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1988-05-19 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十九日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      初村滝一郎君     遠藤 政夫君  五月十八日     辞任         補欠選任      中曽根弘文君     石井 道子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君            発議者  対馬 孝且君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        労働大臣官房審        議官       齋藤 邦彦君        労働省労政局長  白井晋太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        労働省労政局労        政課長      山中 秀樹君        労働省労政局労        働法規課長    渡邊  信君     ─────────────   本日の会議に付した案件林業労働法案浜本万三君外四名発議) ○労働組合法等の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十七日、初村滝一郎君が委員辞任され、その補欠として遠藤政夫君が選任されました。  また、昨十八日、中曽根弘文君が委員辞任され、その補欠として石井道子君が選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 林業労働法案議題といたします。  まず、発議者対馬孝且君から趣旨説明を聴取いたします。対馬君。
  4. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただいま議題となりました林業労働法案につきまして、日本社会党護憲共同を代表して、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国森林は、国土面積の七〇%に当たる約二千五百万ヘクタールを占めておりますが、このうち人工林面積は約一千万ヘクタールに及び、その蓄積は十三億六千万立方メートルと全森林蓄積の五割にまで達しております。  この豊かな森林は、木材などを生産し、建設資材、家具、紙などの形で国民生活必需物資供給を担う等の経済的機能を果たしているほか、国土保全水資源の涵養、大気の浄化、自然環境保全保健休養等の多面的な公益的機能など、はかり知れない重要な役割を果たしております。殊に、国土開発に伴う山地災害多発化水需要増大さらには都市への人口集中などによる生活環境悪化等から、森林公益的機能の充実が一層重要となっております。  しかしながら、森林林業を取り巻く状況は、近年非常に厳しく、危機的状況を強めております。すなわち、木材需要の六五%に及ぶ外材輸入等による国産材需要の不振、山村過疎化の進行による林業労働者減少等により、森林資源保全管理機能は著しく低下しております。特に、造林の育成に不可欠の除伐、間伐が大幅に立ちおくれ、脆弱な森林が増加するなど、森林の荒廃は深刻な事態になってきております。このため、山地災害危険地区昭和五十三—五十四年度の調査で十三万一千カ所であったものが、六十—六十一年度調査では、実に四万五千カ所も増加し、十七万六千カ所になるなど、国土災害危険性増大水害発生水資源不足など、国民の生命と国民生活への重大な影響をもたらす状況があらわれつつあります。  二十一世紀へ向けて、人類が避けて通れない課題は、資源環境だと言われます。我が国においては、まさに、林業こそが森林育成を通して、この二つ課題にこたえ得るのであります。そして、この森林育成に不可欠なのは、その生産担い手である林業労働者安定的維持確保であります。  ところで、林業労働者とりわけ民間林業労働者の置かれている労働実態は、極めて憂慮すべきものとなっております。すなわち、民間林業労働者は、季節的、短期的雇用が多いため不安定であり、健康保険厚生年金等被用者保険の適用はごく少数であり、賃金は、他産業に比べて低い上に、出来高払い制のため、労働強化を強いられ、振動病罹病者は毎年増加するという状況にあります。また、労働基準法さえ適用されないなど、まさに劣悪過酷な労働条件のもとで重筋労働に従事しております。  このような民間林業労働者労働環境のもとでは、新規学卒者若年労働者の就労は皆無に等しく、労働力高齢化は、憂慮すべき事態に立ち至っております。民間林業では、最も近代化が進んでいると言われている森林組合労務班員でも四十歳以上が八八・五%(うち六十歳以上は二一・八%)、三十九歳以下はわずか一一・五%(うち二十歳以下は〇・二%)という実態にあり、このまま推移するならば、林業担い手はいなくなり、我が国森林林業危機的状況は一層深刻なものとなることは明白であります。  世界的な森林減少による環境変化懸念されている中で、今後、我が国森林管理を適正に実行し、国産材供給能力を飛躍的に向上させ、国産材時代への展望を切り開いていくためには、何といってもその生産労働力確保対策が重要であります。しかるに、現行労働関係の諸法律やその運用のみでは、林業労働特質からくる諸問題は解決し得ないところであります。  したがって、民間林業労働者雇用安定、労働条件改善安全衛生福祉面での施策整備充 実等のためには、林業労働特質を踏まえた新たな立法が必要であります。  これが、日本社会党護憲共同林業労働法案提案する理由であります。  次に、法律案の主な内容について御説明申し上げます。  第一に、この法律は、林業労働者雇用の安定、労働条件改善安全衛生確保福祉増進等に関する施策を講ずることにより、林業労働者の地位の向上を図るとともに、山村地域振興に寄与することを目的としております。  第二に、林業労働計画の策定であります。すなわち、労働大臣は、本法目的を達成するための基本となるべき事項について、五年ごとに、全国林業労働計画を策定し、都道府県知事全国林業労働計画に即して、毎年、市町村長が策定した市町村林業労働計画に基づいて、都道府県林業労働計画を策定することとしております。市町村長が策定する市町村林業労働計画では、林業事業の量、林業労働者雇用の安定及び福祉増進に関し必要な事項について規定し、山村経済の発展のための林業振興及び林業労働者雇用開発について配慮することとしております。  第三に、専業労働者とは、常用労働者以外の林業労働者で、一年間に通常九十日以上雇用されるものをいい、兼業労働者とは、常用労働者及び専業労働者以外の林業労働者で、時季を定めて一年間に通常三十日以上雇用されるものをいうこととしておりますが、公共職業安定所長は、林業労働者について、専業労働者及び兼業労働者別林業労働者登録簿に登録するとともに、林業事業体の届け出に基づき、林業事業体登録簿を作成することとしております。また、林業事業体は、公共職業安定所の紹介を受けて雇い入れた者でなければ、林業労働者として林業の業務に使用してはならないものとしております。  第四に、林業労働者に対して、一年間のうち最低限の雇用確保されなかった場合及び本年度雇用実績が前年度雇用実績を下回った場合においては、雇用の安定を図るため、雇用保障手当を支給することとしております。雇用保障手当費用については、一定規模以上の森林所有者林業事業体及び登録林業労働者から納付金を徴収するとともに、国が費用の三分の一を補助することとしております。  第五に、振動機械を使用する登録林業労働者等について、定期及び特殊の健康診断を義務づけるとともに、振動障害を予防するため、出来高払い制の禁止、振動機械の操作時間の規制等を行うこととしております。また、振動障害者福祉増進のため、国は、療養施設等の設置、軽快者雇用安定のための助成・援助、職業転換希望者に対する職業訓練等について、それぞれ、適切な措置を講ずるよう努めなければならないこととしております。  その他、政府は、労働保険及び社会保険制度について検討を加え、その結果に基づき、速やかに必要な措置を講ずるものとし、また、労働基準法労働時間、休憩及び休日に関する規定林業労働者にも適用するために、労働基準法の一部改正を行うことのほか、監督、罰則等について所要の規定を設けることとしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ御審議の上、速やかに御可決くださるようお願い申し上げます。  以上、提案理由にかえます。
  5. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。     ─────────────
  6. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 労働組合法等の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 山本正和

    山本正和君 まず、今回の法案の一番中心となっておりますところの、中央労働委員会国営企業労働委員会統合されるということになっておりますが、この統合することとした理由をまずお伺いしたいと思います。
  8. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御承知のように、国営企業労働委員会対象事業企業数といいましょうか、がかつての三公社現業から四現業減少してしまったこと、したがいまして組合員数も百十六万から三十六万に減少したというようなこと、さらにはまた臨調最終答申におきまして労働委員会簡素化を図るべきことという御指摘もありましたし、また一方、従来から不当労働行為審査案件処理につきましては迅速化要求をされております。  そのために、労働委員会そのものの効率的な運営とかあるいは機能強化を図るべきであるというような御指摘もありましたので、そのことを踏まえまして、これに対応するための措置として今回の改正を行ったということであります。
  9. 山本正和

    山本正和君 なお、労働省提案に対しまして衆議院でさまざまな意見交換が行われまして、最終的にかなり重要なポイント、重要な問題につきまして修正があった、こう聞いておりますので、その修正点部分について御説明をいただきたいと思います。
  10. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 修正部分につきましては、第一点は、公益委員任命につきまして労使委員意見を尊重して作成した委員候補者名簿によって両院での同意を得るということになっていたわけでございますけれども、この点につきまして使用者委員及び労働者委員の「意見を尊重して」を「同意を得て」というふうに修正されております。  第二点につきましては、日本電信電話株式会社に係る調停事件についての実情の公表等特例措置があったわけでございますが、これを廃止するということが第二点でございます。  第三点は、国営企業職員につきまして、労働組合の役員として専ら従事する期間の上限は、従来「五年」であったのでございますけれども、国営企業運営実態にかんがみ、労働関係適正化を促進し、もって国営企業の効率的な運営に資するため、当分の間、「七年以下の範囲内で労働協約で定める期間」とするものとするという修正がなされています。  以上、三点でございます。
  11. 山本正和

    山本正和君 いずれも、労働者労働組合をつくってそして労働者の利益を守る、こういう趣旨の中で本法改正につきまして十分な議論の中から生まれた修正点だと思いますので、後ほどまたこれに絡めて御質問を申し上げます。  まず、きょうは最初に、今大臣から御答弁いただきました統合された問題についてもう少し伺ってまいりたいと思います。  今の大臣お話にもございましたように、対象企業がかつての三公社現業から四現業になった、そしてまた対象職員も大変減少した、また不当労働行為審査迅速化要求にこたえる必要がある、こういう御説明がございました。  国営企業労働委員会中央労働委員会という従来のこの二つ委員会役割また機能は、それぞれ異とされておりますし、特に国営企業労働委員会というのは、国営企業職員争議権を認めないことに対する代償措置ということで定められておりますし、戦後長い間大変な役割を果たしていただいておった委員会でございます。また、この国労委に対する労働者の期待も大変大きかったわけでございます。  そういうふうな状況の中で、この国労委のそういう役割権能というものが統合後も十分に機能し得るのかどうか、こういう面につきましてもう少し御説明をいただきたいと思います。
  12. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほどお答え申し上げましたような理由によりまして今回統合案を御提案いたしておるわけでございます。  したがいまして、本質的に従来の国労委中央労働委が持っておりました権能はいささかも低下をさせない、維持すべきものであるという建前からこの改正を行っているわけでございます。
  13. 山本正和

    山本正和君 そういたしますと、いわゆる今回の統合というのは、単に量的な視点から安易に行われたんじゃないかというふうな若干の懸念もご ざいました。何か知らないけれども、臨調行革、こういう中で役所を統廃合するというふうなことで、量的な部分が非常に強かったのではないかという懸念があったわけでありますが、そうじゃないんだという大臣の御答弁でございます。  そういうことを考えてまいりますと、今回の統合組織の合併問題というふうに考えるんじゃなしに、これは国営企業労働委員会あるいは中央労働委員会の両委員会が果たしてきた機能に変更を加えるものではない、こういうことをはっきり今の大臣お話のように確認してよろしゅうございますか。
  14. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) そのとおりでございます。
  15. 山本正和

