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1988-04-19 第112回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十九日(火曜日)    午前十時九分開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         名尾 良孝君     理 事                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大城 眞順君                 野田  哲君     委 員                 岩上 二郎君                 大島 友治君                 岡田  広君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 永野 茂門君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 小野  明君                 久保田真苗君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君    政府委員        内閣法制局第二        部長       大森 政輔君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     中島 忠能君        人事院事務総局        職員局長     川崎 正道君        内閣総理大臣官        房管理室長    文田 久雄君        内閣総理大臣官        房参事官     平野 治生君        総務庁長官官房        長        古橋源六郎君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        総務庁恩給局長  石川 雅嗣君    事務局側        常任委員会専門        員        原   度君    説明員        内閣参事官    大金 瑞穂君        大蔵省主計局給        与課長      堀田 隆夫君        大蔵省主計局共        済課長      山口 公生君        厚生省年金局年        金課長      松本 省藏君        厚生省援護局庶        務課長      新飯田 昇君        運輸大臣官房国        有鉄道改革推進        部再就職対策室        長        深谷 憲一君        労働省労政局労        政課長      山中 秀樹君        自治省行政局公        務員部福利課長  鈴木 正明君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は前回既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 野田哲

    野田哲君 まず、恩給法の具体的な内容に入る前に、せっかく官房長官出席をいただいておりますので、最初に緊急の問題について二、三伺いたいと思います。  けさの報道は、新聞、テレビ一斉にトップで、ペルシャ湾におけるイランアメリカとの軍事紛争の問題を報じております。日本にとっても非常に関係の深い地域でございますし、また日本外交路線としてイランイラク両方に対してパイプを持つということで、今までイランイラク紛争に対しても調整の努力をしてきたという経過もございますので、今回の軍事紛争についてどのような情報が政府に入っているのか、そしてまたこれは一過性のもので終われば一番結構なことでありますけれども、今後の見通しについてどういうふうな判断をされているのか、そしてまた日本政府としての今後の対応はどうあるのか、この辺について官房長官から御説明いただきたいと思います。
  4. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 閣議後の記者会見がございまして、委員長並びに委員各位に遅参をいたしましたことあらかじめお許しをいただきたいと存じます。  御質問のありましたイラン機雷敷設に対しまして米軍ペルシャ湾においてイラン石油プラットホームを攻撃したことの件でございますが、本件につきましては、米国側機雷敷設等敵対行為に対してとった対応であり、国連憲章に基づく自衛権の行使であるというのがアメリカ説明であります。そこで、このイランペルシャ湾機雷敷設を行ったという事実が我が国としてこれを証明することはできないわけでございますが、そういう事実があったとすれば、湾内自由安全航行に対しまして重大な脅威でありますし、この湾内安全航行ということは我が国にとりましても極めて重要なことでございますので、この件については米国政府のとりました態度につきましてはその事情理解をするものであるというのが政府考え方であります。  ただ、この事態がさらに進んでいくというようなことにつきましては、まことに事態を憂慮しておることでございまして、その悪化に対して深い懸念を表しますと同時に、早急な事態鎮静化を強く期待いたしておるということでございます。ただいま一過性かどうかという見通しを述べよと、こういうことでございますが、率直に申し上げまして、今日本政府としては今後の事態の推移については何とも予測しがたいことでありますが、今申し上げましたように早急に事態解決をし鎮静化し、そのことによって今回の米軍措置が今回限りのものであることを期待することは言うまでもないと思っております。  以上、緊急のことでございますので、申し上げたことが現日本政府考え方でございます。
  5. 野田哲

    野田哲君 恩給の問題はその前提として毎年の公務員給与扱いと非常に深く連動しておりますので、まず最初に今年度の公務員給与扱いがどうなるか、こういうことから政府見解を承りたいと思いますが、先般来人事院総裁もそれから総務庁長官官房長官も、ことしの春闘関連をして公務員関係組合とも何回か会見をされているようでありますけれども、そこでまず第一に伺いたい点は、人事院勧告制度についての基本的な考え方についてであります。  総裁はもう既に長くこの問題にかかわっておられますが、先般再任されたという経過もありますので、改めて伺いたいと思います。総務長官官房長官にはこの問題で伺うのは初めてでございますけれども人事院勧告制度というものについての人事院総裁並びに政府側担当総務庁長官官房長官から基本的な見解をまず伺っておきたいと思います。
  6. 内海倫

    政府委員内海倫君) 勧告制度というものにつきましては、たびたび私も前任期中にお答えを申し上げてきました。それらと何ら再任後におきましても変わるものではございませんが、改めて申し上げますれば、やはり勧告制度というものは労働基本権制約を受けております国家公務員の場合におきまして、その勤務条件あるいは給与条件等をいわば改善するという観点から最も大事な制度であろうと、私ども在来そういうふうに考えてきております。したがって、この勧告制度の運用に当たりましては、そういうふうな背景事情というものを十分頭に置いた上でこれを運用していくべきものと、こういうふうに考えております。何よりも国家公務員にとってはこの勧告制度というものは欠くことのできないものである、こういうふうに理解をいたしております。
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 人事院勧告制度公務員労働基本権制約代償措置として憲法上の評価を与えられておるものでありまして、この制度を維持、尊重することが政府としての基本的姿勢であることは言うまでもないことでございます。
  8. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいま官房長官からお答え申し上げたとおりでございます。
  9. 野田哲

    野田哲君 そこで、六十三年度の公務員給与取り扱いでありますが、民間準拠という原則があるわけであります。民間の方は大体いわゆる春闘も山を越したと、こういうふうに言われているわけでありますけれども人事院としてはこの民間準拠にのっとってことしの民間賃上げ実情についてどのような手順、段取りで調査をされる予定であるのか、今後の取り扱いについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  10. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 民間準拠原則に基づいて勧告作業を進めていくわけでございますが、その前提といたしまして国家公務員給与実態をまず調査する必要がございます。その実態を現在集計中でございます。それが終わりますと民間賃金実情を把握しなきゃなりませんが、例年どおり考え方に基づきまして、おおむね四万一千の母集団事業所から七千七百ぐらいの事業所を選びましてその実態を正確に漏れなく把握してまいりたい、そして調査の日程といたしましては五月の連休明けから六月の中旬にかけて、それぞれ調査員が都道府県及び指定都市人事委員会職員と協力いたしまして調査をしてまいりたいというふうに考えております。
  11. 野田哲

    野田哲君 例年の例によりということで連休明けから民間給与実態調査をやられるということですけれども、やっぱりあれですか、対象事業規模は五十人以上を対象にやられるわけですか。
  12. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 対象事業所につきましては企業規模百人以上、事業所規模五十人以上の事業所対象調査をしてまいりたいというふうに考えております。
  13. 野田哲

    野田哲君 事業所規模の五十人以上というのは、これはもう今の経済構造がだんだん変化をしてきて、五十人規模といったらそこら辺のパチンコ屋でも五十人以上の規模はざらにあるんですよ、これは。少しこれは規模を再検討された方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  14. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 先生がお話しになるような御意見も私たちはかねがねよく聞いております。しかしまた、それに反しまして民間企業給与実態というのはもう少し小さな事業所まで調査する必要があるんじゃないかという片一方の意見もございます。私たちそのそれぞれの意見についてよく検討しておるわけでございますけれども、やはり現在の人事院勧告制度というものの信用といいますか信頼というのは、私たちがいろいろ過去何十年とかけて積み上げてきた実績というものが物を言っておると思いますので、その今までのやり方を変えることについては非常に慎重に対応してまいらなきゃならないというふうに考えております。
  15. 野田哲

    野田哲君 官房長官がまた後の予定もあるようでございますから、官房長官出席されている間に順序を変えて伺っておきたいと思います。後で労働省の方からことしの春闘妥結状況説明をいただこうと思っておりますが、いずれにいたしましてもことしの状況というのは、非常に冷え込んでいた昨年よりは私の推定でも約一%ぐらいは賃上げは上回っている、こういう状況にあると思うんです。したがって、これも総裁に後でもう一遍伺うことになるわけですが、恐らく間違いなく公務員給与改善についての人事院勧告は行われることになると思います。その場合政府としては、先ほど代償措置として人事院勧告制度を尊重するというお話があったわけでありますが、勧告が出ればこれを完全実施するという基本方針に立って対処する、こういうことで理解してよろしゅうございますか。官房長官総務庁長官、それぞれお伺いいたしたいと思います。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど労働基本権制約代償措置として人事院勧告制度を尊重することを申し上げたわけでございますが、今年度につきましても人事院から勧告が出されますればその段階給与関係閣僚会議を開催いたしまして取り扱いについて協議するという運びになりますが、政府としては従来どおり国政全般との関連を考慮しつつ勧告完全実施に向けまして最大限努力をいたしてまいりたいと存じます。
  17. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 給与担当大臣といたしまして、これまでも労働基本権制約代償措置であります人事院勧告制度尊重基本姿勢に立ちまして対処してまいりましたところでございまして、今年度につきましても勧告が出されましたならばその段階国政全般関連を考慮しつつ、勧告完全実施に向けまして最大限努力をしてまいりたいと考えております。
  18. 野田哲

    野田哲君 そこで両大臣伺いたいのは、労働基本権制約代償措置として尊重するということで勧告完全実施をされる、このことは今までいろいろ凍結をされたり率を下げたりあるいは実施時期をおくらせたり、こういう経過があったわけでありますけれども、これは今後きちっと定着をさせていただきたい。そのことが、政府公務員関係組合との信頼関係という点からも基本的なことだと思うんです。  その場合にもう一つの懸案は、官房長官総務庁長官をやられているので私もその時代にここで問題として指摘をしたことが記憶にあるわけですけれども、一番の問題は、この間も公務員関係組合の幹部が私と懇談したときに述べておりました。やはり今後の一番の懸案は、四月からの改善措置勧告が八月に出ても十月、十一月と経過をして、最近の例を見ても十二月にならなければ決着しない、これがやはり一番の私は問題点として残っていると思うんです。特にここ何年かの例を見ると、一番いけないことは政府の方がそしてまた与党の国対が、公務員給与改善のための給与法を人質にして臨時国会での国会対策を進めている、これが一番いけないことだと思うんです。  特に国家公務員の場合は法律が決まればそれで一発で解決するわけですけれども、それに準拠して地方自治体は新たにまたその後で地方自治体の議会で手続をとらなければいけない。そのために、問題が十二月までずれ込むと地方自治体の場合は年内に手続が間に合わず年を越してしまう、こういう例が幾つもあるわけでありますから、早期にこの問題は特に国会での駆け引きに使うことのないような形で決着をつけていく、こういう制度をこれから先考えるべきではないかと思います。人事院総裁にもお願いをしたいのは、やはり早期決着がつくようにこれは勧告に当たっても強く政府にあるいは国会に求めていく、こういうことを考えていただきたいと思うんですが、官房長官総務庁長官人事院総裁、この問題について考え方があれば承りたいと思います。
  19. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 人事院勧告最大限政府として尊重するということはしばしば申し上げておるとおりでございますので、そういう精神から申し上れば、今委員指摘のように、勧告が出ましたら可及的速やかにこれを執行できるようにいたしていくこともこれまた順当な考え方であり、かつ政府としてはそのように対応いたしていきたいと思っております。  なお、委員国会のことをいろいろお話しされました。政府立場でございますので、この点はそれぞれ国会のサイドで御判断をいただかなければならないことではないかというふうに考えております。いずれにいたしましても、政府としては勧告が出ましたら国民世論動向ということも十分考慮しませんと、やっぱり公僕と言われる公務員給与ですから、そういう意味経済状況その他国民動向等も勘案しつつ、できる限り速やかにこれが勧告実施できるように努力していくことは当然だというふうに考えております。
  20. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 給与担当庁といたしましては、当然のことながら、できるだけ早期完全実施を図っていただくよう努力すべきであると考えておるところであります。ただ、昭和六十年には関係閣僚会議を四回、それから六十一年、六十二年それぞれ三回いたしましていろいろな方面から御検討いただいているところでございまして、そのようなことからかなり手間取っているのではないかと考えますが、当庁といたしましては早期実施に向けて最大の努力をいたしたい、このように考えているところでございます。  なお、党間の話につきましては、私の方から言及することは御遠慮申し上げたいと存じます。
  21. 内海倫

    政府委員内海倫君) 私ども勧告を出しました上はできるだけ早期に御決定をいただきたい、これはもう当然我々の願いでございますが、ただいま官房長官総務庁長官等からも御答弁ございましたように、政府においてもいろいろ尽力をされての結果であろうと思いますので、私ども国会及び内閣に対しましてできるだけ早く処理をしていただけるようにということをさらに今後もお願いはいたしたい、こういうふうに思っております。
  22. 野田哲

    野田哲君 これは官房長官ね、国会のことは国会でやられることだから言及はできないということですけれども、それはそのとおりだと思うんですが、問題は、これは総務庁長官もそうなんですけれども政府閣議決定がずっとおくれていって臨時国会が開かれて、そしてその臨時国会の模様を見ながらでないと政府閣議決定をしないから、国会駆け引きの道具に使われることになるわけなんですよ。政府決め方そのものがそういうことを見通した上で扱っているんじゃないか、こういう私は懸念を持つわけなんです。完全実施をするという基本方針があるのであれば、八月に勧告が出ればすぐ勧告実施するという決定をやればいいんですよ。そして、秋に臨時国会が召集をされれば、そこの頭のところで法案を出せばそういうことにはならないわけなんです。  特に、私はことしは懸念を持っているんです。それは、何か竹下内閣税制改革ということで今血道を上げている。税制改革の後で公務員給与法案を出されて、税制改革が通らなければ公務員給与もお流れだなんというような扱いになると、これは労働基本権制約代償措置なんというようなことは言えないと思うんですよ。そういう点から、勧告があった場合には早く閣議決定を行う、こういうことでこの問題の解決を図っていくべきだと思うんですが、その問題に対する官房長官見解総務庁長官見解を伺って、官房長官は何か予定があるようですから退席していただきたいと思います。
  23. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 原理原則は全くそのとおりという考え方もできますが、政府としては、今ほど総務庁長官申されましたように、給与関係閣僚会議というのを何回か開かせていただいております。このことは、基本的にはやはり公務員給与につきましては、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたが、やっぱり国民理解を得て公務員給与改定を行うためには、国政全般との関連について各方面から検討する必要がありということでありまして、政府部内にもそれぞれ担当大臣がおられまして、そういう方々がそれぞれの立場でいろんな意見をお持ちであることは、従来からもしばしばこの関係閣僚会議が極めて活発に催されたという経緯でもあるわけでございまして、そういった意味で、政府基本的姿勢はしばしば申し上げておるとおりでございまして、そのことを達成するために、国民理解と協力を得られる形で最終決着を得るために関係閣僚会議が開かれておることでございますので、この点につきましては趣旨のほどは十分理解をいたしておりますので、こうした関係閣僚会議の開催につきましてもできる限り速やかに決着を得られるように、政府としては努力をいたしていくことをお約束いたしたいと思います。
  24. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいま官房長官から御答弁がありましたと同様に考えております。
  25. 野田哲

    野田哲君 恩給前提となる公務員給与がこれからどういう扱いになっていくかということで、またその前提になる民間のことしの賃金引き上げがどういう状況妥結に至っているか、その状況労働省の方からお伺いをいたしたいと思います。
  26. 山中秀樹

    説明員山中秀樹君) 今年の春闘における現段階までの賃上げ状況についてでございますが、御承知のとおり、四月七日、八日に行われました民間主要産業賃上げ回答状況について労使発表によりますと、まず鉄鋼大手五社では、賃上げ額四千四百円、率にいたしまして一・七九%でございます。造船大手五社平均では、賃上げ額六千五百円、率にして二・七%でございます。電気機器大手十六社平均では、賃上げ額九千九百二十七円、率にいたしまして四・六%でございます。自動車メーカー九社平均では、賃上げ額九千百五十二円、率にいたしまして四・一二%でございます。次に私鉄大手十三社平均では、賃上げ額一万三千三百円、率にいたしまして五・二七%でございました。最後に電力九社平均では、賃上げ額一万二千円、率にいたしまして四・七三%でございました。実質的にこの賃上げ妥結したというふうに承知いたしております。  以上でございます。
  27. 野田哲

    野田哲君 今までの状況を見ると、これは全部平均すると大体どういう状況になりますか。
  28. 山中秀樹

    説明員山中秀樹君) 今現在のところの率を平均するというのは、出すのは非常に難しゅうございまして、具体的に申し上げられません。
  29. 野田哲

    野田哲君 傾向もなかなか説明しにくいですか。
  30. 山中秀樹

    説明員山中秀樹君) 私ども今までの数字について平均して具体的な数字を出しておりませんので、私の方の数字としては出せませんが、御参考までに連合の集計によりますと、四月十四日までに妥結した組合平均賃上げ率は四・四五%でございました。また、日経連の集計によりますと、これも四月十二日までの回答または妥結となった企業平均賃上げ率は四・三六%となっているというふうに私ども承知いたしております。  以上でございます。
  31. 野田哲

    野田哲君 人事院の方に伺いますが、今の労働省の報告によりますと、大体四%台の四・四五あるいは四・三六という労使のそれぞれの発表があるわけでありますが、この傾向は大体去年よりも相当上回っている。したがって、これらの実態調査してことしも例年の例によると八月ということなんですが、そのころには人事院勧告が行われる、こういう理解でよろしゅうございますか。
  32. 内海倫

    政府委員内海倫君) この問題につきましても在来から我々の考え方を申し上げておりますけれども勧告の場合は、先ほど担当局長が申しましたように、公務員側給与実態調査とまた民間における約七千数百、八千に近い企業につきまして具体的に給与調査等実施いたしまして、その結果それらを対比し、較差がある場合にはこれを埋め合わせるようにしていくというのが恐らく在来ともどもとられてきた方策でございますから、私どももそういうふうなことを頭に置きながら、さらに国家公務員につきましてはその公務員生活実態、あるいは何といいましても税金の上の給与でございますから、やはり世論の納得ということも頭に置きながら勧告をどうするかということを考えたいと思います。私どもは、在来も申し上げておりますとおり、こういう問題において較差が出たような場合におきましては、その取り扱いについては積極的な考え方をもって対処したいと、こういうふうに思っております。まず何よりも官民調査の結果を待った上でないと今ここでそのままの実態が出るまでは答弁は差し控えざるを得ないと思いますが、申しましたように、私どもは積極的な対応をいたしたい、こういうふうに思っております。
  33. 野田哲

    野田哲君 わかりました。  そこで、恩給の問題に入ってまいりたいと思いますが、ことしの恩給引き上げですけれども、一律一・二五%、こういうふうになっています。この一・二五%と決めたのは、昨年の二・〇%と同じように六十二年度の公務員給与それから物価その他の事情を総合的に勘案した結果というふうに考えられるわけですが、一・二五という非常に細かいコンマ以下二けたまでとっておられる。総合勘案して決めたというのは一体どういうことなんでしょうか。昨年の場合には二・〇、こういうことで数字の上ですぱっと割り切ってあったわけですが、ことしは実に細かい小数コンマ以下二けたまでとってあるわけです。今回のこの一・二五%というのは根拠はどういうことにあるわけですか。
  34. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給年額の改定につきましては、公的年金改革に関連いたしました恩給制度の見直し結果を踏まえまして、昨年度から恩給法第二条ノ二の規定の趣旨にのっとりまして、公務員給与、物価その他の諸事情を総合勘案する方式をとることとしてきたわけでございます。本年はその第二年目に当たるわけでございまして、昨年末の予算編成時における諸事情、今先生がおっしゃいましたような公務員給与のこれは行(一)の俸給表の平均改定率でございますが、これが一・四六である。この数字と年末におきます消費者物価の年間における動向、これがおよそ〇・二%というような推定が出ておりまして、そういう事情等を総合勘案いたしました結果、今お話のありましたように一・二五%という率でもって六十三年度の恩給改善する、こういうことに決めたわけでございます。  今先生お話しのように、昨年は二%というすっきりした数字だった、ことしは一・二五%であるということでございますけれども、端数が出ることについて特段私ども他意を持っているわけではございません。
  35. 野田哲

    野田哲君 恩給について私もずっとここで審議をしているわけですけれども、今までの増額指標のとり方についてはいろいろと変遷があるわけであります。六十一年までは前年の公務員給与にスライドする、こういう制度がとられていたわけです。六十二年からはいわゆる総合勘案方式に今説明があったように変えられているわけです。これは、公的年金の抜本改正の一環として共済年金については物価スライド制がとられた。そこで恩給についても五十九年の七月二十五日に行革審から「恩給制度について公的年金制度改正とのバランスを考慮し必要な見直しを行う。」、こういうふうに指摘されている。このこともあって恩給局としても恩給問題の懇談会を開いて検討した結果、総合勘案方式をとったものだと思うわけであります。しかし、この一・二五ということにしたのは、物価の上昇率、それから公務員給与、これを総合勘案したということなんでしょうが、公務員給与についてはどの程度の率を算出の基礎にされているのか。大体公務員給与の六割をとるとかあるいは七割をとるとか、こういうふうなことではないかと思うんですが、その算出方式はどうなっているわけでしょうか。  例えば、六十二年度の例をとると給与は二・三%、こうなっているわけであります。それで物価は〇・六%、これに対して恩給は二%、こういうふうになっているわけでありますから、そうすると大体公務員給与の六割と見ているのかなと、こういうふうに感じるわけです。今回の場合には物価は〇・二%、公務員給与は一・四六%、これに対して恩給は一・二五%ということですから、大体恩給公務員給与引き上げ率の七割ぐらいを見ているのかなと、こういう逆に計算をした推定が出てくるわけですけれども、何かこの公務員給与をどれだけ見るという定率的なものを考えておられるわけですか。その点いかがですか。
  36. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給改善につきましては、ただいまのところ公務員給与、物価その他の諸事情を総合勘案するということでございまして、そのさまざまなものはあるわけでございます。総合勘案をすべきものはあるわけでございますけれども、それらの中でもってどういうふうに扱っていくかということについて私どもとして今確定的な式を立てているということではございません。
  37. 野田哲

