○沓脱タケ子君
努力がなされたってサービス残業がようけあったら困るんでね。
実態をつかんでおられないであろうというふうに思いますので具体的に言いますが、徹底したノルマ主義。それからもう
一つは、一般的に
業務量というのが急速にふえている。そして、端的に言えば、職員数、従業者数が減っているという事態があるんです。
少し数字を申し上げますが、従業員一人
当たりの預金口数、これは
業務量がどのくらいふえたかということを示すんですが、銀行
労働研究会の調べによりますと、
都市銀行では
昭和四十五年から六十二年を比較いたしますと、四十五年の指数を一〇〇といたしまして五〇一・一、五倍になっています。地方銀行は同じく四十五年を一〇〇といたしまして三二六・六です。相互銀行では同じく四十五年を一〇〇といたしまして三二四・三です。信用金庫では同じく四十五年を一〇〇といたしまして二四五・六になっています。合理化、機械化というのがどんどん進んだといたしましても、四十五年の二・五倍から五倍に
業務量がふえているということになっているわけです。
とりわけ、五十八年から六十二年というのを、例えば
都市銀行で見ますと二倍になりますね。地方銀行でも一・五倍になっています、この三、四年の間に。従業員の数は逆に減っている。この同じ統計でございますが、総預金額等に占める人件費率、これを見てみますと、
都市銀行では
昭和五十八
年度〇・七九から六十一
年度は〇・五九%に減っています。それから、地方銀行では一・四〇から一・一九に減っています。相互銀行では一・五五から一・三四に減っておる。信用金庫では一・七七から一・五九に減っている。
都市銀行が一番端的に数字は示しています。
次に、一人
当たりの営業利益、これを見てみますと、五十八年と六十一年の調査比較をいたしますと、
都市銀行では五十八年五百七十八万円から六十一年には八百八十七万円になっている。で、地方銀行では三百六十四万円から四百十九万円、余りたくさんふえていない。相互銀行、信用金庫それぞれふえておりますが、
都市銀行ほどのふえ方はしておりません。これを見ますと、大体
業務量がふえてそして人が減って営業利益が上がっているというんですから、
業務量が一般的に言って大変ふえているというのは御
理解がいただけるんではないかと思うんです。
この上に徹底したノルマが追求をされている。これは朝日新聞の、
先ほどお示しをいたしました朝日新聞にも書いてありましたが、こういうふうに言われている。
支店長は毎年二月、次
年度の目標を担当常務と協議し、最後に握手をして、その達成を約束するのがならわし。
ところが、
実際は他の銀行の動きを勘案し、富士全体の目標を支店に割り振るが、
これはもう常務の名前も書いてありますが、
常務渋谷禎一は「支店が自らの意思で決めた目標」。
だと。割り振るけれ
ども、その支店のみずから決めた目標だと。
支店でも課、係単位から行員個人まで目標を出し、中間管理職が支店の目標と調整し、それぞれ「自分の目標」が決まる。
こういうふうにノルマが決められて追求をされていくわけです。しかも、そのノルマの追求のされ方というのは、
先ほど申し上げたように、昼はとにかく所定
労働時間は外回りを跳んで歩いている、夜になってそのデータを一生懸命やらにゃいかぬということになるわけですから、長時間
労働になるのは
当たり前なんです。で、
業務量がふえて、その上にノルマが課せられる。
今、銀行では、詳しく余り言えないんですけれ
ども、預金を集めるだけでは半人前なんです。貸し付け増、貸し付けをふやすということも徹底して追求されている。時間外あるいは休日
労働がふえるのは
当たり前になっているんです。だから母子家庭寮になるのが
当たり前だというふうになっているわけですが、サービス残業、つまり不払い賃金、賃金不払い
労働が起こるのはこういう
業務量の
増大ともう
一つ仕掛けがある。
それは時間外
労働の管理なんです。
これは、仕事がやれないから夜の十時、十一時まで働いているというだけで、それが残業手当を全部もらっていると言えば全体の超過
労働時間というのがわかるわけですけれ
ども、そうじゃなくて、時間外
労働の管理というのがあるわけです。
富士銀行の例はこのルポに書かれております。これによりますと、
富士銀行の全部長・支店長には、人事部長から半期ごとの「時間外
予算の運営」という通達が下ろされる。むろん行内でも厳秘の秘密文書で、部長や支店長も部下には見せない。この人事部長通達によると、八七年九月からの今期の「時間外
予算」は、役席(管理職)で二五時間、男子行員二二時間、女子行員一〇時間、途中入社の庶務行員二〇時間となっている。これ以上の残業時間の申告はまかりならぬという残業手当削減のノルマだ。
というふうに書かれておるわけです。つまり時間外
労働のガイドラインを銀行でつくって、実際上はこれ以上の残業代は支払いませんよという上限を示しているわけです。しかも、それが厳重に管理をされています。
だからどういうことになるかというと、これはもう
一つ、
都市銀行の実例がありますので、これは
大臣のお手元へ行ってませんか、資料としてお渡しをしていただきたいと思うんです。「一般通達」と書いてある資料でございますが、これはある
都市銀行のいわゆる時間外
労働のガイドラインを示しているんです。これによりますと、これ全部読むわけにいきませんので、問題のところをちょっと申し上げます。「六十一
年度上期の時間外管理については、全体としてほぼ新ガイドラインにそって成果が上がってきていますが、ガイドライン比実績が大幅に上回る部店も散見されます。」と。いずれにしても、「厳正な管理を
推進していただくようお願いします。」、「以上の趣旨に則り、別記要領により、「時間外勤務及び連続休暇管理計画」を策定し、目標管理を徹底されるよう依頼します。」というふうに書いておりまして、別記のガイドラインでは、同じく役付者二十六時間、男子書記二十三時間と、こういうふうに書かれているわけです。で、「(ガイドライン)の枠は、各部店の基準人員により設定します。従って、時間外自主計画通期合計は、(六十一
年度基準人員×職種別ガイドライン)合計内におさまるよう注意して下さい。」と、こういうふうに大変丁寧に書いてあるわけでございます。
したがって、そのガイドライン以上は残業しても金は払いません、それが上限なんだと。請求もしない、払わないというふうになっている。ですから、残業を通知をしなきゃいかぬわけですけれ
ども、書き込むのも毎日書いたらそんなものすぐにオーバーするから、月末に一括して請求をしてきていると、こういう仕掛けになっている。ですから、サービス残業がふえるのは必定なんです。まさに実質的な賃金不払いの仕組みというのが、こういう格好で時間外
労働の管理というやり方がやられている。
こういう実態についてどう思われます。