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1988-03-28 第112回国会 参議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員の異動  三月二十五日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     八百板 正君  三月二十六日     辞任         補欠選任      八百板 正君     久保田真苗君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         名尾 良孝君     理 事                 板垣  正君                 岩本 政光君                 大城 眞順君                 野田  哲君     委 員                 岩上 二郎君                 大島 友治君                 亀長 友義君                 古賀雷四郎君                 永野 茂門君                 桧垣徳太郎君                 小野  明君                 久保田真苗君                 飯田 忠雄君                 峯山 昭範君                 吉川 春子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  高鳥  修君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君         ─────        会計検査院長   辻  敬一君         ─────    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        的場 順三君        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        任用局長     森園 幸男君        内閣総理大臣官        房審議官     本多 秀司君        宮内庁次長    山本  悟君        皇室経済主管   井関 英男君        総務庁人事局長  手塚 康夫君        総務庁行政管理        局長       佐々木晴夫君        総務庁行政監察        局長       山本 貞雄君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   福渡  靖君        防衛庁参事官   児玉 良雄君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁教育訓練        局長       長谷川 宏君        防衛庁人事局長  松本 宗和君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁総務        部長       弘法堂 忠君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君    事務局側        事 務 総 長  加藤木理勝君        常任委員会専門        員        原   度君    衆議院事務局側        事 務 総 長  弥富啓之助君    裁判官弾劾裁判所事務局側        事 務 局 長  金村 博晴君    裁判官訴追委員会事務局側        事 務 局 長  龍前 三郎君    国立国会図書館側        館     長  指宿 清秀君    説明員        内閣官房インド        シナ難民対策連        絡調整会議事務        局長       大島 弘輔君        法務大臣官房審        議官       米澤 慶治君        外務省経済協力        局技術協力課長  飯村  豊君        文部省高等教育        局大学課長    佐藤 禎一君        文部省学術国際        局学術情報課長  西尾 理弘君        会計検査院事務        総局第一局長   疋田 周朗君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について ○(皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管総理本府、日本学術会議宮内庁総務庁北方対策本部を除く)、防衛本庁防衛施設庁))     ─────────────
  2. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  去る三月二十五日、予算委員会から、本二十八日及び三十一日の二日間、昭和六十三年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁について審査の委嘱がありましたので、御報告いたします。  この際、本件を議題とし、順次予算説明を聴取いたします。  予算説明につきましては、国会所管及び会計検査院所管以外は去る三月二十二日の本委員会におきまして既に聴取しておりますので、この際、国会所管及び会計検査院所管予算説明を聴取いたします。  まず、国会所管のうち衆議院関係予算説明を求めます。弥富衆議院事務総長
  3. 弥富啓之助

    衆議院事務総長弥富啓之助君) 昭和六十三年度衆議院関係歳出予算について御説明を申し上げます。  昭和六十三年度国会所管衆議院関係歳出予算 要求額は四百六十六億九千六百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、十億九千七百万円余の増加となっております。  次に、その概略を御説明申し上げますと、第一は国会運営に必要な経費でありまして、四百五十三億四百万円余を計上いたしております。この経費議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し十五億八千七百万円余の増加となっておりますが、その主なものは議員文書通信交通費月額六十五万円から七十五万円に増額計上したこと、その他人件費等増加によるものであります。なお、議員会館整備等調査費を計上いたしております。  第二は、本院の施設整備に必要な経費といたしまして、十三億八千五百万円余を計上いたしております。これは第一議員会館昇降機改修費、第二議員会館外装改修費、その他庁舎の諸整備に要する経費でございます。また、国会周辺等整備に必要な土地購入費は引き続き一億円計上することといたしております。  第三は、国会予備金に必要な経費といたしまして、前年度同額の七百万円を計上いたしております。  以上、簡単でありますが、衆議院関係歳出予算概要を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  4. 名尾良孝

  5. 加藤木理勝

    事務総長加藤木理勝君) 昭和六十三年度参議院関係歳出予算について御説明申し上げます。  昭和六十三年度国会所管参議院関係歳出予算要求額は二百七十九億二千二百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、約十五億四千万円の増加となっております。  次に、その概略を申し上げます。  第一は、国会運営に必要な経費でありまして、二百六十二億二百万円余を計上いたしております。この経費は、議員関係の諸経費職員人件費並びに事務局及び法制局所掌事務を処理するために必要な経費でありまして、前年度に比し約八億九千万円の増加となっております。これは主として文書通信交通費月額六十五万円から七十五万円への増額のほか、議員歳費及び議員秘書職員人件費増加等によるものでございます。  第二は、参議院施設整備に必要な経費でありまして、十七億一千五百万円余を計上いたしております。これは、六十二年度から引き続く議事堂中央塔改修費議員会館外装改修費本館その他庁舎等整備に要する経費でございます。  第三は、国会予備金に必要な経費でありまして、前年度同額の五百万円を計上いたしております。  以上が参議院関係歳出予算概要でございます。  よろしく御審議をお願いいたします。
  6. 名尾良孝

  7. 指宿清秀

    国立国会図書館長指宿清秀君) 昭和六十三年度国立国会図書館歳出予算について御説明申し上げます。  昭和六十三年度国会所管国立国会図書館関係歳出予算要求額は百十五億一千百万円余でありまして、これを前年度予算額百三十五億六千七百万円余と比較いたしますと、二十億五千五百万円余の減額となっております。これは主として国立国会図書館車庫外構工事が完了することに伴って工事費が減少したことと、前年度補正予算(第一号)におきまして、緊急経済対策の一環として輸入の拡大等に資するために追加補正されました図書館資料購入費及び科学技術関係資料費増加額相当分が減少したことによるものでございます。  要求額の主なものについて、その概略を御説明申し上げます。  第一は、管理運営に必要な経費であります。その総額は九十四億四千四百万円余でありまして、これを前年度予算額と比較いたしますと、六億七千五百万円余の減額となっております。その主たる理由は、ただいま御説明いたしました図書館資料購入費の減であります。  第二は、科学技術関係資料購入に必要な経費でありまして、五億一千七百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと、二億五千七百万円余の減額となっております。その理由は、冒頭に御説明いたしましたとおり、当該経費の前年度の追加補正分の減によるものであります。  第三は、施設整備に必要な経費でありまして、新館の整備本館改修及びその他庁舎整備に必要な経費十五億四千九百万円余を計上いたしております。これを前年度予算額と比較いたしますと、十一億二千二百万円余の減額となっております。その理由は、車庫外構工事が完了することに伴う工事費の減によるものであります。  なお、本館改修に関しましては、昭和六十三年度を初年度とする二カ年の国庫債務負担行為十二億三千六百万円余を要求いたしております。  以上、簡単でありますが、国立国会図書館歳出予算概要を御説明申し上げました。  よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  8. 名尾良孝

  9. 金村博晴

    裁判官弾劾裁判所参事金村博晴君) 昭和六十三年度裁判官弾劾裁判所関係歳出予算について御説明申し上げます。  昭和六十三年度国会所管裁判官弾劾裁判所関係歳出予算要求額は八千九百五十八万五千円でありまして、これを前年度予算額八千八百八十三万四千円に比較いたしますと、七十五万一千円の増加となっております。  この要求額は、裁判官弾劾裁判所における裁判長職務雑費裁判員旅費事務局職員給与に関する経費その他の経常事務費及び裁判官弾劾法に基づく裁判に必要な事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、主として職員給与関係経費増加によるものであります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  10. 名尾良孝

  11. 龍前三郎

    裁判官訴追委員会参事龍前三郎君) 昭和六十三年度裁判官訴追委員会関係歳出予算について御説明申し上げます。  昭和六十三年度国会所管裁判官訴追委員会関係歳出予算要求額は一億二百六十三万円でありまして、これを前年度予算額一億八十四万二千円に比較いたしますと、百七十八万八千円の増加となっております。  この要求額は、裁判官訴追委員会における委員長職務雑費及び事務局職員給与に関する経費並びに訴追事案審査に要する旅費その他の事務費でありまして、前年度に比し増加となっておりますのは、職員給与関係経費等増加によるものであります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  12. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 以上をもちまして国会所管予算説明聴取は終わりました。  次に、会計検査院所管予算説明を求めます。辻会計検査院長
  13. 辻敬一

    会計検査院長辻敬一君) 昭和六十三年度会計検査院所管歳出予算について御説明いたします。  会計検査院昭和六十三年度予定経費要求額は百十一億七千九十八万九千円でありまして、これは日本国憲法第九十条及び会計検査院法の規定に基づく本院の一般事務処理及び検査業務を行うために必要な経費であります。  今、要求額の主なものについて申し上げますと、人件費として九十九億一千三百二十四万六千円を計上いたしましたが、これは総額の八九%に当たっております。これらのうちには、会計検査充実を図るため一般職員十一人を増置する経費 も含まれております。  旅費として六億三千百七十六万六千円を計上いたしましたが、このうち主なものは会計実地検査旅費が六億三百五十一万二千円、外国旅費が一千九百三十五万八千円であります。  施設整備費として一億四千二百七十万九千円を計上いたしましたが、このうち主なものは庁舎電気配線設備等改修工事費六千四百四十四万円、宿舎関係修繕費六千九十四万五千円であります。  その他の経費として四億八千三百二十六万八千円を計上いたしましたが、これらのうちには検査の円滑な実施を図るための会計検査活動費五千八百一万一千円、検査業務効率化を図るための会計検査情報処理業務庁費五千八百五十四万八千円及び電子計算機等借料六千三百三十四万二千円、並びに会計検査充実強化のための経費二千百四万二千円及び検査手法開発のための経費九百八十三万六千円が含まれております。  次に、ただいま申し上げました昭和六十三年度予定経費要求額百十一億七千九十八万九千円を前年度予算額百十億二千九百二十二万八千円に比較いたしますと、一億四千百七十六万一千円の増加となっておりますが、これは人件費において一億五千三十六万一千円増加したことなどによるものであります。  以上、簡単でありますが、本院の昭和六十三年度予定経費要求額概要の御説明を終わります。  よろしく御審議のほどお願いいたします。
  14. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 以上で予算説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  15. 小野明

    小野明君 まず官房長官にお尋ねをいたしたいと思います。問題は、第十八富士山丸事件紅粉船長栗浦機関長お二人が朝鮮民主主義人民共和国に抑留をされている問題であります。  昨年の九月に私ども社会党代表団朝鮮民主主義人民共和国に参りました際に、この問題については日朝両国該当機関政府機関解決を図りたい、こういう共和国側言明といいますか、方針が示されたわけでございます。それを受けまして、当時の中曽根総理もこの問題解決のためにはベストを尽くします、こういう言明があっておるわけでございます。竹下総理竹下内閣の大きな課題として受けとめているという言明があっておるわけでございます。そこで、この第十八富士山丸事件、その後大韓航空機事件等が勃発をいたしまして、いろんな障害が生じたことは事実でありますが、基本的にこの富士山丸事件について政府はどのようにお考えになっておるか、官房長官からお答えをいただきたいと思います。
  16. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま御質問のありました第十八富士山丸問題の解決につきましては、小野委員におかれましても大変御苦労いただいておりまして、その点感謝いたしておるところでございますが、この時点まで円満解決に至っておらないことにつきましては、甚だ残念至極に存じておるところでございます。  念のため政府としての基本的考え方につきまして申し述べますが、この問題につきましては、私どもは拘束されておられる二人の無実は疑いないものである、こういう立場でございまして、今日まであらゆるルート、日赤ルート等含めまして考えられる種々の方途を尽くしてきたわけでございますが、北朝鮮側に対してそうしたいろんなルート早期釈放のために働きかけてきたところでございますが、申し上げましたようにまだ釈放そして本邦に帰国されておらないということでありまして、甚だ残念であります。  このような我が国としての努力、御家族の切なる願いにもかかわりませず、四年以上にわたりまして無実日本人二人を拘束しておられます北朝鮮側態度につきましては極めて遺憾であると思いつつも、なお私どもとしては全力を挙げてその解決のために今真剣な努力をいたしておるところでございます。したがいまして、政府といたしましても、前中曽根内閣以来の基本的考え方竹下内閣といたしましても踏襲をいたしまして、ぎりぎりの努力を今傾注いたしておるところでございます。
  17. 小野明

    小野明君 まあぎりぎりの努力をなさっておるということでございます。その努力は多といたしますが、この時点でこの事件についての官房長官展望といいますか、早期解決への展望といったものについてお見通しを伺いたいと思いますが。
  18. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) あらゆる方々あらゆる機関が最大の努力を払いながら今日までその糸口を見出し得ておらないということでございますので、まあ率直に申し上げまして、なかなか見通しと申されましてもこの時点でその展望について申し上げることのできないことは大変残念でございます。御承知のように、日本北朝鮮の間にはいわゆる国交がございません。したがいまして、第三国を通ずるとか、またそれぞれ心持たれている方々が積極的に対応される、こういう姿の中で円満解決に今日まで努力してきたことでございまして、我々はたゆまない努力をし、冒頭申し上げましたように、お二人の船長機関長方々がいわゆる北朝鮮考えられておるような罪状を持つということは私ども全く考えられないわけでございますので、粘り強くこの問題については対処していきたいと思いますが、御指摘にありましたように、本日直ちに展望について申し上げることができないことを甚だ残念に思っておる次第でございます。
  19. 小野明

    小野明君 そこで、今のところ展望が見出し得ない。もう四年にわたる拘束でありまして、私の出身であります福岡県には栗浦機関長の夫人が住んでおられる。また兵庫には紅粉船長の奥さん、御家族が住んでおられまして、この問題の早期解決を待ち望んでおられます。そういった御家族の心情を考えますと、私どもはいても立ってもいられないという感じがいたすところでございます。  そこで、大韓航空機事件関連をいたしまして、ことしの一月二十六日、官房長官が談話を発表されておられますね。それで、この中で政府措置と、こういうことを言っておりますが、一般的にはこれはラングーン事件等のことを考えましても、この内容を見てみますと制裁措置であることには実質上間違いがないように思います。そこで、官房長官がこの制裁措置を発表されて、口頭補足説明をされた部分がございます。その第一項でありますが、政府としては今次措置ソウルオリンピック終了時に見直す考えである、このように口頭補足説明をされておられます。これはどういうことを意味されたのでございましょうか、お尋ねしておきたいと思います。
  20. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘のように、大韓航空機事件関連をいたしまして措置を発表した折に、私から口頭説明として、ソウルオリンピック終了時に見直す考え方である、こういうことを申し述べたわけでございます。今般行われますソウルオリンピックがかつてのミュンヘンのような事故にならないように、本当にテロによってスポーツの祭典が汚されることのないように、こういうことで、このオリンピック成功のためには我が政府としても最大限の努力を払い協力を申し上げる趣旨を申し上げたわけでございますが、私が申し上げましたことは、そういうオリンピックテロ行為によって破壊されることのないように、不法行為に対しては毅然たる姿勢を示すとともに、テロ再発防止をするとの本件措置目的達成の状況、朝鮮半島をめぐる国際情勢等を総合的に勘案してその後どうするかを検討する考え方を申し述べたのでございます。何はともあれ、オリンピックということの成功について隣国我が国としても、いやしくもテロというようなことが行われるということがあってはいけないという立場からこのことを申し述べたわけでございますが、ソウルオリンピックがそれこそ成功裏に終了するということであるとすれば、このテロの問題につきましてもオリンピックに関しては行われなかったということであるとすれば、このテロ問題につきましても我々としてはいま一度その国際情勢等を判断しながら見直すこともあり得るというこ とで申し述べたところでございます。
  21. 小野明

    小野明君 社会党といたしましても、いかなる理由がありましょうともテロは断じて許さるべきではない、許せないと考えております。同時に、ソウルオリンピック成功を期待する、これに変わりはないわけでございます。  そこで、ソウルオリンピック終了時に見直す、この言葉はソウルオリンピックが無事終わればこの制裁措置解除をするという意味を含んでいるんでしょうか、いかがでしょう。
  22. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) あの制裁措置につきましては、テロ行為というものの発生につきまして日本政府としての毅然たる態度表明として、いわゆる措置としてこれを行ったわけでございますので、やはり一つの時期としてはテロ発生のことも韓国側としては大変危惧しておることでございますので、この世紀の祭典が無事に終了いたしますればその危惧も一応は解消されるということでございますので、我が方としてはこの措置についても見直しを図りたい。  しかし、先ほど申し上げましたように、韓国内あるいは半島における諸般の国際情勢というものも判断をいたさなければなりませんので、必ずしもその時点ですべて措置を終わるものとする、こういうことではありませんが、いささか希望的、あるいはぜひオリンピック成功させたい、こういう念願を込めつつ、これが無事に成功裏に終わるとすれば政府としても一応の区切りの時期ではないか、こういう趣旨で申し述べておるところでございます。
  23. 小野明

    小野明君 韓国方針もあるでしょう。朝鮮半島の緊張を緩和する、自主的な平和統一をなし遂げる、これが一番望ましいことであろうと思いますが、今長官がおっしゃった区切りをつけるといいますか、見直す中には、やはりこの制裁措置については解除をするということも当然含まれているんだと、このように解釈をしてよろしいですか。それは全然考えていないということですか。いかがでしょう。
  24. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 重ねてでございますが、日本政府としてのこの措置の発表ということは、国際的なテロに対して我が政府の基本的な姿勢表明でございまして、当面危惧することはこのオリンピックのことについてもそうした事態が発生することは全く我々としてはこれは避けなきゃならぬ、こういうことでございまして、その措置も発表いたしておることでございます。そういう意味で、その時点でどうするかということは今の時点では申し上げることはできませんが、そういうことになってこの措置につきまして解除ができるような諸般の情勢が生まれることをひたすら期待をいたしますと同時に、一つの区切りとしてはその時点で見直すこともあり得る、こういうことだろうと思います。
  25. 小野明

    小野明君 非常に微妙なおっしゃり方でありますが、やっぱり長官の頭のどこか隅には解除ということもあり得るということでございますか。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) この朝鮮半島がそれこそ平穏な状態として国際情勢の中で推移のできるということを望みつつ、私どもといたしましては、この措置につきましてもこうした措置を続けていくことのない状態を期待しつつ、この日本側の措置については対応していくということでございます。
  27. 小野明

