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1988-03-31 第112回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十一日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        外務大臣官房審        議官       福田  博君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房会        計課長      林   暘君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省欧亜局長  長谷川和年君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        警察庁警備局外        事課長      國枝 英郎君        法務省入国管理        局入国審査課長  大久保 基君        文部省初等中等        教育局高等学校        課長       森  正直君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (外務省所管) ○特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件(内閣提出) ○国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会開会いたします。  昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 最上進

    最上進君 本論に入ります前に、先日の中国列車事故関連いたしまして、二点だけお伺いをしておきたいと思います。  まず第一点でございますが、二十七名の若い命を失いまして遺族方々は大変な悲しみに暮れておられると思うわけでございます。しかしながら、これから当然補償の問題がクローズアップされてくるわけでございますけれども、巷間伝えられるところによりますと、中国政府また被災者遺族、この間の交渉あるいはまた訴訟によって解決をする以外にないというふうに言われているわけでございますが、私ども考えておりまするに、訴訟になりましても中国国内法によるということになりますと、日本人的な感覚ではこの問題はやはり最終的に大変解決しにくいんではないかというふうに思っているわけでございます。  補償金額主張に大きな隔たりが出てくることは目に見えているような実は気がするわけでございますけれども事故当初の官房長官の談話によりますと、かなり前向きに踏み込んで政府が面倒を見られるようなニュアンスの発言と私どもは実は受けとめたわけでございますが、先日来の外務省あるいはまた大臣答弁によりますと、側面から両者交渉援助するというお話のようでございます。  中国側におきましては陳国務院弁公室秘書長外交ルートを通じて交渉したいという発言をされておられるわけでございますけれども、やはり遺族の側からも既に被災者側窓口として外務省になっていただきたい、そういう考え方が出始めているようでございます。この点につきましてまず第一点お伺いをしておきたいと思います。
  4. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 列車事故はまことに遺憾な事故でございまして、そのたびに哀悼の意を表する次第でございますが、補償問題に関しましてはあくまでも当事者当事者というのが一つの原則でございます。しかし、当事者と申しましても列車の方は国有鉄道でございますから国であり、こちらの当事者は高知県の一高校でありそのPTAである。こういうふうに考えました場合に、当然いろんな問題に関しまして援助をしなかったならばこれは到底できることではない、かように思っておりますので、政府といたしましてはそうした意味合いにおきまして側面的援助に全力を傾注いたしますと、かく申しておるところでございます。  現在の被害者である高校並びにそのPTA遺族方々からは、まだ正式に外務省にああしてほしい、こうしてほしいということはございませんが、やはり外務省といたしましては中国側国内法の問題もこれあり、十二分にその点は検討いたしまして、そして遺族方々の照会に関しましても間に合うような体制はただいま整えておるというところでございます。
  5. 最上進

    最上進君 大臣の御答弁よくわかるわけでございますが、両者主張隔たりがあるということは、先ほど来お話ししましたとおり目に見えているわけでございまして、特にこの交渉当事者間に任せて長引いたりいたしますと日中間友好関係亀裂が入る、これを大変私どもも心配いたしているわけでございまして、この隔たりが大変大きい場合に、問題を早急に解決するという意味を持って政府は何らかの措置をとられる考え方がおありになるかどうか、その辺につきましてお伺いしたいと思います。
  6. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 既に航空事故が一件中国でございました場合、中国から内示されている額もございます。そうしたことを考慮に入れますと、最上委員も御承知のとおりに、やはり国内事情が相当違う、また俸給等の面におきましても日中間にはそれぞれ大きな差があるというふうなことを考えてまいりますると、勢い日本国内と同じような法制下あるいは制度のもとに補償がなされるとは考え得られない。したがいまして、むしろ私たちは、日本のそうした関連補償を念頭に置きながら考えられるとこれは大変なことになる。やはり相手国には相手国の制度あり、また当然その間におけるところの国民生活の状態なり、また円とそして中国通貨との関連もこれありと、いろんなことがございますから、そうしたことも十分配慮しないことには、摩擦を大きくするようなことがあってはならない、私はこう考えておる次第でございます。  既に政務次官を派遣いたしましたところ、中国側からもそうしたことを頭に描きつつ、やはり外交ルートを通じていろんな折衝をしたいということも誠心誠意おっしゃっているわけですし、同時にまたこのことが日中友好平和にしこりとなって残らないよう考えたいものでありますと、これはもう両国の代表が上海においてお互い言葉を交わしておるような次第でございますので、その点は我々といたしましても最大の努力はいたしますが、中国国内法によるところの補償がなされるのであろう、こういうふうに私たち考えております。
  7. 最上進

    最上進君 大臣の御答弁で大体了解できるわけでございますけれども、あくまでも日中友好関係亀裂の入らないような措置をぜひひとつ希望しておきたいと思います。  文部省にお伺いをしたいのでございますが、義務教育の中で海外旅行が行われる時代になってまいりまして、こうした事故は不慮の災害としてついて回る可能性というものが当然あるわけであります。そこで、今回は高等学校であり、また生徒には選択権があったといいながらも、学校教育の一環で行われる以上は、やっぱり参加するということには本人の意思を上回る力というものが働いていることは否めないわけでございます。ましてや義務教育の中で今後修学旅行とか研修とかという形の中で海外旅行が行われる。自由参加ということよりも半ば強制力が働いた中で参加される、そういう旅行なり研修の中で事故が起きたときには、事はやはり大変重大であると思うわけでございます。今回の事故を教訓として、今後学校教育の中で海外旅行に対して文部省は何か小中学校に対して基準とかあるいは指針、こういうようなものを通達する考え方があるかどうかお伺いしておきたいと思います。
  8. 森正直

    説明員森正直君) 御説明申し上げます。  文部省におきましては、従来から小学校中学校高等学校に対しまして修学旅行実施基準というようなものを定めまして使用してまいっているわけでございますけれども海外修学旅行につきましては、御案内のように私立高等学校中心実施校が非常にふえてきておりまして、片や小中学校につきましては、私立中学校で数校実施例があるのみでございます。そうは申しましても、やはり例はあるわけでございますので、各都道府県の修学旅行実施基準について、旅行先とか日程とか経費等につきまして小中学校については大きな制約を加えるということで、実態もそういう線で定められている状況でございます。  なお、今回このような痛ましい事故がございましたので、文部省といたしましても旅行業者に対してなるべく早い機会に安全について御協力をお願いするというような措置考えております。また運輸省の方でも本日海外旅行の安全についての研究会が第一回目の会合が持たれる由でございますけれども、そこにおきましても文部省の方から海外旅行の安全について協力を要請するというような手だてを考えております。
  9. 最上進

    最上進君 列車事故の問題はそのくらいにいたしまして、いよいよ本論に入らせていただきたいと思います。  まず日韓問題についてでございますが、さき日韓外相会談におきましては宇野外務大臣に大変お骨折りをいただきまして、私ども大変高くその結果に対しまして敬意を表しているところでございます。それは、従来の日韓間における話し合いといいますと、過去の不幸な出来事に触れることばかりであって、将来について話し合うという機会が大変少なかった。今回、宇野外務大臣の訪韓によりまして、過去に触れることなく将来を話し合った、あるいはまた文化交流とか人材交流という大変間口の広い問題をお取り扱いいただきまして、私どもは大変大きな成果があったというふうに評価をさせていただいているわけでございます。  そこで、外務大臣自身韓国へ行かれて、外務大臣大変文人としてお名前が通っておられるわけでございまして、私ども感じないことでも敏感にお感じになられる大変すばらしい大臣でございますけれども韓国へ行かれまして今、日韓の置かれている現状というもの、あるいはまたそれを踏まえて今後どのように協力関係が進んでいったらよいか、この点について率直にお感じになられたところをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ちょうど二十三年前に日韓両国は正常化いたしまして、自来最も親しい隣人として相互が敬愛と友好の念を持って交際をしてまいりました。その間にちょいちょいトラブルもなきにしもあらずでございますが、最近の日韓関係は最も良好な関係にあると、私はかように存じております。  特に、韓国の方で御承知のとおり盧泰愚大統領体制がしかれましたが、これは第六共和国でございまして、もう全く新しい国柄が誕生した、憲法も変わった、しかもその間においては非常に民主主義的な方法によって政権も交代した、こういうことを私たちといたしましても高く評価した次第でございます。だから、外相会談は第三回目であったわけでございます。  私は、むしろ韓国に対しまして第六共和国誕生おめでとうございます、その意味では第一回外相会談と表してもよいのではなかろうか、私はこう思う。したがいまして、お互い北東アジアの安全と平和のためにも寄与をしたいと思うし、そうした意味において二国間の話し合いもしましょうということで、今最上委員が申されましたような二国間の問題に関しましても将来を見渡したお話ができたことは非常に私はよかったんではないかと、かように存じておる次第でございます。
  11. 最上進

    最上進君 韓国側が、崔外相から提案のありました八千人規模の人材交流計画、これはお聞きしますと毎年八百人ずつ五年間にわたるものである、四千人、四千人ということであり、とりわけ私どもが注目をいたしておりますのは、学校先生、これは大学教授から小中高先生、また青少年交流まで幅広いものであるようでございますけれども、これを実際に具体的にどういうふうに進めていかれるのか、それについてひとつお伺いをしたいと思います。
  12. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 八千人の交流韓国側からの提案でございまして、これは大変な進歩だとお考え賜りたいと思うのでございます。  本来ならば先ほど最上委員が御指摘のとおりに、やはり過去の三十六年間いろんな忌まわしいことがあったわけでございますから、もし私たちからそういう提案をいたしましても、韓国側では考えてみたいとおっしゃるのがあるいは通例であったかもしれませんが、今回は新体制下韓国側からこういう新しい提案をされた。しかも驚くべき大勢の人であるということも私は日韓関係において新しい時代が開かれておるというふうに認識してもよいのではないかというふうなことでございます。  私はこれは当然全面的に受けるべきである、かように考えまして、総理にもそのことを報告し、総理も了承しておられますが、我々外務省として、外相間の話でございますから、一つの効果を上げるためにどれだけスムーズにこれがこなしていけるか検討しなくちゃなりません。そのためには諸準備が必要でございます。したがいまして、文部省を初め関係省庁等でも近くいろいろと協議もして、そしてその内容充実を図っていきたい、かように考えているところであります。
  13. 最上進

    最上進君 まだ具体的な方策というもの、手順というものはお決まりではないと思うのでございますけれども韓国側がやはりただいまお話ししましたように大学教授だとか小中高先生方青少年というふうに一応幅を絞ってきておられる。我が国からの四千人というものもやはりこうした学校教員あるいはまた青少年中心にした交流対象になるのか、その辺についてはいかがでございましょうか。
  14. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細なことはこの際でございますから、アジア局長から御説明申し上げたいと思います。
  15. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 基本的にはただいま委員の御指摘のとおりでございますし、大臣から御答弁申し上げましたとおりで、韓国側の提示しております教員それから学生等中心にする青少年、これを毎年それぞれが八百名ずつ交流を行ってまいりまして、一年間千六百名、これが五年間で八千名、こういう提案をいただいたわけでございます。  委員承知のとおりに、日韓間では既存のいろいろの交流計画がございまして、この中には青年学生それから教師の方が入っておられるものもございます。したがいまして、このような既存のプログラムとの整合性をどうするかということも勘案をいたしながら、また、地方公共団体でもかなりの交流計画を進めておられますので、こういうようなものを御協議をいたしながら、窓口を初めといたしまして交流計画の具体的な内容について今話を関係省庁と詰めている状況にございます。  ちなみにこの件にも関連をいたしまして、先方文部省——文教部でございますけれども文教部等関係部局行政官を約六十名今回の外相会談の直後にお招きをいたしまして、今月の二十四日から既に日本に来ておられまして、八日間の予定でいろいろお話し合いを行っております。こういう状況にございます。
  16. 最上進

    最上進君 そうすると、まだ窓口は明確に決まっていないということでございますね。
  17. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) さようでございます。
  18. 最上進

    最上進君 経費分担費用分担、これはどのようになっておるのでございましょうか。
  19. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 韓国側の御提案では、先方から送ってこられる方々については、日本に着きますまでの旅費は韓国側負担日本に到着しまして以降の滞在費研修費等日本側受け入れ国側負担日本から送ります場合も同様ということを提案しておられます。
  20. 最上進

    最上進君 やはり経費分担の問題というのは明確にしておいた方がいいと思いますのは、かつて日本から中国青年が三千人訪中いたしましたときのことをお忘れではないと思うのでございますが、中国側が丸抱えであって、それに甘んじて青少年をお送りして、その後それが一部日中不協和音の一因になったという御指摘もありますので、ひとつその点御配慮いただきたいと思います。  もう一点、目立たないニュースでございましたけれども韓国常駐日本人特派員の枠が十五名から三十名に拡大をされているわけでございます。これは明らかにソウルオリンピックを成功させたい、そういう韓国悲願達成あらわれであるというふうに見られるわけでございますが、特に我が国との協力関係拡大というものは不可欠であるというふうに韓国側がお考えになっている、そういう意欲のあらわれというふうにも受けとめられるわけでございまして、この機会我が国といたしましてもやはり韓国側期待にしっかりとこたえていくという姿勢が必要ではないかと思います。  そこで、外務大臣に御所見を賜りたいのでございますが、一体この機会日本韓国に何をしてあげたらよいのか、やっぱり真剣に考えていかなければならないと思うわけでございますけれども、この点についてお考えを聞かせていただきたいと思います。
  21. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 特派員枠拡大は、かねて我が方政府からしばしば韓国政府にお願いいたしておりました。なかなか実現できなかったのでありますが、幸いなるかな新しい大統領誕生、そして第六共和国誕生と、そういうこともございまして、向こうの方から極めて淡々と外相会談において倍増いたしますということが言われまして、非常にこれは我が国韓国の間におきましても大切なことが実現したと思って喜んでおります。  各新聞社も非常に力を得られましたので、オリンピックの報道はもとより、今後もあらゆる経済社会等との交流を通じましてこうしたマスメディアが大活躍をしていただく、そうしたことを私たち期待をいたしたいと、かように考えておる次第でございます。  日韓間におきましてはずっと長らく経済関係も良好でございますが、やはり我が国は依然として黒字国でございます。その黒字も相当最近は減りました。これは韓国努力によりまして我が国への韓国の輸出が相当ふえたということも大きな原因でございますから、この面におきましてもやはり今後NICSという問題がいろいろ出てくるだろうと思います。  私たちといたしましても、アジアの一員としてはNICSを大切にしてあげなくちゃいけないし、また先進国としては諸方からNICSどうなるんだというような問題もございますが、やはり私はNICS側に立ちまして、お互い善隣友好を図っていくべきである、かように考えておりますので、今後も経済関係におきましてはやはり適正な協力というものを我々は惜しんではならない。それプラス文化交流、これが先ほど申されましたような八千人交流等々を通じまして大きな展開を見せるわけでございますので、深い文化的なつながりがあった日韓のことでございますから、もう一度お互い国民がそうした文化というものを脳裏に常に置きながら新しい時代を構築するということは必要ではなかろうか、そういう面におきましても私たち努力は惜しんではならない、かように考えております。  実は初めて歌舞伎がオリンピック開催等を記念いたしまして公開されるということも画期的でございますが、またそのほかに映画が、今のところは大使館大使館センターという広報機関の中においてときどき上映されております。もちろん「細雪」だとかあるいは「喜びも悲しみも幾歳月」、ああいうふうな物語は非常に清純なきれいな物語でございますから、韓国儒教精神をたっとんでおられる国柄としては歓迎されておる。余りへんてこな映画はもちろん向こうは禁止で、私たちもこれは国の誇りとして輸出するわけにはまいりませんが、そうした活動を通じましておいおい文化交流も盛んになるであろう、このことを今後努力いたしたいと、かように思っております。
  22. 最上進

