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1988-04-14 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十四日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月十三日     辞任         補欠選任      糸久八重子君     対馬 孝且君      高木健太郎君     原田  立君      吉川 春子君     上田耕一郎君  四月十四日     辞任         補欠選任      上田耕一郎君     内藤  功君     ─────────────  出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省労働基準        局安全衛生部長  松本 邦宏君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        法務省刑事局公        安課長      木藤 繁夫君        厚生省保健医療        局結核難病感染        症課長      金森 仁作君        厚生省薬務局医        薬品副作用被害        対策室長     石本 宏昭君        労働省労働基準        局監督課長    松原 東樹君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      安藤  茂君        労働省労働基準        局安全衛生部労        働衛生課長    草刈  隆君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  石岡愼太郎君        労働省労働基準        局賃金福祉部福        祉課長      坂本 哲也君        消防庁消防課長  川崎 正信君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出) ○勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出) ○労働問題に関する調査  (血友病を有する労働者労災認定に関する件) ○特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十三日、吉川春子君、糸久八重子君及び高木健太郎君が委員辞任され、その補欠として上田耕一郎君、対馬孝且君及び原田立君がそれぞれ選任されました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案並び労働問題に関する調査を便宜一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 浜本万三

    浜本万三君 私は、きょうは財形法改正法案につきまして質問をいたしたいと思います。  まず最初に大臣お尋ねするんですが、大臣は、先般、労働関係雑誌での年頭あいさつにおきまして、財形制度について次のように述べられております。「勤労者財産形成促進制度については、昨年、二度にわたる法改正などにより大幅な改善が実現しましたが、今後とも働く人達の持家取得年金資産の保有を促進するため、その着実な推進を図ってまいります。」と申されております。  財形制度昭和四十七年一月からスタートしたわけでありますが、六十二年九月現在、財形貯蓄残高は実に十一兆円の巨額に達しておりますが、勤労者一人当たりの平均貯蓄額はわずかに六十四万円ということになっております。一方、この財形制度の大きな柱であります勤労者持ち家取得促進という側面を見ますと、分譲並びに個人融資が六万六千戸余、それからそれに対しまして貸し出しました資金が約四千四百億円というふうになっております。つまり財形貯蓄につきましては、その残高の三分の一まで持ち家取得等の原資に充てることができることになっておるわけでございますが、融資実績は極めて低調であるわけでございます。しかも、ことしの四月からは一般の財形貯蓄につきましては利子等に対しまして二〇%の課税がなされることになりました。この点私どもはまことに遺憾であるというふうに思っております。  財形制度についての中村労働大臣の基本的な認識はどのようなお考えであるか、まずお伺いをいたしたいと思います。
  5. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) この制度の今の運用実態につきましてはただいまお話があったとおりでございます。  まず、この制度は、勤労者の計画的な資産形成を促進するために勤労者自身自助努力に国と事業主が必要な援助を行い、豊かで安定した勤労者生活の実現を目的といたしておるわけでございます。御指摘のように、昭和四十六年に制定されて以来五回にわたる法改正を含めて着実な改善が図られてきておりまして、今や勤労者福祉政策の大きな柱として勤労者生活に広く定着しておると理解をいたしておるわけでございます。  しかしながら、御指摘のように、財形持ち家融資利用が依然として低調である等の問題もありますので、勤労者福祉に対するニーズ等も踏まえまして、制度の一層の充実が図られるよう今後 比べますると問題のあることも事実でございまして、今後、中小企業に対しましては健康保持増進に要する費用についての助成措置等につきましても検討してまいりたいと考えております。  また、中小企業の多くは健康の保持増進を進めるための施設を事業者みずからが十分に整備できないと考えるわけでございますので、サービスを提供する外部の機関も必要であり、その育成にも努めてまいりたいと考えております。  なお、健康保持増進措置実施に当たっては、具体的な時間の設定等については労使の話し合いにより事業場実態に応じて適切に実施されるよう指導してまいりたいと考えておるところであります。
  6. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 それで、法案の具体的な問題点について幾つお尋ねをしてみたいと思うんですが、ぜひこれはひとつ取り上げていただきたいという問題等もたくさんありますし、あるいは今後政省令改正を含めて協議なり検討がされると思うんですが、その段階でもぜひとも生かしていただいてひとつ努力をしていただきたい、そういう立場から幾つか実はお聞きをしてみたいと思うんです。  まず、法案要綱の第二の「機械等及び化学物質に関する規制の充実関係ですが、中基審の建議によっても「機械設備による労働災害現状課題」、こういうふうに題しまして「労働災害を防止するため、構造規格等が定められているにもかかわらず、これら法定要件に適合しない機械設備労働の場において現に使用され、労働災害を引き起こしていることは極めて問題である。」、実はこういう指摘をされておりますが、私がお尋ねしたいのは振動障害防止のためのチェーンソーの問題です。  確かに工具そのもの工具規格水準規格がされておりますが、問題は、これを一定期間使った段階で、何らかの形で事業主の責任として定期的な自主検査制度を行うべきではないか。今日までもたくさんの実は認定患者も出ております。そういう点から見ても今後の検討の中で、例えば四十五条に基づく施行令の十五条の定期検査機械の中にこれを含めていくべきではないか等々、今までもいろいろと議論されてきたと思うんですが、そこらについてひとつ御見解をお伺いしたいと思います。
  7. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 振動障害防止のための構造規格等につきましては、今お話のようにそれを定めまして、振動の少ないチェーンソーの使用を指導するとかあるいは点検整備実施についても事業主に対して指導してきたところでございまして、現在推進いたしております第三次の振動障害総合防止対策におきましても、今申し上げましたような低振動工具の採用について指導すること、あるいは整備不良あるいは経年劣化により振動が大きくなるような傾向がございますので点検整備を励行すること、あるいは点検整備のための体制整備についてさらに重点項目として徹底を図ってまいりたいと考えているところでございます。  ただ、これまで調査したところによりますと、このチェーンソー労働者本人所有物として持ち込んで作業しているというようなこと等もございまして、事業主による定期自主検査対象とすることにつきましては現実には困難な面があろうかというふうに考えておりますけれども、さらに点検整備の定着を図るための指導強化に努めてまいりたいと考えております。
  8. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今労働者自身が自分でチェーンソーを持ち込んでやっているというお話がありましたが、確かにそういう部分もないことはありません。  しかし、これは雇い主の方が当然機械を準備しなければいけないのに、特にそういう資金も持たないといいますか中小零細のところが多いものですから、そこらは別の問題として点検の中に入れていくというふうな方向でひとつぜひお願いをしておきたいと思うんです。  それから次に、衛生管理の問題について若干お尋ねをしていきたいと思うんです。  さきも申し上げましたけれども、当然のことながら省令改正案要綱なんかについては中基審にお諮りをして決定されると思いますが、六十三年の一月二十三日付の総合的な安全衛生対策に関する報告の中で、(イ)から(ニ)までの四作業場での「環境測定結果の評価を行い、」と、いろいろと書かれております。その結果が「適切であると判断される状態一定期間継続した作業場については、」、いろいろと述べております。  お聞きをしたいのは、一つは、「適切であると判断される状態」とは一体何かのか。当然私は何かの基準なんかを定めると思うが、そういう部分についてひとつお聞きをしたい。  それから第二点目は、「一定期間」とありますが、これも今までいろいろお話してきておるようですけれども、「一定期間」というのは、例えば時間的な問題とかあるいは何カ月とか日数を示すのか何なのか、そういう点について少しお聞かせ願いたいと思います。
  9. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 今回の法改正におきまして、従来は作業環境測定をしろとしか書いてなかったものを、測定した結果を評価してその後の改善措置を講じてもらうと、こういうことにしたわけでございます。  その測定した結果の評価に基づきまして、作業環境状態を第一、第二、第三と、こういう形に区分をいたします。第一管理区分といいますのは良好な状態であるという区分でございまして、第二の場合はなお改善の余地がある、第三の場合には直ちに改善をしなきゃならぬ、こういうふうに区分をするわけでございます。  ここで我々考えておりますのは、そういった測定した結果が第一管理区分、つまり良好な状態であるという状態がございまして、それが今考えておりますのは法定の間隔で言いますと四回、一般的に言いますと年に大体二回はからせますので、四回といいますと二年間でございますが、二年間そういう状態が継続しておるという改善状態が認められればその時点で簡易測定に切りかえてもいいではないかと、こういうことで考えております。
  10. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 期間の問題としてはそういうことでわかりますが、それではひとつこれは別な角度から。  今言われたように環境測定中心を置くんだ。そうしますと、アスベスト問題で、今かなりの量が輸入をされておる。そうしますと、港湾労働者の場合、船倉の中で扱う部分については環境測定ができると思うんですけれども陸揚げに従事する港湾労働者屋外での測定については何か考え方があるのかあるいは今後検討されていくのか、お聞きをしておきたいと思うんです。
  11. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 現在、屋外作業については測定は義務づけていないわけでございます。  これは、屋内の場合には、作業環境がほぼ一定をしておるということがございますので、環境測定をいたしまして、その結果に基づいて、例えば局排をつけるとかあるいは全体換気装置をするとかという改善措置がそこで考えられるわけでございますが、屋外の場合には、御承知のようにその日の天候であるとかあるいは風向き、風速、そういったことによって大変影響を受けるわけでございますので、一定の濃度を測定しましても翌日はその状態であるという保証は何もない。したがって、改善をいたすといたしましても、局排つけようがないというようなことがございます。そこで環境測定については義務づけていないということなんでございます。
  12. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 私は、陸揚げをする環境面は確かにそういう難しさがあるかもしれませんけれども労働者個々の問題としては測定ができると思うんです。できると思うんですよ。  だから、そこらはどういう方法があるのか。確かに、今ここで考え方を述べていただきたいということについては難しさがあるかもしれませんけれども個々労働者の被曝をどう防いでいくのか、そういう立場検討はぜひひとつお願いをし すのは、中小企業に対しまして、財形給付金制度あるいは財形基金制度、これらの制度の導入を容易にするために支給しているわけでございまして、昭和五十一年度から支給を開始いたしておりますが、この支給実績を見てまいりますと、昭和五十二年度から五十八年度までは年間大体千五百件前後という実績でございましたが、五十九年度以降減少しておりまして、五十九年度は六百件台、それから六十年度は四百四十件台、六十一年度は三百三十件程度、六十二年度は十二月末現在で百三十件程度と、こういう状況になっております。  また、財形基金設立奨励金でございますが、これにつきましては、昭和五十四年度から支給を開始しているわけですが、五十四年度、五十五年度あたりは四十件前後の実績ございましたものが、例えば五十九年は四件、それから六十年度はゼロ、六十一年度二件、それから六十二年度も十二月末現在でゼロというような実績でございます。  このように最近支給実績が非常に落ちてきているわけでございますけれども、これは、財形給付金制度が発足いたしまして七年を——これは七年一サイクルで運用しているわけでございますけれども、この七年を経過したその後の満期給付金が払い出されたということで、助成金支給期限である七年に合わせてその給付金契約を解約する企業が大分多い、それからまた、新規に契約する企業が最近の厳しい情勢を背景といたしまして非常に減少しているというようなことによるものではないかと思っております。  また、財形基金設立奨励金につきましても五十六年度以降減少しているわけですけれども、これも新規基金設立が非常に減っているということでございます。  このように助成金なり基金奨励金制度活用が減少しておりますのは、いまだにこれらの制度が十分に周知されていない面もあるということが言えようかと思いますし、また負担等の問題もあるわけでございまして、賃金などのほかに事業主が拠出する制度を設けることはなかなか困難な面があるわけでございます。  私どもといたしましても、昭和六十二年度から助成金助成率につきましてはそれまでの助成率の倍増を図ったというようなことで助成措置充実をしているわけでございますし、また新たに都道府県の中小企業労務改善集団に対しまして財形普及促進事業等を行うことにしておりまして、今後ともこういう事業を通じまして給付金制度基金制度周知普及促進に努めてまいりたいと思っております。
  13. 浜本万三

    浜本万三君 次は、中小企業の方が活用されておる割合が非常に少ないようでございますから、そういう問題についてお尋ねを、これは大臣にしたいと思います。  昭和六十二年における全国の雇用労働者数は四千四百二十八万人ということになっております。そして六十二年九月現在の財形年金貯蓄契約者数は千九百五十一万人ということでございます。この数字を見ますと、財形制度の恩恵を受けられる勤労者は全体の約四四、五%ということになると思います。約五六%の勤労者財形制度の適用がなく、しかもその方々は中小企業で働く労働者の人ではないかと、かように思っております。これでは財形制度は大企業で働く労働者にだけ恩典を与えられるということになると思います。  この際、財形制度が全勤労者に適用されるよう法改正を含め抜本的な普及促進策を図ることが必要ではないかと思いますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  14. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 財形制度普及促進、特に中小企業への普及促進対策は、確かに、御指摘のようにこの問題に対する重要な政策課題であるというふうに私ども認識をいたしておる次第であります。  今までもマスコミ等利用しての周知説明会開催等によりまして制度普及に取り組んできたところでございますけれども、特に六十二年度からは中小企業に対する財形制度普及促進のため中小企業労務改善集団に対する指導援助を内容とする新たな事業を開始したところでございます。また、六十三年四月からは損害保険財形対象となったところでございまして、代理店等を通じまして中小企業への浸透を期待されるということもあるわけでございます。  今後とも、御指摘のように着実に制度普及促進に努めるとともに、制度の基本的なあり方につきましても検討を深めてまいりたいというふうに考えておるわけであります。
  15. 浜本万三

    浜本万三君 それから次は、今回の法改正財形住宅貯蓄契約に基づく貯蓄の用途に増改築を加えられたわけでございます。  その項によりますと、増改築その他の工事で政令で定めるということになっておるわけですが、具体的にはどういう工事を想定されておるのかお尋ねをいたします。
  16. 坂本哲也

    説明員坂本哲也君) 今回財形住宅貯蓄の使途に増改築等を加えることにしているわけでございますが、これは住宅取得促進に関する税制上の優遇措置として増改築等対象になるということで、先般成立いたしました租税特別措置法改正法案におきましていわゆる住宅ローン控除対象として新たに家屋増改築等というものが含まれることになったわけでございまして、私ども制度もこの範囲と同様にしたいと考えておるわけでございます。  具体的に申しますと、居住者が所有している家屋について行う増築、改築、それから建築基準法に定義があるわけでございますが、大規模の修繕、それから大規模の模様がえ、こういう工事でございましてその工事費用が二百万円を超えるもの、それからまた工事後の床面積が四十平方メートル以上であるもの、こういった要件を満たす工事を定めることにしたいと考えております。
  17. 浜本万三

    浜本万三君 もう一つお尋ねするんですが、今も対象範囲を二百万円以上というふうにお答えがあったんですが、勤労者増改築をする場合には、大規模増改築をする人もおるでしょうが、相当数の方は、例えば台所を直したい、ふろ場を直したいというように二百万円以下の規模増改築をなさる人も相当多いんではないかと、かように思うわけでございます。  したがって、利用促進観点から考えましても二百万円という額を引き下げて、いわゆる小規模増改築にも利用させるようにしたらどうかと、かように思いますが、それはできませんか。
  18. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 先ほど御説明申し上げましたように、その範囲につきましては、所得税額特別控除制度との横並びをとっているということで税制上支援すべき増改築範囲住宅取得とほぼ同視し得るような規模工事とするという観点から定められたものでありますので、住宅貯蓄に限って緩和するというのは税制の一律性を図るという観点から現状では難しいというふうに申し上げざるを得ませんが、いずれにいたしましても、この要件につきましては勤労者ニーズ、今先生のお話のようなニーズ等も含めまして、制度利用実績などを見きわめながら今後必要な改善について検討してまいりたいと思っております。
  19. 浜本万三

    浜本万三君 それから、先般、財形年金貯蓄契約につきましては、現在年金払い出し以外に租特施行令第二条の三十三の規定によって災害、疾病、その他やむを得ない事情で税務署長の証明を経た場合に限り非課税で払い出すことが可能になったわけでございます。  これを住宅契約についても同様の取り扱いをしてもらいたいという希望がありますが、この点はいかがでしょうか。
  20. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 財形年金貯蓄制度及び財形住宅貯蓄制度は、老後の生活の安定や住宅取得といった政策目的税制上の特別措置を通じて実現しようというものでございます。したがいまして、目的外払い出しが行われました場合には、本来、他の預貯金と同様の課税が行われるべきものであると考えられている次第でございま とも積極的に取り組んでいく所存でございます。
  21. 浜本万三

    浜本万三君 私は、特に持ち家問題について指摘をし、お尋ねをいたしたいと思うわけなんでございますが、持ち家を持とうといたしましてもその価格が非常に上昇いたしましてなかなか持ち家が持てない、こういう状況になっております。  この資料によりましても、私鉄系不動産会社などで構成する都市開発協会というのがございますが、その協会が発表いたしました資料によりますと、JR東京駅から約十キロ圏の中でマンションを持とうといたしますとその価格は六千六百万円だというふうに言われております。仮に勤労者年収が五百九十五万円といたしますと、年収の約十一倍になるわけでございます。六十一年度は約七倍だというふうに言われておりました。また、少し距離を延ばしまして十キロから二十キロ圏について調べておる資料を見ますと、マンション価格が約四千八百万円、これにいたしましても年収の約八倍。六十一年度は約五・九倍だったわけでありますが、そういうふうに非常に高くなっておるわけでございます。一般的に、サラリーマンの所得に対しどの程度価格で家を持つことができるかと言われておりますのは、年収の大体五倍程度ではないかというふうに言われておるわけでございます。年収の五倍でようやく家が持てるのに、先ほど例を示しましたように八倍から十一倍も取得価格がかかるということになってまいりますと、勤労者支払い能力というものをはるかに超えることになるんではないか、かように思います。  こうした現実の中で果たして勤労者が家が持てるかということになりますと大変困難だと思いますが、その点についての大臣の御見解を伺いたいと思います。
  22. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 勤労者資産形成を促進するという観点から申し上げますれば、地価が安定しまして通勤可能な地域に安価な住宅が確保されることが一番望ましいことでございます。御指摘のように、最近の首都圏中心とする地価の高騰は、勤労者持ち家取得を促進する面からは大きな障害となっておるわけでございまして、まことに残念なことであると思います。  政府としましても、臨時行政改革推進審議会の検討状況を見守りつつ、政府全体で地価の安定が図られるよう取り組んでおるところでございます。労働省としましても、勤労者持ち家取得を促進するための方策につきまして調査研究を進めるとともに、関係省庁との連携を図り、必要な対策をこれからも積極的に推進してまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  23. 浜本万三

    浜本万三君 この財形制度を魅力のある制度にしてそして皆さんの期待に沿うようにすることが必要ではないかと思うんでありますが、その一つの方法といたしまして、財形年金制度企業の退職金制度との結合を図るようなことが考えられないかということなんです。つまり、財形年金貯蓄一定期間行ってきたことを条件にいたしまして、退職時点において財形年金の積立額に退職金の一部を追加できるようにしたらどうかということなんでございます。  例えば、退職時に三百万円の財形積み立てをした労働者があるといたしますと、退職金のうち二百万円を限度額いっぱい積み立てる、こういうふうに結合を図るようにしたらどうかと思いますが、いかがでございましょうか。
  24. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 退職金は勤労者資産形成の上で重要な位置を占めておるものでございますし、また本格的な高齢化社会を迎えるに当たりまして労働者の退職後の生活保障の機能を持つものとしまして一層重要な役割を果たすものと考えております。  御指摘になりましたような御意見につきましても、一つの提案かとは思います。  しかしながら、現行の財形年金貯蓄は、勤労者が在職中に賃金から控除する方法により事業主を通じて長期計画的に積み立てることを趣旨といたしておるわけでございます。退職金の預け入れを認めることは、年金原資の大部分を最終回の積み立てによって賄うような積み立て方も可能となるなど制度本来の趣旨とは相入れない、そういう面があるわけでございます。また、退職金については既に税制上特別の優遇措置が講じられておりますので、さらに重ねて税制上の優遇措置をとるのも一つの問題ではないかという指摘もあるわけでございます。  したがいまして、直ちに退職金から財形年金貯蓄への預入をすることを認めることは現状困難であると考えておりますけれども財形年金制度と退職金制度との関連につきましてはこれからもさらに慎重に検討してまいりたいと考えております。
  25. 浜本万三

    浜本万三君 次は、財形住宅貯蓄の契約時の要件の一つといたしまして、年齢が五十五歳未満であることとされております。また、財形年金貯蓄の契約時の要件としても五十五歳未満であるというふうにされておるわけでございます。しかし、最近の定年延長の実態を見ますと、相当定年延長が実現しておるようでございます。労働省の資料を見ましても、六十歳以上に定年延長したいという希望を持っておる企業が既に七五%近くあるわけでございます。  したがいまして、この利用年齢制限を緩和したらどうかということを私は考えております。できれば、高齢化社会の進展の中で六十五歳までの雇用確保が将来要請されておるわけでございますから、年齢の延長につきましてひとつ検討をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  26. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 財形貯蓄等につきまして五十五歳未満の勤労者に限って開始できるということにしております理由は、一つには、勤労者が長期計画的に資産形成を図るという本来の趣旨と、これにかんがみまして少なくとも三年から五年程度の積立期間が必要になるのではないかということあるいは六十歳定年制が社会通念化しつつある現状のもとで長期計画的な積み立てを可能とするためには遅くとも五十四歳以前に貯蓄を開始する必要があるということの観点からこのような要件が定められておるわけでございますが、今お話しのように、定年制につきましても着実に進展はしてきておりますけれども現状を見ますると六十歳を含む六十歳以下の定年制がいまだ大勢を占めている状況でございまして、今直ちにこの制度の見直しを図ることは難しいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、今後の高齢化に対応いたしまして就業の状況が変わってくることあるいは定年の延長等が今後着実に進展していくなどによりまして高齢者の就業状況は変わっていくとしますれば、このような要件等についての見直しについても検討していく余地があるのではないかというふうに考えております。
  27. 浜本万三

