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1988-03-30 第112回国会 参議院 科学技術特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月三十日(水曜日)    午後三時二分開会     ─────────────    委員異動  三月二十四日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     吉井 英勝君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         飯田 忠雄君     理 事                 後藤 正夫君                 出口 廣光君                 高杉 廸忠君                 伏見 康治君     委 員                 岡野  裕君                 岡部 三郎君                 木宮 和彦君                 志村 哲良君                 高平 公友君                 長谷川 信君                 前島英三郎君                 最上  進君                 穐山  篤君                 稲村 稔夫君                 松前 達郎君                 吉井 英勝君                 小西 博行君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       伊藤宗一郎君    政府委員        科学技術庁長官        官房長      見学 信敬君        科学技術庁科学        技術政策局長   加藤 昭六君        科学技術庁科学        技術振興局長   吉村 晴光君        科学技術庁研究        開発局長     川崎 雅弘君        科学技術庁原子        力局長      松井  隆君        科学技術庁原子        力安全局長    石塚  貢君    事務局側        第三特別調査室        長        高橋 利彰君    説明員        防衛庁装備局管        理課長      新関 勝郎君        外務省北米局安        全保障課長    岡本 行夫君        外務省国際連合        局外務参事官   法眼 健作君        外務省国際連合        局原子力課長   中島  明君        文部省学術国際        局研究機関課長  山田 勝兵君        厚生省保健医療        局感染症対策室        長        伊藤 雅治君        特許庁総務部工        業所有権制度改        正審議室長    山本 庸幸君        特許庁総務部国        際課長      油木  肇君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○昭和六十三年度一般会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度特別会計予算内閣提出衆議院送付)、昭和六十三年度政府関係機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管科学技術庁))     ─────────────
  2. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月二十四日、佐藤昭夫君が委員を辞任され、その補欠として吉井英勝君が選任されました。     ─────────────
  3. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 去る三月二十五日、予算委員会から、本日一日間、昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち科学技術庁について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  伊藤科学技術庁長官から説明を求めます。伊藤科学技術庁長官
  4. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 昭和六十三年度における科学技術庁予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和六十三年度総理府所管一般会計歳出予算要求額のうち、科学技術庁歳出予算要求額といたしまして三千四百四億一千万円を計上いたしました。  また、総理府、大蔵省及び通商産業省の共管による電源開発促進対策特別会計歳出予算要求額のうち、科学技術庁分といたしまして九百五十億八千三百万円を計上いたしました。さらに、産業投資特別会計から日本科学技術情報センターに対し四十七億円の出資を予定いたしております。  以上の各会計を合わせました科学技術庁歳出予算要求額は四千四百一億九千三百万円であります。これを前年度の当初歳出予算額四千三百二十五億二千六百万円に比較いたしますと、七十六億六千七百万円の増額となっております。  この歳出予算要求額のほか、国庫債務負担行為限度額といたしまして、一般会計一千四百九億二千五百万円、電源開発促進対策特別会計七百九十四億一千万円を要求いたしております。  次に、歳出予算要求額のうち主な経費につきましてその大略を御説明申し上げます。  第一に、科学技術政策研究強化充実を図るため、資源調査所を改組して科学技術政策研究所を設置するとともに、科学技術会議の方針に沿って科学技術振興に必要な重要研究業務を総合的に推進するための科学技術振興調整費を拡充し、新たに外国人研究者の受け入れを含む国際流動基礎研究推進を図るための経費等として九十五億三千万円を計上いたしました。  第二に、創造的・基礎的研究充実強化のため、国際社会への貢献という観点をも踏まえたヒューマン・フロンティアサイエンス・プログラムに関する調査検討に必要な経費、多分野にまたがる領域における先端的基礎研究を流動的で国際的にも開かれた体制のもとで長期的に行う国際フロンティア研究充実に必要な経費産学官研究者を弾力的に組織化して次代の技術革新を担う創造性豊かな新技術を創出することを目的とした創造科学技術推進制度による研究推進に必要な経費として五十六億三千百万円を計上いたしました。  第三に、科学技術国際協力を通じて国際社会への積極的貢献を図るため、日米協力を初めとする先進諸国との協力ASEAN諸国等開発途上国との協力人材交流等国際協力に必要な経費として三百二十三億六千六百万円を計上いたしました。  第四に、研究開発のための基盤整備のため、地域における研究開発機能高度化等地域における科学技術振興を図るための経費、広範な分野基礎研究に飛躍的な成果をもたらすことが期待される大型放射光施設について所要の研究等推進するための経費民間等との共同研究促進研究公務員等の国内及び海外研修への派遣、ハイテクコンソーシアム制度による先端的研究成果の展開、新技術企業化促進等を図るための経費日本科学技術情報センターにおける科学技術に関する各種データベースの拡充、新オンライン提供システム開発国際科学技術情報ネットワーク運用等内外にわたる科学技術情報の流通を促進するための経費遺伝子資源の収集、保存、提供体制整備等のための経費として一般会計に五十五億八千八百万円を計上するとともに、産業投資特別会計から日本科学技術情報センターに対し四十七億円の出資を予定いたしております。  第五に、原子力研究開発利用及び安全対策推進のため、原子力安全規制行政及び原子力安全研究などの安全対策等を進めるための経費ウラン濃縮使用済み燃料の再処理及び放射性廃棄物処理処分等核燃料サイクル確立のための経費高速増殖炉及び新型転換炉研究開発を行うための経費核融合研究開発原子力船研究開発放射線利用研究高温工学試験研究等先導的プロジェクト及び基盤技術開発等推進するための経費並びに国立試験研究機関等における原子力研究開発利用に関連する各種試験研究を行うための経費等として一般会計に一千七百六十四億七百万円を計上いたしました。  また、原子力施設立地対策として、原子力施設周辺地域住民等に対する給付金の交付、周辺地域における雇用確保事業推進関係地方公共団体公共用施設整備放射線監視対策原子力防災対策等原子力安全対策に必要な経費高速増殖炉原型炉「もんじゅ」及び新型転換炉実証炉用燃料開発施設建設等新型動力炉開発を進めるとともに、使用済み燃料処理技術開発及びウラン濃縮技術開発を行うための経費等として電源開発促進対策特別会計に九百五十億八千三百万円を計上いたしました。  第六に、宇宙開発利用推進のため、通信衛星三号、静止気象衛星四号、海洋観測衛星号b放送衛星三号、地球資源衛星一号、技術試験衛星VI型及び静止気象衛星五号の開発を進めるほか、地球観測プラットホーム技術衛星開発研究等を行うための経費HIロケット及びHIIロケット開発等宇宙輸送システム研究開発を進めるための経費宇宙ステーション計画への参加の一環として実験モジュール開発等を行うとともに、第一次材料実験システム開発を進めるための経費宇宙科学技術の基礎的、先行的研究を行うための経費等として九百八十四億七千万円を計上いたしました。  第七に、海洋開発推進のため、六千メートル級潜水調査船及びその支援母船の建造、潜水調査船「しんかい二〇〇〇」による深海調査研究海中作業実験船「かいよう」による潜水作業技術の実海域実験海域総合利用技術に関する地域共同研究開発を行うための経費等として九十四億八千七百万円を計上いたしました。  第八に、物質材料系科学技術研究開発推進のため、新たに超電導材料研究マルチコアプロジェクト推進を図るなど、金属材料技術研究所無機材質研究所等における各種試験研究創造科学技術推進制度及び国際フロンティア研究における材料研究推進する等のための経費として八十八億七千百万円を計上いたしましたほか、科学技術振興調整費から二十三億円の充当を見込んでおります。  第九に、ライフサイエンス振興のため、国際フロンティア研究一環として老化の仕組みの解明のための研究、脳・神経系免疫系科学技術研究等人間系科学技術研究がん本態解明のための研究、重粒子線医学利用に関する研究放射線によるがんの診断、治療のための研究等ライフサイエンス関連研究推進するための経費として九十三億六千六百万円を計上いたしましたほか、科学技術振興調整費等から三十四億四千三百万円の充当を見込んでおります。  第十に、地球科学技術研究開発等推進のため、海洋観測衛星号b地球資源衛星号並び静止気象衛星四号及び五号の開発地球観測プラットホーム技術衛星開発研究等地球観測技術研究開発推進するための経費地震予知震災対策雪害対策等防災科学技術に関する試験研究等を行うための経費として百七十六億五千百万円を計上いたしました。  最後に、その他の重要な総合研究等推進といたしまして、ファンジェットSTOL実験機「飛鳥」による飛行実験革新航空宇宙輸送要素技術研究開発等航空技術研究開発レーザー科学技術研究等を行うための経費として百九十二億一千九百万円を計上いたしました。  以上、簡単でございますが、昭和六十三年度科学技術庁関係歳出予算要求側につきましてその大略を御説明申し上げました。よろしく御審議のほどお願いを申し上げます。     ─────────────
  5. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) この際、お諮りいたします。  昭和六十三年度科学技術庁予算についての見学官房長説明は、これを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ─────────────
  7. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 木宮和彦

    木宮和彦君 それでは、私の時間最初六十分の予定で質問事項を提出いたしましたが、本日の時間の都合で三十分にカットいたしますので、大変御迷惑をかけると思いますが、その点はあらかじめお断りを申し上げます。  まず第一番目に、今長官からも予算概要説明の方に出ておりましたが、大型放射光科学技術振興上の意味、それからその専用施設がこれからどのくらい必要であり、またそれが民間にどのくらい活用されるであろうか、それらの点につきまして、時間もございませんのでなるべく手短にお願いいたしたいと思います。日本科学技術進歩基盤になる基礎的な研究と私思いますし、また科学技術庁中心計画をされておりますことでございますので、その点よろしく御説明のほどをお願い申し上げたいと思います。
  9. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) ただいま御指摘ございました大型放射光施設でございますが、御存じのとおり、この施設は従来にない非常に明るくて、それから波長が短い光を出すものでございます。そういう意味で、現在非常に大事だと言われております物質材料系科学技術ライフサイエンス情報電子系科学技術といった先端的な分野の基礎的な研究の面で大変飛躍的な成果をもたらすというふうに期待をされております。また、こういったものを共同利用施設の形で整備することによりまして、産学官及び国際的な研究交流にもお役に立つものであるというふうに期待をいたしておるところでございます。  私どもは、産官学の専門家の御意見を聞きながらいろんな検討を進めてきたわけでございますが、現在、この分野の問題につきましては、主として学術の最先端を切り開いていくというような状況にございますが、科学技術進歩が非常に激しい状況でございますので、いずれはもっと幅広く産業界を含めて利用をされるようになるであろうというふうに理解をいたしておるわけでございまして、そういった意味で、現在高エネルギー物理学研究所中心学問研究の一部として、将来の大型高性能放射光についてのお考えもさることながら、もっと利用のビームの数の多いものを安定的に運営をすることが、長い目で見まして、我が国の科学技術進歩上極めて重要であるというふうに理解をいたしまして、現在理化学研究所日本原子力研究所の分担のもとに基礎的な研究を行っておるということでございます。  申し上げましたように、現在の段階におきましては主として大学国立研究機関といったところの基礎的研究中心ではございますが、産業界におきましても、近年こういった放射光の応用ということにつきまして関心が高まっておりまして、例えて申しますと、現在高エネルギー物理学研究所に二十五億エレクトロンボルト放射光施設がございますが、この一部につきましてはエレクトロニクス関連のメーカーがその放射光利用しておるという状況でございまして、今後もっと大きな放射光施設につきまして検討を進めておりますが、先々こういった傾向はますます強くなる、大学国立研究機関はもちろん民間におきましても広くこういったものが利用をされるであろうというふうに考えておる次第でございます。
  10. 木宮和彦

    木宮和彦君 今の説明のとおりだと思いますが、現在は少なくとも日本英米に比べますと大分大型放射光施設が小さいし、レベル的にいいましても劣っているように聞いております。今後それらにつきましては、今現在あるのは筑波研究学園都市文部省高エネルギー物理学研究所だと思いますが、これから設置するのは方々で、関西の方でもつくってほしいというような希望もあるやに聞いておりますが、どこへどういうふうに、具体的にまだ決まっておらなければ結構でございます、何か目標がありましたらお教えいただきたいと思います。
  11. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 現在、御指摘のように、筑波研究学園都市高エネルギー物理学研究所放射光施設がございますが、それより一段大きいものとして六十から七十億エレクトロンボルトクラスの放射光施設計画を考えておるわけでございますが、まだ研究開発段階でございます。その一環として、そういうものをつくるといたしますとどういった立地条件が必要であるかということにつきましても現在検討をしておるというところでございまして、具体的な立地といったようなものを検討する段階にはまだないというような状況でございます。
  12. 木宮和彦

    木宮和彦君 これはやはり一刻を争うと思いますので、なるべく早く立地条件その他を調査の上で具体的にひとつ進められることを希望しておきます。  次に、超電導のことについてお伺いいたしたいと思いますが、独創的な研究日本でもかなり、今まで日本人というのは英米開発したものをまねるということが多かったんですが、超電導に関しましてはかなり独創的な研究もあるように聞いております。現在の超電導日本状況並びに海外状況、最近余り聞かなくなってしまったんですが、どういう状況に進行していますか、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  13. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 今の超電導と申しますのは、大別しまして金属系、これは在来型とでもいいましょうか、金属系とそれから酸化物系というのがございます。今先生案内のように、日本ではその金属系では特にニオブとすずとの合金を利用しましたものについて世界に先駆けまして綿材化、いわゆるコイルにできるような線材化をする技術というのを開発いたしまして、これは古河電工を経由してアメリカに輸出をしておるということで、金属系のいわゆる極低温を利用する超電導技術力という点ではかなり世界的にも進んだレベルにあると思っております。  それから、先生が御指摘されましたのは、いわゆる一昨年から急激にブームになってまいりました酸化物系超電導でございますが、これも実はノーベル賞をもらいましたべドノルツ、ミューラー博士というIBMチューリヒ研究所成果でございますが、これを東大の研究グループがいわゆる超電導性があることを確認するという評価を真っ先にしておりますし、それに引き続きましては無機材研が、ペロブスカイト構造と言っておりますが、そういう新超電導体結晶構造というようなものについての解析世界で初めて行った。さらにことしの一月になりまして、従来から言われておりましたテルルであるとか、そういったややハンドリングの難しい材料にかわってビスマスというような材料を使っての新超電導体というようなものも金材技研開発をしている。そんなような状況で、はなを切っているというのは言いにくいかもわかりませんが、今しのぎを削りつつある状況というふうに考えております。  なお、これらの比較は、アメリカの場合にはヒューストン大学というのが一つコアになっておりますし、先ほど申し上げましたIBMチューリヒ研究所がヨーロッパを代表しての一つコアと。最近米国では、特にレーガン大統領の昨年七月の提案によりましてテキサス大学超電導研究センターというのを設立するという動きが出てきておるといったような状況でございます。
  14. 木宮和彦

