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1988-03-31 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 斎藤 十朗君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 浜本 万三君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    国務大臣        労 働 大 臣  中村 太郎君    政府委員        労働大臣官房長  清水 傳雄君        労働大臣官房会        計課長      椎谷  正君        労働省労政局長  白井晋太郎君        労働省労働基準        局長       野見山眞之君        労働省労働基準        局安全衛生部長  松本 邦宏君        労働省婦人局長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局長       岡部 晃三君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        竹村  毅君        労働省職業能力        開発局長     野崎 和昭君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        文部省初等中等        教育局特殊教育        課長       下宮  進君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (労働省所管)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題といたします。  予算説明につきましては、労働大臣から既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 まず、大臣お尋ねしたいと思うんですけれども、六十三年度労働行政について、どのような点に重点を置かれて行政推進されていくのか、そのお考えをまずお聞きしたいと思います。
  4. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 私は、労働行政の最大の課題は働く人たち一人一人の生活向上を図り、名実ともに豊かな勤労者生活を実現することにあると考えております。  最近は、景気は拡大いたしまして、相対的には雇用失業情勢改善をいたしておりますけれども、なお高齢化あるいは国際化技術革新進展産業構造転換等依然として厳しい環境下にあるわけでございます。  このため、昭和六十三年度におきましては、産業地域高齢者雇用プロジェクト実施しまして、労働力需給の不均衡の改善を図り雇用の安定を確保することが大事であると考えております。  また、豊かな勤労者生活という面では、勤労者の間におきましてはみずからの生活につきまして十分な満足感がない。このため、労働時間の短縮勤労者福祉対策等施策を積極的に推進してゆとりのある勤労者生活の実現に努めてまいります所存であります。
  5. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今、大臣の方から御所見をお伺いいたしました。  そこで、労働省の方にお尋ねをいたしますが、六十三年度予算概要についてひとつ御説明を願いたいと思うんです。
  6. 椎谷正

    政府委員椎谷正君) 労働省関係の六十三年度予算案概要につきまして、かいつまんで御説明を申し上げます。  一般会計特別会計とがございますが、一般会計は四千八百九十億円ということでございまして、前年度に比べますと六億円、〇・一%の増加でございます。  それから、特別会計のうちの労働保険特別会計でございますが、この中に労災勘定雇用勘定と二通りございますが、労災勘定につきましては一兆八千三百五十八億円ということで、前年度に比べまして四百三十九億円、二・四%の増加となっております。また、雇用勘定につきましては二兆四千二十二億円、前年度に比べまして千六百五十二億円、七・四%増の金額を計上してございまして、積極的な雇用対策を講ずることとしております。もう一つ特別会計石炭並びに石油及び石油代替エネルギー対策特別会計石炭勘定というのがございます。これは炭鉱離職者の再就職促進のための経費でございますが、二百十八億円、前年度に比べまして二十三億円、一一・八%の増を計上してございます。  以上、合計いたしますと、労働省の全体予算規模は四兆七千四百八十九億円ということで、前年度に比べまして二千百十九億円、四・七%の増加となっております。  その内容を新しい事項を中心にしまして御説明申し上げますと、まず産業構造就業構造の変化に対応した労働対策がございます。  これは、円高産業構造転換労働力高齢化等進展する中で産業職業地域年齢間における労働力需給ミスマッチによりましていろいろな雇用問題が生じるおそれがあるということで、これに適切に対応します構造転換雇用対策実施が極めて重要な課題となっております。  このために、産業地域高齢者雇用プロジェクトというのを実施することといたしまして、そのための予算額としまして千百四十三億円を計上させていただいております。  また、これに関連しまして、産業対策拡充強化を図るための法律案を国会に提出しまして御審議を願っているところでございます。  このほか、雇用対策としまして、総合的雇用情報システムを活用しました職業紹介産業情報提供業務等充実によります労働力需給システム整備、さらにパートタイム労働者の総合的な福祉 対策検討あるいは外国人労働者の導入のあり方の検討等を行うこととしております。  次に、総合的な勤労者福祉対策がございます。  中小企業福利厚生面充実を図るために、中小企業事業主勤労者が共同して総合的な福祉事業を行うことを援助します中小企業勤労者総合福祉推進事業を創設することとしております。  そのほか、勤労者財産形成促進制度につきましては、その整備充実を図るために、最高貸付限度額引き上げ等改善を行うこととしております。  次に、労働時間の短縮等労働条件向上対策がございます。  週休二日制の普及等労働時間の短縮は極めて重要な課題であることから、中小零細企業におきます労働時間制度改善に対します援助等改正労働基準法の円滑な施行に努めるとともに、労働時間短縮に向けまして社会的、国民的合意形成及び産業別による週休二日制の推進等労使自主的努力に対します指導援助を積極的に行うこととしております。  さらに、労働者安全衛生確保としまして、特に労働者健康確保を進んで行うということで労働者健康確保事業助成制度を創設しまして、労働者心身両面にわたります健康確保に必要な人材養成等に対する援助を行うこととしております。  そのほか、労働者職業生涯を通じました適切な能力開発を行うための職業能力開発対策でございますとかあるいは長寿社会への対応、さらに男女雇用機会均等確保等女子労働者対策ですとかあるいは障害者等特別の配慮を必要とする人々に対します職業生活援助等対策あるいは我が国の国際的地位にふさわしい労働外交推進等を図ることとしております。  以上、大変簡単でございますが、概要を御説明申し上げました。
  7. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 全部予算書に載っておる部分についての概略の説明をいただいたわけですが、先ほど大臣もおっしゃったような六十三年度重点施策があると思うんです。  一つは、産業構造転換等対応した雇用対策内容等についての問題。  今概略予算的な説明がありましたが、労働基準法改正されて四月から施行されますが、労働時間の短縮問題について具体的にどういう措置をとっていくのか。  あるいは、中小企業対策として勤労者福祉対策内容が提起をされましたが、具体的にどういう対応をやっていくのか。  そこらについて、ひとつ重点施策の具体的な内容についてお聞きしたいと思うんです。
  8. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) お尋ね産業構造転換に伴うところの雇用対策でございます。  大臣から申し上げましたように、産業地域高齢者雇用プロジェクト推進することにいたしておりますが、その具体的な内容といたしましては、まず特定不況業種雇用安定法改正など産業雇用対策充実強化するということでございます。  それから、地域雇用開発中心といたしまして総合的な地域雇用対策推進するということでございます。  第三点といたしまして、高年齢者雇用機会確保事業を行うことでございます。  それから第四点といたしまして、円滑な職業転換のための職業能力開発促進を行うということでございます。  昭和六十三年度におきましては、これによりまして雇用の安定に万全を期したいと考えております。
  9. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働時間の短縮の問題につきましては、この四月から施行になります改正労働基準法の円滑な施行にまず全力を尽くすということでございますが、そのほか労働時間短縮に関する国民的コンセンサス形成していくという観点から、労働時間短縮政策会議、これは昨日第一回を開催いたしたわけでございますが、これらによりまして国民的な合意形成に努めていくということ、あるいは新しい労働時間短縮計画を策定いたしまして各方面における労働時間短縮に向けての施策推進を図っていくこと、さらには中小零細企業に対するきめ細かな指導援助等によりまして自主的な取り組みを促進していけるように労働時間制度改善援助事業推進していくこと、あるいは労働時間短縮のいわゆる波及効果の大きい金融機関公務員等に関する完全週休二日制の推進のための働きかけなど各種施策を積極的に推進することによりまして週休二日制を中心とします労働時間短縮の実を上げてまいりたいと考えております。
  10. 白井晋太郎

    政府委員白井晋太郎君) 先ほど会計課長の方から御説明申し上げました中小企業勤労者総合福祉推進事業の創設に関する問題でございますが、勤労者福祉問題につきましては、中小企業と大企業との間に格差があること、この格差を埋めていかなければならない、またその高齢化進展勤労者福祉に対するニーズ多様化という事情対応して福祉について勤労者の生涯にわたる総合的な形での拡充が必要であるということでございまして、そのために、中小企業勤労者が生涯にわたって充実した生活を送ることができるように従来から中小企業退職金共済制度実施各種福祉施設設置等施策を講じてまいったわけでございますが、昭和六十三年度には中小企業勤労者総合福祉推進事業を創設する予定でございます。  この事業は、市区町村単位中小企業勤労者のための総合的な福祉事業、例えば、不時の災害等重点を置いた共済給付福祉施設割引利用あっせん等事業を行う中小企業勤労者福祉サービスセンター(仮称)を整備しまして、これに対して市区町村を通じて運営費等助成を行おうとするものでございます。
  11. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 一応重点的な政策について説明をいただいたわけですが、そこで、私は、労働政策全般の問題について、大臣所信表明なりあるいは今の決意等をお聞きしまして、かなり評価する部分もあるというように思うわけです。  しかし、まず、どうしても私自身が疑問に思うのは、第一に、労働省予算一般会計縮小化が非常に進んできておりまして労働保険特別会計への依存度が年々高まってきておる。六十三年度のこの予算を見てみますと、労働保険特別会計に対する依存度はついに八九・二%に達したと。  こういうふうに労働保険特別会計の方に依存度が非常に高まっていくこと自体について労働省としては一体どういうふうにお考えになるのか、お聞きをしたいと思うんです。
  12. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 先ほど説明を申し上げましたように、労働省予算規模一般会計四千八百九十億、これは前年度に対しまして六億円、〇・一%の増ということになっております。それから労働保険特別会計労災勘定が一兆八千三百五十八億円、雇用勘定、これは積極的な雇用対策を講ずる必要から二兆四千二十二億円、炭鉱離職者対策石炭勘定二百十八億円、合計いたしまして四兆七千四百八十九億円でございます。  ただいま御指摘のように、特別会計の割合が非常に大きいということでございます。これは、雇用保険法に基づきます失業者生活の安定を図るための失業給付費、また被保険者等に対します失業の予防なり雇用構造改善あるいは能力開発向上、こうしたいわゆる雇用保険事業実施経費労働保険特別会計雇用勘定において計上いたしておりあるいは被災労働者に対する保険給付費等に必要な経費労災勘定計上をいたしているためでございます。  一般会計におきましても雇用保険制度に対する一定の負担あるいは保険制度では行えない各種雇用対策費計上をいたしておるわけでございまして、特定不況業種離職者に対する就職促進手当あるいは急速な高齢化対応するためのシルバー人材センター拡充、こうした予算一般会計負担ということにいたしておるわけでございます。  そういう状況事情にあるわけでございますが、いずれにいたしましても、今後とも一般会計 と今申し上げました特別会計制度による施策とを適切に組み合わせて総合的な労働政策推進に万全を期してまいりたいと、こういうふうに考えているところでございます。
  13. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今官房長の方からそういう御答弁をいただいたわけですが、内容を見ますと、例えば、一般会計の中で労働省職員人件費が一千百九億四千四百万円、失業対策費が三千五百七十八億八千百万円、この二つで九五・九%を占めておるわけです。  そうしますと、大変な政策的な重点政策をなされておりますが、一般会計実施をする部分というのは、今官房長がおっしゃった例えば人材シルバーセンターの問題とかありますが、もうわずかの財源しかないんじゃないか。例えば、昨年度の三十万人雇用開発プログラムあるいは本年度先ほど説明がありました産業地域高齢者雇用プロジェクト、この事業費は、ことしの場合が千百四十三億一千二百万円計上されておる。確かに、私自身も、労働保険特別会計から負担をするということも結構ですが、これを拡充するという立場からも、国の方で一般財源から持ち出してより強化を図るべきではないかという気がしてならないわけです。  新しい政策として取り組む場合、労働省一般会計の方から大いに支出をしていって全体的な労働行政推進を図るというのが基本ではないかというふうに私は思うんですが、そこらについてどういうふうにお考えですか。
  14. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 御指摘の点につきましてはごもっともな点もあるわけでございますが、しかしながら一般会計につきましては、厳しい行財政改革のさなかで毎年三角を立てるというふうな状況で、伸び悩みであるわけでございます。一方、雇用保険特別会計につきましては、これは労使負担によりまして、そしてまた一般会計からの繰り入れによるところの失業給付、それから事業主負担分財源といたします雇用保険事業ということで運営しているわけでございまして、このような行財政事情のもとにおきまして雇用勘定によりましてこのような施策を行い得るということはむしろ政策的には有利な面もあるという点も御理解をいただけると思うのでございます。  私ども、いずれにいたしましても、一般会計をより以上獲得する努力は今後とももちろん続けてまいるわけでございますが、現在のところございます雇用保険財源をもちまして適切なる施策を進めるということは、これは、現在、中心的な手法としてやむを得ざるところという状況でございます。
  15. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 国の予算全体の問題から見ればというお話もありましたが、私は常に言っておりますが、ああいう軍備費なんか必要ないんだから、そういう部分をひとつ大いに回してもらって、国内の労働者の安全とか失業をなくしてもらいたい。そういう立場から申し上げておるわけですが、まず今の日本のあるいは日本だけじゃなくて世界全体の産業構造の大きな転換の中で、私は、労働行政というのは非常にたくさんの業務が山積をしておるというふうに実は考えておるわけです。  今、重点政策などでお話がありましたように、高齢化社会の問題なり多くの労働災害の問題あるいは全体的な労働者福祉向上の問題とかそういう問題を含めて実はたくさんの業務があるわけですが、本年度予算書を見てみますと、労働省全体としては例えば十九名の定数増になっておるようですけれども第一線労働基準監督官は逆に十八名の減員なんですね。あるいは職業安定所関係についても減員になっておる。今監督署の定期的な監督実施率はわずか五%だというふうに言われておる。間違っておればひとつ御訂正願いたいと思うんですが、違反事業所の率は六〇%を超しておるというふうに言われておるわけです。特に、最近、いわゆる中小事業所における労働災害が多発をしておる。基準監督官の役割あるいは業務というのは非常に増大をしてくるんではないか、またきておるんじゃないか。そういう状況にありながら十八名も減らしておる。そして定期的な監督実施率はわずか五%しかできていない。  だから、そういう点から見て、私は特に先ほどから一般会計問題等を申し上げてきたわけですが、国の全体的な予算の締めつけといいますか、そういう中で、実は労働行政に対する大変なニーズがありながらも、並行して第一線監督官を含めたいわゆる定数削減をやっておる。私自身は、先ほどからいろいろお話がありますが、逆の方向に行っておるんじゃないかという気がしてならないわけですけれども、ここらについてひとつ御見解をお伺いしたいと思うんです。
  16. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 労働省定員関係でございますが、御承知のように、非常に厳しい定員事情定員環境の中にあるわけでございます。  しかしながら、労働行政の分野におきましては、高齢者雇用対策地域雇用対策あるいは労働時間対策、そうした各般にわたりましての行政需要増大ということを抱えておるわけでございまして、私どもといたしましてそれに対応すべく関係職員増員ということは極めて重要な課題として取り組んでまいってきておるところでございます。  六十三年度におきましては、今御指摘がございましたように、十九名の純増確保することができたわけでございますが、これは定員削減始まって以来の初めての定員純増と、こういうことになったわけでございまして、今後ともこうした行政需要の拡大に応じた必要な増員確保あるいは行政体制充実ということにつきましてはさらに努力関係方面の御理解を得つつ重ねてまいらなければならないと、このように考えておるところでございます。
  17. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 ぜひひとつ、これから労安問題についてはまたいろいろ御質問申し上げますが、第一線基準監督官中心にやっぱり増員をしてもらう、そういうことに今後も努力してもらいたいと思っております。  それでは次に入っていきますが、先ほど官房長から一般会計政策の中でシルバー人材センター問題についてお話がありました。特に不況地域と言われております九州北海道あるいは四国関係で、確かに発足当時は人口二十万以上という一つ規定がありましたが、六十一年度以降これがなくなりまして今日に至っておるわけですが、シルバー人材センター月平均労働日数とそれから一日当たり平均賃金はどの程度になっておるかお聞きしたいと思います。
  18. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) お答えいたします。  シルバー人材センター会員の六十一年度におきます月平均就業日数ということを見ますと、北海道ブロックが六・九日、四国ブロックが六・五日、九州ブロックが六・四日ということになっております。  また、一人一日当たり報酬でございますけれども北海道ブロックが三千四百二十円、四国ブロックが三千六百五十二円、九州ブロックが三千二百二円ということになっております。  また、これらのブロックを含めまして、一般的に、就業日数や一日当たり報酬について、今のところ都市規模とか地域により特段の傾向ははっきりと出ていないという段階でございます。
  19. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そうしますと、先ほど申し上げました三ブロックで、発足当時と、既に二、三年経過をしたわけですが、現在の加入の動向について何か調べたものがありますか。
  20. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) まず、全国的な傾向を見ますと、昭和五十五年の発足当時におきましては会員数は四万六千人でございました。これが年々増加いたしまして昭和六十二年三月末現在におきましては約十四万人に達しております。そしてまた、一センター当たり平均会員数も年々増加しているところでございます。  これは各ブロックごとに見ても同様の傾向がございまして、先ほど先生が御指摘ございました北海道四国九州ブロックで見ましてもこの傾向は同様の傾向が出ております。  また、五十九年度末までに設置されましたセン ターのその後の状況というものをずっと調べますと、一部会員数が減少しているというところもございますけれども、大多数のセンターにおきまして会員増加傾向をたどっておるという傾向にあります。
  21. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 五十九年度といいますと、先ほど言いましたように二十万以上の人口地域という一つ規定があったわけですが、センターでの減っておる原因について何かお調べしたことがありますか。
  22. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) 減少している原因ということについて直接的に調査したことはございません。  しかしながら、一部のシルバー人材センターにおいて会員数が減少しているところもございますけれども、この場合、私どもといたしましては高齢等による健康上の理由ということでシルバー人材センターから去っていくケースが多いのではなかろうかというふうに思っております。これは、制度趣旨そのものがなだらかな引退を図るということに重点がございますので、高齢者の方々がシルバー人材センターから去っていくというのも、これは完全な引退の過程に入ったということで、制度の性格上当然出てくるケース一つではなかろうかというふうに思っております。
  23. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 先ほどから労働省の方の報告を聞いていますと、例えば月平均就労日数九州では平均六・四日だ、一日当たり報酬が三千二百二円だ、あるいは、シルバー人材センターそのものの減退の問題についても大体引退をしていっているんじゃないかというお話でありますが、この間、福岡県の筑豊関係で新しく今労働省に申請が出ておると思うのですけれども二つの町が一緒になりまして、設立委員皆さんたち努力発会総会をやりまして、私もそこに参加をしてまいりました。私の住んでおる太宰府市でも実はもう既に発足をしております。ところが、例えば福岡の大牟田とか久留米とか、久留米というのはかなりの都市でありますが、就労の場所といいますか、センターになかなか仕事の発注がないというようなことです。特殊な技術屋さんは別です。例えば剪定をなさる方とかは別ですが、一般の方たちになりますと大体二日ないし二・五日というのが一月の就労日数になっておるわけです。時間給で平均大体五百円です。そうしますと、月に働いて大体五千円かあるいは八千円かというその程度の手取りしかないというようなお話で、それではどうしてもそこに頼っておっては生活ができないということで、いわゆる脱会をされて他に出ていくというお話をたくさん実は聞いておるわけです。  そういう中で、近ごろ一つの特徴的な現象ですが、今まで小中学校の草刈りとかグラウンドの整地事業とかを、特に福岡の場合は産炭地がたくさんあるものですからそこらの一般失対とかあるいはシルバー人材センターの方に発注をしながら実はやっていただいておりましたが、教育の一環だという言い方で生徒と父母に学校の草刈りとかグラウンドの整地とかをやらせる方法に最近変わってきたわけです。私は、まさか文部省がそういう指導をしておるというふうには思っておりませんけれどもそこらはぜひひとつ労働省にお願いをし、御所見をお伺いしたいんです。  地域人材センターというのは、地域高齢者の方々が今までの長い人生の経験を生かしてそして健康で働ける場所をお互いに求めようじゃないかということで設立していったわけですから、ぜひやはり労働省が音頭を取っていただいて各省庁にも働きかけをし、特に文部省なんかはたくさんありますから、そういう関係部分についてはひとつシルバー人材センターの方に各自治体なりあるいは社団法人なんかを通じて仕事を発注してもらうように、ぜひ労働省のそういう取り組みをお願いしたいと思うのですが、御見解をお伺いしたいと思います。
  24. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) ただいま先生からもお話がございましたように、シルバー人材センターというものは、一口に言いますと、地域社会の日常生活に密着した臨時、短期的な仕事を組織的に把握する、そしてそれを会員に提供する高齢者の自主的な団体であるということが基本的な性格でございます。  したがって、仕事の内容につきましても公共機関のものからそしてまた民間企業あるいは個人家庭のもの等多種多様でございまして、契約高もそれらのいろいろな分野における開拓ということもありまして毎年増大しているところでございます。  ただいま先生から御指摘ございましたような学校の草取り等の仕事の取り扱いというものが確かに減少しているものもあるいはあるものと思われますが、その一方で今申し上げましたようないろいろな仕事の分野を広げるそして仕事そのものをふやすということも可能でございまして、シルバー人材センターに対しましてはこうした地域ニーズの変化に柔軟に対応して高年齢者の臨時、短期的な就業機会の拡大を図るよう現在指導しているところでございます。  また、労働省におきましては、増大する高年齢者の臨時、短期的な就業ニーズ対応いたしまして、新たに、例えば市町村が高年齢者の臨時、短期的就業に適した仕事をシルバー人材センターに委託するという場合におきましては、当該市町村に対しましてそれに要する経費の一部を援助する事業、いわゆる高年齢者就業機会開発事業と呼んでおりますけれども、そういうものも実施しているところでございます。  今後とも、シルバー人材センターにおける高年齢者の就業機会の増大を図るということから、すべての面におきましていろいろな育成、援助ということに努めてまいりたいというふうに思っております。
  25. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 ぜひひとつお願いをしておきたいと思います。  次に、失対事業関係の打ち切り問題に関連をしてちょっとお尋ねをしておきたいと思うんです。  例の失対事業の線引きの定年制が設けられまして、その後、労働省なりあるいは本委員会の努力で任意就労として月に十日間、現在三万六千五百円程度で働いてまいりました第一次の線引きの部分の方たちが、ことしの八月でこの制度が切れるわけですね。それでまた失業しなければいけないことになるわけですが、こういう方たちの九月以降の生活手段等について何か労働省で調査をされたことがあるかどうかお伺いしたいと思います。
  26. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) ことし八月で任意就業事業からも引退するという方につきまして、生活手段について調査したことがあるかという御質問でございますけれども、具体的に私の方で引退する方々のそういう面における調査をしたということは今のところやっておりません。
  27. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 私は、この制度が打ち切られて九月から仕事がなくなるわけですから、全部の方とは思いませんけれども、具体的に私らのところにお話が来ておりますけれどもやっぱり生活のできない方がおる。打ち切られた後は福祉事務所に行って生活保護の手続をとらざるを得ぬという方がかなりな数おられるわけです。産炭地関係というのはもうああいうような状態でありまして、母子家庭とかあるいは老人だけの家庭とかいうような部分が多くて、別に年金等を持っていない方も実はたくさんおるわけです。  そういう状況の中で労働省として何か対策を別に考えておるかどうか、あればお聞きしたいと思います。
  28. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) 今先生から御質問ございました任意就業事業でございますけれども、ちょっと御説明申し上げますと、これは失業対策事業ということにつきまして実は六十年十一月に失業対策制度調査研究会報告というものが出ております。その趣旨を踏まえて六十一年八月以降、年齢要件の設定を中心とする制度改善を行うということになっておりまして、その実施の過程で出ておる問題でございます。  この制度改善実施当たりましては、長年にわたって失対事業によって生活を支えてきた就労者の実態というものを十分調査の上、生活の激変 緩和を図るために、例えば特例給付金の支給とか任意就業事業実施というようなものを行ってきたところでございます。そして、実はことし八月にこの期限切れを迎えることになります人たちは六十一年八月に失対事業から引退した方々でございまして、大体最低年齢で七十二歳ということになります。したがいまして、我々といたしましても、年齢から見まして一般的なライフサイクルということを見ますと、これは自己の努力とかいろいろな年金その他のものとか、そしてまた家庭の援助、そういうもの等により生活を維持する時期に移行するまたはした人たちではなかろうかというふうに考えております。  で、とはいいながら、七十二歳を超えましてもまだまだ元気で働く意欲があるという方もいらっしゃるのもこれは否定できないと思いますし、そういう方々につきましては、一般対策として行っております例えば先ほど御質問がございましたシルバー人材センターというようなものも活用していただいて、臨時、短期的な就労と就業の機会の確保ということで我々も努力したいというふうに思っております。
  29. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 全国的に見てという問題じゃありませんが、特に北海道あるいは九州九州でも福岡、長崎なんかが特徴ですけれども、やはり旧産炭地を抱えたところは自治体自身も実は大変な問題になってくるわけです。  こうして制度で切られて退職をしていく。そうしますと、今おっしゃったような仕事の面もあるでしょうが、しかしどうしてもそれでも生活ができないということで、生活保護の申請をしてくるあるいは国保関係の老人医療の方にかかわってくる。それでなくても生活保護関係の自治体での問題あるいは老人医療費関係の自治体での今の特に国民健康保険関係の超過負担の問題なんかもありまして、自治体財政に及ぼす大変な影響もあるわけですね。考えてみれば、国家財政全般から考えた場合は、こちらの方の仕事をやめて生活保護の申請をすれば確かに担当は厚生省の方になるかもしれませんけれども、やはり国からの生活保護費として支出をしなきゃいけない。  だから、国民としてわからないのは、働く意欲があって、生活保護を受けなくても仕事の場があれば仕事をするんだ、仕事の場所がないから生活保護を申請をしなきゃいけないと。であれば、何か厚生省の方の生活保護の予算労働省の方に回して、そしてそういう仕事の場を見つけていただいたらいいんじゃないかというのがやっぱり一般の国民の気持ちだろうと私は思うんです。しかし、残念なことに、縦割り行政の中にはそういう融通性がないというのも今まで指摘をされてきておるわけですけれども、自治体の財政なんかを含めて労働省としてお考えになったことがあるかどうかお聞きをしたいと思います。
  30. 竹村毅

