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1988-05-17 第112回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十七日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十二日     辞任         補欠選任      中野  明君     広中和歌子君  五月十三日     辞任         補欠選任      松浦 孝治君     林田悠紀夫君      向山 一人君     鳩山威一郎君      吉村 真事君     倉田 寛之君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局次長   緒方謙二郎君        外務大臣官房審        議官       福田  博君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        防衛庁長官官房        防衛審議官    村田 直昭君        科学技術庁原子        力局政策課長   石田 寛人君        科学技術庁原子        力局原子力調査        室長       林  幸秀君        科学技術庁原子        力局核燃料課長  結城 章夫君        科学技術庁原子        力安全局核燃料        規制課核燃料物        質輸送対策室長  大森 勝良君        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        資源エネルギー        庁長官官房国際        原子力企画官   田中 伸男君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全審        査課長      山本 欣市君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      三角 逸郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十二日、中野明君が委員辞任され、その補欠として広中和歌子君が選任されました。  また、去る十三日、松浦孝治君、向山一人君及び吉村真事君が委員辞任され、その補欠として林田悠紀夫君鳩山威一郎君及び倉田寛之君が選任されました。     ─────────────
  3. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。宇野外務大臣
  4. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ただいま議題となりました原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  日米両国間には、昭和四十三年に現行原子力協定締結されていますが、我が国は、米国より供給を受けている核燃料の再処理を行うに当たって必要とされる米国同意を円滑に取得することに多大の関心を有しておりました。他方米国においては、昭和五十三年に核不拡散法が成立いたしました。このような事情のもとに、政府は、昭和五十七年以来、現行日米原子力協定を改定するために米国政府との間で交渉を行った結果、昭和六十二年十一月四日に東京において、我が方倉成外務大臣先方マンスフィールド駐日大使との間でこの協定に署名を行うに至った次第であります。  この協定は、日米間の原子力分野における協力について、現行日米原子力協力協定にかわる新しい協力枠組みを提供するものであり、協力平和的利用に限定されることを確保するため、国際原子力機関保障措置の適用や、核物質を利用した活動などを両政府同意に係らしめることなどについて規定しているものであります。また、このような同意については、この協定の実施取極において一定の条件のもとにあるものについては一括して与えることが定められております。  この協定締結は、日米間の原子力協力のために新しい枠組みを提供し、我が国にとり必要不可欠な長期的に安定した米国との協力を確保するためのものであり、今後の我が国原子力平和的利用の一層の促進及び核拡散防止への我が国の貢献に資するものと考えております。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  5. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 中村哲

    中村哲君 この主題についてお聞きしようと思うんですけれども、ただその前に、アフガニスタンからソ連の撤兵が実現しましたので、この機会に大臣の感想をお聞きしたいと思うんです。これまでの委員会でも発言しておられるようですからダブったことは要りません。そんなに長くというわけじゃありません。
  7. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) もう本月十五日からジュネーブの合意に基づきましてソ連軍撤退が始まっております。ぜひとも九カ月、明年の二月十五日までにこれが終了することを我が国政府といたしましては期待する次第でございます。その後は、アフガンの国民の自主的ないわゆる民族自決による政権が樹立されることを強く私たちも期待するものでございますが、いろんな思惑が絡みまして若干地域的な紛争も生じておるというのが現在の事情であります。  しかし、ソ連軍撤退ということが先決でございますから、これに関しましてはいずれ国連監視団を送るというふうな具体的な措置を講ずることだろうと思いますし、我が国もこれには文民を一名送ることを既に通告いたしておるような次第でございます。したがいまして、アフターケア等々いろんな問題に関しましては、国連を通じましてひとつ我が国といたしましても平和に貢献する日本としての実績を今後は示していかなければならないと、かように考えております。
  8. 中村哲

    中村哲君 この会合でも一言したことがあるんですけれどもアフガニスタンというのは、本来ロシアとはほかのところよりも近い関係がありまして、つまり今のソビエトの前のロシアの古い時代はキエフが中心で、今日のようなモスクワに首都があったわけじゃなくて、したがって北海に面してでなく、黒海の方に出口を求めていたわけで、そういうことから、アフガニスタンというものは歴史的にはソ連というかロシアと全く無関係というところじゃないということを、やっぱりこういう歴史も頭に入れておきたいと、こう思っております。  それからまたアフガニスタンというのは、これは私個人の関心からですが、中国文化の上で篆刻ということで知られているように、古くから印をつくって使用しておりますけれども、この中国の古い印のもとがアフガニスタンから出土しているものがありまして、私はそれを知っておりますし、日本中国研究でも古印のもとはアフガニスタンの辺に発祥するように書いてあって、私はそういう古印をパリのみんなの行かない市場で数年前に発見したことがありまして、アフガニスタンというのはやっぱりシルクロードなんかの一つの接点なんですね。そういうことから、ただアフガニスタンソ連領土的野心を持っているというようなことよりも、長い歴史文化交流などの点も考慮に入れて外交というものはすべきじゃないかと思うんです。  それから、それに関連して外相にお聞きしておこうと思いますのは、ゴルバチョフさんになってから非常にソ連の従来のやり方を一変するかのようにペレストロイカ政策が進んでおります。これを外相としてはやっぱり期待しておられるんだと思いますけれども、世間の批評としては、国内問題もあるし、それから一方でアメリカの方の主張もあるんだから、そう明るいとは見ないような辛らつな批評もありますけれども、この点についてゴルバチョフさんの今世紀というか、今の時代における大きな役割というものを評価していただきたいと思うんで、そのことについて一言お聞きしようと思うんですが、どうですか。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アメリカの首脳と会談いたしましたときに、INFのグローバルゼロが実現したというのは、ゴルバチョフがわかってくれたからだという発言がございました。もちろんそれまでにブレジネフ、アンドロポフ、そしてもう一人チェルネンコ、この三人の書記長の方々ともいろいろ折衝したが、ゴルバチョフさんのときに話が決まったんだから、粘り強い我々の交渉が奏功したとも言えるし、ゴルバチョフ書記長にはそれを受け入れる体質があったんではなかろうか、こういう評価をしておりますから、これは私も非常に大切な評価だと、かように思っております。  これに対しまして、ソ連国内ではどうかという問題もちょいちょい耳にいたしております。ということは、グラスノスチは情報公開である、情報公開し過ぎるがために少数民族のいろんな問題が起こっておるという人もありますし、あるいはペレストロイカ、これは世直しでございますが、したがいましてこの双方がソ連国内において今日実施されておるということが非常に大きな、ダイナミックな政策の転換だと、こういうふうに我々といたしましては期待をしておるわけです。そうしたことが言うならば東西の対決をひとつ対話に持っていってほしいものだ、こういうふうに考えておりますが、そうした政策に対しましても内外にさまざまな憶測もあるということも隠し切れないことではないだろうか。しかし日本といたしましてはやはり話のしやすい隣国であってほしいと、常にこのように考えております。
  10. 中村哲

    中村哲君 本論に入りたいと思うんですが、これもまた一言したいと思いますのは、プリマコフさんですね。日本のことを非常によく知っておられまして、そしてゴルバチョフさんのアドバイザーのように新聞もこのごろ書くようになっております。  このプリマコフさんというのは極東研究所の所長でありまして、私どもの大学がかなり前からソ連との交流をするときの相手がプリマコフさんでありまして、そのプリマコフさんという人は、ソビエトというかロシアでも南の方の人で、それで日本文化に対する普通の外国人とも違う非常に繊細な感覚で日本文化を知っておられましてね。いつか鎌倉に行ったときに、そこに小川芋銭展覧会をやっていたんです。そうしたら、日本にこんないいものがあるのかと言っておられてね。芋銭の絵というのは水墨の、土浦の平たんな水田の上に、かくものがないものだから、上にキツネの嫁入りなんかかいている。ああいうものを非常に評価していた、普通浮世絵とかなんとかいうだけじゃなくて。そういう人ですからね。  それで、松本重治さんがプリマコフさんと交渉を持たれて、国際文化会館に早くから宿舎をほかの国とも違って設けるようになっておりました。こういう人がアジアの問題、日本の問題を直接に発言しているんだということは、やっぱり日本にとっては明るいと思っているんです。  さて本論なんですが、この原子力協定は、直接にはアメリカ国内で核不拡散法が成立し、これは昭和五十三年ですが、それ以後、説明によりましても五十七年以降、現在の日米原子力協定を改定していく必要があって、それが一挙に昭和六十二年にさきの外務大臣であった倉成さんがマンスフィールドさんと協定を結ばれた、こうなっております。  これは、たしかインドプルトニウムから本来の濃縮ウランとはまた別な強力な核爆発に成功したということ、そういうことに関連して、日本でもプルトニウムがどういうふうに科学的に研究され、それから独自の発展があって、そしてアメリカの心配するような原子力拡散ということになるかというこれを国会で議論した話がきっかけのように思いますんですが、これは外相じゃなくてむしろ関係の方にお聞きします。
  11. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今中村先生のお尋ねは、アメリカ議会ということでよろしゅうございますか。
  12. 中村哲

    中村哲君 そうです。
  13. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今先生指摘のとおり、日米原子力協定の新しい協定が調印されましたのは去年の十一月の四日でございますが、その直後、十一月九日にアメリカ政府アメリカ議会日米原子力協定を上程したわけでございます。アメリカの法制によりますと、こういったような原子力協定というのは九十日議会日アメリカ上下両院に付託されておいて、特に反対決議がなければ自動的に承認される、こういうふうな仕組みになっております。  そこで、十一月九日に上程をされたわけでございますけれども、その後賛否両論アメリカ議会にございまして、まず賛成論の方は、やはり先生指摘のようなアメリカで一九七〇年代の半ば以降非常に強くなってきております核不拡散の動き、こういったものを十分に満たしたものである、他方日本アメリカ原子力協力活動というものを非常にしっかりした基礎に置く、こういうふうなところから賛成論反対論の方は、実は二つ大きな反対論というか二つの種類の反対論がございまして、一つはやはりプルトニウム商業利用、こういったようなものを包括同意のもとに置くのは核不拡散上問題である、こういうのが一つ反対論でございます。もう一つ反対論というのは、これはイギリスなりフランスで再処理を頼んでありますプルトニウム飛行機で返ってくる、その航空輸送安全性の問題、これは環境への影響も含めましての安全性の問題、こういうことからの反対で、賛否両論が非常に闘わされたわけでございます。  アメリカ行政府の御努力、それからあるいはマンスフィールド大使自身も直接に書簡等をお書きになったと承知しておりますけれども、そういうようなことで去る三月二十一日に、これは上院の方でございますが、本会議でこの協定承認すべきでないという、つまり不承認決議案が三十対五十三で否決された。ということは、逆に言いますと承認すべし、こういう意向があらわれてきているわけでございますが、この上院決議の以降、反対派考え方というのは非常に弱くなってまいりまして、結果といたしまして、四月の二十五日でございますけれども上下両院でさっき申し上げましたように自動的に承認された、こういう状況でございます。
  14. 中村哲

    中村哲君 核の不拡散ということをアメリカで問題とする場合、日本プルトニウムあるいは濃厚ウラン輸送されてくる、殊に濃厚ウランはこれは原子力関係基本のものでしょうけれどもプルトニウムという方は一種の使用済みのものですよね、使用済みのものだけれども、それをインドの場合はその中から非常に強力な原爆的なものになるような技術的な研究と実際の実行が行われたということ、それを特に心配してということになりますと、日本プルトニウムというものはまあウラン廃棄物の中の再生産したものであるとはいいながら、プルトニウムが科学的に今後どういうふうに強力なものになるかわからない。そういうことを非常に心配して、日本が場合によってはプルトニウムの中から、平和産業というけれども軍事産業に変わってくるんじゃないか、そういう論議があるんじゃないんですかね。どなたでもいいですけれども
  15. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先ほど御説明申し上げましたアメリカ反対論の中の一つ反対論プルトニウム商業利用でございます。  プルトニウムというのは、先生指摘のように、使用済み燃料を化学的に再処理いたしまして出てくるプルトニウム、これは核爆発に使用され得る、こういうことで、これは日本ばかりではなくて世界的にプルトニウム商業利用というのは問題があるというのが要するにアメリカ反対派一つ意見で、別に日本に、何と申しましょうか、ターゲッティングされているようなことでなくて、核不拡散という一般的な観点からの反対論であったわけでございます。
  16. 中村哲

    中村哲君 原子力問題が日本で論議されましたときに、核の問題が論議されたときに、核拡散というものを非常に心配するという声があったのは、過大国のソビエトとかアメリカ等がコントロールするような段階ならともかくも、発展途上国の中に全部それが広がってきて、そして何が起こるかわからないというようなことがある、それに対する心配が核不拡散の問題として出ていたように思うんですが、それについてはどうですか。
  17. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、特定な国ではなくて、プルトニウムあるいは高濃縮ウランというものが、これは核兵器になり得るものでございますから、転用可能なものでございますから、そういったようなものが世界的に広がるということはやはり危険性が出てくるということで、したがいまして、ちょっと繰り返しになりますけれども、この国というのではなくて、やはりそういったような核兵器転用可能な物質はしっかりした管理下、これはアメリカもそうでございますし、私どももそうでございますけれどもソ連もそうですが、NPTという体制のもとにきちっとそれが置かれるべきである、こういうふうな考え方でございます。
  18. 中村哲

    中村哲君 そのことは、戦後の初期には予想もしなかったような、今のような中近東のああいう対立なんかが起こっているし、アフリカ諸国も次々に独立してきて、そして独自の技術やなんかを持ち得る可能性がある。そういう中での拡散、不拡散ということは確かに問題だと思うんですけれども、そういうことからいえば日本にはある程度の信頼があるというのか、条約上の拘束もあるのでということで日本は緩和しよう、こうなったんでしょうね。どうなんですか。
  19. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) おっしゃるとおりでございまして、最初の日米原子力交渉のときには、あわや日本インド並みに考えられたということがありました。  ということは、そのときに、今の首相のお母さんのガンジーさんのときに、かんがいを何かつくるんだというふうなことでドカンとやられた、それが実験だった。したがって日本も危ないぞという意見があったんですが、その以前に二十年かかりまして再処理工場というのをつくっておきました。その再処理工場の大きさは、ちょうど国会の大きさだとお考え賜ればいいわけですが、二十年間アメリカの使途に基づいて日本原子力平和利用のみをこいねがって、そして再処理、これによって日本核燃料サイクルの確立、これをもってやってきたんだ、だからここまでタックスペアが懸命になってつくったものを一挙にして葬り去るんですか、ほかの国にはそういうものはございませんよということで、一応日米原子力交渉というものが成立したわけでございます。  我が国はもちろん非核三原則もございますし、さらには原子力基本法には平和利用のみしかできないと書いておりますし、さらには核拡散防止条約、これに入っております。この間私、ガンジー首相と出会ったんですが、インドはまだ入っておりません。そういうふうなこともございますから、やはり我が国に対するいろんな核の平和利用というものに対する国際的な信用、特にIAEAという国際機関日本プルトニウムを初め核物質の点検をいつもいたしておりますが、恐らく世界的な一番の模範生ではないか、こういうふうに言われておるというふうなことがいろいろアメリカ議会におきましても議論がございましたが、最終的に政府が、日本は信頼すべき国家である、そういうことをやはり議会も認めてくれたということが先ほど政府委員から御説明申し上げたような経緯なのでございます。
  20. 中村哲

    中村哲君 済んだことを蒸し返すわけでは全然ないんですが、この委員会でも中国侵略云々というような問題が問題になったことがありますが、ああいう発言は、我々と学校が大体同じごろの大臣発言したものですから、人ごとであるけれども同時に人ごとじゃないような気持ちが私にはありまして、そして新聞の伝えるところによると、ライシャワーさんの日本論を引いてあったようですが、ライシャワーさんの日本論という、ついでに書いてあったのが、要するに日本のような発展途上国というか、未開発国というか、近代化されていないところが急速に発展してきたというようなことで、図らずも、つまりあの中国との戦争なんかをした段階中近東のトラブルやなんかに近いようにライシャワーさんは見ているんじゃないか。その時代に育った我々が、そのときのことを、感情を信念のようにして言うとこれ大間違いなんだということを非常に感じたのであります。それはそんな程度のことですが。  それから、今外務省の方から発言されましたプルトニウム輸送の問題ですね。これは従来は船で、今度は船でやらないで飛行機でするけれども、そのコースについて、アメリカは自分の領土の上で、アラスカを通過するのは問題だと言って、海の上を通って三沢へというような話になってきて、何かすべてアメリカの都合で言われていて、日本三沢でも陸地の上空を通るわけですしね。飛行機と船というのは、それは船の方が長期に、しかもこっちの方はヨーロッパとは違うけれども、軍事的な意味では非常に危険な要素があって、ソビエトアメリカ対立はむしろ太平洋、それから日本の近海の方に実際は移っているように言われている。そういうことと関係があるんですか。
  21. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) プルトニウム輸送の方法でございますけれども、これは日米原子力協定に関します限り、今まで一回輸送が行われた経緯があるわけでございます。これは船でございます。四年前でございます。  それから、日米原子力協定以外の、つまり、例えば日本研究用プルトニウムを買うとかいって購入したような場合、それは船の場合と飛行機の場合、両方今までもございました。  そこで、新しい協定のもとでどうなっておるかということでございますけれども、やはりプルトニウムが盗まれたりあるいはいわゆる核ジャックをされないようにするためには、輸送期間が短い方ができればいいだろう、そうなりますと飛行機の方がいいんじゃないか。もしそういうことで飛行機であり、例えば北極圏を通るようなコースであれば、実はこの協定のもとの包括同意の対象になる、こういうことでございます。したがいまして、船という可能性はないわけではないわけで、船の場合でしたらこれは個別の許可の対象になるということでございます。  飛行機につきましては、協定自身はもう北極圏であるということしか書いてないわけでございまして、あと北極圏を通るどういうルート、北極圏と申しましてもたくさんルートがあるものでございますから、どういうルートを通るのか、無着陸で来るのかあるいは着陸で来るのか、こういった問題につきましては実施段階の検討といいますか、決定にゆだねられておるわけでございます。
  22. 中村哲

    中村哲君 プルトニウム及び本当の廃棄物プルトニウムというのは廃棄物の中から再生産する。科学技術の今後の発達によってはかなり強力なものができる可能性は持っているわけで、非常に未確定要素がまさにあって、サミュエルソンじゃないけれども、未確定要素というのはどうなるかわからない今後の不確定な要素のことを言っているんで、プルトニウムそのものにもかなり科学の見通しからいうといろいろな要素を持っているんじゃないかと思うんです。  その問題と、それからもう一つは全くの廃棄物ですね、全くの廃棄物の問題がある。プルトニウムの方は確かに問題が僕はあるんだろうと思うんですね。いずれもアメリカが、何というか一応は使い済みの廃品を日本へこうやって渡すわけですが、日本アメリカの廃品業者ではないと思うんですが、何かちょっとそこいら廃品だけのことの管理についてアメリカ国会の中で議論されているようにも見えるものですから、やっぱり日本は政治においても外交においてももう少し日本の独自性があっていいように私は思うんです。別に御意見お聞きするわけじゃないんですが。
  23. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 中村哲君、時間でございますので。
  24. 矢田部理

    ○矢田部理君 先ほどの議論でもございましたが、この原子力協定に対してアメリカ側の批判的な意見反対意見も含めて幾つか紹介をいただきました。一つは確かに商業用プルトニウムを三十年の長さにわたってケース・バイ・ケースではなく、包括的同意を与えるということについての懸念、それからアラスカを中心とする上空通過の安全性に対する疑問、あわせて先ほどもお話がありましたように、日本プルトニウムが大量に蓄積をされるということになると核武装の可能性ということも一つ問題としてあったかと思うんです。  もともとCIA報告などを読みますと、日本は近い将来核武装する力はもちろん、現実的可能性があるという指摘どもあるわけでありまして、その辺この協定八条でも平和目的に限って軍事利用はしないということも明確になっているわけでありますが、やっぱり外務大臣としてこの三十年間はもとよりのこと、日本基本政策として、日本は核武装をしない、平和利用に限定するということを内外に明らかにすることは極めて重要かと思われますが、外務大臣いかがでしょうか。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) たまたまこの原子力協定の第一回目のとき私が科技庁長官で、その責任者であったわけでございますが、そのときにもアメリカを初め関係諸国に宣明いたしました。そのことは本日も全く変わりございません。  と申し上げますと、我が国原子力平和利用のみを許された国家である。したがって、原子力に関しましても自主、民主、公開という三原則をもって原子力基本法は成り立っておる。同時にまた非核三原則という問題もある。 同時にまた憲法におけるところの戦争放棄条項もある。そうしたあらゆる面から見て、我々がこの核物質というものを物騒な方向に用いることは絶対あり得ない。そのためには常にいつ何どきでも国際機関の査察を受けることありということで、先ほども中村委員に申し上げましたように、常に国際機関のIAEAの査察を受けておりますが、いわゆる収支というものが記帳されておるわけでございますけれども、非常にこの点におきましてはきちょうめんで、しかも優等生だということが常に言われておるわけでございます。  したがいまして、今申し上げましたような原子力政策に関しましては、確固不動の政策をもって今後も臨んでいかなければならぬ。いやしくも私たちが核をつくり核を持つ国家ではないと。これは同時に持ち込まさない国家であると同様に、つくりまた持つような国家ではないと。このことだけはこうした機会にさらに一段と声を大きくして申し上げておきたいと思います。
  26. 矢田部理

    ○矢田部理君 次に伺いたいと思いますのは、原子力発電の位置づけでございますが、スリーマイル島の事故やチェルノブイリの事故などを契機にして、それ以前からも底流としてはずっとあったわけでありますが、各国とも原発そのものを見直そうというような動きが一つの少なくとも流れになっているように思います。  ついせんだってのイタリアの国民投票では、原発を持たない、反対ということが多数の意見でありました。さらにスウェーデンでは国民投票をした結果、二〇一〇年にはこれを取りやめると、チェルノブイリの事故がありましたからもっとこれを早めようという気にもなっておりますし、それからオーストリアは一基つくりましたが、国民投票で反対をされて事実上稼働をしないというようなことなどを含めて、チェルノブイリの事故の影響が極めて深刻であるというようなことも重要な理由になって、さらにこの動きは広がろうとしているわけでありますが、外務大臣としてこの原発の位置づけについてはどんなふうにお考えでしょうか。
  27. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) チェルノブイリにおけるところの原発事故は一つの大きな問題として認識をしておく必要があると思います。ただ、我が国の原子炉とは型式が違うよということは言えます。しかしながら、やはり原子力平和利用といえども十二分にこれは安全を期さなければならないということは一つの教訓であろうと、私はかように考えております。  我が国は本当に資源小国でございます。アメリカは自分の国の油田にはふたをして安全を常に保っておるというふうなことも言われておりますし、我が国におきましては唯一頼っておりました石炭も今のような状態で、なかなか思うように我が国のエネルギーの大宗をなしてくれるという時代ははるか昔のことだと言われるようになってしまいましたし、また石油に関しましてもやはり遠いところから運んでこなければならない。こういうふうなことを考えますと、広い意味の安全保障ということにおきましては、食糧と同様に、エネルギーも我が国の国民生活を守る上の安全保障が常に確立されておらなければならぬと、こういうふうに私は思います。そう思いますと、やはり石油にかわるべき代替エネルギーとしてみずからの努力と英知と、それによりましてやはりかわるべきエネルギーをみずから持っておるということも必要でございましょう。それが原子力平和利用という一つの位置づけではなかろうかと、かように私は考えております。  そして、既に先ほど申し上げましたような基本法のもとにその開発を急いでまいりまして、現在では大体三割満たしておると申し上げてもいいのではないかと思いますが、総発電量の三割を私たちは原子力によって賄っておるということは言い得ますし、さらにはまた再処理工場というものを動かすことにおいて、使用済み核燃料の再処理によってプルトニウムを得て、そこから新しいエネルギーを得ることにおいて国民生活を常に問題がないようにしておきたい、こういうふうなことでございますから、今私たちが考えておるのは核燃料サイクルの確立ということでございます。そうした点から考えましても、開発、安全の保障、そうしたことも私たちは同時に並行して努力をしていかなければならない、それが我が国におけるところの原子力政策であると、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  28. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は外務大臣のお考えと内容を少しく異にします。  このチェルノブイリの影響というのは確かに型式が違うという説明がなされておるわけでありますが、やはり原子力発電の本質的に持っている危険性ということを人類に教えた大変非常に貴重な教訓なわけでありまして、ここからやっぱりもう少し多くのものを学ぶ必要があるということが一つ。  それから、かねてから言われていることでありますが、放射性廃棄物処理についてもいまだに有効な方法が発見できないというようなことをあわせ考えますと、原発に依存するエネルギー政策は本格的に見直す必要がある、再検討をする重要な時期であるというふうに私は考えておりますので、その点を申し添えておきたいと思います。  同時に、今大臣指摘をされた核燃料サイクルの問題で、再処理工場の問題です。確かに東海村に再処理工場がありますが、これは言うならばパイロットプラントでありまして、稼働をさせましたが随分しょっちゅう事故を起こしている、私の地元でありますが。したがって、当初予定をした所期の目的はかなり低いレベルでしか達成できないというか、プルトニウムの再生産ができないということも事実なのでありまして、その上に、国際的に見ますれば、アメリカはもう再処理使用済み核燃料を使うというやり方を中止しているわけですね。イギリスの再処理工場もいろんな事故を起こすなどしてアイルランド政府から中止の申し入れがあるというようなことで、再処理そのものがまだ本格的に、技術的にも安全性の面から見ても確立されておらないという状況下でありますが、そういう中で、青森県六ケ所村に商業用の再処理工場をつくるというような動きもあるんですが、これはどうなっているのか。  つけ加えて申し上げますならば、再処理をしたプルトニウムの利用でありますが、本来ならば高速増殖炉でこれを使うということが基本の目標としてあったわけでありますが、どうもこの増殖炉も国際的に見て成功していない。フランスも、これも指摘されていることでありますが、スーパーフェニックスが失敗をして次の凍結をされる。二番目の、西ドイツを中心とするその計画も取りやめというような状況になってきておるということから考えますと、原発そのものの持っている問題性とあわせて、再処理技術なりそこから生み出されたプルトニウムの利用なりについて、依然として技術の関係が極めて不十分である、問題が余りにも多過ぎるというふうに受けとめているのですが、外務大臣としてはいかがでしょうか。
  29. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 三点ばかりの御指摘かと思います。  一つは、再処理技術というのは未確立ではないかということであります。それからもう一つは、そういう状況で六ケ所村に再処理工場をつくろうとしているが、その現状はいかがか。もう一 つは、プルトニウムを利用する本命であるFBR、これについての開発が思うとおりにいっていないんではないか、こういう三点かと思います。  それで、まず再処理技術についてでございますけれども、確かに先生指摘のとおり、動燃事業団が東海村で再処理工場を運転を始めまして、幾つかのトラブルを経験したことは事実でございます。それも私どもといたしましては、やはりそういう幾つかのトラブルを経験しながら日本の自前の技術でそういうものを修理し、やっと私どもそういうものについてはかなりできるという自信を持ったということをまず申し上げたいと思います。  それから、世界的にはどうなっているかということでございますけれども、既にイギリスとかフランス等で二十年以上の再処理の実績があるわけでございます。確かに何度かのトラブルというものはあったと思います。しかし、これも同じくやはり逐次改良が続けられて商業工場として運転を続けているという状況でございます。さらに、そういった実績を踏まえまして、イギリス、フランスにおいてもさらに大きな新しい工場の建設が今進んでおります。それで、フランスにおきましては一九八九年でございますかに運転開始、イギリスにおいては一九九二年に運転開始、そういうスケジュールで大きな再処理工場を今建設している段階でございます。また、西ドイツにおいても新しい工場をつくるという格好で建設が進められておる、そういう状況があるのでございます。それが再処理の現状でございます。  それで、次に六ケ所村でございますけれども日本といたしましては、これは電力会社が中心になりまして日本原燃サービスという会社をつくりました。そこで、青森県六ケ所村におきまして、規模といたしまして年間八百トンという規模の再処理工場をつくるという形で現在計画を進めてございます。予定としては一九九〇年代の半ばごろになりますかに、その運転を開始するという形で進めております。そこにつきましても、やはり最新の技術を取り入れる。もちろん最新と同時にリライアブルな技術と申しますか、そういうことも重要でございまして、そういう意味ではフランスから基本工程を購入する、あるいは動燃事業団の経験をそういうところに入れていくという形で日本独自の、フランスの技術にさらにそういう日本の動燃の技術も含めまして最新のリライアブルな工場を建設しようという形で今進めておる次第でございます。  それから次に、FBR、確かにプルトニウムは取り出しまして有効利用する、そのやはり本命は高速増殖炉、これで利用することが最もプルトニウムの利用効率が高いわけでございます。そのためにいろいろなさまざまな研究が進められているわけでございます。確かに、日本はどちらかといいますとフランスあるいはイギリスあるいはドイツあるいはソ連と比べまして少しペースはおくれております。  ただ、日本といたしましてはやはり自前の技術でやろうということで、まず高速炉の臨界実験装置で炉物理の勉強をいたしまして、それからさらに実験炉をつくりまして工学的な勉強をやっていく。それからさらに、現在「もんじゅ」と申しまして原型炉を今建設しております。これは電気出力で二十八万キロワットでございまして、それを昭和六十七年に臨界に達するという計画でやってございます。それでその次に、私どもとしてはそういった「もんじゅ」の経験を踏まえて、さらにそれから複数基の実証炉をつくりまして、そういうことによって大体二〇二〇年から二〇三〇年ごろに今の軽水炉と匹敵するような、コマーシャライズできる高速増殖炉を開発しよう、こういう計画を今持っておる次第でございます。  なお、フランス、イギリス等につきましては、確かにフランスはスーパーフェニックスにトラブルが発生いたしまして現在まだとまっておるのは事実でございます。実は、フランス、ヨーロッパ連合でフランスかドイツかでその次のさらに大型の商業炉をつくろうという計画がございましたけれども、それにつきましては一応今ペンディングにいたしまして、さらに五年間ヨーロッパ連合でもう一回その設計をやろうじゃないか、こういうふうになってございます。  しかし、いずれにしろ慎重に進めるという点は同じでございまして、やはり将来は高速増殖炉を実用化するということの同じ目標で着実に鋭意努力しているものというふうに理解しているわけでございます。
  30. 矢田部理