    小野明君 口頭補足説明された第三項でありますが、我が国国内の心ない者により在日朝鮮人等に対する嫌がらせ等卑劣な行為が行われることは断じて容認されるべきでなく、かかる行為に対し政府としては厳しい態度で臨む考えであるというのが第三項で述べられているわけであります。これについて私が聞き及ぶ範囲においては、かなり在日朝鮮人の子弟については嫌がらせあるいは暴力行為等行われているやに聞いておるところでございます。これらについて、きょうは法務省もお見えでありましょうが、いかなる措置をとってこられたか、ひとつその実績があればここでお答えをいただきたいと思います。
  28. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 法務省の人権擁護機関は、外国人に対する差別を含め、あらゆる差別が許されないとして広く啓発活動を行ってきているところでございますが、昨年来日本に在住する朝鮮の人たちに対する嫌がらせや暴行等が発生していることは甚だ遺憾に思うところでございまして、各法務局、地方法務局と連絡を密にしつつ情報の収集に努めているところでございます。  ところで、現在までのところの情報等によりますと、いずれもその行為者が判明いたしておりませんし、また人権が侵犯されたとして当局の関係機関に対し具体的に申告をしてこられた方もございませんために、具体的な案件として対処したことはございませんけれども、今後ともさらに外国人に対する偏見や差別の不当を訴える啓発を深めていき、また関係機関とも連絡をとりながら、具体的な案件が明確になれば適宜対処していきたいと考えております。
  29. 小野明

    小野明君 そうすると、嫌がらせや暴力行為を受けたという申告があれば、厳しくこれに対処をするということでございますね。
  30. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) そうでございます。
  31. 小野明

    小野明君 そこで、外務省アジア局長お見えだと思いますが、去る二月四日の衆議院予算委員会竹下総理が、家族の生活への十分な配慮を行うということを答弁されておるのでありますが、これについてはどういう措置をされてきたのか、お話しをいただきたいと思います。
  32. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 紅粉船長及び栗浦機関長の留守家族の生活の支援につきましては、御家族が現在置かれておられる状況にかんがみましてどういう方策をとるのが最善かということで、ただいま委員指摘竹下総理国会におきます御発言の以前からもいろいろ御相談しておりましたが、特にこの御発言後関係県及び市と協議を進めております。私どものアジア局の参事官も現地に派遣をいたしまして、直接県及び市の当局ともお話し合いを行い、また東京におきます関係県の事務所の方々ともお話し合いを続けているところでございます。方法といたしましては、いまだ確たる方針というものが決まったわけではございませんので、ここで御報告をする状況にはございませんけれども、いずれにせよただいま御指摘竹下総理国会におきます御答弁を踏まえまして、この御支援については真剣にお話し合いを続け、かつ対処をしてまいりたいと思っております。
  33. 小野明

    小野明君 去る三月の五日に、これもアジア局であると思いますが、渋谷参事官が福岡の栗浦機関長夫人宅並びに福岡県の奥田知事あるいは福岡市の助役等にお会いになった。外務省の渋谷君はたびたび福岡に行っておられるようでありますが、その際に総理が言明された家族の生活への十分な配慮ということについては県、市と外務省で協力して考えたい、こういうことを渋谷君が言っておりますね。私が聞いたところでは県や市はそれに対応して何らかの措置を、生活が非常に苦しい栗浦さんであり紅粉さんであるわけですから、考えなきゃいかぬと思っておるけれども、外務省が何らまだイニシアをとらない、積極的な方策を示さないということのようであります。  だから、外務省の渋谷参事官という人が来て、制裁措置に至った説明その他いろいろなさって家族への援護措置をやりますと言っておるにもかかわらず、何らの措置がいまだなされていないということは非常に私は遺憾に思いますが、このことについては外務省がイニシアをとってそこまで言っておるんですから、どうしてしゃんとおやりにならぬのです。
  34. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま御指摘の渋谷参事官を福岡及び兵庫の方にも派遣いたしまして、関係地方自治体当局とお話し合いをさせて、先ほど申し上げましたように、引き続き協議を続けている状況にございます。その間どういうことができるかということにつきましては、委員も御高承のとおりいろいろ制度的な問題等もございますので、そういう制約等も踏まえながら、どういう形で私ども及び県及び市が協力をして進めていくかということでお話し合いを続けている状況でございまして、イニシアチブをとらないというお しかりがございましたが、私どもとしても真剣に対応しているつもりでございますので、本日委員からも重ねて強い御指摘があったということも踏まえまして、なお一層努力を倍加したいと考えております。
  35. 小野明

    小野明君 さらに渋谷参事官は、大韓機事件制裁の報復措置朝鮮民主主義人民共和国との交渉は中断をしておるが、第三者を通じ二人の釈放への努力をしておる、こういうことも家族に伝えておる。それから、今言った家族に対する援護措置もやりますよと、こう言っておる。家族にしてみれば、外務省の高官が来てそういうことを言われる以上は、第三国を通じて確かな交渉をおやりになるだろう、あるいは家族の私たちへの援護措置というものを考えてくれるだろうと、希望と期待を持っておられることは事実なんですね。それがいまだに援護措置の方は実っていない。  そこで一つお尋ねをしたいんですが、官房長官の御答弁の中にもございましたが、第三者を通じて釈放への努力を続けていく、これは具体的にどういうことなんでしょうか。
  36. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これは先ほどの官房長官からの御答弁の補足ということになるかと存じますけれども北朝鮮との間では御高承のとおり外交関係を有しておりませんので、直接間接にいろいろな話し合いをいたします場合にも、日赤等のチャンネルを通ずるないしは先ほど官房長官から御言及のありました第三国にもお願いをするということで、私どもとしましては最善と考えます意思疎通を図っております。これが一体どういうチャネルでどういう人ないし国に頼んでいるのかということにつきましては、お願いをしている先のお立場もございますし、それから北朝鮮側のお立場もありますので、私どもの方からこれを明らかにするというのは差し控えさせていただきたいと存じます。  要は、よい結果を生むということを目的にいたしておりますので、いまだ結果が生まれていないのは非常に残念なことでございますが、この折衝に悪影響を及ぼしかねないような今までの折衝経過の公表等は、私どもとして差し控えさしていただくのが一番適当ではないかと存じている次第でございます。
  37. 小野明

    小野明君 第三者というのは日赤ルートということは官房長官もおっしゃった。この大韓航空機事件が起こります前にも、国交がありませんから公式折衝ということにはならないかと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国とはどこかの場所で折衝をされてきたにはきたんでしょうか。
  38. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) その点につきましても、非常に恐縮でございますけれども、日赤等を通ずるということ以上には、私どもとしてそれ以上に立ち入ってどこでどういう形で接触をしているかということについては、相手側との約束もございまして明らかにしないということで対応しておりますので、よろしく御理解を得たいと存じます。
  39. 小野明

    小野明君 そうすると、その第三国を通じての折衝というのは現在も行われていると、このように確認をしてよろしいんですか。
  40. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) その点は、先ほど官房長官が御答弁なさいましたように、政府として全力を挙げて対処しているということでお酌み取りをいただければと存じます。
  41. 小野明

    小野明君 官房長官に戻りますが、官房長官も第三者を通じて云々ということはおっしゃった。制裁措置前あるいは制裁措置後も日赤ルートあるいは第三国を通じて折衝は行われておる。名前を言えと私は申し上げそれは言えないと局長がおっしゃるんだが、第三者を通じてこの富士山丸事件早期解決への努力はおやりになっておると、このように確認をしてよろしいんでしょうか。
  42. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) あらゆる手段を講じて政府としてはなせることはすべてやっておりますというのが答弁だろうと思います。  そこで、先ほどアジア局長から御答弁申し上げましたように、外交関係のない相手国に拘束をされておるという問題の解決でございますので甚だ困難な状況でございますが、先ほど申し上げましたあらゆる手段の中には、それこそあらゆる手段でございまして、北朝鮮と外交関係のある国もあるでしょう。その国がまた我が国との関係がある場合もあるでしょう。そういった意味であらゆるチャンネルを通じて今対応しておるところでございますが、まあしかしこのことも含めて本件はまことに微妙な問題でございますので、ひとつお許しをいただいて、今の時点では政府としてはあらゆるチャンネルを通じて努力を傾注しておるということで御理解をいただければ大変ありがたいと思います。
  43. 小野明

    小野明君 もう一つ官房長官にお尋ねをしておきますが、外務省の渋谷君が現地福岡県にいらっしゃった。そのときには明確に第三者を通じて交渉しております、それから家族の生活への配慮についても県、市と外務省で協力して考えたい、こういうふうなことを伝えておるわけですね。栗浦機関長の奥さんにも伝えた。紅粉さんにも伝えた。ですから、紅粉さんも栗浦さんの奥さんも家族も非常に大きな期待を持っているわけですね、援護措置についてあるいは第三者を通じての交渉という。ところが、援護措置の方は何ら実現をしていない、そういう事実なんですね。これから一生懸命やりますというのが局長の答弁なんですが、これについては官房長官どうですか。どういう金の出し方があるか知りませんが、非常に苦しい生活を余儀なくされていることは事実なんでありまして、今までの、渋谷参事官が行って空手形を現地で発行してきて何ら実がない、こういうことになっているわけですね。  それで、渋谷君が行ったときに見舞い金などを出すというようなことでもあれば別ですが、そういうことは何もない。家族は期待しているにもかかわらず空手形ばかり発行しているという印象を私は受けるわけなんです。そこで、ひとつ実のあることを現地には言ってもらいたい、また措置をしてもらいたい、こう思います。家族への援護措置について、現状は今局長が言うように何もしてないんですが、何とかここは官房長官考えられませんか。
  44. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) いずれにしても、一家の支柱を失ったということではありませんが、今実質的には御主人はおらないわけでございまして、留守家族としては大変厳しい生活環境に置かれておることは重々承知をいたしております。そういった意味で、渋谷担当官がみずから政府考え方も、あるいはまたその援護措置につきましても、誠意のある気持ちをお伝えしたことでございますので、御指摘のように言葉だけでこれを終わってしまってはいけないわけでございます。ただ、いろいろ制約される法的な面もあるようでございますので、そうしたものは一日も早く解消しつつ、特にこの問題については県とか市とか地方自治団体も非常に深く憂慮しておるということでございますので、国はもとよりでございますが、実質的にそういう方々に現場で援助の手を差し伸べることができるのは地元の自治団体でもあるわけでございますから、十分督励をいたしまして、実りあるものにいたすようにさらに努力をしてみたいと思っております。
  45. 小野明

    小野明君 家族は生活の不安あるいは抑留されている御主人の不安におののいているわけですね。そこで、外務省の渋谷参事官が行ってやってもいないことを報告をする、あるいはやりもしないことを言う。こういうでたらめな雲をつかむような話をしに行ってはいかぬわけでして、その裏づけを政府としてはきちんとやっぱりやってもらいたいと私は思いますが、官房長官、その点は超法規的な措置考えられるかと思いますけれども、再度ひとつ実のあることをおやりになっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。総理もこういう答弁しておるんですから、いかがでしょうか。
  46. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 総理も憂いをともにしておるということで答弁もいたしておることでございますから、その趣旨を生かすということで渋谷参事官も現地に赴いたんだろうと思います。そ のときに留守家族にどういうお話をされたか詳細の一部始終を存じませんので、あるいはおしかりをいただく点があっての今御質疑になっておることだろうとは思いますが、しかし、いろいろのルートを通じていたしておりますことにつきましては、重ねてでございますが、その詳細を明らかにしつつ交渉のできるという相手方でもございませんので、やはり一番長い間渋谷参事官もこの問題に取り組んでおられることでございますので、いささかも参事官として心のないことを申し上げておることではなかろうと思います。しかしながら、この問題は極めて重要でございますので、御指摘にありましたようなことを十分受けとめながら政府としては対処いたしていきたい、こう思っております。
  47. 小野明

    小野明君 政府の高官が行って空手形を発行してくるということなんかは許されないと思いますよね。第三者を通じて交渉しているならしていると、きちっとした交渉を。やっぱり実績を踏まえた上で言ってもらわないと困る。渋谷参事官というのはここでは申し上げかねるようなことを家族の前で言っておるんですよ。そして、朝鮮民主主義人民共和国側との交渉についてもちょっとけしからぬことをいろいろ家族には言っておるのでありまして、非常なやっぱり政府に対する不信がございます。だから、今後家族に伝えるというならば、やってもいないことは言わない、言ったことはきちんとやる、こういうことを実行してもらいませんと、現地では外務省、政府に対する不信がいっぱいであるということを私は申し上げておきたいんです。  それから、官房長官、時間の御都合がおありになるようですが、談話の中には北朝鮮という言葉ばかり書いてありますね。新聞等の報道では正式に朝鮮民主主義人民共和国というふうに書いてある報道ばかりなんですが、どうして朝鮮民主主義人民共和国と正式な名前で朝鮮民主主義人民共和国を呼ばなかったんですか。
  48. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) この国名の問題はこれまでもよく国会で御提議がございましたので便宜私から御説明を申し上げますが、北朝鮮と呼びます場合もそれから朝鮮民主主義人民共和国と呼びます場合も、国会では双方使っております。例えば韓国の場合も、通称韓国韓国と言っておりますが、正式の名称は大韓民国ということでございまして、それ以上の深い意味はございません。
  49. 小野明

    小野明君 そうすると、朝鮮民主主義人民共和国という正式名称であるということは認識なさっておるわけですね。
  50. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいままでも国会の場でそのような形で朝鮮民主主義人民共和国という名前を呼んで御答弁した例もございます。
  51. 小野明

    小野明君 そこで法務省にお尋ねをしたいんですが、紅粉、栗浦両君が朝鮮民主主義人民共和国の法律に従って教化労働刑十五年を付されましたね。これについて社会党としては、残された家族の心情も考え早期にこの問題の解決努力をされたいと、朝鮮労働党に昨年末の十二月二十六日に電報で要請をしたんです。その際、早速に十二月三十日ピョンヤン発で朝鮮労働党中央委員会名で日本社会党中央執行委員会あてに返電が来ております。これは原文ともどもお上げしていると思います。これはお読みになったと思いますが、この中で、「日本政府は一方的にわが青年を仮釈放する不当な措置を講じました。」――これは閔洪九のことだと思います。この措置をとったので、今まで紅粉、栗浦両君は司法の手に回っておったんですが、裁判の進行をとめられておったんですね。ところが、仮釈放をしたので、こういう不当な一方的な措置日本政府がとったので、共和国においても「一審裁判を行わなければならなくなりました。」、こういう返電の内容ですね。閔洪九君を仮釈放した、これはどういう理由、経緯があっておやりになったんでしょうか。
  52. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 今委員指摘の仮釈放の問題でございますが、正式には仮放免と申しますのでそういうことでお答えさせていただきますが、閔洪九の仮放免は、本人に対する収容が四年にわたりまして異例の長期間になったということ、そのほかにその収容期間中に本人が心身状態が余りよくございませんで、そういった点等を考慮いたしますと、これ以上収容を継続することは人道上問題ではなかろうかというような判断に至りまして仮放免いたしたわけでございまして、朝鮮の方々の御指摘がけしからぬことであるという御指摘のようではございますけれども、我々といたしましては本人の人道上やむを得ない措置ということで放免させていただいたわけでございます。
  53. 小野明

    小野明君 そうすると、仮放免ですか、これをおやりになって、現在はどういう状態に置かれているんでしょうか。
  54. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) まず、委員御承知と思いますけれども、とりあえず仮放免制度につきまして一般的にお答えした上で、閔洪九の現在の地位について言及したいと思います。  この仮放免制度と申しますのは、強制退去手続進行中、つまり強制退去手続の相手方、つまり対象者として閔は現在もその対象者でございまして、その手続中に、先ほど申しましたような特殊な事情がございまして収容を継続することができない、困難だというような判断から仮放免を特にするということが制度になってございます。したがいまして、閔が仮放免されたとはいえ、強制退去手続は現在継続中、こういうふうに御理解いただきたいわけでございます。  これをよく似た制度と比較してみますと、刑事手続におきます保釈というようなものと同一視できるかと思います。そこで、仮放免いたします場合には、当然のことながら指定住居を決めたり、それから身元保証人を置きまして本人が自由な行動をとらないように、つまりどこへでも逃げていけないようにというような諸条件を定めて、日本政府がその行動を管理しつつ一定の場所におらせるということなのでございます。したがいまして、閔洪九氏自身を直ちに日本から出国させるとかそういうふうなことではございませんで、退去強制手続を今後とも進めてまいりまして最終的にはその結論を出すということになりますし、途中で逃亡いたしますとこれを再収容するということもまたあり得るわけでございます。
  55. 小野明

    小野明君 強制退去をさせる場合に、相手の国が特定できますか。
  56. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 閔のケース自身についてはまだ確定したことは申し上げられませんが、一般論を申し上げますと、退去強制の対象者の意思によりまして相手先、国が決まっていくということが一般のやり方でございます。
  57. 小野明

    小野明君 これは非常に微妙な質問になるかと思いますが、閔君の意思を尊重するという御答弁ですが、閔君は今どういう意思を大体持っておられるんでしょうか。
  58. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) その点につきましてこの段階で申し上げるのは非常に微妙な問題でございまして、本人の意思を最終的に確認するまでには至っておりませんので御答弁は差し控えさせていただきますが、先ほど一般論で私は申し上げた次第でございます。
  59. 小野明

    小野明君 強制退去という名前がつく以上は、いわゆる朝鮮民主主義人民共和国に抑留されている、これとの関係というものもまたこれ考えられる要素ではなかろうか。国の意思によって強制的に退去させるんですから、本人の意思というものが一つ非常にあるでしょうけれども、強制という以上は意思を超えるものがあるんじゃないでしょうか。いかがですか。
  60. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) また一般論で恐縮でございますが、強制退去と申しますのは、本邦外へ強制的にほうり出すと言えばわかりやすいかと思います。そういう手続でございまして、ただその場合に本人が行き先がないということでは人道上非常に問題でございますので、強制的に我が本邦の領域から退去させる際には、相手先国といいますか、本人が行くことのできる国をある程度特定して出すというのが一般でございます。
  61. 小野明