    政府委員竹村毅君) 任意就業事業からの引退者につきましては、先ほど申し上げましたように、一般的なライフサイクルということから見ますと、あとは自助努力ないしは家庭の援助等により生活を維持する時期に移行したのではなかろうかというふうに思いますけれども、任就終了後もなお健康で種々の事情から就労を希望するという者につきましては、先ほどお答えしましたとおりシルバー人材センターその他で、臨時、短期的な就業の機会ということになりますけれども、そういうものを活用して就業の機会の確保に努めてまいりたいというふうに思っております。  なお、非常に高年齢であるということから、健康等の事情からいわゆる一般的な就労が困難であるという方々もかなりな率に上がるということが予想されまして、また年金等のみによって生活の維持をすることが困難であるという者が含まれているということもこれは全くゼロではないというふうに思われます。そういう方々につきましては、やはり就業で対策するというよりも、社会的な被扶養者といいますか、先ほど先生からお話しがございましたけれども、やはりそういう社会福祉政策の中で適切に対応していくことも必要ではなかろうか。私どもとしては、その年齢ということを一応わきに置きまして、働く能力があるかどうか、そういうものを重点にいろいろその仕分けといいますか振り分けも考えて適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
  31. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 それじゃ次に、労働安全衛生法問題について若干質問を申し上げていきたいと思っております。  これは法案審議の段階で詳細についてはお尋ねしていきたいと思うんですけれども、まず全体的に言えることは、かなりな努力がされてそして安全面を含めてかなりな改革案が提案をされておるというふうには実は思うわけですが、私は、この目的を達成するためにはあるいは効果を上げるためには、必要な労働条件とかあるいは労働環境の改善整備がまずもって必要だと思うんですけれども、ここらについてどういうふうにお考えなのか、お聞きをしたいと思います。
  32. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 働く人たちが安全で健康な職場生活を送れるようにしていくということは基本でございまして、このために現行の安全衛生法におきましては危険、有害業務からの保護あるいは衛生面に対する措置など各般にわたりまして安全衛生のための諸施策をやっているところでございまして、労働基準監督機関といたしましてはこれら安全衛生法規の的確な遵守を目標にいたしまして適切な指導監督に努めているところでございますし、同時に、これらの施策を通じまして先ほど申し上げました安全、健康面における確保に努めているという状況でございます。
  33. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今度の改正案そのものの中の内容をずっと逐条的に見てまいります。  私は、労働者自身がみずから健康づくりに努力するのは当然だということは何も否定するものでもありませんし当然のことだと思うんですが、改正案の内容を見てみますと、何か労働者自身の自己の努力ばかりが非常に強調されておる。企業の方は、例えば健康度の測定とかあるいは運動指針が中心に置かれておりまして、もちろんそのことも必要ではあるけれども先ほど申し上げましたように労働者というのは、何か非常に強いように見えるかもしれませんけれども、一人一人を見てみれば実は非常に弱いわけです。こういうふうに法律自身で安全面を強めていこうという法律改正をしていただいても、環境の整備ができなければ末端の労働者までにはなかなか行き渡らないというのが現状なんです。  そこで、私はこの間もこの委員会で少し申し上げたわけですが、三月十八日の朝日新聞の「論壇」の問題を提起をいたしました。これは、秋田県の出稼組合連合会の会長の方が投稿なさった問題で、約四週間御本人があるいは手分けをして調査に回って、その現状を報告した内容です。  四月一日からの四十年ぶりの労働基準法改正は、「わが国労働史上でも大きな成果」だと。見逃してならないのは、労働時間短縮を含め、どれほどの労働者が享受できるのか。現実は、二十年、三十年と同一事業所に出稼ぎ勤続している人にも「一日の有給休暇さえ与えていない企業が多い」。日曜出勤等の割り増しの保障もないところが多く、正月明けから二月中旬まで、一日の休みもない連続労働の実態である。「労働安全と健康保持の上で、このようなむちゃが許されてはならない」というようなことがこの「論壇」の中で出ておりました。  そういう現実があるわけです。ですから、先ほど申し上げましたように、法律改正をする、しかし法律改正をしても点検に回る監督官すらおらない。先ほども言いましたが、十八名もことしの場合減員になっておるんじゃないか、そういう状況であります。  続けて申し上げますが、この「論壇」の中では、特に末端零細建設現場の宿舎を中心に問題の多いことを指摘しています。内容はこうなっております。「疲れ切った心身を温めてくれる、もう少し人間としての配慮がほしい」。秋田出身者が約二万二千四百人加入しているこの会では、ことしの三月一日までに出稼ぎ先の死亡者が三十九人、昨年に比べ八人多い。特に本年は労災事故死が十三人 と昨年より十人も多くなっている。死亡者三十九人中三十八人が建設業で、年齢も五十ないし六十歳代が八五%を占めている。このことは「出稼ぎ者の高齢化労働環境の相関を思わずにいられない。」。「現行法にさえ置き去りにされている多くの底辺労働者」の「いる事実を忘れてはなるまい。」というふうに「論壇」で結んでおりました。  私が申し上げたいのは、今度の改正労働者そのものの努力が非常に強調されておる。それも必要でしょう。がしかし、企業側に対してもう少し強い規制あるいは罰則等を設けなければ私は効果が上がらないんじゃないか。例えば安全衛生委員会を置かなきゃいけない、労働組合から再三再三要求してもなかなか使用者側はうんと言わない、そういう問題だってたくさんあるわけです。あるいは、これはこうした方がいいではないかという当面の提案があってもなかなか聞き入れてもらえない。  そういう問題について、今資料を読み上げて申し上げたわけですが、どういうふうにお考えになっておるのか。
  34. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) ただいま渡辺先生のお話十分拝聴いたしました。  例えば、建設業におきましては昨年の労働災害による死亡が遺憾ながら前年よりふえてきたというような状況など、遺憾な状態が発生していることは事実でございまして、お話しのように、私ども行政側といたしましても、労働安全衛生法令に基づく行政の適切な実施はもちろんのことでございますが、先ほどお話がございましたような事業主自身による安全で健康な作業環境の整備を図っていくということについてさらに私どもといたしましても事業主に対する指導等に努めてまいりたい、かように考えておりますし、お話にございました出稼ぎ労働者に対する安全衛生対策あるいは労働条件面の改善につきましても、今般出稼ぎ労働者に対しましても有給休暇の付与につきまして建設業界等に対する要請、指導等を進めていくということなどによりまして改善を図っていくところでございます。  また、今般の労働安全衛生法の改正の目的につきましても、基本的には事業主の責任として働く人たちの健康の保持増進対策について努めるべきであるということでございます。ただ、この場合に、働く人たちの心身にわたる健康は労働者自身の問題でもございますので、労働者自身についてもその面についての努力を要請しているところでございまして、労働者の責任のみを前面に押し出したつもりではございませんで、両々相まって勤労者健康確保増進を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。
  35. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今局長からそういうふうにおっしゃられたんですが、そうしますと、今度の改正案の中での例えば安全衛生管理体制の充実の問題について、例えば安全衛生推進委員等を、であれば何ですべての事業所に設置をするというふうにしないのか。  これは、以前から労働省の方はいろいろと関係の団体ともお話し合いをされてきておると思うんですけれども、私も公務員出身でありまして、いわゆる公務現場と言われる現場にも大変な労働災害の発生が実は相次いでおるわけです。この間も私申し上げましたけれども、私も公務災害の労働側の参与をしておりまして実は再審問題でかなりの件数を扱ってきたわけです。  そういう点から見て、今度の場合、例えば推進委員なんかの設置の問題だってなぜ十人から五十人というふうにするのか、あるいは管理者の設置のところだけがそういう事業場に該当するとか、先ほど申し上げました事故の一番多いのは十人以下ぐらいの小さな事業場が多いわけですが、何でそういうところを除外するのか、あるいは公務職場を何で入れないのかというのが疑問でならないわけです。  そこらについて御見解があればお聞きしたいと思います。
  36. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 事業主がその職場で働く労働者に対する安全衛生に関する確保のための諸対策を講ずることは、大企業であろうとあるいは零細企業であろうと責任の軽重には違いがないわけでございまして、いずれも同様の責任を負っているわけでございますが、現行法令におきましては、五十人以上につきましては既に安全管理者あるいは衛生管理者等によりましてそのための対策を講じているところでございますが、お話しのように、最近、中小あるいは零細における災害の減少が下げどまりの状況にあるということにかんがみ、中小零細企業における安全衛生管理体制の強化を図るという観点から今般お願いしておりますのが五十人未満十人以上というところでございます。  では、十人未満のところはどうするのかというお話でございますが、やはり事業主の責任として安全衛生義務を果たしていくということでございますので、その場合に十人未満のところでは、比較的といいましょうか、事業主自身による目が行き届くということ等も配慮いたしまして、選任義務につきましては十人以上とさせていただいたところでございます。  また、公務、官公関係につきましても安全衛生管理体制の規定の履行の確保ということは重要な問題でございまして、ただその履行確保のための権限行使につきましては、一般の国家公務員の場合を除きまして学校あるいは消防等につきましては人事委員会に交渉してもらう、それ以外につきましては労働基準監督署が権限行使を図るということで安全衛生法令の適用、履行の確保を図っているところでございます。
  37. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 今おっしゃった中で、今度の改正の中でいわゆる推進委員の設置を十人以上五十人未満と、何でここに十人以上というふうに入れなきゃいけないのか。  今十分にその者の目が行き届くというようなことをおっしゃったわけですが、局長、非常に失礼な話ですけれども、私もおやじが中小企業の商売をしておりました。中小企業の雇い主というのは、おやじさんも作業員と一緒になって働いておるわけですよ。十人以下ぐらいのところで目を配って作業員の作業を点検するような余裕はないわけですよ。ですから、そこらについては、さっきから言いますように、安定所なりあるいは基準監督官の方たちが行って安全衛生面の問題についての指導をするとかということで、わざわざ十人以上ということを私は何で限定したのかというのがどうしても疑問で残るわけですが、これは法案審議の段階でまたやっていきたいと思うんです。  じゃ、今出されました公務現場の問題で、例えば人事委員会の関係の問題だとかいろいろありましたが、ぜひ私冒頭お願いしておきたいと思うんですけれども、基準局を中心に公務現場に一緒にひとつ出向いていっていただいてどういう現状か見ていただけばわかるんじゃないか。  例えば、消防の問題で少し申し上げてみたいと思いますが、公務現場の場合、特に事故の発生の多いのは消防、それから学校の給食現場ですね。これは集団で何万食というふうにつくっておるところだってあるわけですが、そういう学校給食現場の問題、あるいは清掃の処理場を含めて清掃業務に携わる人たちの問題、あるいは児童施設関係、もう大きい子どもになりますと四十キロぐらいあるものですから、若い看護婦さんが妊娠をしておる、抱えますとそのことによって流産をするということなんかが相次いで実は起きているわけですね。そういう問題等もありますから、ぜひひとつこれは一緒に現場を何カ所か見ていただいてそしてぜひ御検討願いたいというふうに思うわけです。  実は消防関係で、もう御承知だと思うんですが、レンジャー訓練の事故がありまして亡くなりました。それで訴訟を起こして八年も経過したわけですが、いまだに安全衛生委員会そのものも設置をされていない消防署がたくさんあるわけです。  それで、先日は北海道の小樽でもまた訓練中に事故があって亡くなったわけです。この事故は、はしご車を売った会社側は操作ミスだというふう に当初言っておりましたが、その後いろいろ点検、調査をしましたところ、やっぱりはしごそのものに問題がありました。上から三分の一ぐらいのところから折れまして、そして消防士が落ちて亡くなったわけです。  ところが、問題はここなんですね。例えば、クレーン車なんかについては非常に厳しい機械についての規制あるいは操作についての規制とか免許上の規制等もあるわけですが、はしご車についてはないわけですね。極端に言いますと、私は機械に弱いわけですけれども、大型二種の免許証を持っておって、大型トラックの上にはしごを積んだ。別に何も規制がないわけですからそれで操作ができることになっておるわけでしょう。はしご車を操作をするための資格はこうなきゃいけないとかというものは全くないわけですね。消防協会の方から取り扱いの注意事項は出ておりますよ。消防車というのは、消防士自身の問題もありますが、人命救助ということで人の命も預かるわけです。そして最近の消防車を見てみますと、もう御承知だと思うんですけれども、昔みたいに三階、四階じゃないです。大都市の消防車になりますと七階から十階になってきたわけです。下の基礎の車自身の安全度が実は非常に問われるわけです。しかし、行くのは火災現場で、急がなきゃいけない。ところが、そういう安全に対する指導等についてもこれが常日ごろなかなかされていないということ。ですから訓練の中でもこういう事故が起きるわけですから、災害の現場に行った場合にはかなりな緊急性も要するわけですから、常日ごろの安全に対する教育とかあるいは訓練とか、そしてお互いがそういう厳しい資格要件の中に学んでもらって対応していかなければならない。  そしていま一つの問題は、消防の仕事というのは災害現場ごとに条件が違うわけでしょう。ここに行った場合は化学工場の爆発かもしれない、ここの火事現場は一般の木造家屋の火災かもしれない。何が出てくるかわからないわけですよ。天井から何が落ちてくるかわからない。今問題になっておりますようないわゆるアスベストですか、そういう昔の建築材を使っておる。そういうのが上から落ちてくるとかあるいは化学関係部分が出てくるとか、そういう関係で災害現場ごとに状況が違ってくる。それぞれに対する安全面の対応も心得ておかなきゃいけないわけですが、残念なことにそういうこともされていない。  しかも、消防士の皆さんたちに聞いてみますと、健康診断なんかは一般の事務的公務員と同じように年に一回の健康診断をやるだけなんです。あれほど現場に行って火災の煙を吸い、そういう条件にありながら、いわゆる労働者の安全面については全く取り扱われていない。  公務現場の一つの問題を申し上げましたが、こういう状況にあるから労働基準法の適用の現場としてあるいは監督官監督の現場としてここらはぜひ考え直していただきたいということがあるわけですけれども局長どうでしょうか。
  38. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 一つは、はしご車の問題等もございましたが、これの考え方は、クレーン等につきましては建設業を初めいろんな業種で多角的に使われておりまして、荷物の上げ下げあるいは地上の作業車に対する影響あるいはオーバーロードによる倒壊、そういったいろんな災害が予想されますし、現に出ております。そういった観点から免許制度というものをつくっておるわけでございますが、消防のはしご車につきましては、これは消防という非常に限定された部面で使われるものでございまして、国家試験といいますと現実には労働省がやるわけでございますが、労働省でやる国家試験というよりはむしろ消防をおやりになっている消防自体でそういったものについての教育なり管理なりというものを十分におやりいただく方がいいのではないかということで、消防車の取り扱い等についてはいわゆる国家試験の対象にしないで外しておる、こういうことではないかと思います。  消防の業務そのものにつきましては、一般の工場の業務と違いましてもともと危険が非常に予想される業務でございますので、いわゆる安全衛生法が予定しておりますような一般の工場を頭に置いたような管理体制というよりはむしろもともと危険を予想しておるそういった現場にふさわしいいろんな管理体制なりあるいは教育のあり方なりそういったものを独自にお考えをいただくのがいいというようなことで安全衛生法の直接の対象からは外していると思うんです。一般的にはもちろん安全衛生法の規定の適用はあるわけでございますが、そういう管理面につきましては基準監督官の規制から外して人事委員会の監督にお任せをする、そういう形にしているわけでございます。  それから、健康診断の問題につきましても、これは労働安全衛生法のもちろん適用がございまして、一般的な年一回の定期健康診断というものの適用がございますが、安全衛生法の上でも実は深夜業が絡みます業務につきましては六カ月に一回の定期健診をすることになっておりますので、消防の業務につきましては多くの場合その深夜業が絡むはずでございますから、そういう意味では六カ月に一回の定期健康診断をやるというような形の規制にはなっておるわけでございます。
  39. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そこで問題なのは、そんなに消防というのは危険だ、一般の業務とは違うんだ、だからそこ独自でやっておるんだというふうな今の御回答ですけれども、その管轄は人事院なり人事委員会だと。人事院なり人事委員会で現場に出ていって消防の現場を、例えば安全かどうかというふうに点検してわかる職員がおるろかどうかです。人事委員会というのはもう不利益審査とかそういう問題ばっかしに追われ、こういう面まではこっちから何か人事委員会に提訴しなければ当たらないというのが今の人事委員会の大体の流れなんです。ですから、私は、そういう特に危険がある消防現場なんかは労働省直轄でもいいから調査をやってそういうふうな安全面を強化をする、これは法案審議の段階でもう少し今の御回答を分析をしていきながらやっていきたいと思うんです。  今消防の問題を申し上げましたけれども、それじゃ例えばごみ処理の現場なんかどうです。確かに昔は各自治体が直営でやっておりましたけれども、今は例えばここの部分は一般の民間の下請だ、ここは一部事務組合だ、これは直営だということでやる。しかし、持ってくるのは全部一カ所に持ってくるわけです。処理する現場というのはもう民間だろうと公的な機関だろうと一緒になってしまっているわけです。そういう部分について民間の方は労働基準法適用だ、ところがほかのところは適用がない——ないことはない、少しありますけれどもそこらの問題についても、私が言いましたように公的現場そのものをもう少し見直していただいて、そしてやはり労働基準法の言う完全な安全管理体制をしいていく。そういうことできょうはとりあえずその程度にしておきたいと思うんです。  それからいま一つ、安全管理体制の問題で、実はこれは労働省も非常に怠慢ということでやられた事件でまだその後解決をしていない問題でもあるわけです。  五十五年十一月六日の本院の社会労働委員会での問題ですけれども、いわゆる健康管理手帳の問題について我が党の当時の安恒良一委員が質問をいたしました。いわゆるコークス炉関係に従事する労働者について健康管理手帳を渡したらどうかと。その当時の法律が製鉄関係のコークス炉以外には渡せないというふうになっておる状況であったけれども、ここに当時の望月説明員の答弁もあるわけですが、こういうふうに言っておるわけです。安恒委員が   現在は、タールによる肺がんは製鉄関係の各コークス炉、ガス炉、こういうものは職業病として認定をされています。ところが、タールによる肺がんというのは都市ガス、それから化学の各コークス炉、ガス発生炉関係の職場にも残念ながら拡大をいたしております。 ということで三井東圧のあの大牟田事件をここで申し上げておるわけです。肺がんの認定がされたということで、だからぜひひとつ、製鉄関係だけ でなくて化学の各コークス炉あるいはガス炉の関係とか都市ガスとかそういう関係部分についても管理手帳の交付を拡大をしていくべきではないかという質問に対して、望月説明員の方から  労働者に対する健康管理手帳の制度がございますが、これは製鉄用コークスまたは製鉄用発生炉ガスを製造する業務に五年以上従事した者にのみ交付することとしておるわけでございますが、 これからが問題です。「が、」ということになって、以下飛ばしますが、  その従事する業務がその業種のいかんを問うものではなくて、製鉄業という業種だけに限らず、ほかの業種であっても、そういった同じ業態であればそれに対して適用をしていくという考え方になっております。都市ガス業でも化学工業でございましても、当該事業所において製鉄用のコークスを製造する業務に五年以上従事したという経験を有する者であれば、当然手帳の交付の対象になるというように考えております。  ところが、これについて健康管理手帳を現在支給しておりますかどうですか。発行しておるかどうかです。
  40. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 現在発行しておりますのは、製鉄用コークスあるいは製鉄用発生炉ガスを製造する業務、その中でコークス炉上においてあるいはコークス炉に接してあるいはガス発生炉上において行う業務に限っております。
  41. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 そうしますと、先ほど言いましたように望月さんが回答された内容ですね、製鉄だけでなくてこういうものにも当然交付されますよと言ったこのことが実行されていないわけでしょう。  このときに大臣も言っておるわけです。藤尾大臣も  御指摘のとおり、私は怠慢のそしりを免れないと思います。したがいまして、そのことを頭に置きまして十二分にこれから指示をいたしまして、十二分な対応ができるように私は指導いたします。 というふうに大臣がおっしゃった後、この問題で望月説明員がそういう御答弁をなさっておる。少なくとも五十五年ですよ。それから後も、都市ガス関係の現場だってたくさんあるものですから。  私は、もう時間が余りありませんが、この法案審議のときにもう少し詳しく御質問申し上げていきたいと思うんですけれども、これほど日進月歩で産業構造が変わっていく。あるいは、化学物質を含めて、日本で何十万、何百万という事業所で数千万人の労働者が毎日働いておるわけです。そうしますと、その日々にどう対応していくか、安全のためにはどう対応するかというのが労働安全衛生の私は原則でなきゃいけない、基本でなきゃいけないというふうに思うわけです。少なくとも五十五年にこういうお約束をしておって、いまだに健康手帳が交付をされていないということについては、藤尾大臣もその当時言っておりますけれども、怠慢だというふうに言われてもいたし方ないと思うんです。  だから、もしも私の見落としであれば、あるいは何かがあって今まで交付をしていなかったといういきさつがあればお聞きしたいわけですけれども、直ちにこういう手帳については交付をすべきだと思うんですけれども、この点についてはどうですか。
  42. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 御承知のように、健康管理手帳は、有害業務に従事しておる労働者につきまして、業務従事中はいわば事業主が管理をするわけでございますが、退職後は管理をする者がいないということで国の方で手帳発給をいたしまして健康管理をやる、こういう制度でございますが、ただ、一定の業務に従事したすべての労働者に発給するかどうかということになりますと、やはり一定の期間従事した労働者に限らざるを得ないということはあると思うんです。一日でも従事していれば出すかということになりますので、それはやはり一定の期間に限らざるを得ない。どういった労働者に限定するかということにつきましては、いろんな疫学調査なりいろんな実態を調査をいたしまして、その結果に基づいて行うということにいたしておるわけでございます。  現在の都市ガス等のコークス炉作業につきましては、現在時点ではそういった疫学的な調査において因果関係が必ずしも明確にされていないというようなことがございますので、一応手帳の対象にはしていないわけでございますが、ただ、御指摘の三井東圧関係のものにつきましては、確かに、製鉄用コークス炉作業以外の作業でございましたが、労災認定をいたしております。これは、その当該コークス炉が非常に旧式のものでございまして製鉄所のコークス炉以上にコークス炉ガスが漏れている、こういった実態を勘案をいたしまして、個別事案として認定をさしていただいたということでございます。  もとより、健康管理手帳が発給をされておりませんでも、個別の認定の結果因果関係が認められれば労災の認定の対象にするわけでございますので、そういった面での救済にもともと遺漏はないと考えておりますし、健康管理手帳そのものの発給問題につきましては、これは実は中央労働基準審議会の方でも対象業務の拡大等については検討するようにというような御指摘もいただいておりますので、また専門家の御意見を聞きながら検討さしていただきたい、かように考えております。
  43. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 私、時間が迫ってきているから余り言いたくなかったけれども、どうも後退したような御答弁をなさるものですから。  健康管理手帳は、その業務に携っておって何かあれば公務災害に認定をしますよというお話でしょう。そうでなくて、公務災害にならないために健康管理をする、事前に管理をすることが目的なんですね。ですから、私が言っておるのは、望月さんがおっしゃったように、一日やったら手帳を渡しなさいというふうには言っていないわけですよ。望月さんも言っておりますように、五年以上というふうに言っておるわけです、今の制度は。五年以上勤務をしておりながらなおかつ管理手帳が渡っていない部分があるじゃないですか、そこはもう、とやかくと言ったら言葉が悪いわけですが、いろいろ言わずにやっぱり管理手帳を渡すべきじゃないですか、こう言っているわけですよ。あとの部分は結構ですよ、専門の皆さん方と論議するのは。  しかし、国会の中で、労働大臣も含めて、政府委員もこういう明確な答弁を五十五年になさっておって、いまだにこれが実施をされていないというところに問題があるんじゃないかというふうに私は指摘をしておるわけですよ。だから、望月さんの答弁についてのこの問題だけ、いまだに交付をされていないということについてどうお考えなのか、そこだけひとつお聞かせ願いたい。この議事録を上げておきましたけどね。
  44. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) 製鉄用のコークス炉の場合の健康管理手帳の交付である限りは都市ガス業あるいは化学工業等についても発給はいたしております。
  45. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 この議事録で望月さんはこうおっしゃっておるわけですよ。  製鉄業という業種だけに限らず、ほかの業種であっても、そういった同じ業態であればそれに対して適用をしていくという考え方になっております。 いいですか。  都市ガス業でも化学工業でございましても、当該事業所において製鉄用のコークスを製造する業務に五年以上従事したという経験を有する者であれば、当然 健康管理手帳を渡しますよ、こう言っておるわけですからこういう方たちに渡してください、こう私は言っておる。
  46. 松本邦宏

