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1988-04-04 第112回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月四日(月曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       池田 行彦君    稲村 利幸君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    北村 直人君       倉成  正君    小坂徳三郎君       後藤田正晴君    左藤  恵君       佐藤 文生君    志賀  節君       自見庄三郎君    鈴木 宗男君       砂田 重民君    田中 龍夫君       西岡 武夫君    浜田 幸一君       林  大幹君    林  義郎君       原田  憲君    細田 吉藏君       松田 九郎君   三ツ林弥太郎君       村山 達雄君    井上 普方君       池端 清一君    川崎 寛治君       菅  直人君    小林 恒人君       佐藤 敬治君    山下洲夫君       井上 和久君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       田中 慶秋君    楢崎弥之助君       柴田 睦夫君    中島 武敏君       野間 友一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長兼内         閣総理大臣官房         内政審議室長  的場 順三君         内閣官房内閣安         全保障室長兼内         閣総理大臣官房         安全保障室長  佐々 淳行君         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官内閣審         議官      紀 喜一郎君         総務庁長官官房         会計課長    八木 俊道君         総務庁恩給局長 石川 雅嗣君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁研究         開発局長    川崎 雅弘君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局長 足立 和基君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省体育局長 國分 正明君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         食糧庁長官   甕   滋君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         運輸大臣官房審         議官      金田 好生君         運輸省国際運         輸・観光局長  中村  徹君         運輸省航空局長 林  淳司君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房会         計課長     椎谷  正君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         自治大臣官房長 持永 堯民君         自治大臣官房会         計課長     富永 栄一君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 三月二十二一日  辞任         補欠選任   宮地 正介君     橋本 文彦君   田中 慶秋君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   橋本 文彦君     宮地 正介君   塚本 三郎君     田中 慶秋君 同月二十五日  辞任         補欠選任   佐藤 敬治君     山花 貞夫君 四月一日  辞任         補欠選任   山花 貞夫君     佐藤 敬治君 同月四日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     北村 直人君   村田敬次郎君     松田 九郎君   村山 達雄君     自見庄三郎君   渡部 恒三君     鈴木 宗男君   井上 一成君     山下洲夫君   上原 康助君     小林 恒人君   辻  一彦君     池端 清一君   大久保直彦君     井上 和久君   金子 満広君     柴田 睦夫君   不破 哲三君     野間 友一君 同日  辞任         補欠選任   北村 直人君     愛野興一郎君   自見庄三郎君     村山 達雄君   鈴木 宗男君     渡部 恒三君   松田 九郎君     村田敬次郎君   池端 清一君     辻  一彦君   小林 恒人君     上原 康助君   山下洲夫君     井上 一成君   井上 和久君     大久保直彦君   柴田 睦夫君     金子 満広君   野間 友一君     不破 哲三君     ───────────── 四月二日  昭和六十三年度一般会計暫定予算  昭和六十三年度特別会計暫定予算  昭和六十三年度政府関係機関暫定予算 は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計暫定予算  昭和六十三年度特別会計暫定予算  昭和六十三年度政府関係機関暫定予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計暫定予算昭和六十三年度特別会計暫定予算昭和六十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して議題といたします。  まず、三案について政府より趣旨説明を求めます。宮澤大蔵大臣。     ─────────────  昭和六十三年度一般会計暫定予算  昭和六十三年度特別会計暫定予算  昭和六十三年度政府関係機関暫定予算     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このたび、昭和六十三年四月一日から同月八日までの期間について暫定予算提出いたしましたが、その概要を御説明申し上げます。  まず、一般会計につきまして申し述べます。  暫定予算が本予算成立までの応急的なものであることにかんがみ、今回の暫定予算におきましても、暫定予算期間中における人件費事務費等経常的経費のほか、既定の施策に係る経費について行政運営上必要最小限のものを計上することといたしております。  なお、新規施策に係る経費につきましては、原則として計上しないことといたしておりますが、教育及び社会政策上等の配慮から特に措置することが適当と認められる生活扶助基準引き上げ等につきましては、所要の金額を計上することといたしております。  また、公共事業関係費につきましては、新規発生災害に係る直轄災害復旧事業費のほか、直轄維持修繕費等について、暫定予算期間中における所要額を計上することといたしております。  歳入につきましては、税収及び税外収入暫定予算期間中の収入見込み額並びに前年度剰余金を計上することといたしております。  以上の結果、今回の一般会計暫定予算歳入総額は二百十一億円、歳出総額は三兆九百十五億円となり、三兆七百四億円の歳出超過となりますが、国庫の資金繰りにつきましては、必要に応じ大蔵省証券を発行することができることといたしております。  なお、特別会計及び政府関係機関暫定予算につきましては、いずれも以上申し述べました一般会計に準じて編成いたしております。  以上、昭和六十三年度暫定予算につきまして、その概要を御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださるようお願い申し上げます。
  4. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて大蔵大臣説明は終了いたしました。     ─────────────
  5. 奥田敬和

    奥田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。近藤元次君。
  6. 近藤元次

    近藤(元)委員 当委員会においても、三月八日、与野党合意の上で、各党それぞれ暫定予算の回避のために審議短縮をして、三月十日に本院を通過をさせたところでございます。  きょう、ここに暫定予算審議をするということはまことに残念であり遺憾なことだと、こう存ずる次第でございますけれども、事ここに至っては、まさに異例中の異例の新年度に入って暫定予算提案をするというような事態に立ち至りまして、今回の予算全体の動きを見ても、議会制度あり方にも多くの問題を残したと言わなければならないと思うわけであります。  ここ一、二年の為替の大幅な変動やら貿易摩擦等の国際的にも極めて厳しい環境の中で、我が国は対外的な責任を果たし、かつ国内的にも安定を確保するための、昨年とそして相当思い切った予算措置をとった本年度予算ではないかと思うわけであります。その結果を見ても、曲がりなりにも、一部を除き、景気動向貿易黒字等の改善が見られるようになってきたところであります。そのことを見ても、財政運営の適正かつ継続いかんがいかに大きな影響を与えるかということが、現実国民も理解をし始めておる今日の状況でございます。  しかるに、今年度予算審議の場においても予算修正要求が出され、本来、要求というようなものは労働の対価として分配をどうするかというようなことになじむものであって、国民の財産を預かっている国会においてやる筋合いのものではないのではないかと思うのであります。予算委員会においても、修正案なり組み替え動議というようなもので正式な土俵にのせて論議をして、そしてその上での話し合いをし、審議をし、かつ最終結論はやはり民主的なルールで採決をしていくというのが正しい方向であって、近ごろどうもいろいろなところで話し合いが進められていって、最終的な結論だけが国会の場に持ち出されるというようなことで、ややともすれば政治不信につながっていくような気がしてならないわけであります。  そういうときには、国民生活に大変な影響があるにもかかわらず、それが審議に入らないで、今後も我々このことについては十分この議会の、本年度新たに、新年度に入っての暫定提案するというような事態を踏まえて、反省をしなければならないところでなかろうかと思うわけであります。その種のことにつきまして、総理から御答弁をいただきたいところでございます。  あわせて、今回の六十三年度予算は、しかも特例公債一兆八千三百億を減額をし、NTT株の売り払い収入によって内需拡大公共事業二〇%の増額をするというような、まさに財政再建内需拡大を両立をさせる予算案であり、このような予算を一日も早く成立をさせることが国民の最も待望するところでなかろうかと思うわけであります。  しかるに、明後日六日には約二百万人に及ぶ人たち、四千三百億という、恩給受給者支払い期日が迫っておるわけであります。恩給受給者はお年寄りが多く、このような方々に特に迷惑をかけるようなことは、責任ある与党としても、政府としても、絶対に避けなければならない、そのことが本日の暫定予算趣旨でなかろうかと思うわけであります。  そのような立場を踏まえる我が党としても、やむにやまれぬものとは言いながらも、この暫定予算が新年度に入って提案をされるということは過去前例のないことであるだけに、ここは確認をさせていただかなければならないことでございます。政府側答弁を求めたいと思う次第であります。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理がお答えになります前に私から答弁を申し上げます。  ただいま近藤委員の言われましたような内外の状況でございますので、政府といたしましては、本予算を一日も早く成立させていただきましてその執行を図りたいと念願をいたしてまいりました。  参議院におきまして本予算審議を御継続中でございますが、三月二十五日になりまして、参議院予算委員長から政府に対しまして、理事会の各会派のお申し合わせに基づいて、政府としては暫定予算編成準備にかかるように要望するというお話官房長官並びに私に対してございまして、翌日二十六日、予算委員長から予算委員会におきまして、その経緯並びに、政府予算委員長お話に基づいて編成準備を始めますという返事であったという、そういう御発言予算委員会の席でございました。  したがいまして、政府はその時点におきまして暫定予算編成準備を始めたわけでございますが、これは参議院予算委員会におきまして過去におきましていろいろな経緯がございまして、一昨年の予算委員会におきまして、当時の安田予算委員長からも同様の御発言があった経緯がございまして、いろいろそのようなことからこのたびの参議院予算委員長の御発言になったものと考えております。  しかるところ、四月二日になりまして、次の週すなわち本日以降の参議院予算委員会における御審議の日程がなお未定であるという事態になりまして、ただいま近藤委員の言われましたように四月六日に二百万人に及ぶ方々に対する四千三百億円の恩給支払いの予定がございまして、これはもう毎年のことであり、いわばそれらの方々にとっては当然に期待をしておられるかなり大切な種類の支払いでございますのでこれを延引することができない、また、その他のやりくりによりましてこの四千三百億円という支出をすることは到底不可能でございますので、政府といたしまして、暫定予算を御審議願うとすればそれは四日と五日しか日が残らないという状況になりましたために、やむを得ず四月二日の時点におきまして閣議に暫定予算の決定をお願いをし、暫定予算国会提出いたした次第でございます。  政府といたしましては、本予算が一日も早く成立し、この執行を早めたいことは今日もなお念願いたしておりますが、明後日に迫りましたそのような事情でございますので、まことにやむを得ないことでございますが暫定予算提出をいたしまして御審議を仰ぐことになった次第であります。  なお、この暫定予算が新年度になりましてから提出されました事情は、以上のような事情参議院の御審議を待っておったということでございますが、法律関係で申しますと、財政法三十条は「内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、これを国会提出することができる。」という規定があるのみでございまして、その提出の時期については言及しているところがございません。恐らく財政法そのものは新年度になってから暫定予算提出されあるいは議論されるという事態をこの立法当時想定していなかったものというふうに考えられますが、この規定だけでございますので、新年度に入って提出してはならないということは法律は申しておらないと思います。  このような現実事態になりまして、大きな恩給支払いがある、それに間に合わないような危険が現実になりましたので、そういう事態に対処いたしまして、政府が新年度になりましたが暫定予算編成し御審議を仰ぐことは財政法の精神に反していることではないというふうに考えております。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず最初、私に対するお尋ね国会審議あり方、こういうことでございます。これについては、国会でまさにお決めいただくことでございますので、とかくの論評をする立場にはなかろう、このように思いますが、確かに歴史的に振り返ってみますと、まずある時期とでも申しましょうか、三十一日というものがいわば議了の最終日である、こういう認識のもとに長らくそういう慣例が定着しておった時期がございます。しかし、一日ならどうだというので一日になりまして、二日になって、そうして四日になって、その理論的根拠は、五日の日は国会職員の給与の支払い日だ、そしてきょうのお話のごとく六日はいわゆる恩給支給日に当たる、こういうところでだんだんそういう形になってきておることは事実であります。  それから、これは二院制の問題でございますが、本院から参議院へ送るにつきましても、最初はいわば自然成立期間を具備した形で送るべきだ、それは異なった議決をなされることがあり得るからだ、こういう論理でありましたが、途中から異なった議決はなされないであろうという環境が招来しましてから、少なくとも自主的判断で一日ないし二日のいわば審議短縮を期待するという形で送るような習慣にだんだん変化してきております。いずれにしても、国会法そうして議事規則、それから国会で一番大きなのはお互いの話し合いの中でできる慣例、そういうものの積み上げが今日こういう事態になっておるというふうに今思っておるわけでございます。  したがって、旧憲法のごとく予算成立せざりし場合は前年度予算執行すべしという議論も山口書記長とこの場で行ったことがございますが、そういう憲法ももちろんございませんし、今大蔵大臣からお話のありました財政法暫定予算の問題に準拠して今日まで相談の中で、協議の中でこういう運営がなされてきておるということでございますので、やはり国会自身の問題はあくまでも各党間、そして国会自身協議の場で決められることではなかろうかというふうに考えております。
  9. 近藤元次

    近藤(元)委員 この問題は、執行部前例のないことにもかかわらず国民のためにやむを得ずやらざるを得ないというその背景は、また、我々の審議反省の材料もこの国会で得られたという感じがいたすわけでございますから、これ以上質問は続けませんけれども、やはり前例のないことを積み重ね、そうしてさらにまた前例のないことを積み重ねていくと、最終的には政治が不透明になって国民から政治不信を招く大きな要因になりかねないので、このことをあえて反省しながら御意見を申し上げたところであります。  今回の野党減税要求については政府はどのように考えておられるかということを一点と、我が党も減税については可能な限り減税に対して賛成をいたしたいところであります。ただ、本年度税制を根本的に何十年ぶりに改正をしようかという準備を今いたしておる我が党としても、その機会にすべての税を一括して審議をすることが最も妥当な手法ではないかということも考えておる立場で、今回の減税というのが政府が考えておる税制改革とどのように結びつくのであろうかということをお尋ねをいたしたいと思う次第でございます。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四月一日に行われました与野党国対委員長会談におきまして、自民党から、六十三年度減税の規模については、三月八日の与野党国対委員長会談合意及びこれに基づく政策担当者会議の対応を踏まえ、その範囲で誠意をもって対処する、また第二項の、野党要求した減税財源担当者間で引き続き協議をしていく旨の回答がなされたということを承知いたしております。したがいまして、この問題につきましては与野党間のお話し合いが今後とも行われるものと考えまして、政府としてはその推移を見守ってまいりたいと考えておるわけでございます。  政府立場は基本的にそのようなことでございますので、いかにあるべきかということについて本来先んじて政府が申すべきことではなかろうと存じますが、ただいま近藤委員減税というものを抜本的改革の全体像の中でとらえるべきではないかと言われました点につきましては、本来そのようになることが望ましいということは御指摘のとおりであると存じております。
  11. 近藤元次

    近藤(元)委員 税制改革の問題はいずれ本年度中にまたやる機会があるように予想いたしておりますので、その機会に譲らせていただきたいと思います。  前回の予算委員会終了後に、とりわけ、ここ佐藤農林水産大臣が渡米をいたしまして、日本の国を代表して農産物、牛肉、かんきつの交渉に当たられてまいりました。幸いにも昨日お帰りになり、きょうこの委員会に出席をしていただいておりますので、佐藤農林水産大臣、あの厳しい状況の中で本当に御苦労さまでございました。決して成果は完成をしたものではございませんけれども、所期の目的は、まずまず我々意にするところにこたえていただいた今日の経過でなかろうかと存じて高く評価をいたしたいと思うわけであります。  なお詳細につきまして農林水産大臣から、経過について国会を通して国民に御報告をいただければありがたいと思う次第でございます。
  12. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般アメリカに参りまして、牛肉、かんきつの問題について話し合いのテーブルづくりが大変おくれておった中で、二十九日から丸二日半協議を、交渉をいたしてまいりました。その模様を簡潔に御報告申し上げたいと思います。  もとより、私といたしましては、日本の農政、これを考える上におきまして牛肉、かんきつの自由化は困難である、こういうことを、その事情説明をいたしました。そして輸入枠拡大をベースとして現実的な対応をひとつ図ろう、こういうことで最大限の努力をさせていただきました。都合四回のヤイター代表との会談におきましては、残念ながらこのことについて合意をすることができませんでした。国民の中にこのことについて多くの方々が関心を持っておられるわけでございまして、この点について合意ができなかった、極めて残念に思っておるところでございます。  そういう中にあって、米側はガット手続はとりあえず進めるでありましょう。しかし、そういう考え方の中で日米間において、二国間において話し合い継続しようということを合意をいたしたわけでございまして、今後さらに精力的に話し合いを続けてまいりたい、かように思っておるところでございます。
  13. 近藤元次

    近藤(元)委員 御苦労されてきた大臣に、その経験を生かして、この一カ月間またさらに交渉を続けていかなければならないわけでありますけれども、とりわけ牛肉、かんきつ農家にとりましては交渉が延びれば延びただけまた不安がさらに延びることになるわけでありますけれども、その間における、大臣が行くことによって自由化でなければテーブルに着かないというものがテーブルに着いた、しかし一方では、大臣がテーブルをセットをされたそのさなかにガットに提訴をされたということに対しては極めて遺憾だという国民感情が、大臣が渡米中にそういう気持ちが非常に国内で沸いて上がったわけであります。  そのようなことを考えてみると、私は、政府全体で、総理、外務大臣にもとりわけ御努力をいただかなければならないことではないかと思うのは、近ごろ特に拙速的にアメリカが、日本バッシングのような感じで日本国民の感情を逆なでをしておる気がいたしてならないわけであります。東芝の事件につきましても、是非は別としても、小さなラジオを大きな男がでかいハンマーで、公式の場所で、いわばぶち壊すというようなことが起きてみたり、あるいは建設関連の業界に対して、民間に対してまでもその参入について強く迫ってくるというのも、極めて短時間の間に無理やりにも開放していかせようとする強引なやり方について、大臣が渡米中に、今申し上げたように話し合いをしようとしながら一方ではガットに提訴するようなことがあってみたり、このようなことは、日米間を基軸とする日本とアメリカの友好関係を心配する人たちにとりましては、この問題にかかわらない多くの国民が非常に心配をしておることで、日米間に亀裂ができるか否かということを、このことにつきましては政府を挙げてひとつ御努力をいただきたいと思うことの一点でございます。  そのことについて総理あるいは外務大臣でも御答弁がいただければ大変ありがたいと思うわけであります。
  14. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今問題になっておりますすべてを含めまして、私たちは、アメリカ政府は非常にいろいろと合理的に事を進めようと努力をしていてくれますが、議会の一部にあるいは今近藤さんが御指摘なさったようなジャパン・バッシングというやつがはやっております。これは遺憾なことであります。特に総理は、今、日米間は縮小均衡でなく拡大均衡でやりましょう、一件一件始末をしましょう、こういうことで、そうした意味合いにおきましては、今度佐藤農林大臣がお行きになられましたことも大変有意義なことで、いろいろと苦労は重ねられておりますが、日米間の問題はあくまで日米間で片づけよう、これが私たちの最大の方針でございます。特にガット問題に関しましては、もちろんアメリカにいろいろなことがあったと思いますが、ガット九十五カ国、理事会はすべてが理事会に参加できる、こういうような仕組みでございますから、一カ国でも反対すれば、これはそう簡単にパネル設置はできないということ等もありますが、こうしたことは一般論でございまして、それを今後どうするか、これはやはり農林水産省を中心として政府全対が考えていかなければならない問題でなかろうか、かように思っております。  特に議会におきましていろいろ包括法案のただいまは分科会の結論が出たようでございますが、これらに対しましてもアメリカ行政府そのものは懸命の努力をして、日米親善の大枠をつぶしてはいけない、こういう努力をしていただいておりますから、これに関しましても私たちは政府全体として、ぜひともそのようなことが将来にわたって日米間の大きな傷にならないよう努力をしたい、かように考えております。
  15. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 補足させていただきますが、アメリカ側がガットの手続を取り運んだ、私が渡米したときと時を同じくしたということにつきましては、私の方から、何でそういうことをするのであろうかということで不満の意を率直に表明いたしましたところ、決して荒立てるつもりでやったわけではない、こういう釈明があったことはつけ加えておきたいと思います。
  16. 近藤元次

