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1988-03-28 第112回国会 参議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午後一時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         関口 恵造君     理 事                 佐々木 満君                 曽根田郁夫君                 山本 正和君                 中西 珠子君     委 員                 石井 道子君                 石本  茂君                 岩崎 純三君                 遠藤 政夫君                 田中 正巳君                 前島英三郎君                 宮崎 秀樹君                 対馬 孝且君                 渡辺 四郎君                 沓脱タケ子君                 内藤  功君                 藤井 恒男君    国務大臣        厚 生 大 臣  藤本 孝雄君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       仲村 英一君        厚生省生活衛生        局長       古川 武温君        厚生省薬務局長  坂本 龍彦君        厚生省社会局長  小林 功典君        厚生省児童家庭        局長       長尾 立子君        厚生省保険局長  下村  健君        厚生省年金局長  水田  努君        厚生省援護局長  木戸  脩君        社会保険庁医療        保険部長     土井  豊君        社会保険庁年金        保険部長内閣        審議官      佐々木喜之君    事務局側        常任委員会専門        員        此村 友一君    説明員        文部省体育局学        校保健課長    込山  進君    参考人        環境衛生金融公        庫理事長     山下 眞臣君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について(厚生省所管及び環境衛生金融公庫)     ─────────────
  2. 関口恵造

    委員長関口恵造君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  去る三月二十五日、予算委員会から、三月二十八日及び三十一日の二日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管労働省所管及び環境衛生金融公庫について審査の委嘱がございました。  本委員会といたしましては、理事会で協議の結果、本日は厚生省所管分を、三十一日は労働省所管分をそれぞれ審査することといたしました。     ─────────────
  3. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管及び環境衛生金融公庫を議題といたします。     ─────────────
  4. 関口恵造

    委員長関口恵造君) まず、参考人出席要求についてお諮りいたします。  本件審査中、環境衛生金融公庫役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 予算説明につきましては、厚生大臣から既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 山本正和

    山本正和君 財政の大変厳しい状況の中で、厚生省、随分大変なお取り組みをいただきましてかなりの、何といいましょうか、問題克服のための予算をおとりいただいております。また歴代厚生大臣、特に我が国福祉国家、こういうふうなことで懸命なお取り組みをいただいて幾多の実績もあるわけでございます。こういう面につきましては今後とも一層のお取り組みをいただきたいと考えております。  ただ、私は、この予算全般を検討する前に、大変残念なことでございますけれども厚生省に対する国民の間での批判、あるいはもっと言いますと、我が国血液行政といいましょうか血液事業といいましょうかこれに対する国際的な批判、さらには血液を必要とされる多くの国民の皆さんが大変な懸念を抱いておられる問題につきましてきょうはただしてまいりたいと思うのでございます。  まず、血液事業というものにつきまして厚生省当局としてはどういうふうなお考え方で臨んでおられるのか、全般的な考え方につきましてお聞きをしておきたいと思います。
  9. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 血液というものは人間の体の一部でございまして、また血液製剤というのはそれ以外の原料からつくることはできないという意味で大変貴重でございますし、また同時に、いろいろな配慮を加えてこれを製造なりまた使用なりしなければならない、こういう製剤であるという認識を持っております。  と同時に、こういった製剤につきましては、これは各国とも共通の問題でございますが、自分の国で消費する血液あるいは血液製剤自分国内献血によってこれを賄っていく、こういう理念に立ってこの事業を行っていくということも必要であるわけでございます。さらに、この血液あるいは血液製剤につきましては、医学的薬学的な非常に専門の知識を持ってこれを扱わなければならないと同時に、国民の側に対してもできるだけわかりやすく事業を行っていく、こういう必要もあるわけでございます。  そのような意味で、既に昭和三十八年に閣議決定をいたしまして、日本血液はできるだけ国内自給ができるようにと、こういう基本方針が定められておりまして、それに基づいて現在までの段階で少なくとも手術に用いる輸血の際の必要な血液、これは国内ですべて賄えるようになってまいりましたが、一方において、血液分画製剤と呼ばれる製剤につきましては医学上の進歩によって 非常に需要がふえたということもございまして、現在の段階ではこれを輸入に頼っているという状況でございます。  したがいまして、今後はできるだけ国内自給体制を確保するための努力を進めるとともに、血液行政についての国民の御理解を得ていくように努力をいたしたいと考えておる次第でございまして、その対応として需要面供給面両方にわたってできるだけ適正な運営に心がけていく必要があると考えておる次第でございます。
  10. 山本正和

    山本正和君 血液は臓器の一部であり人間の生命の延長としての重要な意味を持っていると、こういうお話でございまして、これは全く私も同感でございます。  ただ、経過を見ますと、WHO血液及び血液製剤に関する勧告を出したのが一九七五年五月でございます。その後も国会等でこの血液問題に対するいろんな論議がございました。そして、かつてこの血液の問題は、戦後のいわゆる梅毒汚染それから黄色い血の問題と、こういうふうに騒がれてまいりまして、大体二十年間隔ぐらいに国民の間で大変な関心といいましょうか、場合によってはパニックと言ってもいいんでありますが大変なことになる、こういう問題が出てきておるわけでございます。しかし、実は十年、二十年前からこの問題については国会でもあるいは厚生省内でもさまざま論議があったように私は聞いておるわけでございまして、そういう意味からいいますと、WHO勧告なりあるいは今までのたび重なる国会での論議によって日本赤十字社もしくは国その他の公共団体血液事業については行うべきである、こういうふうな流れがずっとあったと思うわけでございますけれども、これは今日までなおいまだ実現に至っていない。こういう理由はどういうふうにお考えでございますか。
  11. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) お答えする前に、ちょっと先ほど答弁で一カ所訂正をさせていただきたいと存じますが、閣議決定三十八年と私さっき申し上げたのでございますけれども、これは三十九年でございますので、おわびをいたして訂正させていただきたいと思います。  今日まで日本血液事業国内自給体制という基本理念に必ずしも合致した状態になっていないという問題がございまして、これは私どもも非常に大きな問題であると認識をいたしておる次第でございます。  従来、血液を使用する場合は主として手術の際の輸血というような手段が主流でございました。先ほども申し上げましたような閣議決定の当時におきましても輸血血液というのを確保するということがやはり一番重要な問題として認識されていたというふうに考えられるわけでございますが、その後いろいろ医学あるいは薬学上の技術進歩がありまして、いわゆる全血液をそのまま使うのではなくてその成分ごとにこれを分けて患者の症状に応じて使っていく、こういう技術とそれに伴う血液製剤製造技術とが相まっていわゆる成分製剤でございますとか分画製剤というものが非常に発達をし、また需要がふえてまいりました。それに伴って国内技術面あるいは製造面でやはり需要に追いつけない、こういう実態が生じてまいりまして、ここが外国に依存するという形になってあらわれてきておるわけでございます。  現在、先ほど申しましたように、輸血などの血液はこれは国内自給体制ができておりますので、今後は分画製剤等につきましてもできるだけ国内自給体制を高めていく必要があろうと、こう考えておるわけでございます。その際に、いろいろ専門家の御意見を伺ってみますと、分画製剤については使用の面においてもやはり問題があると。例えば、本当に必要な場合はもちろんでございますけれども、そのほかにいわゆるアルブミン等栄養補給のような目的で使っているケースもあり、ここはやはり適正化を図っていく必要があろうと。そういう面にも力を入れていく一方、できるだけ国内における技術を開発いたしまして適正な需要のもとに適正な国内供給を図っていく、こういう方向に向けて努力をいたしておるのが現状でございます。
  12. 山本正和

    山本正和君 国内自給するという場合に、最近ずっと続いておりますしまた当分の間そうじゃないかと思うのですが、民間設備を借りるといいましょうか民間に委託して、特に分画製剤等製造を頼んでいると、こういうことがあるわけですね。  私が申し上げたのは、十年、二十年前から血液自給あるいは血液製剤については国なり日赤なりが責任を持ってやっていくべきものなんだという国際的な流れがある。また患者にしてみても、血液という問題については国の責任であるいはみんなが信頼し得る日本赤十字社責任でもって扱ってほしいと、こういう願いがずっとあったわけですね。しかし、いまだなお民間会社にこれを委託している。この原因は何かということをお聞きしているわけです。
  13. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 端的に申しますと、やはり国内における血漿分画製剤需要量の急増に対して日本赤十字社等における技術あるいはその製造体制が追いつかなかったということだというように考えております。  現在、日本赤十字社においても国内において血液凝固因子製剤等を生産すべく工場設備の開発を行っておりますし、また既にアルブミングロブリン等については一部製造しておるものもございますので、今後はこういった製造体制というものの確保に力を入れていく必要があろうかと考えておる次第でございます。
  14. 山本正和

    山本正和君 諸外国を見てまいりますと、アメリカでは我が国と同じような格好のように思いますけれども、その他の国ではそうじゃない、国もしくは公共機関製造についても管理についても血液問題を扱っていると、こういうことを聞いておりますけれども、それについては厚生省はどういうふうな把握でございますか。
  15. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 外国血液事業実態につきまして、今年度、諸外国における血液行政調査研究というのを実施しておりますので、それがまとまりますと相当詳細な内容がわかるのではないかと考えておりますが、現在の段階でまだ余り外国についての詳しい実態を私どもとしては把握するに至っておりません。  ただ、いろいろな情報を集めてみますと、確かに米国では今御指摘ございましたように献血売血があり、また赤十字以外に血液銀行地域血液センターといったようなものがあるわけでございますが、その他の国で例えば、オーストラリアでは国、州及び赤十字協力体制のもとで赤十字献血者の募集、採血及び全血液製剤製造を行っているということになっておるようでございます。また、スウェーデンにおきましては国と州によって血液事業が行われておりまして、献血採血州立病院で行われ、全血及び成分製剤製造されて、州立血液センターから供給されているということでございます。さらに血漿分画製剤につきましては、これまで輸入に依存してきておりましたが、現在では自給体制を目指して計画が進められているというように私どもとしては聞いておるわけでございます。内容がまだ大変不十分でございまして、今行っております調査研究ども早期にまとまることを期待いたしまして、私どもも今後の参考資料としたいと考えておる次第でございます。
  16. 山本正和

    山本正和君 民間血液製剤、特に血漿分画製剤製造していきますと、これは当然のことでありますが、民間であれば企業でありますから利潤を追求しなければなりません。利潤を追求すれば当然安い原料を手に入れてそして利潤を上げていきたいと思うのが、これは当然のことだろうと私は思うんですね。ですから、WHO勧告なりあるいは国際輸血学会といいましょうか、またさらには患者の会といいましょうか、そういういろんなところから来ております要望からいえば、これは、本来、そういう利潤目的とする会社血液という問題を扱わせるのはいいのか悪いのか、本来の問題ですね。現状は今使わざるを得ないということになっている、しかし本来はどうなのか。 その辺についてはどう考えておられますか。
  17. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) やはり血液というものの特殊性から考えれば、これによって利潤を得るということは、どちらかといえばできるだけそういう形にならない方が望ましいということは理念的には言えると思うわけでございます。しかし、国内における血液のあるいは血液に関連する供給体制の確立という中にあって、やはり技術面あるいは供給面民間企業の果たす役割というものを完全に無視することもまたできない面もございまして、これはやはりできるだけ国内公共的な機関による関与というものを中心にしつつ、必要に応じて民間企業技術力なりあるいは供給のための企業の力というものを有効にかつ適正に利用するということが現実考えられる姿であろうというように考えております。
  18. 山本正和

    山本正和君 現実製薬会社が操業しており、そこで働く多くの人がおるわけでありますから、その会社からかなり大きな利益部分がなくなったら大変な問題が起こる、これは私もよくわかるわけです。しかし、そういう民間会社があって民間設備がある、その中でこの血液事業というものが行われていくという形態は本当はあってはいいのか悪いのかと、この問題なんですね。  ですから、今のお話は、理念的には国なりあるいは日赤なりという機関がやるべきだ、理念的にはこうだと、こういうことを言われたのもこれは理念であって、いつまでたってもだめなのか、そういう方向へ業界も指導し、あるいはそういう会社工場等が他の製品にだんだん切りかわるようにしていきながら持っていくんだと、こういうことなのか。そこのところはいかがでございますか。
  19. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) やはり血液事業中心公共機関であるべきだろうと思います。と同時に、民間企業も医薬品の製造供給という点におきましてやはりそれなりの機能を果たしておるわけでございまして、この機能をどれだけ活用するかという問題についてはそのときどきの情勢に応じていろいろと考慮をすべき面はあろうかと考えておる次第でございます。しかし、その民間企業の比重というものが非常に大きくて、そこで血液事業相当部分を実施しておるという状態については、これはやはり将来是正をするという方向考える必要があろうかというように基本的には考えておる次第でございます。
  20. 山本正和

    山本正和君 最初に局長から御答弁いただきました血液というものの尊厳性ということからいったら、これは当然利潤対象にならないという形で対応すべきだ、こういうことを言っておられるわけですね。ところが、依然として現実民間工場があって民間工場がこれをやっていくとなれば、民間ならばこれは利潤を追求しなければ会社じゃないと私は思うんですね。会社というのは利潤を上げるためにつくられている組織ですから、利潤を上げざるを得ない。だから、それをそのまま置いておいていいのかという問題が、これは理念の問題であると同時に、行政方向の問題であると思います。行政方向としては、したがって将来国なり日赤なりが血液事業については全部やっていく体制に持っていく。方向としてはですよ。今すぐに廃止せよといったってこれは無理な話ですから。そういう方向については厚生省としてはお考えなのかどうなのか、ここのところをお伺いしたいわけです。
  21. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 血液製造等につきましては、外国でも全く企業がないということでもございませんし、また企業の持っているいろいろな利点というものも必要に応じて活用するということは決して望ましくないということはないと思うんでございます。また同時に、企業に対して血液製剤関係事業を一切禁止するというようなことも、これまた果たして今日の日本のいろいろな制度のもとで可能かどうかという問題がございますので、そういった形における民間企業の排除ということについては非常に難しい問題が含まれておると存じますが、少なくとも公共機関によって必要な量が賄われるという体制に持っていくことによって、結果として、例えば民間企業におけるそういう事業というものが必ずしもなくても国内における血液製剤供給は十分賄えるという状態になるとすれば、それは望ましい状況でなかろうかと考える次第でございます。
  22. 山本正和

    山本正和君 そうすると、今のお話を聞いていると、将来ともこの血液事業民間である程度のシェアといいましょうかあるいは競争原理の中でつくっても構わない、それは厚生省としては差し支えないんだ、こういうふうにどうしても聞こえるんですが、そこはどうなんですか。
  23. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 民間製造等を禁止するということはなかなか困難であろうかと思うわけでございます。しかし、公共主体によって必要なものが賄えればそれが一番望ましいという考えでございますし、また公共的な事業について民間企業が実施しているというものもほかにもあるわけでございます。要は不適正な利潤というものを上げてそれでこの血液供給を行うということは、これは避けなければならないことでありますけれども、やはり全体の中で民間企業として適正な機能を果たす面が全くないということは私もなかなか言えない問題ではなかろうかというように考えておる次第でございます。
  24. 山本正和

    山本正和君 WHO勧告日本輸血学会決議やあるいは今までの渡辺美智雄大臣時代厚生大臣の御答弁趣旨等からいきますと、どうもそこのところが私はすっきりしないんです。今あるのを直ちに禁止するとかあるいは生産を停止するとかいうことは、これは現実問題としてできないだろうと私も言っているわけです。しかし、将来あるべき姿として、血液事業というのは国なりあるいは日赤なりが全責任を持ってやっていくべきだという見地に立つのか立たないのか聞いているわけですね。  私がそういうことを言いますのは、こういうふうに「献血六十四万人分宙に浮く」とかあるいは赤血球製剤が余って仕方ないのでこれを廃棄するとかいろんなことが出てくるわけですね。それは当然企業であれば利益のある製品をつくりたいわけですよね。ところが、これを国なり日赤でやれば、利益という問題の前にそれ本来の使命があるわけですから、そういうことにならない。我々の大切な血液を本当に有効利用しようとするのならば利潤対象から外さなければ、恐らく献血しようという人も実は、数年前でしたかもうちょっと前でしたか、全国の高校生に至るまで献血運動が随分広がったときがあった、そういうときにも、この献血ということの意義を、みんなで助け合う、人間が生きていくという本当に自分の命の大切さを前提にして、弱っている人、因っている人に血を与えていこうという中で来ている問題でございますから、そういう中で本来のあり方としてはこうなんだ、現実はまだこういうものがあるからということなのか。将来ともこういうものは現実にあってもいいのだというのと大分違ってくるわけですね。  ですから、将来の方向という形で厚生省はどう考えられるかということを口を酸っぱいぐらいお聞きしているんですけれども、今お聞きしているとどうも将来とも民間のやつがあってもいいように聞こえるんだけれども、それはどうなんですか。
  25. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 将来の理想的な姿としては、公共的な事業主体で全部必要なものが賄えるようにするということであろうかと思います。  ただ、今の時点でいつごろの時点にそういう状態が出現するかという点については私も明確なお答えができるような状況にございませんので、それまでの間は民間企業機能を果たす部分というのはやはり現実として残るであろうと申し上げておりますが、しかしそういう民間企業に依頼する必要がなくなるような状態をやはり将来の目標として目指していきたいと考えておるわけでございます。
  26. 山本正和

    山本正和君 当面すぐということを私は言っているんじゃございません。そういう意味では今の局長お話は、本来あるべき姿としては国なり日赤なりさらには公共機関等がこの血液事業は扱うべきであるというふうにお考えになっている、こ ういうことで確認してよろしゅうございますね。  大臣、この辺はいかがでございますか。大変難しい問題かと思いますけれども、過去からこの種の問題につきましては大臣に御見解を承っておる経過がございますから。
  27. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 後の方で、血液事業の見通しというところでお尋ねがあるかと思っておりました。  先ほどから局長が御答弁申し上げておりますように、血液事業はこれは非常に大事な問題でございまして、整理して考えてみますと、まず自給自足体制に持っていく、国内で要る血液国内で賄う、で六十一年の春から新しい血液事業を始めております。ところが、手術用血液自給できておりますけれども、ほぼそれと量的に同じ程度血液製剤原料部分については残念ながら輸入によって賄っておる、こういう現状だと思います。その部分も含めて一日も早く自給自足体制に持っていく、その中心はやはり日赤中心として事業を進めていくということを申し上げておるわけでございます。  それから、一方において、民間企業が従来からそういうことをやっておるわけでございまして、確かにこの血液事業を通じて利潤を上げていくということは好ましいわけではない、しかしストレートにそこに指導といいますか民間のメーカーにそういった事業をやめさせるということについては、どこまで今の自由経済の仕組みの中でストレート指導監督できるかというといろいろ問題がある、そこで日赤中心として自給自足体制を強化していく中で結果として民間のシェアが減ってくる、最終的には国の事業としてそこへ持っていく、こういうことを申し上げておると思うわけでございまして、私どもも十分に今の現状また事業の重要性は認識しておりますので今後とも一生懸命努力をしてまいりたい、かように考えております。
  28. 山本正和

