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1988-05-12 第112回国会 参議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十二日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十一日     辞任         補欠選任      広中和歌子君     中野  明君  五月十二日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     吉村 真事君      鳩山威一郎君     向山 一人君      林田悠紀夫君     松浦 孝治君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 松浦 孝治君                 向山 一人君                 吉村 真事君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 中野  明君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        内閣総理大臣   竹下  登君        外 務 大 臣  宇野 宗佑君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  瓦   力君    政府委員        警察庁警備局長  城内 康光君        防衛庁参事官   小野寺龍二君        防衛庁参事官   鈴木 輝雄君        防衛庁長官官房        長        依田 智治君        防衛庁防衛局長  西廣 整輝君        防衛庁経理局長  日吉  章君        防衛庁装備局長  山本 雅司君        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        外務大臣官房審        議官       福田  博君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君        農林水産省経済        局長       塩飽 二郎君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        警察庁警備局公        安第三課長    伊藤 一実君        警察庁警備局外        事課長      國枝 英郎君        防衛庁防衛局防        衛課長      萩  次郎君        特許庁総務部工        業所有権制度改        正審議室長    山本 庸幸君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨日、広中和歌子君が委員辞任され、その補欠として中野明君が選任されました。  また、本日、倉田寛之君が委員辞任され、その補欠として吉村真事君が選任されました。     ─────────────
  3. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 黒柳明

    黒柳明君 外務大臣、またきのうからきょうにかけまして、外務大臣の御心労を煩わすというか、まあ内閣全体の問題と言っていいケースかと思いますけれども、一昨日もこの場で、鎮静化を期待いたします、あるいはその前の外務委員会でも鎮静化を期待する、こういう発言があって、当然外務省としても大臣としても、それなりの手は打ってきたんではないかと思うんですが、どんな手を打ってきたのか、ちょっと疑問があるんですけれどもね。  だけれども、言うまでもなく呉学謙副総理も非常に過激な批判をしております、名指しであります、人民日報の論説から中国外務省コメントも出ておりますし、それから韓国も各紙が一斉に、東亜日報あたりをちょっと読みましたけれども、潜在的敵視感を抱いているんじゃなかろうかなんというようなことで、非常に中国の場合にはある意味で遠慮しているかなと、外務大臣が直接会われてそれなり弁明、釈明もしたんだと思いますけれども、韓国の場合は非常に過激な論評も出ておりまして、外務大臣鎮静化の方向にこういう努力あるいは何か行動をなすったのか。あるいはこういう願いとは全く裏腹に、ますますこの問題は中国韓国からの批判が強くなっておりますが、きょうこれをまず冒頭、外務大臣はどう受けとめられているか、コメントしていただけませんか。
  5. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 奥野君にもゆうべ電話いたしました。そして、これ以上近隣諸国に迷惑をかけ、また不快感を表明されるような発言は慎んでもらいたい。私は、中国との間において十二分にその間のお話も申し上げ、なおかつあなたにもやはり中国側要人お話を伝えたつもりである。したがって、その線において、もうこれ以上のことは私といたしましても、私自身がやはり奥野発言に遺憾と言わざるを得なくなってしまう、だからその点は慎んでいただきたい、私はそのようにゆうべ電話で申し上げました。  きょうは議運もあるというふうに承っておりますから、そうしたことに関しましてはこれは議会内の話でございますので、私が介入する立場ではございませんが、外務大臣という立場から、非常に近隣諸国が極端な不快感を表明しておられる、このことに関してはもうこれで二度、三度目になるが、私としては厳重に申し伝えておきますということを申し述べた次第でございます。
  6. 黒柳明

    黒柳明君 大臣からわざわざ電話された、向こうからかかってきたんじゃない、大臣がわざわざ電話されたんですね。
  7. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 向こうの方からぜひとも御連絡したいということでしたから、私帰宅いたしましてから電話をいたしました。向こうの方から先にそういう申し入れがあったわけであります。
  8. 黒柳明

    黒柳明君 何か今の大臣のお言葉にもちょっとニュアンスが出ているんですけれども、これ以上迷惑をかけるような、発言はもうしちゃったんですけれども、そうすると、奥野さん個人の発言に遺憾を表さなきゃならない。今までやっぱり二回の閣議でもこれは問題が出なかったわけですね、またあした閣議がありますけれども。ちょっと今の大臣のお言葉の中にも、遠慮していたことがあるんじゃなかろうかな。  それから、先般訪中したときも、大臣はここの場で一昨日お述べになりましたが、銭外務大臣からも適切な処置をしてもらいたい、その適切な日本政府としての、これは当人がやれば一番いいわけですね、あるいは当人反省する時期をお待ちになっていたのか、その反省する時期を持っていたのが逆に出て、反省どころかますます近隣諸国を怒らした、こういう結果になったわけですけれども、せっかく外務大臣が行かれて、中国首脳、なかんずく向こう外交当事者外務大臣とお会いになって、しかも銭外務大臣から適切な処置をとってください、こう要請されたにもかかわらず、適切な処置をとってこなかったんじゃなかろうかなと、私はこんな感じがするんです。  今の大臣のお言葉でも、これ以上迷惑かけるとあなたの言葉自体に遺憾の意を表さなきゃならないぞ、こういう発言にもちょっと、ちゅうちょしてきた、まあ時期を見てきたのかなという善意の見方もありますけれども、むしろ時期を見てきた、当人反省を、弁明を、謝罪を待っていたということになると、ちょっとそれは逆目に出た、こういう感じもしますが、果たして中国外務大臣の適切な処置をとってきたかどうか疑問なんですけれども、いかがでしょうか。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私としましては、余りどう言ったこう言ったということを公の場で言うこともまた外交上慎まなければならない点が多々ございます。したがいまして、銭其シン外相に、銭其シン外相が申されましたことはそのまま当人に私は伝える所存でございます、こうやって帰ってきておりますので、そのとおりのことは私としてやった所存でございます。  したがいまして、きのう奥野さんとの間にもいろいろ、御本人は御本人のお考え方がありました。決してそれは反中国であるというような考え方でないわけでありますが、そうしたこともことで申し上げますと、また波紋波紋を広げ、誤解誤解を生み、話は話を生むということになりますと大変でございますが、私は奥野さんは反省しておられると思います。したがいまして、私といたしましては、同僚同士の話でございますから、今申し上げましたように、これ以上もうあなたの発言をしないでほしいというぐらいのところまで外務大臣としては申し上げたということだけにとどめておきたいと思います。
  10. 黒柳明

    黒柳明君 まあ外務大臣立場同僚立場でいろんな苦慮する点もあると思いますが、ただ、これ以上ということにもちょっとひっかかるわけですね。もうこれ以上どころか、これ以上以上もう発言しちゃったわけですからね。ですから、むしろ当然のことながら今までの発言撤回あるいは陳謝、これはもう人間ですから、まして政治家ですから、自分哲学、信条、思想、これはおのおの達ったって当たり前ですね。しかし、これはもうこんなことをこの場で言うのも全く嫌なぐらいでありまして、きのうも中国韓国から閣僚ともある者がと、こういう発言がありましたが、閣僚地位を忘れたわけじゃありませんよ、前にもそういう前科があるわけですからね、奥野さんとしましても。ですから、閣僚としてただ単に自分哲学思想だけを曲げないのが立派なんだ、こういうばかげたことは言えるかどうかも疑問だと思います。ですから、大臣の場合も、何回も言いますように、もう内閣自体の問題でもありますけれども、大臣が何といったって外交責任者としてせんだって会ってきたばっかりですから、対話したばっかりですから、当面はやっぱり一番の責任者であるとは思いますね、中国との、当然韓国との。  それで、これ以上というよりも、前の発言撤回をしなさい、ここらあたりはどんなニュアンスですか。今の大臣の話を聞きますと、当然奥野長官としては同僚立場としてもわかった、反省したと。その後が聞きたいわけなんです。それは前にも言っているんですよ、わかったということはね。ですけれどもその後が、本当にこれが中国韓国がわかったと、こういう了解をするようなことを言ってくれるのか、あるいは罷免までいかなきゃだめなのか、きょう一日が私は最大の山だと思うんですよ。その朝なものですからね、この朝でけりがというようなことはない。  今申しましたように、両院議運理事会内閣責任者が出てきます。ですけれども、それはそれとしまして、何回も言いますように、大臣が直接中国首脳と会ってきたわけなんで、奥野長官はきのうの大臣のその警告、いさめに対してどんなニュアンスだったのか、あるいは本当にただ反省、二番せんじの、四番せんじ三番せんじの反省じゃなくて、陳謝なり撤回なりという謙虚な姿勢までも、発言までもあったと受けとめているのか、その点いかがでしょうか、言える範囲で結構ですから。
  11. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私はきのういろいろと、友人でございますからお話をし、また近隣諸国のそれに対する反応も率直に私は伝えてございます。  したがいまして、きょうよい機会に官房長官内閣総意としていろんな措置を申し上げられると思いますし、そうした中において御本人は、恐らく今日まで本当に近隣諸国に対していろいろと批判を招くような発言に対しましては撤回するという意図を持っておられるだろうと、私はそこまで話しておりますから、だろうと、こういうふうに考えております。
  12. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。大臣の今の答弁が一番的確だと思います。官房長官はじかじゃないですからね。  どうも閣議をやってもそういう意見が出ないというのは、官房長官なり大臣なり総理なり、この問題でどの程度、まあ失礼だけれども真剣な話をしているのかもわからない。これは一番外務大臣が真剣な立場であると思いますので、撤回する、こういうこと。まあそれがあったから中国韓国がこれでオーケーとするかどうか、これはまた別ですからね。  ですけれども、少なくとも国会の中、野党立場としましてはもう罷免ということですけれども、何も人間ですから罷免だけが能じゃありません。撤回すればいいんです。陳謝すればそれでまあ一段落と言えるかどうかわかりませんけれども、まずそれがなければその次に発展しないわけですから。撤回というニュアンスを受けたと。まあそうなるとまた、きのうの発言まで蒸し返す必要はないと思うんですけれども、大臣もおとといいろんな立場から、軍国主義による侵略であると。  それから奥野さんの悪い点は、総理のおっしゃるとおりだと、きのうの本会議でも。それからライシャワー元大使の発言を引いて偶発戦争だ、あるいは官房長官侵略と言っているからなんて、それは否定するものじゃない。それから中国侵略と言っているから否定するものじゃない。人のことを引きながら、さも否定しない、そのとおりだと言いながら、自分もだから侵略と認めるんだというニュアンスのことを言っていますが、反対に自分は、おれはそんなことを認めないんだ、おれはもう侵略じゃないと思っているんだ、こういうことを言下に吐露するような発言しかしていないわけですよ。  ですから、これはもう今さら、きのうの本会議偶発、これはまあ侵略と言っていない。一斉に報道はこれをおかしい、さらに近隣諸国批判を拡大した要因だ、こう批判していますけれども、奥野さんとしてはこれを要するに認めているんだから、もしかすると――総理は午後出ていらっしゃいますね、夕方。総理にもそんな考えがあるのかわからない。まあそれはともかくとしまして、ライシャワーさんだってあの本を見ますと、ちゃんと侵略と書いてあるんですよ。ただ偶発と書いてあることは間違いありませんね。その一文だけを引いて偶発だから侵略がないとは奥野さんも言っていませんね、偶発的なものだ、事件だという言葉侵略戦争ではないよ、侵略じゃないよということをにおわしているわけであります。おれもそうなんだと。  ところが、ちゃんとライシャワーさんのあの「ジャパン」という書物には、侵略ということを、侵略戦争ということを明示しているわけですよ。それこそ自分の本来的な支証というものをライシャワーさんの偶発ということをもってかえようとしていること、これは、そんなことは許すわけありませんものですから、当然大臣はそのライシャワーさんの偶発問題については同意しない、こういうことは間違いないと思います。済みませんね、きのうのこと、ライシャワーさんのこと、奥野さんのことですけれども、念のため。大臣はもう軍国主義侵略だとおっしゃっていますからね、念のために。
  13. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ある人との問答ということにしていただきたいと思いますが、ライシャワー偶発と言っていますがどうですかと。偶発と言われようがどう言われようが、そこに日本軍がいたということは事実であって、他国にいたということはどういうことなんだろうということを考えなくちゃいかぬ。しかし、その当時はほかの軍隊もいましたねと。しかし、戦争したのは日本であるということを忘れてはならぬ、こういうふうに私は考えますから、したがいまして、ライシャワーさんのあのくだりだけをもって侵略でないということは言えない、私はさように考えます。
  14. 黒柳明

    黒柳明君 もうそのとおりだと思います。  それで、先ほど言いましたように、両院議運官房長官がいらっしゃって、そのときの発言は、奥野さんとしても官房長官に一任すると、こんなことが言われておりますけれども、まあこれは当人が決めれば一番いい問題でありますから。しかし、もうこれで時期は相当たっているわけですね。  それで、今申しましたように再三再四批判を受けながら、当人はきのうの外務大臣との話では、反省し、撤回ニュアンス外務大臣が受けるぐらい反省したと、こう今の話で私も理解しているんですが、きのうの奥野さんのコメントですと自民党からだって辞任せよなんという意見出ていないよと、こういうようなことも発言したという報道を私闘きましたけれども、万が一やっぱりきょうこのままで、議運理事会でもこのままであるということになると、あした閣議があるわけですね。その閣議でこそ、これで三回目の閣議ですから、大臣がいらっしゃる閣議ですよ、三回目ですから。そのあしたの閣議では、きょう一日でけりがつかない場合、どうけりがつくかつかないか私はわかりません、私がけりつけるわけじゃありませんけれどもね。  ですけれども、国会での雰囲気はもう大臣御存じのとおりであります、野党姿勢御存じのとおりであります。つかない場合には、あしたの閣議ではだれが発言するか、これはわかりませんね、発言する可能性もあります。だけど、だれよりも大臣がその当事者ですから、やっぱりこの問題をきちっと閣議けりをつけるというあしたの閣議でなきゃならないんじゃないかな、私はこういう感じがするんですが、閣議の場に出たことありません。経験がないんでこんなおこがましいことは私言えるか言えないか。いつの日か出たいという意思はあるんですが、まあこれは百年ぐらいかかるかなと思います。  あしたの閣議の場においての大臣のことまで云々できる立場ではないと思うんですが、ただ、二回の閣議でこのケースがあったわけですよ。それでそういうものがなくて、きのうあたりの本会議でも、内閣責任はどうなんだと総理に言っても、それは全く答弁には出てこないんですね、責任問題については。ですから、あしたの閣議こそは、万が一きょう一日けりがつかなかったら、ひとつ大臣、悪役になる気持ちはないんですか。
  15. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはりこれは外交問題でございますから、すべての面におきまして私がその収拾を図らなければならない第一義的責任を帯びておる、かように考えております。したがいまして、それが閣議の場であるのかどこの場になるのか、今からそうしたことは予測し得るものでもありませんが、要は、できるだけ早くやはり今申し上げたような線というものが出れば一番いいのではないか、私はそう思いまして、昨日お電話を受け、また私からも電話をしたという経緯であります。
  16. 黒柳明

    黒柳明君 あしたの閣議の場もその一つの場になるであろう、こういうことですな。
  17. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 閣議とまではっきり申し上げますと、いろいろとまた憶測を生みますが、やはり対内問題でもあり同時にこれは重要な対外問題である。だからどうするかということは、私といたしましても慎重に考え、きちっとしなくちゃいけない、かように考えております。
  18. 黒柳明

    黒柳明君 今の問題は終わりまして、次は警察庁の万、済みませんね。  いろいろ活字やブラウン管で例の柴田の問題は勉強さしていただきましたが、わからない点がいろいろあって、まだ捜査は緒についたばかりですから当然公表できない点もあると思いますし、あるいは失礼ですけれども、まだ事情聴取で何か黙否権を使っているみたいで、わからない点が多々あるんだと思うんですけれども、六日ですか、兵庫県警が逮捕したのは。そのときは柴田泰弘ということで逮捕した、こういうことですね。そうすると、中尾晃名義パスポートを持っていたのをもう柴田と断定して逮捕したからには、その前から何らかの捜査は当然していたんじゃなかろうか。そうすると、その捜査はいつごろから中尾晃なるパスポートを持って偽名であろう、偽名であった柴田泰弘周辺捜査をしていたのか。  ということは、外務省もきのう、おとといの外務大臣発言でも、相当前からこれは知っていたんだ、雑談的には話してあると。さらに、外務首脳発言で、活字で読みますと、何か複数よど号関係者北朝鮮から出国しているんだとか、いろんなあれが出ていました。いずれにせよ、五月六日に逮捕する前の調査というものがあったわけです。それから調査するに当たっては当然どこからか情報があったわけですが、そこらあたりの事実関係というものを教えていただけますか。
  19. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) お答えいたします。  まず第一点でございますけれども、逮捕の時点においては柴田泰弘として逮捕したものではございません。中尾晃名義旅券を取得した人物ということで、旅券法違反として逮捕したものでございます。  いつから捜査をしておるかという御質問でございますけれども、長期にわたって内偵等を進めてきたものでございます。  なお、第三点目でありますが、複数の者が日本に潜入しておるという御質問でありますけれども、私どもその可能性というのは十分考えておりますが、今具体的にここで申し上げる資料等は持ち合わせておりません。
  20. 黒柳明

    黒柳明君 中尾兄弟、お兄さん、お姉さんですね。それが逮捕されて、容疑公正証書原本不実記載という、犯罪からいうと軽い容疑だと私は思うんですが、普通ですと、すぐ釈放というケースになる容疑だと思うんですけれども。拘留されているんですけれども、証拠隠滅か何かの可能性があるのでまだ釈放されない、取り調べ中というようなことなんでしょうか。この点をおっしゃっていただけますか。
  21. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) お答えいたします。  旅券名義人兄夫婦でございますけれども、先生御指摘のとおり公正証書原本不実記載で逮捕いたしております。  犯罪容疑につきましては、弟が北朝鮮に出国して我が国における居住実体がないにかかわらず、しかもそのことを知りながら弟の住民票を移したというものでございまして、本件との共犯関係等についても現在追及中でございます。
  22. 黒柳明

    黒柳明君 本件との関連でも追及中というのはほかの――でもにちょっとひっかかるんですけれども、申しわけありません。
  23. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 公正証書原本不実記載捜査いたしておるわけでございますが、柴田の入国に絡む事案につきましても共犯関係のものについて追及中でございます。
  24. 黒柳明

    黒柳明君 何か特別の、柴田日本に来て、あるいはヨーロッパを三回出入しているという何か意図があるのか。国際的なテロ組織と接触したとかしないとか言われておりますけれども、あのよど号事件のときには未成年ですね。今三十四歳で、現在は旅券法違反での逮捕容疑事実。ところが、よど号事件のときにさかのぼると、十八年前はハイジャック法とかいろいろあると思いますね。これは当然未成年だから、どうなんでしょうか、それは該当しない、あるいは当然海外逃亡中ですから時効というものはこれは失効するわけですけれどもね。この時効の失効ということは間違いない。  ただ、よど号事件の旅券法違反の次の今度は容疑、この捜査になった場合の容疑というものは、未成年ですから、これはどうなるんでしょうか。
  25. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) お答えいたします。  柴田委員ただいま御指摘のとおり、よど号事件発生当時は未成年でございました。かつ、当時の犯罪につきましては刑法犯適用ということでございますので、未成年として今後処理されていくというふうに承知をしております。
  26. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、何か日本恋しくて帰ってきたんじゃないかとか、これは揣摩憶測、いろんなうわさが流れると思うのですけれども、そういう郷愁の念にかられたのか、あるいは岡本との意見の違いが前からあったからそういう意見の違いがあるのかと、こんなこともありますけれども、もしかすると、よど号事件の犯罪には全く未成年という立場容疑、罪にならないと。もし旅券法違反で捕まって、たとえ有罪になったとしても非常に軽いというような憶測があって、まあ何も捕まることを期待していたわけじゃないと思いますけれども、そういうこともやっぱり一つの要件に入りますかね。これこそ全く当人の腹のうちですから、何とも憶測以上のものを出ないんですけれども、容疑が軽いということになるわけですか。
  27. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 柴田は何ゆえに帰国したかという御質問の御趣旨かと思われますけれども、私ども考えておりますに、この柴田の帰国につきましてはやはり何らかの任務を帯びて日本に潜入してきたものであろう、かように考えております。
  28. 黒柳明

    黒柳明君 それと未成年のときのよど号事件の刑は関係ないということになりますと、万が一のことがあっても非常に罪は軽いという当人の認識も前提にあったのかなと私思うんですが、その点は、これは今申しましたように当人の腹の中ですから憶測するよりほかないんですが、ただ事実関係はそうなるわけですね。
  29. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 今後しかるべき時期によど号事件の容疑捜査を展開していくわけでございますけれども、厳正な捜査を推進してまいりたいというふうに考えております。
  30. 黒柳明

    黒柳明君 厳正な捜査の中には、未成年の柴田容疑者としては入らないと、こういうことですか。
  31. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 当然のことながら、よど号犯人のグループの一員として容疑者の対象になるというふうに承知しております。
  32. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、未成年の立場というのはどうなるんですか。ちょっと一番初めの答弁、私錯覚して聞きましたですか。
  33. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 犯行当時未成年者ということでございますので、今後未成年としての法手続はございますけれども、犯罪者の一員としては変わりないわけでありますから、当然厳正な捜査活動が展開されるということであります。
  34. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  よど号は、先ほどちょっと言いましたけれども、外務省も前から情報があった、外務大臣が雑談的にマスコミ等の人に話していた、さらに外務省首脳が、よど号関係者複数で出国しているんじゃないかという、これは活字ですから本当かどうかわかりませんけれども、外務首脳がだれであるかもわかりませんけれども、あのよど号犯人のいろいろな行動についてはどのぐらい把握しているんでしょうか、わかっているんでしょうか。
  35. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) お答えいたします。  よど号犯人グループとこれまでしばしば北朝鮮への訪問者が面会しているというような報道等もございます。中には、私ども警察といたしましてもそうした事実を確認できたものもございますけれども、こうした犯人グループが現在もなお引き続き北朝鮮内に滞在しているかどうか、この点につきましてはまだ確認できません。
  36. 黒柳明

    黒柳明君 ちょっと私もいつか、時期を失念したんですが、国際テロ会議に参加したとか、あるいは中曽根前総理に、日本に帰国したときに逮捕されなければ帰国したいという文書を出したとか、あるいは六十三年の三月三十一日か、田宮名で、準備期間は終わった、どこでも闘えるという声明を出したとか、こういう報道をされていることはこれは当然事実なんでしょうね。ということは、こういうことが報道されていますので、それ以上のことは当然まあここで言えないと、こういう立場もあるのはこれは別だと思うんですけれども、こういう例を報道されている事実があるわけですね。それ以外のことも当然御存じであるはずだし、知っているわけだ。ただ、ここでおっしゃっていただけるものがあるかどうかなということなんですが。
  37. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) お答えいたします。  これらグループの連中がヨーロッパ等におきますその種の会議に出席しておったとか、あるいはただいま委員からお話しございましたような事実につきまして私ども情報としては把握してございますけれども、そのすべてを確認しているというわけではございません。
  38. 黒柳明

    黒柳明君 今言った三点の情報以外にはどんなことがありますか、行動として。言っていただけるような行動がありますか。
  39. 伊藤一実

    説明員(伊藤一実君) 特に目新しいものはございません。
  40. 黒柳明

    黒柳明君 柴田がヨーロッパを往復しているようなこと、あるいは今の声明文とかあるいは会議出席とか一連の行動ですけれども、今外事課長さんが何らかの目的を持って来たんだ、こういうようなことをおっしゃったわけですけれども、一連の行動についてはその目的がどのようなものであると判断できますでしょうか、あるいは感想をお持ちでしょうか。
  41. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) お答えいたします。  柴田旅券を取得いたしましてから三回にわたって海外に出ておるわけでありますが、詳細といいますか、正確なところは取り調べの結果を待つことに相なるわけでありますけれども、現在推測として申し上げますと、やはり海外において何らかの人物と会う、これが目的ではなかったであろうか、かように考えております。
  42. 黒柳明

    黒柳明君 柴田日本に来たときは密入国であるのか、あるいは他人名義のパスポートで堂々と成田から入ったのか、あるいは別の何らかのケースで、菊村みたいに第三国でパスポートを取ってそれで日本に入ったのか、こんなようなケースが考えられるんですけれども、どのようなケースで入ったと想像されますでしょうか。
  43. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 先生御指摘のとおりいろいろな手段、方法が考えられるわけでございまして、御指摘のような点を踏まえまして今後捜査によって解明いたしたいと考えております。
  44. 黒柳明

    黒柳明君 密航船で裏日本へしばしば朝鮮半島から密航者がある。これはもう韓国が主であるというふうに私は聞いておりますが、北鮮、朝鮮民主主義人民共和国から密入国して、入国するときに逮捕されたという例なんか今まであるんですか。
  45. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) お答えいたします。  戦後検挙いたしました北朝鮮スパイ事件を例に申し上げますと、事件全体で四十五件あるわけでございますが、そのうちの大半は北朝鮮工作員が我が国に潜入してきた、すなわち密入国してきた事案でございます。
  46. 黒柳明

    黒柳明君 テレビなんかでたまに私見たことがあるんですけれども、密入国の方法なんというのを見たことがあります。  実際に北朝鮮の密航船で来る場合には、どういう具体的なケースがあったんでしょうか、今まで。
  47. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 最近の事例で申し上げますと、昭和六十年に警視庁が北朝鮮のスパイ事件、私ども西新井事件と呼んでおりますけれども、これを検挙いたしたわけでありますが、この事件の工作員はその後の捜査によって判明したわけでありますけれども、昭和四十九年五月に石川県の海岸から北朝鮮に密出国した、そして北朝鮮で工作員訓練を受けた後、再度我が国に密入国してきた、こういう事実がございます。
  48. 黒柳明

    黒柳明君 柴田の二重国籍のケースなんですけれども、二重国籍で今まで何らかの形で逮捕されたなんというケースはあるんですか。
  49. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 今回の柴田の事例のごとく、二重国籍の人物に成りかわった事例というのは私ども必ずしも承知いたしておりません。
  50. 黒柳明

    黒柳明君 報道によりますと、何か九万三千件こういうケースがあって、今これを徹底的に調べているというような、こういうものは調べられるものでしょうか。これは調べられないとも断言できないでしょうけれども、やっぱりこの二重国籍というのは非常に調べることが難しいんじゃないでしょうか、どうなんでしょうか。これから丹念に一つずつ調べる、こう報道では書かれていますけれども、その点いかがなんでしょうか。
  51. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) 捜査の手法、内容にわたる部分でございますので答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、先ほどの御質問にも関連いたすわけでありますけれども、いわゆる北朝鮮スパイ事件におきましては、私ども土台条件と呼んでおりますけれども、北朝鮮に親族等がおる人で我が国に居住しておる人がよく利用されておるというようなケースがございます。
  52. 黒柳明

    黒柳明君 最後ですけれども、きのうの北鮮、朝鮮民主主義人民共和国当局の発言ですと、もう我々の国はよど号事件の者たちに来てもらってかえって迷惑しているんだ、我が国からの出入国は全く自由なんだ、こう発言していましたね。これについてはどういう感想をお持ちですか。  当然外交関係がない国ですし、よど号事件で国際手配はしているわけですが、まあ北鮮は関係ないわけですけれども、いずれにせよ我々の今までの感じですと、ある意味において北鮮の政府当局の何らかのコントロール下にあったんではなかろうか、こういうような感じがするんですが、それをもう出入国は自由なんだと、そうなると何か北朝鮮は直接関係していない、むしろ迷惑しているんだと言うけれども、これだけの犯罪を犯した者を自由に出入国させている、こういうことなんですが、こういう発言についてはどのようにお感じになりますか。
  53. 國枝英郎

    説明員國枝英郎君) お答えいたします。  北朝鮮が容認しない限り柴田等この種の人物の出入国というのは不可能であろうというふうに考えます。その意味におきまして、先生も御指摘ありましたように、北朝鮮の関与というのは十分考えられるところであろう、捜査的にもこの点は解明いたしたい、かように考えております。
  54. 黒柳明

    黒柳明君 大臣に最後に、きのう総連の発表で、大臣のおとといのここの発言だと思うんですよ。國枝事課長発言じゃない、大臣発言ね。もう北鮮がこれに関与しているなんというようなことがあって、それについての反発だと思いますね、きのうね。日本政府当局はこの問題は北鮮政府が関与しているようなことで事実を歪曲しているなんというようなことでおしかりのコメントがありましたね。どうですか、大臣、あれ大臣に対するおしかりだと思いますよ、どうお感じになりますか。
  55. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 外務大臣が一々外国、特に民間の人たちのコメントコメントする必要はないと思います。私が国会で申し上げたことが私が国会に対する責任を持ってのコメントである、こう御理解賜ればよいと思います。
  56. 黒柳明

    黒柳明君 ありがとうございました。  今度は有馬局長さん、おとといの続きで済みません。おととい私の持っていた資料、その場ですから、幾ら英語の達人だって、はす読みにできなくて、それできのうお渡ししてごらんいただいて、勉強していただいたその結果、まずそれをごらんになってお読みになって、勉強いただいて、どういうふうにお感じになりますか。どういうふうにお感じになるかというより、もうちょっと具体的に言いますと、あの例のアメリカの国内法ですね、クロス・サービス・アグリーメント、これを踏まえてNATOの十カ国とアメリカと物品役務の融通協定を結んだ、これ間違いない、こう思うと、こう私あれしましたが、その事実関係は間違いないと思うんですが、それはそれでいいでしょうか。  と同時に、もう一点、皆さん方が入手していない、わからない、内容までは全然関知していないことも事実ですけれども、まだ話をする前ですからNATOとの問題は全く知らないと、こうおっしゃっていたのが、入手してお読みいただいて、勉強していただいて、それはどういうふうな感想をお持ちか。
  57. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ちょうだいいたしましたテキストを拝見いたしました限りでは、今先生がおっしゃられた性格のものであろうと思います。
  58. 黒柳明

    黒柳明君 うん、わかった。そうすると、日本がせんだってハワイで話し合いしようというふうに言われた役務物品の融通協定、これの国内法に基づいてのNATOと結んだものである、こういうことですね。  そして、このNATOのノルウェー、デンマーク、ルクセンブルク、この内容ですね。これお読みいただいてどうですか。
  59. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先日政府側から御説明申し上げましたより若干詳細に、米側が先般の日米安保事務レベル協議でこれについてどのように説明したかということをお話ししたいと思います。  その際、先方が申しておりましたのは、一部重複いたしますけれども、NATO相互支援法は米国の国内法でありますと。そして、この支援法を見ている限りは、私どもこれは有事、平時いずれにも適用可能なものであろうと思っております。そして実際ちょうだいいたしましたこのノルウェー、デンマーク、ルクセンブルクでは、平時のみならず有事においても適用されるというふうに規定されております。  今般米側からは、同法による相互物品役務融通協定は、基本的には共同訓練を円滑かつ効果的に行う等、平時の適用が主に想定されているとの一般的な説明があったわけでございます。そしてさらに米側からは、米国とNATO諸国間の共同訓練の際の物品役務の融通の仕組みについて説明を受けました。日本との間にも相互物品役務融通協定、そのような協定があることが有用であると思うとの発言があったわけでございます。  また、しかしながら、その際私どもが申しましたのは、結論は、もう全く唯諾することなく白紙で少し勉強させてくださいといったところでございまして、今申し上げました以上のことを、ここで米国と第三国間との間で結ばれているものにつき有権的にお話しすることは極めて困難であると申し上げざるを得ませんので、御容赦いただければと思います。
  60. 黒柳明