    政府委員(松本邦宏君) ここでも当時の望月部長が御答弁しておりますように、都市ガス業でも化学工業でも当該事業所において製鉄用のコークスを製造する場合にはもちろん発給するということになっておりまして、それは現在でもしたがっ て発給をいたしておりまして、むしろ三井東圧の場合には、製鉄用のコークスではなくて、いわゆるガス製造のためのコークス用ガス炉、こういうことでございますので、現在のところではいわゆる製鉄用ではないという意味で発給の対象になっていない、こういうことでございます。
  47. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 それじゃこの問題は、後ほど法案審議の段階で少しやってみたいと思います。  最後に、大臣、ぜひひとつお願いをしたいわけです。  先ほども申し上げましたが、確かに行財政改革という政府自身の大きな方針もある。ところが、これほど急速に進む産業構造転換あるいは高齢化社会、そして何千万という労働者が毎日働いておる現場では化学物質を含めて非常に危険な物も実は扱いながら生産を上げておるという現状にあるわけです。ですから、私自身も、確かに、行財政改革の中では最小の経費をもって最大の効果を上げるというのがこれは政治の国民に対するお約束でもあろうと思うんですけれども、しかし問題は、これから後の労働行政とか厚生省の行政とかいうのは、まあ見方によっては消費的経費というように言う方もおるかもしれませんけれども、私は、それは間違いだと思う。高齢化社会に向けて、あるいは非常に危険が迫っておる労働現場の場合の労働者の安全確保の面からも、私は、逆に労働行政は投資的経費だと思う。そのことによって労働災害をなくしていくあるいは高齢化社会に向けての対応ができていくんじゃないか。  そういう点で、冒頭から申し上げてまいりましたけれども、例えば一般会計の中でいろいろな重点政策を出されておりますけれども、全体的な財政の中で非常に締めつけがひどくて大変だ。私は、労働行政とは投資的経費だ、そういう立場で六十四年度以降臨んでいただきたいと思いますが、最後に大臣の御見解をお聞きしたい。
  48. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 先ほど政府委員からも御答弁申し上げましたように、今政府の方針でございまする行財政改革、こういうものを労働省としましても踏まえながら、なお新しい行政需要にどう対応していくかということをいろいろ考えて、政策の優劣等につきましても順位をつけまして予算編成に臨んでおるわけでございます。  これからも、今御指摘のような点を踏まえながら、一般会計特別会計とどう組み合わせどう調整していくかということを念頭に置きながら、最も効果が上がるような方向でこの組み合わせを考えていきたいというふうに考えておる次第であります。
  49. 渡辺四郎