    浜本万三君 次は、財形制度を採用しておる企業ですが、これは大企業中小企業相当格差があるんではないかと思います。  財形制度企業規模別採用状況について説明してもらいたいと思います。
  28. 坂本哲也

    説明員坂本哲也君) ただいま御指摘ございましたように、財形制度企業規模別の状況を見てみますと、私ども実施いたしました労働者福祉制度調査というのがございますが、これによりますと、例えば五千人以上の企業規模のところでは導入率が八五%、それから千人から五千人未満企業で見ますと八四%と高くなっているわけでございますが、だんだん企業規模が小さくなるに従いましてその割合が低下をいたしておりまして、三十人から百人未満規模企業ではこれが五七・四%という状況になっております。
  29. 浜本万三

    浜本万三君 次の質問をいたしますが、財形助成金財形基金設立奨励金支給状況はどのようになっておるかということです。  また、五十八年以降年々支給件数が減少しておるような資料を拝見しておりますが、その原因あるいは背景などについて説明をいただきたいと思います。
  30. 坂本哲也

    説明員坂本哲也君) 財形助成金制度と申しま ておるのか、また実現ができるのかできないのか、また実現するとすればどういう問題点があるのか、それらの点につきましてお話を伺いたいと思います。
  31. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 御指摘のように、昨年九月財形法を可決していただきましたときに附帯決議にもございますので、住宅生協等に対しまして財形制度で宅地造成資金融資することができるかどうかにつきまして現在鋭意検討を進めているところでございます。  しかしながら、宅地造成資金融資を新たに起こすことにつきましてはいろいろ問題がございます。  一つは、財形持ち家融資制度勤労者持ち家取得を促進するということを目的にいたしておりますので、住宅建設と一体として行わない宅地造成のみを対象とすることがこのような目的に沿うものかどうかということ。それから二番目には、最近地価の高騰が非常に大きな政治問題になってきておりますが、このような宅地造成資金融資制度がこれにどのような影響を及ぼすのであろうかということ。それから三番目には、宅地造成が住宅の建設と確実に結びつくような方策を講ずる必要があるのではないかということ。それから四番目には、住宅建設に結びつかない場合の取り扱いをどのように定めていくかという問題があることなどなど、検討しておりますといろんな問題が生じてきているわけでございます。  しかしながら、附帯決議で御指摘を受けた重要な問題でもございますので、さらにこれらの問題につきまして鋭意検討を加えてまいりたいというふうに考えております。
  32. 浜本万三

    浜本万三君 それじゃ具体的にちょっと伺うんですが、宅造資金、つまり宅地造成資金融資の方策といたしまして財形持ち家融資制度では、住宅の建設に際しまして宅地の購入、造成を含めて融資できることになっておるわけでございます。  そこで、事業主が単独または共同で住宅を分譲する場合にその工事住宅生協等に委託をする、そういう形のやり方に対しまして融資を受けることが可能であるかどうか、また若干問題があるとするならばどのような取り扱いをしたらよろしいのか、そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  33. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 財形の分譲制度におきましては、雇用促進事業団が勤労者に分譲する住宅の建設または購入を行う事業主事業主団体、福利厚生会社または日本勤労者住宅協会に対しまして住宅の新築資金、土地取得資金等々を融資することにいたしておりますが、事業主につきましては、単独または共同、いずれの形でもこの融資を受けることができるようになっております。  そこで、事業主が単独または共同でこの融資を受けた場合に、今度は事業主は、それによりまして住宅の建設、土地の購入等をしなければならないわけでございますが、その場合にそういう仕事を他の者に委託することができることにもなっております。  したがいまして、事業主が単独または共同で分譲融資雇用促進事業団から受けまして、それを住宅生協等に住宅の建設等に関して委託をするということは差し支えのないことになっております。
  34. 浜本万三

    浜本万三君 引き続いてお尋ねするんですが、勤住協というのは事業主と考えてよろしいのか。  その事業主である勤住協が事業住宅生協に委託することができることになっておるわけなんでありますが、そういうルートを通じて勤住協から委託を受けた事業住宅生協が行うこと、それに対して融資がつくということに理解してよろしいですか。
  35. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 日本勤労者住宅協会は建設省が認可いたしておりますところの政府特殊法人でございますが、この団体につきましては、財形法事業主団体と同等の扱いにされているところでございます。  したがいまして、財形の分譲融資制度等におきましては、雇用促進事業団がこの協会に土地資金も含めまして住宅建設の資金を貸し付けておるところでございます。勤住協は、それを受けて分譲の事業を行うわけですが、その際には、御指摘のように、住宅生協にその事業を委託するということも許されております。  現実問題といたしましても、日本勤労者住宅協会は各地の住宅生協に委託をしまして分譲事業を進めているところでございます。
  36. 浜本万三

    浜本万三君 そこで最後に、これを要望して検討お願いしたいと思うんでありますが、その場合でも、この財形資金を借りる場合には取得した土地が五年以内ということになっておるわけです。ところが、今多少の規模の宅地造成工事を行う場合には、土地の買収から工事、地籍の整理に至るまでの作業状況を見ますと、そんなにたやすくできるものではありませんので相当期間がかかることは御承知だと思います。  そこで、その五年以内という年限を若干引き延ばす必要があるのではないか、かように思います。その点について要望しておきますので、ひとつ御検討の上、実現方よろしくお願いを申し上げたいと思います。  なお、決意があればお聞かせいただきたいと思います。
  37. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 御指摘のとおり、現在、日本勤労者住宅協会が分譲いたします場合に、そのうちの土地取得資金につきましては借入申込年度の五年前の年度以降に購入した土地につきましても融資をするという特例が設けられているところでございます。したがいまして、この制度によりまして勤住協は五年前から土地を取得しまして分譲住宅を建設することができることになっております。  この五年前からの土地取得に対する融資というのは私どもはかなりの特例ではなかろうかと思っておりますが、御指摘のように土地の取得がなかなか難しいという現状もございますので、先生の御指摘につきましては今後検討をさせていただきたいと考えておる次第でございます。
  38. 浜本万三

    浜本万三君 時間は少し余っているんですが、安衛法の方が非常に大切な法案になっていますから、私は残しまして渡辺議員の方にその時間を譲らしてもらいたいと思います。よろしくお願いします。  終わります。
  39. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 労働安全衛生法の問題について中心的にお尋ねをしていきたいと思います。  まず、今回の改正案は、従来の労安法が職業病的な対策が中心であったのに比べて、安全面とそれから高齢労働者の増加が進む中から健康づくりなんかに力点が置かれておるというふうに私自身受けとめております。  で、多くの点で実は評価できる部分があるわけですが、この目的を達成するために、改正案の中では労働者の自己努力が非常に強調されております。もちろんそのこと自身も必要だというふうに思いますが、今の国内の特に中小・零細企業の経営の実態あるいは労使の現状から見て、労働者の自己努力だけでは効果を上げるのには不十分ではないか。確かに改正案の中でも企業に対して健康の測定問題とそれから運動指導等はなされるようになっておりますけれども、問題は、健康づくりにふさわしい必要な設備とかそれから時間とかそういうものを設定する基本的な環境づくりが必要ではないかというふうに思うわけです。  そういうことから考えまして企業の取り組みとかあるいは努力が大きな役割を果たすことになるわけですが、労働省として指導を含めてどういうふうな御見解を持っておられるか、まず大臣からお聞きをしたいと思うんです。
  40. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働者健康保持増進労働者福祉の基本でございますし、また労働行政の最重点課題の一つと考えておるところでございます。このため、労働者の健康の保持増進のための措置は、大企業のみならず中小企業におきましても同様に実施される必要があるわけであります。  しかし、中小企業における実施能力は大企業に す。  しかしながら、特に財形年金貯蓄につきましては勤労者にとって不可避である老後生活の安定を図るための貯蓄でございますし、年金として払い出しを受けた金銭についての使途は制限はされておりませんけれども、極めて長期にわたりまして貯蓄を行うものでございます。したがいまして、その過程で災害とか御指摘のように疾病等の事由により払い出しを、余儀なくされるということもあり得るわけでございます。したがいまして、その払い出し災害、疾病、その他これらに類するやむを得ない事情により生じたものであるということにつきまして税務署長の確認が受けられましたときには例外的に五年間の遡及課税が行われないということにされているところでございます。  財形年金貯蓄はこういう取り扱いをしておりますが、これに対しまして財形住宅貯蓄住宅取得等を促進するという特定の政策目的の実現を図るために税制優遇措置を講じているものでございまして、財形年金貯蓄とはやや事情を異にしている面がございます。したがいまして、税制上この点につきまして特別の配慮をすることは現状では困難であると考えているような次第でございます。
  41. 浜本万三

    浜本万三君 これはまことに残念な話なんですが、今申しましたような災害、疾病、その他やむを得ない事情で出費を必要とする場合にはたちまちどこか利用できる金を利用するというのが最近の勤労所帯の実態でございますので、なお引き続き御検討をいただきたいと思うわけです。  それから、それにいたしましても前者の年金貯蓄契約の新しい制度に対する周知が不徹底であるように思いますが、その点周知徹底を図るように努力してもらいたいと思いますが、どのようなふうにお考えでございましょうか。
  42. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 御指摘のように、財形年金貯蓄につきましては払い出しの特例がございますが、御指摘のような余り知られてない面もございますので、この払い出し特例も含めまして財形貯蓄等の要件につきましては、金融機関等をも利用いたしまして、国としてあらゆる機会を通じてPRをさらに強化してまいりたいと考えている次第でございます。
  43. 浜本万三

    浜本万三君 これも労働省の方に申し上げるのは甚だ場違いな話になるかわかりませんが、財形の非課税措置の問題なんです。  財形年金住宅貯蓄では、限度額を超えると預入総額を課税預金とすることになっておるわけでございますが、預け入れを継続すれば一挙に総額が課税されることになるわけです。  これを改めまして、限度額を超える部分課税をするというふうにしていただいたらどうか、かように思いますが、いかがでしょうか。
  44. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 財形年金貯蓄につきましては、退職後の生活保障に資するために個人年金制度として在職中から計画的に年金資金を積み立てるということでもございますし、また財形住宅貯蓄住宅取得目的として計画的に頭金等を貯蓄しようとする制度でございます。  したがいまして、現在、これらの貯蓄につきまして五百万円という水準に至るまで蓄積していくことを国として税制上支援するということにしているわけでございまして、非課税限度額を超えるものについては既に所期の目的を達したものということとして他の貯蓄と同様に貯蓄全体から生じる利子に対して課税されることになっているわけでございます。  このような税制上の取り扱いについては、制度目的からしてやむを得ないのじゃないかというふうに考えているところでございます。
  45. 浜本万三

    浜本万三君 さっきも例示をいたしましたように、東京駅を中心にいたしまして二十キロ圏でも五千万円近いお金が要るわけですね。だから、五百万円程度ではこれはどうしてもしようがない金額だと思っておるわけですよ。  そこで、大臣お尋ねするんですが、非課税限度額五百万円について労働省もこれまで引き上げについて努力をされたということを伺っておるわけでございますが、今後さらにその努力を継続してもらいたい、かように思いますが、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  46. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御指摘のように、今どき五百万では何とも時流にそぐわない、何とかして一千万まで上げてほしいというのが私どものかねてからのお願いでございまして、関係当局にも要請をしてまいりました。しかし、残念ながら今日現在では実現をいたしておりません。  これからいわゆる本格的な高齢化社会を迎えることでありますし、その中で老後の安定した生活が送れるように、さらには御指摘のような今の地価の高騰の中で持ち家をするための準備といたしましても五百万ではどうにも歯が立たないということもよくわかるわけで、社会一般のニーズも高まっておるわけでございますから、今後におきましても私どもは辛抱強く粘り強く関係当局と折衝してまいりたい、このように考えております。
  47. 浜本万三

    浜本万三君 大変力強い決意を伺いましたので、実現を期待しておるわけです。  次は、財形制度から勤労者福祉増進制度へとこの制度の衣がえをしたらどうかという気持ちを私は持っておりますので、その点について引き続き大臣に御所見を伺いたいと思っておるわけです。  国民の大多数を占める勤労者福祉対策をもっと充実してもらいたいというのは、かねてからの私どもの希望でございました。したがって、今後は単に勤労者年金持ち家といったことだけでなく、勤労者の生涯生活設計という全体に目を向けた総合的な福祉増進策を展開する必要があるのではないかと思っております。  そこで、これは提案なんでございますが、この際、勤労者財産形成促進制度から勤労者福祉増進制度へと名称を変更して、勤労者の財産形成の促進だけでなく真に総合的な福祉増進の制度へと発展的に政策を進めていくということはできないかということなんでございますが、この点についてひとつぜひ大臣の御見解を伺いたいと思います。
  48. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 財形制度勤労者福祉対策の中では大きな柱でございます。このことにつきましては、かねてから労働省の内部におきましても寄り寄り協議をしておるところでございます。  冒頭お話がありましたように、とにかく貯蓄残高が十二兆円にも上っているんですから、これを何とか別個に活用する道はないだろうか、その中で財形中心とした総合的な福祉対策というものはあり得ないだろうか、こういう面につきましてかねがね考えてはおるわけでございますけれども、実は、この十月に労働省の機構改革をいたしまして労政局の中に勤労者福祉部というものを設けたいというふうに考えております。実はその中で主として財形を含む総合福祉施策の改善方途等につきまして専門的に研究をいたしたいと思っておるわけでございまして、その際御指摘のような点につきまして十分検討を進めてまいりたいと考えております。
  49. 浜本万三