    黒柳明君 物品あるいはサービスのお互いの融通、これは常識的に考えまして、平時のときに融通し合ったものが有事にはストップするというのは、これは常識以前の問題として考えられないという立場はないですか。これは平時だけなんだよと。ここに、アネックスAの五条にいろんなものがありますね、サービス、物品の供与やなんか。こういうものが要するに平時だけのがあって、有事のときにはなくなるんだよと。これは共同訓練とはちょっと違うと思うんですね。共同訓練は練度を高めますから、一つのモデルでやりますからね。青軍だ、赤軍だ、どこを攻める、そのためにはどう作戦を練ろうと、こういうことですから。  有事においてはそんな想定なんかできないわけですよね、共同訓練の場合には。あくまでも、政府が答弁しているように練度を高める。これは当然そうでしょうね。それで、どういうケースがあっても対応できるように、ともかく基礎的練度を高める。あるいは具体的ケースの練度を高める。ところが、このサービスや物品の融通というのは平時も必要でしょうけれども、むしろ必要なのは有事ですよね。有事のときにどれだけの備品があるかわからない。まあポンカスについても話し合いをこれからしよう、こういうことの話し合いがもうありますけれども、ポンカスの話し合いは、ポンカスというよりも米軍有事来援ね、これはいつごろから話が始まるんですか。  ちょっとこう、質問があっちこっちへいっちゃうもので申しわけない。いつごろから話し合いが始まるんですか。
  61. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 有事来援につきましては、御承知のとおり先般、一月のアメリカでの両長官の会談で合意をしておるわけでございます。ほかの共同研究と同じく、在日米軍司令部と我が方の統合幕僚会議事務局との間で作業をすることになろうとの前提で、現在その進め方などを相談しておるところでございます。具体的に、いつごろどういうことを始めるかということはまだ決まっておりません。
  62. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。  済みません局長。その有事来援の話し合いもこれから始まる可能性があるわけですね。ですから、平時のときに大切なのは有事のときこそ大切であるということは、私はもうここで、何をつくるのか、どういう話し合いをするのか、それが重要であるかどうかという論議とは別のケースとして考えられる問題だと思うんですが、それはどうでしょうか。
  63. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) いただきましたノルウェー、デンマーク、ルクセンブルクとの間の協定におきましては、米側についてはNATO相互支援法に基づいての取り決めであるとございまして、それを通読いたしますと、明らかにそのような部分が多うございますが、必ずしも米国の国内法によって想定されているところだけではないのではないかなという印象を持つことがございます。それが一つでこざいます。  それからもう一つは、有事、平時でございますが、米側の説明の中に、この種の協定には幾つかの制約があるということを言っておりまして、一つは、米側が負うことのできる債務債権の限度額は、非NATO諸国については一年千万ドルであります、十二、三億円でありますと。燃料、油脂類を除くと補給費は二百五十万ドル以内でございます。それから融通の対象は、主要兵器システムであるとか装備品であるとか、あるいはその構成品は対象外にしておりますというようなことを申しておりまして、それから、会計処理も四半期以内に一度の頻度で清算する、年額合計制限の計算は差し引き相殺計算を行う、そして、この種協定は基本的には平時における共同訓練等を円滑かつ効率的に実施することを目的とするものであると申しておりますものですから、米側から今般聞いた説明、今お話しいたしましたような制約を含めて考えますと、これは平時を主として考えたものではないのかなと、そのように考えても誤りでは多分ないのであろうと。  他方、繰り返しになりますが、最初に申し上げましたように、ノルウェー、デンマーク、ルクセンブルクとの間で結ばれている協定には有事のことも含まれている、そういう事態でございます。これからその辺を勉強させていただくということだと存じております。
  64. 黒柳明

    黒柳明君 金額につきましては、当然ですけれども、今の思いやりを見るまでもなく、二国間でも金額が固定している、こんなことは想定する必要はないんで、当面はということ。またエスカレートする可能性は幾らもありますから、相互の融通ですからね。  それから、NATOを見ましても、各国やり方は、レーンバースメントとかなんか、やり方は規定されていますけれども、決して金額までの規定というのはないんですよ。これは融通がきくわけです。それこそ融通がきく。ですから、今現在、局長がハワイでお聞きになったその金額だけだから、これが額が少ないから平時だよという概念は当たらない、私はこう思います。その点いかがですか。説明は説明として素直に認識した上でですよ。だから、それは平時だけだということにはならないし、だからこの金額が上限だということにもならない。ですから、それは間違っていますか。
  65. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先生おっしゃられたとおりだと思うんですが、一つ、あえてこれは推測でございます。第三国間との取り決めについて規定してございますが、先ほど申し上げましたように、先生御承知の、特に米国については、これはNATO支援法を根拠として締結していると書いてございますので、米国が受けている権限というものは多分この金額が含まれている、これを天井としているのではないかなと思いますが、これもあえて推測しているだけでございまして……。
  66. 黒柳明

    黒柳明君 それともう一つ、もうこれも言うまでもなくWHNSがまたあるわけですよ。ここでは、これは西ドイツの例を見たって、もう物すごい金額が明示されているんです。ですから、この役務の融通協定での金額、さらにその上といいますか、WHがあるわけですよ、それではもっと高度な金額が明示されているわけであって。  ですから、私が言いたいのは、今局長もおっしゃったように、基本的にはという形容詞を使われた。基本的には平時ですと、こうおっしゃった。それから金額もと、こうおっしゃった。ですけれども、その金額については今僕が言ったとおり。それから、基本的であって、あくまでも――また話が前に戻るんですけれども、今これから話す、内容はどうか、有用かどうかわからない、ましてその具体的な内容まではコメントできない、その前の問題なんですね、もう一回前に戻るんですが。  こういう核と兵器、弾薬も入っているわけですよ、NATOの場合には。それから港湾とか飛行場とか、ほとんどあらゆるものが入っているでしょうね、融通として。これを私は是として言っているわけじゃないですよ。こういうものをもし結ぶ―これから条約局長にちょっと聞きたいんですけれども、前提とするならば、要するに平時のときじゃなくて有事こそ必要なわけですよ。これはくどいようですが、話し合いする、内容を決める、有用であるかどうか、そんなこととは別で、もしこういうものが前提になるならば、これは平時よりも有事の方が必要である。こういう前提に立つのが常識じゃないかと私は思うんですが、局長、それはどうですか。
  67. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これは私が見た範囲でお話しすることになりますので、そのようなこととしてお聞きいただきたいと思いますが、私は必ずしもそうだと思いません。それは先ほど申しましたように、主要兵器システム、装備品及びそれらの構成品は対象外であるということをきちっと申しておりますし、それから先ほど弾薬等を含むと言っておられましたが、先生がおっしゃられているようなものは明示的にたしか排除されていたと思います。この辺、私は記憶が定かではございませんけれども。  それから、ここで食糧、宿舎、輸送燃料等と挙げられております。それが確かに有事の際に含まれる可能性があるとおっしゃられれば、私はそのとおりだと思いますけれども、他方、基本的にこれは演習ですと言われて説明を受けますと、素直になるほどそのようなものかなと聞けたのも事実でございます。
  68. 黒柳明

    黒柳明君 これは本当かどうか私わかりませんけれども、基本的には平時なんだよと、演習だと言われれば、共同訓練だと言われれば、素直にそう受けてもいいとおっしゃった、その局長の裏なんて、私はあるとも言えませんし、ないとも言えませんし、ああそうですかと聞かざるを得ないんですけれども、ただこれは常識的に平時はこういう融通協定があっても有事のときになかったら何のための平時かと、こんな感じもするんです。  それで条約局長、ことに十八項目の項目が出ているんです、アネックスAの五条を受けて。これは今の国内法で融通し合うことができるものは何ですか。できないものは何ですか。食糧、輸送燃料、油、木材、衣服、通信サービス、医療サービス、弾薬、倉庫サービス、施設使用、訓練サービス、部品パーツ修理、メンテナンスサービス、空港、港湾等、こういうふうに十八出ているんですよ、ずらずらと。これはもし国内法でこういうものを平時に融通し合おうといった場合に、今の国内法じゃこれはできないという項目がある。何でしょうか。あるいはできるというものは何でしょうか。とっさで申しわけないんですが。
  69. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 具体的には防衛庁の方からお答え願った方がいいのかもしれませんが、何分にも先週米国から提案がございまして、まずそれの締結が有用かどうか、有用だとすればどういう法律的な問題点があるかということをこれから検討する段階でございますので、この十八項目のそれぞれについて、現行法のもとで可能かどうかという点についての検討はまだ終わっていないと承知しております。
  70. 黒柳明

    黒柳明君 終わっていないどころか、きのうだって、もらったって見ていないでしょう。局長は見ているけれども、条約局長はまだ見ていないんだ。終わっていないどころじゃない、見ていませんというのが本当の答弁じゃないですか。  そうしたら、今局長がおっしゃったように、防衛庁からお答えいただいた方がいいと言うんですが、これはどうですか。この十八項目について現行国内法で、これは仮定のことで済みませんね、もし平時で融通し合うということになった場合に、できないものはどれですか、できるものはどれですか。検討もしていないですね、当然それは。だけれども、今のをごらんになって。
  71. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 先生からのノルウェーのを見せていただいておりますが、まだ全然検討しておりませんので何とも申し上げかねるんですが、例えば既に以前申し上げておりますように、油の一部については現在でも艦船の間で一部行われているところでございます。  先ほど御説明がありましたように、例えば一千万ドルの金額の範囲内で油だけで七百五十万ドルということですから、大部分は油のことを考えているんじゃないかと思いますが、そうしますと、油はそんなに問題がなさそうかなという感じはいたします。あとこのノルウェーの中には弾薬とか、それから医療業務というようなものがございますので、例えばその医療業務ということになりますと、厚生省絡みの法律がたくさんございますのでその辺は一体どうなるのか、これは私どもにとりましても未知の分野だものですから、相当よく勉強させていただかないと、ちょっと何とも言いかねるのではないかと思います。
  72. 黒柳明

    黒柳明君 空港とか港湾なんというのは、今言ったように、これはもろに今度は運輸関係であり、民間のサービスがありますし、こんなものは全くわからない。こんなことになりますわね。  それで、何回も何回も、おとといから同じようなことですけれども、これから話し合うんだと。ただ、アメリカの意図というのははっきりしていると思うんですよ。平時だけで何かお互いに融通し合う、こんなものじゃ決してない。日本はもうアジアの世界戦略の橋頭堡ですから、要するにだれに会ったって、向こうの兵隊さんはもう私たちと全く考え方が違います。私なんかも向こうの司令官に会ったときなんか、国会発言するようなこんなばかな発言はしていません。これは向こうは戦時態勢ですから、いついかなるときだって、あらゆるものを携えて戦争ができるだけの備蓄は日本にありますと公言してはばからない。それは当たり前だと思いますよ、戦争ごっこをやりに来ているんじゃない、訓練のための訓練じゃありませんから。  ですから、平時のための、共同訓練のためのサービスや物品を融通し合うだけの意図じゃない。明らかにそれが有事に連動する。だって、今ここにいること自体が彼らは何も平時のための駐留じゃないんですから。一たん事あるときにはすっ飛び出ていく、しかも備品だって全部そのまま持っていますと、こう公言しているんですから。しかも第三国にまで持っていくような備品までもあるわけですから。しかも日本の油なんというのは、極東にいるアメリカ軍にもどんどん持っていっているわけですから。だから日本の米軍基地なんというのは、そんな平時のときの構えなんということは当然ない。いついかなるときでも有事の態勢でありますよ。  そうすると、日本と自衛隊と融通し合おうということは、どこからどこまでが有事でどこからどこまでが平時だと、こういう区別なんかできない場合だってあるじゃないですか、これが平時であってこれが戦時であるなんという。油は注文を受けたけれども、載っける手前において戦争が起こっちゃったとか、そんなことは区別できないです。要するにアメリカが日本に駐留しているということ自体が平時のためじゃないんですから、有事に備えての駐留ですから。  そうなると、融通するということは、決して有事は考えられないなんということじゃなくて、平時のためはイコール有事のことであるという常識論の方がやっぱり説得力があるんじゃないでしょうか、それの方がアメリカの考えとしては。それを日本政府がどう受けとめるか。それこそこのNATOの冒頭に書いてありますように、軍事的有効であるとかあるいは物資の補給サービスについてその目的がプラスであるかどうか、両国について。こういう観点もあるでしょうけれども、融通し合うことが自衛隊にそんなメリットがあるのか、日本防衛のために、専守防衛のために。  そうじゃなくて、やっぱりアメリカが融通してもらうことの方がメリットがあるんじゃないですか、常識的に、相互といっても、日本の国ですもの。我々は何といったって年じゅう補給できるんですから、アメリカの場合には補給できないものがあるわけですから。本国から取り寄せる、備蓄しなきゃならない、手間がかかる、金がかかる。当然彼らは戦時を想定しての駐留、戦時を想定してのNATOとの協定どころか、戦時を条件としての協定であると同時に、日本もそれを前提としていることは間違いない、こう私は断定せざるを得ないんですよ。  それでもやっぱり向こうが平時と言ったから、基本的にはと言ったから、そう考えて話し合うんですという立場は変わりませんか。
  73. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) はい、変わりません。
  74. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) アメリカのNATO相互支援法は確かに有事、平時限定をしておりませんし、先生にいただきましたノルウェーの例においても平時のみならず有事を想定しているということは事実でございます。そのことと私どもが今後検討しようとすることが一緒でなければならないことはないんじゃないかというふうに思っております。先ほど御説明ありましたように、共同訓練などに大変有用であるというお話を聞きましたので、私どもは共同訓練ということを中心にして検討しようかというふうに思っております。  それで、こういう相互融通制度みたいなのは有事も当然必要ではないかということですが、それはまさにそのとおりであろうかと思います。ただ有事の際における日米間の相互支援、自衛隊と米軍との間の相互支援の問題につきましては、私ども前からしばしば申し上げておりますように、ガイドラインの中で将来いろんな研究が一応まとまった段階で有事の際の相互の間の支援について研究をしましょうということになっておりますので、それはそれでまた別途ガイドラインのもとでの研究でやりたいなというふうに現在のところ思っております。  したがいまして、私どものこれからの取り組み方の態度としては、もしこの融通協定について検討するとすれば、やはり共同訓練を中心として考えていこうかなという、大体そんな姿勢のようなことでございまして、NATO相互支援法だけを見ておりますと、必ずしもこれで全部有事がカバーできるのかなという感じもいたしますものですから、そんなことを考えている段階でございます。
  75. 小西博行

    ○小西博行君 私地位協定について二、三点についてお尋ねをしたいと思います。  一昨日以来相当同僚議員の方からもこの法案につきまして質疑がなされたところでありまして、特別にこれを間かなきゃいけないということもないわけでありますが、ただ私は二、三点についてはもう一度確認をさしていただきたい、そう思っております。  まず第一点は、今度の改定なんですが、これも質疑の段階でいろいろ議員の先生方からも意見がございましたように、昨年改定したのにまた特別改定ということで今度はやられるというようなところがどうしても問題になっているようでございますし、私もこれいつまでこのような状態が続くのだろうか、改正してまた円高その他の条件が入ってきますとまた改正だというようなことになりますと、大変これはもう不安定でありますし、なかなか納得ができないことになるのではないか、そのように特に思いますので、この改正に当たって政府が原則を逸脱していないんだと、こういうふうにおっしゃっているんですが、その辺の事情をもう一度明確にしていただきたいと思います。
  76. 福田博

    政府委員(福田博君) 昨年、国会の御承認をいただきまして締結をいたしました特別協定は、地位協定二十四条の特例をなす、かつ時間を限って、期間を限った限定的な特則としてつくられたものでございますが、今回のこれを改正する議定書というものは、その中に定められております特定の手当の二分の一までを日本側が負担することができるというのを、全額まで負担することができるというふうに改正するものでございますので、この地位協定の特則であるという性質はいささかも変わりがないわけでございます。したがいまして、経費負担についての地位協定二十四条の基本原則そのものを変えるものではございません。  したがいまして、この議定書による現行の労務費特別協定の改正を行いましても、この特別協定そのものの性格を変えるものではないわけでございます。
  77. 小西博行

    ○小西博行君 そういうことになりますと、また来年改正するということもあり得るというふうに判断してよろしいでしょうか。
  78. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これは先般来申し上げておりますけれども、今ここに御審議願っていること以外のことを現在私ども考えておりません。
  79. 小西博行

    ○小西博行君 今はそうなんでしょうけれども、ひょっとしていろんな事情が変わりますとまた改正するようなことになるかもわからないというふうに私は理解さしていただきたいというふうに思います。  次は、特に労務者の給料の問題がございますが、法案なんか読ましていただいても、基本給はもうほとんどつっつかない。当然基本給というのは日本の国家公務員と大体同等ということになっておるように私は理解しているわけですが、そのあとの残りの付加給ですね、さっき手当とおっしゃったこういう部分がいろいろ変わってくるんだと、このように理解しておるんですが、この基本給の方ですね、何らかの形で続くというようなことは今後は絶対ないんでしょうか。
  80. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) これも先般来申し上げておりますけれども、政府としては基本給の負担を対象として検討を行っているということはございません。
  81. 小西博行

    ○小西博行君 そうすると、あとは付加給がどんどんふえていくということにもしなりますと、あるいはその本給の半分ぐらい手当の方で充当するというような事態も起きないことはないんでしょうね。
  82. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) この特別協定が対象としております手当、これは八つの手当がございます。それらの手当の全額までをこの改正によってお願いしようとしているわけでございます。現在米側において負担している手当がございますが、これについては基本給類似の手当等を含めまして十四手当ございまして、これは五十億でございます。  なお、これを負担するのかというお尋ねでございますけれども、これについても確かに理論的な可能性としてはこれはあり得ると思いますけれども、現在のところそのようなことは考えておりません。検討いたしておりません。
  83. 小西博行

    ○小西博行君 なぜこのようなことをお尋ねするかといいますと、日本の民間企業のいろんな賃金を決定する場合に、地域手当だとかその土地によってのいろんな条件が変わりますと、どうしても付加給のような形でつけるわけです。例えば通勤手当その他ですね。  そういうふうになっていきますと、いつの間にか付加給は非常にふえるんだけれども、この場合は退職金というのは別だと思いますが、退職金計算なんかする場合にはどうしても基本給を中心にやってしまう、そういうような現象があるものですからね。その辺の割合というのが将来にとって非常に大きな問題になってくるんではないか。ましてやもちろん国家公務員ではないわけですけれども、それに大体準等するような形で遇していこうというのが基本にあるわけですからね。そういう意味で、この賃金体系というのも一つ非常に大きな問題になりはしないか、その辺を十分私は考えていただきたいと、そのように思うんですが、いかがでしょうか。
  84. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) 公務員の賃金体系と極めて類似した制度をとっておりますけれども、それ以外にも、実は五十四年度以来日本政府地位協定上負担できるものとして負担いたしておりますものが格差給、語学手当等でございます。こういったようなものを含めまして、日本政府としては既にこの今回の特別協定の改正がお認めいただけますれば、ほとんど大部分を負担することになっています。それじゃ残っているのは何かということは、先ほど申し上げましたように、基本給類似の手当と、それからあとは、例えば今お話のございましたようないわゆる寒冷地手当とか、あるいは隔遠地手当とか、あるいは特殊な業務に従事する者の手当、こういったようなごく一部の従業員にだけ支給される手当でございます。  ところが、今回の特別協定の改正あるいは特別協定の目的そのものはあくまでも従業員全体の雇用の安定に資する、こういう趣旨のものでございますので、そのような特殊な手当は除かれておる。他方、今申し上げたその余の五十億のうちの大部分でございますが、いわゆる基本給的なものに極めて類似した手当、これについても各般の検討の結果負担いたしておりませんし、現在そのような負担を考えていない、検討していない、こういうことでございます。
  85. 小西博行

    ○小西博行君 私は、米軍のいわゆる給料というのは一体どうなっているのか、全然勉強しておりませんのでわからないんですが、ただアメリカの一般の民間の給与体系というのはもうこれは完全に職務給でございまして、日本の場合には年齢給といいますか、ある程度年をとれば結婚もする、子供もできるというようなものを考慮した上での賃金体系。アメリカの場合はそういうことは全然関係なしにその職務のいわゆる評価によって賃金が決まる。だから、若い人がその職場につこうが年輩の人がつこうが賃金はもう同じだ、職務によって賃金が決まる。  米軍の方をちょっとお聞きしたいんですが、どういうような賃金体系になっておるんでしょうかね。
  86. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) まず、欧米型のいわゆる賃金概念とそれから日本の賃金概念の違いということでございますけれども、確かに欧米ではいわゆる提供する労働の量とか質というものを極めてドライに算定いたしまして、そしてその対価を払うということです。ところが日本の場合は、単にそれだけではなくて、いわゆる生活保障給的なもの、例えば何人の扶養家族を持っているとか、あるいはどういうところに住んでいるとか、あるいはどういう交通手段で通っているとか、そういったようないろんな個別の事情、生活保障的なものを加味したその種の手当、あるいは一時的に支給されます、典型的なものは例えばボーナスでございますけれども、そういったようなある種の報奨的な性格のもの、さらには退職の際に支払われます退職金でございますね、これも報奨的なものに加えていわゆる長年の労苦に報いる、こういう趣旨もございます。  いずれにしても、そういったような極めて日本的な思想と、欧米のような非常にドライな思想がございまして、いわゆる例えば米軍人の給与体系でございますが、基本的にはいわゆる基本給が中心でございまして、あとは例えば日本のようなこういう地域に勤務するという特殊な事情を加味した手当がございますけれども、基本的には私どもの言っている基本給そのものだけで構成されておる、こういうことでございます。
  87. 小西博行

    ○小西博行君 もうこれ恐らく十年以上前になると思うんですが、日本の場合でもそのように特に製鉄会社を中心にいたしまして職務給を何とかして導入して、その人の能力に合わせて賃金を決めるべきじゃないかという、だから若くて能力のある人というのはその職務につけば高い給料をいただけるというようなことで相当いろいろやったわけです。  しかし、現実には最低の生活費というのが大切でございますから、アメリカの場合のいろんな賃金を調べてみると、やっぱり最低賃金というのがかなり上の方へ来ていたわけですね。日本の場合は最低賃金というのはうんと低いものですから、子供さんが二人も三人もいて五十歳過ぎてということになったら、職務の選び方によってといいますか、採用によってもう生活ができないというようなことで、どうしても今の公務員の給料をひとつベースにして年齢給的なものがずっと来たと思うんです。しかし、将来においては何かしらそういう方向に私は動くんではないかなと。そういう意味で、米軍の給料というのは一体どういうような仕組みになっているのかということにちょっと興味があったからお尋ねしたわけです。  さて大臣、この思いやり予算というのは何かしら非常に不確定要素が多いような気が実はするわけです。日米安保条約を結んでおりますし、物価が上がったからこうだというようなことじゃなくて、何かこれもう少しはっきりしたものをつくっていかなきゃいけないという感じが私はしてならないわけですね。そうかといって、この間同僚委員の方からございましたように、ペルシャ湾では大変お世話になっているんで、その辺の思いやりという、お返しという意味でこれも改定の一つの基礎になっているのかと。いや、それは全然関係ないと、このようにおっしゃっておるんですが、何か具体的なものを今後検討していくというようなお気持ちはございますでしょうか。
  88. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今日までは御指摘のように主として円高ドル安ということ、あるいはまた一時はオイルショックというふうなこと等も考慮しまして、歴代いろいろと考えてこられたわけでございますが、なべてそれは日米安保体制の円滑な運営ということに頭が置かれておる、特に今回は雇用の安定ということが大きな目的であると、こうしたことで御審議をお煩わせしておるわけでございます。  今おっしゃることも非常に大切なことで、思いやりという言葉すらも、実はあるいは目上の者が目下に対するような言葉でございますから、日米は対等でありますので、そんな言葉がいいかどうかということもありますが、今ここでごろっと変えてしまうと何かまた本質的に変わったんだろうかというふうなこともございますので、それはそれなりで日米の理解のもとに使っておりますが、そうした言葉も私これでいいんだろうかと実は思わないわけでもありません。したがいまして、そんなことでいろいろ今後何かつくれとおっしゃることは一つの御意見だ、かように私も考えますから、いろいろとそういう点を検討してみたいと思います。
  89. 小西博行

    ○小西博行君 ペルシャ湾のことにちょっと触れましたけれども、どうもペルシャ湾の問題というのは以前から私も何回か御質問申し上げたんですが、なかなかうまくいかない。これは現実問題として、日本の将来にとってあるいは現在でも大変大きな問題だというふうに思います。いろんな意味で米軍からの援助を受けながら何とか安全に航行するというのが私は現状ではないかと思うんです。そういう意味で、このペルシャ湾に対してというよりも、米軍に対して何らかの形でこれは財政措置というものを明確にしておく必要があるんじゃないか、このように思いますが、その点はいかがですか。
  90. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはペルシャ湾に対する日本政府としての方針を決めましたときに、なお書きで今回のやつは米国といろいろ相談をして、こういうときには何が適切であるかというふうなことをやったわけでございますから、確かにペルシャ湾の方針を決定したときのなお書きに書いてあると。そういう意味では、ペルシャ湾のときの話である、しかしペルシャ湾そのものではないと、こういうふうに言っておるわけでございます。  確かにペルシャ湾に関しましては我が国の石油の五〇%以上を依存しておるわけでございまして、事実、船員も非常に急迫した状態のもとで仕事をしてもらっておる、その安全は私たちみずからの手で安全を保障することはできない、言うならばこういうような立場でございます。だからといってすぐに私たちは自衛隊派遣だというようなことは到底できない国家でございます。したがいまして、ひたすら平和的な手段ならばということで、御承知のような一千万ドルでございますか、それを出しまして、そして航行の安全を図る、そういうようなシステムをこしらえる、これが日本としての精いっぱいでございますと申し上げておるわけであります。  しかしそうした沿岸諸国からもこれは理解を得なくちゃならない問題でありまして、そして理解を得つつやっと敷設してもよろしいというところまで来ておるわけでありますが、そのときに再びミサイル攻撃が始まったり、あるいは機雷の敷設が始まったというようなこと等々もございまして、非常に私たちといたしましても苦慮しております。しかし、現状といたしましては昨年の秋決めたそれが今としてはベストではなかろうか、こういうことで臨んでおる次第でございます。  もしそれ、国連的な意味で何らかの措置がとれないかという話があれば、やはり平和的な手段によるところの方策ならば、国連等々を通じてならばあるいは私たちも考えることがあるかもしれません。しかし、今のところはなお書きどおり読んでいただきまして、確かにアメリカはグローバルないろいろ役目を果たしていてくれます。といって今度のやつはそのグローバルな役目に対する言うならばお返しでありますというわけではありません。そこら辺もきちっとして私たちはやっておるわけでございますので、今いろいろと御指示賜りました点に関しましても私たちはいろいろと各方面から我が国の平和主義というそうしたものを踏み外さない限度において検討することはこれは当然のことであろうと思います。
  91. 小西博行

    ○小西博行君 安全のシステムというようにさっきおっしゃいましたね。航行安全装置をとにかく日本がつくり直す、何か故障しているそうですね、そういうお話がここにあるんですけれども、これはもう相当進んでいますか。
  92. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) これは昨年の決定直後より、関係国六カ国ございますが、アプローチしております。現地の方ではこれは全く新しいシステムでございまして、このシステムの内容についてまだ技術的に知っていなかったということもあって、彼らも国内でいろいろな調査、それから利害得失の検討をいたしまして、ことしの春六カ国すべてから受け入れたいという回答を得ております。  この回答をもとに現在このシステムを製造し設置し得る会社、イギリスの会社でございますが、その会社とそれぞれの国の担当部局との間で契約交渉に入っております。ただいま断食月でございましてちょっとその契約がおくれておりますが、これが明けますと、それぞれ次第にその契約ができ上がっていくという形になるというふうに思っております。
  93. 小西博行

    ○小西博行君 もうちょっと技術的にお尋ねしたいんですが、それは例えば船舶につけているいわゆるロランですね、三角法で自分の位置を知る、そういうような種類のものじゃないんでしょうか。どういうものを……。
  94. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 基本的には同じでございます。ただ、精度が非常に高いものだというようにお考えいただいて結構です。
  95. 小西博行

    ○小西博行君 そうですか。それは岸辺につけるというのでしょうか、海の上に浮かすというか、どういう形で使っていくんでしょうか。船につけるんですか。
  96. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) これは大体岸辺に近いところに基本的に発信装置をつけまして、その発信装置を日本側としては無償で供与する形になりますが、その湾内を航行する船舶は、その発信する電波を受信する装置をそれぞれ船舶を所有している人の経費によってつけていただきまして、その電波を受信することによって自分の位置が極めて正確にわかる、大体数メートルの誤差の範囲内でわかる、こういうことでございます。
  97. 小西博行

    ○小西博行君 ですから、航行する場合に自分の船がどの位置を走っている、できるだけ例えばイラン側に寄らない、そういう意味の安全装置ですね。
  98. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) そうでございます。例えば特に機雷があった場合に機雷をよけて通らなきゃいけませんので、そうすると自分の位置を極めて正確に知る必要がある、こういうことでございます。
  99. 小西博行

    ○小西博行君 ようわかりました。  そのことはだから早く、もう現在でもつけるべく努力はして……。
  100. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 交渉中でございます。
  101. 小西博行

    ○小西博行君 交渉中……、これは早くやらないといけませんね。  大臣、これまたこの前もちょっとお願いしたんですけれども、まだ人身事故が起きているわけです。これマリア2号、ペルシャ湾。だから海員に従事している日本人の方からやっぱりたくさんの陳情を受けているわけです、もう大変心配だと。大臣のこの前の答弁も国連の方へももちろん申し入れる、あるいはイランに対してもと、こういうお話があるんですけれども、これはどうなんでしょうかね、イランがやったという証拠というんでしょうかね。もちろんイランの国はそれを認めているわけじゃないと思うんですが、何か具体的な調査なりあるいはそれに対する対策というのはないんでしょうかね。
  102. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細は近ア局長から言ってもらいますが、ああした事件が起こりますと一応イランだというふうに外電等々伝えてまいります。したがいまして、私たちもそうしたあらゆる環境等々を考慮しながらイラク、イラン両国に対しまして厳しく申し入れておりますが、特にイランに対しましては局長が大使を招いて強く抗議をしてあります。しかしながら、残念ながら現在のところでは因果関係がはっきりしない、私は砲撃した覚えはありませんというような調子です。しかしながら、本国には伝えましょうということで帰っておるというのが現状でございますが、やはり邦人の大切な命でございますから、今後も私たちはこうした申し入れに沿いまして極力真相は追及したい、かように思っております。
  103. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) ただいま大臣からのお話しございましたように、直後に私どもとしては情況証拠から判断して、マリア2号に対する攻撃はイランの船舶が行った可能性が強い、したがってこれが事実であれば極めて残念なことで遺憾である、今後とも気をつけよ、こういう申し入れをいたしまして、イラン側はこれを否定しております。イラン側は私どもの計算では、現在までのところ一九八四年一月一日以来百五十八隻のタンカーないし船舶を攻撃していると思われますが、このいずれのケースについてもイランは認めておりません。今回の事件についても否定しておりますが、私どもとしてはこのような抗議あるいは遺憾の表明はそれなりの重みをもってイラン側には受けとめられているであろうというふうに期待しておりますし、考えております。
  104. 小西博行