    小野明君 強制退去という以上は、やはり日本 の国の意思ということも働くことがあるわけですね。それはいかがですか。
  62. 米澤慶治

    説明員(米澤慶治君) 委員指摘のとおりでございまして、我が国の主権の発動の一環としてやるわけでございます。
  63. 小野明

    小野明君 そうですね。  そこで、アジア局長に再度尋ねますが、この朝鮮労働党の中央委員会からの返電でありますが、この返電では、「富士山丸問題を政府間の協議を通じて一日も早く解決されるよう日本政府に要請するより積極的な努力を傾けるとの意思を表明されましたが、」――これは私どもですね、「われわれは貴党のこうした活動が良い結果をもたらすものと思います。」と、こう終わりの方に書いてありますね。「われわれも日本政府のこれからの態度を注視しながら、それに見合った努力をしたいと思います。」と、こういうことですね。ですから、私はこの返電で見る限り日本政府の対応次第である、先ほど二人の抑留は人道問題であると、私もそう思いますが、日本政府のこれからの出方次第でこの問題は解決をする、こういうふうに私は見るんですが、責任者である局長はどのようにこの問題を見ておられますか。
  64. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 私ども立場は冒頭に官房長官から非常にはっきり申し上げたとおりでございまして、この第十八富士山丸船長及び機関長について、この二人の無実というものは疑いのないものであるということは、私ども政府のみならず御承知のとおり日弁連におかれても独自の調査をされてその旨をはっきりと結論づけておられます。そういう状況下で、無実の者を四年余りにわたってゆえなく拘留をされているということは非常に遺憾であるというのが第一でございます。  第二番目は、非常に遺憾な状況でございますが、人道的な見地に立ちましてこのお二人の一日も早い釈放を確保いたしますために、先ほど来申し上げておりますようにいろいろのチャネル、方途を通じまして北朝鮮当局側にその釈放の働きかけをしているというのが私ども立場でございまして、今委員がお読み上げになりました日本政府のこれからの態度いかんということについては、私ども態度は非常にはっきり明確にしておりますし、国際的に見てもどこに持っていっても恥ずかしくない態度であるというふうに考えております。
  65. 小野明

    小野明君 直接外務省がこの問題については対処をされておるわけですが、本当に真剣に誠実に北朝鮮と交渉をしてきたのかどうか、あるいは第三国を通じておやりになってきたのかどうか、またはおやりになっているのかどうかというところに、私は非常に今疑問を感ずるんです。というのは、渋谷参事官が栗浦さんの家族を訪問されたときも、日本政府としては大変これは迷惑しておるんですと、我々としてはこの事件はいつでもほうり投げていいんですよというようなことをおっしゃったこともあるんですよ。酒を飲んでの放言ということではなくて。飲む場所ももちろんないでしょうけれども。  ですから、今後、局長、現地に行かれる場合は、渋谷君もそういう日本政府が無責任な態度をとっておるというような言辞を弄することがないように、きちっとやっぱり指示をしておいてもらいたいと思うんです。今後ともこの問題については人道問題、竹下内閣の重要な課題であるというふうにお考えになっている、それが政府意思であるとすれば、やはり誠実な伝え方というか接し方というか、そういうものを特に私は要求しておきたいと思うんです。だから、今後の外交折衝においても、してもいないことを言う、また口で何ぼ言っても中身が何もない、こういうことにならぬようにきちんと私はしてもらいたい、このことを局長に申し上げたいんですが。
  66. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これは渋谷参事官に限りませず、お二人、栗浦夫人及び紅粉夫人が御上京の際は私もお目にかかりまして御説明を申し上げておりますし、委員も御承知のとおり、それ以前には外務大臣も直接お会いになっていろいろとお話を聞いておられる状況にございます。渋谷参事官の現地における発言についての御注意がございましたが、同人も直接の担当者としていろいろ心を砕いておりまして、非常に誠実な男でございますから万そのような誤解を招くような発言があったとは思いませんが、何しろ四年有余にわたって御主人が拘留をされておられる境遇にあられるので、発言等をする場合には十二分に意を用いよという御注意は拝聴させていただきます。
  67. 小野明

    小野明君 最後に局長に一つ。  朝鮮労働党の返電に朝鮮民主主義人民共和国がどう考えておるかということがよく出ていると私は思うんですね。ですから、今後ともこの抑留されている二船員の釈放のために、この問題解決のために、先般宇野外務大臣にも私はお会いをしまして要請をしておったんですが、ひとつ誠実で積極的な努力をしていただくように要請をしたいと思いますが、よろしいですか。
  68. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 先ほど官房長官から御答弁ございましたように、できるだけの力を尽くして方途を探究して努力を続けたいと存じております。
  69. 小野明

    小野明君 それでは、外務省、法務省はこれで終わりましたから、結構です。  瓦長官にお尋ねをいたしたいと思います。  昭和六十年の九月に閣議決定されたいわゆる中期防、六十三年でその三年目に入りました。六十三年度防衛費は大蔵原案の段階からGNPの一%を突破しております。最終的には三兆七千三億円、対GNP比一・〇一三%に相なりました。昨年度もGNPの一%枠は破られた、撤廃されたわけでございますが、しかしGNP一%枠はその精神を尊重する、こういうことを言ってはおられますけれども、もう政府内では一顧だにされていない状態ではないのか、こう考えざるを得ないんです。  防衛庁長官は、長い間我が国の防衛費の節度として存在してきたGNPの一%枠、こういう単年度の歯どめについてどのように認識をされておるのか、まず伺いたい。
  70. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 防衛力整備はそのときどきの国を取り巻く国際情勢並びに経済財政事情等を総合的に勘案しながらこれを行うべきものである、かように考えるものでございますし、また現在中期防におきましても五年間の防衛力整備の内容、所要経費を明示いたしまして、この中期防の枠内で引き続き節度ある防衛力の整備、このことに取り組んでおるわけでございます。  私は、心構えといたしまして厳しく抑制をし、すなわち防衛力を節度あるものにしてまいることは重要なことであると、かように考えておりますし、また昭和五十一年十一月の閣議決定の精神、これもさようなものであるというように理解をいたしておりまして、今後ともかような心構えを持ちまして取り組んでまいりたいと考えておるものでございます。
  71. 小野明

    小野明君 そうすると、単年度の歯どめでありましたGNPの一 %枠、この問題はやはり重要なものであると、こういう御認識はあるわけでしょうか。
  72. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 大綱におきまして平時から保有すべき防衛力の水準、さらに限定的な小規模な侵略に対処し得る能力を持つと、こういう中で中期防に取り組んでおるわけでございますが、私が今申し上げましたように、その水準を確保するために節度ある防衛力の整備、この五十一年の閣議決定の精神もさようなことを言っておるわけでありまして、かように理解をいたしまして、極力抑制していくという心構えで今後取り組んでまいりたいと。整備計画は中期防、これを誠実になし遂げる努力をすることがまた私に与えられた責務でもあると、かように考えておるところでございます。
  73. 小野明

    小野明君 どうもやっぱりお尋ねしておることに真っ正面からお答えがないんですが、この中期防が十八兆四千億という多額の経費を伴っておりますね。これを必要としておる。これは防衛庁が今まで大綱の水準達成ということを金科玉条とし て、質も量もということで正面兵器をそろえようとしているからにほかならぬと私は思うんです。そうして、その結果一体どのくらいの防衛力になるかについては、昨年私が当内閣委員会でただしました際にも的確な答弁がありませんでした。具体的には明らかにされておらぬのです。今年度見てみますと、七千二百トンのイージス艦の経費、あるいはOTHレーダーの導入、この調査費を計上しておられる。ますます強大なプロジェクトが打ち出されてきております。これを見ますと、一体どこまでやれば防衛庁の言う大綱水準に達して満足するのであろうかと、国民は大きな不安を持って予算審議を見ておると思うんです。  そこで、長官から大綱水準の防衛能力とはどのようなものか、どこが限界であるのか、ひとつ明確な御説明をいただきたいんです。
  74. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 量的には別表に示される規模を備えるとか、あるいは質的には諸外国の技術的水準の動向に対応するものとか、かようなことは大綱並びに別表に述べるところでございますが、限定的、小規模な侵略の具体的内容、これは諸外国の軍備の動向であるとかあるいは技術的水準の動向、こうしたことによりまして変動するわけでございますので、こうしたことを従来から申し述べるておるわけでございます。今申し上げましたように、別表に示す装備におきましても諸外国の水準等を勘案しながら弾力的なものも踏まえておる、かように申し述べさせていただいておるところでございます。
  75. 小野明

    小野明君 大綱別表の水準にと、こういうお話ですが、別表の枠を外すとか水準を見直すとか、いろいろな見方が出てきておるわけでございまして、長官はこの大綱についてどのようにお考えであるのか、特に将来変更するおつもりがあるのかないのか、見直す必要を感じておられるのかどうか、その認識をひとつお示しいただきたいと思います。
  76. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 大綱の見直しの問題でございますが、大綱の前提とする国際情勢等に変化がない限り、私は大綱の基本的枠組みを変更する、かような必要はないと考えております。
  77. 小野明

    小野明君 そうすると、国際情勢が変化をすれば当然大綱は見直さなければならないということに通ずるわけですね。そこで、国際情勢に変化がなければというお話ですが、もし国際情勢に変化ありとすれば大綱見直しを必要とする国際情勢の変化というものについて長官の御認識がなければならぬと思うんですが、それはどういう御認識でしょうか。
  78. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 東西いわゆる米ソ両大国の対峙しておる現在の国際情勢であるとか、あるいは私今国際情勢等と申し上げましたが、さような問題を検討いたしまして、基本的にその枠組みが大きく変わるものでなければ大綱を変更する必要はないと、かように考えておるわけでございます。
  79. 小野明

    小野明君 私は、米ソのINF条約問題あるいは戦略核兵器の半減問題、いろいろ困難もあるようですが、そういった国際情勢は緩和をする状況にこそあれ大きく厳しく変化をするという状況にはないという見通しを持っております。この辺は長官はどうでしょうか。
  80. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) INF後の米ソ間におけるさらなる交渉が通常戦力を初め各分野にわたるわけでございましょう。いずれも複雑にして困難な話し合いになるというようなことで注目をいたしておるわけでございますが、通常戦力分野におきましての軍事バランスというようなことを私どもはこのポストINFにおきましても考えていかなければなりませんし、こうした環境というのは極めて冷厳な現実でもあるわけでございます。こうした中で、米ソ間の交渉をさらにしっかり見守っておるということが現在の状況ではございますが、先ほど来申し上げておりますとおり、東西の対峙というこの関係は依然として続くというぐあいに認識をしておるところでございます。
  81. 小野明

    小野明君 ところで、こういうことについて質問をしておればとどまるところがないわけですが、長官はポスト中期防についてどのようにお考えでございましょうか。今後の策定手順、基本的なお考えを伺いたい。
  82. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 予算委員会初め各委員会で申し上げてきたところでございますが、中期防後の昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方について、中期防終了までに改めて国際情勢、経済財政事情等を勘案いたしまして、専守防衛等の我が国の基本方針のもとで決定を行うべきものであると考えておるわけでございます。現在その具体的な方針について述べられる段階ではございませんが、私といたしては、長期的な視点に立って計画的に進めるべきと、かような観点から現在の中期防のような中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましい、さらに安全保障会議にお諮りした上で年内にその検討に着手してまいりたいと、かような考えを述べさせていただいておるところでございます。
  83. 小野明

    小野明君 そうすると、年内にポスト中期防については策定をなさると、こういうことでございますか。
  84. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ポスト中期防と申しますのは、現在の中期計画が昭和六十五年までのものでございますので、六十六年度予算を編成する時期までにつくらなくちゃいけないというように考えておるわけです。したがいまして、そのための基礎作業その他をやらなくちゃいけませんし、そのためにはまず次期計画というものは例えば何年計画にするのかとか、そういった枠組みをお決めいただかなくちゃいかぬ。そういった御論議を年内にも安全保障会議等でやっていただきたい。そういうものが決まりまして、防衛庁としてもそのための準備作業というものを開始し、少なくとも六十六年度予算が編成されるまでの時期には中期的な計画というものをぜひつくりたいというように考えておる次第であります。
  85. 小野明

    小野明君 そうすると、ポスト中期防についてはその長さあるいは基本的な構想は今年中にお決めになるということでございますか。
  86. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 少なくとも計画の期間であるとかそういった枠組みについては政府としてお決めいただき、内容についてはその後まだ二年ほどございますのでその間にいろいろ検討され、安全保障会議あるいは閣議等でも十分審議をされると思いますが、そういったことを含めて二年間ぐらいの期間が要るのではなかろうかというように考えている次第でありまして、決して本年度中に一つの方向が決まってしまうとか、そういう内容的な方向が決まるというふうには考えておりません。
  87. 小野明

    小野明君 さっき防衛局長は、長官もですが、基本的なものは今年中に決める方向だとこういうふうにおっしゃったんですが、そのように聞きましたが、いかがなんですか。
  88. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私の御答弁が十分でなかったかと思いますが、まず大事なことは次期の中期の計画をつくるかつくらないかという方針を決定していただく、つくるとすればそれは何年計画にするか、例えばローリングをさせるのかさせないのかとか、そういうことも含めましてお決めいただかなくちゃいかぬと、それでないと作業に取りかかれないという意味で申し上げました。
  89. 小野明

    小野明君 今防衛庁に防衛改革委員会というのが置かれておりますね。ここに洋上防空体制研究会、これは防衛局長が座長になっておられる。陸上防衛態勢研究会、これも防衛局長が座長になっておられます。これの現在までの活動状況、検討内容、これについて御説明がいただきたい。
  90. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まず洋上防空体制研究会の方から申し上げますが、本件につきましては、現在実施中の五カ年計画、中期防衛力整備計画の中で洋上防空ということが取り上げられておりまして、その一環として例えばOTHレーダーとか、あるいはイージス艦と申しますか、艦艇に搭載する対空ミサイルの検討をするというようなことがございます。そういったことが書かれてございますので、洋上防空という大きな枠組みの研究をいたすと同時に、この五カ年計画中の実施す るかしないかを決めなくちゃいけません今申し上げたOTHレーダーの可否なり、あるいは艦艇に搭載する対空ミサイルをどうするかという点の検討につきまして、まず研究会で十分な研究をしたわけでございます。その結果、洋上防空というものを考える場合に広域の早期探知能力というものが必要である、そのためにOTHレーダーというものが非常に有効な手段であるというところまでは検討が進みました。あとはOTHレーダーを我が国が仮に持つ場合にしかるべき場所があるだろうかどうだろうかといったようなことが残っておるわけで、この点については御承知のように六十三年度予算調査費をお願いをしておるという状況であります。その結果によってさらに採否を決めたいというふうに考えておるわけであります。  一方、艦艇に搭載をするミサイルシステムにつきましては、ターターシステムなりターターの改造型のシステム、あるいはイージスシステム、あるいはそれらのいろいろな組み合わせ等について検討いたしておりまして、イージスのシステムが最も経費効率がよいということで、今年度お願いをしておるという状況のところまで進んでおるというのが現状であります。  一方、陸上防衛態勢研究会と申しますのは、陸上自衛隊の編成というものが御承知のように昭和三十六年以来約二十数年間、三十年近くにわたりましてほとんど基本的な編成は変えていない。十八万、十三個師団体制ということで進んでおります。その間、世界の軍事技術なり軍備の動向というのは非常に変化をいたしております。そういった中で、日本の陸上防衛を全うするためにどういうあり方がいいか、能力が不足したからといって師団をふやすとかいうことは非常に困難でございますので、どういう形で改編をしていったらいいか、あるいは今後の世界の軍備の動向がどうなっていくかということのまだ基礎的研究をいたしておる次第でございます。
  91. 小野明

    小野明君 今お話を承りますと、ポスト中期防については長官は次期安全保障会議で情勢論議などからと、こういうようなお話もございました。防衛局長はやるかやらぬか基本的な論議あるいはその期間、こういう非常に悠長なことをおっしゃったわけですが、実際には今局長説明された防衛改革委員会あたりでもう次期中期防の実質的な検討が行われているのではないのかということが感じられるわけです。  報道によりますと、もう御存じと思いますが、次期中期防では整備の重点がこれまでの海空から陸に移行する、その際の陸上防衛戦略は内陸持久・反撃戦略から前方対処・早期撃破戦略へ転換をする、また引き続き洋上・本土防空を充実強化する、その結果大綱の別表の修正だけでなくて大綱見直しにつながると見られる、こういったことが陸上防衛態勢研究会でまとめられたと、こういう報道がもう既になされておるわけです。これは事実なんでしょうか。
  92. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 報道の一々について私コメントする立場にございませんが、少なくとも私陸上防衛態勢研究会の座長も務めておりますので、陸上防衛態勢研究会でその種報告があったという事実は全くございません。  なお、中期防次期計画についての内容がもうできてしまっているのではないかというお尋ねでございますが、それぞれの部門それぞれの立場においていろいろな研究をすることはもちろんあろうかと思いますけれども、先ほど申し上げたように、これから我々にとって必要なのは、次期中期計画と申しますとこれから八年後に、仮に五年計画とすれば八年後ぐらいに終わる。それらのものができてくるのは十数年後になろう。そうしますと、十数年後以降の状況というものがある程度見えてこなくちゃいけない。そういうものがあって初めて中期計画というのができるわけでございますが、そういったものを十分政府部内でも御論議いただいて、その時点の状況というものをある程度見通した上で着手をするものでありますから、その結果、例えば現在持っておる防衛力の質なり量なりはそのままでいいということになれば更新をしていくだけでよろしい、新たな物を持たなくてもいいということになろうと思います。そのころの状況として世界的な軍備の動向というものが変わっていくということであれば、それにある程度対応したものにしなくちゃいけない。そういったまず見通しを立てる必要がある。  そういったものなしにやみくもにこういうものをしたいということを決めるわけではございませんので、要はまず政府部内で十分な、十年以上も先の話でございますので、そういった状況について御論議をいただき、一つの見通しを立てていただくということがまず大前提であります。それに基づいて、しからば次の中期計画としては何をするかという作業にかかるという段取りであろうと思っております。
  93. 小野明

    小野明君 長官、先ほど私が申し上げましたように、防衛庁内に設けられておる陸上防衛態勢研究会、こういったもので西廣局長が座長になって研究をされておられるわけですが、大綱の別表修正だけでなくて大綱を見直すと、こういうようなことまでも進んでおるということが報道されておるんです。こういう大綱見直しという重大な問題が国会の目を避ける形で秘密裏に行われているとしたら、これはシビリアンコントロール上非常に私は問題があると思います。そこで、長官には国会での論議を避ける形で防衛政策がひそかに進行するということがないように強く要求をしたいと思うんですが、長官いかがでしょうか。
  94. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 防衛庁長官がお答えになる前に私から申し上げますが、私、先ほど来申し上げておるように、陸上防衛態勢研究会の座長も努めておりますし、私自身、その大綱別表のみならず大綱本文の改正までというお話がありましたが、その種のものがあれば十分目を光らせておりまして、直ちに防衛庁長官にも御報告申し上げますが、そのような事実はないということは御理解いただきたいと思います。
  95. 小野明