    ○矢田部理君 きょうはそのことが必ずしも本論ではありませんが、あなたが言われるように、原子力関連のあれこれの施設や研究はそれほどバラ色ではありませんで、かなり状況はむしろ私は厳しいと。現にアメリカ自身がもう再処理方式を中止しているということでしょう。これは、アメリカの中止の理由は何でしょうか。
  31. 松井隆

    政府委員(松井隆君) アメリカの再処理の中止につきましては、実は大分古い話でございまして、これは先ほど宇野外務大臣からおっしゃいました例の日米協定の問題が出たときでございます、昭和五十二年でございますけれども。  カーター政権になりましてから、アメリカとしては再処理政策をやめようという政策を出してございます。そういうときの話でございまして、その辺はやはりアメリカの置かれた事情、つまりエネルギー資源が豊富であるとか、あるいは再処理をすると核拡散につながるといったようなおそれとか、そういったいろいろなアメリカ国内事情があったと思います。そういう事情でやったやつでございまして、再処理路線につきましては、やはり資源の乏しい我が国とかあるいはヨーロッパ諸国、これはやっぱり再処理路線をとっているという次第でございます。
  32. 矢田部理

    ○矢田部理君 資源が豊富か乏しいかということだけでこれを説明するわけにはいかぬのですね。今資源の面から見れば濃縮ウランは、日本にはありませんが、国際的にはむしろ供給過剰ということにもなっているわけでありまして、むしろアメリカの取りやめた理由は、一つ安全性の確立が技術的になかなか難しいということであり、もう一つコストの議論を後の議論でしたいと思いますが、やっぱり割高だというふうなことも含めて取りやめたというふうに私は聞いておるのでありまして、いずれにいたしましても、再処理技術あるいはまたその後のプルトニウムの利用ということがまだまだ未確立なのでありまして、その点でも原発政策は見直しをし、別なエネルギー政策を私たちは確立すべきだというふうに考えておるわけでありますが、総論的な議論はその程度にいたしまして、本協定にちなんだ各論に少しく入っていきたいと思います。  一つは、先ほども出ておりましたが、空輸の問題です。これは飛行ルートはどうなっているんでしょうか。アメリカの中でアラスカが非常に地域的には反対ののろしを上げました。州の知事や出身の議員が反対の急先鋒に立ったわけでありますが、これはアラスカの新聞などを見ますと、銀座のネオンをアンカレジの危険でともらすわけにはいかない、死の空輸だというような厳しい指摘もあるのでありまして、その点でアメリカ議会の自然承認に当たっては、最終的にはアラスカの上空を飛ばない、北極回りで直行で日本に持ってくるというようなことでおさまったというか、話が動いたということで自然承認になったとも聞いておるわけでありますが、その辺の経過とコースについてはどんなふうになっているのでしょうか。
  33. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私の方からまず最初に、協定面と今先生御質問のアメリカ議会等々での動きを御説明申し上げたいと思います。  まず協定の方でございますけれども協定の方は……
  34. 矢田部理

    ○矢田部理君 協定はわかっていますからいいです。
  35. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) はい。  それじゃアメリカ議会の方でございますけれども、確かに先生指摘のようなアラスカ州を中心としますアラスカ上空を飛ぶとか、あるいはアラスカで給油をするために一時着陸する等々についての反対の動きがあったのは事実でございます。  そういうこともあってアメリカの方から、自分たちも検討してみたところ、どうもヨーロッパ、つまりフランスあるいはイギリスから日本に直行でもって飛んでこれる、ノンストップで飛んでこれる飛行機可能性があるのではないか。もしそういうことであるならば、ぜひ英、仏を出て北極圏を通ってノンストップで飛んでくる可能性というものを第一の優先、ファーストプライオリティーとして日本で検討してくれないかと、こういうふうな申し出があったわけでございます。  それに対しまして、日本としましても、どうも私、これは科技庁の方からの答弁の方がいいかと思いますけれども、今のところまだ日本のそういう飛行機は現実にないわけで、したがいまして、もしそういう飛行機可能性が技術的に確認されるならば、それを日本としても優先順位として考えていこうと、こういうふうな話し合いが行われているわけでございます。  これちょっと蛇足になるかもわかりませんけれども、今のそういった話し合いというのは、協定交渉あるいは協定の外側というか、実施でございまして、協定とは直接関係なしの分野での話でございまして、今まだそういった話し合いが行われているところでございます。
  36. 矢田部理

    ○矢田部理君 協定本文には直接的ではないかもしれませんが、やはりこの協定を認めるかどうかということに関連した議論としては非常に大事な部分でありまして、アラスカなりカナダの上空は飛ばない、そこは中継基地としても利用しない、直行便で持ってくるということが一つの動きになって全体がおさまったという経過もあるようですが、問題は肝心の飛行機がいまだ開発をされていない。聞くところによれば、ボーイング社の747—400というあたりが一応検討の課題にはなっているようですが、この開発の可能性は近い将来あるんでしょうか。それから、それ以外に機種として考えられるものがあるんでしょうか。
  37. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) ヨーロッパから我が国までノンストップで飛行が可能と考えられる航空機でございますけれども、現時点におきましては、現在ボーイング社で製造を進めておりまして来年には一番機が就航するであろうと言われておりますボーイング747—400の貨客型、コンビと言われるものでございますが、これがございます。あるいは同社でまだ開発をするかどうか検討しておるわけですが、この747—400の貨物型、フレーターというものがございます。こういうものが想定されるわけでございますが、実際にプルトニウム航空輸送に用いる飛行機の機種はまだ確定いたしておりません。
  38. 矢田部理

    ○矢田部理君 それじゃ次の問題に移りますが、同時に、空輸については監視と護衛の問題が協定ないしは取極の中で出てまいりますが、取極の附属書五によりますと、武装した警官でしたか要員でしたかの同乗ということになっているんですが、これはどんなことを考えているんでしょうか。「武装護衛者が同行」という言葉がある。
  39. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 武装護衛者の点でございますけれども、これはヨーロッパから日本に運んでまいります場合、今一番想定されますのは日本の民間航空機、こういうことでございますが、その場合には武装した警官、日本の警官でございます、日本の警官ということを想定いたしております。
  40. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは何のために同乗するんですか。
  41. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) この武装護衛者の同乗という背景には、これは実はプルトニウムに対します核物質の防護、核物質をハイジャックされたりあるいは不法にいろんな問題を起こしたりする、それを核物質を防護、守ると、こういうことが主眼でございまして、それじゃ先生の御指摘のように武装護衛は一体何をするんだろうかと、こういう点でございますけれども、もし英、仏から日本に仮にノンストップで返ってくるということを想定いたしました場合、その輸送計画には附属書五にあるような非常にいろんな条件がございますけれども、この要件が満たされることが肝要であって、必要であって、したがいまして実のところ、ハイジャックというか核ジャック可能性等々、つまり武装護衛者が出動というか、現実に必要となってくるような場合というのは必ずしもなかなか想定されないのでございます。  一つ私が考えられますのは、飛行機が不時着陸あるいは緊急着陸——緊急着陸の場合にはあらかじめ緊急着陸港を想定してございますから、こことの緊急計画の発動によって対処できると思うのでございますけれども、仮に不時着陸というようなことも可能性としてはあり得るわけで、不時着陸のような場合が起こるとして、そういった場合にももちろん附属書にあります緊急時計画、それが発動されるまでのいわゆる、時間的に私は余り長くないと思いますけれども、そういったような期間においてプルトニウムを防護するというか、防護するための目的が武装護衛者の同乗であると、こういうふうに理解いたしております。
  42. 矢田部理

    ○矢田部理君 今説明にもありましたように、飛行機がハイジャックされるということになると、中に警官が警棒を持っていたって大して役に立たないんじゃないかという印象が強いんで、このところどう読んだらいいのかというのが一つあるんですが、これはあれですか、日本の自衛隊なりアメリカの空軍なりが外側から、何といいますか、防衛するというか、護衛するというか、そういう可能性はあり得るんでしょうか。
  43. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 飛行機にいたしましたのは、先ほど申し上げましたように、時間を短くして核ジャック可能性を減らす、こういうことが主眼でございまして、この空輸につきましては護衛機による何というんでしょうか、護衛と申しますか、それは想定いたしておりません。もちろんこの協定上それはしちゃいかぬとはこれ書いてございませんので、その点は白紙でございますけれども、実態的にはそれは想定いたしておりません。
  44. 矢田部理

    ○矢田部理君 といいますのは、四、五年前に海上輸送をしたときに、フランスの領海はフランスの海軍が護衛して見送る。そしてアメリカは軍事衛星を使って常時監視体制をしく、米海軍が出動してこれを護衛する。日本は自衛隊出動というわけにもいかぬので海上保安庁が大挙してこれを出迎える。物々しい護衛というか、警戒の中で日本に持ってきたわけですね。そういう事情から考えますと、航空機の護衛ということになれば、中に武装警官が乗っていたからといって率直に言うと大した役に立たないのでありまして、可能性としてはむしろアメリカ空軍などの護衛ということが考えられることになりはしないのか。  もう一つの根拠としては、石橋忠雄さんという弁護士がアメリカにこの問題について調査に行った、国防総省に行っていろいろ事情を聞いてきた報告があるんですが、それを読みますと、これは当然のことながら国防総省は米軍が監視、護衛に当たるという説明をしているそうですが、そこら辺もあわせ考えると、協定上排除していないというだけではなしに、やっぱり可能性として相当考えられるのではないかと思うのですが、いかがですか。
  45. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) この交渉の過程も若干御説明申し上げたら背景になろうかと思いますけれども、前回の先生指摘の四年前のケースで、アメリカ海軍なりフランス海軍が護衛してきたわけでございます。それは四十日ぐらいかかったわけで、そういったことを踏まえまして、新しい協定交渉いたしますときに、やはり輸送期間を短くすべきだと、短くするのにはやはり飛行機が恐らく一番いいんではないかと、こういうことで空輸というのが包括同意の対象になったわけでございます。  それと同時にここの附属書五にありますような位置の確認であるとか、緊急時の体制であるとか、そういったことを輸送計画に盛り込むべきである云々と、こういうことでもって、これを守れば護衛なしで、つまり護衛機なしで英仏から日本に運んでこれるであろうと、こういうことの想定で、したがいまして理論的には排除されておりませんけれども交渉の過程においては護衛機の随伴と申しますか、護衛ということは全く議論になっておりませんし、それは想定されていないわけでございます。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 この輸送機は日本の民間機が一応予定されておるのかもしれませんが、アメリカ飛行機であってもいいわけですね。そういうことになった場合には、例えば同乗者、武装護衛者が同行するとか、あるいは飛行場において警察を含む関係当局の協力を得て、または他の武装要員を使って航空機への接近を制限するという規定は、この米軍の出動ないしは関与ということがあり得ると考えていいんでしょうか。
  47. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生の御質問の第二点の後者の方でございますけれども、もし出発飛行場あるいは途中の飛行場で飛行機を隔離するという点につきましては、これはどこの国の飛行機を使おうが、つまり必ずそうしなくちゃいけないということがこの附属書に書いてございます。 したがいまして、その点につきましては、飛行機の国籍に関係なしに適用されると、こういうことでございます。  実は、アメリカ機、米国機を使うことについて、あるいは米国機というか外国機と申し上げた方がいいと思いますけれども、使うことはもちろん協定上排除されていないのでございますし、もし外国機を使う場合に、外国機に乗ってくる武装護衛者が一体どういう種類の人といいますか、警官なのかあるいは民間人で武装している人もあり得るかと思いますし、あるいは軍人ということもあり得るかと思います。  これにつきましては、外国機を使うということが仮に話し合いの対象になったというときに、日本国内法もございましょうし、つまり日本国内でもってどういう人が、例えば武装でございますから、ここで想定されておりますのは小火器、けん銃等々の小火器でございますけれども、そういうものを日本国内法で持てるのかどうかという国内法の問題等々もございまして、これは外国機を使うということが検討対象になりましたときに、その関係国、つまりこれはその飛行機の国籍国、あるいはもし中間の着陸地があるとしますればそういった関係国との話し合いの結果によろうかと思います。
  48. 矢田部理

    ○矢田部理君 必ずしも明快な説明じゃないんですが、やはり米軍の出動、あるいは同乗というようなことを含めていろんな軍の影がかなりちらつく可能性をこの協定は持っているように思われるわけですが、もう一つ、オペレーションセンターをつくって常時監視体制をつくると、継続的監視を行うというふうになっているわけですが、これはどこにつくる予定ですか。
  49. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 航空機によるプルトニウム輸送を行います場合には、新しい日米原子力協定の実施取極附属書の五に従いまして、輸送の実施主体、これは当面動力炉・核燃料開発事業団がなると考えております。動燃事業団がオペレーションセンターを日本の中に設置いたしまして、輸送機の出発から到着まで航空機の位置であるとかその状況を監視していくということになると考えております。
  50. 矢田部理

    ○矢田部理君 その場合に、前の海上輸送の場合にアメリカの軍事衛星が使われたんですね、常時監視。そういう可能性がないのかどうか。  それから、これまた先ほど紹介した石橋弁護士の指摘でありますが、ペンタゴンの説明によると、そのオペレーションセンターの運営には米軍が関与するという説明をしているそうですが、その辺、米軍なりアメリカの軍事衛星の利用なりというようなことも可能性としてあり得るのかどうか。
  51. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 日本に置かれますオペレーションセンターとプルトニウム輸送機の間には必要な通信が確保されます。で、この通信のために通信衛星が使われる可能性はあるかと思っておりますが、軍事衛星ということは今考えておりません。  それから、日本に置かれる、動燃事業団が置きますオペレーションセンターでございますので、アメリカの軍の関与ということは今のところ考えておりません。
  52. 矢田部理

    ○矢田部理君 それから、次の質問ですが、現在の状況から言うと、日本原子力発電所が使用した使用済み核燃料をフランスに送って再処理をしてもらって、それを動燃が買い取って日本に空輸するということが一応想定をされているようですが、この量というんですか、どのぐらいの量のものを予定しているのか。それから運んでくる頻度といいますか、この中でどのぐらいの量を何回ぐらいに分けて運んでくるのかという、量的な問題あるいは回数の問題などを少し説明いただきたいと思います。
  53. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 我が国の電力会社がイギリスとフランスに再処理の契約をいたしております。その契約は、まだ全部使用済み燃料を送り出しておるわけではございませんので、これから送り出す使用済み燃料もございます。したがいまして、その使用済み燃料の燃焼度等によりまして回収されるプルトニウムの量も変わってまいります。そういう前提で現時点における見通しを申し上げますと、イギリス、フランスから日本に持ち帰ってくるべきプルトニウムの総量は、核分裂性のプルトニウムの量にいたしまして大体二十五トン程度と予定いたしております。  それから、このプルトニウムの持ち帰りの輸送でございますが、私どもとしましては一九九〇年代のなるべく早くから開始したいと思っております。  その輸送の頻度でございますけれども輸送につきましては現在輸送容器の開発を進めておるところでございます。この輸送容器の収納量がこれから決まってまいるということでございますし、先ほど申し上げましたように、使用いたします飛行機もまだ機種が確定いたしたわけではございません。そういうことで、飛行機への輸送容器の積みつけの個数といったこともこれからの問題でございます。したがいまして、一回にどの程度運べるかということも現段階では未定でございまして、今後どの程度の頻度で運ぶことになるかということについても現段階で一概に申し上げる状況にはございません。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 いろんな試算がなされており、それをもとにしてまたいろんな指摘もあるわけですが、ともかく九〇年代に三十トン説あるいはまた四十八トン説なんというのも指摘としてはあるし、大量のプルトニウムがいずれにしても空輸をされ、頻度としても二週間に一度ぐらい、年二十三、四回の割合で空輸が行われるということになると、かなりの頻度で飛行機が飛び交うということになるわけですね。  それから、これはどこまで根拠があるのかわかりませんが、先般ニューヨークタイムズに載った意見広告などを見ますと、三十年間にというからこれは協定を想定しているのかもしれませんが、四百トンのプルトニウム日本が入手する、これは米ソの持っている核兵器の総量の二倍分だ、アメリカの核は二万四千発で百トン余だからというようなショッキングな広告が載ったりして、プルトニウムで殺された国民がプルトニウムで生き残ろうとする政府を持つに至ったというタイトルで広告が出されるわけでありますが、いずれにしても、これはどこまでどうかということは私はわかりませんが、相当量のプルトニウムがやっぱり動く、日本の空も飛び交うということになると、ひとり心配なのはアラスカやカナダの人々だけでなしに、日本の国民自身この問題はやっぱり深刻に実は受けとめざるを得ないというふうに思うのです。  そこで、次の質問は受け入れ空港ですが、これはどんなふうになっておるでしょうか。
  55. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 科学技術庁としても受け入れ空港を幾つか決めるときの留意条件ということは考えてございますけれども、結論から申し上げますとまだ決まった段階ではなく白紙の状態でございます。  それで、科技庁といたしましては、先ほど申しましたとおり動燃事業団がまず当面輸送の実施主体になるということで、それを監督する立場もございますもので、まずやはり動燃事業団が検討する、そういうものをもとにして科技庁も検討して、それをまず関係省庁とも相談しなくちゃいけないという問題かと思っております。  それで科学技術庁といたしましては、一つはやはり幾つかの条件を留意しなくちゃいけないと考えておりまして、具体的には先ほど申しましたとおり、プルトニウムをできればノンストップで、例えば今決まっていませんけれども、ボーイング747—400と申し上げましたけれども、つまりそういうものがとまれる空港となるとやはり滑走路が三千メータークラスと申しますか、そういったものが一つ必要じゃないだろうか。それからもう一つは、やはり核物質の防護という視点からなるべく隔離できるような場所があり得るところが望ましいではないか。それからもう一つは、やはり管制と申しますか、そういったものがちゃんとできるような空港が望ましいというようなこと、そういったようなことを幾つか頭に留意条件としては持ってございますけれども、むしろこういうものはこれからどういう飛行機にするかとか、そういうものが決まりつつある段階で逐次実施計画という形でやっぱり検討してまいりたい、そういう意味ではまだ空港については白紙という状況でございます。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 この受け入れ空港は民間空港が一般的だろうと思うんですが、米軍の空軍基地あるいは自衛隊の航空基地なども排除されていないように思われるんですが、いかがでしょうか。
  57. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 米軍の施設、区域の利用につきましては、安保条約第六条及びそのもとの地位協定の規定がございます。この規定に合致すれば理論的には米軍施設、区域の利用の可能性は排除されないということでございます。ただし、私どもとして現在米軍の施設、区域をプルトニウム航空輸送のために使うということは全く検討していない、白紙状況でございます。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 自衛隊の航空基地はいかがでしょう。
  59. 村田直昭

    説明員(村田直昭君) ただいま御質問の件につきましては科学技術庁の方で検討をしておる段階で、まだ私どもその依頼等も受けておりませんので、現時点で申し上げることは検討の段階ではございませんけれども、自衛隊の基地についてそれを検討の際に排除するということについては必要ないと考えております。ただし、全く今検討していないということでございます。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 つまり、制度的には利用できないわけではないというのが一般論ですわね。
  61. 村田直昭

    説明員(村田直昭君) 検討の対象として排除されるものではないということでございます。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、民間基地だけではなくて、米軍基地あるいは自衛隊の航空基地なども制度的には対象になり得るわけですが、先ほど指摘をされた三千メートルクラスの滑走路、管制とか隔離とかという諸条件を備えた空港というのは民間それから軍関係の基地を含めて何カ所ぐらいあるでしょうか。
  63. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 現段階におきまして個々の飛行場が先ほどの条件に合うかどうかという評価をすることはまだちょっと時期が尚早だと思っておりますが、単純に三千メートルクラスの滑走路ということで国内に現在ございます飛行場を当たってみました。それで三千メートル若干欠けるものもございますけれども、大体教えてみますと十九カ所ぐらいございます。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 それを列挙してください。
  65. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) それでは南の方から申し上げますと、嘉手納、那覇、下地島、鹿児島、熊本、長崎、新田原、福岡、大阪、名古屋、岐阜、小松、横田、羽田、成田、松島、百里、三沢、千歳でございます。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで伺いたいのですが、当面考えている受け入れ先は東海村の動燃事業団ということですね。
  67. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) 当面の返還プルトニウムの加工地は動燃事業団の東海村の事業所でございますので、最終的には東海村へ持っていくことになります。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで私は心配するのですが、どこの自治体なり地域でも余り歓迎すべからざる飛行機あるいは受け入れ空港ということになるわけです。しかし、行き着く先が東海村だということになりますと、一つ三沢が有力だと言われておりますが、西の方の沖縄とかなんとかということにはまずならぬでしょう。どうしてもやっぱりこの東海村に近い空港、成田、羽田、横田などなどが有力候補地になる心配が非常に大きいのですが、それはいかがでしょうか。  特に、この北極ルートで来るということになりますと、北から回ってくるわけですし、受け入れ先が東海村ということになると、西の方の空港は論外ということになりそうなのですが、その辺はいかがでしょう。
  69. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 飛行場の位置によりましてどちらがいいということはまだ検討いたしておりません。ノンストップを考える場合も、北から南まで幅広く考えております。  それから、私今申し上げました十九個の飛行場は、これは今ある飛行場ということでございまして、これから整備される飛行場もございますので、既存のものに限定する必要もまたないと思っておりまして、幅広く考えていきたいと思っております。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 幅広くというのは既存のもので拡張可能なのがそれにつけ加えられるんですか。
  71. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 例えば、今後整備される飛行場……
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから具体的に何かありますか、ここ数年で整備される飛行場が。
  73. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) まだ具体的に検討いたしておりません。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 それからもう一点だけ関連して伺っておきたいのは、このプルトニウムの貯蔵施設ですね。これがあるのは東海村だけですか。
  75. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 現在フランス、イギリスから持ち帰ってまいりますプルトニウムは、高速増殖炉、新型転換炉といった原子炉に使っていく予定でございまして、このための燃料をつくります工場は今、東海村の動燃事業団の東海事業所しかございません。したがいまして、当面運び込みますプルトニウムは東海村に行くと考えております。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 貯蔵施設、それから加工工場の問題もあるわけですが、これは青森県の六ケ所村に加工工場の建設というようなことが言われた時期もあるんですが、具体的な計画はあるんでしょうか。
  77. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 六ケ所村にプルトニウムの燃料の加工工場をつくるという計画は今ないと承知しております。
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 とすればなおさらのこと、やっぱりどうしてもこの動燃事業団、東海村に最終的な焦点が移るということになれば、飛行場はまだ白紙だ、受け入れ空港はこれから検討だと。あるいはそうなのかもしれませんが、おのずから沖縄の嘉手納に持ってきてもまた面倒なんですね、陸送なり海上輸送なりをすることは考えられませんから、ずっと東海村周辺の飛行場というのが少なくとも有力候補になりはしないかという心配、懸念を持つんですが、いかがですか。
  79. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) このプルトニウム輸送国内着陸空港につきましては、今後関係者及び関係省庁で検討していくべき課題でございまして、現段階では未定、全くの白紙でございます。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 いずれにしても東海村が受け入れ先になると。そして、民間空港だけではなくて、米軍、自衛隊を問わず軍用空港もその対象になるということになると、どうもやっぱり私が大変心配するのは、横田とか百里とか成田、羽田というあたりが最有力候補になりはしないかというようなことになれば私どもとしても黙っているわけにはいかぬということで、その点は特に増し上げておきたいと思うのでありますが、時間の関係もありますから次の質問に移ります。  もう一つは、先ほども出ておりましたが、航空機事故をめぐる安全性といいますか問題点なのですが、先般の参議院の本会議でキャスク、輸送容器の安全性の問題や、あるいはまた航空機事故があって海中に落ちた場合の回収の可能性やらの議論がなされたのでありますが、北極回りで日本に来る、そして最終的に動燃に入るというコースを想定した場合に、しかもそれは地上を飛ばないということですから、原則として海上を飛ぶということになると、海の深さはどのぐらいになりますか。
  81. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) まだそこまで詳細に調査いたしておりません。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 余り詳細でなくてもいいんだがね。例えば日本海溝あるいはベーリング海、これは地図を見ればはっきりしているんです。いずれも三千メートル以上の深さを持つ、その上空を飛ぶということになるわけですね。  この間の本会議説明では、水深三千メートルまでは回収可能だが、それ以上は日本の手ではどうもというお話だった。回収の技術とか可能性というのはどの程度今進んでいるんでしょうか。
  83. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) ただいま御指摘プルトニウム輸送容器が深い海に沈んだ場合でございますが、あらゆる手だてを尽くしましてその回収を図りたいと考えております。  現在の我が国の技術におきましては、大体水深三千メートル程度までは回収可能であると考えております。この根拠でございますけれども、現在海洋科学技術センターが所有しております三千メートル級無人探査機、ドルフィン3Kと申しますが、これを用いまして輸送容器を回収できるのではないかと考えております。  三千メートルを超えた場合はどうなるのかということでございますが、その場合は関係国の協力を得るなどしてできるだけ回収を図ってまいりたいと思っております。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはいろんな議論をしなきゃならぬのですが、まず、その探索はあるいは三千メートルまで可能かもしらぬが、相当の重さのものを回収した実績はありますか。
  85. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 先ほど申し上げましたドルフィン3K、これは三千メートル程度までは回収可能だと思っております。  また、諸外国におきましては、三千メートルを超える同種の探査機、潜水機というものがございまして、例えばアメリカにはアルビンという四千メートル級、あるいはシークリフという六千メートル級といったものがございます。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 私が聞いているのは探索可能とということ、つまり捜すことはできるかもしらぬが、これももう一つ議論しますが、この間の飛行機事故にちなんでやりますが、実績は全然ないんじゃありませんか、回収の実績は。
  87. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 今御報告できるような実績は承知しておりませんが、ただ……
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 いいです、そこで。  それから、そういうものを捜す能力ですね。これは附属書の五のところに「個々の輸送コンテナーには、墜落の際に位置の特定を容易にするため、応答器又は発信器を装備する。」、こう書いてあるんですね。三千メートルあるいはそれ以上の深い海に沈んだものに発信器ないし応答器を開発して特定する、こういう技術もまだかなりおくれているし、進んでいないんじゃありませんか。
  89. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 万一プルトニウム輸送機が墜落した場合の捜索の問題でございます。  まず、日米原子力協定の実施取極の附属書の五におきましては、先ほども申し上げましたけれども、出発から到着まで継続的に飛行機の位置……
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと待ってください。私の質問に端的に答えてください。時間がないんです。  そういう発信器とか応答器とかというのは開発されているのか、現状はどうなっているのかを聞いている。
  91. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 御指摘の発信器、応答器でございますが、現在、動燃、動力炉・核燃料開発事業団におきまして、応答器または発信器につきまして、フライトレコーダーの基準を参考に、事故時の衝撃に十分耐えるようなものを調査、開発中でございます。  フライトレコーダーでございますけれども、その主要な基準といたしましては、例えば千百度の火災に三十分耐えるとか、海水、ジェット燃料中に四十八時間つけても大丈夫であるとか、水深六千メートルの水圧に耐えるとか、そういう基準が課されておるものでございます。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 基準はできたかもしらぬが、中身ができてないのが現実でしょう。現に、先般行方不明になった大韓航空機の捜査にしても、それから南ア航空の海中に没した状況にしても、いまだに不明、つかまえ切れないという程度のレベルじゃありませんか。水深だってそう深い状況じゃない。それが三千メートルもあるいはそれ以上もある深海に沈んだときに、引き揚げる技術はもとより、どこにあるかすら発見するのはなかなか容易ならざる状況というふうに私は見ざるを得ないのですが、どうですか。
  93. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 現在、動燃事業団において開発を進めておるところでございますが、これまでの調査、開発の結果といたしましては、大体見通しはあるというふうに聞いております。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 見通しはあると聞いておりますと言ったって、現にあの沈んだ大事な飛行機すら、その遺体すら収容できない、飛行機の場所すら発見できないというレベルなのであって、とてもそんなことが簡単にできるというふうには考えられません。これが第一点。  二番目には、キャスク、輸送容器ですね、これについても開発が必ずしも十分じゃないんじゃありませんか。アメリカのサンディア国立研究所に頼んで、動燃が依頼をしてやっているようですが、六十一年夏にはそれが失敗をして、いまだ完成を見ていないというように言われているのですが、これはどんなふうな状況ですか。
  95. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) プルトニウム輸送容器につきましては、やはり同じく動力炉・核燃料開発事業団におきまして、現在世界で最も厳しい基準でございますアメリカ原子力規制委員会プルトニウム航空輸送容器の基準、ニューレグ〇三六〇というものでございますが、これを満足することを目標に開発を進めております。  昭和五十九年度から開発を始めておりまして、これまで二回ほど実寸大の模擬輸送容器を用いた試験を、アメリカのサンディア国立研究所において実施いたしております。その結果、衝撃エネルギーの吸収機能等にかかわる数多くのデータ、知見が得られておりまして、これまでの開発の成果といたしましては、万一の航空機事故等においても、プルトニウムの収能健全性が維持され、環境安全を確保し得るような輸送容器の開発の見通しが得られたと考えております。
  96. 矢田部理

