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1988-03-28 第112回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午前十時一分開会     ─────────────    委員異動  三月二十六日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     松本 英一君  三月二十八日     辞任         補欠選任      松本 英一君     久保  亘君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         大木  浩君     理 事                 下条進一郎君                 前田 勲男君                 福間 知之君                 市川 正一君     委 員                 小島 静馬君                 杉元 恒雄君                 中曽根弘文君                 平井 卓志君                 降矢 敬義君                 松浦 孝治君                 松尾 官平君                 向山 一人君                 青木 薪次君                 伏見 康治君                 矢原 秀男君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣   田村  元君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       中尾 栄一君    政府委員        公正取引委員会        委員長      梅澤 節男君        公正取引委員会        事務局長     厚谷 襄児君        公正取引委員会        事務局経済部長  柴田 章平君        公正取引委員会        事務局取引部長  土原 陽美君        経済企画庁長官        官房長      保田  博君        経済企画庁長官        官房会計課長   安田  靖君        経済企画庁調整        局長       横溝 雅夫君        経済企画庁国民        生活局長     海野 恒男君        経済企画庁物価        局長       冨金原俊二君        経済企画庁総合        計画局長     星野 進保君        経済企画庁総合        計画局審議官   宮本 邦男君        経済企画庁調査        局長       勝村 坦郎君        通商産業大臣官        房長       棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房審議官     末木凰太郎君        通商産業大臣官        房会計課長    牧野  力君        通商産業省通商        政策局次長    吉田 文毅君        通商産業省貿易        局長       畠山  襄君        通商産業省産業        政策局長     杉山  弘君        通商産業省立地        公害局長     安楽 隆二君        通商産業省機械        情報産業局長   児玉 幸治君        通商産業省生活        産業局長     鎌田 吉郎君        工業技術院長   飯塚 幸三君        資源エネルギー        庁長官      浜岡 平一君        資源エネルギー        庁長官官房審議        官        逢坂 国一君        資源エネルギー        庁石油部長    内藤 正久君        中小企業庁長官  岩崎 八男君        中小企業庁指導        部長       村田 憲寿君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        外務省欧亜局ソ        ビエト連邦課長  茂田  宏君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管公正取引委員会経済企画庁)、通商産業省所管中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫)     ─────────────
  2. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十六日、梶原敬義君が委員辞任され、その補欠として松本英一君が選任されました。     ─────────────
  3. 大木浩

    委員長大木浩君) 去る二十五日、予算委員会から、本日及び三十一日の二日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会経済企画庁通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  まず、田村通商産業大臣から説明を求めます。田村通商産業大臣
  4. 田村元

    国務大臣田村元君) 昭和六十三年度通商産業省関係予算商工委員会予算審査における御審議に先立って、一言ごあいさつを申し上げます。  今日の世界経済は、主要国間の対外均衡及びこれを背景とする不安定な為替株式市場、並びに発展途上国の累積債務問題といった課題が山積しており、依然として困難な局面に直面しております。こうした難局を打開していくため、経済大国たる我が国としては、その経済的地位にふさわしい積極的な役割を果たしていくことが強く求められております。  一方、我が国の景気は全体としては内需主導型により着実な回復局面にあるものの、輸出型中小企業等の景況には依然としてはかばかしくないものがあり、今後の為替レート動向によっては国内経済への深刻な影響も懸念されます。また、産業頭脳部分の東京への一極集中による地域経済の不均衡発展といった問題も抱えております。  このような状況の中で、我が国が巨額の対外均衡是正しつつ、二十一世紀に向けて新たな自律的発展への基盤整備を進めていくためには、持続的な内需拡大を図り、国際調和型産業構造への円滑な転換推進して、我が国潜在成長力を十分に発揮させていくことが不可欠であります。  私は、このような認識のもとに、特に次の七点を重点に全力を挙げて通商産業政策展開してまいる所存であります。  第一に、国際調和型産業構造への円滑な転換であります。第二は、国際社会への積極的な貢献であります。第三は、地域活性化であります。第四は、創造的飛躍を目指した技術開発推進であります。第五は、内外の環境変化に対応した中小企業施策展開であります。第六は、中長期的観点に立った資源エネルギー政策推進であります。第七は、快適でゆとりのある国民生活実現であります。  昭和六十三年度の通商産業省関係予算及び財政投融資計画の作成に当たっては、このような基本的方向に沿って、諸施策実現を図ることとした次第であります。  この結果、一般会計は、六千二百一億八千六百万円を計上しております。特別会計につきましては、石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計四千八百七十四億七千百万円、電源開発促進対策特別会計二千九百三十九億七千二百万円、特許特別会計五百九十九億二千百万円等、当省所管の五つの特別会計にそれぞれ所要の予算額を計上しているところであります。  また、財政投融資計画につきましては、財投規模ベースで五兆八千八百六十二億円を計上しております。  通商産業省関係予算及び財政投融資計画内容につきましては、お手元に資料をお配りしてありますが、委員各位のお許しをいただき、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  5. 大木浩

  6. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 昭和六十三年度の経済企画庁関係予算及び財政投融資計画につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち経済企画庁予算額は四百三十五億六千二百万円余となっており、これは前年度予算額に比べて三億四千万円余の減額であります。  また、財政投融資計画につきましては、海外経済協力基金に係る分として四千九百十億円を予定しております。  以下、重点事項につきまして、その内容を御説明申し上げます。  第一に、経済協力積極的展開を図るために必要な経費として三百三十八億五千七百万円余を計上しております。この内訳の主なものは、海外経済協力基金交付金三百三十七億五千百万円余であります。  海外経済協力基金につきましては、政府開発援助の第三次中期目標早期達成を図るため、事業規模として七千四百億円を予定しております。この資金としては、前述の交付金のほか、一般会計からの出資金が二千百十五億円、資金運用部資金等からの借入金が四千九百十億円、回収金等が三十七億円となっております。このうち、一般会計からの出資金は大蔵省に計上されております。  第二に、物価政策及び国民生活政策推進に必要な経費として三十七億五千八百万円余を計上しております。この内訳の主なものは、生活関連物資の需給、価格動向調査監視、その他各省庁の所管する物価対策を機動的に実施するための経費十二億七千万円、国民生活センター運営に要する経費十八億四千七百万円余であります。  第三に、経済構造調整政策推進内需持続的拡大国際的政策協調推進地域経済問題への対応促進、機動的な経済政策等の実施のための調査分析等の充実に必要な経費として十四億五千八百万円余を計上しております。  以上、六十三年度における経済企画庁関係予算及び財政投融資計画について、その概要を御説明申し上げました。
  7. 大木浩

    委員長大木浩君) 次に、梅澤公正取引委員会委員長から説明を求めます。梅澤委員長
  8. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 昭和六十三年度の公正取引委員会関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  総理府所管一般会計歳出予算のうち、公正取引委員会予算額は三十二億四千九百万円となっており、これは、前年度予算額に比べて一億二百万円、三・二%の増額となっております。  以下、その内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、独占禁止法施行経費として一億六千七百万円を計上しております。違反事件審査のための経費経済実態調査のための経費など、独占禁止法を適正に運用するための経費であります。  第二に、下請代金支払遅延等防止法施行経費として二千三百万円を計上しております。法運用の強化と啓蒙普及活動を積極的に行い、下請取引適正化推進するための経費であります。  第三に、不当景品類及び不当表示防止法施行経費として一億九千百万円を計上しております。公正な競争を維持推進することにより、消費者の保護を図り、景品表示行政を積極的に推進するための経費であります。  最後に、その他人件費等予算として二十八億六千八百万円を計上しております。  以上、昭和六十三年度における公正取引委員会予算について、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。
  9. 大木浩

    委員長大木浩君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 福間知之

    福間知之君 まず、田村通産大臣にお伺いをします。  四月の中旬にバンクーバーで四極貿易大臣会議が予定されておる、あるいは五月にOECD閣僚理事会も予定されておると聞いておりますが、これらの会議目的、テーマというのは何か。大臣のこれらの会議に臨む心構えをまずお伺いしたいと思います。
  11. 田村元

    国務大臣田村元君) まず、四極貿易大臣会合性格でありますが、これは、日本アメリカカナダEC委員会貿易担当者自由貿易維持推進のために広く世界貿易問題を中心として自由かつ非公式に話し合う、これが性格であります。  過去、年二回ずつ、既にもう十三回開催されております。今度の会合は十四回目でございます。最近におきましては、ウルグアイ・ラウンド開始のための準備ウルグアイ・ラウンド開始後はウルグアイ・ラウンド推進のための意見交換を行って、大きく貢献をいたしてまいりました。  私が通産大臣を仰せつかってから、ポルトガルのシントラというところの会議、これは、ウルグアイ・ラウンドにどういうふうに先進国として対応するかということがフランクに話し合われた。先般の賢島四極ではこれの推進話し合いが行われたわけでありますが、今回の会合では、最近の世界経済状況を踏まえまして、貿易問題一般に加えましてウルグアイ・ラウンド推進重点を置いた意見交換が行われるということになると思います。  また、OECD閣僚理事会は毎年一回開催されます。加盟国貿易産業大臣外務大臣財政担当大臣等が一堂に会しまして世界経済の重要問題について幅広く意見交換を行う会合でございまして、その年のサミットにも大きな影響を与えてきております。ことしの議題はまだ決まっておりません。しかし、これまでのOECDにおける準備状況から考えますと、マクロ経済政策中心とした一般経済問題、ウルグアイ・ラウンド推進中心とした貿易問題あるいは構造調整などが主たる論議の対象になるのではなかろうかと思っております。  昨年のOECD閣僚理事会におきましては、私と倉成外務大臣とが出席をいたしたわけでございましたが、世界経済均衡是正のための各国経済政策あり方について焦点を当てまして、我が国の当時の財政政策の変更を強く求め、内需中心とする経済運営への転換に大きな役割を果たしたわけであります。  私としましては、国会の承認を得てこれらの会合に参加できれば、四極貿易大臣会合においては、さきのコンスタンツ貿易大臣会合の成果を踏まえまして、知的所有権あるいはサービス貿易等の新分野、セーフガード紛争処理等について一層突っ込んだ話し合いを行って、ウルグアイ・ラウンド推進のために参加国意見調整に努めてまいりたいと考えております。  また、OECD閣僚理事会におきましては、昨年の閣僚理事会において批判の強かった我が国内需あり方について、これは内需拡大策を講じたことによりまして我が国内需拡大が着実に進展していく、しかも貿易黒字の改善が進んでいることが明らかになってきますから、これを率直に御披露申し上げ、そして不均衡の一層の是正のために関係各国がそれぞれの責任を果たしていくべきことを強く訴え、この点で国際的な合意、同意の形成を得るように努めてまいりたいと思っております。この閣僚理事会において、私はこのような形で我が国国際場裏における孤立化を避けるとともに、世界経済運営の一層の健全化のために大いに頑張ってまいりたいというふうに思っております。
  12. 福間知之

    福間知之君 今大臣がるる述べられたように、この四極貿易大臣会議あるいはOECD閣僚理事会それぞれ、後者はサミットを控えての時期だと聞いていますし、重要な意味を持った会議だろうと思うし、ぜひ大臣もこれは出席をいただかなければならぬだろう、日本の今の立場から考えてそういうふうに思います。  ついては、私はこの委員会理事の一人として、今から法案審議がたくさん予定されているわけですから、大臣が向こうへ行かれる日程が少なくとも今二つ想定され、実はこの委員会運営に頭を痛めているわけなんです。先般も西ドイツにお行きになられたわけですけれども、一面で大事な会議だから日本立場として出席を願わなければならぬと同時に、国内で今国会関係法案審議をしているということで、非常に日程のやりくりでちょっと頭が痛いな、こういうふうに思っているんですけれども、事前にわかれば日程などは早く事務方を通じて知らしてもらうことが必要だろう、そういうふうに思うわけであります。  それから、今お話にもありましたように、アメリカが先般カナダとの間で自由貿易協定を結んだのを契機に、今我が国との間におきましても自由貿易圏というものを設けようとする動きが活発化してきておると思います。  アメリカがこの二国間による自由貿易圏構想に大変積極的なのは一体どういう理由によるものか、大臣の所見をお伺いしたいわけですけれども、この自由貿易圏構想というのは、一方では世界経済ブロック化というものにつながるのではないかという指摘もあるわけでありまして、通産当局黒田審議官の見解がある新聞でも表明されておりましたけれども、それによりますと、ブロック化を防ぐためにも自由貿易圏構想というものを推進するに当たっては、ガット中心にした、今お話のあったウルグアイ・ラウンド、これを進めていかなければならない、黒田審議官はそういうふうに言明しておられます。しかし、今回アメリカ自由貿易圏構想を打ち上げた背景は一体何なのかということを考えてみますと、遅々として進まないウルグアイ・ラウンドにしびれを切らしているのではないかというふうにも考えられます。  我が国としては、自由貿易体制維持のためにウルグアイ・ラウンド中心にしたガット体制を積極的に盛り上げていくということが国益にかなうのではないかとも考えられますが、自由貿易圏構想推進していくということが果たして国益にかなうのかどうか、まあ疑問というか不明確な点が少し考えられます。  大臣は、今の御答弁のようにウルグアイ・ラウンドを成功させるということに力を尽くしたい、こうおっしゃっていますから、しからばそういう観点でこの自由貿易圏構想というものについてどういうふうに考えておられて、対処していかれる所存でございますか。
  13. 田村元

    国務大臣田村元君) まず最初に、国際会議への深い御理解をいただいてありがとうございました。  率直に言いまして、貿易問題を論ずる国際会議日本担当大臣が出ないということは、もうその会議の体をなさないということでございます。先般のコンスタンツにおきましても、ドイツのバンゲマン経済大臣を初め皆から、お前が来てほっとしたよ、お前が来なかったら一体この会議がどうなるかと思って心配しておったということがございました。ありがとうございました。よろしくどうぞお願いいたします。  実は、米加の問題でございますけれども、昨年十月、この基本合意の際のレーガン大統領のステートメントなどから判断いたしますと、二国間において関税を相互撤廃することによって、相手国市場へのアクセスを促進することによって貿易拡大効果が期待される。それから、投資サービス自由化も含めて、ウルグアイ・ラウンド交渉のモデルを提供することによって世界ウルグアイ・ラウンドの意義を示すことができるというようなことが主たることでございました。私からは、米加両国に対して地域主義に陥らないように、この米加協定はそれなりの評価はできるけれども、地域主義に陥らないようにということは強く要請をいたしておきました。  それから、現在ガット加盟国は九十六カ国ございます。この幾つかの加盟国間で自由貿易協定に基づく自由貿易地域が成立しております。例えばヨーロッパ自由貿易連合、これはスイス、オーストリア、北欧諸国等でやっておりますEFTA、それから豪州ニュージーランド自由貿易協定、それから米加、それから域内の関税等の撤廃のみならず対外的に共通関税を有する関税同盟ということでEC、いろいろあるようでございます。  このように、ガットが許容する自由貿易協定に基づく自由貿易地域が存在するわけでございますが、一定の条件を満たすことを前提に、ガット自由貿易協定の成立を許容しております。このような自由貿易地域は、締結国間の貿易を促進して当該国経済活性化、ひいては世界経済発展に資することが期待されることは、これはもう当然のことでございます。  自由貿易体制維持強化するためにはウルグアイ・ラウンドを成功裏に導くことはもとより必要でございます。我が国としては交渉推進積極的貢献、これをしていかなきゃならないと思っております。我が国はどうするか、長期的視点に立ちましてガット体制と矛盾しない地域協力あり方もあわせて検討していかなければならないと思いますけれども、先ほど来申し上げましたEFTAあるいは豪州ニュージーランド、あるいはEC米加等々というような地域、あるいはそのお国ぶりというものと日本が置かれておる環境の違いもございます。でございますから、当然ガットの許容する、つまりガット体制と矛盾しない範囲内で我々はそういうことも検討していかなきゃなりませんが、すぐにどうといって即断することはいかがなものであろうか、中長期的な問題として十分の検討をすることは当然必要なことと存じます。
  14. 福間知之

    福間知之君 考え方としては、大臣のおっしゃるとおりだろうと思うんですけれども、特にまた我が国の場合、他のヨーロッパ諸国と違った地域状況等がありますから、どちらかというと非常に難しい立場にあると思うんです。ブロック化をしていくということとウルグアイ・ラウンドでさらに全体の調和協力関係をしいていくということ、これは二律背反ではなくて同時並行してやっていくということは必要でもあるし、間違いじゃないと思うんです。  しかし、日本の場合に特にアジアという地域状況から考えまして、例えば日米の間の二国間協定というふうなものを念頭に置く場合に、アジア太平洋圏というものとのかかわりを慎重に考えてかかる必要があるんじゃないか。アジア太平洋諸国立場というものを特に日本の側で十分にひとつ配慮をしていく、アジア近隣諸国を対等のパートナーといいますか、そういう立場で我々はとらえていかなきゃならない、そういうふうに思います。  かつて大臣も大東亜共栄圏的な発想で進めちゃならぬという言葉をいみじくも使われたことがありました、この委員会でも。要するにアジア近隣諸国立場に立って我が国は特に慎重な配慮をして、例えば日米間協定にしてもあるいはヨーロッパ諸国との関係を律する場合においてもそういう態度が必要だろう。対等のパートナーとしてのアジア近隣諸国というものを常に念頭に置いていく必要があると思います。  この点で、我が国のいわゆるODA政府開発援助というものは最近一年間で一兆円の大台を超えるという世界最大規模の水準に達しております。しかし、その割には相手国からしからばそれに値する感謝の気持ちを持たれているのかどうか、いまひとつ効果的なといいますか、援助が行われてきたとは思われないという指摘があるわけであります。ODA政策というのは、その動機が、海外から強まってきた対日批判をかわすためにその煙幕だというふうにも受け取られかねない、そういう感触を私は持つわけでありますが、だとすればこれは大変残念なことでございますので、大臣としてもそういう近隣諸国からの日本に対する見方、悪く言えば批判、そういうものに対してどういうふうにこたえていくべきとお考えでしょう。。
  15. 田村元

    国務大臣田村元君) 申すまでもなく、我が国発展途上国の貧困、飢餓等の諸困難を看過し得ないという人道的、道義的考慮、さらには発展途上国の安定と発展世界全体の平和と繁栄にとって不可欠であるという、そういう意味での国際社会相互依存性認識の上に立って、発展途上国経済社会開発に対する自助努力を支援する、そして、民生の安定、福祉の向上に貢献することを目的として経済協力を実施しておるところでございます。このような協力を効果的、効率的に進めるためには、相手国の実情に応じて、援助投資貿易が三位一体となった総合的な協力を行うことが重要でございます。  このような観点から、通産省としましては、特に我が国経済的、歴史的関係の深いアジア地域に対して、外貨獲得型産業の育成を支援する新アジア工業化総合協力プラン、いわゆるニューAIDプランを推進しているところでございます。これは御承知のように、昨年の一月、私はタイのバンコクでこの構想を打ち上げたわけでございますが、ASEAN諸国から大変歓迎を受けました。もちろん中国等も含めていかなければならないと思います。そういうことで、こういう画期的な構想を打ち出して、ASEA N諸国あるいは中国等が一次産業にのみ頼っておるということから脱皮して、輸出志向型に育っていっていただく。そのためには、まずもって日本が魅力あるマーケットになるということが大切かと思います。  なお、ODA等の援助につきましても、確かに喜ばれておるんです。喜ばれておりますけれども、なおグラントエレメントの改善等々、いろんな面でなさねばならぬことは多々あると思います。そういうことで、私どもも、ここに企画庁長官もおられますが、中尾長官の、あるいは宮澤大蔵大臣の御協力を賜りながら遺憾なきを期してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  16. 福間知之

    福間知之君 経企庁長官、どのような御所見ですか。
  17. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) もう全般にわたりまして田村通産大臣おっしゃられるとおりでございまして、私どもガット加盟国は言うに及ばず、ある意味においてはアジアからの連帯感、ある意味における親近感、あるいは距離感からいきましてもアジアは非常に日本の近くにある国でございますから、そういうアジアNICS等、目覚めておりまする韓国とか台湾等も含めまして、現実的に言いますならば、私どもが意欲的にこれらの国々ともともども繁栄を分かち合うということはもう先生御指摘のとおりだと思うのでございます。そのような意味におきまして、全般的にわたりまして、通産省を核にいたしまして、経企庁も大蔵省もともどもその域の中において頑張っていきたい所存でございます。
  18. 福間知之

    福間知之君 経企庁長官通産大臣もるる述べておられることは全く同感でございますけれども、問題はただそれを具体的に実行していく過程で相手国の十分な理解というものを得られないと、せっかく多額の援助我が国として提供しようとしても意味がなくなってしまうと思うんですね。  例えば日経新聞の「私の履歴書」という欄を最近読んでおりましたら、元駐米大使の朝海氏の話が載っておりました。東南アジアのある国、これはフィリピンだと思うんですが、における経験として朝海さんは、一般国民が貧しい生活をしているのに、大金持ちが一夜に百万ドルも金を使ってパーティーをやっている。そんな金があるんなら、はだしで町を歩いている貧しい多くのフィリピンの人々のために記念病院の一つでもつくるとか、その他の施策を実行することの方が大事じゃないんだろうか。日本援助がこの国の抱えるその膨大な失業問題を解決することに仮に使われるならば、そのことによって貧しい人々を少しでも減らせることになるし、援助は成功したと、こういうふうに言えるんじゃないだろうか、こういうふうなことを述べておられます。  私もそのとおりだと思うんですけれども、我が国が幾ら援助をしたとしてもそれが相手国の一部の人々だけに利益をもたらすということであっては、かえって一般の国民からは我が国批判を受けるということになって、感謝されるどころじゃないわけであります。  私は議員になる前にフィリピンにも数回足を運んだ経験があるんですけれども、御案内のとおり十五余りの財閥がありまして、国連の第一次五カ年計画、第二次五カ年計画という開発計画を立てて国連が援助してもなかなかそれが地につかない。かつてのマルコス政権時代を思い浮かべればなるほどそういうことだなと、我々の思っているほど援助したこの資金なりあるいはまた立てられた計画なりはなかなか実行に移っていかないということですね。そういうことを私も現地で何遍か聞かされましたし、大学の教授等の話によっても知りました。フィリピンは一つの例ですけれども、非常によくない例なんですね。これがマルコス政権の崩壊というものにもつながっていった大きな国内的な背景ではないかと思うんです。  そういうことを考えて、実質的に効果の上がるような援助体制というようなものを、資金を提供することとあわせて相手に干渉がましいことはできないかもしらぬけれども、一定の範囲で我々の意のあるところをやっぱり貫徹をしていくという、そういう強い姿勢がなければ意味がないと思います。そういうことを私は感じているので、これからのこの膨大な援助資金を提供する我が国としては、過去のそのそういう経験を踏まえて対処することをぜひひとつ強く望んでおきたいと思うんであります。  次に、時間の関係もありますので、ちょっと急ぎますが、日米の半導体協定の問題にちょっと触れてみたいと思うんです。  ECガット違反だということで日米半導体協定を提訴をしていた事件につきまして、ガットのパネルは、この日米半導体協定による第三国向け輸出価格監視はガット違反だと、こういう内示をしたと報じられております。その内容は果たしてどういうものなんでしょうか。  また、ガット違反の内示を受けたということは、この内示に我が国日米半導体協定に対して何らかの対応をとらなければならないということでもあるわけですけれども、政府はアメリカとの間でこの日米半導体協定の見直しということについて現在検討といいますか、対応を考えておられるかどうか、お伺いをします。
  19. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) まず私の方から前段についてお答え申し上げたいと思います。  先週、半導体問題に関しましてガット・パネルからの報告がガットの締約国に配付されました。パネル報告につきましては今後ガット理事会におきまして審議をされるものでございまして、これはガットの慣行によりましてその詳細な内容は現段階では明らかにすることができません。しかし、その概要を申し上げますと、御指摘のように、まず第一に、第三国モニタリング措置は総体としてガット第十一条で禁止される輸出制限に該当する、第二点といたしまして、市場アクセス措置はガット上問題はないというようなものでございます。
  20. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 御質問の後段の、それではパネル報告に対して我々はどういう対応をすべきか、しようとしているかという点でございますけれども、パネルの報告の概要につきましてはただいま御報告申し上げたとおりでございますが、実際の報告はかなり大部なものでございまして、事実の認定に関する部分とかあるいはガットの条文の解釈に関する問題とか、相当専門的な観点からいろいろな分析、整理をしてあるわけでございます。したがいまして、まずこの内容につきまして十分詳細に分析、検討をするのが先決でございまして、現在その作業を精力的に進めているところでございます。  これを踏まえまして、我が国としてもどういう対応をすべきかを検討してまいりたいと思います。方針が固まりましたら、いずれにいたしましてもこれは日米に現在協定があるわけでございますので、アメリカとの関係はもちろんございますし、またECがこの問題を持ち出したといういきさつもあるわけでございますから、そういった関係国との間でのすり合わせをしていかなければならないと思っております。今具体的にスケジュールが立っているわけではございませんけれども、いずれにいたしましてもこういった問題につきましてはできるだけ早く手順を進めていかなければならないと思っております。
  21. 福間知之

