運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-03-28 第112回国会 参議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十八日(月曜日)    午前十時開会     ─────────────   委員氏名     委員長         森山 眞弓君     理 事         宮澤  弘君     理 事         最上  進君     理 事         松前 達郎君     理 事         小西 博行君                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 鳩山威一郎君                 林 健太郎君                 林田悠紀夫君                 原 文兵衛君                 三池  信君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 田  英夫君     ─────────────    委員異動  二月二十日     委員三池信君は逝去された。  三月二十三日     選任          吉井 英勝君  三月二十四日     辞任         補欠選任      吉井 英勝君     吉岡 吉典君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         森山 眞弓君     理 事                 宮澤  弘君                 最上  進君                 松前 達郎君                 小西 博行君     委 員                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 後藤 正夫君                 嶋崎  均君                 林 健太郎君                 原 文兵衛君                 中村  哲君                 矢田部 理君                 黒柳  明君                 広中和歌子君                 立木  洋君                 吉岡 吉典君                 田  英夫君    国務大臣        外 務 大 臣  宇野 宗佑君    政府委員        外務大臣官房長  藤井 宏昭君        外務大臣官房外        務報道官     松田 慶文君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        外務大臣官房会        計課長      林   暘君        外務大臣官房領        事移住部長    黒河内久美君        外務省アジア局        長        藤田 公郎君        外務省北米局長  有馬 龍夫君        外務省中近東ア        フリカ局長    恩田  宗君        外務省経済局次        長        内田 勝久君        外務省経済協力        局長       英  正道君        外務省条約局長  斉藤 邦彦君        外務省国際連合        局長       遠藤  實君        外務省情報調査        局長       山下新太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        木村 敬三君    説明員        法務省入国管理        局総務課長    石垣 泰司君        外務大臣官房文        化交流部長    田島 高志君        文部省学術国際        局国際教育文化        課長       砂子田忠孝君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○国政調査に関する件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (外務省所管)     ─────────────
  2. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  議事に先立ち一言申し上げます。  皆様既に御承知のとおり、本委員会委員でありました三池信君は去る二月二十日逝去されました。まことに哀惜痛恨にたえません。  同君の長年にわたる御功績をしのび、委員会を代表いたしまして委員長より供花をささげ、弔意を表しましたことを御報告申し上げます。       ─────────────
  3. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 委員異動について御報告いたします。  三池信君が逝去されましたのに伴い委員が一名欠員となっておりましたが、去る二十三日、その補欠として吉井英勝君が選任されました。  また、去る二十四日、吉井英勝君が委員を辞任され、その補欠として吉岡吉典君が選任されました。     ─────────────
  4. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 国政調査に関する件についてお諮りいたします。本委員会は、今期国会におきましても国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  6. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 去る三月二十五日、予算委員会から、三月二十八日及び三十一日の二日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  宇野外務大臣から説明を求めます。宇野外務大臣
  7. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 昭和六十三年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算の総額は、四千四百十六億四千六百十三万八千円であり、これを昭和六十二年度予算と比較いたしますと百七十二億四千百万七千円の増加であり、四・一%の伸びとなっております。  我が国を取り巻く国際情勢は依然として厳しく、外交役割はいよいよ重大であります。近年国際社会における地位が著しく向上した我が国は、世界に開かれた日本として、また世界に貢献する日本という視点に立ち、各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していく必要があります。  この観点から、昭和六十三年度においては定員機構拡充強化在外勤務環境改善等外交実施体制強化政府開発援助ODA)及びその他の国際協力拡充海外邦人対策等整備拡充等に格別の配慮を加えました。特に外交強化のための人員の充実は、外務省にとっての最重要事項一つでありますが、昭和六十三年度においては定員百二名の増員を得て、合計四千百五十一名となります。  また、機構面では、在外公館として在イエメン大使館を開設することが予定されております。  次に経済協力関係予算について申し上げます。  今や自由世界第二位の経済力を有するに至った我が国が、平和国家として、世界の平和と安定に貢献する上で、経済協力我が国の重要な国際的責務となっております。なかんずく、政府開発援助ODA)の果たす役割は年を追って重要なものとなっております。政府は六十年九月にODA第三次中期目標を設定し、その着実な拡充に努めることを宣明し、さらに昭和六十二年五月には緊急経済対策において、第三次中期目標の極力早期達成、少なくとも七年倍増目標の二年繰り上げ実施等を決定いたしました。昭和六十三年度はこの中期目標の極力早期達成に向けて、量質両面の着実な拡充を図るため、ODA一般会計予算においては、厳しい財政事情にもかかわらず、政府全体で対前年度比六・五%増とする特段の配慮を払いました。  このうち外務省予算においては、無償資金協力予算を対前度比百三十一億円増の一千四百七十一億円としたほか、技術協力予算拡充に努め、なかんずく国際協力事業団事業費のうち、技術協力に向けられる同事業団交付金は対前年度七・五%増の一千六十二億円と初めて一千億円を超えるものとしています。また、国連等国際機関を通ずる国際協力及び欧米等先進諸国との関係を円滑化するための対策にも配慮を払っております。  さらに情報機能強化のための予算充実に努め、また、各国との相互理解の一層の増進を図るための広報文化人的交流予算についても一層の手当てを講じております。  このほか、海外で活躍される邦人方々が安心して生活できるよう緊急事態における通信連絡体制整備拡充を図るとともに、海外子女教育の問題についても、全日制日本人学校一校の増設を図る等の配慮をしております。  以上が外務省関係予算概要であります。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  8. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 以上で外務大臣説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  外務省所管昭和六十三年度予算大要説明は、これを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  10. 宮澤弘

    宮澤弘君 質疑に入ります前に、過日、中国で大きな列車の事故がございました。多くの方々が遭難をされました。亡くなられた方々の御冥福を祈りますとともに、御家族の方々に心からお悔やみを申し上げたいと思います。  この事件に対しまして、外務省、現地の総領事館、早速対処をされる。また、浜田外務政務次官を派遣されたようでございますが、なお入院をされている方も多いようでありますし、補償問題等もあるようでございますので、どうかひとつ事後処置遺漏のないようにお取り計らいを願いたいと要望をいたしておきます。  六十三年度の具体的な予算の問題を伺う前に、世界情勢についてひとつ伺っておきたいと思います。  ただいま世界情勢を見ますと、イランイラク戦争のように地域的な紛争は依然としてございますけれども、米ソ間でINF廃止条約は合意を見ましたし、さらに戦略核五〇%削減の交渉も行われて、近く米ソ首脳会談も行われようということで、世界軍縮の方向に向かいつつあると思います。このときに、五月から六月でございますか、第三回の国連軍縮特別総会が開かれ、総理出席をされると聞いておりますが、この機会に日本としてはどういう観点から何を世界に訴えようとしておられるのか、外務大臣から伺いたいと思います。
  11. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 御指摘のとおり、INFのグローバル・ゼロという問題は、日本政府といたしまして核軍縮の第一歩として評価し、また当然両国の御努力に対し敬意を表するとともに、この署名、調印は心から歓迎いたしておる次第でございます。  また、続くSTARTつまり軍備管理、あるいは戦略核の半分を縮減しようと、そのほかにも二国間地域紛争、さらには人権等々問題がございますが、これに対しましても、今両国外相間におきまして非常によい成果をおさめるような準備がなされておるということは我々といたしましても当然歓迎をいたしまして、その成功を祈る次第でございます。したがいまして、そういう環境下において軍縮会議が行われるわけでございますから、特に我が国といたしましては唯一被爆国であるというこの大切な経験をもととし、なおかつ非核三原則を初め、憲法上におきましても我々は戦争を放棄しておる、そういう立場を強調しながら世界的な軍縮成果が上がることを主張していかなければならないと、かように考えておる次第でございます。  当然そのためには、日本といたしましても特殊な立場というものがございますから、最終的には核の廃絶目標とし、さらには軍縮が一挙に進めば結構でございましょうが、常に低レベルにおける抑止力というもの、それが均衡を保たれるということ、そうしたことを念頭に置きながら、今後世界動きもございましょうし、そうした世界動きの中において何を提言すべきかということをただいま鋭意いろいろと検討いたしておりますので、総理が登壇になられます前日まで我々といたしましては十二分な準備を整えまして、強いアピールが世界になし得るよう努力をしたいと考えております。
  12. 宮澤弘

    宮澤弘君 ただいま大臣唯一被爆国としての立場基本にしてとおっしゃいました。私もそのとおりだと思いますので、我が国唯一被爆国でございますから、核廃絶世界に訴える権利があり、かつ義務がある、私はそう思います。  前回の国連軍縮特別総会はさして大きな成果がなかったと言われておりますけれども、一番大きな成果核軍縮のキャンペーンが発足をしたことだと思います。この線に沿って、当時の鈴木総理大臣の御提言もあって、日本政府広島長崎原爆資料被爆資料国連に提供いたしました。御承知のように国連常設展示場ができました。それからまた国連は、国連広報局でございますか、この被爆資料を持って世界主要都市で核の脅威展というのを巡回で開いたわけでございますね。さらに、その際に国連軍縮フェローシップという制度ができまして、軍縮専門家を養成することを目標に、主に開発途上国からフェローをつくりまして、毎年二十五人でございますが、日本政府の尽力によって広島長崎で一週間研修をするという制度ができたわけですね。私は、国連軍縮特別総会でいろんな方が演説をなさる、これはもちろん必要でありますけれども、百の説教よりも一つ実物教育の方がやはり世界の人々に被爆の実態を通じて核廃絶を普及するという、非常に重要だと思っております。  そういう見地から、私は前から日本政府が主催して広島長崎被爆資料世界に展示する核の脅威展を開いたらいいじゃないかということを前の総理大臣外務大臣にも伺いましたけれども、この点については余り積極的なお答えはございませんでした。そこで、そういう点について大臣のお考えを伺いたいのと、政府主催でできないということでありますれば、国連当局がそういう企画をし、実施することを政府としてぜひ働きかけていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  13. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 既に国連には、今お話ありましたとおり、原爆常設資料館が設けられておりまして、これは強く世界人たちに大きな影響を与え、また原爆に対する今後の人類としてのそれを用うべからずという一つの宣言、そうしたものを心に抱かすのではないかと思います。  現在、国連主催のそうした行事に対しましては我が国も積極的に御支援を申し上げておるということでございますし、またフェローシップに対しましてもいろいろと我が国といたしましての支援もなさなければならないと思いますが、今後ひとつ今の御提言に関しましては十二分にいろいろと検討さしていただきたい、かように考えております。
  14. 宮澤弘

    宮澤弘君 再度申しますが、政府として難しいならば、国連が主催してやるように働きかけることぐらいはできるのじゃないかと思いますので、どうかひとつ御検討をお願いいたしたいと思います。  それから、この件に関して一つお願いがございますが、軍縮特別総会NGOグループとして広島長崎の市長が出席して発言をいたしたいということを国連事務当局に申し出ております。まだ確たる返答がございませんけれども、ひとつあの場でそういう発言ができますように、外務省とされても積極的にお力添えをいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  15. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これに関しましては国連一つ選考委員会のようなものがございますので、当然我が国も何人かの代表者が常にこの問題に関しましては発言をしていただきたい、かように考えておりますから、そうしたルールもございますが、そのルールに従いまして、我が国といたしましても極力御推薦申し上げておるという段階でございます。
  16. 宮澤弘

    宮澤弘君 どうぞよろしくお願いをいたします。  次に、予算に関連をいたしまして、まずODA政府開発援助の問題から伺いたいと思います。  先ほど大臣の御説明にもございましたが、六十三年度一般会計ODA予算七千億円以上、伸び率も六・五%ということで、当局の御努力を高く評価をいたしたいと思います。  ところで、一昨年のODAドルベースによる実績、多分昨年の六月ぐらいに外務省から公表されたものがございますが、それによりますと、一昨年はその前年に比べて多分五〇%近い伸びであったと思います。恐らく昨年の実績ももう五月ぐらいにはドルベース実績が出てくると思いますが、恐らくこれもかなり目標を上回っていると私は思います。  そこで、外務省はこれまで二回中期目標を設定されて、今第三次の七年間の中期目標が進行中でありますが、既に昨年でありましたか、七年を二年短縮して五年にする、前倒しということで今実施をされておりますが、このままでまいりますと私はもう五年を待たずしてドルベースによる目標は十分達成できると思います。もうこの際に新しい第四次と申しますか、中期目標を策定して実施すべき時期だと、私はそう思っておりますが、大臣いかがでございましょうか。
  17. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ODAに関しましては今御指摘のような面もこれあり、さらにはまた世界で非常に注目をされておりまするが、やはり内容的にも検討しなくちゃならない点がたくさんございます。そうしたことを含めてどうするかということは大切なことだろうと思いますので、ひとつ実績等々の見通しに関しましては政府委員から答弁させるようにいたします。
  18. 英正道

    政府委員英正道君) 委員指摘のように、八六年の実績は前年比四八%伸びておるということで高い伸び率でございましたが、これはそのうちの四〇%が円高影響ということでございます。八七年の実績につきましては、まだ現在集計中で確たることを申し上げる段階ではないのでございますけれども、為替相場の変動につきましては大体その前の年が約四〇%の伸びというのに対応するものとしては約一七%、つまり換算レートが八六年についてはOECDの開発援助委員会、DACで百六十八円五十二銭ということになっておりますが、八七年については百四十四円六十四銭ということで約一七%の伸び、加えまして予算ODA経費の増額の努力、御支援によりまして、合わせますと相当高い伸び率に引き続きなるのではないかということは言えると思います。ただ、現在作業中でございますので、作業が完了次第発表したいということで、現在幾らというところまでは言えない段階でございます。
  19. 宮澤弘

    宮澤弘君 高い伸び率であろうと、私もそう思います。恐らく外務省とされては、新しい計画をつくりたいと思って検討しているとおっしゃりたいんだろうと思いますが、財政当局その他のあれもあるし、なかなかこういう公の席ではおっしゃれないんだろうと私は勝手に推測をいたしますが、これはぜひもう新しい計画に移らなければならないと思います。どうかひとつ適当な時期にそういうふうになりますようにお考えをいただきたいと私は申し上げておきたいと思います。  そこで、先ほど大臣も内容的、質的にも検討すべきことがあるとおっしゃいましたが、以下この内容的、質的な面で幾つか伺いたいと思います。  まず第一番目は、経済協力理念というか、考え方の問題についてであります。これにつきましては、国際的な一般通念というか、二つの柱がある。一つ人道的配慮というのでありますか、それからもう一つは、南北問題を背景にした相互依存の認識。外務省もまたその二つの柱を中心に、これは一般的な国際的な通念だと思いますが。そして、それに加えて各国とも外交目的に即した理念をいろいろ加えているんだろうと思います。我が国におきます例えば平和国家としてのコストという観念であるとか、あるいは経済大国としてのコストという観念であるとか、さらに総合安全保障の一環としての経済交流経済協力という観念はまさにこれに当たると思います。  しかし、いずれにいたしましても、従来ODA経済協力の根底には経済的な観点というか、経済的な視点中心であったと思います。私は無論これからも経済的な視点基本にはなると思いますけれども、それに加えて、政治的な観点と申しますか、政治的な視点も十分考慮していく必要があるのではないかと思います。無論、世界の平和と繁栄というのが最終目的でありますが、世界の平和と繁栄に経済的に寄与するばかりでなくて、ODAを通じて政治的に貢献するという立場もこれからさらに強調されていいのではないかと思います。例えば、世界各地で不幸にしていろいろな紛争がありますけれども、その紛争防止あるいは紛争解決という観点、さらに紛争防止とか解決という見地は、紛争が起こりそうな政治的に不安定な地域安定化を図るというようなことにもつながるわけでありますけれども、そういう観点でありますとか、あるいは紛争終結後の地域復興と申しますか、そのための援助、こういう観点を私は申し上げているわけであります。  例えばイランイラク戦争、不幸にして都市間の攻撃等が行われ、またペルシャ湾では邦人の船員が犠牲になるというようなこともございました。そういうようなイランイラク戦争を早く終結することについて外務省大変努力をしておられるわけでありますが、イランイラク戦争終結後の復興でありますとか、あるいはアフガンの問題も大分明るい見通しがついてまいりましたが、アフガン紛争終結後の地域復興、こういうことについてODAが出動をして政治的な観点から援助を積極的に行っていく、こういうことが必要ではないか、要するにそういう政治的な観点からの援助に今後積極的に取り組んでいっていいのじゃなかろうか、こう思いますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  20. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 非常に大切な御指摘を賜りましてありがとうございます。私も積極果敢な外交展開ということを本会議でも申し述べた次第でございますが、世界の平和に貢献する日本という立場をさらに強調したい、かように思っておりますから、イラクイラン両国紛争はもとより、アフガン問題、さらにはガザ付近におけるところのアラブ、イスラエルの問題、さらにはまたカンボジア問題等国際紛争と見られるところには本当に私たちもできる限りの手を尽くしておる次第でございますが、そうした紛争が幸いにしておさまることあらば、その次にどうするかということも考えていかなければなりません。  アフガンに関しましては、この間審議官を派遣いたしまして、パキスタン政府とも十二分にいろいろと話をいたしておりますが、今御指摘のあったとおりに、幸いにしてソ連アフガンから撤兵する、そしてパキスタンが多くの難民を抱えておる、これを静かに母国に帰ってもらって正業についてもらう。これにはなかなか大変な段取りが必要であろうと、こういうふうに思っております。  直接的には国連監視団が出る予定になっておりますが、我が国といたしましては、ソ連の撤兵に対しては国連監視団にはそれはそれなりの御支援を申し上げましょうということで、既にその申し入れもしてございますが、さてその国々における経済復興、これは私は非常にすべての戦争にかかわりなき国が考えなくちゃならぬ、なかんずく西側陣営としても考えなくちゃならぬということになりますと、果たしてそれをどういう姿で御支援申し上げるか、これは重要な時期が私は来るだろうと、こういうふうに思う次第でございます。  今のところODAは、もう先生も御承知のとおり専らこれは援助だけでございますから、したがいまして、その援助に関しましても日本の規定には今のところ国民所得パーヘッド幾らならば無償、幾らならば二国間円借款、こういうふうな規定がございますが、これは毎年変更さしております。したがいまして、そういう機構を初め、また荒れ野が原になった、瓦れきとなったところをどうするかという問題等々新しい問題がございますが、余りしかつめらしい考え方じゃなくして、やはり政治的に判断をする、時には政治的に判断した方がよろしい、かように考えますので、いずれにいたしましても世界の平和、それに対しましては貢献をいたしたいと、かように考えます。
  21. 宮澤弘

    宮澤弘君 ぜひそういう政治的目的を持った援助という方向について積極的にお考えをいただきたいと思います。
  22. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 委員長、もう一言だけ。  ODAは今までのところは政治的配慮というのは全くなく、ひたすら対象国の民政の安定、福祉の向上、そうした意味で私たちはつくってまいりましたので、その点は今の平和との復興とのいわゆる政治的配慮と、これまでの援助としての配慮には大きな差があるということもこの際一言申し上げておきたいと思います。
  23. 宮澤弘

    宮澤弘君 大臣のお考えはわかりました。  今大臣おっしゃったことで、実は世の中で戦略的な援助という言い方をされる場合がございますが、今私が申しましたのは、世界の平和と繁栄のために政治的目的を持ってということを申し上げました。今の戦略的云々とのかかわり合いで議論をいたしますと少し長くなります。私は今この場ではそういう意味で申し上げているのではございません。大臣のお考え、私もそのとおりだと思います。  そこで、援助の質の改善ということで、従来から一つはGNP比率を高めていく、もう一つ日本援助の内容の贈与比率というものが大変低いからこれを高めようと、こういう議論があるわけでございますね。GNP比率を高めるということは援助の総量をふやすということになりますが、それをもし借款でふやすとなれば贈与比率はまた下がってしまう。大変難しい問題と思いますが、この二つのかねてからの問題、今後どういうふうに取り組まれますか。
  24. 英正道

    政府委員英正道君) 仰せのように、二つの問題は若干トレードオフの関係になる面がございます。しかしながら、やはり基本的に贈与部分をふやしていかなければいけない、そのためにはやはり一般会計における経済開発等援助費の手当て、それから国際協力事業団、JICAの交付金の手当て等を行わなければならないわけでございまして、厳しい予算の制約、財政上の制約はございますけれども、こういう無償予算拡充というところに努力を払うということで、できる限り両方の目的が達成されるようにやっていくということで臨んでおります。
  25. 宮澤弘

    宮澤弘君 おっしゃるように、無償資金をどれだけふやせるかということが非常に大きなポイントだと思います。  次に、援助の弾力化と申しますか、こういうことについて伺いたいんですが、発展途上国の中には、というよりは大部分の国が財政困難あるいは国際収支が悪化をしているということで、従来いわゆるプロジェクト援助というものが中心であったわけでありますが、どうもやはりプロジェクト援助に加えて援助される国、被援助国が負担する費用ですね、ローカルコストというんですか、内貨というんですか、これに対する援助、それからさらにいろいろ問題は指摘をされておりますが、商品借款、そういうようなもの、これまでも一部行われておりましたけれども、いわゆるノンプロジェクト援助に対する要請が恐らく被援助国からは非常に強いと思うんですね。やはりある程度これに今後はこたえていかなければならないと思いますが、これはどうお考えですか。
  26. 英正道

    政府委員英正道君) 現在、石油を初め一次産品価格が非常に低落しておりまして、途上国の経済がかなり従来よりも悪い。そういうことで途上国の開発、社会開発、経済開発の努力というものの内容が若干変わってきておるということを私ども承知しております。  その基本的な方向は、やはり大きなプロジェクトをどんどんやるという力がなくなってきているので、きめ細かく従来の社会的な基盤、そういうものを復旧していこうといういわゆるリハビリテーションのようなものでございますとか、さらには国際収支の困難を助けるための商品借款のようなものの需要、さらには内貨の手当てができないためにプロジェクトの進行がおくれるということでローカルコスト分を負担してほしい、そういう要望が非常にふえております。  私どもの経済協力はやはり途上国のいわゆる開発のニーズに対応していくということが基本でございますので、それに応じて相応の改善を図ってきております。具体的には、例えば借款の、供与する際のローカルコストを従来三割までという原則で、その原則の適用も制限的だったんですけれども、かなりローカルコストを限度枠まで見る。加えまして、従来外貨分しか援助で融資しておりませんでしたプロジェクトの内貨分だけをまとめて追加的に援助を行うというようなことも国によってはいたしました。さらには無償援助についても、これはほとんど完全にいわゆるプロジェクト援助でございましたけれども、サハラ以南の最貧国を中心とする諸国の国際収支困難等を考えますと、こういう国には無償であってもノンプロジェクトの無償供与をするということが必要であろうということで、昨年補正予算における措置を講じた上で、サハラ以南の諸国に対するノンプロジェクト無償援助というかなり画期的なことも行いました。  そういうことで、途上国のニーズに対応するような努力を、予算の範囲内でありますけれども鋭意努力を行っているというふうに御理解いただきたいと思います。
  27. 宮澤弘

    宮澤弘君 ただいま無償資金の援助のことを話されましたが、それについてちょっと二つばかり伺いたいんです。  一つは、従来の無償資金の援助というのは、一つ地域住民の生活のレベルアップというんでしょうか、もう一つは人づくり、こういうようなことが中心であったと思うんですけれども、それに加えて、今後被援助国の外貨獲得に役立つ、例えば工業部門ですとかあるいは観光開発とか、そういうものに積極的に目を向ける必要があるんじゃないかということが一点です。  それからもう一つは、今まではやはり物的施設というものが中心だったと思いますけれども、これからはソフトの面というか、文化面というものもやはりかなり考えていく必要があるんじゃないか。これは、私が聞きましたことは正確であるかどうかわかりませんが、例えばエジプトに日本援助で立派なオペラハウスが近くでき上がる。それに対して、そのこけら落としかなんかの際に、ほかの国からは一流のオーケストラなんかが来るけれども、どうも日本はまだそういうことについてどういうものが行くかというようなことがはっきりしていない、こういう話も聞きましたんですが。  そこで、今申しましたように、物をつくり上げるということもいいんですけれども、そういう芸術家や芸術団を派遣するとか人の派遣とか、あるいはもっと言えばビデオ等を制作して出すとか、そういう広い意味の文化協力ですね。特に大臣文化人でいらっしゃるんだから、やはりそういうことを宇野大臣のときに大いに強調されることも必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  28. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 専門的には政府委員が答えると思いますが、この間、私も今おっしゃったようなことで、アメリカのシュルツ国務長官に何をプレゼントしようかと思いまして考えついたのが、NHKでかつて北海道で釧路湿原でツルを養っている一人の人のお話、「鶴になった男」というのがございました。だから、日本人はすぐ鯨を食うとかあるいはいろんなことが言われておるときでございますから、さにあらず、かくのごとく一人の人が親に迷ったツルを養ってここまで飛ばすまで努力したよと、大変涙ぐましいビデオでございましたので、私はそれをNHKから買い求めまして、そしてシュルツさんに差し上げましたところ、孫と一緒に見たというふうな非常に心温まる返事をちょうだいしました。  やはり政治家の中におきましても、そうした一つの何でもないことが大変な両国の理解を広め、さらに孫にまで、孫の代まで日本のツルの物語が残るかと、こういうふうに思いますと、確かに現世代ではなくして将来に残すべき文化というものはいっぱいあると思います。さような意味で、今御指摘の点は将来尊重していきたいと私は考えます。
  29. 宮澤弘

    宮澤弘君 今大臣にお答えをいただいたんですが、英さんね、今の工業開発とかそれから観光開発というようなものにも着目してやっていくということについては御反対じゃないでしょうな。
  30. 英正道

    政府委員英正道君) 観光開発の問題につきましては、環境の破壊とか現地の住民に対する影響とか、かなり消極的な意見もかつてはあったわけでございますが、最近、途上国の幾つかの国はやはり観光収入というものを今後ふやしていきたい、それで経済自立に向けていきたいという気持ちを持つようになってきております。特に南太平洋の国でございますとかネパールでございますとかギリシャでございますとか。そこで、私どももそういう新しい途上国の要請にこたえまして、これらの国に対する専門家の派遣でございますとかそういうことをやっております。仰せのとおり、今後観光につきましては、積極的にやはり援助の分野で適当なものは取り上げていくということは検討してしかるべきというふうに考えております。  それから、やはり輸出の促進に貢献するような援助ということで、この点につきましても、最近東南アジアの国に幾つか輸出の貿易促進のためのセンターですね、品質の改善であるとか輸出技術の伝播であるとか、そういうことを目的とするプロジェクトタイプの技術協力というようなことも積極的にやろうというふうにして着々準備を進めているところでございます。
  31. 田島高志

