運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-20 第112回国会 参議院 科学技術特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十日(水曜日)    午前十時三十分開会     ─────────────    委員異動  四月十八日     辞任         補欠選任      伏見 康治君     塩出 啓典君  四月十九日     辞任         補欠選任      松前 達郎君     菅野 久光君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         飯田 忠雄君     理 事                 後藤 正夫君                 出口 廣光君                 高杉 廸忠君     委 員                 岡野  裕君                 岡部 三郎君                 木宮 和彦君                 志村 哲良君                 高平 公友君                 成相 善十君                 長谷川 信君                 林  寛子君                 前島英三郎君                 最上  進君                 穐山  篤君                 稲村 稔夫君                 菅野 久光君                 塩出 啓典君                 吉井 英勝君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君    政府委員        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    石塚  貢君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省国際連合        局科学課長    日向 精義君        資源エネルギー        庁公益事業部開        発課長      小林 盾夫君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      三角 逸郎君        特許庁総務部総        務課長      渡辺 光夫君        特許庁総務部工        業所有権制度改        正審議室長    山本 庸幸君        特許庁総務部国        際課長      油木  肇君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        林  政義君        動力炉核燃料        開発事業団理事  植松 邦彦君        動力炉核燃料        開発事業団環境        資源部長     渡辺 昌介君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (科学技術振興のための基本施策に関する件)     ─────────────
  2. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月十八日、伏見康治君が委員辞任され、その補欠として塩出啓典君が選任されました。  また、昨十九日、松前達郎君が委員辞任され、その補欠として菅野久光君が選任されました。     ─────────────
  3. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件を議題といたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件について、本日、動力炉・核燃料開発事業団理事長林政義君、同事業団理事植松邦彦君及び同事業団環境資源部長渡辺昌介君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 志村哲良

    志村哲良君 質問に先立ちまして、私は慎んで弔意を表したいと存じます。  我が国における原子力平和利用の諸問題に関しまして長年にわたり大変な御尽力を賜り、多大な功績を積まれました藤波恒雄先生が去る四月八日、まことに残念なことでございますが、御逝去をされました。私は改めて先生の御功績に深い敬意を表しますとともに、慎んで御冥福をお祈り申し上げる次第でございます。  日米科学技術協力協定の問題に関し質問をいたしたいと存じますが、この問題が今日に至る経緯に触れますために、冒頭若干の時間をちょうだいいたしたいと存じます。  昨年十月から大変な御努力を重ねられました日米科学技術協力協定が三月末新協定内容につき大筋合意が得られ、現在はワーディングの詰めを行っておられると伺っております。本当に御苦労さまでございました。  考えてみますと、この協定問題以外にも例えば牛肉、オレンジの輸入自由化問題、あるいは日本建設市場に対する米企業の参入問題など、我が国の政治や経済に重大な影響を及ぼす諸問題がこのたびの予算委員会の開催中にも日米間の差し迫った問題といたしまして提起され、論議を呼んだことでございました。当然のことと申せるかもしれませんが、私はこれらの問題はすべてその根源は同じところに求められるものであろうと考えております。  一九四四年、アメリカ・ニューハンプシャーのブレトンウッズにおいて開催されました世界通貨会議におきまして新国際金融機構についての協定が調印され、四五年には国際通貨基金(IMF)と世界銀行が設立されまして、いわゆるブレトンウッズ体制確立されたわけであります。さらに一九四七年、この体制を補完するための国際貿易機構といたしましてガットの発足を見たわけであります。  これらを契機といたしましてドル世界基軸通貨としての地位確立いたし、これにアメリカ軍事力を加えまして世に言ういわゆるパクス・アメリカーナ確立が見られたものであろうと考えるものであります。  ところが、その後六〇年代には核軍備ではソビエトに追い越され、さらに一九七一年にはパクス・アメリカーナ基幹的システムであります金ドル本位制の停止が行われ、さらにアメリカ経済競争力の弱化を招来いたします中で、さしも強大を誇りましたパクス・アメリカーナにも揺れと申しますか、機能の不全と申しますか、いずれにいたしましても何がしかの変化が起こったことは疑う余地がないところであろうと考えるものであります。  私は、さきに申し述べましたような諸般の問題は、このパクス・アメリカーナ揺れの中で惹起してきたものであろうと思料をいたすものであります。同時に、このパクス・アメリカーナ揺れに直面をいたしまして、短期的にはこの体制の再構築が必要でありましょうし、長期的には新しい世界秩序維持を図るべき体制確立も模索されなくてはならない、現在はそのような状況下に置かれているのではないか、そんな思いを抱くものであります。  反面、これから経済環境変化の中でも、世銀の姉妹機関であります国際開発協会IDA)も設立されましたし、ガットでも第二ケネディ・ラウンド東京ラウンド、アジア・ラウンドウルグアイ・ラウンド等協力体制設置されまして国際的な協力体制がとられましたことは周知のことであります。  竹下総理は、予算委員会等で一九八五年九月のいわゆるプラザ合意について所感を求められますと、後世史家の批判を待つのみでありますと、まことに慎しみ深い発言をなさっておられますが、私は、あの合意こそ人類の英知を集めて現在最も肝要な国際協力の端緒を開いたものであるし、国際的にも国内的にも経済構造の変革を進める中で長期の安定軌道確立する重要な転機をもつくり出したものであると高い評価を抱いているものでございます。  このような日米両国の間における環境変化の中で、科学技術分野における諸関係も幾多の変遷を重ねたと私は考えております。もちろんブレトンウッズ体制確立されましたその当時は、あらゆる分野におきましてアメリカの援助に負うところが多かったことは私どもは率直に認めることが必要であろうと存じますが、しかし、やがて日本の国力が増大いたしまして、科学技術分野でも一部ではアメリカに追いつくというような事態にまでもなります中で、時には基礎研究ただ乗り論などということが口にされました。その典型的な例を私は半導体工学に見られるような、そんな思いがいたしております。  レーガン大統領年頭教書における科学技術に関する主張もこのような背景の中で出されたものだろうと思います。だが、それにいたしましても、昭和五十五年五月、亡き大平総理が訪米時にカーター大統領との間で署名をされまして現在に至るまで極めて異例であったと高い評価を受けている協定が、今日さらに深い日米間の理解を求めながら討議されておりますことはまことに私は感銘深いものを覚える今日であります。  今申し述べましたような経緯に若干の思いを寄せながら、次に具体的な御質問をさせていただきます。  まず、外交交渉の問題でございますので御無理の点もあろうかとは存じますが、許される範囲で協定に関する交渉経緯大筋合意の概要をお伺いいたしたいと存じます。
  7. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) ただいま先生からるるお話がございましたように、現在交渉しております日米科学技術協力協定の改定も、やはりアメリカ日本の間の力関係と申しますか、そういったものの大きな変化の流れの中において出てきているものでございまして、米国立場から物を見ますと、現在の科学技術協力協定ができ、それから実行されておるその背景というのは、まだアメリカ日本の間にかなりの差があった、そういう前提で物事が考えられ、進められてきたという認識アメリカ側が持っておるわけでございまして、今先生るるお話ございましたように、その後日本発展が極めて著しいということがございまして、科学技術レベルの点におきましても、一部の分野ではアメリカと肩を並べるようになってございますし、また経済力の点につきましては、新聞紙上をにぎわしておりますように、大変強大な力を持つというような形になっておるわけでございまして、そういった中においてやはりアメリカ側としては、日米対等立場に立った形での新しい科学技術協力枠組み構築が必要である、こういう認識に至ったわけでございまして、たまたま現在の協定の期限切れを迎える際に、改めてお話し合いをしてそういった新しい枠組みをつくりたいという提案が昨年の秋ごろからあったわけでございます。  その話を受けまして政府といたしましても、関係省庁相協力をいたしまして現在まで協議を行ってきたわけでございますが、両当事者間お互いに忌憚のない意見を出し合い、自分たち立場維持しつつ、妥協できるところは妥協するという協力精神によりまして三月三十一日に大筋合意に達することができたという状況でございます。  大筋合意内容は六点ほどに要約できるのではないかというふうに思うわけでございます。  まず第一点は、この協定平和目的のための日米のいろんな研究協力について考えようということでございます。  それから第二点は、そういった日米間の科学技術協力発展させるための基本的枠組みをつくろうというのが第二点でございます。  それから第三点は、中身になるわけでございますが、日米間の協力活動をもっと拡充をしていこう。それから、現在アンバランスがあるといったことでいろんな批判も出されておる問題でございますが、両国間の研究者、それから科学技術情報交流といったものを一層拡大をしよう。それから、一方に偏ることなくお互い対等立場でそういった協力拡大をしていこうといった点でございます。  第四点は、そういった協力活動をやりますときには、やはりお互いに納得いく形での成果配分と申しますか、知的所有権の適正な配分というのが必要である。そういったルールを決めようではないか。具体的には貢献度に応じた形での適正な配分をしようという考え方が示されておるわけでございます。  第五点目は、情報公開原則の確認でございまして、両国間での協力拡大によりましてその成果を広く公開をするということによりまして、両国はもちろんのこと、世界知的財産拡大に寄与しようではないかという点でございます。ただ、情報公開につきましては、報道でもいろいろ批判があるわけでございますが、情報公開原則を確認すると申しましても、アメリカの中にはやはり何らかの限定があるといった国内事情がございまして、そういった米国内の国内事情日本国内の実情とが矛盾しないように協定の上に書く必要があるということから安全保障という字句協定の中には出てきておりますけれども我が国立場から見ますと、現在の我が国制度には何ら変更がないという形で整理がされておるものでございます。  第六番目は、協定の適切な運営メカニズム設置でございまして、いろんな問題について相談をする場として両国の代表で構成されます合同委員会設置といったいろんなメカニズムにつきまして内容合意をしたというものでございまして、以上の六点に要約ができるかと思いますが、私どもといたしましては、こういった大筋合意中身もとに現在字句詰めを行っておりまして、協定成立の暁には、こういった協定交渉精神を踏まえて両国間の協力拡大に努めたいと考えておる次第でございます。
  8. 志村哲良

    志村哲良君 先ほど申し述べましたような経緯をも踏まえまして、私は、政府といたしましては国際的な観点から我が国科学技術振興をどのように図っていくおつもりでございますか、基本的な考えを大臣にお伺いいたしたいと存じます。
  9. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生自身からもるる御指摘になりましたことで我々も同感でございますけれども、改めて御質問でございますので答弁をさせていただきます。  国際社会におきまして、経済面のみならず、科学技術の面におきましても大きな地位を占めるようになりました我が国といたしましては、科学技術を通じて国際社会に積極的に貢献していかなければならない、そういう段階に至ったものと強く認識をしております。このような状況にかんがみまして、先生も篤と御承知のとおり、昭和六十一年三月に閣議決定いたしました科学技術政策大綱においては、国際性を重視しながら科学技術発展を図るということを基本方針としておるところでございます。この基本方針に沿いまして、国際共同研究推進外国人研究者の受け入れのためのフェローシップ制度の創設、国際科学技術情報ネットワーク運用等各種施策の一層の推進に努めてまいりますし、これからも大いに努力をしてまいりたいと、このように考えます。政府としては、これらの施策の充実を図ることにより、科学技術面における積極的な国際貢献にさらに努力を重ねてまいる所存でございます。
  10. 志村哲良

    志村哲良君 ありがとうございました。  先ほども実は申し述べましたが、時にただ乗り論などというまことに芳しくない批判をも浴びた経験を持っております基礎研究の問題に関してでございますが、この基礎研究の問題に関しまして、殊に公的部門における研究開発の抜本的な増加などを含めた基本的な考え方に関する大臣の御所見を重ねてお伺いいたしたいと存じます。
  11. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) これまた先生の御指摘をそのままオウム返しにお答えするようになりますけれども、お答えをさせていただきたいと存じます。  近年の我が国科学技術水準の向上、国際社会における役割増大等に伴い、今後我が国が二十一世紀へ向けまして発展していくためには、創造性豊かな科学技術振興、特に御指摘のように独創的な基礎的研究強化が不可欠であると、このように考えております。このことは、先ほども触れましたけれども科学技術政策大綱においても政策基本としてその柱の一つに位置づけているところでございます。そしてまた、これまた御指摘のとおり、基礎的研究はいわば公共財的な性格を有するものであり、その推進に当たっては国が大きな役割を果たしていくことが必要と認識をしております。このため政府としてはこれまでも、厳しい財政状況もとではございますが、科学技術関係予算につきましては、その重要性にかんがみ拡充に努めてきたところであり、また創造性豊かな人材の養成、確保、基礎的研究活動を支える研究基盤整備強化、組織、分野の枠を超えた研究交流促進等を図ってきたところでございます。今後とも科学技術政策大綱に沿った諸施策推進を図り、創造的な基礎研究強化に全力を傾注してまいる所存でございます。
  12. 志村哲良

    志村哲良君 まことに実はささやかな経験でございますが、私は、かつて我が国が打ち上げました純国産の地球観測衛星MOSI受信局設置のことに関係いたしまして、オーストラリア並びにタイの両国を訪問いたしたことがございます。このときの両国MOSI受信局設置に関する喜び、期待、これを実は体じゅうで感じたものでございましたが、そのような経験にもかんがみまして、私は科学技術交流もとといたしました国際交流の深まり、これはよしこれが先進国同士であればそれなりに、先進国開発途上国であればまたそれなりに、実は冒頭に触れましたパクス・アメリカーナの後に、これは随分と先の話でございましょうが、我々が考えなくてはならない、期待しなくてはならない新しい国際秩序維持に関しまして、国際的な科学技術交流ということが極めて重要な意味を持つものではないかというような思いを抱いておるものでございます。ただいま大臣の御所見を拝聴いたしましてまことに心強く感じた次第でございます。  次に、原子力の問題に関しまして若干の質問をさせていただきます。  昨年末現在、世界稼働中の原子力発電所は四百基に達し、これから生み出される電力によって毎日六百万から七百万バレルもの石油消費が節約をされておると伺っております。また、我が国原子力発電も六十二年度には電力の約三〇%を供給いたして、稼働率も過去最高の七七・一%を記録しておると伺っております。  反面、二年前の例のチェルノブイル原発事故以来、一部の国民の間に原発に対するさまざまな意見も生まれまして、例えば四国電力伊方発電所出力調整試験の際に見られましたような反対の動きも見られるものであります。  私自身チェルノブイル事故の後、役所に御厄介になっておりましたので、ウィーンで開催されましたIAEAの特別会期に参加させていただく機会を持ちました。その際、例えばイランとイラクが、あるいは韓国と北朝鮮が、あるいは中国とベトナムが席を並べまして世界九十一カ国の閣僚レベルが参加をいたし、ともかくも化石燃料が有限である限り、安全保障を第一義とした上で原子力平和利用が極めて肝要であると、本当に肩を寄せ合うようにしてこの問題を討議いたしましたことに実は深い感動を覚えたものでございました。チェルノブイル事故以来の原子力に関するパブリックアクセプタンス動向、さらには対応はいかが相なっておりますか、お伺いをいたしたいと存じます。
  13. 松井隆

    政府委員松井隆君) まずパブリックアクセプタンス動向でございますけれども、昨年の八月に総理府で世論調査を実施いたしました。その結果をまず簡単に御説明させていただきたいと思います。  これは六十二年でございまして、実はその前に五十九年、これはチェルノブイルの前でございますけれども、やっておるわけでございます。  まず、原子力主力電源と考える人、これは明らかに増加してございまして、五十九年が五〇・九%に対しまして、六十二年におきましては六〇・六%というふうに増加してございます。  それから、今後原子力をふやすべきという人の御意見でございますけれども、五十九年は非常に少ない三六%でございましたけれども、六十二年度は五七%の人がやっぱり原子力をふやすべきというふうに御意見を賜っております。  それからもう一つは、チェルノブイルのこともございまして、やはり原子力に関して何らかの不安とか心配ということを表示している人、それがふえてございます。五十九年が六九・八%に対しまして、六十二年度になりますと八五・九%。そういう意味ではチェルノブイル影響が明らかにあらわれているというふうに考える次第でございます。  ただ、そういった原子力に対する不安あるいは何らかの心配をおっしゃっている人の中でも、そのうちの五八・五%の方はやはり原子力は必要なのでふやすべきであるという御意見でございました。これが日本での一番新しい世論調査動向でございます。  それから、先生指摘のとおり、その後確かに四国の伊方原子力発電所出力調整試験運転、これを契機といたしまして新しいタイプの心配する方々がふえたことは事実でございます。それに対しては、後ほど説明いたしますけれども、今後それに対する我々のPRの方法と申しますか、やはり原子力理解を得る方法がまだ不十分だったのではないかという反省をして今後対処してまいりたいと思います。  それから引き続きまして、まず海外でございますけれども、これは幾つかございますけれども、実はことしになりましたか、アメリカ原子力規制委員会ステロさんという事務総長が私のところに参りまして、そのときもらいましたアメリカのギャラップでやった世論調査がございます。それを簡単に御紹介いたしますと、これは昨年の九月から十月にやった調査でございます。したがってチェルノブイル後でございますけれどもアメリカ世論調査でも、原子力米国の今後の電力需要を満たすものに重要であると、七七%の方がそう答えてございます。それから原子力必要性は今後も増大するという人も七五%。あるいは原子力は大規模な利用のためのエネルギー源としてよい選択である、また原子力というのは現実的な選択であるとおっしゃる方もやっぱり六七%。そういうわけで、原子力は必要であるという人がかなり多いというふうに考えております。  それに対する各国の政策の問題もあるわけでございますけれども先生指摘のとおり、例えば最近で申し上げますとイタリア、これが国民投票原子力から撤退ということで、厳密に申し上げますと、原子力推進するための施策の三つの点について国民投票があったということでございますけれども反対が多くて、したがってイタリア原子力から撤退するというふうに言われておるわけでございます。  ただ、御案内のとおり、イタリアでは原子力はわずか四、五%程度のエネルギー源でございますものですから、そういう意味では経済的にはそれほど影響はない。ただ、御案内のとおり、イタリアは約一〇%以上をフランスあるいはスイスから電力を輸入しているというような国でございます。それから、あとはスウェーデンが二〇一〇年に原子力発電から撤退するという決定をなされております。  ただ、それ以外の経済的な主要大国アメリカもそうでございます、フランスもそうでございます、西ドイツもそうでございます、それからソ連、イギリス等につきましても、日本も同様でございますけれども、やはり原子力はこれからも推進していくというポジションをとってございます。  それで、私どもそういった最近の世論の動向から見まして、今後の対策としては、確かに伊方で出たようなああいうことにつきまして従来PRが十分でなかった点があるだろうというふうに反省してございます。そういうものを貴重な経験といたしまして、今後関係機関とも密接な連携を図りまして、よりよい広報活動あるいは住民、市民の立場に立った広報と申しますか、そういうものの懇切丁寧な広報活動に努めなくちゃいけないと思っておりますし、さらにこういった原子力推進する国、やっぱり推進しなくちゃいけないというふうに考えている国、そういう各国とも密接な連携をとって国際機関の場でもそういう輪を広げるという形でやるべきではないだろうかというふうに考えている次第でございます。
  14. 志村哲良

    志村哲良君 ただいま局長の御答弁で例えばイタリアの問題等にも触れておられました。かつてはオーストリアの問題、国民世論の問題等もあったわけでございます。私は思うことでございますが、確かに原子力利用に関しましては十分これの必要性がわかりながらも、時に国民の間に何がしかの不安が起こることもあろうと、これはやむを得ないことであろうと思いますので、今のお話にありましたように、十分これに対する懇切な国民に対する説明こそ極めて肝要ではないかなと思うものでありますし、御質問の際に申し上げましたイランとイラクが、北朝鮮と韓国が、ベトナムと中国がというようなことに思いをいたしましても、目下我々が原子力から身を避けることはできないものであろうと実は考える次第であります。大臣、局長、皆さん大変な御苦心をなさることだろうと思いますが、さらに一層の御精進を期待申し上げたい、そんな思いがいたします。  次に、また大臣にひとつお伺いをいたしたいと存じます。  大臣の所信表明の中で科学技術政策研究所のことに触れておられました。私も何か漠然とは科学技術政策研究所というものの必要性と申しますか、がわかるような思いもいたすものでございますが、さらに具体的にこの研究所の設置の目的はいかがな点にあるのであろうかというようなことに関して大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。
  15. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 今日、科学技術をめぐる国際環境が複雑化をしているわけでございますけれども、その中で適切な国際対応、そしてまた時代の要請に即した研究開発構造への転換を図るための指針たるべき科学技術政策の樹立が重要でございます。このためには我が国科学技術活動の諸外国との比較、構造的な分析など多分野にわたり十分に掘り下げた研究を実施することが必要でございます。  御指摘科学技術政策研究所は、我が国研究開発構造、研究開発戦略等につきまして基礎的な調査研究を行い、科学技術会議科学技術政策担当部局における政策展開に資する基礎的情報を提供するため本年七月設置をしたいと、このように考えているものでございます。本研究所が所期の成果が上げられるように十分指導してまいる所存でございます。
  16. 志村哲良

    志村哲良君 ありがとうございました。  次に、ベネチア・サミットにおきまして中曽根前総理が提唱をされまして経済宣言にも盛り込まれましたヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムについてお伺いをいたしたいと存じます。このことのフィージビリティースタディーはその後いかが相なっておりますのか、各国がかなりいろいろな御意見等もお持ちになっておられるというようなことをも仄聞いたしておるものでありますが、その実態はいかがなものであるかというようなことに関して具体的にお伺いをできたらありがたいと思います。
  17. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムにつきましては、既に御案内のように、生体の持つすぐれた機能の解明を中心とした基礎的な研究を国際的に共同して推進しようというものでございまして、こうした分野というのは今後の科学技術発展に向けて非常に多くの可能性が期待できるものであるわけでございまして、既に昨年六月のベネチア・サミットの提唱を受けまして、各国から選出されましたいわゆる第一級の科学者から成ります国際フィージビリティースタディー委員会を設置いたしまして、十一月、十二月、ことしの三月と三度にかけて細かい内容について検討を進めてまいりました。  最初は非常にいろいろな意見が出ましてなかなか取りまとめに苦労したところでございますが、二回、三回と回を重ねるにつれまして各国の理解が深まり、最終的に三月四、五のときにはサミット参加国すべての科学者がこの趣旨について十分に理解を深めまして、少しでも早くこのプロジェクトをスタートさせようというふうな考えで一致したところでございます。  今後ともこのフィージビリティースタディー調査報告の結果を踏まえまして、さらに詳細打ち合わせ、調査等を進めてまいりたいと考えております。
  18. 志村哲良

    志村哲良君 今お伺いしました、例えばアメリカとかフランスとかからいろいろな御意見がかつてあったということでございました。それが非常に気持ちよく一致したということでございますが、例えばアメリカその他の若干のニュアンスを具体的にお伺いできたらいいと思います。
  19. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 例えば研究の分野につきまして当初一昨年来国内委員会で検討いたしてまとめたのは七つの分野でございましたが、それらの分野を各国に提示したところ、例えばアメリカにおきましては、こうした分野に加えてあるいはこうした分野以外にも発展途上国向けの分野として例えば熱帯病などについて各国が一致協力して基礎的な研究を進めるべきではないかというふうな意見がございましたり、あるいはフランス等ヨーロッパにおきましては、今申し上げました七つの分野に加えまして、もう少し植物に偏りました分野での分子論的な解明とか、あるいは運動機能の解明などについてもう少し展開を深めていきたいというふうな意見もあったわけでございます。これは一つ分野の面での意見の不一致が当初あったわけでございますが、その後検討を重ねていくにつれましてもう少し集約していこうじゃないかということになりまして、最終的な第三回目の報告取りまとめの際には二つの分野にまとまりました。一つは脳機能の解明、二つ目には生体の機能の分子論的な解明、この二つにとりあえずは絞りながらお互い協力していこうということになったわけでございます。  その他フェロー、ワークショップ等の進め方についてもいろいろ意見があったわけでございますが、省略させていただきます。
  20. 志村哲良

