を受けた労賃カード等で未払いのもの(一九二九年七月ジュネーブで締結された「捕虜待遇に関する条約」により抑圧当局は捕虜に対し公正な労賃を支払う義務を負うが、その未払分が日本政府に転嫁される)」とあります。このように認められたのは、決して我々が勝手に言っていることではなくて、政府・大蔵省で安藤良雄さんという東大の名誉教授を部会長といたしまして、これには大蔵省のお歴々の方々も参加いたしまして、十数名の方が六年間の歳月をかけて完結されたところの公刊された文書であります。これが一つ。これから見ましてみても、やはり日本政府は現在それが任意であったと言うのはちょっと言うこととやっていることが違うのではないか、こう思うわけであります。  それから、先ほどちょっと触れましたが、四九年条約日本が加盟いたしましたのは五三年であります。この四九年条約にこのことがやはり国際的に明確に表現されたわけであります。どのように表現されたかと申しますとなると、例の「ザ・セッド・パワー」で問題になりました六十七条、ここではありません。その前条の六十六条の第三項にこのような規定となってあらわれてきておるわけであります。「捕虜が属する国は、捕虜たる身分が終了した時に抑留国から捕虜に支払うべき貸方残高を当該捕虜に対して決済する責任を負う。」。極めて明確になったわけであります。従来は捕虜の労賃はソ連が払うべきもの、この場合は。政府条約をこのように日本語訳にしまして、そのことで国会の御認可も受けやってきたわけであります。いよいよ煮詰まってそれがひっくり返ったわけであります。ひっくり返ってみますと、初めてこの六十六条に出ておりますところの「捕虜が属する国」はつまりその労働賃金カードを決済する責任を負うと。  これは諸外国ではこの関係、本来ならば我々を使ったのはスターリン政府でありますからその労賃をスターリンが払うのは当たり前じゃないか、しかしそれを何のために第三者的な立場日本政府が払わにゃならぬかということで、これは国際赤十字のこれの解釈によりますと、それは民事上の保証債務に準ずるものだ、こういうふうに言い切っておるわけであります。保証債務に準ずるものだと。なぜ準ずるか。それは、条約国家間の契約であって、捕虜は直接の請求権を行使できない。だから、捕虜一身に所属するところの貸し借り勘定の問題は所属国において責任を持つんだ、こういうことで初めて次の条の六十七条に参りまして、その際日本政府が払った捕虜に対する支払いというものは後から両国の間で事後処理をやるんだというのが六十七条の規定であります。  私どもはそういう立場をとっておりまして、そういう面からいえば現在提出されておりますところの問題は、平和祈念事業というその趣旨においては私どもは賛成でありますが、しかしこの捕虜の問題というものは私ども個人の問題ではなくて、今後五十年なり百年なり日本国民を左右する問題でありますから、金額をあれこれ言うわけじゃありません、やはり捕虜の労働賃金というものは所属国日本が背負うべきものであるというところの法的観点というものはきちっとしておかないと今後またまたこういうことで過ちを起こすのではないだろうかということで、私どもといたしましては来るべき判決に期待を持ちながら、現在この問題はまだ終わっていないという立場に立っております。  終わります。
  10. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ありがとうございました。  次に、結城参考人お願いいたします。
  11. 結城吉之助

    参考人結城吉之助君) 私は、社団法人引揚者団体全国連合会の副理事長結城でございます。本日、発言の機会を与えてくださいました名尾委員長に御礼を申し上げます。  団体の目的は、海外同胞の完全引き揚げ促進及び引揚者の更正、援護などを軸に社会復帰の促進でございます。さらに、賠償金支払いに引き当てられた在外財産の国家補償であります。  活動としましては、法治国家として、また世界人権宣言にある私有財産不可侵の原則によって、国家百年の大計より筋を通していただきたいと四十年間叫び続けてきたのが、我が団体の真意でございます。具体的には、在外私有財産権に関する法的措置を講ぜられますように、悲願を込めて活動を続けてまいりました。これが全国運動の私どもの大きな仕事でございます。  終戦後六年たって、サンフランシスコ平和条約によって、つまり条約締結に当たって在外財産は引揚者の所有から切り離されてしまいました。日本は賠償の支払いに在外財産の引き当てを連合国と合意しておるのであります。よって、在外私有財産問題というのは平和条約締結以降に発生した問題でございます。したがって、日本は賠償金を支払っていないのが現実でございます。丸裸にされた私ども引揚者は、生き延びることを一生懸命に心配して、執拗に運動を続けてまいりました。昭和二十六年の批准国会で、吉田首相から、連合国に戦争賠償の担保として没収された在外財産については国が補償すべきものである、かように答弁されたのをきっかけに、内閣は第一次、第二、第三次と審議会を設置しまして、昭和三十二年と同四十二年の二回に法律措置を講じてくれました。しかし、この二つ法律には何らの法律根拠はございません。補償の字句は全然ございません。  法律第百九号は昭和三十二年五月十七日公布されましたが、その際当時の厚生省援護局援護課長の小池欣一氏が、現在健在でございますが、この課長さんがこれは補償ではない、かように言明されておられます。当時の説明書にもそのように示されてもおります。四十二年の法律、予算計上の際は、政府としては在外財産の多くは中国にある、中国は平和条約未締結である、よって現時点では日本法律は中国に及ばない、日中両国の国交成ってからの話だ、かように承ってまいりました。しかし、その後昭和五十三年八月十二日に、田中首相と大平外相によって日中国交が開かれました。政府日本法律は及ばない、かように言っておられた心配は取り除かれているのでございます。それにもかかわらず、政府・与党は戦後処理は終わったとの覚書を取り交わしていると承っておりまするが、当事者の私ども引揚者には何らの相談もないのであります。  いよいよ昭和六十一年十二月十九日に、長谷川峻議員連盟会長は議連総会の決定に基づいて、在外私有財産を喪失した引揚者に対する特別給付金支給法案、これを議員立法として提出すべく与党の内閣部会に上程しまして、審議の結果承認決定となっております。しかし、この法案は、昭和六十二年十二月二十七日、ただいま御審議されておる平和祈念事業特別基金等に関する法律案骨子を、政府と与党の了解事項を提示されるに至りまして、同法案は提出見合わせとなりました。極めて簡単に申し上げましたが、以上のような経過があるわけであります。  よって、私ども団体としましては、これだけはぜひとも実現させていただきたい、その点を申し上げます。  政府は、いよいよ戦後処理問題解決へと平和祈念事業特別基金等に関する法律案をお出しになった、その御努力には敬意を表するにやぶさかでございません。ここにおいて、基金法の第三条に基金の目的である関係者に対し慰藉の事業を行う、かようにございます。この慰藉の事業でありまするが、引揚者団体は、金銭や名称は別といたしまして、特別事業として、引揚者の在外私有財産を賠償の肩がわりにした償いを施行できますようにと、かように申し上げる次第であります。先ほど申し上げているとおり、引揚者はすべての在外私有財産を失ったのであります。つまり地縁、人縁、こういう関係からさらに居住あるいは職業あるいは家屋あるいは土地、農地、学校、各個人個人の信用、お墓に至るまでの財産、ことごとく没収され、失ったのであります。この有形無形の財産を政府は賠償金支払いに引き当てられたのであります。日本は賠償金を支払わずに済ませた。この事実を踏まえまして慰藉の特別事業を施して、基金法の尊厳を打ち立てるべきであろうと思います。  具体的に申し上げます。  引揚者に、在外私有財産を賠償にしたその国として、金額の多少は問いませんが交付金を交付する。そしてもう一つは、国家経済再建に貢献したあかしとして、引揚者に国家から杯を添えて感謝状を贈る。以上の措置ができますように、基金法の運用に資することだと申し上げます。かくして、おのれの在外私有財産は祖国日本の国益になったという誇りを引揚者が堅持できますようにこの基金法が施されたい、かように重ねて申し上げます。  昭和十六年、今から四十七年も前でありまするけれども日本軍の真珠湾奇襲を発端に、米国にいる日系市民は住居を追われ、職業をも財産も奪われてキャンプに強制収容された。苦心惨たんはもとより屈辱を受けた日系市民十二万の方々に対しまして、第二次大戦終了後昭和五十一年当時のフォード大統領が収容は誤りであった、かように発言して以来、米国国会の大きな問題となり、下院、上院両院で強制収容の惨事に言及して絶句、声涙ともに下る正義そして公正の言論、感動的な場面が展開された、かように報道されておりました。遂に先月の四月二十日に、国民を代表して米国の国会は謝罪すると第三章に明記した戦時市民強制収容補償法案が可決された、かように報道されております。このことは、私有財産を没収した国、奪われた市民との関係の尊厳であり、私ども引湯者団体が在外私有財産を喪失した問題で正義を唱えた四十年間の運動と余りにも相共通する問題だろうと思いまして、非常に関心を多くしたのであります。  引揚者は全国に引き揚げ当時は四百五十万と言われましたが、現在二百万ちょっととなりました。どんどんと死亡していったわけであります。願わくば、日本と米国の両国民が叫ぶ正義が相こだますることを期待し待望して、私の意見を終わります。  御清聴を心から感謝申し上げます。
  12. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ありがとうございました。  以上で、参考人方々からの御意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  13. 野田哲

    ○野田哲君 五名の参考人の皆さん、大変御苦労さまです。内閣委員会の理事を務めている社会党の野田でございます。  まず、富永さんにお伺いをいたしたいと思います。  先ほど来の御意見の中で戦後処理問題懇談会のことについてお触れになっているわけでありまして、御指摘の点は私ももっともだと思う点があるわけであります。私どももこの委員会で先般来議論をした中で、この戦後処理問題懇談会は私的諮問機関であって、私的諮問機関というのは法律による公的な審議会と違って個々の委員参考意見を述べるにすぎない、したがってまとまった意見あるいは答申を出すべきものではない、こういう政府見解があるわけでありますから、そういう立場をまず基本的に政府に指摘をしたわけであります。そういう見解があるにもかかわらず、戦後処理問題懇談会が今回の平和祈念事業特別基金等に関する措置を報告書として出しているわけでありますが、問題は、この報告書の中ではその前提として、「この際戦後処理問題に最終的に終止符を打つために、当懇談会としては以下のことが適当と考える。」、こういうことで、戦後処理問題についてはこの法律によって祈念事業をやるための特別基金をつくって、そこで法律に定められた範囲内の業務をやることによって戦後処理問題は終止符を打つんだ、こういうのが懇談会報告の趣旨になっているわけでありますけれども、この点について富永参考人はどのような御見解をお持ちなのか、また所属されている団体としてはどのような御見解をお持ちなのか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  14. 富永勝

    参考人富永勝君) 富永でございます。  ただいまの御指摘いただきました戦後処理問題懇談会答申については、野田先生も指摘されましたように、私も先ほど朗読しました中ではっきり申し上げておるわけでございます。政府がこれでもって終わりということをうたってあるということでございますが、それは政府がおやりになることですから妨害はいたしません。自由におやりになって結構でございます。しかし、我々はあくまで個人給付をしていただかなければ憲法違反だという見解を持っておりますから、もしこれで終止符が打たれるとするならば、そういう観点に立ちまして断固たる闘いを前進するつもりでございます。  終わります。
  15. 野田哲

    ○野田哲君 斎藤さんは今の点についてはどういうふうな御見解ですか。
  16. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) この問題、きょうのこの法案で終わるかということでありますが、ずばり申し上げまして、一昨年の七月の総選挙で自由民主党の案として出されたあの案というものは関係団体に広く行き渡っておりまして、末端の会員になればなるほどあの実現を待ちわびているというのが、ここに並んでいる五人の団体に共通するものじゃないかと思うんです。いろいろの予算関係でこのような結果になったわけですが、やはりこの法律が通ったからといって運動が直ちに消えるとは思っておりませんし、私ども立場は、先ほど申し上げましたように、やはり法律上きちんとしていただかないことには我々が従おうにも従う方法がないんだということであります。どうかそういうことでおるということを御理解くださればありがたいと思います。
  17. 野田哲

    ○野田哲君 もう一つ斎藤さんにお伺いをしたいんです。先ほど来ジュネーブ条約の問題について御説明があったわけでありますが、もう一つ国際的なことにかかわるわけでありますけれども斎藤さんの方の団体では戦後強制抑留者の範囲の問題につきましても、いわゆる法律で定めているシベリアそれからモンゴル、これ以外にも戦後強制抑留者の範囲ということについての御見解をお持ちだというふうに仄聞をいたしておりますので、その点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) 私どもこの法案を総理府の方から内示と申しますか、ということでいただきました場合に、最初に問題にいたしましたのはソビエトの地域という問題であります。このソビエトの地域というものは具体的にどことどこをお指しになるのかと言ったら、ソ連の本土及びモンゴルと、今先生の御質問のようなことを総理府で言われましたので、これは大変なことだと。そもそもソ連に抑留されたのはあそこだけではないのでありまして、具体的には樺太、南も北も含めてであります、それから北方四島、今の歯舞、色丹も含めてであります、あそこにも少なからざる捕虜が抑留せられまして、その労働の規律、労働の条件、労働の内容というものはソ連の政府によって決められたノルマでやったわけですから、同じ条件でやったわけであります。それなりに高い死亡率も示しておるわけであります。それが入らないということでありますからどういうことでしょうかと言ったら、日本政府としては歯舞四島は日本の国である、こういうようなお話だったんです。  これはしかし政治の問題のお話であって、戦争犠牲者を救うという点までにその国境の問題を持ち出されてはこっちがたまらない。こちらの方としては、ソ連に抑留されて強制労働に携わった者に対して国の慰藉、こう素直に受けとめておるので、この地域にはソ連の管理地域も含むと、具体的には樺太全島、それと歯舞、色丹を含む千島列島の全域と、それからその当時ソ連の中国政府からの租借地でありました大連、ダルニーと旅順も含めていただきたい。旅順と大連を含めるという意味は次のようであります。ソ連は旧満州から戦利品を没収いたしまして、この戦利品を運送するには鉄路で運ぶことが困難であったわけであります。鉄路では人間、捕虜を運ぶということが主力でありまして、大方の物資は船で運んだわけであります。その港に使用されたのが旅順、大連でありまして、そこには四万近くの日本兵がおりましてやはり強制労働に従っておったわけであります。それも含むべきである。だから、地域は管理地域を含んでいただきたいというふうに事務当局にもお願いしておりまするし、また、いろいろな機関にも、政府にもお願いしております。  今改めてこの法律の解釈上は、従来の厚生省の見解どおり管理地域も含むというふうにしてお取り扱いを願いたいと思います。
  19. 野田哲

    ○野田哲君 終わります。
  20. 板垣正

    ○板垣正君 赤間さんに伺いますが、いわゆる恩欠者、この問題は私はいわゆる官民格差、この問題がポイントであると思います。で、実態についてもう少し伺いたいんです。年限的にぎりぎりの人もおられるだろうしまた浅い人もおられるだろう。それと関連して、今取り上げられつつある実態調査問題がございますね。その辺の見解を伺いたい。
  21. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) 官民格差について御質問がありましたので、お答えを申し上げます。  先ほど申し上げましたように、公務員等そういう方々年金に通算する、しかしながら我々には何らのそういう措置がなされておらない、こういうようなことで、我々はいわゆる年金にそれぞれの軍歴年数を足したものを、何とかそういう制度をつくっていただけないでしょうか、こういうようなことをお願いしたわけであります。しかしながら、そういうぐあいになりますと相当長年月がかかるというようなことで、まず一律な方法をというようなことでいろいろ先生方が御苦労をしていただいたわけでありますが、そういうようなことをも踏まえまして我々は調査をしてみたわけであります。  例えば、公務員方々が三十年勤められましてそして軍歴が十年あった、こういうぐあいにいたしますと年に二百四十万、こういうような受給をされている方を例にとりますと、そういう方々のいわゆる一〇%、一年に六十万、これが軍歴に対する年金、こういうぐあいになるわけであります。それが退職後二十年生を得られますと一千二百万、こういうようなことになるわけであります。片方は我々のような者はゼロでありまして、そういうような退職されて八十歳まで生きられますと千二百万ももらえる、こういうようなハンディがあるわけであります。  そういうようなこと等も踏まえましていろいろと調査をしてみましたんですが、いわゆる公務員、こういうような方々が恐らく、三千三百市町村ありますが、それに平均十名おられますと三十三万、そして、三公社五現業、こういう方々、いわゆる公社職員、そういう方々も同じくそれぐらいにおられるであろうと、こういうぐあいに考えてみております。また、特にその後いろいろと勉強いたしましてわかったことにつきましては、いろいろな官公庁の特別常勤職、市長さんとか助役さん、そういうようなそれぞれの官庁の常勤特別職、こういう方々は十二年で年金がつくわけであります。それに軍歴年数を通算加算されますとそれなりの恩典があるわけであります。そういう方方も恐らく全国に三十万ぐらいはおられるであろうと、このように考えております。  なお、そうした点についても確実な調査はまだしておりませんが、あくまでも我々団体としての推定でございますが、そういう官民格差、官というような処遇を得ておられる方は百万ぐらいはおられるであろうと、このように考えてみております。
  22. 板垣正

    ○板垣正君 今度は青木さんに伺いますが、先ほど言われた亡くなった方々の問題、あるいは恩給を受けている方ですね、やはり皆さん方が一緒に苦労した者は一緒の扱いと、補償問題についての基本的なお考えなりは我々もかねがね承っております。同時に、この法案に関連しておっしゃることは私も同感であります。ぜひそうした方々に対してもせめて慰労なり等の措置がとられるという方向で私どもも努力したいと思っております。同時に、これがいよいよスタートいたしますと、先ほどお話がありましたいわゆる平和基金に基づく事業ですね、そうした事業を幾つか挙げられましたが、その中で最も重点を置いて優先的にぜひ取り上げてもらいたいと、こういう具体的なお考えがありましたら伺いたいと思います。
  23. 青木泰三

    参考人青木泰三君) ただいまお尋ねの問題でありますが、第一番にやっていただきたいのは慰霊碑であります。慰霊碑を建立していただいて我我にまず慰霊祭をやらせていただきたいと、こう思っております。次には、会館を建てていただきたい。というのは、やはりいろいろ後世に残すために資料収集もやらせていただきたいし、またそれを展示してまた記録もつくっていただきたい。また、先ほど申し上げましたように調査研究をしていただきたい。というのは、抑留とは何であったのかということをはっきりひとつしていただきたいと。現在の状態では、抑留とは何であったかということが政府におきましても全然明瞭にされておりません。  今回初めて我々のシベリア抑留というものに対して要するに慰藉の念をあらわすと、こういうことでありますから、初めて私たちが認めていただいたということでありますから、認めていただきました以上、抑留というものは何であったのかということを政府の手ではっきりひとつ国民にあらわしていただきたいし、そういうことになりますと、やはり必然的に起こってきますのが補償という問題ではなかろうかと。先ほど斎藤さんいろいろお話しになっていますが、私たちもそのことにつきましては同様であります。  そういうことを国において速やかにやっていただかないと、平均年齢が七十歳を超えておるという我々の高齢であります。先般も尋ねますと、二百億の果実でということでありますが、三団体おりますと三団体に分けましても、年間まあ五年後に二百億になるようでありますが、二百億になりまして果実というものはまあ五%といたしましても十億でありますから、一団体三億そこらじゃないかと思います。そういうもので会館一つ建てょうといたしましても、会館はまあ少なくとも三十億や四十億の金がかかるんじゃないかと思います。そうしますと、そういうことはいつやってくれるのかということも尋ねたわけであります。  そうしたら、そういう金を積み上げていって、まあできる時期が来たらやろうというようなお話も伺ったわけであります。そうしますと、現在我々のようにこういうことを申し上げておる者はもういないんじゃないかと。だから、我々のやはり目の黒い間にそういうものを実現をしていただきたい。そして、我々の苦労したということを国において慰藉をすると、慰めようと、こうおっしゃるのであれば、我々の生存中にそういうことが実現をせないと、いなくなってからではまあそういうこともわからないんじゃないかと。  先ほども申し上げましたように、四十三年たちますと政府人たちも――先般も外務省へ行きました。先ほど斎藤さんからいろいろお話がありましたので私は抜いておりますが、茂田ソ連課長からこういうことを言われたんです。国はもう権利を放棄したのであるから、君たち補償要求したいのであればソ連に直接請求したらいいじゃないか、その権利までも放棄しておらぬから君たちでやりなさいと、こういうことを言われたわけです。我々はそういうことができるとは思いませんが、政府のエリートである高官の方までが四十年たちますとそういう考え方であるのかと思いますと、私たちは本当に情けなくて断腸の思いがいたしました。そういうことのないように、我々のやはり苦労してきたということを今の若い人に知っていただくのには、この平和祈念事業をやるとおっしゃることを一日も早くやっていただいて、国民の名においてそういうことが本当に理解をしていただくようにしていただきたいと思います。  以上であります。
  24. 板垣正