    浜本万三君 特にこの持ち家の問題につきましては、私ども、もう少し政府の方が積極的な対策を講じてもらいたいという気持ちを前々から持っておりました。つまり、家を建てようと思いましても宅地がなくてはこれはどうにもならないわけでございます。しかも、財形の積立金総額が十二兆円もあって使っておるのはわずか四千億程度であるということになりますと、相当金が余っておるわけですね。しかも、三分の一までは使ってよろしいんだという法律もあるわけなんでございますから、これを活用する方法を考えたらどうかというのが前々から私が申し上げている持論なんであります。活用する方法があるのではないか、かように思っております。  それは、先般のこの法律改正のときにも私申し上げたんですが、そのことによって昨年九月には附帯決議がつきました。そこで、住宅生協等に対して宅地造成資金として融資をされるように御検討をいただくことになったわけでございます。これにつきましてはどのように検討をしていただい たいと思うんです。
  50. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 現在、日本の場合には環境測定ということで、個人の測定というものは入れておりません。  これの考え方は、一つは、規制物質のすべてについてそういった個人的な測定の方法、測定技術というものが確立をされていないという問題がございます。  それから、個人的に測定を行うためには、いろいろ時間だとか手間だとか費用だとかというのが非常にかかる。しかも、労働者自身がそういった測定器を八時間携帯したままで作業しなきゃならぬということで、非常に煩わしいといったような問題もございます。それから、その測定の結果の扱い等については、専門家の細心の注意がなければなかなか判定も非常に難しいというような問題もございます。  そういったいろんな点で、個人測定方式といいますかそういったものは採用していないわけでございますけれども、ただ、先生御指摘のように、個人暴露の管理という観点からは個人測定についてのあり方あるいはその測定結果の信頼性、そういった総合的な面をいろいろ考慮いたしまして、今後検討してまいりたいというふうに考えます。
  51. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 これは何も連絡していなかったわけですが、実は、きのう私は文部省を呼んだわけです。きょうの委員会の中でお尋ねする予定にしておりましたので、飛んできましたから話をしました。  この間、環境委員会でも東京大学の体育館の問題を取り上げたわけです。アスベストの問題で工事が中止をしております。ところが、またきのうも連絡がありまして、工学部の第七号館の改築問題で、そこに働いておった労働者が、六日間おりまして、とてもこれでは被曝をして危ないということで逃げて——逃げてと言っちゃ悪いんですけれども、やめて、そして訴えに駆け込んできたという連絡を受けました。また、けさも東京大学の方からそういう連絡を受けたわけですが、労働省が指導しておりますように、例えばアスベストを除去する場合、マスクをはめなさいとかなんとか言っておる。ところが、その話を聞きますとそうでなくて、はめてもいいがはめぬでもいいよと。そしてその取り壊しは、バールを入れてバリバリやって落としておるそうです。密閉しておるでしょう。ですから、その室内はもうもうとなっておる。そういう状況が続いておるということをきのう連絡を受けたものですから、この間も環境委員会で文部省にやっておりましたから、また呼びましてすぐ連絡させました。  そういう点では、個々労働者の暴露の問題、どの程度被曝をしておるのかというのは重要な問題でもありますし、これはまた後の健康管理手帳の問題とも関連をするものですからそこでも申し上げていきたいと思うんですけれども、少なくとも今認定されておる方が四十三名ですか、それ以外に石綿問題で中皮腫といいますか、何か難しい病気で、九名の方が現に侵されておる。労働省もこれを非常に重視しまして、基準局補償課の編さんで出しました「新・業務上疾病の範囲と分類」の三百四十三ページにも出ておりますように、石綿工場で一年間以上従事した労働者の発病率が一般の十一倍にも達しておる、こういう具体的な数字も労働省は出しておるわけですね。  ですから、個々労働者に対する被曝の状況をどうつかんでいくか、これは私は大変重要な問題であろうと思うから、特に今後の検討を強く要請しておきたいと思うんです。  あと、管理手帳の問題等がありますから、そちらに入っていきたいと思うんです。  先般来のこの委員会でも、私は健康管理手帳問題について基準局長を初め、いろいろとお尋ねをしてきたわけですが、今日まで肺がんを含めたたくさんの認定患者が出ておる。この間、私は大牟田の三井東圧化学の工場の問題を取り上げてお話をしたわけですが、それ以外に実は肺がんで亡くなった方がたくさん出ておることはもう既に御承知だと思うんです。  お尋ねをしたいのは、健康管理手帳の交付の目的とは一体何なのか。  私は、発がん物質の製造、取り扱い等の業務に従事をする労働者の健康管理として、まずは予防、そして早期発見、早期治療というのがこの健康管理手帳交付の目的ではないかと思うわけですが、いかかですか。
  52. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今御指摘のとおり、この健康管理手帳は一定の業務に一定期間以上従事したことなどによって特定の重篤な健康障害、例えば職業がん等も含みまして、これらの健康障害を発生するおそれのある労働者に対して、離職後も定期的に健康診断を受診させることによってその障害の早期発見を行うというために交付するものでございまして、予防的な見地からの趣旨が極めて大きいということはお説のとおりでございます。
  53. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そうしますと、今おっしゃったように、長年一定期間勤めておって、潜伏期間が非常に長いものですから退職後に実は発病する方々がたくさん出ておることは現在までの事実が物語っておると思うんです。  それで、今の管理手帳の交付の対象となっております物質は九つだと。そしてじん肺管理は三以上のものとなっておるということで、この間からこの問題についてお尋ねをしてきたわけですが、そのほかにも職業病としてたくさんの認定がされておる。  で、三井の場合の部分を申し上げましたけれども、いわゆるコークスに関係する従業者が千人当たり労災認定が三名で、そしてこれを含めて七名の方々が肺がんで実は亡くなっておるという事実がある。それから、黒鉛電極の製造労働者にも肺がんが多発をしておるということもおわかりだと思うんですけれども昭和電極工場で労災認定が一名、ほかに四名が既に発病しておる。あるいは昭和電工の大町工場では、千名の対象労働者の中で七名が肺がんで二名の方が新たにがんの疑いがあるということで今病院に通われておるという連絡を受けておるわけです。  ここでお尋ねしたいのは、五十二年ですか、五十三年ですか、労働基準法の施行規則の第三十五条が改正をされ、その中の七項の十三で「コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん」というふうになっておりますね。ぜひ私は要請をし、改正をしていただきたいというのは、この三十五条のように、健康管理手帳を交付する業務として製鉄用コークスあるいは製鉄用発生炉の「製鉄」を外すかあるいは「化学」を挿入するかということの検討ができないかどうか。こんなにたくさん肺がんで亡くなった方もおりますし、現におたくの方で認定された患者もたくさんおるわけです。これは長年コークス現場で働く労働者労働省に対して要求し続けておる問題でありますし、かなりの退職者がおられるものですから、ぜひひとつ御検討願いたいと思うんです。
  54. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今お話しのように、施行規則三十五条の中に「コークス又は発生炉ガスを製造する工程における業務による肺がん」ということで職業性疾病ということで認めておりますし、お話しのように大牟田におきます発症事例等もあることも承知いたしております。  したがいまして、先般来のお尋ねように、この交付の対象業務としていく必要があるかどうかにつきましては、その業務に従事した期間と発がんとの関係等につきまして専門家の委員会等を設置いたしましてここで検討をさせていただきたい、かように考えております。
  55. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 私よりも局長の方が専門職で詳しいと思いますから余計に申し上げませんけれども、製鉄用のコークスと何が違うかといった場合に、例えば温度の問題で千三百度以上と百度違いの千二百度以下、その百度だけの違いによっていわゆる健康管理手帳の交付の対象の業種になるのかならぬのかという問題ですから、これは大臣、ぜひひとつ頭に入れて御検討願いたいとお願いをしておきたいと思います。  それからいま一つは、先ほど若干触れましたけ れども、アスベストの取り扱いです。これも一定期間従事をしておった場合には、先ほどから言いますようにたくさんの患者も出ておる。そうすれば当然健康管理手帳の交付の対象業務になるんじゃないかという気がしますが、いかがでしょう。
  56. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) アスベストにつきましては、発がん性が認められてはおりますけれども、業務に従事した期間と健康障害の発生との蓋然性との関係が必ずしもまだ明確でないということでもございますので、今後関連する知見の集積に努めまして、その上でアスベストを一定期間反復継続して取り扱っている労働者で離職した人たちに対してこの手帳交付業務に加える必要があるかどうかにつきまして、先ほど申し上げましたように、専門家による委員会において検討させていただきたいと考えております。
  57. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 これもさっきちょっと触れましたけれども、もちろん船にもよりますけれども、特に港湾労働者でこういう資材関係を輸入しておるのに常に使われておる船に従事する労働者の場合はかなり長期間取り扱いをやっておるわけですから、ぜひひとつここらは追跡調査でもしながら御検討願いたいとお願いをしておきたいと思います。  それから、有害物質関係の表示の問題についてお尋ねしたいと思うんですが、労働安全衛生法の五十七条で特別管理物質すべてに成分並びに有害性などの表示が義務づけられていますが、有害性の表示については既に発生が医学的に知見として確立をしておるというふうな部分について病名まで含めて表示をすべきではないかというふうに思うわけですが、このことについていかがでしょう。
  58. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) この有害物の表示制度につきましては、取り扱う物質成分、その有害性、またこれを取り扱う上での注意すべき点につきまして事前に承知していなかったというようなことによって職業性疾病が発生するということのないようにすることを目的といたしまして、必要な情報を当該物質の製造、輸入業者から取り扱う事業者に伝達するということを目的としているわけでございますが、そういった観点から物質の組成あるいは人体に及ぼす影響、取り扱い上の注意等を表示させるということでございます。  同時に、労働者に対しましても有害性の知識を持っていただくという観点から、安全衛生法に基づきまして、雇い入れる際あるいは作業の変更を行った際の教育を行うこと、あるいは作業上の見やすい場所に人体に与える影響あるいは取り扱い上の注意等についての掲示をすることについても義務づけているところでございまして、これらによりまして疾病からの防止についての徹底を図っているというのが現状でございますし、さらに表示制度のあり方につきましても、今後検討を行いながら労働者の健康を確保するために必要な表示制度として運用してまいりたいと考えているところでございます。
  59. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 表示の問題について今後検討されるということですから、ILOのがん条約の第四条でも示されておりますように、労働者への情報提供の義務という観点からも、私は、知見として出ておる病名については、この物質の中には発がん性物質のおそれがありますよというふうなことを表示をして、労働者自身も警戒をするしあるいは予防もしていく、また労働者の自覚を高めるためにも必要ではないかという気がするわけです。  さっきちょっと触れましたけれども、東大の工学部の第七号館の問題だって、その労働者の本人の方が言いますのに、全くそういうことは教えていないと言うんです。そして、マスクをはめなくてもいいはめてもいいという程度だと言うんです。文部省に聞きますと、いや文部省の方はかなり指導をしておるというわけです。ところが、仕事をしておるのは業者の方でしょう。業者の方に指導が徹底して行き届かないものですから労働者にまでおりないわけです。  そういう点から見れば、私は、表示をして、一目見た場合に、この仕事についてはこれは発がん物質があるから予防しなきゃいけないということを労働者そのものが自覚できるようにする、それがやっぱり保護の立場上必要ではないか。ぜひひとつそこらの表示のあり方については御検討願いたいと思います。  もう一度お聞かせ願いたいと思います。
  60. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) これらの有害物質の労働者の危険を防止するという観点から、事業主に対する安全衛生上の諸措置の完全実施、履行についての指導を行いますと同時に、表示制度と両々相まって有害物質からの予防等につきまして万全を期してまいりたいと考えております。
  61. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 ぜひひとつお願いしておきます。  次に、さっきもちょっと触れましたが、環境測定問題でいろいろ出ております。さっきもお話がありましたが、簡易測定器というのは検知管を含めてというふうに受けとっていいかどうか。検知管そのものは測定器に入っておるかどうかということをまずお聞きをしたいと思います。
  62. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 簡易測定器の中に検知管は含めて考えております。
  63. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そうしますと、検知管を使用する場合の問題点について、たくさんの学者の意見等も出ておりますが、ここらについては御承知でしょうか。
  64. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 今いろいろ問題になっております、我々が簡易測定法として認めようとしております簡易測定機器でございますが、これについては、近年非常に性能が向上しておりますので、先ほど申しました第一管理区分、これは一番濃度の低い部分でございますが、その管理区分にあるかどうかということの測定は十分我々としては可能だというふうには考えております。  検知管そのものを採用するかどうかについては、専門家による検討委員会の中で物質ごとにその使用範囲だとかあるいは精度とかそういったものについて検討を行うつもりにしておりますので、その中で検討してもらいたい、かように考えております。
  65. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 その物質ごとにひとつぜひ検討していただきたいと思うんですけれども、御承知だと思うんですが、物質によっては干渉物質の影響で妨害をされたりあるいは測定に誤差が出てきたりということがたくさんの学者からも出されております。例えば、シアン化水素用の探知管なんかは、シアン化水素はもちろん反応するそうですけれども、他のガスとか硫化水素についても反応していくというようなことで、精度そのものにも問題があるんじゃないかという指摘等もありますから、そこら検討段階で十分ひとつ御論議をしていただきたいというふうに思っております。  それから、検知管そのものの測定で、なかなか正確な測定ができないんじゃないかということがたくさんの皆さんから実は心配として出されておるわけです。  今環境測定なんかで言われておりますように、個人サンプラー方式と今やっておる環境測定部分とを併用しなければ本当の測定値は出ないんじゃないかということが以前から言われておりまして、これもたくさんの考え方が出されておるわけです。例えば五十二年度の災害科学委託研究の報告書ですか、粉じん作業の有害性に関する評価研究ということで北海道の北里大学の高田教授の発表した部分とかあるいは労働省の関係されております早稲田の荻原義一教授の出しております五十九年度のじん肺審議会粉じん作業部会による港湾荷役に関する作業環境調査の問題とか、こういう部分についてたくさんの報告が出されておりまして、環境調査についても個人のサンプラー方式を採用して併用してやったらどうか。今労働省が考えておりますその調査も必要です。必要ですが、この個人サンプラーも併用してやっていかなければ本当の測定値が出ないんじゃないか。  例えば、五十四年の鉱山における坑内作業に関する環境調査結果ですかの中で、個人暴露濃度の測定のところで、坑内作業者のうちでも電車または自動車運転員、いわゆる動いて回るこういう方たちについては行動範囲が広くて一カ所だけのあ るいは数カ所だけの測定ではなかなかできないんじゃないか、だからそこらはこの個人のサンプラーを併用して測定をすべきじゃないかということも出されておるわけです。これは今まで労働省といろいろ協議もされてきたようですけれども、ぜひこれをひとつ併用する方向で御検討願いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  66. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 先ほどもちょっと御説明をいたしましたが、現在のところでは個人測定方式はとらずに環境測定をやるということにしているわけでございます。  それは、個人測定については先ほど申し上げましたように非常に労働者にとって煩わしい、顔の側面にそういう物質を吸着させるものを持ってしかも腰にはそのための電池を備えてというような形で常時作業をしなきゃならぬというようなことで非常に煩わしいというようなこともあってやっておりませんが、先ほども申し上げましたように、個人暴露の管理という点から今御指摘のような点も踏まえまして検討してまいりたいというふうに考えております。
  67. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 毎日のことでなくて年に一回か二回のあれですから、ぜひひとつそこらお願いをしておきたいと思うんです。  それじゃ次に、消防庁見えておりますかね。——実はきのう資料要求をしておきましたけれども私の手元に来ていないものですからちょっとあれですが、私がきょう消防問題を取り上げたというのは、特に労働省の方にもお願いをしたいわけですけれども、いわゆる公的現場の自治体の直営部分とかあるいは一部事務組合とかあるいは消防の現場とかで実は非常にたくさんの労働災害が発生をしておるということで消防庁の方にきのうお願いをしておったわけです。全国の消防署で安全管理者の選任状況がどうなっておるのかあるいは安全衛生委員会の設置状況がどうなっておるのか、この資料をひとついただけないでしょうかと。しかし、ちょっと遅かったから間に合わなかったかと思うんですが、わかればひとつお教え願いたいと思うんです。
  68. 川崎正信

    説明員(川崎正信君) 消防につきましては、労働安全衛生法の規定します安全管理者、安全委員会の設置というのは義務づけられた規定はございませんけれども、消防庁といたしまして各消防本部において消防業務の実態に即しまして安全管理体制を整備するようにと強く指導しておるところでございまして、既に昭和五十八年の七月段階課長通知名をもちまして、消防における安全管理規程及び訓練時の安全管理要綱並びに訓練時安全管理マニュアル、さらには警防活動時の安全管理マニュアル、こういったものを示しましておるところでございまして、六十二年十月現在で九二・七%の消防機関におきまして私どもが示しました安全管理規程を定め、その体制をとっておるところでございます。  それから、衛生管理につきましては、労働安全衛生法の規定によります五十人以上の労働者の使用事業所ということで、衛生管理者の選任は既に九〇%の消防機関で行ってございます。また、衛生委員八七・八%、産業医八五・〇%という選任の状況でございます。  また、このほかに五十人未満の消防機関におきましても、私どもの通知で衛生担当の責任者を置くということ、それから私どもが示してございます衛生管理規程というものを定めるよう指導いたして、各機関において規程の整備等を図っておるところでございます。
  69. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 たくさん安全管理者も衛生委員会も設置をされておる、だったらどうしてこんなに事故がたくさん出るだろうかというのが実は不思議でならないわけですね。  自治省からいただいた資料ですけれども、全体の公務災害が通勤災害を含めてですけれども年間大体三万四、五千件認定をされておるわけですね。ところが、千人当たりの災害状況を見てみますと、一番多いのが清掃事業現場で千人当たり六十一・七人です。それから、警察がその次で二十五・九人。警察の場合は訓練時の事故が非常に多いわけです。そして消防が十七人です。消防もかなり訓練の事故が多いわけです。ですから、今消防庁がおっしゃったように、そんなにたくさん安全管理者もできておるし衛生委員会的なものもできておるという状況がありながら、何でこういう状態が続くのか。  私ども調査では、衛生委員会の設置状況を見てみますと、町村関係では三三・一%です。それから、市区関係で五四・一%、都道府県関係では四三%。これが衛生委員会の設置の状況だというのが私ども調査の結果では出ておるわけです。それから見れば、今消防庁がおっしゃったような数字は倍以上の設置状況が出ておる。そういう点から見れば災害も非常に少なくて済むような気がしますが、さっきから言いますようにどうしても災害の件数が多過ぎる。  ここに私は一つの資料を持ってきたわけです。何も消防庁を責めるわけで言っておるわけじゃなくて、ぜひひとつ大臣にもお聞きをいただきたいんですが、いわゆる民間現場の部分労働省頑張っていただいて労働者の安全を守るためにいろいろ法律をつくりますが、公的現場が守られていないということを言いたいがためにきょう消防庁にわざわざ来てもらって、事例を話しているわけです。  実は、自治省が四十七年の七月六日に自治給第二十六号で地方公務員災害補償法四十六条の説明を出したわけです。これは、消防の方たちが危険に挑戦するのは職責上当然という考え方が前提になっておりまして、だから消防士というのは警察官と同じように自分の命はなげうってでもやらなきゃいけない、それが本務だと非常に強調されておるわけです。そのために公務災害で五〇%の割り増しを補償費として認めておる、こういう説明の内容になっておるわけです。しかし、どのような職責があるにしろ、使用者側には職員に対する安全配慮義務も当然ありますしあるいは安全衛生法を守る公法上の義務もあると思うんです。ところが、さっき言いましたように、四十七年のこういう感覚があるものだから実は次のような問題が起きてきたんではないかという気がするわけですね。  ここに資料がありますが、消防庁にお聞きをしますが、民間の消防通信社というのを御存じでしょうか。
  70. 川崎正信

    説明員(川崎正信君) はい、存じております。
  71. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 この消防通信社が出しております、ここに私一枚コピーをして持ってまいりましたが、これが「はしご車等安全基準 全国の消防で基準として使用」という大きい見出しで出されておるわけです。  宮崎で訓練中の事故がありまして、それで使用者責任、いわゆる安全面の対策が落ちておったという非常に厳しい指摘の裁判の判決が出たわけです。これは確定をしました。そういう事故が起きて議論をされているころ、院内でも地方行政委員会ではかなり議論をされてきたわけです。  そういう中で、全国の消防長会の方が何とかひとつ安全対策をやろうじゃないかということで、最初は昭和四十八年の五月一日に消防長会議で「はしご付消防自動車のはしごに係わる保安基準について」というのが議論になりました。そして、それから何回か議論を重ねていく中で、四十九年六月五日に会長名で消防庁の長官あてに「はしご自動車等特殊車両整備技術の習得に関する教養課程(はしご自動車等特殊車両の整備要領)の新設について」という文書で要望した。これが最初なんです。その後何回も会議をし、消防庁も一緒にこの会議に参加をしておる。その中で、一体どうなっておるかという質問もされておるわけです。ところが、消防庁の方はこれに対してついに出さないものですから、その中で五十九年の四月に小樽で操作中にはしごが折れて消防士が亡くなった、こういう事故が再発をしたものですから消防長会議の方では自分たちで議論をしてそして「はしご車等の安全基準の制定と安全管理の徹底について積極的に取り組んでいく」、こういう申し合わせを全国の消防長会議でやったという経過がず っと出されておるわけです。  ですから、先ほど私が申し上げました公務災害との関係部分で、消防職員というのは自分の命をなげうってでもやれ、それが本務だというその感覚が消防庁にあるものですから、だからこういうことで十年間ほったらかしてきたのではないか。その中で事故がたくさん起きてきたんではないか。だから、全国消防長会の方では消防庁にお願いしてもなかなか出てこぬものですから自分たちでこういうものを決めていったんではないか。  ここで実は大変問題のある発言があるわけです。ここで消防庁の考え方も述べられた、一番最後です。「国で安全基準を定めるとなると、」、これは消防庁が言った言葉です。「性能検査とか、操作員の資格の問題、定期整備の問題等各分野において専門的、技術的に慎重な検討をしていくこととなろう。」、これが十年経過した後、消防長のその会議の中で出た消防庁の回答になっておるわけです。その中である委員から「十年に及ぶこの問題。いい加減に結論を出しては」という発言が飛び出したというふうに書いてあるわけです。消防の職員ですから労働組合はありません。しかし、労働組合を持っておる関係の部門であったら、これは大変な発言なんです。人の安全問題について消防庁にお願いをして、そして議論をしてきて十年経過をした。なおかつ結論が出ていない。消防庁に対する腹いせがあったかもしれませんけれども、もう大概で「いい加減に結論を出しては。」そういうふうに労働者の生命を安く見ておるのかという問題があるわけです。  その後、消防庁の方は安全基準については六十二年の五月ですか出したようですけれども、これだって何もはしご車そのものについての安全基準ということでなくて、いわゆる補助金を支出するためのその条件として、これこれの条件を整理をしなさいということになっておるわけでしょう。そうしますと、私も県に長年おったわけですけれども、そういうことを申請するのは財政当局ですよ。消防の方ではしませんよ。そうすると、消防の方ではしご車についてこれこれこれという、いわゆる補助金を中央からもらうのに条件がついておるということについては、消防署の職員そのものは余り知らないんじゃないですか。市町村消防施設等整備費補助金交付要綱の中にあるわけでしょう。  ですから、大臣、私が申し上げるのは、人の命、安全というのを確かに人事委員会規則なんかで幾らかやっているところもあります、さっきもおっしゃったけれども。しかし、人事委員会というのは、もう御承知のとおり、この間も申し上げましたけれども一般の事務職ですよ。医療の経験者がおるわけでなし、機械に詳しい人がおるわけでなし。ですから、労働省が出しておりますそういう安全基準なんかを中心に人事委員会規則をつくっていくと思うんです。  そういう点から見て、こんなに事故率が高くて、おたくに入ってくるのは恐らくどうも私は一割だろうと思うんですよ。    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕 大概、共済の保険証を持っておりますからちょっとしたけがぐらいだったら公傷の申請はしませんよ、保険証を持って医者に行きますからね。それにしても余りに事故の件数が多過ぎるじゃないか。  ですから、さっきから言いましたように、私は、責める立場で言っているわけじゃありませんが、ブロックごとで消防の安全対策、特にはしご車の安全対策についてはやっていただかなければ、前は四階建てぐらいのはしごでよかったわけですが、今はどんどん高層ビルが建ち並んできたものですから、もう七階、十階建てのはしごが必要になってきたわけですよ。  そういう点から見て、安全面の教育をぜひひとつ徹底していただきたいと思うんですが、御見解を。
  72. 川崎正信