    福間知之君 この協定が締結された当時は、半導体製品の市況は大変悪化の一途をたどっておったというふうに記憶するわけですが、その後の市況は随分改善されてきまして、最近では品不足が伝えられるというふうな事情にもあるわけです。としますと、この協定は十分その役割を果たしたものと一面において言えるのではないかと思います。したがって、協定の見直しを強く要求していくべきだというふうに思うわけであります。  この協定に附属して、アメリカの半導体の日本における市場の占有率というものを五年以内には二〇%になるように日本側が努力するというふうな、そんな言うならば隠れた約束が行われたのじゃないかと当時のプレストウィッツというアメリカの商務審議官が明らかにしているんですけれども、そんな秘密書簡というか約束事があるのかどうか、またそういうものがあるとすれば、日米間の半導体の自由かつ公正な価格による市場形成を目指すという原則を維持していく上でこれは問題が残るんじゃないかと思うんです。そもそもこの半導体協定というのはアメリカのための保護貿易協定だ、こういう性格が一面あるわけでありまして、だとすればさらにその上にこの秘密協定的なものがあるということではこれはいささか納得できない、そういうふうに思うわけであります。  ちょうど今から一年前に、アメリカはこの日本日米半導体協定違反を理由にして半導体と全く関係のない日本の製品に対して総額三億ドルの報復関税を課してきました。その後一部解除はされていますけれども、この総額三億ドルの報復関税というものの措置はその後一体どういうふうになっておるのかということをお聞きしたいと思います。
  22. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 幾つかの項目についてのお尋ねでございますので、まず最初に、もう半導体の市況も随分よくなってきて大体協定ができたとき考えていたような状況にはなったのじゃないか、もういいんではないかという御質問であろうかと思いますが、御承知のように半導体協定というのは期間五年の協定でございまして、世上よくシリコンサイクルというような言葉が使われることがあるわけでございますけれども、この半導体の世界というのは景気のいいとき悪いときがかなり頻繁にあらわれてくるわけでございます。ちょうど協定を締結いたします時期というのは半導体がこれまで例を見ないぐらい景気の悪い時期であったことは確かでございます。  最近、福間先生も御指摘のように、いろいろございます半導体のうちの一部の品物につきましては需給が逼迫して価格が強含みになるというふうな状況になってまいりまして、確かに協定締結時点とは状況が変化していることは事実でございます。しかしながら、半導体協定の中でこういう価格問題に関するモニタリングにあえて触れましたのは、半導体というものが非常に技術革新が早い、あるいは量産効果によりましてコストの低下が急激に起きるというふうな半導体固有の特性があるわけでございまして、こういったものを頭に置きながら、世界の半導体産業あるいは半導体ユーザー産業の健全な発展を図っていくためにはやはりダンピング輸出は未然に防止すべきであると、こういうような考え方に立って協定が五年間の期限でできているわけでございます。  経済は生き物でございまして、現在は確かに仰せのような状況もないわけではございませんけれども、これから先のことも考えますと、現時点でこのような基本的な考え方を変える状況にはいまだないのではないかというふうに考える次第でございます。  それから、この協定の中で日本市場へのアクセスの問題について触れているわけでございますが、それに関連してどうも日本アメリカに対して五年以内に二〇%のマーケットシェアを占めるように秘密の約束をしているんではないかというふうな報道が確かにございます。前の商務長官顧問をやっておりましたプレストウィッツさんという人がおりまして、この人は第一次の半導体交渉のころには相当半導体について深い関係を持った方でございますけれども、第二次では率直に申しましてそれほどかかわりがあったわけではございません。  ただ、この人がどうもアメリカの報道によりますと四月の終わりごろに本を出すというふうに言われているわけでございまして、どうも本の中身とおぼしきものが日本の新聞に報道をされているわけでございます。その中で、二〇%というシェアを日本が約束をした密約があるんではないかと、こういうふうなことが言われているわけでございますが、私ども交渉の過程でアメリカの半導体産業、特にSIAという業界団体が日本の市場で何とか二〇%ぐらいのシェアを占めたいという希望を持っていると、こういう話はアメリカ側から何回か聞いたことがあるんでございますけれども、そこまででございます。  日本のように民間主導型の市場経済の国におきまして、特定の市場占有率を何の能力のない、そういうことのできる能力のない政府が約束するなんということはこれはもう到底できることではないわけでございまして、いかなる形であれそういったような秘密の書簡というものはございません。それからちなみにその協定がたしかできたときだったと思いますが、ヤイター通商代表がアメリカで記者会見をいたしましたときに、同様な趣旨の質問をアメリカ側でも受けたわけでございますが、その際にもヤイター代表はそういうふうなことは日米間で何の約束もしていないということを申しております。  それから報復と申しましょうか、関税上の特別措置をアメリカはまだ引き続き採用しておりますが、どういう状況であるかというお尋ねでございますけれども、御承知のように三億ドル相当のカラーテレビ、電動工具、パソコンにつきまして昨年の四月十七日に一〇〇%の関税を課したわけでございますが、その後昨年の六月と十一月の二度にわたりまして、第三国ダンピングについて事態が改善したというふうなことからこの特別措置を解除いたしました。一億三千六百万ドル分ぐらい、端数がございますけれどもそれぐらいの金額相当のものについては既に特別措置を解除いたしまして、一億六千四百万ドル、これは電動工具とパソコンを頭に置いた数字でございますけれども、そういったものだけがまだ日本の市場アクセスについてアメリカ側の期待どおりの実績が上がっていないということで残っている状況でございます。
  23. 福間知之

    福間知之君 今の御説明は御説明としてわかるんですけれども、結局私は結論的に、日米半導体協定そのものを見直すべき時期が来ているんじゃないかというふうに考えているんです。それはどうなのかということをお聞きをしているわけです。  大臣御案内のとおり、アメリカはもう事あるごとに昨今は通商法三〇一条なるものを持ち出してはおどしてきたりしているわけです。佐藤農水大臣もあしたですか出発されるとか、あるいは今小沢副長官が公共事業問題で話し合いに行っているんですね。とにかくアメリカの出方というのはいささか高圧的な出方でして、我々としては我慢ができないという気持ちが実はあるんです。アメリカは今大領統選挙を控え、下院の全員の改選を控え、それぞれが日本たたきをしていりゃ損はねえというふうな傾向が感じられるんですね。それは私は、本当に我が方も少しは腹を据えて言いたいことを言うべきじゃないか、こんな気がするんです。そのためには農産物とか公共事業、今新しく出てきている問題ですけれども、半導体の問題なんかはちょうどいい私は材料だと思うんです。  先ほど来るる述べておりますように、市況も大分変わってきましたし、ましてやそういう秘密書簡で、五年以内に二〇%のシェアを日本アメリカが確保するというようなこと、そんなものは政府レベルでできる代物じゃありませんしね。だから、半導体などというのは最近の動きを見ますと、IBMなんかでも大分政策転換をしてきていまして、日本側が一方的に押しまくられて理不尽を突きつけられるというふうな事情じゃありません。この協定の見直しぐらい一遍出して見たらどうか、腰のあるところを見せてもらったらどうかと思うんですが、大臣いかがですか。
  24. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) ただいまの御質問でございますけれども、大臣のお答えの前に一言だけ言わしていただきたいと思いますが、先ほどもちょっと触れましたように、この協定はそもそも日米間で一年がかりで議論して五年間の協定ということでできているわけでございまして、もちろん協定の基礎になるような状況について重大な変更があったときには双方で協議をするというふうにはなっているわけでございますけれども、現在の状況は、私ども見ますところでは、やはり生きた経済の一つの時合いの一局面という気もいたしますし、むしろ今の非常に異常なアメリカ側の特別措置を早く撤回させまして、正常な状態でこの協定がワークするというふうにするのが一番大事じゃないかというふうに考えているところでございます。もちろん主張すべき点は大いに主張しなければならないと思いますけれども、協定をうまくワークさせていくというのが私ども、また事務方としては非常に重要だと思っております。  例えばマーケットアクセスの問題なんかにつきましても、三月の二十四、二十五でございますか、日米の業界同士がアメリカのモントレーというところに集まりまして、どうすればこれをもっとうまくやれるだろうということで、日米が共同で努力すること、アメリカが努力すること、日本が努力すること、こういうふうな項目も分けていろいろな議論をいたしております。さしあたりは双方の業界ともその議論の進展に非常に満足している、今後さらに具体的な細かい作業をして、六月ぐらいにはいい成案をつくろうじゃないかというふうなことも言っているわけでございまして、必ずしもぎすぎすした局面ばかりではなくて、何とかこの協定をうまく生かしながら世界の半導体産業活性化に寄与していきたいというふうな点もございますので、ぜひその点も御理解いただければ幸いでございます。
  25. 田村元

    国務大臣田村元君) 福間さんおっしゃるとおり、アメリカの議会の日本に対する仕打ちというのは率直に言って腹に据えかねるものがあります。唯一の救いはアメリカ政府、行政府が保護主義に対して厳しい反対の態度であり、日本に対して理解を示してくれることが多い。これは救いでございますけれども、それにしても、アメリカの場合は完全な三権分立でございます。日本のように議院内閣制と違いますから、議会は政府に対してもう仮借なきまでに厳しいものがあり、政府のまた要路の人々も議会に対して非常に対応に苦慮する場面も多々あります。  私は、半導体問題につきましても、児玉君、村岡君等に言ったんでありますが、余りPTAがわあわあ言うのはいかがなものだろうか、ひとつ業界同士で話し合いをさしてみたらどうかと、こう言って業界同士で話し合いをしてもらったんです。非常によかったんですね。でございますから、今児玉君がいみじくも言いましたように、今のようにぎすぎすした感情のもとに政府間交渉、これの改定あるいは撤廃ということを前提にした政府間交渉をすることはいかがなものであろうか、まあガットの答えというものもあるわけですから、ガットとの整合性、また業界同士の話し合いの成果等々を踏まえて、あらゆる角度から検討していくというのが今の時点ではいいのではなかろうかというふうに思います。
  26. 福間知之

    福間知之君 半導体関係、私もかかわりはないことはありませんので余り申し上げたくもないんですけれども、昨年の予算委員会でもあるいは当委員会でも、かなり私も厳しいことをここで口にしたことがあります。半導体問題、協定の問題を取り上げたんですが、あの段階ではまだ技術水準で二百五十六キロビット程度のものだったんですが、今やもう一メガビットですね。一メガビットはもう大体各メーカーとも量産体制をしこうと思ったらいつでもしける状況にあります。それから一つのターゲットはもう四メガまで来ていますからね。  そうしますと、そういう分野の製品、あるいはまた量産体制というようなものは、なかなかアメリカ日本には勝てないだろうと思うんですよ。だから、今度新たに出てくるのがあったら、そういうレベルでのまた問題が日米間の半導体問題というのには出てくる危険なしとしないなと、やっぱりハイテクの最たるものですから、アメリカにしてみたら日本にそこまで追い上げられ、追い抜かれてしまうということにはたまらないという気持ちがあるわけなんですね。  しかし今まで言ったように、それは何だかんだ言ったって、いい製品を割安でしかも不良率も非常に低いというふうな仕事は、日本には向こうは勝てないんですよ、この分野では。そういう焦りがやっぱりあるものですから、何だかんだ理屈をつけては文句を言うてくると思うんです。これからも目が離せないと私は思っておるわけでございます。  したがって、当局としても言うべきことはきちんと言うてもらうということが必要だし、今の半導体の協定の見直しについて一遍真剣に考えてみてください。これは僕はいい問題だと思うんです。かさにかかって今いろいろ来ていますからね。それにひとつこちらが対抗する意味でもこれはいい材料になると私は見ているんですけれども、これは大所高所から一遍考えてみていただきたいと思うんです。  それから次に、公取委員長の方にちょっとお聞きをします。  いわゆる昨今NICS製品の不当表示という問題が一部クローズアップされています。三月二十三日付の日経新聞でございますが、公正取引委員会はこのNICS製品輸入拡大のためにNICS製品の不当表示を排除していく方針であるという記事がありましたが、具体的にこれはどういう中身でございますか。
  27. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 一般的に、輸入品につきまして我が国消費者が原産地国も含めまして誤った表示、誤った認識のもとに商品選択をしないようにということで、公正取引委員会といたしましては従来から、これはNICSに限りませずあらゆる国の製品につきまして原産国表示をきちんとしてもらう、したがってそういった表示に誤りがあった場合にはそれなりの対処をするということでやってまいったわけでありますが、たまたま昨年十二月でございましたか、レザーウエアの事業者が、我が国の事業者でございますけれども、NICS製品の原産地国の表示を外しまして日本製あるいは国産品といったようなタグを貼付して販売したという事例がございまして、これに対して排除措置を講じたわけでございます。  私もその記事は拝見いたしましたけれども、恐らくその事件との関連でそういった報道がなされたのではないかとも思うわけでございますけれども、今この時点で殊さらNICS製品だけについてそういった方針を決めるということではなくて、ただいま申しましたように、従来ともあらゆる国の輸入品につきましてそういう厳正な表示をしてもらうということで私どもは臨んできておるわけでございます。
  28. 福間知之

    福間知之君 だから、国内の輸入業者や販売業者がNICSの製品を国産品のように見せかけて売るということですね。その場合に、原産地の国名がちゃんとシールされている場合と、されている場合はまだしもなんですが、されていない場合があります。この場合に公取委としてはどういうふうに対処されるか困っておられるんではないかなと思うんです。  今一つの例が出ましたけれども、そういうのがどんどんふえてくると、もともと日本の国民のイメージとしてはNICSの製品というのは品質がよくないという先入観念がかなりあるわけですから、だからそこをつけねらって販売業者が、あるいは輸入業者が日本製品に見せかけるような偽りを凝らすわけなんです。だから、そのことは長い目で見れば決してよくない。そういう相手国さんにとって決してそれはプラスにならないというふうに思うわけですけれども、このシールのないような場合にどういうふうに公取委としては対応されていくのかということ、これちょっと気になっているわけです。
  29. 土原陽美

    政府委員(土原陽美君) 先生御指摘のように、外国製の製品について偽って日本製というようなシールを張るというのは不当表示の典型的な例でございますが、それ以外にも例えば原産国以外の国旗とかあるいは事業者名を表示するとか、あるいは表示のすべてが和文で書かれているということで国産品という誤解を受けるというようなものは、積極的に日本製と明確に書いた場合と同様に不当表示の問題が出てくると考えております。  また商品そのものだけの表示じゃなくて、一般的な広告の中で原産国について誤認を受けるような表示をするとか、あるいは流通段階でもって新たな表示をつけ加えて誤認を受ける、誤認されるというような表示も同様に不当表示の問題があると考えておりまして、私どもとしましてはそういうものについて厳正に対処していきたいと思っております。
  30. 福間知之

    福間知之君 公取さんの立場としては最近そういう傾向が一部に見られるけれども、これは決して相手国にとっても長期に見ればプラスにならないんです。そういう輸入業者の、あるいは販売業者の虚偽の販売行為というのはよくないということを少し声高にやっぱり叫んで、そういうことのないようにする必要があると思うんです。具体的に発見できた場合は、これはしかるべく対処していかなきゃいけないが、そういうことのないように大いにPRをしておく必要があると思うんです。  本来NICSというか、対日輸出国は自分のところの製品にメード・イン・タイランド、メード・イン何ということをはっきりと表示してやることが一番望ましいんですけれども、それを余りやりたがらないという傾向もあるとすれば、そこにつけ込む輸入業者が出てくるわけですから、相手国さんもそういう認識、意識を持ってもらわなければならぬということは言うまでもありません。  これは国内においては公取さんがぜひひとつそういうことのないように大いに事前にPRをして、そういう芽を摘んでおくということが大事かと思っております。これが長期にわたって日本の市場で相手国さんが仕事ができる、やっていけるための最低条件だろう、そういうふうに思うわけでございます。これ以上これに余り触れることは避けたいと思います。  経済企画庁にちょっとお伺いします。  今年度の政府予算経済成長率に対する寄与度についてどう見ておられますか。  昨年は、国会で本予算審議している段階に、既に大型補正予算による財政支出の追加が不可欠だという認識が与野党とも一致しておったんです。すなわち、昨年七月に補正予算が成立をして、内需拡大のための事業規模六兆円の追加が行われました。ことしはこういうことはさてあるんでしょうか、いかがでしょう。
  31. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 昨年の例を言われますると、私もたまさかその会合には絶えず出席しておったメンバーの一員でございますが、大変にある意味における声が反映されて大成功をおさめたと思います。しかし御質問の趣旨が、六十三年度の政府予算経済成長率への寄与度をどう見るかという一点、さらにまた、財政支出の追加というものが必要になってくるのかどうかというような御質問かと承りますのでお答えをさしていただきます。  我が国といたしましては、引き続き主要国との協調的な経済政策の実施を推進をしつつ、内需中心とした景気の着実な拡大を図ることといたしました。六十三年度予算におきましてはNTT株式の売り払い収入の活用などを図ることによって、一般公共事業費について前年度当初予算に対して二〇%増という極めて高い水準を確保したところでございまして、内需拡大には十分資したところでございます。  しかし、以上のような経済運営のもとで、六十三年度の我が国経済はと申しますと、第一点としては、外需は対外均衡是正過程を反映して引き続きマイナスの寄与となるものと見込まれているものの、二点として挙げられますことは、内需は景気回復二年目を迎えまして、個人消費及び設備投資中心に引き続き好調を持続する見込みでございまして、全体としては内需中心とした着実な成長が十分可能と考えておる次第でございます。したがいまして、補正予算が必要とされる状況にあるとは私どもはまだ考えておりません。  なお、政府支出の寄与度についての詳細につきましては、また御必要とあらば政府委員から答弁さしたいとは思います。
  32. 横溝雅夫

    政府委員(横溝雅夫君) 御質問のありました政府支出の寄与度につきましては、六十三年度におきましては私ども実質で〇・三と計算しております。  今、大臣がお答え申し上げましたように、六十二年度において緊急経済対策で公共事業を二割増という非常に高いレベルに持ち上げましたものですから、その持ち上げたレベルを維持するということで、当初予算比では二割増でありますけれども、補正後では基本的に横ばいということでありますから、それをいろいろ詳細に検討しました結果は、政府支出全体として〇・一二%の寄与度でございます。ですから、個人消費、設備投資等、民間需要を中心に景気回復二年目ということで、民間需要を中心に六十三年度経済展開していくものと考えておる次第でございます。
  33. 福間知之

    福間知之君 経企庁が三月十七日に発表しました昨年十月—十二月期における国民所得統計速報というものによりますと、実質GNPの伸び率は前年比一・七%、年率換算した瞬間風速では七・〇%を記録した。昨年の七—九月期の二・〇%、年率八・四%に引き続いての高成長を達成した。その内訳について説明もありましたが、外需は減少し内需の住宅投資、個人消費等が主力として好景気を生んだ、こういうことでありますけれども、しからば今後の見通しは果たしてどうなのかということであります。  それからもう一点、今問題なのは成長のいわば中身といえば中身なんですが、例えばGNPの六割ないし七割を占める個人消費について見ますと、総務庁が三月の十日に発表した六十二年の家計調査報告によりますれば、株や土地の大幅な値上がりの恩恵を享受した一部の高所得者層による高級家具や高級乗用車等、ゆとりの消費に裏打ちされたものであることが判明しております。そのために、果たして今のようなペースでの消費がいつまで続くのか、余り長続きしないのではないかという弱気の見方も一部にはあるわけであります。したがって、今後とも内需拡大による好景気を長続きさせるために、大多数を占める、持たざる者というと語弊がありますが、多くの一般勤労国民の消費拡大をいかに図るかということにかかっておると思います。  ここで、ことしの春の賃上げについて見通しを述べろと私は言っているわけではないのでございますけれども、政府の御見解をお聞きしておきたいと思います。
  34. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 福間先生の御質問は二点にわたって行われていると思います。  特に、なかんずく大変喜ばしい報道ではございますけれども、昨年の十月—十二月のQEが前期比で一・七%と御指摘いただきました。全くそのとおりでございまして、その前のQEに比しましても大変に高成長でございました。このようなことは全く何十年かぶりというような状況でございますだけに、正直な話、高成長に達したということの御指摘は全くそのとおりであろうかと思うわけでございます。六十二年の十月から十二月期が七月から九月期に引き続いて高い伸びを示したというのはそのとおりでございますが、内需が住宅投資あるいは設備投資、政府支出を中心に順調な伸び、すなわち寄与度が二・四%ということを示したためであることは実証できるわけでございます。  このような内需の好調につきましては、一つには円高、原油安のプラスの効果が行き渡りまして、家計や企業の支出を増大させたことが一つであろうと、このように思うわけでございまして、緊急経済対策の財政拡大策が一点、あるいは金融緩和という政策効果が浸透してきたという点が二点目であろうかと思うわけでございます。三点として申し上げますならば、我が国産業が円高に対する調整を進めて内需転換を図ったということなどが要因として私どもは考えているわけでございます。  そこで、今後の我が国経済について、じゃどうなるのかといいますると、私どもの非常に身近な考え方といたしましての外需は、対外均衡是正過程を反映して引き続きマイナスの寄与となるものと私どもは見込んでおります。一方、内需は景気回復二年目を迎えまして個人消費、設備投資等が中心に引き続いて好調を持続すると見込まれておりまして、全体としては内需中心とした着実な成長が見込まれるのではなかろうか、また続くものと見込んでおる次第でございます。  ただ、先生の第二点の御質問の、一部の高所得者層のみならず大多数の持たざる消費拡大が必要となると思うがどうであろうかと、こういう問題点でございますが、これは最近の消費動向を家計調査で見ますると、勤労者世帯の伸びが大変低いのでございますが、個人消費全体としては堅調に進んでいることは確実でございます。個人消費は国民経済の約六割を占めておりまして、内需主導経済構造への転換、定着を図るためには、その安定的な拡大が極めて重要であると認識しております。  今後ともそういう点におきまして個人消費の拡大をさらに実現していくためには、どうしても緊急土地対策の要綱に見られますような土地対策の着実な実施による総合的な推進というものに努めていかなければならないということとともに、物価安定を確保しながら経済の持続的成長というものを維持することなどによって、実質可処分所得の増加などを図っていくことが必要と考えておる次第でございます。
  35. 福間知之