    木宮和彦君 最近、超電導材料研究マルチコアプロジェクトというプロジェクトが始まったように聞いておりますが、今回の予算にも大分盛られているようでございますが、そのマルチコアという組織ですが、私も素人でございますので詳しいことは全くわかりませんが、いろいろ理論・データ、それから制御する、今度はそれを評価するという三つコアからそれぞれ運営委員会をつくって、そういう運営体制でやっていこうというように、これも科学技術庁中心になってやっていらっしゃる。今回の予算にも二十億四千四百万円が盛られているように聞いておりますけれども、これらにつきまして、私ども目新しいことでございますので十分理解もできません。ひとつまたわかりやすく簡単に御説明していただければ大変ありがたいと思いますが、よろしくお願いします。
  15. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 今御案内マルチコアプロジェクトと申しますのは、実はそれぞれの研究所というのは一つ組織体でございますので、組織間の共同研究をやるというのがなかなか円滑に動きにくい面もあろう。そういう点であえてマルチコアと銘打ちましたのは、一つ内外に開かれた研究体制をどうしてもつくるということ、それから研究者主体研究計画を練り上げていくという創造性を重視した運営をしたい、それから柔軟な共同研究体制をその中でとっていきたいという三つのねらいを持っておりまして、現在は主として当庁の金属材料技術研究所あるいは無機材質研究所に例えば構造解析コアをある研究者中心に組みまして、あるいは合成のコア金材技研の中に一つつくります、それに無機材研であるとか理研であるとかあるいは他の国立研究機関の方、民間の方がそのコアに一緒に入っていただきまして共同研究をやっていく。そういう共同研究をやるために、大きくは共同研究推進連絡会議というようなものをそのグループリーダーといいましょうか、コアリーダーが集まりの中で設けていく。それをさらにサブリーダーというような形でつないでいきまして、一種の研究者同士フォーラム活動共同研究が同時多発的にそのコア中心に行われるようにしたいと考えております。  そのコア結節点になりますものとして、今先生指摘の約二十一億円の予算を来年度計上させていただいておりますが、その中に超電導の性能を評価するのになくてはならない高磁場を発生する研究設施を設けるとか、あるいは構造解析をやりますための非常に分解能の高い、要するに原子距離を見出すことのできる電子顕微鏡を備えつける、そういうようなものを評価グループ中心に据えるという、そういう大型高性能設施をそのコア一つずつに持っていただきまして、そこへみんなが集まって研究をし合うという、そんなようなことを現在進めておるわけでございます。  なお、これの具体的な制度運営化につきましては新年度とともに発足させたいと考えておりますので、現在細部の構造については研究所間でいろいろ相談をしているところでございます。
  16. 木宮和彦

    木宮和彦君 大変いいアイデアだと思いますし、日本にとりまして大変得意な分野じゃないかと思いますので、世界的に本当にしのぎを削ってやっていらっしゃると思いますので、将来の見通しについてはなかなか説明は難しいと思いますけれども、ぜひひとつ全力を挙げて立派な業績を残されますようにお願いを申し上げたいと思います。  時間も余りございませんのでどんどん先へ進みますので、その辺はお許しいただきたいと思います。  それでは、次にエイズについてひとつお尋ねいたしたいと思います。これは本来なら科学技術庁に聞くべきではないかもしれませんが、最近エイズは余り言われなくなっちゃったので、この辺でもう一回我々も恐ろしさを十分理解したいと思うんですが、現在のエイズ研究の現状並びに将来の見通しといいますか、将来の見通しの中にもいろいろあろうと思いますけれども、エイズの原因だけはもう二、三年前に解明されてビールス説、これはHIVというビールスであるということは確かだと思いますが、しかしながら、まだ治療薬も全く発見されておりませんし、現在の状況で、特に潜伏期が非常に長いようでございますので、これから日本がとるべきことは何か。無論治療薬ができればそれにこしたことはないんですが、一体それはいつごろか。わからないかもしれませんが、趨勢としては一体どのくらいの見通しでこれらができるのか。現在は何をやるべきか。  これはある先生の説によりますと、エイズについてはわかっておらないんだから、薬もないんだから、各人一人一人がエイズに対する知識を持って、自分でエイズから身を守るということが目下一番大事だと、こう書いていらっしゃるわけで、大変適切な言葉だとは思いますが、しかし、我々にとってはそれでどうしたら身が守れるのかわかりませんので、その辺の施策を、科学技術庁なのか厚生省なのか知りませんが、どういうところに力点を置いて具体的にそれを進められているのか、その辺をお教えていただければ大変ありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
  17. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 最初に科学技術庁から全体像について簡単に御紹介をさせていただこうと思います。  今申されましたとおり、大変重要な疾病ということでの認識は一致していると思いますが、既にエイズ問題総合対策大綱というのが関係閣僚会議において六十二年二月に決定をされておりまして、現在このエイズ研究については文部省厚生省科学技術庁の三省庁がそれぞれ分担をいたして研究推進しておるところでございます。私どもが承知しておる限り、分担といたしましては、文部省が今おっしゃいましたHIVウイルスの構造や本体の解明という基礎的な部門を担当いたしますし、厚生省が診断、治療あるいは予防方法の確立といった面での研究を進められておりますし、それから科学技術庁はこれらの共通基盤となります技術分野といったようなところとか、あるいは将来の行政施策の実施に当たって必要となる指針といったようなものができればというような分野を分担をいたしておるわけでございます。  全体的には、昭和六十年度に最初に科学技術振興調整費厚生省に移しかえましていわゆる診断技術開発というのを手がけておりまして、その後六十一年度もやはり厚生省に移しかえまして、ウイルスのいわゆる抗体を見つける定量方法の研究を行っているという状況でございます。  なお、見通しに関連いたします問題としては、昭和六十二年度からこういう免疫応答機能が異常を起こす、そういう機構そのものを解明するために、これは特にいわゆる逆転写酵素を持ったウイルスということでレトロウイルスと言っておりますが、振興調整費を六十二年度に一億円計上いたしまして、これは六十三年度も継続する予定でございます。これは本態を解明していくということになろうかと思っております。それから、特に六十三年度には科学技術庁は、理研におきましてこのレトロウイルスそのものの本態をより分子レベルで、あるいは分子生物学的なレベルで解明するための研究費として理研に約六千万円を計上し、本格的に取り組むことにしております。  そういう意味では急がれてはいるわけでございますが、諸外国を含めまして決定的な答えというのがいつできるというふうに予測するまでには残念ながらまだ至らないというのが率直な私どもの見方でございます。
  18. 伊藤雅治

    説明員伊藤雅治君) 厚生省エイズ研究の現状につきまして御説明をさせていただきたいと思います。  昨年二月のエイズ問題対策大綱を受けまして厚生省といたしましても、治療方法やワクチンによる予防がまだできない現状におきましては、正しい知識の普及ということが当面最大のエイズ対策のかぎである、こういう認識のもとに啓蒙普及活動に力を入れるとともに、中長期的には治療方法の開発でございますとかワクチンの開発、これがこのエイズ対策の根本的な対策になる、こういう現状認識のもとに進めているわけでございます。  厚生省といたしましては、昭和五十八年度より研究に着手いたしまして、それ以降、診断技術開発でございますとか感染者の発症予防のための研究、またワクチン開発のための基礎的な研究等中心に実施してきたわけでございます。昨年七月のエイズ対策専門家会議の提言を受けまして六十三年度予算案におきましては重点研究課題を設定いたしまして、それに対する予算の増額及びこれらの研究を進めていくための研究支援体制整備を盛り込んで、六十三年度予算案におきましては八億四千七百万円程度の予算お願いをしているところでございます。  具体的に申し上げますと、六十三年度におきましては、エイズの疾病動物モデルの作成でございますとか、それから病態把握マーカーの探索でございますとか、また発症予防、治療方法の確立のための研究、または疫学的な研究でございますとか、抗エイズウイルス薬の開発及びワクチン開発等の基礎的な研究、これらを重点的に進めていきたいと考えております。そのほか支援体制の強化策といたしまして、リサーチレジデント制度の創設でございますとか、外国との研究者の交流事業及び厚生省におきます中心的なエイズ研究の拠点とするために国立予防衛生研究所エイズ研究センターを設置いたしまして研究推進を図ってまいりたいと考えているところでございます。
  19. 木宮和彦

    木宮和彦君 大変熱心にやっていらっしゃるようでございますが、何にいたしましてもエイズアメリカでは一年に約倍の患者が出るといいますし、またWHOでは、地球上に大体十万人の患者がおって、一千万人のビールスの保有者がいるということを言われておりますので、いずれにしても日本もこれから侵される方で、大変我々としても脅威に感じているところでございます。  今のお話では、ことしの厚生省エイズ対策予算は十億円弱ですか。聞くところによると、間違っていたらごめんなさい、アメリカでは一兆円近くの研究費を出してやっているということも聞いております。その差はまことに何倍か計算ができないくらいです。十倍、二十倍、それ以上かもしれません。これはアメリカエイズの本元でございまして、日本はそれだけ痛切感がないかもしれませんが、やはり研究費を惜しまず、一日も早くこのエイズ治療薬が完成できますことを私は心から願うものでございます。  時間もございませんのでエイズのことにつきましてはまたいずれとしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。  次に、これは科学技術庁にお尋ねしてもお答えになるかどうかわかりませんが、現在非常に遷都論が盛んでございます。同時にまた、東京湾再開発で二〇〇〇年の東京をどう考えるか。東京湾に大きな島をつくって、そこへ人間を集めてやろうという計画もあるやに聞いております。しかしながら、そういう人工島をつくって首都の機能をそこへ持っていくということは大変私はいいと思いますが、ただし、惜しむらくは安全性の問題で、特に関東大震災程度の地震がこれから起こりますと果たしてその人工島がどうなるかということは、これはもう考えずにやっている人はないと思いますが、それらもし将来的な展望で今の東京がこのままでいいとはだれも思わないし、また何かしないと機能がおかしくなるということももう百も承知で、地価の問題だけじゃなくて、すべてがそうだと思います。その安全性あるいはそのプロジェクトに対して科学技術庁として何か各省にまたがって多角的に高い視野でもってそれらを検討されるようなお考えはありや否や。なければないで結構でございますけれども、もし御所見がございましたらお教えを賜りたいと思います。
  20. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 先生指摘の東京湾再開発という一つプロジェクトについては特にございませんが、現在海洋開発につきましては内閣に海洋開発関係省庁連絡会議、これは十一省庁から構成されておりまして、議長が内閣官房副長官でございますが、そのもとでこの東京湾再開発問題も海洋開発一環として審議、議論をされてきておるところでございます。その中で、海洋開発推進計画一つとして現在それぞれのつかさつかさにおいての推進が図られているという状況でございます。  科学技術庁におきましては、特に臨海部の開発問題につきまして共通的、基盤的な、先生指摘の安全性であるとか構造物の強度といったような問題をやるために、昭和五十七年度から六十一年度までの五カ年間にわたりまして、科学技術振興調整費によりまして、海洋に構築しました構築物、それによる海洋空間の有効利用というような見地からの研究を関係機関とともに推進をしてまいりました。これが発展いたしまして、現在運輸省が中心になって海洋構造物の沖合展開のための研究とかあるいはハイブリッド海洋構造物の設計に関する研究というような形で、現在の東京湾再開発あるいは沖合人工島の建設といったような技術的な流れになっているものと理解しております。  なお、その後科学技術庁としましては、地先の海域を総合的に活用するための諸研究ということで、海洋利用技術研究というのを海洋科学技術センターにおいて推進することとしておりまして、まだ基礎的な段階ではございますが、単に構造物等で利用するのではなくて、海を海のままとして利用する場合も含めて総合的な研究を進めたいと考えておるところでございます。
  21. 木宮和彦

    木宮和彦君 ぜひ大事なことでございますので、機会がございましたらひとつまた御検討を賜れば大変ありがたいと思います。  では次に、日米原子力協定の現状と内容でございますが、たしか昨年の十一月四日ですか、日米原子力協定が結ばれたと思います。そして今国会に提出があると思いますが、この発電用濃縮ウラン燃料の再処理問題でございまして、今回は同時に包括同意取り決めというものも決めて、これからは一々アメリカの許可を得なくても移動できるような措置がとられると思います。また、平和的利用を双方ともに確約するというか、双務的な規定もあるように聞いております。時間もございませんので、ごく簡単にさわりだけで結構でございますし、これからの見通し、またアメリカにおける批准の状況など、おわかりの範囲内で結構でございますが、よろしくお願いいたします。
  22. 中島明

    説明員(中島明君) 新しい日本アメリカとの間の原子力協力に関する協定につきましては、先生指摘のとおり、昨年十一月四日に日米の間で署名を了しまして、それ以降アメリカの議会においても本件の審議をしているわけでございます。  アメリカの議会におきましては、一部にこの協定についての批判的な意見もございましたが、一番新しい動きといたしましては、三月二十一日にアメリカの上院がこの協定の不承認を求める決議案を賛成三十、反対五十三という大差の表決で葬り去ったという経緯がございまして、アメリカの上院におきましては、この原子力協定の批准に向けて大きな進展があったと考えております。下院の方はまだこれから審議が続きますが、上院のこのような動きが下院に対してもいい影響を持つのではないかと考えております。  なお、日本側の事情でございますが、これは御承知のように、去る三月十一日の閣議におきまして、国会に提出し御審議を願うという閣議決定を行っております。  以上でございます。
  23. 木宮和彦