    野田哲君 そういたしますと、恩給引き上げについては六十一年までは内訳はいろいろあるにしてもその率というのはおおよそ見えていたわけなんです。人事院勧告が行われれば、前年の人事院勧告をもとにして恩給はどれだけ上がるんだなということが推定されていたわけなんです。人事院勧告実施時期をおくらせたりあるいは率を下げたりいたしますとそれがそのまま影響して、実施時期をまた恩給の場合にも操作したり率を操作したりすることもありましたけれども公務員給与扱いが決まれば大体翌年の恩給引き上げというのは推定がされる状況にあったわけなんです。  ところが、今のように総合勘案だということで、私が物価、公務員給与、それらをそれぞれ数字を挙げて、では公務員給与の大体六割ぐらいを見るんですか、七割ぐらいを見るんですかということに対しては確定的な方式はないんだということになると、恩給引き上げについては六十一年まではガラス張りといいますか数字がほぼわかったわけで、あとはもう内訳の扱いだけだったんですが、今度は総合的な勘案ということで確定的な方式はないんだということになると、受けとめ方によっては恩給引き上げ率そのものが毎年の予算編成に絡んで非常に政治的な扱いを受けることになるのではないか。それは恩給という性格のものからいえば余り私はいい扱いではないんじゃないか、やはりある程度政治的な扱いを受けないように原則的な算出の方式というものを持っていた方がいいんじゃないか、こういうふうに思うんですが、その点いかがでしょうか。
  38. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 先生も十分御案内のことでございますけれども昭和四十一年にいわゆる調整規定といたしまして恩給法第二条ノ二の規定が設けられたわけでございます。それ以後におきまして、恩給年額の改定も恩給審議会方式あるいは公務員給与改善による一律アップ方式、公務員給与改善の回帰分析方式等、さまざまな改定方式によって行われてきているわけでございますが、これらはいずれも恩給法第二条ノ二の具体的な運用としていろいろ検討の結果、その時点におきます最も適切な恩給年額改定の方法としてとられてきたものだというふうに考えているところでございます。しかし、昭和六十一年度から実施されましたいわゆる公的年金改革によりましてすべての公的年金の改定方式が物価スライドに統一されたということから、恩給につきましてもこれとのバランスを図るため検討が求められたわけでございます。  政府におきましては、鋭意検討しました結果、恩給においてはその性格、実体が公的年金と異なるというところから、恩給年額の改定方式につきましても公的年金と全く同様にすることは適当ではないけれども、できるだけのバランスを図るという観点から従来の給与スライドを改めまして、公務員給与、物価その他の諸事情を総合勘案するという方式を採用することにしたわけでございます。今後の恩給年額の改定に当たりましても基本的にはこうした考え方に沿って行ってまいりたいというふうに考えているわけでございますが、昨年初めてこうした方式を取り入れ、ことしで二度目でございます。私どもといたしましても、今後こうした方式をとりながら、いろいろ実績を重ねていく上でもって何らかの方向が見出し得るのではないかというふうに考えているところでございます。
  39. 野田哲

    野田哲君 恩給受給者の方からは私どものところにもいろいろ陳情が来ているわけでありますけれども、やはりそれは公務員給与にスライドして扱ってほしい、こういう要望がたくさん来ているわけです。恐らく恩給局長のところ、総務庁長官のところにもそういう要望が届いているんじゃないかと思うんです。  そこで、去年、ことしの例を今恩給局長も挙げられたわけでありますけれども、この恩給の増額と公務員給与改善を比較をしてみると、六十二年度は公務員給与が二・三%、これに対して恩給改善率が二・〇%、その差は〇・三%であります。ところが、今回は公務員給与が去年の場合一・四六%、恩給改善率が一・二五%でありますから、その差は〇・二一%になっているわけです。つまり、単純に比較をすると、今回の方が公務員給与との差はうんと少なくなって公務員給与改善率に近づいているわけであります。ですから、総合勘案と言いますけれども、やはり私は恩給改善には余り政治的な、年末にいろいろ恩給団体が陳情されて、そしてよくあった例のように最終的には大蔵省の扱いではペンディングになって自民党の方で政治判断をする、政府との間で政治判断をする、こういう扱いではなくて、やはり人事院勧告が出ればおよそ恩給についてもガラス張りで見えてくる、こういう扱いに、つまり公務員給与に準拠するということで、一応建前は総合勘案制度とはいいながら実際の扱いとしては公務員給与を一つの物差しにして準拠していく、こういう扱いの方が私はいいのではないかと思うんですが、高鳥長官いかがでしょうか。
  40. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 先ほど局長の方からも御答弁申し上げたところでありますが、実は共済年金制度の改正の問題、いわゆる官民格差の是正ということで非常にかまびすしくなりまして、六十一年にこの共済年金制度の全面改正が行われたところであります。これは私当時地方行政委員長をいたしておりまして、今おります中島局長が担当の部長でございました。そのときにこの制度改正の問題についていろいろと細かく説明を実は聞いておったわけであります。そのときに恐らくこれは恩給の方にも影響が及ぶであろうなと実は想像いたしておりましたが、やはり共済年金の方が全く物価スライドでいっているのに、性格が全く異なるものである、制度の本質は異なるものであるとはいいながら、一方は人勧そのままで持っていくということについては、かなりやっぱりその間に格差があるではないかという指摘を免れないのではないかというふうに感じておりました。しかるところ、いわば総合勘案方式を採用するということに結局昨年なりまして、昨年、今年とそういう方式を導入されたわけであります。  実は、対大蔵の折衝におきましては大蔵側は一%以下でとどめてほしいという要求でございましたし、私どもの方としてはやはり人勧で出ております数字というものを基本にして考えるべきであろうということを強く主張いたしましたが、最終的には歩み寄りをいたしまして一・二五ということに落ちついたわけであります。したがいまして、ここまで二回やってみたところでありまして、その率については細かく計算をすれば、実は後でくっつけますといろいろその数字に限りなく近づける計算方法というのはないわけではございませんけれども、それでは裏を返してその数字を根拠にして決めたのかと言われれば、実はそれはそうではないのであります。最終的には政治的な折衝によって決まったということであります。  野田委員指摘のように、私ども立場からいたしますと、一定の方式が確立しておってそれで自動的に額が決まっていくということの方が仕事は楽でございます、率直に申しまして。しかしながら、今総合勘案方式を始めましてわずかに二年でありまして、しかもこの間における物価、賃金というものが非常に安定した姿にあったということであります。今後もう少し何と申しましょうか実績を積み重ねさせていただいた中で、おのずから一定の方式というものが生み出せるのではないかというふうに思いますが、当面今回はこれでやむを得なかったのではないかというふうに私自身は判断をいたしております。
  41. 野田哲

    野田哲君 政府としても総務庁としても総合勘案方式をとってまだ二年ということでありますから、また前の公務員給与にスライドをするということは朝令暮改というようなそしりも受けかねないということで、そういう点も懸念をされているんだと思うんですけれども、今長官も言われたように、総合勘案方式でやったら限りなく公務員給与にスライドした形に結果としてはなったということでも私はいいんじゃないかと思うので、問題は、この恩給受給者の平均年齢はもう七十歳を超えているわけでありますから、そういう方々に年末の予算折衝の中でどうなるんだろうかこうなるんだろうかということで気をもませるようなことではなくて、人事院勧告が出、公務員給与取り扱い政府で決まれば、それによって来年は自分たち恩給年金もこうなるんだなと、こういう方が心が休まるんじゃないかというふうに思うので、その点はひとつこれからの扱いについても十分配慮をしていただいた方がいいんじゃないかなと、こういうふうに思いますがいかがでしょうか。
  42. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 私どもも受給者の方々からのいろんな御意見も伺っておりますし、お気持ちは十分わかるわけでございます。そういうお気持ちを察しつつ、先ほど述べましたように、片や公的年金との関連というようなものでもって見直しも問われている、こういう状況もあるわけでございます。その辺を私どもとしても十分考えながら今後適切に対処してまいりたい、このように考えております。
  43. 野田哲

    野田哲君 先ほど長官からは、大蔵省はこういうふうな主張である、総務庁としてはこういう立場でという御説明があったわけですが、予算的に見ていっても六十二年度の二%の増額の平年度化分として今年度百十七億五千万ですか、それから今回の改善分として百四十七億一千七百万、こういうふうになっていると思うので、増額分の合計は二百六十四億六千七百万、こういう内容だと思うんです。一方において、この恩給受給者はどんどん減っているわけですね。今年度の予算の扱いでは四万人の減によってそれによる歳出減が三百八十五億五千二百万、こういうふうになっていると思うんです。つまり、減る方が百二十億八千五百万大きいわけでありますから、そういう点から公務員給与の増加分にスライドしたとしても予算的には私はこれが大きな財政を圧迫するということにはならない、むしろそれでやっても予算的には総額としては減っていくんだと、こういうことだと思います。財政的にはそういう状況だと私は思うんですが、間違いはないでしょうか。
  44. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 先生がおっしゃいますように、確かに恩給受給者は今後年々減っていくことも事実でございます。その減によります予算の減少ということは確かにあると思います。ただ、総合勘案方式を導入いたしましたきっかけは、やはり他の公的年金制度改善がすべて物価スライドに統一されたというところから、恩給に関しましてもその改定方式の見直しを迫られたというところにあるわけでございまして、私どもとしては先ほど申し上げましたように受給者のお気持ちも十分わかりますし、それからそうした他の制度とのバランスというようなことも頭に置きながらやはり考えていかなきゃならない立場にあるということでございまして、今後とも総合勘案方式ということでもって改善を図らせていただきたい、このように考えているところでございます。
  45. 野田哲

    野田哲君 恩給局長が余り遠慮されているとこれは恩給受給者の声にこたえることにならないと思うので、私どもは野党だけれども応援団のつもりなんだから、これはやっぱり頑張ってもらいたいと、こういうふうに思うんです。  もう一つは、計算の方式で伺いたいのは、これは今度は個々の計算の問題ですけれども、従来総務庁の方で恩給の増額に当たってはいわゆる回帰分析方式、こういう方式によって低額の恩給受給者には比較的厚くなる、いわば上薄下厚というような形になる改善方式をとっていたわけですけれども、昨年度から、今年度もそうですけれども、同一率で改定をしていくこうなっているわけですが、これがずっとこれからも続いていくと上と下との格差がどんどん広くなっていくんじゃないかと思うんです。いつまでもこの一律方式を続けていくということはいかがなものか。いずれこれは是正しなければならないと思うんですが、これはどういう状況になったときに是正をされるつもりなんですか。ずっとこれから当分はこの一律方式を続けるつもりなんですか。その点いかがでしょう。
  46. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) たびたび申し上げますように、昭和六十三年度の恩給年額の改定は、公務員給与改善率それから物価の上昇率等を総合勘案して一律一・二五%という増額改定をすることにいたしているわけでございますけれども、これはベースアップにおける回帰分析方式の導入、それから低額恩給改善を図るために最低保障制度を導入してきたわけでございますけれども、これらの措置によりまして上下格差が縮小されてきたというようなことが一つの点として指摘できようかと思います。また二つ目の点といたしまして、昭和六十一年度及び六十二年度の公務員給与改善率は比較的低率でございまして、しかも上薄下厚的な色彩が薄かったというようなことを考慮いたしまして、一律の増額改定を行うことにしたものでございます。  今後とも一律アップ方式を続けていくかどうかということにつきましては、やはり社会経済情勢の推移とかあるいは公務員給与改善傾向といったようなものを見ながら検討してまいりたい、このように考えているところでございます。
  47. 野田哲

    野田哲君 恩給制度とそれから公務員の共済年金制度、非常に関連が深いわけであります。今回も別に共済年金の増額のための法案が出されているわけですが、六十一年度を基礎に六十二年度の物価の伸びが〇・一%である、こういうことから共済年金の方は今度の改定は〇・一%分だけ共済年金の増額をする、こういう扱いになっているわけであります。恩給は、必ずしもこれがいい数字ではないにしても一・二五%、共済年金は〇・一%、したがって共済年金に比べると十二・五倍、倍率からいえば非常に高いわけです。昨年は恩給が二・〇%、共済年金が〇・六%であったわけで、昨年の場合には三・三倍の格差、こういうことであったわけです。したがって、恩給と共済年金の昨年とことしのこれが実施された場合の累積の増額率を計算すると実に四・六七倍、こういう格差になるわけであります。  かつてはずっと共済年金は恩給の改定率と同じように公務員給与引き上げに準じて行われたわけてありますし、そういう点から当内閣委員会でも従前は恩給法と共済組合法は同じ性格のものだということで一括審議をずっとやってきた、こういう例があるわけであります。そういう点からも、かつて同じ公務員であった者が退職の時期によって片や恩給という扱いになり片や共済年金という扱いになって非常な格差の生じたような扱いを受けることになったわけであります。もう一回この共済年金についても恩給と同様に扱う、そして恩給と共済年金は公務員給与にスライドをする、こういうふうに考えるべきではないか、こういうふうに思うわけですけれども、長官この点いかがでしょう。
  48. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 共済年金の方につきましては、担当でもございませんので私の方からコメントするのはいかがかとは思いますが、官民格差是正という観点からいたしまして、厚生年金等との比較においていろいろ論議をされました結果、現在の制度になったというふうに承知いたしております。かつまた、共済年金の方はたしか再計算時においてベースアップの状況等を勘案するという附帯条件みたいなものがついたのではなかったかというふうに記憶いたしておりますが、今制度が一つの大きな移り変わりの時期にございますので、一つ一つを比較してみますとどうも不公平ではないかということにはなろうかと思いますが、恩給制度の方はやがてまあ消滅していくものでございますので、むしろ視点は共済年金と厚生年金とをどのようにまとめていくかということの方にその重点を置いて考えていくべきものではないかというふうに考えております。
  49. 野田哲

    野田哲君 共済年金と恩給については制度の違いということがあり、私もこの問題の議論を制度改正のときに随分やったわけなんですけれども、共済は恩給と異なって社会保険方式で運営されているんだと、そして厚生年金と同様に公的年金の一環として位置づけられているんだと。したがって、スライドについても他の公的年金と同様に物価スライドを基本にする。そして、もう一つはやはり現職つまり在職中の職員の費用負担にも配慮しなければならない。こういうことから恩給とは異なった扱いを受けるようになったと思うんですけれども制度的に言えばこの恩給はこれは全部国民の税金によって負担をしているわけです。共済年金はかなりの部分を職員の掛金によって賄っている。こういう費用負担をする側からすれば、むしろ国民的な感情からいえば費用負担の少ない共済年金の方も全部税金で負担をしている恩給に合わせてもいいんじゃないか、こういう気持ちもあるんじゃないかと思うんです。  一番問題なのは、極端な例を引けば、三十四年の十月以降、つまり制度が変わって共済年金に切りかわった直後に退職した職員は、今度は〇・一%しかことしは増額されない。そして三十四年の十月、制度が変わる直前に退職した人は恩給年金の適用を丸々受けて一・二五%増額されることになる。こういうふうに、一番これは極端な例をとったわけですけれども、受給者の間に大変なアンバランスが生ずることになるわけであります。こういう制度上の矛盾についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  50. 山口公生

    説明員(山口公生君) お答え申し上げます。  先生の御指摘にもございましたように、共済年金は公的年金としての位置づけをしておりまして、したがってスライドにつきましても他の公的年金、厚生年金等と同じ扱いをしているわけでございます。公的年金の一元化という流れがございまして、他の厚生年金等と合わせていくという時代になってきたということでございますが、先生の御指摘のとおり、制度の切りかえのときの不公平があるじゃないか、こういう御指摘がいろいろあることも承知しております。ただ、三十四年に恩給制度がなくなりまして、その後共済制度に移って三十年弱既に経過したわけでございますが、先ほど長官が御指摘なさいましたような官民格差の議論もございました。そういうことでこういった取り扱いにしているわけでございますが、この恩給から引き継いでいるという共済制度の沿革上の特殊性という問題は、どこかでやっぱり割り切っていかざるを得ないんじゃないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、各種公的年金の制度の中で、国家公務員とかあるいは地方公務員制度だけをまた恩給制度に合わせて戻してしまうということは、努力してこの公的年金を一元化していこうという流れから見ますと、せっかくそろえてきた公的年金制度の中でまた内部に新たな不均衡というものを生ずるわけでございます。  確かに、先生がおっしゃったように、一日違いでという問題はあるかもしれません。ただこの場合も、実は制度の切りかえのときに退職金を二五%ぐらい割り増しをいたしました。そこで大分その他の退職金等の取り扱いを変えましたので、じゃどちらが有利かという話になりますと、これは片一方から見ますと別の方が有利だというふうにお互いに言われるような問題もいろいろございます。したがって、そこのところはひとつ割り切っていかざるを得ないんじゃないかというふうに思っておりまして、ここまで公的年金としての制度を合わせてまいりましたので、そこをひとつ御理解賜りたいというふうに思うわけでございます。
  51. 野田哲

    野田哲君 これはしばらく大蔵省とやりとりしますから、総務庁長官公務員の人事担当大臣として聞いておいていただきたいと思うんです。  今大蔵省共済課長はどこかで割り切らなきゃしようがないんだ、こういうふうに言われたわけですが、私どものところに退職されて共済年金の支給を受けておられる方々が陳情にお見えになるもう七十代の人に、あなたがおっしゃるように、私どもがどこかで割り切らなきゃしようがないんですよということはなかなかこれは言えないんですよ。特に今の共済年金の受給者というのは、先ほど言いましたように、昭和三十四年を境にした恩給期間と共済期間をまたいでいる人が大部分なんです。しかも、恩給期間の方が長かった人が相当いるわけですよ。  そういう点からして、どこかで割り切れということで山口共済課長がおっしゃるように割り切らざるを得ないんだと、ならば、恩給とすべてを同率に引き上げができないということになるとすれば、一番切実な受給者の方々の声は、じゃせめて恩給期間にあった部分だけは恩給と同じように扱ってもらえないものでしょうか、これは私は一つの理屈として、私どももそれに対しては答えようがないと思うんですよ。だから、共済期間と恩給期間両方にまたがった人の共済期間のものは、年金制度として厚年とのバランスをとらなきゃならぬという理屈もあるわけですが、せめてまたがった人の場合には恩給期間だけでも恩給と同じように扱っていく、こういうことを考えてもいいのではないか、こういうふうに思うんですがいかがでしょうか。
  52. 山口公生

    説明員(山口公生君) 共済年金のうち恩給期間分を恩給制度と合わせてという御主張でございますが、私どもとしましてはこの恩給期間分を特別に扱うということにつきましては、共済年金の内部で恩給期間の長い人あるいは短い人いろいろございます。恩給期間の方がむしろ短い人の方がかなり掛金もたくさん掛けておられるという事情もございますが、その長短で扱いが異なってしまう、つまり共済制度という一つの法体系の制度のもとでばらばらにまたそこでの不均衡が生ずるという問題がありまして、どうしてもとり得ないというふうに考えておるわけでございます。  それから、恩給期間というものは民間の厚生年金にはございません。したがいまして、厚生年金と合わせたという私ども考え方でございますが、そこでまた厚生年金等にはない期間についてそこだけ国家公務員や地方公務員について有利に扱ってあげるということは、私どもちょっと余り使いたくない言葉でございますが、官民格差という議論がまた出てくるということで、私どもとしてはそこはとりにくいという立場にございます。
  53. 野田哲

    野田哲君 まあ共済課長制度をつくり制度を運用する方の側からの説明ですけれども、やはり受給者という立場に立って考えれば、本人の意思によって恩給が共済年金制度に変わったわけじゃないんだし、本人の意思によって恩給期間のものも全部これからは共済年金として扱うんだよということに了解して決まったものでもないのであって、やはり受給者の方にすれば年金というのがもう生活者としての唯一のよりどころになっているわけでありまして、生活の機能面という点では受給者の方は恩給あるいは共済年金、そんなに区別をして考えると言ってもそれは無理があると思うんですよ、これ。退職した後から制度が変えられたわけなんですからね、なかなか納得しがたいんですよ、山口さん、あなたのような説明はね。  退職してちゃんと生活設計を立てて、恩給部分がこれだけ、共済年金部分がこれだけあって、期間がこれだけあるから、これから退職した後はこれだけもらえる。そして毎年公務員給与が上がっていけばそれに連れてスライドしていく、こういう生活設計をして退職したわけですよ。そして年金で暮らしていると、それが途中から減額されるような制度改正が行われたというんじゃ、これは本当に私は、そういう該当者に対しては大変な期待感を裏切るといいますか、既得権を裏切るというか、残酷な扱いになっていくと思うので、だから、これはそこに配慮をするのが私は政治だと、こういうふうに思うんですよ。これはぜひひとつ高鳥長官も、制度改正があってから二、三年たっているわけですけれども、よく心にとめておいていただきたい、こういうふうに思うんですけれどもいかがでしょう。
  54. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) どうしても制度の変わりますときにはいろいろな問題点が生じてくるのは避けられないことだと思いますし、それをできるだけ緩和しながら措置していくことは当然努力しなければならないことだというふうには思います。ただいまの共済とそれから恩給との境目にある問題につきましては、担当大蔵の方でいろいろ検討しておられることと存じますが、私どももいろいろな機会にまた勉強さしていただきたいと思います。
  55. 野田哲