    小野明君 泥棒を捕まえると言っては語弊がありますが、進めている本人が答弁をそんなことありませんとしらばくれるようなことでは困るんですね。ここは長官がシビリアンコントロールとして答弁をしなきゃいかぬと思うんです。長官局長を抑えて答弁をされなきゃいかぬ。
  96. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 一部報道についてコメントするという立場にはないわけでございますが、今先生御指摘の陸上防衛態勢研究会、この研究会は長期的な視点から将来の効率的な陸上防衛態勢のあり方について研究をしておると、もちろんそのことは承知しておるわけでございますが、大綱の基本的枠組みを見直しをするということでもちろん取り組んでおるものではございませんし、今防衛局長答弁のありましたとおり、防衛改革委員会におきまして研究をしておるもの、こうしたことは研究は研究といたしましても、私は防衛の問題につきまして国会の場というシビリアンコントロールの最も生かされる場所というもののちゃんとあることは承知をもちろんいたしておるわけですし、これを大切にしていかなきゃならぬことも承知をしておるわけでございして、さようなことでこれからもシビリアンコントロールが生かされてまいるということはせいぜい心得ながら、この職務を全うしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  97. 小野明

    小野明君 長官、足元に時限爆弾が仕掛けられておるような状況じゃないかと私は思うんですよ。だから、長官もやっぱり厳しく部内に常に目を光らせて見ておいていただきたい。そして、国会を素通りして中身だけが進行するというようなことがないように、長官ひとつしっかりしていただくことをここでお願いをいたしまして、あとまだ質問があるんですけれども、これは時間の関係上後日に譲りまして、最後に再度ひとつ御見解をお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  98. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 防衛政策という事柄からいたしまして、内部における研究はガイドラインであるとか、あるいはただいまも申し上げましたように防衛改革委員会であるとか、そうした分野でいろいろ研究なり努力がなされていくということ も大切でありますし、またそうした努力なり研究ということが政策として取り上げられていくというようなことになりますれば、もちろん国会で十分な御議論をいただかなければならぬわけであります。私は、部内におきましても、庁内におきましても、かような問題につきましてぜひ各委員の御理解もいただきながら、十分にそうした研究もなされるという御理解をいただくことがシビリアンコントロールがうまく作動していく大切なことでもあろうと思っておりますので、一方におきまして御理解をいただきつつ、私の職務におきまして今後ともしっかり見届けるものは見届けていくということで取り組んでまいりたいと思います。
  99. 小野明

    小野明君 終わります。
  100. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  101. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、日本学術会議宮内庁北方対策本部を除く総務庁防衛本庁防衛施設庁を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  102. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 質問の順序は御出席をいただく方の御都合によりまして少し変更いたしましたので、御不便なところもあるかもしれませんが御了承願います。  まず、実はこのことは総務庁の所管であるとは思いますが、人事院にも関連をいたしますのでお尋ねをいたします。  総務庁は全政府的な観点に立った人事政策を行うために、民間との交流による効率的な行政運営能力の向上を図るということを目的としまして、政府間及び民間と政府の間の人事交流を計画しておられるということを聞いております。これに関係しまして、公務員制度全般の企画とか立案をなされますのが人事院でございまして、だから総務庁の御計画につきまして官民交流施策の研究だということになりますと、人事院もやはりこのことに対して事業を行われると考えざるを得ないのであります。そこで、一般会計歳出予算各目明細書、これは六十三年度の内閣所管のものでございますが、これを見まして官民交流施策の研究に関する予算があるかどうかを見たのですが、どうも明確ではありません。このような問題につきまして予算考えておられるのかどうか、お尋ねをいたします。
  103. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 来年度予算に五百万強の予算が用意されております。
  104. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもはっきりしなかったんですが、予算書にありますか。例えば官民交流施策の研究というような項目かあるいは説明でも構いませんが、そういうものがこの予算書の中に計上されておるでしょうか。
  105. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 細目にわたりますので予算書の中では表面に出ていないかと思いますが、私どもの人事院関係の予算案の中に、先ほど言いましたように、人事行政制度の長期的施策策定のための総合的調査研究という項目名のもとに、官民人事交流施策の検討というものが用意されてございます。
  106. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 その額は大体どのぐらい計上されておりますか。
  107. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 五百二万八千円でございます。
  108. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、その事業の具体的な研究内容はどういうものでございましょうか、お願いいたします。
  109. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 近時、国際化の進展とかあるいは社会経済情勢の急激な変化に伴いましていろんな行政課題が生じておりますが、この種の課題に対しましては行政官の的確な対応が求められております。また、行政の簡素効率的な運営については一層その要請がございます。そういうような要請にこたえていくためには、行政官が柔軟な思考と行動で対処するということが必要でございますが、その一環といたしまして、いろんな試練を乗り越えてまいりました民間企業の経営手法とかあるいは業務運営の方法等に学びましてこれを行政の活性化に役立て、さらには官民の相互理解を促進するということが適当であろうと考えておりまして、こういう方面につきまして検討を進めてまいりたいという趣旨でございます。
  110. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 御趣旨はわかりましたが、公務員制度は人事院の方で御計画になって法律によって決められた試験を行われて公務員の採用をなさる。民間の方はそうではないのですが、これを両者を交流するということの具体的な可能性のある手段はどのようにお考えになっておるんでしょうか。
  111. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 公務員は公務員で採用試験を原則といたしまして任用が行われておりますが、同じ公務世界の中でいろいろ業務運営をやってまいります過程でいわゆる役人的役人になってしまうというような御指摘が多方面からございますので、民間にあります諸種の活力を導入するということも大事であろうということでございまして、まあいわば民間に学ぶ手段といたしまして考えておるわけでございます。
  112. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 少し趣旨が私の理解が浅いので理解ができないんですが、そうしますと、民間の方を国家公務員の資格を与えて任用するために、国家公務員を民間人にして外へ出す、あるいはその逆の場合とかいうことをお考えになっているんでしょうか。
  113. 森園幸男

    政府委員(森園幸男君) 具体的な態様につきましてはなおこれから検討いたすわけでございますが、現在でも極めて限られた範囲内では民間のコンピューターとかあるいは機械の操作、保守等の研修に参加するというようなことはございますし、また限られた範囲内で民間から一部二、三年の期間民間の職員を受け入れているということもございます。こういうようなことをさらに拡大いたしまして、民間業務一般への参加ということも必要ではなかろうかと考えておりまして、そういう問題認識のもとに具体的にはこれから検討してまいるということでございます。
  114. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは決して悪いことではないので、従来の国家公務員の採用制度を根本から改めていくという思想がやはり含まれておると思います。こういう点につきましてある程度具体的なお考えを持って御指導になっておると思いますが、人事院総裁のお考えはどのようでございましょうか。
  115. 内海倫

    政府委員(内海倫君) 今の国家公務員法に定めております公務員の採用のシステムあるいは考え方というものは、これは極めて立派なものとして現存しておりますし、私ども自身もこれを高く評価してその実現に努力しておるわけですが、しかし先ほども担当局長が申しましたように、まあ客観的な情勢の変化に対応する、あるいはとりわけ技術系等におきましては急速な変革が行われておるときでございますから、さらにそういうふうな面における行政の展開ということを考えますと、今の国家公務員法の範囲内においてもできる限りの方策を講ずることによってあるいは民間のそういう知識、能力を吸収する、反面また官の側からも民間に対して能力を提供していく、そういうふうなことによって総合的な行政能力、統合的な経済の力というものが発展していくということを私どもは期待しておるわけでございますから、今後におきましても十分に検討を加えてそういう趣旨の実現を期したいと。  しかしながら、先ほども申しましたように、私は現在の国家公務員法の考え方あるいは国家公務員法のとっておるシステムというものを根本的に取りかえるというふうな必要はまだ全く考えておりません。
  116. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 人事院、ありがとうございました。次に、防衛庁にお尋ねをいたしますが、防衛医 科大学校という学校がございまして、先般これの視察をさせていただきましたが、防衛医科大学校において医学研究科というのがつくられておりまして、ここでは普通の大学課程における教育訓練のほかに特別に防衛上必要な医学についての研究をなさって、深い研究をここで確立されるということも承りました。これは大変結構なことであります。  ところが、この医学研究科をせっかくつくりましたけれども、これに学位審査権を与えていないということでございます。その与えていない理由は、結局防衛医科大学校は防衛庁の職員の訓練機関であるからしたがって大学とすることができない、こういう趣旨からのようでございますが、これは大変形式的な考え方だと私は思います。防衛医科大学校における医学の研究というものは、普通の大学における医学の研究の程度よりも劣ることはないのであって、むしろまさるかもしれない研究をする体制でございますが、そうであるならば、実質的に一般大学の医学部で学位審査をして学位を与える、そういうほどの能力は実質的には備わっておるのではないかと思うわけであります。それが、形式的に所管官庁が防衛庁だというだけの理由でそれを認めないということであるならば、問題だと思います。また、それは防衛庁の職員だから認めないんだということでありますならば、一般大学の人でもどこかの職員になる人間であります。同じことでございます。結局は所管官庁の差異によって国民の処遇に対する差別をするものである、憲法十四条に明らかに違反すると私は考えるのでありますが、こういう点についてお尋ねをきょうはいたしたいと思います。  そこで、まず防衛医科大学校の医学研究科に学位審査権が与えられていないのは研究の程度が低いからなのか、あるいはそこにおける教授陣容が一般大学の陣容よりも能力が劣るからであるかという問題があるわけであります。その点につきまして御所見を承りたいと思います。
  117. 福渡靖

    政府委員(福渡靖君) お答えをいたします。  防衛庁の立場といたしましては、自衛隊医官の養成を目的とするということで防衛医科大学校を設置し、さらにその技能、知識を高めるという目的のために防衛医科大学校に医学研究科を設置して運営をしております。その設置基準につきましては、文部省の方で定めておられます大学設置基準あるいは大学院設置基準に準拠して設置をしておりますので、決して他の学校教育法による大学あるいは大学院と比して劣るというようなことはないというふうに考えているところでございます。
  118. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、非常にすぐれた陣容だということを文部省の方の審査基準に従っていろいろ査定も受けられたのでしょうか。
  119. 福渡靖

    政府委員(福渡靖君) いわゆる学校教育法による大学として設置をされていないということで、大学設置審等の審査を受けるということはしておりません。
  120. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 聞くところによりますと、防衛大学校、防衛医科大学校は、その卒業生に対して他の大学の大学院に入学する資格を与えるために、文部省の設置基準に従って学校の教育体制を改めてきたということも聞いておりますが、これは事実でしょうか、それとも間違いでしょうか。
  121. 佐藤禎一

    説明員(佐藤禎一君) ただいまお尋ねのございました防衛医科大学校を含めまして、各省の教育訓練機関には実態のさまざまなものがございますけれども、そのうちで大学設置基準に準じた充実した中身を持つものにつきましては、私ども学校教育法に関連をする規定に基づきまして大学院の入学資格を告示しているわけでございますが、お尋ねの防衛医科大学校、防衛大学校につきましては、大学院の入学資格を告示で認めているわけでございます。
  122. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実質的に大学の資格のある大学校だといいますと、結局名前に校がつくだけの話であって、といいますことは、文部省の監督下にないというだけの問題ではありませんか。もしそういうことであれば、そのことに関しては教育は全部文部省が監督するということで文部省の監督下に置かれたらいい問題で、これは内閣の内部問題だと思いますが、どうでしょうか。
  123. 佐藤禎一

    説明員(佐藤禎一君) 御案内のように、学士号を含めまして修士、博士、そういった学位は学校教育法によります学術の中心として設立をされております大学が授与するということになっているわけでございます。したがいまして、各省の行政目的に即して設置をされております教育訓練機関にはそのような学位の授与権は従来認められていないというのが現在の制度でございます。  ただ、先ほどお答え申しましたように、実態は区々ではございますけれどもその中に充実整備したものがございますので、それにつきましては積極的に大学院の入学資格等を認めるということをやってきているわけでございますが、さらにさきの臨時教育審議会の中におきまして、進んでこういった学位の授与ができるようにするということを考えるために学位の授与機関というものを検討してはどうかというような御答申を第二次答申の中でちょうだいしているわけでございます。あわせまして、同じ第二次答申の中でこういったことを具体に検討する大学審議会を設置するようにとの答申がございまして、これを受けて既に昨年から大学審議会が発足をしているわけでございます。私どもといたしましては、この学位授与機関という形態に基づいてどういう対応ができますか、この審議会の中での検討されるべき事項として期待をしているわけでございます。
  124. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私は、大学校が全部大学に相当するとは考えません。いわゆる訓練機関である大学校も相当ございますから、学術をきわめるというものではないものもございます。しかし、少なくとも防衛医科大学校の場合は学術の本道をきわめるものでなければならぬのではないか。といいますのは、防衛医科大学校に医学研究科を設けましたのは、やはり防衛ということを基礎に置いていると思います。  防衛という問題は、御承知のように、日本の場合は専守防衛であります。専守防衛の姿というものは、我が国に敵兵が入ってきてここであらゆる攻撃を行う。例えば化学兵器もまくでしょう。また細菌兵器も使うかもしれません。そういうものから国民を守るために、自衛隊は活躍するべき任務があると思います。ですから、自衛隊で研究するものは敵を攻撃するための兵器をつくるための研究じゃなくて、敵に攻撃されて我が国土が侵された場合にどうして国民を守るかという問題、そういうテーマに取り組むのが自衛隊の本来の任務だと思います。  そうしますと、防衛医科大学校でやるべき問題は、現実には起こっていないかもしれぬし将来起こらないかもしれませんが、現在ある特定の国で使っておる武器、例えばイラン・イラク戦争で今日イラクはイラン軍に対して化学兵器を使用しておる。このことは国連の報告書によって明らかであります。そういうことが現在行われておるということになりますと、もし攻撃がなされた場合にそういうことが行われないとは限らない。その場合にそういう被害から国民をどうして守るか、どういう手段で守るかという問題は防衛医科大学校の研究題目ではないか。また、恐らく原爆は落ちないであろうけれども、原爆の被害を受けた場合にこれをどうして守るかというような問題。ソ連では十分この問題を現在研究なさっておると聞いております。チェルノブイリのあの大災害によって起こっておりますね。必ずしも原爆が落ちたということはなくても、日本の原子力発電所が爆発した場合を考えても、やはり対応は自衛隊の仕事だと思います。防衛医科大学校の防衛上のこれは問題だと考えざるを得ない。  そういう場合にどういう対策を講じて国民を守られるのかという研究、これはまあここで一々言いませんが、いろいろのそういう攻撃に対する医学的な防衛はどうするのかという研究がこの防衛医科大学校を設けた趣旨ではないか。そうでなければ、防衛医科大学は要らないのであります。普通の大学で結構です。また、医学研究科をつくっ たということはそういう研究をやるためであって、もしそういう研究をしないのなら、この医科大学校というものは訓練機関であればいいのですから、設置する必要はありませんね。少なくとも医学研究科をつくった以上は、その目的があるはずなんですが、それはあくまでも防衛、攻撃ではなくて防衛の方の医学、防衛医学の問題でしょう。これをどこまで徹底的にやるかの問題です。それをやるということになりますと、普通の医科大学ではそういう研究はいたしておりません。一般的な通常的な研究はしておるにしても、具体的な研究はしていない。そうなると、具体的な研究について真剣に取り組んで具体的な解決案を生み出していく任務が医学研究科にあるはずであります。そういうところにおける研究というものは十分これは督励をしていいものをつくらせる必要があるし、研究者に対してはそれなりの待遇をするのが当たり前ではないかと私は考えます。  ここで研究をしてその研究が世間から受け入れられるならばもちろん医学博士の学位を与えるべきであって、その審査権はよその大学には審査能力がないのですから、この研究科に当然与えるべきではないかというふうに私は考えておりますが、この点について文部省並びに防衛庁のお考えをお聞きします。防衛庁長官のお考えもお聞きしたい。
  125. 佐藤禎一

    説明員(佐藤禎一君) 先に文部省の方からお答えをさせていただきたいと存じますが、私ども、現在の制度が学位の授与権を教育訓練機関に認めていないのは、実質内容に着目をしているというよりも、形としての学術の中心としての大学がその自治的な制度のもとに自律的に一定の学問水準を確認をするという営みの中で、学位の授与という作業が行われているということからくるわけでございます。したがいまして、実質に着目しさらに高度な教育研究を行っていることに対して学位の授与機関等の創設によって対応するということは、別途臨教審の答申を受けて検討すべき事柄というふうに考えておりまして、そのように対応させていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  126. 福渡靖

