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1988-05-18 第112回国会 参議院 科学技術特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十八日(水曜日)    午後一時十分開会     ─────────────    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      林  寛子君     木村 和喜君      前島英三郎君     二木 秀夫君      最上  進君     野沢 太三君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         飯田 忠雄君     理 事                 後藤 正夫君                 出口 廣光君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君     委 員                 岡野  裕君                 岡部 三郎君                 木宮 和彦君                 志村 哲良君                 高平 公友君                 成相 善十君                 野沢 太三君                 長谷川 信君                 二木 秀夫君                 本村 和喜君                 穐山  篤君                 稲村 稔夫君                 松前 達郎君                 吉井 英勝君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        佐々 淳行君        科学技術庁長官        官房長      見学 信敬君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    石塚  貢君        科学技術庁原子        力安全局次長   緒方謙二郎君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省国際連合        局軍縮課長    桂   誠君        消防庁特殊災害        室長       原  純一君    参考人        日本原子力発電        株式会社技術開        発本部本部長        取締役      板倉 哲郎君        日本弁護士連合        会公害対策環境        保全委員会副委        員長       石橋 忠雄君        東京大学教授   鈴木 篤之君        大阪大学理学部        講師       久米三四郎君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、林寛子君が委員を辞任され、その補欠として本村和喜君が選任されました。     ─────────────
  3. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案について参考人方々から御意見を承ることといたします。  本日は、参考人として日本原子力発電株式会社技術開発本部本部長取締役板倉哲郎君、日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会委員長石橋忠雄君、東京大学教授鈴木篤之君及び大阪大学理学部講師久米三四郎君に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人方々には、御多忙中のところ貴重なお時間をお割きくださり、当委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。  当委員会は、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案審査を進めているところでございますが、本日は、本案につきまして忌憚のない御意見を賜りまして本審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、参考人方々からお一人十五分以内で御意見を述べていただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず板倉参考人に御意見をお述べいただきます。板倉参考人
  4. 板倉哲郎

    参考人板倉哲郎君) ただいま御紹介いただきました板倉でございます。  私は、本法案の一部改正に対しまして賛成の立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。  私は、昭和三十二年に日本原子力発電株式会社が設立されました当初からこの会社に所属しまして、主として放射線安全あるいは原子炉安全の方面の仕事をし、また発電所現場運営にも携わってまいりました。現在は高速炉開発などの技術開発仕事を行っている者でございます。本日、原子炉等規制法の一部改正法案国会におきます御審議に際しまして、我が国における原子力発電現場に携わってきた者の話として何か御参考にしていただくことがあれば幸いと存じております。  御案内のように、エネルギー源の大部分を輸入に頼っています我が国におきましては、発電用燃料も、石油などの特定のものに偏することなく、石炭、ガスあるいは原子力などバランスを考えながら電源開発を推進していく必要があると私は考えております。特に長期的な視点から考えますと、原子力発電は、コスト面また供給安定性などの点から他の電源に比べてすぐれており、放射能についても十分な注意が払われていることから、クリーンで頼りになるエネルギーだと考えております。  こうしたことから、原子力発電開発がこれまで我が国でも積極的に進められまして、現在、発電総量に占めますウエートは約三〇%を超えている段階と思います。で、国民生活を支えます基軸 エネルギー源として今後さらに重要な役割を担っていくものと考えます。  世界的に見ましても、原子力発電利用しています国は二十六カ国、また主要国におきます電力原子力発電依存比率というものは着実に伸び続けておりまして、御承知のように、フランスの七〇%を超えることを筆頭にしまして、三〇%以上の国が八カ国、また一〇%以上の国を合わせますと約二十カ国に及んでおります。世界平均といたしますと、国際原子力機関情報システムのデータによりますと、昭和六十一年度で約一六%に達しております。  一方、近年世界的に見ましてエネルギー需要の低迷の中で、電力の伸びの低下と、またソ連チェルノブイリ原子力発電所事故などの影響によりまして、世界的に原子力計画スローダウンなど、原子力発電にとりましては暗いニュースが目につく昨今でございます。しかし、人類エネルギーを長期的に確保する手段としましては、化石燃料はいずれは枯渇するものであります。また、特に地球的規模から見まして、大量の炭素系燃料使用いたしますと、いわゆる炭酸ガス温室効果が危惧されます。本年四月、日本原子力産業会議年次大会に米国、ドイツ、ソ連フランスあるいは中国など、各国のエネルギー関係首脳者が招聘されたわけでございますが、皆、今申しました観点から、長期的に原子力発電重要性が強く叫ばれ、再確認されたところでございます。  なお、原子力発電安全性につきましては、現場でプラントを動かしています我々は最もこれに関心注意を払っておるところでございます。二年前に起きましたソ連事故は、このような核的暴走事故というものは非常に不幸な結果を及ぼしたわけでございますが、このような核的暴走我が国では起こり得ない事故だと考えております。しかしながら、これまで以上に心を引き締めまして安全確保に努めていきたいと考えております。  次に、原子力発電の大きな利点一つは、一たん発電を行った後も、そのために使われた燃料から再び発電のために利用できます物質を回収しまして、エネルギー資源を有効に利用できるという点が大きな特徴でございます。特に我が国のようにエネルギー資源に乏しい国にありましては、この利点を活用していくことが国全体のエネルギー安定供給を権保する上で極めて重要であり、このような観点から、原子力発電所で生じます使用済み燃料の再処理により回収されるプルトニウム、あるいはまだ有効でありますウランというものの再利用の道を開いておくことが必要不可欠と考えます。  現在、我が国原子力発電のほとんどは、御承知のように、軽水炉で行われておりますが、この軽水炉におきましても、炉内で自然にプルトニウムが生成されまして、原子炉で発生していますエネルギーの約三分の一はこのプルトニウムが受け持っているわけでございます。しかし、プルトニウムの最も有効な利用法高速増殖炉であることは皆さん承知のとおりだと思います。  高速増殖炉につきましては、我が国におきましては実験炉常陽」は運転中であります。原型炉もんじゅ」は現在建設半ばのところでございます。さらに、二〇三〇年ごろこの炉の実用化を目標としまして、現在実証炉に向けての研究開発が進められているところでございます。  なお、一方既存の今まであります軽水炉初期燃料としてプルトニウムを添加した、一般にプルサーマルと言われておりますが、この計画も着実に進められております。現在、既に御承知と思いますが、日本原子力発電敦賀一号機及び関西電力美浜一号機で少数体実証試験が行われているところであります。電気事業者としましては、こういう実証に引き続きまして、今後本格的利用を考慮しているところでございます。また、新型転換炉「ふげん」におきましては、プルトニウム添加燃料が既に全炉心の半数以上に使われている状況で、極めて良好な成績をおさめております。  また、世界的に見ましても、このような原子力エネルギー効率的利用、すなわちプルトニウム利用を進めている国はかなりの国に達しております。使用済み燃料を自国で処理あるいは他国に依頼し処理する、そして核燃料リサイクルを図っているという国は、我が国のほかにも西ドイツ、フランス、イギリス、ベルギー、スイスなど十一カ国に及ぶやに聞いております。また、他の国におきましても、このリサイクルということを一つのオプションとして、まだ政策決定には至っておりませんが、いろいろ考慮されているところでございます。  このようなプルトニウム利用に当たりましては、安全の確保が大前提であることは言うまでもございません。既に原子炉での利用プルトニウム燃料の加工あるいはプルトニウム輸送などにおきまして安全の確保に万全を期し、プルトニウム利用を進めてきた実績もありますし、プルトニウムを安全に取り扱う技術もそのようにして確立されてきております。事業者としましては、今後とも安全確保に一層の努力を注いでいきたいと考えております。  また、安全の確保と並びまして、核物質を扱う以上核防護、すなわち核物質が盗難に遭うとか、あるいは原子力施設が破壊されたりするということのないよう所要の手だてを講じておくことは極めて重要なことでございます。従来から事業者の側でも必要な措置を講じてはきております。今回の法改正趣旨を見ますと、この核物質防護法律の上からも正面から取り上げるものでありますことから、こういう事業に従事、所属しています一員としましても、こういう法案に対しまして賛成するものでございます。  私の陳述は以上でございます。
  5. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ありがとうございました。  次に、石橋参考人にお願いいたします。石橋参考人
  6. 石橋忠雄