    福間知之君 時間がありませんので、最後に通産省と公正取引委員会にまとめてお伺いいたします。  一つは、円高効果が消費者に十分還元されないという状況につきまして、円高には交易条件改善による実質所得増の効果があると言われます。実際、ドルではかった所得水準は世界でもトップクラスになっております。しかし、一つは我が国の消費財の大半が国内での生産に依存をしているために、円高効果も原材料費に限定されて価格引き下げ要因が小さいということが一つあります。  それから、円高効果を丸々期待できる完成品等の輸入品の流通が小規模である。一つには、総代理店制度などが横行していますから小規模である。そのために国内品との競争が少なくて円高効果を消費者に還元できない、移転できないという状態が続いている。円高効果を実感できないでいる多くの消費者の不満感を私たちは軽視するわけにはいかぬと思いますが、この点についての通産、公取の見解はいかがですか。  二つ目に、海外市場における割安な日本の商品についてであります。  海外旅行の土産に異変が最近起きておりまして、ニューヨークやシンガポールなどで日本製の商品、例えばカメラ、ゴルフクラブ等を買って帰る人がふえております。同じ商品でも海外で買った方が大幅に安いからであります。しかし、裏を返せば国内では高い物を買わされているというわけでございますので、これは消費者をばかにするも甚だしいという話でございます。同じ物がなぜこうも値段が違うのであるか。海外で買えば買い得ということはもうそれだけじゃ済まされない根深い問題がそこには潜んでいるように思います。この点についての御所見を伺います。  三つ目に、まかり通る一物多価、一物一価じゃない一物多価という状況についてであります。  一物二価問題につきましては、これは日本企業の過当競争体質、内外の流通機構の違いに本当の原因があると指摘する声は強うございます。つまり、日本の流通機構は複雑で、製品がメーカーから消費者に渡るまでのルートが何段階にも分かれている。それに加えて、代理店制度等の拘束料金が何重にも付加される、流通マージンが膨れ上がる一方であるからです。こうした現状について放置してきたつけが、最近、輸出された商品を日本に逆輸入して店頭に並べたところ、逆輸入商品が国内流通ルートに乗って販売されている商品の半値だというケースまで出始めています。このようなばかげた事態がまかり通っていることに対してどのようにお考えでございますか。  それから四つ目に、ダンピング輸出に起因する逆輸入製品、今の話と同様ですけれども、こうした一物二価とでも言うべき状況が生ずる理由として業界が挙げた理由には、急速な円高、これは一ドル二百四十円から一ドル百二十七、八円によって、ドル建ての輸出価格を大幅に上げなければならないが、上げれば競争相手に負けてしまう、消費者離れが生ずることを警戒している、こういう点であります。これは電気製品などにも見られます。そのために、こうした一物多価現象が多くの工業製品を中心に広がっておりまして、このままでは外国政府から日本企業のダンピング輸出だという非難が今後高まることが十分予想されるんです。一物二価問題についてどのように解決をしていくかということ、これは非常に今重要な時点に到達した感じを私はしております。  今、似たようなテーマの質問を四つばかりいたしましたけれども、それぞれ御見解を伺います。
  36. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) まず、第一から第三まで私からお答えさしていただきます。  第一の先生の御指摘でございますけれども、おっしゃるとおり、日本に輸入される物資は原材料等が多いのはそのとおりでございます。その結果といたしまして、その原材料分の値下がりが消費者に実感されるまでには時間がかかり、またはいろんな経路を通ってまいりますので、実感されにくいということになるのは御指摘のとおりでございます。  それから、完成消費財の輸入、これにつきましては、御指摘のとおり、全輸入の約一割程度しかございません。また、これを別の見方から見ますと、例えば大手の百貨店で売られている品物のうち輸入品、完成消費財の輸入品はどのくらいあるかといいますと、一割弱でございます。そういう意味で、これまたなかなか実感がわきにくいということでございます。  そこで、基本的には原材料といえども、消費財といえども、すべて円高利益は適正に還元されるべきでございますけれども、より一層消費者にわかりやすい形を実現するためには、もう少しその輸入消費財がふえてくるのが望ましいというふうに考えます。この点につきましては、大手流通業者に通産大臣からたびたび要請をしておりまして、輸入の促進の努力を求めておるわけでございますが、最近は、大手の小売業者は単に海外にある品物を見て、適切な物を見つけて買ってくるという、いわば受け身に近い姿勢からさらに進みまして、積極的にこういった品物をつくってくれというふうに海外に注文いたしまして、それを輸入するという、いわゆる開発輸入がふえてきておりまして、新規の輸入商品の中では百貨店で約四割、チェーンストア、いわゆるスーパー、大手スーパーでは六割くらいが開発輸入品でございます。そういう意味では、大手小売業者による海外品の輸入というのは、円高差益の還元という、いわば受け身から、円高メリットの活用という積極的な姿勢に転じておりますので、こういった形で先生御指摘のような問題点が少しでも早く解消されていくように、今後とも業界に対し慫慂し、あるいは指導をしてまいりたいと思います。  第二、第三につきましてはまとめてお答えいたしますが、御指摘のような二重価格あるいは一物多価の現象が生じますことについては、国内で売られております物と海外で売られております物との仕様の差あるいは規格の差等もございまして、比較はかなり困難な面がございます。また、仮に同じ物につきましても価格差があるではないかという多分御指摘だと思うんですが、これにつきましてはいろいろなことが考えられまして、一つには円高が余りに急激に進んだために、一方において海外価格の値上げがまだ追いついていない、あるいはもっと円安の時代に輸出した物が今売られている。これは今のレートで換算しますと、おっしゃるような現象が生ずる、あるいは物品税の有無の差といろいろございます。  しかし、そのほかに日本の流通機構にも問題点があるんではないかという御指摘でございまして、私どもは今報道されておりますような一物二価あるいは一物多価が伝えられている物資の日本国内の流通機構がそれ以外の物に比較しまして、その物の流通機構が極端に不合理だというふうには必ずしも考えておりませんけれども、しかし流通機構にもなお一層効率化すべき点がないと申し上げるつもりはございません。  したがいまして、一面において海外価格の問題がありますと同時に、国内においては、御指摘のような問題が解消に向かうように今後とも流通の合理化に努めてまいる考えでございます。  第四につきましては、吉田政策局次長の方からお答えいたします。
  37. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) それでは、ダンピング絡みの問題についてお答え申し上げます。  ドルベースで見ました輸出価格が今回の円高局面を通じまして上昇傾向にあることは事実でございますが、円レートの上昇率とは必ずしも一致しているわけではございません。その背景としまして、先生御指摘のありましたような円レートの上昇が急激であったためにタイムラグが生じているというような問題に加えまして円高、原油安によります原材料コストの低下あるいは企業の合理化努力などの事情があるというふうに考えております。  また、最近、外国政府の一部におきまして、日本製品の価格が円高を十分反映していないことからダンピングが行われているのではないかというような問題意識があるのは事実でございます。  しかしながら、今申し上げました三点ほどの事情に加えまして、ダンピングの認定には輸入国の産業の受けた損害の立証も必要でありますことから、一概に私どもダンピングであるとは言いがたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、ダンピング問題は基本的には企業の問題でございますが、通産省としましても、その動向を十分注視してまいりたいというふうに考えております。
  38. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 御質問の点につきまして、私ども公正取引委員会に関連いたします部分、ごく簡潔に申し上げたいと思います。  まず、輸入の問題でございますけれども、これは御案内のとおり、近年、政府部内を挙げまして、この輸入の促進とかいう観点から関係省庁全力を挙げてやってきておるわけでありますが、公正取引委員会といたしましても、一昨年でございましたか、市場アクセスの改善のための幾つかの考え方をまとめまして逐次実施に移しておるわけでございます。  基本は、やはり競争政策観点からいいますと、その輸入制限カルテルのようなものが存在した場合、これは絶対に排除しなければならない。それからもう一つ、今御指摘になりました輸入総代理店、これはそのこと自体は競争にとって必ずしもマイナスの側面だけではないわけではありますけれども、問題はその輸入総代理店が並行輸入に対しまして不当な阻害を行う、こういう事例も若干あるわけでございますが、こういう面をどんどん当委員会としては当委員会に課せられた任務といたしましてこれを排除していく。商品の種類によりますけれども、ここ一、二年顕著に値下りを示してきておるものもあることは事実でございます。だからこれは個々の商品ごとにいろいろ今後アプローチしていかなければならない問題と考えております。  それから、御指摘のありました一物多価あるいは国内価格と外国での同じ製品の外為相場換算で非常に格差が出ておるといういろいろな問題でございますが、これを国内の商品価格の問題として取り上げますれば、これも言うまでもなくその価格カルテルとかそれからもう一つ、日本の流通機構の一つの特徴と言われておりますメーカーによる系列的な流通機構、これはともすれば再販価格維持に結びつきやすい体質を持っておりますので、この点につきましては今後とも我々といたしまして厳重に監視をし、適切な措置を適時講じていかなければならないと思いますけれども、この流通機構全体の問題は単に競争政策上の観点だけでなくて、我が国の商慣習も含めまして非常に長い慣習的な背景もある問題でございます。  たまたま私どもこの流通機構全般じゃございませんけれども、現在いわゆるメーカーの小売希望価格、これが一体流通機構にどういう影響を与えておるのかということで今外部の学者等も含めまして研究をいたしております。近々その成果を公表いたしましてこの日本の流通問題についていろいろ議論される場合の材料を提供したいというふうに考えるわけでございます。  最後に一言、これは別に公正取引委員会がまとめた考え方じゃございませんけれども、やや私見にわたりますが、公正な競争秩序のもとで市場価格が形成されていく、これはまことに理想的な姿であるし、またそうでなければならないわけでありますが、その前提といたしまして、やはり市場というものは供給する側とそれを求める消費者側との関係で成り立つものでございまして、私どもは広い意味での消費者に対する情報といいますか、消費者の物を買う場合の意識の変革といえば少し言い過ぎになるかもわかりませんけれども、そういった議論がやはり日本全体で行われるということが日本市場に私はいいインパクトを与えていく問題ではないかということでございまして、ただいま御指摘になられましたような議論は、今後各方面でやはり議論されるということが究極的に日本の市場を望ましい姿にもっていくための私は大きな力になると考えております。
  39. 松尾官平

    ○松尾官平君 両大臣、連日大変御苦労さまでございます。  まず、通産大臣にお伺いをいたします。今月の二十四日の朝日新聞の夕刊が報じているわけでありますが、「黒人の自立へトウフも一役」という見出しで日系の方が映画「風と共に去りぬ」で有名なジョージア州のアトランタで豆腐レストランを開業している。これは黒人に対する雇用機会の拡大のためにということなんであります。大変うれしい限りなんでありますが、これをやっておられる店主は佐賀県出身で米国籍の田尻さんという七十八歳の方で、この方の談話が出ているわけでありますが、「黒人がダメだ、といわれるのは、職がないから。貧困も、犯罪も、自立できる職業、経済的な基礎に欠けるからです。米国憲法は機会均等をうたっているが、現実は違う。収入は白人層の半分。失業率も倍近い。黒人にやる気を起こさせるきっかけを作れればと、二千万円でトウフハウスを始めたのです」、こういう談話が出ているわけであります。  ところが、これを報じた同じ二十四日の夕刊の一面を見ますと、「雇用で人種・女性差別 米国ホンダが補償金 六〇〇万ドル」、こういう見出しで約三百七十名の黒人や女性の雇用を差別したということで六百万ドル、約七億六千万円の補償金を支払わされる、こういう事件が起きておりまして、同じ日の新聞の一面と三面で全く逆のことが報じられているわけであります。これにコメントがありまして、「米国では企業の差別は、それほど珍しいことではないが、日系企業の場合には、従業員の質にこだわる日本的経営のひとつと見なされ、日系企業全体が差別的と見られるおそれがある」、今後この傾向が高まるのではないかという心配のコメントがついているわけであります。  今議会を通じましていろいろアメリカ日本たたきの事例が論じられているわけでありますが、ここに木本委員という専門家もおりますけれども、日本のホンダがアメリカへ進出するに当たって人間を雇用する場合にどういうことをやるかということについて、アメリカ人のスタッフもおりましょうしコンサルタントもあって私は企業が進出していると思うんです。極端な差別をしているはずはないと私は思いたいんです。それがこういうことで日本の企業がまさに大きな日本たたきの中の一つとして虐待をされていると言ってもいいと思うんです。このことが他の日系企業に影響することをここに書いてありますとおり大変心配するわけでありますが、こういう事例をお聞きになって通産大臣はどのような御感想をお持ちか、一言簡単にお願いいたします。
  40. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) まず、事実関係につきまして私からちょっと御答弁をさせていただきたいと思います。  ただいまお尋ねのございましたように、二十四日の朝日新聞にホンダが米国の雇用機会均等委員会との間で六百万ドルの補償金を支払うことになったという事実が伝えられております。私どもも非常に関心を持ちまして調査をいたしてみましたところ、アメリカでは人種とか性的な差別に基づいて雇用上の差別をしてはならないということになっているようでございまして、これに違反しました場合には補償金の支払いとか社内での待遇の改善とかを命ぜられるということになっているようでございます。これはこの雇用機会均等委員会というのが職権で各企業に立入調査をしまして、その結果、違反があれば今申し上げたような措置をとるということになっているようでございまして、残念ながら米国のホンダが今申し上げたようなことになっております。  ただ、私ども承知しておりますところでは、日系企業だけがこういうことで措置の対象になっているということではないようでございまして、アメリカ系の企業も例えば有名なGMとかグッドイヤーとかというようなところもこの違反措置ということでいろいろな対応を求められておりまして、その場合の補償金額等も今回伝えられておりますホンダの六百万ドルというものよりは非常に大きな額になっているという事例も承知をいたしております。したがいまして、日本企業だけということではございませんが、日本企業が海外に進出をいたします場合にその雇用問題については現地の法規制なり労働慣行といったものに従って処理をすることは……
  41. 松尾官平

    ○松尾官平君 私は大臣から感想を聞いているのだ。事実関係は簡明に言ってくれよ。
  42. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 当然だと思います。私どももこういった問題についてはこれからも日本企業について十分指導をしてまいりたいと思います。
  43. 田村元

    国務大臣田村元君) 我が国の企業の海外事業活動、これはもう現地社会との協調、融和というものが不可欠であります。我が国企業の現地子会社の雇用問題につきましては、一義的には投資先国の労働慣行や労働法規というものにゆだねられるべき問題であると思います。こういうことから、投資先国の労働慣行や労働法規の尊重を内容とするOECDの多国籍企業の行動指針というのがあります。それから我が国経済七団体が作成しました海外投資行動指針というものがありますが、こういうものに沿った海外事業活動が確保されますように、その普及、遵守の指導を行ってきたところでございます。  いずれにいたしましても、やっぱり郷に入らば郷に従えということも必要でありましょうし、それから同時に、日本の企業というものがこれから進出していく場合、日本の企業という意識を余り強く持たないで、すっかり現地の企業になり切ってしまうというぐらいの気持ち、つまり、今はどうか知りませんが、昔からよく言われております嫁に行くならばそこの女になり切れという言葉をよく私の母が妹に言っておりましたが、そういうようなことが必要だろうかと思います。  ただ、今ちょっと産政局長が言いましたことで、私具体的なのを持っておりますので申しますと、一九八〇年ごろから随分あるんです。フォードが二千三百万ドル補償を取られたとか、GMが四千二百万ドル取られたとか、バーリントン不動産が七百万ドル、それからリビー・オーエンズ・フォードというのが一千万ドル、皆これ性差別です。それからオハイオ州政府が三百七十五万ドル、州政府も取られているんです、これも性差別。グッドイヤーが五百万ドル、ステートファームというのがやっぱり性差別で、カリフォルニアにあるんですが、これは一億ドル取られているんです。向こうはそういうことが非常に厳しいんですね。でございますから、日本と事情も違うということもお酌み取り願いとうございますが、いずれにしてもやはり日本企業も気をつけなきゃなりませんが、国際化ということで通産省も十分の注意を払っていきたいと思っております。
  44. 松尾官平

    ○松尾官平君 事実関係はわかりましたが、問題は、今の時点でこういう事例が報道されると、また日本たたきだ、こういうことになって、先般来大臣の答弁を聞いておりましても、アメリカのいら立ちというものがいろんな形で日本影響をしているというような意味の御発言もございました。いよいよ日米農産物交渉も最後の時点を迎えて、明日佐藤農水大臣が行かれるそうでありますが、この結果がどういう結果になりましょうとも、日米漁業交渉の結果を見るまでもなく、農産物交渉の結果は、たとえどういう答えが出てくるにしても予想されることは、日本農業にとって大変厳しい答えが出てくるんじゃないかと思うわけであります。こういう事態を迎えて私が心配するのは、アメリカのいら立ちというよりも日本のいら立ちが深まっている、高まってきていることを非常に恐れるわけであります。  私の地元の例を引いて恐縮でございますが、我が県でも実は末端へ入っていろいろ農民の声を聞いてみますと、大変な自民党の悪口であり政府の弱腰を追及する声であり、またアメリカを不当だとなじる声が非常に高まっております。これらが実は相乗効果を起こしまして一つの方向へ向かいつつあることを私は恐れているわけであります。  ここは商工委員会ですから通産関係のことに触れて申し上げてみるならば、通産関係のいわば国家的あるいは準国家的な事業として我が県に原発が二カ所、あるいは核燃料サイクル事業が今進行しつつあるわけでありますが、こういうことに対してまでアメリカ日本に対する態度を不満に思う方々の気持ちがいら立ちとなってはね返ってきているわけであります。  時間がありませんので続けますが、私はこういう事態を大変心配しておりまして、それはどこに根本原因があるかということになりますと、第一次産業県である青森県のようなところでは、いわゆる第一次産業が衰退していく、これを恐れる気持ちが根本だと思うんです。まして第一次産業が不振になれば私ども商工業界にも大きな影響が出てくることは論をまちません。こういう事態を考えた場合に、外圧に対する処理に追われる余り、国内対策というものがおくれたならば大変な事態になるんじゃないか。  そこで、通産のいろんな政策にしましても、先を見越して中長期的に第一次産業県に対しては特別な施策が考えられていいのじゃないか。あるいはまた、両大臣いらっしゃいますけれども、閣議などにおいてこの第一次産業問題等にはそれぞれのお立場から発言があってしかるべきじゃないのかということを考えるわけでありますが、これまた御感想で結構でございますから、お願いいたします。
  45. 田村元

    国務大臣田村元君) これはもう松尾さんおっしゃるとおり全く私も同感ですよ。  私は、先般もコンスタンツでヤイター代表に言ったのですが、あっちこっちに火をつけるようなことはやめてくれよと、とにかく今のアメリカ日本に対する攻勢というのは、もう対応し切れないほど数が多いし、そして何かというと他国である日本の国家のこと、民族のことまでくそみそにののしるが、こういうことは勘弁してもらいたいと。もっとも行政府がやっておるわけじゃない、議会ではあるけれども、こういうことで反米ナショナリズムというものがもし高まってきたらどうなるんだということを強く私は言ったんですが、それに対して彼は、困ったというゼスチャーを示しながらも、それほどおまえの国には多くの問題が存在するんだと、こう言うわけですよ。  まあそれは確かにそうかもしれません。そうかもしれませんけれども、日本アメリカとの関係、それは単なる友好国というだけでなしに、経済的に完全に結びついて、お互いがお互いを失ったら大変なことになるということも考えれば、これはもうアメリカ側にも十分にそういう点に思いをはせてもらいたいと思います。  しかし、これはアメリカのことですから、そこで私はこの前も申し上げたのですが、特にお願いしたいことは、私は約二年近くになってきましたが、半導体、ココムに始まって今日に至るまで随分いろんな問題ありますが、今ほど私は議員外交の必要さ、重要さを感じたことはありません。とにかく議員外交というのはどんどんやってもらいたいと思うんです。アメリカならアメリカへ行ってアメリカの国会議員に日本の国会議員が、おいと言ってぽんとそれこそニックネームで呼んで肩をたたいて、日本的に言えば酒酌み交わしていろいろと個人的な話までし合うというような議員外交があっていいんじゃなかろうかとつくづく思います。  と同時に、先ほどの第二の問題ですが、私も実は原子力発電問題を抱えているんです、地元で。もう反対運動が左傾化しまして、そしてあげくの果てが、自民党の悪口のみならず政府の悪口のみならずアメリカの悪口まで、もう全くよく似た状況下にあります。私はこの点、やはり地元の国会議員も十分に国策、国是という面から、あるいは大局的な面から大衆を説得しなければならぬと、私は勇気を出してやっております。と同時に、やはり政府ももっとPRを、特に電源開発、電力会社等はもっともっとPRをやるべきだと思うんです。  それから第三の点です。第一次産業中心としておる地域、県というより地域ですね、地域に対しては、これはやはりその人々の、つまり地域活性化に資するための先行投資とも言うべき国家的プロジェクトをどんどんと、それは大小いろいろありましょう、ありましょうが、それをどんどんと投入していくということは必要でしょう。私はその点で、あなたのお隣の北海道の石炭でやってみました。確かに喜ばれました。石炭で非常にエキサイトしそうなところが、むしろ私に礼を言ってくださったところも多々あります。でございますから、今松尾君おっしゃったとおりでありまして、私もそういう趣旨で部下を督励していきたいし、また他省庁にも話しかけ、呼びかけていきたいと思っております。
  46. 松尾官平

    ○松尾官平君 どうもありがとうございました。  きょうの大臣のごあいさつの中でも七つの重点事項を挙げて、「地域活性化」とか「内外の環境変化に対応した中小企業施策展開」とか、こううたっていただいておりますので、どうぞひとつこれがお題目だけでなく、実力大臣のもとで具体化していきますようにお願いをしておきます。  時間がありませんので、次の質問に入りたいと思います。  四全総の関係でございますが、今回打ち出された一極集中排除、多極分散型の国土をつくらなきゃならぬということでございます。これはもう国民ひとしく同じ思いであり、大歓迎しているところではないかと思うんであります。ところが、残念ながら過去の三全総あるいは新全総あるいは初めての全総等々、経過を見ますと、立派なことはうたってあるんですが、積み残しをしたまんまで次の計画へ行く。まあ三全総の定住圏構想などもそのいい例であります。  こういうことを考えた場合に、なぜじゃその新全総なり三全総なりがそういう運命をたどるんだろうかとなれば、やはり私に言わしむれば、経企庁さんの担当なさる経済計画、今度出されます新経済五カ年計画のような経済的な裏づけがまず一つ考えられる。そしてまたもう一つの点は、大変お偉い方々を前に置いて恐縮でございますが、何となく新全総とか三全総とかいえば国土庁が立案したものだということで、政府全体として各省が真剣に取り組んだだろうか、こういう疑問を持たざるを得ないわけであります。  そういう面で、私はぜひ今度の四全総こそ具体的な施策展開して積み残しを出さないように努力をしていただきたいと思うんでありますが、そういう点について、四全総に取り組む通産大臣のお考え、あるいは経企庁長官のお考えを簡単にお聞かせ願いたいと思います。
  47. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) 松尾委員まさに御指摘のとおりでございまして、四全総というものが今度もっと有機的に、機能的にその働きを果たしてもらうようにと、こういう仰せでございますが、全くそのような方向づけの中に私どもの経済審議会も現在、一生懸命検討中と同時に推進しているわけでございますが、特に昨年十一月二十日に内閣総理大臣から、内外諸情勢の変化に対応して、豊かさを生かした国民生活の充実、国土全体の均衡ある発展実現すること等を内容とした長期経済計画の策定について実は諮問を受けているところでございます。  第一点は、ごく簡単に言うならば、今言った一人一人の暮らしをよくすること、第二点は、何といっても一極中心主義的なあり方から多極分散型の効果を期しむることというような問題点などを踏まえまして、私どもは今鋭意その問題点に努力をさしていただいております。  このために、現在経済審議会におきましては第四次全国総合開発計画で示されました多極分散型の国土づくりを進めまして、国土全体の均衡ある発展を図る必要がある、こういう認識観点から高速交通ネットワークの構築、あるいはまた情報通信網の整備、あるいは広域経済圏の戦略的育成、また定住基盤としての居住環境の整備充実等の将来にわたる我が国発展基礎を維持するための方策について現在御審議を賜りまして、間もなく、大体通常五年に一本出している経済政策ではございますけれども、今度の場合はサミット前に何とかつくっていこう、こういう意図から半年間の枠組みの中に、私も審議会の各委員に御依頼を申し上げまして、強く松尾委員が今言われましたような趣旨を盛り込んだ形で目下作成中であり、間もなくそのような方向づけの答申案の発表もできるんではなかろうか、そのように考えておる次第でございます。
  48. 田村元