    ○小西博行君 もう時間がなくなりましたが、韓国の例のオリンピック、これは何とかして成功させなきゃいけないという気持ちを私どもも持っておるわけです。  恐らく政府は、四月二十七日でしたか、テロ防止会議というのをもう既に開催されたと思うんですが、どういうことをやられたんでしょうか。どういう結論が出ましたか。
  105. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま御質問のオリンピック関連安全対策日韓連絡協議会、ただいま御指摘のとおり四月二十七日、二十八日の両日東京で開催をいたしまして、概略を申し上げますと、国際テロに関する情報交換それから日韓両国の安全対策体制それからソウル・オリンピック安全対策に関する日韓の協力、このような各項目につき意見を交換した次第でございます。  その詳細につきましては事柄の性質上公の場で明らかにするというのは適当ではないと考えられますが、いずれにせよソウル・オリンピックの成功にとり、ただいま委員が御指摘になりましたように、テロ等防止の安全対策が最重要課題であるという認識のもとに、我が国といたしましても対韓協力という次元以前の問題として、日本みずからの責任として国際テロ防止のために最大限の努力を行うという立場で対応をしていく所存でございます。結論と申しますよりも、今後ともこの協議会は常時開かれている状況にしておくということで、会合自体またしばらく時を置いて開こうという合意になっております。
  106. 小西博行

    ○小西博行君 先ほど同僚議員の方からもお話がありましたように、丸岡だとか柴田とか、いろんな不穏な動きが最近非常に激しくなってきているような気がするわけです。そういう意味でいろんなものを想定して、先ほどのお話じゃありませんけれども、やっぱり国内のそういうような状況もよく調査をして、そして韓国との共同的ないろんなこともあるんでしょうし、相当慎重に、しかも思い切った方策をとっていかないとひょっとしてひょっとするというような心配もございますので、その点を大臣中心にひとついい方策を考えていただきたいと思います。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 累次お答えいたしておりますが、韓国オリンピック、ソウル・オリンピックを必ず成功さしていただきたい、それが隣国日本としての気持ちであります。したがいまして、そのためにはやはりもう全世界が参加することがいい、これが私たちの基本的認識であります。そうした意味で先般、卓球選手団という問題がございましたが、これの入国も法務省等々関係省と十二分に吟味いたしまして許可をするということにいたしました。つまり韓国みずからも一日前まで門戸を開いておく、どうぞいらっしゃい、こういう気持ちに私たちもやっぱりこたえよう、そうすることにおいてこそ初めて成功するんじゃなかろうか、こういうふうに思っております。  しかしながら、その後にこういうふうな赤軍逮捕、よど号事件の犯人逮捕というようなことでございますから、いわば私たちも非常に驚きました。しかし、こうしたことはかねて予測されておりましたから、いち早く外務省には赤軍対策の監視をすべき本部等を設置いたしまして、十二分に警察当局とも連絡をして、監視を怠っておらなかったその功があったかなとも思いますが、しかしまだ何人出ておるかわかりません。したがいまして、相当数外に出て――相当数といっても限定されていますが、いろいろたくらんでおるという情報も入ってまいりますから、今小西委員が御指摘のとおりに、我々といたしましても万全を講じたいと思っております。
  108. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  109. 松前達郎

    ○松前達郎君 まず最初にお伺いいたしますが、現在日本に駐留しております米国軍隊の米国側の駐留関係費、それからさらに、日本が負担している日本側負担があるはずですが、これの総額というのは一体どのぐちいに見積もっているんでしょうか。
  110. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 六十二年度の政府予算におきます我が国の在日米軍関係経費、額を試算いたしますと、周辺対策費、提供施設整備費、労務費、施設区域の借料等で約二千五百四十三億円でございます。  それから、米国は在日米軍経費として八七米会計年度において約三十六億ドルを負担していると申しております。ただし、これには在日米軍の装備に要する経費は含まれていないとのことであります。
  111. 松前達郎

    ○松前達郎君 ちょっと聞こえなかったんですが、在日米軍の何が含まれていないんですか、装備ですか。
  112. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) はい、正面装備でございます。
  113. 松前達郎

    ○松前達郎君 今回の特別協定の改定によって在日米軍労務費の総額一千百九十六億三千五百万ですか、このうち日本側の負担が四百十一億三千二百万となる、こういうふうに聞いておるわけですが、負担率は年々増加してきているのは事実ですね。そして六十一年度が一七%、六十二年度が三一%、さらに六十三年度になりますと三五%という予定になってくる。私が調べた結果そういうふうなデータが出てきているんですが、アメリカの駐留経費負担というのは一九八七年の会計年度、これは日本と会計年度が違いますからちょっと食い違っている面が少しあるかもしれませんが、一九八七年の会計年度で今おっしゃったような三十六億ドル、これは一ドル百二十七円で計算しますと四千五百七十二億円という数字が出てくるんですね、私、計算間違っていないと思っていますが。こういうふうに言われておるわけですね。  日本側が負担している在日米軍の駐留関係費、これはいろいろの解釈の仕方もありますし、どの部分をこれへ入れるかという問題もあるかもしれませんが、六十三年度には二千五百九十五億円、これだけじゃなくて、米軍に施設区域を提供するという義務が安保条約上日本にあるんですね。そういったような提供している国有地あるいはその他の土地等あると思いますが、こういうものを、もしか日本以外の他の国々がやっているのと同じように、それは経費がかかると、ただで提供するということじゃなしに借り上げて提供する、こういうふうに仮定いたしますね。そういう経費も普通財産、借り上げ資産等をもとにして加えて試算いたしますと三千二百七十九億円という数字が出てくる。四千五百七十二億円と三千二百七十九億円、これが総計して七千八百五十一億円ということになるわけですね。  そこで、日米の負担の率をこれから計算してみますと、日本は在日米軍の全経費の四〇%以上を負担しているんだということになると思うんですね。前回の委員会でも同僚議員の質問にありましたが、諸外国の中で米国が駐留している国というのはたくさんございますが、その国々でもその国の経費において負担しているというのはほとんどない、米軍がほとんど負担しているということになるので、日本の場合は、アメリカの国防長官が言っているのは全く事実でありまして、日本の負担が最高であると、こういうことになろうと思っておるわけなんですが、この点は御承認いただけますか。
  114. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 我が国における駐留米軍に対する我が方の負担分ということにつきまして、今先生のおっしゃられた一連の数字は正しいと思います。  ただ、これを米軍の駐留を許しておりますその他の国々とそのまま比較するということには、私どもは問題があるだろうとも思っております。
  115. 松前達郎

    ○松前達郎君 その問題があるというのはどういう点ですか。
  116. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 例えば西独は、先般も申し上げましたけれども、そもそもNATO条約のもとで対米防衛義務も負っておりますし、このようないわゆるNATO体制のもとで我が国よりははるかに多い割合の防衛費を使っておりますし、徴兵制度をしきまして約五十万人の軍隊をみずから保有するとともに、我が国の三分の二の国土に米軍二十五万人を含む約四十万人の外国軍隊の駐留をさまざまな問題を含みながらも認めているというようなことがございます。  それに加えて西独は、これはいろんな計算がございますけれども、二千二百億円といい、二千六百億円という費用をNATOの組織体制そのものに経費分担ということで提供しているといったようなことも聞いております。そのようなことから、必ずしも我が国の対米在日米軍支援というものをそのままほかの国と比べるのは適切ではないのかなと思うことがあるということでございます。
  117. 松前達郎

    ○松前達郎君 それはその国によって、例えば日本の場合は安保条約があるからと、他の国の条件とは違うんだとおっしゃるだろうと思うんですが、これはまあ安保条約があれば確かにその範疇では日本側の負担すべきものというのは決めてありますから、当然それは負担ということの行為が行われるのはこれはやむを得ないかもしれませんけれども、まあしかし、世界全体を見て、例えば安保条約一つ挙げても、一体日本と米国の間で安保条約を結んだ当初の安保条約の精神というのはどうも最近変わってきて、アメリカの戦略の一環として安保条約を利用するという格好にどうも変わってきつつあるような気がしてならないわけなんですね。  そういうふうなことから、安保条約がいいとか悪いとか、その辺の問題は今回ここでは議論しませんけれども、まあしかし基本的に相違があるというのが条約に基づくということになれば、私はその条約に規定されているものはしっかりと守らなきゃいけないという政府の責任があるんじゃないかと、こういうふうに思うわけなんですね。  そこで、その安保条約のいわゆる地位協定の中では、今回問題になっているような経費について米側が負担するということになっているんですね。区域施設等については日本側が負担するが、労務費に関しては本筋としては米側が負担すると。そういう協定をそのままにしておいて、いわゆる思いやり予算というのが別に出てきたと。  ですから、今度の問題は思いやり予算と別のまた問題である、新しい協定である、こういうふうなことに区別して考えておられると思うんですけれども、そういうふうな安保条約そのものの当初の考え方、目的といいますか、こういうものが大分最近は変わってきているような気がするんですが、大臣その点はどういうふうに解釈をされますか。
  118. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 条約そのものは、十年たったら一年前にどちらかから申し入れがない限り継続するということになっておりますから、私は条約の本質は不動のものであり、また双方がこれを守らなければならぬ義務がある、かように思っております。  したがいまして、その安保条約が言うならば逆手にとられたような格好で日本がどうも負担を強いられているんではないかというような松前さんの御意見でございましょうが、私たちは、そのように考えるべきではなくして、やはり日本も大きく成長いたしておることはもうこれは自他ともに認めるところでありますから、さような意味合いにおきまして、アメリカの極端な負担の増大に関してはやはり我々自身も考えなくちゃならぬ、そういうことでございますので、あくまでもこれは地位協定の特例だ、しかも一九九二年三月三十一日までという限定的なもので暫定的なものだと、こういうふうに御理解賜りたいと思います。  私たちも、たとえ経済大国になりましても我が国の財政そのものは非常に苦しいわけでありまして、これはすべてタックスペイヤーーの御負担を願っておるところであるということも十二分に考えて、そうむやみやたらと、いかに円高ドル安でありましても限度というものがありますから、ある程度の常識、限度というものは守りつつ今後も対処していかなければならない。だから、あくまで我が国の自主的、自発的な判断によるものである、このように御理解賜りたいと思います。
  119. 松前達郎

    ○松前達郎君 安保条約の最初の精神が最近どうも変わってきて、日本側は今おっしゃったようなことで条約の精神は変わっていないとおっしゃるかもしれませんが、戦略的な意味からアメリカの世界戦略というのは変わってきていますね、当時と大分時間がたっているわけですから。それで、世界情勢も変わってきている。そうすると、今度は戦術として安保条約を逆手に使うという手が出てくるので、これはあからさまにそういうことを向こうが言うわけはないんですけれども、何となく私はそういう気がしておるわけなんですね。ですから、そういう意味からいくと、安保条約、地位協定に基づく基本ルールというのはやはり守るべきであるというふうに私は思っておるわけなんです。  ですから、そういう意味で今質問さしていただいたわけなんで、本会議の代表質問でも質問さしていただいたんですが、もう一度確認の意味でお伺いしたいのは、今回の改定――改正を私は改定と言うんですが、これについて、この理由を何回もお聞きしているんですが、もう一度ここで最終的に確認さしていただきたい。
  120. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはあくまでも最近の円高ドル安等々の経済的事由により駐留軍の負担にさらなる負担が加重されておる、こうした現況をかんがみました場合に、やはり日米安保体制の円満なる運用のためにはいろいろと私たちは配慮しなければなりませんが、なかんずく米軍従業員の雇用の安定というものにつきましてはその安定を図るべき責任を私たちが持っておる、そんなことで我々といたしましては今回の改定をお願いいたしておる、以上がこの趣旨でございます。
  121. 松前達郎

    ○松前達郎君 「最近の経済情勢の一層の変化」ということですね。前回その協定をつくられたとき、二分の一までというときの理由もやはり同じような理由だったわけですね。これもやはり円高ドル安ということが大きな理由になっておる。「最近の経済情勢の変化」とそのときは表現されました。今度は「一層」というのがついているだけですね。  前にもいろいろ同僚議員からも質問があったと思うんです。その割にはドルはそれほど下がっていないじゃないかという、こういう見方もありますね。ですから、一挙に二分の一を短期間にすぐ一〇〇%に持っていくというのが果たして適当な説明になるのかどうかということ、これについて私はどうも納得できないわけなんですね。「最近の経済情勢の一層の変化」、これは確かに変化しています。今説明していただいた円高ドル安ということが主たるその理由であると、あるいは雇用の安定も含めてですね、そういうことをおっしゃるわけなんですが、「経済情勢の一層の変化」となりますと、これはただ単に日米間の今の雇用の問題を対象にしたことだけではなくて、アメリカの財政の問題、そういったような問題まで含めて私は拡大解釈しているわけなんです。  そうなりますと、先ほどちょっとペルシャ湾の話が出ましたが、やはりペルシャ湾の安全航行に関して日本軍隊を出せないんだから、軍隊と言っちゃ悪ければ自衛隊と言いましょう。だからその他の方法で何らかのバックアップをした方がいいのであるという解釈で、ペルシャ湾についてのいろいろな手当てを日本責任を持ってやるというふうにした、これも経済情勢の変化の一つであろうと私は思っている。ですから、非常にその「経済情勢の一層の変化」というのはうまい表現をされたなと思うんですけれども、そういうことまで含めて考えるということについて何か反論ございましょうか。
  122. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これを決定いたしましたのは昨年の十月七日だったと思いますが、そのときにおけるペルシャ湾の方針、これを政府・与党として決定したときのなお書きによるということはいつも申し上げているところでございます。  何が一番現在として適切な課題であろうかということをひとつ日米双方で検討して考えましょうという結果、本年の一月の八日だったと思いますが、正式にこのことを決定いたしました。したがいまして、ペルシャ湾の方針のなお書きの中で私たちはこうしたことを考えようという意見も述べております。だから、なお書きだからペルシャ湾の方針を決定したときの一つの問題であったということはもう御指摘だろうと思いますが、いつもお答えするように、ペルシャ湾そのものではありませんと、こう答えておるわけであります。事実そのとおりだと私も思っております。  したがいまして、アメリカに対しましては、現在双子の赤字を持っておるわけですから、貿易面あるいは財政面に関しましても日本はいろいろとそれはその面で考えてやってきた次第であります。  この間竹下総理がレーガンさんにお目にかかられましたときも、SDR、これをひとつアメリカの分も日本が引き受けましょうと、そうした意味においてそれはそれで経済の面における一つの協力でありまして、やはり安保条約とはこの面は区分をしておかなければならない、かように私は考えておりますので、我々といたしましては、広い意味の経済的な環境の変化というのではなくして、極めて限定された面における、しかも円ドルの関係におけるアメリカの負担の増大、これに対処するためである、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  123. 松前達郎

    ○松前達郎君 ペルシャ湾直接そのものではないというのは、確かにそういうふうな表現であればそうなるわけですね。ただ、間接的にそういうふうになると私は解釈したから、そういうふうに申し上げたわけなんです。  それで、しかも今おっしゃった中では円高ドル安の問題が主たる大きな理由であると、こういうことになったとしますと、円ドル関係というのは今まで非常に不安定でしたね、最近は少し落ちついたようですが。もしか今度はその逆の現象が起きた場合、ドル高円安になった場合にはまた二分の一に戻しますか。
  124. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 一応今お願いをいたしておりますのは、期限を切りましてお願いしておるわけでございますから、その途中における問題に関しましてはどのようになるか、その時点のお話となりますが、しかし、やはり現在といたしましては、一九九二年三月三十一日までのこの協定というものについての特例をひとつお認め願いたい、こういうことであります。
  125. 松前達郎

    ○松前達郎君 ちょっと苦しくなった答弁ですけれども。というのは、一年たたずして改定してしまうわけですから、だからその期間中であろうと改定できるんですね。これは前例をつくっているわけです。  ですから、そういった意味で例えば円安になった場合にはそれなりの逆の改定があっていいはずだと、そういう理屈になるわけですね。それで今お伺いしたわけなんですが、いかがですか。
  126. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今回お願いいたしておりますこの改正の基本的目的と申しますのは、在日米軍の従業員の方々の雇用の安定ということでございます。したがいまして、このような改定をお願いするに当たっての直接の原因というのは円高ドル安ということでございますし、今後このレートがどのようになっていくかわかりませんが、このような協定を改定することによってある程度の期間にわたって見通しを立てておくことによりまして、従業員の雇用の安定をより強く確保しておくことが大切だと思っております。  ただ、仮に本件協定有効期間中において著しい円高の状況が続くなど基本的状況の変化があった場合には、在日米軍の財政事情、従業員の雇用を取り巻く情勢、さらには毎年の予算において御審議いただく等のことを通じまして適切な負担についての検討が行われるであろうと考えております。
  127. 松前達郎

    ○松前達郎君 それはちょっとおかしいんじゃないですか。そうすると、別のまた新たな負担について考えるということですね、また円高になれば。  私が申し上げたのは、円安になった場合にはじゃ戻すかということをお伺いしているんですよ。
  128. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 著しい円安の状況でございます。失礼いたしました、私の間違いでございます。
  129. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうでなきゃちょっと大変な問題だと思うんですね、円高になったらということでは。  しかし、円高がまたさらに進むという可能性もあります。そういうときにはまたさらにこれを前例として改定する。だけれども、これ一〇〇%になっているわけですから、もう改定の数字はそれ以上乗せられないわけですね。そうすると、今度新たに出てくるのは地位協定そのものに手をつけるという考えが出てくるはずなんですね。どうやらそういうムードがあるいはあるんじゃないかということも勘ぐるわけなんですけれども。  この今の協定の範疇では、これがもうマキシマムにいっているんでしょう。たしか前のときは二分の一を上限とするというので、それ以上のものはないというふうなことだったわけなんですが、それがそうじゃなくなって、さらにその倍までということになったわけですね。そうするとこれは全額になるんですから、全額以上のものはないわけですね。そうすると、それをさらに増加させようとする場合には違うことをやらなきゃいけない。違うことで考えられるのは新たな分野でまた負担をしていこうというふうに考えざるを得ないんですね。そういうことまでいきそうな感じがするものですから、私はそういう懸念を持っていますので質問させていただくんです。  どうですか、ほかの例えば給与まで手をつけるというふうなことは絶対ないのか。現時点で考えておりませんということをおっしゃるんだったら、将来考えるということになりますから、その辺はひとつ十分注意して答弁いただきたいと思います。
  130. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 先般来申し上げておりますように、今地位協定の改定といったようなことは考えておりません。
  131. 松前達郎

    ○松前達郎君 それはもう何回も聞いています。地位協定はそうです――地位協定の改定は考えていない。そうすると、地位協定の改定を考えていないとすると、今のこの特別協定、これはもうフルに一〇〇%いくわけですよね、負担のパーセンテージは、五〇%から。そうすると、もうこれで終わりということですね。これがもう上限である、こういうふうに明言できると思うんですが、いかがでしょうか。
  132. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今ここで御審議をお願いいたしておりますこと以外のことは現在考えておりません。
  133. 松前達郎

    ○松前達郎君 もうこれ二十回ぐらい聞いたんですが、現在考えていない。一番無難な答弁だと思うんです。将来は考えるかもしれないというふうに解釈できる面もあろうと思いますが、もう何回も聞きましたからこの問題はこのぐらいにいたします。  もう一つ、時間が大分迫ってきましたので、在日米軍施設区域の再検討縮小、これについても本会議質問申し上げたんです。多少取引的なことになるかもしれませんが、この協定がもしか通ったとすれば、アメリカの今の在日米軍の施設あるいは土地利用等を考えましても、特に沖縄の場合は非常に広大な土地を持っていて、私行ってみても使っていないところもたくさんあるんですよね。そういうものをやはり開放すると言っちゃおかしいんですが、返還するといいますか、上げた土地じゃありませんから返還という言葉は適当かどうかわかりませんが、そういったようなことを含めて再検討をするということをやっていく、これは前からそれを言われていて、既にもう十年以上たっているんでしょうか、ところが全然それが進んでいない。ですからそういう意味で、今のギブ・アンド・テークじゃありませんが、米軍の不要な土地とかそういうものについては日本側に返すというふうな交渉をやはりやるべきじゃないかと思うんですね。  極端なことを言いますと、本来その土地は価値がある土地であり、しかも全部平たん地の相当いいところばかりですね、沖縄の場合。そういうふうな土地についても、それを無償提供しているとは言っても、そうじゃない、もしかそれを米軍のところから外せばこれは非常に価値のあるものですね。その価値を試算してさっき数字を私が申し上げたわけなんですが、そういう意味からいくとそれを返すというのは、ある意味じゃフィードバックとしては非常にまた大きな意味を持ってくるんじゃないか。その辺の交渉はどうですか、積極的に進めていく。  ただし、代替地がなければいけないとか、あるいは港湾を移すとすれば違う港が欲しいとか、いろいろあると思います。その辺の条件もそう出されちゃうと、狭い沖縄ではそんなにないんですから非常に実現が難しくなるんですが、そういった代替措置といいますか、そういうものも含めて交渉していかなきゃいけないんじゃないか。その辺大臣、いかがでしょうか、これは前にも質問申し上げたので繰り返しになりますが。
  134. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この間も本会議でお尋ねがございましたときにお答えしたとおりでございますが、やはり政府といたしましては、施設区域に関しまして個々の案件で一つずつ着実に整理統合できるものは整理統合しようということでただいまも努力を傾けております。  特に沖縄は本当に基地というものに関しましては密度が高いところでございますからなおさらのことでございます。ただ、中にはやはり米軍といたしましても練度向上のためにこの地域はぜひとも欲しいのだというところもございましょうし、移転先があったら移転しましょうということも言われておりますから、そうした二つの面からも考えなくちゃならないことも多々ございます。  今日まで遅々として進まないとおっしゃっておられますが、大体今まで交渉を一応まとめました問題に関しましては四十何%までは進めたのですが、やはり移転先が問題だとかいろいろございます。したがいまして、やはり沖縄の方々の住民感情というものもございますし、十二分にこれを尊重しないことには肝心かなめの安保体制も円満に遂行できない、こういうふうに考えますから、その点はそうした面をも含めまして一つ一つ解決するように努力をいたしていきたい、かように考えております。
  135. 松前達郎

    ○松前達郎君 時間が参りましたが、最後に今の点をひとつさらに積極的にお進めいただくことを要望いたしておきたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  136. 矢田部理

    ○矢田部理君 防衛庁長官が後半においでになるということでありますので、今松前議員から御質問のありました米軍労務費の負担問題については後段にすることにいたしまして、前段少し別の問題を伺っておきたいと思います。  それは先般外務委員会等にも外務省から配付をいただきましたが、「防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定第三条及び同議定書関係規定を実施するための手続細目について」という文書がございます。簡単に言えば、昭和三十一年に結ばれましたから三十一年協定と略して申し上げたいと思うのでございますが、これについて数点伺っておきたいと思います。  最近日米間の技術交流がいろんな意味で活発になってきている。それ自体は歓迎すべきことなのかもしれませんが、同時にアメリカ側からは軍事目的とか安全保障という観点からこれとは別の扱いをすべしということで、いろんな提起がなされています。先般、事実上妥結したと言われておる日米新科学技術協力協定、今成文化の作業が急がれているようでありますが、ここにも安保条項が盛り込まれている。言うならば、軍事転用可能技術の第三国移転を抑える、流出を防止するということから、本来科学技術は全面公開でありますし、またそのことが人類の進歩と発展にとって非常に有用だというふうに考えるわけでありますが、もう一つ別の流れが非常に顕著になってきている。きょう問題にいたします三十一年協定の特許の問題もその重要な一つではないかと私は思っております。  アメリカは、御承知のように最近、テクノナショナリズムというのだそうですが、技術を中心にしてもう一度科学や技術を中心にする世界の支配の再編成をしよう、それに当たって軍事問題、安保問題を少くともその重要なポイントの一つにしよう、こういう動きの一つかとも思うのでありますが、したがってまたこれは全面的な議論を当委員会など、あるいは科技特なども含めてやらなきゃならぬと思うのでありますが、きょうのところは別の協定が主題でありますから、若干の私が最近感じている三十一年協定の細目取り決めをめぐる問題についてお尋ねをしておきたいと考えています。  その一つは、この三十一年協定第三条では、アメリカで秘密特許となったものは日本でも類似の取り扱いをするというふうに決められていますが、この類似の取り扱いというのはどういうことなのでしょうか。
  137. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アメリカにおきましてはそれは公開をせずということでございますから、アメリカのそうした条件が解除されるまで日本におきましても公開はしない、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  138. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということになりますと、日本の特許制度は、戦前は軍事特許を秘密にしていくという秘密特許制度がありましたが、戦後の特許は公開を基本にしている。この公開の原則に例外を設ける、あるいは公開の原則に真っ正面から反する制度を日本の特許の中に持ち込んでくるということになりはしないかという点を非常に心配するわけです。  幾つかの具体例を挙げてあるいは指摘をして質問していきたいと思うのでありますが、アメリカでアメリカ人ないしアメリカの企業などが特許申請をした。ところが、アメリカの軍事目的という立場からその特許が秘密にされた。同じ内容のものを日本で申請されると、これは日本でも今大臣が言われたように秘密の扱いをするということになるわけですね。そこで、しかしこれはアメリカの企業やアメリカの人たちがそういうことをすれば日本でも秘密の扱いにするという趣旨のようでありますが、同じ内容のものを日本で発明して特許申請をする、これは受けつける。したがって従来の特許制度の変更ではないというような説明をされているようですが、その限りではそう見えますが、後に今度はアメリカで秘密にされた特許が解除される、生きるということになりますと、先願、後願の関係はありますが、日本で申請をした、あるいは公開をされた特許は、アメリカの先順位の特許があればそちらに道を譲らざるを得ないというのが今度の制度の一つの内容になっているかと思うんですね。そうなりますと、日本の特許制度は重要な影響を受けることになりませんか。特許庁来ておられますか。
  139. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 今回の五六年協定第三条の措置につきまして、これは先ほど先生が御指摘になったとおり、決して戦前のような一般的秘密特許制度を設けるものではございません。具体的には米国からそういう発明として我が国に出願されたものに限ってそういうふうな措置を講ずるということでございますので、この米国側の出願とたとえ同じ発明でございましても、それと無関係であるならば、言葉を変えて言えば、私どもの日本で独自に開発されたものでございますならば、それはそのまま公開等の手続を行うということでございます。  そして、現在私どもとして考えておりますのは、今先生御指摘のとおり、先願、後願につきましてはこれはもう特許制度の一般的原則でございます。同じような発明を同様に研究開発したとしても、やはり一日でも早く出願したということになりますと、その出願した方が特許になる。これはもう世界的に通ずる原則でございますので、そういう先願、後願で後願になったということになりますと特許にならない、これはやむを得ないものだと考えております。
  140. 矢田部理

    ○矢田部理君 その説明で、必要にしてかつ十分な説明になりますか。
  141. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 先願、後顧ということでございますので、たまたま日本人の出願の方が先願でございましたらそちらが特許になる。逆に米国人からの協定出願が先願でありましたならばそちらが特許になる。これはそういう原則で、いたし方ないものと考えております。
  142. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本は同じ内容の特許を申請した。一定期間、これは一年半ぐらい審査期間その他が必要ですから、それまではどちらが先願であるかわからない。したがって、最終的には最初に特許の申請をした方が特許権を持つ、これは同じレベルでの競争ですからやむを得ないと思うしするわけですが、一年半後には明らかになるわけですね。  ところが、アメリカとの関係での共願になった場合には、アメリカの防衛秘密上の理由で一年半以上ずっと押さえておっても、依然として日本の特許はその間は生きておりますが、相当後になってアメリカが解除されると、そのときになって実はアメリカが本当は先だったんだというふうに言われると、日本の特許権はそこで重大な障害にぶつかってしまうということなので、日本の制度に影響がない、先願、後願の関係では原則に立つだけなんだから違いがないというふうに説明をされるが、それだけでは説明にならないのではありませんか。
  143. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 確かに我が国の特許制度を考えますのに、すべての出願は出願から一年半経過後に公開されるということになっておりますので、この場合の出願から一年半経過するこの間につきましては確かに非公開でございますし、その間、いわゆる第三者による重複投資というものが行われる可能性もございます。  今回のこの五六年協定の対象になります協定出願につきましては、仮に米国における秘密解除が出願から一年半よりおくれて行われるということになりますと、確かにその分公開時期が遅延し、それだけ重複投資が発生するという可能性があることは事実でございます。しかしながら、この協定というものはそもそも防衛目的のために我が国が締結し、かつ我が国がこれによって受ける利益というものもあるということを考えますと、非公開に伴うこの種の制約といいますものはやはりやむを得ないものとして織り込まれているというふうに考えております。
  144. 矢田部理

    ○矢田部理君 大分微妙な違いが出てきたんですね。もともと先願、後顔で特許は決まるんだから、アメリカの今度の制度を受け入れても変わりないんだというのが前段の説明だったが、今度は変わりはあると。変わりはあっても、安保問題の立場からやむを得ないんだ、どっちが本当なんですか。後段がそうなんでしょう。
  145. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 先願、後願ということにつきましてはこれは一般原則でございますから、そういうことでこの原則が貫徹されるということでございます。同時に今申し上げたのは、やはり部分的ではございますが、我が国の特許制度における公開原則というものに一部の例外がここで入ってきたということになるわけでございますが、それに伴う一定の制約が出てきたということは事実でございます。
  146. 矢田部理

    ○矢田部理君 今まで日本の特許では一年半たてば全部公開になりますから、どちらが先だったかで優劣が決まってくるわけですね。したがってそれに基づいて、あるいはそれ以前からでもいいと思いますが、何か投資をし生産を始めておった場合でも、一年半後にはわかるからいいんですよ。ところが大分後になってからアメリカで解除になった、そうしたらアメリカが先先願というのですか、先発明というのですか、発明主義あるいは申請がいつだったかという時期の問題で特許制度はいろいろ違いが出てきますけれども。そうするとやっぱり大変な投資がそこで損害を受けてしまう可能性もある。大手を振って日本ではまかり通っておった特許が、ある時期からだめになるということになりますと、日本の特許制度にやっぱり重大な支障、影響が出る可能性を持っていることを私は第一段に指摘をしておきたいのが一つ。  それから二番目には、準協定出願でございますね、協定に準じた出願、この場合にももっと大きな影響が出てきはしまいか。準協定出願というのは、アメリカから受けた特許に基づいて、それをもとにして日本が開発をして新しい技術が発見をされた、発明をされたという場合に、たしか先ほど申し上げた協定出願と同様に公開をしないということになる制度だと思うのですが、この場合にも協定出願と同じような扱いをするということになりますと、日本の特許制度にさらに深刻な影響、問題が出されることになりはしないのでしょうか。
  147. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) まず前段の御指摘でございますけれども、万が一米国における秘密解除がおくれまして、既に成立している私ども日本の特許権者の特許が無効となったということになりますと、これは私どもとして特許法第八十条の規定によりまして、先願者たる米国の協定出願人に対しまして相当の対価を支払うことを条件に、その事業の実施あるいは準備中の範囲内におきまして通常実施権を有するということが法律にはっきり明記されておりますので、この規定を活用して、例えば工場建設等の事実が既にあるといたしますならば、これでそういうことに伴う問題は事実上回避できるんではないかというふうに考えております。  それから後段の御指摘につきまして、確かに私どもこの協定議定書第三項(b)にございますいわゆる準協定出願というものについてこの範囲が非常に広がるということになりますと、やはり私どもとしても非常に問題であるというふうに考えておりまして、私どもとしてこの範囲を十分慎重に検討した結果、まず、準協定出願として協定出願と同じ扱いをするという出願につきましては、この出願人の対象としてこれはまず発明の提供を受けた政府の関係職員あるいは政府からその発明の内容を知らされた方が行う出願で、さらに協定出願の対象たる発明または考案を公にするものに限るというふうにして十分限定をして、私ども特許庁としてこれを判断したいと考えている次第でございます。
  148. 矢田部理

