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1988-05-10 第112回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十日(火曜日)    午前十時三分開会     ─────────────    委員異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      林 健太郎君     沢田 一精君  五月六日     辞任         補欠選任      沢田 一精君     林 健太郎君      中曽根弘文君     林田悠紀夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        防衛施設庁長官  友藤 一隆君        防衛施設庁施設        部長       鈴木  杲君        防衛施設庁労務        部長       山崎 博司君        外務大臣官房審        議官       福田  博君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        警察庁警備局外        事課長      國枝 英郎君        防衛庁防衛局防        衛課長      萩  次郎君        外務大臣官房文        化交流部長    田島 高志君        自治省行政局選        挙部選挙課長   田中 宗孝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る六日、中曽根弘文君が委員辞任され、その補欠として林田悠紀夫君が選任されました。     ─────────────
  3. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  本件につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 矢田部理

    矢田部理君 質疑に入る前に二つばかりお願いがございます。  一つは、きょう二時間ということで時間をいただきましたが、私どもとしましては、これは安保条約の根幹にかかわる問題でありますので、今後とも二時間という限定ではなしに時間をつくっていただきたい。  それから二番目には、今協定外務省だけがかかわっているのではなく、内閣といいますか防衛庁あるいは大蔵が深く絡んだ議論でもありますので、とりわけ防衛庁長官出席を求めたのですがきょうは実現しなかったようでありますので、引き続き御努力をいただきたい。外務防衛両省庁合わせて質疑をし、あるいはまた総理も御出席をお願いして全体の議論を深めていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。以上です。  そこで中身に入っていきますが、これも特別協定の本論に入る前に、二、三最近の外交課題にちなんで御質問しておきたいと思います。  一つは、宇野外務大臣がこの間中国を初めアジアの各国を歴訪されました。大変御苦労さまでございました。この中国訪問に絡んででありますが、奥野さんの発言問題が中国でも話題になったと言われております。もともと外務省は、恐らくそう問題にはなるまいと、まあたかをくくったと言っては失礼でありますが、言って出向いていったようであります。中国から、特に外務大臣から、日本閣僚の一人が礼儀を欠く発言をした、両国友好関係を守るためにも両国外交当局は今後とも注意を払う必要があるという向き発言があったと言われておるわけですが、そのとおりでしょうか。  特に私どもが問題だと思いますのは、そういうことで中国側からも公式に日本に対して態度表明があった直後、きのうの衆議院決算委員会でありますが、再び奥野国土庁長官発言をされて、従前発言のどこが不適切なのかわからない、日本には侵略意図はなかった、東京裁判に対する論評なども含めて従前よりももっと問題のある発言を繰り返しているのであります。この点を含めて外務大臣考え方をただしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  5. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 銭其シン外務大臣との会談は約三時間にわたりましたが、その中の一部に、こうしたことは言いたくありませんが、日本閣僚の一人がいろいろ発言されました、こうしたことは礼儀を欠く発言でありますと、これは次のような流れの中でおっしゃったことをひとつ御理解賜りたいと思います。  と申し上げますと、これは外務大臣の話ですが、伊東総務会長が訪中の際、鄧小平さんとお出会いになられました、そのときに鄧小平さんから、日中友好を増進したいが、日本の中にはこれに快く思わない人もいますねという発言がありまして、それに対して同行議員が具体的にどういうことですかと、こういうふうに鄧小平さんに尋ねられて、それに対して鄧小平さんは、周恩来首相の詩碑にペンキをかけたり、あるいは福岡総領事館に銃弾を撃ち込んだり、そうしたことですというような話で終わっておりましたと、その後に今の奥野さんの発言があった、奥野という言葉一言も使っておられませんが、ここで便宜上申すわけでありますが、ある一人の閣僚発言がありましたと言うて、今矢田部議員が申されましたとおりのことをおっしゃったわけであります。  それに対しまして私は次のようにお答えいたしました。その閣僚発言、私も総理大臣も、中国新聞によって批判されまた糾弾されたことを甚だ遺憾と存じます。私たちは、日中友好平和条約並びに共同宣言さらには四原則、これを永久不変のものとして考えております。なかんずく共同声明を私は申し上げたのですが、共同声明には、過去において日本国戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省すると、この共同声明を当然私たちもその認識を深めておりますと、私自身はこういうようなお答えをいたしました。で、それ以上銭其シンさんからは話はなかったわけであります。  また、李鵬総理からも非常に高度のお話がございまして、戦争というものは悲惨なものだ。我が国国民も随分といろいろ戦争の迷惑をこうむりました。このことはまだ忘れられておりません。また、日本も原爆という洗礼を世界で初めて受けられた、このことも日本人は忘れられておらないでしょう。そうした悲しみ、そうしたものを乗り越えて今後我々は平和のために尽くしたいと、こういう御発言があったという次第です。  そこで私は、なおかつ銭其シンさんとの場合には、今外務大臣がおっしゃったことは、私は帰りましてその閣僚にそのままお伝えしますということで、本日閣議がございましたが、閣議奥野長官と居残りまして、そして閣議終了後に私は今申したと同じことを奥野さんに申し上げました。奥野さんもわかりましたということで、今さっきその内容記者会見を私がいたしまして公にしたばかりでございます。
  6. 矢田部理

    矢田部理君 奥野さんに伝えられて、わかりましたということですが、どうも奥野さんのわかりましたというのは、大分中身がいつも違うのではないか。従前、この靖国問題あるいは侵略戦争問題に言及をされた後、国会でも論議の対象になりましたところ、中国の首脳を批判するという意図はなかったと言われ、あるいはまた摩擦を起こしたことには気をつけなければならないというふうな向きの釈明はされましたが、自分発言の本質にかかわる内容そのものが間違っていたとか適切でなかったという発言はどうも聞こえてこないのであります。  したがって、そういう延長線上で、きのうまたまた奥野さんは、自分発言のどこが不適切なのかわからぬ、日本には侵略意図がなかった、東京裁判勝者敗者を裁く裁判であったと、靖国問題なども含めて再度重大な発言をしているわけでありますが、外務大臣としてはそういう発言をどういうふうに考えられますか。
  7. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、奥野さんに対してはこうだ、あるいは中国外務大臣にはこうだという区別して一切お話はせずに、今申し上げたとおり話しました。なおかつ、昨日そういうふうな発言があったやに承りましたので、ここにその速記録を私も取り寄せました。  奥野さんは、新聞報道されているようなところもありますが、例えば二カ所ばかり申し上げますと、これは速記録どおりですが、東京裁判では確かに「東京裁判をどう評価するかということでございますけれども、私は勝者敗者に加えた懲罰だ、こういうふうな理解をしておるわけでございます。」と、ここは新聞報道されています。しかしその後に、「しかし日本が過去いろいろ迷惑をかけていることはたくさんあるわけでございますので、それは謙虚に反省して今後の我が国の行方によい反省の指標にしていかなければならないということは十分考えているつもりでございます。」そういうふうな答弁もなさっております。  もう一つ侵略という言葉につきまして、きのうはいろいろ議論もありますよ。しかしながら、その中の一つに、「侵略戦争と呼ぶ、呼ばないという、これは言葉の使い方でございますから、私、先ほど申し上げましたようにこのことについて論争する意思はございません。また、中国侵略戦争と呼んでいることもそのとおりだと思います。」というふうに答えられておる部分もあります。  したがいまして、これはそうした自分答弁を踏まえまして私に対しましてわかりましたとおっしゃっておる。また、自分発言中国新聞でいろいろ取りざたされたことにつきましてもそうした意味を込めておっしゃったものである。私はこういうふうに解釈しております。
  8. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっとわかりにくいのでありますが、何も中国からこう言われたからこうだというのではなくて、中国から指摘されようとされまいと、やっぱり奥野さんの発言は間違っている、正しくない、適切でないというふうに実は私自身思っているのでありますが、そのわかりましたという一言は何をわかったのか。そういうことを中国指摘したことがわかっているという意味なのか、自分発言が不適切であったという点で謝罪の意味を込めてわかりましたと言っているのか、どうもやっぱり不鮮明なのですね。その点は外務大臣はどう受けとめておられますか。
  9. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 奥野大臣に会う前に、私、会議録を十分読ませていただいたわけです。そうして、新聞報道もあるが、それ以外にもこういうふうにしゃべっておられたんだなと、こういう私は考えもございます。また、先般参議院の本会議におきましても、一応そうした趣旨に沿ったような発言もなさっておるということも聞いておりますし、そこで、私も率直に今申したとおりのことをお伝えしまして、それらのことについて奥野さんも理解をしていただいたと、こういうふうに私は考えて、今、わかりましたという一言で、私としてはそのままの言葉を伝言したと、こういうふうに考えております。
  10. 矢田部理

    矢田部理君 これは、再び日中間の重大問題に発展する可能性を持っていると私は思っているわけです。光華寮問題が従前からあります。それから、教科書問題藤尾発言などがあって、とかく問題発言が多かったわけでありますが、今度の奥野発言はそれにまさるとも劣らぬ重大な問題をはらんでいる。現に新華社は、直ちに速報を出すというようなことで、再び奥野発言侵略戦争を擁護している、こういう指摘まであるわけでありますので、わかりましたという一言で片づけられるほど簡単なものではないというふうに外務大任としても認識をしていただきたい。  それから、外務大臣は今奥野発言の一部を読み上げられましたが、どうも奥野発言弁護しているかのように外務大臣の声が聞こえるのでありますが、外務大臣としてはいかがなんですか。その日中戦争、引き続く太平洋戦争というのは日本侵略戦争であったと、中国がどう言うかではなくて、大臣自身としての認識はいかがなんでしょうか。
  11. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今、奥野発言を私が弁護しておると、それは誤解でありまして弁護はいたしておりません。私は同僚でございますから、したがいましてどういう発言をしたかということを私は私なりに調べまして、そうしてそこは書いてあるとおりのことを私は申し上げておるだけで、弁護をしたり、また奥野発言に対しまして私自身批判を加えておるということは、過去申し上げましたようにそうしたことはありません。  つまり、私といたしましては、日中戦争を初め太平洋戦争日本軍国主義によるところの侵略だと、そうした厳しい世界糾弾があるということにつきましては十分認識をしなくちゃならないと、こういうふうに考えております。
  12. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと正確に聞きたいんですが、大臣としても侵略戦争であるという認識をしている、同時に侵略戦争であるということに対して世界の厳しい糾弾があることも認識をしていると、二つ認識を示されたというふうに伺ってよろしゅうございますか。
  13. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、侵略戦争という厳しい世界糾弾があるということは十分認識をし、認識をしなければならないと、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  14. 矢田部理

    矢田部理君 糾弾があるという認識侵略戦争であるという外務大臣認識とは、ちょっとニュアンスが違うような気がするんですね。糾弾があることを認識しているというのと、侵略戦争であるということを認識しているというのとは中身が違うような気がするんですが、前段の方はどういうふうにお考えですか。
  15. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これは、今までそうした認識のもとに私たちは対処してきたわけでございますから、特に中国、韓国に対しましてもはっきりと共同声明でそのことを申し述べておるわけですから、そうしたことを踏まえまして、世界じゅうから侵略であると言われておることについては私たち認識をしなければならないと、こういうふうに申し上げておるわけであります。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 そう言われるとますます聞きたくなるのでありますが、外務大臣自身の御認識は、世界がどう認識しているかではなくて、御自身認識侵略戦争であるという認識に立っているのかいないのか、そこを端的に答えていただきたい。
  17. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 軍国主義による侵略だと私は思っておるんです。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 軍国主義による侵略戦争だと思っているということはいいわけですね。じゃ、そういうふうに伺っておきましょう。  そこで、その立場からすれば奥野発言はあなたの認識とは違う、中国からの指摘をまつまでもなく適切でない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  19. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、奥野発言に関しましては、先ほど申し上げましたとおり、きのうの発言もあったということですから、私が中国で直接外務大臣から聞いた直後のことでもございますから一応速記録を調べさせていただいたということで、弁護するつもりはございませんが、奥野さんも速記録で言われておるとおりのことをおっしゃっておるということをここで私は申し上げたわけであります。  したがいまして、その前の奥野発言、それは全般的に私は伺っておりません。したがいまして、奥野発言が那辺に重点を置いておしゃべりになったか、そういうことも私といたしましては奥野さんに問いただしたこともございませんから、いずれにしても奥野さんの発言中国新聞によって批判をされ、糾弾されたことは我々といたしましても甚だ遺憾なことであると、これが私の従来から当委員会におきましてもしばしば申し上げてきた認識でございます。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 肝心の奥野さんを抜きにして外務大臣と私がやりとりをしてもという感じがしないわけではありませんが、奥野さんが言われておりますのは、「私は侵略戦争という言葉を使うのは大変嫌いだ。あの当時日本にはそういう意図はなかった。侵略戦争であるかないかは、米英に宣戦布告した大東亜戦争に関して言われたこと。日中戦争と言われているが政府は常に不拡大方針を指示してきた」と述べられて、きのうの決算委員会新聞報道でありますが、言うならば、日中戦争政府として侵略をしたわけではない、侵略戦争ではないというふうにとれる発言をしているように思われるわけですが、これは外務大臣認識とは違うのではありませんか。
  21. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私は、先ほど申し上げましたとおり、共同宣言においてはっきりと、中国国民の方々に迷惑をかけた、そのことについては深く反省しなければならない。すべてこれで私は日本人認識というものはそこにある、こう考えております。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 それはそれでよろしいんですが、その前提となる認識は、迷惑をかけたのはあの日本中国侵略によって中国に迷惑をかけたという認識に立つわけでしょう。その点はいかがですか。
  23. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 当然そのことは日中戦争を指すものであると私は思います。
  24. 矢田部理

    矢田部理君 その日中戦争日本軍国主義による侵略であった、先ほどからの説明を承るとこういう認識になるわけですね。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そのとおりであります。
  26. 矢田部理

    矢田部理君 そういう認識に立てば、やはり単に中国における外務大臣発言を伝えるだけではなしに、政府部内として、特に外交を預かる外務大臣として、もう少し閣議でこの問題を本格的に取り上げて、やっぱり政府としての襟を正すべきだというふうに考えますが、外務大臣として今後どんな努力をされますか。
  27. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この問題は、中国の方も非常に重大なことであると理解しながら、やはり今後いろいろなことがありましょうが、お互い努力をして大きな双方の発展、そうしたものを傷つけないようにいたしましょうという大きな背景があるというふうに私は理解いたしております。したがいまして、こうした問題が、奥野さんのわかりましたという理解によって極力今後大きくならないことを外務大臣としては望んでおります。
  28. 矢田部理

    矢田部理君 一言だけつけ加えますが、中国両国外相会談があったその中で、先ほどお話が出たような話が指摘をされた。その直後に、昨日また従前以上の発言をしたということになりますと、少しく鎮静化しつつあったかもしれませんが、また状況が変わってきているんじゃないかと思う。わかりましたという一言で片づけられるほど単純であり簡単な問題ではないというふうな認識に私は立っておりますので、外務省としてもそこをよく心得て、中国もそれほど深追いするつもりはなさそうだという楽観的な認識ではなしに、もう少し厳しく状況を踏まえ、かつ中国がどう言うかではなくて、日本人自身としてどう考えるべきかということを起点はしてお考えをいただきたいということを特に意見として申し上げておきたいと思います。  次の質問に移ります。
  29. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど一つ外務省はこういう問題が出ないんじゃないかと楽観視しておったが出たじゃないかという御発言がございましたが、私たちはそうした悲観もせずまた楽観もせずに臨んだわけでございまして、こうした問題は中国が取り上げないだろうというふうな楽観論を持っていたわけではありません。悲観論もなく楽観論もなく、私は淡々と臨まさしていただいて、また銭其シン外相も私に対しまして先ほどのごとく淡々とおっしゃられた。  このことは私といたしましては、外務大臣として御本人にそのとおり、非常に中国としてはこの問題に遺憾の意を表されたことを申し上げますと、こういうことでございますから、そこだけはひとつ、外務省としても終始そういう気持ちで今後も中国に対しまして、楽観とか悲観ではなくしてやはり日中友好のためにお互い努力を傾けたい、それが今日の私の心境でございます。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 大臣の心情もわからないわけではないんですが、私どもはこの奥野発言というのは、とりわけ前科二犯にも及ぶ奥野発言というのは極めて重大であって、単に中国の話の内容を伝えるとかという質だけの処理ではなしに、責任問題だと。かつて藤尾さんはこのことを理由に教科書問題辞任をされました。やっぱり罷免ないしは辞任にも値する重大な問題だという認識で、これはまあ総理に言うべきこと、奥野さん御本人に言うべきことかもしれませんが、外交の衝に当たる外務大臣としても、閣内でもう少しやっぱり厳しい対応をしていただくことが大事なのではないかと思っておりますので、その点つけ加えて申し上げておきたいと思います。  それから、次の問題でありますが、この五月の初めにハワイで、日米安保事務レベル協議が開かれましたですね。防衛庁外務省としてはどういう方が御出席されましたか。
  31. 有馬龍夫

  32. 矢田部理

    矢田部理君 ここで非常に重大な提案がアメリカからなされたと伝えられております。つまり物品役務融通協定締結したい、こういう提案がなされたと伝えられておるわけでありますが、そのとおりでしょうか。なされたとすればどういう内容提案であったのでしょうか。
  33. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 今回の協議におきましていわゆる米国国内法でございますNATO相互支援法に基づく米国NATO諸国間の共同訓練の際の相互支援の仕組みなどについて説明がございまして、日本との間でも相互物品役務融通を図る協定があることが有用ではないかと考えているという発言はございました。これに対しまして日本側からは、今後このような取り決めが有用であるかどうかということを検討していきたいというふうに申しまして、米側もこれを了承したという次第でございます。
  34. 矢田部理

    矢田部理君 その種協定締結することが有用であるという趣旨発言があったと。
  35. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 米側からございました。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 これは締結提案というふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  37. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) よろしいかと思います。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 それに対して有用であるかどうか、いかが提案に対応するかは今後日本でも検討したいと、こういう向きの答えをされたということですね。
  39. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) そうでございます。結論はもう全く白紙といたしまして、結論は全く予断することはなく、必要かどうか、こういうような取り決めがなければこの取り決めが考えているようなことを果たしてすることができないのであろうかといったようなことを検討するというふうに申しまして、米側もそれで結構であると、こういうことでございます。
  40. 矢田部理

    矢田部理君 これは安保条約中身に重要な一項をつけ加える提案だと私は思っております。したがって、事務レベル協議などで提案すべきものなのかどうなのかということも疑問なしとはしないのでありますが、いずれにしても米側からそういう重大な提案があった。その中身はどんなことを言ってきているのでしょうか、内容ですね。
  41. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) この相互に役務物品をお互い融通し合うという、クロス・サービシング・アグリーメントと米側は呼んでおりますけれども、これは物資でありますとか役務を提供する際に具体的な相互支援を定めたものでございまして、具体的には例えば米側が申しておりましたのは、いずれか一方の飛行機が部品がなくて飛ぶことができないようなときに、他方、ですからこの場合は米国の場合もありますし、米国とその取り決めを締結している対象の国もありますが、そちらのいずれか一方が部品を提供する。それで、それは現金で支払います際には三カ月後に決済をいたしましょうと、物々交換でそれをやる場合には一年以内にそれを行いましょうと、こういうようなアレンジメントであるというふうに説明いたしておりました。
  42. 矢田部理

    矢田部理君 物品と役務というふうに言われておるわけでありますが、物品についてはこれは限定なしにあらゆる物品が含まれることになるんでしょうか。
  43. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) そういうことではございませんで、そして米国は既にNATO十カ国とこのような取り決めをつくっているそうでございます。その内容がすべて同じであるかどうかわかりませんが、米国国内法を見ておりますとそれは一定のもののみを挙げております。物品といたしましては、燃料でありますとか油脂であります潤滑油、衣服、そういったものが挙がっております。
  44. 矢田部理

    矢田部理君 その種のものが例示されていることは私も承知しているわけですが、兵器とか弾薬などはこれに入るのでしょうか、入らないのでしょうか。
  45. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 米国国内法には弾薬を挙げてございます。しかし、いわゆる武器は入っておりません。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 弾薬、それから武器の中でも武器そのものは入らないが、軍用機が故障した場合に部品の提供というようなものは入ると、こういう趣旨でございますか。
  47. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 私は今、米国国内法を、あるいはそれに基づき米側が他国と締結していると言われているものの内容米側説明したところに従って御説明していることに尽きるわけでございますけれども、弾薬は含まれております。それから部品についても、提供と申しますか、暫時融通し合うと、こういうことでございます。
  48. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、武器そのものではないけれども、武器に使用している航空機とか戦車とか、戦車があるかどうか知りませんが、などなどの部品の提供もこの物品の中には入るというふうに受けとめているのでしょうかと、こう聞いている。
  49. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは先般来御説明申し上げておりますけれども、そもそも演習のときに使用される取り決めでございまして、その際、より経済的にその演習を実行し得るようにこのような仕組みをつくったらどうであろうか、こういうことででき上がっているものだそうでございます。その枠組みの中で、例えば今申し上げましたような弾薬を演習の際相互に利用できるといったようなことを申しております。
  50. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、今の答弁にちなんで伺いたいのですが、これは平時の演習、共同訓練等に限定をされた物品ないしは役務の融通協定なのでしょうか。これが平時ではなくて有事の際にもそのような状況が引き継がれるというおそれ、危険を心配する向きもありますが、また私も事実そう考えているのでありますが、平時だけに限定しているのでしょうか。
  51. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 先般の会議におきましては、米側からこの協定共同訓練に大変有用であるという説明がございました。まだ詳しいことはわからないのでありますが、米側国内法等を見ておりますと、平時に限るとか有事に限るとか、そういう規定はございません。したがって、共同訓練の役に立つという説明ではありましたが、平時の訓練だけに限るという説明はございませんでした。
  52. 矢田部理

    矢田部理君 したがって訓練だけの話ではない。訓練以外、有事の場合にもこれが引き続き動くという可能性を持った提案であるというふうに受けとめてよろしいわけでしょう。
  53. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) まだ詳しいことはわからないのでありますが、そのような限定はついておりませんので、先生のおっしゃるような可能性も否定し得ませんけれども、逆に私どもの見方からすると、本当の有事を想定した融通協定というものを考えるのであれば、ちょっとこの協定では有事は全部カバーできないんではないかという感じがいたします。
  54. 矢田部理

    矢田部理君 有事を全部カバーできるかどうかではなくて、有事にも使われる、動くという可能性を否定しない。そこが実は大変問題だというふうに私は思うのですが、もう一つ、これは有事ということになりますれば、単に日本の有事だけでなしに、極東有事の場合にも動く可能性を否定できないんじゃありませんか。
  55. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) まだ先般アメリカ側の説明を聞いただけでございまして、中身もまだ私どもよくわかっておりません。先の話をどうするかということもわかっておりません。すべて今後の問題でございますので、ちょっと現在のような御質問にはにわかに判断がつきかねるところがございます。
  56. 矢田部理

    矢田部理君 外務省防衛庁のお歴々がわざわざハワイまで出向いていって重要な事務レベル協議をやられた。アメリカが提案をされたと言われるその提案内容をもう少ししかと聞いてくるのが当然の仕事じゃありませんか。ただそういう提案があった、それを有用かどうか日本で検討したい、検討する前提としてどういう中身提案なのかということは、正式のあるいは公式の場における会議である以上、文書なりなんなりでもう少し厳密な中身提案があったんじゃありませんか。
  57. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 先ほど来申し上げておりますように、米側からは米国国内法説明が基本的にあっただけでございまして、それ以外には詳細な、今先生がおっしゃられたような形での申し出というものはございませんでした。
  58. 矢田部理

    矢田部理君 とすれば、なおさら日本として今私が幾つか出した疑問なり問題のようなことをアメリカとしてどう考えているのか、質問なりしてしかるべきではなかったんじゃないでしょうか。
  59. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) そもそもそこに立ち至るような話し合いがなかったということでございます。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 それじゃ日本で有用かどうか検討のしようがないじゃありませんか。
  61. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 私ども米国国内法を入手いたしておりますので、それに基づいて考えていこうというわけでございます。  それから、先ほど私こういう取り決めがなければその取り決めが考えているようなものができないだろうかということを申しましたが、これは防衛庁がお答えになることだと思いますけれども、先般来防衛庁が一部融通しているというようなところもあるそうでございますから、そういうようなものの洗い出しといったようなこともしていくのかなといったような感じを持っております。
  62. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしても、この提案は日米関係、特に安保体制にとって極めて重要な提案だと、特に物品等の融通協定というのは平時だけではなくて有事にも動く、さらには日本有事だけではなくて極東有事にも連動するというようなことで大変な問題を含んでいるということで、この種協定には応ずべきでないというのが私の意見でありますが、同時にこの種提案に応ずるためには、国内法で本格的な立法措置なしにはやることはできないのではないでしょうか、その点いかがですか。
  63. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 実はまだその辺もこれからの検討いかんでどうなるか全くわかりません。  先ほど北米局長からちょっと御紹介がありましたように、油の一部について現在融通が行われているということがあるのでございますが、これは特に法律がどうのこうのという話ではございませんで、その辺のところどうなるのか、まだ今後相当勉強してみないと何とも言えないかと思います。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 次元の違った話、私は反対ですから、本来その辺の議論は要らないのかもしれませんが、日本国内法であるいは今の国内法の体制で、米軍に対して物品役務を本格的に提供できる根拠規定がありますか。
  65. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) その辺もまだまさにこれから勉強しないと何ともお答えできないのでありますが、現在、油の融通をし合っているというのは物品管理法の範囲内でやられているというふうに聞いております。
  66. 矢田部理