    野田哲君 今は恩給よりも共済年金が差がつけられたということを問題にしているわけですけれども、もう一つの問題は、高鳥長官、全くスライド停止という扱いを受けている人がいるんですよ。もう上がらないんですよ、これ。これもやはり、やめるときには年金がこれだけそしてこれは毎年の公務員給与にスライドされるということで、そういうことを期待し生活設計の中に組み入れて退職をしたわけなんです。ところが、退職した後で制度の改正によってスライド停止という扱いを受けた人がいるわけですよ。これは私の推定では大体二十万人ぐらいはスライド停止の人がいると思うんですが、共済課長、大体そのぐらいの人数いるんでしょう。どうですか。
  56. 山口公生

    説明員(山口公生君) 六十二年の十二月末で申し上げますと、十二万九千人が従前額保障ということでスライドがとまっております。
  57. 野田哲

    野田哲君 それは国家公務員だけですね。
  58. 山口公生

    説明員(山口公生君) そうでございます。
  59. 野田哲

    野田哲君 だから、地方公務員を合わせそれから農業団体とか私立学校とかそういうところを合わせると、もっともっと大変な数十万人のスライド停止の扱いを受けている人がいるわけです。これは制度改正をやるとき、中曽根総理と私もそこのところを随分議論したんです。当時の中曽根総理も論点はよく理解できる、よく傾聴して心にとめておきます、こういうふうに答えておられるわけです。心にとめておられるだけで中曽根総理が心にとめたのを持って退陣されていたんじゃ、これ全くスライド停止を受けている人たちはまあ泣き寝入りということになってしまうわけです。これはもうこれから先々ずっと死ぬまでスライド停止の状態が続いていく、こういうことになるわけであります。  仮にこの共済年金の制度恩給と同様に引き上げるという制度にしていけば、このスライド停止というものはなくなるわけであります。このスライド停止問題については、これは総務庁長官の所管事項ではない。大蔵省の所管事項なんで、きょうは大蔵大臣や大蔵省の高官は見えていない。共済課長だけの出席なので、これ以上もう深くこの問題の議論をしようとは思いませんが、いずれまた共済年金の審議をやるときに大蔵大臣と直接やりたいと思うんですが、あなたの答えを求めても否定的な答えしか出ませんね。いかがですか。
  60. 山口公生

    説明員(山口公生君) 従前額保障を受けておられる年金、すなわちスライド停止がかかっている年金は、実は共済制度で以前一般方式というものと通年方式と二通りございまして、一般方式と呼ばれる共済年金の独自の年金額の計算方式によっておられた方々の年金でございます。この一般方式といいますのは、端的に言いますと俸給の高い人に有利になる計算方式ということであったわけでございます。ところが、この一般方式というのは他の厚生年金等には全くない制度でございまして、さきの昭和六十一年四月より実施されました共済年金の新しい制度では廃止になったわけでございます。それで、この廃止になった制度でただ全部またその年金額をカットするというわけにもまいりません。したがいまして、従前額保障という形でスライドは我慢していただいておるというもので、過去の高い年金は維持してあげます、それで本来の通年方式というのがスライドしてちょうどクロスした時点から通年方式に乗りかえていただきますと、こういう制度であったわけでございます。  こうした理由は、実は現在、掛金を負担していただいております現役の公務員から見ればこの制度はもう既になくなっておりまして、受けることができない制度である。一般方式というのはそういう制度でございます。で、掛金が従来よりはかなり高くなってきております。それからやっぱり年金の受給者間のいろいろバランスを考えなきゃいけないということ、またこのスライド停止がかかっている人たちをさらにもとに戻してスライドを始めるとなりますと、民間には全くない恩典でございますから、官民格差の議論になるというふうに思います。したがいまして、高所得者が非常に有利であったところの一般方式による年金額は従前額の保障が限度ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  61. 野田哲

    野田哲君 あなたは今説明があったわけですけれども、今まで受けていた共済年金が高いか安いかということは本人には関係ないのであって、退職して受給していたものをある日突然制度が変わって、物差しが変わってきたわけですよ。受給者に関係なく物差しを変えておいておまえたちのは高いんだからもうスライドはストップだよというのは、私はいかにも冷酷な制度だということを言っているわけでありまして、これはこれ以上議論をしませんから、ただ総務庁長官も念頭に置いておいていただきたい、こういうふうに思うんです。  そこで、恩給の問題を審議しておれば、これは公務員給与とも関係がある。共済年金とも関係がある。今度は共済年金はそれじゃどうかというと、厚生年金と関係があるということで、あっちこっちに議論が連動しているわけなので厚生省の方に伺いますが、厚生年金の制度では物価スライド、そして五年ごとの財政再計算時に標準報酬を再評価して賃金スライドからの乖離分を調整していく、こういうことをやっているはずだと思うんです。五十五年の財政再計算時に、五十四年四月から五十五年三月までの物価の上昇率が七・六%であった。そのときのモデル年金で、妻の加算分を除いてこの七・六%を含めてたしか一八・八%の増加が図られている、こういうふうな経過があると思うんですけれども、厚生省の方の御説明をいただきたいと思います。
  62. 松本省藏

    説明員(松本省藏君) お答えを申し上げます。  先生今御指摘のように、厚生年金の制度におきましては、五年ごとの財政再計算期におきまして国民の生活水準あるいは賃金の変動等を考慮いたしまして年金水準の見直しを行っているところでございます。その際、厚生年金の年金額の算定の基礎となっております標準報酬月額というようなものを再評価するというようなことをいたしているわけでございます。具体的に今先生がおっしゃいました五十四年と申しますか、五十五年のときの再評価の際の数字というのはちょっと私ども把握している数字とは違ってございますけれども、基本的にはそういう仕組みで再評価を行っているということは御指摘のとおりでございます。
  63. 野田哲

    野田哲君 厚生年金それから共済年金、これについて国民の生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動があった場合にはこれらの諸事情を総合勘案して別途改定の措置を検討していく、こういう規定がありますね。そして、今後も五年ごとの財政再計算時に賃金スライドとの乖離分を調整することになっているはずであります。たまたま来年の六十四年度が財政再計算時に当たるわけですけれども、従来どおりのやり方で標準報酬の見直しを図るというふうに理解していいのかどうか、厚生 省と大蔵省、それぞれお答えいただきたいと思うんです。
  64. 松本省藏

    説明員(松本省藏君) 先ほど申しましたように、標準報酬の再評価でございますが、厚生年金の算定の基礎となっております標準報酬月額につきまして、過去の標準報酬をそれぞれの一定の期間ごとでございますが、直近の被保険者の平均標準報酬をもとにしまして期間ごとに再評価率を出している、こういう仕組みをとってやっているわけでございます。先生の今の御指摘のように、来年の六十四年四月一日の時点になるわけでありますけれども、厚生年金の財政再計算期に当たります。したがいまして、次期の財政再計算期におきまして標準報酬の再評価をどうするかということでございますが、基本的には従来からのこのような考え方を踏まえまして、現在既に年金制度の改正につきまして私ども年金審議会にいろいろと御意見を伺っているところでございます。いろいろな制度改正事項に合わせまして、この審議会の御意見も参考にしながらこれから決めてまいるということになろうかと思います。
  65. 山口公生

    説明員(山口公生君) 共済年金につきましても、厚生年金等と制度を合わせてまいっておりますので、厚生年金の方の対応を見ながら、また現役の、実は給付を改善しますとその分非常に現役への負担のはね返りも大きくなりますので、その辺の兼ね合いにも配慮しつつ、今後よく各省と相談してまいりたいというふうに思っております。
  66. 野田哲

    野田哲君 改めてこれは共済年金の制度法案の審議をやるときに続けていきたいと思うので、国鉄の問題に移りたいと思うんですが、昭和六十年四月から六十四年三月までの五年間にわたって、国鉄の年金については国家公務員それからNTTそれから日本たばこ産業株式会社、この職員がそれぞれ年間一万五千円の援助つまり財政調整を行う、こういうこととして財政調整五カ年計画が策定をされたわけですが、この計画は国鉄職員三十二万人体制、これを前提としていたわけであります。国鉄改革によってこの三十二万人体制が崩れてきたわけですが、今JR各社総人員何人いるんですか。
  67. 深谷憲一

    説明員(深谷憲一君) お答え申し上げます。  国鉄改革に伴いますJR各社承継法人全体で基本計画ベースにおきましては二十一万五千人ということで設定されておりましたけれども、実際に移行いたしましたのはそれを若干下回った数字でございます。
  68. 野田哲

    野田哲君 幾ら。
  69. 深谷憲一

    説明員(深谷憲一君) 今具体的に手元に数字ございませんので、後ほど先生の方にお届けをしたいと思います。
  70. 野田哲

    野田哲君 およその推定、そのJR各社の職員の人数わかりませんか。
  71. 深谷憲一

    説明員(深谷憲一君) お答え申し上げます。  JR各社、旅客会社、貨物会社全体で二十万人ちょっとでございます。
  72. 野田哲

    野田哲君 まず国鉄の年金の問題については、今お聞きのように基礎になる人員そのものが狂ってきているわけです、年金の計算をした上では。その前提三十二万人体制が大きく狂ってきているわけです。そこで、共済年金の改正の際に大きな問題となって、政府は六十年の十一月二十八日に政府の統一見解を出して、六十四年までは支払いに支障がないようにする、こういうふうな見解を示しているわけですが、これはそういうことでやられているわけですか。今までの措置はどうなっているわけですか。
  73. 山口公生

    説明員(山口公生君) お答えいたします。  国鉄共済年金については、共済年金の御審議をいただきました際に政府の統一見解を出しまして、六十四年度まで、これはなぜ六十四年度までかといいますと、今の財政調整の計画が六十四年度までと一応なっております。その六十四年度までは六十一年度中に結論を出して支払いに支障がないようにしますという、こういうお約束をしております。六十五年度以降はそれ以降すぐ検討しますとこうなっておりますが、したがいまして、六十四年度までは閣僚懇談会におきまして対策をお決めいただいたということでございます。したがいまして、六十四年度までは積立金もある程度残りますし、支払いには支障はないというふうに思っております。
  74. 野田哲

    野田哲君 支払いには支障がないということですけれども、これはやはり確かに支払いには支障がないという形ではあるとしても、これは国鉄職員の共済年金、国鉄を退職した人たちの共済年金は他の国家公務員やあるいは元の電電公社、専売公社の職員よりは水準が低い、職域部分はたしか削減をされた形のもので支払いが支障がないとこういうことですかね、実情は。
  75. 山口公生

    説明員(山口公生君) 職域部分がついてないという部分は、制度の改正後に年金をおもらいになる方々、裁定を受けられる方々のお話でございます。それから既に年金をもらっておられた方々につきましては、国家公務員等からの支援を受ける前提といたしましての自助努力といたしまして、国家公務員水準の一〇%減になるまではスライドをとめる、こういう措置を受けておられます。
  76. 野田哲

    野田哲君 昨年の三月二十四日、国鉄共済年金問題に関する閣僚懇談会、ここで当初の計画の見通しよりも五年間に二千八百億円が不足をする、こういうことでこの二千八百億円のうちの千八百億円は国鉄の共済の積立金から出す、そして残りの一千億円は国鉄清算事業団が支払うということで、六十四年までは支払いに支障がないようにした、こういうことであったと思うんですが、この国鉄清算事業団が支払う一千億円、これはどういう手だてによって措置をされているのか、その内訳を説明していただきたいと思います。
  77. 深谷憲一

    説明員(深谷憲一君) お答え申し上げます。  先生御指摘昭和六十四年度までの対策の一環としまして、国鉄改革に伴いまして国鉄清算事業団が負担をするということで整理されました追加費用の関係のうちの六十四年度対策までの一項目といたしましての精査見直し、これにつきましては六十二年度から六十四年度までの三年間で御指摘のとおり約一千億円ということでございますが、これにつきましては国鉄清算事業団の予算におきまして所要額を計上し、六十二年度、六十三年度、六十四年度負担につきまして支障のないように措置をいたしておるところでございます。
  78. 野田哲

    野田哲君 昭和六十五年度以降の国鉄の年金の赤字が三千億円を超すと言われているわけですが、これは一体だれが払うのか大変大きな問題になっているわけですけれども、報道によりますと国鉄共済年金問題の閣僚懇談会、厚生大臣、これはもう座長になるのを逃げている。そこで当時はやむを得ず後藤田官房長官が座長を引き受けてこの問題の検討を行う、こういうことになっているわけですが、伺いたいのは厚生省と自治省、共済年金制度の改正のときに当時の大蔵大臣、竹下大蔵大臣であったわけですが、私どもによくオールジャパンという言葉を使われてしきりに呼びかけられたわけなんです。つまり当時の竹下大蔵大臣の構想の中でオールジャパンという言葉の中には、国鉄の年金の対策として地方公務員の共済年金も加わってくれ、厚生年金も加わってくれと。つまり、今国家公務員や当時一緒にやっていたNTTや専売の人たちが年間一万五千円を負担している、これを地方公務員も負担してほしい、厚生年金のいわゆる民間の労働者も負担してほしいということを竹下さんらしい言葉でオールジャパンと、こういう説明をしておられたと思うんですが、自治省や厚生省はこのオールジャパンという呼びかけ、働きかけを今何か受けているわけですか。現状どうなっているんですか。
  79. 鈴木正明

    説明員(鈴木正明君) お答え申し上げます。  先生御指摘の国鉄共済年金問題の特に昭和六十五年以降の対策でございますが、私どもが承知しておりますのは、日本国鉄共済年金問題に関する閣僚懇談会におきまして、広く各界の有識者の意見を聞くということで国鉄共済年金問題懇談会が開催されまして、そこにおいて検討が進められていると承知をいたしております。現在のところ、この問題につきまして自治省に対する協議は受けておりません。
  80. 松本省藏

    説明員(松本省藏君) お答えを申し上げます。  鉄道共済年金問題につきましては、今自治省の方より御答弁がありました、また共済課長よりも答弁があったかと思いますが、日本鉄道共済年金問題に関する閣僚懇談会におきまして六十五年度以降対策というのを検討するということになって、いわゆる有識者の懇談会で現在その対策の方向についての御議論がなされているというふうに承知いたしております。したがいまして、そういう状況にありますので、厚生年金を所管する厚生省といたしまして、先生の御指摘のようなオールジャパンでの救済ということについて特段の協議を受けているわけではございません。  なお、ちょっと付言させていただきますけれども、国鉄の四閣僚懇談会には厚生大臣という立場ではなくて年金問題担当大臣という立場で入っているわけでございまして、お含みおきいただきたいと思います。
  81. 野田哲

    野田哲君 大蔵省に伺いますが、六十四年になると、国家公務員やそれから国家公務員共済組合法の適用を受けて今も民間になっても続いているNTTそれからいわゆる日本たばこ、ここの人たちのいわゆる国鉄年金分の拠出というのは終わるべきだと思うんですが、その点いかがですか。
  82. 山口公生

    説明員(山口公生君) 今国家公務員等からの拠出、すなわち財政調整五カ年計画というのは、先生御指摘のように六十四年度で一つの区切りでございます。ただ法律上は、また新たに五カ年計画をつくればまた五カ年計画ができる、こういう形にはなっております。ただ、私ども国家公務員等の共済審議会等でもこれを最後にしなさいという厳しい御指摘もいただいております。先生の今の御指摘も私もいろんな方々からよく聞くわけでございます。ただ、何せ六十五年度以降三千億という非常に大きな赤字を抱えた大問題でございまして、今私が、そういう道はもう結構ですと、こういう道がこれからやれますと言い得る段階ではございませんので、私は今の段階で六十四年度ですべてが終わりでもう御安心くださいと胸を張って言える段階ではないと。ただ、いずれにせよ六十五年度対策をきちっとやりませんと、鉄道共済年金も先ほど来しばしば申し上げております公的年金の一つでございますので、ぜひともこの問題を解決しなければいけないというふうに思っておる次第でございます。
  83. 野田哲

    野田哲君 早々に官房長官まことにタイミングよく御出席をいただきまして、最後になるんですが、今まで国鉄の共済年金の問題についていろいろ大蔵省や厚生省や総務庁と議論していたんです。そこで最後に伺いたいのは、六十四年までは一応手だてができている、こういうことなんですが、六十五年度以降の問題につきましては、六十年の十一月二十八日の政府統一見解で「その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるよう措置」をする、こういう政府の統一見解がありますね。これは官房長官を座長にして大蔵大臣、厚生大臣、運輸大臣、こういう構成で国鉄共済年金問題に関する閣僚懇談会というのを設置して、その下に鉄道共済年金問題懇談会、こういう形で有識者を集めて検討している、こういうことのようでありますけれども、この検討状況、そしていつごろをめどにこの国鉄共済年金問題、六十五年以降の問題について結論を出されるおつもりなのか、その点を伺って終わりたいと思います。
  84. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この国鉄共済問題につきましては、恐らく今までも種々御議論があったことだろうと思いますが、政府としましても大変実は難しい問題でその対応に苦慮いたしてまいったところでございます。お話のように六十四年までは一応手当てができまして、問題はそれ以降いかに対応するかということでございます。  そこで、今委員指摘のような鉄道共済年金問題懇談会を開催いたしましていくわけでございますが、この有識者による懇談会はおおよそ本年の秋ごろを目途に意見を取りまとめていきたいというふうに実は考えております。そして、その御意見等を踏まえまして具体案を作成してまいりたい、このように考えております。
  85. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 午後一時十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      ─────・─────    午後一時十一分開会
  86. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  87. 板垣正

    ○板垣正君 恩給法の問題について質問いたしたいと思います。  まず初めに、恩給法は国家補償である、公的年金とはおのずから性格を異にする、こう言われているわけでございますが、この恩給法の本質並びに今恩給法が果たしている役割、そういうことについて長官はどういうふうに御認識でございましょうか、その点をまず伺いたいと思いますが。
  88. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 恩給制度というものは、その生涯の相当期間を国にささげて専ら国家のために努めてきた人たちに対するいわば国家補償という性格のものであろうと考えておりまして、年金設計によりまして給付をされる共済年金などとはおのずから性格を異にするものである、このように承知しているところでございます。したがいまして、その性格上おのずから共済年金等の改善とは違った考え方で取り組んでもいいものであろう、このように考えております。
  89. 板垣正

    ○板垣正君 なお、現在恩給法が果たしている役割、つまり実質的にいわゆる軍人恩給と言われるわけでありますけれども、過ぎし大戦後における旧軍人なりあるいは遺族あるいは傷痍軍人等に対する国家補償という上において、恩給法並びに遺族援護法、これが二つの柱として果たしている役割というものが私は非常に大きいと思います。  そこで、恩給法も長い過程の中でいろいろな改善を重ねてきたわけであります。私は、その中で特に大きかった改革といいますか、そういうものを考えますと、昭和四十一年にいわゆる調整規定が設けられた。恩給法二条ノ二であります。それ以前は、恩給はいついかなるときに改善措置をするかについて明文が何もなかった。これが入れられたということでありますし、さらに四十八年において、これは四十八年一月からでありますので四十七年度でございますけれども、いわゆる最低保障制度が導入された。これは従来の恩給法の観念にはなかったわけでありますけれども、そうした制度も取り入れられたということは一つの画期的なことであったと思います。さらに五十一年には寡婦加算制度、遺族加算制度、こうした制度がとられたわけであります。  以上、こうした大きな改革というものには、いずれも受給者の立場から受給者により手厚くする、そうした思想がやはり一貫しておったと思うのでございます。今回言われているところのいわゆる総合勘案方式というものが、ある意味におきましては今までの恩給制度から見ても恩給法の流れから見ても、一つの大きな改革というふうなお立場でとらえているのかどうかその点について、長官が今おっしゃいましたこの総合勘案方式が今度とられたわけでありますが、いわゆる恩給の国家補償としての本旨というものが今回の改善措置によっても損なわれることなく貫かれたというふうに御認識でしょうか、その点伺いたいと思いますが。
  90. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 先ほど野田委員の御質問にもお答えしたところでございますが、実は官民格差是正論というものがいろいろと国会あるいはマスコミ等々で論議をされまして、そうしたことからいたしまして、共済年金と厚生年金との格差是正というようなことが取り上げられたところでございます。さらには、年金の一本化等を目指してのいろいろな改革を論議されてきたわけでありまして、そうしたことから共済年金の全面的な改正が行われて、改善につきましては物価スライド方式というものが導入をされてきたわけでございます。  そういう中におきまして、恩給と共済年金とはその性質を異にするとは申しておりますけれども、一方がそのような形になっており、しかも公務員の大多数がそういう形でいっておりますのに、恩給だけが全然かけ離れた形でやっていっていいのかどうかということがまた行革等で指摘をされまして、国家公務員給与、物価その他の諸事情を総合勘案してという第二条ノ二の規定を適用せざるを得ない、そういう情勢になったということでございます。私どもといたしましては、しかしながら、基本的に共済年金とは性格を異にするということを踏まえて、あくまでも公務員給与というものを基準にしながら、その他の事情も総合勘案をして決めるという形をとらざるを得なかったわけであります。  今非常に物価が安定した状況にございますから、したがって、まあ物価が上がる数字が低いのにどっちかといいますと足を引っ張られたというような形になっておりますが、非常に物価変動が激しい場合にはむしろそのことがアップ率を引き上げることにも逆に言えばつながる可能性も残しておるわけでありまして、その辺につきましては今後、まだ行いまして二年しかたっておりませんので、もう少し推移を見ながら取り組んでいきたい、このように考えているところでございます。
  91. 板垣正

