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1988-05-24 第112回国会 参議院 商工委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月二十四日(火曜日)    午前十時六分開会     ─────────────    委員異動  五月十二日     辞任         補欠選任      松浦 孝治君     林田悠紀夫君      向山 一人君     鳩山威一郎君  五月十三日     辞任         補欠選任      永田 良雄君     杉元 恒雄君      鳩山威一郎君     向山 一人君      林田悠紀夫君     松浦 孝治君      渡辺 四郎君     青木 薪次君  五月十六日     辞任         補欠選任      松浦 孝治君     河本嘉久蔵君  五月十七日     辞任         補欠選任      中曽根弘文君     石井 道子君      河本嘉久蔵君     松浦 孝治君      梶原 敬義君     小野  明君  五月十八日     辞任         補欠選任      石井 道子君     中曽根弘文君      小野  明君     梶原 敬義君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 小島 静馬君                 佐藤栄佐久君                 中曽根弘文君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 青木 薪次君                 梶原 敬義君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君                 矢原 秀男君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君    政府委員        内閣法制局第一        部長       大出 峻郎君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁総合        計画局審議官   宮本 邦男君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        通商産業大臣官        房長       棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房総務審議官   山本 幸助君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業大臣官        房審議官     野口 昌吾君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省機械        情報産業局次長  岡松壯三郎君        通商産業省生活        産業局長     鎌田 吉郎君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        特許庁長官    小川 邦夫君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省欧亜局ソ        ヴィエト連邦課        長        茂田  宏君        文化庁文化部長  逸見 博昌君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特定産業構造改善臨時措置法廃止する法律案内閣提出衆議院送付) ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (OECD閣僚理事会に関する件)  (米国経済状況及び見通しに関する件)  (米国包括通商法案に関する件)  (日ソ貿易問題に関する件)  (アラスカ原油輸入に関する件)  (テクノポリスに関する件)  (日米秘密特許問題に関する件)  (映画産業の振興に関する件)  (クレジット産業の問題に関する件)  (技術者育成に関する件) ○伊方原発号炉出力調整実験及び出力調整の中止に関する請願(第二〇五号) ○円高による中小企業危機打開産業空洞化の防止に関する請願(第二九二号外一八件) ○悪徳商法規制に関する請願(第三四一号) ○中小零細企業対策充実に関する請願(第三四三号) ○フロンガスの早期規制に関する請願(第三四四号) ○スプレー剤としてのLPG解禁反対に関する請願(第八一五号) ○中小企業不況対策充実に関する請願(第一三八五号) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣に関する件     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十三日、永田良雄君及び渡辺四郎君が委員辞任され、その補欠として杉元恒雄君及び青木薪次君が選任されました。     ─────────────
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) 特定産業構造改善臨時措置法廃止する法律案を議題といたします。  本案に対する趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 梶原敬義

    梶原敬義君 産構法意義は一体何であったのか、目的を果たしたのか、これが一つ。それから、産構法施行状況及び廃止後にさらに問題が残りそうな点について最初にお伺いをいたします。
  5. 田村元

    国務大臣田村元君) 産構法は、二度にわたります石油ショック契機といたします基礎素材産業構造不況の克服を目的とした法律でございます。この法律のもとで、構造改善基本計画に従いまして、過剰設備処理事業提携活性化投資などの構造改善が行われました結果、多くの業種において稼働率向上や業況の回復が見られるなど、大きな成果が得られたものと考えております。このようなことで、産構法は、石油危機契機とする構造不況を克服いたしまして我が国基礎素材産業活性化に大きな役割を果たしたものというふうに考えております。  なお、産構法施行状況等につきましては、政府委員から御答弁をいたさせます。
  6. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 産構法意義については大臣からただいま御答弁申し上げましたが、私からは産構法施行状況及びそれについての評価という点について申し上げてみたいと思うわけでございます。  これまで産構法では、特定産業として二十六の業種を指定いたしまして、これらの業種につきまして、過剰設備処理、さらに事業提携等に基づきます事業集約化等構造改善に取り組んできたところでございます。  まず、設備処理状況につきまして申し上げますと、昨年の九月末現在で、処理目標量に対しまして九六%の達成状況になっておりますし、またその後も引き続いて、対象になっております業種につきまして、この三月末現在で見てみますと、目標に対して九八%の達成状況になっているわけでございます。  それから事業集約化につきましては、二十六業種のうち十六の業種につきまして、関係企業から四十七件の事業提携計画承認申請がございました。承認された計画に基づきまして、生産、販売、物流等の各分野におきましての集約化共同化事業が進められてきております。  また一方では、産構法対象業種につきましては、エネルギー価格の高騰に対しまして省エネルギー等活性化投資ということで設備面合理化もやってきたわけでございますが、これにつきましては、取得設備につきまして特別償却制度さらには開銀からの低利融資という制度がございますので、これを活用して活性化投資が進められてきておるわけでございます。  ただいま現在では、十三の業種につきまして産構法対象指定、各種の対策が進められておるわけでございますが、今申し上げましたような施行状況でございますし、最近におきます対象業種稼働率、さらには経営状況を見ますとかなりの業種におきまして好転をいたしておりますので、私どもといたしましては、全体としてはこの産構法を制定していただき、基礎素材産業構造改善に大いに役立ったものというふうに評価をしているところでございます。  ただ、対象業種のすべてについてそれでは稼働率経営状況改善しているかということになりますと、残念ながらそうはまいりませんで、いわゆるプラザ合意以降の急速な円高に伴いまして、依然として輸入品等との競合で過剰設備が存在し、また経営状況改善をしていない業種があるわけでございます。こういった業種につきましては、この産構法廃止後におきましても各業種の実情に応じましていろいろな対応をしていくべきものと考えておるわけでございます。  一つ対応といたしましては、昨年制定をしていただきました円高に伴います産業構造転換円滑化のための法律産業構造転換円滑化法がございますので、これの対象として設備処理を続け、事業転換を進めていくというようなこともございましょうし、また、対象にはいたしませんでも設備投資面での情報透明性を確保する、さらには需給見通し等について政府情報提供をする等々の措置を講ずることによりまして、これからも稼働率向上経営状況改善に努めていかなければならない業種があるわけでございまして、ただいま申し上げました幾つかの対応方法によりましてこれに対処をしていきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  7. 梶原敬義

    梶原敬義君 聞くところによりますと、ビスコース繊維尿素湿式燐酸溶成隣肥化成肥料フェロシリコン、これらの業種がやはりさらに問題が残りそうだ、こう聞いておりますが、これらの対応についてお尋ねいたします。
  8. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) ただいま先生お挙げになりました業種のうち、ビスコース繊維尿素溶成燐肥化成肥料フェロシリコン、こういうものにつきましては業界からの御要望等もございますので、今後産業構造転換円滑化法対象としてさらに一段の設備処理を進めていく必要があるのではないかというふうに考えておりまして、今後その方向でさらに具体的な詰めをいたしておきたい、こういうふうに考えているところでございます。
  9. 梶原敬義

    梶原敬義君 これまでややもしますと、我が国産業界というのは、少し景況がよくなりますとそれぞれ好き勝手に増設をやる。そして何かの大きな景気変動とかショックに対してまた行政指導が入りまして、カルテルをやるかあるいはこの産構法のような形でその設備を休止あるいはスクラップする。これはこの二十六業種以外でも特に目立つのが造船ですね。船なんかがそうなんですが、こういう繰り返しをやってきたわけでございまして、そういう設備をつくって、それを休止しなくてもいいあるいはスクラップをしなくてもいいやつをやはりやらざるを得ないような、ある意味では行き過ぎた競争原理が働く場合もあるわけでございまして、その辺についてはこれからもやはり先を読んだ通産の行政指導というのが必要ではないだろうかと考えております。  またこの二十六業種の中で、特に私、紙に関係ありますから、今のような点から考えて先を読んでみますと、新聞用紙が今また少しいいんで増設増設あるいは海外出資と、それからコート紙ですね、これがまた相次いでおりまして、これまたいっときすると過剰生産、そしてまた先では大変な雇用問題まで起こる心配もあります。この点に対する行政指導、先を見た指導をやれないものかと思います。  それから段ボール原紙ですね、少し内需拡大をしてきて一息ついておるところですが、まだ価格は非常に低迷をしておりますね。これがまた非常に業種というか企業数が多い。それから業界の協調がなかなかアウトサイダー等あってとりにくい。そしてある時期はもう原価を大きく割り込んだような価格に下落する。これの繰り返しをやっているわけなんですね。  今後の指導方針についてお尋ねをいたしたいと思います。
  10. 鎌田吉郎

    政府委員鎌田吉郎君) まず、新聞用紙コート紙についての設備増設が相当活発になっているということについてでございますが、新聞用紙コート紙とも当面の需要は大変堅調でございまして、さしあたりは懸念はないと思うんでございますが、今先生指摘ございましたように大変企業設備投資意欲が旺盛でございます。そういった意味で先行き不安なしとしないという状況ではないかと思うわけでございます。そういった意味合いにおきまして、私ども用紙につきましてこの三月から個別設備投資通産省に事前に届け出る、そしてまたそれを対外的にも公表するいわゆるデクレア制度というのを実施することにいたしておるわけでございますが、こういったデクレア制度対象にいたしまして当面設備投資動向の的確な把握努力したいというふうに考えておる次第でございます。  それから段ボール原紙でございますが、先生指摘のように、この業界企業の数も多い、また中小企業がその中で多数を占めているというようなこともございまして、大変過当競争的な体質の業界でございまして、ただいま先生指摘ございましたように、経営状況につきましても市況の低迷等から大変厳しい状況にある、そういった業界でございます。ただ、幸い内需拡大に伴いまして段ボール原紙需要は最近は急速に回復しておりまして、また設備稼働率も大幅に向上している と、こういう状況でございます。  ただ、ただいま申し上げましたように大変厳しい状況でございますので、私どもとしては今般、ダンボール原紙需要見通し検討委員会というのをユーザー業界の御協力を得まして設置いたしまして、定期的にダンボール原紙需要見通しを策定、公表する、そういった形でダンボール業界生産体制安定化努力する、こういうふうにしている次第でございます。いずれにいたしましても大変難しい業界でございますので、今後とも十分目を配っていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  11. 梶原敬義

    梶原敬義君 特に製紙会社の場合は、設備をスクラップするとか、あるいは休止するという問題もですが、スピードといいますか、一分間に例えば三百六十メーター、こうやっているのが四百メーターいく場合もあるし、生産技術向上することによってそこで思わぬ供給量がたくさん出たりして、混乱する場合があるわけですね。だからぜひもう一つ立ち入ってスピードの問題もやはりきちっと届け出をしてもらい、把握をしておかないと、気がついたときにはまた大変なことになる。特にまた雇用問題から、あるいは地域の経済社会に与える影響とか、こういうものが出てきますので、御答弁要りませんが、その辺もぜひ小まめな指導をしていただきたいと思います。  それから、質問通告はしておりませんでしたが、ちょっと時間がありますので申し上げますが、私絶えず疑問に思うのは、電力業界電力料金の問題なんですね。  これは家庭用電力にしても、あるいは工業用電力にしても、本当に我が国電力料金というのは高いですね。そして電力会社原価計算のやり方というのは、これはもうまさに経費は目いっぱい、そして稼働率によりましてコストが急に上がったり下がったりする。今度のように円高で非常に燃料の輸入が有利になってくる、あるいはまた石油価格も下がっている、両面から非常にメリットが出ているはずなのに、しかし家庭用電力の下がり方あるいは工業用電力もそうなんですが、下がり方は、通産省努力をしてくれたけど、それほど下がらない。  なぜ下がらないかというと、やはり電力業界稼働率が落ちている。それがもっと上がればコストが急に安くなるから、そういうもとにあるベースが基本になるから、採算を見てこれぐらいしかやっぱり下げられないというのが電力業界の言い分だろうと思うんですね。  しかし電力業界というのは、私どもの地元の電力業界もそうなんですが、大体町の一番いいところに本社を持ったり支店を持ったり、これは九電力業界皆そうだろうと思う。大変な資産をやっぱり持っているんです。しかし、ある時期、油の値が上がればやはりそれに対応して電力料金のアップがまた申請をされ、上げてくるわけですね。下げるときはなかなか電力業界採算まで壊して電力安定供給するためには下げられない、こういうことでなかなか下がらないんですね。  ところが、民間の一般中小企業なんかは、経営が悪くなりましたら、持っている財産やなんか全部銀行が先に売ってしまえと、こうくるわけですね。そして、もうどうしようもないから、持てる資産や担保を現金化して、そして苦境を切り抜ける。しかし、電力業界あたりは絶対にそういうことはしないんですね。だから、きちっと持てるものは持って、計算もちゃんと、それは原価計算も定額じゃなくて定率で先にざあっとやっていっているはずなんですね。そういう点では、電力安定供給という観点からか、非常に保護されているんですよ。  だからそういう意味では、私はこういうような企業が非常に厳しい、あるいは雇用問題が厳しい、あるいは家庭生活が厳しいときには、もう少し一歩突っ込んで電力料金あたりはやっぱり下げないと、これはアルミなんかもそうなんですよ、もう絶対これは競争できませんわね。だから、本来ならアルミ産業ならアルミ産業水力発電所のどこかいい場所を与えて、そしておまえのところはこの川の水を使って実際に産業を成り立てよと、電力業界と切り離してそういうチャンスを与えた場合は、日本でもやっぱりアルミ産業というのは私は成り立つと思うんですね。  今私どもが知っている古い明治につくった水力発電所というのは、いわばもうただみたいにできているわけですね。送電設備もほとんどただみたいな形でできている。新たにダムをつくってやるというと、今コストは高いかもしれないけれども、昔つくった水力発電所というのはもうほとんどただみたいなものだ。そういう電力を使えば、アルミ産業だって成り立つわけなんですね。しかし、電力業界関係でそんなことはできない。ですから、もっと何か、私が言いたいのは、ある時期非常に貢献したアルミ産業だって大変なことになりまして、非常に歯がゆい思いをするんですが、少し電力業界なんかも協力をするように指導していただきたいと思います。  いろいろ申し上げましたが、もし感想があればお答え願って、終わりたいと思います。
  12. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 電力料金の問題について御指摘がございました。私直接この問題にお答えできるような立場にはないわけでございますが、今までいろいろと聞いておりますことを中心にして、若干個人的な感想めいたことを申し上げるということで御答弁にかえさしていただきたいと思うわけでございます。  電力料金、前回の改定時には大臣の強い御指示もございまして、相当厳しい切り込みをやって料金改定をいたした経緯については御案内のとおりでございますが、それでもなおかつまだ外国に比べれば電気料金が高い。これは水力その他の資源賦存状況にもよるところが大きいわけでございますが、一方では、先生おっしゃいますような電力企業経理問題等についても、あるいは若干の御指摘があるようなことがあるのかもしれませんが、こういった点については一層厳しく我々としても見ていくべきものというふうに考えておるわけでございます。  ただ、最近に至りましてはむしろ電力需要者の方が、共同自家発というような格好でみずから発電をするというようなことがかなりふえてきておりまして、これが電力会社にとりましてもかなり大きな刺激になっているというようなことも聞いているわけでございますので、こういうような観点からも、また電力会社としては一層の自己努力の必要というようなことを促される立場に置かれているのではないかと思います。  ただいま先生から御指摘のありましたことにつきましては、担当局長にも私の方から連絡をいたしまして、これからの行政の面で十分注意をしてまいりたいと思っております。
  13. 矢原秀男

    矢原秀男君 産構法につきましても、私の方も原則的には賛成でございますが、短い時間でございますので、重複を避けて質問をしたいと思います。  当局にちょっとお伺いをしたいんですが、通告以外で申しわけないんですけれども特定産業構造改善臨時措置法特定産業現況についても、電炉アルミビスコース、アンモニア、尿素湿式燐酸、経常の損益としては電炉関係をとりましても、六十一年度でも百三十九億円の損になっているわけですね。ずっと損益が上がってきている。そして当局としては大体目標達成をした、こういうことになるわけでございますが、赤字はふえているけれども目標達成したというふうな数字的な分析はどういう評価でやったんでございましょうか。
  14. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 産構法対象では、これまで二十六の業種対象として設備処理等をやってまいったわけでございまして、各業種ごとにつきましては、当初の目標に対する設備処理量等については、達成率に若干の出入りはございますが、平均をいたしますと、この三月末で九八%程度ということになっておりますので、おおむね全体として見ますと、産構法目標というものは設備処理については達成をされたと思いますし、また最近での稼働率なり経営状況を見ましても、対 象業種の大半はかつてに比べますとかなり改善をいたしておりますが、個別に見てまいりますと、先生指摘のございましたような幾つかの業種におきましては、設備処理目標達成率一般に比べると低うございますし、また最近における経営状況についても必ずしも改善に至っていないというものもあるわけでございまして、個々の業種で見ますと残念ながらまだ十分その目標達成していないと認められるものもございます。  ただ、これはどちらかといいますと、最近におきます急速な円高等の内外の状況変化というものによるところが多いように思われるわけでございまして、こういった新しい状況変化対応して、なお経営面での改善努力が必要な業種につきましては、この法律廃止されました後におきましても、その業種の実態に応じまして幾つかの対応によって所要の措置を講じてまいりたいと思っているわけでございます。
  15. 矢原秀男

    矢原秀男君 私が今この電炉業だけを取り上げましたのも、私もこの関係はちょっと専門的にかつてやっておりましたのでわかるんですが、企業数が五十三社、生産能力が二千六百七十一万トン、こういうふうにあるけれども、結局目標達成評価をされる時点においては、やはり倒産をするかそういうふうな形で淘汰をされて企業の数が少なくなって、そうして調整をされていく、こういうふうなのが電炉業でも現況でございます。  また、二番目のアルミニウムの製錬につきましても、この非鉄金属については、私たちも数年来エネルギー庁にいろいろ陳情したりいろんな要請をいたしておりましたけれどもアルミの問題も、この関係経済界人たちと一週間前もいろいろ話し合いをいたしておりますと、やはり外国で非常に安いということで、皆外国から購入をしていく。ところが倍近くにやはり金額が上がっている。じゃ日本の将来のアルミの原材料についてはどうするのかという問題、こういうことがいろいろあるんでございます。  やはりここで出てくるのは、先ほども質問がございましたように、電力料金の問題が――円高の中で外国から輸入がどんどんふえている、現実には対応できないから企業数をどんどん減らしていっている。これが企業の自然淘汰の中で非常に厳しい問題があることを知っていただかなければいけない。これは私が実際に学校を出て、そこで仕事をしていたから状況が全部わかるわけでありまして、きょうは多くは言いませんけれども、そういう中で電力料金を今お話がございましたように、これは通産大臣にお願いしたいんですけれども、通産大臣電力業界の要望に対して、いやもっと厳しくしなくちゃいけないということで非常に努力をされた。しかし円高の中で外国企業から製品が押し寄せてきて、ここに出ていない電気料金を最大に使うようなグループの企業、もう大変な状況にあることは、これは事実だと思うんです、僕もあえて言わないけれども。  しかし、私は夜間の電力料金というものは、電力を消費する企業それからまた国民の家庭生活、夜間の電力料金は原油等の円高条件等から分析してみても、もう少し私は下がる可能性があると分析しているわけなんです。ですから、これ通産大臣電力を食う企業、これは悲鳴を上げております。また国民生活も、物価は安定しているなと思いましても、高値安定であることははっきりしております。そういうわけで、私は企業に対しても、国民生活に対しても、夜間の電力料金を下げる分析の検討をもう一回やってほしいんです。そうしなければ、ここには今出ておりませんけれども、大変な状況が今あることを私自身は分析をいたしているわけでございます。  この点通産大臣、私が言いたいのは、もろもろの実態の分析の中で電力を物すごく食う企業円高の中で、全般に経済は好調であるけれども苦しんでいる状態、当局はわかっておられる。そしてまた国民の家庭生活も、何も言いませんけれども、やはり公共料金一つである電力についてはもっと下げるべきであるというふうな声もございます。  そういうようなことで、夜間の電力料金は、通産省でもっと検討していただければもう少し私は下がる、このように思っておりますし、下げていただいて、国民生活にもそして電力で悩んでいる企業に対しても、やはりこれはもう少し努力をすべきではないか、こう思うんですけれども、時間ございませんので通産大臣、まとめて私の質問に対して答えていただきたいと思います。
  16. 田村元

    国務大臣田村元君) 電力料金それに大手三社のガス料金、御承知のように私どもに対して残酷という表現もあったようですが、とにかく絞れるだけ絞りました。二兆六千億といえば大減税に匹敵いたします。一般家庭においては、標準的な夫婦子供二人の家庭で、大体合わせて平均三万円ぐらいの料金下げになったと思いますが、それにしても電力というかけがえのないエネルギーというものは人間の生活の実態に大きく影響することは、これは事実でございます。常に為替の動向あるいは原油の価格等々について十分の関心を抱いて検討していくことはこれはもう当然のことだと思います。  大口の場合、私もちょっと余り具体的な事務的なことは存じませんが、電炉なんかは需給調整契約というものの活用によって相当安い料金にすることができるということもちょっと聞いておりますが、きょうはエネ庁が来ておりませんのでまた改めて御答弁をいたさせますが、私としては今後も十分の検討はしていきたいというふうに考えております。
  17. 市川正一