    矢田部理君 物品の融通、貸したり提供したりという物品というのは、言うならば国有財産なわけでしょう。国有財産法で不動産は厳重な管理規定がございますわね。それから、不動産は国有財産法でありますが、動産については今指摘をされた物品管理法が規定をしているわけです。この物品管理法でアメリカに全面的に物品の融通ができる、貸し付けや提供ができるというような規定にはなっていないんじゃありませんか。
  67. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) その辺もまさに先生がおっしゃいますように、そういうことができるのかできないのか、あるいはまだ具体的にこういう協定が我々にとっても必要なのかどうかという検討がまず最初に必要なんであろうと思います。そういうのが必要であるとすると、どういう内容のやり方があるんであろうかということをまたその次に検討する、それで最終的に、それではそれは今の法律とかあるいは条約とかそういうものとの関係でどうなんであろうかという検討になろうかと思いますので、今にわかにそこでできるのかできないかというのはまだ判断がつきかねます。
  68. 矢田部理

    矢田部理君 物品管理法の二十九条ですが、「物品は、貸付を目的とするもの又は貸し付けても国の事務若しくは事業に支障を及ぼさないと認められるものでなければ、貸し付けることができない。」、言ってみればこれだけの規定でありまして、今船舶等の燃料のたしか貸し付けか何かでこの規定を乱用してというか、しかるべく使って一部限定的にやっている状況は私も知らないわけではないし、それから自衛隊法の一部に給水とか電気の供給とかという規定がないわけではありませんが、これは特殊な事例、極めて幾つかの厳しい要件をつけた上での限定的な規定なのでありまして、包括的に全般的に物品の融通とか役務の提供をやるということになれば、しかとした根拠法なしに、新たな立法措置なしにできることじゃないんじゃありませんか。このぐらいは踏まえてもらわなきゃ困ると思うんですが、いかがでしょうか。
  69. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) これからその辺も踏まえまして十分に検討させていただきたいと思っております。
  70. 矢田部理

    矢田部理君 現行法ではそんなことはできないという認識以外には立っていないんですよ、当たり前の話じゃありませんか。
  71. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 先ほど来、外務省防衛庁から答弁しているとおりでございまして、日本側は現段階におきましてはこのような取り決めが有用であるかどうかということを検討していきたいということをアメリカ側に返事をしてきたわけでございます。仮にこのような取り決めを結ぶことが有用であると判断された場合におきまして、それでは関連の法律にはどのようなものがあるか、関連の条約にはどのようなものがあるかということをそれぞれの法律の主管官庁それから法制局等とも協議をしながら考えていくということになるわけでございますので、現段階におきましては、どのような法律上の制約があるか、どのような法律上の根拠規定があるかということにつきましてはまだお答えできない段階にあるわけでございます。
  72. 矢田部理

    矢田部理君 先ほどお話がありましたが、NATO諸国十カ国との間には既に締結済みなんですね。NATOは統一軍、統合軍でありますから先行していることになるわけですが、同時にアメリカは国内法をせんだって整備して日本や韓国、エジプト、イスラエルなどにも同種の提案を行ってきている。日本を除く他の三国は既に交渉に入っているというような動きを見ておりますと、そして日本の国会でも、日本の直接的な問題ではないが、この種議論がかつて全くなかったわけではない。ここでは説明したくないから言わないのかもしらぬが、説明をした限りでは大変勉強不足じゃありませんか。  しかも、日米事務レベル協議という重要な会議に臨むに当たって、少なくともその種提案があるかもしらぬということぐらいは事前に察知しておったはずなのに、中身もただしもせず、ただお話だけ聞いてくるというのでは一体どうなんでしょうか。やはりここでも、日本のあるいは日米安保体制のNATO化がもう一歩本格的に進められるという重要な中身提案であるだけに、私たちとしてはこれは黙視するわけにはいかないのであります。  この点、先ほどのさまざまな危険とあわせて、国民の貴重な財産にかかわる問題でもありますから、私たちは厳しくこれに反対であるということを明らかにしておきたいと思いますので、その点心して今後対処をしていただきたいというふうに思いますが、最後に外務大臣、この点についてどんなふうに受けとめられておりますか。
  73. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今次協議では、国際情勢とかあるいは日米防衛協力、我が国防衛努力の現状、さらには九〇年代に向けての国際社会における日米の責任等、いろいろ忌憚なき説明があり、またお互いに意見の交換をしておる。私は、日本として言うべきことははっきり関係者は言ってきておると、こういうふうに報告を受けております。  今NATOに関する問題に関しましてもお話が出た。政府委員説明どおりでございますが、私もこのことに関しましてその経緯を詳しく報告を受けました。もちろんそうしたことが有用であるかどうか、まだ我が国といたしましては十分これは検討しなくちゃならない問題でございますから、白紙で帰ってきたんだねと、さようでございます、白紙で帰ってきておりますと、そういうことでございますから、それならばそれでよろしいと。相手方からのそうしたいろんな説明に対しては今後いろいろ勉強することは必要であろうけれども、現在といたしましては、有用かどうかそれすらわからぬ。我々といたしまして検討の段階でございませんので、そのことに関しましては十分今後勉強をしていきたいと、かように思っております。
  74. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣には詳しく報告されたそうですが、国会にはどうも詳しくなくてさっぱり要領を得ない。アメリカの法案の説明だけを聞いて帰ってきたみたいな話しかなかったのでありまして、その点大変遺憾であります。  同時にもう一つ、日米事務レベル協議で問題だと思われますのは、経済協力問題が論議の俎上に上ったと。特にアミテージ国防次官補から、日本が経済協力をもっとこれから強化をする必要があると繰り返し述べられたというのでありますが、事実でしょうか。
  75. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 米側が今回の協議で申しましたのは、議会を中心にして、いわゆるバーデンシェアリング、負担の分かち合いとでも訳すべきかと存じますが、そういうものがあって、我が国を含む同盟国に対して幅広い貢献を世界にしてほしいという声が強く存在していると。それでこのような米側の事情が説明されたのは事実でございます。  しかし、先ほど外務大臣が申されましたように、私どもは私どもの立場をきちっと申しまして、我が国としていかなる形で国際社会に貢献していくかは、あくまでも我が国がみずからの判断に基づいて決定すべきものであって、そのように進めてまいりますということで、米側我が国の立場は理解いたしております。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 最近のアメリカの特徴であり、以前から問題とされてきたのでありますが、特に最近際立っておりますのは、経済協力問題を、本来人道的な問題、すぐれて南北問題でありますのに、アメリカは戦略的観点から経済援助をしていこうという色が強くにじみ出ておるわけですね。  これは日米事務レベル協議だけに限ったことではありませんで、例えばことしの春先に出ました国防報告を見てみましても、日本の軍事力の増強に対して大変高い評価をしているわけですね。これから本論に入ります防衛費の中における在日米軍の負担の問題についてもこう言っております。  「日本については、「モンタナ州程度の大きさの国土に、米国の半分に相当する人口を抱えているにもかかわらず、米軍に百カ所以上の基地・施設を提供している。在日米軍の経費を米兵一人につき年間四万五千ドル分、負担している」と説明。」し、さらにさまざまな日本防衛努力を評価した上で、まとめとして、「進歩は遅いが着実だ」と、こう言っておって、軍事問題にはさほどの注文がつかなかったのでありますが、その最後のところに、「しかし、経済援助の供与でもっと大きな負担を受け持つことができる」という国防報告がある一方、同じトーンで今度は日米安保事務レベル協議でこの問題が出てきたわけです。  私たちはかねてから、日本国民の貴重な税金が人道的立場から南の国々の人々に贈られること、この自立の努力、自助の努力を援助することは非常に重要だというふうに言ってきましたが、そういう純粋な観点からではなくて、極めて戦略的な観点で経済援助問題が俎上に上る。とりわけ国防報告や日米安保事務レベル協議の主要な議題にそれがなる、話題になるということは見逃がすわけにはいかないのでありますが、外務大臣どう考えられますか。
  77. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 経済協力の話は出ました。しかし、これは議題でもございませんし、ただ談たまたまそこに及んだことがあったということでございまして、これは安保に関する事務レベル協議でございますから、それが主たるテーマになるということはございませんでした。  それから、先生が最初にお読みになられましたようなくだりが米国の国防報告等に最近、見られることは事実でございますけれども、これは先般来政府側が申しておりますように、米国の行政府は特は議会に対しまして、そこでは日本世界に対する貢献が少ない、防衛面における貢献が少ないという不満が強いわけでございますから、そういうところに対して日本はどのような努力を行っているかということをるる説明してくれているということでございまして、そういう脈絡でそのようなものをアメリカ側はそう申していると、こういうふうに理解していけばもうそれでよろしいのではないかと思います。私どもには私どもの立場があるわけでございますから。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 これは外務大臣に私の意見として申し上げておきたいと思うんですが、中南米の累積債務問題などもそうなんでありますが、もともとあの中南米の累積債務問題というのはすぐれてアメリカの問題なんですね。アメリカの民間銀行が大量に中南米に貸し込んだ。私から言わせればもう過剰投融資だと思われるような状況を、日本が肩がわりして救済に乗り出すというような中身にもなっているわけですが、とりわけ経済協力問題について言いますならば、アメリカの軍事援助そして日本は経済協力、これの責任分担が今、日米関係で盛んでありますが、相互に責任分担して西側の脆弱地点を固めると、戦略観点から援助するという傾向が非常に目立ち始めている。カリブ海援助などもその一つ、トルコなどもその一例であります。その点で日本日本の立場があると、有馬さんも幾らかその事務レベル協議の際はその種の説明をしたやに新聞は伝えておりますけれども、という建前論では対処し切れないほど状況がやっぱり進んできているように思われるわけですね。  日米評価委員会などでも報告書が出ておりますが、その日本の戦略援助を非常に高く評価した報告になっております。その点で、経済援助のあり方、ありよう、理念、哲学、政策、基本原則、これをきちっと固めておきませんと、これから経済協力問題は非常に大きな国際的な話題にもなるわけであるし、日本もそういう方向で動いているわけでありますが、そこの基本の押さえが非常に重要な時期になってきていると思うんですが、外務大臣いかがでしょうか。
  79. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど来の御意見をずっと承っておりまして、経済協力即援助という一つのお考え方で申し述べられておりますが、私たちも経済援助の根底にあるものは、先ほど矢田部委員が御指摘のとおり南北問題の根底にある相互依存と、同時に人道上の考慮ということを中心に考えております。  したがいまして、援助に戦略なしと、我が国のいわば自主的な考え方に基づきましてやっているわけでありまして、特に今や日本地位から申しましても世界に貢献する日本と、こういう立場を必ず鮮明にしていかなくちゃならない。そういうことでございますし、特に多くは国民の税金によってなされる、それだけに慎重を期さなくちゃならぬ、こういうことでやっておりますので、今後もそういう姿勢で中南米であれアジアであれあるいはアフリカであれ、そうした姿勢で私たちはやっていきたい、かように考えております。
  80. 矢田部理

    矢田部理君 きょうの議題の本論に入りたいと思います。  昨年、当委員会特別協定の論議が行われました。そのとき、この特別協定は極めて臨時的なものであり、限定的なものであり、暫定的と思いましたが、いろんな枠づけ、条件設定をして、だから何とか認めてほしいということで特別協定の審議が行われたわけでありますが、あれから一年もたたないうちに、もう既にこの正月竹下総理がアメリカに出向いていくに当たっては、今から議論になる特別協定中身を最大の手土産にしたと言われているわけでありますが、またまた特別協定の上に特別協定と、屋上屋を重ねるような協定締結するに至ったのは一体なぜなんでしょうか。理由を、あるいは根拠をしかと説明していただきたいと思います。
  81. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 昨年も日米両国を取り巻く経済情勢が変化しておって、在日米軍経費が急激に圧迫されている事態がございますので労務費特別協定締結させていただきたいと申したわけでございますけれども、その後さらに一層の変化が両国をめぐる経済情勢にございまして、在日米軍の経費のさらなる圧迫という新しい事態に対応するために今般の措置をお願いしたものでございます。  具体的に申しますと、労務費特別協定締結後の為替面における大幅な変化、一層の円高ドル安が在日米軍経費、なかんずく円で支払われている在日米軍労務費にかかるドルベースの負担を急増させていることを踏まえまして、労務環境の安定化を図るためにこの改定をお願いしているということでございます。
  82. 矢田部理

    矢田部理君 このアメリカに対する米軍駐留経費の思いやり予算の増額、去年やりましたね。そのとき外務省がつくった協定説明書を、去年のやつとことしのやつを私見比べて読んでみましたら、去年のやつは、「最近の経済情勢の変化により、」と、こういう文言になっているわけですね。ことしは、その「変化」に「一層」という修飾語を一つつけただけ。「一層の変化」という理由だけでまたまた、去年あれほどの思いをして――地位協定の本論はもう少し後で議論をしますが、特別協定をつくり、そしてことしの春先には、まあ去年の暮れからでありますが、半年もたたないうちにさらにまた大幅な日本の負担増をアメリカに対して差し上げる、こんなばかなことがあっていいんでしょうか。  円高という説明がありました。この一年間でどこを基準日にするかはいろいろありますが、日本の負担を倍に枠をとらなきゃならぬほど円高が急速に進んだなんという情勢はありませんよ。説明になっていません、あなたの説明は。
  83. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 一層の変化、さらなる圧迫というような表現でございますけれども、これを若干具体的に説明させていただきますと、六十三年度におきましては日本側特別協定の対象たる手当の半分の限度いっぱいを負担しようとしておりますけれども特別協定を検討いたしました際、したがいまして六十一年十二月の一ドルのレートを見ますと百六十二円三十銭でございます。在日米軍従業員の労務費の米側負担総額は七百八十五億円、約四・八億ドルでございまして、そのはずでありますけれども、円高が進行いたしましたために昨年十二月のレート、一ドル百二十八円四十銭でございますが、これを用いますと、七百八十五億円が約六・一億ドルと試算されます。これが特別協定改正の背後にございます「経済情勢の一層の変化」ということに当たるわけでございまして、この結果、変化による在日米軍の経費は大きな負担がさらにかかるようになったと、こういう次第でございます。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 それは衆議院説明もそう言っているから、ここで同じことを説明しなくても私は承知しておるが、説明になっていませんよ。衆議院のやつは円とドルの間違いもあるが、それはそれとしてですよ、それで円は一年間に何%上がったんですか。
  85. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 実はこのレートの増加率というのは、IMFの計算とかいろいろございましていろいろな数字が挙げられております。したがいまして、一般に十数%と申しましたり、それよりかなり大きな数字になったりいたしますが、その計算の仕方によって的確に何%と言うのは困難だというふうに承知いたしております。しかし、それぞれの物差しによってどのような割合になるかということは追って計算して御説明いたします。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 あなたの挙げた数字が百六十二円と百二十八円ですか、というふうに言われたから、それが円の急激な変化だと、あるいは一層の経済情勢の変化だと言うんだから、それならその数字で言えば何%上がったことになるのかと聞いておる。
  87. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 約二六%でございます。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 そんなものでしょう。私はここで、何といいますか支出官レートというのがありますね、政府が予算などで使うレートですが、六十二年度の予算の基礎になったのは百六十三円、それからことしが百三十五円ですか。
  89. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 百二十八円四十銭、去年の十二月……。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 いやことしの予算。これが一応実際に合っているかどうかは別として、政府の公式なところで使っている数字ですから、これを土台に考えますれば上がったのは一七%ですよ。私は円高になったから当然アメリカの費用、駐留軍の経費は負担を日本でそれに見合ってしなきゃならぬというふうには思わないが、あなた方が説明している一層の経済情勢の変化だって倍になんか上がっていやしませんよ。だから、一層の変化があったから今度は全額負担するんだ、八項目に及ぶ手当の全部を日本が負担するというような理由づけには飛躍があり過ぎる。もともと円高だけで上げるかどうかということにも大変問題があるわけです。そう思いませんか。全然説明になっていないじゃありませんか。
  91. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) まず、いわゆる円高なかりせば四・五億ドルぐらいであったものが、円高の結果六・一億ドルと。確かに今私が挙げました数字で計算するとそうなるわけでございますが、これはそれなりに大きな重みを持った数字だと私ども考えておりますが、これは案分比例等というようなことで考えたわけではございませんで、やはり駐留軍労務者の雇用環境の安定化を確保することを通じて安保条約の効果的運用を引き続き維持したいということから行っていることでございます。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 これは立法措置、重要な特別協定ですよ。後でも説明しますが、もともと地位協定が三十五年にできて以降その他位協定二十四条の歴史というのは解釈上やたらに拡大している。とうとうそれで賄い切れなくなって、やっとの思いでつくった昨年の特別協定が一年を経ずしてまたもう一度特別協定特別協定をつくらなきゃならぬ。外務省は一体何を考えているんだと、きのうちょっと政府委員室の人が来たから、少し気でも狂ったんじゃないかと、半年の見通しも立て切れないでぬけぬけとよくもまあこんなものを出してこられたものだなあと私は思っているんですが、あなたの説明を聞いてもなるほどと思われるような説明にはなりません。  もともと円ドルレートは一定の幅で変動していることはだれだって知っている常識的なことである。円が上がっても、円高不況で苦しんでいる企業でもあるいは中小企業などは大変それを深刻に受けとめているが、思いやるべきはそんなところなのであって、去年つくった特別協定、ちょっと今度は二割前後円が上がったからといってすぐ改定して思いやらなきゃならぬような情勢というのは、去年の情勢認識が間違っていたんじゃありませんか。  去年のことも私は賛成ではありませんが、去年の立場に立って考えれば、去年の見通しは少なくともそれに関する限りは間違っていた。五年間という時間の限定をつけたわけでしょう。少なくとも五年間だけはこれでやっていくという誓いを外務省ではしたわけでしょう。だから認めてくださいと言ってきたわけでしょう。それが半年前後で狂っちゃったと。これは何といいますか、責任問題ですよ。単に「経済情勢の一層の変化」などと言って説明できる問題ではないと思うんですが、いかがですか、外務大臣
  93. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今、北米局長からるる説明がございましたが、円高ドル安レートの何%円高になったかということは、二〇%そこそこあるいは二五%そこそこというのが、矢田部委員も今そういう認識お話しなさっておることは決してわからぬわけじゃありませんが、やはり二五%というのは大変なことでありまして、かつてG7のときに二百四十円、それが一挙に百八十円になった、あっという間に。今度もあっという間に円高になったわけでありますが、あのときはちょうど二五%というような数字であることを私は記憶しております。そのときも国内対策はとらなくちゃならない、あるいはまたいろんなことをしなくちゃならないというふうな、政府といたしましてもあらゆる対応策をとったことは矢田部委員も御承知賜っておるんじゃないかと思います。  だから今北米局長が大体数字を挙げまして申し述べましたことは、我々といたしましても、じゃあだれの責任かということになれば、これはまさに為替レートというものは神のみぞ知るという一つの表現もあるぐらいのことでありまして、G7が行われましてもなかなか容易ならざることであると。こういう責任上、やはり私たちといたしましても駐留米軍の経費が過大になるということは、せっかく結んでおります安保条約の安保体制の効果を阻害する要因になっちゃいけない。やはり円滑に動くということが大切だ、こういうことでございますから、まあひとつそのように御理解をぜひともお願い申し上げたい、かように思う次第であります。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 非をあげつらうことだけを審議しているわけではありませんが、そうしますと、去年の認識は少なくとも五年ぐらいを見通して円ドルレートのある程度の変化も踏まえてつくった協定じゃなかったんですか。少なくともことし別な協定、枠を倍にする協定をつくるのには去年の認識が間違っておった、五年間の見通しは誤っておった、済みませんでしたぐらいの、まああいさつされりゃいいというものでもないが、済みませんでしたで済む問題ではありませんが、話が前提としてあってしかるべきではないかと私は思うんです。
  95. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり為替相場というものは非常にデリケートな要素によって動いておるということでございますので、今矢田部委員から申されましたならば、去年そのような認識のもとに組むべき予算が途中で変えなければならぬというようなことは甚だ認識が甘かったんでないか、こういうふうにおっしゃれば私はそれはやはり否定することはできないと、こういうふうに考えます。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 だからいいというわけではありませんが。  そこで、経済情勢の変化というのも一部あったかもしらぬが、少なくとも一年後に特別協定を新たに結び直さなきゃならぬほどの私は変化だったとは思っていないんです、内容から見ても。むしろ別な理由があったんじゃありませんか。  一つは、竹下さんがアメリカに行くに当たって何か土産をつくらなきゃならぬ。かねてからアメリカは軍事費の削減がアメリカの財政事情その他から強く求められておる。そこで日本を初め同盟国に肩がわり分担を求めてくる。最近責任分担を盛んに言うわけでありますけれども。そこで手土産の一つにということで考えた筋もあるでしょうし、アメリカの世界戦略、つまり責任分担や肩がわり論に対応するための一つのポイントとしてこの問題を考え向きもあり、そのことがアメリカの軍事費増額要請にこたえる道でもあると受けとめたこともあるかもしれませんが、もう一つポイントになったのがペルシャ湾情勢じゃなかったかと、こういうふうに言われておるわけですね。  ペルシャ湾の米軍の行動に対して何らかの償いをしなきゃならぬ、支援をしなきゃならぬというようなことから、かねてより直接的に米軍の経費を日本が負担するわけにはいかぬ、そこで、お金に印があるわけじゃないので、在日米軍の駐留経費の一部を肩がわりすることによって、間接負担でペルシャ湾情勢に対応しよう、そんなことが背景にあって、一年を出ずしてこういうことがまた再び俎上にのぼることになったのではありませんか。この点いかがでしょうか。
  97. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 確かに、今いろいろとお話しなさいましたが、ペルシャ湾に対する措置を昨年の十月初旬にとりましたときに、なお書きにおいていろいろ書かれております。したがいまして、そのなお書きに基づく今回の私たち措置であるということは事実でございます。このことに関しましては、累次衆議院におきましても参議院におきましてもお答え申し上げてきたわけでございますが、ペルシャ湾そのものではないと、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。  ペルシャ湾に関しましては、私たちは軍事的な援助はできませんよと、したがいまして非軍事的な問題として、日本の平和に貢献する政策として、ペルシャ湾の航行安全装置これはひとつ我が国がやりましょうというふうに言っておる次第でございまして、ペルシャ湾のいろんな問題のときにそうした方向がなお書きにおいて明示されておりますが、ペルシャ湾そのものではないと、こういうふうに御理解賜りたいと思いますし、また我が国といたしましての日米安保体制の円満な遂行のため、運営のためということでございますので、これが竹下訪米のお土産であると、そういうふうに解釈をされますとちょっと我々の真意とは違うところがある、こう申さざるを得ないと存じます。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 去年の秋口、松永駐米大使が帰国をされて、ペルシャ湾情勢にどう対応するかといういろんな議論政府部内でも関係閣僚会議などを含めて行われているようです。その前後にいろんな新聞社とも松永大使は会ったりしているんですが、こう言っているんですね。なかなかいい方法はないが、一つ考え方として在日米軍の駐留経費を軽くすればアメリカの財源が浮く、肩がわりをすればその分をアメリカはペルシャ湾に振り向けられるという趣旨発言報道されております。  そして、今外務大臣指摘をされた関係閣僚会議で、「ペルシャ湾における自由安全航行確保のための我が国の貢献に関する方針」というのが出された。そのなお書きでお話があったような内容に触れられ、つまり「在日米軍経費の軽減の方途について米国協議を行う。」というようなことがいわば直接の引き金になって、ペルシャ湾だけではないでしょうが、全体としてアメリカの世界戦略、とりわけ最近の責任分担論の一翼をこの負担増で担うということに基本の考え方があったのではないか。その意味で言えば、幾ら外務省の役人の見通しが間違ったからといって、一年ごときで中身を変えるというようなことはあろうはずがないのでありまして、むしろ別の政治的要因、背景があったからこそ、こうして非難されながらもまたまたこの協定を出してきたのではないかと思うのですが、そうではないんでしょうか。
  99. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) たまたまペルシャ湾のそうした措置のときに、なお書きの中に書いてございますが、これをお読み賜りましてもおわかりのとおりに、「適切な対象について在日米軍経費の軽減の方途について米国協議を行う。」、そのことは「我が国の安全保障にとり不可欠な日米安保体制のより一層の効果的運用を確保する見地」だと、こういうふうに書いておりますので、このとおりにひとつ御理解を賜ればよいのではないかと私は思います。だから総理も私も、ペルシャ湾そのものではございませんよということをしばしばお答え申し上げました。  以上であります。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 地位協定及び特別協定中身に関連して少し伺いたいと思いますが、地位協定二十四条一項をちょっと読んでみてくれませんか。
  101. 福田博