    国務大臣田村元君) 私は長年経済計画というのと取り組んできましたけれども、今度の四全総の志向する多極分散型国土の形成というのは、これは従来と違って文字どおり追い詰められた、もう背に腹はかえられない、がけっ縁の構想ということが言えると思うんです。でありますから、通産省だけじゃありません、すべての役所がこれに整合性を持たせた施策展開というものが必要だと思うんです。  私は、あなたが青森だからといって申し上げるのじゃありませんが、北から言えば北海道とか東北とか、あるいは九州の南部とか、あるいは四国の南部とか、その他、今裏日本と言うとしかられるかもしれませんが、北陸、山陰とか、そういうところの地域活性化を図っていく、どのように地域活性化を図っていくかということでやっていかないと、今度の場合は地域も困るが、このままでいくとまた逆に東京も困るんですね。そういうことで追い詰められたぎりぎりの経済政策ということで我々もいろんな仕事をするのもすべてこれを軸にしていくというふうに考えております。
  49. 松尾官平

    ○松尾官平君 どうもありがとうございました。いずれも大変力強いお答えでございまして、感謝したいと思います。  きょう渡されましたこの参議院予算委員会要求資料の中にあります「新経済計画の基本的考え方と検討の方向」というのが経企庁から出ておりますが、ちらっと見ただけでもすばらしい考え方が示されているわけであります。ぜひひとつこれが具体化しますようにお願いをするわけであります。  ところで、四全総の中で、どうしても我々自分の地域のことを見るわけでありますが、あの中に期待される構想として青函インターブロック交流圏構想の推進という項目があるわけであります。今度の青函トンネルの開通を契機にして、青森と函館の頭文字をとって青函インターブロック、これは地元にとっては大歓迎でありまして、北海道知事と青森県知事と協議を重ね、あるいは事務検討を進めているところであります。しかし、何といってもおくれているといいますか、私はおくれているんじゃなくて、おくらされている北海道、青森県と言いたいんですが、そういう弱いところが肩を寄せ合っても弱いと思うんですよ。となると、やっぱり国のいろいろな御指導とか援助というものが必要になってくるんじゃないかというふうに思うわけであります。  両知事の合意しているメモ等を拝見しますと、先般通産大臣梶原委員に対して答弁なさいましたように、中心が交流の円滑化のための基盤である交通、情報・通信体系の整備ということで両知事の意見が一致しているわけです。大臣が先般そういう御答弁を、大分県の事例のときなさいました。まことにそのとおりでございまして、こういうものが整備されますように税制面、財政面あるいはいろんな面で指導助言等をぜひ今後お願い申し上げたいと思います。  その中心となるのは、言わずもがな東北新幹線盛岡—青森間の一日も早い開通だと私は思うわけでありまして、去年の十二月末に大蔵との大臣折衝が行われました際に、我々が運輸大臣激励のために行っておりましたら、そこへ通産大臣があらわれて、やあ東北か、あれはやらなきゃならぬぞと激励していただいたことが今でも耳に残っておりますので、ぜひともひとつ御支援をお願いしたいと思います。  なおまた、三月二十四日のサンケイを見ますと、経済審議会の企画・公共部会で、中間案をつくるに当たっての記事が出ております。これを見ますと、第一案はいわば通産ベースの高成長型、そして大蔵主導型の低成長型、そして中間の安定成長型に落ちつきそうだということが出ておるわけでありますが、経済企画庁の案が三・八%となっておったのが三・七%の方へ引っ張られて、どうもやっぱり大蔵の方に引っ張られる。結果どうなったか私新聞を見ておりませんが、もし三・七%に決まったのだとすればちょっとまた大蔵に大分引っ張られたなという感を持つわけでありまして、どうぞエネルギッシュな実力長官でありますから、元気を出してひとつ先生のお考えをどっと出していただくようにお願いをしておきたいと思います。  時間がありませんのでどんどん進みますが、通告してあります第三点、労働時間の問題であります。  この問題は、もう今や避けて通れない大変な問題になっているわけでありますけれども、実は我々中小企業はこれに対応するに大変な難関を突破しなきゃならないわけでありまして、きのうの新聞にも「小売店はつらいよ 無休五店に一店」というような表題で、三百六十五日営業している店があるとか、あるいは週休二日なんというのは一%しか実施されていない現状だというようなことが記事として出ております。これをこの四月から四十六時間体制に入るわけでありますが、中小企業については三年間だけは御猶予願うようにお願いしてそうなっているわけでありますが、しかし、いずれにせよ近々中にそういう体制に入っていくわけであります。そういう場合に、労働省はもちろん責任を持って御指導いただけると思いますが、相手が中小企業ということになればどうしても通産、中小企業庁に御指導していただきませんと、こういう体制に乗っていけないと思うわけであります。  そこで、質問の中心は、去年の九月に改正されました労働基準法一部改正に伴って進行する事態に対処して、中小企業に対して通産省はしかるべき強力な御指導をしてもらいたいと思いますがいかがですかということが質問になるんですが、時間がありませんので、私なりの提案もくっつけて申し上げたいと思います。  これはいつかも通産大臣に申し上げたかもしれませんが、日本の今の社会生活といいますかライフスタイルといいますか、これを見てみますと、土曜、日曜が買い物の日になっているんですね。そうすると、その買い物客が来る店の労働者は土曜、日曜は休めないわけです。労働省に言わせれば交代で別な日に休めば同じじゃないかと、こうおっしゃるのですけれども、やっぱり一週間、日曜から始まって土曜日まででしょうか、この流れというものが今や国民生活に定着してきている中で、第三次産業に携わる労働者だけが土曜も日曜も休めない、こういう形をそのままにしておいたのでは労働時間の短縮とか週休二日というのは私はどうしても本物にならないんじゃないか。  やはり先進国は、我々たまに外国へ行ってみても買い物をしようとしても日曜日はデパートが休んでおります。そういうことから考えましても、やっぱり日曜日は国民の休日なんだから本当の意味の休日に何かの方法で指導していく必要があるんじゃないだろうか。そうして、週休二日になったら土曜日は買い物の日にしていただいて、日曜日は本当の意味の休みにできないだろうか。  この間、ニュースを聞いておりましたら、総評の提唱でしょうか、週一日は残業をやらない日を決めたとかいって、この間からテストに入っているようですけれども、組合を持っておる労働者の皆さんはそれなりの要求を出していけるわけですけれども、第三次産業に働く労働者の大半は未組織労働者であります。まとまった意見を出せないわけであります。私ども商工会の立場からいうと、我々がやっぱり面倒を見てあげなきゃいけない。そうなりますと、どうしても政府の今までとは変わった、ただ単に労働時間を短縮するというだけじゃなく、何か変わった施策がなければとても二千百六十時間の労働時間を千六百時間にしろといったってできるものではないと思うわけであります。  中小企業労働者対策をいかにするおつもりですか、そしてまた、強力な御指導、御援助をお願いしたい。この二点であります。
  50. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 政府委員からお答えするには大変大きな問題で恐縮でございますけれども、先生、商業問題をいわば入り口におっしゃったものですから、一言御説明させていただきます。  日曜休業につきましては、これは商業問題だけではなくて、休日というものは一体どうあるべきかという大変大きな問題でございますから、私ごときがお答えするのはどうかと思いますが、ちょっと御参考までに百貨店の売り上げの曜日による変化を申し上げますと、日曜日は平日に対して、月によって差はございますけれども、差の大きい月は五割増しの売り上げがございます。少ない月でも一割増し。大体三割とか四割とか五割ぐらいでございます。こういう国民生活のショッピングパターンでございますので、商業問題だけとりましてもなかなか難しい問題だと思います。  そのほか、最近は日曜以外の日につきましても営業時間を延ばす方向になっておりますが、これにつきましては、私どももそのしわが商業労働者に寄ってはならないという基本的にそういう認識でございまして、これは経営者についても同じ認識を持っていると思いますし、そんなことであればいい人が来なくなりますから、まずは大型の百貨店、チェーンストア等の、いわば組織労働者のいるところで労使よく相談をしていただいて、しわの寄らないシフト制を工夫しつつやっていかなきゃいけない。それによりまして、その他の第三次産業にもいい影響が及ぶ、少なくとも悪い影響が及ばない、進んでいい影響が及ぶように商業政策の担当者としては考えております。
  51. 田村元

    国務大臣田村元君) 先ほどからお話しのあった件は、皆私の昔関係があったことで、前の運輸大臣として物を申せばということになるわけですが、多極分散型国土を形成するというのは、何といっても一番大切なものは交通インフラの整備と、こういうことです。  それから、今の労働者の休日問題、これは労働省、総務庁中心に十分お考えを願うことでございましょう。  実は、定年延長と労働時間の週休二日ということを提唱した最初の労働大臣は私だったんですが、そのころから見ると随分定着しておりますが、今審議官申しましたように、消費者のニーズというものとのかかわりというものも大変難しゅうございます。私は自分の自論でこういうことを言うのもちょっと今では他省庁の権限に若干踏み込むことになるかもしれませんが、こういう問題を解決しようと思えば、まず消費者のニーズあるいは国民のニーズを十分に踏まえながら、まず政府と金融機関が先にやらなければできないということです。政府が土曜閉庁をまだ実施していないというような状態ですから、そこいらからまず先にやるべきじゃないでしょうか。そのようにして、いやでも日曜日はお休みになっていくというようなことを実現していくことが必要なんじゃないだろうか。土曜、日曜休みなしというのは、政治家はちょっと身につまされますけれどもね、つくづくそう思います。これは労働省と総務庁で真剣に御検討願いたい、そして通産省その他の意見もよく聞いていただきたい、このように思います。
  52. 松尾官平

    ○松尾官平君 許された質問時間はまだあるわけですが、皆さん方の健康も考えて終わります。
  53. 大木浩

    委員長大木浩君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ─────・─────    午後一時十八分開会
  54. 大木浩

    委員長大木浩君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、松本英一君が委員辞任され、その補欠として久保亘君が選任されました。     ─────────────
  55. 大木浩

    委員長大木浩君) 昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち公正取引委員会経済企画庁通商産業省所管中小企業金融公庫中小企業信用保険公庫議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  56. 青木薪次

    ○青木薪次君 中小企業をめぐる経営環境は非常に厳しくなってまいりました。私は午前中に我が党の福間委員の質問を聞いておりましても、半導体摩擦から今日アメリカが平衡感覚を失ったような要求を次から次へと持ちかけてくるというような問題に対する対応等についても非常に問題でありますが、特に中小企業の場合におきましては、国内のいわゆる内需拡大という面に支えられて、例えば下請産業あるいはまた輸出型の下請産業等におきましては、それぞれ対応が非常に今日目まぐるしく変わってきているというように言えると思うのであります。  特に二度にわたる石油危機を背景にいたしまして、我が国の中小企業はエネルギー面からの構造転換を余儀なくされたと思うのであります。その結果、省エネルギーが徹底的に追求されてまいりまして、自動化、省力化を求めましてエレクトロニクス化というものが進んでまいったと思うのであります。  現在中小企業者が当面している環境変化は、一番目に市場面からの要素に起因しているということが言えるのではないかと思うのでありますが、長年培われてまいりました量的拡大の輸出型体質が、経済摩擦が高まるに従って認められなくなってきて、そして国内市場にふさわしいビジネスを目指したものへと転換を迫られていると思うのであります。量よりも高付加価値商品の生産を中心に考えた体質へと脱皮をしていくということが言えると思うのでありまして、この構造転換要因と並行いたしまして、例えば長寿化とか女性の社会進出とかあるいはまた国際化等々の社会構造の変化も存在を今日非常にしていると思うのでありますが、これらの情勢について大臣、どんなふうにお考えでしょうか。
  57. 田村元

    国務大臣田村元君) 今、中小企業を取り巻く経済環境についてどういう認識を持っておるかという御趣旨の私の感想を求められたものと思います。  御承知のごとく、技術革新それから情報化の進展、消費者ニーズの多様化等需要構造が大変変化してまいりました。そこへもってきてアジアNICSから追い上げを食らっております。特に中小企業の競合の激化というものが激しゅうございます。そういうような中でしかも円高というものに追い打ちをかけられておりますから、いや応なしに体質の改善、いわゆる生きるための構造転換ということを余儀なくさせられたわけでございます。このような内外の厳しい環境変化の中で、最近の中小企業の景況は総じて回復しつつございますけれども、なお二面性というものがくっきりと浮かび上がっております。  輸出型の中小企業、とりわけ今おっしゃいました輸出型産地あるいは企業城下町等の景況にはなおはかばかしくないものがございます。円レートの動向等も含めまして今後の中小企業の景況を十分注視してまいらなければなりませんが、それに伴って中小企業を取り巻く雇用の面あるいは構造転換によって新しく道を選んでいく面あるいは融合化の面、また政府として取り組むべき問題としては地域活性化の面とか、いろいろな問題がございます。身の引き締まる思いでこういう問題と取り組んでまいりたい、これが私の中小企業に対する、大変大ざっぱで恐縮でございますが、感想ということになります。
  58. 青木薪次

    ○青木薪次君 エネルギー面からの制約ということが私は非常に大きな中小企業へのインパクトを与えていると思うのでありますが、省エネ、省力化へと志向した結果、先ほど申し上げましたようにエレクトロニクス化が進みまして、一段と中小企業がたくましくなったという表現ができると思うのでありますが、今後我が国の中小企業がどんな変質を遂げていくのかという点については相当な注目を集めていると思うのであります。  今アメリカ、西欧との経済摩擦が非常にあるわけでありますが、市場面からの構造変革要因というものは、中小企業に今申し上げたどういうインパクトを与え、どのように中小企業は対応していくべきなのか、構造転換の方向とかあるいはまた対応策といいますか、これらの点について所信の一端を述べていただきたいと思います。
  59. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに日本の中小企業は過去におきましても、例えば日本経済の重化学工業化あるいは石油ショック、こういういろいろなそのときどきの試練を乗り越えて日本経済の中で依然大きな地歩を確保し続けておるわけでございますけれども、今大臣が申し上げましたように、再びか三たびかわかりませんが、今改めてまた大きな環境変化の試練の中にある、このように考えております。  それは、特に円高という急激かつ大幅な環境変化という短期的な衝撃、それが今後ずっと長期的に及ぼすであろういわば環境条件の変化、二つあると思いますけれども、今、六十年九月のG5以来二年半を経ましてそういう急激なショックに対する対応というものは、私どももそれなりの努力をしてまいりましたし、ある落ちつきを示しておると思います。例えばあの事態以降私ども現在円レート幾らならば可能ですかという質問を定期的にしてまいりました。最初は二百円を超えておりました。現在は百六十円とか、そういったペイラインを示す中小企業の数が多くなっております。  したがって、そういう意味で急激な円高という衝撃、これについては、いろいろな犠牲を払いながらそしてなおかつ今まだその影響をこうむって脱し切れないところは抱えておるものの、全体としてはそれなりの落ちつきを示してきたんではないかと思っておりますが、それがもたらした構造的な変化、それは国際化という一言で言えると思いますけれども、今後中長期的に中小企業が対応していかなきゃいけない大きな挑戦である、そのように考えております。  NICSからの追い上げという大臣の御指摘ございましたけれども、今やそういうNICS製品というものが、数年前までは価格的には競争力があるがなお品質、納期、信頼性、そういう面で我々に利がある、こういう答えが多かったんでございますけれども、現在は中小企業者の意識調査をしましても、そういう品質、納期、信頼性、そういう面でも非常に大きな競争力の脅威と感じられるようになってきておりまして、そういう中で一段と日本国内の中小企業が占めるべき分野というものが変わっていかざるを得ない。そういう中で今御指摘のエレクトロニクス化等によるいわば自分の存立分野の変化みたいなものを今努力しているところであるというふうに考えております。
  60. 青木薪次

    ○青木薪次君 環境の変化ということは、相対的に経営資源の乏しい中小企業にとって最も対応しなければ生きていかれないという問題についても非常にすばらしい側面も持っているんですね。例えば中小企業者は、昔は一人親方で汗を流してかじ屋さんのようにトンテンカンで生きてきた。ところが今日ではそれではいけませんので、中小企業の日ごろ持っている柔軟性といいますか、あるいはまた機動性といいますか、今直ちに対応できる、お互いに中小企業のおやじさんを中心といたしまして議論がすぐさままとまる、すぐほかの面に対応できるというような面は実はあると思うのでありまして、私もいささか中小企業の、零細企業と言った方がいいかもしれませんが、非常に日ごろ教えられるし、また私どもも意見を述べてきているわけでありまするけれども、そういった意味ではビジネスチャンスをつかむことができるという特質が実はあると思うのであります。中小企業の当事者がこうした意見を持つのはともかく、他の、例えば政府もそうでありますけれども、我々も軽々にそれらの点についてこうしろああしろというような画一的な指導をすべき立場ではなく、またそういうように大きな環境変化というものが私は今中小企業の側面にひたひたと押し寄せているというように考えているわけでありますから、そういう意味では中小企業を指導するということと中小企業から学ぶという、この両側面が実は必要だと思うのであります。  経済を変えていく基本的要因というものは、物や力の結合を変更することであるというように言われておりますけれども、例えば具体的には新しい財貨といいますか、新しい品質の財貨の生産をどうするというようなこと、新しい生産方法の導入、それから新しい販路の開拓、これらの面についても先ほど大臣が融合化ということを言われましたけれども、私はよく青年経営者の諸君とも議論をするわけでありますが、君ら同じ仲間同士でもって今まで何とか協同組合法に基づく事業協同組合にしても企業組合にしても何でもやってきたけれども、そればかりじゃだめだ、君のことを外から見て、ある場合には生産の当事者で、ある場合にはお客さんになってやっていくということをやらなきゃだめだよ。そういう意味でひとつ新しい販路の開拓といったことに取り組みなさい。あるいはまた、原料や半製品といったような問題等についても新しい供給源をひとつみんなで獲得したらどうかというようなこととか、中小企業の、今日勉強会なんかを中心とした新しい組織、この組織をつくってみたらどうかというようなことについて、中小企業の構造改善についていろいろと提起をするわけでありますが、実は素人の意見というやつが案外取り入れられるということも、今日特徴的な分野が開拓されていると思うのであります。  ですから、今日例えば産業構造の変化というけれども、昔は重化学工業の重厚長大から、そして石油危機の時代には川下指向が出てきた。素材産業が停滞し、加工業者やサービス産業発展に特色があった。今日ではどうか、今日ではサービス化、ソフト化ということが求められるというようなことがよく言われるわけでありますが、今申し上げました、私は五点ほど提起をいたしましたけれども、こういう問題について国が政策として、特に通産省や中小企業庁が施策として取りあげることのできるものは、本来企業の自助努力といいますか、これらにゆだねられる分野であると思うんでありまするけれども、余り多くはないとは思うけれども、しかし、これらの点で国が施策として介入する余地があるとするならばどの分野なのかというような点についてひとつ長官に御意見をお伺いいたしたいと思います。
  61. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに六百五十万おりまして、製造業だけでも八十九万の中小企業者が、これはもう日本全国でも毎日毎日どこかで何かの創意工夫が行われておる。そういう状態の中で、国がこうしなさいとかああすべきであるというふうな一律の指導というものはできるべくもないし、またすべきでもない、このように考えております。  ただ、そういう自助、自主独立の精神に燃えた創意工夫ある中小企業者が環境条件に応じて自分はこうしたい、そういう意欲と決断をしたときに、例えば資金がないからそれが実現できないということでは申しわけないので、そういう決断をされたときに、例えばその方向に沿った資金面の用意をする、あるいは信用が十分ではないから資金が借りられないという面については信用補完をする。それから、そういう方向へ行きたいけれども、さしあたり今自分の技術だけでは足りない、そういうときにその技術開発の支援をする、あるいはそういうことを組合でやりたいと思うけれども、その組合をつくるについてまたいろいろな支援をする、そういうことで中小企業者が自主独立のもとで創意工夫のもとに新たなる展開をしようとするそのときに、資金、技術あるいは市場の知識、あるいは人材、そういうことのゆえにそれが実現できないという事態ができるだけ少ないようにすること、それが私どもの中小企業政策の基本であると考えております。
  62. 青木薪次

    ○青木薪次君 昭和五十六年版中小企業白書によりますと、昭和三十二年から昭和五十三年までの約二十年間における生産増加のうち、少なくとも三割は技術進歩によってもたらされたものであるということがあります。ここに言う技術力とは一体何なのかということを考えた場合に、技術進歩を可能ならしめるためにはどんなようなアプローチが必要か、今問題とされなければならぬと思っているわけであります。  私自身は技術力とは、市場のメカニズムに合った財とかサービスとかを生産する能力だというように考えているわけでありますが、これはさらに市場のニーズとは何かを探り出す能力と、そのような財とかサービス、これを商品化することのできる能力とに分けることができると思うのであります。言ってみればマーケッティングリサーチ能力と言いかえることができるかもしれない。しかし、この能力は中小企業にとって身につけることが困難なものの一つではなかろうかと思うんです。  この能力開発を手助けする施策を国が講ずることは可能なような気がいたします。これだけの基盤を持った通産省でありますから、そう思うんでありまするけれども、大臣、この辺についてどういうようにお考えになっておられますか。
  63. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) ちょっと技術開発支援についての中小企業の具体策の御質問でございますので、私からお答え申し上げますと、確かにこの中小企業、まず技術開発しようにも人材それから資金が少のうございます。そこで現在、総額七十億技術開発資金を投じております。そのほかに、予算措置ではございませんが、特定地域対策として年間約五十億、中小企業事業団の資金を用意しております。そういうことで、中小企業の行う技術開発を政府としても支援しておりますし、同時に人材という面では中小企業大学校、あるいは各地にございます公設試験場、こういうところで中小企業の中核技術者の研修、あるいは具体的な技術問題に関するアドバイス、そういう制度をとっているところでございます。
  64. 青木薪次

    ○青木薪次君 市場のニーズに適応した商品を製造する技術力について言いますると、一般に生産の技術は素材と労働と資本とかというようなことがよく言われるんでありまするけれども、素材に相当するものは原材料であり、労働に相当するものの中には特に人間の技能というものが非常に重要視されているわけでありますが、資本というものについては機械器具や土地、建物というように言われていると思うのでありますが、これらの要素が総合的、効果的に関連をもってシステム化されてくるところに一種の広義の意味における技術力がある、こんな具合に我々は勉強することができると思うのでありますが、その点いかがでしょうか。
  65. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 先生のおっしゃるとおりだと思います。それを技術力と申しましょうか、あるいは経営力と申しましょうか、あるいは経営資源の総合力と申しましょうか、そういうものが必要であるということはそのとおりだと思います。特に、御指摘のいろんな着想、技術を市場において事業化する、製品化する、この能力、これが中小企業の場合、特にこういう構造転換が迫られているときに非常に大きなファクターになるというふうに考えております。
  66. 青木薪次