    ○市川正一君 今回廃止される産構法について、私は八三年四月二十六日の本委員会において、ここに会議録もございますが、第一に、これが特定産業における大規模な人減らし、合理化に拍車をかけるものであること、第二に、下請中小企業の切り捨てなどによって地域経済に深刻な影響を与えること、第三に、無秩序な過剰設備など大企業がつくり出した責任を不問にして新たな優遇措置を講ずるものであること、第四に、独禁法の骨抜きに道を開くことなどの点を指摘し、反対いたしました。  今回所期の目的を達して、企業収益も黒字基調との理由で産構法廃止するということなのでありますが、その反面、雇用面では特安法で四万人、産構法で一万八千人余りの人減らし合理化が実施され、失業率も今日平均で二・八%に上っており、事業所の縮小、閉鎖なども地域経済に大きな打撃を与えると言わざるを得ません。  そこで伺いたいのは、雇用面ですが、特にこの面への影響が現実に重要な問題となっていると考えますが、いかがでございましょうか。
  18. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 産構法対象業種におきます従業員数について私ども調べましたところでは、昭和五十八年度末には約十三万人程度でございましたのが、昨年の九月現在では約十一万人ということで二万人、比率にいたしまして一五%程度減少をいたしております。  産構法は、過剰設備処理を中心といたしまして事業の提携集約化等構造改善をいたしますので、その過程におきまして雇用面に影響が出てくるということはこれある程度いたし方のないところでございますが、雇用問題につきましては設備処理等を行います場合に組合との意見調整も十分にやった上で行っていただくように指導もいたしておりますし、また、その過程におきまして雇用面で労働省のやっておられます特定不況業種関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法等の措置の適用をしていただく等々十分に配慮をしたつもりでございます。  その結果といたしまして、設備の過剰問題についても多くの業種で大体改善をしたように思われますし、経営も安定をいたしてきておりますので、この間先ほど申し上げました若干の雇用の減はございましたものの、全体としては業種の安定、企業経営状態の改善が図られるということで、結果的には残された雇用の安定には十分な貢献をしてきたものではないかというふうに評価をいたしているところでございます。
  19. 市川正一

    ○市川正一君 その点はやはり事実に反すると思 うんです。いただいた資料でも、今おっしゃったように一万八千六百七十三人の雇用減、言いかえれば人減らし合理化がそういう形で強行され、今日雇用問題が新たに社会的にも重要な問題になってきているということを私は指摘せざるを得ぬと思うんです。  しかも重要なことは、産構法廃止して助成策がじゃこれで終わるのかと申しますとそうではありません。指示カルテル、共同販売会社など大企業による集中支配体制は温存し、さらに円滑法で合繊、セメント、これを対象に含んでおります業務提携など必要な措置は肩がわりをさせております。また、エチレンなど四業種についてデクレア制をとり過当競争対策まで講じている等々によって、私は産構法の大量人減らし方式は事実上そのまま昨年の円滑化法に引き継がれていると言わざるを得ぬのであります。  しかるに、例えば円滑化法の特定施設の対象として鉄鋼高炉五社をとってみますと、ここは一億トンの生産を依然として確保しております。そして、大幅増益決算と、こう言われております。事実はそのとおりです。ところが、さらに四万四千人の人減らしによって、野村総研の試算によりますと九〇年には労務コスト日本の六分の一と言われている韓国の浦項製鉄よりも総コストが下回るというデータを出しておりますけれども、それほどの大合理化を強行しておる。こういう路線の追求ではなしに、この産構法が示したこの五年間の教訓というのは、やはり失業問題の解決と地域経済の活性化に大企業の社会的責任を果たさせる、そういう方向に通産省指導を行うということがなすべき役割ではないのかということを私は重ねて強調いたしたいんでありますが、いかがでございましょうか。
  20. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 産構法につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、その後も昨年産業構造転換円滑化臨時措置法を制定をしていただきました。これは産構法とは違いまして、むしろ円高によります内外の経済状況の変化に企業対応し、できるだけ企業内で過剰になった雇用を新しい分野へ進出をすることによって維持をしていく、それをお手伝いしよう、それからまた、先生指摘になりましたような企業城下町等地域経済に対する影響を何とかして緩和をし地域の活性化を図っていきたい、そういう観点からつくったものでございまして、むしろ雇用の安定、地域経済の活性化というものをねらいにしたものでございますので、先生おっしゃいますような産構法の延長で体制がそのまま維持されているという御批判はいかがなものかというふうに考えるわけでございます。  ただ、今度の産業構造転換円滑化法では、従来のように業種ごと政府計画をつくって設備処理をする、こういうようなことではなく、また設備処理が円滑にいかない場合には指示カルテルをするというようなことではなくて、むしろ企業の自己責任、自己判断のもとに個別企業ベースで新しい分野への転換、過剰設備処理をしていただく、こういうことをやったものでございまして、そういう意味からも政府の施策としてもこれまでの産構法でとってきた手法とは違った考え方で対策を立てたつもりでございまして、今先生から御批判のありましたその延長ではないかということについて私どもはそうは考えていないところでございます。
  21. 市川正一

    ○市川正一君 廃止法案ですから、きょうはこれぐらいにしておきます。
  22. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、この法案を廃止するということについては賛成なんです、何でもデレギュレーションでどんどん廃止していただいた方がいいと思いますから。ただ、ここで新しい産業構造の問題を提起したいわけです。  それで、この資料の中の業種別進捗率というのをちょっと見てますと、やはり砂糖なんか非常に悪いわけですね。六三%ぐらいで非常に悪い。  それで、実はこの前ある有名なエコノミストと話しておりまして、こういう話を聞いたんです。一九二〇年代のアメリカの状況と今の日本状況で非常によく似ていることはいろいろありますけれども、非常に特徴的なのが、あのときもアメリカは農業が非常におくれていたんですね。自動車だとか製鉄だとか、もちろんハリウッドなんかもそうなんですが、そういう方面はどんどん進歩していたけれども、農業が非常におくれていた。したがって、このアンバランスが大問題だということを心あるエコノミストは指摘していたようなんですが、それがあの大恐慌につながったと。  したがって、今現在日本でも株だとか土地だとかあるいはマネーサプライだとかいうようなことが言われていますけれども、そういうものに対処はできていくだろうけれども、この農業部門のおくれというものを何とかしないとやはり経済混乱に巻き込まれるんじゃないかということなんですね。したがって、通産省関係はこういう法案をつくっていろいろ業界対策なんかもやられて着々と効果を上げているんですけれども、一方、農業部門が非常におくれている。これは通産省の責任でも何でもなけりゃ、そんなことを言われても困るということでしょうけれども、それはむしろ大政治家としての田村大臣の問題かもしれませんけれども、そっちの方をやっぱり何とかしないといかぬのじゃないか。そのエコノミストなんかも極めて憂えておりますし、私もそう思うわけですね。  これは今、この商工委員会でそんなこと言ってもしようがないんですけれども、現実にこういうふうな法案を見ていましても、砂糖関係が非常におくれているというふうなことが目立つわけですね。したがいまして、そういう点をステーツマンとして田村大臣どういうふうにお考えになっているか、受けとめられているか、所感的なものをお伺いできたらと思うんですが。
  23. 田村元

    国務大臣田村元君) 果たしてお答えになりますかどうか、農業の構造改善というものが国民生活のニーズに合ったものに、コスト面でもということだと思いますが、率直に言いまして結論から言えばそのとおりだと思うんです。  ただ、私は直接担当ではございませんので、余りポリシーに関して私がここで具体論を言うのもいかがかと思いますので御遠慮申し上げますが、OECDで農業問題の議論を聞いておりますと、やはり各国ともに悩んでおります。過剰生産国は過剰生産国なりに、ケアンズ・グループを初めとしてアメリカも、それからまたヨーロッパのように輸出補助金等の面で、説明を聞いておるとなかなか彼らも辛い思いをしておる。日本日本なりに苦しい立場をしておる。そういうことでございまして、我々が担当しております産業政策というものから見ればなかなか難しい問題があるなと。  しかも構造調整あるいは合理化の深度というものが浅うございますから、そういう点でなかなか困難もあろうかと思います。と同時に、日本の農民の方々の農業に対する愛情、土に対する愛情と、それから農業に対する保守性といいますか、そういう問題もあろうかと思います。しかし、いずれにしても消費者のニーズに合うコストにいかに近づけるかということがもう究極の問題だろうと。それができれば貿易摩擦も起こらないわけでございますから、そういう点では確かに今、木本さんがおっしゃったとおりだというふうに考えます。
  24. 木本平八郎

    木本平八郎君 アメリカの農業問題というのは第二次大戦が終わるまで結局続いて、それで大戦後非常に合理化されて生産性が上がって、そして非常に世の中が世界的に安定した。今大臣がおっしゃったように、この農業の後進性というのは世界的な問題なんですけれども、これは各国が協力して何とか合理化して生産性を上げるというふうにやることが大問題じゃないかという気がするわけです。今後とも大臣もそちらの方にもいろいろ御関心を持っていただいて御協力いただきたいと思うわけです。  それで、この通産関係業種に関する産業構造の問題について杉山局長にお伺いしたいんですが、今世間一般に、産業の空洞化というのは非常に困るとか、あるいは技術輸出してブーメラン現象になったらえらいことになるとかいうふうな評 価が圧倒的なんですけれども、果たして空洞化というのは日本経済にとってマイナスなんだろうか。結論的に言いますと、私は空洞化をむしろどんどん進めた方がいいんじゃないか。非常に生産性の悪い、あるいは日本ではコストの合わないものをどんどん出していく。そのかわり、日本はそれだけの分がどんどん高度化していく。  私は、スパイラルのようになっていって、技術を出して、そして向こうから製品が返ってきても、その時分には日本が非常に一歩上へ上がっていっているということが現実にも行われているんじゃないかと思うんですけれども、今までで、例えば空洞化で非常に顕著な傾向が出てきているとか、あるいは技術の輸出でブーメラン現象ができてちょっとこういうところで困っているというふうな具体的な例でもありましたら教えていただきたいと思うんです。
  25. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 産業構造転換の過程におきまして輸入がふえる、また日本企業の海外直接投資ということで海外進出が行われる、また発展途上国に対して技術輸出という格好で技術供与が行われるとその製品がまた日本に入ってくる。このことだけをとってみますと、そこに空洞化と言われるような事態が起こる可能性はございますし、またブーメラン現象といったものが生じてくるわけでございますが、むしろ問題は、それに対してやはり積極的な対応をするということで空洞化を防ぎ、ブーメラン効果による関連産業の混乱を回避していくということが必要ではないかと思うわけでございます。  輸入拡大なり日本産業の海外直接投資によります空洞化の懸念に対しましては、やはり製造業の分野では新しい技術を産業化をして新しいフロンティアをつくっていく、またサービス業の分野を拡大して過剰になった労働力をそこで吸収する、こういう努力が必要でございますし、技術輸出に対しましては、むしろそれ以上に新しい技術を開発することによって日本の関連産業の付加価値を高めて、むしろ国際的に調和のとれた分業体制をつくっていく、そういう積極的な努力が必要だろうと思います。  これまでのところ具体的な例があるかということでございますが、労働省等の調査によりますと、ある程度の企業におきましては雇用面に影響が出ているというようなことが回答されたりしておりますから、全く影響がないということを申し上げるわけにはまいらないと思いますけれども産業全体としての空洞化、こういうものが当面現時点で大きな問題となっているということはないように思います。ただ、繰り返しになりますが、ほうっておきますと、将来はそういう問題が出てくる可能性もなしといたしませんから、積極的な対応を今から準備をしていく、これが肝要ではなかろうかと思うわけでございます。
  26. 木本平八郎

    木本平八郎君 この続きは午後の一般質疑のときにやることにいたしまして、これで終わります。
  27. 大木浩

    委員長大木浩君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  特定産業構造改善臨時措置法廃止する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  29. 大木浩

    委員長大木浩君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  31. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  32. 福間知之

    ○福間知之君 最初に、先般のOECDの閣僚理事会に御出席になった田村通産大臣、中尾経企庁長官、まずは大変御苦労さまでございました。  会議の模様は報道機関によってある程度承知をいたしておりますが、今、国際経済の先行きなり、その中で我が国が果たさなきゃならない責任というものの重さ等を考えまして、当会議で大臣方が発言をなされ、また各国からのいろんな要請等もあったことと思いますので、含めまして幾つかの質問をしたいと思います。  まず、今回の閣僚理事会が採択した共同声明の概要について、私の認識では比較的穏当な認識がなされているように思うんです。まず、各国経済が予想を上回る良好なパフォーマンスを示しておって、勇気づけられるという認識を示したようであります。具体的には、加盟国の成長の加速、低水準のインフレ、対外不均衡の縮小傾向、為替レート安定など国際協調の進展、構造調整の進捗などを指摘し、さらには累積債務国問題でも多少の前進があるとの見方をしているようであります。  そこで、政策協調による世界経済のこれからの安定的な成長を念頭に置いて、アメリカに対しましては、一つは財政赤字の削減、二つは貯蓄投資バランスの改善、さらには産業の国際競争力の強化などは象徴的に指摘されたようであります。  また、我が国に対しましては、内需主導型経済成長の持続的維持、二つ目には市場開放の促進についてでありまして、もちろんこの中には農業とか土地利用、税制、流通制度など幅広い分野での構造改革が現在立案あるいは進行中だという指摘がされておるようであります。  次に、欧州に対しましては、構造調整による経済成長の促進ということが象徴的なようであります。  これらの諸課題について、我が国を含めて各国の主張はそれぞれどういうものであったでしょうか、まず両大臣にお伺いしたいと思います。
  33. 田村元

    国務大臣田村元君) 今回のOECD閣僚理事会では、現在の世界経済につきまして予想されたよりも良好なパフォーマンスを示しておるとの評価が大勢を占めておりまして、この傾向を維持するためにも引き続きマクロ経済政策協調を行うとともに、構造調整についても国際的に取り組んでいくことが必要であるということが強調されました。  我が国の経済政策につきましては、各国から高い評価を受けました。コミュニケにおいても内需主導の成長の維持、財政政策の柔軟性維持並びに市場アクセスの改善規制緩和、それから幅広い分野での構造改革が指摘されまして、引き続き適切な政策運営に努めてまいりたいと思っております。  ちょうど中尾長官もことにおられますのであえて申しますと、私は去年のOECDも出席いたしましたが、去年のOECDは日本に対する非常に厳しい対応でありまして、各国の代表が述べます一言一言が針で刺されるような感じでございました。ところが、今回のOECDでは、とにかく各国代表ともに口を開けば日本のマクロ政策のパフォーマンスの大きさに対する礼賛、あるいは貿易収支の改善状態が定着しつつあることに対する評価等々でございました。また、日本の構造調整が順調に進んでおることも高い評価を受けました。  そういうことでございましたが、さはさりながら、だからといってアメリカ経済がああいう状態であるだけに、なおさら日本やドイツはよほどしっかりしたインフレなき内需拡大達成すべしというような期待が込められておったように思われます。  またアメリカにつきましては、財政赤字削減、産業の国際競争力の改善、それから農業支持政策の縮小、保護主義の防圧の必要性などが指摘されました。おっしゃったとおりでございます。  さらにヨーロッパにつきましては、各国政府が構造政策、マクロ経済政策で協力すべきであるとされまして、規制緩和、農業改革等の具体的な政策課題が指摘されました。特に西独につきましては、種々の構造調整の促進による恒常的な大幅経常黒字の削減と内需拡大指摘されました。  このたびのOECD閣僚理事会一つの特徴は、このようなマクロの問題から農業問題やあるいはNICS問題というような個別問題に重点が移されていろいろと議論がなされたということでございます。
  34. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 福間委員田村通産大臣の言われた言葉に全部が尽きると言っても間違いないと思いますので、私の場合ごく簡潔に申し上げたいと思います。  今回のOECDの閣僚理事会におきましては、OECD各国のインフレなき経済成長、主要国間の対外収支不均衡の改善、これまでの各国の政策協調努力によるとの認識で意見の一致が見られたことはもう既に御案内のとおりでございます。また各国からも、このような政策協調に今後とも引き続き積極的に取り組む旨の決意の表明が行われました。  さらに、各国の経済運営における具体的政策課題といたしましては、委員指摘のような主要政策課題について各国が取り組むことの必要性が指摘をされた次第でございます。  以上のような議論の結果、政策協調のもとでマクロ経済政策と構造調整を組み合わせていくことが必要であるという点での合意を見まして、具体的な政策課題がコミュニケに盛り込まれたものと考えますし、そのような方向であった次第でございます。  以上でございます。
  35. 福間知之

    ○福間知之君 田村大臣のお話の中にもありましたように、昨年も閣僚理事会の後、当委員会で質疑をいたしたときに、まさに針のむしろに座らされているような感じだったという発言が確かにありました。それに比べると、今回は新聞論調等でも最も日本は居心地のよかった閣僚理事会じゃないか、こういうふうにも言われているわけであります。しかし、それは国の昨年来からの積極的な内需拡大その他の努力が一応評価もされたということでありましょうが、反面、アメリカの経済につきましても一年前とはかなり好転をしつつあるということが背景にあったと思うんです。  ところで私が気になるのは、大臣の言葉じゃないが、さはさりながら、世界経済の基本的な欠陥といいますか、構造的不均衡というようなものは何ら解消されていないし、今回のOECD理事会のコミュニケがそれぞれの国で努力されていく方向を示しているとはいうものの、なお極めて不透明なものがそこには感じられるわけであります。例えば、アメリカの昨年のいわゆる株の大暴落、ブラックマンデーと言われるあの事態を世界各国はどのように認識をしておるのか、アメリカのこの財政赤字の削減の進捗度合いなりあるいはまた貿易赤字の縮小、一方アメリカの輸入の削減、輸出の増大ということに関しての展望などが必ずしも明らかにつかみ得ない。  確かに三月はアメリカの貿易赤字は史上二番目の低下を示した、こう言われています。しかし、識者によればこれは一時的なもので、またぞろ近いうちに増勢に転ずるなどという論評もあります。それらは私たちが必ずしも一喜一憂すべきことじゃないかもしれませんけれども、構造的にアメリカの経済の体質というようなものがこれから極めて世界経済に与えるインパクトは大きいだけに注目せざるを得ない、そういうふうに思っているわけです。  大臣は、比較的穏当なOECDの今回の確認であり、各国も納得ずくでそれを受けとめたに違いないんですけれども、これからOECDのコミュニケ、確認事項というものが果たしてどの程度それぞれの国で力強く推進されるんだろうか、両大臣はどういうふうな感触をお持ちでございますか。
  36. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 御指摘のとおり、現在の世界経済につきましては、方向として大変よい方向には向かっている。しかし、世界的な不均衡問題等につきましては、いまだ多くの問題が残っているというのが大方の認識でございます。したがいまして、今回のOECDにおきます議論におきましても、従来から継続して行ってまいりましたマクロ経済政策協調に加えまして、各国ごとに構造調整を行い、さらにそれをOECDの場におきましてサーベイランスをしていこうというようなことが議論され、合意をされた次第でございます。  具体的には、今回の会合におきまして、マクロ経済政策協調とともに経済成長と対外不均衡の是正に貢献するものとして構造調整が強く認識され、また各国ともその構造調整の今後の進展につきまして、OECD等におきますサーベイランスを裏打ちいたしまして、その実施を合意したわけでございます。
  37. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 構造調整の問題でございますから、多少私どもの方に関連をする方が多いかなと、こう思いますので申し上げさしていただきますが、OECD閣僚理事会に対しまして経済政策委員会の方から構造政策の改革に関する報告が提出されました。この報告が歓迎されるとともに、同報告第二章で示されておりまする優先課題を支持する旨の記述がコミュニケに盛り込められた次第でございます。それとともに閣僚は、OECD事務総長に対しましてOECDにおける構造改革のサーベイランスの一層の拡充と強化を要請をした次第でございますが、具体的には、経済政策委員会あるいはまた経済開発検討委員会等における構造調整に関する検討と、関係委員会との連携を含めまして充実強化することによって推進されることになろうと考える次第でございます。  以上でございます。
  38. 福間知之

    ○福間知之君 今サーベイランスの話が再三出ていますが、中尾長官も何か報道によりますと、世界的構造調整の期間を一九九二年までの五年間とするように御発言もなされたようでもございますし、田村通産大臣もサーベイランスのための四つの指標を提起されたと聞いておりますが、どのような中身でございますか。
  39. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 一九九二年といいますのは、ちょうど福間委員も御案内のとおり、新経済計画が作成されまして、向こう五年間を私どもとしてはレビューして考えておりますので、その点で一九九二年までのサーベイランスを申し上げたと、こういうように御解釈願いたいと思う次第でございます。
  40. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、新規産業分野などのGNPに占めるウエート、それから産業部門間の労働移動状況設備投資動向、輸出入動向等から各国の産業構造、貿易構造、企業戦略等の相違及び変化の方向を明らかにすることができれば有益であろうということで発言を行いました。  今後、OECDにおいてサーベイランスの拡充強化が図られることは、これは各国の構造調整の進展に大いに利するものというふうに考えております。
  41. 福間知之

    ○福間知之君 その四つの指標は、各国もおおむね同意されたわけでございましょうか。今後またワーキングパーティーかで詰めた議論でも行われるんでしょうか。
  42. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 御指摘のとおり、大臣の方からはこの四つの指標を例示的にお示しをいたしまして、今後の議論を推進するに際しましてその参考として申し上げられたわけでございまして、具体的にどのような指標等を利用するかにつきましては、今後関係委員会等で議論が深められるというふうに認識をしております。
  43. 福間知之

