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参考人(泉
長人君)
最初に、今回の
放送法改正の全体的なことについて
意見を申し述べたいと思います。
現在の
放送法が
昭和二十五年に決まりまして、
民放が発足したわけでございます。三十五年たちました今日、初めて基本的な法
改正が行われまして、当時
NHKに準ずるといったような形で免許されていた
民放の
あり方から、
民放、
NHKが並立しながら視聴者にサービスするという現体制に沿った法
改正ができた、さらに加えまして
放送の計画的普及だとか、
放送局の免許期間の延長とか、
メディア特性に応じた
番組規律等の
改正は評価できるものでございます。基本的には一段前進したものとして賛意を表するものであります。
しかし、一方におきまして、今
先生からの御質問がありましたように、番組向上を理由としたような公的規制を強めようとするような面、それから
有料放送を導入しながら許認可制度を取り入れるなど、自主、自律の尊重だとか、民活方策に反する面も見られまして、そのほかに
NHKに対しましては業務範囲の拡大などが許されるようになって、それぞれの点でまだ
民放としては不満足な点が見られるところでございます。
したがって、今回三十五年もたってようやく
現状追認という法の
改正ができることは大変喜ばしいことなので、そういう
意味で基本的に賛成したわけでございますが、これから訪れます情報化社会、それの基盤となるのは、やはり
日本全体の
国民の情報の受け手の基盤となる情報の受け方だというふうに考えます。
先生がおっしゃったように、
放送衛星とかハイビジョンとか、さらには有線、無線の融合、CATVも視聴者には
放送と同じように情報が来るわけです。それから、そのほかにパッケージな
どもあるわけでございまして、そういうような
時代に合った法
改正というのは、
先生もおっしゃるように近い将来ぜひやっていた
だきたいし、そのときには私たちが今危惧している問題な
どもさらに御検討いただいて、それに含めて処理をしていただきたいというふうに考えます。そういう
意味で、今後はぜひ
国民の、受け手の
立場に立った
放送法、立派な
放送法というものができることを
期待しているわけでございます。
それから次に、
先生がおっしゃいました番組
規律についてでございます。
番組の向上につきましては、
民放始まって以来、長年にわたって
民放連の
仕事でもございますし、その方策を
議論し合ったり実行を進めてまいったわけでございますが、必ずしも視聴者から番組が大変満足だというような評価を得るには至っていない
現状でございます。それは十分我々も承知し、反省しているところでございますが、また非常に番組がよくなった面も十分御
認識をいただきたいと思っているところでございます。
その中で、私
どもが最近最も力を注いでおりますのは、
民放の全社員が
民放人として
放送基準マインドを徹底して勉強して、そうすることが一番、番組をつくっている人間、それを支えているほかの社員全体の総合的な
放送人としての志が高まることによって番組がよくなるんじゃないかということから、昨年来各社の社員
教育担当者、
責任者を呼びまして、全社それぞれ工夫を凝らして、社員に常時そういうような
放送人としての
放送基準を徹底するような
教育をしてくださいということをお願いし、着々実行しているところでございます。
しかし、番組をよくしていくということは、
放送事業が存続する限り永劫の問題でございまして、
教育と同じでございますので、これには時間と忍耐とそれからよい面をうんと引き出していくというような方策が必要なので、絶えざる
努力が必要でございます。したがって、法による規制だとか第三者によるチェック、そんなものがこれにまさるとは到底思えないわけで、ぜひ私
どもの自律を尊重して、これに御協力いただけるような体制づくりをこそ考えていただきたいと思います。
それから、
民放各社の
経営の問題ということをおっしゃいましたが、広告費に依存する
民放の場合に、
放送対象区域の購売力の水準といいますか、つまり、
放送事業存立の経済的基盤によって、その
地域に投下される広告費というものがもう大体決まっているわけでございます。最近、
日本の景気がよくなったと言われまして、
放送局も事実収入は向上しております。しかし、その中身の実態を見ますと、東名阪というようなキー局に非常に広告の投下が集中しておりまして、地方はその三分の一なり四分の一程度しか潤っていないということは、
地域格差が非常に拡大してきているということでございます。そういう
意味で、今度の指針にもありますように、地方の四チャンネル化といいますか、そういうものがこれに重なって出てきますと、非常に地方の
経営というものが圧迫されるし、うまくいくかどうか大変危惧するわけでございます。したがって、こういう厳しい状態のもとで、
放送普及の基本計画にありますような受信機会の平等ということをやることは私たちも賛成でございまして、多チャンネル化も進めていきたいと思っておりますが、それにはやはり今申し上げたような経済的な情勢がございますので、最も経済的かつ合理的なやり方を導入すべきじゃないかというふうに考えます。
と申しますのは、設備投資のミニマム化とか、
放送局運営のミニマム化ということ、それから新規事業者の参入することが
一体その他方にとってどうなのかということの検討、そういうものをさまざまな基準に照らして総合的に計画を進めていただきたいのでございます。したがって、ただいま
議論がありましたように、マス
メディアの集中排除という、その原則を振りかざすだけでこれを処理してもらうことは、大変受け手の
立場からいきますと、必ずしもいいのではないんじゃないか。
受け手は、地方の四局化というのは、地方の独自の情報が四種類ないから、困るから四局化しようというんじゃなくて、東京の人がたくさんの番組を見ているじゃないか、地方が番組が少ないのは不公平じゃないかという基本に立っているとすれば、中央の情報を地方に流すのには、必ずしもマス
メディア集中排除だけを振りかざすのじゃなくて、合理的な方法、いろいろ私は過去申しておりましたように相互乗り入れとか、一社で二波中継局をつくってあげるとか、いろんな方法があると思います。そういう
考え方も導入いたしまして、多数の申請者の一本化ということについて方法にこだわらない、柔軟なやり方というものが図られてしかるべきであります。
放送というだけで独占することの弊害というよりも、今視聴者は、
放送だけじゃなくて、CATVやパッケージとか、あらゆる情報の入手の手段を持っております。だから、
放送だけが妙にかたくなな従来のやり方をとろんじゃなくて、それと総合的に考えた進め方をしていただきたいというのが、今の
放送局の
経営の問題と絡めてお願いしたいところでございます。
以上でございます。