    政府委員(福田博君) 二十四条一項。   日本国合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 というふうに読まれたわけですね。  後段の部分ですね、この地位協定の存続期間中は日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。地位協定、これは存続期間はどういうふうに考えますか。
  103. 福田博

    政府委員(福田博君) 地位協定そのものは日米安保条約の実施のためにつくられている地位協定でございますので、安全保障条約と同一の有効期間を有しているものと考えます。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 昭和三十五年に、六〇年安保のときに同じ時期につくられた地位協定ですから、安保条約と運命をともにするということになるわけですね。その地位協定の存続期間中、言うならば安保条約が存在する限りその期間中は日本国に負担をかけない、合衆国が負担することになっているという基本規定があるんでしょう。どんなに透かしてみても、円高になったら日本がその分は負担するんだなどということは書いていないですな、これを見ると。どこから特別協定などという発想が出てくるんでしょうかね。
  105. 福田博

    政府委員(福田博君) 昨年御審議をいただきまして締結をいたしました特別協定は、まさに今先生御指摘の第二十四条一項を読んでいては、つまりその適用上はそういう特別協定に盛られている八つの種類の手当の二分の一を日本側が負担するということは可能でないということから、一定の期間、具体的には昨年から五年でございますが、特例的、暫定的に特則として結ぶ協定として締結されたものでございます。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 その説明は去年から聞いているからわかっているんだが、基本規定はそういう特別協定などということを想定していないんでしょう。「この協定の存続期間中」、つまり地位協定の存続期間中ですね。アメリカも負担しますよと、日本には負担はかけませんよという基本規定なんですから。そもそもそこに出発点から問題があったわけです。  外務省ないしは防衛庁のとってきたこの間の経緯は、最初はずっと拡大解釈できましたね。維持的経費、とりわけ労務費もそれに含まれると言われるわけですが、この労務費を最初は直接費と間接費に分けて、直接費は負担できないが間接費は負担できると言って、五十三年に御承知のように福利費などを日本負担にした。そして、翌年にはその仕分けを今度はわきに追いやってしまって、国家公務員の水準を引っ張り出してきて、日本の国家公務員として保障されている部分についてはアメリカが負担し、それを上回る語学手当とかあれこれについては日本が負担すると言って、いわば拡大解釈で米側に肩がわりをしてきた。その拡大解釈やその場その場の勝手な理論づけ、理屈づけも限界にきちゃった。昨年はもう日本の今の地位協定ではどうにもならぬということで、事実上地位協定の改定を行った、特別協定です。  その特別協定をことしまたまた、もう去年の秋口からでありますが、一年を経ずして再改定をする。一貫してアメリカの日本に対する負担増、とりわけこの駐留軍経費のそれに日本はこたえる形でアメリカの全体の軍事戦略におもねてきている。それが地位協定の歴史ではありませんか。こういうことでいいんでしょうかということから、私は実は諸外国は一体どうなっているのか、去年同僚委員からの質問もありましたがね。アメリカは世界で百三十カ国とか言われておりますか、海外に基地を持っている。その基地に働く現地の従業員も雇用していると思うんですが、その仕組みや負担はどうなっているのか。防衛庁でも外務省でも結構ですから、国際的な比較を説明してみていただけませんか。
  107. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは実は大変それぞれの国によって事情が違います。私どもすべて捕捉しておりませんが、一部承知しております西独についてお話しいたしますと、西独におきましては駐留米軍が約七万人の従業員を雇用しておりまして、西独側が実施する業務は、派遣国の同意を得て賃金その他の雇用条件を定める労働協約を労働組合と結ぶこと、それから労働者に支払う給与の計算を行うこと、訴訟に関して派遣国側の立場を代行することでございまして、その他の業務、例えば募集、採用、格付などにつきましてはすべて派遣国側で実施しております。労務費につきましては給与その他、派遣国たる米側が負担していると承知しております。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 西ドイツが、多少仕組みは違いますが一番参考になるかと思うんですがね。西ドイツの場合には米軍の駐留に伴う労務費等の負担は一切していないんですよ。兵舎はもちろん、その米軍の家族の住居なども言うならばアメリカが支出をしている、負担をしている。労務費の負担を日本のような形でやっている国はないんじゃありませんか。
  109. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 先ほども申し上げましたように、私ども、米軍が駐留しておりますところで接受国がそれの従業員についていかなる雇用関係を結び、給与がどうなっているかということを承知いたしておりませんが、今労務のことだけに限って西独について説明いたしましたけれども、それだけに限って比較するというのは接受国の担いでおりますことを正確に理解するに当たってどうかなということでございます。  例えば、確かに米軍が労務者の給料等を払っておりますけれども、ドイツの場合は、我が国の三分の二の国土に米軍二十五万人を含む約四十万人の外国軍隊が駐留しているわけでございまして、その存在にかかわる、何と申しますかやっていかなければならないということはいろいろあるわけでございまして、労務だけを取り上げて、これをしていないから我が国はどうだというのはひとつ難しいところではないかと思います。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 私の質問に答えておりませんな。  労務費を西ドイツはアメリカが持っていますがね。日本のような形で肩がわりしていることはありませんよ。のみならず、隊舎の建設や米軍家族の住居、これは日本が今つくりつつあるわけですがね、この辺も本当は少し問題なんでありますが、西ドイツはアメリカがやっております。随分世界に百三十カ国にも及んでアメリカは大きな基地を持っておりますが、フィリピンのごときは基地の使用料をアメリカが払っているんですよ。日本は、施設等は全部日本の責任で提供しているんでしょう。これは二十四条二項の方ですが。  そういう施設区域日本が提供すると、そしてその維持的な経費、駐留軍の日本人労務者、これはアメリカが負担するというのがやっぱり基本になってきた。これだって西ドイツなどの制度から見れば随分日本はアメリカのために負担をしているわけなんです。そういう基本原則を曲げてまで国際的に例を見ない方法で日本が肩がわりをしている、負担増を毎年ふやしていく。去年からあるいは以前から問題になっているんですから、もう少し各国を挙げてみてください。例えばスペインやギリシャやトルコなどにも米軍の基地があり米軍が駐留していますが、どうなっていますか。
  111. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いろいろ北米局長から例を挙げましたが、ひとつここでお考え願いたいことは、この協定を結んだ時点、そして今日における時点、その後の日本の偉大なる発展ということもございますし、それに引きかえアメリカの経済は落ち込む、日本は上がる。端的に円高ドル安がそれを表現する。世界基軸としてのドルの威信を保っていた当時にこの協定が結ばれ、その後二十年を経て、さらにもっと日月が流れた。  こういうふうに考えてまいりますと、やはり日米安保体制の円満な遂行ということが我が国の安全と平和のためには極めて寄与していることでございますから、だからこの協定はがんじがらめであって、そのとおりだと私も思いますが、そういう推移を見たときには特例をひとつぜひともお認め願いたいということで昨年特例としてお認め願って、それを今回改定するということでございますから、この協定が結ばれました三十五年当時の日本と現在の日本との力というものの差がある。それを私たちが覆い隠して、やはりこのまますべて三十五年当時の事情と変わらないんだということであってはいけない。こんなことで、我々といたしましても何も米軍から言われたことではなく、むしろ私たちの自発的な判断、自主的な判断に基づいてやっておる、こういうふうにお考え賜ると御理解もしていただけるんじゃないかな、私はこういうふうに思います。  したがいまして、西ドイツの例もございましょうが、専門的なことはまた局長からお答えするにいたしましても、西ドイツも我が国と同じように経済発展の著しい国であります。しかし、西ドイツは西ドイツでNATOの一員としての立場もございましょうし、そうしたところに我が国とおのずから経済大国であってもあるいは差があるのかな。また別のところで協力をしておるのかな、私たちもそういうふうに思っておりますが、他国の比較論も大切でございましょうけれども、決してそれは私は不必要だとは申しません、大切でございましょうが、こうした特例を暫定的、限定的と申し上げておるのはそうしたところにそのゆえんがある、こういうふうに御理解を賜りたいと思います。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣、問題をほかにそらしているんですがね。日本とアメリカとの関係についてはさっきから議論もしてきましたので、今、国際的な比較の方に問題を移しているわけですね。日本とアメリカとの関係についてはもう少し個別的にも議論をしなきゃなりませんが。  その国際的比較を前から問題にされている。日本のように気前よく負担している国はないんですよ。むしろ基地の使用料まで取っている。フィリピンなどは基地協定がそろそろ切れるものだから、その三倍も四倍もの値上げをいかがするかという議論になってきているわけでしょう。フィリピンのまねをしろと即言うわけではありませんが、西ドイツだって一切負担をしていない。日本だけが年々、とりわけ最初の取り決めの大原則に反して負担を強いられる。  ですから、例えばカールーチ国防長官はこう言っているんですね。駐留経費の負担は日本世界で最高だと。さらにアミテージ国防次官補はこの三月十六日、アメリカの下院の歳出委員会軍事建設小委員会で報告をしているんですが、日本は米軍が駐留している国の中で最も気前のいい国だと。いいですか、先ほども述べましたが、これは国防報告にも出てくるんですが、米軍一人当たり四万五千ドル、総額二十五億ドルを援助しているという説明をした上で世界の中で最も気前のいい国だと。アメリカにとっては思いやられたり気前のいい国として評価は高くなるかもしらぬが、日本国民の貴重な税金がそんなに気前よく世界の最大の軍事超大国に思いやられたのではたまったものじゃありません。その点で安保ただ乗り論とか、日本の軍事費をもっとふやせと執拗にアメリカからの要請があることは私も承知をしております。  今度もまたアメリカの高官が来て、責任分担を中心に日本の負担増を求める動きがここ二、三日中にまた出るという報道もありますが、世界でどの国もやっていないようなことをどうして日本だけが、そして去年につけ加えてたかだか二〇%前後上がった円高というだけの理由でやる必要があるのかということになりますれば、ちょっとこれは日本の政治のあり方、対米関係は重要だとしてもアメリカにおもね過ぎる、アメリカの全体の世界戦略にあんまり気前よく加担をしたり一翼を担ったりしてもらいたくないというのが私どもの気持ちなんです。  私はその意味で言えば、アメリカは世界の百三十カ国に基地を置いているんですから、その基地提供についてどんな仕組みになっているのか、当該国はどんな負担をしているのか、アメリカはいかなる支出をしているのかということをもう一回全面的に調査してしかるべきだ。防衛庁だって各国の大使館に武官を配置しているんでしょう。その各国の実例をもう少し出してください。そうしてこの問題を議論しようじゃありませんか。西ドイツだけなどという例じゃ足りませんよ。
  113. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) NATO諸国はそれぞれNATO諸国間で取り決められているところによって応分の経費、貢献はいたしております。我が国につきましては、先ほど大臣が申されたことでありますが、我が国の抑止体制の重要な一環をなしております日米安保体制を維持するに当たって何を必要としているかということは、基本的には我が国が自主的に決めていくことだろうと思います。  それから、今御審議をお願いいたしておりますこの特別協定を改定するための議定書中身といいますのは、あくまでも駐留米軍の雇用者の雇用環境の改善、安定化にあるわけでございまして、そのために我が国政府が自主的に、先ほど来話題となっております両国間を取り巻く経済環境の変化をも念頭に置きつつこれだけの支払いを行いたいということでございまして、これはまさに我が国の自主的判断によるところでございまして、それによって御理解いただきたいと思います。  NATO諸国その他の国がいかなる形で米軍との間で経費にりいての取り決めをしているかということは、従来からも調べる努力をしておりますけれども、なかなか二国間であるということで教えてくれないということがございます。それがございまして、従来からわかっているところについてはこのように御説明いたしておりますけれども、なかなかひとつよくわかっていない、こういうことでございます。
  114. 矢田部理

    矢田部理君 アメリカの要求に押されて年々増額を続ける思いやり予算、これは後でもう少し議論しますが、日本防衛費が突出している中でも際立ってふえているのがこの思いやり予算、アメリカ駐留軍の経費なんですね。  一%枠突破とか中期防との関係についてもこれはいずれ別の機会に、次のところで議論をしたいと思いますが、この際限なく広がる日本防衛費増、少なくとも各国はどんなふうになっているのかということを調べることぐらいは、外務省なりそれから各国大使館に防衛庁も出しているわけですからこれはきちっとしてもらう。アメリカにも物を言う必要があるし、国民に対しても説明する必要があると思うんで、委員長、これは正式に要求していただけませんか。
  115. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 資料を要求されるわけですか、矢田部さん、外務省の方に。外務省、いかがですか。
  116. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) わかる範囲で調べさせていただきたいと思います。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 前から議論があるところですから、私も西ドイツの国防報告などを読んでいますが、各国に大使館員がいるし、防衛庁の何とか駐在武官だって行って仕事しているわけでしょうから、この程度のことはその気になればすぐに調べられるはずですから、次回の審議までに出していただくよう強く要請しておきたいと思います。  そこで、きょうのところの最後の質問になるかと思いますが、もう一つ大きな問題点として、衆議院でも議論になりましたが、駐留軍労務者の手当問題にずっと手をつけてきている、日本が肩がわりをする道を歩んできました。この特別協定もその立場からさらに負担を増額するという枠取りの協定だと思うのでありますが、一年を経ずしてこういう特別協定をまたまた出してきたところを見ると、どうも外務省は信用できない、これから何をやらかすかわからぬという不安や心配もあるわけですが、まさか駐留軍労務者の本給に手をつける、これを肩がわりするようなことはないんでしょうね、そこを明らかにしてほしい。
  118. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 今ここでお願いいたしておりますこと以外のことは、今考えておりません。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 ということは、今後とも手当問題についてはこういうことで特別協定などを国会で審議してもらうようにしてきたが、本給に手をつけて、これをアメリカの負担から日本負担にその一部ないしは全部を切りかえるようなことは絶対にないとここで約束できますか。
  120. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 現在そのようなことは考えておりません。
  121. 矢田部理

    矢田部理君 現在はわかっている。今後ともということ、これは外務大臣
  122. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今回のが先ほどから説明いたしておりまするとおり特例であり、なおかつ暫定的、限定的であると、こういうふうに申し上げておりますから、その御審議をお願いしておるわけでありまして、それ以上のことは私たちといたしましても考えておらないというのが私からの御質問に対する答えであります。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 つまり、今度の特別協定が言うならば特別協定としてもぎりぎりの制度であって、これ以上本給に手をつけてそれを日本が肩がわりするようなことは将来ともない、ここは明確にしてしかるべきだと思うんですが、外務大臣いかがですか。
  124. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まあ今お答えいたしましたとおりでございまして、現時点では考えておらないというのが私の答えであります。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 現時点はわかりましたが、今後ともを聞いているんです。
  126. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり現時点ということは非常に大切なことでございますから、そのことをひとつ、その時点で今御審議を願っておるということでございますので、それ以上のことは今日考えておりません。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 今考えていると言ったらおかしくなるのでありますが、これは重要なことなんですね。  衆議院で竹下総理の本会議答弁もあります。それから有馬さんですか、衆議院では何か、議事録を読むと、仮定のことだから答えられないなどとふらちなことを言っているわけですが、議事録にちゃんとありますよ。もう地位協定の本体にかかわる問題ですよ、これは。  手当問題はいろいろごまかして理由づけをしてきた、拡大解釈もしてきた、二度にわたって特別協定も出して、我々にとっては到底納得いかない方法で米軍の肩がわりをしてきた。これ以上はやりませんと、それは今後ともやりませんということを言うのは当たり前の話じゃありませんか、特に世界に例のない気前のいいやり方でやっているわけですから。これ以上は手綱を締めるという政治論があってしかるべきだと思うのですが、これはやっぱり宇野大臣、大物大臣としてそこをきちっとここでしてもらうのが私は政治のポイントだと思うんですが、いかがですか。
  128. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはもう期限も一九九二年三月三十一日というふうに明示されておりますし、なおかつ、じゃそのお金はどこから出るんだというような話も随分ございましたが、そのことに関しましても、御承知のとおり十八兆四千億、総額明示方式のその総額の中からでございますと、こういうふうに答えております。  したがいまして、そうしたことでございますので、私たちは現協定の御審議を煩わしておりますが、現時点ではその協定の先はどうなるんだということにつきましては、私自身考えておらない、これが私の答えであります。
  129. 矢田部理

    矢田部理君 くどくなりますがね、どうも私は正確にしないと性分がおさまらないものですからもう少し聞きます。  去年改定してことしまた改定ということになると五年間――五年間の議論ももう少し本当は後でしますが、どうして五年間なのかという背景や問題もあるわけですが、この五年間は少なくともこれ以上の枠の拡大はしない、本給に手をつけるようなことはしない、それはまさか約束できるでしょうね。
  130. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 考えておりません。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 この五年の期間中にまたまた再改定をして本給に手をつけるようなことは考えていない、しないと、これは外務大臣の約束が一番いいですな。
  132. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) もうちょっと詳しく言いますと、六十二年度から六十六年度、これは我が国の年号に関しましてでございます。したがいまして、六十五年度までに一〇〇%になるというふうなことでこれをお願いしているわけですし、したがいまして、この期間にそうしたことは考えておりません。この期間にそうしたことは考えておりません。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 この五年の特別協定期間中に。
  134. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) はい。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 去年も考えていないはずだったのが円高などということで考えられちゃったわけでしょう。また円高になったら考えるのかという疑問もわくし、いいですか、さらには本給に手をつけるなどというよからぬうわさもないわけじゃありませんので、念のために確認しますが、少なくとも今後五年間は、円高になろうといろんな動きがあろうと、本給に手をつけて再びお願いしますなどということはしないと、この約束はできますね。
  136. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 繰り返しで申しわけございませんが、今ここで御審議をお願いいたしておりますこと以外のことは現在考えておりません。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 現在の話は終わってその次の話に行っているんだ、あなた。もとに戻すんじゃない。現在ではなくて、この五年間という期間中は考えない、やりませんと、こう言いなさいと言っている。どうですか外務大臣、それでいいでしょう。
  138. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いや、今後とおっしゃいますと、ことしは一九八八年ですから、今お願いしたのは九一年度まで、つまり昭和六十六年度までのやつで、これはその年度としては五年間だから、私はその意味の五年間でお答え申し上げておるわけでありまして、今後というと六十三年からまたぬっと足が出てまいります。そうなってくるとまた話が、決してもとへ戻しているわけじゃありませんが、認識が違うといけませんから、私ははっきりと一九九一年度まで、つまりこの協定をお願いして以来、私たちといたしましては今おっしゃるようなことは考えておりませんと、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 そろそろ時間ですから、きょうのところはこのくらいで。
  140. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩       ─────・─────    午後一時二分開会
  141. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  142. 黒柳明

    ○黒柳明君 冒頭に、お昼のニュースで、昭和四十五年のよど号事件の関係者が一人兵庫県警で逮捕された、こういう報道がありましたんですが、警察庁の方、ひとつこの事実関係、今現在わかっておる範囲で結構なんで、教えていただけますか。
  143. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) お答えいたします。  昭和四十七年に北朝鮮に帰国いたしました二重国籍の人物、今Aと申し上げますが、この人物の日本の戸籍が盗用されまして、六十一年、この人物の名義の旅券が不正に取得された事案があるわけでございます。この事案につきまして、兵庫県警が名前をかたっておる方の人物を旅券法違反で逮捕、取り調べ中のところ、本日までに赤軍派のよど号ハイジャック事件犯人であります柴田泰弘と断定されるに至ったわけでございます。
  144. 黒柳明

    ○黒柳明君 何か日本から出国を二回とか三回とかしていたとか、その点は。
  145. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) この柴田は、不正に取得いたしました旅券によりまして、過去三回にわたりましてイギリス、フランス等に出かけておりました。
  146. 黒柳明

    ○黒柳明君 私も二十三年議員をやっていますけれども、そういう出入国についてはそんな詳しい方じゃありませんが、素人考えでも、十八年北鮮にいた者の一人が北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国から出国していたということは、当然これは当事者政府の何らかの許可というか、あるいは出国に対してのOKというか、あるいは向こうが主体的に出国させる目的でも持っていたのか、要するに向こうの、北朝鮮の政府がオーソライズされませんと出国できないと私は思うんですが、その点いかがでしょうか。
  147. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 先生御指摘のとおりだろうと考えております。この点につきましては捜査上も十分解明いたしたいと考えております。
  148. 黒柳明

    ○黒柳明君 済みません、お忙しいところ。恐縮です。  それから大臣、先般の新潟におけるピンポン、相当外務省も入国に対して御苦労なされたような感じが新聞の活字から見えましたけれども。せっかく入国を許可したわけです、それも必ずしも入国が全面的にOKな者をOKしたんだというようなニュアンスでもない者もいるわけであります。政治的な配慮ということも当然あった。また国会におきましても、野党からも委員会でそういう発言もありましたし、いろいろ検討した結果入国を許可した。しかし、今子細についてはまだこれからの解明を待つと。  ただ、六日の逮捕ですから、それできょうは十日ですから四日たっています。ですから、正式発表がきょうなされたのであって、ある程度の事情聴取、裏というものはもう相当知っているのではなかろうか、明らかになっているのではないか、明らかになっているはずだと、こう思うわけでありますが、せっかく外務大臣が政治的配慮をして、そしてスポーツだからいいだろう、いろんな今までの状況もある、北鮮については厳しい処置をとったんだけれどもと、そういう矢先にこういう問題が起こった。  しかも今申しましたように、どういう形であるのか、政府当事者が、北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国、それが出国を許可しなければ出られるわけはないんですから。そして、何をやっていたか、これはわかりません、私も。ただし、日本を拠点にしてヨーロッパに三回も出入りしていた。北鮮との出入りはまだ発表になっていませんね、当然していたのではなかろうか、しかも他人名義で、今Aと言ったそのにせパスポートを持ってと。  こういうことになると、非常に何か私は我が日本政府の、外務省の、あるいは外務大臣の政治的な温情をむしろ逆なでするようなことがここで起こったんじゃなくて、起こったのは前です、発覚した、こういう感じがするんですが、外務大臣、今のこのお昼の情報をお聞きになったと思います。お聞きになってどう思うか。また今のその新潟への卓球団の入国許可、これをした大臣としてこの問題との兼ね合わせ、どういうふうに見解をお持ちになるか、いかがでしょう。
  149. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まず最初に、赤軍が最近いろいろとテロを計画しているという情報これあり、また、有力な赤軍がアメリカにおいてもまた日本においても捕まりました。それと同時点において、意外にもょど号の犯人が国外に出て、そしていろんなテロ事件を計画しておるという情報も早く入っております。したがいまして、十二分に捜査当局と連絡をいたしまして、それぞれその人たちの出国並びに入国するとおぼしきところにやはり協力を求めておったことは事実でございます。  したがいまして、今黒柳委員が御指摘のとおりに、ああした国である以上はやはり政府そのものがオーソライズしないことにはそう簡単に出られるものじゃない、私もその認識は同一でございます。それが発覚したのがついこの間であるということでありまして、卓球の方は実は私が中国へ出発する前に法務省と打ち合わせまして、そして国会でもいろいろ御意見ございました。しかし、私たちは大韓航空機のテロ事件に対する厳しい措置をとったわけで、朝令暮改であってはいかぬということも私は当委員会におきましても申し述べたことがございます。  しかし、言うならばスポーツというものはこうした措置をとる以前の話であったし、公務員に関しましては厳しい措置をとるからこれは当然入国できませんよということも何度も私は申し上げてきました。しかし、法務省並びに外務省、いろいろと協議の末、韓国オリンピック成功のためには北鮮も御参加なさった方がいい、御参加なさる以上は物騒なことは考えなさらないであろう、そういう意味もありますから、私たちといたしましては、いろいろ問題はあったかもしれませんが、六日の日に発表するということをきちっと決めまして、私も中国に行ったものでございます。  そうして、私たちはやはり極力朝鮮半島の緊張が解けるように考えていく場面には、日本としてもそれをお手伝いできるように、緊張がほぐれるように、こういう姿勢をとっておるのでございますが、そうした意味から申しますと、我が日本の、しかも国内においてよど号の犯人が捕まった、しかもにせパスポートを持っておったということは甚だ遺憾である、こういうふうに考えております。
  150. 黒柳明

