運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-05-10 第112回国会 参議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十日(火曜日)    午後一時二十分開会     ─────────────    委員異動  五月六日     辞任         補欠選任      下稲葉耕吉君     杉元 恒雄君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 小島 静馬君                 平井 卓志君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 梶原 敬義君                 伏見 康治君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君    政府委員        環境庁大気保全        局長       長谷川慧重君        通商産業大臣官        房審議官     野口 昌吾君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省基礎        産業局長     鈴木 直道君        工業技術院長   飯塚 幸三君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        環境庁長官官房        国際課長     黒川 雄爾君        気象庁観測部管        理課長      山中 陸男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○連合審査会に関する件 ○参考人出席要求に関する件     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月六日、下稲葉耕吉君が委員を辞任され、その補欠として杉元恒雄君が選任されました。     ─────────────
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) 特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案を議題といたします。  本案に対する趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 福間知之

    福間知之君 この法案質疑に入る前に、大臣にお聞きをしたいと思うんですが、御案内のとおり、奥野大臣が昨日も衆議院決算委員会で再び三たび、かの靖国問題ほかかつての戦争侵略戦争じゃないなどと発言をして、先ほどのテレビでは野党の側はこぞって強い批判をいたしておりまして、場合によっては罷免を要求するやもしれないという雲行きになっております。このことはかねがね繰り返されてきたことだけに、しかも、外務大臣は先般中国訪問をして政府見解を伝えて、奥野発言真意じゃないというふうな趣旨の話をしてきているわけですけれども通産大臣はこの連休中に別の用件で中国へ行かれたようでございますから、直接かかわりはないにいたしましても、この発言についてはどういうふうにお考えになっているか、まずお聞きをしたいと思います。
  5. 田村元

    国務大臣田村元君) 中国へ行きまして、王震副首席、姚依林副官相鄭拓彬対外経済協力部長、それから李鉄映国務委員等々にお目にかかりました。特に、姚依林副首相、鄭拓彬部長とはこれはもう本来の通商産業大臣としてお目にかかっていろいろとお話し合いをしたわけでありますが、率直に言いまして中国側は私に対しては、少なくともまあいろいろとあるけれども、総じて日中関係はいい方向に向かっておるのだから、これを大切にしましょうということで、私もいろいろと問題はあろうけれども、我々がしっかりと手を握り合って両国の発展ひいてはアジア、世界のために貢献しましょうということで、非常に友好的な雰囲気の中で別れてきたのであります。  奥野さんの言ったことをどうというお尋ねでございますが、奥野さんは、御自身で自分の信ずるところに従って物をおっしゃったと思います。私とは若干考え方の違う点がないでもありませんが、同じ閣僚でありますし、私から特に発言をすることは御遠慮申し上げたいと思います。私が総理とか副総理とか官房長官という立場でありますとこれは触れなきゃならぬかもしれませんけれども、私は奥野さんを監督する立場にもありませんし、同僚にすぎませんから特に触れようと思いませんけれども、まあ私は大正十三年生まれでございますが、やはり大正二年とは大分考え方が違うのかなと思って聞いておりました。しかし、いずれにしてもよかれあしかれこの問題は何らかの答えを出さないといかぬのかなというふうは思います。
  6. 福間知之

    福間知之君 この問題で質問時間を全部つぶすわけにはまいりませんから、二の矢三の矢を放つというわけにいきませんけれども、いずれにしても、再度にわたるあのような発言があえてなぜこの時期に繰り返されるのか、これは御本人に真意を聞かないとわからぬのでしょうけれども、しかし事はやはり国務大臣として発言をされているので、やっぱり内閣連帯責任ということにも発展しかねません。  我が国が公式に中国と交わした文書では、やはり御迷惑をかけたことに対して日本としてはおわびをするという気持ちを表明しているわけですから、その線に沿った発言でなければならぬのですけれども、かなりこれは逸脱をしているというふうに思います。大臣も個人的にはなかなか話しにくいかもしれませんが、やはり同じ閣僚として十分に監視をしてもらわなければいかぬ立場じゃないかと思っておりますので、その点だけ付言をしておきたいと思います。  さて、このオゾン法案に関して御質問申し上げますけれども、地球的な環境問題としてこのフロン問題が取り上げられてきているわけでございますので、これはこの法案にありますところの排出抑制というふうなことはもちろんでございますが、同時に、国民に対する啓蒙といいますか、啓発ということも非常に大事じゃないかと、こういうふうに思っております。本来、事柄の性質からして通産省からこの法案が出されているということについて少し首をかしげたくなるわけでございますが、一体どのような経過通産省がこの法案提出に当たられたのかということをお聞きをし たいわけであります。  さらに、今回のこの法律上における規制内容が主にフロン製造許可制の導入というところにあるように思いますが、最も大事なことは、やっぱり大気中のフロンの量というものをいかに減少させていくかということが大事なんでありまして、そうするならば、この法案というものは本来大気についての監視役である環境庁から出されてしかるべきだと、そういうふうに先ほど申し上げたことに通ずるわけでありますけれども、まずこの点、大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  7. 田村元

    国務大臣田村元君) 経緯につきまして、詳しいことは局長から答弁をいたさせますが、この所管問題につきましては、この法案の主な内容特定フロン及び特定ハロン製造規制であることということから所管大臣である通商産業大臣がこの法案所管をして、そして国会にお出しするのがよかろうということでお出しを申し上げました。もともとが特定フロン及び特定ハロン、これの製造規制ということは当然通産省がする仕事でございますから、若干ちょっと環境庁にはなじまないのではないかというふうに考えます。
  8. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 今国会批准をお願いいたしました条約議定書がございます。条約オゾン層保護のためのウィーン条約議定書オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書。この条約議定書批准をお願いして既に御承認いただいたように聞いておりますが、これを的確かつ円滑に実施するというのが私ども政府役割だと存じます。  この議定書におきましては、フロンそのものの特殊な性格、すなわち使用の形態が非常に広いわけでございます。液体で使うものあるいは気体で使うものと非常にいろいろございますし、使われる場所も御存じのとおり発泡剤でございますとかあるいは冷煤でございますとかあるいは洗浄剤だとか、使われ方が千差万別でございます。このように非常に用途が広範囲、多様なものの消費特性考えながらフロン規制、特に今後の削減を進めるにはどうしたら一番いいのかということをいろいろ議論した結果、製造段階規制をするというのが一番公平にして効果的なやり方であろう、こういうような考え方で、今回の議定書におきましては各国とも製造規制対応する、こういう考え方が確立したわけでございます。私どももそのような国際的な協調体制の一環に入りまして、オゾン層保護のためのフロン等規制をやろうということで今国会にこの法案を提案した次第でございます。  なお、そういうことで規制製造規制中心というようなことでございますので私どもから提案はさせていただきましたけれども法案作成過程におきましては当然のことながら環境庁を初め政府内各局各省とも十分話し合いをさせていただいておりますし、同時に今後の対策推進過程におきましては、この法律の中にもございますが、主要な事項につきましては環境庁共同作業をすることになっておりますし、またその他の役所、官庁ともそれぞれの役割に応じまして分担をしまして、総合的にオゾン層保護のためのフロン等規制を推進してまいろう、かように考えておるわけでございます。
  9. 福間知之

    福間知之君 アメリカあたりでは環境保護庁が主体になっているようですし、あるいは議会でも上院の環境公共事業委員会あるいはまた環境保護委員会等議論の場になっておるようであります。さらにNASA、航空宇宙局とか、国連関係では環境計画とかそういうところが前面に出ているようであります。  製造規制するという意味では、我が国では通産所管という意味でこれはよくわかるんですけれども事柄はそういうふうに環境汚染ということにあるということを十分に認識してかからなければなりませんから、今後の対応については、やはり環境庁、場合によっては外国との関係では外務省の所管でないとは言い切れないんです。国内問題であると同時にすぐれて国際的な問題だという認識で対処を願いたい、そういうふうに要望しておきたいと思います。  ところで、白色人種紫外線に弱いんでしょうか、レーガン大統領皮膚がんにかかったなどというふうなことも背景としてはあるようですけれども欧米で特にフロン規制の問題が声高に叫ばれ出したように思うんです。しからば、この紫外線皮膚がんの増加の因果関係について、これは通産省に聞いてもわからないかもしれませんけれども、あるいはまた生態系への影響というようなことについて科学的にはどこまで解明されておるのか、これは環境庁もおいでいただいていますが、どちらかお答えを願いたいと思います。
  10. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 私ども法案を提案する際にいろいろ議論をしておりますが、特に国連環境計画UNEPにおきましてこのオゾン層保護のための議論を従来からやっております。そこで提示されましたいろいろないわゆる科学的知見がございますが、特に今おっしゃいました皮層がんオゾン層との関係につきまして、一番重要な資料とされておりますのが全米科学アカデミー研究成果でございます。  この全米科学アカデミー報告によりますと、オゾン層は生体に有害な紫外線を吸収してしまう、特に波長の短いいわゆるUV—Bという紫外線のようでございますが、これを吸収する。その結果、オゾン層濃度によりまして紫外線吸収量が決まりますので、仮にオゾン層が破壊されますと地球上に到達する紫外線の量が増大をすると、こういう予測でございます。  そのアカデミー報告によりますと、紫外線皮膚がんとの関係につきましては動物実験をしているようでございまして、紫外線を照射いたしますと、やはり実験的に見ますと皮膚がんが発生するということが認められるようでございます。  世界各地皮膚がん発生状況を統計的に見ますと、第一に、外部に露出しやすい部分にやはり皮膚がんが発生しやすい、それから第二に、色素が紫外線を吸収する皮膚を持つ人種での皮膚がんは少ない、逆のお話で、今おっしゃいました白色人種系方々は逆に多いということになるかと思うのであります。それから、こういう方々が赤道に近い低緯度の地方に参りますと皮膚がんが発生しやすい、そのような関係が見出されているようでございまして、その結論といたしまして言われておりますのは、地表に達する紫外線の量が一%増加いたしますと皮膚がん発生率平均一%増加するというようなことが言われておりまして、オゾン層濃度が一%減少すると、その結果皮膚がん発生率平均二%増加すると、こういう予測があるようでございます。  他方、おっしゃいました生態系への影響につきましては、農作物、森林その他の陸上生態並びに水中の生態系に悪影響を及ぼす、そのおそれがあると、このように言われておりまして、さらにUNEP中心研究が進められると、こういうように聞いております。
  11. 福間知之

    福間知之君 少なくとも国際的に今お話しされたようなことが判明しているということを前提にしてこのフロン規制が共通の課題になってきているわけですけれども環境庁にそこでお伺いをしますけれども、このオゾン層保護条約に加入するための我が国国会の承認は連休前の四月二十七日に行われたわけでございますが、このオゾン層保護条約が締結されたときこの条約我が国が署名したのかどうか、まずお伺いしたいと思うんです。
  12. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) オゾン層保護条約が決められました時点におきましては、日本におきましてはこれには署名いたしておりません。
  13. 福間知之