    説明員(田島高志君) ただいま委員が御指摘のエジプトの教育文化センターについてでございますが、御指摘のとおり文化面の活動がこのセンターにつきましては期待されておりますので、十月の開所式に際しましては、外務省といたしましても国際交流基金事業を通じまして、これは松竹に御協力をお願いしてございますが、歌舞伎の公演を企画いたしております。歌舞伎のほかにも、できましたらほかの公演事業あるいは展示事業もあわせて企画を進めたいと鋭意努力しているところでございます。
  32. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に、NGOの問題について伺いたいんですが、NGOを通じての援助というんですか、それは草の根の援助といいますか、地域に即してきめの細かい援助ができるということで各国かなり積極的にやっておりまして、外務省ODA研究会の報告書でも、ひとつNGOを大いに活用せよというようなことを言われていたと思います。どうも余り今までそういう面で見るべきものがなかったように思われる。これは日本のNGOの活動自身が余り活発でないということもあるかもしれませんが、やはり今後NGOというものを重要視して、それを通じての援助というようなことを積極的に考えていかなければいけないと思います。いかがでしょうか。
  33. 英正道

    政府委員英正道君) この点が現在の経済協力行政の中でひとつおくれているという御指摘をしばしばいただいているわけでございます。宮澤委員指摘のように、日本のNGOと諸外国のNGOの間にはかなり活動状況等において差異がございます。したがって、諸外国がやっていると同じようなことがすぐに日本実施できるという状況でないという点もあるものでございますから、なかなかすっきりとしたふうにまいりません。  ただ、若干のNGO活動に対する支援ということは行っておりまして、例えばNGOの方が途上国で仕事をされる前にJICAで研修のコースを設ける、そういうような活動でございますとか、具体的にエチオピアでございますとかバングラデシュでございますとか、そういうところでNGO活動を支援するという形で具体的な協力を行わしていただいております。  ただ、今後の方向といたしましては、一つは途上国のNGOの活動に対する支援、それからそれと連携して活動を行う日本のNGO活動の積極化というようなことの方向で検討を行うような時点に来ているのではないかというふうに考えます。一部の国では政府援助実施をNGOに行わせるというケースもございますし、ある程度NGOの役割をその中で認めるというようなケースもございます。フィリピンでもそのような試みが行われております。私どもとしては、そういうものを念頭に、実効的な計画でございますればできる限り前向きに対応していくべきだろうというふうに考えておる次第でございます。
  34. 宮澤弘

    宮澤弘君 我が国でもオイスカあたりには随分外務省の方もお金を通じて協力を求めておるようです。この問題はやっぱり外務省が座っていては向こうからなかなかやってこないと思うんですね。ですから、NGOに外務省の方も積極的に発掘をされて協力を求められるという積極的な姿勢が私は必要だと思います。これはそれだけ申し上げておきます。  ODAの問題の最後に、外務省がかねて研究しておられる国際開発大学ですね、これは今どういうふうに進行しているんでしょうか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  35. 英正道

    政府委員英正道君) これは外務大臣のもとに設けられました研究会が、援助人材養成ということの必要性からそういう組織をつくったらどうかということを提唱されたことを受けまして、六十一年の六月に文部省の御協力も得まして有識者で構成する設立検討会議という組織をつくりました。約一年間検討いたしまして、その報告書が出たわけです。この報告書は、我が国の将来の援助要員を養成し、開発途上国の研究員、留学生の受け入れをも行い得る大学院レベルの高等教育機関として、国際的に開かれた、これ仮称でございますが、国際開発大学というものをODA資金を活用して設立してはどうかということを提言しております。  こういうような検討を踏まえまして御審議いただいております六十三年度の政府予算の原案におきまして、援助関連高等教育機関の調査に関する経費という調査費が約五百万円計上されております。この調査を基礎として着実に構想の具体化を図っていきたい、かように考えております。
  36. 宮澤弘

    宮澤弘君 次に、外国人への日本語教育のことについて二、三伺いたいんですが、まず最初に外務大臣の感想を承りたいんです。  それは、過日マスコミに出ました外国人に対する簡約日本語ですね。これにつきましてマスコミに報道されたところによりますと、この簡約日本語というのは、国立国語研究所の所長さんが外国人のために簡約日本語をつくるということで、十年この方研究をしてきたものだそうですが、文法上の決まり事や言葉、文字を海外の初心者向けに思い切って簡略化する試みで、向こう三年間で完成をさせたいと。それで、ルールとしては、語尾を「です」とか「ます」調で統一をする。後に続く言葉でさまざまに活用する動詞は原則として「ます」に連なる形に加工する。つまり、「書く」ではなく「書きます」とするんだそうですね。それから言葉を二千語ぐらいにする。こういうことで今盛んに研究をしている。  その例として、これは大臣コピーをごらんをいただいたかと思うんですが、「北風と太陽」というイソップの物語があります。それが普通の日本語ですと、「遂に北風は、彼からマントを脱がせるのをあきらめた。」と、「脱がせるのをあきらめた」と、こういうことですが、この国語研究所の所長が研究している簡約日本語になりますと、「とうとう北の風は彼から上に着ますものを脱ぎさせますことをやめませんとなりませんでした。」。これは、大臣は無論所管の大臣じゃございませんので、外務大臣としてよりも文人宇野としてどういう感想をお持ちでございますか。
  37. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いろいろ日本を知ってもらうために簡約日本語の研究をなされておるということは十分に承知しておりますが、「北風」を「北の風」とわざわざ訳さなくても、日本にはやはり昔からこち吹かばの東風あり、あるいは、はえの南風あり、あるいは北の風は白秋のもとでございますから白風とも言うというふうに、いろいろ日本語というものには特別のデリケートなニュアンスがございます。例えば、そういうことから考えましても、極めて物理的に寒いから北の風ということだけで果たして日本が理解できるだろうか。ましてや、今お読みになりましたように、一体どうなっておるのかわからないような文法でありましては、これは非常にかえって混乱を招くんではなかろうか。確かに日本の文法は英語、中国語とは全く違います。「これ本です」と、「これです本」ではありませんから。したがいまして、そういうところもいろいろ問題はございましょうけれども、私といたしましては、果たしてこうしたことが本当に日本を理解するために必要なのだろうかということに関しましては、私は私なりに、はっきり申し上げますと現在疑問を抱きます。
  38. 宮澤弘

    宮澤弘君 ありがとうございました。  そこで、外国人に対する日本語教育、国内の方は主として文部省が担当しておいでになるので、まず文部省に伺いますけれども、現在国内で日本語を学んでいる外国人は三万五千人ぐらいおりまして、日本語の教師が三千八百人いるそうであります。ところで、今世紀末に留学生を十万人ぐらい日本として呼んでくる、こういう計画もありますので、そうすると、一体日本語の教師をどういう充当計画をしておられるのか、その養成計画ですね。そして、それは達成できるのか。それについてひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。
  39. 砂子田忠孝

    説明員砂子田忠孝君) ただいま先生の方から御案内ありましたように、内外の日本語学習者の増大は非常に極めて急激にふえておるというふうに聞いております。国内は確かにふえておりますし、海外においてもふえておると聞いております。  それで、私どもの方で、日本語教員の養成等につきましては、昭和六十年五月に日本語教育施策の推進に関する調査研究会というところから御報告をいただきまして、その対策をそれに即して考えているところでございますが、現在我が国日本語教員の養成を行っている機関は大学が二十二校、それから専修学校、各種学校等が五十機関、計七十二機関ございます。私どもとしましても、日本語教員の養成は日本語教育体制の整備の上で最も重要な課題の一つ考えておりまして、文部省としましても、昭和六十年度から国立大学に日本語教員養成のための学科等を設置しており、これまでに八大学に設置したところでございます。  こういった施策も、先ほど申し上げました調査研究会の方で、国内の日本語学習者数の試算では大体昭和七十五年には十四万をいくであろうと、先ほどの留学生の受け入れ等も含めてですね。そういうことを想定しました数をもとに、こういった養成機関を着実にふやしていきたい、そういう施策を進めているところでございます。今後とも日本語教員の養成の拡充に努めてまいりたいと思っております。
  40. 宮澤弘

    宮澤弘君 できるわけですね、それだけでいいんです。十万人留学生が来ても、それに対して養成にこたえられるわけですね。
  41. 砂子田忠孝

    説明員砂子田忠孝君) はい、そういう計画で目下施策を進めているところでございます。
  42. 宮澤弘

    宮澤弘君 海外の外国人に対する日本語教育、これは主として外務省が担当しておいでになるので、外務省の方に伺います。  海外では、今日本語を学んでいる人が百万人ぐらいいて、教師の数が七千二百人だそうでありますが、将来どのぐらいふえると推定をしておいでになるのか。また、それに必要な教師の数はどのぐらいで、それをどうやって充足するというお考えですか。
  43. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生御指摘の数が、海外での学習者約百万人、教師の数約七千二百人と申しますのは、昭和五十九年度に調査いたしました結果でございます。それが、将来十年後、六十九年度におきましては、海外での学習者数は約四百万人、必要な教師の数は約六万五千人というふうに推定されております。  外務省といたしましても、海外日本語教育につきましては、海外からの協力要請が急増しておりますので、国際交流基金を通じまして鋭意諸施策を実施しているところでございます。主なものといたしましては、日本語教育専門家の長期派遣、それから巡回指導チームの派遣等によりまして現地での日本語教育及び現地の日本語教育に対する指導及び協力を行いますとともに、現地の日本語教師を日本に招聘いたしまして養成、研修等行っております。その他、日本語教材の開発あるいは教材の供与あるいは日本語能力試験の実施等を行っております。さらに国際交流基金におきましては、これらの事業を拡充強化いたすために現在日本語国際センターを建設中でございます。
  44. 宮澤弘

    宮澤弘君 今六万五千人と言われたけれども、六万五千人の教師をつくり上げるということは大変なことだろうと思います。今国際交流基金で恐らく常時百人前後の日本語の教師を外国に派遣しておいでになるし、それから今部長のお答えで日本語国際センターですかができて、そこでも何か百四、五十人の宿泊研修施設ができる。だけれども、恐らくそうしたところでなかなか世界の要望には適合できないと思うんですね。それと同時に、教師の養成も必要ですけれども、教科書とか辞書とかいう教材の開発、整備が大変不十分だと私は思うんです。外国へ参りましても、どうも日本にそういうものを頼んでもなかなかくれないという話をたくさん聞くわけですね。本当は教師を養成して派遣をしたり、現地からの人を研修して何万何千充足できればいいけれども、それができないとなれば、何か今現に中国でもやっているそうですけれども、教材のうちで例えばビデオを開発して各国のテレビ局に配って放送をしてもらう通信教育、そういうシステムを推進する、ビデオの開発というようなこともぜひ必要だと思うんです。  それと同時に私は、日本語教育については今非常にたくさんの機関がかかわり合っているわけですね。外務省と国際交流基金、それから文部省文化庁、それから途上国から研修に来る人については国際協力事業団であるとか、それから通産省所管の海外技術者研修協会ですか、それからNHKも日本語を放送しているということで、関係機関が非常に多くてどうもばらばらだという印象を私は持っております。ですから、教師の養成とか教授法とか、それから教材の開発、整備ということについてもう少しやっぱり一体的に取り組んで、どこかのレポートによりますと日本語教育のネットワークという字が使ってありましたが、ネットワークをつくるということがぜひ必要だ、私はそう思います。  そこで、この問題について大臣に伺いたいんですが、外国人への日本語教育の問題は、単にそれを通じて日本語を知ってもらうとか、あるいは日本と外国との文化交流を盛んにする、そういう見地だけではなくして、今識者の間では、日本語が国際語になりつつある、そういう認識でこの問題に取り組む必要があるというふうに言われております。私もそのとおりだと思うんですね。  これは外務省からいただいた資料ですけれども、主要先進国と比較をしてみますと、よくマスコミなんかに出ておりますが、例えば英国のブリティッシュ・カウンシルは予算が百五十億円で四千百十人、ドイツのゲーテ・インスティテュートは百億円で二千二百人、フランスのアリアンス・フランセーズは四十億円で三百人。それに対して日本の国際交流基金は、これは外務省自身がお出しになったんだから間違いないと思いますが、十八億円で百三十二人。オーダーが違うんですね。私は教師の養成とか派遣とか、先ほど申しました教材の整備とかこういうことについては、外務大臣が国際交流基金を所管しておられますから、国際交流基金をさらに拡充していくということについてお考えがおありになろうと思います。それを伺いたいことが一つ。  それから、先ほど申しましたようにどうもシステムになっていない。ネットワークをつくることが必要だと言われておりますので、これは国務大臣あるいは文化人として閣議等の席で、ひとつ我が国としてもっとしっかりやっていかなければいかぬということを強く発言していただきたい。この二点を伺いたいと思います。いかがでございますか。
  45. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) この国会を通じまして非常に特色的なことを挙げますならば、与野党を通じまして外交の重要性を非常に力説していただいておるところでございます。そのためには、まず量も必要ではないか、さらに質が必要ではないか、こういうふうな御要請が各党からもほとんど出ておりまして、私たちも非常に力強く感ずる次第でございます。  特に日本語の問題は、国連の公用語としてひとつ日本語を用いるように努力せよと、こういうふうなお話もございます。まだアラビア語ほど日本語を用いておる人たちが多くないというような点もあるやに承りますが、しかし事実の問題として多くの国際人が日本語をひとつ勉強しよう、こういうふうに幼少のころから考え出したという大切な事態でございますから、いわゆるこういうときには私たちもそうした雰囲気と申しましょうか、そうした環境に恵まれておるということを認識しなくちゃならない、かように考えますので、今申されました交流基金等々を通じましての一層の努力は我々自体といたしましてもいたさなければならない、かように考えております。  したがいまして、日本予算編成はややもすればシーリングとか過去の実績等々の話ばかりでございますが、新しい時代には新しい時代の予算編成が必要であろう、かように考えておりますので、いずれまた六月、七月になりますと概算要求という事態も参ってまいりまするが、我々といたしましてはこの国会を通じての与野党の御要望というものが、やはり今私が申し上げましたような点に非常に力を注がれておるということを一つのよりどころといたしまして、仰せのとおり十分今後その面の努力を重ねていきたい、かように考えております。
  46. 宮澤弘

    宮澤弘君 日本語の問題はこれで終わります。  最後に、今問題となっております外国人労働者、特に単純労働者の問題について伺いたいと思いますが、法務省の方見えていると思います。  数日前、新聞を見ますと、法務省で出入国管理法でございますか、法律の改正について検討をされて、いわゆる技能労働者については在留資格を明確化していこう。しかし、いわゆる単純労働者については触れない。というのは現状のままということでやっていこう、それで法律の改正案を次の通常国会あたりに出そうという記事が出ておりましたが、それはそのとおりですか。
  47. 石垣泰司

    説明員(石垣泰司君) 今回、入管法すなわち出入国管理及び難民認定法の改定作業に着手することといたしました趣旨は、昭和二十六年の制定以来、五十六年に若干の見直しが行われただけとなってございます入管法の外国人の在留資格を中心とします関係規定を、外国人の入国数及び形態が当時とは大幅に異なりました今日の実情に照らしまして見直しまして、国際化という時代の要請にこたえ得るようにすることとしたものでございます。  単純労働者の問題につきましては、原則としてこれを受け入れられないという従来よりの政府の方針がございますので、これを踏まえつつ多様な角度から現在関係省庁と連絡を保ちつつ慎重な検討を行ってきておりまして、今回の改正の対象とはしてございませんが、今後の検討結果を経ましてから慎重に対応を考えたい所存でございます。
  48. 宮澤弘

    宮澤弘君 多様な角度から慎重に検討をしておいでになる。しかし、とにかく今のところは入れない、こういうことだと承りました。  それで、きょう新聞を見ますと、一昨日ですか、労働省でも研究会が何か労働大臣に答申をされて、雇用許可制というものを導入したい、技能職等は比較的緩めていくけれども、いわゆる単純労働者はこれは認めない、こういう方向だということが新聞に出ていました。きょうは労働省の方に来てもらっておりませんけれども……。  そこで、この問題については積極論、消極論があって、積極論の方は、人の自由化というものはもう時代の趨勢じゃないか。それから貧しい国から富める国に人が流入するということはこれは必然であって、さらにまた、今日本では労働力不足でそういう人材、人手が不足なんだというような積極論。消極論の方は、貧しい国を救済するならばそれはその国で雇用拡大を図ったらいいじゃないか、さらに国内の労働条件や失業問題を考えなきゃいけない、もっと言えば社会問題も発生する。両論が世の中にはあると思うんです。  今法務省なり労働省なりから承ると、どうもこの単純労働者というものは入れない、大体こういう方向でいこうというお考えのようですが、外務省でも研究会をつくってやっておいでになるようでありますけれども、これについて外務省はどういう検討をしておいでになって、どういう方向になりそうですか。
  49. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 先生御承知のとおり、この外国人労働者受け入れの問題は大変問題が多岐にわたっておりまして、同時にまた、対外的にも非常に大きな影響を及ぼしかねない問題であるということを私ども十分認識しながら最近省内でも広く検討、議論を重ねてきているところでございますが、同時に、これはもちろんのことながら国内関係官庁のお考えをも十分踏まえて対処する問題でございますので、関係の各省とも随時連絡をとりながら検討を進めているところでございます。また最近、各経済団体あるいは労働組合の方でもいろいろな御議論をしておられまして随時意見の表明がございますので、そういう点にも注意を払いながら引き続き多様な角度から慎重に検討を進めているという現状でございます。
  50. 宮澤弘

    宮澤弘君 三省ともまさに慎重に御検討になっておるというのはお答え同じですね。私は、それは慎重に御検討になるのもいいんですが、現にいろんなところで単純労務者の不法滞留者について人身事故が起こったり、人権問題が起こったり、あるいは外国人同士の傷害事件が起きているわけですね。そういうことからいいますと、私はやはりこの問題は早く方針をはっきりさせる必要があると思うんです。もし政府としてこれはもう単純労働者は入れないというならば、現在の違法状態について措置するとともに、今後そういうことが起こらないような措置をされなきゃいけないし、あるいは入れるということであればどういう条件で入れるかというきっかりした条件をおつくりにならなきゃいけない。  そこで、大臣に最後に御答弁をいただきたいんですけれども、三省とも各省と協議をしながら慎重に検討しておいでになるということですが、私は、やはり政府としてどちらにするのか。それで、した場合にどういう措置をするのかということを早くお決めにならなきゃいけないと思います。外務大臣も所管大臣のお一人でありますから、そういうことについてのお考えを承りたいと思います。
  51. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) テレビで見ていますと、東南アジアの不法就労者が入国管理者に追われている、逃げている、追いかける、そうして捕まえて、さながら囚人のごとく護送車に乗せる、そうした光景がしばしば放映されております。これ、もし事情を何もわからない方々が見たらどう思われるだろうということでございますから、やはり我が国の法に照らして不法入国者を取り締まるのは当然のことでございますが、アジアの中の日本という点から考えますと、やはり今おっしゃるようにいろんな問題がどんどんと出てくるわけですから、早急にきちっとした対応をすることが必要であると思います。  また、我が国の中小企業者の場合、同じようなフィルムで見てみますると、そこに働いておる人たちが、東南アジア系の方々で捕まえられていく。残った人たちはどう言うかというと、私たちの職場から労働力を奪うのか、こういうふうに言っております。確かに日本の労働条件は現在はよろしゅうございましょうから、したがいまして、余り好まない職場で働くことを好まない人が多いかもしれません。しかし、それに対しましては、安く使おうと思うからなんだという声もあるということを私たちも耳にいたしますと、やはりそうした両面から外務省としては気を使わなくちゃならない問題だとは思いますが、まず我が国の労働市場というものも大切でございますし、その労働市場からいろんな問題が出てくる法務省の考え方も大切でございましょうが、将来アジアの人たちが相当数がふえるという問題でございますから、今ですら先進国の二倍の出生率である、こういうふうに考えたりいたしますと、本当にこの対策は難しい問題で、情けを持って処すべきか、あるいは秋霜烈日のごとき気持ちを持って臨むべきか、この点も外務省といたしましてはやはりその場その場におきましていろいろ思いをいたすものでございます。  しかし、やはり法治国家でございまして、日本が今日まで育ってまいりました環境等を考えながらまず国内でのことを考えなくちゃならないということになれば、今黒河内部長が申しましたとおり、やはり各省と連絡を密にして歩調を合わすことも必要ですよということは申し上げておるわけでございますので、したがいまして、勢い労働市場等々のことを考えますと、私たちも労働省さらには法務省のことを頭に置きながらやはり対応していかなくちゃならぬというのが現在の外務省立場であります。  しかし、今冒頭に申し上げましたような光景を見て、そういう事情を知らない人が見たならば日本は何とひどい国じゃないかというような印象を与えかねません。だから、これらの労働者の方々の出入国に際しましてはより一層厳格にするとかいろんな方途があろうかと、かように考えておりますので、確かに御指摘の面は私たち外務省という立場からは悩む面もあるわけでございます。しかし、現在の対応としては慎重にならざるを得ませんけれども、慎重ならば慎重なるそれだけのはっきりした対応を示せということでございますので、単純労働者に関しましてはなお一層どうすればよいかという問題に関しまして外務省もひとつ研究をいたしたい、かように考えております。決してこれは前向きでないというわけではないので、その点だけは御理解賜りたいと思います。
  52. 宮澤弘

    宮澤弘君 終わりますけれども、私が申し上げましたのは、ひとつ政府として早く方針をお決めいただきたい、こういうことでございます。  終わります。
  53. 松前達郎

    松前達郎君 まず最初に、先週の二十四日に中国を修学旅行中の高知の高校生の皆さんが事故に遭われたわけでございます。死亡者も多数出たということでございますが、死亡された方には心から御冥福をお祈りいたしたいと思います。  そこで、同僚議員も今触れられたことでありますけれども、まだ事故そのものがすべて、負傷者その他の問題等が終わっていないといいますか、手当て等もまだ進行中でありますけれども、補償問題がもう既に出ているということなんです。新聞報道によりますと、この補償に関しては外交ルートで交渉をしていく、こういうふうなことが報道されているんですけれども、二十七日の報道によりますと、政務次官が補償問題について、国家間の問題ではない、学校と遺族と中国側の問題である、こういうふうなことをおっしゃっておられるんですね。ですから、これをそのままそっくり読んで理解をいたしますと、国として補償問題に関与しないというふうにもとれるんですね。これについて、今後外務省としてどういうふうにこの補償問題について取り組んでいこうとされているのか、まずそれをお聞きしたいと思います。
  54. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) こうしたケースにおきましては、やはり当事者同士と申しましょうか、中国側と日本側の被害者との間の話し合いというものが一つの原則でございまして、外務省は助力をする、力を与え助ける、そしてそういう交渉が円満に進行するように側面的に助力をする、これが従来の方式でございます。したがいまして、政務次官もそういう方式に従ってのお話をしたのではないかと考えております。しかし、中国の鉄道は国有でございますから当然中国政府が相手であり、またこちら側は、言うならば日本の一地方の修学旅行生であり、その両親も地方の方々でありということを考えますと、もしそれ学校側からやはり政府お願いしますよというふうな話が今後どのように展開していくかという問題もございますので、国と国とが頭からその問題に取っ組み合うというんじゃなくして、十二分な話し合いをしながら、我々といたしましても遺族の側の気持ちなりあるいはまたそうした要求なり、そうしたものが円満に相手国に伝わるよう、これに対しましてまず第一段階でお助けをするのが当然であろう、かように考えております。
  55. 松前達郎

    松前達郎君 中国側は遺族の補償問題に関して前向きに取り組んでいくという姿勢をどうも示しているというふうに報道されておりますし、やはり今おっしゃいましたように、事故を起こした交通機関というのは中国の国営の交通機関でもありますから、最終的にはやはり国と国とのルートである程度解決を求めていかなきゃならない問題が出てくると思うんで、その点は必ずそうなると思いますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。  それと、文部省がことしから高校生の海外修学旅行を公認する、まあ公認というのがどうもはっきりわからないんですけれども、いずれにしても海外旅行を文部省としては認知をしていこうということだと思います。また同時に、運輸省の方も海外旅行の倍増を目指すということでテンミリオン計画などを推進されているわけですね。今度の事故の背景にはこういう方針との関連がどうもありそうである、出てくる可能性がある、こういうふうにも思うわけですが、事故がない方がもちろんいいわけでありますが、万一こういうことが今後も起こるとしますと、こういったことに対する基本的な措置、態度といいますか、こういうものをある程度決めておかなきゃいけないんじゃないか、こういうふうに私は思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  56. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 昨夜も政務次官が帰国いたしまして直ちに電話で連絡をしてくれましたが、中国側の対応は非常に大変なやはり懇切丁寧、微に入り細にわたる対応がなされておる、だから遺族も非常に喜んでおられると、こういうことでございます。その際の中国側が遺族に言われました言葉の中に、この事件で日中友好平和という関係が損なわれることがあってはなりませんので、この点はひとつよろしくお願いしますというふうに中国側から言われたということは、私は大変大きなことではなかろうか、かように思っております。  したがいまして今後も、せっかく文部省が計画いたしております修学旅行、そうしたものがこうした事件によりまして阻害されないということが一番大切ではなかろうか。しかしながら、今御指摘ありましたような点に関しましては、これは国内問題としてやはり十二分に配慮すべきであろうけれども、広く海外を若い青年たちに見てもらう、生徒たちに見てもらうということは非常に結構なことではないか、かように存じております。
  57. 松前達郎