    山本正和君 それじゃ、そういう今の大臣の御答弁を確認させていただきまして、次にもう少し具体的にお尋ねを申し上げたいわけであります。  国営企業における紛争調整、これを一体どのように行うことになるのか。また、不当労働行為審査を行う場所はどこになるのかとかどういう手続でもって行われてまいるのか、この辺を御説明いただきたいと思います。
  16. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 統合後の委員会につきましては、国営企業関係事案とそれから民間関係事案をそれぞれ行うわけでございますが、先生質問国営企業関係事案につきましては次のように承知をしております。  すなわち、一つは、十三人の労使委員ということになりますが、このうちの四人は国営企業関係労使の推薦に基づいて任命をいたします。この方々を仮に国営企業担当委員と呼ぶことにいたしますと、また公益委員の方につきましても会長の指名によりまして国営企業担当公益委員四人を指名するということになっております。こういうように労使公益、それぞれの国営企業担当委員紛争調整事案なり不当労働行為事案なりを担当するという形になるわけでございます。  すなわち、紛争調整事案につきましては、国営企業担当委員会議におきまして調停仲裁等の開始の決定ができるということになりますし、またその事案処理につきましては、国営企業担当委員が行うということになります。  それから、不当労働行為事案につきましては、先ほど申し上げました国営企業担当公益委員で構成する審査委員会審査を行う、こういう形になるわけでございます。  それからさらに、地方におきます事案につきましても、各ブロック担当地方調整委員を置きまして事案処理させる、こういう形にいたしておりますので現在国営企業労働委員会が果たしておる機能というのはそのままの形で新しい労働委員会にも引き継がれまた同じ形で実際の処理が行われる、こういう形になるわけでございます。
  17. 山本正和

    山本正和君 今のお話で、地方組織の問題は、今回の統合では地方調停委員会という従来の組織を廃止して、そして地方調整委員という形の調整委員によるさまざまな事案処理を行う、こういうことになろうかと思うわけであります。  そういたしますと、この地方調整委員というのは、今の国営企業の問題あるいはそれ以外の従来中労委が果たしてきたさまざまな役割等もございますが、その辺の問題の兼ね合いについてはどういうふうな役割を持っておるのか、もう少し説明してほしいと思うんです。
  18. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 二つ事案がございます。  すなわち、先ほど御説明いたしましたのは国営企業関係事案でございますが、国営企業関係事案につきましては、従来と同じように地方労働委員会都道府県ごとに置かれております地方労働委員会処理するのではなく、原則として地方調整委員が取り扱うという形になります。  それから、もう一つ事案といたしまして、一般民間企業にかかわります事案がございます。この事案につきましては、地労委権限を侵すことのないように、地労委と従来の中労委との権限分配影響を及ぼさないような形で仕分けをいたしております。すなわち、従来から中労委事務とされておりました一部分につきまして地方調整委員に取り扱わせるということにいたします。すなわち、不当労働行為審査事案につきましては、従来から中労委がやっておりました再審査権限のあります民間事案につきましてその一部の事案処理させる。さらに、紛争事案につきましても、従来中労委が取り扱うこととなっておりました二以上の都道府県にかかわる事案ですとかあるいは全国的に重要な事案、そういうものにつきまして処理をさせる、こういう形になるわけでございます。
  19. 山本正和

    山本正和君 そこのところがちょっと、私なりにいろいろ読んでみたんでございますが、わかりにくいのは、従来、地労委でいろいろ調停をしていただいて、そしてなかなか難しい問題を中労委へ持っていくというふうな格好で問題が東京へ上がってきた。そうすると、そういう民間争議というかいろんな事案が起こった場合、今度は、従来中労委がやっておった役割地方調整委員が果たすのか果たさないのか、またその権限はどの辺まで持っているのか、そのことがもう少しはっきりしないので、その辺をひとつ御説明いただきたいと思います。
  20. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 御説明不足で恐縮でございますが、まず、二つ事案がございます。すなわち、不当労働行為審査事案調整関係事案二つございます。  不当労働行為の初審は、先生承知のように、地方労働委員会がまず行います。それで、さらにそれに不服のある場合には中労委において再審査を行う、こういうシステムになっております。その中労委におきまして再審査を行うわけでございますけれども、その事案処理の一部につきまして地方調整委員にやらせることができるという形にしておるわけでございます。ですから、もともと地方労働委員会では行っていない事案——事案のといいますか事務処理地方調整委員にやらせるという形になるわけでございます。  それから、もう一つございますのは、紛争処理事案でございますが、一都道府県内にかかわります紛争処理というのは、本来、地方労働委員会権限でございます。したがいまして、その事案につきまして中労委が出てくるというか乗り出す場面はないわけでございます。  それから、二以上の都道府県にまたがりますような紛争あるいは全国的に非常に重要な紛争というのは、本来、中央労働委員会が取り扱うということになっております。したがいまして、そういうように本来中央労働委員会が取り扱うことになっております事務の一部を地方調整委員にやっていただく、こういう形になるわけでございます。
  21. 山本正和

    山本正和君 おっしゃっていることはわかるんですけれども、いろんな具体的なケースイメージしていくと、本当にどの辺の役割地方調整委員が果たせるのかということで、私はどうも具体的なイメージがなかなか出てこないわけなんです。  要するに、中労委がやっておるその事務の一部を地方調整委員がやれるとなっていると、じゃ具体的に、例えば東海地区なら東海地区愛知三重、岐阜と三県にまたがって何か問題が起こった。そのときに、従来、中労委に直接この問題を扱わせておったものが、地方調整委員は、その段階ではどういうふうな形でもって例えば今の二県なり三県なりにまたがった事案を、どういう規模で、そしてまた中労委権限の中のどの部分を行使してやるんだろうかというところが具体的にイメージが出てこないんです。  その辺をもう少し御説明願いたい。
  22. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 具体的にというお話でございますのでやや具体的にお話を申し上げたいと思います。  例えば二都道府県にわたります紛争が起きました場合、例えば愛知県と三重県とにわたるような紛争が起きたという場合、いろいろ処理の仕方があるだろうというふうに思いますが、本来ですとこれは中央労働委員会が取り扱う事案法律上の 建前はそうなります。  そうしますと、東京中央労働委員会がございますので、東京へ来ていただいて紛争処理を行うという形になります。しかし、東京まで来ていただくには、当事者便宜等も考えますと非常に不便であろう、むしろ現地におります地方調整委員の方にやっていただいた方が当事者にとって便利な場合も有益な場合もあるのではないか。そういうような場合につきましては、そういう地方調整委員にやらせることができるというような規定になっているわけでございます。  ただ、具体的に実際の紛争が起こりました場合にどの段階処理をするかというのは、これは労働委員会が御判断をしていただく問題だというふうに考えております。それは個々具体的なケースに応じまして中央労働委員会判断をするという形になります。
  23. 山本正和

    山本正和君 そうすると、中労委が果たす役割をこの地方調整委員がやるという意味は、当事者たちが従来は東京まで来ていろんな状況説明あるいは意見開陳というふうなことをやっておったのを、地方調整委員がそれを受ける。そして、その地方調整委員はそういう中で中労委にかわっていろんな助言なり指導なりも行う。そして、最終的にそのことについての決着を見る段階では中労委が決定するということで、中央労働委員会で議論した末、結論が出る、大体こういうふうなことになるということでよろしゅうございますか。
  24. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先生の御理解だと思いますが、より正確に申し上げますと、地方調整委員が行います事務と申しますのはあっせん、調停段階でございます。したがって、労働委員会全体として決定すべきような事案、例えば仲裁に関する事案とかそういうものは扱うことにはならないわけでございます。  したがって、それからさらに不当労働行為審査等事務の一部をやらせることができるようになっておりますけれども、それは調査もしくは審問ということだけでございまして、命令を出す権能といいますのはすべて中央労働委員会が持っておるという形になるわけでございます。
  25. 山本正和

    山本正和君 よくわかりました。  そういたしますと、従来地労委が持っておった機能権能というものを侵すことにならない、こういうふうにこれは確認してよろしゅうございますね。
  26. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先生の御発言のとおりでございます。
  27. 山本正和

    山本正和君 それじゃ、これは本法案と直接関係はございませんが、それにちょっと関連しまして、労働省に対して、労働組合法の改正ということでございますから労働組合に関する幾つかの事案について私の方から申し上げて、この機会に御要望しておきたいと思うのでございます。  不当労働行為、これは六十三年四月現在で相当な数に上っておりまして、もう解決したものあるいは解決見込みのものあるいは若干審理中断中のもの等含めまして、かなりな案件に上っております。その中で、私いろいろ聞いてまいりまして、こんなことが今の時代にまだあるのかと思うような内容がございます。  それは福岡県の二つの例でありますが、労働組合をつくろうなんというのは会社に逆らう者だ、会社を壊そうとするようなそんな者は雇用しない、こう言って組合員であった臨時工の首を切って解雇した。組合員以外の人を今度アルバイトに採用する。会社を一遍つぶしてしまって現在おる人を全部解雇してしまって、そして実は違う形でもって経営をする。そのときにはもとの雇っておった人たちをアルバイトで採用して、それで働くなら働かしてやろう。要するに、何といいましょうか、労働組合とか労働者雇用主に対してさまざまな要求をするというそういうことは、会社を大事にするのなら、君たちが会社で働こうとするならそういうふうな考え方を持つな、こういうことを放言する。これははっきりした事実でありますから、その地域では大変びっくりしたというようなことを言っているんですけれども、何とその企業が我が国でも有名な大企業の子会社といいましょうか下請会社である。具体的に言いますと雪印乳業の下請ですけれども、こういうふうなことがまかり通っている。労働組合というのは、これはまるで社会の犯罪集団だというふうな格好で経営者が物を言っているというふうな事例がございます。  さらに、これはかなり大きな建設関連の会社ですけれども、その社長がその会社の組合員に対していろんな議論をするときに、おれが法律だ、工場内ではおれが憲法だ、こういうことを言って、組合がさまざまな問題で労働者の権利とかなんとかということを言うときに、何を言っているんだという格好でやられてしまう。そしてさらに、もうどこへ行っても構わぬよ、どこへ行ってもらってもいいよと言って、労働基準法など守っていては経営は成り立たないんだ、有給休暇を請求するならボーナスは払わぬぞ、こういうことを言う。あるいは、労働組合員はすぐ有給休暇を請求したり権利を主張したりする、そんなことをするのなら会社はもう身売りするぞ、こういうことを言う。これはかなり大きな会社です。これは中小企業ですから大きいと言ってもしれているんですけれども、地方ではやっぱりかなり大きな会社です。こんなことが行われております。こんなことが言われているわけですね。  これは、全国に中小企業は三百六十万ぐらいあるとこういうふうに言われていますから、その中の特別な例かもしれませんけれども、経営者の皆さんが、まだ昔の労働組合ができていない時代、戦前の我が国の親方と徒弟というふうな時代の中からなかなか抜け切らない、いわゆる近代的労使感覚といいましょうかそういうものがないという実態がございます。  私、そういうことを見ていまして、聞きまして思うのは、労働組合法が制定されて以来、もう戦後四十年たつわけですけれども、労働省は、大変な予算も人も使って随分経営者教育をおやりでございます。中小企業の経営者の方はまたいろんな意味で大変な御苦労をしているわけですけれども、法律の範囲内で人を雇ってその人たちを大切にしながら経営を成り立たせていくということでまた大変な苦労が要るわけですけれども、その経営者に対する教育というものがまだまだどうしても必要なんじゃないかということを思うわけでございます。  そういうことから考えて、現在、労働組合というものに対する認識を、特に中小企業が多いわけでありますけれども、そういう中小企業の経営者の方々に対してどういうふうな形で経営者教育をおやりになっているのか、現在の経営者教育の実態あるいはそこでの問題点、そういうものがございましたら、法案には直接関係がございませんけれどもお聞かせ願いたいと思います。
  28. 山中秀樹