    志村哲良君 次に、地震予知の問題に関してお伺いをいたします。  実は、私ごとで恐れ入りますが、私は山梨県に居住をいたしております。かねがね東海地震が起こるのではないかというようなことがいろいろにあげつらわれまして、率直に申しまして住民たちは絶えずこの問題に深い関心を寄せておるのが現状でございます。  一昨年には伊豆大島三原山の噴火がございました。昨年十二月にはマグニチュード七の千葉県の東方沖地震がございました。四全総でも厳しく指摘されておりますが、東京への一極集中はまことに憂慮すべきものがあると私は考えております。もし一たん地震が発生いたしましたときの被害想定をいたしますと、これは極めて多大なものがあろうと実は懸念をされるものであります。反面、地震の予知に関しましては、まことに残念ながらまだ遅々たるものがあるような思いが実はしてならないものでございます。確かに以前にも本委員会でお伺いをいたしたような記憶がございますが、近年、地震発生の重要な要因といたしましてプレートの潜り込みあるいはそのための地殻のひずみというようなことが絶えず論議をされております。プレート理論といいますのも確かに大方の同意を得ている模様ではございますが、反面、例えば日本海中部地震が起こりましたが、あのときまでは北米プレートと申すのは北海道の中部くらいに想定されておった。ところが、日本海中部地震の発生を契機にこの北米プレートが新潟あたりまで実は下がってきておったんだというようなことが考えられておるのだということをも実はお伺いをいたしております。地震の発生に関しまして極めて大きな要因と言われておりますプレートの把握に関してすらまだ実はこのような状況であるということに思いをいたしますと、まことに寒心にたえないものがあるわけでございます。  申すまでもなく、自然科学におきましては、理論は次に実験によってこれが確認されなくてはならないものであると私は考えるものであります。プレートの存在あるいはそのあり方の確認を正確にいたすことによって、私は初めて地震の予知に深く踏み込むことができるのではないかと考えるものでございますし、このためには、単なる弱小地震の震源地のスポットというようなことだけにとどまらず、例えば「しんかい六〇〇〇」の建造を急ぐことによりまして、現に人間がその目をもってじかにプレートと称するものに触れてみるというようなことも極めて肝要ではないかと考えるものでありますし、マグニチュード七クラスの予知に対応するためには、先端技術の活用も極めて肝要なものではないのかなと考えるものであります。本年は大規模地震対策特別措置法が施行されまして十年目に当たるわけであります。この本部長の任に当たっておられます伊藤大臣に私はこの問題に関するまず御所見を伺い、さらに担当の方にこの予知の具体的な現状に関してお伺いをいたしたいと思います。
  21. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 具体的な問題につきましては政府委員の方から申し上げさせていただきますけれども基本的な認識を申し述べさせていただきたいと思います。  地震の発生を予知することによりまして地震による災害の防止及び軽減を図ることは、世界有数の地震多発国である我が国にとりまして極めて重要な課題と認識をしております。政府としては、このような認識もとに、昭和五十一年に閣議決定によりまして地震予知推進本部を設置しております。本推進本部におきましては、自来今日まで防災に関する研究開発基本計画、昭和五十六年内閣総理大臣決定、測地学審議会の建議による地震予知計画に基づき関係行政機関及び国立大学との緊密な連携、協力を図りながら、地震予知に関して一体的、持続的な推進を図ってきたところでございます。  この間、予算のことを申し上げますと、地震予知のための政府予算は、推進本部発足当時約二十三億円でございましたが、本年度には約二・五倍の約五十七億円に増加をしております。これによりまして、関係省庁において各種観測技術の開発、地震観測網の整備充実を図ってきたところでございます。  また、地震防災体制につきましても、地震予知体制の整備にあわせまして、昭和五十三年の大規模地震対策特別措置法制定を初めとし、東海地域を中心とする地震防災対策強化地域の指定等を行ってきたところでございます。地震予知推進本部長の任にあります私といたしましては、今後とも関係各省庁の協力を得まして、的確な地震予知の実現を目指し、一層の推進を図ってまいる所存でございます。
  22. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) ただいま基本的な方向につきまして大臣から御答弁を申し上げましたが、私の方から先生の御指摘のございました点につきましてやや技術的に御説明を補足さしていただきたいと存じます。  まず、先生指摘のように、地震にはプレートテクトニクスといいましょうか、大陸のプレート間の運動がもたらします大型の地震と言われるもので、いわゆる別の言葉では海溝型の地震というのがございます。それともう一つは、先生が御指摘になりましたマグニチュード七クラスのいわゆる内陸型あるいは人間活動の中心での真下で起こるという意味で直下型地震というふうな区別をしておるわけでございますが、先ほど指摘のように、私どもの海洋科学技術センターが保有します「しんかい二〇〇〇」でも、海溝型の地震の源になるいわゆるプレートの移動状況については、相模トラフで現に肉眼で観測することができておりますし、それから地震予知の観測強化地域にこの東海地区が指定されており、非常に網目の濃い観測網が現在つくられております。その結果、現在の段階ではこの海溝型地震といいましょうか、M八クラスと言っておりますが、このような地震についてはある程度予知が可能ではなかろうかというようなことから、気象庁に現在地震予知のための判定会議が設けられて現在日々活動をしておる状況でございます。  一方、マグニチュード七クラスになりますと、いわゆる平野部の直下型地震でございまして、現在のところ観測の網の目が比較的薄うございます。それからもう一つは、いわゆる経済活動が非常に活発でございますので、予兆と見られるような細かい地殻の変動あるいは地殻の滑りといいましょうか、位置が少し相対的にずれるというようなことを細かく観測をしていくことが一つは困難になっておるため、データが十分蓄積されていない。そのようなこともございまして、なかなかこの内陸型について現時点での予知というのが可能かどうかは学者間でもいろいろ意見が分かれている状況でございます。  しかし、私どもといたしましては、被害の大きさから考えますと、このようなものが大変重要な私どもの生活に影響を与えるものと考えておりまして、昭和六十二年度から初年度として二億五千万円をつぎ込みまして、この直下型地震についてのメカニズムをまず探るための研究に関係省庁と力を合わせて取り組むことにいたしておりますし、また、より精緻な観測をするために、これも在来から国立防災科学技術センターにおいてやっております深井戸、これは三千メートルぐらいの地底に設置をするものでございますが、そういうものでの観測をやっております。  しかし、これだけでは到底だめでございますので、特に今年度からは一つアメリカ協力をいたしまして、アメリカの上げました人工衛星を使いまして、精密な位置のずれを測定するためのポイントをそれぞれ観測網を張るということにしております。科学技術庁では、本年十カ所にその側位をするための地点を設けております。このシステムは、訳が難しゅうございますが、グローバル・ポジショニング・システムと言っておりまして、地球の位置測定システムというようなシステムでございます。  それから、もう一つ方法といたしましては、一つ非常に深い井戸の中に幾つかのセンサーを組み込みましたいわゆるボアホール型の複合観測装置というようなものを開発をいたしまして、これを深井戸の中に埋めることによっていわゆる多面的な地震予知に関連をする情報を得るようなシステムをつくるという技術開発を現在行っておるところでございますが、これは一たん掘りました後埋め込んでしまいますので、いわゆるその機器、センサーの寿命というようなものをどのように評価するかというあたりが開発の大きいポイントになっております。  いずれにしても、今申しました二つのいわゆるハイテクを駆使して、経済活動のいわゆる動乱要因はございますけれども、それを克服して予知に必要な基礎的なデータをこれから努力して積み重ねていく以外予知への展望は開けないものと思っておりまして、努力をいたしておるところでございます。何とぞ御理解のほどをお願い申し上げます。
  23. 志村哲良

    志村哲良君 先ほどは例えば予算の獲得に関すること等を含めまして本部長としての大臣のこの問題に対する断固たる決意をお伺いいたし、またただいまは政府委員の細かな取り組みをも拝聴いたしまして、まことに心強い思いがいたしました。  ただ、私は、これはどうもこのようなことを申し上げることが果たしていいのか悪いのか、若干の何と申しますか疑義をも抱きながら、平素考えておることでございますが、例えばかつて南米のルイス火山の大きな爆発がありまして、マウントフロアでたくさんな被害を出したこともございました。また、先ほども申し上げました、先年は三原山の大きな爆発で一万人からの人口が移動をするというような事態にも我々は直面いたした経験がございます。実は、その節、私はルイス火山の調査に建設省と外務省がいらっしゃるということを伺いました。三原山のときには運輸省と建設省がやはり行かれた。これは、両省が行かれることもいろいろなお立場があろうから必要ではございましょうが、このようなときに最も必要な役所、またこれに対処するための具体的なノーハウをお持ちになっておられる方々は科学技術庁におられるし、科学技術庁こそがこれからこのような問題の中心になっていただくことが極めて肝要であろう。もちろん現在も中心にはなっておられますが、何といいますか、そのあり方をさらに科技庁中心に一層整備をされまして、この問題にひとつ力をお尽くしいただきたい、そんなひそかな願望をも実は持っておるものでございます。事ほどさように、地震の予知ということは国民生活にとってまことに大きな影響を持ったものであろうと実は考えておる現在であります。  次に、物質・材料系科学技術研究開発に関してお伺いをいたします。  どうも私事に多くわたって恐れ入りますが、申し上げましたように、私は山梨県の出身でありますが、最近多極分散型国土の形成が志向されますその中におきまして、山梨においてはその重要な多極分散型の方策といたしましてリニアモーターカーの建設を希求いたしております。リニアモーターカーの実用化を進めますためには、できるだけ高温の超電導材料の開発が極めて有効なものであることは言をまたないところであると私は思っておりますが、科技庁におかれましても超電導材料の開発に大変に力を入れておられます。現在その状況はいかが相なっておるか、また今後どのような方向に展開をするものであるかお伺いをいたしたいと考えております。
  24. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) ただいまの御質問につきましてお答えを申し上げますが、今先生指摘のように、超電導材料には実は現在の段階では大ざっぱに二種類あろうかと思います。  一つは在来型の金属系でございまして、特にチタンあるいはすずなどとの合金になったようなものでございますが、チタン酸バリウムとかいろいろの合金がございますが、これらはいずれもいわゆる極低温を利用して超電導という物性をあらわす。このために、冷却材としてはヘリウムを使うわけでございます。マイナス二百七十三度でございます。これはヘリウムにつきましては、残念ながら日本には国産がございませんで、ほとんど全量をアメリカから輸入をしておる状況でございます。そのために、この超電導を利用する場合の経済性という面でなかなか広い分野に応用が効かないという問題がございました。  一方、一昨年来あらわれてまいりましたのは、このヘリウムを使わなくて、いわゆる液体窒素の温度で冷却ができるといわれるようなマイナスの百六十度といったような状況でございますが、そういう新しいセラミック系の新超電導材料が発見をされてきたわけであります。ただし、金属系に比べまして、このセラミックス系の研究の現状は、ようやく一部のいわゆるペロブスカイトといわれるようなものについての構造が解き明かされようとしているような段階で、それ以後出ております高温の超電導体でありますビスマスを入れたようなものであるとか、幾つかの新しい四元構成元素を持ったようなものについてはまだ構造すら十分に確定し得ない。そういう意味で、いわゆる同じものを再生産可能とするような工業技術としての定着化というのにはまだ若干の距離がある、残念ながら距離があるというふうに思っておりますし、その意味科学技術庁が本年度から進めさせていただいておりますいわゆる超電導マルチコア・プロジェクトにおきましても、この基礎的な部分に力を入れるために今年度約二十億円をつぎ込みまして、この酸化物系の超電導材料の理論的な面、構造といったようなものについての本格的な取り組みを開始しようとしている状況でございます。  一方、金属系の方につきましては、安定的に再生産可能でございまして、一部経済的な問題はあるにせよ、既に使用されておりますが、その中でも材料として特に線材化という面では我が国の金属材料技術研究所が開発しました手法が世界的にも非常にすぐれたものでございまして、現にアメリカと共同でやっております核融合炉の電磁石に巻きますコイルには、この線材化技術でつくられた、現在の金属レベルでは最高の超電導体が使われている、あるいは先生指摘の財団法人鉄道総合技術研究所で現在進められておりますリニアモーターカーのああいうコイルにもこういう線材化技術が応用されているというような実態になっておるわけでございます。  御指摘のように、リニアモーターカーを普及させていくためには、一つは現在の金属系でより経済性のよい、はっきり言うとヘリウムのロスが少ないシステムをつくるというのも一つ方法であろうと思いますが、飛躍的な展開を図るためには、現在研究されております酸化物系の新超電導物質というのが工業的に実現できるということになれば、極めて明るい展望といいましょうか、応用範囲の広いものとして展望が開けてくるものというふうに私ども期待をし、関係者を含めまして努力をしております。  なお、これらの研究は科学技術庁のみでできるわけではございませんので、金属材料技術研究所、無機材質研究所のほかに、理化学研究所あるいは他の各省の研究機関、大学、それから産業界なども含めました一種の研究のフォーラムをつくりまして、そこでの研究交流を深めながら現在研究を進めようというところで努力中でございます。
  25. 志村哲良

    志村哲良君 ただいまの御説明で非常にはっきりいたしましたが、どうも実は私など全く素人でございますから、先ほど御説明にありました構造の解明すらなされてない、ましていわんや再生産はできないというような状況の中で、超電導現象に対する実験がどんどん進められておるということに時に奇異な思いすら抱いたものでございますが、考え方によっては、事ほどさようにこの超電導に対する人類の期待が大きいのかなというような実は思いもいたすものでございます。ただいま政府委員の御説明にありましたマルチコア・プロジェクト等も含めまして非常に着実な基礎的な積み上げ、これが科技庁を中心にひとつしっかりと実っていただきますように、本当にこれは大きな期待を持つものでございますし、もしこれが実現した暁には、私は人類にとって大きな希望を、また変化を与えてくれることであろうと、実は期待をいたすものであります。  与えられました時間に二分ほど早うございますが、以上をもって私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  26. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      ─────・─────    午後一時開会
  27. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまから科学技術特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、科学技術振興対策樹立に関する調査のうち、科学技術振興のための基本施策に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  28. 穐山篤

    ○穐山篤君 最初に、原子力発電所事故、トラブルについてお伺いします。  過去一年間で国内の発電所の故障の状況ですね、この概要をお知らせをいただきたいと思います。
  29. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) 御説明申し上げます。  お尋ねの昭和六十二年度における原子力発電所の故障、トラブル等でございますが、この件につきましては、昭和六十二年度末までに通産省の方に報告がございました件数といたしましては全体で十九件に上ってございます。この件数につきましては、前年、つまり六十一年度、前々年、六十年度のほぼ同水準の結果ということでございます。  ただ、先生案内のように、原子力発電所につきましては、ことしそれから去年と新しく発電所が運開、運転を開始しておりますといったようなこともございまして、これを一基当たりの報告件数ということに割りますと、大体ことし、六十二年度におきましては〇・五件パー一基、こういうことに相なろうかと思います。傾向といたしましては、基数の増大ということはありましたが、ほぼ同様レベルに推移しているということでございます。  十九件の内訳と申しますか、内容でございますが、原子力発電所が運転しておりますときに、これはもちろん安全に自動停止するというような保護システムが働くわけでございますが、そういう自動停止をしたものは四件でございますし、また、運転中に必要を感じて手動停止したものというのが七件。それからあと定期検査中におきまして原子炉を、例えば加圧水型の原子力発電所等におきましては、蒸気発生器と称する熱交換をする道具、装置がございますが、そこにおきまして検査したときに停止中に発見されたものといったものが六件でございまして、その他そういう内容になってございますけれども、いずれにいたしましても、十九件の故障、トラブルは生じてございますが、発電所の周辺環境影響を与えたといったようなものは、当然でございますが、皆無でございました。  それから、今後通産省といたしましても、このような件数を一つでも少なくするといったようなことで、原子力発電の高い信頼性の維持と向上を図っていくということはもちろんでございますけれども、このような故障、トラブル等の運転経験を十分活用いたしまして、また、運転員とか保修員の質の向上といったようなことを通しましてより一層の原子力発電所の安全の確保に努めてまいりたい、このように考えてございます。  以上でございます。
  30. 穐山篤

    ○穐山篤君 運転操業中に発生をしたものと、それから定期検査において発見をしたもの、こういうものはおおむね五十対五十という感じですね。これは六十年、六十一年もほぼ同様な傾向にあると思うんですが、さてそこで、運転中のトラブルの中で人為ミスが二件含まれているというふうに報告では見受けるわけですが、こういう人為ミスについては訓練、教育その他によって克服をすることになるだろうとは思いますが、絶無にすることは難しいというふうに報告を読む限りは見えるわけですが、その点の考え方はどうでしょうか。
  31. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) 御説明申し上げます。  今先生指摘のように、確かに六十二年度におきましては、いわゆる人為ミスと申しましょうか、操作の不適切、もしくは人のうっかりといったようなことも二件御指摘のようにございます。我々といたしましては、人為ミスをもちろん絶無にするように各種の対策というのをとる必要があるというふうに思ってございます。具体的には、原子力発電所でございますので、一つは設備の面、ハードウエアと申しますか、設備の面での対応といったようなことで、我々の言葉で言いますと、例えばインターロックといったような間違いをする前の阻止のための設計だとか、それからあと、フェールセーフと申してございますけれども、例えば電源がなくなった場合には自動的に安全側に行くといったようなことといったような、そういう設備面での対応ももちろんでございますけれども、特に人のミスということからいたしますと、運転面での対策といったようなことも大切かと思います。  我々といたしましては、運転員の資質の向上、それから運転訓練といったようなことにも十分意を払ってございますし、また、運転員のいわゆる当直の長と申しますか、そういう方につきましては資格制度といったようなことも考えてございますし、もちろん基本的なところではヒューマンファクターに関する研究開発といったようなことにつきましても努力を傾けて、先生指摘のように、一件でも少なくこの種の原因の減少に努めてまいりたい、そのように考えておるところでございます。  以上でございます。
  32. 穐山篤

    ○穐山篤君 一件一件申し上げることは省略をしますけれども、この十九件の中を見ると、例えば金具の緩みというふうな、そういう系列のトラブルが散見されますね。それから部品の腐食、大綱的に言えば、そういうものが系列としてある。それから、定期点検中に何カ所かでそういう部品の腐食であるとか、あるいは交換しなければ適当でないというふうなものが非常に目に映るわけですね。これは私は統計をとったわけではありませんけれども稼働中のものについてはすべてこういうことが起こり得るというふうに素人目ながら分析をすることができるわけですが、専門家の皆さん方としてはそういう点はどういうふうに評価されていますか。
  33. 三角逸郎

    説明員(三角逸郎君) 先生指摘の事柄、これは確かに十九件中に数件御指摘のように散見されるわけでございます。例えばある種の径のもののフランジ等のいわゆる締めつけするところのパッキングなんかあるわけでございますが、そういうところが緩むといったようなこと、それから、だんだんと使っておりますうちにその機能を正しく、もちろん安全上の問題というのに直接的につながるわけでございませんけれども、そういうようなことにつながる事例もあるわけでございまして、我々といたしましては、電気事業者にいわゆるその手のある種の消耗品でございますか、消耗品につきましては当然にしてその機能を確保できる時間、もちろん使用条件等々でいろいろ変わってきますけれども、そういう変わってくる中で十分それを安全側に評価をして一定の取りかえの基準等々を確立して厳にそういうことがないように十分な指導をしていく、こういうことで考えてございます。  以上でございます。
  34. 穐山篤

    ○穐山篤君 この一年間の事故、トラブルを見て、炉心に対する重大な影響であるとか、あるいは人畜に重大な被害を幸いにして及ぼさなかったという意味では良好だというふうに思います。しかし、毎年毎年同様なトラブルが起きるということについては、基本的に安全性を確保する意味から再点検をする必要があるというふうに私は思うわけであります。  この前、昭和六十一年に私科技特委員をやっておったわけですが、そのときにチェルノブイリ原子力発電所事故の報告がされた記憶があるわけです。このRBMK一〇〇〇型の原子力発電所については、設置をしてから二十年経過をした後で事故が発生をしたわけです。ですから、私そのときに言いましたのは、原発というのは事故が起きるまでの間は安全だ、そういうふうにそのときに意見を述べたわけです。当時、河野長官が、ソビエトの型と日本の型は違う、構造も違う、保守のあり方も違う、こういう話がありましたけれども、いかなる原子力発電所でありましても、事故が起きるまでは安全で、事故が起きて驚く。これは世界じゅう共通した問題だというふうに思うわけです。  そこで、一歩前に問題を進めたいと思っておりますが、その一つは、先月イタリアで国際原子力機関のシンポジウムが行われたというふうに公表をされているわけです。私も読んだところではありますが、このシンポジウムの基本安全原則というものについて、ごく簡潔で結構ですから、専門家のひとつ意見をお述べいただきたいと思います。
  35. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 今、先生指摘の国際原子力機関が取りまとめました安全に関する基本原則でございますが、この原則は、我が国を初めといたしまして欧米諸国で共通の考え方としてこれまで採用してきておりました原子力の安全確保のための基本的な考え方を取りまとめたものでございます。原子力に携わる個人あるいは組織のすべての活動における安全意識、そういったものを高めるいわゆるセーフティーカルチャー、そういう言葉がチェルノブイル事故評価の後IAEAの中で出てまいりましたけれども、そういったセーフティーカルチャー、いわゆる安全文化、そういったものを確立することを重視しているという点がこの基本原則の特徴でございます。  本原則は、基本的には我が国の安全確保対策の現状に沿ったものでございますけれども、自国だけではなくて、他の国におきましても、被害をもたらしました今回のチェルノブイル事故のような、こういう大事故を二度と起こさないように、これから原子力を導入しようとしている国等におきましても、本原則を取り入れて安全確保に万全を期してほしいというのがこの基本原則精神かと思います。
  36. 穐山篤

    ○穐山篤君 今もお話がありましたが、安全文化、セーフティーカルチャーというこの思想が基本になっている。その意味は十分承知をしますけれども、これの前提条件というのは、原発については事故があり得る、無事故ではないという、どちらにウエートがあるかわかりませんが、私の読んだ限りで言えば、原発については事故が起こり得る、そういう前提条件に立ってすべての分野について万全を期すべきである、こういうふうに私はこの基本原則を読んだわけですが、その点についての認識は同じでしょうか。
  37. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) もちろん原子力発電所あるいは原子力施設、これは機械、そういったものの非常に複雑なシステムでございますし、先ほどお話もございますとおり、あるいはその防止について細心の注意を払ってもなおかつ人為ミスというものが起こり得る、そういうことでございますから、やはりそのトラブルあるいは事故といったものについては万全な対策を講じておく必要があるということで、私ども深層防護といいますか、多重防護といったことで事故を防ぐ、事故が起きてもさらにそれの拡大を防ぐといったような設計上の配慮を行っておるわけでございますけれども、この基本原則の中でもそういった点を非常に重視をいたしておりまして、多重防護あるいは深層防護といった考え方を各国において十分にとられるべきであるというようなことであろうかと認識をいたしております。
  38. 穐山篤