    ○矢田部理君 前段の弁解をするからまた前段に戻って少し私も反論しなきゃならぬのだが、一年半以上たってアメリカの秘密特許が解除をされて、それが先願のゆえに生きるということになった場合でも、既に日本で投資をした工場とか製品については、その限りでは通常実施権があるから直で損害を受けることはないという説明はあるいはそのとおりかもしれませんが、今申し上げた内容はごく特許権の一部なんであって、特許権というのはもう少し広い意味を持った権利でしょう。一部がそのまま続行できるからといって、したがって日本では損害はないんだ、特許権の侵害にはならないんだという説明は、一部の説明ではあっても全部の説明にはなっていないということはお認めになりますね。特許法八十条だけでは賄い切れないでしょう。
  149. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) その特許権の範囲といいましても、一般に特許権を実施するということになりますと当然、例えばある特許権の対象たる製品を生産する、そのために設備を購入し、例えば工場の必要な生産設備を用意して生産にかかる、これがまさにその八十条で言います事業の実施あるいは一つ手前の準備中の範囲ということでございますので、私どもとしてはその限りにおいて実際上のいわゆる実害は生じないというふうに承知しているところでございます。
  150. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは既に投資した部分は既成事実として認めようということであって、さらに投資を拡大をするとか、特許権を活用してパテント料を取るとか、次の準備をするとかということはもうできないということになるわけですから、その意味で言えば通常実施権だけでは説明できない、賄い切れないもう少し大きな意味を持つのが特許権の内容だ、その点はお認めになるでしょう。
  151. 山本庸幸

    説明員山本庸幸君) 確かに特許権を持っておりますと、現在考えている特許権の実施内容以上に、例えばそれを第三者に通常実施権を与えたりあるいは専用実施権を与えたりというふうな拡大する余地は十分あるわけでございます。  ただ、この場合はそもそも日本人の出願人はいわゆる先後願原則で言います後願者でございますから、本来何の権利ももらえなかったところでございます。これは逆に言えば、先後願原則で何の権利もないにもかかわらずこの八十条によってそういう法定の通常実施権を入手したということで、これはかえって日本人の後願者にとってみれば有利な点ではないかというふうに考えているわけでございます。
  152. 矢田部理

    ○矢田部理君 有利でも何でもないでしょうよ、もともと特許法八十条というのがあるんだから。アメリカと結んだからその結果有利になったわけじゃないでしょう。むしろ一年半で明らかになって次へのステップがとれるものを、アメリカの解除がおくれればそれだけ制約要因になって日本の制度にやっぱり影響があることは事実なんです。  二番目の方の準協定出願までその規律で押さえ込まれるということになりますと、これは適切な例かどうか知りませんけれども、例えば新幹線のブレーキの技術ですか、これはF104の飛行機の技術から派生した新しい技術で行った、こういうふうに言われていますね。これが仮にアメリカの軍事秘密特許制度にかかわっていたとするならば新幹線のブレーキは待ったということになるわけでしょう、とすればですよ。  それから軍事技術あるいは防衛目的のための技術が焦点になっておりますが、防衛の目的のための技術というのは、必ずしも武器技術、兵器とか武器に関する技術だけでなくて、それにかかわる広い技術までが秘密の網をかぶる可能性を持っているんですね。これは戦前の日本の秘密特許制度を調べれば一目瞭然なんです。今度多少勉強さしていただきましたが、例えば明治十八年に専売特許条例というのが日本にできたのが初めての特許制度だと言われておりますが、そのときに武器などの軍事に直接関係あるものが中心になって秘密特許制度が創設をされた。最初は、武器とかそれに直接かかわる技術が言うならば秘密扱いにされたわけです。  ずっと歴史を見ておりますと、武器そのものよりも、例えば通信、運輸の技術とか、電気関係の技術とかということが武器にかかわるあるいは基礎技術だということで、この秘密特許の中にどんどん取り込まれている。これが収用の対象になる取り消しを受けるということで、日本の民間の一般の科学技術の発達に大変重要な影響を及ぼしたというこの戦前の歴史などにちなんで、あるいはそれに即して今度の問題を考えますと、軍事目的のために秘密特許制度を日本が受け入れることによって、そしてまた準協定出願なども同じような扱いを受けることによって、日本の科学や技術の進歩が非常に大きな影響を受ける可能性、危険性を実は持っているのではないか。  その意味で言えば、特許制度の公開制度に対する重大な例外規定を置き、日本の国民の権利にも大きな支障を及ぼす可能性を持っているものでありますから、国会としてはもちろんでありますが、政府としてもやっぱり心してかかっていただきたい。特に、最初に申し上げましたように、日米科学技術協力協定などでも安保条項を置くというようなことで、ずっとこの公開の原則に対する秘密の議論が広がってきているわけですね。これらを従来私は三十一年協定と言ったんですが、五六年協定といいますから、西暦で言った方が共通の言葉になるかもしれませんからそう直してもいいと思うんであります。  これらが、それだけ重要な国民に対する影響とか日本の特許制度に対する響きを持っているにもかかわらず、行政レベルだけで事が処理されてしまう、国会で本格的な議論の俎上に上らない、つまり協定として、条約として扱わないということにも非常に大きな問題があると思われますので、今後いろんなところで議論はしなきゃならぬと思うのでありますが、大臣としても、通産大臣もおやりになっておりますので、日本の技術がそういう面でアメリカのこの秘密の網を大きくかぶってしまう、影響を受けることに対しては、ひとつ十分に留意をされて事に対処をしていただきたいということを申し上げたいのですが、大臣としてはいかがでしょう。
  153. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 五六年協定の解釈は今特許庁から詳細にわたってされましたから、大体いろんな意味合いの御理解も賜っておるんじゃないかと思いますが、要はそれと日米科学技術協力協定とは全く次元を異にいたしております。  今矢田部委員がおっしゃるように、我が国の科学技術開発のために支障を来さない、これはもう大切な話でありまして、やはり科学技術というものは人類の福祉向上のために常に役立つものでなければならぬ、そのためにはやはり常に公開されて、それは平和のために役立つものでなければならぬ、これを私たちは一つの基本概念として進んでいきたいと、かように思っておる次第であります。
  154. 矢田部理

    ○矢田部理君 問題の性質は、日米科学技術協力協定と今度の五六年協定は別のように見えますが、大きなバックグラウンドとしては共通項を持っているわけです。つまり、日米科学技術というのは一般的で、別に軍事だけを目的にしたわけじゃありませんし、一般的な科学技術協力関係ではありますが、そこにもこの安保条項が持ち込まれて、やっぱり公開の原則が重大な支障を受ける可能性を持っている。これは今まとめ中だそうですから、また別に論議をしなきゃなりません。  そういうものと、それから今度の五六年協定が細目取り決めで日本に本格的に入ってくるという場合にも軍事の網がかぶる。特許の持つ公開制度、特許の公開というのはそのほかにもいろんな意味があります。二重投資の禁止とか、重複研究をできるだけ省く、公開することによって科学技術のより一層の発達を促進するという面では共通であります。いろいろありますが、アメリカの科学技術戦略みたいなものが一つあって、その中で軍事問題の位置づけがポイントにもされていて、その影響を日本が受けることによって日本の科学技術の進歩が、交流は結構なんですが、後段の理由によって阻害をされたり影響を受けることのないようにひとつ心してかかっていただきたい。特に希望しておきたいと思います。  それでは本論に移ります。  先ほどの同僚議員の続きを少しやりますが、特別協定は五年間という期限つき協定ですね。今後円高がさらに促進をされても、これが満杯であって、この特別協定をさらに動かすようなことはしない、その約束はできるんでしょうか。
  155. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今ここで御審議をお願いいたしておりますこと以外現在考えておりません。
  156. 矢田部理

    ○矢田部理君 本給あるいは地位協定の二十四条本体に触れてならない、触れるべきでないというのはもとよりのことでありますが、さっき、施設庁ですか、ちょっと私は正確に聞いておらないんですが、今度の手当は八項目を対象にしたわけですね。従前、八項目の前に、解釈上語学手当とか若干の手当について日本が負担することにしましたですね。今度八項目になった。しかし、そのほかにも例えば寒冷地手当だとか若干まだ手当が残っていますね。総額五十億ぐらい相当分だと言われておりますが、もちろんこれに手をつけるようなこともしないんでしょうね。その点はいかがでしょうか。
  157. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 現在考えておりません。
  158. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたは現在というのを随分きのうから強調しておりますが、その現在というのはどういう意味か。将来は考えることもあるという意味なんですか。あなたの使う現在という用語法についてちょっと聞いておきたい。
  159. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 将来については白紙であるということでございます。
  160. 矢田部理

    ○矢田部理君 今考えているかと聞いているんでなくて、今後そういうことは考えないんでしょうねと私は聞いている。  それについては白紙だと言うんですか。
  161. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) さようでございます。
  162. 矢田部理

    ○矢田部理君 これはこの間からずっと議論しているし、きょう竹下総理もおいでになるそうですからね、この点だけはやっぱり明確にしておいていただきたいんですよね。  二十四条一項というのは、二十四条一項というか地位協定というのは、安保条約の重要な中身の一つでしょう。そして二十四条というのはもうずっと長い間この議論の焦点になってきたわけでしょう。そしてその二十四条本体にはやっぱり触れないというのがこれまでの一貫した防衛庁なり政府の態度だったわけですよ、外務省も含めて。  率直に言って、今度の特別協定、昨年のもそうですが、これは二十四条一項に触れないのではなくて事実上の改定だというふうにも考えざるを得ないのでありますが、にもかかわらず外務省は触れない、とりあえずとにかく円高で特別なんだから何とかやらせてくれということだからいろいろ議論もしているわけですが、その議論を二年続けてやるに当たって、今後のことは白紙ですと言われたんでは、そうですかと言って引き下がるわけにはまいりませんよ、これは。  一昨日からもこれは随分議論しておりますが、少なくともこれが我々の精いっぱいの考え方でありますと、今後本体に手をつけたり、地位協定そのものを改定したりすることはいたしませんと、そのぐらいをやっぱり約束するのは当然の話じゃありませんか。そうでなければ、ただいまこの時点における考え方だけで、あした以降は何だかわからぬというふうに言われて、ああそうですかということで、結構ですというわけにいかない。その点大臣、いかがでしょうか。  これは、ちょっとその前に委員長にもお願いをしておきたいし、理事会でも十分御協議をいただきたいのですが、どうもやっぱり今のところ考えていないということですべての問題が処理をされるということになると、これは政府としていろんなニュアンスを出しているんですが、衆議院の議事録を読んでおりますと、仮定のことは答えられないという部分もある。政府として正式な統一見解でも出していただくということにでもなりませんと、この問題は、はいそうですかというわけにはいかない問題を含んでおりますので、ひとつ御検討をいただきつつ政府の答弁を求めたいと思います。
  163. 福田博

    政府委員(福田博君) ただいま御審議をいただいております改正議定書は、昨年同じく御審議をいただきまして締結されました二十四条についての特則という特別協定でございます。特別というのは、五年間に限って一定の手当のみについてその二分の一までを持つ、日本側が持つようにできるようにしようというのが昨年の協定でございました。既に一年をけみしておりますのであと四年でございます。その協定につきまして、昨今一年間の為替事情の変動というものが余計に激しかったので、それを二分の一ではなくて全額まで持つようにしようという改正議定書の審議をお願いしておるわけであります。  そこで、では今、本法とかその他そういうほかのことも考えておるかという御質問については、今こういう改正議定書の御審議をお願いしておるわけでございまして、そういうようなことを、つまり今改正議定書で御検討願っている以上のことを検討しているということは一切ないということをはっきり申し上げられる、それに尽きるわけでございます。
  164. 矢田部理

    ○矢田部理君 そんな答弁当たり前じゃありませんか。長々と答弁する必要はない。そのことを聞いているんだ。そんなことじゃおかしいじゃないかと言って、おかしい話の昔の繰り返しをしておったんじゃ問題は進まない。  少なくとも五年間特則としてこれをお願いしますよと言った以上は、いいですか、一昨日も議論しておったが、去年からことし改正したから私は特にうるさく言うんですが、この五年間はこの特則で賄っていきますという説明をするのが当たり前のことじゃありませんか。今検討していませんというのもこれも当たり前の話でしょう。今検討しているんならこの案がベターでないということになるわけで、ベストでないということになるので、五年先のことは後でまた議論しますが、少なくともこの特則期間中、特則というか、特別協定期間中はこれを最大限度にしてやらせていただきますということだけは最低言うべきだし、言わなきゃならぬと思うのですが、大臣いかがですか。
  165. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これは先ほどから申しますとおりに、六十六年、西暦で言うと九二年、これが限度でございます。だから今、福田審議官が申したとおりでございますから、この間におきましてはこれを最大限としてやっていかなきゃならぬ、こういうことでお願いしておるわけであります。
  166. 矢田部理

    ○矢田部理君 それでいいです。  局長は今のところ考えていない、あしたから白紙みたいな物の言い方するから変になるんでありまして、しかし五年間だけでいいのかということになれば、特則が五年間なのであって、今度五年たてば当然のことながらもとに戻すというのも特則を五年と限定した意味であることも、これも理の当然というふうに考えていいわけでしょう。
  167. 福田博

    政府委員(福田博君) この特則とも言われております特別協定あるいはこの改正議定書は五年の期間をもって終了いたします。
  168. 矢田部理

    ○矢田部理君 したがって、もとの姿に戻すというのが特則の意味ですわね。
  169. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) ここに盛られておりますことをその段階でどうするかということは、その段階で考えていかなければならないことではないかなとも思っております。
  170. 矢田部理

    ○矢田部理君 また変なことを手を挙げてつけ加えるから、せっかく防衛庁長官が来ているのに議論がややこしくなるんです。  五年間、とにかくアメリカは困っているんだから、円高で大変なんだから、思いやりなんというのは私は随分日本も思い上がっていると思うんですが、思いやってやろうということで五年間決めたんでしょう。それも特則だ、五年の限定つきだと、こう言ってきたんだから、五年たったら考えますじゃなくて、五年たったらもとの姿に戻りますというのが当然の姿じゃありませんかと。それは、大臣そうでしょうね。
  171. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 当然法律の性格上も、私たちの審議をお願いしてあるのもそういう趣旨でございます。
  172. 矢田部理

    ○矢田部理君 大臣の方がよっぽど正確に答えている。  それでは、次に行きます。  防衛庁に伺いますが、この現在進行中の中期防衛力整備計画でございます。これは総額十八兆四千億ということになっているんですが、中期防を策定した当時は、この特別協定による経費負担は当然考えていなかった、そこで中期防の枠外でこの問題を処理しようとした動きがあるんです。しかし、これはできませんでした。二、三年前私に、予算委員会でそれはやらないと防衛庁が答えていたこともあってできなかったわけです、またやってもならないと私は思っているんですが。  そうするとこの四、五年の間に特別協定に基づく負担が想定するに一千億ぐらいになろうかと思うんですね。ことしは二百何億ですか、去年百六十何億、来年三百億、その次四百億というような試算で考えてみます。これはどこからやりくりするんですか。それをまず説明いただきたい。
  173. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 特別協定に基づきまして新たに駐留軍労務者の人件費の負担をするという負担増について、今二つ目のお願いをしておるわけですが、二つに分けてお考えいただきたいと思います。  昨年は特別協定を結びまして負担をするもの、これについては全額がほぼ確定をいたしております。それが中期防の十八兆四千億の中でどうなるかということであります。これについては他の委員会、予算委員会等で当時お答えしたと思いますが、全体の中でやりくりをしておさめるつもりですと、そういうふうに申し上げたと思います。  私どもの見通しとしては、後方経費というのは具体的に積み上げてはおりませんけれども、ある程度の腹づもりは持っております。その中で施設庁関連経費というものがございまして、当然それは施設整備、施設関係と人件費と両方あるわけですが、施設関係について、具体的には申しませんが、御承知のように幾つかおくれているものがあります。そういったものとの相殺でできるというふうに、大体それと見合っているというように考えていたわけです。  今回また新たにお願いをする特別協定につきましては、これは金額的には六十五年度までに全体の負担をするということでありますので、金額は必ずしも確定いたしませんが、これについてはさらに広げて、自衛隊関係の後方経費の中のやりくりと、場合によっては正面装備も含めて全体の中で泳いでいく以外にないと、また泳いでいく可能性を十分持っておるというふうに考えております。
  174. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは予算委員会で随分議論したんですが、従前、駐留軍の労務費の日本負担分は、中期防の中の後方経費、その後方は陸海空に分けたほかにその他の部分がございましたね。後方経費六兆五百億ですか。その他の経費はそのうち二兆一千億と。このその他の経費の中に施設庁費とか、したがってまた駐留軍労務費も入るというふうに説明を受けていたと思うのですが、この二兆一千億の枠の中で操作をする、こういうふうな議論でしょうか。
  175. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今申し上げたように、今回新たにお願いしておるさらなる増加分については、その他の二兆数千億、その中では無理であろうと、より広げて陸海空の後方経費、場合によっては後方経費のみならず正面経費ですね、正面装備の方の経費、そこまで手を広げて捻出していくということを考えざるを得ないんではないかなというふうに思っております。
  176. 矢田部理

    ○矢田部理君 ということになるとまた別の立論が可能になるんですがね。もともと中期防をつくるときに一%枠突破の計画じゃないかという議論があったときに、ぎりぎり絞ってもこれだけ積み上げて必要なんだと言ってきた、後方経費は必ずしも積み上げとは言わなかったんですが。ところが今度特別協定で、この間恐らく一千億前後の支出になるでしょう、四、五年の間でですね。これは十八兆四千億の枠内でも、うまくやりくりすれば処理できるんだという説明が今度は出てきた。超えてはいかぬということだからそちらを優先させることになるのかもしれませんかね。そういうことになりますと、もともと中期防の十八兆四千億というのは十分一%以内でおさめられたんじゃありませんかというふうにも考えられるんですが、西廣さんとやっておったんじゃしようがないんだな、これは防衛庁長官とやらなきゃ……。その辺はどういうふうに考えるんですか。
  177. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどちょっとお断わり申し上げたように、先生今一千億と申されましたですかね、そのうちの七、八百億、七百億ぐらいのものは昨年の協定改定に伴う負担増だと思います。それにつきましては先ほど来申し上げたように、施設庁関連経費の中で、これは人件費のみならず施設関係のものもございます。これについて事業の着手のおくれなり、あるいは事業そのものがまだ着手できないという見込みのものも出てまいりましたので、それでおおむね泳げるというふうに私どもは見込んでおるわけです。残ったものは今回の改定に伴う二、三百億か、まあこれは幅があります、この実施が最終年度でいっぱいにということになっておりますから、これをどうするかという話であります。それについては、今申し上げたようにこれから我々としては年度年度の予算を精査しながらその中で捻出をしていく、そして枠におさめていくということを考えざるを得ないわけですが、その際にまず我々としては……
  178. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単で結構です。
  179. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 後方経費の枠内で考えますし、正面について言いましても個々のスペックダウンなりあるいは場合によってはあるものを積むのを少し減らすとか、そういうことも含めて場合によっては考えざるを得ないかな、その辺は今後の年度年度の予算を精査する段階で処理していきたい、しかしいずれにしましても枠内でおさめたいというように申し上げているわけであります。
  180. 矢田部理

    ○矢田部理君 じゃ端的に答えてください。ことし二百何億か予算に計上しましたね。どこを削って二百億余のお金を捻出したんでしょうか。
  181. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) たびたび申し上げているようですが、それらについてはすべてが施設庁経費の、中期防策定当時はこの期間中に建設されるであろうと考えられておった施設費が、着手がおくれたりあるいはまだ着手に入らないでこの期間中にできなくなっているものがございます。それとの相殺になるというふうにお考えいただいた方がいいと思います。
  182. 矢田部理

    ○矢田部理君 ことしは正面装備、正面に何か手をつけてそこを切り込んだということはないんですか。
  183. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) この人件費の負担のために切り込んだというものはございません。ただ正面についてはそれなりに、例えばアトリションといいますか、自己損耗が起きる、それに対して手当てをしていくというものはございます。これは実績絡みで見ていくわけでございますからそういったものはございますけれども、これはこの協定に絡んで起こしたということではございません。
  184. 矢田部理

    ○矢田部理君 防衛庁長官に伺いますが、これは次期防にも当然関連してくるので伺いたいのであります。  次の中期防衛力整備計画の立案に着手をする、五月半ばにも安全保障会議を開いてスタートするということになっているやに伝えられておるんですが、どんな運びになっているんでしょうか。
  185. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) さきの予算委員会でもさような答弁をさせていただいたわけでございますが、ぜひ次期防につきまして着手をしたい。  なお、国際軍事情勢とかいろいろ検討をしてまいることもありますが、中期防が五年でいいのか三年でいいのか、またローリングというのを考えるのか、そういう枠組みといいますかそういう問題もございますので、これらにつきましても安保会議でお諮りをする、こういう手順も経なきゃならぬわけでございますので、そうした手順も置きながら着手をしたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。いろいろ検討してまいるためにはなお先々二年間くらいの期間も必要であろう、こういうようなことを踏まえながら着手の時期を求めておるわけでございます。
  186. 矢田部理

    ○矢田部理君 具体的に五月中旬という話があったのですが、日程などは詰まってきているんでしょうか。
  187. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) いや、まだその段階には至っておりません。
  188. 矢田部理

    ○矢田部理君 いつごろ。
  189. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 時期につきましていろいろそれぞれ検討を加えて調整も図ってまいることもあろうと思いますので、今のところいつごろという具体的な日程をまだ持っておるわけではございません。
  190. 矢田部理

    ○矢田部理君 内容、骨子についての防衛庁としての考え方でありますが、内容そのものはまた別のところでいろいろ議論をしなきゃならぬと思うのですが、例えば陸を中止するとか洋上防空いかがするかというような議論もあるわけですが、それはちょっときょうは置いておきまして、骨子として非常に重要なのは、GNP一%枠との関係で一つには総額明示方式をとられたわけですね、一%にかわる歯どめとして。この総額明示方式は次期防でも維持されるというふうに承ってよろしゅうございますか。
  191. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 次期防におきまして総額明示方式、今回の中期防のような形をとるか否かというようなこともお諮りをしなきゃならぬと思っておるわけでございますが、中期防におきまして総額明示方式は私は一つの効果といいますか、意味合いといいますか、そういったものもございますし、安保会議におきまして検討がまた加えられると思うわけでございますが、ある一定の期間の計画性を持った考え方ということは私は、この中期防今半ばにあるわけですが、次期防におきましても必要であろう、こういうぐあいに考えておりますが、いずれにいたしましても安保会議でこれまたお諮りをしてまいりたいと思います。
  192. 矢田部理

    ○矢田部理君 最終的には安保会議を経なきゃならぬし、そこの議論で詰めるわけでしょうが、少なくとも原案は防衛庁が示すことになるし、防衛庁長官考え方は非常に大きいと思うんですが、総額明示方式は基本的には維持される、つまり定性的な中身ではなくて定量的な中身で歯どめをつくっていきたいという考え方は維持されるんでしょうね。
  193. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 私はまだ予断を持って取り組むというよりは、いろいろ各種の意見も聴取しながらこれらについての結論を導き出していきたいと思っておりますが、定量的なことももちろん描いておく必要があるというぐあいに個人では考えております。
  194. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと定量……
  195. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 定量的な考え方ですね、そうしたものも踏まえてみることも必要だなということは考えております。
  196. 矢田部理

    ○矢田部理君 踏まえるんじゃなくて、歯どめそのものなんですよ。これが最良だと言って、これも去年来あるいはここ二、三年来論じてきたものですから、そこぐらいはきちっと押さえてもらわなきゃ困りますよ。
  197. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 実は次期防の問題につきましては、安保会議で御審議いただくいろんな順番がございまして、まず御審議いただくのは現在の中期防でできた能力、これができ上がるのはまた数年先になるわけでございますが、さらに次の計画を考えるとすれば、その時点において現在持ち得る、もう既に決まっておる既定の防衛力でございますね、それで能力的にどうなるんだというようなことからまず御論議いただかなくちゃいかぬ。そこで初めてさらなる防衛力整備計画といいますか、中期計画というものが必要であるかないかというところから始めていただくということになろうと思います。その種の安全保障会議というものが数回開かれる。そして、つくるということを確認された後に、それじゃしからばいかなる形式のものにするかということに移っていくんではないかと思っております。  そういう意味で、まだ防衛庁としてこういう形式のものがいいということを決めておるわけではございませんので、今長官のお答えになったようなことになるわけでございますが、いずれにしても計画としては、防衛計画というのは一つの装備をつくるにも四、五年かかるものがございますので、長ければ長いほどいいという面がございますと同時に、余り長くなりますと先のことがなかなか読めなくなってくる、ぼやけてまいります。そういう意味では短期間である方がきちっとした計画ができるという二律背反みたいなところがございます。そこのところでまず期限をどうするか、その際に経費をどこまでをきちっと決めるかというようなことがございますので、それらを含めていろんな利害得失があろうと思いますので、私どもとしては幾つかの案を用意して御審議をいただくというように考えております。
  198. 矢田部理

    ○矢田部理君 GNP一%枠突破のときに中期防が先行しておったケースもあるわけですが、一%枠に置きかえて新しい歯どめとする、それは総額明示なんだと、今日的にはそれが非常に重要だと、いろんな議論を経た結果こうなったんだという説明をされたのですから、次の準備をするに当たっては、少なくともこの議論が――その議論だって私は賛成じゃないんですが、大きな柱にならなきゃならぬというふうに私は思うんです。本当は時間があれば一つ一つ議論したいんですがね。  そして、総額明示というのは当然の話、何を基準に総額明示するかというのはまた問題なんです。私はこのときの閣議決定を今持っているんです。一%枠は突破するかもしらぬ。突破のための議論として政府は出してきたから突破するんですが、しかし、一%程度ということを一つ念頭に置いてやるんだと。一%から大きくふえたり外れたりすることはしないということがこのときの閣議決定の一つの踏まえだったと思う。そのことが、「おおむね当該年度の国民総生産の一%程度となるものと予想されます。」という、非常に微妙な表現ではありますが、そういうことが書き加えられている。  時間がないから、こっちから言ってしまいますが、もう一つの問題点は、防衛庁長官、五年間のいわば中期方式にする、こういうことになっておったわけですね。これも踏襲してしかるべきだと思う。ところが、あの当時も少し議論になったのですが、三年後に見直すというローリング方式を導入してはと。ローリング方式を入れたのでは歯どめにならないじゃないか、五年間に十八兆四千億と決めた以上はその枠内でやるべきである。その十八兆四千億が三年後にまた見直すということでは何の歯どめぞやと、こういう議論があって、最終的な政治判断としてローリング方式はとらないことになった。  そのことも、少なくとも防衛庁長官、基本にしてもらわなければ困る。もちろんそれでいいというわけではありません、下がった議論ではありますが、そのぐらいのことはやっぱり踏襲してしかるべきだと、極めて防衛庁の従来の議論に立った、はまり込んだ議論になるかもしれませんが、私は思うんです。その辺はいかがですか、一言。
  199. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) まさに先生が御指摘されたようなことを我々も念頭に置いておりまして、要するに計画とそれの裏づけになる経費の枠組みというものを明確にしなくちゃいかぬということは十分認識しております。  その際に、どういう形のものが最適であるかということについてはいろんな御意見があろうと思いますが、我々としてもいろんな案をつくって十分御審議いただきたいというように考えておるわけであります。
  200. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間がなくて一つ一つやりとりができないのが残念なんですが、なぜこういうことを聞くかといいますと、今度の特別協定で労務費を負担するときに、どうも防衛庁が犯人らしいが、十八兆四千億という既に決めた枠があるんだが、その枠内じゃできませんと。さっき西廣さんは、やりくりすればできるというようなことになったようですが、枠外にしてくれという議論があったわけです。  それが枠外にできないということでおさまったのですが、五年間歯どめとして固定してしまっているからこういうときに対応できないんだ、だからもう一度ローリング方式を導入して三年後には見直せるようにして、こんな問題が起きたらそこで別枠でとれるような体制づくりをすべきだということで、この特別協定の労務費負担が新たなローリング方式導入の呼び水になろうとさえしている可能性があるから、私はそれはいけませんぞ、それじゃ歯どめになりませんぞと強調しておきたいのですが、長官どうですか。――これは政治問題だ。あなたの問題じゃないんだ。
  201. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) その前にちょっと申し上げておきますが、五十一年の三木内閣の決定、そして先般の決定もそうでございますが、これは防衛力整備を節度があるものとするためというふうに私どもは理解をいたしております。  ですから、基本的に言えば、駐留軍労務費を米側が払うかこちらが払うかという問題は、防衛力整備そのもの、防衛力がそれによって変わってくるものではないという認識を持っております。しかし、従来とも駐留軍労務者の円払いの日本側負担分については防衛関係費の中に入っておりますから、そういう意味で十八兆四千億の中で私どもは処理しなくちゃいかぬし、するということを申し上げておるわけですが、これが非常に変動が激しく、非常に大きなものがどんどん出てくるというようなことであるならば、それは防衛力整備とはまた別の枠組みが必要であるというようなことも含めて、いろんな論議がこれからあろうということを申し上げておきたいと思います。
  202. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこがまた私は大変問題だと思っているんです、その次の質問にしようと思っておったんですが。  どうも動きの底流の中に、防衛費として今まで総枠の中でこの駐留軍の労務費の負担は考えておられた、それが足かせになって今度のようなときに歯どめ論の中に食い込まざるを得ない、これを回避するために今、西廣さんが紹介したような議論が出始めている。つまり、経済協力と同じに、日本の防衛費から外してしまって、国際的に貢献するための予算として駐留軍経費などは別枠にしちゃうと。これも大変不届き千万な議論なのでありまして、その点は防衛庁長官、従来のやっぱり防衛費の枠内でおさめる、歯どめの中に入れる、そこをやっぱり明確にしてほしい。  そのような見識を持って臨まないと、制服の言いなりになってしまったのでは防衛庁長官としてのお務めが問われることになるわけでありまして、その辺の幾つかの――私は私どもの主張とは違うんです。一%突破した中期防そのものもけしからぬと思っているし、総枠方式でいいなどとは言ってないのですが、少なくともそれがベストだとここ一両年出してきた防衛庁が、それをも後退させて、従来の枠組みそのものを変えてしまうというようなことはとんでもない話なんで、防衛庁長官、十分従来の経緯、考えの基本を踏まえてこれから対処するという約束をひとつここで一言言ってください。  あと一、二点で終わります。
  203. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 矢田部委員の御指摘、これらを踏まえまして十分研究をしてまいりたい、慎重に取り組んでまいりたい、かように考えております。
  204. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後に、もうそろそろ時間ですから、外務大臣を中心に伺いたいと思うんです。  最近、もうおいでになっているんでしょうか、タフトという国防副長官がアメリカから来て、例の責任分担、日本の負担増強化というような議論を本格的に行う。何かこの人は責任分担特別作業班のアメリカの座長だということですが、これはどんな動きになっているんでしょうか。
  205. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) けさ八時半ころ、十五分間だけお目にかかりました。せっかく来られて、私もこの委員会もございますし、時間がなかったのでありますが、そのときに一般的なアメリカの考え方を申し述べて帰られました。  私は一つの例を引いたんですが、アメリカの国会の方々とよくお目にかかるが、日米間においては明暗二つの面がある。明るい方は防衛で非常に日本は努力してくださる、暗い万は貿易だと、こういうようなことが大体話になっておるが、私はやはり貿易の方も外務大臣としては明るくなるように努力しなくちゃいかぬと思うし、今明るい面だと言われている面の明るさは今後も続けていきたい、こういうふうにお答えしておきました。だから、そのときに幾らどうするこうするというような話は出ておりません。
  206. 矢田部理