    最上進君 日本人韓国に対する今一般的な関心というと、やはりソウルオリンピックだと思うわけでございます。  外務大臣韓国に行かれて、北朝鮮のオリンピック参加に対してどのような感触を得られたかお聞かせをいただきたいと思います。
  23. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私もいろいろな関係者から御意見は承っておりますが、韓国政府とされましては、開会の一日前まで門を開いておきますと、こういうことを既に大統領も言っておられますから、そうしたことを日本としても期待していたらよかろうと、かように考えております。
  24. 最上進

    最上進君 今度の会談におきましてやはり私ども大きな関心を持っておりますのは、韓国共産圏諸国に対する接近、特に対中、対ソがあるわけでございますけれども、対中改善に積極的である、非常に意欲的であるというふうに私ども受けとめているわけでございますが、さき外相会談におきまして、この中韓橋渡しの何か韓国側から要請、お話外務大臣におありになったかどうか、その辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この問題に関しましては、実は私は韓国の対共産国への門戸開放、これにつきましてお話伺いたいというので私の方からも韓国外務大臣の見解をお伺いいたしました。非常に意欲的、積極的でございます。このことは非常によいことだろうと私も評価いたしました。  ただ、韓中橋渡しというその言葉が最近非常に先行しているような感じがいたしますが、この点に関しては私は率直に次のように申し上げた次第でございます。やはりこれは両国間のお話でありまして、したがいまして日本がしゃしゃり出る問題ではないだろうと、しかしながら日本が無関心であってよいはずの問題でもない、やはり関心を深めることも大切だと、私はこういう気持ちでございますということをお伝えしただけでございまして、こちらから韓中橋渡しということ、そうしたことが必要であろうということは私たちといたしましても評価いたしておりますが、決してしゃしゃり出る問題ではない、このことだけは申し上げておきました。  なぜかならば、やはり韓国十分中国の立場を理解されておりました。やはり中国韓国よりも北鮮を重視しておられるということも十分知っていますと、こういうようなことも韓国側みずからも認識されておるようでございますし、また近く私も中国を訪問したい、かように思っておりますから、そうしたときに何か一つの参考になれば結構でしょうねというふうなことでお互いの会話がなされたことは事実でございますが、しゃしゃり出て韓中橋渡しの役を引き受けましょうということは私の方からは一言も申し上げなかった、また向こうからもそういう依頼もなかったということでございます。
  26. 最上進

    最上進君 これは大変大事な私は問題だと思うわけでございますけれども、再三再四しゃしゃり出るようなことは大臣はされない、また報道によりますと静かな努力を続けていかれるということでございますけれども、やはり日本の立場として、外務大臣としてこの機会に、要請はなかったようでございますが、やはり当然心中期するところがおありになると思います。近々訪中されるということでございますが、その点につきましてはぜひひとつ何らかの成果が上がるようにお力添えいただきたいというふうに思っております。  ところで、一方の中国側韓国に対する見方はどうであるか、この点についてひとつ御説明をいただきたいと思います。
  27. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在、中国韓国間におきましては、貿易は、直接ではありませんが、間接貿易はある程度なされておる、こういうふうに私たち考えております。また、中国韓国に近い省におきましては、非常にそこの省の出身者の方が韓国にたくさんおられるというふうなことで交流も進んでおるということも承っておりまして、両国関係は決して悪くないわけでございますから、中国側とされましても、北鮮のことも思いつつ韓国のことも忘却しておるわけではないというのが現在の中国側のお考え方ではなかろうか。  しかしながら、私たちもいろんな人を中国に派遣したり、またいろんな要人とも出会っておりますが、今直ちに韓国中国関係において劇的な展開はないだろうと、そういうふうな見方が今のところ一般的ではなかろうかと思っております。しかしながら、中国も積極的に韓国オリンピックに参加されるということはこれは大変なことだろうと思いますし、なおかつ明後年にはアジア大会が中国で行われるわけでございますから、当然韓国も参加されると、そういうふうな交流は今後深まっていくのではなかろうか、こう思います。  だから、先ほど最上委員がいろいろと私の訪中に関しましても御関心を抱いていただいて、韓国のことにも特別の御関心を抱いていただいておりましてうれしく存じますが、韓国の崔外務大臣は、私の訪中並びに竹下総理の訪中に対しまして、心から御成功をお祈り申し上げますと、こういう言葉を言われましたので、これは非常に私はやはりすべてをわきまえたすばらしいプレゼントの言葉であるなと、こういうふうに解釈いたしております。
  28. 最上進

    最上進君 韓中の問題と並行いたしましてやはり韓米の問題も大変重要な私どもは問題であると理解をいたしておりますが、やはり韓国におきましても日本とアメリカの間の経済摩擦と同じように大変経済摩擦で動揺している、険悪になっているというふうに伺っております。さきの韓米安保協議会が開かれたということでございますが、これは既にあれでしょうか、開かれて結果が出ておるわけでございましょうか。
  29. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 米韓の定例安保協議会、大体毎年一遍会合するということになっておりまして、昭和四十三年以来開かれておりますが、昨年五月はワシントンにおいて開かれ第十九回でございましたが、本年はソウルで第二十回会議が開催されることになっているというふうに承知いたしておりますが、まだ開催されたというふうには承知してはおりません。
  30. 最上進

    最上進君 米軍の指揮権移譲の問題というのがこの米韓安保協議会では最大の課題になるであろうというふうに言われているわけでございますが、これから会議が開かれるわけでございますけれども、今日のいわゆる米韓、特に反米思想が学生の間で大変広がりつつあるようでございます。あるいは在韓米軍基地の問題、こういうものも含めて必ずしもよい状態ではないという、アメリカでは軍部の予算を削減しようなんというような動きさえあるようでございますので、現状の韓米の、米韓の実態をひとつ御説明いただきたいと思います。
  31. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 委員御高承のとおりに、在韓米軍は米韓の相互防衛援助条約に基づいて駐留をしておるわけでございますが、在韓米軍第八軍の司令官が国運軍の総司令官それから米韓連合軍の総司令官も兼ねておられるという若干複雑な状況になっておりまして、従来から米韓の関係者方々は最も効率的、現実的な米韓安保体制の実現をいかに図るかという観点から、指揮系統問題に関してもかなり問題意識を持っておられるというふうに承知いたしております。また、ただいま委員が御指摘になりましたような立場からのいろいろ報道、論評等が行われていることも私どももよく承知をいたしております。  しかしながら、この問題は米韓の二国間の問題でございますし、かなりいろいろ政治的にも論争が行われている問題でもございますので、私どもの立場からいろいろ立ち入ったコメントをするのは差し控えるべきものかと存じております。いずれにしましても、政府としましては、現実に厳しい緊張状態がございます朝鮮半島においては、在韓米軍の駐留が韓国の防衛努力と相まちまして、朝鮮半島における平和と安定の維持のために非常に重要な要素になっているというふうに認識をいたしております。  ちなみに事実関係ということで申し上げますと、総司令官は米軍の司令官が先ほど申し上げましたように兼務をしておられまして、それから陸軍が米軍、それから海軍は御承知のとおり米軍は常駐しておりませんので、海軍の司令官は韓国の司令官、空軍は米軍の司令官ということで、指揮系統は今はそういう状況になっております。
  32. 最上進

    最上進君 まあオリンピックの後に韓国でウルトラCが行われるのではないか、それは何かというと、従来北が要求をしてまいりました米韓北の三者会談、これをのむ可能性が出てくるのではないかというふうに言われております。要するに、北が言っております休戦協定というものを平和協定に変えようということでございますから、当然そこへ中国が入ってくるわけでございますけれども、盧大統領の言ういわゆる時差クロス承認、この話はどのように受けとめておられるかお伺いをしたいと思います。
  33. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) まあオリンピック後の朝鮮半島の緊張緩和のためのいろいろな模索、提案等が行われておりますのはただいま委員指摘のとおりでございまして、そのうちの一つとして今まで累次表明をされておりましたクロス承認の問題、ドイツ方式と申しますかクロス承認の問題につきまして、盧泰愚大統領が選挙戦の過程におきましてこのクロス承認を厳格に、同時並行的にということではなくて多少時差を設けて実施をすればより北朝鮮の方がのみやすいんではないかということで示唆をされたというふうに承知いたしております。  しかしながら、クロス承認ということ自体につきまして、北朝鮮はこれが南北分断の固定化につながるものだという基本的な反対の立場を変えておりませんので、現在までのところ、これに対して時差という多少変化をつけた提案をなさいましたが、これに肯定的な反応がある状況ではございません。現在、盧泰愚大統領御就任になりまして新内閣等発足しておりますけれども、まだこういう問題について具体的にいろいろ政策を具体化するという段階には至っていないように私ども承知をいたしておりますので、今後とも韓国側のお考え等々は十分に意見交換等の場を通じて伺いながら、私どもとしての対応を考えてまいりたいと存じております。
  34. 最上進

    最上進君 最後に経済問題でお伺いしたいのでございます。  先ほど来NICSの話が出ましたが、大臣は、日本は欧米とアジアNICSとの緩衝地帯の役割を果たしたいとかねて御主張でございますけれども、これは具体的に何をなされるのか。NICS向けの特恵関税も拡大するという話がございますけれども、この点を含めてお聞かせをいただきたいと思います。
  35. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この間もOECDの責任者が来られました。近くそうした先進国の会議にも私は出席しなくちゃなりませんが、私たちはECあるいは米国等々先進国方々とお目にかかりますと、常にNICSの問題が話題になるわけでございます。しかし、NICSの経済的な発展は世界経済の活性化に大いに貢献しておる、したがいまして、私はそれを全面的に否定するというようなことはこれはできるはずのものではございません。  特に我が国は、先進国としてそうした先進国会議等に参加するわけでございますが、振り返ればやはりアジアの一員である。かく考えますと、やはり先進国の立場というものからNICSを見なければならない点があるが、それと同じようにアジアの一員としての立場からNICS考える必要もある、こういうことを日本はやはり明らかにしておく必要があるんじゃなかろうか、こういうふうに思います。したがいまして、NICSに対して非難は先進国から投げられましょうが、日本としては守ってあげるところは守ってあげなければならないであろう、こういう考え方でございますから、特恵関税等々の問題に関しましても、これが日本NICS諸国との間のいろんな関係においてよい結果をもたらしておるということを考えました場合に、さらにこの問題は維持、継続をさせるということがよいのではなかろうかと、かように考えております。  この問題に関しましても、過般韓国外務大臣から御意見を承っておりますし、近く香港、シンガポールにも参ります。したがいましてそうしたところの御意見も承り、そしてその後に私はOECDの会議に出席をしよう、こういうふうな気持ちを抱いておる次第であります。
  36. 最上進

    最上進君 それでは日韓問題は以上にいたしまして、ただいま最大の懸案事項であります牛肉、オレンジの問題、これは佐藤農林大臣が訪米中でございまして、大変精力的に会談を続けているわけでございます。  それにつきまして、特に八日のガット理事会への提訴手続をしつつあるというアメリカ側の姿勢に対しまして、本来でありますれば、交渉というのはお互いに一歩譲る姿勢を持って初めて解決の道が探られるわけでございますけれども、どうもやはり今回のアメリカ側の姿勢を見ておりましても、こちらが一歩退こうにも向こうがやはり退く姿勢が見えない。一歩退けば一歩踏み込んでくるというような感じがしてならないわけでございます。もう既に交渉会談をしながらきょうで協定切れでありますけれども、ガットへの提訴の手続をしつつ会談に臨んでいるという、これは私は非常に憤りを感じているわけでございますけれども外務大臣としてこの辺いかがお感じでございましょうか。
  37. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 私から事実関係を先に御説明させていただきたいと思います。  委員指摘のとおり、米国は今般、四月の八日に臨時のガット理事会を開催してほしいという要請を正式にガット事務局の方にいたしました。実はこの予告は、その前の三月二十二日のガットの理事会で米国は、四月早々日本と米国との間に長い間横たわっている両国間の農産物の問題についてガットで協議をしたい、そのための臨時の理事会の招集を要請する意向であるということを言っておりまして、その継続と申しますか、そのラインに乗って今般臨時ガット理事会の招集を要請したものと理解している次第でございます。  手続的に申しますと、臨時のガット理事会の開催は、締約国からの要請に従いまして理事会の議長によってそれが決定されることとなっておりますので、基本的にはガットの慣行に従った手続がとられているということでございます。この臨時ガット理事会におきまして、私どもは米国が日本の牛肉、オレンジにかかる輸入制限につきまして二十三条二項に基づくガットのパネルの設置を求めるという提案をするであろうと考えている次第でございます。  委員指摘のとおり、現在農水大臣が訪米されて鋭意協議をされているというさなかに、こういうガットの手続に訴えるということは大変残念なことであると思っている次第でございますが、先方は、まず第一に四月早々にこの問題をガットの理事会にかけたいと言っておりましたので、手続的には、その十日前までに各締約国にその臨時の理事会を通報する必要がございますので、そのためにたまたまタイミングがこの時期に合ったのであるということで、米側は、例えば今般のヤイターと佐藤農水大臣との会談におきましても、こういうタイミングになったけれども、決して農水大臣とヤイターあるいはリン農務長官との話し合いとタイミングを合わせてこれを行ったものではないので、決して交渉の行方を先取りするとかあるいはそれに何らかの違った意味での圧力をかける、そういう意味からこの臨時ガット理事会の招請を行ったものではないということは会談の中でもはっきりと述べている次第でございます。
  38. 最上進

    最上進君 私が申し上げたいことは、やはり日本側として足を踏ん張るところは踏ん張って交渉していかないと、これは最後は米の自由化まで迫られるというのは目に見えているわけでございます。  私は農林省からも資料をいただいて、これを拝見いたしますと、我が国が世界で最大の農産物輸入国であるというその実態を明らかにしていただくような資料でございますけれども、とりわけ日本の農水産物あるいは農産物、畜産を含めまして、これの輸入の大体三割から四割というのはアメリカなんですね。こういう実態というものが意外に国民にも知られていないし、政府も余り主張されない。金額にいたしまして、農産物で九千五百億円も昭和六十二年は買っている。あるいは農水産物含めますと一兆四千五百億円もアメリカから買っている。牛肉の問題が今対象になっておりますけれども、高級牛肉だけじゃなくていわゆる横隔膜を含めた内蔵肉なんていうのは、これは九万トンのうち六万トンもアメリカから買って、それがやはり吉野屋の牛丼になったりハンバーガーになったりして、日本国民は随分それを消費しているわけですね。こういう実態というものをもうちょっと国民にも知らせ、主張すべきところはアメリカに向かってきちっと言っていかないと、これはもう日本の農業は私はまさに崩壊するであろう、そういう危機感さえ実は持っているわけでございます。  特に十四品目について、ウエーバー品目として大変理不尽な私は出来事であるというふうに思っておりますけれども我が国だけがウエーバーに対して不信を持っているんじゃなくて、世界の国々の中にはこれに対して不信を持っている国はたくさんあるわけでございますから、こういう国々が横に連携をして、何とかひとつこういう問題点を明らかにしてアメリカのこうした理不尽な要求に対して断固として屈しないという姿勢が必要ではないかと思うわけでございますが、最後にこの点だけお聞かせをいただいておきたいと思います。
  39. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 世界の農産物貿易の問題につきましては、まず何といいましても現在ガットのウルグアイ・ラウンドにおける最重要の問題として取り上げられておりますことは委員も御承知のとおりのことと思います。  最初にアメリカの関係でございますけれども、米国の農業政策、特にウエーバーを取得しているといった点につきましては、政府としてもアメリカにこれを機会あるごとに指摘している点でございまして、その中で米国といたしましてはこのウエーバーの問題も今度のガットウルグアイ・ラウンドの農業交渉の中でぜひ取り上げるべきと申しますか、取り上げていく用意があるということを明らかにしている次第でございます。  日本の問題につきましては、委員指摘のとおり、農業というものが日本国民生活の維持にとって非常に重要な地位を占めている、特に基礎的な食糧についての国内生産の安定を図っていくということについて十分配慮が払われるべきであるという点につきましては、私ども米国に対しましてもあるいはウルグアイ・ラウンドの農業交渉におきましても強く主張しているところでございます。そういう中で、私どもとしましては、ぜひとも農業の貿易ができるだけ国際的に、長期的には市場メカニズムがより効率的に働くような、そういう国際的な新しいルールというものができることを期待し、日本といたしましても、そのために積極的に参画していきたい、参画していっているという状況にある次第でございます。
  40. 最上進