    ○黒柳明君 先般のアメリカの菊村、また前の奥平、外務省としても今大臣おっしゃったようによど号事件の関係者が何か不穏な動きがあったというニュースはあったと、それで要所に目を光らしていた、こういう発言ですが、これはいつごろからそういう情報が入ってきたんですか。
  151. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私、これ記者会見、懇談でも明らかにしておいたんです。したがいまして、この一カ月以内の話ではないか、こう考えております。
  152. 黒柳明

    ○黒柳明君 事実関係がまだはっきりわかりませんから、ただはっきりしているのは旅券法違反である、にせのパスポートを持っていた、これはもうはっきりしているわけであります。しかも我が国を出入国の拠点にしていた、拠点なのか、やっていた。旅券法違反である、それに今度は公権力が絡んでいた、当事者政府が。これはもう今の外事課長の話で外務大臣もそれは間違いないと。そうすると、ケースは違うにせよ韓国の金大中問題、これも事実関係というのは、全くカテゴリーは違いますけれども、公権力が絡んでいたかどうかというようなことで問題になって、今もって私たち野党としては定かじゃないというか食い足らない点があるわけであります。尾を引いている問題もあるわけであります。  今度は逆に、北が、今時点はっきりしているのは公権力が介在した、今法的に言いますと旅券法違反、こういう者を向こうから出国させていた、さらにこれはただ単に、ただ出国させて観光見物してこいということはないんじゃないでしょうかね。何らかのやっぱり目的があったんだと、これもはっきりしますと非常に引き続いて大きな問題に発展する可能性はあるんじゃないのかな、こう感じます。  大臣、今言ったように、相当前から情報をつかんでいた、今この事態が発生した、こういう御答弁でありますが、今後につきまして非常に私は、外交関係がない国ですから、ある国ならまたそれなりの対応ができるわけですね、ない国こそやっぱり非常に意思の疎通が欠けるわけですから、だから今後の発展というものに非常に私はある面でちょっと憂慮――余り心配する必要はないのかわかりませんが、憂慮するんですが、大臣は今の時点でこの事件の発展の推移をこれから見守るということを前提にしましてどういうような感じをお持ちでしょうか。
  153. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり北朝鮮と国交がないということにおきましては、情報がとりにくいまた私たち考え方を率直に意見を交換する場がないということでございますが、例えば第十八富士山丸のごとく、いろいろと我々も第三国等々の手を通じましてあるいは赤十字社を通じまして我が方の意図をお伝えするということに懸命の努力をしております。そして極力やはり国交がないとはいえ、朝鮮半島は南北それ自体がお話し合いになって、そして解決を求むべき問題であるということにつきましても理解を示しておるわけでございますが、しばしばこういう問題が起こるということは甚だ遺憾だと、かように存じます。
  154. 黒柳明

    ○黒柳明君 次の問題で、きのうきょうあたり活字や画面で問題になっておりますので、今これから審議する協定と関係ありますから。  うそ発見器の問題なんですけれども、何か一部報道によりますと、在日米海軍がうそ発見器を七十二カ所、七十二カ所の米軍海軍基地というのは、私二十年来この米軍基地をフォローしていたんですけれども、ちょっと数がわからないんですけれども、これは世界全体なのかなという感じ、在日ということではちょっと数が多いなという感じもするんですが、七十二カ所、対象者五百人、うそ発見器をかけて、その中で特に横須賀の三百人の人に四月十一日から個人個人にやっていいかどうかという許可を求める文書を提示している、こういうことが報道されておりますが、これにつきましてちょっと教えていただけますか。
  155. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) ただいまお尋ねのうそ発見器、俗称うそ発見器と言っていますけれども、これは実は私ども七十二カ所というその箇所については確認いたしておりません。ただ私どもが承知しておりますのは、SRF、横須賀の艦船修理廠でございます、支所が佐世保にございますが、主としてこういったところの秘密を取り扱う職場におります従業員についてその適格性を審査する一つの手続の一環として、事前にもしそういう秘密漏えいの事案が起こった場合にその調査を自由意思で受けるといったような趣旨の承諾書を取りつける、こういう動きがございまして、四月来一部実施していることは先生御指摘のとおりでございます。
  156. 黒柳明

    ○黒柳明君 秘密事項の扱い許可証ですか、これは米軍の海軍だけで、陸空の従業員はないんですか、こういう許可証を持っているのは。
  157. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) その点についても私ども在日米軍司令部に問い合わせておりますけれども、現在のところ、陸軍、空軍についてはそのような提示はないと承知しております。
  158. 黒柳明

    ○黒柳明君 制限許可証を持っている従業員がいないということですか。いてもそういううそ発見器についての行動を起こしていない、どっちですか。
  159. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) 今申し上げたように、事前にそういった取り扱いをするについて、ポリグラフで調査をするといったような同意書をとるというようなことは考えていないということでございます。
  160. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、許可証を持っている人は陸軍でも空軍の基地でも従業員にいるということですね。
  161. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) これは私ども、直接何名の者がそういう資格を持っているかと調べておりませんけれども、恐らくはいないということはないと思います。
  162. 黒柳明

    ○黒柳明君 陸でも空でもそういう秘密取り扱いの許可証を持った人がいる、だけれどもその陸空の方ではうそ発見器についての行動は起こしていない、こういうことですか。
  163. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) そのとおりでございます。
  164. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから、対象者が五百名と報道されていましたけれども、そのうち横須賀、佐世保を含めて三百で、あとがほかの基地。そうすると三百のうち、横須賀だけで佐世保は行われていない、それからあとの二百名も行われていない、こういうことでいいわけですか。
  165. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) ただいまは数のお尋ねでございますけれども、私どもが承知しておりますのは、まずそういったような現在秘密の取り扱いの許可を得ている者、こういった職員がおおむね五百ぐらいあるんだということと、それからそのうち、当面SRFの、これは先ほど申し上げたように艦船修理廠でございますが、の従業員を対象にして取りつけるということでございます。
  166. 黒柳明

    ○黒柳明君 これ何か、うそ発見器はアメリカでは特別なことじゃない、民間企業でもあるいは当然世界各国の基地の中でも行われている、だから日本だけじゃないというようなことも報道されておりますけれども、ただ日本の場合にはあくまでも米軍基地といったって日本の国ですからね。刑事事件で犯罪者でもやっぱり当人の許可がなければ、同意がなければうそ発見器にかけられない、これはもう言うまでもありません。そうすると、幾ら米軍が世界各地でうそ発見器なんか当たり前やっているんだと、あるいは米国の中ではそんなもの当たり前なんだといっても、ここは日本ですからね。  しかも、今審議しておりますこの協定、この前も大臣が本会議答弁されましたように、この協定を通していただければ、思いやりしていただければ、もう従業員の雇用の問題なんかは政府でもしっかりケアします、沖縄の例であっても一たび雇用されぬようになったところがもう回復しておりますと、本会議で事実関係をおっしゃった。そうすると今問題なのは、やっぱり従業員がそれを拒否した場合、職場の転換とか、あるいは首になるとか、あるいは配置転換、そういうようなことがもう必然的に起こってくるんだろう。そうなった場合に、この思いやり予算、この協定を通した場合に全面的に政府は基地の従業員の雇用は保証しますと、こうおっしゃったことはこの問題にも通ずるでしょうね。どうですか、大臣
  167. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) まず、今回米側が取りつけようとしております同意書の内容、要旨について簡単に申し上げたいと思います。  これは先ほどもちょっと申し上げましたけれども、ポリグラフの調査というのはあくまでもみずからの自由意思はよって受けるということが明示されてございます。と同時は、その調査の事項でございますけれども、これもあくまでもプライバシーにわたることのないような配慮がなされております。  と同時に、ポリグラフによる調査、これはあくまでもそういった秘密漏えいの事案が起こった場合の話でございますけれども、その場合、特にそれがしの嫌疑、容疑があるという場合に、本人の同意を得ますけれども、もし同意しなかった場合には、場合によったら他の秘密を必要としない職への転任もあり得るということでございまして、解雇ということではございません。少なくとも同意書を出さなかったこと、あるいはうそ発見器の調査を拒否したことによって直ちに解雇されるといったようなものではございません。
  168. 黒柳明

    ○黒柳明君 配置の転換、そういうことについては大臣どうですか。この思いやりを、これだけ思いやりをやってやるんだから、雇用問題についてもこちらはもう大丈夫なんだよと、面倒見ますよと。それと、今当面に起こっていますそのうそ発見器における同意書の拒否、それによってみずからの自由意思でも、これは聞くところによると同意する者は少ないんですよ。やっぱり拒否ですよ。組合自体非常に拒否反応が強いですからね。ですからこれと、確かに首じゃないですね。ですけれども、職場の配置転換、こういうことについては、これは首じゃないんだからそれはひとつ我慢してくれよと、こういうことになるでしょうかね。
  169. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) まず一つは、三百とか五百という数字が新聞に出ておりますけれども、私どもが現在承知しているのは、横須賀の艦船修理廠について約四十名の者についての同意書の取りつけが終わっております。と同時に、これは実は一斉に三百とか五百というものの同意を取りつけるということではございませんで、一応現在のその種の資格要件というのは五年間ということになっておりまして、五年間の期間が失効した段階で、逐次本人の了解のもとに同意書を取りつけるという内容になっております。  それから、もう一つ配転の問題でございますけれども、これもあくまでもその配転の中身が問題でございます。例えば全く今までやったことのないような、全然今までと違う職域に変えられるとか、あるいは全く本人が行く気持ちもないようなとんでもない場所に転任させるということであれば確かに問題でございましょうけれども、少なくともそういったような、そのために直接的にこの調査、ここのところだけを理由にして不利益な処分はしないということの確認は得てございます。
  170. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、職場の配置転換をする場合でも、本人の同意、これを前提にすると、こういうことでいいですか。一方的におまえ向こうへ行け、関連のところがあったって本人は希望しない、拒否する、こういう例だって出てきた。そういうことについてはやっぱり施設庁としても面倒見てやりますね。
  171. 山崎博司

    政府委員(山崎博司君) ただいまの他の職域への転任ということでございますけれども、その場合は当然のことながら労働条件、給与条件といったようなものが下がることのないようには当然配慮しなくちゃいけないと思っています。
  172. 黒柳明

    ○黒柳明君 またこの次もありますし、時間があれですから、ほかの問題がいっぱいあるんで。  大臣、そういうことです。ですから、もし拒否した場合には職場の配置転換、その場合でも、雇用、労働条件とか本人の同意とか、いろいろなものがあると。ですから、これから起こるであろう問題ですから、ひとつ私たちは残念ながら、賛成しようと思ってもどうしても賛成できない点があるんで反対ですけれども、基本的にはやっぱり日米のこの友好というものは外交の基軸であるということは変わりありません。  そうすると、やっぱりこの思いやり、反対しようが賛成しようが国民の税金というものをアメリカ軍にやるわけですから、思いやりということで。そうなりますと、これをやるからには雇用問題、これ雇用の一環ですから、自分の意思にそぐわないところに配置転換なんて、これはもうついせんだっての大臣の本会議のあの答弁が全くほごになっちゃうわけですから、今後もしそういう問題が起こったら、そういうことがないようにするという大臣発言も踏まえてぜひ面倒を見ていただくと、この約束は大丈夫でしょうね。
  173. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 第一義的には、今答弁をいたしました施設庁の問題でございましょうが、我々といたしましても従業員の雇用の安定、これを図るためにこの協定案を出しておるわけでございます。それはそのとおりだとお考え賜れば結構だと思います。  ただいま、どういう理由かは知りませんが、やはりそれぞれ自分の職場には忠節であるということはいろんな面においてこれは当然のことではないだろうかと、こう思いますから、非常にそれが非合法なことであったとかまた不合理なことであったという場合がもしそれあるのならば、これはやはり政府といたしましても関心を持たなければならないと、かように考えております。
  174. 黒柳明

    ○黒柳明君 時間がありませんもので、クロス・サービス・アグリーメントですか、これについて聞いていきますけれども、午前中にいろいろありましたからね。  先週ですか、連休明けだから先々週ですな、相互兵たん協定というのがありましたですね、立木先生がちょっとお触れになって、それとこのクロス・アグリーメント・サービスと、これは同じものなんですか、タイトルがちょっと違うんで、その点どうなんでしょうか。相互兵たん協定、先々週のこの委員会で。
  175. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 恐らく同じことを指しておられるのではなかったかと存じます。
  176. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、まだこれから話し合いが始まると、それからいいか悪いかはそれによってだと、内容はまだまだこれからだと、こういうことでしょうが、ただこのモデルはやっぱり当然NATOであると、こういうことであると思うんですが、これはNATOのとおりやるか、あるいはやるかやらないかもまだ話し合いしていませんからね。モデルケースはNATOの協定であると思うんですが、この点はどうなんでしょう。
  177. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) アメリカにおきますNATO相互支緩法という法律に基づきましてまずアメリカがNATOと協定を結んだわけでございまして、その法律の改正によりまして、NATO以外の日本を含む四カ国ともアメリカの国防長官にその協定を結ぶ権限が与えられるという改正がなされた結果出てまいった話でございますので、先生のおっしゃるようなことになろうかと思います。
  178. 黒柳明

    ○黒柳明君 NATOはWHNS、当然NATOとして、統合軍としてアメリカと結んでいると思いますね。それからそのほかの協定というのはこのクロス・サービス・アグリーメントも結んでいるわけですか。
  179. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 現在私ども聞いております限りでは、相互物品役務融通協定、NATOの十カ国と結んでいるというふうに聞いております。これらの大部分の国は、まだよく詳細はわかり窓せんが、この協定とは別個に、いわゆるWHNS協定を別に結んでいるというふうに聞いております。
  180. 黒柳明

    ○黒柳明君 NATOのクロス・サービス・アグリーメント、これは平時、戦時どっちなんでしょう。WHNSがあるんですよね、これはもう当然Wですから戦時ですわね。NATOの場合のこの物品使役融通協定というんですか、日本語ではっきりどう言うんですかね。これは平時、戦時、どういうことになるんでしょう。
  181. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) まだしかとはわかりませんが、特にアメリカとNATO諸国との間で結ばれているその協定中身というのはわかっておりませんので、実は確たることはわかりませんが、その協定のもととなっておりますアメリカのNATO相互支援法、この法律ではどちらということを限定しておるわけではございません。  しかしながら、法律はあくまでも米国国内法でございますから、その国内法の範囲内でアメリカが個別の国と協定を結ぶわけでございますので、それぞれの国との特別な事情によって、決め方いかんでいろいろな限定が出てくるのではなかろうかと、こういうふうに思います。
  182. 黒柳明

    ○黒柳明君 北米局長外務省としてはまだ、ハワイで話を聞いて、それでやるやらないも、話し合いするもこれから、まして協定を結ぶ結ばぬもこれから、まだできたてのほやほやでしょうけれども、それからまだ一週間ぐらいですか。このNATOの結ばれている協定、これについては全貌は御存じなんですか、外務省。当然外務省は出先がありますから、防衛庁は出先がありませんから、各国の状況、十カ国ですか、ノルウェー、デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク云々、その状況は御存じなんですか。
  183. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) どこの国と、どこの組織と米国締結しているかということを承知しておりますが、それぞれの内容がいかなるものであるかはこれから調べていかなければならないと思っております。
  184. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、WHNSは結ばれていると、それから物品役務融通協定と言うんですか、あるいは相互兵たん協定と言うんですか、これはイコールであると、あるいはクロス・サービス・アグリーメントと言うんですか、何かあっちこっちいろいろある。これは結ばれているであろうと、内容についてはわからない、これからだと、こういうことですね。
  185. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) いわゆる融通協定につきましては今申し上げたとおりでございます。  それから、いわゆる有事における接受国支援についての取り決め、これは締結している国がいかなる国であるかということは私どもわかっておりまして、内容につきましては、西独だけについてはこれが公表になっているものですから承知いたしておりますが、その他については秘密になっているところもありますし、内容がわかっていないというのが実情でございます。
  186. 黒柳明

    ○黒柳明君 これから話しするわけで、どういう内容になるかわかりませんけれども、この物品役務融通協定、これはマスコミの方がこう活字になっているのを私たち勉強さしていただいたんですけれども、やっぱり後方支援とかサービスとか役務とか、こういうものは当然含まれる、こういう認識でいいわけですね。こう活字になっているので、こういうことで私たち知っているわけですけれども、そういうものであろうと。もし話し合って協定を結ぶならば、後方支援とか役務とかあるいは物品をお互い融通し合うとか、そんなことになるんだと、こういうことですか、大体内容的には。
  187. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) まさに、中身につきまして協定を結ぶ有用性があるかどうかということをまずやるわけでありますが、万一結ぼうということになりましてその中身を決めるということになりますれば、そのときのお話し合いということになるわけであります。  それで、まずアメリカの法律で大枠がどう書いてありますかと申しますと、先生がおっしゃられたように、後方支援、補給品、役務というものがいろいろ定義をなされておるわけでございます。ただ、適用範囲ということで、例えばコマーシャルベースで入手できるものは除くとか、FMSで取得できるものは除くとか、それから主要装備品とか初度部品とか、そういったものは適用除外するとか、いろんなことが書いてございます。したがって、アメリカの法律でもいろいろ適用除外がございますし、しかもその範囲内でまた個別の国と協定を結んでまたその範囲内でやるということでございますので、最終的にどういう姿になるかは協議いかんと思います。
  188. 黒柳明

    ○黒柳明君 ただ、物品それから役務の融通協定という言葉、これから想像すると、やっぱり後方支援とかサービスを融通し合うとか、あるいは弾薬が入るのかどうか、こんなことは別にしまして、そんなことになるであろう、こんな認識はいいわけですね。
  189. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) そのとおりであろうかと思います。
  190. 黒柳明

    ○黒柳明君 それから、先ほど課長さんが、ハワイで聞いた範囲ではどの程度聞いたかわかりませんけれども、平時だけのことであって、戦時にはこの協定じゃだめだろうとおっしゃったんですけれども、それはどういう根拠でおっしゃったんですかな。
  191. 萩次郎

    説明員(萩次郎君) 舌足らずで申しわけありません。私が申し上げたかったのは、アメリカ側の法律では平時、有事という区分けはしておりませんと、ただ、私どもがハワイで聞いた範囲内では、この協定はそういう物の貸し借りということとその支払い方法というような、そう言ってはあれですが、大変瑣末なやりとりを定める協定でございますので、例えば本格的な有事を前提としたような協定ということでありますと、この物品役務融通協定だけではとても全部カバーし切れないのではなかろうかと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  192. 黒柳明

    ○黒柳明君 そこで、私はいつもこうおかしく思うんですけれども、私のところははそれがあるんですよ。これはノルウェーの物品役務協定。これがデンマーク、これがルクセンブルク。これはさっきおっしゃった西ドイツの、これは公表されていますからね、あるんですよ。どういうことなんですかね、こういうものが私のところにはすぐ入手できるというのは。  それで、それだけの話を聞いてきて、外務省はそんなものはわかりません、防衛庁がこれを一生懸命やるかやらないか別にして、そんなものはわかりません、締結国だけわかります。  これを見ますと平時、有事に関係しているんですよ、平時、有事。第五条一項、「両当事国」、これはノルウェーです。全部同じです。ほとんどニアイコールです。おのおのサインしている人が違うぐらいのものです。アメリカは同じです。「両当事国は平時、有事を問わず、自国の国家的目標の優先順位に矛盾しない範囲で後方支援、物資の補給サービスに全力を尽くす」云々と、有時、平時のことなんです、これ。これ英語ですわ、こっちはドイツ語ですね。これは訳文あります、公表されていますから。いろんなことが出ている、ここに、いろんなことが。項目も出ている、全部。何をサービスするか、附属議定書Aというのがあって、詳しく出ています。  なぜこういうものを皆さん方は入手できないんですか。入手できないというよりも、私はここで一番懸念するのは、NATOのこの物品役務協定というのは、これは有事、平時、戦時だって言うんですよ。ちょっと、英語堪能な方、有馬さん一番堪能だから、これ私インチキを言っているんじゃない、来てごらんなさい、見てごらんなさい。この中で有馬さんナンバーワンですから、わかっているんですよ、すごい英語ですから。向こうの大学院卒業ですから。(資料を示す)そこだけ見なさいよ、まず五条の一項。僕は英語を全然読めませんもので日本語の方がいいわけですよ。
  193. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) まさに米国に対しましては、今般せっかくの申し入れがあったのだから、これからひとつ我が国にとって必要であるかを含めて白紙で検討させてほしいと申したわけでございまして、これからこういうものを入手していくということでございます。  それから、これ今私、先生おっしゃられたとおりに、平時、有事を問わずというふうに書いてございますが、先ほど来防衛課長が申しておりますことは、私ども今研究いたしておりますのは、米国国内法であるNATO相互援助法なものですから、その中を見る限りではどうもひとつ戦時に及ばないのではないか。例えばNATO以外の四カ国につきましては、それぞれの国に対して、その年々に負うことのできる債務というものは千万ドルだと、十数億円だと、こう決めてあって、そのうち二百五十万ドルまでは物品のためのお互いの債権債務を負うことができるというようなことがあるものですから、そういうような枠組みを見ますと、どうもいざ有事のときのことを決めているのではないのではないかなという一般的な印象。それから、そもそもこの取り決めというものは演習をより円滑に行うためにできたものであるという米側説明があるものですから、そのように先ほど来、どちらかといえばこれは平時の際のものを考えているんだろう。  他方、防衛課長がけさも申しておりましたけれども、それを断定的に申すことはできませんということを申しておるのでありまして、これは確かに……
  194. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、英語があるから、英語のを見なさい。これはミューチュアルになっている、こっち全部、これがミューチュアルになっている、デンマークの。時間がかかってしょうがないんだから、同じです、内容は全部同じ。
  195. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これはいわゆる兵たんにつきましてのロジスティカルサポートのことにつきまして、多分これは二つの重なる可能性を私は排除いたしませんけれども、それは有事の、先般来言っております――西独と米国とのやつは大変に包括的なものであって、後方支援あるいはその他のものを取り決めてありますが、その他の国につきましては兵たんについてだけあるいはそれぞれ範疇別に取り決めているものがあって、とりあえずそれを拝見いたしますと、場合によると有事の兵たんだけのことかなという印象を……。  ですから、このクロス・サービス・アグリーメントであるかどうか、ちょっと……
  196. 黒柳明

    ○黒柳明君 アグリーメントなんですよ。  これを見てごらんなさい、ミューチュアルと書いてある。だから相互兵たん協定と書いてあるんじゃないですか。だから、一番初めどういう文字が同じなんですか、同じだということであれしたんですよ。それっきゃないんです。結ばれている協定はそれっきゃないの、NATOとは。いいですか、西ドイツのこのWH、これと結ばれているのはこれっきゃない、各国全部。文字は違うんですよ、ミューチュアルなんですよ。
  197. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは相互支援、おっしゃられるとおり……
  198. 黒柳明

    ○黒柳明君 よく調べて。おっしゃるとおりだけじゃなくて。これから話し合いしようと、いいか悪いかもまだ決めていないと。ただ、あえて恐れるという言葉を使いたいんです。  二月の衆議院の予算委員会から始まった、これポンカスの問題なんか言ったら何も知らないよ、あなた方はきっと。何でこんなことがわからないのかと思うんだ。  ちょっと今の途中にするけれども一つ聞きましょうか。  これ、防衛庁で二月に配ったですね、有事来援の。この中で、事前集積が行われている国、空軍用装備、「不明」、これはどこですか、今。それから同じく集積状況、空軍用装備、「現時点における集積状況は不明」、これはわかりませんか。ちょっと横にそれたけれども。わからなきゃわからないでいいです、一言でいいです。
  199. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 一部はわかります。全部はわかりません。
  200. 黒柳明

    ○黒柳明君 まあまあ、それじゃ後で教えてください。
  201. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) はい。共同作戦基地、いわゆるコロケーテッド・オペレーティング・ベースと言って、空軍の基地をつくっているというところでございます。
  202. 黒柳明

    ○黒柳明君 空軍用装備の「不明」と書いてあるところはどこの基地ですか、国ですか。空軍用のNATO諸国における事前集積の状況衆議院の予算委員会では事前集積が行われている国、空軍用装置は「不明」と書いてあるんです。この国はわかりましたか。それから三月たって――まだわからない。余り僕が教えてやったって、日本外務省の権威なくなっちゃうからな。  それからその後、集積状況、空軍用装備、「現時点における集積状況は不明」、これはわかりませんか、まだ。
  203. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) わかっておりません。
  204. 黒柳明

