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1988-02-16 第112回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    二月十六日  浜田幸一委員長辞任につき、その補欠として  奥田敬和君が議院において委員長に選任された  。 ────────────────────── 昭和六十三年二月十六日(火曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 野田  毅君    理事 宮下 創平君 理事 山下 徳夫君    理事 上田  哲君 理事 村山 富市君    理事 池田 克也君 理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    伊吹 文明君       池田 行彦君    稲村 利幸君       上村千一郎君    柿澤 弘治君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 信二君    佐藤 文生君       志賀  節君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    林  義郎君       細田 吉藏君   三ツ林弥太郎君       村田敬次郎君    井上 一成君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    佐藤 敬治君       辻  一彦君    坂口  力君       冬柴 鉄三君    水谷  弘君       宮地 正介君    田中 慶秋君       楢崎弥之助君    中路 雅弘君       中島 武敏君    正森 成二君  出席公述人         筑波大学教育学         系教授     黒羽 亮一君         軍事ジャーナリ         スト      前田 哲夫君         東京大学経済学         部教授     貝塚 啓明君         立教大学経済学         部教授     和田 八束君         東京理科大学理         工学部教授   石原 舜介君         税経新人会全国         協議会理事長  関本 秀治君  出席政府委員         総務政務次官  熊川 次男君         北海道開発政務         次官      上草 義輝君         防衛政務次官  高村 正彦君         経済企画政務次         官       臼井日出男君         国土政務次官  大原 一三君         外務政務次官  浜田卓二郎君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵省主計局次         長       篠沢 恭助君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         文部政務次官  船田  元君         厚生政務次官  長野 祐也君         農林水産政務次         官       北口  博君         通商産業政務次         官       浦野 烋興君         運輸政務次官  久間 章生君         郵政政務次官  白川 勝彦君         建設政務次官  古賀  誠君         自治政務次官  森田  一君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月十六日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     伊吹 文明君   砂田 重民君     柿澤 弘治君   寺前  巖君     中路 雅弘君   矢島 恒夫君     正森 成二君 同日  辞任         補欠選任  伊吹 文明君     小此木彦三郎君   柿澤 弘治君     砂田 重民君     ───────────── 本日の公聴会意見を聞いた案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これより会議を開きます。  委員長指定により、私が委員長の職務を行います。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。昭和六十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず黒羽公述人、次に前田公述人、続いて貝塚公述人順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、黒羽公述人にお願いいたします。
  3. 黒羽亮一

    黒羽公述人 黒羽でございます。  私はただいま国立大学におりますが、一昨年の夏まで長いこと日本経済新聞の教育文化担当論説委員をしておりました。したがいまして、きょうは、来年度、六十三年度の予算案のうち文教関係予算について少し意見を述べさせていただきたいと思います。  六十三年度の一般会計予算案文教予算総額は約四兆五千七百六十五億円でありまして、対前年約二十八億円、〇・〇六%増ということになっております。文教固有の角度から見れば決して十分な額とは言えないかもしれませんが、今日の財政事情のもとにありましては、こういう原案を作成されました政府のきめ細かい努力の跡が諸所にうかがわれますので、この予算に基本的に賛成する立場意見を申し上げたいと思います。  六十三年度の文教予算は、臨時教育審議会答申を受けまして、教育改革に本格的にこれから着手するわけでございますが、その第一年度の予算という解釈もできるかと思いまして注目していたところでありますが、一応改革のための諸項目についての予算は確保されているようでございます。後で時間がありますれば詳しくコメントいたしますが、項目だけ挙げますと、生涯学習体制整備初任者研修試行拡大、四十人学級推進大学を中心としました高等教育個性化高度化推進学術研究積極的振興、それから留学生事業など社会国際化に伴う諸事業拡充などの点であります。  しかしながら、また別の面から見れば若干考えてみなければならないところもあるかと思います。  その第一は、文教予算全体の中の人件費割合の異常な増加によります文教予算硬直化傾向であります。  もともと教育は人なりといいまして、この文教予算の中では人件費の占める割合というのは大きかったわけでありまして、そのこと自体は決して批判すべきことではありませんが、しかしながら、例えば昭和五十六年ごろの文教予算を見ますと人件費割合が六三%であったのが、本年はざっと計算しましたところ七六%を超えております。これは近年、給与改善分文教予算の中で措置していくというようなシステムをとっていることの影響かと思います。また、そういうシステムをとらなければならない理由もわかるわけですが、しかしながら、多少文教予算硬直化という観点から考えてみなければならないことかと思います。  第二は、高等教育の経費についてであります。  まず、学生受益者負担といいますか、学生納付金と言いますが、この割合が年々拡大しております。ことしの国立大学学部授業料はまた引き上げられまして、年額三十三万六千円になりました。私がちょっと調べたところでは、私立の一・七倍であります。かつては、国立私立の三倍とか五倍とか非常に安い授業料と言われておりましたが、今や国立大学授業料は決して安くございません。  それから、国立大学全体の財政を見てみますと、これは国立学校特別会計という形になっているわけですが、総額約一兆八千億円のうち一般会計からの投入は約一兆一千億円でございます。これはパーセントにして六〇・六%でございます。昭和三十九年に特別会計制度が始まったころは八割以上が一般会計からの投入でありまして、文字どおり国立大学であったわけですが、現在の国立大学は六割国立大学、こういう姿になっております。もちろん、国立大学学生授業料を払うとか国立大学附属病院が平たい言葉で言えば稼ぐとか、こういうことも必要かと思いますが、まあ受益者負担に依存する割合が年々ふえているという傾向は多少憂慮しなければならないところかと私個人的には思います。  したがいまして、今後教育改革推進するに当たりましては、例えば教育改革予算別枠で考えていくとか、ベースアップ分別枠で考えていくとか、高等教育予算には格段の留意をするとかという措置が必要かと思います。もちろんそれは財政事情全体を考えればかなり困難な作業とは思いますが、文教を愛する立場からはあえて申し上げたいことであります。  以上は全体に関することでありますが、二、三、一つ一つ項目について時間のある限り発言したいと思います。  第一は、生涯学習体制整備であります。  これは予算と同時に行います六十三年度の文部省の機構改革としまして、社会教育局を生涯学習局に変えることが政府の構想としては決定したようであります。それから、すべての都道府県に生涯教育推進会議を設けるなどの計画がありますが、今日の寿命の伸び、大変激しい社会の変化、余暇時間の増大文化的な豊かな生活の増大というようなことを考えますれば、生涯学習あるいは生涯教育と言われるわけですが、こういうものの円滑に行われる社会の構築ということは必至なことでありまして、このような施策は非常に重要なわけであります。それを裏づけるような社会教育、体育・スポーツ、文化あるいは学習の面では放送大学専修学校等々の振興予算は一応計上されているようでありまして、これを支持するところでございます。  第二点は、四十人学級推進であります。  六十三年度予算では、子供が減ってきますので教員の自然減が一万五千九百人ございますが、四十人学級推進等のために定数改善で約一万人余りの増員を行いまして、差し引き全国教職員の数が五千人の減員ということになるわけでありますが、いずれにしましても、この四十人学級昭和六十六年度達成、完成というその目標に向かって着実に進んでいるわけで、この点は評価すべきことかと思います。  三番目は、小中高校教職員初任者研修試行、テストというのを六十三年度から始めておりますが、これを拡大するようでございます。五十三億円が計上されておりまして、全都道府県指定都市、つまり五十七県市で約四千二百人弱を対象試行が行われるようであります。この初任者研修というのは、昨年閉幕いたしました臨時教育審議会の諸答申の中の最重要事項でございまして、予定では六十四年度から正式実施ということになっておりますが、今日のこの試行拡大によりその予定の実現が一歩近づくようでありまして、喜ばしいことかと思います。  それから、高等教育の方を拝見いたしますと、そういうわけで受益者負担に依存する部分は非常に多いわけですが、一応国立学校特別会計約一兆八千億円の予算を組みまして、しかるべき国公立大学充実というものは行われている、円滑な活動というものは確保されているように思われます。  今日、学部教育もさることながら大学院というものが大切であるということで、昨年から大学院最先端設備費という予算の新しい項目が設けられておりますが、これが昨年は三十一億円強でありましたが、一割以上増額されまして約三十五億円になっておりまして、国立大学に必要な基礎的な研究充実に資するかと思います。  さらに、国立では初めて学部のない大学院大学というのができるようでございます。私立では新潟県の浦佐に国際大学というのがございますが、これが今のところ大学院から始まった大学でございますが、国立でも初めて総合研究大学院大学というのができるようでありまして、これは新しい試みとして注目されるところであります。  それから、六十三年度予算ではまだ創設準備調査の段階でございますが、石川と奈良に先端科学技術大学院大学、俗にハイテク大学院大学というような大学がいずれできるようでございまして、時代進展に即応した国立大学改組拡充が順調に進んでいるように思われます。  関連して、大学院となりますと学術の問題でございますから、教育学術の方について少し話させていただきますと、結局、科学研究ということはもちろん国立学校だけじゃありませんで、民間でもあるいは各省庁研究機関でも殊のほか昔から留意していることでありますし、今日世界的な科学技術進展に伴って、各省庁研究機関民間研究というようなもののウエートも高まっているところでありますが、直接に研究の果実を期待するのではない基礎研究というのは、これはやはり大学大学院でなければできないことであろうかと思いますし、それから、各省庁研究所とか民間研究所は人を養成しないとは申しませんけれども、学部から大学院へという基礎的な、若手の次の世代を担う研究者養成をしながら、なおかつ基礎研究を進めていくというのは、これは我が国だけではありませんで、各国大学固有任務でありまして、そういうような任務はどうしても、いかに財政事情がまずくても、これはおろそかにすることができない、こういうふうに思うわけでございますが、その点で、先ほど申しました大学院最先端設備費とか総合研究大学院大学先端科学技術大学院などは極めて的確、適正なる措置かと思います。  あわせて申しますと、例えば科学研究費というようなひもつきでない研究費がことしも四十億円近く増額されまして五百億円近くなっておりますし、若手研究者養成のための特別研究員制度、平たく言いますとポストドクトラル・フェローシップと申しますが、これも延べで七百人を超しておりますし、こういう点では一応きめ細かい配慮が二十一世紀の学術振興のために行われているように見受けられるわけであります。  どうも国立大学の話が長くなりましたけれども、私学に対しましても経常費助成が一応二千四百五十三億円計上されておりまして、昨年よりは増額されております。そのほか、私学でもやはり研究が大事でありまして、教育研究装置施設整備費という、これは経常費助成とは違う補助金でございますが、数年前から設けられておりますが、大幅に二十億円ふえまして七十四億円になっております。こういう点は評価すべきかと思います。  それから、大学私学ウエートが高いわけですが、高校でも三割ぐらいが私学でありますし、幼稚園は七割——ちょっとその七割は不正確ですが、相当私学に依存しておりますので、私学助成費というものが必要なわけです。これは国庫補助金は七百三十五億円でありますが、地方交付税で二千七百億円強手当てしておりまして、この地方交付税の方の伸びは大変大きいものがあり、まして、一応私学に対する配慮も行われているように思われます。  最後に、国際化のことでちょっと申し上げますと、これは外国語教育充実とか、それから海外帰国子女教育留学生問題、その他いろいろあるわけでございますが、留学生問題では俗に留学生十万人計画というのが、別に正式に閣議決定したわけでもないようでありますが一つ努力目標となっておりまして、これを言い出した昭和五十七、八年には日本留学生は一万人弱であったわけですが、昨年は二万人を超したようでありまして、一応国際化の象徴として結構なことだと思いますが、一面、それに伴う手だても必要になってくるわけであります。  とりわけ最近の象徴的な出来事としては、円高に悩む私費留学生の援助を何とかしたいところでありますが、そしてそのための幾つかの項目は本年度の予算にも見られますけれども、これは決して十分とは言えないと思います。六十三年度はともかくとして六十四年度以降は、ODA予算などもソフトの面で国内で使うというようなことを既にやり出して、そういうルールもできておりますから、この辺を格段に投入して、かりそめにも、日本を信頼して日本に来た、しかもこれは近隣諸国留学生が非常に多いわけですが、かつて明治のころ、あるいは大正のころ、こういう留学生がみんな反日になって帰っていってしまった、こういうような状況日本につくらないように努力しなければいけないと思います。そういう点で先生方の関心の高まることをお願いいたします。  いささかしり切れトンボでございますが、時間も参りましたので、これで失礼いたします。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、前田公述人にお願いいたします。
  5. 前田哲夫

    前田公述人 前田哲男でございます。  私は、昭和六十三年度予算案に反対する立場から、主として防衛関係費及び安全保障政策について意見を述べたいと思います。  周知のように、昨年十二月八日、INF全廃条約が締結され、米ソの間には新しいデタントと呼ばれる時代が始まりました。軍事的デタントから政治的デタントヘ、今世界は大きく転換しようとしているかに見えます。  INF条約に盛り込まれた相互査察相互検証という原則に従って、目下ジュネーブにおいて核実験全面禁止協定を目指す動き、あるいは化学兵器全廃を目指す交渉も進捗しております。地域紛争、アフガニスタンあるいはアンゴラの地域紛争解決にも新しい芽が見えてきました。確かに、核軍縮によって生じた不均衡を通常軍備によって相殺すべしという議論がヨーロッパにおいてあることは承知いたしておりますが、それと拮抗する動きとして、核軍縮をさらに徹底させ、戦術核戦場核において、あるいは一般戦力において達成しようという世論もかつてなく高まっております。  アジアにおきましても、アジア部から撤去されるソ連のSS20によって、中ソの関係は大いに和解へと向かって推進するものと思われます。アジア戦略環境緊張緩和に向かってやはり大きく激動が予測されると思います。  予算案は十二月八日のINF調印を経て作成されたわけでありますから、当然こうした大きな転換期の情勢を組み込むことは可能であったと私は考えます。時間的に極めて制約されておりましたので、大きな手直しは無理であるにせよ、例えば大きな懸案になっております池子の米軍住宅地問題あるいは三宅島の米軍夜間訓練施設建設などに関しては、見直しあるいは少なくとも凍結がなされてしかるべきであったのではないか、そういうふうに考えます。  しかるに、提出された予算案を拝見しますと、五・二%増、三兆七千三億円という巨額なものであります。韓国の新聞が報じたところによれば、その表現をかりますと、我が国国家予算の一・三倍に相当する天文学的な数字であるというふうに書いております。あの重武装国家韓国の全国家予算を凌駕すること三割という防衛予算であるわけです。ASEAN六カ国の全国防予算を総計いたしましても、我が国防衛予算の三分の一にしかすぎません。三兆七千億円余に軍人年金を加えたいわゆるNATO方式と呼ばれる定義に置き直してみますと、我が国防衛関係費は、軍人年金を極めて厳密に解釈して職業軍人への給付七千億円余といたしましても、なお四兆四千億円台に達し、核保有国であるイギリス、フランスとほぼ肩を並べるところまで達してしまいます。したがって、昭和六十三年度防衛関係費は、GNP一%突破を定着させたのみならず、軍縮へ向かう世界情勢の中にも大きく突出したと言わなければならない、そういうふうに考えます。  INF条約後の国際情勢と関連づけて、防衛政策安全保障政策の中で大きく取り上げなければならない点に、海のINFと呼ばれてしかるべき中距離核戦力日本への持ち込みがあると考えます。  これも御承知のように、締結されました米ソINF全廃条約は、地上における中距離核戦力あるいはヨーロッパに主として配備された中距離核戦力に関しては全廃という形容が可能でありますが、しかし、全中距離核戦力体系の中で見ますと、ごく部分的にしかすぎません。とりわけ、海上発射海中発射中距離核戦力をその対象から一切欠いたことにより、全廃とは呼べない、少なくともアジア太平洋地域に住む我々にとっては全廃とは言えない状況を示しております。  その海のINF米軍が装備しますトマホークと呼ばれる中距離核戦力が、既に三百二十八基、海洋に配備されている、そういうふうにイギリス国際戦略研究所発行の「ミリタリー・バランス」の最新版は説明しております。その大部分太平洋地域に配備されているものと思われます。  横須賀在日米海軍司令部の発表したところによりますと、このトマホークを搭載した米艦、巡洋艦のバンカーヒル及び駆逐艦ファイフの二隻がことしの秋横須賀に入港し、横須賀定係港、事実上の母港として任務につく、そういうふうに発表されております。このことは日本国民の安全に極めて大きな意味をもたらす、そういうふうに考えます。ヨーロッパにおいては、ことし、陸上発射INFが一斉に撤去される、そういう光景に我々は接すると思います。その同じ年、我が国には、同じ中距離核戦力が、横須賀母港として、したがって横須賀港の岸壁に接岸する米艦の甲板上に見える、そのような事態に遭遇するわけであります。一方では軍縮、一方では軍拡という光景を我々は見ることになるでしょう。  これはとりもなおさず、日本本土から、日本本土領域から東北アジア主要部を核攻撃できる能力を日本が引き入れだということも意味せずにはおきません。朝鮮半島全域はもとより、ソ連極東部のアムール州、極東州、中国主要部は、トマホークの二千五百キロの射程の中に覆われます。日本列島からアジア大陸が核攻撃できる、そのような戦力日本に引き入れられる、これは大変なことであろう、そういうふうに考えます。  考えてみますと、日本列島には、かつて施政権返還される以前の沖縄に、メースBと呼ばれる初期の巡航ミサイル地上発射型巡航ミサイルアジア大陸をにらんで配備されておりました。これはもう既に我々よく知っておるとおり、沖縄返還交渉の中で核抜きあかしとしてメースBは撤去されました。メースB撤去あかしとなった国際情勢の背景は、米中の和解デタントでありました。米中のデタントによって日本列島からはメースBと呼ばれる地上発射型巡航ミサイルは撤去されたのでありますが、それから二十年たたない今日、デタントはまた別の形で、もっと大きな形で進行しているにもかかわらず、その同じ時期に今回はメースBにかわるトマホーク日本の港に引き入れられようとしている。この光景は逆説的であり、かつ世界の流れに逆行するものと言わざるを得ない、そういうふうに考えます。  トマホークの問題に関しましては、主として核弾頭の有無の面からのみ事前協議との接点が論じられております。それも確かに重要な論点でありますが、しかし運搬手段発射装置そのもの核システムである、核戦力であるという観点の導入がもっと必要ではないでしょうか。INF条約、正式の名称を長短射程中距離核ミサイル全廃条約と申します。決して弾頭だけを対象にしたものではありません。発射装置弾頭とともに重視されております。射程五百キロから五千五百キロに至る発射装置、つまり核ミサイルINF条約で廃絶の対象となっているものであるわけです。これらの要件、五百キロ以上五千五百キロ未満発射装置及び長短射程中距離核戦力という定義は、ことごとくトマホークに該当いたします。  したがって、確かにINF条約海洋発射INFまでは想定しておりませんが、しかしその精神を我々が酌み取るならば、そして我が政府INF条約を評価し歓迎するという態度を示しておることを考えますれば、当然それと同じ機能を持つ海のINFに対しても同じ尺度を当てはめてしかるべきではないか、そう考えます。  また、従来の政府の見解を見ましても、中距離ミサイル持ち込みは事前協議対象になるという解釈が、既に本委員会において、一九六〇年安保審議の中で明らかにされております。昭和三十五年二月六日衆議院予算委員会の藤山外相の答弁によりますと、「核弾頭につきましては、あらゆる場合に事前協議対象になること、当然でございます。それからミサイルにつきましては、核弾頭を持たないミサイルにつきましては、長距離、中距離のものは対象になると思います。」そう答弁されております。  赤城防衛庁長官は、二月十九日の衆議院予算委員会において次のように例示されております。「一つは核弾頭であります。それから二番目といいますか、もう一つは中長距離のミサイルの持ち込み、これはどういうふうに期間が短くてもそれを含む、こういうことになっております。」こうお答えになっております。  さらに一九六八年、昭和四十三年四月二十五日の外務省発表「日米安保条約上の事前協議について」の中の「「装備における重要な変更」の場合」という第二項目におきまして、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」というふうになっております。  どれも核弾頭つきの中長距離ミサイルではなしに、核弾頭及び中長距離ミサイル、そういうふうになっております。したがって、核弾頭の有無にかかわらず、トマホークは中距離ミサイルでありますから、これは事前協議対象となること明白この上もないと考えます。  あるいは、トマホークには多数の種類があって、戦術型は中距離ミサイルのカテゴリーに属さないという答えが用意されるかもしれません。しかし、今回のINF条約が五百キロ以上の核の運搬手段に関してそれを中距離核戦力と認定したという意味において、トマホークはここでもやはり中距離核戦力の中に入るものと考えなければなりません。  さらに、一九七八年SALTII、戦略兵器制限条約、米ソのSALTIIにおきまして、巡航ミサイル合意と呼ばれる合意が米ソの間で成立しております。その第一合意声明によりますと、「一つ巡航ミサイルが六百キロを超える射程を有する場合、同型式のすべての巡航ミサイルは、六百キロを超える射程を有する巡航ミサイルとみなされる。」このように書いてあります。決して二千五百キロ飛ばないから中距離ミサイルにならないという解釈は、少なくとも米ソの間では成立しておりません。そして唯一例外的な事項として、「外見上識別し得る設計特徴を基礎として区別可能な場合」、つまり外見から核ミサイルと非核ミサイルが設計特徴上識別可能な場合に限ってのみ、六百キロ以下、六百キロ以上と区別できるのだ、これが米ソの間のSALTの巡航ミサイル合意と呼ばれるものです。  トマホークには戦術型、戦略型、確かにございますが、それらは外見上識別し得る設計特徴を有しておりません。したがって、ソ連の側ではすべてのトマホークを二千五百キロ飛ぶことの可能な長射程中距離ミサイルとみなす権利をSALTによって持っておるということになります。  このように見てまいりますと、トマホーク搭載艦であるファイフ、バンカーヒル横須賀に導き入れること、横須賀母港とすることを許可することは、日本の安全保障にとって極めて重大な問題を投げかけている、そう言わざるを得ません。まして同じ時期、ヨーロッパにおいて核軍縮のとうとうたる流れがINF撤去という具体的な光景を通じて我々の前に伝えられていくその中で、我が国において海のINF横須賀の岸壁に、あるいは佐世保の岸壁に横づけさせるような決定がなされる、これはぜひ取りやめていただきたい、そのような決定である、そういうふうに考えます。  そのほか、防衛予算に関しましては、洋上防空と呼ばれる新しい防衛概念が登場したのも今年度予算の特徴であろうかと思います。従来言われておりました水際御と呼ばれる防衛線を洋上と呼ばれるはるか公海に設定する。かつて言われた国防の三線、第一線を敵国の海岸、第二線を洋上、第三線を我が国土としますと、これまでの専守防衛、水際防御が第三線思想であった、それを第二線までせり出す、それが洋上防空と呼ばれる防衛構想であろうと考えます。同じ構想を、同じ概念を米海軍及び空軍は長距離迎撃という名で呼んでおります。この方がはるかにはっきり内容を伝える言葉であろうと思います。洋上防空というあいまいな言葉によって防衛線が前にせり出していく、水際防御から前進防御へと変わっていく、あるいは反撃から先制へと変わっていく。洋上防空の概念の中に、ミサイルを発射する前の母機、つまり母体となる敵の飛行機を発射前に撃墜するということがうたわれております。これは反撃から先制へという新しい飛躍であろうというふうに考えます。  そのほか、防衛政策防衛予算の持つ問題点多々ございますが、私は、中でも今日の世界情勢とのかかわりで一番重要だと考えますINF条約後の日本の安全保障、そこに計画されている海のINFトマホーク日本持ち込みの問題に焦点を絞って意見を申し上げました。ありがとうございました。(拍手)
  6. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、貝塚公述人にお願いいたします。
  7. 貝塚啓明