    最上進君 終わります。
  41. 矢田部理

    ○矢田部理君 宇野外務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、外務大臣の本会議における演説をお聞きしましていろいろ私なりに考えるところがございますが、外務大臣御自身としてこれからの外交をどう展開していくのか、宇野外交の特色は一体何なのかというようなことについて、できれば簡潔にお示しをいただければと思います。
  42. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 日本外交の特色といたしましては、やはりこれだけ世界から自他ともに認められる経済大国になったということを常に念頭に置いておかなくちゃなりません。したがいまして、そうした面においてはやはり世界の方々の理解と協力、そうしたことにおいて日本が経済大国になったんだということも我々としては銘記しておくべきだと思います。そうした両面から私たちは、やはりさらに世界に開かれた日本にならなくてはならないだろう、こう考えますし、同時にまた世界に貢献する日本でなくちゃならない、この両点を申し上げればいいのではないだろうか。  ただ、日本のスタンスといたしましては御承知のとおり西側に私たちはおる、同時にまたアジア・太平洋諸国の一員である、こういう立場で私たちの外交は展開される、これが一言にして申し上げる日本外交の特色だろうと私は考えます。
  43. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、時間が制約されておりますので問題点だけ私も端的に伺っていきたいと思いますが、経済的にこれだけ大きくなったということになりますと、前回も議論されておりますが、日本の経済協力のあり方、ODA等がやっぱりもう一度厳しく問い直されなければならないということになろうかと思うんです。確かに量的には相当程度拡大をしてまいりましたが、外務大臣もおっしゃいましたように、GNP比で言えばDAC諸国中十四位、それから贈与比率とかグラントエレメントの関係で言えば最下位という恥ずべき状態に実はあるわけであります。その点で、これは従前から議論をしてきたところでありますが、量的拡大についてもう少しGNP比で目標値を設定して年度計画などを立てる必要があると同時に、質の改善について中期的な目標を設定し、年度ごとにどの程度ずつ消化をしていくかというような目標値を示すことが、あるいは中期的な計画を示すことが極めて大事になってきているのではないか、国内的にももとよりでありますが、国際的に見ましても。その点外務大臣、ひとつ踏み込んでこの辺の計画設定に入られるというようなことを答弁いただけませんでしょうか。
  44. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この国会を通じましての特色は、衆参両院また与野党ともどもに外交に対しましても格段の深い御関心を抱いていただいておるということでございます。私も就任後わずか五カ月でございますが、その感を本当に強く抱いているものでございます。今、矢田部委員が申されました日本の経済協力なり、さらにはODA等の援助なり、こうした面においても与野党ともにほとんどその御意見は一致しておると見てもよいほど深い関心を抱いていただいておりますので、当然それに対しましては我々といたしましてもこたえなくてはならない、かように存じております。  今申されましたとおり、対GNPに対しましても、あるいはまた無償の面におきましてもおくれをとっておるということは、我々世界に貢献すると申しましても数字があらわすわけでございますので、この点に関しましてはさらに今後量並びに質ともに努力をしなくちゃいけない、かように存じております。
  45. 矢田部理

    ○矢田部理君 今までもそういう御答弁はあったわけであります。ただ、抽象的、一般的に努力をされるということではなしに、私が申し上げておりますのは、例えば五カ年計画とかいうことで中期的な年度を示して、その間に少なくとも贈与比率をこういうパーセンテージに上げていきます、それからその他の貸し付け等の条件をこれだけ改善していきますというような数値と年度を示した内容外務省として具体化すべきではないかという意見なのですが、いかがでしょうか。
  46. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この問題に関しましても、実のところは今までの考え方をもとにしてやっておっちゃだめだと。だから今御指摘の利子等を含めた貸付条件に関しましてもやはり改善すべき点は改善しなくちゃいけないと。最もいいのは無償をふやすということが一番端的なことだろうと思いますが、現在目標を立てまして、七年のやつを二年繰り上げてやろうという一つの目標もございますから、その目標達成ともあわせ考えまして内容的なことをこれから十二分に検討させたい、かように考えております。
  47. 矢田部理

    ○矢田部理君 それからもう一点、援助の焦点をどこに当てるべきかということがしばしば問題になっておるわけであります。フィリピン援助などに関連して一定の評価なり問題点も少しずつ出てきてはいるわけでありますが、やはり開発途上国の貧困とか飢餓の解放に対してどういうふうに寄与していくのか、つまり民衆に届く援助をどうつくっていくのかということがポイントの一つであろうかと思うのですが、これについてももう少し基準値を設定してやっていく必要があるのではないか。  一つカナダの例などを紹介いたしますれば、援助の八割をLLDCといいますか、最貧国、最も貧しい人たちに充てるというようなことを行政基準として設定をして援助の重点をそこに置いているわけであります。そういう面でももう少し内容的な改善が望まれているのではないかと思いますが、外務大臣いかがでしょう。
  48. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 特にLLDCに対するやはり我が国措置というものももっと考えていかなくちゃならないと思います。したがいまして、ことしはサハラ以南のアフリカに対しましては頭から五億ドル無償でございますと、こういうような体制も整えさせまして、非常に関係諸国からは歓迎されておるという面もあるわけでございますが、要は、私は先進国同士で話し合いをしますと、もっと無償をふやせということが先進国の条件であります。さらにまた、無利子であってもいいじゃないかというふうな有償の話もございます。したがいまして、そういうことを改めてやはり日本としても検討する時期が来たと、かように思っている段階であります。
  49. 矢田部理

    ○矢田部理君 私も別の委員会で責任者の一人として今経済協力問題をどういうふうに扱っていくかと取りまとめ中でありますから、この程度できょうの議論は差し控えますが、この基本的な理念の確立が必ずしも十分でない、それから原則がこれまたぴしっとしていないということなどが一つ背景にあった上に、どうもやはり四省庁体制、しかも予算が十六省庁に分かれてばらばらに出されるというようなことを含めて本格的にこの経済協力のあり方、ありようについて再検討する必要がありはしないか、これは政府もぜひやってほしいし、国会としてもそのことを考えていきたいと考えておるわけでありますので、議論としてはこの程度にとどめますが、新しい外務大臣として、従来の延長線上でこの問題をとらえるのではなくて、新しい機軸をひとつぜひ打ち出してほしいということを要望としてつけ加えておきたいと思います。  そこで次の問題に移りますが、一つ日韓問題です。  先ほど外務大臣韓国の慮泰愚政権に対して大変高い評価をされているようでありますが、どうも私は必ずしもそういう状況韓国全体はないというふうに実は受けとめているわけであります。なるほど民衆の決起によって民主化の一つの流れはできてきたし、その点は歓迎すべきだと思うのでありますが、同時に新しいこの盧泰愚政権に対してはやはり過半数を得られなかったと、これはまた不正選挙の指摘どもあることが一つでありますし、それから民主化が予想され期待されたほどに徹底していないということから、政権の正当性や民主化の評価について留保をしているというのが韓国の一般的な受けとめ方ではないかというふうに考えているわけです。  在野勢力がそういう立場をとるのは当然としましても、代表的なマスコミと言われる東亜日報あるいは朝鮮日報なども、これらについては依然として留保ないしは否定的な立場をとっておられるということを実は私は受けとめているわけでありますが、大きな焦点の一つとされてきた政治犯の釈放問題ですね。韓国には千二百人以上の人たちが依然として投獄をされている。その中には在日韓国人の政治犯が四十四名含まれているというふうに言われておりまして、その釈放が新政権の誕生に当たって大変強く内外から期待をされておったのでありますが、実際に釈放されたのは百二十人ちょっとでありまして、全体の数から見れば一割前後です。したがって、一割民主化などという言葉韓国では言われているわけであります。とりわけ在日韓国人は、若干の減刑がありましたが、全員釈放されなかったということで私は大変遺憾に思っているわけであります。  先般の日韓外相会議などで公式にはともかくとしても、非公式にせよこの問題は話題にはならなかったのでしょうか。
  50. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 包括して盧泰愚政権の評価をいたしましたが、特にオリンピックに最重点を置いておられて、我々といたしましてもオリンピックが成功することを衷心よりお祈りし、そうした面では協力していかなければならない態勢にあるわけですが、先般の外相会談で私が耳にいたしましたのは、オリンピック終了後に適当な機会を設けて、今、矢田部委員が御指摘のとおり、まだ五〇%の支援を得たという評価はできておりません、だから願わくば五〇%以上の評価を得たいものである、したがって何らかの方法でそうしたことをやるんだと、こういうふうに大統領みずからも決意をされておるということを私は仄聞いたしました。したがいまして、そういう中においてこれから新しい政策を生み、新しいさらなる民主化をお考えになり、さらにはまた議会等々も近く総選挙があるわけでございますから、そうしたことを通じて懸命の努力をしておられるということをありありと私も伺った次第でございます。  したがいまして、今具体的に申されました在日韓国人の政治犯の問題に関しましては十分この間考慮をされたあげくの措置であっただろうと。その直後でもございましたし、私たちといたしましては強く関心のあることでございますが、それを議題として俎上に上げるということは、何か今私が申し上げましたような環境の中で努力をしておられるのに内政干渉めいたことであってはいけない、かように思いましたので、一応外相会談といたしましてはこの問題に相互に触れなかったというのが事実でございます。
  51. 矢田部理

    ○矢田部理君 新しい外務大臣として大変私たち期待をしたいのは、やはり人権を重視する、人権をやっぱり一つ大きな課題にした外交を展開するということが大事かと実は考えているわけであります。  特に在日韓国人の問題について考えますれば、四十四名の方の中には既に刑期を満了している、今近代国家、民主主義国家で、裁判そのものにもいろんな議論がありますが、刑期が満了した人をなおかつ釈放しない、そんなばかなことは常識としては考えられないのであります。そういう人たちを含めて依然として投獄がされている、この事実をやっぱり重く見ていただきたいのが一つ。  それからもう一つは、この問題を単なる内政問題だから、単なるというか、向こうの内政問題であるから日本政府としてはお願い、陳情しかないんだという態度に私は問題ありというふうに実は考えているわけです。  これも従前から言われてきたことでありますが、在日韓国人の人たちは、在日という名が示しますように、既に日本に永住権を持っているわけですね。韓国に行くに当たっても再入国の許可を日本政府より得て出かけていっているわけでありますから、単に向こうの内部でいろんな弾圧があったとか、抑留、投獄があったということではなしに、日本政府としても一定限度でこれを保護する責任があるというふうに私は考えているわけです。そういう立場で物を言うということになりますれば、人権を重視するという考え方とあわせて、もう少しきちっとした態度で韓国政府との関係でこの問題は処理をされてもいいのではないか、臨んでもいいのではないかというふうに考えているのですが、いかがでしょうか。
  52. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 政治犯の具体的な問題に関しましてはずっと経緯もございますから、簡単でございますが局長から説明をさせたいと、かように思っておりますが、当然今、矢田部委員のおっしゃいましたとおり、在日韓国人の永住権等との問題、これは話し合いをいたしております。したがいまして、そうした関連から政治犯に関してももっと当たるべきではないかというお説に対しましては、先ほど私が今回の言うならば新しい政権下の第一回の外相会談だという認識でやったものでございますから、もういっぱいございましたのでその問題はまた機会を改めてという気持ちもございましたし、そんなことで触れなかったというのが実情でございますので御理解賜りたいと思います。
  53. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 在日韓国人の政治犯の方、人数が何人おられるかということにつきましては、委員も御高承のとおり、私どもは実は二十三名の方を把握しておりますけれども、これは在日韓国人という定義をどういうふうに決めるかということによっても異なってくるかと思います。その方々の釈放、減刑の問題、それからただいま御指摘になりました刑期満了後の保安監護処分に付されておられる方の問題につきましても、ともにただいま大臣から御説明申し上げましたように、基本的には韓国の司法、内政の問題であるということは確認しつつも、これらの方々日本に生活の本拠を置かれ、かつ多くの親類の方などおられるということ等を指摘いたしまして、我が方としての人道的な立場からの関心の表明を行ってきているというのが今までの状況でございまして、これは刑期満了の方についても同様に行っている状況でございます。
  54. 矢田部理

    ○矢田部理君 家族の方々を含めて大変この事態をもう長期間憂慮してきているわけでありますから、特にオリンピックに向けて外務省としてはなお一段の御努力を特にお願いしておきたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  55. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 従来の経緯もこれあり、常に努力をしてまいっておる次第でございますから、そうした人道上の問題、人権問題、そうしたことからもやはり従来のそうした線は私たちといたしましても守っていきたい。せっかくオリンピックもあるわけでございますから、新政権もこれから新しい問題をいろいろ御検討になるだろうと思いますから、機会あらばそういう気持ちもこちらからお伝えすることも必要だろうと、かように考えます。
  56. 矢田部理