    ○黒柳明君 こういうことで、事前集積、有事来援のことで、それから有事立法、国内的なこと、あるいは事前集積のことから、事前集積が国会で先取りしてひとり歩きしちゃった感じもしないことはない。だけれども、その後にいろいろいろいろ、今言ったようにHNSだあるいは物品役務協定だ、どんどん出てきている。やるやらないは別なんですよと言いながら、次から次からアメリカから提案されて、こちらは話し合いに応ずる構え。  ところが、そのモデルケースであるNATOではそんな平時、有事なんということは頭にないわけ、当然そんなものは。後方支援にしたって役務の分担にしたって、全部これは平時じゃないですよ。物なんか考えてないんです、彼らは。全部有事想定ですよ。だって、平時のときにはお互い融通し合うけれどもこれは戦時はだめだよなんと言ったら、何のための平時の訓練ですか、平時の共同訓練ですか、純度の向上ですか。有事を目指しているんじゃないですか。  それを、こういう物品と役務だけ平時なんですと、共同訓練なんですと、だけど有事は違うんですと、NATOは全部平時、有事。平時も含めて有事ですよ、こういう協定は。だから日本もそれなりに覚悟していないと――いただきましたよ、アメリカの国内法。あったなここに。国内法あったですね、アグリーメントの国内法。これは確かに国内用ですよ。クロスサービスのことです、国内法ですから。ところが実際の二カ国で、NATOで結ばれているのは平時、有事じゃない。  もっと書いてありますよ。こっちのは、何するかというと、こういうふうに書いてあるんですよ。――それからもう一つ言いたいのは、有馬さん、西ドイツのWHNSとこれと内容もニアイコールなんですよ。これが物品役務協定相互兵たん協定。細かい数字は違いますよ、当然。違いますよ。  それでさらに書いていることは、食糧、輸送燃料、油、木材、医療、通信サービス、医療サービス、弾薬、倉庫サービス、施設使用、訓練サービス、部品パーツ修理、メンテナンスサービス、空港、港湾サービスまでにこれは及ぶと、こういうふうに議定書Aがありまして、そこで細かく書いてあるのね。これ合意している。こう書いてあるんです、ここには。これは平時、有事に関係ない。こういうものがNATOでは結ばれているのがこの物品役務協定です。それをアメリカが国内法でクロスサービスと、こういうふうに言った文書、それとは内容が全く違うんですよ、これとは内容的に。ですからひとつこれを入手しましてよく見まして、モデルケースですから。ここまで立ち入るつもりなんか当然ないんでしょうね。
  205. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 一つは、繰り返しになりますけれども、つい先日お申し出があって、これから研究するということでございます。  それから先ほど共同作戦基地、いわゆるコロケーテッド・オペレーティング・ベースと申しますが、これは空軍の増援部隊等についての取り決めでありますが、これ一九八七年の同盟国の防衛責任分担に関する報告書によりますと、共同作戦基地及び同様の海軍のための基地に関し米国はベルギー、カナダ、デンマーク、西独、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポルトガル、これには海上監視用航空機のため、トルコ、英国と協定締結しているという記述はございます。内容は私ども承知いたしておりません。したがいまして、そういうところとこの種の取り決めを結んでいるということはあろうかと思います。  それから、繰り返しになりますが、私どもはあくまでも米国国内法を今のところは検討しているわけでございます。  それから西独は量質ともに大変規模が大きくて、ドイツの国防白書、一九八五年だったと思いますが、事態がこれはもう質的にもまた対象の範囲においてもたぐいまれなものだというようなことが書いてございまして、一つそういうものが我が方の例になるというふうに私ども一応考えております。
  206. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはいただきまして読ましていただきました、米国内のクロスサービスのことは。だけど、これは全然違いますから、NATOの二カ国間の物品役務協定。アメリカはこれを前提にやっているわけですよ。それを国内法として、いただいたものはあるわけだ。内容的には全然違いますね。だってアメリカは、アメリカの平時も有事もありはしませんもの。二カ国、やっぱりNATOそれから対日本との関係においてこれから話をして協定を結ぼう、既に結ばれているというんです。その内容については何回も言いますように平時だけを想定したものはない、有事、平時というものは連動している。これは当然ですよ。平時だけのことなんていうのは、戦争で有事なんてのは考えられない平時なんかありませんからね。これはここに書いてあるとおり。  ひとつ外務大臣、まだこういう資料は手元にないと言う。これひとつ大使館に言ってもらってくださいよ。ノルウェー大使館に言って、ベルギー大使館に言って。くれますから。それで英語であれしていただきますと、どういうものを米軍とNATOで結んだかというのがはっきりわかります。いろいろな問題がこれに関してあるんですけれども、今時間がないので、またあさって八十分ありますから、その時間にさらに詳しくやらしていただきます。  きょうは有馬さんよかったのよ、あるということをあれして。今度は同じ土俵の上でできますから。ひとつ見ていただいて、よく読んでくださいよ。私たち、何も皆さん方の揚げ足をとってやるだけじゃないんです。やっぱり危険なことは、やっちゃいけないことはやっちゃいけないと、危険だから注意しろとこう言わなきゃならない、言いたいわけですよ。それには皆さん方が知らない場合も中にはあるでしょう。ですからそういう場合には、私知っている場合にはこういうものがあって、内容はこうですよ、ここまで立ち入ってはうまくないですよ、こういうことについても申し上げさしていただいた、こういうことです、大臣。どうですか、総括して一言お願いしますよ、うなずいてばかりいないで。
  207. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今御指摘の問題に関しましては、そうしたものがあることが果たしていいか悪いか、まだ未解決の問題だし、検討していないということは私先ほどから申していますが、諸外国の例を十分研究せいということにつきましては、これは当然さしてもらうべきだろう、こう思っております。
  208. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、NATOのものがわからないというわけよ、具体的内容が。私具体的内容も持っていますと、こういうわけ。その内容というのは平時だけじゃないですよ、戦時も連動して結ばれた協定ですよ、こう今指摘したわけですよ。  それについてハワイでまだ話を聞いたばかりですから、これから話、さらに内容、結ぶか結ばないかにしても、アメリカが考えている国内法はこれはアメリカの国内であって、NATOと結んでいるものとは違いますよと。アメリカの国内法を持っているんですよ、クロスサービスも。私もらったんです。それとは違いますよ、こういうことを言っている。だから、こんなところまでは踏み込まないでしょうね、注意しないとだめですよと、こう私言った。それについてひとつコメントしてください。
  209. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これから検討するところでございますから、今からイエス、ノーということを私の立場から明らかにすることはどうかと思っております。
  210. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいでしょう。またあさって、楽しみにしています。
  211. 広中和歌子

    広中和歌子君 今回のゴールデンウイークには、竹下総理のヨーロッパ訪問を初めといたしまして各大臣が外地に赴かれたわけでございますけれども宇野外務大臣も香港、中国などを御訪問、御苦労さまでございました。  次回はどのようなところを考えていらっしゃいますでしょうか。今まで、フィリピンに始まりまして、いろいろアジア諸国を非常に地味な形で外交を展開していらしたわけでございますけれども、次のターゲットとしてどこをお考えでございますか。
  212. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アジア・太平洋諸国の一員だという立場から申しますと、やはりそうした方面にまず認識を深めていくということが大切でございますから、したがいまして韓国、中国、さらにASEANの有力国であるインドネシア、そしてシンガポールと回ったわけでございます。その中で、特にOECDに出るに際しまして、やはりNICSと呼ばれている地域の考え方も当然先進国としては聞いておく必要がある、こういうふうな感じでございましたから、香港、シンガポールにもそうした意味で立ち寄ったわけでございます。さらに、マニラは終わっておりますから、まだタイ国並びにマレー、ブルネイが残っております。これを近く回りたい、こういう予定を持っております。
  213. 広中和歌子

    広中和歌子君 今環太平洋の時代というようなことで、三カ月ぐらい前になりますか、環太平洋ということでニューズウイークなどにも特集が出て、そして日本アジアにおけるリーダーシップというものが非常に評価されている中でぜひ御活躍いただきたいわけでございますけれども、中近東の方にお出かけになるおつもりはございますでしょうか。
  214. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今のところ予定はいたしておりません。しかし関心は抱いております。
  215. 広中和歌子

    広中和歌子君 私としては、イラン・イラク戦争とか、それからイスラエルをめぐりましていろいろさまざまな紛争のある中近東などにもぜひ日本外務大臣としてリーダーシップを発揮していただきたいというふうに思っているわけでございますけれども、イスラエル訪問などは御予定にはございますでしょうか。
  216. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 我が国外交方針の一つに、平和に貢献する外交、それで竹下総理もそのことはこの間ロンドン市長の主催午さん会のスピーチで大きく取り上げて、そして自分の構想を述べられました。だから、紛争地帯ということになりますと、カンボジアあり、イラン、イラクあり、さらにはまた西岸、ガザありというふうなことになりましょうか。したがいまして、こうしたところに対しましてもやはり独特の外交は展開した方がいいと私も考えております。
  217. 広中和歌子

    広中和歌子君 竹下総理がヨーロッパを訪問なさいまして、文化、経済、ODA、その三つの分野において世界に貢献するんだということを表明なさいました。大変結構なことでございまして、特に文化ということを第一番に掲げていらっしゃる。これまで経済主導の国際関係であったというようなことから、文化を前面に押し出されるということはすばらしいことだと思うわけでございますけれども、昨年の七月、私予算委員会におきまして外務省その他各機関が持っておりますところの海外の広報活動、そして文化予算、そういうものについて質問させていただいたわけでございます。  そういたしますと、日本を一といたしますと米国が十・三倍、英国六・六倍、フランス五・六倍、こうした三カ国というのは文化予算におきましても非常にたくさんの予算をとり、そして活動を幅広くしているわけでございますけれども、我我と比較的似たような環境にあります西ドイツにおいてさえ三倍のお金を使っている。今後もっと文化予算に力を入れるようにというような御要望を申し上げましたときに、そのような方向でというお答えをいただいたわけなんでございますけれども、しかしながら依然として現状はふえていないように思うわけでございます。このように竹下総理がヨーロッパで大きな発言をなさったわけですけれども、その背景となる予算措置ということ、それについて外務省はどのように理解していらっしゃり、また今後どのようにふやしていくおつもりなのかお伺いいたします。
  218. 田島高志

    説明員(田島高志君) 外務省におきましても、文化交流の重要性、先生がおっしゃいましたように、また先生が先回御質問になられましたときにお答え申し上げましたように、文化交流を一層重視していくべく努力いたしております。  予算の現状を申し上げますと、六十三年度予算につきましては七十四億四千九百万円外務省の文化交流部の予算がついております。六十二年度予算額四十七億八千五百万円に比べまして、これは二十六億六千四百万円の増になっております。
  219. 広中和歌子

    広中和歌子君 この基調というのはずっと続いていくというふうにお思いでございますか。
  220. 田島高志

    説明員(田島高志君) 実はこの中には国際交流基金の附属機関であります日本語国際センターの建設費の予算が二十一億円強入ってございます。したがいまして、今年度予算の増額につきましては若干特殊な事情がございますのでかなり大幅な増になっておりますけれども、全体の増額の基調は昨年度の予算の場合もそうでしたし、今後とも他の予算に比べて一層の増額をいただくべく努力してまいりたいと存じております。
  221. 広中和歌子

    広中和歌子君 今までODAの予算でございましたら、非常に額も多うございましたし、そしてまたそれをふやすことにコンセンサスが非常に大きかったわけなんでございますけれども、ODAの予算、その中に含む文化予算の部分というものはどういうふうになっておりますか。
  222. 田島高志

    説明員(田島高志君) ODA関係の予算は、在外公館それから本省全体を含めまして五十二億八千万円がODA予算でございます。これは在外公館と本省と全部入れた数字で、ちょっと先ほど申し上げました数字と全体の数字が違ってまいりますが、六十三年度予算を本省と在外と合わせまして、これは広い意味での文化交流つまり人物交流等も含めまして入れますと、六十三年度予算が七十二億四千四百万円という数字がございます。その中でODA予算が五十二億八千万円、それから非ODA予算が十九億六千四百万円という数字になっております。  この増額の中には、ODAの対前年度増は二十六億七千六百万円ですが、先ほど申し上げました二十一億円強の国際交流基金に対する日本語国際センターへの補助支出が入ってございます。
  223. 広中和歌子

    広中和歌子君 予算と同時にどのような形で文化交流をするかというそういう方針みたいなものも必要だろうと思うのでございますけれども、竹下総理の文化における貢献とおっしゃったそのことの背後には、何か指針みたいなもの、どのような方向で日本が文化的な形で貢献していくという、そういう内容については大臣……。
  224. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今のところはエジプトに文化ホールをつくったり、あるいはまた中国に青年交流センターができたりといって、各国それぞれいろんな支出要求がございます。そうした要求に対しまして十二分に日本としても必要あらばこたえていくということが一つでございましょう。  さらには、近くベルギーでヨーロッパリアという行事がございまして、この行事はヨーロッパだけの一国が中心となっていわゆるフェスティバルを行っておったわけでございます。今度初めて東洋の代表として日本が参加する、まあそういうことにつきましてもやはり日本をヨーロッパに紹介する最もいい方法ではなかろうかと。そうしたことで諸外国からの要請も受け入れ、また我が国の文化も紹介してより一層日本を深く知ってもらうということ等々、いろいろそうした具体的な問題をも含めまして今後積極的に、やはり経済だけじゃない文化交流ということが大切だということを表明されたと、それがこの間のスピーチであります。
  225. 広中和歌子

    広中和歌子君 それから最近、二日ぐらい前でございましたかフランスの選挙がございまして、たまたま私の友人のフランス人が、もちろん日本でお目にかかったわけですけれども、その方が不在投票をしてきたというようなことをおっしゃったわけでございます。それで、その選挙の結果を非常に楽しみに、また気にもしていらしたわけでございますけれども、海外にいる日本人でございますね、そういう日本人はこの日本にいるフランス人と同様、自分の国の選挙の行方に対して非常に関心を持っているわけでございます。  この国政レベルの選挙について外国にいて投票を認めている国というのは、よその国のことはともかくとして、まず日本のことでございますけれども、たしか私が知る限りではそれが認められていないんではないか。私が国政に参加させていただくことになりましたときに最初に言われたのはそのことなんです。選挙したいわということをアメリカにいる日本の方がおっしゃったわけなんですけれども、きょうこのチャンスをいただきまして質問させていただきます。  在外投票についてでございますけれども政府のお考えはどうなんでございましょうか。
  226. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 在外選挙の問題、つまり選挙権行使の方途を海外有権者に開くことも重要というふうに認識しているわけでございますが、これを目的といたしましたいわゆる在外選挙法案は、五十九年の四月、第百一回国会に提出されたわけでございますが、実質的審議がなされないまま継続審議となりまして、六十一年六月、第百五回国会において衆議院解散のために廃案となっているわけでございます。  ただ、政府といたしましては、この法案の提出に当たりまして各方面からさまざまな御指摘があったというふうに理解しておりますので、今後とも海外における邦人の意向等も踏まえながら関係省との間で慎重に検討を行っていくという考えでございます。
  227. 広中和歌子

    広中和歌子君 この五十九年四月の御提案というのは政府による提案でございましたのですか。
  228. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私の理解するところでは、自治省所管の法案ということで提出されたというふうに思っております。
  229. 広中和歌子

    広中和歌子君 ということは、前向きに検討する御意思が十分おありになり、そして法案の形でお出しになったわけですけれども、なぜ審議未了になったのか、そのいきさつとか問題点、そういうものについて御指摘いただけませんでしょうか。
  230. 田中宗孝

    説明員(田中宗孝君) 在外邦人に選挙権行使の道を開くための、いわゆる在外選挙法案の経緯につきましてはただいま外務省の方から御答弁があったとおりでございますが、いずれにいたしましても結末といたしましては、第百五回国会におきまして衆議院解散のために廃案となったところでございます。  この間におきまして、同法案につきましては各方面からさまざまな御意見や問題点の御指摘をちょうだいしたところでもございますので、なお引き続き検討を行っているというような状況でございます。  法案を提出いたしました際に各方面からいただきました御意見や問題点といたしましては、例えば選挙が実施されることや立候補者の氏名、政見等をどのようにして在外の選挙人に周知させるのか、あるいは永住者にも在外選挙を認めるべきではないか、さらにはまた在外公館から遠距離に居住する選挙人や在外選挙を認めない国に居住する選挙人のために郵便による投票を認めるべきではないかなどの御意見や御指摘があったところでございます。
  231. 広中和歌子

    広中和歌子君 諸外国でこういう選挙権を与えていない国というのはどういう国があるんですか。
  232. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私どもの承知しております限り、西側先進国の中ではオーストリア、イタリア、それからギリシャなどが制度を持っていないというふうに理解しております。
  233. 広中和歌子

    広中和歌子君 そういたしますと、例えば米国、英国、豪州、オランダ、カナダ、スイス、スウェーデン、デンマーク、西ドイツ、ノルウェー、フランス、ベルギー、ポルトガル、アイルランド、フィンランド、多くの国々が何の問題もなくかどうかわかりませんけれども、ともかくそういう国々で在外選挙制度をしいているわけでございまして、なぜ日本の場合法案をお出しになるほど準備を、少なくとも準備をなさって法案をお出しになったんだと思いますけれども、なぜ問題なのか。その問題のために多くの方々が――どのくらい在外邦人は今いるのか、先にその数についてお伺いいたします。
  234. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 現在在外邦人といたしましては約五十万人でございます。そのうちの約二十五万人が永住者、残りの二十五万人が長期滞在者ということになっております。そのうち有権者に当たる数がどのぐらいになるかということは、ちょっと私今手元に資料がございません。
  235. 広中和歌子

    広中和歌子君 永住者という人たち、それは日本の国籍を持っているものでございますね。
  236. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 日本国籍保有者でございます。
  237. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本の国籍を持つ以上、永住者であろうとも選挙権というのはあるはずでございますね。少なくとも日本に帰ればそれを行使することができる。
  238. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 建前からいたしますと、日本国籍を保有する以上、日本に帰ってきますときにはおっしゃったとおり選挙権があるものと考えます。
  239. 広中和歌子

    広中和歌子君 というと、五十万人の日本人が海外にいるわけでございます。そして、日本にいても選挙権を必ずしも行使しない人というのはいますから、今六割か七割くらいの方が投票なさるんでしょうか。でも、海外におりますと意外と愛国心というんでしょうか、国を思う気持ちというのはかえって強くなるというようなこともございまして、もし選挙権が与えられたならば恐らく投票を行うだろう、行いたいと思っているに違いない、そして投票を行うことによって祖国とのつながりを確認する、そういうことがあり得るんじゃないか。それは私自分の体験からしてもそのように思うわけで、初めて日本に帰りまして選挙権を行使いたしましたときの感激というのは、何というんでしょうか非常にひしひしとわいてくる喜びみたいなものでございました。自分の体験を申し上げて大変失礼なんでございますけれども、そういうこともありましてぜひぜひ前向きに検討していただきたい。  今問題としておっしゃいましたよね。例えば国によっては投票を認めない国があると。それはどういう国でございますか。
  240. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私どもが調査しておりますところでは、西独、スイスなどがいわゆる在外公館における選挙は認めていないというふうに理解しております。
  241. 広中和歌子

    広中和歌子君 それから、どういう形で選挙を行うか。そういういわゆる具体的な問題としていろいろ問題があると思うんですけれども、やり方としては、公使館、大使館に出向いてやるとか郵送にするとか、いろいろ御検討なさったと思うんですけれども、郵送とかそれから代理人投票ですね。そういうことは不可能なんでございましょうか。
  242. 田中宗孝

    説明員(田中宗孝君) ただいま御指摘の郵送による投票あるいは代理による投票、これらにつきましては我が国の選挙法制におきましてそれらをどういうふうに扱っているかということと大変関係があるわけでございまして、我が国の公職選挙法制におきましては、例えば字が書けないというような方が投票所へ行って代理で記載をしてもらうという代理投票はございますけれども、一般的に広い意味での代理あるいは委任による投票という制度は持っておらないわけでございます。  それからまた郵便による投票につきましては、かつて、昭和二十年代でございますけれども、当時在宅投票制度ということで郵送による投票という制度があったわけでございますけれども、当時この制度をもとにいたしまして大変多くの不正が行われたということで、現在におきましては特定の身体障害者手帳を有しておられる方々等に一部郵便による投票は認めておりますけれども、それ以外には広くは認めておらない、そういう状況にございます。  したがいまして、国内における選挙制度との関係におきまして在外選挙制度を仮に考えるといたしました場合にも、国内の選挙制度の仕組みと無関係ではおられないと、このような状況でございます。
  243. 広中和歌子

    広中和歌子君 おっしゃることはとてもよくわかるのでございますが、外国に行って住む方、今五十万という数字をいただいたわけでございますけれども、過去にさかのぼって見ますと毎年毎年ふえているわけでございまして、この傾向はますます続くのではないかと、そんなように思うわけでございます。新しい国際化という状況が生まれましたならば、国内法との整合性も含めまして新たに検討するということは必要なんではないかと思うのでございますけれども、その点いかがでしょうか。
  244. 田中宗孝

    説明員(田中宗孝君) 御指摘のとおり、外国に居住する日本人につきまして選挙権行使の機会を保障するということは大変大切なことでございますけれども、同時に選挙の公正の確保ということもまたゆるがせにできない大きな課題でございます。  これらを踏まえまして、先ほども申し上げましたようにさきに提案した法律案につきまして種々御意見、御指摘があったところでもございますので、今後関係省庁ともさらに引き続きまして協議の上検討を重ねてまいりたいと考えております。
  245. 広中和歌子

    広中和歌子君 こういう御答弁の場合、大体どのくらいで結果がいただけるのでございましょうか。
  246. 田中宗孝

    説明員(田中宗孝君) 具体的に期限を切ることは大変難しゅうございますが、なお引き続きまして検討を重ねてまいりたいと存じますので御理解いただきたいと存じます。
  247. 広中和歌子

    広中和歌子君 それから、これは新聞で拝見したんでございますけれども、新たにこれはアメリカのイニシアチブで、一種のマーシャルプランのミニ版ということで五年間に百億ドルの規模でフィリピンに援助をしようと、そういう中でイニシアチブはアメリカがとるのであるけれども、しかしながら日本、ヨーロッパの中でも特に西ドイツ、それが多くの資金を出して実質的な形でリーダーシップをとってほしいというようなことが書かれていたんでございますけれども、このことについてはいかがなんでしょうか、百億ドル五年間でございますけれども、大体日本の経済的なコミットメントというのはどのくらいなんでございましょうか、お伺いいたします。
  248. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 今までいろいろな数字が米国の議会、またはフィリピンの議会等々でアイデアとしては出ておりますけれども政府の間でどのくらいの金額というような確定した数字が提案されているという事実はございません。
  249. 広中和歌子

    広中和歌子君 これについては、その発表の前の段階で外務省としていろいろ御相談にはお乗りになっていたんですか。アメリカや他のヨーロッパ諸国とどのような話し合いがあったのかお伺いいたします。
  250. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 御承知のとおり、フィリピンに対しましては世銀が主催します援助国会議というのがございまして、その援助国会議の場で、主たる援助国でございますアメリカ、日本、オーストラリア、ドイツ、それから国際機関等が相寄りまして意見を交換し、フィリピンの需要等の希望を聴取するという会合はこれまでもずっと行われてきております。日本がそのような会合の主催を申し出まして、東京で会合をしたことも二年ほど前にございます。  そういうことで、このフィリピンに対する援助についてのお話し合いというのは従来から場があったわけでございますが、ただいま委員が御指摘のような新しい話としてのシグール国務次官補のお話は、先般国務次官補がお見えの際に一般的な形でアキノ政権の直面しております経済的な困難にかんがみまして、この強化のために対比支援の国際的努力を強めようではないかというようなお話はございましたけれども、それ以上の具体的なお話というのはございませんし、それからヨーロッパ諸国との間で本件を、シグール次官補のお話の後ないしはその前後に新しい話として話し合ったということもございません。
  251. 広中和歌子

    広中和歌子君 このプランに日本が参加いたしましたときには、予算としては当然ODA予算が使われるというわけでございますか。
  252. 英正道

    政府委員(英正道君) ただいま藤田アジア局長から御答弁申し上げましたように、現在具体的な話があるわけではないので、その際にどういうところから資金を提供するかという質問にはちょっとお答えしづらいわけでございますけれども考え方の問題としてはフィリピンの経済の安定成長、民生の安定のための枠組みの中で援助が行われるという形になるものだというふうに理解しております。その場合には当然ODAの予算が使われる。ちなみに、既に一九八五年の段階でフィリピンが受け取っております援助の半分以上は日本の援助でございます。第二位がアメリカでございます。
  253. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は、フィリピンに日本が非常に寛大に援助をするということに対しては大変結構なことだと思っているわけでございますけれども、ただ、このマーシャルプランという名前がつけられて新聞報道されておりますけれども、この前のフィリピン訪問などから総合いたしまして、やはりフィリピンの基地問題なども多少絡んでいるんではないか。そういう中で、援助の形もかなり政策的な、戦略的なというんでしょうか、そうした援助の形に移動しつつあるのか。そしてそれがアメリカの主導のもとに、イニシアチブのもとに行われるようになっているのかなと、そのような感想を持つわけですけれども、いかがでございましょうか。
  254. 英正道