    ○青木薪次君 枝術力を高めるには個々の要素のレベルを高めると同時に、システムを効率的に構築していくといいますか、そういうように考えているわけでありますが、労働とシステムというものについて、労働とは今申し上げたように技術者のことだと、技術者の創造的、技術的能力を高めることが改めて検討されなければならない今日的課題になってきているというように思うのであります。  今までといいますか、昔は中小企業のおやじが直観でやっておった。ところが、大企業の場合には、いわゆるそれらの実情を検討し、調査してシステム化しているという点が言えると思うのでありますが、中小企業といえどもそれをしなくてはやっていけなくなった。したがって、大企業に比べてひどく見劣りがしておるという状態から脱皮するために、国が積極的に乗り出さなければならない一つの分野でもあると実は思っているわけであります。もちろん技術者の人材養成を行ったり、あるいはまた公設の試験研究機関による中小企業向けの技術開発研究を実施するなど、これまでも数多くの施策を講じているけれども、より効果のある中小企業の技術開発施策というものは一体ないものだろうか。施策担当者の問題意識というものをこの際やっぱり聞いておかなきゃいかぬと思うのでありまするけれども、その点いかがでしょうか。
  67. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 先ほど申し上げましたように、中小企業の技術者の養成あるいは中小企業の技術開発努力への要請、そういうものに対する支援策というものはそれなりに、十分とは言えないかもしれませんが特にこの数年間力を入れてきたつもりでございます。  もう一つが、今そういう技術が現実に生かせるための一種の情報といいますか、事業化のための情報の不足みたいなものがもう一つあるような感じかとも思いますけれども、これは確かに御指摘のとおりでございまして、じゃどういうものをつくったらどういう市場へ売れるか、そういう知識、探求、こういうものがもう一つ中小企業の場合要るんではないかというふうに考えております。  このために、基本的には、今私ども地域情報センターというものを各地域ごとにこの数年来設立を支援しつつあります。既に四十カ所以上全国にできておると思いますけれども、こういう地域情報センターが今後長期的にはそういった中小企業のいろいろな市場ノーハウも含め情報の提供の重要な源になるというふうに期待しているわけでございます。  もう一つが、昨年というか六十二年度から始めましたけれども、下請企業のテクノフェアというものを七ブロックに分けて始めました。これも今度はそういう下請企業がいろいろみずからの技術でつくりました新しい製品の市場開拓の一助としてそういったフェアを始めたものでありますけれども、これも非常に好評でございまして、七ブロックで多分二十万人以上の入場者があり、非常に多くの商談が成立を今しつつあるという報告を受けておりますので、そういう構造転換のために努力した新たなる成果、これをできるだけ市場ヘアクセスをさせる、その支援策というものを今後さらに充実していく必要があるというふうに考えております。
  68. 青木薪次

    ○青木薪次君 参考までに聞いておきたいんでありますが、昭和六十年の七月に施行されました中小企業技術開発促進臨時措置法というのがありますね。これに基づいて技術開発計画を作成した組合等は大体幾つあるのか、そしてまた、この法律によって補助金とか融資などの助成策を講ずることになっているけれども、その実績についてはどうなっているんだろうか、技術開発という点でどのような効果が上がっているだろうかという点についてひとつ事務当局から聞いておきたいと思います。
  69. 村田憲寿

    政府委員(村田憲寿君) ただいまの御質問の技術開発関係の組合の数でございますけれども、六十二年度で申しますと六十五組合ということになっておるわけでございまして、予算といたしましては五億二千万円を配分いたしておるわけでございます。
  70. 青木薪次

    ○青木薪次君 技術開発でどんな効果が上がっているのか。
  71. 村田憲寿

    政府委員(村田憲寿君) それから認定状況でございますけれども、六十年度、六十一年度合わせまして六十八の件数を認定いたしておるわけでございます。  これを通じまして、いろいろ各地域ごとのこういう研究開発等の関係の組合でございますけれども、例えばある県で申しますと、中小企業を対象としました新しい情報のシステムの研究開発でございますとか、あるいは地域に密着いたしました素材の自動選別とか均質化システムの開発といったようなことも行われておるわけでございますし、そのほかバイオテクノロジーの応用でございますとか、そういうのは各県等を中心にいたしまして進んでおるわけでございます。
  72. 青木薪次

    ○青木薪次君 技術者の養成という点について伺っておきたいと思うのでありますが、ある地方における下請企業群の中での実態でありますけれども、昭和四十年末では工業高校卒レベルの技術者の人数のウエートは六〇%ぐらいだった。今日では、六十年末時点では大学、高専卒の人数的ウエートがもう五〇%に高まっていて、工業高校卒業の技術者のウエートは三五%のウエートに低下をいたしているわけであります。  この事実だけですぐ下請中小企業の技術力が高まったと結論づけるにはまだいかないわけでありまするけれども、それらの下請企業が次第に特定の親企業からの受注比率を低下させて、そして他の親企業の受注をとっている、あるいは大きな比率になっているというわけではないが、自家製品を開発して販売しているという要素が非常に多くなってきているというようなことを考えると、技術者構成の変化はその技術力をかなり高度化させたところの結果であるというように推察できるではないだろうかというような事態について、私は中小企業のある意味での困難さ、ある意味での努力というようなものが言えるわけでありますけれども、それだけではなくして、やはりそれらの私が申し上げました技術力の上昇といったような点についてどんなような評価を今日的時点に立って行っておられるのかお伺いいたしたいと思います。
  73. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) なかなか定量的に日本の中小企業の技術水準がどういう状況であるか、定量的あるいは相対的に私ども把握できないわけでございますけれども、端的に申し上げて日本の自動車なり家電製品というもののほとんどの部分は中小企業製品であり、その結果がああいう品質を示しておるわけでありますので、そういう意味日本の中小企業の中核部分は一流の技術水準で生産活動を行っているというふうに考えております。  特にこの下請というものには二面性があるわけですけれども、特にその下請の技術水準の向上という意味では親企業との間の協力関係というのがプラスに働いている場合が多いんではないか。しかし、片やそういう中小下請企業の自主性の確保のためには、そういった単一親企業への依存というものからできるだけ新しい製品開発能力があるような企業へ成長することが望ましい。そういう面もありますので、先ほど申し上げたように、そういった新製品の開発、そういうものの市場化努力への支援というものを片や進めているわけでございます。
  74. 青木薪次

    ○青木薪次君 そうだとすれば、この場面で技術の高度化へ対応するための技術者の養成は、大学、高専に任せられているわけでありますが、そのコスト負担にはこれらの教育機関及び親たち家計に占める率というものが非常にウエートが高くなってきているという点が言えると思うのであります。  従来工業高校卒の技術者を採用し、企業内研修というようなもので補完をしてきたわけでありますが、いわゆる企業の負担によって行われていた技術者養成が家計へとコスト負担が転嫁されてきている、これが今日の実情だと思うのでありますが、この点を当局としてはどう考えていますか。
  75. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) どうも労働力あるいは雇用者の質の向上、これは行政的に申しますと労働省の所管になります。ただ、中小企業庁といたしましても、中小企業の経営体としての技術力の向上という視点からそういう中小企業の経営者あるいは中核技術者の研修、これは中小企業大学校あるいは各地域における技術研修等を設けまして、その養成あるいは後継者育成、そういうものに努めております。  またいろいろの中小企業、例えば製品をつくりましたときの品質検査、そういう品質検査装置等をおのおのの企業が持つというのは不経済でもありますし、不可能でもございますので、そういう精密微量検査装置等を備えた公設試験所がそういった中小企業の製品の品質向上を側面から支援している、こういう体制になっているわけでございます。
  76. 青木薪次

    ○青木薪次君 昭和五十九年版の中小企業白書によりますると、最近の経済構造の変化というものが今後の中小企業の経営面に大きな影響を及ぼす要因として、第一に製品、これは多様化してきたので、いわゆる製品に対する需要の減少、次に製品に対する需要の高度化、いわゆる専門化といいますか、それから第三に製品に対する需要の個性化とか多様化というものが言えると思うのでありますが、今後ウエートを増す要因といたしまして、要求される技術水準の向上とか、あるいはまた急速な技術革新の進展といいますか、そういう問題を挙げております。  このことから明らかなように、中小企業の経営も量への依存から質の追求への転換が行われてきているということだと思うのでありますが、近時の円高とか貿易摩擦といった現象というものは一段とこの傾向に拍車をかけていくと思うのであります。  製品の多様化とか、あるいはまた少ロット化とか、短サイクル化などを背景にいたしまして、中小企業の存在理由が高まってきていると言われているんであります。しかしながら、これまでの質問で明らかにいたしてまいりましたように、これらの現象とか構造変化というものはとりもなおさず中小企業の技術力、開発研究の必要性というものが一段と高まってきていることをあらわしていると私は思うんであります。  今後とも円高が進めば、輸入品と競合する製品をつくっている中小企業者は製造業であることをやめて、例えば駐車場経営に変わってしまう、あるいはまたサービス業そのほかへ転化するとか、あるいはまた大企業にくっついて海外進出を図っていくとか、そういうことを図るよりほかに方法がないと実は思うのでありますが、国内で製造業であることを続けていこうとすれば、製品を高付加価値化して生き残るよりほかに道はなくなるということでありまして、中小企業に技術力をつけることは我が国産業の空洞化を防ぐための私は手段であるということが言えると思うのであります。  例えば今申し上げましたように、製造業がみんな駐車場ばっかりやったりするようになったら、この面からも産業の空洞化が行われてくることになるんじゃないか。構造上の変化の実態と、そしてまたこの問題に対するひとつ空洞化を防ぐための手段というものについてどうお考えになっていらっしゃるかお伺いいたしたいと思います。
  77. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) なかなか難しい問題で、これもまた個々の中小企業者のその現場現場における努力の成果がどう出るかということにかかっていると思いますけれども、この二年半の結果を見ておりますと、内需転換というのが非常に進みました。五十五産地、私ども定期的に調査しておりますけれども、この五十五産地の平均輸出比率は円高以前は四割以上でございました。それが現在三割前後になっております。全体平均で、もちろん大きいところは八〇%とかいう輸出比率があったわけでございますけれども、平均で申しましてもそういう生産活動における内需比率の増大という構造転換を一応ある程度進めたのがこの二年間ではなかったかというふうに思っております。  もう一つは、空洞化というのはこれはより中長期的な課題で、どういうことになるか軽々には言えないわけですけれども、少なくともこの二年半の実績で見る限り政府の内需拡大策等も効果があって全体としての製造業の生産は今むしろ上昇傾向にあるわけでありまして、それはそういった年間四〇%あるいは二十数%というふうに六十一年、六十二年と続いております製品輸入の大幅な増加の中で、片やそういった国内生産の活動水準も拡大してきているというのが現状かと思います。  ただ御指摘のとおり、中長期的に見ますときに、この日本の製造業がどういう形で落ちつくのか、これは私どもとしては十分慎重に見守らなければいけませんし、特に私どもの守備範囲である中小企業につきましては、そういう環境条件の中でその地歩を依然確保し続けるよう御指摘のように技術開発力を中心に今後支援策を強化してまいらなければいけないというふうに考えております。
  78. 青木薪次

    ○青木薪次君 そこで私は、中小企業はただ政府とかあるいはまた関係機関の協力援助だけに頼っているんじゃなくて、やはり経営基盤の弱い中小企業は相助け合って自己の弱点を補完するといいますか競争力を強めていくということが必要だと思うのでありまして、その意味では専門性といいますか独自の有利性を結びつけて積極的、創造的な活動を展開するということが必要だと思うのでありますが、協力事業の実態を中小企業庁としてどのように把握されておられるか、その実態をちょっと教えていただきたいということと、中小企業の組織化の現状といいますか、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合とか協業組合とかいろんな組合を相当つくっているわけでありますが、その組合別に大体パーセントでいいからわかっておったら教えていただきたい。
  79. 村田憲寿

    政府委員(村田憲寿君) 中小企業の組織化の実態という御質問でございますけれども、昭和六十二年の三月末現在で、組合の数でございますけれども、これは事業協同組合、商工組合、商店街振興組合等含めてでございますが、全体として約四万九千あるわけでございます。このうち事業協同組合というのが約三万九千でございます。それから火災共済協同組合、それから信用協同組合といったものもあるわけでございますが、数の大きいものを申し上げますと、企業組合というのが二千五百七十三でございます。それから協業組合が千五百二、商工組合が千八百十七、それから商店街振興組合が二千百九十、主な大きなものだけ申し上げますとそういうような数字になっておるわけでございます。  それから、現在それじゃ全体として組合員数はどのぐらいいるかということに関連してまいるわけでございますけれども、正直申しまして総組合員数を正確には把握し切れていないわけでございますけれども、私どもが実施しました調査等によって推計いたしますと、事業協同組合だけでございますけれども、これへの加入者数としましては約三百四十万ぐらいあるのじゃないか。組織率としては約五五%程度というように推計しておるわけでございます。数といたしましては全体としてそんな感じで私ども把握しておるところでございます。
  80. 青木薪次

    ○青木薪次君 よく見受けられるわけでありますが、大企業の地方への進出というものを拒む組織として、中小企業が団結して相当な力を発揮して大企業の進出を阻むというようなことが各所に見られてまいりました。これらのことは余り最近は聞かないわけでありまするけれども、しかし中小企業としては思想とかあるいはまた立場とかというものを乗り越えて、この面においては異常な力とかあるいはまた危機感といいますか地場産業を守ろうという意識といいますか、そういうものがあるわけでありまするけれども、こういう点についてどういうように考えていますか。
  81. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 大企業と中小企業の利害を調整する考え方なり場としては御承知のとおり二つございまして、一つは、流通における大規模店舗の抑制の問題がございます。もう一つは、その他の分野における異分野、つまり中小企業と大企業の分野をある程度利害調整する、こういう二つの法律、制度に基づいて運用されております。  分野調整という面は、流通について大規模店舗法ができて一元的にそちらで調整するようになりましてからその他のケースというのは比較的少のうございます。それでも最近で申しますと、例えばJR等の進出、いろんな分野への進出等に当たって地域中小企業者との間に若干の調整を要するというようなケースがございます。こういうものについては、私どもこの前の国鉄法の改正に際しまして、運輸省との間でそういう問題については誠実に調整する約束を取り交わしてそのようにやってもらっているわけでございます。  それから大規模店舗の方については、大規模店舗法で地域の調整ということでやっておりまして、これも一〇〇オア〇というよりは、そういう衝撃をできるだけ少なくし共存共栄の道を探るというようなことで、例えば開店時期の調整あるいは床面積、規模の調整あるいは開店時間の調整、そういう面についてできるだけ地域中小企業者との利害の調整を図っておる。あるいは最近は特にある地域、面の開発に際して、大規模店を中核としてより積極的にむしろ地域中小企業者と共存共栄を図っていくというような発想に基づく調整もやられているように承知をしております。
  82. 青木薪次

    ○青木薪次君 昨年の十一月末で、四万九千七百五十四ある中小企業の各種組合の中で八割相当が事業協同組合ですね。毎年新規設立される中小企業組合の八割強は事業協同組合ということが言えると思うのでありますが、そこで、中小企業組合の中で中心的な地位を占めている事業協同組合について同業種の結合とそして異業種の結合の比率を見てまいりますと、私が承知している限りでは約六割強が同業種組合のはずであります。しかしながら、ここ数年の変化を見ると、異業種関連組合の比重が上昇しつつありまして、製造業、非製造業間の比率を見ても、非製造業はほとんどサービス業でありまするけれども、徐々に非製造業組合がふえてきているということが言えると思うのであります。  経済サービス化といいますか、ソフト化に対応したものであろうと予想されるけれども、こうした傾向を推し進めてきている原因を何だと見ておられるのか。その変化に対応するところの中小企業の組織化対策についても、今までの製造業中心といったようなものから視点を変えなければならない点が出てきているのではないだろうかというように考えるわけであります。私もよく中小の、特に若い皆さんとよく討論いたしておりますけれども、やはり法案も出ておりますけれども、異業種の交流というものはこれは非常に発展をしてきている。なぜか、やはり自分を客観的な立場から見ることができるし、また素人の目から玄人のを判断をする、よくこれを見てやることが今日の需要の増大といいますか、価値観の多様化の中における私は一番の見方の正確さを意味する時代になったというように考えているわけでありますが、こういう点についてどう考えますか。
  83. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 御指摘のとおりでございまして、従来の事業協同組合を中心とする組合運動というものは、例えばある共同施設をつくり共用する、あるいは共同販売施設をつくる、そういったある規模をまとめることによってそこに効率性を求める、そういう発想に基づく共同事業が多うございました。したがって、また同業者の組合が主流になるわけでございます。ただ、今御指摘のように、今後こういう新しい環境条件の中で自分の新しい活動分野を求めようとしますときに、そういう従来のような同業種間ではなかなか有無相通じませんで、そういう意味で、おっしゃるような非製造業を含む異業種の間で組合活動を行おう、こういう動きが強くなってまいりました。  現在までに異業種連携組合というものは、私ども、組合数でいいますと三百四十九あるというふうに考えております。ただ、組合という形はとりませんが、いろいろな異業種交流活動は今全国に七百ぐらいあるわけでございます。したがって、そういう動きというものは、片や今申し上げたような新しい環境条件の中にみずからの新しい事業機会を求める際に必要ですし、またもう一つがそういうニーズそのものが、単に大量生産ではなくて、先ほど御指摘の少ロット化、短サイクル化というようなニーズでございますので、そういうニーズにこたえるためには必ずしも量の、規模の経済を追求するというだけでは不十分になってまいりました。そういう需要の変化、それから条件の変化、そういう中でみずからの新しい存立基盤を求めようとする動きがこの異業種の連携の動きであるというふうに評価しております。
  84. 青木薪次

    ○青木薪次君 各地の組合で行われている事業で最も力が入れられている事業というのは、共同購入事業あるいはまた金融事業、情報事業というようなことであろうと思うのでありますが、物不足とか金不足の時代に中小企業は資材等の共同購入や事業資金の貸し付けを行う組合のもとで強く結集いたしまして団結いたしてまいりましたけれども、現在においてもスケールメリットといいますか、この面におけるコストダウンが図られる共同購入事業と安定性に富む金融事業はその合理性とか有効性で依然として組合共同事業の主柱といいますか、主力をなしていると思うのであります。  今いろいろと時代が変わりました。例えば衣料品でも、自分の子供の買い方だけ見ておりましてもシャツだけ非常によければあとのものはどうでもいいとか、靴下の見えるところだけ立派だったら中身は何でもいいとか、食事でも、パンを食べさせるところへ行って、新しくてそれこそほやほやのパンを食べたい。そういうところへお客さんが集まるとか、あるいは毛糸のセーターなんかでも、ぼつぼつ毛玉が出てきたら、それをさっと取っていくような、そういったような機械を発明すると物すごく売れる。すぐさま飽きがくるけれども、そういうような時代だと思うんです。そういう時代を先取りしないともうからないというような時代だと思うのであります。  こういうような時代に生きる中小企業は、やはり昔のようなおやじさんの考え方だけで引っ張っていた時代というものは私は過ぎてまいりまして、やはり科学的、客観的に筋を立てた非常にすばらしい高度化事業、構造不況業種にかかわる構造改善事業あるいはまた円相場高騰に対応した緊急融資等について、組合が国の施策の受け皿となって、低利、長期の安定資金が組合を通じて中小企業に流されたりしてきたわけでありまするけれども、これは中小企業にとって大きなメリットになっており、組織強化にも実は役立っていると思うのであります。  今申し上げましたような経済体質に変化が見られる昨今では、組合の共同事業の比重にも変化が見られるようになってくるのではないだろうかというように考えるわけであります。中小企業庁は、組合の共同事業の今後の方向をどういうように見ておられるか御答弁願います。
  85. 村田憲寿

    政府委員(村田憲寿君) いろいろ経済のソフト化といったような、あるいはニーズの変化というものがあるわけでございますが、そういう中で中小企業の協同組合等がどういう事業の方向を目指しておるかということで、昭和六十一年度に私ども調査をしたものがあるわけでございます。これによりますと、今後中小企業の方が実施したい共同事業といたしましては、情報の収集、提供事業が一六%ぐらいあるわけでございまして、そのほか教育訓練が一四%ぐらいでございますとか、市場開拓マーケティング一一%、それから製品の研究開発四%といったような状況でございまして、いわゆるソフトな共同事業を挙げる組合の比率が高くなっておる現状でございます。これなどはひとつ今後中小企業の組合の新しい方向を示唆するものというように私ども理解しておるわけでございます。
  86. 青木薪次

    ○青木薪次君 今、指導部長が言われたソフトの面ということについてはどういうように理解したらいいだろうか。私なりに考えますと、情報の収集とかあるいは情報の提供とか人材開発の教育指導とか、今言いました製品デザインの技術開発、市場開拓のマーケティング等のことを言うのだろうと思うのでありまするけれども、こうしたソフトな事業というものはウエートとしてまだ非常に低いというように言われても仕方がないと思うのでありますが、この面から、例えば情報事業も簡単な機関紙を発行するということでは済みませんね。業界の動向とか生産、販売の具体的なノーハウとか情報を組織的に収集して提供するということでなければ私は間に合わぬ時代に来ていると思うのであります。  どうしてもこの際不足しがちなのは各種の協同組合事業なんかについても、やはり事務局がそれに対してかゆいところに手が届くように指導できる体制があるだろうかないだろうかということを見ますと、私はやっぱりそういう団体の上に、ある意味では、悪い言葉で言うならば、組合費の上にあぐらをかいているというような面が非常に見受けられると思うのであります。その面でこの指導員制度とかいろいろ政府も考えているわけでありまするけれども、組合関係者といいますか、資質を向上するにはどういうような新機軸を打ち出そうといたしておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
  87. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 確かに組合化事業、私ども組織化運動と言っておりますが、中小企業の組織化運動というのは戦後の中小企業施策の一つの大きな柱でございました。その結果が、今御紹介申し上げましたように五万に及ぶ組合の成立を見ているわけですけれども、率直に申し上げて、そういう組合活動に一つの転機が今来ているというふうに私どももまた組合当事者も基本的に認識をしていると思います。組合の数も最近むしろ頭打ち、弱含み、横ばいぐらいに推移をしております。  したがって、新しいこの組合事業のニーズは何かということをもう一回基本的に洗い直そうではないかということで、昨年から中央会各地区のグループごとにコーポラティブ21、いわば二十一世紀の組合運動はどうあるべきかというような検討会を根元のところで今進めております。そういう中の一つとしても、今回私どもが御提案申し上げているこの融合化法、つまり異業種組合、そういうものが今後の日本の組織化運動、組合運動の再活性化の一つの大きなかぎになる、そういう認識と期待が今持たれているというふうに考えております。
  88. 青木薪次