    ○矢田部理君 あらゆる機会をとらえて努力をするというのが従来の外務省考え方でありましたので、やっぱり新しい外務大臣としてひとつぜひお願いしたいというふうに思っております。  それから次の問題ですが、例の大韓航空機事件、これについてもいろいろ詳細に伺いたい点もあるのでありますが、一点だけ特にお伺いをしておきたいのは、日本政府としては北朝鮮の組織的テロ行為によるものというふうに断定をされたようです。この断定をするに当たってどんなことを中心にして認定をされたのかということを、判断の根拠になったものを伺いたいのであります。金賢姫の自供というのがあったようですが、この自供、自白以外に航空機の爆破を裏づける直接的証拠、客観的な証拠はあったのでしょうか、あったとすれば示していただきたい。
  57. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 直接的証拠とおっしゃいます場合の意味はどういうことを指しておられるのかわかりませんが、この百十五名の乗客乗員を乗せました飛行機が消失してしまったということは事実でございますし、そこに乗りました金賢姫、途中でアブダビでおりました金賢姫が自白をし、かつその自白内容を裏づける事実、彼女が通過をしました国々がこれを裏づけているという事実関係、それからこの彼女の自白と申しますか発言を我が方としましても直接担当官を派遣して確認をしているということ、それから旅券の偽造の問題、それに加えまして、今般ICAOで大韓航空機事件について審議が行われまして決議が通過したのは御承知のとおりでございます。  そのICAOに提出されましたビルマ政府の報告書におきましても、ビルマ政府としまして韓国側よりの通報によって検討委員会が設立されまして、その検討委員会の調査報告書という形でICAOに提出が行われておりますが、そこにも漁民が当該飛行機のいなくなりましたころにその方向で閃光と煙を発しながら落ちていく状況を見かけたということをビルマ政府に報告しておりまして、それを取りまとめて報告書としてICAOに提出をされております。  ビルマ政府としては、その後回収をいたしました救命ボート、それから若干のその後回収された物体があるようでございますが、この写真等も付しまして、結論としてビルマ政府の検討委員会としては、同機は爆破により破壊されたものであり、事故原因は乗客を装った二名の破壊工作員が仕掛けた時限爆弾による空中爆発と推定するという結論を出してICAOに提出しております。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 今伺っても情況証拠、間接事実的なものは幾つかの指摘があるわけでありますが、自白を直接的に裏打ちする客観的な証拠といいますか、これが実は見当たらないわけですね。ボートの件も、これは議論をすればいろいろ問題点も投げかけられているわけでありますが、ここが私は率直に言って問題だと思うんですね。近代法の原則は、自白を証拠の王にしてはならない、自白だけで有罪認定はできない。自白があった場合でも、その自白した罪体に関して、つまり航空機の爆破についてそれを客観的に裏打ちできる補強証拠がなきゃならぬというのが近代法の原則のはずなんですよ。どうも今の説明を聞いても、そういう直接的な証拠あるいは自白を、爆破という事実に関して裏打ちする証拠が欠落しているのではないかというふうに実は考えるわけでありますが、今言われた程度しか示せないわけですね。  それから、次の質問に入りますが、韓国政府としてはあるいは韓国の捜査機関としては、その後機体の捜査、本来ならば補強証拠というのは爆破された機体の残骸等が出てくることが非常に重要なポイントになろうかと思うのですが、この機体の捜査や、爆破されたとすればそれに伴う遺体の捜査などは継続しているんでしょうか。
  59. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) これは御承知のとおり、消失をしました当初はビルマの何かジャングルの方を捜していたわけでございますね。それで、これは近隣諸国と申しますか、直接のそばにあります国がビルマとタイの両国でございますので、この両国韓国側の依頼を受けて捜査を行っておられたわけですが、かなりたちましてから、正確にはたしか一週間ぐらいじゃなかったかと思いますが、たちましてから海上に浮遊物発見という話が参りまして、そこの場所に急行して二日ぐらいたってビルマ政府から、回収したライフボートがビルマ側から提供されたという状況でございまして、その後捜査は打ち切られているというふうに承知いたしております。  私どもも素人で、余り発言するのもどうかと思いますが、いろいろ伺っているところによりますと、ビルマ側のただいま申し上げた漁船の方が閃光を発しておっこっていくのを見たというのが二週間後にようやく報告をされている。というのは、無線も持たない漁船なものでございますから、港に、母港に帰ってからこういうことがありましたという報告をしたというようなことで、やっぱりかなり海上を捜索されるというのが随分おくれてからだったということが、委員が御指摘になりました残骸とか何かがかなり少ない物しか見つからなかった原因なんじゃないかというふうに私ども考えております。  現在、捜索は続けているというふうには承知しておりませんけれども、打ち切られた後浮遊物が回収をされた。小さな物、シートのようなもののようでございますが、ビルマの報告書を読みますと、調査報告書が完成した後届け出られたものが少しあるという写真などがついております。この程度しか今のところは回収されていないという状況のようです。
  60. 矢田部理

    ○矢田部理君 それからもう一点、これは警察庁に伺いますが、金賢姫という女性の自供によるというふうに言われているわけでありますが、恩恵という女性がいたと。その人の身元確認みたいなことで大々的に日本の警察が動いているというふうに報道されているわけでありますが、これはどんな事件を想定し、どんな内容で動いているんでしょうか。
  61. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 李恩恵につきましては、日本人であること、また日本から拉致された疑いが持たれますことから、この女性を割り出すために現在情報、資料の入手に努めておるところであります。  いかなる犯罪の容疑でという御質問でありますけれども、ただいま申し上げましたとおり拉致された疑いがあるということで、まず問題の女性を特定すべく、その身元の割り出しに努めておる、こういうところでございます。
  62. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは捜査なんですか、それとも捜査以外の何か特別な調査か何かなんでしょうか。
  63. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 一般論として申し上げますと、捜査の端緒を把握する活動と、それから捜査の着手の時期というのが、どこまでが端緒の把握であり、どこからが捜査の着手であるかということにつきましては明確に区別することは困難であります。ただ、身元の割り出しにつきまして、犯罪捜査の一環ということは言えようかと存じます。
  64. 矢田部理

    ○矢田部理君 それで、捜査の状況はどうなんですか。
  65. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 現在の状況でありますけれども、まず身元に関する情報でありますとかあるいは似顔絵をもとに、家出人の手配データなどを利用いたしまして類似の行方不明者を全国的に調べております。あわせてポスターですとかチラシを全国的に配布いたしまして積極的な広報活動によって関連情報の入手にも努めておる。さらにまた、この李恩恵なる人物が東京に生活基盤を有しておったという点にも注目いたしまして、東京及びその周辺の県で身元割り出しの手がかりを探す、あるいは拉致が行われたと見られる沿岸県におきましてもこの女性の足取りを確認する作業を進めておる、こういうところであります。
  66. 矢田部理

    ○矢田部理君 金賢姫に警察としては直接会って事情を聞くなどの作業はあったんでしょうか。
  67. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 金賢姫とは警察庁係官が二回にわたり事情聴取に立ち会いました。
  68. 矢田部理

    ○矢田部理君 立ち会ったというのは、日本の警察自身が金賢姫から事情を直接聞いたということではないということですか。
  69. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) これは従来からのプラクティスでございまして、外国におきまして情報交換等も含めまして他人からの供述を得るという場合におきましては、先方の係官に事情聴取を依頼する、その際私どもとしては聴取事項を当該係官に渡すという方式をとっておるところであります。  念のために申し上げますけれども、今回の事情聴取に際しましても、聴取すべき事項、これは事情聴取の場に臨んで初めて韓国係官に提供したものでございまして、これは信憑性を担保するというためで、韓国当局の了解も得て慎重に対処したものであります。
  70. 矢田部理

    ○矢田部理君 似顔絵などはどういうふうにして作成したんですか。
  71. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 韓国当局が作成したものであります。
  72. 矢田部理

    ○矢田部理君 金賢姫にも示して、似ているという話なんですか。
  73. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) そのように聞いております。
  74. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、最後の質問になりますが、行きずりの人とか、たまたますれ違ったときに見た人というのではなくて、金賢姫の自供によりますと、一年以上もともに生活をしたというかいろいろ教わったということで、かなり印象深い人の似顔絵が示された、しかも非常に似ているという話でもあるわけであります。同時にまた、くだんの恩恵という女性の従前の生活歴や日本におけるあれこれの状況についても随分具体的かつ詳細に示されているのに、いまだに見つからないというのは一体どういうことなのかという素朴な疑問なんですが、どうなんですか。
  75. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) お答えいたします。  金賢姫と李恩恵は一年六カ月にわたりまして生活をともにしておったわけでありますが、その場所は工作員の訓練所でございます。かかる場所におきまして相互に身の上話をするということはかたく禁じられておったようであります。その意味におきまして、金賢姫が直接知見しました李恩恵の身体特徴あるいは食物の嗜好などと比べまして、恩恵の身元に関する情報が少ないのは一面において当然のことであろうと考えます。  また、このように身元に関する情報が少ないことに加えまして、何分昔のことでもあり、問題の女性が家族等とは断絶した生活を送っていたということもうかがえます。さらにまた、家族が本人によって口どめをされておるなど、警察に通報できない何らかの事情ということも考えられるわけであります。その意味において身元割り出しが困難な状況にあることは否めないところでありますけれども国民の皆様からの情報提供を期待しつつ、今後ともこの身元の割り出しに努めてまいりたいと考えております。
  76. 矢田部理

    ○矢田部理君 今の話も余り説得力がないような気がするんです。こんなに詳しく日本における生活状況なり生い立ちみたいなものまで出ているのに、しかも優秀な日本の警察力をもってしていまだに見つからないというのは一体どういうことなのか。まあ家族や親族で表に出ることを嫌っているということは一面わからないわけではありませんが、家族だけでなくて、多くの社会的な生活とのつながりが自供によっても出てきているわけですから、少なくともこんな人かもしらぬとか、この人かなということでもうちょっと具体的に名乗り出る人があってしかるべきではないかとも思われるんです。そういうことが出てきませんと、自供は一体何だったんだろうかというような逆の疑問、あるいは自供に対する信憑性の問題も出てくるわけでありますが、具体的な手がかりとか目星とかというものにまではまだ至っていないんですか。
  77. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) 国民の皆様からの情報も多々いただいておるところであります。ただ、現時点におきましては、恩恵の身元に結びつく情報は入手できていないというところであります。  先生、今の御質問の中に金賢姫の供述が信用できるのかという点がございましたが、金賢姫の供述につきましては、私ども信憑性が高いというふうに判断いたしております。一つには、先ほど申し上げましたとおり、事情聴取の場に臨んで初めて韓国係官に我々の聴取事項を提供しておるということに加えまして、事情聴取の際の金賢姫の態度でありますけれども、リラックスしておった、また精神的にも安定しておる様子がうかがえたわけでありまして、加えて自己に不利益な内容であるにもかかわらず、全体として極めて自然かつ具体的な供述をしておるわけであります。  さらにまた、金賢姫の供述の裏づけも数多く得られておるわけであります。具体的に申し上げますと……
  78. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単にしてください、時間がない。
  79. 國枝英郎

    説明員(國枝英郎君) じゃ、以上でとどめさせていただきます。
  80. 矢田部理

    ○矢田部理君 警察の方結構です。  そこで、外務省に最終的にまたお尋ねをしたいのですが、私どもの立場は、どうもこの事件の真相解明あるいは全容解明はいまだできていないというふうに実は考えるわけであります。にもかかわらず、外務省は北の犯行と、あるいは組織的テロという認定をして、御承知のように共和国に対する制裁措置に踏み切ったわけですね。ところが、朝鮮民主主義人民共和国を名指しで非難をし、かつ制裁に踏み切った国は日本とアメリカしかないということのようですが、そのとおりでしょうか。
  81. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国という名指しをしたのはあと一、二カ国あったと思いますが、ちょっと今調べてすぐ御報告申し上げます。  国連の安保理事会での審議について申しますと、名指しないし制裁措置という形では北朝鮮側に対して厳しい態度をとった国というのは委員指摘のとおりそう多くございませんでしたが、他方北朝鮮を弁護した国はほとんどなかったと思います。一言だけ。
  82. 矢田部理

    ○矢田部理君 弁護とか何かではありませんで、つまり全容解明とか真相を明らかにするという作業がやっぱり急がれるべきであって、そこがはっきりしないまま名指しで非難をしたり、それからまた加えて制裁措置をするということに私は各国とも比較的慎重であったということの証左ではないかと思うのであります。  そこで外務大臣伺いたいと思うのです。これは官房長官も何か言っておられるようですが、オリンピックが終わればこの制裁措置は早晩解除するという方向で政府としては考えておられるという話も伺っておるのですが、外務大臣いかがでしょうか。
  83. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これはあくまでも制裁という言葉は使っておりません。これはあくまでも措置である、そういうことでございます。そして、テロというのは、これは許さるべきことではないし、我が国といたしましても幾つかの理由で北朝鮮がテロを行ったということに対しまして毅然たる態度をやはりとらなくちゃいけない。  特に、オリンピックに際しましては多くの人たち我が国を通過するであろう、そのときに日本においてもしも、日本人がしないテロが外人によってなされたらどうなるんだろうかというようなことから、過般の外相会議におきましても、そうしたテロ防止行為に関する安全対策を講ずる両国において委員会を設けましょうということに合意したという経緯もございますから、幸いなるかなオリンピックが盛大裏に、成功裏に終わった暁においては当然これはひとつ見直しましょう、こういうことでございます。
  84. 矢田部理

    ○矢田部理君 次の問題に移ります。  南アフリカ、南ア問題を議論に供したいと思うのでありますが、御承知のように八六年の六月に全土に非常事態宣言を発しました。その一環とも言われるわけでありますが、ことしの二月の二十四日に大統領の特別布告が出されました。反アパルト団体といいますか、十七の組織が政治活動を禁止された、事実上の非合法化だというふうに言われているわけでございます。さらに南ア労働組合会議の活動規制というようなこともあって、本格的にアパルトヘイト反対運動を力で封じ込めようと、今強権的な政治が実行されつつあるわけでありますが、これについて日本政府外務省としてどんな認識に立っておられるかをまず伺っておきたいと思います。
  85. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生指摘のとおり、南ア政府は一九八〇年前半にかけましていろいろな形での改革措置をとって、私どもとしては政府の自己改革の方向に向くかというふうな希望も持っておったわけでございますが、御指摘のとおり黒人側からの強い反発ということもございまして、南ア政府自体のこの制度に対する改革というよりはむしろ力による黒人の反発の抑圧という方向に向かっているような感じがいたします。  したがいまして、私どもとしては、あくまでも南ア政府に対して制度の改革に向けて努力するべきであるという政治的メッセージを送り続けるべきである、かように考えまして、外務大臣からもその趣旨の御発言を今年二月にとっていただいた次第でございます。
  86. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本政府の態度なのですが、確かにアパルトヘイトに反対をする、それを弾圧する南ア政府の態度に批判的立場をとっておられることは承知なのですが、その態度が少し弱いのではないかという印象を強めておるわけです。特に、何といいますか、今度の事案などに対しては、もう人民に対する宣戦布告だというふうにツツ大王教などは言っておられますし、かつて非同盟諸国会議では人類に対する犯罪だというふうにアパルトヘイト政策をやっぱり厳しく指弾しているわけですね。そういう立場を基本的にとることが非常に大事でありますが、同時に、そのアパルトヘイト政策をやめさせるための措置を各国がとっていることは御承知のとおりです。  日本政府も確かに幾つかとってきているわけでありますし、安倍外務大臣時代に追加措置もとられたわけでありますが、どうもこれが不徹底なような気がする、不十分なような気がしてならないんです。  あの当時も、倉成外務大臣でしたか、私は幾つか指摘をしたのですが、当時の議事録を読んでみますと、いや、いろいろ諸般の情勢を検討して極めて適切な措置だというふうに大臣は言っておられます。その適切な措置をとったはずなのに、つい最近のデータによりますれば、これは世界各国からも非難の的にされているわけでありますが、日本の南ア貿易がトップに立った。確かに円高というようなことも一つは数字の中では込められていると思うのでありますが、そこだけではやっぱり説明することができないのでありまして、アパルトヘイト政策に対する基本的な考え方が緩い、弱い。したがって経済措置もどうも自粛を求めるというようなことが中心になっておりまして、禁止、規制という立場に必ずしも立ち切れていないということなどに問題の根っこがありはしないかと実は思うのですが、外務大臣いかがでしょうか。
  87. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 御指摘の面もいろいろ私の耳にも入っておりましたので、ひとつ実情をいろいろ調査もし、また御意見も伺おうということで経済団体と懇親会をしたわけでございます。その結果、まあ自粛要請という抽象的な言葉になりますが、やはり第一義的には通産省の関係もこれあり、また輸出、輸入それぞれ違う立場もございましょうし、さらにはまた物によっても違うことがございましょうし、そうした点においていろいろと具体的な話もそういう会議で伺いました。  その結果、経団連もさらにまた同友会も、ひとつこれは火事場泥棒というような汚名を今着ておるわけですから、こういう汚名を返上しなくちゃいけません、だから外務省のおっしゃるとおり我々も最大限の努力をします、こういうことで、既にして、南ア政府が予期いたしておりました鉄道等の問題の解約をされ、また入札参加されなかったという企業もありますし、さらには自動車は全面的に輸出禁止しましょうというふうな企業も出てまいりまして、外務省といたしましてもこれは本当に日本一つの、もしも輸出高、貿易高がふえればまさに恥部をさらすに等しいというぐらいの気持ちで私は臨んでおります。  通産大臣もこの点に関しましては、はっきり議会におきましても私と同じ考え方であると強い姿勢で臨んでおられますので、私はそうしたものにおいてもやはり実効が上がるのではないだろうかと、こういうふうに期待いたしております。
  88. 矢田部理