    参考人石橋忠雄君) 日本弁護士連合会石橋でございます。着席して申し上げます。  委員会審議の御参考に供するために、日本弁護士連合会の「核燃料サイクル施設問題に関する調査研究報告書」並びに私の意見書とその補充書を提出してありますので、どうか御参照を賜りたいと思います。  日本弁護士連合会は、今次改正案につきましてはまだ正式な見解をまとめておりません。したがいまして、これから申し上げますのは私個人の意見でございます。  まず第一に、今次改正案は、プルトニウムや高濃縮ウランなどの核物質防護、これからPPと申し上げますが、これを目的としたものでありまして、現在青森県六ケ所村に立地が進められておりますいわゆる核燃料サイクル施設、とりわけプルトニウムを生産する再処理工場ウラン濃縮工場建設密接不可分関係にあることは皆さん承知のとおりでございます。この核燃料サイクル施設につきまして、日弁連は昨年九月、核燃料サイクル施設立地は一時中止し、再検討すべきであるとの意見を発表しております。  その次に、PP前提となりますプルトニウム需要予測の問題について申し上げたいと思います。  私は科学者ではございませんので若干の間違いはあろうかと思いますけれども、これは日本科学者あるいはアメリカ議会等でも非常に心配している点でございますので、最初に申し上げたいと思っております。  アメリカ兵器管理軍縮庁の新日米原子力協定に関するメモランダムによりますと、日本MOX燃料使用FBR常陽」、ATR「ふげん」で三百キロのプルトニウムが必要であって、さらに「もんじゅ」と「大間」が完成すればもっと多くのプルトニウムを必要とするであろうと、このように述べております。  他方、我が国では軽水炉においても、先ほどの御意見にもありましたように、美浜号炉敦賀号炉でもMOX燃料使用しているところでございます。これらのプルトニウム使用量は、これは私の推計でございまして間違いがあるかもしれ ませんが、意見書に書いてあるとおりでございまして、これの年間のプルトニウム装荷使用量は約一千五百四十キロと推定されるわけでございます。  一方、昭和六十二年版の原子力白書によりますと、プルトニウム利用形態としてすぐれておりますFBR実用化時期は、二〇一〇年ころよりもおくれまして、二〇二〇年から二〇三〇年ころを目途とするというふうになっております。  ところで、アメリカ議会資料等によりますと、日本プルトニウムを二〇〇〇年ころまでに約八十三トンくらい保有するというふうにされておりますし、日米原子力協定の際の審議におけるワシントンの核管理研究所レーベンソール代表下院証言によりましても、この数値はほぼ符号するところでございます。さらにレーベンソール代表は、今後日本が三十年間にわたって保有するプルトニウム量は二百五十トンに及ぶとも証言しておるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、我が国においては高速増殖炉は二〇三〇年ころになって初めて実用化されるということでございまして、それまでは多くのプルトニウムを、使用ももちろんされるでしょうけれども、抱え込むことになります。御承知のとおり、プルトニウムは一グラムで数千人の人を肺がんにさせたりすると、このようになっております。したがいまして、やはり一般におきましては、これらのプルトニウムを一体どのようにこれから保管して、そして民衆はその生活等規制されていくのか、このような点についてやはり多くの心配と関心を持っているところでございます。  このような問題について、我が国においては、開かれた場所においてプルトニウム使用量あるいはその管理というものについてまだ議論が尽くされていないように考える次第であります。したがいまして、法律ということももちろん大事でございますけれども、その前提としてプルトニウムが一体どの程度返還されてくるか、あるいは六ケ所の再処理工場において生産され、それをどのようにして消費し管理していくのか、このような問題点公開の場において十分議論していただきたいと考えております。  次に、政令などへの白紙委任の問題について申し上げます。  今次改正案は、提案理由説明書によりますと、事業者に対してPPの必要な措置を講ずる際の基準明確化するというふうにされております。しかし改正案は、例えば第十一条の三、第十二条の二に典型的に見られますように、最も重要なPP基準政令とそして事業者核物質防護規定白紙委任しておりまして、したがって、改正案をもってしてPP基準明確化はなされていないというふうに考えます。  ところで、今次改正案昭和五十五年六月の原子力委員会核物質防護専門部会報告を受けているというふうに聞いております。この専門部会報告の中には、使用中、貯蔵中、輸送中の核物質防護の詳細に係る情報管理については不必要に分散されないことと規定されております。この報告考え方と今次改正案に見られます政令事業者への白紙委任立法の仕方をあわせ見てみますと、核物質防護規定は今後非公開となる上に、原子力利用開発に関する情報万般PP理由としてさらに秘密化されるおそれがあろうと考えます。その結果、今次改正案によっては、原子力に反対したり、安全性やそれらの情報を要求する住民運動、その他原子力工場の中の内部告発などと正面から対立し、一歩間違うとこれらを規制する役割を担うことになりかねない、このように考えます。  さらに、PP基準がすべて政令等白紙委任されている結果、核物質防護規定が、住民内部労働者の人権、財産等を侵害する内容を仮に持っていたとしても、憲法や市民法労働法などの観点からこれを事前にチェックするという制度的な保障がないということになります。よって、このような白紙委任立法は、原子力について自主、民主、公開原則をうたった原子力基本法第一条の精神に大きく背くものであると考えます。  これらの問題について、私は、PP条約上の国際約束でありますので、まずこの基準法律で明定するとともに、国会がこれに関与する制度的な保障を設定する方向で改正されるべきであると考えます。例えば一定事項について国会への報告義務を定めるとか、立入検査権等国政調査権の運用を強化するというような明文を盛ることも一案であると考えます。  原子力委員会の五十五年部会報告ではアメリカの一九七八年核不拡散法に言及されておりますが、この法律は、国会への報告公聴会制度を取り入れている上に、原子力規制委員会権限をも認めているのでございます。しかしながら、我が国では法制的に見て、アメリカ原子力規制委員会に相当する独立した官庁がないわけでありますので、この点、国会に対して私どもは大きな期待を寄せている次第でございます。もしそうでなければ、新日米原子力協定によって、アメリカアメリカオリジン核物質については、日本に対し、核不拡散上、情報を求めることができる一方、日本では国会にその権限法律上ないという奇妙な結果になるというふうに考えます。  次に、第二条の定義について申し上げます。  第二条は、「その他の政令で定める核燃料物質」というふうに規定しております。これでは核防護対象となる核燃料物質自体行政庁の判断によって自由に決定されることになるわけでございます。  今次改正は、PP違反には刑罰処分も可能となるわけでありますので、防護対象物法律で定めるのが法原則でございます。これは例えば麻薬取締法毒物及び劇物取締法、あへん法などはそのような法形式をとっておるわけでございます。私としましては、海外返還の高レベル廃棄物もこの法律によって特定核燃料物質に組み込むべきであると考えます。  次に、第五十九条の三について申し上げます。  新日米原子力協定附属書五は、英仏からのプルトニウム輸送北極経由空輸によって行われ、その際、輸送は、輸送機の監視に責任を持つ、操縦士から独立した武装護衛者によって遂行されるとされておるわけでございます。一方我が国は、核物質防護条約第四条第五項により空輸機安全防護の保証を取得すべき国際的な責任を負っているわけでございます。しかるに、第五十九条の三は、事業者運搬について責任を有する者を明らかにし、内閣総理大臣確認を受けるとのみ規定しているわけでございます。しかしながら、このようなプルトニウム空輸は、安全面はもとより、核ジャック対策の面も考慮しなければなりませんので、運搬に関する責任を民間に任せるだけでは極めて不十分でありまして、これは核物質防護条約あるいは日米協定規定等とも著しく統一を欠くことになるわけでございます。よって、プルトニウム空輸責任者は国とすべきであると考えます。  さらに、プルトニウム空輸につきましては、私の意見書改正私案を書いておきましたのでどうぞ御参照ください。  次に、核物質防護管理者について申し上げます。  核物質防護管理者に関する規定は、極言いたしますと、非常に粗雑であるというふうに考えます。例えば毒物及び劇物取締法毒物劇物取扱責任者食品衛生法においては食品衛生管理者の各制度を持っておりますが、いずれもその人数、資格などについては法律で定めてございます。しかるに、今次の改正案に言う「核物質防護管理者」につきましては、それらのすべてを政令等白紙委任しておりまして、その体裁は道路交通法に言う安全運転管理者に非常に似通っておるのでございます。核物質という人類にとって極めて有害かつ危険な物質管理する責任者が、毒物劇物責任者よりも以下の自動車の管理者法律上同等に扱われている点に私は重大な問題点があろうかと考えます。  次に、今次改正案罰則規定は、実質的な核物 質防護要件政令事業者の定める核物質防護規定白紙委任した結果、いわゆる犯罪の構成要件法律上明確となっておりません。したがって、この点は罪刑法定主義上大きな問題があろうかと思います。  その理由を二点ほど補充書の方に書いておきましたので、どうか御参照ください。  その次に、核物質防護管理者運搬責任者保管者制度が今次改正案では規定されておりますが、これらの者の注意義務は、特定核燃料物質に容易に接近できるという立場上非常に重大かつ高度なわけでございます。したがいまして、これらの者がもしその任務に違反した場合には、あるいはその任務違反の結果第七十六条の二などのような結果を生じた場合には、むしろこれに対する刑罰は加重してよろしいかと存じます。  最後に、原子力損害賠償補償契約に関する法律改正の問題となっておりますので、その点を申し上げます。  今次改正は、政府による補償契約解除要件の新設をしております。しかし、これは同法第十五条の趣旨を大きく逸脱した考え方であると考えます。政府は、核物質防護については、核物質防護規定の認可、運搬確認などの強力な権限を有することになっておりますので、そもそも今次の改正案は、法律案要綱、第一「目的改正」にも明瞭に規定されておりますとおり、国際約束を実施するために行うものであります。したがいまして、補償契約を解除して国の責任を果たしたことにはもちろんなるものではなく、むしろ内外からその責任を放棄したという批判を受けかねないわけでございます。  日弁連は、現行原子力損害二法のあり方、特に補償体制については多くの問題があるということをこの報告書の二百五十六ページ以下において指摘しております。現行原子力損害二法が極めて不十分であることはチェルノブイリ災害一つを見ても明らかであろうかと思います。また、英仏からのプルトニウム空輸、高レベル廃棄物返還などが行われた場合、事業者核物質防護措置を怠ったそのことをもって政府補償契約を解除するというのであれば、原子力災害の救済という観点から、無責任という批判を受けてしかるべきであろうと考えます。  なお、核物質防護観点からは原子力損害賠償に関する法律施行令第二条は根本的に見直しを図られるべきであると考えます。  以上でございます。
  7. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ありがとうございました。  次に、鈴木参考人にお願いいたします。鈴木参考人
  8. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 東京大学の鈴木と申します。座らしていただきまして、今回の法改正に賛成の立場から参考人としての意見を申し述べさせていただきます。  今回の法改正をめぐる主要な論点は、私が思いますには次の二つの点かと存じます。  まず第一に、いわゆるPP条約の主要な対象物でございますプルトニウムが今果たして本当に必要なものかどうかという点でございます。  確かに、今日世界における原子力発電は、他のエネルギーがそうでありますように、これまでほどの成長率は見込まれておりませんし、世界におけるウランの市場も、どちらかというと、緩んでいる傾向にあるかと存じます。したがいまして、そういう意味でプルトニウムに対します相対的な必要性というものは低下していると言えるかと存じます。しかし、私が思いますには、プルトニウム利用するということは、実は原子力というエネルギー利用していきます上では、その原子力というエネルギー技術的なあるいは本質的な特徴に根差しているわけでございまして、そのことは技術的に見て非常に重要なポイントになっているということを申し上げたいと思います。  と申しますのは、よく原子力発電燃料でございますウランと例えば石油、石炭のようなものを比較した場合に、ウランエネルギー生産性、例えばウラン一キログラムと石炭一キログラムを比較した場合に、そこから引き出すことが可能なエネルギーの量と申しますのは、石炭に比べましてウランは何百万倍も高いのだということが原子力の特徴として指摘されることがございます。しかし、これは実はその一キログラムのウランと一キログラムの石炭をすべてエネルギーとして使った場合の話でございまして、残念ながら現在の原子力発電所ではウラン鉱山から掘ってまいりましたウランのわずか約〇・五%程度しかエネルギーとして利用していないわけでございます。ということは、先ほど何百万倍、それを仮に二百万倍といたしますと、その〇・五%ということになりますので、約一万倍程度のエネルギー生産性しか上げていないということになるわけでございます。これを原子力利用の本来の姿、つまり何百万倍というエネルギー生産性を達成いたしますためには、一度使いました燃料を再処理いたしまして、含まれておりますプルトニウムを何回も繰り返して使うということがどうしても必要でございまして、それによって初めて原子力利用の本来の姿になるというふうに私は理解しております。  例えば米国のように資源に恵まれている国におきましては、ウランのうちわずか〇・五%しか利用しないというような、そういう使い方も可能かと思いますけれども、我が国のように資源に恵まれておりません国におきましては、やはり掘り出したウランはできるだけ技術によってエネルギーとするということが私はやはり非常に重要ではないか。またそのことが我が国のように技術立国を標榜する国の責任ではないかというふうに私は考えております。  もう一つ今回の法改正をめぐります主要な論点として、先ほども石橋参考人の方から御指摘がございましたが、いわゆる秘密主義のようなものが強くなりまして公開原則が守られないのではないかという点でございます。  私の理解では、原子力基本法にうたわれております民主、自主、公開の三原則は今回の改正においても変わらないものと理解しております。そのことは、私ども研究者にとりましても大変に重要なことと認識しております。ただ、一研究者といたしましては、その研究の成果が世界の平和にとってマイナスになるようなことがないように、やはりそれなりの節度と申しますか、倫理観のようなものを持つべきではなかろうかというふうに考えております。  私はたまたま数年前に、ヨーロッパの各国がこの核物質防護に関連いたしましてどのような考え方、体制をとっているかということを調査したことがございます。そのとき私が受けました印象は、各国がそれぞれに大変に立派な体制をとっているという印象を受けました。私といたしましては、国際社会における一流の技術国として我が国もしかるべき体制を整備していただきたいとお願い申し上げるものでございます。  簡単でございますが、私の参考人としての意見を申し述べさせていただきました。
  9. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ありがとうございました。  次に、久米参考人にお願いをいたします。久米参考人
  10. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) 大阪大学の久米でございます。  私は、原子力発電に懐疑的な立場からこれまでその安全性について研究してきました。それで、本日は急なことでしたので、お送りいただきました二つの資料、法律案資料というのと法律案参考資料というこの二つの資料に基づきまして、本改正案についての意見を申し述べたいと思います。  結論から申しまして、私はこの改正には反対であります。その理由の最も重要な点は、本改正前提に同意できないからであります。  法律案資料の一ページに「改正する法律案提案理由説明」という項がありまして、その中に、「今や、核燃料サイクル事業の本格化の時代を迎えようとしております。」と書いてあります。しかし、私にはとてもそうは思えないのです。  いわゆる核燃料サイクルを必要とする目的は、言うまでもありませんが、プルトニウム利用するということであります。それに関連した中心的な事業は、再処理とそれからプルトニウムを生産する増殖炉とであります。これら二つの事業に適用されています技術の原理というのは、既に何十年も前からわかっていたわけであります。しかし、これらの事業実用化は、従来からかけ声は勇ましいのですが、依然としてどの国でも成功していません。それは実用化に伴う技術的、経済的、社会的な困難をいまだに乗り越えることができないからです。  そうした困難の根源は、言うまでもありませんが、死の灰やプルトニウムなど、厄介な放射性毒物を大量に取り扱わねばならないということにあります。  少し具体的に申しますと、使用済み燃料の再処理では、原子炉運転中に燃料棒の中に閉じ込められていた多量の死の灰やプルトニウムを硝酸で溶かし出す、そういうことから始めまして、遠隔操作ではございますが、化学処理を施していきます。ところが、この硝酸は極めて腐食性が強くて、ステンレスのタンクやパイプに穴をあけ、その補修に大変な手間を要します。また、操作の途中で一たん溶けていた物質が再び不溶性のものになってパイプやフィルターに詰まるという厄介なことが起こります。その上、硝酸に溶けたプルトニウムは、その濃度や操作量の調整を誤りますと、臨界爆発という核物質に特有な厄介な事故を引き起こしかねません。当然ですが、日常的に環境に捨てられる放射能の量も原子力発電所に比べてけた違いに多くなってしまいます。  こうした技術的困難を克服しようとすれば、当然ですが、大変なお金がかかります。例えば日本の動燃の再処理工場では、処理する使用済み燃料一トン当たり約二億円の処理料金を電力会社から取っているようです。これは採算ベースではないと思いますが、それでもプルトニウム一キログラム当たり約三千万という値段になっているわけです。同じ価値の濃縮ウランはほぼその十分の一のコストで入手できるわけであります。ところが、原子力発電の世界的な伸び悩みでウランがだぶついてきてその価格低下が起こっています。その一方で、これから申し上げますように、プルトニウムを必要とするはずだった増殖炉の開発も挫折してしまい、コストの高いプルトニウムの売れ先がなくなってしまっているのです。  軍事用の再処理では世界の先頭にあった米国でさえ、商業用の再処理、つまり平和産業としての再処理事業は幾つかの会社が試みてきましたけれども、すべて失敗に終わっています。ヨーロッパでも、EC諸国が共同してやろうとしていましたベルギーの再処理工場も、十年以上も前に店じまいしたままであります。  それで、最近ではどの国でも使用済み燃料を再処理しないで、そのまま貯蔵したり最終処分したりする方向、いわゆるワンススルー方式と呼ばれておりますが、そういう方式への傾斜を強めてきています。日本でだけ奇跡が起こるとはとても思えないのです。  同じようなことはプルトニウム増殖炉についても起こっています。プルトニウムを本格的に利用しようと思えば、現在の軽水炉使用済み燃料から取り出したプルトニウムだけではとても足りません。そのプルトニウムを元金にしてプルトニウムをふやしていけるような原子炉が必要です。この原子炉のことを増殖炉と呼んでいますが、現在のところ金属ナトリウムを冷却材に使う高速増殖炉が最も実用に近い位置にいるとされています。ところが、この型の原子炉は、チェルノブイリ原子炉と同様に、一たん炉心で蒸気の泡が発生しますと、反応度、つまり核分裂の勢いが大きくなるという欠点を持っています。さらに炉心溶融によっても反応度がふえるという性質もありますから、原子炉暴走の危険は軽水炉に比べてずっと大きくなると考えています。それに、金属ナトリウムという厄介なものを冷却材に使いますから、原子炉や配管の腐食あるいはナトリウムの熱的な性質のために配管などが破損しやすいといった欠点、さらには、よく御存じのとおり、金属ナトリウムというのは空気や水と触れますと火災や水素爆発を起こすという特有の危険も持っています。こうした多くの困難を経済性を保ちながら乗り越え、実用化していくことの見込みが立っていないのです。  それで、米国政府国会の決議に基づいて約五年前に高速増殖炉原型炉開発予算を打ち切りました。これに対してフランスでは、原型炉のフェニックスから実証炉のスーパーフェニックスへと進めてきましたが、ついに昨年スーパーフェニックスでのナトリウム漏れ事故をきっかけに、EC諸国と共同で進めようとしていた本格的な高速増殖炉計画を当分凍結し、一から検討し直すとの方針を明らかにしています。ひとりソ連だけが相変わらず高速増殖炉開発を進めるとしていますが、ソ連でも採算性の要求が高まれば、無理をしてチェルノブイリ事故のような大災害に見舞われるかあるいは開発を中止するかといった事態になるのではないかと考えています。日本では原型炉の「もんじゅ」の建設敦賀で進められていますが、あのタイプの増殖炉で実用化していけるとはだれも思っていないのではないでしょうか。  これまで述べてきましたように、核燃料サイクルという言葉が使われ始めたころに抱かれていたバラ色の期待は今や虚像となり、宝のはずだったプルトニウムは不幸を呼ぶ石となってきています。私には日本においてだけ核燃料サイクル事業の本格化の時代を迎えるという見通しの現実的な根拠がどこにあるのか全く理解できません。  通産通は、手元にお配りしました資料1にありますように、日本原子力がひとり立ちできない産業から「経済原則の働く「通常の産業」」になってほしいと期待しています。しかし、もし核燃料サイクル事業の本格化という重荷を原子力産業が背負い込めば、そうした期待もますます遠のくでしょう。スリーマイル島事故やチェルノブイリの事故原子力の経済的環境の悪化の中で発生しています。その上、もし使い道のないプルトニウムをため込むというような愚かなことをすれば、そのための経済的負担の増大はいわゆるプルトニウムプレッシャーを高め、軍事転用への傾斜を強めていくでしょう。  次に、本改正案の内容について述べておきます。  何より奇異に感じましたのは、改正の肝心の中身が不明なままということでした。例えば、第二条の第五項に今回の改正対象となる特定核燃料物質の定義が述べられていますが、具体的な内容は政令にゆだねられています。対象さえはっきりしていないままの法案審議など、私たち自然科学者には不思議です。例えば、改正案では廃棄の事業にまで規制の網がかけられていますが、廃棄しようというものの中にどうして特定核燃料物質というような大事なものが入ってくるのか私には理解できません。中身が不明ということでは、改正案の中心となっています防護措置防護規定の内容も一切省令にゆだねられたままです。このままではどうにでも解釈できるようなものができるのではないかと案じています。  ここで、核物質規制という名目で公開の幅が狭められている例を一つ挙げておきます。  昨年十月に日本原電敦賀号炉で出力低下中に運転員のパルプ操作ミスで出力が急上昇し、原子炉が緊急停止するという事故が発生しました。私たちは、この事故原子炉暴走事故の先駆け的な事故であるとして重視し、その経過の検討を続けてきています。そのためには、当然事故に関する資料が必要です。ところが、敦賀の市民グループが敦賀市に要求して入手した日本原電からの報告書では、その中の合計十二枚のデータが県や市当局によって墨で塗りつぶされていたのです。このことは衆議院でも問題になり、これまで九枚が公開され、あと三枚の資料がお手元の資料2にございますように、今なお墨塗りのままとなっています。  このうちの一枚、「添付資料—2」と書いてござ いますデータですが、これは今回の事故の原因となった重要なバルブの位置を示す図面なのですが、それが公開できない理由が、県や通産省の説明では、核物質防護のためとなっているとのことです。しかし、私には核物質の操作とは何の関係もないこのバルブの位置がどうしてそうした理由公開できないのか全く理解できません。  最後に、改正によって新たに追加されようとしています罰則について一言申しておきます。  私は、長い間弁護補佐人の一人として伊方原発の設置許可取り消し請求裁判にかかわってきましたが、その際、国の代理人の方々は、今回改正されようとしています原子炉等規制法について次のように述べておられました。この法律は、原子炉設置者などの事業者に安全規制のために守るべき要件を明確にして事業の許可を与えるためのもので、一般住民は直接には何の関係もない。ところが、今回追加された罰則は、明らかに不特定多数の人々を対象にしており、これまであった罰則規定とはまるで異質なもののように思います。  このように、取ってつけたような法律構成をなぜとらねばならないのか素人の私にはわかりませんが、何か異様さだけがぎらぎらと光っているように思います。また文章的にも、例えば七十六条の二に「その放射線を発散させて、」とありますが、「その」とは一体何を指すのか。それから、放射線を発散させるという表現は、私の授業であれば恐らくペケになると思います。また、「未遂」という言葉が意味する範囲も、私のような素人には無限定過ぎて薄気味悪く思われます。  核物質防護のための規制の強化は、肝心の物の規制を外れて、人を見たら泥棒と思え式の人間監視の方向に向かわざるを得なくなると思います。核燃料輸送の監視行動についてのお手元の資料3にあります誤った報道騒ぎもその一例だと思います。恐らく核物質規制を強めれば強めるほど、一般の人たちは原子力の本質的な恐ろしさを知り、世論の支持を失った原子力はその終えんに向かって速度を速めることと思います。  以上です。
  11. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) どうもありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 穐山篤