    福間知之君 そういうことのようですね。非常にフロン規制問題については消極的だったということが言われているわけであります。逆に欧米の諸国は積極的、主導的にこの役割を果たしてきた。我が国はむしろおつき合い程度の消極的な姿勢で終始をしてきたように思うわけです。  そこで、この四月の二十二日に環境庁長官が大 阪のダイキン工業淀川製作所を訪問されてまして、その後、ロイヤルホテルで記者会見をしていますが、ここではかなりしっかりしたことを述べておられるわけでありまして、例えば、国際的に科学的知見の充実に積極的に貢献する。そのために専門家会合を発足させなきゃならない。あるいはまた、国立公害研究所で総力を結集して特別研究を開始する。四月の二十七日にはレーザーレーダーを稼働させ、六月からはオゾン層観測に着手するなどなど、かなり積極的な姿勢を示しておるんですけれども環境庁としては具体的なこのスケジュールを持って対応されようとしているのかどうかお伺いをします。
  14. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  先ほど先生お尋ねで、オゾン層保護条約が採択されたときに我が国は署名したのかということでございますので、署名をしていなかったと。その署名していなかった理由といいますものが、当時の条約につきましては全般的なオゾン層保護のために各国がいろんことをやらなきゃならないという、何といいますか、総論的なことを決めた条約でございまして、具体的に何をやるかということについては、その後行われます作業委員会等におきまして具体的な保護のための施策をきちっと決めるということが決められておったわけでございまして、そういう面で、何をやるかということが決められていなかった時点でございますので、日本としては署名していなかった。  その後、国際的に、先生お話にございましたUNEPにおきます専門委員会等の場におきまして具体的なものがいろいろ決められまして、御存じのとおりの議定書が作成されで、それには日本は署名いたしたわけでございます。そのような経過のもとにまいったわけでございまして、我が国におきましてもそういう面では、先生御存じのとおり、この問題が提起されましたのは一九七四年でございますけれども、それ以降日本におきましても各省におきましていろいろ調査研究を行っているわけでございます。  具体的には、飛行機を飛ばして成層圏の空気の量をとって、フロンの量がどうなっているか、あるいはオゾン層の量はどうなっているかというような調査研究を始めたり、あるいはいろんな知見等の文献の収集整理等を行いまして、いろいろこの問題に関する知見整理収集を行いまして検討を行ってまいっているわけでございます。そういう過程におきまして、御存じのとおり、昭和五十五年におきましては通産省行政指導によりまして、一部のフロン製造設備製造能力凍結というようなことも行われているわけでございます。  このようなことで、モントリオール議定書が策定される前の時点におきまして、いわゆる六十二年六月でございますが、国連環境計画管理理事会におきまして、日本政府を代表いたしまして稲村前環境庁長官から、国際的に協調したフロン凍結なり削減対策が必要であるという旨の方針を明らかにして、議定書の決定の前に日本としての態度を表明したという経緯もあるわけでございまして、そういう面では日本はまあ非常に地道な動きではございますけれども、いろいろ準備をし、そのための対策施策も行ってまいったということでございます。  ただいま先生お話しございましたように、環境庁といたしましては、そういう面で国公研の中にオゾンレーザーレーダーを設置いたしまして、オゾンレーザーレーダーによります高度におけるオゾン層の変化の状況について観測をし、今後監視をしてまいりたい。さらに、国公研におきましては、新しい面における調査研究をやる、あるいは環境庁が持っております環境にかかわる一括計上研究費を使いまして、各省の持っております研究機関が行いますこのオゾン層保護の問題に関する研究についてもこの環境庁の予算を使っていろいろ研究を進めてまいりたい。それから、私どもといたしましては、対流圏中におきますフロン等徴量ガスにつきましての測定、監視も行ってまいりたいというようなことを考えておるところでございます。  先般の大臣ダイキン工業の視察の際におきましては、大臣の方からそういう面での今後の科学的知見の収集なり、あるいはオゾン層保護のためのフロン等代替品開発状況についてのシンポジウムを開くというようなことについてのいろいろ今後のスケジュール的なものにつきましての御発言をいただいたわけでございまして、そういう面で環境庁といたしましては通産省及び各省とも十分連携をとりながら、今後ともオゾン層保護のためのいろんな調査研究対策について検討を深めてまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。
  15. 福間知之

    福間知之君 時間が限られていますんで簡単にお答えをいただきたいと思うんですが、去年の二月に、成層圏科学などの第一線の専門家に参加をいただきまして成層圏オゾン層保護に関する検討会が設置されました。昨年五月の第一回の中間報告に次いで、この二月に第二回の中間報告が取りまとめられまして、その上に立って今回の法案作業に入ったと、こういうふうに伝えられております。また、あわせて三月ごろには同検討会排出抑制破壊技術等分科会が設けられた。また今回は、さらに反応・影響モニタリング分科会、こういうものが設けられ、この会合は五月中旬に予定されているとのことであります。  一連のこのような対応策の上に立って、その過程で今回のオゾン層保護法案がまとめられたと承知をしておりますが、今回の法案について環境庁としてはこれでいいと、国際的な環境からいってもこれでいいと、こういうふうなお考えですか、簡単に一言で言ってください。
  16. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 環境庁諮問機関でございます中央公害対策審議会の御意見も伺いまして、その内容に沿って法律通産省ともども作成いたしたものでございますから、この法律で私ども環境を守れるというぐあいに思っております。
  17. 福間知之

    福間知之君 環境庁、次にお聞きをしますのはオゾンホールについてであります。  オゾンホールフロンガス関係につきまして、南極におけるこのオゾンホールというものの存在が確認されているわけですけれども、どの程度までこれは科学的に解明がされているのか、北極では観測されていないのかどうなのか、今までの我が国のこのオゾンホールに対する考え方はどうなのか、以上の点、お伺いします。
  18. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 南極上空におきますオゾンホールの問題でございますが、一九八〇年代に入りましてこのオゾンホールの穴のあき方の増大の傾向が著しいということが言われておるわけでございます。日本におきましても、気象庁南極昭和基地観測結果によりますと、だんだんその減少率が高くなっておるというデータが出てまいっておるわけでございます。  これとフロンとの関係でございますが、国連環境計画全米科学財団等が共同いたしまして、一九八七年春の時期に航空機を南極上空オゾンホール内を飛行させまして種々の観測を実施いたしたところでございます。その結果、オゾンホール内におきましては、他の地域と比較いたしましてCLOの濃度が非常に高いということが観測されておるわけでございまして、オゾンホール発生機構フロンガスが関与しているという説がますます有力になっておるというぐあいに承っておるところでございます。  それから、北極での話でございますが、これもアメリカイリノイ大学データでございますが、北半球の春、これは三月に当たるわけでございますが、この北半球の春にも北極域で、南極域での減少よりはやや小さい割合でございますが、オゾン減少していることが一九八六年に報告をされているところでございます。
  19. 福間知之

    福間知之君 いわゆるローランド教授の学説が発表されましてから、欧米では非常に関心を持ってこのフロン問題に取り組んでまいったようであります。早くも一九七八年にはアメリカフロン使用したスプレー製造が禁止されておりま す。  これに対して我が国では、一部の科学者の間で問題の重要性議論されておりましたけれども政府レベルにおいても、また一般国民の間においてもオゾン層保護条約議定書が成立するまではほとんど関心が薄かった、こういうふうに思うわけであります。  そういう点で、今回はやや遅きに失した感がなきにしもあらずでありますけれども世界経済大国とも言われ、あるいはまたフロン生産でも世界の第三位、アメリカ、ECに次いで三位というふうな大量の生産をしておるわけでございまするから、当然と言っていいわけですが、遅きに失したとはいえ今回この法律ができるということは極めて重要な意味を持っている、こういうふうに思うわけであります。  オゾンホールその他、まだ解明が続けられなきゃならぬ科学的な分野の問題点はありますけれども、いずれにしろ現在までにわかっているオゾン層破壊の原因としてフロンあるいはハロンが指摘されているということで、私は今回の法律意味というものを非常に重要なものと受けとめておるわけであります。  そこで、通産省フロン生産設備凍結に関しましてお伺いしますが、アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、フィンランド等スプレー禁止措置がとられた後に我が国が行った対応というのは、生産能力凍結スプレー製品におけるフロン使用量削減の実施でありました。しかし、このフロン11とフロン12の生産能力、すなわち設備の増設を認めなかっただけなのでありまして、従来から存在するところの設備のうち、休止させていた設備を稼働させることによって、あるいはまたフロン113の製造設備を新設することによって、政府の行政指導というものは有名無実化させられたのではないか、こういうふうに思うわけであります。  通産省の資料によりましても、フロン生産量は年々増加しまして、昭和五十六年には十万トンだったものが六十一年には十七万六千トンになっております。この点について積極的に通産省施策をとってきたのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  20. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 先生御指摘のとおり、フロンにかかわるオゾン層破壊の問題についてのUNEP議論の進展、それに伴いまして一部の国におきましては、おっしゃるようにエアゾールの製造禁止等がスタートしたわけでございますが、科学的な知見の集積、さらには技術的な対応代替品の問題等々、総合的な議論がその後進められたと存じます。  アメリカがおっしゃいました七八年でございますが、七九年にカナダと北欧の諸国でおっしゃるようなエアゾール等の使用禁止措置が行われたようでございますが、EC諸国におきましてはその次の年、一九八〇年に具体的な措置が行われたわけでございます。我が国はEC諸国と同時期でございまして、アメリカとの関係でいきますと約二年おくれておるわけでございますが、その際に、フロン11及び12の生産能力凍結に踏み切り、かつまたエアゾール用フロン削減指導をスタートしているわけでございます。能力につきましては、その後当然でございますが横ばいで推移しております。エアゾール用のフロンにつきましても現実に低下傾向にあると存じます。  我々は、それ以後この国際会議に積極的に参加し、議論を積み重ねることによりまして、今回の条約及び議定書批准という段階を迎えたわけでございまして、特に、昨年九月にこのモントリオール議定書につきましての最終段階に達したわけでございますが、私どものみならず、当然でございますが、環境庁あるいは外務省、政府代表団を派遣いたしまして、これにつきましては、私どもは前向きに対応し、かつまた今回この法案をこの国会に提案をさせていただいたわけでございます。  私どもといたしましては、世界に先駆けてこの法案の成立をしていただきまして、具体的な措置に移したいと思っておりますが、具体的な措置そのものにつきましては、やはり日本の場合は、今お話のございましたように需要が伸びておりますので、仮に来年七月具体的な規制を実施するということになりますと、フロンの実際上の需要に対しますカット幅は約三〇%に達すると存じますけれども、私どもはそのような厳しい措置もぜひ的確に実施いたしまして、前向きの姿勢で今後とも対応するというふうにまいりたいと考えておるわけでございます。
  21. 福間知之

    福間知之君 ところで、スプレーフロンの問題なんでありますけれども、五十六年の一万一千トンから六十一年には約八百トン生産量が減少しています。これは大気中のフロン減少させるという意味では、スプレー用に対する規制は非常に重要でありまして、だから、先ほども触れたように、欧米では既に製造自体が禁止されておるわけです。それにかわって、最近はフロン・LPG使用という表示のある製品を見かけるようになりましたけれども、これは一体どういうことなのか。フロン規制するという意味で、もちろんLPGを代替物として利用しようということなんでしょうが、LPGというのは使い方を誤りますと人の命も吹っ飛んでしまいます。そういう危険性があるわけです。高圧ガス取締法などで取り扱い規制がなされているわけでありますけれども、このフロン・LPG使用製品について、果たして危険性をどのように考えておられるのか、お聞きをしたいと思います。
  22. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 先生今御指摘のように、エアゾール製品の噴射剤としては、人体用のものとそれから非人体用のものとあるわけでございまして、その人体用のものはフロンに少量のLPGを混合したものを使っておる、それから非人体用のものについては、LPG等が使われておる、こういうことになっております。  いずれにしましても、これらについては高圧ガス取締法に基づきまして、これを爆発性、引火性の強さに応じて五つの区分を設けまして、それぞれの区分に応じて、例えば火気の付近で使用してはならないとか、いろいろな使用方法を表示するということを義務づけておるわけでございます。それで、この表示方法に従って適切にエアゾール製品を使用すれば、当然のことながら爆発等の危険が生ずることはないということで、この適正な使用方法の表示義務ということを非常に重視しておるわけでございます。  そういうこともございまして、使用方法を誤ったことによって事故を起こしたという例は皆無ではもちろんございませんけれども、消費者の認識の向上等によりまして、発生率も大幅に減少してきているというのが実態でございます。
  23. 福間知之

    福間知之君 報道によりますと、通産省はヘアスプレーなどの化粧品の噴霧剤としてフロンガスにかえ、液化石油ガス、いわゆるLPGの使用を解禁する方向で検討を始めた、こういうふうに報じられておりましたし、またアメリカからは非公式に、フロンにこだわると、スプレー製品が非関税障壁になって新たな貿易摩擦の材料になりかねない、こんな指摘がされたとも報じられておるわけですけれども、ただいまの説明でもその危険性について、それをどう国民に理解してもらうのか。また、誤った使い方をしないようにしてもらうのかということがこの場合大問題になるわけでありますけれども、一般にまだ今のところ消費者は、そこらあたり余り危険だという感じを持っておるのかどうか、私もちょっと定かじゃないんですけれども、どういうふうに見ておられるんでしょうか。
  24. 安楽隆二

    政府委員(安楽隆二君) 今そういうことで、先ほど申しましたような形で表示をきちんとするようにということで義務づけられておりまして、大分これも時間もたちますので、全体としては、いろいろPRその他もやりまして、事故の数も非常に減ってきておるわけでございます。  ただ、いずれにしましても、実はこの規制というのは昭和四十一年につくりましたもので、それ以後いろいろな実態が変化しておりまして、一方 では技術革新等によりまして品質の管理水準が向上するというようなこととか、それから先進各国では規制の仕方が違っておりまして、それとどう整合性をさせていくかとか、それから今回の逆にフロン規制の問題といういろいろな環境変化が出てきましたので、いずれにしてもこの表示義務等についてさらに現実に合ったものにしたいということで、実は今高圧ガス保安協会に専門的な検討を依頼しているわけでございます。その検討ができ次第、さらに現在のやり方について一層合理的なものにどうしていったらいいかということについて対応検討していきたいと思っています。  ただ、余談になりますが、全般的には事故が減ってきておるわけですけれども、今後若干問題があるかもしれないのは、むしろ使っているときというよりは廃棄した後に今の可燃性のものが残っていますと、それをたき火かなんかしたときに爆発するとかというようなことがたまにあるわけでございまして、そっちの方も今後そういうことも含めて合理的な使用方法の表示義務のつくり方というようなものを検討していきたいというふうに考えている次第でございます。
  25. 福間知之

