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1988-02-29 第112回国会 衆議院 予算委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十九日(月曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    井出 正一君       池田 行彦君    稲村 利幸君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       左藤  恵君    佐藤 文生君       斉藤斗志二君    志賀  節君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       高橋 一郎君    西岡 武夫君       林  大幹君    林  義郎君       原田  憲君    細田 吉藏君       松田 岩夫君    松田 九郎君      三ツ林弥太郎君    村井  仁君       村田敬次郎君    村山 達雄君       井上 一成君    井上 普方君       上原 康助君    川崎 寛治君       菅  直人君    佐藤 敬治君       辻  一彦君    遠藤 和良君       貝沼 次郎君    坂口  力君       中村  巖君    水谷  弘君       宮地 正介君    森本 晃司君       伊藤 英成君    田中 慶秋君       滝沢 幸助君    柴田 睦夫君       中島 武敏君    野間 友一君       山原健二郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         宮内庁次長   山本  悟君         皇室経済主管  井関 英男君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁人事局長 手塚 康夫君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政管理         局行政情報シス         テム参事官   重富吉之助君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         経済企画庁国民         生活局長    海野 恒男君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         科学技術庁長官         官房長     見学 信敬君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 昭六君         科学技術庁科学         技術振興局長  吉村 晴光君         科学技術庁研究         開発局長    川崎 雅弘君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         環境庁自然保護         局長      山内 豊徳君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵大臣官房審         議官      瀧島 義光君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省銀行局保         険部長     宮本 英利君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文化庁次長   横瀬 庄次君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省薬務局長 坂本 龍彦君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  佐々木喜之君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         林野庁長官   松田  堯君         通商産業省通商         政策局長    村岡 茂生君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 植松  敏君         特許庁長官   小川 邦夫君         運輸省航空局長 林  淳司君         海上保安庁長官 山田 隆英君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省婦人局長 佐藤ギン子君         労働省職業安定         局高齢者対策部         長       竹村  毅君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省道路局長 三谷  浩君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         会計検査院事務         総局第四局長  吉田 知徳君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月二十九日  辞任         補欠選任   海部 俊樹君     井出 正一君   後藤田正晴君     高橋 一郎君   田中 龍夫君     鈴木 宗男君   浜田 幸一君     松田 九郎君   村田敬次郎君     斉藤斗志二君   村山 達雄君     村井  仁君   渡部 恒三君     松田 岩夫君   大久保直彦君     貝沼 次郎君   坂口  力君     森本 晃司君   田中 慶秋君     滝沢 幸助君   楢崎弥之助君     伊藤 英成君   松本 善明君     野間 友一君   矢島 恒夫君     柴田 睦夫君 同日  辞任         補欠選任   井出 正一君     海部 俊樹君   斉藤斗志二君     村田敬次郎君   鈴木 宗男君     田中 龍夫君   高橋 一郎君     後藤田正晴君   松田 岩夫君     渡部 恒三君   松田 九郎君     浜田 幸一君   村井  仁君     村山 達雄君   貝沼 次郎君     中村  巖君   森本 晃司君     遠藤 和良君   伊藤 英成君     楢崎弥之助君   滝沢 幸助君     田中 慶秋君   野間 友一君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 和良君     坂口  力君   中村  巖君     大久保直彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、一般質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。貝沼次郎君。
  3. 貝沼次郎

    貝沼委員 私が言うまでもないことでありますが、近年は、特に我が国状況だけで判断できない問題がたくさん出てまいりました。我が国状況といいますか、我が国国内法だけで判断できない問題がたくさん出ております。特に科学技術分野、これにおきましては例えば科学技術基礎研究、これなどは技術基礎研究というものの区別そのものが非常に難しくなっておるというような問題。それから、さらに宇宙開発というような問題になってまいりますと、基礎研究成果そのものがもうどこにでも転用できるというような状況。それに軍事技術、特に軍事技術の中でもその中に秘密の保持というようなことがかかわってまいりますとこれまた難しい。  それに、最近言われております知的所有権の問題。そして今度は、どうもアメリカあたりでは軍事技術転換可能性の高い基礎研究。例えば原子核の問題にいたしましても、かつてラザフォードが原子核研究をやったときには原子爆弾になるとは思っていなかった。しかし、そういう転換可能性の高い基礎研究、こういうものまでも注目を集めるようになってきたというようなことを一つ一つどもが眺めてみますと、これは基礎研究部分だからまあまあ軍事とは関係ありませんとか、あるいはこの部分はもう宇宙開発だけですからというようなことが、一つ一つはあるのですけれども、例えばそれはちょうどテレビの画面で言うならば、あるものは緑色であったり、あるものは黄色であったり、あるものは赤色であったりするわけですけれども、ちょっと距離を置いてそれを眺めたときに何か画面が映っておる。  それがバラ色の平和であるならば問題はないのでありますけれども、ややもすると不気味などす黒い影がちらちら見えたりするのではないか、そういうことが絶対あってはならないので、私どもはそれをどうやって平和の歯どめというものをかけるかということできょうの質問をするわけでありますが、全体でかけることは非常に難しいので、おのおの個別の問題についての平和の担保といいますか、こういうものを本日は確認をさせていただきたい、こう思って質問させていただくわけでございます。  そこで、初めに原子力関係で申しますと、原子力開発というものが平和の利用に限って行われるというようなことの担保のために、原子力委員会あるいは原子力安全委員会というものが設置されておるわけでありますが、この原子力委員会原子力安全委員会の位置づけと、それから内閣との関係についてどうなっておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  4. 松井隆