    ○穐山篤君 社会党の穐山です。どうも参考人皆さん大変御苦労さまです。時間が二十分というふうに限られておりますので、ごく簡潔にお願いをしたいと思います。  板倉参考人に二つ質問をいたします。  先ほどの説明で我が国原子力界には過酷事故はないというふうに断定をされました。そこで伺いますが、さきに行われましたIAEAのイタリア・シンポジウムで、過酷事故は起き得るという前提条件に立って安全についての基本原則を決めよう、決めなければならないというのが国際的な認識になってきているわけです。安全だ安全だと言っておれば安全だというわけにいかないと思うんです。過酷事故は起きないという認識はどういう科学的な根拠に立っているのか。  それから二つ目は、最近の反原発運動ですが、かつては政党、労働組合、そこの一部の地域の人、そういう人の反原発運動というのがあったんですが、最近では通称草の根反対運動というふうに、直接地域に無関係な人までも含めて、命であるとかあるいは子供であるとか、平和であるとか、そういう最低人間の基本条件を満たすという意味で反対運動が起きています。これをどういうふうに認識をされますか。  それと同時に、やはり自主、民主、公開とは言われておりましても、すべての日本人に資料が提供されているわけではないわけでして、隠されているということはいつも不安であるし不満である、そういうことだろうと思うんです。そこでその解消のためにどういうことをお考えになっているのか。  それから、石橋参考人鈴木参考人にお願いをしたいんですが、六ケ所村の地質の問題です。低レベルの貯蔵の場所のボーリング、それから高レベルの廃棄物の貯蔵の場所におきますボーリングというものが行われたわけですが、それが学会などに十分に説明がされて、研究者が十二分に勉強できるような材料が提供されているのかどうか、あるいは皆さん方が独自に持っておりますボーリングの結果、あそこの地質が低レベルあるいはハイレベルの廃棄物の場所として最適の地域であるのかどうか、その点についての研究の成果があればひとつお願いをしたいと思います。  それから、石橋さんと鈴木さんと同じ問題ですが、いずれフランスからもプルトニウムあるいは高レベルの廃棄物が日本に転送をされます。それから、計画によりますと、二〇〇〇年代にはプルトニウムのサイクル施設ができる。リサイクルが行われる。高レベルの廃棄物が発生をする。この高レベルの廃棄物とプルトニウムを国民の生活の危険度という分野から眺めてみて、私の意見は、同じレベルで物を見て安全対策を考えなさい、考えるべきだというのが私の主張でありますが、その点についての御意見を伺いたいと思います。  それから、鈴木先生が先ほど言われました日本原子力発電にかかわる技術というのは相当優秀である、そういう評価をされて、締めくくりとしてこの原子力開発についての体制を整備すべきだというふうに主張されました。それは機構のことを言っているんでしょうか、あるいは例えば、現在は原子力にかかわるすべての問題は原子力委員会あるいは安全委員会で決めたものがそのまま実施に移される。国会では予算の審議とか法案審議程度しか関与できない。そういう意味では非常に私は不満を持っているわけですが、この政策の決定の過程に国民の参加とかあるいは国会の関与とかあるいは専門家の意見の開陳、それが最終的に政策の決定につながる、国民の合意を得る手順だ、こういう立場からの体制整備を言われているんでしょうか、それとも原子力行政上の体制の整備だけを言われているんでしょうか、その点についての御意見を伺いたいと思います。  時間の都合でまとめて申し上げましたが、以上です。
  13. 板倉哲郎

    参考人板倉哲郎君) まず、二つの御質問のうちの一つの過酷事故のお話を申し上げます。  私きょう申しました中で、ソ連のチェルノブイリのような核暴走事故は起こり得ないということを申したわけでございます。先生御承知かもしれませんけれども、一つは、核暴走的なことになりますと、非常に大量のエネルギーが一どきに出ます。そういうために種々の工学的安全施設を持っておりましても、場合によりますとそれを凌駕するということが一つ注意事項としては考えられるわけでございます。  そこで、核暴走というものにつきましては、初めの原子炉の機械的設計といいますより核設計におきましてある反応度がつけ加わる、あるいは場合によってはある操作ミスによってつけ加わることはこれはあり得ることだと思いますが、そういうものがもともと設計上核設計の上である限度以上にはならない。そのようなことを我が国で採用しています炉についてはすべて行っておるという意味で核暴走は起こり得ないと申したわけでございます。  それからもう一つは、そういう核暴走がなくても、原子炉というものは熱を出し続けておりますので、その熱を取らなければ、いずれは燃料が溶融してしまえば、それに伴って放射能が出る。そういうものにつきましては、工学的な安全施設が十分に多重防護されており、また我が国は非常にその訓練、設計上の注意、さらには品質管理も整っておるということで、そういう意味で申しておるわけでございます。これが第一の御質問に対する私の見解でございます。  第二番目は、最近のいろいろの皆を含めての原子力、反原発の運動ということについて、一体おまえさんはどう考えるか、こういうようなお話でございます。  確かに今おっしゃるような問題が起こっておりますが、たまたま最近この数年来エネルギーというものの需要の緩みがございます。そういうこと で、非常に長期を考えますと、どうしても私は原子力というものを、ある部分を原子力によってエネルギー確保する必要があると思っています。そういう点皆さんの日常生活が今豊かでありますし、現在緩んでおる、石油も自由に入るし、そういう時代でございます。それに対しましては、我我原子力事業の者がその真意を将来の我々の子孫、その先についての我々の責任を十分にお話しするということが十分行き届いていないと深く反省している点でございます。  以上でございます。
  14. 石橋忠雄

    参考人石橋忠雄君) 申し上げます。  最初の六ケ所の地勢といいますか、あるいは地質状況についてでございます。  これは私どもも非常に重視しております。青森県等の発行した各種の文献によっても六ケ所村の地質は簡単に言いますと砂泥であるということで、原子力施設が建つところは強固な岩盤であるというのが常識でありますので、地質は適さない、こういうふうに考えます。  また六ケ所は非常に地下水に富むところでありますし、また多雨多湿の場所でございます。アメリカの低レベル廃棄物処分場は当初六カ所、六つの処分場がありました。そのうち、現在操業しているのはバーンウェル、ネバダ、それとハンフォードでございます。この現在操業中の三つの処分場を私は見学してまいりました。いずれも年間せいぜい五センチか十センチ程度の雨しか降らない砂漠とかそういうような非常に乾燥したところでございまして、六ケ所の地質は廃棄物の処分場にも適さないというふうに考えます。  次に、プルトニウムに関する問題でございます。これはプルトニウム空輸、あるいは六ケ所の再処理場におけるところのプルトニウム生産と管理、保管の問題だろうと思います。  科学者ではございませんので、私の見聞したところを申しますと、まず六ケ所のプルトニウム処理工場につきましては、昨年十一月とことしの三月にアメリカ原子力規制委員会あるいは議会等に行って調査してまいったわけですが、その議会等に対する原子力規制委員会の公文書によれば、現在のIAEAの防護基準を適用しても、六ケ所の再処理工場では年間二百から三百キログラムのプルトニウムが計算不能といいますか、所在不明になる、こういうことで、非常に大きな危惧を原子力規制委員会のゼック委員長は示しております。  また、プルトニウム空輸につきましても、先生方御承知のとおり、最終的に日米原子力協定審議の過程において、アメリカの領土を飛ばない、アメリカの領土に空輸機が停止しない、こういうことで決定されたわけです。要するにアメリカ方々は、過去既に一九六〇年代にプルトニウム輸送機の墜落事故がスペインとグリーンランドであったわけですけれども、そういう体験を通して非常に大きな心配を持っております。そこでアメリカ国会議員の方は、英、仏からのプルトニウム空輸機はアメリカを通させないということで一致したわけです。このようなことから見ましても、非常に大きな問題点をはらんでおると思います。  以上でございます。
  15. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 先生から御指摘の点は三点あったかと存じます。  まず第一に、青森県六ケ所村における低レベルの処分場はあの地点が最適かどうかという、そういう御指摘だったかと思いますが、最適と申しますと、これは日本じゅう探して本当にそこが一番いいのかということになるかと思いますけれども、先生御指摘の点は、何といいますか、安全性の点で十分条件を満たしているのかという、そういう御指摘かと思いますので、そういう観点から申し上げますと、私の理解では、それが本当に必要最小限のことを満たすものかどうかについては、これから原子力安全委員会の方で審査が行われるというふうに存じておりますので、私の個人的な意見でございますが、確かに今石橋参考人もおっしゃいましたように、外国に比べますと、例えば比較的雨が降るとか、そういうことはあろうかと存じます。しかし、今石橋参考人は例としてお引きになりませんでしたが、例えばアメリカでもバーンウェルというところに処分場がございまして、この処分場は比較的よく雨の降るところでございます。私も現地まで参りましてよく調べさせてもらいましたが、そこでは既に何年も経験がございまして、これまでの経験を踏まえてよりいい処分の仕方というものをやっておりまして、私どもといたしましても、そういうやり方を十分参考にすることによって、あの地点で安全に処分することは可能であるというふうに私は考えております。  御指摘の第二点は、プルトニウムあるいは高レベル廃棄物、そういうものの取り扱いについてだったかと思います。この点につきましては、私の理解は、やはりそれなりに十分気をつけて取り扱う必要があろうかと存じます。であるがゆえに、我が国では東海村の動力炉・核燃料開発事業団の東海事業所におきましてこれまで十分練習をしているわけでございまして、その練習の成果を生かすことによって、これから本格的な工場における取り扱いも私は十分にできるものと、もちろんそれなりの安全基準を満たす必要がございますし、その取り扱いにはなお一層注意する必要があろうかと思いますが、基本的にはそういうこれまでの研究開発の成果を生かすことによって十分安全に取り扱い得るものというふうに考えております。  最後の第三点でございますが、私の方から申し上げました体制の整備というものはどういう意味であるかというお尋ねだったかと存じます。これは先生御指摘のとおり、原子力に関します重要な政策決定には国民の声がもっと反映されるべきだというような御指摘があったかと思いますが、その点については私もそのとおりであるというふうに感じております。ただ、私が申し上げました体制整備という意味は、これは本日の論点でございますPP条約に関連して特に法的整備という意味で申し上げたわけでございまして、私が西ヨーロッパの幾つかの国を調査したこととの関連で申し上げれば、やはり国際社会においてそれなりの責任を伴うものである、そういう意味での整備が必要ではないかということで申し上げたわけでございます。  ありがとうございました。
  16. 伏見康治

    ○伏見康治君 本日は、参考人方々お忙しい中を我々のために貴重な意見を述べてくださいましてまことにありがとうございました。  お伺いしておりますと、細かい技術的な面もいろいろございますが、一番大事な点と思われるのは、プルトニウムをどれだけ生産してどれだけ使うかというところが一番大事な問題であるように拝聴しておったわけでございますが、それに対して多少参考人方々の間での御意見が違うように伺ったわけでございます。  それで、最初にまず板倉さんにお伺いいたしたいんですが、お隣の石橋さんが主としてアメリカのコングレス周辺のいろいろな文献等によって、アメリカ側が少なくとも日本プルトニウムの量をどういうふうに考えているかということを言われて御心配な点を指摘されたと思うんでございますが、それに対する板倉さんとしてのお考えを述べていただきたいと思います。
  17. 板倉哲郎

    参考人板倉哲郎君) お答えします。  つまびらかな量というものを、今ここにいろいろ調べておりますのを別に持ち合わせておりませんが、いずれにしましてもプルトニウムというものを私たちは有効に利用をして、そして資源の有効活用、我が国エネルギーの安定化を図りたいというのが第一でございます。現在かなりの軽水炉運転させていただいております。その中にはまだ未処理の、まだ使用済み燃料のままの問題、海外に送りまだそれを処理中のもの、そういうものも含まれておりますが、現在具体的に我が国で、東海で処理されておる量、あるいは下北の現在固定した計画、また海外に約束した量というようなものから考えまして、確かに高速増殖炉というのがまだ先の問題ではございますが、実験炉原型炉さらには実証炉というものの計画を持って おります。そういうものに対しての利用と、それから、先ほど申しましたように、現在あります軽水炉プルトニウムを添加してそれを有効に利用していく、いわば一般名でプルサーマルと申しております、そういう計画というものを考えますと、ちょうど我が国で具体的に処理計画が明確になっているものと、それから発生されますプルトニウムの量というものに大きな差はございませんし、発生されたプルトニウムは、精製されたものがありますと私たちはこれを発電用に使っていきたいということで、大きな違いは私はないと思います。
  18. 伏見康治

    ○伏見康治君 石橋さんに伺いますが、今の板倉さんの御意見で、つまり今後生産されるであろうプルトニウムと、それを使うものとは大体とんとんであって、正確にはどうなのかは知りませんが、とにかくいわばプルトニウムの発生量と使用量というものは大体バランスがとれているといったような御意見であったと思うんですけれども、石橋さんはその点について何かもう少し御意見ございますか。
  19. 石橋忠雄

    参考人石橋忠雄君) 申し上げます。  私の意見書の一ページから二ページ目にさまざまな数字が書いてございます。日本の現在稼働している「ふげん」、「常陽」、美浜一号、敦賀一号、この四つの原子炉においてどの程度のプルトニウムが毎年毎年使用されているのかということにつきましては、これは私ばかりではなくして、例えばプルトニウム研究で有名な高木仁三郎さんなども言っておりますが、はっきりしておらないわけです。したがいまして、この点についてまず国側から明確な資料を出していただくということがそもそもの出発点であろうかと思います。  この点、やはりアメリカの方からはある程度確実な数字が出ているわけでございます。これはなぜかといいますと、アメリカは現在の日本プルトニウム使用については一〇〇%的確な資料を持っているわけでございます。これは日米原子力協定によってそうなっているわけでございます。  私の得たところでありますと、西暦二〇〇〇年までに八十三・九トン日本は保有するというふうに言われておるわけですけれども、しからば、日本のこのプルトニウム使用が本格的になるのが二〇三〇年というふうに、原子力白書においてさえそういうふうに書いてございます。  そういうような状況でありまして、私としては科学的に検討する何物も持ってないわけですが、やはりアメリカ側において、日本は不必要にプルトニウムを保有するということをたびたびワシントンにおいて聞いておりますので、私どもとしてもその点について一番危惧するわけでございます。したがいまして、国側においてこれまでのプルトニウムの消費量というものを各原子炉について発表していただきたいと、これが偽らないところでございます。  以上です。
  20. 伏見康治

    ○伏見康治君 石橋さんありがとうございました。  石橋さんはいわゆる専門家ではないという立場で言われたと思うんでございますが、お隣の鈴木さんは専門家だと思うので、専門家として何か今の問題点を整理していただけますか。
  21. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 申し上げます。  プルトニウムの必要量でございますが、これにつきましては、どういう原子炉をどういう考え方のもとにつくり使っていくかということを決めますと、大体どの程度プルトニウムを必要とするかということは推算することが比較的容易でございまして、ただいま板倉参考人あるいは石橋参考人の方から御紹介のあった数字というのは、これはそういう意味で客観的に評価し得る数字であるというふうに私は考えております。  より重要な点と私が考えておりますことは、これからの我が国における原子力利用の体系というものをどういうふうに考えていくか。私が先ほど参考人としての意見の中で申し述べさせていただきましたように、私が思いますには、再処理をしてリサイクルするという考え方がやはりそのベースにあるべきであるというふうに思います。そういう利用の体系を将来つくり上げていくためには、それなりのやはり道筋が必要ではないかということでございまして、これから二〇〇〇年あるいは二〇一〇年、二〇二〇年というような期間はそういう道のりの過程であるというふうに私は理解しております。したがいまして、必要なプルトニウムを必要なときに着実につくり使っていく、その経験を積み重ねることによって将来本来の原子力利用の姿、体系をつくり上げていく、そういう考え方が重要ではないかというふうに考えております。
  22. 伏見康治