    ○矢田部理君 基準も少し低いんですよ、これはね。実験室内の衝撃試験で秒速百二十九メートルの速さでぶつけてその衝撃。この秒速百二十九メートルというのは、飛行機がフルスピードで走っている状況ではなくて、空港に着陸直前の上空の飛行速度ですよ。これじゃ物の役に立たないんでありまして、その点で言えば、アメリカ議会でマコウスキー法案というのが出された、それを見ますと、最高巡航高度から落下をさせて大丈夫かどうかということをやっぱりテストすべしというような厳しい内容の法案ができているのでありまして、少なくともこれだけの毒性の強い、半減期もまた後で話をしますがね、二万数千年という長期にわたるものをやるにしては、今やっている実験程度では私は極めて不十分だというふうに言ざわるを得ないのですが、同時に海中に落下したキャスクあるいはプルトニウムについて腐食の問題をやっぱり考えなきゃいかぬですね。  半減期が二万四千年、四分の一になるまでに四万八千年。人類の歴史はまだ五千年ですからこれは天文学的な長さの時代ですね、腐食に耐え水圧に耐えて、回収ができないとすれば安全性が保たれなければならぬ。これは大変なことなんですね。核ジャックを防ぐというだけでなしに、事故対策にかかわる諸問題についても未解明の部分が余りにも多過ぎやしませんか。その辺をどんなふうに考えているんでしょうか。
  97. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) まず、御質問の初めの部分について御説明させていただきます。  プルトニウム航空輸送に関します我が国の基準は、現在原子力安全委員会で検討しておるわけでございますが、その御指摘米国の基準、それからマコウスキー法と言われる修正条項についてどのように我々が検討しているかということについて若干御説明したいと思います。  原子力安全委員会の検討は昭和五十九年からやっておるわけでございますけれども、そこでは先ほど引用がありました米国の基準等も踏まえた調査、それから実際に航空機事故というものがどのように起きているか、そこでの事故環境といったものはどうであったかというふうなことを調査しておりまして、さらに進みまして、そのときにその輸送物に与えられる衝撃でありますとか、それから輸送物をどのように貯蔵するかという検討を進めてきております。基本的に、現在万が一の航空機事故の際にも、その輸送物が高度の収納健全性を維持するようどのような技術基準を輸送容器に要求すべきかという検討を今やっておるところでございます。  先ほど、その検討の中で御指摘のありました点について若干申し上げますと、最高巡航高度からの落下というふうな点を先生指摘がありました。これにつきましては、既に米国の基準、現行の基準の中でその問題に対する解明といいますか、対応も入っておりまして、実はそういう最高巡航高度からの落下ということで地上におきます衝突速度が、先ほどありました秒速百二十九メートル、これを超えるような場合にはそれに耐えなくちゃいかぬというふうな米国の基準、これはマコウスキーではなくて、以前のニューレグ〇三六〇、これに入っておるわけでございます。我が国はそういった米国の基準、それからマコウスキー修正条項で見られるような、実際に飛行機を落とす実験をしろというふうな要求について、それがいかなる技術的な意味合いがあるかという、意義があるかというふうなことを含んで今検討しているというところでございます。
  98. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうもまだ聞くところによると頼りなくて、基準そのものもできていないかのような印象ですね。ましてこの衝撃とか腐食とか、海中において二万四千年も腐食に耐え、水圧も相当深いところは強いはずですね。これは私は余りよく知りませんが、三千メートルの深さだと一平方メートル当たり三千トンの力がかかると言われている。落ちた衝撃でどの程度容器が強靱性を持つのかということとあわせて、腐食や水圧に何万年も耐える、こんな技術がそう簡単に開発されそうには思えないなどなどを含めて、幾つか私はこの協定には余りもまだ未開発の分野、将来の開発の可能性にかかわっている分野が多過ぎる、こんなことで協定を実施に移すということがあっていいのかどうかという点で、その面からも大変な疑問があるわけでありますが、時間も詰まってきましたので、最後に価格の問題、二、三伺っておきたいと思います。  一つは、前回の参議院の本会議で、同僚議員の質問に答えて、低濃縮ウランプルトニウムの価格の比較を聞いたことに対して、濃縮ウランの方は一キロ当たり十三万円、プルトニウムは四万円という説明をされておりますね。一般的に私どもが聞いておりますのは、プルトニウムの方が値段が高くて採算的にも問題ありと、日本の電力業界などもこの協定に必ずしももろ手を挙げて賛成でないというのは、そのコストの面などもあってそういう動きが一つあるやに聞いておるわけでありますが、全くこの逆の説明になっているんです。これはどういう基準と根拠に基づいたのでしょうか。
  99. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) ただいまの数字でございますけれども、あえて一つの試算をすればということで計算したものでございまして、その根拠を申し上げます。  まず、三%濃縮ウラン一キログラムの価格が大体十三万円であるという御答弁を申し上げたわけでございますが、その根拠でございますけれども、三%の濃縮ウラン一キログラムをつくりますためには、これに必要な天然ウラン、さらに天然ウランは通常イエローケーキという形でございますが、これを濃縮するために六弗化ウランに転換するための費用、さらにウラン濃縮のための費用と、この三つが必要になるわけでございます。  まず天然ウランでございますが、ウラン濃縮を行います条件等によって若干変わりますけれどもウラン濃縮の廃棄濃縮度を〇・二%といたしますと、三%の濃縮ウラン一キログラムをつくりますためには天然ウランが五・五キログラムほど必要でございます。この天然ウランの単価を一ポンド当たり三十ドルということにいたしまして、一ドルを百三十円というふうにいたしますと、大体一キログラム当たり一万百四十円ということになります。したがいまして、三%濃縮ウランを一キログラムつくるために必要な原料の天然ウランの価格は大体五万五千六百円ということになるかと存じます。  次に、この天然ウラン濃縮のために六弗化ウランに転換するわけでございますが、この単価は大体一キログラム当たり六ドルというふうに承知しております。また、一ドルを百三十円ということにいたしまして、この五・五キログラムを転換するための費用は大体四千三百円ということになるわけでございます。  次にウラン濃縮でございますが……
  100. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単に説明してください。結論的でいいですから。
  101. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) はい。  三%の濃縮ウラン一キログラムをつくりますためには、ウラン濃縮役務量といたしまして四・三キログラムSWUが必要でございます。これはアメリカのエネルギー省の販売単価を用いて計算いたしますと、濃縮料金が大体六万五千五百円ということでございまして、以上の三つを合計いたしまして約十三万円という数字をはじいたわけでございます。  次に、これに見合うプルトニウムということになるわけでございますが、この三%濃縮ウラン一キログラムの中には、核分裂を起こして熱を出しますウラン235が大体三十グラム入っていることになります。核燃料としての燃やし方により相当変わるわけでございますけれども、一グラムの核分裂性のウランと一グラムの核分裂性のプルトニウムは大体同じ熱量を発生するということでございますので、一キログラムの三%濃縮ウランと等価の発熱量の核分裂性のプルトニウムはおおむね三十グラムという前提を立てます。  それで、三十グラムのプルトニウムの価格が幾らかということになるわけでございますが、これは現在動力炉・核燃料開発事業団が東海村の再処理工場で再処理をいたしまして、電力会社から買い取っております値段が、一グラムの核分裂性プルトニウムにいたしまして大体十ドルということでございますので、この単価を用いますと、大体三十グラムで四万円という数字がはじけたわけでございます。
  102. 矢田部理

    ○矢田部理君 東海村における取引の値段ですね、動燃と電力会社ですか、この値段の設定がそもそも必ずしも市場性があるわけじゃないし、問題なんでありまして、こういう数字を出されると、比較の基礎なり条件なりがわからぬまま数字がひとり歩きして大変世の中に誤解を与える。常識的に言えばOECDの計算式もありますがね、はるかにプルトニウムの方が高いというのが常識的な比較なんでありまして、その点では、例えばフランスで再処理をしたものをフランスで電力会社のものを動燃が引き取りましたね。そのときのプルトニウムの値段は幾らでしたか。また、それをもとにした計算式に立つとどういうことになりますか。
  103. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) プルトニウムの値段というのはいわゆる市場価格はないわけでございまして、前回動燃事業団がフランスから持ち帰りましたときの輸送、これは昭和五十九年、四年ほど前でございますけれども、このときに動燃が関西電力から買い取ったものでございます。そのときの単価は約二十ドル、一グラム当たり二十ドルというふうに聞いております。
  104. 矢田部理

    ○矢田部理君 私の聞いたのでは、百九十キロで十億円ということでしたね。これをもとにして計算すれば、プルトニウムの方が先ほど出された濃縮ウランの値段よりはかなり高くなる。私の試算では、たしか十五万八千円ぐらいになりましょうか。これにさらに、プルトニウムは御承知のように空輸の問題があり、場合によっては海上輸送という措置もまだ否定されていないわけですから、輸送コストが相当かかると。濃縮ウランもこれは輸送コストはある程度かかりましょうが、プルトニウムはさらにさっき言った物々しい護衛つきの輸送費ということになるわけですから大変な輸送費がかかる。先般の海上輸送の際も輸送費五億円という数字が出されております。  ということになりますと、このプルトニウムの値段は相当やっぱり濃縮ウランから見ると高いものになる。そこがまた電力業界なども必ずしもこの問題を歓迎していない背景にあろうかと思うのでありますが、それはそれとして、やはりこれだけ高いものを大変無理をして、しかも技術的にも大きな未開発の分野を残して今突っ走ることには、大変私は賛成できないというふうに思うわけでありまして、本体は原発政策なり、原子力発電の位置づけをどうするか、あるいはまた、再処理工場の今後の扱いをどうするかというような基本問題にもかかわるわけでありますが、余りにも原子力発電をめぐる諸課題、諸問題は問題が多過ぎるということから、私は賛成できないということを最後に申し上げて、この関連の質問は終わりたいと思います。  最後に、別のテーマを一つつけ加えておきたいと思うんですが、それはこの委員会でも以前から外務省にも要請し、問題も提起してきたのでありますが、在日韓国人の政治犯の問題でございます。  大統領選挙の後、この大統領選挙以後の韓国情勢をどう見るかということで、外務大臣と少し議論をしたことがございます。私は、盧泰愚政権の正当性なり民主化には、韓国国内でも留保と、もう少しこの状況を見きわめようという流れが強いというふうに言ってきたわけでありますが、その結果が端的に先般の国会選挙にもあらわれたのではないかと私は思っております。  そして、野党は民主化の一つの大きなポイントとして政治犯、韓国では時局事犯と言っているようでありますが、この人たちの全面的な釈放をすべし、これは宗教界などもそれに呼応して動いているわけであります。今度の国会選挙の結果を受けて与党内部にもそういう働きが出始めております。これは五月十日の京郷新聞、韓国の夕刊紙だそうでありますが、の知らせるところによりますと、与党民主党が党職者会議というのを開いて、五月十日だそうでありますが、時局事犯、つまり政治犯のうち殺人、放火などを除外して全面的な釈放を検討する、そしてその民正党と政府との間で協議を行って検討される釈放対象者には国家保安法違反者も含まれる、こういう方向づけをしたと、こういうふうに言われているわけであります。  今までの政治犯の釈放問題の一つの壁は、国家保安法違犯者は釈放しないということで非常に厚い壁をつくってきたのでありますが、今回の与党なり政府と与党との間の動きの中には、ここに手をつける。もちろん野党はこの全面釈放を求めておるし、それから政治犯の数についても千余名という野党の指摘、与党内部は依然として二百数十名という議論とが必ずしもかみ合っていない部分もあるのでありますが、いずれにしてもそういう動きが顕著になってきたということは、私たちとしても手放しで楽観をしているわけではありませんが、歓迎すべき動きだというふうに実は思っておるわけです。  そして、その釈放なり検討をした結果の発表時期を、伝えるところによりますと五月二十三日、これはお釈迦様の誕生日だそうでありますが、釈迦の誕生日に合わせる、あるいはまたこの月末には国会が招集されるということにもなってきているようでありますので、この国会の招集前後というようなことが言われているのであります。  そこで、これは外務大臣あるいはアジア局長に特にお願いをしたいのでありますが、非常に今重要な時期であります。在日韓国人の政治犯の方々は、これは外務大臣にもお話をし、アジア局長にもお願いをしてきたわけでありますが、非常に長いことやっぱり苦しんできておるわけです。そしてまた無実の罪で捕らわれてきた経過もあるわけであります。この辺、時期を失せずに外務省として機敏な対応をお願いしたいと思っておるのですが、外務大臣いかがでしょうか。
  105. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員からの御指摘の点でございますが、繰り返し申し上げておりますけれども、本件、基本的には韓国人に対する韓国の司法の問題ということで対処しているわけでございますけれども、在日韓国人の方々が日本関係が特に深い外国人であるという観点から、本問題につきましては適時我が方の関心の表明を韓国側に対しても行っております。  ただいま委員指摘のとおり、昨年の六月以降をとってみますと、累次にわたり政治犯の赦免、復権というのが行われておりまして、在日韓国人の方につきましても一名の釈放と六名の減刑というのがこの間行われております。今般の選挙につきましても、ただいま御指摘のとおり、野党平民党それから民主党ともに、これは共産主義者を除いた政治犯の全面釈放、減免という要求を唱えておられるわけですし、それからただいま御指摘の五月十日付の韓国の新聞の伝えられるところ、与党民正党内においても検討が開始されているという報道は私どもも承知をいたしておりまして、従来同様、種々の機会をとらえまして日本としての関心を有しているところを韓国側に提起を従来もしておりましたし、今後とも適時行ってまいりたいと存じております。
  106. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは何回も言っておりますから内容について詳しい指摘は要らないと思うのですが、韓国の裁判のあり方、あり様についても私どもはいろんな意見があります。しかし裁判が行われ、判決が下され、それに従って刑期を満了した人たちがこのグループの中には何人かいるわけですね。刑期満了者も釈放しない。少なくとも司法制度を持ち、民主的だと言われるためには、判決の結果を全面的に受け入れてというか、従って刑期を終えたこういう人たちまで釈放しないということになりますと、韓国の民主主義というのはいまだ春遠しと言わざるを得ないわけであります。そういう人たちも含まれているということを考えますれば、そのほかいろんな基本問題があるわけでありますが、在日韓国人の政治犯の釈放問題には、関心の表明を超えてもう少しやっぱり積極的な取り組み、対応が外務省に求められているのではないかと私は思います。  特にこの今の情勢が、これまでなかなか壁が厚くて手がつかなかったところでありますが、国家保安法違反体制と言われているものをやっぱり少しくその発動を自制しようとか、その体制のもとで政治犯になった人たちの釈放にも踏み切ろうという方向性が与党内部に出されてきているわけでありますから、またそれで政府との協議も既に始まっているというふうに聞いておるわけでありますので、この機会をとらえて外務省にひとつ動いていただきたい、外務省として大いにやっぱり役割を発揮していただきたいということを申し上げて私の質問を終わりたいと思いますが、外務大臣から一言最後にお願いしたいと思います。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど局長が答えましたとおりに、やはり在日韓国人の方々は我々といたしましても一番近い外国人だという認識を私たちは決して忘れておりません。だから、従来もそうした問題に関しましては特別の配慮ということを求めてきたわけでございますが、今おっしゃるようないろんな問題、これはやはり韓国国民と韓国政府関係で、私たちが内政干渉にわたってはこれは大変でございますけれども、やはり一応深い関心を有しておるということはこれは大切なことだと、こう思っておりますから、十二分にその辺のことはいろんな筋によって一応また向こうからの情報も得てみたい、かように思っております。
  108. 矢田部理

    ○矢田部理君 今外務大臣が言われたように、これはもう前から議論されてきたことでありますが、在日韓国人なんですね、長いこと日本におられて、しかも韓国に行かれたのも再入国の許可を得て韓国に行っているわけでありますから、単なる韓国内部の問題、内政の課題だというふうに見るのは私は必ずしも適当でないというふうに思っているわけでありまして、とりわけ人権にかかわる基本問題でもありますので、その点も踏まえられて格別の御努力、外務省としての対応を重ねてお願いをして私の質問を終わりたいと思います。  以上です。
  109. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時に再開することとして休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  110. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 この協定につきまして、衆議院でもまた午前中も審議がありましたけれども、非常に不明な点といいますか問題点がいろいろある、こういうふうに感じております。  ただ、これまでの原発に対する国民のニーズ、安全性とコストの問題、将来的にいろいろ問題があるかと思いますが、そこらあたりのバランスをとりながらこの協定に対しての私たちの姿勢、態度というものが決まっていく、こう思うんですけれども。何か書き物ですと、アメリカの次がソ連、スリーマイル島の事故、チェルノブイリの事故。フランスと日本が四十基と三十三基持っているから、この次の事故はフランスか日本だろうなんて書いてあるものもありますけれども、いずれにしましても慎重にその取り扱い方を考えていかなきゃならないと思います。  まず、前々回の閣議で通産大臣が原発に対するPRが足りない、こんなことを言われまして、その後どういうふうな手を打たれたんでしょうかな、通産省。
  112. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 原子力発電につきましては、従来より国民の理解と協力を踏まえることが大前提という認識のもとに着実に開発を進めてきたわけでございますが、原子力発電の必要性と安全性につきまして必ずしも国民の十分な理解を得られていない面があることは残念に思っております。  今後原子力発電の安全性を一層向上させることはもちろん、原子力発電の必要性と安全性につきまして、事実をわかりやすい形で国民に伝える施策を充実する等、省内に設置をいたしました原子力広報推進本部を中心といたしまして、国民の理解が得られるよう一層努力してまいるということでございます。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 今までの努力はどんな努力だったんですか、PRは。
  114. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 今までの努力は、どちらかと申しますと原子力発電所の立地権、そういうものを中心に進めてまいったというようなことでございます。今後は、そういう面で国民各層全般にわたりましてPAを進めてまいりたいというふうに考えております。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 テレビか何かではPRしているんですか。
  116. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 五月は、先生御承知のように、原子力発電の安全月間というようなことで、通産省として施策を講じてございますが、この中で政府広報等を通じましてテレビでもPAに努めてまいっております。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 どんなスポットなの。
  118. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 具体的には、政府広報といたしましては日曜日の十二チャンネルの番組で実施をいたしましたし、今後も実施をする計画を持ってございます。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからどんな、具体的に。
  120. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 一つは、「タイム・アイ」ということで、五月の八日に原子力の安全問題についてテレビで放映をさしていただいております。  それから、一月から三月の間でございますが、十五秒スポットというようなことで原子力のPA関係について流さしていただいております。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 十五秒どんなことになっているの。十五秒どういうスポット……。画面はここではわからないけれども
  122. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 原子力発電所の安全性というような面で原子力発電所というのは年に一回定期検査を実施してございますが、定期検査につきましての内容を十五秒スポットで放映さしていただいております。
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 どのぐらいの予算ですか、それ、テレビだけの予算は。
  124. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 予算的な面で全体的なもので把握してございますが、その内数というようなことで大体概数で約五千八百万円のオーダーだというふうに考えてございます。
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで今後どうするんですか。さっきの対策室をつくったんですか、いつつくったんですか、それは。
  126. 山本欣市

    説明員(山本欣市君) 五月十日でございます。で、現在、資源エネルギー庁長官を本部長といたしまして、内容につきまして詰めている状態でございます。
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 料技庁の方でしょうな、これ。いろいろ空輸についての問題がありましたけれども、放射性物質の安全輸送のマニュアル作成要領、五十九年の二月二十四日、放射性物質安全輸送連絡会、これがマニュアルをつくって業者を指導する、こういうのが出ていますね。ということは、これから空輸がどこの空港に来るかわかりませんね。空輸されて、これは今度はそこからまた陸送される、こういうことでありますので、当然今までと違った輸送に対する安全対策というのは必要になってくるわけで、この後はどうなんですか。五十九年二月の二十四日、これをつくって指導する、これはどんなものができ上がったんですか。
  128. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 先生今御指摘のマニュアルでございますが、本マニュアルは、昭和五十九年二日二十四日、放射性物質の安全輸送関係します関係省庁、これが集まりまして「放射性物質輸送の事故時安全対策に関する措置について」ということで合意された内容の一部をなしているものでございます。  マニュアルにつきましては、いろいろな輸送物があるものでございますので、順次整備を進めておるところでございますが、核燃料物質輸送ということにつきましては既に原案がございます。それから、放射性物質といういわゆる放射性同位元素等の輸送もございますので、それぞれその物の形態等なかなか違った点もありますので、それぞれ別途に検討を進めているということでございますが、核燃料物質につきましては、ありますマニュアル案に沿いまして事業者に対しては指導を行っておるところでございます。  そのマニュアルでございますけれども、当面陸上輸送というふうなことが中心になって私どもとしては考えてあるわけでございまして、御指摘航空輸送ということにつきましては、特にプルトニウム航空輸送につきましては、原子力安全委員会そのものが現在どのような基準でもって輸送容器を技術基準として要求したらよろしいかということの検討を行っておりますので、そちらの方での検討を待ってさらに具体的な対応が決められていくものと思われます。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 放射性物質についてのマニュアルはもう持って業者に指導を行っている、こういうことですね。
  130. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) はい。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから、核燃料については国際基準と照らし合わせながらこれからつくる、もうつくってある、基本的なものはつくってある。
  132. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 放射性物質の中にはいわゆる放射性同位元素それから核燃料というものがあるわけでございますが、その安全確保ということにつきましては、昭和五十三年の段階で国際基準、これは国際的に共通の基準でございますが、これに沿った形で法制化がなされております。その段階輸送容器に対する技術基準の具体的な内容、それからそれを国が確認していくという体制が整ってございます。  そういうことでございまして、御指摘のマニュアルというものは、具体的にどのような装備等を核燃料を運ぶ際に用意しておいたらよろしいかとかいうふうなこと等を定めておるものでございまして、既にできておりますのは核燃料の方でございます。放射性同位元素の方は現在つくっておる最中というふうに承知しております。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 だって五十九年二日二十四日でしょう、この特に放射性の物質の安全輸送に関するマニュアルの作成、四年もたっているじゃないか。まだつくっているの、それ。
  134. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 核燃料物質につきましても、いわゆるウランの新燃料でありますとか発電所から出てまいります使用済み燃料等ございますし、特に放射性同位元素というものは医療用でありますとか、それがかなり少量のものから照射装置というふうなことで大量のものまでございまして、それぞれについて具体的な輸送の状況を勘案しながらマニュアルというものは作成した方がより具体的なものとなるであろうということで、若干先生指摘のように時間がかかってはおりますが、順次策定しておるということでございます。  もちろんマニュアルの前に安全基準がございますので、その安全基準を具体的に満たすということはこれはもう既に確認されて、実際の輸送というのは日々進んでおるわけでございます。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 安全であることはこれはもう大前提なんですよ、安全じゃないということが前提だと話が進まないわけであって。国際基準もある、安全な中で事故が起こっているわけですから、起こる可能性があるわけですから、そのことをだから、こちらは心配もしないけれども、要するにそれを頭に入れているわけであって、四年以上もたっていながらなぜつくらないのかなと。つくれない事情があるのかなと。  それから、その順次つくっているマニュアルの中には火災等の事故が発生したときの処置も入っているわけですか。
  136. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 火災が発生した場合につきましては、消防庁の方で検討を進めておりまして、取りまとめられる段階に来ておるというふうに承知しております。
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 消防庁なんか検討していないよ。ここに持っていますよ、五十七年の二月、「放射線施設等の消防活動のための手引」、これは輸送じゃない、施設なんだ。その四十ページに出ていますよ。僕が言っているのは、今のは安全輸送、空輸から陸送になるわけでしょう、九〇年のいつの時点かにおいて。その審議やっているんだから、協定で。消防庁の方は施設なんですよ、これ。ここに出ているのはやっぱり安全輸送でしょう。そのマニュアルでしょう。
  138. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 先生お持ちのは以前の施設に対するものかと思いますが、現在消防庁の方で放射性物質の安全輸送にかかわります火災時のマニュアル、これは具体的に各部道府県、市町村の消防署等がございますから、そちらの方に消防庁としてこういうものに対してはこのようにすればよいということを具体的に示すためのマニュアル、これの作成、検討を今進めておるところでございまして、私どもも参画してやっておるところでございます。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 今作成検討じゃなくて——みんな作成検討、みんな作成検討じゃない、それじゃ。それ何年ですか、作成検討というのは、そこにあるの、それそうなの、消防庁の、今の。私のは五十七年二月の、それでしょう、それ何年、それじゃ。
  140. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 数年かかって作成が進められておりますが、最終段階に来ておるというふうに私どもは承知しております。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、今おたくが後ろから渡されたのは五十七年二月のものじゃないですかと言うんだ。そうでしょう。
  142. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 案でございますのでまだでき上がっているわけではございませんが、日付は昭和六十三年三月というふうな日付が入っておるわけでございます。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 あなたいじめるつもりはないけれども、あなたしかいないからしようがない。申しわけないね、済みません。  案じゃないよ、これ。あなたそこに持っているのは私と同じものですか、五十七年二月の消防庁の放射線施設等火災対策消防マニュアル研究会議、これでしょう。その四十ページに出ているの。違うの、違うならいいんだよ、何年なの。
  144. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) これは案でございますが、昭和六十三年三月の日付が入っております。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 六十三年三月に——それどうしてくれないの。
  146. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) まだ中身について今検討中でございまして、先ほど申し上げましたように最終的な段階に入っておりますので、細部の表現等を今打ち合わせしているところでございます。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで次長さん、それにしても消防庁のは五十七年二月ですよ。それが六十三年三月といえば……。それからこちらの、これは科技庁中心になっているんだと思うんです、これが五十九年の二月二十四日、マニュアルつくって指導する、まだ徐々に徐々にと言いながらなかなかできそうにないのね。九〇年代の当初ですから、この協定に対して実際的に動くのはまだいいんだろうと思うんだけれども、四年も五年も六年もかかっている。どうなんですか、ここらあたり、原子力局次長さん。
  148. 緒方謙二郎