    渡辺四郎君 終わります。
  50. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 与えられた時間が十分でございますので答えは簡便にひとつお願い申し上げます。  一つは、労働基準法の第八条に、十三項でございますか、「病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業」と、事業の範囲に医療関係のことが入っております。と同時に、医師法に、第四章の第十九条でございますが、応召義務というのがございまして、「診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」こういうのがございます。  で、最近、医療機関も大変法人化が進みまして、医師も勤務者と申しますか、サラリーマンが多くなってきました。それと同時に、この治療というのは医師一人じゃなかなかできない面がございます。もちろん看護婦、看護助手それからコメディカルの方々、特に緊急の場合は重症患者が多いわけでございまして、それに対応するにはスタッフがなきゃならない、そういうようなことがございます。当然、これは一時の緊急避難ということで三六協定だとかそれからまた事後申告というようなことで対応は一応できるかとも思いますけれども、しかしこれもやはり範囲がございまして、限度がございます。と申しますのは、翌日も、入院患者もおりますしどんどん患者さんも来るということで、これは継続してきちっと責任を持ってやっていかなきゃならぬ。  そういう場合におきまして、一つは、これは労働省だけでは非常に難しい問題があるかと思います。法務省とか厚生省とも関係しておるかと思いますけれども労働省の見解として、第一点は、労働基準法がこの医師法より優先するのか、どちらが優先するんだろうか。  それからもう一つは、もう一〇〇%労働基準法というものを守れないことがわかっていてやるというときに、この医師法の応召の義務につきまして、正当な事由ということで、労働基準法違反になるからこれは診療できないということが、これは極めて法律的なことでございますけども、それに対してどういう御見解かお聞かせ願いたいと思うわけでございます。
  51. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 先生のお尋ねのとおり、労働基準法が病院・診療所等についての適用があるということで、今般の改正によりまして原則として週四十六時間以下に持っていっていただくということでございます。  で、今お話しのように、診療時間以外に急患が来院するあるいは事態が変わるというようなことで法定労働時間を超えて働かなければいけない場合の対応につきましては、今先生お話のとおり基準法三十六条に基づく時間外協定に基づいて対応していただくこと、あるいは、お話のございましたように事前の許可あるいは事後の届け出によって必要な労働時間就業せしめることができるわけでございますので、これらの規定がございますので私どもといたしましては医師法第十九条に基づく義務と離反するような事態はないかと思っておるわけでございます。  したがいまして、基準法の適用と医師法が十分両立するような形で病院における労務管理等についての御努力をいただきながら両立できるようにお願いしてまいりたいと考えております。
  52. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 それはそのとおりですけれども、私は限度があるというふうに申し上げたんですね。その限度も超えるような場合はどうですかと、こういうことなんです。それに対してちょっと。
  53. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 基準法があるために医師法十九条の義務違反になるということにつきまして、公の場でといいましょうか、エクスキューズしてお話しいただくということは、公共性の強い病院等につきましていかがかというのが私ども考えでございます。
  54. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 そうすると、弾力的にこれは我が方も考えると、こういうことと受けとめてよろしゅうございますか。
  55. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働基準法と医師法とそれぞれの目的に基づいて法律が制定されておりますので、衝突した場合の適用についてまで私どもちょっとここの場でお答え申し上げますのは差し控えさせていただきたいと思います。
  56. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 結構でございます。なかなかそこはお答えにくいところだと思いますので、これは今後の課題として各省庁間でひとつまたお話し合いをしていただきたいと思います。  それから、次は人事院の方針でございますが、国立病院等で四十時間導入に当たりまして、看護婦さんなどの人員をふやさないで、そしてまたサービスの低下もしないでこれに対応できるというようなお話が既にございました。私は、これはちょっと無理じゃないかと思うんですね。看護婦さんの人員は、これはやはりとてもふやさなきゃならない。しかし、看護婦養成については非常に厚生省厳しい状況でございまして、絶対数が足りない、そこへ医療計画でどんどんベッド数はふやしていく、そういう矛盾したことが起きているわけでございます。そういうこともひとつ各省庁間で連絡し合って、実態を踏まえてこれを推進する上において患者さんにしわ寄せが来たりまた働く人にしわ寄せが来ないような対応をぜひ労働省としてもお願いしたい、こういうことでございます。
  57. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 国家公務員の週休二日制あるいは四週六休制の本格実施につきましては、政府全体として推進していくという立場でございますし、労働省といたしましても労働時間短 縮の観点から各方面に対しての働きかけ等しているところでございます。  今お話のような四週六休制の本格実施を行うに際しましては、昨年の十月の閣議決定におきまして「行政サービスの急激な変化を来さないよう、事務処理方法の改善、人員配置の見直し等事務処理体制の整備に努める。」、「現行の予算定員の範囲内で実施する。」という方針とされているところでございますけれども、具体的な運用につきましては、国立病院につきましては厚生省等で十分御検討いただいているかと思いますし、私どもとしてもできるだけの御相談、御協力等につきましても考えてまいりたいと思います。
  58. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 これは地方公共団体とか民間病院等にも波及することでございますので、ぜひそういう点を考慮されて実行に移していただくよう御配慮願いたいと思います。  それから、最後になりますけれども診療報酬改定、これは社会保険診療報酬でございます。そうすると、労災保険でございますが、これは、基本的なものは社会保険診療報酬の点数を準用しておるわけでございます。こういう改定がわかって、いつも労災だけ同時に改定がされないという実態がございます。これは、診療報酬の請求にはやはり今コンピューターを使ってやるところが多いわけでございます。それで今月は旧点数で労災はやる、そして今月から新点数で社会保険はやると、こういうような事務的なことも非常にございますし、これはもうわかっていることですから同時にできるように今後ひとつ努力していただきたいと思いますが、それについてどういうふうになっているかお聞かせ願いたいと思います。
  59. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今お話のとおり、労災保険におきます診療報酬につきましても社会保険報酬に準じて扱っていくというとおりでございます。  ただ、時点でずれるということでございますけれども、労災保険の特殊性から設定しているものについては健康保険との整合性につきまして考慮しつつ改定をしていくということでございまして、もちろん健康保険の改定状況等については十分情報を把握しつつできるだけおくれないようにしていくべきではございますけれども、やはり最終的な改定結果というものを見きわめるという意味で多少のずれについてはやむを得ないのではないかというふうに考えているところでございまして、その辺の事務的な連携等について改善を図るにいたしましてもこの辺の事情についてはぜひ御理解を賜りたいと思っております。
  60. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ぜひそれはずれないように今後努力していただくことをお願い申し上げます。  終わります。
  61. 前島英三郎

    前島英三郎君 先日は大臣、御多忙の中を労働災害に遭われた車いすの全国の代表の方々とお会いをいただきまして、激励も賜りまして大変ありがとうございました。御礼申し上げます。  さて、本日は障害者の雇用対策について質問したいと思うんですけれども、六十三年度改正法の施行雇用率改定で障害者雇用にとりまして特別の年度と言えるのじゃないかと思うんですね。身体障害者雇用促進法から障害者全般にわたる雇用法にも変わりましたし、あしたが四月一日でございますから実施でございます。そういう意味では、ちょうどそういう日に当たりますので大臣の所信と決意を承りたいと思うことと、中でも精神障害者を法律の対象に含めたことは大変評価されると思うんです。実際にはどのような政策の展開をこの精神障害者の雇用の面で考えておられるかもあわせて伺いたいと思うんですが。
  62. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御指摘のように、来年度は身体障害者を含む障害者の雇用促進法が施行になるわけでございます。  お話もありましたように、同時にまた雇用率も〇・一ポイント上がるわけでございます。この面で身障者、障害者の雇用は大変強化されると考えております。労働省としましてもかねてから労働行政の最重点課題一つとして真剣に取り組んできたところでございますけれども、これを機会に一層励んでいかなければならないという決意は固めておるわけでございます。  何といいましても、障害者の雇用に対しまして一般の国民の関心が浸透するように、深まるように一方ではこの努力をいたしますと同時に、さらに障害者の皆さんが健康な人たちとごく自然のうちに自然の中で職場において働くことができるようなそういう環境を整備しなければいけないというふうに決意をいたしておる次第でございます。  なお、具体的な施策の取り組みにつきましては安定局長の方からお答えをいたします。
  63. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 先生お尋ねの後段の精神障害者につきましての政策の展開ということでございますが、精神障害者につきましては、これまでも公共職業安定所におきましてきめ細かな職業相談、職業紹介を行いますとともに、精神分裂病、躁うつ病、またてんかんといった方々でその症状が安定をいたしまして就労が可能な状態にある方々に対しましては職場適応訓練制度を適用いたしまして雇用促進に努めているところでございます。  今後は、さらに法律が改正されましたので、その趣旨を踏まえまして精神障害者に対する職業リハビリテーションの各種のサービスの提供、それから職能的な諸条件についての調査研究の実施事業主と社会一般に対する啓発啓蒙の実施というふうなことにつきましてさらに特段の推進を図りたいというふうに考えております。
  64. 前島英三郎

    前島英三郎君 今度精神衛生法が変わりまして、中間施設的なリハビリテーション体制も厚生省でいろいろ考えていくようですから、そこにまた労働行政のいろんな温かい指導が大切だと思うんです。  精神障害者もそうかもしれませんが、一般雇用になじみにくい重度障害者の雇用促進対策として保護雇用といったことを私もずっとこの委員会で取り上げてきたんですけれども、これまでのところ、いろいろ御検討はいただいているんですが、なかなか経過には芳しいものがありません。しかし、重度障害者の共同作業所といったものがだんだんふえてまいりまして、そういう流れを見ていますと、やはり一般雇用一本では、障害者の雇用というのは自立というのは吸収し切れないんじゃないかという気がだんだんしてくるんですね。  法律改正が行われたことも考慮して、もう一度こういう保護雇用の問題、科学も非常に発達してきましたから、あえてタイムカードを押さずとも、障害者の自立というものは労働行政の中で考え部分というのは幾らでもあるような気がするんですが、その辺は今後も見送りじゃなくてさらに取り組んでいくという姿勢はいかがなものでしょうか。
  65. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 保護雇用の問題でございますが、例えば、イギリスのレンプロイ工場というふうなところで特定の障害者を一定の場所に集中的に雇用、就業させるというような形が喧伝されているような例もあるわけでございまして、重度障害者の雇用の場の確保という上で効果ある手段であるとこれを評価する意見が確かにございますが、一方におきまして、結果的に一般雇用への移動を少なくしてそこに滞留現象をもたらすというふうな問題があるということが昭和五十七年に提出されました身体障害者雇用審議会の意見書等において指摘されているところでございます。  労働省といたしましては、従来から御説明を申し上げますように、ノーマライゼーションの理念に立脚をいたしまして、重度障害者につきましても、民間の活力と申しますかノーハウといいますかを生かしながら、可能な限り一般雇用の場につくというふうなことで施策推進してきた次第でございます。  特に、最近におきましては、民間企業と地方公共団体の共同出資によるいわゆる第三セクター方式による重度障害者雇用企業の育成、これは多々成功例もあるわけでございます。それから、職業リハビリテーションの施策を積極的に推進するという形におきまして、これら方々の雇用促進、安定を図ってきたところでございます。  さらに、昨年六月に策定されました「障害者対策に関する長期計画」後期重点施策におきましても、労働行政は厚生行政との密接な連携のもとにこれらの施策推進していくということになっているわけでございまして、今後ともこの後期重点施策に基づいて対策を進めていきたいというのが現在の労働省のスタンスでございます。
  66. 前島英三郎

    前島英三郎君 確かに一般雇用というのがまずは労働行政の中では大きな柱だということはわかるんですけれども、しかしここ十年間を見てまいりますと、雇用されている障害者数が増加しないという現象が続いていると思うんです。取り組みは労働省もやっていただいているんですけれども、これは、幾ら雇用してもその一方でどんどんやめていっているというようにも見える部分があるんですね。統計上の離職者というのも、例えば六十二年度雇用状況の発表では、新規雇用者が九千八百人あるのに雇用されている障害者の数は千六百人ちょっとしか増加していない。つまり約八千人がやめていったということに計算上はなるんですね。  ということは、やっぱり離職の実態というのも調べていただきたいことと、どんどん時代の流れは変わっていくわけですから、また新たに離職者の調査も含めた保護雇用というものの取り組みをぜひ継続していただきたい。これは障害を持っているがゆえになかなか一般雇用には結びつかないいろいろな問題点があると思うんです。  そこで、これからは厚生行政とそれから労働行政とさらに僕は文部行政との連携というのが大切だと思うんです。それはなぜかというと、養護学校高等部などを卒業してもなかなか雇用されていない。ある学校では百人のうち一人がやっとこさ一般雇用されたというようなケースもあるんですね。  そこで、きょうは文部省にもちょっと課長に来ていただいているものですから、文部省の新年度予算の中に心身障害児職業自立推進のための調査研究というのがありまして、これは新しい前進だと思うんです。前進にしてはちょっとおくれぎみの部分も否めませんけれども、やはり厚生、労働そして障害を持った子供たちに対する職業教育というこの三つが一緒になっていかないと、幾ら労働省で鐘を鳴らしてもだめな部分がある。あるいは、社会の対応についても今の養護学校というような仕組みの中では一般雇用にはどうしても足踏みをしてしまうというようなケースがあるものですから、この心身障害児職業自立推進のための調査研究というのを一つの出発点にして、やっぱり進路指導職業指導というものを文部省にも取り上げていただきたいと思いますし、その辺も労働省との連携を強めていただきたいということで、ひとつ文部省の答弁をお聞きして、また文部行政との連携について大臣のお考えも伺って、もう時間になりますので私の質問を終わらせていただきますが、風林火山で言いますと、まさしくいい政策はやること火のごとく、大臣、ひとつやっていただきたいと思う次第でございます。  では文部省から。
  67. 下宮進

    説明員(下宮進君) 先生御指摘のように、近年における雇用環境の変化とか養護学校の生徒の障害の状態の多様化等によりまして心身障害児の職業自立が大変困難な状況にあるという認識のもとで、私ども労働省、厚生省との連携も図りながら、こういった雇用環境の変化や時代の要請に対応いたします職業教育や進路指導のあり方を労働福祉関係機関との連携のあり方についてもあわせて実践、研究を行いまして心身障害児の職業自立の推進を図りたいということで、来年度予算六百万でございますが計上させていただくことにしているわけでございます。  具体的には、六つの都道府県に事業を委嘱しまして、それぞれの都道府県で教育委員会の中に学校関係者、それから教育、福祉労働行政の担当者、それから企業などの雇用関係者なども入っていただいて、お互いに今後どういう形で雇用推進を図るかというようなことを具体に研究、協議をしていただきます。それとあわせて、盲聾養護学校等の特殊教育諸学校の協力も得て、具体の職業教育のあり方、進路指導のあり方について調査研究をしようということでございます。こういったことを通じて、心身障害児の職業自立に向けて私ども努力を重ねていきたいというふうに考えております。
  68. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 学校卒業者の職業的な自立を円滑にするためには学校当局、文部省と十分な連携をとっていかなければならないということで、かねがね私どもそういう方向で進んでまいったわけでございます。とりわけまして第一線の公共職業安定所におきましては、学校と密接な連携をとりながら在学中の早い時期に御本人の評価あるいは職業指導等をきめ細かく行いましてかなりの成果を上げてきておるわけでございまして、御指摘のように、これからも緊密な連携の中で積極的にこのことを推進してまいりたいと考えております。  私ども政策の遂行に当たりましては静かなること林のごとしであってはならない、かように考えておるわけであります。
  69. 前島英三郎