    説明員(川崎正信君) はしご車の安全基準は、従前よりはしご車の基準を定めてございます消防施設等整備費補助金の交付要綱という形で改正してございます。  これは、御指摘のように補助金の要綱ではないかということもございますけれども、自治体の消防機関が車両を購入いたします場合はすべて補助金を受けて購入してございまして、しかもこの補助金の交付を受けた車両につきましては公の機関でございます日本消防検定協会が技術的な鑑定を行ったものということでございますので、現在使われておりますものはすべてこの鑑定を通ったものばかりでございます。そういう点でそれ以外の車両が使われることはないと考えてございます。  この安全基準並びに私ども検討いたしました結果、現在の車両の運用のやり方等をすべて踏まえました特別教育を既に六十一年度から実施いたしてございます。これは、それぞれの都道府県の消防学校におきまして、各消防機関の責任者、それからはしご車の関係の隊員を対象として行ってございます。こういった特別の教育課程も既に実施いたしておるところでございますので、今後はしご車につきましてはやはり専門的な習熟をしていただくという観点から消防学校における特別教育という形で万全を期してまいりたいというふうに考えてございます。  あわせまして、このような安全の全般の問題につきましては、既に全国消防長会の消防長の研修会、これは毎年全国の消防長を対象に行ってございますが、並びに担当者会議を開催いたしまして、すべて安全の重要性につきまして特に体制の整備、それからその運用の徹底を図るよう強く指導しておるところでございまして、引き続き私どもとして安全確保のために指導を強化してまいりたいと、かように考えてございます。
  73. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 確かに、消防学校で教育をする、そういう部分についてはぜひひとつ必要だと思うんですが、この間もちょっと私は言いましたけれども、それじゃ、大学を出て法学部を出ておれば皆弁護士なり裁判官の司法資格を持つのかと。消防学校に行ったからもうそれで修得をしたからはしご車を扱えるんだと、こういうことでなくて、それならそれとして一つの免許取得の問題にまで発展しなければ、そのくらい厳しい条件をつけなければ事故の防止にはつながらないんじゃないかという気がしてならないわけです。  ですから、この間のさっき申し上げました小樽の問題だって、最初は本人の責任によって起きたんだというふうに言っておったわけでしょう。いろいろ点検したところがやっぱりはしごそのものに不備があった、構造そのものに不備があった。これは後からわかったわけですよね。ですから、調査団を入れずにそのままにしておった場合には、そのまま、本人の不注意による事故死になっておるわけですよ。調査を入れて点検した結果、はしごそのものに不備があったということがわかったわけですから。  そういう点では、確かに消防協会の方で機種についての安全度についてはいろいろ見られておると思うんですが、要は、現場の皆さん方、消防士の皆さん方からの意見が余り反映されていないということですよね。これは御存じだと思うんですけれども、警察以上に今命令系統でしょう。末端の職員からの意見はなかなか上がらないわけですよ。たとえ二十人であろうと三十人でありましょうと火災現場に行って帰ってくる。ところが、ふろにはいれないままに帰る人もおるんですよ。衛生面から見れば必ずふろに入れなきゃいけないわけですよ。ところが、やっぱり上司から入っていくものですから、もう後の方はふろにもはいれないままにそのまま帰っていったり、あるいは二十四時間勤務をするとか。  ですから、私、特に消防庁にお願いをしておきたいのは、私の方が詳しいわけですから、消防職場ほど現場現場によって条件が違うわけですよ。何が噴き出すかわからないわけですからね。どういう化学物質が出てくるかわからない、あるいは十階建てのビルの火災なのかわからないし平家の火災かわからないし、あるいは山火事か、大洪水か、いろいろ条件によって違うわけですから、そういう面では他にない安全面の教育をぜひひとつ 徹底していただきたい。くどいようですが、この部分をひとつお願いしておきたいと思うんです。いいですかね。——それじゃ、消防庁終わります。  それじゃ次に、労働省の方にまた返りますが、今消防庁といろいろやりとりしたわけです。例えば清掃現場というのは労働省の管轄ですね。ところが、先ほど申し上げましたように消防以上に清掃現場の場合は事故が多いんですよ。千人当たり六十一・七人です。  これは、この間も私は申し上げましたが、一つは、基準監督官が少ないというのが一番大きな原因だと。民間の事業所の点検が五%ぐらいしかできていないわけですから、それがやっぱり一つの大きな原因じゃないかというのが一つ。  いま一つは、これは、お互いに公務員同士だと監督官を含めてあそこは公的な職場だからまさかそういう欠陥はないだろうと。消防は管轄じゃありませんけれども、給食現場にしてもあるいは清掃現場にしても。火葬場だってそうですよね。直営の火葬場があります。焼くところだけは直営ですけれども、あとの部分は全部下請になって民間労働者が入っておるものですから、なかなか監督官も入っていけないという状況がある。  そういう点について検討されたことがありますか、いわゆる清掃現場の問題について。
  74. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 清掃の問題につきましては、例えば清掃車に巻き込まれたとかあるいはごみを集積している場所における酸欠の問題、硫化水素の問題等がございまして大変事故が多いということで我々も心を痛めておりまして、過去にも実は清掃における安全衛生管理要綱というようなものを五十七年につくっておりまして、我々としても重点的な対象業務として監督指導対象にしているところでございます。
  75. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 一つの問題として、例えば五十人以上の問題あるいは五十人以下の問題ということで安全管理者の問題あるいは衛生委員会の問題等がありますけれども、清掃現場の場合だって公務員だけであれば例えば三十人ぐらいしかおらない。ところが、一つの清掃の方のごみの処理場に行きますと、この区域は直営でやっている、この区域は一部事務組合でやる、この区域は民間の下請でやっていただく、しかし工場に集中するのは全部一緒になるわけです。そうしますと、百人か百五十人の労働者がおるわけです。ところが、公務員だけであれば三十人だもんだから、例えば安全管理者の選任の義務がないとか、そういう義務がないことはない、全体的に見ればあるわけですけれどもそこらは民間の労働者と一緒にしての設置なんかなかなか難しさがあるものですから。  そこで、ちょっとお尋ねをしたいわけですが、学校の給食調理場が、自校方式といいまして各小学校単位とかあるいは中学校単位にやっておる部分については、今、各自治体の教育委員会は全部まとめて一つの事業所だというふうに言っておりますけれども、例えば給食センターというのがあります、これは民間ですよ。    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕 教育委員会が公社におろして公社からセンターにおろしておりますが、そこなんかは五十人も八十人もおるわけですね。これがセンターの職員もおりますし、公社の職員もおりますし、市の職員もおるというようなことになっておりますけれども、これは文部省ですから労働省の管轄じゃないと思うんです。しかし、働いておる大部分は民間労働者ですから、五十人以上ということで一つのセンター単位に事業所として取り扱いをしていった方がいいと思うんですが、そこらについてどうでしょう。
  76. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 学校給食の問題につきましては、従来は、先生御指摘のように、各学校にはせいぜい二、三人しか職員がいなかったものですから教育委員会単位でやっておったんでございますが、今、御指摘のように給食センターのような大規模なものがかなり出てきております。  それにつきましては、既に、センターそのものを独立した事業所という形でとらえていろんな適用あるいは監督指導に努めているところでございます。
  77. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 行政改革の中から非常にそこらが識別が難しくなってきまして、今申し上げましたようにセンターの職員というのは、福岡市の場合で言えば何万食かつくっておるわけですね。そこの職員というのは日給月給なんです。歩合給なんです。ところが、それにプラスの公社職員は、同じ仕事をしておりますけれども月給制なんです、市の職員と一緒だと。それで事務部分の方は教育委員会から出向してきてやっておる。ですから、一つの施設、建物の中に民間労働者、公社の職員、そして市の職員とそういうふうに混在しておるものですから、なかなかつかみにくさがあるわけです。私らは、あくまで労働基準法適用の職場だというふうに言いますけれども、今おっしゃったように教育委員会の配下だ、だからそれは人事委員会の関係だというようなことでずっと今まで逃げられてきたわけです。  ですから、そこらは一つ一つ、五十人以上おれば一つの事業所という単位にして、そして安全面についての基準監督官の監視も受けていくといいますか、そういうふうなことでぜひ指導していただきたいと思うのですけれども、もう一回ひとつお聞きしたい。
  78. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 学校給食事業につきましても、実は先ほど申し上げました衛生清掃関係と同じように既に四十八年に安全衛生管理要綱というのをつくっておりまして、重点的な対象にいたしております。  今御指摘のように、自治体と民間業者が混在して作業をするというような形態もございますので、安全管理体制をとらせ、それぞれの連携を十分に図らせるように努めているところでございますが、自治省とも連絡をとりましてさらに安全衛生管理面の徹底に努めてまいりたいと思います。
  79. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 大体あれですが、大臣にひとつぜひお願いをしておきたいと思うんですけれども、今申し上げましたように、各省庁間に係る問題の公的現場、これは国家公務員の現場もありますよ、何も地方公務員だけじゃなくて。そういう現場で、さっきから申し上げましたように、例えば労働基準法を守らなきゃいけない職場も守られていない、あるいは労働基準法に基づいて人事委員会規則で定めなきゃいけない、確かに法文上は定まっておりますけれども、それが実行されていないとかというような状況のところが多いものですから、さっきから申し上げますように一年間三万四、五千件の公務災害の認定者が出るわけですよ。  そこらは、ひとつぜひ大臣中心になっていただいて各省と連携をとって、そして公務員も労働者に間違いはないわけですから、公務災害を減らしていくためにもぜひひとつ大臣の御指導お願いしたいと思うんですが。
  80. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほど来、先生の消防関係の事故等に関しましての御意見等十分拝聴いたしました。  上で考えていることと下の勤労者労働者の皆さんの意識に大分ずれがあるなというのも一つの実感でございますし、同時にまた、関係省庁の中でより以上緊密な連携をとりながらその実が上がるようにしなきゃいけないことが重要だなという認識を新たにいたしたわけでございまして、ただいま安全衛生部長からお答えしたように、これからも関係省庁間で緊密なより以上の綿密な連携をとって、効果の上がるように取り組んでまいりたいと考えます。
  81. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 終わります。
  82. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十分まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ─────・─────    午後一時二十分開会
  83. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、上田耕一郎君が委員辞任され、その補 欠として内藤功君が選任されました。     ─────────────
  84. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 午前に引き続き、労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案並び労働問題に関する調査を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  85. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 私は、労働安全衛生法改正案について若干お尋ねをしたいと思います。  まず最初に、御承知のように、二十一世紀になりますと本格的な高齢化社会を迎えるわけですが、二十一世紀までは残すところ十三年足らずとなってしまったわけです。今、そういう時期を迎えて、職場、地域を問わず、国民の健康づくりについての関心が非常に高まっておる際ですから、私は、今回のこの法律の改正は大変時宜に適したものと考えております。  まず最初に、職場における健康保持増進対策の基本的考え方といいますか、そのことをお伺いいたしたいと思います。
  86. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御承知のように、高年齢労働者は、若年労働者に比べまして労働災害の発生率が高いわけでございます。また、休業日数も長期化する傾向にありまして、さらにはまた高血圧性疾患、虚血性心疾患などの有病率も高いわけでございます。  さらにME機器等の導入による労働者のストレス問題、ストレスによる職場不適応の発生やストレス関連疾病の発症の例も見られ、労働者の心の健康問題が重要な課題となっております。  このような状況にかんがみまして、労働者の健康を確保するための措置を、これまでの単に健康障害を防止するという観点からさらに進んで心身両面にわたる積極的な健康の保持増進を目指したものに充実することが必要でございます。  以上のようなことから、このたび、事業者に対し、現行の規定に加えまして労働者の健康の保持増進を図るために必要な措置を講ずる努力義務を設けるようにしたものであります。これが基本的な考え方でございます。
  87. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 昭和六十一年六月閣議決定を見ました「長寿社会対策大綱」がありますが、その中で「個人が生涯にわたりその能力や創造性を発揮できるよう、高齢者の就業・社会参加等の活動を促進」するとあります。  今回の改正案の事業者に義務づけてある健康保持増進措置の具体的内容、これはどうなっていますか。
  88. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今回の改正で考えております事業者の行うべき措置といたしまして、通常に勤務いたしております労働者に対する健康度測定結果に基づきまして運動指導あるいはメンタルヘルスケア、さらには健康相談等を中心といたしまして事業主に継続的かつ計画的に進めてもらうというのが内容でございます。
  89. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 それから、具体的なことですが、法案の中に「事業場における健康教育等に関する指導員」とありますが、これは健康の保持増進を図るのに必要な資質を有する者ということだろうと思うんですが、具体的にはどういう方を考えておられるんですか。
  90. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 事業場内の健康保持増進対策のいわばチームを構成しております医師、歯科医師、職場運動指導者、心理相談等を考えているところでございます。
  91. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 それから、この法案の中身で、労働大臣は、健康の保持増進のための措置に関して、その「適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表する」とありますが、労働大臣の定める指針の内容というのはどういうものですか。
  92. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 事業場におきまして労働者の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるためには、その具体的な手法がそれぞれの職場で確立している必要があるわけでございます。しかし、現実にこのような手法、方法等については十分普及していないというのが現状でございます。  したがいまして、今般の法律改正におきましては、労働大臣は、事業者が講ずるべき健康の保持増進のための措置に関しまして、それが適切かつ有効に実施されるような指針を公表いたしまして、これらの措置の具体的な手法を示すということと同時に、この指針に基づきまして事業者あるいはその団体に対して必要な指導を行うことができることとしているわけでございまして、この指針はいわばトータルヘルスの観点に立って作成することといたしておりますので、メンタルヘルスあるいは口腔保健等も当然この中に含まれるものでございます。
  93. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 それでは、まだ時間はありますがこれで終わりたいと思いますが、最後に、要望を兼ねまして大臣にお伺いいたしたいと思います。  健康な生活を送るというのはすべての国民にとって当然重要な問題でございます。このたびの法律改正は、健康の保持増進対策をすべての労働者に推進し、健康な労働生活をより長く過ごすことを目的とするわけでございますが、これには労働省の格段の努力が必要だろうと思っておりますので、この点を格別に御努力を要望いたしたいと思います。  これについての大臣の御所見を承って私の質問を終わりたいと思います。
  94. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 我が国社会が本格的な高齢化社会を迎える中で、高年齢期になっても労働者が健康でその職務を遂行することができるように、若いときから労働者の健康づくりを進めることが重要でございます。  健康が長い間の積み重ねによってつくられるものであることから、労働者の健康の保持増進を図るための措置を継続的かつ計画的に実施することが必要であると考え、このための指針の策定及び助成等でき得る限りの努力を尽くしてまいる所存でございます。
  95. 曽根田郁夫

    曽根田郁夫君 終わります。
  96. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、午前中同僚議員が労働安全衛生法の一部を改正する法律案勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきましては相当突っ込んだ質問をなさいましたので、今日議題となっております労働問題に関する調査として一般質疑を先にやらせていただきまして、余った時間を安衛と財形、両法案に関する質問とさせていただきたいと思います。  最近と申しましても六十三年三月五日付の毎日新聞とそれから六十三年三月七日付のサンケイ新聞朝刊でございますが、それに「労災は血友病を差別するな」というアピールが出ているわけでございます。  このアピールを読んでどきっとしたところへ、実はこれは足立区の労働基準監督署の方から署長名で、この人は業務上事故に遭って転倒して大腿骨を骨折したんだけれども、療養補償も休業補償もいただけなかった、それで六十三年の二月二十五日付で不支給というたった三行ぐらいの決定をいただいてそのままになっているので、労災は血友病を差別しているということを盛んに新聞の記事なんかにも出しているし、それから足立区の区会議員に訴えて、その区会議員の人が私のところにこのケースを何とか考えてやってほしいということで持ってきたわけでございます。  新聞記事によりますと、   私は縫製工場に工事責任者として勤務する一社員です。昨年三月、勤務時間内に、取引先の玄関で転倒して足を骨折してしまい、救急車で運ばれて即大学病院に入院治療ということになりました。   ところで私は、 本人が言っているんですが、  今世間でエイズとの関係で騒がれている血友病です。長期の入院治療が必要と診断されましたので、勤務中の事故でもあり、会社と相談して休業補償申請を労働基準監督署に出しました。   何日たっても何の連絡もないので、病院を退院して自宅養療になった十月中旬、電話で問い合わせたら「血友病なので審査に時間がかか る」とのことでした。十二月に再度電話すると、年明けの一月七日に自宅訪問され、会社での勤務状況など事情聴取があり、骨折場所の写真などもとりました。「二月中には決定する」とのことで、待っていたら、二月二十五日付の郵便が会社に届き「業務遂行中ではあるが、業務に起因する災害とは認められないので、業務外として不支給と決定した」という三行の簡単な文書に書いてあったのには驚きました。   会社から電話で問い合わせてもらったら「血友病であるため」との答弁でした。血友病だからといって、業務中の災害をなぜ差別するのでしょうか。 業務上の災害と自分は考えているのだけれども、   一国民として納税の義務は果たしているのに、社会に出て働く権利を制限するのでしょうか。幸い私は、理解のある工場経営者のもとで働くことができ、ありがたいと思っていますが、私のほかの血友病の方たちは、労働災害保険がこんな非情なことでは、明るく安心して働くことができなくなります。 このように書いているわけです。  毎日新聞も同じようなもので、   血友病というだけで、なぜこれほどまでに差別されるのでしょうか。 というふうに言っているわけでございますが、この事実関係につきまして労働省ではどのように把握していらっしゃいますか、お伺いします。
  97. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今御指摘のございました事案につきまして経過を御説明させていただきます。  昭和六十二年三月十三日に、被災労働者が、衣類の納品作業をするため事業場の出入り口から外に出ようとして、フロアから約十二センチ段差のある土間におりるときに転倒して左大腿骨を骨折されたわけでございます。被災労働者の労災請求に基づきまして、所轄労働基準監督署において事実関係等を調査いたしましたところ、被災労働者の骨折の原因といたしましては、御本人の基礎疾患でございます血友病による病的な骨折であることが医学的に認められたわけでございます。  御承知のとおり、労災保険は、労働者がこうむった災害が業務によるものであると認められる場合にこれを業務上として所定の保険給付を行うこととしているものでございますが、今回の当該事案の骨折につきましては、病的骨折でございまして業務によるものと認められないという判断のもとで不支給を決定したわけでございます。  なお、事件の発生後時間がかなりかかっているということでございますが、本事案の業務上外を決定するに当たりましては、事案の性格上、慎重を期するために主事医から症状あるいは療養経過等に関する意見書を手に入れるなど、慎重に対応してきたというような事情もあることも御理解賜りたいと思います。
  98. 中西珠子

    ○中西珠子君 本人は、縫製工場で働いていて、工場長を十年ぐらいやっているそうなんですね。十八年間勤務していた会社で工場長を最近十年間やっている。それで下請工場に行きまして、そして福井県まで行って製品をとってきて、そして東京にあるところの下請工場にまた行って、そして工場の床とそれから玄関との間に、さっき十二センチとおっしゃいましたけれども私が聞いているのは十三センチということで、十三センチの段差があって、その段差の角に金具がずっとあるわけなんです。その金具に足をひっかけて滑って転んでその段差の金具のところに左大腿骨をぶっつけてしまったので折れてしまった、こういうわけでございますね。  それで、今意見書の話も出ましたけれども、二人の別々の先生が微妙に違いのある意見書をお出しになっているということでこれを私のところに持ってこられたわけなんですが、一人の先生の方は、病的骨折の一種ではあるけれども業務中の転倒が骨折を惹起したというふうにおっしゃっているわけですね。もう一人の先生は、とにかく血友病による病的な骨折で、骨が少し細くなっているからそういうせいで結局転んで骨が折れたんだと言うんです。その両方の意見の微妙な違いがあるために決定に大変手間取って一年もたってから不支給という決定が来たんだとは思いますけれども、段差のあるところを歩いていますと、普通の正常な人でも、ちょっとうっかりしているとひっくり返っちゃって、転んで骨を折るということはよくあることなんでございますね。  ですから、血友病であるから病的な骨折なんで、たとえそれが業務時間内であり業務中——業務上という言い方は語弊があるから言いませんが——業務中に転んだということなので、労災の適用をお願いするのは普通考えられることではないかと思いますし、本人は、先ほどから申し上げているように、新聞にも差別だということを訴えている記事を出しているわけでございます。  それから、社長の方は、難病だからといって雇わないということではこれは差別になるので、自分としては、本人が非常にまじめによく勤めてくれるので、ずっと血友病と知りながら働かせてきた、そして業務成績もいいので工場長にして、そしてずっと十年間工場長として勤めてきたのだと。それで、自分としては、掛金を払っているのに一年間も待たされたあげく療養補償も休業補償も出さないということであっては、これは余りにもひどいのではないか。また、血友病の人はたとえ業務中に事故を起こしても労災が適用されないということになれば、これからはそういう難病の人、血友病の人などは絶対雇えなくなってしまうと。それからまた、お医者さんの意見書に食い違いがあるとすれば、労災保険の趣旨からすれば本人にとって有利な方を採択してやるのが普通ではないかというか、それが難病の人に対する温かい思いやりというものではないかというふうなことを言っているわけでございますね。  それで、とにかく私は、厚生省が難病の対策の一環としてお手厚く援護措置などをとっていらっしゃるとすればまた問題は別だと思うんですけれども、厚生省の方は血友病患者に対してどのような措置をとっていらっしゃいますか。
  99. 金森仁作

    説明員(金森仁作君) 先生御指摘の血友病についてでございますが、私どもの方で難病対策を担当しておりますが、難病対策の中で、特に特定疾患の治療研究、それから調査を御案内のようにさせていただいております。  原因が不明であってまた治療方法が確立されていない病気を対象にした調査研究事業を進めさせていただいておりますが、御承知のように、血友病は、遺伝性疾患でございまして原因がはっきりしておる、また治療方法も一応確立しておるというようなことで、今申しました難病対策の対象事業としては我々取り上げていないわけでございます。  なお、御承知のように、小児につきましては、子供の特性というようなことを考慮いたしまして治療費の助成をさしていただいておりますし、また保険のサイドの方では、この血友病の患者さん方は大変治療費がかかるということ、また長期にわたるというようなことで医療費の負担が大変多いというようなことで、医療機関におきまして血友病につきましては特例を設けまして、窓口の負担を限度額一万円というようなことで特別な対応をさしていただいておるというのが現状でございます。
  100. 中西珠子

    ○中西珠子君 血友病患者は血液凝固剤というものを用いなきゃならないわけです。それで、大体の血友病の方は血液凝固剤を用いている。それがアメリカから輸入されたものが多くて、そして後天性免疫不全に血液凝固剤を注射したがゆえにかかってしまったという人も多いわけです。  それで、本人は、七、八年前から、血液凝固剤を病院からもらって、そして自分の病状に合わせて、冷蔵庫の中に保存している血液凝固剤を自分で打っていたそうです。今回、左大腿骨骨折で入院した際に精密な検査をしてもらったところが、血友病であるばかりでなく多分この血液凝固剤から感染したのではないかということで、いわゆるエイズの保菌者であるということがわかったわけです。  それで、こういうエイズの人たちに対する対策、援護措置というものは、まだ厚生省の方は結論をお出しになっていないのかもしれませんけれども、血友病の人たちが不幸にして血液凝固剤を注射したがゆえにエイズになった場合の対策というものはどのように今考えていらっしゃいますか。
  101. 石本宏昭

    説明員石本宏昭君) お答えいたします。  本件につきましては、先般の衆議院予算委員会におきまして総理の方から、いわゆる政治的な対応、力によって何らかの対策を講じる必要があるという御指摘もございました。厚生大臣の方も、この件につきましては、まことにお気の毒でありどのような対策が考えられるか現在検討しているところであるという御答弁を申し上げてございます。  御承知のとおり、六十三年度の予算は先般成立いたしましたが、この中で、いわば感染者に対する発症予防、治療研究事業並びに保健生活面を中心とする相談事業というふうな経費が二億六千万ほど国費でつきました。この具体化について現在検討しているところでございますが、このほかに何らかの対策がとれないかということにつきましてさらに現在検討している段階でございます。
  102. 中西珠子