    山本正和君 ひとつぜひそういうことで、国民に対して血液事業についての信頼を確立していただくようにお願いしておきたいと思います。  今度は、若干難しい問題かと思うんでありますが、これも同様国民の間で今いろんな議論が出てまいっております、そのことについて少しお尋ねしてみたいわけであります。  といいますのは、血漿製剤我が国の使用が諸外国と比べて大変多い、そして血漿消費量の世界の三分の一を我が国が使用している、こういうふうなことが言われておりますし、また事実かなりしっかりしたいろいろな場でそういうことが報告をされている。何で一体我が国がこんなに血漿製剤をたくさん使うんだろうかと、どうしてもこういう疑問が浮かぶわけですね。なぜ我が国がこういうふうに血漿製剤をたくさん使っているかという原因について厚生省はどういうふうにお考えでございますか。
  29. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 血漿分画製剤は最近非常に使用量がふえてまいってきておりますが、これは、従来のような全部の血液輸血するのに比べまして、必要な成分だけを患者に使用するということによって患者側の身体面での負担も非常に軽くすることができますし、またその製剤の使用の効能を効率的に高めることもできる、こういうこともあって非常にこの使用がふえてきたということは言えるわけでございます。  ただ、外国と比べてなぜこんなに多いのかというあたりになりますと、私どもいろいろ考えてはおりますけれども明確なところがまだつかめないような状況でございまして、外国における医療の実態というものをもう少し私どもも勉強してみたいと思っておるような状況でございますが、ただ最近いろいろ専門家の御意見を聞いてみますと、分画製剤の使用の実態としてどうしてもそれを使わなければならないかどうかという点に疑問がある、こういうケースもあるようでございまして、そういう意味で、私ども専門家の方々に御検討いただいて分画製剤の中の特にアルブミン等については使用の適正化の基準というものをおつくりいただいて、これをできるだけ普及して、使用というものをできるだけ本当に必要な適正なものにしていきたいと考えておるわけでございます。その結果、最近では若干使用量について減少の傾向が見えてきたという状況もございます。
  30. 山本正和

    山本正和君 このアルブミンを新しく製造の承認、許可を昭和五十九年十月にある会社にして、発売が六十年の七月、この製品が大変な勢いで売れているわけですね。あるいはグロブリンを承認したのが六十一年三月、そしてこれもまた大変な勢いで売れているようでございます。私は、適正にこういうものが使われることについては何ら、これはむしろ本当にしっかり使っていただきたいぐらいに思いますけれども、特に国際的に非難を浴びた中に、これは正式の権威ある場での指摘でありますけれども、栄養剤、疲労回復といいましょうか病後回復といいましょうかそういうふうなものに対してまで血漿製剤が使われている、これは我が国だけの状況だと。  さらにはなぜそう使われたのかということで見てまいりますと、外国と血漿製剤の単価が大分違うわけですね。我が国の血漿製剤の価格が、例えばアメリカと比べても大変な差がある、あるいはヨーロッパと比べても差がある、しかもそこに薬価差がある、実際に売る値段と随分違う、大変高い価格で売る、こういうふうなことが原因じゃないかというふうな憶測すら生まれるわけであります。私は、これは正直言って、例えば病院を経営する経営者の観点からいったら利潤が上がらぬことには、人件費あるいはその他経費からいけばなるべく利潤が上がってほしいと思うのは当たり前ですから、そうしたらもし私が事務長なら、若い先生に、先生済まぬけどもうちょっと薬を使ってくれぬかと言いたくなるんじゃないかと思うんですね。そういうことにならないためには何かといったら、適正な薬価の問題が出てくると思いますし、実勢価格との乖離が出てくると思うんですね。ですから、今血漿製剤が大変売れた原因の中に薬価問題がありはしないか、こういう疑念があるんですけれども、そういう疑念は全くなしと言っていいのかどうか、この辺は局長どうお考えでございますか。
  31. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 医薬品の価格について薬価基準と実際に売られている価格との乖離、これは従来からいろいろと議論されている問題でございまして、私どもとしては、薬価差というものはできるだけ解消をすべきものであるという考えから実際に売られておる実勢価格の調査を行いまして、それが薬価基準と乖離しておれば薬価基準の方を改定していく、こういうことによって薬価差を解消することに努めております。  現実には、これまでの経緯を見てまいりますと、薬価基準が薬価調査に基づいて引き下げられているというのが大勢でございますから、そこに薬価差が全くなかったということは否定できないわけでございますが、そういった状況を解消すべく私どもとしては薬価調査と薬価基準の改定ということによって適正な状態を確保できるように努めておる次第でございます。
  32. 山本正和

    山本正和君 それから、私は専門家の世界はよくわかりませんけれども、お医者さんの世界、学会等でいろいろアルブミンやグロブリンの問題については議論がされておいででございます。その中で、これは一体本当にお医者さんの中でそういうことが確認されたのかどうかわかりませんけれども、これも臨床検査医の段階でのお話でございますが、  三月十五日付The Lancetには、ノースカロライナ大学のグループが、加熱製剤でAIDSに感染したケースを発表しています。 これに絡んで、  ロンドンのグループが静注用グロブリンからとしか考えられない、男女二人のAIDS感染を報告しています。 こんなことが出ています。そしてまた、  アメリカで現在流通するほとんどのγグロブリン製剤は、HTLV—III抗体が陽性であると伝え、わが国でも慶応大学のグループが、わが国で流通しているグロブリン製剤の大半がHTL V—III抗体が陽性であったと こういうふうな報告がされているわけですね。  ですから、こういう血漿製剤の安全性という問題について厚生省はどういうふうにお考えになっているのか、この辺ひとつお聞きしたいんですが。
  33. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 例えばエイズの対策といたしましては、従来から非加熱製剤を加熱に切りかえる等、各国においてそれぞれ進められておるわけでございますが、アメリカなどで調査されました実例によりますと、初期の加熱製剤においては加熱の温度でありますとか時間等において必ずしも十分でなかったというようなものもあったようでございまして、そういうものによって汚染されたと考えられる症例がいろいろ発表されている段階でございます。この加熱の時間なり温度というものをそれではどれぐらいにすれば絶対安全かという、この辺がなかなか学問的にも難しいところでございまして、いわば試行錯誤的に従来からの経験を積み重ね少しでも安全なものをつくっていくという、こういう不断の努力が必要であろうかと、こう考えておるわけでございます。  ただ、日本におきまして現在つくっております加熱製剤については、先ほどの米国で発表になりましたようなケースにおける加熱の温度、時間よりはもっと高度なものを使っておるわけでございますので、報告があったような事例のものは現在日本では使っていないという状況でございます。  なお、各研究者あるいは民間企業におきましてもより安全な加熱製剤の開発について研究を進めておるわけでございますので、その段階でまた新しい結論が出ればそういうものを今後とも取り入れていくようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  34. 山本正和

    山本正和君 私、ここに報告されているような事柄が現在もあるというふうには思いませんし、今の局長の御答弁で恐らくそういう方向で取り組んでおられるとは思うんですね。  ただ、アルブミン、グロブリンが異常に使用されたという原因の一つに、これは絶対安全なんだあるいは高たんぱく質であるからということでもって何か栄養にもなるんだというふうなそういうこととかいろんな問題が背景にあって、しかもそこへもってきて薬価差がかなりあるというふうなことから、こうなったらおかしいですけれどもビタミン剤少々量を余計飲んでも大したことないというふうな感覚でもし使われたら大変なことになってまいります。これはお医者さん自身のモラルの問題でありますから、お医者さんはそれぞれ見識を持っておみえの方ばっかりでございますからそういうことはないわけでありますけれども、ただ経営という感覚からいきますと、ついいろんなことを言ったりしたりしたくなる部分がないでもないと私は思うんです。  そういう意味で、このアルブミングロブリン等のこういう血漿製剤の適正指導について厚生省としても何らかのガイドラインをお示しになったというふうなことを聞いているわけですけれども、それは具体的にはどういう形でお示しでございますか。
  35. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 血液事業検討委員会という専門家のお集まりをいただいた組織で御検討いただきまして、アルブミンにつきましてはこういうケースにおいて使用するのが望ましいあるいはこういうケースの場合には使用するのは適正ではないと、まあいろいろな専門的な立場の方がよく御理解いただけるような内容の基準を作成いたしました。これをできるだけ広範囲に御理解していただこうということで関係の各方面にその報告書としてお配りをいたしまして、現在十分にこれを熟知していただくように努めているところでございます。
  36. 山本正和

    山本正和君 ですから、六十二年度の数字が出てまいりますと、恐らく厚生省でいろいろと御指導いただいたことが数字に出ようかとは思います。  ただ、何といいましょうか製薬業界といいましょうか、いわゆる売る方がとにかくこれについての効能をいろいろお医者さんのところへ持っていって言うわけです。しかし、その売る方が厳密に説明をしているのかいないのかということも私は大変懸念されるわけです。ですから、この血漿製剤を売るについて、そのプロパーの諸君には間違ったことを言わないように、これは製薬会社責任でもっていろんなものを売っているわけですから、またお医者さんの場合は製薬会社からもらったいろんな資料をもとにしながら自分の医療にお使いになるわけですから、そういう製薬会社に対する指導を、特に血漿製剤についてだれが余計に売るかというふうな売り競争をするようなそういう会社の営業については厚生省としては厳重に注意していただきたいと思いますが、そういう製薬会社等に対する指導についてはどうでございますか。
  37. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) アルブミングロブリン等血漿分画製剤の薬効につきましては、私どもの方で今申し上げましたような適正な使用内容というものをもとにして薬効を決めておるわけでございます。当然、その製品につきましてはどういうものに適用するかといういろいろな使用注意書、効能書などに記載すべき内容についても私どもの方でチェックをいたしまして、そういう不適正な使用に流れることのないような指導を行っておるわけでございます。確かに、今御指摘のありましたような点については非常に重要でございますので、私どももその点については十分意を用いてまいりたいと考えておる次第でございます。
  38. 山本正和

    山本正和君 みんな世の中で生きていくのに精いっぱいでございますから、収入を上げようと思ってついそれは悪意じゃなしにやるかもしれないけれども、結果としては大変な問題が起こるわけでございますから、そういう販売面についての御指導はしっかりとぜひひとつお願いしたいと思います。  次に、私は、血友病患者への血漿製剤の投与の問題についてお伺いしていきたいわけであります。  血友病患者に対する血漿製剤の投与、これは今までどういう経過の中で来ておって現在どういうものが投与されているかというその経過につきましてひとつ御報告いただきたいのでございますが。
  39. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 血友病の患者に対しましては血液凝固因子製剤を投与するわけでございますが、日本でこの血液凝固因子製剤の承認が行われましたのが大体昭和五十三年ごろからでございます。これによって患者は非常に治療効果が上がるという状況になってまいりましたが、不幸にしてエイズの問題が出てまいりまして、従来の非加熱型の凝固因子製剤によっては感染の危険があるということで加熱型に切りかえてまいったわけでございます。その一方において、今私が申し上げましたのは濃縮型というタイプでございますけれども、従来、非濃縮型の凝固因子製剤もございまして、これは専門的な言葉ではクリオプレシピテートと呼ばれておりますけれども、そういうものも同時に存在をいたしましてそれも使われておったわけでございます。  ただ、非濃縮型の製剤と申しますのは、例えば病院で点滴によって使用するというようなものでございますので、非常に時間もかかりまた副作用もある。患者にとってはかなり使用の面で不便な点がございましたので、どちらかというとこれよりは濃縮型の方が使われるということがふえてまいったわけでございます。  現在におきましても両様の製剤があるわけでございまして、これはどちらを使うかは医師の選択なりあるいは患者の要望というものによって行われておるという現状でございます。
  40. 山本正和

    山本正和君 現在、濃縮型の凝固因子製剤は、これは民間でつくられているわけですね、あるいは民間輸入してこれを販売している、こういうことでよろしゅうございますか。
  41. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) そのとおりでございます。
  42. 山本正和

    山本正和君 輸入の大半がアメリカだというふうに聞いておりますが、よろしゅうございますね。
  43. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) アメリカ以外のもございますが、大部分はアメリカということでございます。
  44. 山本正和

    山本正和君 実は、血液問題でいろいろ心配される方々がたくさんお見えでございます。そして現実にアメリカで血液がどのような形で採取されているかというようなことで行かれた方もおられます。恐らく厚生省もそういうアメリカでの血液の採取の状況については御調査いただいているかと思うんでございますが、アメリカにおける採血状況献血とそれから血を買うといいましょうか、両方あるかと思うんですが、それについてちょっとお教えを願いたいと思います。
  45. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) アメリカにおける採血状況といたしまして、いわゆる売血部分が非常に多いということは聞いておりますが、数字的に売血献血の比率がどの程度かということについては私どもちょっと正確には把握をいたしておりません。
  46. 山本正和

    山本正和君 これは、厚生省としては本格的に調査されたのかどうか、それも含めてお聞きしたいんでありますが、大変ショッキングな状況が知らされています。  「世界の血漿は、めぐりめぐって日本へと送られてくる」状況だ、「もっとも太いパイプはアメリカです。」と。これはアメリカをずっと回られた方の報告でありますけれども、「アメリカの売血所は、一昨年三百四十カ所だったものが、この一年間で三十カ所増え、三百七十カ所になっています。AIDS多発地域で一九八三年ごろ約五十カ所閉鎖したのですが、魅力ある日本市場のためか、増加して」きた。「アメリカの売血所は、血液製剤メーカー直営のものと、個人経営あるいはメーカーでない会社のものが」ある。専門のところは大分いいようです、日赤にも負けぬぐらい立派だと。「しかし、問題は個人経営で、一般の人が立ち寄れない犯罪地域や、貧しい人たちの集まる浮浪者の街にあります。サンフランシスコはマーケットストリートの南、ミッションストリートにあります。一昨年はこの通りには一カ所だったのですが、昨年六月からベトナム人経営の売血所が一カ所増えました。前からある所は、ホモの集まることで有名なカストロストリートから歩いて十分のところにあります。」、こういうふうにずっと書いてあるわけです。ホモセクシュアルの男が売血者の一割とか、いろんなことが書いてあります。そしてこれはずっと見ていくと、アメリカにおける血液、これが企業として立派に成立している。  さらにまた、最も恐ろしいというふうに私は思ったのは、こういうことがあるわけです。「四〜五年前、南米コロンビアで、次々と子供が誘拐される事件があり、あるときそれらの死体が大量に発見された。そしてその子供は全部血液を抜かれていたと報道されたことがあります。  こういうふうな事柄が国際的に非常に問題になってきている。特に、アフリカでもいろんなことが取り上げられまして議論されたりしておる。そのときに、じゃだれが悪いのかといったら、買い手がおるから悪い。買い手はだれだといったら、ジャパンである。こうなった場合、一体、日本の国は国際的にこのままでいいんだろうかという問題が出るわけです。そうかといって、それじゃ我が国会社がアメリカから血を買うときに、これは買った血ですか、献血ですかということを確かめる方法はないわけです。そしてアメリカから輸入されている血漿の総額、これは金額にして幾らかわかりませんけれども、ひょっとしたら貿易摩擦の緩和に大変寄与しておるかもしれない。こんなことはアメリカ人は喜ばないと私は思うんです。  こういう状況がずっと起きている最大の原因は何か。血友病の患者というのは、この凝固因子で抑えなければ毎日の生活ができないんです。お一人当たり恐らく三百万円かかると言われている。その大変な苦しみをしておられる五千人の患者の方々は、これは企業から見るととらの子なんです。この濃縮凝固因子製剤を使っている、その原料は全部アメリカである。九八%と聞くが、もうちょっと減っているようでありますけれども、そういう実態については厚生省は把握してございますか。
  47. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) アメリカの国内での売血実態というのは、これはいろいろなところから実際に採血しているということは考えられるわけでございますが、ただ私どもとしては、例えば、昭和五十八年七月ごろに、輸入血液製剤につきましてエイズ感染のおそれのない供血者から採血した旨の証明書を添付せよと輸入業者に指示をいたしましたし、また六十年の七月に、輸入血液製剤については原料血漿を含めてエイズの抗体検査済みの証明書を添付せよという指示もいたしまして、少なくともアメリカ国内においてそういう危険な血液を使っていない、こういうことを証明するよう輸入の場合に企業に義務づけておるわけでございます。したがいまして、現在、国内自給体制との関係でこれは現時点において輸入を完全にストップするということはできないわけでございますけれども、できるだけ安全な血液であることを明らかにして日本輸入するように、こういう方向で臨んでおるわけでございます。  また同時に、原料段階のみならず、加熱につきましても、現時点考えられる最も安全な加熱方法を用いて製造することを義務づけておるわけでございまして、いろいろ危険な要素から日本に入ってくる血液の安全性を確保するため必要な手段を講じているということでございます。
  48. 山本正和

    山本正和君 製薬会社が安全だという証明はどういうふうにされておられますか。
  49. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 私どもとしては、製薬業者に対してただいま申し上げましたようなエイズの抗体検査済み、これがマイナスであるという証明を添付することを指示いたしておるわけでございます。これを輸入の際に励行をさせているという方法でございます。
  50. 山本正和

    山本正和君 これは局長、恐らく局のそれぞれ専門の方が御承知のことだと思いますけれども血液といいましょうか血液製剤というものは、今もって未知の分野が大変多いわけですね。これから何が起こるかわからないという内容をはらんでおります。したがって、我々が考え得る安全というのは、単なる一つの検査によって安全かというと、そうじゃない。その一番いい証拠がこの前出ました非加熱型の凝固因子製剤がエイズを持っておったということですね。しかし、これは、確かにその当時は予見し得なかったわけです、その当時の材料で。これから何が起こるかわからない。となりますと、血液製剤というもののなかった昔に戻れば、例えば子供がけがをしたら親が自分の血をやる、兄弟が自分の血をやる、本来そういうところから出発しているわけですね。ですから、血液というものあるいは血液製剤というものは、これはなるべく同じ血の者同士、それがWHO勧告の精神でもあると思うんですね。それもなるべく少数の人の血液から。そんな、何かまざってわけがわからぬような、結局尋ねていけばどこにたどり着くかわからないような形の血液ではなしに、例えば日本国内なら日本国内日本人の血液によって賄う、これが正しいということを言っている理由も私はそこにあると思うんですね。  ですから、今のように製薬会社は、正直言いまして日赤献血をした血を使って製剤をつくったんでは利潤が非常に低いんです。これはもう御承知のことだと思う。アメリカから持ってきた方が安い。そこのところだけは御承知でございますか。そこだけちょっと。
  51. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 企業の方で輸入した場合と日赤の提供する血液を使って委託による製造を受けた場合との利潤の比較、ちょっとこれも企業の内部の話で私も正確には存じておりませんのでちょっと明確なお答えができる状況にはございませんけれども、まあいずれにしても、ただいま御指摘のありましたようなことは、できるだけ国内献血血液を使うということは重要でございますから、日本赤十字社ができるだけ、現在の時点では民間企業技術力を活用せざるを得ない面 がございますけれども自分の力で製造する、あるいは民間企業技術を活用する場合にいたしましてもできるだけ国内血液が十分供給できるような体制は今後確立していく必要があろうかというように考えておる次第でございます。
  52. 山本正和