    前島英三郎君 ありがとうございました。
  70. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 本審査に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  71. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、労働省所管を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  72. 中西珠子

    ○中西珠子君 急速な技術革新円高や内需拡大の要請に対応する経済構造調整の推進産業構造転換労働力高齢化進展、女性の就労増加、強まる核家族化の傾向など急激な経済的、社会的構造変化の中で、勤労者雇用の安定、労働条件の向上労働安全衛生改善勤労者とその家族の福祉の増進などを図る上で労働省の果たされるべき役割に対する国民の期待はとみに高まっております。このように労働省の役割の重要性が増しているのに、財政事情は依然として厳しく、限られた財源の中で各種施策につきまして優先順位を選択せねばならず、財源重点配分をして予算の編成をなさったと伺っておりますが、本当に御苦労さまでございます。労働大臣初め労働省の皆様方の御努力に対して、心から敬意を表する次第でございます。  きょうは予算の中身について少し細かいことをお聞きしたいと思うんですけれども、時間が大変限られておりますので、御答弁の方はなるたけ簡潔にお願いしたいと思います。  まず、一番重要な課題と思われる雇用対策関係についてお伺いいたします。  雇用勘定の方の予算を拝見いたしますと、雇用保険失業給付費を減らして四事業関係費をふやしていらっしゃる。これは政策的な見地からなすっているんだと思いますが、その意味についてまずお伺いしたいと思います。  それから、失業給付の積算の基礎として、六十三年度失業率の予想はどのようになすっているか。また、四事業関係費の内訳などもお聞きしたいと思います。
  73. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 雇用保険失業給付費とそれから四事業関係費の関係ということでございますが、先般来御高承のとおり、労働省重点施策といたしまして産業地域高齢者雇用プロジェクトというものを最大の眼目といたしてここに重点配分を行ったわけでございます。したがいまして、この四事業関係予算といたしましては、六十三年度予算案におきましては六千三百六十八億円、前年比三五・(%増ということで計上いたしまして、これをもちまして失業者の発生を予防しあるいは失業者就職促進をとことんまで追求しよう、こういうことでございます。したが いまして、失業の給付費につきましては、この施策の効果的な実施が実現されますれば失業は現在とそう変わらない水準に維持することができるであろうあるいはある程度の減少を見込むことができるであろうということでございまして、失業給付費は約一兆四千二百四十八億円でございまして、これは対前年約同額というふうな形の予算構成になっている次第でございます。  そこで、次のお尋ねは、失業率の見込みをどんなふうに考えてこの雇用保険失業給付費をやや減らす方向にあるのか、こういうお尋ねでございますが、この失業給付費につきましては失業率とリンクして従来のところ作業は行っていないわけでございます。なぜかと申しますと、失業率というのは雇用保険受給者の実積にそのままあらわれるわけではございません。例えば、今まで労働市場におられなかった主婦層の方が労働市場に出てこられましてそれが失業者計上されました場合に、これは失業率は上がるわけでございますが、雇用保険受給者としては直ちには登場をいたさないわけでございます。したがいまして、伝統的な形で雇用保険受給者を実績に基づきまして算出した結果、失業給付費の算定に当たりましては若干減少するという形を見込むということでございます。
  74. 中西珠子

    ○中西珠子君 失業率は、大体ことしは二・八%になりそうですね。来年は二・七%ぐらいと考えていらっしゃるわけですか。この失業給付の算定の基礎にはもちろん失業率がかかわっているとは思いませんけれども、受給者のカテゴリー別に、給付日数別ぐらいには積算をきちっとなすっているわけでしょう。それからまた、高齢者もあるから年齢によってそういうふうなことはもちろんなすっているわけでしょう。積算の基礎をちょっと教えていただけますか。
  75. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) この完全失業者数とリンクした形では推計を行っておりませんで、作業の形といたしましては、雇用保険受給者がどの程度のレベルかということで作業をいたします。例えば、前年におきましては六十九万人の雇用保険受給者というレベルを想定して予算が積み上がったわけでございますが、この水準を同様に六十九万人と想定いたしまして積算を行った次第でございます。
  76. 中西珠子

    ○中西珠子君 そうすると、六十九万人というものを想定なすって、そして平均受給月額というものをそれに掛けてお出しになったわけですか。それはどのくらいに計算していらっしゃるんですか。
  77. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 受給月額は六十二年度予算におきましては十万六千七百九十一円、六十三年度予算におきましては十万九千二百八十円という数字でございます。  なお、正確に今受給者実人員について申し上げますというと、六十二年度予算先ほど申し上げましたように六十九万人のベースでございます。六十三年度予算におきましては若干減少をするあるいはまた政策的にさせるという考えのもとに六十七万八千人という形でございます。
  78. 中西珠子

    ○中西珠子君 さっき六十九万とおっしゃったから、これ六十七万八千という数字があるのにおかしいなと思ったんですが、六十七万八千掛ける平均受給月額十万九千二百八十ということでなすって、高齢者求職者の給付というのはこれは減って考えていらっしゃいますか。減らしていらっしゃるんでしょう、これも。
  79. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 高齢者につきましては、これは六十二年度、これは十月における実績見込みでございますが、八万六千人ベースでございます。六十三年度では大蔵査定ベースは八万二千人と相なっております。
  80. 中西珠子

    ○中西珠子君 そうすると、六十三年度の積算の基礎は何人にしていらっしゃるんですか。
  81. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 高齢者につきましては八万二千人でございます。
  82. 中西珠子

    ○中西珠子君 それで、先ほど一遍に申し上げたからあれですけれども雇用保険の四事業の方の予算の内訳をお示しください。
  83. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 六十三年度事業の費用を申し上げますというと、雇用安定事業につきましてはこれは二千五百七十九億二千七百万円、雇用改善事業につきましては千二百一億八千八百万円、能力開発事業につきましては一千二百三億三千百万円、雇用福祉事業につきましては一千七十七億二千二百万円でございます。
  84. 中西珠子

    ○中西珠子君 雇用保険の四事業というのは非常に効率的に使っていらっしゃるし、また失業防止の上では大変役立っているものだし、また職業能力開発においても大変役立っているものでございますが、それを今度おふやしになったということの背景にあります政策的な考慮というものについて大臣、いかがでいらっしゃいますか、一言お教えいただきたいと思います。
  85. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 円高産業構造転換、こういうことが進展する中におきましては、産業地域年齢に関する労働力需給ミスマッチによりまする種々の雇用問題の発生が予想をされるわけでございます。このため、こうした構造転換のもとでの雇用問題に対応して失業の予防や雇用機会確保、拡大等の施策を強力に推進することとしまして、今話しましたような産業地域高齢者雇用プロジェクト実施することとしたわけでございます。  その具体的な内容につきましては、特定不況業種法の改正産業雇用対策拡充強化地域雇用開発中心とした総合的な地域雇用対策推進、さらには高年齢者等の雇用機会確保推進、円滑な職業転換のための職業能力開発促進という中身になっておるわけでございまして、昭和六十三年度におきましてはこのプロジェクトによる各般の施策の強力な推進を通じまして失業の予防等雇用の安定に万全を期してまいりたいというのが私どもの決意でございます。
  86. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。  産業地域高齢者雇用プロジェクトが成功なさいまして大いに失業防止のために効果をお上げになるように願っております。昨年度の三十万人雇用開発計画が成功なさいましたようにこれも成功なさると確信をしておりますが、一層の御努力をお願いいたします。  次に、少し細かくなりますけれども職業能力開発の点でございますが、新規に六十三年度は高年齢者特別能力開発制度をつくるというふうにおっしゃっておりますけれども、この目的は何でございますか、そしてどういう職種の特別能力開発なさるわけでございますか。
  87. 野崎和昭

    政府委員(野崎和昭君) 御承知のとおり、現在高齢者雇用失業情勢というのは大変厳しいものがございまして、一度離職しますと再就職がなかなか容易ではないわけでございます。そこで、これまでも公共職業訓練校の施設内での高齢者向けの訓練の拡充に努めてまいったわけでございますけれども、六十三年度からは新たにただいまお話のございました高年齢者特別能力開発制度を創設したいと考えているところでございます。  この中身は、従来行っておりましたような公共職業訓練施設の中で訓練をするのではなくて、実際に雇用される可能性のある事業主あるいはその事業主の団体にお願いをいたしまして訓練をしていただく、そしてそういたしますと再就職に結びつく実践的な知識、技能が身につくということになるわけでございまして、これに要します経費として七億七千万円を計上しているところでございます。
  88. 中西珠子

    ○中西珠子君 大変結構です。  それじゃちょっと細かいことですが、高齢者向け訓練科を増設なさるそうですね。これは四科増設なさるそうですけれども、どういう職種ですか。全部で幾つになるんですか。
  89. 野崎和昭

    政府委員(野崎和昭君) ただいま御指摘高齢者向けの訓練科でございますけれども、来年度は四科増設を予定しております。合計で八十五科になるというふうに記憶しております。  高齢者向けの訓練科の中身でございますけれども高齢者職業能力を生かすという意味で従来ふやしております科目の主なものを申し上げます と、一つは、造園科、園芸科というような関係の科目でございます。もう一つは、建築物衛生管理科といっておりますが、ビルメンテナンス関係業務でございます。それからさらに、家屋営繕科とか構造物施工科、これは家の修理をしたりあるいはベランダ等を直すというような、在職中の溶接等の技能を生かしまして身につけていただくものでございます。そういったものを中心に毎年高齢者向けの訓練科をふやしているわけでございますが、来年度は園芸科、構造物施工科、それから建築物衛生管理科二科、合計四科の増設を予定しております。
  90. 中西珠子

    ○中西珠子君 たった四科じゃ足らないと思うんですけれども予算関係もございますでしょうから。もっとふやしていただきたいと思います。  それから、高齢者ではなくて一般の技術革新対応した職業能力開発対策として情報処理関連技能者を養成するための職業訓練施設を、これも増設されるそうですね。今二カ所あるのを九カ所になさるそうですが、所在する場所はもうお決めになっていますか。
  91. 野崎和昭

    政府委員(野崎和昭君) お尋ねの情報処理技能者養成施設は、先生お話のございましたように、今後情報処理技能者というのは非常に不足するということを考えまして六十二年度から設置を進めているものでございます。  設置につきましては、情報処理技能者の需給見通し等のほかに地域雇用開発の必要性等も考えまして、六十二年度におきましては北海道室蘭市、長崎県の諫早市に設置を決定しております。来年度七カ所増設することになっておりますが、北海道美唄市、青森県青森市、栃木県真岡市、新潟県小千谷市、愛媛県今治市、福岡久留米市、宮崎県宮崎市の七カ所について設置を予定しております。
  92. 中西珠子

    ○中西珠子君 情報処理関連の技能者は不足しておりますから、公共職業訓練の施設でもっともっと技能者養成をやっていただきたいと思いますね。もちろん予算の制約があるからなかなかふやせないということもありますでしょうけれども、できる限りふやしていただくようにまたお願いいたしておきます。  それから、この前の所信表明のときに質問として通告しておきましたものでこの前時間がなくなってお聞きできなかったものを先にお聞きしたいと思うんでございますが、これは労働外交に関する予算についてでございます。  まず、労働外交予算の内訳をお聞きしたいということですね。それは、いろいろ構想があってそしてこういう項目を六十三年度には決定するということになって予算計上なすったんだと思いますが、まずその内容をお聞きしたいということでございます。  それから、各省別のODA予算を見ますと、何か厚生省あたりより労働省が少ないんですね。厚生省はWHOの分担金なんか全部入れているような感じなんですけれども労働省の方はILOの分担金が相当、今二十二億以上の大きさになっているのにもかかわらず、それは全額入ってないと思うんですね。というのは、十二億強のODA予算労働省はお出しになっているからそれが全額入っているはずはないわけで、そうすると一部分入っているのか、どういうことになっているのか、そのODA予算の内訳についてもお聞きしたいと思います。よろしくお願いいたします。
  93. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 労働外交関係予算でございますが、重点としてやってまいりますのは、今お話ございましたように、国際機関活動への積極的な参加・協力、労働関係者の国際交流の推進、海外労働情報の収集・提供なりあるいは海外の広報活動の展開、それから特に開発途上国の経済・社会開発を支える人づくりに対する協力を中心とした技術協力、これを積極的に展開することといたしております。  具体的な予算といたしましては、総額が九十五億四千五百万円でございます。開発途上国を中心とした国際協力のための経費が六十七億三百万、諸外国との国際交流の経費が三億四百万、ILO、OECD、そうした国際機関活動への参加・協力のための経費が二十四億五千三百万、広報活動関係経費が八千五百万というような状況になっております。  それからお尋ねの二点目のODAの関係予算額でございますが、労働省のODA関係予算は十二億四千七百万、前年度比三千八百万、三・二%増ということでございまして、その内訳は国際労働機関の分担金が四億六千七百万、アジア労働技術協力実施費三億七千二百万、アジア・太平洋地域技能開発計画支援事業費五千六百万、さらに日中労働交流事業費が三千五百万ということになっております。  厚生省のODAの予算と比べて労働省が少ない、こういう点の御指摘もございました。これはILOへの分担金につきまして、これが三十二億四千百万あるわけでございますけれども、そのうちいわゆるODAの算入率というものが一九・六%というふうになっております。また、厚生省の関係ですと、これはWHOへの分担金、こちらの方がODAの算入率が七五・四%というふうに非常に高くなっている。こうした違いによるものでございまして、そうした分担金を除いたODAの額といたしましては両省ともそんな差はないというような状況でございますが、こうしたODA予算への今申しましたパーセンテージというのは、OECDの開発援助委員会が加盟国のODA予算についての統計を作成するに当たりまして、それぞれ国際機関への分担金の何%がODAに相当するか、こういう割合をここの委員会で決めておるわけでございまして、それに準拠してはじきますとさような数字になるということでございます。
  94. 中西珠子

    ○中西珠子君 一九・六%というのはどうも納得がいきません。  というのは、それはOECDのDACで決めたかもしれないけれども、ILOの通常予算から技術協力に使っているのは一割ぐらいだけれども、通常予算以外の特別予算から使っているのを合計して通常予算と特別予算と両方を合計しますと、ほとんど半分は技術協力に使っているわけです。それなのに一九・六%というのはどうも納得ができないわけです。今度OECDへ行って言いますから。  それから、ことしからILOとのマルチ・バイ方式を非常におふやしになったそうですが、今までILOのマルチ・バイ予算の中で日本はたった〇・三%だったのです。それで、本当にもう少しふやしていただきたいなと思っていたんですが、ことしは、何ですか、非常におふやしになって三倍ぐらいになすって、百万ドル近くになったと聞くんですが、その内容は何ですか。
  95. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) マルチ・バイ方式による技術協力、これはもう非常に有効な国際協力の手段だというふうに考えておるわけでございまして、来年度につきましては新たにアジア雇用開発調査研究事業というのを予算案に盛り込みまして、とりあえずフィリピンあるいはタイにおいて行おうとする雇用開発のための方策の調査研究に要する経費を拠出する、こういう考え方でございます。
  96. 中西珠子

    ○中西珠子君 今おっしゃったアジア雇用開発調査研究事業、これの予算額を教えていただけますか。
  97. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 八千四百二十四万という予算額でございます。
  98. 中西珠子

    ○中西珠子君 このほかにも、いつもなすっているゼミナールなんかもなさるわけでしょう。その予算はどういうふうになってますの。
  99. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 六十三年度予算案におきましては、マルチ・バイ方式の技術協力の予算額は一億三千三百八十八万ということでございます。
  100. 中西珠子

    ○中西珠子君 どういうのをなさるんですか。どういうテーマでゼミナールをなさるんですか。
  101. 清水傳雄

    政府委員清水傳雄君) 労使関係に関する調査研究及び教育に関する援助あるいはアジア地域労働者安全衛生確保に関する協力と、こうし たことがございます。
  102. 中西珠子