    ○穐山篤君 長官、今のやりとりでおわかりのことと思いますが、我が国原発問題については安全の上にも安全を確保します、そういう意味でいろんな御努力がされた。その点は評価をします。しかし、全く安全かといえば、いろんな管理、防護をして初めて安全が担保されるわけですが、日本の今までの原子力行政というのは、どちらかといえば、安全だから大丈夫です、そういう教育といいますか、そういう思想に立っていたと思うわけです。  しかし、今回のこの安全文化の原則を読んでみますと、必ず原発事故があり得る、そういう前提条件に立ってあらゆる管理、防護あるいは技術の開発研究、そういうものをやりなさいというふうに言っているわけです。その意味では、従来科技庁なりあるいは原子力委員会が述べてきたものと少し私はニュアンスが違うというふうに見るわけですが、その点はいかがなものでしょうか。
  39. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 今回の基本原則の中で述べております考え方、これは我が国においてこれまで安全確保のためにとってまいりました種々の施策、そういったものに基本的には沿っているというふうに私先ほど申し上げたわけでございますが、ただ、中にはシビアアクシデントといったものに対する考え方、あるいは防災対策といったものに対する考え方ということにつきまして現在各国において検討がなお進められている、検討途上にあるというものもこの基本原則には含まれておるわけでございまして、その点につきましては、我が国におきましても、なお今後の安全確保あるいはその安全評価考え方につきまして、より具体的に安全性の余裕がどれくらいあるか、そういったことも含めまして検討の途上にあるものも含まれているということは事実でございます。
  40. 穐山篤

    ○穐山篤君 我が国原子力政策、行政というのは安全が基本である、そのことは私も十分承知をします。しかし、公表されたシンポジウムの基本原則日本原発政策と一致しているんだというふうに言われますと、いや紙一重で違いがありますよというふうに私ども言いたくなる部分があるんです。  それでは具体的に申し上げてみたいと思います。  例えばアメリカの場合に、原子力発電所を建設をする、ここに設置をする。それはそれなりに安全を担保した設計、構造物がつくられますけれども、それはそれにしてもう一つ重要な柱になっているのは、訓練が十分に保障される。そうでなければ原子力発電所設置は認めないし、稼働も認めないという意味で縛っているわけですね、非常に縛っている。言いかえてみれば、安全管理あるいは深層管理といいますか、防護といいますか、そういうものについて二重、三重にお互いに担保をかけ合って、それで安全を期そう、こうなっているわけですね。ところが、日本の場合には建てる方は建てる方、訓練は訓練。それも訓練は後から出てきた話でありまして、立地をするときにお互いに担保をし合ってできているものではないし、またこれからも設置をあと三十二、三基計画があるようでありますけれども、そういうアメリカのような保障の仕方になっていないわけですね。  そこで、私は日本原子力政策、行政というものとシンポジウムの安全原則というものについては紙一重の違いがあるということを先ほど申し上げたわけです。この安全文化に言われているようなものをすべて日本原子力政策、行政というものが完備をしているというふうに言い切るとするならば、今私が例として申し上げたアメリカの場合と比べてみておくれをとっているんじゃないだろうかなというふうに意見を言わざるを得なくなってくると思うんですが、その点いかがでしょう。
  41. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 先生今御指摘米国の例でございますが、恐らくそれは防災訓練のことであろうかと思います。アメリカの規則では、確かに先生おっしゃいますとおり、防災訓練というものが運転を開始する一つの条件として法制化されているという事情にございますことは私どもも承知をいたしておりますが、ただ、日本の場合も、この防災訓練につきましては災害対策基本法の法体系、これは原子炉等規制法の体系から離れまして災害対策基本法の法体系で防災対策といったものを位置づけておるわけでございますけれども、その中において防災訓練というものも地方自治体において実施するということになっておりますが、事実上は日本の場合も運転を開始する前に最近はすべて地方における防災訓練がなされている。そこは法令上の義務づけという形ではございませんけれども、防災訓練は実際上は運転を開始する前にそれぞれの地方において行われておるというのが実情でございます。
  42. 穐山篤

    ○穐山篤君 原子力安全委員会が作成をしました原子力発電所等周辺の防災対策というのが昭和五十五年であったと思うんですね。これは昭和五十四年三月に起きましたスリーマイル島の貴重な経験というものを踏まえて指針が出たことも十分に承知をしますが、六十一年四月のチェルノブイリ原子力発電所事故の体験を経て新しい防災対策といいますか、新しい視野に立った防災対策がとられなければならぬ、こういうふうに私は思っているわけですが、昭和五十五年度に出されました原子力発電所等周辺の防災対策というのはその後大きく手が入れられてないという、そういうふうに私は見るわけですが、ソビエトの事故の体験、貴重な教訓というものはこの中でどういうふうに生かされているんでしょうか。
  43. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 原子力安全委員会におきましては、ソ連の原子力発電所事故状況の詳細な検討を踏まえまして、我が国原子力発電所の安全確保対策の現状につきましては、いろいろな観点から調査、検討が行われたわけでございます。その結果、防災対策につきましては、我が国原子力発電所の特徴等を考慮して定めたこの原子力防災体制及び諸対策というものを基本的には変更する必要性は見出されないというのが結論でございました。しかしながら、今回の事故契機といたしまして、各種の防災対策に関しその内容を充実し、さらに実効性のある対策としていくことが重要であるというのも原子力安全委員会での指摘事項でございます。  そこで、現在、原子力安全委員会におきましては、このチェルノブイル事故調査報告書の指摘事項を踏まえまして、専門的な事項につきましては調査、審議が行われているところでございます。また、科学技術庁といたしましても、チェルノブイル事故を踏まえまして、防災研修の充実あるいは防災機材等の充実など原子力防災対策の強化に努めているところでございますが、緊急時の放射線モニタリングの充実など今後とも防災対策の一層の充実に努めてまいることといたしております。
  44. 穐山篤

    ○穐山篤君 今、私は手元に、五十四年七月十二日の中央防災会議の決定内容というのを持っているわけです。現在、原子力発電所設置されている都道府県は十県ですね。――まあいいです、九県でも十県でも。そのうち、原子力のトラブルがあったと想定をして、地域住民を含めた大々的な防災訓練をやっている県はどこでしょうか。
  45. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 防災訓練は、それぞれの地域の状況を踏まえまして地方公共団体におきまして実施されているというふうに承知いたしておりますが、地方の住民の方が直接参加する形で防災訓練が行われたという報告は私どもまだ聞いておりません。ただ、模擬住民といいますか、学校の生徒さんでございますとかあるいは地方公共団体の職員でございますとか、そういった方が何十名か参加されまして、その避難に要する時間とか、そういったことについて訓練をされているというふうに聞いております。
  46. 穐山篤

    ○穐山篤君 火事を想定をして消防訓練もありますね。それから、地震を想定をして地震対策をやる。静岡では東海地震を想定をして数万人の動員をして訓練をした、そういう経緯、実績があるわけですが、この原発に関する限り模擬訓練ないしは図上作戦という程度で終わっておるわけですね。私先ほどくどくも辛くも申し上げたのは、原発事故が発生し得るという前提条件にこの間のイタリア会議では分析をしているわけです。事故がないことを願うのは当然でありますけれども、絶対にないとは言い切れないというふうにこのシンポジウムの結論は出ているわけです。そうしますと、地域住民が不安を覚えるとかなんとかというその要素は別にしてみて、本当の意味で人畜に被害を与えない、あるいは被害を大きくしない、最小限度のものに封じ込めてしまう、そのためには、当然でありますが、防災訓練、防災教育あるいは啓蒙活動というのはいや応なしに必要であります。その必要性は皆さん方の方も述べていますけれども、例えば国公立、私立医療機関が総動員をされたり、あるいはその地域の日本赤十字社支部が総動員をされたり、医師会なり保健所なり消防機関が動員をされた訓練というのは、私は聞いた覚えがないんです。それは模擬訓練なりあるいは図上作戦という話はあちこちから聞きます。  そこで、私がさっきから言っておりますのは、日本原発はよその国の原発と違って全く安全でございますという思想に立っているから、今申し上げたような小規模な図上作戦なり模擬訓練に終わっているわけです。ですから、私はこの際幾つかの大きな国際的なトラブルの経験をし、貴重な体験を持っているわけですから、原発の安全を期すということは当然でありますが、不幸にして起きた場合でも被害を最小限度に食いとめる、そういう意味思い切って発想を変えなければならぬ、こう思いますが、長官その点いかがですか。
  47. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 住民参加による避難訓練を行うべきであるとの御指摘に対しまして、現在の原子力安全委員会等で考えられております防災対策あるいは防災訓練の考え方につきまして御説明申し上げたいと思いますけれども原子力防災の訓練に当たりましては、他の一般の災害の経験を踏まえながら、原子力災害の特性及び一般災害との共通点、こういったものを勘案して実施することが肝要でございます。  原子力防災の特性といたしましては、やはり放射線による被曝というものは通常五感には感じられないといったようなことが挙げられておるわけでございますけれども、一方、一般災害というものにつきましては、いろいろな形で我が国の場合訓練が行われているところでございますから、原子力防災訓練におきましては、まず何よりも防災の業務関係者を対象とした原子力特有の訓練を中心に行う、そしてこれら防災業務関係者が原子力そのものに関する知識、経験というものを十分に修得し、また原子力特有の防災対策に習熟することによって周辺住民に対する適切な指示あるいは対応ができる、そういうふうにすることが重要であるというふうに指摘されております。また、これとあわせまして周辺住民に対する日ごろからの原子力に関する知識の普及、啓蒙、そういったことが適切に行われておれば、万が一の放射性物質の大量放出といったような事態に対しましても所要の対応ができるというふうに考える次第でございます。
  48. 穐山篤

    ○穐山篤君 自信を持っておられることは結構ですよ。しかし非常に消極的な思想、対応策でありまして、それは私が指摘するように、大規模な防災訓練を仮にやったとするならば、原子力発電に対する信頼性が失われるとか、あるいは地域の住民から常に不安がられる、そういう心配を片面お持ちだからどうしても思い切った対策がとれない、私はそういうふうに断定せざるを得ないんです。  チェルノブイリの事故経験からいってみますと、事故発生の影響というのは相当広範囲であります。放射能が日本にも飛んできた、あるいはその後輸入された食品についても放射能を含んだ飲食物が輸入をされている。そういう広範囲なものなんです。ところが、皆さん方がつくられた防災対策でいきますと、原子力発電所を中心として半径八ないし十キロメートルというふうにごく制限された地域になっておりますよね。しかし、アメリカの場合でも、あるいはソビエトの場合でも四十キロ以上にわたっているということが具体的に実証されているわけです。私はきょうは検討課題で預けますけれども、八ないし十キロメートルというふうな常識で防災対策を考えているとするならば、これはもう決定的に過ちである、もっと広い視野でこの際勉強のし直しをしてほしいと思うんですが、これは政策の問題ですから長官からひとつ御答弁をいただきます。
  49. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 基本的には私ども先生考え方と一緒でございまして、やはり原子力事故があってはもう終わりでございますから、先ほど政府委員からも申し上げましたとおり、十数件のトラブルあるいは故障というものはありましたけれども、当然のことながら日本ではまだ事故は一件もありません。しかし、絶対にということはあり得ないということは我々も同様の認識を持っておりまして、そのための対策を今までも講じてまいりましたし、これからも安全性の確保にいやが上にも安全性を求め、究極の安全性を求めながら、原子力は安全であるというこの貴重な今までの日本原子力発電推進の歴史を汚すことのないように大いに努力をしてまいりたいと思います。私は、下手な例えでございますけれども、あつものに懲りてなますを吹くというのは、ある意味においては愚かな愚直なことをあざ笑うことわざでありますけれども、私は科学技術推進あるいは特に原子力推進に当たっては、あつものに懲りてもなおなますを吹くというぐらいの愚直な態度を原子力行政の推進にはとるべきだということで進めてまいりたいと思います。基本的には先生と同じでございますけれども、防災対策等で若干の意見の食い違いがあるようでございますけれども先生の御意見をも大きな刺激といたしまして、なお一層これから原子力行政の安全性の確保のために役所一体となって、関係省庁とも一体となって大いに努力をしてまいりたい、このように考えております。
  50. 穐山篤

    ○穐山篤君 原子力の安全問題というのは非常に重要でありますので、また改めて問題の提起をしたいと思っております。  私は、国民の気持ちをそんたくすると二つの川柳になると思うんです。先ほども言いましたように、原発というのは事故が起きるまでの安全性である、それ以上の安全性は担保されていませんよ。逆に言えば、起きてからでは遅いんですよ。起きた場合に最小限度にそれを食いとめる、これが私ども含めて全体の人の気持ちではないかと思うんです。それからもう一つは、原発は我が町には欲しくはないが灯は欲しい。そういう意味で、今私が二つ川柳、俗なことを申し上げましたけれども、そういう気持ちを国民の皆さんみんながお持ちだと思うんです。ですから、そういうことを踏まえて、長官ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。  次に、問題を特許権の問題に移したいと思っています。いずれ安全保障と特許の問題というのは専門的に議論をされると思います。その周辺の状況を整備するという意味で、今いろいろ問題になっております特許権の問題についてお伺いをします。時間がありませんので、いただきました数字から私の質問を申し上げたいと思います。  近年、出願は非常に多くなってまいりました。例えば特許の出願でいえば、六十年度は三十万件、六十一年度は三十二万件、実用新案特許でも六十年が二十万、六十一年が同じく二十万というふうに年々ふえていっております。それから、日本の企業あるいは日本の事業者がアメリカで出願をする件数も非常にふえております。  そこで問題にしたいと思いますのは、出願の件数が非常にふえてきましたけれども、特許の認可件数というのが依然として低迷をしている。これはどこかに問題ありというふうに言わなければならぬわけですが、その原因は専門的にどういうふうに分析されておりますか。
  51. 渡辺光夫

    説明員渡辺光夫君) 御説明申し上げます。  今、先生指摘いただきましたように、日本の全体で特許と実用新案を例にとりますと五十万件を上回る出願が行われるわけでございますが、このうち、今、日本制度では審査請求制度と言っておりまして、出願された方が七年ないしは四年の間に特許庁に対して審査をしてほしいという請求をすることになっております。その請求をしておりますのが大体三分の二程度が現在の水準になっております。その三分の二を対象にいたしまして私どもの方で審査をいたしておるわけでございますが、その審査の対象になったものの約半分程度が最終的に権利として登録されていくということでございますので、出願の全体から見ますと、大体三分の一程度が登録につながっていく、こういう姿になっておるわけでございます。  今お尋ねの出願から見るとかなり少な過ぎないかという問題がございますが、最初の審査請求をするかどうかというところにつきましては、先ほど申しましたように、出願してある程度時間がたつ中で企業の方で審査請求までは必要ないという御判断をされる場合がございます。これはちょっと専門的になって申しわけございませんが、特許の機能の中に防衛特許と私ども言っておりますが、相手から出願された場合のことを防ぎたいという意味で出願だけしておく、そういったような役割もございますので、審査請求まで至らないものの中にはそういう防衛的な意味のものが相当数あるだろう、あるいは今の日本ですと、一年半たちますと出願内容をすべて公開するという制度になっておりますので、他社の出願の状況から見てあえて審査請求をする必要がないというような判断をされるというような場合もあろうと思いますので、これはそういう内容に即して出願人の方がふるい分けられるわけでございます。  私どもの審査いたします三分の二のうち半分ぐらいしか登録されないという点につきましては、特許の制度では、私ども特許性と言っておりますが、新しさがあるかとか、あるいは従来の技術に比べまして改良が著しいかとか、そういったような点を中心に審査いたすわけでございますが、その場合にやはり先行する技術との関係で、そういう新規性でございますとかあるいは進歩性といったものの程度がそれほど大きくないという判断で特許にはしない、私どもは拒絶と言っておりますが、拒絶されるものが出てくるわけでございます。したがいまして、審査請求するに当たって企業の側でもう少し先行技術についての御調査をするというようなことになってまいりますと、拒絶されるものの割合が減っていくのではないか、こういうふうに見ておるわけでございます。
  52. 穐山篤

    ○穐山篤君 時間の都合がありますので少しはしょりますけれども、私も特許特別会計をつくるときにはたまたま大蔵委員でその辺も担当しておりました。その後特許庁のコンピューターシステムも勉強さしてもらいましたので、それらのことについてはこの際省略をしますが、最近、特許所有権の問題について国際的なトラブル、特に日本アメリカの間におけるトラブルが非常にハイテク分野で多くなってきたというのに注目をせざるを得ないんです。アメリカはきょうもオレンジ、牛肉の交渉をしているんでしょうけれども、最近、三百一条で提訴をするとか、ダンピング提訴をするとか、特許の訴訟を起こすとか、アメリカにも国内事情があろうと思いますけれども、特許の分野でいきますと、私はアメリカ考え方、特許の運営について非常に疑問を持たざるを得ないわけであります。昨日いただきましたITCに提訴した事件を見てみましても、非常にハイテク部門が多いんですね。そのほかに、例えば光ファイバーであるとか放射線写真であるとか、いろんなものがたくさん出ているわけです。  そこで、これからの問題を含めて伺うわけですが、日本とECとアメリカとの間に特許庁幹部の合議体といいますか、会議が持たれておりまして、特許制度及びその運営について相談をされているはずであります。にもかかわらず、近年、こういうふうにアメリカ日本との間に特許で提訴事件が多いというのは、具体的にその背景なり要因というものは何でしょうか、明らかにしてもらいたいと思います。
  53. 油木肇

    説明員(油木肇君) 先生お尋ねの特許に関する紛争、これは一般的に言いまして、特許庁が関与するような処分に対するものと、あるいはライセンスに関するものがあるわけでして、先生指摘の特にアメリカとの紛争ということでございますが、主にライセンスに関する紛争、御指摘がありましたITCの問題等を含めてライセンスに関する問題があろうかと思います。ただ、この背景と申しますか、最近の企業間の技術開発競争というのは、一般論ではありますが、非常に活発化していると同時に国際化も行われております。  そういう意味で、特許庁といたしましては、特許制度そのものにかかわる問題あるいは特許制度の運用に関する紛争等につきましては、御指摘もありましたが、三極の場等で議論はしております。とともに、一般には日本制度の運用あるいは制度自体についての理解が不足しているんではないかといったところからも起因しているようなところもございます。したがいまして、特許庁としましては積極的にこういった我が国の特許制度自体を理解していただく、あるいは運用について理解していただくといったことにも強く努めておりますが、国際的にまず基本でございます国際的な制度を調和させるといった観点から積極的に我々としては努力をしているところでもございます。  ただ、もう一方の問題がございますが、特許ライセンスそのものに関しての問題は、基本的にはある意味で当事者間同士の問題といった性格もあるようでございます。そういった点につきましては当事者間の解決をまず促すといったことも我々の方ではやっております。  それからもう一点、米国がかなりそういった意味で政治的な形での解決を図ってきているのではないかという御指摘もあったわけですが、確かに我が国との協議の場におきましてこうした紛争に基づいた問題というのを提起してくることもございます。特許庁としましては、提起された問題を整理することはもちろんでございますが、特に特許制度あるいは運用の所轄官庁ということの立場から、適宜その場における必要な措置というのを現在講じているところでもございます。
  54. 穐山篤

    ○穐山篤君 近年、科学技術、工業力の分野日本なり西ドイツというのはすさまじいものがあると思うんですね。アメリカにしてみますと、特にハイテク分野で技術のおくれ、研究開発のおくれの焦りがあるために、どうしても対抗する、防御をするという意味でいろんな法律をつくったり提訴しているという傾向を私は見るわけであります。  例えば、医薬品の分野でいえば特許期間の回復法なんというのが制定をされた。あるいはバイオの基本について言いますと、遺伝子組みかえの特許法というものがつくられる。さらに半導体回路の保護のために半導体チップ保護法なんというものがつくられる。アメリカ自身のことですからそれはそれにいたしましても、すぐれて工業所有権なんというものは最終的には国際的な、インターナショナルなものだというふうに理解をするわけです。平和目的のために、あるいは国民生活向上、科学技術発展のためにみんな特許出願が行われているわけですが、どうも目のかたきにするつもりはありませんけれども、トラブル、訴訟が起こされるために我が国研究開発にブレーキがかかるというふうなことがあってはならないと思うわけであります。  そこでお伺いをしますが、昭和六十一年五月の科学技術特別委員会に研究公務員の交流法案が提出をされまして、その議論にも私参加をしました。そのときに最終的に政府に統一見解を求めましたのは、お互い研究者交流をして科学技術の勉強をする。当然平和目的のために科学技術の勉強をし研究をしていくわけですが、すばらしい成果ができ上がると、それが安全保障なり軍事に適用をされる、そういう場面に到達をしますよということを私は二年前に指摘をしていたわけであります。その当時の議事録では自衛隊の問題に焦点を当てたわけですが、自衛隊の問題に限らず、一般的な研究は、今私が申し上げましたように、平和目的、生活向上目的で勉強していくわけですが、最後はICにしろテクノロジーにしろ全部軍事用に転用をされる。そうなりますと、安全保障協定を結んでおりますそれぞれの国との間にはこの特許権の問題についていや応なしに紛争が起きるのは当然であります。  きょうはその問題を特に掘り下げるつもりはありませんけれども、こういう安全保障なり軍事との絡みで工業所有権というものはどうあるかというものについて、日本の物の考え方アメリカの物の考え方、パリ条約の考え方、それをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  55. 渡辺光夫

    説明員渡辺光夫君) 今、先生お話のございました工業所有権制度安全保障関連の問題でございますが、まず日本の実情を申し上げますと、現在日本の特許法の中には特に安全保障に関する特別の規定は設けておりません。御案内のように、戦前までの特許法の中には安全保障に関連する条項が含まれておったわけでございますが、現在の特許法にはございません。ただ、別途私どもの特許制度を運用する上での法律として二国問の条約がございまして、その条約に基づく規制も日本の特許制度の中に位置づけられておりますので、その面で申し上げますと、昭和三十一年にアメリカとの間で締結されました特許権あるいは技術知識の交流、これは防衛目的のためのものでございますが、そういう協定がございまして、これは当時国会で御議論いただきまして御承認を得たものでございますが、その協定の中に、アメリカで秘密特許という扱いになったものが防衛目的のために援助の形で日本に提供された場合、その中で特許庁に出願があったものについては、日本の特許制度が持っております公開制度の中にはのせない、そういう取り決めがございます。そういうのがございます部分が、あるいは今先生が御指摘になりました安全保障との関連のものかと思いますが、これは日本の特許の出願に対してそういう扱いをするという、いわゆる一般的な制度ではございませんで、今申しましたような、アメリカから防衛目的のために援助としてもたらされた技術情報についての扱いで極めて限定的なものである、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、アメリカにつきましては、今申しましたように、安全保障に関連する特別の規定を持っております。それから、ヨーロッパ、NATO諸国などにつきましても、同じような安全保障関係の規定が特許制度の中にあるというふうに承知いたしておりますが、冒頭申しましたように、日本の場合には特段そういった規定は設けておらないというのが現状でございます。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 特許庁、通産省の所管でありますが、長官、これは勉強していきますと、どうしても通産省と科学技術庁との間で十分にこの所有権の問題について勉強をしていただいて、それは日米安保条約があるとはいえ、日本の国益をどれだけ優先をさせるかという意味ではもう少し汗を流す余地があるような感じがするわけです。きょうは時間ありませんから以上のことを申し上げておきます。  なお、エネルギーの事情と再処理をしましたプルトニウムの輸送の問題につきましては、もう時間がありませんので次回に譲りまして、以上で終わります。
  57. 菅野久光