    近藤(元)委員 今ちょっと質問の順序が悪かったのですけれども、私が外務大臣に答弁をいただいたのは、農産物だけのことではなしに、日米関係の国民感情というのがいささか、アメリカ側の交渉の拙速主義みたいな形やバッシングが厳し過ぎるというような感じで、日本国民がアメリカに対する従来のような好意を持ち続け得る限界のところまで来たのではないかという心配を実はいたしておるわけであります。  そういう背景の中には、何の交渉をしてもうまくいかない、こういう感じがしていくわけでありまして、とりわけ農産物なんかは国内の人たちの納得と理解を得なければ交渉の成果は上がらないものであるだけに、日米関係の亀裂を生じかねない今日の国民感情を可能な限り修復していただく努力をしていただけますかということでありましたので、このことはもう外務大臣のさっきの真意で理解をいたしたわけでありますから、もう堪忍袋の緒が切れてからでは手おくれになりますので、どうぞひとつ、政府を信頼しておる国民の今堪忍の時期に、ぜひこのことだけは政府を挙げてやっていただきたいと思うわけであります。  最後に、もう一度農林水産大臣に、今これからの交渉をこのテーブルで質問するのも少しやぼな話でありますし、答弁を求めるのもやぼな話でありますけれども、内容には私はこだわりません。パネルのセットを四月八日にするであろうという予測記事もたくさん出ておるところであります。しかし、結果して二国間協議を続けようという大臣の合意ができたことは、パネルの設置は相手側が見送るか、こちら側が拒否するかは別として、これは避けられることだ、こう思うのでありますが、大臣がこの後の交渉に当たってどのような決意で臨まれるかということは、多くの農家、農民の心配のことでございますので、この機会に改めて決意を表明していただき、とりわけここ数日来、日本のテレビで米の問題を大きく取り上げておるものですから、時を同じくして、また米農家が非常に自由化の問題で心配をいたしておるところであります。  このことの態度については、竹下総理を初めとする農林水産大臣も外務大臣も、時に触れてここで自由化は絶対にしないという決意表明をしていただいておるところでありますが、まだまだマスコミがそうは信じてないのか、何かしらそういうものが時を同じくして報道されるものですから、皆心配をいたしておりますので、最後に、これから交渉に臨む決意と、米の問題にも付言をして答弁をしていただければありがたいと思う次第でございます。
  17. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど御報告申し上げましたように、三月三十一日ぎりぎりの段階で日米間、二国間の協議を続けようということは合意したのでありますから、慎重にも慎重、そして一日も早く合意を得ることができるように全力を尽くさなければならぬと思っております。  なお、米のことについて触れられましたが、米のことについてはこのたびの交渉で話が出たわけではございません。言わずもがな、竹下総理からも、また私からもしばしば御答弁申し上げておりますように、米は完全自給をしていく、自由化はしないということば明確に改めて申し上げておきたいと思います。
  18. 近藤元次

    近藤(元)委員 いずれにいたしましても、自由化はしないという態度で決意をいたしておるところでありますが、しかし、最終的な結論は枠の拡大は最低免れないところでありますから、そのことも踏まえて、もう農家に、国内対策としても十分にスタートしていいのではないかと私は思うわけであります。そのことが結果して、言葉でなしに態度で出ていって初めてこの一カ月間の間に農家にもある程度の理解を求められることであって、殊に、今交渉中に国内の対策をしておることは、あたかも自由化を認めたという議論がなきにしもあらずであります。  しかし、いずれにいたしましても、この交渉の結果というのは結論的には枠の拡大であろう、なかんずく、自由化であればなおのことでありますけれども、結果はいずれにしても日本農家に打撃のある結論が出ることは間違いないわけでありますので、それを最小限度に食いとめるのは国内対策ということに相なるわけでありますから、どうぞその点にもひとつ、これから国内対策に対しての積極的な検討を始めていただきますようにお願いを申し上げて、私の質問を終わりにいたしたいと思います。ありがとうございました。
  19. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて近藤君の質疑は終了いたしました。  次に、村山富市君。
  20. 村山富市

    村山(富)委員 私は、暫定予算提出するに当たって、これまでにとられてきた幾つかの問題についてお尋ねをしたいと思うのです。  私は、総理はやはり暫定予算はできれば組みたくなかった、そういう考え方でこれまで終始をしてきたのではないかと思うのですが、暫定予算を組んで提出をせざるを得なくなった背景というのは、言うならば与野党の国対委員長合意事項が崩れた、ほごにされた、そこでやむを得ず暫定予算を組まざるを得なくなったということにあったのではないかと思うのですが、どうですか。
  21. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 村山さんおっしゃいますとおり、予算の空白は避けたい、これは当然のことであろうと思っております。そういう考え方のもとに期待をしておったということでございます。  ただ、今度の暫定予算そのものにつきましては、今も大蔵大臣から提案の理由の説明もあったわけでございますが、私はこの問題を、いわば与野党合意事項とかいう問題でそういうものが潜在的には存在しておったとしても、やはり空白を置いてはならないということから、参議院でたしか私が大蔵大臣のときでございますから六十一年度予算を通します際に、委員長発言されて、安田隆明委員長でございました、それに対して、暫定予算あり方について、以上の考え方を持って参議院予算委員会の決議とするというような、言葉はちょっと違うかもしれませんが、それにやはり準拠したら準備をしろと言われたところで十分な準備をし、そうして確たる見通しがつかない場合は素直にそれを提出して御苦労を煩わすというのが建前ではないかな、こういう感じで受けとめておるところでございます。
  22. 村山富市

    村山(富)委員 これは先ほども議論がありましたけれども、建前からすれば三月三十一日までに暫定予算を組んでそして議了し成立させなければならないわけですよ。  私はお尋ねしますけれども、先ほどお話がございましたように、財政法の第十二条で会計年度は独立の原則というのがあるわけです。これは、年度というのは四月一日から三月三十一日までですね。したがって、四月一日から三月三十一日までが年度であって予算の空白があってはならない、これは当然の話だと思うのですよ。きょうはもう四日ですから、仮にきょう衆議院で議了して、あす参議院で議了させれば五日間の空白期間があるわけです。こういう空白期間があるなんということば許されないことですよ。そうでしょう。こういう空白期間ができているということについて、総理はどういうふうに考えていますか。
  23. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに先ほどもお話ししましたように、空白期間のない、何といいますか習慣の時代があったと思います。あえて習慣と申します、国会話し合いで行われるわけですから。それが一日まではいい、二日まではいい、三日まではいい、四日まではいいという議論は、今おっしゃいます財政法の建前論からいえば、私も本当はすとんと気持ちが落ちないところでございます。それを私も国会の一員として許容してきたのだな、予算委員長もやった経験もございます。そういうことでもって、いつの日か本当は本格議論を一遍しなければいかぬなという感じはないわけではございませんが、しかし、今指名されて行政府立場にありますので、やはりこういう問題は国会で議論していただく筋のものだろうというふうに、自分自身の心は割り切っております。  それから、必ず出る議論として、財政法にあります十二月に予算提出するを常例とするというのも、十二月に提出したことば一遍もないわけでございますから、そういう点も本当はみんなが共通の疑問を持ちながら、みんなが心の中でみずからの心に妥協しておるのじゃないかな、私の体験上申しますと。  その辺は村山さん、本当にいい提言をしていただきましたので、本気に私は相談してみたいものだなと思っております。
  24. 村山富市

    村山(富)委員 いや、しかも新年度に入って暫定予算提出されたというのは戦後初めてですよ。戦後初めてですよ。これはあってはならぬことだと私は思いますよ。それは慣例として例えば五日まであるいは六日まであるいは七日までというようなことで暫定予算を組まずに了解していたかもしれませんよ。そういう慣例を重んずるなら、今回暫定予算を出す必要はないじゃないですか。そうでしょう。そうじゃないですか。これまでの慣例からすれば、与野党話し合い国会運営の中で、四日になり、五日になり、六日になり、暫定予算を組まずに本予算を議了して済ませたことがあるわけでしょう、今まで。(発言する者あり)
  25. 奥田敬和

    奥田委員長 静かにしてください。
  26. 村山富市

    村山(富)委員 ただ、今までなかったのは、新年度に入ってから暫定予算提出したというのはないんですよ。そこらについてどうお考えですか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げたことでございますが、確かに新年度に入りまして何日間か予算がないという状況はまことに異例状況でございまして、これが決していい状況だとは政府としても考えておらないわけでございますが、具体的にはこの六日になりますと二百万人に及ぶ人々に対する恩給支払いが行われなければならないということが長年の確立されたしきたりでございますから、したがいまして、この四千三百億円というものはいわばどうもやりくりでやるわけにまいらない。そう申せば、それまでの何日間かはやりくりでやってきたのかとおっしゃいますと、これはまことにそうだとも申し上げにくいことでございます、正直を申しますと。  そうでございますが、いかにもこの四千三百億円という金は国民の多くの関係者が法律規定によって受領されるのでございますので、何ともどうもそれ以外の方法がないという、両院で一日一日の、仮に暫定予算についての御協議を御審議をお願いするとしますれば、そのぎりぎりの日が実は四日と五日である、こういう状況になりまして、やむを得ず御審議を仰ぐこととなったわけでございます。
  28. 村山富市

    村山(富)委員 これは、ここで……(発言する者あり)ちょっと委員長委員長、これは答弁が聞こえないんだよ。
  29. 奥田敬和

    奥田委員長 不規則発言を慎んでください。(発言する者あり)
  30. 村山富市

    村山(富)委員 これじゃ、やめた。
  31. 奥田敬和

    奥田委員長 委員各位に申し上げます。質疑を静粛な中で続行してください。
  32. 村山富市

    村山(富)委員 この際、法制局長官にお尋ねをしたいと思うのですが、財政法三十条の暫定予算規定というのは、三月三十一日中に暫定予算議決成立しておくことを前提とする法意だというふうに思うのですね。言いかえれば、憲法上、財政法上は予算の空白を想定してない、これははっきり大蔵大臣答弁していましたけれどもね。したがって、新年度に入ってから暫定予算提出するなどというばかげた規定は当然考えておらなかったということにあると思うのですが、長官の解釈はどうですか。
  33. 味村治

    ○味村政府委員 先ほど大蔵大臣が御答弁になりましたとおりでございまして、暫定予算提出は、これは立法当時は新年度、新会計年度の開始前に提出するということを予想していたものと考えます。ただ、その新会計年度開始前に暫定予算提出いたしませんで、その後におきまして暫定予算をどうしても組まなければならない必要性がある、暫定予算をお願いしなければならない必要性が生じたという場合には、これはその段階に至りまして、新会計年度が始まった段階におきまして暫定予算提出いたしますことも違法とは申し上げられないと存じます。
  34. 村山富市

    村山(富)委員 いや、違法とかなんとかというのじゃなくて、この財政法三十条の解釈からすれば、この条文の法意というのはそういうところにあるのではないのか。だから、当然それは三月三十一日の年度内に暫定予算は議了しておくものだというふうに解釈していくべきだというふうに思うのですが、どうですか、その点は。
  35. 味村治

    ○味村政府委員 財政法規定によりますと、暫定予算は必要がある場合に提出するということになっているわけでございます。それで、新会計年度が開始いたしましてどうしても暫定予算をお願いしなければならないというときには、それを禁止するわけではないというふうに存ずるわけでございます。
  36. 村山富市

    村山(富)委員 いや、そうしますと、年度を越していつでも暫定予算を出していいということになるのですか。
  37. 味村治

    ○味村政府委員 これは、もとより、先ほど申し上げましたように、会計年度が新しくなる前にお出しするということが法律の予想しているところでございましょう。しかしながら、それが過ぎましても、先ほど申し上げましたようにどうしても暫定予算をお願いしなければ国政上支障が生ずるというようなときには、これは暫定予算提出するということは可能であるというふうに考えている次第でございます。
  38. 村山富市

    村山(富)委員 いや、これはここで議論してもしようがありませんけれども、やはり前提としては会計の独立原則、年度の独立というのがあるわけですから、だから四月一日から三月三十一日までしか予算はないのですよ。空白があるなんということは許されないのです、本当を言ったら。だから、暫定予算を必要とする場合には、三月三十一日までの年度内にやはり議了しておいてその穴を埋めるというのが当然で、空白を埋めるというのが当然であって、それは年度を越えて、そして空白期間ができてから暫定予算提出されるなんということはあってはならないことだというふうに私は思うのですよ。これは総理、そうでしょう。あなたはそう思いませんか。
  39. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いわゆる年度予算成立せざりし場合は、これは空白が生じないように三十一日までに提出し議了していただくというのが、これがあるべき姿だと私も思います。  今度はなぜかと申しますと、これは私自身も今まで何回か反すうしてみた意見でございますが、何となくの許容範囲というもので五日まではいいとか、それじゃ今までどうしておったかといいますと、今までは、最低限理事会で、主として参議院でございますが、理事会で議了の約束ができたという見通しの上に立って見送って出さなくて四日なり五日に成立させていただいた、こういう経験はございますが、今度の場合は、参議院の決議があり、院の決議があり、要請があって、そうして参議院理事会等におきまして何月何日議了するという約束ができていなかったということになれば、政府として、やはりぎりぎり期待権を持ってそこまでまいりましたが提出していくというのが、これが建前ではなかろうかというふうに思います。  それからもう一つだけ。必要とある場合、三十一日でない場合も今まで例がございますのは、暫定予算を二回出さなければいかぬような事態があったことがございます。確かに昭和四十七年予算か何かだと思うのでありますが。そういう場合は、二回出しましたから、三月三十一日という問題とは別に、本予算がずっとおくれてしまったという場合もたしかあったであろうというふうに思います。
  40. 村山富市

    村山(富)委員 これだけ議論してもしようがありませんから次に移りますけれども、冒頭に申し上げましたように、暫定予算をやはり組まざるを得ない状況になったというのは、与野党国対委員長会談合意事項がほごにされたというところに、国会運営に支障を来してそして予想に反したということが一番大きな原因だと思うのですよ。  私は六十三年の三月八日に与野党国対委員長会談合意した事項についてお尋ねしたいと思うのですが、総理はこれまで幹事長をやったりあるいは国会の役員をやったり何かしていろいろ経験が豊富なんですけれども、この各党の責任者である与野党国対委員長が会談で合意した事項、こういうものはどういうふうに扱われるべきものだというふうに考えていますか。
  41. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、与野党合意というものは重い重い意味を持つものである、行政府立場としてはいつでもそのことは素直に考えていなければならぬことだというふうに思っております。
  42. 村山富市

    村山(富)委員 今度与野党合意事項が守られなかった最大の理由はどこにあるかということを洗ってみますと、時間がないから端的に申しますけれども、自民党の渡部国対委員長は三十日の会談で、担当者協議の続行と同時に六十三年度減税規模については予算成立までに結論を得ると明確に答弁をして、合意しておるわけです。ところが、この合意を受けて開かれた政策担当者会議で、これは名字は一緒ですけれども、渡辺政調会長は、渡部国会対策委員長の言ったことはやれない、減税の額なんか言いようがない、それは国対委員長に決めてもらおう、こういうことを言って拒否しているわけです。国対委員長が責任を持って合意した事項、これが、かわって出た政策担当者の政調会長の答えは、そんなことば責任を持てない、知らない、やれない。これは一体どういうわけですか。自民党の国対委員長というのは党を代表しているものじゃないのですか。
  43. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 自由民主党国対委員長国会運営に関して自由民主党に対して責任を持つ立場にある、こういうことでございます。  それから、これは私から申し上げるべきかどうかと思いましたが、いわば結論を得るというようなものには、当然のこととして定性的な問題と定量的な問題というのが私の今までの経験上あり得たことであるとお答えをいたしておきます。
  44. 村山富市

    村山(富)委員 そういうへ理屈はともかくとして、この会談の中では明らかに減税の規模については予算成立までに結論を得るということで合意しておるわけですよ。ところが政調会長は、これはやれない、国対委員長に答えてもらえと、完全に国対委員長と政調会長は意見が違うのですよ。これは私は、だれがどうというのではなくて、それぞれが自民党を代表している者なんです。しかも公党間の約束ですよ、合意ですから。それが自民党内部の意見の違いによって崩れる。こんなことがありていいですか。これは言うならば、さっきからあなたが答弁されていますように、国会というのはやはり与野党話し合いでもって、いろいろ合意でもって運営されてきているのですよ。これが慣行になっているわけですよ。それを尊重するところに議会制民主主義が支えられている根幹もあるのですよ。それが、一方的に約束されたことが守られない。こういうことについては、私は、やはり党の総裁としてあるいは政府の責任者として責任を感じてもらわなければならぬと思うのです。どうですか。
  45. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会で指名を受けた行政府立場として国会そのものを論評するということだけは避けさせていただいておる、これは、長い間私はそれを言い続けてきております。ただ、経験談を申し述べろ、経験談を申し上げるならば、私も長い間大蔵大臣をやっておりまして、いわばこの結論というものはいわゆる定性的な問題と定量的な問題ということに尽きるではないか。両者の考え方が、国対委員長と政調会長の考え方が違っておりたとは私は思いません。
  46. 村山富市

    村山(富)委員 違うと思いませんと言ったって、それはもう明らかに彼はこう言っているわけですから。国対委員長の言ったことはやれない、無理だ、今まで詰めて合意を発表したが、頼んでやらしておいてさらに新しいことをやれと言っても無理だ、額なんか言いようがない、それは国対委員長に聞いてもらおう、こう言っているわけですよ。これは違いますよ、明らかに。  しかも、あなたは行政府と党と分けて言っていますけれども、最終的には八者会談が開かれて、そして大蔵大臣官房長官も出席をして、政府・与党一体のものとしてこの回答はされているのですよ。それをここで党と行政府とを分けて答弁するというのは、それは無責任じゃないですか。これは今の議会政治からいえば与党と政府は一体のものですよ。だから総理・総裁になっているわけでしょう。その総裁として、総理としての責任というのは当然問われるべきじゃないですか。どうですか。
  47. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 行政府立場というのは長い間そういう答弁に定着しておりますから、あえてそれを申し上げるわけであります。したがって、私の経験に基づいてという前提で申しますならば、例えば昨年度の臨時国会における減税の一兆五千四百億という問題につきましても、いわば野党の専門家の皆さん方とお話ししまして、そうしておよそ自然増収がどうなるであろうとかそういう見通しをつけて財政家の良心として数字を出す、こういうことでございます。もちろん秋の時点でございましたが。したがって、今日、お返事申し上げます、こう申しましても、それがいわゆる定量的な返答というものはできないだろうというのはおよそみんなの常識の中で消化され得る問題ではなかろうか、こういうふうに私は考えております。
  48. 村山富市