    ○板垣正君 従来恩給改定につきましては、御承知のとおりに、現職公務員給与改定と何らかの関連の中で改善措置がとられてきたということは現実の歩みでございます。特に、四十八年度以降においては人事院勧告に基づく公務員給与の改定が行われる、それをもうそのままの指数として言うなればまさにそのままにスライドをして実施されてきた。あわせていわゆる上薄下厚の立場から、あわせてそれに最低保障額の引き上げ措置も行われるという姿がほぼ定着して行われてきた、そのことが多くの受給者の気持ちの上においても非常な安定感をもたらしてきたということは事実であったと思います。  その立場から考えますと、この総合勘案方式というものはある意味では受給者にとっては非常に厳しい。今おっしゃったように、他の公的年金とのバランスという問題ももちろんございます。同時に、冒頭おっしゃいました国家補償としての恩給のあり方、またそれを裏づけるところの公務員給与スライドという形で定着して行われてきたという、これはまあ当局のいろんな御苦労もあり、いろいろな形でそこまで築かれて歩んできた。そうした場合に、この総合勘案方式と言われるものがどうも受給者の立場から見た場合に、国家補償との関連の中においても一体どういう姿で今後行われるのかという不安定感をもたらしている、そういう点でより問題があるのではないか。きょう午前中野田委員が御発言ございました。私も野田委員の御意見に全く同感でございまして、やはり今まで積み重ねてきた公務員給与スライドというあり方を今後も続けるということが恩給制度の安定した営みの上でも最も望ましい姿ではないか。端的に要望したいわけでありますが、御見解を重ねて承りたいと思います。
  92. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 私も板垣委員がおっしゃるお気持ちは十分理解しておるつもりでありますし、総務庁の立場といたしましては板垣委員の御主張に沿うべく努力をしていきたい、このように考えて努力はしてきたところでありますが、反面、共済年金の受給者もかつてはベースアップに肩を並べて処遇の改善が行われてきた。それが、今度は物価スライドですというのでがたっと下がっておる。そこで、同じやはり国からの給付を受ける立場でそれを全く考慮しないというような形では、やはりちょっと何と申しましょうか制度として、いわゆる格差というものについて問題にされるのではないか。したがって、ぎりぎりのところとして総合勘案方式というものを採用せざるを得なかったというふうに私は理解しておるところであります。  本来ならば一定の方式が確立いたしまして、ベースアップが幾らあればそれに応じて幾らの率で恩給改定が行われるというルールが確立することができれば一番望ましいことでありますし、私どもも仕事が楽であります。しかしながら、当面、今この総合勘案方式というものがようやく発足いたしまして、実施いたしまして二回目ということになりますので、したがって、先ほど野田委員からも御指摘がありましたが、計算をして出てくる数字というものが必ずしもどうも一定の率になっていない。これは板垣委員などから大いにバックアップしていただきました結果がこういう数字になったということでありますけれども、しかしながら、まだそれをこの率でというふうに固定することは今の段階では若干早いのではないか。したがいまして、来年以降どうなるかということを私が申し上げるわけにはまいりませんが、当面この形が安定するように努力をしてみたいというふうに考えているところでございます。
  93. 板垣正

    ○板垣正君 この恩給法二条ノ二、これはさっき申し上げましたように四十一年に設けられたわけでありますが、確かにここには「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」、こううたわれているわけでありますが、私はこの二条ノ二というのは大きな改革であったが、さっき申し上げたように、長年の恩給法、これはもう本法も大正以来の法律でございますが、にもかかわらず、いかなる場合にこの改定を行うかについての法的な裏づけ、根拠というものは全くなかった。それが改定という形でこう取り入れられたというふうに理解をいたしております。したがいまして、これが取り入れられた後も、さっき申し上げましたように、公務員給与にスライドをして四十八年以後定着して行われてきている。それが我々から言わせるならば今度急にいわゆる総合勘案方式である、こう言われるわけであります。そして、この二条ノ二というのが非常に引用されるわけですね。この総合勘案方式というのは、この二条ノ二にまさに書いてありますよ。「総合勘案シ」というのが書いてある。これを根拠にしているわけでしょうか。恩給局長いかがですか。
  94. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 総合勘案方式と申しますのは、今板垣委員のお話のように、二条ノ二がそういった公務員給与でありますとかあるいは国民の生活水準でありますとか物価とか、そういういろんなものを総合勘案して決めるということをうたっているわけでございまして、今回改定においてとっております考え方も、公務員給与や消費者物価の変動等を見ながら決めていくということでございますので、この二条ノ二の「総合勘案」という言葉を借用して総合勘案方式、こういうふうに申しているというふうに理解しているわけでございます。
  95. 板垣正

    ○板垣正君 私は、二条ノ二というのはもう既に四十一年から設けられて、それ以後の改定のいろいろな経緯を経て公務員スライドで定着して行われてきている。そういう経緯がありますから、この場合、この二条ノ二の解釈というものをとってきて総合勘案方式、そしてこれを政府のお立場として主張されるわけですけれども、どうも理解ができないわけですね。  この一・二五%今回決定を見たわけでありますが、はっきり申し上げまして受給者の立場からは非常な不安感があります、この増額措置そのものが一体どうなるのか。そういうことから、最終的には大臣折衝の段階決着を見たわけでございますけれども、その前日は明け方までかかって我々も大蔵当局等々との折衝に当たりました。あるいは受給者の立場からも、まさに夜を徹して成り行きいかん、こういう形で非常な心配をする、そういう中でようやくこの一・二五%というものが決定を見たわけであります。同時に、この問題については自民党執行部も中に行って、党の立場からもいろいろな意見を述べ、それが最終的には恩給改定のあり方について改めて検討するということを党が申し合わせをしているわけであります。これは党三役並びに我が党の内閣部会長あるいは恩給制度調査会長の連名、連署でいたしております。これには、党としては恩給改定のあり方について国家補償の精神に基づき恩給法第二条ノ二の趣旨及び従来の経緯を体して今後検討すると。これは十二月二十七日でございまして、大臣折衝に党も間に入る形で二回目の折衝で決着をいただいたわけでありますから、これは党の申し合わせでありますけれども、この経緯については長官も御承知だと思いますが、いかがでございますか。
  96. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいま板垣委員がお述べになりました経緯につきましては、私自身も十分承知いたしております。したがいまして、総務庁といたしましては、党側のそのような御検討が行われることにつきましては私どもといたしまして最大限の御協力を申し上げてまいりたい、このように考えております。  ただ、今の総合勘案方式というものにつきましては、これは本来は物価の方がどんどん先行して上がった場合ということを想定して恐らくできたものだろうと思うんです。しかしながら、今このような方式をあえてこの条項を適用して政府としてやらざるを得なかった最大の理由は、累次の臨調、行革審あるいはまた社会保障制度審議会等々におきまして、いわゆる公的年金とのバランスの問題というのを常に取り上げて指摘をされておられるわけでありまして、それらの指摘を踏まえてやはり臨調、行革審の答申は尊重するということからしてこのような方策を、このような総合勘案方式というものを採用せざるを得なかったという事情については御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  97. 板垣正

    ○板垣正君 そこで、二条ノ二の引用をした総合勘案方式というものは、さっき申し上げましたように、私は今までの経緯等を踏まえますと非常に解釈が狭いのではないかと。むしろこの党の申し合わせでございますが、ここで明らかに三つの点を、要素といいますか、まず第一が恩給法の国家補償の精神ということをまず言っております。    〔委員長退席、理事岩本政光君着席〕 国家補償の精神、そして次に恩給法二条ノ二、そして従来の経緯、この三つをこれをまさに踏まえて検討するというのが、これが本当の意味の総合勘案と言えるんじゃないでしょうか。  やはり根底にありますのは国家補償の精神というもの、冒頭長官がおっしゃったとおりでございますけれども恩給法も午前中お話がありましたとおりにこれはやがて消えいく法律であります。まさに戦後処理の法律でございましょう。したがいまして、もう受給者も皆七十歳を超えておる。年間亡くなっていく方も非常に多い。しかも、これらの方々が言うなれば恩給なり遺族年金等を唯一の頼りにして生きておる。従来の御配慮というものもいろいろあることを私ども感謝しておりますし、今の政府のお立場も決してわからないことはありませんけれども、しかし恩給法の精神そしてここで言っている従来の経緯ですね、その中で安定感を得た。しかも、財源的には今回の増額措置をとられてもやはり何百億の減を見るというふうに、予算的にも一つの限界に来ていると。  しかも、遺族一人一人が受けている国家補償、トータルをいたしますと、昭和二十八年からようやく恩給が復活したわけですね、約千五百万でしょう。千五百万ちょっと超えた程度ですね、一人が受けているのが。これは今の時代から見ましても決して十分なものとは言えないと思うし、といってまた関係遺族なり受給者が飛び抜けてさらなる厚遇を求めようというのではなくして、せめて今まで安定して行われてきた措置をそのままぜひ続けてほしいと、言ってみれば極めてささやかな謙虚な願いであります。にもかかわらずその問題をめぐってなかなか安定できない。夜を徹して心配しなきゃならない。あるいは毎日毎日年末ぎりぎりまで国会議員やら政府要路に陳情して回らなければならない。こうした遺族の姿というものは、私どもは一日も早く改めなければならない。  そういう面からも重ねてお願いしたいことは、総合勘案というものをただ二条ノ二ということじゃなくて、根本にあるのが国家補償の精神、それから二条ノ二、そして従来の経緯、こうしたものを大事に考えていただきたいと思うわけであります。これ以前は総理府で恩給局は見ておられた時代、今度は総務庁、これも行革の一端でありますから今日の姿でございますが、総務庁長官は一面においてはこれ行革の推進役でございます。中心でございます。したがいまして、行革の方針という形に沿ってあらゆる問題を処理していかなきゃならない。同時に、今度は恩給局も長官のもとに置かれまして、この面においては、今申し上げましたように、やはり従来の経緯等も踏まえた扱いというものを従前以上に御配慮願いたい。重ねてお願いいたしたいと思いますが、いかがでございますか。
  98. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいま委員指摘の従来の経緯等につきましては、私も十分承知しておるつもりであります。ただ、先刻来何回も申しておりますように、国家公務員として多年お勤めになった方々がおやめになって共済年金を受給されるようになって、その共済年金が〇・幾らしか上がらないというような中で、国家のためにこれは命をささげられた御遺族の皆様方につきましては、私も本当にこれはお気の毒でありまして最大限努力をしなければならないと思いますが、同じく国家のために働かれて退職をされて恩給を受けておられるその方々は給与スライドそのままですよというのでは、やっぱり格差論があちこちから起こってくるのだろうと思うのであります。  そういうことを配慮しながらも、総務庁といたしましては最大限公務員給与改定を基準にするべく努力をしつつやっておるというのが現在の総合勘案方式であるというふうに御理解をいただきたいと思いますし、党の方で今後適当な計算方法について検討されるということでありますれば、先ほど申し上げましたように、総務庁といたしましても最大限御協力を申し上げながらまた財政当局とも折衝してまいりたい、このように考えております。
  99. 板垣正

    ○板垣正君 最後にもう一つですが、予算編成ですね、人事院勧告が出される、これも実施法案の問題というのがあるわけでございますが、いずれにいたしましてもこの年末の段階では公務員給与はほぼ確定する、人事院勧告扱いも決まるということであるならば、恩給というのはそうした段階で追加要求を出すということでございます。その点この手順で、長官今おっしゃったように、党の方でも一生懸命勉強していろいろ今後のあり方というものを求めていかなきゃならないと思いますけれども、もう大蔵原案を出す段階からやはりこの恩給受給者の来年度における増額措置についても当初予算大蔵原案に初めからのせると、そしてもう受給者もそれで公務員給与が上がり期待をしておったそれが大蔵原案できちっと出てくるというふうな姿をぜひ総務庁としても強くお進めを願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  100. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 予算編成の仕組み等につきましては、あるいは局長から答弁してもらうことにしたいと思いますが、事実関係の経緯だけを申し上げますと、実は私の方では何とかして今の状況からして一・二五以上は確保したいという気持ちで取り組んでまいっておったわけでありますが、大蔵当局の方は一以下と、〇・幾つというようなことを言っておりまして、その間に相当の開きがあったということであります。でありますから、仮に委員が言われるように大蔵原案内示の段階から数字を出してこい、こういうことになりますと、恐らく大蔵としては今の〇・八とか九とかと、それは実は初めの下話の段階ではそれよりまだ低いようなことも言っておった向きもあるわけでありまして、したがって今の内示方式でやりますと恐らく低い数字が出てきて、それをまた折衝して上げていくというようなことになって、結果的には同じことになってしまうんじゃないだろうか。  今回の場合には、そういうふうな事態を踏まえながら党側からも非常に強いバックアップをいただいて、最終的に一・二五という数字でともかく改善要求を出した、こういう形になっておさまったわけでございますので、板垣委員のおっしゃることは理解できますが、結果的にはどうも余り変わらないことになるんじゃないかという懸念をいたしております。それよりも、もうちょっとこう回を重ねることによって、おのずから定着してきた方式というものでやれれば一番かなというふうに考えておりますが、いずれにしても党側の御検討もまちながらやってまいりたいと思っております。
  101. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 今大臣からもお答えがございましたけれども、事務的に申し上げますと、概算要求の段階ではまだ私どもが要求する基礎になる数字、特に公務員給与取り扱いにいたしましてもそれから年間の消費者物価の変動がどうなるかというような数字も固まっておらないというような状況もございます。また、公的年金とのバランスというようなことも言われているわけでございますが、そちらの方の取り扱いがどうなるかというようなこともまだ全然方向が定まっておらない、こういうような状況でございまして、概算要求の段階では私ども恩給改善についての要求が出せない状況にあるわけでございます。いろんな四囲の状況からだんだんそういうものが固まってまいりますのは、やはり年末の予算折衝の時期にならないとなかなか固まってこない、こういうような事情もあるわけでございます。そこで私どもいろんなものを考えながら恩給改善の要求を出させていただく、こういうことにいたしているわけでございます。事務的にはそういう事情もあるということを御了承いただきたいと存じます。
  102. 板垣正