    貝塚公述人 政府予算案に基本的に賛成という立場から、主として予算と税制改革について私の意見を述べさせていただきたいと思います。  最初に、予算全体につきまして申し上げたいと思いますが、昨年度から税収入は予想以上に伸びまして、財政事情は多少好転しつつあると思います。そういう状況のもとで、財政再建と両立させながら、マクロ経済全体として妥当な予算が編成されたというふうに考えております。  最初に、予算をマクロ経済の観点からごく簡単に見ておきたいと思いますが、最近の日本経済は内需が非常に拡大基調であります。それからさらに、昨年は特に株式がブームでありまして、そういうことが反映されまして税収入は非常に堅調であるということであります。現在のところ日本経済は恐らく多少予想を上回るような形で景気が割合といい状況に入っておりまして、財政全体として、現在、景気を強く引っ張る必要はない状況にあると考えられます。  昨年度の補正予算の際に、内需拡大のために主として公共事業を中心にいろいろな方策がとられましたが、今年度予算は、昨年度の補正予算と見合って、大体それを引き伸ばすという形で予算が組まれまして、それほど景気を刺激する形にはなっておりません。しかし、今私が申し上げましたように、日本経済は内需を中心として拡大基調にございますので、今年度予算の景気から見たスタンスは妥当なものではないかというふうに思います。あるいは中立的に近いというふうに考えられます。その方がむしろ望ましいというふうに思っております。  それから、財政再建ということでございますが、財政再建につきましては、大体一昨年度ぐらいからそうなんですが、昨年度は税収の見積もりを上回る税収入があったわけでありまして、余り正確にはあれですが、大体二兆円程度の増収がありました。それからそれに加えて、御存じのことですがNTTの株式売却というのがありまして、これが別の財源としてあるわけであります。財政事情は、財政収支、バランスから見ますと、ある程度好転したというふうに判断してよろしいのではないかと思います。どの程度好転したかというのは、これはあるいは意見の相違がいろいろあり得るかと思いますが、私が見ております限りは、余り無理をしないでも六十五年度の赤字公債からの脱却が可能であるというふうに見ております。  具体的な数字は、予算案に付随しております「財政の中期展望」でありますが、この数字の読み方はかなり難しいのでありまして、幾つかのケースが挙がっておりまして、どれが一番ありそうなケースかということはなかなか難しいのでありますが、かなりの程度といいますか、ある程度余裕を見込んだ形でつくられている、私の感じとしてはそういうふうに受け取っておりますので、今申しましたように、財政再建というものはかなりはっきり手が届く、元来の目標には手が屈く状況に来たのではないかと思います。  それから、あと細かい点になりますと予算案はいろいろな側面がございまして、全体として姿がいいとしても個別的な問題がいろいろあるように思います。  財政の専門家として二、三申し上げれば、確かに公共事業の配分というのは、ことしは少し公共事業費がふえましたので少し弾力的に行われるようになりました。しかし、予算案の中で公共事業費の配分というのは、ほぼ固定的な枠といいますかパーセントでの枠に近いようなものがありまして、やはり日本経済は構造的に転換を図るべき時期に来ておりますので、私自身の意見としては、やはり公共事業費の予算の配分はかなり変えていく必要があるというふうに思っておりますが、そういう点からいいますと、やはり多少硬直的な面が多いという気がいたします。  これは全くの私見でありますが、例えば農業に対する公共投資はかなり行われております。もちろん農業は基盤整備が非常に重要でありまして、例えばの話、日本の農業が将来、今よりも生産性を高めて、ある程度国際的にも成り立つような形にしていくためには、相当程度基盤投資は必要でありますが、他方、非常に薄くばらまくという感じがある部分がありまして、そういう部分についてはやはり抑えた方がいいのではないかというふうに思います。  かわりに、例えば公共事業の中に治山治水というのがございますが、治山治水というのは、ある意味では災害が起こらない限りはほとんど注目を引かないわけですが、私はこういうふうな経費は割合と重要視すべきではないかというふうに思います。国民の生活水準が上がりますと、やはり昔に比べてより高い安全度が必要になって、例えば大都市であれば、少し雨が降れば、現在はほとんど舗装されておりますので、例えばの話、割合と簡単に川がはんらんするというよりも下水道がはんらんするというふうなことになります。したがいまして、いろいろな観点から基本的なそういうところを整備をするのが望ましいのではないか。毎年災害復旧費は、実際に災害が生ずればある程度支払われているわけですが、結局その治山治水というのは将来の災害復旧を抑えるということでありますので、そこでお金をかけるということは決してマイナスではないわけで、将来戻ってくる、例えばの話そういうふうに考えております。ですから、いろいろな点で、公共事業費の配分なんかにはいろいろ御配慮をいただくのが望ましいのではないかというふうに考えております。  それから、それ以外にも、ちょっと先を見通しますと、財政の個別の分野ではいろいろな問題があるように思います。  国民健康保険の問題は非常に論争の対象になりましたが、私は東京都の郊外の多摩ニュータウンというところに住んでおりますが、ある機会に、そこで将来の財政伸びを予測といいますか、そういうことをちょっとやったことがあります。多摩ニュータウンというのは、人口で言いますと要するに高齢者の比重が東京では一番低い町であります。というのは、ニュータウンですので、若い方がたくさん入ってこられる。しかし、多摩市の財政の中で繰り出し金と言われている、要するに国民健康保険に、ある意味で、平たく言えば赤字に近いようなものに対して補助を出している部分の支出の額というのは、ここ二、三年非常にふえております。ですから、そういう点で、比較的いい財政事情にある都市でも問題は既に出ておるわけでありまして、十分の御配慮をお願いしたいと思います。  それからもう一つは、地方財政関係でいいますと、公平に見て、恐らく東京に経済活動が集中し過ぎて、大都市の、特に東京が財政的に豊かになっているという問題があります。豊かになっていることは結構でありますが、その他の地域と比べて、やはりそこで格差ができ過ぎるということは問題が発生しているのではないかというふうに思います。その点の配慮が将来必要になるのではないかというふうな気がいたします。  以上が大体予算についての私の意見でございます。  次は、税制改革について多少意見を述べさせていただきたいと思います。  税制改革は、私は政府税制調査会の特別委員でございますが、現在のところ政府税調というのはいろいろな議論の段階でありまして、別にまとまった案が出ているわけでもありませんので、自由に意見を述べさせていただきたいと思います。  一昨年、抜本的改革が出されました。私は基本的にはこの方向には賛成であります。しかし、売上税の廃案という、これは非常に大きな政治的な問題が発生したわけでありますが、その廃案の教訓を生かして今後の改革を行うべきである、基本的にはそういうふうに思っております。具体的には、やはり拙速は避けて、なるべく具体的な税制の中身に即して十分議論して、そしてコンセンサスが得られた段階で税制改革を実施していくのが望ましいというふうに考えております。  あとはもう少し具体的な問題になりますが、税制改革が一昨年の抜本的改革あるいは昨年のときと少し状況が違ってきている面がありますので、最初に多少その点について触れておきたいと思います。  最近の経済の情勢の変化の中で、二つ、抜本的改革のときとは違う事情が発生していると思います。  一つは、不公平感の拡大がかなり従来と違う形で発生している。従来はもちろん、例えばの話、クロヨンの問題であるとかそういう問題はよく言われていたわけであります。あるいは個人事業主とサラリーマンとの水平的な不公平ということがよく言われておりましたが、最近は、一つは大きな都市で、特に東京が顕著でありますが、地価が非常に高騰したということがあります。それから株価の方も、多少下がりましたが、あるいは今後暴落ということも全然ないわけではありませんが、しかし今までのところ株価の上昇で利益を得た人は非常に多いわけです。  その二つの面が、普通の日常感覚からいいますと、土地を持っている人あるいは株式を持っている人だけが非常に利益を得たという感じが世の中に非常に強いわけであります。したがいまして、そういう意味での不公平感は従来とは違う意味で一つふえているということがございます。それが一つの変化であります。  それからもう一つは、財政事情がある程度好転しているということであります。そういう点が二年前とは少し違っているということであります。ですから、今回の税制改革はその二つの違いを十分認識して行われる必要があるというふうに考えております。  不公平感の拡大に対して税制がどこまでできるかということは、これはかなり難しい問題でありますが、要するに、土地が値上がりし、あるいは株が上がって、そして利益を得た人が存在していることは確かでありますが、しかし税制で一〇〇%そういう利益を解消するということは、これは恐らく非常に困難であります。しかし、多少あるいはある程度そういうことの是正は可能であるというふうに思われます。  キャピタルゲインの課税という問題がありまして、これはその点について言えば割と重要な点であります。キャピタルゲインの課税は、私は、率直に言えば割合と簡単にうまくできればやった方がいいと思いますが、キャピタルゲインの課税というものは、税金の中では、所得税の中では一番ある意味では難しい税金であるということを十分配慮をされて、何らかのやり方で簡便的に課税されることができればというふうに思います。そういうふうに考えております。  一言だけ申し上げれば、キャピタルゲインの課税というものは、もし非常に重い税率でかけますと、例えばどなたも株を売らなくなりますから、キャピタルゲインは発生しないということになります。ですから非常に難しい税金であるということだけ申し上げておきますが、基本的には何らかうまいやり方でかける方法を考えるべきではないかと思います。  土地問題を税制で一〇〇%解決するということは、それはある意味では非常にドラスチックな案を考えればできないわけではないと思います。最近、土地問題でいろいろな方が議論を述べておられますが、それは税制で一〇〇%解消するということも全然不可能ではないと思います。しかしそれは大変大きなことでありまして、恐らくどうも、私は個人的には次のように考えております。やはり現在の資産、土地という評価は時価から随分離れておりますので、どうしても基本的には時価になるべく少しずつ近づけていくということが重要で、これには長期的に取り組む必要があるというふうに思います。固定資産税、相続税なんかについてはそういうことが言えるのではないかと思います。  要するに、平たく申しますと、固定資産税とか相続税において土地の値段は、確かに土地は登記されておりますので正確に所有は把握されておりますが、その価額がかなり低い、税制上の課税標準としては低いわけでありまして、そうしますと、土地を持つことの有利さというのがそういう点から、例えばの話、株を持つことに比べてある意味では有利になっている可能性が高い、株の場合はほぼ時価の評価でありますから。そういうことがありまして、そして皆さんますます値上がりするだろうと思って持たれるわけで、その悪循環というものはどうしても、少しずつではありますが、固定資産税とか相続税の評価という点を通じて改善すべきではないかと思います。そういうことでございます。  しかし、土地問題というのは税制だけでは全部できないというふうに思いまして、例えば土地の利用というものをどういうふうに考えるかということもございます。ですから税制で、ある部分は長期的には対応できる部分もあるということではないかと思います。不公平感の拡大につきましてはそういうことでありまして、何らかの意味で前回の税制改革よりは、こういう点を配慮して税制改革のプランが練られる必要があるというふうに考えております。  それから二番目に、財政事情が幾分好転したということでありますが、それはやはり税制改革にはある種の影響を持っていると私は思います。ですから、増税を目指したといいますか、とにかく財源が必要であるから、財政赤字が非常に大変だから、したがって何か税制改革が必要であるというふうな主張は、最近の経済の状況を見ておりますと、ある意味では非常に説得力は落ちたと思います。将来の高齢化社会ということとは別でありますが、とりあえずそういう状況にあるということでありますので、その点がやはり違いではないかというふうに思います。ですから、財政に多少の余裕ができたということは、何らかの意味で税制改革において、必ずしも例えば減税をした額と同額を増税する必要があるかどうかということについても、多少検討が必要ではないかというふうに思います。  それから、最後に新型間接税のことでございますが、一言だけ簡単に申し上げます。  新型間接税というのは、いろいろな大変な論議を巻き起こしておりますが、財政学者として非常に簡単に答えろということになりますと、理論的には付加価値税が一番いいということでありますが、次善の案としては小売売上税がいい。三善というのがあるかどうかわかりませんが、製造者売上税がある。それから、一番まずい形態としては累積売上税があるということだと思います。ただし、実際はこの問題は非常に複雑でありまして、新しい税金というのはなかなか商慣習にマッチいたしませんので、理論的にはそういうことでありますが、選択肢はやはり次善、三善もあり得る、そういうふうに考えております。  それからもう一つ、新型間接税の導入について申し上げれば、新型間接税は結局どうしても消費にかけて薄く広くということは確かに一つの考え方としては納得できるのですが、ただその場合には、やはり低い所得の人がある程度負担をこうむるということは否定しがたいわけですね。ですから、普通これは逆進性と言われていることが多いのでありますが、したがって、そういう新型間接税の導入をやる場合に、逆進性に対してどの程度緩和できているか、いろいろな面で緩和され得る措置は現在でも十分あるわけですが、新型間接税というものについてはそういう点を十分配慮して導入を考えられるのがよろしいのではないかというふうに考えます。  あと、いろいろな細かい問題がございますが、多少時間が早いかもしれませんが、ここで失礼させていただきます。(拍手)
  8. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 どうもありがとうございました。     ─────────────
  9. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柿澤弘治君。
  10. 柿澤弘治

    柿澤委員 黒羽公述人前田公述人貝塚公述人、三先生の貴重な御意見を拝聴いたしまして、心から感謝を申し上げます。  黒羽公述人の御意見につきましては、基本的に六十三年度の文教予算について積極的な御評価をいただき、私どもも大変感銘を受けました。その中で、高等教育の一層の充実、また生涯教育の体制の整備、さらに国際化の中での留学生受け入れ計画整備等、大変適切な御示唆をいただいたと思います。特に私費留学生の問題も含めまして、ODA予算の国内使用という観点から留学生対策を充実してはどうかという御示唆も、今後検討に値することではないかと思います。  また、貝塚公述人からは、六十三年度予算の全体、マクロの姿につきまして、これも積極的な御評価をいただきまして、この点も大変参考になりました。内需拡大の中での中立型の財政のあり方、また、財政バランスが好転している中での税制改正について、拙速を避け国民の合意をという御意見も、ぜひ今後の参考にさせていただきたいと思っております。  前田公述人の御意見につきましては、基本的な認識等につきまして私ども十分に納得できない点がございますので、少し御質問をさせていただきたいと思っております。  まずINF合意の問題でございますが、基本的にゴルバチョフ書記長がワシントンへ出かけてまでINFの合意を求めたそのバックグラウンドとしては、ソ連におけるペレストロイカの政策の進行、その中での国内における経済構造の改革等の進捗が思うように進まない、その中でとにかく国際的な軍縮の面で成果を上げて国内の経済改革への弾みにしたいという、そうした国内的意図があると思いますが、その点についての御意見もぜひ伺いたいと思います。  また、INF合意そのもの、合意を得たということは、核軍縮の第一歩として人類的にも、私ども日本としても当然賛成でございますし、積極的に評価をしなければならないと思いますが、しかし同時に、中距離核戦力の削減が通常戦力のバランスの問題その他にさまざまな影響を及ぼすということも冷静に判断をしなければならないと思いますが、その点についてはどういう御意見をお持ちでしょうか。  私は先般もヨーロッパへ行ってまいりましたが、INF合意後の欧州における通常戦力拡充といいますか、それから各国間の協力の増大ということについて非常に関心が高まっていることを知りました。フランスとドイツの合同演習、共同での兵器の研究開発、そしてフランスとイギリスとの、これはミッテラン大統領、社会党大統領と英国のサッチャー首相との合意でございますが、それぞれの軍隊の領土の通過権の合意とか、また核潜水艦の寄港の相互の許容であるとか、いろいろな形の協力関係拡充をいたしております。そうした中で太平洋地域における、いわゆるアジア部における通常戦力のバランスということも私どもは考えなければならないと思いますし、その点について前田公述人がどういうお考えを持っているのか、お聞かせをいただきたい。  と申しますのも、先ほど来、海のINFというお話がございました。今後の核戦力削減の面でその問題も検討されなければならない問題だとは思いますが、太平洋地域における核戦力というものは、ここ数年のウラジオストクやまたカムチャツカ、オホーツク海におけるソ連海軍力の拡充というものを抜きにして考えることはできないのではないか、その意味でも太平洋地域におけるソ連海軍力の拡充の実態をどう御判断され、それに対する抑止力を我々は持たないでいいのか、この点についてどうお考えになっていらっしゃるのか、お聞きしたい。  私どもとして核軍縮が進むことは望ましい、希望することではありますが、同時に、米ソINF合意が達成したその日にソ連の空軍機が沖縄の領空を侵犯するというような事態も起こっている、これが現実でございますので、均衡と抑止という考え方を捨てるわけにはいかない、こう考えますが、その点について御意見を伺いたい。  そういう意味では、先ほど来池子の米軍住宅の問題と三宅島のNLPの問題についても凍結という御主張がございましたが、この問題とINFとを関連させて考えることはできないと私は考えますが、その点につきましても明確にしておきたいと思います。  時間の制約がありますので、以上幾つか質問点を述べましたが、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  11. 前田哲夫

    前田公述人 柿澤議員より御質問ございましたので、私の知っている範囲内でお答えいたしたいと思います。  ソ連のゴルバチョフがINF合意に到達した最大の要因を、国内におけるペレストロイカを完成させるための、経済的不振を克服するための一つの外交的な措置であろうというふうにおっしゃいました。全くその見解に対して異議はございません。ソ連のみならず、アメリカにおいても国内における経済的な不調を軍縮によって相殺しようという意図があのINF条約にあることは容易にうかがい知ることができます。ソ連の軍事予算、詳しいことは発表されておりませんのでわかりませんが、「ミリタリー・バランス」や何かの統計によりますと、GNPの一〇%以上、一五%ぐらいいくのではないかというふうに推測する向きもございます。明らかに経済上の重圧となって軍拡がのしかかっていることは疑問の余地がないと思います。  これはアメリカにおいても、双子の赤字という言葉で形容されますように、レーガン政権における軍拡、核戦力の近代化が経済上の失調となってあらわれた、これもよく指摘されるところであります。したがって、INF条約がそういう国内の経済上の困難さを反映したものであることに関しては、いささかも私異議を差し挟むものではありません。  しかるがゆえに、このデタントは構造的であり、永続的であり、かつこれからさらに大きく広がっていくであろう、単なる軍事上の駆け引き、SALTに見られたような軍事上の駆け引きではない構造部分を含んでいる、氷山の大きな、我々に見えない部分米ソともに経済上の問題として持っている、であるからこれは大きな転換点として受けとめる必要があるのではないか、そういうふうに私は考えるわけであります。  これも柿澤議員御指摘のように、INF後の情勢に関してヨーロッパにおいて通常戦力における協力体制の強化、近代化、あるいは独仏枢軸という言葉であらわされるような新しい協力関係の模索が進められていることも事実です。それに拮抗する動きも、さっき私述べましたけれども、確かにそのような動きがあることは事実です。  ただ、考えてみますと、ことしから具体的にINFの撤去の作業が始まりますと、ヨーロッパの八カ国に米ソ双方合計四百人の査察官、ほとんどが軍事専門家であろうと思います。ソ連の百二十八カ所、アメリカ、ヨーロッパの三十カ所に米ソの軍事専門官が駐在する、十三年の長期にわたって駐在する、これの持つ意味も極めて大きいだろうと思います。これらは核基地だけではありません。西ドイツにおける査察を要求される場所は、ほとんど通常戦力の基地でもあるわけです。そこにソ連人の査察官が数十人単位で常駐し、基地の動静をうかがう、このような破天荒な条約が実施に移される、そして十三年間維持される。そのような中でソ連を想定敵とする通常戦争の近代化へ向けた協力関係が鋭角的に進んでいくとはどうしても考えられません。それと逆の動き進展していく可能性の方が強いのではないか、私はそういうふうに考えるわけです。  アジア・太平洋においてまだヨーロッパとは違う情勢があることも考えなければならないとおっしゃいました。おっしゃるとおりだと思います。INFヨーロッパを中心に陸上INFの撤去でありましたから、我々の住んでいる地域とはいわゆる地域差ないし時差がございます。即座に我々の周辺で情勢を変える要因としては作用しないと思います。しかし、方向として、趨勢としてそういう方向に向かったことを我々は今知るべきである。そういう中で日本の安全保障、国家目的の再定義がぜひ必要なのではないか。それは従来のような軍拡あるいは防衛政策、防衛力増強ではない道をやはり導入すべき好機ではないのか、そう考えるわけです。  ソ連海軍力の太平洋における拡充、これは客観的な事実でありまして、これを否定することは何人たりともできないだろうと思います。そして、それが一般的に日本の安全保障に悪い影響を与える、これも客観的な事実であろうと思います。  しかし、翻って冷静に考えてみますと、オホーツク海、ベーリング海、日本海を中心とするソ連海軍力及び空軍力の増強は日本を志向した具体的な脅威であるのか、それとも米ソの地球レベルの核のせめぎ合いが運搬手段の近代化によって北西太平洋を覆うようになり、米ソの核レベルのせめぎ合いが日本周辺に持ち込まれたことの波及効果であるのか、この両者は弁別して見る必要がある。私は、ソ連の脅威ではなしに、米ソの脅威が日本周辺にわだかまっている、したがって、これは米ソの脅威を日本周辺から引き離す努力日本が主体的になって行うことによってのみ解決される、そのようなことであると考えます。ソ連海軍力の増強は確かに事実でありますが、同時に米海軍力の太平洋における増強も事実なわけで、米ソの海軍力が日本周辺でお互いに核抑止という関係でせめぎ合っている、そのような新しい一九八〇年代における情勢を根底に置いて、その中から日本の安全保障を考えていくべきであろうと思います。  そういうふうに考えてみますと、やはり三宅島において、あるいは池子において米軍ソ連に対する前進包囲戦略に加担し、協力するような方策をこの後新たに始めるということは決して得策ではない、やはりじっくり時期を待つべきであるというふうに考えるわけです。
  12. 柿澤弘治

    柿澤委員 あと二分ほどしかございませんが、今のお話の中で、米ソのせめぎ合いというお話がありました。米ソのせめぎ合いの脅威であるというお話がありましたけれども、我が国は自由陣営の中に立脚し、その自由陣営の将来の発展と繁栄に依存をしている、そういう中で我が国の防衛を考えなければならない、この点についてひとつ御理解をいただきたい。  それからもう一つは、空白の脅威というものもあるはずである。そういう点で、我が国部分をそれじゃ米ソのせめぎ合いの外に置いたら安全なのかと言われれば、空白の脅威というのがあるのではないか。そういう意味で、やはり基本的な構図は均衡と抑止という点であると思いますが、その点について公述人の御意見を伺いたいと思います。
  13. 前田哲夫

    前田公述人 おっしゃるとおりだと思います。空白の脅威、あるいは日本がまさに国家エゴを発揮することによって生じる一種の真空地帯が決して世界のためにならないという御指摘であれば、そのとおりだろうと思います。ですから、単に空白をつくるということではなしに、日本が主体的に、日本は自由陣営の一員、西側の一員であることをやめる必要はないわけで、でありながら、しかしINF条約によって切り開かれた新しい情勢に見合った、そして日本国憲法、非核三原則の国是の志向する新しい安全保障政策、国家目標を再設定すればいいわけでありまして、決して真空地帯ないし空白をつくるということにはならないと私は考えます。そうさせてはならないとも考えます。
  14. 柿澤弘治

    柿澤委員 終わります。
  15. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、上原康助君。
  16. 上原康助