    村山(富)委員 いずれにいたしましても、今度の与野党合意事項がほごになった責任は、さっきから言っておりますように、それは明らかに、国対委員長が申しわけないと謝っているのですから、だから今後の議会運営については挙げて自民党・政府に責任があるということだけは申し上げておきます。  次に、先ほど御質問もございました牛肉、オレンジの日米交渉の問題についてお尋ねしたいと思うのです。  さっき農林大臣から日米交渉の経過については若干御報告がありましたけれども、具体的に、日本がなぜ自由化に対して受け入れられないと言って反対の態度をとっておるのかということについてアメリカの理解が得られないところに問題点があるのじゃないかと私は思うのですよ。どこに一番大きな日米間の食い違いがあるのか、理解の違いがあるのかということについて、もしわかれば御答弁をいただきたいと思うのです。
  49. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほども答弁をいたしておりますように、日米間の違いというものは長きにわたっておるわけでございます、この牛肉、かんきつについては。これはもう御案内のとおりでございまして、とにかく三月三十一日ぎりぎりの段階までに理解を求め合おう、こういう姿勢で、友好国でありますから平和的に話し合いをしたい、こう思ってテーブルづくりを進めてきたけれどもそれがなかなかできなかった、やっとでき上がった、そして二日半における会談の結果は、その点については自由化は困難であるという点については理解を得るに至らなかった、まことに残念である、しかしとにかく決着はつけなければならぬのでありますから、多くの方々が先行き不安に思っておられるわけでございますから、これをひとつ何としても平和裏に進めよう、解決しよう、こういうことで話は継続しようということで一たん中継をした、これだけのことでございます。
  50. 村山富市

    村山(富)委員 交渉は物別れになったわけですが、二国間の協議はこれからも継続されるということになっているわけですね。これからの推移を想定してみるわけですけれども、八日のガットの緊急理事会でアメリカはパネルの設置について要請する。――聞こえないでしょう。  これからの牛肉、オレンジの扱いについての推移を想定してみますと、八日にアメリカはガット緊急理事会に対してパネルの設置について要請をする。ところが、これはさっきお話がございましたように、一国が反対すればそれはできないわけですから、日本が不満を述べればそれはできないかもしれませんね。しかし、いつまでもそれを引き延ばすわけにはいかぬでしょう、その次の五月のガットにはこれはまた出てくるでしょうからね。そうなってまいりますと、こういうアメリカのガットに対する動きとこれからの二者間協議とはどういう関連で歯車が回っていくのか、それからいつごろこの日米の二国間協議交渉というものは、そういう日程を想定しながらなされていくものなのかというようなことについて、今後の日程や見通しがあればちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  51. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 四月八日の臨時理事会で米側がパネル設置を要求することが予想されますけれども、しかし、三月三十一日に、二国間で話し合い継続しようということになっておるわけでございますから、今までいろいろな方々がいろいろな形で、また私自身もアプローチをかけてまいりましたが、その足跡に徴してこれから判断することである、こういうことでございます。
  52. 村山富市

    村山(富)委員 話し合いが全然なければ、アメリカは八日にはやはり出すと思うのですよ、これはそう言っているわけですから。そこで、それをさせないために二国間協議をやっていこう、こういうことなんでしょう。ガットで正式にパネルが設置をされるまでに、何とか二国間協議で決着をつけたいというのが日本の考えじゃないんです
  53. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 五月四日にパネルの設置が予想されるということは、予想としては私もわかりますけれども、三月三十一日に、パネル設置云々の前に、二国間で継続してきた話をさらに継続しようということになっておるわけでございますから、そのとおり申し上げておるわけでございます。
  54. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃ角度を変えてお尋ねしますが、アメリカは牛肉、オレンジ自由化のおくれの代償として、農業二十四品目の関税引き下げを要求しているというように言われておるわけですね。これは日経新聞に、具体的にこの米国の代償要求リストというのが出ています。こういう事実があるのかないのか、もし事実があるとすれば、こういうものに対して日本はどう対応していくつもりなのか。
  55. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 今回の会合等を通じまして我が方が我が方の主張を主張する中で、アメリカ側はまたアメリカ側の考えについての主張なり説明を我が方にいたしたところでございます。その中で、例えばアメリカが考えている自由化というものはどういうものか等々、あるいはまた我々がこれができないといういろいろな話し合いの中で、いろいろな話が出ておることは事実でございますけれども、これらの点につきましては、なおこれからも話し合いを続けるということでございますので、個々の具体的な点につきましてはコメントを差し控えさせていただきたい、このように考えております。
  56. 村山富市

    村山(富)委員 そうすると、こういう関税引き下げの代償要求というのはあっているわけですね。
  57. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 今申し上げましたように、アメリカ側からの考えとしていろいろ向こうの考えが提示されておるということはございますけれども、その中身についてはコメントは差し控えさせていただきとうございます。
  58. 村山富市

    村山(富)委員 そこで、一応これまでの日米交渉の経過を見るとき、これは日本国民が全体としてそう受けとめておると思うのですが、アメリカの交渉事の態度というのは極めて強圧的である、こういう態度はまことに遺憾であると言わなければならぬと思うのです。特に新聞の報道なんかを見ますと、例えば自由化後も関税を上げるべきではないとか、あるいは国内対策として輸入課徴金でなく不足払いにすべきだとか、こういう日本の国が自主的に決めることをあたかも指図をするような、そういうおせっかいであると言わなければならぬようなことまで言っておる、こういう態度も私は極めて遺憾だと思うのです。  同時に私は、この際日本が世界で最大の食糧の輸入国であること、しかもサミット参加国の食糧自給率等を見ますと、これは日本が最低なんですよ。どこの国でも自給率を維持するために、農業に対して保護政策をとっていることはこれは間違いないわけですから、こういう世界の実態というものをもっと踏まえてもらう必要がある。同時にアメリカ自体も、日本に自由化を求めながら、その自由化を求めている品目まで輸入制限をしているわけでしょう。こういう実態というものをもっと私は明らかにすべきだと思うのです。  これは私は、国民の前にやはり明らかにする必要があると思うのですよ。これは単に生産者だけの問題じゃないのです。安全性の問題も含めて、安定的な食糧が供給されるように、消費者も期待して自由化には反対しているのです。こういう実態というものを私はしっかり踏まえておく必要がある。そのために国会でも、自給率に関する国会決議をしているじゃありませんか。私は、これからもあくまで自由化を拒否して、協定の更新にとどめるだけに努力するということが必要だと思うのですが、あくまでも自由化を拒否するという態度には変わりはないかどうか、この点を確認したいと思うのです。
  59. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、平和的に話し合いで解決をしようということを申し上げているのでございます。  新聞報道、これを引用されましたが、新聞報道について一々私はここでコメントはいたしません。なおまた、国会決議につきまして言われましたけれども、立法府のされることについて私が口を差し挟むべきではない、こういうことでございます。お互い、今日まで長い間かかってきた交渉経緯でございますから、いろいろないら立ちはあるでしょう。私も、ここまで来ておるけれども、それでも自分に言い聞かせて冷静に対応しよう、こういうことは前の予算委員会でも申し上げたとおりでございます。
  60. 村山富市

    村山(富)委員 日本国内の全部の農民が心配しているのですよ。不安に思っているのです。一体どうなるのだろうか、そういう農民の不安に対して、心配に対してこたえていくのは日本政府の責任じゃないですか、国会の責任じゃないですか。私は、そういう意味で聞いているのですよ。単なる新聞報道を盾にとって言っているわけじゃないのです。こういう実態にあるじゃないか、だからこれまでも、これからも農民に不安を与えないように、日本政府としてはあくまでも自由化は拒否していくという態度に変わりはないか、こう聞いているわけです。
  61. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 前の予算委員会でも申し上げておりますとおりに、私自身は平和的に解決しよう、そして農政とのかかわり合いについては、この国際化の世の中で孤立をするようなことがあっては日本国全体にとってどうなることかな、しかし、もちろん我が国の農政あるいは地域農政に禍根を残さないように、私は農政の責任者としてちゃんとしなければならないと申し上げているのでございます。
  62. 村山富市

    村山(富)委員 総理総理の決意とお考えだけ聞きたいと思うのです。
  63. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 政府・与党一体となって、この交渉の最高責任者たる佐藤農林水産大臣をバックアップしようということを決定いたしております。したがって、私の決意は、佐藤農水大臣がお答え申し上げたと同一であります。
  64. 村山富市

    村山(富)委員 これは、もう別に質問するようなことではありませんから申し上げておきますけれども、総理、それこそまたこれは新聞報道を見ますと、こういうようなことが書いてあるのです。「選挙をにらみ農村部に配慮」、だから自民党が拒否して強腰になっておるのは選挙のためだというふうに報道しているわけですよ。妥協論は票に影響と各社皆書いてある。  私は、少なくとも牛肉、オレンジの自由化の問題なんかは、さっきからるる説明しましたように、単に生産者だけの問題じゃないのですよ、国民全体の問題ですよ。これから日本の食糧の自給をどうしていくかという問題なんですよ、ある意味からしますと。これを単なる選挙のために利用するとか、あるいは党利党略でやるとかいうようなことがあっては断じてならない。これはやはり与野党一体となって、むしろ国民の声を反映して、日米交渉が成功するように、うまくいくようにやらなければならぬ問題だというふうに考えているのですよ。私は、そういうものであるということを厳に指摘しておきたいと思うのです。これは答弁は要りません。  そこで、次にお尋ねをしておきたいと思うのですけれども、これは、総理が佐賀に行って記者会見でも言っておりますけれども、やはりこれからの日本の農業というのは、国際化に対応して競争に勝てるような体質を持った農業をつくる必要がある。これは、自由化の問題と食糧の自給率をどの程度まで維持するかということは別個の問題ですよ。さっき言いましたように、どこの国だって食糧の自給率を高めているわけですから。日本は穀類は三〇%でしょう、一番低いのですよ。そこで、自由化とはもちろん関係がありますけれども、日本の食糧の自給率をどこら辺の水準まで高めていくことが大事か。これはやはり私は、これからの日本農政の基本でなければならぬと思うのですよ。それは一体どうなんですか。
  65. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど委員もちょっと触れられましたが、委員から言われるまでもなく、私どもも再々答弁をいたしておりますように、主要食糧は自給をしていかねばならぬ、足らざるところは安定的な輸入体制、もちろん安全問題も、先ほど触れられたとおり、言われるまでもなく、厚生省と連絡をとりながら、安全な食糧を供給するという責任は政治の責任であり行政の責任である、こう心得ておるわけでございます。  そういう中にあって、自給力というものをもっともっとつけていかなければならない。そこには、もう話をすれば長くなりますけれども、担い手の問題もある、いろいろな問題があるわけです。そういうことを総合的に考えながらこれからの農政を進めていく。その基本は、農政審議会から答申をいただいておる。それはしかし抽象的ではございますから、それをもとにしていろいろ勉強を進めながら、そして将来を具体的に展望し、一つ一つ丁寧に取り運んでいくということで私どもは責任を負わなければならぬ、こう申し上げておるわけでございます。自給率がどんどん下がってくるではないか、これ以上下げてはならぬということで、全力を尽くしておるところでございます。
  66. 村山富市

    村山(富)委員 これは、ここで議論してもなかなか難しい問題だけれども、さっきから言っていますように、そういう抽象的な観念論だけでなくて、日本の食糧というものを、今は穀類は自給率約三〇%でしょう、どの程度まで自給率を維持することが国の方針として必要なのかというようなことは、設定しなければならぬと私は思うのですよ。そして、その自給率を維持するために日本の農業はどうやっていくか、足らざる分はどう輸入していくか、これがやはり農政の基本でなくちゃならぬと私は思うのですよ。その自給率の基準もなくて、ただ行き当たりばったりでやるような格好では、農政はないと私は思うのです。それが今までの日本の農政の一番欠陥だったと思うのですよ。そこらについては総理、どうお考えですか。
  67. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほども申し上げましたことについて、抽象的だとおっしゃいますが、私は具体的に答えたつもりであります。  自給力をつけなければならない。自給率は、今おっしゃるように、えさを含めますと自給率は三二%程度になる、これを割ってはならないと申し上げているわけでございますから、具体的に言っているわけでございます。具体的でございましょう。どうぞ御理解を賜りたい。
  68. 村山富市

    村山(富)委員 いや、国会の決議というのは、自給率を高めるという決議なんですよ。今の三二%を維持するという決議じゃないのですよ。その点は、私はやはりしっかり踏まえなきゃならぬと思うのです。もうこれは時間がありませんから議論しませんけれども、それだけは申し上げておきます。  そこで、もっと具体的に聞きますけれども、これは、八品目についてはもう既に自由化は決まっているわけですね。これが日本の農業に与える影響というのは極めて大きいのですよ。しかも、例えばパイナップルは沖縄とか、それから、でん粉やら乳製品は北海道とかいうふうに、地域的に非常に偏在している。したがって、地域経済に与える影響というのは極めて深刻なんですよ。それだけに、これからそういうものに対してはどう対応していくかということは、非常に大事な問題になると思うのです。  そこで、例えばそうしたことが品目ごとにどのような影響を与えていくのかという調査も必要でしょう。同時にまた、この自由化実施の時期、可能な国境措置あるいは国内生産農家の救済対策といったようなものも、具体的に考えていかなきゃならぬと思うのですよ、そういうものについて一体どうするつもりですか。
  69. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今申されましたことは、この委員会においてもしばしば私から答えていることであります。そこに、検討委員会、プロジェクトチームというものを二月一日に発足をさせ、そして鋭意検討を進めさせておるところでございます。
  70. 村山富市

    村山(富)委員 これから検討するということですね。
  71. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 検討をさせているところでございます。進行中でございます。
  72. 村山富市

    村山(富)委員 それではお尋ねするけれども、どういう具体的な問題について検討しているのですか。
  73. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今この途中にあって、報告すべき状況にはございません。もう少しコンクリートしてから、当然のことながら示すべきものと考えております。
  74. 村山富市

    村山(富)委員 それでは、いつごろまでに明らかになるのですか。
  75. 眞木秀郎

    ○眞木政府委員 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、このプロジェクトチームにおける検討、その最中でございます。  この問題につきましては、米国初め当事国の関係もございます。そういう国々とも、すり合わせと申しますか、経過の中で理解を求めながら、円満にそういう話をつけつつ、国内対策あるいは国境対策についてきちんと対処していきたい、このように考えているわけでございます。  具体的な時日については、できるだけ早くということで進めておりますけれども、もうしばらく時間の猶予をいただきたい、このように考えております。
  76. 村山富市

    村山(富)委員 私は、農村の現状というのは、もっと深刻に受けとめて考えてもらう必要があると思うのです。  そこで申し上げておきますけれども、例えば、国際化に対応して日本の農業をどう競争に勝てるような体質にしていくかということのためには、あらゆる角度から努力していく必要があるし、農民にも頑張ってもらう必要がある、これはもう申し上げるまでもありませんね。ただ、これは自然環境を相手にするだけに、おのずから限界があるのですよ。そこで、やはり何らかの保護政策が必要なんだと私は思うのです。  そこで、現状を考えた場合に、これは先般この委員会でも問題になりましたけれども、例えば農機具や肥料、農薬、こうしたものを見ると、外国に輸出される価格と国内で販売される価格とは相当に違いがあるのです。言うならば、外国に安く輸出するために、日本の農民は高く買わされているわけですよ。こういうことで農民は犠牲になっているのです。同時に、自由化がこれだけ要請される背景には、アメリカが理不尽と思われるような強引な持ち込みをしているのも、工業製品による貿易黒字というものがやはり背景にあるからだと思うのです。そういうことから考えますと、日本の農業というのは、二重にも三重にもある意味では犠牲になっていると言わなきゃならぬと思うのですよ。  こういう一点を考えた場合に、もっと生産性を高めてコストダウンを図っていくためには、やはり農機具や肥料や農薬といったようなものの価格差も解消する必要があるというふうに思うのですが、そういう点についてはどうですか。
  77. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生の御指摘の資材等の問題でございますが、この点につきましては、農政審の答申に基づきまして今後足腰の強い農業を遂行し、コストダウンを図るための喫緊の課題だというふうに農林水産省としては考えております。この点については、委員会におきます農林水産大臣の所信表明においても明確に言明しているところでございます。  なお、これにつきましては、例えば肥料等につきましては、具体的な需要者であります全農と肥料メーカーとの間の交渉というもので行われておりまして、先生御案内のとおり、過ぐる円高等々のことも含めまして、農家の中に安い肥料等々を供給すべく値下げを行ったところでございます。さらにまた具体的な問題等につきまして、もちろん、例えば肥料を例にとって申し上げますと、日本におきます肥料の形態あるいは包装の問題等々ございますが、そういったときにおきまして農家がいろいろ外国のものを供給してほしいという声があった場合におきましては、全農におきましてもそういう道を開くというようなこともしておりますところでございまして、今先生の御指摘のとおり、農業の生産性の向上を図りあるいはコストダウンを図るためには、資材費の低減というものが重要な課題であるというふうに認識しているところでございます。  なお、この点につきましては、農林水産省といたしましては、関係各省と十分連絡をしまして対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  78. 村山富市

    村山(富)委員 時間がありませんからもうこれ以上申しませんけれども、ひとつ答弁に立つ農林大臣の元気な姿で、農民の期待を裏切らないように最後まで頑張ってくださいよ。  次に、ココムの問題について端的にお尋ねをしておきたいと思うのです。  アメリカの議会の両院協議会は三月三十一日、包括貿易法案の中に、ココム違反を理由として東芝機械に対する三年間の輸入禁止、親会社である東芝に対しては三年間の米政府との契約禁止を盛り込むことで合意したということが報道されています。ココムそのものに重大な問題があるものの、東芝機械に対しては既に国内法で処分が決定している。にもかかわらず、条約も協定上の根拠もなしに米議会がこのような一方的な制裁法案を画策することは、私は許されないことだと思うのです。  政府は、米国議会政府に対して制裁条項の撤回を厳しく申し入れるべきであるというふうに思うのですが、この点についてはどういうお考えですか。
  79. 田村元