    福間知之君 ところで、総じてフロン代替品の開発という面につきまして、フロン134aとかフロン123などがそれに当たるわけですけれども、今のところコストが高いことあるいはまた毒性試験が必要だということで、洗浄剤に使われているフロン113については代替品の開発めどがついていない、こういうふうに聞いております。フロンより危険なものであってはもちろん代替品意味はありませんが、さりとて価格が高過ぎたのでも代替物だとは言えないし、問題があると思うのであります。  このいわゆるフロンの供給というものが減少することによりまして、需給のバランスが崩れフロンの価格が一方において上昇する、こういうふうなことが心配されるわけでもあります。  アメリカ最大の化学製品メーカーである御承知のデュポン社が、これは新聞報道にあるわけですけれども、五年後にはフロン製造を中止するという意思を表明しておりますが、その場合に今申したように、しからば代替物が安く供給されるのかどうか、価格上昇というものを一方においてもたらさないかどうか、今までのフロンのユーザーの中でも特に中小規模のクリーニング屋さん、町工場等の仕事に決定的に重要な問題を投げかける危険はないのか、そういう点で総じて私は価格の監視をする必要があるというふうに思うんですけれども、この点についてはどうお考えですか。
  26. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 御指摘のとおり、フロン等の段階的な削減というものを今後この法律あるいはまた議定書に基づいて実施するために、代替品の開発が非常に重要であることは御指摘のとおりでございます。私どももその辺に非常に関心を持ち、かつまた民間部門におきます開発あるいは私ども国の中におきます開発ということが非常に重要な問題になると考えておりますが、その際に、お話の中にございましたように、代替品そのものの経済性、すなわち価格の問題、さらにはまた安全性等非常に大きな問題がいずれもあると思います。  特に安全性につきましては、今後の有望なる代替品と言われておりますフロン123及びフロン134a、これはいずれも発泡剤とかあるいはまた冷媒用に使われるものでございますが、これにつきましては、この一月でございますけれども世界の十四の有力化学メーカーで共同して毒性試験をやるということがスタートすることになりました。これは今お話ございましたアメリカの有力メーカーも既に開発途上にあると聞いておりますが、我が国の有力化学メーカーも開発途上にあるように私ども思っております。その方々がいよいよ代替品を一般に使用する際に当然安全性が非常に重要でございますので、これを国際協力によって実現をする、こういう動きでございますので、私どもは非常に望ましい方向だと考えておるわけでございます。  しかし、具体的な削減を段階的に実施する際におきましては、当然でございますが過渡的な問題がございます。最後に御指摘ございましたように、価格の問題というのは一つ非常に大きな問題になる可能性があるわけでございますが、私どもは事前に各般の手を打っていきたいと考えております。  一つは代替品の開発でございますが、もう一つはやはり回収・再利用設備の開発及び普及でございます。それによりまして、需給につきましていい影響を与えるということで、この段階的削減を円滑に進めるということにしたいと思っておるわけでございますが、それにもかかわらず、そのような過渡的な段階で御指摘のような価格の問題が生じますとすればこれは特に適当ではございません。時に便乗値上げとかそのような問題が生じては不適当だと存じておりますので、私どもはやはり機動的に行政指導をいたしまして、そのような過渡的な措置につきましてはそれがないようにぜひやってまいりたいと考えているわけでございます。
  27. 福間知之

    福間知之君 今お話もありました回収・再生システムにつきましてお伺いしますが、既に昭和電工の開発したフロン113回収・再生システムというのがあるわけでございますが、価格は一千五百万円台というかなり高価なものでありまして、きょうの新聞によりますと、ダイキン工業が低濃度のガスの回収が可能な機器を開発した。中身的にはいろいろありますが、価格が四百万から五百万ぐらい、先ほど言った数字よりは三分の一ぐらい安くなる。使用される用途としては限界があるんじゃないかと思うんですけれども、こういう開発に当たりまして今まで金融上、税制上の措置が講じられておりますけれども、それだけで十分なのかどうか。
  28. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 御指摘のとおり、今後のフロンの段階的削減を進める場合に、特にフロン113、これは洗浄用に使われるものでございまして、電子機器部品あるいはまた精密機械部品の関係方々が使っておるわけでございまして、特に中小企業の利用度が非常に高い分野でございますが、この洗浄用に使われております113につきましては現在のところ有力なる代替品がないわけでございます。もちろん、その開発を積極的に進める必要がありますが、当面の対策といたしましては、今お話ございましたように、回収・再利用設備というものを普及していくということが非常に重要な課題でございます。  今お話しの中にございましたように、既に一部回収・再利用設備が開発され、使われているものもございますし、本年発表されて普及しようとしているものもございます。値段は、確かに一番高いものにつきましては御指摘のような一千万円を超えるものもございますが、幅といたしまして、特に中小企業向け等々につきましてはやはり五百万円前後だろうと存じますが、私どもはこういうフロン規制という新しい動きに対応いたしまして、民間各分野におきまして回収・再利用設備の開発というものにつきまして、さらに技術開発が進むことを強く期待しているわけでございますし、その一端が本日の新聞にあったものだと存じます。  これを推進するベースといたしましては、今国会の予算、税制の中でお願いをいたしました措置、それをぜひフルに活用したいと思っております。それは一つは、固定資産税の減免あるいはまた特別償却制度の導入というようなことでございまして、税制面での特典をお与えする。さらにはまた財政金融上の措置の一環といたしまして、開発銀行の低利融資をする等によりまして中小企業を中心といたします回収・再利用設備の普及に努力したいと思います。  御指摘のように、すなわちこれまで決めております政策で十分かどうかという点につきましてはさらに私ども検討したいと思いますし、中小企業施策の中にございますいろんな制度もできるだけ活用して遺憾なきようにしたいというふうに考えるわけでございます。
  29. 福間知之

    福間知之君 時間がやってまいりますので、ま とめて二つ三つお聞きします。  まず、環境庁にお聞きしますが、最近目覚ましく経済発展を遂げているNICSに関することでございますが、議定書にはこのNICS等について一定の配慮規定というのがあるようでございます。これは一体どういう理由によるものかということです。私の調べたところでも、隣の韓国はもちろん、インドあるいはアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、イスラエル、チェコ、東ドイツ、ルーマニア、南アフリカなどでこのフロンをつくっているわけでありますが、そういう現状に立って、この配慮規定というのはどのような意味なり理由をもって設けられておるのかということ。  それから、それと関連して、我が国における製造数量の規制ということから、逆にその設備をNICSの方に輸出していくというふうな傾向が出やしないだろうか。そういう側面について、通産環境はどのように考えておられるかということが二つ目であります。  それから、この法三条のフロンハロン生産量あるいは消費量の基準限度については、いかような内容のものを記載なさろうとしているのか。議定書によりますと、一〇%の上乗せをすることが認められておりますけれども、これは途上国のためのようにも考えられるんですけれども、その公表はどういう基準でやられるのかということであります。  以上です。
  30. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 最初の、発展途上国への配慮規定の問題でございますが、このような地球的規模での環境対策ということを今後円滑に進めるためには、私ども先進国のみならず、当然発展途上国の協力も必要でございます。一方発展途上国におきましては、やはりフロンそのものが生活の向上あるいはまた経済の発展に欠くことができないという要素も別途あるわけでございますので、その辺を配慮いたしましてこの議定書におきましては、一人当たりの消費量が〇・三キログラム以下の発展途上国につきましては規制措置の導入を十年おくらせることができるという特例措置を講じているわけでございます。その趣旨は、先ほども申し上げましたように、できるだけこの条約議定書に参加を求めると同時に、将来やはり規制措置に参加してもらいたい、その辺を考慮しているわけだと存じます。  それから、我が国がそれではNICSに対しましていろんな技術の輸出等について抑制措置を講ずるのかという点でございます。  先ほど申し上げましたとおり、NICSに対しまして条約の参加を積極的に求めるというために先ほどの配慮事項を設けているわけでございますが、入ってこない非加盟国に対しましては、やはりそれに対します例えばフロン製造技術とかあるいはフロン使用技術の輸出を抑制すべきである、こういうことをこの条約議定書の中で言っております。私どもといたしましては、当然それを守るということでございまして、フロン製造技術の輸出等につきましては、当然その非締約国に対しまして輸出が行われないように今後厳格に指導してまいるわけでございますし、さらにはまた輸出にかかわる経済協力等につきましても関係省庁との連携のもとに万全を期すという考え方をとっているわけでございます。  それから、最後に御指摘がございました法律第三条の基本的事項の中で発表いたしますフロン及びハロンの基準限度の中に、議定書に認められております一〇%の上乗せ分はどのような形になるのか、こういうことでございますが、この法三条の基本的事項をなぜ公表するかといいますのは、最初にお話がございましたように、国民方々に今後どのような形でフロン等規制が段階的に厳しくなっていくのかという長期展望を示すということがその目的でございまして、一般国民さらには産業界が供給削減に円滑に対応できるように具体的な数字で今後の削減目標をこの計画の中に書くことにしております。したがいまして、今おっしゃいましたこの一〇%の上乗せ分というのはこの数字の中には含めないで、今後の段階的な削減の目標を明確に示すという考え方でございます。  それではその一〇%分はどうなるかということでございますが、これは、例えば発展途上国の中で、条約には参加しているけれども国内に設備を持っていない、そのような国で、かつまたフロンの需要があるという国に先進国が輸出を従来しているとすれば、仮に規制を厳しくやるとその輸出を国内に回してしまうことがありますので、それを避けるために上乗せを認めて、条約に参加する発展途上国への輸出を認めていこうというのがこの一〇%の上乗せの趣旨でございます。  このような事態があった場合には、その際に具体的に措置はしていくわけでございますし、また議定書に「産業合理化」という言葉が書いてございますが、ある国がどんどん段階的削減になりましてもうその生産単位としては必ずしも成り立たないような規模になった場合に、その設備をやめてある国に輸出を求めてくる場合があると思います。その場合に、求めてこられた国がこの上乗せ規定を利用して、向こうの工場は全廃してこちらから供給する、この逆のケースもあると思いますが、趣旨といたしましては、そのようにその段階的削減世界的に円滑にいくようにということを趣旨といたしましてこのような措置がこの議定書の中にあるわけでございます。
  31. 福間知之

    福間知之君 終わります。
  32. 伏見康治

    ○伏見康治君 同僚の福間さんがいろいろな問題点を既に指摘されましたので、私の用意したものの大部分はもう済んでしまったような感じがいたしますが、少し問題を広げて周辺の問題的な観点からお伺いしてみたいと思うんでございます。  このオゾン層破壊問題とフロンガスとの関係ということに関しまして、福間さんが言われたように、一方では日本対応が国際的な進展に比べますというと非常に遅かったのではないかという観点があるわけですが、一方から申しますというと、そういうことの因果関係オゾン層紫外線によるがんの多発という因果関係もありますが、フロンガスオゾン層破壊との因果関係というのもありまして、そういうものの科学的な証拠というものがどこまで確かなのかという反対側の疑問もあるわけでございます。そういうものの今までの政府としての考え方、つまり、まだ科学的知見が足りないからゆっくり考えてもよろしいという、そういう考え方で鈍かったという観点もあるでしょうし、一方から言えば、その科学的知見をより完全なものにするための努力をどれだけしたかという観点もあるわけですが、その辺のところを説明していただきたいと思います。
  33. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 私ども環境庁あるいは外務省とUNEPに参加いたしましてこれまで議論を重ねてきているわけでございますが、今御指摘のようなフロン等オゾン層破壊との関係につきましては、もちろん各国とも非常に大きな科学的な面での関心があるわけでございます。  それにつきましては、一九八六年の八月にこのUNEP報告書が出されました。「人間活動のオゾン層及び気候に与える影響について」、こういう報告書でございまして、それがUNEPにおきます規制議論のベースとなります科学的な知見の根拠となった最初のレポートだったと私ども理解しております。  その中におきましては、一つは、特定フロンが年間七ないし一〇%増大傾向にある、一方、オゾン層の量でございますが、一九七〇年から八四年の間には、総オゾン量は有意なる変化はない、しかし四十キロ高度の成層圏オゾンにつきましては七八年の段階で二、三%減少している、特に南極大陸上空オゾンは、一九八〇年以降毎年九月ないし十月にかけて特に減少しているというような報告があったわけでございます。このオゾン層そのものの量の変化はいろんな要因が重なっているようでございまして、例えば太陽の光度の強さとか、あるいはまた成層圏におきます風の強さだとか、あるいはまた季節の変化、いろんなものが重なりましてふえたり減ったりするわけでございますので、それは地上での実験というのはできませんので、これをすべてコンピューターによるシ ミュレーションという形で実現をいたしまして計算をし、オゾン層にどのような影響があるかということを皆さん科学者方々研究をしたようでございます。  その計算結果というのが一九八七年、昨年の四月のUNEP専門家会合に出されまして、それによりますと、仮にフロン生産量がこのまま年率二ないし四%の割合で伸びていくとしますとオゾン層は顕著に減少するおそれがある、したがって生産量を国際的に協調して規制する必要があり、それをすればオゾン層保護が可能であろう、こういう発表があって昨年の九月の議定書という段階に達したと思います。  具体的には、議定書の前文にその国際的なある意味の本件に関する認識が書いてございまして、それはこのようになっています。「ある種の物質世界的規模における放出が、人の健康及び環境に悪影響を及ぼすおそれのある態様でオゾン層の著しい破壊その他の変化を生じさせる可能性のあることを認識し」この協定を策定する、このようになっているわけでございます。
  34. 伏見康治