    菅野久光君 私は幌延の問題についてきょういろんな事柄にかかわってただしていきたいというふうに思います。  去る四月の十五日に高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターにかかわる調査の結果を動燃は科技庁の長官に対して報告をすると同時に、関係のところにもその報告書を持っていったということが報ぜられておりますが、これは調査は相当早くに終わって昨年じゅうに報告がなされるのではないかというような報道もされたり、二月中かあるいは三月中かというふうな報道もされましたが、なぜこのようにおくれたのか、そのおくれた理由をまずお聞かせいただきたいと思います。
  58. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生指摘のように、昨年年末ぐらいまでには取りまとめて御報告をしたいというふうに申し上げてございました。また同時に、動燃事業団で責任を持って取りまとめを行うわけでございますが、いろいろの専門家の先生方の御意見を伺って我々の成果について評価をいただくことを考えておりました。その先生方の御意見を伺うのに多少時間を要しましたので発表するのが今日までおくれたということでございます。
  59. 菅野久光

    菅野久光君 専門家の意見を聞くのに時間がかかったということでありますが、それもあったのかもしれませんが、その他の要因もいろいろあったやに承っております。そこのところはいいです。  それで、この報告について関係のところへこれを持って回ったわけですね。どんなところへ回りましたか。
  60. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) お答えいたします。  科学技術庁長官、それから北海道開発庁長官のところにそれぞれ参りました。それから札幌では北海道庁、それから北海道議会に参りました。それから幌延町では幌延の町長さんのところに参りました。それからもちろん国会議員の先生方にもお届けいたしました、ということでございます。
  61. 菅野久光

    菅野久光君 北海道庁ということで今お話がありましたが、北海道庁のどこに行きましたか。
  62. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) 商工観光部の資源エネルギー課でございます。
  63. 菅野久光

    菅野久光君 報道では、道議会は道議会議長のところに行っているんですよ。それから道庁は商工観光部長ですね。なぜ知事のところに行かなかった。知事のところへ行くと言って会われなかったんですか。
  64. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 北海道議会の議長及び副議長のところに伺いまして御説明をさせていただきました。その主たる理由は、北海道議会におきましては調査の促進決議をしていただいておりましたので、そのためにもおこたえすることが必要であるというふうに考えました。したがいまして、北海道議会には議長及び副議長のところに伺ったわけでございます。  また、道庁に対しましてはいろいろと調整をお願いしておりましたが、時間的な調整がうまくとれませんでしたので、商工観光部の方に御説明に伺ったわけでございます。
  65. 菅野久光

    菅野久光君 地元の北海道新聞の社説に「道民を代表する横路知事に、直接報告書を手渡し、説明しようとしないのも理解に苦しむ。他人の家の庭に、危険なゴミを捨てようとしているのに、その家主に何も説明せず、勝手にゴミ捨て場を造ろうとしているようなものだ。」という、これは社説ですよ。  それから、先ほど北海道関係の国会議員に配ったということを言われましたが、その配り方も私は非常におかしいと思うんですね。私ども社会党の国会議員十一名おるんですが、当日配ったのは三名ですよ。私は全部調べたんだ。なぜそんな配り方をするんですか。おかしいですよ、それは。
  66. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) 資料をお配りするのは、実は公表も含めて四月の十六日の予定でございました。で、急遽十五日ということに繰り上がったものですから、お配りするのに多少手間取っておくれたことを申しわけなく思っております。  以上でございます。
  67. 菅野久光

    菅野久光君 発表しちゃってから配るなんということもまた、私どもとしては、これにずっとかかわってきたものとしては極めて不親切なやり方だということをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、私どもは、この調査の結果が適だとか不適だとかということにかかわりなく、とにかく北海道に核のごみを持ち込んでもらっては困る、核のごみは要らない、そういうことでずっと話をしてきたわけですが、今日この報告書が出されました。私もこれを見まして、まさに初めに、何というんですかな、適地ありきというかな、そういうようなやり方ではないかというふうに思わざるを得ません。  そこで、幾つかの点についてお尋ねをいたしたいと思いますが、活断層の有無の調査をどのようにして行われたのか、その活断層の調査のやり方について説明をしていただきたいと思います。
  68. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生お手元の資料で「とりまとめの概要」の方をお示しになりましたが、もう一つ調査のとりまとめ」という資料の方もお届けしてあるというふうに理解しております。その十二ページぐらいのところに「活断層について」ということが記述してございます。もちろん文献の調査というのが一つの大きな主題になっております。それからもう一つは、現地の踏査ということが大事なポイントになっております。  従来とも国会でも申し上げてまいりましたが、一九八〇年版の東大出版会の「日本の活断層」という資料がございまして、それでもって前もっていろいろな検討をさせていただいておりました。しかし、最近さらに追加されまして、昨年、一九八七年、東大の出版会から日本第四紀学会が「日本第四紀地図」というのを発表しておられます。また同時に、昨年、一九八七年、地質調査所が「五十万分の一 活構造図旭川」というものも新しくお出しになっておられます。こういう新しい資料も含めて文献調査をさせていただきました。  その結果は、その三つの文献とも活断層が候補地近辺に存在しておるということを示しておらなかったということが言えます。また、活断層かもしれないというふうに御指摘のありました断層については、できる範囲で現地踏査をいたしましたが、現地踏査の結果を見ますと、活断層であるということを断定できるような兆候は見られなかったということでございます。
  69. 菅野久光

    菅野久光君 活断層は文献と地表踏査、それによって調べた。その結果見当たらなかったというんじゃないんですよね。「候補地には、活断層や地すべりはありませんでした。」と、こう書いてあるんですよ。「ありませんでした。」と書いてある。ですから、活断層というのは地表で見えるところ、そこにしかないということでしょうか。
  70. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) ここに書いてございますように、候補地の中には活断層はありませんでした。それは明確に申し上げられます。
  71. 菅野久光

    菅野久光君 活断層のある場所というのは、地表で見たそれだけでわかるということですか。
  72. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先ほども申し上げましたように、いろいろな専門家の方が航空写真を使ったり地形図を使ったりいたしまして活断層の有無について調査をされ、その報告をされておるわけでございまして、これを我々は活用させていただきました。また、できる範囲でこれらの専門家の方々が現地もごらんになって、その上で文献上活断層もしくは活断層でないということを判断しておられるというふうに思っております。
  73. 菅野久光

    菅野久光君 活断層があるかないかということは特に地震と深いかかわりがあるわけですね。ですから、そこのところはしっかり調べなきゃいかぬということでやられたのだと思いますけれども、その候補地という決められた狭いところにはない。しかし、その周辺の方にはどうなんですか。
  74. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 文献にも書いてございますし、報告書の中にも書いてございますが、候補地の東方約十四キロメートルのところに問寒別東方断層というのが存在しておるということは、これは明らかにされております。しかしながら、候補地からそこまでの間に活断層が存在するかどうかについては、先ほど申し上げましたように、調査の結果では活断層ではないと我々は判断をいたしております。
  75. 菅野久光

    菅野久光君 「貯蔵工学センターに関する調査のとりまとめ」の白表紙の二ページのところに周辺の断層とそれから活断層の図がありますが、こういうことだけ見て「候補地には」という、限られたところだけで活断層や地すべりがないからそこは大丈夫だというふうに周辺の方も考えないで言えるのか。こういうふうに言い切るというところに、いろいろ不安を抱いている人たちに対して、いよいよこれはおかしいなというふうに疑問を抱かせることになるのではないかと私は思うんです。しかも、文献と地表踏査でしょう。ずっと地下深くあるのがそれでわかるんでしょうかね。専門家だから、歩いたら足の裏ずっと地下何キロもわかるということになるんでしょうか。しかも、東京大学のこの「日本の活断層」という文献も、ある地質学者の方たちに聞けば、これがすべてではないというようなお話もあるわけですよ。  ちなみに、この活断層で地震とのかかわりについて申し上げますと、東京大学出版会の「日本の活断層」に出ていない活断層も実際にはたくさんある。例えば一九八四年の九月十四日、皆さん方も御記憶にあると思いますが、長野県西部地震、これはマグニチュード六・八、最高震度六、死者二十九名。これで多くの地盤災害が発生をいたしましたが、これは「日本の活断層」には出ていないところです。地下に伏在している活断層が動いて起こったということは、これは実際に地震が起きてそれがわかった。そのことについて何か反論ありますか。
  76. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 私も地震と断層の専門家というわけではございませんので正確にお答えができるとは思いませんが、少なくともこの北海道候補地のごく近辺には特に心配するような活断層があるとは思われません。特に千三百五十メーターという深いボーリングの実施を候補地でいたしておりますが、その結果を見ましても、その範囲内で活断層が存在するということは考えられませんでした。
  77. 菅野久光

    菅野久光君 植松さんも科学者だからね、もっと科学的に言ってもらわぬと。  一カ所のボーリングだけで活断層があるとかないとかということが言えるんですか。例えば先ほども申し上げました長野県西部地震の震源ですね、これは地下二キロメートルだと言われているんです。その深さのところにある活断層が動いた、それで地震が起きた、そういう話になっておるわけで、活断層の有無の調査というのはこの地表地質踏査だけではだめだ。もう地下何キロメートルといった深いところまで調べる必要があることになるが、動燃はそんな調査は何もやってない。先ほど言った深層ボーリングというのは一本しかやってないわけですね、千三百五十ですか、そうですね。あとは踏査ですよ。それで不安にこたえるということで、「ありませんでした」と、こういうふうに断定的に言えると、そういうことになるんですか。
  78. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) もちろん我々がボーリングをしました千三百五十メーターの範囲では活断層は存在しておりませんでしたし、そのごく近傍の地質構造図というのは北海道の地質調査所からもいろいろなデータが出ております。そのあたりを全体を勘案しますと、現在の候補地に活断層が存在する可能性というのについては否定できるのではないかというふうに考えております。またたとえ直下型の地震が発生するような可能性があったといたしましても、それを考慮して、地方に設置されるような構造物については十分な耐震設計をするということを考えております。
  79. 菅野久光

    菅野久光君 構造物をつくる話までしてないですよ。  こういう道民の不安にこたえるということで出している中に「ありませんでした」というそういう断定的な書き方、先ほど言ったように、長野県の西部地震なんかは地下二キロメートルで、しかもそこに活断層があるということはわからなかった。そういうところで地震が起きているんですよ。この付近に大曲断層というのは活断層ではないかというふうに言われている部分もありますが、そうではないという部分もあるようですが、その付近に断層はありますね。
  80. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) もちろんお手元の先生お持ちの資料の白表紙の中にも二ページにございますように、断層そのものは候補地の近傍にもいろいろと存在しておることがわかっております。しかし、これが活断層であるかどうかについては、先ほど申し上げましたように、活断層であると明らかに判定されておるものは問寒別東方断層だけであるというふうに理解をいたしております。
  81. 菅野久光

    菅野久光君 活断層だ死断層だというのかな、生きている反対だから死ということになるんでしょうが、死断層ということに例えば大曲断層がなったとしても、死断層と断定するだけの証拠があるのか、それはいかがですか。
  82. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 活断層、死断層というものは片一方が生きておる、片一方が死んでおるというものではありませんで、活断層というのはごく最近の年代において活動したことがあると認められるものを活断層と言っておるわけで、それ以外の断層を通常断層と申しておりまして、それは必ずしも死断層というわけではないと思っております。
  83. 菅野久光

    菅野久光君 生きている証拠がないから死んでいるということでは困るんで、死んだふりしているかもしれないですね。中曽根前首相ではありませんが、死んだふりというのがありますが、断層もいつどういうふうになるかわからない。今は活動していないということだというふうに思うんです。  それで幌延周辺の活断層は、A級とかB級とかC級とかと活断層にもあるそうですが、そのうちのどのクラスに当てはまるような断層なんでしょうか。
  84. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先ほどから申し上げております候補地東方に存在しております問寒別東方断層、これは級で言いますとC級に相当する断層だというふうに評価されております。
  85. 菅野久光

    菅野久光君 幌延周辺の活断層はC級だというようなふうに言われておりますが、C級だから大したことはないというふうに思われたら大変で、C級の活断層が動いて直下型大地震を起こした例がたくさんあるというふうに思うんですが、動燃はそのことを知っているはずだと思いますが、この点はどうなんでしょうか。ついでにC級の活断層が大地震を起こした例を一つ、二つ教えていただきたいと思います。
  86. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 私も地震の専門家ではございませんので、そういう例を特に今申し上げられるようなデータを持っておりません。しかしながら、問寒別東方断層がC級であるというふうに申し上げましたが、このC級の断層がもし動いたらということで、その断層が動くことによってもたらす地震動、それの候補地における影響というのがどういうものであるかということについては試算をいたしておりまして、候補地においては特に大きな地震動をもたらすものではないということを計算で確かめてございます。
  87. 菅野久光

    菅野久光君 C級の断層で大地震が発生しているということを、植松理事は地震の専門家でないということですから、植松理事に聞いてもどうかと思いますが、私が調べたところではC級と言われている活断層で地震が起きた。一九二七年といいますから昭和二年ですね、の三月七日に北丹後地震、兵庫県の北ですが、ここではマグニチュード七・五で実に二千九百二十五人の人が死んでいる。それから一九四三年九月十日には鳥取地震、ここではマグニチュード七・四で千八十三名の方が亡くなられておりまして、ここでは活断層があることもわからなかったということなんですね。一九四五年には三河地震、これはマグニチュード七・一で、このときには千九百六十一人の方が亡くなっておられる。このときも地形的には活断層があることもやっぱりわからなかった。そういうところで起きているんです。一九四八年には福井地震、これはマグニチュード七・三で三千八百九十五人の方が亡くなられている。これは一部B、一部Cの活断層だと言われている。こういうふうに、ちょっと私も調べてみましたら、C級と言われている活断層あるいは活断層があることもわからなかったところでこんな大きな地震が起きているんです。ですから、これはC級だからということで侮っては大変なことになりますし、どのような計算をなされたのか、それは私はわかりませんけれども、それで本当に大丈夫なのかという心配がまた出てきております。それは私が質問しても、C級で大地震が起きたということが地震の専門家でないからわからないと、こう言われているわけです。計算は地震の専門家にしてもらったのかと思いますが、しかし、それも初めに答えがわかっていてそれに合うような計算というのもあるわけですから、疑っちゃなんですけれどもね。いや、本当に疑っちゃなんですけれども、やろうと思えばそういうことだってできないことじゃないんです。どこまでも私どもは疑わなければならないような状況が今までのずっと積み重ねの中で残念ながら出てきているということだけは言っておかねばならぬと思います。  地震についてでありますが、この幌延を含む道北地方は一般的に見て地震の活動性の低いところとされていますね。それはこの報告書の中にも出ております。道北地方の周辺海域ではマグニチュード七クラスの大地震が起こっています。これは白表紙の九ページだと思いますが、そうですね。大地震の場合に百キロメートルぐらい離れていても目と鼻の先ということになるというふうに思うんですが、海底に震源のある地震のこの幌延地区への影響をどの程度まで調べたのか、お尋ねをいたします。
  88. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 日本海の海底にある可能性のある断層というのが考えられるわけですが、それはいろいろの文献によりますと、利尻島の西南方に存在し得る可能性があるというふうにされております。利尻島西南方の活断層を、もしこの活断層が今言われておるようなデータをもとに活動したと仮定をいたしまして、それで先ほどから申し上げておるような専門家の先生方に試算をしていただいておりますが、その結果は、マグニチュードが八・二という地震になる可能性があるということが推定されております。これが候補地の岩盤にどの程度の影響を及ぼすであろうかということも計算をしてございますが、この計算の結果を見ますと、耐震設計上十分可能な範囲内の数字であるということが出ております。
  89. 菅野久光

    菅野久光君 一応そういう試算がなされたということについては受けとめておきますが、これは後から資料の問題についてはまた質問をいたしたいと思います。  道北と並んで地震が少ないと言われている九州や山陰でも過去に大地震が起きた。また、日本の被害地震のおよそ半分は、これは過去に被害地震の記録のないところで初めて起こったと言われておるわけです。これは地震学者の通説ということになっているように私は聞いております。九ページの図の十三を見ますと、九州は道北と同じに地震が非常に少ないところと言われておりますけれども、一九七五年四月にはホテルの一階がぺしゃんこにつぶれたような震度六と言われる大分県中部地震が起きているんですね。これと同じようなことが幌延で起きないと断言できるかどうかですね。断言できるなら、その証拠を示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  90. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 具体的にどのような地震が候補地について起こり得る可能性があるかということは、先ほど来申し上げておりますように、候補地周辺におきます活断層の問題をよく調べた上で、それの影響がどうであるかということを計算をして、その上で耐震設計の要求度がどの程度であるかということを検討しておるわけでございまして、そういう地震が起こるか起こらないかということについて御説明するよりも、もしこの程度の地震が起こっても、それに耐えるような耐震設計をすることが十分可能であるというふうに我々は考えております。
  91. 菅野久光

    菅野久光君 これは建物ですから、耐震設計ということはどんなところでも耐震設計ということではやれるわけですね、それは。別に幌延でなくたっていいわけですよ。  そこで、昭和六十一年の八月二十一日から八月三十一日にかけてこの幌延町周辺で群発地震が起こったわけですけれども、これは小さい地震で被害はありませんでした。しかし、この群発地震が将来被害を出すような地震につながる可能性はないというふうにお考えですか。
  92. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) この幌延町を中心にした豊富町あるいはその南の方で群発地震が起こったことは承知しておりますし、ただいまも地震計を置いて観測を続けております。これまでの地震の記録あるいは活断層あるいは期待値等を総合的に判断してみますと、例えば直下型地震が起きても設計可能、せいぜいマグニチュード四クラスであろうというふうに考えております。したがって、この程度の地震ならば、耐震設計をやれば安全上十分に耐え得ると考えております。
  93. 菅野久光

    菅野久光君 長野県の木曽郡の王滝村で一九七六年から群発地震が起こって、七七年の十月にはマグニチュード五・三とやや大きな地震がありました。その二年後の七九年十月二十八日には御嶽山が一万年ぶりに噴火をいたしました。気象庁は慌てて臨時火山観測所をつくったわけですけれども、地震も噴火も大体おさまったので観測所を撤去したら、八四年九月十四日にマグニチュード六・八の地震があって、このときは死者が二十九名、そして山崩れ、土石流と大変大きな被害が出たわけです。  こういうふうに群発地震があって、それが一休みして、何年かあるいは十何年か、あるいはもっと長い期間か知りませんけれども、それだけの期間がたって大きいのがどかんとくる、こういうのが今までの経験からいくとあるわけですね。だから、幌延だってこんな場合があり得るのではないかと、そういうふうに私どもは思うわけですけれども、そういうふうに言いますと、先ほど来言いますように、その程度の地震では耐震設計でやりますから大丈夫ですと、こういうわけです。しかし、どんな耐震設計をやったとしても、そのときの地震の状況とかそういうことで、それが絶対大丈夫だということは、先ほど原発のときにもいろいろお話がありましたが、この種のもので絶対大丈夫だということはないんですね、ないんですよ。ですから、心配をしているわけです。  動燃は、この幌延地方は有感地震がないというふうにあちこちで言われておるようであります。いわば東京の三%ぐらいしかないと。しかし、大地震があるたびに地盤がぴんとはね上がる四国の室戸岬は東京の五・二%なんですね。東海地震が起きたら震度七になるという御前崎だって東京の七%しかなくて、ふだんは実に静かなところなんですね。  そこでお尋ねしますが、有感地震回数が東京の五%とか七%しかない室戸岬や御前崎は危なくても、三%の幌延は安全というふうに言えるのかどうか、そこのところはいかがですか。
  94. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生御参照にしておられますのは十一ページの図―十六だと思いますが、これは理科年表から引いてまいりましたデータでございまして、我々としては非常に客観的な数字であるというふうに考えております。有感地震回数が稚内地域においては他の東京、水戸などに比べて非常に少ない回数であるということは明確になっておると思います。その有感地震の数が少ないということと安全であるかどうであるかということはまた別の問題であるというふうに考えております。  候補地地域において起こり得る地震、回数ではなくて起こり得る最大の地震、これに対して施設を耐震設計にしておくというのが基本でございますので、稚内地域の有感地震の数が多い少ないということと耐震設計との間には特別の関係はないかと思います。
  95. 菅野久光

    菅野久光君 そうですね。有感地震の回数が多い少ないということが安全とか安全でないとかということに関係がないと、そういう認識をされているということは大変いい認識だというふうに私は思いますよ、今まで私がいろいろ事例を挙げて申し上げたことからいえばね。しかし、現地でいろいろ言うときにはそうじゃないんですね。東京から見たら、この道北地方、幌延のこの地域は三%ぐらいしか有感地震がないんですよと、こう言うんですよ。そうすると、一般の人たちは、そうかそんなに少ないところなら大丈夫かなというふうに思うわけでしょう。思わない人が非常に多いんですけれども、しかし思う人もいる。だから、このことを余り強調されるということは、私先ほどから言っていますように、活断層の有無の問題、それから地震のそういう問題、そういうことからいけば、これは、何というんですかな、余り表に出しても意味のないものではないかというふうに私は思わざるを得ないんです。何か聞かれたときに答えればいいというふうに思うんですね。  次にお尋ねいたしますが、八二年の三月十三日付の北海道新聞によりますと、科学技術庁は、原発の原子炉施設を建設する場合、N値五十では地盤が弱過ぎるとの見解を持っているというふうに報道されました。  そこでお聞きしますが、N値五十なら、原子炉はだめでもセンターならいいのかどうか。センターはれっきとした原子力施設だというふうに思うんですが、そこのところはいかがでしょうか。
  96. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 現地で、浅いボーリングでございますが、浅いボーリングをしながらN値を測定いたしてきております。N値五十以上というところが確認をされておりまして、この上N値が五十以上幾らまであるかということについてまで確認を求めておるわけではございませんので、N値としては五十以上が存在しておるということがわかっております。N値五十以上のところがあれば、通常の建物は問題ないと思いますし、この原子力施設を建設する場合にも、その候補地の状況を確認しながら設計をし建設をしていけば十分ではないかというふうに思います。
  97. 菅野久光

    菅野久光君 そのN値五十では地盤が弱過ぎるという科技庁の方の見解から見て、五十以上のところもあるということなんですが、そこのところは五十だからいいということなのかどうか、そこの見解をはっきりしてください。
  98. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 私どもは東海の再処理工場の敷地において東海再処理工場が建設されておる場所などとも比べますと、N値五十以上あれば十分安全な設計ができるものと確信をいたしております。
  99. 菅野久光

    菅野久光君 N値五十では地盤が弱過ぎるということなんですから、それじゃ科技庁の見解と違うんじゃないですか。
  100. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 何度もお答えしておりますように、N値五十以上というふうに申し上げております。これだけあれば、重要な耐震Aクラス以上の施設につきましても十分設計ができるというふうに考えております。
  101. 菅野久光

    菅野久光君 N値五十では地盤が弱過ぎるというのは、何というんでしょうか、解釈の仕方はいろいろあると思うんですけれども、五十一以上ならいいのか、五十なら弱過ぎるということで五十一ならいいのか、五十五ぐらいなかったらだめなのか、その辺はどうなんでしょうかね。これは科技庁の方ですな、いかがですか。
  102. 松井隆

    政府委員松井隆君) 申しわけないんですけれども、私、今、N値五十という道新の記事も持っておりませんし、それからその事実関係を今調べておりますものですから、それについての回答はちょっと留保させていただきたいと思います。
  103. 菅野久光

