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国務大臣(
梶山静六君) 一つは、公の立場で行われる一
省庁一機関の地方移転に始まるいわば公の機関の地方分散というと言葉が悪いですけれ
ども東京以外のところに移転をさせること、それから前々からこの
委員会でも問題になっておりますように、いわゆる地方分権を進めることによってむしろそういうものを期待をする。むしろ私は後者の方がはるかに大きな成果があると思うのでございますけれ
ども、中央の権限を地方に移譲することによって地方分権を進めていけばいわば公的な誘導策になる、こういう問題があろうかと思います。そして公的な中でやれることは、今
政府委員からも
答弁をいたしましたように、
ふるさとづくりの特別
事業やあるいは新たな構想の財団的なものを設立をし地方への
活性化の誘導策にしたい。
それから東京でなければならない情報や金融やその他の機能は当然東京に集中をするでありましょうけれ
ども、東京でなくてもよい産業機能やその他の機能があるはずでございます。私も試算をしてここに一表を持っているんですが、東京の恵比寿にあるビール工場、と言えばもうわかるわけでありますが、あの当時このビール工場が地方移転を考えたことがございます。
そこは面積が十二万平米ございまして簿価は三億円でございます。そして時価は幾らかというと三千六百億円でございます。そしてそのビール工場が東北のある仙台の近くに
土地を求めて移動をしようという一時期がございましたけれ
ども、それに要する費用は、買いかえ資産は面積が約五万平米ふやしまして十七万平米、単価が平米五万円でございまして、八十五億円でその
土地を取得できる目安がついたわけであります。しかしこのとき税金が幾ら取られるかという計算をいたしましたところ、圧縮記帳や買いかえ
制度やその他を全部生かしてみましても、長くなりますから細かい数字は抜きにいたしますが、国税、
地方税をひっくるめまして二千二百五十五億円取られるわけであります。
取られると言うとこれは悪い、納めなければならない税法上の決まりがございますが、そうなりますと、簿価は確かに三億円かもしれませんが何代も何十年も持っていた
土地が、今時価が三千六百億円だからといって二千二百五十五億円取られてもいいだろうという議論もありますけれ
ども、その
土地を一遍処分をして地方に出てしまえばもう一回同じ勢いで東京に戻ることができません。半分以上、三分の二を取られてしまうわけでございますから、これはだれが考えても間尺に合いません。
ですからこんなことをやっていては、幾ら買いかえ
制度があるからいいではないかと言うけれ
ども、買いかえ
制度というのは釈迦に説法かもしれませんが一対一ないし一対五ぐらいの地価の相違の場合に有効に作動するわけでございまして、一対百や一対二百というような大きな地価の変動がある場合はこの買いかえ
制度や圧縮記帳の
制度は有効に作動いたしません。
ですから考えてみますとこういうのはやめて、簿価のままでそこを再開発することによって人がもっともっと集中をし機能的な機構がそこにできることは現実でございます。こういうのを考えますと、必ずしもビール工場は東京になくてもよろしい、しかし東京から出ていこうとすると二千二百五十五億円取られるのではこれはたまったものじゃないから東京で再開発をやった方がよろしいということで、そこにまた人口の集中がなされるわけであります。
こんなことを私が言っていいのかどうかわかりませんが、しかし考えてみますと、こういう税の公平平等というのも大切でございますけれ
ども、税というのは何のためにあるのかというのを考えればやはり大きな人々の幸せのためでございますから、東京に集中しなくても済むためにはどうすればいいかというようなことを考えれば、こういう意味でも民間のエネルギーをスムーズに持っていくためには税制上の恩典やあるいは地方進出準備金
制度的なものをつくり上げることによって、その企業が地方に出ていくならば東京のいわば空地もできるし地方に産業の
活性化もできる、こういう両々相まつ
制度をこれから考えていかなければならないのかなという気が私はいたします。
いずれにしましても、地価が高騰したために今東京のいわば地価
対策を中心にした緊急の
対策がなされたわけでございますけれ
ども、四全総を踏まえてこれから五年先十年先どういう国土形成をするかというと、こういうものに着目をして民間のエネルギーをスムーズに地方に移す準備も整えていかなければならないと思うと、そういうことが公の誘導策という意味で、ただ単にこれは事例を申し上げて、そういうものができるかどうかわかりませんが、そういう問題もひっくるめてこれから考えていかなければならないというふうに考えております。