    ○伏見康治君 今までのお話の中はそれは国際的な動きを説明していただけたと思うんですが、その中における日本人の役割はどうであったかということを伺いたいわけです。つまり、例えば今言われたコンピューターを使ってオゾン層の中でのいろんな化学変化を追求するといったような研究日本人はどの程度コントリビューションをしているかという説明をしていただきたいと思います。
  35. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいまの通産省鈴木局長の方から御答弁ございましたような経緯でこの問題が現実にまいっているわけでございますが、先生の御指摘の、日本がどの程度関与したかということになりますれば、日本におきましては、日本の国内といいますか上空におけるオゾン層監視フロンガス監視といいますのは日本研究者等もやっているわけでございますが、国際的にそういう評価といいますか、国際的に認められた文献、知見に対しましてはそれほど大きな効果、影響というものを今のところはまだ与えていないといいますか、提出していないというのが現状であろうと思います。そういうことで非常に立ちおくれた面もあるわけでございますので、私どもといたしましては今後そういう面でのいろんな学問、知見研究を促進いたしましてこれからの国際的な舞台におきますこの問題に関する知見の成績、評価というものに対しまして日本も応分の寄与をしてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  36. 伏見康治

    ○伏見康治君 それは非常に大事な事実の認識だと思うんですが、それでは今後は大いに日本の科学技術者たちもこういう問題に対して積極的に参加させようという御意思だと思うんですが、具体的にはどんなことが考えられているのか。先ほど例えばレーザーレーダーのようなお話がございましたが、大勢としてはどんなことをお考えになっているか。そういう個々の思いつき的なものよりは僕は全体としての心組みの方が大事だと思うんですが、それについて何かお話がありますか。
  37. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お話にございましたんでございますけれどもオゾンレーザーレーダーを使って成層圏におきますオゾンの変化といいますのを現在いろいろ調査しておりますのは、これから日本も入るわけでございますが、世界で四カ国でございます。大体北半球に四カ国あるわけでございます。そういう面で、オゾンレーザーレーダーによりますオゾン層の変化の状況といいますのを北半球にありますほかの四カ国と共同してそれをはかってまいって、地上面からの成層圏におけるオゾンの変化についてのデータ世界に提供いたしたいというぐあいに思っているところでございます。  それ以外にも、日本は従前三十年代からやっておりますけれども気象庁におきましては分光光度計によります対流圏あるいは成層圏オゾン層の把握といいますのを世界の気象研究協会の一連の作業という形で、そういう面でのオゾンの量の測定等もやっているわけでございます。それからまた、新たに国立公害研究所におきましては、これからレーザーレーダーによりますオゾン層状況観測あるいはこれからの各種の対策の動向を踏まえましたオゾン層の変化の将来予測あるいは紫外線の変化によりまする生体影響の調査といいますものについても、国公研におきましてはこれから調査研究を進めてまいりたいというぐあいに考えているところでございます。  また、それ以外に、先ほども申し上げましたけれども環境庁に持っております国立機関公害防止等試験研究費、一括計上という言い方をしておるわけでございますが、この一括計上の中におきましても、通産省の公害資源研究所等におきます例えば揮発性有機ハロゲン化合物の大気放出抑制技術に関する研究だとか、不活性化学物質の不均一系光反応による変換・分解に関する研究といいますものもこれから研究が行われるわけでございますので、そういう面での研究成果がまとまりますれば、UNEP等の場におきます国際的な専門家会合にこういうデータを提供いたしまして、国際的な今後の予測の参考にしたいというように思っているところでございます。
  38. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は、公害問題、環境問題のいろいろな個々のテーマを伺うたびに、もう少し平衡感覚と申しますか、広い視野で眺めるということをやらないといけないと思っているわけですが、大気フロンガスで汚染するという問題を考えると、大気を汚染する要因としてはほかにいろんなものがあるわけですね。例えばNOxのような問題もあるでしょうし、それから一番有名な話は炭酸ガスがだんだんふえているという話があるわけですが、炭酸ガスがふえて地球がいわゆる温室効果でだんだん気温が高くなってしまうという話は、何か理屈としては非常に正しいように思うんですが、それについてはいまだにフロンガスの場合のように対応策が一つも出ていないというのは、これはどういう関係なんでしょうか。
  39. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 非常に難しい御質問で答えに窮するのでございますが、フロン等の問題につきましては、世界の学者がいろいろ研究いたしまして、非常に現時点といいますか、早いうちに手を打たないと成層圏にまでフロン等が上がりましてオゾンを壊し生体影響を与えるということで、比較的早い時期といいますか、現在まだはっきりした証拠がないような時点におきましても、ある程度将来予測をいたしまして未然に防止するという観点から国際的な取り決めが行われたというぐあいに理解いたしているところでございます。  先生お話しございました二酸化炭素によります地球温暖化の問題につきましても、世界でいろいろな方々の御意見等もありまして、その方々は非常に大変な問題であるということをいろいろ提言いたしているわけでございます。そういうことで、国際的な機関の場におきましてもそういう議論になっているわけでございまして、私どもといたしましてはそういう面では大気環境の問題ということで非常に関心を持っておりまして、内部的にはいろいろ資料等も集めておったわけでございますが、その段階にいつまでもとどまっていても、だんだんおくれおくれになりますものでございますから、できるだけ早い時期にこの二酸化炭素の地球温暖化の問題につきまして、私どもの方ではそれぞれの分野の専門の方々のお集まりをいただきまして勉強会といいますか検討の場を設けて、これからそういう面での体系的な検討を進めてまいりたいというぐあいに思っておるわけでございます。  それからまた、お話ございましたようなNOx等の問題につきましては、大都市におきます大気問題ということで非常に重要な問題でございまして、私どももいろいろ対策を講じておるわけでございますけれども、なかなか解決がまだ難しいということで非常に頭を痛めておる問題でございます。  そういうことで、この大気環境の問題につきましては、NOxなりあるいは二酸化炭素あるいは ハイドロカーボン、いろいろな問題等があるわけでございまして、その問題問題がそれぞれに相互に関連しているものもございますし、また単独に取り扱って対策を講ずる必要のあるものもあるわけでございますので、そういうことで、関連してやっていかなきゃならない問題につきましてはそれぞれの分析調査、それから対策の設定といいますものもそれぞれの問題問題に対しまして私どもそれなりに対策を講じておるというぐあいに思っておるところでございます。  いずれにしましても、これからだんだんそういう面での分析技術が進歩してまいりますと、より大気環境を汚染しておるといいますか汚しておる物質がはっきりわかってまいりますし、その発生源なりその予防対策といいますものがこれからますます問題になってくるというぐあいに思っておるわけでございますので、そういう面では私どもといたしましてもいろんな勉強の場を設ける、あるいはいろんな調査研究を進めるというようなことをやりまして、できるだけ人間環境といいますか地球環境、私どもの生活環境の保全に万全を期してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  40. 伏見康治

    ○伏見康治君 細かいことですが、二酸化炭素の調査、観測を持続的に系統的にやっておるのは気象庁ですか。環境庁気象庁との役割分担というのはどんなふうになっているんでしょうか。
  41. 山中陸男

    説明員(山中陸男君) お答えいたします。  気象庁では二酸化炭素の観測につきましては、岩手県の綾里におきまして六十二年度から観測を開始いたしました。  気象庁役割といいますのは、全国的といいますか世界的な観測網の一環としまして、気象庁でもあるいは日本でもその一翼を担って正確に観測をやっていってデータを公表するということではないかと考えております。
  42. 伏見康治

    ○伏見康治君 何かお答えがすれ違っているような感じですが、私の伺っているのは、大気汚染というものをまず少なくとも監視する必要があるわけですが、そういう観点から行政上組織的には何か手を打っていかなくちゃいけないと思うんです。  そのうちお仕事の連続性、親近性のせいでしょう、CO2の観測気象庁にお任せになるというのは結構だと思うんですが、そうするとほかのものはどこかにお任せする、ほかのものはどこかにお任せするということで環境庁としての全体の統一性というかそういうものがなくなるような感じもするんですが、その辺のところはどうなっておるかということを伺いたいわけです。
  43. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 環境庁といたしましては、それぞれの既存の各省庁さんがおやりになっていらっしゃいますこういう定期的といいますか恒常的な観測といいますものにつきましては、それぞれの省庁さんに引き続きお願いをしてやっていただこう、そういう面でそちらのデータを私どもはいただきまして、私どもの方の専門家の方からの御意見も聞きながらそれを評価あるいは必要に応じては監視という形での対策を講ずることもあり得べしというスタンスでございます。  そういう面で、環境庁はすべての物質、すべての問題について観測といいますかそういうことをやるということは特段考えていないわけでございまして、各省庁さんがおやりになっていらっしゃるものについてはそれはそちらにお任せいたしまして、それに足りないところといいますかまだやっていないような分野につきまして私どもやっていかなきゃならないだろうし、さらに必要に応じてはそれを強めるといいますか、さらにデータを必要とする場合におきましては各省庁さんにお願いすることもあり得るかもしれませんし、私ども独自にやるということもあり得るというような感じで考えているところでございます。
  44. 伏見康治

    ○伏見康治君 CO2の問題について申しますと、大気中の炭酸ガスの濃度がどうなるかを調べるのももちろん非常に大事ですが、それがなぜ増加するかという原因の探求も極めて大事なんですね。アマゾン流域のような大森林がどんどん焼き払われているというのが原因だと言う人もいるし、それから人間がたいている石炭や石油から出るCO2の分量が全部大気へ行ったとするというと、実は今の観測されているような量ではなくして、非常に多くの部分がどこかに消えてなくなっているわけですが、その消えてなくなっている部分が海に吸い込まれているんだという説もありますが、それが確実に立証されているというふうには私には思えないわけです。  そういう、つまりCO2ならCO2の大気中の観測をただやる、ハワイの観測所が昔からやっていたことを日本でもやるというだけでなくして、CO2が一体どういうメカニズムで今のような値になっているのかその探求をするという組織的なまず考え方があって、その中で気象庁に常時的な観測をお願いするというようなことが出てくれば結構だと思うんですが、どうもそうでなくて、CO2の観測というのは別の問題としてひょっと出てきて、全体を統一的に眺めて打つべき手を打つという態度が欠けているような感じがするんですが、何かありますか。
  45. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 物事を決める場合に、先生おっしゃられますように、体系的に全体を俯瞰した上でそれぞれ必要な項目をセットしそれに応じたものをそれぞれにやっていただくというアプローチの仕方は基本的にあるわけでございますが、現実の問題としましては、その炭酸ガスの問題につきましては気象庁が長年といいますかあるいは世界的にも観測が行われておりますし、気象庁がこれからおやりになるという話もございますので、そういう面で私どもは、思考方法が逆になるのかもしれませんけれども、現在ある各種のデータを集めましてそれを分析評価し、もう一回組み立て直すといいますか、その中で足りないものについては新たな手を打って調査をする必要があるだろう。  それから、組み直した上でそれをどう評価するかという問題もあるわけでございますので、そういう面では、炭酸ガスの問題につきましては全く新しく物をスタートするということではなくて、既存のものを集めて評価をし、足りないところを補う。あるいはその評価という言葉の中では、先生のおっしゃったように、炭酸ガスが全体的にどういう量発生しどこでどう消化されているかというような分析もあろうかと思いますけれども、そういう面での勉強をこれからやってまいりたいというぐあいに思っているところでございます。
  46. 伏見康治

    ○伏見康治君 まあそういうことなんですが、環境庁は従来、大気汚染といっても主として地域的な、例えば東京のどこかの町のNOxが非常に濃度が大きかったといったような地域的な汚染問題、あるいはどこかの工場の近くでぜんそくがふえたといったような問題に取り組むとか、地域的な問題に専ら注視があって、グローバルな問題に対しましては余り関心がなかったんではないかと思うんですが、その点いかがですか。
  47. 黒川雄爾