    ○青木薪次君 次に、法案にもあるわけでありますけれども、異業種の交流という点でちょっと聞いておきたいのであります。  昭和四十年代の初頭からであると聞いておりまするけれども、昭和三十年代の半ばでも大阪でこういう動きがありました。それから、埼玉県でも四十年代には実施されているわけでありますが、こうした動きが民間あるいは地方自治体主導で行われてきたわけでありまするけれども、これらの動きが現在の異業種交流と大いに違うものがあったら、この相違点を私は教えてもらいたいと思うのであります。  特に、こういう動きというものについて政府は知っていて手を出さなかった傾向というのがあるんじゃないだろうか。私もいろいろとそういう点については、もうこれからはいろんな需要の要因が変わる、あるいはまた供給の要因も変わる、今申し上げたように消費者ニーズが多様化し、価値観が全く変わってきたというような中においてどういうような素材を提供するかという点については、私は、先ほども申し上げたのでありますけれども、この異業種交流というものを相当主張したのでありまするけれども、このごろ雨後のタケノコのようにこの意見というのが出てきた。昔の意見と今のこの異業種交流という問題に対する問題点の把握とその背景というものが違うのかどうなのか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  89. 岩崎八男

    政府委員(岩崎八男君) 御指摘のその昭和三十年代のケースというのがどういうものであったか私は存じませんけれども、この異業種交流について申しますと、私ども昭和五十六年、そのころ先覚的にございましたそういう動きを参考にして五十六年から政策措置としてこれを取り上げ、その異業種交流プラザというものを各地方自治体を通じておのおの慫慂してもらうように制度化したわけでございます。したがいまして、既に七年目になりますか、そういう技術交流プラザの七年間の活動、その普及状況、そういう上に現在のこの中小企業を取り巻く環境条件を重ね合わせまして、この動きをさらにより体系的に進めたいという発想として今回の融合化法ということで、確かにちょっとおっしゃいましたように、ある組合がいろいろ異業種の交流あるいはそういう別の分野への活動を組合活動として行っている、そういう例もそれまでにございましたけれども、そういうものを公然とむしろ制度化するというような形でこれを考えているわけでございます。
  90. 青木薪次

    ○青木薪次君 最後に大臣、このごろ相当産業経済の内在要因も変わってまいりました。例えば、ME化によるところの技術革新とか情報化の進展、サービス化の進展、都市化の進展、さらにその中で産業潮流も変わってきた。素材産業構造調整、組み立て加工産業におけるME革新と海外展開サービス産業の拡大、情報・通信産業の新展開、社会開発投資の活発化というものと同時に、そういう調整を迫られる部門の中で、いろいろと重厚長大からだんだんと今日的な意味における軽薄短小から、これからの時代はどうなるだろうかというような中で中小企業はそれに負けずについていかなきゃならないというようなことが言えると思うのでありますが、中小企業者はみずからも勉強し、お互いに業界でも努力し、その中で新しい時代にはどうしたら対応できるのか。その面における供給要因といったようなものについても、高付加価値化の問題とか多品種生産とかきめ細かいマーケティングを追求するとかシステム化を追求するとかいろいろ努力いたしているわけでありまするけれども、一言大臣から今後の中小企業対策についてお伺いいたしまして私の質問を終わります。
  91. 田村元

    国務大臣田村元君) 今青木さんが質問の形でおっしゃったことで大体答弁は尽きると思います。  先ほど来私、拝聴しておりまして、非常に専門的に詳しい意見を開陳されておられたので大変感心をしておりましたが、今後の中小企業というのは二つの基礎というものが要るだろうと思います。  その一つは、古い言葉でございますが、毛利元就の三矢の教えというのがございます。また三人寄れば文殊の知恵という言葉もございますが、とにかく異業種の融合等、いろいろと自分で持っていない知識を求めながら自分の持っておる知識をより進めていくということだろうと思います。  それからもう一つは、今後中小企業がたくましく生き抜くためには、やはり高付加価値というものを追求していかなきゃならぬだろうと思います。そういう点で、これから中小企業も大変な時代を迎えるわけでございますけれども、通商産業省としては、その自助努力に対する支援体制というものの完璧を期していきたいと思っております。  中小企業対策というお言葉がございました。今私がお答えいたしましたのは、今後の中小企業というものをちょっと簡単に申し上げたわけでございますけれども、現在そうしてこれからの通産省の中小企業対策ということを申し上げるならば、とにかく金融や補助金などの面でまず円滑な構造転換を支援していくということであろうと思います。  それからまた、先ほど来お話の出ております異分野の中小企業者の経営資源の融合化を通じた新事業の開発を促進するための、立法を含む総合的な対策を必要とすると思います、もちろんこれはやっておるわけでございますけれども。それから中小企業の経営基盤の充実等を図るための金融の円滑化あるいは信用補完制度の拡充を図るために信用保険法の一層の充実をさせていく、あるいは人材養成の強化とか情報化への対応、技術力の向上の推進、小規模企業対策、中小小売商業対策等につきましても引き続ききめ細かい対策を講じていかなければならないと思います。  いずれにいたしましても、私が常日ごろ申しておりますように、中小企業というのはこれはピンからキリまでありますけれども、中小企業と我々が位置づけております企業というのは、我が国全体で事業所の数だけでも九九・四%を占めておるわけであります。従業員も八一・四%を占めておるわけでございます。中小企業が日本経済の牽引力であると言っても過言ではございません。  それだけに、これを取り仕切っております通商産業省というのは多分に中小企業省であるということと同時に、通産大臣もまた中小企業大臣であるということが言えると思います。私はこれは常に言っておりますが、中小企業対策というのにはイデオロギーは必要ありません。そういう点で与党、野党みんなが力を合わせて、そして政府と三位一体になってその対策を推進することこそ肝要、このように考えております。今後ともどうぞ何くれとなき御助言をお願い申し上げる次第であります。
  92. 伏見康治

    ○伏見康治君 私は元科学者でございまして、学者のうちに入っていたわけですが、今は余り勉強しておりません。それでも大学の先生のときに本を買う癖がついておりまして、いまだに読みもしない本をたくさん買うわけですが、その洋書を買っているという立場から申しますと、これだけ円高になったんだから、昔一万円した洋書は半額ぐらいになってもいいんじゃないかと思うんですが、ちっともそういう感覚が出てまいりません。  いわゆる円高差益還元ということがいろいろな面で叫ばれているようでございますが、その辺の事情がどうなっているかということを少しお聞かせ願いたいと思うんです。
  93. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) 先生は洋書にお詳しいと思いますので、御存じのことと思いますが、輸入洋書の国内価格、小売価格の決定の仕方につきましては、本国の小売価格に洋書業界で使われるといいますか洋書輸入企業が使います、俗に洋書換算レートという一定の率を掛けまして国内の価格が決められております。それで、ここのところが円高でどう変わっているかということでございます。  その前にこのレートの考え方でございますけれども、このレートは、国内の書籍の場合には大半、九五%が委託販売だと言われておりますが、洋書は原則買い切りでございますから、それに伴う金利とかリスクの負担、それから当然のことながら輸入から小売に至るまでの通信費、通関費、運賃、在庫管理等の諸費用を含めた数字として換算レートが決められております。  この推移を見ますと、円高前の六十年八月でございますが、このころに主要な輸入企業のレートは一ドル三百三十円ないし三百四十円くらいに分布しておりました。当時の為替レートは二百三十八円でございますので、ちょうどそのコスト、マージンに当たる部分が引き算をいたしますと九十二円ないし百二円に当たります。それが円高後の本年二月で見ますと、各社の洋書換算レートが二百円ないし二百十円くらいでございます。為替レートの方は百三十一円でございますので、引き算をいたしますと六十九円ないし七十九円、これは流通の経費及びマージンになっております。したがいまして、円高前に一ドル当たり九十二円ないし百二円くらいであったマージンが、六十九円ないし七十九円、絶対値では減っております。率で見ますとおおむね三割ということでございます。  したがいまして、これは全体ならした感じでございますけれども、円高差益は洋書換算レートにおおむね反映されているように思っております。
  94. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の数字の御説明で一応わかるような気もいたしますんですが、そういう数字で満足すべきなんでしょうかどうなんでしょうか。実は余り強いことは言えないんでして、大学の先生というのは貧乏なものですから、本を買ったっきりいつまでたっても払わない。私の若いときの経験ですと三年間ぐらい机の上に置いておいたまま払わずに済ましたこともありますので、余りびしびし物が言えないんですが、今の数字がお役所の方では妥当な、要するに国内の流通経費的なものですね、そういうものの判断はそれで妥当だとお思いになるのかどうか。
  95. 末木凰太郎

    政府委員末木凰太郎君) ただいまの御説明は、六十年八月と本年二月の比較では反映されていると申し上げたわけですから、そもそも根っこの時点において適切であったかどうかということに、御指摘の点はなると思います。そこのところは書籍についてどのくらいのコストがかかるのかというのを厳密に積み上げた作業をしたわけではございませんが、おおむねほかの品物の流通マージン率と比較いたしまして非常に高いという感じではございません。  問題は、この換算レートが、しかし十分競争を反映したものとして決められているかどうか、輸入する企業がもし独禁法違反のようなことでこのレートを決めていれば不当にマージン率が高くなるということがあり得るわけでございます。過去にそういったことが、大分前に何かそういうことが話題になった記憶がございますが、最近そういう話もないようでございますし、適正に競争が行われていれば、それで自由価格としていいのではないかと思いますが、しかし、その点も含め、特にこのレートの変更が先ほど申しました期間に引き続き今後とも十分反映されていくかどうかということについてはなお注視をしてまいりたいと思っております。
  96. 伏見康治

    ○伏見康治君 もう一つ似たようなお話ですが、これもうかつな学者の話ですけれども、近ごろ大学の先生に会ったり、あるいは国会図書館に遊びに行ったりいたしますと、去年急に大盤振る舞いがあって前から欲しいと思っていた稀覯本を買うことができましたというふうなお話を承るわけです。それでどういうことかと伺いましたら、昨年度緊急経済対策閣僚会議というのがおありになって、そこで相当の大盤振る舞いをなすったというふうに伺っているんですが、その大盤振る舞いをなさること自身は大変結構なことだと思うんですけれども、しかし、とにかく国民の血税をお使いになる限りにおいてはできるだけ有効な使い方をしなくちゃならぬと思うんですね。緊急だから相当でたらめな使い方をしてもいいということにはならないと思うんですが、どういう基本方針でいろいろお買いになったかということを伺いたいわけです。
  97. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今伏見委員の御指摘の点は、昨年十億ドルに相当する予算を緊急対策の中で確保いたしまして、例の六兆円と言われた、全体が六兆円でその中で十億ドルという輸入と申しますか、政府調達のお金を用意した分についての御指摘であろうかと思います。  これは考え方といたしましては、六兆円の緊急対策を実施いたしましても、直接にそれによって誘発される輸入の金額というのはそれほど大きなものではない。しかしながら、政府調達で外国の品を直接調達すれば、例えば十億ドルでございますと当時千四百億円でございましたけれども、そういうのが直接に輸入に向かうことになるので、この方が資金効率がいいではないかということでとることになった措置でございます。  その中で、今御指摘の学校関係あるいは図書関係につきましては文部省の御所管でございますので私ども詳しく存じてはおりませんけれども、一応政府調達コードに基づきまして、何と申しますか、輸入品でないと調達できないものについて十億ドルの中で調達をされた。具体的な取りまとめは内閣及び予算査定当局で行ったというふうに理解をいたしております。
  98. 伏見康治

    ○伏見康治君 ちょっとお門違いになりまして、文教委員会で文部省に聞くべきことかもしれないんですが、去年は高温超電導で一大ブームがありましたので皆さん御存じだと思うんですが、その一大ブームの焦点におられた東大工学部の田中教授の研究室で、ノーベル賞をもらわれたスイスのIBM研究所のべドノルツ、ミュラー両博士の仕事の論文を田中先生が最初に読んだわけではなくて、それの載る雑誌が田中研究室ではだんだん研究費が乏しくなってきて、その雑誌をとるのをやめた。やめて一年ぐらいたってからそういうニュースが飛び込んできて、よその大学の先生に田中先生はその存在を教えられて、そこから高温超電導ブームが起こったといううわさを聞かされております。  一方で、非常に現代の研究を促進するのに必要な情報源が十分得られないという先生がいる中で、非常に骨とう品的な高い書物をお買いになるというそのバランスの問題がちょっと気になるんですが、皆もちろんお買いになった以上は堂々たる意味のあるものをお買いになったことはそのとおりだと思うんですけれども、やっぱりそのときそのときの学問の焦点がどこにあるかということをお考えになった使い方でないといけないと思うんですが、そういう配慮は払われたかどうかを承りたいし、それからこの話はもう昨年だけでおしまいでことしはやらないんでしょうか。
  99. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 十億ドルの調達計画は、今委員からは書籍とかあるいは研究施設とかそういう御指摘でございますが、そのほかに政府専用機でございますとか、長距離捜索救難機でございますとか、あるいはスーパーコンピューターでございますとか、いろいろ各省そういうものを調達いたしたわけでございます。  その中にありまして、文部省の方ではコントロール・データ社のスーパーコンピューターなんかも調達をいたしておるわけでございますので、今私、これ詳しく文部省の中でどういうふうに決定を行ったかということについて存じておりませんけれども、こういったスーパーコンピューターなんかも入っておりますので、現代の研究に必要な書籍であれば書籍というようなものも恐らく排除することなく対象になっていたんだろうと思います。今、御指摘の例はたまたま私どもと申しますか、文部省と申しますか、全体としての制度のPRが十分でなかったために、その知識を持っておられる方もおり、持っておられない方もいたというようなことで、あるいはそういう事例が生じたのかと思います。いずれにしても御指摘の点、文部省によく連絡をいたしておきたいと思います。
  100. 田村元

    国務大臣田村元君) 実はこれは私が当時この緊急経済対策にちょっと深くかかわっておりまして、私も鉛筆をなめた一人でございます。  この十億ドルの問題は、まず第一、各省庁の意向というものを一番強く取り入れました。それからもう一つは、なるべく速やかにお金の回転がいいようにということで、可能な限り国庫債務負担行為等延べ払いのようなものは排除いたしました。そういうことでこれを厳選したわけでございますが、私は一省一省のことを詳しく記憶しておるわけではございませんけれども、私の記憶するところでは各省庁がこれはと思う、特に求めてきたものの中でよりニーズの高いものということで厳選いたしました。例えば通産省の場合はスーパーコンピューターなんかを申しましたが、これの中身につきましてはやはりそれの配分にあずかった役所が御説明申し上げるのが一番正確かもしれません。
  101. 伏見康治

    ○伏見康治君 余り私自身も調べていないので二、三の例題だけで申し上げるのは失礼なんですけれども、国会図書館の予算というのは国会が責任があるんですか。どこかよく知らないんですが、せっかくつくったコンピューターがうまく動かなかったり、ちょっと申しわけないような点があったと思うんですが、今申し上げたいと思っているのは、国会図書館の方でも何か稀覯本を幾つかお買いになったように思うんですね。ですが、私が国会図書館を利用する上で一番もどかしく思っておりますのは、アメリカのコングレスのいろいろな動きが相当たたないとやって来ないわけです。つまり、もう話が済んでしまったころになって国会図書館にいろいろな情報が届くというのは国会審議の上にも非常に大きな影響を及ぼすと思うので、特別に何かお金が余るようなときには何らかの意味でコングレスの情報が即座に手に入るような仕掛けというものを今後お考え願いたいと思うんですが、この緊急対策でいけるかどうかは別問題だと思いますけれども、何かのチャンスにそういうことをお考え願いたいと思います。  それでは、予定に従ってもとへ戻ります。先日の予算委員会でココム問題を大臣にいろいろ御質問申し上げたわけですが、またかと思われて申しわけないんですけれども、そのときもお聞きしたことですが、アーミテージ国防次官補が何か話をされたということが新聞に出ておりまして、ソ連の原潜の騒音が低下したことと東芝機械が工作機械を売ったこととの因果関係が必ずもはっきりしないということを国防次官補が言ったということが新聞に出ておりましたので、その件について大臣の御意見を伺ったんですが、その後アーミテージの書簡なるものをお役所の方から見せていただきました。  よく読んでみますというと、これはむしろ大変日本を弁護したような手紙なんですね。日本はこの東芝事件を契機にして大変よくやっている、今後同じようなことが起こらないようにいろんな法律的な措置もちゃんとやっておる、まるで田村通産大臣に何か優等賃の免状を出したような、そういう文面でございました。それで、新聞記者の物を読む観点というものは随分違うものだと思って改めて感心したわけでございますが、そういうことを知った上で田村大臣の御感想をいただきたいと思います。
  102. 田村元

    国務大臣田村元君) アーミテージ次官補の書簡、お読みいただいたそうでございますので、私からそれについて繰り返すことは御遠慮申し上げますが、お読みいただいたらわかりますように、直接に因果関係を論じたものではございませんでして、米側に追加的なコストが生じたかどうかということを議論したものであるということでございます。したがいまして、ソ連原潜のスクリュー音につきましても、ソ連は東芝機械の最初の不正輸出の三年前から静かなプロペラを有していたと述べているだけでございまして、東芝機械の不正輸出とソ連原潜のスクリュー音低下との間の因果関係を否定しているわけではございません。私はそのように認識しております。  私が従来から、これは外務省もそうでございますけれども、申し上げておりますのは、ソ連原潜のスクリュー音の低下というのは、国会で防衛庁当局からしばしば答弁いたしましたように、突然起こったものではなくてだんだんと進んだもの、ああいうものはある日瞬間的にぱっといきなり静かになる、それはちょっとあり得ないことだと思うのです。したがいまして、東芝機械の工作機械の輸出前に仮にスクリュー音の低下があったといたしましても、その後東芝機械の工作機械の輸出によってスクリュー音の低下がさらに進んだということは少なくとも論理的には言い得ること、しかし、それも私どもはそういう因果関係があると断定したことは一度もございません。いろいろと向こうの説明を、私二度にわたって向こうへ行ったわけでございますが、聞きましても、また防衛庁、外務省等が入手しました情報によりましても嫌疑が極めて濃厚であるという心証を得たということでございまして、それ以上日本からも詰めるわけにもいきませんが、アメリカ側も詰めてきておりません。  そういうことでございまして、この東芝機械の問題といいますのは、あくまでもココムに違反した案件というのは国内法で処分すべきものであって第三者、第三国から処分や制裁を受けるべき筋のものではないというのがココムの精神、この事件はあくまでもこれは国内法に違反する国内犯罪であるということだけは私は徹し切ってまいりたい。でございますから、今度の裁判もそういう面からこれをとらまえたということが言えると思います。
  103. 伏見康治

    ○伏見康治君 今お話にございました三月二十二日の東京地裁の判決、この判決文の内容についての大臣の御感想を伺いたいと思います。
  104. 田村元

    国務大臣田村元君) これは大変難しい問題でございまして、私が政府の国務大臣として司法の下した判決を批判することはこれは遠慮しなければならないと思います。  ただ、今度の判決でアメリカあたりでいろいろな日本に対するまた新たなる批判が起こっておるということを私もちょっとうわさで聞いたわけでございますけれども、これは御承知のように、東芝機械がまずこの犯罪を犯したときは旧法の時代でございましたから、旧法で犯した犯罪を新法でいわゆる遡及効果でやっつける、これは不可能でございます。法理論上、これはできません。でございますから、刑罰の軽い旧法であったということ。それから東芝機械が犯した大きい問題は既に時効にかかっておるということ。でございますので、今度の処分の対象は、後でもし必要であれば詳しいことは事務方から御説明させますが、軽微な方が裁判の対象になったというようなこともございましてああいう判決が出たものというふうに思います。  いずれにいたしましても、東芝機械も非常に厳粛に受けとめておるようでございますが、また通産省といたしましても政府といたしましても、この判決を冷厳に受けとめるべきというふうに考えております。  日本の三権分立というものが諸外国にも理解され得るものと私は信じておりますし、また自由社会であるならば、自由国家であるならば、三権分立はどの国にも定着しておるというふうに私は信じて疑わないものでございます。
  105. 伏見康治

    ○伏見康治君 三権分立と大臣が言われましたので、それに関連して私のこの裁判に対する反応をちょっと申し上げてみたいと思うんですが、この判決文の中で、東芝機械の違反事件というのが非常に国際関係、自由主義圏、特にアメリカ日本に対する不信感を増大させたという罪があるというふうに判決文の中に出てくるところがいささか私には奇妙に思えたわけです。  三権分立という立場から申しますと、裁判官はそういう国際的な、いわば政治的配慮といったようなものを度外視した、法律に照らした判決をなさるべきだと思うんですが、少なくとも光華寮の裁判の場合には、日本と中国との間の国際的関係を理解した上で議論をするのと、それを無視して法律面だけで議論するのと随分違うと思うんですが、光華寮の場合にはいわば法律面だけで判決を出された。今回の場合は法律面だけでなくて、その背後にある国際関係まで言及しているというところが何か日本の裁判としては不統一なような感じを受けるわけですね。つまり、ある場合には政治的考慮を入れ、あるときには政治的考慮を排除しているといったような、少し身勝手な感じを受けるんですが、これはもちろん内閣とは関係のないお話で、私の感想だけをただ申し上げました。  さて、このココム事件で随分大臣は苦労されたと思うんでございますが、結局今一年たってみて、おやりになったことの御自分での評価はどんなものでございましょうか。つまりちょうどいいところをやったのか、やり過ぎたのかやり少なかったのかといったような御感想を承りたい。
  106. 田村元

    国務大臣田村元君) こういうものは後世の史家が論ずることでございましょうが、私は率直に感想を申し述べればアメリカを初めヨーロッパ諸国、いわゆる自由主義国家と日本とは感覚的に違うということが一番のつらいところでございました。例えば、国家機密とかあるいは防衛機密とかということについての感覚というものがもうアメリカやヨーロッパの国々、特にアメリカの場合ぴりぴりしたものがある。ところが日本はそういう秘密というものを論じること自体がおかしいじゃないか、日本には機密はないよ、強いてあるとすれば個人の機密と企業機密ぐらいである、国家に機密があってたまるか、いわんや防衛においてをやというような社会風潮というものはないといえばうそになると思うんです。ところがそれに対して米側は非常に厳しい追及でございました。私は某高官とマッカーサー論まで展開したぐらいでございました。  そういうことでございましたが、それだけに外為法の改正につきましてもっともっと強い国会の抵抗があると私はあえて覚悟をしておりました、あのときに。ところが与党野党を問わず、いわゆる賛成反対はとにかくとして、これに対して私から申し上げるならば非常に良識ある対応をしていただいた。もうあんな恐らく重要法案、しかも非常にデリケートな法案、法律というものをあんな短期間にあのように成立せしめるということは、もう今後の恐らく国会の歴史にないかもしれない、それほどのことでございました。それはやはりこの程度のものは必要であろうという、賛否は別として国会の判断であったと私は思います。  あえてあの一連の私のとりました行動、またその成果につきましてはあれでよかったんじゃないか、早晩あの道はいずれかの日には歩まねばならぬ道、日本が歩まねばならぬ道であった、それを私のときにたまたま歩んだということだと、そのように解釈をしております。
  107. 伏見康治

