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1988-04-26 第112回国会 参議院 運輸委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十六日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      二木 秀夫君     鳩山威一郎君  四月二十二日     辞任         補欠選任      鳩山威一郎君     二木 秀夫君      橋本孝一郎君     田渕 哲也君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         中野 鉄造君     理 事                 真鍋 賢二君                 松岡滿壽男君                 安恒 良一君                 中野  明君     委 員                 伊江 朝雄君                 高平 公友君                 野沢 太三君                 二木 秀夫君                 森田 重郎君                 山崎 竜男君                 吉川 芳男君                 吉村 真事君                 穐山  篤君                 小山 一平君                 田渕 勲二君                 小笠原貞子君                 田渕 哲也君    国務大臣        運 輸 大 臣  石原慎太郎君    政府委員        運輸省運輸政策        局長       塩田 澄夫君        運輸省国際運        輸・観光局長   中村  徹君        運輸省海上技術        安全局船員部長  野尻  豊君        海上保安庁次長  大塚 秀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        多田  稔君    説明員        労働省職業安定        局業務指導課長  小倉修一郎君    参考人        社団法人日本船        主協会理事長   山元伊佐久君        全日本海員組合        組合長      土井 一清君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付) ○船員法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     ─────────────
  2. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいまから運輸委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、橋本孝一郎君が委員辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     ─────────────
  3. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに船員法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会社団法人日本船主協会理事長山伊佐久君並びに全日本海員組合組合長土井一清君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに船員法の一部を改正する法律案の両案を便宜一括して議題といたします。  両案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 穐山篤

    穐山篤君 お二人の参考人、きょうはありがとうございます。参考人には、後ほど海運市況全体につきまして御意見を承りたいと思っております。  最初に、船員雇用促進に関する特別措置法から始めたいと思っております。  今回提出をされました法律案は、特別措置法延長適用をする、そういうものでありますが、最初特別措置法が制定されましたのは昭和五十二年であります。したがいまして、今日まで十年間という長い期間この適用が行われたわけです。この適用状況を見ますと、五十三年、五十四年が一つの大きな節目でありました。相当の数の離職者が出たわけであります。最近は、昭和六十一年、六十二年がこれまた集中的に船員離職が行われたわけですが、この十年の間に特別措置法適用を受けました離職者、もしおわかりになるならば業種別にその数を明らかにしていただきたいと思います。  なお、おおむねこの十年間で三千名程度と思いますが、再雇用をねらった特別措置法でありますので、その後再雇用をどういう形でされたかどうか、当然こういう追跡調査が行われていると思います。したがいまして、再雇用について、海上におきます再雇用、それから陸上におきます再雇用、その追跡の結果を数字で明らかにしてもらいたいと思います。
  7. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員雇用促進に関する特別措置法が五十三年の一月二日に施行されて以来、六十三年一月末まで約十年になるわけでございますけれども、その間に離職船員求職手帳の発給を受けた者は二千九百八十三名、今先生おっしゃいましたように約三千名でございます。  これをまず年度別に見ますと、五十三年度に約一千二百件余り、以後ずっと増加してまいりまして六十三年一月末までに今申し上げましたような件数になっているわけであります。  なお、それを業種別にということでございますので、五十三年から六十二年までの十年間につきまして合計額を順次御説明申し上げますと、まず、船舶製造修理業が六十五人、一般外航海運業が千百六十六人、近海海運業が千三百九十五人、内航海運業が二百二十四人、はしけ運送業が百三十三人、合計が二千九百八十三人ということになっております。  それから、こういう人たちがどういうようなところに再就職しているかという御質問でありますが、最近三年間の求職手帳所持者の再就職状況を御説明申し上げますと、海上企業へ再就職をした者が五七・二%、それから陸上企業への就職者が二四・六%、それから求職希望陸上企業に変更いたしまして公共職業安定所の方へ移ったのが一五・五%になっております。なお、安定就職ができずに、手帳有効期間であります三年が満了し た者は二・七%という状況になっております。
  8. 穐山篤

    穐山篤君 今お話があった数字二千九百八十三名、まあ相当の人数だというふうに思います。五十三年、五十四年を見ますと、これは近海海運業あるいは内航海運業に集中をしております。昭和六十一年、六十二年というのは外航海運近海ですが、どちらかといえば外航海運業に集中的に離職が出ているわけです。これは今日の外航海運状況を反映をしていると思うんです。後ほど参考人にも御意見を伺いますが、外航海運業の厳しい状況というのは当分の間続くであろうと、そういうふうに理解をします。したがってこの特別措置法延長ということが提案をされているわけですが、法案を提案をする以上、背景というもの、条件というものを十分に考慮されての特別措置法延長だろう、これを七年間としたことについても一定背景があるだろう、こう思うわけですが、その点についていかがでしょうか。
  9. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 六十二年、昨年の五月に、経済審議会におきまして「構造調整の指針」という建議をいただいております。これがいわゆる新前川レポートと称するものでありますけれども、この新前川レポートによりますと、今後我が国産業は、外需依存型から内需主導型へ需要構造を変革していく必要がある。そして、それに見合った産業構造転換が進められるということによりまして、素材型産業等ウエートが低下すると予想されております。このような産業構造転換が一九九〇年代前半にかけての期間に行われるというように述べられております。このために一九九〇年代の前半の終わりに当たります昭和七十年ごろまでは、原材料及び製品の輸送海上輸送に依存している素材型産業ウエートが低下することに伴いまして、海運企業事業規模縮小等による離職船員が発生する可能性が高いということから、まず七年の期限延長をお願いしている次第であります。  なお、特定不況業種の指定につきましては、特定不況業種離職者等を対象とします特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法、これにつきましても有効期限七年の延長を別途お願いしているところでありまして、それとの平灰を合わせまして、今回七年延長をお願いしている次第でございます。
  10. 穐山篤

    穐山篤君 それでは、参考人のお二人の方に、最近におきます外航海運業現状ですね、非常に厳しいことも私ども勉強して知っているつもりではありますけれども、やはり船主協会皆さん方は、一段と、円高影響ども受けたり、あるいは北米航路船員などについても大変な御苦労をされているわけです。これからの日本海運業を展望するときには、現状認識を十分に深める必要があるだろう、こういう立場から、山元参考人に、外航海運現状についてまずお話を承りたいと思います。
  11. 山元伊佐久

    参考人山元伊佐久君) お答え申し上げます。  本日は外航海運中心に御説明申し上げたいと存じますので、あらかじめ御了承をお願い申し上げる次第でございます。  我が国海運会社は、国際的な情勢のもとで、オイルショック後タンカー、続いて不定期船、そして定期船ということで、三部門同時不況に見舞われまして、大変に体力が消耗しておりました。そのやさきに、一昨年秋以来の急激かつ大幅な円高影響をもろに受けまして、海運界はさらに窮地に陥りまして、現在各社とも企業の存亡にかかわる経営危機に直面いたしております。ちなみに、大手六社のうち三社が金融支援を受けているというような状況でございます。  決算面で見てまいりますと、主要海運会社の六十一年度の決算状況は、前年に比べまして約九百六十億円ほど損益が悪化いたしております。六十二年度におきましても、円高がさらに進行いたしておりますので、損益の悪化は相当程度に至るだろうというように見込まれるわけでございます。また、これと同時に、円高によりまして日本人船員の乗り組む日本船国際競争力が完全になくなるという事態を招いております。二百四十円当時でも日本船東南アジア船員が乗り組む船舶と比べまして三倍のコスト高でございましたが、円高によりましてそのコスト高が五倍ないし六倍に拡大して、到底立ち行かなくなっているというようなことでございます。  こういうような状況のもとで、日本船海外流出が年々増加いたしまして、昭和五十八年には千百四十隻三千四百十万トンあった日本船が六十二年には八百十六隻二千八百六十万トンということで、隻数では三割近く減少いたしております。今後も円高がさらに進行することによりまして、日本船がさらに減少するのではないかと、私どもは大変に危惧の念を抱いているところでございます。  一方、船員方々雇用状況でございますけれども、一昨年の秋に主要会社五十二社につきまして過剰船員が何人いるかということを調べたわけでございますが、二万四千人のうち約四〇%が過剰だという回答が船主協会に来ております。  そこで、これをもとに、ただいまおいでになります全日本海員組合組合長並びに中執の方々とも御相談しながらこれにどのように対処していくか相談したところでございますけれども、昨年の三月五日に雇用開発促進機構の設置と本人の選択による特別退職制度実施について合意を見たところでございます。  それで、この合意に基づきまして雇用調整を始めたわけでございますけれども離職船員の中にはできるだけ海上職域就職したいというような希望が多うございましたので、できるだけ、一定期間海上職域を確保しながら陸上就職に必要な準備をさせるということで、この雇用開発機構の中に外航船員雇用促進協会というものを昨年の四月一日に設けまして、離職船員雇用開発とその促進を図るということで、具体的には、海陸職域開発、教育・技能訓練及び陸上職種の情報の提示、相談を実施しているところでございます。  以上が現在の外航海運界の実情でございます。
  12. 穐山篤

    穐山篤君 オイルショック影響というのが一つあるし、それから長期的な海運不況という要因についてもよくわかります。それからもう一つ近年大きな要因になりましたのは、急激な円高影響、これは全く無視できないものだろうと思うんです。いろいろな計算方式はあるんでしょうが、ドルが一円下がったあるいは円が一円上がったというその一円の相場の違いというのは、具体的にどれほど海運業影響といいますか、コスト影響があるんでしょうか。もしおわかりになるならば数字でちょっとお知らせをいただきたいと思います。
  13. 山元伊佐久

    参考人山元伊佐久君) お答え申し上げます。  主要外航海運会社三十九社について見ますと、一円円高になりますと十四億円損益が悪化するということでございます。したがいまして、円高が二百四十円から百二十円に至ったということは大変な影響を持っているわけでございます。
  14. 穐山篤

    穐山篤君 今参考人からお話がありました外航海運現状について、運輸省側としては、認識はどういうものでしょうか。今の参考人の御意見と変わりがありませんか。あるいは特別な御感想があるならばお話を承りたいと思います。
  15. 中村徹

    政府委員中村徹君) ただいま山元参考人からお話がございました内容と、私ども認識はほぼ同じでございます。私どもで、ただいま海運造船合理化審議会で議論をしております問題は、ワーキンググループとして二つございまして、一つ北米定期航路の問題、一つはフラッギングアウト問題、この二つを議論しているわけでございますけれども、そういった問題のよって来るところを議論してまいりますと、ただいま山元参考人がおっしゃったこと、これが一つ原因になっているというふうに考えております。
  16. 穐山篤

    穐山篤君 現状認識では余り変わりがないというお話はよくわかりました。  さて、手をこまぬいていたわけではないので、海造審で最近のものを見ますと、昭和五十九年八月に「今後の外航海運政策について」中間答申。それから六十年の六月に同じくこれの本答申が行 われた。それから昭和六十一年の十二月に、海造審海運対策部会小委員会が専門的な立場で、「当面の海運対策について」ということで中間報告した。それになお昭和六十一年七月には船員中央労働委員会から「当面実施すべき船員雇用対策に関する建議」も出る。さらに昨年の五月には、同じく「今後における船員雇用対策の基本となるべき方針」というものが答申をされる。この短い間に矢継ぎ早にいろんな答申が出ているわけです。それは当然のことでありますが、海運市況状況を反映して出されているというふうに思うわけですが、このそれぞれ中間報告なりあるいは本答申をされたものを船主協会協会なりに、あるいは組合組合なりに、それから政府政府なりに対応をしてきたと思うんです。  後ほど具体的に詰めますけれども、それぞれの自助努力を十分果たしてきただろうか。仮に果たしたとしてみても、今日のこの状況の中ではなかなか胸に落ちるような解決策というのはそう簡単に見つけることは難しいとは思いますけれども、今まで建議答申をされましたこれらの問題について、まず政府側から、政府がやるべき事柄についてどういう努力を総括的に行ってきたのかという点をひとつ確かめておきたいと思います。
  17. 中村徹

    政府委員中村徹君) ただいま先生がお述べになりました幾つかの答申の中で、海運業が直面しております問題の一つとして定期航路の問題があるわけでございますけれども、これは日本産業構造自身転換の問題に関係がございまして、荷動きが、日本中心とした荷動きから、極東荷動き相当部分が移っていく。極東アメリカ中心とする荷動きに移ってくる。これに対応する対応体制をとるために、これまでの協調方式では対応できなくなってきておるということで、それに対応する海運企業体制を改め、自由化というようなふうに表現されている場合もありますけれども、そういった形で新しい対応体制競争中心とする運営を行うようになってきたわけでございます。これが赤字の大きな原因一つになってきているわけでございます。これに対応するために、先ほどちょっと申し上げました北米定期航路問題のワーキンググループをつくり、どのような対応体制をとっていけばこのような赤字体質から脱却できるかということについてただいま検討を行っておるという問題が一つございます。  それからもう一つは、円高も含めましてコストが、円で支払われてドル建てで収入が得られる、こういったことが一つ原因となりまして、非常に船員費経営を圧迫するという状況があるわけでございますが、これに対応いたしまして船員雇用問題というものに対する各種の対応をただいまとっておるところでございます。これは非常に苦しい問題ではございますけれども、これに対していかなる対応をとったらいいのかということで、ただいま種々検討をしておるところでございます。これがフラッギングアウトの問題というふうに私先ほど申し上げましたが、そういったことでこれに対する対応策をただいま種々検討しておるという状況でございます。
  18. 穐山篤

    穐山篤君 山元参考人にお伺いしますが、先ほど私が申し上げましたように、いろんな外航海運政策というものを答申をされ、それぞれの立場から自助努力をされてきたと思います。船主協会としては、どういう点に中心を置いて、まあ再建策といいますか、対応策というものを実施をされてきたんでしょうか。その点についてお伺いをしたいと思います。
  19. 山元伊佐久

    参考人山元伊佐久君) お答え申し上げます。  北米定期航路の問題は五社なり六社の問題でございまして、船主協会が取り上げるべき問題ではないわけでございます。その点は一応大前提としてお断りを申し上げたいと存じます。  それで、北米定期航路につきまして、従来五社なり六社がスペースチャーターという形で協調してやってまいりましたけれども、先ほど国際運輸観光局長からお話しございましたとおり、極東からの荷物が異常にふえております。かつては日本発が八割でその他の極東荷物が二割という状況だったのでございますが、現在は逆転いたしまして、極東からの荷物が八割で日本からの荷物が二割という状況になっております。スペースチャーターでやっておったのではとても機動的な対応ができないので、先ほど局長から話もございましたように、海造審で、デレギュレーションということで、そのスペースチャーター方式を取りやめるということになったわけです。そこで各社がそれぞれパートナーを探し、場合によっては外国船社とも提携しながら荷物動き対応する体制をとってきたわけでございますが、遺憾ながらアメリカの新海事法競争原理を導入いたしまして、これによりまして同盟船社はもちろんのこと、盟外船社も入りまじりまして、運賃の低下が非常に極端な傾向に至っております。だから、荷物はふえているのでございますけれども運賃水準が非常に低迷いたしているために、それともう一つは急激な円高、この二つが重なりまして、北米航路は大変な赤字を抱えているという状況でございます。  しかしながら、六十一年度におきましては約七百億程度赤字がございましたけれども、各会社努力いたしまして、大体六十二年度は四百数十億円の赤字でとどまるという見通しでございまして、それなりの努力の成果は上がりつつあるわけでございます。それにいたしましてもなお四百数十億の赤字でございますので、これを何とか回復すべく各社努力をいたしているところでございます。  また、運輸省海造審でも、皆が納得できるようなお知恵を出していただければ、それを一つの物差しにして対応を考えていきたいというように聞いているところでございます。
  20. 穐山篤