    説明員(黒川雄爾君) 今お話にありましたようなオゾンの破壊とかCO2濃度の上昇等による地球の温暖化、あるいは熱帯林の破壊、あるいは野生生物の絶滅、砂漠化、こういったものがよく新聞に出てくるようになりましたけれども、こういった地球環境問題というのは全人類的な課題というようなことになっておりまして、実は環境庁UNEPを通じまして一応提唱したんですけれども環境と開発に関する世界委員会というのが設けられまして、それで昨年の四月に一応報告書がまとまりました。そして、それで国連の総会なんかでも大体そういった趣旨のものをこれからやっていくんだというところまできております。我が国では、環境保全の分野で一応産業公害を中心にしまして、いろんな知識や経験というものは有しているわけですけれども、非常に国際社会における地位と責任が高まっているということもあります。  それで、地球環境の保全には積極的に取り組んでいくんだということで、現在環境庁の長官の諮問機関でありますが、地球的規模の環境問題に関する懇談会、地球懇と称しておりますけれども、 そこに特別委員会を設けまして、我が国の今後の地球環境に対する具体的取り組みのあり方といったことについて検討しております。間もなく、この夏をめどに提言をまとめる予定でございますけれども、そうしたものが出ましたら、関係省庁とも連携しまして地球環境の保全に努めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  48. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう方向の線で、ひとつ大いに頑張っていただきたいと思います。日本はいろんな意味で何か大国になったんだそうでございまして、国際的なものはどこかよその方がやっていて日本はそれに便乗すればいいという考え方から脱却して、世界全体に日本が率先して貢献していくという態度を養っていっていただきたいと思います。  ところで、オゾン層の破壊については、私の記憶に誤りがなければ、もう十何年も前の話ですが、英仏共同開発のコンコルドという成層圏近くを通る飛行機が開発されましたときに、アメリカは自国の上空にそれがやってくることを拒否したんです、と思いますが、一つの理由は、ショックウェーブの、やかましいということなんでしょうけれども、一つはオゾン層の破壊ということも言われていたと思うんです。しかもそれを言ったのは全米科学アカデミーだと思うんですが、その行く末は一体今どういうことになっているのか。つまり、コンコルドはアメリカ以外のところでは盛んに、でもないかもしれませんが、とにかく飛んでいるわけで、それによってオゾン層が破壊されたということは認められているんですか、認められていないんでしょうか。
  49. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 今回のウィーン条約の中に、オゾン層影響を与える物質といたしまして、今後調査研究対象というのに別表が出ているわけでございますが、その中に「窒素酸化物」というのがございます。その「窒素酸化物」の中にこのような表現がございまして、「対流圏界面近くにおける窒素酸化物の注入は、対流圏上部及び成層圏オゾンの変化を直接引き起こす可能性がある。」、すなわち対流圏と成層圏の間でおっしゃるような飛行機が飛びまして、そこでNOxを人工的に注入すると影響を引き起こす可能性がある、こういうことが指摘されておりまして、今後の一応調査研究課題になっているようでございますが、アメリカにおきましては、おっしゃるようなテーマにつきましてその後国内で議論したようでございます。  その報告というのを、私どもも範単なものでございますが手元にございまして、NAS、全米科学アカデミーとFAA、連邦航空局がそのSSTの影響について研究したようでございますが、結局の結論は、当初言われていたほどオゾン層への重大な影響はないと結論された、このような報告が出ておるようでございます。
  50. 伏見康治

    ○伏見康治君 そういう前例があるとすると、今騒がれているフロンガスの方の関係も何か怪しいんじゃないかという疑問が出ないわけでもないんですが、こちらの方は確かだという根拠はありますか。
  51. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) このフロンガス関係につきましては、国連環境計画すなわちUNEPの場で従来から議論されておりまして、そのUNEPに従来いろんな報告書が出されております。  その中で、具体的なレポートはこういう議論をしております。すなわち、当初出ましたレポートの中では、南極上空のいわゆるオゾンホール、それにおきましてはやはり相当のオゾン減少が認められる、しかしオゾン層総量につきましてはそれほど有意な変化はない、ただある一定の高さにつきましてはオゾン層の変化が、減少傾向があるというような議論がベースとしてございまして、同じデータをベースにいたしましてもう一度検討し直したようでございますけれども、その報告はこの三月に出ているようでございます。その中では、やはり総量の面でややオゾン層減少傾向があると、このような逆の結論を一方で出しているようでございます。  いずれにいたしましても、成層圏の問題でございますので、先ほどちょっと御説明いたしましたようないろんな影響がございます。すなわち、太陽の光の強さ、あるいはまた成層風、風の影響、あるいは季節の変化によります温度変化等々によりまして、例えば太陽の光度が強いときには当然オゾン層がふえるわけでございます。その逆の場合がございますけれども、そういうのをすべてシミュレーション化いたしまして、そしてコンピューターで計算して観測データをインプットして、その上で実際上オゾン層に何らかの変化があったかどうかという結論を出しているようでございますが、今のところ今回お出しいたしました法律の基礎になりました議定書の前文では、その可能性があると、このような結論を出しているわけでございます。
  52. 伏見康治

    ○伏見康治君 昨年でしたか、レーガン大統領が、オリエントエクスプレスというのをつくって、ニューヨークから東京まで三時間で来るとかなんとかいうお話をされていたんですが、そういうものの大気上層に対する影響というものはもちろん十分検討されていると思うんですが、何か御存じですか。
  53. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お尋ねのオリエントエクスプレスにつきましても、お話がございましたオゾン層に与える影響といたしましては、SSTの場合と同様にオゾン層内に排出されます窒素酸化物が問題となるというぐあいに考えるわけでございます。影響程度の問題でございますが、このオリエントエクスプレスにつきましては現在計画中という話でございまして、それが飛行回数等具体的な計画がまとめられる段階で、窒素酸化物の排出量あるいはオゾン層に与える影響といいますものが評価されるべきものというぐあいに私ども受けとめているところでございます。
  54. 伏見康治

    ○伏見康治君 また話が変わりますが、一時酸性雨というのが少なくともヨーロッパでは大変問題になっておったんですが、あれも恐らくグローバルと言えるかどうか、少なくとも隣の国に影響を及ぼす程度のものだと思うんですが、この酸性雨に関しての今状況はどういうことになっておりましょうか。
  55. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 酸性雨に関するお尋ねでございますが、概略を申し上げますと、アメリカの北東部、カナダ等のいわゆる北米、それからヨーロッパ、西ドイツ、スウェーデン等におきましては湖沼や森林等の生態系に深刻な影響を与えているということが言われているわけでございます。このために、北米におきましては、米国とカナダの両国が越境大気汚染に関する覚書といいますものを結びまして、これに基づきまして、一九八〇年から共同モニタリングを行っているところでございます。ヨーロッパにおきましては、国連欧州経済委員会長距離越境大気汚染条約という長い条約でございますが、この条約に基づきまして、一九七九年から欧州モニタリング評価プログラムによりますモニタリングが実施されております。それから、八七年から発効されましたけれども、ヘルシンキ議定書と俗に言っているわけでございますが、二酸化硫黄の削減が行われているところでございます。  我が国におきましては、環境庁におきまして、昭和五十八年度から五カ年計画で酸性雨発生メカニズムの解明、それから生態系への影響の把握等のための調査研究を進めているところでございまして・その中間取りまとめによりますれば、pHが四・四から五・三の雨が全国的に観測されておるということがわかったわけでございます。これは欧米と比較いたしますと、酸性度は弱いものの硫酸イオン等の酸性降下物はほぼ同様であるというぐあいに見ているところでございます。しかしながら、我が国におきましては、欧米とは異なりまして土壌が酸性化しにくいことなどから酸性雨によります湖沼や森林等の生態系に対する被害は、現段階におきましては明らかにあらわれていないというぐあいに考えているところでございます。  こういうことでございますので、この被害を未然に防止する観点から、昭和六十二年度に全国に二十三カ所の国設大気測定所に酸性雨自動測定装 層を設けまして、監視のための降雨等の分析を充実させますとともに、六十三年度以降、生態系監視影響力等の調査研究を五カ年計画で実施いたしまして、今後の対策を図ってまいりたい、適切な対応を図ってまいりたいという考え方でございます。
  56. 伏見康治

    ○伏見康治君 考えてみますと、フロンとかハロンとかいう弗化物、塩化物というものは自然界には元来なかったもので、人間が新しくつくり上げたもので、ある意味では大変有利な性質を持った、化学的には極めて安定であり、いろんな油類をよく溶解してくれるような特別な性質を持っていて非常に役に立つ物質ですね。それを大気中やなんかに放出してしまうために二次的ないろいろな害を与えてくるわけですが、その物質そのものは非常に私は貴重な人類の英知の産物だと思うんですね。それをコントロールできないというのは何か間違っているような感じがいたします。  よく似た物質で、何年も前にカネミ油症事件というのがございまして、PCBでしたか、塩化物ですね、それ自身は私は非常に役に立つ物質だと思います。非常にやはり化学的に安定であって、例えば冷却剤として非常によく使われ得るものであったと思うんですが、それが食品に、油の中に入ってしまうという非常に大きなエラーを起こして、そのためにPCBは今や地球上から退治しなけりゃならないようなことになってしまったと思うんですが、あちらの方についてはその後どういうことになっているんでしょうか。
  57. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) PCBのようないわゆる有毒性の化学物質、これは蓄積性があり、そのような化学物質につきましては、私どもが厚生省と担当しております化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、いわゆる化審法でございますが、それの規制対象物質になっているわけでございまして、このような物質につきましては現在徐々に規制対象を増加いたしますし、既存物質も含めまして監視を深めていく。これは国際的な協力の形で深めているというのが現状でございます。
  58. 伏見康治

    ○伏見康治君 ちょっと時間がありますが、最後に大臣にお伺いいたします。  今申しましたように、フロンとかあるいはPCBとかは元来みんな人間の英知がつくり出した新しい非常にすばらしい性質を持った物質だと思うんですね。そういう人間の英知がつくり出したものを取り扱いを誤まっているために、何かいろいろと事故を起こしているんだと思うんですが、新しい物質をどうコントロールするかという人間の知恵というものがそこでも発揮されるべきだと思うんですね。  そういう観点から、こういういろいろないざこざに対して通産大臣の哲学を伺いたいと思います。
  59. 田村元

    国務大臣田村元君) それでは率直に申しまして、答弁用紙を離れて私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  今、いみじくもおっしゃった人間の英知がより新しいすばらしい化学物質をつくっていく。私は医学のことも化学のこともわかりませんが、最近、若き日に聞いたこともないような病気がはやってきた。あるいはおおよそ想像したこともないような化学物質が生まれてくる。そうして化学物質の一つとして薬品があるのかもしれませんが、それはまた非常に人類に役に立つ。反面また、人類は恐れおののいてその対応に大わらわというようなことがございます。  でございますから、やはりより新しい、例えばPCBのような化学物質による環境汚染なんかを防止するというようなためには、やはり化学物質の審査それから製造などの規制に関する点について、新しいものが出てきたときにやはり先取りしてどんどんいかなきゃいかぬのじゃないかというふうに思います。  現にPCBなんかの場合でも規制に関する法律もございますし、それから国会の附帯決議もございます。そしていろいろと安全性の点検を推進するための御質疑等もございましたが、役所は後追いであってはいけない、みんなの命に関する問題でございますから。でございますので、このフロン等についての法律案もあるいは御批判を受ける点があるかもしれません。それはあるとすればタイミングの問題だったと思いますが、しかしこれをよき一つの経験として今後の官僚たちが、より若い官僚たちが先人の経験を踏み越えてすべての対応の先取りをしていくということにいそしんでもらいたい、このように思います。  いずれにいたしましても、私も原子爆弾被爆者でもありますし、それからこれとは関係ありませんけれども、フルイトランという薬で、私は色素が抜けてまいりました。大変現在難渋いたしております。そういうちょっとこれとは異なる経験ではありますけれども、それも一つの経験かもしれませんが、今申し上げたようなことで今後の若い官僚たちが専門的により先取りをして対応してもらいたいし、政治家がそれを叱咤勉励するという形は当然のことだと、このように思います。
  60. 伏見康治