    ○矢田部理君 かつてといいますと一九八四年ごろはアメリカが数字によりますと四十六億ドルということでトップの位置にあったわけですね。そのアメリカが御承知のようにレーガンの反対を押し切って、アメリカ議会として南ア制裁法をつくりました。それをもとにして、ずっと輸出を大幅に規制している。昨年のごときは前年度比五六%ぐらいでしょうか、六割以下に抑えたというようなことで、アメリカは西ドイツやイギリスの下になって今は四位ということになりました。  そして日本が去年あたりあるいはおととしあたりからトップに躍り出た。自粛措置とか規制措置とかといっても、どうも日本政府の態度は、前の質問のときにも指摘をしたのですが、及び腰なのではないか。基本的にアパルトヘイト政策に対する反対の立場が弱いのではないか。そして、世界各国の模様を眺めながら、余り風波を受けない程度の自粛措置、規制措置というところで対応してきたことがこういう結果になったのではないかと私は思っているのですが、いかがでしょうか。
  89. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 南アに対する規制措置は、これは私どもも含めまして西側諸国としてはアパルトヘイトに反対である、南アはそれを改革するためにみずから努力するべきである、こういうことを南アに伝えるための、メッセージを伝えるための手段として規制措置をとろうと、こういうことで、もちろん日本の規制措置は、比較いたしますと世界諸国よりはかなり進んだ措置でございますが、しかし一応西欧諸国、まあ同じような類似の措置をとっているわけでございます。  問題は、南アに対して南アがみずからを改革するように説得していかなければいけない、そのためには措置をとる。措置をとる場合はこれはやはり大勢国際社会が協調して、これが一致した声であるという形のメッセージの伝達が必要ではないか、かような考え方から、諸外国との協調、それからそのメッセージが南アに対して改革を迫るだけの強さと、それからまたそれが南アから決定的な敵対的な行為でないと受け取られるだけの対応というのが必要なわけでございまして、現在私どもがとっている措置は、そういう趣旨での検討を経た上での国際的な常識として、判断として結論に達したものを行っている。  具体的に貿易額がどうかという問題につきましては、実はアメリカも日本も貿易を制限している品目というのは非常に限られております。例えば日本につきましては武器、それから電算機、金貨ですね。
  90. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単に、大体知っておりますから。
  91. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) したがいまして、その範囲内でありますと貿易額が時によってふえたり減ったりするのはこれは自然の成り行きでございます。それは制度上あるいはシステムとしてそれがおかしいということではないというのは原則の立場でございますが、しかし日本が南アに対して断固反対しているという政治的な姿勢を示す上においてはふえるというのはいかがなものか、こういうことで禁止措置ということでない形で日本の反対の意向が伝わるような実質的な措置ができるように、今外務大臣を通じてあるいは通産大臣を通じて自粛を呼びかけているということでございます。
  92. 矢田部理

    ○矢田部理君 南ア問題はもう少し数字なども挙げ、各国との比較の問題なども指摘をしながら議論を続けたいと思っているのでありますが、制限時間だそうですからもう一言だけ申し上げて、とりあえずきょうのところは終わりにします。  アメリカの議会は、南ア制裁法をつくってかなり厳しい経済措置を講じているわけですね、石炭、ウラン、繊維製品等々の禁輸措置をきちっとやると。日本の水準をはるかに超えた制裁措置に踏み切っているわけでしょう。日本の場合には、例えば鉄鋼などについても鋼材とか銑鉄は禁止をするが鉄鉱石の輸入は認める、そして石炭から綿花から砂糖まで向こうから輸入している。もう少し細かい議論はいずれやりますがね。そして自動車が急速に輸出としては大幅に伸びているわけですね。これでは南アに対する効果的な制裁措置というわけにはいかない。そのことが国際的な非難の対象にもなっている。そして、先般行われた国連の安全保障理事会では、南アのアパルトヘイト政策を非難し、かつ経済制裁を強化する決議案に日本は棄権をする、これももう少し内容をたださなきゃならぬと思っているわけであります。その点で次回にまたこれは続編をやりますが、やはりこの段階で追加的な経済制裁の措置をとるべきだというのが第一であります。  それから、通産省と外務省との間に少しく不協和音があって、外務省のやり方に通産省が抵抗しているなどという記事もあるわけでありますが、単に自粛を一般的、抽象的に要請するだけではなしに、もう少し具体的な基準づくりをする、その中身について私もいろいろ考えているところがありますが、次回に申し上げます。やっぱり厳しい措置に踏み切るということをしないと、南アとの関係だけではなくてこれはアメリカなどからも非常にこれから攻撃、非難をされる材料を国際的に提供していることになるということなどもあって、きょう通産省もおいでいただいていて答弁をいただく機会がなくて残念なのでありますが、次回までに外務大臣として追加的措置の検討も含めて御検討いただきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  93. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) 先ほど委員からの御質問につきましてきちんとお答え申し上げませんでしたが、北朝鮮を名指しで批判しております国は、韓国日本、アメリカのほか、英国とシンガポールでございまして、それからフランスは若干回りくどい表現でございますが言及をしているという状況でございます。それから、措置とあわせて行った国はフィジーでございます。フィジーは外交関係を断絶しております。  以上、補足させていただきます。
  94. 矢田部理

    ○矢田部理君 今のは正確じゃないんです。  非難をし、かつ制裁措置を講じた国はどこかということ、フィジーがあるかどうか知りませんが、日本とアメリカ、今つけ加えるとすればフィジー程度で、あとは名指しをした国が幾らかありますが、全体としては大勢は非常に慎重な態度をとっておるということを私は指摘をしたわけであります。
  95. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時十分に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時四十九分休憩      ─────・─────    午後二時十分開会
  96. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  97. 広中和歌子

    広中和歌子君 先回に引き続き、日米経済摩擦の言ってみれば象徴でありますところの農産物、そして流通業とともに公共事業、この三つがあるわけでございますけれども、本日は公共事業についてお伺いいたします。  農産物に関しましては先回、現在農林大臣が訪米中であり、そうした大事な交渉のさなかであるからということで、はっきりとしたお答えはいただけませんでしたし、またこちらも要求するべきではないというようなこともございましたけれども、幸い公共事業に関しましてはきのう一応の決着を見たということでございますので、この件に関しましては素人、部外者にとっては非常にわからないことだらけでございますので、丁寧に御説明もいただきたいし、そして私どもに納得のいくようにお答えいただきたいと思うわけでございます。  なぜ建設業界に関しまして摩擦が起こったのか。まずいきさつのところから、どのように外務省としては捕捉されていらっしゃるか、お願いいたします。
  98. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 今般、大型の公共事業の参入の問題につきまして日米間で実質的な合意が図られましたのですが、経緯を若干さかのぼらせていただきますと、約二年前に例の関西空港建設工事への参入、市場アクセスの問題が発生いたしまして、この関西空港問題につきましては、昨年の秋に手続についてほぼ決着を見たわけですが、その関西空港問題の最終段階と申しますか、かなり遅くなった段階におきまして、米国側は関西空港の建設工事だけではなくて、広く公共事業市場一般への参入を希望しているということが明らかになってきた、判明してきたという事情がございます。  それで、関西空港につきましては、関西空港としての一つの手続を日米間で実質的に合意いたしましたのですが、それではこの米国の関心事項である公共事業市場への参入の問題をどういうふうに取り扱うかということで、我が方といたしましては、ちょうどそのころ竹下内閣が成立いたしましたわけでございます。そのとき、ちょうど十一月でございますが、ベリティ商務長官が訪日いたしました際に、宇野外務大臣、ベリティ商務長官の会談で、日本側としては公共事業は内外無差別の原則でやっておりますということで、さらにマルチの場で、といいますのはウルグアイ・ラウンド、ガットのラウンドで各国の制度の調和を図るという交渉が現在行われているところなんで、その場での調和を図っていきたいという趣旨の回答を米側にいたした次第でございますが、米側といたしましては、マルチのガットのラウンドでの決着、結論を見る前の段階でやはり日本の建設市場への参入、特に公共事業への参入ということについて何らかの措置がとられるべきであるということを強く主張した次第でございます。  それを受けまして、昨年の暮れになりますけれども日本側から、日本の公共事業はいわゆる指名競争入札ということでやっているわけですけれども、その指名競争入札の制度を変えることなく一定の特例措置をとることによって本件問題の解決を図っていきたいという提案をした次第でございます。  その後、竹下総理の訪米がございまして、総理からレーガン大統領に対しましても、この日本の制度を変えることなく特例措置をとっていくという、そういう日本提案に従って本件解決に努力したいということを総理の方から申された次第でございます。  その後二月に入りまして東京で、三月二度にわたりましてワシントンで、この日本提案に従いまして協議が行われ、さらにその協議の過程では、日本の公共事業についての特例措置ということはそれでわかるけれども、公共事業に関連して行われるいわゆる第三セクター、民間事業についても米側が関心がある、これも何とかならないかという主張が米側からもございまして、その点につきましても今回の決着の一環といたしましていわゆるエンカレッジメント方式と申しますか、民間、第三セクターが行う特定の公共事業に関連して行われる民間のプロジェクトについても、政府としてできる限り民間の事業主体が内外無差別の取り扱いをするように勧奨していくという形での日米間の合意が図られたということで、最後、小沢副長官に行っていただきまして、昨日、米国で関西空港の手続についても日米間で確認いたしますとともに、特定の公共事業における特例措置並びに第三セクター、民間事業におきまする政府の勧奨方式という、大きく分けまして三つの分野につきましての合意が図られた、こういう次第でございます。
  99. 広中和歌子

    広中和歌子君 外野におりますと、今は非常にきれいに片づいているという印象を持つわけですけれども、なぜアメリカ側から非常に強烈なる不満が噴出したのか、なぜ紛糾したのか。そして、そういう紛糾の過程の中で、日本で新聞しか読まない者にとっては、何かアメリカのごり押しといったような印象を持ちますし、何かそこに非常にコミュニケーションギャップというんでしょうか、そういうものがあったような気がするのでございますけれども、その点についてはいかがでございましょうか。
  100. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 日本の公共事業あるいは建設市場の制度あるいは慣行につきましては、必ずしも米側が最初から十分の知識、情報を持ち合わせていなかったという点もございます。  関西空港方式について合意いたしましたときも、関西空港方式に類似のプロジェクトについては、これは関西空港方式でもってやる用意があるということを日本側が言っておりましたのですけれども、その類似のプロジェクトというものに対しまする米側の理解にもかなり不十分なところがございまして、話をしてまいりますうちに、だんだん先方の意図しているところあるいはこちら側が情報として先方に対して提供しているところについての話し合いの、何と申しますか、接点がなかなか得られなかったというところが一つ交渉が長引いた原因かと私ども理解している次第でございます。
  101. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほどおっしゃいましたけれども宇野外務大臣が原則的には開放の方向でいくというふうにおっしゃいましたし、そしてまた、竹下総理訪米の際、この一月でございますけれども、お土産として開放すると。ですから私は完全に開放されるのかと思っておりましたらば、実を言うとということで、公共事業の中でも民間の部分はだめだと、しかも民間の部分がかなりの部分、七割、八割というんでしょうか、私は具体的にはよく存じませんけれども、そういうようなことで誤解を与えるような情報しかあちら側に提供していなかったというようなことはございませんでしょうか、大変失礼な言い方ですけれども
  102. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 私も当初ベリティさんとこの問題を話し合い、さらにはシュルツさんとも話し合ったという経緯から申し上げますと、やはり日米相互の公共事業なり、あるいは指名入札制度なり、そうしたことに相当な懸隔があったわけです。特に関西空港は、広中委員も御承知のとおりに、出資金は民間から仰いでいる一部もある。そうしたいわゆる民間活力というような政府としての新しい方式がなかなかアメリカにはのみ込めなかった。  もう一つ民間活力の例と申し上げますと、東京湾の横断道路があるわけでございますが、これなんかどんどんと割引債を出してやろうというようなことで、日本はお金がありませんので、公共事業といえども税金を使うよりもむしろ国民方々の預貯金をひとつ有効に使わしてくださいというのが民間活力の一つの事業だったわけです。それと、民間と公共事業がごちゃまぜになっておりました。  だから、私が行きましたときには、はっきり申し上げて実は日本においては実績というものが必要なんだよと。しかしながらその実績といえども、アメリカの企業は日本に実績を持っているはずがないから、これはひとつ拡大解釈いたしましてアメリカの実績も日本の実績として考えてあげますから、もともと日本の公共事業は内外無差別でございますからどうぞお入り込みください、こういうふうに言ったことが一つの土台になりまして今日の結果を生むことになったと。  その間には、今政府委員が申しましたとおりに、やはりこちらも特例を設けてあげたり、あるいは民間はだめですよと言うんですが民間にも入れてほしいと。だからターミナルビルなんか民間でございますが、特にそうした面におきましては、今回の合意の中にはエンカレッジという言葉がございますが、これを勧め、奨める、勧奨ということをつくり上げまして、ひとつ政府も大きな民間には開放してあげなさいというふうなことを勧奨してもいい、それぐらいの気持ちを出したわけでございます。  もちろんアメリカには日本の企業が相当進出しております。しかし、アメリカも難しい制度で、ベリティ商務長官がアメリカは簡単にもう日本企業が入っていますよと言ったときに、いやその企業が入るまでに、そこへいくまでに十年かかっておる、アメリカにおいてもそれぐらいのものだと。だから、そこら辺はお互いに理解しなければいけませんということを相当強くお互いに申し述べながら、幸いなるかな今日の結論を得た、そういう経緯でございますので、やはり物差しが違った面が相当あったということもこの際私から御説明申し上げておきます。
  103. 広中和歌子

    広中和歌子君 私も日本の企業が、建設業界がアメリカに参入するに至りましては非常な努力があったということを認めますし、アメリカも当然そういう努力をしなきゃならないと思うのでございますけれども、今までアメリカの建設業界が日本に、またほかの国の建設業界もそうですけれども、参入できなかったような日本の建設業界の持つ体質、そういうものはなかったんでしょうか。そして外務省の原則としては自由貿易を建前とするそういうお立場と、そして業界との間のいわゆる話し合い、そういうものに非常に時間がかかったために、結果としてはこれだけ開くんだったら最初から開いていればもっとすっきりしたんじゃないかというような気がするわけでございますけれども、そこのところはどうなんでございましょうか。
  104. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細は政府委員から申し上げますが、やはりお互いの業界の立場というものもありますし、建設業界に対しましても、政府としてはある程度の説明もしてあげて理解も得ながら市場開放さすということも必要でございますから、そうした点の努力も随分あったわけでございます。  もちろん建設省、さらには運輸省、専門家がいっぱい日本はおります。立派な工事をしていてくれます。そういう方々の意見も聞いてやっていかないことには、もう単に外務省だけとか建設省だけとか運輸省だけというわけにはまいりませんので、関係各省庁が本当に夜も眠らずに綿密な連絡をし合っておった、そういうことにも多少時間はかかったであろうと私は推測いたしますので、ここら辺は恕すべきところではないだろうかと、こう思います。
  105. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) ただいま宇野大臣からのお言葉のとおりでございまして、私ども外務省にも、日本の建設業界の実態と申しますか、現実にどのように事業が行われ、行政が行われているかということにつきまして必ずしもつまびらかにしないところもございます。  ただ、運輸省あるいは建設省と外務省との間に緊密な連絡をとりましてこの問題の解決に努力してきて、今回実質決着にまで至った次第でございまして、政府といたしまして一体的に本件問題に対処してきて今日の結果を得たというように御理解いただけたらと思う次第でございます。
  106. 広中和歌子