    政府委員緒方謙二郎君) 私の方からお答えさせていただきますが、輸送時の安全対策につきましては、先生御案内のとおり、安全基準の作成、それを受けて事業者が守るべき基準、それから国側の対応の体制、それから事故時の対策というようなことで重層的に各段階での対応をやっているわけでございますが、役所側の先ほど先生が最初に御指摘になりました五十九年の輸送連絡会の体制というのは、国側の対応体制を決めたものでございまして、これはでき上がっております。ですから、何か輸送の途上で事故があったときの役所としての対応をどういうふうにするのか、そこの行動要領というものは既に決められているわけでございます。  それから、事業者に対して守らせる基準というものにつきましては、もちろん法律あるいはそれに基づく政府令で決まっておりますので、これもできているわけでございます。それらを補完してさらに運用していく上での細部にわたる、具体的には例えば消防庁としての対応は基本的に決まっているけれども、現場の消防吏員の行動についての具体的なマニュアルであるとか、そういうさらに詳細なものについて検討しておったというのが実情でございまして、少々時間がかかっているのは先生指摘のとおりでございますが、できるだけ早く体制の方遺漏なきを期すようにしてまいりたいと思っております。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 何かこう、かかる必要性もあるんでしょうけれどもね、現場においては。何か少々ではなくて相当かかっているような感じがしますね、私は、何年も何年も。そうすると、今のこの協定を九〇年代の何年、九二年になるのか四年になるのか、五、六年の間にそういうものにまた少々時間かけていたんじゃ本論の方になかなか進まないというふうな感じがします。  この前も言いましたように、アメリカの軍隊では相当しっかりしたものをつくってあるんですよ。アメリカの核兵器、核燃料、これはもう相当安全性がありますよね、もう世界じゅうにそれこそ年じゅう持って飛行機が飛んでいるんですから、潜水艦が遊よくしているんですから。あるいは地上だってあるかもわかりません。それでもなおかつ事故対策というのは物すごいマニュアルがあるんです。これは日本の場合には、たしか容器が完璧だから横須賀から浜田まで大丈夫ですよと、追跡調査しなくたって大丈夫ですよとか、飛行機だって容器を安全なものをつくっていますよ、開発しますよと。すべてその面で安全安全、これは安全でなかったら大変なことなんですね。ですけれども、安全な上にもさらに万が一の場合に対しての物すごいやっぱり防護というもの、安全対策というもの、応急処置というもの、それをとっているわけですよ。  ですけれども、何かここまで協定審議し、あるいは間もなくこれを採決するという手前になりながら、しかも四年も五年もかかっていながら、どういうところを細かく詰めているのかわかりませんけれども、いつまでたっても案だ案だということじゃ私はちょっとうまくないなというような感じがするわけであります。細かい点、どこがどういうことということはまた後日あれしますけれども、まだ二十四日もありますからね。どうも何か時間がかかり過ぎている。やっぱり安全性ということがこれは第一ですからね。まあそこら辺でいいでしょう。  ちょっと観点を変えて申しわけありませんけれども、アフガンの問題で外務省からの文官の出向、これは正式に国連から要請があったんですか。それから、要請があったとすると、どういう役目、分担が考えられるんですか。  ということは、もう言うまでもなくこれからアフガンの国情だってどうなるかわかりませんわね。反政府軍の勢力が強いみたいな感じもしますし、来年の二月、ソ連が撤兵してから後どうなるのかわかりませんし、その中に、国連監視軍のもとに北村さんとかなんとかとおっしゃる人がもし行くとすると初めてのケースですし、非常にまた不安もあるでしょうし、いつ役目が終わるのかもわかりませんし、どういう任務なのか、どういう役目なのか、それはいつごろ幕がおりるのか、要請があったのか、そこらあたりひとつ教えていただけますか。
  150. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 今回のアフガニスタンでの俗に監視団と言っておりますが、正式には最近国連の方で訳語を統一いたしまして、アフガニスタン・パキスタン仲介使節団、こういうふうな名前にしようということになっております。  そこに対する我が国からの要員の派遣につきましては、当初国連の方から打診がございまして、しかも、当時は監視団と言っておったわけでございますが、今回につきまして文民部門、特に政治的な調整をする部門に日本人の職員の派遣を打診してまいったわけでございます。これに対しまして、我が方といたしましても職員を、要員を派遣するということにまず基本的な方針を定めまして、その後具体的な検討をしてきているわけでございまして、ちょっと人の名前は別といたしまして、日本側としては内定をしているわけでございます。  ただ、仲介使節団は先遣隊がまだアフガニスタンとそれからパキスタンに赴いたところでございまして、今後の具体的な現地における組織それからさらに細かい役割、そういったことについては現在国連の方で検討中ということでございまして、したがいまして、正式には我が方からの要員派遣というのもまだ実現していない、決まっていない、こういう状況でございます。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 先遣隊が行って段取りする、それで正式に要請して派遣する。そうすると、派遣するときには相当やっぱり役目や任務なんかはクリアになるわけですか。
  152. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) いずれにいたしましても、文官部門といいますか、政治調整の部門というのは非常に小人数でございますし、いわゆる監視部門の方から上がってくる報告、こういったものを取りまとめて、そこでどのくらい調整ができるのかわかりませんが、少なくとも現状はどうなっているということをまず把握するという役割はあるんだろうというふうに考えております。
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、まだ難民の救済、難民に対する対応というのが大きな任務だと思うんですけれども、そのほか大体推定されるのはどういう仕事をやるかなんということも、全く国連の先遣隊の要請、案づくりを待ってからということになるわけですか。
  154. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 今、委員指摘の難民でございますけれども、難民の状況についても、もちろんこれはアフガン合意の一環でございますから、難民の自発的帰還ということについての状況把握も当然任務の一部だとは思いますけれども、当面はやはりソ連軍撤退状況、それからそれに伴ってどういう問題が起きているか、そういったところをフォローするというのが中心の任務ではないかというふうに考えております。
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 前からこれは心配というか、いわゆる初めてのケースですし、それが自衛隊の派遣に通ずるおそれもあるというような反対意見も現にありますし、なし崩しになるんじゃなかろうかというような危惧もあります。ですから当面は難民の方も、難民が即反政府ゲリラ部隊ということにもなっていますし、どれが難民か、どれが反政府軍かはっきりしない面も当然ありますし、まだアフガンの政情自体がいつ安定するのか、難民が帰ってこれるのか、これもわかりませんし、そうなると、難民の救済、撤兵の監視、もう一つ何かありましたね、三つありましたな。
  156. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 内政不干渉でございます。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 ああそうか、内政不干渉。三つありましたね、内政不干渉はもう当然ですからね。  そうなると、難民に対するというよりも、今おっしゃったように撤兵の監視、これはきのう、おとといですか、国連軍の制服の人が千二百人の撤兵の監視をしていた。当然そんなところに外務省の北村さんという方が出るわけのほどでもないと思うんですが、当面やっぱりそういう面が多くなると思います、今局長がおっしゃったように多くなると思うんですね。そういう中から難民に対するどういう措置がとれるのか、日本政府は何ができるのか、こういうことになると思うんです。  そうなると、やっぱり撤兵の監視となると、テレビの画面に出たのは国連軍の制服を着た兵隊さんが監視役に出ているわけですよ。そうすると、日本政府外務省派遣の文民の人があれと一緒になってやるのかなという危惧もあるというようなことで、おとといあたりテレビを見ながら、北村さんという人が行くんですかと言うから、おれは外務大臣じゃないからだれを派遣するかわからないと言ったら、ああいうところへ日本も出ていくんですかと言うから、ああいうところに出ていかないだろう。だけれども、当面はやっぱり撤兵の監視というのが中心になるから、そこらあたりよく注意しながらやらなければならないだろうなんというようなことで対話もしたんです。  万が一にもそんなことはないと思うんですけれども、初めてのケースですし、兵隊さんの撤兵の監視ということが、直接間接にどういう行動をとるにせよ、国連監視軍の中心の役目になるわけですから、その中の文民部門というのは当然おのずから役目が変わると思うんです。その中から出てくる役目というものな拾いながら、分析しながら、整理しながら、日本政府が対処していく、こういうことになると思うんですけれども、ああいうテレビの画面を見まして危惧する声も正直言ってもう出ているんです。ひとつそこらあたり方遺漏なき配置というか、全くこれからの役目分担というのがわかっているみたいでわからないものですから、それじゃちょっと私も一回注意しておこうというようなことでその人にも言っておきました。  外務大臣、万が一にもそんなことはないと思うんですけれども、撤兵の監視ということがどうしても当面中心にならざるを得ないと思うんです。その撤兵の監視ということの中においての日本派遣の文民の役目、しかも文民というのは各国で非常に人数も少ない、中心はやっぱり監視軍の制服なものですから、そこらあたりに巻き込まれるというか、役目分担をきちっとしなきゃならない。ここらあたりひとつぜひ今からきちっとしておかないと、これが尾を引きましていろんな問題が発生する、現地において一生懸命やっている首席事務官の人が、そんなはずじゃなかったというようなことになりかねないということもありますので、ぜひともその点配慮をしていただきたい、こう思いますがいかがですか、外務大臣
  158. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 仰せのとおり、たとえそれが国連でございましても、監視軍に我が国の制服が出張できるかといいますと、これは自衛隊にはそういう任務はございませんから、したがいましてまた海外派兵等々物騒な話になってはいけませんから、外務省といたしましては、やはりお金だけで済む問題ではない。平和に貢献するのは日本も汗をかいておる、そのためにひとつ文民派遣と、こういう決定を下したわけでございます。  したがいまして、国連におきましても当然制服は制服、文民は文民というような分野があるだろう、こういうふうに思っておりますので、今国連局長が答えましたような分野において活躍をしてもらいたい。また、本人も私が参りましょうと言って、本当にボランティアとして手を挙げてくれた。これもまた私たちとして初めての試みでございますから、この辺の精神も酌み、なおかつ逸脱しない範囲内で外務省としては派遣したい、かように思っておりますので、いろいろと御忠告ありがたく承っておきます。
  159. 広中和歌子

    広中和歌子君 今の同僚議員の質問に関連したところで続けて質問さしていただきます。ほとんど私がお聞きしたいことに触れていただいたわけでございますけれども、一部残った問題などを伺わせていただきます。  停戦監視団、今の状況ではまだ検討中ではっきりしたことはわからないということでございますけれども国連側としては何人ぐらいを予定していらっしゃるんでしょうか。どういう国々から派遣される予定であるのか、そういうことをお伺いいたします。
  160. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほど申し上げましたように、この名称を国連アフガニスタン・パキスタン仲介使節団と、こういうふうな名前にいたしましたのですが、当然その中に監視部門というのも入っているわけでございます。  そこで、文民部門の人数は必ずしもはっきりいたしませんが、いわゆる軍人さんから普通成っております部門につきましては当初十名でありまして、カブールに五名、たしかイスラマバードに五名ということだったと思いますが、その後この人数はこの十名も含めまして五十人まで増強できる体制にしておくと、こういうのが基本的な了解だったというふうに私どもは承知しております。
  161. 広中和歌子

    広中和歌子君 どういう国の方々から成り立っているか、そういう情報はございますか。どういう国の方々から成り立っているか。
  162. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 失礼いたしました。今のところカナダ、デンマーク、アイルランド、スウェーデン、オーストリア、ガーナ、フィジー、ポーランド及びフィンランド、この九カ国ということになっております。
  163. 広中和歌子

    広中和歌子君 そしてタイミングについてもまだはっきりしないわけですね、いつ……。
  164. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほど申し上げましたように、先遣遂はもう既に行っているわけでございますが、このフルのサイズにといいますか、この五十名の規模になるのがいつかということははっきりいたしません。  したがいまして、その文官部門につきましても、現在一、二名たしか行っているんだろうと思いますけれども、これがさらにどのぐらいふえていくのか必ずしもはっきりいたしておりません。ちなみに文官については、実は六十名ぐらいだというふうな話もあるわけでございますけれども、ここでいう六十名の文官と申しますのは、いわゆる官房的な、ロジスティックス的な文官とそれから政務調整をやる部門の文官と、この両方を含めての数字でございまして、政務調整をやる部門の文官というのは非常に数は少ないんだろうと思います。
  165. 広中和歌子

    広中和歌子君 どういうキャパシティーの方が日本から推薦されていらっしゃるのか。文官とおっしゃいますけれども外務省の方でございますか。
  166. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 現在考えておりますのは外務省の職員でございまして、国連に出向するという形になろうと思います。
  167. 広中和歌子

    広中和歌子君 これまでの日本アフガニスタンへのかかわりについてお伺いさせていただきたいんですけれども、主に難民への救済というんでしょうか、援助、そういったものであったんでしょうか、具体的に教えていただきたいと思います。
  168. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) このアフガニスタン問題につきましては、御指摘になりましたようにソ連軍のアフガン侵入がございまして、それによって多数の難民がパキスタンあるいはイラン等に脱出せざるを得なくなった。そこでその難民に対して、日本側といたしましては国連の難民高等弁務官府、それからその他の機関を通じまして援助を出していたということでございます。
  169. 広中和歌子

    広中和歌子君 停戦とともにこのキャンプはどのような状況に変わっていくのか。総数にいたしますと五百万近くになるというふうに伺っておりますが、それにその大勢の人たちが、総人口今大体一千八百万と伺っておりますけれども、そのアフガニスタン国内にまた再び戻っていくということは、かなりの再適応ということが必要なんではなかろうかと思いますけれども、そういう状況の中で今後日本が果たすべき役割、具体的なことをお考えでいらっしゃいますかどうか。
  170. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 御指摘のように、現在イランとパキスタンにおります難民というのは五百五十万ぐらいと、こう言われております。 ただ、難民が自主的に帰還いたしますためには、当然アフガニスタンの状況が、ソ連軍撤退に伴いいろいろな帰還のための条件が整備される、当然平穏が保たれるということが重要でございまして、その場合、実際にどのようなタイミングで、どのような形でこの難民の帰還というのが実現するのかというのは必ずしも現在予測の域を出ませんけれども、当面言われておりますことは、パキスタン、イランの国境に近い部分への難民の帰還がまず始まるのではないかと。そこはソ連軍も撤兵するし、政府軍、いわゆるアフガン政府軍ですが、これも撤兵するということで、この難民の帰還が可能になる状況になるのではないかと、こういうふうに言われているわけでございます。  したがって、そのタイミングとかどのぐらいの規模で行われるかということははっきりわかりませんけれども、その点につきましては難民高等弁務官府、それから世界食糧計画、それからュニセフ、そういったところで今後いろんな事態を予想いたしまして現在計画を立てているというところでございまして、そういった状況も踏まえてみながら、我が国としてもどう援助していくかということを考えたいと考えております。
  171. 広中和歌子

    広中和歌子君 不確定な中で御質問するのは大変恐縮なんですけれども、確かにどのようなかかわり方をするかというのは今後の政治状況とかそれから経済の動きにかかわると思いますけれども、当然特にアフガニスタンというのは多くの資源を潜在的に持っている国というふうにも伺っておりますんですけれども日本が今後経済的な形で、経済援助、開発援助、そういうようなことでかかわっていく御予定というようなものはもう既にあるのでございますか。
  172. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) アフガニスタンに対する援助は、とりあえずは国外に出ておりますアフガニスタン難民の帰還、それから国内においても難民の状況、つまり定住地から離れて住んでいる人たちのもとのところへの帰還、こういうことに対する人道的見地からの援助、難民援助をまずやらなきゃいけないんじゃないかと、こういうふうに考えております。これは先ほどの答弁にもございましたように、国際機関、特に難民高等弁務官などを通じる援助が主体になろうかと、かように考えております。  その後アフガニスタンの政治状況が安定してまいりまして、アフガン国民を代表する政権が成立し、我が国がそれを承認することができるような事態になった場合においては、改めて同国に対する復興援助、これは必ずしも国際機関を通じなくても、直接日本政府からその新アフガニスタン政府に対する援助という形でいけると思いますが、それが考えられる。しかし当面はまず難民の帰還、定住ということのための人道援助というものをやっていく必要があると、かように考えております。
  173. 広中和歌子

    広中和歌子君 先回、まだ発表前の非常に不確定なときに御質問して大変恐縮だったわけでございますけれども外務大臣が六月に中近東を御訪問なさるということを数日前に新聞で読みまして、これは公表の段階だろうと思うのでございますけれども、ちょっと具体的に御旅行のプランなどをお伺いさせていただきたいと思います。どういう国々に行かれるのか。
  174. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この間、広中委員から、イスラエルへ行くんじゃないかというお話がございまして、私は、まだわからないというふうにお答えしましてまことに申しわけなく思っておりますが、外交のルールから申しますと、やはりそういう計画を持っておりましても、特に問題の地点でございますから、どのような反応があるかということもございましたので控えさしていただいた点は、どうぞ御寛恕を賜りたいと存じます。  その後、幸いにいたしまして、エジプト、ジョルダン、シリア——これはまあアラブでございますが、三国がどうぞというふうな歓迎の意を表してくれましたし、同時にイスラエルもやはり歓迎の意を表してくれましたので、中東和平という重大な問題に関しましても、やはり平和に貢献する日本としての姿勢をひとつぜひとも示したいものである。この地域には和平に関係する首脳がたくさんいらっしゃいます。この間ジョルダンの皇太子ハッサンさんもお越しくださいまして、いろいろ意見を交換したこともございました。そうしたことで、各国を訪問いたしまして、やはり中東和平に貢献をいたしたいというのが私の考えでありまして、中東政策に関しましては何ら変更するものではありません。  ややもいたしますと、イスラエルに行くとアラブが反対するとか、いろいろございましょうけれども、今回は、今申し上げました関係国がいずれも日本の立場、日本の今回の訪問の意義、そうしたことを理解してくれたということが大きなことである。したがいまして、私はやはり参りまして、この紛争のために、一日も早く平和がよみがえるよう努力をいたしたいというのが私の考え方であります。
  175. 広中和歌子

    広中和歌子君 イラン、イラク両国に我が国は大変パイプを持っていて、そして非常に積極的な役割を演じていらっしゃるということを伺っておりますけれども、また今度、パレスチナ問題をめぐっての中近東のコアのところにお出ましになるということは大変にすばらしいことだろうと私は評価させていただきたいわけですけれども、これまでシリア、ヨルダン、エジプトには日本政府高官、特に外務大臣がおいでになったことがあると思うんですけれども、イスラエルは初めてでございますか。
  176. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 外務大臣を含めまして、閣僚としては初めてということに相なります。
  177. 広中和歌子

    広中和歌子君 今度のイスラエル訪問をどのように意義づけていらっしゃいましょうか。
  178. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり一九六三年以来いろいろと紛争がございまして、自来我が国国連等々の場におきましては話もいたしております。あるいはまた、イスラエルの大使とも交歓をいたしておりますから、したがいまして、西岸、ガザ等の紛争のとき、いろいろな問題のときには大使に外務省に来てもらいまして、我が国としての立場をお伝えし、そして戦争が長引かないように、そういうような意見も具申しておるというような状態でありますけれども、やはり西岸、ガザという問題等々を考えますと、どういたしましても今日の状態は憂慮すべき点の方が多い、こういうふうに考える次第であります。  したがいまして、イスラエルにはイスラエルに対しましてのそうした平和への道をひとつ求めてもらうように私からも進言申し上げたい、かように思いますし、また同時に、アラブに対しましても和平への道、特に西岸、ガザの住民に関しましてはやはりいろいろ問題もございましょうから、できたならばその地域も入れないものだろうかと、現在はそうやって考えております。
  179. 広中和歌子

    広中和歌子君 私自身、アメリカに長く住んで、イスラエル系のアメリカ人というんでしょうか、そういう人たちが日本人に対して、文化的なというんでしょうか、価値観とかそういうようなことが非常に似ているというようなこともあったり、また知的に日本文化に興味を持っていたりする人も多かったせいもあって、かなり大勢のュダヤ系のアメリカ人が日本人に対して親切であった。我々多くはそれをアメリカの中で気がつかないことがあるわけですけれども、よくよくルーツを調べてみるとイスラエル系であったなんというようなことが結構ございまして、御案内のように、イスラエルの人口というのは三百万ぐらいの小さなものでございますけれども、西側陣営にはもうそれの数倍のイスラエル系の人が住んでいる。そういう中におきまして、イスラエルに外務大臣が御訪問いただくということ、そしてイスラエルは、アラブ諸国の中の西側陣営の一つとして非常に難しい立場にあるわけでございまして、そういう中でアラブだけではなくて、イスラエルと両方とのコミュニケーションを盛んにしていただくということはすばらしいことだと大いに歓迎させていただきます。  次に、今懸案となっております日米原子力協定について質問させていただきます。  この新しい協定は、一九八二年から五年余にわたる長い交渉の後昨年十一月に調印され、そしてことしの四月二十六日、アメリカ議会反対を受けながらも自然承認の形で通ったわけでございますけれども、改定に至るいきさつでございますね、ここにもございますように、日本政府が改定を求めていたというようなことでございますけれども、具体的な理由をもう一度説明していただきたいと思います。
  180. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) この協定の改定交渉、確かに五年ぐらいかかったわけでございますけれども、これはどちらが改定を申し入れたということは、必ずしも日本側ということではなくて、まず日本側の事情アメリカ側の事情が両方あったわけでございます。  日本側の事情の方は今まで、つまり現在の協定でございますけれども、これには再処理をするときとかあるいは使用済みの燃料をヨーロッパに持っていくとかあるいはアメリカから濃縮ウランを買う、そういったことにつきまして個別の許可が要ったわけでございます。特にカーター政権のときに再処理問題をめぐりまして個別の許可が非常に大きな問題になりまして、こういうことでは非常に日本原子力活動が不安定な状況に置かれる、したがって、何とかこれを長期的なあるいは予見可能的な立場に置きたいと、こういうことから、何とかそういったような個別同意包括同意に変えたいというのが日本側の意向であったわけでございます。  他方アメリカ側の方は、インド核爆発以降の核不拡散に対する声が非常に強くなってまいりまして、これを受けまして一九七八年に核不拡散法という法律ができて、アメリカとしては諸外国と持っております、あるいは諸外国と結ぶ原子力協定には幾つかの核不拡散の観点から要件を入れなくちゃいけないと国内的な要請が出てきた。  こういう日本包括同意を求めたいという立場と、アメリカ側の核不拡散の強化という二つの立場から八二年に交渉が始まったわけでございまして、それが五年間かかったということでございます。
  181. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本側の得たものは今伺ったわけでございますけれどもアメリカ側としては国内法、核拡散防止法に基づきまして新たな規制を入れたんじゃないかと思います。そちらについてはどういうものなんでしょうか、具体的に。
  182. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) アメリカのその今の一九七八年の核不拡散法によりまして若干の新しいといいますか、現在の協定に加えまして新しい規制を受け入れることになった点が幾つかございます。  例えば、ウラン濃縮は二〇%を超える濃縮はやらないというか、それについてはやらないというよりかそれは規制の対象になるということが一つ。それから核物質の防護、これは現行協定は何も言っておりません。ところが新協定あるいはその今の核不拡散法によりますと、きちっとした核物質の防護が必要である、こういうようなこと。それから例えば貯蔵、プルトニウムあるいは核物質等々を貯蔵しますことにつきましても規制権の対象が及んでくると、こういうようなこと。それからIAEAの保障措置が必ずかかっていなくちゃいけないと。こういうようなことが新しい規制として出てきたわけでございます。
  183. 広中和歌子

    広中和歌子君 外務大臣、この全体の交渉結果でございますけれども日本にとってのプラス面、そして規制ということも配慮した結果でございますけれども、それを全体としてはどのように評価していらっしゃいますでしょうか。
  184. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 我が国は資源小国でいろんな備えをしておかなくちゃなりませんが、特に石油にかわるエネルギーとしてはやはり原子力しかない。しかし、これはあくまでも平和利用である。そのための核燃料サイクルの確立、このことをひとつ考えようということになりますと、今まではアメリカからウラン鉱をもらう、そのもらったウランはずっと戸籍がついて回っているようなことで、濃縮をしようが、さらには使用済み燃料を今度は再処理しようが、そこから抽出したプルトニウムを動かそうが、すべてがいろいろと煩雑な手続を必要といたしました。  そうしたことが今回は包括的なことによって処理される。これは非常にお互いの信頼関係というものを確立したことではなかろうか。同時にまた、核は拡散すべきでないという私たちの主張が、これによりまして世界的にアピールすることができるだろうと、こういうふうに私は考えております。
  185. 広中和歌子

    広中和歌子君 包括的合意ということで、何か日本では、少なくとも核エネルギーに関しましてはある種のインデペンデンスというんでしょうか、エネルギーの独立を得た、非常な自由度を得たというような気がするわけでございますけれども、しかしながら問題がないわけじゃなくて、しかも日本国内での問題、反対などだけではなく、また国際的な世論というようなものもあるのではないか。  またアメリカ自身も、アメリカの政治家でございますが、具体的な形で幾つかの反対があり、そしてその反対が結果的には消えていったわけでございますけれどもアメリカの政治家が、例えば上院、下院の議員たちが幾つか、上院で三本ですか、下院で一本不承認決議案が提出され、結果としては、先ほども説明がございましたようにこれは反対多数で否決されたわけでございます。しかしながら、この具体的な内容、そしてそれが完全に問題がなくなっているのか、そういうようなことについてどのように受けとめていらっしゃるかお伺いいたします。
  186. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 具体的な事例は政府委員からお答えするといたしまして、次のようにお考え賜りたいと思うのであります。  国内におきましては、なかなか原子力の安全利用という問題に関するPRというものは非常に大切なことだと、こうも思いますし、また安全は確保すべきであると思います。  一つの例を申し上げますと、かつて原子力船「むつ」が長崎に回航しましたときに、長崎の御老人たちが、また原爆を積んでやってきたかと、例えばそのような、長崎という特殊な原爆の被爆県でございますから、やはりそうした感情を持って迎えられていることも事実でありますから、よほど国民にも広く安全であるということをPRすることが必要だろうと思います。  米国におきましても、例えば名前はもう御承知だろうと思いますけれども、みずから信念的、宗教的に原子力には反対だと、核は悪なりというような信念の議員さんもいらっしゃったわけで、これはもう一部でございますがいらっしゃったわけで、さらにはまた、自分の選挙区との、輸送との関連等々いろんなことがございまして、やはりそうした不安があったことも事実でありますし、さらにはやはり日本というのは物騒な国だと、これを持たせておけばやがては原爆をつくるんじゃないかというふうなあるいは思いを抱いておられる方がなきにしもあらずだろうと私は思います。  そうしたことからいろいろとありましたが、幸いなるかなずっと政府政府はこの問題に関しまして信頼関係を築いてまいりましたので、非常に政府が、輸送問題に関しましても、あるいは日本の今日までの原子力発電等々の関係におけるいろんな施設なり、あるいはまた核物質の管理なり、そうした面におけることをよく知っていていただきましたので、そうしたことも大きな参考になったと思いますが、そうしたことで今回のお互いに包括的合意ということに達することができたと、こういうふうにひとつ御理解賜りたいと思います。  そのほかは政府委員から説明いたします。
  187. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 大臣の御答弁に若干補足させていただきたいと思いますけれども、今大臣から申し上げましたように、大きく分けましてアメリカ議会反対二つぐらいの種類に大別できるかなという気がするわけでございます。  一つは、プルトニウム経済というのは非常に危ないと、こういう核不拡散の観点からのプルトニウム商業利用はだめだと、やるべきじゃない、こういうふうな反対論一つございます。もう一つは、プルトニウム輸送の問題、殊に輸送が果たして安全なのかと。  後者の方の反対論の方は、必ずしも原子力発電に反対しているのではなくて、むしろ多くの場合は、原子力発電には賛成なんだけれどもプルトニウム航空輸送するのはやはり安全性の観点から懸念があると、こういった二つの、これ実は若干、両方ともの方々はかなり違った方々というか、ダブっているわけじゃなくて、別の方々であったわけですけれども、そういうふうな二種類の反対があったと思います。  しかしながら、アメリカ行政府の働きかけ等々によりまして、三月二十一日だったと思いますけれども上院の本会議でこの協定を否認する決議案が否認されたと、否認の否認でございますが、それが五十三対三十ということで否認決議案が否認されまして、その後は下院の方でも、何の動きもなく四月の二十五日に、反対決議案なし、したがって自動承認と、こういうことになって現在に至っているわけでございます。
  188. 広中和歌子

    広中和歌子君 二種類の反対意見があるというふうにおっしゃいましたけれどもプルトニウムなど商業利用はするべきではないというアメリカの政治的な世論と、それからノーヌークスというんですか、いわゆる市民レベルの反核運動と議員レベルの核エネルギー反対とその二つが容易に結びつくことだろうと思うのでございますけれども、その点についての配慮というんでしょうか。  それからこれはアメリカだけではなくて、非常に全世界的に広がっていく傾向にあるのではなかろうか、そのような気がするわけでございますけれども、ほかにも例えば核エネルギーに関するどちらかというとネガティブ、つまり控えていこうという国々、そういう国々が非常にふえていると思いますけれども、そういう国々の例をお知らせいただきたいんですが。
  189. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 私は今の各国の状況につきまして簡単に総論的に申し上げまして、あと科技庁の局長の方から御答弁をお願いしたいと思うんですが、これ私自身の分類で必ずしも正確かどうか、若干ダブっているところがあるかという気がしますのでその点御了承いただきたいと思うんですが、各国を見ますと、私は四つぐらいに分類されるかという気がいたします。  一つは、いわゆる原子力発電を今後とも推進すべしという基本的な政策をとっておる国でございまして、これはどちらかといいますと経済規模が大きくて、かつ原子力発電を相当程度にやっておる国でございます。例えば、国としましてはアメリカとかイギリス、それからフランス、カナダ、ソ連、こういった国がその範疇に入るのかなというふうに思われるわけでございます。  それから二番目が、これは相当程度の原子力発電を行っておるわけでございますけれども反対運動が起こってきておるという国で、これは西ドイツとかスイス等々でございます。スイスの場合、決して原子力発電が量的に多いわけじゃございませんけれども、総発電量の中の原子力の占める割合というのは約四割近くになっているものですから、その意味でこのカテゴリーに入れたわけでございます。  それから三番目に、カテゴリーとしまして、原子力発電を今やっているんだけれども新規の原子力発電計画は凍結するというような国、これは例えばベルギーとかオランダとかイタリアなんかがこの範疇に入るのかなという気がいたします。  それから最後に、四番目のあれとしまして、原子力発電廃止の方向に向かっておるという国、これは例えばオーストリア、これは一個つくったのでございますけれども、やめてしまったと、それからスウェーデン。以上の分類分けでございます。  これはかなり部分的にはダブっているというかぼやけたところがあって、本当の意味では正確じゃないと思いますけれども、大体そんなふうに分かれるのかなという感じがいたします。
  190. 松井隆