    ○伏見康治君 終わります。
  61. 市川正一

    ○市川正一君 最初に、フロンなどの規制に対する通産省の基本的な姿勢について確認をいたすところから質問を進めたいと思います。  ここに持ってまいりましたのは、「産業と環境」という雑誌であります。これは御承知かと思いますが、通産資料会、言うならば通産省の外郭団体の一つだと思うんですが、そこがことしの一月号でありますが、「通商産業省は、オゾン層保護に係るフロン規制問題の重要性に鑑み、当初よりこの問題に取り組んできており、」「議定書の策定作業にも積極的に関与してきた」、こういうふうに、執筆者はあえて申しませんが、通産省の担当部門が述べていらっしゃいます。ところが、私どもがずっと経緯を見てみますと、このモントリオール議定書の採択に至る交渉過程のいろんな報道などでは、一方で厳しい対策を主張するアメリカあるいは北欧諸国に対して、どちらかというと日本はECなどとともに消極的であったというふうにも伝えられているんですね。  もう一つここに持ってまいりましたのは、「公害と対策」という雑誌、ことしの第三号です。これは、発行所は公害対策技術同友会でありますが、同じ通産省担当部門の論文が出ておりますが、その解説では、日本は独自の立場を主張してきたというふうに記述しているんですね。なかなかこの二つの、同一の担当部門の、私もなかなか勉強になったんですが、こういう論述からもそこはかとなく伺えるんですが、そこで、通産省が世間から見て、グローバルに見て消極的であったといわれるような理由がどこにあったのか。私は責めているんじゃないですよ。いろいろ事柄のいきさつというのがあると思うんですよ。認識の発展というのがあると思うんです。今後の施策を進めていく上で、ひとつ総括をしていただくおつもりで、この際、御見解をまず承りたいと思います。
  62. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) このオゾン層保護の問題の歴史はそう古くはないわけでございまして、御存じのとおり、一九七四年にアメリカでカリフォルニア大学の先生が論文を発表して以降の問題であるわけでございます。それ以後、もちろん国によりましては直ちにこれに対して対応すべきであるという議論がございましたでしょうし、一方これは地球的規模の問題であるので国際的協力なくしては実効性は上がらないというような議論もございまして、ある国はもちろん国内対策を実施すると同時に、やはり国際協力を得るべきであるというようなことで国連の場での議論がスタートをしたと存じます。  国連の場で議論がスタートした段階におきまして、先般も御質問ございましたように、例えばアメリカにおきましてはエアゾールの製造禁止という措置をとった、我が国はどうしてとらなかったかというところで消極的であったかどうかという御議論につながっていくかとは存じますが、そのエアゾールに対しますいわゆる安全規制にやや差がございまして、例えばエアゾール用の代替品が活用できる国々、例えばLPGを使用できる国々につきましては、実害といいますか、それに対し ます生活への影響というものがないということで製造禁止ということへ直ちにいったと存じますけれども、私どもとかEC諸国は、それからややおくれてはございますけれども、やはりこの問題の重要性、国際的な議論の深まり等に応じまして具体的な策を講じてまいったと考えております。例えば、フロン11及び12の生産能力凍結あるいはエアゾール用フロン削減努力ということにつきましては、昭和五十五年から実施しているわけでございます。  その後、国連環境計画、すなわちUNEPにおきます議論過程におきましては、私ども環境庁と同様にここに参加いたしまして、当然でございますがその科学的な知見というものにつきましての議論、さらにはまた具体的な対策議論の深まりには積極的に参加していったつもりでございます。  そして、これまで御議論ございましたように、UNEPに出されましたいろんな科学的な知見をベースに具体的な措置が昨年の九月のモントリオール議定書という形になったわけでございまして、その最近の過程におきましては、私どもとしては積極的にそこに参加し、その結論に対しましては署名という形で私どもの政府の意思を表明してまいったわけでございますし、今後この御審議を経た過程におきまして、仮に立法措置を御了承いただければ、世界に先駆けて法律がスタートするという意味で、私どもはより前向きな対応ができると考えておるわけでございます。
  63. 市川正一

    ○市川正一君 今鈴木局長から解明があったように、例えばアメリカは一九七八年からフロンが含まれたスプレー、あなたは今エアゾールとおっしゃいましたけれども、同じことですが、使用禁止にしております。それから七九年にはスウェーデンが、続いてノルウェーが、またフィンランドが、カナダが同様の規制措置をとってまいりました。日本行政指導の上で手をつけたのは一九八〇年、ですから五十五年とおっしゃった、その十二月だったと思いますね。フロン生産能力凍結使用削減行政指導を行ったという経過になっているわけです。先ほど御紹介したこの「産業と環境」の一月号にも、八一年に「フロン成層圏オゾン減少に対する影響等の調査も実施した。」というふうにあります。  確かにやってこられているんですが、しかし国際的な場にこれが提起されたとは聞いていないんです。むしろ、私どもがいろんな報告を聞きますと、日本は国際的な協議の場では、自分たちがやっている研究成果は示さずに、因果関係への疑問など、どちらかというと他国の調査結果を批判することに終始していた。国際的には、そういう意味で、日本のそういう態度に対して言うならば批判的見解が生まれていたというふうに聞いておるんですが、私はその経過の一つ一つの節々をどうこうというんじゃなしに、少なくとも、今度この法案をお出しになった政府の立場通産省立場というのは、そういうものからは大いに転換し、発展しているというふうに積極的に受けとめてよろしいんですかどうか、そこをまず入口論として確認をさせていただきたいと思います。
  64. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 今回のモントリオール議定書に対しまして批准をいただいたわけですが、その署名をいたします際の国際的な共通の認識というのがこの議定書の前文に書いてございます。これによりますと、「ある種の物質世界的規模における放出が、人の健康及び環境に悪影響を及ぼすおそれのある態様でオゾン層の著しい破壊その他の変化を生じさせる可能性のあることを認識し、」ということを言っておるわけでございまして、このような認識につきましてはいわゆる世界的な共通認識ができ、その中に私どもも当然ながら入っているわけでございます。  さらに、後の方でございますが、「オゾン層を破壊する物質の放出を、科学的知識の発展の成果に基づき、かつ、技術的及び経済的考慮を払いつつ無くすことを最終の目標として、この物質世界における総放出量を衛平に規制する予防措置をとることによりオゾン層保護することを決意し、」こういうことでございますので、私どもといたしましては、やはりその可能性というものについての共通の認識を持ち、この際予防的な観点をベースにして規制世界的に実施するということにつきましては、私どもとしてはそういうことを認識した上でこの法案をお出ししたということだと存じます。
  65. 市川正一

    ○市川正一君 じゃ、そういう共通のベースで議論をこれからやらさしていただきたいと思うんですが、去年十月六日の日本経済新聞の科学欄なんですが、「オゾン層破壊 フロン犯人説に疑問」というタイトルの報道があるんです。それはどこの記事かいなと思うたら、公害資源研究所、たしかこれは通産省の工業技術院の中にあるんですが、そこのレポートについての報道ということになっているんですね。この研究の目的、内容はどういうものなのかということについてひとつ説明を承りたい。
  66. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 御質問の工業技術院公害資源研究所におきます研究でございますが、そもそも大気中のハロゲン化物それからフロン濃度が砂漠の上空におきまして若干低くなっているというふうな知見に基づきまして、これは粒子の触媒作用によってフロン等が分解されるのではないか、そういう仮説を立てておりまして、それを実証するための研究昭和六十年度からスタートしたわけでございます。  具体的に申しますと、実験室内におきまして熱処理をいたしまして、またかつ真空処理をいたしました理想的な表面を持つ粒子を容器の中に導入いたしまして、そこに自然環境よりもはるかに強力な光源としてハロゲン光を照射いたします。そうして、粒子状物質フロンとを反応しやすい条件に置きまして、分解速度がどのように変化するかを測定しているところでございます。  これまでの成果でございますが、中間的な結果によりますと、粒子状物質を構成する成分のうち数種類の物質については吸着あるいはフロンの分解の可能性が見出されております。しかしながら、まだこの研究昭和六十年度から六十四年度までの途上でございまして、最終的な結果はまだ得られておりませんので、現段階では結論的なことは言えない状況にあると思います。  またさらに申しますと、この研究はあくまで理想条件下でフロンの対流圏における分解の可能性というものを定性的に研究するものでございますので、この研究の成果が直ちに実際の対流圏におけるフロンの分解に当てはめられるかどうかということについては困難があるのではないかというふうに考えております。
  67. 市川正一

    ○市川正一君 そうしますと、今のような御説明だったらわかるんですが、「フロン犯人説に疑問」というような報道の仕方は必ずしも真意を伝えていない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  68. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 先ほど申しましたように、この私ども研究の成果をそのまま対流圏における実際のフロンの分解に当てはめられるというふうには考えておらないわけでございます。
  69. 市川正一

    ○市川正一君 私があえてこういうことを申しますのは、レポートを拝見し、また私の秘書がじかにいろいろお話伺いました。研究というのは、言うまでもなく極めて限られた条件のもとでフロンの変換とか分解について行われたものであって、今技術院院長の方は理想的条件下というふうに言われましたけれども、自然条件のもとでは必ずしも現実的でない条件を前提にした変換とか分解の可能性を確かめるというようなものでありますから、自然界における現象を解明するためには、こうした研究をそれぞれの原因物質について調査するとともに、それらを複合した場合についてどうなるかなど、やはり何百何千の研究調査を積み重ねることによって複雑な自然現象の解明の入り口に到達できるものである。私どもも、今度のこのフロンとの因果関係については、そういう慎重な立場をなおとっております。  しかし同時に、例えば私は、個人のことを申し上げて恐縮でありますが、八四年の七月の二十四 日の本委員会で、使用済みの乾電池の水銀汚染の問題に関連して、その挙動について知見が確立していると言われている水銀でさえ、長期にわたる微量汚染の環境等に対する影響はなお知見が確立してないということを指摘いたしました。ところが、遺憾ながら通産省は当時そういう立場に立とうとされなかった。しかし、今でもなお地方自治体は使用済みの乾電池の回収などをやっぱり続けているんです。続けざるを得ないんです。  これは私は、その問題をここでとやかくという意味ではありませんけれども、そういう問題が我々の周辺に、これだけ科学技術が発展してくると、それに対応する、言うならば、新しい分野に対するアプローチというのは、政治的立場とかあるいは思惑などを排除して、真に科学的立場から接近しなければならぬということを私は言いたいんです。  だから、この記事について、フロン規制に対する国際協議の場における従来の我が国の消極的な立場と、うがって言えば軸を同じくするようなタイトルでこの報道がなされている。その中身は、お伺いすると、実際に工業技術院がなすっておられる研究者の真意とそぐわないものになっているという点からも、今後こういうふうな問題について、通産省としてはやはり真に科学的な立場からのアプローチというものを引き続き行われるべきであるということをこの機会に強く要請したかったからにほかならぬのでありますが、私の申し上げている意味がもし通じておるようでしたら見解を承って、今後の議論のいわばベースにしていきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  70. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 先ほども御紹介いたしましたとおり、この問題、やはり科学的知見の発展あるいはまたその蓄積というものが非常に重要な側面を持っているわけでございまして、これまでの御質疑にもございましたように、その科学的な知識の発展の中に日本も寄与していかなくちゃいけないというふうに考えておりますし、お説はそのとおりだと思います。
  71. 市川正一

    ○市川正一君 そこで大臣にお伺いいたします。  以上、入り口というか前提的な議論であったのでありますが、今回通産省がこの法案提出されたこと自体にオゾン層問題に積極的に対応しようとする姿勢があらわれている、こういうふうに私は受けとめたいのであります。  その立場というのは、国際的な世論に押されてやむなく進めるという、受け身といいますか、受動的なものじゃなくて、科学的知見が確立されるにはなおしばらく時間がかかるとしても、現在到達した知見ではフロンオゾン層破壊因果関係があるということを認識した上で、オゾン層保護対策を積極的に進めていくという立場に立つんだというふうに理解してよろしいか、大臣に確認をいただきたいと思います。
  72. 田村元

    国務大臣田村元君) 国際社会の重要な一員でございます我が国は、このかけがえのない地球を守るために世界に率先して国際的貢献を果たす必要がございます。今般、この条約及び議定書を受けましたこの法案を、やはり私ども世界に先駆けて成立させていただきたいということで御提案申し上げたわけでございます。  今おっしゃいましたように、世界に押しまくられてやむなくみこしを上げるよりは、率先して世界の範となる対応をしていくのが日本の国際的な務めであると思っておりますし、どうぞそういう意味におきましてもこの法案をぜひよろしくお願いを申し上げる次第でございます。
  73. 市川正一

    ○市川正一君 その一番最後の言葉、もう少し議論を進めてまいりますんですが、そういう能動的立場からフロン規制の枠組みについてお伺いしたいんでありますが、この法案は、議定書に定められた物質議定書に定められたスケジュールで段階的に規制を実施していくことになっております。ところが、我が国アメリカに次いで二番目の、世界でも有数のフロン生産国でありまた消費国であるとすれば、また政府が常々世界に貢献する日本と今も大臣もおっしゃったような能動的立場から考えれば、これからの科学的知見が深まるに応じて規制対象物質を広げるとともに期間も短縮するというような、そういう対策を積極的にとるべきであろうかと思うんでありますが、この点はいかがでしょうか。
  74. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 今回の議定書に基づきまして実施いたしますフロン等の段階的削減のスケジュールでございますけれども、それは御存じのとおりでございますが、私どもこれにつきましてはこの議定書の中にいわゆる見直し規定がございますので、当然その中で積極的な役割を果たしたいと考えております。ただ、その前提となりますのはやはり代替品の開発、さらには回収・再利用技術の開発ということが非常に重要でございますし、一方これまで御議論ございましたように、オゾン層に関する各種の科学的知見の深まり等々があるわけでございます。それらを総合的に踏まえまして、その段階におきまして私どもとしては締約国会議がございますので、その際に積極的な役割が果たせればと、かように考えているわけでございます。
  75. 市川正一