    政府委員(英正道君) 新聞報道等いろいろ行われておりまして、ミニマーシャルプランとかそういう言葉の好きな国の方もいらっしゃるようでございますけれども、しかし基本はあくまでもフィリピン経済の安定、発展というところにあるというふうに理解しております。
  255. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 最初に、案件と離れますが、前回日本の歴史認識が国際問題になっているということに触れましたけれども、その後、先ほど午前にも論議になりましたように、再び奥野長官発言があってまた話題を呼んでいるわけです。繰り返し同じことを述べようとは思いませんけれども、この発言の中で私一つ注目しましたのは、閣僚にも思想の自由があるという発言部分なんですね。一個の国民の思想の自由、これは当然保障されるわけですけれども閣僚という公的立場の人が、戦後世界の到達している認識、戦後の世界政治の原理に挑戦するような発言をして、閣僚にも思想の自由があるんだということで通るものかどうなのか。大臣の感想をお伺いします。
  256. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) どういう意味でおっしゃったか、そういう点まで私奥野さんとは話をいたしておりませんので、いわゆる思想といいましても一概に決めがたく感じております。ただ、今までおっしゃった一連の流れというものをつかんだ場合に、やはりそうしたものが中国新聞でいろいろと批評された、また韓国からも批判を受けるということは遺憾だと、私はこういうふうに認識しているつもりでございます。
  257. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は、戦後何ら進歩のない人物、戦前の思想のままの人物が日本政府閣僚であるという事態は、これはやっぱり日本の政治の世界に対する恥だと、こういうふうに思います。こういう状態というのが奥野長官だけでなく日本にかなり広く存在する、そこが問題だということを私は前回問題にしたわけですけれども、私はこういう発言が近年広がっていることにやはり憂慮をするものです。  これは別の委員会でも私はちょっと問題にしたことがあるんですけれども、民間人でなく、元行政管理庁事務次官という高い立場にあった小田村四郎さんという人が、一九八四年ですからそう古い話じゃありませんけれどもお話しになったものが出ております。ちょっと読んでみますと、こういうことをおっしゃっているんですね。   占領下に強制された現行憲法は、白紙の新大陸に建国した米国の独立宣言の思想を基調としたものであって、この美しい国土に三千年来生成発展させて来たわが歴史伝統を無視した異質の法理に基づくものであり、かかるものをわが国の基本法とすることは「民族の屈辱」と言わなければならない。白州次郎氏の手記に記された「斯ノ如クシテコノ敗戦最露出ノ憲法案ハ生ル「今に見てゐろ」ト云フ気持抑へ切レスヒソカニ涙ス」 白州さんがそういうふうに言ったと。それは、  わが国民の瞬時も忘るべからざる血涙の文章である。我々はいつの日か「皇祖皇宗ノ後裔ニ貽シタマヘル統治ノ洪範」に基づくところの正しき憲法を恢復しなければならない。 「今に見てゐろ」と、憲法改正に対してですね。終戦直後の手記ならまだいいんですけれども、一九八四年という時点でこういう発言をなさって、これは金丸さんが所長を務めておられる日本戦略研究センターの「戦略研究シリーズ」の中にちゃんと活字になって出ておりまして、私は大変驚きましたけれども、これも元政府の高官ですね。こういう人の発言がこういう形で出ているということについて、もう一つ感想をお伺いします。
  258. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現行憲法は、平和、民主、人権擁護等々幾つもの特色ある憲法でございます。当然閣僚も公務員も、また天皇様も摂政も皆これを守らなければならぬ、こういうふうに書かれておりますから、私たちは今の立場で守らなければならないと、こう思っております。だから公務員も当然そういう立場だったろうと私は思うのでございますが、一人の野に下った人の意見ではないか。我々から申し上げますとちょっと乱暴な意見かなという感じは私は抱きます。
  259. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 「今に見てゐろ」というわけですから、これは報復主義丸出しの意見ですけれども、この人のこの演説、今の箇所はさすがに気になったとみえて省略されていますけれども、大部分は本になって出ております。これは金丸さんが監修をなさっている本にその演説のほとんど九九%が出ていますから、後から読んでいただいて、これは私は国際問題にもなり得る内容のものだと思います。  例えてみれば、非常識きわまる極東裁判の結果について述べて、戦後四十年を経るにもかかわらず史実を歪曲した歴史教科書の偏向性はますます顕著となり、また、戦犯として起訴された人々の名誉はいまだに回復されていないままであるとか、その種のこと、靖国神社に参拝できないでいる状態がいかにけしからぬことか等々ずっと書かれて、要するに戦後日本でとられた民主的な措置、治安維持法の撤廃等々、それが全くけしからぬことだという本なんですね。  こういうことになると、それが戦後の状態じゃなくて、この本が出ましたのが去年ですかおととしですか、そういう時期ですから、そうすると、これはだれか野におりてからの一人の人の発言というわけにはいかない、そういう政治的な意味を持つと思うんですね。しかも元政府の高官だということになりますと、私はそういう点で、やはりこの前も言いましたように、奥野長官だけでなく、戦後占領下、また戦後長い時期に黙っていた戦前そのままの思想、私はこれは本人の頭の中では凍結状態になっていたんじゃないか。それが経済大国にもなる、あるいは最近この種の発言がアメリカから批判もない、したがって大手を振ってこういうことがあらわれ出している。アメリカからの批判は余りないかもしれませんが、それがアジア諸国との絶えざる摩擦になっている、こういう事態ですね。  私はまことに遺憾です。単に少し激し過ぎるとか非常識な発言というふうなことでなく、世界に通用しない認識がそういう人々の語っているものであり、奥野長官発言もそういうものだということを明確にしておく必要があるんじゃないかと思います。これきょうの中心問題じゃありませんけれども、最初にもう一度大臣の見解をお伺いして次に進ませていただきたいと思います。
  260. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) けさも申しましたとおり、私は、中国におきましても名指しこそなかったものの、奥野発言に対する御批判だろうと思える発言銭其シン外務大臣がなさいましたことは御報告いたしました。そのとき私も、そうした閣僚に対しまして、あなたの言われたことをそのままお伝えしましょうということできょうは私はお伝えした次第でございます。  ということは、やはり私もそうしたことが両国間において問題になっておるということは遺憾だと、こう存じましたから、したがいまして我が国新聞中国新聞でいろいろ批判され、糾弾されたことについて遺憾だと言っておったが、さらにその話が出たものですから、御本人に私からもお伝えしますということでお伝えした経緯は午前中に申し上げたとおりでございます。
  261. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 次に入りますけれども、私は今の発言に関連して、日本で今考えなくちゃいかぬのは、やはり歴史から学ぶことの重要さ、歴史の進歩がとまってしまっているという状態でなく、歴史から学ばなくちゃいかぬ。しかし、日本の現在の政治を見ると、歴史から学んでいないものが非常にたくさんあると思います。これは大臣と意見が違うと思いますけれども、今から論議しようとする基地の特別協定、このもとになっている日米安保条約、これも私は戦前の教訓を日本が学んでいないことのあらわれだと思います。  きょうここで議論をしようとは思いませんけれども、私が非常に尊敬しており、絶えず教えてもらいに行っていた外務省の大先輩で、一昨年ですかお亡くなりになりました西春彦さんですね、一九一八年から外交界で活動なさった大長老ですが、この人から行くたびに言われていたことは、戦前の日本を誤らせていたのは日独伊防共協定であった。戦後の日本を誤らせているのは日米安保条約だと。これが西先生の持論でした。私はこの西先生の持論を本当に大事な言葉だと今でも受けとめております。この問題をめぐっては一度大臣とまた論議をしたいなと思っております。  しかし、きょうはそこから離れて、特別協定の問題ですが、やはり衆議院段階の論議、また去年の論議も含めて考えてみますと、この問題はやはり地位協定の実質上の改定を意味する、そういう重要な改定だと、こう思います。そういう重大な問題を論議する場合に、我々は見通しの問題が重要だと思います。これはこの委員会でも午前も問題になりました。そこで、私は協定を含めて、日本の基地そのものの見通しをも含めてお伺いしたいと思いますが、最初に、この特別協定は五年たてば状況いかんにかかわらず終わるんですか。この点まず最初に明らかにしていただきたいと思います。
  262. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) この協定は終了いたします。
  263. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 去年の国会では、最終的に終わるかどうか今から問題にできないで、その時点で政府と国会が判断して決めることだという答弁が行われていますけれども、きょうの答弁は円高の事情あるいはアメリカの財政事情いかんにかかわらず五年たてば終わると、そう判断してよろしいですか。
  264. 福田博