    ○伏見康治君 鈴木さんにもう一つ伺いますが、先ほど久米さんが言われたワンススルーというんでしょうか、一遍入れてとことん燃やしてしまうという考え方は専門家の立場からいってどうお考えになりますか。
  23. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 申し上げます。  これは、先ほど申し上げましたエネルギー生産率ということで考えますと大変に低い効率になるわけでございまして、先ほどは〇・五%、これは大体現在の原子力発電所利用前提にいたしますと、そのくらいの効率になろうかと思います。さらに改良を加えていくことは可能でございますので、その数字はワンススルーであっても一%ぐらいはいく可能性はございますが、やはり本来はウラン鉱山から掘ったウランをできるだけエネルギーとして使うというところにあるわけでございまして、それは再処理し、プルトニウムを再利用していくということによって初めて可能になるというふうに理解しております。
  24. 伏見康治

    ○伏見康治君 鈴木さんありがとうございました。  最後に久米さんに伺いたいんですが、久米さんも多分核兵器が日本プルトニウムからつくられるというふうなことがあったら大変だとお思いになっていると思うんですが、そのためにプルトニウムのいわゆる防護、ハイジャックのようなものに盗まれないということが非常に大事なことであろうと思うんですが、そういう点についての久米さんの御意見はどうでしょうか。
  25. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) お答えいたします。  私の基本的な考えは、プルトニウム拡散は国家レベルあるいは準国家レベルで起こるのが中心問題だと思うんですね。何か探偵小説みたいに核ジャックが忍び寄ってというようなのは、話としてはおもしろいですけれども、私はそれはメーンではないと理解しています。例えば今西独で大変な問題が起こっていまして、廃棄物の横流しとそれからプルトニウムの原爆七十発分が行方不明になったというあの話も、結局は燃料会社というものが立て役者になっています。私が先ほど申しましたプルトニウムプレッシャーというのは、実はそういう形でやっぱり経済機構の中に組み込まれて拡散していく、それが一番恐ろしいのであって、当委員会に出されている法律を見ますと、何か過激派が忍び寄ってきてというような、そこで全然私は意見が違います。ですから、もっと、何というか、必然性がある、だから、その根をとめないことには規制ばっかり強化しても本末転倒であるというのが私の一番言いたいことなんです。そんなことをすれば一般の人の支持は絶対得られません。今ここで皆さんが議論しておられるようなことを一般の人が聞いたら、何と原子力は恐ろしいと思いますよね。ますます原子力はその寿命を縮めるというのが私の意見です。もしも本当におやりになりたいのであれば、できるだけソフトな形でどうやったらエネルギー原子力から取り出せるかということこそお考えにならないとだめだと思いますが。
  26. 伏見康治

    ○伏見康治君 私も久米さんと似たようなことを考えてはおりますが、しかし、同時にハイジャック的なことも守らないわけにはいかないので、いろんな意味で秘密的というか、ことにならざるを得ないとは思うんです。  アメリカの雑誌類を読んでいると、日本政府レベル——今の政府レベルの方の話になりますが、外見上不必要な程度にプルトニウム確保し ようとしている。ということは、日本は国レベルで核兵器をつくるという準備をしているのではないかというような記事がアメリカの雑誌に散見しておりますが、そういうおそれはあるとお思いになりますか。
  27. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) 具体的な、ちょっと政治的なあれはできませんが、私は十分あり得るというふうに思っています。それで、諸外国がそういう目で日本を見るのは当然だと思うのです、これだけ異様にプルトニウムに固執している国はほかにはありませんから。だから、こんなに経済的に破綻が明らかになったものをどうしてあれだけ欲しがるのかという、そしたら、これは核兵器しかない。これは実は今の脱原発の人たちに皆さんが聞いていただいたら、一番大きな疑問はやっぱりそこにみんな抱いているわけですよね。ちょっと立ちどまって一回みんなで考えてみたらどうかという、そういうことが出てこないで、進め進めということの奥にはどうもそういうことがあるのではないか。国内でも随分そういう不信が高まってきているように思います。私はどういう形で核兵器を持つようになるかというようなことはよう申しませんけれども、先ほどから言っていますように、やはり経済というものが支配すると思います。そういうものの余地をつくれば一晩でひっくり返るというのは、私のような戦中派は随分いろんなことを経験してきているわけですので、そういう意味で、特に民主的な国会で基本的なところを議論をなさっていただきたい。  それから、伏見先生がおっしゃいました、じゃ核ジャックはどうするのかというのは、私はこの法案で一番問題は、これまでは恐らくやってこられたんですね、これまでのやり方でできないというのは、いよいよ本格的利用に乗り出すという前提をお持ちになっているからです。そこを国会で十分に、これは政策レベルの議論しかもうする場所はないと思います。私と板倉さんがやり合いしてもちょうちょうはっしやるだけですし、本当にこれ国会が踏み込んで、どうしてフランスがあれだけやったのにスーパーフェニックスがだめになったのか、あの秘密の国に乗り込んでいって調べていただく、本音をただしていただくとか、そういう調査こそおやりになっていただいて、その間しばらくこういう何かぎらぎらするようなものはちょっと横へ置いておいて国民と一緒に議論をしていかれるという姿勢を一番私は要望しておきます。
  28. 伏見康治

    ○伏見康治君 時間が来ましたけれども、ちょっと。  賛成派、反対派、賛成派、反対派で、反対派でおしまいにすると与党の人が怒るかもしれませんので、最後に板倉さんに、今の久米さんの意見に対する反駁をやってください。
  29. 板倉哲郎

    参考人板倉哲郎君) 核兵器への転用ということをおっしゃっておられますけれども、私は本当に平和利用ということに徹しています日本の我々電力会社、また日本の産業から見てそういうことはあり得ないと思います。  なおフランスの問題が多少高速炉関係でお話出ていましたので、余り時間とらない範囲で御説明しますが、確かにフランスは次々に大型をやっていく計画を持っておりましたが、電力需要の低迷ということと、それから、これまでの軽水炉が非常に安定してよい成績を上げていると。そうしますと、経済的な面から見て、高速炉を次々の計画でつくるよりも、ここで数年かけて、フランスのみならず、ヨーロッパのイギリス、ドイツその他と共同しましてもう一度各国の持っている設計を寄せ集めて、より経済的なものができるのではないかということで、ここ二年間基本的な概念設計をやり、それに基づいて詳細設計をやって共同でひとつつくっていこうということに変わったわけでございまして、核兵器の上からそういうことをおやめになったというようには私は全く聞いておりません。  以上でございます。
  30. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 鈴木参考人にお伺いいたしたいと思いますが、核物質防護、広くは核防護と申しますか、核ジャックとかあるいはジャックによるそのものを使っての脅迫とか、あるいは核兵器への転用とか、そういうものが行われて国民の平和と安全が脅かされるということがあってはならぬということは、これは当然の前提になろうかと思うんですが、    〔委員長退席、理事後藤正夫君着席〕 歴史的に見まして、原子力利用が核兵器から始まってきたということもあって、核物質防護というのは、いわば核兵器防護というそういうところから始まってきたというふうに思うわけです。ですから、軍事施設におけるPPには物理的手段とともに信頼性チェックが持ち込まれてきたり、特にそれは宗教、思想、人種、出身から、指紋をとってみたり、軍事施設の場合ですとうそ発見器の利用に至るまでいろいろ信頼性チェックというのが行われて、基本的人権の侵害ということも進んでまいりますが、日本PPの場合は平和利用のための研究開発利用施設でのものであるというところからして、軍事施設でのPPというものとは全く異なる手法というものが求められてくると思うんです。  そこで、四点ばかりお聞きしたいんですが、原子力基本法原子力原則、自主、民主、公開ですね、特に公開原則、国民的監視の中でPPをより確かなものにしていくという、これが一つ大事な点ではないかと思うんですが、この点についての御意見をお伺いしておきたいということ。  二つ目には、研究者、労働者の基本的人権の問題、これは軍事施設におけるPPのような信頼性チェックではだめであって、そこには基本的人権を守った上での手法というものが考えられなければならないんじゃないかと思います。  三つ目には、学問研究の自由、科学者、研究者、労働者のそうした核物質を扱う施設での自治意識とか核防護に対する自覚ですね、強制された自覚じゃなしに、まさにみずから育てた自覚というものが大事であると思うし、それを保障する民主主義というのが特に大事なことだと思うんですが、その点についてのお考えを伺いたい。  四つ目には、PPの府省令を定める場合とかその運用面で、我が国科学者、研究者の代表機関である日本学術会議政府として諮問をするなどしてよく意見を聞いて進めるということが大事ではないかと思いますが、つまりこういう法律は事務的、行政的な取り扱いで済ますということをしちゃならぬという、こういう点についての以上四点について鈴木参考人の御意見を伺いたいと思います。
  31. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 申し上げます。  いずれも大変難しい点についての御質問だったかと存じます。  第一に、公開原則が守られるかどうかについてどう思うかというお尋ねだったかと思いますが、私、これは先ほど参考人としての意見の中でも申し述べさせていただきましたように、いわゆる原子力基本法でうたわれております三原則の中での公開原則というのは今後とも大変に重要であるというふうに考えておりまして、お尋ねの第三点とちょっと関連するのかとも存じますが、私どもが研究者として研究を行っていく上では、やはり公開原則をぜひ守っていただきたい。しかし、今度は私ども研究者の立場からいたしますと、やはりそれなりに自分の研究については責任を持つべきであるというふうに考えております。  それから第二点の基本的人権の問題でございます。  これも大変重要な御指摘かと思います。私が先ほどもちょっと申し上げましたように、ヨーロッパの何カ国かを調査いたしましたときも、その点についていろいろ各国の考え方を教えていただいたことがございます。    〔理事後藤正夫君退席、委員長着席〕 そのとき受けました印象では、あるいはそのときに大変参考になるのではないかと思いましたことは、各国がそれぞれに工夫しておりまして、例えば工場における運転員のそういう意味での管理につきましては、これは基本的人権にかかわらない ように、例えば運転員の健康管理の一環としてそういうことを定期的にやっていくというようなことをやっていたところがございます。  それから第三点は、核防に対する、何といいますか、自覚といいますか、そういうことについてのお尋ねだったかと思います。  これは私はちょっと第一点との関連があろうかと存じますが、私は、研究の成果について研究者がそれぞれに責任を持つということがやはりそういう意味での自覚をより確かなものにしていくということではなかろうかというふうに考えております。  それから第四点は、私が特にそういう意味で専門的な意見を持ち合わせているということではございませんが、今回の法改正につきましては、御案内のように、原子力委員会の方で大分前からそのやり方について検討がされてきたというふうに私は理解しておりまして、そういう意味では、単に事務的、行政的にそういうことを、何といいますか、強引にしているというようなふうには、私はそういう印象は受けておりません。  以上でございます。
  32. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 学術会議などに、府省令を定める場合、その運用面について政府として諮問をするとか、この点について御意見どうですか。
  33. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 申し上げます。  運用面、学術会議の勧告で、そういう意味で、何といいますか、先生御指摘のとおりにすべきかどうかということについて、私は、学術会議という組織が持っております社会的な意味といいますか、そういうものもいろいろ変化していると理解しておりまして、私自身今現在は学術会議の中の原子力に関します小委員会のお手伝いもさせていただいておりますけれども、やはりいろんな形でこういうものの妥当性について議論をしていくということが大事かというふうに考えております。
  34. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 同様の今の四点について石橋参考人の方から御意見ございましたら伺っておきたいと思います。
  35. 石橋忠雄

    参考人石橋忠雄君) 申し上げます。  第一点の公開原則、あるいは言葉をかえて言うと国民的な監視のもとに原子力の議論をすべきだ、あるいは今回の法改正の問題でもそうでありますけれども、私は鈴木参考人とは見解を異にしておりまして、例えば一昨年の原子炉等規制法改正公開原則に逆行した改正であると考えます。そしてまた、今回もそのように考えます。それは先ほども申し上げましたけれども、いろんな問題点、大事な点をほとんど政令等に委任しておる。今回は特に政令の下にさらに事業者等が定める核物質防護規定も実質的な要件となっているように考える次第であります。  核物質防護にかかわらず、原子力の問題について、私は日本の法体系というものが原子力基本法の第一条と原子炉等規制法を頂点とする利用体系が大きく乖離しているというふうに考える者の一人でございます。例えば六ケ所村の問題につきましても、青森県知事がこの立地を受け入れた際に、一番重大な問題であります安全性の論議については、県知事が私的に選任した青森県専門家会議の答申を待って、それをもって安全性の問題は事足れりとして、その後の一切の質問なり議論というものを受けつけておらない状況であります。この専門家会議というのは、実際に六ケ所村の立地状況等を勘案して検討したわけではなくして、ただ単に三カ月の短い期間でもって安全性の結論を出したわけでございます。その一つをとってみても、我が国原子力利用法体系というのは、原子力基本法第一条から大きく離れているというふうに考えておる次第であります。  この問題は、私は一番大きい問題だというふうに思っておりますのでもう一点だけ申し上げさしていただきますと、先ほど申し上げましたように、公開原則、すなわち国民的な検討、議論を担保するというのはやはり国会しかないわけでありまして、国会核物質防護基準の検討をする。それはすなわち法律の中において核物質防護基準を明定する、あるいは国会事業者なり政府なりに対して何らかの報告義務を要求する、あるいは公聴会を法制度上設定するとか、そのような何らかの法律的な取っかかりを国会が持たないと、常にこの公開原則の問題というのは、この後も大きく尾を引いていくだろうと思います。  もう一点、日本学術会議のことが出ましたんですけれども、私はこの点は反対でございます。すなわち、これは先ほどの公開原則などにも大きく関連する問題でありまして、基本的な問題点というものを法律で明定する、すなわち国会で議論するというのではなくて、政府の決める省令等に委任して、その省令等の中において一機関である日本学術会議安全性その他について検討するということは、やはり国民的な議論あるいは国民的な監視のもとに原子力の問題を展開していくということから見れば、大きく後退するであろうと考えます。  もう一点、基本的人権の問題でございますけれども、現在やはり原子力産業界の中では労働組合等がこの今次改正案を大きく危惧しておりまして、反対の声明等を発表しているということを私承っております。  以上でございます。
  36. 小西博行

    ○小西博行君 きょうは参考人の皆様方大変お忙しいところありがとうございました。  私は、実は外務委員会にも所属しておりますので、今度は日米原子力協定ということもございまして、連日原子力の問題を審議をさしていただいているわけですが、非常にわかりやすいことを賛成、反対ということでけんかしないようにお聞きをしたいと思います。  日本原子力発電ですが、いろんな意見もございますけれども、まあまあ今日まで大した事故もなしにやってきたというように私は理解をしているわけです。そういう意味で、果たしてこれは日本管理技術が非常に優秀なのか、あるいは機械そのものの性質が諸外国に比べて違うのか、いろんな問題点が私はあろうかと思うんですが、日本原子力発電が比較的事故が少なくて今日までやってこられたその特徴的なもの、これは諸外国に比べてお話を願ったら一番いいんですが、その問題について板倉参考人石橋参考人にぜひお願いをしたいと思います。  それからもう一つは、今度は核防護という問題がかなり議論に上りました。それからもう一 つは、やっぱりプルトニウム輸送というのがございましたが、きょうは核防護というようなことで鈴木参考人と久米参考人にお尋ねしたいわけですけれども、この間実は動燃あたりへも我々委員が調査に行ったりいろいろしたわけですけれども、実際に内部でのいろんな防護体制というのは拝見さしていただいたんですけれども、あるいは外部からテロの行動みたいなもので襲われたときに果たしてどうするんだろうというような面についてはまだ十分私どもはわからないわけですが、そういう面についてどうなんでしょうか。諸外国では相当そういう分野が進んでいるのかどうか、その辺のもし参考になる御意見がございましたら教えていただきたい、この二点でございます。
  37. 板倉哲郎