    穐山篤君 土井参考人にお伺いしますが、今まで外航関係について政府並びに船主協会からお話を承ったわけですが、以上の問題について、組合側のサイドから見まして、今までのお話が的確であったかどうか、その点についてひとつ評価をいただきたいと思います。
  21. 土井一清

    参考人土井一清君) 海員組合土井でございます。いろいろ諸先生方に御心配かけておりますが、感謝をいたしておきたいと思います。  評価をせよというお話でございますが、一つは、外航海運の置かれている状況について、政府船主協会で御説明ありました内容とそう大差がございませんが、ただ足らない点については、船員雇用問題についてはもう言い尽くせないほどの危機的な状況にあるということと、政府業界は、海造審でしばしばいい答申をいたしたのにもかかわらず必ずしもそれにこたえていないという点、この二つの点については今日なお十分ではないという感じを持っております。  まず、船員雇用問題については、先ほど来政府業界からお話もありますように、今日の過剰船腹さらには業界の再編成過程でのデレギュレーション、さらには新前川リポートに示されるように、外需から内需への経済構造の大転換、それに急激でしかも大幅な円高、こういう中で、まさに外航船国際競争力がなくなったという点は目を覆うばかりでございまして、特にNICS諸国さらにはその後ろからついてくる東南アジア諸国、こういったところの追い上げと、それらの国の経済情勢の中での労働者の賃金、生活状態それらが今日日本勤労者との比較からいたしますと、まさに六倍ないし十倍日本側競争力を弱められているという状況にありまして、その最先端で働いているのが外航船員でございます。この外航船員は、もろに東南アジア船員職場を同じに働いておるわけでございますけれども、これらの船員と比べると、船員費はまさに話にならぬぐらい高くついておるということになるわけであります。そういうことから日本の荷主あるいは船社、もちろんそのバックの金融界も、国際競争力をつけるために日本人船員をできるだけ少なくして、第三国人を乗せることによってコストセーブを図って、できるだけ合理的な運送をしてもらうという姿勢をとってまいりました。  そのおかげで、先ほど穐山先生からも示されましたけれどもオイルショック前の四十八年ごろ は、外航船員は、私ども組合労使関係のあるところを中心にまとめてみましても、約三万三千人ほどおりました。ところが今日では、それが一万名ちょぼちょぼというような状況でございまして、船員の数は今日約三分の一になっております。さらにまた、その三分の一になった日本人船員についても、競争力をつける、つまり円が百二十円から百十円というようなこれから先の動向を見れば、もっともっと日本人船員を減らさなきゃ競争力がつかないというコスト論中心我が国経済動き、その中で、この一万人そこそこの外航船員を、本当に国際競争力をこれでもってつけようと思えば、もう日本人船員は全部おろしても競争にはならないと思います。特にこれは例えば北米航路関係で申し上げますと、運航経費の中で船員費は三・二%であります。これは明らかに政府統計で示している数字でございますが、三・二%であります。私がこういう話を陸上経営者にいたしましたら、船員費が三・二%、それは本当か、それだったらわしも外航海運をやろうかと言われるほど今では船員費は、北米航路の例ですけれども、そのような状態であります。したがって、これは日本人船員を全部おろして船員費をゼロにしても競争力はつきっこないということは明白であります。これほど船員雇用という状況は、職場喪失という形でまずあらわれてきておるのが実態であります。  それからもう一つは、政府がいろいろサポートをすべきだということを海造審答申の中でしばしば述べてまいっておるわけでありますけれども、それは外航海運を再生するためには、まず近代化船を中心にして日本の商船隊を構築し、それに混乗船とか、あるいは外国用船とか、あるいは在来からおる船等を組み合わせた日本の商船隊を、少なくとも近代化船を中心にして構築すべきである、そうして競争力をつけていくべきだ。それについては政府が必要な政策アテンドをすべきであるということをしばしば指摘をしておるわけであります。もちろん政府としても、近代化船をつくるための長期低利融資とかあるいはその他の税制面とか、いろんな面で相応の手当てはしてきてはおると思いますけれども、しかしながら、今日のような急激な円高東南アジア諸国の追い上げという状況の中では、近代化船を中心とする国際商船隊の国際競争力を付与するというためには十分な手当てではないのではないか。特に外航海運は公共性を持っておるわけでありまして、国が今日まで計画造船というものをサポートしてきて、そうして政府金融あるいは市中金融等でそれを進めてきたわけでございます。言うならばこれは国の政策として外航海運を育成してきたはずであります。ところが、今日もろもろの条件が変わったからでありましょうけれども政府は、まあ臨調行革というような線もありましてデレギュレーション実施いたしまして、専ら自助努力による再生と、あとは荷主のニーズなりあるいは国のいろんな要請にこたえるために一生懸命労使で頑張ってくれという声援をするだけでいいかどうかという問題であります。  私どもは、実は外航海運が公共性を持っておるためにいろんな法律でカバーされておるわけです。海上運送法であれ、あるいは船員の場合は船員法であれ、あるいは船舶職員法であれ、あるいは海上保安庁関係海上保安関係諸法規、もろもろの法律が海上産業については規制をしておるわけでありまして、同時に、そのことによって運航業者の資格の問題とか、あるいは船員の国家試験の問題とか、あるいは運賃についての認可料金、認可運賃というようなことがあるわけでございまして、もちろんこれを全部、いかにデレギュレーションの時代といえども解きほぐすことは、やはり公共性を維持する上からいって、当然そういったことはあってはならないというぐあいに思うわけです。そういった立場からいたしまして海造審でせっかくいろいろ示唆を与え、あるいは行政的な措置、政策アテンドを求めたことに対して、政府が果たして十分こたえているかという点については、私は、外航海運の存在意義からいっても十分な手当てはされてない。これからその問題について十分御検討を願わなきゃならぬのではないかというぐあいに考えるわけであります。  特に、雇用の問題とそれから今の海造審における、あるいは船員中央労働委員会からの諸答申、具申等に関する政府の手当てのあり方について不満足であるという点を申し上げておきたいと思います。
  22. 穐山篤

    穐山篤君 今もお話がありますように、まあ外的な要因ですから、その外的な要因をすべて排除しない限りそういい解決策が出ないとは思いますが、海造審で海運政策について何回となく提起をされました。今土井組合長からもお話がありますように、ただ頑張れ頑張れと言うだけでは困る、そういう意味では政府の政策努力あるいは行政努力、こういうものについて大変厳しい注文がついたわけですが、それについて運輸省はどういうふうにお考えでしょうか。
  23. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まず、船員について御説明申し上げます。  先ほど先生からも御指摘がありましたように、船員雇用対策につきましては、船員中央労働委員会から「船員雇用対策の基本方針」ということについて御答申をいただいておりまして、目下その答申に基づいて鋭意政策を展開しているところでございます。  ちなみに、六十三年度予算につきまして若干御説明申し上げますと、先ほど山元参考人からお話がありましたけれども、六十二年、昨年の四月から二年間にわたりまして約四割にわたる大幅な雇用調整が行われるという中におきまして、外航船員の緊急雇用対策をどうしたらいいかということが我々にとっての当面の課題であるというように認識しております。船中労の答申の中では、まず海上職域の確保を第一に挙げ、海上職域の確保ができない船員に対しましては陸上職域へ転換を図るという趣旨の御答申をいただいているわけでございます。かかる観点から、六十三年度予算におきましては、私ども所管しております一般会計、そしてまた厚生省で所管しております船員保険特別会計、両省相まってこの対策に鋭意努力しているところでございます。  その内容について二、三かいつまんで御説明申し上げますと、まず、海上職域の確保につきましては、従来、離職船員に対しましては、外国船に乗る場合に一回当たり十二万円の奨励金を交付しておりましたけれども、六十三年度からはこれを十八万円、五割増という大幅な増加をすることにいたしまして、日本船に乗れない離職船員に対して、少しでも外国船に乗れるような、そういうような配慮をしているところでございます。あるいはまた、外国船を日本船社が借り入れた場合、いわゆる裸用船と称しておりますが、これに対しまして、従来二〇%の源泉徴収税が課せられておりましたけれども、それを減免するといったような措置も講じております。さらにまた、外国船等に乗る場合に必要な資格等を取得するための訓練についても意を用いているところでございます。あるいはまた、職業転換給付金ということで、職につけない人に対しましては生活の安定を図るための給付金を支給するというような措置も講じているわけであります。  一方、陸上職域への転換につきましては、昨今の事情から、陸上事業におきましてもなかなか離職船員あるいは雇用船員を受け入れる余地がないということもありますので、一般会計からは助成金を交付しまして、陸上事業に対しまして、離職船員を受け入れた場合に一定の賃金差額補助をする。あるいはまた、船員保険特別会計からは雇用船員陸上事業主に出向派遣させた場合に、同じく賃金差額補助をするというような新たな政策を展開するということで、六十三年度におきましては、外航船員の緊急雇用対策に万全を尽くしたいというように考えておるわけであります。
  24. 中村徹

    政府委員中村徹君) 土井組合長お話の中にございました計画造船等の問題、ハードの問題について私の方からお答えさせていただきたいと思います。  組合長おっしゃられたように、これまで我が国商船隊については、日本船と外国用船を適宜組み合わせて、全体として競争力を有する船隊構成としていく必要があるというふうに考えておりまして、そういう位置づけの中で、日本船について従来近代化船を中核として考えてきたところでございます。しかし現実問題として、日本船国際競争力が著しく低下してきているという状況がございまして、そういう中で近代化船の建造意欲が落ちていることは事実でございます。六十二年度におきまして、計画造船としては十分枠は確保しておったわけでございますが、実際には一隻しか建造の計画が出てこなかったという現実がございます。こういう中で近代化船を国際競争力ある船舶としていくには、いかなることを考えていったらいいのかというのがただいま我々に課せられた課題だというふうに認識いたしております。  ただやはり、計画造船を中心として日本船を整備していくということは、我々、日本の海運を今後も維持発展させるという海運政策の基本からいって、これはぜひとも守っていかなければいけないことであるというふうに考えております。具体的にいかに維持するかということは非常に厳しい課題ではございますが、今後も懸命に取り組んでまいりたい、かように考えておるところでございます。
  25. 穐山篤

    穐山篤君 今の運輸省側からの答弁は、それぞれ局が違いますから、二つの分野からお話がありました。  そこで、近代化船の問題について伺いますが、近代化船の建造につきましては、労使国を挙げて一定の話し合いが成立をして、財政上の援助もありまして、一定の成果は上げていることも私は認めます。しかしながら、今お話がありましたように、計画造船で六十二年で一隻しかなかった。建造する意欲もない。非常にさま変わりをしてしまったわけですね。そうしますと、この近代化船のあり方の問題についても再検討をしなければ、計画があるからやるんだというような態度ではもはや許されないと思うんです。まあ船主協会の方では、何かこの問題について特別のお話もあるやに仄聞をするわけですが、今の昭和六十二年度一隻しか建造しなかったという実績から見て、この近代化船の建造のあり方、計画造船について、特別なお考えがあるんでしょうか。これからどうなされようとしているのかですね。政府側の方からひとつ御答弁いただきたい。
  26. 中村徹

    政府委員中村徹君) ただいま申し上げましたように、計画造船に対する建造意欲というものが非常に減少していると。日本籍船につきましては、日本船主協会等から外国人船員の混乗といった措置をやはり検討すべきではないかという御指摘があるわけでございます。私どもとして、ただいまそれについて一定の考えを持っているわけではございませんけれども、計画造船制度そのものがこのような状況では、維持することが困難になってしまうというふうに考えておりまして、これをいかに、制度そのものを見直しつつしかし計画造船の本来の目的である日本船を維持するというような観点から何をなすべきか。六十四年度の予算を目指して、私どもも今深刻に真剣に取り組んでおるところでございます。
  27. 穐山篤

    穐山篤君 計画造船について今運輸省から答弁がありましたけれども業界としては、この問題の先行きについてはどういうふうに希望されているんでしょうか。その点をお伺いします。
  28. 山元伊佐久

    参考人山元伊佐久君) 先生の御指摘の問題の前に、先ほど船員部長あるいは国際運輸観光局長からお話しございました、雇用対策の関係の予算を大変に充実していただいたことを、我々業界としても大変に感謝しているところでございます。特に、昨年外航船舶利子補給金の特別措置法を改正していただきまして、日本開発銀行に対する利子の支払いを猶予していただいたこと、さらには六十二年度の補正予算におきまして、繰り延べになっておりました利子補給金を百九十億円一括交付していただきましたこと、これらにつきましては、干天の慈雨ともいうぐあいに我々受け取っておりまして、業界挙げて感謝しているところでございます。  そこで、計画造船の問題でございますが、その前に、まず日本船国際競争力というのが、五十四年度から近代化船を推進してきているわけでございまして、現在は、十一名乗りのパイオニアシップを目指して、十三名の実験をスタートしております。ところが、十一名乗りでございましても、東南アジア船員が配乗いたします船舶に比べますと日本船コストが四倍につくわけでございます。したがって、今後日本商船隊の国際競争力をいかにして維持していくかということにつきましては、先ほど局長からもお話がございましたように、混乗日本籍船、支配外国用船、単純外国用船、これらを適宜組み合わせまして、全体として日本商船隊の国際競争力の回復、維持を図っていく必要があろうかと思います。私ども企業が生き残っていくことと、それから船員雇用一定数を確保する、両方の見地から、ぎりぎりの選択といたしましては、ただいま申し上げましたように、日本船への混乗ということを実現しなければ到底やっていけないわけでございます。  そこで、現在、緊急措置といたしまして、運輸大臣の諮問機関でございます海上安全船員教育審議会の船舶職員部会におきまして、貸し渡し方式による混乗、これを一般外航にも適用し、乗り組み数をさらに極力少数化するということで御検討をお願いいたしております。それから長期的に抜本的な改革といたしまして、新しい船舶の登録制度を、ノルウェーなどで実現されているような制度をぜひ日本にも導入していただきたいということで、海運造船合理化審議会のフラッギングアウト・ワーキンググループで御検討をいただいているところでございます。  そういう日本船への混乗ということを前提にいたしまして、計画造船につきましても混乗を認めていただきたいというのが我々の念願でございまして、計画造船への混乗が実現いたしますれば、今のように六十二年度一隻ということでなくて、かなりの日本船が建造される可能性があるものというぐあいに考えている次第でございます。
  29. 穐山篤