    ○板垣正君 ありがとうございました。終わります。
  103. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 本日の恩給法改正法案の第四条というのがございますが、これを見てみますと、結局これは昭和四十一年の法律第百二十一号の附則第八条の表の中の金額の改定であるというふうに読み取れます。そこで、先ほど申しました附則の第八条を見てみますと、大変この規定はわかりにくい規定でございまして、何が書いてあるのか普通の常識を持った人では判断しがたいような条文であります。    〔理事岩本政光君退席、委員長着席〕  読んでみますと、   普通恩給又は扶助料で、次の表の上欄の区分に対応する同表の中欄に掲げる区分のいずれかに該当するものの昭和六十二年四月分以降の年額がそれぞれ同表の上欄及び中欄に掲げる区分に対応する同表の下欄に掲げる額に満たないときは、当該下欄に掲げる額をもつてその年額とする。 こうあります。そのことはそれでいいんですが、ここに「普通恩給」という言葉がございますが、この普通恩給なるものは一体いかなるものかという定義がどこにも見当たらないわけであります。そこで、まずこの普通恩給というものは何物であるかということをお尋ねいたし、それから次の問題に入りますが、いかがでしょうか。
  104. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 普通恩給と申しますのは、公務員恩給を受ける最低の年限を勤務いたしましてその結果退職後受ける恩給、いわば私ども一般的に年功恩給と申しておりますけれども、それを普通恩給というふうに言っているわけでございます。
  105. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 といいますと、一般公務員がということになりますと、公務員の中にはいろいろなものがございますが、恩給法の第二十条に文官の定義が書いてあります。この定義に書いてあるものはまことに雑多なものが書いてありますが、こういう人たちが受けるのが普通恩給と、こういうことでございましょうか。
  106. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) この方々が恩給受給年限に到達いたしました後退職して受ける恩給が普通恩給、こういうことでございます。
  107. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ここに書いてある人たちは同じ在職年を在職すれば恩給がつくんでしょうか。
  108. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給の最短受給年限と申しますのは、その公務員の種類によって若干異なっているわけでございます。一般的には、文官につきましては十七年、それから警察等の職員につきましては十二年、それから軍人につきましては兵、下士官が十二年、准士官以上が十三年、こういうような区分けになっております。
  109. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 同じ国家公務員でそのように年限が違うということは、根拠はどこにございますか。
  110. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給法の中で規定してございます。
  111. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 恩給法の中にありますけれども、なぜ警察官と普通の公務員は年限が違うのか、なぜ自衛官と普通の公務員は年限が違うのかという問題がございますね。これは普通恩給という言葉で一つにくくった場合に、内容は同じもののような感じを受けるわけです。普通恩給というものは同じ内容だ、こう受け取れますね。それが実は詳しく見てみましたら同じではなくて個々ばらばらだということになりますと、このばらばらになった原因は一体何かということがやはり問題になると思います。時間がございませんので、私の方から少し述べてお答えを聞こうと思いますが、結局これは危険度が問題だったのではないか。自衛官というものは普通のものよりも危険であるとかあるいは作業が厳しいとかという問題、警察官にも同じような問題があるということで差をつけられたのではないかと推測をいたしますが、そのように理解をしてよろしいかどうかお尋ねします。
  112. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給の所要最短年限につきましては、恩給制度が発足いたしまして以来若干の消長があるわけでございますけれども、最終的には、先ほど申し上げましたような文官、教育職員等が十七年、警察、監獄職員が十二年、旧軍人につきましては兵、下士官が十二年、准士官以上が十三年、こういうようなことになっているわけでございます。これらの最短年限につきましては、その年限自体に絶対的な意味があるというわけではございませんけれども、国が使用者としての責任と権限において公務員との関係あるいは経済上の取得能力の減耗の度合い、そういったことを考慮いたしまして、人事政策上の配慮も加えながら雇用条件の一つとして決められたものであるというふうに理解いたしております。
  113. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 憲法の十四条を見ますと、こういう言葉が書いております。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」、こうありますね。ですから、例えば自衛官と一般公務員、警察官と一般公務員という、これは身分でしょう。身分によって政府恩給の最短年限に差別を加えておるということは憲法十四条に反するではありませんか。
  114. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 自衛官と一般の公務員、これは公務員という範疇におきましては同じ身分を持っている、こういうことであろうかと思います。ただ、仕事の内容といったようなものがそれぞれ異なっておりますので、それぞれのグループに応じて自衛官あるいは一般の公務員というようなことで分けられるというふうに考えております。
  115. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいまのような憲法解釈は、これは大変重大な問題を含みますよ。私はそういう解釈は誤りだと思う。結局、自衛官だから差別がないんだといったようなとらえ方、そういうとらえ方は従来から政府ではよくおやりになるが、こういう考え方は間違いです。今差別問題で起こるのは、同じ人間でありながら差別されるということでしょう。これはある一つの特定の身分によって差別されるから問題になる。それは身分というのは違いがあるんですよ。この身分とこの身分で差別するということは許さないということでしょう。同じ自衛官の中での差別の問題じゃないんです。自衛官と一般公務員の間でその地位によって、一つの職種というものによって差別をするのは、その仕事の難易とかあるいは危険度とかいうことで差別をするのならこれはいいです。そういう差別は認められますが、そうじゃなしにそういうことは一切ない、ただある地位についておるからということだけで差別するのは、これは許されない。憲法の十四条に反する問題です。  こういう問題につきまして、私はかねてから大変遺憾に思っておりますが、政府は常にこの点でごまかしをやられる。憲法違反を、憲法を空洞化した解釈を平気でおやりになる。そういう慣習が昔からありますが、これはちょっと困りますよ。ですから、この点はそういうあいまいな解釈では困るので、自衛官というのは危険な場所へ行くでしょう。一般の公務員は机の上で働いているんだからその仕事の差があるではないか、大変な仕事に差がある、危険度においても差がある、だから危険なものには早く恩給を支給する、これは当然のことなんです。そういうことから差別するのならそれは立派な行政であって、私はその差別を憲法違反とは申しません。これは憲法に違反していないわけです。ところが、一般職と特別職ということで、そういう身分によって差別なさるということになるとそれは許されない。
  116. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 私が申し上げましたのは、一般職、特別職というようなことを申し上げたわけではございませんで、公務員という点では同じ身分を有している、こういうことでございまして、それぞれの公務員の中のグループ分けにつきましては、職務の内容とかあるいは責任の度合いとか、そういうものによってさらに細かい分けられ方がある、こういうことを申したわけでございます。したがいまして、恩給公務員の中でも、先ほどの一般の文官それから教育職あるいは警察職員、こういうようなグループを指してそういう名称を使っているわけでございますけれども、これもやはりそれぞれの職務の内容に着目したグループ分けである、このように理解しているところでございます。
  117. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは別の観点から質問をいたしますが、普通恩給という言葉が使ってありますと、この普通に対応するものはやっぱり特別でしょうね。特別恩給というものはいかなるものを指すんでしょうか。
  118. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 言葉の問題でございますけれども、普通恩給以外の恩給といたしましては、扶助料というのが一つございます。これは公務によって亡くなった方の遺族に対して支給される公務扶助料でありますとか、あるいは公務員が通常に退職いたしまして恩給を受けている方が亡くなりましてその遺族の方に支給されるようになる普通扶助料というようなものもございます。それからまた傷病者、公務によりましてけがをされたあるいは病気になったというような方で、経済的な稼得能力をそれによって損なわれたというような方に対して傷病恩給というのが支給されるわけでございます。例を挙げますとそういうようなことでございまして、普通恩給以外には今申しました扶助料や傷病恩給等があるということでございます。
  119. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 傷病恩給といいますのは、一般の公務員でもいただけますか。
  120. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 傷病恩給につきましては、公務員がその公務に起因してけがをした、あるいは病気になったというようなことで退職せざるを得ない、その傷病の程度によりまして受けることが可能でございます。
  121. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それじゃ、戦争に行ってけがをしたとか軍人恩給というのはこの普通恩給に含まれるんでしょうか。それとも何か別のものでしょうか。
  122. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 特に他の傷病恩給等の対象にならないで受ける恩給はすべて普通恩給でございますので、文官でありましても軍人でありましても、御本人が退職後普通恩給を受けるということに一般的にはなるわけでございます。
  123. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そこで、この表を見ますと、「普通恩給又は扶助料の基礎在職年数に算入されている実在職年の年数」、こうありまして、この年数につきましては四段階に分けております。そして、一番少ないのは六年未満というのがございます。六年未満でも普通恩給または扶助料の基礎在職年数の中に算入されておる在職年数であり得るわけですね。そこで、私はこの規定の仕方が非常に不親切だと申し上げたいために今まで言ってきたんですよ。この条文をまともに読んだ場合どういうふうにとれますかというと、例えば六年未満役人であったあるいは兵隊に行っていたという人は、この条文を見まして、ああ自分も普通恩給をもらえるんだな、こう思います。もらえるのにもかかわらず、県庁に行ってそのことを言うたところが県庁からけんもほろろに追い払われた、まことにけしからぬ、こう言うて私のところへ泣き込んでおいでになる方が多いんです。そのもとはこの法律なんです。  それで、私はこれは幾つかの意味に実は理解をしてきたんですが、一つは無理やりに解釈すれば戦地加算などを考えた場合のものでなかろうかという考え方、これも私の推測なんですね。もう一つは、恩給から年金に通算される人の問題ではなかろうか、こういう解釈。そう二つの意味にとれるんです、この問題は。ところが、これにつきまして政府の方の御意見を聞きますと、大分違うようです。私は法律学は五十年もやっているんだね。その専門家でありながら、この法文を見てもうあらゆる想像をたくましゅうしてもそういうことしか読めない条文なんです。まして一般の法律なんか勉強してない人がこれを読んだ場合にどういうことになるかといいますと、自分は一年兵隊に行ったんだが、ああもらえるようになったか、これはありがたいということになるでしょう。そういう点につきましてどのようにお考えになりますか、お尋ねいたします。
  124. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 今先生御指摘の点は、恩給法が非常に読みにくい、わかりにくい、こういう御指摘かと思います。恩給法が難しいということは今先生の御指摘のとおりしばしば言われているところでございますけれども、これは一面、年金制度に関する法令一般にも通ずるところでございまして、法令の性格からある程度はやむを得ない点もある、こういうふうに考えているところでございます。  すなわち、恩給法は大正十二年に制定されましてその後いろいろな変遷をたどってきているわけでございますが、特に戦後は毎年のように改正が行われて今日に至っているわけでございます。そういうふうに、恩給法恩給受給権という退職公務員の権利を規定したものであると同時に、内容が極めて技術的なものであるというような二つの面を持っておりますために、厳密かつ複雑な規定がどうしても必要となってまいります。こうしたことから、幾つかの改正が積み重ねられまして今日では非常に複雑膨大な法体系になっている、こういうことでございます。しかしながら、法令の内容は先生御指摘のとおりわかりやすいことが理想でございまして、技術的な制約はあるにいたしましてもできるだけの努力はしてまいりたいというふうに考えております。  なお、恩給局におきましては、恩給法令のわかりにくさを少しでも緩和するという趣旨から、毎年都道府県の職員に対します研修を行いましたり、あるいは私どもの機関誌の「恩給」というのを発行し、あるいは「わかりやすい恩給のしくみ」というパンフレットもつくりまして、これらを関係方面に配付いたしましてその周知徹底を図っているというところでございます。
  125. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、私は難しい難しくないということは抜きにしまして、ここに現在書いてある言葉をどう理解したらいいかということについてお尋ねいたしますが、私はこの第八条を読みまして、最初一体これはどういうことが書いてあるかわからなかったんです。いろいろ推測をたくましゅうした結果発見したのは、先ほど申しましたように、これは恩給と年金とこの二つが通算される人の問題で、その人の恩給に関する部分についての在職年数のことであろう、こう理解をしたんです。そう読めるんです、これはね。これは専門家が読むとそう読めるんですよ、法律の専門家が読んだ場合はね。それで、それにつきましてそういう理解でいいのか悪いのか、お尋ねします。
  126. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 先生ただいま御指摘の点は、今回の改正法のあれでいきますと、普通恩給及び普通扶助料の最低保障額に関します表を例にとられておっしゃっておられるというふうに思うわけでございますけれども、この表の表側と申しますか、表の横に書いてあるまず一番上の段に「普通恩給又は普通扶助料」、その次の段に「普通恩給又は普通扶助料の基礎在職年に算入されている実在職年の年数」、それから一番下に「金額」、こういうふうに欄があるわけでございます。今お話しのことはこの真ん中の段の「普通恩給又は普通扶助料の基礎在職年に算入されている実在職年の年数」、この欄についてのお話だというふうに今先生のお話を伺いながら私理解させていただいたわけでございますが、この欄を見ましたときに、「普通恩給についての最短恩給年限以上」でありますとか、あるいは「九年以上普通恩給についての最短恩給年限未満」でありますとか、こういったようなことがいろいろ区分けして書かれているわけでございます。  まず、この表側の「普通恩給又は普通扶助料の基礎在職年に算入されている実在職年の年数」、これを読む場合に、全体として普通恩給または普通扶助料の受給資格を有するということがまず前提になっているということが一つあるわけでございます。その次に、「基礎在職年」と申しますのは、最短恩給年限以上になっているその在職年でございまして、これは実際に勤務した年数と、それから軍人の場合には加算年等がございますから、そういうものを加えた在職年、これが「基礎在職年」ということになるわけでございまして、この加算年を加えました基礎在職年に算入されておりますところの実際に勤務した在職年数、これがこの表側の意味でございます。
  127. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その御説明はそのとおりだと思いますがね。この規定の仕方が非常にわからぬと思いますのは、真ん中の欄ですよ、普通恩給の基礎在職年に算入されている実在職年の年数としまして、「六年未満」とか、「六年以上九年未満」とか、「九年以上」云々、こうございますね。こういう数字を見たときに、こういう年数で恩給がもらえるとはだれも考えない。そうなると、ここに書いてある年数というのは普通恩給のもらえる年数であるけれども、それは通算して十七年とかいう、つまり後の制度と合わせて十七年という場合の年数のことではないかというふうに常識的には読めるんです。常識からいいますとね。特別に例えばこれは戦地加算の問題だというふうに限定して読むということになりますと、それは特別の配慮が要るんです。この規定これだけを読んだ場合にはとても戦地加算の問題だとは読めない。だから推測すれば、結局先ほど言いましたように、通算の場合かというふうに誤解を受けるものでありますね。私は現に誤解したんです、これ。法律ばかりやってきた者はそういうふうに誤解するんです。  それで、政府の方では誤解なさらないで説明なさるが、説明を聞かなければわからぬような規定の仕方では困りますよということなんだね。国民法律の専門家でもないし、政府の考えはわからないんです。ですから、この改正案を見て小躍りりして喜んだ、自分は六年未満だけれどももらえるのかいなと。ここに書いてあるのは基礎在職年に算入されている実在職年でありましょう。これは、逆に言えば算入してもらえる実在職年というふうに読めるんです、国民の側から見れば。上からの問題じゃなしに国民がこれを見ておった場合には、ああ自分は六年いるんだからこれは算入してもらえるのかなと思う書き方です、この日本語を読んだ場合には。それで、多くの人がこれを読んでぬか喜びをしておるわけですね。  それがもとになって、この昭和四十一年の以後の問題ですよ、恩欠問題が起きてきた。恩給欠格者問題というものがやかましく運動として発生したのはそれ以後の問題でしょう。今日非常にますます盛んになってきておる。その盛んになってきた根拠はこの改正案のわかりにくさにあるわけです。それで、これは幾ら政府でこういう意味ですこういう意味ですと言って御説明になっても、法律としてはっきり文字として出た以上はこれがひとり歩きするものでございますね。ひとり歩きしますというと、もう政府の方の御弁解は大変苦しい御弁解になると思いますよ。で、どんなにこの恩給法の解説を出してみても、それは政府の方の解釈であって実際の法律はそうではないんじゃないか、こういうことになりかねない。  そこで私は、この問題を実は私の支持者から毎年毎回責められ責められてきていますから、御質問するんです。それで、私の立場からあなた方はないですよと言うんだけれども、ないはずはない、法律にあると書いてあるじゃないか、それはお役所の方で自分を入れてくれない、差別をしておるからの問題であって、差別を抜けば入るはずだ、こういう御見解国民の多くの人のこの法律から受ける見解であるわけです。こういう点についてどのように対応なさるのか、御質問申し上げます。
  128. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) ただいま申し上げましたように、この普通恩給または普通扶助料の基礎在職年に算入されている実在職年の年数と申しますのは先ほどお答え申し上げましたようなことで、いずれも恩給法の中の言葉を丹念に理解していただければ私が先ほど申し上げたような結果になるというふうに私どもは考えているわけでございます。  ただ、委員指摘のとおり、全く法律の予備知識がないあるいはこうした難解な法律を初めてごらんになるというような方にとりましては、大変理解しにくい面があるということは私どももわからないわけではございません。そのために、恩給の受給資格につきまして、最低の資格はこういうものですということをわかりやすくいろんな機会に御説明するということにしているわけでございます。そういうことで、先生のお話のように、こうした改正の話を聞いてあるいはもらえるんじゃないかということで相談に来たけれども、あなたの場合には最低年限に達しておらないというようなことで断わられたというお話があるということは、私どもも決してそれを否定するものではございませんけれども、しかし制度制度としてそういう形になっているということを私どももできるだけ窓口で丁寧に御説明申し上げて、御理解をいただくようなことをいたしているつもりでございます。今後ともできるだけそういうことで対応させていただきたい、このように考えております。
  129. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、これは今後こういう問題についてはわかりやすい法律にまとめていただきたいという希望を述べまして次に移りますが、恩給法がいかにずさんな法律であるかという一つの例として、もう一つ先ほどの二十条の規定から申しますと、この二十条に掲げてあるものの中には海上保安庁長官、海上保安庁次長、警備救難監というのが書いてありません。この海上保安庁長官、海上保安庁次長、警備救難監というのは海上保安官ではないということが海上保安庁法に書いてあるわけです。それで、そういう海上保安庁法ができたからこの六号に「海上保安官」という職名が書いてあるんですが、当然この海上保安官という職名を書くならば同時に海上保安庁長官、次長、警備救難監というのが二号か三号かどこかに載らねばならぬ問題でありますが、それが書いてないのです。  そうしますと、一体なぜ書かないかということがまず疑問が生じますのと、これは一体十号で含めるつもりなのかという疑問も生じますね。内閣でこれ立案された改正法ですが、その内閣の中の職務さえも理解されていないということになると、これは一体法制局は何しているということにならざるを得ないじゃありませんか。とにかく原局ももう少ししっかり調査してつくるべきである。これは一つの例ですが、こういう例は至るところに出てきておるのではないかと思われる。それで、今の問題についてどうですか。
  130. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) ただいまの海上保安庁長官あるいは海上保安庁次長という職は、御指摘のとおり、二十条の第二項第十号で読んでいるわけでございます。その根拠は昭和二十七年十二月二十九日の総理府告示第二百九十九号というので、「恩給法第二十条第二項に規定する官職に関する件」という告示が定められておりますが、その中の運輸省の項の中に「海上保安庁長官、海上保安庁次長、警備救難監、海上保安官(一等海上保安士の階級以下の階級を有する海上保安官を除く。)」と、それから「高等海難審判庁長官、海難審判庁審判官」というようなことが規定されているわけでございます。
  131. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは特にそういうふうに差別されたのは該当者が一人であるからという意味でしょうか。例えば第三号では「法制局参事官」というのがございます。「若ハ法制局事務官」というのもございますね。こういうように官名が挙がっているわけですが、ところが海上保安庁長官というのは一人しかいないから、もう面倒くさいから除けと、こういう考えでしょうか。
  132. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) これは、官職と申しますのはいろいろ数多くあるわけでございます。そこでそれらを法律にすべて列挙しておけば非常に見やすい、わかりやすいということは確かにあろうかと思いますけれども、これを列挙するかわりに先ほどの二十条の第三項に規定を設けまして、これを読んでみますと、「前項第十号ニ規定スル官職ニ該当スルヤ否ヤ疑ハシキモノニ付テハ内閣総理大臣之ヲ定ム」と、こういう規定でございますが、これによりまして今申し上げましたような職を含みます各省の関係の多くの職をこの総理府告示で指定させていただいている、こういうことでございます。
  133. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次の問題に入りますが、軍人恩給をお決めになった根拠は前の戦争に敗戦になる以前に国に大変功績のあった人だから恩給を支給するという、こういう意味であるかどうかお伺いするわけです。このことをお伺いする前に一つもう少し基礎的な問題を尋ねておかなければいけないんですが、結局恩給法なるものが今日もなお有効であるというためには、国家の同一性が認められなきゃならぬですね。大日本帝国も日本国も同じ国家だと、同一の国家だと。継承じゃないですよ。革命が起こって革命国家が継承するというそういう継承じゃなくて、同じ国家なんだと、名前が違っただけだと、こういう理解をしない限りできないことであるし、また憲法の継続性がなければならぬ。大日本帝国憲法と日本国憲法は継続している、全面改正で内容はすっかり変わったけれども継続しているんだと、消えていないという思想が根本になければこの恩給法は死んでしまう。  そこで、なぜ私がこんなことをお尋ねするかといいますと、我が国の最高学府と言われておる東京大学の憲法の一番権威のある先生が八月十五日革命説をはっきりと著書に書いておられるからです。八月十五日に革命が起こったということであるならば、大日本帝国憲法はその段階で消滅しておるはずです。そして日本国憲法は発布されたときに新しくできたということになるんです。私自身は、そういう革命説は実体にそぐわないと思いますから、誤りだと思っていますよ。革命説は誤りだと思っていますが、しかし少なくとも学説としては有力であるということになると、国家公務員の上級職を受けた人の大部分はその先生の憲法の教えを受けてきておる人ですから、そういう人たちが一体どういう認識を持っておられるかをお尋ねしたい。
  134. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 飯田先生は法律の専門家でいらっしゃいまして、専門家に素人がお答えをするというのはどうもいかがなものかと思いますが、最近の東大の憲法の先生はどういう講義をしておられるかわかりませんが、私は実は宮沢俊義先生から憲法の講義を受けました。そのときには、確かに先生がおっしゃるように、新憲法と旧帝国憲法との間の継続性の問題につきまして、いわゆる天皇主権から国民主権に変わった、そういう意味合いにおいてまさに革命的な意味を持つ、手続的には継続はしておるけれども、いわばそこにおいて一つの革命が行われたというふうに見ることができるという趣旨の講義をされたというふうに記憶をしております。しかしながら、宮沢先生もおっしゃっておられますように、帝国憲法から新憲法には全く帝国憲法の手続に従って憲法改正が行われたわけでございますので、したがってその間に国家としての継続性はあるというふうに私ども理解しております。
  135. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それで安心しまして次の質問に入りますがね、もし革命だと言われると次の質問ができなかった。  戦前の政府のもとで満州国というものがつくられました。これは戦前の政府がつくったことは間違いないんです。そして私どもが満州国の官吏で行きます場合には、純粋に民族協和の理想国家をつくるんだ、自分はその使命を持って行くんだということで行きました。そして、そのとおり働いたんです。ところが、最近いろいろ当時の満州国に関する秘密書類が公刊されました。それを見ますと、これは明らかに外国が申しますようにかいらい政権だということになりますが、私はかいらい政権と言うのも間違いだと思う。かいらいであったのは皇帝と皇帝の配下にあった中国人の職員だけです。それがかいらいであった。日本人はかいらいでなくて、日本そのものであったと、最近出てきた秘密文書でそう判断せざるを得ないと思いますね。  行った役人自身は純粋に理想国家をつくるということで、それは主観的にはそうであったんだが、客観的につくられたものはそうでなしに日本そのものだった。関東軍司令官が頂上におってそのもとに満州国政府をつくると、内面指導をするとはっきり書いてある。内面指導ということはどういうことかというと、満州国政府の中に入って自分の思うとおりに操るということですよ。操られるのは皇帝とか満州の人たちです。操る仕事をやったのは次長以下日本人です。お亡くなりにました岸先生もその一人であったんですね。これはもう間違いない事実です。そうなりますと、あの満州国というものが実は日本そのものであった。そうであるなら、満州国の日系公務員日本公務員そのものではないかという疑念が私にはわいてきました。最近たくさんの文献が出されました。これをぜひ読んで研究してくださいよ。それを研究しなければ恩給法の正しい運用、正しい改正は難しいと私は思います。  当時私どもが非常に疑問に思ってましたのは、満州国の紙幣が全部日本の紙幣と等価交換ができる、物価がどんなに違っても等価交換ができる、それを不思議に思っておりました。それから、日本で貯金しておった貯金は全部おろして満州国の貯金に入れろと、こういう命令があったんですね。というのは、満州国の貯金も日本の貯金も郵便貯金は同じだ、通帳は満州のどこでも即相互に通用する、それは事実であったし、そのために私どもは財産を満州へ全部移した。ということは、今から考えてみますと、日本であったからだ、つまり少なくとも日系官吏は日本の官吏として考えられておったと、上の方では、ということを認めざるを得ないわけです。こういう点につきまして、主観的な問題を取り上げて今までは否定されておりましたね。しかし、客観的な事態をとらえるならば、はっきり日系官吏は日本政府職員である、少なくとも準政府職員である、例えば軍人に対する軍属のようなものであるということを私は認めるべきものだと思います。その点についてのまあ御研究が足らなければしようがないが、研究をしてもらってからでもいいですがね、私の話を大体信用していただいて、どういうふうにお考えになるのか。これは長官の御意見どうですかね。
  136. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 今先生から大変難しいお話を承ったわけでございますが、その先生のお話に関しまして私ども十分責任を持ってお答えする立場にはないわけでございますけれども、ただ、私どもがこれまで理解しております考え方を申し上げますと、満州国政府に勤務する日系官吏といいますものは、満州国における法令の規定によりまして任命され、あるいは満州国の官吏としての身分を有し、満州国の公務に勤務していたという方々であるというふうに理解しているわけでございまして、そうした点からも我が国の官吏と同じというふうには考えられない、やはり我が国の官吏ではないということでもって従来考えてきているところでございます。
  137. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今の御見解は表面のごまかしのところだけを見られての御見解なんでね。最近たくさん出ております満州国建国当時から終戦までに至る関東軍司令官から出された命令をぜひごらんになっていただきたい。そして、満州国というものが日本をおいてはないという問題ですね。しかもあの文章の中ではっきりしておりますことは、満州国皇帝は日本国天皇の大御心を大御心とすることによってのみ存在し得るものであるとはっきり書いてある。つまり、天皇の心を心として初めて満州国皇帝であり得るということなんです。それを関東軍の指令で書いていますよ。そして、もし天皇の心に反するような皇帝はいつでも首にする、その権限を持っておったのが関東軍司令官です。その関東軍司令官のもとに日系官吏というものが構成されておったということを最近発見しました。当時行った我々の主観ではそういう考えはなかったですね。あくまでも理想国家で民族協和を築き上げるんだということでみんな死んでいったんです。それは主観的な考え方。ところが、日本政府の客観的な構築状況はどうであったかということを私は今問題にしているんです。本人が満足して死んだからどうでもいいという問題ではない。客観的にどういうものであったかということからとらえるべきではないかとこう思いますが、いかがでしょうか。
  138. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) どうも旧満州国がどんな形のものであったかということにつきましては、残念ながらお答えをする知識も何もございません。ただ、先生が客観的と言われることが果たして客観的であったのかどうか、それは軍の主観でそのようなことを考えておられたのではないかというような感じもしないではないところでございます。いずれにいたしましても、今の恩給法は旧満州国の官吏ないしは軍人の問題については対象とすることは考えておりませんし、私どもといたしましては、ただいまのところそれを対象にすることを検討する考えも残念ながらございません。
  139. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 長官、そんなに簡単に考えないと言ってしまわれたんじゃ困りますよ。先ほど長官は旧大日本帝国と現在の国家との間には継続性があるとおっしゃったでしょう。継続性がある、同一性があるとおっしゃった。私も同一性があると思うんです。はっきり同じ国なんです。日本国民でだれ一人別の国とは思っておりません。あるいはあるかもしれませんが、それはほんのわずかの人が別の国だと思っております。大部分の人は別の国とは思ってないんです。  その証拠に、今日大日本帝国時代につくられた刑法、民法、今なお生きております。それによって裁判が行われておる。昭和という年号は戦前から今なお一貫して続いておる。今の天皇は、職務こそ象徴という職務に変わられたけれども同じお方が続いております、天皇として。天皇の地位におられるのは一貫して今の天皇です。どこに一体革命というものがあったということを認め得るか。全然事実として革命などはないんですよ。ないものをあったと理論的にこじつけるだけの話でございましょう。現実は革命はない。  そうであるなら、私は申し上げたいのは、扇動されてそれに乗ったのは悪いかもしれませんが、満州へ行ってそのとき国のために殉じようということで一生懸命やった、そういう人たちは軍人も文官も同じではないかと申し上げたい。召集されれば恩給対象になるけれども、召集ということがなかっただけで一生懸命に働いても恩給も何もないということでは、余りにも客観的に材料が同じものに対する差別だと私は思います。材料は同じなんです。そういうものを身分によっての差別をする。満州国官吏という身分、日本国官吏という身分による日本人の日本国民に対する差別ではありませんか。そうであるなら、明らかに憲法の十四条違反です。この点についてどうか御答弁願います。
  140. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 先生と私と世代がちょっと違うせいか、満州国が日本国と同一だというような考えはどうも持ち得ないところでございまして、あるいは岸信介元総理にでもよみがえっていただいて答弁していただけばもっと先生のお気に召したような答弁ができるのかもしれないのでございますが、いずれにいたしましても、ただいまのところ先生がおっしゃるようなことを私どもとしてはちょっと考え得ないところでございます。
  141. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは長官、関東軍司令官は日本の軍人であった、そして関東軍というものが満州に現実に存在して満州国政府を内面指導したという、その事実はお認めになりませんか。
  142. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) それはあの当時関東軍の影響というものは非常に大きかったでありましょうけれども、満州国というのはあくまでも満州国でございまして、日本国ではないという認識をいたしております。
  143. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは、それでは後ほどまたこの次の機会に文献を持ってきて答弁を求めますが、もう明確に日本と同じなんですよ。皇帝自身が天皇の心を心としなければいつでも首になるというふうに言われているんです。文章に書いてあるんです。文献があるんです。そういう文献をやはり私は日本政府でもよく勉強されて、そして客観的に存在したものに対してはそれに対応するということをやっていただきたい。そうでなければ、同じ日本人に対して身分による差別をすることです。満州国官吏という身分、日本国官吏という身分によって同じ日本人を差別する、それは許されないでしょう。日本国憲法の十四条違反です。このことは何も私だけがここで言っておることじゃありませんよ。文献に書いてある。  それから問題は、大日本帝国時代につくった満州国であるけれども、その大日本帝国の延長が今日の日本国なんです。その責任はやはり現在の政府にある。大日本帝国時代の政府のやったことは、当然国が延長であるならば責任は今の政府にもあると言わざるを得ないのです。そういう点で差別をしてもらっては困りますよ。旧満州国官吏、旧日本国官吏、その間で差別するというのは困るわけですね。この問題は憲法問題としてぜひとらえていただきたいということを私は要望します。それで、勉強してくださいよ、これね。そうでないと、国のために働いて純真な気持ちで死んでいった人たちに顔向けができない。ぜひこれは勉強をしていただきたい、こう思います。  それでは、次の問題に入ります。これは一般論に入りますが、総務庁長官恩給を取り扱う官庁の長としておいでになるわけですから、長官として恩給というものはどういうものとして考えていこうとなさっておるのか、基本的な考え方ですね、それを御所見を承りたいと思います。
  144. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 恩給につきましては学説はいろいろあるようでございますが、私どもといたしましては、相当年限忠実に勤務して退職した場合、または公務による傷病のために退職した場合、または公務のために死亡した場合において、国がその者との特殊な関係に基づき使用者としてその公務員またはその遺族に給付するものであり、その意味において国家補償的性格を有する年金制度である、このように考えております。
  145. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この恩給というものは恩恵的なものなんでしょうかね。それとも生活補給的な意味を持つんでしょうか。その点はどうですか。頭からおまえ働いたから褒美にやるよと言ってくれるものなのか、それとも公務員が年をとって生活するのに困るから生活補給の意味でもって与えるということの意味があるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  146. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 今大臣からお答えいたしましたように、恩給は国とその公務員との特殊な関係に基づきまして国が使用者として公務員またはその遺族に給付するというものでございまして、その意味において国家補償的性格を有する年金制度である、こういうふうに理解しているところでございます。
  147. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 生活補給金であったかどうかという点をもう少しはっきりおっしゃってください。
  148. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給の性格につきまして、確かに学者の中には恩恵であるとかあるいは保険料であるとかいろんな説をお述べになる方がおられることも確かであろうと思いますけれども恩給局といたしましては恩給の基本的な性格、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように考えております。
  149. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 というのは、生活補給金として考えていいということでしょうか。
  150. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 公務に長年尽くされて退職した方々の生活のある面では大事な糧になる、そういうところをとらえればおっしゃるような考え方もできるということであるかもしれません。しかし、基本的な性格としては先ほど申し述べましたようなことで私ども理解いたしております。
  151. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 恩給につきまして支給年限という、つまり年ですね、支給されるときの年、こういうものはどのように考えられておられますか。
  152. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 現在の恩給法の規定では、新規に公務員を退職して恩給の受給者になるというような方はおらないわけでございまして、昭和三十四年の十月に現職の国家公務員はすべて共済組合組合員に切りかえられている、こういう点から申し上げますと、現在の恩給法では支給年齢は共済組合等と比べまして法に規定されている年齢は低うございますけれども、実際に受給する方はそれよりも年をとっておられる方になっている、こういう実態でございます。
  153. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 結局、年をとってしまったからどう見てもいいじゃないかと、こういうことだと思いますが、年をとったからこそ生活ということが大変な問題だと思いますよ。殊に経済価値の変革というものが恩給受給者には大きな問題となっておるわけですね。  そこで、恩給というものとその後の年金というものが続いた場合に、恩給の部分については年金の部分の上がり方と同一の上がり方をするというふうになってしまいましたね。以前は恩給の部分は恩給の部分、年金の部分は年金の部分で別々に計算して足したんですね。最近はそうじゃないでしょう。一本でしょう。ということは、生活補給金であるにもかかわらずそれをなるだけ値下げしようという試みがなされておるように思われるんですが、いかがですか。
  154. 山口公生