    菅野久光君 それじゃ、それがわかった段階でひとつ教えていただきたいと思います。ここのところはやっぱりあいまいにできないところだというふうに思いますので、お願いいたします。  「貯蔵工学センターに関する調査のとりまとめ」の白表紙の六ページの図―七を見ますと、このB―2、B―1、B―5地点にかたい地盤の下にやわらかい地盤があって、その下がまたかたくなっているというサンドイッチ地盤があると思うんですが、そうですね。
  104. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生指摘の六ページのボーリングの絵は、ごく浅いボーリングをしたときに得られたデータが示してございまして、これだけではその下がどういうことになっているかわからないわけでございますが、その次のページに深層ボーリング、千三百五十メーター掘ったときのデータも示してございます。六ページの下の図―八でボーリング位置が示してございますが、深いボーリングはD―1と示してございます。ごく近傍にB―1という浅いボーリングの結果も出ておりますので、この二つを対比することによって、いわゆる先生のおっしゃるかたい地盤の下がどうなっておるかということがこの七ページの図からお読み取りいただけるのではないかというふうに思います。  その七ページの図―九、「深層ボーリングの結果」、これは先ほど申し上げましたように、浅いボーリングB―1のごく近傍でございますので、そのデータを対比していただきますとよろしいかと思いますが、そこにありますように、密度、それから弾性波速度、こういうところから判断をいたしまして、十分かたい地盤があるものというふうに判断してよろしいかというふうに考えます。
  105. 菅野久光

    菅野久光君 いや、かたいところがあって、その下にちょっとやわらかいところがあって、またかたい地層があるというふうに読み取れるんですが、それは違いますか。
  106. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) 先生にお尋ねいたしますが、六ページというのは白い表紙の方の六ページでございましょうか。
  107. 菅野久光

    菅野久光君 白い方。
  108. 渡辺昌介

    参考人渡辺昌介君) 六ページの方の図―七、「N値の分布」という図がございます。これは浅いボーリング四本につきましてN値を測定していった結果が出ております。B―2のボーリングでございますが、恵北層という地層がございます。その下に更別層という地層がございます。この更別層の上に恵北層などの第四紀の地層が分布しているわけでございますけれども、これは傾向としては恵北層の中でややかたいところがある。そしてまたやわらかくなってN値が低くなって、さらに更別層でかたい地盤になっている。N値が五十よりもはるかに高い数字になっておる。五十回で打ちどめにいたしますけれども、五十よりはるかに高い硬度に、かたさになっているということを示しております。  以上です。
  109. 菅野久光

    菅野久光君 こうして見ると、かたい地盤があって、あと少しやわらかくなって、そしてまたかたい地盤がある、そういうのをサンドイッチ状というふうに言いましたが、そういう地盤でこんなことがありましたね、函館大学なんですが、このサンドイッチ地盤の上にあったために、四階のうちの一階がぺしゃんこになってしまった、地震でですね、そういうふうになったことがありました。  そこで、センターの建物をつくろうとされるわけですが、その考え方は、そういったような場合に、かたい地盤までくいを打つのか、それとも建物は、かたい岩盤まで掘っていって、かたい岩盤の上に乗せるということになるのか、その辺はどのように考えておられますか。
  110. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先ほど来何度か申し上げておりますように、この建物、我々の施設はN値が五十を超えるような場所、ここに設置をすることにいたしております。かたい地盤の上に設置をするということを考えておりまして、先生がおっしゃるようないわゆる基盤岩というようなところまで掘り下げる必要があるというふうには考えておりません。N値五十以上のかたい地盤は六ページの図―七にごらんいただきますように、地表から約十ないし二十メーターのところにございますので、ここに支持を建てれば、先生指摘のようなサンドイッチ現象などは起こらずに済むというふうに考えます。
  111. 菅野久光

    菅野久光君 それはいいでしょう、そういうふうにならないように私どもはやらなきゃならぬというふうに思っていますので。  次に、幌延町が昭和五十六年の十月から五十六年の十一月にかけてボーリング調査を行いましたが、その調査で声問層の泥岩が大曲断層のために割れていたんですね。また大曲断層のところで風化しているところもあったというふうに報告をされております。そうしますと、大曲断層がたとえ死断層だというふうに思っていたとしても、この断層のために声問層が割れたり風化したりしていて岩質が悪くなっていることがわかるのではないか。良質な泥岩だというふうなことを言われておりますが、そうではないんではないかというふうに思いますが、そのことは今回の動燃の調査では一切触れておりません。動燃は、この調査結果をつくるに当たって幌延町の調査結果をチェックしたのかどうか、そこら辺はいかがでしょうか。
  112. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 幌延町が行いましたボーリングの結果についても見せていただいておりますし、またこの整理に当たっては参照をさせていただいております。
  113. 菅野久光

    菅野久光君 参照しておられるということですが、それにしてはちょっと幌延町で行った調査の結果と違うのではないかというふうに思わざるを得ません。木村敏雄東大名誉教授は、開進地区に厚く広く分布している声問層が均質な泥岩であり、割れ目ができにくい性質を有していることから深地層試験に適しているというような見解を記者団に発表されておりますが、幌延町のボーリング調査結果に照らしてみると、これは間違いだと言えるのではないかというふうに思いますが、この点はどのようにお考えですか。
  114. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 木村先生は、ボーリングの結果をごらんになって、候補地の近辺の声問層については、均質で割れ目が少なくて地下実験を行うには適切な場所ではないかというふうに判断をされておるわけで、声問層すべての全域にわたってそういうふうにおっしゃっておられるのではないというふうに理解をいたします。
  115. 菅野久光

    菅野久光君 それにしても科学的な判断ではないんではないかというふうに、大先生にこんなことを申し上げるのは失礼かとは思いますが、いろいろそういう今までの調査結果などを踏まえてみますと、失礼な言い方かもしれませんけれども、やっぱりそのように思わざるを得ないんですよ。だから、動燃の調査の結果に都合のいいような発表になってしまったのではないかというふうに私は思わざるを得ません。  次に、弾性波速度の問題についてお尋ねをいたしますが、声問層の泥岩で深地層試験を実施すると言われておりますが、この泥岩は十分なかたさを持っているというふうに先ほど言われました。そうですね。弾性波速度の図、白表紙の七ページの図―九ですね、これを見ますと、深度九百メートル以下に分布する声問層のP波の速度は秒当たり二・五キロですね。これは岩石を軟岩とか中硬岩とか硬岩というふうに分けると、このP波はどのくらいの数値で軟岩あるいは中硬岩、硬岩というふうに分けているのでしょうか。
  116. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) この声問層におけるP波の速度は約二・五キロメーター・パー・セクという数字になっております。このP波速度というのは、通常のいわゆる堆積岩においてはごく普通の数字であるというふうに考えられます。この声問層泥岩のP波速度は、凝灰岩、それから風化軟岩、変質軟岩よりも小さく、新期の火山岩よりも大きなものとなっております。また、S波の方も、変質軟岩よりも小さく、凝灰岩、新期火山岩よりも大きなものになっておるというデータになっております。
  117. 菅野久光

    菅野久光君 ですから、軟岩とか中硬岩とか硬岩というふうに岩石について土質工学的に何か分けられているでしょう。私が調べたのでは、軟岩は三キロメートル以下、中硬岩は三キロメートルから四・五キロメートルまでを中硬岩、硬岩を四・五キロメートル以上と、こういうふうに私は承知をしているんですが、それは違いますか。
  118. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 先生のおっしゃる数字で結構だと思いますが、軟岩というのは何も岩がやわらかいからそういう分類ではございません。学術用語でございまして、通常の堆積岩は多くの場合軟岩に分類分けされる、火山岩のような花崗岩は多くの場合かたいと呼ばれておるものに分類されておるということでございます。
  119. 菅野久光

    菅野久光君 いや、だから硬質だという先ほどからそういう答弁でしょう。だから、土質工学的に言ったら、これは三キロメートル以下ですから、通常そういうふうに言っているというのは、それは、何というのですか、学界では通用するのかもしらぬけれども、私どもにはわかりません。P波が三キロメートル以下を軟岩と言っているんです。この声問層は二・五キロメートルだ。それでも硬質の岩石だと、こう言っているんですよ。だから、これは土質工学のこれが間違っているのか、あなたたちが正しいのか、一体どうなのか、もっとわかりやすく説明してください。
  120. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 申し上げておりますのは、学術用語では軟岩、硬岩というふうに分かれておることは事実でございます。我々がそこでP波二・五キロでもって申し上げておるのは、硬岩というふうに申し上げておるわけではございませんで、我々が地下実験場をつくるのに必要とするような強度、かたさを持った岩帯であるというふうに申し上げております。かたい岩帯であるということは必ずしも学術用語の硬岩というものを使っておるわけではございません。
  121. 菅野久光

    菅野久光君 しかし、弾性波速度というのは石のかたさをある程度あらわすための数値でしょう。だから、二・五キロといったらこれ軟岩に所属しているわけですよ。入っているわけですよ、その範囲に。それがそうでないような言い方というのは何としてもそれは理解できない。軟というのは、これやわらかいと読まないでもっと別な読み方があるのか。私は、どんな辞典を引っ張っても軟というのはやっぱりやわらかいことじゃないかなというふうに思うんですよ。  時間がありませんからちょっと理事長にお尋ねしたいと思うんですが、先ほどから言いましたように、地表踏査とか文献だけで「活断層や地すべりはありませんでした。」と、こういうふうに断定的に書く、それが住民の不安や疑問にこたえるということになるのかどうか。私は今全く素人の立場で幾つかのことについてお尋ねいたしましたが、今のP波の問題についてもそうですね。それから、地下水なんかについても、透水性だとか、そういう地下水の水質や何かについては書かれていますけれども、地下水の量なんかについても書かれておりません。そういうふうに言っていけば、これはこういうものを出されたけれども、今までもこの幌延に立地するかしないかということについて道民は幾つかの経過を経てきました。例えば昨年の統一地方選挙では、知事選挙の争点は、売上税もありましたけれども、幌延に高レベル放射性廃棄物の貯蔵工学センターを設置することにどうなのかという道民投票でもあるという位置づけであの選挙は戦われました。結果は皆さん御承知のとおりであります。その後、周辺の議会あるいは農協、それから北海道の漁業協同組合、そういうところがみんな反対の決議ですよ。  そういうようなことを考えていきますと、いかにこの調査の結果をもって住民に理解をさせよう、不安を除こうとしてもとても除けるものではない、そのように思います。先ほど来の質問を聞いて、私が今申し上げたことについて理事長はどのようにお考えになるのか。まず理事長からお答えをいただきたいと思います。
  122. 林政義

    参考人(林政義君) 当事業団といたしましては、これまで進めてまいりました調査の結果を取りまとめまして、四月十五日から幌延町を初めとする地元の方々にその説明を開始させていただいたわけであります。これまで進めてまいりました調査は、地元から提起されましたいろいろな疑問や不安におこたえするためにやったものでございまして、地元の方々の一層の御理解を深めていただくために実施をさせていただいたものでございます。  したがいまして、今回の調査結果の内容を地元の方々に対して十分に御説明して、御理解をいただけるように最大限の努力を払ってまいりたい、このように思っております。
  123. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 基本的には理事長からお答えをしたとおりでございますけれども、長官として、また原子力委員長としてお答えをさせていただきますが、動力炉核燃料開発事業団が北海道天塩郡幌延町で進めております貯蔵工学センター計画は、原子力の今後の開発利用を進めていく上での重要なプロジェクトでございまして、昨年六月に原子力委員会が定めました原子力開発利用長期計画にのっとりまして、その着実な推進を図ってまいりたい、このように考えております。  今回の調査は、今理事長もお答えを申し上げましたとおり、地元から提起をされました疑問や不安にこたえるためのものでございまして、私としても幌延町を初めとする地元に対し、今後この調査結果の取りまとめを十分に説明をさせる所存でございます。そして、これからの説明によりまして地元の疑問や不安が解消され、貯蔵工学センター計画に対する地元の理解が一層深められることを期待をしております。
  124. 菅野久光

    菅野久光君 理事長や長官のお話を聞いても疑問や不安が解消されることではなくて、ますますその不安や疑問が増大するようなきょうのやっぱり私は結果だというふうに思います。  そこで、今まで調査をされた資料、これ成果については発表しますと、こう言っているんですが、成果だけ、いいところだけ見せて、それで納得せいと言ったって、これは納得できないわけですから、いろんな団体などがありますから、こういうことについては資料を公開をしてくれという要求にはおこたえになりますね。それがきちっとこたえられれば、ある程度理解ができる部分もあるのではないかというふうに思いますが、そこはいかがでしょう。
  125. 植松邦彦

    参考人植松邦彦君) 生データの問題につきましてはいろいろとございますが、今までこの生データを動燃の手で評価をいたしまして、しかも専門家の先生方に十分御意見を伺ってまいりましたので、今度皆様に御説明をさせていただきました調査結果につきましては、これで十分説明ができ、また御理解がいただけるものというふうに理解をしておりますし、そう期待をしております。  なお、今後地元への説明の過程におきまして、取りまとめを行いましたこの中身にいろいろ御質問などが出てまいるかと思っております。そのときには事業団として十分お答えしていくことが地元の理解協力を得る近道と考えております。御理解いただくまでその内容について何度でも御説明していきたいと思っております。その過程におきまして、必要が生ずれば、さらに補足的な資料についても検討さしていただきたいというふうに考えております。
  126. 塩出啓典

    塩出啓典君 まず最初に、昨年の九月、ブラジルのゴイアニア市におきまして放射能災害があったわけでありますが、これはチェルノブイル原子力発電所事故に次ぐ最大級の災害であると言われておりますが、四人の方が亡くなって、そうして二百人以上の人が被曝の事故に遭ったと報ぜられておりますが、科学技術庁としてはこの概要をどのように掌握されておるのか、お尋ねをいたします。
  127. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) ただいま先生指摘のブラジルのゴイアス州ゴイアニア市、これは首都ブラジリアの南西約二百キロメーターに位置する都市でございますが、ここにおきまして昨年九月にセシウム137による被曝事故が発生をいたしております。すなわち昨年の九月末に廃品回収業者が市内のゴイアニアがん治療センターの跡に放置されておりました放射線のがん治療装置の一部である鉛製のシリンダー状のカプセル、約百キログラムの重さと言われておりますけれども、これが治療センターの跡地に放置されておりまして、それを廃品回収業者が不法に持ち出しまして、そして古鉄回収業者にこれを売り払ったというのが最初のきっかけでございます。  このカプセルを古鉄回収業者が持ち帰って壊しまして中を見ましたところ、中から発光性の粉末が出てきた。これがセシウム137であったわけでございますが、それを大変珍しがりまして、家族や隣人にそれを分け与えたそうでございます。その後、この線源と接触のあった多くの人たちが痛みとかやけど、吐き気、下痢等の症状を呈したそうでございます。さらに、これを不審に思いましてこの古鉄回収業者が、その原因を調べてもらうために、このセシウム137の入りましたカプセルを市内のいろいろな場所に運んだために、汚染がさらに広範囲に広がったということのようでございます。  そこで、本事故によりまして二百四十四人が被曝し、うち五十四人が入院いたしました。この入院患者のうち、これまでに既に四名の方が亡くなっているそうでございます。  事故後、古鉄回収業者の自宅周辺等から汚染物質が回収されまして、それらはドラム缶に入れて現在ゴイアニア市郊外の仮場所に運ばれているというふうに聞いております。
  128. 塩出啓典

    塩出啓典君 このセシウム137は量としてはどの程度であったのか。それから放射能の強さはどの程度だったんでしょうか。
  129. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) この事故の原因となりましたがん治療装置に使用されておりました量は約二千キュリー、これは一九七一年の製作当時約二千キュリーであったと記録されております。
  130. 塩出啓典

    塩出啓典君 量は。
  131. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) ただいま申し上げました二千キュリーといいますのが放射能の量でございます。
  132. 塩出啓典

    塩出啓典君 セシウム137の量はどれぐらいですか。
  133. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 質量はちょっと不明でございますが、キュリー数で私ども情報を得ております。
  134. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、四人の人が亡くなるというのは、我々から考えますと大変ショックを受けたわけでありますが、大体どの程度被曝したのか、その被曝線量はどうなんでしょうか。
  135. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 一般には三百ないし四百レム浴びますと半数の方が亡くなるというふうに言われておりますので、恐らく亡くなった方は数百レムを被曝したのではないかというふうに推測されます。
  136. 塩出啓典

    塩出啓典君 このような事故我が国においても起こる可能性はあるのかどうか。例えばがんの治療用にいろいろな同位元素が使われている例は多いと思うんですけれども我が国においてはどの程度このような放射性物質が使用されているのか、この点はどうなんでしょうか。
  137. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 我が国におきましてこのような同様の事故が発生する可能性があるかどうかとの御指摘でございますけれども、このブラジルの被曝事故をよく分析研究をしてみますと、これはやはり放射線源であるがんの治療装置の使用者が施設を廃止する際に適切な措置を怠ったということ、さらにそういった装置が勝手に持ち出され放射性物質が周囲に拡散してしまったということが原因であるわけでございます。  そこで、我が国におきましては、放射線障害防止法等によりまして放射性同位元素等の厳重な管理が行われているところでございますが、特に同法におきましては、施設の廃止といったような際には放射性同位元素の取り扱いが認められた他の機関にそれを譲り渡す、あるいは跡をきちっと除染するといったような措置を講ずることが義務づけられております。また、法令に基づく許可を受けた場合等以外は放射性同位元素を所持してはならないというふうになっておるわけでございます。したがいまして、同法を遵守することによりましてかかる事故の起こる可能性はないというふうに考えておるわけでございますが、なお今後一層同法の遵守の徹底を図ってまいる所存でございます。  なお、放射性同位元素の使用の件数をお尋ねでございますが、現在約三千数百カ所というふうに記憶いたしております。
  138. 塩出啓典

    塩出啓典君 三千数百カ所というのは、今お話がありましたけれども、同位元素も非常に放射線の強いのと弱いのといろいろあると思うんですけれども、今回の死亡事故を起こすようなその程度の強さの同位元九素というのは何カ所ぐらいあるんですか。
  139. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) この粉末状のセシウム137というのは、最近の医療、がん治療等には使われなくなってきているそうでございまして、現在日本では主としてコバルト60が放射線の発生装置に使われているということでございます。  なお、こういった規模のものが現在日本でどれくらいあるかということにつきましては、そう多くはないようでございまして、現在我が国におきますセシウムについて申し上げますと、セシウムの大線源を取り扱っている主要事業所につきましては、京都大学医学部の附属病院、これが約五千キュリー、それから九州大学の生体防御医学研究所に約二千キュリー、それから財団法人癌研の附属病院に約二千キュリー、大阪大学の医学部附属病院で約二千キュリーというふうになっております。  なお、先ほど私三千数百カ所と申し上げましたけれども、実際に放射性同位元素を現在所持しているかどうかは不明でございますが、法律上許可あるいは届け出を受け付けておりますのは約四千五百カ所だそうでございます。
  140. 塩出啓典

    塩出啓典君 ブラジルの場合も法律どおり処理をしておれば、恐らくこういうことは起こらなかったわけで、日本国内においても、今のお話では、ちゃんと法律どおりやればこういう心配はないわけですけれども、やはり数が多いと必ずしもそういう法律どおり行われない場合もあるという心配はあるわけでありまして、そういう点こういうときに再度よく徹底をして誤りなきを期していかなければいけないと思うんですが、これはこういう措置はとられたんでしょうか。
  141. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 御指摘のとおり、法律の遵守をどのように徹底させるかという点でございますけれども、私ども行政当局といたしましては、放射性同位元素あるいは放射線発生装置の使用の許可あるいは届け出を受けた際の審査あるいは予防規定の届け出を義務づけておる施設につきましては、そういった際の審査に当たりまして十分必要なアドバイスあるいは法律の遵守等につきまして徹底を図っているということがまず挙げられます。さらに立入検査を適宜行っておりまして、そういった際にも実情に応じまして適宜指導を行っているところでございます。さらに、これは放射線障害防止中央協議会というものが放射性同位元素あるいは放射線発生装置を使っております事業者等で組織されておりまして、こういったところが年に一回以上放射線安全管理の講習会を開催するといったようなことで、みずから安全管理について徹底を図るといった努力も払われております。  それから、放射性同位元素の紛失とか盗難、そういった事故が過去たまに我が国でも発生したわけでございますが、そういった場合には必要に応じまして現地の事業所に対し文書をもってこれまで注意の喚起を図ってきた、通達をもって注意喚起を図ってきたというようなことも過去において行っております。さらに、財団法人でございます原子力安全技術センターというのは当庁の所管でございますけれども、そういったところによります施設の検査あるいは定期検査、これは検査の指定機関でございますけれども、そういった検査の実施とかあるいは放射線安全管理の相談を常時受け付けておりまして、そういった諸施策を通じまして法律の趣旨の徹底を図っているところでございます。
  142. 塩出啓典

    塩出啓典君 諸外国では今回のこの事故についていろいろ調査やあるいは援助が行われているように聞いておりますが、我が国は、例えば現地調査とかあるいは現地のいろんな援助とか、そういうことはやったのかどうか。
  143. 松井隆

    政府委員松井隆君) この事故が起きまして、私どもも援助すべくいろいろと検討はいたしました。  具体的に申し上げますと、まず放射線医学総合研究所におきましては、そういうものの専門家がおりますものですから、その被曝事故の医療のための指導者ないしは助言者の派遣、それから線量測定の専門家の派遣、あるいは放射線防護の専門家の派遣ということがいつでも即応できる態勢はつくりました。また、日本原子力研究所では線量測定器あるいは体内の汚染の測定器、いわゆるホール・ボディー・カウンターと言いますけれども、そういったもの、それから測定技術者、そういうものの派遣ができるように準備はいたしました。  ただ、この事故に関しましてブラジル政府から具体的に援助をお願いしたのは、一つが、御案内のとおり、チェルノブイル事故の後できました原子力事故及び放射線緊急事態における援助に関する条約、いわゆる相互援助条約でございますけれども、それでIAEAに要請がございまして、IAEAからアメリカ政府に対して要請を行ったというふうになってございます。  なお、ブラジル政府は、そのIAEAに要請する以外に西独、それからソ連、それからアルゼンチンについて要請を行って、その要請を行った国からそれぞれ放射線医学の専門家等を派遣したというふうに承知してございます。  私どもとしては、こういうような事故でございますものですから、当然人道上の配慮から援助すべきであるというふうに措置をとったわけでございますけれども、何分そういうような事情だったものでございまして、結果的には日本から派遣できなかったということがございます。
  144. 塩出啓典

    塩出啓典君 報道によりますと、今局長がお話しのように、IAEAを仲介として米国、アルゼンチン、フランス、西ドイツ、イギリス、あるいはソ連、そういうように専門家を送り、あるいは放射線モニタリング機器等を持ち込んでいろいろやった。私は、今世界的な一つの動きの中からいっても、我が国は被爆国であり、そういう放影研という放射線の被害者の治療の実績もあるし、また現在原子力発電のいわゆる稼働状況等から見ても、こういう問題については我が国としてもいろんなデータを集め、今後の対応の誤りなきを期していくためには、こういうときこそやっぱり現地へ行って調査をすべきじゃないか。なかなか放射能の事故というのは実験するわけにはいかないわけで、こういうような事故のときは最大のチャンスというか、それを生かしてこそまた災いを転じて福にしていけるんじゃないかと思うんですけれども、そういう我が国の対応は招かれないんだから仕方ないということなのか。もうちょっとふだんからアメリカにも根回しをして、こういうときにはどんどんひとつ参加をして国際的に貢献してもらいたいという、そういうやっぱり姿勢がもっとあっていいんじゃないかなという、何かこういう事故は、チェルノブイルにしても、TMIにしても、我が国においてはそういう起こり得べからざる事故だから余りそういうところへ行っても参考にならないんだという、何かそういう気持ちなのか、そういう気がするわけですが、私はもっと積極的に参加をし、また調査もすべきだと思うが、その点どうですか。
  145. 松井隆