    木宮和彦君 時間がなくなりましたので、最後に長官にお尋ね申し上げたいのですが、長官は正月に夢のある宇宙開発をしたいというお話をされました。どういうふうにこれから夢のある宇宙開発をおやりになろうとしているのか、これが一点です。  それからもう一つ、これは利根川博士が、若手研究者の育成は日本は非常にだめだ、それだから頭脳が流出するというような意味のことをおっしゃったと思いますが、日本でこれから若手研究者をいかに、これは専ら科学技術庁だけじゃなくて、文部省その他もあると思いますが、これはこれから一番大事なことだと思いますが、これの育成についてどうお考えでしょうか。これが二つ目。  最後に、原子力船「むつ」につきまして、この間、関根浜へ移りまして原子炉の運転の補助スイッチのかぎが返還されたように聞いておりますが、これからの日程と、過去の、今までの「むつ」を通して国の科学技術開発に対する反省と同時に、将来の一つの反省材料としてどうお考えですか。  この三点について、簡単で結構でございますが、お聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 人類の文明は、古来、未知なるフロンティアに挑戦をし、これを開拓することによって新たな発展を遂げてきたところでございます。今日、宇宙は、大陸や海洋に続き、人類全体が力を合わせ取り組むべき新たなフロンティアでございまして、その探求は人類の夢を実現し、人類文明の発展を促すものと認識をしております。また、宇宙の開発利用を進めることは、科学技術水準及び国民生活の向上に寄与し、そして経済、社会の発展のためにも貢献するわけでございまして、さらにまた国際社会にも貢敵するということにもなりますので、我が国にとりまして大きな意義を有するものと認識をしております。  このような観点から、我が国の宇宙飛行士が搭乗することとなる宇宙ステーション計画への参加を初めとして、人工衛星、ロケット等の研究開発を、今までもやっておりますけれども、さらに精力的に進めることによりまして、次代を担う、二十一世紀を担う青少年に夢と希望を与えてやりたいというように精いっぱい頑張っております。  なお、若手研究者の養成といいますか、激励はどうしたらいいだろうかということは、これはなかなか科学技術庁だけでどうということでもございませんし、先生お話しのとおり文部省という問題もありますし、あるいはまた明治以来続いております大学というもののいろいろのしきたりなどもあるようでございまして、そういうことに対して我々ができるだけ若手研究者、特に三十代に立派な研究ができるといういろいろのデータもございますので、若手研究者が伸び伸びと自分の独創性に基づいて研究できるような環境整備というものを、予算の面でもあるいは制度の面でも文部省その他の関係機関とよく協力をして、若手研究者が十分に自分の才能、研究が発揮できるような環境整備というものをぜひひとつ急いでつくりたいということで、今みんなで力を合わせて全力投球をしているところでございます。  原子力船「むつ」の問題につきましては、データもございますので、原子力局長の方から答弁させていただきます。
  25. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 原子力船「むつ」につきまして、先ほど先生から御指摘がありましたとおり、本年一月に関根浜の新定係港が完成いたしましてそこに移しました。原子力船「むつ」に関しましては、もともと昭和六十年三月でございますけれども、政府が定めた基本計画がございます。それに従って着実に推進する次第でございます。  それで、関根浜新定係港に移しましてから、本年の二月と三月にかけましていわゆる温態と冷態の機能試験、これは原子炉は動かしませんけれども、制御棒の上げ下げとかそういうものをやりまして、機能試験も無事に実施してございます。  それから、その先のスケジュールでございますけれども、まず六十三年度末までには関根浜の陸上の附帯施設、これについては工事を完成したいというふうに考えております。なお、それと並行いたしまして、六十三年度中には原子炉のふたを開けまして、その中の燃料体あるいは炉内構造物、そういうものの点検を実施するという原子炉のふたの開放点検、これを実施したいと思っております。それで、六十四年度になりますと、船体の点検とかあるいは起動する前のいろんな諸試験を実施した上で、その後出力の上昇試験をやりたい、また海上の試運転もやりたいと思っております。最終的には、昭和六十五年度におおむね一年間を目途とした実験航海を行うという計画を持っている次第でございます。  それで、確かに「むつ」につきましては、過去におきまして、私ども政府とそれから日本原子力船開発事業団等々と地元の方々との連絡が、意思疎通が必ずしも十分でなかったという面につきましては我々十分反省する次第でございまして、そういう意味で、私どもも地元とのお約束とかあるいは地元に十分御説明すると、そういうことについては心がけているつもりでございまして、おかげさまで、例えば本年一月の「むつ」の回航につきましても極めて円滑に進められたということでございます。  いずれにしろ科技庁といたしましては、今後関根浜における新定係港におきますいろいろな諸試験を着実に実施いたしたいと思っております。もちろん安全性の確保が大前提でございますけれども、そういうことによりまして所期の成果が得られるように進めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  26. 木宮和彦

    木宮和彦君 どうもありがとうございました。
  27. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先ほど昭和六十三年度における科学技術庁予算について御説明がありましたが、以下重要事項について順次ただしたいと思っております。  まず日米科学技術協定について伺いたいと思いますが、最初にこの協定の改定交渉の進展状況と今後の見通しについてお伺いしたいと思います。
  28. 法眼健作

    説明員(法眼健作君) 日米科学技術協定の交渉の現状について簡単に申し上げます。  先般の日米首脳会談におきましてもその重要性が確認されたわけでございまして、そして現在ワシントンに我が方の交渉団が、外務、通産、科学技術庁等の交渉団が先週来向こうに出かけておりまして、今鋭意交渉をしておるところでございます。  内容につきましては、まさに今交渉中ということでございますが、日米間の科学技術協力関係の強化というための一般原則、これを織り込むこと、それから協力活動にかかわる知的所有権の保護、こういったような問題を含めて今話し合いが続けられておりまして、一生懸命やっておるところでございます。  先生今御質問の見通しはどうかという点でございますが、まさに今ぎりぎりのところに来ておると思われます。どういうふうに具体的な状況なのかということにつきましては、ただいままさに交渉中なものでございますから、この点御了解をいただきたいわけでございますが、日米双方が納得し得るような合意に達するべく今後ともできるだけの努力を重ねていきたいと考えております。
  29. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今お話がありましたが、協定の内容とか改定の中身について、交渉中ですからそれに触れてもなかなかお答えにくいと思いますね。  そこで、一般的にということでお伺いをしたいんです。これは特許庁だろうと思いますけれども、これは一般論でお答えをいただいて結構です、知的所有権の保護強化、これは極めて大事だと私は考えるんですけれども、特許庁ではどういうふうにお考えになっていますか。
  30. 油木肇

    説明員(油木肇君) 先生指摘のように、技術開発技術移転の基盤としての知的所有権、特に工業所有椎の保護強化といったことは基本的に重要であるというふうに我々考えております。しかしながら、その保護が行き過ぎるということもございまして、そうなりますと技術開発の妨げとなり、あるいはひいては産業の発展を阻害することにもなりかねないということも考えられますので、現在、制度の国際的な調和ということを考慮しつつ、効果的かつ適切な保護を図るという観点から検討を進めているところでございます。
  31. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ長官にお伺いしますけれども、改定の中身だとか、いろんな改定の内容について踏み込む話じゃなくて、これまた一般論で結構でありますが、科学技術政策上、知的所有権の保護強化、これについてはどういうふうに長官お考えになっていますか。
  32. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) ただいま御指摘科学技術政策上の観点からという、もう一度そういった点から見詰め直してみますと、御案内のように、最近の科学技術の発展というのがこの知的所有権問題に非常に大きな新しい問題を投げかけている。大きく分けると三つぐらいになるんじゃなかろうかと言われております。  一つは、最近の科学技術が非常に大型化したり高度化したりしておりまして、科学技術研究開発に多額の資金なり長期の期間を要するということで、一方、それを使う者の身になってみますと、逆に非常に短期間で安い費用でそれを利用することができるというタイプのものがふえてきている。一つはコンピューター関係、ソフトウエア関係などがそうでございます。いわゆる開発者のインセンティブ、開発へのインセンティブの付与と、それから利用者、ューザーへの何といいますか、パブリックインタレストと申しますか、そこいらのバランスが非常に大きな問題になっている。アンバラになっているというのが第一点でございます。  それから第二点は、非常に新しいいろんな、今まで想像もつかなかった新しい技術分野が出現しているということで、例えばバイオテクノロジーあるいは新しいソフトウェア等々でございますが、そうした分野の知見は既存の知的所有権制度の枠の中でなかなかおさまり切れなくなってきているということで、科学技術の発展に伴って新しい枠組みが必要になってきているというのが第二点でございます。  それから第三点は、よく言われておる科学技術が非常に国際化いたしております。この国際化の進展に伴って、一つは先進国同士とか、あるいはLDC、NICS等との間でのそれぞれのバランスが必要になってくるという、この三つの観点から我々科学技術政策上も非常にさめ細かなそれぞれバランスのとれた対応を図っていく必要があるというふうに認識しております。
  33. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 これまた一般論として考えてみていただきたいんですが、超電導だとか生命工学などハイテクの分野でのこういう協力というものを強化してはどうかというふうに私は考えますね。これまた科学政策上ですから、それはどういうふうに今申し上げたことを考えていますか。これはぜひできれば長官の所見を伺いたいんですけれども、どういうふうにお考えになりますか、この際伺います。
  34. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 御指摘のように、国際協力というのは非常に重要になっておりまして、特に研究開発の規模が非常に大きくなるとか、それから世界経済の活性化だとか資源エネルギー問題といった各国が協力をして取り組むべき課題というのがますます大きくなっておる。そういうことに加えまして、我が国に対しましては、やはり先進国の一員としてそういった面での国際的役割を十分果たすべきであるという声が非常に強くなっておるわけでございまして、そういう認識のもとにそういった面での国際協力に努めておるわけでございまして、先生指摘のようなそういったハイテク分野はもちろん、それ以外の分野につきましても共同研究とか人材の交流、情報の交流といったものに努めておるわけでございまして、今後ともそういう努力を続けていきたいというふうに考えております。
  35. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 特許庁も来ておられますから、ちょっとこれまた一般論で結構ですけれども、共同研究成果、これはすべてそれを生み出した国に帰属するといういわゆる属地主義ですね、これについてはどういうふうにお考えになりますか。
  36. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 突然の御質問でございますが、属地主義と一概に申し上げますと非常に幅広い答弁になるわけでございますが、共同研究というのはいろんなタイプがあろうかと思います。相手方あるいはその研究のレベルがどうかとか、あるいは研究の内容がどうかとか、そういうそれぞれの内容によって属地主義の問題についてもバランスのとれた考え方が当然必要だというふうに考えております。  我々、これ答弁になりませんが、現在個別のいろいろな国際研究協力の交渉を二、三進めておりますが、そうした場合、みんなそれぞれその研究の性格によって異なってまいります。しかも、共同研究一つのテーマの中においても分野ごとに属地主義の扱い方とかいうものも違ってまいります。その分野の中でも、研究レベルがこちらと相手方で違えば、さらにまた違ってまいります。そういったことで、それぞれの内容に照らしながらバランスのとれた属地主義の考え方をうまく調和さしていく必要があるんじゃないかと思っております。
  37. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大変な時期だと思いますから、いろいろなものを踏まえて協定の実現に向けて長官ひとつ努力していただきたいと思うんですね。  それから次に、新日米原子力協定についてお伺いをしたいと思うんです。  先ほど新協定の合意までについてのお話がありましたから、新協定についてアメリカの国防総省ですね、これは核拡散への危惧でアメリカ議会でもプルトニウムの空輸の安全性に対する不安ですね、これを表明している、こういうように聞いている。これはぜひひとつ長官からお答えをいただきたいんですけれども、核物質の平和利用ですね、これは堅持する姿勢、これをこの際明らかにしていただきたいと思うんです。長官どうでしょうか。
  38. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 改めて申し上げるまでもなく、我が国の原子力開発利用につきましては、原子力基本法に基づきまして平和の目的に限ってこれを進めてきたところでございます。また、国際的にも核兵器不拡散条約を批准をしておるなど、我が国が原子力の平和利用に徹する姿勢を内外に明示をしておるところでございます。さらに核兵器につきましては、従来からいわゆる非核三原則を国是として堅持することを明らかにしており、このことは我が国の一貫した政策でございます。これから御審議をいただく新日米原子力協定の実施に当たりましても、原子力基本法の精神、非核三原則にのっとりまして原子力の平和利用を強力に貫いてまいる所存でございます。
  39. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 聞くところによりますと、プルトニウムの空輸ですね、飛行機で運ぶ、こういう安全性の確保について伺うんですけれども、アメリカの上院で、先ほどもお話がありましたように、阻む法案というものが提出されたというふうに聞いているわけですね。  そこで、これからの動向ですね、それと我が国として今後とり得る対応策ですね、これについてはどういうふうに対応されるのか伺います。
  40. 松井隆

    政府委員(松井隆君) 今度の新日米協定のアメリカ議会での審議の過程で、先生指摘のように、プルトニウムの航空輸送に関しまして、非常に危ないんではないかというような恐れる向きからのいろいろと御提案があったということは私ども承知しております。  それで、私どもとしては、プルトニウムを航空輸送する場合にやはり安全に運ぶということがまず大前提であることは当然でございまして、現在動力炉・核燃料開発事業団がその安全に運べるような輸送容器の開発を行っております。  少し具体的になりますけれども、これはアメリカに現在PAT―1、PAT―2という二種類のプルトニウムの航空輸送の容器がございます。この容器があるということは、もちろんその前に当然アメリカとしても基準があるわけでございまして、アメリカのNUREG―〇三六〇という基準でございます。これは世界で最も厳しい安全基準でございまして、それに従った形でできるかどうかということを今動燃事業団が研究開発をしてございます。  それで、この実際のテストをもうやっておりまして、このテストにつきましては、実は非常に過酷なテストでございまして、日本にはそういった試験施設がないものでございますから、アメリカのサンディアという国立研究所に持っていきまして、そこでテストをしております。一昨年と去年二回ばかりテストをしてございまして、一回目の一昨年のテストにつきましては若干問題がございましたけれども、さらにそれを改善いたしまして、昨年のテストにつきましてはかなりいいデータを得ておりまして、そういう意味では、かなりNUREG―〇三六〇に合致する基準については見通しを得ている次第でございます。
  41. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 報道によりますと、私は専門家ではありませんから、いずれ専門家の方々が十分な論議を当委員会でもしていただいたらいいと思うんですけれども、空輸の際の容器、入れ物、これは墜落事故などにも耐えられるものを使用するんだ、それから二つ目として、特別専用の輸送機は護衛をつけていくんだ、それから、日本の空港では可能な限り一般の航空機からは隔離するんだと、こういう要点の報道があるんです。最初に申し上げましたとおり、私も専門家ではありませんから、専門家の方々の計算上において安全なものが現実において完全であるかどうかというのは非常に私も疑問を持っている素朴な国民の一人だというふうに思うんです。  それで、現実にはやはりアメリカのスリーマイルアイランドの原発やソ連のチェルノブイリの原発事故というのがあったわけですから、ですから心配なのは、理論上の安全を盾に空輸が開始されるということは私は大変な問題じゃないかというふうに素朴な疑問を持つんです。それについてやはり十分国民にこたえる責任があると思うんですが、それはどういうふうにお考えですか。
  42. 松井隆