    ○上原委員 御三名の公述人の先生方、それぞれのお立場での御意見、大変ありがとうございました。  私は社会党に所属をする者ですが、時間が大変限られております。そこで、主として前田先生の御意見に質問をさせていただきたいと存じます。  本来ですと、この委員会でもっと防衛問題あるいは外交、税制、教育関係等々もいろいろ議論をした後に、公述人の方々の御意見を拝聴してさらに審議を深めるというのが筋かと思うのですが、御案内のような状況で、まだ質問もしない前に公述人の方々の御意見を聞いて質問をするというのもいささか、余り気力がこもらないのですが、それはそれとしてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  私は、先ほど前田公述人がお述べになったことについて基本的に賛成でございます。  そこで、きのうから、立場が違えばこれほど国際情勢の受けとめ方、認識、あるいは我が国安全保障政策をどう確立をしていくかということで相違点があるのかなと思って、改めていろいろ考えさせられているわけですが、要するに今回の米ソINF全廃条約の調印というものは、国際的に見ても、日本立場から見ても、アジア立場から見ても、大きく従来の核軍拡時代から新たなデタントの方向に動いたという認識は、私は何人も否定できないと思うのですね。しかし、これがソ連脅威論だけを前面に押し立てて、ますます軍拡、防衛費を膨張拡大をしていこうという動きに対して、今国民は疑念と、何とかならぬものかというじれったさを私は持っていると思うのです。  そういう立場からすると、INF全廃条約調印を踏まえて、さっき御指摘がありましたいわゆる海上、海中の核の危険性の除去ということが、今後の日本の反核・軍縮あるいは平和、なかんずくアジア日本周辺の核軍縮にとって極めて重要な課題だと思うのですね。この点について、いま少し前田先生の御見解を聞かしていただきたいと存じます。
  17. 前田哲夫

    前田公述人 上原議員おっしゃったとおり、本来ですと、私ジャーナリストでありますので、予算委員会冒頭における本委員会の質疑を聞いた上で、その中からこういう席に呼ばれますと自分の意見を組み立てるのが常道なんですが、今回は逆になりまして、全く参考になる資料がございませんでしたので、INF後の情勢巡航ミサイルトマホークの問題に論点を絞ったわけですが、今御質問されましたので、海上、海中における中距離核戦力の危険の除去について私の見解を述べてみたいと思います。  何度も申しますように、INF条約は陸上発射の長短射程中距離核戦力全廃条約であります。空中発射、海上発射はこれから完全に除外されております。そこで、我々周辺においてINFの影響が即座にあらわれるということにはなっておりません。ですから、INF後我々が何としても考えなければならないのは、ヨーロッパにおいて生じたINF全面撤去をいかにして他の分野に波及させ、他の地域に波及させ、我が国周辺に招来するであろうかと考えます。その場合、当然前面に出てくるのが海上発射INFであることは言うまでもありません。  さっき申しましたように、三百二十八基、核つきのトマホークが配備されておるというふうに「ミリタリー・バランス」は分析しております。米海軍の議会に通告した資料によりますと、一九九〇年代には七百五十八基になるというふうに言われております。アメリカがヨーロッパに持ち込む予定でした巡航ミサイルは四百六十四でしたので、現在でもややそれより少ない程度、将来におきますとそれをはるかに凌駕する海上INFが主として太平洋に配備される、そういう状況に我々遭遇するわけですから、これを何とかして引き離す。そして、今米側だけ申しましたが、ソ連もこの海中発射INFを開発中であることを隠しておりませんし、それはごく近い将来、日本周辺において実戦配備という形であらわれるであろうことも明らかなわけです。  そうしますと、我が日本列島の東西あるいは周辺に米ソ中距離核戦力海洋、海中で行動するというそういう状態に我々さらされるということになります。これも周知のとおり、我が日本海洋国、海洋依存大国であります。貿易のための原材料の大半はシーレーンを通じて日本に運び込まれますし、製品もまたシーレーンを通じて日本から地球上の各地域に運ばれていく。その海洋が核の移動発射基地になっている、核ミサイルの移動発射基地に等しい状態になっている。これは何としてもやはり危険であると思います。陸上の核基地でありますれば平時はお互いの領域に引き離されております。しかし、海洋はもう極めて厄介なことに公海自由の原則によって律せられますので、米ソ核戦力は平時においても海洋ではまじり合い、同居し合うという特性を持っているわけですね。ですから事故が起こり得ますし、不測の事態も予測されます。  そのような中で日本海洋依存国家として国家活動を継続し繁栄を享受していくためには、やはり海洋における軍縮海洋における非核化というのを至上命題として米ソに働きかけていく、そのことが極めて重要であろう。そして、それをまずトマホークと呼ばれる現在実際に配備されている米軍海洋発射中距離核戦力に当てはめていく、そういう方策がINF条約後の日本の政策としてとられてしかるべきではないか、そのように考えるわけでございます。
  18. 上原康助

    ○上原委員 全くおっしゃるとおりで、要するに今、日本政府がとるべき姿勢というのは、陸上の中距離核戦力の廃絶に加えて海のINFをどう撤去させるか、それを非核化していくかということが最大の外交課題であり、防衛戦略でなければいかない、そう思うわけです。前田公述人もそういう御見解だと今の御意見で思うのですが、いかがですか。
  19. 前田哲夫

    前田公述人 全く上原議員のお話しになったことに同感であります。INF条約を評価し、歓迎するという我が国政府の方針が確固たるものであれば、INF条約を海に拡大し、我が国周辺に実効あらしめる新しい条約を米ソに結ぶように働きかける、これがとるべき方策であろうと思います。  ヨーロッパINF条約締結の陰にも、ヨーロッパにおける反核草の根と呼ばれる運動が大きな役割を果たしたこと、これはもう疑問の余地がないことでございまして、今回はアジア太平洋地域における国際世論を結集して米ソに対して海のINFを撤去するように、公海を非核にするように申し入れる好機であるというふうに考えております。
  20. 上原康助

    ○上原委員 恐らく国民世論も国際世論も、よりそういう方向に展開、発展していくものと私たちは思うし、また国会においてもそのような方向での反核・軍縮の方策というものをより積極的に進めていきたい、こう考えております。  時間が残り少なくなりましたので、あと一点、一問しかお尋ねできませんが、先ほどもこういう国際情勢に反して我が国へのトマホーク配備の米艦船がしばしば寄港している、また核持ち込みというもの、あるいは核の撤去というのは核システムそのものをトータルとして考えなければいかないという御指摘がございましたが、全くそのとおりだと思うのですね。  しばしば本委員会でも問題になっておりますいわゆる非核三原則の問題、日本政府は米国の事前協議がないから核持ち込みはないんだという見解をとっておりますが、こんな子供だましのようなことは通用しませんね。恐らく日本の国会の予算委員会だけでしかこれは通用しないんじゃないかという、自分で聞いてもおかしくなりますね。このことについて御専門の立場から国民はどう見ているのか。もう時間があと二、三分しかありませんので、ひとつ簡潔にお願いしたいと思います。
  21. 前田哲夫

    前田公述人 非核三原則については、確かに二つの側面から接近が可能であろうと思います。  果たして非核三原則が字義どおり守られているかどうかに関してです。これに関してはライシャワー発言、ラロック発言を初めとするアメリカの当事者たちの具体的な発言によって、非核三原則が我々が聞かされているのと違った運用をされていることはもう既に公然たる事実であろうと思います。非核三原則を、つくらず、持たず、持ち込ませずの持ち込ませずを字義どおり完壁に行われているという保証は、もう既にライシャワーさんのあるいはラロックさんの証言によって明らかであろうと思うのですね。  もう一つは、非核三原則を弾頭だけに限定してよいかということです。INF条約は核の発射手段を問題にしております。そして、核システムと呼ばれる概念で我々日本列島を見てみますと、核の発射機構あるいは核の通信施設と呼ばれる核のシステムが存在するわけでありまして、たとえ、仮に核弾頭が持ち込まれていないというふうにみなしましても、なお今日の核戦略の中で日本は非核であるとは言いがたい状況を持っている。ですから、非核三原則を核システム、核の運搬手段及び関連施設に拡大する努力もやはりやっていかなければならないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  22. 上原康助

    ○上原委員 あと一点、簡単に。  今度の防衛予算の中で一番突出した新しい装備はやはりイージスシステムを確立をしていこうということなんですね。これは非常に問題があるのでなかなか短時間の議論でできませんが、これが導入されますと、まさしく憲法で否定された集団自衛権の、今でもそれは行使されていると私は見ているわけですが、それをより顕著に日本の防衛に取り入れられていくということになると見て、私たちはこの点は非常に重要視をしているわけですが、その点についてはどうお考えですか、簡単にひとつお願いします。
  23. 前田哲夫

    前田公述人 イージスシステムを搭載した水上戦闘艦は、米海軍は空母の護衛戦力として開発いたしました。我が国はシーレーン防衛あるいは洋上防空のためというふうに言っておりますが、しかし、シーレーン防衛のタンカーの数十隻分に相当するような軍艦を数隻も装備するということは経済的に見ましても余り意味がないことでありまして、これは上原先生御指摘になったとおり、アメリカとの共同作戦体制の中で空母護衛戦力の一角を占める、つまり米軍が開発するのに使ったのと同じ理由で使われる可能性が強い。そういう意味でやはり集団的自衛権の行使に限りなく接近していく兵器であろうと思います。
  24. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  25. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 続いて、上田哲君。
  26. 上田哲

    ○上田(哲)委員 前田公述人にお伺いいたしたいと思います。  私は、ポンカスを今国会でぜひ実情を明らかにし、その危機を訴えたいと思っているわけでありまして、これは七八年のガイドラインに基づいて行われる日米の共同研究、シーレーン防衛共同研究から共同作戦計画、そしてインターオペラビリティー、その一連の延長線上に今回はいよいよ米軍の有事来援が実戦配備の段階に入る。全くこれまでとは違った危険な段階に踏み込むものだと思っております。  これは一九八二年のアメリカと西ドイツの明確な協定にも明らかでありまして、最低限のユニットセットに従っても一個師団分、いわゆる装軌車で一千台を下らない、それだけでも大きな集積になっていくわけでありますから、それはこれまでと全く次元を異にする体制への準備だということになります。  そしてまた、それは明らかにホスト・ネーション・サポート協定というものを求められることになるわけでありまして、日本防衛庁もその防衛白書の中でホスト・ネーション・サポートを明記している。その中に実は思いやりを定義づけているわけであります。したがって、国際的な認識からしてもホスト・ネーション・サポート協定とそれに見合う有事立法、このことが研究の中に入らざるを得ない必然でありまして、こうした踏み込みというものが持っている危険性というものを私はやはりもっとしっかり見詰めなければならないと思っております。この点について前田先生の御意見を承りたいと思います。  時間がありませんので、これをメーンにいたしまして、あわせてもしお時間がありますなら、前田先生は確固たる非武装中立論者と伺っておりますので、お時間があればその点を、先ほどのINF協定以降の、廃絶以降の国際情勢、とりわけアジア情勢との関連において言及していただければ幸いであります。よろしくお願いします。
  27. 前田哲夫

    前田公述人 先ほども申し上げましたように、INF後の世界米ソデタントによって規定づけられ、構造的、永続的な緊張緩和の状態が続いていくであろうというふうに考えます。しかし、セントラルデタントが即座にエリアデタントに直結しローカルデタントを構成するというふうには残念ながらいっておりませんで、さまざまな要因がこの米ソのセントラルデタントを我々周辺に及ぼすことを妨げています。  それは、やはり海のINFを残したままのINF全廃条約であったということが最大の要因なのでしょうけれども、そういった情勢太平洋地域が取り残された関係上、ヨーロッパと違って太平洋では依然として軍拡の潮流がかなり現象面では大きい、強いというふうに言える。特に太平洋の強国であります、大国であります日本とアメリカは安全保障条約によって結ばれているわけですから、まだ軍事の論理がこの地域を覆う主要な潮流である、そうみなして差し支えないと思います。セントラルデタントの波はここまでまだ波及してきていない。であるがゆえに、我々はこれを提起しなければならないというふうに考えるわけですが、現実の動きはそうではなしに、本予算案にも盛られているINF後の日本の身の処し方は、残念ながら従来と同じように米国の軍事的な見地における太平洋政策に協力していく形とみなし得ると思います。  その一つに、今上田議員おっしゃいました有事来援という新しい概念がここでも出てまいりまして、その方策の一つとして、ポンカスと呼ばれる物資の事前集積、戦闘物資を事前に前線地区に集めておいて、有事には身一つてそこで戦闘に投入できるような体制をつくっておこうという動きがにわかに表面化してまいりました。NATOにおいてはこれは別段新しいものではなかったわけですが、そのヨーロッパにおいて今逆の動きが吹き始めた今日、我が日本でそれを新たに構築し始めるといういささか時代錯誤の方策に私は疑問を感じるわけなんですが、まずそのことがあります。  ヨーロッパには確かにポンカスがあるわけですが、しかし、ヨーロッパはそのポンカスを初めとする軍事対決の重圧からようやく逃れる逆の道を模索し始めた。したがって、我々はポンカスに学ぶべきではなしに、ポンカス後のヨーロッパ情勢を先回りして追求することの方が重大であると思うわけですが、現実の動きはそうはなっておりません。これはやはりセントラルデタントとエリアデタントの地域差、時差の問題もあろうかと思いますが、我々の認識力がまだ追いついていない面があるのだろうと思います。  ポンカスがどういう形で、どこにという具体的なところまでまだ明らかにされておりませんので、詳しい論評は不可能でありますが、しかしこのような措置がとられますと、在来の法制ではまず不可能であろうということは容易に想像できます。どこに置くのであろうか。一個師団分、二個師団分の装備ともなりますと、莫大な量に達します。そのための施設も必要です。米軍が志向しておるオホーツク海ということになりますと、北海道がまずその候補地になるのでしょうが、北海道に米軍は現在、用地、区域、施設を持っておりませんので、新たに取得するか、ないしは自衛隊の基地にこれを置くかということになると思います。どこが管理するのか、維持管理費はだれが負担するのかという問題も生じるでしょう。さまざまな面でポンカス、戦闘部品の事前集積問題は新しい有事立法を我々に突きつけざるを得ないというふうに考えるわけです。  同時に、有事来援というシナリオをとってみましても、これももしこのシナリオが具体化していくならば、莫大な日米間における海の軍需品輸送のシーレーンを想定せざるを得ない。部分的なポンカスを日本国内において備蓄し得たにしましても、主要な装備、人員はやはり海を通って日本に来援してくるということになるでしょうから、今回は有事立法において海の有事立法もまた具体的な形をとってあらわれるだろう。海運統制といいますか、船舶の運航統制のような問題が具体的になってこざるを得ない。  例えて申しますと、今、日本から米国に対しておびただしい自動車を輸出しております。そのための自動車専用船などございます。一度に数千台の自動車を運ぶことができる自動車専用船をトヨタ自動車、日産自動車は持っております。帰りは当然空車、空船であるわけでございますから、これに米軍のジープを搭載する、もう物理的な能力としては簡単にできるわけで、こういったことを船舶運航の統制という形で米側は要求してくることは容易に想像できると思います。  そうなりますと、海の有事立法もまた具体的になってこざるを得ない。その自動車専用船をどうやって守るのだということで、いわば兵たん線護衛のためのシーレーン防衛もまた新たな光を当てられていくであろう、新たな方向を提起するであろうというふうに考えるわけです。ですからこのポンカス、有事来援の柱であるポンカスはまだ全体が明らかにされていないので、それ以上詳しいことを申し上げることはできませんけれども、ぜひ本国会で内容を明らかにしていただきまして、それはいかなるものであるのか、ヨーロッパにおける現体制といかに背馳するものであり、かつそれを実施することによって我々が平時における市民的な自由を犠牲にしなければならないのかということをぜひ広く国民の前にお教え願いたい、そのように考えます。
  28. 上田哲

    ○上田(哲)委員 もう一問だけお伺いできるようでありますから、一言だけで結構でございます。  先生御指摘のような洋上防空という構想がいわゆる第二線防衛軍事体制であるという御指摘は大変正しいと思うわけでありますが、それらに関連しつつ、日本の防衛構想が大きくここで次元を超える。もう一度繰り返すわけでありますが、ポンカスはまさに米軍の有事来援の実戦配備体制に踏み込むものである。言葉を変えるとこれは日本軍事体制のNATO化である。こういう認識の中で私は、これまでの軍備増強というものがたどってきた、新しい兵器を導入するとか軍事費用を増強するあるいは兵員を増強するという次元ではなくて、今申し上げたような意味での大変大きく一つ違った危険な段階に入ろうとするものである、こういう認識が正しいかどうか、お伺いいたしたいと思います。
  29. 前田哲夫

    前田公述人 全く同感でございます。先ほど私、米ソの脅威が日本周辺にわだかまっているというふうに申し上げましたが、一九八〇年代に入りまして相次いで米ソ海洋核戦力、先ほど申し上げました中距離核戦力ではございません、戦略核戦力、潜水艦から発射してお互いの首都あるいは軍事中枢を直接攻撃し得る核戦力でありますが、それが日本周辺に入ってきた。ソ連のオホーツク海はアメリカを、アメリカ大陸全域を核攻撃可能な潜水艦の哨戒海域に一九八〇年代以降なったという冷厳な事実がございます。一方、アメリカもアラスカ湾をソ連ヨーロッパ部を核攻撃可能な海域として核の管理下に置いた。オホーツク海もアラスカ湾も我が国の古くからの北洋漁業として知られる漁場でありましたが、今は漁業の論理ではなしに核の論理に支配されている海域になった。我々の北洋漁業の壊滅も決してこれと無縁ではないと思うのですが、そのようなことを米ソの脅威というふうに申し上げたわけなんです。  確かにアメリカにとってオホーツク海からニューヨークがねらわれるということは愉快ではないに違いありません。まくらを高くして寝られない心境になるのはうなずけるところです。そこで米海軍は、従来はオホーツク海まで出ていかなかった戦略を変えて、漸進的にオホーツク海を常時監視下に置き有事には制圧する新しい海洋戦略の策定に着手した。これは広く知られているとおりであります。その中に日本列島は地政的にもあるいは日米安保条約によってもアメリカの与国、同盟国として位置づけられております関係で、いや応なしにといいますか位置づけられている。その新しい段階を今我々は目撃しているのだと思います。  ですから、やはり米ソ核軍縮への努力という新しい動きが始まったわけですから、ここで米側の対ソ核抑止戦略に協力するのではなしに、米ソに対して核軍縮アジア・太平洋に実践するその働きかけをすることによってこの困難な状態を突破すべきであって、今のような方策は得策であるとは私には思えません。
  30. 上田哲

    ○上田(哲)委員 ありがとうございました。
  31. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、冬柴鉄三君。
  32. 冬柴鐵三

    冬柴委員 本日は、公述人におかれましては貴重な御意見をまことにありがとうございました。与えられた時間が十五分でありますので、ごく簡潔にお答えをいただきたいと思います。  まず黒羽公述人にお尋ねいたします。  新しいテストが六十五年から開始されるという予定でありますが、これに関する御意見、一言で結構でございます、よろしくお願いをいたします。
  33. 黒羽亮一

    黒羽公述人 新しいテストは私は必要だと思います。といいますのは、昔のように大学入試というのがごく限られた人の問題であったとき、例えば旧制高校が定員が全部で一万人もありませんで、それを受ける人が十万人というような時代と今は違いまして、大学を目指す人が百万人ぐらいいるわけでございますね。そうしますと、高等学校の方も六千校近くありまして、さまざまな教育をしているわけですが、そこで、進学ということに関してはある程度基礎的な力を見る試験というようなものがやはりあった方が高等学校教育もそれを目安に正常化できるでしょうし、大学の方としてもある程度の人を選抜する基礎資料が得られると思うのです。そして、その上にそれぞれの大学が必要とする特定の科目の試験をするとか面接をするとか小論文をするとかというようなことで、二段構えという措置が私はよろしいのではないかと思います。
  34. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、これも一言で結構でございますが、貝塚公述人にお尋ねをいたします。  先ほどの中で、財政が好転をしたので減税に見合った増税は必ずしも必要ない、このような趣旨を述べられたように受け取ったわけでございますが、例えば所得税一兆円程度の規模の減税をするとした場合、これに対してもそれに見合う増税ということは考えなくてもいい、このような趣旨でよろしゅうございますでしょうか。
  35. 貝塚啓明

    貝塚公述人 余り具体的な数字は頭に置いておりませんですが、私が念頭に置いておりますのは、私はどちらかといえば新型間接税賛成の方でありますので、新型間接税を入れたときの差額といいますか、要するに抜本的改革のときには事実同額であったわけですが、その辺のところは必ずしもそんなに神経質に同額を考える必要がないという趣旨であります。その程度の内容でございます。
  36. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それでは前田公述人にお尋ねをいたします。  我が国防衛政策は憲法及び国防会議と閣議で決定された昭和三十二年の国防の基本方針並びに五十一年の「防衛計画の大綱」の枠組みの中で決定さるべきものであることは疑問の余地がないと考えております。そしてその三者を貫く防衛哲学、これは専守防衛に尽きるのであり、大綱はその上に立脚していわゆる基盤的防衛構想というユニークな防衛戦略思想に基づいて防衛力の整備計画を具現化したものではないかと思っております。  そこで、昭和六十三年度の予算案の特徴でございますが、先ほど公述人もお述べになりましたように、イージス艦の導入、それからOTHレーダーの導入についての調査費の計上等で明瞭なように、シーレーンなかんずくその洋上防空に積極的に踏み出した点に特徴があるように思われます。これは大綱の思想である基盤的防衛力構想から逸脱をしているのではないか。これに対する脅威対応所要防衛力構想、このような考え方に立脚するのではないかと考えるのでありますが、前田公述人の御意見をいただきたいと思います。
  37. 前田哲夫

    前田公述人 おっしゃるとおり、我が国防衛政策の基本は昭和三十二年に策定されました国防の基本方針が一番基礎的な文書であろうと思います。そして一九七六年の基盤的防衛力構想をもとにした。「防衛計画の大綱」によって今日まで基礎づけられているわけですが、「防衛計画の大綱」はおっしゃるとおりこれは政策でありまして、基本的な理念を基盤的防衛力構想に置いていることは当時の防衛白書、一九七六年版、七七年版を見れば歴然としております。両年度の防衛白書はほとんど全ページを基盤的防衛力構想の解説に充てまして、これがいかに我が国の防衛力の基本であるかをるる述べております。  この基盤的防衛力構想を哲学とする防衛政策として「防衛計画の大綱」という数量的な規定が置かれたわけでありまして、哲学と政策の関係になる。かつ、この哲学と政策を現実的ならしめるもう一つの方策としてGNP一%の防衛費という財政上の原則が導入された。これらは同じ時期に策定されたいわば三位一体をなす防衛政策の政策群であろうというふうに言えます。哲学、政策、財政枠という三つの関係になるわけです。  ところが、今日、三位一体であるはずの、不離一体であるはずのこの三つの政策はばらばらに切り離されまして、残っているのは数量的な規制である「防衛計画の大綱」だけになりました。極めておかしなことであろうと思います。「防衛計画の大綱」を改定しようという意見があることは承知しておりますし、それを主張することは結構だと思います。もしこれをきちんとした形で別のものに移行させるのであれば、それはそれなりに納得できるのですが、「防衛計画の大綱」を構成している基盤的防衛力構想あるいはGNP一%枠を切り離した後、これだけ維持し、これを唯一のてこにして軍事力増強を図るというのは、いささか腑に落ちない。  そして、おっしゃるとおり、今年度予算案に盛り込まれている兵器群は、明らかに基盤的防衛力構想の枠を大きく踏み越えた、領域外における日常的、常態的な軍事力の展開を前提としております。米軍との間の集団的自衛権にかかわるような線もやはり踏み越そうとしている。これが「防衛計画の大綱」の名のもとに実施されているのは、本来基盤的防衛力構想と一体のものとして策定された経緯を考えれば、逸脱甚だしい生言わざるを得ないと思います。
  38. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そこで、イージス艦についてお教えをいただきたいと思います。  イージス艦というのは、米海軍が開発した画期的な艦隊防空システムの革命児だ、このように言われているようでございますが、その目的とするところは空母、艦隊防空一本に絞られた戦艦である、このように言われています。そこで、もう少し国民にわかりやすくイージスというものの機能、目的、もう時間も少ないので簡単にお願いしたいわけですが、それともう一つ、米国のイージス艦というのは一そうが一兆円もするような空母を直衛するということからその存在理由が高いわけでございますけれども、我が国の海上自衛隊においてこのようなイージス艦を導入することの必要性、そのようなものについても触れていただければと思います。よろしくお願いします。
  39. 前田哲夫