    ○板垣正君 私の方からのお願いですけれども、亡くなった方のための慰霊碑、これも大事なことだと思います。同時に、亡くなった方々政府の推定でも約五万五千と言われていますね、ソ連本土で。そのうちソ連側から墓地について、あるいは亡くなった氏名、人数等について正式に通告があったのはもう本当にごく一部ですね。つまり、五万五千のうち、二百カ所とも三百カ所とも言われている埋葬墓地について正式に通告があったのはわずか二十六カ所、三千九百何名かです。こういう事態は、これは当然国会においてもまた政府においても取り上げていかなければならない。我々も取り上げていく問題でありますが、亡くなった方の問題あるいはおっしゃった抑留者の実態という中で、まさに戦後処理の重大な問題として五万を超す方々の墓地すら、あるいはどこで亡くなったかも正式に判明しておらない。うやむやになっておる。これは人道上も許されないことでございます。私どももこの問題は忘れることができないとともに、皆さん方の団体も大変苦労して今日までお努めでございますが、この亡き人々を忘れられない思いを皆さん方の団体、あるいは一つの国民的な運動としてもこれはほうっておけないという立場でひとつ今後いろいろ御相談願えればと、こう思うわけでございます。  時間が参りましたので、私の質問をこれで終わります。
  25. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいまいろいろ参考人の皆様から御意見を伺いました。私の内容の受け取り方が間違っているかどうかわかりませんが、まず赤間参考人からは、年金の通算問題を公平化しろと、こういうことが強く述べられたと思います。次に富永勝参考人からは、軍人軍属とは性質が違うのだから、これを区別して軍人だけについて個人給付の立法をするようにと、こういう御意見であったと思います。それから青木泰三参考人は、抑留者に支給する範囲について恩給受給者を除いておるが、これは除くべきでなしに同じく支給してもらいたいと、こういう御意見であったと聞きました。それから斎藤六郎参考人の御意見は、捕虜の労賃の支払いに対する問題なのだからこれを一方的な恩恵的なものとして考えるのは間違いだ、国の法律上の義務として実行してもらいたいと、こういう御意見であったと承りました。それから結城参考人の御意見は、在外財産は賠償金支払いの引き当てにされたのだから当然これは国家補償すべきである、こういう御意見であったと思います。  もし間違っておれば、後から私に対して訂正するように申し述べていただきたいと思いますが、こういう点につきまして全員の方の、私の理解が間違いないかどうか、お伺いします。  それから次に、現在ここで御証言願いました件につきましては、過去におきまして衆議院においても参議院においてもしばしば論議が行われました。そして、その結果として平和祈念事業特別基金等に関する法律案というものになったと理解しておりますが、その過程におきまして、戦争犠牲者は国民全体であって軍人だけではないし、国費を負担するのは国民の了解を得なければならない、それには限度がある、こういう趣旨の御答弁を政府側からはいただいたと思いますし、また考えてみますというと、無制限にすることもできないということであれば政府のおっしゃることも当然かと思いますが、こういう見解について参考人先生方はどのようにお考えになっておられますかということでございます。それから、終局的には参考人先生方はこの法案について御賛成なのか御反対なのか、これがどうも明確でなかったと思いますのでお伺いをいたします。  以上の質問でございますが、よろしくお願いします。
  26. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 飯田委員にお伺いしますが、では順次全部五人の方からですか。
  27. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ええ、順次お願いいたします。
  28. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) ありがとうございました。私たちは、先ほども申し上げましたように、年金にそれぞれの軍歴年数を通算加算していただくことが一番いい方法であると。先ほども申し上げたとおりでありまして、それがいろいろの国の施策あるいはお金の都合、こういうようなことでできない、したがってどうするかということで、一昨年特別基金法案という法律案をお出しいただきましてそれの促進法をお願いしたわけでありますが、それもできなかったということで、そういうようなこともできないので現在の平和祈念事業特別基金法案というようなことになったと、このように承知をしております。この法律案に対しましては、我々はそれなりに突破口であるというぐあいに考えまして了承をいたしておりますが、また先ほど申し上げましたとおり、これでは我々の個人補償に連動する、そういうような個人補償の道が一つも出ていない、明文化なされておらない、こういうようなことで、今申し上げましたようにお願いを申し上げた次第でございます。  そういうようなことでございますので、どうかひとつ諸先生方も――我々はもう年であります。何よりも早く、ことしの十二月、来年度の予算編成の時期までに我々のこうした明文化を何とか出していただくようにお願いを申し上げる次第でございます。きょう本当にこうしたことまでお話しいただきましたことを厚く感謝申し上げますが、再度どうか我々のこの心境をお察しくださいまして、十二月までにはそれなりの明文化、いわゆる今回の法律案の中にはほとんどがシベリア抑留者内容に尽きておるようなことであります。ただ、我々の問題といたしまして、いわゆる運営委員会におきましていろいろと討議検討して何らかの形を出すんだというように法律案の中にもあるわけであります。そういうようなことでありますので、どうか我々の団体の心情もお察しいただくようにお願いを申し上げて、終わります。
  29. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 参考人の方にお願いいたしますが、時間の関係もありますので、お一人三分以内でひとつ御答弁を願いたいと存じます。
  30. 富永勝

    参考人富永勝君) ただいまのお尋ねにお答えいたします。  一つは、一般国民大衆も大変犠牲を受けているんだと、戦争のためには。それで、我々だけがこれを要求してどう考えるのかという御意見、御質問だったと思います。この点にお答えします。我我軍人は特別国家公務員としてすべてをささげて、お国のために命も捨てて働きました。だから、この意味では一般国民と同列に御判断していただくのは間違いではないか、このように考えます。したがいまして、軍人とは何であったかという定義についての御理解をさらにお願いをいたしたいと思うのでございます。  次に、この法律案についての意見はどうかということでございますが、我が連盟としては、個人給付というものが明示されていない現法律案でありますので、賛成はできません。したがいまして、「旧軍人」の三文字を削除していただきたいと言ったのは、我々が該当しないからであります。別個に個人給付という味つけをした、明示したところの特別立法制定を強く要望しておるわけでございます。この点、御理解をお願いいたします。  終わります。
  31. 青木泰三

    参考人青木泰三君) ただいまお尋ねの問題でありますが、一番肝心なのは補償でないということであります。慰労金でございますので御苦労と言うのになぜ差がつけられるのか。苦労したのは一緒であります。現在、私たち恩給受給者と言われておる、年金、いろいろな関係の方が十二万人ぐらいおると、こういうことでありますが、今の国家財政の中で十二万人ということは百二十億ぐらいだと思います。この金がなぜ差別をしなきゃならない原因になっていくのか、そういう点が私たちとしては納得がいかぬわけであります。一緒に生死をともにして、いつ自分が果てるかわからない苦労をしてきたこの仲間に差がつくということは、私たちは何としても納得がいかぬわけであります。  恩給とかなんとかいういろいろな問題につきましては、やはりそれなりの理由があってつくわけであります。我々が労働をやったから労働補償をと言っておるのに、労働補償は現在のこの法律案には載っておりません。載っておりませんから、御苦労やったと言うのであればそれは全体に同じ立場に置いていただかないと、私たちだけがいただくということは非常に難しいんじゃないかと。私自身も恩給受給者でありますので、そういうことには該当しないわけであります。そうしますと、我々の会の中からこれはどういうことなのか、何で差別されることを了承したのかと。いや、私たちは了承も何もしていないと。要するに国がこういう法律案を出しておられるのであるから何としてもこれは認めていただくように、平等な立場に置いていただくように我々はお願いをしておるというのが現状であります。  まして、昨年の暮れの十二月二十八日の朝方、自由民主党の三役と参議院の議員会長のお名前でとにかく来年の六十四年度の予算編成までには何とかこの問題は前向きで考えてやろう、こういうお話でございました。私は何といたしましてもそれだけは実現をしていただきたいと。そうでないと、我々いただくという立場に、仮にいただく者が中におりましても、同じ苦労をしてあすは生きとるのか死んどるのかわからぬという立場におった者同士になぜ差がつくのか。今の時代はお正月に子供がいただくお小遣いというものも十万やそこらの金じゃないわけであります。そういう時代に十万の金で国家財政の中から差別をしなければならないという、私はどうしてそういうことになるのかが解せぬわけであります。だから十万円というものに差別をつけずに、やはり御苦労と言うのならみんなが喜ぶ十万円を出していただくということが国家としての立場ではなかろうか、私はこう思うわけであります。  私たちがこの法律案をどう思うかということでございますが、私は、この法律案というものを出していただいて初めて私たちシベリアで苦労したということが認められたわけでありますので、だから認めていただいたのであれば、先ほども申しましたように、抑留とは何であったかということだけは国会の名において答えを出していただきたい。そうでないと、補償ができるとかできないとかいう問題じゃないわけであります。我々は犬働きをしてきた、勝手に行ってきたことになっておるわけであります。ただ御苦労と言っていただいたけれども、御苦労と言うのには原因がなければ御苦労と言う理由はないわけであります。原因はあるわけであります、我々が抑留されて本当に強制労働をしてきたわけでありますから。  そのことが何であったのかということを国で認めていただいて、そのことに対して政府がお金が出せないなら出せない、出せるなら出せる、補償ができない、こういうことの明瞭な回答をひとつしていただかないと、私たちは何のために捕虜になったのか、シベリアへ行ったのか、抑留されたのか、こういうことが解せぬわけであります。ただ勝手に行ってきたのではないのでありますから、そういう点を国会の名において私は答えをひとつ出していただいて、我々がやはり後世にああいう問題は二度と起こさないようにするのにはこういうことだけはやめようというのなら、抑留という問題の答えだけは明瞭にひとつ回答していただきたい、こう思うわけであります。
  32. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) お尋ねの捕虜の労働賃金の支払いは国に課せられた義務であるというふうに申し上げましたとおりであります。それから、国民一般の方々戦争犠牲と我々の国に対する要求関係でありますが、私ども戦争を起こした張本人ではありませんけれども、あの戦争に少なくとも参加した一人でありますから、再びあのような戦争を引き起こしてはならないという、そういうかたい決心でもってこの運動に携わっております。  そこで、私ども要求との関係でありますが、捕虜の人権、捕虜の地位は、これは捕虜だけの問題ではなく、戦時非常時の際の国民一般の人権の最後のよりどころになるところであります。軍人捕虜の権利が確立されておりませんと、沖縄戦やサイパン戦に見られるように、結局は軍人は一億玉砕国民道連れということになるわけでありますから、捕虜はしかるべきときにおいて投降権も認められるべきであるし、そういうことからは捕虜のいろいろな処遇というものも保障されるべきである、そういうことで今後とも国民皆様の御理解を得ながら私ども補償運動を進めるという立場にあります。  そういうことで、先ほど板垣議員さんからお話ありましたように、ソ連からは確かに三千九百七十四名の死亡通知しかいただいておりません。これも非常に残念なことと考えておりまして、ソ連政府に対しても強く私どもは要望し、直接モスクワにも交渉をやってまいりました。これまで五回ソ連の墓参もやっておりまして、ただ、ソ連はなかなか未開放地区というものが多くございまして我々の墓参を認めませんでした。本年度の墓参も許可なりませんでしたが、昨夜突然ソ連の方から通知がありまして、こことここ大きく解除されたから今度はよろしいですよというお話もありました。このような展望も開けてまいりましたので、私どもといたしましては、今ここで制定される平和祈念事業はせめても現地で亡くなられた方々の慰霊碑というものを現地に建てる、南方諸地域でやったと同じようにその土地を日本政府が買い求める、社会主義国家のソ連でありますから売るようなことはしませんかもしれませんが、永代の供養料を払うなどしてその霊を慰める、こういうことにはこの平和祈念事業法というものは大きく役立ってほしいと思いまするし、私どももその立場でおります。  それから、この法案にそれでは賛成かどうかということでありますが、私どもは現在司法当局にもこの問題の国家の自由裁量の問題であるか国家義務であるかという一点に限りましては御判断を仰いでおりますので、自余の問題につきましてはこの平和祈念事業に賛成の立場であります。ただし、国家義務という問題についてはこれを保留しながらの賛成であります。
  33. 結城吉之助

    参考人結城吉之助君) お答え申し上げます。  在外財産は戦争の賠償に充てた、それには変わりはないかというような御意見でありましたが、そのとおりでございます。実は、実際の立場の方方、行政からあるいは学者からあるいは法律家から、さまざまな方々から検討してもらいまして、その検討の結果、裁判に訴えましてそれを決着せよと、これが法治国家と、こんなぐあいになりまして、一応は全国代表の方々が集まりましてそのように決定したのでございました。  しかしながら、国会議員連盟先生方々がみんな集まってもらいまして、そしてまた私どもの団体の人々も集まりまして、今に政府も与党もしっかりした考えが出ますからそれは見合わせなさいと、このような御指導もございました。したがって裁判に訴えることは見合わせいたしまして、暫時私ども政府・与党の努力の面を待っておったわけですが、今回こうした平和事業の基金法が出ました。でありまするから、各国会方々あるいは政府方々、引揚者団体が昭和二十年から連綿として運動してまいったその内容というものはよく御存じのはずでございます。それをかたく信じまして、今回の基金法の中には必ずや先ほど申しましたように慰藉事業、これに対する特別事業、これを実行されまして個人個人に交付する、あるいは感謝を申し上げると、こんなぐあいに大きな期待を持ちまして基金法には賛成するような立場であります。  以上。
  34. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ありがとうございました。
  35. 吉川春子

    ○吉川春子君 共産党の吉川と申します。  きょうは五人の参考人の皆さん本当に御苦労さまです。  私たちは、皆さんの御要求なさっておられます個人補償あるいは官民格差是正そして墓参など、こういう要求は当然だと思いますし、私たちも支持しております。そしてまた、在外財産についてもサンフランシスコ条約日本政府が放棄しておりますので政府の責任において補償すべきだと、こういうふうに考えているものです。  それで、まず赤間参考人にお伺いいたしますけれども、この法案は政府自民党との了解事項そして戦後処理懇結論に基づいて平和祈念事業という法律が出てきて戦後処理問題はこれで打ち切るんだと、こういう立場で提案されているんですけれども、この了解事項処理懇結論についてどういうふうにお考えでしょうか。
  36. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) この法律案政府と党の了解事項に基づきましてのものであると、こういうようなことは承知をしております。しかし、この中にありますようにこれで終わるんだと、こういうようなことは我々は絶対許すべきでない、このように考えております。そういうようなことで、この法律案は先ほども申し上げましたとおりに我々の突破口であるというような考えを持っておりまして、一つ法律案といたしましてはこれは仕方がないものと、このように考えております。そういうようなことで、先ほど来もお願いいたしましたとおりであります。  以上です。
  37. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうですか。  そうしますと、個人補償が否定されたりそれから戦後処理問題がこれで終わりなんだということについては納得できないと、その部分は納得できないということですか。
  38. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) はい、そのとおりであります。
  39. 吉川春子

    ○吉川春子君 斎藤参考人にお伺いいたします。  社会主義国ソ連の強制抑留、こういうことは私は間違っているんじゃないか、このように考えております。大変御苦労されたわけですけれども、先ほど斎藤参考人は、一昨年の選挙のときに自民党の案が発表されてそれが末端まで行き渡っているんだと、こういうふうにおっしゃられましたけれども、それはどういう案だったんですか。
  40. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) 私の見ましたのは、おおむねあのときの選挙の広報で見たのが一つであります。それから議員連盟の方から受けました法案でありますね、その二つを見ました。その内容としては最高百万円、たしか最低が四十万と思いますが、抑留一年から四年までの四段階、さらにその前提として、その趣旨としてはシベリアから帰ってきた抑留者は労働賃金をもらっておらないと、それから南方から帰ってきた労働に従事した捕虜は労働賃金を受けておるということがありまして、私はそれを読んだ際に、自由民主党は少なからず我々の意見をこの法案に織り込んでくれたということで、私どもは急遽役員会を開いてそれに賛成の意を伝えたわけであります。そういう内容であります。
  41. 吉川春子

    ○吉川春子君 その案について今どうなっているというふうにお考えでしょうか。
  42. 斎藤六郎

    参考人斎藤六郎君) その案は、現在いろいろな過程を経て、結局のところは政府自民党間の協議におきまして、政府側の財政がそれに伴わないという理由で、ぎりぎりといたしまして個人補償は行わないと、ただしシベリアは特別の事情、苦労もあるので、恩給をもらってない者に対しては十万円、それから記念品、書状というものが出ると、このように最終的に昨年の十二月でありましたか決まったということをこの会の、私どもと違った会でありますけれども、会の会報で知りました。
  43. 吉川春子

    ○吉川春子君 まあ選挙のときのそういう約束と実際に出てきたものとが違うと、関係者のお腹立ちは当然だと思います。  富永勝参考人にお伺いいたしますが、この平和祈念事業が二百億の基金でもってその果実によっていろいろな事業をすると、こういう法案になっているわけですけれども、先ほどどなたか参考人がおっしゃいましたように、二百億円数年後に積み立てられて、その果実はそれでも年間十億ぐらいじゃないかと。そういうようなお金を運用するについて、このお金の中からの個人補償というのはもう絶対に無理ではないかと、こういうふうに私たちの党としては考えているんですが、平和祈念事業のこの基金、その運営、それと個人補償、こういう関係についてどうお考えでしょうか。
  44. 富永勝

    参考人富永勝君) お答えいたします。  平和祈念事業等のこの法律案了解事項に基づいて書いてあるわけでございますが、二百億の積み立てでその果実によって行うということは、我我軍人についての個人給付は不可能であります。ですから、このような少額の金額ではどうすることもできないということで、我々は他の別途の方法ということを考えておるわけでございます。  それから、もう一つは何だったですかね。
  45. 吉川春子