    ○田村国務大臣 これは村山さんのおっしゃるとおりでございます。  そこで、申し入れるべきであるという御意見でございますが、もう長い間この問題につきましてはしつこいほどに我々申し入れをいたしております。ただ、議会は、これは日本でもそうでございますけれども、議会の特殊性、自主性がございますから、我々としては政府間交渉ということになります。先般、日米首脳会議のときにも米政府側から、こういうものが通ることは阻止しなきゃならぬが、もし仮にこういうものが通ったとしても、いわゆる保護主義色の強いものが通った場合においては、米政府としては拒否権を発動するというような保証を日本側に与えておるというようなこともございます。  でございますから、私どもとしては、今おっしゃったように国内法で処罰すべきものである、それを第三国から制裁を食らう、あるいは妙な立法をするということはココムの精神そのものにも違反しておるわけであって、またココムの結束にひびが入りかねない問題でありますから、そういう点では我々も厳正な対応をしていかなきゃならぬと思います。ただ、議会議会でございますから、我々は政府間同士でいろいろと話し合っておるということでございます。
  80. 村山富市

    村山(富)委員 次に、総理は、この国会における予算委員会審議その他の委員会においても、大型間接税問題の議論については実にあいまいでうやむやな問答をしているわけですよね。それは、今政府税調でいろいろ諮問をして審議をしてもらっている、だからそれとの兼ね合いがあってなかなか思ったことが言えない、また差し控えておる、これは予見を与えてはいかぬとしばしば言っていますけれども、しかし、具体的にもう政府税調は素案を発表して、そしていろいろ議論を提示しているわけでしょう。その政府税調で議論をしているから国会の議論はなかなかしにくいというようなことになったのでは、私はやはり国会審議権が侵されると思うのですよ。  そこで、この中身について突っ込んでは聞きませんけれども、これからもう秋に臨時国会を開いて税制改革がやられるだろうということは、大体大方見ているわけでしょう。そこで、私ども、この際政府は一体どういうふうに考えているのか、今後の税制改革のスケジュールについてあなたの見解を聞いておきたいと思うのです。
  81. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今かなりの理解をお示しいただいての御質疑でございますが、政府としては、税制調査会へあるべき税制の姿についての御諮問を申し上げておる、したがって、予見を挟むことは可能な限り差し控えたい、だから御質問に対して、従来の税制調査会で毎年毎年答申いただいておるわけでございますが、その範囲内での考え方を述べるというように自分なりに気をつけておるつもりでございます。そうして、一方、国会の論議は正確にその都度税制調査会の方へお知らせする。これはきちんとそういう措置をとっておるわけであります。  したがって、税制調査会で先般たたき台等が出されたということは私も承知しておりますし、さらに公述人の会でございますとか、公聴会の第二ラウンドとでも申しますか、そういうものも予定されておるというふうに承知をしておりますので、やはりそれらの経緯を見て、答申をいただいた段階でもって正確に今後のスケジュールについて申し上げるべきであろう。これだけ税の問題が議論されておりますから、私もゆっくりやってくださいとか、そういう考えはございません。がしかし、税制調査会に対して期限を付すというのは非礼でもございますので、したがって期限は付していない。  今村山さんがいみじくも秋にはという表現でございましたが、そういうことが一般に大体そうなっている、あるいは村山さん自身もそれに賛成していただいておるというふうに受けとめるほど失礼はいたしませんが、しかし、そういう環境をも踏まえてこれから対応すべき課題だなというふうに考えております。
  82. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がありませんから、私は明確に申し上げておきますけれども、誤解があるといけませんからね。これはたびたび我が党が言っていますように、もう国会決議もありますし、それから政府の統一見解もあるし、選挙の公約もあるわけです。こういうものを踏まえた場合に、大型であれ新型であれ間接税の導入をするような税制改革をやろうとするならば、当然その前に解散をして信を問うべきだというのが憲政の常道だということばもう申し上げるまでもないわけですから、そのことは強く申し入れておきますよ。これは誤解しちゃ困る。  それからもう一つは、やはり今度の合意事項が崩れたのも、私ずっと見ておりますと、政府は今度の税制改革の課題に、不公平税制を是正したい、こう言っているんですよ。言っているけれども、本気になってやる意思があるのかどうか。本気になってやる意思があればこの合意事項は守られたと私は思うのですよ。そこで、本気になって不公平税制の是正をする意思があるのかどうかということをもう一遍確認しておきたいと思うのです。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来から、不公平感が生じませんような税制の確立並びに執行につきましては注意をしてまいったつもりでございますが、今回また税制抜本改革について、国民の中から殊に不公平感が強いということの御批判が強く出ていることを私どもはよく知っております。税制調査会におきましても素案の中においてその点を述べられておりまして、私どもとしては、この不公平感の是正というものについては、最善を尽くしてこれを税制並びに執行面で実現をいたしたいと思っております。
  84. 村山富市

    村山(富)委員 私はこの予算委員会で、政府が、今の税制の中での不公平税制についてどういう項目を検討しているのかという質問をして資料をいただきましたよね。そういう項目について鋭意検討しているというふうに理解していいのですか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  86. 村山富市

    村山(富)委員 私は、前段において今やらなきゃならぬことは、国民が一番期待している不公平税制の是正を徹底してやる、これは国民が納得できるような結論が出るようにやっていくということが前提だ。そして税制改革の次の項目には、老齢化社会に対応、こういうのがあるでしょう。ところが、先般も申し上げましたように、老齢化社会というのはまだ二十年、二十五年先なんです。今から準備をすることは大事ですよ。先般資料をいただきましたけれども、あの資料は、現行制度を維持した場合に二十年後は負担がどうなるか、二十五年後はどうなるかという資料なんですよ。  ところが、年金も一元化の方向は決まっておるわけでしょう。医療も一元化をするという方向はだんだん審議されているわけでしょう。ですから医療も年金もこれから改革されていくんですよ。いいですか。だから、高齢化社会が到来した場合に医療のあるべき姿というのはどうなっていくのか、今の制度を守るんじゃないですよ、変えていくんだから。そして年金の給付水準というのはどういう状況になるべきかという絵をかいて、ビジョンを描いて、そのときの財源負担は一体どうするのかということを想定してこれから議論していくということは大事なことだと思うのですよ。だから、老齢化社会に対応して準備をしていくというのはそういうことが先行して議論をされていく、そして国民の納得を得るような議論をしていく、だから二年も三年も必要ではないか、その期間を置いてやるべきではないか、私はそう思っておるわけです。  もしあなた方が言うのなら、老齢化社会に備えて社会保障費の負担がうんと要るわけですから、むしろその財源を今からためていく、貯金していく、そして対応していくというのならまだ話はわかると言うのですよ。そんなことはないでしょう。これはさっきから議論していましたように単年度予算ですから。ことし入った金はことしで使うというのが会計のあれですから。ですから今仮に来年から間接税をやった場合に、その間接税の財源は毎年使っていくわけでしょう。老齢化社会が来たらもっと負担を多くしなければ賄えぬことになるじゃないですか。そこらの点はどういうふうに理解したらいいのですか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府におきましても各種審議会におきましても、将来における福祉の給付と負担の関係についてはいろいろの検討をいたしておるわけでございますけれども、おっしゃいますように、きちんとした将来への展望を政府が決定しているという段階にはまだなっておりません。  それは一つには、やはり長期の経済計画というものが本質的に非常に難しいということにも関連があろうと存じますが、先般資料でお目にかけましたように、給付と負担の関係は結局国民の選択にまつわけでございますが、しかし、今の社会保障の水準をこれ以上さらに下げるというようなことについてはなかなか国民の側にもいろいろ抵抗がおありであろうということを一応頭に置きながら、せんだって厚生省と大蔵省の間で試案をつくってお目にかけたわけでございます。  確かにあれはおっしゃいますように、現行の制度を前提にしてのことであろうと言われまして、そのとおりでございますが、実はそのような機械的な計算をするしか今としては政策決定がございませんので、あれよりさらにいわば有権的な資料を出すということがどうも困難であったわけでございますが、それにいたしましても両省の間でそういう作業を、機械的な計算ではございますが、実は初めていたしてみたわけでございます。  その結果としては、現行制度がある限り、この延長線で考えます限り、社会保険と租税との合計の負担は大体二〇〇〇年には今より五ポイントぐらい上昇するであろう、二〇一〇年にはさらに今から一〇ポイント上昇するであろうというような試算が出まして、これはやはりそのときに人口が老齢化していることを考えますと、いわばより少なくなる生産年齢人口が老人のためにしょわなければならない大変な負担になるということをいわば機械的な計算でごらんに入れたわけでございます。しかしその際にも、経済成長、GNPの将来の計数を政府は持っておりませんから、仮の計算として四%ないし五・五%といたしたようなわけでございます。  そういったようなことで、もう一つ明確に今から十何年先の社会保障の給付と負担の関連をつくれと言われましても、なかなかそれが、今一元化の方向に向かってはおりますけれども、計数的にまだお示しできる段階になっていない。ただ、そうかといって、そのような老齢化の社会はまだ先のことというわけではございませんで、進行しつつ、もうあと十二、三年で二〇〇〇年になるというのが事実でございますから、今からそのためのことは、やはり税制改正も四十年近くで初めてここでいたします。過去三十何年、少なくとも十何年の将来、その展望は持った中で今いたすべきではないかと考えておるわけでございます。
  88. 村山富市

    村山(富)委員 それは具体的な細かなところまではかけないと思うのですよ。だけれども、やはりこれから二年かかるか三年かかるか知りませんけれども、ある程度の展望を与えて、そして財政負担、財源がこれぐらい要る、その財源について国はこれだけ見るから国民の皆さんにこれだけ負担してもらいたい、こういう話ならそれは素直に聞いて納得すると私思うのですよ。だけれども、そんなものは全然なくてやれといったってそれは無理ですよ。だから私は時間をかけて審議する必要があると思うのです。  この際、厚生大臣に聞きますけれども、医療の一元化の問題やら年金の一元化の問題というのは、どういう考え方でこれからどう進めていくつもりですか。
  89. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 この問題は、六十一年にお示しをいたしました高齢者対策企画推進本部報告でお示しいたしておるわけでございますが、昭和七十年を目標に年金も医療も一元化の方向を目指しておるわけでございます。
  90. 村山富市

    村山(富)委員 一元化の方向を目指していることはわかっているんだけれども、どういう考え方で一元化の方向を進めているのですか、こう聞いているわけです。
  91. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 考え方でございますけれども、これからの高齢化を控えまして、負担も給付も国民公平でなければいかぬということで、公平化の見地から一元化なりあるいはそういった措置をとっていこうということでございます。したがいまして、年金については七十年を目途に一元化をいたしますけれども、その際、給付あるいは負担が国民公平になるようにということで年金制度を設計していこうということでございます。手順的には、近く年金の財政再計算をいたしますけれども、そのときに当たりまして、できるだけ一元化を目指した地ならしをしていく、それから七十年の一元化につないでいくというのが考え方でございます。  それから医療の方は、六十年代の後半できるだけ早い時期に負担と給付の公平化を図るということで厚生省の施策を明らかにいたしておりますけれども、手順といたしましては、今回国保の改革をお願いしているわけでございます。そして次には老人保健法、この前成立のときに六十五年までにもう一回見直すようにという修正の条項が入っておりますから、そういった形で国保見直し、老人保健制度を見直しながら、国民の全体の負担と給付を国民のコンセンサスを得ながら内容的に固めていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  92. 村山富市

    村山(富)委員 だから、そういう医療や年金の一元化の作業を進めておるその延長線上に、高齢化社会を展望しながら医療はどうあるべきか、年金はどうあるべきかということを描いていくんでしょう。ですから、そういう素材を提供して国民的な議論をつくっていく、そして国民的な合意を得ながらやっていかなければ、これは負担をしてもらうことなんですからね。ですから、今は何もなくて、そして高齢化が来るから負担が要る、金が要るんじゃ金が要るんじゃというようなことだけでは納得しないと私は思うのです。そういう意味で申し上げているわけですから、私はやはりそういう扱い方をすべきだというふうに思いますから、そのことを強く意見として申し上げて、この際総理の見解も聞いておきたいと思うのです。
  93. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先ほど大蔵大臣からもお話があっておりましたが、将来の想定した問題につきましては、従来も、現行の施策、制度そのままに置いての推計、こういうことはよく御要請に基づいてお答えしてきておりますが、今村山さんがおっしゃったので、かつての経験からいたしますと、私は、年金一元化の一番はしりのところで各党の専門家の皆さん方に二カ月ぐらいかかっていただいて年金問題が構築された。我が党の人で申しますならば、今参議院にいらっしゃる田中正巳さんがたしか座長格でございましたが、そういう積み上げというようなものが将来の展望を示すのにいかにも議会制あるいは政党政治らしいやり方であったのかなと、お話を聞きながら、今までの体験で、与野党合意でやや構築された論理にはその問題があったな。したがって、今おっしゃった議論は一つの見識でございますから、私どももとかく党利党略だとか先ほど来議論がございましたが、そういう形でなしに、シャドーキャビネットができたりしましてこの真摯な議論が行われることは好ましいことだ。しかし、体制側にあります与党たる我々が、いつでも七割の批判は受けてもいい、この姿勢は持っていなければいかぬというふうには思っておりますが、そういうような議論の積み上げというのは好ましい姿だと私は思っております。
  94. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がありませんから、次へ移ります。  先般、高知県の学芸高校の修学旅行生が中国旅行中に上海で痛ましい列車事故があったことはもう御案内のとおりです。私はこの際、心から亡くなった方々の御冥福を祈りながら、遺族の方々または負傷された皆さんにお見舞いを申し上げたいと思うのです。  伝え聞くところによりますと、遺族会が結成をされまして、これから中国との事故に対する補償交渉が行われるというようなことが報道されておるわけですね。これは国際間の問題ですし、余り例のないことだと思いますから、大変難しいのではないかと思うのです。ただ、中国が大変誠意ある対応をしてくれているということも新聞で報道されておりますから、その点は余り不安はないと思うのですけれども、これから交渉する際に、例えば日本と中国では所得の格差が相当大きいですね。こういう格差はどんな扱いになるのか。  あるいは国際間で何か基準みたいなものがあって、そして補償が算定されるというふうなことになるのか、あるいは事故が起こったその国内の基準というものが一つの基準になってこの補償が計算されるのか、こういったいろいろな難しい問題があると思うのですが、そういう点についてはどういうふうにお考えになっておるのか。あるいはこれから交渉される際の窓口等についての扱いやら、あるいは政府はどういう対応をしていくのかというようなことについて、この際伺っておきたいと思うのです。
  95. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 まことに不幸な事故で、改めて政府といたしましても哀悼の意を表したいと思います。  仰せのとおり、国鉄を所有している中国政府、並びに我が国はやはり地方でございますから、また地方の高等学校でございますから、お互いが当事者間で話し合うというのが普通のルートでございます。しかしながら、今申しましたような差がございましょうから、十分外務省は側面的に協力しますよ、こういうふうに今日まで国会で御答弁申し上げておりますが、やはり今村山さんが御指摘なさいましたような点においてどうなるかということは、当然こちらといたしましても準備をして、そしてそれなりのお話を通じなければならない、こう思っておるわけです。  あすあたりに具体的に高知県から知事を初めあるいは高校関係者がお越しになる、こういうふうに聞いておりますから、そのとき改めてお話を承ろう、こう思っておりますが、では現在どこまでやっておるかということ等に関しましては、もしよければ政府委員から説明させます。
  96. 村山富市

    村山(富)委員 これはいずれにしてもやはり日中間の問題でもありますし、これが原因でいろいろなトラブルが起こったり何かすることも決して歓迎することではありませんから、したがって、当事者間の交渉であることはそれは当然でしょうけれども、しかしやはり政府はある程度アプローチしながら協力もしていくということは必要だと思いますから、そういう対応をぜひしていただきたいということを特に要請しておきます。
  97. 中島源太郎

    中島国務大臣 せっかくの高知学芸高校の御質疑でございましたから……。  今回の事故は大変不幸な、そして悲しい出来事でございまして、二十七人の死者並びに多数の負傷者を出されまして、私からもまず亡くなられました方々の御冥福を心からお祈りを申し上げますとともに、負傷されました方々の御全快の一日も早いことをお祈りをいたす次第でございます。  事故直後から外務省、運輸省と連携をとりまして万全を尽くしてきたつもりでございますし、それからまた、日本体育・学校健康センターからの災害共済給付金、つまりそのうちの死亡見舞金でございますが、これは去る三月三十一日に学校にはお渡しをいたしております。その後、昨日遺族会が結成をされまして、一応学校でお預かりをいたしておく、こういう状況のようでございますが、今後御指摘の補償その他につきましては、宇野外務大臣からお答えしたとおりでございますけれども、私どもも側面からできるだけの協力をいたしたい、こう思っております。
  98. 村山富市

    村山(富)委員 せっかく御答弁いただきましたから、この際文部大臣にも聞いておきたいと思うのですが、これからやはり日本の課題として国際化をしていく、そんな意味では、高校生あたりが外国を修学旅行するということはある意味では必要なことだと思うのです。そういう高校生などの外国の修学旅行について、文部省はこれからどういうふうに対応していくつもりですか。
  99. 中島源太郎

    中島国務大臣 今回の事故は、確かに不幸な出来事でございました。ただ、修学旅行あるいは海外の修学旅行につきましては、それなりに有意義であるという面は当然ございますので、今後とも意義ある、つまり有意義であるということは認めつつ、ことしの一月にも、特に健康、安全面を含めまして保護者の方々と十分合意を得るように指導いたしたところでございますが、今回の事故にかんがみまして、三十一日にさらに対策本部長でありました事務次官名で通知を出しまして、今後一層の安全面、健康面で確認の上にも確認をするようにということで、事前承認―実施計画を届け出させまして事前承認制をとる、そのようなことを含めましての通知を出したところでございます。もし詳しく内容があれば政府委員から答弁をさせます。
  100. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がないから、それはそれでいいです。  次に、これは通産大臣にお尋ねしますけれども、この国会に訪問販売法の改正案が出されていますね。これは産業構造審議会の答申を受けて出しておるのですけれども、その中身を見ますと、一つは業界の自主規制、それから二つ目は法規制の強化、三つ目は消費者の啓発を推進するということが三本の柱になって改正案がつくられておるというふうに思われるわけです。  最近、これはもう事例を申しませんけれども、訪問販売や通信販売のいろいろなトラブルが起きていますね。これはもう件数を申しませんけれども、大変なものです。そこで、通信販売やら訪問販売等の規制をする必要があるという意味で改正案が出されてきたと思うのです。  そこで、この三本の改正の柱である業界の自主規制を求めるというのは当然だと思いますね。これがなければ、これはできぬと思うのです。ただ、残念なことに業界に入っている人が少ない。アウトサイダーが多い。このアウトサイダーのものについてどういうふうにこれから扱っていくつもりなのかということが一つですね。それからもう一つは、それと関連して指定商品制をとっているわけです。これは、消費者団体やら弁護士会なんかが相当強く反対していますね。この指定商品制を隠れみのにしてアウトサイダーが悪徳商法を行っているということもまたあり得るのではないか、こう思いますから、私はこの際、アウトサイダーの扱いと指定商品制の問題についてどういうふうにお考えになっているのかということをお尋ねしたいと思うのです。
  101. 末木凰太郎