    ○福間知之君 次に、今回の閣僚理事会ではいわゆるNICSとの対話を促進しなきゃならないという観点から話し合いが行われたように聞いております。  アメリカのベーカー財務長官が、NICS諸国も政策協調に加わって責任を果たす必要があるという認識を述べたのを受けて、NICS諸国における為替レートの調整あるいは規制緩和、金融資 本市場の開放などの諸問題に対して、我が国を含めて各国はどういうふうに受けとめ反応を示したでしょうか。
  44. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) NICS問題につきましては、NICSの経済発展を積極的に評価するというのが大方の認識でございました。これら諸国あるいは地域の世界経済に占めます役割が増大しております。したがいまして、OECD諸国といたしましても今後これら諸国あるいは地域との間で対話を深めるという認識の一致が見られたというふうに考えております。  これら諸国、地域との対話をどのような形で今後進めてまいるかにつきましては、一部の国は為替調整あるいは貿易政策などNICS諸国との対話の対象範囲をコミュニケで明示することを主張したわけでございますが、日本からは、NICS諸国に対しまして一方的に要求を押しつけるというのではなく、対話の内容につきましては今後NICS諸国との間で詰めるべきものであるという観点から、対話の対象範囲の明示を避けるべきであるという主張をいたしました。  各国もこのような日本の考え方に理解を示しまして、穏健な対応が必要であるとしまして、結果としてコミュニケにおきましては対話の対象範囲を明示しないということになった次第でございます。
  45. 田村元

    国務大臣田村元君) 実はこのNICS問題につきましては、主に私が発言したものですから、私からちょっと申し上げますと、この発言をいたしましたワーキングランチの前の晩の議長招待のディナーで、私は議長と隣同士になりまして、あなたはNICSに対してどういうふうに考えておりますかということで、私の意見を述べましたら、それは結構なことだ、ぜひ発言してもらいたいというようなことでございました。  要するに、対話の問題でございますけれども、一部の国からはNICSに対して相当厳しい対応ぶりが示された。私どもは、このNICSという、その場では四匹のトラという言葉が使われておりましたが、脅威ととらえるよりは世界経済への貢献、刺激という点で機会、オポチュニティーとしてこれをとらまえるべきではなかろうか、そしてOECDで先進国がこうと決めてNICSに押しつけるような、あるいは枠決めで話し合うようないわゆる君臨するような、こわもてのような対応はすべきでないと、かえって刺激をするということで強く私から申し上げたわけでございます。  そこで、NICSにつきまして、特にアジアNICSは一人当たりの平均GDPが先進国のいまだ四分の一程度であります。それから世界貿易に占めるシェアがおのおの一、二%であります。対GDP、輸出依存度が極めて高い、平均で六〇%程度であるというようなことから世界経済の動向の影響を敏感に受ける、下手をすれば、一部の国が言っておるように、途上国としての恩典というものを外して厳しい対応をしていったならばパニック状態が起こるだろうし、そして中南米の累積債務国の二の舞をすることは必定である、しかも日本の場合は地域的にNICSの中に住んでおるようなものですから。  アメリカを例にとると、アメリカはアジアNICSのGNPの倍のGNPを示しておる中南米諸国への輸出よりもアジアNICSへの輸出の方が多いんです。だからこれを一方的に責めるよりもむしろ中南米よりすばらしいマーケットになりつつある、世界経済への大きな影響にもなる、あるいは我が国にとってみれば構造調整というものに踏み切る一つの刺激にもなったといういろんな面がございまして、これを機会としてとらえるべきではないか。いずれにしても先進国とNICSとの対話は弾力的に行われるべきものであり、NICSの意向は十分に尊重しながら大人の対応をすべきであるということを強く私は言ったんです。それに対してほぼヨーロッパは同調したというようなことでございます。
  46. 福間知之

    ○福間知之君 報道されているところによりましても、今の御答弁のように、我が国はむしろアメリカの市場とNICSの立場の間に立って穏当な対話の促進ということで全体の合意を取りつけることに努力が行われてそれが評価された、理解された、こういうふうに見ていいかと思うんです。  ところで問題は、アメリカに対してのNICSからの集中豪雨的な輸出、と同時にまた大臣今おっしゃったように、前回、前々回の委員会でしたかな、私もアメリカのNICSに対する輸出がかなりのピッチでふえている、それだけ市場が拡大しているということを指摘しました。大臣もおっしゃったですね。アメリカにとってもNICSは中南米よりも市場としては非常に有望だと、こういう指摘がされましたね。私もそういう認識なんです。したがって、相互にこれは依存関係が深まっているというふうにも言えるわけでありまして、一方的にNICSをたたくことは当たらない。  問題は、じゃ我が国とNICSとの関係で、アメリカへの集中豪雨的な輸出を少しでもセーブするために、日本がより一層NICSから輸入を促進すべきじゃないかというふうな意見は特に出ませんでしたか。
  47. 田村元

    国務大臣田村元君) そういうような具体的な話は出ませんでした。国際会議の場という姿ではそこまでの深い話はございませんでした。
  48. 福間知之

    ○福間知之君 次に、ウルグアイ・ラウンドの推進に関しましてお聞きをしたいんですが、いわゆる保護主義に対抗して自由貿易主義を維持し強化するということのためには、欧米における反ダンピング税の賦課などに対して我が国はどういうふうな批評をされてまいりましたでしょうか。  さらにまた農業貿易の今後の見通し、先ほどもNICSと並んで農業問題が今日米間ではもうちょうちょうはっしの大詰めの段階を迎えていますが、農業貿易の今後の交渉見通しについて、これは直接担当大臣ではないんですが、経済閣僚としていかがお見通しでございますか。
  49. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) それではまず、ウルグアイ・ラウンドとの関係もありますので、アンチダンピング税の賦課等の問題を先にお答え申し上げたいと思います。  最近、一部の国におきまして、政府ガードの代替措置といたしましてアンチダンピング税の賦課に訴える動きがございますことは御指摘のとおりでございます。製品がアンチダンピング税を賦課された場合、現地進出企業が本国から輸入する部品に対しまして輸入製品と同様のアンチダンピング税の賦課に訴える動きなど、当方としましては、かねてよりこれらの動きが貿易の流れを間接、直接にゆがめるものであり、投資規制的な動きと相まちまして新保護主義の台頭というような位置づけすらしなければならないような問題じゃないだろうか、今後の世界経済の発展に悪影響を与えるおそれがあるという強い懸念を表明した次第でございます。  我が国のこのような主張は、各国の理解を得ることができまして、アンチダンピング手続等の乱用は避けるべきであるという表現が今回のコミュニケにも盛り込まれているところでございます。  なお、農業問題につきましては、今後の問題等、私から申し上げることは御遠慮さしていただきたいと思いますが、OECDにおきましてどういう議論がされたかという点についてのみ御紹介をさしていただければと思います。  農業問題は今回の会合の最大の争点の一つでございまして、米、ECの主張を中心に議論が行われたところでございます。米国等は、十二月の中間レビューにおきまして長期的な改革に向けての大枠の合意が得られるべきであるという主張をしたところでございますが、ECはより現実的な対応が必要であるといたしまして、この米国の主張をトーンダウンすることを要求いたしました。  結果といたしまして、コミュニケにおきましては農業政策の継続的改革の必要性が強調されまして、またアメリカとEC双方の折り合うところといたしまして、他の分野と同様に農業改革を促進する長期、短期両要素を含む大枠の取り組み合意への努力がコミュニケに明記されることとなった 次第でございます。
  50. 福間知之

    ○福間知之君 農業問題は、特に我が国は今アメリカとの関係では大変厳しい状況にあるわけで、事務次官レベルの会議でロンドンにおけるレーガン・竹下会談以前にも決着を図ろうということで、与党自民党も今大変汗をかいておるわけでございますけれども、これが一つの象徴的な国際間における農業問題として、私は必ずやこれは欧州をも含めてさらに再調整へのステップを踏まなきゃならない、こういうことになろうと思うわけであります。  きょうは時間がありませんので、農業問題を深く議論もできませんが、さしあたっては、頭上に降りかかった我が国の農産物自由化問題がどうなるかということは国民にとっても大変関心事であるし、その結果、必要な国内的な施策というのがどうしても必要だろうと思いますので、これは閣僚の立場で善処をひとつ要望しておきたいと思うわけであります。  次に、昨今のアメリカの経済の状況についての認識をお伺いすると同時に、若干の私見を申し上げたいわけでありますけれども、先ほども触れましたように、昨年のブラックマンデー以降、アメリカの製造業の分野での復権というか、回復が伝えられておるわけですけれども、通産当局としてはこれ一遍調べてくれということを私は事前に申しておったんですが、どの程度把握されておりますか。
  51. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 最近の米国製造業の状態でございますが、鉱工業生産についてみますと、八七年には米国におきましては前年を上回ります三・八%のIIPの増加を示しております。また製造業部門におきます失業率でございますが、八七年の四月の六・三%が本年の四月には五・三%へと低下を示しております。また、先ほど先生からも御指摘ありましたように、輸出も大きく増加をしてまいっております。これらの数値は、米国製造業が回復過程にあるということを示す証左であろうというふうに考えられます。  しかしながら、今後とも米国製造業が順調な成長を続けていくためには限界に近づいているといわれております設備稼働率を考えますと、設備投資を増加させ、また供給能力を充実させていくという必要があろうかと思います。また同時に、各企業が品質サービス等非価格面での競争力の強化に努めつつ、安くなりましたドルを利用いたしまして、なお一層の輸出拡大努力を行うということも不可欠であるというふうに認識をしております。
  52. 福間知之

    ○福間知之君 ところで、最近はいわゆる円高の影響もこれありまして、我が国からの進出企業がかなり積極的に活躍をしておるわけであります。それに対してアメリカの国民的な感情というものは、一口では言い切れないし、全体像をつかみ切るわけにはいかないわけでございますけれども、部分的にはかなりシビアな受けとめ方をしているという向きもあるわけですね。  しかし一方、日本の進出企業による経営マネージメントというものは、それなりに従来のアメリカのそれとは違ってかなり成功をしているという事例もあり、そういう分野では高い評価も受けている、こういうふうに思うわけであります。  例えば、カリフォルニアのフリモント工場の成功というのは見事な例でございまして、これはGMが保有していたころ、全米自動車労組、UAWでございますが、折り合いが悪くてストライキが頻発をしたわけであります。とうとうGMはこれを閉鎖しまして、その後日本と合弁工場で出発することになりまして、このUAWのかつての組合員を再雇用してほしいというGMの要請があり、それを受けましてトヨタは操業に踏み切りました。ところが、同じ今までの従業員で再出発をしたわけですけれども、何とGM時代の生産性のほぼ二倍を達成して、しかも日本からの輸入車の品質に匹敵するような車を現地生産することに成功した、こういう事例があります。  この逆のまた事例もないことはないんです。だから、一概にどうこうということは言えませんけれども、要するによいものをつくるということについては働いている人たちの態度のよしあしだけじゃなくて、やっぱりすぐれてマネージメントに問題がある。それは日本の進出企業であろうと、アメリカの現地における歴史と伝統を持った企業であろうと同じだと思うんですね。そういう点で私は、これからの日米間における製造業のあり方、これはひいては輸出競争力にもつながってくるわけでありまして、非常に注目していかなきゃならない、重要視していかなきゃならない、そういうふうに思っておるわけであります。  かねがねアメリカは、レーガン大統領以来、むしろサービス分野のネットワーク化というものに、通信や運輸や航空機というふうな分野で力が入って、デレギュレーションも進みましたし、一定の成果が上がっているんですけれども、むしろそれに対して製造業というものが衰退をしかけたというふうに認識をしておりまして、今アメリカが製造業に目を向けて、これの復権に力を入れるということは極めて世界経済にとってもいいことだし、日本はそういう意味で、輸入を促進するということも含めて、また海外進出ということを適宜適切に成功させていくということも含めて、日米関係というものを再構築していく一つのモメントにしなきゃならない、そういうふうに感じておるわけでございます。  経企庁長官、アメリカ等におられまして、今どういうふうに感じておられますか。
  53. 中尾栄一

    国務大臣(中尾栄一君) 前段、福間先生からるるお言葉を賜りました。そのとおりだと私も思って聞いておったわけでございますが、なかんずくOECDに出席をいたします前に私はアメリカに一週間おりまして、そしてスプリンケル委員長並びにグリーンスパン連銀総裁等とお会いをいたしまして、さらに福間委員のおっしゃられるその裏づけをそのまま率直に感じ取ったような次第でございます。  米国製造業をめぐる問題の状況を見ましても、ドル安のもとで輸出増、生産増、あるいは稼働率の上昇、あるいはまた設備投資増の好循環が非常に見られまして、貿易収支も緩やかながら改善傾向にあると私も判断するわけでございます。設備投資の増加は中長期的な国際競争力を高めまして、米国製造業は徐々に回復していくものと期待しておるものでございます。  ただし、それがアメリカ経済の再生にとりまして完全に十分なものかということにつきましては、今後の動向をじっくり眺めていかなければならないという不安材料もないわけではないというように感じておると、こう申し上げたいと思っておる次第であります。
  54. 福間知之

    ○福間知之君 もう少しアメリカ経済、製造業の問題は議論を続けたいんですが、時間がありません。  最後に一点だけ、いわゆる包括通商法案の件ですけれども、きょう二十四日アメリカで、もう半日もすると大統領は拒否権を発動するんじゃないかと報じられておりますが、その場合、議会の対応をどういうふうに見ておられるかが一つ。それから通商法案の中のスーパー三〇一条、東芝制裁条項等に対する我が国政府の働きかけはどういうふうに進めておいでになったでしょうか。三つ目は、この通商法案の成立がガット体制にどういう影響をもたらすとお考えでしょうか。  以上、あえて言うならば、こういうものをアメリカが仮に通過させても、私はアメリカの貿易収支の改善にそんなに役立たないと思っているんですが、その点はどういうふうにお見通しでしょうか。以上お聞きして私の質問を終わります。
  55. 田村元

    国務大臣田村元君) 包括貿易法案でございますが、今おっしゃいましたように、レーガン大統領の拒否権の発動が極めて近いのではなかろうかというふうに考えております。まず拒否権を発動することは間違いないだろう。上院の四月二十七日の採決結果から見まして、議会がこれをオーバーライドすることは困難だというふうに私は思います。しかし、何といいましても外国のことでございますから断言することはできませんが、今 後の議会の見通しはまだまだ不透明であるというふうに注意深く動向を注視したいというふうに思っております。  それからスーパー三〇一でございますけれども政府としましては包括貿易法案の中のスーパー三〇一条等の保護主義的条項や、ココム違反に係る外国企業制裁条項が成立しないように、日米首脳会談、それから四極貿易大臣会合等の場における申し入れ、米国主要閣僚、主要議員に対する意見書の発送等によって働きかけてきたところでございます。  御承知と思いますが、過去一年、もう私はこれにかかり切ったと言っても過言ではございません。残念ながら法案は現在これらの条項が含まれたままの形で大統領に送付されておりますが、この法案に対しまして大統領が先ほど申し上げたように拒否権を発動することは間違いないと考えておりますので、最終的にこの法案が成立しないように期待をいたしております。  それから現在大統領に送付されております包括貿易法案は、通商法三〇一条の改定強化、ココム違反に係る外国企業制裁条項など多くの問題条項を含んでおりますが、特に通商法三〇一条の改定強化につきましては、仮にこれが成立した場合には、ガットの手続を経ることなく、米国が一方的に対抗措置を発動する傾向を助長する。これが引き金になって世界貿易が縮小均衡に向かうおそれがあるということで、自由かつ無差別な多角的な貿易体制のもとで貿易の拡大を図るというガットの精神に反するものというふうに考えまして、政府としましても強い懸念を抱いておるものでございます。
  56. 福間知之

    ○福間知之君 終わります。
  57. 青木薪次

    青木薪次君 私は、五月四日から五月十二日まで、ソ連のゴルバチョフ書記長の招待を受けて、日本社会党の土井委員長とともにソビエトを訪問いたしまして、日ソ両国における当面する重要問題の協議を行ってまいりました。その中で、課題の一つとして経済交流の問題がございました。  ゴルバチョフ政権になってから、八六年経済の順調な滑り出しを受けて、八七年計画でも第十二次五カ年計画どおりの目標が打ち出されまして、生産国民所得の伸びは四・一%、前年の投資の影響を受けて八七年計画は四ないし六%増まで伸び率を示しました。機械工業は最重視されておりまして、前年に対して七・三%増という高い目標が立てられていますけれども、農業では、穀物生産は二億三千二百万トンで、八七年は年初から一連の経済改革が実施に移されておりまして、企業の自主権強化の諸施策が全工業の分野に適用されているのでありまして、第二に、石油価格など七つの工業分野を中心に徹底した独立採算制へと移行いたしました。労働者の賃金体系に能力給が初めて導入されるというような特徴的な点が変わってきているということが特筆大書されると思います。  この経済の分野におけるペレストロイカといいますか、これは内外に相当な反響を見ているわけでありまするけれども日本政府として経済の分野におけるペレストロイカについてどういう感触を持っているかお答えをいただきたいと思います。
  58. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  ゴルバチョフ書記長が政権をとりまして以降、ソ連ではペレストロイカという路線が推進されている。このペレストロイカ路線ですけれども、このペレストロイカ路線の中心というのは、いわばソ連の経済を立て直す、そのことを通じて、再び経済面でも社会面でもまた軍事面でも強いソ連をつくるということを目的としているというように考えております。ペレストロイカの路線が従来のソ連で行われました経済改革と違う点がありまして、これは経済面だけの改革を進めていたのではそういう目的達成されないということで、現在の書記長の行っています改革は経済から社会面それから政治面というところに広がりを持ってきているということだと思います。  それで、経済面に関しまして中心的な課題といいますのは、従来の行政的な経済運営方法、いわば行政機関の命令によって経済を運営していくという方法から、より経済的な刺激、経済的な手法というものを入れた経済運営をしていこうということだと思います。これが先生指摘ありました独立採算制、それからいろんな省庁の統廃合というようなところに出てきております。  それから、機械工業に先生から言及がありましたけれども、経済発展を促進していく上で科学技術革新、技術革新が非常に重要であるという観点から、機械工業の振興というものに大変な熱意を燃やしているということでございます。  ペレストロイカ路線が始まった後の経済実績ですけれども、八六年には四・一%の成長を国民所得で確保してあるということです。ただ八七年度におきましては、実績としましては二・三%の成長にとどまっております。ゴルバチョフ書記長は二〇〇〇年までの所得の倍増ということを目標として掲げておりまして、これは年率平均四・八%の成長を必要とするということでございます。したがいまして、八六年、八七年の実績を見る限りにおいては、この二〇〇〇年までの所得倍増という目標達成というものについては、今なお容易ならざる点があるというように我々は見ております。
  59. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) ゴルバチョフ政権が御指摘のように中長期的な観点からペレストロイカを推進しておりまして、それによりまして市場メカニズムの導入あるいは外国経済との関係改善というような点に重点を置きながら施策を推進しているというふうに認識をしております。  現時点におきまして、ペレストロイカの全体的な成果を評価するというのはまだ時期尚早であろうというふうに考えますが、中長期的には、このような改革を通じましてソ連経済の改善が期待をされるというふうに考えております。
  60. 青木薪次

    青木薪次君 これは経済におけるペレストロイカでありますけれども、今外務省と通産省から答弁を聞いたわけでありますが、一つの市場メカエズムを導入する、それから欧米経済、いわゆる自由主義経済との立場というものについてどういうように整合性を持たしていくか、あるいはまたこの合弁法によるところの合弁企業のあり方、あるいはまたその中におけるいろんな細かな、例えばもうかった場合における送金方法とかあるいはまた出資の比率とか、あるいはまた資材機材を導入する場合における税関その他の取り扱い、あるいはまたその雇用の面における労務管理その他の関係、労働条件全般の問題、日本人の技術者の現地におけるいろいろ待遇の関係における措置、いろんな関係についてまだ相当詰めなければならない問題が多かろうと思います。  私の地元静岡県は家具のメッカであります。家具工場等そしてまた、したがって製材工場等が相当多いわけでありまするけれども、ことでは南方材を相当導入をいたしております。また、梶原委員も紙パルプの出身でありますけれども、私のところは富士市を中心といたしまして製紙関係産業が盛んなところであります。今日、もはや製紙関係の原料と言われるチップは一〇〇%外国から入っている、こういうことになっているわけでありまして、そこで例えば、シベリア、沿海州等においては少なくともチップの生産工場といったようなものが合弁企業として具体的に今話し合いが進んでいるという段階にあると思うのでありますが、このペレストロイカ路線における経済の改革、新しい発想によるところの新しい行動、新しい計画というような問題について、日本通産省としてこの問題に対してどういうような基本的な構えでいるのかお伺いいたしたいと思います。
  61. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 先ほどお答え申し上げましたように、基本的にはソ連経済は、マーケットメカニズム的な要素をその経済体制の中に導入を図り、あわせて外国経済との関係改善を図るという中長期的な路線に踏み込んできたというふうな認識を持っているわけでございます。  日ソ経済関係につきましては、一時日本の対ソ輸出、これはソ連側におきます石油の値段が下が ったことによります外資の不足の問題、あるいはペレストロイカ体制への移行に伴いまして向こうの関係行政機関の機構改革等が行われまして、貿易を実務的に推進する体制に若干問題が生じたというようなことから、日本の対ソ輸出がやや鎮静化したような事態もあったわけでございますが、ことしに入りましてから日本の対ソ輸出の伸長も見られますし、またソ連から日本への輸入につきましてはここ数年順調に拡大をしております。  また、先生指摘の合弁法、これは昨年の一月に制定をされた新たな法律でございますが、合弁法に基づきまして既に日本とソ連との間におきましても一部合弁企業の設立が見られております。  このように日ソ経済関係先生指摘のような合弁に伴います事業活動につきましては、なおいろいろな問題はございますが、ソ連側も関係改善を望んでいるということもございまして、今後ソ連の経済が対世界経済との関係におきまして健全な姿で発展を遂げ、我が国との間におきましてもその拡大が健全な状態で図られるということを私ども期待をしている次第でございます。
  62. 青木薪次