    説明員(山口公生君) お答え申し上げます。  恩給から共済というふうに歴史的に制度が変わって今日に至っておるわけでございますが、実は先生の御指摘のように、六十一年の改正までは二つの方式いずれかを選択というふうな形になっておりました。それを端的に申しますと、先生の御指摘のように、恩給と共済を一緒に足すというような考え方、それからもう一つは、これはむしろ所得の低い方の方に有利なんですが、厚生年金などと同じように定額部分というのがありまして、その上に報酬比例が乗るという形、いずれかその人の選択という形で来たわけでございます。  ところが、六十一年の四月の大改正によりまして原則的には非常に俸給の高い人に有利であった前者の方式は廃止になりました。それで、後者の厚生年金と同じ仕組みが原則になったわけでございます。別に意図的に切り下げというわけではございませんが、恩給制度から引き継いだ共済年金制度も三十年近くたちまして、公的年金としての位置づけから見まして厚生年金等と同じ仕組みに変えたという歴史的な経緯でございます。
  155. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、恩給年限とそれから現在の共済年金とが続く、この続いた年金をもらっておる人は相当年配だと思いますが、こういう人たちで大体どのぐらいの支給になっておるとお考えでしょうか。年額、大体の平均した年額でいいですがね。
  156. 山口公生

    説明員(山口公生君) 国家公務員の場合は三十四年の十月で制度が変わりました。したがって、例えば三十四年の四月に入った方はその四月から十月分までは恩給相当期間、こうなるわけでございますね。三十四年十月以降もし去年までということでありますと六十二年までは共済期間、こういうふうになるわけでございます。いずれにせよ、最近おやめになる方も恩給期間を持っている方がまだかなりいらっしゃるというのが現状でございまして、そういう方々をすべて平均しますと大体国家公務員で年間二百二十万円ぐらいという数字になっております。
  157. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 年間二百二十万円というのは、現在でいきますと生活費のうちのどの程度までのものを見るということでしょうか。例えば夫婦二人でおりまして食事ができればいいという程度なのか、家も住んでという程度なのか、小遣いも使ってという程度なのか、いろいろあるでしょうね。年をとりますと孫に小遣いをやらなかったら不人気になるでしょう。そういう問題も含んでの金が計算されておるのかどうかという点で、どのような御見解でしょうか。
  158. 山口公生

    説明員(山口公生君) 実はその生活費とのかかわりでどれくらいかということになりますと、年金だけの生活の場合もあるでしょうし、ほかの所得あるいは資産所得、利子等もございましょうし、そういう形では余り計算しておりませんが、私どもが今度の年金改革に当たって考えました大まかな給付の水準というものは、要するにその方が在職した期間の平均的な報酬、平均標準報酬と申しますが、それの大体六九%ぐらいをめどに設計をしたわけでございます。それがどれくらいその方の生活を保障するかということになりますとなかなか難しゅうございますが、抽象的に申し上げますと基本的な部分に充てられているというふうな表現をしております。
  159. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、その今おっしゃった金額で計算して、将来の恩給受給者の数とそれから予算との関係でどういうふうに推移していく、変わっていくというふうにお考えになっておりましょうか。
  160. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給の受給者数及び予算の将来推計につきましては、恩給受給者の失権による減少等をどのように見込むか、また恩給改善をどのように織り込むかというような点で、社会経済情勢にも影響される面が非常に多いわけでございましてなかなか難しい問題でございますが、仮に昭和六十三年度予算において見込みました受給者数などを基礎といたしまして、二つの前提、すなわち一つは厚生省の人口問題研究所が昭和六十一年度のデータによって作成いたしました簡速静止人口表の年齢別死亡率などを用いて受給者数を算出する、それから二つ目は現行の恩給制度のまま昭和六十四年度以降恩給改善がなく推移する、こういう二つの前提のもとに推計させていただきますと、五年後の昭和六十八年度には受給者は約百八十三万人で恩給予算額は約一兆四千二百億円、十年後の昭和七十三年度には受給者は約百五十二万人で恩給予算額は約一兆一千億円、この程度になるのではないかと見込んでおります。
  161. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 恩給受給者の数はどんどん減ってまいりまするから、予算が少々のこと多くても心配はないとは思いますがね、今一兆円そこそこの金額ですから。それを余り節約されて、恩給受給者がみじめな思いになるのは困るのではないかと思います。  そこで、お尋ねしますが、恩給法の第二条ノ二に「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ」云々と、こうありますね。これは、昭和四十一年にこういう規定を設けられましたね。それで、こういう規定でうまく処置できるかどうか、こういう規定を根拠にしていろいろの標準になる材料を集めてうまくいくかどうか、今までの御経験はどうでしょうか。もしうまくいかなければ、この条文は将来改正しなきゃならないでしょうね、もう一度ね。どうお考えですか。
  162. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 今先生お話しのように、昭和四十一年度にいわゆる調整規定と呼ばれます恩給法第二条ノ二の規定が設けられたわけでございます。その後の恩給改善につきましては、恩給審議会方式でございますとか公務員給与準拠方式でありますとかいろいろな呼び方をされる方式がとられてきたわけでございますが、私ども恩給局といたしましては、これまでとられてきたそれらの方法につきましても、いずれも恩給法第二条ノ二の具体的な運用としてそのときにおいていろいろ検討した結果、そのときにおける最も適切な方法ということでとられたものだというふうに考えているわけでございます。  先ほど来申し上げましたように、今回の公的年金制度の改革によりましてすべての公的年金が物価スライドになったというようなことで、恩給制度につきましてもその改善の方法について見直しをするようにというような御指摘を受けたわけでございますが、その結果恩給局としていろいろ検討をしましたものが昨年からとっておりますいわゆる総合勘案方式というものでございまして、これはまさに第二条ノ二の規定にうたわれておりますようなさまざまな要素を総合勘案しながら決めていくということであるわけでございます。私どもといたしましては、ことしで二回目でございますけれども、今後こうした方法を続けていくことによって各方面理解を得ていきたい、このように考えております。
  163. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは次の問題に移りますが、官房長官にお尋ねをいたします。  旧日赤救護看護婦等に対する慰労給付金の問題ですが、この給付金につきましては、普通の恩給と違いましてほとんど値上げがなされないという状況であるようでございます。旧日赤の関係者につきましては五十四年から、また旧陸海軍の関係者につきましては五十六年から、在職期間に応じまして年額十万円から三十万円の間で支給されることになったことは御承知のとおりでございます。そして、六十年に初めて一二・三%の引き上げが行われております。もとの金額が十万円から三十万円で安いですからね、これは年額ですから。で、現在その額は十一万円から三十四万円というふうになっておりますが、恩給や年金は毎年たとえわずかでも引き上げが図られてきております。  兵とこの従軍看護婦というものは、その働いた場所、それから働きのぐあいから見ましてほとんど差異はない。危険度におきましても体のきつさにおいても同じぐらいに働いてきたものでありますが、それがやはり看護婦という身分、片っ方は兵という身分という、身分だけの問題で差別がなされてきておるということで、これも大変問題ではないかという気がするわけであります。御承知のように、我が国の憲法は身分による差別は認めない、実質が同じならば同じにやれというふうに十四条で書いております。そういう点から、この日赤関係の者に対する慰労金あるいは従軍看護婦の慰労金、こういうものについて将来何らかの対応がなされるのであるかどうか、どういう政策をお考えになるのかという問題につきまして官房長官の御所見をお伺いいたします。
  164. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま御紹介のありました旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金は、いわゆる赤紙召集を受けあるいは旧陸海軍の命令により戦地において戦時衛生勤務に服し、また戦後の抑留生活で長期間御苦労されたという特別の御労苦に対し御慰労するために設けられた特別な措置でございまして、これによりまして所得の保障を図るという年金的な性格を有するものでないので、増額を年々行うということは困難である、こういう立場をとってきたところでございます。また、双方とも実は政府としては、戦後の各種の処理問題は従前塚原総務長官時代に政府・与党その他お話し合いで決着をした後にこういうことが設けられたという経緯もございまして、したがってこれはあくまでも御慰労の趣旨ということで設けられた制度でございましたので、さように取り扱ってきたわけでございます。  しかし、今先生お示しのように、昭和六十年にさればこの一二・三%の改定をなぜ行ったかということでございますが、前段申し上げたような趣旨で来たわけでございますが、約五年間経過いたしてまいりましてその間消費者物価その他の上昇もかなり変化がございましたので、こうしたことを勘案いたしまして実は六十年度に改定をいたしたわけでございます。したがいまして、年々歳々のベースアップみたいな形はとり得ませんけれども、今後はこの六十年に行われました増額の経緯、こういうものを踏まえながら今後事態の変化に応じて慎重に対応していきたい、これが政府考え方でございます。
  165. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、次の問題をもう一つお伺いいたしたいんです。  戦後処理問題に関しまして平和祈念基金法案が提出されているということを聞いておりますが、その中には恩給欠格者の問題は含まれていないようだということも聞いております。これは、先ほど恩給法の制定の仕方について御質問を申し上げましたが、恩給法の改正の文言の至らなさから起こってきたのが恩給欠格者問題でございまして、これにつきまして恩給欠格者といいましてもいろいろ程度があると思います。それで、ある恩給受給年に近いところで線を引くなりして恩給欠格者の扱いをなさるような御研究が可能であるかどうか、その点について総理府の御責任者である官房長官にお伺いをいたします。
  166. 平野治生

    政府委員(平野治生君) 大臣のお答えの前に、今までの経緯を少し御説明させていただきたいと思います。  ただいま先生御指摘恩給欠格者問題は、いわゆる戦後処理問題の一環といたしまして御承知のとおりに政府でかねてより検討を進めてきたところでございます。御承知のように、五十九年の十二月に戦後処理問題懇談会報告というのが出されました。この報告によりますと、そういう方々の心情に深く思いをいたしまして、今次大戦におけるとうとい戦争犠牲を銘記しかつ永遠の平和を祈念する意味において、政府において特別の出資を行って事業を行うための特別基金をつくる、こういう御提案があったわけでございます。政府といたしましては、その戦後処理懇の報告の趣旨を基本的方針といたしながら各方面と折衝を続けた結果、ただいま先生が御指摘になりました平和祈念事業特別基金等に関する法律案というのを別途この委員会でも御審議いただけるかと存じますけれども、その中におきましていわゆる恩給欠格者の方々につきましても、関係者の「労苦について国民理解を深めること等により関係者に対し慰藉の念を示す事業を行う」、こういうための特別基金を設けて対処してまいりたい、こういうふうに政府としては考えているわけでございます。  ただいま先生が御指摘ございました、何と申しますか、在職年の長さに応じて云々ということにつきましては、あるいはそういう御提案もあったかと思いまして、恩給局等であるいは御審議、御検討いただいたかと思いますが、政府としてはただいま私が申し上げたような方向でいわゆる恩給欠格者問題について対処してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  167. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、時間が来ましたので長官のお話だけを承って、これで質問をやめます。
  168. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 恩給欠格者問題等につきましては、かねて政府といたしましても今平野参事官が答弁申し上げましたように、戦後処理問題として取り組んできたところでございますが、この問題につきましてはだんだんの経緯はございましたが、結論といたしましてはこの平和祈念事業特別基金を設立し、この事業の中でこうした方々の御苦労にもお報いをしたいということで結論づけたわけでございます。この基金につきましては、今答弁申し上げましたように、御審議をいただくわけでございますが、どのようなことをやっていくかということについては運営委員会において御協議を願って、真にこうした方々に図としてどのような対応ができるかということについて御協議願うことになっておりますので、その基金をもって恩給欠格者問題につきましても一応の終結をいたしたいというふうに願っておるところでございます。
  169. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 終わります。
  170. 吉川春子

    ○吉川春子君 恩給法案の附帯決議の実施状況についてお伺いいたします。  恩給法は毎年提出され、旧軍人並びに遺族に対する国家補償としての生活保障を一定程度改善してきました。この法案は全会一致で議決されており、その際毎回附帯決議も本委員会で採択されています。この附帯決議は恩給法改善充実を求めるもので、旧軍人、遺族の方々の切実な要望です。  そこで伺いますが、大臣政府としてこの附帯決議というものは院の意思として重く受けとめ、その実施を誠実に行うべきであると思いますが、いかがでしょうか。
  171. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 附帯決議は国権の最高機関たる国会の御意思でありますので、政府といたしましては十分これを尊重し、その実現には最大限努力を払うべきものであると考えております。  内容的にはいろいろと難しい問題もございますが、今後とも国会の附帯決議の御趣旨を踏まえながら検討してまいりたいと存じます。
  172. 吉川春子

    ○吉川春子君 十分に尊重して対処するという答弁でしたけれども、実際には必ずしもそうなってはおりません。過去十年間の参議院の本委員会の附帯決議を調べてみましたところ、十年たっても実施されていない項目が四つあります。政府としては次の事項について速やかに検討の上善処すべきであると思います。  まず第一は、「恩給の改定実施時期については、現職公務員給与改定時期を考慮し、均衡を失しないよう配慮すること。」、「一、恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等その改善を図ること。」、「一、扶助料の給付水準については、さらにその改善を図ること。」、「一、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。」、この四点について十年たってもまだ実現していない理由について伺いたいわけですが、午前中からこの問題についてはいろんな論議もなされておりますけれども政府としてどういう検討を行い、またどういうふうに対処されてきたんでしょうか。端的にお答えいただきたいと思います。
  173. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) まず第一番目に実施時期の問題でございますが、恩給年額の改定は社会経済の諸事情の変動に対応いたしまして恩給の実質的価値を維持することを目的とするものでありまして、このような変動の状況をあらわす指標として従来からいろいろな改善方式をとりながらやってきたわけでございます。けれども、そのことが直ちにいわゆる公務員給与とのおくれというような形になっているものとは考えておらないということでございます。  それから次に最低保障額と扶助料の引き上げの問題でございますけれども、最低保障額の改善につきましては、公務員給与の改定、他の公的年金の給付水準との均衡等を勘案いたしましてその額を定めてきているところでありまして、昭和六十三年度におきましても、各種最低保障額を同年四月から一・二五%引き上げることにいたしているところであります。  また、普通扶助料の給付水準の改善につきましては、基礎俸給の格上げ、それから加算年の金額計算への算入、寡婦加算制度の導入等、これまで優遇措置を講じてきておりまして、昭和五十二年度以降は特にその最低保障額の改善に努めてきているところでございます。  それから、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限のお話がございました。これは恩給局の所管ではございませんので、私の方から申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思います。
  174. 吉川春子

    ○吉川春子君 毎年、毎回国会で附帯決議をつけて、そのたびに大臣が院の意思を尊重して対処するという発言をなされるわけですけれども、それにしては今いろいろ言いわけあるいは弁明なさいましたけれども、まだまだこういう点について大変不十分な点が残っていると、そのことはお認めになるんですか。
  175. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 先ほども申し上げましたが、他の公的年金制度の改革あるいは公務員給与の水準、そういったもろもろのものを考えながらこれまで恩給制度については改善を行ってきているところでございまして、現段階におきましては他と比較いたしまして恩給は特に指摘されるような状況ではないのではないかというふうに考えているところでございます。
  176. 吉川春子

    ○吉川春子君 参議院の附帯決議に指摘されるような覚えはないと、こういうことですか。
  177. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) いろいろ改善を行ってきているということでございまして、現段階におきましてはそれほど水準が低いということでおしかりを受けるというようなところにはないのではないかというふうに考えているところでございます。
  178. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣にお伺いいたします。  今申し上げました四つの点については、過去十年間ずっと附帯決議に掲げ続けられてきたことなんですけれども、この問題について指摘される覚えはないということになりますと、国会の附帯決議というものについてやはりそれは尊重していくという大臣立場とちっとずれるんじゃないでしょうか。私は、いろいろ改善なさってきてはいるけれども、しかしまだ不十分なんじゃないか、これからも国会の附帯決議の意思を尊重してやるべきではないかというふうにお伺いしているんです。先ほど最初大臣の御答弁とはちょっとずれると思いますが、大臣いかがでしょうか。
  179. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 先ほども申し上げましたように、国会において全会一致で付されました附帯決議というものは大変重いものであると私ども考えておりまして、その御趣旨に沿って努力をしておるところでございます。ただ、それでは満点かと言われれば、なかなかそうもいっていないという御指摘は甘んじて受けなければならないと存じます。それから、その後に若干事態が変遷してまいっておりまして、例えばごく最近のいろいろな臨調答申あるいはまた社会保障制度審議会とか国家公務員等共済組合審議会答申、こういうところにおきましても他の共済年金等とバランスをとれというような指摘もしばしばされておるところでありますので、それらも踏まえながら対処しておるところでございまして、私ども満点とは決して思っておりませんが、今後とも努力はいたしたいと存じます。
  180. 吉川春子