    政府委員松井隆君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、私どもも、先ほど申し述べたとおり、準備はすぐにでも行けるという態勢はつくったつもりでございます。基本的にやはりどうもこういう問題につきましては先方から要請あるいはそういうものがないと、こちらからというのもなかなか難しい事情もあろうかとは思いますけれども、しかし、いずれにしろ、先生の御指摘のとおり、こういったことにかかわるデータの収集とか、あるいはそういった人体への影響の問題もございます。そういう問題につきましても、今後いろいろと私どもデータを収集してまいりたいと思っております。  もともとこういった考え方は、先生案内かもしれませんけれども、昨年の六月、原子力委員会で長期計画を、これから二〇〇〇年まで何をすべきかというのをまとめました。その中に三つのポイントがございまして、その一つに、主体的、能動的にやっぱり国際対応をしよう、つまり国際協力を積極的にやっていこうという思想を打ち出してございます。そういう意味合いからいいましても、私どもとしてはぜひそういう、先生の御説のとおり、今後も対応してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  146. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題については科学技術庁としてもまだ十分実態を調査しているとも言えないし、これはぜひよく調査をして一つの結論をまとめてもらいたい。  それともう一つは、これは長官にもお願いしておきますが、やっぱりこういうときにどんどん日本も参加できるように、それは呼ばれないのに行くわけにはいかぬかもしれぬけれども、もうちょっとふだんから根回しをして、こういうときにはぜひ参加さしてもらいたいと、そういう声がIAEAにも響いておれば、すぐ日本というのが頭に浮かんでくると思うんですけれどもね。私は、もっとそういう点でふだんから努力をしてこういうときにもどんどん参加できるようにするべきだと、これ努力をお願いしたいと思うんですが、その二点どうでしょうか。
  147. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 私も先生の御指摘、御意見と全く同感でございまして、このことを事務当局からお聞きしたとき私もそういう感じを持ちまして、報告を受けたところ条約がそうだということで、しかし、またとない大事な調査をする機会を逸したわけで、まことに残念だと思っております。したがって、これから原子力外交といいますか、IAEA等の関係者とよく協議をして、こういう場合には、条約は条約としても、運用で日本が必ず参加できるように、積極的にこちらも参加する姿勢、態度、体制をとりながら先生の御指摘にしっかりこたえていきたいということも私は全く同感でございますので、今後私自身そういう原子力外交の舞台に出ましたらそういう方向で進めたい、このように考えております。
  148. 塩出啓典

    塩出啓典君 第一点の方は……。事故の結論をちゃんとまとめる、それちょっと。
  149. 松井隆

    政府委員松井隆君) その点につきましては、先生のおっしゃるとおり、これから努力したいと思っております。
  150. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、チェルノブイル事故からもう約二年を経過したわけでありますが、チェルノブイル事故ではもう大変な放射能汚染があったわけでありますが、これは世界的にも広がって、現在に至るまでその余波はあるわけですが、この放射能汚染に関する調査活動に我が国はどのように参加してきたのか、これをお伺いをいたします。
  151. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) チェルノブイル事故が発生する以前から、我が国におきます核実験等から降ってまいります放射性降下物あるいは土壌とか野菜等に含まれております放射能、こういったものの測定値につきましては、国連科学委員会、UNSCEARと言っておりますが、その国連の科学委員会の事務局に半年ごとに提出してきております。また、WHO、世界保健機構に対しましても、放射性降下物及び牛乳に含まれる放射能の測定値、そういったものを四半期ごとに提出しておりまして、各国のデータとともに毎年報告書の形で取りまとめられております。  本年六月に開かれる予定の第三十七回の前述の国連科学委員会におきましても、今度はチェルノブイル事故後の各国の放射能の測定データというものが報告されるというふうに聞いておりまして、我が国といたしましても、これまでの測定値を取りまとめてここに報告する予定でございます。
  152. 塩出啓典

    塩出啓典君 今お話があったのは我が国として当然だと思うんですけれども、やはりチェルノブイル事故による放射線の人体に対する疫学的データの収集に関し放医研等が参加して国際的に行うべきではないか。というのは、放射線に対する認識においても、我が国とヨーロッパあるいは先般のブラジル等を見ましても非常に考えが違う。日本はそれだけ非常に繊細なんですね。またそういう経験も積んできているわけですから、そういう意味で、我が国がただ日本のデータを報告するだけじゃなしに、もうちょっとチェルノブイル事故等を一つ契機として、このときのデータを本当にいろんな面で生かすことができるような、そういう意味でのもっと積極的な貢献をすべきではないか、この点はどうなんでしょうか。
  153. 松井隆

    政府委員松井隆君) 先生指摘のとおり、こういった疫学的データと申しますか、そういうものを収集して評価を行うということは非常に重要な課題で、また、こういうものはやっぱり各国の協力もと推進するということが望ましいというふうに考えているわけでございます。  それで、先ほど石塚局長の方からも御説明いたしましたけれども、いわゆる多国間協力方法といたしましては、国連の科学委員会、UNSCEARと言っておりますけれども、ことしの六月ウィーンで開催されますけれども、そこで各国の状況、データが報告される。そういうものをもとにいたしまして、IAEAにおきまして人体の被曝線量の計算、そういうものを行うことになっております。  それと別に、バイな話といたしましても、私ども、日ソの科学技術協力協定というのがございまして、そういったチャンネルを通じまして二回ばかりソ連と相談をしている段階でございます。  まず昭和六十一年の九月でございますけれども、日ソ科学技術協力協定に基づく日ソ科学技術協力委員会が開かれまして、そのときにチェルノブイル原発事故に関連した日ソ共同疫学調査をソ連側に提案いたしました。本件につきましては、伏見先生からもそういう御指摘があった件でございますけれども、そのときは結論が出ませんでして、その後、六十二年の十二月にまた同じくその合同委員会が開かれました。そのときに再度、微量の放射能放出の人体及び環境に与える影響につきまして、ソ連側と共同調査の提案を私ども行っております。  そのときの議論では、放射線医学総合研究所を日本側の関係機関としたい、それからソ連邦としては、ソ連邦医学アカデミーの全ソ放射線医学科学センターというのがございまして、そことの間でその課題につきまして共同調査を行おうということで基本的には合意されております。あと、これから双方におきまして現在具体的内容詰めている段階ということになっている次第でございます。
  154. 塩出啓典

    塩出啓典君 昨日の新聞報道でも、輸入食品から放射能が検出され、暫定値の七%から一五%であると。これはイタリアのスパゲッティなどが挙がっておりますが、民間の監視機関のチェックの報告が報道されております。ヨーロッパにおきましても、事故による放射能の生活への影響、これが言われておるわけでありますが、私たちは今後原子力平和利用という点から考えて、このような生活への影響あるいは生命への影響については、これはおろそかにするわけにはいかないと思うのでありますが、科学技術庁としては、このような西欧における生活への影響また日本における輸入食品への影響というものをどのように考えておるのか、どのような認識を持っておるのか、これをお伺いをしておきます。
  155. 松井隆

    政府委員松井隆君) まず、西欧におきましてチェルノブイル事故が発生してどういった生活への影響が与えられたかという点でございますけれども、それにつきましては、ことしの一月十五日にOECD・NEAが、OECD諸国の放射能がどうなっているか、どういう措置をとったか、そういった趣旨の報告書をファイナルにまとめたものがございます。その内容を簡単に御説明させていただきますと、OECD・NEAの報告書によりますと、まず西欧諸国におきましては、その汚染の程度に応じましてモニタリングを強化した、あるいは旅行等いわゆる屋外活動と申しますか、そういうものの制限を行った、あるいは飲食制限等の所要の措置がまずとられたというふうになってございます。それで、特に多くの国では飲食による放射線被曝というものを制限するために、例えば雨水の飲用とかあるいは家庭での使用の規制を行ったというふうに書いてございます。それから食品についてのソ連、東欧からの輸入規制を行った、それから乳牛の屋外の放牧を規制を行った、それから牛乳とか乳製品、それから葉菜等の消費、流通について規制を行ったということが書いてございます。それで、特に一部の国では肉とか魚類等の消費の流通規制あるいは狩猟の規制とかの措置もとられたというふうに聞いております。  いずれにしろこれらの規制は、当初よくわからなかったものでございますから、安全サイドに立って厳し目に行われたというふうに聞いてございます。その後実際の汚染状況評価が進むにつれまして、大部分のそういった規制も二日ないし三日ぐらい、あるいは長いところで数カ月ぐらいで解かれたというふうに聞いております。それから昨年五月現在の話でございますけれども、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーにおけるトナカイの肉の国内販売につきましてはより長期の規制が行われたというやになっております。  しからば、そういった放射線の人体の健康への影響についてはどうなのかということでございますけれども、まずその報告書によりますと、OECD諸国の国民一人当たりが受けたそれによる放射線は、自然界に存在する放射線からのものより著しくは大きくなかったということになってございます。具体的に数字を申し上げますと、最も大きかった国がオーストリアでございます。これが六百六十マイクロシーベルト、これはミリレムで言いますと六十六ミリレムでございます。それからフィンランドが五十ミリレム、それからスウェーデンが二十ミリレムでございます。ちなみに、先生案内のとおり、我が国の自然放射線の平均値というのは約百ミリレムと言われておるわけでございます。そういう意味合いでは、その程度の平均すると量であるということになってございます。そういった量でございますものですから、集団線量を計算することによって得られるがんや遺伝的影響と申しますか、あるいは健康への影響と申しますか、そういうものは自然の発生率に対して有意な増加をもたらしたものではないというふうにこの調査報告書は述べております。  それから日本におきます食品の問題でございますけれども、輸入食品の放射能に関する規制につきましては、これは厚生省が関係の識者といろいろと御相談の上三百七十べクレル・パー・キログラムという規制値を施しているというふうに承知しております。それに基づきまして厳格に管理を行っているというふうに承知しております。そういう意味では、私ども健康上の問題はないというふうに思ってございますけれども、いずれにしろ最近の原子力に対する反対運動というのが、そのまま食品の汚染ということに非常に強く不安を持つ方が多いわけでございまして、今後ともこういった放射能のレベル、それからそういう原子力に関する正しい理解、知識、そういうものにつきましてやはりより懇切丁寧な広報活動に努めてまいることが必要かなというふうに考えておる次第でございます。
  156. 塩出啓典

    塩出啓典君 輸入食品でいわゆる三百七十べクレルという放射能限度を超えて積み戻しのような処置がとられた食品がどの程度あるか、御存じですか。
  157. 松井隆

    政府委員松井隆君) 申しわけないんですけれども、今ちょっとそのデータを持ち合わせておりませんものですから、後ほど調べて先生に御報告させていただきたいと思います。
  158. 塩出啓典

    塩出啓典君 ここにデータは厚生省からもらったのがあるわけですけれども、かなりそういう量が出ているということは御存じですか。大体のことはそういうことは知っていらっしゃるわけね、科学技術庁は。
  159. 松井隆

    政府委員松井隆君) 大体のことは承知しております。
  160. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 原子力安全委員会の立場につきまして一言御説明を追加させていただきたいと思いますが、我が国の輸入食品につきまして厚生省がいろいろと検査をし、輸入の規制を行っているということにつきましては御案内のとおりでございます。原子力安全委員会といたしましても、厚生省からかかる基準値、それからその基準値以下のものであればどの程度被曝するのかといったようなことにつきましていろいろと報告を受けておりまして、その限りにおきましては、厚生省の措置は適切な基準を設定することによって必要な監視を実施しているというふうに原子力安全委員会でも了承しているというふうに承知いたしております。
  161. 塩出啓典

    塩出啓典君 今チェルノブイル事故におきましても、OECDの発表では国民一人当たりの平均値は自然放射能以下である、これは余り大したことはないという、いつもそういうような政府お話をよく聞くわけですけれども、しかし先般の四国電力伊方原子力発電所のいわゆる出力調整運転試験等に対する日本国内の動き、あるいはまたこれはエコノミストの四月十九日号に「世界に吹きまくる「脱原発」の風」と、こういうようにあって、これではイタリアあるいはデンマーク、オーストリア、ポルトガル、フィリピン、メキシコ、スウェーデン、スイス、ユーゴスラビア、フィンランド、スペインあるいは西ドイツ、米国、さらに日本においても、そういう出力調整するぐらいならとめればいいじゃないか、こういう論理。これはある意味では非常にわかりやすい論理でもあるわけですね。そういう意味で、このチェルノブイル事故というものから二年たった今においてもこれだけのやはり日本の食糧にまで放射能があるということは、これは大変なことじゃないかと私は思うんですね。したがって、これからのエネルギー政策というものは私はいろんな意味で考えていかなければいけないんじゃないかなという、そういう気持ちがするわけですけれども、これはもちろんエネルギー政策になると通産省の問題にはなるわけですが、この点科学技術庁としては原子力発電の将来についてどのような認識を持っているのか、これをお伺いしたいと思います。
  162. 松井隆

    政府委員松井隆君) 私ども原子力発電につきまして、確かに現状、伊方の出力調整運転試験を契機といいますか、現象面としてはそれを契機といたしましてかなりいろいろな不安を持つ層が出てきたということは認識しておる次第でございます。ただ、御案内のとおり、原子力発電日本のエネルギー供給構造の脆弱性を克服するために非常に重要な手段でございまして、これはやはり進めなくちゃいけないということを考えている次第でございます。  それで、私ども昨年の長期計画も、それもチェルノブイル後につくったわけでございますけれども、そういったやはり日本のエネルギー事情等を見まして、原子力発電についても今後着実に推進しよう。それで、二〇〇〇年には少なくとも五千三百万キロワット、大体電力の全体の四〇%でございますけれども、五千三百万キロワット、四〇%、そのくらいまでにふやす必要があるという考え方を持っている次第でございます。そのためにはやはり必要な核燃料サイクルについての着実な推進を図るということも必要だと思っております。そういうことによりまして、日本のエネルギーの問題を解決するというふうにしたいと思っております。また、これが同時に、日本だけでなくて、やはり先進国がそういうことをすることによりまして、石油全体についての需給状況につきましても非常に緩和基調をもたらすわけでございますから、それはぜひそういうふうに進めたいと思っております。  ただ、御案内のとおり、そういった非常に御心配の向きがふえていますものでございますから、私どもとしてはやはりより住民あるいは市民の立場に立った懇切丁寧な広報と申しますか、そういうことを正しく理解していただくということが大事なものでございますから、その点についてはこれからもさらに意を尽くしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  163. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは長官にもお尋ねしたいわけでありますが、今述べました四国電力の出力調整運転試験、これに対する反対の運動については大変女性、子供が多かった。組織的な動きではない。あるいはエコロジーの学生とか、自然食品とか生活協同組合の婦人とか、そういうことで、専門家から見れば余り問題にならないという、そういう意見もあるわけですけれども、しかし、神奈川大学の川上という先生がかつて、原子力発電平和利用を進めるには、ただ科学的な安全だけではなくて、社会的な安全が必要だ、こういうお話を当委員会でしたか、参考人で来られてお話をされたわけですが、その意味は、ただ一部の専門家が安全だ安全だと幾ら言っても、国民の世論、大衆というものを説得するだけのそういうものがなければやっぱり前には進まないんじゃないか。そういう点で、私は、科学技術庁の姿勢は、いつもそういう専門家の安全性ということだけに重点を置き過ぎて、社会的な安全性に力を入れていないんじゃないか、そのあらわれがこの出力調整運転試験等における問題でもあったんじゃないかと思うんですが、そういう点、科学技術庁長官としてどのように反省をされておるのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  164. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 段々お話を申し上げておりますとおり、原子力の開発、利用を進めるに当たっては一にも二にも三にも四にも安全性の確保が大前提でございまして、そしてまたそのことによって国民の幅広い理解と御協力をちょうだいすること以外には原子力行政を進めることはできません。安全確保なしに原子力利用なしというのが我々の基本的な態度でございます。しかしながら、先ほど来御指摘のとおり、伊方発電所で行われました出力調整運転試験が、誤解ではございますけれども、再三御指摘のソ連のチェルノブイル原子力発電所事故の引き金となったあの実験と同じものであるという誤解が一部の方々に生じた等々でいろんな反対運動が起きております。そういう経験にかんがみまして、先生の御指摘にもありますように、国民立場に立った懇切丁寧な広報活動、ひとりよがりではない、ちょうど日本経済と同じように、GNPがこうだ、あるいは所得がこうだといっても、生活の実感としては経済の豊かさを感じられないというようなことと同じように、ひとりよがりでない安全性の問題についてみんなでひとつ親切に懇切に広報をして国民理解を深めてまいりたいと思っております。  そしてまた、今先生お話しのとおり、社会的な需要というか、社会的な合意というか、国民的な合意、いわゆるパブリックアクセプタンスに関しましても、これまた先生再三お話しのとおり、やはり日本だけでなしに、国際的な情報交換の中からそういうものがつくられるわけでございますから、今後OECD・NEA等の場におきましても、原子力についての正確な情報交換の提供とパブリックアクセプタンスの促進に資するような事業を強化するよう働きかけてまいる所存でございます。  また、先ほどのブラジルの問題あるいはまたチェルノブイルの問題につきましても、日本がこれだけ原子力先進国になったわけでありますから、またこれだけの世界的な立場になった日本でございますから、積極的に、主体的に、指導的にそういう事故の場合には参加できるような、そういう準備態勢もしっかりとってまいりたい、このように考えております。
  165. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、やはり熟練した技術者が非常に訓練をして、そういう人が運転して辛うじて安全というものは、やっぱり人間である限りいつかは事故を起こす可能性もあるわけですから、そういう意味で、いわゆる固有安全炉ということが昭和五十八年ごろから言われておるようでありますが、運転をミスしてもその場合炉が動かないと、だから、もう絶対安全だという、こういう炉を研究していかないと、日本の優秀な訓練した技術者で安全であっても、教育レベルの低いあるいは訓練されていない人たちが運転すると時々ミスをするような炉ではやはりいけないんじゃないかと思うんですね。そういう意味で、東京大学の若林教授を中心にISERという炉ですか、あるいは原研ではSPWRという、そういう固有安全炉というのを研究をされておるようでありますが、ぜひ科学技術庁としても力を入れてもらいたい。電力会社が余り乗り気でないのでメーカーも力を入れない。だから、熱が入らないと、こういう声も聞かれるわけですが、余り固有安全炉と言うと、今までの炉が安全じゃないのかという、そういうようにとられる節もあってなかなか抵抗があるようですけれども、私はこういう研究には科学技術庁としても力を入れるべきだと思うんですが、この点はどうでしょうか。
  166. 松井隆

    政府委員松井隆君) 御指摘の固有安全炉と申しますか、固有の安全性の高い原子炉につきまして、これも昨年の六月に原子力委員会が策定しました原子力開発利用長期計画の記述を御説明申しますと、「いわゆる固有の安全性については、今後の軽水炉の技術開発に応用できる点があるかどうかを含めて所要の検討を進める」という形で原子力委員会の長期計画では決まってございます。そういうことをもとにいたしまして、いろいろと固有の安全のタイプがあるわけでございまして、原研で、先ほど先生が御指摘になりましたような、いろいろな軽水炉タイプで固有の安全性の高い炉という検討も進めてございます。  それから、もう一つは高温ガス炉、これが炉の特性上固有の安全性が高い炉というふうに言われておりまして、将来中小型安全炉としての利用が考えられるというわけで、原研におきましては、アメリカ、西ドイツともいろいろとその協力を進めておるわけでございますけれども、高温ガス炉の将来の技術の基盤の確立あるいは高度化とか、さらに多少欲張っていますけれども、高温工学に関する先端的基礎研究ができる、そういうようなたぐいのいわゆる高温工学試験研究炉という概念を立てましてその設計を進めております。それで、ことし六十三年度からは実施設計に着手するということで、かかる研究につきましても我々としては鋭意推進してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  167. 塩出啓典

    塩出啓典君 次に、資源エネルギー庁にお尋ねをいたします。  自家発電が最近非常にふえておるわけですね。私は広島におるわけでありますが、中国電力も北海道電力に次いで自家発電が非常に高い。ここ数年、あるいは去年、ことし急速に自家発電が伸びているようですが、工業用電力の中で自家発電の比率はどの程度になっておるのか、それとその原因をどう考えているのか、こういう方向については資源エネルギー庁はいい方向だと考えているのか、この三点お尋ねをいたします。
  168. 小林盾夫

    説明員(小林盾夫君) 最近の自家発の動向でございますけれども、円高、原油、石炭価格の低下によりまして既存の自家発の稼働増加等もございましたものですから、まず六十一年度の伸び率一〇%アップということで、総発電電力量ベースで申し上げますと、全体の一一・一%ということになっております。六十二年は四月から十二月までの統計でございますけれども、伸び率は若干鈍化いたしまして四・一%増、発電電力量に占める比率は一〇・九%と徴減をしているという状況でございます。  この原因ということでございますけれども先生案内のとおり、自家発の稼働状況と申しますのは燃料費の動向と非常に強い相関関係がございまして、原油価格の変動に応じまして発電量が変動するというところが大変大きゅうございます。例えば昭和五十三年度ですと、原油のCIF価格は一万七千六百三十三円、キロリットルでありましたけれども、そのときは非常に稼働率が高くなっておりまして五六%、発電電力量も六百九億キロワットアワーということでございました。五十七年度になりますと、非常に石油価格が上がりまして五万三千四百八十五円ということになりましたものですから、稼働率が下がりまして四三%、発電電力量でも五百十四億キロワットアワーというふうに変動しておるということが示しますように、原油価格また円レートの状況ということに非常に影響されるということでございます。  また自家発は、御案内のとおり、紙パルプですとか化学工業、それから鉄鋼業といった大口の需要家において多く使用されておるものですから、これらの業種の生産動向によって非常に左右されてくるというのは御案内のとおりでございまして、やはりこういった業種は、御承知のように、最近景気の回復が著しいということで生産量も伸びている。したがって、使用電力量も伸びている、こういった状況にあるのではないかというふうに思っております。  自家発の今後の見通しにつきまして、実は電気事業審議会の需給部会で昨年十月に見通しを行った中の一部に自家発の動向をも見通されておるわけでございますけれども、当面は若干漸増するという傾向はございますけれども、長期的な方向といたしましては、素材型産業の電力需要の伸びが鈍化するといったようなことですとか、また原油価格が再び上昇するのではないかという見通しもございますものですから、そういった点から買電への振りかえが進んでいくということで、その電事審の需給見通しの中では、昭和七十年度におきましては比率は九・二%、さらに七十五年度におきましては八・七%というふうに漸次低下していく、こういうことでございます。  なお、私どもとしましては、この自家発がよいかどうかという御質問でございますけれども、あくまでもこれは企業のお考えでやっておることでございまして、私どもとしてこれをどうこうするという立場にはないということをとりあえず申し上げておきます。
  169. 塩出啓典