    ○吉川春子君 その中身について。
  46. 富永勝

    参考人富永勝君) ちょっと忘れまして、失礼しました。
  47. 吉川春子

    ○吉川春子君 結構です。今のお答えで結構です。  結城参考人にお伺いいたしますが、さっきアメリカの議会が在米の日系人に対する陳謝とそして補償を行ったという報道に触れられました。私もそれを読んで日米の違いということをすごく感じたわけですけれども、今引揚者団体の皆さんにとって、さっき金額は問わないんだというふうに言われましたけれども、一番とにかく真っ先にしてほしいこと、政府に対して要求したいことがあれば、おっしゃっていただきたいと思います。
  48. 結城吉之助

    参考人結城吉之助君) 先ほど申し上げましたが、どんどんと引揚者が半分以上亡くなっておるような状態でございまして、亡くなった方々に対しましてもあるいはまた生存者の方々に対しましても報告できるようなぐあいにしてもらいたい、このように悲願をしております。ということは、個々の交付であります。これなくしては団体が壊れます。がっちりと団結しておるのはそれが必ず来るであろう、こんなぐあいに信じておるからです。簡潔に申し上げますが、引揚者個々の方々が給付をちょうだいする、こういう考えを持っておることが第一点であります。
  49. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  50. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は民社党の柳澤と申します。参考人の五人の先生方、本当に感謝を申し上げますし、私自身が戦争に参加をしてラバウルでもって生き残って帰ってきた方ですから、皆さん方の先ほどからの御意見というものは身につまされますし、それはもう当然なことだというふうに思うわけなんです。で、戦後四十年以上もたった今日になってこういう問題が国会の中で議論をされているというところにむしろ今の日本の政治の問題があるんじゃないかということでもって、いまだにこういう問題を片づけないでおったということで、むしろ私の方から皆さん方におわびをしたいという気持ちになりますんです。  この間も、この法案審議のときにも官房長官に言ったんですが、国家のために戦争に連れて行かれてそれで命をささげて死んだ人を、お国がそのお祭りをしないなんという国が世界の中にどこにありますかと。少なくとも国のために命をささげて死んだ人であるならば、その人たちについての慰霊祭というものは国家が行うべきでしょうと。それがいまだにできないということは情けないじゃないですかと。それからもう一つは、先ほども富永参考人ですかお話が出た戦後処理問題懇談会、あれが戦後の問題については国家としてこれ以上措置することはないという答えを出している。これなんかも私は越権というか僭越だと思うんです。戦争というものは国が起こしたんですから、国家戦争を起こしたのであって、その戦争によっていろいろの犠牲を受けた、そのことについてどういうことをして救済をするかというのは、これはもう国がやるのは当たり前のことなんです。  先ほど結城参考人からもお話が出ました、アメリカが在米日本人を強制収容したことについて、国会の中であれはかなり議論がされたんだけれども、ともかくそれなりの補償をああやってしたわけなんです。しかも、この前の戦争のときにフィリピン人で米軍と一緒に戦って戦死をしたこの人たちなんか、アメリカ政府はアメリカの兵隊と同じように、フィリピン人であってもその人たちに全部同じ日本で言えば遺族補償というか恩給というか、そういうことについてはアメリカ人と何も変わりがない形であのフィリピンの人たちについていまだにずっとそういう待遇はしているわけなんです。  日本はついこの間ここでもって台湾人、現在は台湾人である、かつては日本人として戦争にも行ったわけですけれども、その人たちが幾ら救済をしてくれと言っても日本政府はやらないで、これはもう裁判にまで持ち込まれて、それで、私どもなんか裁判に持ち込まれただけでも恥ずかしいことじゃないかと言って、そして議員懇談会もつくっていろいろやってまいりまして、やっとことしになってその亡くなった人たちに対しての慰労金を贈ることができるようになりました。そういう点でもって、お聞きしたいというよりも、いまだに皆さん方がそういうことで御苦労なさっているということにむしろ心からおわびをして、じっと聞いておりまして、赤間参考人、大変時間にきちょうめんでもって言いたいこともまだあるんじゃないかと思いますので、官民格差はもうわかっておりますから、この不公平の是正をしてくれと言われたことについて、何かありましたらお聞かせをいただきたいと思います。  それから、結城参考人も、今裁判が終わったら団体が解散とかってちょっと聞いたんですが、そういう形になるのかどうなのか。で、これも先ほども言いましたように、官房長官がここへ来たときに、戦後処理問題懇談会がもう国において措置すべきことはないという答申を出している。これは大変失礼な不見識なことであって、たとえこの法案がここでもって成立をしても、今後においてもこの種の問題について検討を続けるんだということをはっきりお約束してくださいよと言って、そして官房長官も検討はそれはする必要があるものがあればいたしますという御返事だけはお聞きしたんですけれども、その辺の、お二人だけお聞きをしたいと思います。  あと、富永参考人からは資料をいただいておりますから、それでもうよくわかっていますので、よろしく。
  51. 赤間清吉

    参考人赤間清吉君) 不公平につきまして再度御質問いただきまして、本当にありがとうございます。  先生も御承知のように、赤十字看護婦あるいは陸海軍看護婦、そういう方々も非戦闘員であられるわけであります。そういう方々もそれなりに救済をなされておるわけであります。それと同時に、先ほど申し上げました官の人はああいうぐあいになっている、我々はそうでない、こういうようなことについての不公平、そして軍人恩給法、いわゆるそれは法律でありますのでこれは確かにそうであろう、このように考えるわけでありますが、それに本当に、先ほど例をもちまして申し上げましたとおりに、同じ同年兵でありましても最初帰還された人は十二年の枠内に入らないで後の人が入った、こういうぐあいな不合理、こういうものもたくさんあるわけであります。  そういうものはよく先生方も既にここで申し上げるまでもなく御理解をいただいておることであろう、このように考えてみておりますんですが、そういうようなことに対しまして我々は数が多過ぎる、数が多過ぎるからこれは考えものであるということに対しては我々は絶対許せないことである、このように考えてみておるわけであります。そういうようなことでございまして、二百七十五万、こういうようなことを申されておるんですが、それならばどうだという調査、こういうものも早くしていただきまして、そしてその調査につきましても、我々は年でありますので、六千万の範囲内で抽出調査でもできるんだという政府の方方のお話も聞いております。そういうようなことでありますので、調査する場合には単年度でやっていただきたい、こういうようなことをお願いを申し上げまして、不公平の点につきましてお答え申し上げます。
  52. 結城吉之助

    参考人結城吉之助君) 柳澤先生にお答え申し上げます。  引揚者団体全国連合会は社団法人で、昭和二十一年に生まれた伝統のある団体でございます。全国に皆各県連がございまして、それを網羅したのが全国連合会でありますが、そんなわけでこの団体がとにかく何とか解決しようというわけで、先ほど申し上げましたように、一番手っ取り早いのは裁判だ、そんなわけで裁判に訴えることを決議したことがございました。しかしながら、先ほども申し上げましたように、超党派の議員連盟がありますものですから、そういう方々と御相談申し上げまして、今に政府も各政党も心配するから裁判に訴えることはまずよそうじゃないかというような助言、御指導もちょうだいしまして、それはお見合わせいたしたような経過があるわけであります。  したがって、今回の基金法が出ますことを非常に待望しておりました。しかし、皆さんが申されるように、その骨子が発表されたときにこれは玉虫色の法律ではないかなと感じました。まさしくそうかもしれません。それならばこれを拡大解釈しまして、何とかひとつ慰藉事業というものを特別事業にいたしまして、長い間かかっても引き揚げの方々にちゃんとお灯明がともるようにやろう、こんなぐあいに決めまして裁判は取りやめました。そして、厳然として現在は全国連合会があるわけでありまするけれども、解散はいたしません。どこまでもこの基金法が通りましたならば基金法の事業に一生懸命に協力する、こんなぐあいになるわけであります。そうしてまた、私ども運動の中に、中国の養父母の問題あるいは孤児の問題あるいは日中友好の問題、さまざまなこうした運動の指導要網がございまして、そういう方面も今後一生懸命にやって、日本と諸外国との円滑なる発展に資そう、こういうような団体でありますので、そんなぐあいにやっていこうというような方針であります。  柳澤先生に今後とも御指導をよろしくお願いします。
  53. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  54. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々一言お礼を申し上げます。  長時間にわたりまして有益な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時二十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時三分休憩      ─────・─────    午後一時二十二分開会
  55. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、小野明君が委員を辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。     ─────────────
  56. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 平和祈念事業特別基金等に関する法律案を議題といたします。  休憩前の質疑をもって質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  58. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は、日本共産党を代表して、平和記念事業特別基金等に関する法律案に反対の討論を行います。  まず最初に指摘しなければならないのは、現職閣僚のたび重なる侵略戦争肯定発言が内外の厳しい批判を浴びたことです。  さきの太平洋戦争によって日本国民は三百万人のとうとい命を失ったのを初め、アジアの諸民族にも多大の犠牲を強いたことは厳然たる事実です。この侵略戦争を率直に認めようとしない姿勢こそが、戦後四十三年にもなろうという今日に至ってなお未解決の戦後処理問題が多く残されている最大の原因だと言わなければなりません。  以下、具体的に理由を申し上げます。  法案に反対する第一の理由は、特別基金の設立と恩給を受けていないシベリア抑留者にわずか十万円の慰労金支給のみで、強制労働問題、恩給欠格者問題、在外財産問題など関係者の最大の要求である個人補償を一切否定したことです。関係者は高齢化しており、早期に解決すべきにもかかわらずこれを否定したことは、人道上問題でもあります。  第二の理由は、本法案が戦後処理問題終結の引きかえ条件になっていることであります。それは、法案が政府自民党が一昨年十二月、「戦後処理問題については、先の戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って、特別基金を創設し、関係者労苦を慰藉する等の事業を行うことで全て終結させるものとする。」という合意のもとに提出されていることによっても明らかです。しかし、戦後処理問題は今回の法案によっても何ら解決されておらず、これを終結させる現状にはありません。戦後処理問題を切り捨てる引きかえ条件になっている本案を到底容認することはできません。  第三の理由は、今回の法案が国民を欺く文字どおりの公約違反法案であることです。自民党はさきの同時選挙で戦後処理問題の解決を公約に掲げるとともに、選挙中、恩欠者シベリア抑留者に五十万円から百万円の特別給付金を支給するという議員立法案を配布して、関係者を選挙に大量動員しました。法案はこの公約に全く反したものであります。しかも、自民党特別基金の設立によって恩欠者個人補償が可能であるかのように主張しておりますが、特別基金の設立自体が個人補償を否定することによってとられた措置であること、また特別基金が二百億円の運用益で運営されるという財源上から見ても、現状のままで二百七十万人恩欠者個人補償が行われないことは明白です。このような主張は公約違反を糊塗するだけでなく、重ねて関係者をも愚弄するものにほかならないことをこの際指摘しておきたいと思います。  十五年に及んだ侵略戦争犠牲者に対して国が十分な補償措置をとるのは当然のことであり、我が日本共産党は引き続き関係者要求実現を目指して奮闘することを表明して、反対討論を終わります。
  59. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  平和祈念事業特別基金等に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  61. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  板垣君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。板垣君。
  62. 板垣正

    ○板垣正君 私は、ただいま可決されました平和祈念事業特別基金等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     平和祈念事業特別基金等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について善処すべきである。  一、運営委員会委員の任命に当たっては、公正に行われるよう配慮すること。  一、運営委員会から政府に対し提言があった場合には、これを尊重すること。  一、法第二十七条第三項の業務の認可については、速やかにこれを行うこと。  一、慰労金の支給を受ける権利の認定については、受給者の高齢化等の実情にかんがみ、速やかにこれを行うこと。  一、戦後強制抑留者に対する措置について、引き続き検討を行うこと。  一、恩給欠格者に対する慰労個別的措置については、引き続き検討を加えた上、速やかに実施するよう努めること。   右決議する。  以上でございます。
  63. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいま板垣君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  64. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 全会一致と認めます。よって、板垣君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  この際、委員長から一言申し上げます。  ただいまの附帯決議の中に「戦後強制抑留者に対する措置について、引き続き検討を行うこと。」となっておりますが、この中には戦後強制抑留者の対象範囲も含まれているというのが内閣委員会の理事会で一致した意見であります。政府においてもこの趣旨で理解されたいと存じます。  ただいまの決議に対し、小渕内閣官房長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小渕内閣官房長官
  65. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては十分検討いたしてまいりたいと存じます。  なお、委員長から御発言のありました点につきましては、そのように理解させていただきます。
  66. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  68. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 次に、昭和六十二年度における国家公務員等共済組合法年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  69. 久保田真苗

    久保田真苗君 私、都合によりまして、先に国家公務員の男女差別問題を取り上げさせていただきたいと思います。  既に新聞等の報道でたびたび御存じのとおり、郵政省電波研究所で四十二年働いてまいりました女性の事務官が昇任昇格の男女差別の是正を求めて人事院に行政措置要求をした件についてでございます。この件につきましては、既に人事院が当局と申請人に対しまして粘り強いあっせんを行っていただきまして、昇任昇格等に対しまして一定の是正が行われたということを評価しております。それは、行政措置要求は個人にとりましては最後救済のとりででございまして、人事院がその救済措置の役割を果たしていただいたということはこの種のさまざまの案件につきましてもまた希望の持てることだと思っております。  したがいまして、私が今取り上げたいのは、既に両方によって受け入れられましたこの案件についてではございません。ただ、この案件から私自身も幾つかの教訓といいますか、そういったものを得ておりますし、また国家公務員に関しましては意外に原始的な男女差別が存在することが懸念されるということなのでございます。このことは、人事院からいただきました行政措置要求の継続案件になっているもの、つまり焦げつきのリスト、それが四十件ある中で二月十五日現在の数字ですけれども、三十二件がこの男女差別に係るものだったということを銘記しておく必要があると思います。私が申します原始的な男女差別といいますのは、それは端的に言いましてある職場において一般的な昇格基準というものと婦人に対する別の昇格基準というものを別立てにしているというそういう事例があったということなんでございます。そして、そのような慣行が行われてきたということでございますし、また昇格の実態を拝見いたしますと、実際にそのような別立ての基準のとおりになっているという事実でございます。  例えばある一つの級の八号俸から上位の級に昇格するというときに、女性に対してのみはそれに対して十五号俸からといったような二倍ぐらいかかる、そういう基準が当然のごとく当てはめられていたというような事柄を私は指しているわけでございます。そして、このような慣行があるということは、国家公務員法の平等取り扱いの原則に対しましてやはりこれは非常に大きい問題だと言わなければならないと思っております。今回の案件から少し公務員全体の問題に視野を広げていただきましたときに、こういった差別的な基準についての人事院総裁の御所見を伺っておきたいと思います。
  70. 内海倫

    政府委員内海倫君) 男女の性別による区別というふうな問題につきましては、御存じのように、国家公務員法にも厳しくその点の差別をしてはならないという規定をいたしておりまして、男女の平等というものを法律によって確保しておるわけであります。もともとそういう昇任昇格というふうな問題につきましては、それぞれの各人の担当しておる職務に関してその能力あるいはその勤務の成績、さらに適性というふうないろいろな条件を総合勘案して定められるべきものであって、いささかもその間に性別による区別、差別というふうなものがあってはならないし、またあるべきではない、こういうふうに考えております。私どもも在来そういう点については各省に対して指導をしてまいっておりますし、今後におきましてもそういうことのないように、厳重な注意をしながら人事管理が行われるように指導をしていきたい、こういうふうに考えております。
  71. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうかよろしくお願いいたします。  ところで、この国家公務員法は昭和二十二年に制定されたものでして、それ以降四十年余りを経ておるわけでございますけれども、なおこの趣旨、つまり性別による差別をしてはならないということの取り扱いについて、必ずしも理解が十分ではないのではないかと思われる節がございます。それは数年前に本委員会で取り上げました総理府統計局の問題がございますし、またときどきそのようないわゆる何といいますか、役付に行く手前の主任といったクラスのところ、この主任のあたりに女性の高位号俸者が極めて大量に滞留するという現象が大量観察の中から見られているからです。もちろんその後徐々に解決を見ているには違いないし、またそうであるべきだと思いますけれども、しかしぜひともより積極的な御指導をお願いしたい、こう思います。  そこで、ちょうど男女雇用機会均等法が制定されてようやく軌道に乗ってきたというところでございます。この雇用機会均等法が必要とされました理由の一つも、こういった救済措置以前の極めて一般的な平等原則の普及とか徹底とか周知とか、そういったことにも大いに意味があるわけでございます。ところが、公務員の場合はこの国家公務員法の中で既に性別による差別禁止が明文化されているという理由をもって、この均等法の適用を除外されているわけでございます。したがいまして、もし政府みずからが襟を正してこういった実態をなくすということが行われませんと、実際には均等法でさまざまな御指導をなさっていらっしゃることもはばかられるということになっております。私は、今総裁からいろいろな指導をしていただくというお約束をいただいたのでございますけれども、それでは人事院がなされる指導あるいはそういった周知徹底の意味からいいまして、どのような方法をやっていらっしゃるのか、あるいはどんな方法が考えられるのか、もう少しその辺を具体的にお伺いしたいと思います。
  72. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 基本的な考え方はただいま総裁の方から御答弁申し上げたとおりでございますが、先生がお尋ねのいかなる方法でということでございます。今先生の御質問の中で取り上げられましたような事案がございましたので、ことしの三月の上旬に各省の人事課長、秘書課長を集めまして、総裁の指示によりまして人事院の事務総長が特にこの件については各省に注意を促しております。そういう各省の人事・秘書課長会議というものがございますとともに、それ以外にも給与担当者会議とか担当者レベルの会議もございますので、そういう機会をとらえまして適時適切に指導していかなきゃならないというふうに考えております。
  73. 久保田真苗

    久保田真苗君 今度は官房長官にお伺いしたいと思います。  婦人問題企画推進本部の事実上の責任者でいらっしゃいまして、この問題は全省庁にまたがる問題でございますから、ぜひとも人事院の御指導がありますと同時に、各省庁がそれぞれ襟を正すという意味合いにおきまして、婦人問題企画推進本部としての御対応をお願いしたいと思いますけれども、本部の立場からはどういうことがおできになりますでしょうか。
  74. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 御指摘のように、私、婦人問題企画推進本部の本部長になっておるわけでございまして、婦人関係施策の総合的効果的な推進に努めておるところでございます。特に昨年五月には「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」を策定いたしておるところでございます。この計画では「政策・方針決定への参加の促進」を重大課題の一つとして、これを実現するため基本的施策として今御指摘のありました女子公務員の採用あるいは登用等による能力の開発の促進を掲げておるところでございます。今後予想されるさまざまな経済社会環境の変化に対応するために、公務も含めたあらゆる分野での婦人の能力の十分な発揮を図ることが極めて重要でありまして、本部といたしましてはこの新計画に沿いまして本部、各省庁の緊密な連携のもとに女子公務員の採用、登用の促進についてなお一層の努力を傾注してまいりたい、このように考えております。
  75. 久保田真苗