    ○矢田部理君 最後に、私から申し上げておきたいと思うのですが、依然としてアメリカは日本の軍事力増強に相当の評価をしつつも、財政難その他の事情もあって日本に大きく肩がわりを求めてくる。その動きの一つとして来日されたものとも思われるわけですが、日本のとるべき態度は、やはりもう肩がわり論や日本の軍事力、軍備費増強の路線ではなくて、世界の流れが、核軍縮が焦点でありますが大きく変わろうとしています、同僚議員からも指摘がありましたが。  その点で言えば、一つにはやっぱりアジアの軍縮というようなことを真剣に追求すべきじゃないかというふうに私は思っています。アジアの軍縮の中には米ソの核問題が当然洋上核を含めて問題になり、日本の非核三原則の徹底や国際化の議論が必要だと思われるのが第一でありますが、同時にこの日本の通常兵力も相当なレベルに達しているわけです。
  207. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 矢田部君、時間です。
  208. 矢田部理

    ○矢田部理君 はい、終わります。  やっぱりここを凍結する、あるいは削減の方向を探るということは、日本的には非常に重要だし、同僚議員からこれまたありましたように、沖縄の米軍基地の縮小などは喫緊の課題だというふうに私は思っているわけです。その点でアメリカとの経済摩擦にリンクして防衛力増強で肩がわりをしたり、負担増を引き受けたりということではなく、そういう方向を外務大臣そして防衛庁長官もそうなんですが、シビアにぜひそういう方向でこれからの政治を考えていただきたいということを特に申し上げて私の質問を終わりたいと思います。
  209. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後一時四分休憩      ─────・─────    午後二時三十分開会
  210. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 特別協定の内容に沿ってこれまでの経過を踏まえながら若干お尋ねしたいんですが、現行の地位協定が発効されたとき、この二十四条の定めるところでは施設区域の提供に要する経費は日本側が負担をする、そして提供された後の、つまり在日米軍の維持することに伴う経費というのは米軍が負担するというふうに決められて発足したのが二十四条、つまり現行地位協定の発起時の取り決めではなかったんでしょうか。
  212. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 現行地位協定第二十四条においては、日本側が負担すべき経費として、まずその第二項に、日本が第二条及び第三条に定めるすべての施設区域及び路線権、飛行場及び港における施設区域のように共同に使用される施設区域を含む、をこの協定の存続期間中米国に負担をかけないで提供し、かつ相当な場合には施設区域及び路線権の所有者及び提供者に補償を行うことを規定しておりまして、他方、米側が負担すべき経費といたしましては、同条の第一項で、我が国に米軍を維持することに伴うすべての経費は二項に規定するところにより日本側が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本側に負担をかけないで米側が負担する旨規定いたしております。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、現行地位協定の二十四条二項と一項を読み上げたわけですよね。もちろんそのとおり、私は簡単に申し上げたわけですが。  これは旧行政協定の場合には一部の派生的な経費も日本側が見ていたんですね。二十五条の二項の(b)、これが現行の地位協定では削除された、つまり派生的な経費は見ないで済むようになったということが旧行政協定と現行の地位協定との変化であった、これがこの地位協定の出発点だったということは確認できますね。
  214. 福田博

    政府委員(福田博君) 二十五条につきまして仰せのところが変わったことは事実でございます。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 つまり旧行政協定では米軍の維持にかかわる、つまり派生的な経費の一部を日本側が負担していた、それを負担しないというふうになって発足したのが今回の地位協定であります。  この地位協定の二十四条は変わっていないということをずっとこの議論の間政府側は述べてこられたわけですが、しかし、その後の経過を二十数年間見てみますと、実際には変わってきたというふうに見るのが妥当ではないだろうか、それは派生的な経費の一部をやっぱり負担するようになってきている。これは細分の取り決めが行われていないのでそれを明確化するために行われたというふうなことが一時期主張されましたし、あるいはその後この問題については先ほど言われたように円高等々の問題で、それに見合った形で、思いやりという形で事実上日本側が負担すべき経費というのが増額してきた。そして今回では、これは特例的なものだ、だから暫定的、限定的なものだという条件をつけていますけれども、事実上地位協定二十四条に特例を設けたという意味では、二十四条自身が変わったものになっているというふうに解釈することが可能ではないでしょうか。
  216. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) もし今先生の言っておられますのが今の特別協定についてでありますれば、暫定的でございますが、これは二十四条の特例であるということは事実でございます。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 そしてこういうような一番最初に問題になってきましたのが、あれは沖縄返還のときでしたかね。沖縄返還のときに米軍の部隊が移動する。で、岩国あるいは三沢等々での古くなった米軍の宿舎を、この代替施設日本側が負担するというふうなことが大平さんの時代でしたか行われたと思うんですね。そしてその後いわゆる新規の建設の問題についても日本側が負担するようになってきた。そして一九七八年に初めて思いやり予算という形でこれが登場してきた。いわゆる派生的経費の一部まで負担するということが出てきたということになったと思うんですが、この一九七八年に生じた思いやり予算、つまり法定福利費など日本側が負担するようにした考え方の根拠というのは一体どこにあるんでしょうか。
  218. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 昭和五十三年の場合ですと、今先生がおっしゃられましたように、任意と法定の福利費と管理費でございますが、そのときの考え方、すなわち地位協定第二十四条との関係ではこれはいかに考えるべきかと申しますれば、そもそも昭和三十五年の安保条約改定のときに行いました一つの大きな改善というのは間接雇用の実施でございます。間接雇用の実施ということで、これは駐留軍労務者の勤務環境をより安定したものとしようということであったわけですから、もしも間接雇用が存在しなかったらば米国が必ずしも負担しないで済んだであろうところの費用を考えれば、例えば施設庁における管理費の還付を求めるとか、あるいは法定、任意の福利費を米側が必ずしも担ぐ必要はなかったのではないかと、簡単に申しますと地位協定との関係ではそういうことであったと思います。事実との関係は、またそのほか石油ショックでありますとかそのほかございましたけれども、地位協定との関係では今申し上げたのが考え方であったと思います。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、そういうふうな解釈をしたのは、日本側が自主的に解釈をしてそういうふうな思いやり予算というのを提供したのか、あるいは米軍からそのことが要求されて、米側の意思に基づいてそういうことを行ったのか、いかがでしょうか。
  220. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 自主的な判断によるものでございます。
  221. 立木洋

    ○立木洋君 私ここに、アメリカの会計検査院長の米議会に対する報告書というのを持っているんですが、一九七七年六月十五日、七八年の思いやり予算が始まる一年前ですね、これは既に局長なんかもお読みになっているだろうと思うんです。  重要な点を引用しますと、これはつまり米側が、この会計検査院長の国会に対する報告では、「可能な経費分担の方法」という章が第三章に設けられてありますが、これは日本側にいかにして経費を負担してもらうかという内容です。  そこで第二項に「労務費分担」という項目があります。ここで述べられているのは、アメリカがこれまで経費節減のために人員の削減を行ってきたということがるる述べられながら、しかし日本の基地で働く従業員の人員を削減するというふうなことではこれは適切でない面も生じてきている。だから、そうではなくて、「経費節減のため、さらに人員を削減することは、現在の任務を遂行する上での国防省の能力を損うこととなろう。代案としてより望ましいのは、日本政府がこれらの労務費を分担することである。」ということが述べられてありますね。  そしてこれを述べた後、「日米地位協定は、基地の土地使用料および関連経費を除いて、在日米軍を維持するためのすべての支出は、米国が負担することとしているため、(経費分担を実施する上で)問題となり得よう。両国とも地位協定について再交渉することは望んでいないので、いかなる労務費分担方式もこの協定の枠内で考察しなければならない」と、こういうふうに述べた後、「われわれ」つまりこの会計検査院ですが、「われわれは、国務長官と国防長官が本報告書の中で議論したものを含め、可能な経費分担方法につき共同して再検討し、日本政府との経費分担の追加的可能性を探求するための一定の計画を策定するよう勧告する。」と言って、会計検査院長が国務長官と国防長官に勧告をしております。  そして、勧告をした後、それに引き続いて、「われわれは、国務長官および国防長官が労務費分担方式を策定するための交渉を始めるよう勧告する。」、交渉もせいということも勧告しています。国防省と国務省はこの結論と勧告に同意したという旨、この一九七七年六月十五日の会計検査院長の報告にはそのように述べてあるんです。  これは、アメリカ側が勧告をして、アメリカ側の要求に基づいていわゆる思いやり予算というのが一年後交渉の結果発足することになったと考えるのが妥当ではないでしょうか。こういう会計検査院長の報告というのは全く問題にされなかった、こういうことは問題にはならなかったということになるのでしょうか。
  222. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 私どもそのような報告が米議会に会計検査院から出されていることは承知いたしております。その背景には駐留米軍の財政的な困難さがあり、それからその報告書の中で、在日米軍従業員の数は年々減少しているにかかわらず、給与改定のため労務経費の減少はごくわずかであると言って、さらにはその報告の中に、右努力が成功しない場合には、日本人よりも米国人を雇用した方が経費が安上がりの場合が多いので米国人の雇用増加を図ることが望ましいといったようなことまでがこの報告書の中に書いてあることも私ども承知しております。しかし、この会計検査院の報告書自体はあくまでも米議会に対するものでございまして、あの時期、段階で我が国政府のとりました措置とは直接関係はございません。  そしてこの報告書も、今申しましたように駐留米軍の財政的困難の増加を背景として出てきたものでございまして、その意味では、あの段階で私どもが決定いたしました措置を検討するに至った背景として勘案されたことは事実でございますけれども、すなわちあの報告書を無視はできなかったということは事実でございますが、このようなことによって日本側の措置が決められたということはございません。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 なかなか無理した答弁をなさっておられますけれども、こういう勧告。が一切なくても日本側から自主的に思いやり予算を提供するというふうなことがあり得たとは、あの当時の新聞をずっと経過を見てみますとないと思うんですよ。いわゆる米側との交渉が繰り返されて行われ、そして結局あの思いやりという言葉を金丸さんが言われて、そしてああいう形になってきた。  だから結局、米側の要請をある意味では受け入れた側面を私は明確に認めるべきではないか。それを全く無視して、そういうことがないにもかかわらず、日本側が自主的に思いやり予算を提供したんだということだけを強調するならば、それはいかにもちょっと詭弁に通じるのではないかというふうに思いますけれども、どうですか。
  224. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今先生が会計検査院の報告を挙げられたものですから、この会計検査院の報告の性格をお話ししましたが、当時日米間で本件をめぐって長期にわたってのやりとりがあったことはもちろん事実でございます。  ただ、繰り返しますが、どのような姿で地位協定上許される分担を我が国ができるかということを最終的に決めたのは我が国である、こういうことでございます。
  225. 立木洋

    ○立木洋君 だから結局、無理やりに何とかしてということで思いやりという言葉を出したんですよ。  問題は、結局こういうことを検討せいということが会計検査院から国務長官と国防長官に言われ、そして交渉も行いなさいと言われてそれも行いますということも国務長官も国防長官も同意したわけです。その結果、実際の交渉というのが進められてきた。だから私はこうした問題をやはり念頭に置いておく必要があるだろう、今日の事態を判断する上でも。  それからその次に、今回の特別協定の政定される約一年足らず前に特別協定が制定されたわけですね、昨年五月でしたか。これもやはり地位協定では認められていない、地位協定の内容とは異なるいわゆる八つの手当の二分の一、これを日本側が負担するということになったわけですね。これの根拠、こういうふうに地位協定にない特例をここで設けた根拠、これはどういう経過でこういう特例を認めたのか、その点についてはどうですか。
  226. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 根拠と申しますれば、このようなことを行うに当たっては現行の地位協定二十四条では許容されないので、暫定的な特例をこの限定的対象について国会の御承認を得ようということになりまして、御承認いただいた特別協定そのものが根拠でございます。  さすれば、どうしてこのようなことを八つの手当について行うかということにいたしたかと申しますれば、けさも施設庁の方から答弁がございましたけれども、この八つのいわゆる手当、生活給的なもの、それからいわゆるボーナス、退職金というものは、いわゆる日本の給与体系によりなじんでいるものであるというそういう性格づけがあって、そしてそれを取り出したということと、それからもう一つはより根本的なことでございますが、その背景に日米両国を取り巻く経済環境、これは具体的には主に円高ドル安の状況、それに伴う円貨払いの米国の経費、在日米軍の経費の負担ということがありますが、それがその背景にあった、こういうことだと思います。
  227. 立木洋

    ○立木洋君 日米を取り巻く円高の経緯、変化というふうに言われましたけれども、実際にはやっぱり米側からの要請に基づくというふうに考えていいのではないでしょうか。
  228. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 米側とのやりとりの間で出てきたということであろうと思います。
  229. 立木洋

    ○立木洋君 これも、昭和六十一年の九月に栗原防衛庁長官が訪米したですよね、あのときにブッシュ副大統領から、アメリカの議会において在日米軍に対する日本側の経費負担増の期待が出されている、考慮してほしいという旨、円高の影響等を考慮に入れて提起されている、これは事実ですよね。いかがでしょうか。
  230. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのような要請があったことは事実でございます。
  231. 立木洋

    ○立木洋君 この円高の問題というのが起こってきてこういう経済状態になったということのいわゆる原因、根本的な責任というか――責任とまでは言わなくても、どこにこういう円高になった原因があったのか。この円高の要因というのはすべて日本側が責任を負わなければならない要因に基づくものなのかどうなのか。大臣、いかがですか。
  232. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 為替レートというものは、やはりいろんな観点からそうした相場が出るものだと思いますが、一つ総理が言われたことは、神のみぞ知るということをおっしゃいました。昔はその国の力というものがもちろん作用していることでございましょうけれども、今日では余りにも大き過ぎるので、したがいましてG7等をやりまして介入しても、なかなかそう簡単なものじゃないということが言えるかもしれません。  しかし、円高ということに関する限りは、やはり我が国の相対的な強さというものを反映しておるのではなかろうかと、かように思います。また逆に、ドル安というのはやはり米国の貿易赤字、財政赤字等々、いろんなことも反映しておるのではなかろうか。それが両国においては円高ドル安という現象を招いておるということだろうと思います。
  233. 立木洋

    ○立木洋君 直接的な表現は大臣避けられましたけれども、実際一九八五年でしたか、いわゆるアメリカが債務国に転落しましたよね。これの大きな原因というのは、一九八〇年にレーガン大統領が登場したときの軍事費と、それから転落したときの一九八五年、アメリカの軍事費の予算というのは倍増していますよね。これは一割、二割の増額ではなくて、倍になっている。大変なやっぱり軍事支出、これが大きな負担になったということは、これは多くの人々が認めているんだと思うんです、アメリカの財政赤字の原因の一つとして。あるいはまた、多国籍企業の海外進出の問題によって、そしてやはり貿易の関係でのバランスが崩れていくという状態での貿易の赤字という問題が生じてきたということも、これも多くの人々がやっぱり認めているところだと思うんですね。  もちろん、日本のいわゆる大企業がなりふり構わず海外にどんどん輸出ラッシュをかけるというふうなやり方についてはいろんな批判があるということももちろんそうでしょうし、いろいろな問題はありますけれども、しかし私たちがいろいろな状態を公平に見ても、アメリカ自身も改善しなければならない点が多くあった、この円高の問題、ドル安の問題について言うならば。その後はG7の中でもいろいろ問題になってきた経緯があっただろうと思うんですね。  そういうふうな背景の中で、防衛分担、いわゆるこういう在日駐留米軍の経費の負担まで日本がそういう状況のもとでしなければならないという理由が本当にあったのかどうなのか。いわゆる経済問題と防衛問題とは絡めないというふうなこともこれあり、こうした状況の中で、円高の原因からこういうことにまで、日本が相手の要請を受け入れて八つの手当の二分の一の負担までしなければならなかったのか。その点については大臣いかがでしょうか。
  234. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 思いやりという言葉の意味がいろいろございましょうが、当時英語に訳せばどうなんだというようなことで、一つはボランタリーというような意味もある、それが中心だということで、ボランタリーバジェットと一応アメリカでは呼ばれたこともあります。現在もそういうふうに呼んでいる人も多いと、こう思っております。  したがいまして、あくまでも自発的なことでございますが、先ほど政府委員が言いましたように、思いやり予算と今回お願いをしている特別協定とはまた意味が違うということは御承知のところでございますが、思いやりが始まりましたころにはオイルショックがあったり、あるいは我が国自体の給与の引き上げがあったということ等々を考えますと、米軍の従業員との均衡、バランス、そういうような面からもやはり力のついてきた日本といたしましてはただ単にアメリカに守ってもらっておるというだけじゃない。またアメリカの議会におきましても、安保ただ乗り論なんというようなやつがまかり通るということ等もやはり政治的には配慮しなくちゃいかぬ。したがいまして、あくまでも自主的に判断をして、そうした体制にこたえていったというのが私はその経緯ではなかろうか、かように存じております。
  235. 立木洋

    ○立木洋君 大臣そのようにおっしゃいますけれども、こういう円高ドル安の重大な事態が起こったときに、例えば経済構造の調整だとかいうふうな問題でアメリカ側が日本に輸出しやすいようないろいろな経済的な調整もとらなければならないよとか、いろいろな問題が起こって、いまだにその事態というのは長引いているわけですね。農業の問題にしてもこれあり、ずっとその後も事態が続いている。あるいは当時、中曽根さんはいわゆるもう百ドル日本人が多くの外国製品を買えばいいということまで言われたことがありましたですよね。そして、こういう問題が日本の農業にしろエネルギー産業にしろ、いろいろな意味で重大な事態を与え、円高の影響で海外輸出に依存していた中企業等も大変なやっぱり苦境に追われるという事態まであったわけですね。  そういう状況の中であったにもかかわらず、アメリカ側としてはそういう自分がつくり出した要因について積極的にそれを改善するという意図はなかなか見られなかった。そして、こういう在日米軍の駐留の経費、本来条約上でいうならば全く見ることが必要でない経費を特例をしてまでやっぱり見ざるを得ない事態にまで日本側がアメリカの主張を受け入れた、つまり日本側が譲歩した。よく言えば譲歩した、悪く言えば追随したということに私は結果的にはなっているんじゃないかというふうに指摘せざるを得ないんですが、その点はどうです。
  236. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 譲歩とか、したとか、せぬとかという問題ではないと思います。  我が方といたしましても、アメリカの双子の赤字に対しましては私もシュルツさんにも申し上げ、また総理大臣もレーガンさんに申し上げる、もちろんそれまでの内閣におきましても、それぞれ担当者は厳しくそのことをアメリカの政府並びに国会にも申し上げてあります。アメリカ自体といたしましても努力されておると思うのでありますが、確かに立木委員が御指摘になられましたとおり、レーガノミックスというやつが初めから成功した面もありましたが、大きな赤字財政を残したという意味においてはあるいは問題であったかもしれません。  しかし、その問題が出るときに私たちもいろいろ検討したことがあります。一九八四年、この年にあるいは今のような米ソの戦い――戦いというよりも競争が進んでおると、そのときにソ連がアメリカを追い抜いてしまう。追い抜いてしまったら永久に取り返しができないという焦りがアメリカにあったということも事実でございますし、私たちも十分そうした点も認識しておったわけであります。  だから、レーガン政権もそうした意味で片一方では減税、片一方では歳出増、それは主として軍事費に充てられた。だから、レーガノミックスと私たちは呼んだというふうな経緯もございますが、確かに今日では懸命になりまして、何といってもドルは基軸通貨でございますから、その信用を取り戻してくれないことにはやはり世界の経済は安定しない、そういうことでございまして、私はこの経済政策というものは政策であって、私たちはそのツケを回されて我々がやった。もう遠因としてはあるいはそうしたことがドル安になったから片一方円高になったと言えるかもしれませんが、私はドル安円高というものを考えた場合に、やはり円高の要素の方が高かったから、強かったから円高になった、そして相対的な問題としてドル安になった、こういうふうに考えるのがここ数年間における両者の関係ではないか。  そういう意味におきまして、何かこちらに負担が回ってきたとかツケが回ってきたというふうなことではないと、こういうふうに考えて、我々としては思いやり予算あるいはまた今回の特別協定をお願いしておる。それが私たちの考えであります。
  237. 立木洋

    ○立木洋君 その問題についての結論を出す前に先に進みたいと思いますが、結局、一年足らずしてまた特別協定の改定ということに今回相なったわけですね。八つの手当を全額日本側が見るということにこれをした。そして、一年足らずにもかかわらずこういうことが行われてきたということは、これもやはりアメリカ側の要請に基づいて行われたというふうに判断すべきじゃないかと思うんですが、そうではなくて、日本側から自主的に八つの手当全額を見ますというふうに日本側から申し出たものではないというのが真意ではないんでしょうか。
  238. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これもしばしばお答え申し上げておりますが、こうした考え方を持ってひとつ極端な米側の負担過重、これを軽減してあげなきゃならないと考えたのは、昨年のペルシャ湾、そうした方針を決めたときでございます。そのなお書きにおいて書いたとおりでございます。  しかし、そのもの自体はペルシャ湾の肩がわりではない。やはり我々といたしましても、安保体制の円満な運営というものを念頭に置きながら、特に昨年はいろいろと米軍従業員にも問題が出ておりました。だから、やはりそうした面におきましては、まず同じ我が国民が、その就職するところによってドル安円高の影響をいたくこうむっていらっしゃる。こうしたことを考えました場合には、米軍の負担軽減も考えなければならぬし、同時にまた雇用の安定も考えなければならぬ。これが両者の一致した意見となりまして、それで今回の改正をお願いした、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  239. 立木洋

    ○立木洋君 今回の直接のきっかけになったのはペルシャ湾の問題があった。それが直接的ではないにしても、いわゆるそういう問題が起こった時点から考慮が払われてきた。これは十月七日の政府のなお書きにも書かれてあるわけです。当時、マンスフィールド駐日大使はペルシャ湾について、軍の派遣という形ではなくて、何らかの形での安全確保に参加する方途を見出すことを期待するということを述べられています。それから、昨年九月に松永駐米大使が帰国をして首相に対して報告をしていますが、その報告の内容でも、アメリカ側の要請について間接的に日本が負担することを検討してほしい。その際、在日米軍の駐留費を少し軽くすれば米軍の財源が浮くということも提唱していますよね。これは事実、間違いないでしょうね。
  240. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) さようでございます。
  241. 立木洋

    ○立木洋君 そのとおりですね。
  242. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのような発言があったことは事実でございます。
  243. 立木洋

    ○立木洋君 だから、マンスフィールド駐日大使がそういうことを提唱し、あるいはアメリカの意向を受けて戻ってきた松永駐米大使がそういうことを首相に報告し、提案しているということ、そういうことから、一時期ペルシャ湾にいわゆる掃海艇を送るか、あるいは巡視艇を送るか、いろんな問題が問題になりましたけれども、そういうことではなくて、いわゆる在日駐留米軍の経費を一部日本側の負担をふやして米側の負担を軽くするという方向に動いていったということもこれは明確だ。結局、アメリカ側の要請に基づいて行われた。  先ほど同僚議員も述べておりましたけれども、結局円高だけでは問題としては非常に理由になりにくいという指摘もありました。「最近の経済情勢の一層の変化」という、「一層」ということだけではどうも根拠が薄弱ではないかという指摘もありましたけれども、やはり問題は、こういう点に米側の要請に基づくということが大きな根拠として作用したというふうに判断していいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  244. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) そのようなことでは最終的にございませんで、十月七日のペルシャ湾における自由安全航行確保のための我が国の貢献に関する方針の中で申しておりますように、「ペルシャ湾における自由安全航行のために、従来からの外交努力に加え、より大きな貢献をすることが国内的にも国際的にも求められている。」ということを申しまして、それが認識でございますが、そして三つの平和的手段によってこの努力に参画するということをしたわけでございます。しかし、今回お願いいたしております措置は、主たる目的と申しますか、目的はあくまでも在日米軍労務者の雇用の安定を維持するためでございまして、その結果、我が国にとりまして極めて重要な日米安保体制の円滑な運用を確保するということでございます。  今申しましたことがまさに私どもの基本的な認識であって、それがそのなお書きから連なってきておりまして、そして今お願いいたしておりますことは、直接にペルシャ湾を支援するといったことでは全くない、こういうことでございます。
  245. 立木洋

    ○立木洋君 直接か間接かは別として、ペルシャ湾に対して支援するというふうなことを私は述べたわけではないんです。アメリカ側の要請に基づいてこの負担増を日本側が図ったということになったんではありませんか。根拠は別としても、アメリカ側の要請がやはり要因として大きな要因にあったんではないんですかということなんですよ。これは違うんですか。  日本側から自主的に一年前に取り決めたことを、また急遽国会に出してこれを改定するんだというふうなことを、そこまで日本政府が自主的にやらなければならなかったということではなくて、やはりアメリカの要請が大きな根拠としてあったんではないかということなんですよ。
  246. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そうしたことではなくして、あくまでも自主的、自発的に組んだということはもう先ほどから申し上げております。  ただ、ペルシャ湾に関しましては我が国も重要な関連がある。したがいまして、我が党の中におきましてもやはりいろいろなお考えの方がおられますから、したがって、本来ならばアメリカに守ってもらわなくたって、やはり自衛艦が行けばいいじゃないかという意見もなきにしもあらずであったわけでございます。しかも、それらは決して海外派兵じゃないよという意見まで言われる方がありました。しかし、そうであったとしてもやはりペルシャ湾はいかにも遠過ぎる。これは紛争をまたいろいろ巻き起こすということは賢明ではない。だから私たちは、それらに対しましては平和的手段以外にありませんよということで、安全航行装置なんかを考え出したというわけでございます。  しかしそれと同時に、アメリカ自身も非常にグローバルな活動をしていることを私たちは認めなくちゃならぬ。その中において安保条約があるということも認めなくちゃならぬ。そうしたことで、決してグローバルな活動を応援するために今回の合同措置をとろうというのじゃなくして、やはり我が国に関連する問題に関しては、そうした面においてひとつこの際に我々としても誠意を尽くし、自発的な私たちとしての努力をすべきだ、こういう結果でございますから、いろいろとお考え方もございましょうが、累次私たちが申しておるそうした自発的な意思において今回の改定の御審議を煩わしておるということであります。
  247. 立木洋

    ○立木洋君 大臣がおっしゃる自発的な意思というのがいかにも空虚に聞こえるのですかね。  昨年九月二十一日、日米の首脳会談が行われましたね、中曽根さんがおいでになって。あのときに、幅広い可能な限りの方法を検討しましょう、援助の問題に関してはそういう約束をなさった。そして、それが十月七日の政府の発表になったわけですね。  あそこには、なお書きとしてペルシャ湾の関連が書かれてありますけれども、しかしペルシャ湾に対する関連ということを私は特に注意しているのではなくて、いわゆるアメリカの要請に基づいたと。ですから、結局そのことについて十二月二日でしたか、ニューズウイークのインタビューに答えて、竹下首相がいわゆる財務的な義務の分担でより多くのことをする必要が我が国にはある。だから、例えば米軍の基地で働いている日本人労務者の賃金を払うというふうなことも考えているということをインタビューの中で述べていますね。  こういうことを自主的に日本の首相が述べたんではなくて、いわゆる日米首脳会議の中で援助が求められて、可能な限り援助をしましょう、検討しましょうという約束がなされた。それに基づいてそういう方法をいろいろ検討した結果、そういう結論になったというふうに考えるのが私は妥当だ。アメリカ側からいかなる要請も提起もないのに、日本から自主的に一年前に取り決めたことを、再び改定を国会に提出するというような朝令暮改的なやり方を日本政府が好きこのんでやるということまでは私は考えたくない。やはりアメリカの要請に基づいているというふうに考えるのが私は妥当だと思うんです。  最初の場合の私が思いやり予算の問題を提起したのも、これは米側からの要請であった。それから、昨年の特別協定を行ったときも、これもブッシュ副大統が問題を提起して、そしてそれに基づく検討がなされた結果である。今回も同じように、ペルシャ湾に端を発したかもしれないけれども、日米首脳会談で問題が提起され、可能な限り検討しようということになって検討した結果、いわゆる在日駐留米軍の経費、八つのいわゆる手当、これを全額負担するということにまでなった。これが私は素直に見る実態ではないだろうか。アメリカ側が言わないのに日本側から進んでやったということではない。その点どうですか。  アメリカ側の要請というのが全く日本側の政府の念頭にあるいは考慮になかったのかどうなのか。そういうことは全く無視されたのかどうか。私はそうではないと考えるのが一般常識的な見万ではないだろうか。すべての人がそう考えるのは妥当な考え方だと思うんじゃないだろうかと思うんですが、そういう考え方というのはおかしいですか。
  248. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そうしたいろいろの立場でそういうお考え方もあろうかと思いますが、私たちはやはり日米基軸ということを外交の中心にも置いておりますし、そうしたことは防衛体制、安保体制ということを大切にしておりますから、したがいまして、そうした立場における政府といたしましては常に細かな気配りをしなくちゃならないということでございますので、あくまでも我々の自発的な考え方でやった、こういうふうに御理解を賜りたいと思うのであります。余りにも押しつけられた押しつけられたというようなことでは、さっぱり我が国の自主性はございません。やはり今日の内閣はきちっとした方針を持ち、また、自主的にすべてを判断してやっておるわけでございますので、決してさような考え方ではないということを改めて申し上げておきます。
  249. 立木洋

    ○立木洋君 宇野大臣がそれほど言われるならば申し上げておきますけれども、私は宇野大臣がアメリカ側に対して全く何事も主張しないで、ただ向こうの言うことをはいはいと聞いてきたなんというふうなことを考えているわけでは毛頭ありません。それは主張することは主張されたでしょう。しかし、結果的にはやはりアメリカの要請を受け入れるという結果としてあらわれているというのは私は事実だと。日本側の主張が通ったのではなくて、やはりアメリカ側の主張が結論としては通って、今日のこういう事態になって、いわゆる派生的な経費をもより多く負担せざるを得ないという事実の中に私はあらわれていると見るのが妥当だろうと思うんです。  そこで、先ほど来同僚議員の中でも指摘をされましたけれども、それならば今度、今後の問題ですが、今は円高だからこうしたと。だから、それならいわゆる円安になってドル高になったら変えるのかという問題については、もう一度念のためにお伺いしておきますが、いかがでしょうか。
  250. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) まず第一に、この改定の目的が駐留軍労務省の安定的雇用の確保でございますから、ある程度安定した展望を我が方からの拠出について与えておくということが大切でございますから、これを変動する円ドルのレートに直接リンクさせることはいかがなことかとは思いますけれども、他方、この有効期間中において著しい円安の状況が続く等基本的状況の変化があった場合には、在日米軍の財政事情、従業員の雇用を取り巻く情勢等を勘案しつつ、その時点において国会の御審議を仰ぐということで、その段階における適切な負担について検討が行われることとなろうと考えております。
  251. 立木洋

    ○立木洋君 今後また引き続いて円高の状況が続いていくという経済事情が「一層の変化」といいますか、ある程度の変化を来すという状況になってきた場合には、今度再びさらに経費を日本側がより多く負担するというふうな事態も起こり得るということもその内容には含まれるわけですか、そういう今後の変化の対応については。
  252. 有馬龍夫