    塩出啓典君 きょうは時間がございませんが、私が言いたかったのは、電力会社の設備は政府の過大なエネルギー見通しのために過大な設備投資をして、私の地元の中国電力でも竜島という火力発電所は、もうほとんど整備をして港までつくっているけれども廃棄せざるを得ない。こういう政府の見通しの誤りから過大な設備投資、また不況対策として電力業界にいろいろ設備先行投資を政府が要求したり、そういうことで電力料金が高いわけですね。東洋工業なども昨年約五万キロの自家発電をつくったわけですが、年間二十億円ですか、大体八十九億円の設備投資だけれども、年間二十億円のエネルギーコストの節減につながる。もちろんこれは蒸気も発生しているわけですけれども。だから、電力業界ももっとコストダウンに努力しなければ、どんどんそういうのがふえて、もう原発なんか必要なくなってくる。そういう点ではいいのかもしれませんけれども、やはりコストダウンにもっと努力をしていただきたいということを資源エネルギー庁に申し上げて、またこれは別な機会に質問したいと思います。  最後に、これは科学技術庁にお尋ねをいたしますが、科学技術会議は官民ハイテクを結集して砂漠化の機構解明の調査をやろうとしている。御存じのように、地球上の緑が減り砂漠がふえている。年間九州と四国を合わせたぐらいの面積が砂漠になっていると言われておるわけでありますが、こういう調査をやろうということのようですが、非常にいいことですけれども、遅きに失した感もあるわけであります。鳥取大学の砂丘研究所あるいは通産省のグリーンアース計画等、そういう砂漠に緑をという計画もあるわけですが、この科学技術会議の砂漠化の機構解明というのはどういう観点からやっておるのか。ぜひひとつそういうほかのところと連携をとりながら本当に成果を上げていただきたいと思うわけですが、そのねらいについてお尋ねをして質問を終わります。
  170. 川崎雅弘

    政府委員(川崎雅弘君) 先生指摘の砂漠化機構の解明等に関する調査は、昭和六十三年度に科学技術振興調整費の中の一つの課題として進めようとしているもので、今月の十四日に科学技術会議政策委員会の場において決定されたものでございます。  この研究のねらいは、まず当面は、我が国には残念ながらといいましょうか、幸いにしてフィールドがございませんので、砂漠化については単なる自然現象というのに加えて、大きく生態系を乱すものとしての人間の活動というのがあるわけでございますが、それらを含めての総合的な研究が砂漠化への一つメカニズムを探る糸口になるのだろうと考えておりまして、そういう意味での従来の自然科学のみの方法ではなくて、そういう広い視野からどういうふうに研究計画を立てるかということがまず当面の一つの課題でございます。それを一年程度各専門家の御意見を徴しながら研究計画を進め、つくり上げました上で本格的な研究に着手したいというふうに現在考えておる状況でございます。  なお、大まかな方向につきましては、既に私どもの航空・電子等技術審議会の地球科学技術部会という部会がございますが、昨年の七月の中間答申において生物圏の問題として、これは地圏、大気圏、水圏とあるわけですが、その中の生物圏の問題としての重要課題というふうに指摘も受けておりますので、他の国際機関、特にUNEP、国連環境計画における動き、あるいは一九七七年の国連砂漠化防止会議といったようなものの報告などをも参考にしながら、その研究計画の取りまとめに当たりたいというふうに思っておるわけでございます。
  171. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 私は、科学技術というのは平和的に利用され、民主的、自主的に発展すべきものだと思いますし、そういう立場で去る三月三十日の当委員会で科学技術外交、とりわけ日米科学技術協定や五六年協定の秘密特許に関する細目づくりなどの日米二国間協議の中で、科学技術分野に安保条項を持ち込んだり、日本科学技術の自主的、平和的発展にとって重大な障害が生じようとしているということを指摘しました。  その後どうなったかということですが、日米科学技術協定の改定交渉は、結局アメリカ側の要求どおりに安保条項を明記して三月末に政治決着、秘密特許の方の細目は四月十二日に協定に基づく技術財産委員会の勧告を受諾して、日本においても秘密特許制度が具体化されることとなりました。  長官は所信表明のところで、「科学技術我が国経済社会の発展の基盤であり、人類全体の進歩向上に大きな役割を果たすものであります。」と、このように述べておられますが、日本経済というのは、軍需中心のアメリカ経済とは違って、民需中心に発展してきた。開発した技術というのは特許制度ですべて公開され、そのことが戦後日本経済発展を支えてきた、こういうふうに思うわけですが、まずこの点から長官の見解を伺っておきたいと思います。
  172. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 所信表明で申し述べたとおりでございまして、繰り返しますと、科学技術推進につきましては、平和国家の理念のもとに、また進んで世界科学技術発展と国際平和に資するよう推進していくという基本方針はこれからもしっかり守ってまいりたい、このように考えております。
  173. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 世界平和を含めた平和利用経済発展のために日本科学技術はあるということですね。そうだとしますと、日本の企業、研究者の自由を束縛して科学技術の健全な発展が妨げられるような事態に対しては、日本科学技術を守り抜くというために、この点では長官を先頭に全力を挙げていただくべきだと思うんですが、この点を重ねてお伺いしておきたいと思います。
  174. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) その方向に全力を注いで努力をしてまいります。
  175. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 ところが、今回の秘密特許に関する細目取り決めで、公開が前提の日本の特許に非公開の例外措置が設けられるということになりました。日本経済新聞の四月十四日付の社説では、「特許行政の枠を超えた重大な問題が含まれており、将来に禍根を残す」、「日本企業の研究開発意欲がそがれる」、こういうことを指摘しておりますし、また、神奈川新聞その他地方紙の社説でも、「今回の二つの合意は、技術革新の芽や勢いをそぎかねない」、こういう指摘もしているわけです。  私は、アメリカ側の要求を受け入れた政府の責任は重大であると思いますが、日本科学技術発展に第一義的に責任と権能を持っておられる長官の所見をまずこの点あわせて伺いたいと思います。
  176. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 御指摘のようなことはないと私自身理解しておりますし、またそういう報告を受けておりますが、実際の項目等につきましては政府委員から答弁させていただきます。
  177. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 秘密特許、いわゆる一九五六年協定の実施のための手続細則に関する御質問でございますので、私の方からお答えさせていただきます。  特許制度というのは、言うまでもなく発明の保護を図る一方で、これを公開することにより一般の技術水準の向上を図ることを目的としているものでございます。したがいまして、出願に係る発明というものは公開することが原則であり、我が国の特許制度もこれにのっとってやってこられたわけでございます。今回行いましたのは、一九五六年協定で国会で御承認を得ている条約に基づきまして、その範囲内で極めて限定的な措置を米国で秘密保持命令の付されている特許出願について我が国でも類似の取り扱いを行うということを行っただけのものでございまして、我が国で新しく秘密特許制度を導入するといったたぐいのお話ではないことを御理解いただきとう存じます。
  178. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 実は長官の答弁と政府委員の答弁は随分違うわけなんです。長官は、そういうことはないものと思うとおっしゃったわけですが、これは五六年協定のいよいよ具体化ということで出てきているわけですが、要は公開を前提とする日本の特許制度に、アメリカがこれは秘密だ、非公開だということにすれば、そのまま日本の特許制度に持ち込まれて、その部分については出ておりますね、出願公開、出願公告しないと、それは秘密扱いということになるわけですね。ですから、これは極めて例外的とか、そういう問題じゃないんですね。日本の特許制度公開原則なんです。しかし、ここに非公開が持ち込まれるという、明らかにこれは変更なんですよね。この点はやはり例外じゃなくて、そのとおりなんだということをちゃんと確認しておいてほしいんです。
  179. 山本庸幸

    説明員(山本庸幸君) 我が国の特許法では、出願は出願日から一年半経過後にこれを公開するということになっております。今回五六年協定を実施したわけでございますけれども、この措置というのは確かにこういう公開制度に対する一部の例外となるものでございます。  ただ、これはその内容を見ますと、米国で秘密に保持されている特許出願に係る発明が米国政府から日本政府に対して防衛目的のために提供された場合に、これに相当する発明についての日本での特許出願等につきましては、これに限って公開しないという限定的な措置でございまして、これはいずれにせよ既存の条約に基づくものでございますので、そして条約の規定というのは国内法としての効力もございますので、私どもとしてはこれを実施しなければならないものと理解しております。
  180. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 特許庁は条約上の義務でやらざるを得ないようなお話ですが、要するに公開と、それとは別にアメリカが開示するまでの間は、秘密を解除するまでの間は非公開にするものを持ち込むということは間違いないですね。もう一遍そこだけちょっと確認しておきたいんです。
  181. 山本庸幸

    説明員(山本庸幸君) 今回の措置と申しますのは、議定書の第三項(a)のいわゆる協定出願、それから(b)のいわゆる準協定出願につきまして、その出願に相当するアメリカにおきます特許出願の秘密保持が終止するときまで出願公開及び出願公告を行わないということにしております。
  182. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 ですから、日本公開原則の特許制度に、公開しないと、事実上秘密特許が持ち込まれたということはこれは明白なわけです。  これは、日本経済新聞にも経団連の申し入れ等が出ておりましたけれども、この秘密特許の申請を知らずに、日本の企業が類似の特許を申請した場合、通常の手続で審査され特許として成立した場合がある。この場合、後になって米国が秘密扱いを解除した時点で、先願主義の原則により日本企業が既に獲得した特許権が消滅してしまい、日本企業が研究開発に費やした努力はすべて無になってしまうことになるということを心配して申し入れがあったということなどがございますが、この点いかがですか。
  183. 山本庸幸

    説明員(山本庸幸君) まず、そのような申し入れそのものにつきましては、私ども直接には承知しておりませんけれども、今の点につきまして少し詳細に御説明したいと思います。  まず、私ども今回は、先ほど協定出願と御説明したところでございますけれども、これに相当するものではない、いわゆる私ども日本でこういう協定出願と無関係に独自に開発した技術というものは、これはそのまま公開される等の処理が行われるわけでございます。したがいまして、その結果、通常それが米国にもたらされて米国における秘密が解除されて、それで我が国における処理が再開されて、我どもでいわゆる先後願と呼んでおりますけれども、その処理が行われて、後願が特許になることはないというふうに考えておりますけれども、確かに先生おっしゃるように、万が一そういうことがあるかもしれません。それにつきましては、私どもとしては、特許法に実は八十条というものがございまして、これはそういうふうにして万が一後願の方が先に特許になった、それで後から先願も特許になって、いわゆる無効審判による審判の結果、後願の特許が無効になるということにつきましては、特許法の八十条に、そういう場合におきましては後願の権利者というものは、これはいわば元権利者でございますけれども、この元権利者というものは一定の相当の対価を支払うことを条件にその事業の実施あるいは実施の準備中の範囲内におきましていわゆる法定の通常実施権を持つということになりますので、この規定によって調整されるものと考えております。
  184. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 今長々と御説明いただいたんですが、今おっしゃったのは法定実施権の話ですね。それは特許権とは本質的に違う問題ですね。これは単に自分で開発した技術の使用が認められるということですね。  しかし、せっかく特許権は取っておったんだけれども米国で秘密扱い解除となって、実はそのアメリカの特許の方が先だったんだということになりますと、これは特許権を譲渡するとか、そういう権利は全くなくなるわけですね。あるいは特許権について権利料をいただいて使用を認めるとか、それは全くできないわけですよね。だからこそ産業界も、日本の企業がアメリカ側の軍事特許の存在を知らずに同じ内容の特許を申請したら、後から実はアメリカが先に出願していたということが発覚して、それまでの研究開発投資がむだになる可能性が出てくるじゃないか、そういう懸念を表明していると思うんです。この点で特許行政上混乱を来すことは私は明白だと思いますが、いかがですか。
  185. 山本庸幸

    説明員(山本庸幸君) 先ほど先生が御指摘になった点につきましては、私どもでいわゆる先願後願の原則という特許法三十九条の原則でございまして、例えて言いますと、ここで二人の方がおられまして、同時に同じような発明をして、さらにその結果、一方の方が一日でも早く特許を出願すれば、そちらの方が先に特許になるということは、これは先願後願の原則ということで、いわば特許法上の前提としての制度でございまして、そういうことでございましたら、これは先願後願の原則ということで御理解いただきたいと思います。
  186. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 今の話は私さっき言っておきましたからいいんですが、協定出願ということで秘密扱いにするかどうかということが、いつの時点でこの秘密を解除するかということもすべてアメリカの判断だけにゆだねられるということになるわけですね。日本側の判断の入り込む余地が全くないということですね。アメリカがどう扱うかはこれはアメリカ側の自由です。しかし、日本での特許を秘密にするかどうかという、この判断をアメリカに全面的にゆだねるということは、これは重大な日本の主権の放棄になると思うんですよね。先ほど紹介した日経新聞の社説でも「これほど重大な事柄について、国会審議も経ず、例外措置という小手先の対応で済ませた政府の態度は納得できない。」と政府の態度を厳しく追及しておりますが、やはりこれは研究者国民が納得のいくような説明、こういうものをいただきたいと思うのですが、どうですか。
  187. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) この手続細目のもととなっております一九五六年協定は、一方の国において与えられていると類似の取り扱いを他方の国において行うということでございまして、これは相互主義の原則になっているわけでございます。もちろん私どもには秘密特許制度というものはございませんから、米国我が国制度と類似の取り扱いをしてくれと言う場合は全くないわけでございますけれども、今回の取り決めの立て方としては、あくまでも原則として双務的になっておるということでございます。  それから後段のお尋ねでございますが、これは、たびたび引用いたしますけれども、五六年に日米間で国会の御了承を得て締結をいたしました条約に基づく実施でございまして、同じく国会で御了承をいただいております議定書に沿いまして、その内容を実行するために、政府の与えられた権能の範囲の中で技術財産委員会の勧告を受諾し、そしてこれを口上書の交換という格好で確認したというものでございまして、私どもとしては改めて国会の御了承をいただく必要はないものと考えております。
  188. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 その五六年協定からすると、もうこれは何年になりますか、三十二年ですか、三十一年何カ月かですか、事実上死文となってきたものですね。今改めてその死んでおった文章を、亡霊を引っ張り出してきて、そして公開原則我が国の特許制度に秘密特許を持ち込んだ。しかも、これを例外措置という小手先の対応で済ませてきたということは、これは本当に重大な問題だと思うのです。我が国の主権がそういう形で放棄されるということは許されざる問題だと、この点を指摘しておきたいと思うのです。  次に、日米科学技術協定の改定交渉に関連して伺っておきたいのですが、先日の新聞報道によりますと、アメリカ政府は、六月のカナダのトロント・サミットで科学技術協力の新たな枠組みづくりを議題の一つに取り上げるよう各国に打診を始めたということが十九日付の日経に載っておりましたが、そういう事実はありますか、どうですか。
  189. 日向精義

    説明員(日向精義君) お答え申し上げます。  トロント・サミットでございますが、サミットの議題につきましては、これは主催国たるカナダを中心に参加国間で詰めていくものでございまして、現時点では未定でございますが、現在までのところ、米国日米科技協定をトロント・サミットの議題とするということを各国に打診しているということは承知しておりません。
  190. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 報道がどういうところからであるにしても、我々国民は新聞報道でそういう打診が始まったということを見ているわけです。アメリカ側の提案というのは、公開と規制の両面から研究開発に関する新たな枠組みをつくろうというもので、安全保障の見地から技術流出に対する規制を何らかの形で明示しようというものと言われておりますが、そうだとすれば、日本政府側が何ら国内法制の変更を意味しないと言っているこの安保条項が、実はこのサミット参加国の多国間取り決めという形で日本の自主的科学技術行政を大きく制限することになるのではないか、この点が非常に懸念されるわけです。こういう点ではやっぱりそういう科学技術協力に包括ルールを設けるという形で日本科学技術行政が大きく制限されるということについては、これはきっぱり拒否すべきものだと思いますが、この点については長官のお考えを聞いておきたいと思います。
  191. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) サミットでのお話につきましては、先ほど外務省から御答弁ございましたように、現時点において我々はそういったことは何ら承知をしていないということでございます。  それで、日米科学技術協定につきましてもいろいろ御指摘があるわけでございますが、日米科学技術協定の中で情報の取り扱いにつきましては可能な限り広範に公開、普及をしていこうということが原則になっておりまして、我が国の現行の法制度を何ら変えないでそういったことをやるということがお互いに了解をされておるわけでございまして、私どもが今までやっております科学技術政策に御指摘のような御心配が起こるというふうには理解をしていないというものでございます。
  192. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 あなたの理解とは別に、現実には先ほどの秘密特許の問題にしても、科学技術協定原子力協定などへの安保条項の持ち込みにしても、大変な事態が進んでいるんだということを指摘して、次の問題に移りたいと思います。  次は、原子力防災の問題についてですが、実は、石油化学コンビナートにおけるフェールセーフの思想で設計されているので絶対大丈夫だとか、それから最高水準の技術と二重三重の安全装置でコンビナートは絶対万全ですと、そういうことが実はかつて言われてきたわけです。しかし、一九七〇年代に入りまして全国で次々と大規模な爆発、火災、有毒ガス流出、危険物、毒物の河川、海洋への流出事故などがコンビナートで起こりました。そのころ私も全国のコンビナートの事故現場へ発災直後や発災中にも調査によく回りましたが、関係者はいつも、幾つもの偶然が重なって起こり得ない事故が起こったという言いわけをしておりました。そういう経過もあったわけですが、その後石油コンビナート等災害防止法というのが生まれましたし、一定の財政措置も講じられるようになりました。  ところで、原子力災害の場合、大きな事故日本経験してから抜本対策というわけにはいかないわけです。そこで、原子力防災について、どこでどれだけの予算を組んでどういう研究をしておられるのか、まずその点から伺いたいと思います。
  193. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 原子力防災に関しましては、防災対策関連の調査研究の実施でございますとか、あるいは関係地方自治体等における連絡網あるいは防災活動の資機材等の整備、そういったものに対しまして電源開発促進対策特別会計並びに一般会計におきまして従来より予算措置を行っておるところでございます。  昭和六十三年度におきましては、科学技術関係の緊急時対策関係予算といたしまして十五億四千三百万円を計上しておるところでございまして、原子力防災対策のより一層の充実を図ろうとしておるところでございます。  なお、その内容につきまして若干説明を加えさせていただきますと、緊急時の際の航空機によりますサーベイシステムの調査というものも本年度から実施するということでございまして、その着手のために約九百万円を計上いたしております。  それから各種防災対策に関する調査でございますが、これは除染のためのマニュアルを作成するとか、あるいは対策を解除するための判断基準をどのようにすべきかといったような調査研究に二千九百万円を計上いたしております。  それから緊急時の迅速放射能影響予測システムというのがございますが、SPEEDIと言っておりますが、実際、事故の際に放出される放射能の量といいますか、そういったものをコンピューターにインプットいたしますと、その影響がどの程度どの範囲であらわれてくるかといったことを迅速に予測するシステム、そういった開発を四億一千五百万円の予算で行うことといたしております。  それからまた、原子力安全委員会が事故の際、緊急時の際に緊急技術助言組織というものを組織するということにいたしておりますが、その際の助言の採用システム、原子炉の事故がどのように発展していくかといったことをコンピューターを使いまして予測するような、そういうシステムの開発に二億一千九百万円を計上いたしております。  その他、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金の充実を図りまして、各県のレベルにおきます防災関係調査、そういったものに力を入れるということにいたしております。  なお、今年度から原研におきまして緊急時避難シミュレーション、これは実際の住民を参加させなくても、緊急時の避難のためのいろんな計画をシミュレートさせる、そういう研究に本年度から着手するということで、初年度五百万円を計上いたしておりますし、また緊急時の医療対策協力体制の整備に係る調査検討システム、これを放医研で着手するということで若干の予算を計上いたしております。
  194. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 今のお話を伺っておりますと、随分防災に頑張っていただいて安全だ安全だという感じですが、実はこの原子力については、今おっしゃったように、年間大体十四億、十二億、十六億、十五億ですね。実は昨年より減っているわけですが、安全PRの予算の方は毎年五百七十八億とか六百五十二億とか、原子力の安全PR予算というのは随分組まれているわけですね。ですから、安全だ安全だという宣伝予算の三%にも満たないのが現在の防災対策予算だと、この点をまず指摘しておきたいと思うんですが、実はTMI事故のケメニー報告などで指摘されているように、原発は安全との思い込みがTMI事故の原因の一つであったという指摘もあるぐらいなんですが、そこで大事なことは、各原子炉施設ごとのさまざまな規模の災害を予測し、その地域の地形、気象その他条件を考慮して、それに対応した避難方法についてのシナリオを準備し、事前の総合訓練のプログラムをつくって実行していくということが大事だと思うんですが、具体的にお聞きしたいと思うんですが、科学技術庁の方が直接かかわりを持っておられる、あるいは所管しておられる原研なり動燃の東海村の施設について最大規模の災害想定を行って、それに応じた防災対策について実際にシナリオを作成されて研究しておられるのかどうか、まずこの点どうでしょうか。
  195. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 具体的な事故の想定と、それとの関係においてどういう防災対策が具体的に講じられているかという御質問かと思いますが、一般論として申し上げますならば、防災対策というのは具体的なある一つ事故を想定して、その事故シークエンスに従ってどの程度の事故が及ぶか、それに対してどういう防災対策を講じているか、そういうような対策は今のところとっておりません。一般論といたしまして、技術的に考えられない、これは設計上の配慮あるいはそういったことで原子炉の規制の観点からは既に安全性は確保されていると判断されている場合であっても、仮に考えられないような事故が起きた場合にどうするかという観点から、この防災対策につきましては対策を講ずべき範囲というものも決めておりますし、そういった観点から万々が一のときを想定いたしまして種々の対策を講じているということでございます。
  196. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 その万々一という考え方が、実はケメニー報告などでも原発は安全との思い込みが事故の原因の一つであったという指摘をしておりますので、まずそれを払拭するところから災害対策が始まるんだということをまずお考えいただきたいと思うんです。  非常に単純な例でひとつお聞きしておきたいと思いますが、例えば原研の東海村で原子炉と附属建屋で発災した場合、すぐに駆けつけてこれる消防自動車の台数は何台ですか。――事前に申し上げておきましたんですけれども、ちょっとおわかりにならないようで、こちらから数字わかっておりますから申し上げておきますと、原研、動燃の自衛消防と原電の自衛消防と東海村の分で合計九台なんですね。実は堺・泉北コンビナートの例について消防の方で調べてありますが、化学車だけでも自衛、公設合わせますと三十六合、それから大型高所放水消防車などを初めとする一般の化学車以外の消防車七十二台。コンビナートなんかですと百八台あるわけなんです。ですから、例えばああいうコンビナートなどの発電所で火災その他災害があれば、小規模事故の場合でもすぐに二、三十台が自衛、公設合わせて対応するわけなんです。原研、東海の原子炉などでそういう問題が起こった場合は九台しかまず来れない、これが現状なわけです。しかも、原子炉なり原発は火力発電と違った難しい問題がありますね。放射性物質に対する対応、原子炉附属建屋の消火活動、この二面が求められるわけです。  さて、そうしたら今度は逆に、発災した場合に避難の対応が、先ほどコンピューター云々ありましたが、具体的に原研、動燃の社宅が研究所のすぐ前にありますが、あるいは商店もありますが、研究者の家族、商店の人たちが一体どのように避難するかということについて、プログラムを立てられて避難場所、避難ルート等も設定されて訓練をされたことはございますか。
  197. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) 東海地区におきます原子力災害時の住民の避難につきましては、茨城県原子力防災計画及び東海村地域防災計画におきましていろいろ細かく定めがございます。すなわち避難地区の指定をする際の線量の基準をどうするかといった点についての設定、それから避難地区を設定する際のいろんな手続事項、それから避難所を……
  198. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 私伺いましたのは具体的な話だったんです。そしたらいいですわ、ちょっと時間がございませんので。
  199. 石塚貢