    説明員(山中秀樹君) 使用者が、先生がおっしゃるとおり、労働組合法で禁止する不当労働行為を行ってはならないことは言うまでもないことであります。  その意味で、労働省においては、かねてから労働関係法規の周知徹底を図るなど、不当労働行為防止のために努力しているところでございます。今後とも私ども先生の御指摘の点を踏まえて一層の努力を払ってまいりたいと思います。  それで、労働教育の関係について、具体的に私ども労働問題について研究を行うとともに、広く労働者及び使用者並びに国民一般の労働問題に関する理解と良識を培うことを目的とする、特殊法人でございますが、日本労働協会というものを設置いたしまして、労働教育について実施してきております。  例えば、労働大学校を開設して労働組合法あるいは不当労働行為制度、労使関係等について企業関係者あるいは労働者の方あるいは国民一般を対象として労働教育活動を行っております。また、都道府県においても、同じように労働大学講座を開設していただいたりして同様の労働教育を行っていただいております。また、労政事務所などにおいても、個々の労働組合あるいは使用者の方の 御相談に応じてそういう先生のおっしゃるようなことがないように努力をしているところでございます。
  29. 山本正和

    山本正和君 もう故人におなりになった南先生という随分長い間の労働法専門の名古屋の大学の先生でございますけれども、この方が三重県の経営者協会の事務局長をおやりになって、そしていろんな意味で経営が健全化していく大前提は、労働組合労働者労使対等の中で議論して、そして本気になってお互いに経営を発展させよう、こういうことにならなければだめなんだということを、これは南先生の持論でございましたけれども言っておられた。  例えば、経営者協会でそういう講座を設けて何とかみんなで勉強しようということを提案するあるいは商工会議所と連合して経営者のいろんな研修会を持とうとする、こういうふうなことを考えるんだけれどもなかなかうまい方法がないという話が出るわけです。  ですから、私、これは通産省も関連するとは思うんですが、経営者というのは、いろんな意味で大変な苦労が多いんですけれども、しかしそれだけの社会的責任があると思うわけです。要するに、何人かの人あるいは何十人か何百人かの人たちの生活をきちんと保障していくという部分と同時に、経営者としては利潤を求めなきゃいけませんから、そういう意味では非常な難しさがあると思うんですけれども、いわゆる法人認可、会社なら会社という法人を認可するときに、何か、そんないい方法はないものだろうか。あなたは会社を設立するということで認可を求めに来たと。そうすると、何人かの人を使うのでしょう。使うのなら、ついてはあなたの経営者としての使う人に対する心構えはどうなんですか、最低限この程度の知識は知っていますかというようなことがあれば随分違うんじゃないかというような話しを南先生といたしたことがございました。  ただ、具体的には、自由主義社会の中に我が国は位置づけているわけですからそんな強制はできないと思うんですけれども、これはあくまでお互いの自覚といいましょうか、が前提でございますけれども、そんなことを思っております。  実は、労働組合法の基本精神というのは、経営者と労働者というのは力関係からいったらどうしてもいろんな違いがある、これを何とか人間として保障していこうという基本的な精神が労働組合法にあって、そしてこの労働組合法によって我が国のある意味の近代化、現在の経済の発展があると思うわけですね。  これは、具体的に名前を挙げると大変問題かもしれませんけれども、世界的な企業と言われる松下あたりは、いわゆる労働組合がパートナーとして今日の松下をつくっているんだということをよく松下幸之助さんが言われるわけです。私は、労働者教育あるいは労働組合の組合員教育というものは労働団体みずからがやっているわけですけれども、大企業の場合は別ですけれども、中小企業の経営者の皆さんの経営者教育といいましょうかそういうものが必要じゃないかという気がしてならないわけなんです。  これは、労働組合法の改正の論議とは若干違いますけれども、労働組合改正趣旨の中にこういう不当労働行為等の問題に迅速かつ的確に対応していきたいということもあるわけでございますから、経営者教育等の問題につきまして今課長さんからお話がございましたが、今後ともひとつ一層のお取り組みをいただきたいと思うわけでございます。  この辺の問題につきまして大臣、もし御所見ございましたら、一言お願いしたいと思います。
  30. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 確かに、御指摘の点は、実は、昭和二十年代の末期から三十年代の初めにおきましては、随分多うございました。私どもも経験しておるわけでございますけれども、しかし最近におきましてはかなり前進をして改善をされたと思うんですが、御指摘のような状況にありますことも確かに承知をいたしておるわけでございます。  何といいましても、これは大企業は別でございますけれども、中小・零細企業のこの面における啓蒙指導というものをもっと徹底させなければいけないなと感じておるわけでございまして、日本労働協会等を通じまして、きめ細かに中小・零細企業を対象として、なお一層強力な指導啓蒙等を行っていかなければいけない、このように考えておるわけでございます。
  31. 山本正和

    山本正和君 ひとつぜひ今後ともその面につきましての御指導等をよろしくお願いしたいと思います。  それから、その次の質問に移りたいわけでございますが、実は、この十九条の十の中に「政令で定める」と、権能の問題等も含めまして、こういう規定がございます。  この「政令で定める」ことの意味といいましょうか、現在の段階ではこの政令事項をどういうふうにお考えになっておられるのか、ちょっと承りたいと思います。
  32. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 改正後の労働組合法十九条の十におきまして地方調整委員、先ほど先生御議論ございました地方調整委員権能を政令で定める規定がございます。  今、この政令の内容として定めたいと思っておりますのは、一つのブロック内にとどまる紛争調整事案、そういうものは地方調整委員処理させることができるというような形にしたいと考えております。
  33. 山本正和

    山本正和君 今のようにかなり具体的な格好での問題提起があるということをお聞きしましたので理解いたしますが、ひとつ政令等の問題につきましても、それぞれ、各団体等の要望等も聞く場をぜひ与えていただきますように要請しておきたいと思います。  それから、統合されました新しい中労委公益委員さんの役割について労働省から、従来の中労委国労委機能をいささかも変えるものではない、こういうお話が最初にございましたが、統合されました新しい中央労働委員ということになりますと、今度は大変いろんな意味での役割が出てまいろうかと思うわけですね。ですから、新しいこの中労委の中の公益委員役割というのが、先ほどの国営企業担当の四名の方以外の九名の方は従来の中労委の仕事をそのままおやりになるということでございますけれども、何はともあれ、全体としての議論がいやでも応でも出てくるんじゃないかと思います。  それは完全に画然と切り離して、会長が指名した四名の方だけが国営企業の方は担当されて、残りの九名の方はもう一切そのことについては議論しないということになるのか。それとも、かなり重要な案件につきましては最終的に中労委の名前で処理されるわけでしょうから、そこで合議等が行われて意見交換等もされて結論を出されることになるのか。この辺の問題を、最後に念のためでございますけれども、冒頭の質問に関連しましてちょっとお聞きしたいと思います。
  34. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先ほど申し上げましたように、国営企業関係不当労働行為事案につきましては国営企業担当公益委員が原則として当たるという形になっております。しかし、これは原則でございまして、極めて重要な事案等にかかわるような場合、そのように中央労働委員会判断した場合には、全体の公益委員が参画して決定をするというような形になっております。  それからさらに、労働委員会権能一つとして労働委員会規則を制定する権限を持っておるわけでございますが、これは全員の合議によって決定をされる、こういう形になるわけでございます。  さらに、国営企業担当公益委員の方でありましても民間事案不当労働行為事件について関与するということは許されるわけでございますので、そういう意味で民間事案不当労働行為事案については十三人全員が当たるという形になると思います。
  35. 山本正和

    山本正和君 それから、これも念のためにお尋ねするわけでございますが、衆議院等でも質問を いたしましてお答えを願ったところでございますけれども、旧国労委段階では公益委員については常勤制ということが制度としてうたわれておりました。制度としてうたわれておったわけですけれども、これは、現実問題としては非常勤の形でもって運用がされておった、こういうふうな状況があったわけでございます。  今度統合されますと、制度としての仕組みはそのまま残されていくのか。仮に残されていったとしても、実際の運用は従来と変わらないのか。この辺について衆議院でもちょっとお尋ねいたしましたけれども、再度本院でも労働省側のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  36. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 従来、国営企業労働関係法におきましては、国労委公益委員の一部を常勤にすることができるという規定がございました。今度の統合後の新しい労働委員会につきましても、その規定を引き継ぐという形にいたしております。  先生指摘のように、公労委時代を含めまして国労委になりましてからも、常勤の公益委員を置いた事例は今まで一件もございません。私どもといたしまして当面常勤の委員任命するということは考えておりませんが、制度自体としては引き継いでおく方が適当であろう、こういうふうに考えております。
  37. 山本正和

    山本正和君 今のお答えで、要するに従来同様の考え方である、こういうことでよろしいわけですね。
  38. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 従来と同じような考え方で運用をしてまいりたいと思っております。
  39. 山本正和