    青木薪次君 田村大臣にお伺いいたしたいと思いますけれども、ここのところ貿易摩擦の問題がこじれてきて、先ほどもスーパー三〇一条問題も出たわけでありますけれども、少し日本の貿易がアメリカを初めとして二、三カ国に一極集中し過ぎているという点は指摘できると思うのでありまして、これを多角的に、世界の各地に向かってやはり貿易を拡大していくということが必要だ。もちろん今も局長答弁にありましたように、ソ連側の外貨不足、貿易システムの変更とか、いろんな問題における混乱というのは幾らかあったと思うんです。それから日本側の対ソ資源導入への関心が非常に低下しておったというような点とか、今福間委員が言いました東芝機械のココム違反事件というようなものもいろんな要素を加えたと思いますが、日ソ間の駐在員相互追放なんというエキサイトした部分もございました。  そういうような中で、今まで日本の工業製品を輸出する、資源輸入というこのワンパターンの日ソ貿易というものは限界に来ているんじゃないかということも考えられますので、そういう点から考えて、いわゆるアメリカは今日、昨年は三八%でしたか、三七・五%ぐらいですか、ことしは若干減って三五、六%というところだと思うんでありまするけれども、この中でやっぱり貿易の相手国を相当拡大をしていくという立場に立って考える時期に来ているし、産業界もそれを望んでいるというように考えますので、そういう点について大臣の御答弁をお伺いいたしたいと思います。
  63. 田村元

    国務大臣田村元君) 日米関係というのはいろいろな面で切っても切れない関係にあることは事実でございますし、またこの関係は大切にしなければならないと思います。しかしながら、日本の輸出の対米依存度が一昨年で三八・五%、といえば約四割であります。それに比べて、同じ黒字国でありましても西ドイツはおおむね一〇%であります。でございますから、どうしても日本の場合、アメリカに対して、やはり貿易摩擦の種になるような問題もありますし、また時には先方もいろんな方法を講じて防衛をするでしょうけれども日本も時に強いことが言えない場合もあり得る。つまり売り手という弱みもあるということは事実でございます。  ドイツの場合は、何といいましてもECという巨大なマーケットの中にみずからが生活しておるんでございますからこれは幸せな話でございますけれども、ですから、アメリカに対しても言いたいほうだい言っておりますけれども日本の場合は残念ながら一番近い最大のマーケットといえばやっぱりアメリカということになります。でございますから当然、一極集中から多極分散といえば大げさになりますけれども、徐々に日本の貿易の方向というものを全世界に向けていかなきゃならぬし、とりわけアジアに眼を開いていかなきゃならぬことは当然でございます。  そういうことで、私はニューAIDプランを堤唱したわけでございますが、ただアジアを対象として日本の貿易のシェアを広げるんだというだけでは私は足りないと思うんです。かつての大東亜共栄圏的な構想を持ったら大変なことであります。アジアの特にASEANあるいは中国等から見て、まず日本が魅力あるマーケットになるというようなことも考えるべきでありましょうし、そしてECに対してもどんどんとダイバージョンでない正当な拡大均衡の貿易を展開していく必要があろうかと思います。  いずれにいたしましても、そういうことも考えながら、なおかついかにして日本が貿易を拡大均衡の姿で均衡せしめるかということが必要でございまして、今後の大きな日本の貿易という点の課題になっていこうかと思っております。
  64. 青木薪次

    青木薪次君 アメリカとの間における四〇%近い貿易をひっくり返してなんというようなことはできるものじゃないし、また今日日本産業界にとっても大変なことでありますから、今大臣のおっしゃったように徐々にそういった相手国を拡大するという方向は正しいと思います。  ただ、日ソ貿易というのが停滞ぎみであるのに対して、西欧諸国は物すごい熱心なんですね。私どもの行っているときにもアメリカの財界三百人がモスクワを訪問いたしまして、そうしていろんな問題で経済関係の議論をしておった。こういうことだけでも、ゴルバチョフ自身が言っているんです、世界でもって百何カ国ツーカーで話ができるようになった、日本だけどうして凍結状態にいるんだと。それはもういろんな問題があることはわかっているのでありまするけれども、INFの全廃とかあるいはまた今度はヨーロッパのいわゆる戦略核の半減とか、アジアにおけるINFをどうするか、洋上核をどうするかといったような問題に議論が集まっているときに、片方の西欧諸国の中における貿易の拡大というものについては本当に一生懸命やっている。コメコンというでかいビルがありまして、そのビルの中に西欧諸国が商談にどんどん行っているというようなことも聞いておりました。  私たちは、かつての漁業大臣日本と交渉いたしましたカメンツェフという、副総理ですか、副首相というんですか、この人とも会談をいたしました。しかし実際問題といたしまして、私たちはいろいろ現実的な議論をしてきたわけでありまするけれども、何としても今日こういった雪解けの状態というものを今度は逆手にとって物を売りつけていくというようなことについて、ゴルバチョフ政権の経済改革に呼応するように東西の緊張緩和の兆しが芽生えているだけに、欧米諸国のこの経済拡大努力というものを私たちはやはり見習って、そしてこの問題で日ソ間だけが全然凍結状態にある、向こうが言っているんですから、そういうことのないようにしていかなきゃならぬというように思うのでありまするけれども、この点についてどう考えますか、外務省。
  65. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  書記長が土井委員長に日ソ関係は凍結されているというお話をしたというのが報じられておりますけれども、我々は日ソ間の実務関係に関しては、凍結ではなくこれは進展しているというふうに考えております。  米ソ間の貿易額というのはせいぜい十八億ドルとか二十億ドルとかそういうレベルですけれども、日ソ間の貿易は大体五十億ドルございます。したがって、米ソの貿易に比べて日ソの貿易がおくれているというのは、数字上もそういうことはありません。  それから、制度上、米国はソ連に対して最恵国待遇を供与していない。ソ連に対して米国は公的信用供与を供与していない。これに対しまして日本は、例外はありますけれども、最恵国待遇を供与しておりますし、公的信用についてもそれなりの措置をしているということであります。したがいまして、八六年に関して言いますと、西側の国のうちで西独が一番、フィンランドが二番、それから日本が三番、日、伊、仏というのはときどき順序が入れ変わっておりますけれども、それほど おくれているわけではありません。したがいまして、日ソ関係というのはそういう状況にあるということであります。  日ソ間の実務関係について若干言いますと、昨年の六月には第二回政府間の貿易経済協議が開始されておる。ことしの一月には第十一回日ソ経済委員会合同会議というのが開始されておる。それから、科学技術交流、文化交流についてもいろいろな措置が進められております。したがいまして、我々の認識は少し異なるということでございます。  ただ、日ソ間には御存じのとおり北方領土問題というものがあります。そういう問題を解決して、この日ソ間に長期的な安定した関係をつくるということを政府基本方針にしておりまして、その枠内で、ただ、経済の関係も互恵平等というラインで進めてきたし、これからも進めていくという方針でおります。
  66. 青木薪次

    青木薪次君 ゴルバチョフの見解と相反するようなことで討論するようなことは別に私は考えていないし、また、向こうの言うことを請け負って別に言っているわけでもないんで、そんなにあなたも力まなくてもいいと思うんであります。  ただ、私どもも、五六年の鳩山・ブルガーニン会談でちゃんと前進するように、これでいけば領土問題だって解決するはずじゃないか、もっともっと貿易拡大ができるはずじゃないか、いろんな友好の積み重ねができるはずじゃないかということを言ったんですよ。何回もそういう取引を言っております。  しかしながら、その中で向こうの言っているのは、百何カ国と友好がどんどん進んでいるんだ、日本だけ、それは北方領土の問題があるでしょう。しかし、北方領土の問題でも、ただ反ソ宣伝の道具にするようなやり方というものが非常に多い。この点ははっきり言えるということ、これはいろんなところで聞きました。それは私どももそういう点もあるなと思っているんです。しかし、そのことを今我々が荒立てて物事を言うというよりも、日本国民の気持ち、日本国の固有の領土である北方領土という問題について、我々は駐ソ日本大使館によくやってくれましたといって褒められたんだから、それくらい実はこの問題では激論を飛ばしてきた。  しかし、よく俗に言うように、北風と太陽という言葉がある。マントを脱がせるために、ひとつこれでもかこれでもかといって冷たい風を送る。しかし、ますますマントは締めてしまう。それよりも暖かい太陽を当ててやれば自然と旅人はマントを脱いでしまうであろうということは、これは後で質問したいと思っているわけでありまするけれども、環日本海閣僚会議の設置ということであります。  社会党の土井委員長が帰ってきて竹下総理大臣にあいさつをしたときにこの問題を言ったら、それは大賛成だと。ただ、政経不可分、政経不可分ということだけにとらわれていると、やはりその問題については大変な難しい問題も出てくるんじゃないだろうかというように考えますので、その点について、ひとつ環日本海閣僚会議の設置の提案についてソ連は、ウラジオストクをいわゆる自由区とする、解放区とするというようなことも言ったし、だんだんとそういう中で昔から沿海州貿易というものもどんどん盛んになってきたし、やってきたし、あるいは新潟県や北海道等もやはりこの沿海州貿易の中に相当積極的な意欲というものもあるわけであります。  したがって、アメリカやソ連や日本や朝鮮や中国というようなものを入れた中で、ソ連の対外経済外交の問題と符合いたしまして、これらの問題について閣僚会議を設置するというような構想について田村大臣いかがですか。
  67. 田村元

    国務大臣田村元君)これは、単に経済だけで割り切って取り組むことはなかなか難しい面がございます。環日本海の閣僚会議ということになりますと、当然日本、ソ連、中国、それに朝鮮半島の両国ということになりましょうから、これはまあなかなかちょっと政治的な問題、政治的な色彩が極めて強まるものと思います。  でございますから、私が今ここで単に主観的な、あるいは私自身の思いつきで御答弁を申し上げるよりも、後日外務大臣等から、しかも外務大臣に十分考える時間を与えておいて、その上で答弁をお求めいただくのが一番適切ではなかろうか、このように考えます。もっとも、私が入閣以前にはそういうことに熱心ではございましたけれども
  68. 青木薪次

    青木薪次君 ただいろいろと私どもは言ったんです。例えば中国の鄧小平さんも言っていると。ソビエトはモンゴルの近辺における大軍を引き揚げる、あるいはまたアフガニスタンからすぐ撤兵しろ、あるいはまたベトナムを応援しているじゃないか、ベトナムはカンボジアに進駐しているじゃないか。この問題についてひとつベトナムを応援しないで、カンボジアから引き揚げるという国連決議を我々は支持する立場であるというようないろんなことを言ったわけであります。  それら自分の国で解決する問題、例えばモンゴル周辺からの撤退とか、あるいはまたアフガンからの撤退とかという問題については、これはさほどの問題じゃない。今日の問題というのは軍縮の問題である、世界に平和をもたらす問題であるというようなことから、ただベトナムの問題は、これはソ連がベトナムからすぐ撤退しろということを命令づけられる問題でもない。昔はフランスもベトナムに影響を与えた、だがうまくいかなかった。アメリカさんもベトナムに対してはいろんな影響を与えたけれども、これもうまくいかなかった。今度はソ連がやれと言ってもなかなかうまくいかないんだよと、こういう平たい言葉も交わしたわけであります。  いずれにしても今日の状態というものは、アメリカとソ連がやはり核軍縮等をめぐりあるいはまた東西の交流をめぐって、南北の交流をめぐって相当な意見の一致というものを見つつあるという現状、新聞でレーガン大統領がソ連のゴルバチョフを絶対信頼するということまで言っている現状については、いろいろとあるでありましょうけれども、少なくとも単なる雪解けとだけは解することはできないような状態になってきている。  ソ連のゴルバチョフも我々に言ったことは、これはイデオロギーの差異とか立場の相違とか、いろんな国内の事情とかという問題で議論をしていく段階ではない、我々はやっぱりその辺で相当な虚心坦懐にやっていくべきときに来たと思っている。そういう意味で、イギリスのサッチャー首相にしても、ドイツのコール首相にしても、フランスのミッテラン大統領にしても、やはり考え方というものについては、その一点についてはいろいろ了解し合って話し合っているんだよ、したがって、このことに経済交流も伴っていくということで、世界の各地でやはり幸せになっていく。  ソ連もまだまだ問題が多い。例えば、資材その他の原料の節約問題等についても、こんなことではまだまだだめだというような問題や、相当な働く意欲というものをもっと労働者に与えなきゃいかぬとか、虚心坦懐に科学アカデミーの経済研究所長等ともいろんな議論をしてまいったわけでありますが、そういった中において社会主義計画経済、片や自由経済、自由経済といいましてもいわゆる管理型の経済になってきているわけですね。例えば、自動車は二百万台以上売っちゃいけないとか、やれ半導体はどうであるとか、いろんな問題が出てきている。  そういう中で、大臣も先ほど申されたように、いわゆる保護主義的な傾向というものも出てきているという中において、いろんな経済体制の変化というものをお互いに努力し合って、雪解けの方向にその方面からも行くべき時期に来ているんじゃないだろうかということを私たちは考えたわけでありまするけれども、そういう点についてこれから合弁の問題を今話し合っている、あるいはまた日本の商社が、あるいはまた企業がシベリアの現地の開発のために、あるいはまた現地の事情を視察するために、シベリアとかサハリンへ行って、そして日本の技術と日本努力によって開発 し、そしてまた相互の貿易というものを拡大していくということについてやっていかないと、気がついたらいいところをみんな欧米に取られてしまったということにならぬように体制を強化し、政府としてもこの問題については相当最大な関心を払って、そうしてそれらの日本企業日本の文化とか、そういった問題について相当な便宜を供与するということが必要ではないだろうかというように考えているわけでありますが、この点はいかがですか。
  69. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は、日ソ貿易がどんどんふえていくことは非常に結構なことだと思っております。また事実、日ソ経済関係というものは政府間、それから民間ということで、割合に最近うまくいっておるようでございます。政府ベースでは日ソ政府間貿易経済協議の場において、また民間ベースでは日ソ経済合同委員会の場で意見交換や交流の促進が図られております。でございますから、今後ともこのような努力を通じて多面的な日ソ経済関係の進展に努めてまいる所存でございます。  また、経済関係拡大の具体策といたしましては、昨年六月の日ソ政府間貿易経済協議、それから本年一月の日ソ経済合同委員会におきまして、ソ連側より訪ソ経済ミッション派遣の要請がございました。このミッションの派遣は日ソ経済関係の今後の発展にとって有意義と考えられますので、民間ベースの検討を踏まえまして通産省としても前向きに検討することといたしております。  いずれにいたしましても、共産圏との貿易というのは多分に政治が絡む場合がございますけれども、いわゆる純粋な経済交流、貿易の拡大ということは非常に結構なことでございまして、私どもも今後その拡大努力をいたしていく所存でございます。
  70. 青木薪次

    青木薪次君 最後に、これらの関係について、今大臣のおっしゃったように、お互いにやっぱりそういう意味での信頼感というものがなければなかなか貿易なんて発展するものじゃないと思うんです。  例えば、日本企業が合弁をやる。その場合に、例えば引き揚げてくる場合に、それじゃその後の資産はどうなるのかといった問題に至るまで、私の知っているところは随分中国へ行っています。私も中国へ行って、そして現地の政府が関与いたしまして合弁企業をやっておりますが、非常にスムースにいっているというようなことも見えるし、私はやはり合弁の関係というのはむしろ共産圏の中で日ソの方がおくれていると実は思っているわけであります。  それらの関係についてひとつ、そういう友好をだんだんと積み重ねていく中において、北方領土問題を解決していくという相関関係にあるということをこの際考えていくべきであると思っております。その意味で、日ソ関係の経済交流、文化交流もそうでありまするけれども、そういうことで積み重ねていくということを、私は初めてソ連へ行ったわけでありますけれども、考えて帰ってきたわけであります。  その点をひとつ要望いたしまして、答弁は要りません、これでもって私の質問を終わります。
  71. 大木浩

    委員長大木浩君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ─────・─────    午後一時三十二分開会
  72. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  73. 向山一人

    向山一人君 久しぶりに貴重な時間をいただきましたので、これから石油の問題、それからテクノポリスに関係した問題、今度国会で成立した頭脳立地法に関係する問題、この問題について時間の許す限り質問をしたいと思います。  前回、アラスカの石油の問題で質問をしましたら、大体私の質問の要旨に資源エネルギー庁の方でも賛成の御答弁がございました。  申し上げるまでもなく、我が国にとっては石油産業資源としてもエネルギー源としても現在においては最も大事な問題でございますし、また我が国外国との間の貿易関係、特にアメリカとの間の貿易の不均衡を来した原因も、日本がどうしても石油輸入しなきゃならないというような立場にあるために輸出を積極的に行わなきゃならぬということに原因があるわけでございますが、その結果、アメリカに対して大変な日本が黒字になって、日本たたきと言われるような状況に今あることは御承知のとおりでございます。  そんな状況下でもございますので、何とかアメリカに対する貿易収支の改善策としても、また日本が今この大事な石油をいわゆるペルシャ湾岸諸国、イラン、イラクというような戦争をしている地域の大変危険なところから運んでこなきゃならぬ、大部分を運んでこなきゃならぬというような現状。もともと以前からこの地域はもう戦火の原因の地域で非常に難しい地域でございますから、アメリカから何とか油を輸入することによって日米貿易のアンバランスも改善できないものだろうかということがかねてからの考えでございます。  そこで、アラスカ原油についてはいろいろ規制がございまして、輸出が禁止されていることはよく承知をいたしております。しかし、最近アラスカの石油パイプラインを使って輸送してきた原油を精製した石油とか製品については多少緩和の方向というか、聞くところによると、アメリカのレーガン大統領は日本に対して輸出をすることは賛成である、しかし議会筋は反対であるというようなことが言われておりますが、これら最近のアラスカの石油あるいは石油製品について、現状はどういうふうになっているのかひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  74. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 御指摘のように、アラスカの石油日本へ輸出されるようになりますと、日米間の相互安全保障という観点からも、また貿易不均衡是正という観点からも非常に有意義なわけでございます。  アラスカ原油の大宗をなしておりますノーススロープ原油でございますが、これは先生指摘のとおりアメリカの法律で輸出が禁止になっております。日米間でエネルギーワーキンググループが設けられておりまして、かねてからこの問題を議論いたしております。米国政府は、これは輸出を解禁することに賛成という姿勢は基本的に維持し続けているわけでございますけれども、残念ながら米国議会ではこれを真剣に検討するという状況にはなっておらないわけでございます。  一つは、やはり輸入原油に大きく依存をいたしております東部の諸州におきまして、やはり原油を輸出することは心配だというような考え方が根強く存在をいたしております。それからもう一つは、アラスカの原油は小型のタンカーを使いましてパナマ運河を通りまして、いわゆるガルフで精製をされているわけでございますが、この原油が大量に輸出されるようになりますと、このタンカーの持ち主でございますとかあるいはそのタンカーで働いている労働者が非常に悪影響を受けるということで、非常に強く反対をいたしておりまして、残念ながらまだこれをクリアできるに至っておりません。  ただ、パイプラインの通っておりません太平洋岸のクックインレットというところで産出をいたします原油につきまして、行政措置で一部輸出が解禁になっておりますが、量といたしましては六千バレル・パー・デーでございますので、三、四十万トンタンカー年間一隻というような量でございまして、これはどうも今のところともかく糸口ができているというような状況でございます。  他方、製品でございますけれども、これは現在原則的には自由ということになっておりますが、太平洋岸に余り製油所がございませんので、製品輸出というのは多くを期待できないわけでございます。ただ、最近太平洋岸に新しく製油所を建て ようという動きがあるわけでございますけれども、これをめぐりまして実は今話題の包括通商法案の中に関係条項が設けられております。原油の輸出を抑えるというような考え方の延長線上にあるわけでございますけれども、新しい製油所の能力の五〇%または七万バレル・パー・デーを超えて輸出をしてはならないという条項が設けられております。これにつきましては、一時削除するというような動きもございましたけれども、最終的にはその規定が残ったままで大統領のもとに法案が送付されているというような状況でございまして、今のところ大きな進展は見られないという状況なんでございますけれども、私どもとしましては、日米エネルギーワーキンググループ等を通じまして引き続き積極的に米国側に働きかけを続けてまいりたいと考えております。
  75. 向山一人

    向山一人君 今お答えのあったような状態のようでございますが、五月十二日の日本経済新聞に、アラスカのLPGの輸入が検討されるというようなことで、時間がありませんので細かいことは申し上げませんけれども、「九三年から年三百万トン」というような記事で、この輸入に対しては、もちろん民間ですが、三菱商事と日石ガスが輸入をしていく、通産省も積極的に支援する方針だというふうなことが新聞の記事に出ておりましたが、新聞の記事にあるような実情でしょうか。
  76. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) ただいまの問題は、ノーススロープの天然ガスに関係をする問題でございます。  非常に大量の天然ガスが埋蔵されているわけでございますけれども、これにつきまして、まずLNGの形で日本へ、あるいはアジアへ輸出できないかということがかねがね検討されてきたわけでございます。しかし、LNGという形になりますと、約千三百キロのパイプラインを引きまして、大規模な投資を行いますものですから、供給量も年間千四百万トンというような量になってしまうわけでございまして、日本の市場の大きさにはどうしてもマッチしないというふうなことでこれは採算がとれないという状況になっております。そこで、いわばそれの代案というような形で浮上しておりますのがただいま先生が御指摘になりました案でございます。  天然ガスの中にLPG留分というのが含まれているわけでございますけれども、このLPG留分だけを引き出しまして、既に存在しております石油のパイプラインで太平洋岸に送り出すという考え方でございます。これですと投資額はそう大きくなりませんので十分採算に乗るんではないかというようなことで、おっしゃるように、米国側で年間三百万トンというような構想がございまして、日本関係業界に対する打診が続けられているという状況でございます。  私どもも御高承のとおり、LNGにつきましてはサウジアラビア一国だけで五〇%、中東に七五%を依存しているという状況でございますので、供給源の多様化ということがかねがね望まれているわけでもございますので、非常に強い関心を持ちましてその成り行きを見守っているという状況でございます。
  77. 向山一人