    穐山篤君 それでは、本格的に雇用対策についてお伺いします。  何といいましても、条件が許すならば、日本船日本船員が乗船する、これが一番ベターな姿であることは間違いない。しかし、競争力あるいはコストの問題になると、そう感情的な問題、理屈の問題だけではどうにもならない。そのこともよく承知をしますが、冒頭も私が質問しましたように、これからも外航海運については、当分の間状況は厳しいと、そういうことを前提条件に置いた上で、雇用対策をしっかり立てなければならぬわけです。  そこで、まず第一の問題は、海上においてどれだけ職域を確保するか、離職の数を少なくしていくかということが基本だろうと思います。一定のものが確保されて、それ以外にまだ残っているという場合には、いろいろな訓練、手続を経て陸転という問題になるわけです。まず、その海上職域雇用を確保するということが当然望ましいし、それを優先しなければならぬ。  そこで、土井参考人にお伺いをいたしますが、先日私どものところに、職域拡大の問題につきまして請願書が出されております。私どもも受け取って勉強しているわけでありますが、便宜置籍船に職場を拡大をしろと、この問題についての請願の背景なり内容なり、具体的にひとつその点をお述べいただきたいと思います。
  30. 土井一清

    参考人土井一清君) まず、やっぱり船員海上での職域を確保するには、日本人の乗った日本籍船を一定数維持するということであります。現在、八百隻程度日本籍船がおりますが、これは今から十年も前には約千二、三百隻おったわけであります。これがこれだけ減ってきた。同時に、当時も外国用船がありまして、大体日本船が千二、三百隻であれば外国用船もそれぐらいおったわけでありまして、総数で二千二、三百隻というのは十年前も今もほとんど変わりません。したが って内容は、日本籍船が少なくなって外国用船がふえたということであります。それだけに日本の船に乗っておる日本人船員というものが少なくなったというのが先ほど来申し上げている船員数の減少の傾向であります。  私どもとしては、やはり日本の旗を立てた日本籍船は、一定数はぜひ国策として必要ではないかというぐあいに考えます。それを経済安保上というかあるいは総合安保上というか、いずれにしましても、日本は島国でございますので、どうしても有事の際、とかくこれは戦争と誤解されるわけですけれども、そういう意味ではなくて、やはり経済的、社会的いろいろな問題が生じた場合最低限、日本の船、そしてそれに日本人が乗っておるというものが一定数はぜひ必要ではないかというぐあいに考えるわけです。そういう意味から、私どもはナショナルミニマムを設定すべきではないかということをかねがね提言しておるところであります。  そこで一方、そういう形で守りながら、片面、日本船舶競争力を失うとか、老朽化するとか、あるいは経済構造の変化でどうしても減少するという、そこから余ってきた船員をどうするかという問題であります。これについては、海上に残りたい者と陸上にかわりたい者、あるいは全然廃業するという者といろいろな形があるわけでございますが、私どもは、やはり海上に残りたいという船員が多いわけでございますので、できるだけそれらの船員を船に乗せる。これは便宜置籍船に乗せるか、言うところの外国用船に乗せるか、あるいは国内船に乗せるか、いろんな船がおるわけでございますが、少なくとも外航船で育った船員外航船に乗りたいわけであります。  それで、そういう船があるかどうかということになるわけでございますけれども、実は、日本には千五百隻の便宜置籍船がおります。言うところのFOCというのがおります。これは全世界で約七千隻おるわけでございますが、そのうちの千五百隻が日本の船主が利益を得ている、いわゆるべネフィシャルオーナーでございます。この千五百隻の、日本船社とか商社とか荷主とかいろんな形で日本の法人が支配しておる千五百隻の船になぜ日本船員を乗せないかという問題であります。これはやはり、日本の重要な輸出入物資を運んでおる日本船社が、あるいは商社が支配をしておる船であるわけですから、こういう船に一定日本人を乗せるということは、私は当然の救済策ではないかと思っておるわけです。  現在、千五百隻のうち約三百三十隻ぐらいには日本人が何がしか乗っております。約二千五百人ぐらい乗っておりますが、あとの千二百隻については、これはもう全く第三国人が乗って運航をしておるわけであります。これらの船舶は、恐らく先生方も御存じだと思いますけれども海上保安庁による毎年の要救助海難船舶、ひとつ助けてくれと言うて海上保安庁に通知が来る、海難を起こす船は、ほとんどそういう船舶であります。先ごろ瀬戸内でも火災事故を起こしましたし、いろんなところで衝突事故、あるいは海上の汚染というような、環境を汚すと、こういうことをやっておるのがほとんど便宜置籍船と言っても過言ではありません。したがって、やはりそういう船に優秀な技術、技能を持った日本人船員を何がしか乗せるということは、私は国の保全上からも大事なことではないかというぐあいに思っているわけであります。  そういう立場から、私ども日本のフラッグを掲げた日本籍船に一定日本人船員を乗せると同時に、便宜置籍船にも日本人の過剰船員を乗せていくということがこの際最も必要なことだ。同時に、それについては、今までコストの安い第三国人を乗せておったわけでございますので、そこにコストが高いと言われる日本人船員を乗せるわけでございますので、どうしても一定の政策的な手当てが必要であろうというぐあいに考えておるわけであります。したがって、その政策的な手当てをつけることも含めまして、現在の千五百隻の便宜置籍船に対して日本人船員を乗せてほしいということを御請願いたした次第でございます。  現在、私どもは、それらの船に乗せるについても、できるだけ外国人も海員組合組合員にしていこうという運動もしております。そういう中からやはり資質の向上、技能の研さん、修練等を加えることによって、それこそ便宜置籍船を日本の国の利益に役立たせることができるという立場で、対応組合としていたしておるところであります。そういった点におきまして、ぜひひとつ議会の中で御検討いただいて、我々の趣旨が御理解賜れば幸いだというぐあいに思っております。  以上であります。
  31. 穐山篤

    穐山篤君 運輸大臣、今までのやりとりでよくおわかりになったと思うんです。業界からは、近代化船にも混乗を認めてくれと、背に腹はかえられないというせっぱ詰まった気持ちがある。しかしまた船員立場からいいますと、日本籍の船に日本船員を乗せるというのは当然でありますけれども、ここまで追い詰められていきますと、打開策を洋上で考えなければならぬ、そういう意味で、今土井参考人から、一定の条件はあるにしても、便宜置籍船に日本船員を乗せてほしい、こういう話があったわけです。  言ってみますとこれは政策の問題であるし、政治の問題だと思うんです。もうこの領域に入ります。その限りでは、アメリカアメリカなりに、安保政策上もありまして、一定の助成もしているわけです。それから北欧四国につきましても、海運立国としての具体的な政策が政治の力で出されているわけです。したがってこの外航海運の問題というのは、単に事務的な分野から問題を考えるとかあるいは解決をするということは全く不可能になってきた、そういうふうに私ども認識をするわけであります。衆議院の審議の状況を見ておりますと、日本企業が支配をしております便宜置籍船は千五、六百という数字であるわけですが、これは日本の法律の適用の外である、こういうお話で、なかなかそこがかみ合わない。かみ合わないところが一番大きな問題だと思うんです。  そこで大臣として、具体的にどうこうするという話はこれからの問題としてみても、もはや政治の問題である、もはや決断をしなければならない段階だというふうに私は思うんですけれども、その点運輸大臣、いかがでしょう。
  32. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 海運の問題というのは本当に八方ふさがりで、また、今参考人お話を聞いておりましても、海員の代表の方とオーナーの代表の方と、食い違いもあるわけでして、政府としても本当に苦慮しているわけでございます。  しかし、便宜置籍船に日本のクルーを乗せるということは、建前からいっても外国の企業ですから、直接指導することは困難だと思います。本題をそらすわけじゃありませんけれども、これやはりナショナルミニマムというのは何回も何回も出て、そのたんびに、どう言うんでしょうか、議論が中途半端に終わっているようですが、やはりそれをきちっと据えて、ある船腹なり、それに必要な乗員というものの自給率というものを想定してかかりませんと、政治的な判断もしがたいと思います。  食糧に関しても自給率の問題で安保論のようなことがございますけれども、私はやはり日本のような海洋国家にとっての海運というのは本当に致命的なもので、欠かすことはできないと思いますが、しからば、こういう状況の中で最低限どれだけのものをどうやって確保するかということをやっぱり考えませんと、いつもじりじりじりじり問題が悪化していくばかりだという気がいたします。
  33. 穐山篤

    穐山篤君 いや大臣、感想はどなたでも言うことができるんです。問題は、どうやって政治の力で、八方ふさがりになっているもの、法的になかなか障害があるものの解決の糸口を探すか、そういうことにならざるを得ぬと思うんですね。  例えば、例は非常に悪いわけですけれども、昨年の税法の改正のときに、単身赴任の者にいろんな控除を認めるという制度を行うことによって負 担の軽減を図るというやり方をやっておりますよね。船員の場合、なかんずく外航船に乗船している者について言えば、三カ月、六カ月、九カ月、一年と、こういう長いスパンで乗船をするわけです。その場合、いろいろ考えてみますと、日本人で日本国内にいる人が税金を払ってサービスを受けるというのは当然でありますけれども、職業として六カ月も九カ月も一年も乗船をするわけですね。その間公平な平等なサービスを受けないという、そういう欠陥もあるわけです。ですから、船員を便宜置籍船に一定の数乗せるという道を政治的に探すということもあるだろうし、あるいは税制の分野で手助けをするというものもあるだろうし、いろんなことが私は想定がされるし、また努力をしなければならぬだろうと、こういうふうに思っているわけです。  確かに、韓国、台湾あるいはインドネシア、東南アジア船員が乗ることによって船費が安くなる、コストが非常に安くなるのでなかなか対抗ができづらいというのは、もう十分に承知をしているわけでありますが、やっぱり海造審からも、海上職域において十分雇用を図りなさいと、図るように労使も考えたらどうか、政府も援助したらどうかというふうに繰り返し繰り返し答申が出ているわけですよね。ですから、運輸大臣の感想だけでは困ると思うんです。  例えば離職をさせないためにこういう方法をとる。あるいは離職をしても、最近いろんなイベントがあるわけですけれども、そういうものに計画的にのせていくとか、きめの細かい配慮をしなければ、離職の数はどんどんふえるばかりだと思うんです。そのうちの一環が、今土井参考人から言われました便宜置籍船へ一定の数を乗せてくれと。請願では一応五名程度というふうに言われておったわけですが、数のことは別にいたしましても、思い切った措置をとらなければ、あるいはそれを国際的な力をかりながら解決していかなければ、どうにもならぬ問題だと思うんです。  いずれは東南アジア船員につきましてもコストは少しずつ高くなっていくわけですよね。また業界としては、円建てをドル建てにするというふうな努力もあるんでしょうけれども雇用の分野からいえば、今私が繰り返し提示をしているような幾つかのきめの細かい対策を出す。それと同時に、組合側と十分に話し合う。そのことが私は必要ではないかと思うんですが、もう一度その点、大臣の具体的な、ひとつ毅然たる態度をお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 便宜置籍船に日本のクルーを乗せるという問題は、非常に技術的といいましょうか、建前からいって難しいと思います。それは政府委員から具体的に答弁いたしますが、私、決して感想を申しただけじゃないんです。  例えばアメリカのように、国家補助を船員に対してするということなども、やはりアメリカアメリカなりの戦略構想というものがあるわけです。日本の場合には、一種の平和戦略として、ナショナルミニマムというのは非常に想定しにくいでしょうけれども、そういうものを決めてかかりませんと、要するに国家からの補助もあり得ませんし、もうここまで追い詰められてきたので、私としましてはやはりナショナルミニマムというものを、決して運輸省だけではなくて、各省またいで政府として想定するという作業をし、その上で、つまりそれを確保するための、大きな手段小さな手段というものを講じていかなくちゃならないと思います。
  35. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 便宜置籍船に日本人船員を乗せるように何らかの行政指導を行うべきではないかという趣旨の御質問であろうかと思います。  便宜置籍船につきましては、先ほど大臣の御答弁にありましたように、外国の法律により設立された法人でありますから、私ども日本政府立場からそういった便宜置籍船に対して具体的に雇用関係について行政指導を行うということについては限界があろうかと思っております。ただ、便宜置籍船を含めまして、日本人船員の職域を確保するという観点から、外国船に対して日本人船員就職をあっせんする、あるいは就職促進するという観点から、かねてから環境整備をしているところでございます。  その二、三について、例として御説明申し上げますと、第一は、日本人船員が外国船に乗る場合にいろいろな技能を習得しなければなりません。そのために、日本船員福利雇用促進センターにおきまして各種の技能訓練を行っておりますし、そのために必要な諸費用につきましては、私ども運輸省が所管している一般会計、あるいは厚生省が所管しております船員保険特別会計におきまして各般の援助を申し上げているところでございます。  あるいはまた、先ほど申し上げましたように、船員の方が外国船に乗る場合に、離職船員につきましては奨励金ということで、従来十二万円でありましたのをことしは十八万円というように増額いたしましたし、あるいはまた船員保険特別会計からは月最高三万円を限度とする賃金格差補助をするというような形で、日本人船員が外国船に少しでも乗りやすくするということで環境整備を図っていく。かかる観点から、少しでも日本人船員海上職域の確保のために努力をしていきたい。あるいはまた、今後も努力すべきものというように考えております。
  36. 穐山篤

    穐山篤君 まだ私の気持ちというものが十分伝わっていない感じですね。行政上できることは全部やっていただく、それは当然のことだと思う。しかし、もうここまで来ました外航海運としては、船員雇用を確保するという立場からいきますと、どうしても破らなければならない壁が一つあるわけですよ。そこの政治的な決断を私は要望したつもりなんです。  国内法、あるいはそれぞれの法律の障害があることも、私も十分に知っているつもりでありますが、それをどうやって改善をしていくかということについて、議会も行政も力を合わしたらどうでしょうか。皆さん方の御努力も、今もお話がありましたように、船員保険だとかいろんなことについても、お話はよくわかりましたけれども、突破するためにはどうしても政治力が必要な分野が残っている。先ほど大臣も言われましたように、やはり平和戦略上、日本の海運をどういうふうに位置づけるかという問題に最後は戻るだろうと思うんです。  そういう意味できょうの議論をひとつ大切にしてもらって、なお引き続き勉強をしてもらいたい。我々も知恵を出そうと、こう思いますが、その点、運輸大臣いかがでしょうか。
  37. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) おっしゃるとおりだと思います。私たちも十全の努力をするつもりですし、また、委員の皆様にも、ひとつ十分なお知恵を拝借したいと思っております。
  38. 穐山篤