    前田公述人 イージス艦、わかりやすく言いますとハイテク戦闘艦というふうに呼べば適当かと思います。極めて高度にコンピューター化され、かつそのコンピューターと武器が連関した形で動く。目標を探知し、敵、味方であるか識別し、その敵、味方であるか、敵と判断された物体に対して何が最適の武器であるかを自動的に選択し、そこへ向かって照準し、目標圏内に入ってくると射撃し、撃墜を確認し、そして次の目標を指向する。それらの一連の手順をすべて自動的に行う、艦長は戦闘指揮室で監視するだけというような、そのように高度に自動化されハイテク化された兵器で、異方向から同時に飛んでくるミサイルの攻撃あるいは航空機の攻撃に対してそれを防御する目的でつくられました  これはおっしゃるとおり、米空母機動部隊の中核をなす制式空母十五個米海軍が保有しておりますが、これは浮かぶ空軍基地とでも申すべき多くの戦闘機を持っておりますし、極めて高価な、したがって一度損害を受けますと長期間調達することの不可能な兵器群ですので、何としても無事守らなければならない。それで、この高価な空母を守るためにイージス艦、イージスシステムという新しい艦隊防空システムが導入され、それを搭載した巡洋艦が目下配備されているということなわけです。ですから、経緯から見て、能力から見て、これを海上自衛隊が我が国沿岸及び海上交通の安全のためにという名目で導入する理由は極めて薄弱であろうと思います。このイージス艦をもって守られる我が国のタンカーあるいはそば粉を積んだ貨物船という船団を想定すると、いささかこっけいになってくる。やはり正当な場所は米海軍機動部隊の外側でこれを護衛するという形以外には、このイージス艦を使う理由も必要もない。したがって、我が国自衛隊の存立の本来の目的から判断すれば、導入の必要はないのではないか、そういうふうに考えます。
  40. 冬柴鐵三

    冬柴委員 終わります。
  41. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 次に、楢崎弥之助君。
  42. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 公述人の皆さん御苦労さまです。  前田公述人にお伺いをしたいのですが、防衛費がGNP一%を突破するそのきっかけになったのは、シーレーン防衛という名のもとに今お話にありましたイージス艦等を購入するようになった、そこに私は直接的な因果関係があろうと思います。  そこで、ではシーレーンというものが本当に守れるのか。私は過去、昭和四十年代の後半だったと思いますが、当時の山中貞則防衛庁長官に、守れますかと聞きました。守れると言った。そこで私は、マル秘文書を出して、日米の安保協議委員会に提出する日本側の案として外務省と防衛庁が一緒になって案をつくった、その中にオイルロードは守れないと書いてある。さらに七三年一月、石油の海上輸送問題に関する当時のズムウォルト海軍作戦部長の証言があります。これはアメリカ海軍も守れない、恐らく二五%しか守れないであろう、こう証言している。それを私は山中長官に提出をして、結局山中長官が最終的には守れないという返事をなさったのですよ。ところが、また八一年ですか、鈴木首相が向こうへ行かれて、レーガン大統領の言葉に乗せられたという言葉は悪いですけれども、ひょっこり洋上防空などという、これまたできもしないものを約束してきた。それで、以後ずっとこうなって、GNP一%突破の要因をつくった。  私は、ちょっと前置きが長いですけれども、太平洋、特に北西太平洋が核の海になった。これはいわゆるSLBM、ポラリスからポセイドン、ポセイドンのC3ぐらいまではまあよかったんですよ。四千三百キロの射程ですから、インド洋あるいは地中海からモスクワ等をねらった。ところがここにトライデントが、C3ですかC4ですか、これが出てきた。そして、これの射程距離は八千三百キロ、東京—モスクワ間は七千五百キロ。ここで初めてこのトライデント級が出てきて、オハイオですか、ソ連も対抗してタイフーン、それが太平洋に配置されるようになったから、それ以来、太平洋が核の海になった。  だからシーレーンを防衛するために、今もありましたが、イージス艦を入れるのじゃない。どうしてかといいますと、イージス艦一隻千三百六十億ですか、あれの一番目玉はSPY1という高性能のレーダーですよ。これは非常に重たい。だから高くつけられないのですよ、マストの高いところには。例えば、これをつけているアメリカのアーレイバークという船は、海面から十四メートルの高さのところしかつけられない。それに比べて自衛隊のDDGの例えば「はたかぜ」、これは三次元のレーダーを水面から三十四メートルのところにつけておるから、「はたかぜ」の方がよほど索敵効果がありますよ。だから非常にイージス艦は遠目がきかない。きかないから今度はどう考えたか。今計画しているでしょう。P3CにAUWのあれをつけて、このイージス艦の足らざるところを補う。これは四千九百億円ですよ。イージス艦の三倍です。これを私は言うのですよ、限りない軍拡だと。そうなっているんだ、だんだん。  だから、これはまさにシーレーン防衛はできもしない。結局、先ほど問題になったとおり空母護衛のため、つまりリムパックで既に日本の海上自衛隊がやっている、アメリカの空母を守るために、それで購入するのではないか。つまり今せめぎ合っているのは、ソ連はアメリカのSLBM、これをなるたけつぶしたい。そしてまた空母をつぶしたい。そういうことでどんどん防衛費が上がっておるのですが、この点についてはどうでしょうか。
  43. 前田哲夫

    前田公述人 私など楢崎議員の国会における質問議事録を教材に勉強してまいったものでありますから、まさに釈迦に説法というしかないのでありますが、せっかくのお尋ねでありますので感想を述べさせていただきますと、シーレーン防衛は行い得ない作戦であるということはもう事実であると思います。我が国周辺太平洋を覆っている脅威の主要な部分はシーレーンの脅威ではなしに、今御指摘になりましたように、米ソの、水面下からお互いの首都をねらう潜水艦が、幸か不幸か、一九八〇年代、日本周辺の海を作戦海域にするようになった、そこで日常的に哨戒しているという事実に由来していると思います。アメリカもソ連もモスクワとワシントンを突如核攻撃される、それも海の底から核攻撃されるということは耐えがたいことでありますから、それを監視するため、あるいはそれを有事制圧するための一般海軍力を大規模に展開します。それは我が国周辺におけるソ連海軍力の増強であり、第七艦隊の近代化である、そう見ることができます。  シーレーン防衛は、こういう全体的な動き、特にアメリカ海軍の西太平洋における前進配備及び近代化と切り離して論じることはできない。シーレーン防衛を船団護衛という部分に限定して論じますと、太平洋の広さは船団護衛なるシーレーン防衛が成り立つには余りに広過ぎる。これはアメリカのあらゆる海軍の軍人の共通した認識。船団護衛によるシーレーン防衛は、第二次世界大戦、大西洋においてのみ、あるいは地中海においてのみ可能であった作戦であって、太平洋のようなサイズでは不可能である、これはもう共通の認識です。あるいは、我々はシーレーンと呼んでおりますが、米海軍ではSLOC、シーラインズ・オブ・コミュニケーションという名称を使っておりまして、これは軍事兵たん線の維持を意味する軍事活動の別称であります。  どのような観点から迫りましても、シーレーン防衛を我が国輸出入路の保護というところで論じるのは正確でないし、また、それができるかのように描くのはさらに穏当を欠くというふうに思います。
  44. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 シーレーン防衛は、私から言わせると、これは虚構です。  それで、もう一つつけ加えておきますが、これも私は当予算委員会で明らかにしたのですが、海上自衛隊の特別班が、もし貿易路が途絶えたら国民の生活はどうなるか、五〇%を割って三〇%か四〇%しか守れないということになったら日本は飢餓列島になる。この言葉は海上自衛隊が使った。飢餓列島になる。だから私はいつも思うのですが、例えば瓦さんが向こうへ行って、有事のときの支援はどうするか、私がそれを聞いたとき、そのときに日本の国民はどうなっておるのだろうか、それを一番に思いますよ。気安くそういうことを言うのですが、日本国民はどうなっているか、そういうとき。それをまじめに考えてもらいたい。  英国は第二次大戦で、やはり島国ですが、四〇%しか守れなかった。ズムウォルトは二五%しか守れないと言っている。もしそうなれば日本列島は飢餓列島になるのですよ。だから、いわゆる防衛戦略も上田委員が言ったとおり変わってきたから、洋上撃破、今までは海上交通を守ると言っていたのが、いつの間にか洋上撃破になった。水際から公海上へ出ていく。そして、例えばベアなんというのは三千キロメートルの射程を持つミサイルを持っているのですよ。その母機に対処する能力を上げると言うのだから、これは私が言うのじゃない、防衛庁が言うのだから。そうするとバイカル湖付近まで追いかけていって撃つことになりますよ。そういうことよ。だから議論をもう少し、私どもは架空なことを言っているのじゃない、具体的にやってもらいたい。  それで、時間がなくなりましたが、あと一つ、上田委員の先ほどの質問に関連してお伺いしますが、瓦さんが行って有事の、つまりWHNS、ポンカスも含めて、これの約束をしてきた。どうしてそういう約束をできるかといったら、これは五十三年度の日米防衛協力に関するガイドライン、これに基づいてやったと言っているのですよ。ところが、そのガイドラインですね、研究する際に前提がある。事前協議に触れることはだめ、憲法に触れることはだめ。あるじゃありませんか。上田委員も指摘したとおり、これを進めれば、外国に例がある。米国と西ドイツ、米国とイギリスイギリスなんかひどいですよ、あの合同兵たん計画というのは。私はやがて明らかにしますけれども、どうしてもそこにいかなければいかぬのですよ、研究すれば。そうしたら、憲法に触れることはだめと言っておるならば、ああいうことを研究すること自体がだめじゃないですか、私はそう思うのですよ。そういうことを思うのですよ。その辺もはっきりしておかないとだめで、今の法体系のもとでああいう研究ができるか、それだけ聞きます。
  45. 前田哲夫

    前田公述人 私も、できない、あれはけしからぬと思う者の一人でありますので同感なんですが、七八年のガイドラインは、確かに安保条約を一言一句変えなかったのですが、やはりあれは安保改定と等しいような運用の重大な変更をもたらした、そのように使われていると思います。  おっしゃったように、あの中には双方の憲法の規定に従うということはちゃんと明記してあるわけでありまして、何もあらゆる問題が立てられるということではないのですが、ガイドライン以後の日米の防衛政策を見てみますと、日本のこの国会の予算委員会であるより日米防衛首脳会談、ハワイ協議なんかで意思決定がなされるかのごとき運用をされている、それは、ガイドラインという摩訶不思議な日米の合意に由来するものと思います。ですからやはりガイドラインの違憲性、違法性もぜひ明らかにしていただきたいと思います。
  46. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ありがとうございました。
  47. 奥田敬和

  48. 中路雅弘

    中路委員 先ほど公述人の方もおっしゃっていましたけれども、予算委員会の総括質問もまだ終わっていないところですから、公述人の皆さんも御意見が述べにくいのではないかと思いますが、本当に御苦労さまでございます。限られた時間ですので、二、三問お聞きしたいのです。  まず、前田公述人にお聞きしたいのですが、先ほどの御意見INFの条約の合意ですね、戦後ずっと核の悪循環といいますか増強の続いた中で、一分野ですけれども核廃絶という問題で合意がされたということはやはり大きな転機でもありますし、世界の大勢がこうした方向へ向かう中で日本が、先ほどお話しのようにとりわけ海中、海上ですね、この対象になっていない空中などの、アジアにおけるいわばこうした大勢に逆行する足場になっているという御意見については私たちも全面的に賛成でありますし、新しく池子やまた三宅島の基地の増強、拡大、これは当然見直し、凍結すべきだという御意見にも全面的に賛成するわけですが、核の持ち込みに関連して、運搬的な手段を初めとした関連施設を含めて御意見を述べられました。  トマホークの問題でお話しされたのですが、お話しになりました昭和三十五年の国会答弁でも、事前協議弾頭及びミサイル、中長距離ミサイルと対象になっています、明確にこう述べているのですが、その後、私も国会でたびたびこの問題を質疑していますが、答弁は大分変わってきているのですね、大変けしからぬことですけれども。弾頭及びミサイルというのは、核に役立つ、核でなければ役立たないミサイル、そういう解釈で弾頭と結びつけて解釈していますから、この点はけしからぬと思うのですが、それはさておいて、先ほどINFと関連して、地上発射のINF合意の中で五百キロ以上ということで距離の問題をお話しになりました。私はこの点は、INF地上発射は——地上発射は全部核なんですね、非核はないわけです。だから、先ほどお話ししたように、距離の問題だけで問題にしていくとなりますと、ちょっと粗っぽい議論になりはしないかというふうに思うのですが、その点もう一度御意見をもう少しお聞きをしたいと思います。
  49. 前田哲夫

    前田公述人 おっしゃるとおり、ヨーロッパINF廃絶は地上発射に限られるわけでありまして、それはおおむね核そのもの、非核はないというふうに考えられております。ただ、今度のINF条約で撤去、廃絶の対象となったINF中距離核戦力は、現実に配備しているもののほか未配備のものも含むわけです。未配備、当然核弾頭が装着されていない状態も含む、つまり、先ほど申し上げましたように運搬手段の廃絶という原則を導入しているところに新しいものがある。核弾頭だけに着目しているのではなしに運搬手段、運搬能力に着目しているそういう条約である、その両面性を持っていることが第一点であります。  それと、距離だけに議論を集中すると粗っぽくなるという御指摘でありますが、しかしトマホークの場合、戦術用の非核と称されるものも含めてやはり五百キロ以上の射程を有することを思い、かつ米ソのSALT合意によって、外見上識別し得る設計特徴を有しない場合、それは同じものとみなすという合意が少なくとも米ソの間では成立しているわけでありますから、となりますと、やはり今回のトマホークは、どのような形であれ、どのような形態であれ、外見上識別し得る設計特徴を米軍は有していないわけですから、ソ連の目から見れば、すべて五百キロないし五千五百キロ未満の海のINFとみなす根拠を有していることを意味します。  そういう意味で、核がついているのであれ、核抜きであれ、核なしであれ、やはり海のINFは、ヨーロッパに成立したINF全廃条約の適用を明らかに受けてしかるべきものである、我々はそれを根拠にして要求していかなければならないのではないかと考えます。
  50. 中路雅弘

    中路委員 前田先生がお書きになったのを幾つか読ませていただいたことがあります。最近は「エコノミスト」ですか、それから雑誌「公明」にも書いておられますが、その中で、これは八七年三月の雑誌ですが、「一%枠突破総決算路線の危険な第一歩」という題で書かれたのを読ませていただいたことがあります。きょうお話もありましたけれども、NATO並みに計算すると、日本の軍事費は、英、仏、西ドイツを抜いて、米ソに次ぐ第三位の軍事費大国になっているということが述べられているわけです。その中で、この対策として、当面一%以内に抑え戻すことに最大の力を傾注する時期だという趣旨のことをお話しになっているのですが、七六年十一月の三木内閣の閣議決定ですね、一%の枠、この一%の枠という中で、先生がおっしゃった今日の世界第三位の軍事費大国になってきた、これは事実なわけですね。  そういう意味で、日本はGNPでも世界第三位ですから、逆に言いますと、一%まで軍事費は拡大してもいいという逆の免罪符の役割もある意味で果たしたというふうに思うのです。歯どめだということでひとつ映っている面もあるのですけれども、しかし現実を見ると、先生がおっしゃった軍事費の増強がこの一%の枠という中で年々拡大されてきた。そういう面では、拡大していく、またその中で後年度負担というようなことを最大限に活用してやってきました。だから、この中でも述べられていますけれども、イギリスは今年度から三年間に実質六%の国防費の削減、西ドイツは五年間で十万人の兵力削減を開始したということも述べられておるのですが、世界の大勢がおっしゃった軍縮の方向へ向かうということになれば、一%粋へ押し戻すというのじゃなくて、やはりもっと思い切った軍縮の方向、軍備削減の方向へ向かうべきじゃないかと考えるのですが、いかがですか。
  51. 前田哲夫

    前田公述人 私は決して、GNP一%以内であれば防衛費を支出すべきだという立場に立っているわけではないのですけれども、GNP一%という政策のもとで日本の自衛力が拡大されてきた経緯はおっしゃるとおりであると思います。  ただ、GNP一%という財政枠の決定がなされた当時の事情に立ち入って考えてみますと、やはりこれは前進的な意味を持っていた。それまで続いてきた所要防衛力構想と呼ばれる、倍々ゲームというふうに称されました防衛力整備方式に歯どめをかける、あるいは米中のデタントによって、あるいはベトナム戦争の終結によってアジア周辺に生じた緊張緩和情勢に応じた軍事費の歯どめという前進的な側面を持っていたこともやはり指摘されなければならないと思うのです。それは基盤的防衛力構想という防衛の理念によって補強されておりました。そういう意味で、GNP一%ができてきた当時の事情に立ち入って考えてみますと、必ずしも否定ばかりしてはいられない状況がある。  それと、押し戻してそれでいいとするわけではありませんで、まず当面の我々の目標を、以内に押し戻す。中間的にはこれをさらに削減して軍縮を徹底していく。最終的には軍備廃絶という目標に至るのでしょうけれども、これは、一九六一年にゾーリン、マクロイ両米ソ代表が国連総会に提出したゾーリン・マクロイ協約という軍縮への八項目合意声明の中に、最終的に軍事費の廃絶、基地の撤廃、軍隊の解散という目標を置きつつ、当面軍縮、軍備撤廃という道筋を示しておりますけれども、当面はやはりできるところから、あるいは突出し通ぎた部分を押し戻す努力から始めるしかないわけで、それを私は象徴的な意味を込めてGNP一%の中に押し戻すというふうに表現したわけであります。
  52. 中路雅弘

    中路委員 もう一問だけ前田公述人にお聞きしたいのです。  お考えはわかりましたが、今論議されている来年度の予算を見ますと、先ほど論議になっています例えば防衛予算の中で、アメリカの空母の護衛、日本は空母を持っていませんから、それを任務とするこういうイージス艦の導入、これも初年度はわずかですね。全部後年度負担になっているわけです。あるいは、先ほどおっしゃった三宅島にしても逗子にしても全部思いやり予算です。この思いやり予算も、発足した最初の五十三年のときは六十二億ですから、現在、今度は千二百億を超えているわけですから、二十倍近くになっている。まさにこの面では、一つ取り上げても全く歯どめがないわけですね。駐留米軍の負担の問題も、新しい協定ということも問題になります。こういう点では、やはり思い切ってこういうところは削減すべきじゃないかというふうに思うのですが、もう一度その点は、まあ一%という意味で、こだわる意味じゃなくてお聞きしたいのです。
  53. 前田哲夫

    前田公述人 駐留米軍に対するいわゆる思いやり予算は、これは防衛予算の中でも摩訶不思議な領域と申しますか、法的な根拠に非常に乏しい部分である。そこが異常に膨れ上がっている事態は、やはりこれは、法律によって物事を決していく方式の中では少しおかしいのではないか。余りにも肥大化し過ぎた。これは一つには、日米安保条約が強行採決という成立の仕方をして、日米地位協定に関する具体的な審議がほとんど行われないまま成立してしまったという歴史的な事情にもよるものと思われますけれども、地位協定に関しては余り立ち入った解釈がなされていない、論議がなされていない、そのこともこういう思いやり予算という名目で膨れ上がっていく素地となったのだろうと思うのです。ですから、今、地位協定の改定という声も自民党内の一部にあるようですし、この地位協定をひとつ徹底的に内容に立ち入って審議するような機会を国会の方でつくっていただいて、この地位協定の持っている問題点を思いやり予算との関連でぜひ明らかにしていただきたいなというふうに思っております。
  54. 中路雅弘

    中路委員 時間がなくて申しわけありませんが、貝塚公述人に最後にもう一問だけ。  先生は税財政の専門家でおられますわけですが、私も、きょうのお話を聞き、また、先日、岩波書店から出されています「財政」という先生の論文等を拝見させていただきました。きょうもお話しになっていましたけれども、間接税というのは、生活の隅々から所得がなくても絞り取るという点で、所得の低い人ほど重くなるという根本的な問題点を持っていると私は思うのですが、先生もその「財政改革論」というのですか、この中で売上税に触れて、今回の売上税提案に見られるように、所得の逆進的な要素ということを触れられて、所得水準の低い層まで負担が及ぶことになるということで、このことはもう原理的に避けられないということをおっしゃっています。ただその後に、日本社会保障制度が一定の水準があるから、それが給付で補われるので、低所得者に対する逆進的要素は深刻でないということも述べておられるわけですね。  私はその点で、間接税というのはどういう形にしてもやはり所得の低い層に影響が大きいということは先生も述べられているわけですが、その補うという社会保障、この分野が今度の予算の中でも、生活保護の予算も二百五十億ぐらい削減になっていますし、国民健康保険の自治体負担の導入にしても大きな負担になるわけですね。そういう点で、補うどころかその分野が一層削減をされてきているという中で、こうした例えば間接税の見直し等の増税ということになると、低所得者に対する影響というのはさらに深刻になるのじゃないかというふうにも考えるのですが、最後にその点お考えをお聞きしたい。
  55. 貝塚啓明

    貝塚公述人 今の御質問に対して。  確かに所得で見れば逆進的になるというのはそのとおりだと思いますが、私が申し上げているのは、しかし、現在は昔と違って社会保障制度があるわけですから、例えば最低限、次のことは保障されていると思います。それは、例えばことしの社会保障の給付で申しますと、年金は、去年たしか〇・一%物価上昇がありまして、その部分は次の年に、ですから、去年の十二月の末にたしか〇・一%の物価上昇がわかって、ことしの四月に遺族の給付それから生活保護も大体スライドしてその分上がるわけですね。ですから、おくれますが、最低限はそこはある意味で社会保障の給付者は保障されているということは申し上げられます。しかし、それでもなおかつそこでおくれがありますから、問題は残っているということは私も認めます。  ですから、諸外国の例で言えば、カナダというのは、例えばの話、間接税を入れたときにちょうど還付するような形で、所得税の方で還付を行っているわけですから、それはいろいろ考え方がありますが、その点は留意すべきであるということはそうだと思います。ただし、昔と違って、社会保障制度がある程度進んでいればそれなりに吸収できるところはあるということも御留意くださいということでございます。
  56. 中路雅弘

    中路委員 終わります。
  57. 奥田敬和

    奥田(敬)委員長代理 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ────◇─────     午後一時三十分開議
  58. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  先ほどの本会議におきまして、皆様方の御推挙により予算委員長の重責を担うことになりました。何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ────◇─────
  59. 奥田敬和