    政府委員(福渡靖君) 防衛医科大学校の医学研究科につきましては、その設置目的が、先ほども申し上げましたけれども、自衛隊医官の医学水準の向上、研究能力の付与ということにあるわけでございます。したがいまして、そこで教育を修了した者がどの程度の医学水準の力を持っているかということについては、当然防衛庁として必要な水準を確保するということは私どもも十分に自信を持ってこれから運営していくつもりでおります。  ただ、学位ということになりますと、これは今も文部省の方から御答弁がありましたけれども、一般的に公平な目で見てある学問水準を超えているという場合にやはり授与されるべきものであろうかと思っております。そういう意味で、私どもの方もかねてから文部省の方にこういう学位授与機関の設置について要望をしてきておりますが、やっと大学審議会の方で御検討いただけるというところまで参っております。私どもの方も、今後も引き続きましてこの学位授与機関の設置ということについて、関係当局にその早期実現方を要望しながら努力してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  127. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) ただいま衛生担当参事官から答弁がございましたが、私どもといたしましても、臨教審におきましての学位授与機関の創設並びに文部省に設置されました大学審議会、これらの検討を終えまして、ぜひただいまの学位であるとかそうした形で結果が得られるように期待をいたしておるところでございまして、早期実現に向けまして関係当局に一層要望してまいりたい、かように存じておるところでございます。
  128. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 文部省、ありがとうございました。  では、次は自衛隊の教育内容についてお尋ねをいたしたいと思いますが、まず自衛隊の教育ということを考えまする上におきましては、専守防衛の実態を認識しなければそれに対応する教育はできないと私は思います。そこで、自衛隊の教育は陸海空それぞれ違うべき問題だと。陸上自衛隊は専守防衛上どういう形態をとらされるかということをまず根本的に考えてみなければならないわけであります。  陸上自衛隊は、専守防衛である以上外国へ出ていくことはありませんし、我が国内において防衛に従事するということにならざるを得ないわけであります。我が国に敵が上陸をした場合にどういう形の防衛になるかということは、例えばアフガニスタンにソ連が侵入したときにアフガニスタンはどういう形の防衛をしたかという問題、これが一つの参考になると思います。それから中東におけるいろいろの戦時状態、これも参考になると思いますが、殊に日本の場合にこの国内で戦闘態勢をとるということになりますと、大部隊によるいわゆる大陸における戦いの仕方というものは不適当だと言わざるを得ないのです、陸においては。海とか空は別のことですよ。そして、従来言われておるように、敵が攻め入ってきたならば一日か二日持ちこたえて後は降参だといったような、そんなことなら初めから私は防衛はしない方がいいと思うんです。防衛をする以上は徹底的に防衛をし切らなければならない。  例えばかつて日本が中国大陸に侵入いたしましたときに、中国はどういう防衛態勢をとったかということです。今まで、侵入された国家はすべて戦いに勝っておるわけです。例えばベトナムの場合もそうですね。これも、アメリカがベトナムに戦いを挑んだときにどういう態勢をとったか。全部ゲリラ戦なんです。ゲリラ戦以外にないわけです。ゲリラ戦をやって最後まで頑張って勝ち抜いて相手をのかせるという。そうなりますと、国民の自分の国に対する愛国心、愛国心と言うと誤解がありますが、自分を自分で守ろうという旺盛な気力があるかどうか、この気力の問題が一つありますが、そのほか本当にゲリラ戦を陸上自衛隊が戦うということになると、この場合の教育はやはり私は個々の人間が個々に戦える能力をつけさせる教育が根本だ、こう考えます。  それで、この間も実は、ちょっと飛躍するようでございますが、陸上自衛隊を参観いたしました。そこでいろいろの訓練も見ましたが、特に私は非常に心を引かれましたのは体育学校の教育であります。体育学校が非常に努力をしておられる。あの体育学校の姿というものはゲリラ戦を行うための基礎を養うのに最もいいものだと私は考えます。そこで、こういうことをお尋ねするためにきょうは問題提起をいたしますが、まず専守防衛ということについてその実態をどういうふうにお考えになっておるのか、これを防衛庁の責任者の方にお尋ねをいたします。
  129. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいま先生からいろいろと御意見を承ったわけでございますが、国を守る際に国民一人一人の国を守る気概と申しますか、そういったものが重要であるということについては全く論をまたないところであります。ただ、国を守る際にゲリラ戦しかないであろうという点については私ども若干意見を異にしておりまして、日本のような近代国家といいますか、そう広い国土でなくてしかもその一部の平野部に人口なり産業が集中しておるという国の中で戦闘するということは、先生御指摘のように大変厳しい戦いになることは間違いないわけでございます。ゲリラ戦と申しますのは私どもの定義では正規軍でないものがいわゆる戦闘行為をするということでありまして、日本のような島国に海を渡ってくる相手方の正規軍に対して正規の部隊でない一般国民が銃をとってこれに当たるということは大変被害の大きな苦しい戦い、非常に悲惨な戦いをやらなくちゃいかぬということは御理解いただけると思います。  我々の防衛の基本的な考え方と申しますのは、やはり日米安保というものと自衛隊という実力集団、こういったものとの組み合わせによって日本に対する侵略を未然に防止するということにまず基本を置いておりまして、仮に万々一実際の侵攻 があった場合にはできるだけ国土に入れないようにこれを排除するというのを基本に置いております。したがいまして、自衛隊のような正規の実力部隊でない一般国民が相手方の正規軍に対してかなわぬまでも抵抗するというような事態は、全く考えられないわけではございませんけれども、それ自身非常に悲惨な状況になるわけでございまして、そういう事態に立ち至るのをいかにして防止するかということを基本に考えておるんだということを御理解いただきたいと思います。
  130. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私も防衛というものは予防が先決だということはよくわかっております。予防することが第一である、戦争をしないことが第一である、そのことはよくわかった上で、しかしどんなに我々が努力をしても予防ができなくて攻撃されたということを考えて自衛隊というものは訓練をされておると思いますが、攻撃された場合に我が国土は長いので一つにまとまることは恐らく難しいので、それぞれ多数の地域に分断されてしまう。その分断されたところでおのおの戦わねばならぬ事態に陥る。武器の補給とか食糧の補給は安保条約によってアメリカがやってくれるでしょう。武器の補給、それから食糧ですよ。そういうものを与えられてそこで最後まで頑張り抜く態勢でなければ、もう防衛は初めからやらぬ方がいいんですね。やる以上は徹底的にやるということであれば、ゲリラ戦しかない。ゲリラ戦という言葉は悪いですが、国の機関であってもゲリラがやるようなああいう戦いの仕方をやるという意味のゲリラ戦ということですね。そうなりますと、やはり余りのほほんとしておるのは困るのではないか。  それとも、我が国は攻められたら一日か二日は形だけやるが後は白旗を上げてやめてしまう、そういう政策を徹底するのかという問題。それならそれでもいいです。それならばこれも一つの立派な防衛の仕方ですね。すぐ手を上げてもう反抗しないという、これも立派な防衛の仕方であって間違いじゃありません。しかし、そうであるなら余り大きな陸上自衛隊は要らぬということになりますから、陸上自衛隊を持っておる以上はそうでもないということだというふうに我々は判断いたしますので、だから教育問題を取り上げるわけです。ただ、大部隊を使っての教育も大事ですけれども、いざというときの一人一人の力によって防衛が遂行されるという態勢をおつくりになる考えは全くないのか、あるのか。なけりゃないでもこれも一つの方法ですよ。決して悪いとは言いません。立派な方法です。どちらをおとりになるおつもりであるのか、お伺いしたい。
  131. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 様相によっていろいろあると思いますが、先生も認めておられたように未然防止、抑止が最善であるということは言うまでもないことでありまして、仮に武力による侵攻があった場合にはできるだけ国土に累を及ぼさない、水際まででこれを防ぐというのが一番の策だと思います。しかし、力関係によってそれもなかなか不可能な場合が当然あり得るわけでございまして、その際にはやはりあるところまで後退をして、要害といいますか隘路のような部分があるわけでございますが、そういうところによって敵方が広い地域まで侵攻しないような形で食いとめるという、非常に粘り強い戦いというものもせざるを得ない状況というのは当然考えられるわけでございまして、先生のおっしゃるようにゲリラではございませんけれども、陸上自衛隊そのものが我が方のいろいろな地理的な条件等を利用しながら、そういうところで粘り強く頑張るという事態も当然あり得るものと考えております。
  132. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そこで、そういうことが考えられるとするならば、陸上自衛隊は航空自衛隊とか海上自衛隊とは区別をして別の教育が必要になる、こう思います。殊に一人一人の力をつけるということを目的として教育をするということが必要だと思いますが、端的に申しますと陸上自衛隊の隊員一人一人がオリンピックの選手で出場して全部金メダルがとれる態勢をつくれ、こういうことなんですがね。そういうことであって初めて本当の陸上自衛隊の教育ではないかと思いますが、この点についてどうお考えでしょうか。
  133. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 自衛隊は精強でなければならぬ、かように私は考えております。先生御指摘オリンピックの金メダルは別といたしまして精強な自衛隊、それによって防衛力が維持される。今防衛局長からも答弁がありましたように、我が国は専守防衛、さらに他国の侵略を受けない、そのすき間のない態勢をつくることが必要であることも言をまちませんが、現有の自衛隊でそれを賄うことができるかといいますと、決して私はそうではない、やはり国民一人一人が国の防衛の重要性をよく認識をいたしまして、国を守ろうとする強い意思を持つということが何よりも大事なことであろうと思うわけでございます。そういう中で安保体制と相まって我が国の平和を維持してまいる、そして自由を確保してまいるということになるわけでございます。御指摘のように、そうした点も踏まえながら精強な自衛官を育成していく、教育していく、そういったことを心がけてまいることが大切だと、かように存じておる次第でございます。
  134. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 わかりました。  それで、先般体育学校を拝見いたしましたが、建物は大分古い建物でそこで十分なそういう体育の訓練を実施できるかどうかと思われるような施設でございますが、これは体育を非常に軽視しておられるのではないかと思われるんです。本当に重視しておられるのなら、よその方の政府機関の建物は実に立派な建物が建っているんだから、少なくとも体育学校の建物は立派にしてそこでみんなが喜んで体育の訓練ができるようにし、場合によっては自衛隊だけで使わないで、立派なものであれば民間の人も時に選手を呼んで訓練をしたり激励する機関にしてもいいのではないか。余り狭く考えないで、陸上自衛隊の体育学校というものはもっともっと強化すべき問題だし、もっと立派にしないと困るのではないかと私は思いました、現物を見まして。この点についてどのようにお考えになりますか。
  135. 児玉良雄

    政府委員(児玉良雄君) お答えいたします。  体育学校の施設につきましては、これは朝霞駐屯地にございますけれども、各種の体育施設の整備を逐年してきているところでございまして、今までに体育館であるとかプールであるとか格闘技訓練場であるとかいうものを整備してまいりました。ただ、朝霞駐屯地にあります建物の中には昭和十年代の後半に建てられたものがありまして、建設後四十数年間を経過しているものがあり、先生今御指摘のように老朽化しているものなども中にはございますが、今後これらにつきましては陸上自衛隊の施設全体の中でバランスをとりながら整備をしていくように考えております。
  136. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 体育を重視するという問題は、私は自衛隊ばかりでなしに国家機関で全般的に強化されるべきものだと思います。将来の本当の国と国との間の争いというものは、私は平和的に解決されると思うんです。それは体育によって勝負を決める、こういう世界が必ず来ると思います。そうでなければ人間の闘争心を抑えていく手段がない。闘争心をうまく操作して世界平和を保つための手段として体育、いわゆるオリンピックというようなものが大変これは重要視される時代が来ると思います。そういう意味におきましても、この際そういう観点からの強化をされることが必要だと思いますが、防衛庁長官はどうお考えでしょうか。
  137. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 大変ありがたい御指摘でございまして、私は体育またスポーツを通じまして隊員のチームワークがとれるとか、あるいはまた身体の鍛錬につながるわけでありますし、私は体育施設の充実について就任いたしましてずっと国会が続いておりますので視察も十分ではございませんが、飯田先生既に御視察をいただいておりまして、確かに老朽化したことも聞いております。そういった面で整備が図られるといいと、私も研究してまいりたいと思っておるわけでございます。  そういう中で、先般のレスリングであるとか重量挙げ、これらの選手を見ましても、自衛隊というユニホームで出てまいる選手を見ますと率直に言いまして頼もしく思うわけでございますし、また我が国は志願制をとっておりますから、優秀な人材もこれによって集めることができるということになりますと大変これは結構なことでございますので、体育施設の充実整備につきまして意を用いてまいりたいなと、私はかように考えておるところでございます。
  138. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ありがとうございました。  それでは、次の問題に入ります。次は災害派遣についてです。国際緊急援助隊というのができましたが、これについての経費予算面にどのように処置されておるのでしょうか、お伺いいたします。
  139. 飯村豊

    説明員(飯村豊君) お答えいたします。  国際緊急援助隊の派遣にかかる経費は、外務省所管の予算であります国際協力事業団、それに対する交付金の中で六十一年度予算以降毎年計上しております。六十三年度政府予算原案においても引き続き計上させていただいております。
  140. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、自衛隊の災害救助につきましてはどのようになっているんでしょうか。自衛隊法の八十三条の災害派遣についての規定がございますが、予算面はどうなっておりますか。
  141. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 災害派遣は自衛隊の任務として行っておりますけれども、これにかかわる経費といたしましては、ごく一部のもの、手当等を除きましては通常の訓練費なりそういったものの中で賄っていく。特に何らかのものが必要であるという場合には、状況によっては地方公共団体が負担したりというようなことがございますので、災害派遣用経費として特段の計上したものはごく一部のものに限られておるということでございます。
  142. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 災害派遣に出動する場合は部隊活動としておやりになるのでしたがって予算は使わないと、こういう御趣旨でございますか。
  143. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 例えば人件費とすればそのままの人件費を使う。特に災害派遣手当という若干のものがございますが、それ以外については通常の手当の中でやっていく。それから燃料その他かかりますが、この種のものは訓練用の燃料その他を流用して使うという形になります。
  144. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、国際緊急援助隊というものが我が国から派遣しなければならない事態になった場合に、自衛隊は自衛隊法の八十三条による災害派遣というこの規定に基づく派遣はなさらないのかどうかお尋ねいたします。
  145. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 自衛隊法八十三条といいますのは、まあ一種の警察活動について規定したものでございますが、災害があった場合に都道府県知事等から要請があった場合には災害派遣するという規定でございまして、これは主として国内における災害活動、もっとも公海上においての災害救助も当然考えられることでございますが、海外の相手の領地において災害活動するということまでは予想してない規定であるというように解釈しております。
  146. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、国際緊急援助隊の法律をつくりますときに防衛庁長官は除かれておりますね、これね。当然国際緊急援助隊に日本の官庁のものを出すという以上は一番出しやすいのは自衛隊だと思われるんですが、これをなぜ除かれたんでしょうか。
  147. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) これはやっぱり外務省等から理由をお聞きいただいた方がいいかと思いますが、恐らく従来の経験等に照らしまして、関係の十六省庁があると思いますが、そのほか都道府県警察等で十分対応可能であると、防衛庁の職員を迎えなきゃならないような事態が当面考えられないということで入らなかったものと理解をいたしております。
  148. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これはもし日本の各機関、例えば町の消防隊を派遣することになっていますが、消防隊の派遣では間に合わぬということが目に見えておるような場合、アフリカで大災害が起こって緊急援助隊の派遣を求められた、この場合に外務大臣は防衛庁長官に対して出動を要請されるでしょうか、それともしないんでしょうか。
  149. 飯村豊

    説明員(飯村豊君) 緊急援助隊の活動にかかわる人員の派遣の問題につきましては、先ほど防衛庁側から御答弁がありましたように、これまでの経験等にかんがみて、十六省庁それから都道府県警察、市町村消防の協力等の活用によって十分効果的に対応できるとの判断に基づきまして、緊急援助隊に関する法律では自衛隊の参加は予定しておりません。
  150. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この点につきましては私は、よい法律をつくってありしかも条約があるにもかかわらず、極めて内容のない緊急援助体制をとっておられるとしか考えられないので大変遺憾に思いますが、きょうはこの程度にしておきます。  それでは、次の問題に入ります。シーレーン防衛と海上警備行動の問題につきまして簡単に少しくお尋ねをいたしたいんですが、シーレーン防衛というのは戦時だけなんでしょうか。それとも、平時においてもあるんでしょうか。
  151. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現在シーレーン防衛ということで私ども申し上げている内容的には、これは我が国に対してもう武力行為が行われておる、いわゆる防衛出動下令下における海上交通の保護についてのものだというように整理をして従来申し上げております。文字どおりシーレーン防衛でございますから、海上交通の保護ということになれば戦時においても平時においてもあろうかと思いますけれども、私どもシーレーン防衛と従来申しておりますのは、防衛出動下令の中における海上交通保護のための自衛隊の行動にかかわる問題を申し上げているわけでございます。
  152. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 一九七四年の十二月十四日の国連総会の決議で「侵略の定義」という決議がございますが、その第三条の(d)項には、「国家の軍隊による他の国家の陸軍、海軍もしくは空軍または船隊もしくは航空隊に対する攻撃」、これを侵略行為の一つとして掲げております。このことは、シーレーン防衛というものとの関係から見まして、我が国の船隊が他国から攻撃を受けた場合にこれは国連の決議によれば侵略だと、こういうことになるように見えるんですが、この点については防衛庁はどのようにお考えでしょうか。
  153. 依田智治