    山本正和君 じゃ、そういうことで確認させていただきます。  それから、その次の問題でございますが、冒頭に大臣からもお話がございましたように、今回の統合については労働委員会制度の効率的運営及び機能強化の観点から行う、こういうことを言っておられるわけでございます。また、不当労働行為審査については、長期化する傾向で長いものでは十年もかかる、こんな状況を何とかしなきゃいけない、こういうふうな趣旨も含まれておるというふうに大臣の最初の、御見解を承ったわけでございます。  具体的には、一体、どのようにこれを効率化しあるいは機能強化をしていくのか、この辺につきましてのお考えを承っておきたいと思います。
  40. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 今回の統合趣旨につきましては先ほど大臣から申し上げましたとおりでございますが、一つのねらいといたしまして不当労働行為審査をより効率的に行いたいということがございます。  現在、中労委におきましては、九人の公益委員の方がそれぞれ分担をして不当労働行為事案処理に当たっておるわけでございますが、先ほど御説明申し上げましたように、今度は十三人、国営企業担当公益委員の方にも民間事案不当労働行為審査をお願いするということになりますので、全体といたしまして十三人の公益委員によって民間事業不当労働行為審査にも当たっていただく、こういうことになります。  そういう意味で不当労働行為審査迅速化というのがある程度全体といたしまして図られるのではないかというふうに考えておりますし、また両事務局もこの機会に統合をいたします。この統合を機会といたしまして総務管理系統のようないわば重複する部分についての定員を削減をいたしまして、そのかわりに審査関係の事務に当たります事務職員を増員をいたしております。こういうような措置によりまして全体といたしまして中央労働委員会におきます不当労働行為事案審査迅速化が図られるのではないか、こういうふうに考えております。
  41. 山本正和

    山本正和君 事務局の人員配置等につきましても御苦労いただいているように聞いておりますし、当事者にしてみますと期間が長いということは大変苦痛を伴っている問題でございますから、今の審議官お話のようにひとつ最善の努力をしていただきたいと思います。  ただ、ちょっとそこで、あらかじめこういうことについては申し上げていなかったわけでありますけれども、実際に中労委の予算というものを従来からずっと考えてまいりますと、これだけの予算でいいんだろうかということを私どもいつも感じたりしております。特に、何といいましょうか、行財政改革の中でいろんな意味でのしわ寄せがこういうところへ来るんじゃないかという懸念をいたしますし、中労委が本当に機能しようと思ったら、それに伴うスタッフとそれから予算が要るだろうと思うのでございます。  そういう意味で、今後中労委機能強化のために、予算面についてはひとつ格段のお取り組みをいただきたいと思いますけれども、その辺の問題についてはいかがでございますか。
  42. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先生指摘のように、不当労働行為審査をできるだけ迅速に、かつまた公平妥当な結論を出していただくというのは極めて重要なことだろうというふうに考えております。その手段といたしまして、先ほど申し上げましたように人員的な問題をお話し申し上げましたけれども、やはりそれに伴いまして必要な予算というものも確保しておかなければならないだろうというふうに思っております。  で、今回の統合によりまして公益委員の数が全体としては若干減少しておりますし、それから労使委員の方々も全体としては若干減少するということになりますし、管理部門を統合するということによりまして不必要になる予算というのもございます。そういうような関係から、全体としましては若干減少はしておりますけれども、労働委員会機能が十分発揮できるような予算はやはり獲得といいますか確保しなければならないだろう、こういうふうに思っておりますし、そういうようなつもりで今後とも努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  43. 山本正和

    山本正和君 そこで、最後に、修正点の問題につきまして少し私なりの見解も含めて労働省に対して御要望申し上げておきたいと思います。  衆議院でのさまざまな論議の中で、国営企業のいわゆる現業部門の職員についての専従期間が、労使の話し合いに基づくという前提がございますけれども二年間延長されることが可能となり得ることあるいはNTTの労働基本権の問題等についてさまざまな協議がされたというふうなこと、こういうふうなことを含めまして大変難しい労働関係の諸問題が与野党協議の中で少しずつ解決されていくという方向が今度の国会で見られておるところでございます。また、労働者が持っているさまざまな不安等も審議の中でかなり明らかにされてまいったところでございまして、これは、労働省としても大変なお骨折りをいただいたことを私も大変高く評価申し上げるところでございます。  一番大事なことは、労使間の相互不信が感情的なところから発するというふうな問題や、極端なことを言いますと、世界観の違いだというふうな決めつけをいたしまして、そこから生まれるさまざまなトラブルというものが随分ございます。ですから、そういう意味で、現在ある我が国労働組合法の精神を十分に生かしながらやっていけば、もっと相互信頼に基づいて、そしてまた、それぞれ、立場の違いはきちんと主張し合いながらお互いに発展していくという関係ができるんじゃないかということを今度のこの法案の審議を通じて私は感じたわけでございます。  そういう意味で労働省としても今後一層この種の問題についての啓蒙あるいは啓発、それからさまざまな事案についての具体的な指導、こういうことをお願いしたい、こう思うわけでございます。  その辺の修正点に絡みまして、今度の法案審議の中で労働省としてのお考えがございましたら一言お聞かせいただきたいと思うんでございますが、大臣いかがでございましょう。
  44. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御指摘のように、これから日本経済を支える原動力となりますものは、一つには労使間の信頼に基づく安定ということが基本にあると思うわけでございます。  そういう意味で、労働省としましても、労使間の真摯な話し合いによる信頼関係の維持ということを重点としまして労使に向かって御指導、御助言等をいたしておるわけでございますけれども、その精神は今後とも引き続いて進めていかなければいけないというふうに考えておりますし、冒頭御指摘がございましたような中小・零細企業に対する不当労働行為的な所作につきましても、あらゆる機会を通じまして、労働組合をつくれという指導ではなくて、労働組合とは何ぞやというまず原点に返っての御指導を積極的にしていかなければいけないなというふうに判断をいたしておるところであります。
  45. 山本正和

    山本正和君 どうもありがとうございました。  以上で私の質問を終わりたいと思います。
  46. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいま議題となっております労組法等の一部を改正する法律案を御提出になりましたのは臨調最終答申に基づいてということでございますが、もちろん、臨調最終答申があったから、単にそれだけの理由でなさっているということではなくて、やはりいろいろの事情があり背景があり、そしてまた各方面の意見もお聞きくだすったものと思います。  大臣、その間の事情と経過を少し御説明いただけますでしょうか。
  47. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほども山本先生にお答えをしたところでございますけれども、まずは、何といいましても国営労働委員会対象事業対象企業が非常に減少したということ、これが第一点であろうと思うわけでございます。三公社現業四現業になりまして、組合員数も百十六万から三十六万になった、したがって当然起こり得るいろんな案件につきましても少なくなるであろうということで、このことを踏まえまして臨調の方からも最終答申の中で労働委員会簡素化を図るべきだろうということでありまして、そのこと自体は行政改革の一環として私どもも素直に受けとめなければいけないという考え方があるわけでございます。  それから第二には、先ほど来から御指摘がありましたように、国営労働委員会機能の面でございますけれども、不当労働行為の申し立て等につきましても非常に審査が手間取っておる、この迅速化を図るための効率的な運営権能強化を図るべきではないかという御指摘も一方にあるわけでございまして、これらのことを踏まえまして今回法案提案に至った、こういう経過でございます。  ただ、法案提出までの経過について申し上げますると、労政局には関係審議会というものが設けられておりません。したがいまして、これにかわる手続としまして、昨年の五月から十一月にかけまして関係労使団体を含む各方面からの意見聴取を行い、それらの意見を踏まえて今年の二月初旬に法案を提出したという経過があるわけでございます。
  48. 中西珠子

    ○中西珠子君 いろいろ各方面の意見聴取をなさいまして、違った意見も随分出てきたと思いますが、それを調整なすったということは非常に大変な御苦労であったと思うわけでございます。  政府原案におきましては、この改正法案の一番中心となります国労委中労委との統合というものをやるに当たりまして、公益委員の選任に関して労使委員同意権を奪った形になっていたわけですね。しかし、衆議院段階での修正におきまして、公益委員の選任に関して労使委員の「同意を得て」という修正が入りまして、政府原案の「意見を尊重して」というのがなくなったわけでございます。  これに対しまして労働省としてはどのような受けとめ方をしていらっしゃいますですか。仕方がない、こう思っていらっしゃいますか。
  49. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 国会の同意権といいましょうか、ある意味において広い審議権でございますけれども、これを尊重の建前一つあったわけでございます。  それから、「尊重」と「同意」のことでございますけれども、文言は、そういう意味で国会の同意権を尊重するというような形の中で「同意」と「同意」というのもどうかなというような判断もあったわけでございますけれども、実質的には「尊重」と「同意」というのは初めから同じように私どもも承知をいたしておったわけでございます。「尊重」という意味はですね。  そういうことでございましたので、衆議院の方で修正の案が出たときも、まあやむを得ないといいましょうか、よろしいでしょうというように思った次第であります。
  50. 中西珠子

    ○中西珠子君 先ほどちょっと質問を同僚委員もされましたけれども、現行の国労法には、国労委公益委員は二名まで常勤させることができるという規定がございますね。今回国労委中労委統合されます中労委というものにおきましてもこの規定を踏襲されまして、公益委員二名までは「常勤とすることができる。」という規定となっているわけでございますけれども、公益委員を少なくとも二名は常勤にするということのメリットとデメリットはどういうことでしょうか。  組合によっては常勤化ということに大変反対していらっしゃって、民主的ではなくなる運営になるとかといっていろいろ危惧の念を表明されている組合もあるわけでございますけれども、労働省としては、このメリット、デメリットはどのようにお考えですか。
  51. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答えいたします。  先ほども議論がございましてお話し申し上げたとおりでございますが、デメリットはないと思っております。  公益委員の一部常勤制が従来の国営企業労働関係法の規定を引き継いだものでございますけれども、メリットとしては、常勤の公益委員が非常勤の公益委員よりも多くの事件を担当することが可能であり、労働委員会における事件処理を全体として迅速化することに役立っているものである、そういうことでつくられたものではないかと考えております。  なお、常勤の公益委員につきましてこれを置くことについての危惧の御意見もいろいろございまして、確かにお聞きしておりますが、仮にこれを置くとした場合にも労使委員の共同の同意がなければ任命できないものでございますから、その同意を得るということで特段の問題が生ずるおそれはないんではないかというふうに考えている次第でございます。
  52. 中西珠子

    ○中西珠子君 しかし、同僚委員も確認されましたように、現在のままで常勤の公益委員は当分置かないということでございますね。
  53. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) それは、先ほど御答弁申し上げましたように、そういう対応で進めてまいりたいというふうに考えております。
  54. 中西珠子