    ○中西珠子君 マルチ・バイをILOと共同でやるという予算をふやしていただいて非常に結構だと思います。  というのは、今、国全体のODA予算がどんどんふえておりますね。七カ年倍増計画が五カ年に縮小されたために大変例外的な措置としてODA予算をふやしているということでございますが、予算がふえて金額が大きくなっても、それを消化するだけのよいプロジェクト、よいというのは、本当に途上国に喜ばれて途上国の人々の役に立つようなそういうプロジェクトがなかなか見つからない。そしてまた、事前調査も十分でないのにやってしまってうまくいかないというふうなケースもないわけではないし、そして必要な人材というのがなかなか確保できないという面もございますので、ILOとかWHOというふうな国際機関の政治的な中立性と専門性というものをもっともっと活用して日本と共同でやるというマルチ・バイ方式をもっと増加させていただきたいと思うわけでございます。  今回は六十三年度予算で大変おふやしになって結構だと思いますが、これから先も一層ふやすように御努力をお願いしたいと思いますが、大臣、いかがでございますか。
  103. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 労働省としましては、ただいま政府委員からお答え申し上げましたように、開発途上国の社会経済開発を支える人づくり、この面で協力をいたしておるわけでございまして、そういう面から従来ともODA予算の増額は積極的に取り組んできたところでございます。  今後におきましても、目下考えておりますのは、ODA予算を一九九〇年には一九八五年の倍とする、そういう政府全体の方針に基づきまして、増額を今後とも努力していきたいという考えでございます。
  104. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。  私、今度は少し細かいことをお聞きするんでございますが、労災勘定の中で、労災補償給付、それも大変細かくて恐縮なんですが、労災就学児童の援護経費、小学校幾ら、中学幾らと決まってますね。これを小学校はたった五百円お上げになるだけで、それから中学や高校は千円ぐらいお上げになる、大学はもう少しお上げになるというふうな数字になっているんですが、これは対象人員というのは何人ぐらいいるのでしょうか。また、積算の基礎は何人ぐらいになすっているか、ちょっとお聞きします。
  105. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労災就学援護費の対象人員を申し上げます。昭和六十一年度でございますが、小学校が六千五百二十名、中学校七千七百六十八名、高等学校九千五百八名、大学三千三百五十八名でございます。  額につきましては、ただいま先生御指摘のとおり、現行月額小学校が五千円から大学等が一万九千円までそれぞれ設定されておりまして、この単価につきましては、これまでの例によりまして教育費の伸び等を参考にして設定さしていただいたところでございます。
  106. 中西珠子

    ○中西珠子君 労災就労保育援護費、これも単価引き上げをなすっていて結構なんですが、その引き上げの幅は大変少なくて五百円ということなんですね。これは対象人員はどのくらいおりますか。
  107. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 昭和六十一年度の実績で五百二十九名であります。
  108. 中西珠子

    ○中西珠子君 そんなに少ないんですか、五百二十九名。  これは、要件を満たすことが難しいということなんでしょうか、たまたまそういう保育所にやらなくちゃいけないような小さい子供がいないということなんでしょうか。どちらでしょうか。
  109. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労災被災者の子弟等で保育所あるいは幼稚園に通学している者について支給されるものでございますので、人数的には傾向的にはやや減少傾向にございますけれども、実績がこの数字であるということでございます。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 子供全体の出生率も減っていることですから、やっぱり子供の数も減っているし、そういうふうな保育需要のある人が少ないということになるのかもしれませんね。  それから、もう一つ労災関係でお伺いしたいのは、ことし新規に高齢被災労働者対策費というのを計上していらっしゃいますね。これ相当の額、十八億ですか、計上していらっしゃるんですけれども、これはどういう内容のものですか。そして重点をどこに置いていらっしゃいますか、これをお聞きしたいです。
  111. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 高齢者被災労働者対策費は、家庭におきまして介護を受けることのできない高齢の重度被災労働者のための介護施設の設置のための経費等でございます。  このため、六十三年度予算におきましては、じん肺、脊損等の労働災害の傷病の特性に即した効率的な介護を高齢被災労働者に提供する労災特別介護施設を設置するための土地購入費等を計上いたしているわけでございます。  以上でございます。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうもありがとうございました。大変結構でございます。早くそれができるとよろしいと思いますが。  それでは、ちょっと女性の労働者対策につきましてお聞きしたいんですが、殊に再就職をしたがっている女性の活用事業ということで予算をおとりになっているんだと思いますが、キャリアカードの開発というのは、これはどういうものでございましょうか。それで、見通し、それから予算の額、そういったものをお示し願いたいと思います。
  113. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生御指摘のように、女子の再就職希望者は増加しているわけでございますけれども、再就職の場合に、特に個々人の能力、適性に応じた職業につくためには職業能力を客観的に評価するシステムが必要であると考えられるわけでございますけれども、従来の学歴を中心としたような履歴書では必ずしも十分ではないというようなところから、職業能力を客観的に評価することができるような方策ということで在職中の職業経験や職業能力の到達点につきまして評価、認定した結果を提示できるような一定の様式としてキャリアカードの開発考えているわけでございます。  で、このキャリアカードを活用することによりまして再就職を希望する女子の適切な再就職機会の拡大と企業が必要とする人材確保に資することを期待しているわけでございますが、このキャリアカードにつきましては、引き続き学識経験者とか企業の方のお話を聞かせていただきながら私どもでまとめてまいりたいと考えております。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 そうすると、どこかに委嘱してそしてその開発考えてもらっていらっしゃるというのではなくて、いろんな人を集めて討議をしながら考えていらっしゃるという段階でございますか。
  115. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 先生おっしゃいましたように、いろいろな方々の御意見を伺いながらまとめていくということで考えております。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 これまでやってきた仕事の評価というこの評価の方法もなかなか難しいことですし、客観的に非常によくわかるような評価の仕方ということをよく御研究になっていただきたいと思います。  女だからつまらない職名であったり、女だからつまらない補助的な仕事しかしていない、しかし本当はその人が主になって主体的にやっているというふうな場合もあるわけですから、非常に評価というのは難しいと思うんですね。ですから、そのキャリアカードをおつくりになるということはただただ形式的に何をやったということがずらずらっと書かれるのではなくて、今局長おっしゃったように、評価の問題から職種と結びつかない職務内容というのもあるわけですので、よくこれは慎重に御検討いただきたいと思います。
  117. 中西珠子

    ○中西珠子君 それから、この間育児休業のことを少しお聞きいたしましたけれども、この育児休業の奨励金が出ておりますが、まだ六十二年度は 全部その決算をやっていらっしゃるわけではないから、幾つ会社が新しく育児休業を導入したか、それからまた対象の人員は何名かということはおわかりにならないかもしれませんけれども、今の段階でおわかりになっている範囲でお教えいただきたいと思います。
  118. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 現在の段階で把握しております限りで二百九十三件ということで、前年度より若干上回っている状況でございます。
  119. 中西珠子

    ○中西珠子君 前年度は幾つだったんですか。
  120. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 前年度は、一年度で二百九十ということでございます。
  121. 中西珠子

    ○中西珠子君 育児休業奨励金の予算は少しだけれどもふやしていらっしゃいますね。しかし一方、再雇用制度の方の普及促進費の方は前年と同額を一応計上していらっしゃいますが、これは御遠慮なすっているわけですか。
  122. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 女子再雇用制度は、女子が妊娠、出産、育児の理由によりまして退職した場合、育児等がある程度済んでまいりまして再就職を希望する、そういう人たちを再雇用するという制度についてのものでございまして、この支給は実際に再雇用が行われたときに支給されるという形になっておりますので、制度をつくりましてから受給者が出るまでにかなりの期間がかかるということでございます。  そういうことから昨年度、必ずしも私どもが期待しておりましたほどには出ておらなかったということから、来年度につきましてもその実績を頭に置いて大体同額で済むのではないかということからこのようにいたしたのでございます。
  123. 中西珠子

    ○中西珠子君 この女子再雇用制度というのは非常にいい制度だと思いますし、均等法の中にせっかく入っているんでございますから、もっともっと利用する人がふえてほしいと思いますが、周知徹底がまだ足らないんじゃないでしょうか、いかがですか。
  124. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 私どもさまざまな機会をとらえて本省の方でもいたしておりますし、各都道府県の婦人少年室でもPRに努めているのでございますけれども、さらに今後努力をいたしたいと存じます。
  125. 中西珠子

    ○中西珠子君 どうぞ大いに周知徹底してもっともっと予算を使うようにしてくださいませ。  それから、育児休業の休業中、有給であるか無給であるかということは大きな問題なんでございますが、その処遇について。  また、社会保険料をどのようにしているか。全額使用者が払ってくれているか、また労働者が全額払わざるを得ない情勢になっているのか、そういった点についての調査がございますか。私は五十七年ぐらいのちょっと古いのしか見たことがないんですけれども
  126. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 今先生がごらんになっておられるものが最新のものでございまして、六十一年のものを現在集計中でございまして、できる限り早く出して公表いたしたいと考えております。
  127. 中西珠子

    ○中西珠子君 できる限り早く集計して公表してください。  それから、ファミリー・サービス・クラブというのを数年前からやっていらっしゃいますね。これは今度の予算の中に出てきてないんですけれども、これは一体現状はどうなっていますか。それから、これから先どういうふうになさるおつもりか。
  128. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 来年度も同じように予算として計上いたしております。  したがいまして、今年度と同様に普及には努めてまいりたいと考えております。
  129. 中西珠子

    ○中西珠子君 私がいただいた予算の中には入ってないからどうなったのかなと思っていたわけですね。もちろん重点的にお書きになっているんで、細かいところまで入っていないのかもしれませんが。  今、全国で幾つくらいの都市でこのファミリー・サービス・クラブがあるんですか。  それからまた、どのくらい会員がいるか、そういうふうなことをお示し願いたいと思います。
  130. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 会員の数までは把握がいっておらないのでございますけれども、全国で二十の地域におきましてファミリー・サービス・クラブがつくられております。
  131. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは地域の婦人団体連絡協議会というこれだけを通してなすっているわけですか。そこに対して助成金が出ているわけですか。
  132. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) これは全国組織の婦人団体を実施主体といたしておりまして、これに補助をいたしておるという形になっております。
  133. 中西珠子

    ○中西珠子君 私の持っている中には予算の額がないんですけれども予算額お教えいただけますか。
  134. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 全部で補助金といたしまして二千二十五万九千円を計上いたしております。
  135. 中西珠子

    ○中西珠子君 一件当たり幾らぐらいということで積算していらっしゃいますか。
  136. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 平均で一件当たり百万円ということでございます。
  137. 中西珠子

    ○中西珠子君 ああそうですか。そうすると、会員が何人いてもそこでクラブができますと百万ということでやっていらっしゃるわけですか。
  138. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) これは事務等の補助でございますので、大体そんな見当でいたしております。
  139. 中西珠子

    ○中西珠子君 このファミリー・サービス・クラブというのは相互扶助ということだと思いますけれども、とにかくいろいろな形で老人介護とかそれから子供の養育とかいうものをなるたけ社会化していく、それと同時に子育ての終わった人なんかに仕事を与えるという意味もあると思います。  とにかく、女性の職場進出がふえているというと妙な言い方なんだけれども、女子雇用者がすさまじい勢いでふえている中でこういったファミリーサービス的なものとかそれから家事のサービス、ホームヘルパーのようなものがどんどんふえていくということは大変望ましいことだと思うんです。  前に企業でやっていらしたホームヘルパー制は、今はどうなっておりますですか。
  140. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) 予算としては総体的にはだんだん縮小いたしておるわけでございますが、現在も若干残っております。これが必ずしも拡充の方向でやっておりませんのは、大都市の周辺の場合などは特にそうなのでございますけれども、その企業に勤めております従業員が非常に広い地域から参りますので、ホームヘルパーといいましてもその企業全体をカバーするということがだんだん難しくなってまいりまして、そういう意味で総体的に縮小というような感じになっておるわけでございます。
  141. 中西珠子

    ○中西珠子君 そういうふうな住居事情の変化というふうなものもございますから早晩同じことをやっているということではだめなんだと思いますが、このホームヘルパー制も非常に喜ばれた制度でしたね。  ですから、とにかくファミリー・サービス・クラブも続けていただきたいし、ホームヘルパーも必要なところではやはり補助金をお出しになっているんですか。
  142. 佐藤ギン子

    政府委員佐藤ギン子君) これは補助金を出すという形ではなくてむしろいろいろな、何といいますか、御相談に応じたりそういう形での援助をさせていただくという形になっております。
  143. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは予算関係ないんですけれども、この際一言だけお聞きしておきたいのは、最近労働基準法の第四条違反の摘発件数がふえているらしいんですね。これは男女雇用機会均等法が六十年にできまして、それが施行になるに並行して労働基準監督署が一生懸命調べていらっしゃるということがあって、それで結局違反摘発件数がふえているのかなとも思うんですけれども、今件数はどういうふうになっておりますか。
  144. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働基準監督機関が監督指導実施いたしまして基準法第四条違反として措置した件数につきましては、昭和五十九年 が八件、六十年二十件、六十一年二十一件ということでございますが、それ以前、五十年代に入りましてからは四、五十件程度ございまして、通算いたしますと大体四十件近くがこれまであったような実績になっております。
  145. 中西珠子