    奥田委員長 昭和六十三年度総予算について公聴会を続行いたします。  この際、御出席公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  各位におかれましては、御多用中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。昭和六十三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただくようお願い申し上げます。  なお、御意見を承る順序といたしましては、まず和田公述人、次に石原公述人、続いて関本公述人の順序で、一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、和田公述人にお願い申します。
  60. 和田八束

    ○和田公述人 和田でございます。  それでは、昭和六十三年度予算につきまして、参考人として意見を述べさせていただきたいと思います。  最初に、主として歳入面につきまして感想を申し上げまして、後、税制改革をめぐる問題について意見を申し上げたいと思っております。  六十三年度予算につきまして、歳入面を見てみますと、従来の状況からいたしますとかなり好転してきたという印象を持つ次第であります。昭和六十五年度を目標としておりました財政再建の方もほぼ達成できるのではないかという印象を持っております。これは、ここ一、二年における税収がかなり順調に伸びてきたということが背景にあると思いますが、そのおかげで国債依存度が低下し、赤字国債の減額も可能になったということで、この点は国民の一人としても同慶の至りという感じはいたします。  しかしながら、なお国債残高は本年度もふえるという見通しになっておりまして、百六十兆円ぐらいというような見通しになっておりますし、公債費の支出も二〇%程度ということで、なお財政的には種々問題があるのではないかという印象も非常に強く持つ次第であります。最近出されました「財政の中期展望」におきましては、六十五年度までに特例公債ゼロという計算になっておりますけれども、このようにうまく三年度続きまして税収増が続くかどうかということはまだ様子を見てみないとわかりませんし、この辺のところは幾分危惧を持つ次第であります。     〔委員長退席、野田委員長代理着席〕  それからもう一つは、NTT株の収益というものがかなり当初予想を上回って相当な収入になっておりまして、これが国債整理基金の方も潤しております。余裕金も増加しておりますし、これが一般会計の方にも公共事業関係として支出されているというふうな形になっております。  しかしながら、このNTT株の収益が増加するということは、これは財政面からいいますと結構なことではあるのですけれども、果たしてどのように使われているのかということになりますとわかりにくいところもございまして、せっかく増収があるのであれば、国債整理基金の余裕金という形で置いておくよりも、早期に特例債を償還した方がいいのではないかというふうな考え方も成り立つわけですし、それに、一般会計で無利子融資というふうな形で運用するということも、これはどういうふうな歳入としての意味合いを持っているのかということにつきましても、今後、財政論的にいろいろ問題点が生じるのではなかろうかという感じもいたします。  いずれにいたしましても、そういう形で歳入構造が好転したということは、それはそれなりに大変結構なことでございます。従来の財政再建が財政上第一義的に緊急の課題でありまして、そのために大型間接税を導入せざるを得ないという論拠はかなり薄弱になったのではなかろうかということが言えるわけでありまして、ここで税制論につきましても一段と時間をかけて行うということの可能性が出てきたのではなかろうかというふうに感じているわけであります。  そこで、その次に本年度の税制改正の問題でありますけれども、本年度の税制改正につきましては、六十二年度でほぼ大幅な税制改正が行われましたので、余り大規模なものはないように思います。土地税制が最大の課題といえば課題になっているわけでありますが、土地税制につきましても既に六十二年度におきまして譲渡課税の改正などが行われております。その他、問題になっておりました酒税とか相続税は先送りになっている。先送りというか、年度内でありましてもなお当初予算以降というふうな改正の段取りであるというふうに聞いておりますので、主として土地税制ということになろうかと思います。  この点で、土地税制につきまして簡単に申し上げておきますと、土地税制につきましては、従来、譲渡所得課税におきまして長期譲渡課税は軽課、軽く課税をして、短期につきましては投機的な売買を抑制するという意味合いから重課するということになっております。六十二年度におきましても超短期の譲渡益課税につきまして重課する、こういうことになっておりますのは、いわゆるあめとむちという、こういう対策だろうと思われるわけであります。  しかしながら、そうした土地譲渡課税を利用したあめとむちの政策というものがどれだけ実効力を持つかということにつきましては、四十年代以降こうした政策がとられてはいるのですけれども、必ずしも顕著な効果を上げているとは言えないわけであります。むしろ土地をめぐる所得の不平等あるいは資産の不平等ということから考えますと、長期課税を重課するということによってそうした目的に資するということの方が、税制としての本来のあり方からいえば望ましいのではないかというふうな感じを持つ次第であります。  で、土地政策上もあるいはそうした土地をめぐる不平等の是正ということからいいましても、この際、個人、法人に対する財産課税あるいは土地再評価税というふうなものを実行することによって、より一層この点について明確にするということを考える必要があるのではなかろうかということで、従来よく行われておりました譲渡課税を通じてのあめとむちの政策というものについては再検討がしかるべきではなかろうかという考え方を持っているわけであります。  なお、酒税の改正につきましては、ほぼその方向性が出ているように思いますけれども、やはりこれは対外的な問題からいいましても早期実施ということで行われるのがよろしいのではないかと思います。抜本的税制改正といいますか、新型間接税の導入と合わせてというのは余り理解ができないところであります。  それから相続税につきましては、いわゆる水平相続といいますか、夫婦間の相続につきましては軽減するのが妥当だろうと思いますけれども、垂直的な相続につきましては、むしろ富の不平等、資産の不平等を是正するという意味からいいまして軽減は必要ないのではないかというふうに考えております。  なお六十三年度につきましては、買いかえ特例、いわゆる資産の買いかえ特例につきましても、長期の保有で父祖、お父さんとかおじいさん等から相続したものについてはこれを認めるという考え方でありますけれども、相続税といい、買いかえ特例といい、現在の核家族化の動向からすれば幾分家族主義的な方向での改正になっているのではなかろうかという感じを持っております。  続きまして、税制改革についての問題をあと申し上げておきたいと思います。  税制改革につきましては、既に昨年におきまして売上税が廃案になったというふうないきさつがございますけれども、これらのいきさつを見てみますと、やはり一般的消費税といいますか、あるいはよく大型間接税と言われているタイプの税につきましては、日本社会的な条件に非常になじまないのではないかという感想をなお強く持った次第であります。これはさきの一般消費税問題にいたしましても、あるいはその前の取引高税の経過からいたしましても、どうもヨーロッパないしは他の大型間接税を導入している諸国とは社会的条件がかなり違うのではないか。この辺が一つ、この問題を考える上で重要ではなかろうかというふうに考えております。  大型間接税は非常に多くの国々で採用されてはおりますけれども、ヨーロッパ諸国を別にいたしますと、どちらかといいますと開発途上国、南米諸国でありますとかアジア諸国の一部でも採用されておりますけれども、低開発諸国といいますか発展途上国が多いように思いまして、日本とはその辺についてもかなり違うところがございます。  最近、新聞などで発表されました税制調査会の基本問題小委員会の「税制改革の基本課題」という文書などを見てみますと、かつての中曽根内閣のときの売上税に関する論理の立て方と幾分違うところがあるような印象を持っております。  一つは、最初にも言いましたように、財政再建という問題がやや解決の糸口がついた、こういう財政条件の好転ということでこれが焦眉の問題とは言えなくなったということが一つあると思います。そういう点でやや目標を遠くに置いて、二十一世紀といいますか、こうしたところにおける社会保障財源というところに目標を移したということでありまして、ですからこれは議論が相当長期にわたっても、数年かかって議論してもなお余裕があるということを間接的には意味しているのではなかろうかということであります。  それからもう一つは、間接税のゆがみ、ひずみを是正しなければならないということが非常に強く言われております。そうして税制全体といたしましては、所得、資産、消費のバランスをとるような税体系にしなければならない、こういうことが言われておりまして、特に資産課税の是正ということが新しい税制調査会では強調されておりまして、これはこれで大変結構なことだろうと思います。資産、消費、所得というところにバランスを持つということも、これは税制としてそれなりに妥当なことでありますが、ただ、その三者においてどれが重点なのか、どれが柱になるのかということはかなりはっきりさせなければならないところだろうと思います。  それから、資産課税に着目しているということは大変結構なことなんですけれども、資産課税に対する税というのが日本では一番おくれておりまして、この点はもっと早期に具体化されなければならないわけであります。キャピタルゲイン課税という点でいいましても、あるいは個人、法人の財産課税という点からいいましても、諸外国からおくれているといえばこの点が一番おくれている税制のところでありますので、むしろ具体化が一番急がれるところだろうと思います。  それから間接税のゆがみ是正ということでいいますと、従来、我が国の個別消費税を基本とする間接税については非常にゆがみ、ひずみが大きい、国際的にも非常に立ちおくれたものであるということがよく言われておりますけれども、果たしてそうかどうかということにつきましては私は個人的に非常に疑問を持っておりまして、はっきり言えば、我が国の物品税などの個別消費税につきましてはそれほどのひずみ、ゆがみはないという認識を持っております。ゆがみ、ひずみがあるとすれば、もっと一般大衆からも間接税に対する怨嗟の声というものが巻き起こりますし、いろいろ流通、消費過程でも大きな障害が生じているはずなんですけれども、そうしたものはほとんどないわけでありまして、言われるほどひずみ、ゆがみというものはないのではなかろうか。  現在、付加価値税が採用されておる多くの国々におきましては、過去をさかのぼってみますと、取引高税のようないわゆる広い多段階の税が施行されておりまして、これのゆがみ、ひずみが非常に目立ったというふうに言われております。それを是正するという形で付加価値税が採用になったという歴史があるわけですけれども、日本の場合にはそういう国々とはかなり事情が違いまして、個別消費税が所得税の補完的な役割としてかなりスムーズに育っている、そして社会的にも定着しているということからいえば、いわゆる付加価値税タイプの税を導入しなければならないというひずみ、ゆがみというものはほとんどないのではないか。むしろ現在の個別消費税を中心として間接税を整備していくということが可能であり、そちらの方が重要ではなかろうかというふうに考えております。  議論を見ておりますと、どうも現行の間接税のゆがみ、ひずみということが非常に強調される一方で、それのメリットといいますか長所というものの検討が余りない。それから付加価値税タイプといいますか大型間接税につきましては、そのメリットの方は強調されますけれども、そのマイナス面というものは余り強調されないという、こういう議論自体が幾分ゆがんでいるのではないかという感じがいたします。  漏れ聞くところによりますと、例えば大型間接税も今回は広く薄くということをねらいとして税率も二、三%程度、それから例外品目も極端に少なくするというふうなことが一部で言われているようにも聞きますけれども、ヨーロッパその他の国におきましても付加価値税の税率を見てみますと、二、三%では無理だろうと思いますね。五%でも無理なものでありまして、徴税費が非常に高くつくとか脱税が非常に多くなるというふうなことも勘案いたしますと、どうしてもヨーロッパ諸国では低くても一〇%程度になっておりますので、それぐらいないと現在の個別消費税に取ってかわる間接税にはなり得ないということであります。  それから例外品目を極端に少なくするというのも、これも多くの国々においてそれはないわけでありまして、かなり免税、非課税、ゼロ税率というものを存置させているわけであります。これはやはり税としての社会的な意味を考えればそうせざるを得ないわけでありまして、例外品目はほとんどないというのは幾分空想的な議論ではなかろうかというふうに考えております。  ほかにも申し上げたいこともございますが時間がありませんのではしょりますけれども、私といたしましては、特に申し上げたいことは、我が国の間接税の問題について大いに議論するということは必要でしょうけれども、どうも個別消費税の方のメリットが十分に明らかにされていないという反面で、大型間接税の方のデメリットというものも必ずしも十分になっていないという、そういう点もう少し議論として補強しておく必要があるのではなかろうかということを申し上げて、一応終わりにさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  61. 野田毅

    ○野田委員長代理 どうもありがとうございました。  次に、石原公述人にお願いいたします。
  62. 石原舜介

    ○石原公述人 石原でございます。  六十三年度の予算の提案理由説明要旨によりますと、六十三年度予算は「財政改革を強力に推進するとともに、内需拡大の要請に配意することとして編成」してありますと大蔵大臣が申し述べております。また、経済企画庁の「昭和六十三年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」によりますと、「内需を中心とした景気の着実な拡大を図り、持続的な安定成長を達成し、雇用の安定及び地域経済の活性化を図る必要がある。」としておりますし、「国民生活の充実と国土全体の均衡ある発展を実現する」と述べて、そのためにはこういうことが必要だということで五つばかりの方針を掲げております。その中で特に重要なのが「内需を中心とした景気の持続的拡大」ということであろうかと思います。  そこで、大蔵大臣の提案理由要旨は「一般公共事業費についてNTT株式の売り払い収入を活用すること等により前年度当初予算に対し二〇%増という極めて高い水準を確保するほか、限られた財源を重点的・効率的に配分するよう努める」と述べております。  このように公共事業充実ということが非常に重要であるということは申すまでもございませんが、特に政府の経済長期見通しによりますと、六十二年度の実質成長率の三・七%のうち外需の寄与度はマイナス一・三%、内需の寄与度は五%となっておりまして、内需主導型の経済構造が定着いたしますとともに、国際的な摩擦も逐次解消の方向へ進んでいると考えることができるわけでございますので、こういうことから六十三年度もその路線を進むべく公共事業を一段と拡大し、そしてこれをさらに進めていくということにつきましては高く評価するものでございます。  しかし、このような公共事業拡大といいましても、それには幾つかの障害がございます。そこで、これらの障害を除去していかなければ、経済成長や地域振興を図ることも困難かというふうに思うわけでございます。この障害となるものには大きく二つの問題点があろうかと思います。一つは土地問題でございます。もう一つは東京一極集中問題でございます。  第一の土地問題でございますが、昭和六十二年度の「主要経済指標」の実績見込みにおきまして、対前年比で民間住宅の投資が実に一九・九%と急増しております。住宅建設が経済成長に大きく寄与していることはこういう点から見ましても明らかでございます。特に六十二年度は建設戸数が百七十万戸を超えるのではないかというふうに予測されております。これは過去の大変住宅が多く建設されました昭和四十七、八年に次ぐ大量の建設になるわけでございます。     〔野田委員長代理退席、委員長着席〕 そういう点で、六十三年度も予算面ではこの住宅建設に相当の力を注いで、景気の一つの牽引車的役割を果たしてもらおうという期待が込められているように拝見するわけでございます。  例えば住宅金融公庫におきまして、融資予定戸数は五十四万五千戸と、六十二年度の当初計画戸数の五十二万戸より約二万五千戸増加しておるばかりではなく、その融資枠の拡大、融資資格の緩和等が図られていることは歓迎すべきことだと思います。さらに、税制上も住宅取得促進税制の改正を行いまして、取得が非常に容易になるような条件を整えております。また公営住宅も五万二千戸と、六十二年の当初計画の四万九千戸を上回っております。  このように、取得面の強化あるいは公的住宅の建設の側面におきましては大変画期的な政策が掲げられているわけでございますが、このように需要面だけを刺激いたしまして、そして供給の基盤となります土地の側面をないがしろにいたしますといたずらに土地の値上がりを促すだけでございまして、こういうような政策がうまく対応できるとは必ずしも限りません。  そういう中で特に危惧いたしますのは、ここ二、三年来の東京を中心といたします地価高騰がございまして、その後遺症としまして、六十三年度は六十二年度ほどの住宅建設は期待が難しいのではないかというふうに思われるだけに、よほど土地に対する施策を投入しないといけないのではないかと思うわけでございます。  そこで、土地のいろいろな対策にはもちろん税制、土地利用計画等いろいろな側面がございまして、これらを総合的に体系化して施策していく必要性があるわけでございます。特に最近の地価高騰ということで、一昨年来の地価高騰に対します緊急対策としては、国土利用計画法の一部改正による監視区域制度あるいは超短期の譲渡所得税の強化等によりまして、ある程度投機的な行動を抑止する効果はおさめていることは御承知のとおりでございます。  これらはどちらかというと応急的な対策でございまして、土地利用を促進するための今後の重要な施策とは必ずしもつながりませんので、私は、抜本的な方向といたしまして三つばかりの考え方があるのではないかと思っております。  その一つは、現行法の中でいろいろな矛盾が発生しておりますので、この矛盾を解決していくことが一つ大きな目標ではないかと思っております。これは御承知のように、都市計画法が制定されまして、市街化区域を当時十万以上の都市で制定することになりまして、約八十万ヘクタールの区域を予定しておりましたところ、いろいろないきさつがございましてこれが百二十万ヘクタールに拡大したために、なかなか宅地化できない農地をいつまでも抱えていなければいけないという矛盾が発生していることは御承知のとおりでございます。こういうことから、宅地並み課税問題も非常に課税が難しいというようなこともございましてなかなかうまく運営できません。  また、通称大都市法主と言われております法律によりまして、東京近郊の自治体と国が協議して、いろいろ宅地供給等の促進を図るということになっておりますが、なかなかこの場を持つこともできません。そういうこともございまして、この都市開発のプログラムというのは、本来こう決めていくことが宅地開発の上において非常に重要だということでございますが、それを支えていく背景の法律がこのような形で、矛盾を含んだ形で運用されているということが問題でございます。  第二点は、私権の制限等によります土地利用の促進でございます。  これは、例えば土地区画整理を完了した土地で五年以上も未利用のまま農地等に転用されているというようなことがございますので、こういう区画整理後の宅地の宅地化率といいますか、利用率が年間二%ないし三%程度というふうに非常に低い状態でございますので、これを何とかある程度促進さす措置を講じていかなければいけないと思います。それと同時に、大規模な工場跡地等の転用あるいはそういうものをスポット的に何か対策を講じていく必要があろうかと思います。  また、特に重要なことは、これまでの住宅建設五カ年計画で、第三次、第四次ともに、公的な直接供給というふうなことで、公営住宅等の建設予定戸数の約七割程度しか達成できておりません。これは実は第五次住宅建設五カ年計画におきましても、第四次の実績を基本にして、その数字をもとに決めましたのですけれども、現実にはこういうものがうまく運用されていないということは、相当用地難ということもございますので、特に公的な用地、こういうところを積極的に公共的な住宅の直接供給へ活用するような施策を強力に進めていく必要があろうかと思います。  それから最後の三つ目は、土地の保有税の強化と長期保有の譲渡税の緩和でございます。  私どもは、いろいろな土地利用の状態を政策シミュレーションいたしましたところ、この保有税の強化とそれから譲渡税の緩和、それから計画的な宅地供給、こういうものをうまく組み合わせていけば地価の上昇率を低く抑え、そして供給量を拡大するということが可能だというような試算も得ております。こういうようなことから見ますと、保有よりも利用への転換を図っていくためには、できるだけこういうような保有税の強化を図るとともに、保有期間によって譲渡税を緩和する。だから、短期の場合には当然これを強化するというようなことが必要かと思います。  次に、第二の問題であります四全総に述べられている東京一極集中是正問題でございます。この是正問題に対しましては大きく二つの問題がございます。一つは東京の機能分散でございますし、もう一つは地方の体質強化でございます。  その第一の機能分散でございますが、これは二つの側面がございまして、一つは東京の圏域、すなわち首都改造計画に示されておりますように、業務核都市の育成を図っていくというようなことでございます。しかし、この業務核都市の育成に対しまして、千葉では幕張メッセということで約五万平米の見本市会場を設定いたしておりまして、これの建設に取りかかっておりますけれども、東京都は現在の晴海の五万六千平米の見本市を改築いたしまして、これを十号その一の埋立地に約十万平米の見本市会場を設けようとしております。それからまた、横浜のみなとみらい21の中で核になります国際会議場、これに対しまして、東京都は都庁移転跡地に東京国際フォーラムという形で約五千人の国際会議場を設けるというような計画を発表しております。  このように、それぞれの業務核都市において大変一生懸命にその地域の振興を図ろうといたしましても、東京がそのすべてを先取りするかのようにどんどん同じようなものをつくったのでは、これは業務核都市の育成にならないし、機能の分散にもならないわけでございますので、こういうことを国の方でうまく調整するようなことで、国土庁にこういう強力な調整機能というものを与えていかなければいけないのではないかというふうに思います。  それからまた、こういう四全総の中にも含まれておりますように、東京都心五区におきます業務機能に対します特別課税を課して、そしてそれを財源に業務核都市の整備や、あるいは都市交通の施設整備にこれを目的税的に充てていくというようなことも可能ではないかというふうに考えます。  それから二つ目といたしまして、この東京からの機能分散というようなことに関しましては、国土庁が準備しております多極分散型国土形成促進法案がありますが、これをぜひひとつ成立させていただいて、そして、東京の拡大抑制に効果あるものと期待しておりますが、これは我々、首都改造計画をつくったときに感じたことでございますけれども、東京に直接的な効果というのはそれほど大きなものでは。ざいませんけれども、地方におきましてはこれが大変重要な起爆剤になりますので、そういう点からも、ぜひひとつこういうような側面を配慮していく必要があるのではないかというふうに考えております。  それから第二の地方の活性化の問題でございますが、これは四全総の中にも含まれておりますように、私は、現在一番望まれているのは、何といいましても交通施設の整備ということが一番ではなかろうかというふうに考えております。例えば、この四月十日に開通予定になっています本四架橋でございますけれども、この架橋の効果を上げていくためには、当然高知から島根の方に向けて四国横断あるいは中国横断というふうなことで、太平洋と日本海を結ぶような幹線街路が整備されなければいけないわけでございますけれども、実はこれが全く整備されていない。それで、辛うじて倉敷から福山までの山陽自動車道が整備されたり、あるいはこの架橋の位置から川之江までの間の高速道路が整備されているというような程度でございまして、どうも、こういう大型のプロジェクトをしながらも、そのネットワークをうまく整備するような形になっていないわけでございます。やはりこれは投資のその方法を考えていかなければいけないわけで、優先順位を考えなければいけないということだと思います。  それからまた、その際に我々が考えなければいけない問題点の一つは、せっかくこの架橋の整備をいたしましても、その通行料が六千円を超えるというふうな非常に過酷な料金の徴収が予定されております。これでは、せっかく四国の人たちがこういう架橋を利用して市場の拡大を図りたいというふうに感じましても、なかなかその拡大を図っていくことができません。そこで、四国ナンバーの車にはせめて料金を半額にするというようなことで、四国の車が、四国の人たちが有利にこれを利用できるようなことを考えていく必要性があるのではないかというふうに思っております。  それから、特に四全総の中で豪雪地帯の充実が必要だというふうに言われておりますが、今回の予算ではこの豪雪地帯に対する予算措置が若干マイナスになっております。ところが、こういうところは実は大都市とか太平洋岸以上に基盤施設を整備していかなければいけない必要性が迫られておりまして、そういうような面からもこういうようなことを十分配慮した配分を考えていただきたいというふうに思うわけでございます。  以上でございます。(拍手)
  63. 奥田敬和