    松前達郎君 最近団体の旅行というのが非常にふえていまして、特に中国に団体で行くというのは多いんですね。中国の事情もいろいろあると思いますが、航空機の事故も大分多くなっているようでありますし、また同時に、団体が行きますと民間の、まあ中国の民間というのがあるかどうかわかりませんが、いわゆるルーチンの飛行機がとれないような場合は軍の飛行機が出るというふうな状況も私自身も体験いたしております。  ですから、いずれにしても、今おっしゃったように外交的にある程度うまく処理をしていただかないと、いわゆる両国の親善関係が損なわれる。これは確かに損なわれたら大変なことですから、そういう点で外務省もその辺を配慮しながら今後の対応をしていくということが必要なんだと思うんですね。その辺はひとつよろしくどうぞお願いをしたいということでございます。  さてそこで、六十三年度の外務省予算についてでありますけれども、先ほど御説明がございましたが、外務省の六十三年度の予算は総額四千四百十六億円余りということでございますね。六十二年度の予算に比較しますと四・一%増額されたということでございますが、これは国家そのものの概算要求基準というのが非常に厳しいという中である程度の増額が得られたということは、一歩前進じゃないかと私は思うんですけれども、その中で特に六十二年度に比べて減っている部分があるのではないかと思うんですね。  これは私直接細かく比較してはおりませんが、例えば一般行政費あるいは経済開発援助費ですとか、あるいはJICA出資費、こういうものがそう増額もされていない、あるいは一部は減っているところがあるというふうに見受けられるわけなんですが、こういったものがもしか増額されない、あるいは減っているものがあるとすれば、これらについての理由といいますか、これをひとつ簡単に御説明いただけませんでしょうか。
  58. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) ただいま松前委員指摘のとおり、一般行政費、経済開発援助費、JICA出資額については六十三年度の予算では減額しておるわけでございますが、六十二年度の当初予算と比較いたしますとこれは増加しておりまして、六十二年度の第一次補正予算におきまして、例えばただいまの一般行政費でございますと十億円、それから経済開発援助費、これは無償援助でございますけれども、それにつきましては百四十五億円それぞれ増額されております。したがいまして、第一次補正後と比較いたしますと確かに減額でございますけれども、六十二年度当初予算と比較いたしますと、それぞれ六億円、百三十一億円の増額ということになっております。また、JICAの出資額につきましては、これは既に開発投融資、移住投融資の自己資金が増加しておりましたので、その増加がございますので減額を見たということでございまして、運営上全く支障はないというふうに考えております。
  59. 松前達郎

    松前達郎君 外務省予算については毎年問題になるわけなんですが、我が国のこれからの外交の展開を考えていきますと、外交実施体制を格段に充実していくというのがやはり重要な課題じゃないか、こういうふうに思うんですね。  その内容としては、外交予算ですとかあるいはいわゆる定員ですね、これも昔はイタリア並みだとかいろいろ議論があったわけでありますが、これを拡充するということがやはりどうしても必要なんだろうと私は思うわけなんです。この拡充によって活動をし我が国の国際的地位が向上していく、それに伴う外交活動の展開、事業量も大幅にふえていってしかるべきだと思うわけなんです。ですから、現実には事業量というのは、仕事の量はどんどんふえているわけですね。それにもかかわらず予算定員というのが余りにも少ないものですから、今後ひとつこの予算獲得、これは大変なことだろうと思いますが努力をしていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。  例を挙げますと、ここ十年間に電信料、それからさらに経済協力に関する費用、あるいは条約締結の数、それからさらに海外渡航者数、こういったようなものについてどれほど伸びているのか、その数字をまず御説明いただきたい。それから同時に、これに対して予算定員伸びというのは一体どの程度になっているのか、これをひとつ御説明いただければと思います。
  60. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 昭和四十六年と昭和六十一年を比較いたしますと、電信料につきましては約十六・九倍、それから経済協力費につきましては約十一倍、それから海外渡航者数はこの間に五・七倍、条約締結数は約四・七倍ということでございます。  これに対しまして、御指摘外務省定員でございますけれども、昭和四十六年度は二千七百五十三人、昭和六十一年度は三千九百六十八人でございまして、約一・四倍でございます。それから予算につきましては、昭和四十六年度と昭和六十一年度の対比では約七・九倍に増加しておりますけれども、インフレ率などを加味して調整いたしますれば約三、四倍程度の増加というふうに考えられるわけでございます。
  61. 松前達郎

    松前達郎君 今ちょっと御質問したことは、いろいろな活動に関してその内容がどんどんふえているということなんですね。電信料が十六・九とおっしゃったわけですが、経済協力費十一倍、いろいろと相当大きな仕事の量がふえてきている。それに対して定員が一・四倍しかふえていない。定員がふえれば仕事ができるかどうか、これは別の話でしょうけれども、余りにも差があり過ぎるものですから、やはりこの辺が今後の大きな予算要求に対しての問題点になってくるんじゃないか、こう思っておるわけであります。  また同時に、外国の外交予算、これと我が国予算を比較してみても非常に我が国予算が低いんですね、少ない。これも比較すればすぐわかることでありますが、例えば我が国外交予算の対GNP比率、それから国民一人当たりの額、それから国民予算に占める外交予算の比率、これらを恐らく外国と比較してみてもはるかに少ないんじゃないかと思うんですが、この辺比較してみますとどういうふうになりますか。
  62. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 我が国外交予算、これには無償等経済協力あるいは技術協力が入っておりますけれども、対GNP比率は〇・一三%、これは国民一人当たりで申しますと三千五百四十六円ということでございます。  それから、これを国際比較にいたしますと、カナダにおきましては〇・五八%、一人当たり一万三千円強、西独は〇・五三%で一万二千円強、イギリスは〇・五五%で八千円強でございます。それからフランスは〇・三五%で七千円強、アメリカは〇・一八%で四千円強ということでございます。イタリアは〇・二五%で三千五百六十五円ということでございます。
  63. 松前達郎

    松前達郎君 外国が非常に予算をとって活動しているから、これは一つの例として今申し上げたんですが、特に西ドイツというのは全体を見ても相当外交予算というのはとっているんですね、外交を活発に展開しているんじゃないかと思うんですが。  国際国家日本という看板があるわけですから、その点は一挙には解決できないと思いますけれども、ひとつ今後この辺を強調していただいて、やはり軍備をふやすのもいいでしょうけれども——私の立場ではいいと言えませんが、それよりも外交という手段、これがやはり重要だと思うんですね。ですから、そういう方向でひとつ検討をさらに続けていただきたい、努力お願いいたしたい、こういうふうに思うわけでございます。  それからもう一つは人的資源の問題なんですが、これにつきましても現在の条件のもとでは定員が限られているわけですから、この定員を増すということが一つ外務省全体の力を向上させるといいますか、活動を向上させることにもなろうと思いますけれども、これは限られているとすれば、いわゆるノンキャリアとかそういう方々をさらに登用していくということもこれから重要であろうし、またある意味で言うと民間の活力をそこの辺に導入していくということも必要であろうと思うんですけれども、この辺一体どういうふうに、何かそういった面での御施策がおありかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  64. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 先生御指摘のように、外務省員の士気及び質の向上ということが大変に大事でございます。もちろん研修その他におきましてこれを達成していくわけでございますが、同時に、ただいま御指摘のように人材の登用ということ、これに心がけておるわけでございまして、一つは適材があれば民間あるいはほかの省庁などからも採用するということが一つでございます。  それから、特にただいま先生御指摘のように上級、ただいまは一種と申しておりますが、上級以外のところからも上級に登用していくという、いわゆる登用制度というものを昭和五十年度からこれを実行してきておりまして、この結果、昭和五十年度から六十二年度までの十二年間でございますけれども、上級登用が三十名、中級登用が九十名ということでございます。また、民間その他からも適材があれば、ただいま申しましたように適宜これを採用していくということでございます。
  65. 松前達郎

    松前達郎君 その辺ひとつ少ない人材といいますか、定員で最大限どういう効果を発揮したらいいのか、これをひとつまたさらに御検討いただいて御努力いただければと思うんです。  五十八年の四月に臨時行政調査会ですね、ここで外務公務員制度改革ということに関しまして答申を行っているわけですね。この答申の中には、外務省の人事制度の問題点が凝縮されていると言ってもいいんじゃないかと思うんです。この答申に関して外務省はどういう改革を今まで行ってこられたのか、それをお聞きしたいと思います。
  66. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) この答申は非常に重要な答申として受けとめておりまして、この答申のラインに沿いまして、ただいま御指摘のございましたような人材の登用、研修の強化等を行っておるわけでございまして、例えば人材の登用につきまして、先ほど御説明申し上げましたこと以外に、例えば部外からの採用実績というようなことも、民間それから他省庁からも随時それを採用をふやしておりますし、さらに大使あるいは総領事につきましても民間からの採用ということに心がけておる次第でございます。
  67. 松前達郎

    松前達郎君 最近になりまして、外務省の仕事といいますか、対応しなければならないいろいろな対象がどんどん大きくなって、量もふえますし、幅も広くなってくるという状態だと思うんですね。  日米間の各種の摩擦だけ取り上げても、これは全くプログラムに乗ったように次々と摩擦が絶えないわけであります。繊維から始まって鉄鋼、それからさらに自動車あるいは電気機器ですね。半導体、情報通信あるいは最近の農産品ですね。また漁業の問題もありましょうし、同時に建設問題も最近出てきている。恐らく金融も今そろそろやってくるはずですし、それから保険ももちろんそれに付随してくるだろう。さらに今度はソフトの分野で非常に多くの問題が今国際的に日米間で取り扱われるようになってきたわけですね。  そこでまた、後で御質問申し上げますが、科学技術の問題それから先ほどからお話が出ております外国人労働者の問題、こういったような数多い非常に幅の広い分野での摩擦が次々と出てきているわけですね。将来はもしかすると教育摩擦まで出てくるんじゃないか。そういう問題もどうもぼちぼち出始めているような感じがするわけなんです。ですから内容的に非常に幅の広い対応をしなきゃならない。特に、その対応をするときに各省庁との連絡、各省庁とのチームワークというのがこれもう非常に重要だと思うんですね。今申し上げたことだけ挙げても物すごい数の省庁との関連があるわけでありますから、仕事がどんどん複雑になり多様化している中で大変な仕事を外務省はしなきゃならない、そういう現状だろうと私は思います。  皆さんの御苦労は大変なことだろうと推察はいたしますが、やはりこれに対応できるような内容が年々整備されていきませんと、追われてしまって十分の検討ができないような状況になってくるんじゃないかと思います。これは政府全体として考えていかなきゃならないことだと思うんで、外務省の皆さんの方ではそれに対応すべく予算の獲得にいろいろ御苦労されておると思いますけれども、この点はいわゆる予算獲得合戦ではなくて、そういった基本的な問題をひとつ大臣から提起をしていただいて、日本予算全体の構成の中に占める外務省役割というものも皆さんに認めてもらいながらその点をひとつ強力に進めていただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
  68. 藤井宏昭

    政府委員(藤井宏昭君) 大臣がお答えになります前に事実関係をちょっと御説明させていただきたいと思います。  ただいま先生御指摘のとおりでございまして、片や専門家の養成、これは例えば語学につきましてもウルドゥー語、フィンランド語等々世界各国の言葉をますます日本外交官は使えるようになっていかなきゃいけないということで、そういう面もございますし、他方、今度は分野別にいきまして、ただいま先生御指摘のように極めて広範な分野についてある程度の素養を持つ必要があるということ、この両方の要請が出てきておりまして、これに対応する一つの方法は各省庁のアタッシェを増員するということでございまして、現在昭和六十年度末の定員といたしましては四百五名のアタッシェがおるわけでございますが、これも場所によりましてはかなりアタッシェの比率がもう館員の五七%になっている、あるいは四〇%以上というのがかなりございます。  そういう意味でいろいろな限界と申しますか、ということもございますし、外務省といたしましてもいろいろな専門家を養成していく、その専門家の中には語学の専門家はもちろんでございますし、同時にいろいろな特殊な案件といいますか、一種ごとの専門家、分野ごとの専門家という者も養成していきたいというふうに考えております。この辺につきまして、まさに先生御指摘のとおりの状況でございますけれども、これに対して真剣に取り組んでおるところでございます。
  69. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 非常に外務省にとりましてありがたい御発言でございまして、この国会を通じ本当にそういう御発言を与野党ともどもにしていただいておりますことは、いかに外務省の今日の立場なりその責務が大きいかということに対する皆さん方の御激励の声として私たちは尊重し、その実現に努力をしなくちゃならないと考えております。  私ももう既に五カ月たちますが、ある大臣と会えば財政問題、ある大臣と会えば農林問題、ある大臣と会えば工業製品問題というふうに、日本の縦割りの行政からいたしますと大蔵省の分野、農水省の分野、通産省の分野あるいは労働省の分野と、もうどんどんと外務省ではそうした外務大臣同士がそういう専門的なお話をしなければならないという時代を迎えているような次第でございまして、今度特にウルグアイ・ラウンド等におきましてはもう今まで考えられなかったガットの新しい分野が展開されたわけでございます。  昔は貿易と言えば物。しかしながら物の移動だけを監視しておっても仕方がない、その物に関するサービスはいかがなものであろうか、その物についての知的所有権はどうなんであろうか、こういうふうにどんどんと今ガット自体の分野も広がりつつあるということでございますから、当然その分野一つ考えてみましても外務省の守備範囲は非常に大きくなるということでございますので、数も必要でございますが質も高めなくちゃならない。そういうことにおきまして我々といたしましては、ましてや世界に貢献する日本と言うたからにはそれにふさわしい体制をつくるように本当に最大限の努力をいたしたいと思っておるような次第でございます。今後、ますます御指導、御鞭撻のほどをお願い申し上げる次第であります。
  70. 松前達郎

    松前達郎君 経済協力についてお伺いをいたしたいんです。  政府開発援助ODAに関して先ほどの御説明の中でも出てきておるわけですが、質と量の問題があるんですね。とりわけこの中で質の問題、これについてはいろいろと議論もあるわけであります。ただ物だけ援助すればいいということじゃなくて、その内容についても十分相手国と検討をした上で要望に応じられるようなものにしていくということですね。こういったようなものも含めて質の問題というのは重要であろうと私は思うんですが、この点何か新しくODAの内容を見直して、先ほどもお話しありましたように、今後ソフトの分野も含めて質の方を重点的に改良をしていくとか、そういうふうなことをお考えになっておられるかどうか、その点をひとつお伺いしたい。
  71. 英正道

    政府委員英正道君) ODAの質という点になりますといろいろな問題点がございます。借款と贈与の比率をどうするかという問題、贈与比率の問題、さらには借款の条件をどうするかという問題、さらには借款、贈与等を供与する対象をどういうものを選ぶべきか、ソフトの問題、技術協力等の連携等々非常に多くの問題がございます。私どもは、関係省庁とも密接な協議をとりながら、こういう問題につきましてはできる限り運用面での改善をするということでやってきております。  この一両年で非常に大きな変化が出ておりますのは、先ほども宮澤委員の御質問にお答えした点でございますけれども、途上国のニーズというものに対応して、できる限り親切に日本の資金と技術を提供するというふうに持っていく。もちろん従来もそういうことであったわけでございますが、いわば先方からの要請を受けた形で対応していたということで、この点につきましては相手の国の経済全体の分析、その中で日本援助の能力等を考えてどういう分野をやったらいいかというような分析はともすれば二次的になりがちであったわけでございますが、これからはやはり途上国の経済全体の分析というようなことも主体的に政府が行う。その中で先方政府とよく話をしながら、最終的には先方からの要請に基づくわけでございます。要請のないものを押しつけるわけにはまいりませんけれども、そういう形で質の向上をしていこう、そういう大きな基本的な方向を打ち出し、現在限られた人員の中で、できる限りそういう方向で効果的、効率的でかつ適正な援助を行うということの努力を行っているところでございます。
  72. 松前達郎

    松前達郎君 その質の問題の中に、これは私前前から申し上げてきたつもりですが、いわゆる開発途上国が経済的発展をするという基本には産業の問題があるんだと思うんですね。とりわけ工業的な製品をつくっていく、その中で彼らの経済がよくなっていくとか、それでだんだんとレベルが上がっていく。恐らく先進国というのは、今まで見てみますと大体工業国が先進国ですね。幾ら資源があったって、それを売ってそれだけで生きていく国、食っている国というのはたしか先進国じゃない。いわゆる内容的にそれを開発する能力と付加価値をつける能力がなければいけないわけですね。そういうふうに考えてみますと、やはり工業がある程度経済の基盤として果たしている役割というのは非常に大きいんじゃないか。そういうふうに考えていきますと、ODAの内容もいわゆる技術者養成とかそういった面に大きな役割を演じていいんじゃないかと思うんです。  そのためには、いわゆる技術的な労働者といいますか、修理するとかそういうふうなものだけじゃなくて、もっと基本的なその国の技術レベルを上げるための努力というもの、それにお手伝いするということがどうしても必要だろうと思うんです。そうしますと、いわゆる技術教育機関を含めた教育機関というものが重要になってくるんじゃないか。ですから、そういった面にも相当なウエートを置いてODA役割を果たしていくということがやはり今後重要だろうと私は思うんです。  道路をつくったりいろんなことにお金を出す、これも結構でしょうけれども、しかし道路は何年かたつと壊れてなくなっちゃうわけで、やはりそれよりももっと基本的な問題として考えODAの内容を検討していく必要があるんじゃないか。これは前から私申し上げてきたわけなんですが、質の一つとしてこれが大きな問題だろうと私思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  73. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 御指摘のとおり、やはりODA援助の中の最大の援助であるというのが国際的な通念でございますから、なかんずくやはり無償に力点を置くべきであろうけれども、今おっしゃったような技術協力、そうした面におけるところのODAの果たす役目は、私はこれはもっともっと大きくしなければならないと、かように考えておるものでございます。  今日まで青年海外協力隊等のそうした方々も累積大体七千人行っていただきましたが、それはそれなりのいろんな効果を上げていただいて、そして善隣友好の実を上げていただいておるという効果がございますし、先ほど宮澤委員から御質問ございました外国人労働者の問題に関しましても、第一義的にはそうした国々に対しまして我々が援助をすることにおいてその国が工業化あるいは産業を高度化される、そして雇用の増進を図られるということも一つの大きな目的でなくちゃならない、こういうふうに考えておりますので、今御指摘の点は今後尊重してやっていきたいと思います。
  74. 松前達郎

    松前達郎君 それからもう一つ質の問題なんですが、グラントエレメントですね、GE。これの比率、このパーセンテージというのがどうも我が国は低いと言われているんですね。私、外交青書というこの本をちょっと拝見をしてみましたら、後ろの方に実績の一覧表が出ているんですが、グラントエレメントのところを見ますと、この中に日本が一九八五年の実績では七三・六%という数字が出ているんですね。それでその一番最後の方に、これはDACの諸国中十八位であるということが出ているんですが、DAC諸国というのは何カ国あるんですか。
  75. 英正道

    政府委員英正道君) 十八カ国でございます。
  76. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと日本は一番びりであるということで、明らかにこの表で出てくるんですね。これはやはり問題だと思うんです。諸外国は割と高い比率で出しているわけなんで、やはりこのGEというものをどういうふうに今後改善していくかという問題ですね、これをひとつお考えにならないと、全体としての金額というか顔は確かに多いかもしれませんが、その中のグラントエレメントの比率が非常に低いということですね。これをやはり先進国となった以上お考えいただかなきゃならないんじゃないか。それと同時に、もう一つは先ほどのようにノンプロジェクトといいますか、相手国の要望というものも十分踏まえた上での援助というものが必要である、これも当然の話であります。これいかがでしょうか、ちょっと私初めてこれを見て十八位というので驚いたんですけれども、何か御感想ございますか。
  77. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ODAに関しましては二つ弱点ありと、総額においては世界一だというけれども、しかしながら対GNPにおいては十四番目、なおかつ無償に関しては今おっしゃったように十八番目というふうなことがよく指摘されます。これはもう諸外国も、日本はありがたいけれども、もうちょっと頑張ってくれやと、こういうふうに言われますし、またそういう数字に関する限りにおいては確かにそうであろうと思いますから、一挙にはなかなか難しい問題ではございましょうけれども、ひとつそうしたことに対しましてもやはりナンバーが上がるように頑張っていかなくちゃならないと考えております。
  78. 松前達郎

    松前達郎君 そうですね、それ頭張っていただかないと、どうも日本は抜け目がないと、商業ベースが非常に強過ぎるとかそういうふうに言われがちですから、その点はひとつ今後改善をしていただければと思います。  さて、次は在日大使館の問題なんですが、これもまた最近非常に話題になっている問題でございます。在日外国大使館の東京脱出問題ということなんです。  最近、発展途上国の大使館が東京から脱出しているところが非常に多いというふうに伺っているんです。脱出という言葉はちょっと不適当かもしれませんが、東京の場合、非常に地価も高い、それから家賃も高い、生活費も高い、いろいろな理由、さらに円高の問題もありますね。こういうことから非常に維持運営が大変であると。これは確かにそのとおりだと思うんです。  そういうふうになってきますと、当然東京から離れて外国に行ってしまう。例えば北京あたりに移転して、そこで日本も含めて対象とするというそういうふうなことまで行われてくるんじゃないかと。それで発展途上国への経済援助、これは先ほどのお話のように大幅に増加しようとしておられる。これは結構なんですが、肝心の東京、おひざ元ですね、ここで大使館の維持が困難になってくる。特に発展途上国ですね、お金持ちの国は別といたしまして。こういうことが問題になりつつあるということなんで、この辺何らかの手を打てないものかどうか。この問題は国際問題となっていると言ってもいいんじゃないかというふうに思うんです。  中国はかつて、第三世界の友人である、こういうふうになりたいということから発展途上国の大使館を特別の条件で積極的に誘致するという政策をとっていたと聞いているんです。我が国では国交回復が遅かった途上国ほど、後から来ている国ほど大使館立地というのは非常に不利な条件になっているんじゃないか。ですからその辺を何とかしてくれというので、三十一カ国ぐらいまとまって外務大臣に直訴があったんじゃないかと思うんですが、この点やはり急いで何らかの対策を講じませんとならないと私は思うんですが、その点何か対策をお立てになっておられるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  79. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在進行形の問題でございますが、その点ある程度話している問題は官房長から話すことにいたします。  確かに昨年、そうした国々から要請を受けました。直ちに私は外務省内にプロジェクトチームと申すとおかしゅうございますが、とにかく大使館のことですから一番地価の高い都心部、この都心部に大使館がないことにはやはり間に合わないという一つの問題がございます。そんなことで、都心部において果たして御要望に沿えるような地があるのか、あるいは方法があるのか、そうした意味をひとつ検討せよというふうに命じました。もちろん政府自体は、御承知のとおりに大使館に対していろいろと御便宜を図るということが政府の役目でございまして、政府がこの土地を買いまして差し上げましょうという問題ではない。そういうところに困難はございますけれども、一応我々としてはそのままほうっておく状態ではないということだけは申し上げてよいのじゃなかろうか、努力をしておる状態であると、かように申し上げてよいのじゃなかろうかと思います。
  80. 松前達郎

    松前達郎君 努力をする、ほっておけない、これはわかるんです。  民間では、銀行系列の不動産会社のビルなどを中南米の十数カ国の大使館に安く提供しているという話も聞いているんです。こういうことで考えますと、民間の方がどうも対応が早い、こう言ってもいいんじゃないかと思うんですが、ODA予算では、日本国内の大使館建設費用をこれらについては使用できないというふうになっていると思うんです。政府として、我が国が国際的な孤立を避ける、大げさに言えばそういうことになりますが、避けるために柔軟にこれに対応していかないとならないんじゃないか、こういうふうに思うんです。  急いで対応をしなければいけないということはわかるんですけれども、何かそこにちょっと発想の転換をして、新しい計画が持たれるということがないのかどうか、それがもしかあるとすればいつごろをめどにやりたいと考えておられるのか、それを午前中の終わりにお聞きしたいと思います。
  81. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 現在百六カ国の駐日大使館がございます。そのうちやはり三十カ国前後が今申されましたような状態にございます。だから、そうした数からいきましても非常に難しい問題がございますが、具体的に今こういう方法ならばどうかということで一、二もう既に折衝に入っております。在外公館とは折衝に入っておりませんが、いわゆる民間なりそうしたところと折衝に入りつつ成果を上げたい。何分にも現在の家賃と、では今度入ってもらったらどれぐらいがよいかということも大体計算をしました。ここら辺ならいいんじゃないかなと。そのためには民間にどういう苦労を払ってもらわなくちゃならないかという問題もございます。そうしたことで、実は具体的に一、二入っておるのがございますが、これはなかなか三十何カ国になると順番もございましょうし、難しい面もございます。はっきり申し上げまして、うちの方はひとつビルを建てますから日本政府に要求してくださいというような調子で、あべこべに在外公館へ行ってそして指名をもらってビルを建てて、さあ政府が払いなさいと、そのルールがわからずにやっておられる方々も、善意だろうと思いますが、中にはそういう方々もいらっしゃいますから、やはりそういう日本市場の面も整理をしながらやっているということは事実でございますけれども、要は都心部にいて、そして敷金もあるいは家賃も今よりは安い、うんと安いというぐらいの気持ちを出さないことには話にならないというのが大体のプロジェクトチームの研究結果でございます。それに沿いまして今具体化を急いでおるというのが現状でございます。
  82. 松前達郎

    松前達郎君 いろいろ便乗組が出てくると思いますけれども、もしかそういうことで賃貸の対象として大使館に貸した場合、例えば税制面で優遇するとか、そういったような面もひとつお考えをいただきたい。これは要望いたしておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 当然そういう面も考え、税制面の優遇あるいは金融、いろんな面で考えていかなければそうした体制はとれないだろう、それを民間が直接契約者としてやっていただく、日本としてはそれを側面からそのようにいろいろと便宜を図っていく。そういうことでございます。
  84. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  85. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  86. 松前達郎

    松前達郎君 午前中に引き続いて質問さしていただきたいと思います。  午前中にも外国人労働者の問題の質問があったわけでありますが、最近とりわけこういった外国人労働者の受け入れについての問題がクローズアップされつつあるわけです。先ほどちょっと申し上げましたように、どうやら貿易問題とか資本問題とかいろんな摩擦、これはアメリカとの問題が非常に多いわけですが、外国人労働者の問題は大きな対象としてはいわゆる開発途上国ということになるのじゃないか、こういうふうに思います。  先ほどのお話ですと、原則禁止ということを、現時点ではそのままずっと堅持していくというお話だったわけでありますが、今後基本的に緩和の方向をとっていくのかどうか。これは外務省が決める、最終的に全責任を負うという問題じゃないかもしれませんが、外務大臣としてこれについてはどういうふうな方向で対応していきたいと考えておられるのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  87. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 先ほど宮澤委員のときにもお答えいたしましたが、現在外務省といたしましては法務省並びに労働省と緊密な連絡をとり協議をいたしておりますが、単純労働者に対しましては極めて慎重であるというのが外務省の姿勢でございます。  我が国の現在の失業率は世界まれに見る低いものでございますが、ついこの間までは三%を数えたというようなこともございますから、決してすべてがすべて安定しているものではないということを考えますと、やはり国民のためには常に安定した労働市場というものが提供されなければならない。かく考えました場合に、技術者等々は別といたしましても、やはり単純労働者に対しましては、いろいろ勉強はしなくちゃならないでございましょうが、慎重であるべきだと私たち考えております。  したがいまして、どういうふうにするんだということに関しましては、先ほども御指摘がありましたが、政府といたしましても、ひとつ労働省はこう考える、法務省はこう考える、政府全体としてはこう考えるという問題が早急にやはり結論づけられていいのではないだろうかと、私個人といたしましては考えております。
  88. 松前達郎