    向山一人君 最近のアメリカの国会の情勢も、上下両院協議会の包括貿易法案に対する状況等を見ても賛否両論、もちろん数は違いますけれども、両論に分かれておりますし、最近多少緩和の方向にも来ているようにも思いますし、これは急にできることじゃありませんので、どうしても息長くもっと積極的に、アメリカから日本に余りにも細かいところまで非常に強くいろいろ要求を出してきているんですが、日本の方からも、日本はもう石油資源が一番大変なんだと、だからアラスカの石油もあなたの方は積極的にひとつ日本に輸出してもらいたいということを継続的に、やはりこれ息長く継続して運動していかないと実現できないと思うんですよ。  ソ連のチュメニの油田を先方が協力してくれと言えば、日本の財界はかつて随分足を運んで積極的にやったわけですが、そんなことを思えばもっともっと僕はこの問題の方がやりようによっては簡単だと思うんです。そして、日米間のともかく友好状態が相当促進されると思うので、もっと積極的に日本の方からアメリカに対して日本の実情を知っていただいて、先方に協力してもらう。  ましてやアラスカから上院議員がお二人出ているようですが、そういう方々等に対しては、もちろん我々国会においても、議員間においてももっと働きかける必要があるようにも思いますけれども、いずれにしてもこういう重大な問題を解決するために息長く、火のついた牛肉、オレンジ問題もさることながら、もっと本当に精出してこういう重要問題をロングランで解決していくということをしていただきたいと、これはもう時間がありませんので要望だけしておきます。  次に、いわゆるテクノポリス法についてお尋ねをいたします。  五十八年にテクノポリス法が成立して、今日までどの程度の地域を指定しているのか簡単に年次別に、五十八年に法制定をしてから何年に何カ所、何年に何カ所、あるいはまた今後何カ所か要請があれば指定するかどうか、こんな点をちょっと一括して答弁を願いたいと思います。
  78. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) それでは先生の御質問に沿って申し上げますと、五十八年の四月に高度技術工業集積地域開発促進法、いわゆるテクノポリス法が成立して以来、順次開発計画の承認をしてきたわけでございます。  まず初年度の、法律のできた五十八年度におきましては、これは五十九年の三月になりますが、まず九地域でございます。これが第一次の承認でございます。それから逐次、五十九年度六地域、六十年度三地域、六十一年度二地域、六十二年度四地域、そして本年に入って一地域、合計二十五地域の承認を行ったところでございます。  今後につきましては、この法律の建前から申しますと、都道府県の方から申請があって、主務大臣法律に従って厳正に審査して、要件が整えば承認するということにはなっておりますが、今までのいろいろな状況等を総合的に判断しますと、これからその数が大幅にふえるということはないのではないかというふうに私どもは見ております。
  79. 向山一人

    向山一人君 今のは工業再配置の関係とテクノポリスと両方ですか。
  80. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 今はテクノポリス地域、テクノポリス法について申し上げました。  工業再配置促進法の方は、実はそういう地域指定はやっておりませんで、広く全国の誘導地域と申しますか、そういうところに対して工場ができるだけ行くようにいろいろな諸施策をとっております。これは現在もう十年以上やっておりまして、今後とも一層充実させていきたいというふうに考えております。
  81. 向山一人

    向山一人君 そこで、これは実際の地域を見ると相当広範囲のそれぞれ地域を、二十五カ所今指定しているわけですが、一番最初から指定された地域がこの目的を、いわゆるその地域の高度技術の集積化を図って、そしてその地域の活性化を図り、地域の住民の経済的な発展を図るというふうな目的を果たすために、通産省だけでなくて、主務大臣として建設大臣、農林水産大臣あるいは国土庁長官等と相談をして進めるわけですが、現実には道路問題などがこの目的達成するための大きな重要問題なんですね、工業用水の問題もありますけれども。  そうした通産省の所管以外の行政が非常に大きなウエートを占めているわけですが、その辺は、通産省といわゆる主務大臣とはそれぞれ連携は十分とれて進めているんでしょうか。
  82. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) これは四大臣が主務大臣になっておりまして、通産省以外は、建設省、国土庁、それから農水省でございますが、今御指摘のとおり、このテクノポリス計画というのは高度技術に立脚した工業開発を軸にした産学住一体の町づくり、地域づくりでございますので通産省だけということではなくて、そういう建設省、国土庁、農水省の協力を得てやっておりまして、これは密接に四者一体となって相談をして進めてお ります。
  83. 向山一人

    向山一人君 そこで、大体何年間ぐらいにこれを完成しようというお見込みでいるか、また、最初に指定された地域が大体通産で計画しているような形で進行しているかどうか、簡単で結構ですからちょっと御答弁を願います。
  84. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) この点につきましては、産学住一体となった町づくりでございますから、相当の期間がかかるわけでございまして、テクノポリス構想自体は、二十一世紀を展望してやっていくというような大きな考えになっております。  ただ、具体的に計画を出していただいてやっていくという形の、当面のいわば目標年次といたしましてはもう少し細かく切っておりまして、六十一年度以前に承認された二十地域については六十五年度、それから六十二年度以降に承認した五地域は七十年度が当面の目標年次でございますが、これは当面でございまして、実はこの開発計画のもとになる開発構想というものにおきましては基礎固め期、あるいは成長期、成熟期といったように分けて、二〇〇〇年ぐらいのところを段階的に展望した構想もつくっていただいておりまして、そういう長期的な構想のもとに逐次進めるという形になっております。
  85. 向山一人

    向山一人君 例えば道路については、テクノポリス地域について、年々予算を組むときに、この地域はテクノポリス地域だから優先的にひとつ予算をふやすようにということを実際やっていますか。
  86. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) これは主務大臣の一人である建設省の関係になるわけでございますが、建設省が全体の計画の中でこのテクノポリス法に基づいて、テクノポリス計画が円滑に推進するように計画の中で配慮していくということになっておりまして、そのような形で行われているというふうに私どもは考えております。
  87. 向山一人

    向山一人君 全般的に見ると、テクノポリス法は、従来の日本産業が輸出型中心の産業で非常に経済成長を遂げてきたものを、さらに伸ばすような形の上にできているような感じを待つんですね。  そこで、今度成立したいわゆる頭脳立地法の方はソフト面を中心にして、また地域を決めてやっていくわけですが、これは、実際問題としては一体化していくことが必要な面も相当多いと思うんですが、通産省の方では、テクノポリス地域の中でも必要があれば頭脳立地法の方も適用するんだというせんだって来お答えがありましたが、そういう必要も相当あると思うし、新しくソフト面、頭脳面のこの法律に基づく、ほとんどこれは法文を見れば、片一方がハードで片一方がソフトというふうな関係で、これは一体化していく方がいいような感じを受けるわけです。  しかし、テクノポリス地域に入っていないところでは新しい頭脳立地法に基づいていく方がいいとも思いますので、そんな点については大体何カ所ぐらい――もちろんこれは各県から要望があって、皆さん方の方は検討を加えて決めていくわけでしょうが、大体何カ所ぐらいを予定しているんでしょうか、お答えを願いたいと思います。
  88. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 法律を成立さしていただきまして、これから政省令とか指針とかという準備をして進めていくわけでございますが、一応私どもは、都道府県の方から集積促進計画というものが出たところを判断して、計画の熟度とか、あるいはその法律の要件等に適合しているかどうか、そういうことで順次承認しているわけでございますので、率直に申しまして、今何カ所ということをあらかじめ想定しているわけではございません。  ただ、一応来年度予算も関係いたしますので、その予算面におきましては、六十三年度については業務用地というのを三地域分と、それから中核的な施設をつくるということになっておりますが、これについては五施設分一応確保されているということでございます。
  89. 向山一人

    向山一人君 テクノポリスの地域でも実際進めてみると同じだし、今度の頭脳立地法も、恐らく実施してみると、やっぱり今御答弁の中にもありました産学官が一体になってこれは進めなきゃなかなか実現できない問題で、この地域の中に工業系の大学がなかったり、いわゆる産学官一体でいきたいけれども学がないというような面が非常に多いわけで、そういうところへは、本当は工業系の学校とかをつくってもらいたい。  今度の頭脳立地法でいくと、当然これは情報関係の学科とかコンピューター関係、ソフト関係の学の方の関係、そういう関係を積極的にその地域には入れてもらいたいと思っておりますし、また、ちょうど今四全総の中のいわゆる多極分散型を政府は進めようということなんですから、こうした地域には国の研究所を初めとして、いろいろ法律に基づいたソフト面の施設を考えて進んでもらいたいと思いますけれども、通産のお考えを承りたいと思います。
  90. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 今先生の御指摘のとおりでございまして、この法律ですべてができるというふうには思っておりませんけれども、頭脳集積をするために、一つは民間の頭脳部分を集めるということでいろいろインセンティブを用意しておりますが、同時に、国も中核的な施設をつくりまして、例えば中核的な研究開発施設とかあるいは人材育成施設とか、そういうものをつくりまして、民間のいろいろな施設を呼び込んでいくという形で、民と官と、あるいはその中間的なものといったものが一体となってそういう頭脳集積づくりをしていきたいというのがこの法律の考えでございます。
  91. 向山一人

    向山一人君 このテクノポリスの場合もそうですけれども、通産の方では学の関係について文部省の方に対して、テクノポリス地域に対しては産学官一体がどこでも問題になっているわけですが、そういう点について、こうした指定した地域については学の関係をぜひひとつ進めてもらいたいというようなことで、本当なら主務大臣の中へ文部大臣も入れてもらうぐらいのことを私どもはお願いしたいけれども、それについてのお考えをお願いします。
  92. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) テクノポリス地域は産学住でございますけれども、特にその中で、地域産業の技術の高度化のために産学官の交流ということを非常に重視しておりまして、既に年間二百件近い交流あるいは共同研究の案件が出てきておりますが、このために、私どもは地域の、特に大学との、あるいは公設試験研究機関と産業との連携ということでいろいろやっておるわけでございます。  御指摘のように、文部省に対しましても、このテクノポリス法の運用に当たりましていろいろ御支援を賜るべく連絡とか御相談に乗っていただいておりまして、今後の頭脳立地法におきましても同様な方向の考えでございますので、文部省等の協力も得まして広い観点から地域づくりを進めていきたいというふうに考えております。
  93. 向山一人

    向山一人君 時間がありませんが、頭脳立地法の関係でございますけれども、これの方は、今のところ何カ所というふうなことも決まっていないということなんですが、六十年の九月を境にして、非常にああした円高状況、経済構造がずっと変わってきて、輸出産業から内需型の産業日本産業が切りかえをしなきゃならないということで今行われているわけですわね。  そこで、前のテクノポリス法案というのは、どっちみち従来、輸出を中心に日本産業が非常に急速に成長してきた中の延長線だ、今度は内需型に産業の転換が行われて新しい時代に入った形の中でとられた産業だ。本来なら、これは当然テクノポリスの中へ一緒に入れて、ハードとソフトと一体になっていけばうまくいくような感じがしますけれども、しかし、ソフト面を重点に考えていくことも非常に重要だと思っておりますが、この新しい法律が実施されれば、新しい時代はやっぱり新しいこの法律の方へ、魅力を持ってこちらへ重点が置かれるようなことになりはしないかという心配がありますけれども、その点についてのお 考えをお願いいたします。
  94. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) テクノポリス法もこの頭脳立地法も日本産業構造の将来の方向に適応すべく政策を考えているわけでございますが、今後の産業構造の将来方向につきましては、一つはサービス産業等の第三次産業のウエートがふえるということもございますが、もう一つ、製造業につきましても、特に研究開発や情報等のソフトが集約したような製造業が発展する。それからまた、製造業の中の直接生産部門とソフトの部門と比べますと、またソフトの部門が発展すると、こういうことでございまして、産業の頭脳部分、一言で言えば頭脳部分、ソフト部分が重要になる産業構造でソフトを育てていくというのが頭脳立地法でございますが、しかしテクノポリスにつきましても、高度技術工業というのは、工業の中でも最もソフトというか頭脳を使う部分でございますので、両方とも日本産業の構造の高度化の大きな流れの方向に向かって、双方ともそれに適応し、またそれを推し進めていく役割を果たしていくのじゃないかというふうに考えております。
  95. 向山一人

    向山一人君 時間が参りましたから、以上で終わります。
  96. 伏見康治

    ○伏見康治君 年をとりますと同じことを何度も聞くことになりまして、通産大臣にはお気の毒ですが、また秘密特許の問題に関連していろいろお伺いいたしておきたいと思います。  いまだに国会議員一年生でございまして、初歩のことがわかりませんので少し教えていただきたいんでございますが、ある法律なりあるいは準法律的なものが、国会にかけるべきであるものなのか、それとも国会の承認を経ないでお役所がいわば勝手にやってもいいものであるのかという、そのけじめというものが私にはよくわからないわけです。  今具体的な問題として申し上げお聞きしたいのは、MDA協定というのがございまして、その第四条を具体化するということの内容だと思うんですが、それが一九五六年に協定が結ばれております。この協定は国会の承認を経ておられるわけです。  ところが、関係は極めて似たようなものだと思うんでございますが、対米武器供与に関する取り決めというのが、これは国会の承認を経ておりません。それからもっと最近では、SDIに関する協定が結ばれておりますが、これも国会承認を経ないでよろしいんだというようなお話でございましたんですが、どういうものが国会承認を経なければならぬし、どういうものがしなくてよろしいのかという、そのけじめをひとつ教えていただきたいんでございますが。
  97. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 国会の議を経なければならないというような観点からの御質問でございますが、ただいまのは条約に関連してのお話と思いますが、憲法第七十三条三号という規定があるわけであります。そこに言うところの条約といいますのは、単に条約という名称を有するもののみを指すわけではございませんけれども、他方、すべての国際約束、広い意味での条約のすべてがこの七十三条三号に言う条約に当たるわけではないというふうに考えられるわけであります。憲法第七十三条第二号という規定がございまして、そこでは内閣の事務といたしまして、「外交関係処理すること。」を掲げているところから見ましても、外交関係処理の一環として一定の範囲の国際約束というものが行政府限りで決定し得るものであると、こういうふうに考えておるわけであります。  そこで、それではいかなる範囲の国際約束が国会の承認を要する条約に当たるのかということについて申し上げますと、一つは、国会の立法権に制約を課する内容、すなわち法律事項を含む国際約束、そういうものがございます。それから二つ目には、国会の議決を経た予算または法律で認められていない財政支出義務を含む国際約束、そういうものがございます。これらは憲法第四十一条、これは国会は唯一の立法機関であるということを定めた規定でありますが、四十一条または第八十五条、この規定は国費の支出なりあるいは国の債務負担は国会の議決に基づくことを要するということを定めた規定でございますが、この第八十五条の規定による国会の権能を制約するものでございますから、先ほど申し上げました二つのグループのものは当然国会の承認を要するということとなるわけであります。  また、これらの事項を含みませんでも、三つ目といたしまして、我が国と相手方との間、あるいは国家間一般基本的な関係を法的に規定をする、こういう意味におきまして、政治的に重要な国際約束であって、それゆえに発効のための批准が要件とされているような国際約束というものがございます。こういうものも国際約束に拘束される旨の国家の最高の意思表示の形式たる批准を要求しているのでございますから、我が国憲法上、国権の最高機関たる国会の承認を要することにされる、そういう条約にふさわしい内容のものでございまして、国会の承認を経るべきであるというふうに従来考えてきておるわけであります。  これらのいずれにも該当しない国際約束は、既存の条約の実施なりあるいは細目に関する取り決めであるかを問わず、憲法第七十三条第二号に言う外交関係処理の一環としまして、行政府限りで処理し得るものというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  98. 伏見康治

    ○伏見康治君 国会にかけるべきかかけなくてもいいかという判断の基準を示されたと思うんですが、そのどの基準を拝見いたしましても、必ずしも自動的に、だれが見てもすぐ、これはこの条件にひっかかるとか、具体的な案件が出ましたときにすぐ、ひっかかるものであるとかあるいはひっかからないものであるとかという判断が必ずしもすぐ下せるような基準ではないと思うんです。したがって、通産省なら通産省のような行政省庁が御自分のお考えで、これは国会にかけなくてもよろしいんだという判断をなさったんだけれども、法制局の立場から言うとそれはかけるべきであるというようなことがあり得ると思うんですが、いかがですか。
  99. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまのお話は、各省におきまして、例えば条約に関連して申し上げますというと、外務省が中心になるかと思いますが、外務省の方の御判断でこれは国会の承認を経る必要のある条約であると、こういうふうにお考えになりました場合には、当然その内容につきまして私ども内閣法制局の方に審査の請求が参るわけであります。そして、その内容につきましていろいろ審査をいたしまして、果たして国会の承認を要するということになりますれば、閣議決定を経まして国会に条約の承認を求める旨の提案をいたす、こういうことになるわけであります。  ところで、ある場合におきましては、必ずしもこれは、必ずしもといいますか、国会の承認を経る必要がないということについていろいろ疑義のある場合がございます。そういうような場合におきましては、もちろん外務省の方から私ども法制局の方にいろいろ御相談があります。そして、私どもの方の審査によりましてそれが国会の承認を要するということになりますれば、これは当然のことながら内閣の閣議決定を経まして国会に提出をするということになるわけであります。  しかし、日常いろいろ外交関係処理をされておりますものの中に、これはもう疑問の余地なく国会の承認を経る、先ほど申し上げましたような基準の面から見まして問題がないというようなものにつきましては、当該外務省の御判断で処理をするということで、必ずしも私どもの方には御相談がない場合もあるということはもちろんあり得るわけであります。  以上でございます。
  100. 伏見康治

    ○伏見康治君 それでは伺いますが、一番初めに申し上げましたMDAに関連していると思うんですが、五六年の協定、それから対米武器供与取り決め、SDI、この三件というのは外務省から一々法制局に御相談があってその処置をお決めになったんでしょうか。
  101. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 一九五六年、昭和三十 一年のMDAの関係の協定、こういうお話でございましたが、これは国会の承認を経て成立をしている条約でありますし、その議定書もまた不可分一体のものとして当時処理をされたと思います。したがいまして、当時内閣法制局の方にも御相談があり、したがって閣議決定を経て国会に提出をして承認を求めたというふうに承知をいたしております。
  102. 伏見康治

    ○伏見康治君 まだ二つあるんですが、対米武器供与というやつとSDI、それはどういうふうに処理されたんでしょうか。
  103. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 対米武器技術供与取り決め及びSDI参加取り決めは、いずれも行政府限りの権能の中で締結することができると判断されましたいわゆる行政取り決めでございます。  この両件については、閣議に対してその署名のための決定を求めております。したがいまして、政府全体としてもちろん法制局も御参加していただいた場での決定でございます。
  104. 伏見康治

    ○伏見康治君 それで法制局に伺いたいのは、殊に例えば近ごろのもので言うと、SDIというのはどういう判断のもとに国会承認を経なくていいとお思いになったか。
  105. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) SDI参加取り決めを国会にお諮りいたしませんでしたのは、その中に書かれております内容がいずれも既存の国内法の範囲の中で処理し得ることである、また自動的に財政的な支出を必要ならしめるものでもない等の理由によりまして、先ほど法制局の方から御答弁がございました三つの基準のいずれにも合致しないと判断されたからであります。
  106. 伏見康治

    ○伏見康治君 SDIについてもいろいろ聞きたいんですが、今当面私が一番問題にしているのは秘密特許を導入する話なんですが、これの方は国会承認事項なんですか、そうでないんですか。どうなんですか。
  107. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 根っこの五六年協定は、先ほども御説明ございましたように、当然国会の承認を求めたわけでございます。これは特許法や財政法の原則の例外を定める等、いわゆる法律事項を含んだものと判断されたからであります。そして、その国会の御承認を得ました五六年協定のもとで、今回その具体的な実施に関する手続の細則を、これは政府限りで判断したわけでございますが、これは五六年協定の授権の範囲内であり、現在の法制度のもとで行政府が授権された範囲内で処理し得るという判断に基づいてのことでございます。
  108. 伏見康治