    政府委員(松井隆君) おっしゃるとおり、プルトニウムの航空輸送に関しましては、やはり安全確保ということを大前提に進めなくちゃいけないと思っております。かつまた、そのために先ほどちょっと私も申しましたけれども、例えば現在テストしている容器についてのテスト条件でございますけれども、一例を申し上げますと、普通、飛行機というのは高度一万フィート未満の場合に大体四百二十二フィート・パー・セック以下のスピードに抑えられているわけでございます。それで、そういった状況で、そのままのスピードで地上に落下した場合ということを想定しております。これはアメリカのNUREGの基準でございますけれども、つまり具体的に申しますと、百二十九メートル・パー・セックというスピードで地上にぶつけるテストをやっているわけでございます。それでもその中が大丈夫であるということを実証した上でないとそういうものはできないというようなことをやっておる次第でございまして、私どもとしてはもちろんそういった安全確保が大事でございますから、その辺については十分気をつけてまいりたいと思っておりますけれども、いずれにしろ、そういったものを今進めながら着実にできるように、安全にできるように心がけている次第でございます。
  43. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 ぜひ安全を確保していただかなきゃならないと思います。  時間の関係がありますから次に進ましていただきますが、資源調査所科学技術政策研究所に改組する、こういうことになっているんですけれども、資源調査所科学技術政策研究所へ改組して科学技術会議審議科学技術庁の政策立案をサポートする総合シンクタンク機能を持たせるというようなことなんですが、具体的なその体制、これはどういうふうになるんですか、伺います。
  44. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 先生案内のように、科学技術問題は近年非常にまず国際的には複雑化してきております。それから、既にトップランナーとして新しい道を切り開いていかなきゃならないという使命も新たに負ってきているわけでございまして、新しい我が国としての研究開発行動をどうしていくかというふうな問題もこれから大きな問題となっているわけでございまして、いずれにしましても科学技術関係の政策、これからはもっともっと独自で深く掘り下げた研究をし、データを取得していく必要があるということで、この資源調査所改組、科学技術政策研究所という運びになったわけでございます。  具体的に今検討を進めております内容でございますが、六十三年度七月発足の目標で、予算二億五千万、定員四十六名ということで、中の体制でございますが、二つの研究グループ、これはいわゆるサイエンスインジケーターとかあるいは科学技術のいろいろな理論的な研究をいたします研究グループが二つございます。それから、あと国際問題とかあるいは将来予測とか研究環境のあり方等々を調査検討するグループが、調査研究グループとして四つグループが構成される予定になっております。
  45. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 今お話がありましたように、アメリカ議会の技術評価局、OTAですかが果たしている機能というものを持たせるというふうに聞いているんですけれども、その機能というのはどんなものなんですか。
  46. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 先生指摘アメリカ技術評価局、OTAでございますか、これは米国の議会におきます科学技術関係の問題に対しての政策や研究評価などを実施いたしまして、議会に情報を提供していくことを任務としているというふうに承知しております。  一方、当科学技術政策研究所でございますが、これは先ほど申し上げましたように、科学技術政策に関します基礎的な、理論的な各種問題の研究、分析を行いまして、我々科学技術政策に反映させていくというものでございまして、研究評価等の問題ももちろんこの中に含められるわけでございますが、具体的に今我々が念頭に置いておりますのは、研究、政策評価に資するその手法の開発などをこの研究所でやらしていきたいというふうに考えております。
  47. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 民間との人材交流、それから自然科学系にとどまらず、法律や経済など人文科学系の研究者あるいは調査マンへの門戸開放、こういうのは今後どういうふうに進めていくのか、あわせて伺います。
  48. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 人文科学系の研究者なども含めまして、広く英知を集めてこの研究所は機動的な運営を図っていきたいというふうに考えておりまして、具体的な措置といたしましては、いろんな外部機関との人事交流を積極的に進めていきたいと考えております。  まず一つは、大学民間シンクタンクの研究者の採用を考えております。第二に客員研究官制度を考えておりまして、これによりまして外部研究者を参画させていきたい。それから第三に、研究者民間への派遣を考えていきたい。第四に、外国人研究者の任用など、主としてこの四つのポイントを基本的な方針として掲げておりまして、内外専門家研究機関との交流を積極的に進めていきたいと考えております。
  49. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 審査にいろいろ準備をして私は十分ただしたいと思いましたけれども、全体的な時間の関係がありまして、用意した質問やレクチャーをしましたことを飛ばしまして、次に医療分野についての関係について若干ただしたいと思うんです。  先ほどエイズについてはお話がありましたからそれは除きます。したがって、がんの関係に対しての医療技術研究動向、これについて伺いたいんですけれども、医療分野における姿勢についてこれはぜひ長官からいただいた方がいいと思うんですが、長官科学技術開発等について、医療分野についてはどういうふうな所見を持っておられるのかまず伺います。
  50. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 原理原則の御答弁にしかなりませんけれども、御指摘のとおり、がん及びエイズのような大変な病気の予防や治療には、言うまでもなく、科学技術の果たす役割が極めて重要であるわけでございまして、科学技術庁としては、科学技術をつかさどる行政の庁として今後とも関係省庁、厚生省なりあるいは文部省などとも密接な連携、協力のもとに予防、治療のための研究開発を積極的に推進してまいりたい、このように考えております。
  51. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 先ほど御説明いただいた概要説明の中にも、がん本態の解明のための研究とか、重粒子線医学利用に関する研究とか、放射線によるがんの診断とか治療のための研究等、こういうふうに言われているんですから、積極的にやっぱり国民の期待にこたえるようなことをぜひ実現していただきたい、これはお願いであります。長官お願いしておきます。  資料をいただいて拝見しますと、対がん十カ年総合戦略、政府でも大変力を入れてこういうふうなことでずっとやっておられるんですね。これは大変画期的な取り組みだと思うんです。  そこで、さらに伺うんですけれども、この総合戦略の進捗状況ですね、これを見ますと、厚生省だとか文部省とか科学技術庁、これが合同でそういうものの研究成果の発表会、こういうものを予定をしているんですね。そこで、具体的にこういうふうな研究成果の発表会ということを科学技術庁としてはどういうふうなものを予定しているのか、これを伺いたいと思います。
  52. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) いろいろの発表の場は考えられるわけでございますが、一つは、御案内のとおり、がん対策関係閣僚会議というのがございまして、そこで研究の中間的な報告であるとか、これまでの現状といったようなものを報告をする。これは役所の内部でございます。先生お尋ねの御趣旨は外といいましょうか、役所の外ということを考えておられると思いますが、それにつきましては、今先生指摘のように、昭和六十二年三月に五十九年から六十一年までの三カ年についての三省庁、これは厚生省文部省科学技術庁でございますが、合同研究成果発表会というのを持っております。それで、この流れで私ども現在企画中のものは、科学技術振興調整費研究を総合的に進めている部分がございますので、その中で六十三年の秋、ことしの秋にもこれに続く第二回の成果発表会というのを進めたいと思っております。  それからもう一つの方法としましては、これは常にやっておりますが、振興調整費の成果につきましては一期、二期というふうなフェーズ分けがございますが、その一期の成果報告書というものを集大成してまとめたいと考えておりまして、これは現在編集をしておる最中でございますので、近々皆さんの手にお渡しすることができるようになるというふうに考えております。
  53. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 長官、ぜひひとつこれまた積極的な推進、それからやはり医療分野における、さっきのエイズのいろんな研究もあったようですから、それを含めて効果的に積極的な姿勢をぜひひとつ関係省庁とも連携を深めながらやっていただきたいと思うんですね。お願いをしておきます。  時間の関係で、次に理化学研究所筑波研究学園都市)のいわゆるP4の安全性の確保と当面の実験について伺いたいと思います。  御承知のとおりに、研究学園都市では今度五町村が合併してつくば市というのが誕生したわけであります。この新しい市議会で新たに、最近でありますが、筑波P4施設について市民からP4の実験中止についての要求を中心とした請願が出ているようです。そこで、その実験について具体的に伺いたいんですが、このP4の本格的な実験がことしの四月ということですからもうすぐですね、あさってから四月ですから、本格実験に入ろうとしていると、こういうふうに聞いているんですが、具体的にいつからどんな実験を開始される予定なのか、ぜひひとつ明らかにしていただきたいと思うわけです。
  54. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 理化学研究所筑波ライフサイエンスセンターのP4実験計画でございますが、実験を行いますことにつきまして、昨年科学技術会議審議を得て実験計画の承認をいただきまして、十二月七日より実験を開始しておるということでございます。ただ、具体的なP4施設の中での実験というまでには事前の準備が必要であるということで、現在はP2レベルの実験室におきまして実験に必要な材料などの調整作業をやっておるということでございまして、実際にP4レベルの実験室で実験を行いますのは本年の四、五月ごろであろうというふうに考えておるところでございます。  具体的にどういう中身の実験かと申し上げますと、ウイルスを利用いたしましてヒトの細胞に遺伝子を導入するといった技術が将来大変発展する可能性があるわけでございますので、そういった技術の安全性の評価をしたいということでP4レベルの実験室を使って実験をしたいというのが内容でございます。
  55. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 御承知のとおりに、去年の六月二十二日の理研安全委員会の審議、これではP4施設を使って行う遺伝子組みかえの実験については地元住民の了解、これが条件としてつけられたというふうに聞いているんです。その後、今は市ですが、その当時はまだ谷田部町ですね、谷田部町の了解が得られたとして実験準備が進められてきた、こういうふうに聞いているんです。私の聞いているのは、今なお強い不安を抱いて、先ほど申し上げたように、市議会には実験についてはちょっとやっぱり心配だからやめてくださいという請願が出ているように、P4の実験については承認をしていないんですよという住民の意思表示が現に表明されているんです。だから、実験を進める側では、一体地元住民の了解が得られたというふうに確認されたのかどうか、それはどうなんでしょう。
  56. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) ただいま御指摘ございましたように、昨年の六月二十二日に開かれました理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センターの組換えDNA実験安全委員会におきまして、先ほど申し上げました実験内容について御説明をいたしましたところ、国の定める「組換えDNA実験指針」に基準が示されていない実験に該当すると。したがいまして、国に対して所要の手続をとる必要があるとされたわけでございます。  その際、安全委員会からP4施設を用いた実験を行うに当たっては地元住民及び職員の安全の確保に万全を期すること、国に対する実験承認申請を行うに当たっては谷田部町当局及び住民の理解を得るよう誠意を持って努力をすること、という要望がつけられております。これを踏まえまして、理化学研究所は谷田部町へ実験計画の内容、安全確保策について御説明を申し上げております。それから、地元の住民に対しまして御理解をいただきますために、P4施設を用いた実験に関する説明会を開催しておるところでございます。昨年八月十三日に谷田部町は理化学研究所に対しまして、P4施設を用いた実験計画の国への実施申請を了解をするという御回答をいただき、それに基づきまして理化学研究所は国への実験申請を行ったものでございます。  なお、先ほど御指摘がございました地元住民の方からつくば市議会に対してP4レベルの実験凍結に関する請願が出されておるということも承知いたしておりますが、この請願につきましては、つくば市議会の総務委員会におきまして去る三月二十二日不採択になった、それからさらに本日、つくば市議会本会議でその不採択とした総務委員会の結果を認める旨の表決があったというふうに伺っております。
  57. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 説明がありましたが、P4の実験ですね、これは何のために行うのかというような素朴な質問になっちゃうんですけれども、それから、どうしてもP4の施設を使わなければならない理由というのは一体何だろうか、これまた素朴な質問ですけれども、そういうものをぜひひとつこの際明らかにしていただきたいな、こういうふうに思うんです。それはどうでしょう。
  58. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 遺伝子組みかえの実験を行いますときには、その実験のレベルによりましてどういった施設でやるべきかということが専門家の間で議論をされまして、先ほど申し上げましたような実験指針というものができておるわけでございます。その実験指針に当てはめて考えますと、現在計画をされております計画、すなわちウイルスを使いまして人に役に立つ遺伝子をヒト細胞に導入をするといった技術の実験は、そういった実験指針に当てはめますと、類型的なものとして従来認められてない。そういったものは個別に専門家の間で議論をして、それで承認を得た上で進める必要がある、こういう扱いになっておるものでございまして、そういった性格のものでございますので、それはP4の施設でやる必要があるということでございます。  なぜこういったことをやるのかということでございますが、こういった技術が確立できますと、現在通常の微生物を使って開発が考えられておりますいろんな化学物質と申しましょうか、医薬品と申しましょうか、それよりもはるかに性能のいい薬品、医薬品の開発ができる可能性がある。また、そういうことができるということによりまして、遺伝病に対する根本的な治療法の開発へつながる可能性があるといった将来のライフサイエンス技術に向けまして非常に大きな意義を持つ技術であるということでございますので、安全性には重々配慮をしながら、そういったものの技術開発を進めてまいりたいというのがこの実験の趣旨でございます。
  59. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 具体的に安全委員会についてお尋ねをしたいんですけれども、審議の内容ですね、これは当時の谷田部町から出ていた委員から聞こうとしても一向にその内容というのを明らかにしてもらえないという、そういう市民、住民の人たちの不満があるんですね。  そこで、いただいた資料、これですね、「安全委員会規則」、これを見ますと、六条の六に、「会議の結果については、これを広報する。」、こうあるんですね。これは恐らく安全委員会でいろんな話をしたことはぜひ地域住民に知らせてほしいんだという住民の要求を取り入れてこういうふうに定めたと思うんですけれども、非常に安全については関心を持ち、非常に重要な実験だというふうに言われるわけですから、それならばやっぱり市民や住民の人たちにも理解が得られるようなことで実験されたらいいんじゃないかと思うし、公開をすべきものはした方がいいんじゃないかなというふうに思うんです。ですから、この規定にはそういうことが入れられている、こういうふうに思うんですが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  60. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 先生指摘のとおり、住民の方々に十分理解をいただいて実験を進めるというのは大変大事なことであると思っておりまして、そういった観点から安全委員会の規則の中におきましても、ただいまお話ございましたように、「会議の結果については、これを広報する。」ということになっておるわけでございます。  具体的には、安全委員会の結果が出てまいりますと、その結果につきまして委員会終了後記者発表をするということによりまして皆様方にできるだけ知っていただくということをやっておるところでございまして、また、さらに谷田部町に対しましても説明をいたしております。なお、谷田部町からはその審議結果を公示していただいておるというふうに伺っております。
  61. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 くどいようですけれども、安全についてはせっかく安全委員会というのをお持ちになって、それで町の側からの代表も入っておるわけですから、そこで審議をされたこと、恐らくそれは重要なものについて守秘義務だとかいろいろあると思うんですね。それはそれとして整理をしていく必要があるとは思うんです。いろんな重要な実験ですから、実験そのものを全部すべてを公開しろ、こういうことを言っているわけじゃないんです。しかし、少なくとも実験をする以上は地域住民の了解を得るんだという前提で進んできているわけですから、これはぜひひとつ尊重をしていただきたい、こういうことを要請しておきます。  そこで、もう余り時間なくなっちゃったんですが、先ほど新しい市議会の動向についてお話がありましたが、私の手元にはこんなのがあるんですね。新しい市長の倉田市長が市議会の質問に対して、実験についてはぜひ慎重にやってほしいという意味を含めて議会では答弁をして、そして科学技術庁なりに要請をするんだというような報道が地元ではされているんです。ですから、実験についてはそういうことで慎重にというのが率直な地域住民の、何といいますか、不安と同時に関心を持っていることではないか。それについては、くどいようですが、安全ということはやっぱり念には念を入れて地域住民の人たちの理解を得られるように努力をすべきだというふうに考えるんです。この辺はどういうふうに現在の動向をつかんでおられるか伺います。
  62. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) ただいま御指摘ございましたように、つくば市の倉田市長が去る三月十七日の市議会におきまして、理化学研究所に対しP4実験の中止を申し入れる旨答弁されたという新聞報道があったことは私どもも承知をしておるところでございますが、現在のところ、つくば市から理化学研究所に対して格別の申し入れはないというふうに伺っております。
  63. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 私は、きょうの委嘱審査は実りのあるもので十分審議を尽くしたい、こう思っていたんです。ところが、いろいろ減税等の政治的な判断で変則的な本委員会の委嘱審査ということでありますから、私の予定をしていたものをうんと圧縮したわけです。そこで、いろんな重要な問題についてきょう予定したものを全部割愛しまして別の機会に譲りたいと思います。  したがって、私の締めくくりとしては長官にぜひひとつ所見を伺って終わりたいと思うんですが、今まで日米の技術協定あるいは新原子力協定、あるいは医療の分野における科学技術庁の役割、国民の期待にこたえるこれからの取り組み、あるいは今またP4のいろいろな重要な実験をどんどん開始していく。そのためにやっぱり国民の期待にこたえなきゃならないし、国民の不安というものを解消し、理解をしてもらうところにも心がけなければならないと思うんです。ですから、そういう意味で、積極的な科学技術開発研究については大いにしていくべきだという立場から、私は長官の積極的な姿勢を要請するわけです。そういうことについて今後の取り組み、いろいろな分野における重要な時期でありますから、長官の政治姿勢、これからの決意、こういうものを伺って私の質問を終わりたいと思うんです。
  64. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 段々のお話の中にも結論的に出ましたように、科学技術なしには日本の将来も世界の将来もないわけでございまして、それは今まで以上に熱心にまた強力に推進をしてまいりたいと思います。と同時に、科学技術というものが本当に人類なり社会に調和し、また本当に人類の福祉に役立つようなそういう科学技術政策というものをぜひ進めなければならない。余り上手な表現ではありませんけれども、アクセルも大事ですし、またブレーキも大事だというような、そういう気持ちで私は進めなければならないと思います。P4の問題あるいは原子力の問題、科学技術全般でございますけれども、やはり安全性の確保というのが大前提であって、安全性の確保なしに科学技術推進はあり得ないという、古いことわざでございますけれども、あつものに懲りてなますを吹くというのは愚かな愚直な態度として表現されておりますけれども、私は科学技術推進に当たってはやっぱりあつものに懲りてなますを吹くというぐらいの愚直な気持ちで、また勇敢に人類の福祉なり社会の福祉に役立つというような信念なり誇りを持って積極的に進めていきたい、このように考えております。
  65. 伏見康治