    久保田真苗君 雇用の分野におきましては、この均等法の分野で大変いろいろ手厚い新国内行動計画の施策が出ているわけです。いろいろな法の周知徹底、あるいはそういった指導業務ですとか、例えばこんなようなことも出ているんです。「男女雇用機会均等法の施行状況の的確な把握に努め、」というようなことが出ておりまして、労働省が民間に対しましては施行状況の的確な把握をする、こういうことを言っているわけですね。そういたしますと、やはりこれは政府の側でも企画推進本部なり、あるいは婦人問題担当室、あるいは労働省がなさるのか、その辺はどなたがなさるのかお決めいただいて、もう少し国家公務員法の平等取り扱いの原則の実施の状況を的確に把握していただくというようなことをやっていただけませんでしょうか。
  76. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) ただいま官房長官からお答え申し上げましたとおりでございますが、今先生の御指摘の雇用機会均等法につきましてはおっしゃるとおりでございまして、国家公務員法についてのいわば実施状況の的確な把握という御指摘でございます。私どもこの「西暦二〇〇〇年に向けての新国内行動計画」の実施状況を把握する、そういう立場にございますので、御指摘の趣旨を踏まえまして今後対応を図ってまいりたいというふうに考えております。
  77. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうぞよろしくお願いいたします。  それから、この件につきまして最後質問になります。これは行政措置要求という制度の問題点なんですが、今回の結果からいささかお願いしたいことがあるんです。  それは、現在行政措置要求におきましては申請者に対して代理人の地位が認められていないんですね。しかし、これは私は個人が申請します場合には非常にネックになるんだろうと思うんです。なぜかといいますと、これに対する当局の方はこれはもうお仕事でやっていらっしゃるわけですね、人事という。そして、その上に専門家がそろっていらっしゃる。人数もたくさんいらっしゃる。そして、仕事としてそれをおやれになる。ところが、本人は人事院からいろいろ御連絡なり御要求をいただいても、これは勤務中でして第一動きがとれない。それから、いろいろなことを状況によりましては人様に聞いて回るということもできない。そういう非常にタイトな物理的条件の中でこれをやらなければならないわけです。  私は、確かに人事院規則の中で今代理人という制度が不服審査に対しまして行政措置要求には認められていないということは承知しておりますけれども、しかし、この行政措置要求の方もやっぱり自主的解決への勧告ですとか口頭審理ですとかあっせんとか、人事院がおとりになるさまざまの措置、こういったものを人事についての素人がやっていくということは、これは容易なことじゃないと思いますし、時間のロスも甚だしいものがあります。そこで、まずお願いしたいと思いますのは、弁護士なりというものを本人と並べてその代理人としてお認めいただく、このことを御検討いただけませんでしょうか。
  78. 網谷重男

    説明員(網谷重男君) 行政措置要求は、職員がその勤務条件に関しまして措置を求めるということで、その内容も多種多様でございます。したがいまして、どのような審査方式をとるかということは、具体的にその事案に即した審査方式をとるということが適当だろうと考えております。  御指摘の代理人あるいは口頭審理の方式の件でございますけれども、これは私ども措置要求されました職員の中で口頭審理、非常に人事の機微にわたる問題でございますから、処分を受けた後の不服審査制度と違うわけでございまして、正面から対決して事を解決するよりも前に、そこまで至る前に解決する方法はないものかということで考えてきておりますけれども先生御提言のその点をよく踏まえまして、私ども措置要求を所管する者といたしましてこれから先より適正な運営を図るために、幅広い視点から御提案の点も含めまして研究させていただきたい、このように思っております。
  79. 久保田真苗

    久保田真苗君 人事院規則の軽い手直しでできることだと思うんですね。この代理人の問題というのはやはりぜひお認めいただきませんと、余りにも何というか公平感がちょっと損なわれますので、ひとつ御研究をお願いいたします。  それでは、公務員問題はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。  次に、共済年金の方なんでございます。  毎年こういうことを言っていることになるんですけれども、去年もこの時期に共済年金の額の改定について私質問いたしました。そのときにやはり消費者物価変動への自勤スライド制というのができていなくて、例の五%条項があって、五%未満の物価変動については全く白紙委任のような形で毎度毎度特例としてこういうふうにやらなければならないということの不合理について申し上げました。今、そのとき宮澤大臣から去年もお答えいただいておるんですけれども、私は相変わらずこれは非常に不合理だと思います。特に、物価スライドが完全にできたとしても、それは経済成長を反映していないと思うんですね。そして、特に年金生活者の場合は、もうGNPの膨らみの中からどんどんどんどん小さく取り残されていくということがいつやまるのであろうかという、そこをお伺いしたいわけです。例えば六十一年では経済成長率が名目四・二%、実質二・六%、そして公務員給与が二・三一%のアップ、恩給が二%のアップ、そして共済年金は〇・六%の引き上げでした。ことしはもっとがっかりする数字になりました。六十二年度の経済成長率は名目で四・一%、実質三・七%、これは見込みですけれども、そしてそれに見合って公務員給与は一・四七%、恩給は一・二五%、でも共済年金はわずか〇・一%ということでございますね。これはちょっと気の毒過ぎるのではないかということを思いますし、やっぱり経済成長の恩恵というもの、それをもう少しこれに反映させていく方法は大臣ないものでしょうか。どういうものでしょうか。
  80. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 先生承知のとおりではございますが、共済年金を含みました公的年金すべて社会保険方式ということで運営しておりますので、いろいろスライドを考えます場合には現役組合員の負担増の問題としても常に考えてまいる必要がある、こういう建前に立っておるわけでございます。  この共済年金に限りませんで厚生年金もそうでございますが、このような被用者年金というものにおきましては物価スライドをいろいろいたしましても、国民の生活水準でございますとか賃金でございますとかその他の諸事情が著しく変動をしておって不合理が生じておるというような場合には、そういった著しい変動というものの後の諸事情に応ずるための所要の改定という制度はあるわけでございますが、しかし基本的には今日この共済年金のスライドの取り扱いというのは、年金額の実質的価値を維持するという観点からの物価スライドを基本とするということになっておるわけでございますし、この年金制度全体を安定的にもたせていく、そして円滑に運営していくという点を総合的に考えますと、私どもとしましてはこの物価スライドの考え方をとるのが最も適切ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  経済成長の恩恵というものもいろいろなとらえ方があろうかと思いますが、直ちにこれをOBの受給者に均てんをさせるということをいたしましても、これはすべて現役の負担となりますので、これからの高齢化社会というものを考えますと、やはりそれを成り立たせていくためには今日のような物価スライドを基本とした考え方、実質的価値を維持するということに全力を挙げさせていただきたいと思っておるわけでございます。
  81. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいま政府委員がお答えを申し上げたことに尽きておりますけれども、経済成長の恩恵に退職後の方々もできるだけ浴するようにすべきだと言われることは、私そのとおりであると思います。また、それは現実に、見方にもよりますけれども、時代とともにそういう恩恵を受けておられると申しても私は間違いではないと思うのでございますが、ただその場合に、経済成長が激しい物価上昇を伴いますとこれはもうむしろ恩恵を受けるどころではない。そこはマイナスになるわけでございますから。幸いにしてここのところ余り大きな物価上昇かないということもありまして、まあまあそういう意味では経済成長の恩恵をお受けになっておられるのだと思いますが、ただ多少の物価上昇がございましても、それによって実質価値を棄損することになりますから、その実質価値を棄損しないようにという意味では、物価にスライドをいたしておきますればまずまずその点の答えにはなるのではないか。そういう状況の中で経済成長の恩恵に浴していただくという考え方、先ほども政府委員が申し上げましたけれども、これはいわば現役の人々の負担になるという、組合員の負担になるということも無関係ではございませんので、実質価値は何とかして維持したいというふうな考え方で今度も御提案をいたしておるわけでございます。
  82. 久保田真苗

    久保田真苗君 今の年金生活に入られた方も、現役当時はその前のいろいろな方の年金を負担してこられたんじゃないんでしょうか。そして、実質価値を維持されるとおっしゃいますけれども、実質経済成長に対して率で見ますとこれ三十七分の一ですね。そして、公務員給与に対しては十五分の一ですね。こういう比率でしか上がらないんです。そうなりますと、実質価値の維持なんかがとてもできるものじゃないということは大臣よくおわかりのはずでございます。特に物価とおっしゃいますけれども、土地は物価の中に入るんでしょうか、入らないんでしょうか。どうなんでしょうか。
  83. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 現在の物価指数のとり方は、結局購買する頻度の多いものを物価指数の要素の中へ入れておりますから、土地はその中には入っておりません。それはもうそのとおりでございますが、ただ土地価格そのものが今度はまた年金との関連において、年金生活者がすぐに土地との関連を持たれるわけではこれございませんから、そういうものは確かに入っていないということはそうでございますけれども、ですが、だから物価スライドでは不足だという議論には直ちにはならないように存じます。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 年金生活者が直ちに土地には結びつかないかもしれません。でも、例えば固定資産税の上昇で結びつく。あるいは地代で結びつく。そして家賃で結びつく。特に大都市圏におきましてはこの住の問題で年金生活者ももう例外なしに脅かされておりまして、おじいさんやおばあさんたちがどこかへ行ってしまうというような非常に情けない状態でございます。この一年に二倍にもなるような土地の価格が大きな変動でないというようなことはとても言えないと思うんですね。ですから、私はやはり土地政策について政府が無策であるというんですか、それとも土地政策が誤っているというんですか、ともかくこれは非常に人の生活を脅かす、中でも年金の上昇を望めない人たちの生活を非常に脅かす要因になっておると思いますので、こういうものも反映させていただくように何らかの措置をおとりいただきたいと私は思うんです。もしお答えがいただけましたら、どうぞお願いいたします。
  85. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 土地政策あるいは住宅問題等々いろいろな問題がありますことは存じております。また、それについての施策が必ずしも十全でないということも御指摘のとおりであると思いますが、しかし、この年金の問題につきましてこういう物価スライドによって処理をさせていただくということ自身は、これはこれとして私は合理性があると思いますので、その他のいろいろ政策の至らない点につきましては、これは政府としてもいろいろ考えなければならないことがあるというふうには存じます。
  86. 久保田真苗

    久保田真苗君 次に、もうびっくりしたのが政府税調に次ぐ自民党の税調なんですね。  おととい総理府から世論調査が発表されました。これは「社会意識に関する世論調査」という題になっていますけれども、社会的不公平とか不平等について八〇%の人が税制についての不公平を言っていまして、これがトップなんです。つまり、いかに久しく税制の不公平をなくすということが私どもの頭を支配してきたかということだと思います。八〇%の人が不平等を感じているという税制問題について、最近政府税調の中間答申が出ました。それは確かに不公平税制の是正ということを強く強調しておられるわけです。ところが、じゃ実際何が行われるのかという段になりますと、実際はいろいろな今まで取り上げられてまいりましたいわゆる不公平税制の焦点となっていたようなもの、例えば医師の優遇税制、みなし法人税、宗教法人等の非課税、それから赤字法人への交際費の課税の問題、こういったものが政府税調の中でも引き続き検討するといったような表現で、実際にはこれ見送りになっていると見てよろしいのでございましょう。どうなんでしょうか。
  87. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 不公平税制と呼ばれておりますいろいろな点につきまして、今度の政府税制調査会の中間答申ではきめ細かく取り上げましてその内容を分析し、それぞれの方針を出しているわけでございますが、確かに御指摘のとおり案件によりましては長期的な検討ということになっているものもございます。中には例えばみなし法人等につきましては既に去年の夏の臨時国会におきまして一つの施策が打ち出され、それが現実にどのように機能するかということがまだ明らかになっていないというようなこともございまして、そういういろいろなそれぞれの案件につきましての事情がございますのでニュアンスに差はございますが、しかし、不公平税制の是正には強く取り組んでいくべきであるという姿勢は答申の全体を通じて強く打ち出されているものというように私たちは受けとめております。
  88. 久保田真苗

    久保田真苗君 考え方としては確かに前書きのところにそういうふうに強く打ち出していらっしゃるんですけれども、具体的施策になりますと、この問題をお取り上げになっているどんな新聞も雑誌もこれが実施されるというふうには受け取っていませんね。これは見送られたんだというふうに受け取っています。そして、その上に自民党の税調、これはまだ結論をお出しいただいてはいないけれども一つ一つの御決定についての報道を見ますと、これは今まで申し上げたようなものは全部もちろんのこと、そのほか政府税調の方では例えば企業に対する各種の引当金制度ですね、そういったものを見直すべきだというものであったはずがこれもどうも見送りになるらしい、そういう報道。ほかにもまだございますよね。つまり、私どもが期待していたいわゆる不公平税制の焦点だというふうに見られていたものがほとんど全部見送りになる、こういう状況を見て私はもう唖然としているわけですね。そして、ただ公約違反の大型間接税、それだけはがむしゃらに取らなきゃいけないというような非常に荒々しい、なぜそんなに荒々しいまでに今お急ぎになるのか、そういう私は印象を受けるんですけれども、これ私の印象が間違っているんでしょうか。
  89. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 先生のお言葉にもございましたように、自由民主党の税制調査会の審議はまだ途中でございまして、新聞等にいろいろ報道されておりますが、これから引き続き検討される段階でございます。いろいろ不公平と言われております問題につきまして、私どもも説明の機会か与えられましたら十分に御説明してまいるつもりでございます。その中でも、例えば昭和二十八年以来原則非課税とされておりましたキャピタルゲインにつきまして課税が行われる方針が打ち出されるなど、いろいろの面で不公平と言われることの是正についての方針が打ち出されていることもこれまた御承知のとおりでございまして、なお途中の段階ではございますが、私どもも十分注意して見守ってまいりたいというふうに存じます。
  90. 久保田真苗

    久保田真苗君 まだ結論は党税調はお出しになっていないということでございます。そうなりますと、やはりそんなことにはならないんだ、いわゆる積年の懸案である不公平税制、さっき挙げましたような項目についての是正はまだ崩れているわけじゃなくて、そこが行われるという見込みは十分にあるんだ、こういうふうに受けとめてよろしいのでございましょうか。これは役人の方にはお答えにくいと思いますけれども、党の大幹部でいらっしゃいます大臣はお答えになれるかと思うんですが。
  91. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 幾つかの問題を先ほどお挙げになりまして、そのうち政府委員がお答えいたしましたものもございますが、まだ全体といたしまして私どもの党内の税制調査会で議論中でございます。殊に不公平税制といったようなところまでいきますと、これはそんなにそれ自身が大きな体系にかかわる問題でございませんので、まだかなりの時間検討をしていくことになろうと存じますので、御発言の趣旨などはよく私ども参考にさせていただきたいと思います。
  92. 久保田真苗

    久保田真苗君 本当に体系上大きな問題ではない、大きいのは直間比率だけだ、そういうふうにおっしゃりたいのかもわからないんですけれども、体系上枝葉末節だというようなお言葉もあるんですけれども、その枝葉末節こそが長年国民の頭の中にあった不公平税制の権化なんですね。そんなに枝葉末節だったら簡単にお直せになるんだろうと思うんです。それをやらないということは、私は政治家には税制をいじくるということがもはやできないのではないかと、非常に絶望的な気分になるんですね。何しろそういうわけですから、今後、政府税調の方もまだ中間答申でございますね。そういたしますと、政府税調の方が税調らしい最終答申というようなものをもう少し具体的にお出しになるという、そういう見込みはいつごろ立つんでしょうか。
  93. 尾崎護

    政府委員(尾崎護君) 政府税調は、中間答申をお出しになられました後も基本問題小委員会というのを引き続き開いておりまして、検討を続けております。最終答申をどのようなタイミングでどのような形でお出しになるのかは、その基本問題小委員会を中心に今後検討されることになっておりますが、全体の方向としては何かいただけるのではないかなというように私たちは受けとめております。
  94. 久保田真苗

    久保田真苗君 本当にこれはもうとんでもないことにならないようにお願いしたいと思います。ただ、私ども立場も不公平税制というものを何しろもう最優先で直していただきたいという立場をとってまいりました。それが満たされないということでは大変がっかりになりますので、よろしくお願いしておきたいと思います。  それから次に、不公平税制の中にもう一つ問題がありまして、いわゆる法人所有の土地それから株式等についての資産の再評価の問題があるわけです。個人の場合ですと、その資産の再評価というのは相続税によりまして何十年か、まあ二十年なり三十年なりそれごとに実質的に再評価が行われる。だから、含みを吐き出していかざるを得ないということがあるわけです。ところが、法人の場合ですとその相続税の問題がありませんので、購入時の価格のままで値上がりによる含み資産というものを吐き出さないということになります。しかも、土地購入に当たってその金利分は全額が損金として落とせる仕組みになっている。こういうことでございますと、それはもう企業が先を争って土地を購入したがるのは当たり前で、やる方が悪いんじゃないとむしろ事の理屈からは言えるんじゃないかと思うんですね。これは再評価しろという声も非常に強いのでございますけれども、この辺についての大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  95. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そのお話はよく久保田委員ばかりでなく御質問になられる方がおられまして、私どももいろいろ考えてみることもございますし、税制調査会でもいろいろ御議論になっているわけでございますけれども、おわかりになっていらっしゃることをあえて申すようですが、そういういわゆる含み利益というものは現実に顕現した利益ではございませんから、それに課税をするという場合には一体どのような担税力があるかということにやっぱりなるのでございましょうし、それから土地なんかで申しましたら保有税というものがございますから、土地の価格が評価上大きくなっていればそれは保有税として取るべきものであろう。つまり、所得税としては所得を生じていないということになってくるのではないか、どうもその理屈は税の理屈から言うと私はそうでないとは申せないのではないかと思います。  そういう利益が取引によって、売却によって生じた場合に課税があることはもちろんでございますが、そうでない場合にどのような課税が、それは所得税であるのか保有税であるのかといったようなことも一つ問題であろうと思いますし、土地で申せば大きな土地を持っておりますのはどっちかといいますと基礎産業でございますが、今基礎産業は必ずしも好況であるわけではない。そういうところで保有しております土地に課税をすることが果たしてどういう意味があるか。それが国民にその土地が別途の利用ができるということでもなさそうに思います。したがって、おっしゃいますように個人ならば相続税のときに一遍課税をできるが、法人はそういうチャンスがないと。それはそうでございますけれども、それはいわばリアライズされていない、体現されていない含み利益ということではないかと思います。  それから、もう一つおっしゃいましたそのような土地をすぐに使い道もないのに買っておいて値上がりを待っている、その金利が経費になるのはおかしいだろうとおっしゃいます点は、昨今のような土地の上昇が非常に激しいときには確かにおっしゃるような問題がなきにあらずと思います。なきにあらずと思いますので、その点につきましては何か税制上の新しい考え方を導入いたしまして、そのような金利分については経費としては計上しない、つまり値上がりを待つための投資についての利子は経費とは認めないといったような、何かそういう対応は考えたいと思っております。
  96. 久保田真苗

    久保田真苗君 私も実際問題として今の世相を見ておりますと、本当に少数者の手に土地が集中していくんじゃないかというおそれを持つものですから、ひとつ御検討をお願いしたいと思います。  最後一つだけ、ODAについてお伺いしたいんです。  大蔵大臣はこの四省庁体制のお一つで実際にお金を出されるお立場なんですけれども、ODAにつきましてはもちろん海外からの期待もありますし、また竹下総理もイギリスなどへ行ってODAの拡充強化というような演説もしていらっしゃるわけでして、今後ODAがもう広がって拡充されていくことは間違いないだろうと思うわけでございます。それにつきましても、日本におきましてはこのODAの総額だけでもって、どこへどういうものを差し上げるかという中身についてはほとんど国会にも資料が提出されず、これはもう政府に白紙委任をしたという形です。政府といいましても、それは恐らく四省庁が主体でございまして、私どもとしても前回マルコス疑惑のときにいろいろお願いしたんだけれども、その後一向にこれを国会でもっと審議をさせるという、そういう方向に向かっての進歩がないわけです。  そういたしますと、ODAはそれは一つの外交折衝の問題だという御答弁も中にはあるんですけれども、これは純然たる外交の問題だけではないと思うんですね。これは行政の問題だと思うんです。一体海外に対してどういった経済援助をしていくことがそれぞれの分野で必要なのかという行政の問題、そこへの監督権が全く及んでいないという事態について、私は極めて憂慮しております。この問題についてのいろいろな御提案がいろいろな委員会でございますけれども、お金の出し手でいらっしゃる大蔵大臣としてはこのODAと国会審議、あるいはもっとガラス張りで国民の意思とリンクさせていくということについてどうお考えでございましょうか。
  97. 内海孚