    広中和歌子君 その御努力というのは非常に多とすべきだと思いますけれども、例えばアメリカ側の不満というのは、私なりに受け取ったところによりますと、何かわかりにくいと、日本国民でさえわかりにくいのでございますから、ましてやアメリカ人はわかりにくいと思うんです。いわゆる透明度がないということ、それからいわゆる指名入札制なんだけれども、そこのところは実際にその透明度と絡みましてどういうふうになっているんだろうか、この二つの点が問題なんじゃなかろうかと思うんです。  今回一応の妥結を見たわけですが、この指名入札制度は今後どういう形でなされていくのか。恐らく日本の建設業界そのものに画期的な変化が求められるんじゃないかと思いますけれども、それについてはいかがでございましょう。
  107. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 一般的に申しまして、公共事業はそれぞれの国民の税金を使用して実施されるものでございますので、日本あるいはアメリカ、欧州も、それぞれその各国の社会条件と申しますか、いろいろな条件に合致した最も妥当かつ合理的と考えられる制度というのが各国に長く存在しているということは事実であろうかと思います。日本の制度は、確かに先生指摘のとおり米国でやっておりますようなボンド制度、ボンドを出すことをベースにいたしましたいわゆる公開競争入札とは違ったシステムをとっている次第でございます。  ただ、この米国の制度あるいは日本の制度、欧州の制度、それぞれの間の国際的なルールというものは現時点では存在しておりませんで、この国際ルールを今後どういうふうに調和させていったらいいか、お互いに建設サービス業が、サービス業の国際的取引あるいは貿易を今後一層発展させていくためにはどうしたらいいかということが、まさに今日ガットのウルグアイ・ラウンドでの一つのテーマになっている次第でございます。  それで、今般の日米間の合意につきまして、これが新しく日本の建設業の一層の市場開放あるいは制度の改革につながるのだろうかという御質問かと承りましたけれども、基本的に今回の日米間の合意につきましては、日本の現行の制度、これは日本の会計法あるいは予算単年度制度といった大きな基本的な日本の制度を変更することなく、その制度の枠の中でどこまで日本として外国建設企業の参入を容易にする措置がとり得るかということについて協議いたしまして合意に達したものでございますので、直接この協議、合意の結果が日本の制度の変更につながるといった種類のものではないのではなかろうかと思う次第です。  ただ、もう一点つけ加えさせていただきますと、今回、日本の従来から存在してきている制度というものを若干特例措置として緩めるといいますか、外国企業が参入しやすいような措置をとるということにつきましては、御案内かと思いますけれども、基本的に七つの特定の大型公共事業につきましてそういう特例の手続をとるということで合意いたしまして、裏から申しますと、七つ以外のものについて今後いろいろ公共事業があろうかと思いますが、これは従来の日本の制度、もちろんその制度は内外無差別でございますし、外国企業も入ってこられるわけでございますけれども、それは通常の制度、手続に従って調達が行われるということになっている次第でございます。
  108. 広中和歌子

    広中和歌子君 具体的に言っていただきますと、例えば指名入札制度でございますけれども、外国はボンドを使っている、そちらの方はどういうふうに変わりますでしょうか。指名入札の中に外国での実績を認めると、そのことだけでございますか。そして原則的にはこの指名入札制度を続けていくということでございますか。
  109. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 今回の七つの公共事業についてとられます特例の措置は、第一点が、先生指摘のとおり指名につきまして外国における実績を国内の実績と同等に評価すると。通常は国内の実績のみが基準になりまして公共事業の事業主体の指名が行われるわけでございますけれども、外国においての活動をカウントするというのが第一点でございまして、ほかにもカウントした後で日本のこの七つのプロジェクト、公共事業につきまして外国企業が参入——まだ指名だけでは参入に至りませんので、参入がしやすいように説明会を開催いたしますとか、あるいはその指名がありましてから入札の期間まで、いわゆる見積もり期間と通常申していると思いますけれども、見積もりの期間を通常の場合よりも長くとるとか、あるいはさらにその指名の前の段階からマスタープラン等々の情報提供を行いますとかといった幾つかの措置につきまして今回日米間で合意をした次第でございます。
  110. 広中和歌子

    広中和歌子君 そういう説明は、特に説明書でございますけれども、英語で書かれるんですか。
  111. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) まだこれから今回の合意のどこまでをどう具体化していくかという点につきましては事務的に詰めなければいけない点がございますので、何が英語になって何がならないか、私もここで即座にお答え申し上げられないのでございますが、大きなものは当然英語にもなると私は理解しております。
  112. 広中和歌子

    広中和歌子君 もちろん残念ながら日本語というのは現状では国際語ではないので、外国人にわかってもらいたいとこちらが望む場合には英語でするわけですけれども、よその国でビジネスをしたいという場合には向こうの方が日本語のパンフレットなりなんなり、それを読む能力または読む人間を使う、そういうようなことをするのが当然だと思うのでございますけれども、そういうようなことも含めまして非常に譲歩というんでしょうか、こちらが勧奨、エンカレッジという言葉をお使いになりましたけれども、エンカレッジしてまでもアメリカの参入を歓迎するような方向をとらざるを得なかったということにつきましてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  113. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) アメリカには現在議会が非常に対日問題に関しましては強硬な意見を持っている人たちが多いと見てよいのではないか、私はこう思います。その人たちが唱えられるのが保護主義でございます。保護主義になりましたならば、これは世界貿易のみならず、我が国は一番被害国になるのではないか、そういうこともありますから、政府同士は非常にお互いに理解し合って辛抱強くやりましょう、こういう面もございます。もちろん私たち日本の国会の御意見を常に尊重しながらやってまいっておる次第でございますが、そういう立場においてやはりいろんな問題があった。今回の公共事業の日米合意というものは、私はある意味においては台頭しつつある保護貿易主義、これに対して私たち両国政府の間で話がうまくいったことは一つのメリットであった、こう考えてよいのではなかろうか、こう思っておる次第であります。
  114. 広中和歌子

    広中和歌子君 日本の公共事業予算というのは六十三年度だけでも十八兆円という非常な額でございまして、そういうところにアメリカの企業としても参入したいという気持ちになるのは当然だろうと思いますけれども、このようなさまざまな配慮の上で参入しやすいようにそれを勧奨するような形で一応の合意を見た後で、実際になかなか指名されないということも当然起こり得るわけですし、一たん指名された後、そこが問題なんですけれども、仕事をとってきただけで実際に下請なりいろいろな、私はよく存じませんけれども一つの建物をつくるそういうことに関しましてはかなりのいわゆるインフラ、日本の国内におけるそうした他の建設業者の協力というものが必要だろうと思いますけれども、そういった意味で、日本の建設業界は今回の合意に関してどのくらいの勧奨、エンカレッジする同じような態度を持っているんでしょうか。そしてそれが末端まで行き渡っているのか、これが非常に心配なところなんでございますけれども
  115. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 今般の合意につきましては、先生指摘のとおり参入の機会を与えているものでございますけれども、必ずしも参入の結果を保証しているわけではないということはそのとおりでございます。  政府といたしましては、こういう特例措置を米側の建設企業が大いに活用いたしまして実際に日本市場に参入してくるということを大いに期待している次第でございますが、しかし、そういう実際の参入が行われる上ではどういう形という——今回の特例措置がまさに参入を容易にするための措置でございますけれども、実際の問題といたしまして米側企業がどういう企業努力をするのかということに一つにはかかっていると思います。ただ、米側の企業努力の一環といたしまして、日本側の建設企業の協力、あるいは例えばでございますけれども日本建設企業と米国建設企業との間のジョイント、合弁事業をつくりまして、合弁会社がそういう事業に当たっていきまするとか、幾つかのその具体的な仕組みというものもこれから、これは政府の問題ではございませんですけれども、建設企業の間で大いに考えていかなければいけない問題になってくるだろう、このように考えている次第でございます。
  116. 広中和歌子

    広中和歌子君 この十八兆円という膨大な公共事業の予算、そういうようなことでアメリカの政府、特に日本との経済摩擦を取り扱っているUSTRにとっては非常に興味のある問題だろうと思いますけれども、果たしてアメリカの建設業界自身が、この問題というのは二年前に始まったことでございますから、果たしてその参入の意図がそれほど強烈にあったかどうかというようなこと、だから実際に開いてみたら意外とそういう参入したいという企業がないかもしれないし、そしてそのための努力をしないかもしれない、そういうことも大いにあり得るだろうと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  117. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) USTRといたしましては、もちろん議会の動きあるいは米国建設業界の動きというものも、そういった動きあるいはその立場、意見をも十分吸収いたしまして日本側との協議に当たってきているわけでございますし、事実業界には日本の市場に大きな関心を示しているということは、例えばベクテル・インターナショナルが日本に支社を設けてきているとか数社の間で合弁企業をつくろうという動きがあるとか、幾つかの動きは私ども承知しているところでございます。  繰り返しになりますけれども、こういう企業が日本の市場に出てまいりまして、ぜひせっかくの今度の合意でございますので実績を上げて、日本の建設市場で活動をしてもらいたいというように期待している次第でございます。
  118. 広中和歌子

    広中和歌子君 私は日本も建物はすばらしいものができておりますし、特に最近の本四架橋などすばらしいと思いますけれども、あのレベルのものというのはアメリカなんかでは五十年ぐらい前からいっぱいできているわけでございまして、そういう意味では今のアメリカの建設業界の実力は存じませんけれども、しかしながら、例えば飛行場の建設、そしてそのデザインとかさまざまなトラフィックのノーハウ、そういったものが日本の中へ国際コンペの形で参入してくるということは、私は日本にとってもすばらしいことだというふうに一方では期待しているわけですが、現実にはいれないというような状況があったときにまた新たな国際摩擦の火種になる、日米摩擦の火種になる。  建設業、日本の公共事業はどのくらいのパイをとればアメリカというのは満足するというふうに予想していらっしゃいますか。
  119. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 先生の御質問に直接にはお答えできませんですけれども、私どもといたしましては、せっかくの合意でございますので、できる限り多くの米国建設業界が日本の建設市場に関心を示して参入のための努力をすることを期待している次第でございます。
  120. 広中和歌子

    広中和歌子君 それと同時にEC諸国そして韓国韓国もすばらしい建設技術を持っていると思うのでございますけれども、ああいう国々なんかも日本の建設事業、そういうものに目を向けてくるのではないか、そのように思います。アメリカに与えられた条件、またそうした特例措置、そうしたものは他国にも適用されるのかどうか、新聞に一応書いてございましたけれども、もう一度改めてお伺いいたします。
  121. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 今般の合意は日本と米国との間での合意ではございますけれども、合意は外国の建設企業の日本市場への参入の機会を容易にする、そのためにこういう措置をとるという形での合意でございまして、この合意は決して米国の企業だけを念頭に置いたわけではないということが第一点でございます。  そうであるといたしましたら、どういう形で第三国への適用があり得るのかということが問題になるわけでございますけれども、これは具体的には、正直申しまして今まだ検討中でございますが、基本的に互恵の形でそういう関係国と申しますか、関心を表明している国に対しまして適用が図られていくことになるというように考えている次第でございます。
  122. 広中和歌子

    広中和歌子君 実際、事実と神話みたいなのも差もあるかもしれませんけれども、何かと日本というのは閉鎖的であるというふうに言われがちなので……。  公共事業に次ぎまして、次に最近新聞などに出ていましたものですから、難民の問題についてちょっとお伺いいたします。  難民の定義でございますけれども、どういうふうに受けとめたらよろしいんでしょうか。
  123. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 難民という言葉は、例えば難民とか亡命者とか、あるいは政治亡命者とか、いろいろな似たような概念がございまして、それぞれにつきまして一般国際法上確立された定義があるわけではございません。難民について扱っております条約もございますけれども、それぞれの条約の目的に応じて適用の対象を定めているにとどまりまして、学説におきましても、これが難民の定義だと一概に言えるようなものはございません。  しかしながら、我が国でいわゆる難民あるいは亡命者として論じられておりますものは、これは英語ではともにレフュジーと言っているものに当たっておりまして、通常、戦争とか内乱とか、あるいは自然災害等によりまして、または政治上、宗教上の理由による迫害の危険を免れるために自分の本国や本来の居住地を離れ、これらの国による保護を受けることができない場合、または自国の保護を受けることを望まない人々、これらを総括的に指すものというふうに考えて差し支えないんじゃないかと思っております。
  124. 広中和歌子

    広中和歌子君 難民の地位に関する条約というのは一九五一年にジュネーブでつくられたわけで、その後一九六七年、議定書というのがありますね。あれには日本は参加していらっしゃいますか。
  125. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 日本も加盟しております。
  126. 広中和歌子

    広中和歌子君 加盟していらっしゃいますか。
  127. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) はい、しております。
  128. 広中和歌子

    広中和歌子君 我が国における難民受け入れの基本的な姿勢というのはどういうものなんでしょうか。そしてまた、受け入れの現状についても続けてお伺いいたします。
  129. 斉藤邦彦

    政府委員(斉藤邦彦君) 我が国におきましては、我が国に亡命を希望する外国人がありました場合、これは政治的迫害の申し立てが十分に根拠のあるものであるかどうかを慎重に検討いたしまして、根拠があると認められた場合にはその人権の尊重と我が国の利益との調和を考慮して対処するという方針をとっております。具体的には、難民条約に入りましたときに出入国管理法の改正をいたしまして、その規定に従って個々のケースについて対処しております。
  130. 広中和歌子

    広中和歌子君 大体人数はどのくらい最近になって受け入れていらっしゃるんでしょうか。そして受け入れの条件でございますが。
  131. 大久保基

    説明員(大久保基君) お答えいたします。  昭和五十七年から本年二月末までの数字でございますが、これまでに我が国が受けました申請の総数は七百六十八人でございます。このうち難民として認定を受けました者は、総数百八十八人でございます。この内訳は、インドシナ三国人が百五十六人、その他三十二人でございます。これは難民認定された数でございます。  以上でございます。
  132. 広中和歌子

    広中和歌子君 その条件は何でしょう。つまり、七百六十八人中百八十八人が受け入れられたと。そしてまた、それ以上に多くの人たち日本を通過していっているわけだろうと思いますけれども、条件について、どういう条件で受け入れ、どういう条件で受け入れないのか、その条件について。
  133. 大久保基