    山本正和君 これはちょっと横道にそれましたけれども、私が申し上げたいのは、血液製剤、これは薬の世界はすべてそうでありますが、何がいつ起こってくるかわからない大変難しい問題をはらんでおります。その中で長い間使われてきた安全なものあるいは、何といいましょうか、本当に人間の本能的な感覚でかぎ分けた薬というふうなものもあるわけでありますけれども、そういうふうないろんなものが使われて今日薬というものがある。しかし、血液はちょっと違うと私は思うんですね。しかも、特に血液は、まだ生命を持っていると言ってもいい製剤もあるわけです。そういうふうな内容の中で、これが安全ですということを言い切るのは非常に難しい。だからどうしなきゃいけないかということについてWHO輸血学会が勧告しているのが、何とか国内で、それも限られた安全な血でという中でそういう問題が言われている。  この部分については、もう局長先ほどからお話のように、なるべくそういう方向へ持っていくべきだと、こういうふうなお考えでございますね。
  53. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) おっしゃるとおりでございます。
  54. 山本正和

    山本正和君 そこで、実はここで日赤の問題について少し触れたいんでございますが、日本赤十字社というのは、これは皇后陛下が総裁で、そして明治以来ずっと続いてきた。我が国民から言えば、何かあれば日赤があると、こういうことで来ている私どもにとっても大変大切なすばらしい団体だと、こう思うわけです。  この日赤がいろんな形で取り組んでくる中で、恐らく戦後の献血というものも日赤の存在なしには、今日のように世界でも献血率が高い、我が国は国際的に比べたら献血率が非常に高いわけですが、日赤がなかったらそこまでのことになっていないと思うんですね。その日赤はこういう血液問題を扱って、しかも第二次大戦後の医学の大変な飛躍的な進歩の中でこういう血液問題を扱うとなったら随分お金が要るわけです。これは国際会議等でも血液問題は何遍も取り上げられて、やらなきゃいけないと言っている。血液事業は一応日赤専門家でやっている。しかし、国は血液事業について日赤に対しどのような助成や補助あるいは指導をされたのか、この辺はいかがでございますか。
  55. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 日本赤十字社血液事業の運営につきましては、まず昭和四十六年度から四十八年度までは薬価の据え置きがございましたので製造原価との差額補助制度という意味での国庫補助をいたしておりました。また四十九年度から六十年度までにおきましては血液代金について患者からこれを徴収しないというシステムになっておりましたので、その無料化部分について日本赤十字社に給付費あるいは事務費という補助をいたしておったわけでございますが、昭和六十一年度からは日本赤十字社本社の事務補助を含めまして新しい血液事業の推進を図るために補助を行っております。昭和六十二年度におきましては約六億九千万円の国庫補助をいたしておる次第でございます。  なお、国のほかに各都道府県等におきましても施設の整備費補助あるいは血液センターの運営といたしまして補助が行われておるわけでございますが、そういう国あるいは地方公共団体によって日本赤十字社血液事業運営のために公共の助成が行われておるわけでございます。
  56. 山本正和

    山本正和君 日赤献血によって国民のとうとい血を集めてくる、それによって今全血輸血等は全部賄い得る体制にある、あるいは血漿じゃなしに血液製剤についても大体日赤で賄い得る、残りは血漿製剤民間に回しているというのが今の状況でございますね。  ところが、日赤の「百年史」ができましたのはもう十年ほど前だと思うんですけれども、そのときにこういうことを言っているんですね。日赤に対して血漿製剤も含めて全部やってくれるべきだという国民の声は強い、しかしながら設備その他の問題でまだ今のところはそういうことになっていない、しかしこれは何としてもこういうふうな方向で取り組むべきだ、しかし国の態度が未定なのでと、「百年史」にこう書いてあるんですね。恐らくお手元に資料があろうかと思うんでありますが。ですから、国の態度が未定だから日赤はこの血漿分画製剤製造ができなかった、もう十年前です。  それで、日赤がやっとつくったのがこの前千歳にできた分画製剤工場ですね。これは大変新しい設備だそうでございますけれども、これについては国から一銭のお金も出ていないというふうに私は聞いたんでございますけれども、既に十年前に日赤血漿分画製剤についてもつくりたいという意欲があった、十年間ほうっておかれた、やっとできた、そのときには国から一銭もお金が行っていない、こういうふうな状況については一体どうお考えでございますか。
  57. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 日本赤十字社血液事業のいわば財政状況と申しますか、そういう面にもかかわり合いがあることでございますけれども、従来いろいろな形で国庫補助金も支出されておりまして、そういった国庫補助金も含めて日本赤十字社血液事業部門ではこれまで一応全体を通じて見ると黒字というような状況にもあったわけでございます。最近若干この傾向が変わってまいりまして財政状況が悪化しておる面がございますけれども、従来そういう意味におきまして直接具体的な施設の補助というものは行われていなかったというのは確かに事実でございます。  しかし、そのほかに、最近におきましては保存血液供給事業費あるいは献血者の健康増進事業費あるいは献血推進基盤の整備事業費というようなことで、できるだけ日本赤十字社血液事業にこれが効果を発揮できるような形で国庫補助を行っているというようになっておるわけでございます。
  58. 山本正和

    山本正和君 いずれにしても、もう今までのことについては私もそう触れても仕方ないと思いますけれども、今後日赤責任ある体制のために厚生省としても格段の御指導なりあるいは援助をされて、それは国民として当然、ああなるほど国はよくやったなと思うことだろうと思いますので、これについては要望としておきたいと思いますけれども、ぜひ日赤の経営、特に日赤責任ですね、それを果たすために国が何をし得るかということについては御検討をしてやっていただきたいと思います。  次に、これも私もどうもわからないものですから、これは国会の場で国民の前で明らかにする形で厚生省の御見解を承った方がいいと思いますからお尋ねしたいわけでありますが、日赤が開発いたしました、血友病の方に対する薬として大変今患者の方々からも期待をされているRCG—5の問題でございます。  このRCG—5というものについては厚生省はどういうふうな今御判断になっておるのか、その辺をお聞かせ願いたいんでありますが。
  59. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) RCG—5という血液凝固因子製剤日本赤十字社から製造の申請が出されてまいったわけでございます。これにつきましては、昭和六十一年五月に出てまいったわけでございますが、私どもとしては、やはり医薬品の承認につきましてはその安全性、有効性を確認するというこれはむしろ国としての義務がございますので、その内容についていろいろと審査をしたわけでございます。  その際に、今非常に問題になっております血友病の患者さんに使うものであり血液製剤でございますから、どのような点について特に注意をすべきかというようなことを中心考えたわけでございますけれども、やはりこれは安全性という点を軽視するわけにはまいりませんので、少なくともエイズウイルス等についてこれを不活化あるいは除去できるという効果が確認をされなければなら ない、そういう意味において実は提出資料について中央薬事審議会に御相談を申し上げたわけでございます。その結果、中央薬事審議会におきましては、長期間継続して使用される血友病治療薬としては、仮に原料献血血液であって一応安心ではあってもやはりエイズウイルスそのものについての不活化、除去効果が確認をされる必要がある、そういう面での不活化、除去試験を行った上でその結果を提出してもらうべきである、こういう御意見であったわけでございます。  で、私どもとしてはそれを日本赤十字社に伝えまして、現在日赤において各種ウイルスの不活化、除去試験が行われておる段階でございます。その試験結果が出てまいった段階で私どもとしては改めてこの審査を進めたいと考えておる次第でございます。
  60. 山本正和

    山本正和君 実は、私も大分長い間勉強していないので忘れてしまいましたけれども、友達に教えてもらいながらこのRCG—5の調製、それから「新しい中間型第VIII因子製剤乾燥低フィブリノーゲン抗血友病ヒトグロブリンRCG—5の臨床評価」という論文を読ませてもらったんですね。私、仲間の医者でこういうのの専門家がおるものだからちょっと聞いてみたら、これは本当にいいんだと言うんですね、みんな。しかもコストが大変安くできる。今の濃縮凝固因子製剤よりもこっちの方がうんと安くできるんですね。しかも、国内でこれをやった場合、随分国内での自給率がふえる。安全といったらおかしいんですけれども我が国献血者、それも六人程度献血者血液ですから、どなたがどういう人かというのはわかるんです、場合によって、極端なことを言えば。そういう安全な血液からしかもこういうふうな形できちっととれる。これは六十一年五月に認可申請をしたのに一年、もう既に二年たとうとしておるんですね、何でおくれているのか。  そうすると、それは、日赤にもう一遍検査しなさいということを厚生省指導されたにもかかわらず一年五カ月も日赤はそれをサボっていたと、こういうふうに受けとめてよろしいですか。
  61. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 決して日本赤十字社が怠慢であったというように私ども申し上げるつもりはございませんが、いずれにいたしましても、血友病の治療薬でありまして、現在非常にこの血液製剤については難しい状況にございますので、いろいろこの製剤についてもメリットはあるということは私ども承知をしております。  ただ、少なくともエイズウイルスについて、これがこういう方法によって不活化されているという確認だけはいたしたい、こういうことでございましてその確認の方法について今試験を行っている段階でございます。したがいまして、その結果によって少なくとも不活化ということが現在使われております加熱型の製剤と同等に認められれば私どもとしても直ちに審査を進めて承認ということもこれは考えられるわけでございますが、最も肝心なエイズウイルスに対する不活化の確認、ここを私どもはどうしても避けて通るわけにはいかないと、こういう時点に今至っているわけでございます。
  62. 山本正和

    山本正和君 そのエイズウイルスの不活化の問題は、実は濃厚凝固因子の試験とこれを比べてどうかという問題もありますが、それは私余り言うつもりはありません。  ただ、臨床例も含めていろいろなデータがもう既に出ているわけですね。これにさらに念には念を押してということで厚生省が今慎重にお取り組みになっている。今の局長の御見解を聞きますと、それが出さえすれば直ちにというふうな感じでございますから、そういう意味で恐らく患者の皆さんも一日も早い認可を待っているだろうと思うんです。これは調製も、ほかの薬と比べますと、私も見てみて、ああなるほどこんなことでできるのかというぐらい簡便でございますし、全国の血液センターでもつくれるのですね。しかもフィブリノーゲンを吸着して出てきますから、そういう意味での副作用を排除することも非常にいい。そんなことで、私どもが素人流に見たら、一日も早くこれを認可していただければ血友病の患者の皆さんもまたお医者さんも安心してお使いになれるということになるんじゃないか。これはまだ認可をとっていませんから仮定の上での話です。認可をとった場合の話ですが、そういうことを私ども思うわけです。  そこで、私非常に懸念いたしますのは、こんなことはないと思いますからないというふうに言っていただきたいんですけれども、血漿製剤を商社がアメリカから買ってきて国内の業者に売る、いろいろずっとあって、もしこういう新たなものをつくるとなった場合にそういう企業に対して大変大きな影響を与える、そのことのためにこれはおくれているんじゃないかというふうな懸念すら持ってくるわけです。確かにこれは憶測でしょう。しかし、そういう懸念を持たれる背景がこの前からいろんな形で報道されております。特に、厚生省のOBの方が民間会社に、しかもこういう血液製剤関係会社にかなり退職後御就任なさっている。それはそれぞれ意味があることだと私は思うんですね。しかし、意味があって役割があっておやりになっておられても、そういう方々がお見えになればなるだけに、逆にこの種の問題に対しては毅然として、絶対そういう疑惑はありませんよとまさに李下に冠を正さずという姿勢を厚生行政としてはおとりいただきたいと、こう思うんでございます。  そういう意味で、これがおくれているのは決してそんなことじゃなしに、とにかく今の問題さえ出れば直ちにこれは承認します、そして承認されたら国民の皆様の手に行き渡りますと、こういうふうな展望として受けとめてよろしゅうございますか。最後に局長、ちょっとその辺の御見解を願いたいのですが。
  63. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 私どもが現在この審査をしております中で、専門家の間でも安全性につきましての議論というのがやはり一番問題でございます。  もう少し具体的に申しますと、加熱の条件といたしまして液状で五十四度C五分間ということになっておりますが、現在使われております加熱濃縮凝固因子製剤につきましては液状で六十度C十時間、乾燥で六十度C七十二時間あるいは六十五度C九十六時間というのが一応条件になっておりまして、これと比べて本当に安全かどうかという点についての確認をしなければならないというのが最大の問題点でございます。  したがいまして、この確認については、私どもとしては専門家の間で見ても十分であるというような判断をいただく必要があろうかと考えておるわけでございまして、決して民間企業輸入して販売している他の凝固因子製剤の売れ行き等を考えているというようなことはございません。
  64. 山本正和

    山本正和君 慎重の上にも慎重をということでお取り組みをいただけるということ、そういうふうに私としても把握してまいりたいと思います。  ただ、ここでもう一つ指摘しておきたいと思いますのは、現在使われております濃縮凝固因子製剤、これが本当に安全なのかどうなのか。これはいろんな議論もあるようでございますから、これは学会の中でもいろいろ議論もあるように聞いておりますから、これについても厚生省としてひとつ再度十分な御検討を加えていただきたいと思いますが、その点についてはどうでございますか。
  65. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 確かに、血液というのは非常に難しい完全にわからない部分というのはあるわけでございます。そのときそのときにおいて最善の条件を課して安全性、有効性を確保いたしておりますけれども、これもまたいろいろ状況が変わりまた技術進歩があれば当然変わってしかるべきものと思っております。現在、そういう意味で現在の製剤についてはもうこれで一切改良の余地なしという状況ではございませんで、さらにいろいろな面について改善の研究も行われておるわけでございます。  私どもも十分その点に注目をいたしまして、より安全、有効なものが開発されるように努めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  66. 山本正和

    山本正和君 それから最後に、この血液問題でもう一つだけお尋ねしておきたいのですが、今は加熱製剤についてはこれを製造しもしくは販売を許可しているわけですね。非加熱製剤についてはこれは現実に今市場にもないしつくってもいないと、こういうふうに聞きます。しかし、非加熱製剤は、これは明らかに国が許可をしたというのは事実ですね。許可をしたものなんだけれども現在使われていないという状態なんです。もしだれかおかしな人がおってこれをつくるということになった場合、これは新しくつくるのだから認めないと、こういうことを言うにしてもそれの法的根拠というのを明示すべきだろうと私は思うんです。  そうなる場合、恐らく薬事法の五十六条が適用になるかというふうに私は思うんですが、この辺はいかがでございますか、御見解は。
  67. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) ただいまのお尋ねは、私どもが加熱製剤の開発を指示して国内に加熱製剤が行き渡ったという段階以前に日本で使われておりました非加熱製剤が今もし製造の承認申請が出てきたらどうだと、こういうお尋ねかと理解するわけでございますが、医薬品を製造あるいは輸入しようとする場合には薬事法の十四条によって安全性、有効性、品質を確保するために必要な審査を行って厚生大臣が承認するわけでございます。現在、この血液凝固因子製剤につきましては既に加熱によってウイルスの不活化処理が可能となっておりますし、私どももそういった内容によってこれを提供するという形での承認内容に切りかえておりますので、その承認内容と異なるようなものが申請されてまいりましても血液凝固因子製剤としては承認をしないと、こういう取り扱いができるわけでございます。
  68. 山本正和

    山本正和君 最初に許可した当時は、これは五十六条に触れない、今の十四条で認可できるものとして認可されたと思うんですね。しかし、少なくともいわゆる非加熱製剤については現在のいろんなデータの判断からいったら五十六条に触れるもの、こう解釈していいと思うんですが、そこはどうですか。
  69. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 五十六条の解釈といたしましては、現に店頭にあるものとかあるいは病院にあるものとか具体的な個々の製品につきまして、それが汚染されている、汚染されているおそれがある、こういう判断をするという建前になっておりますので、一般論的に特定の種類の医薬品という形で判断するというのは、これはこの条文からいきますと直ちに適用ということはなかなかできないというのが私どもの解釈でございます。  しかし、いずれにしましても、六十年に加熱製剤に切りかえる以前の非加熱製剤というのは私ども血液凝固因子製剤の承認内容をもう切りかえて、現在の段階では加熱による不活化という承認内容になっておりますので、凝固因子製剤としてはそういうもののみを認め、そういう内容に合致しないものはこれを認めないというのは、十四条の趣旨からしてこれは厚生大臣として不承認の決定ができるという解釈に立っておるわけでございます。
  70. 山本正和

    山本正和君 いずれにいたしましても、私は、こういう薬といいましょうか人間の体に対して投与していく薬というものは、裏返せば毒でありますからいろんな問題があろうかと思うんですね。ですから、そういう意味で薬事行政というのは非常に難しいと思うんです。難しいと思いますが、現実にやっぱり時代の流れとともに変わってくるんだと。だから、かつて非加熱製剤は血友病の患者の方にとっては救いの神であった。実はその中に大変な毒が入っていた、恐ろしいものが入っておった、こうなってきた。同じことで今は大変安全と言われている薬があっても、将来はあれは大変に間違っておったということになるかも知らぬと私は思うんですね。日本の国が戦争に負けてもう本当に焼けただれて、国民の大多数がノミやシラミにたかられておった時代にはDDTを救いの神と思ってみんな体にかぶった。これは大変な毒性があるということでDDTは今製造が禁止されております。  私は、薬というのはそういう歴史の積み重ねだというふうに思うんですね。ですから、国の段階でも、それはいろんな経過の中であれはだめならだめと、こういうふうにはっきりと判断をされた方がいいんじゃないか、こう思いますが、その辺はまた法律上の問題でございますから、これはこの次にまた私、いろんな薬品等の例も過去の歴史も含めまして一遍もう少し調べまして、今後どういうふうにこの種の問題が出た場合対応されるかということをひとつお聞きしたいと思います。  きょうはこの程度でこの問題は終えてまいりたいと思います。  時間がもうございません。血液問題、本当に大変難しい問題でございますし、それだけに関係当局はいろんな意味で御苦労は多いかと思いますけれども、安心して国民献血できるということにするためには、率直に国民の前に何もかも知らせていただいて、そして国民に知らせた上で信頼を求めるということをしなきゃいけないと思うんです。新聞紙上でもいろいろと血液行政に対して出てまいります。これはちょっと調べますと、やっぱりおかしいなと思うんです、正直言いまして。いろんな形が次から次に出てまいります。これは、私は、やっぱり率直に厚生省国民の前に、そのまま、実はこうですよとずばり出されることによってその種の問題は解決し得ると思います。  私は、行政に過誤なしということは決してないと思います。行政に過誤なしということを言うのは、これはファシズムの国だけです。民主主義の国では、行政にはやっぱり過誤がつきものだ、しかしそれをお互いに直していくんだというのが私は民主主義の原点だろうと思うんでございます。決して私は、今、過誤があったとは言いません。しかし、過誤があるということを、その可能性を否定しないで、国民に少しでもわかりやすい形での厚生行政をお願いしてまいりたいと思います。  特に、血液の問題を本当に解決しようと思いましたら、これは青少年にまたなきゃいけない。となりますと、高校生、大学生という青少年の皆さんに血液事業の重要性ということを、文部省も含めて十分に教えていきながらやっていかなきゃいけないという問題でございますから、この問題につきましては今後ともぜひひとつフランクに国民の前にある程度いろんなことを率直にさらけ出していただいてお取り組みいただきたい、こういうふうに思います。  時間がもう本当にございませんで、申しわけございませんが、環衛公庫の理事長さんがお見えでございますので、少しそちらの方に質問を回させていただきたいと思います。  環境衛生金融公庫が環境衛生関係事業の振興に大変寄与されてまいっておられます。いろんな意味で業界の方も金融公庫に相談に行ったりあるいは指導を願ったりしておるようでございますが、六十一年度、六十二年度とこうずっと見てまいりますと、一体、この環境衛生金融公庫の貸付計画の総枠はどの程度水準を確保されているのか。  また、正直言いましていろんな需要が随分言われております。その資金需要の関係からいってこの額で一体保障されるのかどうか、この辺の問題についてちょっとまずお聞きしたいと思います。
  71. 山下眞臣