    ○吉川春子君 それから、先ほど飯田委員の方からも質問がありましたけれども、日赤の救護看護婦などにつきまして毎年私たちは改定すべきであると思っているんですけれどもこれが毎年行われない。非常に遺憾なことであると思うんです。先ほど答弁でもありましたけれども、事実上軍の命令で戦地に行って従軍したと、そういうことで国会でもたびたび附帯決議の中で取り上げられてきているわけですけれども、これを物価上昇に見合うように実質的に改善してほしいというふうに思いますが、これは例えば五年ぐらいたたないと見直さないとか、そういうことなんでしょうか。
  181. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほども飯田委員にお答えを申し上げた趣旨でございまして、この慰労給付金がそもそも所得の保障を図るという年金的な性格を有するものでないということが年々の一定の増額ということをいたしてこられなかった事由でございます。しかしながら、これまた申し上げましたように、六十年に改定をさしていただきましたが、それまでに至る間の物価変動等かなり大きいものがございましたので、その段階で調整をさせていただいたわけでございます。したがいまして、今五年というお話がございましたが、諸般の情勢を勘案しながらこの改定の問題につきましては、その経緯も踏まえながら慎重に対応していきたいというふうに政府は考えておるところでございます。
  182. 吉川春子

    ○吉川春子君 いずれにいたしましても、戦争によって駆り出された国民の犠牲というのは大変痛ましいものですので、それに見合うということはもうあり得ないわけですけれども、最善の努力をしてほしいというふうに申し上げておきたいと思います。  次の質問に移りたいと思いますが、いわゆる天下り人事の問題について伺います。  私、これ政労協の天下り白書を見せていただいたんですけれども、これ大臣もごらんになったんじゃないかと思いますので、もしごらんになっていれば感想をお聞かせください。
  183. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 大部の報告書でございますので全ページにわたって通読するということは申しわけないことですがいたしておりませんが、いわゆる天下りというものにつきまして政労協ですか、そこでいろんなデータを収集しながらおまとめいただいたという御労作については敬意を表します。ただ内容につきましては、政府でいろいろ集めておりますデータその他に比べますと基準が違っておったり、例えて言いますと同じ事業団の中で理事から理事長に昇格するというようなときはこれはどういう扱いになるかとかというところで物差しが必ずしも一致しておらないというところで、数字的には違ったものになっておるように拝見をさせていただいております。
  184. 吉川春子

    ○吉川春子君 政府は、特殊法人の天下り人事について、役員の数の縮減あるいは給与、退職金の適正化、年齢制限など閣議決定で規制をしております。その根拠は何でしょうか。なぜこういうことを閣議決定しておられるんですか。
  185. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、特殊法人、これは国が行うべき業務を国にかわって円滑に行う、これを目的として設立されたものでございます。したがいまして、公務との密接な連携を保つ必要もあるわけでございますし、役員の中に公務員出身者がある程度含まれる、これは業務の適正かつ円滑な運用のためには有益な場合が多かろうかと存じます。しかしながら、一方におきまして広く各界有識者の中から適任者を人選するということは必要でございますし、また行政改革の一環といたしまして特殊法人の活性化、こういった観点から特殊法人の責任体制の明確化あるいは士気の高揚、こういったものを図ることが必要だという観点ももちろんあるわけでございます。その二つの観点、言うなれば公的な業務の性格と一方におきます特殊法人の活性化の要請、これをいわば兼ね合わせるというようなところで、五十二年の閣議決定あるいは五十四年の閣議了解におきましては、公務員から特殊法人常勤役員への就任者を半数以内にとどめるという目標を設定しておるところだと理解いたしております。
  186. 吉川春子

    ○吉川春子君 政労協の組合員のアンケートの結果では、天下り役員が法人の業務に貢献していると考えているのは一割弱、こういう辛らつな厳しい結果も出ております。こういう天下りの弊害を是正するという観点からそういう閣議決定があると思うんですけれども、特殊法人だけに厳しく限っているのはどういうことでしょうか。例えば公団のすぐそばにある団地サービスとか、こういう法人を含めて考えないのはなぜですか。
  187. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) お答え申し上げます。  特殊法人につきましては、ただいまも御説明申し上げましたように、本来国が行うべき業務を国にかわって行う。したがいまして、これは国がみずから設立した法人でございまして、各省庁所管の大臣の役員人事についての関与、これも法律上認められておるところでございます。したがいまして、特殊法人につきましては先ほど申し上げましたような形の内閣のチェックを行っているところでございます。  ただ、一方認可法人あるいは公益法人でございますが、こちらにつきましては、認可法人の場合、これは民間等の関係者が発起人となって、主務大臣の認可はもちろん受けるわけでございますが、自主的に設立するというところから、その性格も大変多様でございます。したがいまして、なかなか一律にこれを一定の基準で規制するということは難しい面がございます。まして特殊法人以上にその法人の自主性というものを尊重しながら経営の活性化を図る必要があるわけでございまして、私どもとしてはこれを所管しておられます各省庁がそれぞれ実情に応じて特殊法人の役員に関する適切な指導を行っていかれるというのが最も適当だと考えております。  それから公益法人も同様でございますが、公益法人もこれも民法の規定による主務官庁の許可はあるわけでございますが、民間の発意によりましてそのさまざまな設置目的、事業内容に応じて設置されるものでございます。したがいまして、各主務官庁の業務運営の適正化についての指導はもとより必要だと考えておりますけれども、やはり役員の登用につきましてはその業務内容に応じた適材の人選を行う必要が非常に強いと考えております。こういった事情がありまして、私ども今認可法人あるいは公益法人につきましては統一的な基準に基づいたチェックはいたしておらないところでございます。
  188. 吉川春子

    ○吉川春子君 多種多様な法人がある、そして一律には対応しないということですけれども、やはり同じように天下り人事が好ましくない影響を与えているものもあるわけですから、そういう意味で後に続く質問にも関連するんですけれども、そういうものを全部排除して考えると数字がここと多少違ってくるということになると思います。  それで伺いますけれども、役員全体が天下り組で独占されているという特殊法人は今幾つあるんでしょうか。
  189. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 特殊法人のうち常勤役員の全部を国家公務員出身者が占めておる数という御指摘だと存じますが、私ども把握しているところではこの四月一日現在で十三法人ございます。
  190. 吉川春子

    ○吉川春子君 私二十四と思っているんですけれども、ちょっと名前を挙げてみてくれますか。
  191. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 恐らく先生御指摘の二十四というのは政労協の天下り白書の数字を御引用かと存じます。先ほど官房長官からの御答弁にもございましたように、国家公務員からの直接の就任者の範囲のとらえ方が白書と私どもとでは違っておりますので、恐らくその差が出ているものだと存じます。
  192. 吉川春子

    ○吉川春子君 どういうふうに違っているんですか。ちょっと説明してください。
  193. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 私どもがとらえておるのは先ほど申し上げた十三法人でございますが、恐らく政労協の白書で全員天下りというとらえ方をしておられます中には、例えば地方公共団体から役員になられた方あるいは国立大学の先生から役員になられた方、こういった者もすべて国家公務員出身者の中に入れて二十四でございましたか、その数を出しておられるかと存じます。
  194. 吉川春子

    ○吉川春子君 その地方公共団体あるいは国立大学からのということをもし答弁のとおり前提とするとしまして、これは構わないわけですか。
  195. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 私ども先ほど閣議決定閣議了解で対象としておりますのは国家公務員からの直接の就任者ということでございますので、まず地方公共団体の職員についてはこれを除外してございます。それから国立大学の先生の場合には、身分は国家公務員であるといたしましても、いわゆる行政官庁に勤務しております職員とはこれは本質的に性格が異なる、つまり大学の先生としての識見なりあるいは御経歴なりを生かして役員として御活動いただくという観点で、これを除外しておるところでございます。
  196. 吉川春子

    ○吉川春子君 いろいろおっしゃられましたけれども、しかしもう大変厳しく絞りましても十三法人ある。このことはやっぱり閣議了解あるいは閣議決定立場には反するんじゃないんですか。それともこれは構わないんですか。
  197. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 閣議決定閣議了解で申しておりますのは、特殊法人全体として見ました場合に、公務員からの就任者の数が半数以内ということを目標としておるわけでございます。確かに特殊法人、同じく国の業務の延長線上の仕事をするといたしましても、やはりその性格がおのずから異なっておりまして、まさに役所の延長的な仕事をするものもございますし、あるいは企業体としてむしろ事業経営に似た形の業務をやっておるところもあるわけでございます。あるいは特殊法人の規模でございますとか、あるいは歴史と申しますか、部内の職員がどの程度成長してきているか等によりまして、すべての特殊法人で一律に半数というような目標達成はこれは非常に難しいわけでございます。これを踏まえまして私どもといたしましては、閣議了解の趣旨を踏まえて全体として半数以内に抑えるべく努力を今しておるところでございます。
  198. 吉川春子

    ○吉川春子君 しかし、先ほどおっしゃいました天下り人事の弊害について、各界からの登用であるとかあるいは士気の高揚であるとか、こういうことを考えましたときにトータルで、トータルでも達成されていないわけですけれども、トータルでよければある特殊法人は全員天下りの役員で占められてもいい、こういうことにはならないんじゃないですか。やっぱりこれはまずいんでしょう。
  199. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 私どもといたしまして各省庁と特殊法人の選定、選任につきまして今事前にいろいろ御相談はしておるわけでございまして、その段階におきましては全員国家公務員出身者ということはなるべく避けるように、そういう方向で御相談をしておるところでございますが、そういった面で努力は私どももしておるところでございますが、なかなか先ほど申し上げましたような特殊法人それぞれの事情がございまして、まだ今の段階で十三法人はそういう状態で残っておるというのが実態でございます。
  200. 吉川春子

    ○吉川春子君 天下りの役員が全体の五〇%という閣議了解の目標に達している法人の数は、私は政労協で見ますと二割、十九法人ということなんです。なるべく避けるように努力している、しかしいろんな事情があるということなんですけれども、やっぱりこれは閣議決定閣議了解の少なくともそういう立場に立って今後努力されていくべきじゃないかというふうに思うわけです。  逆に天下りをふやしている特殊法人、これは幾つありますか。
  201. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 役員の任命、交代の場合に若干の変動はもちろん出てくるわけでございます。例えば今まで部内の方がおられましても、たまたま部内に適材がおられないので公務員OBが就任する、もちろんその逆のケースもあるわけでございますが、こういう一時的な増減というものは当然あるわけでございます。ただ、増加傾向にあるというような法人は私ども認識しておりません。
  202. 吉川春子

    ○吉川春子君 四月一日で天下りをふやしている特殊法人は幾つあるんですか。
  203. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 四月一日といつの比較かちょっとはっきりいたしませんけれども、今私ここに個別法人の資料を持ち合わせておりませんので、お許しいただければ後ほど御説明を申し上げたいと存じます。
  204. 吉川春子

    ○吉川春子君 一時的とおっしゃいましたけれども、少なくとも天下りの役員がふえるというようなことは好ましくないわけですね。
  205. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) はい。一般論としてはふえるのは好ましくないわけでございます。ただ、先ほど来繰り返して申し上げて恐縮でございますが、なかなか個別の法人についての対応には難しい面がございまして、私どもとしては少なくとも全体として閣議了解の目標としておるところ、これは達成をしなければいけないと思っております。これは、私どもの手元の数字で申し上げますと、四月一日現在でございますが、常勤役員総数七百四十一名のうち国家公務員からの出身者、登用者、これが三百八十一名、その割合は五一・四%でございまして、もう一息で目標に達するところかという認識を持っております。
  206. 吉川春子

    ○吉川春子君 政府にお伺いすれば五一・四%ですけれども、労働組合の調べによりますと六割を超している、こういうことになるわけですね。  それで、いわゆる渡り鳥人事についてお伺いいたしますけれども、特殊法人の間を渡り歩いているといいますか、この件数はどれぐらいありますか。
  207. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) まず、特殊法人相互間の役員の異動でございますが、これは閣議決定閣議了解では真にやむを得ない場合に限って一回だけあり得るという建前をとってございます。私どもの四月一日現在の数字では、このような真にやむを得ない場合ということで特殊法人間のいわゆるたらい回し的異動を経験した役員が十八名でございます。二回以上このような異動を行った役員はございません。
  208. 吉川春子

    ○吉川春子君 これも数が違うんですよね。  年齢の制限が閣議決定でありますけれども、それからはみ出している役員、副総裁総裁はどれぐらいいますか。
  209. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 特殊法人の常勤役員の年齢制限でございますが、閣議決定閣議了解では高齢者の起用は努めて避けるということを前提で、理事クラスで六十五歳、総裁、副総裁クラスで七十歳というのを原則といたしております。真にやむを得ない事情があるということでこれを超えております者の数でございますが、ただいま御質問の総裁、副総裁クラスで七十歳を超えている役員は現在十一名でございます。
  210. 吉川春子

    ○吉川春子君 これ十一人というのは、六十五歳と七十歳以上と両方合わせた数ですか。
  211. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) 十一名という数は、総裁、副総裁クラスという御質問でございましたので、七十歳を超えている数でございます。
  212. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ六十五歳以上は。
  213. 大金瑞穂

    説明員(大金瑞穂君) このほかに、理事クラスで六十五歳を超えている役員は十名でございます。
  214. 吉川春子

    ○吉川春子君 いわゆる渡り鳥という形で幾つかの特殊法人あるいは公益法人を渡り歩いてその都度退職金をもらって、そして多額な退職金を手に入れるということでマスコミ等を通じて国民が知って厳しい批判を浴びているんですけれども、この間幾つかの役職を歴任して退職金をたくさんもらったと、こういう例がありましたら説明していただきたいと思います。大蔵省ですか。
  215. 堀田隆夫

    説明員(堀田隆夫君) ただいまの御質問でございますけれども、今の役員の退職金の支給につきましては、退職時の俸給月額と在職の月数を掛けまして、それに民間企業の役員の退職金の支給実態などを踏まえました支給率を、今〇・三六になっておりますけれども、それを乗じまして出しているということになっております。したがいまして、複数の法人を渡り歩いた、渡り歩くといいますか異動したということで、そのために特に退職金がふえるという形にはなっていないということをちょっと申し上げたいと思います。  あと、実際にどういう方がどのぐらいの退職金を受け取られた例があるかということでございますけれども、そこはちょっと私ども財政当局としては全体としての総量的な管理をしておりますので、具体的には承知しておりません。
  216. 吉川春子

    ○吉川春子君 どこでも結構ですけれども、これをつかんでいらっしゃる省庁で答えていただけませんか。――総理府か総務庁つかんでいないんですか。
  217. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 省庁を指定してください。
  218. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は大蔵省に伺っているんです。払っているところだから多分知っていらっしゃるだろうと思って聞いているんですけれども、答えられないとおっしゃるので、じゃどこか答えられるところがあるのかなと思ったんですが、大蔵省に答えていただきたいと思います。
  219. 堀田隆夫

    説明員(堀田隆夫君) 私ども特殊法人の収入支出予算の認可というようなことをやっておりますけれども、あるいは給与規程とか退職金支給規程の主務大臣が承認をする際に大蔵大臣が協議に応ずるということをやっておりますけれども、具体的にどういう方が、つまり、何といいますか、ある法人につきまして平均的なといいますか全体的な予算の額で押さえているということにすぎませんので、実際にどういう方がどういう法人を渡り歩かれたかとか異動されたかとか、ある法人にその役員が何年間おられてどのぐらいの退職金を支給されたかということはちょっと、申しわけありませんけれども、私どもそれを承知し得る手段を持っておりません。
  220. 吉川春子

    ○吉川春子君 閣議決定において特殊法人の役員の給与、退職金の適正化については、どういうふうに閣議決定しているんですか。――いや、閣議決定のことを聞いているんですよ。大蔵省じゃなくてもいいんですよ、これは。閣議決定のことですから。
  221. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 昭和五十二年十二月二十三日の決定の第三項に「特殊法人相互間のたらい回し的異動は、原則として行わないこと。」という一項が設けられております。
  222. 吉川春子

    ○吉川春子君 今大臣が御答弁くださったことのほかに、一九七九年にもこういう閣議決定をしているんですね。つまり、「特殊法人の役職員給与、退職金の適正化」というんですから、余り適正でなかったということですね。それで是正していくということが閣議決定されているんですけれども、そうしますと、その退職金や給与が適正かどうかということを大蔵省もつかんでいないということであれば、じゃどうしてこの閣議決定が適正に行われるかどうかということをつかめるんでしょうか。
  223. 堀田隆夫

    説明員(堀田隆夫君) 退職金につきましては、過去の閣議決定を受けまして、例えば五十二年十二月二十三日の閣議決定におきましては「特殊法人の役員の退職金の支給率については、昭和五十三年度から現行の在職期間一月につき俸給月額の百分の四十五を百分の三十六に引き下げることとする。」という決定がございます。それからその後五十四年の十二月二十八日には「退職金については、人事院に依頼している民間企業の役員の退職金実態調査の結果を検討の上、適正な措置を講ずるものとする。」という決定が行われておりまして、要すれば民間企業の退職金の実態を踏まえまして引き下げる必要があるときは引き下げるということで今の閣議決定が出てまいりましたけれども、五十三年には約二割の引き下げを行っておるわけでありますが、いずれにしましてもそういう一律的な手法で冒頭に申し上げましたような形で算定されるものでございますから、そこはそういうものとして私どもは各主務官庁あるいはその当該の法人において適正な執行が行われておるというふうに考えておるわけでございます。
  224. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますとその閣議決定の中身は、一般論として退職金、給与はこういうことだということだけをつかむんですか。そうではなくて、いわゆる渡り鳥と言われているような人事であちこち役員をして総裁をしてやめてその都度退職金をたくさんもらう、こういうことに対する国民の批判もあったので、そういう個々の例もなくすようにという意味はこの閣議決定の中には含まれていないんですか。
  225. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 特殊法人の役員の人事につきましては、各主務大臣及び内閣官房長官が所掌しておられるところでありますが、行革審等でも今の問題についてはいろいろ御指摘をされているところでございますので、私の方で今後調べてみたい、このように思います。今現在のところどうなっているかということについては、残念ながらまとまった資料はございません。
  226. 吉川春子

    ○吉川春子君 この政労協の白書によりますと、個々の名前を挙げるのは適切ではないと思いますが、幾つかの特殊法人の理事あるいは総裁あるいは取締役社長、こういうものを歴任いたしまして通算退職金が八千四百九十四万円になる、こういう例も出ているわけです。そのほか幾つか出ていますけれども、せっかく閣議決定で退職金や給与について適正なものにしなければならないという決定があるわけですから、こういうものについてやっぱり個々にもちゃんとつかんで、幾ら払っているのかということもつかんで、やはり適正にしていっていただきたいと思います。今長官から御答弁がありましたので、ぜひ今後つかんでいただきたい、こういうふうに考えます。  それで、そのほか含めて政府みずからがこの天下りを是正するという方針は決定していらっしゃるわけですね。しかしながら、なかなかその是正措置がうまく機能していない。今幾つか指摘しましたけれども、特殊法人の役員の半分は天下りでない者に抑えるとか、これは数字が多少あれしますけれども政府のあれでも五〇%超しているわけですね。それから年齢制限、渡り鳥、そういうことはやっぱり遅々として改善されていない、こういうふうに思うわけですね。そういうことを是正するためにも、今後少なくとも閣議決定の線はきちっと守って頑張っていただきたいというふうに思うんですけれども、これは官房長官いかがですか。
  227. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 内閣として責任を持って決定いたしておりますることでございますので、その趣旨に適合いたしますようにさらに努力をいたしてまいりたいと存じます。
  228. 吉川春子

    ○吉川春子君 じゃ、その件についてはそこまでにいたしまして、残り時間少ないんですけれども一問か二問伺えると思います。  中国残留孤児の問題についてお伺いいたしますが、去年のこの委員会で私は中国残留孤児問題を取り上げまして、帰国された孤児の方が本当に日本の社会にスムーズに入っていけるように、自立されるようにということで質問いたしました。ことしの予算を見ますと、中国帰国者自立研修センターの設置とかあるいは中国帰国孤児適応状況調査研究などの一定の改善は見られるわけですけれども、もちろんまだ十分とは言えないわけです。それで定着促進センターのほかに、今それは埼玉県の所沢ほか四カ所あるわけですけれども、ここが四カ月で出されてしまうために日本語の習得がなかなか十分にはいかないということで、今後自立研修センターをつくるというふうに聞いていますけれども、この内容について説明していただけませんか。
  229. 新飯田昇

    説明員(新飯田昇君) お答え申し上げます。  六十三年度に全国十五の主要都市に新たに設置することといたしました中国帰国者自立研修センターは、今おっしゃいました中国帰国孤児定着促進センター修了後地域社会に定着しました孤児等に対しまして、日本語教室、生活相談及び就職指導を行うものでございまして、都道府県に事業の実施を委託することとしておりますが、その事業内容について御説明申し上げます。  まず日本語教室につきましては、地域社会において通所しながら生活に密着した実践的な日本語指導を行うこととしておりまして、必要に応じまして複数のコースを設定してきめ細かな指導を行いたいと考えております。次に生活相談、生活指導についてでございますが、定着自立のための生活指導に熟知しました相談員が常駐しまして種々の相談に応じるとともに適切な指導を行い、帰国者世帯に個別に派遣する自立指導員の業務を補完することにしたいと考えております。また就職指導につきましては、日本の労働事情あるいは雇用慣行につきまして十分説明するとともに、地元の公共職業安定所などの協力を得まして公共職業訓練校への案内や職業指導を行い就職の促進を図り、生活保護からの早期脱却を進めたいと考えております。また、中国帰国者が家庭内に閉じこもりまして自立するということがおくれることのないよう、地域住民との交流を図る行事を実施したいと考えております。さらに、就籍の相談や子女の就学についての情報の提供など、孤児の自立の促進に努めたいと考えております。
  230. 吉川春子