    政府委員(有馬龍夫君) 今ここで御審議願っておりますこと以外、私ども今何も考えておりません。
  253. 立木洋

    ○立木洋君 これは多くの人が質問されたのを繰り返し質問しているようですけれども、私が述べたいという点は、これは今までアメリカの要請があるたびに、結果的には、あえて大臣が自主的にとおっしゃるから、私は結果的には結局日本側が負担するようになってきた、これは事実だと思うんですね。結果的には負担するようになってきた、それはどのように日本側が自主的に主張されたかは別として。それは大臣があえて自主的にとおっしゃるんだから、そのことまではまあお聞きするとしてですよ、しかし、結果的にはやはり日本側が受け入れてきた。  今後アメリカ側からそういう要請が出てきた場合に、またいろいろ交渉はなさるかもしれないけれども、結果的には受け入れるということがやっぱりあり得るというふうに考えるのが素直な見方になるのではないだろうか。だから、今後五年間はこの事態でいくんだと先ほど大臣はおっしゃいましたけれども、しかし、そういう状況の変化が起こればそういうこともあり得るというふうに考えることができないんでしょうか。私たちはそれをやることは反対なんですよ。だけれども、そうなさるのではないかという懸念があるので念のためにお尋ねしているんです。
  254. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今回の円高ドル安というやつは、G7をもってしてもなかなかはかり知れないような現象が起きた、それが急激に来たと。だから再び改定をしてお願いせざるを得なかったということでございます。しかし、そのほかにやはり私たちは常にアメリカに双子の赤字を征伐しなさいということをやかましく言っております。またあらゆる面で努力をしてほしい、努力することにおいて世界の基軸通貨であるドルを安定してほしいと。我々としてはこれ以上のドル安は望むものではない、世界もそんなことは望んでおらぬ、むしろドル高を望んでおるんだというのが今の日本立場でございますから、やはりそれに対しまして私たちも努力することはしましょうしと。  例えば竹下総理の、先ほど申し上げましたように、アメリカの金利がそのままであるのならば我が国の本邦資本の流出がしやすいように、そうしたことにおいてでもアメリカの経済の破綻を救ってあげようという心から、短期資本の低目金利の誘導なんかもその一つだろうと思いますし、あるいはSDRはひとつアメリカのを買いましょう、それでもしも円高になったらアメリカが円を売ってくれてむしろとめてほしい、こういうふうに私たちはしておると。これはこの間もアメリカの国会議員に言うたんですよ。だから貿易だけでなくして資本面における移動においてどれだけ努力しておるか、あなたたちの方の努力を言ってごらんなさいと私はむしろ言っておる方でございます。  したがいまして、再びドル安になったら、再びドル安になったらという議論が余りこの国会でない方がいいので、私はドル高になった方がいいというふうな気持ちをここで改めて申し上げて、そうしてやはりアメリカはアメリカとして自分の通貨、世界の基軸通貨の威信を保ってもらいたい、そうしたことがお互いの経済の繁栄であり世界の安定につながると、こういうふうな気持ちでございますから、今いろいろ仮定の質問がございますが、私としてはそういう仮定の質問に対しましてああだこうだと申し上げること自体はかえって余り好ましいことではないのではないかと、こういうふうに思っております。
  255. 立木洋

    ○立木洋君 いや、実は仮定の問題ではなくして、アメリカ側から要請が出ているんですね。二日前です、十日。アメリカの会計検査院のケリー局次長が国会で証言しているんですよ、公聴会で。そしてその証言している内容は、アメリカ政府当局も円ベースでの在日米軍援助費の追加を日本側に要請しており、五億ドルが見込まれていると指摘していると。日本政府当局はこれが可能だと示唆しながらも、この支出を合法的にするために地位協定改定の交渉が必要だと考えていると。  こういうふうに既にアメリカの会計検査院の次長が国会で公聴会で証言しているんですが、この事実は御承知ないですか。
  256. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いやしくも私も日本外交の第一線におりますが、全く耳にいたしておりません。そうしてまたそういう勝手な議論がなされておることを一々取り上げるつもりもございません。
  257. 立木洋

    ○立木洋君 これは勝手な議論ということよりも、会計検査院としてのアメリカの政府当局ですね、政府当局が国会で証言をしているわけですね。そしてそういう指摘があって、日本側もそういうことが可能だと示唆しながら地位協定改定の交渉が必要だと考えているということまで言っているんですから、これが事実に反するならばこれに対して明確な対処を私は日本政府はとるべきだと思う。それにもしかこたえるというふうな趣旨があるならば、先ほど私が持っている懸念、これが事実になっていくのではないかと考えるから私は懸念があるというふうに指摘したわけです。  もしかそういうことが事実無根で、そういうふうなことを勝手に述べるとはけしからぬと、大臣がそこまでおっしゃるならば、アメリカ当局にこのことを申し入れて、そういうふうなことは日本側としては考えていないという立場を明確にされるのが至当ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
  258. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 事実関係をきちっと調べまして、今申し上げましたように、我々の何ら知らないところで知らない話がなされておるのであるのならば我が方の立場も鮮明にする必要があると、かように考えております。
  259. 立木洋

    ○立木洋君 そのことはぜひやっていただきたいと思うんです。  しかし問題は、先ほどの一九七七年六月十五日のアメリカ会計検査院院長の議会に対する報告も、日本側に事前に通告して議会で報告したわけではないと思うんですね。これは事後に日本政府も知ったと思うんです。これも勝手にアメリカが我々の知らないところでやったものというふうになったかもしれないけれども、しかし結果としてはそれを受け入れて七八年から思いやり予算が事実上計上されたという経緯があるだけに、私はこの問題を重視して、宇野大臣が今おっしゃったことをきちっとなさるかどうか私は見届けさしていただきたいというふうに考えます。  私はこれらの経過の問題をなぜくどくどとわかり切ったようなことを取り上げたのかという問題について申し上げるならば、これは先ほども言われましたように、日米安保条約の効果的な運用に資するためということが理由の内容として一つ挙げられておりますね。私は、結果的には、いわゆる在日米軍が効果的に世界戦略を実行するためにいわゆるその経費の負担を日本側が可能な限り負担するということに実質的にはなっているんではないか、そういうふうに考えて妥当だと思いますが、いかがでしょうか。そうでなければ安保条約の効果的な運用という意味がどういう意味なのかお答えいただきたいと思います。
  260. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) すべては自主的な判断に基づくものでありますが、今日のごとき体制というものは、やはりお互いに日米安保体制を組んでいる双方といたしましても、当然アメリカにいろいろと自主的な判断で負担の軽減を図るということは、これは日本としても、我々といたしましては一つの友情のあらわれであり、また私たちの今日の経済的な大きさから眺めれば当然しなければならない。さにあらずんば安保条約の円満な運用もない、こういうふうな判断でございますから、そうしたことをどういうふうにおとりになりますか、私たちは今申し上げたような気持ちでやっておるということであります。
  261. 立木洋

    ○立木洋君 先日、同僚議員の吉岡議員が質問して、これは核兵器が日本に存在するか存在しないかという問題は別として、日本に米軍の核戦力、いわゆる核積載可能な艦船あるいは核搭載可能な飛行機が日本に駐留しているということは有馬局長も認められたとおりだと思うんですね。ですから、日本に対しては、これは核を持っているか持っていないかは別として、いわゆる核戦力としての米軍の軍備が存在している。  そこで具体的にお尋ねしたいんですが、今三沢に配備されているF16戦略戦闘機、これ一機にどれぐらいの核爆弾を搭載することができるでしょうか。――御承知でなければお答えしましょう私の方で。これは防衛庁の方でないから、きょう防衛庁の方おいでになっていないから。  B61型の核爆弾、これ一発が〇・五メガトンなんです。広島で落とされた原爆というのは十五キロトンと言われております。だから、B61の〇・五メガトンというのは何倍になるかというと、広島に落とされた原爆の三十三倍余りになる。このB61型の核爆弾がこのF16戦略戦闘機には五発積めるんです五発。二・五メガトンになるんですね。大変ないわゆる爆破力、威力を持ったものがF16に搭載できるんです。これが五十機日本に配備されているんですね。これは三沢に配備されているものだけでもB61型の核爆弾で計算すると百二十五メガトンになるわけですから大変な量になるんです。  これは搭載していることと日本に核が持ち込まれているということとは別ですよ、そういうことを私は言っているんじゃない。いわゆるそれが搭載でき得る能力として見た場合にはそれだけの大変な核爆弾が搭載できる。岩国にもこれはありますね、これはFA18という飛行機があります。これも核爆弾を搭載することが可能なんです。これは同じくB61型を二発搭載できる、これが十二機最近ふやされました。また、来年度これを増派するという計画が岩国の基地にはあります。  また、日本の横須賀、佐世保等を母港としているアメリカのいわゆるミッドウェーを初めとする空母、この空母一隻に搭載でき得るいわゆる核兵器、核爆弾、いわゆる核ミサイルですね、どれだけになるか、アメリカの資料で計算するとざっと三十メガトンから五十メガトン搭載できる。世界じゅうにアメリカの軍艦がいわゆる基地としているところというのは七カ所ありますけれども、そのうちの六〇%のアメリカの艦隊が日本を母港とする基地になっているんです。ですから、これらのもの、それから原子力潜水艦等々の搭載能力、おおよその推定をしますと大体二百五十メガトンから三百メガトンに近い核破壊威力を持った攻撃力が日本には存在している、核兵器があるなしは別ですよ。核兵器があるとなったら、それは事前協議があるから入っていないとおっしゃるから、そんなことをここで議論しようと思っているわけじゃないんです。それほど大変な核攻撃力を持った状態というのが日本の基地でつくられている。これは事実なんです。防衛庁が出している資料にでも全部載っていますから、これは間違いない事実なんです。  それを核兵器でどれだけ搭載できるかというのを計算すると、少なく見積もっても二百五十メガトンから三百メガトン、これは投下された広島型原子爆弾の二万倍近くになるんですよ。大変な核破壊威力というのが日本に存在している、現実に。これはINF全廃交渉ではこの攻撃力というのはいささかも減少されないんですね、日本に存在している米軍の核攻撃能力というのは。私はそういう状態、つまり米軍が果たしている日米安保条約の効果的な運用というのは、こういう危険な実態、広島型原爆に計算するならば二万発にも及ぶ核兵器が存在するような、そういう攻撃能力を持った米軍が日本に存在している。それに次々とアメリカの要請に基づいて経費をふやしていく、そういうあり方というのは根本的に考え直さなければならないのではないか。  今世界的に言うならば多くのところで軍縮が叫ばれ、何とかして核兵器をなくしていこうという方向への努力が開始されているという状況です。そういう中で日本だけが突出して軍事費をより多く負担し、アメリカのいわゆる核戦略に協力するような体制をとるというのは世界の流れに逆行するのではないか。そういう意味で日米安保条約の効果的な運用に資するということ自身が今の世界の情勢から見るならば私は考え直さなければならない根本的な問題点だということを、この特別協定の改定に当たって改めて大臣に申し上げておきたいんですが、これはもちろんそのとおりですとは大臣言わないでしょうが、大臣の御所見をお伺いしましょう。
  262. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) INFに発した御議論でございますが、これは何回も申し上げておりまするとおり、核軍縮の第一歩として私たちは評価すべきだと、こう申しております。また同時に、軍縮、常にこの軍縮は私たちはやはり望む方向へ努力をしなければならない、こう思っておりますし、特にいろいろと抑止力バランス等とも言われますが、やはり抑止力バランスは低いレベルにおいても保てるんではないだろうか、これが私たちの主張でございます。  と同時に、今F16の話が出ました。いろいろと核弾頭のお話も出ましたが、あくまでも我が国は非核三原則の国でございますから、そういうような数字を言っていただきますと、これは一つの、失礼でございますが杞憂にすぎない、私たちはあくまで核の持ち込みは許しません、そういうことでございますので、やはり必要あってF16は配置されておる、こういうふうに考えております。  なおかつ、そうしたこと自体も最近もっと減らせばいいじゃないかという御意見でございましょうが、確かにINFは成功いたしましたけれども、続くモスクワ会談においていろいろと議論をなさることでございましょうが、太平洋並びにアジア自体につきましては、いささか私たちはソ連の方が艦隊においてもあるいは飛行機においても増強あるいは近代化しておるのが現状であるということになりますと、やはりソ連に対する抑止ということも、バランスということも考えておかなければなりませんので、そうした必要やむを得ざる枠内におけるところの今日の日米安保条約の体制がしかれておる、かようにひとつ御理解賜りたいと思います。
  263. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 立木洋君、時間でございます。
  264. 立木洋

    ○立木洋君 一言だけ。  大臣、今おっしゃいましたけれども、これ以上もう時間がありませんから議論を申し上げるつもりありませんけれども、今までのこの特別協定の改定に至るまでの経緯を見て、私は結果的にはアメリカに追随するというふうな結果が結論的にはやっぱり出てきている。と同時に、今の世界の流れから見て、軍縮こそやっぱり努力すべきだと、それは自民党の先生方の中にでも、原子爆弾の危険性を世界じゅうに知らせるために今度のSSDIIIを利用されてはどうかという主張をなさる先生までおいでになるわけですから、そういうことに真剣に耳を傾けていただくということはぜひとも要望しておきたいということを重ねて申し上げて、きょうの質問は終わります。
  265. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、たしか四月二十一日の当委員会で大韓航空機行方不明事件について私が御質問申したのに対して、外務省の方から追加答弁をしたいという御要望がありましたので、この機会に答弁をしていただきたいと思います。
  266. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 今、田委員お話がざいましたように、四月二十一日の本委員会におきます田委員からの御指摘、すなわち大韓航空機事件に関連いたしまして蜂谷真一、真由美と称する両名が持っていたのが偽造旅券だということを日本の大使館員がどうして知ったかということは非常に疑問であり、他方大韓航空の方は搭乗のときからそれぞれの旅券を見ることができたのであるから、我が国政府より早く両人の旅券が偽造であることを知り得る立場にあったという趣旨の御見解が表明されたわけでございます。  これに対しまして、政府として把握しております事実関係はこれと大きく異なるものでございますので、この機会に説明させていただきます。  まず指摘いたしたいのは、政府としても大使館員が旅券の偽造を見破ったと理解しているわけではなく、旅券が偽造とわかったのは、外務本省で旅券申請書等資料と現地大使館から報告のあった両人の旅券記載事項を照合した結果であるという点でございます。また、この段階でわかったことは、女性の旅券が偽造であるということのみであります。  これに至る経緯は次のとおりでございます。  まず現地大使館側といたしましては、昨年十一月二十九日に大韓航空機が消息を絶って以来、邦人保護等の観点から真相究明に全力を挙げていたわけでございますが、その過程で同機が緊急通信もせず突如行方不明になったこと等不自然な点があることにもかんがみ、テロ等あらゆる事態を想定し、念のため同機の乗客名簿をチェックしたところ、三十日、邦人と思われる男女二名がアブダビでおりていることを確認いたしました。そこで、現地国当局の協力も得て両人の所持する旅券の番号を入手し、外務省におきまして旅券発給申請書等資料と照合した結果、女性の旅券につきかかる番号の発給事実がないことから、女性の旅券が偽造であることが判明した次第でございます。  次に指摘すべきは、両名の旅券は専門家の所見でも極めて巧妙に偽造されていたものでございまして、航空会社のカウンターの係等第三者が見て偽造と気づくような安易な偽造物ではなかったという点でございます。したがいまして、当初の段階では、偽造が判明したのは当省の保管するデータにより当該旅券番号による旅券発給事実がなく、直ちに偽造とわかる女性の旅券のみであり、男性の旅券については当方としても偽造であるか否かは判断し得なかった次第でございます。男性の旅券につきましては、男性の死亡後国内での調査の結果、死亡した男性の旅券の名義人である蜂谷真一氏が日本国内に実は実在していることが判明し、初めて偽造であることがわかったものでございます。  以上でございます。
  267. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 四月二十一日の当委員会におきまして、田委員より在韓国我が方大使館館員が、金賢姫の日本人化教育に携わった女性に関し根拠の乏しい情報日本の新聞記者にばらまいたのではないかとの御指摘がございました。  当時の報道は種々の憶測に基づくものがあり、我が国の大使館館員が御指摘のような情報を流したということではございませんでしたので、右申し上げておきます。
  268. 田英夫

    ○田英夫君 この問題については、また改めて機会がありましたら御質問したいと思います。  北朝鮮に関連をする問題で、一言この機会に申し上げておきたいことは、午前中も同僚委員から取り上げられましたよど号の柴田が逮捕された問題に関連をして、実は一九七二年に私、当時社会党の参議院の代表団の一員で訪朝したことがありました。  そのときに九人のよど号の犯人に面談いたしました。その経緯を若干申し上げておいた方がいいと思うんですが、金日成主席と会談をする機会がありました。昼食をともにいたしましたときに、金日成主席の方から、実はよど号の犯人たちも、自分たちが今ここで保護した形になっているけれども、大分年月もたつので実はその取り扱いに悩んでいる――悩んでいるという言葉を使ったことを記憶しておりますが、そういう発言があって、できたら皆さん会っていただけますかというむしろ向こう側から要望がありまして、代表団の中でも議論をいたしました。  ああいう重大犯人に面談するということの可否について議論をしたんですが、せっかく金日成主席からそういう要望があったということも踏まえまして面談いたしました。九人全体の中には当然柴田がいたわけです。あと個室といいますか、住んでいるところを見せてもらいながら個々に話し合ったときに、私の記憶では、宮之原元参議院議員と私とで田宮に会いました。そのときに宮之原先生は非常に厳しく、君たちの犯した罪をどう思っているのだ、そして北朝鮮に対して君たちは大変迷惑をかけているじゃないか、そういうことで、人生の先輩として叱責をするような発言を私も含めてしたことを覚えております。  したがって、最近北朝鮮バッシング、北朝鮮たたきというような風潮が私はあるように思います。私ももちろん北朝鮮のような体制がいいと思っているわけではありませんし、私は韓国も訪問いたしましたし、南北両方の状況というものも把握しているつもりですが、一番大切なことは、お互いに政府も我々も朝鮮半島の緊張を緩和させるということこそ最も重要なことだと思います。  先日来、制裁措置の問題も取り上げましたが、捜査当局はその立場上いろいろなことを推定して、北朝鮮の工作員ではないかというような発言もきょう午前中ありましたけれども、政府全体としては、特に大臣のお立場からは朝鮮半島の緊張緩和という一番大きな目的のために、今どういう態度をとるべきかということをぜひお考えいただきたいということをこの機会に申し上げておきたいと思います。  本題に入りますが、時間が大変短いので、実は取り上げることが大変大きな問題ですので、当然突っ込んだやりとりを期待できないんですけれども、今問題になっております米軍労務者の問題とも絡みまして、今立木委員も言われましたけれども、世界全体としては非常に緊張緩和という方向に、向かっていると言っては言い過ぎかもしれませんが、向かうのではないかという状況の中で、日本として何をやるべきか。これは決してもちろん防衛費の増大とかそういうことではなくて、あるいは在日米軍も経費が不足するならこの機会に削減してもいいのではないかとさえ私は思うのです。  そういう中で、日本として何をやるべきかということを考えましたときに、INFの合意ができた、次は戦略核兵器の五〇%削減、モスクワ会談で、モスクワ・サミットではなかなか技術的な問題があって合意までいくかどうかわからないようですけれども、もう一つ非常に重要な問題として包括的な核実験禁止条約というものを早急につくるべきだという声が今世界各地から起こってきているように思っているわけです。そういう中で、唯一の被爆国である日本の政府として、この包括的な核実験禁止条約を締結するために推進役を果たすべきではないかという気がしてならないんですけれども、大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  269. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 非常に我々といたしましては、究極的には核の廃絶、そうしたことを目指さなければならぬ、こういう立場でありますし、もう一つはやはり常に軍縮を叫ぶことが必要だ、そうした立場におりますから、今、田委員のおっしゃったようなことに対しましても決して反対であるわけではありません。しかし、本当に今日の世界の情勢を考えましたときには、核は核として、人間の業といいますか、そうしたものが開発された。だから、我々は平和利用に専念いたしておりますが、既に核実験、核爆発等々話題になっておることも多うございますから、日本立場といたしまして前任者が主張したことがございます。これはステップ・バィ・ステップ方式といいまして、やはり日本も拱手傍観しておるのではない。したがいまして、やはりやるからには検証ができる、そうして本当にこの国は立派だったね、検証に従ってくれたねということが大切でございますから、決議だけすることも必要でございましょうけれども、そうした意味において、それぞれの国々が検証でき得る範囲の核爆発禁止ということをまずひとつ主張しようではないか。それを敷居というふうに呼んでおることは御承知のところでございましょう。  そして、やがて、小さなやつは地震計にも引っかからぬと思いますが、その小さなやつですら何かに引っかかって検証ができる、そういうことを望もうというのが具体的な日本立場でありまして、既に安倍外務大臣のときに、そうしたことを実証し、なおかつ地震計のそうしたいろいろ国際的なデータ交換のプロジェクトも進めておる。私は、そういうこともございますから、やはり実現可能で、実際にその方途へ着実に進み得るということを我々が現在やっておるということを考えますと、もちろんPGAでございますか、我が国の議員の代表もおられて、私の親しい櫻内さんもおられるわけで、大いにこの方々に主張していただくことは私はいいことだと、かように考えております。
  270. 田英夫

    ○田英夫君 確かに、日本政府は、特に地震の探知という技術で非常にすぐれているということを利用して、検証のために日本は技術的に協力しようじゃないかということをジュネーブでも国連でも提案し続けてこられた、このことは大いに評価をすべきだと思います。  同時に、今大臣がおっしゃったPGA、パーラメンタリアン・グローバル・アクションですか、これは日本の議員も参加をしておられる、世界議員行動と訳しておりますけれども。今度六月二日に第三回の軍縮特別総会がニューヨークで開かれる機会に、このPGAのメンバーと日本の国際軍縮促進議員連盟の起党派の代表団とディスカッションをしようじゃないかということが合意いたしました。そういう会合が文字どおり超党派、自民党、社会党、公明党、民社党、共産党、私どもを含めまして、みんなで行くことになっております。  そのPGAの提案は、もう既に御存じだと思いますけれども、いわゆる部分的核実験停止条約を改定する形で包括的な核実験禁止条約に発展させよう。従来は部分核停条約とは別に新しいものをつくろうという動きであったものを、改定でいこう。この根底には、カーター政権のときのSALTIIの首席代表であったポール・ウォーンケというアメリカの核軍縮の専門家ですが、この人の案が非常に有力な根拠になっている、こういうふうに聞いているわけで、ここにPGAの提案の文書もありますけれども、これはやはり私も新しいものをつくるというよりも、米ソが核になってつくった部分核停条約を発展させる形ということをとれば、今アメリカは包括的核実験禁止条約というものに消極的でありますけれども、可能性はより大なのではないかというふうに私は思うんですが、この点、外務省はどういうふうにお考えですか。
  271. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほども大臣から答弁ございましたように、核実験の全面禁止ということは究極的な核廃絶ということと並びましてといいますか、その一つの条件として非常に重要なステップである、こう考えているわけでございます。  他方、現実にはやはり着実にどうすれば検証を含めてやっていけるかということでございまして、したがって今委員の御指摘になりました点につきましては、条約形式の点からすればあるいはおっしゃっていることも理由があるかなという気もいたしますけれども、どうもその根っこの本質的な問題の方、これは依然としてやはり残っているわけでございますので、やはりむしろ今後の核実験全面禁止に向かってどうやって一歩一歩核軍縮を進めていくかという、そちらの方がいわば本質的な問題ではないか、こうあえて考える次第でございます。
  272. 田英夫

    ○田英夫君 どうも日本のジャーナリズムなんかの間に、ソ連が核実験禁止ということ、かつて一方的に停止をして、そしてアメリカに停止を迫ったというような経過があったことも含めまして、どうも包括的核実験禁止条約というのはソ連の望むところなのではないか。アメリカは消極的なんだ、こういうものに乗っかっていくということはアメリカの友好国という立場からいかがなものかという考え方があるのではないかという気がしてならないんですが、私はやはり唯一の被爆国ということを考えますと、これはぜひ日本政府がイニシアチブをとるべきじゃないか。たとえアメリカが消極的であろうとも、あるいはソ連が積極的であろうとも、いいことはいいとして進めるべきではないか。  とにかくINFはこれは喜ぶべきことですが、せいぜいすべての核兵器の四%とか五%とか言われているわけですね、今度合意を見たものは。それから、戦略核兵器五〇%削減といっても、残る五〇%で地球はやはり十回やそこらは全滅するというものが残るわけですから、喜んでいいわけはないのでありまして、やはり将来を見通したときに、次の重要な課題は全面的に核実験を禁止するということによって新しい核というものを生まないということを、まずそっちをふさがなくちゃいけないんじゃないかと思いますので、重ねて大臣のお考えを聞かしていただきます。
  273. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 大局的見地から申しますと、日米は安保体制下にあって円満にそれが動かされておる。また、日本もそうした体制下にありますから、今日の平和と安全を保障され、なおかつ繁栄という大きなべネフィットも受けることができた。そうした中において、やはり核というものは、先ほど申し上げましたように人間のつくり出した業と申しましょうか、究極的には廃絶した方がいいと私たちも考えますが、現在ある程度、ある以上はそれが世界の戦争を抑止しておるということもこれ否定できない面である。  そうしたことから、私たちも常に申しますとおりに、アメリカのニュークリアアンブレラの中におる、ただし柄は我が国の領土外でございますよと、こういう関係でございますから、そこはそこで主張しておいて、片一方は片一方でやはり私たちは、とはいえ米ソ間の核軍縮は歓迎する。さらには、究極的廃絶は大いに望むところであると言いつつも、そのプロセスにおいてはそうした現実というものもあるということはこれは一概に無視することはできないんじゃないだろうか、こういうふうに考えますので、今そうした立場において私たちの核に対する認識もあり、また核に対する廃絶の希望もある、こういうふうにお考え賜りたいと思います。
  274. 田英夫

    ○田英夫君 これも大臣のお手元に届いているかと思いますが、先日、今度第三回の国連軍縮特別総会で竹下総理が演説をされる内容について、以前にもここでちょっと申し上げましたが、核軍縮を求める二十二人委員会の名前で、総理あてにこういう内容をぜひ入れていただきたいということを要望いたしました。総理も全部読まれて、私も全く同感だというお答えをしておられましたが、実はその中に、包括的な核実験禁止条約をぜひ一日も早く締結されることを望むというふうに総理から提起していただきたいという一文が入っております。また、今お話のありました核兵器、通常兵器の軍縮と宇宙兵器及び化学兵器禁止のための検証制度を確立するために日本が技術的な協力をいたしますよということも総理から言っていただきたい、これもわかりましたというお答えでありました。  したがって、こういう問題は実は党の違いやイデオロギーの違いを乗り越えて、やはり政府、日本国民みんな大きく一致している問題ではないかと思うので、後は実際におやりになるのは政府でありますから、政府の決断いかんというところに来ているんじゃないかなと思うんです。どうもアメリカが消極的であるから何となく日本政府も消極的なのではないかという危惧を持つ方々もあります。そういう意味からも、何か技術的にできないぞ、もっとほかに問題あるぞというようなことならばともかく、これは私の理解する限り地下核実験だけが今生きているわけですから、地下核実験を禁止してそれを検証するということは、例えばINFや戦略核兵器をなくす、あるいは五○%なくす。本当になくしたかなくさないか検証するよりははるかに容易であると思うんですけれども、これは専門家の議論になるかもしらぬ。国連局長はどうですか。
  275. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) これは確かに、今直ちに核兵器の廃絶というのができる状態にあれば、これは恐らく核実験の禁止ということで検証するという方が楽ではないかという点については、今委員御指摘の点もわかるような気もいたしますけれども、やはり先ほど申し上げましたように根っこの問題、つまり究極的な核廃絶に向かいつつも、その過程におきましてはやはり一定の核抑止というものに依存せざるを得ないという現状がある段階におきましては、やはり核実験の禁止につきましても当然核実験の停止、それに関する検証というものは進めていくわけではございますけれども、核実験についての検証自体の技術的な困難性もございますし、それからまた根っこの、一定の核抑止力に依存しなきゃいかぬというその現実の戦略的な問題もある。こういうのが現実ではないかというふうに考えております。
  276. 田英夫

    ○田英夫君 そこに来るんですね。核抑止という言葉が出てきたから、なるほどと私は思うんです。つまり核抑止論というのは、もう核軍縮の専門家、先ほども申し上げたポール・ウォーンケとかそういう人たちの間では、もうこれは全く過去の伝説である。ジェラルド・スミスという人もおりましたね。この人もはっきりそう言っています。にもかかわらず、やはり日本政府が核抑止論というものをとり続けておられるというところに問題があるということが今はっきりしてきたと思います。  これは、失礼ながら自民党の議員の皆さんの中にも、明快に核抑止論はもう過去のものだということを主張しておられる方もあるわけでありまして、この辺の認識の違いというところに今政府の消極的な姿勢の根源があるんじゃないだろうか。これはぜひ、生意気なことを申し上げれば、外務省を中心にしてこうした政策を進める立場にある政府の中で、この核抑止論というものについて改めて根本から勉強していただきたいということを要求しておきたいんですね。  恐らく今度の竹下総理がおいでになって国連の演説をされる内容については、外務省が中心になって作成をされるんだと思います。そして、前回の第二回軍縮特別総会のときの鈴木総理の演説も、先日改めて読み直してみましたけれども、極めて立派な、非常に日本総理大臣として立派な演説をされたと思います。竹下総理の演説も恐らくそれに匹敵する立派な演説をされると思うんですけれども、にもかかわらず、こういう具体的な核廃絶へ向かっていこうということになって、具体的なことになると日本政府は極めて消極的になってしまう。このところが非常に残念なんです。  そろそろ総理がおいでになるでしょうから、大臣に最後に一言そういう問題、そこの点についてのお考えを聞かしていただきたい。
  277. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今いみじくもSALT交渉の衝に当たられましたアメリカ人のジェラルド・スミスさん、私は旧知の間柄でございまして、もちろん日米原子力交渉のときの相手方であります。  いろいろ田委員と同じような御意見を私も耳にしないではありません。ところが、肝心かなめのデタントの最中にアフガンの侵略があったということも事実でございまして、いかに緊張緩和というのが難しいかということで、自来アメリカで余り緊張緩和というようなことを使っちゃばかにされるというふうな話すらまかり通っておるというようなことでございますから、残念なことだけれども、やはり通常兵器においてもいろんな兵器においても、そうした質並びに量というものはバランスをとりながらも一つの抑止を働かしておるんじゃなかろうか。  だから、核もそうであると私たちは認識しておるんですが、しかし軍縮ということは忘れてはいけないことでございますから、いずれにいたしましても、抑止とかあるいはバランスというものは低レベルにおいてもできるんじゃないか。何も高レベルを望まなくたってよろしいというのが日本立場でございますから、したがいまして、そういうふうなことで今後外務省といたしましても世界のそうした問題に臨んでいきたい、かように存じておる次第であります。
  278. 田英夫

    ○田英夫君 この核の問題はもちろん大変な重大な問題ですから、こんな短時間で議論できることではありませんけれども、ここでよく申し上げているとおり、ニュージーランドのロンギ政権がああいうことをやりました。続いてフィリピンがやりました。デンマークのおとといの選挙もありました。そういうことを含めて核をなくしていこう、あるいはできる限りデンマークなどはNATOの中にいながら領海内への核持ち込みを禁じ続けてきている、そういう国も次第に顕在化してきているという状況の中で、唯一の被爆国である日本の政府がどうあるべきかということをぜひお考えいただきたいということを申し上げて終わります。
  279. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) それでは、これより内閣総理大臣に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  280. 松前達郎