    ○伏見康治君 私もいろいろな質問をするように通告いたしましたけれども、時間の関係で、私自身も疲れますので適当なところで切り上げたいと思うんです。それで、テーマを一つ限定いたしまして大型放射光実験施設、SORについてだけ御質問申し上げたいと思うんです。  これについては既に木宮先生が御質問くださいましたので、大体のアウトラインは皆さん既におわかりになっていると思いますので、いきなり質問に入りたいと思うんですが、質問と申しましても、まず私の意見を申し上げないと質問の意味がわかりかねると思いますので、二つの点から御質問申し上げたいと思うわけです。  一つは、日本科学技術のすばらしい発展に対して先進国のヨーロッパ諸国やアメリカから、日本はただ乗りをしているという非難を絶えず受けているということは皆様よく御承知のとおりでございまして、それで、歴代の科学技術庁長官は、ただ乗り論と言われるのは甚だ困りますので、基礎研究からちゃんとやっていくんだということをたびたび言明されていると思うんですね。  ところが、この大型放射光実験施設というのをただいまの形でつくり上げるということは、アメリカ人に言わせると、一種のただ乗りであるというふうに言われかねないわけです。と申しますのは、このSORというもの、つまりシンクロトロンという加速器がまず発明されました。この加速器を発明した駆動力は実は素粒子論者にございまして、より高いエネルギーの粒子をつくり出すということに夢中になっていて、加速器に対して新しい工夫が絶えず加えられてきた。皆さんもよく御承知のとおり、現在では大変高いエネルギーの粒子がつくれるようになっているわけです。その一こまとしてシンクロトロンというものが発明されたわけですが、その発明は三十年ぐらい前の話です。  しかし、シンクロトロンを発明された方は、それを加速器、つまり粒子の勢いをよくするということだけで、できた粒子をほかの粒子にぶつけましてそこから新しい粒子が発生してくることを期待してやっておりましたものですから、そのシンクロトロンに、電子を高速度で回しますと、その軌道から大変いい性質を持った光が出ているということに余り気がつかなかった。しかし、窓をあけてみますというと、実は大変よく光っているということがすぐ目に見えるわけです。  それで、その光を光源として利用しようではないかという発想がそのシンクロトロンの加速器が発達した段階で出てきたわけでございまして、その光源として利用する研究というものが二十何年前に始まっていると思うんですが、それ以来いろんな形で、アメリカで申しますと、ウィスコンシン大学のSORとか、あるいビューロー・オブ・スタンダーズのシンクロトロンとかというのがそういう仕事を手始めに始めております。それがだんだん成績を上げてまいりましたので、今からちょうど二十年ぐらい前になりますが、日本の科学者がそれと同じ光源用のシンクロトロンをつくろうといたしまして、田無市にあります原子核研究所のシンクロトロン、それから出てまいります勢いのいい電子を使いまして、それを光源として利用するという仕事を始めたわけです。  その当時、私は名古屋大学のプラズマ研究所の所長をしておりまして、原子核研究所の所長さんと、それからもう一人は物性研の所長さんと三人連名で文部省に陳情書を出しまして、そういう新しい光源をつくっていただくようにお願いした記憶があるわけですが、それが二十年ぐらい前だったと思うんですね。  つまりそれ以来いろんな工夫が積み重なりまして、だんだんシンクロトロンのエネルギーも大きくなってきて、そして御承知のように、筑波の高エネルギー研究所が、本来の目的であります素粒子論的な加速器のほかに、あわせて応用という面を含めて大変高エネルギーの粒子をためた装置の中でその粒子の出すシンクロトロンラジエーションを光源として利用するという、そういう仕事を始めました。それが好企画であったのでしょう。一つは、それをつくった当時には世界最大のエネルギーを持ったシンクロトロンであったわけです。それから、非常に上手につくりましたので非常に利用率が高くて、例えば現在で言うとNTT、電電公社なんかがその一つのチャンネルを独占して利用するとか、民間の会社がそれを利用するとかというような話が広がりまして非常に役に立つということが実証されたわけです、実際問題に役に立つことが。そういう段階でこのお話が出てまいりますというと、つまり今までの二十何年間積み上げた技術の上でそのいいところだけちょうだいするというただ乗り論的非難というものが出てくるおそれがあると思うんですね。  それで、私はこういう計画をお立てになるときには、少なくともこういう光源というものをつくるという意識はそもそもどういうところから出てきたか。それから、これからつくるについてはもう少しただ乗り論でない要素をつけ加えるべきであるというふうな感じを持つんですが、その辺のところの今度のこういうSORをおつくりになるそのフィロソフィーというものがもしおありになっりたら聞かせていただきたいと思うんです。
  66. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 大型放射光施設をつくりたいという発想でございますが、これはもう既に先生お話ございましたように、長い歴史の上に研究の面で非常に役に立つということが皆さんにだんだん認識をされてきました。さらに日本として物質材料系だとか、情報・電子、ライフサイエンスといった分野においての基礎研究をもっと進めるためには、大型放射光施設というそういった道具が必要だという発想から、日本におきましても、ヨーロッパ、アメリカ計画と並んでそういった施設をつくろうという考え方になっておるわけでございます。  そういった際に、先生指摘のように、大型放射光施設そのものというのは日本人が考え出したものではなくて、そもそもは外国人の発想であり、それをみんなの力でだんだん改良されたものであるので、日本でつくるならば本来的に全く違うシステムの日本独自のものをつくるのが、本来であればそういったただ乗り論的な批判に対してこたえる道ではないかというふうに御指摘いただいているのかと思いますが、確かに先生の御指摘そのとおりだと思いますが、現時点におきまして私どもできるだけ基礎的な研究を進めるために、その手段としての放射光を必要であるというふうに理解をいたしておりまして、そのためには、今まで積み上げられました技術の延長線の上に立ってさらに発展させたものをつくるということがまずは大事であろう。  それをやることによりまして、放射光枝術というよりは、それを使った分野での基礎的研究が非常に進むのではないか。その中におきまして世界に対して貢献するという役割も出てくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。全く違った発想につきましては、当然私ども今後そういった発想につきましては考えていく必要があるかと思いますが、具体的な施設計画ということになりますと、やはり今までの実績と申しますか、そういった技術の延長線の上で計画をつくるのが適当ではないかという考え方で進めておるところでございます。
  67. 伏見康治

    ○伏見康治君 文部省の方見えていますか。  文部省関係ではいろんなところに放射光施設をつくってきたと思うんですが、今までつくってきたもの、現在あるものの状況をひとつ説明してください。
  68. 山田勝兵

    説明員(山田勝兵君) 放射光施設につきまして、その経緯等につきまして先生からいろいろお話があったわけでございますが、文部省関係といたしましては、先ほどお話がございましたように、昭和三十九年に東京大学の原子核研究所の一・三GeVの電子シンクロトロンを利用して開始しております。それから、昭和五十年からはやはり東京大学の原子核研究所の専用リング、後に東京大学の物性研究所の方に移管してございますが、それを用いて行われました。現在、その後その東大の物性研究所のISSP―SOR、それから岡崎国立共同研究機構の分子科学研究所にUVSOR、これは〇・七五GeVでございますが、そういうものをつくっておりますし、それから高エネルギー物理学研究所に先ほどお話のございました放射光実験施設、二・五GeVの施設を建設いたしております。
  69. 伏見康治

    ○伏見康治君 それで、そもそもの発想はアメリカ人ですけれども、それを築き上げていく途中の努力は日本はしてきたと思いますので、そういう努力の上に立って今度の計画もぜひ進めていただきたいと思うんですが、その際にやはり大きなものをつくるという、利用するという面だけでなくて、今後さらに発展するためにも基礎研究的な面というものもつけ加えるべきだと私は思うんです。  その一つは、現時点で既にいろいろ試みられている、例えばシンクロトロンの電子の通る道のところにくし型の磁場を入れまして、いわゆるウィグラーというものを入れてより光を強くするといったような、そういう物理的ないろいろな技術的な技巧が開発されつつあるわけですが、そういうような面に対する努力といったようなものはもちろんお考えになっていると思うんですが、ぜひやっていただきたいと思うんです。  そのほかに、これはまだ紙の上の理論にすぎなくていささか早走り過ぎた感じもいたさないわけではないんですが、大阪大学の池上栄胤教授が発明した考え方があります。それは自由ポジトロニウムSORというものですが、電子と陽電子と同じ速さで高速の速さで走らせておいて、その電子と陽電子とがポジトロニウムという――電子と陽子であるならば水素原子になるところを、電子と陽電子とがくっついてできるポジトロニウムというのがございますが、そのポジトロニウムができるときに出す光、その光を利用するという提案をしておられます。そういう新しい提案をもっと現実化する、本当の役に立つものに仕立て上げるといったような試みもどんどん出てくるべきだと思うんですが、この装置は恐らく簡単にテストするということはなかなか難しい話で、相当本腰を入れなければ、紙の上でやった理論だけではどうにもなりませんから、相当大きな投資をしなければこの池上さんの発案というものが確かに動くかどうかということをテストすることはできないので、相当本腰を入れた取り上げ方をしないといけないと思うんですが、今度の科技庁の企画の中に例えばそういう新しい仕組みの放射光実験施設というものを用意する御準備があるかどうかを伺いたい。
  70. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 科学技術庁で考えております大型放射光施設は、先ほど来お話しございました長いSORの技術開発の延長線の上に立ってできるだけ早い機会にそういった手段をいろんな先端分野研究者の方々に提供しようということでございまして、そういう技術開発に当たりましては、そういった発想の中で生かせるものにつきましては、例えば先ほどお話しございましたウィグラーの技術といったようなものにつきましてはできるだけ工夫をいたしまして取り込んでいきたいというふうには思っておるところでございますが、そういった形での大型放射光とは全く原理が違う、考え方が違う放射光施設、例えば先ほどお話がございましたような大阪大学の池上先生の発想といったものにつきましては、私どもは私どもの計画の中には考えてないというのが実情でございます。いずれにいたしましても、そういった基礎研究成果につきましては、今後とも関心を持って勉強をさせていただきたいというふうに思っております。
  71. 伏見康治