    ○末木政府委員 御指摘のように、現在団体に加盟しているものは企業数で約半分ほどでございます。売り上げでは八割がカバーされておりますが、企業数では半分のアウトサイダーが存在します。これにつきましては、先生おっしゃいましたように三つの柱で対処していく。具体的には、今回御審議をお願いしております法規制の強化によりまして一罰百戒の効果を上げる。二つ目には、消費者にも自衛をしていただく。三つ目に、自主規制で良貨が悪貨を駆逐するようにしていく。特に、私どもとしましては、自主規制を側面から応援をし、また消費者に自衛をしていただくために、悪質な業者につきましては、現在関係消費者団体、十一団体ほどの定例的な連絡会を持っておりまして、そういうところできめ細かい情報を流す。また、今度法律によりまして業務停止命令のようなものをかける場合には、その名前を公表するというようなことで補っていくつもりでございます。  それから、第二点の指定商品制につきましては、これは私どももいろいろ議論をいたしましたが、一方において規制はやはり最小限であるべきであると思います。この法律は民法、刑法に対しまして大きな例外を設けておるものでございますので、一応被害の実態に即しまして検討を加えた上、しかし必要なものは適切に指定をしていくということでございます。現実には今四十三の品目分を指定しておりまして、指定がなされないために問題になっているというものは当面ございません。今後とも問題があれば積極的に指定をしていくということで対処したいと思います。
  102. 村山富市

    村山(富)委員 これは私は、アウトサイダーに対する対策とそれから指定商品の扱いというのはよほど慎重にしていかないと、今までやっていることは全部後追いですよね。何か事故が起きたら、トラブルが起きたらそれをどうするかという話になるので、トラブルの未然の防止にはならないですよ。だから、その点は十分検討してもらう必要があるのじゃないかということを申し上げておきます。  それから、これは消費者の啓発といっても、高齢者なんかが多いのですよ、家庭の主婦が多いですね、事件の件数を見ますと。こういう者に対する啓発というのは特別に何かする方法を考えているのかということが一つと、外国の事例を見ますと、高等学校あたりから、義務教育のあたりからそういう消費者教育というものを積み上げてきておるということもあるのですが、文部大臣、こういう消費者教育というものは単に起こった事象に対してするというのではなくて、これからますます情報化社会が広がっていってそういうことが起こり得る可能性が強いわけですから、したがって、学校教育の段階から消費者教育というものは考えていく必要があるのではないか、こういうように思うのですが、この点はどうですか。
  103. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の消費者教育につきましては、現在でも小中高の社会科、家庭科で消費者保護という項目を立ててやっておるわけでございますが、御指摘のようにいろいろな契約の重要性その他新しい形態も出てまいりましたので、教育課程審議会の答申もございますので、私どもは学習指導要領でこの点については十分充実を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  104. 村山富市

    村山(富)委員 終わります。
  105. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。     午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十四分休憩      ────◇─────     午後一時開議
  106. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。池田克也君。
  107. 池田克也

    池田(克)委員 公明党の池田克也でございます。よろしくお願いいたします。  私は、ただいま審議しておりますこの暫定予算に至る経過を見ておりまして、去る三月三十日に与野党間で、「六十三年度減税の規模については予算成立までに結論を得る。」また「六十三年度減税のための法案は今会期中に処理するように最大限努力をする。」こう合意をされていながら、一日にはこれがほごになってしまった。まさに公党間の約束をいただいたことが具体的な姿を見ないままこういう事態を迎えた、非常にこれは遺憾な事態だと思っております。国政の運営にも支障をもたらした責任は重大であると痛感をいたしております。総理は、与党の最高責任者としてこの事態をどう認識していらっしゃるか、冒頭総括的にお伺いをしたいと思います。
  108. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、与野党合意事項が最終的に合意に達しなかった、こういうことでございますが、これは私の経験上から申し上げるならば、この時期にいわゆる定量的なものと定性的なものとの考え方の相違があったんではないかな、こんな感じは持っております。  しかし、合意というのはそれぞれの政党の責任で努力するものでありますが、いつの場合も体制側が批判の対象になるというのは、私はそれは十分心して受けて立ってこそまた体制側たるの責任も果たせるものじゃないか、いつもそのように考えております。
  109. 池田克也

    池田(克)委員 大蔵大臣官房長官お尋ねをしたいのですが、これはマスコミの報道ですが、今回の与野党国対委員長確認事項は与党自民党と政府の間で詰めたものではなかったという論評があるのですが、事実はどうだったんでしょうか。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 与党と政府とは常に一体になって緊密に会合もし、運営もいたしております。私の場合、たまたまその間に委員会、殊に参議院予算委員会がございましたが、委員会等で会合に出られない場合もたまにはございますけれども、議論ないし結論につきましては緊密に連絡をし合っておりますから、一般的にそのような事実はございません。
  111. 池田克也

    池田(克)委員 これは新聞の報道ですから、いろいろ御議論があろうかと思いますけれども、「宮沢蔵相は同日午後、首相官邸に竹下首相を訪ね、十分間余り会談した。内容は明らかにされていないが、政府首脳によると、蔵相は、この日の与野党国対委員長会談における四項目合意について自民党から詳しい説明を受けていなかったらしく、蔵相は首相に対し、大蔵省としては①(六十三年度減税の規模については予算成立までに結論を得るとした)三項目めは不可能である②従って、四項目め(減税法案の今国会提出を最大限努力)はできないこととなる―との考えを伝えたという。」こういうような報道がございまして、大蔵大臣総理に対してこの与野党合意は無理だ、こうおっしゃったと伝えられているのですが、この事実はございますか。
  112. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理官邸に参りまして総理大臣にお目にかかりましたのはそのとおりでございますけれども、私の申しましたのは、この合意をこれから措置してまいります上で、先ほど総理がちょうどお話がありましたが、減税の規模というようなものを―定性的なものもあります、定量的なものも当然のことながらあるわけでございます。今の段階で定性的なものにならざるを得ないといったようなことにつきまして、政府側の持っております見通しを申し上げたということはございますけれども、この合意そのものについて、これはどうこうということを政府立場で申し上げたことはございません。
  113. 池田克也

    池田(克)委員 今、見通しを総理お話しになった、こういうふうに御答弁をいただきましたが、その見通しは、明るいものであったんでしょうか暗いものであったんでしょうか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その「六十三年度減税の規模については予算成立までに結論を得る。」という第三項でございますが、これを定量的にこのぐらいということを申し上げるのは予算成立まででは到底難しいということでございますから、やはりこれはお返事をするとすれば定性的に考えていくということになるんではないかというようなことを申し上げたのであります。
  115. 池田克也

    池田(克)委員 そういたしますと、定性的にはできるけれども定量的には無理だ、与野党間では「規模」という表現がなされておりまして、我々のつもりは、金額というものがなければ具体性を帯びてこない、こういう認識は持っておりました。しかし一部、私は直接その交渉に当たったんじゃないのですが、税の種類、この税とこの税は具体的に何とかなるというものであってもある程度交渉が進んだんじゃないか、こういうふうに私は間接的に聞かされていたんですが、この点はどうでしょうか。
  116. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 与野党国会対策委員長の確認事項でございますので、それにつきまして政府としてとやかくということは申し上げる立場にはございません。また、そのつもりもないわけでございますが、この三項目の合意をそのまま仮に定量的に考えるといたしますと、六十二年度の税収がどういうことになるかということがまず明らかになりまして、その上で六十三年度がどういうことかという議論になっていくわけでございましょうが、六十二年度の税収は大体六月の下旬になりませんと量的に把握ができないという事実がございますから、そういうことを私としては申し上げて、したがいまして、この三項に従いまして予算成立までに出すべき結論は、これを数量的にあるいは税目的にということは困難であって、定性的なものにならざるを得ないであろう、こういうことを申し上げておったわけでございます。
  117. 池田克也

    池田(克)委員 先ほどから定性的というお話大蔵大臣から出ているんですが、もうちょっとその定性的というのはどういう答えになるのかお聞かせいただきたいのです。
  118. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはその後の四月一日の国対委員長会談において自民党の国対委員長から申し上げたことに入っていくわけでございますけれども、従来からの与野党国対委員長会談、三月八日に合意がございました。あるいはそれに基づきまして政策担当者の間で議論をしてこられた。そのことは誠意を持って自民党としても対処する、そして担当者間で引き続き考えていこう、こういうことでございますから、現在としてはそういう形でこの三月八日の合意は、与党はもちろんでございますが、政府としても誠実にやっていくが、それを金額的にどうということをこの予算成立までには申し上げられない、しかし合意そのものについては誠意を持って対処しなければならない、こういう意味合いのことでございます。
  119. 池田克也

    池田(克)委員 そうすると、合意については誠実に実行するというお答えが定性的という意味だ。国民から見ますと、じゃ一体幾ら減税は出てくるのかということがはっきりしない。私どもも国民からの負託をいただき、そして三党があわせて減税要求している以上は、それに対してどうなのかという期待は国民が持っている、これにどう説明するか。誠意を持ってやりますと言うだけではこれは納得をさせられない。となると、結局、大蔵大臣が三十日の午後でしたか、総理のところへおいでになって、定量的は無理だ、定性的はあり得る、定性的とはどういうことかというと誠意を持って実施するというだけだ、ということになりますと、財源の協議をしましょうとかいろいろその他の項目があったことについて一歩も前進をしていない。これでは野党もとてもこれはのめない。  そこで、今度は総理にお伺いしたいのですが、三十日の午後、これをどう措置すべきかということについて、定量的には無理だ、定性的にならざるを得ない、そういうお話大蔵大臣からあったときに、総理はどういう印象をお持ちになり、どう大蔵大臣協議をされたのか、ここでお聞かせいただきたいと思います。
  120. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最終的には、おっしゃるとおりでございましょうと申し上げました。これは私の経験からいたしましても、例えば昨年の私が幹事長でありましたときに、一兆五千四百億の所得税減税というものを最終的に合意しました際にも、やはり前年度剰余金等、それが土台になりますと、次の年度のまた自然増収とかいろいろな議論がありますが、それらが大体のみ込めてから返事ができたということでございますので、定量的、これを数字の上でと、こういう言葉に置きかえますと、あの時点では困難じゃないかなということは私自身も思っておりました。
  121. 池田克也

    池田(克)委員 そうしますと、合意文書の中に、六十三年度減税について「野党三会派の要求する減税は実施する。」この「要求する」というのは、野党側は文書をもっていろいろ項目を立てて要求をしているわけですね。ですから、ここに「要求する減税」ということが合意されている以上、野党側から見ますと、その項目がそれぞれその金額の大小、その評価の違いはあるにせよ、それなりに検討されて、そして返事が出てくるということが普通に考えれば予想されるものじゃない  いわゆる政策担当者お話をずっと聞いておりますと、最初は大型間接税が入るか入らないかという議論で一日つぶれた、それから野党側が提案したものについていろいろ説明をした、それについての評価があった、さあ自民党さんの方の財源はどうでしょうかということをお願いして、その返事を待ったけれども、いただけなかった。先ほど伺うと、定量的はだめで定性的、しかも定性的も誠意を持ってやるという一つの精神的なお答えだということになると、ここに書いてある、六十三年度減税について「野党三会派の要求する減税は実施する。」というのは、言うならば全く意味のない表現であった。我々から見ますと、一体何のためにこういう文書を書いて、それを一つの土台として審議に応じ、そしてまたここまで来ていたのか、これは政府側の態度について、本気でこれを考えていたのかということを非常に強い疑問を抱かざるを得ないのですが、どうでしょうか。
  122. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私は、もとより総裁でございますので報告は受けておりますが、行政府立場からこれをコメントするのは差し控えることに今までもいたしておりますが、経験上若干の、お許しをいただいて申し上げますならば、平年度三兆円という言葉がありました。それがなくなっておりまして、そうなると、どこへ基準を置くべきものかなということを、私の経験上から見ますと、そういう疑問を持ったことも事実であります。それをあえて大蔵大臣に申し上げたわけではございません。そういう疑問を持ったことは事実であります。  それから、財源についていろいろお書きになっておりますのを私なりにも大体整理してみますと、その中で、今後例えば株式譲渡益の原則課税にいたしましても、どういう仕組みでやったら、それが現実税収の問題としてはいつごろから入ってくるのかなというような問題についてもまだ議論のあるところではなかろうかな。ましてや自然増収、こういうことになりますと、六月末にやっと前年度の税収が締まるわけでございますから、そういうことから考えると、経験上は、おっしゃっているのを全部誠心誠意取り上げて勉強するということはもとよりのことでございますが、定量性を持たすというのは難しいだろうなという、経験学的にはそういう印象を受けておりました。
  123. 池田克也

    池田(克)委員 六十三年度減税をする、こういうふうな合意があった。もしも野党要求した不公平税制是正を柱とした財源が、実施時期等の関係もあって減税要求に及ばないというのであれば、その根拠をお示しになって、その上で六十三年度における可能な減税規模というものをお示しになってもよかったのじゃないのか。三兆円を掲げたのだから、それが一つの目標ではあります。しかしながら、これは国民の声を背景にしてやったので、決してこれだけが一つの交渉、これでなければならぬと。確かにそういう要求です。要求ですが、いろいろこちら側も税目を挙げて、こういうことでもって財源は出ませんかということを申し上げている。しかも協議の場が整った、そして協議をされて一つ一つ検討をされたと私は伺っております。  そうであるならば、こういう根拠でこれはこのぐらいの額になる、野党の言うのはちょっと無理だけれども、この程度だ、こういう積算の上でこの程度ならどうだ、こういう話し合いもあったのじゃないだろうか。オール・オア・ナッシングという、これはそういう真っ向から対決してしまう場合もあると思いますが、こういうような減税国民要求に対する対応、後から伺いますが、世論調査などでも不公平税制の是正という声が強いわけですから、私は、そういう話し合いが進むということは、これから税の議論をしていく上において有効なはずだったな、非常に残念な形でこの暫定審議になってしまったな、こういう思いをしているのです。  重ねて伺いますが、この野党要求したものについての積算の根拠とか資料とか、こういうものをお示しになる、そういう一つの手順はなかったのでしょうか。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、各党間におきましては政策担当者間で御協議が続いたと存じておりますが、政府立場はその際どうかというお尋ねでございますので、この与野党協議、これは政府があれこれ申すべきことではございませんので、それと切り離しまして政府の考え方はどうかとおっしゃいますれば、政府といたしましては、六十三年度予算国会に御提案をして、ただいまでは国会が御審議中でございます。今の段階としては、政府国会で御審議いただいております予算成立をさせて、できるだけ早く執行をいたしたいと考えておるわけでございますので、それ以外の考え方を今、政府があれこれ申し上げる立場にはないわけでございます。  ところで、しかしながら何カ月かたちますと昭和六十二年度の税収がどうなるかが明らかになるはずであって、そのときに昭和六十三年度歳入の想定に使いましたところのいろいろな想定が六十二年度の結果として変化することはこれはあり得ることでございます。したがいまして、それがわかります仮に六月の末ごろになりますれば幾らかそういう定量的なものが出てまいるかもしれない、そういうことは私ども気持ちの中で思っておりますけれども、その以前の段階で、しかも六十三年度予算を御審議願っておる段階でそのことについて言及をするわけには政府としてはまいらない、政府立場を言えとおっしゃいますので、御協議と離しまして私どもはそう考えておったわけでございます。
  125. 池田克也

    池田(克)委員 この税収の見積もりの問題についてはまた後から伺うことにいたしまして、これも報道によりますと、自民党側は合意案として、野党要求している中で、所得税一兆二千五百五十億円と相続税四千億円は実施するという案をお示しになった、こういうふうに報道されておりますが、大蔵省はこれを御承知でしょうか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ある新聞にその報道がございましたが、私どもそれについて全くかかわり知っておりません。
  127. 池田克也

    池田(克)委員 総理にお伺いしますが、今後の問題としてこの減税問題の処理、与野党間の亀裂が今日非常にあるわけですけれども、いろいろこれから法案を処理していく過程もありまして、いつまでもこの状態は好ましくないと私も思います。この三十日合意の三項目目が守れないまま予算成立することになるわけですが、予算成立後には、まあ今六月にならないと計算ができないと大蔵大臣はおっしゃっていますけれども、しかしそれはそれとして、今日までずっと推移しているわけですから推定というものはできるだろうと思う。推定という条件つきででも減税の大枠というのは示せないのかどうか、お伺いしたいと思います。
  128. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私の経験からいたしまして、推定でということはやはり困難と言わざるを得ない。昨年の場合も、私は今と立場は違っておりましたが、あれだけ議論して一兆五千四百億の減税というものに合意するまでには大変な御勉強もいただいたし、私も勉強したつもりでございました。したがって、そのことは政策担当者の先生方は皆恐らくおわかりの上で御議論なさっておったのではないかな、したがって可能な限り早く、お互いせっかくできた機関でございますから、そういう機関が機能することを期待するというところまでは私から申し上げてもいいのではないかなと思っております。
  129. 池田克也

    池田(克)委員 推定は無理だということでございますが、さて、いろいろ議論したいところですけれども、今までの政策担当者間でいろいろな数字が示されていると思うのです。野党三党は、国民の不公平税制是正の声を反映すべく九項目の柱を立てて要求をいたしました。自民党側は第一回の会談で、野党が概括的に例示した極めて限定的な項目に絞って財源の補てんについて答えを出されたようですが、かなり意図的に消極姿勢を示されたのではないか。自民党側が説明した内容は大蔵省が計算したというわけですけれども、私はその積算根拠あるいは資料等をこの委員会にでもお出しいただいて、少なくとも野党提案した幾つかの項目、九つの項目ですが、それについて政府はどう判断しているのか、これをお示しになってはどうか、こう考えますがいかがでしょうか。
  130. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一定の前提を置いて、これに対してひとつ計算してこいということに対しては、御協力申し上げることは当然のことであると思っておりますが、あの九つ全部を見まして概括的にこの場で私なりの感じで申し上げることは差し控えるべきではないかな、一定の前提を置いて作業してこい、こうおっしゃることについては協力するのは当然であるというふうに思っております。
  131. 池田克也

    池田(克)委員 有価証券の譲渡益課税の問題を一つの例として考えますときに、与野党とも、政府側も、原則課税の方向を示されていると思います。あくまで総合課税として、その第一歩として当面の措置、みなし源泉分離課税を採用する。個人の株式売買に、年間約五十兆円と言われておりますが、一%としても五千億ある。野党はこれを四千億というふうに文書には示しているわけですが、こうした数字は妥当だというふうに私は考えます。  このみなし分離課税については我が党の和田参議院議員が参議院でお伺いをいたしまして、小倉税調会長等も可能性をほのめかされたように私は記憶をしております。こうした一つ一つの問題について具体的に数字を挙げ、またその具体的なやり方について詰めていくことは意義のあることだと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  132. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私も聞いておりましたが、いつからということは別といたしまして、一つの前提を置いての御議論がちょうだいできるというのは極めて建設的なことであるというふうに思っております。
  133. 池田克也