    ○松前達郎君 竹下総理がお見えになりましたので、総理に対しての質問をさせていただきたいと思います。  外交問題を取り扱っております本外務委員会の一員といたしまして、奥野発言外交に非常に大きな問題を投げかけているということを非常に心配いたしておるわけでありますが、最近の奥野長官のたび重なる発言について、内閣の最高責任者としての総理は、奥野長官罷免に値するということすら出ているわけでありますけれども、この問題をどう収拾させていかれるつもりか、その点をまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  281. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる奥野発言に対してのお尋ねでございますが、私の立場から申しますと、昨日の参議院本会議というものが私と奥野さんとが一緒になってお答えできる、今で言えば最終の機会であったんじゃないかというふうに思っております。  本会議場に入ります前に、奥野大臣もこの問題について出席するようにという要請があったということを聞きましたので、私なりに整理をいたしまして、まず政府が統一して今日まで申し上げております考え方を述べまして、法律案そのものは文部省所管の法律でございましたが、当該大臣からお答えがあるというふうに申し上げました。その後、奥野大臣から、政府の見解と軌を一にしております。そして最終的には、不適切な部分があった場合はこれに対して適切な対応をいたしますと、こういう御発言がございまして、この最初と後というものは、奥野大臣が適切な対応というものを考えられるという意思表示であるというふうに承っておるところであります。  もとより発言が、新聞紙上等であるいは他の情報で見ます限りにおいて、いろいろな問題を起こしておるということにつきましてはまことに遺憾なことだというふうに考えております。
  282. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは本題に入ってまいりたいと思うんですが、我が国の外交の基軸、これは日米安保体制を基盤とした日米関係のもとに展開されているということについてはこれは事実でございます。その日米安保条約ですが、歴代の内閣によって事実上軍事同盟の性格が主体となりつつあるというふうに私は考えております。我が国のアメリカに対する軍事的貢献、これは諸外国に比してぬきんでているのが現状でありますけれども、今回さらに防衛分担をより以上引き受けることになる特別協定の改定が行われようとしているわけであります。  そこで総理にお伺いしたいのですが、最近の日本の防衛力に関する米国の認識、これは極東の安全ということもあろうと思いますが、それよりももっと重点となってきたのが核戦略の面から米国の国益と安全を守るためのものとなりつつある。かつて中曽根総理のときに不沈空母ということをおっしゃったわけですね。こういう表現に象徴されますように、今、日本は米国の防波堤的な役割を持つようになったと見ている人もいるわけでありますが、極東の軍事情勢を含めまして総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  283. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘ありましたように、安保条約ということ、日米安保体制というものが我が国の外交の基軸の一つであるということは、私も絶えず申し上げておるところでございます。  その本質そのものは、やはり米国の対日防衛義務を規定することによって我が国に対する侵略を未然に抑止するということでありますし、そして次の条項においては米軍の駐留を認めることによって我が国の安全及び極東の平和と安全の維持に寄与することを目的としておると。したがって、日米安保体制は我が国及び極東の平和と安全に資しておって、そのことがアジアひいては世界の平和と安定にも貢献しているという共通認識というのは、やっぱり私はこれは土台に存在しておるというふうに思っております。したがって、これはあの安保条約、岸内閣における改定のときから今日までその土台の物の考え方というのは変わってはいけないというふうに思っております。  今先生御指摘なさいましたように、それが間々、いわゆる我が国の安全ということでなく、米側の世界戦略の中における枠組みの一つというふうな理解の仕方で議論されておるというようなことがよくあることは私も承知しておりますが、あるにはあるだけに、なおやっぱり土台というものは我が国としてきちんと守っておかなければならないことだと思っております。
  284. 松前達郎

    ○松前達郎君 米国との相互協力及び安全保障条約、この条約の第六条に基づく地位協定の第二十四条ですが、これが今回の協定改定の対象の基本の項目となってくるわけです。在日米軍経費の分担についてこれは定めているわけですね。で、「日本国合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」、これは施設及び区域に関する負担は日本側であり、その他については本協定存続中日本に負担をかけないで米国が負担するものである、こういう基本的な条項がここに定められているわけなんです。  この協定の基本的合意があるということ、これはもう総理も御認識いただいているわけなんですが、この合意があるにもかかわらず、政府は昭和五十四年四月以降格差給あるいは諸手当などのうちの公務員のその水準を上回る部分を負担するということで、いわゆる思いやり予算ですね、これを実施するということにしたわけですね。  そのときの理由には、協定二十四条には細目について明文化されていない。だから米側の負担は通常の水準における労働力に対する労務費と解されるので、差額についての米側負担の義務はないというふうに解釈、こういったことから思いやり予算というものが出てきたと。まあその歴史の経過でありますが、私はそういうふうに解釈をいたしておるわけなんです。この点間違いないと思うんですが、総理いかがでございましょうか。
  285. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 経緯につきまして私も御同様な考え方を持っております。
  286. 松前達郎

    ○松前達郎君 昭和六十一年になりまして、さらに労務費の負担の増額が日米間で話し合われる、六十二年に現在の在日米軍労務費特別協定、これが昨年ですが署名をされる、在日米軍の従業員に対する調整手当の支払いに必要な経費の一部を、その二分の一の範囲を限度として負担する、これはもうつい最近のことでありますから、こういうふうになったわけであります。  このときの理由として、経済情勢の変化というのが挙がっているんですね。これは当委員会で外務大臣にも先ほど質問させていただいたんですが、経済情勢の変化というのがその主な理由になっているわけです。今回は二分の一の範囲を限度として負担するというのを決めてからそんなに時間がたっていない、まだほとぼりも消えていないといいますか、そうまだ時間がたっていないうちに特別協定をまた改定する。今度は負担限度を全額とするということになるわけなんですが、その理由としてやはりことに再び経済情勢の変化、これに「一層」という字がついていますが、「一層の変化」ということでその理由を挙げておられるわけなんです。  いろいろ伺ってみますと、その理由としては円ドルのレートの問題である、円高ドル安の問題である、こういうふうなことが主な理由ということであるわけでありますが、当時と今とそんなに時間がたっておりません。いわゆる円ドルレートの上昇といいますか変化というのは、そんなに大きく変化していないんじゃないか。これは数字も挙げて当委員会ではいろいろと議論があったんですが、間もないときにさらにまた倍に増額するというふうなことが、その理由として経済情勢の変化というのは当たるのかどうか、その辺が私どもどうも納得いかないわけでありまして、これについて総理の御見解をいただきたいんですが。
  287. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私自身、一九八五年の九月二十二日でございましたが、いわゆるプラザ合意の責任者でございました。したがって、前回特別協定締結した際に、実感としては非常に私自身はよくわかりました。あるいは気持ちの上で妥当であるというふうに考えたと思うわけでございます。その後さらにそれが進みまして、一方、当時いろいろ御議論いただいたりいたしておりましたが、いわゆる雇用問題そのものに波及するという度合いが一層強くなってきたではないか、そうなれば安保条約の効果的運用を図るためにこのことは必要であろうといわば自主的に判断をいたしまして、今回この特別協定の審議をお願いするに至っておるというふうな感じで受けとめております。
  288. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、経済情勢の変化、それが一つの引き金となっての雇用問題というのが大きくクローズアップされるんだというふうに、今総理のお考えを伺ったらそういうふうに受けとれるわけなんですね。たしか当時三百同名でしたか、三百名ぐらいの解雇の問題があったわけですね。そして、たしかこの協定ができた後だったと思いますが、これを米側は撤回した。ですから、その雇用の問題に大きな影響を与えたというのは、その事実だけですれば確かにそうだと思うんですね。  ですから、そうなれば雇用問題というのがもう優先であって、いわゆる雇用問題というのを前面に押し立てるというふうなことで説明があればいいんでしょうけれども、ただ円ドルレートの問題だけというふうになりますと、ちょっとその辺との問題がひっかかってくるわけです。というのは、円高ドル安ということになれば経済情勢の変化であることは間違いないんですが、経済情勢の変化というふうに一言で言うとなると、日米関係は今大変な問題が山積している。貿易摩擦もありましょうし、その他日本とアメリカの間の経済的ないろんな問題が出てきている。こういう問題をひっくるめてアメリカの分担すべきもの、アメリカが支出すべきものを日本が分担するということが経済的にひっくるめた大きな意味での援助になるというふうに私は最初は受け取ったんです。  それと、もう一つはペルシャ湾の問題がありましたですね。だからこれもどうもひっかかってくるんじゃなかろうか、こういうふうに思いまして、その辺の質疑を当委員会でやってきたわけなんですが、雇用問題ということで限定してかかってよろしゅうございますか。総理、どうお考えでしょうか。
  289. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 雇用問題というものは、私自身が非常に印象深く、今先生おっしゃいました、まあ解雇の勧告までいっておりましたのか内報ぐらいのときでございましたでしょうか、それからその後起きましたのがあの沖縄の間接雇用みたいなことでございましたけれども、そういうようなものがあの円ドル調整をやった後新たに私自身の考えの中に強烈な印象を与えたという意味で申し上げたわけでございます。で、あるいは先生お考えの、よく最近流行語のように言われます総体的なバードンシェアリングの一つであるかとかいうことになりますと、それは一つ一つやっぱり見方によって違う場合もあり得るのかなというふうに思っております。  それからペルシャ湾の問題につきましては、あれは昨年の十月七日でございました。私も自由民主党の幹事長をしておりましてこの会合に出かけましたが、私自身頭の整理をいたしましたのは、これとこれの問題がリンクしておるというような印象は私自身とらざるところでございまして、よく文章を読んだら、「なお、」というなお書きの中に整理されておりましたので、当時もう中曽根前総理が御退陣になる直前、一月前ぐらいでございましたので、なるほどよく気配りをしてなお書きでお書きになったんだなと思って、心の中の了承を私自身がいたしたわけでございます。
  290. 松前達郎

    ○松前達郎君 ペルシャ湾の問題についてもこの委員会でいろいろと質問させていただいたんですが、外務大臣は直接の関係はないと、直接という言葉を使われたんですね。しかし、もっと大きな目で見ると、やはりさっき私が申し上げたような格好で、一つアメリカの経済情勢が悪ければそれに対する全体で見た援助の一端であるというふうに解釈できる。これは解釈の仕万でありますから、その辺はいろいろと異論がある場合もあると思いますけれども、全然関係ないとはどうも言えないというふうな感じを持っておるわけであります。  そして、本協定の今後の問題ですね、本委員会でもこれに関連して質疑が行われたわけです。本協定の期間中に例えば円ドルレートの甚しい変動がある、逆の変動があった場合果たしてどうするのであろうか。円安ドル高というのが極端に進んだ場合にどう対応するのか、その辺も議論したわけでありますが、これについてどうですか。例えば枠の限度があるわけですから、その範囲内で決めればいいと言えばそれっきりになりますが、例えば協定そのものについての二分の一というところまで戻すとか、そういうふうなことを検討するお考えはございますか。
  291. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) あるいは不勉強と御批判を受けるかもしれませんが、どうも私、たしか在外勤務の方々の為替相場の変動における増減の政令でございますか、何か昔――昔というか、大蔵大臣中にやらしていただいたことがございますが、今度の場合私の頭の中には、逆変動と申しますか、そういうことは私自身の検討の中には率直に言って、不勉強だと言われればそれまででございますが、ございませんでした。
  292. 松前達郎

    ○松前達郎君 逆変動がないと。これは流れとしてどうなるか、予測というのはほとんどできない状態だと思うんですね。これができていればお金もうけも至って簡単にできるわけです。  逆変動がないとおっしゃったのは、現在の状況で円ドル関係というのは、その幅はあるかもしれませんが安定するというふうに判断をされているから、今私が申し上げたようなことはないだろうというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  293. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どうもまだ癖が残っておりまして、通貨当局者が若干でも相場の先行きを予測するような発言をいたしますとそれこそ市場に影響を与えるので、いつも言語明瞭、意味不明なことをこの意味においては申し上げておるわけでございますが、今のG7で政策協調等が行われ、市場はそれを正当に評価しておるという前提に立っておりますというようなのが、窮屈でございますが私のあるいはお答えのこの問題については限界かもしらないと思います。
  294. 松前達郎

    ○松前達郎君 その点、そこから先は結構であります。  また、協定期間ですね、この今の改定している協定ですが、この協定期間が過ぎた場合、五年ということですね。その後において一体どうなるんだろうか。今おっしゃったようなことで余り変動がないと、仮にそういうふうにしますと、協定期間が過ぎてもまた協定を結ばなきゃならぬ、こういうことになるわけですね。協定期間が過ぎたときには、また白紙状態でその時点で考えるんだというふうにいろいろと議論の中でも答弁が出てきているわけなんですが、現在はその時点で考えるから考えていない、その後の問題は。こういう議論が行われてきたわけなんです。  これについてどうでしょうか、見通しがどうということと別に、その時点で考える。その時点でやはり同じような状況であったら、また再度この協定を延長するかあるいは結び直すか、そういうふうなことを考えるということになると私思うんですが、その点はどういうふうにお考えでしょうか。
  295. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり協定そのものに期限がついております限りにおいては、現時点で予断するというのはできないことじゃないかなというふうに思っております。
  296. 松前達郎

    ○松前達郎君 予断といいますか、協定の期限の中においていろいろな客観情勢が変わってきたりなんかして、どうしてもそれを見直さなきゃいけないとかそういう状態が起きた場合は、それは確かに今総理おっしゃったようなことであると思いますね。  しかし、協定が切れた後というのは白紙になってしまう。一応形式的には白紙になりますですね。その後で、先ほどのように今のような経済状態が続いた場合には、やはりまたこれを再び同じようなことをやらなきゃいけない、こういうことになるんじゃないか、こう思うんですがいかがでしょう。
  297. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 結局は、仮にそうであったならばあるいは期限をもう少し延ばした形の協定で話し合いをしておったかもしれませんし、今からその先のことを予断するというのは、特別協定を結んだ相手に対してもやはり予断することは差し控えるべきものではなかろうかというふうに思います。
  298. 松前達郎

    ○松前達郎君 ちょっとはっきりしないんですが、まさか安保条約をそのときからもうやめるというわけでもないと思うんですね。  そこで、思いやり予算、五十三年からですか続いてきています思いやり予算というのが年々増加しているわけなんですけれども、防衛力の、防衛予算といいますか、これに対する歯どめの一 %問題というのがありましたですが、思いやり予算の増加に対する歯どめというのを一体お考えでしょうか。もうどこまでもこれはふえていっていいんだとお考えになっていますか。
  299. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私は、毎年毎年の予算編成の中で安保条約の効果的運用についての話し合いの中で対象とかいうようなものが決まっていく問題ではなかろうかというふうに思っております。
  300. 松前達郎

    ○松前達郎君 そこもちょっと余りはっきりしない、ちょっと理解に苦しむ面もありますけれども、時間がございませんからもう一つ、二つお願いしたいんです。  在日米軍施設ですね。これは本会議質問でも質問の中へ入れさしていただいたんですが、在日米軍施設区域の再検討ですね、返還条件いろいろあると思うんです。そういったようなものをさらに重点的に進めるということがある意味じゃこれは見返りになるかもしれません。そういう意味で今後の重要な施策になってくるんじゃないかと思うんですが、返還条件の見直し、あるいは区域の見直しということをぜひこれは行わなきゃいけないんじゃないか、こう思っております。これにつきまして総理としてどうお考えでしょうか。主にこれは沖縄が一番パーセンテージが多いんですね。
  301. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やっぱり私は、安保条約に基づく施設区域の提供というものが安保条約上これは最も大切なことでありますが、他方、今御例示になりましたように、沖縄県における米軍施設区域の整理統合について地元から再々強い要望があるということは十分私も承知しております。したがって、この整理統合というようなものは、可能なものから一つ一つ実現すべく努力を継続していくべきであろうというふうに考えております。
  302. 松前達郎

    ○松前達郎君 その問題でネックになる条件が一つあるんですね。これが返還に際しては、代替の土地とか施設とか、港湾にしたら港湾を与えてくれ、そっちに移るんならいいんだと、こういうふうなことがあって、なかなかそれが見つからない、そういったことがあってなかなか進まないという話も聞いているんですね。ですから問題は、その条件というものを見直すということですね。それをまず基本的な問題として取り上げませんと話はどうも進まない、こういうふうな感じを私持っておるわけです。  この点、総理御自身でそういうことを交渉されるわけじゃないわけですが、総理の積極的なこの問題への対応、指示をひとつ期待いたしておるわけであります。いかがでしょうか。
  303. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 従来、仮にもし何か念頭に置いていらっしゃるとすれば、具体的な問題についてお答えするだけの準備はいたしておりませんが、間々、移ることによって代替地でありますとか代替施設でありますとか、そういうようなものの要請があっておるという事実は私も承知をしております。  その場合におきましても、その地域の住民のお方の理解と協力が可能な限り得られるような努力を払いつつそれらを探していくという努力をしなければならないと考えております。
  304. 黒柳明

    黒柳明君 総理、先ほどの冒頭のお答えを聞いておりますと、奥野発言は、昨日の参議院の本会議の長官の答弁でピリオドを打ったという総理の認識でしょうか。
  305. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのことが、その発言がさらにいろいろな論評等を呼んでおるという事実ももとより承知いたしておるところでございます。  ただ、私が同席しておる場所から今日まで経過しておりますが、今、本院の議院運営委員会の万でどういう議論がなされておるかは今のところ承知をしていないところでございますけれども、不適切な部分があればそれを適切に対応するということが何であるか私もわかりませんけれども、そうしたものがあって、それの対応というものが考えられるとしたら、奥野発言というのは昨日の発言それなりにクリアできる、クリアという言葉誤解を招きますが、説明のできる話になるのではないかというふうに思います。
  306. 黒柳明

    黒柳明君 その発言があったのが十時から十二時ですね。冒頭にも総理がその発言をされて、我が党の高木が質問したのは午前中です。中国時差一時間あります、韓国は同時間ですね。しかも、言うまでもなく、先ほど外務大臣質疑したんですが、それが午後ないし夜に向こうから大反発が出てきましたね。そうすると、総理がおっしゃった認識と中国韓国の認識は違うんじゃないんでしょうか。  今総理は、もし奥野長官の五月九日の衆議院の決算委員会での侵略はなかったという発言、それに対して、不備があったら今後対応する、その対応の仕方のいかんによるとおっしゃったけど、もう対応の仕方のいかんという問題じゃないんじゃないでしょうか。  失礼な言葉だと思いますけれども、前科三犯、四月二十二日、五月九日、それから五月十一日、もう同趣旨の発言を三回繰り返しているからこそ、もう近隣諸国……。先ほど外務大臣がおっしゃった、連休中に外務大臣がじかにお会いして、それこそ説得という言葉が適切かどうかわかりません。向こうは名指しを避けた、そして非常に控え目だったと、これは外務大臣の努力かもわかりません。にもかかわらずまた奥野発言が昨日あった。九日もあった、だから昨日はああいう反発が出たんじゃないでしょうか。対応の仕方いかんなんというのはなまぬるいんじゃないですか、総理。事実は、もう対応の仕方じゃなくて、既成の発言に対して問題をどう処理するかということじゃないんでしょうか。
  307. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) その御発言は私も、私として受けとめなければならない御発言であると思いますが、この措置の中、いろいろなことをお考えであろうと思います。  任命権者は、これは国会で指名された内閣総理大臣閣僚を任命するわけでございますから、私自身、国務大臣とし、国土庁長官として適任であるという考え方で任命をしておりますので、その問題を含め、そこまでお考えのことがあるとすれば、私自身の責任で対応すべき問題であるというふうに考えております。
  308. 黒柳明

    黒柳明君 そうしますと、同じようなことですが、昨日の対応の仕方を考え、見守って、そして総理として、任命権者として処置する、しないも含めて推移を見る、こういうことであって、昨日あれだけの批判を受けたその原点である、原因である、今言いましたように三回の発言については総理はもうネグる、それは対応の仕方いかんによってゼロになる可能性もあるんだ、こういう考えですか。
  309. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私は、実はやっぱり同席いたしました昨日の参議院本会議というものからの問題を整理しておるわけでございますが、その前の発言についても、それはもとより速記録等を読ましていただいておることも事実でございますが、奥野大臣自身が、不適切なものがあれば適切な対応をしますですか、そういうことが本会議場でなされておる限りにおいてはそれを一義的に考えるべきものであろうというふうに思います。
  310. 黒柳明

    黒柳明君 その適切な対応というのははっきりしていません、総理、何ですか。これはまあ私、済みません、総理に何ですかなんて、本当に非礼な言葉で申しわけありませんが、もうこれは相当多くの国民が、こんなことはテレビ、マスコミで連日、古くは二十二日、新しくは九日からもういやというほど知らされていますから、それは何ですか、適切な対応というのは。どうすればいいんですか。これは私が言わなくたって常識的にわかるわけです、何でしょう。
  311. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まさに不適切な……
  312. 黒柳明

    黒柳明君 発言ですよ。
  313. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 発言があったらば適切な対応をしますとかいう言葉であったと思います。
  314. 黒柳明

    黒柳明君 いやいやそうじゃなくて、適切な対応とはどういうことをすることが適切な対応になるかということです。
  315. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) それは本人自身の考え方、また最終的には任命権者たる私の考え方もあろうかと思いますが、人事権という重大な問題をも含んでのお話であるとすれば、なお私なりにこれは慎重に、正確に対応すべきものだと思っております。
  316. 黒柳明

    黒柳明君 総理、飛躍されているの、私はその前段を言っているんです。要するに、不適切な発言があったわけですから、二十二日が鄧小平発言に振り回されるなと、靖国神社参拝後の閣議の後の記者会見。それから九日、衆議院のあの決算委員会では、正確にはあれですけれども、侵略なんかなかったんだと、あのとき拡大政策を日本はとっていなかったんだと、これが一番の起因ですね。この発言撤回することじゃないですか。この発言に対して陳謝することじゃないですか。さらに言うならば、きょう午前中、記者さんの要求に対して、十一日の盧溝橋の偶発問題は撤回してもいい、こうおっしゃったというニュースが流れておりました。これはもう当然そうでしょうね、第三番目の不適切な発言ですから。  だけれども、一番目、二番のこれについて、これは人間ですからあるいはそういう哲学、信条を持っていた、これは間違いありません。ですけれども、閣僚ですから、くしくもきのうの呉学謙副総理がおっしゃったように、閣僚たる者がと、こうなるわけなんです。それを撤回し、陳謝した、それでもなおかつ中国韓国がどう出るか、これはわかりません。向こうの意図ですから知るべくもありません。そんなことを言ったって三回も言った発言に対しては容赦できないと言うのか、これはわかりません。  ですけれども、きのう本会議で言った、総理が見守っていきたいという対応、どういう対応があるか、今罷免とかなんとか――私国対じゃありませんから、おっかなくないんです、非常にやさしい方の立場ですからね。そうなりますと、その発言撤回し、陳謝することがまず第一の対応ではないでしょうか。これは総理に言うまでもない常識的な問題じゃないですか。それを総理、それじゃさせますか。
  317. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのことを含めまして、きょう議院運営委員会に内閣を代表し内閣官房長官が出席をいたしております。したがって、いわゆる国対、議運であるなしは別といたしまして、そこで内閣官房長官が、私もこの前大蔵委員会とずっと出張っておりますので、どのような問答を行ったかということについては定かにいたしておりません。  ただ、私自身、昨日のを聞いておりまして、私がまず最初に政府の考え方を述べまして、そして当該大臣という言葉を使いました。それは、文部省の法律でございますると当該大臣は文部大臣になります。法律からいうと文部大臣と言わなきゃいかぬことでございましたが、あえて当該大臣と申しましたのは、奥野大臣答弁があるというふうに私が承知しておったからであります。その答弁を私は聞いておりまして、政府の考え方に私もきちんと立っておりますという表現はございました、いわば中間部分は別といたしまして。そして適切に対応するという言葉がありました限りにおいては、まずそれをどのような形で対応されるかというのは、今の新聞記者会見の話は実は初めて聞きましたけれども、私としては見守るべき問題だというふうに思っております。
  318. 黒柳明

    黒柳明君 先ほどの答弁の繰り返しです。総理大臣が答えて、それに対して私も竹下総理のお答えと同じですと、こういう発言をされたんですね。ですから、さっきとまた同じことです。それを踏まえて反発が出てきたということですよ。ですから、もし総理のおっしゃることを百歩譲ったとしても、けさの会見で、長官が昨日の偶発問題は撤回しますと、これはこれでいいと思います。一つの見識だと思います。対応の一つだと思います。それじゃ九日の、侵略はなかったんだ、これの方がむしろその罪は重いわけでしょう。  さらに言うならば、中国だって名指しにしなかったんです、外務大臣がいらっしゃったとき。それを昨日は名指しですからね、御存じのように。それほど向こうも慎重であったんです。ところが偶発があったから名指しになった。その偶発撤回する。一つの見識。それじゃ九日の、侵略はなかったんだ、日中戦争は我が国は拡大政策はなかったんだ、これは撤回しなきゃ向こうだってイエスとは、まあどういう反応が出るかわかりませんけれども、それを前提にしてですけれども、対応するというようなことにならないじゃないですかという私は質問をしているんです。だから私は、任命権者としてそういう対応を見守るんじゃなくて、そうさせるんですかと。罷免とかなんとかというのはその後の問題ですね。  それからもう一つ、衆議院の議運委員会では、これはもうファックスで流れておりますけれども、官房長官は、「竹下内閣の一員として(今後ともやってもらいたい。)奥野氏に努力することをお願いしたい。閣内不統一ではない。」、こういう発言でありますね。これは、議運理事会では、要するに罷免罷免という、不信任決議を出すぞと、こういうあれですからね、野党の。ですけれども、私はその前のことを言っているんです、総理。よろしゅうございますか。  そういう対応をさせなければ、それとも任命権者としてさらに個人の対応を待ちますか。きのうの対応するということがあったんだから、だからきょう、あした、あさって、どういう対応を個人がするか待つと。辞任するのか、あるいはさらに九日、二十二日の発言撤回するのか、あるいはおれに対して相談に来て、罷免という要求を……。そういうような対応を待つと、こういうことですか。待ってきたんですよ、今まで。対応を待ってきたにもかかわらずこういう結果になっているんですよ。外務大臣はどれだけ苦慮しているか。褒めるわけじゃありません。本当のことですよ。総理は、私は知らないものでなんて、総理が一番の任命権者じゃないですか。対応を積極的に総理はやらせるように奥野長官を指導しますか、任命権者として。それとも個人の対応の仕方を待つという消極的姿勢ですか。どうでしょう。
  319. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私はもとより信頼してこそ任命しておるわけでございます。そして、あるいは私の幾ばくか思い違いがあるかもしれませんが、昨日の本会議で政府の考え方と一緒でありますということは、やっぱり前言の、正確に今持ってきておりませんが、いわば訂正でございましょうか、につながっておるのではないかというふうに思います。
  320. 黒柳明

    黒柳明君 わかりました。もうこれで三回目ですからね、もういいです。  そうなりますと、昨日の、政府の考えに同じだということは、九日の衆議院決算委員会での発言もそれで否定した、奥野長官がみずから言った発言、二十二日の靖国神社参拝後、閣議後の記者会見の発言もそれで否定できたと、総理はこういう認識ですね。
  321. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) どの部分が否定され、どの部分が否定されないというようなことを私は精査して申し上げるつもりはございませんが、私どもの考えと一緒であるということは、それと違った印象を与えられたことについては既に釈明されたというふうに理解をいたします。
  322. 黒柳明

    黒柳明君 同じことの繰り返しになりますね。それが一緒だと総理は考えているけれども、中国韓国は考えていないんじゃないですか。それが明確に十日の日には官房長官は衆議院の内閣委員会で日本侵略をした、侵略行為はあった。同じく十日、ここの外務委員会宇野外務大臣軍国主義による侵略はあった。総理大臣もきのうは同じようなことを言っている、世界的に侵略という事実を政府は認識しなきゃならない。  ところが、奥野長官発言は全くそういう具体的なことを言っていませんね。ライシャワーさんの「偶発」に事寄せて私も偶発だと言う。あるいは中国侵略と言っていることは否定しない。官房長官侵略と言っている事実については知っている。それじゃ自分はどうなのか。自分哲学自分考え方はどうなのか。何も言ってない。みんな相手のことに事寄せて否定はしない、否定はしない、認める。それじゃおまえは、ただ一回言ったのは――もうこれで五回目です。総理答弁について私は同じですよ、賛成しますよと。これだったって侵略という言葉は嫌いと言いましたからね。使わなかったんでしょうけれども、大きな誤解を与えた。日本国内だってこれだけ誤解を与えているんですから。海の向こうで正確に伝わるわけでないですよ。だからこそ対応の仕方を見守るのじゃなくて、任命権者としてみずからその対応の仕方を示唆しなさい、勧告しなさい、命令しなさい、それをやるんですか。そうすると総理はまた繰り返して、いや、昨日の本会議の話で話でと、これじゃもう平行線。そんな消極姿勢ですか。そんな、まあ失礼ですけれども、奥野さんに対して内閣として、任命権者総理大臣として何か弱みがあるんですか。  ここまで発言して失礼ですけれども、そんなものはないと思いますけれども、配慮しなければならないことがあるんでしょうか、そんなに。それよりも今の発言についての近隣諸国の怒りは現実問題じゃないですか。どうも対処しないで、まだそれを眺めていくという姿勢ですか。これじゃ何のための国際的に貢献する日本なんですか。総理大臣の金科玉条のサミットへ行く、訪中するじゃないですか。全部崩れるじゃないですか。消極姿勢でやりなさいということを言っているんじゃないんです。起こる前に手を打ちなさいと言っているんじゃない。起こった問題について手を打てる手をなぜ打たないんですか。当人反省しています、その反省をもうちょっと引き出してやるために任命権者としてなぜもう一つ積極的にならないのですか。任命とか罷免とか不信任とか、その手前のことを言っているんですよ、私は。やらないんですか。あくまでもきのうの本会議反省でいいんですか。最後に対応すると言った奥野長官のそれを見守るんですか。それで事件が大きくなって、どうなったってしようがないということですか。
  323. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 別に消極的に見守るということを考えたわけではございません。あれだけのことを、対応するということを申したわけでございますから、本人責任において対応されることが、恐らくこうしておる間にあるいは官房長官との間で話が進んでおるかもわかりませんけれども、何かじっと見守っておるというような感じを持っておるわけじゃ全くございません。事の重要性も十分認識しておりますが、私なりにやはり人事権の、基本的には任命権者でございますから、そういうところから非常に正確を期さなきゃならぬということがあるいは消極的と言われておるのではないかというふうに思います。
  324. 黒柳明

    黒柳明君 失礼な言葉を使ったかもわかりませんけれども、私なりにやっぱり外務大臣のきょうと一昨日の答弁を聞いて、非常に真剣なものですから、何か総理答弁は真剣さがない。だからこういう言葉になった。本当はもっと私はいつも語気やわらかく発言するんですけれども、失礼があったらお許し願いたいんですけれども。私は、中国韓国のあの怒りよりも対応を見ていく方が優先する、こういうことじゃうまくないなと感じます。まあこれはもういたし方ない。  そうすると、結論としては、当然今現在、長官を罷免する考えなんか全くない、こういうことですね。
  325. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) やはり人事の大権でございますから、感想を述べるのは差し控えるべきであると思います。
  326. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、罷免する考えはないって、感想じゃないじゃないですか、これは。感想ですか、これも。
  327. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私も非常に物を冷静に判断する癖がございますが、やはり感想、コメントのうちに入ると思います。
  328. 黒柳明

    黒柳明君 済みません。感想をお聞きして申しわけありません。  あと一分ですから、どうですか、柴田泰弘の問題。これはこの場ででも公安当局がこれはもう北朝鮮の政府の何らかの関与がなければ出国できないと、また目的は、はっきりした目的があると思うと非常に断定的におっしゃっていますし、外務大臣も、それはそのとおりだと、こうおっしゃっているし、何か日本が諸外国にテロをまき散らしているような、日本人があっちこっちで悪いことをやる。にもかかわらず、ああいう問題が起こり、しかも来週には、総理が議長である安全保障会議のテロ対策についての話し合いもやるような報道がありました。今回の柴田事件について、総理はどのような受けとめ方、感想をお持ちでしょうか。
  329. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは人事の大権に属することとは別の意味において、政策における感想でございます。申し上げたいと思っております。  今御指摘ありましたように、日本国民にとって大変遺憾なことであり、もとより世界全体のために遺憾なことであると思っております。  きょう私は、午前中内奏がございましたので、その前の時間を割きまして一応内閣調査室の方から意見を、今までの概略を承りました。そして、安全保障の会議に対して、さらにいま少し可能な限りの情報収集の上詳しく説明し、対応策を御説明しますという趣旨でありましたが、私も、大変遺憾なことでございますので、これが全く予測されるいろんな形が現実の問題とならないように、さらに鋭意対応策を詰めていくべきであるというふうに考えております。
  330. 黒柳明