    ○中西珠子君 私の時間は三十分で余り時間がないんですけれども、同僚委員が聞かれたこととまた同じことを繰り返して聞くということは重複をするわけでございますから避けたいと思うんですけれども、一点ちょっと確認したいところがございます。  それは、先ほどの地方労働委員会とそれから中労委とそれから今度できます地方調整委員ですね、その地方調整委員機能ということなんです。  御説明を聞いていますと、結局、地方調整委員というのは中央労働委員会に係争中の問題しか扱えないということで、そして中央労働委員会機能を遂行されるのに補助的な役割を果たす、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。  例えば、ブロックを幾つか、八つなら八つにお分けになる。その中で地方調整委員任命されるわけで、そのブロックの中の民間紛争などをとにかく調整する、あっせんとか調停とかそういったこともさせるしということだけれども、不当労働行為の場合、調査したり審査はするけれども全然命令権はないわけですね。ということは、結局、中労委に命令権があって不当労働行為の初審としての役割を全然果たさないわけですね。  これはそのとおりですか。
  55. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 地労委中労委との役 割の関係等につきましては先ほどお答えをしたとおりでございますが、本来中労委が行うべきものとされておる調整事案につきましてその事務の一部を行わせるということでございますし、また不当労働行為事件につきましても中労委に係属をいたします不当労働行為の再審査事案処理の一部を行わせることができる、こういうことでございます。  ですから、そういう意味で不当労働行為の命令を発する権能というのは地方におきます調整委員にはないということになります。
  56. 中西珠子

    ○中西珠子君 地方調整委員がせっかくできるのだからブロックにおける不当労働行為の初審というものもやれるようにしてほしいというそういう要望も組合の中には持っていらっしゃる向きもあると私は理解しているんですけれども、いずれにいたしましても、今回の改正法案におきます地方調整委員というものの機能は、結局、中労委の果たす機能の補完的な補助的な役割ということですね。
  57. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 地方調整委員につきまして不当労働行為の初審的役割を果たさせるべきではないかという御議論、これは、確かに国営企業関係事案につきましてそういう方式をとったらどうかという御意見があるということは私承知いたしております。  しかし、民間事案につきまして現在の地方労働委員会中央労働委員会という二審制につきましては、大方の御意見としましては現在の二審制というのは維持すべきであるという御意見であろうというふうに私ども承知しておるわけでございます。  したがいまして、この二審制というのを崩さないということを前提にいたしまして、中央労働委員会不当労働行為審査を行いますに当たりまして当事者便宜等を考えて現地において調査なり審問なりを行わせた方が適当であると判断した場合には、そのような事務地方調整委員にやらせるということでございます。  したがいまして、先生言われましたように、いわば中央労働委員会公益委員の負担を軽減するといいますか事務の一部を補助するというような形になるというふうに思っております。
  58. 中西珠子

    ○中西珠子君 国労委の方の不当労働行為審査の係属件数は余り多くありませんけれども、中労委不当労働行為審査の係属件数が非常に多くて、またいつまでに命令を出すという期間の制限が全然ないわけですから、非常に処理日数が長期化している。先ほどのお話でも十年もかかっておるというのもあるということでございます。  私の手元には六十一年度の数字しかないんですけれども、六十二年度の数字というのはございますか。
  59. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 六十二年の数字についてはまだ出ておりません。
  60. 中西珠子

    ○中西珠子君 全然集計していらっしゃらないということですか。
  61. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 失礼いたしました。  六十二年につきましては、まず係属件数が二百八十六件というふうになっておりまして、審査に要しました平均処理日数はこの六十二年に集計しました事件について見ますと一千二十四日ということになっております。
  62. 中西珠子

    ○中西珠子君 とにかく係属になっている件数がふえていて、そしてその処理日数が非常に長期化しているということから、中労委の再審の場合の申し立てと命令を発する間の期間というものにやはり目標というのを定めた方がいいんじゃないかという御意見もあるようでございまして、今度の改正法案の第十九条、現行の国労法の二十五条の五の第四項、第五項、そういったところには殊に解雇に関する不当労働行為の申し立てに対する命令は二カ月の制限がついているわけですね。  それで、中労委のこれまでのあれにはついていない、労組法にはそういう制限がないということで、少なくとも三カ月とか半年とか制限を一応つけたらどうか、少なくとも努力目標というものを定めたらどうだろうかという御意見もあるようでございますが、労働省はどのようにお考えですか。
  63. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 先生指摘のように、国労委争議行為を理由とする解雇の事案につきましては二カ月以内に命令を出すというふうに書いてあるわけでございます。  民間部門についてもそのような規定を設けたらどうかという意見は従来からあるわけでありますが、労働委員会機能として一番重要なものは、正しい事実認定を行って、その上で命令を出すということであろうかと思います。確かに、審査迅速化につきましては努力をしなければいけないわけでありますが、やはり事実認定に一定の日数を要するということも確かでございまして、現在のぎりぎりの中でできるだけ早くやるということで対応しておると、こういうことになっております。
  64. 中西珠子

    ○中西珠子君 現在の体制の中でできるだけ早くやるということですと、この処理日数の長期化を是正するということがなかなか難しいわけですね。  先ほども審査関係の事務職員をふやすということをおっしゃいましたけれども、審査関係の専門職員というふうなものもあるわけでしょう、公益委員がするばかりでなくて審査関係の専門職員というのもやはり労働委員会の中にあるわけでしょうから、そういうものをもっとふやすとかですね。そして、私がいただいた今回の統合後の事務職員の数というのは余り多くないんですね。  それで、非常に不当労働行為審査などがおくれているという状況、それからもっともっと事務を効率化しなくちゃいけないという要請もある中で人数さえ減らせばいいということではないので、審査関係の事務職員はふやすとはおっしゃいましたけれども、やはり中労委の今度統合された事務局を拡充強化していただきたい、必要な人員はもちろん雇い入れることができるようにその予算化というものも図っていただきたいし、また中労委が行う機能が本当に迅速にまた円滑にいきますように必要な経費の予算を計上していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  65. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先ほどもお答えをいたしましたけれども、不当労働行為審査促進を図るべきだという非常に強い御意見がございます。  それに対応するための一つの手段としても今回の両委員会統合というのはそれなりの効果があるんではないかというふうに私ども思っておるわけでございますが、先生指摘のように、実際の不当労働行為審査を促進いたしますためには、公益委員を補助いたします立場にある審査部門の事務職員というのをある程度増員しなければならないということも当然のことだろうというふうに思っておりまして、今回これを機会といたしまして事務局の統合を図り、あわせまして定員の再配置を行うことにいたしております。そういうことによりまして両委員会で重複する業務を行っております管理・総務部門の定員は削減をいたしまして、審査部門に従事します職員を増員いたしております。  現在、政府全体といたしまして行政改革を行わなければならないというのが至上命令でございますので、ある程度と申しますか、おのずから制約はございますけれども現在の情勢の中では精いっぱいの増員を図ったというふうに思っておりまして、その辺は御理解を賜りたいというふうに思うわけでございます。  また、予算面につきましても、先ほども申し上げましたとおりでございますけれども今後ともできるだけ本来の労働委員会の業務が執行できますように努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  66. 中西珠子

    ○中西珠子君 行財政改革が至上命令とおっしゃいましたけれども、とにかく行財政改革はやっていただかなくちゃいけませんけれども、必要なところにはやはり必要な予算をつけ、人員の配置をするということが大事だと思うんですね。  それで、臨調最終答申では、労働委員会の機構を簡素化するようにということでございます が、機構の簡素化だけではなくて、もちろん統合すれば庶務、会計とかそういうのは人数が減ってきますね。今度はその余剰になった人たちがどういう扱いをお受けになるかということも私は大変関心を持っておりまして、首になる方が出るのではないかという心配があるわけです。それは、もちろん立派な処遇をして対処してくださることを要望させていただきますが、労働者労働基本権というものを守っていく上で今度統合になりますこの中労委ですね、それは非常に重要な役割を果たすわけでございますから、十分な人員の配置と予算をつけて、そして労働者労働基本権を守るという方向でやっていただきたいと思うわけでございます。  そして、殊に国営企業職員労働基本権が制約されているわけですね。それで、これまで国労委が、殊に労働基本権の制約の中で争議権の否認ということに対する代償措置というものの機能を果たしてきたわけでございますが、今度統合される中労委というものが国営企業の人たちの争議権否認の代償措置として十分に機能が果たせるかどうか、非常に私も関心を持っているわけでございますが、その点は労働大臣のお考えはいかがでございますか。
  67. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 私どもも、今の審査期間が非常に長過ぎる、平均千日、長いものは十年というようなことは決して能事足れりとしているわけではございませんで、お説のように、これからもこのままでいいとは毛頭考えておりませんので人員の増加等を含めまして十分検討してまいりたいと考えております。
  68. 中西珠子

    ○中西珠子君 これからずっと時間をかけて御検討になるのではなく、御検討も必要でございますが、これが発足いたしましたらすぐ現在労働基本権が制約されている国営企業労働者の利益というものも考えていただかなくちゃいけないわけでございますから、争議権否認に対する代償措置としての機能が十分に果たせるように十分御指導、御監督を願いたいと思うわけでございます。  労働大臣、もう一度御決意のほどをお願いいたします。
  69. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) お説の趣旨は十分理解をいたしておるところでございます。
  70. 中西珠子

    ○中西珠子君 終わります。
  71. 内藤功

    ○内藤功君 まず、公益委員の候補者名簿の作成を労使両側の委員同意にかからしめるということは、私はもう余りにも当然のことだと思うんですね。衆議院での修正はこの余りにも当然なことを法文上確認したもの、かように受けとめておるわけですが、私は、今にして思いますと当初の法案がどうして「同意」という言葉を外して、大臣は同じだとおっしゃるんですけれども、言葉としてはこれは全然別の「意見を尊重」という言葉にしたのか、今にして全く理解に苦しむわけなんであります。  ところで、昨年十月十五日に中労委国労委統合の検討の方向が発表されて、これに基づいて法案がつくられたわけですが、先ほど同僚委員からも質問がありましたが、昨年、事前に労働委員会委員などへアンケート調査をおやりになったようですが、その結果はどんなふうな結果であったか、この公益委員同意制に関してで結構ですから明らかにしていただきたいと思います。
  72. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 労政局には関係の審議会が設けられておりませんので、本法案を立案いたしますに際しましては、昨年、御指摘のように関係方面にアンケート調査等を行っております。  まず、労働委員会委員等に対しましてアンケート調査を行いますとともに、関係の労使団体等から意見聴取を行っております。  御指摘のありました公益委員任命の方式につきましては、このアンケートは選択制というようなものではありませんで、自由に意見を書いてもらうという形式でありましたから、特にこの点について触れている意見、触れていない意見、いろいろございましたが、大別をいたしますと、現行の国労委方式がいいとするもの及び中労委方式がいいとするもの、それぞれの意見が見られたところであります。
  73. 内藤功