    奥田委員長 どうもありがとうございました。  次に、関本公述人にお願いいたします。
  64. 関本秀治

    ○関本公述人 税経新人会全国協議会の理事長をしております関本でございます。  私は、昭和六十三年度の総予算案に反対の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。  現在、政府税調及び自民党税調におきまして税制の抜本的改革についての御議論が行われているわけでございますけれども、政府税調は今月の八日から全国各地で公聴会を開催しておられます。しかし、昭和六十三年度の予算案並びにその基礎となっております昭和六十三年度の税制改革に関する法案には、この税制の抜本的改正に関する問題は全く含まれておりません。現在、国民各層が切実に求めておりますのは、課税最低限の大幅引き上げを中心としました勤労者に対する大規模な所得減税でございます。  ところが、昭和六十三年度の税制改正に関する法律案の中には、この切実な国民の要望にこたえるものは全くございません。減税は来るべき税制の抜本的改革、これによる大型間接税導入のためのいわば人質とされてすべて先送りされております。この点をまず御指摘しておきたいと思います。  昭和六十三年度予算案の特徴の一つは、アメリカの要望に沿いまして軍事費を総額三兆七千三億円と大幅に増額させた点にございます。これは昨年に続きましてGNP比一%枠を突破するものでありまして、六十二年度の一・〇〇四%を大幅に上回り一・〇一三%に達しております。前年度比の伸び率で言いますと五・二%増ということになっておりますけれども、六十三年度は売上税の上乗せ分がございませんし、為替レートも六十二年度に比べまして大幅に円高となっている、こういうことを考え合わせますと実質六%を上回る伸び率となることは確実でございます。また、新規発注に伴う後年度負担も約二兆六千億円と実質七・六%の増加となっております。  この中にはアメリカの空母を護衛すること、これだけが目的でありますイージス艦、同じくアメリカのレーダー網を補完するものとしてのOTHレーダー、これらの導入などが含まれております。これらはいずれも専守防衛という立場からも説明のつかないものでございまして、米極東戦略の一翼を担う軍拡であることは一見して明らかでございます。  さらに、発展途上国への経済援助である政府開発援助、いわゆるODAも七千十億円となっており、財政投融資を含めた事業規模では一兆三千四百八十七億円に上っております。これをドルに換算しますと実に百億ドルに達するわけでありまして、アメリカの八十八億ドルを超えて世界一の援助国、こういうことになろうとしております。これはドルベースで換算しますと前年度比三〇%以上の増加率となります。ここにも竹下総理の対米公約であります「世界に貢献する日本」、この面目躍如たるものがございます。これもアメリカ戦略を支える重要な一環でありまして、国民には何ら利益をもたらさないものでありまして、逆に大企業の海外進出を促進し、産業の空洞化をもたらす一因となるものでございます。  これに対して社会保障関係費は大幅に抑制されております。年金受給者数の増加などによります当然増七千億円も認められないで、四千億円以上がカットされ、社会保障給付の水準を一層低下させるということになります。また、国民健康保険制度についての改悪が図られております。国庫負担を四百五十億円削減して、新たに都道府県、市町村に対して六百九十億円の負担増が押しつけられようとしております。さらに、生活保護費、児童扶養手当なども純減となります。生活苦で餓死者や自殺者が続出しているというのに、最後のよりどころであります生活保護費までも削減するということは、憲法二十五条が保障する生存権を奪うことになるのではないかと考えるわけでございます。  昭和六十三年度予算がこのような重大な状況を生み出すことになろうとしているにもかかわらず、政府は、我が国社会保障などの公共サービスが充実して、福祉水準は世界のトップレベルに達しているかのような宣伝をしております。これは全く事実に反するものでありまして、従来でさえ劣悪であると言われておりました福祉の水準が、最近の健康保険や年金制度の改悪、老人医療の有料化、昨年の百九国会における公害健康被害補償法改悪、国立病院の統廃合、労働基準法の改悪などによって一段と低下しまして、今回の昭和六十三年度予算案並びに関連法案によりましてさらに一層改悪されようとしているのが実情でございます。  教育についても例外ではございません。臨時教育審議会答申に基づきます教育改革の一環としまして教員の統制強化、初任者研修試行、奉仕等体験学習研究推進、産業教育振興、産業界等との研究協力の推進等々に関する予算が大幅に増額している反面、四十人学級推進は遅々として進んでおりません。そのために欠かせない公立学校施設整備関係費は九・七%も削減されております。国立大学授業料が大幅に値上げされることになるとともに、私学助成も不十分な状態が続いているために入学金や授業料の値上げが相次いております。  我が国教育環境がいかにひどいものであるかの例といたしまして、先進諸国の学級編制基準と比較してみますと、次のとおりでございます。初等教育で、日本が一学級四十五人、これに対しまして、アメリカ、カナダ、フランス、西ドイツなどがいずれも二十五人、イギリス二十五人ないし三十人でございます。中等教育で見ましても、日本の四十五人に対しまして、アメリカ、フランス二十五人、カナダが八人ないし三十一人、西ドイツは三十人、イギリス二十五人ないし三十人となっておりまして、我が国のすし詰め学級ぶりは一目瞭然でございます。  いわゆる内需拡大の対米公約の実行と財界の要求にこたえるための公共事業関係費は、NTT株売却益が繰り入れられます産業投資特別会計からの一兆二千億円を加えまして約七兆三千億円と昭和六十二年度の予算に比べまして一九・七%の伸びとなっているほか、大企業向けにはいわゆる構造調整や新技術開発のための特殊法人設立の費用が増額あるいは新設されておりまして、産業の空洞化を財政面から支えるための助成金、特定業種雇用安定助成金制度の創設などが提案されております。これに対しまして、円高、消費不況に悩む中小企業に対する対策費は、六年連続の削減で、一般会計予算に占める割合はわずか〇・三四%と史上最低に落ち込んでおります。  このように、昭和六十三年度予算は、歳入面では、昨年の税制改革によりますマル優原則廃止、一律二〇%の分離課税の導入、課税最低限の据え置き、最高税率の引き下げを中心としました税率の改定、措置法の期限切れによります法人税率の一・三%の引き下げなど、大企業、大資産家に対する減税によりまして負担の不公平を一層拡大しているものでありますとともに、歳出面では、軍事費、政府開発援助などの異常突出、大企業中心の公共投資などの大幅増、社会保障、教育関係支出の削減など、歳入歳出の両面から勤労国民の生活を破壊して、大企業、大資産家に対する優遇を拡大するものとなっております。これは同時に、日本のアメリカへの従属をますます深めさせるとともに、産業の空洞化を促進し、円高、消費不況のもとで呻吟する勤労者、中小零細企業など、勤労国民の生活を破壊する予算案であるというふうに考えざるを得ません。  そもそも、財政は、税の徴収と歳出の両面を通じまして所得の再分配を図る、これが本来の機能でありますけれども、近年の不公平税制の拡大、歳出面における福祉の切り捨てなどによりまして、その本来の任務に反する方向へ変質させられつつあるという点を強調しておきたいと考える次第でございます。  現在、政府税調では、竹下総理の諮問を受けまして、税制の抜本的改革についての審議を進めておられるわけでありますが、そこでは、先ほどから申し上げておりますような実態がほとんど顧慮されておりません。  なぜそうなのかと申しますと、政府税調の委員の選任、審議のあり方、ここに根本的な問題があるわけでございます。建前上は民間、国民の各層の意見を聞くということになっておりますけれども、実際には政府の意向に同調する人々が圧倒的な多数を占めておられるわけでありますし、その審議は全く非公開、密室審議でございます。大蔵省の用意した資料に基づいて政府の方針に承認を与えるだけの儀式にすぎない、こういうことでございますので、これでは、開かれた議論を通じてというふうに言われましても、本当に国民的な税制改革論議というものは不可能でございます。  現在進められております地方公聴会についても全く同様でございまして、政府が選んだ公述人の方々が大蔵省や自治省の用意された資料に基づきまして一方的な意見を述べておられるにすぎないわけでありまして、結論は初めから決まっているようなものでございます。  政府は、税制の抜本的改革の背景としまして、日本の所得水準は世界のトップクラスになったとか日本世界一貧富の差の少ない国であるとか、こういうことを挙げております。だから、高齢化社会に備えて薄く広くの考え方を持つ税が必要であり、それが現代的な公平を実現するための最も適切な選択であるという趣旨のことを盛んに宣伝しておられます。また、日本の課税最低限も世界で最も高い水準になっていると言っておられます。これらはいずれも事実に反するものでございます。所得水準や課税最低限の数値というのはつくり出されました異常円高によって計算上押し上げられているということにすぎませんし、貧富の格差も最近の財テクだとか土地転がしなどによりましてますます拡大しているのが実情でございます。  我が国におきましては、住居費や教育費が異常に高くて、これが生活を著しく圧迫しているということを度外視することは公正ではないと思います。世界のトップレベルの所得水準にある日本人の大部分がなぜウサギ小屋にしか住めないのか、この一事だけを見ても、所得水準が世界一流であるというのは単なる神話にすぎないということが容易に理解されるはずでございます。特に、薄く広く負担を求める間接税というものが導入されましてこれによって福祉財源が賄われるとしますと、この税は社会的弱者に、より重い負担を強いるものでございますから、社会的弱者同士を助け合わせる結果になりまして、憲法が予定しております福祉国家とは似ても似つかない状態が出現することにならざるを得ません。  薄く広く負担を求める大型間接税は昭和六十三年度予算並びに関連法律案には直接関係がないということになっておりますので、これ以上申し上げることは差し控えたいと思いますが、ただ、今国会における質疑や政府答弁、総理の演説などを承っておりますと、ことしの秋を目途としまして新大型間接税の導入を含む税制の抜本的改革を断行することを予定しておられる模様でございますので、もしそのようなことになりましたら、これは、一昨年七月の衆参同日選挙における大型間接税は導入しないという公約に違反するものであるということだけは明確に申し上げておきたいと思うわけであります。  次に、本委員会においても御議論になりました外国為替資金特別会計に関連して意見を述べさせていただきたいと思います。  昭和六十三年度特別会計予算案総則第十条によりまして、外国為替資金の融通証券発行の最高額を二十八兆円に増額することが予定されております。昭和六十二年度当初予算では十六兆円でありましたけれども、二度の補正によりまして現在二十一兆円になっております。これ自体大変な大きなものでございますけれども、二十八兆円ということになりますと、これは昭和六十三年度一般会計予算のほぼ半額に匹敵する額でございます。これが外為市場でドル買い、円売りの介入をするための資金源でありまして、竹下総理が先般訪米された際の手土産でもあったわけであります。先月十三日の日米首脳会談で合意しましたアメリカのSDRを日本が買い受けることによって、アメリカがドル買い、円売りの介入資金を調達する、このためにも使われることになります。アメリカ経済が財政と貿易の双子の赤字によりまして大変な危機に直面しておりますが、最近のドルの著しい下落によりまして民間の資金がアメリカからどんどん逃避しております。そのために危機を一層深めているというのが実情でございまして、その肩がわりをしているのが日本ヨーロッパ、カナダなどの政府資金でございます。このようないわゆる経済協力は日米安全保障条約第二条によるものであることは明らかでございます。  アメリカは、レーガン政権による急激な軍拡政策と無謀ともいえるような大企業、大資産家に対する減税によりまして、財政赤字を急速に拡大し、今日の危機をつくり出してきました。しかし、日本政府を初めとする西側諸国が、米短期財務省証券、いわゆるTBでありますが、これを購入することによって赤字の穴埋めをしているために、アメリカ財政の自律的な改善が先延ばしされまして、危機はますます深刻なものとなりつつあります。  大蔵省は、このアメリカの財政赤字の穴埋めとドル買い介入によるドルの下落防止のために、外国為替資金証券いわゆる為券を発行しまして、これを日銀が引き受けるということによって資金の調達をしております。そのために円が国内に大量にばらまかれまして、マネーサプライを引き上げ、過剰流動性を生み出す結果になっているわけであります。これは、効果としては、財政法が禁止しております国債の日銀引き受けと同一ではないかというふうに考えられまして、これが我が国にインフレの危険性を生み出すであろうということは容易に推測できるわけであります。  さらに、外為特会は、下落する一方のドルを盛んに買い支えているわけでありますから、ドルの下落に伴って為替差損を拡大していくわけであります。この為替差損は、一ドル百四十四円で換算しまして、昭和六十二年度末予定額が六兆円を超えております。昭和六十三年度予算では、為替差損は見込んでおりませんけれども、二十八兆円規模の介入を行うわけでありますから、その差損はさらに数兆円増加することは避けられないというふうに考えられます。しかも、外国為替資金特別会計法は、その八条の二項で、この為替差損を、損益計算書には計上しないで、貸借対照表の資産の部に計上することとしております。損益計算書上ではしたがって数千億円の利益を計上する、こういうことになっております。  昭和六十三年度予算では、そのうちから外為特会受入金として一千四百億円を一般会計予算の歳入に計上しております。本来ならば評価損は利益と通算されまして、外為特会は積立金を取り崩しましてもなお昭和六十二年度末の予定額で一兆一千六百七十五億円強の損失となっているはずであります。しかも、最近の数年間は兆単位の損失を計上し続けているわけでありますから、今後ともこの損失が雪だるま式に累増することは避けられないのではないかと考えられます。  このように、我が国財政はアメリカの財政にリンクされておりまして、為替介入の強化というさきの日米首脳会談の合意によりまして、ますますアメリカへの従属を強めて、アメリカと一蓮托生の関係に追い込まれているといわなければなりません。  以上のとおり、昭和六十三年度総予算は、我が国の将来を破滅に導きかねないような重大な問題を含んでいると考えますので、以上申し上げまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。
  65. 奥田敬和

    奥田委員長 どうもありがとうございました。     ─────────────
  66. 奥田敬和

    奥田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊吹文明君。
  67. 伊吹文明

    伊吹委員 自由民主党の伊吹文明でございます。  本日は、公述人の先生方には大変お忙しいところをおいでいただきまして、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  まず石原公述人にお伺いをいたしたいのでございますが、私は、現在の日本の大きな問題は、民間に余っている資金をどのように国民の幸せのために使うかという一点にかかっておると思います。昭和二十年代、三十年代、四十年代、五十年代と、国民生活が大変豊かになってきたのは、これは私たちの周りを見ればどなたもうなずかれるはずだと思うのです。田中内閣あるいは池田内閣のころは、外国と貿易で稼ぎ出したものを国民の幸せのために民間が使ってくれました。しかし、今非常に幸せになり、ある程度物が行き渡ったために、また新たな技術革新がないために民間でそれを使えなくなってきておる、ここにいろいろな問題が生じておると思いますので、石原公述人がおっしゃいました公共事業拡大が非常に大切であるということは我々も全く共通の認識であります。  その中で、特に住宅を充実させていく、そのために住宅金融公庫あるいは税制面で今回の六十三年度予算で種々の措置をとっておりますので、需要面での刺激策は十分であるけれども、供給面の対策は非常に不十分である。したがって土地対策、つまり住宅対策は即土地対策であるという認識に立っていろいろな御意見をいただいたわけでありますが、まず土地税制についてお伺いをいたしたいと思うのです。  土地税制というもの、あるいは土地問題というものを扱います場合に、我々は常に長期と短期の矛盾に苦しむわけであります。例えば、容積率を緩和するということは供給をふやすという意味では非常に結構なことでありますが、短期的には土地の利用効率を非常に高めまして、土地価格の高騰を招くというおそれもある。そのような観点からまいりますと、やはり長期的には需給というもので土地の値段が決まってまいりますから、保有には重課をして、そして譲渡益には軽課をする、これが長期的には私は正しい方向だと思うのです。  したがって、相続税あるいは資産税を重くして、同時にその譲渡税を低くするという考えがあると思うのですが、和田公述人の御意見の中には、長期の譲渡益を軽課しているのはややおかしいのじゃないか、もう少し重課すべきじゃないかということの御意見もあったわけですが、まず石原公述人としては、そのあたりの土地問題に対する長期、短期の取り組みの政府の考え方についてどのようなお考えを持っておられるか、お教えいただきたいと思います。
  68. 石原舜介

    ○石原公述人 それではお答えします。  おっしゃるように、民間資金をうまく使って国民の幸せをかち取るというのが現在置かれた一番大きな課題ではないかというふうに思っております。  そこで、いろいろな面がございますが、例えば今お話しのように土地税制の問題に関しまして、私はやはり長期的には保有税強化、譲渡益課税の軽減、これが筋だというふうに思っておりまして、こういうことがそれでは現在の政策としてどうなのかというふうなことで考えますと、私は、この譲渡益というものの扱いが余りにもしゃくし定規になり過ぎているというふうに思っております。それでやはり、保有税が強化されますと、保有税という形で一応の負担をしているわけでございますから、それを長期に負担してきておりますので、長期に保有している場合には保有税を軽減していくというような、保有期間によって税率を変えるというような段階的な緩和措置、こういうふうなものが必要ではないか。特に短期の場合の売り買いというものは、これは御承知のように、超短期の場合には当然重課しなければいけません。  それから容積率の問題でございますが、私はちょっと説明をしませんでしたけれども、確かにこの容積率を一方的に緩和すると必ずしもいい結果が得られないということが言えます。そこで私は、この容積率の考え方も、例えば小さな敷地と大きな敷地で区分すべきではないか。小さな敷地の容積率を低く、そして大きな敷地には容積率を高く与えるということが都市環境をよくしていく方法ではないか。そうすることで小さな宅地は利用度が低くなりますので、それを統合することでメリットがあるというふうなことで、容積率緩和というのをそういう形で容積率緩和という形にしていけば、これはその土地問題の上におきましても、それほど地価高騰というような問題を招かず健全な市街地形成へいけるのではないかということで、これは余談でございますけれども、ただいまこういうような考え方でいろいろ研究をしている最中でございます。
  69. 伊吹文明

    伊吹委員 引き続いて石原公述人にお伺いをいたしたいのでございますが、宅地並み課説の問題あるいは私権の制限による土地利用の促進の問題等についてお話がございました。それから大規模工場跡地の利用の促進についての政策についての御言及もあったわけですが、この大規模工場跡地の利用については、六十三年度予算で我々はいわゆるアーバン・リストラクチャリングという税制あるいは財政上の促進策をとっておりますので、これはさておきまして、私権制限による土地利用の問題について少し伺いたいのでございます。  現在の土地収用法あるいはまた借地法、借家法、特に借地法、借家法においては借り受け人の権利が非常に強くて、実は土地を公共財として使うのを非常に難しくしておるという面があると思うのですが、これらの法律の運用について石原公述人の率直な御感想をお伺いいたしたいのです。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
  70. 石原舜介

    ○石原公述人 それではお答えいたします。  確かに、工場跡地の活用につきましてはアーバン・リストラクチャーの準備がされていることは承知しておりますが、こういうようなスポット的な開発でないと私権は全般にわたって強制していくことはなかなか難しかろう。そこで、これがなぜ必要かというやはり計画が前提にありまして、そしてその中で、例えばその区画整理完了後、跡地などの活用にいたしましても、それがこの場所はぜひひとつ利用してもらわなければいけないというスポット的に地域指定ができるような制度を設けて、その範囲において私権を制限していくべきであろうというふうに考えております。そういうようなことで、私自身はそういう私権の制限というふうなことにつきましては決して一般に適用すべきものではないというふうに思っております。  それから、御質問の土地収用法それから借地・借家法の問題に関してでございますが、必ずしも私こういうふうなことを十分承知しておりませんので、ただ私見を申し述べるにとどまると思いますが、実は私いろいろ都市計画をやっておりまして、この収用というようなものに関しまして諸外国のいろいろな収用の問題について調べたことがございます。それで、そのときに大変驚きましたことの一つは、フランスのラ・デファンスという非常に大規模な再開発地区がございますが、ここでは収用された人が全体の四割だ、こういうふうに言われております。  それはなぜかといいますと、この四割の人たちの利用の収用であって、その補償は裁判所でゆっくり相談してくれということで、その利用の収用を、補償が完了するまで利用を認めないというようなことではなくて、利用と補償とを分離した行き方がかえってその収用法を非常にうまく運用するような形になっている実態を見まして、我が国の収用は余りにも補償の方に偏り過ぎておりまして、利用ということがその次に段階的に出てくるというふうなことでございますので、この収用法は、私はできるだけ利用の収用ということを先行すべきだ、それがひいては借地・借家の問題にしましても、一部収用的な意味合いで公共財として利用する、あるいはそういうような場合には相当この利用の収用を先取りしまして、そしてこういう人たちの手当てを別にしていくというふうなことが適切なんじゃないかというふうに考えております。
  71. 伊吹文明

    伊吹委員 和田公述人、大変御苦労さまでございます。お伺いをいたしたいのでございますが、歳入の状況が非常に好転をしてきた、これは私もそのとおりだろうと思います。それで、御承知のようにことしも約一兆八千億の赤字国債の減額をいたしましたから、公述人がおっしゃるような状況、昨年よりはよくなっている、一昨年よりはよくなっている、そのとおりだろうと思います。  しかし同時に、御承知のように財政法で規定をいたしております定率繰り入れというものは相変わらず特例法でこれを見送っておる。それからNTTの株式の売却というものは、これは率直に申しまして民間からお金を吸い上げる方法としては株式がなくなればそれで終わるわけでございますから、財政の将来のやや中期的な展望からいいましてこの状況が長く続くかどうかについてお考えをお伺いしたいということが一つと、時間がありませんので大変恐縮ですが一緒にお伺いをさせていただきたいのは、実は中曽根内閣のときは、御公述がございましたように、財政再建という意味では我々は税制改革を考えていなかったと思います。それは増減税イーブンである、「増税なき財政再建」というキャッチフレーズにむしろ縛られながらやったのではないかと思うのです。  そのときに一番強く考えておりましたのは、やはり直間比率の見直しということでありまして、これはもう公述人がよく御存じのように、国際化社会を迎えて企業活動が空洞化しないか、あるいは高齢化社会を迎えて勤労意欲がうせないか、同時にまた相続税等がこのままでいくと中小企業の相続等が難しくならないか、こういう点を考えておったわけでありまして、したがって現在赤字国債を抱えながら財政を運用しておる限りは原理原則に合わぬことはできぬわけでありまして、それらのところに手当てをしようとすれば、歳出をカットするかさもなければ何か別途の財源を見つけなければならない。  先ほど関本公述人がおっしゃったように、この国際化社会あるいは日米関係を踏まえて我々は防衛費の削減であるとかあるいは海外援助をカットして日本の国がよくなるとは思っておりませんから。であるとすれば、和田公述人としてはそのあたりのお考えはいかがかということをお教えいただきたいと思います。
  72. 和田八束

    ○和田公述人 歳入条件についてのお尋ねでございますけれども、これは私たち財政問題を研究しているといいますか、そういう立場から言いましても、果たしていいと言えばいい側面も確かにあるわけですけれども、悲観的な側面というものも先ほども申し上げましたように国債もなお累増しているということでございますので、そういう悲観的に見れば悲観的にも見えるわけでありまして、この辺はなかなか難しいところでございましてなにですが、大蔵省がいたしました「財政の中期展望」はかなり今度は楽観的な税収見通しではなかろうかなという感じはいたします。しかしこれもよくわからないところでありまして、従来どちらかというと悲観的な見通しが強かったのに対しては、結果は楽観的な形になっておりまして、財政は意外にいいというふうに言った方がよろしいのではないかと思います。  それから国債なんですが、確かに赤字国債は問題でありますけれども、建設国債はそれほど急速に減らすという必要はないわけで、むしろ建設国債の方は適宜運用した方がよろしいのではないか、これは総合的に考えて。ということからいいますと、財源的にはかなり私には、楽観視の方にやや傾いているということでございます。  それで直間比率なんですが、これも理屈を申し上げますといろいろありまして、一体間接税とは何かということもありますが、地方と合わせますとどうかということもありますし、どれくらいの比率がいいのかということもありますが、私の立場から言いますと、私はいわゆる諸般の不公平是正それから資産課税というふうなことを行いまして、いま少し直接税で税収を上げるという方向で考えていただきたいということでございます。
  73. 伊吹文明

    伊吹委員 それでは貴重な御意見を審議の参考にさせていただきたいと思います。どうも大変ありがとうございました。
  74. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 次に、村山富市君。
  75. 村山富市