    政府委員(松井隆君) ただいまの外務省説明に多少追加させていただきたいと思います。  今言った動きというのは、やはりチェルノブイル事故、そういうものの影響ということが多いというふうに理解しているわけです。確かにチェルノブイル事故につきましては、いろいろとインパクトが大きかったと思います。ただ、私どもの理解では、やはり経済規模の大きな原子力発電を行っている国、具体的に申しますと、アメリカであるとかフランスであるとか、それから西ドイツもいろいろと反対勢力が強くなっているようでございますけれども西ドイツであるとか、あるいはイギリスであるとか、そういう国につきましてはやっぱり今後とも原子力発電を推進するという方針、これは変更がないというふうに承知しておるわけでございます。  もちろん私ども日本といたしましても、やはり非常に資源に恵まれない国でございまして、一次エネルギーの約八〇%は輸入に頼っているわけでございます。恐らくそれは今申した国よりも圧倒的に多い数字でございまして、やはり石油需給が現在緩和基調ではありますけれども、やはり中長期的には必ず逼迫してくる、そういう意味合いから日本としてはやはり石油依存度の軽減を図る、それからエネルギーの安定供給を確保する、そういう視点から引き続き石油代替エネルギーの開発利用ということを進めなくちゃならない国情にあるのかと思っております。  そういう意味では、先ほど申しました安全ということが一番大前提でございますから、やはり安全の確保というのを大前提として、原子力の開発利用をさらに着実に進めるということが必要かというふうに考えておる次第でございます。
  191. 広中和歌子

    広中和歌子君 核エネルギー依存度でございますけれども、現在そして将来にわたっての依存度でございますね、これは日本はどのように予想されるわけですか。
  192. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) 今後の電力供給に占める原子力発電の割合でございますが、昭和六十二年度の総電力需要は六千三百四十八億キロワットアワー、最大電力需要は一億一千四百四十九万キロワットということになっております。これは、今後年率二%強の割合でふえていくというぐあいに見込んでございまして、昭和七十五年度には総電力需要八千三百億キロワットアワー程度、それから最大電力需要が一億六千万キロワット程度というぐあいに考えてございます。  このような全体に対しまして、昭和六十二年十月に閣議決定されました石油代替エネルギーの供給目標におきましては、原子力発電は昭和七十五年度においては設備容量五千三百五十万キロワット、これは全設備容量の二五%、これは設備で二五%でございまして、発電電力量が三千五百十億キロワットアワー、すなわち発電電力量アワーベースで申しますと、全発電電力量の四〇%とすることを目標にいたしてございます。
  193. 広中和歌子

    広中和歌子君 何か、西暦二〇三〇年ですか、それには六〇%に至るというようなことを政府の要人が言っていらっしゃるということを聞き及んでいるわけでございますけれども、それは事実でございますか、大分先のことですけれども
  194. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) 通産省におきますところの原子力のビジョンということでございまして、いろいろ議論をしてございますが、二〇三〇年におきまして、電気出力、発電電力量という観点で六〇%というような議論がされておるのは確かでございます。
  195. 広中和歌子

    広中和歌子君 国際世論を現状で四つに分類していただいたわけでございますが、これがどのように動くかわかりませんけれども、しかし少なくとも電力において六〇%の依存度に、そしてほかの代替エネルギーの方の割合はふえない、ふえないかむしろ減るということは、ともかく石油は減るということですか。ちょっと問題ではなかろうかと思うのでございますけれども、いかがでしょう。
  196. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先ほど御指摘の二〇三〇年に約六〇%というお話でございますけれども、実は昨年の六月に原子力委員会が長期計画をつくってございます。その長期計画におきましても、一応その辺を目標にしようじゃないかというようなコンセンサスができていると。六〇%というのは、ちなみに申し上げますとフランスが現在七〇%でございます。フランスは電力七〇%に既に現在なってございます。もちろん七〇%が適当かどうかというのはまた別問題としてありますけれども、一応そういう例はございます。  それでその場合に、将来持っていく大きなシナリオといたしましては、やはり石油というのが非常に不安定なものでございますから、石油は少なくとも現在の輸入量から横ばい、できれば少し減らすぐらいで、原子力あるいは石炭、そういったもので補っていこう、こういうのが大きなシナリオというふうに理解しております。
  197. 広中和歌子

    広中和歌子君 例えば天然ガスでございますね、設備投資さえすれば供給したいという国または州、さまざまなところがあるのではなかろうか。アフガニスタンなんかにもあると伺いましたし、アラスカにも大量に眠ってむだにされていると聞きましたけれども、そういうような方向への設備投資、それは同時に海外の国々に喜ばれ、しかも我々のエネルギーの需要を満たすものであると思うのでございますけれども、そういう国際的な配慮というものも含めた計画も必要ではなかろうか。バランスの問題でございますけれども、いかがでしょうか。
  198. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 少し数字から御説明申し上げたいと思います。  先ほど申しました政府で決めています今後のエネルギーをどういうふうに確保していくかという計画を申し上げますと、石油につきましては、先ほど申しましたように六十一年度の実績でいきますと二・四六億キロリットル、それから七十年度は二・四五億キロリットル、そういう意味じゃ少し減っていく、それからさらに七十五年度は二・四二億キロリットルということを考えています。それから原子力は、先ほども申しましたように、今六十一年度が発電容量にして大体二千五百八十万キロワット、これが七十五年度では五千三百五十万キロワット。それから先ほど御指摘の天然ガスでございますけれども、現在、六十一年度で申し上げますと四千二百八十万キロリットルを消費しております。それで七十年度はこれを少しふやしてございまして五千五百万キロリットル、それからさらに七十五年度は五千八百万キロリットル、そういう意味で天然ガスは少しふやしていく。こういうような計画を持っている次第でございます。
  199. 広中和歌子

    広中和歌子君 実際、先ほどのエネルギーの独立というんでしょうか、それはすばらしいことだということ、それは日本人にとってはもう大変に夢のようなことだろうとは思うのでございますけれども、同時に、日本は原料をかなり輸入することによって輸出が可能であったという部分もあるのではなかろうかと思います。  しかもなるべく原料も輸入しないでテクノロジーでもって補っていくということは、いいことでもあるし、同時に今度は買ってくれない日本ということで、単に先進国だけじゃなくて発展途上国からも、例えばアラブなんか、今、西欧、他の諸国は石油を買い控えている、そういう中で日本にもっと買ってくれというような、それは決して長期的なものじゃないにしても、そういうようなこともあるのではないかと思うんですが、そういう兼ね合わせもありませんか。
  200. 松井隆

    政府委員(松井隆君) おっしゃるとおりでございまして、日本独自で自分のエネルギーを全部自分で賄う、こういうようなことはできるわけでもございませんし、やはり世界の中の日本でございますから、それなりの海外とのいろいろ交流、そういうものでやっていくべきであると思います。そういう意味合いも含めまして、例えば石油については将来なくなるのでやっぱり少しずつ減らしていこうじゃないか、それから天然ガスは少しずつふやしていくとか、そういった形でもってやはり全体のバランスを図っていくべきじゃないか。ただ、いずれにしろやはり現在日本では一次エネルギーの輸入量が八〇%近いわけでございますね。  それでほかの国をちなみに申し上げますと、例えばこれは六十年度の実績でございますけれどもアメリカが輸入依存度が一一・二%、それからフランスが五七・八%、西ドイツが四九・九%、イギリスは逆に輸出国でございまして、一六・四%輸出しております。そういうようなことで、そういった中でもやはり日本はもう少しエネルギーの自給を高めるということが望ましいだろうというふうには考えております。
  201. 広中和歌子

    広中和歌子君 今後のいわゆる核エネルギーへの世論というものは、いかに安全であるかということによると思いますけれども我が国の事故例でございますね、それはどういうものがございましたか。
  202. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) お答えいたします。  通産省では歴年、それからあと毎年度いわゆる報告される事象として電力会社から報告を受けてございます。事故と今先生おっしゃいましたけれども、我々としては故障もしくはトラブルのたぐいでございますが、それが本年度、これは六十二年度でございますからこの六十三年三月末までの一年間の集計でございますが、十九件ばかりでございます。ただ、その中には例えば定期検査と申しまして、原子力発電所を定期的に、ほぼ一年に一度でございますが、とめまして、それでチェックをするというそういうシステムがございますが、そのようなシステムの中でふぐあいが見つかったといったようなそういうものもございますので、運転中に、例えば安全保護系と申しまして、安全にとめる仕組みが働いてとまりましたといったような例は、多分自動的なものでは四件だと記憶してございます。  なお、この傾向は、御指摘がございましたけれども、最近原子力発電所、実は発電所の基数、これはプラントの数でございますが、だんだんふえてきてございます。それとの対応で見れば、毎年度ほぼこの数年間はそういう数になってございますけれども、いずれにいたしましてもこれをできるだけゼロに近づけるように、我々としては電気事業者を安全規制といったような観点で厳しく指導してまいりたい、こんなふうに考えてございます。
  203. 広中和歌子

    広中和歌子君 過去大きな原発事故といいますと、アメリカ・ペンシルバニア州のスリーマイルアイランドと、それからソ連のチェルノブイリの原発事故、この二件なのでございますけれども、技術的な立場からこの事故は何が原因だというふうに受けとめていらっしゃいますでしょうか。そして、日本でこの種の事故が起こり得るのかどうかという予想もお伺いしたいと思います。
  204. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) TMI事故につきましては、これは昭和五十四年でございましたけれどもアメリカ・スリーマイルアイランドで起こった事故でございますが、これは数々の運転される方のいわゆる重大な操作のミス、それからあと各種機器の誤った操作といったようなものが重なりまして起きたといったようなことでございまして、事故の後、これは事故と呼んでいいものだと思いますが、我が日本の場合の原子力発電所については、その当時総合的な総点検、再点検というのを行いました。それで、原子力安全委員会等でも特別委員会をつくっていろいろ議論をしたところでございますが、その結果、五十二項目ほどの指摘を受けまして、それを我が日本においては原子力発電所に反映されてございます。そういう観点で私思いまするに、我が日本におきましてはこのような事故というものが起こる心配はないということが確認されているというふうに思います。  ただ、しかしながら、我が通産省といたしましては、TMIの教訓と申しますか、この事故の教訓を常に頭に置きまして、我が国原子力発電所がより一層安全性が確保できるように、TMIの後、実は原子力発電所の各プラントが置いてございますサイトでございますが、そのサイトに常駐させる、いわゆる運転管理専門官というシステムをつくりますだとか、それからあと各種のその当時問題となりました安全解析の面でのコードと申しますか、計算するコードがございますが、その改良等によるところの安全審査の機能の拡充、充実といったようなこと等々をその後やりまして、緊急連絡網の整備等も重ねてやりまして、十分その教訓を反映させてきたところでございます。  それから、あとお尋ねがあったチェルノブイリの関係でございますけれども、これは一昨年ソビエトのウクライナで起こった事故でございますが、チェルノブイリの原子炉につきましては、これは日本原子力発電所で用いてございます原子炉とは原子炉の設計が異なってございまして、基本的に原子炉の設計という観点で、例えば中性子を減速する減速材だとか、それから熱を取り出す冷却材等々の組み合わせで原子炉の性格が基本的に決まるわけでございますが、そういう観点で設計上の問題があったということでございまして、いわゆる設計上の脆弱性に加えまして運転上の観点でも、言ってみれば規則違反といったようなことが重なって起こったといったようなことでございます。  これにつきましても原子力安全委員会のもとで特別委員会で御議論いただきまして、その結果日本におきましては起こりがたい事故であるという結論を得てございます。そんなふうに承知してございます。ただ、その際にも原子力安全委員会からの御指摘もございますが、なお原子力発電については慢心を戒めて、今後とも日本原子力発電の安全と信頼性の維持のために充実した施策を継続していくということが重要であるというような御指摘もいただいてございまして、その線に沿って種々の施策を進めておると、こういう状況にございます。  以上でございます。
  205. 広中和歌子

    広中和歌子君 技術水準につきましてはどんどん進歩しているし、非常に自信を持たれているということもわかるし、私ども一般の素人といたしましてもそういうことに信頼を置きたいわけでございますけれども、どのような機械でも最初の事故が起こるまでは安全なわけでございまして、つまり完全ではないだろうということでございます。  それから同時に、機械を扱うのは人間でございまして、そういう点では人間の訓練というんでしょうか、そうして先ほどちょっと触れられましたけれども、訓練制度とか資格制度、そういうものもございますんでしょうか。それと同時に、やはり待遇というんでしょうか、そういうものも非常に大切なんじゃないかと思います。待遇というのは私よくわかりませんけれども、例えばどのくらい機械に張りついて仕事をするのかというようなことを含めまして、それから休暇制度ですね、そういうようなことも含め、実態がどうなっているかということと、それから再検討をなさる御用意があるのかということをお伺いいたします。
  206. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) お尋ねの件でございますが、多岐にわたってございますけれども、最初に原子力発電所で働く人、主として御指摘の運転関係に関与される方々の技術レベルといったようなことでどんなふうになっているかという実態を御説明申し上げたいと思います。  まず第一に、原子力発電所におきましてはその設置者が、これはまあ電力会社でございますが、運転員の養成を基本的に責任を持って行っておるわけでございまして、これにつきましては中長期的な教育訓練、一日では成りませんものですから、長期的に教育訓練計画を作成してございまして、運転員に必要な技能のレベル、それから専門知識を修得させるように、またこれはその前に言うべきかもしれませんが、いわゆる安全意識の高揚、セーフティーカルチャー等とも申しますが、安全意識の醸成のための意識の高揚といったようなことで社員教育等も行われているということでございます。  原子力発電所の運転に携わる方々の専門知識や技能の修得につきましては、具体的にはまず新入社員と申しますか、入りまして、社内の研修で初歩的な原子力の知識、これを修得するということでございますが、その後現場に配属されます。現場に配属されまして、経験者の指導監督のもとに、いわゆる原子力発電所は巨大なシステムでございますが、その系統の様子だとか、ポンプ、バルブ等の機器の点検といったようなことを行いながら系統の構成、原子力発電所のシステムについて研修をするということで、これが約一年ぐらいあろうかと思います。  その後にその方は、一般的なパターンで申しますので若干の差はあるかもしれませんけれども、補機の要員としまして、補助的な機械でございますが、そういう要員として、実は当直、これは二十四時間で原子力発電所は動いておりますので当直体制をとってございますが、その当直に入りまして、原子炉を構成しております施設だとか電気系統、タービン施設について基礎的な知識や各系統機器の運転操作を修得していくといったようなことでございます。順次きっちりと原子力発電所の要員の訓練をしてございます。  それから、長くなって恐縮なんでもうやめますが、あと我が方では運転の責任者、これは当直長さんでございますが、当直長さんにつきましては国の質格試験の合格者をもって充てるといったようなこともしておりまして、いわゆる人のレベルということにつきましては、我々としては、日本におきましては技能、知識について、またその背景となる安全意識についても十分なレベルにあろうかというふうに考えてございますが、なお努力してまいります。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 協定の改正の問題に関して、最初に若干日本の原子炉などの現状についてお尋ねしておきたいと思うんですが、現在日本の原子炉は大体三十六基運転されているというふうに聞いておりますが、そのほとんどすべてが軽水炉、沸騰水型、加圧水型という型になっているわけですね。さらに、今後建設中のものあるいは建設準備中のもの、これもほとんど軽水炉型であるというふうに聞いておりますが、これはアメリカから輸入したものあるいはアメリカの技術を基礎にしたものというふうに考えていいのですか。その点はいかがでしょうか。
  208. 林幸秀

    説明員(林幸秀君) ただいまの御指摘の件でございますけれども、現在我が国で稼働中の原子力発電所は先生おっしゃいましたように三十五基でございます。それから一方、建設中の原子力発電所は十二基でございます。これらはすべて、一基だけ除きまして軽水炉でございます。この軽水炉は、導入いたしました初期におきましてはアメリカの技術導入という格好で建設がなされたわけでございますが、その後、電力会社あるいは国内のメーカーといったところが一体となりましていろいろ技術開発などを行いました結果、原子力発電所の機器の国産化率というのが徐々に高まっておりまして、近年運転を開始しております原子力発電所はほぼ一〇〇%の国産化率になっておるということでございます。
  209. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) 委員長ちょっと補足させていただぎます。  今、先生の御質問で三十六基とおっしゃったのに対しまして林室長が三十五基と申しましたのは、恐らく新型転換炉原型炉「ふげん」を先生は数えられ、こちらの方では商業用原子力発電所ということで数えていないということによるものと思われます。
  210. 立木洋

    ○立木洋君 一九五〇年代にいろいろ平和利用の問題が問題になり出して、御承知のようにソ連なんかでもオブニンスク型の炉だとかあるいはイギリスのコールダーホールなどのあれがつくられている。当初東海に入れたのはたしかイギリスのコールダーホールだと思うんですが、これがいろいろ問題になって、そしてそういうことが一つの軽水炉を導入する原因にもなったかと思いますけれども、どうしてアメリカ型の軽水炉を基調にして日本原子力の開発ということに据えられたのか、その考え方というのかその要因というのか。これは通産ですか。
  211. 林幸秀

    説明員(林幸秀君) なぜ軽水炉を導入したのかという問いだと考えておりますけれども我が国原子力発電株式会社、東京電力、それから関西電力が軽水炉をアメリカより導入することを決定いたしましたのは、昭和四十年ないしは昭和四十一年というそういう時期でございます。それの理由でございますけれども、我々が聞いておりますのは次の理由であるというふうに聞いております。  まず第一点は、軽水炉が、今先生おっしゃいましたようなコールダーホール型とかその他の炉に比較いたしまして発電コストが低いというふうに推定されたというのが第一点でございます。  それから第二点は、やっぱり経済的な問題でございますけれども、軽水炉がコールダーホール等の他の炉型に比較いたしまして大型化しやすい、大型化しやすい結果としてさらにそのコストがより有利になるという技術的な見通しが得られたという点でございます。これが第二点でございます。  それから第三点でございますけれども、これは軽水炉を開発いたしましたメーカー、これはアメリカのメーカーで、ウエスチングハウスないしはGEというメーカーでございますが、その両社は火力発電の設計、建設におきましても我が国の電力会社との関係を有しておりまして、しかもなおかつ非常に高い信頼性をかち得ていたという第三の点がございます。  それから第四点、これは軽水炉の燃料といいますのは微濃縮ウラン、三%程度の濃縮ウランが必要なわけでございまして、必然的に濃縮というサービスを必要とするわけでございますけれども、その濃縮サービスにつきまして当時日本にもちろんなかったわけでございますが、それにつきましてアメリカ政府が全面的な供給保障を行ったと、そういう点がございます。  以上四点から当時電力会社といたしましては軽水炉を主力として原子力を考えていくということになったと聞いております。  なお、四十年当時ガス炉を開発しておりましたフランスあるいはイギリス、これはイギリスはコールダーホールでございます、そういう国におきましてもその後ガス路線を放棄いたしまして軽水炉路線に転換しておりまして、我が国原子力電力会社等の当時の選択というものは誤っていなかったというふうに考えております。
  212. 立木洋

    ○立木洋君 当時のいわゆる原子力平和利用というのは核兵器の生産ということと切り離して存在し得たわけではなくて、いわゆる核兵器の生産の中で可能な濃縮ウランというものに結びついて平和利用ということが問題になってきたということがあったと思うんですね。ですから、アメリカの場合でもこの軽水炉の問題というのは、当初潜水艦用の動力炉の実験計画を発電炉の計画に変えていくということが現実に行われていった。そういう経過の中でこの軽水炉がいわゆる実際商業用の開発として実用化されていくようになってきた。この点はもちろん考えておられるだろうと思います。  現在の国際的な科学者、技術者の中でも恐らく数少なくない人たちが今の問題で平和の問題についての考えを及ぼすに至っていますけれども、重要な点では少なくない科学者や技術者が依然として核兵器の生産に携わる、核兵器の開発に携わる、真剣にやっぱり平和的な利用の面にこの技術を生かしていくという点ではまだまだ不十分さがこれまでの長い間存在してきた。これは世界的なことですよ。そういう状態にあったということを念頭に置いて、日本での平和利用の面ではどういう点を特に考慮してこの国産の開発なんかの面で努力をしてこられたのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  213. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 御案内のとおり、確かに原子力の開発というのがやはり当時、例えばアメリカとかソ連、それからほかの国もそうかもしれません、そういった軍事的な目的というのがかなり大きなウエートを占めていたことは事実でございます。  日本先生御案内のとおり、日本原子力の開発利用を始めたのは昭和三十年ごろでございまして、確かに昭和三十一年の一月だったと記憶しておりますけれども日本としてこの原子力開発を進めるに当たって、やはりその平和利用に限ってやろうという形であの原子力基本法ができたわけでございます。その原子力基本法におきましては、平和利用ということがはっきりうたわれているわけでございまして、それ以降私ども日本といたしましてはそういった各国とは別に、日本としてはあくまでこの原子エネルギーを平和利用だけにするという目的で開発利用を進めてきている次第でございます。
  214. 立木洋

    ○立木洋君 どういう点に特に留意しているかという点については明確なお答えではなかったですけれども、そこでやはり私は先ほど言われたいわゆる軽水炉が非常にコストが安くいわゆる大型化しやすい、あるいは濃縮ウランアメリカに依存している、いろいろな例を挙げましたけれども、私はやはりさっき申し上げましたように、一九五○年代に入ってアイゼンハワーの宣言等が出され、そしてその中でいわゆる原子力平和利用という面での市場をいかに確保するかということの競争が非常に強く行われてきた。そういう状態の中でアメリカ日本をこの市場の確保の場として非常に重視してきた。これは何にでも書かれているんですよ。  そういう状況の中でやはり日本が御承知のように、これは旧安保ですか、日米安保体制のもとにあったということとの関連で、やはりそういうことは無関係ではなかったと。だから原子力の開発はアイゼンハワーの宣言にこたえていわゆる緊急の国会に予算を提唱したというのは一九五四年でしたよね。これは宇野さん御承知だろうと思いますけれども。  あの当時に自主的な開発、研究は何にもなされていないのに、予算だけ緊急に上程されるとはどういうことなのだということが大変なやっぱり問題になった。そしてその後これに対して原子力基本法などが問題にされてきたという経過があったわけですね。やはりそういう経過を踏まえて私たちはやるべきではなかったか、考えるべきではないのか。だとするならば、アメリカに軽水炉を依存したというのがただ単にいわゆる低コスト、大型化しやすい云々の問題だけではなかったという問題がやはりあったということを念頭に置かなければならないと思うんです。  それで私はお聞きしたいのは、このウランですね、ウラン鉱石はアメリカに依存しているのは、去年かおととしあたりの状態で言いますとわずか六%だと思うんですが、ウラン鉱石は。しかし濃縮ウランの依存度というのは約九割近くという状態になっているのは間違いないでしょうか。
  215. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) 現在我が国の天然ウランの購入契約量でございますが、全体約二十万ショートトン、これは八酸化三ウラン、U3O8に数えまして二十万ショートトンでございますが、うち対アメリカ契約分は一万トン強でございますから、ごくわずかな割合でございます。それに対しまして御指摘のとおりに濃縮ウラン役務提供に関しましてはアメリカにほぼ九〇%程度依存しておると申し上げてよろしいかと思います。これが現状でございます。
  216. 立木洋

    ○立木洋君 大分昔のことになりますから、今ごろこんなことを持ち出してわからないと言われるかもしれませんけれども、当初やはり濃縮ウラン協定を、一九五五年にアメリカに依存するという協定を結んだわけですね。結局それ以外に選びようがなかったのかどうなのか。例えばヨーロッパなんかに対しても濃縮ウランを依存するんだとか、そうしたら一定のアメリカに対する自主性も、何といいますか、いわゆる対等性といいますか、そういうものも持てたんじゃないかと思いますけれども、当初どうしてアメリカにだけ濃縮ウランを完全に依存するということになったのか。昔のことですからこれはわからないかもしれませんけれども、何かわかっている点がありましたら。
  217. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) お答え申し上げます。  先ほど対アメリカ依存度約九〇%と申し上げましたけれども、年々状況が変わったりいたしまして、一九八七年の年度別では約八〇%と申し上げる方がより正確であるということでございます。基本的には先生御承知のように、アメリカはオークリッジそれからパデューカそれからポーツマスと非常に大きな濃縮工場を持っておりまして、確かにあの当時安定した供給力を有しておるということであったかと思います。そういう意味では非常に安定した供給元という観点から電気事業者はアメリカと契約したということでございます。  ただ、御承知のごとく最近はヨーロッパ等でも濃縮能力を持っておる国あるいは国のグループが非常にございますので、それとのバランスでございますが、今でも基本的にはこれまでの流れあるいはアメリカの供給安定性ということ等々の観点から、主としてアメリカからの供給に依存しておるというのが現状かと存じます。
  218. 立木洋

    ○立木洋君 なかなかいいことばかりおっしゃいますけれども。  こういう、アメリカにやっぱり基本的に濃縮ウランを依存するというのはいつごろまで続くんですか。
  219. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) 御承知のごとく、我が国におきましても濃縮ウランの役務をなるべく国産化していきたいという政策をとっておるところでございます。その観点から、民間電気事業者が中心となりまして日本原燃産業株式会社というそのための会社をつくってございます。これが青森県六ケ所村に商業用のウラン濃縮施設を建設することを進めてございまして、これが昭和六十六年度から一部運転開始いたします。もちろんその前段階といたしまして、動力炉・核燃料開発事業団は一貫して国産化の計画を進めてまいりました。昭和六十六年度から商業用のウラン濃縮施設が稼働を始めまして、年間百五十トンSWU分ずつふえてまいりまして、昭和七十五年には一千五百トンSWUの設備に達するということになってございます。  それから、今世紀の終わりと申しますか、二十一世紀との前後あたりまでに大体私どもといたしましては三千トンSWUぐらいのものに達したい、そのころにおきまして我が国の必要であります濃縮ウラン役務の三分の一あるいは三割程度を国内で供給したいという計画でございます。それ以外は海外に依存せざるを得ない、そういう状況でございます。
  220. 立木洋

    ○立木洋君 何でこんな古いことを申し上げるかというのは、これからなぜこれを改定したかということをお聞きしたいからなんですが、つまり今いろいろとアメリカに軽水炉を依存するのはコストが安くて大型化しやすいし、濃縮ウランも安定的に供給を依存できる等々のことをおっしゃいましたけれどもね。あんた元科技庁長官の顔ばかり見ながら答弁しましたけれどもね。そのために宇野大臣があれで大変苦労されたじゃないですか。  昭和五十二年でしたか、あのときの状態というのは、日本ではあの東海のいわゆる再処理工場、あんなことをアメリカにいちゃもんかけられるなんてだれも思っていなかったんでしょう、政府だって。それが現に金なんかは全然、資金なんかも依存していない。物はフランスでしょう。それが問題は八条C項ですよ。これによって大変なことになって、長期のあんな大変な交渉をしなければならなかった。あのときにやられたのは宇野さんでしょう。それが今生かされているかどうか、これは別ですよ、後でまた私が言わなければならない。そういう事態になったという、アメリカに従属した状態にあの原子力協定がなっていたということは大変苦慮しなければならなかった。  日本のエネルギーが外国に依存しなければならないといういろいろなハンディがあるということはこれはありますよ。しかし、だからといっていろんな問題、こういうことを選ぶ場合に、やっぱりいかにして対等性を確保するのか。日本の自主的なエネルギーの開発ということをどれだけ重視していくのか。そういうことを考えないでやるということの歴史を振り返ってみると、今の事態で私たちが考えなければならない教訓も決して少なくないということを私は強調しておきたいと思うんです。後でその御所見はまた大臣の方にお聞きしますけれども。  それで問題は、今度の原子力協定の改定というのはなぜ必要になったのかという問題を聞きたいんです。これは遠藤さん、双方が合意したなんておっしゃいましたけれども、ちょっと違うんじゃないですか。正確に言っていただきたいんですがね。
  221. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今先生お話しのように、日米現行原子力協定、あのもとで日本は、先ほどからの議論がございますように八割強の濃縮ウランアメリカからの供給を受けており、できたものは、使用済み燃料はイギリスなりあるいはフランスなりに再処理を持っていく、そういうふうな原子力活動で行ってきたわけでございますけれども、御承知のとおりの一九七七年の例の東海再処理工場のときの例にもありますように、アメリカ国内のいわゆる核不拡散の声の強化ということから、ああいうふうな一九七七年の東海再処理工場交渉経緯があったわけでございます。  日本としましては、この東海第一再処理工場の運転開始につきましては、当時宇野科技庁長官と先方のジェラルド・スミス大使との交渉により乗り切ったわけでございますけれども、しかしながら今後その第一再処理工場から第二再処理工場へと進んでいくそういう段階において、やはりもう少し日本原子力活動を長期的なものあるいは予見可能的なものに置かなくちゃいけない。そのためには、じゃどうしたらいいのかということが一つ。その要請として、やはりこれは包括同意をとらなければいかぬということが日本側の要請としてあった。これは七七年の交渉経緯で殊にそれを強く感じてきた、こういうことがあると思うのでございます。それが日本側の事情であったわけでございます。  他方アメリカ側の事情としましても、これは一九七四年の例のインドの核実験等々からまいります核不拡散の声の高まり、こういうことも踏まえて、ちょうど一九七八年に御承知のとおりの核不拡散法ができた。核不拡散法によって、アメリカが各国と結んでおる原子力協定の中に、核不拡散を強化するような要素を盛り込むべしというアメリカの要請が出てきた。  これは、実は先生アメリカばかりのあれではなくて、核燃料供給国であります豪州とかあるいはカナダ等々にも同じ声が出てきまして、この核不拡散体制の強化というのはいわゆる私は一種の国際的な趨勢かなというふうに思うわけでございますが、いずれにしましても、日米に関します限りアメリカ側からのそういったようなあれが出てきた。そこで、両者の要するに利益の調整というか、要請をどうやって調整するかというこれがアメリカ日本の両方から出てきたということが言えるかと思います。
  222. 立木洋