    ○内藤功君 八月から九月にかけてと伺っていますが、労働省は公労協、全官公、労働四団体、日経連、日商、四現業当局などから個別の意見聴取をやっていると伺っておりますが、その意見聴取の際の意見内容はどんなふうなものでございましたか。
  74. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) アンケートに加えまして、労使の団体からも意見聴取を行っております。  ただ、この意見聴取に際しましては、これを公表するというふうにしてお聞きしたものではございませんので詳細を述べることは差し控えさせていただきますが、やはり同じように公益委員任命につきましては、国労委方式を支持する意見あるいは中労委方式を支持する意見、両方の意見が見られました。労働団体の中にも両様の意見がございました。
  75. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと問題は、そういうアンケート調査なりあるいはヒアリングを受けまして労働省当局としましては、両方の意見があるんだ、しかしどちらの方が多いというふうに判断をされたんですか。あるいは、どちらが多いかはわからぬ、両方、賛否相半ばするというふうな判断をしたのか。その御判断を伺いたいと思います。
  76. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 今申しましたように、意見としては両方の意見がありましたし、またこれはどちらが多いか少ないかという形で意見を聞いたものではありませんので、私どもといたしましては国労委方式、中労委方式いずれの意見もあったというふうに判断をいたしております。
  77. 内藤功

    ○内藤功君 労働委員会不当労働行為救済機能についてきょうは主に質問するわけですが、この不当労働行為救済機能の場合に、一番利害関係が強く関心を持っているのは、やはり申し立て件数の比較的多い労働組合ですね。  私は、全国一般の方からお聞きしますと、五十六件、中労委にかかっているそうですね。ここに資料をもらってきました。大変多い割合です。全国一般の書記長が総評の機関の会議で発言しているところによると、うち中労委の二〇%、こういう利害関係を持っていますね。それから、民放労運だとか新聞労連だとかこういう純中立の組合も非常に多いようです。言葉は悪いですが、いわばお得意さんの組合がある。私は、労働四団体も結構ですけれども、そういう利害関係の非常に多い組合の御意見をかような場合には聞くべきじゃないかと思うんですね。  戦後、労働組合法や労働基準法をつくるときには下部組織の単組までの非常に綿密な調査をしたことがある。寺本先生のお書きになった「労働基準法」なんかに出ていますし、私も寺本先生にお聞きをしたことがあります。  こういうことはいかがでございましょう。もっときめ細かいアンケートをやるべきでなかったか。非常に大ざっぱでずさんだという感じがしますが、いかがですか。
  78. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先ほど労働法規課長から御説明をいたしましたように、今回統合を考えますに当たりまして、労政局には関係審議会がございませんので、本来からいきますと労政局が労働省としての責任でもって法案を作成して後は国会の御審議にお任せするという方式もあろうかとは思いましたが、事は労使当事者にとって非常に大きい問題だろうというふうに思いましたために、幅広く御意見は伺わなくてはならないだろうというふうに思いまして、そういう観点から先ほど法規課長が御説明をいたしましたようにアンケートを行いました。  まず、五月に中労委国労委、それから地方の各都道府県に置かれております地労委の全委員、これは公労使を含めてでございますが全委員、それから各都道府県労働主管部長あるいは各地労委事務局長の方々、こういうような方々を対象といたしましてアンケート調査を行いました。さらに、各ナショナルセンター、中央におきます代表的な労使団体の方々からも御意見を伺いました。それから、四現業労使の方々からも直接御意見を伺いましたし、また労働省には、国労懇と 略称しておりますが、国営企業労使問題につきましてフリーな立場で御議論をいただきます懇談会がございます。これは国営企業労使の方々と学識経験者の方が入っておりますが、そういうようなところでも御議論をいただきました。  そういうような御議論を踏まえまして、私ども、こういう案であれば大方の方々に御納得いただけるのではないかというふうに判断をして今回の法案を作成したわけでございます。
  79. 内藤功

    ○内藤功君 それが大変な反対を受けて、結果的には見込み違いとなったわけですね。  とにかく、いろいろおっしゃいましたが、労働委員会不当労働行為審査に最も深い、自分の生活かけた、死活の関係を持っているそういう組合の方の意見を率直に聞かなかったことがこの過程では一番問題点として指摘される点だということを率直に私はここで申し上げておきたいと思うんですね。  次に、公益委員うち二名以内を常勤とすることができるという規定を入れるという問題です。  当面、実際に常勤を置く考えはないということ自体に労働省当局がこのデメリットというものを暗にお感じになっているということを私は今の答弁で酌み取るわけなんですね。こういう常勤委員というのは、本来、非常勤を原則とする労働委員会には私はなじまないと思うんですね。厳しい批判がいろいろありますよ。結局高級官僚出身者が常勤の委員になっていくんじゃないかとか新たな天下り先になるんじゃないかとかこういう厳しい批判もあります。  大変失礼ですが、昭和三十一年五月十五日に衆議院で公労法の一部改正案が審議されましたときに、当時の横山利秋議員が反対討論でこういうことを述べているのが私は記憶に残っているんですね。「常勤委員政府から給料をもらう職員であって、次第に中立性を失うおそれがあり、」「常勤制度などは断じてとるべきではありません。」。これは横山議員が反対討論で述べている問題です。  もう一つ。塚本重頼先生、最高裁の判事をやり労働委員会の会長もおやりになった方だと思いますが、この方は「労働委員会」という著書を書いています。この非常勤制というのは、労使関係の識見を有する人材を広く民間に求めて、労働委員会における労使紛争処理労使関係の実情に即して処理されることをねらった制度だ、公益委員がその地位に執着しないために、労使委員労使当事者に対し気兼ねなしに対応できるメリットがある、こういうふうに言っているわけです。  戦後、中労委の場合、この非常勤制を貫いた趣旨はそこにあると思うんですが、この点についてお伺いをしたいと思います。
  80. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 労働委員会公益委員につきましては、先生指摘のように、労働問題に関します幅広い知識と経験を有しておるということがまず第一要件だろうというふうに思います。あわせまして、労使から信頼をされる人物でなければならないということもまた事実だろうというふうに思いますし、大事なことだろうというふうに思っております。  ただ、労働委員会委員は、そういうような公益委員を担保するために、任命に当たって慎重な手続を要求しておるわけでございます。現在の中労委でございますと、労使委員同意を得た上で労働大臣任命するという形になっておりますし、また国営企業労働委員会につきましては、労使委員意見を聞いてさらに国会の同意を得た上で任命をするという形になっておりまして、公益委員の重要性にかんがみてそれなりに任命に慎重な手続を設けておるわけでございます。  したがいまして、先生指摘のような事例は、事例と申しますか御意見は、公益委員の常勤、非常勤とは別な問題ではないかというふうにも考えるわけでございまして、むしろ公益委員の公平性を担保するために慎重な手続が必要だ、こういう議論ではないかというふうに思うわけでございます。
  81. 内藤功

    ○内藤功君 私は、常勤委員は置かないというこの中労委方式を貫いてもらいたかったですね。  したがって、私がこの法案に反対する一つ理由がこれなんです。大事なところだと思います。  それから、先ほど常勤委員を置くと審理促進に役立つというお話がありましたが、私はこれは改めて論じたいんですが、今、中労委の審議がおくれているのは、私自身の若干の乏しい経験ですが、経営側の引き延ばしですよ。経営側が不当労働行為審査を引き延ばす。率直に言いまして、経営側の代理人である弁護士さんが大変多忙で、手帳を見せて三カ月先まで入らない、四カ月先まで入らない、こうして延ばされるんですね。同じ弁護士ですが労働側の弁護士は、そんなに入っていないんです。私はこの実情を一つ指摘をしておきたいと思うんですね。  そこで、次に法案の十九条の十です。  これは、先ほど同僚議員から「国営企業とその国営企業職員との間に発生した紛争その他の事件で地方において中央労働委員会処理すべきものとして政令で定めるもの」と、その内容につきまして質問がありましたが、もう一回、不当労働行為の救済面については政令で何々を考えておられるか、それだけ端的に答えてもらいたいんです。
  82. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 現在提案しております十九条の十におきましては紛争調整について「政令で定める」ということにしておりまして、不当労働行為については従来の中労委の扱っている事案の一部をやらせるということにしております。
  83. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、従来の法令と同じということですね。
  84. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 従来中労委が所掌するものの一部を分担するということであります。
  85. 内藤功

    ○内藤功君 この地方調整委員の問題でありますけれども、私は、調査まではともかくとして、不当労働行為の審問をこの地方調整委員に与えるということは重大問題だと思って、率直に言って反対なんです。  審問というのは、いわゆる裁判所の証人尋問に準じた方式で主尋問、反対尋問、クロスエグザミネーションの形で尋問していくという形ですから、命令をお書きになる公益委員の方がその両方の彼我の応酬を直接聞いて、いわゆる心証を得て、その心証に基づいて命令をお書きになるということがこの公平を担保するまた審理の正確を担保する基本であるというように私は思うんですね。先ほど審議官は、審問は事務の一部の補助だという表現を使われましたが、私は、そうじゃない、もっと大きな本質的な判定機能そのものであるというふうに思うわけなんであります。直接主義とか口頭主義とかいう民事訴訟法の概念もありますが、それはともかくとして、基本精神として、救済を求める労働者は、中労委公益委員の例えば大学のだれだれ先生あるいは練達弁護士のだれだれ先生に聞いてもらったというところに一つの納得があるわけなんで、中労委公益委員先生自身がやるというそこに本旨があるんです。もしこれが安易に行われますと大変な弊害、中労委制度の崩壊を来すというのが私の経験も含めた率直な批判であります。ですからこれに賛成できないわけであります。  もしどうしても審問をやると固執されるのであれば、それは、労働者本人が、中労委公益委員先生御自身でなくても結構でございます、じきじきでなくても調整委員の方で結構だからという明確な労働者申立人の同意がある場合に限る。本人がいいと言うのだからこの場合はいいかもしれません。私は、百歩譲ってもそこまでだと思いますね。  この点についてはいかがでございましょう。これを広げたら大変なことになりますよ。
  86. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 不当労働行為事件の審査に当たりまして、公益委員が心証を形成して命令を発するということになるわけでございますが、この公益委員が心証を形成するに当たりまして直接当事者に対して審問を行うということが重要であるということは当然のことだろうというふうに思います。そういう意味で、審問というものが不当労働行為審査手続の中に占める地位という のは非常に重要なものだということは十分承知をしておるつもりでございます。  今回の規定におきましても、具体的にどういう事案地方調整委員に担当させるかまたはどの程度まで担当させるかということは、労働委員会が御判断すべき問題であろうというふうに私ども思っておる次第でございまして、当該事件ごとにどの程度の調査を行わせるあるいはどの程度の審問を行わせるか公平適切な判断を行って、労使の信頼を得られるような命令を作成するという観点から、労働委員会が御判断いただければいい問題だろうというふうに思う次第でございます。
  87. 内藤功