    ○村山(富)委員 社会党の村山でございます。きょうは公述人の三人の先生方には、貴重な御意見をありがとうございました。  私は主として和田先生にお尋ねをしたいと思うのですが、和田先生の公述の中に、現行の間接税に長所と短所がある、大型間接税のメリットが強調され過ぎてデメリットの分はさっぱり議論されてない、現在の間接税でも長所が十分あるというふうなお話があったわけです。  今税制改革が議論されているその一つの大きなポイントは、先ほどもお話がございましたように直間比率の問題が議論されておる。そして日本の税制度は余りにも直接税に偏り過ぎておる、したがって間接税に乗りかえる必要がある、均衡を保つ必要があるのだ、こういう話なんですね。私どもに言わせますと、やはり間接税というのは逆進性が強いわけですから、それだけ所得の低い方々にも重い負担がかかっていくという意味では逆に不公平を募らしていくのではないか、こういう意見もあるわけです。  そこで、間接税と直接税がどういう比率でなくちゃならぬというようなことの理屈はないと私は思うのですけれども、そういう問題も含めて先生のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  76. 和田八束

    ○和田公述人 今もちょっとそういうお話が出まして申し上げたわけですが、これはちょっと難しいといいますかあれなんですが、なかなか直接税を中心にした税制というのは難しいといえば難しいのではなかろうかということが一般に言えるのではなかろうかと思うのです。  シャウプ勧告というのが昭和二十四年にございまして、御承知のところだと思いますけれども、最近になって読み返してみますと、いろいろとまた示唆されるところが多いわけですけれども、そこでシャウプ博士はといいますか、シャウプ勧告の中で書かれていることなんですけれども、先進各国において直接税中心で成功した国は非常に少ない、ほとんどないということをまず書いておりまして、そうしてそこでわずかに成功したのは英米ぐらいでありまして、その仲間入りをこれから日本はしようとしている、果たして今後日本が長きにわたってこの直接税中心という税制でうまくいくかどうかということはこれからの課題であるということを述べておられるわけですね。  その後の経過を見てみますと、必ずしも我が国が積極的に直接税中心の公平税制を確立してきたという面ばかりとは言えませんけれども、いろいろとやはりシャウプ勧告の骨抜きといいますか、こういうのも見られるわけですけれども、しかし各国を見ますと、アメリカ、日本というのは直接税中心がともかくも確立した数少ない国である。イギリスはEC加盟を契機にいたしまして、やや間接税に比重を移したわけですけれども、そういう国といたしますと、現在の七、三程度の直接税比率というのはそれほど高いものではない、直接税に偏しているものではないというふうに言えるのではなかろうかと思うのですね。  つまり、シャウプ勧告のときは五〇%ではなかったか、五、五ぐらいではなかったかと言うのですが、そのときに、今言いましたように、シャウプ勧告では、これから日本はそういう直接税中心の道を歩むのであって、これからですよということを言っているわけで、そのときは五〇%であったわけですね。ですから、それから今日まで二〇%上がってきたということでありまして、これは結局日本のその後の、いろいろな欠点はあったものの、努力のたまものであったというふうに考えれば、まあいい線ではないか。  しかもそのうちの三〇%ぐらいは法人税でありまして、これはヨーロッパ諸国等においてもこれほど法人税の高いところはないわけでありますから、そういうところを考慮すると、個人所得課税だけですとヨーロッパ諸国とほぼ同じといいますか、それほどの差がないのですね。ほぼ同じというのは語弊がありますが、それほどの差がないということからいいますと、日本が特別に間接税に弱いということではないわけです。  法人税につきましては、なおこれは半分程度は間接税的なものではないかという意見もあるわけでありますので、そういう点も考慮しなければなりませんし、それから、地方税のことを言いますとまた幾分数字は変わってくるのですけれども、地方税におきましては、電気ガス税とかあるいは料飲税等間接税的なものがかなりあるわけでありまして、こういう点も考えますと、日本の間接税はなお是正すべき点はたくさんあります。しかし、直間比率ということだけにこだわって、これを何かシャウプ勧告の当時に戻さなければならないということは、今までの日本の歩んできた歴史からいいますと私としては賛成しにくいということでございます。
  77. 村山富市

    ○村山(富)委員 それから次に、税制改革を求める国民の声というのは大体コンセンサスがあるのではないかというような意見もありますけれども、一口に税制改革といいましても、改革を求める中身には大変な違いがある。一方では、将来の老齢化社会に備えて薄く広くみんなから負担してもらう必要があるんだというので大型間接税を導入しようとする動きがある。一方では、むしろそんなものではなくて、逆に今ある不公平を是正しなさい、それが先ではないか、こういう意味で改革を求める大多数の国民の声もあるわけですよ。  そこで私は、不公平税制というのは一体何を指して言っているのか。いろいろ調べてみますと、現在非課税、減税など政策的な特別措置が講じられているのが国税だけで百六十八項目ぐらいある、地方税だけでも百八十項目からある。こういうものの中にはもちろん政策的に必要なものもあろうかと思うのですけれども、だれが考えたってこれは不公平じゃないか、これは改めるべきだというようなものもあると思うのです。詳しく中身について具体的に触れることは時間がありませんからできませんけれども、こういう問題について先生はどのようにお考えになっていますか。まず、こういう不公平がある、こういうものについてはやはり積極的に整理すべきだというふうにお考えになっておりますか、どうですか。
  78. 和田八束

    ○和田公述人 不公平税制について、個別に申し上げると多岐にわたりますのでなんですけれども、確かに税制改革を求める意見というのは非常に多いということは各種の世論調査を見ましても出ておりまして、竹下内閣に何を望むかということでトップに挙げられるのはやはり税制改革ということでございます。しかしながら、中曽根内閣のどこが悪かったかという質問がありますと、またこれが税制改革ということで、一体どちらなのかということなんですが、そこで言われている税制改革という言葉にどうもすれ違いがあるような感じがいたします。  税制改革を求めているのは、一般庶民の立場からいいますとやはりサラリーマンが非常に多いということでございまして、サラリーマンの所得税における納税者数というのは年々ふえまして、もう八割を超えている。これは全部サラリーマンというかどうかわかりませんけれども、いわゆる給与所得者でございますし、そうしてみずからの必要経費あるいは自己申告というチャンスが十分ではないわけであります。  前回の昭和六十二年度における税制改正、第一次税制改革といいますか、ここでは給与所得控除につきましてある種の是正がなされましたけれども、これはかなり後退したものになってしまいまして、当初、税制調査会などの議論として伝えられていたところからも相当後退をしてしまいまして、これは売上税の余波であったような感じもいたしますので、売上税が廃案となった現在、もう一度給与所得控除のあり方等についても議論して、実質的に多くのサラリーマンが利用できるということがこうした税の不公平問題というものに対する一つの大きな解決策ということが言えると思うのです。  それからもう一つは、やはり昭和六十二年度におきましていわゆるマル優廃止ということで、少額貯蓄に対する非課税制度が課税される、課税制度ということに変わったわけであります。この影響というのは今後どういうふうに出てくるかわかりませんが、これは確かにいろいろと議論がありますけれども、やはり資産性課税に対する一つの不公平をもたらしたということは否定できないところでありまして、仮にそうした措置がなされるならば、キャピタルゲインでありますとか、あるいは土地課税につきましては先ほどの議論からも幾分異なった意見もあるかと思いますけれども、やはり長期に保有している土地にはそれだけのキャピタルゲインは——キャピタルゲインといいますか、資本利得はそれなりに土地についてもあるわけでありまして、そうした問題。それから、株式の価格上昇というのは非常に大きなものがあったわけですけれども、こうした株式のキャピタルゲインというふうなものも最近目についてきているところだろうと思います。  それから、その他従来言われておりました各種の引当金、準備金とか、それから医師優遇税制とか、そうした問題というのは非常にたくさんあるということだけは申し上げられるのではないかと思います。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  79. 村山富市

    ○村山(富)委員 今キャピタルゲインの課税が必要だというようなお話があったわけですけれども、このキャピタルゲインの課税問題については今、税調なんかでも大変議論されているところだと思うのです。ただ、その議論の中にキャピタルゲインの原則非課税を原則課税に変えると株が一時的に暴落するのではないかというふうな意見もありますし、それから、株の売買についてはなかなか把握がしにくい、捕捉がしにくい、したがって番号制を設ける必要があるのではないかといったような意見があって、軽々に原則課税に変えるべきではない、こういう意見もあるようですけれども、そういう問題については先生はどのようにお考えですか。
  80. 和田八束

    ○和田公述人 私はキャピタルゲインには原則課税すべきであるという意見を持っておりまして、御承知のように先進諸外国におきましてはほぼ、どのような形であれ課税をしているということでございますので、それはいろいろ問題はありまして、どのような税でありましても租税回避という問題を完全に避けるということはできないでしょうけれども、それにもかかわらず努力するというのがやはり課税のあり方ということでございますので、租税回避の可能性あるいは技術的困難性ということですべてを見逃しておくということは、これはやはり税のあり方としては好ましくないということでございます。  把握しにくいということなんですけれども、株式を常に売買している、キャピタルゲインを得ているという人たちは納税者数としてはそれほど多くありませんし、そして限られた層ということになるわけでありますので、もちろん例外はあるでしょうけれども、ほぼ各税務署管内で把握し得ることでありますし、それから、必ず証券会社を通じてでなければ売買できないわけですから、その時点で把握し得るということでございますので、これは言われているほど困難ではないのではないかというふうに思います。  なお、番号制ということにつきましては、私は、実は余りその点について技術的にはお答えする自信がありませんけれども、番号制がすべていわゆる国民総背番号制といいますか、そういうものにつながるというふうに心配をする必要はないと思います。また、国民全部に納税者番号を付番しなくても、一部そうした株式売買といいますか、取引に関係しているところを対象にして部分的な付番制度というふうなことも検討できるのではなかろうかというふうに考えますが、なおこれは私も研究しておきたいと思っているところでございます。
  81. 村山富市

    ○村山(富)委員 次に、これは私もなかなか理論的に解明が難しいものですからお尋ねしたいと思うのですが、先般、新聞なんかの報道によりますと、去年でしたかね、移転価格税制によってトヨタや日産に、国税で八百億円、地方税で四百億円返還することになった。これは、日米交渉の中でどのようなことが協議されたのかわかりませんけれども、いずれにいたしましても国民の税金でお返しするわけですから、これはある程度中身も明らかにしてもらわなければならぬと思うのですが、ただ、日米関係の取り決めでなされることですからそれはそれとして、こういうものが十一年間もさかのぼって地方税にまで波及していくということはちょっと問題があるのではないかと私は思うのですよ。  これは、地方税の法人事業税にしてもあるいは住民税にしても、その所得に対して応能負担をするというのではなくて、地方自治体がサービスをする、そのサービスをコストとして課税する、応益負担が本旨だと思いますから、したがって、移転価格制度によって国税を還付することになったから、それに応じて地方税も返さなければいかぬというようにつながっていくのはちょっと問題があるのではないかというふうに思うのですけれども、そういう点はどうでしょうか。
  82. 和田八束

    ○和田公述人 その点につきましては、私も初めてお聞きするようなことでございまして、ちょっと直接にお答えしかねるところがあるのですが、地方税ということでのお話でありますと、地方税は確かに応益原則ということになっておりますが、しかし、実際には地方税はいろいろと問題がございますね。やはり応益原則だけで成り立っているというわけでもないですし、応能的なものもございますし、特に地方税における、今の御質問とも関係のあると思われる法人住民税あるいは法人事業税というところは、どうもやはり実際の税の建前とそれから現状というものとが合致していない。法人事業税などは特にそういうことでございまして、以前から是正ということが言われているところで、地方税については大いにそういうところは問題だろうというふうには思います。
  83. 村山富市

    ○村山(富)委員 これは、これからやはり日本の企業もどんどん外国に出ていきます。ですから、より一層大きな問題になっていくのではなかろうかと思うのですよ。特に、国によっては非常に税金の安い国がある、あるいは免税している国がある。そういう国に日本の企業が進出した場合に、税金が安い国、免税している国にすべての所得を集中して税金がかからないようにするというようなことが起こり得るのではないかというので、タックスヘーブン対策というのがつくられているわけですね。ところが、実際には把握することが非常に難しいというようなこともあると思うのですけれども、これは、こういうことが次から次にずっと行われていきますと、実際にあるかないかは別にして、合法的に脱税ができるようなことになる。ですから、そういう場合には、子会社も本社も含めて総合的に所得に課税するというような制度になっていると思うのですが、さっき言いましたようになかなか難しい問題もあると思うのです。  そこで、先生にお尋ねしたいのは、外国税額を控除する制度あるいはタックスヘーブン対策といったような政策について、何かお考えがあれば承りたいと思うのです
  84. 和田八束

    ○和田公述人 外国税額控除につきましては確かに問題であるということで、昨年の税制改正では若干の手直しが行われましたけれども、なお繰り延べが非常に長期にわたるというふうなことでありますとか、特に商社関係などでは、今おっしゃいましたようなことで外国の支払い税額によって我が国日本における税額が軽減されているというような実態も耳にすることがございますので、確かにそういうことであろうと思います。  しかしながら、よく法人税の議論におきまして日本の法人税の実効税率が高いということが言われまして、そういう法人税率が高い場合には諸外国に法人が逃避する、日本の会社がだんだん少なくなる、なくなってしまうというふうな、それはちょっと極端ですけれども、どんどん逃げていくじゃないかという議論があるわけなのですけれども、ある程度はこれは、やはり資本は国際的ですので、コストの安いところに動いていくということは当然のことでありまして、また、それによって日本経済が発展するという面もあるわけでありまして、コストというのは税金のコストだけではなくて労働力のコスト、それからそのほかのコスト、総合的にやはり企業が判断するわけであります。  最近におきましても海外への直接投資の件数が非常にふえてはおりますけれども、意外に、支店設立などは比較的少なくて、現地法人等に対する出資が多くなっておりますし、それから、金融機関、商社等だろうと思いますので、そう日本の企業がどんどんなくなるということではないわけでありまして、逆に、日本の法人企業統計などを見てみますと、日本の企業数はもちろんふえておりますし、資本金規模、従業員規模ともに大きくなっているというふうな実態がございます。これは、税制上はやはり移転価格税制その他タックスヘーブン等厳格にするということは当然のことでありまして、さらにそういうことが必要だと思いますけれども、法人税率についていえば、この法人税率が高過ぎる、そして、それによってどんどん日本の法人がいなくなってしまうというふうな議論というのはかなり極端じゃなかろうかという感じはしております。
  85. 村山富市

    ○村山(富)委員 それから、地方財政の問題について若干お尋ねしたいと思うのですが、私が調べた資料によりますと、地方財政の財源不足が六十一年、六十二年、六十三年続いてあるわけです。ちなみに申し上げますと、六十一年度が二兆一千九百七十三億円、それから六十二年が二兆三千七百五十八億円、六十三年度が一兆七千二百五十九億円ですね。普通交付税額との割合を見ますと、その不足額は六十一年が二四・三%、六十二年が二六・二%、六十三年が一七・三%、こうなっているわけです。  地方交付税法の六条の三の二項によりますと、二年間以上財源不足が一〇%以上生じた場合、なお三年について継続するといったような場合には、交付税率を上げるか、あるいは制度を変えなければならぬ、こういう条項があるわけですよ。これは今までも随分言われてきたことですけれども、政府は一向に実行してないわけです。こういう地方交付税法の問題点が無視をされて、地方財政は、単に財源不足だけではなくていろいろな意味で赤字を背負っていますけれども、こういうあり方について先生とのようにお考えでしょうか。
  86. 和田八束

    ○和田公述人 地方財政の財源不足は、例のオイルショック以降昭和五十年代において四兆円程度まで上昇して大変問題になったことがございますが、最近年次においては、いわゆる財源不足といいますかは次第に縮小してまいりまして、そして六十三年度の例でいいますと、例の三年間の措置の補助率削減の分、主としてそれについて不足しているという結果になっているというふうに私は最近の資料では知っております。この分について直ちにそれが交付税率の変更に結びつくかどうかということについてはちょっと問題があるような感じがいたしまして、直ちにそれと結びつけられるかどうか。むしろ国家財政の方が少し上向きになってきた場合には補助率カットですね、これの方をもとに戻して見直すというふうなことが先であって、それによって財源不足を解消していくということ。あるいは今回の国保の改定ですね、これはかなりそうした技術的な面が多くて、つまり一般歳出の均衡を優先してそれによって交付税の方にツケを回したというふうな形になっておりますので、そういう方式自体がむしろ問題ではなかろうか。  そしてまた、財源不足が一方にある中で、地方財政におきましては不交付団体の財源超過のところが非常に大きくなってきているということも地方財政全体から見ると一つの問題でありまして、だんだん地方財政ということが一つのものとして議論しにくくなっているんじゃないかという印象をちょっと持つ次第であります。
  87. 村山富市

    ○村山(富)委員 石原先生にお尋ねしたいのですけれども、先ほど先生のお話を聞いておりますと、東京一極に集中していくことを排除しよう、こういう政策に反すると思われるような公述があったようにちょっと聞いたわけです。これはいろいろな意見があるわけでしょうけれども、先生は先ほど東京湾を埋め立てて、そしてうんと住宅建設をやって土地問題の方は解消ということも考えておるんだと思うのですけれども、これは逆の意味からしますと、東京の一極集中をさらに進めていくんではないかというふうに思われますし、特に三菱地所が丸の内に高層ビル群をつくるとか、あるいはまた空き地をなくして農地をつぶすとか、こういういろいろな意見があるわけですけれども、これらはすべて東京に集中することにつながっていくんではないかというふうに思われるのです。  特にこうした計画を進めるに当たって、一体水道はどうするのか、あるいは下水道の対策はどうするのか、あるいはまた交通政策はこれに付随してやられていくのかとか、いろいろな問題が出てくるのではないかと思うのですね。これはいろいろな角度からいろいろな意見があると私は思うのですけれども、むしろそれだけの投資をするのなら、その投資の財源を地方に分散をして、そして多極分散型の政策に切りかえていくことが今求められておるのではないかというふうに私どもは考えるわけですけれども、先生のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  88. 石原舜介

    ○石原公述人 それではお答えします。  先ほど申し上げましたのは、東京の中で機能の分散を図るというのと、それから東京から地方へ分散を図るという二つの方法がある。その東京の中で機能の分散を図るために業務核都市構想というのがございまして、それが幕張メッセなどを育成しないといけない。むしろ東京がそういう埋立地に晴海の見本市会場を拡大しようとしている、こういうものをやめさせなければいけないんじゃないかということを申し上げたわけでございまして、むしろ私は東京の一極集中を是正する方策としてその業務核都市の方へ行くべきである。そしてむしろそういうところを公営住宅を建設するような形にしないと、現在のところ東京におきましては公営住宅建設がどうしてもおくれがちでございます。ですからそういう用地取得難というふうなことから直接供給が低下しておりますので、そういうところをむしろ東京の場合には利用すべきだということを申し上げたつもりでございます。ちょっとその点で誤解があろうかというふうに思います。  それで、地方分散を図っていくというふうなことで、もちろん東京に、それでは東京圏に全く公共投資をする必要はないかどうかというふうなことは、これは非常に問題がございまして、東京の場合にはある程度受益者負担的な形で民間が資金のある面の負担をしていける状態がございますが、地方はむしろ公共が先に投資をして民間を誘発させるというふうな方式をとらないといけませんものですから、おっしゃるようにいろいろな面におきまして公的な施設の大半は地方へできるだけ分散をするように使っていくべきであろうというふうには思います。  それで、いろいろ水、下水道、交通、こういうふうな施設につきましては、我々、数年前になりますけれども首都改造計画をつくりましたときにこういうチェックをいたしました。そしてそのときに、いろいろ問題になった点は確かにございますが、そのときで一番大変だなというふうなことになりましたのが実は建設土砂でございまして、これの埋め戻しをどうするかということが一番大きな制約条件になるのじゃないかというふうに考えておりました。
  89. 村山富市

    ○村山(富)委員 最後に、和田先生にもう一点お尋ねいたしますけれども、きのうも連合の山田公述人から、サラリーマン減税は天の声だというふうに強く強調されたわけですね。今の税制問題におきましても、先ほど先生のお話がございましたように、サラリーマンの重税感が一番強い、あるいは今の税制は不公平ではないかといったような感じを一番強く持っておられる。これは単に税金がだんだん上がっていくというだけではなくて、社会保険やら一般の負担もやはり上がっていっているわけですから、恐らく可処分所得は年々低下してきておる。それはまた内需の拡大には大変大きなマイナス要因になるわけですから、私は何にも増して減税は最優先でやるべきではないかというふうに思っておりますが、和田先生の見解を承ります。
  90. 和田八束

    ○和田公述人 私もその点についてはそのように考えまして、内需拡大という点からいいましても、サラリーマンの負担軽減ということからいいましても、引き続き減税を考えていただきたいというふうに思っております。
  91. 村山富市

    ○村山(富)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  92. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、宮地正介君。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 公明党の宮地正介でごぜいます。公述人の皆さんには大変に御苦労さまでございます。限られた十五分という時間でございますので、よろしくお願いをしたいと思います。  二年前にいわゆる売上税の問題が政府から出されまして、今回、大型、新型の間接税、こうした問題が出てきているわけでございますが、そういう中で特にいわゆる土地の高騰という、そうした新しい一つ状況の変化というものが出てまいりました。  そこで、最初に和田公述人と石原公述人に、そういう中におきまして、今、一つは法人の持っている土地というものの再評価あるいは株の再評価、こうした含み資産というものを、最近のこうした円高、株の高騰あるいは土地の高騰、こういう中で大変不公平感が国民の間に急激に拡大をしているのではないか。こうした面でやはり法人のそうした資産に対して、特に土地とか株に対して再評価をして、何らかの形で再評価税というようなものの一つの税の仕組みを導入するべきではないか、こういう声も最近非常に国民の間から聞こえてきているわけでございますが、この点についてまず御両人から御意見を伺えればありがたいと思います。
  94. 和田八束

    ○和田公述人 株式につきましてはちょっと問題を別にいたしましても、土地が特にいわゆる含み資産の増大ということが顕著になっておりまして、昨年も「日経会社情報」などでその点が調査結果が出ておりまして、私も拝見したわけですけれども、一兆円以上の含み資産というふうな企業も何社かございます。やはりこれらにつきましては、いろいろ財務上問題があるということは、前から言われてはおりましたけれども、やはり余りに簿価と実際価額とが開くという場合には、何年かに一回は再評価をいたしまして、分割納税でいいわけですから、一定の課税を行うということが、公平の点からいいましても、土地の問題からいいましても、それから法人の経営の公正化という点からいいましてもふさわしいわけでありまして、今日やはりそういう時期ではなかろうかというふうに考えております。
  95. 石原舜介

    ○石原公述人 私はこの土地につきます再評価問題しかわかりませんけれども、この点に関しましては、固定資産税というものの適正化というふうなことがむしろ重要であって、こういう形で十分その収益に対します負担をしていくのであれば、特別再評価税というようなものを設けなくてもよろしいのではないかというふうに考えます。ただし、この固定資産税が余りにも高くなるということで、東京の場合などに多少激変緩和の措置が講じられておりますので、これは私はむしろやめるべきではないかというふうに思っております。
  96. 宮地正介

    ○宮地委員 和田公述人は土地のそうした法人の再評価税というものは前向きに検討すべきではないか。大体この簿価と時価の差というのは大変に急激でありまして、固定資産税なんかの場合は大体六割、六掛けぐらい、それにまた調整率を掛ける。ただ、今やはり野方図にされているということは、国民にとって不公平感が強いのではないか。もう少し具体的に、もし日本の国でそうした法人の土地再評価税など導入するとしたら、どういうような条件といいますか環境づくりといいますか、そういうものが必要なのか、その点についてもし先生のお考えがあれば、御高説お伺いしたいと思います。
  97. 和田八束