    ○市川正一君 では、具体的に法案に沿って、また条項に沿ってお伺いいたしたいと思います。  まず第三条でありますが、ここで環境通産大臣は、条約及び議定書の実施を図るために基本的事項を公表することにいたしておりますが、その中で「国民の理解及び協力を求めるための施策」と、こうあります。その際に、国民生活全般に重大なかかわり合いを持ち、また支障をもたらすようなものであってならぬと思うんですが、具体的にはどのような対策考えていらっしゃるのか、両省からお伺いしたいと思います。
  76. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) この第三条の基本的事項は、今後におきますフロン等規制の段階的削減というものを一般の国民、さらにはその規制対象となる産業界、さらにはそのユーザーにお示しいたしましてそれに積極的に御協力をいただくということを目標にしているわけでございます。したがいまして、そのような点からまいりますと、その第二の、今御指摘ございました一般の方々への理解と協力というのは、やはりこのような形でフロンそのもの国民生活なり産業界に幅広く使われているという事実を基礎にしつつ一方その生産量が削減されてまいりますので、それを活用しておられます方々から見ますと不便になるわけでございますから、その辺にやはり前向きに御協力をいただくということがどうしても必要でございます。  私どもは、それを規制という形でやるわけではございません。すなわち生産量そのもので抑えてまいりますので、使用段階の規制ということではないわけではございますけれども、しかし、一般消費者も含めました利用者の協力はどうしても必要でございます。この場合、この二号に基づく具体的な措置につきましては、政府全体が持っております各種の広報活動、広報手段というものをぜひとも活用し一般にお知らせをしていくというふうにしたいと考えておるわけでございます。
  77. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 私どもの方も、このオゾン層保護におきます御指摘の第二項につきましては、具体的にオゾン層保護対策の意義あるいは必要性を国民に周知徹底するということを考えているわけでございます。各種のオゾン層保護対策の背景や前提となります知識などの普及に力点を置いてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  78. 市川正一

    ○市川正一君 もう少しここで概念でなしに内容的に立ち入りますと、法案によるフロン等規制はまず供給量、すなわち生産数量と輸入数量の規制中心になっていると思います。しかし、資源の有効活用という観点からあるいはまた有害なものはなるべく放出しないという観点から対策をとる必要があると思うんです。したがって、規制の仕方としては生産と放出の両方の対応が必要だと思うんです。  この点について環境庁通産省両省庁からそれぞれのお考え方をもう少し立ち入って伺いたいと思います。
  79. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) お話のように、この法律製造規制、輸入規制をやるわけでございますが、その製造規制、輸入規制をより有効に効果的に進めるという観点、さらにはまたフロンの放出を抑制をしていくあるいはまた限られたフロンを有効に利用していくというもう一つの観点から、これはこの法律はほかの国と違いましてやや特色を持っておりますけれども、二十三条にいわゆる排出抑制使用合理化指針というものを作成いたしまして公表する規定を設けさせていただいております。これはフロン使用している方々に対しまして例えば代替品の活用をより進めるあるいはまた回収・再利用設備の導入を積極的にやっていただくということをより具体的にお願いをするということを目的にしているわけでございまして、お話にございましたように、一方において製造、輸入規制をすると同時に、一方において使用者の方々にそれを円滑に進めるためのいろんな指導をやっていくと、こういう両方にかけた措置を考えているわけでございます。
  80. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生お話にございましたように、ただいま通産省の方からお話ございましたように、生産量の削減規制といいますものとあわせまして大気中への放出をされる排出抑制というのは同じような位置で重要な対策ということで位置づけをして法律考えているところでございます。
  81. 市川正一

    ○市川正一君 時間が参りましたので、あとワンテーマだけに限ってお聞きして本日の質疑を終えたいと思うんですが、フロンハロン生産、輸入の規制数量はどのように決めるのかということなんです。  議定書では、規制対象物質としてフロン五種類、ハロン三種類を挙げられておりますが、この種類ごとに数量を決めるのか、それともフロンの総量、ハロンの総量というふうに決めるのか、どちらなんですか。
  82. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) フロンはおっしゃるとおり五種類ございますけれども、この規制の段階ではそれを一括いたします。といいますのは、フロンの用途によりまして対応が違ってまいります。代替品があるものあるいはまた回収・再利用設備使用が容易なもの等々差がございますので、この段階的規制を円滑に実施をしていくという趣旨からいきまして規制は一本、ハロン一本フロン一本でいくと、このように考えております。
  83. 市川正一

    ○市川正一君 化学品審議会の中間答申を見ますと、総量規制のようなんですけれどもフロンスプレーとか発泡剤とか洗浄剤だとか用途によって異なる種類のフロンが使われております。ということは、場合によっては社会生活上重要な分野に必要なフロン、例えばぜんそく患者が使う吸入薬スプレーなどの医薬用品のフロンが不足するおそれも懸念されます。こういう事態について対策考える必要があるんじゃないか。具体的には、用途別やフロン等の種類ごとの数量とか優先順位なども考える必要があるんじゃないかという気がするんですが、この点はいかがでしょうか。
  84. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 私どもも用途別あるいは品目別の需要動向に関しては関心を持ちたいと思っておりますが、それをあらかじめ決めることは非常に硬直性をもたらすわけでございますし、例えば代替品の導入とかあるいはまたその回収・再利用設備の導入というものも非常に弾力的に、積極的にやっていただきたいと思っておりますので、事前にある枠があることは必ずしもそれをうまく促進するとは限らないと考えております。  しかし、御指摘のとおり総枠は一本で決めますけれども、その用途別、品目別には需要も違いますし、技術的対応も違ってくると存じます。特に最後に御指摘ございましたように、緊急に必要な分野に特に回らないという事態が想定されないわけではないと存じますので、私どもはあらかじめこの規制の段階的な削減の目標は決まっておりますので、それに対応する需要動向は事前に十分つかまえて円滑にいくようにしたいと思っておりますが、場合によりましてある分野に需給逼迫が生じたり、おっしゃる緊急に必要なところにいかないという事態が仮に想定されれば、当然でございますが機動的に行政指導はしていくというふうに考えているわけでございます。
  85. 市川正一

    ○市川正一君 以下は次回に譲ります。
  86. 木本平八郎

    木本平八郎君 テーマに入る前に、ちょっと初歩的な問題を整理したいんですが、まずオゾン層が減っていっているということ、これは外国のカリフォルニア大学の何とかという先生研究結果じゃなくて、日本としての調査あるいは研究でそれは減っていっているということは確かめられているんですか。
  87. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 日本におきましては、気象庁におきまして三十二年以降、日本の四カ所におきまして分光光度計を用いましてオゾンの量の把握を行っているところでございます。  その結果によりますれば、特にオゾンの量が減っておる、変化があるというようには理解できないというような評価をしているというぐあいに聞いております。しかしながら、現時点におきましても国際的なUNEP等の会議におきましても、オゾン量全体は現時点においても全体の一%ぐらいの減少だろうというぐあいに思われておるわけでございますので、分光光度計によります測定では誤差もございますので、ちょっと日本の分光光度計の成績だけで世界考え方にクエスチョンを投げるにはちょっと問題があるのじゃなかろうかというぐあいに思っているところでございます。
  88. 木本平八郎

    木本平八郎君 それでその次に、先ほど工業技術院の院長のお話がありましたけれどもフロンオゾン層を破壊している、仮にいろいろオゾン層というのはふえたり減ったりして、今のお話では一%ぐらい減っているかもしれない。しかし、このオゾン層が破壊されるのは、フロン以外に原因がいっぱいあるわけですね。むしろ私はそっちの方が大きいんじゃないかと思うんですけれども、これは先ほど、実際に確かめられないんでコンピューターでシミュレーションをやっているとおっしゃいました。それが、本当にシミュレーションの結果が信用するに足るのかどうか、その辺はどういう感触をお待ちですか。
  89. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) コンピューターによるシミュレーション結果というのがUNEP会合で昨年の春に示されているわけでございますけれども、それにつきましてはやはり私ども自身がそれに対して科学的に当然反論し得る材料は持ち得ない。むしろコンピューターそのものに入っております閾値が非常に膨大でございます。化学反応そのものも非常に量が多いわけでございますが、同時に、お話の中にございましたようにオゾン層をふやす要因、例えば太陽の光が強くなる、黒点が出ますと弱くなりますので、これはオゾン層を減らす要因になるわけでございますけれども、そういう要素すらすべてインプットしたシミュレーションでございますので、やはり今あります科学的知見の中では最も考え得るシミュレーションであろうということで、その結果につきましては私どもも重要な参考資料だと思っているわけでございます。
  90. 木本平八郎

    木本平八郎君 そうすると、確かめますけれども、疑わしきは罰する、クロかシロかわからぬけれども、一応安全サイドをとってクロとして対策を講じた方がいいというスタンスと解釈していいわけですね。
  91. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) その辺の認識は、たびたび引用して申しわけないんでございますが、議定書の前文でございまして、議定書の前文では、やはりフロン等世界的な放出が人の健康あるいは環境に悪影響を及ぼすおそれがある、その可能性があるということを前提にいたしまして、やはり科学的知見の深まりを待つよりもこの段階で予防的措置を講ずるということの必要性がより高い、こういう判断をしていると存じます。
  92. 木本平八郎

    木本平八郎君 もう一つ初歩的な質問なんですけれどもフロンの比重、空気に対する比重は幾らになっているんですか。
  93. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) ちょっと数字を持ち合わせておりませんが、ややフロンの方が重いというふうに私ども理解しております。
  94. 木本平八郎

    木本平八郎君 私もこれよく知らないんですけれども、例えば塩素は原子量が35ですよね。それからCは14だったですかな。それで弗素も相当重いはずですよね。これはもう四十年も五十年も前の化学の知識だからこれは怪しいんですが、それは調べていただきたいんですが、そうしますと常識的に考えた場合に、空気より重いものが空中に発散される、そうすると一時的にはふわっと上がっても、徐々にどんどん下がっていって、成層圏に上がっていかないんじゃないかと思うんですけれども、これどうして成層圏に上がっていくんですか。
  95. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) UNEPの場に出ましたレポートによりますと、地表から対流圏、約十キロだそうでございますが、十キロの中におきましては大気はおっしゃいました気体の比重にかかわらず循環をしている、こういうことになっているようでございまして、仮に重たくても、それは対流圏におきましていわゆる対流現象といいますか、ということで循環しておりまして、それが上空に行って成層圏に近い段階でフロンがむしろ対流圏に拡散をして成層圏に入っていくというような考え方になっているというふうに理解しております。
  96. 木本平八郎

    木本平八郎君 私もその辺になるとよくわからないんですけれども、学者の仮説としては非常におもしろいと思うんですね。ここまでは対流していって、そこから成層圏に拡散するんだという仮説は十分に成り立つと思うんですけれども、普通考えたら、そこまで行きますと気温も相当下がってくるし、そうすると重いものはそこまでは一応対流圏で上がっていっても、もうそこ以上には上昇気流はないわけですからやっぱり重いのは下がるというのが普通常識だと思うんですね。その辺はよくわかりません。しかしそういう仮説でこういうことをおっしゃったと。このアメリカの学者は研究テーマとして非常に興味のある研究をなさっていると思うんですね。それでこれはこれでいいと思うんです。  問題は、こういうことが提起されて、そして今度のモントリオールですか、こういう世界的な議定書をつくって規制をやろうということなんですね。そういうことも先ほどのように疑わしきは罰するという考えからいけばやむを得ない。そこでやっぱり問題は、ここでこの規制するときに、相当これ有用な物質ですよね、フロンというのは。それを規制してしまうということになると、国民の生活に相当大きな影響があるわけです。しかし疑わしきは一応罰するということだからそれはいいにしても、そこで私いろいろ問題にしたいんです。  まず第一は、先ほど伏見先生からもお話がありましたけれども、こういう研究で、一たんフロンオゾン層を破壊して、これは紫外線を通して危ない、人間に皮膚がんを起こすという危険性があるということを外国人が言うわけですね。これはいいと思うんですけれども、そうなると、実際に規制をやらなきゃいかぬということになってくると、日本の国の中の問題ですね、メーカーの肩を持つわけじゃないけれども。そうすると、そこで日本がもっと積極的にこの検証という面に参加していなきゃいけないんじゃないですかね。それが受け身というか、外国が研究したそのとおりで、何か国際会議で言われたからしようがないから日本もつき合いでやりましょうというのでは、ちょっとだらしがないというかコストが高くつき過ぎるんじゃないかという気がするんですが、その辺はどうですか。
  97. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 確かに御指摘のとおりだと思っております。その点に関しましては、今回の条約及び議定書の中におきましてもさらに科学的な知見を深めるということにつきまして、それぞれ批准した各国も義務を負うことになっておりますし、それをベースにいたしまして今回御提案いたしました法律の中にも因果関係を含めた調査の強化、さらにはまた、むしろ対策面でございますけれども代替品の開発、回収・再利用設備の技術開発等につきましても積極的な役割を国が果たすべきである、こういう規定を書いているわけでございますので、いろんな意味での国際的な貢献の一環におっしゃるような技術研究の強化というのは重要な要素だと考えております。
  98. 木本平八郎