    参考人(山下眞臣君) 昭和六十三年度の環境衛生金融公庫の貸付計画枠は千九百二十億ということを予定いたしているわけでございます。  環衛公庫の貸し付けの実績につきましては、五十五年度をピークにいたしましてずっと低下の一途をたどっておったのでございますが、六十年度を底にいたしまして六十一年、六十二年と上昇を見てきております。ごく数字を大ざっぱに申しますと、五十八年度が八百四十六億、五十九年度が千六百五十四億、六十年度が千五百三十六億。これを底にいたしまして、六十一年度千六百七十一億に上がってまいりまして、六十二年度はまだ年度途中でございますので経過途中でございますが、これよりもさらに上がっていくかと思っております。  そういった今までの最近の実績、それから環境 衛生の置かれております経営環境等を総合的に勘案をいたしまして千九百二十億ということで設定をいたしたところでございまして、これで一応資金需要に対応できると私ども考えておるところでございます。
  72. 山本正和

    山本正和君 今度融資についてのいろんな改善をおやりになっているようでございますが、設備資金、運転資金の関係、その辺どうなっているのか、ちょっと伺いたいと思います。
  73. 山下眞臣

    参考人(山下眞臣君) 六十三年度の貸し付け条件の改善の主な内容を申し上げますと、第一は、振興事業に係ります設備資金の改善でございますが、貸し付けの限度額を、飲食業でございますとか理美容というような一般業種につきましては七千万、クリーニングについては九千万、旅館業については一億五千万というぐあいに引き上げを行っております。また、振興事業のうち一部のものにつきましては特利を適用するわけでございますが、店舗等につきましてその増改築もこれを特利対象にするという改善、それから新たな業種といたしまして食鳥肉の販売業も振興事業として特例対象事業にする、これが振興事業関係の改善でございます。  その他の一般設備資金につきましても、一般業種は四千五百万、クリーニングは六千万、旅館業は一億、浴場については一億一千万ということで限度額の引き上げをいたしておりますが、特に浴場につきましては複数の施設を持っておられる場合には二億までお借しを申し上げるということで限度額の改善をいたしておるところでございます。  また、運転資金につきましても、従来二千七百万という限度額でございましたが、これを三千五百万に引き上げるというような改善を図っておるところでございます。
  74. 山本正和

    山本正和君 いろいろとこれは大分要望が強い費目のようでございますから、ひとつ適正に御判断いただきますように。いろんな要望、大変難しいかと思いますけれども。  それからあと一つ、無担保の小企業設備改善資金特別会計、これは融資をされるわけでありますが、その場合の事故率がなかなか改善されない、今なおまだ高い数字にある、何か六十一年度では五%ぐらいあるとかいうふうなこともお聞きするんですが、この問題についてはどういうふうにお考えでございますか。
  75. 山下眞臣

    参考人(山下眞臣君) 先生よく御承知のとおりに、この小企業設備改善資金というのは、零細な環衛業者の中でも特に零細な二人以下の従業員のところもしくはそれに準ずるような五人以下のところ、こういう担保も保証人もない、その力がないというような方に対しまして無担保、無保証人で設備資金をお貸し申し上げるという制度でございます。対象がそのような方でございますし、かつまた制度がそのような趣旨でできておりますために、一般の貸し付けの場合に比べまして延滞等の状況が多くなっておる。普通の場合よりもやや、五割ぐらい高いような状況に相なっておるのは事実でございます。  私どもといたしましては、これは環境衛生同業組合等の御推薦をいただいてお貸しをするわけでございますが、環境衛生同業組合の推薦に当たりまして、経営指導員の方その他の御指導をより適切にお願いいたしましてできるだけひとつそういった延滞等の状況を生じないように努力をいたしていきたいと思っておりますが、また一方におきましては、御推薦のあった者につきましてはできるだけこれを尊重してお貸し申し上げまして、角を矯めて牛を殺すということのないようにこの制度を有効に活用していただくということにも心がけてまいりたいと思っておるところでございます。
  76. 山本正和

    山本正和君 ぜひひとつ、この公庫を利用する方々の大多数は大変零細といいましょうか中小の方が多いわけでございますから、いろんな意味で御指導をいただきますようお願いしたいと存じます。  それから、実は薬価についてお伺いする予定でございましたけれども、時間が参りましたのでこれは次回に譲ってまいりたいと思います。  大臣血液問題についてはまた格段の御配慮をいただきますようにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  77. 石井道子

    ○石井道子君 きょうは質問時間を十五分いただきます予定でございましたが、十分になってしまいましたので、簡単に御質問をさせていただきたいと思います。  まず、医薬分業についてお伺いをいたします。  医薬分業につきましては、昭和六十年度から三カ年計画で医薬分業推進モデル地区事業を推進されているわけでございまして、医薬分業のメリットもだんだんと理解をされてきつつあるのではないかと思いますけれども、その成果を踏まえまして六十三年度からの医薬分業推進基盤整備事業が計上されているわけでございます。今後の分業推進対策をどのようにお進めになりますか、お伺いをしたいと思います。
  78. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 医薬分業につきましては、従来からその推進に努めてまいっておりますけれども昭和六十年度から三カ年計画によりまして医薬分業推進モデル地区事業を進めてまいりました。この事業がちょうど六十二年度末、ことしの三月末で終了するわけでございますが、さらに今後とも医薬分業を推進するために六十三年度以降においても医薬分業の啓蒙活動、薬事情報センターの設備整備への補助などにつきまして従来から実施しているような各種の推進施策を引き続き実施するほかに、さらに昭和六十年度から行ってきたこの分業推進モデル地区事業の成果を踏まえて新たに五カ年計画で大病院からの処方せん応需体制の整備、それから情報提供の実施、備蓄体制の整備、薬歴管理実施方法の検討などを柱とする医薬分業推進基盤整備事業を進めていきたいと考えておりまして、そのための所要の予算も計上しておる状況でございます。
  79. 石井道子

    ○石井道子君 次に、来月から行われます診療報酬改定の問題でございますが、その中の調剤報酬のことでございますが、調剤薬局とかあるいは病院薬剤師の調剤報酬につきましてどのような改定がされましたか、お伺いをしたいと思います。
  80. 下村健

    政府委員(下村健君) 今回の診療報酬改定におきます調剤薬局の関係でございますが、その技術料については薬剤服用歴管理指導料を五十円から八十円に引き上げるという点が一つございます。それからまた、病院薬剤師の技術料につきましては、患者指導を重視いたしました調剤技術を評価して、医薬品情報室があるということなどの一定の施設基準に合致する病院について調剤技術基本料百点を新設するというふうなことを行いました。この二つが主なものでございます。
  81. 石井道子

    ○石井道子君 私が前から主張しておりました調剤業務がこのたびいろいろと評価をされていただきましたことにつきましては感謝をする次第でございますが、このたび新設されました調剤技術基本料百点、これの適用される一定の施設基準、これはどのような基準でございましょうか。
  82. 下村健

    政府委員(下村健君) 今回新設されました調剤技術基本料でございますが、要件の第一が、病床数が三百床以上の病院ということが第一でございます。それから二番目が、専用の医薬品情報管理室があって専任の薬剤師が二人以上配置されているというのが第二でございます。三番目が、患者ごとの投薬記録に基づきまして薬剤師が適切な服薬指導を行っているということでございます。以上三つの要件を満たす病院について算定できると、こういうことにいたしております。
  83. 石井道子

    ○石井道子君 この基準に合致する病院というのは数が本当に少ないのではないかと思いますが、今後この情勢を見ながらぜひ拡大をしていただきたい、このことを要望させていただきます。  それから次に、医薬品のカタログ販売の問題についてお伺いいたします。  最近は、ホームショッピングとかテレホンショッピングなどで新しい流通販売形態が目立ってまいりました。医薬品についてもカタログ通信による販売が具体化をされまして、既存の医薬品 販売業者との対立が起こっていると聞いております。この種の販売形態は確かに消費者にとって便利であるという利点はございますけれども、医薬品が対象商品になるというのは少し問題があるのではないかと思うわけでございます。医薬品は、普通の品物と違いましてやはりその使用方法とかあるいはその副作用に関する情報と切り離して使うことはできませんし、この情報がなければ使えないという普通の商品とは違う問題がございます。そしてその品質についても十分に管理できなければなりませんので、このようなことを踏まえまして、医薬品は人の健康に深くかかわっているという大変重要なものでございますから、消費者に対しましても薬剤師が直接服薬の指導を十分に行って、安全性を確保して販売するということが薬事法でも規定をされておりまして、対面販売が原則とされているわけでございます。  そういうわけでございますので、カタログ販売というのは余り好ましいものではないと思いますけれども、このことについての厚生省のお考えをお伺いしたいと思います。
  84. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) 御指摘のように、医薬品は生命関連商品でございまして、一般の商品とは異なった扱いを要求されるという面があるわけでございます。現在の薬事法のもとでこの販売についての規制が行われているわけでございますが、少なくとも許可を得た店舗による販売というのがまず一つあるわけでございます。また、そのほかに配置のような形態もございますけれども、いずれにしても、法律によるそういう規制を経て販売を行わなければならないということになっておるわけでございます。また、その販売の方法として対面販売方式というのを厚生省も従来から指導してきておりまして、基本的には今御指摘のあったとおりであると私ども認識しております。  ただ、最近におきましていろいろな商品流通形態が発達してまいりました。医薬品についてもいわゆるカタログ販売のような新しい形の販売方法が考案されてまいってきておるわけでございまして、これは一つには医薬品の特殊性もございますけれども、いわば時代の動きとしてどう取り扱うかということを私どもも真剣に検討をすべき時期にまいってきたわけでございます。  このような通信販売につきまして厚生省考え方を明確化するために現在検討を進めておりまして、近く通知の形でお示しをいたしたいと考えておるわけでございますが、現時点においてその内容を申し上げますと、主な点を申し上げますと、第一に、望ましい販売のあり方はやはり対面販売方法であるということを基本にいたしております。  それから同時に、第二点として、安全性確保の観点から最低限守るべき条件を決めたいと考えております。その決めるべき条件といたしまして、第一に、販売店舗の名称、販売医薬品の名称さらに使用に当たっての注意などをカタログに記載すること、これが第一でございます。第二に、医薬品の使用に関する問い合わせに対してこれに応じられるような体制を整えること、これが第二でございます。第三に、販売できる医薬品につきましては副作用のおそれが少ないものに限定する、こういったような条件を付して行うべきであるというように現在の時点考えておりまして、さらに検討を進めてまいりたいと考えております。
  85. 石井道子

    ○石井道子君 細部にわたっての御検討をされているようでございまして、おおむね妥当とは思われますけれども、やはり薬事法三十七条、それから九条の条項に基づきまして十分に監督指導されますように御要望いたします。  それから次に、学校教育における医薬品の問題についてお伺いをいたします。  次代を担う青少年に医薬品に関する正しい基礎知識を教えていくことが大変重要なことではないかと思います。現在の中学校、高等学校の保健体育に関する学習指導要領の中では医薬品に関する項目が欠如しております。これまで国民医療の発展向上に大きな役割を果たしました医薬品の問題そして重要性に関して記載がされておりませんから、そういう面の医薬品の有効性に関しますメリット面と、一方では副作用が起こりますとか乱用問題などがありましたり、デメリットの面も随分見受けられるわけでございますから、こういう面で今行われておりますこれからの学習指導要領の改定の中にこの問題をどのように取り上げていただけますか、お考えをお伺いいたします。
  86. 込山進

    説明員(込山進君) 医薬品が健康の保持増進に果たしている役割は非常に大きいものがございますし、またその正しい使い方を理解させることが教育の指導の面でも非常に重要なことであるということは先生御指摘のとおりだと思います。また、薬物の乱用につきましては社会問題になっているところでもありますし、また臨時教育審議会の答申におきましてもその指導の充実を図るよう指摘されたところでございます。  現在、文部省におきましては、中学校、高校の保健体育の教科の中で薬物乱用等の防止に関する指導を行うとともに、指導資料の作成であるとかあるいは講習会の開催等を行っているところでございますが、先生御指摘の今回の学習指導要領改定におきましては昨年十二月の教育課程審議会の答申でこれからの充実をするよう指摘されたところでもございます。現在この点に関しましては協力者会議におきまして新しい学習指導要領の改定について検討しているところでございますので、先生御指摘の点も踏まえまして、医薬品の正しい使い方あるいは乱用防止等の指導の充実を図ってまいりたい、このように考えております。
  87. 石井道子

    ○石井道子君 時間になりましたので次回に回させていただきます。ありがとうございました。
  88. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 時間がございませんので答弁は簡明にお願いします。  昨年九月の参議院の社会労働委員会におきまして私が健政局長に御答弁をお願いした件でございますが、徳洲会のような特定医療法人の承認に関する都道府県知事証明に関しまして、今までは医療法の違反については記載事項となっておりますが、健康保険法違反等に関しましてはこれが漏れております。これに関しまして、健康保険法違反関係もこれは入れるべきであるということを申し上げたのでございますが、十分検討して措置をするということでお答えをいただきました。  その後どのような処置をされましたか、お聞かせをいただきたいと思います。
  89. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 特定医療法人に係ります都道府県知事の証明でございますが、先生ほか国会での御指摘を踏まえまして大蔵省とも十分協議をいたしまして、本年の二月に健康保険法等の違反の事実がないことも証明するように、またその証明に反する事実が判明した場合にはその旨厚生省に報告するように都道府県に通知したところでございまして、今後はこの方式にのっとりまして大蔵省とも連絡を密にして特定医療法人について適切に指導してまいりたいと考えております。
  90. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ありがとうございました。  そのように、やはり公益性の強い特定医療法人でございますので、十分これは監督していただきたいと思うわけでございます。  また、昨年七月の衆議院決算委員会におきまして健康政策局長は、複数の県にまたがる病院を開設している医療法人の病院については一斉に医療監視を行う、そして実態に合った医療監視を行う旨の答弁がございました。その後実態を私がお聞きしましたところによりますと、これは行っておると。  そこで、医療法人徳洲会関係の病院に対しまして一斉監視を行った結果はどうであったか、御報告いただきたいと思います。
  91. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 昨年の七月に決算委員会の御指摘ございまして、政府委員から複数県にまたがります医療法人の病院に関しまして実施日が異なるためにいろいろ判明しがたい部分もあるということがございましたことで、都道府県の行う医療監視の日を統一して実施するということで決めまして、六十二年度におきましては徳洲会ほか一医療法人、合計二つの医療法人グループの病 院を対象に医療監視を一斉に実施したところでございます。  今後も計画的に実施してまいりたいと考えておりますが、その結果でございますけれども、医療法に定める医療従事者の標準数を満たしていない部分があったとか広告制限に違反している等の事実がございましたので、そういうことを指摘いたしましたとともに、地域の医療機関との連携あるいは医療機関の管理体制が十分でないということもございました。そういう指導事項がございましたので、これらにつきまして先般医療法人徳洲会につきましては本部に対して指導をいたしまして、その旨関係道府県にも指導するように通知を出したところでございます。
  92. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ただいま御答弁の中にやはり指摘事項とか指導事項があったわけでございます。  そういうような問題のある法人が新しく地域において病院を開設するというようなことに関しまして、ただ地域医療計画で病床数が不足している地域だからいいんだというような単純なる考え方でなく、やはり地域の医療機関、例えば病院・診療所と緊密ないわゆる連携のとれるような、そういう国民医療にとって十分対応できるような措置というものは講すべきではないかと思いますが、それに関してはどうでございますか。
  93. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御指摘のように、医療資源を効率的に活用するということは地域住民に良質な医療を提供するために必要な欠くべからざることでございますし、地域の医療機関相互の機能連携というのは私どもとしても大いに図っていただきたいということで考えているところでございます。  医療法人徳洲会関係の病院につきましては、先ほど申し上げましたようなことから一部地域医療機関、病院・診療所等との連携が必ずしも十分でなかった病院が少なからずあったということ、あるいは院長が欠けているとかそういう面もあったことからいたしまして、一部にはそういうことで急に膨張したと申しますか急速に増加したことが一因でもあるのではないかということが考えられるわけでございまして、今後私どもといたしましても地域の中でそういう病院も地域医療を担っていただくわけでございますので、連携をさらに密にしていただくことが必要だと考えているところでございます。
  94. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 ぜひそういうようにお願いしたいと思います。  それから、一方、医療監視とあわせて医療保険関係の調査も行ったということですが、その結果いかがでございましたか。
  95. 下村健

    政府委員(下村健君) 一斉の医療監視とあわせまして医療保険関係につきましても実地調査を行ったわけでございます。  その結果、主として差額の徴収関係で問題が出てきたわけでございますが、徳洲会につきましては、第一が、複数の病院において二〇%を超える病床について差額徴収が行われていた。それから第二点として、治療上の必要により個室に収容している患者からも差額徴収が行われているものがあった。それから第三点としては、治療上必要なものを保険外負担として患者から差額徴収しているものがあったということが出てまいったわけでございます。  これらの事項につきましては、関係都道府県を通じまして当該保険医療機関に対して改善するよう指導いたしているところでございます。
  96. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 公益的な色彩が強い特定医療法人でございますので、厳しくこういうことは指導して、これから監視をしていただきたいと思います。  それから次は、「厚生省所管一般会計主要経費別歳出予算額の推移」というこの厚生白書の中からでございますが、特に、この中に科学技術振興費というのがございまして、これは年々少しずつふえているんですが、昭和六十二年度が二百九十八億八千六百万という数字が出ております。これは私、外国の例と比較してみますると、文部省の予算の中にも幾らかこういう科学技術振興費なるものが医療関係、福祉関係でありますけれども、アメリカは既に一兆円以上これを出しております。まさに二十分の一でございます。特に先進諸国は、大体、この費用がもう軍事費の次ぐらいでございます。ちなみにアメリカは軍事費の次でございまして、宇宙開発のNASAの計画等はこれより予算は下でございます。日本は農林水産省の動植物の研究に対する費用よりも人間の命に対するこの費用の方が安いわけです。長寿社会を迎えまして、寝たきりで生きているなんということよりもむしろ健康で長生きするというような成人病の研究とかがんの研究費等がいかにも少ないお金でございます。  利根川教授のような優秀な頭脳がアメリカの国でアメリカの研究機関でアメリカの費用で仕事をする、日本へ帰ってきたら行くところもないというような状況では困るわけでございまして、これに関しましてはひとつ厚生大臣日本の国の、何と申しますか、やはり福祉国家という面でも先進国に、今や経済大国と言われている日本がこのような状態では非常に私は寂しいと思うわけでございます。今後、大臣として重大なる御決意を持ってこの科学技術の振興のためにこういう研究費を大学それから国公立の研究機関民間研究機関にぜひ出していただくように御努力願いたいと思います。  最後に、要望を申し上げて、御決意をお伺いしたいと思います。
  97. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 我が国の科学技術関係の予算が非常に少ないではないか、また保険医療分野での予算も少ない、御指摘のとおりでございまして全く同感でございます。  科学技術一般の問題もさることながら、先進国として我が国の現在の医療の水準は世界で一流のものでございますから、この成果を国内のみならず国際的に用いていくということ、生かしていくということは極めて大きな問題でございますし、またこれは我々の責務であろうと思うわけでございまして、今後この種の予算をふやすことにつきましては全力を挙げてまいりたいと考えております。  なお、今後の進め方につきましては厚生科学技術会議で御議論いただいておるわけでございますが、一つには、やはり独創的な基盤的な技術研究に力を入れていく。また、二番目には、国際的な協力関係ということにつきましても力を入れてまいりたいと、かように考えております。  今後ともひとつ御支援よろしくお願い申し上げたいと思います。
  98. 宮崎秀樹