    池田(克)委員 また、税の自然増収について減税財源に挙げております。大蔵省が三月三十一日に発表した二月末の税収実績によりますと、税収は法人税、物品税を中心に好調で補正後の見積もりを大幅に上回り一兆五千億円に上る、こう報道されておりますが、六十二年度の税収見込みをお示しいただけますか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、本予算審議の際に申し上げました状況から実は余り事態は進んでおりません。ただ二月末の税収が明らかになりまして、二月末までの累計が九・一である、前月までの累計と大体似たような水準であるということでございます。前にも申し上げたのでございますが、一番大きな部分は法人の三月期決算、これがわかりますのは六月の中下旬でございますけれども、これがもう非常に大きなウエートを持っております。それからもう一つは、申告納税分が間もなく、まだわからないということがございます。といったようなことがございまして、六十一年度は最後の三カ月で非常に税収が上がったということがございますものですから、それとの対比で高い水準を維持できるものであるかどうかが実ははっきりいたしておりません。  そのようなことから、税収の推移はただいままでのところ悪いとは思っておりませんが、一番大事な最後の部分、例えば昨年は五月のたしか最終日ごろであったと思うのですけれども、一日で法人税が四兆八千億とかなんとか、金利がございますので大体納付が最後の日に固まりますが、そのくらいの大きなウエートが最後になってあるものでございますから、やはりそれを見ませんとどうも自信を持ったことが申し上げられないというのが私どもの気持ちでございます。
  135. 池田克也

    池田(克)委員 確かにそうした慎重な姿勢は重要だと思うのですが、政治的な判断と申しましょうか、これもまたあると思うのです。国民のこうした大きな税の不公平感というものを総理もお認めになっていらっしゃいます。減税を強く期待する声も強いわけでございます。そして国会審議というのはこういう時期に限られて開かれておりまして、いつまでもあるものではございません。したがって、私どもがこうやってお伺いをする、六月にならないと大蔵省としてはしかとしたお金の入りぐあいがわからない、そうするとその時期に国会があるかといえば御承知のとおり国会はある時期で閉めることになっておりまして、国民から見ますと、この時期に日本の国はどういう税の見込みを持ち、それがどう還元されるかということは国民が知りたいことであろうと思うのです。  そして野党もいろいろな要求に従って政府要求をいたします。その中で、巷間報道されているところによれば、そうした財源ということに絡めて大型間接税の議論をしようと政府は考えておられる。野党はそれを拒否して別の財源でと言っている。ここに対決がある。それは対決で結構だと思います。しかしながら、国民の期待にこたえて日本の経済が、家計がこれからどうしていくのかということを国民に示す国会の場としては、今の時期にできるだけの見込みを立てて、そうしてこういうことができるということを答えるのは国民に対する義務ではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 できるだけ現状を国民に申し上げておくことは、国会に対しましては殊に私どもの義務でございますから、それで毎月毎月の税目別の税収、それから累計を常に御報告をしておるところで、それがただいま二月末までできたということでございます。  それで、後で御指摘になられます前に一言だけ申し上げさせていただきたいと思いますのは、万一六十二年度にある程度の自然増収が最終的に出た、それは六月の中下旬でわかることでございますが、その場合には政府は、特例公債発行を予定しております未発行のものが一兆一千億ばかりございます。これは当然歳入が予定を上回ればこの国債は発行すべきものでないわけでございますから、これをまず発行を取りやめるという決断をそうなりましたらさせていただかなければならないと考えております。  なおその上で、しかし自然増が仮にあるといったような場合には、そのうちで地方分がどのぐらいあるかというようなことになっていくわけですが、先ほどから池田委員の言っていらっしゃいますように、問題は、昭和六十二年度がそうなりましたときには、六十三年度歳入見積もりのいわばベースがもっと上がっているではないか、したがって六十三年度減税の余裕が出てくるではないか、こういう御議論でございますから、それはやはりそのときにどのぐらいの六十二年度にいわば増差があって、それがベースに引き伸ばすとどのぐらいになるということはかなりきちんと計算をして申し上げるべきものであって、今何となく税収が比較的好調でございますから、これは六十三年度もひょっとしたら何がしかうまくいくかもしれませんといったようなことは、私の立場からは、こういう公の場を外してのことはともかく、公にはどうもなかなか申し上げにくいということでございます。
  137. 池田克也

    池田(克)委員 私が申し上げているのは、今大蔵大臣の御答弁もよくわかります。しかし国民が持っている大型間接税についての心配というものを考えますときに、税収見積もりというものをどう立て、どの時点で把握し、そしてそれをどう使っていくのかということと、不公平税制を目いっぱいやって、そして足りるのか足りないのか、ここのところは私は国民によく示し判断を仰ぐべき部分ではないか。国会をこれで閉めて、秋に国会を開いてそこで税の案をお出しになるかどうか、これもお伺いしたいところですけれども、そこでぽんと出てくる以前に、今の時点で税収の見込み、そして不公平税制、ここまで目いっぱいやった、これだけの額がある、景気はこうなる、このことを数字の上で示し、それを私どもこういう場であるいは参議院でもお示しになり、国民の前で議論なさることが、秋にぽんと案を出されるよりは国民の判断には助けになるのではないか、私はそう思うのです。  それが、税収見込みが先だとおっしゃられれば確かにそのとおりだと思いますが、そういうことも含めて、この減税要求というもの、そして暫定になったというのは結果として残念なことですが、この予算暫定審議があるということは私は意味があることだと思う。単なる三兆九百億円の審議ではなしに、この減税要求をめぐる与野党の議論というものは、この秋の税をどうするか、必要か必要でないかということを国民が判断する上に重要な話のやりとりではなかろうか、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
  138. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは、今おっしゃったような議論が国会の中で行われるということは大変私もいいことだと思っております。だから私どももそれに対して誠心誠意お答えをすべきである。しかし、いわゆるこの税の仕組み等から申しまして、定量的なものにおいてはできること、できないことがある。したがって、平年度ベースの議論もあるいはしていかなければならぬのかな。そういう議論をしておりますと、先般来の国会のことについて意見を差し挟む考えはございませんが、これから今のような議論が継続されていくというのは国民のために大変いいことだというふうに私は思います。
  139. 池田克也

    池田(克)委員 時間がございませんので、内職減税のことをちょっとお伺いしたいと思います。  野党要求の中にも内職者減税について触れておりますが、国税庁は、パートと内職のバランスに意を用いる、こう国会でもお答えになっておりますが、郵便等で申告する方もおりまして十分ではないという声があるわけでございます。三割という概算の控除をやっていらっしゃるようですが、これを引き上げるとか、あるいは給与所得控除の最低保障額である五十七万に引き上げるとか、こうした具体的なこれら内職者についてのいわゆる措置というものについてどう考えていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  140. 水野勝

    ○水野政府委員 各党政策担当者会議におかれましてもろもろのお話し合いが行われ、その中での与党からの御回答の中に「内職所得者の課税の改善を行う。」という項目が含まれておることは私ども承知いたしてございますが、そのことから始まってのどのような対応を具体的にしていくのか、まだ現在の段階におきましては特段御指示もございませんので、大蔵省、国税庁、まだ具体的な検討には入っているところではございません。御指摘の点の回答につきましては承知いたしております。
  141. 池田克也

    池田(克)委員 これは大蔵大臣、いかがでしょうか。与野党合意の中にこの問題は触れられているのですけれども、これからいろいろ作業なさるような御予定でしょうか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは与野党の御協議がまだ最終の決着に達していないのが現状であると考えておりますけれども、その中途の三月三十日の段階において今政府委員が申し上げましたようなお約束を与党としてはいたしておりますので、したがいまして、全体がどういうふうに収束いたしますのかそれにもよりますが、三月三十日の国対委員長会談の確認事項の中に野党三会派の要求する減税は実施する、恐らくさらにこれをいわば確認したような格好になっておると思いますから、私どもとしては税制を改めます機会にこれは何かのことは考えなければならない、そういう立場政府はおるものとただいま考えておりますが、まだ具体的に何ということを申し上げる段階でございません。
  143. 池田克也

    池田(克)委員 同じく災害遺児育英対策の問題についても触れられております。先般、この委員会で我が党の坂口政審会長からも御質問いたしまして、総理からも災害遺児育英制度の創設と申しましょうか、それについていろいろ協議を進めよう、こういう御答弁を伺ったように記憶をしておりますが、新聞報道でしたが、新しいものを創設せずにいわゆる現行の育英会の制度を若干緩和するというふうになっておりますが、現在の育英会制度はたしか成績を一つ基準にして、平均点が三・三とか三・五とかいうことで有利子とか無利子とか、成績がかなり基準になっております。災害の子供たちの苦しい生活から見ますと、アルバイトをしたりしておりますので、成績が基準になってくるとなかなか厳しいという面がありまして、何とかこれとは別枠で発足させてもらえないかという強い声が寄せられておりますが、これについていかがでしょうか。
  144. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは党首会談で出た問題でございますので、私からお答えをいたします。  数年前でございましたが、当時失野書記長時代でございますが、この問題が提起され、そうして党首会談で各党から申されたのは、昨年末の予算編成の際でございました。その際もお互い理解の度合いが一応できておりましたので、今池田さんがおっしゃったような日本育英会でやればどうしたって成績基準ということが念頭に置かれざるを得ない、だから既存の仕組みの中へ入れるにしても何かの形で考えろということと、それから、入学するのだから四月一日までにある種の結論を出したらどうだ、およそこういうことだったと思います。  したがいまして、私どもの方としては、さようしからば勉強するところは内閣の内政室だろう。そこで一応の検討をいたしまして、したがって今私から政調会長をお呼びいたしまして、これはやはり政党間の話し合いでひとつ結論を出してもらいたい、四月一日は過ぎておりますけれども遡及することもあり得る。それから、既存の制度の中で実際四十から五十くらいございました、いろんなのが。それらを整理して政党間で詰めてもらった方が合理的なような感じがしますというので、政調会長に私が指示をいたしまして、それに基づいてこれから話し合いが行われるであろうというふうに期待をしておるところでございます。それなりのいろんな参考に供するような諸準備は整えてきておるつもりでございます。
  145. 池田克也

    池田(克)委員 問題を移しまして、アメリカとの建設の公共事業等の交渉があったわけでございますが、これについて、時間もございませんが若干お伺いしたいと思います。  勧奨という耳なれない言葉が出てまいりましたのですが、日本の制度に今まであったのか、これを持ち出した法的な根拠とか制度上の問題はどこにあるのかとかについてお伺いしたいと思います。
  146. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先般、小沢副長官に行ってもらいましてこの問題は解決しましたが、実はいろいろとアメリカと日本の意味が違うところがたくさんございました。例えば公共事業、これに関しましても、日本では国または地方公共団体がやる仕事である、しかしアメリカにおきましては、公共のためにする仕事はすべて公共事業。そこへまた関西空港や東京湾の横断橋のごとくに、第二番目には民間セクター、第三セクター、民間活用、これがアメリカにはなかなかわからなかったのであります。そうしたことで、私も国会でお答えいたしましたが、ゴールが決まっておって、ゴールに近づくとまたそのゴールがかげろうのごとくまた百メーターずれる、どうなっているんだろうというのが実はそういうところにあったわけでございまして、両国の担当者が非常に気配りをされて、最後に仕上げられました。  そこで、本来ならば、民間または第三セクターに対しまして政府といたしましてはこうせよああせよということは言えないわけでございます。しかし、アメリカといたしましては今申し上げたような観念でございますからこうせよああせよ言えるじゃないかというふうなことでございましたが、そこはエンカレッジという言葉を用いまして、あえて私たちはこれに対しまして、勧めるのである、勧奨、ともに勧めるでございますから、そういうふうなことで、今後はやはり民間に対しましてもあるいはまた第三セクターに対しましても、内外無差別というその精神だけは、そういう方式だけはのみ込んでくれるように、こういうふうに政府といたしましてはそれこそエンカレッジする予定でございます。その意味でございます。
  147. 池田克也

    池田(克)委員 お話を伺いますと、大変な御苦労があったように思います。しかし、アメリカ側は現実に実績を上げたい、二年後にもう一遍これについて見直す、その間に監視するための会合を持つ、随分と厳しい姿勢のようでございますし、この監視するための会合はだれが主宰し、監視した会が何か物を言ったときにどういう権限が生ずるのか、どうも今まで報道されたところではよくわからないのです。監視という言葉は一体どういう意味を持っているのでしょうか。
  148. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  今御質問のございましたいわゆる監視をするという点でございますけれども、今回せっかくの取り決めが日米間でできたわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、当然アメリカ側の企業というものがこのメカニズムを利用いたしまして実績を上げていただくということが何分にも必要だと思います。そういう過程の中で、今回私どもが協議いたしましたことがお互いに円滑に進んでおるかどうか、こういうことを常々話し合っていこうということで、今回の合意をできるだけ前向きなものにしていこうという趣旨で定られたというか、意見の一致を見たものでございます。  監視という言葉の意味は、いわば一方が一方に押しつけるということでは決してございません。私どもの立場もそこで表明をしながらこの方針の円滑な実施を図っていく、こういうことでございますので御了解を得たいと思います。
  149. 池田克也

    池田(克)委員 外務大臣からもこの辺もう少しお伺いしたいのですが、アメリカから見ればもっとやれということになると思いますし、日本側から見れば既得権と申しましょうか、いろいろと企業が自分の商売を取り合っているわけですし、恐らく相当ぶつかり合いがあるのじゃないか。この監視機関というのが一体本当に公正に行われるかというのはかなり難しい部分だろうと思うのですが、大臣としてはどういうお気持ちでこれから進めていこうとされるのでしょうか。
  150. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど私も多少詳しく触れたかったのですが、時間の都合も考えてお答えいたしておりますが、まだ入札制度そのものに関しましてやはりアメリカにも習熟をしてもらわなくてはならない点がたくさんある、こういうことですから、だからモニタリングしながらここを直そう、あそこをよくしようと、結論合意したのですから、やはりアメリカの企業が大いに参入していただければよい、そういう意味でございますので、何も余り難しく考えない方がよい、かように私は考えております。
  151. 池田克也

    池田(克)委員 まだまだお伺いしたい点がたくさんあるのですが、日米科学技術研究協力協定、この問題について、残された時間大変短いのですが、お伺いしたいのでございます。  これは、知的所有権問題と安保条項について合意をした、大変難航されていたものが急転して解決をされた、こう報道されております。知的所有権の問題では、成果の配分というルールづくり。現行協定では、特許権など実施権について研究実施国が自国と第三国での権利を持つ、相手側にも自国内では権利を与える、こういうことになっておりますが、アメリカは属地主義を主張した、日本は反対した。  これに対してケース・バイ・ケースで研究実施前に当事者が取り決めるということで合意をしたというのですが、これも、研究というのは初めと終わりではかなり違ってくる。研究ですから、こういう結果になるだろうと思って始まったけれども大したことはなかったというのもあるし、初めはそれほどでもないと思いながら意外な結果に発展したということもあるし、私はこの辺について、こういうようなケース・バイ・ケースということが本当に安定的なものになるのか、トラブルを生むもとになりはしないか、こういう懸念を持つのですが、いかがでしょうか。
  152. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 科学技術協力協定、あくまでも平和目的ということになっております。そうしてまた技術者も交流いたしております。その中で今指摘された部分だけを御説明しますと、いわゆる特許でございますが、アメリカでは属地主義、だからアメリカにおいて、もしも日本人であれその他の外人であれ発明発見したものはすべてアメリカに帰する、これが今までのしきたりでございましたが、今回の改定におきましてはその分は多少よくなっております。つまり、その結果、配分によりましては、我が国が発明発見したんだという場合にはこうする、ああすると。いずれにいたしましても、あと三カ月現行法を自然延長いたしまして、その間に十二分にワーキンググループでその間のことを詰めましょう、かようになっておりますので、今私の申し上げましたのが特許に関する部分の説明でございます。
  153. 池田克也

    池田(克)委員 同時に、防衛目的の特許権及び技術の知識の交流を容易にするための日米政府間協定、議定書について、日本はこれまで割と現実問題としていろいろ約束はしていなかったように聞いておりますが、大筋でこれを合意したのか、GS協定に至らずに柔軟な対応でいくという報道ですが、これでアメリカは納得したのでしょうか。
  154. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今の問題はあくまでもこちらの特許出願の場合のお話でございまして、今第一問の科学技術協力協定とは別個の問題でございます。したがいまして、もう既にこれは一九五六年ですか、国会の御審議並びに承認を得ましてでき上がっておる協定でございまして、今まで一件もそういうことはなかったわけでございますが、そろそろいろいろ世の中も発展してきた、そういう場合にはアメリカはこれを秘密扱いにしますから、日本におきましても同様のこれに準拠するような取り扱いをしてほしい、これだけでございまして、我が国が改めてその条項について新しい問題を抱えて秘密協定をつくるということは絶対ないわけでございます。したがいまして、アメリカ国内において秘密が守られておる間だけはこの出願はひとつぜひとも特許法に基づいて秘密を扱ってほしいというだけの話でありまして、その方法をどうするかということが先般いろいろと話し合いをされて、こうしなさいということが政府に勧奨されたという段階であります。
  155. 池田克也

    池田(克)委員 科学技術庁にお伺いしたいのですが、学者がいろいろ研究をされるわけですが、こういう新しい状況の中で、かなり研究に障害があるという御意見も聞かされておりますし、科学者の中には反対を表明している方もいらっしゃるわけです。現に、お金や人はこららが出しても、アメリカの方が研究施設がしっかりしている。従来日本にも研究施設をもっともっとふやそうという声はあるのですが、そういう点で、属地というと人も金も日本が持ちながら向こうで研究するとかいろいろな事態が予想されるわけですが、この科学技術の問題をめぐりまして科学者等がこれからの研究に障害がある、こう表明しておられることについて、どうこれを保護しながら日米間の問題を解決するか。科学技術庁としてはどういう態度で臨んでいらしゃるのか、お伺いしたいと思います。
  156. 伊藤宗一郎

    ○伊藤国務大臣 ただいま外務大臣からもお答えがございましたとおり、本協定は従来の日米間の科学技術協力関係及び協力活動をさらに強化をするためのものでございまして、むしろ今までよりも協力関係なり研究がやりやすくなるという方向に進むものと確信をしておりますし、また、科学技術庁としてもこの新しい協定、でき上がりました協定に基づきまして、両国間の協力をさらに一層拡充していく所存であります。  また、今、学者あるいは研究者等で若干の意見があるということも私たちは承知をしておりますけれども、今度の新協定におきましても情報の可能な限りの広範な普及が図られるということになっておりますし、また、新協定によって従来の我々の法制度その他を何ら変えるものではないということが確認をされておりますので、研究者、学者の方々の御心配は無用のものであるというふうに思いますし、また、それなりの広報活動あるいは対応を科学技術庁としても、何ら従来の協力活動には支障がないということをなお一層鮮明にするように努力してまいりたい、このように考えております。
  157. 池田克也