    参考人板倉哲郎君) お答えいたします。  おかげさまで我が国原子力をかなりの開発をし、実際にやっているわけでございますが、おっしゃいますように、何とかここまで育っておるわけでございます。  まず第一に、我が国原子力を導入する段階から放射線あるいは安全に関しまして、我々実際にやっています電気事業者も非常にこの点をまず何より第一ということを考えております。と申しますのは、御承知のように、非常に多量の放射性物質を含んでおりますので、そういう意味では潜在的には非常に危険なものを十分の管理のもとにと。それで第一は、一番初めに申しましたように、設計的に核暴走をできないというようなことを第一義に考えております。  それから、さらにはもう少し徐々に起こるような問題に対しましては、多重の防護施設をつくっておるという設計上の問題が一つ。それから第二番目には、こういう周辺技術もすべて総合したも のでございまして、今先生おっしゃいましたように、非常に管理技術、品質管理、さらには運転員のトレーニングということに鋭意意を注いでおります。そういう結果として世界に誇る原子力ができたものと私は考えております。
  38. 石橋忠雄

    参考人石橋忠雄君) 申し上げます。  板倉参考人とは若干意見を異にいたします。例えば、我が国においては動燃の東海再処理工場において過去R10、R11の溶解槽の事故があり、ほぼ二年間操業が停止されていたことは先生方御承知のとおりでございます。また、東海再処理工場の再処理量は年間たしか二百十トンだったと思いますが、つい最近はちょっと私数字を持っておりませんけれども、二、三年前の私どもが東海再処理工場にお伺いした時点では、その操業率といいますか、再処理量はたしか一割強だったと思います。  この一つを見ても、我が国の再処理技術というのは必ずしも確立されていない。しかるに今度六ケ所村に年間八百トンの世界的大規模の再処理工場をつくるということになると、果たしてどうなのかということは一般民衆の中に大きな不安があろうかと思います。これは、ただ単に事故が起こるということではなくして、先日も東海再処理工場の周辺において大きな放射能の環境汚染の数値が出ておりました。これは再処理工場というものが日常的に大量の放射能を放出するという問題でございます。これは御承知のように、イギリスのヴィンズケールの再処理工場の大きな汚染状況を思い浮かべていただければすぐおわかりになろうかと思います。私は、基本的には原子力の問題というのは、確かに技術の問題でもございますけれども、一歩間違うと我々の生存と環境に大きな損害を与えるということから見れば、単に技術の問題ではなくして、すぐれて民主的な手続の問題であり、また人間の問題であろうかと思います。アメリカにおいてプルトニウム空輸が全くアメリカの領土を通過させないということになったのも、その問題であろうかと思います。  最近、青森県内においては主婦層たちが百万人署名運動というものを始めまして、それで過日、青森県内外から三十万人の六ケ所核燃反対の署名を集めて科学技術庁に提出いたしました。また、青森県内の農業四団体という大きな組織がございますが、これが県内だけの農業関係者から十四万五千人の署名を集めて、これも県知事に提出をしております。その他県内の労働者が四万五千人の署名を集めて国等に陳情に、最近のことでございますけれども、参っております。  このようにして、青森県内においては本件で問題になっております法律前提をなす再処理工場の問題につきまして大きな不安が起こっているわけでございます。その点は、やはりただ単に技術の問題ではなくして、大きな政治の問題であるというふうにも考える次第でございます。
  39. 鈴木篤之

    参考人鈴木篤之君) 申し上げます。  私が調査いたしました範囲で申し上げますと、例えばヨーロッパの諸国におきましては、テロ行為その他に対する防護という意味では、物理的手段を含めましてそれぞれに工夫した方法で体制を組んでいるということでございました。  ただ私は、この問題は基本的には社会的な治安の問題ではないかというふうに感じておりまして、そういう意味では幸いにして我が国は大変にすぐれた状況にございますので、そのすぐれた側面を最大限に生かしつつこういう問題にも処していくことが重要ではないかというふうに考えております。
  40. 久米三四郎

    参考人久米三四郎君) 小西先生の御質問にちゃんとよく調べておりませんので答えられませんのですが、先ほど伏見先生に申しましたように、私としてはそういう個人レベルと言ったら言葉が悪いですが、そういう横流れよりも、むしろ国家レベルないしは準国家レベルの拡散、それがやっぱり基本的です。  先生も御存じだと思いますが、西独のシュピーゲルという雑誌がことしの一月にIAEAの秘密報告を暴露しまして、原爆七十発分の核物質が行方不明になったと。この行方がわかっていないんですね。その秘密報告があるということはもう確認されているんですが、それがこの間から問題になっている西独のあの輸送会社がやった不正行為と関係あるかどうかは目下調査中なんです。それは決して個人のテロ、核ジャックじゃないと私は思うんですね。そこらが非常にやっぱり難しいので、何か行ったらピストルを下げてちゃんと人が立っていたというような、そういうのでPPというのがとかくそこらで議論されるのを私は非常にむしろ懸念していまして、恐らくドイツでも日本以上に厳しいPPはやっていたんですが、いつの間にかそういうことが起こって、それが今のドイツの原子力を恐らく終えんに追い込むだろうと見られているわけですから……。私はそういう観点であります。
  41. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 他に御発言もないようですので、参考人に対する質疑はこの程度にとどめます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  参考人方々には本日は貴重な御意見をお聞かせくださいましてまことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  42. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 速記を起こしてください。  それでは、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  43. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間の都合上、通告をしました質問の順番を変えます。  最初に科技庁にお伺いをしますが、この核防にかかわる今回の法律改正については、主務大臣は科技庁長官である。当然輸送にかかわるという問題のところに来ると運輸大臣の政令、省令ということは承知をします。  さてそこで、通称核ジャックとかあるいは不法な核物質の移転であるとか、そういうものを予想しているわけです。その予想の事柄については後ほどしっかり確かめますが、核ジャックといえば、国レベルあるいは特定のグループ、そういうことが想定をされるわけですが、平和利用にかかわるこのプルトニウム輸送に関連をして、軍事転用するおそれありというような予想も立てながら提案をされているわけです。しかし、実際の問題として軍事転用も予想されますが、その核物質特定核物質というものを縛ることによって政治要求が出てくるわけです。その政治要求というのは、金を要求をしたり、政治犯を釈放したり、その他考えられることはたくさんあるわけですね。今まではその種の事件がなかったわけですが、これからはその可能性があるわけです。  そこで、この核ジャックですが、私が申し上げたような幾つかの例があるわけですが、そういう重大な緊急な事態になりましても、本問題の所管は科技庁長官であるのかどうか、その点まず伺います。
  44. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 今回、原子炉等規制法の一部改正によりまして手当てをいたしたいと思っております核物質防護上の措置、これは原子力委員会専門部会報告書を受けまして昭和五十六年に原子力委員会が決定いたしました事業者PP措置、つまり核物質防護措置として守るべき要件、こういったものを法令上明確にしていく。もちろん核物質防護条約に加入するために必要な手当てというのが中心でございますが、加えまして原子力委員会の昨年の十二月の御決定の趣旨を踏まえまして、既に五十六年に原子力委員会が定めましたその要件、そういったものにつきましても法令上明確にしていくということで今回の規制法の改正の骨子ができ上がっているのでございます。したがいまして、事業所、事業者に守っていただきたいことにつきましての規制官庁としての権限、これは当然科学技術庁にございますし、それから緊急事態には科学技術庁のみならず、治安当局あるいは関係省庁と協力をしながら緊急事態に対応 していく、そういう仕組みになっておるわけでございます。
  45. 穐山篤

    ○穐山篤君 通常の緊急事態の対処が非常に困難になるという場面が核物質の場合には十分に想定をされるわけです。これは事務的な話でなくて、品物が品物でありますし、そこでさらにお伺いをしますが、私は昭和六十一年に内閣の理事を担当しておりまして、安全保障会議設置法でこの問題をただしたことがあった。この安全保障会議設置法のときに、その設置についての具体的な例示を後藤田官房長官が申されました。その当時は三つです。例えば昭和五十一年のミグ25侵入事件、昭和五十二年の赤軍によるJALハイジャック事件、昭和五十八年のソ連機によるKAL撃墜事件、具体的に例を挙げて、通常の緊急体制では間に合わない、言いかえてみますと、重大な緊急事態、そういう政治判断をしなければならないとき、あるいは想定をされるときには安全保障会議が発動をすると、そういう議論であったわけです。その当時、そのほかのことを幾つか私ども例示を申し上げて確かめたんですが、言及なさらずにその三つだけに限定したわけです。  さて、今回の場合、この特定核燃料物質、私の気持ちからいうとプルトニウムであるし、ウランであるし、高レベルの廃棄物、これは私は同列に見るわけですが、これをジャックをする、そして政治要求が出てきて日本じゅうを震駭させる、そういうところまで考えて出しているとするならば、これは内閣全体の問題になるであろうと。そういう意味では、安全保障会議の検討課題になっていなければならないし、またなる要素であるというふうに思うわけですが、その点いかがですか。
  46. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  先生御指摘のように、六十一年の内閣委員会において先生がこの問題をお取り上げになり、後藤田官房長官が御指摘の三件をお答えをした後、その後の審議の過程において四つ目が入りました。これは関東大震災規模の治安問題を伴う大災害と、こういうことが加わっておりますが、後藤田前官房長官の御趣旨は、例示列挙ということでございまして、限定列挙ではなかったと承知をいたしております。  核ジャックの問題を先生が御質問をなさったわけでございますが、これに対して当時の国防会議事務局長は、通常の各官庁の緊急事態対処要領で処理できるものについてはそちらの方で行われ、通常各省庁が予想をし、それに対する対処要領を定めていない全く予想外の事件、あるいは予想をはるかに超えた事件、こういうものについてはケース・バイ・ケースで問題に取り上げられることがあり得ようと、こういう御答弁を申し上げたと承知いたしております。  この重大緊急事態のうち、内閣安全保障室が担当いたしますのは、先ほど御指摘のような三件及び関東大震災規模の大震災だけではなく、理論上は重大性と緊急性とそれから異例性、前例がないと、こういう三つの要件を備えた場合には、理論上安保会議対象になる場合もあり得ようかと存じます。  本日御審議をいただいております核防護問題につきましては、これは原子力行政に携わっておられます科学技術庁、輸送の運輸省、あるいは通産省、こういう原子力行政関係官庁の通常における防護体制であろうかと存じますので、安保会議でこれは当然検討しただろうと御質問でございますが、この法案に関する限りは審議事項ではございませんでした。  しかしながら、先生御指摘の問題につきましては、核ジャックが行われ、国に対し政治犯といいますか、獄中の犯人の釈放であるとか、身の代金の支払いであるとか、こういう政治要求が不当な形で突きつけられた場合、こういう場合にはやはり治安担当官庁も当然かんでまいりますし、法務省もかんでまいりますけれども、そうなりますと内閣全体で調整をすべき問題と相なろうかと思いますが、いずれにせよ、本件に関しては通常の非常事態対処要領もしくは防護要領の御審議でございますが、先生御指摘の問題につきましては、ケース・バイ・ケースにより、発生した事態によりまして、安全保障会議設置法第二条第二項に基づきまして総理大臣が個別的に判断をし、これに対処をする、こういう原則と相なっております。
  47. 穐山篤

    ○穐山篤君 この法律そのものは、なるほどそれぞれの事業者防護の義務づけをきちっとさせる。そういう意味では単純ですよね。しかし、これが出てきた背景、政治的な状況というのはありとあらゆるものを考えているわけです。究極のところは、不当に特定物質が奪取をされて軍事に転用をする、あるいはそれを使って内外の国民をおどかす、あるいは現実にそういう場面が生じる、そういうことを究極的には想定をしなければならぬと私は思うんです。その可能性が国際的に全くないというふうに言い切れる証拠も何もないわけですね。現実に軍事に転用をしようと準備をしているところもあるし、あるいは転用を図っているところもあるわけですね。それから、政治的にこれを政治要求に発展をさして、自分の国なり民族なり、あるいはグループなり集団の要求を通すために政治要求というものが出てくる。そのことを考えずして原子力開発あるいは防護ということはあり得ないと思うんです。  そこで、私は今それぞれからお話のあった通常の緊急事態という場合は、これは従来と同じもので結構だと思いますが、重大な緊急事態の発生のおそれがある、あるいはそれが予想される、あるいは現実に発生をしたという場合には、主務大臣は内閣総理大臣、言いかえてみれば安全保障会議の管轄下に入るべきものというふうに理解をするわけです。その意味では、それぞれの意見に多少の違い、ニュアンスの違いを感ずるわけです。  そこで、長官ね、今私の申し上げた問題について政府の統一見解をつくって、この委員会に態度の表明をしてもらいたいと思うんです。その統一見解がどちらに比重が置かれるかによってこの法律の性格も違うし、あるいは危機管理のあり方の違いも出るだろうし、あるいは情報管理、広報のあり方についても全部変わってくるわけです。その意味で、時間ありませんので、統一見解を当委員会に出してもらうということについてお約束してもらえるでしょうか。
  48. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) ただいま政府委員の安全保障室長から答弁をさせていただきましたけれども、その中でも尽きておりますけれども、安保会議の運営の最高責任者は言うまでもなく内閣総理大臣でございまして、私が直接安保会議の運営について責任を負っているわけでもございませんので、統一見解の必要性等につきましてこの場で一存で申し上げる立場にはございませんので、その点はぜひ御了解いただきたいと存じますけれども、事柄の重要性あるいはまた緊急性等については、先生御指摘のとおり、私も十分理解をさしていただいておりますので、関係方面とも連絡をとりまして検討してまいりたい、そしてまた、御指摘にもおこたえできるような検討を進めてまいりたい、これだけでぜひ御理解を賜りたいと、このように考えております。
  49. 穐山篤

    ○穐山篤君 委員長ね、きょうのところは私は前後の事情を考えてここでとめますけれども、昭和五十二年の赤軍によるハイジャック、それから政治要求が出てきた。これはそもそも安保会議対象のものである、そういうものがはっきり政府から提示されているわけですね。ハイジャックと核ジャックを考えてみて、どちらが比重が高いか低いかなんてやぼな議論をするつもりはありませんけれども、事の性格上非常に重大に考えなければならぬと思うんです。  そこで、委員長にお願いをしたいのは、理事会で協議をしていただいて、政府から統一見解をもらえるように御努力をいただきたい。
  50. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまの御発言、理事会の議を経まして処置をいたします。
  51. 穐山篤

    ○穐山篤君 二つ目に、先ほど参考人の方のプルトニウムの需給関係についての見解の相違が出ました。これはそれぞれの見方によっての違いでありますから私はやむを得ないと思いますが、概括 的に言えますことは、二千二、三十年代になりますと、最低限でも原子力発電の操業率あるいはプルトニウムの需要あるいは供給というものはかなり高くなる、一般論としてそういうふうに思います。言いかえてみますと、二千何十年代というのは、ここで見ますと、プルトニウム社会というものがやってくる、構成をされる、産業が成り立つ、そういうふうに見ることがいいと思うんです。これが安全に十分管理をされ、操業をされるということはだれも期待をするし、信じてはいますけれども、事柄は核物質、放射能、死の灰と言うことができるわけです。そうなりますと、単にこれは東海村であるとか六ケ所村の問題ではない。言いかえてみますと、日本全体の社会問題である、そういうふうに思うわけです。  その点をつらつら考えてみますと、この情報公開という問題についていささか私は危惧を持つわけです。昭和五十二年、むつ小川原の開発が石油コンビナート計画で始まったわけですが、このエネルギーの問題について下向きになってきますと、ここが空き地になる。空き地になったから何か適当な品物はないかという話でプルトニウムという話が出てくる。それも経過的には明らかになっているんですが、その後それぞれから発表をされております資料というものが特定の、例えば原子力委員会だけが持っているとか、青森県庁だけが持っているとかということで資料の公開が非常に少ないんです。  私も幾つか準備をしてまいりましたが、例えば去年の五月に日本原燃産業株式会社が出しました「ウラン濃縮施設及び低レベル放射能廃棄物貯蔵施設に係る環境保全調査報告書」、膨大なものを見さしてもらいました。青森県庁に聞きますと、これは原燃の会社に聞いてください。原燃に聞きますと、青森県庁に資料が送ってありますから、県の知事の認可を得ていただきたいと。この報告書が発表になってちょうど一年後に青森県庁は、それも積極的に発表したんじゃないんですよ、図書室に置いてあるから見たい者は見なさい、そういう資料の公開なんですよ。これは、安全だからおれたちに任しておけという思想に立っているのか、明らかにすると不満や不平が出てくるというので抑えているのか、どちらかよくわかりませんけれども、この原子力発電開発研究、プルトニウムの将来性を考えてみますと、これは単なるそこだけの箇所の問題ではない。そういう意味で言うならば、日本じゅうにすべからくこういうものは公開すべきだ。そういう点で非常に私は不満を持っている。私どもが資料の提供を求めますと、ようやくぎりぎりのところでこういう資料が出てくる。積極的に原子力の問題について国民の理解、納得を得るという姿勢に全く欠けているわけです。  結論だけ申し上げますと、従来のそういう態度はこの際改めて、積極的に公開すべきものは公開をする。先ほど私が参考人に質問をしましたが、例えば低レベル廃棄物あるいは高レベル廃棄物の箇所におきますボーリングの調査結果についても何ら公表されていないんです。だから、どういう岩盤が、岩質のものが地上から何メートル下にどれだけしっかりしたものがあるとかないとかということさえも公開をされていないわけです。そういう意味で言いますと、これは全く適正さを欠いていると思うんです。今後資料の公開について、あれは会社がやっているから、あれは知事がやっているからというふうなものでないことをまず前提条件として認識してもらって、積極的に原子力にかかわるすべてのものについて国民の前に公開をする、そういう原則をきちっとしてもらいたいんですが、長官いかがですか。
  52. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生御指摘のとおり、原子力につきましては、基本法によりまして公開原則ということがうたわれているわけでございます。それで、私どもそれに従いまして成果については極力公開してまいったつもりでございます。  ただ、前にも御説明したかとも思いますけれども、いわゆる商業機密と申しますか、そういうものの問題、つまり財産権の保護という視点、それからもう一つは核拡散の防止、そういう点からの制限はあろうかと思いますけれども、それにつきましても、単にそれだけの理由ではなくて、なるべく広く公開に努めるという方針で臨んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  53. 穐山篤