    政府委員(福田博君) 特別協定は五年のいわゆる期限を持って結ばれたわけでございます。今回この改正をお願いしておりますが、特別協定そのものは期間が五年で終了することになっておりますので、いずれにいたしましてもこの協定は五年たてば終了することは間違いがないと思います。
  265. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 じゃこの協定に関して言えば、今答弁がありましたそのとおりだということにしておきましょう。ただし、日本の思いやり予算というのはこの特別協定だけでなく、他に施設関係でもまた労務費関係でもありますけれども、この思いやり予算自身はこれは見通しはどうなりますか。ある期間という見通しがつくかどうか、この点はどうです。
  266. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) きちっとした見通しはございません。
  267. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、特別協定という思いやり予算の一部分は五年でなくなるけれども日本の他の分野の思いやり予算はいつまで続くか見通しがない。つまり将来とも続くということになると思います。これは単に続くだけでなく、ますます負担が大きくなる傾向にあると私は判断します。  そのためにも幾つかお伺いしたいんですが、この間開かれた日米事務レベル協議ですね、これは午前も大分論議がありました。この日米事務レベル協議について、報道によればこれはもう事前折衝を通じて米側が十分な成果が得られた、確かな手ごたえを感じ取った上で開かれたものだと、こういうふうに報道がありましたけれども、これはどういう事前折衝、いつごろからどういう話し合いがあって開かれるに至ったものですか。
  268. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) この日米安保事務レベル協議と申しますものは、一年に一遍あるいは三年に二回ぐらいの割合で開かれているものでございますが、事前にすり合わせを行うというようなことはいたしておりません。一般的な討議項目というようなものは内々決めてまいりますけれども、自由な討議をする場面として従来から設定されているものでございます。
  269. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 どういう討議をするかということを事前に内々では話し合うという答弁ですが、これは大変重大です。というのは、私が四月二十八日のこの委員会で質問したときには、まだ議題も決まっていませんという答弁でした。ですから、実際は内々で事前折衝をやりながら、私が新聞報道に基づいてこういう会議になるのかということについては、全くしらっぱくれて議題も決まっていないと、こういう答弁ですね。これは非常に遺憾です。
  270. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) それは私が申し上げたわけでございますけれども、率直に申し上げましてあの段階で明確な議題が決まっていたということはございません。  その後、会議が開かれるというところにいくまでに、けさほど大臣も申されましたが、国際情勢でありますとか日米防衛協力、我が国防衛努力、一九九〇年代に向けての国際社会における日米双方のあるべき姿等々の議論を話そうではないかということになっていったわけでございます。
  271. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その時点ではまだと言ったって、あれは四月二十八日ですよ。そういう言いわけは私は聞きたくありません。それはそれでおきましょう。  この日米事務レベル協議内容、詳しくは要りませんが、協議になったテーマだけ教えてください。
  272. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) テーマは今申し上げました諸項目でございます。
  273. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その諸項目の項目を。
  274. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは国際情勢、日米防衛協力、我が国防衛努力、それから一九九〇年代に向けての国際社会における日米のあるべき姿等についての話し合いが行われたということでございます。
  275. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 経済協力だとか、午前も問題になりました新しい協定等々はこの中にはないんですか。このどこに当たるんですか。
  276. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) その過程で米側から、ここに日米防衛協力という項目がございますけれども、その段階で米側から先般来御説明申し上げておりますNATO相互支援法米国国内法についての説明がございました。
  277. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 これはきょうはテーマだけ聞いておくことにして、また改めて論議したいと思います。  いずれにせよ、日本防衛負担を強めるという方向での発言が相次いでおると同時に、日本のその面での役割についてのアメリカ側からの高い評価もいろいろな形で伝わってきています。私はそういう発言を聞く中で、あるいは報道を目にする中で幾つか尋ねておきたいと思います。  日本の負担というのはもう世界一だとか、午前も問題になりましたけど、さまざまの高い評価があるわけです。ところが、別の報道では、アメリカは基地の維持に四苦八苦している、世界各国の基地離れが起こってそれで大変な事態だという報道もありますね。南欧諸国あるいはフィリピンもそうで、基地を継続するならばもっと基地料を多くせよと。これは決してフィリピンだけでなく、ギリシャその他各国で起こっていることだということが新聞でもいろいろ報道があるわけです。  一方でそういう状況があるときに、日本は非常に自発的にという説明ですが、自主的に日本から在日米軍の負担をどんどんふやしましょうということを言っている。そして、アミテージ国防次官補の証言によりますと、こういう状況だと言うんですね。我々の在日米軍の軍事建設予算、要するにアメリカが負担している在日米軍の軍事建設予算は二千七百万ドルだと、日本の八八年の在日米軍施設費は六億五千万ドルだと、ちょっと計算してみると在日米軍基地施設費ですね、建設費、日本がアメリカの二十四倍も負担していると、こういう数字も述べて日本の役割を高く評価している。世界の中でまさに日本は独特な立場をとっているなということがこれでわかるわけです。こういう状況ですね。こういう称賛を世界の各国と違って受けている。そういう称賛を受けてどういう気がするのか。私はその感想を含めてこの現状についてどう思うかということを、これは大臣からお伺いしたいと思います。
  278. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今回の協定を行いますことによりましても、それ以前からも日本が非常に防衛努力を払っておるということに関しましては、米国米国それなりの評価をしていることは事実でございます。また、これはあくまでも私たちの節度ある防衛費という考え方から、自主的、自発的にいろいろと努力をした結果であることも御理解賜りたいと思います。  そうしたことで、日米安保体制は非常に私は現在有効かつ円満に運営されているのではなかろうかと。それがために、この間における日本の安全と平和というものは本当にかつてない長期間にわたりましてその実を上げているのではなかろうか。そうしたことが今日の日本のいわば経済的また国際的な地位も上がってきたのではなかろうか等々、幾つもそうしたものの効果を挙げることができると私は思うのでございます。  したがいまして、そうした意味合いにおきまして、我々は防衛費の絶対額から申しますと世界のトップから勘定して七番か八番ではございましょうが、事アメリカという関係におきましては日米安保体制という重要な体制をしいておるわけでございますから、したがいまして私たちの自主的な努力の結果が、アメリカにおきましても日本世界一だねえと言われるゆえんをなしたわけではなかろうかと思います。もちろんこれはその面から見ますと、いかにも日本防衛費が巨大過ぎるというふうな印象を与えかねませんが、決してさようではなく、あくまでも防衛費に関しましては私たちは節度を持って今後も臨んでいきたい、そして五十一年の政府決定の一%という問題に関しましてもこれを尊重してやっていきたいと、かように思っておる次第であります。
  279. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今のような日本の負担が日本の国際的地位を高めるという発言については私は別の評価をいたしますけれども、それはさておきまして、自発的な日本の負担だということですが、報道によりますと、最近自発的な負担でなく日本の肩がわりという形で問題が提起されている。マンスフィールド駐日大使のこの間の参議院の外交・安保調査会での発言でも、日本に肩がわりを求めるとか、そういうことになっているわけです。実際は肩がわりというのが事実じゃないんですか。
  280. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) バーデンシェアリングなんという言葉が最近こう耳に入るようになったのでございますが、またではバーデンとは何かということに関しましてはさっぱりその定義がないというのが現状でございます。またアメリカにおきましても、どこがそれを言い出しておるんだということになりますと、議会の一部においてそういう話があるよということでございますので、特に議会の方々が来られました場合には、私はやはり今委員が懸念されておりまする面に関しましてもはっきり物を申し上げることにいたしております。  すなわち何が肩がわりであるか、そういうことでございましょうが、要はいろいろと日本が大きくなったんだからもっと持てというふうな話でしょうが、あくまでも私たちは具体的な問題に関しましてはいろいろと検討はしましょうけれども、やはり例えばフィリピンの基地なんかが常に話題になるものですから、そうしたことに肩がわりをせよとおっしゃってもこれは筋違いでございますよということは、下院議員にもしばしば申し上げておるわけであります。  そのほかで、フィリピンのアキノさんにかわる人はいない、この方が今困っておるんだと、経済問題で農地解放を初め近代化を始めたいと、それについて経済協力してほしいということならば、アメリカも日本もあるいはまたECも豪州も、この間はリー・クアンユー・シンガポールの首相もおっしゃったんですが、我々NICSといえども、やはり太平洋・アジアの平和のためにはアキノさんを助けてやることに決して私たちやぶさかではございませんと、そうおっしゃいます。  そうした意味で私は、よく世界銀行的な性格で御支援申し上げるのならば私たちも検討する余裕はありますと。しかし、何か知らぬが意味不明の肩がわりとか意味不明のバーデンシェアリングということにつきましては、そう簡単に我々がオーケーと言ったこともございませんし、今後も十二分に慎重でなければならぬと、かように思っております。
  281. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 アメリカが日本にさまざまな肩がわり要求を突きつけてくる。それを日本が自発的な日本の意思は基づく役割分担だという形で引き受けていく。このやり方が安保条約が発足するとき以来のやり方なんですね。それは僕はきょう後でも幾つか事例を挙げて問題にしていきたいと思いますけれども、そのやり方が今も続いている。だから、アメリカから肩がわり要求という形が非常に簡単に飛び出してくるというのは当然だと思います。  私は、その中で特にここでお伺いしておきたいのは、例えばこれも報道によりますが、首相が公平な負担の努力を行うということをアメリカの代表に語られたというのが出ております。これはパトリシア・シュローダー米下院議員と、それからジェームズ・デービス在日米軍司令官が竹下総理と会ったときに、「在日米軍経費の「負担の公平」に向けて努力する考えを示した。」と、こうありますが、一体公平な負担ってどういうことでしょうか。
  282. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 正確に総理が何とおっしゃられたかということを私は記憶しておりませんけれども、そこで言われたのは先般来申しておりますように、まず第一に、日米安保体制の効果的な運用を確保するために我が方として何をしなければならないかということであり、もう一つは、より具体的な話として、先般来の日米両国を取り巻く経済情勢が変化してきている、それを勘案して在日米軍に雇用されている労務者の人たちの雇用環境を安定的なものにしようというようなことが御念頭にあっての御発言ではなかったかと思います。
  283. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうだとすると、それはそれで私はやはり大変な発言だと思います。つまり、状況に応じて日本が負担をふやしていくと。それが公平だということになれば、それは日米の経済関係、日本の経済発展が変わればもっともっとふえるということになるわけですね。  別の点から言えば、アメリカ側では同盟国の公平な負担ということが七〇年代後半から盛んに言われている。その一つの定義で私が読んだところでは、公平な負担というのは国力に応じての同じ比率での分担だと。したがって、軍事分担という点について言えば、それを最もわかりやすい形で言えば、GNP比同率になることが最も公平な分担だという論議がアメリカ側からあり、ある時期には日本の会合で、今アメリカはGNP比五%だと、日本が五%になるのが最も公平な分担だという問題提起が行われたこともあります。ですから、いずれにせよ、公平な負担という問題提起は大変なことになるんじゃないかと思いますが、そうではありませんか。
  284. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 技術的な面は政府委員から申し上げますが、シュローダーさんとかあるいはまた米軍太平洋司令官とか、そうした方々に私も会いました。したがいまして、公平という総理の御発言でありますが、その根底にはやはり日本には日本として一つの制約があるということは、常に総理もこのお二方に申されたはずであります。と申し上げることは、憲法上の制約、さらに非核三原則等々の制約。したがいまして、我々の防衛費というものは、当然そこに一つの制約を持って平和国家として平和に貢献するように私たちは予算を編成しております。  なかんずく、日本は今日まで、過去を振り返りますと東南アジアの諸国を戦場と化したと、こうした反省もありますから、したがって、ややもすれば経済大国日本は軍事大国というふうな連想が強くアジアの方々は持たれます。この点においても、私たちアジアに対しまして、経済大国日本は決して軍事大国になれないんですと、シュローダーさんそうでしょうと、私もシュローダー女史に申し上げまして、深くうなずいておられました。そうしたことも公平という一つの私たち考え方の基盤にあるということは、ひとつ御理解賜りたいと思います。
  285. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 午前も指摘がありましたけれども、最も公正で公平な分担というのは、条約に沿って条約の取り決めどおりの分担ということがやはり貫かれることだと思います。もちろん私ら安保条約地位協定も反対ですけれども、しかし、公平な分担を条約に基づいて行うというならば、それは条約どおりに厳密に行うことが公正、公平だというふうに私は言いたいと思います。  もう一つの問題、これは前回質問したことに関連しますが、ペンタゴンに同盟国の防衛分担に関する特別委員会が設置されたということについて質問しました。その後何かわかったことがありましたら報告してください。
  286. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは本年の三月三十一日に設置が発表されたものでございまして、米国防総省内においてスペシャル・タスク・フォースという名前でできております。共同の防衛努力を公平な形で強化するため同盟国との間でその方策を検討し、調整することを目的として設置されたものというふうに説明されておりまして、先般どういう人たちがメンバーになっているかという御質問でございましたけれども、これは国防総省それから統合参謀本部さらに国務省あるいは大統領府にございますNSCからもメンバーが参画するというふうになっております。
  287. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 あしたその責任者が来日するという報道がありますが、ここでどういう行動が予定されていますか。もう何らかの協議でも始まるんですか。
  288. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 協議というようなことは予定されておりません。あしたの午後来られまして、あさっての午後離日されるということでございます。
  289. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この特別委員会新聞発表文によりますと、国防総省が議会に提出した同盟国の負担に関する報告で示した方向を国防総省が追求しているということが述べられております。その議会に対する報告というのは、日本について非常に重大なことを述べております。これはもう既に発表されているものですけれども、この日本部分について書いているのを見ると、日本のさまざまな分野での防衛努力を大いに評価すると同時に、こういうことも書かれている。ペルシャ湾に関する日本努力を高めよとのアメリカ政府の要求に対する回答の中で、日本は機雷掃海を助け、この地域での安全航海を促進するために投入されるさまざまな精密航海システムに資金負担をすることで同意した。日本はまたオマーンとヨルダンに五億ドルの経済援助を与え、ペルシャ湾における国連の平和維持活動が始まれば、その資金援助に参加する予定であると、こういうふうに述べられています。  つまりペルシャ湾に関して日本努力を高めよというアメリカ政府の要求があった。日本がそれに対して回答をして、その回答の中で、この協定でも問題になっているような問題が出てきているわけですが、そういう要求、そういう回答、どういう形で行われたんですか。
  290. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 今お読みになられたような記述は確かにございます。これは基本的に先般来繰り返して申し上げておりますが、同盟国の共同防衛責任分担に関する国防総省の対議会報告と申しますのは、あくまでも議会に対して、多くの場合議会が持っておりますさまざまな国に対する不満を解消しようという努力のあらわれである場合が多いわけでございますが、ここに書かれております精密航行システムのための資金拠出と申しますのは、次に書かれておりますオマーンとジョルダンに対し五億ドルの追加的経済援助を提供することと、あわせてさらにペルシャ湾における国連平和維持軍への資金援助ということで我が方として自主的に決めたことでございます。  私が理解している限りでは、十月七日にこの決定がされました際の我が国の決定は、「ペルシャ湾における自由安全航行確保のための我が国の貢献に関する方針」ということで、「従来からの外交努力に加え、より大きな貢献をすることが国内的にも国際的にも求められている。」ということを踏まえて、我が国としてとり得る措置をこういうものとして発表したわけでございまして、基本的には我が国が何をなし得るかということを検討してこのような結論に達したということをここに書いてあるものと考えております。
  291. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうしますと、ここに言うところの日本政府の回答というのは十月七日の方針を指していると、そういう判断ですか。
  292. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは米国政府の求めに応じという――これは米国政府の文書でございますので、てにをはな一つ一つ詰めるということよりは、我が国がどのような過程で物を決めたかということの方がより大切であり、より客観的に正確な話だと思いますが、これはもう決められた背景というのは、ペルシャ湾における自由航行のために従来からの外交努力に加え、より大きな貢献をすることが国内的にも対外的にも国際的にも求められていたと。その脈絡の中でこのようなことを決めたということに尽きると思います。
  293. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 アメリカ政府の要求に対する回答ということで大変こだわられるわけですけれども、これは実態はそうだろうと思いますが、この日本政府の回答、この中には、午前も問題になりましたなお書きがありまして、「在日米軍経費の軽減の方途について米国協議を行う。」ということがあるわけですね。アメリカの議会に対する国防総省の報告の中でも、また日本は一九八八会計年度在日米軍に対して二十五億ドル以上の直接負担を行う予定である、この額は新たな設備と人件費の分担に対する資金を含んでいる、こういうふうに述べられております。こういう金額まで含めてのアメリカへの回答というのはどの時期に行われたことになるわけですか。
  294. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 十月の初めでございます。
  295. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、十月の初めの時期に在日米軍に対する日本の新たな負担をも含めて伝えたという内容になるわけですね。
  296. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 政府の方針を明らかにしたのが十月七日ということでございます。
  297. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 国防総省の報告では、新たな負担の金額まで出ているわけで、これは三月に提出した報告書ですから、その後彼らが知ったのかどうか知りませんけれども、少なくともアメリカ政府の要求に対する回答ということはなっていますから、日本政府がこういう説明あるいは回答をどの時期にどういう形でやったかということはこれは我々疑問を持つわけで、お答えを願ったわけです。これはどういうふうに説明されますか、もう一度。
  298. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私から申し上げた方がいいと思います。というのは、両方ともこの会議に私も、前半は幹事長代理、後は外務大臣として出席しておりますが、十月七日のときには方針を決めて、そこに先ほど吉岡委員が御指摘になりましたなお書きというやつがございます。だから、なお書きを正式に政府が決定いたしましたのは本年の一月十一日である、したがいまして後ほどアメリカからどういうことでしたということに対しましては、その一月十一日に決めましたことを知らしてあげたと、こういうふうにお考え賜れば結構であります。
  299. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 いずれにせよアメリカの国防総省は議会にそういう報告書を送っており、今度特別委員会がつくられた、その特別委員会新聞発表文には、議会に提出した方向で追求している、そういう日本による防衛役割と治権責任の公正な分担の確保をみずから追求していると、こうなっているわけですね。ですから在日米軍経費の新たな分担ということも国防総省は追求すると、そういう形の発表になっていると我々とるしかないわけですね。  そうしますと、今論議している特別協定の改定という問題がもう既にアメリカに回答済み、アメリカから見れば追求の対象、そういう内容になっているということはこれは否定できないじゃありませんか。
  300. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そういうふうにお考えになられますと甚だ迷惑でございまして、やはり先ほどから私申しますとおり、政府といたしましても我が国の自主的判断ですべてをやってまいったわけであります。  だから、現在アメリカといたしましても我が国の安保体制下の防衛努力、これに関しましては高い評価をしておるわけでありまして、現に具体例を申し上げますと、アメリカの国会――国会が最近は一番うるさいところでございますが、その国会の、しかも野党の院内総務すらが竹下総理と私が参りましたときには、日本防衛努力に対しまして敬意を表します、日米間にもし明るいところと暗いところがあるとするのならば、経済面は暗いところでございまして、防衛面におきましては今本当にお互いががっちり手を結んでおることは喜ばしいことでございますと、こういうふうに言っていてくれますから、だからといって、では次から次へ要求を出してくるというものではないと、私はかように解釈をいたしておりますし、またそうした要求に対しましては、先ほど来答えましたとおり我が国の自主的な判断があるということも申し添えておきます。
  301. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私の受け取り方が迷惑だとおっしゃいますけれども、そういう受け取り方をするしかないような、国民から見れば大変迷惑な発表をアメリカがやっていることに問題があるわけでして、私の受け取り方が迷惑というわけではありませんし、そういう迷惑のもとをつくったのはあなた方の回答じゃないかと、こういうふうに言わなきゃなりません。  しかし、こういう論議をやっていますと前へ進みませんから、基地の負担がこういう形でいよいよ深まる、こういう問題を考える場合に、見通しのもう一つの問題、より根本的な見通しの問題として私は大臣にお伺いしておきたいんですけれども、一体在日米軍基地というのはいつの時期まで続くんですか、米軍の駐留というのはどの時期まで続くのか、そういうことを何か考えられたあるいは検討されたことがあるのかないかを含めて、その見通しをお伺いします。
  302. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今日まで政府においてそうしたことを検討したことはございません。特に安保条約が御承知のとおり昭和三十五年に改定されまして、十年たった後は一年前の双方からの通告によってこれを廃止することができると、こういうふうに書かれておりまして、それに従って地位協定もあるわけでございますから、我々といたしましては、今日そのようなことを議論もしまた考えたこともない次第であります。
  303. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうすると、具体的な見通し、何もそれが三年とか五年とかいうわけじゃありませんけれども、何十年続くのか、あるいは一世紀も続くのか、いかなる見通しもない、そういう問題だというふうに考えざるを得ないんです。  私は今の答弁を聞いてちょっと思い出しましたけれども、アメリカでもそういうことが大論議になった時期がある。これはたしか一九六八年ごろだと思いますが、既に亡くなられた当時の牛場外務次官が話されたことですけれども、アメリカで海外米軍基地、軍人で百万、家族を含めれば百四、五十万にもなるようなこういう軍隊を配置していたのでは、アメリカ経済が幾ら強くてもまたアメリカのドルが幾ら強くても、これはもうもつ見込みがないということで、六〇年代の後半に大検討が行われた。私もこのアメリカでの大検討はワシントンへ行っていろいろ詳しく当時のことを聞いたことがあります。  牛場事務次官の話では、その検討の中で、戦後海外に米軍を配置するときに一体こういう状態が何年続くのかということの検討は何もやらないままに出発した。で、その結果アメリカのドルは弱くなり大変な事態になったと。少なくとも、戦後検討なしに配置したけれども、しかし、それは何十年も続くということを予想した者も恐らくなかっただろうという話を含めての牛場次官の話で、これはまあ活字にはなっていない話ですけれども、私は大変おもしろい話だと思って聞きました。  それで、六〇年代にさまざまな委員会がつくられて、海外にある米軍基地をどうするかという論議が議会でも行われた、幾つもの委員会でもそういう論議が行われ、その産物として在韓米軍の撤退等々いろいろなことも行われ、ニクソン・ドクトリンというのも発表もあったわけですね。いずれにせよアメリカではそういう論議があった。  日本は米軍基地を置いてもらっている側になっているわけですけれども、そういう今のような米軍の基地、主権侵害を受けざるを得ないような基地の存続、外国の軍隊が駐留するという事態が今後どの時期まで続くかというふうなことは、これまで全く検討もされたことはないんですか。
  304. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 米国との相互協力及び安全保障条約の第十条、そこに有効期間として次のように述べられております。「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。」と、これが一つの有効期間ということになっておりまして、我々もやはり世界がまだ残念ながら米ソ間、それぞれ努力はされておりますが、東西の対立がある、これは否定することはできないであろう、また極東の緊張も依然として続いておる、そうしたことを考えざるを得ないし、また、国連決議そのものも幾つかの地域紛争で、尊重をする国もあればがえんじようとしない国もある等々、いろんなことがございます。  やはりNATOもそういう意味でまだ警戒を解いておらないという状態等々これあり、私たちといたしましては速やかに国連が最大の機能を発揮いたしまして、東西におきましても南北におきましても地域におきましても、そうした紛争の気配がもう見受けられなくなったということを、措置が効くということをもう本当に心頼みにいたしまして、そのためにそれぞれの地域紛争に対しましても、私たちは平和に貢献する日本ということで、先ほどの御質問の中にも紛争地域に関心あるかと。関心大いにございます、総理も平和に貢献する日本、そうした意味も具体的にお説きになっておると、こういうふうにお考え賜りますと、決していつまでもいつまでもと思ってはいやしないんだ、やはり速やかに世界じゅうの平和が来ることを日本も望みながら、みずからその行動をとらなくちゃならない、こういうふうに考えておるということも私からこの際申し上げておきます。
  305. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私に言わせれば、今の日本外交政策、安全保障政策というのは、国連が機能して安保条約のような軍事ブロックが要らなくなるのを促進するのではなく、逆に軍事ブロックの対抗を強める方向に向かっていると言わざるを得ません。それは大臣とこれまた意見が異なるわけですが、時間があればきょうもそういう論議を最後の方で少しやりたいなと思いますけれども、その基地について言えば、やはり安保条約の条文はこれは私もよく知っておりますけれども、そういう事態というのが半世紀続くのか、一体どこまで続くのかというふうなそういう議論というのは全く行われたこともないということがわかりました。  しかし、考えてみますと、僕は今の基地というものを我々はもう一回戦後の出発点に立って見直す必要があるんじゃないかということです。それは、ポツダム宣言は、同宣言の目的が達成されたときには、「聯合国ノ占領軍ハ直ニ日本国ヨリ撤収セラルベシ」と、こう規定していたわけですね。ところが、平和条約後も米軍は撤退しないで駐留し続け、それは一体いつまでいるのかの見通しも立たないという状況になっているわけですね。この事態はどう説明しますか。
  306. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) ポツダム宣言第十二項で占領軍の撤退が明記されておりますことはただいま御指摘のとおりでございます。  ただ、これはあくまで日本の敗戦という事実の後に起こりました占領軍の日本の駐留に関しての規定でございまして、ただいま日米安保条約に基づきまして日本国に駐留しております米軍とは全く性質の異なる軍隊の存在についての規定でございます。したがいまして、このポツダム宣言第十二項の規定とただいまの安保条約に基づきます米軍の日本における駐留というのは関係がないことということになると考えております。
  307. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それは言いわけでして、ポツダム宣言が想定した事態というのは、日本軍国主義の危険がなくなり、独立した平和な日本、外国の占領軍もいない、そういう日本を想定していた。これはもう間違いない事実です。  だから、サンフランシスコ平和条約でも、「連合国のすべての占領軍は、この条約の効力発生の後なるべくすみやかに、且つ、いかなる場合にもその後九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。」ということをうたったはずです。それで今米軍がいる。それは新旧安保条約がそのサンフランシスコ平和条約のただし書きに沿って駐留しているというのが実態じゃないんですか、そうじゃないんですか。
  308. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 平和条約第六条には御指摘のとおり、占領軍が「九十日以内に、日本国から撤退しなければならない。」ということが規定してあります。ただし書きにおきまして、ただしこの規定は、連合国と日本国との間に締結される協定に基づく日本における外国軍隊の駐屯を妨げるものではないという規定がございます。これは従来より政府が御説明しているところでございますけれども我が国といたしましては、これはもう全くどのような政策を選択するかということは、この平和条約によりまして独立を達成した日本国が自主的に決めることでございまして、日本国の政策としてこのようなことが望ましいと判断すれば、このただし書きの規定があろうがなかろうが当然の権利としてできるということでございますので、このただし書きはあくまで念のための規定だというのが政府考え方でございます。  もう一つ、御参考までに申し上げさしていただきますけれども、平和条約の第五条におきましては、「日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有すること及び日本国が集団的安全保障取極を自発的に締結することができることを承認する。」という規定も、これも国際法上は念のための規定でございますけれども、こういう規定もあるわけでございます。
  309. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 また自主的判断という言葉がありました。一々自主的と言わないと説明できないところに戦後日本外交の特徴があるというふうに今の言葉も受けとめましょう。在日米軍基地は、そうすると自主的な日本の判断で日本がお願いしてアメリカに置いてもらっているんですか。
  310. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) これは、基本的には双方の合意によって存在しているということでございます。
  311. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 双方の合意、これはまた重宝な言葉を引っ張り出されたものですが、日本もお願いしたということも含むわけですか。
  312. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) もしも旧日米安保条約体制成立の過程を先生がおっしゃっておられるのであれば、これはまさに双方の間で交渉を行ってこのような取り決めをつくって、米軍が平和条約締結後はその条約に基づくものとして存続することになったということでございます。
  313. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 それはとんでもない間違った説明ですね。平和条約を結ぶときの状況というのは、日本側でもたくさんの文書が発表されておりますし、アメリカ側からもたくさんの文書が発表されておりまして、そういう状況ではないんです。  アメリカ国内における平和条約の前提は米軍の駐留だったということをこれを証明するものは幾らでもあります。私はきょうここへたくさん持ってきましたけれども、当時の条約局長の西村熊雄さんがいろんなものでたくさんお書きになっている。私は西村さん自身に直接何回も話も聞きました、講和条約締結時の話をジャーナリストとして聞きましたけれども。ですから、今のような説明では私は満足できません。いかに日本の米軍駐留の継続と、それから日本を独立させて再軍備させ、西側の一員にこれを加えるかということを両立させるかということでアメリカが日本に押しつける、日本の側がそれを受けてどんなに四苦八苦したかという記録はもう幾らでもあるわけです。  第一、日米安保条約の最初の日本側の案は、日本に米軍を駐留させるのじゃなくて、日本の周辺に駐留させるという案だったんじゃないですか。余りにも虫がよ過ぎるというのでそれは通らなかったわけですけれども。そういう経過というのはもう幾らでも文献の中で明らかはなっているわけです。ですから今さら、そういう終戦直後のまだ資料が少ないときならいざ知らず、そういうすべての問題が明らかはなっている時期にそういう話を持ち出したんじゃぐあいが悪いと思いますね。
  314. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 今私が双方の話し合いの過程でと――平和条約締結に先立ってもちろんその話があったわけでございますが、さまざまな経緯があったということは先生がおっしゃられるとおりだと思います。  基本的に、今のおっしゃっておられる姿が一九五一年、二年の段階で出てまいりますのは、米国が対日平和の構想を七つの原則に取りまとめたいわゆる対日講和七原則、これは昭和二十五年十一月二十四日に公表されたものでございますが、ここで米軍の我が国駐留が想定されております。そして日本側につきましては、昭和二十六年一月の第一次交渉において我が国が米軍に示した「我が方見解」というものがございます、一月三十日に米側に手交してございますが。そこに両国の協力構想を示しておりまして、米軍の我が国駐留は……
  315. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 いいですよ、そんなの長々、ここに詳しく出ているんだから。
  316. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 双方の間での交渉を通じてということが私ども政府側の頭にあったわけでございます。
  317. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 自主的判断ということで私さっき言ったのは、こういう事実も明らかだからです。  これは宮澤大蔵大臣がかつて書かれた、私は名著だと思いますけれども、「東京―ワシントンの密談」、この中で基地を置くやり方についての内幕まではっきり述べているんです。こう書いているんです。これは、池田蔵相がダレスと会ったときに、吉田首相の意を受けた極秘の吉田首相のメッセージを伝えたんです。その中身はこうなっているんです。  講和条約ができても、おそらくはそれ以後の日本及びアジア地域の安全を保障するために、アメリカの軍隊を日本に駐留させる必要があるであろうが、もしアメリカ側からそのような希望を申出でにくいならば、日本政府としては、日本側からそれなオファするような持ち出し方を研究してもよろしい。 こういう吉田首相のメッセージをダレスに伝えた。これは宮澤さんがお書きになっているんですからね。そういうやり方までやって、私さっき大臣に、アメリカの要求を日本の自主的な申告のように取り繕って事を運ぶやり方の原点をここに実は見出しているので、さっきもそういうふうに言いました。そういう形で日本に押しつけられた基地なんです。  その基地を双方の合意だというふうなわけにはいかない。しかも、行政協定に基づく協議の過程で、日本が駐留継続を認めない施設まで五十も引き継いだわけでしょう、それは認めるわけでしょう。どうですか。
  318. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 五十の施設につきまして継続使用が保留されたという形であったことは事実でございます。
  319. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今お認めになりましたように、アメリカの米軍基地は行政協定に基づく交渉で日本側が使用を認めない基地も、岡崎氏の同意によって継続使用、保留基地ということでそうなった。その基地で今残っているもののリストを私はいただきたいと思いますが、そういう経過ですから、宮澤さんはその経過をこの中で「ヤンキイ・ゴオ・ホームという叫び声が起こっても仕方がない」ということもお書きになっていますし、それから、サンフランシスコ平和条約の全権の一人だった民主党の最高委員長の苫米地さんは、これは不平等条約だ、そういうふうにお書きになっているんです。それが日本の基地のスタートなんです。  朝鮮戦争が始まって、これは私は西村さんの本を読めば結論的にはそうなりますけれども、結論としては、アメリカはサンフランシスコ平和条約、安保条約で三つのことをねらった。一つは、基地の継続、二つ目には、日本を独立させて再軍備をさせて、ポツダム宣言の拘束にとらわれることなく西側の一員に加えることだった。三番目には、それを軍事同盟に結びつけていく、そういうことだったということを、これは私はたくさんお書きになっている西村さんの本の中からはっきりと読み取らざるを得ない。  ですから、西村さん自身が、私はよかれと思って結んだ、しかし、この二つの条約、これが本当に日本国民のためになったかならなかったかということは後世の歴史家に任すしかない、そう言って無条件には肯定されなかった。これは私が話を聞いたときにもそういう状況でした。その基地が今も続いており、その基地に諸外国からも例のない金を出そう、こういうのが今特別協定を我々が論議しなくちゃならない基地問題の出発点じゃないんですか。大臣、どうでしょう。
  320. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 講和条約締結時のいろいろ思い出等、それはそのままに私は評価をしたらよい、かように考えております。また、そうした先人の苦労の累積によって今日の日本の繁栄と平和が確保されたということも事実でございます。  したがいまして、先ほど自主的という私たちの表現は、一にかかって講和条約締結時の秘話に一つの出発点があるというふうな御解釈でございましょうが、これは一つの歴史観としての問題でございますから、私はさにあらずして、やはり今日の日本が大きくなった以上は、この安保体制というものの円滑な運用を図るためにも必要だ、なかんずく円高ドル安は米軍の駐留経費に本当に過大の負担をかけておる、これは見逃すわけにはいかない、そういう気持ちから特例としてお願いをいたしておるのが今回の改定案であると、こういうふうに申しておりますので、さように御理解賜りたいと思います。
  321. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 そうして出発した基地、これが今どうなっているかという問題について幾つか問題にしたいんですが、日本の基地の中、日本に駐留する軍隊、これと核戦争と関係のあるそういう部隊というものにはどういうものがあるか。私がお伺いしているのは核弾頭があるかないかということではありません。核弾頭はないというのが政府の一貫した見解ですから、あるかないか聞いてもこれは答弁になるはずがありませんから、そのことを問題にするのではなく、アメリカの核戦略とかかわりのある部隊としてはどういう部隊が日本にいるのか、全くいないとおっしゃるのか。
  322. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 核戦争とかかわりのある施設としていかなるものがあるかということでございますが、それは明確に何を考えておられるのかわかりませんけれども米国がかかる抑止力の効果的な維持のために必要な施設我が国に置くことは必要なことと考えております。安保条約及びこれほ基づく我が国における米軍の存在は、そもそも我が国が巻き込まれ得るような紛争の発生そのものの抑止を目的とするものでありまして、政府としては米軍や米軍施設等の存在ゆえに、核戦争であると否とを問わず我が国戦争に巻き込まれるというような認識は有しておりません。
  323. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 あなたらの方からこういう部隊がそうだとは言いにくいでしょうから、私の方から幾つか質問しましょう。これはこれだけに何時間もかけてやりたいんですけれども、時間来ましたから一、二お伺いします。  何よりもまず米第七艦隊、これは巨大な核戦力だと思いますが、どうですか。日本はこの米第七艦隊の重要な拠点になっている。
  324. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 第七艦隊は米国の大変に重要な抑止力の一環をなしていることは事実でございます。
  325. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私はこれが核戦力と無関係かどうか、重要な核戦力でしょうということを聞いているんです。
  326. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 米国は個々の艦船の核兵器搭載能力を明らかにいたしません……
  327. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 搭載なんか聞いていませんよ。
  328. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 私、米国の核抑止力体制の重要な一環をなしていると申しました際には、その抑止力の中には核の能力も含まれております。
  329. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その核の能力を含む米七艦隊の最前線拠点だということ自体、日本がアメリカの核戦略とかかわっているということだと思います。  具体的にもう一、二聞きますが、例えば岩国には米海兵部隊が海外における唯一の戦闘攻撃航空部隊がいます。これが核能力を待った部隊だということはこれは核部隊だと、核兵器を持っているか持っていないかは別として核部隊だということはこれはもう世界の常識ですが、これはお認めになりますか。
  330. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) 核の能力を持っている軍隊が存在するということはあることでございます。
  331. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 こういう調子でやっていますともう時間がなくなりますからやめます。  日本は海兵隊、海兵航空部隊あるいは海兵地上核部隊の基地、これも沖縄のキャンプ瑞慶覧あるいは横田基地、これもアメリカの重要な核戦略の拠点になっている。三沢のF16戦闘爆撃機、この部隊ですね、これも核攻撃部隊と無関係だというふうに言われますか、どうですか、三沢。
  332. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) いずれにいたしましても我が国は、ここで改めて申し上げるまでもございませんけれども、非核三原則を堅持しておりますし、それを堅持することができる法的枠組みを米国との間に持っているわけであって、今幾つかの具体的な施設をお挙げになりましたけれども、それは米国の抑止力体制の一環はなしておりますけれども、そこに今おっしゃられたようなものがあるということでは全くございませんで、したがいまして抑止力体制の一環ではあるけれども、最初に申し上げましたように、したがってそれが核の体制であるのか、あるいは我が国がそのような事態に巻き込まれるのかということではなくて、まさにそういう事態に巻き込まれないためにそのような抑止力体制を我が国としては維持しているということだろうと思います。
  333. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 余り詳しくないようですから、この問答はやめにします。  いずれにせよ、日本が核弾頭があるかないかということを問題にしているのでないと私は最初から言いましたように、弾頭があるなしにかかわらず、アメリカの核部隊が存在し、日本の基地にアメリカの核攻撃能力を持った空軍機が配備されており、日本の港湾に核兵器を積載する能力を持った艦船が絶えず出入りしているということはこれはもうだれも否定できない事実ですよ。その事実も否定するんですか。
  334. 有馬龍夫

    政府委員有馬龍夫君) その事実は否定いたしておりません。
  335. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その結果、日本が守られているというその認識が問題なんですね。  私は、ここにアメリカのコラムニストの書いた「日本人に感謝したい」という本を持ってきました。この本には大変おもしろいことが書いてありまして、こういうふうに書かれています。「日本人はアメリカを一方的に全く誤解しているのである。多くの日本人は「日米安保条約」によって、アメリカの一方的な善意で、対等の軍事負担ではなく片務的に、アメリカ人の血と汗と血税とで一方的に日本を守ってくれていると考えている。」これが大変な誤解だというわけですね。真実は何であるか。「ところが、今やアメリカが考えている日本への防衛とは、つまりこれからの「日米安保」とは、日本によって、日本人の血と汗と血税との出費で、一方的にアメリカを守らせようと考えているのである。」と、これはアメリカ人のコラムニストの書いた「日本人に感謝したい」という本の中でこういうふうに書いておられます。  私はこれが真実だと思います。現にアメリカの議会では、アメリカが一方的に攻撃される可能性はない、日本が攻撃されるのはこれは米ソ戦争の際だという有名な証言が行われています。今度特別協定で我々が負担をさらに求められているところのこの特別協定というのも、結局このマイケル・アームストロングという人ですけれども、この人が言うところの「日本人の血と汗と血税との出費」と、それをさらにふやそうというものでしかないということを私は言わざるを得ません。この本に異議ありますか、大臣、異議あるでしょうね。ちょっとやっぱり一言発言の機会を与えましょう。
  336. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 日米安保条約に従いますれば、あくまで日本は個別的自衛権があるわけでございますから、集団的自衛権はありませんから、私たちにはアメリカを守る義務はない、こういうことをはっきり申し上げなければなりません。その第一歩からその著書は間違っておる、こういうふうに私は解釈しなければならぬと、こう思います。
  337. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は特別協定の問題を考える場合に、今の時期をどう見たらいいかということで、この前も問題にした特別委員会の問題を非常に重視したいと思っております。それは一九六〇年代後半、さっき私、牛場次官の話も引き合いに出しました。そして、私はワシントンでも国務省の人その他ペンタゴン関係者等々からその当時の論議の話も聞きました。その海外米軍基地の問題をめぐる論議の結論は、同盟国への負担の増大ということでした。今度ペンタゴンにつくられた特別委員会というのは、さっきその構成についての話もありましたように、ペンタゴン内部じゃなくて、国務省から統合参謀本部を含めた大規模な作業をやろうというものだと思います。  きょうも話題になりましたアメリカをめぐる経済情勢、財政事情、軍事費を削減せざるを得ない、そういう状況のもとで同盟国にどういう負担を求めるかということがここでまた抜本的に論議されようとしている。その結果日本にも出てくるのが、新たな日本の分担、日本のみならず同盟国の分担であるということは目に見えているわけですね。  しかも今、米軍の海外からの削減ということも話題はなっている。去年、ヨーロッパでは在欧米軍十万人削減ということが大論議になったそうですが、最近の国会の委員会では、在韓米軍の削減もあり得るだろうと、そういう論議が行われているということですね。政府もそういう認識を持っていると、そういう答弁防衛庁から行われているわけですね。そういうのをどう食いとめるかというので、既に日本平和・安全保障研究所の提案では……
  338. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 吉岡君、時間でございます。
  339. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 はい。同盟国の負担でそれを補おうという提案が現に行われている。そういうときに、基地の分担強化ではなく、そういう日本の安全保障のあり方を根本的に再検討する必要があると私は思います。  一九七〇年の国連総会で日本も賛成した決議、「国際安全保障の強化に関する宣言」では、「全ての国家が、平和と安全を全ての国民に保証し、かつ国連憲章に従って、軍事同盟のない世界的集団安全保障の効果的な体制を確立するための努力に貢献するよう勧告する。」、こうなっています。軍事同盟のない世界をこそ目指すべきであって、西側同盟の強化という、軍事ブロックの対抗の一方に一層組み入れられることを目指すべきではない。そのためにも……
  340. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 時間でございます。
  341. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私は大臣にそういうことを考えていただきたいと思います。
  342. 田英夫