    木本平八郎君 先ほど田村大臣世界に先駆けてやるんだということをおっしゃったわけですね。私は、それは非常に立派なことだと思うわけです。しかし、現実に最近の日本の政治のあり方というか外交のやり方というか国際対応を見ていますと、どうも後手後手になって、相手に問題を起こされてしようがなしに押され押されてやっていく。例えば捕鯨の問題ももちろんそうですし、そのほかの問題でもどんどん押されてやむを得ずにやっていくということで、どうも積極性というか自主性というか、先手を打つというところがおくれているような気がするんですね。  私は、この問題は取り上げ方によっては非常に日本が国際的に格好よく振る舞える一番いいチャンスじゃないかと思うわけですね。ということは、こういう問題が仮に人類に非常に大きな影響を及ぼすということであれば、日本が真っ先に問題提起するということがまず必要だと思うんですけれども、それができないとしても、ここまでの段階になったら日本フロンの代替物質の開発を一手に引き受けてやるというぐらいのスタンスで向かっていいんじゃないかと思うんです。日本は、どうも最近は経済大国になったためもあって世界から非常に注目もされているし、何かバッシングというかたたかれることも多いわけですから、こういうところで、いや日本世界のために貢献しているんだということを見せるのに非常にいいチャンスじゃないかと思うんですね。  その辺で、代替物質というかフロン代替品の開発に対してどういうふうに今指導されていますか。その辺をお伺いしたいんです。
  99. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 確かにオゾン層保護問題、特にフロン規制をより強化していくわけでございますが、それを円滑に進めるための非常に大きなポイントは、おっしゃるように、代替品の技術開発さらには回収・再利用技術の開発だと私ども考えております。  フロン代替品の技術開発につきましては、化学メーカーも今大変努力をしているように私どもも聞いておりますし、フロンそのものの開発が、アメリカ企業でございますが、そのアメリカ企業そのものが従来フロンを開発することによるいろいろな意味の技術蓄積をむしろ代替品開発に向けているだろうと私どもも想像しております。したがいまして、これはやや世界的にある意味の競争になると考えておりますけれども、特にその競争と協調の協調の方でまいりますと、フロン代替品として一番今有力視されておりますのがフロン123、これはフロン11の代替品、それからフロン134a、これはフロン12の代替品でございますけれども、これはいずれもその毒性試験さえパスしますと恐らく実用化が可能である、かように言われているわけでございます。  これにつきましては、アメリカの有力メーカー及び日本のメーカーも含めまして世界の十四社が参加して毒性試験をやることになっております。五年ないし七年かかるというふうに言われておりますけれども、この成果に私どもも期待しておりますが、同時に御指摘のように、さらなるフロン代替品の開発につきまして私ども関心を持っております。  今後、政府の研究開発機関、私どもの工業技術院傘下の機関にも要請をいたしまして、その辺につきましての研究についてより積極性を持たせたい、かように考えているわけでございます。
  100. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、通産省傘下の工業技術院ほかの研究機関におけるフロンに対する取り組み状況というのはいかがですか。
  101. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) これにつきましては、まだ大変未熟だと私ども思っております。ただ、今回の予算の中に私どもフロン代替品の物性あるいは毒性試験の予算を二千万円強でございますが用意しておりますので、これにつきましては、先ほど申し上げました有望だと思われており ますフロン123及び134aについて考えております。  さらにはまた、最もその代替品が期待されていないというのがフロン113、すなわち洗浄用に使われているものでございます。それ以外のフロンにつきましては代替品が相当期待されておりますが、電子部品あるいはまた精密部品の洗浄に使われておりますフロン113、これは全体のフロンの約半分を占めておりますが、これにつきましては、まだ代替品につきまして有力なもののめどが立っておりません。しかし、実は私ども、これはいわゆるアルコールでございますが、エタノールというのを持っておりまして、このエタノールをフロン113の代替品にできないかということを考えておりまして、それの技術開発というものを考えております。  いずれにいたしましても、先生の問題意識、私どもと同じでございますので、ぜひ工業技術院の試験研究機関にやってもらいたいものだと考えております。
  102. 木本平八郎

    木本平八郎君 今、予算二千万円とおっしゃったけれども、二けたぐらい違うんじゃないですか。
  103. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 先ほどの世界の化学品メーカー十四社がやります毒性試験が約十億円かけるわけでございますので、その辺から見ますと確かにまだでございますので、この辺は今後の努力すべき課題だと思います。
  104. 木本平八郎

    木本平八郎君 私が申し上げるのは、この取り組みのところに、これは今大臣おられないのでしようがないんですけれども、やはり役人の皆さんはすぐ大蔵省が目に浮かぶからせいぜい二千万ぐらいがもう精いっぱいだと思うんです。しかし、日本が置かれているポジション、そういった世界における立場とか今後の日本の存在を主張するということになりますと、これは開発の方は確かに役所の方は出おくれたかもしれないですね、民間の方がどんどん今や進んでいますね。しかし、毒性試験などというのはやっぱり相当金もかかりますし、それで日本じゃこれやれないはずなんですね。やれないというかそこまでいっていない、アメリカか何かに頼まなきゃいかぬのじゃないですかね。  そうなりますと、やっぱり問題は今度金がかかるわけですね。それで、そのときに日本が思い切ってそれじゃ毒性試験にばっと金を出す。今、六、七年かかるとおっしゃったけれども、それが仮に五年間に二年間縮まってもこれは大変な世界的な貢献になると思うんです。その辺の見きわめというか判断というか、そういうものは失礼ですけれどもこれは、大臣おられないからしようがないけれども、あなた方じゃ無理なんで、やっぱり大臣があるいは内閣が判断して、宮澤大蔵大臣に言ってすぐ十億円ばんと予算つけるというふうなことで対応していかなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。  どうもこれが先ほどから申し上げているように、政府のやり万というのは受け身受け身でお茶を濁している。二千万円などというのは、そんなのは国際会議へ行くと、日本のやろうまたけちなことをやりやがったというふうに思われるんです。その辺、あなた方も格好よく振る舞いたいと思うんだけれども、今後のやり万としてどうですか。
  105. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 確かに技術開発課題として、例えば大型プロジェクトとか次世代技術でございますし、御指摘のように、そのある技術開発のめどのつくプロジェクトというものが技術的な知見を寄り集めましてあるとすれば、その有力なテーマとして本来考えるべきものか、かように考えております。
  106. 木本平八郎

    木本平八郎君 したがって、何回も今国会商工委員会というのは技術問題ばかり何か出てくるような感じがするんですけれども、まず通産省の工業技術院がこういうものの開発にうんと力を入れて取り組む、そして開発したら、これはもう特許を取らずに世界に全部どうぞお使いください、どんどん新しい無害なものを皆さんでつくってくださいということで提供すればいいわけです。あるいは先ほどの毒性試験にしても、そういった金がかかるようなもの——その前に、これちょっと専門家がおられないのでわからないんですけれども、私はこういうものというのは金をかけると割合に開発期間を短くできると思うんですけれども、その辺はどうなんですか。
  107. 鈴木直道

    政府委員鈴木直道君) 先ほどのその毒性試験、これは恐らく動物実験あるいは慢性毒性試験ですので、ある期間をかけるというのがむしろ逆に前提になっているように思います。毒性試験を短縮するというのはなかなか難しいかとは思いますが、ただ、ある代替品を開発するというものにつきまして、期間をなるべく短くするために大きな資金を投入する、これはあり得るかと存じます。
  108. 木本平八郎

    木本平八郎君 だから、そういう点でやはりこの際、先ほど大臣がおられなかったのでちょっとなにしたんですが、もう一度これ改めて大臣の御所見を承りたいんです。  今国会商工委員会で何回も何回も技術開発の問題が出てくるわけです。私はこの問題も、もう怪しきは使用せずということであればそれはそれなりに結構だと思うんです。しかし、国際的にやっぱり日本が先駆けて、それじゃ代替品をすぐつくるとか回収装置を開発するとかして、そして代替品をすぐ世界に供給して、あるいは特許を公開して無害なものをつくってもらうというふうなことにいかなきゃいかぬ。  ところが、先ほどお伺いしましたら、これに対して二千万円の予算だと言うんです。これ、毒性試験をやるだけでも十億円かかるわけです、先ほどの答弁で。それならやっぱり、今日本が国際的に置かれている立場考えた場合に、こういうときこそ日本がさっと手を打って、格好よく世界のために貢献いたしましょうと。わずか、わずかと言ったらなんですけれども、十億円ですよ。十億円で日本がどれだけ世界からアプリシェートされるかということを考えた場合に、もっとビビッドに、もっと積極的にぱっとこう反応しなきゃいかぬのじゃないかと思うんです。  しかし、これはもう何回も申し上げておりますように、役人ではやっぱり限界があるんです。大蔵省の顔色を見たら、まあ二千万円がいいところだということになっちゃうんですね。こういうときこそ大臣が先頭に立っていただいて、内閣としてこれはひとつやろうということで、宮澤大蔵大臣に、あなた、これはもうぜひ特別に十億円でも二十億円でもつけなさいと、こういう反応がやっぱり必要なんじゃないかと思うんです。そこでやることによって、これは国際的に日本のなにが全然違うと思うんですよ。そういう点で大臣どうお考えになるか、個所見を承りたいんです。
  109. 田村元

    国務大臣田村元君) 事務当局はもちろん大蔵省といいますか、主計局に対していろいろな点で気を使うところは、それはあるかもしれません。けれども、私がずっと経験で感じますのは、対主計というよりはむしろ省内をおもんぱかるという方が割合に役人としてはありがちな姿勢だと思うんですよ。  例えば、公共事業なんというのはその典型でありまして、重点主義をとらないんですよ。要するに、今のような御時世では乏しきも憂えて、そして等しきも憂えなければいかぬのです。重点主義で思い切った取捨選択があっていいと僕は思うんです。ところがそれは絶対にうんと言いません、役人は。それはもう大変なことになります。でございますから、私が大蔵大臣の肩をたたいて、なあなあで十億円仮に取ったとしても、その後それが有効に生きるかという問題はなかなか難しい。  ですから、私は今木本さんのおっしゃったことは正論だと思うんです。もうまさに正論です。そのとおりだと思うんですが、それには、竹下総理じゃありませんが、通産省内部のつかさつかさの話し合いを十分させませんとなかなか難しい点があります、ということを申し上げて、私は木本さんの御意見に賛成であります。
  110. 木本平八郎

    木本平八郎君 やっぱり国際問題というのはちょっと後手になると高くついちゃうんです。それ で、ちょっと早く先手を打つとうまく格好よくいけるわけです。そういう点が、日本のような非常に平等で、民主主義で合議制、コンセンサスの社会というのはどうしても対応がおくれちゃうんですね。その辺に民主主義の一つの弱点があると思うんです。  この問題なんかで私が思うのは、ほかのことで先手をとろう、格好よくとろうと思うと、それは何百億かかっちゃうんです。ところが、これは割合に金額が少なくてフルーツがぱっと大きくとれそうな感じなんです。どなたが行かれるか知りませんけれども議定書かなんかの調印ですか——これはもう調印したのか、批准ですか、そういう何でも非常に格好よく振る舞えるわけです。わずか、わずかと言ったらなんだけれども、十億円ぽんとこう出しますというだけで。  そういうふうなことをこれからの日本というのはやっていかないと、今までのように後手後手で押され押されてやむを得ずになんていうことでやっていると高くつくし、それでやはり非常に風当たりがどんどん強くなってきているときですから、そういう対応をぜひやっていただく必要があるし、これなんかは私も当然やろうと思えばできるし、やっぱりやって一番効果があるプロジェクトと言うんですか、問題だと思いますので、今もう過ぎたことはしようがないんですけれども、今後積極的に情勢判断をしていただいて、手を打っていただきたいということをお願いしたいわけです。  一応これできょうの質問は終わります。
  111. 大木浩

    委員長大木浩君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ─────────────
  112. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案について、環境特別委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  113. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会の日時等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  115. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、連合審査会における参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案審査のための連合審査会参考人出席要求があった場合には、その取り扱いを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 大木浩

    委員長大木浩君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会