    ○中西珠子君 血友病でエイズになってしまった人に対する対策は目下検討中と、まあ具体化していないわけですね。  それから、血友病で、たとえエイズになっていないにしても、骨を折っても手術ができないわけです。普通の人なら手術をして非常に早く治癒する道があるのに、血友病の人は、手術ができないから結局牽引療法かなんかをやったりギブスをはめて固定したりというふうなことで非常に長くかかるわけでございますね。それで、一応本人は健康保険があるからそれで今やっているんでしょうけれども、休業補償の方は、結局社長というか経営者、使用者の考慮で多少出ているけれども、社長としては、これはもうやはり労災の掛金も払ったんだから労災の方から休業補償をいただきたいと考えるのはまあ当然の気持ちかもしれないと思いますが、本人は、健康保険を使ったけれども差額ベッドの費用が請求されてきていましてそれが三十二万円あるんだそうです。しかし、休んでいる間、ほんの少しばかりの会社からもらっているお金では、子供が二人いて奥さんがいるわけですが、もう生活するのにやっとで三十二万円の差額ベッドの費用はとても払えないと、こう言っているわけです。  それで、審査請求をもう一度やってもらう再審査請求を出したらどうかと言いましたらば、血友病だからだめと言われているんだからまた再審査請求をしても血友病だからだめといって差別される同じ結果になるのではないかと、こう言っているわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  103. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今回の事案はまことにお気の毒な事案だというふうに私ども判断しておるわけですけれども、労災保険制度の趣旨から申しまして業務に起因するかどうかという判断が決め手になるわけでございます。  今お尋ねのように、所轄の署長の処分が出たわけでございますが、これに対して不服がございます場合には労働者災害補償保険審査官に対しまして審査請求をしていただく道が開けておりますので、そこで御主張のような業務に起因するものであるかどうかについてさらに審査をしていただくという道を考えられるというのがこれからの方法ではないかというふうに思っておるところでございます。
  104. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働者災害補償保険審査官におきましてまた別の新たなる医師の意見を取りつけるということは可能ですか。
  105. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今回監督署長の下しました処分につきましては主治医の意見あるいは治療経過等を見た上での判断でございますけれども、審査請求におきましてさらに必要な場合には専門家の意見を聞く等の観点から、さらに業務上外の適否、署長の判断が正しかったかどうかについての審査が行われるものというふうに考えておりまして、先ほど先生のお話のように、血友病だからということで特に差別するということではなくて、あくまで今回のこの被災が業務に起因するものであるかどうかということにやはり絞って判断がなされるものというふうに思っております。
  106. 中西珠子

    ○中西珠子君 血友病であるから差別されるという意識は血友病の方が非常に持っていらっしゃるものだと思うんですね。それで厚生省に対しても血友病の方々の代表が陳情にも行っております。それはテレビでも放映されました。そして、血友病でアメリカから輸入した血液凝固剤を注射したがゆえに後天性免疫不全というふうな病気に不幸にしてなった方は、殊に非常に行政に対するふんまんと医療行政に対するふんまんというものを持っている。今度は、業務上の障害ということには血友病であっては労災のもとで絶対にならないというふうなことになってしまいますと、これは働く希望というものも本当に失われてしまうのではないかと思うんです。  やはり、先ほど私が申し上げたように、段差のあるところでは、正常な人間でもちょっと向こうを向いていたりうっかりしていると滑って転んで骨折をするということがあるわけです。私の友達がじゅうたんのところで転んで大腿骨骨折したケースも、非常に丈夫なぴんぴんした人ですがあったわけでございます。  そういう業務を遂行しているときにたまたま転んだ、そのことのために骨折が起きたのかそれとも本当に血友病の病的な骨折であったかという点については、もう一度違ったお医者さんの意見書というものをもらっていただきたいと私は保険審査会に対して要望したいと思うわけでございますが、この点は基準局長からでも保険審査会に本人が再審査請求をしました場合にはお伝えいただけますでしょうか。
  107. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) この審査請求がなされました場合には、公正適切な判断が下るように審査官等独立して審査するものでございますけれども、当然公正な判断が下るものというふうに期待しておるところでございます。
  108. 中西珠子

    ○中西珠子君 私も公正な判断が再審査において下りますように切望しております。  そして、とにかく差別ということで、どうせしてもしようがないんじゃないかと思っている本人にも再審査請求をするように説得いたしますので、何分よろしくお願いいたします。  そしてまた、今回の決定はほとんど一年かかったということで不支給という通知をいただいたわけですが、再審査請求におきましてもやっぱり一年、二年とかかるのでしょうか。いかがでしょうか、この点は。
  109. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 非常に難しい病気でございますし、医学的な判断その他、慎重な審査が必要かということでございますけれども、慎重と同時に迅速な審査が行われるようにしてまいりたいというふうに思っております。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 慎重、迅速かつ公正なる審査をしていただくように心からお願いいたします。  大臣、この点について一言御所見をお伺いしたいと思いますが。
  111. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) ただいま先生おっしゃられましたように、迅速、公正、慎重、これでいかなければいけないと考えております。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうぞよろしくお願いいたします。  これは、血友病の人たちの問題がクローズアップされているときですから、労災がどう扱うかということに対しても多くの国民の目が注がれていると思いますので、何分善処のほど、また慎重、迅速、公正なる審査をもう一度やっていただきますようにお願いいたします。もちろん本人が再審査請求の手続をとらねばならないことでございますが、どうぞよろしくお願いいたします。  それでは、まだ時間がございますので、労働安全衛生法改正案について少しお伺いしたいと思います。  私は、この非常な技術革新の進展、社会経済情 勢の変化の中で、今回労働安全衛生法改正案並びに財形法改正案をお出しになりましたことは大変時宜を得ていると思っておる次第でございますが、ちょっと労災の被災者の数などにつきまして少し細かいことですがお聞きしたいと思います。  労働安全衛生法令の整備について中基審の建議というものが出されましたが、その建議について労働省が発表をなさいましたね。その労働省の発表の中の数字は、労災の死傷者は毎年八十一万人ぐらいいるというふうに書いてあるわけでございますが、安全衛生年鑑によりますと、それどころじゃなくてもっと多い。交通災害の被災者を非常に上回っているわけですね。それですから、この労働安全衛生年鑑にある六十一年度と六十年度の数字、こういったものについてお聞きしたいし、またその数字が結局労災の新規給付の受給者というふうなものだけの数をケースとして数えていらっしゃるのかどうかという点をお聞きしたいわけです。  そして、基準法とかそれから安全衛生法に関しては監督権限をお持ちのはずの労働省がお持ちの地方公務員とか国家公務員の現業部門、こういうところの人たちで業務上の災害に遭ってそして死傷した人たちの数が、果たして労働省のおっしゃっているまた安全衛生年鑑に出ている数字に入っているのかどうかということを非常に疑問に思うので、この点ちょっとはっきりとした数字をお教えいただきたいと思います。
  113. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 労災保険の新規受給者の数でございますが、六十年度で見ますと八十四万九千四百三十二名ということでございます。これは六十一年度では八十万六千二百四名ということでございます。  それから、通勤災害を含みますと、六十年度の数字が九十万一千八百五十五人、それから六十一年度の数字が八十五万九千二百二十名という状況でございます。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは労災保険新規受給者数ですか。
  115. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) そのとおりでございます。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 地方公務員とか国家公務員の現業部門の人たちの死傷者、業務上の、もしくは通勤上の災害による死傷者の数はつかんでいらっしゃいますか。
  117. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 公務災害の発生件数の問題につきましては、実は、労働省は直接把握するという格好にはなっておらないわけでございますが、人事院あるいは自治省の調査の数字で申し上げますと、昭和六十一年度の国家公務員の公務災害の発生件数は一万二千九百十七件、これは人事院の数字でございます。それから地方公務員におきましては三万一千二百九十三件、これは自治省の調査でございます。こういう実態であるというふうに、これは認定された数字だというふうに承知をいたしております。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 そういう地方公務員や国家公務員の数字を入れますと、業務上の災害や通勤上の災害によって死傷した人の数がまだまだ多いということが言えますね。  それから、労働災害の発生率における企業間格差というものが依然としてあると思うんですが、強度率、それから度数率ともに中小企業が非常に高いのではないかと思うのですが、この点に関して少し数字を教えていただけますか。
  119. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 事業所の規模別の状況昭和六十一年の数字で申し上げますが、休業一日以上の発生、これは度数率で見た場合ですが、千人以上の規模事業所におきましては〇・七一、それから五百人以上千人未満の事業所におきましては一・三四、それから三百人以上五百人未満の規模では二・〇九、それから百人以上三百人未満では三・八四、それから五十人以上百人未満のところでは六・三三、それから三十人以上五十人未満では七・二六ということでございます。この数字を見ましても、規模が小さくなるにしたがって災害の度数率が高くなってきているということがうかがえるという状況でございます。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは強度率についてはどうですか。
  121. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) まことに申しわけありませんが、ちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんので、別途また。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 私、通告したときに、強度率と度数率にかかわる企業間格差と申し上げたつもりですけれども、強度率についてはそれでは後ほど資料を下さい。
  123. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 失礼しました。強度率は規模別に出た統計そのものがございませんので、お許しをいただきたいと思います。
  124. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは度数率で言いますと、昭和六十一年の製造業における規模別の度数率を見ると、今、全産業でおっしゃったとおりに、規模が小さくなるに従って度数率が高くなっている。殊に製造業では、規模三十人から四十九人の事業場の度数率は規模千人以上に比べて約二十一倍の高率となっている、こういうことだそうですが、これは確かですね。
  125. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) そのとおりと思います。
  126. 中西珠子

    ○中西珠子君 中小規模事業場災害が非常に多発している、労災が多い原因は、いろいろあると思うんですけれども、大企業の下請の工場が多いということもあると思います。  そういった大企業が、円高不況、それから為替レートの変動にもかかわらずとにかく輸出を量的に下げないために物すごく頑張るというふうなこともあったりして、ここ数年非常にふえているということが挙げられると思うんです。殊に、大企業が受注単価を切り下げてきたり納期を早めてきたりするということが非常に多く、長時間労働、過密労働労働者の犠牲において対抗しなくちゃいけないというふうなことがある。というのは、資本力がないために、省力化するための新しい機械を導入することが非常に困難であるしまた設備の改善ということも十分にできない、作業環境改善もなかなかできない、こういう状況の中で労働者が精神的肉体的に負担を強いられているという面も非常にあって、それが中小企業における労働災害の発生が非常に高いという原因の一つにもなっているのではないかと思うわけでございます。  で、労働省は、中小企業労働災害防止のためにここ数年、三年ぐらい前から一生懸命いろんな対策をおとりになっておりますが、その対策についてまたその対策の効果ということについて御説明いただきたいと思います。
  127. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今御指摘いただきましたように、最近労働災害は減少してはおりますけれども、最近この減少傾向にいわば鈍化の動きが見える。その原因の多くは、今御指摘のように、中小企業における災害件数がやはり大企業に比べて非常に高い頻度で出ているというところにあるわけでございまして、現下ももちろん、これからも労働災害防止の中心はやはり中小企業に置いていかなければいけない、かように考えているわけでございます。  その原因につきましては、今お話しのように、大企業との関係等もございますけれども、やはり中小企業自身安全衛生管理に対する努力をさらに進めていく必要があるということでございまして、労働省におきましては、中小企業における労働災害防止を一つの大きな柱といたしまして安全衛生管理の推進あるいは監督指導に努めているところでございます。  また、中小企業における安全衛生水準の向上を図るために、安全衛生のための施設のための融資制度を設けておりますほか、中小企業巡回安全点検制度等の助成制度を設けているわけでございますが、さらに中小企業共同安全衛生改善事業に対する助成制度も設けましてその対策を図っているところでございます。さらに、昭和六十三年度を初年度といたします第七次の労働災害防止計画におきましても、中小企業における災害防止対策を重点の一つに掲げましてさらに強化を図っていくということでございまして、さらに今後中小企業における安全衛生水準の向上に努めてまいりたい と考えております。
  128. 中西珠子

    ○中西珠子君 大いに努力をしてくださいまして、中小企業における労働災害防止を効果あらしめるようにやっていただきたいと心から希望いたしております。  で、最近は第三次産業でも労働災害が非常にふえてきているということで、サービス経済化の進展によって第三次産業の従事者の数がどんどんふえている、そして今まで安全管理者の選任を必要としないとされていた業種のうちでも、例えば卸売とか小売業、旅館業などにおいても、これは企業規模の大小を問わず、業務をどんどん機械化したりいろいろ技術革新を導入しているわけで、したがって労働災害の発生率も高いところが出てきているということで、安全管理者の選任を要する業種の拡大、それから規模の見直しというものが必要と思われるのでございますが、労働省の御所見を伺います。
  129. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 第三次産業における労働災害は一般的には第二次産業に比べて低いということでございますけれども、最近の第三次産業の業種は非常に多様化し、かつまた分野も拡大してきているということから、第三次産業における労働災害防止対策はかなり重要な問題になってきている、かように考えているわけでございます。  中でも運輸業、清掃業については、労働災害の発生率が高いということから既に安全管理者の選任義務等を設けているわけでございますが、今後三次産業の中でも新しい機械の導入あるいは新しい商品を取り扱うなど、流通関係の近代化等の中で新しいタイプの災害も出てくるということも考えられますので、これらの産業の実態等を見ながら、さらにまた労働災害の発生率の比較的高い業種、規模等につきましては安全管理者の選任の義務づけについても検討してまいりたいと考えております。
  130. 中西珠子

    ○中西珠子君 ぜひ検討していただきまして、早くそういう必要な措置はとっていただきたいと思います。  私は、地下鉄の駅にずうっと続いている小さな店とかそれから駅の下にある小さな地下街の店ですね、ああいったところでもし爆発が起きたりなんかしたらどういうことになるかとか、またそれぞれの店がちゃんと労働安全衛生上の知識を持って労働災害防止ということをやっているのかどうかといつもその小さなお店がごちゃごちゃとある地下街を通るたびに思うわけですが、労働省は、こういった地下の小さな店が集合している地域に対してはどのような労働安全衛生上のまた労働災害防止上の指導を行っていらっしゃいますか、お伺いします。
  131. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 地下街の店舗や事務所におきます安全衛生対策につきましては、昭和四十七年に地下街労働対策要綱を策定いたしまして、これに基づき非常災害発生時におきます危険の防止、作業環境改善あるいは健康管理の徹底等について指導を行ってきているところでございます。  特に、昭和五十五年の静岡の地下街におきますガス爆発事故を一つの契機にいたしまして、この地下街労働対策の重要性がさらに認識されてきているというふうに考えておりますけれども、最近さらにまた地下街の過密化等が進んでおりますので、事業場が個別に安全衛生施設を設けていくというようなことになるなど、全体として整備につきましては難しい問題も実は生じてきているわけでございます。  したがいまして、これまで以上に共同で安全衛生対策を強化するという必要性が出てきているというふうに考えておりまして、今後とも、先ほど申し上げました対策要綱に基づきまして、関係行政機関とも連携しながら、地下街におきます安全衛生対策につきまして、特に照度・照明関係の標準ですとかあるいは共同の衛生施設の整備あるいはこの維持といったような問題につきましても、この要綱の必要な見直しも含めまして適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
  132. 中西珠子

    ○中西珠子君 昭和四十七年度におつくりになった要綱に基づいて共同で防止対策をやらせるということは結構なんですけれども、今最後にちょっとおっしゃったように昭和四十七年というと大分前ですね。それからいろいろ技術革新も進んでいるし、使っている機械、それから商品そのものも質が変わってきているし、材料も変わってきているということがありますので、ぜひその対策の見直しをやっていただきましてそして効果的な災害防止、労働安全衛生上の対策ということを進めていただきたいと思います。これは要望でございます。  それから、今回は労働安全衛生法改正に当たりましては高齢者に対しても相当の注意を払った改正をなさるということになると思うんでございますが、労働災害による死傷者の中で高齢者の占める割合というのはわかりますか。
  133. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 昭和六十一年度におきまして、休業四日以上の労働災害のうち五十歳以上の方の割合が三七・六%でございまして、労働者全体に占める五十歳以上の比率は二二%強でございますから、そういう意味でいけば高齢者の労働災害に遭われる頻度は高いという状況でございます。
  134. 中西珠子

    ○中西珠子君 高齢者が定年退職されてしまったら後は雇用の場を与えないというような方針ではなくて、たとえ短時間労働であろうと、やはり生きがいを与えるため、また生活の糧を得るために雇用の場を与えるという方針で労働省はいらっしゃるわけでしょう。  ですから、やはり、高齢者の労働災害に遭う頻度もそれから災害の強度も少なくしていく必要が非常にあると思うわけでございますが、特別に高齢者に対しての対策というものはどのようなものをおとりになるつもりですか、また既におとりになっていますか。
  135. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今回御提案申し上げています法律改正の中におきまして、健康の保持増進対策については特に高齢者に対する配慮を必要とするということでございまして、事業主の講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るために公表してまいります技術上の指針の作成に対しましましても、中高年齢者に対して特に配慮するということを明記しているわけでございます。  さらに、これまで、昭和六十一年度から中央労働災害防止協会並びに建設業労働災害防止協会におきましては高年齢労働者労働災害防止対策に関する検討を行ってきておりまして、近く具体的な労働災害防止対策についての報告書が出ることになっております。  したがいまして、この報告書に基づきまして、私どもといたしましては高年齢労働者労働災害防止対策のためのガイドラインを作成いたしまして、これを一般に周知して対策の徹底を図ってまいりたいと考えております。
  136. 中西珠子

    ○中西珠子君 早くその検討を終えて報告書が出てきまして、労働省でガイドラインをおつくりになり、またそれを周知徹底して、高年齢の労働者労働災害防止対策がうまく進展していきますように心から望んでおります。  健康保持の問題が出ましたんですが、最近の職業性疾病の発生状況というのはどのようになっておりますか、一番多いのが何であるかというふうなこと。これは安全衛生年鑑などをずっと見ておりますと出てはいるんですけれども労働省では何が一番多くて何が一番困ったことで何が一番緊急の対策を必要としているとお考えか、労働省の職業性疾病発生防止のための対策についてお聞きしたいと思います。
  137. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 職業性疾病の発生状況は、昭和六十一年度で件数で見ますと一万四千五百四十七件ということになっておりますが、その中では、負傷に起因する疾病、つまり何かのけがに遭いましてその後疾病状態にあるというのが一万七百六十三件でございますから、大半はそういうものでございます。その中でも実は八千三百というのは災害性腰痛、いわゆるぎっくり腰と言われるもので、これがほぼ半数以上を占めておると いうのが実情でございます。  そのほかの疾病といたしましては、じん肺症、これが千五百弱、それから熱傷、つまり異常温度条件下における疾病でございますが、それが約千二百強ございます。そのほかになりますともう数百という段階になりますが、化学物質による疾病等が三百というようなことでございます。  労働者にしてみますればどの災害もいわば大変な災害でございまして、我々はあらゆる面で労働者災害に遭わないようにということで対策を講じているところでございます。
  138. 中西珠子

    ○中西珠子君 じん肺とじん肺合併症が六十一年には前年比約六・一%増加している。それで、これが職業性疾病の全体の中の約一〇%だということを聞いているのですが、なぜ増加しているんでしょうか。
  139. 草刈隆

    説明員(草刈隆君) じん肺といいますのは、先生御承知のように、一たん有害な粉じんを吸入いたしますと、徐々に徐々に発生してまいります。このじん肺も、粉じん障害防止規則を含めましてじん肺法の改正などで作業環境整備を徹底いたしまして、昭和五十年代には二千四百ぐらいでございましたが今千五百台ということでございますので、私どもとしては減はしていると考えております。しかしながら、年度によって多少の変動はあろうということでございます。
  140. 中西珠子

    ○中西珠子君 有機溶剤の中毒の発生状況はどうでしょうか。
  141. 草刈隆

    説明員(草刈隆君) 化学物質による疾病というところに有機溶剤による疾病が含まれていると考えますと、六十一年では三百四十二、こういうふうになっております。ただし、これはがんを除いております。
  142. 中西珠子

    ○中西珠子君 十人から二十人なんという、殊にパートやなんかが働いている東京の下町の小さな工場で、有機溶剤を使って作業をさせていて、そしてベンチレーション、通気のための穴もない、そして防護用のマスクもかけてない、呼吸用の保護用具というのもつけていない、健康診断もやっていない、それからもちろん作業環境測定もやっていないというふうな工場がたくさんあるんですよ。そういうところで働いている人たちは、顔が真っ赤になって、ふらふらになって、いつもいつも慢性的な中毒症状の人が多いんですよね。  こういうものに対しては、基準監督署は指導をきちっとやっていらっしゃいますか。
  143. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 今御指摘の有機溶剤業務関係の特に化学物質を扱う業務につきましては、我々としても監督指導の重点対象にいたしておりまして、小さなところではそれなりの設備を講ずるとかいうような点でなかなか難しさはあろうかと思いますけれども、我々としては精いっぱい監督指導に努めているところでございます。
  144. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働基準監督官が足らないということはわかっているんですよね。  ILOの八十一号条約、労働基準監督に関する条約を日本は批准しているんですね。ですから、労働基準監督というものは徹底してやらなければいけない。労働者の安全と健康を守るためにやはりもっともっと頻度を多くしてやっていただきたいと思うし、それからまた技術革新がどんどんどんどん進む中で、昔勉強した知識とかいうものはもう古くなってしまってなかなか現状に合わなくなってくるという面もあるので、労働基準監督を第一線でやっていらっしゃる方のOJTというか、アップ・ツー・デートに知識を提供する研修というのはやっていらっしゃると思いますけれども、もっともっとやっていただきたいと思うのでございますが、大臣はいかがでございましょうか。
  145. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働基準行政におきましては、従来から労働災害の防止、職業性疾病の予防等労働条件の確保を図るため、毎年労働基準監督官等の増員に努めておるところでございます。  昭和六十三年度におきましても、これらの目的を達成するため、労働基準監督官を中心に増員を図ったところでございます。今後とも、厳しい行財政改革のもとではありますけれども労働基準監督官等の増員には懸命に努めてまいりたいと思うわけでございます。  また、仰せのように、労働基準監督官の研修につきましても、新任研修を初め中堅研修、実地研修等を実施しておるところでありますし、それらの研修において安全衛生にかかわる内容も取り入れ、能力の向上に努めておるところでございます。  今後とも、仰せのように技術革新等に対応できるよう研修内容の一層の充実に努めてまいる所存であります。
  146. 中西珠子