    政府委員内海孚君) ただいま久保田委員も御指摘のように、ODAにつきましては予算で御審議をいただきまして、その予算に基づきまして政府が四省庁体制でそれぞれの立場を十分意見を言いながら調整をし、相手国のニーズに合致した援助を行っているわけでございます。今御指摘のような問題点もございますので、外務省を中心といたしまして我が国の援助の事後的なアフターケア、あるいはその効率性の調査その他について格段の充実を行うような措置がとられつつありますし、また国会への事後的な御報告についても従来よりも充実をするということで、外務省を中心としていろいろ進められているというふうに承知しておりますので、そういうことをもって御了解をいただきたいと思うわけでございます。
  98. 久保田真苗

    久保田真苗君 この際、非常に国会の中で熱意の高まっております海外経済協力についての基本法を外国並みに制定するとか、あるいは、四省庁とは言われますけれどもこれはどこかがもっと総合的な立場から全体を見ていく必要があると思いますので、もっと大きいハイレベルの内閣の機関をつくっていただくとか、そういうことを私はお願いしておきたいと思うんです。これについてはお答えをいただけますかどうかわかりませんけれども、もしありましたらお願いいたします。
  99. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどおっしゃいました問題は、今政府委員が申し上げましたように、国会に対して少なくとも事後に具体的に御報告するようなことをもうちょっと考えなければならないと私も思っておりまして、ただ事前には、これは援助を受ける国によりましていろいろ問題が違う、しかもどっちかといえば要請の方が多いわけでございますから、その間にやや競合関係があって、しかも国の国民所得の水準とかいろんな状況によって条件が相手によりまして違いますので、それが全部あらかじめ明らかになるということが非常に仕事の上で差し支えるということは御承知のとおりでございます。事後の報告等についてはよく検討をさせていただいて、もう少し国会でごらんになれるように外務省を中心に検討をしてもらっております。  それから、四省庁の体制というのは、私はたまたまどの四省庁にも勤めたことがあるものでございますから比較的公平にこの問題を見ておるつもりなんでございますが、何か一つにすればいいということは抽象的には考えられることなんでございますが、役所というものは久保田委員も御承知のような性格を持っておるものでございますから、なかなか一つにまとめたらうまくいくかまとめられるかということになるとそうはいきませんで、比較的私は最近はうまく四省庁が協力をしてきているというふうに見ておりますから、そこをもう少しよく円滑に協力関係、情報交換がいくように努力をしていけばいいのではないか。  基本法という御議論も何回か国会でございますが、私は基本法というものは一概に要らないと申しておるわけではございません。ございませんが、かなりもう具体的にODAも実績なりそのための経験、ノーハウも蓄積がございますので、あえて基本法ということをせずとも予算等々の措置でやっていけるのではないかと私は思っておりますが、なお御意見でございますから検討させていただきます。
  100. 久保田真苗

    久保田真苗君 終わります。
  101. 野田哲

    ○野田哲君 まず今回の共済年金の改正でありますけれども、今回ぐらい、私どもこれを審議する立場にありまして、年金受給者の方々からたくさんの手紙をいただいたりあるいは訪問を受けたことはないのでありまして、恐らく大臣のところにもたくさん出されていると思うんですが、大臣のところへは届いていないんじゃないかと思うので、途中秘書官のところか主計局の方でとまっているんだと思うんです。これなぜかといいますと、まず今回の改正が〇・一%。これは大臣、理屈じゃなくて実感として考えてみてくださいよ。これ、十万円に対して百円ですよ。これは改正に値しないですよ。物価が安定しているからなんだ、こう言われるんだけれども、もしことしJRの運賃改正あるいは私鉄の運賃改正が一回あったらもうそれで終わりですよ。赤字が、つりが来るんですよ、これ。結局、一番のやはり年金受給者の方々にとって納得できない、手紙にも共通して書かれているのは、恩給が一・二五%でなぜ共済年金は〇・一%なんだ、こういうことなんです。  これに対して先ほども主計局次長から答えがあったわけで、大体答えはわかっているんです、ここでは。まず一つは、共済年金恩給と違って社会保険方式で運営されているんだと先ほど答えられた、これが一つです。二つ目には、厚生年金と同じように公的年金の一環として位置づけられているために、スライドについても他の公的年金と同様に物価スライドを基本にすることになっていると。三つ目には、費用負担についても配慮しなければいけない、現役の方々の費用負担にも配慮する必要があるんだと言う。しかし、これについても私は年金受給者の方々にはきちっとした説明にならないと思うんです。それは、今の年金受給者は自分たちも現職のときにはずっと長い間負担をしてきているんですよ。恩給は全額国が負担しているわけですよ。つまり国民が税金で負担をしているんです。それに対して共済年金というものは自分たちもずっと積んできているんだ、そういう点からしても私はやはり年金受給者に対しては納得のいく説明にならないと思う。  それからもう一つは、やめる時期によって非常な格差が生じるじゃないか。今の年金受給者の方方はほとんど恩給期間と共済年金期間とに勤務がまたがっている人たちが大多数なんです。昭和三十四年の十月以前に退職した人は今度の場合でも一・二五の引き上げを受ける、三十四年の十月以降に退職した人は〇・一%の改善にしかならない、そこにやはり一番の問題があるわけです。ですから、これは六十年の暮れの今の年金制度の改革が行われたときに、私も当時の竹下大蔵大臣、中曽根総理、後藤田官房長官ともその辺の問題は何回も議論をしてきたわけなんです。せめて恩給の期間だけでも恩給並みに扱ってくれたらどうなんだ、こういうのがもうぎりぎりの切なる願いになってきているわけなんですが、こういう主張は無理だと思われますか。私は無理もないとこう思うんですが、大蔵大臣いかがでしょうか。
  102. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) お答えいたします。  恩給共済年金のバランスに立ちましてただいま御意見を賜りましたわけでございます。恩給共済年金というものを比較してみましていろいろ考えたのでございますが、やはり確かに制度を変えるときにどこで割り切るかという問題がありまして、それ以来受給者というものが存在しておられるので、今日に至るもそのような御議論が続くわけでございますが、共済制度に恩給から移行をいたしました際にも、先生承知かと思いますが、退職金を二五%増額措置をして、恩給だけで仕切られる方と共済で仕切られる方との間ではかなりなレベルのアップを行っておるということで、共済年金受給者の方が全体としてそういう措置をその後引き続き均てんをしておるという状態に置いてあるといったようなことでございますとか、それから恩給共済年金では年金の計算方式も異なっておりまして、いわば恩給は報酬比例一本と考えていいわけでございますが、共済年金の方は定額部分がございまして、その上に報酬比例部分が乗っておるといったようなこともあるわけでございます。そういうふうに考えてまいりますと、恩給共済年金との間で単純な比較というのはなかなか難しいのではないかなと。そこで、私どもはスライドにつきましてもこの両者が異なった取り扱いになることはやむを得ない姿ではないだろうかというふうに考えておるわけでございます。  共済年金のうち恩給期間分だけについて恩給並みのスライドを考えてみたらどうかということでございますけれども、これはこれでまた率直に申しまして共済年金の内部で恩給期間の有無でありますとか、あるいはまた長短ということでアンバランスが出てくるのではないだろうかと。むしろ恩給期間の短い人、つまり共済期間の長い人の方が恐らく掛金はかなりたくさん掛けているという事情にあるわけでございまして、掛金を非常にたくさん掛けた方が恩給のようなスライド率には均てんできない、こんなことにもなってしまうのではないかというふうに思います。また、恩給期間というものが厚生年金には無論ないわけでございますから、民間の厚生年金にない有利な取り扱いというものを共済年金受給者の一部に認めていくということになりますと、やはりまた一種の官民格差論というようなことにもなりまして、せっかく全体の一元化の方向に進んでおります制度というものがまた狂いを生じてくるということではないか、そういうことでなかなかとり得ないのではないかというふうに考えざるを得ないのでございます。
  103. 野田哲

    ○野田哲君 まあ制度をつくった方からいえばそういう説明だろうけれども、これは感情的にそしてまたもう一つは生活実感の上からいって、篠沢さんの説明はなかなかこれは今退職して年金で暮らしておられる方々には素直には理解できない、こういう点を私は申し上げているんです。制度の説明をしてくれとは言っていないんです。それからまた六十年暮れの改正のときにも、当時の後藤田官房長官も、年金受給者の生活実感からいえばなかなかそう理解が難しいだろうという意味のことを述べておられる経過もあるわけです。こういう制度を改正するときには幾つか例があることは、やはり激変緩和というなだらかに移行していくということも必要じゃないかと思うんですよ。そういう点が一切とられてない。しかも、この物価スライドになってみたら〇・一だったというところに、やはり十万円の人でたった百円玉一つかと、こういう感情がわいてくるわけです。  そこで続いて伺いますが、現在の厚生年金でも共済年金でも、国民の生活水準や賃金その他の諸事情に変動があった場合に、これらの諸事情を総合的に勘案をして別途の改定の措置を講じていく、こういう規定があって、五年ごとの再計算時には賃金スライドとの乖離分を調整することになっていると思うんです。来年六十四年が財政再計算時になっておりますので、今までどおりのやり方で標準報酬の見直しを行われるのではないかと思うんですが、厚生省はどのように考えておられますか。
  104. 松本省藏

    説明員松本省藏君) お答えを申し上げます。  先生御指摘のとおり、厚生年金におきましては、五年ごとの財政再計算期におきまして、国民の生活水準あるいは賃金の変動等を考慮いたしまして年金水準の見直しを行うということになっているわけでございます。その際に、厚生年金年金額の算定の基礎となっております標準報酬月額につきましては、過去の標準報酬を直近の被保険者の平均標準報酬をもとにした額で再評価をする、それによって年金額を算出する、こういう仕組みをとっているわけでございまして、厚生年金につきましては六十四年四月一日が財政再計算の時期に当たるわけでございます。厚生省といたしましては、こういう標準報酬の再評価の従来の仕組みというものを踏まえながら、またなお現在財政再計算期に向けましていろいろな制度改正事項というのを幅広く年金審議会で御審議をいただいているところでございまして、その年金審議会の御意見も踏まえながら、次期財政再計算期における制度改正事項の一環として、そのやり方等についても決めてまいるということになろうかと考えているところでございます。
  105. 野田哲

    ○野田哲君 今厚生省、厚生年金等について六十四年四月一日付で見直しを行う、こういう説明があったわけですが、その場合に共済年金についてはどういう対応をされますか。
  106. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) ただいま御説明がございましたように、五年ごとの財政再計算時に標準報酬を再評価するということは厚生年金ではずっとしてきておられるわけでございます。次の対応が六十四年を基準時点とする再計算期ということになるわけでございますが、国共済がその仕組みに乗りますのは今度がいわば初めてということに相なるわけでございます。当然のことながら、公的年金の大宗を占めます厚生年金というものの対応を見ながら、それからまた共済それ自体において現役の費用負担増といったようなことがどういう姿をとっていくのかという点なども配慮をしながら、今後検討を進めさせていただきたいと考えております。
  107. 野田哲

    ○野田哲君 これはぜひひとつ積極的な前向きの御検討を願いたいと思います。  次に大蔵大臣に伺いますが、国鉄の共済年金、六十四年までのことは政府として責任を持って措置をする、こういうふうになっているわけですけれども、六十五年以降の国鉄の共済年金、これはもう見通しが立たないということです。そしてさらにこの問題を深刻にしているのは、最初に計算をされたよりも在職者の数が十万人以上も、三十万で計算したものがもう二十万を切っちゃったと、こういう状態になっているわけでありますが、この国鉄の共済年金問題については、これから六十五年以降どうされるおつもりでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これはいつぞや予算委員会でございましたかあるいは一部申し上げたことがあったかと存じますけれども、六十五年以降になりますと毎年の収支残が三千億円というオーダーにどうもなってくるということが今の状況からだけでも予測されておりますので、非常に深刻な問題になってまいることはもう否定できないところだと思います。  それで、先般六十四年度までの対応はいたしましたので、年金担当大臣としての厚生大臣を中心に四閣僚で懇談会を設けまして、何度か討議をいたしました。その結果、この問題について学識経験を有しておられる方々にひとつ御参集をいただいてそういう方々の御検討を仰ぎたいと思いまして、鉄道共済年金問題懇談会をつくっていただきまして今日まで鋭意引き続き御検討を願っております。私どもとしては、年内には一応の結論を出していただきませんともう時間も迫っておりますので、その懇談会のお知恵を拝借しながらまた関係閣僚でこの後の考え方を決めていかなければなりませんで、非常に収支残の大きい見通しがどうも避けられないように存じますので、何かかなり抜本的なことを考えなければならないのではないかという予感がいたしますが、それはこの懇談会の御意見を待ちまして閣僚の間でまた協議をしてまいりたいと思っております。
  109. 野田哲

    ○野田哲君 人事院の方に伺いますが、昭和六十年十二月の共済年金制度の改正の際に附帯決議がつけられています。それは職域年金の問題でありますが、「職域相当部分の根拠、水準が必ずしも明瞭でないので、」「人事院等の意見もふまえ、」云々とこういうふうになっておりまして、そのときのこの「人事院等の意見をふまえ、」という人事院の意見は、大体両三年ぐらいというふうなことをたしか私も確認をしたような記憶があるわけでありますが、人事院としてはこの附帯決議に基づいて調査をやっておられるのかどうか、やっておられるとすればその進展状況はどういう状況なのか、御報告をいただきたいと思います。
  110. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 附帯決議がございましてから、人事院といたしましてはそれにおこたえすべく三つの項目について調査を進めてまいりました。  まず第一番目は何といいましてもやはり企業年金の状況だろうということで、企業年金についての調査を制度面、実額面、両面から進めておりまして、それぞれについて集計に入っておりますが、その集計も最終段階に来ておるというふうに現在認識しております。二番目は外国の公務員年金制度でございます。これにつきましても、外国に調査に出かけそしてそれを整理するとともに、なお足りないところについては往復文書で細部について調査をしているところでございます。これも調査につきましてほぼ完了に近い段階でございます。三番目は退職公務員の生活実態ということでございますが、この生活実態につきましてアンケート調査をする、そして同じく民間企業について退職された方についての生活実態も調査いたしまして、その両者をできれば分析いたしまして私たち結論を出す際の参考にしてまいりたいということで、現在作業もほぼ最終段階を迎えておる、そういう段階でございます。
  111. 野田哲

    ○野田哲君 調査されたこの企業年金の今の普及状況、割合というのは大体どの程度でございますか。
  112. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 六十一年の四月現在で、企業規模百人以上の企業につきまして調査いたしましたところが、五〇%を超える企業において企業年金を導入しておるということでございました。それから一年後の六十二年の四月現在で調査をいたしましたら、おおむね六〇%の普及状況ということでございます。非常に普及のテンポが早いというふうに思いますが、なお同様の調査は厚生省等においても行われておりますのでそちらの資料も参考に見てみますと、やはり年を追って企業年金は普及しておるというふうに私たちは認識しております。企業年金の普及は現在経過的な時期にあるんじゃないかというふうに考えるのが素直じゃないかというふうに思います。
  113. 野田哲

    ○野田哲君 この企業年金、年を追って普及しているということですが、一口に企業年金といっても種類がいろいろあると思うんですね。自社年金とか、あるいは調整年金とか、税制適格年金とか。これらの企業年金の原資はどういう状況ですか、大まかに言って。
  114. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 総じて申し上げますと、一つはやはり従業員の負担というのがございます。二番目は事業主負担といいますか企業側が負担しておる、そして三番目は退職一時金を企業年金の原資に振りかえておる、この三つに集約して御説明できるかというふうに思います。
  115. 野田哲

    ○野田哲君 そういたしますと、この企業年金の種類とかあるいは今説明のありました原資の構成とか、なお今日いろいろ企業によってそれぞれ流動的であるというふうな判断をしていいわけですか。その点はいかがですか。
  116. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) かなり難しい判断を要すると思いますが、企業年金内容といいますか、今の原資の問題とかあるいは支給期間の問題とか、そういうものにつきまして、やはり現在私は企業側の企業年金の姿が固定しているというに見るには若干無理があるのではないかというふうに思います。と申しますのは、私たちが企業年金について調査いたしましたそのアンケート調査の項目の中に、企業側の責任者に将来企業年金をどういうふうにするつもりだという質問項目がございますが、それに対しまして退職職員の老後のより充実を図りたいというふうなことをやはり言っておりますので、企業年金内容につきましてもより充実していくんじゃないかというふうに思います。  なお、今回の国会におきましても厚生年金法の改正案が提案されておりまして、その内容を見てみますとやはり「努力目標」というのが掲げてありまして、それに基づいて厚生省が指導をなさるということでございますので、そういう状況をもやはりしばらく見ていく必要があるんじゃないかというふうに思います。
  117. 野田哲