    ○伏見康治君 大臣は御自分のことですから、御自分を褒めるわけにはいかないんでしょうけれども、よくやっていただけたと思います。  ただし、今言われたあちらさんとこちらさんの感覚の相違という点ですが、私は感覚、今言われた秘密ということに対する感覚の相違というものも相当大きいと思いますけれども、もう一つ別のところの感覚の相違というのがあると思うんですが、御承知のようにアメリカという国は要するに弁護士の国であって、こういう法律のこういう条項に反しているといったような細かい議論を詰めて物事を決していくわけですが、日本人の場合にはそういう心がけではいけないとかいう心がけ論になるんですね。そこがアメリカ社会の論理といいますか、物の考え方と、それから日本人の物の考え方の根本的な違いだと思うんです。  つまり私なんかが日本での秘密の介入を極力恐れておりますのは、秘密に対するアメリカの一般の方々の考え方と日本人の考え方と非常に違うということによるわけです。日本人は、何か国家機密というようなものがあるとそれをどんどん敷衍してしまって、どこかに要塞があったとするとその要塞に近づくのも怖くなってしまって、そこへ近づかなくなるといったようなそういう感覚が日本人にあると思うんですね。ところが、アメリカの場合には、何キロメートルまでは近づいていいと言ったら平気でそこまでは近づくわけでして、近づくこと自身を恐れるわけではないですね。そこの感覚の差というものがある限り、日本へ秘密条項を持ち込むというのは非常に危険だと私は特に感ずるわけです。本体の問題と余り関係ありませんけれども、ちょっと感想を申し上げておきます。  ところで、客観的にはこの外為法を改正してどういう変化が起こったとお思いになりますか。それをひとつ、特に貿易の数字の上でどういう変化が起こったかということを教えていただきたいと思います。
  108. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 我が国の対共産圏輸出は八六年、八七年と減少してまいっております。で、その大宗を占めます対ソ及び対中輸出について数字を見てみたいと思いますが、まず対中輸出につきましては、八五年には前年比七二・九%増と急拡大をしたわけでございますが、八六年に九十八・六億ドル、これは百二十四・八億ドルから減少してまいっております。八七年には八十二・五億ドルと減少してまいっております。  一方、対ソ輸出でございますが、八六年には前年より一四・五%増大いたしまして、三十一・五億ドルとなったわけでございますが、八七年には二十五・六億ドルと一八・六%減少しております。  こうした傾向につきましては、ソ連におきましては経済改革が行われたわけでございます。また中国におきましては輸入抑制策がとられた等いろいろな理由がございますが、近年の円高の影響もあるものと考えております。  一方、我が国の対ソ、対中輸出の内容でございますが、これは機械あるいは鉄鋼の比率が高うございます。ちなみに米国の対ソ、対中輸出の額の推移を見ますと、これはよろしゅうございますか。
  109. 伏見康治

    ○伏見康治君 どうぞ教えてください。
  110. 吉田文毅

    政府委員(吉田文毅君) 八五年の六十億ドル台から八六年には四十四億ドルへと急減しておりますが、八七年には五十億ドルと若干回復してまいっております。  また、EC諸国の対ソ及び対中輸出は、八四年に百二十二億ドルから八五年には百五十億ドル、八六年には百六十一億ドルと増大をしておりまして、八七年の九月までの数字も前年同期を約五%上回るというようなことになっております。
  111. 伏見康治

    ○伏見康治君 今数字を教えていただきましたが、そして八七年度にどかんと数字は減っているわけですが、その理由は円高ということも一つの要素であるでしょうし、それからペレストロイカでソ連の内部体制がいろいろ変化している、うまく商売ができない情勢になっているという点もあるかと思うんですが、しかし例えばペレストロイカの話でしたら、ヨーロッパとかアメリカとかの方が逆にふえているということがよくわからないわけでして、結局日本の外為法改正に基づく影響というものをどのくらいに踏んでおられるわけですか。
  112. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 今伏見委員指摘のとおりペレストロイカでございますとか円高でございますとか、そういうものが恐らく複合して起こっていると思っておりまして、減った額は今輸出面で吉田次長言いましたように二割弱でございますけれども、その中で一体外為法の影響が何%であるのかというのは、恐縮でございますけれども、測定不可能だと考えております。
  113. 伏見康治

    ○伏見康治君 なかなかそのエスティメーションは難しいわけですけれども、外為法がいろんな意味で対ソ貿易に支障を来しているということは、定性的には少なくとも明らかなことだと思います。  ついでに伺いますが、日本でも東芝機械のような違反事件がございましたけれども、ココム違反事件というのはよその国でも間々起こっているように伺っておりますが、ヨーロッパ諸国とか、あるいはアメリカ自身の企業のココム違反といったようなものがどんなものであるか、余りたくさんのデータは要りませんが、大体の概況を教えていただきたいと思います。
  114. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) アメリカでの例を申し上げますと、これはアメリカの正式に発表している資料でございますけれども、一九八六会計年度、したがって八六年の十月からの一年間でございますが、これは日本で言う輸出停止みたいなものを向こうでは輸出特権剥奪と呼んでおりまして、若干これは違いまして、ココムの品目だけを向こうは対象にしているわけでございますけれども、それが二十七件、その命令をしたのが二十七件であるということでございます。それから、今のは行政処分でございますけれども、刑事的な手続といたしましては告訴件数が三十件で、科された刑事罰の金額が百十七万ドルぐらいであるということが発表されております。  それからヨーロッパの例でございますが、これはいろいろありますけれども、確定されたものかどうかというのはそのケースによって異なりますが、例えばフランスでございますけれども、これはことしの一月に国土保安局というのがフランスにある共産圏への不正技術輸出網を摘発した。これは五人のフランス人が外国のエージェントを通じてエレクトロニクス機器のソフトウエアの輸出をしたというようなケースでございます。  それから、ココム違反ではなくて、むしろスパイ防止法みたいなのに引っかかった例といたしまして有名なのが、時々国会でも御指摘をいただいておりますが、アメリカのウォーカー事件というものでございまして、これは米国の国防省に勤めていたウォーカーファミリー、親子とおじかなんかのようでありますが、それが十八年間にわたってソ連の潜水艦追跡システムの内容をソ連に渡した模様だということで、その主犯は終身刑の判決を八六年の十一月に受けたというようなことがございます。  それから、アメリカではこのほかに八六年に半導体製造装置、これはチェコへ無承認輸出を企図したということ、それからレーザー反射鏡、これは虚偽申告でソ連へ無承認輸出をしたということなどがございますし、それからイギリスでもプリント配線基板あるいはコンピューター部品、電子装置等々について違反事例があった模様でございます。  まだございますが、とりあえずこれぐらいにさしていただきます。
  115. 伏見康治

    ○伏見康治君 よその国でも似たようなココム違反事件あるいはそれに類似した事件が起こっているようでございますが、大臣アメリカさんと交渉する際に、お国の方は一体どうなっているんだという質問はなさったんでしょうか。
  116. 田村元

    国務大臣田村元君) もちろん申しました。アメリカやヨーロッパ、特にあなたの方はないんだろうねと、こういって随分私は申しました。率直に言いまして、大木委員長も私と一緒に最初行ったわけでございます。佐藤衆議院前商工委員長、両委員長に行っていただいたわけです。随分きついことを言われましたが、私も言いました。実を申しますと、私が一番困り果てましたのは、それ以上のことで、場合によったら立ち上がるということができなかったことは、グループ制裁という、東芝グループの品物はもう波打ち際から揚げないような勢いでございましたから、そういうグループ制裁を食らうと、東芝グループだけでも大変でございますが、もし三井、三菱、住友等のグループに対して制裁でもきたらどうなるか、一つの先例をつくってしまえばということで、売り手というつらさというものが一番の重荷でございました。  その点ドイツはたった一割しか依存度がありませんからうらやましゅうございますが、日本は四〇%、当時で三八・五%でございました。そういうことで、これが日本が買い手だったらなと、こいつをやっつけてやるんだがと思わぬでもなかったし、ところがもし日本アメリカ立場だったら赤字で泣いておる。やはり黒字でがあがあやられることの方がまだ幸せかなと思ったり、そういうことございましたが、本当にその点が一番つらいところでございます。
  117. 伏見康治

    ○伏見康治君 今の大臣お話につられたというわけでありませんけれども、東芝グループというふうに話が広がりかかってしまったのは、会長と社長が辞任したといったようなことがむしろ原因じゃないかと思うんですけれども、なぜ東芝機械だけの事件にうまくすることができなかったんでしょうか。
  118. 田村元

    国務大臣田村元君) 実は私もびっくりしたんです。東芝の会長、社長が私のところへいらして、責任をとってやめることにしました。私は、ちょっと待ってくださいと、また急な話だ。いやいや、もうきょうこれから会社へ帰って記者会見で発表するんですということでございまして、私ももう慰留することもできないような急のことでございました。  これは我々東洋人として申せば、両氏が事態の重大さにかんがみて、グループの総帥であり、また東芝機械の過半の株式を保有しておる企業の最高責任者としての責任をとられたということでまことに潔いということかもしれません。けれども、アメリカ側はそうはとりませんでした。ココム違反を犯したのはあくまでも東芝機械であって、株式会社東芝は独立した別の法人であると言って私は頑張りましたが、じゃ別の法人の会長、社長がなぜ責任とってやめたんだと、こういうことでありました。東芝は無関係だと言いましたら、無関係ならなぜやめたんだ、無関係ならなおさらやめるべきでないんじゃないかということで、受けとめ方が全然違う。私が東洋人の潔さだと言ったら、ハラキリか、こういって反論をされたというようなことでございました。これはやはり東洋人から見て潔いものであり、また西洋人から見ればナンセンスということであったかもしれません。
  119. 伏見康治

    ○伏見康治君 大臣の御苦心はよくわかりますんですが、そういう経緯を経て外為法が改正されたんですが、その趣旨は、要するに違反を犯した企業を罰するという、その罰則を強化したということで、対ソ貿易を圧縮しようという意図のもとになされたものでないと私は了解しているんですけれども、大臣ももちろんそうでしょうな。
  120. 田村元

    国務大臣田村元君) 当然のことでございます。ソ連だけじゃございません。共産圏に対して貿易を縮小するということを意図してやったものではございません。けじめをつけただけのことでございます。特に、ココム十六カ国、日本と十五カ国、まあ自由主義諸国との信義に生きるということであり、また当然その自覚のもとにおいてこういうけじめをつけたということでございまして、我々はむしろ共産圏といえども貿易の拡大均衡を今後も求めていくことは当然のことでございます。
  121. 伏見康治

    ○伏見康治君 通産省というのは、いろんな事件があって、中小企業が不景気になりそうになるといろいろ援助の手を差し伸べられているんですが、私の見るところでは日ソ貿易をやっている方たちは非常に混乱して戸惑っておられると思うんです。それをいわば救済するというか、インカレッジする何か政策をお持ちなんでしょうか。
  122. 畠山襄

    政府委員(畠山襄君) 無論、今大臣からお答え申し上げましたように、外為法の改正自体は、それによって規制を強化するというよりも、違反に対する制裁を強化するということであったわけでございますけれども、ただあの東芝機械事件という事件が企業の虚偽の申請によるものでございましたために、審査を非常に慎重にせざるを得なくなったということがございました。昨年、輸出審査にその結果おくれが出たわけでございます。そういうことがございまして、今御指摘のような、例えば日ソ関係なら日ソ関係に携わっておられる商社あたりで非常に迷惑をこうむったということはあったろうかと考えておりますが、昨年後半集中的に審査をいたすことにいたしまして、その結果現在では審査のおくれというものはほぼ解消したというふうに考えております。  確かに通産省は一般論として中小企業なんかに助成策を講じるわけでございますけれども、本件につきましてはその原因が審査のおくれということでございますものですから、そちらの方を解消するということでございまして、御指摘の救済策というのが、例えば資金的な助成というような意味でございますれば、事柄の性格上そのようなことは考えておりません。
  123. 伏見康治

    ○伏見康治君 私の知っている二、三の貿易商の方々は、要するに手続が非常に煩瑣になって時間がかかって困るといったような、そういうコンプレーンが主なものでございましたので、そういうところは大いに円滑化してあげていただきたいと思います。  ところで、大臣が今言われましたように、対ソ貿易というものはますます順調に伸ばしていかなければならない。とにかくお隣の国でございますので、アメリカや中国と同じようにソ連との貿易も増していかなくちゃいけないと思うんですが、アメリカさんはレーガン大統領政策がINF以来変わったという観測があるんでしょうか、非常に対ソ貿易を盛んにするような方向への政策を打っておられるように思うわけです。  新聞情報によりますと、四月の半ばには政府レベル、それから民間レベルの代表者がモスコーへ大挙して乗り込んで、何か五百名ぐらいになるとかいう大変な団体がゴルバチョフに会いに行くそうなんでございますが、何かうっかりしていると、かつてのニクソンショック、頭越しに中国とアメリカとが仲よくなって、日本が後へ残されたというようなことが、今度は対ソ連を相手にして起こるんではないかといったような危惧も感じないわけではないんですが、その辺のところをどうお考えになりますでしょうか。
  124. 田村元

    国務大臣田村元君) これはココムの問題とそれから日ソ貿易といいますか、日本と共産圏との貿易の問題は、これは全然別でございます。でございますから、日本は何といっても今おっしゃったようにお隣の国でございますから、しかも日本貿易立国でございますので、日ソ貿易についても健全な形で発展せしめていくことは必要と考えております。日ソ貿易の今後の発展のためには両国間の意見交換や交流が重要でございます。  ところが、自由主義諸国とソ連の場合はもう全然貿易のやり方が違いますし、窓口も異なります。例えば旅行いたしますのでも、一般の方々が観光旅行されるのでも全然仕組みが違うわけでございます。そういうことで、政府ベースでは日ソ政府間貿易経済協議というのがございますが、その場において協議をする。また、民間ベースにおきましては日ソ経済合同委員会なんかの場で協議をしていくということになろうかと思います。また、それを進めていかなければなりません。  アメリカ日本の頭越しということは、これはないと思います。それは我々はそれほどおくれをとろうと思っておりません。かつての日中問題、日中のあの政治の問題とは意味が違います。事実、昨年六月の日ソ政府間貿易協議、それから本年一月の日ソ経済合同委員会におきまして、ソ連側から訪ソ経済ミッション派遣の要請があったことは事実でございます。このミッションの派遣というものは、日ソ経済関係の今後の発展にとって有意義と考えられますので、民間ベースの検討を踏まえまして、通産省としましても前向きに検討をいたしておるところでございます。
  125. 伏見康治

    ○伏見康治君 これもお門違いの質問になるかと思うんですが、農林水産省の方へ聞くべきなんでしょうが、アメリカとソ連が北太平洋における漁業について、何か非常に進んだ共同動作をとりつつある、日本だけが北太平洋の漁場から排除される気配があるというような新聞記事を読んだことがあるんですが、そういうことはあり得ることでしょうか。これはお門違いで申しわけありませんが、何かお答えありますか。
  126. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) 北太平洋の漁業の問題について、私、所管ではありませんけれども、簡単に概略をお答えしたいと思います。  一つは、ベーリング海のソ連の二百海里、それからアメリカの二百海里が接するところがあるわけですけれども、接する中に一つ公海部分が残るところがあります。公海部分の資源に関しまして、その公海部分で漁獲をすることがアメリカ及びソ連の二百海里内の資源に影響を与えるということで、米ソ間で話し合いが行われているというのは事実でございます。これに対しては、日本としては公海というその地域の水域の性格に着目しまして対処をしているということであります。  それからもう一つ、北太平洋の漁業の問題で今問題になっておりますのが、日ソでサケ・マス交渉が今中断されておりますけれども、ソ連系のサケ・マスを日本側がアメリカの二百海里内でとっていた地域がございます。これについてはイシイルカ及びオットセイの混獲に関する許可証の問題が出てまいりまして、ソ連側から漁獲の割り当てをもらったとしても、そのアメリカの二百海里水域内で日本のサケ・マス漁船が操業できないという問題が生じてきております。これは片一方ではアメリカと、また他方ではソ連と現在話し合っている状況であります。
  127. 伏見康治

    ○伏見康治君 外務省はその客観的な事実を報告されたんでしょうが、それに対して日本政府としてはどういう態度をとるかというのを伺いたいところですけれども、まあいいです。  これもどうでもいいことですが、アーマンド・ハマーという方がおられます。これはオクシデンタル・ペトロリアムという石油貿易商でございまして、何か子供のときにレーニンにじっこんになったとかいうわけで、それ以来何十年の間、アメリカとソビエトの貿易に従事してこられた大変なお金持ちだそうでございます。私がそういう方を知ったのは、チェルノブイル事件のときにそのハマーさんが骨髄移植のお医者さんの専門家を連れてモスコーに乗り込んでいって、放射能で弱った方の骨髄を移植する手術をさせたというニュースがございまして初めてハマーさんなるものの存在を知ったんですが、最近ハマーさんの自伝みたいなものの厚い本が翻訳されておりまして、極めておもしろいんですが、デタントとかあるいはレーガンさんの対ソ強硬策とか、いろいろ米ソ間の関係が紆余曲折する中で、このハマーさんというたった一人の貿易商は連綿として民間外交的なことを、御商売ももちろんなすったんですが、同時に民間外交的なことをずっと続けておられた。こういう要素を私たちはもう少しよく眺めないと、アメリカとソ連との間の関係というものを誤解するおそれがあるんではないかと思うんです。  日本人とソビエトとの間には人種的な共通要素が少ないせいでしょうか、そういう個人的な民間外交をしょって立ってきたという方がどうも少ないように思うんです。貿易面でもそういう民間貿易の伸び伸びとした活動を政府が大いに援助すると申しますか、インカレッジする、そういう向きの何か政策はあり得ないだろうかということを考えるんですが、そういうことは無理でございましょうか。
  128. 茂田宏

    説明員(茂田宏君) お答えいたします。  オクシデンタル石油のハマー会長が米ソ関係の円滑化に非常に大きな役割を果たしているということは我々も承知しております。  我が国の場合ですけれども、我が国の場合は昔は高碕達之助先生などが日ソ関係でも非常に大きい役割を果たしたわけですけれども、今のところそういう形でいろんな方がいろんな意味役割を果たしているというふうに我々は考えております。  政治面では日ソ円卓会議という交流の場がありまして、この場でいろんな方々が日ソ間の意見交換について役割を果たしておりますし、経済団体では先ほど田村大臣から話のありました日ソ・ソ日経済委員会の枠内において日本経済人が、先方は民間人というよりも政府の要人ですけれども、要人との間で日ソ経済などについて話し合いをしているということであります。ハマーさんのような方というのは非常に例外的な経歴のある人でして、そういう方が日ソ間に育ってくるのは、いろんな事柄が行われている中で自然に場合によっては生まれてくるし、場合によっては生まれてこないということであろうと思いますけれども、そういう今、日ソ間で行われているような民間交流というものについては我々としても進めていくべきだ、このように考えております。
  129. 伏見康治

    ○伏見康治君 対ソ関係で今ハマーさんの話をしたので、余計なことですけれども一つだけ申し上げますと、私も実は日ソ間の交流ということに対して非常に熱心に活動しているつもりでございまして、この四月の末には松前重義さんのお供をして文化交流の方で行ってまいるつもりですが、そういうことをなさる方が通商関係の方でもどんどん出てくださることを希望いたしまして、ココム関係の質問をおしまいにいたします。  もう一つ、まるで関係のないお話で申しわけないんですが、エネルギー需給の見通しについて伺ってみたいと思います。  終戦後非常に情けない状態から出発いたしまして、経済復興の歩みを始めたころは、エネルギー需給というものは、これから先エネルギーがますます必要になる、そのころ五年先はどうなる、七年先はどうなるというような曲線をかきますと、必ず指数関数的に上昇している曲線を描いておりました。その曲線の上がり方が、人によって違ったんでしょうけれども、指数関数的であるという点においてはほとんど似たようなものでございました。ところが、だんだん経済成長が進んでまいりますというと、すべての現象がそうでございますように、成長曲線というものは初め急速に増加いたしまして、それからやがてだんだん飽和していくものでございますが、その飽和点がだんだん出てまいりまして、いわゆる下方修正というものを毎年繰り返してなされるようになってまいりました。  もっと思い切って根本的に考え直したらいかがかと思うんですが、今まで言ったことと全く裏腹なことは言えないと思いまして、下方修正という形でだんだん曲線を下げてこられたような感じを局外者としては受け取るわけですが、現時点ではエネルギーの将来に対する見通しというものはどういうことになっているか、それはどういう考え方で見通しを立てておられるかといったような点をお話し願いたいと思います。
  130. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) 御指摘のとおり、なかんずく産業構造の変化が大きく進んでおりまして、エネルギー多消費型のいわゆる重化学工業のウエートが下がってきております。    〔委員長退席、理事前田勲男君着席〕 それからまた国民生活全般あるいは一般のサービス部門におきまても、エネルギー使用の効率化が進んでおりまして、いわゆる広い意味での省エネルギー化といいますか、エネルギー利用の効率化が国民経済全体で進捗をいたしております。  経済成長率に対しますエネルギー消費量の伸び、いわゆる弾性値でございますけれども、御指摘のように石油ショック前後におきましては、成長率一に対しまして〇・五というようなことになりますけれども、そういった伸び率、年率にしまして五%、六%というような伸びも見込まれた時期があるわけでございますけれども、次第に下方に修正をいたしておりまして、現在昨年の十月に策定をしていただきました長期エネルギー需給見通しにおきましては、エネルギーの需要の伸び率を年率にいたしまして約一・五%程度というようなところまで下方修正をいたしているわけでございます。したがいまして、これによりますと、昭和六十一年度のエネルギー需要量は原油換算にいたしまして四億三千三百万キロリッターでございましたけれども、昭和七十五年度、今世紀末になるわけでございますけれども、五億四千万キロリッターぐらいと見込まれておりまして、それでも約一億キロリッター相当分ぐらいの需要増が見込まれるというような見方が存するわけでございます。
  131. 伏見康治

    ○伏見康治君 今のお話の中で特に原子力のエネルギーはどういうことになっておりましょうか。
  132. 浜岡平一

    政府委員(浜岡平一君) いわゆる一次エネルギー供給ベースでございますが、これはもう先生、大変よく御承知のことかと思いますが、昭和四十八年度、石油ショックの起きました年には全体の中で原子力のウエートは〇・六%でございました。    〔理事前田勲男君退席、委員長着席〕 昭和三十年代の初めに日本の原子力政策はスタートしたわけでございますけれども、石油ショックのときには〇・六でございますから、余り事態に対応するに役立っていなかったと言わざるを得ないわけでございます。昭和六十一年度の実績がわかっているわけでございますけれども、全体の中で九・五%、約一〇%のウエートを占めるに至っているわけでございます。  今後、さらに代替エネルギーの導入が進んでいくと見込まれているわけでございます。昭和六十一年度におきましては石油依存度五六・八%でございましたけれども、昭和七十五年度にはこれが四五%まで低下するというぐあいに見込まれております。当然その裏返しといたしまして代替エネルギーの伸びが見込まれるわけでございますけれども、代替エネルギーの中で大きな役目が期待をされておりますのは原子力でございまして、先ほど申し上げました九・五%が一五・九%に上がっていくというようなことが期待をされているわけでございます。
  133. 伏見康治