    ○宮崎秀樹君 どうもありがとうございました。
  99. 中西珠子

    ○中西珠子君 六十三年度の厚生省所管一般会計予算の総額は十兆三千二百十一億円を超えており、六十二年度に比べますと二・九%の増加となっております。国の一般会計予算総額に対して一八・二%の割合を占めているという大変膨大なものでございます。厚生省の所管事項というのは、国民の健康と福祉の向上、また国民の日常の生活の質の向上というものに大変密接な関係があり、その予算は非常に大きな影響を与えるものでございます。それゆえ、予算編成におきましては厳しい財政事情の中で大変御苦労になったと思います。厚生大臣初め、厚生省の皆様方の御努力に対して、敬意を表するものでございます。  さて、六十三年度予算の中身を拝見いたしますと、行財政改革推進のための特例措置がとられております。  まず、厚生年金国庫負担金の一時繰り延べとして六十二年度と同様に三千六百億円に上る特例措置がとられておりますが、五十七年から六十三年度までの予算上の繰り延べの累計はどのようになっておりますか。    〔委員長退席、理事曽根田郁夫君着席〕
  100. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) お尋ねの厚生年金の国庫負担の繰り延べの累計額でございますが、昭和五十七年度から昭和六十三年度の予算案まで累計いたしまして一兆九千七百十億円でございます。
  101. 中西珠子

    ○中西珠子君 五十七年度からの、六十三年度は予定になりますが、利息分、すなわち運用収入相 当分というのがあると思うんですが、これは幾らぐらいになっていますか。
  102. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 運用収入相当分につきましては一定の前提を置きまして計算をいたします。その試算結果によりますれば、六十三年度末におきまして四千六百三十七億円となる見込みでございます。
  103. 中西珠子

    ○中西珠子君 その運用収入相当分、すなわち簡単に言いますと利息分というのを入れますと、合計が幾らになりますでしょうか。
  104. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 元金の累計額と運用収入相当分を合計いたしますと昭和六十三年度末におきまして二兆四千三百四十七億円になる見込みでございます。
  105. 中西珠子

    ○中西珠子君 この繰り延べの特例期間というのは六十三年度までとなっているのですが、これを延長するおつもりはございますのでしょうか。延長するべきではないと私は考えるのでございますが、いかがですか。大臣はいらっしゃらないのですね。
  106. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 繰り延べ措置、現行行っておりますものは六十三年度までということに法律上なっているわけでございます。六十四年度以降の取り扱いにつきましては、安易に延長しないよう慎重に対応するというのがかねての政府の方針でございまして、現在でもそのように考えているところでございます。
  107. 中西珠子

    ○中西珠子君 二兆四千三百四十七億円に上るというこの繰り延べの累計額は全額返還されるべきものだと思うんでございますが、そして返還して給付水準を高めるのに使うべきであると思うのですが、どうなんでしょうか。
  108. 佐々木喜之

    政府委員佐々木喜之君) 厚生年金の国庫負担の繰り延べ額の返済につきましては厚生保険特別会計法に規定がございまして、年金財政の安定が損われることのないよう国の財政状況を勘案しつつ、積立金運用収入の減額分を含む年金国庫負担金の減額分を繰り入れるという旨規定がなされております。  さらに、国会におきまして政府から、一般会計が特例公債依存体質から脱却した後においてできる限り速やかな繰り入れを行うという旨の答弁はされているところでございます。
  109. 中西珠子

    ○中西珠子君 大臣がお見えになりましたので大臣にお聞きしたいんでございますが、六十三年度も六十二年度同様厚生年金の国庫負担金の繰り延べがなされておりまして三千六百億円に上るわけでございますが、六十三年度までということが特例期間は決まっているわけでございますので六十三年度でこれはやめるべきであると考えますし、またこれまで繰り延べました利息分、運用収入相当分を入れますと六十三年度末に二兆四千三百四十七億円になるというこれは全額やはり返還されるべきものであると考えますし、また六十三年度が終わった後はこれを延長して同じような特例措置をとるべきではないと思うわけでございますが、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  110. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今政府委員から御答弁申し上げましたとおりでございまして、年金財政からいたしますと好ましい問題ではもちろんございません。  しかし、やむを得ないということで協力しているわけでございまして、支障のない範囲内でということでございますし、また返済につきましては、法律に基づき、また今後安易に繰り延べをしないように十分に考えてまいりたいと考えております。
  111. 中西珠子

    ○中西珠子君 また、政管健保につきましても特例措置がとられておりまして、六十三年度は特例の減額措置として国庫負担分を六百五十億円カットしているわけでございますが、六十年度から六十三年度までの厚生保険特別会計健康勘定への一般会計からの特例繰り入れ減額措置、これは累計で幾らぐらいになっておりますか。
  112. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 累計額でございますが、四千二百三十九億円でございます。
  113. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは単年度で、毎年変わってくる額が減額されているということだそうでございますが、この措置につきましても六十三年度で終える。  六十四年はまた新たに減額措置を考えるということはなさいませんでしょうね。いかがでしょうか。
  114. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 今回の措置は六十三年度単年度限りの措置でございまして、六十四年度はどうかというお尋ねでございますけれども、現段階では六十四年度の予算編成の問題でございますので何ともお答え申し上げにくい問題でございます。
  115. 中西珠子

    ○中西珠子君 単年度限りで、その年その年によって違っているわけですよね。それはわかっているんだけれども、単年度限りだから来年はどうなるかわからないというお返事では大変心配なんですけれども、どうなんでしょうか。
  116. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 政管健保は短期保険でございますので、私ども、この特例措置を講ずる場合に、当然、翌年度の政管健保の運営がどうなるかというようなことを十分慎重に検討をし、また社会保険審議会の御意見等も伺いながら、どういう措置を講ずるのが一番いいのかということで相談して今日に至っているところでございます。  気持ちとしては中西委員おっしゃるような気持ちで私どももおるわけでございますけれども、六十四年度の問題でございますので今日の段階では確たる御返事を申し上げにくいという気持ちでございます。
  117. 中西珠子

    ○中西珠子君 健康保険につきましては本人の一割負担が導入されているわけですね。将来は全部に二割負担をやるといういわゆる医療の一元化を図るというふうな計画をお持ちだそうですが、これはいつごろやる御予定でいらっしゃるんですか。
  118. 土井豊

    政府委員(土井豊君) お答えがちょっと適切なお答えになるかどうかわかりませんが、政管健保につきまして申し上げますと、現在約四千億強の積立金等もございますが、何分にも他の組合健康保険等々あるいは政管健保の過去の赤字状況等々を見ますと、財政的には現在程度の積立金を保有してこの運営に当たるというのが適当であろうというふうに考えておりまして、今お尋ねの件に直接お答えする形になっておりませんけれども、現時点におきましてはそのように現状の形で財政運営をやっていきたいというふうに考えております。  なお、制度全体としては六十年代後半にというお話は従来から申し上げていることでございますので、それはそれとして今後検討すべき課題というふうに聞いております。
  119. 中西珠子

    ○中西珠子君 政管健保の六十年度から六十三年度までの減額措置、これは単年度でやっているのだから、この累計を戻すということは全然考えていらっしゃらないわけですか。
  120. 土井豊

    政府委員(土井豊君) 政管健保の収支状況等を勘案いたしまして、その適正な事業運営が阻害されるような場合、この場合には繰り戻しその他の積極的な措置を講ずるということが財確法の中にも定められておりまして、私ども、単年度単年度の財政状況を十分見きわめながら、そのような措置を講ずる必要があるかどうか、十分財政当局と協議してまいる考えでございます。
  121. 中西珠子

    ○中西珠子君 私は、やはり減額分は返還して給付の改善とか医療内容の改善に充てるべきだと考えておりますが、とにかく、財確法にもありますことではございますが、できる限り減額分は返還して給付の改善に充てていただきたいと要望いたします。  年金積立金の自主運用額というのを六十三年度は拡大して二兆二百億円というふうに計上していらっしゃるわけですが、昭和六十二年から始まりました年金財源強化事業、これはことしは一兆二千七百億円というふうに増額をして計上していらっしゃいますが、この運用をどのように六十二年度はなすったか。  また、六十三年度におきましてはどういう計画を考えていらっしゃるか。もちろん信託銀行とか生命保険とかその他の民間の運用機関などを活用 して、そしてそれによって得られた利差益を厚生保険特別会計とか国民年金特別会計に納付されるということで、将来の問題というふうになるということはわかっておりますが、どういうところに一応運用のためにお預けになったのかというのを簡単にお教えいただけますか。  それから、六十三年度の計画というのは大体どういうことをお考えか、お教えいただけますか。
  122. 水田努

    政府委員(水田努君) 年金財源強化事業は六十二年度からスタートいたしまして、総額一兆円でございまして、これは信託銀行に六千九百億円、生命保険会社に三千百億円運用の委託をいたしたところでございます。  六十三年度につきましては、予算が成立後速やかに資金の配分計画を立てたいと、こう考えているわけでございますが、現在、六十三年度の資金運用の配分に先立ちまして、この事業の実施主体でございますところの年金福祉事業団が信託、生保各社からヒアリングをいたしておりまして、そのヒアリングの結果に基づいてどういうふうに配分するか内部的に検討を進めているところで、今具体的にこうしますと申し上げるような段階にまだ至っておりませんので、六十三年度分については可及的速やかに配分計画を立てたいということでお許しを願いたいと思います。
  123. 中西珠子

    ○中西珠子君 信託銀行、生命保険、全部日本会社ですね、六十二年度になすった分は。
  124. 水田努

    政府委員(水田努君) 年金財源強化事業については、全部日本国内のものを使っております。  それからもう一つ、資金確保事業という事業がございますが、こちらについては、信託分についてはバンカーズ・トラストという外資系の信託銀行を一部使っております。
  125. 中西珠子

    ○中西珠子君 財源確保事業の方も、昨年度は五千億円でしたけれども今年度は七千五百億になっているわけですね。それで、とにかく非常に有利に運用していただいて、安全性を確保していただいていると思いますけれども外国の年金基金の積立金運用でドルが暴落したために大変損害をこうむったところなんかがあるわけですね、御承知と思いますが。そのようなことのございませんように、何分、せっかく自主運用の制度ができたわけでございますからその年金の財源の強化のために慎重な運用をしていただきたいと思います。  それから、財源確保事業の方は、結局還元融資事業の財源確保ということだと思いますが、これにつきましては六十一年度からやっていらっしゃるわけで、それでとにかく一つ外資系の企業が入っているということでございますが、これにつきましても慎重に安全性を確保して運用していただきたいと思います。それは要望でございます。  次に、予算案の中身を拝見いたしましてちょっとお聞きしたいと思ったことを、少し細かいのでございますがお聞きいたします。  例えば、今度は六十三年度から家庭医機能普及定着事業の推進ということで新規に五千六百万円の予算が入っているわけでございますね。家庭医の機能というのはどういうものかというのは家庭医に関する懇談会が六十二年四月に報告書を取りまとめられたというふうに理解しております。プライマリーケアを含めた住民の日常からの健康管理や諸疾患に対する適切な診断、治療、さらには必要に応じて専門医療機関へ紹介するなどの機能、任務を負う医師の養成と支援体制をつくることが必要だということをこの懇談会がおっしゃったらしいんですね。ところが、ちまたのうわさでは、何しろ近所の開業医を家庭医にしなければならないのだ、それで家庭医の紹介がないとこれからは病院に行かれなくなってしまう、これは病院の数を減らしたり入院用の病床を減らすためのものなんだと、こういうふうにいって病院には家庭医の紹介がなけりゃ行かれなくなってしまうという不安が非常に高まっているという向きもあるわけでございます。  家庭医機能普及定着事業というのは五千六百万の予算でどういうことをなさるのか、御説明いただきたいと思います。
  126. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 今後の地域医療でございますけれども、二十一世紀へ向かって高齢化社会に医療資源を有効に活用する、しかも質を落とさないでできるだけそのような状態に持っていきたいということで考えておるわけでございます。そのためには、プライマリーレベルで日常の健康相談から予防あるいはリハビリテーションまで含めまして一貫して担当するそういう家庭医機能をお持ちになったお医者さんを定着させるということが非常に重要だということで考えておるわけでございます。  私どもといたしましても、一部にはこのような機能を今でも十分お持ちの方々もおられるというふうに承知しておりますし、ただいま御質問の中にございましたように、今の我が国患者流れと申しますかは、どちらかといえば大きな病院を志向する病院志向とかそういうふうな形もございますけれども、やはりプライマリーレベルはプライマリーケア・フィジシャンと申しますか、そういう家庭医的な機能をお持ちのお医者さんにまずプライマリーレベルでコンタクトしていただくという方がいいのではないか、そういう発想に基づいてただいまおっしゃいました家庭医に関する懇談会の御意見もあるわけでございますので、それを受けまして私どもとしては来年度から地域医師会の協力を得まして開業医を対象といたしました家庭医機能の普及定着を図るためのモデル事業というのを実施するということで予算化をお願いしておるわけでございます。  五千数百万でございますけれども、その大半は市町村を実施主体といたしまして地域医師会の協力を得ましてモデル事業を四カ所で実施するということで考えております。  内容は、これから私ども専門団体であります日本医師会とも十分相談をしてその協力を得ながら実施してまいるということで、細部についてはまだ確定しておらないのでただいま申し上げる段階にないわけでございますけれども、家庭医懇談会の御報告等を受けまして、私ども一方においては医療法を改正させていただいて地域医療計画、医療のシステム化ということを地域の中で図るような努力をしておるわけでございますので、それに対応いたしましてプライマリーレベルでございます家庭医機能の普及定着を図るという事業予算化さしていただきたいと考えているところでございます。
  127. 中西珠子

    ○中西珠子君 モデル事業を四カ所でなさるということですが、どこでなさるわけですか。
  128. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) まだ場所あるいは詳しい内容については確定いたしておりません。
  129. 中西珠子

    ○中西珠子君 母子福祉についてお尋ねいたしますが、母子福祉、寡婦福祉の対策費が六十三年度予算においては減っておりますが、その理由はどういうことでございましょうか。
  130. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 六十三年度の予算案におきまして母子・寡婦等福祉対策費が百七十億円減額となっております。これはほとんどが児童扶養手当の関係予算額の減額によるものでございます。  児童扶養手当予算額が減額となりました主な理由でございますが、児童扶養手当は離婚をされました母子家庭に対します手当でございますけれども、離婚件数が五十八年をピークといたしまして六十年、六十一年、六十二年と低下をしてまいっておりますために、この離婚を事由といたします受給者の伸びが低下をしているということが一つの大きな理由でございます。  またもう一つは、昭和六十年度に児童扶養手当法の改正をいたしまして、同年八月以降に新規に児童扶養手当をお受けになられます方につきましては地方負担が導入されたわけでございまして、この効果が大きくなってきているというこの二点が減額になっております理由でございます。
  131. 中西珠子

    ○中西珠子君 母子福祉、寡婦福祉対策費が大幅に減っているというのは児童扶養手当が非常に減っているからだと。百六十九億円ほど減っているわけですね。    〔理事曽根田郁夫君退席、委員長着席〕  その理由も今お聞きしましたが、この対策費の 中で新規に母子家庭等自立促進基盤事業費というのが入っております。この額は私のいただいているものの中にはちょっと見当たらないわけですが、これは予算額はどのくらいなのか。  また、自立促進基盤事業というのはどういうものなのか。これまでも自立促進のためにいろいろやっていらっしゃいましたね。たばこ屋さんの許可を優先的に与えるとか売店の許可を優先的に与えるとかやっていらっしゃいましたけれども、これとはまた違う新しいことをおやりになるわけですか。
  132. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 母子家庭にとりまして就労等によって自立をしていくということは大変大きな重要なことであると考えております。今先生からもお話がございましたように、お母様方御自身が技術を身につけていただくためには自立促進事業というのを既にやっておったわけでございますけれども、今回の事業費は母子家庭のお母様方を対象といたしまして全国でブロックごとに研修会を開催いたしまして、例えばその地域の商工会議所の方でございますとかそれから職安関係の方でございますとか母子家庭の就職促進についていろいろ影響力を持ち、またいろんな意味で情報もお持ちの方においでをいただきまして母子家庭の実情についての御理解を深めていただくと同時に、母子家庭のお母様方に対しまして専門家の立場からの就労についてのいろいろな心構えとか準備とか、こういう問題点があるんだというようなことをお話ししていただくようなこういう研修会を開催していただくのはどうか、こういう考え方に立っているものでございます。  ブロック等でお願いをいたしますので、経費といたしましては五百万を予定いたしております。
  133. 中西珠子

    ○中西珠子君 非常に結構なアイデアだと思うんですが、五百万というのは余りにも少な過ぎますね。もっとふやしたらどうですか。少なくとも一千万はないとできないんじゃないですか、地方でいろいろ研修会をやったり意見を伺ったりするにはね。
  134. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 大変ありがたいお言葉でありがとうございます。今後とも努力させていただきます。
  135. 中西珠子

    ○中西珠子君 この前、厚生大臣の所信表明に対して質問をいたしましたときに、保育の多様な需要への対応についていろいろ長尾局長からお伺いしたわけでございますが、四十七億円の予算がふえているということは大変結構なことだと思うんですけれども、新規に入っている保育所措置費特別調整費というのは、その内容は何でしょうか。
  136. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 先ほど先生がおっしゃいましたように保育所の問題、非常に保育需要が多様化いたしておりまして、こういった多様化した保育需要に大変熱心に取り組んでいただいておる保育所があるわけでございますが、御承知のように児童数の減少がございましていわば定員割れということが起こっております。この定員割れをされますと、措置費というのは児童一人当たりという単価で交付をされますので、経営自体が非常に厳しいという状況がございます。これを全体として見ますと、例えば保育所全体の定員を変えていただくとか全体の地域の計画をもう一度見直していただくというようなそういう対策が構造的にはあるかと思うのですが、いい保育をやっていただいております保育所につきましてはぜひその保育を続けていただきたい、こういう意味で特別調整費という形でこういった経営上の問題を解決するための予算を計上いたしたと、こういうことでございます。
  137. 中西珠子

    ○中西珠子君 その額はどのくらい計上していらっしゃいますか。
  138. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 予算額で申し上げまして四億五千百二十六万五千円でございます。
  139. 中西珠子