    ○穐山篤君 先ほども指摘をしましたように、積極的に公開をしてもらう。これは会社の仕事ではあるかもしれませんけれども、私くどくも辛くも言うように、二〇〇〇年代になりますと、プルトニウム社会という、そういうふうに客観的にはなるわけですよ。ですから、それは安全と危険の間をさまよう諸問題をはらんでいるわけです。それと、東海村の地域の人だけ、青森県六ケ所村だけの問題でなくして、輸送の問題もあるだろうし、いろんなことを考えてみますと、日本じゅうの問題だ。だから、それは少なくとも当委員会ぐらいは全員に資料が配られるぐらいの配慮があってしかるべきだ。  そこで、低レベルあるいは高レベルの廃棄物のボーリングの結果ですね、あそこが最適であるという具体的な調査報告書はできているんでしょうか、あるいは公開をされたんでしょうか、その点を伺います。
  54. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 恐らく先生が御指摘の件は青森県六ケ所村で原燃産業株式会社がボーリングを行い、地質調査を行い、それについてのデータの公開ということかというふうに理解いたします。  それで、私どもといたしましては、そういった原燃産業株式会社が調査した結果をもとにいたしまして事業許可申請書という形で申請してまいるわけでございます。現に低レベル放射性廃棄物の問題は既に申請がなされました。それから、やはり同じく原燃産業株式会社で申し上げますと、ウラン濃縮事業、これにつきましては既に昨年に申請されてございます。それで、私どもとしては、その申請された申請書そのものは申請された時点からなるべく近い時点で公開するという形でしておる次第でございます。原燃産業株式会社の申請のありましたウラン濃縮事業につきましては、既にその資料、したがってそこにはどういったボーリング結果、どういうふうに地盤を評価しているか、そういうものが記載されているわけでございますけれども、そういったものが公開されているわけでございまして、また近く低レベル放射性廃棄物の問題についての事業許可申請の申請書の公開についてもやりたいというふうに考えている次第でございます。
  55. 穐山篤

    ○穐山篤君 この電事連から出されたものを含めて経過的に私も調べてみますと、最初は、というふうなことも検討していると、その次になりますと、ここに何とかを設置しますというふうに、少しずつですがエスカレートし、計画が逐次明らかになるような仕組みになっているんですね。時間の都合がありますから一々申し上げることは避けますけれども、非常に私はその資料についても疑念を持ちます。  それから、昭和五十二年の石油コンビナートの第一次計画のときの影響評価、それから最近の影響評価との対比がきちっとしてないんです。平たい言葉で恐縮ですけれども、コンビナートの安全の管理という意味では環境影響評価をしっかりしなきゃならぬ。地域住民の生活あるいは地場産業の擁護ということも考えなければならぬ。しかしコンビナートを、例えばあの広大な地域にキツネか猿を飼育する場所を考えたときの環境影響評価と、サイクル工場をつくり、あるいは高レベルのものを貯蔵する、言いかえてみますとライオンとかトラを飼うようなものをつくるわけですよね。したがって、環境影響評価というものはおのずから変わらなきゃならぬ。ところが、それが昭和五十二年のままのものが出て発表されているわけですよね。これじゃちょっと私は信用したいと思っても難しいんですよ。その点いかがですか。
  56. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生御指摘の件は、昭和五十二年に環境庁の指示を受けまして青森県当局がむつ小川原開発全体にかかわる環境影響評価を行いまして、その資料を地元住民に縦覧し、かつ また説明し、その後地元住民意見を踏まえて、いわゆる「むつ小川原開発第二次基本計画に係る環境影響評価報告書」、この件だと思います。  これにつきましては、まずちょっと説明させていただきたいのは、これはいわゆる大気汚染であるとか、あるいは水質汚濁、騒音、振動、土壌汚染、悪臭、地盤沈下、いわゆる典型的な七公害と申しますか、そういったものについてのいわゆる青森県としてのこういったものを守りなさいという各事業者に課する目標値と申しますか、そういうものを設定したものというふうに理解してございます。  それで、先生御指摘のとおり、確かにその中身は、当時は石油精製であるとかあるいはその石油の化学の工場、あるいは火力発電、そういったものの関連施設、そういうものを主として対象としてつくってあるというふうに承知してございます。  ただ、原子力につきましては、いわゆる放射能にかかわる問題につきましては、この青森県の環境影響評価と別に、国といたしまして原子力安全局あるいは原子安全委員会がそれを厳重に審査すると、こういう仕組みでやっておりますものですから、確かに先生の御指摘の面あるかもしれませんけれども、国としてはそういう両面から確実にできると、安全を確保できるという仕組みでまいっておる次第でございます。
  57. 穐山篤

    ○穐山篤君 低レベル廃棄物の箇所も申請がされたと、その事実も知っております。いずれ高レベルの廃棄物の場所も申請をされるでありましょう。そういうことになりますと、一番心配をしますのは、果たしてあそこの六ケ所村がその意味で立地的にベターなところであるのか、あるいは社会的に政治的に最適な土地であるのか、そういうことを地域住民はもちろんのこと、全体が危惧の念を持ったり、あるいは心配をするのは当然であります。ところが、先ほどから私がしばしば申し上げますように、資料の公開にしましても、調査結果の発表にしましても手抜きが多過ぎるんです。そこで不満が出てきて、反対の署名運動というふうなものに発展をしていることは間違いないわけです。  私は、時間の都合で細かくは申し上げませんけれども、地質調査の結果の発表なり資料の公開という問題については、原点に戻っていただいて、地元の地域住民はもちろんでありますけれども、天下に公表するぐらいの大きな気持ちを持ってもらいたい、そのことを強く指摘をしておきますが、いかがでしょう。
  58. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 御指摘の点につきましては、私どもそのデータの調査結果をまとめた事業許可申請書、それにまとまっているわけでございまして、それにつきましては、私どもすべて申請後しかるべき時期にオープンにしてございます、公開にしてございます。これは科学技術庁でも見られますし、あるいは国会図書館でも見られますし、そういうふうにオープンにしてございますもので、そういうことによりまして、やはり十分御理解を賜るようにしたいというふうに考えている次第でございます。
  59. 穐山篤

    ○穐山篤君 それでは、六ケ所村を中心とする具体的な問題について伺います。  当委員会で前後二回それぞれの専門家の方から質問がされました。先行き不明な問題がたくさん多いわけです。移送する飛行機は、何かアメリカ開発してくれるのを待っていると。本来ならば、日本からフランスに再処理をお願いをして、それから日本が持ち返るあるいは会社が持ち返るということになれば、一番当たり前の話は、自分の国、自分の事業者がつくった飛行機あるいは容器というものが一番信用ができるわけです。ところが、これはまたアメリカにお願いをしている。いつできるやらできないやらわからない。そういう意味でいうと、不明な問題をたくさん残したまま議論をされているわけです。  そこで具体的にお伺いをしますが、前回の同僚委員の質問で、民間航空機が原子力施設の上空あるいはその周辺を飛ぶ場合に、あらかじめこういう施設がありますよという情報を運輸大臣が提供をする、こういうふうになっています。それから自衛隊の航空機の問題につきましては、昭和四十三年八月十二日に、これまた放射性災害をもたらすおそれがあることにかんがみ、原子力研究所東海研究所上空については飛んではまずいよと、それ以外のところもこれに準じてやりなさい、こういうことが明らかになっておりますので、よもやそういう不祥事態はないと思います。  そこで外務省に伺いますが、日本に駐留をしております米軍の航空機、ここの空域なり管制の問題についてはどうなっているんでしょうか、御答弁いただけますか。
  60. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 六ケ所村の核燃料サイクル関連施設との関連でお答え申し上げれば、付近に三沢の対地射爆撃場があることは御承知のとおりでございます。これは日米安保条約に基づきまして日本の安全保障のために提供しております重要な施設でございますので、この機能の維持が図られるということが必要である、これはたびたび国会でも私どもから御説明申し上げているつもりでございます。現在六ケ所村の核燃料関連施設については、安全性の問題で今詰めが行われておるところでございますので、私どもはさきに述べましたような観点に立ちまして、今後とも所要の調整を行い、各方面及び在日米軍と続けていくつもりでございます。  一般論として在日米軍全体がどうなっているのかということであれば、これは、先ほど申し上げましたように、安保条約及び地位協定に基づきまして提供している諸施設でございまして、その使用条件等は日米間で合意することになっております。
  61. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、具体的に三沢と六ケ所村の中間にあります射爆場のことについてはまだ触れていなかったんですが、東海村であるとか、あるいは全国に三十何基あります原子力発電所の上空についての米軍の訓練あるいは航行については、安保協議でどういうふうに決まっているんですか。決まってないんですか。
  62. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 在日米軍全体についてのお尋ねでございますとすれば、在日米軍に提供されました施設区域の使用条件、これは日米間の合同委員会の合意等によって律せられるわけでございます。空域提供、そして提供された空域での訓練の問題等につきましても同様でございます。そこで米軍が活動するに当たっては、日本側の公共の安全に十全の配慮をして行わなければならないこと、これは当然でございます。
  63. 穐山篤

    ○穐山篤君 皆さん聞いておってどういうお答えをされたかおわかりになるでしょうか。私は全然わからない。  かつて衆議院でこの問題についての質問が行われて、お答えは、勉強させてもらう、この結論になっていたわけです。で、いよいよ具体的に六ケ所村の施設が建設をされる。将来にわたって再処理工場、それから高レベルの廃棄物が貯蔵されるという計画が明確になっているわけですから、これは日米安保協議、地位協定の協議の中で、上空は飛びませんとか、あるいは飛ぶためにはこういうふうにしてくれとか、具体的な問題提示がなければ、これは日本人としては甚だ困った問題だ。時間をかしてくれというなら時間をかしましょう。日本政府が取り決める決意を持っているのかいないのかはっきりしたことがもっともわからぬのです。伊藤長官、そんなことではお困りでしょう。  具体的にあそこの射爆場、三沢から高瀬川の上から六ケ所村を含めて訓練空域が指定をされているわけですよ。安全管理をするという意味では安全でしょうけれども、危険物を全部あそこで貯蔵をしたり、あるいは操業、稼働をするわけです。現に日本の自衛隊なり日本の民間機はすべてあのところを迂回をしているわけです。また、管制もそういうふうに指示しているわけです。米軍の問題だけこれは例外ですというわけにいかぬと思う。これは長官、御答弁できるでしょうか。
  64. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 青森県六ケ所村に核燃料 ザイクル関連のいわゆる三点セット、それをつくるときに政府でもって閣議口頭了解というのがございます。これはちょっと読み上げますと、たくさんあるのでございますけれども、ただいま先生御指摘の点で言いますと、「なお、「防衛施設との関連については、その機能の確保に配慮しつつ、核燃料サイクル施設立地安全性確保観点から、上空飛行の制限等について必要に応じ所要の調整を行う。」というふうになっている次第でございます。それで、御案内のとおり、この問題につきましては、当然核燃料物質が搬入される時点まではそういった措置が必要かなというふうに考えている次第でございます。
  65. 穐山篤

    ○穐山篤君 一般論ではそうでしょうが。  そこで、現在東海村を含めて全国各地に原子力の施設がありますよね、ここの上空について訓練空域になっているところもあるんですよ。現にそれは避けて航行をするという日米の間に約束ができているんでしょうか、できていないんでしょうか、具体的に答弁してください。
  66. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 先ほども御答弁いたしましたとおり、本件に関する在日米軍との連絡調整は、この計画が具体化していく過程の中で行っていく所存でございますので、まだ行っておりません。
  67. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は六ケ所村のことも含めていますけれども、現有する原子力の施設の上空のこともお伺いしたわけです。  もう時間ばかりとってこれはどうしようもないですね。これは予算委員会ならとまりますよ。  そこで私は、もう一つ委員長お願いしますが、政府の統一見解、これは六ケ所村が最終的にすべての施設が機能するというのは、確かに今世紀後あるいは二十一世紀の初頭になるでしょう。しかし、それまでの間に決めるというふうなお話では絶対に受けられませんよ。統一見解を求めたいんですが、いかがですか。
  68. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 理事会の議に諮りまして処置いたします。
  69. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこで私は、昨日外務委員会をちょっと傍聴しておりまして、同僚委員の質問にお答えをされていたわけですが、先ほども申し上げましたように、不鮮明な問題が多いわけですね。どういう飛行機になるのか、あるいは容器がどうなるのか、あるいは輸送する経路は直行便で来る、三千メートル前後の滑走路を持った飛行場は十九カ所あるという程度のお話はわかっていますが、さて具体的に三点セットが六ケ所村に設置をされますと、当然高レベルの廃棄物あるいは再処理されたプルトニウムの貯蔵という問題は、東海村の事業所もあるでしょうけれども、大部分のものは六ケ所村が想定をされる、これも想定以上のものは出ませんけれども。そうなりますと、移送とか移転とかということで最適な飛行場はどこかということになりますと、まさか那覇空港におりてそれを持ってくるというような仕組みにはならぬだろう、ごく近いところになるだろうという可能性が非常に強いわけです。そこで三沢ではないかということを同僚委員が質問しましたが、しっかりしたお答えは聞かれなかった。可能性は非常に多い。嘉手納にしろあるいは三沢にしろ米軍の軍用基地と共管あるいは共存をしているわけであります。  そこで、三沢に輸送するのかとお伺いをすれば、いやこれから勉強しますという御答弁になると思いますが、平和利用と軍事利用との差を明確にする一つの手段としては、軍用基地を使わない、そういうことのあかしが私は必要ではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  70. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 先生御指摘のとおり、まだ空港の検討については白紙の状態でございますもので、それについて直接お答えすることができないわけでございますけれども、もし仮に軍用の基地を使ったという場合につきましては、私どものプルトニウム利用というのは、我が国高速増殖炉あるいは新型転換炉あるいは軽水炉、そういった炉でもって燃料として使用するものであるわけでございまして、あくまで我々の目的は平和目的に限ってやるわけでございますから、そういう意味では確かに、先生の御指摘のとおり、それがそうでない方がより明確になるのではないかという点については私もここであえて否定は申し上げません。しかし仮にそうなったとしても、目的はあくまでそういった平和目的に使うということだというふうに御理解賜りたいというふうに思います。
  71. 穐山篤