    穐山篤君 冒頭私がお伺いをしたときに、離職船員のその後の雇用状況で、海上が五七%再産雇用された、しかし残りの二五%ほどが陸転を図ったと、こういうお話があります。これから離職させないような努力をしなければならぬと思うんですが、なお離職は必至だろうというふうに思うんです。  そこで、労働省に伺いますが、船員陸上就職をするというのはなかなか厳しい状況だと思います。時間がありませんから余り多く言いませんけれども、資格の取得につきましても多大な配慮はされていることも承知をしております。しかし、この陸転をする問題について、労働省としてももっと門戸を開放して、離職期間がそう長くないようにしてもらわなければならぬと思うんです。その意味で、資格要件の緩和の問題、あるいは訓練の問題などを含めて、なお努力をしてもらわなければならぬと思いますが、その点についてはいかがでしょう。
  39. 小倉修一郎

    説明員小倉修一郎君) 先生御指摘のように、船員方々雇用環境は極めて厳しいわけでございまして、こういった現状のもとで、それぞれ関係者の御努力によりまして雇用の安定のために職域の開拓等努力をいただいているところでござい ますけれども、なおかつ、これらの関係者の御努力にもかかわりませず、海上職域等々で吸収されない船員方々については陸上職域への転換が必要になるわけでございます。  そこで、私ども公共職業安定所におきましても、そういった陸上職域へ転換希望される方々につきましては、きめ細かい職業相談を行っているところでございますが、先生御指摘のように、例えば賃金の問題であるとかあるいは職務内容が、船員職場陸上の職域とでは大分異なるわけでございまして、やはりそういったきめ細かい職業相談というのがまず必要であろうということで、そういう面に力を入れているわけでございます。  それからなお、職業訓練を付与して資格を取得していただくとか、あるいは個別的な求人開拓を実施するとか、そういった面で、現在積極的に努力を行っているところでございますが、今後さらに関係各省庁とも十分連携をとりながら就職あっせんについては鋭意努力してまいる所存でございます。
  40. 穐山篤

    穐山篤君 いずれにいたしましても、船員雇用の安定拡大というのは緊急課題であります。その意味では、どうか勇気を持って、あらゆる分野で、広い視野で、きめ細かく対策を立てていただきたいということを強く要請をして、この分野については終わりたいと思います。  次に、船員法の一部を改正する法律案につきまして伺います。  たくさん問題はあるわけですが、最初にお伺いをしますのは、衆議院で与野党満場一致で修正が付された、こういう状況にあるわけですが、この満場一致で付されました修正につきまして、運輸大臣はどういう認識をお持ちなんでしょうか。その点をまずお伺いしておきます。
  41. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 衆議院で二点修正されましたが、その中の一つは、四十時間労働制に可及的速やかに移行すべきということと、それから法律施行後三年後に新法について見直しして必要な措置を講ずべきというような趣旨の修正でございます。  実は、船員中央労働委員会におきましてこの船員法改正案につきまして御審議していただきました段階におきましても、労働基準法の改正の過程におきまして衆参両院におきまして議院修正が行われたという情報を聞きまして、労働委員会でもそのことが一つの話題になりました。ただ、船員法におきましては、現行の週五十六時間制から四十時間制へ短縮するということでありまして、労働基準法の場合は四十八時間から四十時間へということでございますから、その短縮の幅は労働基準法よりも倍の短縮であるというようなこと。さらにまた、今回の船員法改正案の中では補償休日制度という今までにない新しい制度を導入しているわけでありまして、その定着を見きわめる必要があるというような観点がございまして、修正後の労働基準法と同じような表現による政府原案にすることは適当でないという判断から、当初の案には労働基準法の政府原案にありましたとおりの条文にしたわけであります。  しかしながら、船員の福祉を図るという観点から、労働時間短縮につきましてはできる限り早期に四十時間制に到達すべきであるという観点から衆議院におきまして先ほど申し上げました趣旨の修正が行われたというように理解しているわけでありまして、政府といたしましても、この衆議院におきます修正の趣旨を十分尊重いたしまして今後対処していくべきものであるというように考えております。
  42. 穐山篤

    穐山篤君 与野党での修正というのは、認識は共通をして、そして相当厳しく労働基準法改正にのっとってその目標を達成をしなさいと、そういう意志が込められているわけです。ですから、厳しいという状況についてはそうだろうと思いますけれども、ちゃんとプログラムに基づいて四十時間制に予定どおり実施を図る、こういう決意が込められているということについて十分認識しているかどうか。その達成目標のおおむねの年度というものも、労働基準法改正の時点では議論されている。一定の、一九九三年とかあるいは九〇年代の前半というふうに、一定のプログラムが明示をされているわけです。そのことを十分に承知をしてこの修正を受けたと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  43. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先ほど申し上げましたように、船員法体系と労働基準法体系とは、同じ労働時間の決め方をしておりますけれども、その内容は大きく違っているわけでありまして、例えて申し上げますと、現在の船員法は、航行中、当直者については五十六時間という決め方をしております。現在の船舶の運航状況は、船舶技術革新によりまして、停泊時間が短縮するという状況の中で、ほとんど毎日運航しているという状況にあるわけでありまして、事実上、船に働いている船員皆さん方の労働時間は週五十六時間ということになっているわけであります。こうした中で、国の方針であります年間総労働時間千八百時間、週に直しますと四十時間に向けてどういう形で短縮していったらいいかということについて、私ども各般の立場から検討した結果が、補償休日制度ということで、週四十時間労働制を達成しようということになったわけであります。  労働基準法につきましては、先ほど申し上げましたように、四十八時間からスタートして四十時間と、しかもこれも補償休日制度ということではなくて、実労働時間をそのまま短縮すれば達成できるというものでありまして、船員法とは大きく違っていると考えております。したがいまして、労働基準法と全く同じスケジュールで船員についても労働時間を短縮していくということは難しいというように考えておりますが、しかしながら、労働時間短縮というのは国の政策でもあります。また、衆議院でも先ほど申し上げました修正も行われたということも考えまして、私どもといたしましては、労働時間短縮について最大限の努力を払っていくべきものであるというように考えているわけでございます。
  44. 穐山篤

    穐山篤君 どうしても前段言いわけをしたがる気持ちはわからぬわけでもありませんけれども、労働基準法の改正を受けて、船員法なりあるいは港湾労働法というそういう特別な法律につきましても準拠をしていくということがこの修正の本旨であるわけです。しかし、船員法の中に特別な規定が書かれておりますよね、船長の職務権限であるとか、あるいは当直の問題であるとか、さらに安全確保の義務であるとか、そういう意味で船員法が特別であるという性格については認めますけれども、労働時間短縮の問題については、前提条件を置かずにぜひプログラムを立てて具体的に進めていただきたい。また、しなければならぬと、こういうふうにまず第一に申し上げておきます。  それから、船員法適用を受けております船員というのは十八万人ぐらいおいでになるんでしょうが、しかし、船員法の本法でなくして別の規定で労働時間の定めが行われております、七百総トン未満の内航船や漁船というのが非常に多いわけですね。数字で見ますと八〇%以上が船員法本則の非適用船員数になっておる。そういう意味でいきますと、小労則なりあるいは漁労則の適用を受ける人が非常に多いわけであります。  時間がありませんから、私は次のことを申し上げておきたいと思います。  たしか昭和六十一年四月一日に、海上技術安全局船員部労働基準課長から先任船員労務官あてに通達が出ております。この通達は、「小型内航船舶員の労働時間等に関する監査指導の強化について」というのであります。これを読んでみますと、必要な就業規則の掲示がないとか、あるいは台帳もしっかり整備されていないとか、あるいは長時間労働が野方図に行われているとか、いろいろな問題が相当組合から指摘をされて、それを受けた形でこの通達が出ているわけであります。  小労則なりあるいは漁労則で行っているわけでありますが、労働時間についても相当乱れがある、あるいは給与につきましてもダンピングが行われる、そういう現状がまだまだ続いているわけ であります。したがって、この際、私は少なくとも、小型漁船についてはまだなじまないかもしれませんけれども、少なくとも三百総トン以上七百総トンぐらいまでのところは船員法本法に逐次入れていって、確立した労働条件、そういうものにすべきだと思うんです。小労則あるいは漁労則を引き続き検討することは結構でありますけれども、段階的に本則、本法にのせていく、そういう基本的な態度を持っていただかないと、引き続き協議をしましょう、見直しをいたしましょうと言ってみても、なかなかその決断が行われないと思うんです。  その意味では、政府側がその決断をするかどうかというところにかかっているし、その決意のもとに労使双方を十分に説得をする必要がある。その努力をしない限り私は見直しの作業というのは困難であろうというふうに思いますが、いかがでしょう。
  45. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 労働時間法制につきまして、七百総トン以上については法律で定め、七百トン未満については省令で定めるというような法体系の状況の中で、これを同一にすべきではないかという趣旨の御質問かと思いますが、私も基本的な考え方、理念としては同じ意見であります。  ただ、現在の小労則におきましては、船員法本則にないいろいろな規定がございます。例えば小型船につきましては一週間航行中五十六時間、停泊中四十八時間の範囲内であれば一日の制限を超えて就労させることができるとか、あるいは小型旅客船につきましては四週間を平均しまして一週間五十二時間の範囲内であれば一日または一週間の制限を超えることができるとか、あるいはまた、労使協定によりまして一日または一週間の制限を超えて労働させることができるというような、法律本則にない規定が省令に書かれているわけでございます。こういった省令の規定に基づきまして労働の実態が定着しているという中で、この省令についてどうするかということの議論なくして省令を法律に格上げすると申しますか、法律と省令を一緒にするということは非常に難しいということで、船員中央労働委員会におきます審議におきましてもこの小労則を廃止して本則の適用を拡大すべきということが特に労働側委員から強く主張されましたが、短時間のうちでその結論を出すには至らないということになったわけであります。  ただ、労働委員会からは、この問題につきましては今後三年以内をめどに結論を得るように審議すべきものというように答申をいただいているわけでありまして、私どもといたしましては、この答申に基づきまして今後法律の適用範囲を拡大いたしまして、七百トン未満の船についても法律で規制するような方向について今後労働委員会答申に基づく御指摘に基づきまして検討してまいりたいというように考えております。
  46. 穐山篤

    穐山篤君 運輸大臣、六百九十九総トン、つまり七百総トンにならないそういう船がたくさん建造されている。それは何をねらっているかということも、議論する必要がないほどはっきりしている。しかし、まあ五トンとか十トンとかという話は別にしてみて、少なくとも三百総トン以上につきましては本則にのせていって、労働条件をしっかり安定をさせるという努力がなされなければならないと思うんです。  それと、今お話がありましたけれども、すべて労働協約が締結をされて乗船をしているわけではない。したがって、労働条件あるいは雇用の安定、身分の安定ということを考えてみましても、やはり本問題には急いで取り組む必要があるだろう、こう思います。労使双方に意見の対立があることも当然です。  そこで、変な話ですけれども、どこがリードするかといえば、その点は官がしっかりリードをしてもらうというふうでなければならぬと思うんです。ぜひひとつ石原運輸大臣の決断、決意をお伺いをして質問を終わりたいと思います。
  47. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 周囲の条件はいろいろ違いましても、働く方々の基本的な立場というのは本質的に同じだと思います。ですから、基本理念にできる限り近づけるように最大限の努力をするつもりでございます。
  48. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十分休憩      ─────・─────    午後一時一分開会
  49. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) ただいまから運輸委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、船員雇用促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案並びに船員法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 中野明

    中野明君 最初に、現在の一般外航海運業等の事業規模の縮小などによって離職を余儀なくされる船員離職者の再就職促進するために、特定不況業種関係労働者雇用安定特別措置法に指定された業種のうち、船員関係が、船員雇用促進特別措置法の省令によって特定不況海上企業として指定をされております。この制度は、創設以来既にもう十年を経過しておりますが、十年を振り返ってみて、どのような効果なり進展があったのか。また、今後の取り組みの重点施策の考え方はどのような視点から進められるのか。この二点お伺いします。
  51. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 昭和五十三年にいわゆる船特法が施行されて、昭和六十三年一月末までに二千九百八十三人に対しまして同法に基づく求職手帳を発給しております。六十二年までに給付金の額は総額で五億七千九百六十四万円支給しておりまして、これにより離職船員の再就職の援助を行ってきております。  その援助措置の結果、求職手帳所持者の再就職状況を最近三年間で見ますと、船員として再就職した者が五七・二%、陸上企業に再就職した者が二四・六%、これらを合わせて八一・八%の者が再就職しております。このほか、公共職業安定所に移りまして陸上企業に再就職をすべく求職活動を開始した者は一五・五%でございまして、安定就職ができずに、手帳有効期間であります三年間を越してしまった者は二・七%にすぎないという状況であります。  また船特法は、船員雇用促進センターを指定し、助成監督することとしておりますが、同センターの雇用促進事業に係る予算額は、五十三年度におきましては七億三千八百三十六万円でありました。その後、技能訓練の拡充、船員派遣助成金の助成のアップ等を行いまして、さらに六十三年度からは陸上転換のための再就職あっせん受け入れ助成金事業を開始しておりまして、総事業費は六十三年度予算では十五億七千六百十三万円に増額しております。  さらに、給付金関係につきましては、外航海運業等からの離職船員に支給するため予算の一層の増額を求めるとともに、船員雇用促進センターの事業につきましては、事業内容の改善及び必要な事業規模の確保に今後とも取り組んでまいりたいと考えております。
  52. 中野明

    中野明君 関連して、けさほども議論になっておりましたが、国際的にも船員費の格差の是正を根拠として、いわゆる便宜置籍船が増加してきております。海運造船合理化審議会におきましても、近代化船を中核として必要に応じて日本船等との効果的な組み合わせなど、全体として国際競争力を有するものでなくてはならないと追認をした形になっております。  そこで、この便宜置籍船、FOC船舶の実態と船員費格差の内容はどのようになっているか説明していただきたい。
  53. 中村徹

    政府委員中村徹君) 便宜置籍船の実態につきましては、その所有、用船関係が複雑でございまして、また、実質的な船主の確定というのが難しいといったような理由で、正確な数を把握することは困難でございます。しかし、当局においていわゆる便宜置籍船の数を推定いたしますと、我が 国においていわゆる便宜置籍国から用船している船舶数は、昭和六十二年の六月末現在で千三十一隻、千九百七十五万四千総トンとなっております。さらにそれを国籍別に見ますと、パナマ籍が最も多く七百九十七隻の千二百五十八万総トン。次いでリベリア籍が百九十二隻、六百五十九万総トン。それからキプロス籍が三十二隻、バハマ籍が十隻というような数になってございます。
  54. 中野明

    中野明君 船員費の格差の内容はどのような状況になっていますか。
  55. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 日本船主協会の試算によりますと、東南アジア船員二十四名配乗の船舶の年間船員費が約三十五万ドルだということでありまして、これに対しまして日本人船員が十五人配乗の近代化船で年間約百八十万ドル、それから十八人配乗の近代化船で約二百二十万ドルということでございますので、その差は五倍ないし六倍の開きがあるということになります。
  56. 中野明