    ○中西珠子君 これは足りそうでございますか。
  140. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 新規の予算でございますのでなかなか対象経費の算定に難しい要素があるわけでございますが、一応私どもはこれで足りると考えております。
  141. 中西珠子

    ○中西珠子君 本予算を効果的に使って調整を進めていただきたいと思います。  その次に、児童の健全育成対策として家庭基盤に関する調査研究というのを新たに出していらっしゃるわけですね。それで大体五千万ぐらいとっていらっしゃるらしいんですが、この家庭基盤に関する調査また研究というのはどういうことをなさるおつもりですか。
  142. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 我が国の社会全体、いろいろな意味で社会経済構造の変革期にあると思うのでございます。家族の問題にいたしましても、核家族化の進展でございますとか婦人の就労構造が大変変化をいたしております。いわば児童を取り巻きます環境の大変な激変があるわけでございますが、こういった変化の中で児童が健全に育成されるような状況が少しずつ損なわれている面があるのではないか、つまり家庭の持っております養育機能の変容に対しまして十分な対応がなされているのであろうかどうかということが私どもの問題意識であるわけでございます。  家庭問題につきましては、大変いろいろな多角的な観点から検討がなされるべき問題だと思いますし、また行政が一方的に一つの考え方を押しつけるということが不適当な分野であると思っておりますので、この家庭問題に注目しました調査研究事業というのをまず始めてみたいということでございます。各方面の有識者の方にお願いをいたしまして研究会を設置いたしまして、この中でどういった観点の対策の方向があるのかというような検討をお願いすると同時に、一般有識者の方々を対象といたしまして、また必要によりましては一般の家庭も対象といたしまして調査をやってみたいということでございます。
  143. 中西珠子

    ○中西珠子君 家庭基盤の強化ということが大平内閣のときかなんかに言われまして、これは婦人は家庭に帰れということだということで働く婦人の方々は家庭基盤の強化ということに対して大変神経質になっているわけですね。それで、家庭基盤に関する調査というのを、今御説明をお聞きしまして、子供の健全な育成のためには家庭が非常に大事だと、これは私は全く同感なんですが、いろいろ詳しい実態調査並びに意見の聴取というふうなことをしていただきたいと思います。  それから、児童健全育成対策の中の一つとして新規に自立相談援助事業というのが入っておりまして、これもたった五百万入っているわけですね。これはどういうことをなさるんですか。
  144. 長尾立子

    政府委員(長尾立子君) 先生十分よく御承知かと思いますけれども、私どもの抱えております児童の中で養護施設がございますが、養護施設の子供さんにつきましては、高校へ進学されます場合はともかくといたしまして、例えば中学卒業だけで就職をされますケースがございます。社会的にもまだ成人というわけにはいきませんで、就職をいたしましてもいろいろ問題を抱えておるケースもございます。正直言いまして、退所をされて巣立たれても、言葉は適切かどうかわかりませんが、失敗されていろいろな意味で問題を起こしていくというケースもございます。こういう意味では、養護施設のアフターケアといいますかそういった意味で起居をともにしてこういった子供たちのための相談をやってくださるようなそういう事業考えたいということでございます。  既に、大変ありがたいことですが、一部の篤志家の方が非常に体当たり的にそういうような事業をやっていただいておりまして、私どももそういった方々がぜひこういった事業を進めていただくための少しでも援助をしたいということを考えたものでございます。  養護施設を退所されましたこういった方々を中心考えまして、大変問題の多い年齢層の、それから家庭的にもいろいろ恵まれない子供たちが健全に自立して成人になってしっかりとした社会人になっていくためには非常にきめ細かな相談というものが必要なのではないか、そういう意味でこの予算、先生がおっしゃいましたように大変額も少ないのでございますが、一つの芽としてやらしていただきたいと、こういうことでございます。
  145. 中西珠子

    ○中西珠子君 御趣旨は大変結構なんですけれど も、起居をともにしてまで相談に乗るというふうなものの援助となりますと五百万は余りにも少ない。新規ですから、ことしやってごらんになって来年はもっとうんと予算をとるというふうにこれを成功させてくださいませ。  それから、細かくなりますけれども、社会福祉施設の整備運営に関する項目の中で運営費の改善というのがあって、その中で社会保険料事業主負担金の改善とありまして、どういう改善なのかさっぱりわからないのですけれども、その内容をお教えください。
  146. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 社会福祉施設に働く職員の社会保険料、具体的に申しますと、健康保険、厚生年金保険、雇用保険等がございます。こういう社会保険料は原則としまして被保険者と事業主がそれぞれ半額ずつを負担する、これは先生御承知のとおりでございます。この事業主負担分につきましては、従来から社会福祉施設の運営費の中の人件費にその所要額を算入しているところでございます。  そこで、今回の改善は、この社会保険料の中で厚生年金の女子の保険料率とそれからもう一つ、雇用保険料率が引き上げられました。したがいまして、それに伴ってその分の事業主負担もふえますのでその分の所要の増額をしたものでございます。  ちなみに所要改善額は全部で二億五千万ほどでございます。
  147. 中西珠子

    ○中西珠子君 厚生省のやっていらっしゃることはなかなか範囲が広いから、細かくいろいろなところに目配りをなすっていろいろ予算を編成なさるのは本当に大変だと思うのでございますけれども、この前通告しておきながらお伺いできなかったことを一つ、この際ちょっと時間がございますのでお伺いしたいと思います。  それは、「新しい日本型福祉社会」という表現を厚生白書の中で厚生省がなさっているのですけれども、この「新しい日本型福祉社会」というのはどういう意味でお使いになっているわけですか。
  148. 黒木武弘

    政府委員(黒木武弘君) 日本型福祉社会ということでいろいろとこれまでも御説明なり議論を私どもはしてきたわけでございますが、活力ある福祉社会を目指そうという背景の中で、それぞれの国民一人一人の自立自助等を願おうというものであるわけでございます。厚生白書で分析いたしております「新しい」というのは、家族観と申しますか、女性の職場進出等に伴いまして新しい家庭像なり家庭観が芽生えてきた、そういうことを背景にしながら、かつまたお年寄りの同居率の推移あるいは同居の希望等の国民意識調査等をにらみながら、これからの私どもの福祉社会の建設はそういった新しい家庭観なりあるいは新しい老人との同居等も、国民の意向を踏まえながら新しい発想でこれから日本の福祉社会をつくっていく必要がある、こういうことで経済社会の情勢を分析しながら新しい展開をということで厚生白書で指摘させていただいたわけでございます。
  149. 中西珠子

    ○中西珠子君 新しい家庭像、また男女の役割分業というものをこれまでとは違ったところから見ていくという発想で「新しい日本型福祉社会」とおっしゃっているというふうな印象を受けました。  厚生省は現在の女性の意識の変化とかそれから家庭のあり方の変化というふうなものをなかなかよく見ていらっしゃるなという印象は受けたのでございますが、老人の入院はなるたけ抑えて在宅ケア、在宅福祉という方向に政策の重点を移していらっしゃるところを拝見しますと、家庭にやはり女は帰って、そして老人の面倒を見るのも女であるという、そういうことを要求していらっしゃるのかなという感じもするし、そうではなくて、これから高齢化社会に向かって経済活動の分野で生産年齢人口がうんと減るのだから女性がこれまで以上に経済活動に従事しなくちゃいけないという一つの経済的な要請があるわけです。  それで、とにかく何しろ家にいて家事、育児また老人介護をやるのが女性の役目である、それが女性の役割分担であるという考え方に固執していては女性自身の能力の開花もないし、また女性自身の地位もまた福祉も向上しないということなんです。翻って、家庭を構成している夫なり子供なりまた老人、年とった親とか兄弟とかそういった人たちの問題というのも非常に大きな問題で重要な問題でございますから、社会サービスというものをもっともっとふやしていただいて、個人の自助努力だとか企業にもっとやらせるとか地方公共団体にもっとやらせるとかというふうに国庫負担を減らしていくことばかりお考えにならないで、厚生省がイニシアチブをとって社会サービスの増強、社会保障の安定的な運営、給付の改善、そういったことを本当に総合的に推し進めていただいて、女性、男性、子供、老人すべてを含めた国民の福祉の向上のためにやっていっていただきたい。  そういう新しい視野からの日本的福祉社会ということであるならば私は大変結構だと思うのでございますが、終わりに大臣のお考えをお聞きさせていただきます。
  150. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) これが日本型の福祉社会である、こういう問題は、現在御承知のように大変な過渡期でございますから、いろいろな諸条件を念頭に置きながら進めていくということだと思います。  ただ、具体的な一つの考え方といたしましては、確かに六十一年に政府がつくりました長寿社会対策大綱というものがあるわけでございます。そういう具体的な指針といいますかそういうものと、まさにこれは背景には国民性とか文化性とかそういうものがあるわけでございますから、日本人の勤勉性といいますか、また家族主義といいますか、それから企業社会といいますか、いろいろな日本の独特の社会の諸条件を頭の中に入れながら、どういうものが日本型福祉社会であるかということを考えながらこれから進めていかなきゃならぬと思っておりますけれども、具体的には、先ほど申し上げましたようにあの長寿社会対策大綱、雇用、生活環境、医療、年金、所得保障、こういう具体的な問題についてこれから考えていくべき課題だというふうに思っております。
  151. 中西珠子

    ○中西珠子君 ありがとうございました。時間が参りましたので終わります。
  152. 内藤功

    ○内藤功君 まず、生活保護行政の問題についてお伺いをしたいと思います。  現行の生活保護法は、日本国憲法第二十五条、「国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」この条項、その精神に基づいて具体的に権利を保護する、権利を保障する、そしてさらに自立を助長をするという目的でつくられた非常に重要な法律、制度であると理解をしております。すべての国民にとって病気、けがあるいは倒産、失業あるいは家庭内の不和、いろいろな災厄が襲いかかってきたときに、最後に国にこういう制度があるということは国民にとって限りない安心感というものをもたらすものだというふうに理解をするわけです。しかも、この受ける保護は恩恵ではなく権利だということ、これが憲法及び法律の重要な基本だと理解をするものであります。  まず、これはわかり切ったことであり、当然のことでありますが、ここを誤ると大変なことになりますので、大臣厚生省というのは国民にとって非常に頼りにされている役所でありますから、生活保護法及び生活保護制度というものに対する基本的な理念、また基本的な姿勢を最初にお伺いしたいと思います。
  153. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 生活保護制度は、御指摘のように憲法二十五条で保障された権利でございまして、生存権といたしましてはその最後のよりどころになるところでございまして、生存権保障の根幹となる重要な制度であるというふうに理解をいたしております。
  154. 内藤功

    ○内藤功君 特に私が言ってもらいたかったのは生活保護法の一条から四条です。一条では、憲法二十五条に基づく法律である。二条では、無差別平等である。三条では、最低限度の生活というの は健康で文化的な生活水準を維持するものでなきゃならぬ。そして四条で、あらゆる資産、能力の活用が条件であるが、急迫した場合には必要な保護が行われる。第五条で、この四つは「この法律の基本原理であつて、この法律の解釈及び運用は、すべてこの原理に基いてされなければならない。」、ここのところが非常に私は強調しなければならぬところだと思います。  そこでお伺いしたいのは、そういう制度であるが、昭和六十二年度政府予算と比べて昭和六十三年度予算案、生活保護の予算はどのように増減されておるか、金額と率でお示しいただきたいと思います。
  155. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 昭和六十二年度当初予算、それと昭和六十三年度予算の比較でございますが、差し引き増減額で二百四十九億六千九百万円の減であります。伸び率で言いますとマイナスの二・二%でございます。
  156. 内藤功

    ○内藤功君 昭和三十一年度以来三十二年ぶりの減額だと承知をしております。  憲法二十五条二項には、国は社会保障、社会福祉、公衆衛生の分野においてその「向上及び増進に努めなければならない。」というふうに書いてありまして、私どもの理解では、前の年より三十二年ぶりで率、額とも落ちているということはこの努力義務に背くことになりませんか。
  157. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほどお答えしましたように減額になっていることは事実でございますが、これは近年の生活保護受給者の減少傾向を勘案したものでございまして、明年度に必要な予算額というものは十分確保しているというのが我々の考え方であります。そういうことでございます。
  158. 内藤功

    ○内藤功君 そういう実態ではないということを私はいろいろ調べて感ずるものですから、幾つかの御質問をさせていただきたい。  まず、被保護世帯、被保護者数、保護率のこの五年ぐらいの間の推移、増減のおおよそのところをお示しいただきたい。
  159. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 昭和五十七年度から六十一年度まで申し上げます。  これはいずれも年度平均の数字でございますが、まず被保護世帯で申しますと、五十七年度七十七万世帯、五十八年度七十八万世帯、五十九年度七十九万世帯、六十年度七十八万一千世帯、それから六十一年度が七十四万六千世帯でございます。  それから、被保護人員につきましては、五十七年度百四十六万人、五十八年度百四十七万人、五十九年度同じく百四十七万人、六十年度百四十三万人、六十一年度百三十五万人でございます。  あと、保護率につきましては、五十七年度が一二・三パーミリ、五十八年度が同じく一二・三パーミリ、五十九年度一二・二、六十年度一一・八、六十一年度一一・一でございます。
  160. 内藤功

    ○内藤功君 特に今お示しになったこの三年来、私にとっては非常な激減の印象を受けるのであります。  ところで、お伺いしますが、福祉事務所等での面接相談の件数はふえておりますか、減っておりますか。どのように把握しておられますか。
  161. 小林功典

    政府委員(小林功典君) ちょっと、現場の福祉事務所の面接相談件数は統計的にとっておらないと思います。
  162. 内藤功

    ○内藤功君 現場では最近記録をとるということをいろいろ非常に指導されておるようですね。こういうものは、データがもともと本省にはないんですか。
  163. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 福祉事務所自体ではいろいろ書類を整備しておると思いますが、それを全国的に集めてはいないという意味でございます。
  164. 内藤功

    ○内藤功君 それでは、私がいろいろ現場で働いているケースワーカー、福祉事務所の方、それからそこといろいろ交渉されている要保護者側の方から聞いた結果ですが、主として東京になりますが、面接相談の件数は、福祉事務所の段階では去年来減っていない、しかし保護申請の伴数が激減している、こういう現況だと聞いております。  そちらの把握の状況はどうですか。
  165. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほど申しましたように、その相談件数そのものを集計しておりませんのでちょっとお答えいたしかねるのでございます。
  166. 内藤功

    ○内藤功君 特に申請以前の段階の問題が、私、非常にたくさんの事例を聞いておりますし、またそれを調べたわけですが、一番先に申し上げたいのは、保護申請を受け付けてもらえなかったということで多くの問題が起きております。  その一つは、母子家庭の母親が三人の子供を残して死亡された昨年の一月二十二日の札幌市白石区のケースでございます。おまえたち空腹だろう、許しておくれという悲痛な遺言を残して亡くなったのでございます。死亡時の体重は三十キログラム余だったと伺っております。  厚生大臣、厚生行政の立場から、この問題、この事件をどうお思いになりますか。また、どういう教訓をお引き出しになりますか。法の運用のどこかに間違ったところがあるのではないかというふうに私どもは思うのですが、この御感想、またどこからどういう教訓を引き出すかという点は当然お考えがあると思うんですが、お伺いしたい。
  167. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 荒川の問題と札幌の問題……
  168. 内藤功

    ○内藤功君 荒川は言っておりません。札幌だけ。
  169. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) いやいや、今まで委員会でしばしば御指摘といいますか、例に挙げまして御質問がございます。  私も事実関係につきましては十分に調べましたが、正確を期す意味局長から答弁させます。
  170. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 事実関係に基づく御質問でございますので、事実関係、私どもが調べましたものをちょっと簡単に御報告させていただきます。  この札幌市のケースでございますが、実はこれ五十三年三月から五十六年十二月まで一度生活保護の適用になっております。そのころの事情を調べますと、例えば母子寮への入所でありますとか、児童扶養手当、児童手当の申請の指導でありますとかそれを福祉事務所はやっております。それから、ケースワーカーが就労先のあっせんまでいたしまして、現に病院の家政婦として一たん勤務ができたということもございます。その後、最初パートで病院に勤めたわけですが、正式採用になりましてボーナスがつくとかあるいは給与水準が上がるとかというようなことと、それからまた市営住宅に入居できたというような事実もございまして五十六年の末に辞退届を出した、こういう経緯がございます。  そこで、今度のその六十一年のことでございますが、六十一年十一月十一日に本人のお友達から、この母子世帯が生活に困っているという通報が電話でございまして、すぐ翌日ケースワーカーがそのお友達と一緒に訪問いたしまして本人とお会いしております。その結果、本人について特に緊急を要する事態が認められなかったために、別途じゃ詳細については福祉事務所でお聞きするのでぜひ来ていただきたいということを申し上げまして、翌十三日に来所をされております。それで、十三日に面接相談員が応対いたしましたが、御本人からは当面生活上の差し迫った窮状の訴えというものが特になかったわけでございます。そこでこの面接相談員は一般的な指導相談ということをいたしまして、かつ、福祉事務所としては今後生活に困ったような場合にはいつでも御相談に応ずるからという御説明をいたしまして、本人も十分納得をされてお帰りになったのでございます。その後、十二月の中旬になりまして前のお友達から再度電話の通報がございまして、本人がおいでいただけないなら兄弟でもいいしそのお友達でもいいから来て説明してほしいという御協力の依頼を申し上げましたところ、そのお友達は了解したので、福祉事務所としてはお越しになるのを待っていたということでございます。その後、本人または友人の来所はなかったんですけれども、福祉事務所としましては、本人に十二月に児童扶養手当が出るはずであると。これは四カ月分で当時十六万二 千八百円。それから兄弟もいらっしゃるようなのでその援助もあり得るということで、まあ差し迫った困窮状態は避けられたんじゃないかなというふうに判断してそのままになったというのが事実でございます。  なお、この事件後に判明したことをちょっと申し上げますが、この御本人は六十一年四月以降、例えば市営住宅の家賃の減免申請、これもやっておられません。それから児童扶養手当、これは月四万七百円、それから児童手当月五千円、これの更新のための現況届を出しておられません。それから雇用保険の受給の手続もやっておられません。そういった幾つかある公的援助をすべて利用しなかったということがひとつわかりました。  特に児童扶養手当と児童手当につきましては、役所の方から催告をいたしまして、そういう手続をしないと受けられません、出してくださいという催告をいたしましてもなおかつ届け出が出なかったということでありまして、ここら辺を考えますと、手続さえすればかなりの金額が給付として受けられる状況にありましたから、これは全くやっていらっしゃらなかったというのはどういうことなんだろうかという疑問を持つわけでございます。  以上の経過から見ましておわかりのように、福祉事務所としての対応に特に不適切な面はなかったんじゃないかというのが我々の見解でございます。
  171. 内藤功

    ○内藤功君 今の御調査はどういうところでお調べになったんですか。
  172. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 札幌市を通じて現場まで全部当たらした結果でございます。
  173. 内藤功