    ○中西珠子君 行財政改革のときで大変御遠慮なさるかもしれませんけれども、これは御遠慮なさいませんで労働基準監督官はふやしていただきたい。  それから、研修もお金のかかることではございますが、技術革新で新しい機械が入ってくるばかりでなく、原材料それから溶媒ですね、みんな新しいものがどんどん入ってくるわけでございますから、やはり勉強をうんとしてもらわなければアップ・ツー・デートにならないし、古い知識ではちっとも労働災害の防止にもならなければ労働者の安全衛生を確保することにもならないので、これは何分よろしく労働大臣お願い申し上げておきます。  それで、今度の改正法案の中に、労働災害防止の業務に従事する人とか労働者健康保持増進を図る人たちというものが決められて、そしてそういう人たちの能力向上教育というものが必要だということになってそれに対するいろいろの援助をなさるということですね。  労働大臣は指針をおつくりになる、そのほかいろいろ国としての援助というものの指導もなさるということですが、その具体的な内容はどういうものでしょうか。
  147. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 健康増進対策は事業主の方にやっていただくわけでございますが、やるためには、一つは、いろんなスタッフを整えていただかなきゃなりません。そういったスタッフの養成については私どもでやはり御援助しなければならないだろう、それから実際に中小企業あたりでやるということになりますとそういうスタッフをそろえることもなかなか大変かもしれない、そういう場合にはやはり外部の機関に委託するということになるであろう、そのためにそういう外部の機関の育成、これも我々の仕事ではなかろうかと思っております。  それから、実際に企業の中あるいは外部に委託をしてやられる場合でも、中小企業の場合にはやはり経済的な御負担もいろいろかかるであろう、そういった経済的な負担の面についても若干の援助はいたしたいと、かようなことを考えております。  それから、指針の中では、具体的に行う措置のやり方等についてこういう形でやられるのが理想的でございますよというような形で、具体的なやるべき措置等について内容の行くべき方向を示すと、こんなことを考えておるわけでございます。
  148. 中西珠子

    ○中西珠子君 能力向上教育は非常に必要ですし、それに指針をお出しになり、またいろいろ指導援助をなさるのは結構なんでございますが、結局、安全管理者とか衛生管理者をつくったりまた委員会をつくったりしても、その委員会や何かがちゃんと本当に仕事をしなければ、名目上そんなものがあってもちっともうまく運用されていないという面もないわけではないと思うんですね。  ですから、そういった面での指導というものも、これまでもなさっていると思いますけれども、これからもやっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  149. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 確かに、おっしゃるように、いろいろな管理体制をつくりましてもそれが実効ある働きをしてくれなければ意味がございませんので、安全管理者、衛生管理者について技術革新に合ったような能力の向上、こういった点についても実は今回の法律改正事業主の方にやっていただくようにいたしておりまして、いろん な機械設備等の改善はかなり進んできておりましてやはり最後に残るのは教育ではなかろうかというような感じもいたしておりますので、そういった教育面の充実については今後とも事業主の方の指導について万全を期していきたい、かように考えております。
  150. 中西珠子

    ○中西珠子君 教育面で新しい知識をつぎ込むばかりでなく、やはり委員会なら委員会、それから体制なら体制をいかに運用して効果を上げるかという面も教えていただきたいと思うんですね。  それはお願い申し上げますが、いかがでしょうか。
  151. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 委員会の運営につきましては、これは事業場の労使がお入りになっていろいろやっていただくわけでございまして、労使の話し合いの中でぜひ改善を進めていただきたいと思いますが、我々としてもそういった委員会が活発に回転するようにいろんな面での御指導を申し上げたいというように思います。
  152. 中西珠子

    ○中西珠子君 労使のお話し合いというと非常にきれいに聞こえますけれども、大企業はさておき中小企業、零細企業になりますと、労使のお話し合いで安全衛生の面でうんとやってくださいとか労働災害防止をやってくださいよと口で言っただけじゃだめなんですね。ですから、その点をよくやはり教育していただかないとまずいと思いますよ。  いかがでございますか。
  153. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) おっしゃるとおりだと思いますので、いろんな面で事業主の方に対する啓蒙、いろんなトップセミナーなんかもやっておりますので、そういった点で企業経営者に対するいろんな啓蒙をやっておりますので、そういう機会を利用してさらに教育が徹底されるようにいたしたいと思います。
  154. 中西珠子

    ○中西珠子君 こんなこと危ないと思っても、言ったら首になるから言えないなんてそういう心情は労働者側にもあるんですね。ですから、そういう面はちゃんと労働安全衛生教育をやってくださると同時に、管理体制の動かし方また委員会の動かし方、そういったものもあわせて教育して啓蒙宣伝していただきたいと思います。これは要望です。  それから、時間がなくなりましたので、財形の方ですね。  財形改正案、大変時宜を得て結構だと思うんでございますが、同僚議員からも御指摘がありましたけれども住宅関係融資がどうも余り成績が上がっていない、実績が余りないということが言えると思うんですが、これはやはり周知徹底、啓蒙宣伝の不足ではないかと思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  155. 石岡愼太郎

    説明員石岡愼太郎君) 御指摘のとおり、財形持ち家融資制度実績は余り振るっていないという現状でございます。  その原因といたしましては、先生御指摘のとおり、制度のPRが必ずしも十分でなかったということがございますが、そのほかにも金利が他の公的金利に比べて高かったとかあるいは融資をいたします場合に財形貯蓄を三年以上やらなければならないというようなことも原因としてあったのではないかと考えております。  そこで、昨年、法改正中心といたしまして大幅に制度改善をいたしました。金利も、現在公庫の基準金利が四・五に対しまして四・五五というところまで下げてきております。また、融資条件である財形貯蓄期間も、三年ではなくて一年以上であればいいというふうにも改めていただきました。また、PRの予算も六十二年度から充実させた次第でございます。  このように制度改善されましたので、その内容を大いに中小企業中心にPRをいたしまして、財形持ち家融資制度がさらに伸びますように努力してまいりたいと思います。
  156. 中西珠子

    ○中西珠子君 時間が来ましたのでやめますけれども、今の住宅関係融資も、土地問題そのものが解決しなければなかなか借りる人もいないということも言えるかもしれませんので、労働大臣が閣僚の一人として土地問題についても強力な御発言を勤労者のためにやっていただきたいと思います。  そして、この財形制度は非常にいい制度なんですし、よい前向きの改正をなさろうとしているんですから私は支持させていただくわけですが、労働大臣がこの財形制度を一層推進していかれる御決意のほどを伺いまして終えます。
  157. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほどの御質問にもお答えしたところでございますけれども、とにかく財形制度というのは、勤労者のこれからの福祉の増進の上にとりましても重大な制度でございます。  それだけに、今後におきましても、この運用に当たりましては実効の上がるような、それで真に勤労者のためになるような方向で十分留意してまいりたいと考えております。
  158. 内藤功

    内藤功君 労働安全衛生法改正案について御質問をしたいと思います。  まず、労働安全衛生の行政体制について御質問をしたいわけですが、現在、第一線の労働基準監督署で安全衛生に直接携わっている職員は労働基準監督官、産業安全専門官、労働衛生専門官、こういう専門官それから労働技官、いわば監督官、専門官、技官という三者の方がそれぞれ事実上連携をとってお仕事をされている、かように私ども伺いまた理解をしておるわけなんであります。  そこで、全国の労働基準監督署は幾つあり、労働基準監督官の人数、各専門官の人数、労働技官の人数、これはどのぐらいになっておりますか。
  159. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 昭和六十二年度末で労働基準監督署の数が三百四十六でございます。  それから、労働基準監督官の総数が三千二百三十七人でございます。  それから、産業安全専門官の総数が三百八十六人、労働衛生専門官の総数が二百九十九人でございます。  それから、技官の総数につきましては、安全専門官、衛生専門官を含めまして技術系一般職全体でございますが、専門官のほかに約百十人ほどでございます。
  160. 内藤功

    内藤功君 専門官も技官もいない監督署がございますか。あるとすれば、それは幾つぐらいあるのか。
  161. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 専門官も技官もいない監督署はほとんどございません。ごく例外的に一けたの数の監督署でそのような事態になっているところがございます。  ただ、そういうところにつきましても労働基準監督官がその面の仕事をカバーしております。監督官も、最近は技術系の監督官も採用しております。
  162. 内藤功

    内藤功君 専門官が一人もいない監督署はありますか。それは幾つぐらいありますか。
  163. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 安全専門官、衛生専門官のクロスした数字は実は持ち合わせがございませんが、安全専門官が配置されていない監督署が八十六、それから衛生専門官が配置されていない署が百二十三というふうな状況になっております。
  164. 内藤功

    内藤功君 そうすると、今の数字の中には、産業安全専門官も労働衛生専門官も両方ともいないというところもあるわけですね。
  165. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 残念ながらございます。
  166. 内藤功

    内藤功君 その数は幾つぐらいあるんですか。
  167. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 先ほど申しましたように、安全専門官が配置されていない監督署の方が少なくて八十六でございますので、ちょっと詳しい数字を持ち合わせておりませんが、その範囲内でございます。
  168. 内藤功

    内藤功君 これはどういう事情によりますか。
  169. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 労働安全衛生法の制定以来、それぞれの監督署に衛生専門官なり安全専門官を配置すべく年々増員等に努めてまいったところでございますが、厳しい行財政事情の中、定員事情も非常に難しい事情がございまして、他の監督官等の増員も図る必要もあるという全体のバランスの中で少しずつはふえてきておりますけれども、いまだこのような状況にとどまっておる、こ ういうことでございます。
  170. 内藤功

    内藤功君 専門官は法九十三条によって設置が制度上保証されておる制度ですから、我々も監督官、専門官の増員を毎年要求しておりますし、国会でもしばしば決議されておりますし、労働省の方でこれは強力に要求をするということが必要ですね、これは命にかかわる問題ですから。非常に多いという印象を私は今受けました。そうして現実基準監督官、専門官、労働技官という人がこの検査、調査指導等を一緒に協力してやっている、これが実態だというふうに理解をしております。  そこで、今話に出ました労働技官のことにちょっと触れておきたいんですが、これは法律、命令あるいは通達を見ましたが、こういう労働技官というものの職務、地位、権限についての規定が何かあるんでしょうか、私はちょっとわからないものですから、これを教えていただきたい、あるのかないのか。  それから、今のままでいいのか。今のお話だと百十人ぐらいいらっしゃると。我々、現場の方にいろいろお話を聞くと、実際、監督官、専門官と一緒になって仕事をしておられる、ただ権限がない、地位がはっきりしないというふうに伺っているんですが、これはどういうふうにお考えになっているんですか。
  171. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 技官についての法令上の規定は特段にはございません。  ただ、技官といいますのは、要するに技術系の職員ということでございますから、事務官と対比した意味での技術系職員ということでございまして、特段の規定はございませんが、その技術系職員の中で一定の経験年数とか何かを積んだ者については専門官という形でこれは法令上の規定があるわけでございます。  ただ、技術系の職員につきましては、職員の一定の執務要領みたいのがございまして、その中では、専門官の職に準じたような仕事をしてもらうんだ、こういうような形にいたしておるわけでございます。
  172. 内藤功

    内藤功君 そこのところをもう少し法令上明確にしておく必要はありませんか。
  173. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 基準法の当時は、御承知のように監督官という制度がございまして、監督官には一定の司法権限を与えるというような形でそれが法律の施行を担保する、こういう形で来たわけでございます。安全衛生法ができました際に、その監督官にあわせて専門官という制度をつくったわけでございますが、その専門官は、今申し上げましたように、技術系の職員の中である一定の経験なり実務なりを積んだ人を取り上げまして、そういった人に法律上一定の権限を付与するということでございます。  それ以外の技官ということになりますと、それこそ入ったすぐの方からいるわけでございますので、そういった方にその専門官に準ずるような権限を同じように与えるというのはいかがかなという感じがいたしておりまして、一定の権限を与えて、例えば事業場への立ち入り権限なんかも与えるわけでございますから、それについてはやはり一定の経験なりを積んだ人、今で言う専門官というような形になった人に与えるのが適当ではなかろうか、かように考えているわけでございます。
  174. 内藤功

    内藤功君 私の方でいろいろお話を聞いた範囲ではかなりな年数やっており、経験も積んでおり、専門官、基準監督官に伍してかなり仕事をしておられる方もいられるということなんで、そこらあたり現場の方の意見、特に職員の組合、団体などの意見もよく聞いて、やはり何といいますか、やりがいといいますか、生きがいといいますかそういうものを失わせないような配慮、これは当然のことだと思いますが、これはしていただくように要望しておきたいんですが、いかがでしょうか。
  175. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 私どもも技官を取り仕切っていると言うと語弊がありますが、そういう立場にございまして、やはりそういった方々が生きがいを持ってやっていただくということは非常に重要だと思っております。  今監督課長からも御説明いたしましたように、とにかくそういう意味では専門官の数もふやしていただくことによってそういった方々をできるだけ専門官に登用するという形をとりたいというふうなことでできるだけ専門官の数をふやすような努力をいたしておりますが、今申し上げましたように、執務要領の中ではある程度そういった事情も考慮いたしまして専門官に準じたような仕事を技官にやっていただくような形で変えておりまして、そういうことで組合の方々ともお話しをしながら何とかそういう方々が熱意を持って仕事をしていただくように常日ごろやっているところでございます。
  176. 内藤功

    内藤功君 大臣、今のお話ですけれども、現場の第一線でやっている方が全員生きがいを持ち、やりがいを持ってやれるようないろんな状況の設定について大臣もひとつお力添えいただきたいんですが、いかがでしょう。
  177. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほど監督課長の方から申し上げましたように、しょせんは定員増を基本的に図っていかなきゃいけない、こういうことで厳しい状況下ではありますけれどもどもも監督官の増員と同じようにこの専門官等の増員につきましても骨を折ってみたいというふうに考えております。
  178. 内藤功

    内藤功君 そこで、労働基準監督官のことなんですが、これは特別司法警察員としての権限によりまして直接違反被疑事件を捜査してそれから送検、検察庁に送る、それから事情により押収、捜索、逮捕の権限もあるわけであります。  最近の三年くらいでいいんですけれども、監督官の取り扱ったこれらの件数、送検件数、それから押収、捜索、逮捕等の件数、これをお示しいただきたいと思いますが。
  179. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) ここ三年間、労働基準監督官が司法警察員として行いました送致の件数は昭和六十年で年間千三百二十八件、昭和六十一年千三百十六件、昭和六十二年千三百五十九件となつております。  それから、押収件数は、同じく昭和六十年三十件、昭和六十一年三十三件、昭和六十二年二十四件。  それから、捜索件数が昭和六十年三十一件、昭和六十一年三十五件、昭和六十二年二十四件。  それから最後に、逮捕の件数は昭和六十年三件、六十一年同じく三件、昭和六十二年はゼロでございます。
  180. 内藤功

    内藤功君 私は、戦前の内務省時代に工場法等の違反でかなり違反事件を送検し、戦前はああいう時代だったせいもありましょうが、検挙するという件数もかなりな件数に上っているというふうに、これは法務関係でつくっている司法研究の報告書で読んだことがありますよ。  戦前のこの時代の件数はどのくらいあったか、労働省の資料で何かございますか。
  181. 松原東樹

    説明員(松原東樹君) 当時の工場監督年報、それによりますと、処罰件数として上がっておりますが、昭和十四年におきます処罰件数が五百十八件というふうになっております。
  182. 内藤功

    内藤功君 当時でもかなりなことをいろいろやっているわけですね。  法務省に伺いたいんですが、労働安全衛生法違反事件についての、これも最近三年ぐらいで結構ですが、起訴件数、それから第一審におきます有罪判決の数というものをお示しいただきたいと思います。
  183. 木藤繁夫

    説明員(木藤繁夫君) お答えいたします。  全国、検察庁におきます昭和六十年以降の過去三年間の労働安全衛生法違反事件の起訴件数でございますが、昭和六十年が千六十六件、同六十一年が千百六件、同六十二年が千六十件、合計三千二百三十二件となっております。  これらの起訴の内訳でございますけれども、公判請求の事件が三年間で合計十六件でございまして、その余はすべて略式命令請求事件でございます。  これらの起訴に対します有罪人員の数でござい ますけれども、実は略式命令請求に対する裁判結果の統計が把握されておりません。したがいまして、有罪人員の数も正確には把握できないわけでございますけれども、しかしほとんどすべての事件について有罪の結果が得られている、かように理解しております。
  184. 内藤功

    内藤功君 これは有罪になるのは当然だろうと思うんですが、私が今の問答で気がつくことは、指摘しておきたいのは、懲役刑というのが全国で昭和六十年二件、六十一年一件。それだけ労働安全衛生法は守られていて違反がないというふうに言うんならこれは天下太平なんですけれども、こういう現状というのは果たして法の機能が十分作用しているのかということを思うわけです。  それから、今の法務省のお話だと判決が下ったのは三年間で十六件ですね。
  185. 木藤繁夫

    説明員(木藤繁夫君) 十六件三年間で公判請求いたしまして、そのうち昨年の末で十三件判決がありまして、三件が未済で残っております。
  186. 内藤功

    内藤功君 非常に少ない感じがします。この原因等は別途また解明をしたいと思います。  法務省にもう一点お伺いしたいのは、この安全衛生法違反というのは、第一線の検察庁、東京で言いましょうか、東京地方検察庁で言いますとどういう部が捜査は担当していますか。公判になれば公判部だね、捜査は何部が担当しているのか。
  187. 木藤繁夫

    説明員(木藤繁夫君) これは労働事件の一種でございまして、公安部が設置されておるところは公安部でやっているものと思います。
  188. 内藤功

    内藤功君 公安部というのは、我々の一般的な常識的な考え方ですけれども、盗聴器を据えつけた事件が発生したり、それから政党がビラをまいたというのでそれで公職選挙法で捕まったり、労働争議で何か事件が起きたりあるいは過激派の事件だとかいうものを扱うところと理解しているんですね。  そういうところがやっているという現状、これはやっぱり第一線の検察官の中では重きを置かれていないんじゃないかという感じが率直にするんですが、いかがですか。
  189. 木藤繁夫

    説明員(木藤繁夫君) 労働事件の中には労働基準法違反の事件であるとかそれから安全衛生法違反の事件であるとか労働者のいわゆる保護法規違反事件と言っておりますけれども、こういった事件件数が比較的多うございまして、検察庁といたしましてもそれらの事件は非常に重要であるという認識のもとに鋭意捜査を遂げて適切な事件処理を行っておるところでございます。
  190. 内藤功

    内藤功君 そこで、法案の中に入りますが、十二条の二で安全衛生推進者等の選任及び担当業務を定めておりますが、この規模事業場の実情として、果たして容易に人選ができるものかという疑問を呈したいんですね。人選できたとして、大企業のようにその仕事にその推進者という方が専念できる体制は、これはまずないと断言してよろしかろうと思いますね。これを機能させるのは、法案をおつくりになったことは私は結構だと思いますけれども容易ではないと思いますが、運用、運び方の見通しはどうでございますか。
  191. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 現在、五十人以上のところについては安全衛生管理者というものを置いているわけでございます。五十人未満のところについては、今のところは法律上はないわけでございますが、実は、事実上行政指導といたしまして今回法律で設置しようとしております安全衛生推進者に類似のものをお願いをしておりまして、我々の調査ではほぼ四割はそういったものを置いていただいているという実情がございます。したがいまして、今回の法律改正によってそれがさらに拍車がかけられるのではないかというふうに思いますが、行政指導段階ではまだ六割は置かれていないというのは確かに実情でございます。  そこで、今回こういった方を置くにつきましては、その資格要件といいますかそういったものについても、やはり中小企業で見つけやすいような方を考えるべきであろうというふうに一つは考えておりますし、そういう適格な方がなかなか見つからない場合には、必要な例えば安全講習のようなものを受けていただくというような形で何とかそういった能力を担保できないだろうかというようなことを考えているところでございます。
  192. 内藤功

    内藤功君 やはり企業規模が小さくなればなるほど人的な結びつきは非常に強くなりますから、したがってそこで働く人、そこで働く労働者の信用がある人、逆に言うと、労働者から推挽され推薦された人をできるだけ任命していく、指定していくというふうなことを考える必要があるんじゃないか。いかがですか。
  193. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) おっしゃるとおり安全衛生対策が、これは事業主にかわってといいますか、事業主の義務を行うわけでございますけれども、それが円滑に行われるためにはもとより労働者の御協力もいただかなきゃなりませんから、そういった方が出てくることは大変望ましいことだというふうに思います。  ただ、五十人未満の事業場でございますから、安全衛生に経験があるといいますか、能力があるという方はおのずから限定をされてきて、だれが見てもあの人ならやれるだろうという人はおのずから決まってくるのではなかろうかというような感じがいたしておりますが、もとよりおっしゃいましたようにそういった労働者からも信頼を受ける方が出られることは望ましいことでございますので、そういった形での指導はできるだけいたしたいというふうに思います。
  194. 内藤功