    ○中西珠子君 五十九年の八件から六十年の二十件にふえたということで、結局基準監督署が一生懸命なすったのかなと思って感心していたわけなんですけれども、そういうわけでもないわけですね。  それでは、私もう時間が参りましたという御通知をいただいちゃったのでこれで終えますけれども労働省に対しては国民のみんなが本当に期待を持っておりますので、大臣初め労働省の幹部の皆様また職員の皆様方、どうぞ頑張ってやっていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  146. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 今日、我が国の労働環境の著しい変化の中で、労働省に対する国民や労働者の期待は大変大きくなっておるわけでございます。限られた時間でございますので、きょうは端的に銀行業の例を用いまして労働行政の根本姿勢をただしていきたいのと、御注文もしていきたいと思うのであります。  銀行業といえば、昨年は空前の利益を上げておったのは御承知のとおりであります。そして、自民党に対する政治献金もまた空前であり、業界第一位になっております。史上空前の利益、これがどういう労働状態の中でできたか、可能にしたかということであります。そういった点についての、これは全面的にはとても限られた時間でやれませんので、ある部分についてきょうはお聞きをしていきたいと思っております。  まず、銀行、金融業の完全週休二日制、来年の二月から実施をなさるという方針のようでございますが、これは実現をなさるんですか。
  147. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 金融機関週休二日制につきましては、昨年十一月から十二月にかけまして労働大臣から全国銀行協会連合会など金融機関関係十団体に対しまして土曜閉店制による完全週休二日制の実現を要請したところでございまして、先般、全国銀行協会連合会会長及び郵便局関係で郵政大臣がそれぞれ来年二月を目途に閉店制による完全週休二日制に移行するための検討を開始するということが表明されたところでございまして、労働省といたしましてもこのような流れの中で金融機関の土曜閉店制による完全週休二日制が来年二月を目途に実現するものと考えておりますけれども、さらに関係機関、関係省庁にも働きかけを進めてまいりたいと思っております。
  148. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 都市銀行だとか地方銀行など銀行業の就業規則上の労働時間というのは、ほとんど八時四十五分から午後の五時、あるいは八時五十分から午後の五時、昼休みが五十分ということになっているようでありますが、都銀や市銀の時間外協定、これは月何時間ぐらいが多いんですか。
  149. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 都市銀行におきます時間外労働協定の具体的な締結内容につきましては十分に詳細には承知いたしておりませんけれども、六十一年に実施いたしました労働時間総合実態調査によりまして、金融と広告業を含めました業種になるわけでございますが、これによりますと、月二十時間以下が六%、二十時間から四十時間以下が二七・五%、四十時間から五十時間以下が六四・八%という状況になっております。
  150. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 労働省指導の上限などというのは指導しておられませんか。
  151. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働省におきましては、所定外労働時間の適正化という観点から、昭和五十七年、時間外労働協定に関する指針を定めておりまして、その中では、延長時間の目安といたしまして例えば一週間については十五時間、一カ月につきましては五十時間以内等になるように時間外労働協定の届け出の受理の際において行政指導をいたしているところでございます。
  152. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 全体としてお調べになっておられるようですが、そういう点で私どもも協定の幾つかを調べてみましたが、地方銀行というのは大体三カ月で百時間だと思うんですね。あるいは一カ月四十五時間だとかというふうな協定が多くて、大体労働省指導の指針の上限以内になっているようですね。  で、その時間外協定は守られていると思われますか。
  153. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 時間外労働協定につきましては、労働組合のあるところでは労使の協定によって定められ、また労働者の過半数を代表する者との間での協定として定められているものでございますので、私どもといたしましては、他の一般業種と同様、都市銀行においても基本的には遵守されているものと考えております。
  154. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 ところが実態というのはそう甘いものではないと思うんです。  六十一年の九月十五日の朝日新聞によりますと、これは富士銀行の例を用いてルポが出ているんですが、これによりますとこんなふうに、ごく一部を申し上げますが、  日中は得意先回りに追われる。必要データを拾ったり書類を作るのは夜の作業。だが収益重視の経営は残業時間にも目標を課す。一人当たり月二十五時間前後。はみ出した時間は無給の「サービス残業」だ。  「仕事のきりあげは十時が一つのめど。終わらなければ書類を持ち帰る『フロシキ残業』です」 これは都下郊外店の課長代理の方の意見ですね。  富士銀行のルポというのが最近ある雑誌に出ておるわけですが、それによりますと、富士銀行の社宅を家庭寮と呼ぶんだそうです。ところが、ひそかに母子家庭寮と呼ばれているそうですね。というのは、夫の帰宅が大変遅いので母子家庭寮などと呼ばれているというんですね。その御家庭の方々のアンケートによりますと、九時から十時ごろ帰るという人、十一時から十二時ごろ帰るというのが一番多い。十二時を過ぎるというのも少なくないが、通勤時間が大体一時間以内ですから、これは社宅ですからね。いわゆる家庭寮です。だから、お店まで一時間以内の通勤時間ですから、それを考えますとおよそ夜九時から十時ごろ帰るというんですから、大体八時から十一時過ぎまで残業しているということになるわけですね。大体実態がわかるかと思います。  これは富士銀行の従業員組合の五十九年度の調査ですからちょっと古いんですけれども、問いの中で「あなたは毎日働いていて、腹の立つこと、不満なことは何ですか」という問いに、三九・一%が「時間外労働が多いこと」というのを挙げ、ダントツになっている。それが五十九年の調査でございますから、この三、四年の間に財テクだとか金融自由化等々ありましてもっと条件が悪くなっているわけです。  こういうふうに見てくると、少なく見積もっても平均して月に大体七十時間以上の残業のうち五十時間はただ働きのいわゆるサービス残業と見られるとこのルポは述べているわけですが、これは労働省どういうふうにごらんになりますか。
  155. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 今先生御指摘になりましたルポルタージュの中に今御指摘のような発言があることも承知いたしておりますけれども、このような事実が現実にあるのかどうか、私どもの方ではちょっとまだ詳細承知をいたしておりませんので、今この時点でこれについての直接的なお答えをすることは御勘弁いただきたいと思います。
  156. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 つかんでいないと言われればそうですよね。管理の仕方は後で申し上げますが、やっぱりちょっと認識不足だと思うんです。  都市銀行を初めとする銀行業というのは押しなべてこういう状態なんですね。史上空前のもうけをやっているということを申し上げましたが、この裏には労働者の血の出るようなこういう酷使があると。私はきょうこの部分について少し申し上げて御意見を聞きたいと思っているんですが、なぜこんなに超過時間労働、いわゆる超時間外労働とサービス残業になるとお考えになりますか。知 らないから何とも言えませんか。
  157. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) それぞれの業種におきまして必要な経営活動あるいは企業の発展の観点からそれぞれの労働の効率を上げるなど労使間でいろいろな努力がなされているものと一般的には承知しております。
  158. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 努力がなされたってサービス残業がようけあったら困るんでね。  実態をつかんでおられないであろうというふうに思いますので具体的に言いますが、徹底したノルマ主義。それからもう一つは、一般的に業務量というのが急速にふえている。そして、端的に言えば、職員数、従業者数が減っているという事態があるんです。  少し数字を申し上げますが、従業員一人当たりの預金口数、これは業務量がどのくらいふえたかということを示すんですが、銀行労働研究会の調べによりますと、都市銀行では昭和四十五年から六十二年を比較いたしますと、四十五年の指数を一〇〇といたしまして五〇一・一、五倍になっています。地方銀行は同じく四十五年を一〇〇といたしまして三二六・六です。相互銀行では同じく四十五年を一〇〇といたしまして三二四・三です。信用金庫では同じく四十五年を一〇〇といたしまして二四五・六になっています。合理化、機械化というのがどんどん進んだといたしましても、四十五年の二・五倍から五倍に業務量がふえているということになっているわけです。  とりわけ、五十八年から六十二年というのを、例えば都市銀行で見ますと二倍になりますね。地方銀行でも一・五倍になっています、この三、四年の間に。従業員の数は逆に減っている。この同じ統計でございますが、総預金額等に占める人件費率、これを見てみますと、都市銀行では昭和五十八年度〇・七九から六十一年度は〇・五九%に減っています。それから、地方銀行では一・四〇から一・一九に減っています。相互銀行では一・五五から一・三四に減っておる。信用金庫では一・七七から一・五九に減っている。都市銀行が一番端的に数字は示しています。  次に、一人当たりの営業利益、これを見てみますと、五十八年と六十一年の調査比較をいたしますと、都市銀行では五十八年五百七十八万円から六十一年には八百八十七万円になっている。で、地方銀行では三百六十四万円から四百十九万円、余りたくさんふえていない。相互銀行、信用金庫それぞれふえておりますが、都市銀行ほどのふえ方はしておりません。これを見ますと、大体業務量がふえてそして人が減って営業利益が上がっているというんですから、業務量が一般的に言って大変ふえているというのは御理解がいただけるんではないかと思うんです。  この上に徹底したノルマが追求をされている。これは朝日新聞の、先ほどお示しをいたしました朝日新聞にも書いてありましたが、こういうふうに言われている。   支店長は毎年二月、次年度の目標を担当常務と協議し、最後に握手をして、その達成を約束するのがならわし。 ところが、  実際は他の銀行の動きを勘案し、富士全体の目標を支店に割り振るが、 これはもう常務の名前も書いてありますが、  常務渋谷禎一は「支店が自らの意思で決めた目標」。 だと。割り振るけれども、その支店のみずから決めた目標だと。  支店でも課、係単位から行員個人まで目標を出し、中間管理職が支店の目標と調整し、それぞれ「自分の目標」が決まる。  こういうふうにノルマが決められて追求をされていくわけです。しかも、そのノルマの追求のされ方というのは、先ほど申し上げたように、昼はとにかく所定労働時間は外回りを跳んで歩いている、夜になってそのデータを一生懸命やらにゃいかぬということになるわけですから、長時間労働になるのは当たり前なんです。で、業務量がふえて、その上にノルマが課せられる。  今、銀行では、詳しく余り言えないんですけれども、預金を集めるだけでは半人前なんです。貸し付け増、貸し付けをふやすということも徹底して追求されている。時間外あるいは休日労働がふえるのは当たり前になっているんです。だから母子家庭寮になるのが当たり前だというふうになっているわけですが、サービス残業、つまり不払い賃金、賃金不払い労働が起こるのはこういう業務量の増大ともう一つ仕掛けがある。  それは時間外労働の管理なんです。  これは、仕事がやれないから夜の十時、十一時まで働いているというだけで、それが残業手当を全部もらっていると言えば全体の超過労働時間というのがわかるわけですけれども、そうじゃなくて、時間外労働の管理というのがあるわけです。  富士銀行の例はこのルポに書かれております。これによりますと、   富士銀行の全部長・支店長には、人事部長から半期ごとの「時間外予算の運営」という通達が下ろされる。むろん行内でも厳秘の秘密文書で、部長や支店長も部下には見せない。この人事部長通達によると、八七年九月からの今期の「時間外予算」は、役席(管理職)で二五時間、男子行員二二時間、女子行員一〇時間、途中入社の庶務行員二〇時間となっている。これ以上の残業時間の申告はまかりならぬという残業手当削減のノルマだ。 というふうに書かれておるわけです。つまり時間外労働のガイドラインを銀行でつくって、実際上はこれ以上の残業代は支払いませんよという上限を示しているわけです。しかも、それが厳重に管理をされています。  だからどういうことになるかというと、これはもう一つ都市銀行の実例がありますので、これは大臣のお手元へ行ってませんか、資料としてお渡しをしていただきたいと思うんです。「一般通達」と書いてある資料でございますが、これはある都市銀行のいわゆる時間外労働のガイドラインを示しているんです。これによりますと、これ全部読むわけにいきませんので、問題のところをちょっと申し上げます。「六十一年度上期の時間外管理については、全体としてほぼ新ガイドラインにそって成果が上がってきていますが、ガイドライン比実績が大幅に上回る部店も散見されます。」と。いずれにしても、「厳正な管理を推進していただくようお願いします。」、「以上の趣旨に則り、別記要領により、「時間外勤務及び連続休暇管理計画」を策定し、目標管理を徹底されるよう依頼します。」というふうに書いておりまして、別記のガイドラインでは、同じく役付者二十六時間、男子書記二十三時間と、こういうふうに書かれているわけです。で、「(ガイドライン)の枠は、各部店の基準人員により設定します。従って、時間外自主計画通期合計は、(六十一年度基準人員×職種別ガイドライン)合計内におさまるよう注意して下さい。」と、こういうふうに大変丁寧に書いてあるわけでございます。  したがって、そのガイドライン以上は残業しても金は払いません、それが上限なんだと。請求もしない、払わないというふうになっている。ですから、残業を通知をしなきゃいかぬわけですけれども、書き込むのも毎日書いたらそんなものすぐにオーバーするから、月末に一括して請求をしてきていると、こういう仕掛けになっている。ですから、サービス残業がふえるのは必定なんです。まさに実質的な賃金不払いの仕組みというのが、こういう格好で時間外労働の管理というやり方がやられている。  こういう実態についてどう思われます。
  159. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 銀行における業務の合理化、機械化等行われている一方で業務量の増大がある状況でございますけれども、これが直ちに長時間労働につながっているかどうかまだ確認いたしておりませんけれども、特にまた銀行業務の場合には外に回る営業業務等もございますので、実際の時間外労働につきまして労働者の自主的な申告を基本に置いて残業時間を認定していくということにならざるを得ない面があろうかと思 います。いずれにいたしましても、銀行側が残業を命じ、この残業について必要な残業手当が支払われていない事実があれば、これはもうはっきりとした労働基準法違反として対応しなければならないと、かように考えているところでございます。  また、今御指摘の時間外勤務に関する通達の問題でございますが、これを拝見いたしましたところ、業務の効率的な推進の要請から職員の健康管理面にも配慮しためり張りのある執務管理の徹底が重要であるということでございますので、まあ時間外労働を基本的には減らしていくという面もあるわけでございますので、その意味ではこの通達自体の適否について批判するのはいかがかというふうに思っているところでございます。  いずれにいたしましても、適正な時間外労働管理等によりまして命じられました時間外労働に対する手当の支給等については法律に基づいて執行すべきものと考えております。
  160. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 こういうガイドラインを示されてその枠内におさまる労働になっておるという実態であればこれはおっしゃったとおりなんですが、しかし御家庭では、社宅では母子家庭寮だと言われるほど御主人のお帰りが遅い。  だから、どういう事態が起こっているかというと、例えば、このルポにも書いてありましたけれども、自分の家から通勤している女子行員は給与の支払い明細書を見た母親に素行を疑われたというんですね。お前は毎晩毎晩残業残業と言って遅く帰るが、一体どこを遊び回っておるのか、残業手当は月に十時間、十一時間しかついていないのに毎晩毎晩遅いじゃないか、一体どうなっているんだというふうなことが起こっている。あるいは、母子家庭寮と言われている奥さん方も、夫の給料明細書を見たら一体銀行はどうなっているんだということを言われているということを見たら、これは、ガイドラインはえらい上手に書いてあるから、その範囲でおさまっているであろうなどと言っておられない事態があるのではないかということを私は重ねて申し上げておきます。  そして、この状態を見れば明らかに、このルポで言われておりますように、月に七十時間から百時間以上の残業が想定できる。しかも、その大半は不払い労働だというふうに類推ができるわけですから、局長指摘のように、明らかに労基法違反が類推できるんですよ。だから問題にしているわけですけれどもね。  こういう事態というのは、都市銀行だけではなしに、銀行業全体にこういう超時間外労働というのが横行しています。銀行だけではなしに保険業界、証券業界も大変ひどい状態がやられています。こういう不払い賃金が一体どの程度になるのかということが、これはルポでも富士銀行の例で試算をしておられますが、それによりますと、銀行の経常利益の約二〇%以上が不払い労働によって占められている。三和銀行でもこれが試算をされたのがありますが、これによりますと、やはり三和銀行全体の経常利益の一〇%以上になるであろうというふうに言われていますね。もう一つは、これは機関紙に出ているわけで、もう御承知かと思いますけれども、これは前にもちょっと申し上げました長崎の相互銀行ですね。ここは銀行と職員組合で構成する時間管理委員会が調査をした結果なんですが、これによりますと、一人平均二百万円、二年間で全体で十一億円になる賃金不払いがあるということが指摘をされているわけですね。  私は、賃金の不払いというのは労働監督行政の中では最優先課題だと思うので、こういう状態があるとしたら放置できないのではないかと思いますが、いかがですか。
  161. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 長崎の事案につきまして関係労働者から具体的に申告された事実はございませんけれども、その後所轄の労働基準局におきまして実態を把握いたしましたが、基準法に違反する事実は認められなかったように聞いております。  その後、またさらに署の方に御相談になっているようでございますけれども、具体的な事案内容について十分事態がわかれば適切な措置をとる必要があるというふうに考えております。  それから、金融機関につきましては、従来から賃金不払いあるいは時間外労働等につきましても必要な監督指導に努めているところでございまして、監督指導の際に基準法違反に係る事態が認められた場合には速やかにこの是正措置を図らしているところでございまして、今後ともこの方針に基づきまして進めてまいりたい、かように考えているところでございます。  また、特に時間外労働につきましては、先ほど説明申し上げました時間外労働協定に関する目安に関する指針がございますけれども、これにつきまして、先般の労働基準法改正の際の当委員会の附帯決議にもかんがみまして指針の見直しをすることにいたしておりますけれども、その前提といたしまして六十三年度には時間外労働等に関する実態把握を実施したい、かように考えております。
  162. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 実態把握もやっていくというふうにおっしゃられたんですが、そうならさらにもう一つ実例を、具体例をお示ししましょう。  これは、大臣にお渡しをしておりますもう一部の資料ですね。この文書は、ある大手の都市銀行のガードぶりをガード会社が都市銀行側に報告したものなんです。ことしの二月の現物なんです。ごらんをいただきますとおわかりいただきますが、備考欄には最終退行者名も実は明記してあります、ここにはね。で、その他銀行名、店名なども書いてあるんですが、そういうものは余りオープンにすることはよろしくないと思って若干消してあります。  で、ここに書いてある時間でございますが、警備開始、警備終了と書いてありますね。ここの銀行は朝八時五十分から五時までが就業規則で定められた時間。ところが、これ、警備開始、警備終了と書いてあるでしょう。警備開始、警備終了というのは、警備開始というのは何かというたら、最終退行者が、銀行から最後に出た人が店のかぎを閉めたとき、その時間から警備開始をしているんですね、ガードは。それから、警備終了というのは最初の出勤者がかぎをあけて銀行へ入ったとき、その時間が警備終了になっている。その時間をずっと見てみますと、警備開始というのは一日では二十二時五十六分、それから二日、翌日の朝までやって、翌日の朝、二日の朝は警備終了が午前七時十八分ですね。それをずうっと皆書いてありますね。で、警備中と書いてあるのは休みの日なんですね。丸印をつけているのは日曜日、休日です。  でね、この銀行を最後に出た者がかぎを閉めたとき、朝初めて入った人がかぎをあけたときというのがガードの仕事の開始と終了の時間になっているんですが、それじゃ、いわゆるかぎは一体だれが持っているか。かぎは店長や次長が持っているんではないんですね。かぎは店長代理クラスが保管している。店長代理クラスというのは管理者ではないんです。ある銀行で調べてみたら、店長、次長が持っているんじゃなくて店長代理クラスが持っているんですが、これは管理職でなくて、一人じゃないんですね。四、五十人の行員の中で六人ぐらいその店長代理クラスというのがおる。それらがかぎを持っていて、最後に銀行の職員が出たらかぎをかける、それでガードが始まる、朝は一番に早く来た人のためにあけて、そしてそれでガードが終了するという仕組みになっているんですね。「警備実施時間」と横に書いてありますが、ごらんいただいたらおわかりのように「六十三年二月分綜合警備による警備開始時間一覧表が還元されましたので、以下ご報告いたします。」と書いてある。二月、二十二日間ですね。二十二日間中平均退行時間というのが二十二時四十分。最も早い退行が十九時四十三分、これは土曜日です。最も遅い退行時間が二十四時十七分。十九時前の退行日というのは一日もない、ゼロです。二十時、夜八時ですね、二十時前の退行は二日、二十二時前の退行が五日、二十三時前の退行が十一日、二 十四時以降の退行が二日。つまり夜の十時以降の退行が八六%になるということをこの報告書は示しているわけでございます。  ですから、これを見たら、これはもう超時間外労働になっていると思うんですが、これが全部支払われていたらそれはそれなりにまた話は別なんです。ところが、おっしゃるようにほぼ二十数時間ということで管理はされていると報告もされている。実際には銀行ではガイドラインを二十時間、二十二時間というふうに決めているわけですから、少なくともここまで明らかになれば、不払い賃金についてメスを入れるために調査を本格的にやっていただかなくちゃならないのではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  163. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働者が現実に行いました所定外労働時間につきましてそれが適切に残業手当として払われているかどうかという点についての問題が起きた場合には、私ども基本的にそれぞれの申告に基づいて実際を調査するわけでございます。  これまでの例といたしましては、申告のあった時間外労働については完全に支払われているというケースが多いわけでございまして、申告されなかった所定外労働時間というものについてこれが具体的にどの程度あったのかあるいは確認できるのかどうかといったような問題等、御本人の申告を基本に私どもは調査をいたしますので、少なくとも申告のあった事案についての基準法違反問題についてはそれぞれ是正措置をとっているところでございます。
  164. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 上限をガイドラインとして銀行内で決定をされているんだから、だからそれ以上請求してもお金はもらえない。払いませんということの指示がされているんだから、実際には今申し上げたガードの実例を見てもおわかりのように、あるんだけれどもそのことは申告はされていない。そういう仕組みがつくられている。だから監督ができないんだということで逃げたら困ると思うんですよ。  私が今具体的な事例をお示しをして申し上げたこういう点については、厳格にというか、厳正に注目をしていただく必要があろうと思うんですね。これは、申告というのは労働時間の申告、残業の時間の申告の話をしているんですが、大阪でも最近銀行労働者が労基局に申し入れをしていますよ。これはぜひ厳正に注意、調査をしてもらいたいと思っています。  私、このことをなぜ申し上げるかというと、そういう労働条件が大変なことになっているという反面、そのことを裏づけるのは銀行業務そのものが大変ゆがめられてきている。これはもう時間がありませんから詳しく言えませんけれども、巨大な土地投機だとか融資で社会的に指弾を浴びるというふうなことで、銀行法に基づく銀行の公共性などというのはゆがめられてしまっている。あるいは、金融の自由化によって庶民には預金をしたら低利金利、貸すときは高い、大金持ちや大企業には特別のサービス金利などという状態が起こっていますね。もっとつけ加えて言うならば、身体障害者の雇用率だって、これは銀行は業種の中では一番悪い。社会的責任を果たしていない。国民経済の健全な発展が銀行法には要務になっているのですけれども、これもゆがめられてきている。そういうことが行われている裏に労働者労働条件というのは大変なことが起こってきている。だから調査をする必要があるということを申し上げているわけです。  私、労働省しっかりしてもらわなきゃいかぬなと思いますのは、現に、秋田県のある銀行ですが、基準監督署の通知を改ざんされておるんだな。これは地方銀行、名前を言うてもいいでしょうな、こんな機関紙に出ているのだから。羽後銀行というのだね。羽後銀行というのはひどいなと思ったのは、昨年の末に秋田の労働基準局長名で「年末における労働基準法違反の防止について」という通達を出しているんですね。ところが、銀行側は都合のいいところだけ書いて、カットして発表しているんですね。労働基準局の通達の内容は「三六協定の範囲を超えた違法な時間外労働、休日労働をさせないこと。」と書いてあるのですが、銀行はそれを「時間外(三六)協定を超えた時間外勤務をさせないこと。」と、「休日労働」というのは飛ばしてあるんです。それから二番目に「女子労働者に違法な時間外労働、休日労働、深夜労働をさせないこと。」というのが労基局の通達には書いてあるんだけれども、銀行はこれをカットして銀行内へ回すというやり方をしているわけです。つまり銀行では、労基局の通達、労基法違反なんというのは重要な問題ではないんだと、局長の通達が来たのだからまあしょうがないから知らそうかということになっているわけですね。労働組合からこれ追及されて、もう一遍原文のままに書きかえて全店に再び連絡をしたなどという不細工なことが起こっている。こういうやり方、あり方を見たら、労働省なめられていますよ、銀行にね。こんなところまで来ているということです。  ですから、おたくの通達の改ざんまでやるというようなことが平気でやられるというようなこんなところまで来ているという点を御承知いただいて、ぜひやはり今日の労働者労働実態というものを調査をしていただいて、少なくとも労基法の中の不払い賃金という一番ひどいやり方というものにメスを入れるということをきちんとやってもらいたいと思うんです。そのために厳正な注意と調査、これをぜひ要望したいと思いますが、いかがですか。
  165. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 労働基準法の適正な実施にさらに努めてまいりたいと考えております。
  166. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がいよいよ来ておりますので、最後に大臣にお伺いをしたいと思います。  週休二日制の完全実施をやって労働時間を短縮する、労働者生活向上を図る、大変大事なんですね。しかし、その裏にこういう事態が隠されているままでは、週休二日制が看板としてやられましても、労働者が本当の実質的な労働時間の短縮あるいはその仕事を分け合って雇用の拡大というところに発展をしないであろうというふうに思うんですよ。  私、こういう問題点を具体的に指摘いたしましたので、ひとつ厳正に御調査をいただいてそして必要な措置をおとりいただけるように要請をしたいと思いますが、大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  167. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 御意見は十分拝聴いたしました。十分検討させていただきたいと思います。  今お話がございました労働時間の短縮、それを雇用の拡大につなげるという御提起でございますけれども、これはやっぱり企業なり産業事業主の判断に任せるべきものではないかなと思うんです。  労働省としましては、いずれにいたしましても時間を短縮して雇用機会増大につなげる、消費機会の増大につなげるということになりますれば、仰せのように経済の均衡ある発展に大きく資するわけでございますから、マクロ的に見ますれば、中長期的に検討されればこれは雇用確保につながっていくのではないかというふうには考えておるわけでございます。  御指摘の点につきましては十分検討させていただきたいと思います。
  168. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 結構です。
  169. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 私は、外国人労働力の導入問題に絞って一、二点お伺いいたしたいと思います。  御案内のように、最近外国人労働力の受け入れ問題が大変注目を集めておるところでありますが、この問題は国際化時代の経済大国日本に対する門戸開放である貿易、資本の国際化・自由化に次ぐ最終段階の極めて重要な事案だと思います。日本では現在、出入国管理及び難民認定法で外国人の就労を制限しているところでありますが、実態は、観光あるいは日本語学校入学などの名目で短期在留資格を得て入国して、在留期間を過ぎても帰国もせずにホステスあるいは土木作業員、工員などの形で不法就労しているというのが現状で あり、しかもその不法就労の外国人が急増しているという状況にあります。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕  ある新聞の調査などによりますと、この不法就労という点について「労働集約型の流通・サービス業では既に四割以上が外国人を雇用しており、今後採用する意向がある企業を含めると六割近くに達する」ということを報じております。  このような状態で不法就労増加すれば、一つには、外国人労働者中心とする低賃金市場が生まれてくる。そして二重労働市場が形成されることになりかねない。いま一つは、極めて大切なことでありますが、入管行政あるいは労働基準監督行政というものが破綻するんじゃないかという懸念すらあるわけです。  中村労働大臣は、こういった状況を深刻に受けとめられまして、一月の下旬に労働省の内部の会合の席で、東南アジアなどからの外国人不法就労増大という現実に対して、我が国の雇用失業情勢労働条件に影響を及ぼすことが懸念される、労働関係法違反に対しては厳正に対処するとともに入管当局への情報提供などを徹底したい、低賃金など労働条件面の取り締まりとともに不法就労自体に対する監視を強化すべきであるということをおっしゃっておられます。  このような状況の中で労働省としては、この外国人労働者雇用問題の取り組みについて基本的にどういうお考えであるのか、どのように対処なさっているのか、このことをお聞きしたいと思います。
  170. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 先生御指摘のとおり、最近外国人の不法就労増加が著しいと私どもも認識をいたしております。  例えば、入管法違反で摘発された人間というものだけをとってみましても、このところ対前年三〇%以上の伸びとなっておりまして、増加傾向が続いているわけでございます。また、最近はアジア諸国からの単純労働者、特に男性の不法就労者による違反事件が首都圏等を中心に急増しているような次第でございます。先生おっしゃいますように、この傾向がさらに続けば低賃金市場の発生、二重労働市場の発生ということも懸念されるわけでございますし、そしてまたそれは単に労働条件面への悪影響ということのみならず、ただでさえ我が国で雇用失業情勢のいまだ厳しい地域あるいは産業あるいは年齢別の問題も抱えているところでございますので、そのような労働市場への悪影響ということも懸念されるわけでございます。  したがいまして、御指摘のように、これについての対策を早急に立てるべきであるということを私どもも意識をいたしておりまして、昨年来法務省あるいは外務省あるいは警察庁といったところと事務レベルの協議を続けておったわけでございますが、しかしながらさらに一段踏み込んだ対策を講ずるべきであるということで、昨年の十二月以来外国人労働者問題研究会を労働省発足せしめまして、つい先ごろ、先週でございますが、その報告を得たところでございます。この報告の中には、問題点整理の形ではございまするが数々の今後の方向についても示唆されておるところでございまして、そのような分析を踏まえて、今後は、この四月から労使を含めた外国人労働者問題に関する調査会を発足せしめまして具体的な政策づくりにつきましていろいろ議論を重ねていきたい、このようなスケジュールでおるところでございます。
  171. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この不法就労というのは言ってみれば単純労働であって、しかも労働を提供している場所が中小零細企業である。百人規模というよりもむしろ十人、二十人といった規模、あるいはサービス業においてホステスなどの場合も大体同様なことなので、マスコミではいろいろ聞き取り調査のような形で不法就労者の数を一応類推しているわけだけれども、私は、実態把握は非常に難しいと思うんだけれども労働省としてこの不法就労の実態というのをどのように把握していますか。
  172. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) これはまことに困難なことでございまして、確定的な推計というものは現在までまずなかろうと考えているところでございます。  一つ、手がかりといたしましては、先ほどの入管当局によるところの摘発件数でございますが、これは約一万一千名の不法就労者でございますが、これとて氷山の一角のまた一角にすぎないと思われるのでございます。  もう一つは、入管統計によるところの不法残留数、これは現在五万人と出ておりますが、パスポートの期間が切れてもなおかつ残留している不法残留でございます。これは何らかの仕事についていると思われますので、恐らく不法就労者としてまず計上していい最低の数字であろうと考えられます。  しかしながら、問題は、いわゆる観光ビザ等の短期の滞在ビザで来日をいたしましてそこで資格外活動として就労しておるというような人が一体どれぐらいいるのかということは、まことにこれはつかみにくいのでございます。観光ビザだけでも約百六十万の人たちが入国をしているわけでございまして、そのうちどれぐらいがこの不法就労にわたっているかというところはちょっとこれはつかみかねるということで、私どもも苦慮いたしております。
  173. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 局長もおっしゃったように、法務省、労働省、経企庁あるいは外務省、もちろん労働団体である同盟なども、大体、この外国人労働者の問題についての中間的といいますか、考え方が発表されてきているわけです。    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕 おおむねそろっているのは、単純労働についてはこれは欧州の先例にもならって禁止する方向で行け、しかしそうじゃない熟練労働者等については国際化時代に合わせて一定の枠はやはり拡大しなきゃならないのじゃないかと。その場合にどのようにして受け入れたらいいのかということをこれから模索していくべきだという方向にあると私は認識しているわけです。  しかし一方、現実問題として、今局長おっしゃったように、五万人ともそれ以上とも言われる不法労働者が現にあるわけでしょう。しかも、その不法労働者が現に作業しているわけだから、労災問題を引き起こす、そうすると実際は不法就労である外国人であるにかかわらず労災の適用をせざるを得ない。これは現実ですわね。もう現に労災を適用しているわけなんだから。しかも、労災を適用して何十万という医療費は払うけれども、幸いといいますか、けがで済んでいるから不法就労なるがゆえに送還するということで済むけれども、これがもし亡くなったときに、原則日本人と同じ適用をするんだという形でいった場合に遺族に対する年金はどうするんだ、遺族の判定をどうするんだと。これは、円とドルの関係じゃないけれども、バーツと円の関係でも日々これは変わっている。こういったところをどのように調整するのか、これはもう非常に重要な問題になってくるし、間違えば国際的な大きな問題にもなりかねない。しかし、なし崩しにこれはやっているわけでしょう。だから非常に綱渡りみたいなことなんで、労働省としても答えにくいことかと思うけれども、深刻に考えれば非常に重要な問題だと。  それともう一つ、私思うに、入管当局にしてみれば、パスポートの関係で出入国の関係で押さえていくだけのチェック機能しかないんだけれども労働省がこの種の問題を摘発あるいは監督していくということが法的に可能なのかどうか。労働基準法違反という問題、あるいはどの法律に準拠してどういう形で対応をしていくのか。これは現実に不法労働があるわけでしょう、それに対してどうするのか。先のことはわかる、これから一生懸命勉強しようということはわかるけれども、今どうするんだといったときに労働省としてどのような手が打てるのか、それをお聞きしておきたいと思うんです。
  174. 岡部晃三