    松前達郎君 今後検討が続けられていくと思うんですね、単純労働者以外については。  最近の状況なんですが、不法就労外国人の状況、これが非常に目立ってきているんじゃないかと思うんです。とりわけビザが必要なフィリピンなどでは、現地の大使館のチェックというのは非常に手間がかかる、大変であろうと思うんですけれども、チェックしている割には不法就労外国人がふえているんですね。また、ビザが免除されている国、例えばパキスタン、それからバングラデシュからの不法就労もふえている、こういうふうなことが言われているわけなんですが、ビザ免除の国の人たちに不法就労が非常に多いという点につきまして、外務省として何か効果的な対策をお持ちでしょうか。
  89. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) ただいま先生御指摘のとおり、不法就労者として国内で摘発された者の大宗はフィリピン人でございます。フィリピンにおきましては、今先生御指摘のとおり、査証担当官が査証発給の際に従来より厳重にそれぞれ面接しながら、本当に観光目的のための渡航であるかどうかというところを非常に慎重に審査の上出しているわけでございます。そういった意味で、従来に比して査証の拒否率も高まっている状況でございます。ただ、絶対的に日本に来たいというフィリピン人の数が激増しておりますので、数において必ずしも減っていないという実情があることを御理解いただきたいと存じます。  他方、パキスタン、バングラデシュにつきましては、二国間、日本とそれぞれの国との合意によりまして査証免除取り決めが行われているわけでございまして、私どももそれらの国からの不法就労者がふえているという実態は念頭に十分置きながら、今後どのような対策が必要か鋭意検討しているところでございます。
  90. 松前達郎

    松前達郎君 一方、ILOの八十六号の勧告、これは移民労働者に関する勧告なんですが、これによりますと、原則的には移民労働者の移動の自由についての勧告をこの中に盛り込んであると思うんです。「労働力の過剰な国からその不足している国への労働力の移動を促進することは加盟国の一般政策でなければならない。」、これは一般的なことでこういう結論が出ているんだと思いますが、こういうことを言っているわけですね。  これにつきましては、我が国では現在問題となっている外国人労働者の受け入れ、これとの関係が出てくるんじゃないかと思うんですが、政府としてこの勧告に対してどういうふうに認識をされ、また今後どう対応されようとしているのか、また態度等ですね、これについて御説明いただきたいんです。
  91. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) ただいま御指摘のILO第八十六号勧告でございますが、これは我が国がILOに一九五一年に再加盟したわけでございますが、その再加盟する前の一九四九年に採択されたものでございます。この勧告は、第二次大戦後の避難民の流出をも背景として、今御指摘のように、労働力の過剰な国からその不足している国への労働力の移動の促進が加盟国の一般政策でなければならないということを言いながら、移民を容易にするための募集や職業紹介等に関する加盟国の施策等について規定したものと承知いたしております。  その後、一九七五年にまた同様の目的によります条約、勧告も採択されているわけでございますが、私どもといたしましては、外国人労働者受け入れの国内的検討を進めるに当たりましては、このような国際的なガイドラインを十分留意すべきものと考えております。
  92. 松前達郎

    松前達郎君 それでは次に、外国人の留学生受け入れに関する問題ですが、これもちょっと宮澤先生のと重複するところがあるかもしれませんけれども、現在外国からの留学生、これは国費と私費とに分かれるわけですけれども、国費が三千四百五十八人、私費が一万八千六百九十六人というデータ、六十二年ですが、トータルで二万二千百五十四人というデータがあるわけですね。その留学生の全体の七六・五%が下宿、アパートに住んでいる。受け入れの寮の施設とかそういう施設が非常に少ないということによるものと思います。  先ほどの大使館の場合、外国の大使館が東京を逃げ出すということと同じような内容なんですが、数年間円高が加速されて円高が定着したという格好になりまして、留学生の生活そのものも苦しくなってくる。もちろん授業料等も含めて苦しくなってくる。多少これについては文部省の方で対策が三月にあったと思うんですね。今後十万人という話が出ているんですが、その十万人の受け入れの内訳が、やはり国費が一万人で私費が九万人ということで受け入れようということなんですが、国費の割合を増すか、あるいは私費留学生の援助充実というものがこの裏にないと、なかなかこの十万人というものの受け入れというのは大変なことじゃないか、こういうふうに思っておるわけなんです。  各省別のODA予算を見ますと、六十三年度では文部省については前年度比の三三・一%増、百七十二億円余りが計上されているわけなんですけれども、従来は国費留学生中心の政策だったんですが、私費留学生対策も今後充実していくということだろうと思います。その内容を具体的に御承知であればひとつ説明をしていただければと思うんですが、いかがでしょうか。
  93. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生御指摘のとおり、留学生の交流は我が国と諸外国との関係相互理解の増進のために大変重要でございますので、外務省といたしましても、国費留学生のみならず私費留学生に対しましても、来日前の留学情報の提供や留学相談あるいは日本語教育等、それから帰国後のアフターケア等実施いたしております。先生もおっしゃいましたとおり、国内の受け入れ体制につきましては、第一義的には文部省の担当でございますが、外務省といたしましても大きな関心を有しておりまして、私費留学生受け入れの整備充実のため文部省及び関係機関と緊密な協議、協力を進めております。かつ、民間企業あるいは民間団体との連携にも努めてまいる所存でございます。  予算につきましては、外務省関係予算について申しますと、留学生募集選考経費、これは国費でございますが、あるいは私費と国費と含めまして留学生交流事業普及経費あるいはアフターケア対策費、それから東南アジア日本留学者会議という事業を行っておりますが、それの関係、それから留学生名簿作成等現地での援助費等々含めまして五千四百八十四万三千円という経費を六十三年度予算には計上いたしております。
  94. 松前達郎

    松前達郎君 留学生、実は私も関係しておるわけで、ある機関でいろいろ取り扱ってはいるんですけど、なかなか大変だということはこれは前から言われているんですね。ですから、これもせっかく日本に留学する以上悪い印象を持って帰るということだと逆効果になってしまうんです。  実はどうしてそんなことを言うかといいますと、いろいろ留学して帰った連中に聞きますと、非常に逆効果になっている面が多いんですね。日本に留学してよかったという人が必ずしも一〇〇%じゃない。一〇〇%どころじゃない、四割ぐらいは余りいい感じを持っていないという返事も場合によっては出てくるんで、まあこのいい感じというのはどういう内容かというと、日本滞在中にいろいろあったんだと思います。しかし、全体的な面として今みたいな問題が留学生に対して非常に圧迫されるような状況になってくると、全体が悪い感じを持たれてしまうので、これも一つ今後の大きな課題じゃないか、こう思いますので、外務省、文部省、お互いにひとつ御連絡いただいて何らかの方策をとっていただくようによろしくお願いいたしたいと思うんです。  それからさらに、二月の末に政府が発展途上国の留学生派遣費用を留学生の派遣先を問わないで円借款供与の対象に加える、こういう方針を固めたというふうに伺っておるわけなんですが、これはそういうふうにされるわけですか。もしかされるとしますと、具体的にそれがどう進展しているのかお答えいただきたいと思うんですが。
  95. 田島高志

    説明員(田島高志君) 留学生関係に円借款を活用してはいかがかという点についての御質問でございますが、現在諸外国の中からそのような要請は具体的には出てきておらないというふうに承知いたしておりますので、特にその点の検討は具体的には行っておりません。
  96. 松前達郎

    松前達郎君 では、まだそういう方針が固まったとかそういうことではないという、それは外務省もそういう情報は入っておりませんですね。
  97. 田島高志

    説明員(田島高志君) そのとおりでございます。
  98. 松前達郎

    松前達郎君 それから、先ほどから出ております日本語教育の問題、これも大変な計画なんですね。恐らく日本語の教師を養成してそして実施するというのはそう簡単なことじゃないと思うんですけれども、日本語教育といいますと、国内に現在来ている外国人も日本語を習いたいという人はたくさんいるんだと思うんですね。相当たくさんの外国人が日本に滞在しているはずなんです。私もよく調べたわけではないんですが、例えばNHKあたりでフランス語とかロシア語、ドイツ語、英語、中国語というのは、時間があって定期の番組でもってやっているんですが、日本語の番組はありますかね、これをちょっとお伺いしたいんです。日本語教育に関するテレビの番組ですが、定期的な番組。
  99. 田島高志

    説明員(田島高志君) 日本の国内で外国人向けに日本語の講座を行っている番組があるかという御質問かと存じますが、私特に承知いたしておりません。現状を正確に把握いたしておりません。
  100. 松前達郎

    松前達郎君 私もよくわからないんですが、毎日テレビを見ているわけじゃないものですから。多分定期的にちゃんとした番組がないんじゃないかと私思うんですが、もしか情報があったら教えていただきたいんです。もしかないとすれば何でだろうかと僕は思うんですね。やはりそういった放送機関というのは、公共的な機関を通じてでも国内にいる外国人に対する日本語の教育が、もしかないとすれば私必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  101. 田島高志

    説明員(田島高志君) 現在はそのような番組は恐らくないというふうに承知いたしておりますので、先生おっしゃるとおり御趣旨を踏まえまして関係機関あるいは関係者等とその問題については検討してまいりたいというふうに存じます。
  102. 松前達郎

    松前達郎君 ぜひそれを、時間を取るのが大変かもしれませんが、何かのチャンスにサゼスチョンをしておいていただければと。まあNHKに直接私の方から申してもいいんですけれども、そういうことで日本語教育、外国にいる人ばかりじゃなくて、日本に来ている外国人についてもやはり日本語教育をやるべきであると前から私気がついておりましたので今申し上げたわけなんです。  それでは次に、INFの全廃条約の締結後の問題につきましてお伺いいたしたいんですが、皆さん既にこれについてはもう十分締結された後の問題についてもいろいろと議論をされておりますので、ここでとりわけ特別に申し上げる必要もないかもしれませんが、ただしちょっと全体の平和に関する問題がこのINF全廃によって多少方向が変わってくる可能性もあるということでお伺いいたしたいわけなんです。  この全廃条約に引き続いて戦略核兵器の五〇%削減という問題が最近俎上に上がってきているわけなんです。これも近々米ソ会談がありますね、トップの会談がございますが、その中で恐らくこの話題が出てくると私は思っておるわけなんですが、この五〇%削減というものに対する我が国としての見方ですね、それからこれに対するコメントというのはございましょうか。
  103. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 第一次のINFのグローバルゼロ、これはもう私国会で何度も申し上げておりますが、核軍縮の第一歩として評価し歓迎するということでございます。したがいまして、これですべて世の中はデタントだというわけにはまいりませんというのが政府立場でございます。そうした中で、まあ戦略核の五〇%削減、これまた喜ぶべきことである、かように考えております。  直接私はアメリカへ参りましたときにその苦労話の一端を聞きましたが、やはりゴルバチョフの時代になって初めてこれが実現し得た、したがいまして、ゴルバチョフ書記長以前にも随分と折衝したんだが非常に難しい問題であったと、こういうふうにアメリカ側は言っておりましたので、やはり日本を初めとする西側陣営の結束というものがこうしたときにはそうした核軍縮の第一歩というものの成果を上げた、かように考えますと、当然戦略核の五〇%削減に関しましても、あるいはそのほかの二国間とか地域紛争とかいっぱいございますが、そういう問題に関しましてもやはりアメリカを大いに支援しなければならない、かように私たち考えております。  ただ、専門的な方々のお話を承わると、五〇%というのは非常にすばらしい数字ではあるけれども、ICBMにいたしましてもSLBMにいたしましても、さらには重爆撃機にいたしましても、これなんかはソビエトが非常に関心を抱き、またアメリカも抱いておる問題でございますが、移動 ということが可能でございますから、ミサイル一つについてこれは存続ですか廃棄ですかというのはなかなか難しくて、廃棄ですと決まってもどこかにまた動いたらどうだろうかというようないろんな疑問が出ておりますが、そういうような疑問をひとつ克服してでもやろうという両国努力に対しましては、私たちはやはりその努力が実るように成功を祈りたいものである、かように考えております。
  104. 松前達郎

    松前達郎君 おっしゃるように、INFの全廃条約は、とりわけ西ヨーロッパに関しては軍事的合理性の面からいきますと疑問が持たれているところがあることは事実だと思うんですね。西ヨーロッパ、西欧では通常兵力をそのかわりに代替しなきゃいけない、その問題が新たにまた大きくクローズアップしてきたということになるのではないか。  我が国にとりましては、これは西ヨーロッパとちょっと状況が違いますね。周りが海ですし、その辺ちょっと違っていると思うんですが、潜在的脅威だと今まで言っていたSS20が撤去されるということになれば、当然これに関して防衛政策とかあるいは軍備管理の政策というものをもう一遍ちょっとその辺考えてみなきゃいけない、見直してみなきゃいけない面も出てくると思うんですね。見直してもとと同じだというふうになるかもしれませんし、あるいは本気になってこれは多少見直した結果少し変更しなきゃならぬ面もあるだろう、こういうふうになる。どっちか、これから恐らくそういう状況が出てくると思うんですけれども、アメリカの国防次官補がことしに入ってから国防大学で演説をしているんですね。これはアミテージ米国防次官補の演説なんですが、これが報道されていたんですね。  これは私初めて聞くんですけれども、アメリカの議会筋で、日本に防衛力についてはGNP三%を要求しろなんて声があるんだというふうに報道には出ていたんですが、これに対してのアミテージ米国防次官補の考え方というのが出ているんですね。それによりますと、「日本の駆逐艦保有数は、西太平洋とインド洋全域を守備する米第七艦隊の二倍以上の五十隻を超えている」、現時点で。それから「第七艦隊の対潜しょう戒機は二十三機だが、日本は百機を備えようとしている」。航空自衛隊の場合ですと、「F4ファントム百機のほか、九〇年までにF15約二百機」、合計三百機体制になるということですが、「これは米本土を防衛する戦術戦闘機の数に」匹敵するものである、こういう指摘をしているんですね。そして、今後もしか日本に三%なんということを押しつけて、そういう軍事費になってきた場合には、これはもう既にいわゆる今までの防衛というものじゃなくて、アジア全域に対して脅威となるであろうし、あるいは核武装しろと言うのかとか、そういうつもりで三%を言っているのかと、こういう反論をアミテージ国防次官補がしている。  私はどうも最近のいろんな状況を見まして、シーレーン防衛とかいろいろありますけれども、日本の現在のいろいろな国内情勢、経済発展の裏づけとしてどういうことがあったか、いろんなことを考えますと、やはり防衛力というものについてはもう限度が来ているような気がするんですね。これ以上やったら切りがない。だから、どの辺でやはりとめるべきか。一%というのがそれであったのかどうか知りませんが、一%という一つの歯どめがあったんですが、それが今歯どめを超えつつある。ですから、そういう意味と、先ほど申し上げたようないわゆる戦術核、戦略核、これの撤廃の動きと削減の動き、さらにその他いわゆるソ連の軍事的政策といいますか、拡大主義じゃないとかということを最近言っておりますが、そういうことを全部踏まえてやはりこの辺で見直していくということがどうしても必要だろうと私は思っているんですが、その点外務大臣いかがでしょうか。
  105. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) いろいろお話がございましたが、まず私たちINFのグローバルゼロ以後も要注意で、決してわきの下を固めることを忘れちゃいけない、こういうふうに言っておるゆえんは、はっきり申し上げまして太平洋におけるソ連の軍事力というものは、バックファイアを中心としたり、あるいは太平洋艦隊を中心として近代化が進められておる、またその機数がふえておるということは事実でございます。ソ連に対しまして、出会うたびにそのことは言っておるんです。どうぞお互いにそういうようなおそれのあるようなことのないように自粛しましょうや、これは私たちが申し上げておるところでございます。それが第一点でございます。  アミテージ発言も私たちは注意深く読ましていただきましたが、恐らく国防次官禍として我が国の中期防に関する説明をされためではなかろうか。そうした中においても、有事の際には航路帯は千海里だとかいろいろ設けてある。だから、それ以上の防衛力を求めることは、日本をして軍事大国にせしめるむしろおそれがあるのではなかろうか、こういうふうなアミテージさんのお話である、私たちはこのように解釈をいたしておるような次第でございます。特にアメリカ議員の中には三%とか、そういうことを言う人もたくさんおりますし、フィリピンの肩がわりをさせなんというようなことを堂々と言う人もおりますが、その都度私たちはそうしたことに対する否定をいたしております。  先般も、松前先生も御承知だろうと思いますが、シュローダーさんという女史の国会議員がお越しになりました。この方は同盟国に対する軍事費をいろいろと処理する小委員会委員長であるというのでお越しになりましたが、女史みずから言われました。日本には憲法上の制約があることはよく知っておりますと、しかしながらと、こう言われようとするわけですから、私といたしましては、この間竹下総理が東南アジアに行かれましたときに、この委員会でもそういう御意見を私は拝聴して参考にしたのでありますが、経済大国になりましても軍事大国にはなりません、これはもう常に日本が言わなくちゃならぬことである、こういうことがございますから、ややアメリカの方方と私たち方々との防衛に関する意見は異にする面があるいはあるかもしれませんが、日本立場は今私が申し上げたことが一番正しい、こういうふうに申し上げておいたような次第でございます。  だから、一%枠を外したというときにも、あれは私も党の最高幹部の一人としてその会議は参加しておったんですが、五十一年度一%を超えるべからず、そういう趣旨の閣議決定、これは尊重しますと、こういうふうに申し上げましたし、今後も節度ある防衛というものに対しては自主的に判断する、節度あるということが大切である、かように申しておりますので、やはりこの線は竹下内閣といたしましてもいささかも変わることのないところである。したがいまして、太平洋の情勢を眺め、あるいは北東アジアの情勢を眺めました場合に、今申し上げましたような考え方で節度ある防衛は続けていかなければならない、かように考えておる次第であります。
  106. 松前達郎

    松前達郎君 アミテージ次官補の発言はこれ一回じゃないんですよね。前にも、内容がちょっと違いますが、同じような趣旨で発言されているわけなんです。  節度ある防衛とおっしゃったんですね、それから軍事大国とならない、これはそういうふうに総理も言われているわけなんですけれども、一体どの辺が軍事大国のリミットなのか、節度ある防衛というのはどの辺がリミットなのか、この辺がどうも今まで議論をされたことが余りないわけですね。これは相手があって、その相手が増強すれば、こっちもそれに従って増強している、その度合いがバランスしているのが節度なのか。あるいはそうじゃない、相手があった、その相手以外の地域、例えばアジア地域各国に対する脅威となるような軍事力を持たない、こういうふうなことが節度あるのか。その辺がどうも私まだはっきり理解できないんですよね。言葉では節度あるとか軍事大国にならないということをよく言われるんですけれども、一体どの辺が限度なんだろうかという限界がどうもはっきりしない。  今までは限界というのを一%に求めていたわけですから、それがなくなってくると一体どこが限界なんだろうか。結局、片方が要するに軍事力を増強するから、それに相応してこっちも対抗上やらなきゃならないというと、これは切りなく両方とも大きくなる、いわゆる競争になってきてしまうんで、その辺から考えますと、やはりこの辺でもう一度見直しと申し上げたのはそういう意味も含めて申し上げたんで、見直ししながら検討する必要があるんじゃないか、こういうふうなことで今申し上げたわけなんですけれども、いかがでしょうか。
  107. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 松前委員のお気持ちはよく私も了とするものでございます。しかし、やはり日本といたしましては専守防衛でございまして、厳密に言うならば集団的自衛権は我々にはないわけで、単独的自衛権しか、個別的自衛権しかありません。したがいまして、中期防等々におきましては防衛大綱が求められて、その防衛大綱によって現在の中期防がその水準を達成すべく努力しておる、こういうことでございますから、一応我々といたしましては防衛大綱というものが我々の一つの防衛についての常識である、こういうふうに考えております。
  108. 黒柳明

    黒柳明君 高知の高校生の事故が起こりましてきょうで五日であります。亡くなった方に心から哀悼の意を表します。家族の方はこれからまた苦しみと新しい闘いが始まるわけなんです。また、外務大臣、現地へ飛びました外務次官、関係者の皆さんの労を多とするとともに、中国側の協力についても高く評価いたします。  それを前提とした上でですけど、私は非常にやっぱり気になることが二つありまして、一つは事故発生当時の情報の大混乱、もう一つは、それを踏まえて文部、運輸、当然海外邦人の生命、財産を預かる外務省、どういう反省といいますか改善策を考えているといいますか、今後どう処置するか、この二点がいろんな私なりに見聞きした中で非常に気になっている二つであります。  まず初め、中国の今回の事故、修学旅行の学生、これを踏まえて、海外旅行といったらこれは多岐にわたりますから、あくまでも若い学生、しかも計画的、しかも人数が多い、こういう中で起こった事故を踏まえての外務省当局、文部、運輸もいろいろ反省しておりますけれども、外務省としてはどういう点を反省し、どういう点に、まあ一生懸命努力した中においてもしこういう点がなかったならばという反省、今後の改善、こんな点がありましたらまず教えていただけますか。
  109. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 外務省といたしましては全力を挙げたつもりでございます。そして、時しも閣議がございまして、いろんな報告が文部大臣からなされましたが、その直後に総理中心に官房長官、運輸大臣、文部大臣並びに私が集まりまして、混乱を起こしてはいけない、その混乱を静め、また直接指揮者がいなけりゃならない、こういうような考えで、政府代表として政務次官を派遣いたした次第でございます。  もちろんそれをやる前に、上海領事館には緊急態勢をとらし、また外務省本省にも緊急本部を設けまして、さらには北京の中島大使は、少数精鋭でございますが十名の課員を上海に直行せしめた、そして十二分に事態の把握に努めた、かようなことでございます。その間に残念ながら死傷者の数がふえたというようなことがございましたが、いろいろ後で考えてみますると、私たちは率直な、事故の現場に居合わせるものでございますからいろいろと数字上のこともある程度把握したと思いますが、特に学校側では非常にその点を心配なさって、同行の同窓生にショックを与えちゃいかぬというふうな配慮もあって、そうしたために母校に対しましてはあるいは一時少な目の数字が報道されたというようなこともあったわけでございます。  そういうような配慮も当然必要であったかもしれませんけれども、外務省はやはりきちっとした数字を申し上げて、そして事故というものについての認識を深めていただくということも大切でございましたので、いろいろと対策本部が情報の収集に当たり、また混乱が起こらないようにしたつもりでございますが、もしそれ、どこかに欠陥ありとすればやはりまた反省しなくちゃならない問題だと思っております。しかし、今のところ一応、ああいう大混乱時に際しましても現場の人はよく頑張ってくれたんではなかろうか。同時にまた、中国政府も、本当に大事故でございましたのであらゆる点に細心の留意をし、またいろいろと応急の措置をとっていただいたんではなかろうかと、かように私は考えております。
  110. 黒柳明

    黒柳明君 NHK中心に私終始テレビを見ておりました。九時のNHKなんか大混乱で、現場の高知のその学校からの報道、あるいはどこかから来たニュース、生きていらっしゃる方を死亡ということで流したりなんかして、それはやっぱりNHKの方も情報不足だったろうと、こう思いますが、それはそれとしまして、外務省にこの一報が現地から入ったのは何時ですか。
  111. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 第一報が入りましたのは二十四日の午後八時でございます。
  112. 黒柳明

    黒柳明君 現地からは八時ですね。現地の上海の総領事館の人、あるいは現地の人ですね。
  113. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) はい。
  114. 黒柳明

    黒柳明君 交通公社からは何時に入りましたか、交通公社。
  115. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) ちょっと申しわけございません。私、今正確な時間を把握しておりません。
  116. 黒柳明

    黒柳明君 済みません、偉い人。私、偉くないものですからいろいろ調べまして、六時なんです。交通公社から外務省に一報が入りましたのが午後六時です、東京本社のですね。ですから、当然交通公社は添乗員がいたからと。これはいたからだからということだけで果たして、さっき外務大臣がもし不備があったら——私は何も外務大臣に不備があるという前提で言っているんじゃないんです、あくまでも、大変なことですから、今後のこともありますから、対応について私は抜かりなかったと思いますけれども、交通公社は添乗員がいたからですけれども二時間早いんですね。そして、その入った情報で現地の総領事館に電話を入れたのが、外務省、六時、交通公社から来ているわけですよ。それで、あくまでも現地の大使館筋から入ったのが八時。こういうことです。ここに一つ問題があるわけだ。  それじゃ、なぜ大使館がそれだけおくれたんですか、外務大臣、理由。——偉い人はわかんないんですね。部長、わかりますか。——部長もわかんない。わかんなきゃ私だ。おくれた理由。——いいです、いいです、私、女性には非常に寛大な方ですから。  これははいれなかった、現場に。これは新聞でも報道されました。現場が厳重に、これは事故が起こるとある程度そうかわかりませんね、一般の人は入れません。一般の人ははいれませんよ。日本だってそうですよ。ただしマスコミ、これはああいう国ですから、ああいう国と言ったって悪いという意味じゃありませんよ、ですからマスコミもシャットアウトするかわかりません。  ですけれども、日本人の旅行者が百九十三人いたわけですから、そこで大使館が行動を起こしたのがやっぱり四時か五時ごろ行動を起こしているんですよ、らしきものはある。ところが交通公社の第一報で本省が向こうに電話を入れてだれもいない、行動を起こしているから。ところが交通公社の方の添乗員がいたからといって入った。それが外務省に入った。なぜ外務省がおくれるかというと、はいれないんですよ、あの中に。そこらあたりに私は非常にやっぱり何か問題の一端がもしかするとある。起こったことに、事故に対しては不可抗力という言葉があります、事故の原因はこれから究明されるでしょう。らしきことは出ていますね、らしきことは。わかりません、はっきりしたところは。  だけど、やっぱり日本人の子供が多数乗っかっている。このぐらいのことは、田舎で起こったんじゃないですから、あれだけのポイントの切りかえのところで起こっているわけですから相当情報はわかるわけですよ、情報は。生存の先生もうんといらっしゃるわけですから。その中で結局外務省が立ち入りできなかったわけ、あの中に。それを無理に突破して入ったらしい。そこで情報を収集した。そんなことありますかな、ありませんかな。——私へ言ったって、私外務省じゃないから。こういう情報はないですか。——済みません、後で。私、初めてお目にかかってもう光栄でございます。  そういうことで、外務大臣ね、それは国外で起こったことです。あくまでも外交ルートを通じてだって拒否されるときは拒否されるかわかりませんよ、だから情報収集一生懸命やった、だけど限度だったんだと言えばそれだけのことかと思います。  私は、その後なんですよ、言いたいことは。今このことをメインで言っているんじゃないんです。これからどんどん言うところを言いたいために、今まくらでそのことを言っているだけなんですよ、言っているだけ。そういうことがあったんです。あったんですって、私外務大臣じゃありませんから、外務大臣になったらもっと詳しいことをしゃべります。まだ外務大臣じゃありませんから、あったらしいと、こうしておきましょう。らしい。  情報収集に手間がかかった。だから、NHKを中心にして、全くだれが病院へ運ばれているのか、何人亡くなった方があるのか。それは学校では、今大臣おっしゃったように、校長先生は控え目に言っていたんだ。そういう発言がテレビ通して来ましたね。これは私も見ました。これは学校当局の話ですね。その情報はどこから入ったのか、そこも問題なわけですよ。だから、さっきも言ったように、ニュースのコメンテーターは、どこで入ったんですか、その学校の情報どこから入ったんですかと盛んに言っていました、わからなくて。こちらではそんな情報入っていません、外務省の情報も入っていません、どこから入ったんですかと盛んに九時のときにやっていました。だけどそれはわかりません、こういうふうに言っていましたですね。  そういうことで、添乗員が、これで三回目ですけれども、いるからとは言いながら外務省に情報がおくれたというのはそういうことがあった。二度と起こってはいけません。二度と起こっちゃいけないけれども、起こることだってこれからないなんて言えない、人間ですからわかりません。そこらあたり外交ルートで反省の一つとしてやっぱりクリアにしなきゃならないんじゃないでしょうか、もしそうだとすれば。大臣、もしこういうことがあったとすればですよ。私が言っていることが全部正しいと押しつけているわけじゃありません。しかし、うそでもないですよ。
  117. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 今のお話を聞く限りにおきましては、やはりいろいろと混乱があったということは私たちといたしましても反省しなくちゃならぬと思います。  全力を挙げたと申します条、外務省とそして旅行社との間で何時にはどういう日程かとか、そういう問題も、今私はそこまでは知りませんが、しかし将来はやはり外国においてはそれぐらいのことも当然在外公館との間においてある程度の意思疎通というものがあることも必要ではないかなと、私はそういうふうに考えたような次第でございまして、参考にさしていただきます。
  118. 黒柳明