    ○伏見康治君 また法制局に伺いたいんですけれども、特許法の二十六条に、条約が変われば変わることがあるという注釈みたいなものがあって、条約を優先させて何か変えるという話があるんだそうですが、それと憲法の九十八条、条約の遵守というものとは何か重複しているような感じがするんですが、特許法の中にわざわざ二十六条という条約優先項目が入っているのは何か特別な理由があるんですか。あらゆる法律がみんなそうだろうと思うんですが、憲法に書いてある以上。
  109. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) まず条約と国内法との関係一般について若干申し上げさしていただきたいと思います。  条約に国内法としての効力をそのまま認めるか、あるいは別に国内法を制定いたしまして国内法化するかにつきましては、国によってそれぞれ異なる取り扱いがなされているというふうに承知をいたしておりますが、我が国におきましては一貫して、これは憲法第七条一号に公布の規定がございますが、条約は公布されることによりまして国内法としての効力を有するものと考えられておるわけであります。  このことは、憲法第七十三条の第三号、先ほど申し上げました三号の規定により、条約の締結については国会の承認を要するというふうにされていることが一つ。また、憲法第九十八条第二項により、「日本国が締結した条約」は、「これを誠実に遵守することを必要とする。」というふうにされていることにより、条約の内容として含まれる法規範に対する国家意思というものは確定をいたしておるわけであります。改めて同一内容の国内法を制定する必要は一般にはないというふうに考えられるからであります。  もっとも条約の中には、その規定のしぶりからいたしまして直ちに国内法の規範として機能できるようなそういう内容になっていないものもありますので、そのような場合にはその条約は別に国内法による補足が必要である場合もございまして、現にそのような国内法が制定されているという例もございます。  次にもう一つ、条約と国内法との関連について申し上げさしていただきたいと思いますのは、国内法的効力を有するとされましたそういう条約と法律との形式的効力の優劣、どちらがまさるかということにつきましては、憲法がその第九十八条第二項において特に条約の遵守義務を定めているという趣旨から見まして、法律よりも条約の方がまさるというふうに解されておるわけであります。  そこで、御指摘の特許法第二十六条でございますが、これは「特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。」というふうに規定をいたしておるわけでありますが、これは条約と法律とのいずれに優位を認めるかの議論の余地が、そういう論議が起こらないようなという配慮、そういう考え方で条約に別段の定めがあるときは条約が優先するということをここでは確認的に明らかにした、そういう規定であろうというふうに理解をいたしております。  このような立法の例といたしましては、例えば郵便法などにもそういう規定が見られるところでございます。
  110. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の特許法二十六条なんですが、これは別に条約は、多国間の条約、つまり世界のどこへ持っていっても通用するといったような意味の条約の場合を想定しているわけではないんですか、二国間条約でなくて。
  111. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまの御質問は、第九十八条第二項の規定というものが多国間の条約だけを想定をしておるという御趣旨かと思いますが、それはそうではございませんで、二国間の条約も含めて九十八条の二項が規定をいたしておるというふうに理解をいたしております。
  112. 伏見康治

    ○伏見康治君 二国間といたしますと、特許法の制度なんというのはヨーロッパとアメリカでは大変違うと思うんですね。アメリカとの間に条約を結んだ場合と、ヨーロッパのドイツならドイツと条約を結んだ場合と違うという場合があり得ますね。そうするとどういうことになるんですか。
  113. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 特許制度の実態、中身につきましては私ども承知をいたしておりませんけれども、ただいまのお話でございますというと、我が国と例えば西ドイツとの間である特許に関する条約が結ばれたというようなことで、その結ばれた条約の内容といいますのが我が国の特許法の規定との関係でいろいろ細かい点で矛盾が出てくる、矛盾といいますか、違った取り決めがなされておるというようなことになりますというと、特許法の各規定に対しましてその規定と抵触をする部分の条約、これが優先的に働くということになるわけであります。先ほどの特許法二十六条というのは、そういうような場合条約が優先するんですよという趣旨のことを確認的に明らかにしている規定だというふうに思います。
  114. 伏見康治

    ○伏見康治君 いや、今伺ったのは、西ドイツと条約を結んで、またアメリカとも条約を結んで、その内容が違っていたら困ることになりませんかということなんです。
  115. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) 先生がただいま御提起されましたようなケースというものは、具体的にちょっと私ども想定しにくいわけでありますけれども、もし我が国と締結した条約というものが、一つ我が国と西ドイツとの間で結ばれた条約、そしてもう一つ我が国とアメリカ合衆国との間で結ばれた条約、そしてその内容において違った内容が決められておるというようなことになりますというと、恐らくそういうケースにつきましては日本国とアメリカとの関係日本国と西ドイツ との関係というような形で取り決めがなされるわけでありましょうから、適用の場面というものがそれぞれ違うのではないか。つまり、条約を含めました法の適用領域というものがそれぞれ違うというふうになるのではないか、そういう感じがいたしております。
  116. 伏見康治

    ○伏見康治君 それで、アメリカとドイツとが違う場合の一番いい例は、先願主義というのと先発明主義との差だと思うんですが、アメリカとのおつき合いがだんだん強くなってくるようなのでアメリカの先発明主義というものを日本に持ち込まれた、日本もそうせいという御要求があってそれを例えば半ば取り入れたというようなことにしたとしますね。そうすると、ドイツとは昔からうまくいっていたのがドイツとのぐあいが悪くなってくるというようなことが起こり得ると思うんですが、そういう場合のいわば整合性というものは一体だれが責任を持ってやるんですか。
  117. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 整合性の法制的位置づけの問題は法制局のお答えする部分かと思いますが、今おっしゃいました、例えばの事例という御趣旨ではございますが、先発明主義と先願主義の問題につきましては、現在私どもアメリカ、ヨーロッパ、日本の間で話し合っておりますのは、むしろアメリカが先発明主義を先願主義に改めることによってヨーロッパ、日本という世界で最も普遍的な先願主義の方に合わすということを議論しようじゃないかというのは、こういったきょう御議論をいただいておる場とは全く違った場、つまり日米欧の特許関係者の協議の場で議論をしておるところでございますので、そういったところでの先願、先発明の制度的矛盾を日本が抱え込んでしまうということは実際には考えにくいことかと存じます。
  118. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のは余り例がよくなかったかと思いますが、それから私の聞いた趣旨は原理的な質問をしたのであって、具体的なお話ではなかったんです。  それではもう少し具体的なお話を伺いますが、アメリカとの交渉の結果、特許法の中に秘密特許の制度というものが部分的に入ってくることになりましたね。元来、日本の特許制度というものは戦後日本の平和憲法の精神を全面的に入れて、完全なる公開の精神にのっとった特許法をおつくりになった。特許法の精神はそもそも公開するというところにあるわけですから、技術の内容を公開しながら、なおかつその発明者の権利を擁護するためのものでございます。  公開するという要素が欠けてしまいますと特許法の精神がいわば台なしになるわけですが、そこに軍事上の、国防上の理由から秘密にしたいという要求があって、妥協の産物として秘密特許制度がアメリカでは採用されたんだというふうに私は了解しておるわけです。日本は別にそういう軍事的要請が強くないわけですから、完全なる公開の精神でまことに理想的な特許法であったと思うのですが、それが近ごろ軍事大国アメリカのいろいろな強い圧力のもとに、恐らく特許庁の方々は嫌々だったと思うのですが、部分的にせよ秘密特許の方法を入れなければならなくなってきたというのが実情だろうと思うんです。  そこで、私もそういう実情を無視するわけではないんですが、それを取り入れたことによって起こる弊害というものがもしあるとすれば、それは事前にできるだけ排除しておかなければならないと思うものですからしつこく質問繰り返しているわけですけれども、アメリカの国防省が日本でもまだ秘密特許にしておけということを持ち込んでこられた場合の処理の仕方というものは、いわばそういうものを秘密にするという要求も何もかもアメリカさんの方の判定に基づくんでしょうから、日本政府はいわば関与していないわけだと思うんですね。その点をまず確かめておきましょう。  今度の協定、特許なるものを入れたときには、日本の特許庁というものはその中身が何であるかということを吟味してから受け取るものなんですか。それとも完全なるブラックボックスで、ただ表面に国防省の判こが押してあって、それから日付が押してあるものをただ受け取るだけなんですか、どうなんですか、その事実をちょっと。
  119. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 御質問の趣旨いろんな意味が含まれるかと思いますが、まずアメリカで秘密指令がかかった出願、それがどういったものが日本に提供されるかというのは、これは防衛目的から国防当局同士でその技術内容が渡される。その渡される限りは国防当局限りの問題でございますが、先生指摘のお話は、むしろそれが協定出願として出願された場合に特許庁としてどうなのか、見るのか見ないのか。  この点は、まず見るか見ないか、最終的には秘密が解除されたときには当然実質審査をいたしまして特許性を判断して、最終的には特許を与えるかどうかを決めるということでございますが、秘密が解除されませんうちは協定出願の受理だけをいたしまして、実質審査はしないで秘密解除までの間凍結をする、こういう扱いになっております。
  120. 伏見康治

    ○伏見康治君 協定出願の方はそういうことで話が割合にすっきりしていると思うんですが、もう一つ準協定出願というのがあるように伺っているわけです。これの方は、アメリカ国防総省がいきなり何かやってくることではなくして、日本側で何かをおやりになるというふうに伺っているんですが、まずこれの話の内容をひとつ説明していただいて、その上でまた御質問したいと思います。
  121. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 御指摘の準協定出願は、議定書第三項(b)に該当する部分のことでございまして、その内容は、アメリカからの協定出願の対象になっております発明の内容を受け取った防衛庁の関係職員とか、あるいは防衛庁から、例えばライセンス生産のような関係にあるためにその協定出願の発明内容を見せてもらった企業とか、こういった協定出願の中身を知った方々がそれをもとにした改良発明のようなものを出願したいとするときは、その出願の中身がもとの協定の出願内容を明らかにするものについて準協定出願としてこの条約に基づいて処理することになっております。
  122. 伏見康治

    ○伏見康治君 よくわからないところがあるんですが、結局、そういう準協定出願なるものを特許庁の方が受け取る判断をするのは、特許庁の方がいわば最終判断するのか、それとも防衛庁の方が判断するのかという点を伺いたいんですが。
  123. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 準協定出願であるかないかの判断につきましては、実際の運用に当たっては必要な協力は防衛庁から得ますけれども、判断はあくまで特許庁が責任を持って行うことといたしております。
  124. 伏見康治

    ○伏見康治君 それで伺うんですが、防衛庁がとにかくイニシアチブはおとりになる、最終判断は特許庁がおとりになるという、そのイニシアチブの中に、日本の過去の太平洋戦争をやっていたころの秘密特許制度の事例なんかを見ますというと、随分噴き出したくなるような発明が堂々と秘密特許になっているんですが、何かそれと似たようなことがまた起こるのではなかろうかという感じを非常に強く受けるんですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  125. 小川邦夫

    政府委員(小川邦夫君) 準協定出願の判断に当たっていろいろ防衛庁の御協力をいただく場合に、あくまで信頼を前提にしての協力でなければ協力関係はうまく成り立たないということでございますから、御指摘のような、歯どめがないので必ずしも防衛庁の判断を信頼できないということを前提にはしておりません。しかしながら、私どもの判断の仕組みとしまして、通常の場合には防衛庁でチェック、確認をしていただいたものが準協定出願提出書というものに表示されておりますので、それをもって確認をすることで処理いたしますが、ただ内容に疑義がある、特に必要があると思われるときは、そういう通常の流れで処理をしないで、特に中身について見て判断して処理するという体制を整えております。
  126. 伏見康治

    ○伏見康治君 今、協定出願並びに準協定出願のお話の中身の方に入り過ぎちゃったんですが、実 は、こういうふうに秘密特許の制度を今まで秘密でなかった日本の特許制度の中に入れ込むということは、僕は特許法の一大変革だと思うんですよ。意味が随分変わってくると思うんです。その大変革をやりながら国会の審議を十分に経なくていいということはどうもないように思うんですが、法制局はどうお思いになりますか。
  127. 大出峻郎

    政府委員(大出峻郎君) ただいまのお話のもとになっておりますいわゆる一九五六年協定あるいはその議定書、こういうものは当時国会の承認を得た条約ということであるわけであります。そこで、ただいまの一定の場合には秘密取り扱いをするということが条約の内容として決められておるわけであります。しかも、この内容といいますのは、国権の最高機関である国会において承認されたものであるということが一つ、それと同時にもう一つは、先ほど申し上げましたように、条約と法律との形式的効力においては条約の方が優先をするという、そういうこととあわせまして、ただいまのようなものは国会の承認に基づいて内容が部分的に変更されることになる、こういうことであろうかと思います。  そういうことで、条約を決めたことによりまして特許に関する法規範というものがある部分において改められることになるというのは、ある意味ではいわば当然のことであって、これ自体が不当ということには法理上はならないというふうに考えております。
  128. 伏見康治

    ○伏見康治君 その経過の中で国会承認を得たということは事実なんでしょうけれども、結局、具体的な形になったとき、つまり、例えば準協定といったようなお話はごく最近の話だと思うんですが、そういうお話は議論されていないと私は思いますが、あるいはどこかでされたんでしょうか。
  129. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 先ほど来御説明申し上げております五六年協定の議定書の中身ですが、準協定出願についても言及がございます。  それは議定書の三項のところでございますが、「協定出願以外の特許出願又は」云々、「翌日以後に日本国でされたものが、出願公告されることにより」ということで出願公告をしない説明がまず前段にございまして、その後続けまして、「ただし、その特許出願又は実用新案登録出願の対象たる発明又は実用新案が、特許又は登録を受けうべきものであり、かつ、当該協定出願の対象たる発明又は実用新案と関係なくされたものである場合は、この限りでない。」、この後段がいわゆる独立発明についての出願でございまして、分離解釈上この頃の前段は準協定出願に言及しているものというのが私どもの解釈でございます。
  130. 伏見康治

    ○伏見康治君 ちょっと質問の仕方を間違ったようです。  五六年というのは随分いわば大昔だと思うんですが、つまり五六年のときにいろんなことを決めたというのは、いわばお蔵に入っていたんじゃないかと思うんですが、それが近どろ急に問題になり出したというのはどういうことなんですか。
  131. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 五六年協定を締結して以来、我が国にはこの内容を実施するべき義務があったわけでございます。  ただ、長い経緯がございましたけれども、その実施のための手続細則というものは最近まで整備されてこなかったわけでございます。それはそのときどきの担当者たち対応ぶり等いろいろございましたでしょうが、基本的には日米間の技術にはまだ相当の格差がありまして、米国として、我が国に対してこの制度を直ちに実施させて知的所有権の保護に万全を期すという必要性がそれほど切迫に感じられてこなかったからではないかと推察されます。これが最近の我が国の目覚ましい技術水準の上昇によりまして、米国といたしましては早急にこの協定の実態的な実施が必要になったものと理解しております。
  132. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のような御説明だと、つまり五六年の協定のときには、実はこういう具体的なことまで話が進むということを日本側も予期していなかったと言うべきではないかと思うんですけれども、国会審議にかかったときも、恐らくそういうことが現実に問題になるような情勢ではなかったというふうに判断されるわけです。  今説明されたように、それが日本の技術能力が急にふえてきて、アメリカがそのことを無視できなくなったという現情勢が初めてこの協定出願なり準協定出願なりを必要とすることになった、時代的変化というものがそこにあったと思うんです。つまり、そもそものこの協定をつくったときにはそういう情勢になかったからこそ、国会も恐らく余り吟味しないで通しちゃったと思うんですが、新しい情勢の中で本当に問題になるという段階での議論はしなくていいものなんですか。
  133. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 今回実施に移しましたのは、五六年協定の第三条及びそれを受けましての議定書そのものでございます。手続細則は、私どもからの御説明を聞いていただければわかりますとおり、この五六年協定の実施に当たって通告手続を定めたといったごく技術的なことだけを日米間で今回合意いたしたものでございます。  あくまでも五六年協定を日米間で締結したときにすぐに実施されるべきものであった内容を、技術的に今日整備したということでございまして、その必要性は、五六年協定のときからは原理上変わっていなかったものと存じます。
  134. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の御議論は原理上の話であって、実際の日本とアメリカとの国情というものを基礎にしたお話ではないと思うんです。つまり、前には抽象的にそういうことをお決めになったわけなんですが、現段階では抽象的に決めたものが実際上物を言い始めた時代ですね。ですから、実際上問題になり始めたところで実は国会の議論を必要とするのではないかという意味のことを申し上げているわけなんです。  ところで、予定の時間が大分迫ってまいりました。SDIについてちょっと最後に伺います。  先日の五月の半ばの日経新聞によりますと、SDIに参加する方があらわれたというお話で、それで再びSDIのことを思い出したんですけれども、前内閣時代、前総理大臣のころには、SDIというのは武器に関する研究ではない、基礎研究だというふうに専ら伺わさせられておりました。それが、SDIの協定といったようなものが全部武器に関連する法律の枠内で取り扱われているというのは、これは解釈の違いが起こっているわけなんですか。
  135. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 御指摘のとおり、MDA協定は、防衛分野におきます日米間の相互協力について規定したものでございます。SDIは、要素的に考えますと、汎用技術のものもあれば武器技術のものもあると思うわけでございますが、その武器技術の移転、SDI研究計画のもとで我が国から米国に対して提供される技術が武器技術に該当するような場合には、この移転に際しましてMDA協定を使用する、このようなことで、昨年のSDI参加協定の中におきましても、適当な場合には米国との間のMDA協定に依拠するものとするという文言を挿入したものでございます。
  136. 伏見康治

    ○伏見康治君 同じく日経の五月十五日の記事によりますと、これは三菱重工のような民間企業だけが直接参加するものであって、政府機関は研究に参加しないというふうに書いてありますが、これは事実ですか。
  137. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 私どももその新聞報道は拝見いたしましたけれども政府としてSDI研究計画に対する態度は、従来から御説明してきているとおりで、変わってございません。つまり、米国から我が国政府に対してSDI研究に対する協力要請がなされました場合には、特定の研究活動を我が国政府関係機関が行うかどうか、これは、この要請が行われた段階で要請の内容やそれぞれの機関の設置目的等々を勘案しまして判断することになるというものでございます。  今日まで米国から我が国政府関係機関に対するSDIプロジェクトに対する参加の要請というものはセットしておらないわけでございます。
  138. 伏見康治

    ○伏見康治君 私の理解では、SDIというのは結局民間の企業とアメリカの国防総省とが勝手に契約するものであって、日本政府は内容にタッチ しないんだというような説明も伺ったように思うんですが、だからこそ三菱と国防総省とが何かやっているんだというふうに僕は理解していたんですが、そうではないんですか。
  139. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) SDI参加の現実的な姿といたしましては、我が国企業が中心になるものと私どもも心得ておりますけれども政府関係機関の対応ぶりというのは、先ほども申し上げましたように、個々具体的な米側のSDIプロジェクトへの参加要請に応じまして、その都度判断していくということでございまして、政府関係機関が全く関与しない、参加しないといった決定があらかじめあるわけではございません。
  140. 伏見康治

    ○伏見康治君 大臣にちょっと意見をお聞きしたいんですが、軍事大国アメリカと平和国家日本との間で行き方が違うものですから、田村大臣もいろんな面で随分御苦労をなっている。ココムのときなんか本当に御苦労なさったと思って、よくやっていただいたと思っているわけです。  とにかく軍事大国と平和大国とがおつき合いをするんですから、いろいろ難しいことが出てくることは当然ですが、田村さんにこの際、日本は平和国家としての立場をあくまでも失わない、貿易は自由であるべきだと考えるという信念をひとつ伺っておきたいと思うんです。
  141. 田村元

    国務大臣田村元君) アメリカだけではないんでございますけれども、多くの外国ということは言えるかもしれませんが、我が国、私をも含む我が国の国民と防衛問題についてやはり非常な意識のギャップがございます。どちらが正しいかはとにかくとして、それだけに実際やりにくい問題が多々ございます。  しかしながら、日本は従来平和国家として四十年を上回る歴史を重ねてまいりましたし、そして立派に自由主義、民主主義、そして平和主義というものが定着をいたしておりますし、そういうお国ぶりであるということを踏まえて、今後諸外国とりわけアメリカとの間で、難しい問題はもちろんあることは相当なものでございますけれども、それをうまくさばきながらこれからおつき合いを願っていくということであろうと思います。現在でもとにかくそれはやっておるんでございますから、これからも我が国のその衝に当たる人々が国民の理解を得ながら努力をすれば必ずできるというふうに考えております。
  142. 伏見康治

    ○伏見康治君 ありがとうございました。  終わります。
  143. 市川正一

    ○市川正一君 田村通産大臣は政界きっての映画通とされ、現に、超党派の映画議員連盟の会長であります。また先日、その映画議連主催の「敦煌」試写会であいさつをなさいました際に、映画問題は実は通産省の所管事項であるというふうにも述べられました。  そこで本日は、日本映画及び映画産業の振興対策についてお伺いしたいと思います。  日本映画の衰退を憂える声が久しいんでありますが、昨年秋の第二回東京国際映画祭でも心ある良心的な日本映画はどこへ行ってしまったのかという言葉を聞きました。まことに心の痛むところであります。一部にはテレビに観客をとられたという意見もありますが、私はこれは必ずしも問題を正しく把握していない皮相な見解と言わざるを得ません。例えば、通産省の外郭団体である余暇開発センターの「レジャー白書'88」、これを拝見いたしますと、映画を劇場で鑑賞したいという人は三〇%を大きく超えております。現にまたいい映画を上映している映画館は、個々の作品はあえて挙げませんが、満員になっております。  私は、日本映画の文化的衰退をもたらした原因には、例えば文化、芸術としての映画を利潤追求の対象だけとしか扱ってこなかった大企業の商業主義、映画を国民の文化財として尊重し、それにふさわしい保護育成策をとってこなかった政府の文化政策、アメリカ映画に著しく偏重させられたゆがみなどを指摘しなければならぬのでありますが、まず田村通産大臣日本映画の衰退の原因について所見をお伺いいたしたいと思います。
  144. 田村元