    ○伏見康治君 そこで、大臣の御感想を伺いたいんですけれども、ただいま相当大きな放射光実験施設をおつくりになるという計画をお立てになって、まだ本当の予算は取っておらないけれども、それに対して着々と準備の手を打っておられる。私に言わせると、それだけでは要するただ乗り論になってしまうと思うんですよ。それだけではそうなってしまうと思いますので、ぜひ新しい分野を開拓していくという面もあわせてお考え願いたいと思うんですが、大臣のそういうことに対するお考えはどうですか。
  72. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 今の大型放射光を含めましていわゆる私どもで光科学技術と言っておりますが、これにつきましては、昨年の七月に、科学技術庁長官の諮問機関でございます航空・電子等技術審議会というのがございます、そこで答申をいただいておりまして、今のいわゆる放射光あるいは最近特に注目されつつあります極端紫外光といったようなものも含めて基礎的な研究から始めるべきだという報告を受けておりまして、この報告を受けまして、関係省庁とも手分けをしながら、基礎的な研究については今進めょうとしておるところでございます。その一環として、またあるいはそのための研究手段の一つとして、やはり大型放射光施設も重要な役割を担うものというふうに思っているわけでございます。
  73. 伏見康治

    ○伏見康治君 私の質問とどうも多少すれ違っているようなお答えだと思うんですがね。しかし、とにかく光科学一般にわたって基礎的なところから考え直すというお話は大変結構だと思うんですが、それを単なる机の上の議論でなくして、もう相当具体的ないい案が出ているわけですから、それを集中的に議論なさるべきだと私は思います。でないと、またその他上さんの発想もどこかヨーロッパあたりでもって実現してしまって、またただ乗り論というふうになりかねないと思うんですね。本当に研究の苦労をする場所というものがどこにあるかということをぜひ認識していただきたいと思うんです。  つまり、他人が一遍歩いてしまった後を歩くのは極めて楽なことです。私は信州の北の方に山小屋を持っていてよく雪の中を歩くことがあるんですが、初めて雪の中を歩くのと、一人でも歩いた後を歩くのとではまるで違うということがよくわかるわけですが、初めて歩くということの苦労を知ってみせなければ、僕は日本は永久にただ乗り論、つまり人の歩いた後だけを歩いていると言われかねないと思うんですね。科学技術庁長官はひとつヨーロッパ人やアメリカ人のまだ歩いていないところを日本が歩くという計画をぜひ考えていただきたいと思います。  ところで、話をちょっと変えますが、そういういろんな発想の中で、先ほど文部省から日本にあるいろいろなSORのお話をしていただきましたが、もう一つ文部省でないところにありまして、電総研の中にございます。これは通産省の関係の方ですが、電総研というものは昔電気試験所と言ったはずだということを思い出しまして、それとアメリカのビューロー・オブ・スタンダーズというものを連想したわけでございます。アメリカのこの新しい光源をつくろうという意欲はビューロー・オブ・スタンダーズがまず初めに描いたわけでございます。そこからこのSORの話が発展してきたんだと思うんですね、二十何年も前の話ですが。日本にはそのビューロー・オブ・スタンダーズに類するものがあるのかないのかよくわかりませんが、しかし昔の電気試験所といったようなものは恐らくビューロー・オブ・スタンダーズを念頭に置いてつくられた施設であったと思うんですが、いつの間にか試験所が研究所に変わってしまったと思うんです。  このビューロー・オブ・スタンダーズのようなところでSORの萌芽が出てきたということは、これは自分の仕事をちゃんとするために必要なものを求めた結果出てきたと思うんですね。つまりちゃんとした光源をつくって、それをいろいろな分光的なものに使うとか、いろんな分析の手段に使うとか、光がちゃんとしたものでなければちゃんとした実験はできないわけですから、研究、試験ができないわけですから、それに必要な道具を探してSORという発想に到達したと思うんですね。  それで、日本でも同じような場所が昔は少なくともあったはずなんですが、そういうところでちゃんとした光源をつくろうという、そういう意欲というものがどうして日本ではわいてこなかったのか、それを反省したいと思うんですが、これについて何か御意見ございますか。
  74. 川崎雅弘

    政府委員川崎雅弘君) 現在手持ちの資料ございませんが、先生指摘のNBSにかわる機能というのは、現在通産省の所管で度量衡に関しては計量研究所が行っておりますし、それから電気標準といいましょうか、あるいは電波標準というのについては電総研とそれから電波研究所がこれの維持管理に当たっておるわけでございます。  今資料がないので正確にはわかりませんが、たしかメートル原器につきましては、計量研究所のアイデアをもとに、クリプトンの発します光の波長をベースにするように原器の維持が変わりまして、国際的なスタンダードもそれに統一されたと聞いておりますし、時刻につきましても、セシウムの振動といいますか、それを利用するというふうに変わっております。たまたま寡聞にして放射光問題についてどういう研究をやったかというのは、私どもの所管でもないので、ちょっと手持ちの資料もございませんので、淵源についてはよくわかりかねるところがございます。申しわけございません。
  75. 伏見康治

    ○伏見康治君 私の申し上げたいのは、ビューロー・オブ・スタンダーズ的な発想というものが日本のいろいろな機関の中でなぜ起こってこなかったか。つまり試験所というと、与えられた道具を使って外から運び込まれてくるいろいろなものをただ検査するということだけが仕事であると思っている。何というのか、非常に受け身で物事を考えている証拠だと思うんですね。つまり自分がいろいろなものを試験していく上に必要な道具というものをちゃんとそろえなくちゃ仕事にならないわけですが、その道具をより高度なものにしてよりしっかりした試験をしようという、そういう意欲がなぜ日本の試験所から出てこないのかということを承りたいんです。特に過去において昔試験所と言っていたものが研究所と名前を、看板を塗りかえている、その思想的背景というものはどこにあるか、何か少し甘えているんじゃないかという感じを受けるんですが、その辺のいろいろな、試験所を研究所に改組したそのフィロソフィーを聞かしてください。
  76. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) まず、御質問の後段の方についてお答え申し上げます。  国立試験研究機関のあり方につきまして、昨年八月の科学技術会議の答申を受けまして、十月に「国立試験研究機関の中長期的在り方の基本」を内閣総理大臣決定したところであるわけですが、あの決定内容を細かく見てみますと、まず「基本的考え方」の中に、「国立試験研究機関の役割は、研究等の実施を通じて行政上の政策の遂行に資することである。」というふうになっておりまして、当然のことながら御指摘の検査、分析、標準化といった業務は重要な業務だと認識しているわけでございます。  具体的にこの「基本的考え方」にさらに六つの基本的方向が明示されておりまして、この六つの方向の中にも、細かくは二つ、基本的には一つ今御指摘のようなところがはっきりと示されております。  まず一つ、「標準、気象等科学技術的な基礎資料を作成するための調査研究については、必要性の高いものを長期的視点から着実に行う」、それから「国際的な標準・規格等外国との関係において国を代表するような科学技術データの作成、あるいは研究協力国際社会に対して貢献する業務を行う」というふうな、この大きな六つの方向の中の二つが標準化関係について指摘されておるわけでございまして、さらに基本的には「市場原理にはなじまない分野」や「行政上の必要性や国民のニーズを十分踏まえたものを行うこと」という第一番目の項目でそうした基本的考え方がうたわれておるわけでございます。
  77. 伏見康治

    ○伏見康治君 その方針は結構なんですけれども、やはり何か迫力が足りないような感じがいたしますですね。どう表現したらいいかな、日本の教育が多分悪いんだろうと思うんですが、日本の教育というのは、先生が問題を出して生徒さんが一生懸命に解く。その練習を小学校から大学を終わるまで続けているものですから、教育を受ける方は、問題というものは与えられるものであって解くだけやればいいんだということになっていると思うんですが、今のお話を聞いていると、何かそんなような感じがするんですね。問題はどこかよそから来て、それをただ一生懸命解けばいいんだという、そういう感覚、印象としてはそういうものを受け取るわけです。  しかし、本当の創造的な活動というものは問題を見つけるところにあるわけです。問題を見つけてそれを解いてみせるのがノーベル賞だと思うんですが、そういう問題を見つけるという発想が今おっしゃったものの中にはどうもあらわにあらわれていないと思うんですが、あるいは聞き違いかもしれませんが、どうですか。
  78. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 第一番目の御質問に答弁しておりませんでしたが、今の御質問にあわせてお答えを申し上げますが、標準化に対する取り組みというのは二つの視点があるんじゃないかと思います。一つは、やはり物事を整理していく方向での標準化の業務、それからもう一つは、今先生の御指摘のような、新しいものを生み出していくための基礎となる標準化、いわゆる基礎研究開発は必要な標準化でございます。御案内のように、日本は戦後キャッチアップの過程で恐らくそうした前者の過程を経てきたわけで、まだまだ後者の新しい研究を進めていくに必要な標準化というものには至ってなかったんではなかろうかというふうな感じがしておりますが、その問題はこれからの我々がまさに解決すべき問題ではないかと考えております。
  79. 伏見康治

    ○伏見康治君 もう疲れましたのでこの辺でやめますが、最後に長官から、ぜひ創造性のある科学技術推進体制というものについての長官のいわば信念をお伺いしたいと思います。
  80. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生の御指摘なり御質問の中に私が申し上げたいことがすべて言い尽くされておるようでございますけれども、たまたま私東北大学の西澤潤一君と高等学校が一緒で、学生時代からよく会っておるわけでございますけれども、彼の意見とか、また先般の利根川さんとの会談での印象とか、また先生の御指摘などを見まして、もう我々は世界のまねごとをして済ませられる国ではなくなったわけでございまして、これだけの経済力を持ち――西澤潤一君は、昔日本に素封家というのがいて、素封家が地域の若い子弟をそれなりの経済力で育てたというようなことがあって、それが今日の日本を形づくったわけだけれども、今や日本世界の素封家ともいうべき地位になったので、もうまねごとばかりしてはいけないと。  今御指摘のとおり、自分で問題を見つけて、それを自分の努力によって解き明かしていくという世界のトップランナーとしての地位をぜひ我々は進んでいかなくちゃいけない。あくまでも創造科学を目指して、また基礎研究充実を目指して、十年先、二十年先か何かわからない、あるいは結果が出ないかもしれない、そういう基礎研究推進は全力を投球して、日本が置かれておる国際的な地位、立場をしっかり貫き通して、先生指摘のような方向に日本科学技術というものを持ってまいりたい、このように考え、そのための研究環境の整備、あるいは文部省の問題になりますけれども、これまた先生指摘の教育制度の問題、また大学のあり方等々にも敷居を越えて大胆に踏み込んで、科学技術の調整官庁としての長官の立場で大胆に踏み込んで、ぜひ日本のトップランナーとしての地位が確保できるような科学技術政策の推進を進めてまいりたい、このように念願をしておりますので、先生を初め皆様方なお一層の御鞭撻をお願いしたい、このように考えておるわけでございます。
  81. 吉井英勝

    吉井英勝君 日本共産党の吉井英勝でございます。限られた時間でございますので、私は我が国の科学技術政策の基本にかかわる問題についてお聞きしたいというふうに思います。  まず、昨年の夏のことでございましたけれども、新聞などに報道されましたように、「米国防総省は三十一日までに、日米武器技術供与取り決めの一環として一九八四年七月以来、三次にわたり日本の先端技術企業十一社と防衛庁技術研究本部を視察した専門家調査団の最終報告書「日本の光電子工学およびミリ波技術」をまとめた。報告書は、米国の軍事技術開発計画への「応用の可能性が特に高い、多くの技術分野が確認された」と結論付け、」云々とありまして、そして、いずれも達成され、日本の政府当局者もフォトンエレクトロニクス及びマイクロウェーブ、ミリウェーブ技術の交流の確立で協力する前向きの意向を表明した、今後の軍事用技術の移転に展望が開けたことを強調している、こういうこと等が報道されましたけれども、そこでまず長官に最初に伺いたいんですが、日本科学技術外交として米国の軍事技術開発に積極的に協力するという立場への転換といいますか、そういう立場に立つことになったのかどうか、その点からまず伺いたいと思います。
  82. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 科学技術庁は、科学技術振興を図り、国民経済の発展に寄与するため、科学技術に関する行政を総合的に推進することを主たる任務としておるわけでございまして、科学技術庁は、このような任務からして、武器の設計等に専らかかわるいわゆる武器技術そのものの研究開発推進に当たるものではないので、従来より対米武器技術供与につきましては関与してまいらなかった、このように申し上げます。
  83. 吉井英勝

    吉井英勝君 そこで、少し報道等を見ておりまして気になりますのが、「日本の政府当局者も」ということで入っておりまして、日本の政府当局者となりますともちろん科学技術庁も入っておりますので、この点で少なくとも、よそはどうあれというそういう議論じゃなくて、やはり科学技術庁を先頭として日本科学技術外交の基本としては軍事技術開発協力するという立場はとらないということ、この点は確認さしていただいていいでしょうか。
  84. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) そのとおりでございます。
  85. 吉井英勝

    吉井英勝君 さて、今度の日米科学技術協力協定の改定交渉が難航していると聞きますが、主要な対立点は一体どこにあるんでしょうか。
  86. 法眼健作

    説明員(法眼健作君) ただいま日米両国間で科学技術協力の協定改正の交渉が行われておるわけでございますが、今まさに交渉中でございまして、その内容、どういう点が対立点か等の御質問でございますが、内容につきましてはただいま交渉中でございますので、その点については申し上げられる段階にございませんものでございますから、この点御了解いただきたいと存じます。
  87. 吉井英勝

    吉井英勝君 交渉中で答えられないということなんですが、三月二十日の報道を見ておりましても、「米側が、科学技術の重要問題を協議する閣僚級の合同委員会設置を提案、日本側もこの点に関してはほぼ合意していることが十九日、明らかになった。現在日米間には、この改定交渉以外にも、原子力協定の承認や防衛技術の秘密特許制度準用など科学技術政策をめぐる問題で両国の対立が表面化しており、閣僚級レベルの定期協議が実現すれば、科学技術外交上大きな意味を持つ。」、こういうふうな報道がございます。そこでまず、こういう閣僚級の合同委員会設置、こういう点でほぼ合意していると言われているんですが、外務省、この点はいかがですか。
  88. 法眼健作