    黒柳明君 どうも済みません。ありがとうございました。
  331. 立木洋

    ○立木洋君 私も、非常に重要な問題なので、最初に奥野長官発言に関連して若干お尋ねしたいと思うんです。  総理御存じのように、戦後の日本の歴史の出発点、政治の原点というのは、再び戦争を行ってはならないと、侵略戦争を繰り返してはならないということが政治の原点としてあったと思うんです。この外務委員会において、宇野外務大臣は、この戦争について軍国主義侵略であったと思うと明確に述べられました。また、閣僚としてあるべき姿としてはそういう認識をしておくことが大切だろうということも述べられております。  総理は、宇野外務大臣が述べられたそういう認識と、戦後の日本の政治の出発点としての再び侵略戦争を繰り返してはならないという見地から、あの侵略戦争をどのようにお考えになっておられますか、総理御自身の御見解としてお伺いしたいと思うんですけれども。
  332. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私なりに整理整とんをしてみますと、最終的には一昨年九月十六日の中曽根前総理発言というものが一番当を得ておる表現ではなかろうかというふうに整理いたしております。太平洋戦争云々からございまして「侵略的事実は否定することはできないと私は考えておる」、こう答弁をされております。したがって、基本的に全く一緒でございます。
  333. 立木洋

    ○立木洋君 総理侵略戦争であったというふうにお考えになっておられると。そうすると、日本の政治、そういう戦後の政治の出発点であった侵略戦争を再び繰り返してはならないというそういう見地に立つならば、過去の歴史について、少なくとも今の閣僚となるべき方はそういう認識に立った、やっぱり今日の政治理念を持った政治を進めていくというのが当然の姿勢ではないかと思われますが、そういう点から見ると、奥野長官発言は大変異にした見解を述べられておるということは万人が認めるところではないかと思うんですが、そういう点についてはどのように御認識でしょうか。
  334. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは私が昨日もこの基本的な認識にいささかの変化もないという立場を述べたところでございます。したがって、奥野大臣が昨日の本会議総理考え方と一諸であるという答弁をいたしておりますので、それはそれとして、私はこの奥野国務大臣考え方であるというふうに理解をしております。
  335. 立木洋

    ○立木洋君 じゃ、この奥野長官発言は重大な問題ではない、政府の見解と一致しているから重大な問題ではないというふうにお考えになるのですか。  先ほど大臣は、総理は人事の任命権者であるという立場も加味して慎重に考慮したいという趣旨の発言をされておられますけれども、つまり、重大な問題であるという認識はお持ちなんでしょう。だからこそ、この問題については慎重な対応を考えなければならないとおっしゃったんではないんでしょうか。
  336. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いずれにせよ、発言があれだけの大きな報道となり、内外ともに出ております限りにおいては、これは重大な問題であるという問題意識はひとしくしておるところでございます。  したがって、私があえて任命権者と言いましたのは、罷免とか解任とか、そういう具体的なことについて申し上げたわけではなく、それだけの立場にあるだけに慎重に対応すべきであるというふうに申し上げたわけでございます。
  337. 立木洋

    ○立木洋君 これ以上私は繰り返しませんが、今までの同僚議員とのやりとりを聞いておりますからこれ以上やりませんけれども、これは極めてやはり重大な問題であり、日本の政治の根幹にかかわる問題でもある、そういう点を十分に総理として御認識をされて、正しい対応をされないと重大なことになりかねないということも含めて、改めてこの点に対する正確な対応を強く要望しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  338. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御要望の趣旨、受けとめさせていただきます。
  339. 立木洋

    ○立木洋君 では、特別協定の改定の問題について関連して若干お尋ねしますが、とれは去年の夏でしたか、あのペルシャ湾の一帯が重大化しまして、こういう状況の中でアメリカの駐日大使などからも何らかの日本の可能な協力ができないものだろうかというふうなお話がありました。その問題を踏まえて、九月、当時の中曽根総理がアメリカに訪問されて首脳会談が行われて、可能な限り協力については検討してみましょうということを約束されて帰ってこられた。先ほど総理のおっしゃったように、十月七日の政府の見解発表になったわけですね。  それで、今回特別協定の改定という形で今日審議をしておるわけですが、総理が一月の十七日、ハワイでお述べになった発言の中で、ペルシャ湾問題と絡むかどうかは、根源にさかのぼれば費用負担の問題としてとらえることはあり得ると思うというふうに述べておいでになりますね。先ほどはリンクして考えるという考え方はとらないとおっしゃったけれども、ここで記者会見でお述べになっているのは、さかのぼるならば費用負担の問題としてとらえることはあり得ると、だから、一切関連がなかったということじゃなくて、もともと端を発したのはペルシャ湾の問題にもあったし、ある意味では関連があり得る。だからこそ政府の見解でもなお書きとして書かれたのではないかというふうに思いますが、そこらあたりを明確にしておいていただきたいと思うんです。
  340. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) これは、私は十月七日に幹事長としてこの会合に参加をさせていただきました。したがって、これを私も見ながら、「なお、」ということでありますので、いわば先ほど申しました完全にリンクしておるものではないという判断をここでいたしたわけでございます。  それから、私はよく言語明瞭、意味不明と言われますのは、非常に一般論にこだわる習癖がございます。したがって、ハワイでございましたか、記者会見の際、理論的にはちょうどあなたがおっしゃったように、そういうバードンシェアリングという見万でこれを見る人もあり得るだろうと、こういう発言をいたしたことは事実でございます。
  341. 立木洋

    ○立木洋君 じゃもう一点、今後の問題になりますけれども、アメリカから米軍の在日駐留経費の問題についてさらに負担をお願いしたいというふうな要請が来た場合に、それに対して検討するだとか、何らかの対応をするだとかというふうなお考えはいかがでしょう。
  342. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今、この特別協定そのものを話し合いで協定したわけでございますので、これと別なものを考えたことはございません。一般論としての安保条約を有効にこれが機能するための予算問題等は、これは毎年毎年の予算編成の際に考えるべきものではなかろうかというふうに割り切っております。
  343. 立木洋

    ○立木洋君 なぜそういうことをお尋ねするかといいますと、五月の四日、ロンドンで総理が御発言なさっておりますね、平和努力の問題に関連して。その中で、いわゆる「資金協力を含む新たな「平和のための協力」の構想」ということをお述べになっておられるわけです。この「資金協力を含む」というのがどういう意味なのかという問題が一つありますのと、同時に去る十日、二日前ですが、アメリカの国会におきましてアメリカの会計検査院の次長が、アメリカ政府当局も在日米軍援助費の追加を要請しており五億ドルが見込まれていると指摘をして、「日本政府当局はこれが可能だと示唆しながらも、この支出を合法的にするために地位協定改定の交渉が必要だと考えている」ということを国会発言されているわけですね。  これは宇野大臣にお尋ねしましたら、私はそんなことは全く関知しないというふうにお答えになったけれども、総理がロンドンでお述べになった、資金協力の問題も含めて今後努力をしていきたいとお述べになっていることと、このことと考え合わせて、いずれの考えをお持ちなのかどうなのかという意味でお尋ねしたんですが、そこらあたりを明快にしておいていただきたい。
  344. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私がロンドンでスピーチを行いました際の、先ほど来の言葉じゃございませんが、「世界に貢献する日本」という中の三つを申し上げまして、一つが今御指摘なさいました平和のための協力強化、それから文化交流、ODAの拡充強化、この三つでございます。  その第一の「平和のための協力」の際に、私が「外交努力への積極的参加、要員の派遣、資金協力等を含む新たな「平和のための協力」の構想」ということを申し上げたわけでございます。で、安保理等の、あるいは国連事務総長さん、それから次長さん等が活動される国連の経費を負担した実績も過去にはございます。さらに、私は幾ばくか将来のいわゆるソ連撤兵後におけるアフガニスタン問題というようなことも念頭に全くなかったわけじゃもちろんございませんが、一般論として、そうした場合のいわば協力機構とか監視機構とかいうところに、この費用負担の問題も含め、文民の派遣等もあり得るという考え方で申し述べた次第でございます。
  345. 立木洋

    ○立木洋君 その同じ ロンドンでの御発言の中で、「憲法上も軍事面の協力を行い得ないことは御承知のとおりであります。」という発言がございますが、この軍事面の協力を行い得ないという「軍事面の協力」とは、どの範囲のことをおっしゃっているんでしょうか。軍事的な経済協力という意味も含めているのか、直接の人事の派遣だけのことをお述べになっているのか、あるいは武器や弾薬の援助もなされない、紛争地に対してはそういう態度をとらない、そういう包括的な意味で軍事面の協力はなされないと、こんなことができないという意味なのか。その内容を明らかにして……。
  346. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そのときに申しました話の私の底意にありましたのは、いわゆるミリタリーという考え方が率直にございました。したがって、我々のできるところはおのずから限られたところであると。で、経済協力の問題は別建てにしておりましたので、したがって先般国連へ特別拠出いたしました問題とか、あるいは考え得る文民のそういう機構への派遣とかいうことを念頭に置いて申したわけでございます。
  347. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がございませんので最後に、日本のこういう在日米軍駐留費の負担をこれまで何回かふやしてこられたという経緯があるわけですが、これが究極のところは、結局日米安保条約の効果的な運用に資するためということも総理はお述べになっておられるわけですが、今世界の情勢、動きというのは、御承知のように軍縮ということが大きな国際的なテーマになっておるということは明白だと思います。そのために交渉が行われておりますし、SSDIIIも直前に迎えているわけです。  こういう中で、昨年ニュージーランドでは御承知のように反核法案が可決をされました。また、フィリピンでも領土内での核兵器を全面的に禁止するという非核法案が上院の外交国防委員会で承認されるなど、新たな動きも起こっております。これはアジアだけではなくて、ヨーロッパではスペインもアメリカとの協定の内容としてF16を七十二機撤去するということが合意されました。また、あの選挙になりましたデンマーク、御承知のようにここでも外国軍艦のデンマークへの寄港については、これまでは相手の立場を尊重するということだけで対応してきましたけれども、これについては核兵器の有無を明確にするという内容をも含めた反核の決議などが行われて選挙戦になったという経緯もあるわけです。  こうしたように、核兵器を自国の領土内には置かせない、核戦争の起こる危険を何としても取り除いていく、そしてやはり軍縮だという努力がなされているというふうに見るわけですが、こういう努力については竹下首相としてはどのようなお考え、また日本としてはそれに対してどういうふうな対応をすべきだというふうにお考えになっているのか、今日のこの特別協定の改定の問題とあわせてお尋ねしておきたいと思います。
  348. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 特別協定の改定の問題は、やはり経済情勢の変化、雇用問題というふうにお答えいたしておるところでございます。  東西問題全体に対する認識は、私は、INFの全廃条約が締結され、そしてさらに可能性の有無は別といたしまして、戦略核等々の話し合いがなされておるというそのことは評価すべきことである、軍縮への大きな第一歩でありたいものだと思っております。さらに、それが化学兵器あるいは通常兵器、これの削減ということにまで進み、地域問題の解決にもこれが当然進んでいかなきゃならぬということを悲願としておりますし、西側の一員としてその立場を堅持しながら、特に非核三原則を国是としておる我が国でございますから、その意味において対応すべきことであるというふうに考えておるところでございます。  ただ、私も先般はヨーロッパを回ってまいりましたが、いわゆる現実的な見方というような点につきまして、やはり我々も種々議論もしていかなければならないなという認識も一方持っておるところでございます。
  349. 立木洋

    ○立木洋君 そうすると、今私が四つか五つの国を例に挙げて申し上げたわけですが、こういうところにおけるいわゆる非核の決議、非核の法案の上程、こういう動きについては理解できるし、当然同調できるものである、肯定できる動きであるというふうに、総理のお考えであるというふうに受けとめてよろしいですね。
  350. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 重ねて申しますように、いわゆる非核三原則というものを打ち立てた我が国であるという認識が何よりも土台に存在しておるというふうに思います。
  351. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 立木洋君、時間が来ております。
  352. 立木洋

    ○立木洋君 あと一分ございますが。  大臣、今非核三原則が日本にあるからだというふうにおっしゃいましたですね、これが土台にあるんだと。ですから、そういう立場を堅持されるならば、このような核兵器を自国から取り除いていくという努力に対してはやはり肯定的な立場をとるべきであるということであるならば、日本においても当然そういう非核を要求する日本の人民の声や要望についても当然肯定的な立場をおとりになるというふうに解釈してよろしいですね。
  353. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 非核三原則というものが厳然として存在しておるということが一番大事なことではなかろうかというふうに思っております。  そして、いつも申し上げますように、究極的な核の全廃、現実問題として核の持つ抑止力というものを私どもは肯定しなきゃなりませんが、最終的な究極的な全廃ということはやはり私どもが掲げておらなければならないことだと思っております。
  354. 立木洋

    ○立木洋君 お答えになっていないように受けとめますが、もうこれ以上時間がありませんので、改めての機会にさせていただきます。
  355. 小西博行

    ○小西博行君 時間が大変少のうございまして、したがいまして二、三問について総理に御質問を申し上げたいというふうに思います。  我が党の方は、日米安保体制ということに対して賛成の立場でありますし、そういう意味ではこの法案についても賛成でございます。しかし、一昨日あるいはきょうの審議を通じまして、やはりいろんな問題があるということだけは私自身も認識を新たにしているところであります。  特に、さっきから同僚議員の方からも既に御質問もございましたが、昨年の六月に改定しておきながら、さらにことしまた改定というような、大変短い時間の中で改定の連続というようなことが現実に行われているわけであります。その理由は主に経済的な観点というような御答弁をずっといただいているわけなんですが、しかし考えてみますと、ペルシャ湾の問題については大変米国からお世話にもなっているし、あるいは核を移送する場合でも、自発的とはいいながら五十九年には大変これまたお世話になっている、そういうようないろんな事情が実はあるのではないか。  したがいまして、何となくこういうような思いやり予算ということで毎年積み上げていくようなやり方じゃなくて、この際こういう種類のものに対しては明確にすべきではないか、そのような感じがしてならないわけでありますが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  356. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 私のあるいは受け取り万の間違いがあるかもしれませんけれども、今度の分、私自身の認識から申しますと、プラザ合意自身の私は責任者でありまして、そして素直に昨年の場合、円高問題というのが私の底意に存在しておりました。その後の体験の中で、いわゆる雇用問題というのがさらに私の考え方の中には追加されてきたわけでございます。かれこれを総合的に勘案いたしまして話し合いができたのがこの特別協定だというふうに思っております。  一方、私の考えは、あるいは間違いかもしれませんが、思いやり予算というものももっと計画的にきちんとすべきではないか、こういう議論のあることも私も承知しております。そもそも思いやり予算というのが昭和五十三年ぐらいでございましたか、始まりましたときに、本当は私も最初どう訳すのだろうかと思って一生懸命で探してみました。防衛庁と相談したわけじゃございませんが、私なりに探しましたのは、昔ウェリントン公が、偉大なる軍人とは、ただ強いということでなく、兵士の靴まで思いやる、それでウェリントン・ブーツというのができたそうでございますけれども、シンキングモーストオブザシューズオブヒズソルジャーズという言葉がございまして、やっとわかったような本当は気がいたしましたが、その後通用してきております。  やはり毎年毎年の予算編成の中で、もちろん今で言えば十八兆四千億の枠というものは厳然としておるわけでございますが、いろいろ必要な最小限度なものが話し合いによって出てくるものであって、基準というようなものを決めるのになじむかどうかということになりますと、私はなじむものですと言うだけの自信はございません。
  357. 小西博行

    ○小西博行君 そういうことだと、このペルシャ湾の問題、これは先ほど大臣にもお伺いしたわけですが、総理としては日本の石油を輸送しているということで大変大切な私は課題ではないかと思うんです。この安全を守っていくために大変いろんな国に迷惑もかけていると思うんですが、これに対する予算的な措置だとか、先ほど申し上げましたような形で何か具体的に、これから先計画的にそれを何かやっていこうというふうにお考えでございますか。
  358. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) あのとき決めましたのが、オマーンが二億ドル、いわゆる湾岸諸国の経済協力でございます。ヨルダンが三億ドルでございましたか、それとデッカと言うんですか、航行安全装置ですね、そういうことが私どもが協力するところの具体的な問題になるとそういうところに到達するというふうな私も理解をいたしたわけでございます。  しかし、やっぱり我が国の海員組合の方が現実あそこで働いていらっしゃる。これらに報いる道というものを、国民の気持ちを代表するものはないかということもいろいろ考えてみまして、運輸当局と内閣官房で協議して、近々、結局は言葉の上でありがとうございますという感謝の気持ちをあらわすしかないかなというので、具体的な日程等を検討しておるということが、いま一つつけ加えさせていただければ国内問題としては存在しております。
  359. 小西博行

    ○小西博行君 とにかく海員組合の方々が命がけというか、そういう形で行っておるものですから、本人はもとより家族の皆さん方ももう大変心配しておりますし、ひょっとしたらもう船をおりようかというような方も相当いらっしゃるというふうに聞いておりますので、ぜひともその安全を守るという立場でお願いをしたいというふうに思います。  それから、もう最後になりますけれども、最近、先ほどもちょっと御意見が出ましたが、テロの問題です。特にこれはソウルのオリンピックということもございまして、何としても日本も協力体制を組んでテロ防止ということでやっぱり全力で協力していかなきゃいけない。もう既にそういう安全会議みたいなものも開催されているというふうに聞いているんですが、私は非常に先ほどの問題も含めてそういう協力体制が大切ではないか、このように思います。国内にも大変危険な分子もまたたくさんおるというようなことも聞くにつけて、やっぱり詳細な調査をしなきゃいけない、そういう感じもいたしまして、その辺の決意を最後にお伺いしたいと思います。
  360. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いわゆる国内ももとよりですが、国際テロ問題というのは、これはサミットの議題でもここ数年、毎年出ております。なかんずく大韓航空機事件というものが一つありまして、特に今年は韓国のソウルにおいてオリンピックが行われる年であるというので、日本側からも外交チャネルを通じて話を詰めてもらって、実務者、警察庁関係者等も訪韓いたしまして具体的な詰めが行われておるというふうに承知しております。  それから今度、テロの輸出国だなんて言われるようなことがあったら大変でございますから、これについてはいろんな調査が行われておるという実態でございますが、可能な限りの報告は私も近く受ける予定にしておりますので、一層鞭撻したいと思っております。
  361. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  362. 田英夫

    ○田英夫君 先日総理にお会いをして、今度第三回の国連軍縮特別総会においでになって演説をされる内容について要望をいたしましたが、核軍縮を求める二十二人委員会という名でお願いをしたわけですが、お読みいただいたと思いますので、準備の段階の中での今のお気持ちを聞かしていただきたいと思います。
  363. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 先般二十二人委員会を代表して、本院におきましては宇都宮先輩、それから田先生、私に要望の向きを手交していただきました。私自身も読ましていただきました。そのときも感想を若干申し述べたこともございますが、それらを調整しながら参考にさしていただいて、私も今月末出発さしていただきたいというふうに思っております。
  364. 田英夫

    ○田英夫君 総理御自身でこの総会に出られるということに大変私も敬意を表したいと思います。  この平和の問題、軍縮、特に核軍縮の問題ということは、先ほども外務大臣にもお願いをしたわけですが、非常に重要な問題ですけれども、日本が唯一の被爆国であるということ、非核三原則、総理も言われたけれども、そういうことがある。  そんな中で、これは突然の日程の御質問ですが、八月六日広島、九日長崎というこの原爆の日、これを休日にしてほしいという広島、長崎の被爆者の願いがここ数年ずっと政府に対して行われていることは御存じだと思います。このこと自身と、そしてそのいずれかの日に現地においでになるという御予定があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  365. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) この間聞いてみましたら、本来、ことしは長崎へ行く順番とでも申しましょうか、そういう先例のようなものがあるそうでございます。ただ、就任した当初年は両方へ行ったという先例もあるようでございます。そのころの外交日程等どうなっておりますか、にわかには判断がつきませんが、私も、この前内閣以来続いたことにつきまして、官房長官として行ったことはございますけれども、ぜひお伺いしなきゃならぬというふうに思っておるところでございます。  休日問題等については私も承ったことはございますが、要するに、その際私自身感想を述べませんでした。と申しますのは、ちょうどその直前に、これは全然別の次元でございますけれども、海の日をつくったらとかいうようなお話が相次いで参っておりましたので、やっぱり専門のところで御検討いただいたらいいと思って感想は述べませんでした。
  366. 田英夫

    ○田英夫君 この八月に中国においでになるわけでありまして、先ほどから出ているいわゆる奥野発言あり、私も連休前にちょうど外務大臣と入れ違いのような形で日中民間人会議中国へ行っておりましたので中国側の空気も承知をしておりますが、そこに奥野発言がさらに激化したといいましょうか、そういう中でありますから、これからの奥野発言の処理をされる状況が大変総理の訪中にも大きな影響があるだろうと思います。  そこで、中国に関連をしてこの機会にひとつ伺っておきたいのは、先日、北京に参りましたときに、日本から中国へ行く留学生の寮ですね、これを北京大学と北京師範大学に日本の民間の負担においてつくるということで合意をいたしまして、なぜか私が署名をしてきたんですが、実際にはこれは日本の若い青年たちが走り回って資金を集めてつくるわけでありまして、政府はもっと日本の留学生についても対応をお考えいただきたいと同時に、一番緊急なことは、中国だけではなくて東南アジアなどを含めて外国から日本に来ている留学生、これからますますふえるわけであります。この受け入れ体制について、ようやくと言っては失礼ですが、閣僚懇談会というような形になってきているようですが、この留学生の受け入れの問題について総理のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  367. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今二万二千ぐらいでございますか、それでもとよりいわゆる我が国の国費を出しております留学生の数は全体からいえばまだ少のうございます。したがって、私費留学生対策というものも必要である。寮などの完備したところがあるというところもございますが、先日閣僚会議を私が指示いたしました。事前に私なりの勉強をしてみましたら、企業で独身寮を提供していただけるところも出てまいりました。ただし、ここでそれを経費算入にするのか、あるいは奨学金として別途受け入れをしていくのかというような問題はもちろん残っておるわけでございますが、まさに官民挙げてこの対応策は考えなきゃならぬことであるというふうに考えておるところでございます。  ただ要するに、やっととおっしゃいましたが、始めて間がないという言葉が適切かどうかわかりませんが、そういうことでもございますので、できるだけスピードアップしてこの問題に対応していこうということでございます。少なくとも概算要求時点ぐらいまでにはある程度まとまったものを構築しなきゃならぬなというふうに思っておるところでございます。  こちらから出かけていきます留学生の問題につきまして、先般その問題に御努力いただいたことを大変感謝いたしておりますが、一応ああして青少年交流センターというのがひとつできたときでございますので、また今度は別の意味において民間のいろいろな御協力を得なきゃならぬことであろう、御苦労に対して感謝をいたしておるところでございます。
  368. 田英夫

    ○田英夫君 中国においでになるに当たりまして、一つは、そういう留学生の交流の問題について、やはり中国側は、向こうから来ている人は新聞配達をやりましたり、住むところ、それからアルバイト、こういうことで生活にまず苦労いたしますから、このことをぜひ政府全体として対応を急いでいただきたいと思います。  また、先般の民間人会議では、やはり日本からの経済協力あるいは投資、そういう意味での経済建設に対する協力が大変鈍いという点、それから分科会が四つありまして、政治、経済、科学技術、教育とありましたが、特に経済と科学技術、教育についてはそういう意味で中国側からの要望が相次いだようであります。政治の方は残念ながらマイナスの話ばかり、つまり光華寮とか奥野発言とかいうことで中国の不満が噴出する、こういう空気の中でありますから、ぜひプラスの面をもっともっと大きくする努力を政府としてぜひやっていただきたい、そのことをぜひ携えて中国を訪問されるようにということをお願いして、終わります。
  369. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ありがとうございました。
  370. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 総理は御退席いただいて結構でございます。     ─────────────
  371. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) この際、委員異動について御報告いたします。  先ほど鳩山威一郎君及び林田悠紀夫君委員辞任され、その補欠として向山一人君及び松浦孝治君が選任されました。     ─────────────
  372. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより本件について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  374. 松前達郎

    ○松前達郎君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、日米地位協定第二十四条についての特別協定の改正議定書に対し、反対の討論を行うものであります。  政府は、我が国外交の基軸は日米安保体制を基盤とした日米関係であるとしておりますが、日米安保条約は、歴代の内閣によって事実上日米同盟条約に変質しており、我が国のアメリカに対する軍事的貢献は、今や諸外国に比べ群を抜いたものになっております。  にもかかわらず、本改正議定書の内容は、我が国が、これまで以上に防衛分担を引き受けることになるものであります。  私は、このような見地から、以下本件に対する主な反対理由を申し述べます。  第一は、特別協定そのものが、安保条約に基づく地位協定の精神を政府みずからがないがしろにするものでありましたが、今回の改定はその趣旨から一層逸脱するものとなっていることであります。  第二は、今回の改定理由が、日米間の経済情勢の一層の変化によるとされながら、何ら切迫した情勢の変化もなく、昨年の協定締結以後わずか九カ月で改定を行うがごときは、余りにも無定見であり、賛成できません。  第三は、昭和五十三年度来続けられている思いやり予算の増加に明確な歯どめもないことであり、政府の裁量による節度のない増額は国民の容認するところではありません。  第四は、特別協定の有効期間中における我が国の負担増額の可能性、有効期間終了後の対応等についてその時点で考えると明確な見解を示さず、今回の改定にかかわる最も重要なポイントが明らかにされていないことであります。  以上、本改定議定書は、やがては地位協定の改定につながる危険な前ぶれとも言うべきもので、我が党はこれを承認することはできません。  以上、討論を終わります。
  375. 宮澤弘

    ○宮澤弘君 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております在日米軍労務費特別協定の改正議定書について賛成の討論を行うものであります。  今日、我が国が平和を謳歌し、世界のGNPの一割を優に超え、一人当たり国民所得で世界の最高水準に達するまでの経済的成功をおさめるに至った背景には、先人のたゆまざる努力はもとよりでありますが、自由貿易体制の恩恵と並んで、日米安保体制を基盤とする米国との友好関係の着実な進展があったことは明らかであります。  さらに、日米合わせて世界の経済活動の三分の一を占める両国の関係は、単に二国間にとどまらず、世界の平和と安定にとって決定的に重要なものとなってきております。  このような意味から、日米関係の基盤である安保体制の一層の円滑かつ効果的な運用を確保し、その信頼性を高めていくことは、我が国にとって極めて重要な課題であります。  安保体制を有効に機能させていく保証は、在日米軍の存在であります。したがって、我が国は、安保条約上の義務を誠実に履行し、在日米軍の効果的な活動を確保するために、駐留支援を惜しむべきではありません。  ところが、急激な円高など、日米両国を取り巻く最近の経済情勢は一層変化し、これによって在日米軍経費が著しく圧迫され、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用に重大な支障を生じかねない事態に至っております。  このような状況にかんがみ、このたび在日米軍労務費特別協定の改正を行うことは、時宜にかなった措置であると考えます。  すなわち、今回の改正による在日米軍の駐留支援の拡充は、在日米軍の効果的な活動を確保し、日米安保体制の信頼性を高め、米国との友好関係を引き続き発展させていくことに大きく寄与するとともに、我が国の節度ある防衛力整備と相まって、我が国の平和と安全の確保に多大の貢献をなすものであります。  また、今回の改正によって、二万一千余名の在日米軍従業員の安定的な雇用の維持が引き続き確保されると期待されるのであります。  今後とも、政府は、我が国外交の基軸である米国との友好関係の重要な基盤である日米安保体制の一層の円滑かつ効果的な運用の確保に努力されることを要望して、私の賛成討論を終わります。
  376. 黒柳明

    黒柳明君 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、改定議定書に対し反対の立場から簡単にその理由を述べます。  反対の第一の理由は、最近の日米経済情勢の変化と、これに伴う基地労働者の安定的雇用など、考慮すべき点も十分認識しておりますが、防衛関係費がGNP一%を突破し、防衛費削減の努力も見られず、こうした米軍への特別措置に対し、国民の十分な理解と支持を得られるとは考えられないということであります。  第二の理由は、地位協定は在日米軍の維持経費は原則として米国負担となっておりますが、こうした特別協定というような方法で地位協定の趣旨を超えた措置を講ずることは疑問であるということであります。  以上です。
  377. 小西博行

    ○小西博行君 私は、民社党・国民連合を代表して、ただいま議題となりましたいわゆる在日米軍労務費特別協定の改正議定書に対し、賛成の討論を行なうものであります。  今日、我が国の安全は憲法を踏まえた自主的な防衛努力と、これを補完する日米安保体制とによって守られていることは厳然たる事実であります。そして私は、見通し得る将来においてもこの政策が我が国の安全を守る上で最良の選択であると確信するものであります。こうした立場に立つとき、常に安保体制の有効性を確保しておくことは重要な課題であり、我が国としてもそのための努力を尽くすことは当然であります。  現在四万九千名を数える在日米軍の存在は、有事における米軍の来援とともに、安保体制の有効性を支える大きな柱であります。したがって、在日米軍の円滑な駐留を図ることは安保体制の有効性を担保する重要な政策にほかなりません。  米軍が我が国に駐留するに際しての費用負担の原則は、言うまでもなく日米地位協定で定められているところであります。我が党は、昨年締結された特別協定は、地位協定の例外措置であるものの、その精神を逸脱するものではないと理解し、これに賛成いたしました。今回の改正についても、我々はその延長上にあるものと判断し、賛成を決定したのであります。  しかし、もし今後、アメリカが在日米軍についての一層の費用負担を求めてくるような場合は、このような特別協定では対応できなくなることは明らかであります。したがって政府は、これを契機として在日米軍についての費用負担の原則を確立し、国民的理解を図る必要があると考えます。それなくして、アメリカからの費用負担の要求を無原則に受け入れ続けるようなことがあれば、国民の理解を損なうおそれなしとはしないのであります。  政府の今後の責任ある対応を強く要求して、私の討論を終わります。
  378. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日米地位協定二十四条の特別協定を改正する義定書に対する反対討論を行います。  理由の第一は、在日米軍経費を大幅にふやすということが、事実上ペルシャ湾の米軍作戦費用の肩がわりとなるものであり、六十三年度予算での軍事費五・二%アップ、我が国の軍事分担をさらに深める有事来援研究の開始、戦略援助の拡大、米艦船への核の有無の未確認などと相まって、我が国を日米軍事同盟のもとで米核戦略のアジア最大の前線拠点としての協力、加担を一層進めることになるからであります。  第二は、もともと地位協定二十四条一項で米側負担を義務づけられていたものを、一年もたたずに、国会の意思を踏みにじってまで八つの手当の全額を日本側が負担するものへと変え、さらに対米従属のもとで日本側負担を拡大することになるからであります。  第三は、在日米軍経費の日本側負担増という形での財政支援は、アメリカのペルシャ湾への武力介入を間接的であっても支持することになり、戦争と武力による威嚇を禁じている我が国の憲法の精神に明確に違反するからであります。  第四は、日本の在日米軍駐留経費は世界最高だと米側から称賛されるほどになっているにもかかわらず、この負担拡大は、国民生活関連予算へのしわ寄せを一層強めるものであり新大型間接税導入を避けがたくするものであるからです。  最後に、歯どめなき軍事分担への新たな危険性が心配されるとき、徹底した審議を行うべきところ、衆議院での外務委員会運営で十分に審議されないまま参議院での自然成立を可能とする日程で持ち込まれたことに対し極めて遺憾であることをあわせて表明し、反対討論を終わります。
  379. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 他に御意見もなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  380. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  381. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  382. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十一分散会