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木本平八郎君 私、けさほど技術のブーメラン現象と、それから
産業の空洞化問題についてイントロだけをちょっとやったわけですが、それを受けてあとやりたいと思うんですけれ
ども、もう相当時間も遅くなって皆さんお疲れのようですから簡単に終わりたいと思うんです。
それで、簡単に終わるためにちょっと私が申し上げたいことを先にざっと言いますんで、あと飯塚院長からは技術者
対策はどうするかという問題についてお答えいただきたいし、それから
杉山局長からは今後の国際分業という面でどういうふうにお考えになっているかという御所見。それから、まだおられないけれ
ども、
大臣おられたら最後に御所見承って終わるというふうな段取りでやりたいんです。
それで、まず私の申し上げたいことを先に言ってしまいますと、先日、十日ほど前に電機メーカーの鎌倉製作所を見学に行ったわけなんです。私ももう十数年ぶりに行ったものですから非常にびっくりしたんですけれ
ども、そこで一番驚いたのは、宇宙衛星に積むコンピューターの基板を組み立てているんですね。これは多品種少量
生産で、一品一品の手づくりです。
どういうふうにやっているかといいますと、女の人が台におりまして、そこに上から電気でぴっと照らすんですね。そうすると、基板のところにぱっと電気がつくわけです。そうすると、隣から部品を取って、そしてそこへ埋め込む。この部品は、ぴっとつくと必要な部品がすっと浮いてくるんですね。それで、埋め終わるとぴっと明かりが映って、またこっちがすっと変わって、それをこうやっているわけですね。しかも、この部品は、その横に三万ぐらい入っているドラムがあって、それがコンピューターの指示によってぴょこぴょこ上がってくる。そのドラムに入っている部品は、そこにずっと自動倉庫がありまして、トレイがずっと入っていて、それでやってきているわけですね。それを、そこの作業場では八人ぐらいでやっているだけなんです。
それで、こういう作業はまあ大変なんだけれ
ども、これの
コストは
日本は絶対にどこにも負けないというわけですね。大量
生産で、ベルトコンベヤーに乗っかっているというのは、これは確かに未熟練労働者でいいし、労働賃金が安いんでいけるだろうと私は思っていたんですが、こういう多品種少量
生産というのも、
日本のように
コストが、人件費が高いともう到底競争できないと思ったんですね。ところが、いやそれがもう
日本の方が得意なんだと。これはいろいろ理由がありまして、その作業をしている
人たちは皆高校出だというふうなことで、非常に特徴はあるんですけれ
どもね。
それで、それを組み立てまして、その後がまた大変なんです。衛星用ですから、もう極低温から瞬間的に太陽側になると超高温になりますね。それから、無重力の問題とか、そのテストが大変なわけですね。その試験機がずっと並んでいてやっているわけです。
そこで、向こうの方でも言っていましたけれ
ども、私が感じたのは、一人の作業員に対して後ろでバックアップしている技術者が十数倍おるわけですね。昔の工業
生産というのは、一人のエンジニアがおって、その下に十人、あるいは二十人、ひどいときには百人ぐらいの作業員がいてやっていたわけですね。もう逆転しちゃっているわけですよ。
そこで問題は、将来、今のちょうど高一の
人たちが大学を卒業してくる時分から人口が減るわけですね。そうすると、どんどん技術者も減ってくる。今のままで二十一世紀になると、毎年数万人のオーダーで技術者が足らなくなっちゃうというわけですね。それで、けさほどの
産業の空洞化の問題なんですけれ
ども、海外に出ていくのは、いわゆる作業員のやる仕事なんですね。逆に
日本は、だから極端なことを言えば、技術者ばっかり残っちゃって作業員は残らなくなるという可能性があるわけですね。
そういうことでますます
産業が空洞化して、海外へ出ていって、技術者は逆にどんどん要るようになっちゃうというわけですね。それで、例えば試験機なんかも、本当にすごいのが並んでいるわけですね。宇宙衛星なんかつくっているのは、もうその作業員はほんのわずかでバックアップしているのが大きいと。
さて、問題なんですけれ
ども、こういう技術者が足らなくなってくると、そうしたらどういうふうにしてこれをサプライするかというと、二つしかないと思うんですね。
一つは、
外国からどんどん技術者を導入してくるということですね。それからもう
一つは、文科系の人を今度は再教育して技術者に変えるということなんです。
これは、私は高等学校、理科を卒業したんですけれ
ども、理科と文科の差というのは、今で言えば専門学部のあと二年の差でしょう。こんなたった二年で理科と文科と一生分かれちゃうというのはおかしいと思うんですね。逆に言えば、文科を卒業して、会社に入って二、三年して、ああしまった、おれは理科へ行っておきゃよかったと思う人もいっぱいおるわけですから、そういう人を再教育して使えるんじゃないか。例えば、大学には工学部と理学部がありますけれ
ども、これから必要なのは
情報科学部だと思うんです。したがって、
情報科学部のエンジニアというのをそういうふうにして養成できないかと。
したがって、結論から申し上げますと、
通産省で貿易大学というのがありましたね、今どうなっているか知りませんけれ
ども、あれと同じように、
企業から二、三年貿易大学みたいなこういう
情報科学大学に留学させて、そこで大量に養成していくというふうなことで、産学あるいは産官学が共同してやっていくということ。それから、
外国の技術者を入れるといったって
日本語の問題その他ありますから、むしろ積極的に各国に、何というんですか、工業大学か何かをやって、そこでついでに
日本語も教えて、そして
日本にどんどん連れてこれるような手を打っていかなきゃいかぬじゃないかというのが私の趣旨なわけです。
それで、先ほどのように、これは技術者の確保という点から飯塚院長にお願いして、それから国際水平分業ということで
杉山局長に、それで最後に総合的に
大臣の所感を承って、私の
質問を終わりたいと思います。