    ○内藤功君 札幌市の調査というのは非常に一方的で、福祉事務所の担当者の責任逃れと、私は一言で言うとそういう印象をこの報告書を見まして感じるわけなんです。  ポイントは、この方、名前は申さないことにいたします、Aさんと称しておきます、この婦人の方が、福祉事務所で相設に来たのかどうか、納得をして帰ったのかどうかという点だと私は思うんです。ここは細かいことを認定を争うところではありませんから、福祉行政の大きな問題として私は申し上げたい。  それから、いろんな今局長の言われた公的な手当、公的な扶助制度を利用しなかったという問題を、一般の素人である国民にそれがやってないということで責められるかどうか大きな問題だと思います。むしろそういうことをやはり役所がきちんと知らしていくべきじゃないのかということを、今あなたの答弁を聞いて私は強く感じるわけであります。  これは今も報告がありましたが、福祉事務所に出向いて、子供に対する養育費が九年前に別れた夫からもらえるかどうか書類をもらってくるようにというようなことを言われて、帰ってきてから恐ろしくてもう行きたくない、九年も前に別れた人を探せと言ったって無理だ、そういうことを知人にこの方は話しておられたということであります。そこで、この知人が見るに見かねて、電話で強く福祉事務所に対して、このままでは死んでしまうという通報をしたということもあります。最後には、子供さんが千円、二千円を近所の知人に金を借りたり近所の店でパンやお弁当を掛け買いしているという中で、この方は食事を摂取せず死亡されたわけであります。  そこで、私はお聞きをしたいのは、問題のポイントは福祉事務所の面接業務の問題であります。今局長の言われたのは札幌市の保護指導課でまとめた「白石区母子世帯の母親(A子さん)死亡事件の概要」と題するこの報告書を基本にしてほとんど市の言い分をここで述べられたものと私は受け取りました。  これは私もよく読んでおります。Aさんが福祉事務所に保護申請に出向いた十一月十三日のことについては、今後の生活をどうしたらよいかと相談をしたとここに書いてあるんです。しかし、これは明らかに生活保護の申請手続に行ったと見るべきなのであります。  この死亡事件のありました直後に札幌市役所のケースワーカーでおつくりになっている労働組合、自治労の分会でございますが、この方々がこの事件を検討して一つの報告文書をおつくりになったんですが、この中の一節を御紹介しますと、「今回の事件がケースワークについて注意を喚起していることの第一は申請の不受理」だというんです。申請時点で比較的高額の家賃に住んでいることや九年前に別れた夫に養育費を請求していないということが直ちには保護受給の欠格条項にはならないのだから、問題点として御本人、要保護者に説明する要はあっても、相談で終わらせずに、申請を受理するなり保護を開始してから具体的な指導をするべきであった、こういうふうに指摘しております。  私は、ここがこの問題の、政府の保護行政で反省すべき点だと思うんです。個々の案件をここで審議をやっているのじゃありません。ここから導き出す教訓は何かのポイントの一つはそこだと私は思うんですが、いかがでしょう。
  174. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 事実関係をもとにしての教訓ということなものですから、事実関係をお話ししたわけであります。  それから、一つ申し上げさしていただきたいのは、先ほど公的援助を利用しなかったというのは申し上げたとおりですけれども、この方は、現に、以前児童扶養手当も受けておられましたし、児童手当も受けておられた。それから市営住宅の家賃の減免もやっておられた。したがいまして、この方は全部御承知の上で、しかもそういう手続をとらなかったと、こういう意味で申し上げたわけであります。  それから、今の窓口の問題でございますが、そもそも生活保護というものは、生活にお困りの方がその利用し得る資産やあるいは他の法律等による各種施策を活用してもなおかつ最低生活が維持できないという場合に行われるものであります。これは先生御承知のとおりであります。したがいまして、来所される方の中にはこういった生活保護の仕組みを十分おわかりいただいていない、そのために保護の適用に結果的に至らないという方も随分いらっしゃいますし、それからまた、他の施策を活用することによりまして最低生活が維持できることになってこれも保護の適用に至らないという方もいらっしゃるわけであります。  例えば、御相談に来られた方にお聞きしますと、そのケースから見てどう見ても年金がもらえるんじゃないかというようなケース、例えば障害基礎年金というのが非常に多いようでありますが、調べてみるとやはりこれはもらえるというケース、それから児童扶養手当も同じでありまして、この制度を御存じないという方については児童扶養手当の支給を受けたらどうかと言いますと、これ現に受けられる例もございます。それからまた雇用保険なんかも、失業して生活が困るということで来所されるんですけれども、雇用保険の手続さえすればもらえるという場合もございます。そういったいろいろ給付があれば生活保護の適用を受けなくても自活が可能であるというケースがかなり多くあるわけでございます。  そこで、まず、窓口におきましては、来訪者の方々の御相談に応じまして生活保護の仕組みについてよく御説明して御理解いただくということ、それからまた他方、他施策の活用ができるかどうかにつきましていろいろお話を聞いて、可能性があれば適切なアドバイスをする、これも必要なことでありましてそういった配慮をやっているものでございます。もちろん、この場合、生活保護の申請の意思のある方の請求を阻害するようなことがあってはこれはいけないわけでありまして、国といたしましては、制度の趣旨、仕組み等を理解していただいた上でなおかつ生活保護申請の意思がおありの方には申請手続についての援助、指導も行うように従来から指導しているところでございます。
  175. 内藤功

    ○内藤功君 今時間をかけて、面接のときの行政側の指導のメリットのある部分をずっとおっしゃったんですね。それ自体を否定しませんが、 本件はまさにあなたの言われる申請を阻害した結果になっておる事案で、それなりに行政は厳しい教訓を導き出すべきだということで私は当委員会で質問をしているわけであります。  ところで、三月二十四日に札幌弁護士会人権擁護委員会が札幌市長あてに警告書を発しております。私、これ一昨日入手をいたしましたが、この方、Aというふうに仮に呼びます。  Aが、昭和六一年一一月一三日生活保護申請のため札幌市白石区社会福祉事務所を訪れた際の、同女に対する同福祉事務所の対応は憲法及び生活保護法の基本理念に合致しない不適切なものであり、 ということが一つ。それから、  同福祉事務所が、同六一年一二月頃、市民の一人から同女の健康状態が悪化しそのまま放置すると同女の生命に窮迫した危険があり緊急に保護を必要とする旨の明確な通報を受けたにもかかわらず、緊急の措置をとらなかったことは、憲法及び生活保護法の基本理念に違背する違法なものであって、明らかに、同女に対する人権侵害行為であるとの結論に達しました。   よって、当委員会は、貴庁に対し、強く反省を求め、今後再度、同種行為を繰り返さないように警告します。 という内容のものですが、この事実は厚生省は把握しておられますか。
  176. 小林功典

    政府委員(小林功典君) そういう文書が出たのは私も拝見をしております。  ただ、それにつきましては、今の二つの論点につきましては先ほどるる御説明しましたように、最初のときの面接について不適切な点があったとは思えませんし、それから友人からの連絡についてもすぐに対応しているというふうに考えているわけであります。
  177. 内藤功

    ○内藤功君 これは軽視してはいかぬと思うんです。  私も人権擁護の副委員長の経験が一回ありますが、弁護士会の規則によりましてこれはつくられております。弁護士は基本的人権を擁護することを使命とする、これが第一条。そして法律制度の改善に対する努力義務が課されております。それから、弁護士会は弁護士事務に関して官公署に建議できるという条項等があって、こういうものに基づいて昨年の四月三十日に申し立てられた案件に対して昨年十月から三月まで市役所の福祉事務所の面接担当員とケースワーカーの方をちゃんと呼んでおります。それから、口述したことに補充する陳述書もとっております。それから一方、亡くなったAさんの元雇い主の婦人の方、元喫茶店に勤めていた雇い主の方を呼んで両側から公平な調査をしております。  そしてその中で、特に今問題になっている  一一月一三日に、福祉事務所に行った用件が、単に慰めや励ましを求めたものとは、到底思われないし、また、仮に、Aの用件が保護申請をするためのものであることを明確に意思表示しなかったとしても、Aの用件の意図が面接担当者に伝わらなかったと考えるのは不自然なことである。   むしろ、面接担当者がAに対し、先夫から養育料の支払いができないとの念書をもらうことをすすめたという一事実からしても、Aが福祉事務所を訪れた用件が生活保護申請にあったということは明らかであり、……  生活保護を求めて、福祉事務所を訪れるものの中には、……  社会から面倒をみてもらうという気持ちから、羞恥心や劣等意識に苦しみながら保護を申出し、担当者に碌に反論できない者の方が多いと思われる。したがってAが穏便に帰っていたとしても、そのことがただちに、同人の納得を意味するものではないことは言うまでもない と、こういう指摘があります。  これは、局長、あなたは市の代弁をなさる立場じゃないわけですから、国の立場できちんとやはりそこのところの要保護者、福祉事務所を訪れる人の心情というものを理解して、ここからもっと教訓を導き出すというそういう態度にお出になることが望ましいと思うんですが、いかがお考えになりますか。
  178. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほど来お聞きしていますと私の方で調べた事実と大分差があるなという感じはいたしますけれども、ただ一般論として申しますと、確かに、福祉事務所を訪れられる方は非常な苦しみと悩みを持っていらっしゃる方ばかりでございますので、できるだけ温かくきめ細かな指導をする必要があるという点はそのとおりでございまして、従来からそれはやっているつもりでございますが、さらにこれからもそういう指導を強めてまいりたい、このように思います。
  179. 内藤功

    ○内藤功君 さらに、この警告書でもう一点だけ指摘しておきますと、十一月下旬から十二月中旬にかけてAの元雇い主は、福祉事務所に対して電話で、  Aが寝たきりの状態で、緊急に保護をする必要があることを述べていた ところが、   福祉事務所としては、かかる緊急保護の必要性について、市民から通報を受けたばあい、ケースワーカー、民生委員等に早急に事情調査をさせ、実際に要保護者に緊急保護の必要性があれば、職権で必要な保護を行なうことが憲法及び生活保護法に定められた職務上の義務である ところが、  受報者のB及び福祉事務所が、何らの措置もとらなかったことは、右義務に違反するものである。 この指摘ですね。  保護法二十五条、さらに二十七条三項もそうですが、緊急の場合の措置を定めてあるわけです。そして、さっきの局長の報告にもあるように、いずれ本人が来るだろう、あるいは通報した人が来るだろうと待っていたということは、これはやはりこのような指摘を認めざるを得ないと私は思うんですね。  この点、いかがにお考えになりますか。
  180. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 先ほどお話ししましたように、十一月の十二日にはケースワーカーがその世帯を訪れているわけでありまして、十三日には事務所で本人に直接お会いしているわけであります。確かに十二月の中旬にその友人から電話があったのは事実、これもお話ししたとおりでありますが、そのときは福祉事務所に来ていただきたいということをお願いし、そのお友達はそれを了解しておったということでございますので、来所を待つのはやむを得なかったのかなという気がいたします。
  181. 内藤功

    ○内藤功君 局長、そこまで市のやっていることをかばわれるのは私はどうかなと思いますね。  この弁護士会の人権擁護委員会が指摘していますように、法律は二十五条で緊急の措置の定めをしているわけですから、そういう職権の調査、ケースワーカー、民生委員等に事情を調査をさせるということをやるべきだったという方が私は筋が通っており、それが血の通った保護行政だというふうに思えてなりません。また、そのように私は考えるわけでございます。  大臣、今の問答をお聞きになりましていかがでございましょうか。形式上はこれは一札幌弁護士会人権擁護委員長より一市長に対する地方レベルの警告のように見えますけれども、実は国の生活保護行政そのものがやはり問われているというふうに受け取る必要があると思うんですね。市長は、今後このような事件が二度と起こらないよう、その再発防止の徹底に努めてまいっており、今後ともでき得る限りの努力をしてまいりたい、このように反省の弁を述べられたそうですが、大臣、この事件及びこのたびの弁護士会からの調査に基づく警告というものをどのようにお受けとめになりますか。
  182. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 生活保護の問題につきましては、本当にお困りの方に対しましては憲法二十五条に基づきまして対応する、これはもう間違いないことでございまして、予算上も御承知のように一兆円強の予算を使っておるわけでござい ます。  御指摘の点につきましては、一般論として、そういう窓口で対応する人たちの心得としてはきめ細かく対応をしていただくことが望ましいことであることはこれは申し上げるまでもないことでございまして、今御指摘の点につきましては今後私も注意して見てまいりたいと考えております。
  183. 内藤功

    ○内藤功君 この一件だけでここで時間をとるわけにはまいりませんが、非常に大事なケースだと思います。  そのほかに、例えば、私どもが調べた範囲で次のようなことが現場の第一線段階で行われております。いわゆる適正化というのはこういうふうに行われているのかと。  福祉事務所の窓口で、ある事務所では一度の申請だけでは受け付けない、二度三度来なけりゃ申請を受け付けないと、そういうふうにしているところがあるそうです。それから二番目、申請書にくっつける書類を、これを持ってこいあれを持ってこいとたくさん要求すると。そして申請を複雑にして、いろんな調査を要保護者に強要して申請を結局あきらめさせる、面倒くさいなということで断念させる。それから三番目は、申請書を下さいと言っても、その用紙を渡さないと。そしてその理由として、例えば生別母子世帯に対して、本当に別れているのかどうか、偽装の離婚じゃないかというわけですね、疑ってかかると。それがチェックできないから家庭裁判所に訴えて、これは恐らく調停でございましょうが、調停へ訴えて、それでそれの結果、確認できてから申請書を渡す。これなんかはもう家庭裁判所の領域の侵犯で、向こうが大変迷惑になるだろうと思うんですね。それから、民法の親族関係への介入、そこまでやっている。それから、仕事を見つけて収入がはっきりしてから申請書の書類渡しますと。これはもう申請前の面接相談の段階で就労指導までやっていると、こういうような事例ですね。  それから、名前をこれも省きますが、大阪市のある市営住宅に住む四十三歳の方ですが、一昨年の七月に白内障の手術を受けて、ほかに腎臓病がある、仕事ができない、夫と別居して、仕送りもないと。去年の六月にひとりで福祉事務所へ保護申請に行ったところ、診断書を持ってこいと言われたと。診断書は出したと。そうしたら、働けるんだろうと。言動から見て、あなたは精神科にかかりなさいとか保健所へ相談に行けとか言われて、さんざん苦しい目に遭ったと。  そのほかたくさんあります。時間の関係であとは省略せざるを得ませんが、例えば、現にこれは東京都荒川区であった例です。東京都の監査の中で指摘をされた事実ですが、現に嫁に行っている長女に就労指導している。嫁に行っている娘さんですね。あなたが働けば保護を必要としないケースになるんだといって、ほかに嫁に行っている長女のところにまで行って就労指導をするというようなことですね。  私の持ち時間の範囲で幾らでもできますが、こういうようなことが無数にあります。まだまだ申し上げたいんですが、もう切りがないぐらいあります。全部これ面接段階なんです。  いかがでしょう、局長、こういう現場の実態は初めてお聞きになりましたか、ある程度把握しておられますか。行き過ぎじゃないでしょうか。
  184. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 今例に挙げられました大部分は私は聞いたことはございません。  いずれにしろ、生活保護というのは、先生よく御承知のように、あらゆる収入とか資産とかあるいは扶養義務とかいうのを全部使ってそれでもなおかつ最低生活すら維持できないという者に対して適用するものでございます。これは、生活保護の経費はすべて税金で賄うものでございますから、そういった意味ではそういう仕組みになっているわけであります。  したがいまして、福祉事務所としましてもそういういろいろな調査をいたしませんと、果たして生活保護を適用していいかどうか判断できない面がありますので、今の例は私存じ上げませんけれども、いろいろ調べていることは事実だと思いますし、それはそれで適切な措置であろうと思います。
  185. 内藤功

    ○内藤功君 これが憲法で保障された健康で文化的な生活の権利かどうか、権利を持っている人に対する対応か、今この委員会で指摘したことは私どもも根拠を持って言っておりますから、よくお調べいただきたいと思うんですね。  ところで、社会局監査指導課長塩崎信男氏監修の財団法人社会福祉調査会発行「指導監査からみた生活保護の実務」という本がございますね。
  186. 小林功典

    政府委員(小林功典君) あるようでありますが、私は中は読んでおりません。
  187. 内藤功

    ○内藤功君 この本の冒頭の「はじめに」というところに課長さんがこういうふうに言っておられます。被保護者に、  きめ細かな配慮と手厚い援助の手を差し延べる一層の努力が必要であるが、それと同時に、働く能力を有しながら働こうとしない者、収入があるのにこれを正直に申告しない者等制度の適正な運営を阻害するものに対しては、厳正な対応が必要 である。それから、  暖かさと同時に厳しさを兼ね備えた、けじめある制度の運営の確保 が重要である。  各都道府県・指定都市・福祉事務所とも適正運営を確保するため、それぞれの地域の実情に応じたさまざまな取り組みを進めている と、こういうふうに書いておられるんですが、これは厚生省の、国の方針と伺ってよろしいですか。
  188. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生活保護につきましては、その取り扱いの温かさ親切さ、それと適正実施と両面があることは事実でございます。
  189. 内藤功

    ○内藤功君 温かさ親切さはもう基本だと思いますね。これがやっぱり憲法の精神なんですね。これがあるから国民は安心なんです。  同時に、つまり同等に厳しさを兼ね備えるということは国の方針ですか。
  190. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 生活保護を受けるべきでない方が受けることがあるということは、これは厳に慎まなければならないという意味ではそのとおりでございます。
  191. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、これを各都道府県、指定都市、福祉事務所の一線の方が見た場合に、これは厳しさにウエートがあると、こういうふうに私は必ずおとりになるんじゃないかと思いますよ。適正運営とは専らこの厳しさの強調だというふうに私はこの文章を見て感じたわけなんですね。  ところで、北海道大学の杉村宏という助教授が最近発行された著書「一粒の種子大地にあれば」という書物、私はこれを拝見したんですが、  国の言う適正化の方針は、収入認定の適正化、資産の活用、扶養義務の履行、稼得能力の適正化の四つで、いずれも要保護者の保護の観点が抜け落ちている。このような方針が第一線のレベルにまでおりてくると、保護受給者や申請者に対して半ば機械的にこの四つの履行や確認を迫り、結果として生活保護制度の入り口を極端に狭めることになる。 と指摘しております。  私は、この方向は生活保護制度として一番気をつけなくちゃいけない。厳しさを強調して、実は福祉国家、憲法の精神というものがそれていく、一たんそれますとだっとそれますから、そういう危険があるものと思いますね。  この指摘について厚生省はどうお答えになりますか。
  192. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 今引用されました四つのポイント、これは保護の適正実施に当たりまして大変重要なポイントであると思います。  ただ、その運用に当たりましては温かなきめ細かな配慮が必要であるという点はそうであると思いますが、ポイントとしては確かにその四つは法の適用に当たりましては十分勘案していかなければならない、そういうポイントであると思います。
  193. 内藤功