    ○内藤功君 それはそうですけれども、考え方として、労働者同意した場合に限るということを基準として明確にしていいんじゃないですか。これは、労働委員会に干渉することにはならないと私は思うんですね。  審議官、あなたが御専門で担当しておられるようだから、この考え方として、今僕の言った、労働者同意した場合は審問も地方調整委員にゆだねる、しかしそうでない限りは直接審問を中労委公益委員がする、こういう明解な解釈をここで打ち出せませんか。
  88. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 現行労組法の建前と申しますのは、具体的な不当労働行為の審問の手続ですとか、強いて言えば不当労働行為命令を発するに当たってのいろいろな手続というのは、労働委員会において自主的に決めていただくという建前になっております。  そのための手段としまして労働委員会労働委員会規則の制定権をも認めておるわけでございまして、そういう意味で、どういう事例にやらせるかということはいろいろの事例があるだろうと思います。一律にどうこうというよりか、両当事者の事情を一番知っておるのが労働委員会でございますので、そういうような労働委員会判断に任せることが適当ではないかというふうに思う次第でございます。
  89. 内藤功

    ○内藤功君 その労働委員会判断というのは、あなたの御答弁は、労働委員会規則がやがてこれに基づきつくられるであろう、その規則の中に織り込むということですか。
  90. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) どのような事項労働委員会規則に盛り込むかということも、これもまた労働委員会の総会において決める事項でございます。  したがいまして、労働委員会があらかじめ規則を定めておいた方がいいというふうに判断されるかもしれませんし、また事案ごと判断をして決めるというふうに決定されるかもしれません。その辺も含めまして労働委員会の御判断にお任せをしたいというふうに思う次第でございます。
  91. 内藤功

    ○内藤功君 衆参社労委で他の議員各位からも出た意見とあわせて、私が特にこの点を強調した意味はおわかりになっていると思うんですが、これが正確に労働委員会委員各位、担当者に伝わるように、重ねて注文をつけておきます。  そこで、新聞報道によりますと、労働省は、労働組合法案につきましては今回のいわば国労委統合法案に引き続いて労働組合法の全面改定に取りかかろうとしているやに報道されております。いわば二段構えで見直す方針だと報道されております。  そうなると、この法案は、その二段構えの後からくる大変重大なまたある意味では非常におどろおどろしい内容があるのかもしれませんが、そういうものの先導であるのか、こうも考えられるわけなんですね。この点の真意を私はこの機会に伺っておきたい。  特に、これも報道によりますと「次の段階不当労働行為やスト権などにも踏み込んだ抜本改正をする」とか「労使代表や学識経験者らによる検討委員会を発足させ、抜本見直しの協議を始める。」などとも言われておりますが、これらいずれも報道でございますので、大臣及び責任ある御答弁を伺いたいと思うんです。
  92. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 実は、私どもあの新聞記事を見たわけでございます。私自身も関係部内を確かめたわけでございますが、あの新聞記事は全く私どものあずかり知らないところでございまして、労働省としてはそのようなことは考えておりません。  労働関係法制というのは、制定以来、改正するのがなかなか難しいわけでございまして、今のところ私どもは改正のための機が熟しているとは毛頭考えておらないところであります。
  93. 内藤功

    ○内藤功君 新聞記事があずかり知らぬかどうかということよりも、その内容のようなことがあるかどうか。  特に、あれはたしか中村大臣の御就任前の状況でございますからね。決して御答弁を疑うわけじゃないんですが、「検討委員会を発足させ、抜本見直しの協議を始める。」、こういうことはやられていないと承っていいですか。これは、局長、どうですか。
  94. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  今大臣が御答弁なさいましたように、我々としてはこの新聞記事にあるようなことは存じていないわけでございまして、労働関係の、特に労使関係法の検討というのは、意見がいろいろあるわけでございまして、それをまとめて法律にするということは現在考えておりません。  また、先生指摘の検討委員会が置かれ協議が行われた事実はございません。
  95. 内藤功

    ○内藤功君 その点は確認をいたしました。  時間がありますので最後に、公益委員とともに非常に大きな役割を担う労働者委員の推薦は、現行法上はどういうふうな推薦の基準か。  定数にオーバーする推薦がいろんな労働組合からあった場合にはそこで交通整理をしなければなりませんね。もちろん非公式に調整があればいいですよ。調整があればいいけれども、これからの労働戦線はなかなかそう簡単に話がついてというようなことにならない時代になるんじゃないでしょうかね。  そうなりました場合の労働省としての従来及び現在のこれについての基準、それから手順の基準というものをお示しいただきたい。
  96. 渡邊信

    説明員(渡邊信君) 中労委労働者委員任命に当たりましては、昭和二十年代に労働事務次官の通達がありまして、私ども基本的にはこの通達にのっとって運用しているわけであります。  これによりますと、系統別の組合数や組合員数あるいは産業分野・地域別等を十分に考慮して任命するようにということになっておりまして、こういった基準におきまして中労委及び地労委に対しても指導しておる、こういったことになっております。
  97. 内藤功

    ○内藤功君 今のはたしか昭和二十四年の次官通達ですね。要するに、組合員の人数と組合数というものを十分に比例するようにやれというお考え方。  その前の昭和二十一年ごろはどうでした。次官通達で、選挙という時代があったんですね。そういう時代があったんです。これは、それくらい調整の基準をしっかりと腹に据えていないと間違いますよ。  そこで、お伺いしたいのは、労働者委員というのはどういう役割を果たすのか。  私は、労働者委員は非常に大事だと思うんです。申し立てをしますね。そうすると、労働者委員をだれにするかということは申し立てる労働者側の大変な関心事です。もしうっかり、そういうことは絶対にないと思いますけれども、相談したことがその労働者委員からひょっとしてほかへ漏れたらどうしようかと。ですから、その労働者委員の役目というのは、申し立てた労働者といろいろ相談して、質問、尋問をどういうふうにやるかという打ち合わせまでまじめな人はします。それから、記録をよく読んでくれます。それから、いよいよ労使がここで話をつけよう、じゃ何人復職して何人は退職するという詰めの段階になったときは、その労働者中労委公益委員の間をとって、つらい立場だが場合によっては労働者を説得するということもしなきゃならぬ。さて、説 得するのにも、あいつはどうもほかに通じているんじゃないかというような気持ちを持たれた人だったら、説得したって言うことを聞きませんよ。信頼できる人から説得されれば言うことを聞くことがあるかもしれない。私は、労働者委員というのは本当に大変なことで、これに人を得ることは非常に大変で、その任に当たる方は御苦労だと思っております。  私の親友で山本博さんという弁護士がいますが、その著書「労働委員会」で、労働者委員は「若く熱心で献身的に仕事ができる者、しかも、現在の使用者の不当労働行為のやり方をよく知っている者、こういうオルグのような人、もっといえば解雇されて法廷闘争を行った経験者がよい」と、ここまで言っています。私は、決して極論じゃないと思うんですね。労働者委員というものはそういう役目を持っておる。  ですから、私は、基準の一つは、今あなたの言った二十四年の通達で、大組合、小組合、それぞれあるが小組合の代表も出すということが大事だ、特に不当労働行為の申立件数の多い労働組合から出すということが非常に大事だ、それから一人一人労働者にとって本当にこの人は相談相手になれる人かどうかを判断することが大事だと思うんです。  いかがでしょうか、今こういうような基準をしっかり持っていますか。それとも、そういう基準でこれからいきたいと思っていますか、どうですか。
  98. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  労働者委員役割、それから労働者委員が信頼されなくてはならないという点につきましては、先生の御意見のとおりだと思いますが、その選定の基準として、件数がたくさん出ている組合その他、そういうような理由で選ぶということはまたどうかと思います。先生の前半におっしゃったような信頼し得る労働者委員を選んでいきたいというように考えております。
  99. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 内藤君、時間です。
  100. 内藤功

    ○内藤功君 もうちょっと済みません、最後の質問になります。  ところが、私が数字をお聞きしたところによると、お名前は省略いたしますが現在の中労委労働者委員の中で、たしか三人のお方が、労働者委員として不当労働行為事件に関与されているケースがゼロだそうですね。  それから、これは名前を申し上げていいと思うんですが、先年度おやめになった元炭労委員長の原茂さん、この人は九十六件持っていた。はっきり言って、ある労働者委員には一人も頼みに来ない。この労働者委員にやってもらいたいと頼みに来ないんですよね。ある人は九十六件頼まれている。この違いはどういうふうに思われるかということが一つ。  それから、これは、二番目はお答えいただかなくていいですけれども、私は、その意味で、この間新聞を見て驚いたんですが、民放労連、新聞労連、自交総連などのいわゆる純中立労働組合懇談会が次期の労働者委員を七人推薦したところが、一人も採用されなくて、いわゆる労働四団体の推薦の九名の方ばかりが採用され任命された。これは大臣任命でございますから、結局それで訴訟が起きたというんですね。
  101. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 内藤君、時間です。
  102. 内藤功