    ○田英夫君 外務大臣がちょっと席を立たれた間、実は大臣が先日、中国、ASEANに行かれました。このことを後で大臣が帰られましたら御自身からお答えいただきたいんですけれども、その前に、まず今度の御旅行の結果について事務当局として――特に中国から聞きましょうか。中国でのやりとりをどういうふうに受けとっておられるか、まずお伺いいたします。
  343. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 中国では、外務大臣会談が三時間にわたり行われまして、これが五月の三日でございましたが、引き続き五月の四日には李鵬総理、それから趙紫陽総書記との会談が行われました。  これらを通じまして、まず日中二国間の問題につきましては、本年が平和友好条約締結の十周年に当たるという記念すべき年であるという見地から、宇野大臣より、日本日中友好関係の進展を日本外交の重要な柱の一つとして位置づけているという御意見の開陳がありまして、この基本的な態度に基づいて政治、経済、人的交流等々の分野で両国関係が非常に堅実な歩みを進めている、本年の八月には竹下総理の御訪中も予定されておるというお話があり、中国側もそれに基本的には認識はひとしくすると。ただ、そう申しまして、先ほど来いろいろ御質疑のございました問題、一部の日中友好に反対の動きもあるということの指摘、それから光華寮の問題等々に言及があったというのが二国間の問題でございます。  国際問題につきましては、両国の共通に関心を持っている問題ということで、当然のことながら朝鮮半島の平和、カンボジアの問題ということについて意見の開陳が双方から行われたという状況でございます。
  344. 田英夫

    ○田英夫君 今アジア局長から大臣の訪中の感想を伺いました。  大変御苦労さまでございましたが、今度の中国訪問について大臣は、印象で結構ですが、どういうお気持ちをお持ちですか。
  345. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今アジア局長が申しましたこととダブらない範囲で申し上げますと、日中とも閣僚レベルでは初めての会合がなされた、これが大きいことだったと私は思います。しかも、党の最高位におられます趙紫陽総書記にもお目にかかりましたし、名前を挙げれば相当な方々にお目にかかりました。そうした中を通じて、やはり日中友好というものを永久にひとつ両国の大きな外交上の柱としてさらにその基盤を固めようということに関しましては、もう完全に意見の一致を見たと申し上げてもよいのではないか。さらに中国は、平和に貢献するために、なかんずく太平洋・アジアの平和に貢献し繁栄に貢献するためは、我々といたしましても開放、改革の政策を推進いたしますから、ぜひともそうした面における日本の協力をお願いいたしますと。これも、一つの大きな展望を両国ともにひとしくすることができたんではなかろうか、私はかように思っております。
  346. 田英夫

    ○田英夫君 既に午前中から、光華寮問題なり奥野発言なりのことが出ておりますから、もうかなり話は出尽くしていると思いますが、実は大臣が行かれる直前に私は日中民間人会議出席をいたしました。ちょうど入れ違いで三十日に帰国したということですから、中島大使なりから既にその日中民間人会議内容や空気はお聞き及びと思います。  朝からのお話を伺っていて、実は政府間、特に外務大臣同士とか李鵬総理とかいう政府間のレベルで最高幹部で話される場合は、それぞれ国を代表するといいましょうか、公式のものですから一つの儀礼があると思います。民間人会議の方は、これが目的なんですけれども、全く歯に衣を着せないでお互い議論をし合おうじゃないかということですから、違うのが当然でありますけれども、民間人会議は、御存じと思いますが、政治、経済、科学技術、教育と四つの分科会に分かれて三日間それぞれの専門家が議論する。例えば、日本総団長が伊東正義自民党総務会長で、兼政治の分科会の日本側代表と。また、例えば教育分科会の日本側代表は永井道雄さん、科学技術は向坊元東大学長、こういう皆さんですが、中国側もそれぞれそれに見合った方々が出てきておられる。私は政治分科会におりましたけれども中国側発言も非常に歯に衣を着せないものだったと思います。  冒頭、全体会議中国側の基調報告というのは宦郷さんという人がやったわけでありますが、この人が、我々が事前にもらっておりました中国側のペーパーにはなかったんですが、まず奥野発言をその中で取り上げております。一閣僚という表現を使っておられましたが、遺憾の意を表している。ところが政治分科会の中で孫平化中日友好協会会長が述べられたのも、これもやはり最初のペーパーにはありませんでしたが、極めて厳しい調子で、名指しでただ奥野先生という表現を使われたのを覚えておりますが、非常に厳しく批判をされました。  同時に王鉄崖という、日本で言えば横田喜三郎さんのような存在だと思います、国際法の長老で中国の権威という人を、前日まで香港の会議に出ていたのをわざわざ呼び戻しまして、この第一分科会に出てきて、光華寮問題について条約あるいは日本の三権分立論というところに触れました。以前にこの委員会で斉藤条約局長とやりとりしたことを思い出したんですが、そういう条約、法律の立場から中国の主張をかなり長時間、極めてはっきりと述べました。そういうやりとりを全体として受けとめてみますと、中国のこの問題に対する姿勢というのは依然として大変に厳しいというのが私だけでなくて出席した人たちの一致した意見だと思います。  第一分科会にはちなみに自民党から各党の皆さんがおられましたし、あるいは坂本義和さんとか武者小路さんというような学者の皆さんもおられたわけですが、終わってからの内輪の懇談の中でやはり厳しいなというのが一致した意見です。これはもう大臣も御存じのとおり、なぜ中国がこのことに対して大変に厳しいかといえば、日本の一部に戦争に対する反省をしない者がいるというようなことで言い尽くされていると思いますが、そういうことに対して大変に厳しいということです。それからもう一つは、孫平化会長が特に取り上げられた中で、台湾の帰属未定論ということに対して厳しく日本政府の態度を批判をされています。  この辺のところは改めてまた私も政府のお考えを伺いたいところでありますが、印象を言えば、私は、大臣が帰られて、先ほどアジア局長との御答弁も含め、報道などを見ておりますと、私どもが受けた印象よりも緩くお考えではないかということを危惧するわけです。率直に言って私ども民間人会議で出してきたのが中国の本音じゃないかというふうに考えますと、このことをぜひ頭にとめて日中間外交を進めていただきたいと思います。いかがですか。
  347. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 光華寮問題は、銭其シン外交部長からも共同声明また四原則、さらには日中友好平和条約等々一連のものがございますから、それを厳格に踏まえて実施してほしいものであると、そういうふうな発言があります。李鵬総理からも同じような発言でございますが、李鵬総理の場合にはアメリカ、中国の関係をお述べになりつつ台湾問題に触れられて、アメリカには依然として時々二つ中国というふうな意見がある、これは残念だと。それと同じように、日本においてもやはり二つ中国であってはこれはたまりませんと。現に共同声明等において日本一つ中国ということになっておるわけだから、その点もひとつ十二分に御理解していただきたいというふうなところから入られました。  そして私も、中島大使が現地におりましていろいろとずっと経緯を知っておりますから、経緯を聞きました結果、今日まで日本は三権分立であるということをことごとく言っておりますし、いやしくも行政が司法に介入することは許されないと言っておりますし、そうしたものを踏まえながら、適切かつ合理的にこの問題は双方の努力で解決しなくちゃなりませんと、こういうふうなことを繰り返してまいったんですが、ちょうど日本が繰り返してまいりましたような観点に立って李鵬総理の方から、今私が申し上げましたようなことで解決をひとつしなくちゃいけませんねと、こういうふうに言われたと。このことが従来からやや観点がそうした意味におきましては日本に近寄っていただいておると、非常に難しさがあるということも御承知だし、時間がかかるということも御承知だし、またこれだけで大局を見失っちゃいけないということも言っていらっしゃる。しかし、厳しくやはりこれは適切、合理的な結論を得たい、そのために努力してくださいと、こういうふうに私たちは受けとめております。
  348. 田英夫

    ○田英夫君 先を急ぎますが、ASEANの方では、あるいは中国でももちろん出たと思いますが、カンボジア問題が一つの重要な話題になったと思います。  この問題についてのやりとりの中身を伺う時間がありませんからずばり先に進めまして、いわゆる東京ティーパーティーというようなことが言われるわけですが、政府としてはそういうお考え、用意がおありかどうか伺っておきたいと思います。
  349. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今のところはそういう言葉が言われておることはあるのでございましょうけれども、やはり我々といたしましては一番近いASEANの人たち、この人たちが主張しておる線に沿いまして、ベトナムの即時撤兵並びにカンボジアの民族自決、こういうふうに申し上げております。これに関しましては、中国外交部長も、私たちも同様に思っておるという同意の意見を吐いておられました。  したがいまして、まず私たちは、日本が今しゃしゃり出ましてもこれは難しい問題だなということを考えておりますので、それは日本といたしましてもそういうふうな場面がつくれたら結構でございましょうが、やはりインドネシアがASEANの窓口として頑張っておられる、またベトナムとの接触もあると。我々もベトナムとの接触がある場合にはそのことを申し上げて、やはり速やかなる撤兵、これに関しましては中国と意見の一致を見ました。
  350. 田英夫

    ○田英夫君 シアヌーク大統領の来日というのは大体夏ごろということが言われておりますが、これはそう考えてもよろしいですか。
  351. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私の方から招請申し上げまして、その招請にこたえる形で夏に訪れたいと、八月になると考えております。
  352. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、きょうの本論の在日米軍の労務費の特別協定の問題なんですけれども先ほど来の同僚委員の御質問、やりとり、大変重要な問題だけに興味深く伺ったんでありますが、特に吉岡委員が言われた安保条約、在日米軍の駐留ということについて再検討しているかという、すべきではないかという前提で質問されたようですが、結論的に私もそういう考えがあります。そういう感じがしてならないんです。  さっきも、旧ですが、日米安保条約が最初に結ばれたときの経緯などもお話に出ておりましたけれども、当時と今と明らかに国際情勢の基本が完全に変わりつつある。これは私の持論ですけれども、つまり朝鮮戦争に端的に見られるように、資本主義か社会主義かというイデオロギーを背景にして、当時の世界というのは自由陣営と社会主義陣営、東西対立、こういう構造が極めて明確にあったわけですね。  そこで、私は実は亡くなった吉田茂総理大臣に昭和三十七年、つまりサンフランシスコ平和条約、安保条約が結ばれて十年目のときに、既に引退をしておられた吉田さんを大磯のお宅にお訪ねをして、新聞記者としてお話を伺ったことがあります。そのときの吉田さんのお話は非常に今も頭の中に焼きついて残っているんですが、二時間ぐらいいろんな当時のことを、既に好々爺のような感じで、談笑のような形で話してくださったんですが、私があのときに全面講和か単独講和かという議論が国内で二分していたときに、なぜ吉田さんは単独講和という結論を選ばれたんですかというような意味のことを質問しましたら、突然往年のワンマン総理の表情になられて、田君、ばかなことを聞くなと言われたんです。  要するにあのときに全面講和などということはあり得なかったじゃないか、つまり東西対立のいずれにつくかという選択しかないので、敗戦国の日本がすべての国と全面的に講和条約を結んでいい子になろうということはあり得ないじゃないかという意味のことを言われて、それから後はまた笑いながら当時のことを話されたわけです。それが当時のつまり世界の構造だったと思いますね。  そういう中で、さっきもお話が出たような安保条約が結ばれてきた、その是非、善悪は別にしまして。しかしそれに比べると、その当時の状況に比べて今世界はどうかということを考える時期に来ているんじゃないか。つまり今世界はそうした厳しいイデオロギーを背景にした東西対立の状況と言えるかどうか。  もちろん米ソの間に対立状態があり、同時に、しかし一方ではINF合意のようなことがあるということ、したがって完全に対立が解消したとはもちろん言いがたいわけでありますけれども、あのころのような、朝鮮戦争直後のあのときの雰囲気と現在の国際情勢は構造的にもう変わってきているというふうに考えるべきではないか。そのときになぜこの在日米軍の労務費を日本側がさらに負担をするというような方向に、つまり米ソの軍事的対立の一方の側に日本が加担をするといいましょうか、このアメリカの側の財政の一部を負担するということですから、そういうことをやる必要があるのかというそういう根本的なところを考えるべきじゃないか。  今までの惰性で来ているならともかく、私の印象では、今はむしろ世界の構造が東西対立ではなくなりつつあるという状況の中では、日米安保条約をよりもっと軍事的でないものにしていくという必要があるんじゃないだろうか、そういう時期に来ているんじゃないだろうかという感じがするわけですね。そこでこういうことをお尋ねするんです。大臣としてはさっきもお答えありましたけれども
  353. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 講和条約締結前後の情勢から考えましても、現に一九四五年、日本敗戦の年は私たちはアメリカのGNPの二十分の一と言われておりますが、オリンピックのころに十分の一になり、そして三年前の六十年、四十年たったときに二分の一になった。また一ドル三百六十円は御承知のように一ドル百二十円台で今動いておる。こういうふうなことを考えますと、明らかに日本の力というものがついたということはこれは否定するわけにはまいりません。そしてアメリカの力と逆転しておるということも否定するわけにはまいりません。もちろんアメリカには二億の人口並びに強大な領土がございますから、我々とは比較にならぬほどその基礎的な地盤というものの強さ、これを私たちは軽視するわけにはまいりません。  しかしながら一応いろんな経済力等々の関係から申しますと、日本もいつまでもおんぶにだっこ、そうした姿でいいのかいという声も、これは単にアメリカだけではなくして世界からも聞かされるというふうなことを考えますと、私たちにはやはり世界に貢献する場合には平和的な方法しかないわけでありまして、軍事的な方法で貢献するような道は全くないわけでございますから、したがいましてこうした安保体制という一つの枠組みの中でやはり従業員の雇用の安定等々を考えました場合に、これはひとつ我々の同胞のことでもあり、またそれは同時に安保体制の円満な運営のためでもある、かような判断が実はなされたわけでございます。したがいまして、現在の東西の対立というものはまだ厳しいものがあるのではなかろうか。  私はここでちょっと御披露申し上げてもいいんですが、中国からは、私に対しましてソ連をどう眺めていますかというような質問もありました。私は、この間のINFは核軍縮の一歩であると評価しながら、米ソの努力を非常に私たちも期待していますというふうに申し上げたわけでございますが、六月の大会ではいろいろあるんじゃないですかというふうなことで、ゴルバチョフさんそのものが進めておられるペレストロイカあるいは情報公開等々に関しましても一つの見解を持っておられたということは、私といたしましても世界は広いなというふうな感じをいたしまして、だからそう単純に、今平和が来ました、もう大丈夫です、安保体制を改定しましょうという時期ではないと、かように私は考えております。
  354. 田英夫

    ○田英夫君 私も日米安保条約を一挙に解消したり在日米軍を一挙にゼロにするというような状況にあるとは思いません。しかし、今申し上げたような理由で、政府のそういう意味の中枢は外務省でしょうから、そういうことを外務省の首脳の皆さんの頭の中に置いていただく、同時に政府閣僚の皆さんの頭の中に置いていただくときが来ているんじゃないかなという気がするわけです。  むしろ私の主張としては、日米安保条約というものの軍事的な色彩を次第に弱めていくということの中で日米友好条約という色彩に変えていく、このことが経済摩擦を含めて日本とアメリカとの関係によりよい結果をもたらすんではないかなと、大きく言ってそういう考え方を持っておりますが、これは時間がありませんから一方的に考えを申し上げます。  そこで次の問題ですけれども、これも先ほど広中委員から取り上げられた問題ですが、フィリピンへの援助の問題。これも実はきょうこの在日米軍の労務費の問題に絡めてなぜ取り上げるかということを申し上げますと、要するにアメリカの財政が極めて厳しい。そういう中で、アメリカの特にペンタゴンを中心とするところの皆さんの考え方というのは、今私が申し上げたような考え方とは違って、軍事的にソ連と対立をしている、そういう中で軍事力を弱めずに、しかしアメリカの財政難をどうやって乗り切っていくかというそういうところで接点のある同根の問題じゃないかなという気がいたしまして、しかも、フィリピンの援助に対しては日本は大きな役割を担えというようなことが言われているわけですから、それで取り上げたわけです。  これはもうさっきの広中委員の御質問の中で御答弁がありました、まだ具体的にシグール国務次官補から出ているわけじゃないと。しかし、ワシントン・ポストの報道は少なくとも極めて具体的に報道されているわけで、その辺は私もああいう御答弁がありましたから、それはうそだろう、実際には具体的にもっと提案があったんじゃないかとこの場で言ったところで、そうですという御答弁が返ってくるとは思いませんから、それ以上は聞きませんけれども。  今申し上げたような前提から考えますと、今までフィリピンが外国から年間受けていたのが大体十五億ドル程度、その中のアメリカが四億ドル、そしてその四億ドルの中の一億八千万ドルがスピック、クラーク米軍基地のいわば貸与料というふうに言われているわけですが、これが一挙に百億、まあ五年間ということはありますけれども、大幅に数字が大きくなるわけですが、計画が事実とすれば、伝えられたところが事実とすれば。  そうすると私が危惧するのは、アメリカは財政難だと、今既にその交渉がアメリカとフィリピンの間で始まって、とりあえずは一九九一年の貸与期限までの三年間の貸与料、今までの一億八千万ドルを値上げしろということをフィリピンが主張していると言われています。それだけでもアメリカの負担がふえるわけですね、ただでさえ財政難の中で。そうすると、一九九一年以後引き続き米軍基地を維持したいというのがアメリカの強い要望だということになりますと、フィリピンはただでさえ経済難ですからその貸与料の値上げをさらに求める。  こういう見通しの中で出てきている話とすれば、間接的ではありますけれども、アメリカの今までの民政経済援助の部分を日本に肩がわりさして、それでアメリカが全体として四億ドル出していたその額ぐらいがすべて軍事基地の貸与料になってしまう。結果的には間接的に日本がその分を、もちろん日本はODAでやるだろうというさっき御答弁がありましたから、ODAの方でそれを引き受ける、間接的に何か米軍基地の維持のために日本が協力するというようなことになるんじゃないだろうか。これは邪推かもしれませんがそういう心配をするわけですが、その辺はいかがですか。
  355. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) そうしたことを念頭に置きながらの幾つかのアメリカの人たちの話がなきにしもあらずであります。だから、私はそういうことはできませんということははっきり申し上げました。その相手はシグールさんであり、あるいはシュローダーさんであり、またそのほかにも重要な方がお越しになったとき、そうした話をしております。  特に名前を申し上げるといささかはばかりますので申し上げるわけにはまいりませんが、フィリピンの高官も、フィリピン自身がまだ基地の問題に関しましては結論を出しておりません。国民もまた結論を出しておりません。そうしたときにそういう話が先行するということはかえって迷惑でありますというふうな表現もあったほどでございますので、私は基地の問題はアメリカとフィリピンの間の話である、こういうふうに申し上げましたら、もうそれは一番正しい判断でございますと。私たちがそうした意味合いにおいて将来肩がわりをしてあげましょうとか、そういうようなことにつきましては、やはり日本にはもう幾つもの拘束がありますからできませんよということは申し上げておる次第でございます。
  356. 田英夫

    ○田英夫君 先日、フィリピンの外務大臣が来日されましたから、外務大臣宇野外務大臣お話の中でこの問題も、今ちょっと触れられましたけれども、出たと思いますが、フィリピンの外務大臣としてはマルチ援助と言われる援助をぜひ実現したいと発言をしたというふうな報道がありますけれども、これは事実ですか。
  357. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 一言も出なかったんです。
  358. 田英夫

    ○田英夫君 その辺が、私も実はその報道を読んでいささか首をかしげたわけです。あの方は、マルコス時代にアメリカに亡命をしていたという、いわば民主化の闘士でありましたから、フィリピンの民衆の支持が非常に大きいし、民衆が何を求めているかを十二分に御承知だという人だと思います。  私も実は、福田赳夫さんが会長のあのフィリピン協会ですか、あの昼食会で隣り合わせに座りましたからそういう話を実はしてみたんですが、全くやはりそういう考えを向こうから言われることはなかったんですが、もうこれは大臣アジア局長、皆さんには釈迦に説法ですけれども、広中さんもさっき言われました、私も一緒に昨年の秋フィリピンに参りました。そのときに、フィリピンの民衆の感じというものを受けとめてきたつもりですけれども、これも申し上げたことがあるかもしれませんが、たまたま日本・フィリピン友好議員連盟で行きましたから記者会見があった。小坂善太郎会長を中心に、メンバーの各党一人ずつ出ていたんです。フィリピンの記者が大勢いる。当然この日本からフィリピンに対する経済援助の問題が大きな話題になるであろうという予測のもとに私も臨んでいたわけですが、ついにその問題は一言も出なかったんです。  フィリピンの記者からの質問はすべてアメリカ軍基地、核の問題です。それについて日本の国会議員の皆さんはどう考えるか、これが今フィリピンの民衆、特に新聞記者諸君ですが、最大の関心事。それは突き詰めて言えば、一九九一年以後存続さした方がいいのか、もうなくした方がいいのかという議論で今沸騰しているというと大げさかもしれませんが、国論が沸騰していると言っていいほどの関心の持ち方だったと受けとめました。したがって、さっき私が危慎すると申し上げたような、米軍基地を引き続き維持するということになれば貸与料の値上げということをアキノ政権は要求せざるを得ない。そうすると、その分は苦しいから、アメリカは日本とか西ドイツとか豊かな国に肩がわりをさせるんじゃないかと、こう私申し上げましたが、これはフィリピンの民衆もそういうふうに受けとめるおそれがあるということは、フィリピンの民衆が日本に対してどういう気持ちを持つかということにつながるわけで、そこを私は十二分に考える必要があるという気持ちで申し上げたわけです。  それは本当に私も驚きました。あなた方にとってフィリピンの軍事基地はあった方がいいと思いますか、もうなくした方がいいと思いますかという、それを聞かれても当然のことで、小坂団長は、それはフィリピンの皆さんがお決めになることですという答えだったのですが、それでは許されないで、もしなくしたらアメリカはその分を日本に肩がわりさせるんじゃないか、つまり日本の米軍基地を強化するというようなことになるんではないですかという問い詰め方をしてくるくらい、非常にある意味で言えば思い詰めたような問題意識を持っていると思います。そういう意味でお聞きしたんですが、いかがですか。
  359. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今、田委員からお話を承りまして、前回にも経済大国日本は軍事大国になるんじゃないかという懸念を一般大衆は持っているよと、特にフィリピンにおいては援助が過去の政権でいろいろと悪用されたという経緯もこれありという非常に貴重なお話を承りましたので、昨年総理とマニラに参りましたときには、総理みずからが何度も何度も、実は日本は経済大国になりましても軍事大国になりませんと、こう答えられている。これが非常に大きく現地の新聞の第一面トップを飾った。これによりましても、田委員がこの場でいろいろとアドバイスをしていただいたことを私たちは喜んでいる次第でございます。だから、私たちもやはり学徒出陣兵でございますから、お互いにその点は今後も守っていかなくちゃならないと、かように思っております。  特に、マングラプス外相のお話が出ましたが、一切基地の問題とか肩がわりの問題は出ておりません。それよりも私から申し上げたんですが、外務大臣は、ついこの間十四次の借款の調印をしました。だから今度も、十五次もございます、十六次も頼みますといって十五次、十六次の話までなさいまして、実のところはまだ具体的にこういうプロジェクトだということを持ってきておられません。  だから、そういう話はありましたから、私から、我が国も援助というのは国民の税金でやっておるわけでありまして青天井ではありませんと、苦しい中をいろいろ考えてさしていただいておるので、早くプロジェクトを出していただければ検討さしていただいて、妥当なものならば御協力申し上げましょうと、そのときには、この間シグールさんが来て、世銀的な感じ方でアメリカも豪州もECも日本もいろんなところもというようなことならどうかなというような話があったから、私もそういう意味の世銀的な構想はよかろうねということをマングラプスさんにお話し申し上げたことがございます。それはそのまま新聞報道されたと考えております。
  360. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。ありがとうございました。
  361. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時二十分散会