    内藤功君 指導する場合には、それこそ労使間の協定を結ぶときに労働者の代表を選ぶいろんなやり方がありますね、そういったことも十分参考にして、ただできるだけ望ましいというんじゃみんな出てきませんから、そういう人をできるだけ選ぶ。それから、選んだ場合に、その人にいろんな不利益がかからない、さっきも中西先生の御質問にあったけれども、物言えば唇寒しという雰囲気の中じゃ物を言えないですから、そういうような保障をする必要もあるだろうと思いますね。  そうして私は、特に五十人未満ということで伺いたいのは、全体の産業合計の中で建設業にしておきましょうか、建設業ということを指定した場合に、五十人未満での労働災害率、百万延べ時間当たりの度数率、これはどのくらいになっておりますか。
  195. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 五十人未満の災害の発生率、全体と建設業、お尋ねでございますが、実は統計の区切りで五十人未満というのがないものですから、三十人から四十九人のところの数字でお答えをさしていただきます。  そこでの度数率は、六十一年度で全体で七・二六でございます。
  196. 内藤功

    内藤功君 三十人から四十九人じゃないのか、今のは。
  197. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 建設業につきましてはちょっと手元に資料を持ち合わせておりませんので、別途御報告さしていただきたいと思います。
  198. 内藤功

    内藤功君 資料昭和六十一年の労働省の労働災害動向調査というのによると、四十九人以下三十人以上でちゃんと出ているじゃないですか。
  199. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 全体の数字。
  200. 内藤功

    内藤功君 全体が出ていますよ。
  201. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 全体の数字は先ほど申し上げました。
  202. 内藤功

    内藤功君 それから建設業も出ていますよ。これはたまたま社労の調査室がつくった資料にもちゃんと載っている。
  203. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) ここにございます数字はちょっと五十人のところで切っておりませんで三十人から九十九人ということでございますが、全産業で申し上げますと、これは六十一年の数字でございますが、休業四日以上のあれで四万……
  204. 内藤功

    内藤功君 度数率。
  205. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) 建設業につきましては今手元にございませんけれども、全体の数字は先ほど申し上げた数字でございます。三十人から四十九人の規模で六十一年度の度数率は七・二六という数字でございます。
  206. 内藤功

    内藤功君 六十一年の労働省の労働災害動向調査によると、三十人から四十九人の間、労働省の 調査産業合計で七・二六ですね。建設業四・三六、製造業が八・五二、こういう数字ですね。こういう数字になっています。これいいですね。  それで、このように五十人未満、四十九人から下というのはほかと比べて非常にはっきりしているんですね。  資料がないというのもおかしな話で、ちゃんとここに持っているんだ、僕は。四十九人から三十人、きちんともう一遍資料を整備してちゃんと答えられるようにしておいてください。きのう、これは通告しているんだから、五十人未満のを聞くよということを通告しているんだから。それで九十九人の資料なんていうんじゃだめだよ、これは。厳しく警告しておきます。  それで、推進者ですけれども、この推進者は下請なんかの場合に非常にこれから意味を持ってくると思うんですが、元請の事業者に対して下請の方の推進者が意見を述べるのは当然できますわな、意見を述べられなきゃ下請の推進者なんていうのは意味が全くないですから。これはどうです。
  207. 安藤茂

    説明員(安藤茂君) もともと、今考えております安全衛生推進者と申しますのは、その事業場において安全衛生業務の遂行に中心的な役割を果たして、その結果によって事業主に対していろいろ意見を言うというそういう役割を想定しておるわけでございますけれども、建設業でありますとか造船業のようにああいう下請関係の場合は協議組織の設置でありますとか運営を行う、元方とその下請との関係で協議組織を設ける、こういうような格好になっておるところでございます。  そういう中で、下請の安全衛生推進者が協議組織の場において安全衛生問題、労働災害を防止するために必要な意見を述べるというようなことは当然できるというふうに考えております。
  208. 内藤功

    内藤功君 そういう形であれ、推進者等がいろいろと改善意見を言う、もう職務上当然のことです。  その場合に、その発言が非常に活発であるあるいは発言をして耳が痛かった、痛いこと言われたということでその人がにらまれて不利益な取り扱いをされたんじゃ、これはみんな言わなくなっちゃいます。  これについては、そういうことをしないという条文はここにないようなんですけれども、これはどういうふうに御指導しますか。
  209. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 安全衛生推進者は、事業者にかわりましてというか事業主の行うべき安全衛生業務を当然いわば代行するような形のものでございますから、その職務を適正に推進できるように事業主は当然その措置をしなければならないわけでございまして、それを、何かを言ったがために不利益な取り扱いをするなんというのは、いわばもってのほかというか、当然そういうようなことは予定していないわけでございまして、改めて法律の規定を設けるまでもなく事業主はその人が適正な職務ができるような形での配慮をすべきである、こういうように考えておるわけでございます。
  210. 内藤功

    内藤功君 法律というのは万一ということがあるので、万一そういうことが起きたらどういうふうにしますか。
  211. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 事業者の方に対しまして今回の法案の趣旨等について十分周知をいたしたいと思いますが、万一そういうようなことがないように、十分事業主に対する教育に努めたいというふうに考えております。
  212. 内藤功

    内藤功君 これは欠陥なんです。  そういう万一のようなことが起きた場合に、事業主にそのような不利益な取り扱いをしないように是正を求める、こういう指導をする、こういうことですね。
  213. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) ケースによりまして、何が本当に不利益な取り扱いかというのはなかなか認定が難しいかと思いますけれども、いろんな法関係の違反があれば当然そういったものとしてまた処置をしなきゃならないだろうというふうに思います。
  214. 内藤功

    内藤功君 次に、産業医の問題ですが、法案十八条二項三号、十九条二項三号で衛生委員会あるいは安全衛生委員会に「産業医のうちから事業者が指名した者」を加える、こういう改正であります。  産業医については医師会の自主的な講習が行われているというふうに私は承っておるわけですが、今の要件はただお医者様の免許があればよろしいということでほかに特に要件がないように承知をしておりますが、これでよいのかどうかという問題ですね。法制的に資格要件を明確にするということがぜひ必要じゃないか、例えば日本産業衛生学会などございますが、こういう学会等の講習、研修の課程を終了した方であることを要するというような明文化の必要があるんじゃないか。何らかここにひとつ、労働者の命、健康に重要な関係を持つ方でありますから、そういう資格を明確にしておくということが非常に大事じゃないか、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  215. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働安全衛生法におきましては産業医の資格要件を特に定めてはおりませんが、その職務を適正に実行できるようにしていくという手だては必要かというふうに考えております。  そのために、産業医の職務内容の一層の具体化を図るということと同時に、その職務内容にふさわしい職務が執行できるように研修をさらに進めていくということにいたしておりまして、これらの研修を終了した産業医を優先的に選任するように事業者に対して指導していきたいと考えております。  これらによりまして産業医の確保と資質の向上を図るということが達成できると考えておりますので、法的に産業医の資格要件を設定する必要はないものというふうに考えている次第でございます。
  216. 内藤功

    内藤功君 中基審の建議の中に「産業医の職務内容を明確にすること。」と、こういうのがうたわれておりまして、これは法令改正の事項の中にうたわれております。今度の法案はこれには沿っていない、こういう点で非常に私は不十分だと思いますね。  それから、いかがですか、労働団体の推薦する産業医あるいは労働者側の推薦による産業医という人を入れていくというふうなことはお考えになりませんか。
  217. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 産業医の職務執行にふさわしい人を指名していくということが基本でございますので、労働組合あるいは労働者団体の特に推薦ということではなくて、職務にふさわしい人を選んでいただくということを基本に置いて法令上組み立てているわけでございまして、これを法文において特に任命の手続あるいは推薦等について設ける必要はないものと考えております。
  218. 内藤功

    内藤功君 次に、法案の六十九条一項、二項の問題なんですが、六十九条の一項では事業者努力義務というものを定めております。これは「その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置」ということになっていますが、現在、その他必要な措置というのはどういうことを考えておられるのか、できるだけ具体的にお考えをお示しいただきたいと思います。
  219. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) その他の措置といたしましては、例えば事業場内におきます運動等のための施設設備の整備あるいは健康教育あるいは健康相談等に必要な人材の確保等を考えているところでございます。
  220. 内藤功

    内藤功君 例えば入院の設備のある病院・診療所、こういったものはどうですか。
  221. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 先生の御質問は、入院施設のあるような病院・診療所のようなものを設けるべきことまで含むかという趣旨かと思いますが、そこまでは我々としては考えておりません。
  222. 内藤功

    内藤功君 それに対応して六十九条の二項ですね。  これは労働者の側のことを決めているんですが、労働者に新たな義務を労働安全衛生法上付加したものというふうに見られますが、これはどう ですか、新たな義務を付加したものというふうにこれはとるのか、それとも義務ではない、義務ではないとすれば一体何の規定なのか、この六十九条二項の「努めるものとする。」というこの意味ですね。これはどういうふうに理解したらいいですか。
  223. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今回の法律改正のねらいは労働者の健康の保持増進ということで、単に健康障害の防止ではないわけでございます。  そのために、事業者に対しましては健康教育あるいは健康相談の措置を講じていただくということにしているわけでございますが、これは例えば事業主が行わなければならない作業環境ですとかそういった管理対策といったように、事業主がその措置をとれば完結し目的が達成できるというものではなくて、やはり労働者がこれらの事業主側の措置を利用することなどによって初めて健康の保持増進という本来の所期の目的が達成できるわけでございまして、こういった健康の保持増進対策、勤労者自身の問題という特性にかんがみまして、今回の法律改正におきましては労働者がこれらの措置を利用して健康の保持増進に努めることが望ましいということを明記したわけでございまして、新しい義務を設けたわけではございませんが、健康の保持増進対策が事業主の措置と相まって労働者努力を規定したということでございます。
  224. 内藤功

    内藤功君 そうすると、この労働安全衛生法の従来からあります法四条のこれは努力義務ですね、これとは違うと、こういうことですか。
  225. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 四条の方は事業主の行う作業環境の整備等に対する協力といいましょうか努力義務でございますけれども、こちらの新しく設ける健康の保持増進努力義務といいましょうか、これは勤労者自身の健康の問題について十分努めていただくという趣旨でございまして、必ずしも一致するものではございません。
  226. 内藤功

    内藤功君 その六十九条二項は、あくまで努力義務であるにせよ、義務を付加したものなんですか。それともあなたがさっき述べたように、望ましいという一種の、何というか理念というか、そういうものか。そこの点ちょっとはっきりしてください。
  227. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 努力義務を新しく課すものではございません。いわば理念的な規定でございます。
  228. 内藤功

    内藤功君 六十九条の二項について、これを見た場合にいろんな疑念が生じ得るだろうと思うんですね。  例えば、これは杞憂だとおっしゃるならそれでいいんですけれども労働者のいわゆる医師選択の自由というようなものがこの六十九条二項によって非常に制限され制約されていく、そういうことにはならないかとかこういうようないろんな危惧の念が表明されることがあり得ると思うんですね。これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  229. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 今回の規定は健康増進対策でございますから、事業主はいろいろ労働者がやれるように便宜を図るわけでございますが、労働者利用しなければ全く効果はないわけでございましてそういう意味でこの六十九条の二項というのが入っているわけでございますけれども、医師選択の自由はまた別の分野の話でございますから今回のこの規定によってそれが制約を受けることはないというふうに理解をしております。
  230. 内藤功

    内藤功君 次に、この中基審の建議では中高年齢者、表現としては高年齢者について非常にスペースを割いて触れております。これはもう当然のことだと思うんですね。  中基審の建議の総論部分を見てみますと、まず、「労働災害による死傷者のうち高年齢者の占める割合が高まっている。」「それら労働災害は、転倒、墜落・転落等により発生するものが多く、」「また、高年齢者は、高血圧性疾患、虚血性心疾患などの有病率が高く、これら疾病の程度は、労働者の従事する業務によって影響を受けることもある。」、こういう部分があります。それから、法令改正すべき事項の中で「労働者の高齢化に対応したものとなるよう、一般健康診断の項目の充実を図る」、こういうこともありますが、これについては法令上どういうふうに対応をされるおつもりですか。
  231. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 基準審議会の建議に示された事項のうち、今回の改正法案に必要な部分は盛り込んでおりますけれども、同時に、その他の事項につきましては法改正後必要な政省令の中において措置してまいりたいと考えております。
  232. 内藤功

    内藤功君 この「一般健康診断の項目の充実」ということについては、基本的に政省令の中でどういうふうなお考えで臨まれますか。
  233. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 健康診断の中の項目等につきまして、高齢者の健康の測定に必要な項目等についても含めていくというようなことも検討しているところでございます。
  234. 内藤功

    内藤功君 中基審建議の中で、もう一カ所こういう部分があるんですね。「事業者は、加齢に伴う身体機能の低下等による労働災害を防止するため、中高年齢労働者に対し、必要な安全衛生教育を行うように努めなければならない」と。  これに応じた法令改正はどんなふうにされるおつもりでしょうか。
  235. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 今までもいろんな安全衛生指針を定めておりますが、そういった指針の中に高齢者に配慮した指針をつくるということとそれから高齢者のための安全教育の指針、そういったものをつくるということを予定しておるわけでございます。
  236. 内藤功

    内藤功君 法律の条文としては非常に私は具体性を欠くという印象を持っております。中高年労働者雇用の確保、さらに安全衛生教育等については、法律の本文中に規定を明確にさらに詳密にしておく必要があると思うんですね。  一九八〇年の六月に第六十六回の総会でILOが百六十二号勧告というのを出しております。これは高齢労働者に関する勧告で、この中にも、作業について労働者の安全衛生を維持するために適当な監督を提供するとかあるいは「困難な、危険な又は健康に有害な作業のために雇用されている高齢労働者の一日当たり及び一週当たりの通常の労働時間を短縮する」というふうな具体的な勧告がありますが、今日これらの国際基準に整合した法改正というものを真剣にやはり検討しておく必要があると私は思うんですね。  これらについてのお考えはいかがでございますか。
  237. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 我々が法律改正あるいは規則改正を特に考えます場合には国際的な基準の動向には常に目を配っておりまして、取り入れられるものについてはどしどし取り入れるような方向で検討をいたしておるつもりでございます。
  238. 内藤功

    内藤功君 さらに積極的にこれを推進していただきたいと思うんですね。  それから次は、中基審建議の中で、最近の「技術革新、サービス経済化の進展等により、職場の労働態様、就業形態が多様化しているが、ME機器等の導入による労働者のストレスの問題、ストレスによる職場不適応の発生やストレス関連疾病の発症」などの事例を挙げております。  現行法を見ましても、それから今度の改正法案を見ましても、最近の労働態様のこういう変化に伴う単純労働、それから看視、反復、こういう特徴を持った作業に対応し得るような安全衛生規定というのが非常に少ない、ほとんど見られないですね。まず、作業密度について、それから作業時間について、それから作業中断・休止時間についてあるいは作業の姿勢について、こういった安全衛生規定が、現在、私の知るところでは、一つは、労働基準法三十六条に書いてある坑内労働など、それからもう一つは、現行の安衛法六十九条の潜水業務その他と、これしか条文としては見られないわけなんです。これも国際的には非常に少ないんじゃないかと思いますね。自動化、OA化、ME機器の導入ということに伴ってのいろんな特徴、単純、看視、反復労働の増加というものが身 体的肉体的な疾病と同時に精神的神経的ないろんな疲労、疾病を醸し出している。これは今社会問題になってきております。この対策が今の労働省の最大の問題の一つだろうと私は思うんですね。  もちろん、いわゆるVDT指針というものをお出しになっていることは私も知っておりますが、これはもう当然のことであります。  これも私は繰り返して言うんですが、こういう指針を通達という形で出すだけじゃなくて、労働安全衛生法という本文の中に位置づける。というのは、一般に周知徹底できますから。六法全書に載るわけですから、みんながこれを見るわけです。通達というのは、一般の労働者や市民、もちろん使用者の方もなかなか見る機会がないんですよ。ですから、私はいろんな機会に法文に載せろということを言うのはそれなりの労使関係における啓蒙的な意味も強いということを申し上げておきたいと思うんです。  いかがでしょう、せっかくお出しになっているこういうVDT通達等を次の改正の機会に労働安全衛生法の本文上にはっきり規定をしておくということは、労使関係の上で非常に意味のある、強い影響力のあることだと私は思いますね。お金がかからないんですから。予算は要らないんですからね。法文に載せる、これは真剣に考えていただきたいということをお願いをしたい。いかががでございましょうか。
  239. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 技術革新の進展に伴いますいろんな労働態様の変化、それに対して安全衛生上の配慮をどうしていくかという問題は、我々も非常に考えているところでございます。  ただ、今先生御指摘のようなVDT作業というような形できちっととらまえられるものについては我々既に手を打っているわけでございますが、一般に単調労働というようなことになりますとどういう作業形態としてつかまえるかという技術的な問題もございまして難しい問題はあろうかと思います。  VDTについては既に指針の形でお示ししているわけでございますが、これを法文に取り入れるかどうかということになりますと、法文は、御承知のように、それに違反すれば罰則がかかるということに安全衛生法の場合はなるわけでございまして、従来、法文に取り上げますについてはやはり因果関係といいますか、例えば連続作業時間あるいは休止時間のような問題について言えば、その作業と労働者に対する健康影響、そういったものがきちっと因果関係が解明されている、こういうことであれば間違いなくこういうのが出るんだ、そういった分野が確立したものについては法文上で強制をしていくというような形をしておりますが、今のところはまだそういった医学的な解明がきちっとなされたというところでは必ずしもないであろうというふうな理解をいたしておりまして、そういうことで現在のところは通達で対応しているわけでございます。  もとよりいろんな知見の集積には努めているところでございますし、たとえ通達という形でございましても、中央労働災害防止協会とかあるいは地方の基準協会とかいろんな事業主団体あるいはそこが発行いたしますいろんな諸雑誌あるいは役所自身でもいろんなものを発行いたしておりますが、そういった点を通じて周知徹底には努めておりますので、周知という点については遺漏はないであろうというふうに思っております。
  240. 内藤功

    内藤功君 私は、法文に書くということが六法全書、法令集を通して広くあまねく国民に知らせる最大の周知方法だという考え方をかねてより持っているものですから、重ねて強調しておきたいと思うんですね。  それで、具体的な例ですが、長時間の過密労働実態の一つとして、今、電算機の関係労働者の方の問題は非常に深刻だと思うんですね。電算労という労働組合が御存じだと思いますがあります。ここがコンピュータープログラマー千五百四十人のアンケートをとりまして、最近こういう資料もできておるわけですが、コンピューターソフト労働者の過去一年間の月間最高残業をアンケートでとりましたら何と百五十時間以上の方が三・五%、百時間以上が一三・三%、八十時間以上が一三・五%、これは月間でございますよ、六十時間以上が一五・三%、四十時間以上が二九・四%、月四十時間以上の残業者が四人に三人いるという結果になっております。  労働者八百人おります某大手ソフト会社ですが、昨年七、八月に月五十時間以上の残業をした労働者は二カ月とも二〇%を超えた。多い人は二百五十七時間の残業、休日出勤を入れても一日に八時間以上の残業、だから一日十六時間働いた勘定になります。職場の長いすで短時間の仮眠をとって、三日連続徹夜同然の作業で、頭ももうろうとしている状態だったという具体的な証言もあります。  これはどうしてなのか。競争の激しい電算業界では、ソフトウエアの内容変更が発注メーカーから次々に来る、納期の延期というのがなくて残業に次ぐ残業でこなすしかない、こういう状況のようであります。公正取引委員会が昨年の六月に、内容変更については納期や費用負担で双方よく協議するようという要望を発注側の情報サービス産業協会などに出したんでありますが、その後も相変わらず不公正取引が横行している。そこで、こういう事態でありますので、当該の労働組合、電算労組協議会、いわゆる電算労が本年四月四日に公正取引委員会に、一層強い要望を業界に出してもらいたい、それでも是正されない場合は同趣旨の勧告をして業界の浄化、健全化を図ってもらいたい、こういう通産省サイドのことをやっているわけです。ただ、これは、同時に、何といいましても労働省の重要なお仕事の一つであると私は思うんですね。  いかがでしょう、これは一部一般新聞にも報道をされておりますので、労働省も恐らく情報としては把握しておられると思いますけれども、こういう業界の事態等についてどう把握しておられるか、十分把握しておられなければ何とぞ実態調査して必要な対処をされるようにお願いしたいんですが。
  241. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今御指摘の情報サービス業分野が長時間の労働分野であるということは私ども十分把握しておりまして、実は、昨年の秋に比較的残業時間が多い長時間労働の分野等を二業種ほど選びまして、その中の一つとしてこの情報サービス業を選びまして、事業主の方々を中心に研究会を設けておりまして、長時間労働を是正していくための方策、そのための問題点等について検討を進めてきているところでございます。  近くこれらの報告書をまとめた上で、業界ぐるみでこの恒常的な労働時間、残業時間を是正するということによりまして就業状態改善を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  242. 内藤功