    説明員(大久保基君) 委員の御質問は先ほど外務省条約局長から一般的な形でお答えしたと思いますが、私からはこの中で数が多いインドシナ難民につきまして具体的にお答えしたいと思います。  インドシナ難民につきましては、今からちょうど十年ほど前の昭和五十三年四月に、ベトナム難民の定住受け入れの方針を閣議了解の形で打ち出しまして以来、累次の閣議了解を経まして、インドシナ難民の定住許可基準の整備、緩和、それから定住枠の拡大というものを図ってまいりました。  現在我が国が受け入れておりますインドシナ難民は、大きく分けますと三つのカテゴリーに属するかと思います。すなわち、我々が親族ケースと呼んでいるもの、それから二番目に日本関連ケース、それから第三は資格ケースでございます。  このうち第一のものは、日本に親族、すなわち日本人の配偶者でありますとか、日本に適法に在住する外国人親族がいる場合でございます。第二の日本関連ケースと申しますのは、かつて在外の日本国公館、在外の日本企業等に相当期間雇用されたことがある者、または日本に留学または研修した実績がある者。それから最後の三番目のものは、このような関係はございませんが、例えば日本語を解するとか日本社会への適応力があると認められる者でございます。  なお、最後の日本社会への適応力ということでございますが、より具体的に申し上げますと、例えば、日本定住について積極的に意欲があるかどうかという点、それから年齢でありますとか教育歴、それから家族状況、職業上の技能、経験の有無、これは難民キャンプにおいて技術研修を受けたかどうかということも含まれておりますが、それから関係者の健康状況、こういうものから総合的に判断しておる次第でございます。
  134. 広中和歌子

    広中和歌子君 これを伺っておりますと、先ほどの指名入札のときの条件と非常に似ているなと思うのでございますけれども、つまり、過去の実績といったようなこととか、それから意欲があるかどうかといったような非常に抽象的なもの。  過去の実績ですけれども、難民の方の場合は恐らくは多くの方が日本に配偶者とかなんかいないし、日本というのは今までどちらかというと鎖国的であり、移民などを受け入れないそういう状況の中で親族がいるとか、それから日本語が既にできるとか、そういうようなことを条件にするというのは大変に、ともかく入ってくるなといったようなのに等しいのではないかなという気がいたします。それからやる気があるのか、日本語を既に知っているかということでも、もちろん移民したいと思って一生懸命事前に勉強するという状況じゃなくて、難民の場合で急にそういうところにほうり出されてどこか行く先を求めている、そういう状況の中で日本語の準備ができている、心の準備ができているというのはちょっと難しいような気がするのでございますけれども、その点につきましていかがでございましょうか。  外務大臣、今後の対策を含めましてちょっとお伺いしたいことと、それから一たん入ってきた難民の人たち、そういう人たちがどのような適用を日本の中でされているか。私は、一たん入ってくると、日本人って親切な人が多いと思っておりますのでそれほど心配はしていないんですけれども、実際にどうなのか。これは私の誤解かもしれませんけれども、余りにも日本は閉鎖的で難民に対して冷たいと、そんなふうにアメリカなんかでも思われちゃっている部分がございますので、誤解を解く意味でも外務省の今後の方針、そして先ほどおっしゃった受け入れ条件なども建設業界でもお変えになったわけですから、難民の条件などに対しても多少寛大になっていただけないのか、そういうふうにお伺いいたします。
  135. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ボートピープル等に対しましては、今法務省が申されましたような一時的な庇護を与えていますが、あるいは考えようによってはかたくなな面があるかもしれません。そうしたことも今後いろいろと諸外国の情勢等々を判断いたしまして、余りそしりがないように考えていかなくちゃならないのが日本の今日の立場ではないか、かように思っております。  特に、やはり日本よりもアメリカの方がいいねと言う人たちが多いというふうにも聞いておりますから、そうしたことに対しましても、極力日本社会に打ち解けてもらって定住化が促進されるように、ここら辺のことも外交の一つの大きな柱として、さらにそのことも条件等々考えてまいりたい、かように思っております。
  136. 広中和歌子

    広中和歌子君 時間が参りましたので、本当にどうもありがとうございました。
  137. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この委員会で初めての質問ですので、外交に係る基本姿勢をお伺いしたいと思いますけれども、その前に一、二質問しておきたいことがあります。  一つは、きょうの新聞に大きく報道されていますけれども韓国でセマウル疑惑が大きく広がっている問題です。このきょうの報道によりますと、全斗煥前大統領の実弟でセマウル運動本部の前会長ですが、逮捕されたということですね。  このセマウル運動というのは日本も全く無関係だとは言えないと私は思っています。というのは、この新しい村づくり運動、これに対する直接の援助かどうかは別としまして、韓国の農村改善には、経済協力白書によりましてもいろいろ日本は経済協力を進めてきている問題であります。そういう点で、韓国の新しい農村づくりという運動をめぐってこういう大規模な疑惑が出ているということについて、日本外務省としてはどういうお考えをお持ちになっているのか、まずお伺いしたいと思います。
  138. 藤田公郎

    政府委員藤田公郎君) ただいま委員指摘のとおり、セマウル運動、当初朴大統領のときに進められておりましたセマウル運動、新しい農村をつくる運動につきましては我が国もそれなりの協力をしたわけでございますけれども、新聞等の報道でもごらんのとおり、その後のセマウル運動というのはかなり変わってきたわけでございまして、その第二期と申しますか、後半の時期について、今いろいろ韓国の中での議論が行われ、手続が進められていると承知しております。  これ以上のことは、今まさに韓国の中での論議及び司法的な手続が進められていることでございますので、私どもとしてとやかくコメントをする立場にはございませんけれども日本協力しておりましたのはもう全くの初期の段階のものだということだけを申し上げておきます。
  139. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 セマウル運動への援助及びセマウル運動だけでなく韓国の農村近代化、農村振興への日本の経済協力のリストを私は提出していただきたいと思います。  それは別としまして、全斗煥政権というのは、不正腐敗を糾弾し社会浄化を掲げて登場した内閣でした。この内閣のもとでこういう大規模な疑惑が起こっているということは、日本政府がこれまで高く評価してきた全斗煥政権、前政権ですけれども、この基本的な評価にもかかわる出来事が今明らかになったんじゃないかと思いますが、そういう点どうお考えになりますか。
  140. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まあいろいろ評価はあろうかと思いますが、やはり日韓親善という意味でずっと歴代第何次共和国日本とは親善を結んできたわけでございます。特に今回、前第五共和国のもとのことが今いろいろと検察のメスが入ったということでございまして、隣国でこういうことが起こっておることは甚だ残念なことだと私たちも思っておる次第であります。
  141. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 私がお伺いしたかったのは、今の政権じゃなくてあくまで前政権ですね、前政権は日本訪問のときなどにも非常に高い評価を日本政府は与えてきたわけでして、その内閣でこういう事態が起こっている問題について、この評価にかかわるものじゃないかということをお伺いしたかったわけですけれども、これはまあそれ以上突っ込んで意見を求めようとは思いません。  もう一点は、これもきょうの報道によりますと、日米科学技術協力協定がきょうじゅうにも合意かという見通しも出ております。この見通しと、これには非常に懸案になっていました安保条項はどうなるのか、織り込まれるのかどうなのかという点をお伺いします。
  142. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 実は、この日米科学技術協力協定の交渉は去年の十月の半ばぐらいからずっと続いておりまして、ちょうど今回で七回目になるわけでございますが、たまたま私は日本側の実務レベルの責任ということでやってきたわけでございます。七回の交渉を重ねました結果三月三十日、日本時間のこれきょうでございますが、きょうの午前中に交渉団同士で一応大筋合意をしたという現状でございます。もちろん、大筋合意でございまして、これからのワーディングとかあるいは法律的な詰め等々が残っておりますので、最終的にどういうふうな形に確定するかというのはまだわからない状況でございますけれども、一応大筋の合意を見たということでございます。  他方、そういうことでしばらくまだ詰めに時間がかかるものでございますから、現在あります協定、これはきょうで実は切れる協定でございますけれども、それを三カ月間、六月の末まで延長するということに合意したわけでございます。それで、実はきょうの午前中に合意したばかりで、今内容につきましても徐々にしか報告が入ってきていませんので、的確な中身を申し上げるわけにいかない状況でございますし、まだ確定していないということもあるのでございますけれども、そういう状況でございます。
  143. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 細かく内容を私ここで聞こうとは思いませんけれども、安保条項は入るか入らないか、内容は別としまして、その点だけはお伺いしておきます。
  144. 遠藤哲也

    政府委員遠藤哲也君) 先生のおっしゃっておられる安保条項、これはよく新聞等に出るわけでございますけれども、安保条項というのは何を御念頭に置いているか、あるいはどういう中身なのか必ずしも明らかでないのでございますけれども、むしろ情報の取り扱いというふうに表現した方があるいは適切ではないかと私は思うわけでございます。先ほど申したように、必ずしも正確な情報が、まだ部分的にしか入っていないものですからあれになりますけれども、いずれにしましても、情報の取り扱いというものはこれは公開が原則だということを確認いたしておるわけでございます。  先生指摘の安保条項と安全保障はどういうふうな関係になるのかあれでございますけれども、安全保障という字句は今一応合意しました文章、協定の中には用いられておりますけれども、これによりまして我が国の現状を何ら変えるものではないということも確認されております。  それから次に、我が国は情報の公開について、先生承知のとおり安全保障の観点からの一般的な規制はないわけで、こういったような状況というのは新しい協定のもとでも変わりはないわけでございます。いずれにしましても、この協定は平和目的の研究あるいは研究活動、この促進のためのものであることがこの協定で明らかにされておるわけでございます。  ちょっと走り走りでございますけれども、今のところそういうことでございます。
  145. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 内容が明らかになったところでまた大いに論議がここでも行われるようになると思いますけれども、私はここで、日本の科学技術を占領に沿ってアメリカの統制下に置くようなものになることになれば、絶対に許せないということだけを申し上げておきたいと思います。  本論に入らせていただきますけれども日本外交の基本姿勢については午前の質疑でも外務大臣から見解が述べられました。従来日本政府日本外務省もいろいろなキャッチフレーズで日本外交について語ってきたことがあります。国連中心主義だとか、あるいは全方位外交だとか、西側一員外交だとか。今の内閣のは一言で言えばどう言ったらいいのか、世界に貢献する外交というようなことにもなると思いますけれども、今の外交姿勢というのは、従来の外交姿勢、例えば国連中心外交というふうなものを否定した上にあるものではないと思いますが、それはどうでしょうか。
  146. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 当然さようでございます。否定するものではありません。
  147. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 国連中心外交が生きているということになると、私はその観点から日本外交について幾つかただしておきたい問題があります。  国連創設の基本的なねらいからいって、また日本外務省がこれまでいろいろな文書で書いてきていることから見ましても、国連の中心問題はやはり平和の問題であり、また外務省自身がお書きになっている幾つかの文書でも国連の中心的な任務が軍縮だということをしばしば強調なさってきています。したがって、私は日本外交も当然外交の最も重要な柱として軍縮ということを置かれるべきではないかと思いますが、その点いかがですか。
  148. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 御案内のように国連憲章に基づきまして、国連の最も重要な柱となっておりますのは、国際の平和と安全の維持でございます。この国際の平和と安全の維持という観点から、軍縮というのもその一つの方法であるというふうに理解しております。
  149. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 その点で私は、日本は世界の各国の中でも特別な重要な役割を果たし得ると思います。というのは、日本はよく言われるように唯一の被爆国でありますが、同時に日本国民が憲法改悪を抑えてきた結果、日本の軍事費というのは他の国に比べればGNP比率というのは低くなっており、そのことが日本経済の成功の一つの要因になっている。ですから、我々はそういう点で核兵器の悲惨を訴えるという点でも、軍事費を抑えることが経済の成功の力になるということを事実で示す点からも、軍縮問題について世界にアピールすることのできる立場にあると思いますが、どうですか。
  150. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 軍事費の前にやはり日米安保体制という体制がしっかり組まれておったから今日の平和を維持しまた拡大し、さらには我が国の民生の安定にも経済の拡大にも資することが多かったと、かように考えていいと思います。  ではそのいわゆる防衛費についてどうなのかということについてのお話になると思いますが、これはもう御承知のとおりに、我が国の憲法を初め、あるいは非核三原則を初め、いろいろと私たちはその動き一つに対しましてシビリアンコントロール、そのほか法制の拘束等々もございます。したがいまして、そうした中において節度ある防衛費を自主的に今日計上しておる、これがただいまでございますから、もちろん低きにこしたことはないでございましょうが、我が国のもろもろの状況考えてこしらえられておるのが今日の防衛費である、かように御理解賜りたいと思います。
  151. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 アメリカと軍事同盟を結んでいる国は、世界じゅうで日本だけでなくたくさんあるわけですね。その中で日本の特徴は、日本の軍事費のGNP比が他国に比べて非常に低いということが特徴で、これが日本の経済成功の一つの重要な要因だということが国際的にも目下研究対象になっている。そういう時期に、私はやはり外務大臣からそうだということを強く強調してもらいたい。まず安保があるからだという答弁というのは、そういう点でアメリカと安保条約を結んでいる国は日本だけではなくて多くあるわけですね。  しかし、その点の論議は別としまして、私は今の軍事費の問題は、安保との関係はもちろん政府としてはおっしゃるだろうと思いますけれども、国連中心主義ということになれば、日本政府も賛成した国連における軍事費削減に関する決議というものもあるわけでして、我々は、安保があるないにかかわらず、その国連決議に沿っても軍事費の削減という方向に向かって努力すべきだと思います。しかし、残念ながら軍事費は減少の道をたどらないでいるというのが今の世界の現状です。  今日の世界の軍事費、兵力はどういう状況になっているか、わかったら教えていただきたいと思います。
  152. 山下新太郎