    国務大臣田村元君) 映画産業は、昭和三十年代半ばに映画館の数と入場者数でピークを記録しました。その後は大幅に減少して、また若干低迷状態にございます。昭和三十五年度には映画館の数が七千四百五十七ございました。それが六十二年度ではわずか二千五十三になってしまいました。まことに悲しいことであります。  その原因としましては、以前は国民の余暇、娯楽の種類が少なく、映画がその主流であったのに対して、最近では旅行、スポーツ、外食等々多様化してまいりましたし、また余暇、娯楽などに占めます映画の地位が低下したことは残念ながら率直に言って事実だと思います。またテレビ、ビデオの発達や普及によりまして、映像の分野においても他のメディアとの競争が厳しい状況になっておるということもまた事実であろうと思います。しかしながら、何といっても最大の原因というのは、映画館に足を運ぼうという意欲のわき出てくるような名作といいますか、いい映画がだんだん少なくなってきたということがやはり最大の原因かなというふうに思います。  ただ、だからといいまして、映画というのはあらゆる階層の人々が見るのでございますから、その好みというものはさまざまであります。例えば、非常に科学的な映画を好む人があるかもしれません、あるいはまた静かな映画を好む人もあるかもしれませんし、またにぎやかな音楽の入った映画を好む人もあるかもしれません。それはさまざまだと思います。しかし、少なくとも一つに集約して言えば、人々の心を打つ映画であれば必ず人々の足はそちらへ向くと私は思うんです。  そういう点で、映画関係者に責任があるというのも気の毒な話でございますけれども、やはり娯楽の種類が大変多くなった、広くなったということで映画が苦しくなって、そのため映画界に焦りがあったんではなかろうか。だからいい映画もできたけれども、とんでもない映画もできたということも言えると思いますし、それから政府に責任といっても、そういうふうに決めつけるのも気の毒かもしれませんけれども、映画に関係のあるお役人のみでなく、お役人自体に映画を愛してもらいたいなと、そういう気持ちを持ってもらいたいなと、さすればおのずとまた政策もそのような方向へ向くであろう。過去に責任があったと、現在に責任があるとは思いませんけれども、私はそういうふうに好きになってもらったらきっとその方向へ行ってくれるであろうというふうに考えております。
  145. 市川正一

    ○市川正一君 それでは具体的に、いい映画をつくるそういう振興対策として質問を進めたいのでありますが、文化庁に伺います。  映画に対する助成策でありますが、防衛費は毎年大幅に増額される一方、文化関係の予算は逆に毎年減額されております。こうした中で文化庁がとっている映画振興の助成策は、いただいた資料によりますと、優秀映画の促進一億三千六百万円、東京フィルムセンター運営等二億五千百万円、その他民間芸術等振興費補助金、芸術祭等千七百万円、合計四億四百万円ということになっておりますが、間違いございませんか。
  146. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) お答えいたします。  今先生にお示しをいたしました資料、これは主なものをお渡ししておるところでございまして、映画の振興のためにはまだまだその他、ただ予算的にはそれほど多くはございませんが、事項としては優秀な映画をつくるための施策は種々講じてございます。
  147. 市川正一

    ○市川正一君 要するに総額わずかに四億円余りという予算的規模が問題だと思うんです。私はP3C対潜哨戒機が一機九十八億円もする、それをことし九機購入する。あえてこういう比較をいたしますのは、平和国家、文化国家、こううたっているわけでありますから、そこをやっぱりあいまいにすることはできぬと思うんです。  そこで伺いたいのは、社会主義国はもちろん欧米諸国でも映画に多面的かつ相当額の助成をしております。経済大国を誇る日本がもっと映画への助成を増額、充実してしかるべきだと思うんですが、文化庁いかがでしょうか。
  148. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) お答えいたします。  予算的な面での充実、これも当然でございますが、そういうことと同時に優秀な映画をつくれる素地をもう少ししっかりとしたものに見直していく必要がある。そういったことで、現在文化庁には映画芸術の振興に関する懇談会、こういったものを設けておりまして、鋭意検討中でございます。間もなく中間報告が出るところでございますが、そういったものを受けまして総合的にひとつ立て直しを図ってまいりたい、かように考えているところでございます。必ずしも予算だけの問題ではない、こう考えておるところであります。
  149. 市川正一

    ○市川正一君 そんなあなた観念論言うてもあかへんがな。  実は、きょうは大崎長官に出てもらうつもりだったんです。長官は、トーキー時代からの名画をほとんど見ている無類の映画好き、こうマスコミは報じ、映画の再生を公約しておられる。だからどういう手を打つのかということをきょうお聞きするつもりだったんだけれども、残念ながら所用で出てこられなかった。あなたはいろいろやっていると言うけれども、しかし、同じ九月一日の朝日新聞で長谷川芸術課長は、「映画は大衆に密着し、芸術としても奥行きが深い。オペラ振興と同じように、公的な支えをしたい」、これはやっぱり金のない支えというのは、そんなものはへのつっぱりにもならんがな。  そこで、通産省映画産業にどういう助成策をとっていらっしゃるのかお伺いいたしたいと思います。
  150. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 私ども映画産業については大変関心を持っておりますが、産業としての映画に対して直接的な補助というものは実はほとんどございません。しかし間接的にできるだけのことは考えてきておりまして、ここ二回既に行われました、先生も先ほど言及されました東京国際映画祭、これは国際的な交流の場、国際的なイベントの振興という観点から、中身は映画でございますけれども、財政的な助成をしております。  それから、これは今後の問題といたしましては、さらに現在勉強会をやっております。これは次世代映画産業懇談会という研究会を設けまして、映画をつくる会社の方、あるいは映画に出演される方、あるいは映画に関係のある評論家の方、あるいは放送関係の方、その他学識経験のある方にお集まりいただきまして、いろいろ今後の問題を検討しております。  先生、今お金の裏づけがなければ余り意味がないとおっしゃいましたけれども、その点もございましょうけれども、時間もあれですから簡単に申しますと、一つ規制の緩和という形で、今後映画産業の振興にどういう規制を緩和したらどういう効果があるかということを今勉強しておりますし、それから二つ目は技術の面から、ハイビジョン等の新しい技術の振興という観点、これは抽象的な技術振興というのはないわけでありまして、必ず素材があって行われますので、映画などは格好な材料といいますか対象だと思いますが、そういった面。それから資金面等については現在勉強中でございます。
  151. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は役所でも勉強中でございますが、私は映画界の人々に、とにかく自分で努力することが一番大切なんだけれども政府にどういうことを求めるのか、一遍それを洗い出して持っていらっしゃい。その上で映画議連で一遍あらかじめ検討して、役所に突きつけるものは突きつけよう、こう言ってございます。だから考えようによっては自分で選んで自分に突きつけるような格好になるわけですけれども、そういうことを言ってございます。  市川さんのお気持ちも重々私も知っておりますし、うれしく思っておりますけれども、飛行機や軍艦と比較されますと私も答えにくうて、もうちょっと映画というのはエレガントなものですから、ひとつ血なまぐさいものとちょっと離して、そして映画を大所高所から論じられると私も大変答弁しやすいんでございますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
  152. 市川正一

    ○市川正一君 大砲とバターという言葉がございますが、やっぱり大砲と映画、文化というのは両立しないと思うんです。しかしきょうはそれが本論じゃございませんので、いずれまたゆっくりいろいろ議論をさしていただくこととして、今おっしゃった、やはり何をなすべきか、また何ができるのかという点で私もいろんな各方面から意見を集約してまいりましたが、例えば日本映画の現状を打開するために、緊急措置として一定の助成策も必要になってきていると思うんです。  さっき大臣もおっしゃったように、やっぱり映画の製作者側もいろいろもっと努力をせんといかぬけれども、しかしここまで来ますと必要なそういう助成策も求められているんじゃないか。例えば、国と映画企業が出資して映画製作基金というものをつくって、すぐれた映画製作に対する長期、低利の融資を行うとか、あるいはまた撮影所の設備投資や機材への税制上の優遇措置だとか、あるいはまた撮影所での人材育成に対する助成、さらに先ほどお触れになりましたが、ハイビジョンなど新しい技術的可能性を追求するための助成とか、こういうのは私は具体化さるべきテーマのリストだと思うんですが、ここらのところはどういうふうにお考えでしょうか。
  153. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先ほどとちょっと重複いたしますけれども、いろいろ基金の問題もおっしゃいましたが、まず一番やりやすいといいますか、手が届きそうに思いますのは、先ほどちょっと規制緩和と申し上げましたけれども、例えば建築基準法で映画館は現在商業地域、準工業地域しかつくれない。ところが住居地域、近隣商業地域等にもつくりたいという話があります。  例えば百貨店ができるところ、スーパーができるところでも映画館はできない。そうしますと、ショッピングセンターなんかをつくった場合に、映画館を含んだショッピングセンターというものは非常に今後発展の可能性があると思いますけれども、法制上できない。まずそういうふうに抑えられているところをもうちょっと何とか緩和できないんだろうかという議論が研究会で出ておりますけれども、そういったところは比較的手が届きやすいのではないか。そのほか、建築関係でいろいろきつい規制がございますが、こういった点をまずやってみる。  それからハイビジョンにつきましては、これからいろいろな実験事業が行われると思いますけれども、そういったモデル的なものについて映画に名乗り出ていただいて、そういう場でもってひとつ新しい分野を開拓していただく。  それから資金面につきましては、国の基金ということも御議論もあろうかと思いますけれども、まず民間のお金がいわばベンチャーキャピタルのような形でうまく集まるような仕組みは考えられないだろうか。現に、投資事業組合という形をとりまして映画産業以外のお金、他の産業、例えば商社のお金とか広告代理業等からのお金を集めまして、最近話題になっている立派な映画をつくったケースがございますけれども、そういった資金面の対策というものもあるんじゃないか、こういった議論がいろいろ今出ておりますので、国がどれだけできるかということも、御指摘でございますので、私どもはそれも念頭に置きましてもう少し勉強さしていただきたいと思っております。
  154. 市川正一

    ○市川正一君 それをもう少し突っ込んで、人材面で、田村ビジョンというわけじゃないですが、ちょっと大臣にお伺いしたいんですが、文化的、芸術的に高い水準の映画をつくり、映画の振興を図る上で、映画製作に携わるすぐれたスタッフ、監督はもとより照明とか美術とか録音とか編集とか、そういうものも含む人材の養成とか後継者の育成というのは、私は不可欠の課題だと思うんです。  現在、御承知のように、歌舞伎とか能とか、こういう分野は国立劇場で後継者養成に当たっております。しかし、映画の場合も、公的な教育機関、例えば国立大学に映画関係の専門部門を設置するとか、あるいは将来、研究所を持つ国公立の映画大学をつくってその育成を図るとか、こうい うふうな構想は、決して支部大臣とかいう意味でなしに、田村通産大臣としての御所見を伺いたいんですが、いかがでしょうか。グッドアイデアというふうに……。
  155. 田村元

    国務大臣田村元君) そういうふうにしてほしいものですね。私も、本当にそれはすばらしいことだと思います。大学に映画の専門課程を置くというふうに、国公立に置けるかどうかという問題はあるかもしれません。けれども、例えば我々の若いころでも、日本大学には芸術学部がございました。でありますから、私はやってやれないことはないと思いますし、そういう問題も含めて、やはり真剣に検討しなきゃならぬと思います。  まあ文部省にも御協力をお願いしなきゃならぬし、幸い今の中島文部大臣も、あれなかなか映画が好きでございまして、一遍よく相談をしてみたいと思っております。
  156. 市川正一

    ○市川正一君 文化庁に今度はお伺いしますが、私は今、特に重視する必要があるのは、先ほどの構想などとも関連して、フィルムライブラリーを、これを言うならば国立劇場並みに、例えば国立映画センターといった将来的展望を持って大いに改善し、大いに充実さしていくということだと思うんですが、こういうような展望、構想については文化庁はどうお考えでございましょうか。
  157. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 先生御案内のとおり、フィルムライブラリーはそれなりの役割を果たしてまいっておりますが、現在、焼けまして、あそこに建築するということになっております。昭和六十六年度に新しいものが建ちます。現在は、御案内のとおり、東京国立近代美術館の一つの内部施設、こういうことになっておりますが、これにつきまして、先ほど申し上げました、例えば映画芸術の振興に関する懇談会等では、例えばこれをそういった美術館の附属施設というふうなことではなくて、独立した映画のための施設、映画振興のための、そういうふうなことも考えてはいかがか、こういうふうな御提言もいただいておるところでございますので、その施設が成った暁には、これまでの機能を充実するとともに、そういった新しい方策を検討してまいりたいと思っております。
  158. 市川正一

    ○市川正一君 今部長のお話があったように、京橋のフィルムセンターが八四年の九月に火災に遭いました。そうして今、東京国立近代美術館のフィルムセンターを運用し、また相模原にフィルム収蔵庫、あれはできたわけですね。約一万本近いフィルムがあるというふうに聞いておりますが、しかし、全体として、また金の話で、予算は極めて少ないんですよ。これは僕は驚いたんですが、フィルムも結局映画会社の寄贈に頼っているというのが現状なんです。まことに私はお恥ずかしい限りだと思うんです。  私は、この際、やはりプリントだけでなしにネガも含めて買い上げて保存する、せめてその程度のことはやるべきだと思うんですが、これは著作権の管理とは決して矛盾するものではないんです。これは焼き増しして売り渡すわけじゃないんですから。そういう立場で取り組むべきだと思うんですが、文化庁いかがですか。
  159. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 先生指摘のような方向も踏まえまして、前向きに検討いたしたいと思っております。
  160. 市川正一

    ○市川正一君 次に私、映画をつくる上でもう一つ重要な問題は、俳優など実演家の権利の保護と待遇改善の問題だと思うんですが、文化庁に伺います。  映画は、製作者はもとより監督、美術、音楽、俳優など多くの人々の協力によってでき上がる、言うならば総合芸術だと思うんです。ところが、現行の著作権法ではこれらの人々の権利がどういうふうに保障されているのか。なかんずく映画俳優の権利はどうなっているのか、お伺いしたいと思います。
  161. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 端的に申し上げますと、俳優等の実演家が行いました実演が収録されております映画、これにつきましては、実演家は当初の出演料は出るということになっておりますけれども一般的にはその後の映画の利用については一切何も受け取れない、権利が認められていない、こういったような状況でございます。
  162. 市川正一

    ○市川正一君 私は、それは非常に不当な措置だと言わざるを得ぬのです。と申しますのは、確かにローマ条約では、第七条でその権利を認めながら第十九条で外しております。しかし、この点については、国際的にも今日問題になっており、ローマ条約が起草されたときはまだビデオが存在していなかったころです。ところが、今やビデオ的著作物のはんらんによって事態は根本的に変わってきておるわけですね。ですから、第十九条の改正が勧告されたのは今から十年前であります。したがって、この十年間の特に著しい変化、これに私は対応すべきだと思うんでありますが、文化庁はどのようにこれに対応されようとしているのか、お伺いしたいと思います。
  163. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 先生指摘の映画のビデオソフト化、こういった新しい手段が出てまいりまして、単に映画館で映画を上映するということにとどまらなくなっているわけで、そういったことを受けまして、私どもも現状の保護のあり方、これがベストであるというふうには心情的には必ずしも思っていないわけでございます。  ただ、先生今御指摘のとおり、現在のローマ条約、隣接権条約でございますが、これの中には、先生今御指摘のとおりでございまして、今、日本制度をとっておるこのとおりの規定が七条、十九条ということで設定されておるという現状でございます。また、それを受けまして諸外国におきましても同じような制度をとっておる、これが圧倒的な多数を占めておるところでございます。  ただ、著作権法の改正ということで先生は恐らくこういう問題を処理しろというふうな御提言かと思いますけれども、この問題は、例えば隣接権条約そのものがまだそういったふうな、現在我が国がとっておる状況と同じ状況であるということ、それから諸外国状況もそれを踏まえて同じような状況にとどまっておるというふうなこと、それから映画の著作物の権利の取り扱い全体とも関連する大きな問題であるということもございますので、これは当然、将来におきましては法改正というふうなことも踏まえた検討が必要になってまいろうかと、こう思うわけでございますけれども、それには少々時間がかかると思いますので、当面のところは、実演家と映画製作者との間の契約面での解決の方がより現実的な処理ではなかろうかということで、その方のバックアップをぜひやってまいりたいと、かように考えておるところでございます。  先生御案内のとおり、映画の監督者と製作者との間には、既に昭和四十六年に契約等が成り立っておるところでございます。一部、そういった面での解決が成り立っているところでございますが、この俳優の方々とそれから製作会社との間でも、今ある特定の面、三つの面があるそうでございます。その一つの面においては着々と解決に向かって進んでおるというふうなことを伺っておりますので、そういったものをぜひ進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  164. 市川正一

    ○市川正一君 十年前にはああいうカラオケビデオみたいなものはなかったわけですよ。ところが、今はもうちょっと行けば、ずたずたに切断して使われておる。これは私には明らかに著作権に対する重大な侵害だと思うんですね。現に私は映画俳優の待遇を調べてみましたら、ごく一部のいわゆるスターを除けば極めて深刻な状態にあります。  例えば、交通費は支給されるけれども、現金支給のために税金が差し引かれている。宿泊費も支給されるけれども、二千円から三千円どまりです。これも同じように一〇%の税金を取られる。食事代も出ない。俳優の年間所得は、これは八四年の調査でありますが、二百万円未満が三七%で、勤労世帯の平均年収以下の五百万円未満というのが七七・二%と圧倒的です。しかもまた、仕事中にけがをしても労災保険がないという厳しい条件のもとで俳優の活動をやっているということ を考慮いたしますと、労働条件の改善とともに、著作隣接権の確立は焦眉の急だというふうに言って過言でないと思うんですが、私はこういう実態に即して文化庁が早急に検討し結論を出されることを重ねて要求いたしますが、いかがですか。
  165. 逸見博昌

    説明員(逸見博昌君) 先生の御要望は御要望として十分承っておきまして、そういった問題があるということを十分認識して前向きに仕事を進めてまいりたいと思います。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、現在の条約そのものそれから世界の大勢そのものがまだ大変かとうございます。ただし、それが決して本当に現実を反映しているものとは必ずしも思われませんので、そういったものが変更されるということも十分踏まえながら私ども前向きに対処してまいりたいと思います。
  166. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、最後に大臣に今後の抱負も兼ねまして、映画館が庶民のレクリエーションの場にふさわしい安全で衛生的で、また快適な場になるような設備改善が望まれていると思います。先ほどお話しございましたように、規制緩和によってふだん著で気安く行けるような方向を指向されているというのはまことに時宜に適したタイムリーな御検討の方向だと思うんです。今言ったこういう設備改善に対しても助成措置の要求がずっと出ておりますが、通産省の所管事項のこの映画に関する事業として御所見を承って、きょうはまあ第一ラウンドでありますが、質問を終わりたいと思います。
  167. 田村元

    国務大臣田村元君) そういうことも含めていろいろと検討してみなきゃならぬと思います。また、議連としても検討しなきゃならぬと思います。そのときはよろしくお願いいたします。  私は、こういう席で映画の話というのはまあめったにないことで、常任委員会で映画の話というのは市川先生ぐらいのことだろうと思いますけれども、本当にいい機会でございますからあえて申しますならば、例えばテレビなんかでも、テレビの映画も映画なんですからもうちょっといろんな面で考えてくれたらどうだろうか。例えば、テレビ映画の時代考証というのはめちゃくちゃです。実際むちゃくちゃでございます。我々子供のときに大都映画とか極東キネマというのがありまして、チャンバラしておるところに電信柱が立っておったというのがございましたけれども、今のは本当にめちゃくちゃです。  そうかと思うと、中にはすばらしいテレビの映画もございました。私が見ておって、幸四郎の「鬼平犯科帳」というのはとってもよかったと思うんです。あの「鬼平犯科帳」に出てくる江戸時代の食事、これは池波正太郎の博学ぶりをあそこで知らしめておるんでしょうが、まさに江戸時代の食事がさまざまに出てきて、池波正太郎の「鬼平犯科帳」の食い物をたねにして本をあらわした人のその本がベストセラーになったというようなすばらしい、これは小説がすばらしいわけですけれども、映画もすばらしかったと思います。  やはりテレビも、もうちょっとまじめな映画をやってもらったらどうだろうか。落語家なんかでも、収入が少ないからしようがないかもしれませんが、このごろは座布団を積んだり外したりしてまるっきり喜劇役者みたいな格好になってしまって本当に悲しく思いますが、まあこれからいろんな面で映画をよくしたいし、もう一回、映画を国民の心の糧として取り戻したいと思いますので、どうぞよろしく御指導のほどをお願い申し上げます。
  168. 市川正一