    中野明君 それで、従来の便宜置籍船の魅力は、法人税等主として税制面の有利性などから、経済合理性にかなった企業行動として世界的に急速に普及してきたというふうに聞いておりますけれども、基本的には、船員費コスト削減が主要な目的になっていることは今日明らかになってきておるわけです。  それで、我が国では、本船登録費用及び年間費用は主要便宜置籍船国と比較した場合に、初年度においても三倍以上のコストがかかるという試算例もございます。少なくとも日本船とFOCとの格差是正を志向するものであれば、最近一部の国において提唱され実施されておるオフショア船籍制度の導入なども一考を要するのではないかと考えられるわけですが、いずれにしても、国の支援措置の一環として、税制手当て等について諸外国の例を含めて今後の対応策というものを示してもらいたい、そういうふうに思います。
  57. 中村徹

    政府委員中村徹君) 先生御指摘のとおり、ヨーロッパにおきましては、オフショアレジストリーという制度を導入している国が多くなってまいっております。これは船員コストの増加等によっていわゆるフラッギングアウトというような自国籍船の海外流出が進んでおりますので、これに対する対応策として、国際船舶登録制度と呼ばれる新船舶登録制度の導入をした国、あるいはそういうものの導入を検討している国というのがあるわけでございます。これを我が国にこのままの形で導入できるかということになりますと、やはり制度上幾つかの難しい問題があるかと思うわけでございますけれども、この問題の本質は、いかにして自国船の国際競争力を高めるかという問題だと思います。したがいまして、やはりそういった観点から、我が国におきましても実情に合った施策を検討しなければならないというふうに考えておりまして、ただいま海運造船合理化審議会でフラッギングアウト対策のワーキンググループをつくって研究をいたしておるわけでございます。  我が国の税制につきましては、既に外航海運につきましては船舶の特別償却制度もございますし、登録免許税も大幅に軽減され、固定資産税の軽減措置もあるというようなことで、税制上からはかなりの措置があると思うわけでございますけれども、例えば昨年、六十三年度におきまして外国船の裸用船に対する所得税の源泉徴収の不適用措置を創設していただくというようなことで、海運対策の観点から可能なものがあればどんどんそういうものを採用していただくように、なお努力を重ねてまいりたいと思っております。
  58. 中野明

    中野明君 けさほども議論がありましたように、この便宜置籍船に日本船員を何とか乗船させるという方法も、これ将来の一つの課題として考えなきゃならないということで、いろいろありますので、ぜひこれは検討事項の中に入れてもらいたいと、このように考えております。  それから、船員雇用対策の進め方なんですけれども、この改正法案は、先ほどもお答えになっておりましたように、制定後三回目の改正を迎えることになるわけですが、過去二回の改正と今回の改正案の比較、これをわかりやすく説明していただきたいと思うんです。そして、今回延長期限を七年にされた理由、これもあわせてお答えをいただきたい。
  59. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船特法につきましては、昭和五十四年に四年間、それから五十八年に五年間の期限延長をいたしまして今日に至っております。  五十四年当時には、特定不況海上企業に指定されておりましたのは、近海海運業、それから内航海運業のうちの一般貨物船、はしけ運送業、それと船舶製造・修理業の四業種でございました。その後五十八年の改正時に、これら四業種に加えまして新たに内航海運業のうちの油送船が追加されております。過去二回の改正時におきましては、一般外航海運業は船特法の対象となっておりませんでしたけれども、近年の深刻な外航海運不況によりまして、六十一年の七月からは一般外航海運業のうちで油送船につきまして、さらに六十二年一月からは一般外航海運業のうちの一般貨物船につきましてそれぞれ特定不況海上企業に指定されております。  手帳発給状況につきましても、六十二年度で見ますと八百九十二人中八百三十五人、つまり全体の約九四%は外航海運業から離職した船員でございまして、今回改正された後の六十三年度も外航海運業が本法の施策の中心業種になるものと考えられます。  それから、期限延長をなぜ七年にしたのかということでございますけれども、六十二年五月、昨年の五月になりますが、経済審議会から「構造調整の指針」、いわゆる新前川レポートという建議がされております。この新前川レポートによりますと、今後我が国産業外需依存型から内需主導型へ需要構造を変革する、そして、その変革に見合った産業構造転換が進められるべきである、これによりまして素材型産業ウエートが低下すると予想されております。このような産業構造転換は一九九〇年前半にかけての期間に行われるべきであると、こういうように述べられております。このため、一九九〇年代前半の終わりに当たります昭和七十年ごろまでに、原材料及び製品の輸送海上輸送に依存しております素材型産業ウエートが低下することに伴いまして、海運企業事業規模の縮小による離職船員が発生する可能性が高いというようなこと、それからまた、特定不況業種の、船員以外の特定不況業種離職者対策等を規定します特定不況業種関係労働者雇用の安定に関する特別措置法有効期限も七年延長ということで今国会に法案提出をしているところでありまして、かかる観点から、船員雇用促進に関する特別措置法附則二項の期限につきましても七年を延長いたしまして、昭和七十年六月三十日までこの措置を継続していきたいと、かように考えているわけでございます。
  60. 中野明

    中野明君 それで、この船員雇用対策に関して、船員労働中央委員会においては六十一年七月に建議をして、六十二年五月に答申が、それぞれ提出をされております。それで、六十一年十二月には海運造船合理化審議会においても初めて船員雇用問題への対応が急務である旨中間報告がまとめられておるわけですが、最初に、五十一年—六十一年の船員数の推移、それから最近までの離職船員求職手帳の発給件数、就職促進給付金の支給実績と手帳所持者の就職状況について、御説明をしていただきたい。
  61. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 昭和五十一年から六十一年まで十年間に、船員数全体では二十六万四千人から十八万八千人と約七万六千人、率にしまして約二九%の減少となっております。特に外航海運業におきましては、五万三千人から二万四千人と二万八千人余り、五四%の大幅な減少となっております。  それから、船員雇用促進に関する特別措置法は五十三年の一月二日に施行されておりますが、施行されて以来六十三年の一月末までに、二千九百八十三件の特定不況海上企業離職船員求職手帳を発給しております。  また、この間に支給しました就職促進給付金の 額は、総計五億九千八万一千円でございます。  それから、特定不況海上企業離職船員求職手帳所持者の最近三年間の再就職状況につきましては、海上企業へ再就職した者が五七%、陸上企業就職した者が二五%、求職希望陸上企業に変更しまして公共職業安定所へ移った者が一六%となっておりまして、安定就職できずに手帳有効期間であります三年が満了した者はわずか三%ということになっております。
  62. 中野明

    中野明君 それで、ただいまも説明がありましたが、陸上就職への転換について、陸上雇用対策法、職業安定法、職業能力開発促進法等いずれも船員に関して適用除外とされておりますので、陸転の障壁改善をいかに進めるかが焦点となるわけでありますが、船主協会等の要望、あるいは運輸、労働省間の合意を受けて、現在までに海陸資格の互換性が一応まとまったというように聞いておりますけれども、その経過と特に難航した点、今後追加措置の可能性があるのかないのか、その辺御説明をいただきたい。
  63. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今御質問の海陸資格の互換性につきましては、運輸省と労働省との間で五十七年二月から協議を行ってきております。六十年の七月には、運輸省から、十一の技能資格につきまして具体的に学科試験の免除、受験資格の拡大の検討を依頼いたしまして、何回か協議を重ねまして、六十二年一月から、労働省から五種目の技能資格につきまして受験資格の拡大とそれから二種類の技能資格につきまして受験科目の一部を免除するということについて回答を得ております。  これらの協議におきまして、労働省からは、海の資格というのは船舶の安全な運航の確保を目的としたものでございまして、広範包括的な制度であり、クレーンだとかボイラーだとかといったような扱いはその一部にすぎないということ。それから二番目に、陸の資格というのは労働安全の確保を図るということを目的としたものでございまして、各個別の設備、機械、機具の取り扱い等に関する専門的な制度となっているわけでございます。したがいまして、どの陸の資格一つをとってみましても、これに対応する海の試験の出題の数あるいは程度が異なっておりまして、また、船舶内のこれらの業務に従事する頻度も少ないというような指摘がされております。  今後、海陸資格の互換につきましては、具体的な点がございましたら、労働省とも十分御相談いたしまして、積極的に対応していきたいというように考えております。
  64. 中野明

    中野明君 次は、船員法の改正に関する公益委員の見解によりますと、内航船の大部分が本法の適用範囲外——七百トン未満ですね、けさほど議論になってましたが。これが適用範囲外とされているので、適用範囲の拡大については三年以内を目途に結論を得るよう審議するとのことでございますけれども、これは厳格に守ってもらいたいということと、その間の行政指導をどのように進めていかれるのか。その辺もちょっと伺っておきたいと思います。
  65. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今先生御指摘のように、船員中央労働委員会から、七百トン未満の小型船につきましても適用範囲を拡大するということについて、三年以内をめどに結論を得るよう審議を進めるべき旨の御指摘を受けておりますので、私どもといたしましては、この御指摘に従いまして鋭意検討してまいりたいと考えております。  それから、その適用範囲の拡大が実現されるまでの間の行政指導はどうするのかという御質問でございますが、小型内航船あるいは漁船につきましては、それぞれ小労則、漁労則といった省令で労働時間が定められることになっております。これらの省令につきましては、船員法の定めに準じた規定になっている部分もありますから、今回の法律改正が成立した暁には、補償休日制その他本法の改正に伴い、当然その見直しが必要になってくるというように考えております。  これらの省令の改正につきましては、船員中央労働委員会の審議を経まして省令改正ということになろうかと思います。具体的な内容につきましては今ここで述べる立場にはございませんが、本法の改正の趣旨が十分省令に反映されるよう、私どもといたしましては最善の努力を尽くしていきたいというように考えております。
  66. 中野明

    中野明君 そこで、船員法等の法令遵守状況について、司法警察員の身分を有する船員労務官の役割というのは特に重要になってくると思われるんですが、最近の違反取り締まり状況、それから地方の海運支局の船員労務官配置状況、そして増員計画がもしあるのならばあわせて御説明いただきたい。
  67. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員労務官の職務は、先生御存じのように、船員法あるいは労働基準法、賃金の支払いの確保等に関する法律、船員災害防止活動の促進に関する法律、あるいは最低賃金法といった各種の法律の施行に関する事務をつかさどっているわけでございます。必要があるときには、船舶所有者あるいは船員に対しましてこれらの法令の遵守に関する注意喚起、勧告、船舶その他の事業場に臨検をいたしまして、船舶所有者や船員に対して出頭命令等を行いまして、またこれらの法令に違反する罪につきましては刑事訴訟法に規定する司法警察員の職務を行うものとなっております。  船員労務官の監査実績でありますが、昭和六十一年におきまして一万二千九百五十六の船舶及び船舶所有者の事業場に立入検査をしておりまして、百九十七件の違反及び四千二百一件の指導事項を発見しまして、これらに所要の措置を講じているところでございます。  それから、船員労務官の配置状況についてはどうかという御質問でありますが、昭和六十三年四月現在、百三十九人の船員労務官を全国の地方運輸局及び海運支局に配置しているところでございます。六十三年度の増員を含めまして、現在六十七の海運支局のうち三十三の海運支局が一人配置ということになっております。船員労務官が的確かつ十分な情報収集やきめの細かい効率的な監査を実施するためには、状況に応じて複数の船員労務官による監査が必要でありますし、また、船員災害の発生や船員からの申告に対して即時即応する体制が必要であるというような観点から、これまで船員労務官の一人配置となっている海運支局につきましては、これを複数化、二人配置化を中心として増員を行ってきたところでございます。  今後も、これらの海運支局の管轄する区域の状況、あるいは船員労務官の業務の状況等を勘案しまして、関係省庁とも十分調整をし、逐次船員労務官の増員が図られるように努めてまいりたいと考えております。
  68. 中野明

    中野明君 今お話が出ておりますように、一人のところはぜひ複数にしていかないと、なかなかその役目を果たすことが困難じゃないかというふうに感じますので、ぜひこれを、実情に応じて早急に手当てをしていただきたいなと、このように思います。  それから、違反件数に労働時間とか労働基準に関するものがどの程度挙がっておるんでしょうか。その件数なり、おわかりになったら教えてもらいたいと思います。
  69. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 昭和五十九年から六十一年までの船主別の違反件数、これをざっと御説明しますと、船員の安全及び衛生に関するものが六百三十五件、それから船員の雇い入れ契約等が二百八件、船長の職務に関するものが七十件、就業規則六十六件、給料その他の報酬六十件というふうになっておりまして、今御指摘の、労働時間、休日及び定員に関する違反件数は三十八件、六番目ということになっております。
  70. 中野明

    中野明君 実際は、徹底してやられたら、労働時間とか労働基準に関するものが多いんじゃないかなという感じを受けるわけでありますが、これはやはり運輸省の仕事の関係というんですか、運輸行政が先行という形で、労働行政というものが、労働省と異なつて産業優先というような形になるんじゃないかという嫌いを受けるわけであります。要するに、労働時間とかあるいは労働基準 に関する問題は、やはり労働省が一括して担当してやっていった方が効果的じゃないかなという感じも受けるんですが、その辺はどうお考えになり、また、今後そういう点について運輸省として、今回の法改正が含まれるわけですから、かなり労働時間とかあるいは労働基準の問題についてきめ細かく指導していかなきゃならぬと思うんですが、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
  71. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 海上労働の特殊性ということから、労働行政のうちで船員行政については運輸省が所管するということで、これまで四十年来運輸省船員行政をつかさどってきているわけでございます。ちなみに、ILOにおきましても海事関係については別の条約を結んでおりますし、その総会も陸上の一般総会とは別に海事総会が開かれるということで、いわば世界的にも船員行政については陸上の一般行政とは別個に取り扱われていると、かように私ども承知しております。  船員行政につきましては、陸上にない特殊性があるわけでありますので、私どもといたしましては、そういった海上労働の特殊性を十分考慮しながら、今後船員行政の適正な運営に努力していきたいと、このように考えております。
  72. 中野明