    ○立木洋君 つまり第一次の日米交渉ですね、いわゆる東海村の再処理工場の問題をめぐっての交渉の中で、日本側がこの問題について何とかしなければならないという感じを持ってきたということは私は否定しません。そういう感じがあっただろうと思う。しかし、これを改定しようということを持ち出してきたのはやっぱりアメリカ側なんですよ。  これは一九七四年にインドで核実験がやられて、これは大変だということになって、カーター大統領の時代に今言われました核不拡散法というのが国内法としてつくられたわけですね。それで、それによって各国との協定の見直しということを提起してきた。一九七九年じゃないですか、日本側にこういうふうにして改定したらどうですかという提起をし始めてきたのは。そして、鈴木さんと話し合いをして、首脳会談でやろうかというふうになってきたのが一九八一年ですよ。だから、アメリカ側からどうですかと、日本側にもそういう感じはあったにしても、だから双方で合意したんだけれども。だからそこのところはちょっとはっきりしておかないと私はいけないと思う。
  223. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) どちらが言い出したかということでございますけれども協定改定交渉というか、核不拡散法の要件を新しい協定に入れるべしというのはアメリカ国内法の要請でございまして、その意味では今先生のおっしゃるとおりかと思います。
  224. 立木洋

    ○立木洋君 いや、どっちが言い出しっぺかというのは、変な意味でそのどちらが先に言い出したかということじゃなくて、いわゆる最初の改定案を提起してきたということの持っている意味というのは私は特に重視したいと思うんです。  今度の協定の内容を考える上でやはりいろいろ新聞なんかに批判されていますよ、これは木と竹とくっつけたようなものだとかというようないろんな批判が新聞に出ているのを私は見たことがありますけれども、しかしいろいろな問題点がある。その問題点があるというのは、双方がいわゆる改定に、利益が一致したからということだけではなくて、やっぱり問題の違う点があるんだということをはっきりさせるために私は指摘したいんですが、アメリカのいわゆる核不拡散法というものはどういう特徴を持っていたのか、その点についてちょっと説明していただきたいんですが。
  225. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) アメリカの核不拡散法、これは一言で言えば、もちろん御承知のとおり、核不拡散体制を要するに強化していくということに抽象的には尽きるわけでございますけれども、具体的には、二国間協定の中でアメリカが結んでおります諸外国との協力協定には、この核不拡散を強化するために次のような要件を盛り込むべし、盛り込んだような協定を結ぶべしと、あるいは改定すべしと、こういうふうなことが書いてございまして、それは八点ぐらいあるわけでございます。  一つは、核爆発あるいは軍事利用を禁止すべし。それから第二点は、第三国移転、つまり核物質であるとか機材であるとかそういったものにつきましての第三国移転には事前同意が要るんだと。それから第三番目には、再処理等の事前同意。これは再処理ばかりじゃなくて、二〇%以上の濃縮ウランの高濃縮に関する事前同意、それからあるいは形状変更等の事前同意でございます。それから第四番目には、プルトニウムと高濃縮ウランの貯蔵の事前同意。それから第五番目には、IAEAの保障措置がかかっておるべきだということ。それから第六番目には、協定期間を超えた場合のあるいは協定が何らかの形で終わった場合の協定の諸条件をどうやって存続させていくかという問題。それから第七番目には、返還請求権の問題。それから第八番目には、核物質防護の措置。こういうふうな条件を入れた協定を結ぶべしと、こういうふうなのがNNPAのたしか第四〇一条だったと思いますが、四〇一条に載ってございます。
  226. 立木洋

    ○立木洋君 結局は、原子力協定を結んでいるアメリカとしては、相手国に対して核不拡散という建前で規制を強化するということが基本的な内容になっていると。言うならば問題は、アメリカは核兵器を持っているわけですよね。それでほかの国には持ってはいかぬということを言うわけですな。これ以上核兵器が広がらない方がいいにこれは決まっていますよ。しかし、御本人は持っているから自分が核兵器を持っているという優位の地位、これを独占的に確保できる状態を維持していくわけですね。そして、その核兵器をふやさない、建前としては非常にいいけれども、それに対する規制的な地位を強化する。  そこでお尋ねしたいんですが、この核不拡散法に基づいて、いわゆる御承知のユーラトム九カ国なんかとの話し合いを開始するというふうに言っていますが、このユーラトムのアメリカとの交渉経緯はどんなふうになっていますか。
  227. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 実は立木先生、よその国の交渉でございますから必ずしもつまびらかにしているわけではないのでございますけれども、現在、アメリカとユーラトムの間には協定がございます。この協定を、何といいますか大統領権限でたしか一年ごとに延ばしてやっておるということでございまして、アメリカ側としましてもあるいはユーラトム側としましても、日米原子力協定を、殊にユーラトム側からしますと日米原子力協定の成り行きを非常に見ているというふうに思われます。  現在、交渉がどこの段階——交渉が始まらんとしておるか始まっているかという、つまり日本の状況に照らして言いますと、ちょうど一九八四年の日米交渉段階ぐらいか。つまり八四年と申しますのは、交渉自身五年ぐらいかかったわけでございますけれども、最初の二年間というのは、実は現行協定の枠内で何とか処理できないかと、こういういろんな話し合いを続けてまいりましたのが三年間で、後二年後になりましてこれはだめだということで新協定締結に方針を変えたわけでございますが、ユーラトムとアメリカ交渉、大体その真ん中ぐらいかなという感じを抱いております。
  228. 立木洋

    ○立木洋君 つまり一九七八年にアメリカ国内法で核不拡散を出しまして、そして相手側に、どうだ話し合いしないかという問題を提起してから言うならば九年ですよね。そして、なぜこんなに進まないのか、進まない原因がどこらあたりにあるとごらんになっておいででしょうか。他国のことだからということもあるかもしれませんけれども、どういうふうにごらんになっておりますか。
  229. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生の今お尋ねは、日本につきまして……
  230. 立木洋

    ○立木洋君 いや、日本ではないです。
  231. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) ヨーロッパとの関係はそういうふうなことでございますが、あとアメリカ側が既に協定締結したのが三つ、三カ国ございます。一つはスウェーデン、それからもう一つはノルウェー、これは両方ともたしか八四年ぐらいだったと思いますが、発効してございます。それからフィンランドとの間にもアメリカは新協定締結いたしております。しかしながら、これはたしかどちらかの理由でもってまだ発効には至っていない、こういうことでございまして、したがいましてスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、こういうところではもう既にこのNNPAが成立しました後の協定ということでは挙げられるかと思います。
  232. 立木洋

    ○立木洋君 さっき私が言いました、アメリカ国内法として核不拡散法というのが一九七八年につくられたと。このときにはヨーロッパでは大変な反発をしたんですね、フランスなんかでも。そういう国内法を国際的な形で他国に押しつける、他国の協定との間にそういう内容を盛り込もうとすることは一国の主権に対する侵害ではないかという厳しい反発まで出たわけですね。  基本的な問題というのは、私はそういう核不拡散法という国内法の中に盛り込まれた内容で、他国のエネルギー政策にかかわる問題に対する規制を強めようとする点に重大な反発があったという点は間違いないんじゃないですか。
  233. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) お答え申し上げます。  先生、私どもといたしましては、米国からのそういうこと以外に、INFCEという会議があったことをぜひ申し上げたいと存じます。これは御承知のとおりに、宇野大臣とジェラルド・スミスの間の交渉がセットいたしましたことから……
  234. 立木洋

    ○立木洋君 私の質問に答えてもらえばいいんです。
  235. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) はい。終わったのが五十二年の九月でございましたけれども、五十二年の十月から五十五年の二月まで国際核燃料サイクル評価という活動をやったわけでございます。 ここで我が国あるいはアメリカ、ヨーロッパ等の各国が……
  236. 立木洋

    ○立木洋君 その記録持っていますから結構です。
  237. 石田寛人

    説明員(石田寛人君) はい。御承知のとおりでございます。  そこで、御承知のとおりに、核不拡散平和利用両立可能というそういうことになったわけでございますので、それを踏まえながら鈴木・レーガン共同声明につながっておるということを御理解願いたいと思います。
  238. 立木洋

    ○立木洋君 私の質問したことに答えてもらえばいいんです。あなた日本政府の立場を弁明するために一生懸命やろうとしている気持ちはわかりますけれども、私はそういうことを聞いているんじゃないんですから、聞いたことにお答えいただきたい。
  239. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 確かにNNPAの中の私が先ほど御説明申し上げました八項目、これは核不拡散をなるべく強化していきたいということで、これはやはり七四年の例の事件というかインド核爆発、それから始まりました——実はインド核爆発というのは、むしろやはり核兵器に転用されるようなプルトニウムがふえてきたことの一つの象徴的な事件じゃなかったかと私は思うわけでございますが、いずれにしましてもそういうこと以降、核不拡散体制を強化すべしという意見は、これは先ほど冒頭に御説明申し上げましたように、アメリカばかりではなくて、カナダ、オーストラリア等々に、かなりの国に抱かれておる趨勢でございまして、したがいまして、このアメリカ側の核不拡散法というNNPAの要件というのは、私はやはり原子力大国、平和利用原子力の分野での大国である日本としましてはわかることだと思うわけでございます。  したがいまして、そのアメリカ側のNNPAの要請は、アメリカそれ自体ということはもちろんそのとおりなんですが、同時に一つのやっぱり国際的な要請ではなかったかと、それが一方にある。しかしながら、さはさりながら、やはり日本原子力活動についてそういうものが全部かぶってきて、個別同意の対象になるというのは日本原子力活動を阻害する。したがいまして、片方に核不拡散体制への強化の要請があり、片方に原子力平和活動の支障なきを得るというこの二つの要請をどうやってバランスをしていくかと、こういうこと、今回の協定はその両者のいわゆるバランシングというか調整の結果であろうと、私はそういうふうに考えているわけでございます。
  240. 立木洋

    ○立木洋君 核不拡散ということが世界的な趨勢だったと、いわゆるインドのああいう核実験が行われて以後。それはわからぬことはないですけれども、しかし極めてきれいにし過ぎると思うんですよ。  大体、交渉の経過を見てみますと、遠藤さんね、一九八二年から交渉が始まったわけでしょう。当時は中川さんでしたか、科技庁長官が。あのときにやはり日本は、核不拡散法に基づく新しい国際的な義務を負うということに対しては反発したんですよ。新しい協定を結ぶということには賛成しなかったんだ。現協定の枠内でやりたいというのが方針じゃなかったじゃないですか。それは日本がそのときは間違っておったというんですか。どういうふうな焦点でそういうふうになったのか、問題は。余りきれいに言わないで、本当のことをちょっと説明してください。
  241. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 一つ具体的な例を申し上げますと、例えば核不拡散法では、二〇%以上のウラン濃縮、つまり高濃縮というものは事前同意の対象にすべしという新しい要請を出しております。ですからアメリカ側としては、新しいそれを日本も受け入れてくれと。それに対しまして日本といたしましては、日本は二〇%以上の濃縮をする予定は全くないわけでございます。したがいまして、現行協定上、その部分はアメリカの要請かもわからないにしても、日本といたしましてはそれを全くやるつもりもやる計画もないわけでございますから、そういうことは協定に書く必要はないのではないかと、こういうふうな議論があったわけでございます。  ところが、アメリカ側の方の二〇%、日本はそうかもわからないけれども、これは各国にもそれを受け入れてもらっていることであるし、INFCE等等でもたしか二〇%の濃縮云々というのは一つの問題になってきているので、やはり新しい原子力協定ではそれを取り入れたいと。これは現行協定からはみ出すわけでございまして、そうなりますとやはり新協定にせざるを得ないと、こういうようなことがあったわけでございます。  それは一例でございますけれども、そういうようなことから二年間ばかりそういったような議論を続けまして、ちょうど一九八五年だったと思いますけれども、八五年からやはり新協定にしない限り問題の処理ができないということで、要するに現行協定の中でのあれから新協定への方針転換と、こういうことをやったわけでございます。
  242. 立木洋

    ○立木洋君 濃縮ウラン一つの例だと言われましたけれども、だけれども、新しい協定につくりかえなければならないというのは、私は日本政府が態度を変えたのは、プルトニウムに対するアメリカ側の譲歩じゃなかったかと思うんですね。アメリカ側が、同意を求めるにしてもプルトニウムの貯蔵を認めることになった。それからプルトニウムに対するIAEAですかの査察だけじゃなくしてアメリカも査察をしたいという要求があったのが、その査察がIAEAの査察だけでいいということになった。そういうことで転換されたというふうなことが書いてあるものもあります。  私は、いずれにしても、この問題について言いますと、先ほどアメリカ側が出してきた核不拡散法の規制の要求、この内容というのはほとんどこの内容の中に盛り込まれているわけですよね、この協定の中に。この問題は、ですから、先ほど包括的な同意と、包括同意ということが実現されたということを非常に高く評価をするというふうな意味の説明がございましたけれども、事実上包括的な同意を得るにしても、これはやっぱり事前の同意を得なければ、包括であるか個別であるかは別としても、同意を得なければならないという点では私は変わりがないと思う。その点は私はびちっとしておかないといけないんじゃないか。包括同意だから勝手にできるんだじゃないんですよ。包括であろうと個別であろうと、アメリカ同意を得なければできないんだという点がやっぱり私は問題だと思う。  そういう点で言いますと、ここで言われたアメリカの核不拡散法の内容の規制がほとんど盛り込まれて、さらに言うならば、貯蔵の問題にしろあるいは二〇%以上の濃縮ウランの問題にしろ、この一部の措置の問題が従来は同意なしにできたのが、やはりそれにも規制がかけられてきているということになると、やはり規制、同意を得なければならない枠が拡大されたというふうにも私は見ることができるんではないだろうか。そこらあたりはシビアに私は見ておく必要があると思う。  ですから、これで何か日本が自主的に、アメリカ同意を得ずにエネルギー問題でアメリカの従属の状態から解放されたというふうな意味合いではないんだということは、私ははっきりしておく必要があると思うんですけれども遠藤さん、どんです。
  243. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 確かに先生おっしゃいますように、この協定のもとで規制権が拡大されたというのはそのとおりだと思うのでございます。しかしながら他方、繰り返しになりますけれども包括同意が入っている。それからもう一つつけ加えたいと思いますのは、この規制権というのは相互にかかっておる規制権でございまして、現行日米原子力協定では規制権というのは一方的になっておるわけでございます。  ところが、この新協定のもとでは規制権というのは双務的になっておる。これは確かに現在の状況においては流れがそうではないかもわかりません。しかし、この協定は三十年間の協定でございまして、日本原子力技術、私がちょっとこれを言うのは口幅ったいんですが、原子力技術は日進月歩やっておりますし、そういう状況を考えましたときにこの取り決めを双務的なものに変えたということで、したがいまして規制権というのはアメリカからのみならず日本からのアメリカに対する規制権も拡大している、というか、これは新設だと言っていいと思いますけれども、されておる、こういうことで御理解いただきたいと思うんですが。
  244. 立木洋

    ○立木洋君 今いみじくも遠藤さん自身も否定できなかったのは、やっぱり現状の状態というのは日本側から提起をして現実に双務的になり得るという状況ではないと。将来は、それは進歩したらどうなるかということがあり得るんだということをあなたおっしゃいましたけれども、私はその点でもう一つ重要なことをここで指摘しておきたいと思うんです。  この問題の中には、非常に重要な点は、この協定の第十一条あるいは実施取極の三条などで提起されている問題ですが、もうこれはいろいろ問題になっているのでおわかりでしょうけれども、ここには、十一条では「それぞれの国における原子力平和的利用を一層容易にする態様で満たす別個の取極を、核拡散の防止の目的及びそれぞれの国家安全保障の利益に合致するよう締結し、かつ、誠実に履行する。」ということが書かれてありますし、この問題についても実施取極の三条では同様に、「核拡散の危険又は自国の国家安全保障に対する脅威の著しい増大を防止するため、第一条において与える同意の全部又は一部を停止することができる。」と、包括的に同意した内容についても停止することができるということまで、停止の規定まで入れているわけですね。  ここで言われている国家の安全保障の利益というのはどういうふうなことを意味するんでしょうか。
  245. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) どういうふうに御説明しようかと今考えているのでございますけれども、ここで十一条及び実施取極の第三条で問題にしていますのは、包括同意が存立し得るための基盤、逆に言いますと包括同意が停止される場合の状況ということを言っておるわけでございますが、その観点に立ちますと、包括同意が停止されるのは核拡散が起こったときである、あるいは国家安全保障の利益に合致しないような場合であると。  そこで、本件につきましては既に別途議論さしていただいたわけでございますけれども、国家安全保障、つまり核拡散ということと国家安全保障、逆に言いますと、核拡散の危険の増大に関係なしに国家安全保障に関係するような現実的な、何といいましょうか事例というのは想定できないわけでございます。逆に言いますと、この包括同意が停止になりますような場合には核拡散の危険が出てきた、それは国家安全保障の利益にもとるものである。つまり、確かに抽象論といたしましては、核拡散と国家安全保障というのは違う概念かもわかりませんけれども……
  246. 立木洋

    ○立木洋君 遠藤さん、ちょっともう少し質問進めますからね。
  247. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) はい。
  248. 立木洋

    ○立木洋君 大変苦労して答弁なさっているようですけれども、率直に言えば、国家安全保障の利益に合致するようにといってこれを文言に入れようと言ったのはアメリカ側でしょう。日本側が入れようと言ったわけじゃございませんよね。アメリカ側が入れようというふうに言ってきたと。これはアメリカ合衆国の核不拡散法の中にたくさん入っています。国家の防衛と安全という文言が過大に盛り込まれている。これが挿入されたということだと思うんです。  それで、今のお話を聞きますと、これは核不拡散核拡散の防止という概念といわゆる国家安全保障という概念はほとんど変わりない、同じものであるというふうに言われた。そうすると、少なくとも二国間で協定される条文の中にそんな書いても書かなくてもいいような文言を入れるようなあいまいなものなんですか、協定というのは。入れるというからには入れるなりの重要な意味があるから入れるんじゃないですか。入れなくてもいいような文言を入れる、そういうのが協定というんでしょうか。
  249. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生指摘のように、この国家安全保障の字句というもの、こういった字句を協定の中に入れるべしということは、核不拡散法の特に四〇一節にその旨書いてあるわけでございます。  そこでアメリカといたしましてはこれを入れたいと。いろいろ議論しましたところ、つまり包括同意を停止するに関しては、核不拡散という概念とそれから国家安全保障の利益にもとる概念とは実際上ダブるものである、したがって国家安全保障だけがはみ出した概念として、それによって包括同意を停止したりなんとかするようなことには至らない、そういう事例は想定できない、こういうふうなアメリカ側の説明。で、日本側も全くまさにその説明。そういう説明の認識の一致であれば国家安全保障という字句をここに入れることは受け入れることができる、こういうふうなことになったわけでございます。
  250. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、日本側は今度のこの主張の中でいわゆる核不拡散核拡散防止に反する行為、言うならば例えばNPTから脱退するだとか、日本が核兵器を持つだとか、そういう場合だと思うんですね、単純に言えば。そういうことまで日本側は交渉の中で主張されたわけでしょう。こういう具体的な状況だったら具体的な状況でそれでいいじゃないかと。  あなたは今認識がそれで一致したと。認識が一致したなら、その認識をなぜこの合意議事録に書かないんですか。合意議事録というのはそういうものじゃないんですか。重要な問題で、こういう点ではこういう点での意見の一致がありましたと書くのが合意議事録じゃないんですか。合意議事録にはそういう文言一つも触れていない、しかし何か話の上では一致したということになっているというのは、いかにも外交的にはあいまいで、後で問題になったときにどういう事態になるかということを考えない無責任な外交のやり方と言われても仕方がないんじゃないですか。合意したなら、なぜ合意議事録に書かなかったんですか。
  251. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今の、ちょっとさきにさかのぼりますけれども、国家安全保障云々の字句が入っておりますのは、アメリカ日本より先に結びました協定にもほぼ同じような文言が入ってきているわけでございます。これはスウェーデンとかノルウェーのあれでございますけれども……
  252. 立木洋

    ○立木洋君 私はスウェーデン、ノルウェー関係なし。日本のこと。
  253. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) はい。  それで、そういうふうな認識が一致して、国家安全保障の利益ということだけで包括同意が停止されるような、つまり核不拡散関係なしにはあり得ない、こういう認識をなぜ書かないのかというわけでございますが、合意議事録に書かなくても、この点は両者の認識が一致ということで十分ではないかと私は思うわけでございます。  と申しますのは、つまり日米原子力協定のそもそものよって立つ基盤といいますのは、日米間の何といいますか信頼関係、そこに依存するものである。したがいまして、そういうことからしますれば、その認識の一致を見たことを必ずしも全部合意議事録に書く必要はなく、それはそれとして十分に両方でもって理解しているわけでございますから、それでいいのではないか、こういうふうな判断に至ったわけでございます。
  254. 立木洋

    ○立木洋君 信頼関係ですべての外交問題が処理されるならば、それはいとも簡単ですよ、あなた。いわゆる親兄弟の中でも金銭のあれが別れ目だとかなんとかと言われるように、もっとシビアなものですよ、外交というのは。きちっとしなければならないところはきちっとしないといけない、言うべきことは言わなければならない。これは宇野さんもいつも言われる。言うべきことはきちっと言わなければならないということを強調されている。あいまいなことになって、これ問題はどういうことか。  アメリカの国家の防衛と安全という核不拡散法の内容がこれに盛り込まれている、アメリカ側の要求で国家の安全保障等を脅かす危機がある場合というわけでしょう。これは大統領が認定するというんでしょう、核不拡散法によると、アメリカの大統領が。そうしたら日本の側は何にも考えていない状態のもとで、日本のエネルギー、原子力行政にかかわるすべてのことが、これは重大なアメリカの防衛と安全にかかわる脅威だといって持ち出されて、日本側はいやそんなことは全然思ってもいなかったというふうなことで包括的な同意が停止される、取り消されるというふうな状態になったらどうします、そのとき。あなたが言ったから信頼関係でしたなんというようなことは言えないですよ。
  255. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生の今の御質問につきましては、実施取極の第三条に、この包括同意が停止される、何というんですか、場合を例示的に挙げてあるわけでございます。第三条の二項でございます。  それにタイアップ、連携しまして、実施取極の合意議事録の第七項にもこの包括同意がとまりますことを書いてあるわけでございますが、ここに書いてございますのは、要するにNPTに対する重大な違反とかあるいは脱退、あるいはIAEAとの保障措置協定に違反するとか、そういった「重大な違反のような例外的事件に起因する」云々ということで、したがいまして、核拡散の危険とかあるいは自国の安全保障に対する脅威の著しい増大というものがかなり例示的ではございますけれども書いてあるわけでございます。かつ実施取極の第三条にもそういうふうな事態に立ち至ったときにはお互いに協議をする云々ということも書いてございます。  したがいまして、国家安全保障ということの、つまり核不拡散とは独立した形での、別個な形での国家安全保障条項による包括同意の停止云々というのは、かなり何というんでしょうか、ここでもって限定化されておるというふうに言えることも先ほどの認識の一致に加えての歯どめというか、理解ではないかと思うわけでございます。
  256. 立木洋

    ○立木洋君 それは遠藤さんの解釈ですよ。アメリカ側が違うと言えば、これはそのことが即この安全保障だということになっていないわけですから。  私は、この問題というのは非常に重要なことはなぜかというと、さっきいわゆる日本原子力エネルギー行政というのがかつて八条C項で大変苦労した、そのことをもう嫌というほど知られたのが宇野さんだと私は思うんですよ、ある意味では。これはすべてとは言いませんけれども、ある意味では私は五十二年の交渉のときに矢面に立たれた。それで、この問題については何かというと、アメリカの防衛と安全ということを基準にして書かれた内容によって、日本原子力エネルギー行政が事実上従属させられてしまうかもしれないという重大な懸念を含んでいる内容なんですよ、歯どめがないんですよ。  あなたが今言われた内容というのは、それはある意味ではあなたの解釈であって、これはアメリカとの合意文書の中で明確にアメリカの防衛と安全、この安全保障がこれである、それ以外のものではないというふうに限定された内容というのはどこにもないんです。それは解釈としてそうするというふうなことは言われるかもしれないけれども、そういう意味で非常にやっぱり重要な問題がある。  私は先ほど言いましたように、日本のエネルギー行政、この原子力行政というのが、エネルギーや石油の問題でもそうでしたけれども、石炭の問題もそうでしたけれども、いろんな意味で日本は外国に資源を頼らなければならなかった。そういう状況の中でどれほどやっぱり苦しい思いをしたか。それだけにこそやはりエネルギー行政というのは、このエネルギーの問題に関する立場というのは外交的には自主的でなければならない。そして本当に原子力基本法で認められたようないわゆる自主、民主、公開という原則で本当に外交上も貫いていかなければこれはやっぱりだめなんだということを私ははっきりさせておく必要があるだろうと思います。  そういう点を私はこの問題については指摘しておきたいと思うんですが、この問題に関する終わりになりますけれども大臣に何か御所見がありましたらひとつ。
  257. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まあ今遠藤君から申しましたとおりに、包括同意等々に関しまして非常に御懸念があったわけでありますが、そのことは条文で明らかにされておるようなケースの場合ということでございますから、あくまでも私たちは今日のこの包括同意を得たこと自体が一つの大きなメリットであると、これは趣旨説明のときにも申し上げておるような次第でございます。  確かに原子力行政そのものは、やはりあれだけ強大な、もう人類がかつて想像もしなかったような核というものをアメリカが発明、発見したと。そしてその当時はソ連との間におきましてやはりそれが一つの兵器の合戦になったというふうな経緯もございますから、したがって当然アメリカが外国に対しましても非常に神経質になっておったことは事実だろうと私は思います。ましてや、まだ原子力行政が発足して二十年しかならなかった日本に対しましては、まあそういう意味でいろいろと懸念を有したことも事実でございましょう。  ちょうどそのときに原子力交渉があったわけでございますが、先ほど来立木さんが申されましたような問題に関しましても、実は私はそのときに相当主張しておるわけであります。そしてお互いの信頼のもとに一応私たちもプルトニウムを単体で抽出することができたと。最後の最後までアメリカは混合抽出ならいいということを申したわけでありますが、私は単体抽出しただめだということをやりまして、そしてその朝、十時ごろだと思いますが、それでもだめかと言ってジェラルド・スミスさんが言いましたから、だめだと言った瞬間に、ジェラルドさんが非常に日本の立場を理解し、また前夜カーター大統領とも恐らく連絡をされていたと思いますが、全面的に日本の言い分を取り入れます、それは今日までの交渉の過程において日本政府がとっておられる核に対する真摯な行動、真摯な考え方、これを私たちは高く評価しますと、こういう前文があったわけです。  そういうようなことで私たちといたしましては、もう十一年前になりますが、初めて再処理工場を動かすことができたというような経緯でございますから、まあそれ以来いろいろと動きがあります。もちろんアメリカの議員の中にも、今日の強大な経済力を持った日本がどの方向に発展するんだろうかということは、過般もキッシンジャーさんを初めいろんな有能な人が議論しているほどやはり日本に対するいろんな問題があるかもしれません。  しかし、私たちあくまでも同盟国といたしまして、やはりアメリカと十二分に議論をして今日のこの改定を得たわけでございますので、私たちはやはり日米基軸としてこの面におきましても大いに平和利用、これに専念をしたいと。我々の専念することはまた世界の平和にも、核利用の平和にも私は大いに役立つものだろうと、こういうふうに思っていますから、そういう信念で今後もやっていきますので、いろいろ御懸念は表明されまして私も傾聴いたしました。しかし、今後そうした皆さん方の御懸念を念頭に入れつつ、なお一層私たちは原子力行政に力を込めていきたいと、かように思う次第であります。
  258. 立木洋