    ○野田哲君 終わります。
  118. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、初めに大臣にお伺いします。  各種の公的年金の改革の一環といたしまして、御存じのとおり百三国会、六十年の暮れだったですかね、共済年金制度も抜本的に改正をされたわけでありますが、もう既に二年を経過いたしまして、改革に伴った新しい年金を支給されているという現状にあるわけであります。そこで、この改革を振り返りましてやっぱり評価される点や反省しなければならない点も幾つかあるんじゃないかと思うんですが、初めに大臣の御所見をお伺いしておきたいと思います。
  119. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 六十一年度の改正をいたしまして今日までのところ、御承知のように、給付面につきましての一元化はかなり前進をいたしたと思っております。いわば制度の公平化が図られたと申し上げてもよろしいのではないかと思います。したがいまして、給付面では進歩がございましたが、今度はその負担面でどのようにして一元化を図っていくかということが残された問題であろうかと思っておりまして、具体的にそれをどう進めてまいりますか、関係各省庁とも相談をしながら検討してまいらなければならないと思っております。特に反省をすべき点というようなことでございましたけれども、やはり給付の方が改善をいたしましたが負担の方の問題がこれからである、問題はしたがいましてまだ半分残っておる、そういう感じで将来を考えております。
  120. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、きょうは同僚議員の方からもいろいろと質問ございましたので、できるだけダブらないように質問したいと思っております。  そこで、初めに自衛官の年金についてお伺いしたいと思います。防衛庁としましても実は年金の問題につきましていろいろとお考えなんだろうと思いますが、防衛白書を見ましても、六十一年までは年金の問題が「就職援護等」というところで最後の方に少しだけつけ加えてありましたのが、六十二年の防衛白書からは今度はきちっと「年金」という項目を設けて書いていらっしゃいますので、相当これからの自衛官の皆さんの年金につきまして真剣に取り組んでいらっしゃるようであります。そこで、自衛官の年金というのはいろんな問題がたくさんあるわけでありますが、防衛庁も、私は新聞報道で知ったわけでございますが、自衛官年金問題等検討委員会ですかというのができまして、新聞の報道によりますと昭和六十一年の八月ですからもう約二年、正味二年もうたっているわけですね、大体。相当検討も進んでいらっしゃると思いますが、その検討の経過とそれから現在どういうふうな状況になっているのか等を含めまして、自衛官の年金の問題についてお伺いしておきたいと思います。
  121. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) ただいまの自衛官の年金の問題でございますが、おっしゃいますように、自衛官の年金につきまして大変大きな問題を抱えております。と申しますのは、現在国家公務員等共済組合法の中で、自衛官についてだけ五十五歳からの退職年金の支給及び支給開始年齢の五年前からの繰り上げ支給という制度が存置されております。それは退職者の大部分が若年定年、つまり五十三歳以前でほとんどの者が退職するということにかんがみまして、その実態と合わせてこういう特例を一応暫定措置として残しておいていただいておるというのが現状でございます。  そこで、そうしますと大部分の者が五十三歳から年金受給するということになりますので、一般的に言いいましていわゆる保険数理に基づいて運営されております年金の中では、掛金を掛けておる期間が短くて退職後年金受給する期間が長くなるというところから、財源の上で非常に問題が出てまいります。現在も一般の公務員に比べまして約二五%高い掛金率を負担しておるわけでございますけれども、これをそのまま放置しておきますとさらにこの差が広がってくる。やがては個人の負担能力といいますか、これをオーバーしてしまうことになりかねない。こういうことによりまして自衛官の士気の低下ひいては優秀な隊員を確保するということにも支障を及ぼしてくるであろうということから、これは衆議院で六十年でございますか、国家公務員共済組合法の改正案を御審議されましたときも大蔵委員会で指摘がありまして、早急にその対応策を検討すべきであるということで附帯決議をいただいております。  私どもといたしましては、これを受けまして自衛官の年金問題につきまして抜本的に検討していきたいということで部内に委員会を設けますとともに、年金問題というのが非常に専門的でありかつまた広範な検討を必要とするということから、部外の学識経験者の意見を聞くというようなこともあわせまして現在鋭意検討を進めておるという段階でございます。なお、ここで自衛官の年金問題だけを取り上げて検討というわけにもまいりませんで、全体の国家公務員あるいは国の公的年金全般の動きもにらみながら進めていかなければならないかと考えております。したがいまして、そういうものを踏まえながらどういうような対応策を考えていくかということを現在勉強しておるということでございます。
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この自衛官年金問題研究会というのは、これは大体新聞報道によりますと毎月一回のペースで来年の夏まで、六十一年の八月に発足して六十四年の夏までに結論を出したい、そういうふうな目標等も報道してありますが、現在までの開催の状況とかその中身についてもう少しお伺いしておきたいと思います。
  123. 松本宗和

    政府委員松本宗和君) 名称は、これ一応新聞の方で俗称を申されておると思います。自衛官の年金問題等検討委員会というように報道されておるわけでございますが、正式にそういう名称を使っておるわけじゃございませんで、最近八名の先生方お願いいたしまして、いろんな専門的な立場からの御意見を伺うというのがそもそも目的でお集まりいただきまして、いろいろ御意見を承っておるというところでございますが、現在までに五十九年十一月に発足いたしましてから七回の会合を重ねております。主として自衛官の給与面あるいはその他の処遇全般についての実態の勉強とか、そういうことが一わたり終わりまして、今後こういうものを踏まえてどういう対応を考えていくかということを検討しているというのが現在の状況でございます。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 事前にこの研究会が私的諮問機関に当たるからこれは相当問題だというようなことを申し上げたものですから、大分勉強して答弁していらっしゃるようでございまして、まあ結構です。  いずれにしましても、そういう点は法に触れないようにして、やっぱりそれなりの検討をしていただきたいと私は思います。これは大蔵大臣あるいは大蔵省当局で結構ですが、要するに自衛官の年金というのは非常に私大事だと思うんですね。今もお話ございましたように、自衛官の士気に関する問題でもありますし、しかも退職年齢が非常に若いということで、これは具体的に今申し上げませんが、実際は五十歳ぐらいからもう定年を迎える方がいらっしゃるわけです。そういうふうな意味でいきますと非常に大変だと思いますし、さらには掛金も高いわけですね。そういうような点で非常に問題が多いと思うのでありますが、こういうような問題について、自衛官の年金について大蔵省としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、あるいはどういうふうに掌握していらっしゃるのか、この点もちょっとお伺いしておきたいと思います。
  125. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 自衛官の年金問題につきましてはもう先生つとに御承知のとおりでございまして、大蔵省の方におきましても、これはもう既に大変な成熟度にもなりますし大変な掛金率にもなってまいりますので、極めて大きな問題であるという認識でおります。ただ、この問題は自衛官の若年定年制という特別の制度とかかわりを持っております問題でございますので、いわゆる単純に共済制度あるいは年金制度だけという分野の問題であるのかどうか。人事施策上の観点といったようなことでの検討が必要になるということで、事実現在防衛庁におかれて研究を進めておられるというふうに思います。私どもといたしましては非常に大きな問題であるという認識と、それからそういう若年定年制という特別の人事施策上の観点がある問題だということ、それから現在研究が行われておるということでございますので、そういったことを総合勘案して、まず現在防衛庁での研究の状況を見守らせていただきたいと思いますが、いずれいろいろな御提議もございましょうと思いますので、これは十分に御相談をしていく所存でございます。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、年金の一元化のスケジュールですね、これは大臣にお伺いしたいんですが、実際は五十九年の二月二十四日に、「昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる。」、こういうふうな閣議決定もあるわけであります。また、六十年の共済年金の改革に際しましても、当内閣委員会におきまして附帯決議をつけております。「公的年金一元化の内容及びスケジュールが依然として明らかにされていないので、今後できるだけ速やかに、その内容等につき明らかにすること。」、こういうふうな附帯決議をつけているわけでございますが、実際問題として七十年に向けまして一元化の内容あるいはスケジュール、そういうようなものは現在どういうふうになっておりますでしょうか。これは一遍大臣のお考えをお伺いしておきたいと思います。
  127. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 昭和五十九年に閣議決定がございまして、昭和七十年を目途に一元化を完了させようということで、この決定に従いまして努力を続けておるわけでございますけれども、具体的には、先ほども申し上げましたように、年金担当大臣である厚生大臣を中心に閣僚の懇談会をつくっております。目標は七十年でございますけれども、たまたま昭和六十四年が財政再計算のときになるということでございますから、専門家の皆さんは地ならしと言っておられるようでございますが、そのときにできるだけ地ならしをしようではないかということを申し合わせております。  それで、先ほどこの二年間の反省は何かというお尋ねがございましたように、給付の方の公平化というのはほぼそのとおりに動き始めておりますわけですが、負担の方の問題が残っております。結局、その問題を中心に関係閣僚会議で各省十分相談しながら検討を進めまして、そして六十四年の地ならしを経まして七十年には最終的に一元化を完了したい、こういうことで進んでおります。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほど国鉄の年金の財政問題につきましてもお話ございました。実際問題として、今回国鉄が民営化をされまして三十二万人体制から二十一万人体制ですから、これは大変な職員の十万人以上の開きがあるわけですね。そうしますと、確かにこれはいろんな問題が出てまいりまして、私どもいただいている資料によりましても、先ほどまた大臣からも御答弁ございましたが、六十五年以降は年間で三千億円に達する赤字が出る、こういうふうになってきたわけでございますが、そこで大臣、厚生大臣を座長とする閣僚懇談会をつくってというお話がございました。さらにその上で、そのもとで有識者を集めて懇談会をつくって検討をするというふうなお話も私ども聞いておりますし、その資料もいただいておりますし、またメンバーも資料として提出をされておりますが、私は、大臣、せっかくこういうふうな諮問機関をつくるわけですから、これは非常に大事な問題であると思いますし、中身も重要なことを審議するわけでございますから、特に名前はどうなっているのか具体的にわかりませんが、鉄道共済年金問題懇談会名簿というふうにいただいていますからそういうふうになっているんでしょう。  これ、やっぱりこれから審議をしてそれなりの結論を出して、結論が出ればその結論に基づいて政府としては新しい施策なり対応をしていかなきゃいけないわけでございますから、そういうような意味ではやっぱりちゃんとした、きちっとした機関にしておいた方がいいことないか。従来当内閣委員会でいつも議論になって、私的諮問機関でやるということになるとそのやり方やいろんな問題で差しさわりが出てくる、こういう点がありますから、昔は国家行政組織法が改正される前はいわゆる法律に基づかなければできなかったんですけれども、最近は法律でなくても国家行政組織法の改正以後は政令でも十分できるようになったわけでございますので、十分そこら辺のところも配慮をしながらこういう点はやった方がいいことないかなと思うんですが、この点についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  129. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは実は以前から峯山委員からそういう御指摘をちょうだいしておりまして、私はたまたまかつて官房長官でございましたので何度もそのことで御批判があってお答えをしたことを実はよく覚えておりまして、またそういうことを御批判を受けて非常に恐縮だということを今思っておるわけなんでございますが、この懇談会ごくごくこういう問題についての御意見を聞かせていただきたいという極めてインフォーマルなことで、それも閣僚懇談会の名におきましてお願いをしたというようなことであるものでございますから、かねてのお話しになっていらっしゃいますこと私はよく存じ上げておりながら、できるだけこういうことで非公式と申しますのでしょうか、インフォーマルに御意見を聞かせていただこうと思いましてこの名簿のような方々に御意見を伺っておるということでございますので、それももう長いことではございませんのでひとつ御理解をお願いいたしたいと存じます。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 何か歯切れの悪い答弁でございましたが、私は先ほど随分遠慮して申し上げたつもりなんですけれども、いずれにしてもやっぱりそういう点ははっきりしてやっていただきたいというのが私の気持ちであります。    〔委員長退席、理事岩本政光君着席〕  それから今回の、先ほども質問ございましたが、昨年は〇・六%、ことしは〇・一%、これはどう考えても恩給との絡みがどうしても出てくるわけでございますが、この差額がやっぱり相当ひど過ぎる、そういうふうに私は思うんですけれども、消費者物価が五%以下でも年金を増額した理由というのも私当局はちゃんと持っていらっしゃると思うんですが、〇・一%でもやっぱりそれはきちっと値上げしたというふうにお考えなのかどうか、ここら辺のところの説明を、余り長くやってもらうと時間がありませんから簡単で結構ですけれども、一遍お伺いしておきたいと思います。
  131. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 率直に申しまして、年末予算編成段階でこの年金のスライドというものをどう考えるかということを大分議論いたしました。当時概数で出ております六十二年の消費者物価のアップ率が〇・一であろうか、あるいは〇・二ぐらいになるであろうか、こんなような状況でございました。このような低率になってまいりますと、その前の年が〇・六でございましたけれども、大変悩みまして、〇・六と〇・二あるいは〇・一ということとの質的な差があるかどうかとかいろいろ考えたわけでございますが、関係省いろいろ寄りましていろいろ相談もいたしました。    〔理事岩本政光君退席、委員長着席〕 この共済年金のみならず、老齢福祉年金の問題でございますとか幾つかの問題がございまして、低い金額にはなるであろうけれどもやはり財政的に特別にそれが困難であるという状況にもないし、また他方において給与改善も行われておるといったような中で、低いからといってそれはネグリジブルなものと考えるよりも、やはりそれなりの実質的価値の維持という仕組みで、できるときにはそれをやっておいた方がいいのではないかという、率直に申しましてそういう判断に立ちまして、政府全体としてそのような判断のもとでこれを行ったということでございますので、御理解を賜りたいと思います。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、消費者物価の上昇率が五%を超えた場合には政令でその消費者物価の上昇率に比例して増額をする、いわゆる物価スライド制がとられているわけですね。消費者物価が五%以上の場合は政令で、ところが五%以下の場合は法律で、こうなるわけですね。これちょっと何か本末転倒みたいな感じがするわけですけれども、この五%という基準はこれは人事院勧告の中にもあるわけで、この基準についてやっぱり再検討した方がいいんじゃないかというような感じも最近しているわけですけれども、これはどうでしょうかね。
  133. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 共済年金がただいま先生がおっしゃいましたようなスライドの仕組みになりましたのは、六十一年四月の制度改正からでございます。このような形はむしろ厚生年金がいわば先輩になるわけでございますが、厚生年金に合わせて六十一年四月から五%を超えれば自動物価スライド、それは政令で行えるということにしたわけでございます。この趣旨は、やはり考えてみますと五%を超えるというようなかなり大幅な物価上昇ということになりますと、これは年金の実質価値というものの維持を図る、そのためにスライドを行うということは極めて緊急性が高いと申しますか、有無を言わさずそれは政令によって執行しなければならないようなものであろう。他方、物価上昇率が小幅であります場合にはそこまでの緊急性はないと考えられるけれども、他の公的年金の動向でございますとか現役組合員の賃金がどうなっておるかとか、そういった諸般の事情を考慮してスライドをすればいいのではないか、それを政策判断することが適当ではないか、こういう仕組みで厚生年金は考えてこられたものと思いますし、私どもも六十一年の四月の改正でそれに従ったということでございますので、御理解を賜りたいと思っておるわけでございます。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この法案を提出するに先立ちまして、大蔵省は社会保障制度審議会とそれから国家公務員等共済組合審議会、この二つ審議会に諮問をして、答申を得ているわけでございます。二つとも大蔵大臣に答申があったわけでございますが、大蔵大臣はこの答申をどのように受けとめていらっしゃいますでしょうか。
  135. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 答申におきましては、この〇・一%というような低い率の改定になるわけでございますけれども、こういうものについてはいろいろ議論はあるけれどもこれを行うのはやはり適切ではないか、おおむね異存はないという御意見をいただいたわけでございますが、他方恩給のアップ率との差というものが出ておる。これは〇・一と一・二五ということでございますので、水準自体としては一%余りということなのでございますが、これをいわば倍率換算してみれば片や〇・一で片や一・二五というのは大変な違いであるぞというような御意見はやはり国共審の内部にもそれはございまして、そういった点で恩給のアップ率のあり方等についても一つの御意見を賜った次第でございます。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、今次長さん御答弁になったとおりなんですけれども社会保障制度審議会の方も、それから共済組合審議会の方も両方とも、要するに今お話ございましたように、恩給の引き上げ率は高過ぎる、共済の方は低過ぎるとは言うてませんが、要するに恩給の方と比較して恩給の引き上げ率が高いと、これは何とかバランスとるためにちゃんとせいと、こうおっしゃっているわけであります。これはやっぱりこれに対する大蔵大臣のお考えを一言聞いておきたいのと、総務庁の恩給局長さんお見えになっていらっしゃいますね、恩給局長さんのお考えと両方お伺いしておきたいと思います。
  137. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに国家公務員等共済組合審議会、それから社会保障制度審議会、そのことについて意見を言っておられます。これはおのおのの審議会のお立場から言われることでございますので、それとして承っておくということでございますけれども恩給ということになりますと、これはやはり性格として国家補償というのでございましょうか、そういうことでもあるし、いろいろ過去のいきさつもあり、またほとんど裁定を受けている人ばかりであるというようなことがございまして、いわゆる総合勘案方式というのでいこうということで、予算の決定の最終の段階でそういうことにいたしております。やはりおのずから恩給年金との性格の違いということだというふうに私は理解をいたしております。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは社会保障制度審議会の事務局長さんにお見えになっていただいておりますが、大体こんなこと言うのは越権行為と違うかと、実際私はそう思うんですよね。例えば国家公務員等共済組合法の百十一条によりますと、「この法律に基づく組合に関する制度及びその行う給付その他の事業の運営に関する重要事項について、大蔵大臣の諮問に応じて調査審議するため、大蔵省に、国家公務員等共済組合審議会を置く。」、つまりこの審議会はこの法律に基づく組合に関する制度及びその行う給付その他の事業の運営に関する重要事項についてだけ審議する権能があるということであって、恩給について云々ということはこれはどこにもないわけでありますね。  それから、これは社会保障制度審議会の方も同じ、多少違いますけれども大体中身は同じだと私は思いますね。社会保障制度審議会の方は、「審議会は、自ら、社会保険による経済的保障の最も効果的な方法につき、又は社会保険とその関係事項に関する立法及び運営の大綱につき研究し、その結果を、国会に提出するように、」「内閣総理大臣及び関係各大臣に書面をもって助言する任務及び権限を有する。」「そういうように規定してありまして、第二項には、「内閣総理大臣及び関係各大臣は、社会保障に関する企画、立法又は運営の大綱に関しては、あらかじめ、審議会意見を求めなければならない。」。そういうわけでありまして、かねがね恩給局の方では恩給性格について当内閣委員会でも、恩給というのは国家補償性格を持っている、こういうふうな答弁をしてきたと私は思うんですが、この点と絡めましてこの問題について事務局長とそれから総理府恩給局長の御答弁をお伺いしておきたいと思います。
  139. 花輪隆昭

    政府委員(花輪隆昭君) 社会保障制度審議会恩給制度関係についての御質問でございます。  恩給制度につきましては、ただいま先生からお話ございましたように国家補償としての性格もございますので、審議会の方といたしましても狭い意味での社会保障には該当しないということで、従来慣例として社会保障制度審議会には諮問はされない、こういう取り扱いをいたしてきておるわけでございます。しかしながら、公務員の老後の生活の安定に資するという意味におきましては共済年金の給付と同様の役割を持っておるわけでございますので、広い意味では社会保障の一環をなすものであるというふうに考えてきておりまして、審議会といたしましてはこの六十三年度の意見だけではございませんで、実は過去長さにわたりまして恩給制度、いろいろな機会に他の年金制度とのバランス等を配慮いたしまして、いろいろ御意見を申し上げてきておるような経緯がございます。
  140. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給はその基本的な性格が社会保障制度とは異なるということにつきましては、今御説明があったとおりでございます。したがいまして、恩給制度に関する立法及び運営につきましてこれらの審議会に諮問することにはなっておらないということも先生承知のとおりでございます。  ところで、恩給が国の補償でありそれにふさわしい処遇がなされるべきであるという基本的な考え方につきましては、やはり戦前も戦後も変わりはないものではないかというふうに考えているわけでございますが、しかしこれは恩給制度が戦前も戦後も全く変化がないということではなくて、戦後における諸制度の画期的な変革ないしは社会経済情勢の著しい変化というものがあったわけでございますけれども、それらの変化が恩給制度にも影響を及ぼしておりまして、個々の問題の取り扱いにおきましては必ずしも戦前の恩給制度そのままの姿ではない。特に戦後におきます社会保障的な考え方というのが随所に取り入れられてきた。例えば高額所得者につきましての調整の問題でありますとか、あるいは非常に低額な者についての最低保障といったようなものがそれでございますけれども、そういうものが取り入れられてきたということは否定できないところでございます。  恩給局といたしましては、これら各種審議会の御意見につきましては一つの御意見として承っているわけでございますが、公的年金制度改革に関連いたしました恩給制度の見直しを行うに当たりまして、これらの御意見も十分念頭に置いた上で、先ほど大蔵大臣からも御答弁ございましたような総合勘案方式でもって改定を行っていく、こういうことにいたしているところでございます。
  141. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 両審議会恩給のところをうたった点は、これはやっぱり大蔵省が圧力かけて書かしたんと違うか――大臣はははっと言うてはりますが、実は恩給法改正の審議を先般当内閣委員会でやったわけであります。その際高鳥総務庁長官が、六十三年度の予算編成の際に財政当局は当初恩給の増額はコンマ以下にしてほしいという内示があった、しかしいろんな折衝の結果この一・二五%というふうになった、こう言うてはるわけです。こういう点を見ましても、やはりどうも大蔵省自身がこの審議会に、いわゆる理由は先ほどの恩給のスライドのあり方と公的年金とのバランスということを考えてそういうふうなこともやったんじゃないかと、これはあくまでも想像でありますが考えられるわけですよね。ですから私は、そういうような意味では確かに恩給が高過ぎるというんじゃなしに共済が低過ぎるということでございまして、そういうことも含めましてやっぱり今後しっかりやっていただきたいということを申し上げておきたいと思いますが、大臣いかがですか。
  142. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) ただいま予算編成の過程での恩給のいわばスライド率といいますか、これについての経緯につきまして言及をなされたわけでございますが、私ども恩給につきましてはやはり共済年金のような被用者年金とは性格が大分違って、位置づけが違ってくるということは認識をしておりますけれども年金としての機能という点だけに着目をいたしますと、やはり公的年金とのバランスというものがある程度考慮されることが望ましいのではないかというふうに考えまして、実際には恩給の折衝過程におきまして内示復活というようなことはございませんで、特に数字をあれこれ細かく申し上げたつもりはないのでございますけれども、いずれにしてもやはり物価が非常に低い状況であるので、やはり年金としての機能を持っておる恩給、そういう考え方をすれば恩給のアップ率も相当程度、いわば言葉は悪うございますけれども、やや遠慮をしていただくということができないだろうかという考え方を申し上げたことは事実でございます。  基本的にそういうことで、私どもできるだけ各方面のバランスがとれている方がいいなと思ったことも事実でございますが、なお共済審議会審議の際に私どもが特にお願いをしてこういう意見を入れていただいたというような事実は全くございませんので、御理解を賜りたいと思います。
  143. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは、さらにもう一点お伺いしたいと思います。これは内閣法制局長官にお見えになっていただきましたので、国家公務員法百条のいわゆる守秘義務、秘密を守る義務という問題についてお伺いをしておきたいと思います。  国家公務員法の百条には「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。」と、第一項にこういうふうにあるわけでございますが、この「職務上知ることのできた秘密」とは具体的にどういうふうな内容を指すのか、御説明いただきたいと思います。
  144. 味村治