    政府委員(依田智治君) 一九七四年十二月十四日のこの国連総会の「侵略の定義」の問題でございますが、ここにあります「国家の軍隊による他の国家の陸軍、海軍もしくは空軍または船隊もしくは航空隊に対する攻撃」、これは侵略の定義について幾つか列挙してございまして、安全保障理事会が国際連合憲章三十九条の規定によりまして侵略行為の存在を決定するときの一つのガイドラインとして決まっておるというように承知しております。  なお、その「侵略の定義」の中では、さらにこれは「前条に列挙された行為は、網羅的なものではなく、安全保障理事会は、憲章の規定の下で、その他の行為が侵略を構成すると決定することができる。」というような規定もございます。そんなことで、これが侵略の定義のすべてでないと考えておりまして、私ども我が国が防衛出動をする事態というのは、我が国の国土及び国民の生命財産を守るために自衛権を行使するということで、その範囲で、したがって我々としては必ずしも我が国の領海、領空だけでなくて公海、公空にも及び得るというように解しておるわけでございます。  シーレーン防衛は、先ほど防衛局長が言いましたように、我が国の継戦能力の保持とか国民の生存を保持するという見地から、海上交通の安全の確保という面から必要な場合に発動するものでございまして、この定義とは特に関係はないと、我々は我が国の安全のために必要だと認められる場合には自衛権の行使として発動する、こういう立場をとっておるわけでございます。
  154. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもはっきりわからなかったのですがね。  それでは、例を挙げてお尋ねをいたしますと、 海上自衛隊がペルシャ湾を航行中に攻撃を受けた、この場合にこれはこの侵略の定義における侵略とみなすのか、それともそれは侵略でないのか、どちらでしょうか。
  155. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 具体的に状況がわかりませんとはっきり申せないわけですが、要は自衛隊法七十六条による防衛出動が下令される、つまり自衛権を行使し得る状況というのは、我が国に対する武力攻撃というものが我が国の存立そのものを脅かすような組織的、計画的なものであるという条件が私どもは必要であろうというふうに考えておるわけであります。したがいまして、例えば海賊行為のような形でたとえ自衛艦といえども攻撃をされたということが直ちに我が国に対する侵略、武力攻撃、自衛隊法で定める七十六条の対象になる武力攻撃というふうには考えていないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  156. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますと、先ほど例として挙げましたように、ペルシャ湾で海上自衛隊の船が国旗を掲げていないどこの国のかわからぬ船舶から攻撃を受けた場合には、海賊行為とみなしてこれを撃沈する態度をとられるのか、あるいはそうでなしにこれは侵略ではないのだから撃たれ損ですごすごと帰ろうと、こういうことなんでしょうか。どちらでしょうか。
  157. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 現在ペルシャ湾は戦闘が行われている戦闘地域と考えていいような地域だと思いますが、そこにどういう形で自衛艦が派遣されているかということによっても非常に状況が変わってくるわけで、そこに自衛艦が存在すること自体がなかなか想像しにくいわけでございますけれども、いずれにしましても、例えば遠洋航海なら遠洋航海をしておってそのあたりを通りかかった、そこへ突然攻撃してきた船があるというような形の場合には、これは我が国に対する組織的、計画的な侵略的武力攻撃ということではなくて、海賊行為に近いものであって、それに対応をするということはマイナー自衛権の範囲で考えなくちゃいかぬというふうにお考えをいただきたいと思います。
  158. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 実は、ペルシャ湾で我が国のタンカーが攻撃をされた事例はございますね。イラクの空軍によって爆撃を受けたし、イランの艦艇によっても攻撃を受けました。この場合に何ら防衛措置は講じていないんです。ところが、これは日本国民の生命財産の問題なんですが、これを保護しないというのはどういうわけでしょうか。当然これは保護されるべきものではないかと思われますが、国家の責任としてどうお考えになりますか。
  159. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど来申し上げておりますように、自衛隊法七十六条による防衛出動という形で対応するという際の要件としましては、我が国の存立そのものを危殆に瀕せしめるような組織的、計画的な武力攻撃という認定がなされなくちゃいけないということでありますので、現状におけるペルシャ湾等の状況について、政府としてはそういう考え方をとっておらないというように御理解をいただきたいと思います。  しからば、そういった状況下で我が国の国民の生命なり財産がある程度危険にさらされておるということがございまして、これにはどうするのかということになりますと、一般的には私はいわゆる平時における警察行動ということになろうかと思いますが、海上における我が国の国民の人命なりあるいは財産、そういったものを守るべき任務を負っておりますのは海上保安庁ということになります。それで、海上保安庁がそういった形で対応されたが手に負えないと申しますか、そういったものではとても及ばないという状況になりますと、御承知のように、自衛隊法の八十二条だったと思いますが、海上における警備行動ということで自衛隊自身がその種警察行動を行う場合もございますが、現在まだそういう状況に至っていない。ペルシャ湾の問題については非軍事的な態様でこれに対応するというのが現在の政府方針というふうになっております。
  160. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 先般のペルシャ湾におけるタンカーの攻撃につきましては、法理論上からいいますとおっしゃったように海上保安庁が出てきまして警備に当たるということなんですが、この場合に警備に当たる当たり方の問題ですが、相手が攻撃を加えてくる場合に、相手の船を撃沈しなければ警備ができないわけですね。そうすると、それは戦闘行為を行わないと防衛できない、つまり船を守れないというのが現実でございましょう。こういう場合にどう処置をするかという問題が私は今の我々の前に出されておる問題点だと思いますね。もちろん、これは外交によって解決するのが一番いいと思います。イランなりイラクなりに申し入れて、そういうことをやらせないということが必要です。それからもう一つは、申し入れてやらないと外国が言うた場合に、言ってもなお国旗を掲げないでやればそれは海賊行為です。政府機関が知らないことをやるんですから。その海賊行為に対しては遠慮なくこれを撃沈してもいいわけですね。公海に関する条約にはそうなっています。そういう問題についてどこまで腹を決めて国民の生命財産を守るかという問題があるのですが、こういう問題をぜひ御研究を願いたいと思います。  きょうは防衛庁の方、もっとたくさんお聞きしたかったんですが、そのほかの件もございますのでこの程度にしまして、次は総務庁の方にお尋ねをいたしたいと思います。  行政監察の問題でございますが、いわゆる海外経済協力をやっておられまして、その協力関係の実態を行政監察されるということは従来もあったと思います。殊にフィリピンにおける件につきましてはいろいろ監察をなされたと思いますが、この在外公館の実地調査につきまして、六十二年度の実績及び六十三年度の計画はどうなっておりますか、お尋ねをいたします。
  161. 山本貞雄

    政府委員山本貞雄君) 御指摘の経済協力に関する行政監察の問題でございますが、昭和六十二年度におきましてはODAのうち無償協力それから技術協力、この二つにつきまして関係省庁と実施機関におきまする業務の実施体制、仕組み、手続、運営、その実態等を調査いたしますとともに、現地の在外公館等におきまする業務の実施状況を調査いたしたわけでございます。この監察は、事業の種類が非常に多うございますしまたほとんど全省庁にまたがるわけでございまして、そういうことで現在事実関係につきまして関係省庁等との間で確認作業を行っておりまして、今後できる限り速やかに所要の勧告を行う所存でございます。なお、昭和六十三年度におきましては有償資金協力につきまして監察を実施することといたしております。  それからさらに在外公館の実態調査でございますが、昭和六十二年度におきましては経済協力行政監察関連の在外公館数館を並行的に調査いたしまして調査結果を整理中でございますが、なお六十三年度におきましても引き続き有償資金関係の経済協力の行政監察を行いますので、その関連の在外公館数館につきまして並行的に調査をいたしまして、これら在外公館の調査結果を一体といたしまして整理、検討の上、所要の改善意見を取りまとめたい、かように考えております。
  162. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは総務庁にもう一つお尋ねいたしますが、総務庁では全政府的な観点に立った人事政策を行うために、民間との交流による効率的な行政運営能力の向上を図るということを目的とされまして、各省庁の職員を対象とした政策研究を行う、こういうことでやっておられるということを聞いております。それで、六十二年度にこれも聞いたところによりますと四百二十万円、六十三年度は四百十六万円を行政政策研究過程等の実施経費として計上した、こういうふうに言うておられるのを聞いたことがありますが、これは予算書の中にこういうことで正確に載っているんでしょうか。
  163. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 予算書は克明にその項目がどうなっていたかちょっと私も今手元にございませんが、正規に財政当局にも御説明してそれで認めていただいた項目でございます。
  164. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 最初に私が、この総務庁がおやりになっている問題については、これは人事政策の問題だから当然人事院が検討をして施策を考えるべきだということでお尋ねをいたしました。そこで、重複するかとも思いますが、総務庁で民間との人事交流を実際に実施しておられるというお話ですので、これは現在の公務員制度との関連で問題がありはしないかということがありますが、その点についてはどうでしょうか。
  165. 手塚康夫

    政府委員(手塚康夫君) 人事院との関係はなかなか難しい点もございます。私どもは中立第三者機関たる中央人事行政機関、それに対して内閣総理大臣昭和四十年の改正によりまして中央人事行政機関としてもう一本入ってまいりました。いわゆる使用者の立場で人事管理を考えるというふうに思っております。それで、各省間の人事交流も実は当方サイドでやっておりますし、これが民間との関係、これも実は昨年当方も有識者を集めて御意見を伺ったんですが、やはり今後の行政管理上これはぜひとも必要であるという御意見が強うございました。そういう意味で、六十三年度いわばトライアルとして、補佐クラスで短期間ではございますが民間の方に行ってもらって、いろいろ民間の実態に触れてくるという機会を設けようかというふうに現在検討しているところでございます。  先生御危惧なさるのは、服務上の問題がいろいろあるのではないかという点ですが、現在考えていますのは、せいぜい一月足らずの短期間出張という形で身分を保持したまま行かせることを中心に考えておりますので、その点の問題はないかと思います。将来もし長期に民間との交流を行うということになれば、制度化が必要になります。その場合には当然人事院も関係してくるということで、人事院などとも協議しながら検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  166. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、会計検査院の方にせっかく来ていただきましたのでお尋ねをいたしますが、行政監察ということは総務庁でやっておりますけれども、会計につきましては検査院の方で検査をなさるのが建前だと思います。そこで、検査院の方の検査総務庁の方の行政監察における会計検査というものは仕事が重複するんですが、行政組織法の第二条との関連で所掌が同じような官庁を設けるというのは建前上許されないので、総務庁の方の会計監察というのは検査院の検査の方へ全部任せるべきではないかという理論上の問題があるのですが、こういう点はどうお考えになっておるかということ。それから、会計検査院総務庁と同様に経済協力の在外公館の実地検査を行っておられますが、六十二年度の実績及び六十三年度の計画はどうなっておるのか、こういう問題につきましてお尋ねをいたします。
  167. 疋田周朗

    説明員(疋田周朗君) お答えいたします。  まず第一点でございますが、会計検査院総務庁行政監察局との間の関係につきましては、先生御承知のとおり、設立の目的、趣旨などが違っておりまして、そういったことでございますけれども、しかしながら、先生御指摘のように、両者の業務内容の間には類似した点がございます。こういったことから、会計検査院といたしましても限られた陣容で検査の効率を上げる、こういうことを目的といたしまして行政監察の実施状況を十分に把握いたしましたり、それからまた総務庁との間で検査報告あるいは行政監定結果に関する連絡会を開催するなどいたしまして、相互に密接な連絡をとるように努めてきているところでございます。  それから第二点の六十二年の海外協力関係、海外検査の状況、それからことしの予定でございますが、まず六十二年におきましては東南アジアを中心にいたしまして計八カ国に調査官を派遣いたしまして、在外公館あるいは国際協力事業団、海外経済協力基金、こういったところの事務所を検査いたしました。と同時に、このうち政府開発援助の対象となっております国、これは七カ国でございますが、につきましては経済協力事業の現場を実地調査いたしました。現地調査に当たりましては、現地の実態を正確に把握することを主たる目的といたしまして、我が国の援助実施機関職員の立ち会いのもとに相手国政府協力を得ながら現地の状況を確認いたしましたり、あるいは相手国の現場責任者から説明を受けたりいたしまして現地調査を実施したわけでございます。  それから、次に六十三年度の計画についてでございますが、昨年と同様援助額の多い国の中から数カ国を選定いたしまして検査を行う予定でございます。なお、検査に当たりましては昨年の経験を生かしながら検査充実に努めてまいりたいと考えております。
  168. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 終わります。
  169. 吉川春子

    ○吉川春子君 公文書館法の法文の解釈についてまず伺います。  昨年十二月の臨時国会におきまして公文書館法が成立しました。その際、公文書館法案の草案の提案理由説明なお書きにおいて法案を補う意味で三点について触れていますので、この際その点についてはっきりと総理府の見解を伺っておきたいと思います。  第一条、二条において「公文書等」とあるのは江戸時代以前のいわゆる古文書、企業、労組その他団体の私文書が含まれるというふうに理解していいんですね。
  170. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 先生御指摘のとおり、公文書館法第二条におきまして定義されました「公文書等」とは「国又は地方公共団体が保管する公文書その他の記録(現用のものを除く。)」ということになっておりまして、「その他の記録」の中には御指摘のとおり古文書あるいは私文書等も含まれるものと解釈しております。
  171. 吉川春子

    ○吉川春子君 それらの私文書、古文書の収集については今後どういう手だてをとっていくんでしょうか。公文書館法の成立を契機として文部省が責任を持ってやるものもあるでしょうけれども、その他のものについてはどうするんですか。
  172. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 既に内閣文庫の時代、つまり江戸期以降の古文書等が公文書館におきまして保存、活用されておるところでございますが、今後恐らく類似の古文書等が将来公文書館において保存されることが当然想定あるいは予想されるわけでございまして、これはつい先般この公文書館法が成立したばかりでございますので、今後各省庁と従前以上に密接な協力を得ながらその古文書等の受け入れ体制あるいはそれに従事する専門職員等について積極的に検討を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  173. 吉川春子

    ○吉川春子君 本法は国及び地方公共団体に公文書等の保存などの義務を課しているわけですが、公文書館法をつくることを義務づけているのではありません。したがって、現在全国にある文書館についてこれを公文書館に変えたりする必要もないし、また今後つくられるものについて公文書館とすることを義務づけているものでもないというふうに解釈してよろしいわけですね。
  174. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 先生御指摘のとおり、公文書館法は「国及び地方公共団体は、歴史資料として重要な公文書等の保存及び利用に関し、適切な措置を講ずる責務を有する。」ということを明らかにしておりまして、その責務を果たす上で望ましい方法といたしましては公文書館の設置を期待していると解釈されますが、しかし既存の施設を利用するなど他の方法によりましてその責務を果たすことを否定しているものではございません。したがいまして、先生が御指摘されましたとおり、例えば既存の設置根拠の変更など、改めて公文書館としての位置づけをし直すというようなことを義務づけたものではないというふうに理解しておるところでございます。
  175. 吉川春子

    ○吉川春子君 アーキビスト、コンサベーターなど、専門職員の養成についてお伺いいたします。文部大臣も予算委員会で積極的な答弁をされておりますが、専門職員の養成についてどういう具体策を持っているのか、文部省お答えいただきたいと思います。
  176. 西尾理弘

    説明員(西尾理弘君) 御指摘のアーキビストに つきましては、資料の保存、管理の専門家として文書館等における公文書等の保存、利用に重要な役割を果たしていくということが期待されておるわけでございますが、公文書館法の制定を契機といたしまして、その養成についてはますます重要な課題になってきておるという認識でございます。  このアーキビストの養成に関しましては、これまで大学の共同利用機関でございます国文学研究資料館というのがございまして、これは品川区にあるわけでございますが、ここにおきまして昭和二十八年以来、特に近世史を中心といたしました専門職員の研修コースを実施しているわけでございます。この研修コースは都道府県等の図書館、文書館、博物館等に勤務する専門職員を対象として近世史を中心として史料の調査、整理、保存、管理等に関する基礎的な知識、技能を習得させることを目的として開催しているものです。毎年一週間程度の短期間の講習でありますが、これまでに受講者は二千人を超えているという状況でございます。このたびの公文書館法の制定を契機といたしまして、文部省としても今後こうした国文学研究資料館における研修コースの充実強化を図り、我が国におけるアーキビスト養成の実を上げていくことが必要であるという考えでございます。
  177. 吉川春子

    ○吉川春子君 品川ですか。板橋じゃないんですか。
  178. 西尾理弘

    説明員(西尾理弘君) 品川区でございます。
  179. 吉川春子

    ○吉川春子君 それで、さらに今後諸外国のように大学あるいは大学院においてアーキビストの養成講座を設ける必要が出てくると思いますが、そのことについては文部省はどうお考えですか。
  180. 西尾理弘

    説明員(西尾理弘君) 我が国におきましては、先生も御承知と思いますけれども、まだアーキビストとしての資格あるいは能力を持った専門家の方が少ない、ましてやこれを指導する研究者の方も少ないという実情にございます。そういう状況下におきまして、私どもの方といたしましては、まず大学の共同利用機関である国文学研究資料館、特にここの中に附置されております史料館におきまして、ここには幸い専門家の方も二、三人いらっしゃるものでございますので、この共同利用機関を中心といたしまして人材養成のきっかけづくりをしていきたい、こういうことでございまして、この館がまた将来は中軸となりまして、関係大学等の御同意、御協力を得ましてそういう養成コースが展開されればというふうな期待もございます。
  181. 吉川春子

    ○吉川春子君 この件についてちょっと官房長官にお尋ねいたしますが、今アーキビスト等の養成が急務となっております。実はアーキビストといいますか、文書司とか日本語で言われていますが、こういうものの基準ですね、どういう能力が必要でどういう資格でどういう履修科目を必要とするかなどについて基準が今までのところ日本にありませんので、それで文部省においても大学の講座をつくるその他がすぐにはできないという実情にあるわけですね。それで、これは文部省だけでもできませんし、まさに公文書館法の責任官庁である総理府がこういう専門職員について能力、資格、そういう基準をどう決めるかというようなことについて早急に検討されなければならないと思います。これをぜひ総理府のイニシアチブでやっていただきたいと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  182. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 先生御指摘のとおり、専門職員につきましては現時点におきまして我が国ではその養成あるいは体制を含めまして十分整備されていないことは御指摘のとおりでございます。したがいまして、私ども今後の一つの大きな課題といたしまして、今文部省の方からもお答えもございましたとおり、私どもといたしましては文部省その他関係方面と相談しながら、基準づくりまで果たして近い将来できるかどうか、現時点においてはちょっと自信を持ってお答え申しかねるところもございますが、少なくともそういった公文書館の充実という観点で努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと確認しますけれども、要するに専門職員のあり方について総理府としても文部省などの協力を得ながら積極的に検討していきたい、こういうことでいいわけですか。
  184. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 現時点におきましては公文書館におきます職員がたしか四十四名だと思いますが、その中でいわゆる専門職に該当されると思われる方はいわばまだ一けた台でございます。しかも、それは高等教育機関においてある程度の例えば歴史学等を学んだ方でありまして、さらにその後いわば実務経験、実務研修といいますか、そういう場でその専門的な知識を得た人しかおらないわけでございますので、今後諸外国等の状況あるいは先ほど申しましたような文部省との協力等を得ながら、そういった基準をつくるような方向で当面は努力してまいりたいというふうに考えております。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 国立公文書館がございますが、現在各省庁の公文書はどのようにこの国立公文書館に移管されているんでしょうか。その方法やら基準について説明していただきたいと思います。
  186. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) たしか昭和五十五年でございましたか、各省庁との連絡会議を設置いたしまして、昭和四十六年の公文書館の開設以来年間二万七千冊、たしか一冊四センチ換算でございますが、を各省庁からの協力を得ながら受け入れてきているところでございますし、今後ともそういった各省庁とのいわば申し合わせによりまして、定期的に開かれる連絡会議あるいは個々に相談しながら積極的に受け入れ体制を整えてまいりたいと考えます。
  187. 吉川春子

    ○吉川春子君 今各省庁の公文書が漏れなく国立公文書館に移管されているんでしょうか、どうですか。
  188. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 現在は永年保存するような文書等を中心としまして各省庁の判断におきまして私どもがその受け入れを行っているところでございますし、行政各般にわたるその文書の重要性ということでございますので、しかも現用を除くということでございますし、私ども総理府あるいは公文書館が直接各省庁に参りまして云々ということではございませんで、先ほど申しました永年保存を中心とした公文書を各省庁との協力において私どもが受け入れているというのが現状でございます。
  189. 吉川春子

    ○吉川春子君 公文書の場合に、その役所にとっては永年保存というのが重要な文書ということになると思いますが、一般的に後の歴史家あるいは国民が判断する場合に、永年保存文書が必ずしも歴史的に重要だということには限りませんで、永年保存でない文書についても大変貴重な価値のあるものは存在するわけです。今永年保存文書はかなり移管されているということですが、それ以外の公文書の受け入れについては必ずしも明確ではありませんけれども、これについての対策はどうなさるんですか。
  190. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 先ほどは、例えばということで永年保存文書を中心にというふうに申し上げましたけれども、もちろん永年保存文書だけではなくて、各省庁が管理しております例えば文書管理規程等によりまして必ずしも永年保存ではなくてもその文書が作成後三十年を超えない期間において保存しているものにつきましては、私どもが各省庁のこれが現用ではないと、つまり非現用であるという判断のものにつきましては受け入れております。
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 各省庁の文書保存規程といいますか管理規程といいますか、これは統一的なものが総理府かなんかにあるんですか。
  192. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) ございません。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 したがって、各省庁文書管理が個々ばらばらで、それはまあそれでやむを得ない面もありますけれども、国立公文書館その他に公文書を後世の歴史資料として必要なものを受け入れるという観点からは非常にマイナスになる面が出てくると思うわけです。  それで、また官房長官にお伺いしますが、公文 書の保存、閲覧について、公文書館法では国と地方自治体に義務を課しているわけなんです。これを実効あらしめるためには、各省庁がばらばらに文書規程を持っている現在ではなかなかうまくいかないことは明らかなわけですね。国立公文書館その他に少なくとも公文書が、私文書も古文書も含まれますが、きちんと系統的に保存できるためには、各省庁統一の基準、統一の協力体制、そういうものが必要なわけですけれども、ぜひ総理府においてこういう問題についてきちんと体制を整えてやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  194. 本多秀司