    ○伏見康治君 お願いいたしたいことは、原子力の場合には特にそうだと思うんですが、計画を立ててからそれが本当にエネルギーを出すまでに十年あるいはそれ以上かかったりする、非常にいわゆるリードタイムが長いプロジェクトでございますので、先の先をよく見通しておかない限り仕事にならないわけですね。それで、皆さん方の方で将来見通しを立てる理論的な道具をひとつ整備していただいて、的確な判断ができるようにしていただきたいと思うわけです。  高度成長の時代というものは、とにかく皆さん一生懸命にそれぞれおやりになればいいようなものでして、つくり過ぎたってそれをすぐ翌年には使う人が出てくるというようなことなんでしょうから、高度成長のときは実は余り先の見通しなんか問題にしなくてもいいと思うんですが、これからむしろ低成長の時代になりますというと、つくり過ぎてしまった原子力発電所なんていうのは非常に荷厄介なものだと思うんですね。ぜひひとつ、将来の見通しというものを、論理的な根拠に基づいて見通しを立てるような研究をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  134. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 数点質問したいと思いますけれども、まず第一点は六十三年度通産予算の中で長寿社会に関連する福祉関係について質問をしたいと思います。  身体障害者対策としましては、完全参加と平等をテーマにしました昭和五十六年の国際障害年を契機とした障害者福祉の必要性についての認識が深まり、昭和六十年度には身体障害者雇用促進法、身体障害者福祉法、それぞれの改正がなされたものでございます。そういう観点から、先ほど申し上げました六十三年度通産省予算に関する長寿社会への対応関係、この予算の中に、一つは質の高い国民生活実現に資する内需創出関連予算、こういうことで概要があるわけでございます。六十三年度通産政策重点の中で、質の高い国民生活実現に資する内需創出の項目がございますが、この中に長寿社会への対応関係予算化、言うまでもなく、我が国では来るべき長寿社会への対応が急がれており、通産政策においてもこれらの施策に今後とも重点を置いていくべきであると考えております。  そこで、まず通産省としての長寿社会への今後の対応施策についてお願いをするわけでございますが、質問の第一点は、今申し上げましたように長寿社会への今後の対応施策、六十三年度予算に計上されているわけでございますが、長寿社会対策関係予算概要について、まず伺いたいと思います。
  135. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 私ども技術開発面でまず関連した予算について申し上げたいと思います。  五十一年度から医療福祉機器技術研究開発制度を発足させてございまして、これは高度な福祉社会の実現を図る観点から医療及び福祉の分野において緊急に開発が要請されているもので、リスクが非常に大きく民間独自で開発することが困難な医療福祉機器について国が主導的に研究開発を行うものでございますが、御指摘の高齢化社会に伴いまして、がん、成人病等の診断、治療機器、あるいは高齢者の機能補完機器などの開発を重点的に進めているところでございます。  それで、私どもの関連予算といたしましては、六十三年度におきまして、前年度からの継続の八機器、これは医療機器が三機器で福祉機器が五機器でございますが、全部で約六億六千万円の予算を計上しているところでございます。
  136. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) ただいまは予算についての御答弁を申し上げたわけでございますけれども、そのほか財投の関係もございますので、簡単に御説明させていただきたいと思います。  福祉関連の機器につきましては、実は開発銀行の融資を使いましたリース制度というふうなものもございまして、昭和五十一年度からできているわけでございます。六十三年度につきましては、この福祉安全対策枠の中で融資額ベースでは二十億円を一応予定いたしているところでございます。
  137. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 私ども住宅産業を所管いたしているわけでございますが、住宅対策の一環といたしまして、高齢者対策のための新しい開銀融資を財政投融資計画の中に盛り込んで要求いたしております。  具体的に申し上げますと、開銀の住宅水準向上枠という新しい枠でございます。これは先ほど先生からもお話ございましたけれども、住宅につきましてもその質的向上についての国民のニーズが非常に高まっているわけでございます。特に、高齢者とか身体障害者用のいろいろな住宅関連機器、こういったものにつきましてのニーズが非常に高まっているわけでございます。こういった事情を背景にいたしまして、そういった住宅関連機器を生産するあるいは販売する企業に対しまして、生産設備あるいは流通設備に対して所要の開銀融資を行っていこう、そういったことを通じまして新商品の開発と普及を進めていこう、こういう財投計画の一部でございます。
  138. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私も、通産省が高齢化社会における福祉関係に非常に大きく寄与しているということで、きょうも予算を見ながら、その額は別といたしまして非常に敬意を表しているわけでございます。そういう中で、福祉関連項目についてちょっと目を移してみますと、昨年の六月に総理大臣を本部長とする障害者対策推進本部から障害者対策に関する長期計画後期重点施策が発表されており、政府としての積極的な障害者福祉を推進することになっておる、これらをいろいろ興味深く私も見詰めさせていただいておりますけれども、福祉関係数点だけきょうは伺ってみたいと思います。  まず一つは、住宅水準の向上でございますが、通産省では新住宅開発プロジェクトとしてハンディキャップ者配慮住宅の開発を進めておられます。その概要、また進捗状況について伺いたいと思います。
  139. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 私ども通産省では、ただいま先生お話ございましたように、新住宅開発プロジェクトと称しておりますが、昭和五十五年から昭和六十年にかけまして所要の研究開発をやったわけでございます。その中で高齢者、身体障害者用のケアシステム技術につきましても研究開発をやりまして、相当な成果を上げたわけでございます。  例えばどういうものがあるかと申しますと、寝たきりの老人を寝たままおふろに運ぶ、そのための、水平トランスファーシステムと言っておりますけれども、そういった技術、施設、あるいは車いすに乗っておられる方がそのままの状態で洗面所とかトイレが使えるように車いすに合わせて台が上下するような関連機器、あるいは車いすのままで家の中で昇降できるような個人用の住宅エレベーター、こういったものの研究開発をしたわけでございます。  研究開発も相当な成果を上げましたので、いよいよこれを商品化しまして普及する必要がある、こういう段階に来ておるわけでございます。そういった意味で、住宅産業メーカーあるいは住宅関連機器メーカーに対しまして新商品の開発に取り組むように要請してまいってきておるわけでございますが、そのための一つの手段といたしまして、先ほど御説明申し上げましたように、来年度新しく開発銀行融資の中に住宅水準向上枠という新しい枠をつくろう、こういうことにいたした次第でございます。
  140. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣、やはりこのハンディキャップ者用の住宅の質の水準向上、これで今お話がございましたように、高齢者、身体障害者用ケアシステム技術とか、可変住空間システムの技術、地下室利用のシステム技術、自然エネルギー利用住宅システム技術、住宅躯体材料耐久性向上技術その他住機能の高度化に資する技術、非常にすばらしい対策をやっていらっしゃるわけでございますが、この金利が五・四五%になっていると思うんですが、これは将来もう少し下がるとか、こういう方々の利用のために、そういう政策的な将来に対する考え方というのは、大臣どうなんでございましょうか。
  141. 鎌田吉郎

    政府委員(鎌田吉郎君) 先ほどから申し上げておりますように、来年度新しい融資枠を設定するということでございまして、私ども開銀の特利一と言っておりますけれども、五・四五%の金利で来年度お願いをいたしておるわけでございます。  私どもとしましては、現在まだ予算案御審議中でございますが、国会でこれが認められました場合には、ぜひこれを何とか最大限活用いたしまして新商品の開発普及に最大限の努力をしてまいりたいということで考えております。  また将来につきましては、その結果を踏まえまして私どもの対策を考えていく、あるいは積み上げていく、こういうことでまいりたいと思っております。
  142. 田村元

    国務大臣田村元君) せっかくこういうふうに張り切っておるんでございますから、どうぞ与党野党それぞれに応援してやっていただきますようにお願いをいたします。
  143. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次に福祉機器の開発の問題でございますが、この六十三年度予算にも医療及び福祉機器技術の研究開発として六億六千万円が計上されております。著しい科学技術の進展の成果をもってさらに有用な、そして低価格な福祉機器が提供されるべきだと考えます。  そういう観点から、この福祉機器の研究開発のこれまでの推移と、そして二番目には実績、そして今後の課題について簡単に伺いたいと思います。
  144. 飯塚幸三

    政府委員(飯塚幸三君) 先ほども申し上げました昭和五十一年度の制度発足以来、私ども福祉機器では九機器の研究開発を既に終了しております。その中には盲人用に点字書を多量に複製する点字複製装置などが含まれておるわけでございます。また、そのうち五機種については既に商品化がされておりまして、家庭あるいは施設、病院等で使用され始めておりますし、また残りの機器も現在民間企業におきまして商品化を目指しましていろいろな評価を行っておるところでございます。今後一層高齢者のハンディキャップの軽減あるいは寝たきり者の介護負担の軽減等のための福祉機器について研究開発に力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  145. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ここに開発予算の推移というのが五十一年度三億円から六十三年度五億九千万、こういうふうな格好で数字が載っておりますけれども、私も昨年スウェーデンの障害者の方々に対する機械の研究開発、公的、民間、そういう部門の方々、いろいろ視察をさしていただきましたけれども、通産大臣、非常にやはりお体の悪い人とも一緒に社会のために希望のある生きざまの中でやっていこうという、どのようにしたらお体の悪い人が健康な平常な人と一緒に安心してお仕事ができるか、生活ができるか、もういろんな部門で研究を一生懸命しているんですね。  そういう面から見たときに、私はこの研究開発の予算の推移、厚生省が本当は一生懸命にならなくちゃいけないと思うけれども、通産省としても、これ少しはふえておりますけれども、この金額ではまだまだ少ないんではないか、こう思うんです。その点は大臣いかがでございましょうか。
  146. 田村元

    国務大臣田村元君) 予算が多いか少ないか、私は専門家でありませんからちょっとその判断はつきかねますけれども、ただ一つ言えますことは、今おっしゃいました高齢者の方々あるいは寝たきり者の方々のために、あるいはがんその他で希望を失っておられる方々に対して、何とかこの方々を楽にしてあげる、あるいはお助け申し上げるというような研究開発予算ならば幾らつけても国民は反対しないと私は思うんです。  例えば仮に今がん克服のために大量の予算をつけるから各省庁は全部この程度出してくれということであれば、私は皆出すと思うのです、生命の問題でございますから。そしてやはり人間である以上、一番それにおびえておるわけでございますから、そういうことでございますので多いにこしたことはない。これだけは言えると思います。ただ、どれだけが適正か、これはちょっと私も素人で、しっかりわかりかねます。
  147. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次に、福祉機器のリース制度の問題が同じく六十三年度予算の中の開銀融資福祉安全対策枠四十億の中に、福祉関係機器リース制度が含まれております。この制度の概要についてまず伺いたいと思います。
  148. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) ただいま御指摘のございました福祉関連の機器リース制度でございますが、これはエックス線CT、人工透析機器等、重度の心身障害者あるいは重症患者等の診断、治療用の機器のリースによる利用促進を図ることを目的といたしまして、昭和五十一年度に創設されたものでございます。具体的な仕組みを申し上げますと、日本開発銀行がリース会社に対しまして、この会社が医療機関へのリース向けの機器を購入するに際しまして、融資比率四〇%で融資を行うものでございます。  六十三年度の予算につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、福祉安全対策の枠の中で融資額ベースおおむね二十億円程度を予定しているところでございます。
  149. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この制度は昭和五十二年から始まって、当初六十億程度の実績があったようにいただいている資料からは見えるんですが、六十二年度の実績は三億になっているようにこの数字で見るわけです。この極端な落ち込み、何か事情があったのかどうか、その点はいかがでございますか。
  150. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) 制度は五十一年度にできまして、実際に動き出したのが五十二年度からでございまして、融資実績につきましてはただいま先生御指摘のように、昭和五十二年度には六十一億円でございましたが、六十二年度につきましては三億円程度になる見込みでございます。  これはなぜかということにつきましては、恐らくいろいろな原因があるわけでございますけれども、実際今使われました跡をたどってみますと、やはり医療の分野でいろいろな新しい高額な機器が普及していく時期というものと裏腹の関係にあるような気がするわけでございまして、具体的には、例えばエックス線CTというふうなものが、ちょうどこの制度ができた後急速に普及していったわけでございますが、この機械は大変高い機械でございまして、リースにもなじみやすい機械だった。その普及がおおむね一巡したというふうなことが一つの原因かなと思うわけでございます。  ただ、この医療機器の分野におきましては最近でもまたいろいろ新しい機械が次々と開発されつつあるわけでございますので、私どもといたしましては、今そういう底のような状況にはなっておりますけれども、やはりこの制度はこれから先も役に立つ制度として使っていただけるものではないかと考えております。
  151. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 それからもう一つは、この制度の対象機器のうち、身障者、老齢者の能力回復、社会復帰に寄与する機器類が、来年度からは適用除外と、いただいております資料に出ておるわけなんですね。私たちも今高齢長寿社会を迎えるときに、お体の悪い方とか高齢者の方々の能力の回復、社会復帰に寄与する機器類が来年度からなぜ適用除外になったのかなと、そういうふうに資料をいただいてその中を分析しながら見ているんですけれども、それはどういうふうな論議が交わされたんでしょうか。
  152. 児玉幸治

    政府委員(児玉幸治君) この福祉関連機器リース制度というのは三種類の分野の機器を従来対象にいたしておりました。第一は、今先生御指摘の心身障害者、高老齢者等の能力回復、社会復帰に寄与する機器、第二の分野は、重度心身障害者、重症患者等の診断、治療等に利用される機器、三番目が、健康管理、疾病、障害予防、救急対策に寄与する機器と、こういうふうになっていたわけでございます。  先ほど全体としての融資実績の推移につきましては、先生御指摘のございましたとおりでございまして、かつての六十億ぐらいから最近では三億ということでございますが、これをさらに中三つの今の分野に分けて様子を見ますと、ここ四、五年の経過を見ただけでも、実は第一の心身障害者、高老齢者等の能力回復、社会復帰に寄与する機器につきましては五十八年度に六件、金額にいたしまして百八十八万円の融資実績がございました。五十九年度はゼロでございます。それから六十年度は一件ございまして、これが二十八万円、六十一年度、六十二年度はゼロでございます。  こういった事態を踏まえまして、私どもといたしましては、せっかくこの項目をリース制度の対象には入れてあったわけでございますけれども、どうも何かこの制度がうまく働かない事情があるのではないかなというふうなことをいろいろ議論をするに至ったわけでございます。したがって、このままただこの枠の中にとどめておきましても十分使われないものでは意味がないということでございまして、実はこういう削除というのは、これまでの財投の運用の一つの物の考え方としまして、何年もどうも実績がないようなものは一応外してみるということで外したわけでございまして、これ自身、私どもがこの分野についての対応、検討をむしろやめたとか、あるいは政策的な努力の手を引いたということではございません。  どうしてかなということで今いろいろ調べておりますけれども、一つの理由といたしましては、例えば身体障害者福祉法に基づきまして、地方自治体でいろいろな援護施設をつくっておりますけれども、こういったところで、むしろこの分野における機器をみずから買い取る、それをあるいはレンタルで自治体の方で導入をするというふうなケースが多くなっておりまして、なかなかそのビジネスベースのリースというふうなところに需要がこなくなっているなというのが一つの印象でございます。それでは全部それに任せていいのかなということになりますと、これは必ずしもそうではないかもしれません。  そういうことでございまして、とりあえず六十三年度につきましては、この分野はこのリースの対象からは外しますけれども、一体どういうような利用実態になっているのか、それに対してどうすれば一番適切な制度がつくれるのかという点につきまして、これから財政当局とも相談をしながら検討を進めていきたいと考えております。
  153. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 確かにこの問題は、リース制度についても一つは高価であるという問題があると思いますね。ですから、やはり低廉なもので質のいいものを提供していくということが大事だと思うんですね。見ておりましても、心身障害者、老齢者等の能力回復、社会復帰に寄与する機器の中の一つは例として電気治療機器でしょう。これはやはりいろいろ何段階かに分けて開発をしていけば、私はこれはいろんな効用とか、そして連携すれば運用、活用という面では必ず生きてくる。これは私の場合をとって失礼ですけれども、若いときに運動しておりますので、もう体の内臓はめちゃめちゃで、関節とかいろんなものがやられてしまっていますね。そういうままで固まっている我々でも、こういうものが軽量化される、そして軽度なリース制度に開発されるといえば、これは私たちでも生体学的に言ったら必要だなと思いますね。これが、そういう希望者がいないからというので外してしまう。  それと同じように温熱治療機器でもそうですね。これが、理学的にもやはり高度になってくる、年齢が高くなってくる、体が冷えてくる、そうしたらやはり温めていく部門、そういうふうなことは、やっぱりこれは医学的にも機能的な面の開発ということで、中小企業の異業種の問題ではございませんけれども、やはりもっと当局が考えていく必要があろうと思います。  もう一つ外されている運動療法の機器、それから運動機能検査機器、特殊入浴の機器、やっぱりこれは本当にもうちょっと考えて、何か含みを残していただかないと、利用率が少ないからといってすぱっと切ってしまうことになれば、なぜかと申し上げますと、これは通産大臣ももちろんでございますけれども、竹下総理大臣、これは中曽根さんのときから続いてきたものだと思うんですけれども、総理大臣を本部長とする障害者対策の推進本部というふうにきちっとできているわけですから、こういう細かい点を行政とか政治の我々の分野が本当にきめ細かく考えて対応していかないと、数字的なデータが下からずっと上がってくる、だからこれは外そうかというようなことでは、お体の弱い方々、社会的に弱い人々の立場を考える行政や政治ではない、こういうふうに思うわけですね。その点、通産大臣いかがでございましょうか。
  154. 田村元

    国務大臣田村元君) これはおっしゃるとおりだと思いますね。  こういう問題については申し込みがあるからとかないからとかということだけで判断をするより、なぜないんだろうということを考えて、そしてやはりいろんな面から、どうせ自分たちもどのみち老後をたどるんですから、自分たちの行く道なんですから、いろんな面で検討して、そしてニーズに添い得るように努力をするということは当然だと思う。もちろん、中には何ぼ考えてもだめというものもありましょう。それはありましょうけれども、やっぱり考えた上でだめというのとそうでなくてだめというのとでは違うわけでございますから、それは十分検討していく必要はあろうと思います。
  155. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 あと二点ございますけれども、時間がちょっと中途半端になりますので、一点だけ経企庁長官通産大臣に伺いたいと思うんです。  円高差益の還元について、統計を見ておりましても、円レートを六十年九月を一〇〇として考えた場合に、やはりいろいろ論議もありましたけれども、ヨーロッパ系は余り差益の効率が出ていない、マルクの西ドイツ、リラのイタリア、フランのフランス、こういうふうに、余り日本には。消費者の皆さんも不満というものを持っていらっしゃると思うんですけれども、ここで、時間がございませんからいろんな問題はまた別な時間にいたしまして、差益還元をもう少しやるべきなのか、それとも、七〇%方平均的にはもうしているからこれでストップなのか、そういう問題ですね。まずそれを経企庁長官
  156. 中尾栄一

    国務大臣中尾栄一君) まず矢原先生、同僚議員でございます沼川先生の大変な御不幸、本当に心から哀悼の意を表したいと思います。  円高差益の問題は、これはもう、もっとやるべきであるかどうかという単刀直入な御質問に対しては、やるべきだと私は徹底して申し上げたいと思っております。現在の時点で六九・六%、まあ私どもは七割、こう言っておりますけれども、一つ一つのアイテムをずっと逐一チェックいたしますると、ときには、本当にこれだけの差益が還元されているんだろうかと思うものもございます。これはもう率直に認めざるを得ません。  そういう点におきましては、航空運賃の方向別格差、あるいはまた特に野菜関係を含めました生鮮食料品等の輸入問題とか、幾つかのハンデを背負っておる。肉においても、明二十九日実は農林大臣出発だと思いますけれども、その問題点もその中に含まれなければなりますまい。それからまた、その他もろもろの問題、例えば一ついい例を挙げれば、エビみたいなのはアイテムとしては理想的な八割ぐらいの還元がなされてはおりますけれども、現時点の中では全体総合して本当に七割還元されているのかという素朴な疑念の方がむしろ当たっているんじゃないかと思うほど、私も実は悩んでおるわけでございます。  しかしまあ、総合的な判断でやっておりますと同時に、あと一つはタイムラグがございまして、二ないし二・四半期半というんですから、大体七カ月くらいのずれをもってこの還元の効果率が出てくるということもございますし、それからまた中には、きょうの御質問にもございましたように、並行輸入の問題など通じまして、もうこちらから何か、日本製品が向こうへ出ていったものが戻ってきた方がかえって安いというような、ちょっと一見ばかげているような状況もないわけではございません。こういう問題点もさらに詰めていく努力は、私ども経企庁では今必死になって闘っていかなければならない、相済まない、こう考えておりますので、その点なども含めて鋭意努力を惜しまずやっていこう、こう考えております。  ただ、最後に、円高差益の問題点におきましてまだ完遂をされていない面におきまして、さらにまた委員においてこういうようなというようなお知恵がございましたらば、さらにまたお知恵を拝借したいと思いますが、その間における私どもの、輸入をした場合の特にそれぞれのとりでがございまして、中間的な段階の中で多少なりとも私どもに思うような効果が上がっていないということも指摘しなければならない、こういう構造的な問題も含めて考えなければ総合的な解決にはつながらないなと私は申し上げて差し支えないかと思っております。
  157. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 細かい問題はまた別の機会にいたしまして、姿勢としては本当に賛意を表するものでございます。後日よく検討していただきまして手を打っていただきたいと思います。  最後に通産大臣、同じ問題でございますが、電気・ガス料金の値下げについても、下げるべきでないとか、いろんな、流用の仕方があるとか、いろんな問題がございましたが、やっぱり通産大臣はこの前も英断で、非常に電力会社よりもさらに低くなるような形のいきさつの中で電気・ガス料金の値下げの経緯がございましたけれども、こういう公共料金ですね、特に物価に影響する電気、ガス、こういうものはもう値下げはこれで限度なんですか。それとも今の円高の情勢の中でもう少し奮発をして値下げの方向に行く可能性というものを検討しているのだと、そういう点はどうですか。
  158. 田村元

    国務大臣田村元君) 円高差益の還元につきましては、今企画庁長官からお話がありましたので、先ほど私へも御指名がありましたが、一般論としては私は御遠慮申し上げたいと思います。  ただ、これは私も同じ意見で、断じてやらなければならない。一つには、今後内需拡大策政策継続をやるならばインフレを懸念しなきゃならぬ。そのためには今から予防策として物価を抑え込んでおかなきゃならぬという面があります。それから生活実感の問題で、購買力平価というものを考えるときに、やはり為替レートと物価、つまり円高差益の問題というものとの関係も整合性を持たせたものにしていかなきゃならぬ、これは当然のことでございます。  アメリカはドルがああいうふうに暴落しましたからこれは非常にはっきりしておりますが、ヨーロッパの方はそれぞれに国の通貨が違いますけれども、総じて円とドルほどの大きな変化はなかったわけです。例えばドイツなんかも日本と同じような平行線のグラフに近かったということでありますから、当然アメリカの方が円高差益を還元せしめやすい。ヨーロッパの方がかえってなかなか難しい面があるところへ、ブランド商品なんというものは多くヨーロッパですし、そういう点で難しい面もございます。  さて、それはそれといたしまして、公共料金の問題でございますけれども、率直に言いまして、先般まあ言葉は悪いかもしれませんが、絞れるだけは絞った、電気、ガス等について。それはもう本当に事務方も驚くほどのことでございました。電力会社、ガス会社、恐らく相当なショックだったと思うんです。でございますから、先般来のあの企業の景気動向を見ておりますと、電力会社なんかは気の毒な話ですが、減益を余儀なくさせられておるというようなことでございます。  そこで、じゃこれ以上は無理か、ここまでやった以上今の為替レート、今の原油の価格等で、これ以上というとなかなか難しい面がある。やはりマンモス企業でございますから、株主もあれば、特に労働者に飯を食わせなきゃならぬということもございます。ですから、ここでお答えとして申し上げるならば、為替レートや原油価格の動向がまだまだ定着しないで不透明、きょうあたりドルが百二十四円台のようでございますが、行ったり来たりしておりますので、ちょっとわかりませんが、さりとて今度は逆に電力料金を下げるために円が高くなることを祈るわけにはまいりません、通産大臣として。これ以上の円高は大変なことになります。  でございますので、そういう点はまだ不透明な点がございますけれども、じっと常に監視をして、そしてある程度まだ値下げができるなというような姿で定着をしてきたら、すかさずこれをまたお願いするということだと思います。  二兆六千億というのは思い切ったことでございまして、私、こんなことを言うとちょっとおこがましいかもしれません、不遜かもしれませんが、三兆円足らずの減税で大げんかしておるのを見て、おれは二兆六千億やったぞというような感じすらいたしますが、これからももちろん前向きに検討していきたいと思っております。
  159. 大木浩

    委員長大木浩君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後四時二十五分散会