    ○内藤功君 今、福祉行政は、憲法に基づき戦後つくられたこの温かい理念というものとそれから専ら財政上の理由でこれを切っていこうという冷 たい流れというものが、恐らく厚生省の中でもどこでも渦巻いている時期じゃないかと私は思うんですよ。それだけに私は強調しておきたいんです。  思い起こしますと、昭和六十一年の十一月に東京都の福祉局が生活保護の申請権を侵害しないようにということをブロック別事務打合会で注意を促したことがあるんです。これは、申請書の交付と受理は福祉事務所の義務である、扶養義務者の扶養というのは本人が挙証することを義務づけたものではなくむしろ福祉事務所が調査すべきことなどを内容としております。これは、東京・荒川区で保護打ち切りが相次ぎまして、区民の運動、国会、都議会での追及の結果こういう見解を表明したんであります。このことが非常に大事だと思うんですね。  それから、私がいつも見ている生活保護のブックがありますね、「生活保護手帳」。これを見ますと、これは昭和六十二年版ですが、この冒頭のところに今度は社会局の保護課長の文章が載っております。  「生活保護実施の態度」、これにはいいことが書いてあるんです。「被保護者の立場を理解し、そのよき相談相手となるようにつとめること。」、「実態を把握し、事実に基づいて必要な保護を行うこと。」、「生活保護の保障は、要保護者個々の需要に基づいて行われるものである。」。このとおり実行すれば、私は札幌の白石のような例は起きなかったと思うんですね。  一体、さっきの監査指導課長の厳しさを強調する方が厚生省の本音なんですか、それとも生活保護手帳の冒頭に書いてある「生活保護実施の態度」の保護課長のこの態度が本音なんですか。私は、そういうふうにあなた方にとっては非常に重大な二つの考え方があるように思えてならないんです、率直に私言わせていただくと。
  194. 小林功典

    政府委員(小林功典君) この生活保護手帳につきましても「3」のところにありますように、「要保護者の資産、能力等の活用に配意し、関係法令制度の適用に留意すること。」、「生活保護は、要保護者の活用し得るもののすべてを活用した後に、はじめて適用されるべきものである。要保護者の資産能力等の活用に十分配意するとともに、関係法令を理解し、その適用に遺漏のないように留意すること。」というくだりもあるわけであります。  したがいまして、どちらがというお言葉でございますが、私どもは、その運用について温かいきめ細かな親切な配慮をしなけりゃならぬという面と一方において厳正な態度というのは車の両輪のように併存するものであるというふうに考えているわけでございます。
  195. 内藤功

    ○内藤功君 自立を助長するということは真に救済を必要とする人を遺棄するということではありませんね。
  196. 小林功典

    政府委員(小林功典君) そうではございません。真に必要かどうかの場合に、判断するに当たっていろいろ手続がある程度必要が出てくる、こういうことでございます。
  197. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、実態においては、真に保護を必要とする真に困っている人が切り捨てられている。言葉は厳しいですが、保護の外に置かれているという実態があることを私はさっき指摘したわけです。  最後に、生活保護というものは、冒頭に大臣も言ったように人間らしい生活、健康で文化的な生活の実現を目指すものであるとするならば、その実現の過程、手続もまた人間らしい、人間尊重の手続で進められる必要があるということを私は強く指摘をいたします。これはいわゆる保護を受ける手続的権利という問題であります。  国際連合が一九五二年の報告におきまして、各国の公的扶助に関する報告をいたしました。この中で「諸国では、申請者は、手続が人間的に公平公明に、敬意ある態度で、人格の尊厳を尊重するように、冷静に、迅速かつ効果的に進められるように要求する権利をも有することが広く認められている」、先進諸国の公的扶助制度について国連はこのように報告、総括をしておるわけであります。  重ねて、この立場に立つことを大臣に要望し、御決意を伺いたい。  さらに、人間の尊厳を守ることを教えること、特に憲法、社会保障の精神を職員によく研修することが必要だと思います。  最近私の調べたところでは、ある福祉事務所の職員には国税庁で、税務署において国税の調査、取り立て等を行ってきた人をほとんど研修も十分しないで採用し、配置をしておる。そのために、その職務執行にとかくの批判が出ている事例があると聞いておるわけであります。福祉は人を助けるのでしょうか、苦しめるためのところでしょうか、生き抜く瀬もなくなりましたと遺書を残して七十八歳の方が亡くなっておりますが、この遺書は痛烈なる反省材料とすべきだと思います。  以上の点についての大臣の生活保護行政にかける今後の御決意、また人権擁護についての御所見を伺いたいと思います。時間が参りましたのでこれで質問を終わります。
  198. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) まず最初に、この法律の目的は「日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」。私どもはこの目的に沿いまして、真に困窮されておられる方々に対しては、これまでもそうでありましたし今後も十分に保護を行ってまいります。  また、対応その他の点については、一般的に申し上げますと、その対応については十分的確に行われているものと私どもは思っております。なお、注意すべきところがもしあれば、十分に注意はいたします。  以上でございます。
  199. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 時間です。
  200. 内藤功

    ○内藤功君 これで質問を終わりますが、真に困窮する人に保護が与えられていないという現実があることを重ねて指摘をしておきたいと思います。
  201. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 最初に大臣にお伺いいたしますが、厚生年金基金の自主運用についてです。  企業年金制度を充実させなければならないということは政府の「長寿社会対策大綱」でも言われていることでありまして、大臣も、そして前大臣もその前の大臣もこの厚生年金基金の自主運用ということについて大変強い意欲をお持ちでございました。私もそのことについて強い関心を持ってまいりました。  厚生省はこの見地から二月の上旬に法改正に踏み込まれたわけでありまして、私も金融自由化という大きな流れの中から将来いい方向へ滑り出すものと期待していたんでありますが、まことに残念ながら、その後、断念せざるを得ない、自主運用の箇所を削除して法案を提出するということに相なったようでございまして、いろいろマスコミにこの間のいきさつ、てんまつなど報道されているわけでありますが、概要どういったことになったのか、そしてこれから先厚生省としてはこの厚生年金基金の自主運用についてどういった対処をしていこうとなさっているのか、この辺のところをお聞きいたしたいと思います。
  202. 水田努

    政府委員(水田努君) まず、私から経過を御説明申し上げておきたいと思います。  先生御指摘のとおり、六十一年の「長寿社会対策大綱」が閣議決定された中で「企業年金制度の充実」というところがございまして、「公的年金制度を補完する企業年金制度の普及を図るため、企業及び被用者の多様なニーズに柔軟に対応できる条件の整備を推進する。また、将来にわたり安定した企業年金の運営を可能とするため、資産運用の効率化を一層推進する。」。これを受けまして厚生省の中に企業年金等研究会というものを学識経験者によって構成しまして、約一年間鋭意御検討いただきまして昨年の七月に中間報告をいただいたわけでございます。  この中間報告の内容は広範多岐にわたっているわけでございますが、企業年金の、なかんずく厚生年金基金の普及育成を図るための大きなポイン トとしましては、年金積立金の非課税水準を恒久的に確立する必要があるというのが大きなポイントの一つでございまして、その他の幾つかのポイントの中の一つにこの資産運用問題があったわけでございます。  この資産運用の問題につきましては、基調としては「安全確実を基本」としながら「多様で高度な運用が求められている今日では、運用機関の多様化、運用機関相互の健全な競争を促進して運用の一層の効率化を図ることがこれまでになく重要になってきている。」という基本認識のもとで、「当面は、厚生年金基金連合会及び資産量や運用体制等に関する一定の条件に適合する厚生年金基金について自主運用を認めるものとすることが適当である。」、こういう中間報告を受けたわけでございますが、昨年の七月以来、特に私ども税の問題について暮れまで文字どおり与党の方とも御連絡をとりながらこれに忙殺をされ、私どもの所期の成果を上げることができたわけでございます。  年を明けまして、次の資産運用問題に取り組んだわけでございますが、いずれにしましても極めて限られた時間の中でこの問題をどう処理していくかということに大変苦慮をしたわけでございます。運用機関の範囲を拡大するという問題とそれから一定の能力のある基金に自家運用を認めると一一つの方法があり得るわけでございますが、前者の運用範囲の拡大という問題については関係者あるいは大蔵当局と交渉するのに余りにも時間がなさ過ぎるということで、自家運用の問題に限定して、すなわち具体的に申し上げますと、年金積立金の資金量が二百億を超えた基金でかつ運用体制が整備されているところにつきましてはその三分の一について厚生大臣の認可によって自家運用、いわゆるインハウスを認めるという案を固めまして大蔵当局と交渉に入ったわけでございますが、やはり二十年来生保、信託というのは相当安定的にこの運営に貢献してきた、こういうこともございまして、これら関係の向きを説得するのに余りにも時間がない、唐突であるということで、大蔵当局としても金融の自由化、国際化という大きな流れがあることは十分承知しているので、むしろ急がば回れということもあるではないかということで、この問題については決して大蔵当局も反対というのではないんでむしろ金融の自由化、国際化の流れの中でどう関係者を含めて合理的な結論を出すかということの方がやはり重要ではないかということで今回は見送る、こういう結末になった次第でございます。
  203. 藤本孝雄

    国務大臣藤本孝雄君) 今局長から御答弁申し上げましたとおりでございまして、結論的に申し上げますと、時間が足らなかったということに尽きるかと思います。  しかし、私どもは、厚生年金基金の育成、充実強化、これは非常に大事な問題であるというふうに考えておりまして、特別法人税の問題も解決いたしましたし、また魅力のある厚生年金基金にするためにも資産の運用につきましては運用先の拡大、これはぜひとも解決しなけりゃならない問題だと考えておりますし、また厚生年金基金を拡大していく、ふやしていくということにつきましてもこの国会で改正案を出そうとしておるわけでございまして、運用幅の拡大につきましては厚生、大蔵両省の事務次官で覚書を交わしてございまして、次期通常国会に法案を提出するものとし、運用方法を拡大する方向で両省が誠意を持って協議をする、こういう文言で覚書を交わしておりますので、その線に沿いまして今後とも努力をしてまいりたい、かように考えております。
  204. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大蔵省が縄張りの問題でシャットアウトするというようなことならこれはゆゆしき問題なんだけれども、基本的には金融自由化の中で行くべき方向であろうという合意を得ておられるわけで、問題は、私は責任をどうこうということじゃないけれども、もうちょっと手際よく、二十年続いたということもこれ事実なんだから、その辺の根回しをしておけば私はすっきりやれたものをと非常に残念に思います。  もう言うまでもないことですが、とりわけサラリーマンにとってはその仕事に定年というものがありますので、老後の経済的基盤の確立ということには大変な関心が深い。こういった意味からも加入者の立場に立って法改正というものをぜひひとつやっていただきたい。そして基盤の厚い年金基金というものに仕上げていただきたいということを御要望申し上げたいと思います。  次に、中国の残留孤児の問題について、これも私一、二お伺いしたいわけでありますが、これまで厚生省として大変な御努力の中で六年間十五次にわたって孤児の訪日調査を行ってこられました。昨年春で一区切りついて六十二年度から補充調査という形に切りかえられて今日に至っているわけでありますが、私、これも報道で知ったわけで大変驚いているんですが、中国側から、これから集団訪日についてはできたら打ち切りたいという意向があるように伝えられているわけです。  これまでの厚生省のスタンスは、斎藤前厚生大臣が昨年五月ごろでしたか訪中して呉学謙外相と会談なさって、最後の一人になるまでこれは続けようという合意も得ていますし、来年度の予算にも引き続いて補充調査を行う予算が計上されているわけだけれども、中国のどういう事情があるのか、この報道が正しいとすれば、これは大変重要な問題になるんじゃないかという気がいたしております。  その辺、中国側と接触もなさったようでございますので、どういう経過になっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  205. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) 今先生御指摘のように、本年度は補充調査百名を行ったわけでございますが、調査が六十一年度で一わたりしたところで中国側から、もう数が少なくなってきたからそろそろ大量の人を日本へ送る訪日調査という方法はそろそろ要らないんじゃないかというような非公式の発言が昨年の九月と十二月に私どもの担当官が北京へ赴いたときに担当官から非公式にあったのは事実でございます。  そこで、私どもといたしましては、最後の一人まで肉親調査を行う、そしてまとまった数の孤児がおられる限り中国側の協力を得て今のような訪日調査という方法を継続したいという意図は日本側としては持っておりますので、この三月の十四日から十七日にかけまして担当課長を訪中させました。その結果、次のような結果になったわけでございます。  まず第一に、中国政府が引き続き訪日調査に協力するという基本的態度には変わりはございません。それから、私どもといたしましては、六十三年度百名の訪日調査を予定してございますが、今後具体的にいつやるか、何班に分かれるか等具体的な問題については今後詰める。それから、六十四年度以降についても集団でまとまる数の孤児がいれば前向きに検討をする、このような協議結果であったわけでございます。  私どもといたしましては、引き続き最後の一人まで肉親調査を行うという方針のもとに、中国側の協力も得ましてまとまった数の孤児がおられる限り現在の訪日調査というものを続けていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  206. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 そうだとすれば、従前の方針に変更はない、中国側もそれを了解したというふうに解してよろしゅうございますね。
  207. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) 先生おっしゃられるとおりでございます。
  208. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 ぜひこれは続けていただきたいと思います。  それから次に、同じ残留孤児ということでフィリピンの問題が報ぜられているわけです。このことについて、どういうことなのか。そしてまた、中国における残留孤児というのは、大体、日本人はあの戦争中のことはみんなわかっているわけでございますし、残留孤児ということがすぐのみ込めるんですが、フィリピンに残留孤児ということになると一体それはどういうことなのか、中国との違いはどうなんだということにもなります。  同時に、フィリピンということになれば、それはひとりフィリピンだけじゃなくてインド、ビル マあるいはマレーシアあるいはソロモン諸島だとかその他、かつてあの戦争体験をされた方たちにすれば、広範囲にこういった方たちがいらっしゃるんじゃないだろうか、それを全部これから同じような形で孤児を捜し求めてそして同じような形で対応していくのかどうなんだろうかと、この辺のところがさっぱり我々わからないわけでして、この辺のこともお聞かせいただきたいと思います。
  209. 木戸脩

    政府委員(木戸脩君) 先生おっしゃられたフィリピン、インドネシア等、中国以外の地域についての孤児調査の問題でございます。  私ども、戦前から海外に残留している方あるいは帰ってこられない方々につきましては、従来から未帰還者調査というのを行っているわけでございます。それとともに、戦前海外に在留していた人たちの肉親捜しというのもこの未帰還者調査の一環として従来から受けているわけでございまして、これは厚生省が直接あるいは在外公館を通じて未帰還者調査というのに応じているわけでございまして、フィリピン、インドネシア等の国につきましても、従来から未帰還者調査ということで日本大使館あるいは援護局に直接肉親捜しの依頼というのはあったわけでございます。  ところで、なぜフィリピンについて今回このようないわゆる孤児調査を行ったかということでございます。  幾つかございますが、一つは、六十年から六十二年にかけて日本人の孤児がフィリピンにまだいるという情報が寄せられたということが一つございます。それから、外務省が国際協力事業団に委託いたしまして昭和六十一年に日系人の実態調査報告書というものを作成をさせたわけでございますが、その報告書によりまして、現地の日系人会から残留孤児とか日系二世の実態調査日本政府として行ってほしいという強い要望があったわけでございます。  私どもといたしましては、フィリピンその他南方地域につきましては早くから国交がございますので、事改めて中国のような訪日調査というようなものを行う必要はないというふうに考えていたわけでございますが、日系人会から一般的な日系二世、残留孤児を含めた日系人の実態調査を行ってほしいというたっての要望がございましたので、いわば外務省の一般的な日系人の実態調査あるいは保護対策というものも兼ねまして共同で調査を行ったわけでございます。  なお、厚生省固有の事情といたしまして、実はフィリピンではさきの大戦で五十二万人の戦没者がございましてまだ毎年遺骨収集をフィリピン政府あるいは日系人会の協力を得て行っているわけでございますが、この残存遺骨の状況調査というのもやる必要があった、こういうことから今回担当課長をわざわざ二名派遣して調査を行ったわけでございます。  しかしながら、今回の調査結果でも、いわゆる残留孤児という方は見当たりませんでした。また、各種の現地の情報から総合的に判断をいたしましても、今後の見通しでも出てくる数というのは、あらわれましても大変少ないのではないかというふうに考えられるわけでございます。  それから、中国残留孤児とフィリピン等の残留孤児とどこが異なるかというと、一番大きな問題は、やはり同じ戦争の犠牲者であるという点は同じでございますけれども、やはり戦後の事情が違うわけでございまして、中国以外は比較的早くから国交が回復をしていた。また、厚生省としていろいろ遺骨収集とか慰霊巡拝等のことでフィリピン、インドネシア等の国は訪れておりましたので、そういう面においては情報網というものはあったわけでございます。そこが違うわけでございます。  それから、フィリピン以外の他の地域はどうするのかということでございます。私どもとしましては、一般的にどこの地域であろうと海外から肉親を捜してほしいという依頼がございますれば未帰還者調査とともに調査をいたすつもりでございます。しかしながら、中国について行っているような訪日調査というような大規模な、いわば政府で向こうの政府と共同してこれから調査をやるというようなことは考えていないわけでございます。
  210. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 もう時間がありませんので、最後に一つだけお伺いいたします。  それは、海外の在留邦人ですね、とりわけ私が今申し上げるのはASEANについてでありますが、私も毎年ASEANに行っているんですが、最近ではもう家族帯同して五年、十年と現地にとどまっている邦人の方がたくさんいらっしゃる。そして最近は、とりわけ円高の問題、貿易摩擦の問題もあって、中小企業よりも零細企業がタイ、インドネシア、マレーシアあたりにラッシュしているわけですね。こういった方たちが現地にずっと定着していかれるということになって一番問題になるのが医療問題です。これは、国として医療行為を直ちに行うことはできないことでありますが、家族を帯同した方たちの切実な問題は医療です。もう長い歴史もあるわけですから、こういった国との間における医師の派遣であるとかあるいはベッドの確保であるとか、ある意味の医療行為ですね、こういったものが外交ルートを通じてでもとり行えないものかどうか。例えば、インドネシアの大使館には医務官がおりますが、これは邦人に対しても何にもできません。駆け込んでもアドバイスするだけであって手を施すこともできない。言葉の障壁もあるし、とりわけ小さなお子さんをお持ちの方、一々出産のために帰るというわけにもいかない。言葉が英語でも通じない。これは大変な問題のように私は受けとめているんです。  この辺についてお考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  211. 仲村英一

    政府委員(仲村英一君) 御指摘のような実態は私どもより先生の方がよく御承知のようでございますが、やはり資格、免許の関係がございまして、日本の医師が行って自由に診療するというのは非常に難しい仕組みであることは十分御承知だと思いますが、それにつけましてもやはりそういう状況に置かれた日本の方たちが海外で仕事をされておる場合の医療の確保というのは本当にいろいろ問題があろうかと考えております。  これは、一義的には御承知のように外務省が所管しておるわけでございまして、巡回医師団を派遣するとかあるいは民間法人で在外診療所を設置したりというふうな動きもございますし、幾つかの活動があるわけでございますので、私どもそれをいろんな形で応援していくとかあるいは診療所を設置する場合にはいろいろ御相談に応じるとか、私どものできる範囲でできるだけのことをいたしたいと考えておりますが、外務省におきましても海外移住審議会というところでいろいろ御検討をいただいておるように私ども伺っておりますので、そちらの検討状況もまた見守りながら今おっしゃったような方向厚生省としてできることがありますれば努力を続けてまいりたいと考えているところでございます。
  212. 関口恵造

    委員長関口恵造君) 以上で厚生省所管及び環境衛生金融公庫に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会