    黒柳明君 これは外務大臣、こんなものを出す必要ないと思いますね。これ、旅行のたびにこういうもの来ますよ。(資料を示す)費用が幾らだ、地図がどこだ。ところが、中国だけはこういうものがついています。「緊急事故対策とその報告ルート」と書いてあるんですよ。これがついているんです。私も国際局長二十二年やった。いろんなパンフレットを見ました。注意もしました。事故があってはならない。ないことが当たり前。だけど、こういうパンフレットは余り見ません。これは私全部目についているかどうかわかりませんよ。緊急事故対策とその報告ルート、これは交通公社、旅行会、四つしかありませんね、近畿ツーリストとか。そこでつくっているパンフレットですよ。  そこで、この桃色が添乗員。事故が起こったら在外公館に報告すること、それとその次は北京駐在事務所に報告すること、これのどれをやったか。この在外公館なんかやりようがないわけです。本当は上海の総領事にやればいいんでしょうね、このルートですと。北京に行ったわけです、北京に。交通公社の北京駐在事務所。そして北京駐在事務所から交通公社の本社、本社から外務省、六時。六時で上海総領事に電話をかけた、外務省が。だれもいない。それで八時になったら現地から外務省に電話が入った、領事部第二課に。こういうことなんですよ。  だから、これだけ、不慮の事態に備え、日ごろから社員は徹底的な教育と訓練を実施し、万が一の場合全社を挙げて迅速な処置が行われる万全の体制をしておりますと、こういう注意書きがしてあって、こういうふうに書いてある。だから、我我は万全の体制で事故は起こりません、起こったとしたってこういう緊急事態の体制が整っていますよと。これもまあ私わかりません。非常に異例ですね、こういうパンフレットがついているのは。しかも、添乗員、これ桃色。それが在外公館、北京駐在事務所へすぐ連絡とりなさい。この在外公館の連絡はしなかった。すぐ北京事務所へ行った。そして北京事務所から本社へ来て、外務省に来たのは六時。だからこっちなんかにする余地ありませんよ、添乗員としたら。混乱しているんですから。ですけれども添乗員がいましたから、生存者が、先生がいましたから、だからそれでも敏速にできた。その情報がどんどん学校には入っていったわけです。こういうことなわけです。  何も不測の事故が、緊急事態が起こるためにこれをつくったんじゃないと思いますよ。ですけれども予測して、あくまでも大事なお子さんを参加させるわけですから、これは各交通公社、旅行会としても一生懸命です。こういう対策を持って、そして社員には指導訓練してありますと。してある中にやっぱり在外公館は書いてありますけれども、これは両てんびんで電話もかけられないで、一方的にみずからの上司にと、こういうふうなことになっているわけです。だから訓練されていても、なかなか現地で事故が起こったら訓練どおりいきませんね。まして不測の事故が起こるのはこれはわかりゃしません。  そこで私はいよいよ本論に入りたい。  外務省はよくやりましたよ、外務大臣。決してけなしているんじゃないんですよ。藤田さん後ろでにらんでいますけれども、決して私は藤田さんをあれしているんじゃないですよ。よくやったという大前提で、私はうそでもない、本当であります。  ただ、問題はその次なんです。さっきも社会党の松前先生おっしゃったように、文部省が昨年の九月に教育委員会の部課長会議で、海外旅行、ミリオン計画というんですか、と同時に修学旅行も拡大しなさい、推進しましょう。それで一月に出したわけでしょう。その後のルートはどうなるのか。これは当然ながら国公立しかこの教育委員会の指導訓練なんか周知徹底できません。私立高校は全く業者任せです。国公立だって業者任せですよ。それで業者の方も今この事件が起こる前から反省しているのは、現地の受け入れ体制の安全と衛生面と輸送力を強化しなければならないということを、この事故が起こってからじゃないですよ、二十四日の前からこれをやらなければならないということを感じているというんですよ。  ところが、業者の場合やっぱり競争ですから、なかなかそうはいかない。シェアを獲得する方が先行する。何も文部省と運輸省がそれに乗っかったとは言いませんよ。その業者の後押ししたとは私は言いませんよ。ですけれども、外務省の方はやっぱりそういう立場とちょっと違うわけだ、立場は。現地の情報を収集できます。業者が何をここで一番先に言うかということは、現地の情報の収集はできないことはないと言うんです。できないことはないけれども、それを先に立てたら商売にならないというわけですよ、情報を先に立てたら。危険ですよ、こうありますよとなったら商売になりません。私たち万全を尽くしています、一生懸命やっていますよ、そういうところがみんなあるんですから、あれも危険ですよ、これも危険ですよと。  私は中国旅行だけを取り上げたくないんです。言っているつもりはないんです。ですけれども、言うまでもなく現地主義ですから、ついせんだってまでは現地へ行ってみなければ飛行機の便もわからない、汽車の便もわからない。今は改善されたけれども、現にまだ変更は幾らもある。今回の旅行だって変更した一環なんです。そういうものが現にあるんです。旅行社だってそういうことは知っている。まあ私は極端に、だからもうけ主義とは言いませんよ。そんなことはないと思います。ですけれども、やっぱり商売ですよ、競争ですよ。その中によって現地の実情というものを隠してまでもとは私は言いませんけれども、むしろ注意を促すためには、こういう点もあります、こういうこともありました、私たち注意しますけれども、皆さん方ぜひそういうことを認識した上でひとつ御旅行してください。そのぐらいのことがないとうまくなかったんじゃないか、あるいはうまくない面もこれからできるのではなかろうか。  ただ単に、失礼ですけれども、本当に失礼ですけれども、事故が起こった。よくやったんだ、どこもいいんだと。私は、どこもいい、どこもいいと言ってそれでいいんだ、黒柳もいいんだと、こう言っておしまいにしたいんですよ。それが一番いいです、利口になっていれば。ただ、利口になってばかりいられるかな。行って業者に話を聞き、現場に行って実際いろんなことを聞いてみますと、今言った本音、まだまだいっぱいあります。いっぱいあるけれども、そんなもの私、委嘱審査の会ですから、この会というものを私はやっぱり自覚して、業者の言い分なんかずらずらずらずら言ったってしようがありません。  文部省、運輸省と立場が違うんじゃないですか、外務省というのは。イの一番に行かなければならないのは政務次官ですよ。外務政務次官ですよ。運輸省、文部省じゃありませんよ。それで現地とのやっぱり窓口にならなきゃならない、そういう立場においてはもうちょっと情報を集めろじゃなくて、情報があるわけですから、その情報を認識させなきゃならない。  今回の旅行でも、いやいや生徒が希望して行ったんだから班が分かれていたんだ、自分で行きたかったからなんて陰口をきく人もいます。まあそれはそうかわかりませんよ。ですけれども、事故がある前提で行くなんてことじゃありませんから、喜んでみんな楽しい旅行のつもりで行かれたわけです。だから、せめて外務省が、外地で何か起こったから勧告するんじゃなくて、通告するんじゃなくて、こういう情報があるんですから、やっぱりそこらあたり運輸省、文部省と若干違った角度で情報収集、情報分析、そして生命、財産を守る、こういう役目があるんじゃなかったかなと、こういう感じもするんですが、いかがですか。
  119. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 今の先生の御指摘まことにもっともでございまして、私ども領事移住部におきましては日ごろからそういう点も十分念頭に置いて作業しているつもりでございます。領事移住部の中には海外安全相談センターというものをかねてから設けておりまして、最新の海外の事情について情報を収集するとともに、主として旅行業者を中心とする関係者に情報もお流ししております。それから、昨年初めてそういった情報を一まとめにした一冊の本もつくりまして、また今回新たに改訂版もつくって出したところでございます。同時に、ただ待っていて情報を提供するというのみならず、今後は積極的に関係方面に、できればコンピューターを通じて提供するようなシステムを今検討しているところでございます。  さらに、今回のような修学旅行が、かなり多岐にわたって海外に修学旅行が行われているということがわかりましたので、私ども担当レベルといたしましては、今後文部省と十分御協議しながら、組織的にそういう点につきましても事前に情報を確実に提供できるように考えていきたいと思っているところでございます。
  120. 黒柳明

    黒柳明君 部長さんの言葉じりをとらえるわけじゃありませんけど、まあ相当海外にいらっしゃっている——実は私も今わかったんです。だけど、今わかったなんて言うと同じになっちゃうから、昔からわかっていたとしないと、やっぱり野党としての質問にはちょっとちぐはぐになりますから。これだけ運輸省、文部省が奨励しているわけですから、相当行っているわけですよ、今までも。それはちょっと何か私、失礼ですけれども、今回の事件で相当行っていることがわかったという発言はちょっとどうかなと私、済みません、申しわけありません、変なことを言って済みません、おわびしながら発言するというのはなかなか苦しいですけれども、申しわけありませんけど、ちょっと外務省の態度……。  それじゃもう一つ、部長さん、そのつくったパンフレットの中に、中国はどういう指摘をされていますか。今事故が偶然中国だったから。ほかに起こる。台湾にも行っていらっしゃいますね、修学旅行、ほかも行っていますから。今度は偶然中国で起こったから中国と言いますけれども、私別に中国だけがどうこうということじゃありません。よくやっていただきました。もう何回も大前提で言いましたけどね、冒頭に。どういうことが書かれてありますか、その外務省の情報収集したというパンフレットの中に。
  121. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) まことに申しわけございません、今私手元に持ってまいりませんでしたので詳細は申し上げられません……
  122. 黒柳明

    黒柳明君 結構、いいですよ、わかりました。もう偉い人は余り細かいこと知らない方がいいの。
  123. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 一般的な交通機関の安全の状況、交通事情、それから医療事情、その他治安関係の情報、ありとあらゆる角度から私どもが可能な限り収集したものを入れているつもりでございます。
  124. 黒柳明

    黒柳明君 もう時間がありませんものですからね。さっきも自民党の先生がお話されましたけど補償問題、何か新聞一部情報とちょっと食い違いがあるみたいですね。秘書長と外務政務次官と外交ルートでやって、国内法のほか特別に扱うというのは、これは情報間違いみたいですね。特別扱いはしないんですね、今回は。あくまで国内法にのっとってやるんですか、今度の事故の補償問題。けさ一部報道では、何か特別扱いするというようなことが書いてあった。これは間違いですか。
  125. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 補償の問題でございますけれども、これは今後、死亡なさった方につきましては御遺族その他関係者の方々、傷を負われた方と中国側との間でお話し合いが行われることになると思います。  外務省といたしましても、相手が外国でございますので、このお話し合いが円滑に行われるようにできる限りのお助けをするというのが基本的な立場でございまして、これをそのときの御質問の受け方とか等々でいろいろ言い方が変わって報道されたことがあるかと思いますけれども、基本はそういうことでございます。
  126. 黒柳明

    黒柳明君 だから、国内法では特別扱いはすると書いてあったんです。そうじゃないんですね、新聞には特別扱いすると。
  127. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) これはもう中国側の法律で処理されるものと理解しております。
  128. 黒柳明

    黒柳明君 中国側の国内法というものはまだ入手されていないんですね。まずそんなところだと思いますけど、これから入手されると。
  129. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私ども今在北京大使館に訓令を発しまして調査しているところでございます。
  130. 黒柳明

    黒柳明君 結構です、ゆっくりでいいですよ、結構です。  この国内法、藤田さん、中国には保険制度というのは相当充実していますか、保険制度、生命保険、障害保険、交通事故。
  131. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) 保険関係制度はございます。
  132. 黒柳明

    黒柳明君 最近ちょこちょこ出始めたのね。  もう言うまでもありません、旧国鉄、JRでは保険で全部賄うわけですね、保険に全部入っていますから。だから、当然政府がなにするわけじゃありません。これはもう言うまでもなく中国の場合には政府ですよ。その政府が国内法で処理するわけですよ。その国内法で処理する場合には、日本のあるいは諸外国みたいにそういう保険が適用されるか、そういうこと。これは領事部長、国内法を早くお取りになりませんと、これから、先ほど私冒頭に言いました悲しみ、まだ悲しみでしょう。悲しみの後には苦労とやっぱり闘いが待っているわけです。その闘いが始まるために外務省外交ルートで補償の先鞭をつける、個々にやるんでしょう、あくまでも。だけど、日航だってあれだけ身近にいる中だってまだ片づいてない、弔意をあらわしながら。あるいは大韓航空もそうですわな。IATAというあれだけの協定の中においてでも、個々で解決できないんですよ。  まして中国の国内法、領事部長早く入手したいと。またあしたありますよ、外務委員会。こっちが持っていてそっちが持っていなきゃうまくないんじゃないですか。どういうふうに書いてあるか、特別にしないわけですから。これは国内法にのっとるわけですから、そうでしょう。向こうは民間じゃありませんから、国ですから、国がどういう保険制度を持っているか、ここらあたりは非常に疑問ですよ、いいですね。  それにのっとって個々の遺族が補償問題についてどう解決するか。それは中国は大人の国ですから、これは大丈夫だと私は思います。ですけれども、これから大変な遺族の苦労が始まると私は推測するにやぶさかじゃないわけでありまして、外務大臣、ひとつこの点、補償は個々でしょう。いろんな御家庭で違います。今ここで補償問題を言うのはあるいは不遜かわかりませんね。まだ悲しみに暮れている最中です。ですけれども、やっぱり政治家として政府として大局観に立って、すぐあした起こることはやっぱり処置しなきゃならない、そういうことのためにはやっぱり国内法を早く取ってそれをよく見ていただいて、それをどういうふうに適用するのか。果たしてこれは窓口では、あるいは照会するぐらいのルートだったらこれは解決できませんよ。  ひとつその点よく政府が、まあこれは今局長がおっしゃったことが基本的なものである、これは私そうだと思います。それをわかった上でも、非常にこの補償問題の解決に中国政府がどう出てくれるか、どう出ていただけるのか、これにかかっていると思うんですよ。あくまでも国内法で詰めることはできないんじゃなかろうかと私は今推測しているわけでありますが、ひとつ老婆心に終わればいいと思うんですけれども、外務大臣、まだわからないことを前提にしての話で申しわけありません。午前中に既に外務省の、個々にはやると、だけれども照会はすると、こういう答弁が出て、私もテレビで見たんですけれども、ちょっとこれだけでいいのか非常に私は疑問なんですけれども、いかがでしょうか。
  133. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 浜田君を派遣した責任者として、その点だけを事実関係申し上げておきたいと思いますが、二十六日上海に赴いた浜田政務次官と会見した中国国務院秘書長から補償問題に関しての言及はありましたが、補償方法等について具体的な申し出はまだ受けておりません。  なお、中国鉄道省の規定等補償に関する制度、規定に関しましては、今黒河内部長が申しましたとおり、早急に手元に取り寄せます。そして、あくまでも外務省は当初は助力という姿でやっていくのが普通の姿だ、これだけは一つ御理解賜りたいと思います。
  134. 黒柳明

    黒柳明君 当初は助力でいいですよ。それは今までに準ずるんですから、全部そうですよ。ですけれども、個々のいろいろな違いがありますから、ですけれども中国ですから国内法がある。よく見ていただいて、それじゃいけないときにはもう一歩立ち入らなきゃならないんじゃないんですか、老婆心で終わればいいんですけれどもと私言っているんですから。今までのパターンをわかった上でおっしゃっているならいいですよ、わからないでおっしゃっているんですから。そうだと私は断言しません。ひとつぜひその点、もし必要があるならばもう一歩立ち入ってやっていただきたい。ただ当座だけ哀悼の意をあらわして、当座だけかわいそうでしたではだめなわけですよ。最後まで面倒を見ていただく、できる限り。私は要望を含めてお願いするわけです。
  135. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 要望として承っておきます。
  136. 黒柳明

    黒柳明君 要望としてなんてつれないな。結構です。ありがとう。
  137. 広中和歌子

    広中和歌子君 今の質問に関連いたしまして一言だけ伺わせていただきたいんですけれども、修学旅行生は日本の国内において障害保険、死亡保険、そういうものに入っていたかどうか、事実をお知らせいただきたいと思います。
  138. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 私どもの承知しております限り、海外旅行保険にそれぞれ加入して行かれていると承知しております。
  139. 広中和歌子

    広中和歌子君 それぞれ入っているんですね。
  140. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 各人お一人一人について当たったわけではございませんが……。失礼いたしました。交通公社として団体旅行保険に加入しているということでございます。
  141. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。  その金額なんかはわかりませんね。
  142. 黒河内久美

    政府委員黒河内久美君) 細かい点は、今ちょっと手元に資料がございませんので、大変申しわけございませんが。
  143. 広中和歌子

    広中和歌子君 それでは、別な質問に移らせていただきます。  けさほどからODAに関して大変いい御質問もございまして、また御親切な前向きなお答えもいただいたわけでございますけれども、一つだけ伺わせていただきます。  前々回でしたか、私は外務委員会で小規模援助の必要ということを申し上げて、そして努力をするというようなお答えをいただいたわけでございますけれども、小規模援助と私が申しますのは、例えば去年の夏でしたか、ブラジルなどに旅行し、アマゾンの領事館などにお伺いいたしましたときに、現地でこういうことをしてあげたいと思うような小さなことがいっぱいある。しかしながら、援助というのは原則的には要請ベースであるから、こちらから気をきかせて何かをして差し上げるということは規則としてできにくいというようなことをおっしゃったわけですけれども、しかしながら、私が受けとるところによりますと、やはりちょっとした災害であるとかなんかというのは非常にタイミングが大切でございますので、そのことを外務委員会で御質問したわけでございます。  そういたしましたら、大きな災害に関しましては、それも要請ベースではあるらしいんですけれども、外務省としては対応し、タイミングに合った形で何かできるんだけれどということでございましたけれども、今回の予算措置の中で、いわゆる各在外公館などが独自の判断で必要だと思われる小さな援助でございますね、金一封的な、火事場の見舞い金といったようなそのような援助ができるようなシステムになっているかどうか、そのことについてお伺いいたします。
  144. 英正道

    政府委員英正道君) 現在、例えば技術協力の関連で単独機材供与、単独と申しますのは専門家の派遣を伴わないという意味において単独機材供与、これは先方からの要請に基づいて供与するというものはございます。しかし、広中委員指摘のような、現地の大使館なり援助機関の出先の機関の判断において使用できるというようなプログラムというのはまだできていないのが実情でございまして、在外公館からもそういう現地の判断に基づいて使用できるようないわゆる小口の援助というのは機動的に、それから量的に少なくても大変喜ばれるものである、そういうものをぜひ新設してほしいという御要望は、実は各地域の大使会議が開かれますとその都度大使から強く要望されております。  実施制度をつくる点において、なかなか完全にこれならばそういう小口の援助実施できるというものができないということがあって、これまでまだ実現していないわけでございますけれども、大変に重要な御指摘だと思いますので今後ぜひ検討させていただきたいと思います。
  145. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほどの御答弁の中にも、なるべく柔軟性を持たせた援助というようなこともおっしゃっていたわけでございますけれども、どのような難しさがあるのか。そういうことと、それからやはりこれからはODA予算というのは、今までもそうですけれどもさらにこれからふえていく。大きな金額を有効に使うためには、やはりそれなりのいわゆる人材というんでしょうか行政というんでしょうか、そういうものが必要であろうかと思います。例えば研究所に研究費が行く場合でも、その約四〇%は行政費、オーバーヘッドと申しまして行政のために使われ、残りの六〇%が研究そのものに使われる。  ODAに関しまして、日本ODAでございますけれども、どのくらいが実質的な援助でどのくらいが行政であるかということ、その数字がわかりましたらお知らせいただきたいのでございますが。
  146. 英正道

    政府委員英正道君) 現在政府の行っておりますODAというのは、今広中委員指摘のような、欧米の国が例えば大学研究機関等にあるプロジェクトを委嘱する、そしてその際に四割、六割でございますか、オーバーヘッドと実際の援助のための支出というものを区別する、そういう形の実は援助ではございませんので、今の御質問にちょっと直接答え得ないわけでございますけれども、どちらかというと、それに近い形は民間のコンサルタントを使って開発調査をするとか、そういうようなものが割合近いのじゃないかと思いますが、この場合にはむしろ何人のコンサルタントが何時間仕事をしたかというような形で支出が行われておりまして、その機関が自由にできるお金というような形にはなっておりません。コンサルタントの側からも、何時間働いたからということも重要であるけれども、どういうアイデアを出したかということが重要なので、いわばアイデア料といいますか技術料といいますか、そういうものを費目として計算してほしいという要望がありました。少しずつそういう方向に進みたいと思っておるところでございます。
  147. 広中和歌子

    広中和歌子君 先ほどからもいわゆるODAに携わる人材開発というようなことでいろいろお話も出ていたわけでございますけれども、この予算の増大にふさわしい内容のあるソフトの方の構築に向かってぜひ御努力いただきたいと思うのでございますけれども、外務大臣のお考えをお伺いします。
  148. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 累次申し上げておりますが、ODAこそ真の援助である、これが国際認識でございますから、常に先進国日本といたしましては、もう同僚からもあるいは後輩からもいろんな意味で見られておるというのが今日の日本立場でございます。したがいまして、総額は大きいけれどもしかし内容においては乏しさものあり、あるいはまた、GNPは日本は大きいけれどもその対比からすると総額は決して大きくない、こういうような批判がございます。したがいまして、全力を挙げてやっていきたいと思います。  ただ、先ほどの御質問にちょっと触れますが、援助ODAというのはあくまでも南北間の根底にあるところの人道上の考慮、これがまず第一点、そして相互依存、これも共存する問題ですから第二点としてございまして、災害時のときなんかもやはりいろいろと対応の方法はございましょうが、やはり相手国のこうしてほしいああしてほしいという申し入れで初めてそれに対応しなくちゃならぬと。  つい最近も南米で大きな事故がありましたとき、私はせっかく昨年国会の了承を得てレスキュー部隊ができておるんだから、レスキュー部隊出たかいと一番に言いましたら、いや今度は要りません、それよりも食糧を送ってくれという話でしたと。こういうふうなことで、現地在外公館はやはり現地政府と打ち合わせをいたしまして、それに応じてやっていこうということになるのではないかと、こう思います。だから、今の小規模の災害等々に関しましても、在外公館の長からはそういう要望もたくさん来ておるわけでございますから、今後ODAそのものの内容改定等いろいろ私も考えていかなくちゃならないと思っておりますので、そうした際に一つの着眼点として検討を加えていきたい、かように思っておる次第であります。
  149. 広中和歌子

    広中和歌子君 次に、日米関係についてお伺いいたします。  日本で新聞、テレビなどを見ますと、非常に経済記事が多いわけでございまして、これは外国人が指摘したことでございますけれども、本当に第一面に非常に経済記事の占める割合が多いと。それとかかわりがあるのかもしれませんけれども、最近非常に経済に絡んだ日米関係の記事が多いわけでございまして、それがすべて日米関係、経済関係がうまくいっているときにはそれなりに結構なことなんでございますけれども、最近のように多くのあつれきが諸所に見られるところにおきましては本当に不協和音がたんだん増幅されてくる、そういう中で日米関係全体、それが庶民のレベルで何かこう、何というんでしょうか、反米感情、そういったところに発展しなければいいがと非常に恐れているわけでございます。宇野外務大臣は現在の日米関係を全体としてどのようにとらえていらっしゃるか、まずそのことからお伺いいたします。
  150. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) まず第一点は、この間竹下・レーガン会談がございまして、そこで確認されたことがございます。これが現在もその基調をなしておるとお考えになればよいのではないかと思いますが、そのときに竹下総理の側から、お互いに大きくなりまた世界が発展すると、いろんな思いがけない問題が次から次へと出てまいるものでございます。これは何も日米だけに限ったことではございますまい。しかしながらお互いにそうしたことを根に持って、経済は縮小均衡であってはいけませんから、拡大均衡にいたしたいと、こういうふうに申されました。そして、一つ一つの案件に関しては専門家同士でよく検討して、お互いに意見のそごを来さないよう、実りあるものにするようにと、こういうふうな話がございました。  したがいまして、貿易で二つばかりございますが、現在そうした一つ基本と申しましょうか、その上で両国の話し合いが続けられておる、こういうふうにお考え賜りたいと思います。したがいまして、政府政府は非常に信頼し合い理解し合いながらこの問題を解決したい、かように考えております。  また、議会側におきましても非常にそういう問題に心を砕いていただく方々も多いわけでございますので、やはり日米親善というのは、これは永久の一つの大きなパターンでなくちゃならない、こういうふうにお考え方々が非常に多うございます。中にはやはりいろいろと批判をされる方々もいらっしゃいますが、それはそれなりに私たちといたしましてもいろんなルートを通じまして、あなたの考え方に対してはこうですよというふうに理解をしてもらうように努めなくちゃならない、かように思っております。  ただ、最近アメリカにおきまして、御承知のとおりにああやって幾つかの選挙ございましたが、何も今度の大統領の予備選を申し上げるわけではありませんが、その前の下院議員の選挙等におきましても、ジャパンバッシングをやれば当選だというような傾向は必ずしも一〇〇%正しいものではない、そのためにかえって席を失った方もいらっしゃる、これが一つのアメリカ人の良識ある見方であります。  我が国におきましても、やはりどの国と一番親しくしなくちゃならないかというと、多くの国民の方々が米国だと言ってくださいます。しかし、今日のような際立った何か具体的な例がありますと、その関係者はアメリカは嫌いだとおっしゃるかもしれませんが、やはりそういうような両国国民の立場をお互いに理解しながら私たちも常に日米親善という実を上げたい、これが今日の日米関係であります。
  151. 広中和歌子