    ○和田公述人 余り具体的なことは、今まだその点については考えておりませんので申し上げられないわけですけれども、これはやはり実際にそうしたことが実施されるということになれば、かなり具体的なところは詰めて行わなければならないだろうと思いますし、そうたびたび実施するというものではないと思いますね。ですから、何年かに一度ということでしょうし、それから納税方法につきましても、分割その他いろいろ考えられるであろう。一種の法人財産税という感じのものになるということでございます。  固定資産税も一種の保有税でありますね。財産税であるということでいえば、これが一定の機能を果たすということは言えるわけですけれども、これはやはり恒常的な税でありますし、急速な地価の上昇あるいは蓄積されたキャピタルゲインをどこまで固定資産税だけで吸収できるかということになりますと、やや問題があるような感じがいたしますので、今日のような状況のもとでは、やはり臨時財産税という形で考えるべきではなかろうかということでございます。
  98. 宮地正介

    ○宮地委員 当然企業の活動の活性化とか国際的な競争力、そういう面を考えたときに、やはり法人税の引き下げとかそういうものと並行してやっていかなくてはならないのかな。企業活動を低迷化あるいは停滞化させてはならない。ただ、余りにも不公平感というものが、この異常な高値の中で、さらに含み資産が非常に強くなって高くなって、国民の間では何らかの措置はやはり検討すべきではないかという声もありますので、ぜひ今後また研究をされ、またお教えをいただければありがたい、こう思っております。  さて、和田先生の「日本の税金」という本も私読まさせていただきまして、特に直間比率の問題について、特にヨーロッパ諸国におきましては、一九六〇年代に付加価値税を導入いたしました。当時日本の国も直接税が五四%、アメリカは八三%、イギリスが五三%、西ドイツが四七%、フランスが三七%、イタリアが二〇%。こういう中で、特にヨーロッパ諸国が導入をされ、一九八〇年、ちょうど二十年後に、イタリアなんかは当時直接税二〇%でありましたのが五二%と逆に直間比率が逆転しておるわけですね。フランスなんかも三七から四〇、西ドイツも四七から五二、イギリスも五三から五九と、当初そうした付加価値税を導入し、だんだん直接税の方に比率が高まっていく、こういう一つの現象があるわけですね。  そういう中で、先生は先ほど、日本で今こうした大型間接税を導入する、日本は今そうした素地に果たしてかなっているのであろうか、むしろ個人消費税というものをもっと抜本的に改革して、そのメリットを生かすべきではないか、こういうような御発言もあったわけでございますが、こうしたヨーロッパにおける導入の経過などと比べまして、私はやはり先生と——今そんなに短兵急に急いで大型間接税、まあ小倉会長なども、理想とするものはEC型付加価値税である、こういう御発言もしているようですが、私もやはりもっともっと時間をかけて、国民の合意を得るために政府が時間をかけ、またそうしたいろいろ議論をして、本当に日本のこれからの二十一世紀の高齢化社会に対応できる税なのかどうか。この秋に結論を急ぐというようなことは、これは私は竹下内閣が少しはやり過ぎているのではないかな、こんな感じをしているわけでございますが、先生の率直な、そうした諸外国の例を踏まえて、日本におい,てのそうした対応についてどういう御意見を持っているか、少しお教えいただければと思っております。
  99. 和田八束

    ○和田公述人 いわゆる直間比率という問題につきましては、先ほども御質問がございまして、私なりの考え方を申し上げたわけですけれども、直間といいましても、その中身はいろいろあるのです。我が国の税のパーセンテージを大別いたしますと、所得税が大体三〇%程度、それから法人税が三〇%程度、それから間接税といいますか消費税といいますか消費流通税、これが三〇%程度ということで、お互いに三分の一ぐらいずつ大まかに言って分け合っているようなあれです。  これをばらして見てみますと、所得税の三分の一程度、三〇%程度というのはヨーロッパ諸国に比べてもそれほど差がないということは、先ほども申し上げたわけなんです。差があるのは、その次の法人税なんですけれども、その法人税の三分の一程度というもののうち半分ぐらいが仮に転嫁されているといたしますと、残りの三〇%程度の間接税と加えますと四、五〇%ぐらいがこの間接税の範疇に入るというふうに考えられますので、日本が特に直接税に偏し過ぎているということは、その点からいっても言いにくいのではないかと思います。  それからもう一つは、ヨーロッパ諸国、あるいは現在付加価値税タイプの税を導入している諸国が次第にふえておりまして、広がってきているわけですけれども、これが何か国際的潮流であり、そちらに移行することが何か国際的な動向にかなうというふうに言う説明があるわけですけれども、その点は、果たしてそれが国際的な潮流であって、それに参加しないと税制、税体系としても取り残される、非常に異質なものになるというふうに言えるかどうかということは非常に私としては疑問に思って、そういう論理というのは、この点については成り立ちにくいのじゃないかというふうに考えております。
  100. 宮地正介

    ○宮地委員 やはり所得、資産、消費、この三つのところしか税を取る方法としてはないわけですね。やはり国民は今不公平感、不公平税制の是正、これを現行税制の中で最優先すべきである。その中で今後の対応というものを検討していく。私はそういう中でやはり所得、資産、特に先生もさっきお話しのように、国際的に日本は資産税の取り組みが大変おくれておる。そういう中から考えましたとき、余り消費税消費税ということで、政府がそこにターゲットを置いて消費税の導入、ここにどうもポイントを置いている。私はむしろ重点は、やはり資産税あるいは所得税、ここにおける国民の不公平感を取り除くところにまず最重点を置いて抜本的な税制改革をやるべきではないか、こう思っているのですが、最後に先生の御見解を伺って終わりたいと思います。
  101. 和田八束

    ○和田公述人 私もそういうふうに考えております。ですから、特に資産、所得課税の強化。それから資産に対しては、先ほども申し上げましたような法人の土地評価益課税等が大きな問題であろうというふうに考えます。
  102. 宮地正介

    ○宮地委員 終わります。
  103. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、吉田之久君。
  104. 吉田之久

    ○吉田委員 三人の公述人にお礼を申し上げます。  まず初めに和田先生にお伺いしたいのでございますが、ほかの公述人の方もお聞きおきいただきたいと思うのです。  最近の我が国の風潮は、特に政治やら社会面におきまして、近い将来大変な高齢化社会がやってくる、いわゆる労働者人口というものが著しく減って、そしてお年寄りが急速にふえる、だからその時代を想定して今から新型間接税のようなものを導入して備えなければならない、大体こういう記事あるいは声が毎日毎朝伝わってくる。その中で、私の町にいるかなり誇り高き御老人でございますが、既に八十五歳を超えていらっしゃいます。町の図書館に八千万円の寄附をなさったというような方でありますが、その方がつくづく述懐されるには、最近私たち老人は毎日非常に暗い気持ちで過ごしている、何か私たちが生きていることが悪いように感じ取れるような報道ばかりだ、だから早く年寄りは死んでいった方がいいではないか、そう言われているような感じさえするということを非常に嘆いておられました。  いわば戦後、廃墟の中から日本をここまで立ち上がらせるために懸命に頑張ってきたこの老人たち、先輩たちに対してたたえねぎらう言葉が全くない今日の風潮。そういう場に置かれているお年寄りの気持ちというのは、私どもはかなりそんたくしなければならないのじゃないかと思いますが、その点先生はどうお考えでしょうか。
  105. 和田八束

    ○和田公述人 確かに高齢化社会というのは、欧米水準ということからいいますと、実際にはやや先の問題で、現在のお年寄りが社会的に非常に大きな負担になっているということではないわけでありまして、将来の問題を今からということで議論がなされていることだろうと思うのです。  そういう点でいいますと、実は私なども昔でいえばそろそろ高齢化になりつつあるのじゃないかと思いますけれども、自分自身の将来の生活設計というものもなかなか具体的ではありません。社会保障制度が、制度的にはいろいろあると思いますけれども、果たして自分の社会保障というのがどのように活用でき、そしてまた、年金もどれだけの年金が得られて、どういう生活ができるのかということについて、自分自身のことについてもめどが実はなかなか立たないのであります。多くの人々というのは、若い人の場合には特にそうだろうと思いますので、社会的に言いましても、将来のそうした日本社会における社会保障制度、こうしたものの見取り図といいますか全体図といいますか、こういうものをなるべく早く明らかにしていただくと同時に、国民の一人一人が自分の老後生活についても設計が持てる、これは公的な保障というものも必要でしょうけれども、個人的にもそれだけの努力も必要なんで、それらを合わせでどれだけの、そしてどういう生活設計ができるのかということについてもっと明らかにあらかじめしておく必要があるのじゃなかろうかというふうに考えるわけです。まず税制の問題あるいは社会保障負担の問題ということにつきましても、何か手探りというのが実情でありまして、やはりもうちょっと具体的に明らかにしていただきたいということでございます。
  106. 吉田之久

    ○吉田委員 一番案ぜられるのが、推定から申しまして昭和九十五年、二〇二〇年だろうと思います。それは当然そろそろ私どもも真剣に考えなければならない時代の到来ではありますけれども、しかし、それよりもまず今私どもが本気で考えなければならない問題は、先ほど和田先生もお話しになりましたけれども、現にある国債発行残高、既に百六十兆円を超えております。さきにもお話がありましたが、一時的な税収の好調に助けられて赤字国債は少し減らしぎみでいけそうでありまして、幸い六十五年に赤字国債発行体質から脱却できると仮定いたしましても、先ほどもお話しのように、建設国債はなおかなり濶達にそれを使っていいのではないかという気持ちは依然としてあると思うのです。百六十兆円をやがてますます超えていくであろうこの国債の残高、これが今後日本の国家財政のガンにならないだろうか、私は非常にそれを恐れる一人なのでございますが、先生はどうお考えになりますか。
  107. 和田八束

    ○和田公述人 これも見通しといいますか、そういうことでございまして大変難しいと思うのですが、最近、国債発行に我が国財政が踏み切った時代を振り返った書物、研究書などが幾つか出ておりまして、その中には、その当時大蔵省その他で第一線で御活躍になっていた方々の回顧録などもありまして、非常に興味深く読んだわけです。そのときは、非常に国論を分けるといいますか、国債発行というものについて賛否両論ありまして、そして国債発行による将来の日本財政に対する非常な不安感というものも大きく持たれたりしたわけなのですけれども、その当時と現在と振り返ってみますと、率直に言いまして大きな心配というものがそれほど表面化せずに乗り切ったということが言えるわけで、これはいろいろあると思うのですけれども、現実にはそうだろうと思うのです。  例えば、一番言われたのがインフレーションそれからクラウディングアウトとか、それからその他財政の非常な放漫性というようなことなどが言われたわけなのですが、そうした兆候なり問題は確かにあらわれましたけれども、現時点に立って振り返ってみますと、それらの問題が、インフレーションなどは別の要因で狂乱インフレというふうなことはございましたけれども、国債はかなり財政的に吸収する形で、しかも国債市場も育成されて、現在ではむしろ国債を減らすといろいろな、そういった金融・証券市場に逆にマイナスの影響さえあらわれるというようなことになっておりまして、現時点ではもう少し、昭和四十年時点とは変わった見地も含めて、国債の問題については考えるべきところがあるのではないかということを少し痛感しているところでございます。
  108. 吉田之久

    ○吉田委員 確かに、今日まで国債が果たしてきた役割、それはかなりのものがあったと思いますし、また、特段危険な兆候もなかったという点はお互いに幸いだと思うのでございます。しかし、中曽根さんが戦後代議士になってこられたころにはこんな国債はなかった。竹下総理が代議士になられたころにもそんなものはなかった。いわばここ二、三十年の間に日本の政治家が、それぞれさらに豊かな活性化した社会をつくろうという願いのもとに、いろいろ計画を実施してきた、その中でやはり国債をつくってしまっていると思うのですね。  しかし将来、十年先、二十年先、まして高齢化社会の到来が予測されるその時期に、その世代の国民たちにとってはもはや昭和六十年代の政治家が残したそういう借金の後払いといいますか利息払いと申しますか、それに明け暮れるだけであって、その時代のサラリーマンやすべての国民が懸命に働いて税金を納めても、それはその時代の有効な需要にこたえる財源には一向にならないということが大変心配なのでございます。  むしろ民主主義社会といいますか、それは選挙を絶えず経なければなりません。選挙を経るためには、みんながよりすばらしい公約をしなければならない。公約は果たさなければならない。そうすると、金がなくとも借りてやればいいじゃないか。こういうことがどんどん増幅してまいるということは、現代の私どもが将来の子供や孫たちがなすべき仕事を全部先取りして、そしてツケだけ押しつけることになりはしないだろうかという点を非常に心配しているのでございますが、先生はそうお考えになりませんか。
  109. 和田八束

    ○和田公述人 非常にそういうことは心配でございます。そういうことがないように、私たちは国会の皆さん方に大いに頑張っていただきたいということでございまして、特に国債につきましては利払いが歳出の二〇%も占めるということは、やはり所得分配の不平等をここでもたらしているわけでありますので、税制の方ではキャピタルゲイン課税その他公平な税制を確立するということがその点では大変重要になってまいります。  それからもう一方では、財政の支出面、使われ方というものについてなお一層改革を行うということと、むだな歳出がないように十分に審議をしていただきたい、こういうことでございます。
  110. 吉田之久

    ○吉田委員 石原先生にお伺いいたしますが、先ほど先生の土地問題、住宅問題、いろいろ伺いました。しかし、多くの専門家たちがまず東京を中心にしてこの問題を真剣に、深刻に考えていらっしゃる点、それは十分うなずけるわけでございますが、もっとやはりグローバルに日本全体の土地の利用やあるいは宅地の供給をどう図っていくべきであるかということを考えなければならないと私は思います。  そういう点では、先生が都市計画法それ自体が抱えておる矛盾についてお話がございました。確かに都市計画法を当初の八十万ヘクタールより百二十万に拡大して実施したことによって未利用地が残っているという点はうなずけます。しかし、逆に今、私どもの方ではほとんど似通った同じ農村の町が、今から考えれば大変先見性を持っておったと思うのでございますが、ある町はほとんど町全体が市街化区域であることを要請してそれが実現した。その町が急速に発展してきております。  そういういろいろな事例があるわけでございまして、場所によってはもっと、国民の住宅事情にこたえるためには市街化区域を拡大すべき場所があるのではないか。逆に、市街化区域に指定しながら全然利用されない、いわばA農地などはむしろ市街化区域であることの指定を取り消す方法もあるのではないだろうか。あるいは今、日本全国農村におきましては休耕、転作が強いられておりますけれども、活用できる農業地帯が活用できない状況にある。むしろその辺は大いにつくるべき米や農作物をつくらせ、今、後継者がだんだんなくなりつつある都市近郊地域にむしろ住宅地を広げていく、そういうことが抜本的に見直されていい時期に来ているのではないかと思うわけでございますが、先生のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  111. 石原舜介

    ○石原公述人 それではお答えいたします。  おっしゃるとおりに、都市計画法の中で市街化区域を拡大していかなければいけないところ、あるいは営農を持続するということで、そういう申し入れによりまして非課税といいますか宅地並み課税が課税されていない農地等につきましては、その生産緑地あるいは逆線引き、こういうようなことをしていくことが、私が最初申し上げましたボタンのかけ違いとよく言われますけれども、それがもう十九年も続いている。こういうようなことを抜本的に改めないと、本当の意味の宅地供給につながらないというふうなことを申し上げたつもりでございます。そういう点では、お考えの要旨、そのとおりだと私は思っております。
  112. 吉田之久

    ○吉田委員 ありがとうございました。
  113. 奥田敬和

    奥田委員長 次に、正森成二君。
  114. 正森成二

    ○正森委員 まず関本公述人にお伺いしたいと思います。  各公述人から直間比率の問題、税制改革の問題についてお触れになりましたが、いわゆる大型間接税に反対される方の御意見では逆進性と言われていることが大きな問題であります。大型間接税を実施している国における実態など、税理士さんとして御存じの点がございましたらできるだけ詳しく伺いたいと思います。
  115. 関本秀治

    ○関本公述人 各EC諸国のEC型付加価値税の負担率の実態等でございますけれども、これは多少古いものがございますが、塩崎潤先生が翻訳されました「付加価値税—ヨーロッパからの教訓」という本がございまして、今日社というところから出ております。  これによりますと、フランスの、多少古いのですが一九七二年の統計でございまして、所得を八分位に分けまして、最低分位の方々の付加価値税の負担率が、当時は税率も高かったのですが、二二・一七%であるのに対して、最高分位の方々の負担率がわずかに五・四四。この間に約四倍の格差があるというような統計もございます。  それから、これはEC型付加価値税ではございませんけれども、アメリカの州小売税につきまして、実は昨年の一月十四日にアメリカの民間団体でございます「税の正義のための市民」というところで発表しました「州税の残念な状態」という報告書がございます。これによりますと、これは新聞記事でございますので正確なところはわかりませんけれども、最下層の年収一万ドル以下の家庭ではこの小売売上税が三・一%、それから二万ドルから四万ドル程度で一・六%ないし一・九%、上に行きまして五万ドルから十万ドルになりますと、これが一・四に下がりまして、十万ドル以上の世帯では〇・七%、こういうような実態が出ております。  なお、この間接税の増税と所得格差の関係につきまして、少し興味のある資料がつい最近の新聞に載っておりましたので、私持ってまいりましたが、これはイギリスのサッチャー政権のもとにおける所得格差の拡大ということで、一月七日の毎日新聞に出ておりました。  これによりますと、サッチャー政権が発足した一九七九年と一九八五年の比較でございますけれども、所得階層を五分位にいたしまして、この間に最低の階層では所得が、収入と言っておりますが、平均収入が四三%も減少したことがわかった。これに対して、逆に所得が最も高い最上層の二〇%の家庭では、平均収入は一一%ふえた、こういうような発表がされております。  ちなみに、この間に直間比率がどうなったかということを見てまいりましたら、七九年の統計はちょっと手元にございませんでわかりませんでしたが、八〇年の間接税の比率が四〇・八%でございます。これに対して八五年は四三・九%と、三・一ポイント上昇しております。つまり所得格差の拡大と間接税の比率の増大がまさに比例的に進んできた、こういうことがこの数字からわかるのではないかというふうに考えるわけでございます。
  116. 正森成二

    ○正森委員 同じ関本公述人の御意見の一番最後の部分で、ほかの二人の公述人にもしおよろしければ伺いたいと思いますが、外国為替特別会計の問題が出てまいりました。  これは円高・ドル安対策として大蔵省が外国為替資金証券というのを発行いたしまして、それを日銀引き受けで円を大蔵省に供給するという格好になりますが、その限度が予算総則で定められることになっております。御承知のとおりであります。これは昭和六十一年までは十三兆円以下ぐらいで推移しておりましたが、昭和六十二年に十六兆円になりました。補正予算で十九兆、二十一兆とふえまして、今公述人に御意見をちょうだいいたしました昭和六十三年度予算では、実に二十八兆円という膨大な額で、これは本予算五十六兆円の二分の一。本予算でさえ新規の国債発行は九兆円に満ちません。借換債を含んでも二十三兆円であります。  ところが、外国為替特別会計ではそれをはるかに上回る二十八兆円を予定しておりまして、しかもそれを財政法五条で、我が国の歳入であるならば絶対にとってはならない日銀引き受け、つまり、戦争中の軍事費と同じやり方で賄うということになっております。この金が結果的にはドル買いに使われまして、ニューヨーク連銀に預けられ、それによってアメリカの財務証券や最近では国債に運用されるということになっております。これは結局、我が国政府が日銀引き受けで円を創出いたしまして、それでアメリカの財政赤字が賄われているという格好になります。これは東海銀行、三菱銀行といったところの調査部や、あるいは比較的保守的な経済学者も憂慮しているところでございます。  まず和田先生に伺いますが、こういう外為特別会計で使われる資金を二十八兆円も出すということは、円の過剰流動性といいますか、これはインフレ要因にもなりますし、現実に土地についてはこの金が流れ込みまして非常な土地騰貴を起こしたと多くの学者が言われております。こういう問題についてもし御意見がございましたら、和田先生、石原先生から一言でも御意見を承りたいと思います。
  117. 和田八束

    ○和田公述人 正森さんのそういう御指摘につきまして、せんだってNHKテレビの本委員会の中継を私は聞いておりまして、なるほどそういう問題があったのかと、もう少し聞きたかったところでございますけれども、ということで、一つ財政金融面においても盲点といいますか、そういうことでございまして、私も調べて勉強しようと思いながら、ちょっと入学試験に入りましていまだ着手しておりませんので、改めて調べてみたいと思っておるところでございます。
  118. 石原舜介

    ○石原公述人 私はどうもこういうような財政面におきましては素人でございまして、技術屋でございますのでよくわかりません。したがって適切なお答えができかねるので申しわけないと思います。
  119. 正森成二

    ○正森委員 どうも。  それでは、最後に一問だけ和田公述人に伺います。  先生の最初の御意見の中で、資産、所得、消費にバランスが必要だけれども、資産課税についてはある意味では日本が一番おくれているようにも思えるとおっしゃいましたが、残された時間わずかでございますが、先生のこの点についての御意見を承りたいと思います。
  120. 和田八束

    ○和田公述人 余り詳しくということはできないわけですけれども、私が念頭にありましたのは、やはりキャピタルゲイン課税でございまして、キャピタルゲイン課税につきましては先ほどもちょっと質問もございましたけれども、いろいろ問題がありましてもどの国でもやっているということでありまして、原則非課税というのはやはり日本だけであるという点で、税制面においておくれをとっているのではないかということを申し上げたわけでございます。  ただ、どのようにキャピタルゲインの課税を行うかということにつきましては、なお十分な議論が行われているとは思えません。完全な総合累進課税というのが一つありまして、これは一つの理想的な形だろうと思います。しかし、理想的な形がそのまま有効な税制として機能するかどうかということになりますと、いきなりというのも無理じゃなかろうか。  そういたしますと、残された方法といたしますと、分離課税とか、あるいは分離して総合選択制にする、あるいは昔の所得税のように分類所得税のようなものを考えるというふうな幾つかの方法というのがありますけれども、それらは私はどれかということは言いませんけれども、まあ比較的妥当だろうと思われるのは、一応分離課税を行って源泉分離でやって、そして総合課税の選択というところでスタートしてはどうかというふうに考えておりまして、その辺から少し検討、研究といいますか、を行うべきではなかろうかということであります。  それから、もう一つは相続税の問題でありまして、これも、相続税につきましては非常に国民の中では心配する向きがありまして、一体どうなるんだろう、これだけ夫婦で一生懸命稼いだ土地、住宅が子供に残せないのではないかというふうな投書などもありまして、これは確かにそういう面までどんどん相続税がかかるというのは問題ですけれども、現状からいいますと、東京等の大都市を別にいたしますと、それほど相続税の課税割合というのは大きくないわけでありまして、むしろ高額の遺産に対しては相続税を強化するという方が望ましいわけであります。現在は封建社会ではありませんので財産はやはり一代限りということを、もう少し国民の人々も、その点ではそういう考え方を前提にしていただいた方がよろしいのじゃないか。とかく買いかえ相続の点につきましても何か家族制度が復活するんじゃないかとさえ思えるようなところもありまして、今後相続税の問題も議論がなされるでしょうけれども、これはやはり資産課税として考えていただきたいということでございます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  122. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  以上をもちまして公聴会は終了いたしました。  次回の委員会は、明十七日午前十時十分より開会し、昭和六十二年度補正予算の審査を行います。  本日は、これにて散会いたします。     午後四時二分散会