    中野明君 それで船員法なんですが、この改正船員法は、基準労働時間四十時間以内を目途として、当分の間は四十八時間としておりますが、この四十八時間以後の日程が不明確。同様に四十八時間から段階的に四十時間への短縮を目途とする労働基準法と比較して、どれぐらい時間的におくれることになるのか、その辺は定かでないと思いますが、もしおわかりになれば教えてもらいたいと思います。
  73. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員につきましては船員法で労働時間が定められているわけでありますが、船員法では、現在の法律では、航行中、当直者につきましては週五十六時間、それから当直に立たない人については四十八時間というように船舶の航行の実態に合わせて労働時間が定められているわけであります。しかしながら、最近の船舶の技術革新の進展等によりまして、船舶の停泊日数が減ってくるという中で、一方で労働時間の短縮をどうしたらいいかということでいろいろな角度から検討した結果が、今日お諮りしております補償休日制を含みました改正内容となっているわけでございます。  この制度によりますと、将来平均労働時間週四十時間を目標にするということにしておりますが、現在一般的には五十六時間労働になっております船員の労働を一挙に四十時間に持っていくというためには、何と十六時間の短縮をしなければならないということになるわけであります。一方、労働基準法の方は四十八時間を四十時間に短縮していこうということでございますので、いわば短縮の割合が陸上と海を比べますと二倍の開きがあると、こういうことが第一点申し上げられるかと思います。  それからもう一つは、こういった労働時間の短縮につきましては、先ほど申し上げましたように、船の運航実態に合わせて労働時間を決める。いわゆる実労働時間で現在は法律で定められておりますが、この実労働時間方式を改めまして補償休日ということで、海で働いた分につきましては、超過労働時間についてはまとめて陸上で休暇をとらせる、まあ原則としてということになりますが、原則として陸上でまとめて休暇をとらせるという形に改めようとしているわけでございます。こういった新しい制度を導入するということから、船員法につきまして労働基準法と同じテンポで週平均労働時間四十時間に到達させるというのは難しいというように考えております。  しかしながら、先ほど申し上げました経済審議会建議であります新前川レポートでも、二〇〇〇年に向けて総労働時間を千八百時間に短縮すべしという建議もいただいております。運輸大臣からは、この建議をもとに、一九九〇年代のできるだけ早い時期に目標を達成したいという御答弁をしていただいておりますことを申し上げます。
  74. 中野明

    中野明君 ただいまの答弁にもありましたように、労働時間の短縮というのは国民生活向上の必須の条件というふうにされております。大いに進めなければならない状況にあることはもう異論のないところでありますが、昨年の労基法審議のときに、六十一年の年間総実働時間が二千百二時間で、六十二年は少しふえて二千百十一時間、このようになっておりますが、これと比較する上で、船員の年間総実働時間はどのくらいになるんですか。外航、内航、旅客船、それに漁船についてもわかるようであれば示していただきたいと思います。
  75. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員の労働時間につきましては、船員労働統計、六十一年九月にまとめたものでありますが、これによりますと、五百トン以上の船舶で、海運業全体では月当たり二百二十四時間、そのうち外航船が二百二十八・三時間、内航貨物船が二百三十七・七時間、旅客船が二百三時間となっております。この数字には長期間下船している船員が含まれておりませんのでそのまま年間の労働時間を計算することは困難でありますが、この数字をもとに、陸上休暇、有給休暇の実績を勘案しまして年間の労働時間をあえて推計いたしますと、海運業全体では二千二百三十時間、そのうち外航船が二千百十時間、内航貨物船が二千四百時間、旅客船が二千三百二十時間程度と想定されます。これに対しまして、陸上の労働時間は労働省の毎月勤労統計調査報告で、全産業平均二千百二時間、運輸業で二千三百三時間ということになっております。  それから漁船につきましては、季節的な就労形態もありまして、操業の態様によりその作業形態も多様でありまして、労働時間についての統計はほとんどないといったような現状でございます。
  76. 中野明

    中野明君 やはり時間を短縮するということになると、総労働時間というものは正確に把握されないと、結局、幾ら短縮したのかということもなかなか国民の方から見ても従業員の方から見ても納得するような数字が出ないわけですから、ぜひこの実労働時間の実態調査というものをこれは行ってもらいたい。そこから出発をしないと、労働時間を短縮するといっても幾ら短縮ができたのやら、それもわからぬものですから、ぜひこれは——ちょっと私もデータを調べてみますと、長時間労働であることは間違いありません。ですから、昨年の労働基準法改正の際には従来の統計に加えて労働時間総合実態調査という単発の調査も労働省はやったように伺っております。運輸省の場合はこの法改正に当たってそういう手続とかそういう方法はとられなかったのかどうか、その辺はどうなっておりますか。
  77. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員の労働実態につきまして、毎年一定の調査月に所定内労働時間及び所定外労働時間を調査する船員労働統計がございます。今回の船員法改正に当たりましては、財団法人海上労働科学研究所におきまして、六十一年度に船員の労働時間、休日、休暇につきまして実態調査を行っております。この調査は、船員の労働実態についての貴重な資料ではありますけれども、調査のサンプル数が少なく回収率も低いということで、その結果だけで全体を判断するのは無理があるということで公表しておりませんけれども、今回の改正に当たりましては、船員労働統計あるいは今申し上げました実態調査のデータを参考にしているところでございます。
  78. 中野明

    中野明君 今後、週四十時間制に移行するためには、順次短縮を進めていくことが運輸省に求められている課題になるわけですが、その際に正確な数字を踏まえて行わないと、何時間縮めることが可能なのかもなかなか難しい。船中労では議論をされるでしょうけれども、国民の目から見てわかりやすい基準で進められるとは思えないわけです。ですから、船員労働時間のより詳細な実態の把握というものをおやりになっていただきたいなと、このように思うのですが、運輸大臣いかがでございますか。
  79. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 週の平均労働時間につきましては、船員労働の特殊性や船員の福祉、 船員の労働時間の動向その他の事情を考慮して、段階的に短縮するように政令で定めることとしております。その制定または改正に当たっては、あらかじめ船員中央労働委員会の議を経ることにしております。このために、今後、この規定に基づいて短縮を図っていく過程におきましては、船員の労働時間の実態把握に、おっしゃいますように正確な実態把握をすべく努めるとともに、また、その把握されたデータに基づいて船員中央労働委員会での十分な審議を行っていただくように努めるつもりでございます。
  80. 中野明

    中野明君 ぜひこれはお願いをしたいと思います。  そこで、年間の総実働時間短縮ということから法案の中身を見てみたいと思うのですが、今回の法改正で、補償休日の制度が加わって一週間四十八時間からスタートするわけですけれども、それを超える時間は一定の時間を基準に補償休日が与えられることになる、このように理解してよろしいんですか。
  81. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員労働は、陸上より離れた海上における船舶内での勤務のため、航海中は航行のための作業が連続すること、外部から適宜必要な労働力の導入が困難であること、船舶内での休息は拘束された環境のもとでとるというようなこと、こういったようなことがございます。また、休息としては船内休息というのは必ずしも船員にとっては好ましくない、こういうような特殊性を有しております。乗船期間中のみで休日を量的、質的に確保することはそういうような観点から困難であろうというふうに考えております。  このため、今回の制度改正に当たりましては、船舶を下船した後、あるいは停泊中の休日付与を中心として航行の状態に応じ一定期間での弾力的な休日付与が可能な制度とすることによりまして、航海中の連続労働という実態との調和を図りつつ休日の確保を図ることとしているわけであります。基準労働期間内での休日付与を義務づける補償休日制を設けることとしましたのもかような趣旨からでございます。この制度におきましては、一週間の通常の労働時間、すなわち一定の要件のもとに特別に認められる時間外または補償休日の労働の時間を除いた労働時間が四十時間を超える部分について補償休日が与えられることとなっております。  なお、時間外または補償休日の労働については、補償休日によらず、別途割り増し手当により通常より高い率の報酬を受けることになっております。  以上でございます。
  82. 中野明

    中野明君 時間外労働、補償休日の労働が、改正法六十四条によってできることになっておりますが、この「臨時の必要」というのはどういう場合で、それは船長判断に任されておるのか。その辺はどうでしょうか。
  83. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 政正案の六十四条一項の規定は、現行の六十七条を踏襲したものでございます。六十七条の「臨時の必要」ということについては従来から議論があったところでございますが、五十年の通達によりまして、「船舶、航行の安全を図るために必要な業務が含まれることはもちろんであるが、その他船舶の運航の確保を図るために必要な業務を排除するものではない」という解釈、運用が確立しておりまして、今回の改正に当たってもその考え方は変えておりません。具体的な例といたしましては、濃霧の発生によりまして航海当直に立つ海員の員数を増加する場合であるとか、機器の故障が生じて修理する場合、乗組員の傷病等により欠員が生じそのかわりに作業を行う場合、あるいは何らかの事情変更に対応するために急遽運航スケジュールを変更せざるを得ない場合などが考えられるわけであります。  それから、「臨時の必要」の有無についての判断でありますが、これは船長が判断することになっておりますけれども、この規定は、船長に恣意的、あるいは恒常的な時間外または補償休日の労働を命ずることを許容するものではないことは言うまでもないわけであります。運輸省といたしましては、この規定が遵守されるように今後とも船員労務官の監査等を通じて指導監督を行っていきたいというふうに考えております。
  84. 中野明

    中野明君 また、改正法第六十五条で、適法な労使協定がある場合は補償休日労働ができるんですが、命令で定める一定日数を限度とするとなっておりますが、どのぐらいの日数を考えていらっしゃるのか。その辺はどうでしょうか。
  85. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 補償休日につきましては、六十五条におきまして一定の日数を限度とするというように定められております。この制度は、補償休日制の趣旨を没却しないように法律上一定の限度を設ける必要があるからという配慮からでございます。具体的な日数の限度につきましてはこれから船員中央労働委員会で御審議願うことになるわけであります。したがって、確定的に今何日ということを申し上げることはできませんけれども、例えば全日本海員組合と船主団体との間の労働協約の例によりますと、百十八日の休日のうちに三十八日は就労させることができるというような定めがございます。こういった労働実態を勘案しながら今後検討してまいりたいというように考えております。
  86. 中野明

    中野明君 次に、有給休暇の日数ですけれども船員法は義務的付与の建前ですが、労働協約で一部買い上げの制度もありますし、付与日数即取得日数とならない面もあろうかと考えます。どのぐらいの取得日数になっておるのか、その辺、数字がわかれば教えてください。
  87. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 財団法人海上労働科学研究所の行いましたアンケート調査によりますと、海運合計で十九・五日、そのうち外航船が二十二・五日、内航貨物船が十八・一日、旅客船が十八・五日の平均取得実績となっております。
  88. 中野明

    中野明君 年間の所定内労働時間が順次減少していくことになると思いますけれども、その分時間外がふえてしまうことを心配して話をしているわけですけれども、臨時の必要とか、命令の内容とか、有給休暇の取得日数によっては、それを容認してしまうおそれがなきにしもあらずという感じであります。運輸省に適切な運用をお願いするとともに、やはり年間の総実働時間を正確に把握して、検証しつつ、それに応じた短縮手法を工夫していく必要があるということで先ほど大臣にもお尋ねをしたわけでございますので、よろしくぜひお願いしたいと思います。  それで、今まで議論をしてみて、船員の長時間労働がどこに問題があるかということも見当がつきましたけれども、そこで、これらの船員方々の年齢の構成、特に内航船員の年齢構成の上で、一番多い年齢世代は何歳から何歳までになっておるんでしょうか。職員と部員に分けて、それぞれお答えをいただきたいと思います。
  89. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 昭和六十一年の統計で御説明申し上げます。  まず、二十五歳未満が、職員が二十九人、〇・六%、部員が七百十三人、一二・五%、合計で七百四十二人、七%ということになっております。以下、二十五歳から三十五歳未満まで、職員が五百七十八人、一一・九%、部員が千五十九人、一八・六%、合計千六百三十七人、一五・五%、三十五歳から四十五歳未満、職員が千六百八十五人、三四・七%、部員千六百二十二人、二八・四%、合計三千三百七人、三一・三%。四十五歳以上が、職員二千五百六十八人、五二・八%、部員二千三百十二人、四〇・五%、合計四千八百八十人、四六・二%ということで、約半数近くが四十五歳以上ということになっております。
  90. 中野明

    中野明君 それで、内航船員の平均年齢と同じ運輸交通業全体、それから他産業と比較して、どのようになっておりますか。かなり高年齢の人が多いんじゃないかと思われるんですが、その辺はどうですか。
  91. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 他産業の資料が今手元にございませんので正確なことは申し上げられませんが、内航海運業につきましては、今申し上げましたように、半数近くの方が四十五歳以上ということでございますので、他産業に比べましても年 齢構成が高いということは言えるかと思います。
  92. 中野明

    中野明君 そうしますと、一番問題になるのは、やはり後継者をどうやって確保して育てていくかというのが大きな問題になるわけですが、長時間労働はこれからも変わらないと、若い人が集まらなくなるのはもう必至でありますし、国内輸送の約半分近くを海運に期待していくその役割に影響も考えられるように思いますので、若い人にとって魅力ある職場をつくるということからも、他産業に負けないぐらい、同じぐらいに労働時間を短縮する、ぜひこれは必要だと思います。今直ちにやるということになりますと船主にとってもきついことかもしれませんけれども、そのままにしておくとかえって問題を大きくしてしまうおそれがあるように思われます。  この点について、今後、日本も島国でありますから、けさほども議論が出てましたように、一朝事あるときには大変ですから、やはり日本籍の船を確保する。どれぐらい確保するかということとともに、その船員も必要であります。後継者も当然必要なんです。ですから、今後の後継者育成という観点におきますと、商船大学の卒業生が過去においては毎年二百人程度就職は可能であったのが、最近ではその一〇%にも満たないというような状況であるとも言われております。そうしますと、船員の教育制度の根幹にもかかわる問題にもなってまいります。そういう点で、漁船の場合は特に船員の高齢化を反映して若年労働力の導入が非常に困難になる。こういうことをいろいろ考えますと、一刻も早く将来の見通しを立てた適切な船員雇用対策というもの、後継者づくりというものが重要になってまいります。  大臣として、この点いかがお考えになり、どのような決意でお臨みになろうとしておるのか、それをお伺いしたいと思います。
  93. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) おっしゃるとおり、乗員の高齢化によります将来の若い乗員の不足が内航海運に非常に大きな妨げになるということを懸念しております。後継者をつくるためにも、できるだけ内航海運というものが魅力的な職場になるようにいろんな努力をしなくちゃいけないと思いますが、何といっても、船舶の設備の近代化を進めると同時に、やはり労働時間を短縮するということに努めていかなければ、結果として乗員の不足によって内航が寂れる、社会的にも大きな問題が起こると心得ておりますので、そういう努力をしようと思います。
  94. 田渕哲也

    田渕哲也君 まず、船員法の問題でお伺いをしたいと思います。  労働基準法が昨年改正され、ことしの四月からそれが実施されております。ところが、船員法の改正は、労働基準法に比べて一年おくれになっております。これは一体どういう理由なのか、お伺いをしたいと思います。
  95. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 労働基準法の改正につきましては、改正案を提出するまでに審議会等で答申をいただき、建議をいただいた末に国会に提出されたというように聞いております。船員法につきましても、まず実態調査から始めなければならないということで、昨年の一月から三月にかけまして海上労働科学研究所におきまして実態調査を行うと同時に、また、今度の船員法改正につきましては、労働基準法と違いまして法律的にいろいろの問題があるということで、法律専門家の方々から成ります労働法制検討会なる検討会を設けまして、昨年の四月から約半年にわたって審議をしていただき、その結果に基づきまして昨年の九月、船員中央労働委員会にお諮りした、こういうような経緯から約一年ほどおくれたということになります。
  96. 田渕哲也