    広中和歌子君 バランスのとれたお考えをお伺いして大変にうれしかったわけですが、私も数回ワシントンを訪ねさせていただいて、議員の中にもいろいろあるということ、そういうことが日本に余り知られていないことを大変残念だと思っている次第でございます。  今回は、際立ったいわゆる不連続線のある部分を聞かせていただきたいわけでございますけれども、牛肉、オレンジ交渉というのが最近新聞、テレビなどをにぎわしているわけでございますが、その交渉経過についてちょっとお伺いいたします。
  152. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 先生御案内のとおり、牛肉、オレンジの日米間の取り決めは八四年につくられておりましたんですが、その四年間の協定の期限が三月三十一日に到来いたします。その八四年の協定では、八七年度中に協定が切れてからどういうふうにするかということを双方で話し合いましょうということが規定されて、規定と申しますか合意されていたわけでございますけれども、そういうことで、八七年の十一月でございましたか、ハワイでの日米の貿易会談のときにも、この話を取り上げるということで若干非公式な話し合いがございました。その後総理の訪米もございまして、今後どういうふうにするかという話を日本側はぜひ早急にしたいということで申し入れをしておりましたわけでございますけれども、アメリカ側の方は、八四年協定をつくるときも私たちは申し上げていたでしょう、ぜひ日本側は牛肉、かんきつについて自由化をしていただきたい。自由化の時期を明示していただけなければ交渉をする意味はないのではないかということを言ってまいりました。  私ども政府といたしましては、アメリカ側がそういう自由化ということを主張されていることはよくわかっております。ただ日本側も日本側としての事情もございますので、ぜひこれは現実的に解決する方向で話をしたいということを申して対立していたわけでございますが、いずれにしましても、前提条件なしにぜひ一日も早く交渉のテーブルに着くことが肝要であるということをアメリカ側に申していた次第でございます。  その後、そのやりとりの過程で農林管の局長が二度にわたって、またことしに入りまして訪米いたしました。それでぜひ交渉のテーブルに一日も早く着いてほしいということをこちらから申し入れたわけでございます。  その中でアメリカ側は、ぜひ自由化の時期を明示してほしいという主張は依然として強く申しておりますわけでございますけれども、このたび、先方は自由化の時期を明示しなければいかぬ、我が方は現実的に解決したい。すなわち具体的に申しますと、牛肉、かんきつの枠の拡大で解決をしたいという希望が、お互いに対立したままの状況ではいつになっても交渉ができない、ぜひ前提条件を外して牛肉、かんきつの問題のあらゆる側面について話し合いをしたいという立場から、先生御案内のとおり今般佐藤農水大臣が訪米されて、その過程でそういう牛肉、かんきつにかかわるあらゆる側面について話し合いをしていただきたい、こういうことで現状今日に至っている次第でございます。
  153. 広中和歌子

    広中和歌子君 八四年の時点でございますけれども、何か日米間にパーセプションギャップみたいなのがあるような気がいたしますけれども、日本側はアメリカ側にどのような約束をなさったのか、そしてそれがどの程度守られてきたのかということをお示しいただきたいと思います。
  154. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 八四年の協定では、繰り返しになりますが、先方は牛肉、かんきつの自由化を主張いたしました。我が方はこれに対しまして割り当て枠の拡大で対応したいということで、相当厳しいやりとりがございました。その結果、ぎりぎりの交渉の決着といたしまして枠の拡大で対処をするということで、具体的に枠の拡大の量について合意いたしまして、その合意は過去四年間守られて今日に来ている。今度、八八年四月一日からはその協定が切れますものですから、その枠の新しい交渉が当然必要になってまいりますけれども、そのとき先方は、いやもう期限が過ぎたんだから自由化に踏み切ってほしいということを主張してきていたということでございます。
  155. 広中和歌子

    広中和歌子君 この牛肉、オレンジのことに関しましては、各省また政治家の中でもいろいろな立場の人がいるわけでございますけれども、外務省のお立場といたしましては、生産者の立場とそれから消費者の立場両方ある中で、世論をどういうふうにとらえていらっしゃいますでしょうか。
  156. 内田勝久

    政府委員(内田勝久君) 外務省といたしましては、この牛肉、かんきつの問題、当然国際的な経済関係の中で解決していかなければいけないと思っておりますが、あわせて国内の生産者あるいは消費者の選択と申しますか、消費者の意向というものも総合的に考え解決していかなければいけない問題であると考えている次第でございます。
  157. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 外務大臣といたしましても、今経済局次長が申しましたとおりの考え方で進んでおります。だから私としてはやはり自由化という問題、これには今慎重であるかもしれません。しかしながら、国際的に考えた場合、やっぱりガットというものは自由貿易を一つの基軸として動いておる国際機関だから、やがてはそういう場においていろんな問題が議論されるような時代が来ますよ、そのための国内的な準備もしなくちゃならないでございましょうねということでございまして、もちろん国内の生産者の体制、そうしたことも考慮しておかなくちゃならないと思います。  だから、この間も私は米国の議員に申し上げたのですが、日本は急激に大きくなりました、だから見ていただくと着ている洋服が小さくなってしまってみっともない格好のところがございましょう、そのためにはやはりズボンを直し、そでを直したいと思います。そのためには多少時間がかかるかもしれません、しかしやがては日本もそうした意味合いにおきまして体に似合った洋服を着ることになるでしょうと言いましたら、アメリカも、ああ、そう言われれば自分たちの方も直さなくちゃならないところがたくさんある、そういう気持ちでお互いがしゃべろうよと。だから二国間で起こった問題は、私としたらこいねがわくは二国間で解決するのが一番いいよと。余り短気になさって、それはガットだ、ガットだとおっしゃらない方がいいんじゃないのというふうな私の気持ちは伝えておいた次第でございます。  今経済局次長がきちっと申しましたとおり、生産者のことも考え消費者のことも考え、やはりまず外交というものは国内のことを考え、そしてそのことを外国に訴えて外国のサイズに合わせていくということも必要でございましょうから、そういう気持ちでございます。
  158. 広中和歌子

    広中和歌子君 今外務省としては二国間協定を主張していらっしゃるわけですけれども、次の枠を拡大していく、時間をかけて、そして五年間の猶予をというようなことをおっしゃっているんでしょうけれども、そういうところで自由化に向かっていけるそういうタイムテーブルをきちんとお持ちなのでございましょうか。つまり、五年後に完全な自由化というものはあり得る、そういうことを今アメリカに主張していらっしゃるのか、それともまた少しずつ少しずつ枠を広げていきますよ、だからまず次の五年間をくださいと、そういうことなんですか、どちらなんでしょう。
  159. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) きょう、ちょうど昼に政府・与党連絡会議をやりました。そして、佐藤農林大臣が特別出席されまして、いよいよあす出発されます。それに対しまして私たちは、やはり農林大臣としてのお考え方があらうと、こう思いますから、別に私たちからこうせい、ああせいという問題とか、具体的にどうのこうのという問題とか、ましてや数字とかそういうものは一切挙げずに、農林大臣が今までの経緯を踏まえてアメリカの最高の責任者と話をしてくださいと、こういうことで終わっておりますので、一番大切なときでございますから、ここで二年とか三年とかそういうことも全くございませんし、自由化賛成とか反対とかそういうこともございませんし、当事者能力を持って農林大臣はあす出発される、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  160. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカとしては四月一日からの自由化ということを強硬に主張しているわけでございますけれども、それが不可能であればガットに提訴もと、非常に強硬姿勢だということですが、仮にガットに提訴をされた場合に与えるインパクトですね。日米関係、それからさまざまな国際世論とか、また日本の国内の問題もございます。そういうことについてどのように評価していらっしゃいますでしょうか。
  161. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) これは牛肉、かんきつという問題は別にいたしまして、例えば二国間という問題があったといたします。ガットの精神から申しますと、二国間よりも多数国間がいいんだよというのがガットでございます。これが第一点。余り二国間二国間と言いますと、二国間だけでやっているのか、おれたちは差別されているのかという問題がございます。したがいまして、今申し上げましたような問題は、一般論といたしましてウルグアイ・ラウンドでいろいろと検討しようではないかという一つの議題になるだろうと私は考えております。  そこで、今申されましたような例ということになりますけれども、今もしそれ、牛肉、かんきつを別として、日本が今何かの問題でいろいろ話題になっておる、それがガットにもし持ち込まれたという場合にはもうその結論は出ておるに等しいというような感じがするんです。しかし、そういう場を設けながらもなおかつ日本の主張を繰り返すということもあるいは必要であるかもしれませんが、これに関しましてはどっちがいい、どっちが悪いというわけにはまいりません。私たちといたしましては、二国間で起こった問題は二国間できれいにお互いに了解し合って話をつけてほしいねというのが外務省考え方で、したがいまして、例えば具体的な問題にいたしましても、通産ともあるいは農林ともそのほかの省庁とも、それぞれ所管の扱われる物資があろうと思いますが、そうした問題では外務省は当該所管省と十二分に意見を交わしてやっておるというのが今日の態勢でございます。
  162. 広中和歌子

    広中和歌子君 時間でございますので、明日引き続き質問させていただきます。
  163. 立木洋

    立木洋君 中国の列車の事故で犠牲になられた方々に対して、私も心から哀悼の意を表したいと思います。  既にもう同僚議員がいろいろこの問題については質問されておられますし、大臣の方からお答えもございましたけれども、こうした問題というのは、事故の解決というのは、先ほど局長が言われたようになかなか円滑にいかないというのが普通、通常ですね。とりわけ外国との間の問題というのは法体系が違いますし、それから社会的な条件や慣習等の違いも多々ありますから、結局遺族の方々にしてみれば、いざというときにはやはり相手が国ですから、外務省お願いしなければならないという気持ちを強く持たれるということが通常ではないかと思うんです。  今までのKAL機の問題の場合にもそういうふうなことも聞いたことがございますし、ぜひとも今後この問題が円滑に解決できるように最大の努力を尽くしていただきたいということを私の方からも心から御要望申し上げておきたいと思います。  さて、昨年の十二月に御承知のイスラエルの占領地になっておりますヨルダン川の西岸とガザ地区におきまして深刻な事態が起こりました。最近でもいわゆる散発して事態が続いているようでありますけれども、これはある人々によれば、この地域における二十年間に及ぶ占領、こうした事態の深刻さが示されたものだというふうな指摘もあるわけですが、このイスラエルの占領地で起こった深刻な事態に対して外務省としてはどのような判断をなさっておられるのか、まずその点からお伺いいたしたいと思います。
  164. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細は局長がおりますから局長から申し上げるといたしまして、基本的には私たちはやはり世界紛争に積極的に何らかの方法においてその紛争解決のために努力をしなくちゃならない、貢献をしなくちゃならない日本だと、こう考えております。  だから、西岸、ガザの問題におきましても速やかにイスラエルというものは戦争をやめなさい、虐殺なんてもってのほかですよと。そしてイスラエルの生存権を認める、同時にまたパレスチナ人の民族自決権を認める、これが日本の政策でございます。
  165. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 今般の騒擾事件のもとになった背景はどうかという先生の御質問でございますが、御存じのとおり六七年の戦争以来、西洋、ガザはイスラエルによって占領されております。そして、現地は現在事実上の軍政でございます。文民政府という占領政府ができておりまして、その政府の長官はイスラエルが任命しております。それから、軍事マターは国防軍が担当しております。で、ジョルダン法に基づいて選挙等が行われる形になっておりますが、事実上もう選挙は行われておりませんのでそういうイスラエル支配下にある。現実の問題としてはなかなか開発はうまくいっておりませんので、現在の状況で言いますと、イスラエルの一人当たりのGNPが約六千ドル、西岸、ガザはやっぱり千ドルで明らかに生活も苦しいということで、政治的な自由がない、他民族に支配されていて生活が苦しいというこの基本的な事実が今度の騒擾事件の発端ではないかというふうに私ども考えております。  したがいまして、先ほど大臣からお答えいたしましたように、この状況の解決はやはり西岸、ガザの最終的な解決を含む中東紛争解決というのが必要ではないか、そのために日本政府として努力するというのが私どもの立場でございます。
  166. 立木洋

    立木洋君 今言われたように、占領地域における状態というのは大変な状態で、百数十万のパレスチナ人があそこにいるようですが、特にガザ地域においての三分の二の人々が難民キャンプで二十年間生活している。賃金の格差も大変なものだと。大変な貧困状態それから暴力と恐怖、こういう大変な苦境の中でこういう生活を強いられているということが怒りとしてこういう形で爆発したというふうにも言えるだろうと思うんです。  日本外務省としても、当地の駐日イスラエル大使に対して、武力を行使するようなことはやめるべきだ、自粛すべきだというふうなことを申し入れされたということも新聞等で見たわけですが、今局長が述べられた日本政府としても努力をしていくという、当面どういう形で努力を進められていくのか、もう少し具体的にお考えがあれば示していただきたいと思います。
  167. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 先生御指摘のとおり、我が国政府はまずイスラエルに対して、西岸、ガザにおける行動についての自制、いわゆる国際条約、約束に基づいた形での住民の取り扱いを要望するということがとりあえずまず第一に必要でございます。これは二月四日、大臣が新聞に発表さしていただきましたところに基本的に書いてございまして、事態が国際社会の要求にもかかわらず、なかなか改善していないのは遺憾である。イスラエル政府に対して再度事態改善を要望するということ。  第二は、そもそも根本的な解決が必要であり、それは国際連合の安全保障理事会の決議に基づいた恒久的な解決が必要だというのが我が国立場でございます。もちろん中東紛争につきましては、日本はなかなか直接的な手がかりというものがございません。やはりこれは米国です。これはイスラエルとアラブとの双方の和解をさせなければいけませんですけれども、双方の主張が非常に離れております。アラブ側は西岸、ガザに独立したパレスチナ国家を含む完全な独立、それから領土を完全に返してもらって、その交渉にはPLOが当たるというのがその主張でございますが、イスラエル側は、まだその領土の返還というものにも同意していなければ、その交渉の相手方はPLOではないという立場をとっております。したがいまして非常に難しい。双方の立場が余りにも離れておりますので、やはり米国のようなあるいはソ連を含む超大国のある程度の力強い説得を持った形でなければなかなか解決は難しいと思います。  ただ、日本は現地に直接的な利害関係がない。しかし尊敬される世界の大国の一つとして公正な立場からの意見をすることは非常に重要なことだと思います。特に現在は安全保障理事会のメンバーでもございます。そういう意味で日本立場を機会あるごとに表明する、それからこの問題が解決された後では経済復興等さまざまな形での援助が必要でございます。そういう場合にはまさに日本の果たし得る役割は多いわけでございますので、そういう将来の参画というものを含めまして日本が積極的にその考え方を述べていくというのが紛争解決のための貢献の一つであろうかと考えております。
  168. 立木洋

    立木洋君 やはりパレスチナの民族自決権を完全に擁護する、国の創設を含めて。さらにイスラエルの全占領地からの撤退。もちろん今まで非常に大きな開きがあったというのは、例えばPLOの側の主張の中では、一部の組織の中ではイスラエルの抹殺というふうな主張が一部では見られた。しかし、そういうことも解決されてきているんですね、内部の話し合いの中では。やっぱり共存していかなければならないということもPLO側も主張するようになってきている。だから、イスラエルとしてもやはりパレスチナのそういう民族自決権の確立ということを認める方向に日本側が積極的に主張していくということは非常に重要だと思うんです。  特に最近やはり国連等においてもPLOの事務所の廃止等のことがアメリカ側が問題にされたりしておりますし、またアメリカとしても新聞等の主張で見ますと、依然としてPLOというのはテロ組織であるというふうな主張もあるようでありますから、そこらあたりも、日本側としてもアメリカ側にも十分にそういう考え方を申し述べて、この問題が根本的に解決されるようにしていっていただきたい。六十余りの国々がPLOの存在を認めているわけですし、既に七十余りの事務所が世界じゅうにあるわけですから、こういう人々の自決権というものもやっぱり十分に認めた努力を今後とも強く要望しておきたいというふうに思います。よろしいでしょうか。
  169. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) はい。
  170. 立木洋

    立木洋君 それから次に、これも先ほど同僚議員の中でいろいろ問題になったんですが、INFのダブルゼロ、この調印という問題で、これはちょうど去年の九月でしたか、米ソの外相の間で話し合いになってほぼ合意ができた。そして、引き続いて今度は戦略核の五〇%の削減へ努力するんだという方向が出てきて、同じ時期から第四十二回の国連総会が開催されてきたわけですね。  こういう新しい状況の中で開催された第四十二回国連総会の中で、核軍縮の問題をめぐってどういう特徴、どういう新しい決議などの問題が見られるのか、そういう点は外務省としてはどういうふうな点を押さえておられるのか。
  171. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 四十二回国連総会におきます軍縮審議一般につきましては、INF条約署名といった国際的な背景を踏まえまして、従来に比べまして比較的雰囲気は良好であったということが言われるかと思います。その間に、昨年四十二回の国連総会におきましては、核軍縮関係の決議は二十一本通っているわけでございますが、特に精力的に議論がなされましたのは、いわゆる包括的な核実験の停止に関する決議、それから二国間核軍備の交渉を促進するという決議、この二国間といいますのは米ソのことでございますが、この二つの問題についての討議がかなり中心的な地位を占めていたということが言えるかと思います。これの包括的な核実験の停止問題、それから二国間の核軍備の交渉促進に関する決議、いずれもこれは西側とそれから非同盟とそれぞれから決議が出されておりまして、実はその両方とも中身は違いますけれども成立はしております。
  172. 立木洋

    立木洋君 審議の内容というのは比較的良好だったというふうな言われ方をされたわけですが、別の角度からいいますと、確かにINFダブルゼロという形になったのは、これは核の軍縮としては極めて数%という少ないものであっても、これは初めてのことですから非常にやっぱり歓迎されるべきものであろう。しかし、だからといってこれで自動的に核兵器がすべてなくなっていくというふうなものではありませんし、これからさらにやはり努力が必要であるということも当然だろうと思うんですね。  それで、四十二回国連総会の中で見てみますと、そういう核兵器を地球からなくしていく努力をしていこうという方向と、依然として核兵器は必要ではないかというこういう状況との対立というのがやはり根底には根強く存在したというのが明らかになったのが、四十二回国連総会のまたもう一つの特徴ではなかったかというふうに見るんですが、その点はいかがですか。
  173. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 長期的な目標といたしまして、核兵器の廃絶に向かうべきであるという点につきましては、すべて参加者は同じ意見を持っていたというふうに考えております。  しかしながら、今委員指摘のやはり当面核抑止力というものが必要であるという考えから、したがいまして直ちに具体的な措置なしにそういった理想的な、いわゆる宣言的な決議というものについてはこれは現実的でないという考え方がございまして、したがってその場合には当然一歩一歩必要な積み上げをした上で長期的なあるいは究極的な目標としての核廃絶に向かうべきである、こういった意見の違いはあったかと思います。
  174. 立木洋

    立木洋君 この国連の開会中の中で、例えばアルゼンチンなど六カ国の首脳が十月の七日でしたか、共同声明を発表していますが、やっぱり「あらゆる手段によって核兵器のない、いっそう安全な世界を追求する」ということが共同声明の中でも強調されておりましたし、あるいは非同盟諸国は、十月の五日から七日まで閣僚あるいは代表団長会議が開催されまして、「いかなる状況のもとでも核兵器の所有とその使用の正当化を意味するすべての理論や概念を拒否する」ということが確認されております。  もちろん社会主義の国の中でもそうですが、他方、しかし一方非核化というのはやっぱり幻想だということが公然と国連の中でも述べられている主張がありますし、あるいは核兵器の廃絶を想定すること、これは全く合理的ではないという主張も一方でははっきりとしてあったというわけですね。だから、核兵器はなくそうということで一致があって、そのやり方に違いがあるということではなくて、やはり核兵器の存在を必要と認める層が、主張がやはりあったというふうに私は見ているわけです。  これは、ここに私は一覧表を全部つくって持っておりますが、どういう決議がされたのかという内容を見ましてつくってありますけれども、具体的に幾つかの内容を見ても、やはりそういう問題点が非常にはっきりしているんじゃないかと思うんです。  そこで、私が特にお尋ねしたいのは、非同盟諸国が提出した決議で四二—四二—Cというのがあります。これは「核軍備競争の終結核軍縮」というテーマのものですが、そこに現物がもちろんおありにならないでしょうけれども、この中では核抑止力に依存するということは誤りであるという見地を述べながら、核兵器の完全廃絶を歓迎し、多国間の軍縮交渉が強力に進められなければならないという提案がされました。これとほぼ同じ内容のものが一昨年も提案されたわけですが、そのときと比べまして、去年のこの四十二国連総会での決議は一昨年よりも賛成がふえました。それまでは百三十が賛成でしたけれども、それがさらに七カ国賛成がふえて百三十七になった。反対がそれまで十五だったのがこれが二カ国減った。そして棄権が七カ国、これは棄権も二カ国ふえた。これに対する状況というのはよくなってきているというふうに数字の上から見ることができるわけですが、この四二—四二—Cという「核軍備競争の終結核軍縮」というこの決議に対して日本政府は棄権をされているんですね。どうして棄権をされたのか、その理由をお聞きしたいんです。
  175. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) この委員指摘の決議は、非同盟諸国が提出したものでございますけれども、核凍結の考え方を打ち出しておりまして、核抑止理論への依存を批判するという基本的な立場をとっているわけでございます。  我が国といたしましては、長期的な目標として、究極的な核廃絶ということを目指す点におきましては、まさに唯一被爆国としての立場から、これを強く推進しているものでございますけれども、現在、当面の国際情勢、軍事情勢のもとにおきまして、やはり核抑止に依存せざるを得ない面があるということは否定できないわけでございまして、その意味で棄権票を投じたわけでございます。
  176. 立木洋

    立木洋君 つまり今の局長のお話によると、結局核抑止力に依存するのが誤りであるという批判をしているからこれに対しては棄権をしたというふうに取れるわけですが、ここではこういうふうな内容として書いてあるんですね。「核抑止論への依存が核戦争勃発の危険性を高め、国際関係における安全欠如と不安定の増大をもたらしていることが表明され、また核兵器は戦争兵器以上のものであり、そうした兵器は大量全滅の手段であることが表明されたことに留意し、」云々、だから「世界平和が核抑止によって維持できるという理念は、現存するもっとも危険な神話であることが表明されたことに留意し、」云々と。この核抑止についての批判というのはこういうふうな表現でなされているわけですが、こういう表現に同意できないので棄権をしたという意味ですか。
  177. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 核抑止という考え方につきましては、御案内のようにいろんな意見があるわけでございます。これ自体が危険で、核抑止という考え自体が危険である、あるいは核抑止というのはそもそも矛盾ではないか、いろんな批判があることは十分承知しております。しかしながら、現実の、現在の世界におきまして核の抑止力に全く依存しないで国際の平和と安全が保たれるかということになりますと、それについては否定的な見解を表明せざるを得ないわけでございまして、当然核の抑止力につきまして、先ほどどなたかの委員の御質問に対しまして大臣からの答弁もございましたように、ただしこの核抑止力というものもできるだけ低い、最低限度のレベルに抑えなければいかぬという点につきましては、私どもは全く異議はございませんし、当然そのように推進していくべきである、こういうふうに考えております。
  178. 立木洋

    立木洋君 核抑止についての考え方が世界の人々の中に一部存在するということを私は否定しているわけではありません。しかし、問題というのは、ここで言うつまり核抑止によって平和が維持できるというこういう理念を今後とも持ち続けていくということは、結局は核の存在を肯定することになる。核兵器を地球から完全になくそうということとアンチテーゼなのね、まるっきり反対の立場に立つ。だから、核兵器がなくなれば核戦争がなくなるわけですから、そういう意味では核兵器をやはりなくしていくという方向への努力に大変なブレーキをかける。そういう状態がやはりこの問題としては考えられなければならない。  そういう意味では、核抑止の問題については国連でも繰り返し議論され、それがやはり誤りであるという問題になってきていて、ですからこういう考え方には、世界の中ではもう圧倒的な多数の国々がこういう立場をやはりとるべきではないということなんですね。ですから、こういう核抑止は依存すべきであるという考え方を根底に持つというのは、世界の中では十数カ国、極めてごく少数の国々でしかないということも、やはり今度の四十二国連総会の中で示された私は事実だろうと思うんです。  こういう点では、日本政府が核抑止の立場に立つという点については、やはり世界の大勢からおくれをとるということになるわけですから、午前中の同僚議員の質問の中で、やっぱり唯一被爆国としての立場をどう貫いていくかという見地からも、この問題については明確な対応を日本政府としてはとるべき必要があるんではないかと思うんですが、その点はちょっと大臣の方の御見解を聞かしていただきたいと思います。
  179. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 我が国唯一被爆国である、その点におきましては核に対する格別の感情を国民は抱いておる、これはもう数次にわたりまして国連総会等々でお話をし、また特に日米安保条約の対象国であるアメリカに対しましてもこのことは強く知ってもらっておるというのが現状でございます。しかし、核が事実無制限な競争のもとに生産されたということも事実ならば、そういう際限なき核の開発というものがいかにそれぞれの国家にとって負担であるか、また国民の経済生活、民生等々いろんな影響を与えるかということを知った両国が今回の核に対するグローバルゼロというINFの調印をしたんではなかろうか。そういうふうに考えてまいりますと、その傾向は私たちは当然歓迎すべきである、かように申し上げておるわけでありまして、さらにもっと低レベルで抑止力も保てるんではなかろうか、こういうふうに私たち考え方を申し述べておるわけでございます。  現在といたしましては核は抑止していない、そういうふうに言い切ることも大切であるかもしれませんが、現に西側諸国、我々と同じサイドに立っておる諸国の中の核保有国のある有力な政治家は、今回たとえ米ソ戦略核の五〇%削減を合意されたとしても、私も五〇%それではと言いませんよ、大体私の持っている核の数量までおりてきた場合にはそういう相談に乗ろうけれども、まだまだはるかに多い核を保有している以上は我が国としても抑止力として核は持たねばならぬと、こう言う相当な先進国もあるわけでございますから。  したがいまして今立木さんの申されましたお考え一つのお考え方であるかもしれませんが、現在の我々といたしましては、軍縮は低レベルの軍備を持つことにおいて均衡を持つことが必要。さらには、核は将来に向かって廃絶するけれども、現在は先ほど来申し上げたように核軍縮の第一歩としての評価である、こう申し上げておるわけでございますので、そこら辺も国連におきまして私たちはある程度首尾一貫した主張をし、またその行動をとっておるのではなかろうか、かように考えております。
  180. 立木洋