    ○立木洋君 まあ五十二年当時の問題で言えば、それまでの日本の自主的な技術の開発等々幾つかの問題があったわけですが、それはこの際繰り返して述べることはいたしません。今後の原子力行政のあり方の問題については、やはり日本原子力基本法をしっかりと踏まえて、完全に平和利用に徹すると。そういう面でも科技庁のあり方としても、やっぱり科学者の、もともとこの核兵器の開発ということから生まれてきた平和利用ですから、本当の意味での平和利用に徹するということを技術面でも強化していくということは今後引き続いて重要な私は課題になっていると思う。  本当の意味で平和利用できる技術というのはできていないです、言わせるならば。そういう点では、私はもっともっとその問題についての技術の重視ということもしていかなければならないだろうということをこの点では強調しておきたいと思うんです。  それで、信頼関係という問題が出たので、話はちょっと変わりますけれども、非核三原則の問題とのかかわり合いにもなってきますが、アメリカは、日本原子力基本法を持っている、そして核不拡散条約にも加盟している、そして日本はそういう意味では平和利用に徹しているという立場をとっていながらも、やはり今回の場合にさらにアメリカの核不拡散法を内容とする規制を盛り込んだ協定を結ばなければならなかったし、またあえて言うならば、それに加えていわゆる国の安全保障という問題まで主張しなければならなかったということは、もしかするとやはり日本が核兵器を持つのではないかというふうな人が、大臣はさっき一部にいるかもしれないというふうなことを言われましたけれども、やはりそういう問題。どんどんどんどん技術が発達していけば、インドでもああいう核爆発の実験をやったわけですから、だから日本に対してもそういう懸念をやはりアメリカは持っているんじゃないかというふうに考えられないかどうか、その点どうでしょうか。
  259. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 五十二年当時もやはり日米原子力交渉というのは非常に世界的に有名になりまして、そのとき福田総理が東南アジアにお行きになるとき、今度日本プルトニウムをつくるらしいね、大丈夫かいというふうな懸念があったわけです。  したがいまして、いち早くそういう懸念を表明される前に、私たちが経済大国は軍事大国につながらない、そんな意思は毛頭ないと、こういうふうに言ったと同じように、その当時も、私たちは原爆をつくる民族じゃありません、そのために核不拡散条約にも入り、なおかつ非核三原則を持っております。このことを総理みずからが東南アジア全般においてスピーチの冒頭に入れていただいたというふうな経緯もございますから、確かに日本というものに対しましては、かつてあのような戦争、そうしたことを思い出される方々がまだ生きておられるわけで、その子供も生きておられるわけで、そうした時代においてやはり懸念はあるということを考えながら、私たちはそうではないという実証をしていかなくちゃならぬ、これが原子力平和利用のまず第一ページじゃないか、私はこういうように思います。
  260. 立木洋

    ○立木洋君 確かに日本は、つくらず、持たず、持ち込ませずという非核三原則、これは国是であるということが国会の場でも表明されたこともあります。だけど、ある場合には日本は核兵器が持てないのではない、核兵器を持たないというのは政府政策であるというふうなことが述べられたこともありますよね。  いろいろ考えてみますと、現在自民党政府としては絶対に核兵器を持たないという政策をとっていますということを主張しているけれども、やっぱりそのニュアンスの中には、将来になると持つかもしれないというふうに外国では受け取る向きがあるんじゃないか。そうすると、核兵器を持たないというこの非核三原則、つくらず、持たず、持ち込ませずという非核三原則、これを完全に憲法と同じような国是として再確認するということを世界的に明確にすることができるかどうか、その点どうですか。
  261. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この国会の予算委員会を通じまして、非核三原則は国是なりや否やというふうな問答がしきりと与野党を超越してなされました。そのときにもう既に国是だというふうに私たちは申し上げております。そうした認識において今後も進まなければならぬ、こういうふうに思っております。
  262. 立木洋

    ○立木洋君 私はそういう意味では、その非核三原則というのはやっぱり厳格に守らなければならないということを、常に日本政府がそういう立場であるならばそういう立場をすべての面で徹底させていくことが必要だと思うんです。  そこで、つまりその一つである今度は持ち込ませずなんですが、これは三月二十一日にアメリカ上院歳出委員会の軍事建設小委員会アメリカのアミテージ国防次官補、これは日本でもよく知られた方ですが、このアミテージさんが、いわゆる在日米軍支援などの問題に関して日本の軍事役割分担に関する言及の中で、我々の原子力推進戦力や核可能戦力の日本への頻繁な立ち寄りも規制がないというふうに述べていますけれども、これは核を積載した艦船が日本に頻繁に立ち寄ることについて何ら規制がないというふうなことを特別の言い回しで表現したものとはお考えになりませんか。
  263. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのようなものとは考えません。
  264. 立木洋

    ○立木洋君 核を積んでいない船ならば規制がないというのは当たり前なんですよね。わざわざアミテージさんが規制がないというふうなことをあえて言わなければならなかったというのは何か特別な意味があったからなのか、決して言葉のしりをとって言っているわけじゃありませんけれども、どうです。
  265. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 特別な意味があったとは思いません。
  266. 立木洋

    ○立木洋君 そうしますと、核の持ち込みの問題に関してですが、核を積むことが可能な艦船あるいは飛行機、これが日本の領空や領海を寄港あるいは通過するような場合に、核の有無をどのようにチェックしているかという点はいかがでしょうか。
  267. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ただいまのお尋ねは、その船または飛行機米国のものであるかあるい は米国以外の第三国であるかによってお答えが違ってくるんだろうと思います。
  268. 立木洋

    ○立木洋君 すべての国についてどういうチェックをしているか。
  269. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 米国につきましては、安保条約によりまして事前協議の交換公文がございますので、核兵器を搭載している軍艦または飛行機我が国の領域に入ってこようとするときは事前協議をする義務が米側にございます。米側がそのような協議をしてきた場合は、いかなる場合でもノーと言うということは、繰り返し政府の方針として御説明しているところでございます。  そのような取り決めのない第三国の軍艦または飛行機我が国に入ってくる場合どのようなことになるかというお尋ねにつきましては、これは一般国際法上、軍艦の場合は無害通航権がございますが、我が国は核を搭載した軍艦が我が国の領海を通過することはこれは無害とは認めないという方針を明らかにしております。それから航空機につきましては、いかなる国の航空機も他国の領空に入ってくるときはその他国の同意が必要だということになっております。したがいまして、我が国の領海、領空に軍艦ないし航空機が入ってくる場合は我が国同意が必要なわけでございます。  どういうようなケースが具体的に想定されるかと申しますと、通常の場合、軍艦の場合は親善訪問ということが考えられます。航空機の場合は、軍用機が我が国に入ってくるということはこれは通常の場合想定されないわけでございます。親善訪問の場合でございますけれども、これは当然のことながら我が国の非核三原則というのは世界各国にもう周知徹底しておりますので、第三国が我が国に友好親善の目的で軍艦を派遣することを希望する場合に、核兵器を持ち込んでくるということはもう全く想定されていないわけでございます。  このような状況でございますので、米国以外の第三国につきましても我が国の知らない間に核兵器が我が国に導入されるというようなことはあり得ないというふうに考えている次第でございます。
  270. 立木洋

    ○立木洋君 結局アメリカ以外の国でも、核を積んでいる積んでいないにかかわりなく、寄港する場合に我が国に対して事前に同意を求めてくる、そういうことが行われるわけですね。そうした場合に、相手が通告してきた場合に、軍艦があなた方の国の港に寄港したいと言ってきた場合に、核を積載しているのかどうなのかというふうなことはやっぱり問いただすわけですか。
  271. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 私が同意を求めてくると申し上げましたのは、米国の場合の核兵器の持ち込みの同意ということではなくて、軍艦そのものの入港についての同意ということでございます。  これも先ほど申し上げた点でございますけれども我が国の非核三原則というのは既に各国に周知徹底されておりますので、寄港を希望する第三国が我が国同意を求めるに際しまして、このような我が国基本政策を尊重するとの立場に立ってこのような同意を求めてくるということは当然の了解でございます。  したがいまして、ある国が我が国に対する自国の軍艦の寄港を求めてきた場合、すべての場合、いかなる場合でも核兵器を積んでいるか積んでいないかということを問い合わせるということにはならないわけでございまして、そのような当然の了解のもとで外交関係基本でございます信頼関係に基づいてお互いの関係を運用しているわけでございますので、そのような問い合わせを行わないままに核兵器が積まれているようなことは全くあり得ないという考え方から、同意を求められた場合にそれに同意を与えるということもこれはあり得るところでございます。
  272. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、いわゆる我が国が非核三原則をとっているということが国際的に周知しているという状況だから、外国の軍艦が日本に寄港を求めてくる場合に、これはアメリカ以外の軍艦であろうとも一々核兵器を積んでいるかいないかということを問いただすというふうなこともしない。そして、日本が非核三原則をとっていますよということも改めてその場で相手に知らせるということもやらないわけですか。何もやらないで、相手は日本が非核三原則をとっているということを前提として寄港の申し入れをしてくるんだから、核兵器は積んでいないだろうということで寄港を認めるということなんですか。
  273. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 私は、積んでいるか積んでいないかという問い合わせをすることは決してないと申し上げたつもりはございません。その問い合わせをしないままに諸般の状況から同意を与えることもあると申し上げたわけでございまして、したがいまして、そのような積んでいないということが当然想定されるような状況にない場合、これは既に中曽根総理を初めはっきりした御答弁を申し上げておりますけれども、疑いがあるような場合には協議をするし、事情をよく聞いてみることもあるし、どうも核を積んでいそうだという疑いが消えないような場合には拒否することになるという御答弁もあるわけでございまして、場合によりましてはそのような問い合わせをして、その結果同意を与えないという場合もこれは当然想定されるところでございます。
  274. 立木洋

    ○立木洋君 一九七五年の三月に神戸で、斉藤さん御承知だと思いますけれども、いわゆる核積載艦の寄港に対してそれを認めないという決議をしたですね。そして、それから以後外国の艦船というのは、神戸市に核を積んでいないという文書を提出しない限り神戸港は寄港を認めないという態度をとってきた。その後アメリカ以外の軍艦が十四隻寄港していますけれども、イギリスの軍艦でしたか、いわゆる提示が求められて、我々は書類でもって提示することはできないと言って、寄港しないで帰ってしまったという外国の軍艦さえいたわけですね。  私は問題というのは、こういう問題についても先ほど言いましたように、信頼関係だとかなんとかということを言いますけれども、例えば今度デンマークの議会で四月十四日に決議がされましたよね。「議会は、この三十年間を通じ、港を含めデンマーク領域においては核兵器を受け入れないことが当国の政策であることを確認するものであり、デンマーク寄港艦船に対し右を通告することを政府に要請する」。つまりすべての国に、私たちはいわゆる核兵器を受け入れないのだからどんな船の寄港も認めませんよ、核兵器を積んでいたら。そういうことをすべての外国政府に通告するという、そのことを政府に要請するという国会決議がなされたんですね。これは当然のことだと思いませんか。  日本政府も、日本の非核三原則、核兵器を積んでいるものは一切認めないよということを諸外国に周知徹底させているというのはどういう意味かということにもなりますけれども、こういうことは当然の態度じゃないでしょうか、日本政府とすれば。
  275. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 第三国の政策でございますので私がとやかく言うべきことではないと存じますけれども、私の理解しているところでは、デンマークはかねてより非核政策をとっておりまして、今度の決議の新しい点というのは、外国軍艦に事前の通告を義務づけようとするということであると理解しております。  このような国会決議が行われた結果といたしまして、議会が解散されて総選挙が行われて、議会の構成も若干変わったというふうに承知しております。
  276. 立木洋

    ○立木洋君 議会の構成は若干変わっても非核を要請した構成員の方がやっぱり依然として多いということだけはちょっとつけ加えておきたいと思います。  それで、前にデンマークが非核政策をこれまでずっととってきたと言いますけれども、いわゆる核兵器を入れることは平時においては認めないという態度をとってきたわけですね。今まではデンマーク政府のそういう立場を尊重します、理解しますということだけで済んでおったんですよ、軍艦の寄港は。日本と同じようにチェックしなかったんですわ、一々積んでいますか、積んでいますかと聞かなかったんです。  今度は違うんですよ。これは各国政府に、私たちはこういう態度をとっていますよ、核兵器を積んだ軍艦は入れませんよということをアメリカから全部の政府に通告したわけです。さあアメリカ政府はどうしたでしょうか。結構だと言ったでしょうか。何と言ったでしょうか。デンマークに対してアメリカ政府は結構だと言ったのか、困ると言ったのか、何と言ったのか。
  277. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 私の理解では、これは国会決議があったという段階にとどまっておりまして、デンマーク政府がそれにいかに対応したかという点につきましては、まだ政府政策として具体的な変化があったというふうには私は承知しておりません。
  278. 立木洋

    ○立木洋君 やっぱりアメリカの国務省は直ちにこの問題について、このデンマークの決議について「運用次第では、個々の艦船について核兵器の有無を明らかにしない米国の立場に反し、同盟関係を損なう恐れがある」と言って声明を出していますよ。  日本政府の非核三原則について、同盟国の立場を失うおそれがあるなんというようなことを言ったことはないですよね、アメリカは。デンマークのこういう決議に対してはそういうことを言っている。一体日本のいわゆる非核三原則を厳守して通過も寄港も認めないというのと、デンマークで言う核兵器、これを入れることを認めないという点はどこが違うんでしょうか。
  279. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) デンマークと米国との関係についてまた私がとやかく言うのは適当でないような気もいたしますが、ただいま御指摘のございました米国の反応というのは、これはデンマークの議会決議に対する反応でございまして、このような決議アメリカの核の存在を肯定も否定もしないとの政策に適用しない形で実施されれば、NATOの安全保障が基礎づけられている核抑止政策を阻害するものとなろう云々ということでございまして、私はこのような米国の反応は米国の立場からすれば当然ではないかという気がいたします。  それから、米国がデンマークへの反応と日本への反応の仕方が違うという御指摘でございますけれども、これも日本との間には事前協議制度というのが国際法上の義務として存在しておりますので、デンマークへの反応と日本への反応が違ってくるのはこれも当然ではないかという気がいたします。
  280. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないので、最後にこの問題についての大臣の御所見をお伺いしたいと思うんです。  つまり核積載艦船、これについて日本は非核三原則の立場をとっているから事前協議がある。だから、もし事前協議の申し入れがあれば、日本としてはこれは入港は認めません、寄港は認めません、いかなる意味でも核兵器の寄港、通過は認めませんという立場をとっている。今までは事前協議に対する申し入れは一回もなかった。だから、核兵器は日本には一切入っていませんというのが日本政府の立場ですよね。だけど、日本政府が非核三原則の立場をとって、核兵器の寄港、通過は一切認めませんという態度を表明しても、アメリカはそれでは大変困りますと、そういうふうなことが運用次第では同盟関係への危険を冒す、同盟関係に対して危険な事態をもたらすなどと言ったことはないですよね。だけど、デンマークの場合は、これは実際上ここで言っているのは、核兵器を受け入れないことが当局の政策であることをすべての政府に通告するという決議に対してさえ、これが運用されると大変同盟関係についても響く、危険なことになるというふうに言っている。  今、斉藤さんは、日本は事前協議があり、デンマークはそれがないからだという言い方をしましたけれども、先ほどの問題を聞いてみても、事前に核兵器の有無をチェックするのかということは、信頼関係において一々アメリカ以外でさえ核兵器があるのかないのか聞かないというのでしょう。聞く場合もあるかもしれないけれども、そういう危険性がなければほとんど聞かない。だけど、積んでいるか積んでいないかということはわからないわけですからね、確かめてみないと。だから、そういう意味で言うならば、私はやはり日本の非核三原則の持ち込ませずというのは本当には空文化してしまっているのではないか。そういう意味では、もう一度改めて正式に日本政府は、アメリカに対しても諸外国に対しても、日本は非核三原則をとっている、いかなる国の核兵器であろうとも日本政府はそれを持ち込み、通過は認めませんということを諸外国に通告するということを鮮明にした方が私はいいんじゃないかと思いますが、そのことも含めて、これまでの議論をお聞きになった大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  281. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今、それぞれ政府委員からお話がありましたとおりに、やはり安保条約というのは非常に日米間において古い歴史をもう既に持っております。また、地位協定も古い歴史を持っております。そうしたものを通じまして、お互いの信頼関係というものは他国にもう見られないような強いものが私はここに生まれておる、また今後もそれを続けなくちゃならない、かように思っております。  特に核の問題でございますが、これはやはり六条、事前協議ということにおきまして、もう既に古い時代に交換公文なりあるいはまた口頭了解なり、念には念を押して、重大な装備の変更あるときには事前協議をなすべしと、その装備とは核であるというふうな定義もなされておりまするし、その後に、佐藤内閣のときに御承知のように非核三原則というものも厳然として国会決議もなし、また内閣も内外に宣明したわけであります。そうしたことはアメリカも十分知っておるし、また諸外国におきましても日本が独特の政策を持っておることはもう十分知れ渡っていることでございますから、したがいまして、そうした国際信義なり、また安保体制下の同盟国の信義なり信頼なり、そうしたことを中心として動いておるのでございますから、今またこれを改めて取り上げてどうのこうのというよりも、今日の円満な運用を、ひとつその信頼をなお一層強固にするということが大切ではないかと私は考えております。
  282. 小西博行

    ○小西博行君 原子力協定について、二、三の点についてお尋ねをしたいと思います。  私は、たまたま実は科学技術特別委員会にも所属しておりまして、この一週間ばかり主に原子力関係ばかり質問をさせていただいておりますし、またきょうは科学技術庁からも大勢のスタッフあるいは通産、運輸省というふうにおいで願っているわけでございますが、とにかくこの法案でずっと審議をしてみまして、私は賛成の立場でありますけれども、しかしやっぱりまだまだ整備をしなきゃいけない分野がたくさんあるなというのが実感であります。  例えば、きょうのまず第一問なんですが、輸送計画といいますね、具体的な輸送計画、これは飛行機をどういうものにするのかとかいうようなことがこの間からもずっと審議一つの問題点として出ているわけです。  一つ私がお聞きしたいのは、大体いつごろから具体的にこういうものが機能していくのか。従来までは船で一度運んだということは聞いているんですけれども、それにあわせて早くそういう国内のいろんなものについて整備しておく必要があるんじゃないか。その中の一つが、やっぱり具体的な輸送計画がぴしっと立てられるような段階まで進めていかなきゃいけないんじゃないか。そういうものが現在の段階で具体的にないものですから、何となくその辺のところを質問をせざるを得ないという感じがしてならないわけです。そういう面をまずお伺いしたいと思います。
  283. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) 我が国プルトニウム航空輸送を実施します場合には、この新しい日米原子力協定の実施取極の附属書の五に従いまして御指摘のとおり輸送計画をつくることになります。この輸送計画は、個々の輸送の実施の前に関係国の協力と援助を得まして、また関係者の間の調整によりましてつくるものでございます。  私どもといたしましては、一九九〇年代なるべく早期に海外からのプルトニウム輸送を開始したいと考えておりますが、何分にもまだ数年先のことでございます。現在、このためにプルトニウム航空輸送容器の開発、プルトニウムを運びます航空機の機種の検討などを進めておるところでございまして、このような現在の状況から、現段階で具体的な輸送計画をつくることは極めて困難でございます。ただ、数年先の輸送の実施までには関係国の協力と援助を得まして、また関係者間の調整によりまして輸送計画を作成していくことになると考えておるところでございます。
  284. 小西博行

    ○小西博行君 今、容器の問題がまた出てまいりましたが、先日の科技特の審議の中でも大体容器は安全な容器、これについてはもう目鼻がついたというようなお話でございましたが、それはそれでよろしいんでしょうか。
  285. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) プルトニウム航空輸送容器につきましては動力炉・核燃料開発事業団で開発を進めておるところでございます。これまでの研究開発の結果から見まして、万一の航空機事故等においてもプルトニウムの収納健全性が維持され、環境安全を確保し得るような輸送容器の開発の見通しが得られたと考えております。  今後、動燃事業団におきましては、これまでの開発の成果を踏まえまして、実際に実用に供します輸送容器の設計を行いまして、我が国を初めとする関係国の安全性のチェックのための試験等を実施して、安全性承認を得ていきたいと考えております。
  286. 小西博行

    ○小西博行君 いや、少しこの間の発言と違うような気がするんですが、その意味はよくわかるんです。この間の質疑の中で、見通しは十分立ったような回答があったものですから、もうほぼ具体的にできているのかなと、理論的に、例えばもうこれは大丈夫だ、どういう材質を使ってどうだというようなものが十分できているというふうに私は理解したんですが、そうではないんですか。
  287. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) これまで二回にわたりまして実寸大の模擬輸送容器を用いた試験を実施いたしました。その結果、技術的には世界で一番厳しいアメリカ航空輸送容器の基準をクリアできるという大体の見通しを得たところでございます。
  288. 小西博行

    ○小西博行君 そうしますと、もう実験では十分成功して、実用段階に入ろうと思えばすぐできると、そのように理解していいんでしょうね。わかりました。  もう一点ですが、これも実は科技特でいろいろ議論が出た中で、プルトニウムの再処理をお願いしますね、それのいわゆる消費、需要と供給のバランス。それも実は同僚議員の方から、プルトニウムがだんだん余っていくんじゃないか、日本で使ったかすを持っていって処理してもらえば、量的に蓄積の量がふえていくんじゃないかというようなお話があったときに、そうではない、十分バランスがとれるんだ、消費がちょうどいいぐあいにいくんだと、このような回答がございましたが、これも具体的なそのような計画はもうぴしっと立っているんでしょうか。それをお伺いしたい。
  289. 結城章夫

    説明員(結城章夫君) これから二、三年ぐらいまでの我が国プルトニウムの需要でございますが、現時点での見通しに立ちますと、核分裂のプルトニウム量にいたしまして合計で約四十トン程度消費するという計画になっております。  この内訳でございますけれども、動力炉・核燃料開発事業団の常陽、ふげん、もんじゅといった新型動力炉におきまして約十トンでございます。さらに電源開発株式会社が青森県大間町で計画しております新型転換炉実証炉というもので約五トンでございます。 さらに、日本原子力発電株式会社が計画しております高速増殖炉実証炉で約三トンでございます。残りの約二十二トンは現在電気事業者が全国に持っております軽水炉におけるプルトニウムの利用というものを考えてございます。  こういうことで大体四十トンぐらい二〇〇〇年までに使いたいというふうに考えておりますが、この供給の方でございますけれども、これも現時点での見通しといたしましては、国内の再処理により得られるプルトニウム、これは現在東海村の再処理工場が運転中でございますし、一九九〇年代の半ばごろから青森県六ケ所村の民間の再処理工場も運転に入ります。こういうことで、国内の再処理から得られるプルトニウムが大体十七トン程度二〇〇〇年ごろまでに出てまいります。残りの部分、二十三トン程度になりますけれども、これは我が国プルトニウムの需給状況を見まして、イギリス、フランスに頼んでおります再処理から回収されるプルトニウムを持ち返ることによって賄っていきたいというふうに考えております。
  290. 小西博行

    ○小西博行君 そういたしますと、これはもちろん高速増殖炉もですが、軽水炉でプルサーマルという形で消費するということも含んでいるわけですね。通産の方はいらっしゃいますか。——それでよろしいですか。
  291. 田中伸男

    説明員(田中伸男君) そのとおりでございます。
  292. 小西博行

    ○小西博行君 わかりました。  それでは、実際の再処理というのは英国であるとかあるいはフランス、こういう国々に依存をするわけなんですけれども、現実には依存したものは全部日本へ取り戻すというか、むしろそこからどこかへ販売するといいますか、そういう形態は将来ずっととっていかないという考え方なんでしょうか。その辺のお考えを。
  293. 松井隆

    政府委員(松井隆君) おっしゃるとおり、このプルトニウムにつきましては我が国でいろんな形で利用するということを前提に考えてございます。そういう意味では、このプルトニウムを海外にまたそれを販売するというふうなことは今全く考えておりません。
  294. 小西博行

    ○小西博行君 さっきの貯蔵がどんどんふえていくんではないかという心配がよく諸外国からあるというお話もありますので、その辺も含めて何か明確に関係国にお知らせをするということが私大変必要じゃないかなと思います。特に先進諸国はもうお互いに同盟国という形でいろんなあれがあるんでしょうけれども、むしろ発展途上国、こういう国々から日本に対して非常にいろんな意味の懸念があるのではないか、そう思いますので、直接はそういう関係はないにしても、よくPR活動をしておく必要があるんじゃないか、そのように思いますが、そういうのは具体的にやっておられますか。
  295. 松井隆

    政府委員(松井隆君) そういった意味合いで具体的にPRは現在していないと思いますけれども、私ども日本原子力政策につきましては常日ごろ海外の方々にも御理解を賜るべく、常に御説明は申し上げているわけです。  具体的には、昨年六月に原子力委員会におかれましてつくられたこれからの長期計画というのがございます。これは私ども海外から人が来られるたびに、全部英語版もつくっておりましてそういうものをお渡しして、日本はこういう施策を考えているという説明は常にしておるつもりでございます。
  296. 小西博行

    ○小西博行君 実はこれ三月十七日ですか、こういうようなIAEAの新安全指針というようなものが出ておりまして、これは通達しておりませんでしたが、こういうようなのが新聞で実は報道されておりまして、国際機関でかなり詳しく取り決め事項ができております。例えば原子力の安全に対するガイドラインというものは今まで以上に明確にして、詳細にして、原発のチェルノブイリ事故の教訓を得てやらなきゃいけないということで非常に細かく出しているわけです。  そこでお尋ねしたいんですが、このIAEAというのは、この間実は私ども科学技術のメンバーも動燃にいろんな意味で調査に行ったり勉強さしていただいたわけです。もちろん、現状のいろんな核の保有についてとかいうようなことでチェックにたびたび来られているというお話を聞いたんですけれども、このIAEAの権限の範囲というんでしょうか、機能というのは大体どのように理解したらいいんでしょうか。いろんな分野でだんだん広まってきておるんですけれども、その辺がもしおわかりだったら教えていただきたいと思います。
  297. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) IAEAの機能といいますか活動は、大きく分けまして三つの柱から成っていると思うのでございます。一つは今の御議論の保障措置をどうするかということ、それからもう一つ原子力施設の安全あるいは放射線防護をどうするかという安全の面が第二、第三の面が発展途上国への原子力分野での援助、こういうことでございまして、この三つの柱のうち保障措置につきましては、何といいましょうか、これは査察員を、例えば東京事務所には査察員が何人かおりますが、査察員等々を活用しまして原子力施設でもって核物質の流れを軍事転用されないようにチェックしておる、いわゆるかなりというか、非常に厳密なチェック機能を果たしておるわけでございます。  それで、安全につきましては、今の保障措置のような意味での強制力といいますか、そういうことではなくて、二つ活動をIAEAはしていると思います。一つは、原子力の安全基準をつくりまして、それをもとにして各加盟国が原子力発電所の安全向上に寄与してほしい、こういうことの一つの安全基準をつくる。もう一つは、これは割と最近のことなんでございますけれども、各原子力施設、発電所の安全性評価を現実にやろうということで、安全運転評価チームと言っておりますけれども、それを原子力施設に送りまして、現実に特定な原子力発電所がどのように安全性に配慮をして運転しておるか、こういうふうなことをやっておるわけでございます。  この安全運転評価チームにつきましては評判がいいと申しますか、かなりの活動関心を呼び集めておりまして、既にこれは八四年から始まったわけでございますけれども、既に去年まで二十件近く原子力施設を見てチェックをいたしております。これは間接的というか、直接的及び間接的にも安全性評価につながろうかと思います。  それから、三番目の原子力分野での援助でございますけれども、これは非常に多くの部分が、原子力分野は大別いたしますと二つの分野、いわゆる発電関係のパワーの分野とそれからもう一つはアイソトープを中心としますノンパワーの分野があろうかと思いますが、殊にノンパワーの分野での発展途上国への援助はかなりな金額も人も投入されておりますし、殊に日本は非発電分野での援助につきましては殊にアジアを中心にいたしましてかなりやっておるわけでございます。
  298. 小西博行

    ○小西博行君 私は、むしろこういう安全という意味で特に原子力につきましては世界全体がそれをやらなきゃいけないという立場だと思うんですね。そういう意味で個々のチェックというのも非常に私大切だと思うんですが、むしろ指導あるいは勧告という形がとれないものかな、そういう感じがしてならないんです。  ですから、各国におきましてもそれぞれ事業者が違いますので、その発電所の中でどの程度安全に留意してちゃんと管理体制ができているかということで、評価基準を決めて評価するということは非常に大切なことだと思うんですね。 それはそれなんですが、世界共通のそういう認識に立って私は早くそういう取り決めをして、余りにひどい場合はそれに対して勧告、指導するというような権限あたりを与えなければちょっとやりにくいんではないか、そういう感じがしてならないんですけれども、その辺の考え方はどうでしょうか。
  299. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 今の先生の御指摘、まさに私も非常によくわかるわけでございます。  先ほど私IAEAを申し上げたわけでございますけれども、実は原子力の安全分野ではOECDの中にNEAという、原子力機関というのがございまして、ちなみにOECD加盟国だけで全原子力発電量の約八割を持っておると思いますけれども、OECDの中でも実は安全性について専門的な研究をやっておるわけでございます。そこで問題のこういったものを統合して何かもうちょっときちっとした勧告なりなんなりにすべきだという御意見、そのとおりだと思いますし、しかし現実的にそういうものが成るかどうか、本件ちょっと考えさせて、検討させていただきたいと思います。
  300. 小西博行