    説明員(法眼健作君) その点も含めましてただいままさに交渉中でございまして、その成り行きという点につきましては、ただいま申し上げましたとおり、まさに今アメリカ側と話し合っているところでございまして、その見通し等、その点につきましては今交渉中でございます。
  89. 吉井英勝

    吉井英勝君 そうしますと、これは交渉中であるから答えられないということなんですが、これは情報がリークしたのかどうなったのかよくわかりませんが、これはあれですか、閣僚級の合同委員会設置についてはほぼ合意しているという、これは合意していることはないというふうに理解していいんですか。
  90. 法眼健作

    説明員(法眼健作君) 今まさにそういった点も含めまして、日米科学技術協力のしかるべき枠組み、適切な枠組みというものがどういうふうにあるべきかということについて交渉をしているわけでございます。
  91. 吉井英勝

    吉井英勝君 これは二十八日のまた報道によると、「米国が安全保障上の理由から機密に指定した軍事技術関連特許の日本利用問題をめぐって、日米間で秘密交渉が行われていたことが二十七日、明らかになった。 交渉は既に大詰めを迎えており、米国防総省が防衛庁の要請に応じて軍事機密特許を提供し、その利用を認める方向でほぼ合意に達している。日米両政府は近く、交換公文と了解事項覚書を取り交わす方針。」、こういうことも報道されておりますが、まずこういう交渉を行っている事実があるのかどうかということですね。それからまた、軍事機密特許の提供に関してほぼ合意に達しているとか、交換公文と覚書という段階に至っているのかどうか、この点伺いたいと思います。
  92. 新関勝郎

    説明員(新関勝郎君) 防衛庁といたしましては、近年各種先端技術の装備品に占める割合が増大しているという背景がございまして、防衛技術の相互交流の一層の円滑化を図る、それから、そういうことで防衛分野における日米間の協力を進展させていくということで、いろんな意見交換とか話し合いというものをやってきているところであります。こういう話し合いの一環といたしまして、日米両国が保有する防衛の関連技術を最大限交換するという見地から、米国の秘密特許資料を我が国に導入する問題についても現在日米間で調整をしておる、そのための具体的方策について協議をしているというところでございますが、その具体的な状況につきましては現在交渉中でございまして、アメリカ側の立場等もございまして、現時点でこれ以上述べることは差し控えたい、こう思います。
  93. 吉井英勝

    吉井英勝君 あわせまして、軍事機密漏えいを防ぐために日米技術協定、五六年協定ですね、この実施細目を新たに作成されるということも伝えられておりますが、この点はいかがなんでしまうか。
  94. 岡本行夫

    説明員(岡本行夫君) 日米間には昭和三十一年、一九五六年でございますけれども、結ばれました防衛目的のためにする特許権及び技術上の知識の交流を容易にするための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定といういささか長い名前の協定が国会の御承認を得て締結されております。五六年協定と呼びならわしております。  この五六年協定の第三条におきましては、米国で秘密に保持されております特許の出願につきまして、我が国におきましても一定の手続のもとに米国における取り扱いと類似の取り扱いを受ける旨の規定がございます。具体的には、米国におきます秘密保持が終わるまで我が国におきます特許の出願を公開しないことでございます。この第三条は現在まで具体的には実施されないまままいりましたけれども、現在その実施のための手続細目について日米間で事務的な話し合いを行っているところでございます。
  95. 吉井英勝

    吉井英勝君 さらにこの報道によると、「軍事機密特許の運用をめぐっては最終的な詰めが残されているが、日米双方は①防衛庁が要請すれば、米国防総省は原則として機密特許を開示し、利用も認める ②防衛庁は、受け取った特許を秘密度の最も高い「機密」扱いにし保護する」と、この二点は了承済みということだということも載っておりますが、この点は事実でございますか。
  96. 新関勝郎

    説明員(新関勝郎君) 現在日米間で協議をしているところでございまして、その具体的状況につきましては、交渉中でもありますので、また米側の立場等もありますので、現時点でこれ以上述べることは差し控えたいと思います。
  97. 吉井英勝

    吉井英勝君 そうすると、両国の話し合いの途中の部分はお答えできないということなんですが、少なくとも日本側としては、防衛庁としては軍事特許を具体的にどのような形で保護しようということを内部としては検討しておられるんですか。
  98. 新関勝郎

    説明員(新関勝郎君) 特許の保護の問題はちょっと私どもの所管ではございませんのでお答えはできませんが、防衛庁といたしましては、先ほど申し上げましたように、先端技術の装備品に占める役割、その割合が増大している背景がございまして、防衛技術の相互交流の一層の円滑化を図り、日米間の防衛分野における協力を進展させるということから種々の話し合いを行っておりまして、こういうことでそういう資料の導入の問題についても協議をしていると、こういうような趣旨でございます。
  99. 吉井英勝

    吉井英勝君 この防衛協力なり軍事技術開発の問題をめぐって非常に際どい問題といいますか、非常に危険な状況が出てきているように思うんですが、次に特許庁に少し関連してお伺いしたいんですが、日米科学技術協力協定に基づく合同プロジェクトで発明された技術日本で特許申請した場合に、アメリカ側において秘密特許扱いとなったものについてはどういう扱いになりますか。
  100. 山本庸幸

    説明員(山本庸幸君) まず御説明いたしたいことは、現在、先ほど来御説明しております五六年協定第三条の実施細目に関する日米両国政府間の話し合いが行われているわけでございます。これはあくまでも国会の御承認を受けた条約の実施についての話し合いでございまして、私どもとしては日米科学技術協力協定交渉とはまた別個のものと理解しております。  で、今の御質問でございますが、そういうことでこの五六年協定第三条の実施細目について今後その話し合いが取りまとめられまして、この措置が実際に実施に移されました暁には、米国で秘密特許出願扱いになっている発明のうち、米国政府より我が国政府に防衛目的のために提供されたものに限って我が国でもこれを公開しないということになるものと考えております。
  101. 吉井英勝

    吉井英勝君 実はそこが非常に際どい問題でして、日本ではこの民生用の技術開発、特許であると。しかし、アメリカ側からすると軍事用ないしはその転用のおそれありということでなってまいりますと、これは日本研究開発は規制を受けることになりますね。まあ極端な話をしますと、伏見先生御専門のラザフォードの実験にしても、私も科学万博へ数年前に行ったときに見ましたけれども、エンリコ・フェルミなんかの原子核実験もやがて将来は核兵器開発に転用されるおそれありとか、そういうことになってまいりますと、本当の意味での科学技術の発展というのは望めないわけで、こういう点では科学技術分野に安保条項を持ち込む、あるいは秘密特許というものが具体的に動き出してくるというのは、これは日本科学技術の公開の大原則というものを根底から突き崩すという非常に大事な問題になってくると思うんですよね。  この点で長官は、科学技術の公開の原則というものをまず大前提としてそれを守っていくという、そういう立場にやはりしっかり立っていただきたいと思いますし、この点では、秘密特許の問題なり安保条項の問題については日本科学技術の発展にとってはこれはだめなんだということ、そういう点で科学技術の公開の大原則を守る立場からやはり頑張ってもらわなきゃならぬのじゃないかと思うんですが、この点で長官のお考えを伺いたいと思います。
  102. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 一般論でございますが、先ほどからたびたび申し上げておりますが、こうした二国間なりの共同研究というのはいろんなタイプがあるわけでございまして、研究の目的とか、あるいは実施の主体とか、研究分野とか、あるいは基礎とか応用とかいった研究の性格などで、そうした背景でいろんな取り決めがなされたりする場合があるわけでございますが、一般に我々常に言っておりますように、科学技術の発展に情報というのは非常に大きな役割を果たすわけでございまして、情報の流通というのはできるだけ円滑に行われることが望ましいというふうに考えておるわけでございまして、こうした観点に立ちまして十分に調和のとれた科学技術情報の取り扱いがなされる必要があるというふうに考えております。
  103. 吉井英勝

    吉井英勝君 情報の交流云々の話じゃなくて、これは基本問題を私お聞きしているんですが、もともと一九八〇年の、よく御存じのように、日米科学技術協定の第一条ですね、目的には「平和的目的」とちゃんとうたっているわけですね。ですから、この「平和的目的」ということにちゃんと立つならば、安保条項の持ち込みや秘密特許の問題については、当然日米間の本当の意味での平和的な科学技術の発展のための協力分野においては必要ないわけですね。そのことはやはり原則としてちゃんと踏まえてやっていかなきゃ困る、こういうふうに思うわけです。  この問題に関連して秘密特許が存在しているという、これは先ほども実は五六年協定の中では秘密特許の扱いの問題が出てきているわけですが、アメリカの方は日本科学技術に多方面の軍事利用の価値を認めてそれを軍事利用したい、そのために今回の科学技術協力協定の改定交渉でも閣僚級の合同委員会の発足とか、問題をできるだけ政治的に進めようとしているようにうかがえますね。アメリカ側は安保をてこにして日本の民生用ハイテクを完全にアメリカの統制下に置いておきたいという、そういうねらいもあるようですが、防衛庁も、アメリカの軍事技術利用したいがために、軍事特許を日本でも機密扱いにしていこうという、そういうところがうかがわれるわけですが、こういうことになると、これは本来の科学技術の発展とは本当に関係のないところへいってしまう、こういう点で非常に危険な問題だということを指摘しておきたいと思うんです。だからこそ、現在国の内外問わず批判の声が上がっているわけですね。  日本学術会議の近藤次郎会長は、こういう安保条項や秘密特許の問題などについて「絶対反対だ。公開という科学の大原則に反する。もし政府が譲歩するならば学術会議は反対声明を出すつもりだ」と。また、文部省学術情報センターの所長で、昨年十月まで経済協力開発機構科学技術政策委員会の議長を務められた猪瀬博東大名誉教授は、「政府がもしこんな要求を受け入れそうになったら、学問の自由を守るために反対運動に立ち上がるつもりだ。」と。それからイギリスの科学雑誌「ネイチャー」はことし二月四日号の巻頭論文で、日米科学技術交渉で米国の主張は誤りだと指摘しているんですね。  こういう内外の声にやはり耳を傾けていただくべきだと思うんですが、長官の見解を伺いたいと思います。
  104. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 先ほどから申し上げておりますように、先ほどは情報と申し上げましたが、要するに科学技術成果の取り扱いにつきましては、十分慎重な配慮をしつつ調和のとれた取り扱いがなされる必要があるということでございます。
  105. 吉井英勝

    吉井英勝君 これ最後にしておきたいと思うんですが、実はこの問題についてはアメリカの第二次ジョーンズレポートですね、これはアメリカ議会下院のレポートですが、その第五章の研究開発の動向で、米国政府の研究開発支出の多くは、むしろ貿易上即効効果がほとんどない軍事部門に投入されているとした上で、そのことがアメリカ産業の競争力の低下の一つの主要な原因であると指摘しているんです。つまり軍事偏重の科学技術は発展をゆがめて、結局長い目で見たときに大きな立ちおくれを生み出してしまう。  それから、そういう点では安保条項とか秘密特許の持ち込みという、日米科学技術協定第一条の平和目的を侵すアメリカ側の要求にこれはこたえるべきではないと思いますし、あわせて日本科学技術の大原則である平和目的に限って日本の国内法を尊重し、そして日本科学技術の自主的で民主的な発展のためにやはりそういう立場で臨んでいかれるべきだ、こういうふうに思うんですが、最後に改めて長官のお考えを伺って質問を終わりたいと思います。
  106. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) まず御質問の第一点、軍事技術の経済成長に及ぼす影響の問題につきましては、これは各国いろいろな政策展開があろうかと思います。これが経済成長に果たして寄与しているかどうかという問題は、各国によっていろいろな判断があろうかと思いまして、私どもから云々する問題ではございません。  それから、さらに今後の我々の姿勢でございますが、既に申し上げましたような、何度も繰り返して申し上げますが、科学技術成果の取り扱いにつきましては十分調和のとれた形でなされる必要があるということでございます。
  107. 小西博行

    ○小西博行君 私は、先ほど長官から予算概要を承りました。合わせて四千四百億ぐらいの予算でことしもやりたいということで、あらゆる分野で具体的な政策が出されております。  そこで、私はもう常日ごろから思っておるんですが、日本研究開発費全体を統計で見ますと、大体九兆円前後ということが今言われております。アメリカがまず十九兆円ぐらいですから大体その半分ぐらいまで到達したわけです。数年前は大体三分の一というように言われていたんですが、大体半分ぐらいまでいったということですから、科学技術庁予算そのものは必ずしも多くないわけです。我が国の研究開発というような大きな、例えばこれは文部省も当然入りましょうし、通産その他の各省庁の予算も入るし、それから民間研究開発予算も全部含めて大体九兆円という膨大な金額になっているわけです。  したがいまして、私は科学技術庁が何から何まで研究開発についてはイニシアをとらなきゃいけないということではないとは思うんですが、しかし、政府の性格上どうしてもこれは科学技術庁がその中心になっていろんな調整機能も十分果たさなきゃいけないし、先ほどの同僚委員の方からもお話がありましたように、今までのことをただ踏襲してやっていくというんでは非常に弱いと思うんです。ですから、長官中心にして各局長さんも含めまして前向きにやはり取り組んでいく必要があるんじゃないか。さっきの伏見先生のお話じゃありませんけれども、こういう省庁の運営そのものも、先ほどの独創的なというお話がございましたけれども、ただ従来どおり二%上がったからいいというものではないような気がするんです。そういう面で私は、科学技術庁もう少し頑張ってほしいというのが従来からの私の考え方です。  そこで、きょうはいろんな問題をお聞きしたいと思ったんですが、時間が二十分しかありませんし、皆さんも相当お疲れでしょうが、振興調整費というのがございます。これは九十二億円ぐらいですから、全体の予算からいったら決して大きいものではないんです。しかし、私はこれは大変大きな意味があるんではないかと、常々そう思っておるんですけれども、これは五十六年にできたわけですね。最初の趣旨、これは私も伺っておりますけれども、最近は果たして最初の趣旨どおり、目的どおりこの調整費というのが生きているのかどうかなという感じがするので、その辺からお話を伺いたいと思うんです。
  108. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 振興調整費の運用でございますが、先生指摘のように、昭和五十六年にこの振興調整費が計上されたわけでございまして、活用の基本方針というものが掲げられております。これは科学技術会議で決定されておるわけでございますが、ちょっと読み上げさせていただきますと、国土が狭く、資源に乏しい我が国は科学技術立国が不可欠であると、もはや導入技術への依存が許されない状況だと、あるいは先進国の一員として世界貢献が求められているという背景で、我が国は独創性に富んだ自主技術開発を主体として特に重要な研究業務の総合調整を実施するためこの科学技術振興調整費運営していくというふうに書かれておりますが、こうした基本針方にのっとって現在も鋭意努力しておるところでございます。
  109. 小西博行