    政府委員山下新太郎君) いろいろな資料が実は余りないわけでございますけれども、世界の軍事費は現在どのくらいかということにつきましてオーバーオールに書いてあります資料としましては、アメリカの軍備管理軍縮局、これが去年の四月に出した報告がございます。それによりますと、世界の軍事費は八千三百五十七億ドル、それから総兵力は二千九百二万人というふうに報告されております。
  153. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 外務省がSSDIIを前につくられた資料によりますと、一九八〇年の世界の軍事費は五千億ドル、正規軍は二千五百万人、そういう数字が、これは私外務省自身のつくられたパンフレットで読んでいる数字です。そうしますと、その一九八〇年以降、今の数字を見ましても、軍事費は非常な勢いでふえている。一部の報道では一兆ドルというような数字も報道されております。兵力も二千五百万人から二千九百万人というふうにふえているわけですが、この流れを国連総会決議にもあるようにやはり変えていく必要があると私は思いますが、大臣いかがでしょうか。
  154. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 軍縮問題に関しましては、常に私たちもいろいろとその先陣を承っておる国家であると認識いたしております。特に今の兵員の数あるいは軍事予算、そうしたものが、現在それぞれの国において際限なき軍事費の拡大というものはいかに民生の安定を傷つけあるいは経済発展を阻害するかというむなしさが今回米ソ両国におけるINFのグローバルゼロという一つあらわれにもなった、こう見たらいいのではないか。かように思いますから、今おっしゃるとおりのことで、我々といたしましては、お互いにまだ東西陣営があるということになりますと、やはり対決、対立ということもあえて無視するわけにはまいりませんから、言うならば抑止力とバランスがとられておるのが今日だと申し上げましても、その抑止力とバランスは低レベルでも保ち得るのではないか、そういうような考え方我が国としては臨むべきである、こう思っておる次第であります。
  155. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 軍事費が削減する方向へ向かうことに大臣は賛成だとおっしゃったんですが、そうだとすると、やはり日本の実態というのはそれに反している。日本の軍事費の伸び率というのは世界的にも最も高いということはこれは私がここで申し上げるまでもない事実です。それだけでなく、今国会の本会議における代表質問に対する答弁で竹下総理大臣は、アメリカに軍事費削減要求せよということがあるけれども、それは要求はしないんだと、アメリカの軍事力、これは必要なんだという答弁なんですね。日本も軍事費はどんどんふやす、アメリカ国内でも今日削減世論が高まり一部削減も行われている。これに対して削減要求しないということでは今の大臣答弁とも実際は食い違うじゃないかという気がしますが。
  156. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) やはり日米安保体制を基軸としておる我が国の外交方針から申し上げますと、両国はそれぞれの立場において最も信頼ということを確実に築き上げていかなくちゃならない仲だと思います。  したがいましてアメリカも、今私が申し上げましたように、まず核という問題に関しましてはソ連と話し合いをいたしまして、両国努力によって一応INFのグローバルゼロは実現した、これから検証の段階に入るわけでございましょうが。そうしたふうなことは核軍縮の第一歩である、こう思っておる次第でございまして、また通常兵器を初めそのほかもろもろのことがあるということを考えますと、今ソ連の意図は知らず、アメリカだけに対しまして私たちがひとつ軍事費を削減しなさいということの是非に関しましては当然我々には我々としての判断がなければならない、かように思っておりますから、あえて私たちが今アメリカに対しましてむだなことはよしなさいと言っている立場ではない、これだけはひとつ御理解願いたいと思うのであります。
  157. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 理解はできませんし、そういう立場をとっている政府というのは、私は西側の中でもやはり珍しい立場ではないかと思います。  国連中心外交ということでもう一つ、私は今軍事費問題で見解をただしましたけれども、核兵器廃絶問題でお伺いしたいと思います。  国連の第一回総会決議、一九四六年の国連総会決議ですけれども、これもまた外務省の文書でも常に強調しておられますけれども、原子兵器の廃棄を求める決議であった、これは被爆国日本として非常に重視し、今日も尊重すべき決議であり、国連中心外交というならば日本外交の中心に据えるべきものだと思いますけれども、この国連総会第一号決議についての大臣の所見をお伺いします。
  158. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 御指摘の国連決議第一号は御案内のように原子力委員会の設置に関するものでございまして、その付託事項の一つといたしまして、国家の軍備からの核兵器及びその他のすべての主要大量破壊兵器の除去についてこの委員会が具体的に提案を行うということになっているわけであります。  この原子力委員会はその後軍縮委員会、それから現在は軍縮会議というふうに変遷をしてきておりますけれども、この軍縮会議の場におきまして核の問題、将来、長期的な究極的な目標としてこの核の廃絶の問題、これに向かうにはどうしたらいいかというふうな具体的な問題を討議しているわけでございまして、当然その中で核実験の停止の問題等々が議論されてきているということでございます。
  159. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 国連総会の第一号決議は、経過的に言えば別としまして、今おっしゃったような経過をその後たどっていますけれども、兵器体系の中から原子力兵器というものは取り除けというものなんですね。ですから、戦後の第一号決議が兵器体系の中から原子力兵器、今言う核兵器というものはなくせ、廃棄せよという決議だったということをやはり戦後政治のこれは原点として我々は貫くべきだと思います。とりわけ日本は唯一の被爆国ですから、そういうすべての兵器の中から核兵器だけは取り除けということをあらゆる外交の中で貫くべきだと思います。  その核兵器のなくし方についてはいろいろ我々今ここで見解を一致しようとは思いません。それは意見の違いがあります。しかし、兵器の中から核兵器だけは廃棄しなくちゃいかぬということを世界に訴えるということは日本の外交の中心課題になるべきだと思いますが、その点はどうですか。
  160. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 究極的な核廃絶ということは当然日本政府の目標でありまして、この点につきましては多くの国と見解をともにしております。
  161. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 究極的ということについては後でまた論議したいと思いますけれども、いずれにせよ核兵器をなくそうということでは一致しているということだとすれば、そのために日本政府が行っておられる具体的な努力、どういう点がありますか。
  162. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほどちょっと言及いたしました軍縮会議の場におきましても、例えば核実験の停止問題、禁止問題につきまして具体的なその検証の方式等を我が国のその研究の結果として発表するとか、あるいはこの検証を一つの核の実験につきまして至急設けまして、この検証可能なところにつきましては、それ以上のものの核実験についてはこれを禁止するというステップ・バイ・ステップ方式を提案するといったことで、具体的に核の廃絶問題について一歩一歩実績を積み重ねていこう、こういう努力を続けております。もちろんそれ以外に常に究極的な核廃絶が目標であるということについては、国連の場その他あらゆる機会に訴えてきているところでございます。  ただ、もちろんその間、安全保障という面を無視してはならないということは当然のことながら私どもの念頭にあるわけでございまして、その点についても当然我々は主張しているところでございます。
  163. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今のお話ですと、軍縮交渉の場で日本政府の見解を述べていることが日本政府の核兵器廃絶へ向けての努力内容のすべてだというふうにしかとれません。  午前の会議で、外務大臣日本政府の外交姿勢として理解と協力ということを強調されました。やはり世界諸国民から理解されるような外交であるべきだと、これは私もそのこと自体は賛成ですが、そうすると日本政府は唯一の核被爆国として外から見ても理解できる形で核兵器廃絶への努力を行っているかどうかということが、世界から日本の外交姿勢として問われるところではないかと思います。  そういう点で、私は日本政府の外交姿勢というのは、核兵器をなくそうという努力をしているというふうにはどこから見ても見えないじゃないか。一昨日立木議員が国連総会での幾つかの決議に対する日本政府の態度を問題にしました。例えば核兵器の廃絶決議にも反対する、核兵器の不使用と核戦争の防止決議にも反対する等々この間立木議員は触れました。外務省から見ればいろいろな理由があるでしょうけれども、国連でそういう態度をとっていることが、諸外国から見て日本はなるほど核兵器廃絶に向かって努力している国だなというようによく理解できるかどうか。どう思いますか。
  164. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 核の廃絶の問題につきましては、今ほど委員はただそういう訴えているだけではないかと、こうおっしゃったわけですが、現実の具体的な方法といたしまして個々の核実験禁止についてステップ・バイ・ステップ方式等を提案しているということをちょっと申し上げたわけでございます。  それから、核軍縮関係の種々の決議につきましては、単に私どもは宣言的なものだけで現実の究極的な核廃絶というものが実現されるというふうには考えておりませんで、やはり一歩一歩積み上げていくということが必要であるという観点から態度を決定しているわけでございます。当然その間に、究極的な核廃絶に至るまでの過程においてやはり一定の核抑止力に依存せざるを得ないという現実も踏まえていることは当然でございます。
  165. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 今いろいろ説明されますけれども、例えば外務省がかつてつくっていたパンフレットでは、「すべての核実験の禁止を叫び続けてきた」ということを説明してありますが、国連で核実験禁止の決議については賛成しないと。これは一昨日立木議員が明らかにしたとおりですね。それから、核兵器は一挙には廃絶できないんだということですけれども、一挙に廃絶できないかできるかという議論、これはまた改めてやりたいと思いますけれども、そういう見解だけじゃなくて、外務省のパンフレットを見ますと、理想的な提案は危険だということまでお書きになっているのですね。  私は、核兵器をなくそうという理想的な提案日本政府が反対すること自体とんでもないことだと思いますけれども、そういう提案が危険だとまで宣伝を開始するということになれば、この政府がどうして核兵器に反対している政府かというようにしか世界どこから見てもとれないと思いますが、今後ともそういう態度をとり続けるのですか。
  166. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 先ほど委員の方で核実験の禁止について日本が賛成していないというふうにおっしゃいましたが、包括的な核実験の禁止につきまして我が国は賛成しているわけであります。どういうところに賛成したかと言えば、やはり検証あるいは遵守ということを重視しているわけでございまして、例えば核実験の停止で我が国が棄権したものもございます。これは例えば単に米英あるいはソ連三国のみに核実験停止を求めて、中国とかフランスについてはこのらち外にするとか、いろいろそういった問題点のあるものにつきまして、それぞれ我が方としては態度を決めているわけでございまして、基本的にその核実験の包括的な禁止というものについては賛成をし、むしろ我が国は共同提案国になっているということでございます。  したがいまして、他方、先ほどちょっと御指摘になりました理想的なことは危険であるというのは、ちょっとどこからの御引用か必ずしもよくわかりませんけれども、いずれにいたしましても現実的な軍縮というのは東西対峙、東西対立の現実を考えますと、各国の安全保障を損なうことなく力の均衡レベルを徐々に下げていくということしか方法はないと思っているわけでございます。したがいまして、単に究極の姿だけを見て、それに至る過程を無視するということは危険である、こういうことを恐らく申し上げたかったのだろうと思います。
  167. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 時間がありませんからその論議ばかりやっているわけにはいきませんけれども、繰り返し今国連局長が言われる究極的核廃絶ということですけれども、それの中身はどういうことなのか、これは国会でもこれまで相当論議されてきたことですが、安倍元外務大臣は究極的核廃絶というのを、私の解釈では全面完全軍縮と同義語で使っておられるように思いました。つまり核兵器だけじゃなくて通常兵器も含む兵器のない世界、その兵器のない世界が訪れるその一環として核兵器も廃絶するんだというように私はとりましたけれども外務省の見解はその点どうなっているのか、具体的に答えていただきたいと思います。
  168. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 今、安倍元大臣の御発言の御引用がございまして、ちょっと私手元にございませんけれども、通常兵力もない状況において、その一環として核が廃絶されるということはこれは一つの姿だろうと思います。  ただ、そこまでいきませんでも、国家間の不信感が除去されるという状況のもとにおきまして、例えば化学兵器は全廃される、それから通常兵力の均衡が回復される、維持される、それからさらに例えば国際連合等による国際の平和と安全に関する十分な保障が得られる、こういう状況というのも一つ究極的に核が廃絶される場合の状況として考えられるのではないか、これは例えばというふうにしかちょっと申し上げられませんけれども、というふうに考えております。
  169. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 この問題は非常に大事な問題でして、共産党が国会でよく問題にする自民党のパンフレットでも、通常兵器がまだある状況のもとでの核兵器廃絶は危険だというふうに書かれていて、これ国会でしばしば論議になりますけれども、この点について明確な答弁は今まで行われておりません、通常兵器がある状況のもとでも核兵器をなくすという立場に立つのかどうなのかというのがですね。  ここで私ども主張するこの点を繰り返して言うのは、軍縮の歴史というのは、もちろんすべての兵器のない世界が実現するのは理想ですけれども、それはそう簡単でないと我々も思っているわけです。その中で、かつて毒ガスだけは例外として使用を禁止するという歴史的な教訓もある。戦後、国連総会でも兵器体系の中から核兵器だけは廃棄するんだということが決議された。この国連総会でも、兵器を全部なくせということではなく、核兵器だけは廃棄せよと言っているわけです。我々が核兵器だけは廃絶しなくちゃいかぬという場合に、それはもちろん通常兵器の軍縮も主張しますが、それができるまで待たないで、ちょうど歴史的に毒ガスだけを通常兵器から切り離して使用を禁止したと同じように、核兵器だけはなくそうという立場を我々は主張しているわけです。  その点で、国会での論戦の中で全面完全軍縮だと、しかもそれも外務省の文書では、究極的全面完全軍縮と言われる。そうすると、その見地に立ってそれと事実上同じ意味で核兵器の究極廃絶ということになれば、核兵器をなくすということはいつのことなのかもうわけのわからぬ将来のものになっちまう。そういう点で日本政府の立場、外務省の立場というのはどうなのかということを、なくし方の問題はいろいろまた議論するとしまして、基本的な核兵器をなくすという場合に、通常兵器と切り離して核兵器だけはなくそうという立場にはっきり立つというのか、そうはいかないというのか、この点だけはっきりしていただきたいと思います。
  170. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 毒ガスの問題を例に挙げられましたが、毒ガスは非人道的であるというふうな一つの大きな共通認識から廃止ということが行われたと思います。  核だって同じことではないか、そうすれば普通の鉄砲の弾だって同じであると、まあ皆言い得るわけでございますが、しかし、現在の東西関係というものを考えますと、やはり核そのもの自体も存在することは決して我々にとって好ましいことではないが、そうしたものがあって東西のいわば抑止になっておるということはこれは否定するわけにはまいらないと思います。  ただ、核は核に対する抑止であるのではなく、やはり通常兵力との上においてもバランスがあっての抑止だと、こういうふうに世界は考えておるわけでございますから、したがいまして、核だけ廃絶して、どこかの地方において通常兵力でも雲泥の差がついたら、果たしてそれで平和が保てるかという問題に対しては甚だ疑問だということも言われているわけでございますので、やはり今せっかくいろいろおっしゃいましたけれども、毒ガスと同じように核兵器を扱って、それのみを廃絶というのはいささか世界の平和のためにどうであろうか、私たちといたしましてはそう簡単に合意することができないと、私はかように思います。
  171. 吉岡吉典

    ○吉岡吉典君 日本外務省の立場、外務大臣の立場、非常によくわかりました。賛成という意味じゃなくて、よくわかりました。  私は、今、INF条約をめぐって世界の核兵器廃絶への流れが大きく進もうという時期にその態度を変えてもらいたい。やはり核兵器をいかなる理由があるにしろ、安全確保、平和確保の力という立場をやめることが唯一の被爆国の日本の世界に対する義務ではないかというのが私の主張したい点です。  繰り返すようですが、なくし方の問題はいろいろ議論はあると思いますけれども、しかし、核兵器というものはどこの核兵器も、アメリカの核兵器もソ連の核兵器も、すべての核兵器を我々はその存在を合理化してはならない、それはなくさなくちゃならないという立場に立つか立たないか、それが日本の世界に対してとるべき立場だと私は思いますし、国連総会決議が兵器体系の中から原子力兵器を廃棄せよと言った立場もそういう立場だと思います。しかし、大臣の立場は非常に鮮明になりましたので、これ以上ここで論議しても簡単に答えは出ないと思いますけれども、私は、繰り返すようですが、その立場を改めてもらいたいということを要望して終わります。
  172. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 言いっぱなしだけでは困りますから、もう一度念のため申し上げますが、核の究極的廃絶は常に我が国の目指すところであると、そのことに関しましては政府委員から御説明がございました。  また、米ソ両国のせっかくの努力に決して日本は水を差しておりません、協力をむしろいたしております。そして、INFのグローバルゼロは確かに核軍縮の第一歩であった。だから、第二回目のSTARTと言われております戦略核の五〇%削減に関しましても、私たちは、西側が結束してアメリカにひとつ実現してもらうように努力しようということでやっておるということでございまして、先ほどのいささか結論めいたお話と私の基本的な考え方とは全く違うということだけは申し上げておきたいと思います。
  173. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) これをもって昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  174. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  175. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 次に、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件、国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。宇野外務大臣
  176. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ただいま議題となりました特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この改正は、昭和六十二年五月にカナダのレジャイナで開催された同条約の第二回臨時締約国会議において採択されたものであります。  この改正は、同条約の締約国会議を定例化しその権限を拡大すること、財政規制を定め分担金制度を導入すること等について規定いたしております。  我が国がこの改正受諾し、条約の実効性を高める努力に参加することは、環境保全の分野における国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第でございます。  次に、国際復興開発銀行協定第八条(a)の改正受諾について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この改正は、国際復興開発銀行における加盟国の出資比率の調整を背景として、昭和六十二年六月に同銀行の総務会で承認されたものであります。  この改正は、同協定の改正の効力発生に必要な受諾加盟国の投票権数の総投票権数に占める割合を引き上げることを内容とするものであります。  またこの改正は、同協定の安定性の向上に資するものであり、また、国際復興開発銀行における我が国の出資比率の引き上げとも密接に関連いたしております。我が国がこの改正受諾することは、同銀行の業務の円滑な運営に資し、ひいては我が国が同銀行を通じて開発援助の分野における国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。  よって、ここに、この改正受諾について御承認を求める次第であります。  以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。  以上でございます。
  177. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  両件に関する質疑は後日に譲ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十六分散会