    政府委員(本多秀司君) 先生のせっかくの御指摘ではございますが、何しろ、先ほども申しましたように、まず公文書館法が成立しましてまだ数カ月しかたっていないわけでございますし、それから何と申しましても一番私どもが今後考えていかなきゃならない点は、いわば専門職員の養成ということでございます。まだその専門職員の養成等につきましてもグランドデザインといいますかそういうものもできていない状況でございますので、各省庁との協力をどのような形で仕上げていくか、現在先ほど申しましたように定期的な会議は持っているわけではございますが、とりあえず私どもがまず真っ先に手がけねばならないのは専門職員の養成をどのようにして構築していくかという点だというふうに理解しておりますので、今の御質問、もう少し時間がたった後に説明させていただきたいというふうに思っております。
  195. 吉川春子

    ○吉川春子君 私はその答弁は納得できないんですね。というのは、各省庁ですから政府機関ですから、それを統一的に文書をどうやって受け入れるかなどということは予算も大して必要ないし、やる気になればそれはできることだと思いますので、専門職員の養成の基準ももちろんですけれども、公文書の全般的な移管についてやはりきちっとした体制をつくるために、総理府の負っている責任というのは大きいと思うわけです。  それで、官房長官にお見えいただいていますのでこの問題の最後に、公文書館法の成立によってやはり総理府の責任は重くなると思うわけですけれども、この法律については予算も六十三年度はついておりませんが、今後実効あらしめるために全力を傾けていただきたい。その決意をお答えいただきたいと思います。
  196. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今質疑もありましたが、公文書館法につきまして昨年当委員会の発議で成案を得て法律化されたわけでございます。したがいまして、政府といたしましても法律を施行していく立場からやはり諸外国にもひとつ負けないような公文書館のあり方について今後なすべきことを十分検討して、この法律の制定の趣旨を全ういたしていくように努力をいたしていきたいと、こう考えております。
  197. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、米軍の有事来援についてお伺いいたします。  瓦長官の一月訪米の際に、日本側から持ち出した米軍の有事来援のための共同研究、これに着手することが合意されました。しかし、議事録を繰ってみますと、昨年八月二十四日、衆議院安保特で当時の栗原防衛庁長官は、米軍重装備の事前集積については米側から話があれば対応するが、こちらからは持ち出す意思はないというふうに答弁しております。日本が今回従来の方針を変更した理由は何ですか。
  198. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今お尋ねの栗原前長官当時のお話は事前集積、ポンカスについて日本側から申し出があるかという御質問だったと思います。したがって、我が国がそういう政策をとりたいということで、日本側から直ちにそういう政策実施についての希望を述べるかというお話であったと思いますので、そのつもりはございませんというお答えをしたと思います。  今回有事来援研究を行いますというのは、こちら側からこういうことをしたいというのは研究をしたいということであります。したがって、その有事来援研究の中に事前集積の問題も含まれるかと思いますけれども、いずれにしましてもそういったものについてもろもろの研究をいたしたいということであって、それを実施したいという申し込みとは非常に異なるものであるというふうに私ども考えております。
  199. 吉川春子

    ○吉川春子君 研究だけして、事前集積を実施するつもりはそれではないわけですね。
  200. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 有事来援の研究を行った結果どういう答えになりますか、まだ答えは出てまいりませんが、その結果によってあるものについては政策的にそれを取り上げていきたいということになれば、それぞれの政府が持ち帰った段階でもう一度政府部内で十分な審議をして、その政策の実施に移るか移らないかということになろうかと思います。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 それでは、やはり事前集積の問題について結論を得た場合は日本もやるということになるんじゃないですか。  従来、日本側がこのことを持ち出すのに消極的であった理由は何ですか。
  202. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 前も安保特か何かでお答えしたと思いますけれども、要はアメリカ側としてはいわゆる事前集積については議会の承認が要るということで、議会の承認された枠組みというものがございます。それはたしか九二年までだったと思いますけれども、その間にやるべき事前集積の箇所なりはもう決まっております。したがって、それに追加するという考え方はアメリカ側は現在持っていないと思います。そういったものについて日本側が一方的にやってほしいとかいうことを言うことは好ましいことではないと私ども考えております。  そういったことはさておきまして、今回の有事来援研究というものは、そういった事前集積というただ一つの選択肢だけではなくて、いろんな意味で米軍の時宜を得た来援というものについていかにあるべきかというより幅広い研究をいたしてみたいということでございます。
  203. 吉川春子

    ○吉川春子君 西廣局長は、日本側から積極的に働きかけるとその費用を日本が負担せざるを得なくなるというふうに理由を述べていますが、そういうことですね。
  204. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 相手が嫌だ嫌だと言っているものをどうしてもやってくれということになれば、そういうことになろうかと思います。
  205. 吉川春子

    ○吉川春子君 今度はそうしますと有事来援の研究をして、その結果ポンカスということもあり得ると。そういう場合にはやはり日本のこの費用の負担もあり得るのではないか、そういう覚悟のもとにこういう提案をなさったわけですね。
  206. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 御承知のように、今回の研究というのは米側と共同研究をするわけでございますから、ここで出てきた研究の答えというのは、日米両国の担当者の同じような認識、同じような意見がまとまったものが研究成果として出てくる。それがそれぞれの政府に報告されるわけでありまして、それ以後どう取り扱うかということは別途の問題でございますけれども、いずれにしましても研究の成果としてまとまったものは、少なくとも両国の担当者同士では意見の一致を見たあるいは共通の認識が得られたものについて答えが出てくるというふうに考えております。
  207. 吉川春子

    ○吉川春子君 研究の前提条件として日本の負担にはならないもの、こういうものがあるんでしょうか。
  208. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 実は、先生お尋ねのポンカスという陸軍部隊の部隊編成に応じた事前集積について研究をするというような形で具体的なテーマを狭めて固めてしまった研究ではございませんで、そういうことであれば米側としても先ほど申し上げたような事情で現状においてポンカスを増加するというような計画はございませんので、そういう研究はできないというのが事務方同士の話し合いの結果でありまして、より広い立場から有事来援についての研究であれば米側としては応じる用意があるということで今回の研究開始が決まったわけでございます。
  209. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうしますと、そのポンカスの研究をやるということについては消極的なわけです か、日本もアメリカも。
  210. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 少なくとも米側としては、ポンカスということに限ってであればその研究に同意であると言うわけにはいかないというのが向こう側の言い分でした。
  211. 吉川春子

    ○吉川春子君 ポンカスをする場合、そうしますとアメリカの装備を日本が負担するということはあり得ないわけですよね。
  212. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 従来ヨーロッパ等で行われておりますポンカスについて、装備そのものについてその受け入れ国が負担をして買ったという例はないと思っております。
  213. 吉川春子

    ○吉川春子君 ヨーロッパはまた後で聞きますけれども日本においてこの装備を日本が負担するということは現行法制上もあり得ないわけですね。
  214. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 法制上はもちろんでございますが、我々としては、仮に装備をアメリカ軍に買ってやるのなら、自衛隊の装備をもっとよくしたいというふうに考えております。
  215. 吉川春子

    ○吉川春子君 そうすると、装備以外にいろいろ維持管理あるいは倉庫、そういうようなものについては負担する余地があるんですか。
  216. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 有事来援について研究をまだ始めておりませんから具体にどういう問題が出てくるかわかりませんが、仮に米軍の時宜を得た来援を得るためには何らかの施設の受け入れ態勢というものが必要であるとか、そういった問題が出てくるかもしれません。そういった問題についても何が必要であり何が必要でないか、どの程度のものが必要かということを研究すること自体が目的でありまして、それを実際の行政組織として負担するとかしないとか、そういう決心は研究の終わった後政府部内で改めて検討されるべき問題だろうというふうに考えております。
  217. 吉川春子

    ○吉川春子君 装備品以外のものについて日本の負担については否定なさらないわけで、つまり米軍の輸送配備装備品の維持、管理、展開、こういうものについて日本の負担はあり得るということになるんだと思うんです。在日米陸軍司令官チャールズ・W・ダイク中将はことしの一月に札幌市で記者会見して、この研究について、展開する米軍の装備、弾薬など補給品の調達には事前集積と米本土からの緊急輸送という二つの方法があり、どちらが安上がりで有効なのかを研究するというふうに述べているわけですが、重装備の事前集積というのはそれではどういうものを指すのか。アメリカの国防報告にも載っていると思いますけれども説明していただきたいと思います。
  218. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 米陸軍はポンカス計画として欧州に四個師団分の装備及び資材を事前集積しておりまして、さらに二個師団分の装備及び資材を主としてベルギー、オランダに配備するという計画を推進中でございます。その内容につきましては必ずしもはっきりいたしておりませんですけれども、国防報告等から総合いたしますと大体、戦車、兵員輸送車、トラック、トレーラー、工兵機材、それから携帯用でない火器、つまり大砲のようなものでございますね、それから通信機材というようなものが含まれております。逆にヘリコプターとかそれからコンピューターのように集積にそぐわないものについては、ポンカスの中に含まれていないというふうにされております。
  219. 吉川春子

    ○吉川春子君 仮に米陸軍の一個機甲師団を事前集積するとして、主な装備はどういうものですか。数も言ってくださいね、数も。
  220. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) ポンカスの対象になっております師団については、機甲師団、機械化師団、歩兵師団といろいろあり得ますけれども、ただいま委員機甲師団ということで例を挙げられましたので、ここに掲げられております主要装備、これもすべてではないと存じますけれども、主要装備として、アメリカの資料によりますと、戦車三百四十八両、装甲兵員輸送車三百十四両、戦車回収車三十四両、対戦車ミサイル搭載装甲車九十二両、騎兵戦闘車八十二両、百五十五ミリ自走りゅう弾砲七十二門、二百三ミリ自走りゅう弾砲十二門、百七ミリ迫撃砲四十六門、以上が資料に出ている装備でございます。
  221. 吉川春子

    ○吉川春子君 これらのものが大体どれぐらいの費用がかかるのかということをお伺いしたいわけですけれども、アメリカ議会での答弁があると思うんですが、それに基づいて価格は幾らぐらいになるんでしょうか。
  222. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) これらの装備というものがポンカスのために調達されたものであるかどうかということがわかりませんので、これらの装備が幾らかかるかという計算というのは非常に難しいのではないかと存じます。ただ、参考になるものといたしましては、一九八四年四月五日の米議会の議事録の中に、ヨーロッパ向けの五番目、六番目の師団用のポンカス、そのセットについての予算額が三千七百六十万ドルという数字が挙がっております。三千七百六十万ドルと申しますのは、当時の円レート、つまり一九八四年四月一日のレートを二百三十八円といたしまして換算いたしますと、八十九・五億円ということになるかと存じます。
  223. 吉川春子

    ○吉川春子君 今の費用については、これはさっきおっしゃった機甲師団の一個師団分の金額というには余りにも少ないと思いますが、そういうことではないわけですね。
  224. 小野寺龍二

    政府委員小野寺龍二君) 先ほども申し上げましたとおり、ポンカスとして事前集積されます装備というものがポンカス用として調達されるというものでは必ずしもございませんで、アメリカの師団が既に持っているものの中から恐らくポンカス用に振り向けられるという形のものだろうと思います。したがって、その調達費がどれくらいになるかというのは非常に難しくて、むしろこの費用というのはこの資材を運ぶための費用とか、そういったようなものがかなり含まれているというふうに見たらよろしいんじゃないかと思います。
  225. 吉川春子

    ○吉川春子君 いろいろな本によりますと、一個師団の事前集積の費用というのは三千億から五千億ぐらいかかるのではないかという指摘があるわけですけれども、仮に、北海道とこの間防衛局長おっしゃいましたが、北海道が対象になりそこに事前集積をする、しかもそれが少なくとも四個師団ぐらい必要だというふうに指摘されているわけですけれども、そうすると莫大な費用になると思うんですね。  さっきNATOの場合の費用負担の問題については答弁がありましたけれども、もう一度そこを詳しく伺いますが、NATOはどういうような形でどれぐらい、何分の一ぐらいポンカスの費用負担をしているんでしょうか。
  226. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいまの先生の御質問、先ほど来伺っておりますと装備品そのものの購入についてどのぐらいかかるかというようなお話が多かったと思いますが、これらについてはNATOは負担をいたしておりませんし、米側としては米本土にある部隊のものを持っていっておるということで、ポンカスとして別のものを調達しておるのではないというふうに私どもは理解をしております。と申しますのは、議会がポンカスをより以上ふやすことについて非常に消極的な理由として、現役師団なり予備役師団の装備品の充足が下がってしまう、ポンカスに余り持っていくとですね。ということで、現役師団については七〇%までは確保しなくちゃいけない、予備役師団であれば五〇%の装備を確保すべきであるというようなことを申しておりますので、いずれにしましても米本土にある現役師団なり予備役師団の装備を薄めて、それをポンカスするというのが現在のやり方だろうと思っております。
  227. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本側が有事来援の研究を提案したその陰には、やはり日本でこの米軍の装備を買うのも辞さない、経済大国だと、こういうような含みはまさかないんでしょうね。
  228. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 全くそのような考えは持っておりません。
  229. 吉川春子

    ○吉川春子君 防衛庁長官にお伺いいたしますが、INF協定が締結されて世界は核廃絶の方向に一歩踏み出しているわけです。そういう時期に新たに有事来援の研究を、今まで消極的だと言っ ていたのに、日本の方から持ち出したというのはなぜであるのか。これは世界情勢との関係でいっても大変国民が理解に苦しむところだと思うんです。アフガンの撤退も具体化して、ソ連脅威論への見直しも欧米の評論家たちは進めている。そういう時期に日本政府はそういう動きに水をかけるかのように、以前よりは一歩踏み込んで有事来援、ポンカスあるいはホスト・ネーション・サポート、有事立法、こういうような研究に一歩踏み込んだということは大変重要だと思います。これは世界の大きな軍縮、核廃絶の流れに反するもので私は許されないと思うんですけれども、その辺の長官の御認識はいかがでしょうか。
  230. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) INF全廃合意を私どもは大変喜ばしいことだと思っておりますし、さらに米ソ間の核問題も含め各般の議論がなされておりますので、これらを注目いたしておるところでございます。本委員会でも申し上げてまいりましたが、通常兵器レベルでの抑止の信頼性というのはまた重要な面がございますから、ここにも私どもは配意をしておるわけでございまして、率直に言いまして東西間の平和を維持する、そうしたことを考えてみますと、軍事バランスといいますか、そういうことも含めまして冷厳な現実が横たわっておる、かような認識を申し述べてまいっておるわけでございます。  さらに、アフガンにいたしましても局地的な問題等を踏まえましても、私どもにとりましては大変関心の深いところでございまして、しっかりこれを見届けてまいらなきゃならぬ、こういうぐあいに考えております。また、一方におきましてソ連の極東における軍事力の増強は御承知のとおりでございまして、私どもはそういったものにももちろん注目をしてまいらなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  有事来援の問題につきましては、これはいわゆる日本有事の場合タイムリーに米軍の来援が得られるかどうかという問題は直近の問題ではなくてかねてからの問題であり、私どもはこの有事来援の問題は日米安保体制の核心の問題である、かような認識もございます。よって、先般訪米の際に有事来援の問題につきまして米国防長官に申し上げ、この研究を進めるということで合意を得た次第でございます。
  231. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間が来たので、終わります。
  232. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 宮内庁の方に先にお尋ねしていくんですが、皇室費として六十三年度は三十億何がしという予算を組んでいるんです。この内容で私が知りたいのは、皇太子は別にしていわゆる皇族が海外にお出かけになるのは大体年間何人ぐらいおられるのか、そのための予算というのを六十三年度の中で幾ら組み込んでおりますんですかということです。
  233. 井関英男

    政府委員(井関英男君) 皇族様の外国の御訪問の経費でございますが、予算の積算といたしましては、皇太子殿下が外国に一回御旅行になる、それからその他の皇族でございますけれども、六十三年度は三回御旅行になるということで予算の積算をしております。それでその金額でございますが、皇太子殿下以外の皇族の三回の御旅行の経費といましまして、一応四千百万円余を計上してございます。
  234. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が申し上げたいのは、国民の海外へ出ていくのももう年間六百万を超えるほどだし、それから国会議員らもそういってはなんですけれどもかなり海外へ出ていくわけなんです。だから、そういう点でやはり皇族の場合もそれにふさわしいなりの海外にお出かけになることが可能なようにしてあげた方がよしいのではないか、余り昔のシビアなままでいつまでもやっているということはいかがなものか、このように経済力を持つようになったんだから、したがってそれにふさわしいように出られるようにしてあげていただきたいという希望です。国会議員と比べてどうなんですか。皆さん方がごらんになってみて妥当だと言えますか。むしろまだ少し厳しいじゃないかなというふうなお感じになられるんじゃないんですか。
  235. 山本悟

    政府委員山本悟君) 皇族の外国御旅行の点でございますが、確かに予算積算上そう多くのものではないというぐあいには存じております。ただ、やはりどうしても国交上、国と国との関係上公的に必要であるというようなときには予備費その他のこともさせていただくと。要するに、予算を組みます際にあらかじめ翌年の分が何件であるということの想定がつかない場合もあるわけでございますが、そういったときは効率的な運用というようなことで対応をさせていただく場合もあるわけでございます。そのかわり、逆に申しますと先ほど申し上げましたような、経済主管からお答えいたしましたような格好で予算計上いたしましても、そのお受けがない場合もある。そのときはやはり予算残金が出るという場合も起こってくるわけです。そういったもの総体を判定しながら有効適切、効率的なという言葉は適当かどうかあれでございますけれども、そういったような考え方で対応をさせていただいております。  このごろのように国交を交えている国が非常に多数でございまして、かつ日本のこういった情勢からいいましていろいろな意味での政府の御招待、公的な御招待もございますしそうじゃないプライベートの御招待もございますが、いろいろなそういったような対応の仕方に応じまして、公的なものは宮廷費から出している。私的な場合には宮様方が御自分で行っていらっしゃる場合もある。その場合でもお供の者とかなんとかいうものはやはり公式につけるわけでありますから、そういったものはお世話申し上げるというようなことで対応させていただいているわけでございまして、こういったような格好でだんだんと外国交際というものもふえていることは間違いないことでございます。なお実際上困らないような格好で努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  236. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そういうことでして、余り皇室のことだから深く立ち入るといけませんが、私ども国会議員が扱われている待遇から見るならば、皇族の方がどうもシビアに随分窮屈にやられているようなことを耳にしますから、できるだけそういうことのないようにしてあげていただきたいということを要望しておきす。  せっかくおいでいただいたんですからもう一つこれをお聞きするんだけれども、浩宮様の結婚のことについて三月中は御発表なさらないようなことをこの前も言っておりましたんですが、もうあと四日ばかりたつと三月も終わりになるんですけれども、いつごろ御発表なさるおつもりでおられるのか、その点はいかがなんですか。
  237. 山本悟