    ○市川正一君 こちらこそどうぞよろしく。
  169. 井上計

    ○井上計君 OECDの閣僚理事会での大臣の御活躍については、私もお伺いしようと思っておりましたが、午前の部で同僚委員から御質問がありまして、大臣からお答えがありました。あえて重複を避けます。  ただ、昨年と比べてわずか一年しか経過していないのに大変な日本に対する評価が大きく変わっておるということで、大臣はうれしく思ったと、こういうふうなお話がありました。    〔委員長退席、理事下条進一郎君着席〕 これも大臣を初め通産当局が昨年から大変御努力された成果だと、このように考えまして、心から敬意を表します。  そこで、このOECDの理事会の中で、先ほど大臣お話がありましたが、アジアNICSの擁護論といいますか、お述べになったと、こういうふうなことが新聞報道にもありました。これはこれとして大変日本として正しい姿勢である、こういうふうに私も思っておりますが、そこで当然そうであるとすると、アジアNICSから今後輸入量を拡大するある種の義務といいますか責任がやはり当然生じてきておると、こう思うんです。  ところが、NICSからの輸入等についてはいろんなまた障壁もあるようでありますし、また既にNICSからの輸入品の激増によって国内の、特に軽工業、中小企業業界が大変困っておるというふうな問題もあります。したがって、そう簡単に、じゃNICSからどんどん品物を買えばよろしいということにはまいらぬと思いますが、そういう難しい問題等ありますけれども、今後NICSに対する輸入政策をどのようにお考えになっておるのか、ひとつこれはもう大臣でなくて結構です、局長で結構ですが、お伺いしたいと、こう思います。
  170. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今御指摘のように、NICSからの輸入量は最近激増をいたしておりまして、六十二年度の実績で申し上げますと、全体の輸入の伸びが五割弱、四九・五%伸びまして、それで二百五億ドルになったわけでございます。それから製品輸入につきましては六割弱、五九・四%伸びまして百三十九億ドルになりました。プラザ合意の前のときは、我が国輸入に占めるアジアNICSのシェアが七・八%であったわけでございますが、それが六十二年度のそのシェアは一二・七%と大幅に増加しているわけでございます。それで、OECDでの大臣の御発言もございますし、今後も引き続いてこういったアジアNICSからの製品輸入を中心としてふやしてまいりたいと思っております。  ただ、今御指摘もございましたように、一部の繊維製品などの品目によりまして、あるいは時期のとり方によりましては何倍も前年同期に比べて伸びてしまうというようなものもございまして、    〔理事下条進一郎君退席、委員長着席〕 そうした例外的な品目につきましては、やはり輸出国側の自省も要求したいと思っておりますが、それらを除きました通常の製品輸入につきましては、引き続き力強い勢いで伸びていただきたいというふうに期待をいたしているところでございまして、そういったものに若干の痛みを伴いながらも耐えていくこと、そして拡大をしていくことが我が国輸入政策における一種の責務であろうというふうにも考えているわけでございます。
  171. 井上計

    ○井上計君 時間がありませんので、この問題については今伺った程度にしておきます。ただ、NICS製品の輸入については、消費者も非常に大きな関心を持っています。同時にまた、生産者も関心というか脅威と同時にまたいろんな意味での関心を持っていますから、今後NICS製品の輸入をふやすと同時にいろんな面でのまた行政指導も必要であろう、こう思いますから要望しておきます。  次に、クレジットカードの問題で二、三お伺いをしたいんですが、近年クレジットカードの発行が激増しておると思います。文字どおり国民生活にも浸透したであろう、こう思うんですが、聞くところによりますと、現在発行枚数が約一億枚ということですから国民一人、赤ん坊まで大体一枚持っておる、こういう計算になろうと思います。ただ、アメリカは八億枚ということですから、アメリカに比べるとまだまだアメリカのようなキャッシュレス社会にはほど遠いとはいいますけれども、しかし、ここまでクレジットカードが激増してくると国民の消費生活に大変な影響をもたらしておるわけであります。  私がちょっと見た資料等によりますと、六十年度でありますけれども、家計の最終消費支出に占めるカードによる購入の割合が二・八%、既に現 在でも三%ぐらいになっておるであろうということですから相当なカード社会になりつつあるな、こんな感じがするわけでありますけれども、そこで、通産省としては、現在の消費者信用産業といいますか、クレジット業界というものについてどのように現状を認識しておられるのかお伺いいたします。
  172. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 御指摘のとおり大変急速な伸びを示しております。業界の団体の調査の数字でございますけれども、年々の新しい消費者信用の供与額が幾らぐらいかといいますと、五十二年には十三兆三千億円でございましたが、六十一年には三十八兆四千億円、年平均一三%というテンポで伸びております。  広義に、消費者信用を二つに分けまして、一つは物の売買に伴ういわゆる販売信用と、それからいわゆるローン、銀行から借ります消費者金融、この二つに大別いたしますと、前者の販売信用の方はこの同じ期間に年率一一%の伸びでございます。それから、金融機関からお金を借りる消費者金融の方は一五%という伸びでございます。したがいまして、二つに分けますと、消費者金融の方が少しずつシェアが広がっているわけでございます。  それから、販売信用をさらに二つに分けまして、カードを使うものとカードを使わないものに分けますと、カードを使わない個品形態といいますか、購入の都度ローンの契約を結ぶものでございますが、この個品形態でカードを使わないものは最近の伸び率が年間一〇%の伸びでございますが、カードを使うものの方は年間平均一四%でございます。  したがいまして、今高い伸びを示しておりますのは、金融機関から借りる消費者ローンとそれからカードを使う販売信用、こういうことでございまして、販売信用全体の中でカードによるものが今三二%くらいでございます。恐らくカードによるローンというのはますますふえていくものと思われます。  カードの枚数は、先生お示しのとおり六十二年三月末で一億一千万枚でございます。
  173. 井上計

    ○井上計君 承ると、これから一体どうなるであろうかというふうな、ある意味では一種の危惧を抱くような感じです。  今審議官の御説明にはなかったですが、私のまた見た資料では、昨今の小売業の売り上げの中でカードの占める割合が平均して、いろいろ取りまぜてですが、九%あるということですね。ということは、現在の消費の伸びをかなりカードが受け持っておる、カードによってかなり消費の伸びが高まっておるなという感じがするんです。一面、言えば架空の、ちょっと表現が難しいんですが、水増しの消費とも言えるわけですね、カードによる売り上げですから。したがって、クレジットカードの発行の主体が信販会社あり、百貨店等々の個々の会社があり、あるいは中小のクレジット団体があり、さらには最近は、消費者ローンですが、金融機関のなにがある。もう多種多様になってきて非常に複雑になっておる。  それだけに、カード会社自体の過当競争が大変激しくなって、中には消費者のニーズの本質的な期待、要望にこたえない、言えば過剰なサービスだとか過剰な不必要な特典等々をつけるということでますますカード業界自体が大変な過当競争になって、これでは本当の消費者のためになるのであろうか、あるいはまた、カードがこのまま伸びていった場合に、流通の健全な発展に寄与するのかどうかという危惧を一面私は持っておるんですが、それらについてはどんなふうにお考えでしょうか。
  174. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 確かに非常に伸びが高いものですから、私どももそういった陰の部分、面についても注意を払っていかなければならないと思っております。  ただ、その前に、全体の規模といたしますと、フローといいますか、年々の消費支出に対する新しい消費者信用の割合という面で見ますと日本もかなりのところへ来ておりますし、小売の売上高に対比しても、これもフローの数字でございますが、相当なところにあるわけですが、残高ベースで見ますとアメリカなどに比べますとまだ相当低い水準でこざいます。  ちょっとこれは手元の資料の換算レートがはっきりしませんので、今換算レートによってかなりこういう数字比較は変わるので注意を要しますが、それにしましても六十年末でアメリカは百二十八兆円の残高、日本は二十八兆円の残高で、残高ベースで見るとまだべらぼうに行き過ぎているということも言えないのではないかと思います。  しかし、一面、そうは言いましても急成長しておりますのでいろいろ問題があり得る。一つは、先生もおっしゃいましたカード会社の間の過当競争で不健全な事業活動が行われるおそれがないだろうかという危惧。もう一つは、多重債務者と私ども呼んでおりますけれども、イージーに買い物ができるために収入に対して多過ぎるローンをしょい込んでしまって家計が破綻をする、そういった多重債務者の発生をどうやって未然に防止をし、また不幸にしてそうなってしまった方をどういうふうに面倒を見るかという問題がございます。それからさらに、カードに伴うプライバシーの問題もいろいろ指摘されているところでございまして、そういったカードの急速な普及あるいは発展に伴いますメリットを十分生かしつつ、問題点の方についてもしかるべき手を打っていかなきゃならないと思っております。現にプライバシーの問題あるいは多重債務者問題についてもいろいろ従来から手を打ってきたところでございます。
  175. 井上計

    ○井上計君 今いろいろと問題点、またメリット、デメリットをお述べになりましたが、全くそうであろう、こう思うんですね。  アメリカに比べるとまだ数字的には開きはあります。しかし、アメリカのように日本はいわば完全なキャッシュレス社会にはならぬであろう、日本とアメリカとの消費構造の違いあるいは治安、特に一番大きなのは治安問題だと思いますが、そうはならぬと思いますけれども、しかしこのままいくとかなりもっといろんな意味で膨大なカード発行ということになってくるであろう、こう思うんです。  そうすると、今審議官お話がありましたけれども、多重債務者が既に大分発生しておるようですね。今後、ますます発生をしてくる。言えばサラ金地獄が今度はカード地獄というふうなこともあり得るわけですが、何らかのここに、立法ということになるとちょっと問題が大きいかもしれません。ただ規制というふうな意味じゃなくて、的確な行政指導を行うというふうな意味で何か考えていくべき時期に来ておるんではなかろうかという感じがするんですが、現在、特にカードについては通産省としても特別な指導というか、規制というか、あるいはカード会社設立、発行についてのそのような特別な指導というのは特にありませんわね。今後そういうことについてあわせてどのようにお考えであるかひとつ承りたいと思います。
  176. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) カード一般については規制がございませんけれども、そのカードが総合割賦購入あっせんで、かつ分割払いをする場合につきましては御承知のように通産省に登録をしなければなりませんから、登録段階である程度のチェックなり指導なりは可能でございますし、中小商業問題として一定の制限をしていることも御承知のとおりでございます。  さらにそれ以外に、具体的にどういうことをやっておるかということでございますけれども、多重債務者につきましては、いわばこういったカード社会、クレジット社会における犠牲というとちょっと適切ではないかもしれませんけれども、お気の毒な状態に入ってしまった方々でございますので、そこの方の対策をきちんとしておきませんと、そもそも健全な発展といいましても、あれは一体どうするんだということになりますので、いろいろ研究いたしまして、六十二年三月、昨年の三月でございますけれども関係業界の打って一丸となった体制によりまして、日本クレジットカウンセリング協会という財団を発足していただき ました。まだ一年間の実績でございますけれども、既に専門の弁護士の方々等の御協力を得て具体的なカウンセリングをやっております。今後ともこういった面について、陰の部分についてしっかりした手を打ちつつ状況を見守っていくということだろうと思います。  いま一つ例を挙げさせていただきますと、これは五十九年の割賦販売法の改正でございますが、クレジット会社と小売業者と消費者のその三角の関係におけるトラブルの防止、あるいは発生したトラブルについての消費者保護を図るために割賦販売法を改正いたしまして、いわゆる抗弁権の接続というような制度も導入したということで、ここ数年間御指摘のような意識を持ちまして手を打っておりますが、今後とも引き続きそういう意味では研究をし、ウオッチをしてまいりたいと思っております。
  177. 井上計

    ○井上計君 時間がありませんから、また別の機会にもう少し勉強をし、またいろんな面で提言をしたいと思います。  ただ、最近、中小の小売団体もやはりクレジットカードを発行しようと、こういうふうな検討を進めているところが多くなったと聞いております。またますますふえるであろうと、こう思いますから、十分ひとつ今後またいろんな意味での行政指導を的確にお願いをいたしたい、要望しておきます。  終わります。
  178. 木本平八郎

    木本平八郎君 私、けさほど技術のブーメラン現象と、それから産業の空洞化問題についてイントロだけをちょっとやったわけですが、それを受けてあとやりたいと思うんですけれども、もう相当時間も遅くなって皆さんお疲れのようですから簡単に終わりたいと思うんです。  それで、簡単に終わるためにちょっと私が申し上げたいことを先にざっと言いますんで、あと飯塚院長からは技術者対策はどうするかという問題についてお答えいただきたいし、それから杉山局長からは今後の国際分業という面でどういうふうにお考えになっているかという御所見。それから、まだおられないけれども大臣おられたら最後に御所見承って終わるというふうな段取りでやりたいんです。  それで、まず私の申し上げたいことを先に言ってしまいますと、先日、十日ほど前に電機メーカーの鎌倉製作所を見学に行ったわけなんです。私ももう十数年ぶりに行ったものですから非常にびっくりしたんですけれども、そこで一番驚いたのは、宇宙衛星に積むコンピューターの基板を組み立てているんですね。これは多品種少量生産で、一品一品の手づくりです。  どういうふうにやっているかといいますと、女の人が台におりまして、そこに上から電気でぴっと照らすんですね。そうすると、基板のところにぱっと電気がつくわけです。そうすると、隣から部品を取って、そしてそこへ埋め込む。この部品は、ぴっとつくと必要な部品がすっと浮いてくるんですね。それで、埋め終わるとぴっと明かりが映って、またこっちがすっと変わって、それをこうやっているわけですね。しかも、この部品は、その横に三万ぐらい入っているドラムがあって、それがコンピューターの指示によってぴょこぴょこ上がってくる。そのドラムに入っている部品は、そこにずっと自動倉庫がありまして、トレイがずっと入っていて、それでやってきているわけですね。それを、そこの作業場では八人ぐらいでやっているだけなんです。  それで、こういう作業はまあ大変なんだけれども、これのコスト日本は絶対にどこにも負けないというわけですね。大量生産で、ベルトコンベヤーに乗っかっているというのは、これは確かに未熟練労働者でいいし、労働賃金が安いんでいけるだろうと私は思っていたんですが、こういう多品種少量生産というのも、日本のようにコストが、人件費が高いともう到底競争できないと思ったんですね。ところが、いやそれがもう日本の方が得意なんだと。これはいろいろ理由がありまして、その作業をしている人たちは皆高校出だというふうなことで、非常に特徴はあるんですけれどもね。  それで、それを組み立てまして、その後がまた大変なんです。衛星用ですから、もう極低温から瞬間的に太陽側になると超高温になりますね。それから、無重力の問題とか、そのテストが大変なわけですね。その試験機がずっと並んでいてやっているわけです。  そこで、向こうの方でも言っていましたけれども、私が感じたのは、一人の作業員に対して後ろでバックアップしている技術者が十数倍おるわけですね。昔の工業生産というのは、一人のエンジニアがおって、その下に十人、あるいは二十人、ひどいときには百人ぐらいの作業員がいてやっていたわけですね。もう逆転しちゃっているわけですよ。  そこで問題は、将来、今のちょうど高一の人たちが大学を卒業してくる時分から人口が減るわけですね。そうすると、どんどん技術者も減ってくる。今のままで二十一世紀になると、毎年数万人のオーダーで技術者が足らなくなっちゃうというわけですね。それで、けさほどの産業の空洞化の問題なんですけれども、海外に出ていくのは、いわゆる作業員のやる仕事なんですね。逆に日本は、だから極端なことを言えば、技術者ばっかり残っちゃって作業員は残らなくなるという可能性があるわけですね。  そういうことでますます産業が空洞化して、海外へ出ていって、技術者は逆にどんどん要るようになっちゃうというわけですね。それで、例えば試験機なんかも、本当にすごいのが並んでいるわけですね。宇宙衛星なんかつくっているのは、もうその作業員はほんのわずかでバックアップしているのが大きいと。  さて、問題なんですけれども、こういう技術者が足らなくなってくると、そうしたらどういうふうにしてこれをサプライするかというと、二つしかないと思うんですね。一つは、外国からどんどん技術者を導入してくるということですね。それからもう一つは、文科系の人を今度は再教育して技術者に変えるということなんです。  これは、私は高等学校、理科を卒業したんですけれども、理科と文科の差というのは、今で言えば専門学部のあと二年の差でしょう。こんなたった二年で理科と文科と一生分かれちゃうというのはおかしいと思うんですね。逆に言えば、文科を卒業して、会社に入って二、三年して、ああしまった、おれは理科へ行っておきゃよかったと思う人もいっぱいおるわけですから、そういう人を再教育して使えるんじゃないか。例えば、大学には工学部と理学部がありますけれども、これから必要なのは情報科学部だと思うんです。したがって、情報科学部のエンジニアというのをそういうふうにして養成できないかと。  したがって、結論から申し上げますと、通産省で貿易大学というのがありましたね、今どうなっているか知りませんけれども、あれと同じように、企業から二、三年貿易大学みたいなこういう情報科学大学に留学させて、そこで大量に養成していくというふうなことで、産学あるいは産官学が共同してやっていくということ。それから、外国の技術者を入れるといったって日本語の問題その他ありますから、むしろ積極的に各国に、何というんですか、工業大学か何かをやって、そこでついでに日本語も教えて、そして日本にどんどん連れてこれるような手を打っていかなきゃいかぬじゃないかというのが私の趣旨なわけです。  それで、先ほどのように、これは技術者の確保という点から飯塚院長にお願いして、それから国際水平分業ということで杉山局長に、それで最後に総合的に大臣の所感を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  179. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 先生指摘のように、我が国企業産業構造転換を迫られております。また、新規分野への参入というふうなことで新しい技術についての研究開発が非常に重要であり、また、その分野の技術者が非常に不足するであろうというふうな御指摘でございますが、技術 者の新規採用あるいは既存の技術者等の再教育のニーズは確かに高まっておると承知しております。  私どもの工業技術院の試験研究所におきましても、技術指導という形で産業技術分野の技術者養成にお役に立っているのではないかと思っておりますが、現在持っております企業のニーズの内容、確かに高まっているわけでございますが、その内容等について十分検討いたしまして、技術者の育成について工業技術院といたしましても今後十分に検討してまいりたいというふうに考えております。  なお、御必要があれば、情報分野の技術者については機械情報産業局の方からお答えされるかと思います。
  180. 岡松壯三郎

    政府委員岡松壯三郎君) ソフトウエア関係の技術者不足問題が、最近特に著しくなってきておるわけでございますが、この点につきましては、このまま放置しますと産業経済社会の発展のボトルネックになるおそれがあるということで、通産省といたしましても、情報関連の技術者の養成につきましてはいろいろ政策を講じておるところでございます。  具体的には、情報大学校構想という名称のもとで効率的な高度な技術者養成の方法を研究しておるわけでございますが、これを全国の情報関係の専修学校等の協力を得まして、今年度から始めておるというのが一つでございます。  もう一つは、いわば教育のための教材づくりと申しますか、コンピューターの助けをかりて、効率的に技術を身につけることができるように工夫されたプログラムをつくるということを情報処理振興事業協会の方で進めておりまして、これを先ほど申し上げました専修学校の方に教材として提供するという形をとっております。  それからもう一つは、情報処理技術者試験につきまして、拡大するニーズに対応いたしまして試験地域をふやしたり、それから試験科目をふやすといったような形で対応をとっておるところでございます。  このような人材面の対策と同時に、やはり技術者一人当たりの生産性を上げるということも大事であるというふうに考えておりまして、ソフトウエアの生産システム、いわゆるシグマプロジェクトと申しておりますが、このシグマシステムの構築の問題、あるいは一つのソフトウエアがさらに多くのユーザーに使われるような汎用プログラムの開拓というようなことも積極的に進めておりまして、技術者不足対策を側面からサポートするという形をとっておるわけでございます。  以上のような総合的な対策を実施していくことによって情報関連の技術者の不足対策を進めてまいりたい、こんなふうに考えておる次第でございます。
  181. 田村元

    国務大臣田村元君) 確かに、我が国の研究者総数は過去順調に増加をいたしております。昭和六十二年におきまして約四十二万人、アメリカに次いで世界第二位の規模に達しております。また、対従業者数比率で見ましても、主要先進国中トップ水準にございます。このうち民間企業の研究者が六割以上を占めておりますが、その割合は増加する傾向にございます。また、研究開発に関する試験あるいは評価などを行う企業群も生まれてきておるというふうに承っております。  今後もこういう傾向は続くと期待されますが、我が国の将来に向けた基礎研究の重要性が増大していく中で、この分野の人材確保の必要性が高まっていくことになお一層の注意を払う必要がございます。  通産省といたしましても、特に基礎研究ということに、いわゆる基礎技術の開発ということに最重点を置くようになっておりますだけに、一層研究者の育成について鋭意努力をしてまいりたいと考えております。
  182. 杉山弘

    政府委員杉山弘君) 先生質問の中に、外国人技術者の雇用を促進するような方向で考えるということがあったように思いますので、それについて私からお答え申し上げます。  既に、一般的に外国人労働者の受け入れ問題が各方面で議論になっておるところでございますが、その中で特に技術、技能を持っている人については現在でも特に制度的な面での制約がないわけでございますが、将来、今大臣が申し上げましたような需給状況になってまいりますと、むしろ外国人の技術、技能者というものに対する需要が今以上に高まってくる。そうした場合に、そういう方々の国内での就労を容易にするために何か手を打つべきではないかというのが先生の御質問の御趣旨であろうかと思うわけでございます。  こういった点につきましては、本来各企業ベースにおいて行われるということも必要でございますが、国のベースにおきましても最近は特に日本におきます外国人留学生の問題というのが大きなテーマになってきておりまして、留学生に対していろんな面での支援をすべきではないか、こういう御意見が出ております。こういう方々が将来技術、技能を身につけて日本企業に就労をしていただくということになりますと、これは極めて好都合でございますので、むしろ政府といたしましてはそういう面での外国人の技術者、技能者の国内での就労というものに大いに期待をしているところでございますし、また留学生段階におきましては所要の御援助も申し上げたいということで今いろいろと対応を重ねているところでございます。
  183. 木本平八郎

    木本平八郎君 終わります。
  184. 大木浩

    委員長大木浩君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  185. 大木浩

    委員長大木浩君) これより請願の審査を行います。  第二〇五号伊方原発号炉出力調整実験及び出力調整の中止に関する請願外二十四件を議題といたします。  これらの請願につきましては、理事会において協議の結果、いずれも保留することにいたしました。  以上、理事会の申し合わせのとおり決定することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ─────────────
  187. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  188. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異譲ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  190. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中の委員派遣につきましては、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十九分散会