    政府委員(味村治君) この「秘密」の意義につきましては、私どもは以下のように解しております。  秘密と申しますと一般に知られていない事実であって、そしてそれを他に知られないということについて相当の利益を有するものというふうに考えておりまして、つまりは非公知性とそれから秘匿の必要性とこの二つの要素を具備しているものであるというふうに考えております。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ちょっとわかりにくいんですけれどもね、もう少しわかりやすく言うてくれませんか。
  146. 味村治

    政府委員(味村治君) 最初に申し上げました非公知性と申しますと、要するに今まで一般には知られていないというのを非公知性と、公知されていないというわけでございますね。それからもう一つ秘匿の必要性と申しますのは、それを隠すこと、それを秘密にしておくこと、一般に知られないようにすること、それが、相当の利益があるということ、そういう隠すことについて利益があるんだと、それは合理的な利益があるんだということでございます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでも私はまだわからないんですけれどもね、意味はわかるんですけれども。  従来形式的な秘密とかそれから実質的な秘密ということをよく言われてきましたですね。この問題と今長官答弁になったこととの関連をちょっと詳しく御説明いただけませんか。
  148. 味村治

    政府委員(味村治君) 私が今申し上げました秘密の定義はいわゆる実質秘、実質的な秘密の定義を申し上げたわけでございます。これに対しまして形式的な秘密、形式秘と言われるものがございます。これは官庁におきまして秘密の指定の権限を持つ方が秘密として指定した、これは形式上秘密扱いになっているわけでございますので、それを形式秘と呼んでいると理解しております。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。結局今長官が御説明になったこの二つの点は、いわゆる実質秘ですね。わかりました。  そうしますと、そういう守秘義務が退職後の公務員にも適用されるということになっているわけでございますが、退職した公務員が過去のいわゆる自分が取り扱ったいろんな事例、それを公表するに当たっていわゆる実質秘に触れることがあるのではないか。あるいはその実質秘に触れるような場合にその取り扱いをどういうふうにしたらいいのか。それは解除されることがあり得るわけですか。
  150. 味村治

    政府委員(味村治君) これは具体的なケースによるわけでございますが、先ほど私が申し上げましたような実質秘でございます以上は、それを仮に退職した公務員が発表する時点においても実質秘であるというときには、これを公表するということは守秘義務に違反するということになるわけでございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その実質秘というのは、実際問題として時効とかいいましょうかね、普通言う時効なんていう概念というのはこれはあるんですか。
  152. 味村治

    政府委員(味村治君) 実質秘について時効ということはないというふうに思います。  ただ、先生の御質問の趣旨が実質秘であったものがそのうちに時間の経過とともに実質秘でなくなることがあるのかという御質問でございますれば、それはまあ場合によってはあり得るわけでございまして、これは法務当局の方にお答えいただいた方がいいのかもしれませんが、例えばある家を捜索するということは、これは捜索前においては秘でございます。実質秘でございます。しかし、捜索した後におきましてはこれはもう秘でなくなっちゃうというようなことはあるわけでございます。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは、その実質秘をある人が公表したと。その場合、この公表した当該者が死亡した場合、その場合いわゆる免責という問題がどういうふうになりますか。
  154. 味村治

    政府委員(味村治君) この国家公務員法百条に違反いたしました場合には、これは二つ効果があるわけでございます。一つは、行政上の処分として懲戒処分を受けるというケースがあろうかと思います。それからもう一つは、国家公務員法の百九条の十二号によりまして刑事罰に処せられるというケースがあるわけでございます。それで、公務員が退職しますればもちろん懲戒処分ということはないわけでございますが、退職後もこの罰則の適用はあるわけでございます。しかし、その公務員が死亡いたしますれば、その公務員に対して処罰するというわけにはまいりませんので、これは公訴棄却ということに相なるわけであります。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは例えばの話なんですけれども一つの事件があって取り調べをして、それで起訴して裁判で判決が出た、そういうような場合はそれなりに、例えば判決とか起訴とかいうようなものは公開されておりますから、それなりに公表されておる問題ですから問題がないんですが、例えば指揮権発動なんていうことでずっと調べていって、途中でいわゆるすぱっと切れてしまう、事件そのものがね。そういうふうな場合は、例えばその間に起きたいろんな事件、出来事、知り得たこと、そのことを例えばあのときから大分時間がたっているからということでいわゆる免責されるということになりますか。そういうことで免責されることがありますか。
  156. 味村治

    政府委員(味村治君) これは具体的に検察庁法に基づきます法務大臣の指揮権発動に係ります事案をめぐっての御質問でございますので、そういったように指揮権発動がなされた場合にいろいろなことがあるわけでございましょうが、そういうものについて先ほど申し上げましたような非公知性とそれから秘匿の必要性というものがあるかどうかということを判断しなければならないわけでございまして、そういう場合にどのようなことが起こり、そのようなことがまた秘匿の必要性があるのかどうか、秘密に該当するかどうかということは、これはごく抽象的に申し上げますれば、先ほど申し上げました二つの要件に該当すれば守秘義務がかぶってくるということしか申し上げられないわけでございまして、具体的な案件につきましては法務当局の方からお聞き取りをいただきたいと存じます。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 結構です。
  158. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、共済法の問題についてお伺いいたします。  今回の改正は、昨年と同様、物価上昇率が五%以下の場合共済年金を消費者物価指数の上昇分だけ引き上げるということで、わずか〇・一%ですけれども改定されるというものです。ずっと論議がありましたように、一方恩給については一・二五%のアップとなっています。このことについては答弁もいろいろありましたけれども、非常にアンバランスだ、こういうことについては間違いないと思うんですけれども、アンバランスであるということについて大蔵省はお認めになるんでしょうか。
  159. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 先ほど来申し上げておりますように、恩給の方が総合勘案方式で一・二五%、それから諸種の被用者年金が押しなべて物価上昇率によりまして〇・一%ということで、その水準の差があるということについてはもう事実そのとおりでございます。
  160. 吉川春子

    ○吉川春子君 大蔵大臣、これはアンバランスというふうにお考えになりますか。
  161. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) おのおの制度が違っておりますから、アンバランスというふうには私は思っておりません。
  162. 吉川春子

    ○吉川春子君 〇・一%ですと、平均的な受給者には年額で二千二百円、月に二百円弱ということにしかなりません。これはまあ改善といえば改善ですけれども、実質的価値の維持という点では非常に困難ではないかと私は思います。やはり公務員の給与スライドに合わせるべきだというふうに思うわけです。恩給国家補償だから別扱いだと繰り返し答弁されているわけですけれども、この実質価値の維持という点からいっても、少なくとも給与スライドあるいは総合勘案、こういうふうにしないと維持できないんじゃないかという、そのことが今回の〇・一%ということでもう明らかになったんじゃないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  163. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 被用者年金につきましては、共済年金は六十一年四月の改正以来追随をしたわけでございますけれども、長らく厚生年金等の被用者年金が物価スライド方式をとっておるわけでございます。私、やはりその物価スライドそれ自体が何であるのかといえば、これは実質価値の維持である、まさにそのために行うものであるという哲学に立っておると思いますので、私どもとしましては、たまたま〇・一%という六十二年の前年に対する物価上昇率になったわけではございますけれども、やはり実質価値の維持としての意義は持っておるというふうに認識しております。
  164. 吉川春子

    ○吉川春子君 共済年金に続いて、今の答弁納得できないんですが、国鉄共済の問題についてお伺いいたします。  現在、国公、日本たばこ、NTTが年四百五十億程度、一人一万五千円を拠出しております。これは本来国が負担すべきものであると私たちは考えるわけです。満鉄の引揚者二十万人について特定人件費は国が負担していますけれども、そもそもは戦後処理の一環だと思います。この負担を国公労働者に負担させるのは大変筋違いだ、こういうふうに思います。しかも、再来年からは三千億不足するわけで、これは国公では負担し切れない額だと思いますが、これをどうするおつもりでしょうか。国公共済にはこれ以上の負担を押しつけるべきではないと私は思うんですけれども、今後の方針についてお聞かせいただきたいと思います。
  165. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 先ほど来大臣からも御答弁しておりますように、六十五年度以降の問題、大変な問題を抱えておりますので、現在鋭意検討を進めておるわけでございます。御承知のとおり、四閣僚による懇談会というものを随時開かせていただいておるわけでございますが、さらに四閣僚の間で閣僚懇談会から広く各階の有識者の方方に御参集いただいて御意見をお聞かせ願うべきではないかということで、現在何回かその有識者の方にお集まりをいただいて、この秋を目途に御意見をちょうだいできればというふうに思っておるところでございますので、現在具体的な方向を私どもからいきなりこれこれとお示しできるという段階ではないということは御理解賜りたいと思います。  今先生がおっしゃいましたように、国家公務員、それからNTT、たばこ、こういうグループが年間四百五十億円平均のいわば救済をしておるということも事実でございますが、これについてはなかなかそういう救済措置をずっと続けていくことは難しいぞというような厳しい御意見もかねて出ているところでございます。そういう問題を一体どういうふうに考えたらいいのかということも含めましてこれから鋭意検討を進めたいというふうに考えますが、現在のところ具体的な方向をこれにつきましても申し上げることがちょっと難しい段階であることをお許しいただきたいと思います。
  166. 吉川春子

    ○吉川春子君 官房長官の時間の御都合があるそうですので、ちょっと質問が中断しますが、質問を総理府汚職の方に持っていきたいと思います。  先週の委員会で答弁者もちょっとそろっていらっしゃらなかったようで中途半端になりましたので引き続き伺いますが、まず官房長官に政府広報のあり方についてどうお考えなのか伺います。例えば、法律が変わったというような告知広告、これは必要だと思いますけれども政府意見広告、これについてはかなりの絞りが必要ではないかと思います。例えば国民の間に意見が対立していて二分しているような問題について政府の考えを一方的に押しつけるような、あるいは政府・与党の宣伝の道具に使うというようなことであってはならないと思いますが、この点について基本的なお考えはいかがでしょう。
  167. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 御質問は、国民の意見が分かれている、例えば税制改革のような政治的問題につきまして政府広報を行うことは問題であるのではないかという御趣旨とお聞きをいたしましたが、政府が各般にわたる政府施策につきその背景、内容、必要性等の情報を国民に提供することは、開かれた民主主義のもとでは不可欠なことであり、政府といたしましては当然の責務と考えておるところでございます。  なお、お尋ねの中で政府・与党というお話がございましたが、政府はあくまでも政府という立場で与えられた任務を遂行する立場から、国民に対して広く政府の考え方を理解を求めるために広報することは当然のことだというふうに考えております。
  168. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 若干事務的な立場から補足を具体的に申し上げさせていただきたいと思いますが、ただいま官房長官が申し上げたような考え方に立ちまして、昨年も国会に提出されました税制改革法案の解説という観点に立ちまして広報を実施したのでございますが、昨年の四月二十三日に国会で実質廃案になって以降は、政府広報は必要でないのではないかというような御意見もございましたけれども、これにつきましては税制改革の必要性、あるいはその際成立いたしました税制改正法律、すなわち減税でございますとかあるいは利子優遇税制の見直しなどの周知につきまして広報を実施してまいったところでございます。また、昨年十一月十二日に竹下総理から諮問が行われて以来、政府の税制調査会は審議を重ねまして、先般、御案内のように、四月二十八日に中間答申を提出していただいたところでございまするけれども、この過程におきまして実施した政府広報はどういうことかと申しますと、大きくまとめて三つございますが、一つは広く一般の方々意見審議に反映させるための地方公聴会の開催の告知、二つ目には国民の皆様が考える参考とするために提示いたしました改革の素案の内容の周知、三つ目には今般まとめられました中間答申内容の周知、こういうことを政府広報として行ってまいり、また行っているところでございます。このように、国民の皆様に考えていただくために正確な情報を提供するという観点からの広報を行っているものでございまして、一方的な広報という御指摘はそういうものではないというふうに考えていたしておるところでございますので、よろしく御理解のほどをお願いいたしたいと思います。
  169. 吉川春子

    ○吉川春子君 一方的な広報だということはまだ言っていないので、これから言おうとしているんですけれども、先回りして答弁していただきました。  政府広報のあり方について、これまで国会でさまざまな警告とか意見があったわけです。とりわけ三月二十日付の総理府の有識者調査、これは八割が間接税導入反対という結果でありまして、各種の新聞社の世論調査などと大きく隔たっているわけですね。調査方法も全く一方的だと、大型間接税導入の世論誘導だというふうな批判も浴びたわけなんです。最近の新聞報道によりますと、通産省は原発の安全性について広報体制を強化する方針だと、国民の不安に政府、業界が一体になって反論すると、こういうふうに報道されているわけですが、官房長官、さっき政府の任務だというふうにおっしゃったんですが、告知広報についてはこの際ちょっとおきまして、政府意見広告、こういうものは、国民世論が二分されているときに一方の方に誘導するような、こういう意見広告というのはやるべきではないし、むしろ、例えば原発の安全性についても、これは通産省ですが、例えば反対の立場の学者の見解を載せるとか国民の不安を載せるとか、そういう公平なものでなくてはならないと思いますけれども、その点について官房長官、基本的なお考えとして国民が相対立しているものを一方的に政府の広報という形で宣伝するということについて、私はこれは行政府の中立性からいってもやるべきじゃないと思いますが、その点いかがですか。
  170. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) まず、第一点の先般行いました総理府の税制改革に関します有識者調査につきまして、若干誤解がございますので御説明をしておきますと、この有識者調査と申しますのは、一般のいわゆる世論調査とは全く性格を異にするものでございまして、世論調査は国民全般の動向を把握するというもので、トータルが何%であるというところに意味がございます。これに対しまして、行いました有識者調査と申しますのは、それぞれの関心の深い層あるいは専門家の層、例えば学者先生でございますとかあるいは税制の実務家、あるいは報道関係等々といった各ジャンルの分野の方々がどういうお考えを持っておって、どういうふうな違いがあるかということを調べるものでございます。吉川委員仰せのように、八〇%というような全体のトータルを求めようとするものでは全くございませんし、またそれを求めることは、全体のトータルを、これは世論調査と違いまして、求めることは間違いであると、またかえってさらに誤解も生むことになる、そういうものでございますので、その点あらかじめ政府は広報といたしましてさような偏ったことをしているものではないということをはっきりまずもって申し上げさせていただきたいと思います。  それから原発広報につきましては、仰せのようにいろいろ意見もあるところでございまして、国民が広く関心を持っているところでございますので、仰せのように公平を旨といたしまして、十分審議を尽くした上で適正な政府広報を実施してまいりたい、かように存じております。
  171. 吉川春子

    ○吉川春子君 政府広報のあり方について、やっぱり公平なものでなきゃならないということは官房長官もお認めになると思うんですけれども、今行われております政府広報が適正なものか、公平なものか、ふさわしいものか、こういうようなことを検討する機関というのは総理府あるいは政府の中にあるんですか。
  172. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 制度としては必ずしも確立されておるわけではございませんが、そういう趣旨を十分考えまして私どもで努力しておるところでございます。
  173. 吉川春子

    ○吉川春子君 やはりこういう莫大な税金を使って、国の予算を使って行われる広報ですから、正しく適正に行われるということをどこかでチェックする体制が必要だと思いますし、民間の広報業界ではいろいろ倫理綱領とかさまざまなものがあって、そういうものから逸脱しないような形での広報活動が行われているわけですから、政府においてもそういうチェック体制をきちっと設けるべきだというふうに思うわけです。例えば政府の広報活動について計画あるいは実施状況について公開するとか、国会に定期的に報告するとか、こういうようなことをやるべきだと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。これは長官のお考えを聞かせてほしいと思います。
  174. 小渕恵三

    ○国務大臣(小渕恵三君) 政府広報の公正さにつきましていろいろ御指摘があるとすれば、世のマスコミも注視をしておるんだと思いますし、また現にこうした国会での御指摘もあるわけであります。政府としては常にみずからを厳しく見つめながら、国民に負託された責任を全うするために常に公正さを旨として対処いたしておるところでありまして、現在みずからチェック機能と言われますが、そうしたことをチェックしながら対応しているのが現在の政府広報だというふうに考えておるところでございます。
  175. 吉川春子

    ○吉川春子君 この問題引き続きやることにしまして、じゃ官房長官結構でございます。  この問題について、副総理でもいらっしゃる宮澤大蔵大臣にお伺いしたいと思います。  政府広報の発注に絡んで、総理のおひざ元とも言える総理府に東京地検の捜査の手が入ったわけですけれども、このことについて宮澤大蔵大臣はどのように受けとめておられますでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 公務員は、申すまでもなく国民全体の奉仕者として職務の公正な執行に当たりまして自粛自戒し、厳正な規律を保持しなければならないものであることは申し上げるまでもないことでありますが、元職員であるとは申せ、今回の事態はまことに遺憾なことだと思います。改めて姿勢を正しまして、国民の信頼を回復すべく政府として努力をいたさなければならないと思います。
  177. 吉川春子

    ○吉川春子君 その逮捕された総理府の元幹部職員にいわばわいろを贈る会、永田町友の会というような組織までつくって、またここは退職後の就職先の新会社まで設立していたという報道があります。こういう永友会の存在に政府は全く気がつかなかったのでしょうか。
  178. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 今先生がおっしゃった永友会でございますか、これは私ども総理府におきまして全く知っていなかった事実でございます。
  179. 吉川春子