    政府委員(石塚貢君) はい。  避難場所等につきましては、どちらの方向にどういう距離のところに何があるかといったことにつきましては、地図等を既に用いましてつくってございます。
  200. 吉井英勝

    ○吉井英勝君 実は実際にすぐ目の前にあるんですけれどもね、社宅その他、東海村の消防本部でこれは聞いてあるんですが、総合訓練というのは昔一回やったきりで、このときも住民避難訓練まではやっていない。事故がいつ起きるか心配であるが、起きないように予防面をしっかりやってもらいたいと。実際のところ、この保安距離の考え方とか、保安距離というのは災害が起こっても絶対大丈夫なようにどこまで離すかとかいう問題ですが、そういう問題などは実は考えられていないわけです。幾らコンピューターで計算してみようと、現実に災害訓練等やらないと意味がないわけです。  最後に私は、原子力災害対策を少し問うてまいりましたが、コンビナート災害の教訓というのは、一つは初期消火と災害の抑え込み、二つ目に、幾ら頑張ってもだめなときがやはりあるわけですから、被害を最小にするための保安距離の確保、三つ目は災害想定とそのシナリオに応じた防災訓練、四つ目には施設そのものの安全性を限りなく高める取り組みなどが必要なわけですが、そのうち特に原子力災害に当てはまる問題として、原研など国の研究機関において実用炉をつくるための研究だけじゃなしに、何よりも安全性の極めて高い原子炉の研究開発、まあこういう安全炉などもそうですが、核反応物質の無毒化の研究、それから原子力防災の技術やシステム、都市計画上の検討などを含めた広い研究が今求められていると思うんですが、最後に、これは原子力災害の対策というのは大事な問題ですから、科学技術庁長官のお考えだけお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  201. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 原子力防災の重要性は、先生の御指摘をまつまでもなく、我々も重要であると認識をしておりますので、今後とも対策を十分とってまいるように努力をしてまいりたいと思います。
  202. 小西博行

    ○小西博行君 きょうはこの委員会では長官の所信に対する質問ということになっておりますので、細部の個々の問題につきましてはまた時間を改めて御質問を申し上げたいと思いますが、午前中にも同趣旨の質問がございましたのでできるだけダブらないようにお話をさせていただきたいというふうに思います。  長官の所信表明をお伺いいたしました。そしてまた科学技術政策大綱というのが十二月に出ておりまして、主にこの問題について確認をさせていただきたい、そのように考えます。  この中では特に基本方針というのがございまして、三つほど大きな柱がございます。一つは、基礎研究ということをこれからどんどん進めていくべきだということです。それから二番目は、人間及び社会と調和した科学技術発展、それから三番目が、国際化ですね、国際的に貢献しなきゃいけないと、こういう三つが大きな柱になっておるんですが、長官、このことについてはもう全く長官の御意思と同じでしょうか、お伺いしたい。
  203. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) そのとおりでございます。    〔委員長退席、理事後藤正夫君着席〕
  204. 小西博行

    ○小西博行君 長官えらいあっさりと答えられましたが、そのとおりだと思います。  私は、実はこの三つの分野について本来なら細かくずっと長官の御意思をお伺いしたいというのが本意でありますけれども、時間的に制約がございますし、この基礎研究という問題、これは前回にも少しそういうお話をさせていただいたんです。世界のいろんな研究予算なんか見てみましても、基礎研究分野というのはやはりどうしても国の機関で、国の予算で研究を進めなければ大変難しいだろう。というのは、民間の場合はどうしても利益追求というのがございますので、何年かかるかわからない、あるいは成功するかしないかわからないような研究に民間が大きな金を投資するというのはなかなか難しいだろう。そういう意味で、実際に過去の実績を見てみますと、日本の場合は圧倒的に民間の研究予算というのが大きいわけですね。これは先進諸外国と比べましてちょっと異質の状態だというふうに私は考えているわけです。したがって、言葉として基礎研究を大いに強化したい、そのようにおっしゃっていただいても、現実には予算的にそれをどうするのか、そして国の研究機関でそれをどのように展開していくのか。これは科学技術庁だけではなくて、文部省関係も農水省もそれぞれの省庁が当然その研究をやるわけですけれども、その辺が実は一番気になるところであります。  そういう意味で、これから先基礎研究をもう少し拡大していって、そして国際的にも堂々とおつき合いができるようなものにしていきたい。そのために、民間と国との予算の割合、これを具体的に国の方をどんどんふやしていくという考え方があるのかどうか。もしあるとすれば具体的にどうなのかという問題をまずお聞きしたいと思います。
  205. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) まず具体的な数字についてお答えを申し上げます。  基礎研究の額の問題でございますが、現時点で各国と比較をいたしますと、例えば一九八六年の時点におきまして、我が国の研究費総額は八兆四千億、この中で基礎研究費は一三%でございますので一兆一千億でございます。  これを米国と比較いたしますと、米国は研究費総額は倍ぐらいの十九兆でございますが、基礎研究費の占める比率は日本とほぼ同等で一二%でございまして、全体の額が二倍でございますので研究費総額では二兆四千億という形になります。これは米国との対比でございます。したがって、米国と比較いたしますと、基礎研究の頑張っている比率においては大体同じ状況である、ただ全体のパイが違うという形になろうかと思います。  ヨーロッパと比較した場合は、西ドイツ、フランス――ちょっとイギリスは大学の数字が入っておらないデータなので略させていただきますが、西ドイツ、フランスと比較しますと、研究費総額は、もう御案内のように、日本が三倍とか二倍を超えておるわけでございまして、西ドイツは三兆五千億という、日本の八兆四千億に比べて半分以下でございます。イギリスが二兆三千億。基礎研究費の占める比率が西ドイツ二〇%、フランスは二一%。これはいずれも比較時点がちょっと古くなりますので、それは御容赦いただきたいのですが、大体そんな水準ではなかろうかと思います。一方、額におきましては西ドイツが七千億円、フランスが五千億円ということで、これをまとめて申し上げますと、ヨーロッパと比較した場合は、基礎研究の比率においては日本は相当に格差があるが、基礎研究費総額においては西ドイツ、フランスのほぼ倍のような地位にあるというふうなことで、いずれもアメリカ、西ドイツ、フランス――アメリカ、ヨーロッパと比較いたしますとそういったことで、比率においてはアメリカとは似たようなものであるが額が違う、また一方、西ドイツ、フランスはそれとまた逆転したポジションにあるということで、一長一短という言葉が適当かどうかわかりませんが、そうしたポジションにあるということで、数字的に見るとかなりのところまできているのではなかろうかというふうな、今までのこの数字だけで見ますと評価ができるのではないかと思いますが、質的な問題、それから従来からのトレンドの問題、それから基礎研究費そのものの定義自体がいろいろな、定義は一定、OECDの定義なんかきちんとしておりますが、それを実際にデータとして例えば総務庁がとらえるとき、あるいはアメリカがとらえるとき、ヨーロッパがとらえるとき、かなり違った形でとらえているようでございますし、また日本におきましても、大変長くなって恐縮でございますが、基礎研究という中に例えば核融合が入っていないとかというふうな問題もありますし、もう一度原点に戻って基礎研究というものを各国と突き合わしていって、本当にどうなのかという点はまだまだ十分に検討しながら、そうしたコンシステントな数字の上でまた議論をすべきではなかろうかと思っております。
  206. 小西博行

    ○小西博行君 いや、今御質問申し上げたのは、どうも民間と政府との予算が基礎研究に対して随分割合が諸外国、特に先進諸国と違うじゃないかと、基礎研究をやっていくということは、さっき申し上げたように、民間というのはなかなかやりにくいので、国の方の予算をやっぱり投入していくような体制をつくらないと、世界各国が期待しているような形にならないのではないか、うまくなってもらえるんだろうか。そういうことで、国の予算はやっぱり積極的にもっとふやしていかない限りは、この文書に書いていることになかなかならないんじゃないか、そういう面で御質問申し上げているんです。
  207. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 民間との対比で見た場合に、これもアメリカ、ヨーロッパと比較いたしてみますと、先生既にデータをお持ちだと思いますが、基礎研究だけで対比してもよろしゅうございますか。全体の数字は、御案内のように、日本は国が約二〇%、産業界が八割。それに比べて米国、西ドイツというのは国の比率が非常に高いという点はありますが、基礎研究だけで見た場合に、まず日本政府研究機関が一三・六%という状況でございます。それから米国が一四・三%という状況でございます。これは全体の基礎研究の中のあれですね。
  208. 小西博行

    ○小西博行君 そういう数字はいいんです。  今さっき申し上げたのは、これから先どのように伸ばすかということです、政府の予算を、割合を。
  209. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) もちろん、御案内のように、十一号答申でございますか、十一号答申では、当面の国民所得に占めるウエートは三%、長期的には三・五%というふうな数字が掲げられておりまして、現在既に三・一、二%というふうな状況でございますが、    〔理事後藤正夫君退席、委員長着席〕 まだまだこれから三・五%に向けて大きくふやしていかなきゃならないというふうに思っておりますが、その中でもちろんその基礎研究というものについて一段と従来以上に努力をした伸ばし方をしていく必要があるというふうに考えております。
  210. 小西博行

    ○小西博行君 そういう意味で、だんだん話を進めてまいりますと、研究者交流というのが当然出てまいります。これは各省庁で全部それぞれやっておりますね。通産関係ももちろんでしょうし、大学関係では当然研究者をお迎えする招聘制度なんかもあるようですけれども科学技術庁の中にも招聘制度というのがありますね、受け入れとして。四つぐらいの項目がこの中にあったわけです。私は、これについては具体的にどのぐらいの規模でどんなことをやっているのかなという感じがするわけです。項目としては、例えば科学技術関係外国人研究者招聘制度あるいは原子力研究交流制度とか、あるいは宇宙開発委員会外国技術者招聘制度、あるいは科学技術振興調整費によってお迎えする、こういう項目になっているんですが、現実にはどのぐらいの予算で、そして何人ぐらい現在迎えているのか、これから迎えようとしているのか、その辺はいかがでしょうか。
  211. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) ただいま御指摘ございました外国人研究者の招聘でございますが、私どもにおきましては二種類の予算を持っております。一つは、関係各省みんなでそれを使っていただくという意味で、科学技術庁だけでないというものでございますが、国の研究機関に来られる方についての一括計上ということ、それから科学技術振興調整費を使いましてそれと同じような趣旨のことをやっておるというもの、二通りあるわけでございます。それからもう一つは、科学技術庁の特殊法人におきましてその特殊法人が外国の研究者を招聘するというための予算と、大きく分けて二つの性格のものに分けられるかと思います。  六十二年度の予算で申し上げますと、両方合わせまして四億一千二百万円、人の数にいたしまして約二百五十名でございます。  これに対しまして六十三年度におきましては、科学技術振興調整費によりまして新しく国際流動基礎研究制度というものをつくるということで今作業を進めておりますので、これに対しまして金額にいたしましてプラス約三億円、人数にいたしましてプラス約百名という形に六十三年度はなろうかというふうに考えております。
  212. 小西博行

    ○小西博行君 そこで、私が心配しているのは、科学技術庁ではそのような形で外国人をお迎えするような体制ができておると思うんですが、私も外務委員会をやっておるもので、この間宇野外務大臣が韓国へ行ったときに、大体八千人ぐらいの交流をやろうと、こういうお話が出たり、あるいは総理がアメリカへ行ったときには、これも相当数の人数を呼ぼうと、あれは大体百人ということだったんでしょうかね。そのように各ところでいろんなお話があるんですよね。科学技術庁としては当然研究機関に入ってくる可能性もあるわけですから、その辺の事情はどうなんでしょうかね。
  213. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 私ども全体の姿につきまして関係省庁と相談をしながら進めておるわけでございますが、非常に大ざっぱに申し上げまして、大学関係につきましては文部省がお世話をされておるということで、文部省につきまして新しく百人のフェローシップ制度をつくると、それから大学以外につきまして私どもがお世話をして新しく百人のフェローシップ制度をつくろうと、それから総理がアメリカに行かれましたときにお話をされましたのは、アメリカ側から日本側に研究者を派遣していただく、そのための経費として約六億円程度の経費を日本側から提供いたします、その運用につきましてはアメリカ側にお任せをいたしますというお話になっておるわけでございまして、私ども基本的には私ども立場でお呼びするのは新しく約二百名、それから先方の運用で来られるのが約六億円ございますので約百名程度ではなかろうかというふうに思っておりますが、その運用につきましては今後具体的に先方から連絡があるだろうと、その連絡を受けまして私どもとしては円滑な受け入れ態勢をつくる必要があろうということで、先方の今後のお話をお待ちしておるという状況でございます。
  214. 小西博行

    ○小西博行君 文部省の関係は、この間予算委員会で留学生問題で私も質問をさしていただいたわけですよ。それにしても、文部省関係だけでもなかなか留学生問題というのはいろんな問題がありまして、宿舎とかあるいはフェローシップといってもなかなか大変だし、それだけの生活が果たして保障できるだろうかというのが今大きな問題になっておりまして、しかも十万人構想というような大きなものを打ち出しているものですから大変だ。しかし、そのほかの研究者交流ということでもやっぱり私は同じことだろうと思うんですよ。しかも相手の国によっては相当質が違う。こちらの方で勝手に試験して採用するというわけじゃないですから、国の代表という格好で来られるんでしょうから、やはりそれ相当の方が来られるということになろうかとは思うんですが、大学院生なんか見ても相当能力が違うわけですね。だから、日本でゼミナールへ入っていろいろやっていても、先生はもう大変困っているんです、現実問題。十人の中で二人ぐらいは能力がぐっと落ちる人がいます。もうゼミナールにならないとさえ言っているんですね。そういう意味で、研究ということは大変大事なことだし、国際的にそういうことでお互いに貢献し合って切磋琢磨しなきゃいけないというのは私はよくわかるんですけれども、実際に来ていただいたときに成果がなければいけないというようなことで、宿舎の問題その他いろいろ整備をされているようですけれども、しかし、逆に今度はもっと優秀な方が来られた場合には、果たして日本の研究機関としてそれに対応できるだけの魅力を備えているのか、逆に今度はそうなると思うんです。  私は、文部省関係の留学生、特に大学院の博士課程の学生なんか何人かお会いしていろいろお話をしたら、相当やっぱり誤解もあるようなんですね。つまり、機械工学へ入ってくれば、自動車が完成できるまでほとんど理解できるような、これは国によってそういう期待度が違うわけです。だから、本人は、とにかく日本へ行って数年やれば、国へ帰って自動車がつくれると。ところが、大学院のドクターコースというのはそういうような広い分野じゃないわけですね。狭い分野でしょう。それに対して大変期待が薄い。とてもできない、教えてくれないんだ、こう言うんですね。だから、日本人には教えておるようだ。だけれども、我々には教えていただけない、そういうような非常に大きな誤解もそこにありますので、我々の常識としてある研究分野お互いの交換というんだったらよくわかるんですけれども、その辺の今度は逆に相手国に対してのPRの仕方というのが、留学生問題もそうなんですけれども、余り情報がないんですね。ですから、何となく期待して来る。そのとおり全然いかないということで、かえって摩擦になるという現状がありますので、数字を方々の省庁でぱんぱん言っているのは結構ですけれども、その辺の調整をうまくやっぱりどこかでやらなきゃいけないんじゃないか、そういう感じがするので、せめて科学技術庁の中は今言った幾つかの項目で招聘のシステムがあるようですから、その分野は、例えば情報的にはどのような打ち合わせをして、相手の研究者が納得して、あるいはこっちの受け入れ側も納得してちゃんと来られるのか、その辺はどうなんですか。
  215. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 確かに、御指摘のように、ただ政府側としてフェローシップを与えるだけでは不十分でございまして、来られます方が本当に有意義に日本国内で研究活動をやっていただくことが不可欠であるというふうに考えております。  それで、御報告おくれましたが、実はこの私どもの百人の新しいプログラム、文部省の新しい百人のプログラムをPRする機会をつくろうということで、去る三月にアメリカ及びヨーロッパの従来から研究交流のおつき合いのあります国から研究交流の実務のお世話をしておられる方々を約三十名お呼びをいたしまして、日本国内状況を御説明をする、筑波の研究学園都市を見ていただく、大学その他の研究所の実態を見ていただくというプログラムをやったわけでございます。大変皆様方の間で好評でございまして、その後の反省会では非常に有意義であったと。それで、今後日本がこういったことで前向きにやっていただくのはいいけれども、現在、御指摘があるように、やはり生活環境だとか外国に対する日本の研究情報というものをもっと流していただければお金を生きて使えることになりますというお話がございました。私どもそういった各国からの意見を十分尊重いたしまして、実際私どもが提供しますフェローシップを本当に生きた形で使えるようにしたいというふうに考えておる次第でございます。
  216. 小西博行

    ○小西博行君 まさにその情報が物すごく不十分なんですよ。だから、これはもう私はいろいろ調査をすればするほど、特に留学生の問題というのは、向こうの国の大学の先生日本へ留学したとか、そういう場合には、日本の大学の先生の専門もある程度わかっておりますので紹介するんですけれども、恐らく科学技術庁の中でPRをするといっても国がある程度限られてくるでしょうし、情報そのものも非常に狭い分野で恐らく流れるんじゃないか。日本へどんどん来たいというのはどうしてもやっぱり東南アジアが非常に多いでしょう。私は、逆にそうじゃなくて、もう少し今までのつき合いの少ないところへもっと親切に情報を流したらどうだろうか、あるいは大使館の広報室的なものを通じてでもよく流していかなきゃいけないんじゃないか。そういう意味では、先進諸国といいながら日本の情報というのは非常に悪いですね。  それから、もう一つお伺いしたいんですけれども、いろんな研究の成果が論文とか雑誌に載りますね。その辺の学者同士でいろんな資料をとろうとしますね。私なんかは例えば昔は学会誌あたりで必要なものをとるわけですね。その辺の情報の世界との国際的な交流というものもある学会では非常にそれを盛んにやっている、しかしあるところではもうほとんどない、こういう差が相当あるようなんですよ。だから、少なくとも日本の中での研究体制というものが何かの情報として海外へ必要に応じて通達ができるようなシステムというのは、これは相当できておるんでしょうかね、私余りほかのことわからないんです。
  217. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 我が国科学技術体制が従来はいかに外国の情報を吸収してそれを消化していくかというところにポイントがあったということもございまして、日本科学技術情報のシステムというのも、外国の文献をたくさん買ってきて、それを要約をして皆さんに提供するということが中心であったわけでございまして、現在日本科学技術情報センターでやってきましたことの中心はそれであったわけでございます。ただ、日本がこれだけ水準が上がってきたということもございまして、単なる受信基地ではなくて発信基地にもならなければいけないということから、情報センターにおきまして、日本語の論文につきましての英文のデータベースをつくるということを始めておるところでございまして、そういった情報をやっと外国に対して提供できるところになってきた。  その提供の仕方につきましても、従来は国内研究者に提供するJOISというシステムでやっておったわけでございますが、昨年から新しく日本科学技術情報センターとアメリカのケミカルアブストラクツという情報機関とドイツのFIZ・カールスルーエという情報機関と三者のネットワークをつくりまして、これをSTNインターナショナルと言っておるわけでございますが、そういうルートをつくりまして情報を提供するということをいたしております。そういった意味で、日本からアメリカ、西ドイツの情報機関の情報を直接入手できる。また、逆にアメリカ、西ドイツから日本の情報機関の情報を直接入手できるというルートは開かれたわけでございますが、まだ質的な充実がもちろん必要であるし、それから、こういった制度ができましたということの周知ということも今後非常に大事であるというふうに思っておりまして、御指摘を踏まえまして今後とも努力をいたしたいというふうに思っております。
  218. 小西博行

    ○小西博行君 数年前に理化学研究所へお伺いして、たしか光岡先生だったと思うんですが、いろいろお話をした中で、例えばカビですね、カビがたしか私あのときに七万種類というふうに聞いたと思うんですが、結局そういうカビの顔というものが全部ナンバーで整理をされて、そして例えばアメリカの大学と意見交換するときに、ナンバースリーのカビはございますよ、そのかわりおたくでナンバー何ぼのやつをくださいと、こういうお互いにギブ・アンド・テークをやらなきゃいけないんだと。それまではもうほとんどいいかげんに整理していたと。だから、向こうから言われて持っていくと全然違うカビ、つまり情報だということで随分恥かきましたということがございました。ですから、恐らくそういうようなお互いに近いところではかなり交流が盛んになっていると思うんです。  ところで、国際会議、これも過去の実績をちょっと調べてみますと、やはり日本でやる国際会議というのは数がえらい少ないですね。これはまあ地理的な問題もあるんでしょうけれども、やっぱりアメリカというのは、これは一九八六年のデータで六百八十四回、日本が百十六回ということを見ましても、どうも日本でいろんな学会を中心になって開催しますということが非常に少ない。それはまあ距離が遠いから来にくいということもあろうかとは思うんですが、ある意味では専門の分野が、非常にリーダーシップをとる人が少ないということかもしれませんが、私はこういうような国際会議というのが日本でどんどんできるような体制に持っていかなきゃいけない、このように思うんですが、その方向はどうでしょうか。
  219. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 先生指摘のように、国際会議の開催実績は、正直申し上げましてかなり欧米諸国と比べては少ない状況にございます。昨年の科学技術白書におきましてもそういう数字が二つの団体から出ておるわけで、この数字はもう既に先生指摘のようなことで申し上げるまでもないわけでございますが、一つはUA1、国際団体連合会、これは国連の関係団体と承知しておりますが、ここのデータを今先生が御指摘になったんだろうと思います。  一方、国内の統計といたしましては、国際観光振興会の統計がございます。この統計は、国連の方が三カ国以上の関係する会議でございますが、日本の国際観光振興会は二カ国以上の関係する会議ということで、これで見ますと件数はかなり多くなってまいりまして、一九八六年におきましては五百二件という状況でございます。  それで、どのような努力がなされているかというのをちなみに十年ぐらいの経過で見てみますと、一九七七年から一九八六年の十年間で見ますと、その数字では倍増になっておるという状況で、かなり地理的なあるいは言語上のハンディはありながらも非常に頑張っているというふうなことが言えるんではないかと思います。また、この中で科学技術分野におきましての比率というのも非常に高まってきているということで、今後ともこういった国際会議の開催につきましてはさらに努力を重ねてまいりたいと考えております。
  220. 小西博行

    ○小西博行君 時間が参りましたから、長官に決意を最後にお伺いしたいんですが、この大綱の中にかなり詳しくこれからやるべき重要研究開発分野推進というので、これは読むだけで頭が痛くなるぐらい難しい問題がたくさん出ております、ライフサイエンスその他ですね。これらをとにかく科学技術庁が中心になって進めていかなければいけないという、これは仕事の一つの大きな宿題だというふうに思います。そういう意味で、予算が一定の限られたものでありますけれども、長官としてまずリーダーシップをとっていただいて、日本の将来のために頑張っていただきたいということを申し上げまして、何か考え方がございましたらお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  221. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 科学技術の進展なり振興なくして日本の将来はないわけでございますから、その方向に全力を尽くして、また調整官庁としての科学技術庁の役割を十分認識しながら、ただいま外国人の受け入れの問題もありますけれども、文部省あるいはその他ともありますけれども、やっぱり我々がリーダーシップをとってやらなければうまくいくわけはありませんので、多少他省庁に足を踏み込むことになるかもしれませんけれども、それぐらいの調整能力を発揮して科学技術立国の国是を全うするために一生懸命頑張ってまいりたいと思います。
  222. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  223. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四分散会