    ○穐山篤君 想定問答集みたいなものであります。ですから、どうしても審議に迫力がわいてこない。非常に残念な審議のやり方だと思うんです。  さて、時間がありませんので、自治省さんおいでになっていますか。——ここの国会の場所は三百年前はどういう状況だったんでしょうか、勉強されていますか。——いいです。  低レベル廃棄物にしろ、これは少なくとも三、四百年の時間で半減をするわけですね。高レベルになりますと二万年とか三万年という時間が必要になります。  さてそこで、これは時代がどんどん変わることは承知をしますけれども、言ってみますと、六ケ所村というのは村全体がプルトニウム社会なんですよ。これを三百年なり二万年なり三万年地域住民のためにどういうふうに生かしていくか、管理をしていくか、そういう問題について研究をされたことありますか、三万年先の話。
  72. 原純一

    説明員(原純一君) お答え申し上げます。  残念ながらまだそこまで研究はいたしておりません。
  73. 穐山篤

    ○穐山篤君 冗談はともかくとして、時代の変遷、近代化ということについては私は全然否定をするものじゃありません。しかし、扱う品物そのものが安全を十分に担保するということがあったにしてみても、非常に放射能、死の灰というふうな性格の品物を操業し、稼働し、加工し、管理するものであります。したがって、おれたちの時代だけでこの問題は終わりというわけにいかぬと思うんですね。  そこで、大臣、冗談はともかくとして、少なくとも何百年、何万年という将来に向かってどういうふうな地方自治を考え共存をさせるかという問題は政治の課題だと思うんですよ。きょう直ちにお答えは出ないと思いますけれども、私は事が重大なだけに非常に重視をしている一人であります。その点についての御感想をお伺いしたいと思います。
  74. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) お話のとおり、六ケ所村全体がこれから核燃料サイクル施設の大きな舞台として我が国原子力発電の安定的供給のために貢献をしていただくわけでございますので、それには政治としても、また国民全体としても六ケ所村の方々に十分おこたえをしなければならない。長い問題でございますけれども、当面は関連産業を誘致する方向に進めたり、またできるだけ住民方々にこれらの施設でお働きをいただけるような場をつくってあげたり、地域住民と共存共栄の形でこれらの施設が運営されますように、こちらでも誠意を尽くしますけれども、住民方々のなお一層の御理解なり御協力をいただけますように、また交付金の問題等でも、私の直接の所管ではございませんけれども、そういう面でもお役に立たたなきゃならないという気持ちでいっぱいでございます。  いずれにしても、六ケ所村を抱えております青森県の皆様方、特に知事様あるいはまた県議会さらにはまた六ヶ所村の地方自治体の皆様方のこれまでの御努力に報いられるように、安全性確保をなお一層高めながら、さらにまた国民のエネルギーとしての原子力発電を着実に進めていくということで努力をしてまいりたい、このように考えております。
  75. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間が来ましたのでまとめて申し上げますが、核防条約にしろ日米原子力協定の締結にしろ、その間さまざまな日米間の議論がありました。あるいは国際的な議論があったことも十分承知をしております。なかんずくこのプルトニウムの軍事転用という問題を関係国は非常に憂慮を しているわけです。実際に核兵器を持っているところは世界に何カ国かあるわけですね。そこは核兵器を使ったり、あるいはINF条約なんかである程度の縮減を図ろう、そういう政治課題があることも十分承知をしています。  しかし、心配をしております国際的な話は、韓国が核兵器を持つんではないか、あるいは台湾もそれに近いではないか、インドが核実験を行ったといううわさがある、あるいはパキスタンも同様である、イスラエル、イラク、南アフリカについても同様であるということが公然と議論をされたいきさつが残っているわけですね。日本日本で平和利用以外は絶対使わない、その確固不抜なことは私も承知をしておりますけれども、そうなりますと、日本だけが孤塁を守れるかどうかというのは私は一〇〇%重荷ではないかなという意味で、軍事に転用をさせない、そのための国際的な約束、監視をもっと徹底をすべきではないか。核兵器を持っているところについて私は許容しているわけではないんです。そのことは誤解をしてもらいたくないと思う。  そこで、今月末から来月にかけまして第三回の国連軍縮特別総会が開かれるわけです。被爆国日本として当然主張すべきことは主張してもらわなければなりませんし、核を廃絶するということに向かって全力投球をしてもらわなきゃ困る。その意味では、竹下総理にその意思ありやなきやということをただしたかったわけですが、御都合が悪いようですから、外務省でも結構でありますが御答弁をいただきたいのは、その際に、核防の問題に関連をして、軍事転用について絶対にさしてはならないし、査察なり検証について積極的に日本が提案をしていく、そういう気持ちであってしかるべきではないかな、そう考えます。その点についての御意見をいただきたいと思います。
  76. 桂誠

    説明員(桂誠君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、五月の末から六月末にかけまして第三回の軍縮特別総会というものが、六年ぶりでございますが、開かれるわけでございまして、御指摘のとおり、竹下総理大臣も冒頭御出席いただきまして代表演説を行われる、六月一日かと思います。私ども軍縮に関する国際努力に最大限協力するというのは政府の基本方針の一つでございまして、竹下総理が、今先生がおっしゃったことを踏まえまして、我が国の軍縮に対する熱意を訴えてくださる、これは大変私ども外務省としてもありがたいことだと思います。  先生の御指摘のございました核拡散防止条約、これにつきましては、御指摘のとおり、核兵器国と非核兵器国の差があるわけでございますが、しかしながら、それでは不平等を解消すればいいではないかということになりますと、それでは全世界が核兵器国になっていいということになりましても困りますものですから、不平等性は残っているわけでございますけれども、五核兵器国以外の非核兵器国は核兵器国にはならない、こういう約束をこの核拡散防止条約でしているわけでございます。こういう国々につきましては、先生の御指摘のございました韓国、それから台湾、これは私ども国とは考えておりませんが、韓国、台湾、これは加盟しておりまして、この条約に加盟しております非核兵器国は、その領土のすべての原子力施設につきましてIAEAの査察を受け入れることによりまして核拡散防止のあかしを立てる。非核兵器国がNPTに加わりましてIAEAに査察をしてもらうことによって、核兵器に軍事転用していない、核物質を軍事転用していないという身のあかしを立てるわけでございまして、この体制がますます強化されるべきだろう、こういうふうに考えております。  他方、原子力の平和利用は、これは非核兵器国につきましても十分に担保されなきゃいけないということでございまして、先生がおっしゃっておりますように、原子力の平和利用と核拡散の防止、この両立を図ることは非常に重要な問題であると思っておりまして、この点を竹下総理御自身が訴えられるかどうかは総理の御判断でございますが、私ども代表団といたしましては御指摘の点も十分踏まえて対処していきたい、こういうふうに考えております。
  77. 伏見康治

    ○伏見康治君 きょうの参考人方々のお話を承っております間に、前回もちょっとお聞きしたことでございますけれども、今回の措置によって、アメリカの監視のもとに大量のプルトニウム日本へ運び込まれてくるという道が開けたと思うんですが、プルトニウム生産の数量的な計画、それからそのプルトニウムを何に使っていくかということの数量的な計画ですね、それがマッチしてないといろいろな国際的な疑惑を抱かせると思いますので、その数字をちょっと整理して伺わさしていただきたいんですが。
  78. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 整理して申し上げますと、昭和六十年度以降、まあ一応二〇〇〇年ごろというふうにさしていただきたいと思いますけれども、我が国プルトニウムの需要量、これはあくまで現時点の見通しでございますけれども、合計約四十トン核分裂性プルトニウムという見込みでございます。  それで、じゃどういう用途に使うのかということでございますけれども、その四十トンの内訳でございますけれども、まず動燃事業団でやっております高速増殖炉常陽」、それから新型転換炉「ふげん」、それから現在建設中、これは昭和六十七年から臨界に達しますけれども「もんじゅ」、これで約十トンの核分裂性プルトニウムという量になってございます。それからもう一つは、電源開発株式会社が青森県大間町で、動燃事業団が開発しました「ふげん」をより大型にしたもの、ATR実証炉と言っておりますけれども、これで約五トンの核分裂性プルトニウム。それからもう一つは、高速増殖炉で「もんじゅ」の次に実証炉をつくろうという計画がございます。これは現在では電力会社が中心になりまして、もちろん動燃と一緒にやるわけでございますけれども、日本原子力発電株式会社、そこが実施主体になるということに一応今決まってございますけれども、そこでのFBR実証炉、これが約三トンの核分裂性プルトニウム、これを所要する。それからあともう一つは、現在の電気事業者軽水炉で、先ほど板倉参考人からありましたプルサーマルというやつでございますけれども、この軽水炉でのプルトニウム利用、これで約二十二トン核分裂性プルトニウムということになるというふうに考えてございます。合計しまして四十トンというのが今後の需要でございます。  それから、それに対する供給でございますけれども、そのバンドで考えますと、まず海外の再処理フランス、イギリスから輸送され持ってくる核分裂性プルトニウム、これも先生御案内のとおり、燃料をどのくらい持つかによって少し量は変わってくると思いますけれども、大体二十五トン核分裂性プルトニウムというふうに考えてございます。それからもう一つは、国内で動燃事業団の再処理工場からできるプルトニウム、それから青森県六ケ所村でこれから原燃サービス株式会社がつくります再処理工場からできるであろうプルトニウム、これが両方足しますと約十七トンぐらいであろうというふうに考えてございます。したがって、多少約でございますものですから、両方で大体バランスがとれる、こういうふうに考えている次第でございます。
  79. 伏見康治

    ○伏見康治君 なおいろいろ質問しておきたいことも実はあったんですけれども、きょうの参考人の話を聞いてこれは聞いておくべきだなと急に思いついたのがあるんですが、この最後の久米さんが出してきた事故報告、これいいですか、聞いて。余り的確な答えが得られないのなら聞かなくてもいいんですが、別に通告はしてないから。
  80. 松井隆

    政府委員(松井隆君) ちょっと申しわけないんですけれども、的確なお答えができないと失礼に及びますものですから、できればその答弁は留保させていただきたいと思います。
  81. 伏見康治