    ○小西博行君 大臣、やっぱりそういうことは私は非常に必要だと思うんです。私もまだ新人の議員ですから、大臣が科学技術庁の長官を過去にやった——私は中川さん時代からですから存じておりませんでしたが、特にこれから先の外交の分野でもこういう世界全体の共通の、例えばオゾンという問題もこの間ございましたが、そういう問題の場合はやはり日本が相当技術も進んでいるわけです。特に安全という問題についてはこの原子力に対して非常に日本は進んでいるだろうと思います。そういう意味で、その分野でぜひともリーダーシップをとられて、そういう提案をぜひそれぞれの国でなさっていただきたいなという私は感じを持っているわけです。  それにいたしましても、このIAEAもかなり新聞に出ているように細かい分野まで踏み込んでいるようなことが相当出ているわけでして、もし事故が起きた場合というようなことにも割合詳しく書いておられます。ですから、この間核防護あるいは災害に対してということで科技特でも少し御質問申し上げたわけですが、とにかく今の日本の技術というのは相当いいところまで来ている、大した事故もないとはいいながら、やはり私はこの辺でもう一回この安全という問題に対して十分なる体制を組み直していく必要があるんじゃないか。こういう科学の問題というのは絶対ということはなかなかございませんので、そういう分野で私はこれを契機にしていい形で整備をしていただきたい、そのように感じているわけなんです。  時間がまだ少しあるんですけれども、最後の質問にしたいと思うんです。  これは直接この法案とは関係ないんですが、電力の関係の国際協力という観点で見てみますと、技術協力日本はそれほど諸外国に対してはしていないわけなんです。特にエネルギー関係協力をどの程度しているかということでいろいろ見てみましたら、例えば六十一年度の電力関係での研修生の受け入れですね、これも一%ということで非常に少ない、あるいは専門家の派遣、これも非常に少ない数字が挙がっております。 そういう意味で、東南アジアの場合は原子力ということじゃなくて、その国々における例えば水力発電をやりたいとか、あるいは石炭とかガスがある場合には火力発電をやりたいとかいうようなことで、このエネルギーに対するいろんな指導を待っているんじゃないか。ODAの立場からもそういう分野にどんどん突っ込んでいくべきじゃないか、お世話すべきじゃないか、そのように感じておりますので、その辺に対してはこれはむしろ通産省、あるいは外務省でしょうか、ODA、この関係でぜひとも協力をしてあげてほしい。よその諸外国の先進諸国と比べますと非常に恥ずかしい数字が挙がっておりますので、その点はどのようにお考えでしょうか。
  301. 英正道

    政府委員(英正道君) 電力分野におけるODAについては委員指摘のような点が確かにございます。日本の技術協力全体のODAに占める比率というのが一〇%程度でDAC諸国の平均の二〇%というのから比べますと低うございますので、そういう意味で確かに絶対量的に少ないということはございます。  ただ、電力分野について申し上げますと、一つは、電力セクターというのは収益性のあるセクターであるということで、援助要請というものが通常発電施設の建設であるとか送電線の拡充であるとか、またそれに伴う調査であるとか、そういう分野の要請が実は多うございます。研修員の受け入れ、専門家の派遣もやっておりますけれども、特に専門家の派遣要請の割合は少のうございます。それから研修員についても年間六、七件の集団コースというようなものをやっておりますけれども、これは先方の要請が非常に多い場合にはもちろんコースをふやしていくという形になっていくんですけれども、何か制度的な欠陥の結果そこが立ちおくれているというよりも、むしろ電力セクターの持つ特性ということから有償資金協力と無償技術協力の間にそういう差が出てくるのではないかというふうに考えておりますけれども、御指摘は大変貴重でございますので、さらに検討させていただきたいと思います。
  302. 小西博行

    ○小西博行君 質問は以上で終わりますが、大臣、きょうの夕方からスタートという、海外へ行かれるということも伺っておりまして、大変な時期でございますので、体に気をつけて頑張っていただきたいと思います。  終わります。
  303. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ありがとうございます。
  304. 田英夫

    ○田英夫君 日米原子力協定ですが、朝から伺っておりまして、熱心な御答弁にもかかわらず、残念ながらまだ問題が多い、不安も多いと言わざるを得ないわけで、例えば同僚の委員の方から既に多くの点で指摘されております輸送安全性の問題ですけれども、結論から言えば、輸送の容器が完全に一〇〇%安全という形でもうここにでき上がっていますよということではないと言わざるを得ないわけですね。こういう点はやはり一般の国民の皆さんの感情からすれば非常に問題があるんじゃないか。私の友人で霞が関ビルを設計した人がおります。実は台湾出身の人ですけれども、この人の話を聞いたことがあるんですが、日本は地震国だから高層ビルはできないというのが昔の話でしたけれども、それを初めて打ち破った。しかし、あれをつくるに当たっては安全性ということを本当に一〇〇%技術的にクリアしたんでできたんだと、こういうことは非常に参考になることだと思います。  したがって、たとえこの協定が発効をいたしましても、実際にこれを発動するというか、輸送が始まるというそういう意味ではまだ大分先、時間があるわけですから、私の意見で言えば、一〇〇%輸送安全性が技術的にクリアできないうちは、たとえ協定が発効していても発動しないというくらいの決意が必要だと思いますが、そういう意味からはいかがですか。
  305. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生指摘のとおり、特に私ども原子力をやっている者はとりましてやはり安全確保が大前提でございます。逆にその安全確保をそぐようなことをやったらやっぱり日本原子力開発はだめになる、こういう認識でございまして、御指摘のとおりプルトニウム輸送容器の開発をやっておりますけれども、あくまで大丈夫という十分な自信を得てからやるという姿勢は貫きたいというように思っております。
  306. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、これも大臣の政治の立場からのことですけれども、ちょうど先週の土曜日に長崎で核軍縮を求める二十二人委員会のシンポジウムというのがありました。そこへ長崎の市民の代表の方も出てこられて、被爆者ですけれども、悲惨な話をされたわけですが、長崎は御存じのとおりプルトニウム爆弾であったわけでして、そのプルトニウムが問題になっているこのことですから、長崎の市民はもちろん、日本の国民感情ということもこれはやはり政治の立場からは十二分に考える必要がある、また考えるだけではなくて説明する必要がある。これもやはり時間が必要だと思いますね。この点は大臣いかがですか。
  307. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 特にプルトニウムを初めとする原子力のPRをさらにしなければならないことは当然だろうと思います。最初の被爆国という我が国でございますから、したがいまして、当然それだけの国民感情はまだ残っておるということは十分私たちも認識して、そして平和利用ということの意義を説いていかなくちゃならぬ、かように思っております。
  308. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、きょう伺っていて一つ気になりますのは、日米原子力協定によって日本原子力発電といいますか、核エネルギーというものを確保しようというこのことの意味は私も理解できますが、その根源がやはり経済主義といいましょうか、そういうところに根幹があるんじゃないかと思うんですよ。  もう大変昔の話ですが、一九五六年から五七年ころのことです。つまり第一次南極観測隊が南極へ行きましたときに、昭和基地の対岸の大陸でウラン鉱を発見したわけです。私はそのときの隊員でしたから、帰りましてから南極の報告会であちこちで話しましたときに、ある財界の、お名前を申し上げていいと思いますが、郷古潔さんという財界の当時の巨頭でありましたが、この方が質問のときに、ウラン鉱が発見されたそうだけれども、これは我が国にとってはまことに朗報だなということを言われました。  ですから私は、当時は原子力発電ということがまだ全く緒にもつかない、話として出ている程度のときにこのことに言及をされたその経済人の頭の速さといいますか、そういうことに感服をしたんですが、同時にしかし、私のお答えは、南極は領土権を主張することはできないということになっている、したがって日本が発見してもそれは日本のものじゃありません。もう一つは、たまたま昭和基地のところが露岩だったから表に出ているので、一般的には平均二千メートルの厚さの氷の下にある話ですから経済的には無理でしょうと言ったら、まあそうかということで終わったわけですね。そういう経済人の経済的思考と言ってはしかられるかもしれませんが、そういうものが根底に流れているような気がするんです。  あるいは経済人だけではなくて政党あるいは労働界、そういうところにも実は原子力発電の問題については御存じのとおり賛否両論あります。今新しく生まれました労働組合の連合、その前身が政策推進労組会議というのがありまして、これが総評系、同盟系集まりまして、原子力発電で言えば賛否両論のグループが集まって原子力発電についての政策を決めたことがあります。  その表現は、「地域住民の意見を尊重しつつ」とあり、最後に「推進する」、こういう表現になっていて、まさに苦心の作だった。こういう「推進する」というところは、今私も申し上げた経済界の経済主義の論理ですね。一方で、「地域住民の意見を尊重しつつ」というところは、つまり民生主義といいましょうか、一般の国民の生活ということを重視するという、こういう考え方が、いつもお互いに相手の考えを理解し合って進めていかないと問題が大きくなるんじゃないだろうか、うまく進まないんじゃないだろうか。きょう伺っているとどうも経済主義の方が先行しているんじゃないかという気がしてならないんですが、これもやはり政治家の立場で大臣から伺いたいと思います。
  309. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 我が国原子力平和利用一つの端的な物の考え方として、私は米国原子力交渉をやったときに、二枚の絵を持っていきました。その絵は文殊菩薩と普賢菩薩だったわけであります。先ほど来「もんじゅ」、「ふげん」という名前がしばしば飛び出しておりますが、あれは実は、文殊菩薩と晋賢菩薩の絵を持っていきまして、文殊は御承知のとおり獅子の上に乗っておる、普賢は象の上に乗っておる、普賢は徳、文殊は知恵、そして象も獅子もともにモンスターである、原子力もモンスターである、だから、ちょっとまかり間違えばこれは大変なことになる。だから、私たちは仏教徒が多いものですから、したがって、普賢のそうした徳をもって、文殊の知恵をもってこの動物たちをコントロールしながら平和利用しますというのが「ふげん」と「もんじゅ」の事の起こりで、この命名者は動燃の初代理事長の清成さんでありました。  私は非常に感銘深くしてこれをアメリカへ持っていって説明したんです。日本は資源小国だからどうしても原子力が必要だ、そのためにはこういう心でやっておるんだ。あなたたち疑うな、おれたちは宗教心を持って今後世界の平和に役立つ原子力平和利用をしたい、こういうふうに申しましたので、今、田委員が申されましたことは全くそのとおりでございまして、私たちも資源を補うために、まずこれによって将来の私たちの国家また国民の生活にお役立ちできるようにというふうなことでその開発を進めたということでございます。
  310. 田英夫

    ○田英夫君 原子力協定の問題は次回また伺うことにいたしまして、きょうはちょっと、大臣がお出かけになる前に伺っておきたいことがあります。  一つは、通告をしてありませんでしたけれども、先ほど出ました問題で、外務大臣はイスラエルへおいでになるということで、一言これはお願いをしておきたいことですが、ちょうど去る十四日からパレスチナ問題についての国際シンポジウムというのを東京でやっておりまして、きょうで終わるわけです。今イスラエルの占領下にあります西岸、ガザ地区のパレスチナの人二人と、それからこのイスラエルの占領に反対をしているイスラエルのユダヤの人四人、こういう人たちを招きまして、日本の市民運動のような形のグループの人たちのシンポジウムだったわけですけれども、そこで、私も関係しているものですから、この人たちが一致して、日本外務大臣が今度イスラエルへおいでになるようだがという意味で、率直に言うと懸念を表明いたしました。  これに対して、私は外務大臣でもないのに、さっき広中委員にお答えになったと同じようなことを実は申したわけですが、恐らく日本外務大臣はイスラエルへ行かれて、イスラエルがこの問題を平和的に解決するように要望されるに述いないと私は思うということを申し上げていたわけですが、たまたまさっきああいう御答弁がありました。  本当に今実際にパレスチナの人たちは、そこから出てくること自体イスラエル政府の厳重なチェックに遭いまして、外務省の恩田中近東フリカ局長が随分いろいろお骨折りくださってこられたというような経緯もありまして、来た人たちも大変な苦労をして来るわけです。その辺の実情をぜひひとつ大臣も把握されて、今後のこの問題について、これは日本の場合は両方に物の言える立場ですから、初めてイスラエルに閣僚として行かれることに敬意を表しますし、ぜひそのことで実情を正しく把握していただきたいということをお願いしておきたいと思います。一言ひとつ……。
  311. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 幸い日本は、イラン、イラクに対しましても同じ立場で対処し得るという立場を今日まで続けてまいりました。だから、中東和平に関しましても政府の姿勢は一貫いたしておりまして、イスラエルに対しましても物を言い、またアラブに対しましても物を言う、ましてやパレスチナ問題もございますから、そうした点に関しましては一日も早く地域的な紛争を終息せしめたい、そのために何らかのお役に立つのならばと、そういうことで先ほど申し上げました地域の各首悩と忌憚ない意見を交換したい。恐らくいろんなところから懸念が出ると思います。イスラエルへ行くのかと言ってアラブからも懸念が出るかもしれません。イスラエルだけであってパレスチナはどうなんだというような懸念もいっぱいあるだろうと思います。  しかし、そうしたことを一々ああだ、こうだと考えておりましてはいろいろ問題も解決しにくいと思いますから、今日まであらゆる外交手段を使いまして一応関係諸国の理解は得たつもりでございます。そうしたことで、私といたしましても日本の外交姿勢というもの、そうしたことを本当に如実にやはり私が行くことにおいて示さなくてはならぬ、言葉だけであってはいけない、こういうふうに思いまして参りたいと思っておりますので、今のいろいろとアドバイスに対しましては心から感謝を申し上げます。
  312. 田英夫

    ○田英夫君 今度参りましたのはジャーナリストあるいは女性の大学教授というような、何といいましょうかレベルが高いといいますか、そういう皆さんの声でありますので、あえて申し上げました。  きょうは、残る時間を実は朝鮮半島の問題についてお尋ねしたいわけであります。  私もいつも申し上げているとおり、朝鮮半島南北分断の中で何とか緊張緩和を進めなきゃいかぬということを念願しているわけですが、たまたま日本政府が今回アジア卓球選手権の北朝鮮代表選手団の入国を認められた、これは大変そういう意味を込めてよかったと思っているわけですね。事実、北朝鮮の団長もその意味では感謝をしているようでありますが、これに関連をして、にもかかわらず、きょうの報道によりますと、荻村国際卓球連盟会長と北朝鮮の団長との会談の中で、北朝鮮は現状ではソウル・オリンピックに参加は不可能だろうと言っていると。しかし一方で、これも小さな報道ですけれども、北朝鮮の労働党の機関紙の労働新聞がやや前向きに検討をしてもいいというような意味のことを言っているというのがきょうの新聞に出ております。これは、韓国の在野の人たちが南北両方が仲よくオリンピックに参加できるようにということを書簡として北に伝えたことに対して、肯定的に検討をするということを労働新聞が伝えている。いろいろ報道、情報によってソウル・オリンピックをめぐる動きが複雑に絡んでいると思いますね。  もうしかし、実はくしくもきょうがエントリーの正式な締め切りの日だと思います。十七日という日が来てしまっているわけですけれども、しかし組織委員会の方は朴世直委員長がテレビの討論の中で、北が参加をするならば北で開催する種目を二種目程度ふやしてもいい——既にIOCの提案では決まっているわけで、それを北が拒否したわけですが、それをまたさらにふやしてもいいと。まだ何か流動的なんですね、参加締め切り日がきょうでエントリー締め切りが切れるにもかかわらずまだ流動的だと。この辺のところで、やはりオリンピックというものは、私はある意味でにしきの御旗だと思うんです。  そういうことに対して日本政府日本が緊張緩和ということのために何らかの役割を果たせないものか。荻村さんなんかも随分北朝鮮にも行かれ、いろいろ中に入って国際卓球連盟会長という立場から骨を折ってこられたようでありますが、政府がというのはオリンピックの性格上問題はあるかもしれませんけれども、やはりこれまさに政治絡みの問題になっているわけですから、大臣は何かその辺でお考えはありませんか。
  313. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 北鮮の卓球選手団の入国、これは外務省とそして法務省とが慎重に検討いたしまして意見の一致を見た次第で、私が訪中前にこのことは決めてまいった次第でございます。  今、田委員が御指摘のとおりに、やはりソウル・オリンピックをぜひとも成功さしたい、隣国としてそれが最大のやはり願望である。そのためにはやはり北鮮が参加されるということが一番大切なことではなかろうか。そういう延長線上において、いろいろ問題はあったかもしれないけれども、やはりこのことに関しては、例の我が国措置をとる以前から決まっておった大会でもある。さようなことで両省が意見一致いたしまして選手団の全面受け入れをしたわけでございます。なおかつ、これも新聞社には公にいたしましたが、私が銭其シン外相とお目にかかりましたときにも、まだ六日が来ておりませんが、来る六日には発表いたしますと、だからぜひとも北朝鮮と親しい中国政府とされましても、ソウル・オリンピックの成功のためにぜひとも御尽力をお願いするということは、私は銭其シン外相にそのとき申し上げたような経緯もあったわけであります。  したがいまして、現在のところ私はほとんどの方に出会いまして、盧泰愚大統領にもまた崔外務部長にも出会っておりますが、いずれも成功のためには北朝鮮選手団の歓迎をいたしますということも言っておる次第でございますし、またオリンピックの委員長のサマランチさんとも去年出会っております。そしてそのときの話もやはりどうしても成功さしたい、私たちの願いはそれだと、隣国日本としてはそれだということを各地でサマランチさんもはっきり公に言っていただいていいと、そのためにはやはり朝鮮半島の問題は南北それぞれの自発的な話し合いによるものであろうけれども、私たちがしゃしゃり出るということはいささか外交上また国交もないから難しい問題があるかもしれないが、私たちの気持ちはサマランチさんもお伝え願ったらいいのではなかろうかと、こういうふうなことで、日本外交といたしましては今のような気持ちをあらゆるところで吐露してまいったというのが現状でございます。  それ以上私たちがどうのこうのと言うのは非常に難しい問題もあるんじゃなかろうかと思いますが、私たち政府の気持ちはそれぞれ伝わっておるのではなかろうかと思っております。
  314. 田英夫

    ○田英夫君 スポーツをめぐって北朝鮮の参加ということは今回が初めてではありませんで、東京で一九六七年と思いますが、学生のオリンピックのようなユニバーシアード大会が開かれましたときに、神戸の前に東京でやりました、一九六七年に。たまたま私はその組織委員会の報道部長というのをやりましたので覚えているんですけれども、このときも北朝鮮の参加の問題が最後までもめたわけですね。結局六七年ですから、その後七二年のいわゆる南北の共同声明という格好で南北の対話に進んでいくわけですが、当時はまだ対立状態にあった。しかし、それが東京まで来たわけですから、参加はできませんでしたが一つのきっかけになったと思います。  そういうようなことを振り返りながら考えますと、やはりさっきオリンピックはにしきの御旗だと申し上げたのは、オリンピックに対しては南の、つまり韓国の野党、在野勢力も皆成功を祈っているという意味で賛成なんですね。そういうこの時期こそ非常に貴重な時期で、政府の一部でオリンピック後に北に対する対応は考えるべきだという御意見があるようですね。官房長官がいわゆる措置を発表されたときに、オリンピックが終わった後はこのことをまた考える、つまり解除というような方向のことを示唆されたやに聞いておりますが、私はこれは疑問があるんですね。むしろこのにしきの御旗が立っている間こそ、一致して韓国の与野党、在野勢力も一致して賛成なんですから、日本が北との関係を何らかの形で改善をする行動に出るチャンスじゃないだろうか。私は率直に申し上げて、今まで日本が北との関係を改善しよう、あるいは何らかの動きをすると韓国の政府側から非常に不満が表明されたりそういうケースが多々ありました。このオリンピックのにしきの御旗が立っているときはチャンスだというのはそういう意味で申し上げるわけです。  それからオリンピックが終わってしまうと、これはむしろもとへ戻ってしまうんじゃないか。あるいはアメリカの情報などでは、オリンピックが終われば韓国の軍部が再び政治に介入するのではないかという情報すらあるわけで、私はそこまでいかなくとも、オリンピックが終わった後は、野党が勝っただけに与野党もかなり激突状態になるんじゃないかなというふうに見ているわけですが、オリンピックを含めて日本政府が北に対する何らかの態度を変えられるというお気持ちはありませんか。
  315. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 非常にデリケートなところでありまして、余り私たちが方針をぐらぐらさすということは、やはり朝鮮半島問題そのものにつきましても幾つかの波紋を投げることも私は時にあると思います。  この間の私たちのいわゆる措置をとりましたときにも、毅然たる態度ということで終始いたしておりました。日本は毅然たる態度じゃないじゃないかというふうにすぐに反応があったわけでございますが、しかしやはり今、田委員がおっしゃったように、民族の祭典と言うと民族意識が強くなるかもしれませんが、私たちのときにはオリンピックは民族のお祭りである、祭典であるというふうなことで、これは確かに一つのよいきっかけになるだろうと、こういうふうに思っております。  この間私たちも、そうした面におきましても韓国からいろいろあるだろうけれども、ここはひとつ大統領初め皆が一日前まで門戸を開くと、こういうふうにおっしゃっておるのだから、私たちもそのことを祈ってやりますと、こういうふうにきちっとしたわけでございますので、いろいろと今、国会も新しい分野が決まりましてこれから出発をされょうというときでございますから、やはりもう少し私たちもそうしたいろんな動きというものを十二分に情報も得、またそれぞれ分析もしていかなくちゃならないのじゃないかと思います。したがいまして、きょう今日ここで何とかやりましょうと言うことは極めて難しいことだろうと思います。
  316. 田英夫

    ○田英夫君 けさのサンケイ新聞が、北朝鮮のホ・ダム前外務大臣がひそかにソウルを訪問したということを大きく報道をしていたのはごらんになったと思いますが、アジア局長、この情報というのは外務省は聞いておられますか。
  317. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 過去にも委員御承知のとおり、南北の間の秘密の接触が行われた、ないしは行われているのではないかという報道が時折新聞をにぎわすことはございましたけれども、大体におきまして韓国側ないしは北側がそれを否定しているというのが今までの状況でございます。  今回も、私どもの承知している限りでは、北朝鮮側も韓国側も、これを確認していないというふうに承知いたしております。
  318. 田英夫

    ○田英夫君 きょうの報道につきましては、四月の後半ぐらいからソウルの新聞が、名前は出さずに北の高官がひそかに来ているという報道をしていたということを聞いておりますけれども、今アジア局長が言われたように、今の状況の中でもしや本当なら、これは大変に思い切ったことだと思いますが、韓国側から報道されているというところが私もいささか気になるんです。  そういう情報がここのところしきりに出てくるというあたりに、何か韓国のサイドから北に対して、先ほどのオリンピック組織委員会の朴委員長発言も含めまして、平ったい言葉で言えば平和攻勢みたいなそういうものが出てきているように思うんですが、これは韓国の自信なのか、あるいはオリンピックをうまくやりたいという願望なのか、これはよその国のことだと言ってしまえばそれまでですけれども、我々にとって無関係のことではありませんが、アジア局長はどうですか。
  319. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 今回の報道が果たして韓国側から行われているプレスキャンペーンと申しますか、そういうものであるかどうかわからない段階でございますので、私からコメントを申し上げるのは適当じゃないんじゃないかと思いますが、一般的に申しますと、悪口を言い合うよりはそういうことの方が結構だということは申せるんじゃないかと思います。
  320. 田英夫

    ○田英夫君 私は、ひとつ大臣にもぜひお考えいただきたいと思いますのは、南北両方の現状を、さっき大臣も御答弁されましたけれども、よく情報をとってと、おっしゃったとおりだと思うんですね。どうも北は不可解な国だという声が外務省の中にもあるようですし、ある意味で事実だと思いますよ、それは。それからいろんな学者の方や政治家の方の中にもある。しかし、場合によってはそれがややオーバーに言われている面がかなりあるんじゃないだろうか。特に突きとめていくと、最後は韓国の一部の当局側から出ているというような場面もあると思うんですね。  これも日本新聞に報道されたことですけれども、北朝鮮は今や経済が非常に苦しくなり、特に農業が崩壊をして一日二食主義を政府が奨励しているというような新聞記事がかなり大きく、一カ月か二カ月前でしたけれども日本の有力な新聞に出ておりました。内容を見てみると、昨年台風で段々畑が、無理やりに段々畑をつくっていたもので崩壊して、トウモロコシを初め穀物が非常に打撃を受けた、それが直接の原因だというようなことが書いてありました。ところが北朝鮮には段々畑というのは、私が行った限りではありませんね。こういうところがあれだけ大きく報道されると、知らない人はそうだろうと思うだろうと思います、これは一つの例として申し上げるんですけれども。  この点は北は非常にうまくやったと思いますが、日本の支配時代はげ山だった山に松の木を植えて、これもう緑ですね。そして傾斜地は果樹園にして、その下のところを、緩いところを畑にしている。平地は田んぼにしている。これは北の中をあちこち板門店まで行き、また北部の方も行きました。段々畑というのは見た記憶がないんですけれども。私は農業の専門家ではありませんから詳しくわかりませんけれども、そういう報道が出てくるような、そういう何といいますか、ためにするといいましょうか、あるいはオーバーなというか、そういう北情報がかなり多いだろうと思います。しかし、一方でもっとやはり北朝鮮というところは国際社会に門戸を開くべきだと私も思いますね。いかにも不思議な、不可解な国だという印象を持たれている。それは事実だと思います。ですから金永南外相にそのことを直言したこともあります。しかしなかなか変わらない。これは体制の問題なのかもしれません。しかし、日本が朝鮮半島の緊張緩和を求めていくとすれば、こういうところをやはり打開してもらわなければできないことじゃないだろうか。  逆に韓国はまた大変日本とはある意味でサイクルが同じといいましょうか、方程式が同じですから、我々日本の側からすれば韓国の方のいろんなことは理解しやすいと思いますけれども、北の方はどうも方程式が違うという気がするんですよ。ところが、方程式が同じだから韓国のことは理解しやすくて理解する人が多い。しかし、意外に理解されていないのは、北に対してという意識が非常に強いために、反共というこのことについては日本の我々が全く理解できないほど強烈ですね。これは外務省の専門の皆さんはよく理解しておられるでしょうけれども、この点は驚くべきものがある。こういうようなことを、ある意味で言えば双方の特異性というものを理解しないといけないんじゃないだろうか。  しかし、私が残念ながら客観的に見て、日本の政治あるいは学者、政府も含めまして、そういうところと比べて、アメリカの方がこの問題については理解が深いんじゃないだろうか、こう思いますね。アメリカの国務省の朝鮮問題の専門家という人たちと歴代、ハビブ氏あたりからずっと会ってきますと、あるいはブルッキングス研究所というような、これは民主党のシンクタンクですが、そういうところの学者の人たちとかそういうところと会っていますと、今申し上げたような特異性というところをかなり最近は正確に把握しつつあるんじゃないだろうか。  一つの例として、エドワード・ケネディ上院議員が、最近、大韓航空機事件といってもこれは最近のではなくて、例のソ連に撃墜された大韓航空機事件について、上院の航空委員長にあてた書簡を出しておりますが、それは簡単に言えば、あれはアメリカと韓国の政府が仕組んでソ連のあの地域の防空体制といいましょうか、そういうものを乗っ取ろうとしたのではないかと、その点についてもっと政府は情報を隠匿すべきではない、議会はこれをもっと調べなさい、そのことを要求すると、こういうことを言っているわけですね。  その中に実は日本のことも触れていまして、日米両国政府によって公表された交信記録も捏造されたと信じられる理由もありますという部分まで、まあこれはケネディ氏の書簡ですけれども、その底流にあるのはエドワード・ケネディという人は韓国の特異な部分というところについてかなり突っ込んで理解をしている。彼はもちろん韓国へ何度も行っておりますが、そういうようなことを含めて考えますと、私はさっきチャンスだと申し上げたんですけれども、ぜひ政府もそうした両方のことを理解しながら、オリンピックというにしきの御旗が立っている間に何らかの行動をしていただきたい、こうお願いをするわけです。  最後にひとつ大臣の御感想をお聞きしたいと思います。
  321. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 朝鮮問題は非常にデリケートな問題がございまして、特に我が国は過去三十六年間朝鮮半島を領有しておった、このことは共同コミュニケでも深い反省をいたしますと申し上げておるとおりでありまして、そうした面におきましてもやはり過去の一つ歴史が、アメリカの対朝鮮政策と私たちがたとえ同じ思いでありましても受けとめ方が違う面もあるいはあるかもしれません。そうしたギャップを埋めていくのが日本外交の朝鮮半島政策ではないか、かように思います。  したがいまして、冒頭に申し上げましたように、にしきの御旗と田委員が申されましたソウル・オリンピック、これをともかく私たちは成功さすために今後も努力をするというのが現在の私の気持ちでございます。
  322. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。
  323. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時四十四分散会