    田渕哲也君 そういう調査とか、あるいはいろいろな機関で相談する時期が遅過ぎると思うんです。労働基準法の改正についていろいろそういう審議や調査が行われておるときは何もしないでおいて、労働基準法の方向が大体出てからやっと動き出すのはおかしいんじゃないか。やっぱり労働基準法を改正するならそれにテンポを合わせるような状態で準備を進めるのが本来のやり方ではないかと思いますが、いかがですか。
  97. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 先生御指摘のとおりでありますが、今申し上げましたように、船員法につきましては、昭和二十二年に制定されて以来四十年来労働時間に関する規定は改正されなかったということから、まず実態調査をし、また法制的な検討もしなければならないということから、労働基準法に比べまして一年ほどおくれたということについては遺憾に思っております。
  98. 田渕哲也

    田渕哲也君 労働基準法の場合だって、労働時間についてはずっと改正されていなかったわけですから、同じ条件ですね。船員法が一年おくれていいという理由は何にもない。これはやっぱり運輸省の怠慢じゃないですか。
  99. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 繰り返しの答弁になりますが、労働基準法の場合は、まず問題になりましたのは、短縮すべき労働時間を何時間にするかということでございました。最終的には週労働時間四十時間ということに落着したわけでありますが、それまでにはいろいろな検討経過があったというように聞いております。  こうした労働基準法改正案の策定過程における議論を踏まえながら、船員法もそれに倣う必要があるということで、労働基準法の審議経過をにらみつつ、私ども準備を進めてきた次第でございます。
  100. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは今提出されておるわけですから、一年遅れというのはこれはもう仕方ないんですが、問題はこれからのスケジュールでありまして、先ほどからのいろいろの論議を聞いておりましても、労働基準法の方は、週四十時間に移行するのが大体一九九三年ごろというふうなことが言われております。ところが、船員法の方はこれは一向にはっきりしない。大体二〇〇〇年までにやるんだというようなことを言っておるわけであります。  これも先ほどの説明を聞いておりますと、労基法は八時間短縮するだけだ、ところが船員法の方は十六時間も短縮するんだからそれは倍ぐらいかかるんだというようなことだと思うんですけれども、これも実態から見ると非常におかしいと思うんですね。現在、船員の実態労働時間というのは、海員組合の組織下では、大体昭和四十九年以降は労働協約によって週労働時間四十時間ないし四十三時間という、これぐらいのところで協定が皆結ばれておるわけです。もっとも、全部海員組合に組織されておるわけではありませんけれども外航船、それから旅客、フェリーなどはほとんどがその組織下にあるわけであります。  問題は内航であります。内航は、現在組織下にあるのが約三〇%、あとは未組織のところが多いのでありますけれども、未組織の分野でも、良心的な船社では組織船の協約を準用しておるところがかなりあります。したがって、総体的に見た場合に、現行法の週五十六時間をかなり下回っておる状態。特に外航、旅客、フェリーではもうほとんどが大体四十時間から四十三時間の協定になっておる。  こういう実態からすると、十六時間短縮せぬといかぬから暇がかかるんだという答弁はちょっと納得ができないと思うんですが、いかがですか。
  101. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 私の手元にある資料によりますと、海運関係船員の組織率は五〇・四%、約五割になっております。  先生おっしゃるように、確かに海員組合と各船主団体との間で結ばれております労働協約によりますと、労働時間法制についてはかなり進歩している、前進しているというように考えておりますが、ただ問題は、そういった海員組合の組織下にない船員の労働時間をどのようにしたらいいかということであろうかと思います。海員組合の組織下にない船員については、残念ながら労働協約どおりにはなっていないというのが実態であろうかと思います。  したがいまして、今後この法律改正が成立した暁には、こういった業界方々も啓蒙いたしまして、労働時間の短縮に向けて順次進めていく必要があるというように考えております。
  102. 田渕哲也

    田渕哲也君 それと、この船員法における労働時間の短縮というのは、やはり船という特殊な形態で、補償休日という制度をとらざるを得ない。だから乗船中の労働時間が飛躍的に減るわけじゃないんですね。そのかわりに補償休日というものをとらせるということですから、実際の運航上のことにおいてはそんなに大きな支障はない。問題は、補償休日を与えるための休日交代要員というものを雇わぬといかぬ。ところが、現在は船員もいっぱい余っておる状態ですから、これもそれほど難しいことではないと思いますね。だからそんなに時間がかかる問題ではないと思うんですけれども、いかがですか。
  103. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まず、補償休日の問題につきましては、確かに結論的に言えば先先がおっしゃるとおりかもしれませんが、今まで船員法では、実労働時間ということで実際に船が走っている状況を前提にした労働時間の決め方をしておりましたのを、今度は、労働時間短縮につきまして、超過労働時間についてはまとめて、一括して休日をとらせるという形に制度を改正していくわけであります。したがいまして、その制度改正につきましては、十分船主あるいは関係労働者に周知徹底させまして、その制度の定着を図るという必要がまず第一にあろうかと思います。  それから、要員を確保すればいいではないかと。まあ確かにそのとおりでありますが、要員を確保するということは、翻って言いますと船主経済にはね返るわけであります。したがいまして、そういう観点からも、順次短縮していくべきものというように考えております。
  104. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしても、そんなにべらぼうに時間をかけるべき問題ではないと思うんですね。まあ大臣も、二〇〇〇年までにやるけれども、一年でも二年でも三年でも縮める努力をするとおっしゃっておるわけです。これはやはり労働基準法が大体九三年に行われるならば、法律が一年おくれているから一年ぐらい延びるのは仕方がないけれども、一九九四年ぐらいには実施すると、それぐらいの目標でやるという約束をしていただけないですか。
  105. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 衆議院の委員会でも、大臣から再三、新前川レポートでは二〇〇〇年に向けて千八百時間に短縮すべしという目標が掲げられているけれども、二〇〇〇年ということにこだわらず一年でも二年でも短縮し、一九九〇年代のできるだけ早い時期に週平均四十時間労働に持っていきたいという趣旨の答弁をされているわけでありますが、今御指摘のように、その一九九〇年代のできるだけ早い時期を確定年数で話せと、こういう御質問かと思いますけれども、現段階で何年といった確定日で申し上げることは非常に難しいということについて、御理解いただきたいと思います。
  106. 田渕哲也

    田渕哲也君 補償休日の問題でお伺いしますが、この六十四条による「臨時の必要があるときは、」云々というのがありますが、これは大体どの程度になるものですかね。日数的にはどの程度になりますか。
  107. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 「臨時の必要」というのは、あくまでもその船が運航中あるいは停泊中も含めて、要するに乗船中に生じたことであります。したがいまして、船から下船して臨時の必要で乗せるということはまず考えられないというふうに考えております。
  108. 田渕哲也

    田渕哲也君 これは現行六十七条の規定があるわけですけれども、これによって労働時間がかなり延びておる。その、これによって延びておる労働時間というのは大体どれぐらいと推定されていますか。
  109. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今御質問の趣旨は、恐らく臨時の必要を含めて時間外労働がどのぐらいかと、こういう御質問かと思いますが、所定外の労働時間につきまして、私どもの方の統計によりますと、海運合計で一人平均月間二十五時間程度かと思います。
  110. 田渕哲也

    田渕哲也君 月間二十五時間ということは年間にすると約三百時間ということになりますね。そうすると、六十四条との関係でその時間を当てはめると、どういうことになりますか。
  111. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 「臨時の必要があるときは」労働時間を延長することができるという規定があるわけでありまして、その「臨時の必要があるとき」というのはどういう場合かということをまず御説明したいと思いますが、例えば濃霧が発生して当直者の員数を増加する必要がある場合だとか、あるいは船舶の機器が故障して修理する必要がある場合、こういったようなあらかじめ予定できない事態が発生いたしましてそれに対応するために時間外労働をする、こういうような場合を想定しているわけでございます。  したがいまして、確かに月間二十五時間——船員さんが一年間に乗っているのは大体九カ月ぐらいだと思いますので、先ほど三百時間とおっしゃいましたが、二十五掛ける九というのが年間を通じての時間外労働かと思います。したがいまして、今申し上げましたように、あらかじめ予定できないような事態が発生した場合の時間外労働でございますので、ここで、一般的なパターンとして何時間が時間外労働として通常かというのは申し上げにくいかと存じます。
  112. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから六十五条の問題については、先ほどの答弁の中で、現在海員組合が協定をやっておる年間百十八日の休日に対して三十八日と、それを勘案するということですけれども、ただ、法で定められておる休日は当面は五十二日ですね。だから、勘案するというのはどういう意味ですか。大体そういう比率に準じてという意味ですか。
  113. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 補償休日についてちょっと御説明申し上げますと、今回の法律改正で、まず第一点は、従来停泊中週一日休日という制度でありましたのを、停泊時間が非常に短いという実態の中で、停泊中一週間に一日の休日というのは余りにも過酷であるという観点から、停泊中であると否とにかかわらず一週間当たり一日まず休日を付与するということにしたわけでございます。  第二点は、将来の目標として四十時間労働に持っていく。しかしそれは段階的に短縮するということになりますから、初めは四十八時間からスタートするかと思います。そうしますと、四十八時間の場合ですと週休一日ということが先行するわけでありまして、四十八時間が段階的に四十六、四十四というふうに減っていくのだろうと思いますが、その段階で超過労働時間が生ずるということになるわけであります。そこで、そういう形で休日が発生した場合に、その休日を船内でとらせることは非常に難しい。旅客船のように短距離でいわば通勤で勤めることが可能な場合は週休制ということができるかと思いますけれども、通常の船の場合ですと一週間七日間運航しているわけでございますので、船の中で休日をとるしかない。しかし、船の中で休日をとるということはやはり私ども健康上の理由から見て好ましくないというように考えておりますので、労働協約等によって定めがある場合は別ですけれども、一般的には陸上で休暇をとっていただくということが望ましいのではないかというように考えているわけであります。  ただ、陸上で休暇をとるといった場合でも、例えば船舶の運航スケジュール等によって必ずしも予定どおり休日をとらせられないという場合も想定される。したがいまして、そういう場合には時間外労働ということで補償休日に働かせる場合も考えなければならないだろうというように考えております。ただ、それを船主の恣意に任せますと、せっかくの補償休日の制度が没却するということになりかねないということから日数制限を設けたわけであります。  そこで、それでは日数制限をどこまでにするのかということにつきましては、これから、この法律が成立した暁に船員中央労働委員会で御審議いただくことになりますけれども、例えば労働協約の例でいきますと、今先生おっしゃいましたように、年間百十八日の休日に対しまして就労している実績は三十八日ありますと、まあざっと三割と いうことになりますが、そういうようなことを勘案しながら、割合としてそれが一つの尺度として言えるのではないかという意味で御答弁申し上げた次第でございます。
  114. 田渕哲也

    田渕哲也君 海員組合の場合は、年間百日以上の休日がある中の三十八日。ところが、当面は週に一回ということですから、それは同じ比率でやると十五日ぐらいということになりますけれども、休日が本当に少なくなってしまう。だから、同じ比率でやるというのはまず問題があるのじゃないかと思うんですね。やはり百十八日の協定を結んでおるところと休日が五十二日しかないところと、同じ比率で買い上げを認めるということ自体がおかしいと思いますが、どうですか。
  115. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) まさに先生のおっしゃるとおりだと私どもも考えております。したがいまして、どの範囲、つまり補償休日の買い上げと申しましょうか、時間外労働の認められるべき日数の限界はどの程度が望ましいかということにつきましては、船員中央労働委員会におきまして関係者各位の御意見を承りながら決めていきたいというように考えております。  したがって、先ほど申し上げました数字はあくまでも労働協約ベースでいくところだということでありまして、三割とかあるいは三分の一にするという意味で御答弁申し上げたものではございません。
  116. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、小労則の本法への一本化についてお伺いします。  現在、内航船員の数は幾らか。また、そのうち小労則が適用されておる船員数は幾らかお伺いをしたいと思います。
  117. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) お話しをする順として、まず総数から御説明してまいりますと、船員法適用船員数は十八万七千人余りということになっております。その中で、漁船が八万八千人余りでございますので、残りの九万九千人余り、約十万人が商船海運業、その他と、こういうことになります。  そこで、今御質問の趣旨は、この法律の適用になります七百総トン以上の船舶に何人ぐらいの船員が乗っているかと、こういう御質問かと思います。  まず、七百総トン以上の商船に乗っている船員は、六十一年十月の統計でございますが、三万五千百六十人でございます。ただ、このほかに海運の特殊性といたしまして、予備船員制度というものがございます。予備船員数というのは二万一千人余りでございますが、この二万一千人余りの予備船員というのは、七百総トン以上の船と七百総トン未満の船舶と両方に関係しているわけであります。そこで、私どもの方で一定の尺度でこれを配分しましたところ、大体一万七千人ぐらいが七百総トン以上の船舶に関連する予備船員であろうと、こういうように推計しております。そういうような観点から計算しますと、今申し上げました三万五千百六十人に一万七千人を加えた約五万二千人、これが七百総トン以上の船舶、つまり今回の船員法の中の労働時間の適用を受ける船員であろうかと思います。  その比率は幾らぐらいかというお話でございますが、商船等に乗り組む九万九千、約十万の中の五万二千人ということでございますので、五二%程度かと、こう考えております。
  118. 田渕哲也

    田渕哲也君 その場合の七百トン以上に乗る船員は、外航も含まれておるわけですね。内航だけでは幾らなんですか。
  119. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 統計のとり方が内航、外航という区別をしておりませんので、この中で何人が内航で何人が外航かという仕分けはしにくいかと思いますけれども、内航に就航している船舶というのは小型船舶が主体でございますので、七百総トン以上の船舶に乗り組んでいる内航船員というのはかなり少ないものというように考えております。
  120. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしても、内航船員の大部分、八割以上は船員法適用されずに小労則が適用されていると思うんです。私はそういうこと自体がまずおかしいと思うんですね。やっぱり内航船員の大部分は船員法適用されないといかぬ。大体小労則というのは戦後、まあ七百トン未満といえば木船か機帆船、大体家族労働的な運用をしておったわけであります。そういう時代と今とは違うわけですから、内航船員のもう八〇%以上が本法が適用されないで小労則が適用されること自体おかしいと思いますが、いかがでしょうか。
  121. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 船員法が二十二年に制定されまして、七百総トン以上の船舶に乗り組む船員につきましては法律で労働時間が定められております。七百総トン未満の小型船あるいは漁船につきましては、それぞれ四十二年、四十三年に省令で定められるということで今日に至っているわけであります。そこで、こういった労働時間を省令で定めるのではなくて、法律で定めるべきではないかというのが今先生御質問の趣旨かと思います。  この点につきましては、船員中央労働委員会で、今回お諮りしております船員法改正について御審議いただく過程におきましても大きな議論になったところでございます。特に労働側委員からは、内航船員の労働条件を改善するという意味から、小型船につきましても省令で定めずに法律で定めるように改めるべきではないか。いわゆる適用範囲の拡大ということが強く主張されたのであります。  ただ、その場合に問題になりましたのは、現在省令、いわゆる小労則と言っておりますけれども、小型船の労働時間に関する省令でございますけれども、この省令では、法律にないいろいろな規定がございます。  二、三その例を申し上げますと、例えば小型船につきまして、変形労働時間制と称しまして、一週間航行中五十六時間あるいは停泊中四十八時間の範囲内で一日の制限、一日八時間の制限を超えることが可能であるとか、あるいはまた小型旅客船につきましては、四週間を平均して一週間五十二時間の範囲内で一日または一週間の労働時間の制限を超えることができるとか、あるいは労使協定によりまして一日あるいは一週間の制限労働時間を超えることができるというように、法律に規定されていない各種の規定がございます。  これらの規定をどうするかということが大きな議論になったわけでありまして、短時間のうちにこれらの問題について結論を得ることは難しいということから、船員中央労働委員会では、三年以内をめどに、この適用範囲の拡大について労働委員会において審議をし結論を得るというような御答申をいただいているのでございます。
  122. 田渕哲也