    ○小西博行君 長官、ですから、振興調整費というのは金額はそれほど大きくはないんですが、科学技術会議というのがございまして、これは総理が議長になっているわけですが、そこで日本の将来に向けてどういうような分野について研究開発をしなきゃいけないという一番大きなものがそこで出るわけですね。それによって各省庁にわたる分野について予算の配分その他をやるわけです。もちろん、予算のいろんな移行の作業なんかをやる場合には、当然各省庁と科学技術庁との打ち合わせをやっていくということで、そこへテーマを決めて配分していくというシステムになっているわけです。  ところが、現実問題というのは、各省庁との現実に打ち合わせをこうやっていくものですから、科学技術庁は何か相談にはあずかるんだけれども、何となく予算をそこへ配っていく。それで、結果では何かの権限があってもっと進めなさいとかあるいはもう少しこうしなさいというようなリーダーシップというのが恐らく非常にとりにくくなっているんじゃないかなと。従来何%、金額幾らだから、ことしは少し上げてこうだとかというような格好になってしまえば、科学技術庁の機能というのは非常に私は弱まっているような気がしてならないんです。その辺のところは一体どうなのか、お聞きしたいと思うんです。
  110. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 振興調整費の具体的な運用につきまして御説明を申し上げまして御理解を得たいと思っておりますが、具体例といたしまして、総合研究のテーマを例に挙げてどのように運営されているか御説明申し上げます。  科学技術会議の政策委員会の下に研究調査委員会というのを設けまして、ここでまず毎年度重点的に研究推進すべき分野を定めます。これは毎年次第に内容が変わってきておりますが、ことしは三つ分野でございますが、物質材料ライフサイエンスと、それから地球でございましたか、三つが指定されておりまして、新たに地球科学が入ったと記憶しておりますが、ここでその分野が明示されますと、それに従って各省庁あるいは民間から具体的な提案が出てくるわけでございます。  それで、実際昨年の例を見ますと、約百課題ぐらい提案がありまして、これをどんどん事前評価を重ねます。これは評価手法がきちっとございまして、科学技術庁で採点して評価する、一つのフォーマットに従ってやっていくわけでございます。そこで、その採点結果を科学技術会議研究調査委員会で御検討をいただきまして、昨年ですと九十九課題を七課題に絞っているというふうな状況でございます。  それからなお、細かくなりますが、その後の課題が七つになった後、この七課題をどのように各分担、研究していくかということにつきましては、科学技術会議のその調査委員会がある学識経験者を選定いたしまして、その学識経験者に研究体制を御検討いただきまして、科学技術庁がそれをさらに調整し、学識経験者の方と意見を打ち合わせながら研究体制の決定をするというふうな状況でございます。  さらに、決定して動き出した後、中間評価というのがございまして、これは三年ばかりすると、すべて中間評価をする仕組みになっておりまして、これは科学技術会議政策委員会の下に評価委員会というものが設けられております。その評価委員会の下に各課題ごとにワーキンググループが設けられまして、これは推進している方々、全く独立した方々によるワーキンググループが設けられております。そこで非常に綿密な、これもやはり科学技術会議で設定された中間評価の様式に基づいてやっておりますが、課題の中で中断すべき分野とかテーマとかいうものをそれぞれきめ細かに御検討いただいて、実質的に内容の再編成をしたり中断させたりして、そうした結果、第二期に移行するものは装いを新たにして第二期に移行するという仕組になっております。  さらに、第二期に移行した後あるいは第一期で終了したものにつきましては、事後評価というものが評価委員会のワーキンググループでなされて、この評価結果につきましては、課題を選定する調査委員会の先生方の次の課題選定への御参考としていただくということと、実施した機関にもその資料を提示いたしましてフォローアップをさせていくというふうなことをやっておりまして、先生指摘のような、ただ振興調整費を各省庁の申請のとおりに予算を配分していくということでは全くございません。
  111. 小西博行

    ○小西博行君 そのこともよくわかっております。結局最終的には科学技術会議がそれの評価をするということですね。余りいい結果が出ないようなものはもうそこでやめてしまうとか、そういうことも聞いておるんです。  そこで、私ども科学技術特別委員会のメンバーでよく調査に参りますよね。今は超電導超電導でもう全部超電導の話ばかりですけれども、例えばバイオですね、理化学研究所へ行きましてもバイオは盛んにやっている。筑波学園都市へ行きましても各省庁、例えば農水省その他でもやっている。私は、せっかくそういう調整機能があるのであれば、そういう研究をやっぱり一つにまとめて設備なんかも十分に使いやすいようにすれば――研究施設が大体おくれてきますから、思い切った予算をかけたいと思っても、全体の予算が少ないものですから、三年ぐらいかけてやっと一つのものをつくり上げるということも聞いているわけです。そういうことを科学技術庁中心になって推進していくという機能をそこへ思い切って入れなければ、結果は非常に合理的ではないんじゃないか。もちろん研究者同士ですから各省庁で競争するという原理は当然あるわけです。だけれども、私はそればかりではないんじゃないか。縦割りのシステムになっておるものですから、なかなかその辺がうまくいかない。  そういう意味では、流動研究システムというのは非常にいいリーダーシップを中心に展開していくというので、私は非常におもしろいと思うし、これからああいうものはもっとふえなければいけないと思うのだけれども、私は、今の科学技術庁がリーダーシップをとるために、そういうようなもう少し効率的なやり方というのも、もちろん競争原理も考えながらやっていく必要があるんじゃないか。そういたしますと、科学技術庁の存在感というのは私はもっと表に出てくるんじゃないかという感じがして、応援する立場でいつもいつも私はそう思っているんですが、その辺に対しての決意はどうですか。
  112. 加藤昭六

    政府委員(加藤昭六君) 大変私どもの御支援という観点からの御指摘ありがたくちょうだいいたしますが、具体的に私ども今運営している仕方につきまして、正直申し上げましてまだまだ改善していくべき点は多々あると思います。例えば昨年から研究調査委員会の学識経験者が課題の大勢をくみ上げることをやるような仕組みが入ってきたとか、ことしもまたもう少し細々したいろいろな体制の改正が加えられますが、今後も逐次先生の御指摘のような方向でさらに効果的な科技庁の総合調整機能を十分に果たすべくいろいろ検討を重ねていきたいと思っております。
  113. 小西博行

    ○小西博行君 もう時間がないから次に移りますけれども、外国人の研究者の受け入れというのがあるでしょう。それは一つプロジェクトに来てもらうという、お互いは交流するということもありますし、例の公務員、これは研究交流促進法ですか、そして日本の省庁へ登用したいというか、しましょうということで、もう現実に外国の研究者が来ているんですね。ところが、これ調べてみると三人ですよね。これ私も実はびっくりしたんですが、科技庁、通産、厚生で一名ずつ。どうしてこんなに人数が少ないのかなと。科学技術庁の中にはちゃんとうたっているんですよね、そういうのを。だから、これは随分大勢来ているのかと思って調べたら三名なんですね。各省庁に聞いてみますと、定員制があるのでとてもとても採用できないという話なんですね。こういうものは私は定員とは別に考えないといかぬ。しかも海外に対してどうぞいらっしゃいなんて言いながら実は三名。大体助教授クラスということを聞いているんですが、これ何とか解決しないと、こんなに大きくふろしきを広げて、外国から行きたいと思っても三名というのがこれ現実の実績でしょう。これ何とか考えられないですか。
  114. 吉村晴光

    政府委員吉村晴光君) 御指摘のとおり、外国人の研究者を招いて日本研究者と相互に刺激を与えながら研究を進めるということは、我が国にとっても大変メリットがございますし、また国際的な貢献という点からも大変大事なことでございます。  そういう観点で私どもとしましては、従来から招聘制度というものがあったわけでございますが、欧米におきましては、単に外国人を招聘するというだけではなくて、公務員として採用するという道も開いておるという状況にもございます。その数自体がそんなに多いということはないわけでございますが、いずれにしましてもそれぞれの国の科学技術システムを国際化するということの一環として、ただ単に外国人研究者を招聘するというだけではなくて、条件がうまく合えばその方をやはり公務員として採用するという道も必要であろうということで、私どもはそういう制度をお願いをしてつくっていただいたということでございます。  確かに、御指摘のように、現在まで三名ということでその実績は少ないわけでございますが、私どもといたしまして外国人の研究者を、どういう形であるにせよ、できるだけ日本の国の中に招いてくるということは非常に大事だと思っておる次第でございますが、研究公務員に採用します場合には、やはりどうしても外国の雇用システムと日本の雇用システムというものの違いというのが一つの問題としてなっておるわけでございまして、外国人はどうしても長年同じところで働くというよりは、短期間いろんな研究施設を回るということの方に好みがある。現在の日本の公務員体系では、やはり終身雇用を前提にしていろんな制度ができ上がっているということもございまして、短期間勤める場合には正式の公務員になった方が得だということには必ずしもならない場合もあるということもございます。  そういった問題につきましては、日本の雇用システム、外国の雇用システム、将来どういうふうな刺激を与えながら変わっていくかということとも関連あるわけでございますが、私どもとしましては、どういう形にあるにせよ、できるだけ外国の研究者を受け入れてお互いに刺激し合える機会をつくりたい。それから、そういった制度をつくりますときに、ただ単に招聘、お客さんということだけではなくて、やはり日本の公務員として採用するという道を開いて世界にその姿勢を示すことも大事であるという発想でこういう制度をつくったというところをぜひとも御理解をいただきたいと思います。
  115. 小西博行

    ○小西博行君 そうですね、よくわかりますけれども、やっぱり三名というのはいかにも恥ずかしくて、かえって言わない方がいいんじゃないか。公務員で三名は雇っていますなんという言い方の方がかえって外国に誤解を招くと思うんです。科学技術庁も百名ほど研究員をこちらへ来ていただく、通産省も百名。この間総理が向こうへ行かれて、百名どうぞみたいなことをまた言っていますけれども、これは果たしてそういう受け入れ態勢というのがあるのかなと。  私は、この間留学生問題を予算委員会でもやったんですけれども、数字を言うとか、二〇〇〇年にはこうだなんというのは、それは言いやすいことですよね。ところが、現実に宿舎その他の受け入れ、あるいは研究機関で何をやっていただくのか。それは向こうから来る場合だって魅力がなかったら来ないんですから、百名どうぞと言ったって。日本でやっぱりすばらしい学者がいるから、そこへ入って勉強したいとか、恐らくそうだと思うんですよ。そこで自分のレポートを書くことが将来のプライドにつながる、そういう魅力があるからこそ初めて来たいということじゃないでしょうか。  だから、人数をトータルすると三百名ぐらいになるんですけれども、そういうような受け入れ態勢というものが具体的にあるのだろうか。一番その点は弱いところなんですね。もちろん宿舎なんかもぼつぼつ建てていますということなんですけれども、そういうことではちょっとかえって悪い、そんなこと言わない方がいいんじゃないかとさえ思うほど私は問題が残っているような気がする。ですから、これからそういう国際交流という意味ではしょっちゅうやらなきゃいけない。  それから、今はむしろアメリカあたりからは、先端技術日本からいろんな勉強したいというよりも、産業技術ですね、日本で一番進んでいるのは産業技術。だから、科学技術協定の中でもそういう分野が、大分向こうからも表明しているように、日本民間の方へぜひ研究者を入れるようにしてほしいというんだけれども、日本産業界は、それは大変困ると。いわゆる品質管理のシステムなり、産業で世界に誇っているいろんな技術がありますから、そういうものはできるだけ教えたくないという産業側のノーハウというのが当然あると思うので、そういうものまで全部含めまして、これから科学技術庁としてそういう研究の受け入れというものはどういう形で具体化していくのかということは、しっかり計画の中へぴちっと入れていかないと、言葉だけで終わっちまうんじゃないかということを私つくづく心配をしているわけです。  大臣、もう時間がなくなりまして、またの機会にいろんなことを質問させていただきたいんですが、科学技術庁に対しては、先ほど申し上げたように、長官中心にして、少なくとも先端技術研究開発というのは、やっぱり科学技術庁中心になっていろんなセクションと協力しながら、あるいは指示しながらまとめていかなきゃいけないという大きな責任がある。その割には全体の予算が確かに小さい。人数も少ない。大学の方まで口出しできないということもありますけれども、しかしその中でもどうしても研究開発をやらなきゃいけない分野が当然あると思うので、私はそれは一つの姿勢の問題だと思うんですよ、科学技術庁こうありたいという。それは過去やってきたことをただ踏襲するんじゃなくて、新しい分野にどんどん広げていく、そういう期待をずっとしておるわけですが、最後に長官のその決意をお伺いして質問を終わりたいと思います。
  116. 伊藤宗一郎

    国務大臣伊藤宗一郎君) 先生全くおっしゃるとおりでございまして、私も就任以来、科学技術庁がそういう調整機能を発揮する以外にないわけだから、役所の方々ももっと責任感なり使命感なり誇りを持って、日本科学技術行政のリーダーシップとイニシアチブは我々がとるんだという気概なり矜持を持ってやってほしいということをしょっちゅう申し上げておるわけでありまして、またおっしゃるとおり競争原理も大事でございますけれども、やはり連係プレーなり整合性というのはなおさら大事でございますから、そういう連係プレー、整合性を求める、そういうためのリーダーシップあるいはイニシアチブというものを科学技術庁がぜひひとつこれから果たすことができますように、長官以下なお心を引き締めて御期待なりお励ましにこたえたいと思っております。
  117. 小西博行

    ○小西博行君 終わります。
  118. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) ほかに御発言もないようですから、質疑は終了したものと認めます。  これをもって昭和六十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府所管のうち科学技術庁についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 飯田忠雄

    委員長飯田忠雄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会