    ○内藤功君 これは驚きましたが、こういうことはやっぱり怒るのが当たり前なんですね。怒るというのは、やられた方は差別だと怒るのが私は当たり前だと思います。  この後の件は訴訟にかかわるから特に御答弁を求めませんが、前の点はいかがでございますか。
  103. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  不当労働行為についての申し立てのそれをどの先生がどういうふうに受け持つか、先ほど先生から常勤でなくて一般の非常勤というようなお話もございましたが、それぞれ、そういう関係で中労委の中でいろいろと御検討ある問題だというふうに思います。  そのほか、この不当労働行為案件だけじゃなくてその他のいろんな仕事もあるわけでございますから、それぞれでの御活躍が割り当てられているものと我々は理解いたしております。
  104. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 二、三御質問申し上げます。  今回のこの法案改正については、一つには、三公社現業から郵政事業などの四現業国営企業実態が変わったということと、いま一つ臨調最終答申にも指摘された労働委員会機構の簡素化ということを受けての改正であるわけでありますが、この簡素化と言っても、単に経費の節減とかそういったことだけではこれはいけないのであって、当然、その裏にはそのことによる効率的運用ということが欠かせない要件だと思うんです。  したがって、国労委中労委統合された。そして、労働委員会制度というものが新しく運営される。そのことが、簡素化を伴うと同時に、従前よりも効率的にしかも機能的に運営されなければならない。具体的に言うと、調停仲裁事案処理等をもっと迅速化するあるいは不当労働行為などに対する事案についても速やかに処理ができるしまた救済ができるという運営改善というものがなされなければならない、しかもそれが中央地方と同時並行的に行われなければいけないと思います。地方地方なりの機能分化をしておるわけですから。  したがって、最初に、そういった意味における改革、機能強化の具体策等についての御方針をお聞かせいただきたいと思います。
  105. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  今藤井先生指摘のとおりでございまして、行革の一環として中労委国労委の合同を図るわけでございますが、本来国労委が持っております機能も十分維持しながら、またその合同によりまして新たな合理化を図りますとともに、効率的に不当労働行為その他についての審査等が促進いたしますように、それらを配慮した体制を中央においては進めていく。  それから、地方におきましても、三公社現業四現業になることによりましてその地方のブロックでの仕事その他は減ってまいってきておりますが、それらを配慮した制度にいたしますとともに、従来の機能が十分機動的に維持されるような制度にいたしていきたいということで今回の制度をお願いしているわけでございます。  また、中央労働委員会が用います不当労働行為その他の件につきましての民間事案につきましても、地方において行った方が利用する人々にも便利であるというような点も配慮し得るような措置もとらしていただいたというようなことで、全体的に機能は十分維持しつつまた従来の機能を拡充するメリットを持たせながら合理化を図っていくということを考えた次第でございます。
  106. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 中央地方を通じてこのように大きく制度が変わっていきますと思っていることと実態がずれてくることは、私はどうしても避けられないと思うんですね。やはり、しばらくの間は、どうしても手間暇がかかる、てこずるといったことで非常に不便を来すだろうと私は思うんです。すべて何でもそうだと私は思うんで、だから大変な事業だと思うけれども、今時間の制約もあって細かい点は指摘できませんが、十分その点は配意して、労使関係というものは生きたものですから時間をかけてじっくりやるものとは違うわけですから、効率的、機動的に運営できるようにせっかくの御努力をお願いいたしたいと思います。  それから、国労委中労委統合によって労働省の機構が再編される、勤労者福祉部を創設するということでございますが、この目的概要等についてちょっとお聞かせいただきたい。
  107. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 今回の中労委国労委統合、十月一日を施行予定といたしておりますが、それに軌を一にいたしまして労働省内の組織を一部改編する予定にいたしております。  その一つといたしまして、労政局の中に、仮称 でございますけれども、勤労者福祉部を設けることを予定いたしております。  我が国の経済は最近非常に発展をしてまいりました。世界的に見ましても、名目的な賃金をとりますとアメリカの賃金水準を追い抜いたんではないかというようなことも指摘されております。しかるに一方、具体的な勤労者の方たちの生活の実態を見ますと、経済成長の成果というものが必ずしも勤労者に十分に還元されていないんではないか、勤労者個々の方々にとりまして生活の質の向上を図る必要がまだまだあるのではないかということもまた指摘されておるわけでございまして、勤労者福祉の充実を今後図っていかなければならないということが一つの大きな課題だろうと思いますし、またそれは労働省に課せられた一つの大きな課題であるというふうにも考えておるわけでございます。  で、従来、労働省におきましても、いろいろな勤労者福祉施策を行ってまいりました。行ってはまいりましたけれども、今後さらにより一層充実させていきますためには、やはり勤労者のニーズを的確に把握するということが大事であろう、このように社会経済情勢が非常に複雑になってまいりますといろいろな形でのニーズがございます。多種多様に勤労者のニーズというものは分かれてまいります。そういうような多種多様に分かれます勤労者のニーズを的確に把握をして統一的に施策を充実していくということが必要であろう、そういう観点から労政局に勤労者福祉部を置きたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  108. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先に行きますが、今回の改正案の中の国営企業職員のいわゆる専従期間の問題について、この修正では、「当分の間」、現行五年を「「七年以下の範囲内で労働協約で定める期間」とする。」ということになっているわけです。  これは、修正としてこういう形になったわけですが、行政当局としてはここで言うところの「当分の間」というものをどのように受けとめておられるのか、この点聞かしてください。
  109. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) お答え申し上げます。  衆議院修正で加えられましたところの例の「当分の間」でございますが、暫定的な措置であることを示すものであるというふうに思っております。  在籍専従期間としてどの程度の期間が適切であるかは、公務員としての職務専念義務との関係や労使関係の実情、制度運用の実態等を踏まえて、今後とも検討されるべき課題であると考えている次第でございます。
  110. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは、民間労働組合という視点から見ると、労働組合専従者の専従期間を決めるということ自体、理解に苦しむ。  今局長がおっしゃった公務員としての職務専念義務、一般民間企業であっても、従業員はその企業に対する職務専念の義務というのが当然就業規則にあるわけですわね。しかし、労使関係において労働協約を締結し、労働組合は対等の立場においてみずからの意思とそして組合がみずから積み立てるところの財政基盤において必要とする者を必要な期間専従にするというのは、我が国においてもこれは常識です。それが現行五年、それを二年延ばして七年。そのことは、いわゆる民間労働組合と対置して考える場合には極めて奇異に考えられる。そのこと自体が既にいびつな労使関係。労働組合にはそれぞれの歴史というものもありましょうし、労使の慣行ということもありましょうけれども、まあまあ普通の労働組合であるならば労働組合における専従期間というものは労働組合が決めることであって、法その他によって規制すべきことではない、こういうふうに私は思うんです。そういう意味で「当分の間」というものをどういうふうに見ているんだろうかということをお聞きしました。  したがって、これは私の考えでありますが、いい労使関係、いい慣行ができていくならば、私は専従期間というものはやっぱり撤廃すべきである。それは、組合が自主的に判断する内容のものだ、まさに労働協約で決めることだというふうに私は思っております。しかし、これはもう時間がありませんからこれにとどめておきます。  それからいま一つ。  先ほど来たくさんの同僚議員が御指摘になっていた問題の一つでありますが、不当労働行為ですね。  組合の組織率というものが、伸びないどころか、どんどん落ちてきている。近代国家を自負している日本の社会でありながら組織率が伸びない、非常にこれは重要な問題だと私は思うんです、戦後からこれだけたっているわけですから。しかし、よく見てみますと、いわゆる大企業の組織率というのは、大体行き渡っている。欧米諸国に比して遜色はない。全体の組織率が低下しているゆえんは、日本の産業の特性である、二重構造とも俗に言われるけれども、中小・零細企業過多、そこにおける未組織ということだと思うんです。  しかも、もう一つは、企業内組合ということもありましょう。せっかく労働組合ができても、労働組合つぶしというのが最近目に余る。先ほど大臣は、二十年代に比べると格段の進歩だ、日本労働協会などでよく勉強もさしているとはおっしゃるが、現実の問題としては、中小企業のおやじさんにしてみれば労働組合は必要悪、ないにこしたことはない。あるいは、親請に対する顔向けということから、親請から仕事を受注するということを口実に下請に、組合をつくれば組合をつぶす、こういうことを忠実な企業家精神と踏み違えている。これらはもう目に余ることです。そして不当労働行為を繰り返す。そのことに対して地労委が注意しても、聞かない。中労委まで持ってくる。裁判する。これは、労働省に対する堂々とした敵対行為だと思うんですよ。労働省だけではない、労働組合に対しても。  そこで、私は最後に一つお伺いするんだけれども、労働省では、現在、高齢者、身障者の雇用率を守らない企業などについてはこれを公表する、そして企業における社会的責任というものを自覚させるということをやっておられるわけなんだけれども、長年にわたって労働基準法に違反したり最賃法に違反したりあるいは不当労働行為を繰り返すようなところは、私は、公表したらどうだ、そしてそのことによって目を覚まさせるようなこともひとつ考えたらいかがかなというふうにすら思っているわけです。  この辺についてひとつお考えをお聞きして、私は質問を終わりたいと思います。
  111. 齋藤邦彦

    政府委員齋藤邦彦君) 先生指摘のように、不当労働行為があってはならないということは当然のことだろうというふうに思います。  不当労働行為の件数全体としては社会経済情勢の進展に伴いまして減っておるんではないかというふうに思いますが、まだ依然として中小企業等において不当労働行為が行われておる実態もあるということも事実だろうというふうに思います。そういう意味におきまして、私ども、不当労働行為があってはならないことだということを、あらゆる機会を通じて普及啓蒙に努めてきておるつもりでございます。また、具体的な事件が起こりましたときには、各都道府県の労政課等も通じましていろいろな指導等を行う事例もございます。そういうようなことでいろいろやっておるわけでございます。  ただ、制度的に不当労働行為制度をどうするかということになりますと、先生指摘のような御議論も確かにございます。悪質な不当労働行為を繰り返す事業主につきましては公表をする制度を取り入れるべきであるとか、あるいは、不当労働行為につきましては現在は労働委員会による救済命令によって救済するという形になっておりますが、直罰主義をもって、刑罰をもって禁止すべきではないかというような御議論もございます。いろいろな不当労働行為制度についての御議論があることも十分承知をしておるわけでございますが、不当労働行為制度の一つ機能と申しますの は、労働者を救済するというだけではなくて、その企業におきます労使関係をそれ以降安定させるという機能もあるだろうというふうに思います。そういう観点から見ますと、公表制度ですとかあるいは直罰制度というものを取り入れるということはかえって当該企業の労使間の対立を激化させるおそれもまた一面においてあるんではないかということもございます。労使間の問題はできるだけ労使間で自主的に解決をしていただくというのが一番いい解決の仕方だろうと思いますので、そういう意味で労使間で解決できるようにあらゆる手段を通じて援助をするというのが国なり労働委員会役割だろうというふうに思いますし、それが結局一番労使にとっていいことではないかというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、先生指摘のようなことも含めましていろいろな御議論があるところでございます。私どもといたしましては、不当労働行為を未然に防止するということに努力を傾注しなければならないだろうというふうに思っておる次第でございます。
  112. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  113. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本共産党を代表して、政府提出の労働組合法等の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。  本改正案は、臨調答申に基づき国鉄や電電などが民営化された結果、その対象となる労働者が激減したことを理由国営企業労働委員会中央労働委員会統合しようとするものでありますが、これに便乗して労働委員会不当労働行為救済機能を著しく弱めるような改悪条項が導入されることであります。  第一の反対理由は、統合に伴い委員総数が削減されることであります。  昨今、中労委に係争中の不当労働行為事件の審理状況は、再審査の場合、命令、決定が出るまでに平均一千日を超え、長期化の様相を呈しています。委員総数の削減は、この審理日数の長期化にさらに拍車をかけることとなり、労働者の権利の救済が一層おくれることになります。  第二の理由は、公益委員の一部常勤制の導入であります。  公益委員二名の常勤化を行えば、結局は官僚OBが任命され、他の非常勤委員役割が相対的に低められ、形骸化されることになります。  第三の反対理由は、中労委地方出先機関としての地方調整委員不当労働行為事件の審問権までも与えたことであります。  地方調整委員が審問を行い、審問に直接参加しなかった中労委公益委員が書類上だけで判断し、命令を書くということになれば、その判断、命令の正確さ、公平さが著しく損なわれることになります。また、いわゆる直接主義、口頭主義の原則からも逸脱するものであります。労働者救済機関としての労働委員会機能を著しく弱めるものであります。  以上の理由により、本法案に強く反対することを表明し、反対討論を終わります。
  114. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  労働組合法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  115. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十八分散会