    ○吉川春子君 全国で十カ所程度つくられるということなんですけれども、例えば埼玉県一つとってみても九十二市町村あるんですよね。例えば荒川村とか岩槻市とか今数十世帯まとまって住んでいるところに一つつくっても、じゃ岩槻につくったら荒川の人とか遠い人たちはどういうふうにするのかとかいろんな問題がありますね。八カ月日本語を習得する期間を延長してくださったということは大変いいことなんですけれども、それを本当に実りあるものにするためにはどうするんですか。宿泊施設も伺うと二DK二戸ということでしょう。そうしますと、多くの人は泊まれないし、その点はどういうふうにするんでしょうか。
  231. 新飯田昇

    説明員(新飯田昇君) おっしゃいました点に注意しながら運用することとしておりますが、埼玉県の場合ですと、私どもただいま県に聞いている状況では大宮に設置するということでございますので、例えばおっしゃいました岩槻からの通所での日本語指導等は十分行えるものと考えております。また、このほかに先ほど御案内しました自立指導員によるきめ細かな生活指導というのは引き続きまして拡充していきたいと考えております。
  232. 吉川春子

    ○吉川春子君 委員長、時間が来ましたので、この質問は次の委員会にまた続けて行うことにします。
  233. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今回の恩給法の改正というのは、提案理由の説明でも述べられましたけれども、「昭和六十二年における公務員給与の改定、消費者物価の上昇その他の諸事情を総合勘案し、」一・二五%増額するんですと。朝から各同僚委員からも聞かれておって、そちらの答弁を聞いているんですけれども、問題の「総合勘案し、」というこのところの御答弁というものがどう聞いておったってわからない。もうちょっとこういうことなんだというのがわかるような答弁をお聞かせいただきたいと思うんです。
  234. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 先ほどから何回もお答えさせていただいておりまして大変恐縮なんでございますが、恩給法第二条ノ二の規定では国民の生活水準、公務員給与、物価その他の諸事情を総合勘案する、こういうふうな書き方がされているわけでございまして、昨年の恩給改定から私どもとってまいりました方式というのは、まさに恩給法第二条ノ二の規定に書いてございますようなことをいろいろ考えながらやってまいっておる、こういうことでございます。本年でその第二年目ということでございまして、昨年の末には公務員給与の特に行(一)の俸給表の改善率が一・四六%、それから予算編成時におきます消費者物価の見通しが〇・二%というような状況でございましたので、そういったものを考えまして一・二五%に決定させていただいた、こういうことでございます。
  235. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 違う角度から申し上げますと、そうすると六十三年度の恩給改定というものは一・二五%でなくて二・二五%でもいいんだし、あるいはそうじゃなくて〇・五%でもいいんだということになるわけでしょう。
  236. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 総合勘案ということでございますので、まあある程度の幅と申しますかそういうものはあろうかと思うわけでございますけれども恩給局といたしましては、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、総合勘案というようなことの中で受給者の皆様方の立場とかいろいろなものを考えてできるだけの努力をした結果一・二五%、こういう数字で決めさせていただいたということでございます。
  237. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、それは私への答弁にならない。朝からこれ何度も言われていることだけれども、そういう総合勘案という判断に立てば、私が今聞いているのは一・二五じゃなくて二・二五%でもよろしいんだし、あるいは逆に〇・七五%にしてもよろしいんだしということになっちゃうんですよ。それでもよろしいんですかと聞いているんです。
  238. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) これは全く仮定の問題でございますが、例えば前年度の公務員給与の改定の状況を一つここに因子として置きまして、前年度の物価がそれょりはるかに上がっているという場合にはそれも総合則側案しなければならないということになりますと、今仰せになられたようなケースも起こり得ることであるというふうに思います。
  239. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、大分こう答弁が具体的になってきた。そのとおりであって、それで私が言いたいのは、今も大臣が言われたように、昨年の場合には公務員給与改定は二・三一%、それでこの恩給の方が二%です。そうすると、この公務員給与改定の私が計算してみたら八六・六%になるんですよね。それでことしの場合には公務員給与の方が一・四六%のアップで恩給は一・二五%、そうするとその割合というのは八五・六%。だから、何かその辺に物差しを置いたのかなというようなのが私のこれは推察。ですから、いろいろ難しい要素があると思いますけれども、やっぱり何かよりどころの物差しだけはお持ちになって、それできょうも朝刊のうちは人勧もお話に出ましたけれども、人勧なら人勧も人事院がこうだと出しても、本来ならばそのとおりやらにゃいかぬのがその都度政府はそれを認めないで修正したベースアップをやることは今までも再三あるわけですから、そういうふうなつかみ金をどうこうするようなことでなしに、何らかのよりどころ、物差しはお持ちになって、そしてそのよりどころ、物差しを持ってやっていっても、それがそのときの政治情勢でもって素直にそのとおりいかない場合もあるだろうけれども、極力そういうふうなことでやっていくんですりと、多少そこにそのときの情勢で出たり入ったりの振幅は持たせていただきたいんですというような、そういうふうな理解をしたらどうかと思うんですけれども、その点についてどうですか。
  240. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 恩給先ほど来申し上げておりますように国家補償的性格を有する年金制度であるといったような特殊性を考慮いたしますれば、他の公的年金制度が物価スライドでいっているわけでございますけれども、まあそうした状況の中でいわゆる総合勘案方式をとるということが現在の段階では適当であるというふうに考えているわけでございまして、恩給局といたしましては、今後とも基本的にこのような考え方に沿って行ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  先生御指摘のように、従来の改定方式に比べて非常にわかりにくいんじゃないかというようなお話があるわけでございますけれども、ただ、従来の改定方式につきましても一つの固定した算式というものがあってそれでずっとやってきたというわけではないのでございまして、そのときどきにおける最も妥当な方式によって行ってきたということでございます。総合勘案方式というのはさまざまな要素を勘案することに意味があるわけでございまして、御指摘のようにそういう観点からわかりにくい面もあるわけでございますけれども、この方式をとりましてことしで二回の実績しかないわけでございます。今後この方式を続けることによって、恩給改定の落ちつき先と申しますか、あるいはあるべき姿と申しますか、そういうものがある程度形づくられてくるのではないか、私どもとしてはそういうふうに考えております。
  241. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは大臣、ことしで二度目でしょう。だから、こういうことをお聞きする方が少し無理だと思うんですよ。だけれども、今恩給局長の方は何かこれがいいやり方だからこれからもやるんだというふうな、そういう答弁をなさっているんだけれども、私が大臣にお聞きしたいのは、ですから今言ったこの総合勘案方式というこの方式を今後も続けるつもりなんですか、それとも、まだ二回目だからいささか無理だけれども、どうもやってみてうまくない、もうちょっと知恵を働かせていい方式を編み出したいとお考えになっているかどうか、  恩給局長の答弁をじっと聞いていて今私は思うんだけれども、ずるいやり方ですよ、これはまことにもって。だから、そういうずるい気持ちを持ったらこれほどぐあいがいいことはない、何をやったっていいんだから。しかし、少なくとも相当な人たちがこの恩給の適用を受けるわけでしょう。そうすると、その人たちがある程度納得できるような、そういう物差しだけは持っていてやるべきだと私は思うんですけれども大臣どうですか。これはまことに結構だから今後も続けるというお気持ちか、それとももうちょっといい方式を考え出したいというふうにお考えになっているか、その辺いかがですか。
  242. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 今回の予算編成に当たりまして私自身感じたことを率直に申し上げますと、何か決め方がいま一つすっきりしないといいますか、そういうふうな感じを私自身も確かに持ちました。ただ、国家補償的性格を持つものであるということと、もう一つは臨調、行革審の答申なり他の公的年金制度とのバランスなり、そういうものを考慮した中でのぎりぎりの選択と申しますか、ぎりぎりの努力をした結果がこの数字になってきておるわけでありまして、先ほど板垣委員にも御答弁申し上げたところでありますが、自民党の側でもいろいろ検討しろという条件がついておるということでもございますので、私どもはこれがベストだとは思いませんが、とりあえず今許される状況の中で最善の努力をした結果がこの数字であるということに御理解をいただきたいわけであります。  二回やったばかりでありますし、かつまたそれの計算根拠というものが、後で計算で出た数字をつじつま合わせに説明しろと言われれば、それは確かにいろいろな数字が出てまいります。しかしながら、それを根拠にして決めたかと言われれば、実はそうではないということでございますので、まことに正直に申し上げておるわけでありますが、とりあえずのところはそういういろいろな制約を課された中で国家補償的性格というものを踏まえてぎりぎりの努力をした線であるというふうに申し上げる以外にないと思います。
  243. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 大臣、よくわかりました。  それで、私から希望を申し上げておきますと、ことしはもうこれでやるしかないですから私たちも認めていきたいと思いますけれども、もうちょっと知恵を出してよりベターな方法がないかということをやはり宿題にして御検討いただきたいと思う。  次に、恩給の性格の点で、これは恩給局長、さっきどなたでしたかお聞きになったのに、国が使用者として云々という、そういうお言葉が答弁の中に出てきた。その辺の点が、少しやはり恩給というものに対してのお取り組みの姿勢というものがいかがなものかなという気がするんです。これは一昨年のこの場でもって恩給の性格ということについて私が質問をしているんです。その日私が言ったことは、国から支給されるものだからもらう方が国に感謝をしてそしてもらうべきものなのか、それとも長い間御苦労なさったんだから国が感謝の気持ちで差し上げるというそういう性格のものなのか、その辺は政府はどういう判断をしているのかと言ってお聞きしたんです。  そうしたら、そのときに当時の江崎総務庁長官は、やはり長い間国家の犠牲を強いたわけで、国家補償の意味を持った感謝の気持ちを込めて恩給を出すというのが根本精神だと認識をしておりますと。だから、ここは恩給局長、本当によくお考えいただかないと、昨年の附帯決議の中でもそう、これが終わった後またきょうも附帯決議やるわけですけれども、その中でも、言うならば「恩給年額の改定については、国家補償としての恩給の性格、恩給受給者の高齢化等に配意し、」云々と、こう書いている。ですから、国が使用者としてという言葉の出てくるところに既に私はやっぱり恩給というものに対しての考え方というか、その辺がいささか、まあおかしいという言い方はいけないんだけれども、局長がそうお考えになったといえばそれまでだけれども、もう一回ここでもってそういう恩給の性格というものをどう把握なさっているかお答えいただきたいんです。
  244. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) 局長に対する御質問でありますが、実は局長は恐らく恩給等の重要事項を調査審議した臨時恩給調査会の答申を踏まえてその言葉を使ったんだと思うんです。それには「経済能力を減損した者に国が使用者としてこれをおぎなうという意味のものであるといわれている。」云々と、こう書いてありますので、恐らく局長としてはその文言をそのままやはり調査会の答申に書かれているという意味合いにおいて使ったんだというふうに思います。もちろん、多年国家のために尽瘁した方に対する御苦労であったという感謝の気持ちも当然あると思います。
  245. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 あわせてこの機会に恩給局長からお聞きしたいと思うのは、どなたかということを申し上げませんけれども、かつて恩給局長をなさっていた方で、裁判でも疑わしきは罰せずと言うじゃないか、だから疑わしい者については恩給は支給しない、それがおれの持論だと言った局長さんがおったわけです。私はとんでもないことだと。裁判の場合には、果たしてこの人が罪を犯したか犯さないかという、その辺が判断に非常に迷う。だったらそれは罪せずでもって、あるいは罪を犯したかわからぬけれども、罰しないことによって言うならばその人の身分を守るというか何というかね、だから裁判で疑わしきは罰せずというふうなその理念、考え方からいうならば、この恩給の場合には、これは特に傷病恩給の場合のことを言っているわけですけれども、疑わしきは支給するであって、それで果たして支給してはいけないのかよかったのかわからぬけれども、しかし疑問があるならばむしろ支給することによってその人を救済することの方が、たまには間違うかわからぬけれども、その方がいいんじゃないか、そういう判断をやはり恩給局長さん持ってもらわなければ困るんじゃないかと言ったことがあるんだけれども、その辺の認識は石川局長どうお考えですか。
  246. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 傷病恩給につきましては、公務傷病により心身に著しい障害を受けあるいは日常生活において相当程度の障害が生じている方々に、その障害の程度に応じて国が一定額を支給するというものでございます。傷病恩給請求者の大部分の方々がさきの大戦におきまして厳しい環境のもと軍務に精励され、その結果不幸にして戦傷を受けられあるいは罹病された方々でありまして、既に御高齢のことでもあるというような事情も考えましたときに、公務傷病との因果関係判断というのが非常に困難なものも少なくないというのが現状でございます。ただ、私どもといたしましては、これらの方々の御労苦にも思いをいたし、また国の責任におきましても十分な検診、これは医学的な検診あるいは現地での実態調査といったようなことも行いまして、困難なものでありましてもできるだけの心証が得られるものにつきましては、公的資料が仮になくても公務性を認めていこう、こういうような気持ちでもって審査に当たらせていただいているということを申し上げておきます。
  247. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 局長、本当にそれはありがとうございます。そういう気持ちでお取り組みいただけるならば、本当に救われると思うんです。  それで、これは大臣にもお聞きになっておっていただきたいんですが、私も随分そういう事件を扱って、そしてまだ残っているのも随分あるわけです。ある人の場合なんか、これは東京におるんです。そして却下却下となにされて、そして本人からも恩給局の方に、せめて一度呼んで私の話も聞いてくださいと言っている。病院のどこそこへ行けと言われてそこへ行ったって、わずか十五分も調べただけでおまえはあれだというような形で扱われて、そこで一度私の言い分も聞いていただきたいんですということを言っている。それも恩給局では呼ばないで却下をして、そのこともここでもって私は何でそんな冷たい扱いをするんだと言っている。  そうしたら今度は、これは昨年の暮れに私のところへ来た手紙で、これは四国ですけれども、これは今度わざわざ香川県のそこまで恩給局の職員の方が行ってくれているんです。行ってくれて、そしていろいろ事情を聞いてくださった。もう耳がだめなんですから、そういう点で家内をなにして話をして、ここにも書いていますけれども、そうやって何か証拠になるものを出してください、そうしたら恩給がおりるようにしますと言って帰られたんだけれども、それから後もあっちへ行ってもこっちへ行ってもどこへ行っても、それはみんなかつての上官とかそういうふうなものもなにだし、現認証明書ももらっていなかったしといって本当にギブアップしちゃって、それでも来てくれていろいろと事情を聞いてくれたということについては感謝をしながら、しかしもう戦後四十年になっちゃって、今になって証拠を出せと言われてもどうにもならないから、何とかしてほしいということを書いてきているわけです。  それで大臣、そんなことがあったりして、昨年のときに、あれは山下総務庁長官のときだと思いますが、総務庁長官決定を下すともうそれが最終決定になるわけですが、最終の総務庁長官決定で却下されてもなお不服があれば再審のあれを出してください、受け付けます、ただし、何か新しい証拠になるものだけは、柳澤さんつけて出してもらわないと切りがないからというようなことがあって、その辺については長官がお変わりになられても、そういう再審の道をお開きになっているということについては変わりがなしという判断をしてよろしいかどうか。
  248. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 変わりはございません。
  249. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 それから、申請が出されていわゆる恩給を支給するように決められたのと却下したのとの割合というようなものは、過去には半分以上が支給する形でもって、却下というのは半分以下だったんです。それがここ数年はもうずっとその率が悪くなっているという言い方もよくないんだけれども、四分の一ぐらいしか支給にならないでもう大部分が却下されてきているんですが、最近のその辺の数字がどういうふうなことになっているか、御説明できたらしていただきたいと思うんです。
  250. 石川雅嗣

    政府委員(石川雅嗣君) 昭和六十二年度におきます傷病恩給等の受け付け及び処理件数を私ども調査しているわけでございますが、旧軍人傷病恩給の初度請求、これは初めて請求してくるというのを初度請求と申しております。それからまた、かつて請求をしたけれどもその後症状がかなり増悪してきた、重くなってきたというような爾後重症、この二つをまとめまして請求件数が千四百五十件、それから前年度からの繰り越しで審査をしておりますものが九百二十件ございますので、合わせまして二千三百七十件の件数があったわけでございますけれども、このうち千七百九十九件を処理させていただきました。その内訳につきましては、給与をするということで決定いたしましたものが四百六十九件で二六・一%、それから棄却されましたものが千二百八十三件で七一・三%、それから御本人が取り下げ等をいたしまして戻しましたものが四十七件、二・六%、こんな数字になっております。  それから期間をつけて傷病恩給を支給しているケースがございますけれども、この有期の再審査が千四百二十一件新たに請求が参っております。前年度からの繰り越しが四百十件ございましたので、合わせて処理を要する件数が千八百三十一件ということでございますが、このうちの千六百六件を六十二年度に処理させていただきました。その内訳でございますが、給与決定したものが千五百十件、これは処理いたしましたものの九四%に当たっております。それから棄却いたしましたものが二十四件で一・五%、それから戻しましたものが七十二件で四・五%、こういう数字でございます。  なお、これらの審査の結果に対しまして異議申し立てができる道が開かれているわけでございますが、この異議申し立ての請求件数が四百七十五件、前年度からの繰り越し三百六十七件を入れまして処理を要する件数は八百四十二件ございました。このうち六百四十二件を処理させていただきましたが、給与決定したものが七十件、一〇・九%。それから棄却いたしましたものが五百五十九件、八七・一%。それから戻しましたものが十三件、二・〇%。それからさらにこの異議申し立てに対しまして不服がある場合に行政不服審査法によります審査請求の道があるわけでございます。この審査請求で請求がございましたものが二百五十九件。前年度の繰り越しが百七十五件ございましたので、合わせて四百三十四件の要処理件数があったわけでございますが、このうち二百十一件が処理済みとなっておりまして、うち七件が給与、これは三・三%に当たります。それから棄却が二百件で九四・八%、それから戻しましたのが四件で一・九%、以上の数字になっております。
  251. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 ありがとうございました。  大臣、今お聞きになってもわかりましたと思いますけれども、かなりみんな今はもう却下されちゃうわけだ。それで、お願いしておきたいことは、恩給局の中にも戦争に行かれた経験のある人はもうおらないはずなんです。それで、いろいろのことをこうこうしかじかでしたと書いてくるのを見ましても、それがどういうふうな情景の中でこういう事態があったんだということを想像しろと言ったって、それが無理なわけ。自分が戦争に行っていれば、そういうものが申請が出されれば、それを読んでいればどういうふうな状況だったんだというということがある程度頭に浮かぶから、またその扱いもそれなりに変わってくると思うんですが。  したがって、大臣お願いしておきたいことは、特にもう四十年からたっておりますということと、それからそういう恩給をもらってなにしようと思うならもう早目にやっているんだけれども、若いころは何というんですか元気だから、多少のことがあっても国から恩給なんかもらってもというふうな気があってむしろそういうことを遠慮しておった。それがだんだん年をとってきてそういう者が障害が起きてくるから非常に不安になって、このままで自分が死んじゃったら後へ女房子供残してどうなんだろうかという気になるから出してきますから、皆さん方の方も扱うのが大変だと思うんです、そんなもの長い年数たって。しかし、そこのところは先ほど恩給局長も御答弁なさっておりましたので、そういう気持ちでどうか扱ってあげていただきたい。疑わしかったならばむしろ支給して、それが果たして正しかったかどうかわからないけれども、むしろその方がその本人のためにもなることなんだというふうな考え方を持ってお取り組みをいただきたいということを最後にお願いをして、終わりたいと思います。
  252. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいま御指摘のいろいろな問題につきましては、私の方でも実は恩給局の方に鋭意、本当に高齢になられてそして苦しんでおられる方々に対して温かい措置ができるように最大限努力をするようにということは申しております。また、その応対に当たりましても、総務庁としてはさわやか行政サービスをやろう、真心のこもった親切な行政サービスをやろうということを提唱しておる立場でございますので、今後とも御指摘趣旨を体して対処してまいりたいと存じます。
  253. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 今の大臣の御答弁に本当に感謝して、時間がまだありますけれども終わります。
  254. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  255. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  恩給法等の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  256. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  野田君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野田君。
  257. 野田哲

    野田哲君 私は、ただいま可決されました恩給法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議日本共産党及び民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかに検討のうえ善処すべきである。  一、恩給年額の改定については、国家補償としての恩給の性格、恩給受給者の高齢化等に配意し、今後とも現職公務員給与水準との均衡を維持するよう努めること。  一、恩給の改定実施時期については、現職公務員給与改定時期を考慮し、均衡を失しないよう配慮するとともに、各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。  一、恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等を図るとともに扶助料の給付水準については、さらにその実質的改善を図ること。  一、恩給受給者に対する老齢福祉年金の支給制限を撤廃すること。  一、外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について再検討を加え適切な措置を講ずること。  一、戦地勤務に服した旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍従軍看護婦に対する慰労給付金の増額について適切な措置をとること。  一、恩給欠格者等の処遇について検討すること。  一、旧満州国日系公務員の処理問題について検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  258. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいま野田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  259. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 全会一致と認めます。よって、野田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、高鳥総務庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。高鳥総務庁長官
  260. 高鳥修

    国務大臣高鳥修君) ただいまの附帯決議につきましては、今後慎重に検討してまいりたいと存じます。
  261. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十八分散会