    立木洋君 いや、特にINFダブルゼロという状況が出てきた事態の中での国連世界動きの特徴をどう日本政府がとらえるかということは、根本的に重要な問題だと思うんですね。やはり低レベルといいましても、核兵器の存在そのものを容認するという立場と、核兵器を地球から一掃しなければならないという日本の民族が念願していることとはこれは両立しないわけですから。私は特に強調したいのは、先進国というふうに大臣言われましたけれども、その核抑止に依存しなければならないということを述べている先進国というのが世界では極めて少数になってきているということも改めて強調しておきたいわけです。  次に、もう一つの決議で四二—三九—Cというのがあります。これは核兵器使用禁止条約という決議ですが、これは、核兵器及びその抑止の概念にその使用が内在することが人類の存続と生命の維持にとって極めて脅威をもたらすものである、だから核兵器の使用を禁止するという条約をやはり締結すべきであるということが提案されております。これも昨年は一昨年より賛成が三カ国ふえまして百三十五カ国、反対が十七、棄権が四というふうな状況になっておるわけですが、この核兵器の使用を禁止する条約を結ぼうではないかという問題についても、日本政府はやはり棄権しているわけですが、これもさっき述べたと同じ理由でしょうか。何か別の理由があるんでしょうか。
  181. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 基本的には同じでございますが、特に核の不使用につきましては、欧州の場合等のように東西間の通常戦力に圧倒的なといいますか不均衡が存在しておりまして、そういった通常戦力の不均衡是正のため、あるいはそういった状況のために核不使用の約束を行った結果、あらかじめ核使用の可能性を一切排除してしまうということは核抑止論そのものの否定になるわけでございまして、もちろん核抑止論についての批判があることは承知しておりますけれども、そういった核抑止論に一定の必要性を認めるという限りにおいて問題がある、こういうことでございます。
  182. 立木洋

    立木洋君 そのほか例えば四二—三一、これも非核兵器国の安全を強化するための効果的な措置をとるべきであるという提案、これにも日本政府は棄権ではなくて反対をしておりますね。核兵器を持っていない国の安全を強化するための国際的な取り決めをやろうと、これにも反対をされている。あるいはまた核軍備の凍結に関する総会での決議、この履行の問題、これについても日本政府は反対の態度をとっておられる。それから核兵器の不使用と核戦争防止という内容はついても、これも反対の態度をとっている。それから核戦争防止という四二—四二—Dですが、これには棄権をしている。それからすべての核爆発実験の禁止、四二—二六—Aですが、これにも棄権をしている。  こう見てきますと、核兵器の除去による安全の保障だとか使用の禁止あるいは戦争防止等々については、棄権したりあるいは反対をしたりという態度をとられているんですが、こういうのが目立っているのは極めて遺憾に見るんですけれども、こういうようなものというのは何を基準にして決められておるのでしょうか。
  183. 遠藤實

    政府委員遠藤實君) 幾つか御指摘になりましたんですが、最初に御指摘になりましたブルガリア提案の非核兵器国の安全保障について、確かに我が国はこれに反対をいたしております。これは実は法的な拘束力のある国際文書の作成をブルガリア等は要求しているわけでございまして、これは当然NATOの核戦略もそうでございますし、西側といたしまして現在の核の抑止力を限定的ながらも必要とするという状況においては、このような拘束力のある国際文書についての決議については反対せざるを得ないということでございます。  他方、同じ名前の決議でございますけれども、これについてパキスタンが提案しておりまして、これにつきましては、ブルガリアの提案に係る決議よりもこの点ははるかに柔軟なといいますか、穏健な決議でございまして、これについては我が国は賛成をしているわけでございます。
  184. 立木洋

    立木洋君 拘束力があるとだめで柔軟だといいということになると、使用禁止の実際には役に立たないようなものであれば結構だけれども、実際に使用禁止するというそういう安全保障の上で拘束力のある内容になってくると、どうも日本政府は極めてあいまいな態度をとるというふうな、あなたの答弁になるとそういうことになってしまうと思うんですね。  私は、これすべての一つ一つを挙げてここで申し上げようとは思いませんけれども、一度大臣に私はよく見ていただきたいと思うんです、どういうことが国連で決議されているのか。見てみますと、核軍縮問題に関する決議に対してアメリカが行ったと全く同じ態度をとっているというのは世界じゅうに一カ国もないんです。アメリカが反対したら全部反対している、アメリカが賛成したら全部賛成しているそういう国は世界じゅうに一カ国もないんです。 どこかが違うんです、全部。そして、アメリカと態度が違ってきている国々というのはふえてきているんです、NATOの諸国の中でも。これはこの数年間のやはり特徴ですね。  私は長い目でこの問題というのは見ることが非常に重要だと。そして、日本の国が唯一被爆国というふうに午前中宮澤議員の質問に対してお答えになられて、そういう点での努力の必要性ということも大臣は確認されたわけですし、やはり本当にこの問題を私は真剣に考えていただきたいと思う。今国連の中で日本政府がとっている立場というのは極めて少数の、そういう立場にあくまで固執しているという状況がやはり国際的にもますます浮き彫りになってきているということを示したのが私は今度の四十二国連総会の特徴でなかったかと、こういう点では極めて遺憾に思いますし、極めて私は残念に思うんです。  ですから、唯一被爆国としてのあり方の問題、これから真剣にやはり核兵器を地球からなくしていこうという努力、これをさらに積極的は進める、そういう立場こそ今日本の国民が求めているんだということを十分に考えていただいて、まだお読みになっていないいろいろな決議もあるかもしれませんけれども、ぜひ大臣も一度ごらんになっていただいて、今の世界の動いている方向を十分に検討していただきたいということを、今私と同じ意見を直ちに持ってくださいと言ってもそれは無理でしょうから、よく研究していただきたいということを要望いたしたいんですが、大臣の所見を。
  185. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 国連局長からいろいろ答弁がありましたが、私が先ほど申し上げましたような基本的な線を踏まえての対応である、こういうふうに私は考えております。しかし、全部が全部まだ読んだことはございませんから、その点は一回読んでみます。  しかし、日米間の防衛というものに関しましては、安保条約の体制というものがこの四十三年間我が国の平和と安全を保ってくれたと、かように私たちは信じておりますから、したがいまして、そういう関係におきましてもやはり日米はよきパートナーであるというふうな一つの面も他の国とは違った面があるかもしれません。そうしたことはそうした面で私たちは理解していかなければならないと、かように思っておる次第であります。
  186. 立木洋

    立木洋君 これはこれ以上論じるつもりはありませんけれども、例えば包括的な核実験の禁止ということを日本政府というのはずっと強調してこられたようですね。包括的な核実験の禁止、核実験をなくそうという点については相当強調してこられた点だと思うんですね。  それで、なかなかそれは検証の問題があるとかいろいろな問題が確かにありましたけれども、最近アメリカではこの核実験の禁止という点についても反対しているんですよ、包括的な核実験の禁止。それに調子を合わせるような内容に日本の核実験の包括的な禁止条約、ステップ・バイ・ステップという方向で話が進んでいきつつある。つまり、アメリカの主張にかなう方向がこの核実験の禁止という内容でも入れられてきているという点も私は極めて遺憾な点だと。だから、そういう方向でない方向を私は探究してほしいということもあわせて一言申し上げておきたいと思うんです。  次に、これも同僚議員から大分出されましたけれども、ODAの問題ですね。これも一般会計や財投、特別会計など合わせますと相当な額になっている。金額にしますとざっと百億ドルぐらいにもなる。だからもう日本世界で第一位ではないかというふうな声さえも出てきている状況になっているわけですね、絶対額としては。ですから、この問題というのは私は確かに量の問題と質の問題と両面があると思いますけれども、ここで改めてODAの目的といいますか理念といいますか、これをやっぱりもう一遍振り返ってみる必要があるんではないかというふうに考えるんですが、この理念、目的という点について大臣の御所見をまずお伺いしたいんですが、このODAの目的、理念について。
  187. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) ODAは先ほども累次お話をいたしておりますが、あくまでも南北間の根底に横たわっている人道的な考慮並びに南北相互依存、そうしたことで発足して、現在におきましては各国それぞれがODAこそが本当の意味の援助である、そういうふうに言ってくれるわけであります。もちろんODA以外に政府機関以外の援助とか一般民間の援助等々幾つもあるわけでございますが、だからODAの中には有償もあれば無償もある。無償の中には無償とそして経済協力ありと、こうやって幾つも細分されていくわけでございます。  やはり最近の日本の力というものから考えまするに、また事実国際社会が眺める日本立場というものから考えまするに、総額は確かに世界一ではございますが、内容において指摘されるところ多々ありと申し上げた方がいいのではないだろうか。やはりODAでせっかくの援助を続けておりましても、何かこづかれながらやっておるとか、あるいはまた不服たらたら、不平を言われながらしておるというようなことでは、これまた国民の税金を中心としたせっかくのODAに対する援助でございますから、さような観点から申し上げましてもやはり私たち国際社会にこたえ得るような内容というものをさらに勉強する必要があるのではなかろうか、かように思っておるという段階であります。
  188. 立木洋

    立木洋君 これまでODAの問題については繰り返し国会の場でも何回も議論されてまいりまして、そしてこれが軍事目的に利用されるようなものであってはならない、あるいは紛争当事国に行ってはならない、あるいは紛争を助長するようなものであってはならない等々の国会のそれぞれの外務委員会等における決議等もあったわけですね。  さらには、この問題について言いますと、実際に援助を受けている国の実情に合っているのかどうなのか、そこの民生の向上に役に立っているのかどうなのかというふうな問題、つまり適正に行われているのかどうか、それからそれの効率、有効性がどうなのかというふうな問題、いろいろな問題というのが今までも繰り返し議論されてまいりましたし、これがましてやその腐敗や汚職等々とのかかわりがあるようなことはこれは論外ですが、そういう問題についても、これらの問題というのはやはり我々としては国民の税金が正当に使われなければならないわけですから、そういう意味でも厳しく論じてきたわけですが、今後こういうふうな膨大な量になってきている状況の中で、とりわけこれまでのそういう幾つか国会で議論されてきた教訓といいますか、そういう問題点、特にどういう点を今後注意していかなければならないというふうにお考えになっておられるのか、その点の説明をお伺いしたいんですが。
  189. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 端的な例を申し上げますと、この間もASEAN会議日本出席を要請されましたので、去年の暮れに総理と私と出かけたわけでありまして、その際にも二国間の問題としてそれぞれの領袖と総理との会談がございました。もういずれも期せずしてまず私たち考えなければならぬのは民生の安定である、それによった福祉の向上である、これが一番大切だと、そのためにはどうしても経済の安定、そしてそれによる政権の安定、こうしたことをお互いに考えていきたい、かように思うので、ぜひとも日本のさらにそうした趣旨においての援助のほどを請うということが六人の首脳いずれも申されましたことでありまして、これはそれぞれの援助国がみずから申されたことでございますので、私は大変大きな響きを持つ言葉だと思いました。  それがひいては南北間の相互依存であり、あるいは南北に分けた場合の南にまだ途上国が多いというような問題についての認識ではなかろうか、かように思っておる次第でございますが、先ほどもいろいろと御質疑があり、また御答弁申し上げましたとおり、金だけではなく、やはり心というものも十二分に日本が持って臨まなければならない、かように思っております。  そこで、大切な国民の税金ですからもっと監査しろという声もあるんでございますが、そこまで言ってしまいますと、これは内政干渉になりますから、あくまでもプロジェクトを相手国が出されました場合に、そのプロジェクトを本当にどういう目的でお使いになるのかということを相手国の立場に立って、国民の立場に立って私たちも真剣に検討を申し上げなければならない。試みにフィリピンとはこの間私が行ったときに第十四次の調印をした次第でございますが、そうした問題に関しましては、既に一つのフィリピンに対するところの援助のあり方、それについて小委員会等々設けまして、その小委員会がいろいろとエスティメートを行ったわけでございます。  その結果、さらに調査団を派遣して、そしてどういう方法がこの国に一番いいんだろうというところまで実のところは調査もしていただいた結果、では政府のおっしゃっておることと私たち考え方が合致いたしました、ひとつこういう線で臨みましょうというふうなことがあったわけでございますので、そうしたことも今後のこのODAの大切な使い方ではなかろうかと私たち考えております。
  190. 立木洋

    立木洋君 今まで、日本政府はかつて経済協力の供与の基準というのをつくっていましたですね。そして無償援助は一人当たりGNPが六百二十五ドル以下の国に対して行う、それから円借款の場合はGNPが千ドル以下の国に対して行うと。これは一九八四年度から変更されまして、そして無償援助は七百九十五ドルですか、そして円借款の場合が千六百四十五ドル以下というふうにされたというふうに記憶しておりますが、その後現在の状況では変更はございませんでしょうか、この基準については。
  191. 英正道

    政府委員英正道君) 無償資金協力は特にそうでございますけれども、やはり供与能力に限界がございますのである線を引いて、こういう種類の援助はこういう国を中心にやろうという援助適格国ということをやっているわけでございますが、絶対の、もうその線を一歩踏み越したらやらないというのではないんですが、これは世界銀行の援助を、いわゆる市場条件でやる世銀と、それからもうほとんど金利のない第二世銀の借款と、それを分ける基準を準用しております。  それで、毎年それは世界銀行の方である方式に基づいて計算をしておりまして、これは国によっては一人当たりのGNPがずっと一本調子で上がるということでなくて下がる場合もありますものですから、そういう計算でしたものをやっております。ただ、全体としては徐々に所得が上がってまいりますから、その基準というものはずっと上向いております。  具体的に、一九八七年度の実施については、無償資金の場合には一九八四年の一人当たりのGNPが七百九十ドル以下の国を対象とする。これが八八年になりますと、一年上がりました一九八五年の一人当たりのGNPが七百九十ドル以下、この場合にはたまたま変わっておりません。有償資金協力の場合には、御指摘のように、八七年度については一人当たり八四年のGNPが千六百三十五ドル、八八年についてはやはりこの場合も八五年の一人当たりのGNP千六百三十五ドルということで、たまたまこの八七年と八八年については基準は変わっておりません。  ただ、私どもが日本政府の有償資金協力、無償資金協力を供与する場合には、途上国の状況を見まして、その国の経済が急速に下降しているというような状況でございますとか、例えば日本から行っております移民の生活にも関係があるとか、そういうある合理的な基準のもとで今のような世界銀行の定めた基準から若干超える国にも援助を行っているということはございます。
  192. 立木洋

    立木洋君 まあ先回りされてそういうふうに答弁されてしまうとなかなかこちらも質問しにくくなるわけですが、かつては、英さん、比較的供与基準というのは守られたんですよ。八〇年代の前後からこれがだんだんだんだん崩れ始めまして、なぜそれが崩れ始めたのかということはきょうはもう時間がないからこれ以上議論できませんから、次の機会にまた十分にやらしていただきたいと私は思うんですがね、これはやはり非常に私は大切なことだと思うんです。  先ほど大臣が例えば人道上の目的、民生の安定、これは非常に重要だというふうに言われておりますけれども、今アフリカは飢餓や貧困の問題で世界で最悪の状態にありますよね、集中的に今アフリカに飢餓や貧困という問題が生じておりますけれども、つまり最もおくれたこの途上国つまりLLDCに対する援助というのは、日本はいわゆる十八カ国の中で見たらどういう状況ですか。
  193. 英正道

    政府委員英正道君) ちょっと今手元に数字を持っておりませんが、たしかGNP全体の中で一五%を切れるぐらいの数字で、DACの中では十八カ国中の恐らく十七番目か十八番目だろうと思います。
  194. 立木洋

    立木洋君 これ人道的といいますけれども、今や飢餓や貧困で最大の問題になっているところに対する援助というのは先進国の中でやっぱり最下位の状態で低迷しているんですね、日本の国というのは。で、状態を見てみますと、これは八二年から八五年までの状況を見ると全体の援助額の一一%だとか一三%だとか、人道的なこういう飢餓、貧困等々に対する援助の占める比重というのは極めて低いんですね。こういう問題がありますし、それから一九八二年から八六年までこの援助の総額というのが八%ふえているんですよ。ところが、この人道的な援助の額というのは二〇%余り減っているんです、比率が、援助の内容を見てみますと。これはやはり人道と民生の安定だということが目的に掲げられながらも、実際にはそうなっていないという一つの私は証明だろうと思うんです。  それで、これはもう具体的な例をここで述べるわけにはいきませんけれども、私はここで特に強調したいのは、前もこの外務委員会で問題になったことがありますけれども、つまり我が国は外国に対する援助を行う場合の理念と目的、これを体系的に明示した援助政策、これを律する法律が日本にはないんですね。これは設置法がありますよ、いろいろの設置法が。その設置法の中にはどうしなければならないということがありますけれども、いわゆる援助の政策、この理念、これはどういう目的とあれでやるべきかということを明確に律した法律が日本にはない。  世界をいろいろ見てみますと、アメリカでもこれはございますし、それからイギリス、イタリア、オーストリアなどでも援助基本法という法律があるわけですね。アメリカでも対外援助法、これは援助に関する実質的な事項として国会でも審議されているわけですが、やっぱりこういうものがきちっとあって、そのときどきの状況に左右される。一定の政策的な必要性があったにしても、基本基本として明確な法的な体系が私は必要ではないだろうか。  そしてそれが人によって左右されるんではなくて、日本の政策として、先ほど大臣から述べられたような内容なら内容に基づいて、それがどうあるべきかということはきちっと必要なものは公開されるし、民主的な手続も経るし、そして内容も十分に充実したものとして適正な援助が行われるようなそういう法体系はやっぱり完備する必要があるんじゃないかということを最後にお聞きしておきたいんですが、まだこれ後ずっと続くんですけれども、もう二十分で私の質問終わりですから、その点できょうのところの大臣の御答弁をいただいて、きょうの私の質問はここで終わらしていただきますけれども、いかがでしょうか。
  195. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 一本にまとめて援助法もつくり、さらに効果上ぐるべしという御意見だと、こういうふうに拝聴いたしておりましたが、それぞれ国にも事情がございますし、我が国は各省それぞれこのODAを扱っておりまして、現在のところでは非常にうまくいけているんじゃないだろうかと、私はかように思っておりますから、まあ将来の検討事項でございましても、今日ただいまでその方がよろしいですねというふうにお答えするわけにはまいらないんじゃないか、かように思っております。
  196. 立木洋

    立木洋君 それでは次に譲ります。
  197. 小西博行

    小西博行君 私の方からは外国人の留学生の問題について、先日少し予算委員会で幅広い形でやらしていただいたわけです。午前中も同僚議員の方からもいろいろ質疑がございました。私は特に外務省お願いしたい点についてきょうは御質問を申し上げたい、こう思っております。ひとつよろしくお願いしたいと思います。  まず、やはり何といっても日本のいろんな事情について、外国から留学しようとする方々にどのような形で情報を提供するかというのが一番大きな問題だと思います。いろんな財団その他を通じてPRするのも結横ですけれども、せっかく在外公館という形でちゃんとしたものがあるわけですから、そういう分野でできるだけ予算をとっていただいて、そして詳しく説明をしてあげるというのがまず手っ取り早い話だろう、そう思いまして、特に情報活動の実態、その辺からお尋ね申し上げたいと思います。
  198. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生御指摘のとおり、留学生につきましては大変重要な問題でございますので、外務省といたしましても在外公館を通じまして情報の提供あるいは日本語の教育あるいはアフターケア等について鋭意努力いたしております。在外公館におきましては、大学案内あるいは留学案内、ここに若干の例をお持ちいたしましたが、例えば「私費外国人留学生のための大学入学案内」、それからこれは英語でできております「ジャパニーズカレッジアンドユニバーシティー」、このような資料在外公館に置きましていろんな照会に鋭意応じております。今後ともさらに、例えば最近では外務省制作の広報映画「日本への留学ガイド」、これも在外公館に配付いたしております。これらの諸施策として、昭和六十三年度予算政府原案におきましては、約四百四十万円を計上いたしておるところでございます。
  199. 小西博行

    小西博行君 今お見せいただいた関係資料なんですが、それも実は予算委員会の前に私はいろいろ調べさしていただいて、そしてなるほど東京大学の中にはこういうものがある、あるいは九州大学にはと、そういうことで大体総花的に書いてあるわけですね。  ところが、この間質問で申し上げましたように、本当に自分が留学しようという場合にその中身についてなかなかわからない。例えば、私の場合ですと経営工学というのが専門ですけれども、経営工学はわかるわけです。しかし、そのもっと突っ込んだ、例えばどこそこ大学の経営工学料にはこういう先生がおられてこういう研究をしているというような、その辺の情報がもうないわけです。恐らく文部省あたりでそういうものをまとめさせますと大体そういうことになるんじゃないでしょうか。各大学の数が多いものですから、大体二行ぐらいでまとめろというようなことで恐らくまとめているんじゃないかと思うんですね。だから私は、そういうような情報だからかえって誤解をされて、そして大きな期待を持ちながら日本へ留学してくる。しかし、十分にそれにはこたえていただけないというところが、実は留学生は会ってみますとそういう問題が非常にあります。  特に国費留学の場合は大学を自分で選ぶことができませんし、大体この辺だろうということで専門の分野を調整はするんだけれども、実際来てみると全然自分と違う分野だというようなことで、例えばよその科へ行きたいと言いましてもそれは全然許可にならないわけですね。自分で選ぶことができないわけです。国費留学の場合はどららかというと地方の国立大学へできるだけ分散しようということでやっているわけですね。私費留学の場合はどうしても首都の東京へ行きたいというのが、東南アジアなんかは特にそうだろうと思うんですが、恐らく東京へ全部集まってくる。圧倒的に数においてはもう国費留学よりも私費留学が多いわけですから、そういうことになる。しかも、東京で生活する場合にはこうなんだという生活面のいろんな情報というのもなかなかわからない。そういうことで、情報というのは大学だけではなくて、東京の様子についての私は情報が必要ではないか。そういう意味でいきますと、もう情報は大変不足しているんじゃないか。  東南アジアというのは、皆さんもう御承知だと思いますが、比較的日本への留学者というのは多いわけです。もう八十数%は東南アジアですから。しかし、そうじゃない小さい国ほどもっと情報がないんじゃないか。逆に言いますと、地理的にも近い東南アジアの場合ですね、情報もある程度まだわかる。それから先輩もいるというようなことで、東南アジアの方々がだんだん日本にふえている。これはよくわかります。そうじゃない国に対してもそういう情報を十分に体制をつくっていかない限りは、もうこれから先こういう問題が非常に多いんではないかということで、今お見せいただいたその資料はもちろんですけれども、今のビデオテープその他もあるでしょうし、もう少しそういうものは質と量と、本当にサービスができるような、本人がそのニーズにこたえられるような資料を一遍検討していただきたいと思うんです。外務省中心でも、それは文部省の関係もあるでしょうし、その辺を早くやらないとこの問題だけは解決にならないだろう、そう思うんですが、その意思はおありですか。
  200. 田島高志

    説明員(田島高志君) 先生おっしゃいますように、各留学希望者あるいは留学予定者の個々人に応じて、必要とする情報もきめ細かくできる限り提供しなければならないという認識でございます。そのために、例えば先ほどお示ししました資料以外にも「ABC オブ スタディー イン ジャパン」という資料で、「ハウジング」あるいはその他「クライム」、「リビング イン ジャパン」、そういうものが書いてあります資料、あるいは「ライフ アンド スタディー イン ジャパン」、 こういう資料も備えまして、できる限り照会に応じるべく努力いたしております。  それらに加えまして、また在外公館におきましては一般的な日本事情の紹介活動を積極的に実施しておりますので、これらの活動も相当数の日本留学希望者の助けになっているものと考えます。  先生御指摘のとおり、まだまだこの点は十分ではございませんので、文部省、関係機関とも協議、協力をいたしながら、さらに一層の拡充に努めてまいらなければならないというふうに考えております。
  201. 小西博行

    小西博行君 国際交流基金がそういう意味でいろいろ活動なさっているということをもう既に聞いているんですが、十一カ国、百三十二名というふうに伺っておりますが、どういう国に何名、そしてどういう活動を具体的にやっていますか。
  202. 田島高志

    説明員(田島高志君) 国際交流基金の活動につきましては、特に留学生とは直接関係を持っての、それを目的としての活動といいますよりは、我が国文化事情等々の紹介、幅広い活動を行っておりまして、その一環といたしまして、もちろん留学生希望者からも照会がありましたり、あるいは基金の事務所が行います文化事業の活動に参加希望がありますときには招待をいたしたりしております。  国際交流基金の在外事務所でございますが、現在アメリカ、イギリス、フランス、西独、あるいは若干の東南アジアの国等、十カ国に十一カ所の海外事務所を持っております。これらの事務所では、主として講演会あるいは展示会、映画会等の主催、あるいは日本語講座の運営、日本文化行事への参加ないし協力を実施いたしております。それらの事務所関係予算額につきましては四億四千万円を計上しております。職員数は現在派遣職員が二十名、現地職員は二十八名、合計四十八名という状況でございます。しかしながら、これではまだまだ不十分でございますので、この面におきましてもさらに一層拡充してまいりたいというふうに考えております。
  203. 小西博行

    小西博行君 外務省在外公館の中に広報活動をやるセクションがありますね。その方々が留学生問題を取り扱ってPRしたり、中身の説明といるのをやっておられるんじゃないかと思うんですが、例えば中国、韓国、マレーシアその他、留学生が非常に多い国、大体何名ぐらいの人がそういうものは携わっているんですか、留学生を対象にしていろんな広報活動。
  204. 田島高志

    説明員(田島高志君) 現在在外公館におきまして、広報文化活動のための拠点といたしまして広報文化センターが設けられてある公館がございます。それは全部で二十九カ所でございます。ことしはさらにソ連、それから来年度はポーランドに設ける予定にしております。  広報文化センターに留学生関係の照会がございましたときにはもちろん広報文化センターで鋭意対応いたしますが、広報文化センターが設けられておらないところでも、大使館、総領事館におきましてはそういった照会が当然ございますので、その際には大使館員あるいは総領事館員が、領事部なりあるいはそれぞれ質問を受けたところにおきましてきちんとした対応をしているという体制でございます。したがいまして、人数的には何人という数字がここでは私持ち合わしておりませんが、そのような体制で対応しているという状況でございます。
  205. 小西博行