    ○吉川春子君 今回の汚職事件で逮捕されました日本ビデオ・ネットワーク代表取締役の人は、日本広報センターの専務理事も兼ねておりました。政府のいわば広報代理店とも言うべき法人の代表者が、別の広告会社をつくってそこへ仕事を発注するようなずさんなことを政府は見逃していたんですか。
  180. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 決して見逃していたわけではございませんで、ただ、この日本ビデオ・ネットワークというところにつきましては、この業務内容は、御案内のように、各地方の空港でございますとかあるいはJRの駅の待合室などにビデオの施設を設けまして、そこでテレビのスポット広告などをサービスしていくというものでございまして、全国に六十カ所ぐらいあるものでございますけれども、さようなことから競争入札というような形ではなくて随意契約で契約をし、実施をしてまいったというような事情がございます。
  181. 吉川春子

    ○吉川春子君 この日本広報センターというのは、じゃどういう組織なんですか。
  182. 宮脇磊介

    政府委員(宮脇磊介君) 財団法人日本広報センターということで、政府の広報を行いますもののほか、各種の媒体などとの間に立って事業を行っているところというふうに承知をいたしております。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 そういう政府の広報を行う法人の代表者が、別の会社をつくってそこに随契で仕事をもう独占的に渡して、そしてしかもわいろまで払っていたと。これは全く総理府、政府にとって言い逃れができないことだし、こういうようなことを見逃していたこと自体今度の汚職事件につながっているのではないかと思いまして、この辺は厳しく指摘をしておきたいと思います。  時間がちょっと中断されましたけれども、さっきの国鉄共済の問題ですが、一言大臣のお考えを伺っておきたいのは、この国鉄共済の問題について、やはり国公労働者あるいはそのほかの労働者、そういうところに負担をかぶせるということは好ましくないと思うんですけれども、基本的なお考えとしてあるいはそういうところにも負担をかぶせても構わないと考えていらっしゃるのか。その辺はいかがでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申しましたように、非常に大きな、三千億といったようなオーダーの赤字が出るということが予想されておりますものですから、これはちょっとやそっとのことでは対策が立てられないということから有識者のお話を伺ったりしておりまして、私ども実は関係閣僚でもまだどういうふうにしたものかという見当がついておりません、正直を申しますと。    〔委員長退席、理事岩本政光君着席〕 そういう状況でございますので、もう少し私どもの検討の推移をごらんいただきたいと思います。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 国公共済の組合連合会が三十八年十一月に設立いたしました東京保育所、この閉所問題について最後にお伺いいたします。  国公共済組合連合会を監督する責任を負っている大蔵省にお伺いするわけですけれども、今度のこの東京保有所というのは生後四十三日から乳幼児を預かって、東京二十三区の公立保育所では産休明けからの保育を行う保育所が非常に少ない中で、出産前からすなわち妊娠中より入所受け付けを行うとか、あるいは非常に父母の要求あるいは勤務形態に見合った保育を続けてまいりまして、この閉所ということに対して父母の間から困るという強い声が起こっているんですけれども、この閉所に当たって運営審議会から父母の声を大蔵省はお聞きになっておられますでしょうか。
  186. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 私どもは、国家公務員等共済組合連合会の方でことしの三月に運営審議会を開かれまして、運営審議会として東京保育所は昭和六十九年の三月までに閉所をする、そのため六十三年四月以降は原則として児童の新たな受け入れは行わないといった決定をされたという旨の報告を受けまして、この運営審議会の議を経て事業計画等が大蔵大臣の認可という形で出てまいるわけでございますから、私どもとしては運営審議会というもので組合員の代表等も含めて御議論になり結論を出されたものについて適否を判断しておる、そういう状況でございます。
  187. 吉川春子

    ○吉川春子君 父母の声を伺いますと、この問題は降ってわいたような話だということなんですけれども、週刊紙などにも報道されておりますが、防衛庁の移転との関係でこの保育所が閉鎖される、こういう要素もあるんですか。
  188. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 連合会としてこのような閉所の決定、まあ閉所はまだ先のことではございますけれども、これを決めました理由といたしましては、結局昭和三十八年に東京保育所を開所いたしましたときに比べまして東京都内で一般保育所というものが相当整備されております状況でございますとか、組合員の子女でございます乳幼児の入所というものが非常に減少してきているといったような状況、で、収支状況からも、御承知かとは思いますけれども、既に累積損益が四億七千万円近くの赤字になっておるといったような状況で、これを受益者負担で収支相償していくべきものが、このような状況になって今後とても立ち行かないという大変な困難になってきた、かたがた施設自体やや経年によります老朽化もございまして、総合的に連合会として判断をして決定されたと、こういうふうに聞いております。
  189. 吉川春子

    ○吉川春子君 赤字ということですけれども、組合員の福祉事業ということについてどういうふうに考えるのかという問題です。ほかの事業も赤字を出しているわけですけれども、赤字を出していればあるいは老朽化していればみんな畳んでしまうのか。そういうことじゃないと思うんですね。で、将来に向かって閉所という方針を出して、新規入所者を入れないという方針を立てているわけです。そうしますと、保育所としての運営が体をなさなくなるわけですね。だんだん先細りになっていく。今保育を続けていてもその保育自体が非常に中身の薄いものに、偏ったものになってしまうんですけれども、希望者には入園を許可し父母の声をよく聞いて保育所が円滑に運営できるような、そういう立場での監督をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  190. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 先ほど申しましたように、私どもとしましては、連合会の運営審議会におきましていわばいろいろな立場の方が集まられて議論をされたところでこのような御判断があったと聞いておりますので、    〔理事岩本政光君退席、委員長着席〕 私どもとしてはその御判断を尊重してまいらせていただきたいと思っております。
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 最後に、大蔵大臣にお伺いします。  男女機会均等法が施行されて以後、特に女性の勤務形態が多様化いたしまして、したがって保育に対する要望も多様化しているわけですね。時間が特にそうですけれども。これは国家公務員の保育所ですけれども、女性が働き続けるためにはやはり保育施設、この充実ということなしにはできないわけで、そういう意味から東京保育所というのは非常に大きな役割を果たしていたわけなんですが、今回連合会の廃止という結論になったわけなんですね。しかし、何としても父母の人たちは困るという声で署名をたくさん集めておられるわけですが、この際、少なくとも東京保育所をできるだけ存立していただくことと、六十九年閉所ということに向かって先細りになるような、保育の中身が今日からもうだんだん低下していくような、そういうことにはならないようにしていただきたいし、特に、結論を尊重するということですが、監督権限というのも大蔵省にあるわけなんで、働く婦人あるいは公務員労働者の福祉、こういう立場からやはり大蔵省もこの問題について、突き放して考えるんじゃなくて、適切な監督をしていただきたい、こういうふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  192. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 私は実はよく事情を存じませんで、連合会の運営審議会でそういうことを判断をして決められたというふうに聞いておるのでございますが、なお一度事情を私も聞いてみます。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 終わります。
  194. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大蔵大臣はお疲れのようですから、余りあれこれ言わないで要点的な点を若干お聞きをしてまいりたいと思います。  第一にはこの共済年金昭和五十一年度から賃金にスライドして改定をするというふうにお決めになってきたわけです。それで、今度は六十一年度からは物価にスライドして改定するというふうにやり方を変えたわけですけれども、その理由は何だったんですかということです。もちろんその方が妥当だからそういう改定をなさったと思うんですけれども、その辺の根拠というものはどこにあったかということをまずお聞きをしたいんです。
  195. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどから申し上げておるわけでございますけれども、厚生年金等々と同じようにやはり年金額の実質的な価値を棄損しないように、維持するようにという観点から、それでございますと消費者物価というものがやはり基本になるであろう、こう考えたと承知しております。恩給と違いますことは、共済年金とはいろいろ違う、恩給が社会保険方式で運営されていない、あるいは国家補償的な側面を持っておる等々から違った扱いになったというふうに聞いておりますが、なお恩給の場合にもいろいろなことを考えまして総合勘案方式というものを採用したというふうに承知をいたしております。
  196. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今大臣がお答えいただいたその恩給の方なんですね、昭和六十一年度の物価の方は〇・六%しか上がっていない。それでこのときの公務員給与は二・三一%のアップ。したがって、今おっしゃられた総合勘案方式ですか、そういう点で恩給は二%上げた。公務員給与から見れば八六・六%の割合で恩給の方は改定をしているということになる。六十二年度も物価の方は〇・一%しか上がっていないけれども公務員給与は一・四六%という人勧が出ている。それに基づいて六十三年度の恩給は一・二五%。これも公務員の給与から見れば八五・六%とほぼ似たような一つの物差しをあてがって、それを今大臣は総合勘案方式でとこうお答えになっているわけなんですけれども、そういう総合勘案方式でということになればその辺の数字はかなり幅があって動けるわけなんです。共済年金の方は今言いましたように物価にスライドということになると、もうそのとおり右へ倣えとこう決められたんですけれども恩給共済年金の扱いがこうやって違っているというところの一番のポイントはどこなんですか。
  197. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) やや繰り返しの答弁になるかもしれないのでございますが、やはり恩給はどうしても共済年金とは性格が異なりまして、社会保険方式というふうな位置づけにはなっておりません。特に軍人恩給を中心といたしまして国家補償的側面というものを具備しておるというふうに考えておりますので、他の公的年金とやはり取り扱いを異にしておるということについては、これはそう理解せざるを得ないのではないかというふうに日ごろ考えておるわけでございます。
  198. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういう答弁をされちゃうと、もう一回恩給の方に戻っていってそういう国家補償性格を持っているんです、ですから共済年金とは違った扱いをと今答弁されたんだけれども、そういう答弁がじゃ果たして恩給に通用するのかということです。それで私は恩給の方はもう終わったことですから余りそこまでさかのぼって触れようとは思わないけれども、そういう答弁では今の恩給の扱いというものがそのようにはなっておりませんということだけは私ははっきりしておきたいと思うんです。  次に私はここでお聞きしたいのは、共済年金というものを考える場合に一番大切なポイントというものは、今言った〇・一%とか幾らとかというアップ率の問題もあるけれども、それよりかも厚生年金共済年金との水準のバランスがとれているかどうか、そこが一番の大事な点だと思うんです。そのとき幾ら上がるかというので物価にスライドしたとか人勧のあれにスライドしたとかというよりかも、全体の水準がそこでバランスがとれているかどうか。恩給の点は今言ったように先ほどの答弁はこれはお返しをして、これはまた別な機会にしてきょうはもういいですからあれだけれども、その共済年金と厚生年金というバランスの関係格差がないのかどうなのか。妥当なことに今なっているかどうか。もし格差があるとするならばどういう点に格差があって、それはどのように改正しようと考えているかということをお聞きしたいです。
  199. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 共済年金につきましては、六十一年の四月から実施されました新年金制度への移行の際に幾つかの大きな改正点があったわけでございますが、一つは、年金額の計算方式というものを厚生年金と同じにいたしたわけでございます。共済年金には、ただ民間の企業年金とのバランスということになるのかと思いますが、職域部分というものが公的に設計されておると。厚生年金がその上に企業年金を持つわけでございますが、これはいわば公的設計とはまた若干違う性格を持っておると思います。それから二つ目には、掛金と給付の基準を従来本俸をベースにしておりましたんですが、共済年金の方も厚生年金に合わせまして標準報酬で合わせていくようにいたしました。それから第三番目といたしましては、共済年金につきましては御承知のとおり減額退職年金という形で繰り上げ支給の仕組みがございましたんですが、これも現在なお経過的には存続をさせておりますけれども昭和七十年まででこれを廃止するという形でこの減額退職年金という繰り上げ支給制度はやめるということにしております。それから最後にスライドでございますが、従来の賃金スライドから物価スライドを基本とするという仕組みに転換をしたわけでございます。  以上のような大改正を行っておりますので、若干の経過措置を除きますれば、私どもとしましては特に将来に向かいまして大きな目でこの共済年金と厚生年金の給付のバランスというものはおおむね図られたのではないかと考えておるところでございます。
  200. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 企業年金の方は、これは先ほども答弁がありましたけれども私は黙って聞いていて、これは調査をした結果のことを言っているんだからあれだけれども、これはむしろ不正確なことであって、それで現在行われている企業年金というのは言うならば退職金を民間企業が一遍でもらう、やめたとき。それを一度にもらうよりかもそいつを残しておいて、そして何年間かにわたって年金でなにした方がいいではないか、そういう採用をということを労使の間でもって協定してやっているのが主なんです。ですから、そういう点で企業年金を持ってきて、ここでもって共済年金とか厚生年金に比較してこれをやろうとしてもこれは無理なことで、共済年金の場合にはこれは退職金がもう出るんですから。もう一回わかりやすく言ってくれませんか。私が聞いたのは、アップ率とか何かというその年のあれだけじゃなくて全体的に、細かいことはいいですから、大筋としてほぼ厚生年金共済年金のバランスはとれたというふうに判断をしてよろしいのかどうなのか、まだそこまでいかないで若干そこに問題が残っていますというような程度にあるのかということで、そこのところはどういうふうに考えられますか。
  201. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 私どもといたしましては現時点では、この職域部分は別といたしまして、あと細々したところで例えば遺族の範囲のとり方とか、あるいは遺族年金について転給をいたします場合にその範囲がどうであるとか、幾つか細かい御指摘を受けていることもございますが、そういうことを別といたしますと、私どもといたしましては共済年金と厚生年金の大筋のバランスというものはとれてきているのではないか、こういうふうに考えております。
  202. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 わかりました。じゃそういう理解にして、次にお聞きしたいのは障害補償年金、現在支給をもう受けている人ですね、そういう障害補償年金の支給を受けている人がいよいよ今度は共済年金の支給といいますか、受給資格が発生したそのときにはどういう扱いになるんですか。
  203. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 公務上でございますとかあるいは通勤途上でございますとかに災害を受けまして傷病状態になるということで、国家公務員の災害補償法によりますただいま御指摘の障害補償年金が支給される者があるわけでございます。そのような障害補償年金をもらう者が同時に国家公務員共済制度の方から出ます障害共済年金受給権も取得をいたしました場合には、二つ年金は基本的には併給をされるということになっておりますけれども、当然同一の損害に対します重複給付というものはある程度排除されなければならないという観点に立ちまして、障害共済年金の方の公務による上積み部分というものの支給を停止することとしております。したがいまして、先生御指摘の障害補償年金の方は丸々出て、そして同じ件に関して出ます共済の方の障害共済年金の方からある程度上積み部分を差し引く、こういう仕組みにしております。
  204. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そうすると、障害補償年金は丸々出る、それで共済の方はそこのところを多少加減させられるということで理解してよろしいわね。
  205. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) さようでございます。
  206. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そうすると、今度は同じように厚生年金の資格が出た人たちですね、民間の場合の、その人たちの場合はどういう扱いにそこのところはなるんですか。
  207. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 厚生年金の方の関係で申しますと、厚生年金には障害厚生年金が出るわけでございますが、それより前に労働者災害補償保険法いわゆる労災制度に基づきます障害補償年金が出るわけでございます。障害補償年金と厚生年金の方のその障害厚生年金というのが併給状態になるわけでございますが、こちらの方におきましては障害厚生年金はそのまま出るわけでございますが、労災の方から出る障害補償年金の方から併給部分として幾らかのものを調整控除するという仕組みになっておるようでございます。
  208. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、それで厚生年金はどうなっちゃうの。
  209. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) その場合、厚生年金すなわち障害厚生年金というわけでございますが、この障害厚生年金は丸々出るわけでございます。で、この丸々出ます障害厚生年金と申しますのは、先ほど共済の方で障害共済年金から上積み部分は差し引かれますと申し上げましたが、この上積み部分が差し引かれた後の障害共済年金というものが厚生年金の方の障害厚生年金とちょうど見合う、全く同じ水準で出される、こういう姿になっておるようでございます。
  210. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そこはまた後で細かいことを教えていただこうと思います。  それで、大臣、まだ時間あるんですけれども最後に申し上げてやっぱり大臣にもお考えをいただきたいと思うのは、こういう年金は、これまあ恩給だろうが年金だろうが非常に難しい問題だと思うんです。それで、金額総額からいってももう大変な額を占めるわけですから、ですからそういう点で大蔵大臣としてもこういうものの扱いということについて、それぞれが歴史を持ってきていることだし、そういう点で先ほども出たように長い年数かけてこういう年金の一元化ということを今進めているわけですから、努力はなさっていても大変なことだと思いますんですが、ただ一つお願いしたいことは、どの年金を受ける人であろうが、今までずっとそれなりの職場で働いてきて、そうして厚生年金なり共済年金なりそういうものの年金受給資格が発生をしてきた。それでもらえるようになるわけなんですけれども、それはともかく長い間本当に働いていただいて御苦労さまでしたと言って、そういう感謝の気持ちでもって私は政府は支給――支給というか差し上げる気持ちにならなきゃいけないことだと思う。  それで、えてしてこういうことを言うとなんですけれども、大蔵省のお役人さんというのは頭のいい人が多過ぎる。ですから、何かにつけて大蔵省の人たちというものは自分らが考えたことはもう最高の一番ベストなものだと思ってその点いろいろ、この法案のことを言っているわけじゃないんだけれども、大蔵省の法案の審議というときになるともう頑として自分らがつくった法案というものについては修正させないというふうな、そういう態度をとるわけなんです。どうかその辺の点を大蔵大臣お願いしておきたいんですが、いろいろと難しい問題があるけれども、これの適用を受ける人の数というものもこれ大変な数になるし、国家としてももちろん今後は予算の中で使う金というものは相当な金額ですから、そういう点ではああそうかそうかと言って幾らでも出せるような状態でないこともわかるわけなんで、いかにして公平でありそしていかにして公正であり、そのバランスがとれてそして国民全体がこれの適用を受けていくかという、そういうふうに一日も早くなるように御努力を願いたいし、そういう方向に向かって進んでいただきたいと思いますし、そういう意味に立ってやはり一番の責任者である大蔵大臣からの御答弁をお聞きして、終わりたいと思うんです。
  211. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、まじめに何十年を勤労されて一定の年齢に達せられて年金生活に入られる方々が受けられるわけでありますから、もう理想としてはいわば老後年金生活の期間はひどい苦労はされなくとも生活をしていかれるということでなければならないのだろう、本当のいわば社会福祉というものが全うされましたらそういう社会でなければならないだろうと思いますが、そこへ参りますのに我が国はまだまだ径庭がございます。まだまだ道のりがございますが、考え方としてはやはりそういうことでなければならないというふうに考えます。そういう気持ちでこの問題を考えていかなければならないと思いますし、また私どもが御指摘になりましたように時として陥りやすい弊害のことも気がついておりますので、よくよくその点も自粛をいたしたいと思います。
  212. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  213. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  昭和六十二年度における国家公務員等共済組合法年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  215. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  野田君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野田君。
  216. 野田哲

    ○野田哲君 私は、ただいま可決されました昭和六十二年度における国家公務員等共済組合法年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和六十二年度における国家公務員等共済組合法年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   国家公務員共済年金の職域年金相当部分の根拠、水準等に関する人事院の調査研究については、民間企業年金の状況等を勘案し、慎重に行うべきである。   右決議する。  以上でございます。
  217. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいま野田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  218. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 全会一致と認めます。よって、野田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、内海人事院総裁から発言を求められておりますので、この際、これを許します。内海人事院総裁
  219. 内海倫

    政府委員内海倫君) 人事院といたしましては、ただいまの附帯決議の趣旨を十分に尊重して検討してまいりたいと存じます。
  220. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十四分散会