    田渕哲也君 制度上の違いがたくさんあるように言われましたけれども、確かに第三条の変形労働時間制というものがある。それから第四条は四週間単位の変形労働時間。第七条が労使協定による時間外労働。ただし第四条、第七条はいずれも小型旅客船の場合。それで現在小型旅客船、この旅客船の場合はほとんど海運組合の組織下にあります。そしてこのような協定は実際には存在していない。だから実際にはこれはもう度外視していいぐらいのものだ。  一番大きな問題は第三条の変形労働時間制。ただ、この変形労働時間制の問題点というのがありまして、これは週五十六時間の定めをした場合に、一日八時間を超えて労働させることができる。ところが、現実には、週五十六時間すら守られていない例が非常に多い。特に未組織の内航船の場合非常に多い。だから、この変形労働時間制がこれは非常に問題があると思うんです。  それからもう一つは、昔は小型内航船というのは木船や機帆船。大体一昼夜以内の短距離を往復したわけです。ところが、現在の内航船は、百九十九総トンぐらいになっても、これはもうほとんど日本の全沿岸をネットとした航海が常態となっておる。航海時間も二十四時間を超える場合がざらであるし、実際はもう七百総トン以上の内航船と変わらないような運航をしておるわけですね。  だから、七百総トン以上とこのような七百総トン未満というものを分ける必要は労働時間の上か らはほとんどないのではないかと思いますが、どうでしょうか。
  123. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 労働時間に関しまして、七百総トン以上の船員と七百総トン未満の船員とに差があっていいというわけではないということは私も承知しております。基本的な考え方といたしましては、将来の方向として、七百総トン未満の船舶に乗り組んでいる船員についても、七百総トン以上の船舶に乗り組んでいる船員と同じレベルに持っていくべきであるということについて、私どもそういうように考えております。  ただ、先ほど申し上げましたように、これまでの経過から、規制の仕方が法律と省令と分かれている。そういう中で、一挙に省令を法律に持ってくるということについてはいろいろな問題があるということで、労働委員会では三年間の猶予を置いたというように承知しているわけでありまして、私どもといたしましては、この三年間十分検討いたしましてしかるべき方法をとるべきであるというように考えております。
  124. 田渕哲也

    田渕哲也君 これはぜひお願いしたいと思うんです。私は、今までこういう小型の内航船を小労則というようなことで本法の適用範囲外に置いておいたことが、内航船の労働時間の短縮という面では非常におくれを生じておると思うんです。むしろ、こういう本法を適用しなかったというようなやり方自体が船員の労働条件の悪化につながり、また、それが過当競争を生んでおる、こういうことも言えると思いますので、ぜひ早急にこれは見直していただきたいと思います。  それから、当面はそういうことで小労則、漁労則の内容を見直すことでやらざるを得ないと思いますけれども、これは実施時期においても、また労働時間、休日も、基本的には変わりがないわけですね、本法と。したがって、本法が変わればこれはすぐ本法と同じように変えるべきだと思いますが、いかがですか。
  125. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 今度の法律改正では、何度も御答弁申し上げておりますように、補償休日制という新しい制度を導入しているわけでありまして、そういう制度につきまして、小労則、漁労則についても当然考え方としては適用すべきであろうと考えております。ただ、どういう形で小労則に取り込むかということにつきましては、これから船員中央労働委員会にお諮りして御審議していただこうと思っております。  ただ、私どもといたしましては、この法律は来年の四月から施行ということになっております。したがいまして、七百トン未満の船あるいは漁船等について定めております省令につきましても、同じ日から改正するような方向で鋭意検討してまいりたいというように考えております。
  126. 田渕哲也

    田渕哲也君 次に、先ほども話題になりましたけれども、ナショナルミニマムの問題について少しお伺いをしたいと思います。  外航海運は、人員合理化がますます拍車がかかってきておりまして、外航船員も現在ではもう一万人を割り込もうとしておる状態だと言われております。ここ数年間の外航船員の数の推移をまずお伺いしたいと思います。
  127. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 我が国外航船員数は、昭和五十八年十月には三万五千七百五十人でございました。それが五十九年には三万三千四十四人、六十年には三万十三人と減少しておりまして、六十一年、一昨年の十月には二万四千三百三十三人、この三年間で約三二%の減少ということでございます。  このうち、外航労務協会及び外航中小船主労務協会に所属するいわゆる二団体所属船員の数につきましては、日本船主協会の調査によりますと、昭和五十八年二万九千百八十三人でありましたのが、六十二年十月、つまり昨年の十月には一万四千九百八十四人とほぼ半数になっております。
  128. 田渕哲也

    田渕哲也君 これから先の見通しがどうなりますか。この調子で減っていくと、あと二、三年たてば日本船員はいなくなってしまうということになるんですが、先の見通しはどうなんですか。
  129. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 外航海運界、非常にこれからの業界自体の見通しが不透明ということもありまして、遠い将来についてどのようになるかということをここで申し上げることは難しいかと思いますが、ただ、外航海運界では、昨年の四月から二年計画で労使合意のもとで緊急雇用対策と称する雇用調整実施中でございます。この雇用調整の過程におきまして、日本船主協会の試算によりますと、六十二年四月現在、先ほど申し上げましたが、外航二団体所属船員約一万八千人が四割ぐらい減るのではないか。そういうことになりますと、来年の三月には一万一千人台に減少するのではないかというように考えております。
  130. 田渕哲也

    田渕哲也君 運輸大臣は、衆議院の運輸委員会においても、日本の商船隊を一定日本船員が運航することが最低必要条件だと私は思う、ナショナルミニマムを一応我々がめどをつけて事に取り組む必要があるような気がします、こういうことを述べられております。  ナショナルミニマムについての基本方針というものをお伺いしたいと思います。
  131. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) 基本方針と申しましても、つまり、ナショナルミニマムそのものが基本方針にならないと日本の海運特に外航は救われないと思うんです。この間も船主協会のある幹部の方とお話をしたんですが、船主協会なりに事を憂えてそういう試みをしたことがあるそうですが、そういう原案を持ち出すとすぐたたかれて、そんなものじゃないということでまた案を引っ込めたとか、そういう話をしておられました。  いずれにしろ、船主側だけじゃなくて、労使がそういうもので合議して決めるとか、あるいは衆議院の発言でも申しましたけれども、これはもう運輸省マターではおさまり切れない問題ですから、やはり関係省庁またいでもうちょっと多元的に、複合的に、マルチに、こういうものを想定してかかる必要があるのではないかと思います。
  132. 田渕哲也

    田渕哲也君 五十八年の運輸政策審議会の総合安全保障部会の報告がありまして、その中にも、「不安定な要素を有する外国船に過度に依存することは、我が国海上輸送における脆弱性を増すこととなるので、日本人船員の乗り組む一定量の日本船を確保しておくことが必要である。」、こういう報告があるわけですけれども、やはりこれを政府の方向として早く確認をしてもらわないといかぬと思うんですね。  それで、もちろんその場合に、一体ナショナルミニマムはどういうことで見るのか。例えば、日本籍船の数とか比率で見るのか、あるいは日本人船員の数とか比率で見るのか、いろいろあると思うんです。運輸大臣は大体そういう方向でやらなければいかぬという見解は述べられておるわけですけれども、これをぜひ大臣が就任されておる間中に一つ政府の方針として決めて具体的に動き出すようにしていただきたいと思うんです。そうでないと、さっきのテンポで進んでいくと、あと三年ぐらいの間に日本人の船員がいなくなってしまうかもわからぬ。それからじゃ遅いんですよね。  だから、早く最低これだけは守るべきだという線を出して、出せばやっぱりそれを守るためにあらゆる政策を駆使しなければならないと思うんですけれども、この点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  133. 石原慎太郎

    ○国務大臣(石原慎太郎君) これはやはり運輸だけではなしに、いろいろな行政の分野の動向をとらえて考えなくちゃいけないと思うんです。先ほどもちょっと考えてみたんですけれども、ざっと考えても、運輸省のほかに、経済企画庁とか通産省とか大蔵省とか、あるいは防衛庁とか労働省、あるいは場合によっては文部省と、そういった役所にも及ぶことでありますから、内政審議室というのが新規に設けられてあるわけで、そういうところでやはり物を集約して、内閣の一つの問題としてはっきりとらえる必要があると思います。その努力を在任中にしようと思います。  発議することは簡単ですけれども、まず内閣全体がそういう意識を持たなければならないことで、運輸省だけがハッスルしてもままならない問題でありますから、閣議を通じて、関係閣僚を精いっぱい洗脳していこうと思っております。
  134. 田渕哲也

    田渕哲也君 まあこれはだれかがそういうことを口火を切らなければなかなか問題にならないわけです。やっぱり運輸大臣が口火を切ってもらわないといかぬと思うんですね。内閣でどのようにまとまるかというのはなかなか大きな問題ですけれども、ぜひこれは早くやっていただかないと間に合わない。そういうことでぜひお願いをしたいと思います。  それから、先ほどからいろいろまた論議が出ておりましたけれども船主協会は、マルシップの特例延長だけでなくて、適用範囲の拡大、さらには新置籍制度の導入を望んでおる、こういうようなことを聞いておりますし、また政府としても、こういうことについて検討をされておると思いますけれども、基本的にどのように考えておられますか、お伺いをしたいと思います。
  135. 野尻豊

    政府委員野尻豊君) 日本船に外国人を混乗させるということについて、これは原則として認めないということできておりますが、外国人に貸し渡しました日本船舶につきましては、乗組員の配乗権を外国人が有するということから前記の方針は適用にならないということから、以前から近海船の多くの船においては、今先生が御指摘のような、マルシップ形態によりまして外国人船員が乗り組み、運航を行ってきているというのが実態でございました。  こうしたマルシップにつきましては、従前は船舶職員法の適用が除外されておりましたけれども、五十八年にSTCW条約の批准に伴う船舶職員法の一部改正によりまして、こうした船舶に対しても新たに船舶職員法が適用になるということになったわけであります。これによりまして、船舶職員法によって、マルシップにも日本の海技免状を持った者を乗せなければならないということになったわけでありますけれども、その激変緩和ということから、経過的措置といたしまして、五十八年の改正法の施行当時に、現に貸し渡しの許可を受けていた船舶につきましては五年間に限り軽減措置を講ずるということで今日に至ったわけでありますが、この四月二十九日に期限が切れるということで、海上安全船員教育審議会の中にこれの関係する小委員会がございますが、この小委員会で御審議していただいた結果、とりあえずこの種の船につきましては期限延長をするということで結論を得たわけであります。  そこで、現在船主側から希望が出されておりますのは、こういった五十八年以前のマルシップ船だけではなくて、五十八年以降の船についても適用を拡大してほしいと、こういう趣旨の陳情でございます。その船主側の御希望をもう少しかみ砕いて御説明申し上げますと、急激な円高等に伴いまして日本人の船員コスト開発途上国の船員コストに比べて格段の両離が生じている。このままでは日本船国際競争力が低下してますます日本船海外流出、いわゆるフラッギングアウトをして減少していくばかりである。したがって、マルシップに対しましても、五十八年以前の船舶と同じような軽減措置を講ずることによって国際競争力の強化を図りたい、こういう趣旨の陳情でございます。  ただ、船舶職員法というのは安全法規でございまして、したがいまして、船舶職員法の規定に基づきまして船舶職員の配乗について特例を認めるべきかどうか。あるいはまた、認めるとした場合にどの程度までとすべきかということにつきましては、船舶航行の安全確保という観点から判断すべきものであろうかと思います。この問題については、現在、先ほど申し上げました海上安全船員教育審議会の中の小委員会で引き続き審議をお願いしているところでありまして、私どもといたしましては、同委員会の結論を待って対応してまいりたいというように考えております。
  136. 田渕哲也

    田渕哲也君 それから新置籍制度というものも問題になっておりますが、これをやればどういうメリット、デメリットがあるのか、お伺いしたいと思います。
  137. 中村徹

    政府委員中村徹君) 新置籍制度は、欧州諸国におきましてフラッギングアウトの防止対策として制度を導入している国がだんだんふえてきているわけでございますが、メリットと申しますと、やはり自国籍船員だけではなくて、外国籍船員一定のレベルに達したような船員を導入できるということで全体に船員費コストを下げ、そのかわりに自国籍、まあ準自国籍船と申しましょうか、自国のフラッグを立てた船をある程度確保できるという点にメリットがあるのではないかというふうに考えております。  ただ、これがこのまま我が国に導入できるかどうかということについては、なお問題があるというふうに考えております。
  138. 田渕哲也

    田渕哲也君 これを導入した場合、やはり日本人船員雇用の問題に非常に重大な影響を与えると思うんですね。その反面、例えばそれによって便宜置籍船というものがなくなるのかどうか。なくなってある程度日本人の船員をそれに乗せられるようになるのかどうか。日本船員雇用に対する影響のメリット、デメリット、それについてはどう考えますか。
  139. 中村徹

    政府委員中村徹君) ただいま先生御指摘の点が非常にポイントであろうと我々も考えておるわけでございまして、この置籍船制度を導入することによって自国籍船をある程度確保できるということ、それが職域の確保につながるかどうか。職域の確保につながらずに、そのまま便宜置籍船は便宜置籍船としてその数がどんどんフラッギングアウトがふえていってしまうというのでは何にもなりませんので、ある程度そういった見通しといいますか、それが一方で行われ、同時に反面、混乗なら損乗というような形でコストを下げると、その両面がどこかでバランスをとってある程度確保できる見通しがつくかどうか、これが置籍船制度を導入するかどうかを決定するといいますか、決心いたす一つのポイントになるだろう、かように考えております。
  140. 田渕哲也

    田渕哲也君 いずれにしましても、日本人船員の数がどんどん減っておるわけですから、やっぱりこれはもうこれ以上減少しないという方向で、歯どめをかける方向で物事を考えていただきたいと思います。  では、終わります。
  141. 中野鉄造

    委員長中野鉄造君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時三十六分散会