    小西博行君 大臣、そういう意味で恐らく具体的に対応する職員の数が絶対的に私はやっぱり少ないんだろうというような気がするんですよ。特に私、ニュージーランドのたしかあれはクライストチャーチですか、カンタベリー大学というのがあります、去年行かしていただいたかしら。そのときは、行きますとあそこは在外公館一人ですよね。それで現地から何か二人ほど採用されて、日本人がそのうちの一人ですがね。あのカンタベリー大学というのはもう大変親日派が多くて、日本の例えば私のふるさとである広島大学とかそういうところへ研究者が随分来ているわけです。  それで、行きましたら、日本の勉強をしている方が大勢いらっしゃって、それで日本のいわゆる何か古来の手紙文を教えているわけです。恐らく今の日本人の若い人はああいう文章をよう書かないだろうと思いますが、そういうような文化の高いような文章をやっておられまして、ところがやっぱり聞いてみますと、今申し上げたように、長い伝統がある大学の場合は先輩がいらっしゃいますから、それで日本語をぜひ勉強したいという学生もたくさんいるんですけれども、在外公館お願いするといっても、総領事あれ一人だったと思いますが、どうしようもないというのが実態じゃないかなという私は感じがしてならないんです。  ですから、いやこれから先は大いにやるべきだとおっしゃっても、具体的に今さっき申し上げた人数の件だとかあるいは仕事の内容というものを明確にしない限りは、なかなかそういうように親切に留学希望者に対して御説明するとか、あるいは出向いていって各大学で説明するとかあるいは高等学校で説明するなどできないんじゃないかなという実は私は感じがするものですから、やられるとおっしゃるんならその辺をもっと具体的に詳細計画を立てて、人員増であれば人員増の要求をするなりという具体策がなければ、これ一向に進まないんじゃないかという感じが私はするんですが、大臣の御所見はいかがですか。
  206. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 本省を支援してやろうというお気持ちのあらわれの今の御質問だと私本当にうれしく思うのであります。  先ほども申し上げましたとおり、今国会を通じて、まさに外交日本の将来を決める、そういう意味合いで与野党の先生方から常にそういう激励の御質問をちょうだいいたしました。だから、率直に申し上げまして、せめて五千名体制というのが今の海外における外務省の願いでございます。  私も行管庁長官をやっておりましたが、行政改革というものは何も切るばかりが能でなくて、不要なところをカットして必要なところに足すことである、こういう精神でやりまして、そのとき外務省と余り関係なかったんですが、いささかそうした意味では貢献し得たというような問題もあったわけで、その当時は政府内におきましても、そんなことできるのか、外務省の職員に他省の職員を持ってきて充てるというようなことができるのかというような話もあったんですが、まず外務省が当然こういうときでございますから私たちみずからひとつそういうような方法で将来に備えましょうと言ってくれましたので、一つの方法が見つかったということもございましたが、それだけではなかなか難しい問題でございます。  したがいまして、先ほど来私の決意を申し述べておりますが、私は総理とも二人きりでいろいろお話しすることがございますが、やはり世界に貢献する日本世界に開かれた日本と言うからにはそれだけの体制を整えなくちゃいけませんねと。例えば留学生の問題でも、十万人と言うが大変ですよ、私は滋賀県の小さな町だが五万人だと、その五万人を一九九〇年代につくり上げなくちゃならないんで、二十一世紀になればその倍の十万人を抱えるというんだから、その方々に対して、今文部省も努力しておられるだろうけれども、さらには建設省、国土庁とあらゆる省が努力をして、どういうふうにして受け入れるか、どこかにそのような受け入れ施設ができるのか、こういうことも考えなくちゃいかぬじゃないかと、過般もいろいろな雑談のときに申し上げておりますが、そうした意味合いにおきまして、ぜひとも今御指摘の点に関しましては全力を挙げて本当に新しい方式を用いなければ、到底今日の方式だけではだめである、過般来ずっと本日御質問を賜りました諸先生方にそのようにお答えしてまいったとおりでございます。
  207. 小西博行

    小西博行君 私が実は予算委員会でこの問題を取り上げたのは、今大臣がおっしゃったように、外務省だけでできるものでもないし、それから文部省だけでできるものではないという感じがやっぱり強かったおけです。ですから、特に宿舎の問題とか、後のフォローの問題というのはこれは大きな問題だろうと思うんです。  先進諸国へ留学している人のいろんな意識調査いたしますと、例えば生活に困るとか自分の飯を食うためにアルバイトをしなきゃどうにもならぬというような国というのは余りないわけです、先進諸国の中では。そういう意味で、日本へ留学してきている特に私費留学の人は一生懸命アルバイトをせっせせっせとやるというようなことが中心になっておるようでして、しかも、私がびっくりしたのは、そのアルバイトの質も国によって相当違うそうであります。例えばアメリカであるとかヨーロッパの学生さんというのは、これは人数も少ないんですけれども、例えば家庭教師あるいは塾、そこで英会話とか英語を教えるということで、割合レベルの高いアルバイトができるというんですよ。その他の例えば東南アジアの皆さん方というのは、数も多いんですけれどもアルバイトが大変厳しい。土木工事もそうですけれども、大体飲食店の皿洗いというのが非常に多いそうです。我々が食堂に行きましても大分いるようです。  ですからその辺の格差が相当また大きくできているということで、午前中もありましたけれども、入ってきた学生そのものの質の問題がまた、私も大学で十二年間教えましたからよくわかるんですけれども、ゼミナールなんかやって、やっぱり二人か三人が質が悪いといったら語弊がありますけれども、レベルが違いましたら、これはもうゼミナールも何もならないわけですね。ですから、そういう問題も実は各国立大学の先生とお話をすると出てまいります。だから、その辺のやっぱり留学というのはこうなんだという明確な情報なり、あるいは試験なら試験のシステムを明確にしておかないと、国によってまた随分レベルが違うわけです。ですから、そういう問題もあわせ持っているわけで、もうだれでもいいから大勢いらっしゃい、面倒見ますというものではない。  だから、十万人構想というけれども、十万人というのは本当はそういう立派な勉強したいというような方々が集まればこれはいいんですけれども、最近の就学生の問題のような、とにかく日本でアルバイトをして一年間働ければ帰って店の一軒も持てるという情報すらあるぐらいですから、私はそういう意味で、もっと政府全体でそういう問題を突き詰めて詳細計画をちゃんと出して、各省がやるべきことはこのような計画でやるというような明碓なものがないとこれは実現不可能ではないかというような感じもするわけですね。その辺はどうですか、質の問題なんか特に。
  208. 田島高志

    説明員(田島高志君) おっしゃるとおり、留学生を受け入れましてもなるべく質のいい留学生を受け入れるということがもちろん望ましいわけでございまして、そのためには事前の情報をきちっと提供する、あるいは日本に受け入れましてからの受け入れ体制がしっかりしている、日本の住民ともいろいろな交流の機会がある、日本を知って気持ちよく帰ってもらえる、そういう体制をきちんと確保する、それによって初めてまた質のいい学生も日本に来てくれる、そういう状況になるというふうに思いますので、そのような状況をつくり出すためは、先生おっしゃいますとおり、関係省庁あるいは関係機関と鋭意協議をし、改善策に努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  209. 小西博行

    小西博行君 留学生問題というのはいろんな角度がありますが、いろんな分野の実態調査というのが全くないと言っていいぐらいなんですよ。だから、日本の大学を出られて、向こうへ帰られてどういう仕事をされて、そして例えば研究者になった場合には今どういう成果を上げておられる、あるいは企業へ就職された場合はどうなのかというようなフォローも含めて、あるいは大学で今勉強しておるんだけれども実際中身はどうなのだというようなことも、割合文部省もつかんでいないんですね。ですから、これからだんだんふえるということになれば、特にそういう留学生の実態的なものを調べておく必要があるんじゃないか。それは外務省外務省の担当の分野でやるべきだと私は思うわけですが、そういう現状をこれから先もずっと追っかけていくような体制をとっていく必要があるんじゃないか。不満があるとすれば何に不満があるのかということだと思います。  留学生そのものは、例えば大学へ入ってくる人とあるいは大学院、つまり修士課程とかドクターコースへ来る人とはもう全然違います。目的も多分違うだろうと思います。特に国費留学の場合はもう圧倒的に大学院コースが多いわけですね。そうすると、どうしても学位を取りたいと。その学位の問題も実は日本とアメリカと定義が全然違いますね。日本の場合は相当実績がなければいけないという定義なんです、貢献をしているという。ところがアメリカあたりは違いますね、将来の研究者としての可能性はどうかということで学位を与えるわけですから。だから、日本でもドクターコース出たからといって学位をもらえるわけじゃないですね。やっぱり論文を出して、そうしてその先生あたりがイエスしないとこれはもらえない。だから文科系なんというのは本当にそれはもう大変なことだと思います。  だから、そういう全体的なことも含めて、海外の情報、例えばフランスあたりも相当学位の内容を変えていますね、二種類今度つくりましたけれども、そういうような形の全体の動きがあるはずですから、その辺は私はもう本当に文部省あたりとよく相談していただいてやっていただきたいなと、これは要望ばっかりになりますけれども、今のままのような状態だったら難しいなという感じがしてなりません。  私はきょうこれぐらいで終わりますけれども、実は研究学者ですね。これも日本は今随分大きくふろしきを広げております。科学技術庁もそうですし、通産もそうですし、海外から研究者をどんどん入れて研究やりましょうという、これは大臣も何か発言されておるようですけれども、じゃ具体的にどういう中身をやるのかということになりますと、これはまた大変な大きな問題があります。ですから、国際化と言いながら現実は鎖国から少し進んだ程度でありますから、特に国の内部のそういう政府の中の整備というような問題をぜひとも一日も早く整えていただきたい、縦割りということじゃなくて、そういう目的に合わした対応の仕方というものをぜひともしていただきたいということをお願いいたしまして、私はきょうは質問を終わります。
  210. 田英夫

    ○田英夫君 午前中に宮澤委員も取り上げられましたが、まず第三回の国連軍縮特別総会に関連をしてひとつお尋ねをしておきたい、お願いをしておきたいことがあります。  前回、鈴木元総理がおいでになって演説をされた。今度続いて竹下総理自身行かれて演説をされるということで、大変結構なことだと思います。恐らくもう外務省総理の演説の内容について準備を始められておられるんじゃないかと思いますが、たまたま核軍縮を求める二十二人委員会というのがあります。宇都宮徳馬参議院議員が座長で、鈴木、三木元総理もメンバーに入っておられます。参議院からも同僚議員が何人か入っておられる、私も実は委員なんですが。  ここが近く、竹下総理の演説の内容について、こういうことをぜひ訴えていただきたいということを総理にお会いして申し上げる準備をしております。総理に申し上げたときには、外務大臣にももちろんその内容をお知らせするつもりでおりますけれども、その八項目ある中の一つに、大体第二回のときも、ニューヨークで総会があったその年に世界の各地で地域軍縮会議というのを国連が主催してやられました。前回のときは、アジア・太平洋地域はタイのバンコクで開かれまして、日本からいわゆる国際軍縮促進議員連盟と国連協会という形で、私も実は出席をさしていただいたんですが、大変有意義な地域会議だったと思います。  今回も、この第三回の軍縮特総に関連をしまして恐らく地域会議が行われるだろう。幸いにして明石国連事務次長が軍縮担当ということでありますので既に連絡をとっているんですが、そのアジア・太平洋地域軍縮会議をぜひ広島で開くようにしていただきたい、こういうことを明石さんに有志の国会議員も含めましてお願いしているところであります。この点は、荒木広島市長も大変積極的に来ていただきたいという姿勢をとっておられるようでありますので、総理への要望の中にも入れてありますけれども、外務大臣もぜひ頭にとめておいていただきたい。  ただ問題は、日本で開きますと、円高影響がありまして、この地域会議に参加をされる方々はほとんどアジアあるいは太平洋諸国ですが、NGOの方々ですから政府機関のお金で来られるわけではありませんので、その点が大変苦しいことになるだろう。ということになりますと、どうしても日本政府の御理解をいただいて特別の経済的配慮をしていただかないと、せっかく開くことになってもなかなか難しいんじゃないか、こういうことでありますが、大臣のお聞きになっての今の心境を聞かしていただきたいと思います。
  211. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 田さんを初めそうそうたるお方の御提言でございますから、政府といたしましても承りましてこれは慎重に検討しなければならない問題ではないか、かように思っております。  もちろん日本で開くという意味におきましては一つの意義があるかもしれません。このことに関しましては、国連がどういうふうに今までずっとやってきたか、私も詳細にわたりましてはまだ検討いたしておりませんので、局長なりそうした方方の専門的な意見も十二分に聴取いたしまして、そうして御提案等々に対しまして対処をいたしたいと、かように思っております。
  212. 田英夫

    ○田英夫君 次の問題ですけれども、先日、日本に国際政治学の勉強に来ておりましたイギリスの若い学者の卵と言っていいような人が、日本を去るに当たって日本外交について感想を述べたものを読んだのですけれども、対応外交だという言葉、日本語に翻訳してありましたが、英語で何と言ったのかしりませんけれども対応外交だと。何かあるとそれに対応する、そういう意味の対応外交だと、こういう批判をしていたのであります。  私はそれに全面的に同意するということではありません。しかし、そういうふうに言われても仕方がないという面もあるのではないかな、こう思うんですね。それは問題と相手の国によるような気がいたします。その最も典型的な例が実は朝鮮半島の問題ではないかと思うんですよ。  日本政府は、日韓基本条約を結んでおられるということである程度明らかかもしれませんけれども、しかし、朝鮮半島には二つの政権がある、国と言ってもいいかもしれませんが、国がある、政権がある。これについて基本的にはどういう姿勢なのかということを改めてお聞きしておきたいと思います。
  213. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 表現といたしましてはお気に召さないかもしれませんが、北には北朝鮮と、こういうふうに私たちは呼んでおるわけでございまして、まだ国交がございませんから北政権というふうな言葉は使いたくないというのが現在の私でございますから、そこはひとつ御理解賜りまして、こいねがわくは南北が一本化されるということは非常に大切なことではないかというふうに私たち考えておりますが、このこと自体に関しましてはやはり南北自体の問題であるというふうにまず考えておかねばならないんではないだろうか。  しかし、最近の韓国のオリンピック等々を契機といたしまして、ソ連もあるいは中国もいろいろ姿勢に変化が見られるが、そうした点はどう評価するのかという問題もございましょうが、私はやはり南北問題は歴史的に非常に不幸なことがあったから今日分断状態にあるし、これまた戦勝国が勝手に民族の意思を問うことなく分けてしまったという最大の問題がありますから、私たちの意思の及ばなかったところで、この点は歴史的にも私たちは遺憾であるとしか言いようがございません。  しかし、やはり南北両朝鮮半島における人たちがひとつこの問題は解決していただくと同時に、並行的に日米あるいはまた中ソ、この関係が常に平衡を保たれておるということが大切ではなかろうかと。どちらかがどちらかにちょっと力を入れたということでバランスを崩してはいけませんから、私たちといたしましても今そのような考え方におるということは、これは朝鮮政策として常に申し上げておるところでございます。
  214. 田英夫

    ○田英夫君 私の意見を言わせていただければ、日本人としてこの朝鮮問題を考えるときには、私は二つの柱が必要だと思っています。  一つは過去の三十六年に及ぶ支配ということに対する反省、これは大臣も最近訪韓されました、向こうの韓国の皆さんの空気は十二分に御存じだと思いますけれども、やはりいまだに庶民の間では日本に対する感情というものは厳しいものがあります。私も韓国に何度も行きました。町で酒を飲んだこともありますが、そういう点は厳しいものがありますから、いまだに日本の映画、音楽、演歌はもともと韓国が元祖だとさえ言われているにもかかわらず、日本のそうした歌も向こうでは自由にはやれないという向こうの厳しい対応があるわけで、こんなところにもあらわれていると思います。  もう一つの柱は、やはり今大臣も言われた、南北に分断をされているのは朝鮮民族の意思ではなかったわけでありますからそれを統一する、そのために日本人としてできる限りの協力をすると。もちろん南北本人同士のという大臣の言い方は理解できますけれども、我々としてもそれに協力をする、少なくともそれに障害を与えるようなことを政府並びに日本はやるべきではないと、こういうことだと思っているわけです。今回の大韓航空機行方不明事件については、私はあした質問をさせていただきたいと思います。そして、制裁措置の意味などについても、今申し上げた原則からするならば私は大変残念なことであったと思いますが、私はそういう意見を持っております。  そこで、それを突き詰めて一言で言ってしまえば、南北の緊張を緩和することが一番大事な点ではないか。その意味からも制裁措置というのはまことに残念であったと思いますが、こういう私の意見に対しての御見解を承りたいと思います。
  215. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 大韓航空機の個別の御質問がございましたときには詳細にわたりまして御説明も申し上げたいと思いますが、要は北鮮のテロ行為であるというふうに我が国も認定いたしまして、そうしたことにおいて北鮮に対する措置をとったわけでございます。よく吟味していただきますとおわかりたまえると思いますが、制裁という言葉は使わずに措置ということで、公務員等等の交流を禁ずるとかいうふうにいたしたわけでございますので、やはり緊張緩和ということを常に頭に置きながら、私たちといたしましては北朝鮮が余り孤立化してしまわないようなことも念頭のどこかに置いておかないことには、いたずらに一国だけが孤立化してしまって何をやってもいいわというようなことがありましたら大変でございます。  この点は私も、日本も心を使っておりますが、やはりアメリカも心を使い、あるいはまた中ソも心を使っていらっしゃるんじゃなかろうかと、こういうふうに思っておりますので、この間の大韓航空機事件に関しましては、これはテロ行為でありまして断固究明をしなければならない問題であり、二度と起こらないためにもというので国連におきましても安保理が特別に招集されました。そのときにも、我が国政府代表からは、今私が申し述べましたようなことに関する意見の発表をしておいてもらったというのが経緯でございます。
  216. 田英夫

    ○田英夫君 けさの新聞に、先日の外務大臣の訪韓が契機になって、日韓友好協会あるいは韓日友好協会というものをつくる準備をしているという記事が出ておりました。私は初耳でありましたが、これは事実でございますか。
  217. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) 詳細はまたアジア局長から申し述べますが、実は現在日本にはそういう協会はありません。そして、私が向こうに参りましたら、田委員も御承知の日韓正常化のときの韓国の国務総理でございました丁一権さん、この方が会長として就任をしておられまして、相当重厚なメンバーで、今後なお一層日韓の関係は深めなくちゃなりませんと、こういうごあいさつもしておられました。  したがいまして、日本も早くつくってくださいという話は改めてなかったわけでございますけれども、向こうがそうした体制をとっていらっしゃるとやはりつくった方がよいのではないかと、こういうような考え方があるだけでございまして、今人選に入ったとか、どういうような規模とか、まだこのことに関しまして検討をいたしておりません。韓国側の韓日親善協会はどういう組織、どういうメンバーでおやりになっていますかということを一度改めて我々といたしましても承知いたしたいというのが現状でございます。
  218. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま大臣から御説明申し上げました以上の本日の新聞報道に関する特別の情報は持ち合わせておりません。
  219. 田英夫

    ○田英夫君 もう一つ、これは今その朝鮮半島の問題はどうも対応外交一つの例じゃないかという私の気持ちで申し上げたのですが、逆に私は日本政府外務省でおやりになっている外交の中で、もちろん問題があるから対応するのは当たり前ですけれども、カンボジア問題に対する取り組みというのは大変評価をしているわけでありますが、もちろん基本姿勢も変わっていないということでその点のお尋ねはしませんけれども、具体的にシアヌーク大統領の訪日を要請して、そして今いわゆるへン・サムリン政権のフン・セン首相とも話し合いをされていた、そんないきさつの上に立って日本政府が積極的にカンボジア問題の解決に乗り出そうというようなそういうことも聞くのでありますが、このシアヌーク大統領の来日という問題はどういうことになっておりますか。
  220. 宇野宗佑

    国務大臣宇野宗佑君) また詳細は藤田アジア局長から申し上げた方がいいと思いますが、今、田委員が御指摘のとおり、やはり平和に貢献したい、またそのためにはやはり我々も経済大国と言われる以上の方途があるであろう、こういうような気持ちがまず根にあるものでございますから、積極的に私たち地域紛争なり二国間の問題にも、介入では決してございませんが、日本として尽くし得る問題ならば尽くしたい、これが基本姿勢でございます。  カンボジアも今御指摘のとおりでありまして、既にシアヌーク殿下がそういう御意思を持っていらっしゃるということも、十二分にこちらもキャッチいたしましたので訪日を御招請申し上げました。そして、多分夏にはお越しになるのではないだろうかと、そのような回答を得ている次第でございます。  そこで、日本の主張といたしましては、ベトナム軍に直ちに撤兵をしてもらいたい、後のカンボジアの民族自決はやはり民族自決の方法等でおやりになるのが一番至当ではないか、これを基本路線といたしております。
  221. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま大臣から御答弁がありました以上、特につけ加えることはございません。
  222. 田英夫

    ○田英夫君 今度はまた逆に、対応外交と言われるものは、問題あるいは国別にどうも起こっているんじゃないかと申し上げたのですけれども、アメリカとの関係ということになりますと、なぜか非常に対応的な姿勢が目立つように思いますね。これはきょうは時間がもうありませんので細かな具体的な問題はお聞きいたしません。  それから中国の問題についても、やはり基本的にこれは日中平和友好条約で姿勢は示されていると思いますけれども、具体的に日本は一体中国との関係を、経済を含めてどういうふうに積極的にやっていこうと考えているのかという政府の姿勢というのは実は余り定かでないように思います。そういう意味で、非常に大切な関係にあるはずのアメリカと中国については、いささか対応と言われても仕方がないんじゃないか。ソ連に対する姿勢というのは、これはだれが見ても、いい悪いは別にして非常に明快なんじゃないだろうか、こういうふうに私は思えて仕方がないのです。  アメリカとの関係につながるのかもしれませんけれども、いわゆる日本の安全保障という問題についての政府の姿勢というものはそれなりに一つの方向で貫かれてきているのじゃないか、これもいい悪いは別にいたしまして、そんな感じを持っております。しかし、いい悪いは別にしてというのは、私は政府外務省がお考えになっている安全保障政策についての基本的な姿勢というものと反対でありますが、そういう意味でその最も最たるものは、これはもう方向は一貫しているんですけれども、私が全く賛成できない最たるものは非核三原則の問題だと思っているのです。  非核三原則そのものはもう繰り返し歴代の総理外務大臣を初め皆さんがこれは堅持すると言っておられるわけですけれども、それはだれが見ても、つくらず持たずは日本自身の決心の問題でこれは守られてきていると思いますが、持ち込ませずという点については、これは全くしりが抜けているといいましょうか、実は非常にあいまいであるということをもう国会で何十年か疑惑を議論されながら今日に至っていて、政府の姿勢は一貫してアメリカから事前協議の申し出がないから持ち込まれていない、こういう御答弁で終始して、これはその意味で一貫しているんですが、この点をやはり明快にする必要があるんじゃないかと私は思うわけですね。  そこで、十二月のこの委員会で、フィリピンのウィグベルト・E・タニアダ上院議員の非核法案というものを、そういうものがあるということだけ若干御紹介したと記憶しておりますが、これは今外務省は既に入手しておられますか。
  223. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) ただいま委員指摘の非核法案、タニアダ議員等十名の提案になるものと、それからもう一つ、ピメンテール上院議員が別途もう少し詳細な法案を提案しておられまして、この二つともに上院にかかっております。私どもも持っております。
  224. 田英夫

    ○田英夫君 外務省、当然これは現地から入手しておられると思うんですが、まさに、サロンガ上院議長もこの十人の中に名を連ねておられるということですから、上院は二十四人のうち野党は二人しかいない。もっともその二十二人の与党の中にもそれぞれお考えにいろいろ違いがあるようですけれども、上院議長を含めて二十四人中十人が署名して提案しているということになりますと、常識では上院は少なくとも通るというふうに考えられるわけでありますが、一言で内容を言えば、憲法に既に非核ということが規定されているわけですから、それに基づいて罰則などを定めたということではあります。  しかし、その趣旨説明の中で、ニュージーランドのロンギ首相の姿勢を非常に評価したり、そういうことになっておりますから、これがもしあのまま成立するようなことになるともう一つ別の法律案でいわゆる監視委員会、核兵器監視法という名前をつけている法律で監視委員会というものをつくって、米軍の艦船に対してあるいは飛行機に対しても核を持っているかどうかを問いただすということまで内容にした法律案が出てきているわけですね。これはアメリカにとっては大変なことだと思うんです。どなたでもいいんですが、このフィリピンの現実化しようとしているこの法律案について、他国のことですけれども、外務省としてはどういう感想をお持ちですか。
  225. 藤田公郎

    政府委員(藤田公郎君) まず第一点は、ただいま委員指摘のとおり、新しい憲法が採択されましたあのころの熱気のもとで非核条項をより具体化するということでタニアダ議員もピメンテール議員もこういう法案をつくられて提案されているということでございますが、現在の状況下で、確かに人数ということから申しますと多くの方が提案者に名を連ねてはおられますけれども、法案の推移がどういうふうに動くかというのは私どもにはわからない状況でございます。  それから第二番目に御質問の、これについてどう日本政府として考えているかということについては、まさに委員がおっしゃいましたとおり他国の内政にかかわることでございますので、とやかくの論評を行うのは差し控えた方がよろしいのではないかと思います。
  226. 田英夫

    ○田英夫君 ニュージーランドのロンギ政権がああいう非核政策をとったことでアメリカもかなり圧力をかけるなどしたことは記憶に新たなところでありますけれども、今こういう法案が上院に提出されてきているという状況で、願わくは、私はアメリカがフィリピンアキノ大統領に対して再びいろいろと圧力をかけるというようなことがないことを望んでやまない、そういう心境です。しかし、現実に私の耳にするところでは、いわゆるクラーク、スービック両基地の維持を含めて、この法案に対してもアメリカはいろいろいわゆる圧力を加えているというふうに聞き及んでおります。アキノ大統領もその意味では苦境に、板挟みというように形になりつつあるのではないかと心配をするわけです。  私自身は、非核三原則を堅持すべきだというそういう意見でありますから、そのことと照らし合わせて、このフィリピンの非常にすばらしいこういう法案というものがアメリカの圧力によって葬られるというようなことのないようにということを申し上げて、時間が来てしまいましたので終わりたいと思います。ありがとうございました。
  227. 森山眞弓

    委員長森山眞弓君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時十二分散会