    ○伏見康治君 じゃ、また。  言おうと思ったことを社会党の同僚委員が既に聞かれた面もございますのでこの辺でやめておきますが、最後に原子力委員長としての伊藤さんに お話を承りたいんですが、先日亡くなりました有沢広巳先生が長らく原子力委員会に参加されて一つの筋の通った仕事をしておられたということは御存じのとおりだと思うんでございますが、私の最も尊敬する先輩でございますが、その有沢先生が原子力委員長代理を長らくやっておられて、原子力委員会が何をなすべきかということを絶えず繰り返して私に説かれていたんですけれども、その中で一番私の印象に残っておりますのは、日本原子力委員会にとって一番大切なことは、いかにして原子力の平和利用を担保するかということであるということを繰り返し説明されておりました。いろいろ外国の雑誌類を見ておりますというと、日本は核武装するのではないかといううわさがいろいろと取りざたされておりますので、私は本当は総理に望みたいわけですが、今目の前におられる伊藤原子力委員長に、日本は決して核武装などはいたしませんということを改めて御確認を願いたいと思うんでございますが、いかがでしょうか。
  82. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 当然のことでございますけれども、極めて大事なことでございますので繰り返しお答えをしたいと思いますけれども、我が国原子力開発利用は、言うまでもなく平和の目的に限って推進してまいりましたし、これからもこの原則は貫き通してまいりたい、また貫き通さなきゃならないというふうに考えております。また一面、今もお話しのとおり、安全性確保なくして原子力の平和利用もない、この一点もしっかり守っていきたい、このように考えております。
  83. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 核物質防護ということでちょっとこの間議論してまいったわけでございますが、広くは核そのものの防護と申しますか、そういう中の大事な問題だと思うんですが、広く見てみますと、本来核兵器の廃絶とか核施設へのジャック等不法行為の防止であるとか、それから核施設の事故防止と事故発生時の防災対策であるとか、また事故発生時の放射能汚染対策と日常監視の問題など、より広く体系的に本来考えられるべき問題であるというふうに思うわけです。  そうした観点から先日も五月十三日にお聞きしたんですが、時間切れとなって十分深められなかった問題について、そこのところから少し入っていきたいと思うんですが、外務省の方は原潜事故があったということを当然のことながら認められたわけですが、米軍自身も推進力としての原子炉事故そのものはあり得るんだということを認めております。それに対して、原潜事故が起こっても、船だからよそへ引っ張っていけばというふうな、まあいささか子供じみた議論は論外としても、実際に横須賀で事故が起こったらどうするのかという、この問題はやはり大事な問題であるわけです。国は原発設置県に対しては、原子力防災を地域防災計画に入れなさいということを指示しているわけですね。災害対策基本法では、この計画を立てるときには国と協議をしなさいと義務づけているわけですね。横須賀ではそういうことをやろうとしているわけですが、科学技術庁としては、こういう協議を受けて原潜事故を想定した地域防災計画を立てちゃならぬという立場でいかれるのか、もう最初から回答を拒否されるのか、それはもう地元、県で勝手にやりなさいよということでいかれるのか、この点もう少し整理して深めたいと思いますので、まずそこのところからお聞きします。
  84. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 米国の原子力潜水艦の寄港に伴います防災対策が必要ではないかという御指摘につきましては、先般の本委員会におきましても原子力潜水艦というものの安全性につきまして御説明申し上げ、外務省からも御説明があったと思いますけれども、私どもはそういった米国側の説明を受けまして、特に防災計画といったものは必要ないというふうに御説明をさせていただいておるわけでございます。  横須賀市あるいは神奈川県におきまして、本件防災計画について策定してはどうであろうかといったお話があるということは私どもも承知をいたしておりますが、決して私ども必要がないからということでそれをつくるべきじゃないという指導をしたつもりはございません。地方自治体が防災計画をおつくりになるのは、災害対策基本法によりまして必要があればつくるということで、それは地方自治体の御判断にゆだねるべきであるというふうに思いますが、私どもといたしましては必要はないという立場をとっているものでございます。
  85. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 災害対策基本法では、これは勝手につくればよろしいというだけじゃないですね、国と協議をしなさいと義務づけているわけですね。だから、協議を持ってきたときに、いやそれはアメリカが大丈夫と言っているから大丈夫ですと。つまり原潜はアメリカが安全だと言うから防災計画は必要ないという、そういう立場なのか、もうちょっと詰めておきたいんですけれども、安保条約によって防災計画を立ててはいけないという立場に立っておられるのか、この点はいかがなんですか。
  86. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 米国側のるる御説明あるいはエードメモワールあるいは声明等によりまして、寄港する場合の原潜につきましての安全性は米国が保証するということでございますので、私どもはそれに加えましてさらに防災対策といったものは必要なかろうというふうに判断をしているものでございます。
  87. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 皆さんも関与されておられますのでよく御存じのように、青森県地域防災計画というのがございますね。ここの原子力対策では、青森県のむつの方ですね、県の災害対策本部の設置、「知事は、次の各号に該当する場合は、災害対策本部を設置する。」と、ここでは原子力船定係港で災害が発生し、大量の放射性物質が港外に放出するおそれがあり、また放出した場合には本部をつくるんだということとか、事細かに書いておりますね。それからまた退避の問題につきましても、被曝を避けるための被災地住民に対し緊急の措置として屋内待機の措置をとるよう関係市町村長に要請するということとか、あるいは退避そのものについてとか危険地区への立ち入り制限の問題、ずっと青森県の港湾については日本原子力船については決めているわけですね。つまり、これはアメリカの原潜はアメリカが大丈夫とおっしゃるから大丈夫、日本原子力船は危険だからこれを考えるという、こういう立場ですか。
  88. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 原子力船「むつ」につきましては地元の地域防災計画があるではないかとの御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、「むつ」の万が一の事故におきましても、これは陸上部と異なりまして、沖への引き出しといった可能性があるという点も考えますと、やはり一般公衆への被害の可能性というものはまず考えられないというふうに考えるわけでございますが、しかし「むつ」の場合は、原潜と異なりまして、ここにはやはり陸上附帯施設というものが設置されている。そこではやはり燃料交換あるいは燃料の貯蔵あるいは廃棄物の処理等が行われるということで、これは単なる寄港、原潜の寄港とは違うわけでございます。またさらには、定係港として原子力船「むつ」が常にそこに係留されているということも勘案いたしまして、地元の自治体におきまして原子力防災計画が策定されたものであるというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  89. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 日本原子力船の場合は、原子力災害を万一にしても考えなきゃいけないということを今おっしゃったわけですね。アメリカ原子力潜水艦であれば、同じ原子力船であるけれども、大丈夫だから必要じゃないという立場ですね。あなた自身おかしいと思われませんか。
  90. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 私は原子力潜水艦と「むつ」との違いを御説明したつもりでございます。米国の原子力潜水艦は日本に寄港するだけでございますが、「むつ」の場合は定係港に常に係留されており、かつ陸上施設というものがそこにあるわけでございます。その陸上施設におきましては核燃料を取り扱い、さらに貯蔵され、廃棄物の処理 も行われている、そういう違いがございますので、その点を勘案されて地方自治体で防災計画をおつくりになっているというふうに理解をしているわけでございます。
  91. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 潜水艦であろうと一般の船であろうと原子炉を積んだ船という点については違いがない。一時的にとまるにしても、長らくとまるにしても、そのことは除外して、原子炉を持った船であるということについては違いはないんでしょう。どうですか。
  92. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 原子力船「むつ」、そこに原子炉を積んでいるということにつきましては物理的には違いはないと思います。出力とかそういう面では当然違うでありましょうし、これは私どもの推測でございますが、単に寄港するだけであれば、普通は原子炉は出力は非常に抑えているというふうにもこれは常識として考えられるわけでございますが、「むつ」の場合はそういった定係港というようなところで、母港として常にそこにいるというその辺の運用の仕方、その辺の違いもそれはあろうかというふうに考える次第でございます。
  93. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 科学技術庁は放射能漏れの方は考えられて、それで原子力軍艦放射能調査指針大綱というのをまとめられて、これは横須賀でもやっておるわけですね。ですから、一方では放射能漏れもある、事故等も想定しながらそういうものをつくられて、ただしこれは測定だけで終わってしまっているわけですけれども、一方ではそれを考えながら、一方では地元が地域防災計画の中で位置づけようとして協議を持ってきても回答もしない、勝手にやりなさいと、これは余りにも無責任じゃないかと思うんですが、この点長官どうですか、長官のお考えを伺いたいんですが。
  94. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 累次御説明申し上げておりますとおり、原子力潜水艦につきましては、まず安全性は米国が保証し、さらにそれを確認するために私どもは軍艦の放射能調査大綱によりまして寄港のたびに測定し、あるいは寄港しないときにはバックグラウンドを測定しているということで、安全性確認、チェックを行っているわけでございます。したがいまして、いざ何か事があれば、前回も申し上げましたとおり、沖への移動も含めましてその安全性は保証されている。またそういう場合にはあの大綱によりまして、その事故の大きさの段階によりましてとるべき措置というものも決めておりまして、いざというときにはそういった関係機関によりまして協議をし、対応をとっていくということになろうかと思います。  一方、「むつ」につきましても、これは安全審査の段階で事故が起きた場合にはどういう影響が出るか。その場合でも、やはり原子力船というのはそういう場合には沖合いへ引き出すということも考慮に入れながら安全審査というものが行われておりますし、平常時におきましても、モニタリング等万遺漏なきを期しているということで安全性確保されておるわけでございますが、そういった規制によって安全性確保されているということと、それから防災対策、これは災害対策基本法によります防災対策でございますが、これはまた違う観点から、それでも万が一の何か起きた場合ということを想定しておるわけでございますから、それは、先ほどから申し上げておりますとおり、「むつ」には陸上施設もあるということも、これは地方自治体で十分勘案された結果であろうというふうに考えておるわけでございます。
  95. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 この議論を長官にも横でお聞きいただいたわけですが、別にアメリカでなくてもどこでもいいんですけれども、原子力潜水艦であれば、相手が大丈夫だと言えばもう大丈夫だと、そして日本原子力船については万一の事故も考えなければならないんだと、これはだれが考えても少なくともおかしな論理なわけです。そして、それじゃ万一横須賀で事故が起こったときにどのように人は避難をしなければならないのかとか、事前に防災対策を考えておくというのは当たり前のことだと思うんですが、しかし、そういうことも必要ないという見解は、どうも私は国民の立場からすれば合理的で納得できる根拠じゃないと思いますが、この点だけは長官のお考えをちょっと伺っておきたいんです。
  96. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 事故の際に何も対策がないということではございません。原潜が寄港中に仮に事故が起きたような場合には、米軍から外務省を通じまして直ちに通報が来る、あるいは私どもの放射線モニタリングによってそれにつきましては十分確認ができるという体制をとっておりますので、そのような場合には直ちに私ども所要の部署へ通報を行いまして、その後空中あるいは海水中の放射能測定等放射能調査を強化するということでございますとか、あるいは必要に応じ内閣の放射能対策本部を開催いたしまして、関係省庁及び地方公共団体との協力のもとに、一定海域への立ち入り制限でございますとか、原子力軍艦の近傍の海域での住民に対する影響が及ばないような措置、所要の対策を講ずるといったような万全の対策を講ずるということで私ども体制を整えているというふうに申し上げたいと思います。
  97. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 実際には事故が起こってから対応なんて遅過ぎるんですよ。事前に防災計画も立てて避難訓練をするとかちゃんとやって初めてなるわけであって、これはコンビナート災害であったとしても、地震災害であったとしてもちゃんとやっているわけです。これが相手が大丈夫だ大丈夫だと言っているから大丈夫でございますと、地域で地域防災計画を立てることについても拒否的回答をするということは本当に不当なことだと思います。  後ほど改めて大事な問題ですから長官のお考えを伺っておきたいと思いますが、時間がかなり迫ってまいりましたので、最後にPP問題についてまとめて申し上げておきたいと思います。  ハイジャックを初めとしたこの一連のテロ行為というのは、人道上も国際法上も断じて許されない蛮行であることは明らかでありますし、まして核ジャックなどは絶対に許されないことであります。その点で核物質盗取の防止や原子力施設または核物質の移送に対する妨害、破壊等に対して国民の平和と安全が脅かされることのないよう、核物質政府責任で適切に管理するということは必要なことです。  本改正案、今審議中のものですが、第一に、核防護措置に限定して核燃料物質を取り扱う事業者に対して防護のための措置の義務づけ、第二に、国際輸送中の核物質の不法な奪取が大きな社会的不安をもたらすことから、国際輸送中の核物質防護の国際的協力体制を定めた核物質防護条約批准に当たっての国内法整備ということでありますから、この理由について本改正案については賛成できるものでありますが、本委員会における審議の中でこれまで強調してまいりましたけれども、核物質防護を考える際に重要なことは、核物質についてのやはり情報公開するということ、直接に従事する科学者、研究者、労働者はもとより、広く国民の監視によって防護することであります。原子力施設に従事する科学者、研究者、労働者の自主性や専門研究の自由、自治の保証がみずから防護についての自覚を高め、核物質防護を確実にするものであります。反対に個人の宗教、思想、信条、人種、出身についてチェックするような人間に対する不信から出発したのでは、自覚的な防護は生まれ得ません。したがって、核物質防護の名によってこれら原則が損なわれることは絶対あってはならないことです。また広く国民の監視による核物質防護を形成する上で、本改正案に盛られた防護措置防護規定核物質防護管理者や信頼性確認などの重要事項が政省令にゆだねられているということは極めて重大です。本法施行に当たっては、政府及び関係機関は、原子力基本法が定める自主、民主、公開原子力平和利用原則を厳格に守るとともに、信頼性確認においても基本的人権や労働基本権を遵守し、尊重し、研究者の自由な交流を妨げることのないよう強く求めておきます。  最後に、核兵器廃絶の緊急性、重要性についてですが、地球上からすべての核兵器を廃絶するこ とは今日何よりも緊急に求められております。同時に、核兵器の廃絶こそが最大の核物質防護になるものであります。現実にはアメリカの核不拡散政策は我が国の平和的原子力利用研究開発分野にまで及び、原子力基本法の三原則が今侵害されてきていることは大変な事態でございますが、このことは政府自身が言っている原子力の平和利用とも矛盾することは明らかです。このことを強調し、また核兵器の廃絶という緊急かつ重大な課題で政府が果たすべき責任重要性を重ねて本法案については強調しておきたいと思います。 の最後に、今申し上げた点ですね、本当にこれは横須賀におけるこういう態度というのは、国民の核に対する不安の問題、本当の意味での広い意味でのこの核防護という観点からしても、これは重大な問題を持っておりまして、長官としてはやはり三港連絡協議会の科学技術庁あての要望書がありますし、これはこの間も申し上げましたが、具体的対応指針を出してもらいたいということが地域から出ているいわですが、これは指針をまとめいく、こういうことが少なくとも必要だと思うんですが、最後にこの点について長官にお伺いして質問を終わりたい思います。
  98. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 原子力潜水艦に対する周辺住民の安全は十分確保されております。また原子力軍艦の万が一の事故の場合にも、政府委員からも答弁を申し上げましたとおり、所要の対策を講ずることができるようになっていると確信をしております。
  99. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 他に御発言もないようですので、質疑は終局したものと認めます。     ─────────────
  100. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、前島英三郎君及び最上進君が委員を辞任され、その補欠として二木秀夫君及び野沢太三君が選任されました。     ─────────────
  101. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  102. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 速記を起こしてください。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  103. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。  反対の理由を申し述べるに先立ち、日米原子力協定について指摘しておきたい点があります。もちろん協定そのものの審議は当特別委員会の所管外でありますが、本改正案とかかわり合いを持ち、科学技術庁所管の原子力安全性に深くかかわり、科学技術庁や通産省のエネルギー対策として行うことに対する取り決めだからであります。  同協定によって、包括同意によって回収プルトニウム空輸が行われることになりますが、協定締約国の一方の当事国たるアメリカが、自国領土内への立ち寄りばかりか、領土内上空の通過さえ拒否されようというのに、なぜ我が国の空は欄わないとするのか、どうしても納得のいかないところであります。  また、仮にアメリカ上空を避けてノンストップの空路をとるとしても、この場合、それが可能な航空機も、マカウスキー法をクリアする安全容器もまだ開発途上なのであります。  また、アメリカには軍事目的に転用されるのではないかという心配の声もあると言われております。核ジャックを防がねばならないのは当然であります。しかし、プルトニウム回収と利用さえしなければ、輸送に伴う問題点も、輸送中の核ジャックの心配もなくなるのであります。そのことをこの際強く指摘し、以下本改正案に反対する理由の主な点について述べたいと存じます。  その第一は、原子力基本法趣旨がどのように生かされているかを知りたい重要な部分が政令及び府省令事項とされているという点であります。本改正案審議に当たって、その考え方等について一応の提示があり、説明も聞きましたが、政令、府省令そのものが提示されたわけではありませんし、政令、府省令は国会の議決あるいは承認の対象ではありません。重要な問題は、本来国会における論議を経て決定される、そういうことこそ我が国の民主主義の原則であるはずであります。しかし、政令、府省令は、もし改定するとしても、行政府と行政委員会の判断に任されるということになるのでありまして、重要事項が国会審議の外に置かれてしまうということになるわけであります。国会軽視に通じる政令、府省令の扱いを許すわけにはいかないのであります。  反対する第二の理由は、その政令、府省令事項とされている防護措置防護規定、そして防護管理者等の内容、基準、決定の方法などについて、原子力基本法の民主、自主の原則に照らして必ずしも明確でないということであります。  核ジャックのおそれを口実に、過度な規制や独断的管理に陥ってはならないわけでありますが、例えば核燃料物質防護のための組織体制を整備するというが、それはどんな組織的整備をいうのか、あるいは一定の知識とはだれがどんな方法で認定する、どんな内容の知識水準をいうのかなど、その具体的内容は、組織によって、あるいは施設の種類や対象の違いによって異なる場合がある程度では、どうしても納得できないわけであります。  一歩間違えば、基本的人権や学問、研究の自由、労働基本権等を侵し、民主、自主の原則を踏み外しかねない問題だけに、自主的チェック機能を働かせる仕組みをつくるなど、その保障措置が必要であります。民主、自主の原則が守られる保証のないままで法律改正案を認めるわけにはまいりません。  第三点は、公開原則がますます空洞化されるおそれがあるという点であります。  現在でも既に原発事故の場合等で、企業秘密や核ジャックのおそれなどを口実にして資料の一部が非公開扱いされております。私は核ジャック防止の重要性を認識するがゆえに、核の持つ恐るべき本質についてより多くの国民が理解しているということこそ重要だと思うのであります。それが核ジャックを未然に防ぐ基礎的な条件だと思うからであります。だから、チエルノブイリ原発事故以来、原発に疑問を持つ国民がふえたことは、核の恐ろしさを感ずる者がふえたという面ではよい傾向だと思うのであります。しかるに政府は、逆にこうした傾向に懸念を持ち、安全を強調するだけで、核の持つ恐るべき側面から国民の目をそらせようという姿勢をますます強めてきております。これは核ジャックへの警戒心の薄い国民づくりに通じているのではないかと思うのであります。  また、安全性への疑問こそ安全への努力を怠らせない要因でもあります。もし核ジャックのおそれを口実に反原発運動を抑えるなどということがあれば、むしろその方がかえって危険であります。平和利用への安全弁でもある公開原則を空洞化することには絶対に反対であります。  第四は、特定核燃料物質の定義を設け、いわばプルトニウムの本格的回収と利用のための法律的整備になるという点であります。  プルトニウムは半減期二万四千年、わずか二百キログラム程度で全世界の人々を発がんさせるとも言われるほど毒性の高いものであります。その平和的、商業的利用の本命だとされる高速増殖炉開発については、最も早く手がけたアメリカが中止しておりますし、フランスのスーパーフェニックスも事故以来開発が凍結されております。これは余りにも危険性が高い上、高価なものになるからにほかならないのではありませんか。それに、我が国にはアメリカのマカウスキー法のように厳しい安全証明を義務づける法律が、空輸はもちろん海上、陸上輸送の際にもあるわけではありません。核ジャックからの防護はもちろん必要でありますが、それ以前の問題としてプルトニウム輸送すること自体が大きな危険を伴うものだということを認識しておかなければなりますまい。  使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを回収し、利用するプランは、輸送、貯蔵を含め、国民にとって取り返しのつかないことになるかもしれない、そういう危険と裏腹の関係にあるわけであります。この際、プルトニウム利用のための法律的整備を急ぐよりは、まず先に開発を手がけた諸外国のあり方等を十分検討して根本的な見直しを図ることの方がより緊要な課題ではないかと思うのであります。  以上、本改正案に反対する主なる理由とその考え方について申し述べました。委員各位にはどうか御同調をいただけますようお願い申し上げ、討論を終わります。(拍手)
  104. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 以上で討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  105. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、後藤正夫君から発言を求められておりますので、これを許します。後藤正夫君。
  106. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 私は、ただいま可決されました核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・国民連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は本法施行に当たり、次の諸点について遺憾なきを期すべきである。  一、原子力の研究、開発及び利用について、民主、自主、公開の三原則を定めた原子力基本法の精神を堅持すること。  二、核物質防護措置に関する法令上の基準を速やかに策定すること。  三、核物質防護措置を円滑に実施するために必要な体制整備を図ること。  四、核物質の国際間における輸送の機会が増大しているおりから、核物質防護に関する一層の国際協力を進めること。   右決議する。  以上でございます。
  107. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいま後藤正夫君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  108. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 全会一致と認めます。よって、後藤正夫君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、伊藤科学技術庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。伊藤科学技術庁長官
  109. 伊藤宗一郎

    ○国務大臣(伊藤宗一郎君) 核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、慎重御審議の上、ただいま御可決を賜りました。まことにありがとうございました。  その際の附帯決議の御趣旨を十分に尊重し、核物質防護についてさらに万全を期する所存でございます。何とぞ今後ともよろしく御指導をお願い申し上げます。
  110. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会