    池田(克)委員 時間が参りましたので、ほかにいろいろと準備をしていただきました点はまた次回に機会を得てお伺いをしたいと思います。  以上で終わります。
  158. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて池田君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  159. 吉田之久

    吉田委員 きょう四月四日、既に新年度に入って四日目でございますが、この時点暫定予算をこういう形で審議しなければならない、それはまさに前代未聞でありまして、珍無類の予算委員会と言われるかもしれないと思うのです。私どもはこれをあしき一つの教訓として今後いろいろと対応していかなければならないのではないかと思うわけなんでございますが、事のついでにちょっと私の頭も一遍整理しておきたいと思うのです。  御承知のとおり憲法六十条によりますと、「参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、」「三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決国会議決とする。」大体このように書いてあります。だといたしますと、ことし三月十日に衆議院で議決を行いましたこの予算は、もしも参議院が三十日以内に審議を終えないとするならばその自然成立は何月何日何時なんですか。その辺をちょっとお教えいただきたいと思います。
  160. 西垣昭

    ○西垣政府委員 四月九日の午前零時でございます。
  161. 吉田之久

    吉田委員 それで正解だと思います。三十日以内は四月八日が含まれるわけでありまして、したがって、四月八日の夜の十二時までに参議院が議了しない場合には、その次の瞬間、九日の午前零時から自然成立、発効するということだと思いますが、そういうことから考えまして、こういう事態に至った原因はどこにあるか。いろいろ与党は野党をなじり、野党は与党をなじる現状ではございますけれども、私は先ほどからの総理やあるいは大蔵大臣の御答弁を聞いておりまして、きょうここに来てやはり野党三会派の減税要求に対して、定性的には答えることができても定量的には答えることができません、あるいは、国家財政執行者の良心としてそういうあいまいな、数値がまだ判明しない時点で具体的な数字を出すことはできないというようなことも新聞等でも拝見したわけでございますが、それは一見、一つの正論のようにも思います。しかし、きょうまでの予算審議の経過を聞いてみますと、必ずしもそうではないと思うのです。  我々野党の方は、あくまでも定量的に、一切間接税導入を考慮しない予定しない範囲内で、現にこれだけの減税ができ得るはずであるということでいろいろ項目を示して、数値をはじいて要求しているわけでございます。ところが、予算審議の中で与党の方の質問に対しても総理大蔵大臣は、もしも間接税を将来導入することが想定されるならば三兆円の減税は可能であります、時によっては四兆円の減税も可能でありましょう、こうお答えになっているわけでありまして、その限りにおいては定性的にも定量的にもお答えになっておる。そして、今日この事態に及んで、定量的には答えられない、これは大変いいかげんな答弁だと思うのでございますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
  162. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 基本はまず合意の前提にありましたが、数字はその後なくなっておりますけれども、平年度三兆円というのはこれは定量的なお答えあるいは合意の中にあったのかなというふうに思うわけでございます。それがなくなりますと本当は基本がちょっとなくなってまいります。そうすると、やっぱり私どもは恒久的に構築していかなきゃいかぬわけです、三兆円なら三兆円といたしますと。そうすると財源問題というのが当然議論になってくる。  しこうして、お示しいただきましたこの財源問題を一つ一つ、これは何月からどうしたらどうなりますとかという議論になりますと、今度は三兆円というものから見れば非常に限られたものになりはしないか。だから、もう少し詰め合えばもっといいところへいくんじゃないかなというような期待感は私も持っておりましたが、今、一方的にという表現、別にあっちが悪いこっちが悪いなんて言ったことは一遍も私はございません。それは言ったことは一遍もございません。本当にございません。  したがってやはり、こういう問題につきましてはお互いが合意に達するような努力をもっと期待できるんじゃないかなというふうに思っておりますが、私の経験上から申し上げた場合、定量的な額というのは、昨年度の幹事長・書記長会談の一兆五千四百億にいたしましても、その前、私、大蔵大臣で四百八十四億から千五百億からずっとやってまいりましたが、みんなおわかりになっているんじゃないかなと思っております。
  163. 吉田之久

    吉田委員 一向によくわからぬ答弁でございまして、要するにもうちょっと詰め合っていけばよかったとおっしゃってみたり、あるいは総理としては余計なコメントはできないとか、あるいは私の経験に徴すればいろいろまた知恵はあったのではないかとか、そういうおっしゃり方ではなしに、私は、今度のこの事態を頂門の一針として、今後もやはり減税要求なんかはいろいろ激しくぶつかっていく局面がいっぱいあると思いますので、初めから政府の方はこの時点では定性的には論議はできても定量的にはできませんとか、あるいはある程度定量的には話できますけれども完全な数値としては責任は持ちかねますとか、やはりその辺をきちんとして交渉しないと、きょうまでの経過を聞いていますといかにも三兆円近くの減税をのんでもいいようなポーズを示したりのめないようなポーズを示したり、非常にあいまいだったと思うのです。  だから、悪く言えば野党は完全にもてあそばれたというような感じがするし、もてあそばれた野党の方がふがいないかもしれませんけれども、こういうことはやはり後日のためにきちんと、それは一党の総裁でもありますし総理でもいらっしゃるのですから、こういう話にはここまでは乗れますとか初めからこういう話には乗れませんとかということをきちんとしておかないと、またしても今後こういういろいろな事態が生じないとは保証できないと思うのでございます。その辺、今度の経験に徴して総理はそういうふうにはお考えになりませんでしょうか。
  164. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私自身振り返ってみても、一見優柔不断、言語明瞭意味不明、こういうことをよく言われたということを考えてみますと、あるいはそういう手法が私の反省すべき手法である、これは私個人に対する問題であります。  それから、党間の問題について論評することは差し控えますが、今の吉田さんのお互い詰めた議論をしていくべきであるという考え方には賛成でございます。
  165. 吉田之久

    吉田委員 次に、四月に入ってこんな日に、かつ今の説明であれば四月八日までの予算案でありましょうが、それを暫定として組まなければならない。一般国民の目から見ますと、まあいずれにしても三、四日のことではございますね。きょうまで四日間は、おかしいけれども空白でくぐってきているのでしょう。三、四日の実効ある暫定予算を組むために衆議院と参議院で丸々一日ずつこういう形で審議しなければならない。理屈はそうかもしれぬけれども、いかにも効率の悪いというか見通しのつかないというか、やはり議会というのは非常に変なところだなという印象を深めると思うのです。  ですから、常に参議院の方では、委員長自身がその権限でも表明されておりますように、四月の一日を超えてなお自然成立がしないと予想される場合には、どのような事態が期待される、期待されないは別として、昨年度内にきちんと何日かの暫定を組んでおくべきである。やはりこの辺のけじめをきちんとした方がいいのじゃないかと思いますが、それはお考えになりませんか。
  166. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 その議論、随分従来してまいったわけでございますが、仮にの前提でございます、これも私の経験上の問題でございますが、仮にもし衆議院を自然成立期間を具備しないで通過した場合に、自然成立期間をあらかじめ想定して暫定予算をお送りするということになった場合に、二院制の建前からの参議院の権威というものに対しての説明は、これは何回もやりましたが大変説明のしにくい問題でございます。論理的には異なった議決のなされる場合もあり得るからと。が、現実的になかなかその議論は議論としてかみ合ってこない。  したがってやはり足らざる場合は参議院審議に対する期待を可能な限り続けていく、こういうことであるのかなと、これは多年古くて新しい問題といえばそれまででござまいすが、そこのところを苦悩したというのがことしの段階ではなかろうか。去年おととしまでは、少なくとも理事会でいつ通るという申し合わせができたから出さないで済ました。だから、期待権は持ちつつも現実問題として、窮屈に言うとやはりことしの措置はやむを得ざる措置であったのかな。だが国会が言ってみればむだしているんじゃないかとかいろいろな国民の意見を買うからその辺の節度をきちんとすべきだということについては、私は賛成でございます。
  167. 吉田之久

    吉田委員 総理の苦悩はわかりますけれども、私はむしろ逆に、衆議院でこの日に予算は通りました、なお一カ月ありますけれどもできるだけ四月の五日までには成立するように圧縮、短縮して審議をしてくださいということを他院に対して衆議院の側から言えば、他院に対して予定したり想定したりすることの方が失礼だと思うのですね。ましてこんな四月に入ってから、今どき中途半端な、極めて短時間の暫定をこれほど大げさな形で組まなければならぬということはどうも説得力がない。だから、どう見ても三月の二日ですね、三月二日以降に予算が通らないようであるならば、三月中に時期を見てとりあえずの暫定を組んでおく、やはりそういうことの方が節度ある運営なのではないかと思います。いろいろ論議の分かれるところでございましょうけれども、ひとつ総理としてもよく御検討いただきたいと思うのです。  次に、四月三日の日経新聞でございますが、他の新聞にも書いてあったと思うのですが、「一般消費税率五% 大蔵省方針 減税上積み財源確保」ということでいろいろ書かれております。大蔵大臣もごらんいただいていると思うのでございますが、大蔵省がこういうことでいろいろと一般消費税導入のための最終調整に入っておられるのかどうか、お伺い申し上げます。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、ただいま政府税制調査会がこれからさらに世論を聞かれるために素案を幾つかつくっておられる段階でございますから、それから御判断くださいましても、全くそのような、報道にあるような段階ではございませんで、そういう事実はしたがいましてございません。
  169. 吉田之久

    吉田委員 そうでなければおかしいと思うのです。総理大蔵大臣も、この間接税導入等については、政府税調も今審議してもらっている最中であるから一切予見を与えないという基本姿勢を持っておられるにもかかわらず、大蔵省の方で担当者がこういう調整に入っておるとするならば、これはまさに大変不謹慎なことだと思うのです。  しかし、こういう新聞が、ニュースが誤ってつくられたとしても、社会的事実としてはもう広範に流布されておるわけでございますね。だとするならば、国民の目にこういうことがさらされておるわけでございますから、やはり大蔵大臣は直ちに、いやそんな事実はないとかということばはっきりおっしゃっていただかないと、国民は何らかの世論操作の一環としてこういうものをやられているのじゃないだろうかと受け取らざるを得ませんね。その辺、これは明確に否定されますか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このような機会をお与えいただいたことをありがたく思っております。明確に否定をいたします。こういう機会がございませんと、やはり報道をされる側にはそれなりの調査とかがおありでありましょうし、またそれを報道される自由もございますものですから、そういう建前からいいますと、なかなかこういう機会でございませんと申し上げることができません。明確に申します。
  171. 吉田之久

    吉田委員 次に、この間永末質問に関連いたしまして、二十一世紀初頭の我が国の社会保障費にかかわるいろいろな展望について、大蔵省と厚生省から資料が出されました。その後、いろいろ速記録もできまして、詳しく読んだ次第でございます。しかし、私が一番問題があると思いますのは、医療費の伸びについてでありますけれども、最近一年半の伸び率から想定して、昭和七十五年、八十五年時点における国民医療費や老人医療費を算定した、こういうことになっております。しかも、私どもは常識的に、人工透析でありますとかCTスキャンと申しますのか、そういう新しい医療が最近どんどん導入されておりまして、だからそういう傾向もこれあり、ここ最近の傾斜は非常に厳しいのかな、しかし、それがそのまま、瞬間風速のような一つの傾向が十年、二十年将来にわたって持続されるんだろうかといろいろ考えてみたわけでございます。  そこで、ちょっとお手元に委員長の許可を得て私なりの一つの算定したグラフを用意したわけでございますが、いろいろ厚生省から出てまいりました数値というものをプロットいたしまして、昭和八十五年の時点国民医療費八十八兆円なるものにどのようなカーブを描いて進んでいくんだろうかということをいろいろ置いてみたわけなんでございます。だといたしますと、その傾向は、この上の欄にも書いておりますが、六十年から七十五年の間には六・二四%の伸びで複利計算で伸びていく。七十五年から八十五年にわたっては七・〇五%、これは一人当たりの年率の伸びでございます。それから、医療費全般から見ますと右のカーブになりまして、やはり七%の伸びないしは七・四%の伸びで伸びていくということなのでございます。  この七%ないしは七・数%の伸びが何に根拠するか、それは最近の一年半の医療費の実績を見てそう判断いたしました、こうなっているのです。ところが、では最近三年間の伸び率はどうなっているかということで六十年、六十一年、六十二年、六十三年、それぞれ国民医療費を求めまして、そして増加額、伸び率を算定いたしましたら、六・五、五・七、五・二とむしろだんだん漸減傾向にあるわけなんでございます。これが最近の実態であるのに、なぜ厚生省のあの資料はこういう七%を予定するカーブとなってあらわれてくるのか、その根拠がいかにも私どもわからないわけでございましてへ、この辺は大変重要な問題になってまいりますので、改めて御説明をいただきたい。
  172. 黒木武弘

    ○黒木政府委員 医療費の推計は大変難しいわけでございますけれども、今回推計に当たりまして、いろいろな過去の実績のとりようがあるわけであります。長期推計でございますから、例えば過去十五年間をとるということになりますと二けたの一一%台になる、こういうことでございます。それでは五年間とろうかなということでございますけれども、これは実績で六%の伸びになっているわけでありますが、その間、御案内のように五十八年には老人保健法が、無料化から有料化という大きな制度改革がありました。あるいは、五十九年にも健保法改正ということで、サラリーマンに一割の一部負担が導入された、こういうことでございます。したがいまして、この過去五年の実績もなかなか使いにくいなということでございます。  では、直近、一番新しい六十三年度の数値、この資料にも御提示いただいておりますけれども、あるいは六十一年度の数字でございますが、六十二年度は、私どもは非常に財政厳しい中で大がかりな医療費の適正化を織り込んだ、これは実績ではございませんで予算上の数字でございまして、これもなかなか使いにくいということで、結論といたしまして、制度改正等の影響のない自然体の数字が最も出ている一年半をとろうということで、被用者保険につきましては六十一年四月から六十二年九月までの一人当たり医療費というものを出しました。四・一%でございます。国民健康保険につきましても同様の期間をとりまして、七・六%でございます。老人保健につきましては、これも数字が出ておりますが、六十一年度に、六十二年一月から老人保健法の制度改正、また一部負担の引き上げが行われるということで、ここの期間がまた医療費が大幅に変更いたしますので変えた方がいいだろうということで、老人については六十年七月から六十一年十二月の一年半をとりまして、五・七%という一人当たりの伸び率の実績値を得たわけでございます。  その数値をもとに、これからの人口増あるいは制度別の加入者の状況、特に、それぞれ制度別に、人口が高齢化しますとともに老人層なり高齢者層がふえるわけでございます。老人層等は、特に高齢者層は若い人よりも医療費が多くかかるということは統計上明らかでございますので、したがって、年齢階層別に先ほどの一人当たりの医療費を再編いたしまして結論を得た、その結果が七%台であったということでございます。  総じて申し上げれば、現在の医療費の伸びに対してやや多目に出ているのではないかという御懸念でございましょうけれども、これからの高齢者の増が急ピッチで進む、したがって、今の若い人口構成から老人層あるいは高齢者層を中心にした人口構成がこの推計に反映された結果、七%台の数字になったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  173. 吉田之久

    吉田委員 この前の説明の限りでは、人口構成の変化はこの推定の根拠に入っていないはずでございます。もちろん人口構成の変化でいろいろと比重が変わってまいりますことは、私どもは承知いたしております。しかし、出された時点では、ここ一年半の医療費の伸び率を見て、それをとらえてこれから十五年、二十年後を想定した。私は、大体そんな短期間のデータで十年、二十年の将来を予見するというのは非常に間違いだと思います。そういう意味で、ここ最近十年ぐらいのいろいろな医療費対国民所得も比較してグラフをつくってみたのでございますが、むしろ非常に緩やかな伸びでございます。  したがって私は、時間がありませんのでここでこれ以上の論議はできないと思いますけれども、こういう重要な、政府側によれば、だから間接税を導入しなければならないんだとおっしゃる、そういう唯一の口実になっておる二十一世紀当初の社会保障のあり方、その一番基本的なデータをこういうあいまいな形でつくられるべきではない。つくられたものはそれとして、やはり専門家がよりもっと中長期的にいろいろ尺度を合わせてみて、そして大体この辺だろうかなということを想定しないと、国民は大変間違った判断材料に基づいてこれからの対応をしなければならないというふうな気がいたしますので、その点は特に御注意を申し上げておきます。  それから、今度は、ポンカス論議から有事法制の整備の問題についていろいろ論議されたわけでございますけれども、掃海艇派遣は憲法上は可能であるけれども政策としては派遣しないと過日我が党の和田委員に対して当時の中曽根総理がお答えになっておるわけでございますが、それはそれとして、もしもどうしても掃海等に従事しなければならない事態ができてきた、あるいは最近は触雷事件は下火のようでございますけれども、ロケット攻撃が一層しきりでございます。こういう中で、我が国に石油が運べないような事態が来れば、これは容易ならぬ事態でございます。  何かの対応をしようとしたときに、もしも部下に死傷者が出た場合、指揮官は業務上過失致死傷の罪に問われることに、今の法制ではなると思うのです。あるいは、もしも不幸にしてそういうことに従事している自衛隊員が亡くなった場合には、それは訓練中の事故死と同じような尺度において年金や弔慰金が考えられるのか、あるいはそういう事態が生じた場合に、それを命令した指揮官はどのように処分されるのか、処罰されるのかされないのか、その辺が全然不明であります。こんなことで今後の国家の安全のためにいろいろと対応できるんだろうかという点が私は非常に心配なのでございますが、防衛庁長官はいかがお考えでございましょうか。
  174. 依田智治

    ○依田政府委員 お答えいたします。  私どもとしましては、現在の自衛隊の行動に関しまして、現行自衛隊法等によりまして自衛隊の行動、予想されるものにつきましては十分カバーできておるというように考えてございます。  それで、有事につきましては、もう先生御存じのように、自衛隊法七十六条の出動が予想される事態についての第一分類、第二分類、第三分類ということを現在やっておるわけでございますが、先生御指摘のようなペルシャ湾のような問題の事態への対応という点につきましては、既に昨年十月七日、非軍事的手段による対応ということを我が国の政府として決めておるわけでございます。  法律的には、本当に我が国に対する組織的、計画的対応ということになれば、七十六条の自衛隊の自衛権の発動ということが考えられる事態、また一般的な問題でありますれば、八十二条の自衛隊の海上における警備行動ということで一般的には対応することになるのじゃないかと思うわけですが、具体的に細部、ではしからばどうかという問題については、現時点で大変深く突っ込んだ研究はしてございません。これは、現在の時点におきましては自衛隊の通常予想される法制をもって対処するということになろうかと思いますが、それぞれの問題が出た時点でまた具体的に真剣に検討すべき問題であるというように考えておるわけでございます。
  175. 吉田之久

    吉田委員 時間を厳守して、きょうはこれにて終わります。
  176. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  次に、野間友一君。
  177. 野間友一