    政府委員岡部晃三君) 前段おっしゃいますように、単純労働者につきましてはこれは受け入れ ないという方針は、現在、大方の各方面のコンセンサスになりつつあるのではないかなと考えているところでございます。  そこで、将来どうするかということにつきましてはこれからの議論でございまして、現在の各法令の適用でどんなぐあい、式になるのかというお尋ねでございます。  まず、取り締まれるのかという部分につきましては、最近でも、私ども法律を発動いたしましたのは労働関係諸法令、例えば労働基準法あるいは最低賃金法、安衛法違反というふうな形で問題を整理していくという事柄がございますが、もう一つは、例えば職業安定法における労働者供給事業禁止の違反あるいはまた労働者派遣法の違反というふうなことで、そのあっせん、仲介者まで含めまして法令の適用をしていく、こういうのが現在の対処方針でございます。  しかしながら、それで一体全部片づくのかねと、こう言われますと、片づかないと私どもも思うのでございまして、したがいまして諸外国で行っておりますようなより厳密な在留管理の必要性を感ずるのでございます。  諸外国におきましては労働許可制がございまして、入国の許可のほかに労働の許可ということで、その許可に違反した者につきましては事業主に対する罰則あるいはあっせん者に対する罰則というふうなものが備えられているのでございます。したがいまして、先ほど申し上げました労働省におきます外国人労働者問題研究会におきましても、この外国の制度検討から発しまして、我が国においては日本的な雇用許可制度というふうなものを採用すべきではないかという御提言が行われております。そのようなことも中心に、在留管理をしっかりするような方向に私ども努力をいたしたいというふうに考えているわけでございます。  なお、労災保険の適用につきましては、これは基準局長の方から申し上げます。
  175. 野見山眞之

    政府委員野見山眞之君) 日本国内における就労につきましては、日本人であろうが外国人であろうが、また適法就労、不法就労を問わず、労働関係法令が適用されるわけでございまして、労災補償についても同様でございます。  昨年来、労災補償給付の状況を取りまとめましたところ、不法就労と見られる労災被災者が二十八件ございまして、これらにつきましては所要の療養給付あるいは休業補償給付、障害補償給付等が支給されているところでございますが、先ほど先生が御指摘になりましたような死亡あるいは帰国後の給付の事務手続など行政事務上の技術的な問題がいろいろとありますので、この点は今後さらに検討を進めなければならないと、かように考えております。
  176. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最後にお尋ねいたしますが、今政府の方で御答弁になった点についてはよく私も理解できます。単純労働についての物の考え方、これからの方針等もですね。  しかし、同時に一面、ウルグアイ・ラウンドあたりで言われているサービス業の自由化に伴う国際間の労働力の移動の自由化というような発想がこれはあるわけだし、なるほど西ドイツ、フランスあたりでは現在はどちらかといえば外国人労働者に帰ってもらおうという方向に向いていることも事実だけど、ある時期はたくさん受け入れていたし、現に、EC諸国では、三カ国は現在も自由に労働力が移動しておるわけですね。規制はない。そうなってくると、これからのアジアにおける日本ということを考えた場合に、この単純労働力を完全にシャットアウトし通せるものか。我が国における雇用との関連もあるけど、これもまた現実には中小の建設業界、建築業界などは労働力がないために受注機会を失している。これももう現実の問題ですね。だから、大手企業はともかくとして、中小零細企業は、言葉は適切じゃないかわからぬけれども、人夫さんがいない、だからせっかく仕事をもらってもできない、こういう状況にある。しかもその仕事というのは単純労働である。働きたいのは幾らでもいる。中国から来ている日本語学校に通っている連中が幾らでも仕事を求めている。何でもやらしてくれ、こういうのが現実の問題ですね。  そういう中で、私はよくよくわかるんであるが、全部ぱっと締め出し切って、日本は国情が違うんだ、単一民族なんだということで、文化もいろいろ違うしということでやりおおせるのかどうか。これも心配をするわけなんで、この辺のことはひとつ大臣からお聞きしておきたいと思います。
  177. 中村太郎

    国務大臣中村太郎君) 冒頭から御指摘をいろいろいただいたわけでございますが、その点に関しまして私ども全く同感でございます。  労働省は、かねがね単純労働者は受け入れないというのが基本方針でございますし、これからもその方針は維持されてしかるべきものであると考えております。ただ一方、企業産業国際化に伴いまして、外国人の優秀な技能者、技術者を受け入れたいという企業ニーズもあることも事実でございます。したがいまして、単純労働者は受け入れないけれども、その要請のある外国人をどうしてある程度要請に沿うような形でいくか、この接点、調整がこれからの一つ課題であろうと思っております。  そのためには、実は研究会からもいろんな御提言をいただいているわけでございますけれども、そういう技術者、技能者を仮に受け入れる場合であっても、野方図に単純に受け入れることはいたしかねるということでございまして、あくまでも制限的な期限的な条件をつけた上で、厳正に今後におきましても管理できるような体制だけはしていかなければいけないと考えております。  ヨーロッパは、御案内のとおり、特に西ドイツの例を眺めましても、そこのところが一番問題になるわけでございまして、受け入れることは受け入れるけれどもやっぱり短期、臨時的であると。あとはすっきり厳重な管理ができる、そういう管理のできるような法改正もやっぱりやらざるを得ないではないかなというふうに考えておるわけでございまして、これから、今の状態をいつまでもほっておくわけにはまいりませんので、でき得べくんば早い時期に先ほど安定局長が申し上げましたような労・使・学識経験者による今後のこの問題への方向づけ、これをまずいたさなければなりませんし、各省庁間の協議も調えて政府全体で一つの方向を早い時期に見出していかなければいけない、そのための法案づくりもしていかなければいけないというふうに考えているわけであります。
  178. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で労働省所管に対する質疑は終了いたしました。  これにて、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管、労働省所管及び環境衛生金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十三分散会