    内藤功君 公取の方も要望を出しておりますから、公取に負けないように、労働省の方では、このような残業に次ぐ残業、納期が延期されないこういう実態ですから、研究会というのもちょっと生ぬるい感じがするが、ひとつ強い要望をやっぱり出していただくようにお願いをしておきたいと思いますね。  そこで、最後になりますと思いますが、いわゆる労働基準法、労働安全衛生法の仕組みは、先ほど御質問申し上げた監督官、専門官あるいは技官という方々の第一線における御苦労で調査をし、指導をし、さらに悪質なものについては告発し裁判にかけるということが、労働基準法以来のこれが一つの主流的な考え方なんですが、同時に、私は最近思いますのは、刑罰機能がさっきのように十分機能していない。東京地検は一生懸命やるといって、それは結構なんですけれども、実際公安部の中でしかるべき位置づけを与えられていないと思う。  もっとこれを強くすると同時に、私は提案をしたいのは、労働安全衛生法労働基準法等の違反事業者に対しましては、単に罰則の適用あるいは指導というものにとどまることなく、これはアメリカ合衆国の公契約法の考え方がそうだというふうに私は理解しておるんですが、国や公団や地方 公共団体で、そういう法違反事業者で悪質なものについては物品を買わない、購入しない、工事等を発注することもやめるというような姿勢をとれるそういう仕組みをひとつ設けておくことがどうしても必要じゃないかと私はかねがね思っておるわけです。この点についての労働省当局のお考えを承りたい。  それで、質問の最後の時間になりまして、時間がもうあと二分ぐらいになっておりますから、質問をあわせて大臣に、きょうのこの問答を聞いておられて、労働安全衛生に関する労働省の、労働大臣としてのお考え、また私が質問の中でるる開陳しました私独自の意見もありますけれども、それも含めての御所感、今後の労働安全衛生にかける大臣の並み並みならぬ決意のほどをひとつ最後にお聞かせいただきたい。  この二問をあわせて申し上げたいと思います。
  243. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 労働災害を起こしました事業場につきましては、例えば建設業については、現在、国等でも発注を差しとめるといいますかそういった措置は実際行っているわけでございますが、ただそれ以外のものについては現在は行われていないというのが事実でございます。  我々の立場からいたしますれば、やはりそういった災害を起こさないようにするということが大切でございますので、そういった点についてなお一層の努力を重ねたいというふうに思うわけでございます。
  244. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働者の安全と健康の確保ということは労働行政の最重要課題であると承知をいたしております。  今般の労働安全衛生法の一部改正法案労働者の健康の保持増進中小企業における安全衛生水準の向上を目指すものでありまして、その実効ある運用に十分留意してまいりたいと考えております。  また、今後とも社会経済情勢の変化に対応した的確なものとなりまするよう努めてまいる所存であります。  最後に、内藤委員の御質問を聞いておりながら、弁護士というものはよく勉強するものだなとつくづく感じとった次第でございます。
  245. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 労働安全衛生法改正案について御質問申し上げますが、きょうは各委員からかなり細かい点まで熱心に御質問がありましたし、労働省の方でも一生懸命答弁なさっておられました。したがって、重複する面は一切避けて五つ、六つ確認するような形でお伺いいたしたいと思います。大臣は答弁の必要ございませんから、気を抜いて座っておっていただきたいと思います。  一つは、今回の改正案は、言うまでもなく高齢化社会の到来に対応して高年齢労働者労働災害を防止するとともに、その健康を保持することが一つの眼目となっていると思うんでありますが、この高年齢労働者労働災害の防止、疾病予防、健康保持のためにどのように具体的施策を考えておられるのか、総論的なところで結構ですからお聞かせいただきたいと思います。
  246. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今後の高齢化社会への移行に対応いたしまして、中高年齢者の健康確保の問題は極めて重要であるという観点から今回の必要な法改正お願いしているわけでございますが、このためには、中高年齢期に至る前から心身のバランスのとれた健康の保持増進対策を計画的かつ継続的に講じていく必要があるということになるわけでございます。  このために、健康保持増進対策の具体的内容といたしましては、まず第一は、労働者の健康状態を把握し運動指導あるいはメンタルヘルスケア等の個別的な指導を行う健康教育、二番目には、労働者の心身の健康に関し労働者の相談に応じて指導あるいは助言を行う健康相談というものが内容でございます。  さらに、今回の法改正のほかに、労働者の高齢化に伴いまして、疾病構造等の変化に対応いたしまして健康診断項目の充実等必要な見直しも進めてまいりたいと考えております。
  247. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほども出ておりましたように、中基審の報告などでかなり細かく問題点指摘されておるわけでありますが、今もお話にありましたように、身体的な災害、疾病だけでなく、まさにME機器の導入あるいは技術革新の進展、こういったことに伴って就業形態が非常に多様化している。こういったところからくるところのストレスによる心の病というのが、これはソフトといえばソフトの問題かもわからないけれども、単に建設業、製造業ではなく、第三次産業にまでわたってこれからますます大きな問題になってくると思うわけで、その意味では今おっしゃったようにとりわけ高年齢者のメンタルヘルスケアという問題が非常に重要になってくるというふうに思うわけです。  そういった中で、概念的なお話はわかるんだけれども、このメンタルヘルスケアというものは具体的にどうするんだということ、これはもう一つきょうのお話の中でも各委員の質問の内容の中でもまだしっくり答えられてない。これからの問題だろうと私は思うんですが、もう少し細かく聞けないものかなというふうに思います。  同時に、中小企業は、このメンタルヘルスケアも含めた安全衛生の面で人員的にもまた資金的にも不十分にならざるを得ない。今回の改正に当たっては、七十一条関係でとりわけ国は中小企業に対して援助を行うということが明記されているわけであります。この中小企業援助というものをもう少し具体的に、どのようなことを考えていらっしゃるのか、この辺の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  248. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 高年齢者のメンタルヘルスの問題につきましては、まず、昭和五十四年度から中高年齢労働者の健康づくり、いわゆるシルバーヘルスプランの中でメンタルヘルスを含めた心身両面にわたる健康確保対策を進めてきたところでございます。  さらに、昭和六十一年度以降、産業医学振興財団を通じまして、企業内におけるメンタルヘルスケアの実施体制の整備を図るという観点から、このメンタルヘルスも担う産業医あるいは衛生管理者等を対象といたしましてメンタルヘルスケアに必要な専門的知識あるいは技法を付与する研修を実施しているところでございます。  お話のように、今後高度情報化あるいは多様化する社会の中でメンタルヘルスの問題は非常に重要になってまいりますし、他面、またこれはプライバシーにも関連する問題でございますので、処方は非常に難しい面があろうかと思いますが、いずれにいたしましても心身両面にわたる健康教育、相談をしていくということでございまして、まず基本的には事業場におきまして相談体制を確立して、産業医の指導のもとに例えばカウンセラーといったような心理相談員等の人たちによるメンタルヘルスケアを進めていくということが基本になるのではないか、かように考えているところでございます。  第二点の中小企業に対する援助の問題でございますが、これらの健康保持増進対策を中小企業においても進めていくという面におきまして、費用の面等につきましてもなかなか十分に間に合わない面もございますので、これらの措置につきましても必要な費用についての助成措置を進めてまいりたいと考えておりますし、同時に、中小企業の方々自身が持つ施設も十分でございませんので、これらの健康教育、相談等について、中小企業の委託を受けて健康保持増進のためのいろいろなサービスを提供する機関を労働省としても育成していくということなどによりまして中小企業でもこれらの対策を進めやすくしていくということを考えているところでございます。
  249. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 参議院の社会労働委員会調査室というのは非常によく勉強しておるところでして、法案ごとに労働省で発表される数字よりも細かい数字を分析して私たちの手元にいただいておるわけです。  私もこれをずっと読ませていただいたわけでありますが、この中にも中基審のことについていろいろ細かく記載されているわけですが、この数字 などを見てみましても、労働災害の約八割を中小企業が占めている。また、労働災害の減少率の傾向を見ても、大企業に比べて中小企業の方が減少率が低いわけですね。ということは、ますます中小企業が大きな比重を占めてきていることを意味していると思うんです。それは、先ほど来おっしゃっているようなもろもろの現象が起きてそれに対応できないということであろうと思うんです。そういう意味で今度の改正案の中には中小企業に十分配意したことが盛られておるし、私は大変いいことだと思っておるんです。  ただ、その中で、先ほども出ていたことでございますが、この安全衛生推進者ですね、これを置くということについて、これは私は非常にいいことだと思うんだけれども、この中基審の中にも書かれていますように、これを設置する規模基準というのは十人以上五十人未満、これまで放置されていたところに置こうと。中小企業というより小規模企業ですね。そして安全衛生推進者、これは借り物じゃいかぬので、これに一定の資格がなきゃいけない。その一定の資格というものを、安全衛生の実務経験を有する者または労働大臣の定める講習を修了した者、こういうふうに中基審では述べているわけなんです。  この辺のところを、労働省としてこのまま額面どおり受けとめて、こういった一定資格のある人たちを推進者として持ち込んでいこうというふうにお考えなのかどうか、確かめておきたいと思います。
  250. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 安全衛生推進者を選任していただく、これは十人以上五十人未満のところではぜひ一〇〇%置いてもらいたいと思っているわけでございます。  そのためには資格要件をどうするかということがあるわけでございますが、余り緩くしてしまってだれでも出られるようなものも問題がございますし、かといって余り厳しくして中小企業が選任できないということでも困るということがございますので、一応、現在、安全管理者、衛生管理者という資格がございますので、その辺を参考にしながらそれよりは少し緩やかな資格で五十人未満の中小企業でも得られるような形にしたい、どうしてもそういった方が得られないような場合については講習等で補充をするというような形でそういったふさわしい方が得られるような形を講じたいということでございまして、具体的にはまた中央労働基準審議会とも御相談をしながら決めることになろうかと思います。
  251. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは非常にいいことだから私は何も否定するつもりもないし大いにやるべきだと思うんだけれども、しかし対象企業というのはごまんとあるわけでしょう。経験者がおれば今までだってこれだけの事故は発生していないわけなんで、いないからやれないわけでしょう。講習を受けさせようと思っても、受け皿をどうするんだ、そんなことできるのかと。一つの産地を形成しているところを見ても、それだけの入れるところがあるかいという問題になって、これは私は非常に重要な問題だと思う。だから、絵にかいたもちのようにならないように私は綿密な手はずを整えなければ、看板は非常に美しいけれども、実体は伴ってないじゃないか、またそこからくるトラブルというものがあるんじゃないかなということを危惧します。  だから、やめろと言うんじゃないですよ。大いにやらなきゃいけないし、我々も大いに応援しなきゃいかぬと思うんだけれどもそこら辺のところは十分ひとつ配意して措置していただきたいと思います。  それから、産業構造の変化、技術革新というのが非常にスピードが遠い。それに伴ってどんどん職場環境の変化もテンポを速めてきているわけです。それに対応するような形で必要な知識をこの安全衛生管理者が持つということは、私は大変なことだと思う。だから、従来のようにルーチンに仕事がずっと動いている装置産業なんかではどうということはないんだけれども、昨今のような状況の中ではそれらを本当に熟知した形で安全衛生管理者がついていくということは、これはもう本当に専従で随分勉強もしていかなきゃならないことになるわけなんで、そういった面における管理者の能力向上、レベルアップという面、それは単にもっとレベルを上げるというよりついていかすための教育というものが私は必要だと思う。  そういった意味で、ただ置いておけばいいということじゃないわけなんで、どのように取り組むお考えなのかを聞いておきたいと思うんです。
  252. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) ただいま先生のお話しのように、安全衛生管理制度がまさに成果を上げるかどうかというのは、これらの管理者が最新の知識、技能を持って安全衛生面における所要の業務が行えるようにしていくということが中核になることは言うまでもございません。  したがいまして、従来からこれらの管理者が本当に職務が遂行できるような教育、能力向上が常に必要であるということが言われてきたところでございまして、そういう観点から今回の改正におきましては能力向上を図るために教育を行うこと、さらにまたこれらの教育を受けるような機会を事業主が与えるように努力義務として設けたというのも今先生のお話しのとおりでございまして、今後これらの教育が適切に行われるようにするために労働大臣は必要な指針を公表いたしまして、この指針に基づいて事業者あるいは団体が必要な指導教育が行われるように指導を図るように努めてまいりたいと考えております。
  253. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 現在の労働安全衛生法で作業環境測定対象となっている十種の作業場のうち、粉じんを発散する事業場等四種の作業場改正案で測定評価対象となる。改善が必要な場合には必要な措置をとることになっていると思うんでありますが、これらの作業場はどういう考え方基準で選んでいるのか。また、評価の結果に基づいてどのような事後措置を事業主にとらせるのか、このことについて教えていただきたいと思います。
  254. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 現在作業環境測定をしていただいておりますのは十種の作業場がございます。その中で今回四種の作業場について評価を行うことにしたわけでございますが、それは測定対象の物質の性質上、個々測定値とそれから環境の良否を判断するための基準値を設けておるわけでございますが、単純に測定値と基準値を比較するというのは非常に難しいわけでございますけれども、この四種のものにつきましてはそういった測定値と基準値との評価方法が確立をしたということがございますので、今回その評価をしてもらう、それからその事後措置を講じてもらうということにしたわけでございます。  それじゃ残りの六種についてはどうかといいますと、実は、評価が実に簡単にできるものでございまして、例えば酸欠場所についてははかれということになっているわけでございますが、酸欠については、例えば酸素が一八%以下であればもう直ちに換気をしなきゃならぬ、こういうことでアクションはすぐとれるわけでございます。したがって、今回は、改めて評価しろと言うまでもなく、いろんな措置がもう既に講じてあるということで対象にはしていないということでございます。  実際の措置といたしましては、測定した結果によりまして第一管理、第二管理、第三管理とこう区分分けをするわけでございますが、第一管理区分は良好でございますからそれはもう措置の必要はない。第二、第三になりますとやはり問題がございますので、それに応じて環境の、例えば有害物質が発散している場合には原因究明のための点検を行うとかあるいは局所排気装置を設けるとかそういったいろんな面での、あるいは作業工程を変えるなり方法なりを変えるなりこういったことを講じてもらう、こういうことを考えているわけでございます。
  255. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 第一管理に入るまで継続的に年に二回測定をずっとこの四業種については続けていくということですね。
  256. 松本邦宏

    政府委員松本邦宏君) 第一管理に入らない例えば第二、第三の場合には、特に第三の場合です と非常に有害でございますから直ちに措置を講じてもらうわけでございまして、その措置を講じた結果が本当に措置どおりいったかどうかというのは直ちにまた測定をして、その措置の結果を見てもらうということになるわけでございます。その上で、今おっしゃったように年に二回の定期的な測定をしてもらう、こういう形になるわけでございます。
  257. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 もうこれでやめますが、たしか金沢だったかで日本産業衛生学会というのが今開かれておると私聞いておるんですが、労働衛生についての学会だろうと思うんです。  私も仄聞しているところですが、大変な盛況のようでございまして、とりわけ先端技術、ME機器の導入などによる、俗に言うVDT労働についての問題あるいはシステムが非常に巨大化している、そのことにおける単純な人間のミス、エラーが及ぼす災害、例えば、よその国のことを言って申しわけないけれども、上海におけるこの間の列車事故あるいは日航ジャンボ機の墜落事故、さらにはスペースシャトルの事故なども一応議題になって、我々がここで細かい論議をしておることとはまた別な角度からシステムの巨大化に伴う人間のエラー、そしてそれが一挙に多くの人命を損なう、それをどういうふうにするのかというような貴重な意見が出ているようです。きのう、おとといのことだから私まだ細かいことは承知していないんです。  そこでもそのように論議されていることでありますが、この改正案の中でも六十五条の三で「事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない。」という「作業の管理」という条項があるわけだけれども、とりわけVDT労働に対する作業の管理というものを、私は的確に事態を把握して処置しなければいけない時期じゃないかなというふうに思うんです。  そういった意味で、先ほども内藤さんの方からびっくりするような残業時間の問題も出ておりましたが、現在の勤務体制というものも随分多様化しているわけですから、現在の休憩時間とかいうような問題についても労働省指針というものを再検討すべきじゃないかというふうに私は思っているんです。もっと柔軟に対応して、そして視点をきちっと労働者の安全衛生に、冒頭にあなたがおっしゃった趣旨に基づく方向性をきちっと見出す指針に持っていくべきじゃないかなという気がするので、その辺のところのお考えをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  258. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 作業管理に関する規定は、たとえ作業環境が良好でありましても作業の仕方自身によっては例えばストレス、疲労というのが出てくるわけでございまして、そういうことにならないように作業を適切に管理するということを考えているわけでございます。  具体的には、今お話にございましたような連続作業時間と休憩時間の適正化の問題ですとかあるいは作業量の問題、作業姿勢の問題といったようなことがあるわけでございまして、今御指摘のVDT作業などはまさにその例でございまして、昭和六十年には御存じのとおり安全衛生上の指針を公表しておるところでございますが、さらに本年度VDT作業に関する実態調査を行う予定にいたしておりまして、これらの結果等も踏まえましてさらに検討をしてまいりたいと考えております。
  259. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上をもちまして、ただいま議題となっております労働問題に関する調査につきましては本日はこの程度にとどめ、労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、労働安全衛生法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  260. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、山本正和君から発言を求められておりますので、これを許します。山本正和君。
  261. 山本正和

    ○山本正和君 私は、ただいま可決されました労働安全衛生法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     労働安全衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一、労働者の健康の保持増進を図るための措置を促進するため、専門家の養成、実施機関の育成その他必要な基盤整備に努めるとともに、事業者に対し必要な指導援助を行うこと。  二、労働者が産業の場で取り扱う化学物質について、労働者の健康を確保するために必要な表示の充実を図るとともに、安全衛生教育が徹底されるよう施策の充実強化を図ること。  三、健康管理手帳について、知見の集積に努め、必要に応じて交付対象業務の範囲の拡大について積極的に検討を行うこと。  四、産業医確保のための積極的対策を講ずるとともに、産業医制度充実を促進する具体的方策を拡充強化すること。  五、労働安全衛生水準の向上に資するために、労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント制度の活用を図ること。  六、ME化、サービス経済化の進展等に伴つて生じている新たな労働災害・職業病を防止するため、関係法令について、実態に即したものとなるよう見直しを行うこと。  七、本改正法の円滑な施行を確保するため、労働基準監督官、安全・衛生専門官の増員と、労働安全・衛生を担当する行政体制の整備拡充を図り、労働災害の防止に即応できる態勢を確立すること。   右決議する。  以上でございます。
  262. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいま山本君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  263. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって、山本君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中村労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中村労働大臣
  264. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましてその御趣旨を尊重いたし、努力する所存でございます。
  265. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  266. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 全会一致と認めます。よって本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案に対する審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  267. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  268. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 次に、特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案並び駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案の両案を 議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。中村労働大臣
  269. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) ただいま議題となりました特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  我が国の景気は現在のところ拡大局面にあり、最近の雇用失業情勢は求人倍率が上昇を続けるなど総じて改善傾向にあります。しかしながら、こうした中でも石炭、造船、非鉄金属等の構造的不況に陥った業種においては、相当程度雇用調整が行われるなど依然として厳しい状況にあります。また、円高や対外貿易摩擦を背景に、内需主導型の産業構造への転換を図ることが国民的課題となっており、その過程において産業・職業間の労働力需給の不適合の拡大や雇用調整の増加など各種の雇用問題が発生するおそれがあります。  このため、構造的不況業種の労働者や今後の産業構造の転換の過程において雇用面での影響を受けることとなる労働者に関し、失業の予防を中心とした雇用の安定のための施策を積極的に進めていくことが重要な課題となっております。  政府といたしましては、こうした課題に適切に対処するため、特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法について、その廃止期限の延長を図るとともに、失業の予防対策の充実等を図ることとし、その案を関係審議会にお諮りした上、この法律案を作成し、ここに提出した次第であります。  次に、この法律案の内容につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一に、法の廃止期限を七年間延長して、昭和七十年六月三十日までとすることとしております。  第二に、特定不況業種に係る事業所以外の事業所のうち、事業規模の縮小等に伴い相当数労働者が離職等を余儀なくされるおそれがあると労働大臣が認定した事業所を特例事業所として本法の失業の予防措置の対象とするとともに、下請事業主範囲を拡大することとしております。  第三に、特定不況業種事業主が作成することとされている現行の再就職援助等計画を、雇用の維持及び再就職の援助のための措置に関する計画、すなわち雇用維持等計画とするとともに、特例事業所の事業主は、失業の予防のための措置に関する計画を作成し、公共職業安定所長の認定を受けることができることとしております。  第四に、事業の転換による雇用機会の確保など、関係労働者の失業の予防に特に資すると認められる措置を講ずる事業主について雇用保険法の雇用安定事業として特別の措置を講ずるとともに、事業主が在職者の職業の転換のために必要な教育訓練を円滑に実施できるようにするため、職業訓練の実施について特別の措置を講ずることとしております。  なお、この法律は、一部の規定を除き、本年七月一日から施行することとしております。  以上、この法律案の提案理由及び内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  続きまして、ただいま議題となりました駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、それぞれ、駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法に基づき、特別な就職指導実施、職業転換給付金の支給等各般の施策を講ずることにより、その再就職の促進と生活の安定に努めてきたところでありますが、これら二法は、前者が本年五月十六日限りで、また後者が本年六月三十日限りで失効することとなっております。  しかしながら、駐留軍関係離職者及び漁業離職者につきましては、今後においても、国際情勢の変化等に伴い、なおその発生が予想されますので、政府といたしましては、現行の駐留軍関係離職者対策及び漁業離職者対策を今後とも引き続き実施する必要があると考え、そのための案を中央職業安定審議会にお諮りして、その答申に基づき、この法律案を作成し、提案した次第であります。  次に、その内容を御説明申し上げます。  第一に、駐留軍関係離職者等臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十八年五月十六日までとすることであります。  第二に、国際協定締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の有効期限を五年延長し、昭和六十八年六月三十日までとすることであります。  以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上であります。
  270. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時七分散会