    政府委員山本悟君) 先般国会で御質問いただきましたときにお答えしました三月云々と申しますのは、たまたまそのころある週刊誌が三月云々ということを書いたものがあって、それをちょうど読んだところでございましたので、さようなことはないと申し上げたわけでございます。  公式にその際にも申し上げたわけでございますが、要するにこの問題につきましてどういう段階かということをお答えするのは事柄からいって遠慮させていただきたい、御容赦いただきたいというのが基本の考え方、これはもうずっとその前から貫いている考えでございまして、その辺は御容赦を賜りたいわけでございます。少なくとも皇室会議がいつだというようなことを議題にするようなといいますか、我々がいろいろなところで申し上げるような段階には至っていないというのが私どもの現在の気持ちでございます。
  238. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう少しお聞きしたいんですけれどもその辺でとめておきたいと思いますので、宮内庁さんの方ありがとうございました。  次は、難民の問題で御質問していくんですけれども官房長官、この国会の冒頭の一月二十五日ですか、総理が施政方針演説の中で言っているんですけれども、「「世界に貢献する日本」との姿勢を確立し、日本の豊かさと活力を世界に生かしていかなければならないとの思いをさらに深くいたした」、こう言っている。そういう総理の御見解と現実に今政府がおやりになっている難民対策とい うものとがちょうどイコール結びついて、それにふさわしいような難民対策をなさっておるのかどうなのか、その辺は官房長官どう御判断なされますか。
  239. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 総理が施政方針演説で申された「世界に貢献する日本」という中には、今委員指摘の問題も含まれておると思います。そういう意味で難民対策につきましても政府としても懸命の努力をいたしておるところでございまして、特に深刻化した一九七〇年代後半より本格的に取り組みを開始しまして、一九八一年には難民条約に加入して国内体制の整備を図るとともに、世界の難民救済活動に積極的に今貢献しておるところでございます。特にインドシナ難民につきましては、人道上の見地及び東南アジア地域の平和と安定への貢献との観点から、国連の難民高等弁務官事務所、いわゆるU NHC R等の国際機関政府に対する資金協力を行いその救済援助に努める一方、ボートピープルに対する一時庇護を提供いたしております。これは約九千人でございます。また、本邦への定住受け入れ約五千五百人を進めているところでありまして、今後ともかかる協力を継続していく方針でございます。  ただ、いろいろマスコミやその他から日本の場合にはどうも定着率も少ないというような御批判もございまして、そういった点についてはさらに研究する余地があるのではないかなという気がいたしておりますが、国際国家日本という広い見地から、やはり難民の方々に対しましても、大はアメリカが一番大きいわけでございますが、日本としてもこれだけの経済力を持っておりますし、御指摘をいただきましたような国際社会に生きる日本といたしましても、可能な限りこの難民救済につきましては努力を今傾注いたしておるところでございます。いろいろ御批判もあろうかと思いますが、さらに努力を続けていきたいと思っております。
  240. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 具体的に、官房長官、GNPが日本とアメリカで比較してどのくらいの割合になっているのかということ、そして昨年末の難民の受け入れ数というものはアメリカが八十万三千五百四十二人、日本の場合には五千五百六十九人、日本の百四十四倍からの難民をアメリカは受け入れているわけなんです。そうすると、GNPの対比というようなものはどのぐらいになっておりますか。日本とアメリカのGNPの。
  241. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘の日米おのおのの名目GNP、一九八七年の統計によりますと日本が二兆四千億ドル、アメリカが四兆四千八百億ドルでございまして、今委員指摘のようにアメリカ側が約八十万、我が方は五千五百ということでございますから、GNP対受け入れ数というのには格段の差のあることは否めない事実でございます。
  242. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 だから、国家の経済力の一つの物差しであるGNPから見れば、アメリカは日本の二倍ちょっと。ところが、難民の受け入れの方からいくならばアメリカは日本の百四十四倍と。そういう点から考えて、総理が「世界に貢献する日本」とこう言っているんだけれども、難民の問題についてはそれにふさわしい扱いをしていないんじゃないかということが言えると思うんです。  これは皆さん方だって御存じだと思うんですけれども、昨年、外国の新聞記者ですけれども、上野の動物園でパンダのハウスを今まで六千万でつくっておった。そいつを今度は鉄筋コンクリートの二階建ての三百六十六平方メートルのハウスを二億六千万円で建てる。大体この三月末には完成のはずなんです。もちろんこのお金は国が出したわけじゃなくて、宝くじ協会かなんかが寄附をしたお金なんですから別に政府予算を使ったわけではありませんけれども、しかしそういうことが外国人の目にどう映るか。日本では難民はパンダ以下の扱いしかしてくれないではないかと、外国人の新聞記者がこういうことを書いているわけです。ですから、そういうことを皆さん方がどういうふうにお感じになっているか、そのお気持ちの一端でもお聞かせをいただきたいんです。
  243. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) まあ今委員の御指摘のパンダのおりのことでございますが、それと一概に難民に対してのいろいろ施設の問題とを比較いただきますことは、これはちょっと次元の違うことではないかというふうに思います。しかし、外国のリポーターがいろいろなそういうことをおもしろおかしく取り上げられるということは甚だ残念でございまして、私どもといたしましても、もし必要であればいろいろな施設につきまして専門家から答弁していただきますが、懸命の努力をしてこの受け入れのためのいろいろな施設建設については精いっぱいの努力をしておるというふうに思いますが、まあしかし足らざる点がありましたら御指摘をいただいて、反省もいたしつつ改善していかなきゃならぬと思っております。  それから、先ほどちょっとこのGNP対比の受け入れにつきまして御指摘がございました。なるほどまあ数字はそういうことになっておるわけでございますが、日本の場合定住するという人は非常に少ない。日本にいてまたほかのどこか夢の国はないかと、こう探していかれるというケースもありまして、そういった意味で、余りこれを強調するとまた日本は経済大国だと言われるからいけないことかもしれませんけれども、いろいろの国際機関を通じまして資金援助、食糧援助、また特にUNHC Rの救済計画に対しては総額の約半分を拠出しておりまして、援助国の中で最大の拠出国になっておるということですから、日本の中で定住する方々に対する先ほどおっしゃっておられた施設の改善とかそういうものについて努力をすることも必要なことですが、どうも難民の方々のお気持ちというものが日本にいたいなという方ばかりでない場合には、それぞれの機関を通じて経済的な面で精いっぱいのお手伝いをするということも日本としてやっていくべきことじゃないか。この点については決しておくれをとっておらないという数字は一応出ておるわけでございます。まあしかし、いろんな御指摘を賜りながらより改善をしていきたいと思っております。
  244. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が難民の問題に取り組むようになったのもそこなんですけれども、五十三年の年末ごろだったんですが、外国からのあるマル秘の手紙が世界で日本ほど恥ずべき国はないと言っている。ベトナム戦争であれだけ金もうけをしておきながらベトナム難民についてはたった一家族三名しか受け入れていないと、そしてこうずっといろいろなことがそこに書いてある手紙を受け取って、そしてこの国会へ持ち出してきたら、それで五十四年すぐ政府でも五百名の受け入れの枠を決めてくれたわけなんです。その後毎年のようにやっていってそれが五百が千になり三千、五千と、今一万までふやしてはいるわけですよ。  それで官房長官、今言われたお金でこうしているから、なにしているからと、そういうことを政府の皆さん方は言われるけれども、そういうことの言えるような状態ではないことはおわかりだと思うんです。つい数日前の朝日新聞でも書いていますけれども、「難民に捨てられた日本」と言っているわけでしょう。これは外国の新聞記者じゃないんですよ。日本の新聞記者が難民の問題をいろいろ調べて、どんどんどんどん素通りしてアメリカやカナダへ行かれるので、そういう点でもって、何で日本の定住を希望しなかったんだと言ったら、自分の友達は日本に定住を希望したけれども、何年たっても許可が出ないんですと。ですから、その辺のお考えをやっぱり根本から改めていただかなきゃいけないと思うんです。  栃木県の足尾町なんかでは数年前町議会が決議をして、そして土地は提供するから建物だけは政府の方で建てるようにしてくれませんかと、それで難民については受け入れましょう、日本語の教育も私たちがやりましょう、あと就職の方もこの周辺でもって全部責任を持ってやりますと。時の外務大臣にそれをお願いしたときにはそれは非常にいいじゃないかと言ってくれたんだけれども委員会の席でそれを言ったときには政府側の答弁というのは、いやまだ受け入れの枠が余っていますから別にそんなものを建てる必要はありません し、そういうことについてやる考えはございませんという答弁しか出てこない。だからその辺が、アメリカまでと言わなくてもせめてもう少し――ヨーロッパなりオーストラリア、はるか遠い国がもっともっと受け入れているわけなんですよ。一番近い日本がわずかにやっと今ここで五千幾らというところへ来ている。ヨーロッパの遠い国だってそうなんですよ。カナダも十一万三千何がし、オーストラリアも十一万一千、フランスでも十万というように、みんなそうやって遠い国でもそれだけのものを受け入れてやっているわけなんですから、だからもう少し人間的な心の温かさというものを持ってそして受け入れて、こういう人たちをやっぱり助けてあげるということをしていただきたいと思うんです。  それで、決してそれは日本の国にとって私はマイナスではないと思うんですよ。必ずそういう人たちが今度将来大きくなったとき、大きくというか先になって日本でもって受けた恩義というものは忘れないで、日本という国はいい国だと言うようになると思うんです。今のようなことをしておれば、それはもう日本のような憎たらしい国はありますかというようなことしかよそへ行って言わない。それがゆえにどんどんどんどんここのところ日本の国を素通りしてアメリカなりカナダなりヨーロッパなりへ行ってしまうんですから、その辺官房長官や関係のお役所の皆さん方がやっぱりもうちょっと人間味の温かさでもって受け入れてほしい、扱ってほしいというふうに思うんですけれども、いかがですか。
  245. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お示しをされた数字、アメリカ、フランスあるいはカナダ、こういう数字に比較しまして我が国はとこう言われますと、私も政治家の一人として非常に寂しい気持ちもしますし、恥ずかしいといいますか、どこに問題点があるかという反省も常々していた点でもあります。  ただ、アメリカの場合には、御案内のとおり、人種のるつぼみたいな形であらゆる人種の方々が非常に同化しやすい環境もありますし、それからフランスの場合にはこれが旧宗主国だったということからフランス語圏であるというような点もあり、カナダの方は広大な土地と自由な発展があるというようなところもありまして、そういうことでかなりの難民の方々が新しい人生を求めておるんじゃないかと。その点、正直申し上げて日本の場合には一民族一言語という、しかも難しい日本語というようなところで、正直言ってなかなか同化しにくく、また定着しにくい環境があることも否めない事実のような気もしますが、しかし、本当にこれから国際社会の中でお金もうけばかりやっているんじゃないかという批判にこたえる意味からも、ぜひもっともっと温かく迎えていかなきゃならぬという御主張は、私も全く同感といたすところであります。  お示しをいただきました栃木県足尾町のインドシナ難民受け入れ構想、大変すばらしいものだろうと思いますので、政府も一生懸命頑張りますが、それぞれ地域社会におきましてもこういう町、村といったところがたくさん出ていただいて温かく迎えていただくようなことができれば、大変ありがたいことだと思っております。しかし、御指摘をいただきましたこと、政府として完璧かと言われればこれはまだまだという気もするのだろうと思いますので、一生懸命さらに勉強して、国際的にも胸の張れるというところまでは行きかねますけれども、一応先進国としてやっておるという姿を示していくよう政府としても努力をいたしていきたいと、こう考えております。
  246. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これはもうきのうの新聞に出ていてごらんになったと思うのです。日本に来て六年になるんですが、一生懸命勉強して日本語も覚え高等学校にも行き、そして杏林大学の医学部の試験に合格したと。せっかくそこまで努力をして大学の医学部の試験に合格したんだけれども、初年度の納入金が八百万円だというのですね。杏林大学には奨学金制度がないものだから、そこの理事長までも方々駆けめぐって、せっかくあれだから何とかして受け入れるようにしてやりたい、分納でもいい何でもいいと言っていろいろ方々駆けずり回ってやっていても、金を貸してくれるところがないんですよ。日本にも奨学金制度があって、日本人自体がそういうぐあいでもって勉強をしている人もいるわけなんですよ。  ですから、そういう点に立つならば、こういう難民の人でもって日本に来てそういう言葉の障害も乗り越えて今のように努力をして、それで中学へ入り高校へ行き最終的に大学まで合格したと。だったら、今官房長官もできるだけ難民のことをやってあげたいと言うのならば、こういう人たちがせっかく大学に受かっているんだから、そこに行けるように何らかの道を切り開いてやはり温かい手を差し伸べてあげるという、そういう気持ちをお持ちいただけませんか。
  247. 大島弘輔

    説明員大島弘輔君) お答え申し上げます。  先生今御指摘の新聞の記事に関しましてでございますが、確かに御案内のとおり医学部に入ると、特に私学でございますと、入学金あるいはまたその後の授業料というものはもう我々日本人にとっても大変だと思うくらいの非常に大きな額でございます。医学部のこの本人に関しましての対策というものは正直なところ我々もなかなか立てにくいわけでございますが、また既に難民が入りましてもう十年以上たっておりますので、中学、高校そしてまた大学という人たちが徐々にふえてまいっております。これに関しましては、もちろん一般の民間のボランティアの方々からの援助というものも非常に大きな助けになっているわけでございますけれども、及ばずながら政府関係特に日本育英会の方におきましても、定住いたしました難民の子弟に対しましては奨学金というものはこれは日本人と同じ扱いとして出してございます。  私学関係でございますと、もし自宅から通うのでございましたら三万五千円、そして寮に入っておりましたら四万五千円というのが月額支給されております。これは全部無利子で貸すわけでございますが、これはもう我々一般が使っているのと同じものでございます。そのほかに、金利が若干つくのでございますけれども、さらに月額八万円というものが同じように難民にも支給される。これはまあ五・八%の利子がつきまして、卒業後何年間かかかって返さなければならないという義務は生じますけれども、一応政府関係におきましてはそういうことで、まだこれでも先ほどの医学部の例をとりますとちょっととても足りない額ではございますが、もし一般の大学の学部ということでございましたら、こういうことがかなりの助けになるのではないかというふうに考えております。ただ、もちろん今こういう難民に対しましての扱い方というものは、官房長官が答弁を申し上げましたように、まだまだ足りたい点が幾つかございますので、今後とも関係省庁との間でもいろいろ協議してまいりたいと思っております。
  248. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これ、もうこれ以上深追いするつもりはございませんけれども大島さん、ヴー・ダン・コイさんというこの人たちに――今言われたような規則、それはそうなっているんだ。そういう中でどういう知恵を働かせたらこの人のそういう希望をかなえることができるようになるか、そういうことについての道が開けるのか、そういうふうにお考えいただきたいと思うんですよ。それは官房長官ね、話を始めたら切りがないけれども、ラオスから出てきたのでもそうだけれども、もうメコン川を命がけで乗り越えるんですから、親子が全部一緒だったら死ぬときはみんな一緒に死んじゃうから、みんなばらばらで脱出するわけですよ。それで、親たちはちゃんとカナダへ行ってカナダ政府は難民としてなにし、それでしかも父親の方は病気になって生活保護までやってくれる。娘の方は台湾をなにして今度は日本に来ているという。幾らやったってなにしたって日本政府はそれを難民として扱わない、こういう違いなんだ。あるいは国連の難民高等弁務官の方がこれは難民だと認定をすると言ってくれても、日本政府はいやこれは難民の資格はありませんと言 っている。そういうことが今まで数限りなくあるんです。  ですから、そういう点で、別に私は難民の人たちに利害関係があるわけでも何でもない。しかし、もう何度も言うようだけれども、アブノーマルで出てきた人たちが難民だと思うんです。その人たちにノーマルな法律だけを適用してものをやろうというところに日本政府のやり方の無理がある。そういうやっぱりアブノーマルから生まれてきた人たちなんだ、じゃその人たちについてはどういうぐあいに受けとめて扱っていくことがよろしいかということをお考えになって、そして温かい手を差し伸べてやってあげていただきたいということをお願いして、終わりたいと思います。何か最後に官房長官、それにあれがあったらお聞かせいただきたいと思うんです。
  249. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お医者さんになった難民の話、たしかTVかなんかで西ドイツので私見た記憶があるんですが、そういった高度な技術を持つ方々が勉学を通じて資格を得ていくというのが、仮にも日本以外のところでたくさん出てきて我が国でないという事態は、これは大変寂しいことだと思います。今の医学校に入学するについての大変な財政的負担の問題について具体的な例が出ましたが、政治は一つ一つ具体的な例を消化していくというところにも、一般論的に押しなべてということはこれは当然のことですが、それ以外に一つ一つそういうケースをまじめに取り上げて解決できるかどうかということを図ることも当然だろうと思います。  今御答弁がありましたが、お医者さんの教育については、これ日本の場合には四けたの入学金とかということでございまして、今は三けたの話をされておりましたが、厳しい財政的負担を要することでございましてなかなか困難なことだろうとは思いますが、仮にも私立学校のことでございますので、無責任なことになるかもしれませんが、出世払いのような形で何か見てあげることができぬのかどうか、そういうことも含めまして検討できたらというふうに思います。いずれにいたしましても、難民の問題、日本も他国とのかかわり合いなしに生きていけない時代を迎えておりますので、極めて重要な問題として取り組むことを改めて政府としても決意を新たにいたしていきたいと思っております。
  250. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  251. 名尾良孝

    委員長名尾良孝君) 本日の委嘱審査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後三時二十六分散会