    野間委員 まず最初に、予算編成権を持っておられます総理に、本暫定予算についてお聞きしたいと思いますが、二日の閣議で決めて二日に提出をした、こういうことですね。ところが一方では、奇妙なことにこの暫定予算の範囲は期間が一日から八日まで、こういうことですね。予算というのは、読んで字のごとく、あらかじめ算定する、これは広辞苑にありますけれども、そういうものです。過去にさかのぼっての予算というのはあり得ないわけですよ。どうお考えでしょうか。
  178. 西垣昭

    ○西垣政府委員 財政法は、国の会計年度は四月一日から始まると定めておりまして、暫定予算期間につきましても、歳入歳出とも四月一日を始期とすべきだ、こういうふうに解釈しております。
  179. 野間友一

    野間委員 いや、そんなこと聞いていないのですよ。二日に策定されたのでしょう。二日に閣議で決定して出された予算ですよね、この暫定予算は。ところが、その期間は一日からですよ。そうでしょう。予算というのは、もともと今から将来に向かってする、あらかじめ、読んで字のごとくですね。ところが、二日に決めたものが一日からもうさかのぼっている。これはまさしく予算じゃないわけですよ。どうお考えでしょうか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本予算成立いたしますまでは、この暫定予算成立いたしますと、四月一日から八日までを、その期間をカバーしておるわけでございますから、一日に生じた国の債務あるいは国の債権というものは、この暫定予算によって行われるしか行う方法がないわけでございます。確かに一日が済んでおりますけれども、その日に属する国の権利なり債務というものはそれを施行するための予算が要りますから、これがそれになるということだと思います。
  181. 野間友一

    野間委員 いや、私の問いに答えてないわけですよ。予算というのは、今からあらかじめでしょう。これから先でしょう。ところが、二日に決めたものが中身は一日にさかのぼっておる。これはまさしく予算じゃないのじゃないか。おかしいじゃないか。これは先例ありますか、総理大臣。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでしたら、逆に申せば、この予算が三日から八日でございましたら、一日と二日はどうなりますか、カバーする予算がないことになりますから。
  183. 野間友一

    野間委員 だから、予算というのは憲法の建前からしても、これは八十三条、八十六条ですね、財政法の三十条あるいは財政法の十四条、とにかく新しい年度に対して事前にきっちり組んで空白をつくらないというのが予算なんですよ。まさしくあらかじめですからね、将来に対してですよ。ところが、本件の場合について、大蔵大臣はえらい問題をこんがらかるようなことを言いますけれども、さかのぼって組むことで果たして予算と言えるかどうか。言えないでしょう。二日に決めたものがどうして一日の分が予算と言えるのでしょうか。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 予算の予という字におこだわりであれば別でありますけれども、歳出権限というものは、予算がなければ政府は歳出ができないわけでございます。仮に三日から八日でございましたら、一日と二日に政府が持っておる歳出の義務でございますね、それは予算がなければ履行はできないことになると思います。
  185. 野間友一

    野間委員 だから、履行はできるかどうかじゃなくて、私がお聞きしているのは、異例の出来事ですからね、さかのぼって予算を組むというようなことはあり得ないわけですよね。その点について私は内閣の責任は大変重大だと思うのです。私は、編成権を持っております総理の明確な見解を求めたいと思うのです。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでは、多分御質問の意味は、そういうことであれば三月のうちにこういうものは組んでおくべきだ、こういうお話かと存じます。それでございますと、現実には参議院予算を御審議中であって、私どもはそれが期日内に成立することを念願をいたしておる立場から申しますと、参議院が御審議中に暫定予算政府が勝手につくって出すということは、これはもう期限までに本予算成立しないであろうということを政府が勝手に考えるということになりますので、それは政治的にはなかなかできないことでございます。  今回の場合は、たまたま参議院予算委員長がそろそろ政府準備をしたらどうかと言われましたので、並行してとにかく準備だけをせよということとして三月二十六日に準備をしたのでございます。
  187. 野間友一

    野間委員 そんなこと聞いておるわけじゃないのですよ。では、大蔵大臣聞きますが、こういう二日の時点でさかのぼって組んだ暫定予算、こんな先例ありますか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 暫定予算年度が始まりましてから組んだ先例はないと聞いております。
  189. 野間友一

    野間委員 私は、こういうあしき先例をつくった竹下内閣の責任は重大だと思うのですよ。確かに四月五日まではどうだとか、あしき先例は幾つかあります。それは私は誤りだと思います。と同時に、今回の暫定予算というのは初めてのケースなんです。今大蔵大臣認めたように、これは先例がないのですよ。新しいあしき先例なんですよ。私は、内閣総理大臣の責任というのは非常に重大だと思います。どうですか。
  190. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この問題、長い話の問題でございますが、率直に言って、先例のないことであった、それは私自身のまさに責任である、それはそのとおり思っております。
  191. 野間友一

    野間委員 だから、今責任をお認めになりましたけれども、こういうあしき先例はやはりつくってはならぬ、当然だと思うのですよね。大体予算がさかのぼって、そんなばかなことはあり得るはずはありませんからね。私はぜひ、これはどういう責任をおとりになるのか、そのことについてもお聞かせいただきいと思うのです。
  192. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いつもよく旧憲法時代のお話をするのでありますが、それは今その規定はないわけでございますから、したがって暫定予算制度というものがある。今回はまさに先例のないことをしました。その責任はどうするか、私自身可及的速やかに予算を通していただくことに対して最大限の協力をするというのが私の果たすべき責任です。
  193. 野間友一

    野間委員 先例がないということはお認めになりました。なぜ三月じゅうに、これは実際三月の三十日あるいは三十一日の時点ですね、年度内に本予算が通らないということは明らかだったわけですよ。それにもかかわらず暫定を組まない。空白をつくって、二日になってさかのぼった一日からの予算を組んだ、全く異例中の異例なんですよね。だからその時点で、三月三十一日の時点で、なぜ暫定予算を策定してそれを提案しなかったのかですね。なぜしなかったのでしょうか。
  194. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三月三十一日までに予算参議院成立しないことは明らかであったとおっしゃいましたが、明らかではなかったのでございます。その証拠に二十六日の段階で予算委員長が「審議と並行して念のため暫定予算編成準備に入るよう」と要請されたのでございまして、これから見ましても、年度内に、旧年度内に予算成立しないことが明らかであったとは、この段階では考えられません。
  195. 野間友一

    野間委員 いや、そんなことはないですよ、三十一日の時点でわかっておるわけですからね。国会審議するわけですよ、予算は。国会審議するわけです。ただ予算編成権、これを提案するのは総理大臣の権限ですからね。それが三十一日の時点で、本予算はその年度内に通らない、成立しないとわかった段階でこれを出すのは、これは当然の話なんですよ。なぜこれを出さなかったのか。今、準備の話をされました。私は準備のことを聞いておるんじゃないんです、準備のことを。それを策定してこれを出すというのがその責務でしょう。違いますか。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来の財政法は、多分野間委員の言われるような慣行を考えておったと思います。それは私は、したがって暫定予算をいつ出してはならぬ、いつ出せと書いておりませんのは、原則はやはり年度が切れる前に出せと、こういうことであったろうと思いますけれども、その後の我が国の民主政治の慣行というものは必ずしもそのように行われてまいりませんでした。それで、現実に本予算年度がかわりましてから何日かたって成立したことがございまして、その間政府は、実は非常な、これは厳密に言えばいろいろな御議論があるところだと思いますけれども、差し支えない範囲でのこれに対処をしてまいったという事実がございます。  そのことはあしき慣行であろうと、もうそういうことは一切これからやらないように国会も御運営になられるというようなことでありますと、それはまた財政法が想定した本来の趣旨に返っていくのでありましょうけれども、現実にはある程度慣行的に今のようなことが行われてまいりましたから、それで政府もそれに従いまして対処をいたしてまいったのでございます。
  197. 野間友一

    野間委員 私は、そのあしき慣行を次から次と発展させるという点の問題を指摘しておるわけです。今まさに、今度初めてのケースですからね。  六十一年三月二十八日付、政府暫定予算についての、これは参議院予算委員会における安田委員長発言の中にありますように、これもいろいろ問題になりまして、「予算年度成立が期待し得なくなった場合には、事態に即応して国民生活影響を与えないよう適切に対応することとし、諸般の情勢を勘案し、財政法第三十条の規定により対処する」、年度成立が期待し得なくなった場合には三十条の規定によって暫定予算を組むんだ、このことを政府みずからが約束しておるわけです、参議院で、国会に。そうでしょう。だから、六十一年にこういう約束をしながら、もう既にことし破った、こういうことになるわけですよ。私はこれは許されぬと思うんです。  そこで、なぜこんなに、二日になってから暫定予算を組むという異例中の異例をやったのか、その原因についてお聞かせいただきたい、このことなんですよ。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問の御意図がよくわかりませんけれども、私どもの知っておる限りでは、参議院予算審議が比較的順調に行われておりましたけれども、しかし二十五日になりまして、各理事さんの間で理事会委員長から政府に念のため暫定予算編成準備にかかるように御要請があった、こういう予算審議状況であった。しかるところ、政府はこれに従いまして準備はいたしましたけれども、なお参議院が本予算年度内に成立させていただく期待が日にちとしてはございましたので、政府準備だけをいたしておきました。  しかるところ、先週の土曜日になりまして、今週の参議院の御審議の日程が立たないということが明らかになりましたので、そういたしますと、暫定成立に必要な二日だけはとらしていただきませんと六日の恩給支払いができない、こういうことになりまして、土曜日にやむを得ず決心をいたしたわけであります。
  199. 野間友一

    野間委員 あなたはいろいろ言いわけされますけれども、繰り返しになりますけれども、こういうあしき先例だけは、六十一年に約束しながらもうすぐにこれを崩す、破ったということの責任は重大だということを私は申し上げておるわけです。そうして、こういう背景というか理由ですが、午前中から論議がありますような、国会の正規の機関で徹底して論議をして、そこで一つ一つ決めていくということでなくて、我が党を除きまして、そしてああいう密室で社公民が協議をする、ここに私は最大の問題があると思うんです。  私はここに東京大学の竹内さんという教授の書かれた一般紙の報道を持っておりますけれども、こう言っておられますね。「国会審議を始める前に、与野党国会対策委員長の間で、重要な政策の内容について「合意」を取り決め、国会での審議はその合意に基づいて、形式的に大急ぎですましてしまうというのは、改めて考えてみれば、国会という場を著しく軽視するものであり、有権者を侮辱するものではなかろうか。極端にいえば、これでは国会が、総会屋に取りしきられる株主総会と同じことになってしまう。」こういう厳しい指摘をやっておられるわけですよ。  国会で、どうでしょうか、国会が始まっておってまで審議がストップする、そして裏でどんどん話が進んでいく、動いたりとまったりすることが密室の協議、これによって左右される。私はそういうものを優先させるという今のあり方は、これはなってないと思うんですね。そういう私的な脇議を優先さして、国会をとめたり動かしたりする。あるいは、先ほど申し上げたように異例のこういう出来事、今度の暫定ですね、さかのぼってまで予算を組む。あらかじめが泣きますよね。こういうものにまで発展していく。こういうところに私は密室政治の弊害が出ておると思うのです。  国会は正々堂々と、堂々と政策をぶつけ合って議論する場ですね。ですから、私は自民党総裁としての竹下さんに要求したい。こういうことをやめさせるために、こういう紛糾、このもとになったのは今の密室協議ですから、こういうものを一切やめて正々堂々と、国会は言論の府、国権の最高機関としての国民の負託にこたえる、そういうものにすべきである、こう思いますが、いかがですか。
  200. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御意見は承りました。
  201. 野間友一

    野間委員 いや、承るだけじゃだめです。本当に真剣に考えなけりや。これは、私は今竹内さんの主張を引いただけですけれども、あと要するにこの密室協議についての批判はいっぱいありますよ、新聞報道に社説等々。これは御案内のとおりなんです。これでは国民国会にそっぽを向くのは当たり前なんです。ですから、堂々とやっぱり論議しようじゃありませんか。そういうものに戻していく、それが私は政権与党の総理大臣、総裁の責務だと思うのです。ぜひこれは慎重に十分考える、こういうことは当然だと思いますけれども、その点についてもう一遍答弁を求めたいと思います。
  202. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国会のことに対して行政府がコメントすることは私はずっと差し控えるべきだという筋を通しておりますから、したがって今の話は話として承りましたと、こうお答えしたわけであります。
  203. 野間友一

    野間委員 単なる承りましたということだけじゃだめなんですよ。そういう姿勢でもしこれからも臨まれるとするならば、同じようなことが起こってくるわけですよ。国会が全く形骸化するわけです。民主主義が死んでしまうのですよ。そのことを私は警告しているわけですね。ぜひその点十分な検討というか、考えていただきたい、このことを重ねて申し上げておきたいと思います。  大体、竹下総理の手法は、熟しガキを待つとか、あるいは優柔不断とかいろんな、みずからも言語明瞭意味不明ということを言われたというふうに言われましたけれども、そういうことなんです。ですから、私はこの税制の問題について言いましても、片方では総理大臣はこう言われますよね。私がいろいろしゃべると予見を与えることになると、こうおっしゃる。ですから、直間比率の見直しとか、あるいは所得や資産やあるいは消費のバランスの問題、こういう理念や概念だけは言うけれども、具体的にこういうふうにやりたいんだと、私はこう思うというのは全くないわけですね。  ところがどうですか。一方では党の税調も政府の税調もずっと進んでおるわけでしょう、事実は。素案まで出したでしょう、政府税調。私はこれは総理の言うこととすることが全く矛盾しておる、こう言わざるを得ないと思うのです。もしあなたがこの大型間接税を導入しないとするなら、はっきり導入しないと言ったらいいと思うのです。やると言うなら、こういうものをやりたいんだということを堂々と申し上げて、そして国会を解散して信を国民に問うというのが常道だと私は思うのですよ。違いますか。
  204. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、最後の問題、国会解散をして信を問え、これは解散権が政府にあることは事実でありますが、やはり四年間の任期は大事に大事に大事にすべきだ、これだけは重ねて申し上げておきます。  それから、私の政治手法に対する批判、これはしかと承りました。
  205. 野間友一

    野間委員 だから、国民は非常にわかりにくいとみんな思うのは当たり前なのですよ。やるのかやらないのか、やるとすれば何をやるのか、それがさっぱりわからぬ、こういうことです。ところが、一方では政府税調が素案を出した。しかも素案のEC型あるいは一般消費税、取引高税、大体三つのタイプが出されておりますね。この素案をもとにして、この中のどれか、この三つのタイプがありますが、これを総理としてはやるということなんですか、どうなんですか。素案に対してどう対応されるのですか。
  206. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 総理大臣の諮問機関である政府税調に対し諮問を申し上げ、その答申が出て、やはり判断をすべきときにはきちんとした判断をいたします。
  207. 野間友一

    野間委員 素案の三つのタイプ、私もこれを読んでみたのですけれども、EC型の付加価値税タイプ、これは去年廃案になりました売上税とほとんど同じものですね。それから一般消費税タイプ、これは大平内閣のときに選挙で惨敗して断念せざるを得なかったが、こういうのを出している。取引高税、これは一九四八年、芦田内閣が実施したけれども、翌年これをやめた。いずれも一度死んだものを墓場から掘り出すということになると私は思うのです。  中曽根さんが六十一年夏の同日選挙で大型間接税を私がやるもんですか、野党は四谷怪談の時期だからお化けをうんと持ってくる、こういうふうに全国にふれ回りました。今は桜の花が咲く季節なんです、春なんです。だから季節外れの、時期外れのお化けをまた出そうとするのか。みんなやはりそう思うんですよ。いかがですか。どうなんですか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは総理大臣からの昨年十一月の諮問にもございますとおり、昨年までに起こりましたこと等もいろいろ勘案の上でひとつ税制調査会で検討してほしいと申し上げてございますから、それに従いまして御検討いただいているものと思います。
  209. 野間友一

    野間委員 いずれにしても、国民の世論に対する挑戦でありますし、あるいは国会決議あるいは選挙公約にも違反することになりますから、私はこういう作業はやはりもう中断すべきである、こういう大型間接税の導入についてはこれはもう中断すべきであるということを主張しておきたいと思います。  それから、素案の減税案を見ましても、やはり法人税についても刻みをフラット化すると言いつつ、そして税率をうんと大きなところは低くする。所得税についても同じですよ。まさしく大金持ち減税ということがこの減税案そのものを見たってはっきりしている。ところが一方所得減税、これを見ますと、人的控除の引き上げ、これについては検討する、あるいはキャピタルゲインの課税についても検討するというようなことで、本当に国民がいろいろ要求しておることについては検討とか、目を向けない。結局、今素案の中で出ておる具体的なことは大金持ち減税であり、大企業減税、これだけなんですよ。  こういうものをするから、国民世論、新聞の世論調査にもありますし、あるいは税制国民会議、ここでも反対の提言しておりますよね。私は当然だと思うのです。神戸市議会を初め、今幾つかの市議会とか町村でも意見書を出しております。私は、こういうものは何としてもやはり断念する、もしそうでなかったら信を国民に問うという態度をとるのがルールだと言わざるを得ないと思うのです。  最後に申し上げておきますけれども、私は今申し上げたように、いろいろな国民の願い、こういうものに背いて、そして、みずからは物を言わないけれども、どんどんどんどん事実上その作業だけは先行させるということをやはりやめるべきだということ。もう一つは、国会運営の問題について申し上げましたように、私的な協議を優先させて国会を形骸化し、さらにその上に異例中の異例のこういうことまでやるというところに、国会の本当に惨めな姿、国民にそっぽを向かれる姿があると思うのです。この点について私は、十分総理反省し、こういうことのないようにこれから改めていくということについての見解を求めたいと思うのです。
  210. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 意見はきちんと承らせていただきました。
  211. 野間友一

    野間委員 きちんと承るだけじゃなくて、今申し上げたように、税制国民会議の反対の提言も御存じでしょう。新聞の世論調査の結果も御存じでしょう。これは国民の声なんですよ。これに謙虚に耳を傾ける、こういう姿勢をぜひ持っていただきたい、このことをお願いしておきます。
  212. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは一般論として、国会に議席を持つ者、謙虚に耳を傾ける姿勢を持たなかったら資格がないと自分でも思っております。
  213. 野間友一

    野間委員 時間が参りまして終わりますけれども、そういう謙虚に耳を傾ける姿勢であるならば、私は、大型間接税、新型間接税の導入はこれをやめるべしということを重ねて要求して、質問を終わりたいと思います。
  214. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて野間君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして昭和六十三年度暫定予算三案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  215. 奥田敬和

    奥田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  昭和六十三年度一般会計暫定予算昭和六十三年度特別会計暫定予算昭和六十三年度政府関係機関暫定予算、以上三案を一括して採決いたします。  右三案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  216. 奥田敬和

    奥田委員長 起立多数。よって、昭和六十三年度暫定予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。(拍手)  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました昭和六十三年度暫定予算三案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  218. 奥田敬和

    奥田委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十七分散会