    松井政府委員 原子力委員会原子力安全委員会内閣関係でございますけれども先生案内のとおり、原子力委員会及び安全委員会設置法がございまして、そこで原子力委員会安全委員会内閣総理大臣に対する諮問機関というふうになってございます。いわゆる国家行政機関の八条機関に相当するやつでございますけれども、その運用につきましては、御案内のとおり原子力委員会ないしは安全委員会の答申について内閣総理大臣は十分にそれを尊重しなくちゃいけない、そういう義務が課せられている極めて重要な両委員会であるというふうに承知しております。
  5. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは実は愚問みたいな質問なんですけれども、なぜこういうことを質問したかと申しますと、原子力委員会というのは科学技術庁の中にあるのではないかというような錯覚があったり、原子力委員会あるいは原子力安全委員会の大変重要な地位というものがややもすれば理解されておらない、こういう面がありますので、わざわざその質問をさせていただいたわけでございます。  したがって、原子力開発というものは原子力委員会が責任を持ってやっていく。そうして、その原子力委員会決定については、これは内閣総理大臣は十分尊重していかなければならない。この十分尊重していくということにつきましては、法律で書くにはこれ以外の書きようがない。しかし、ほとんど原子力委員会決定されたことをそのままやっていくということであるというような解説もなされておるわけでございます。そういうところから、この原子力委員会または原子力安全委員会というのは平和のとりでである、平和の担保である、こういうふうに言われておるわけでございます。  ところが、この平和の担保というものがややもすれば形骸化される傾向があるのではないか、それがあってはならないというのが私の質問の趣旨になるわけでございます。そこで、具体的なことをちょっと申し上げます。  これは、昭和六十一年の七月二十五日の夕刊に出ておる記事でございます。「政府は二十五日の閣議で、日本原子力研究所理事長国際科学技術博覧会協会事務総長を務めた伊原義徳氏、新技術開発事業団理事長に同事業団専務理事赤羽信久氏を充てることを了承した。」こういう記事が載っております。これは、閣議了承したのが二十五日、そうして原子力委員会同意を求めたのが二十九日でございます。  これは、原子力研究所法第十二条ですね、十二条には「理事長は、原子力委員会同意を得て、内閣総理大臣任命する。」こうなっております。この内閣総理大臣は、主務大臣としての内閣総理大臣と理解いたしております。したがいまして、この同意を得る前に閣議で了承したということは、そこに出席をしております原子力委員長、つまり科学技術庁長官、この人は既に同意を与えておるわけでございまして、それから原子力委員会同意を求めるということは、これは逆立ち人事になっておるわけでございます。こういうことにつきまして、官房長官はどういうふうにお考えですか。
  6. 小渕恵三

    小渕国務大臣 我が国原子力研究開発は、原子力基本法に基づき、平和の目的に限り、安全確保を大前提として推進されており、その中核でございます原子力委員会重要性については十分認識いたしておるところでございます。  そこで、日本原子力研究所理事長人事につきましては、今お話しのように、日本原子力研究所法の定める所要の手続を経て任命を行っているところでありますが、一方、内閣におきましては、特殊法人の役員の選考についての閣議決定は基づき、内閣意思統一を図る観点から、すべての特殊法人総裁等選任に当たっては閣議口頭了解を得ることにいたしておるわけでございます。  そこで、今貝沼委員指摘の点につきましては、原子力研究所法の十二条、先ほど委員指摘でございますが、その条項によりましてこの原子力委員会決定同意がありまして、その後総理大臣任命、こういう日程上の問題としては、これは法律に基づいて措置をいたしておるところでございます。しかし、御指摘のありましたように、その以前に閣議口頭了解があったことについて逆ではないか、こういうことでございますが、内閣総理大臣が最終的に任命行為をするということで、そのことについてあらかじめ閣議で、日程等関係もありまして、一応全閣僚にお諮りをするということで、法律上ということでなくて内閣措置としてやっておった。  このことが、先生指摘のように、順序からいいますれば原子力委員会での決定があり、その後政府も口頭了解し、かつ内閣総理大臣任命、こういう順序が正当だろう、こういうことをお話しだろうと思います。この点につきましては、結論的に言いますと、いろいろ日程上の事柄もありまして、そうした点にもなっておることでございますので、御指摘の点も十分今後配慮いたしまして対処いたしていきたい、こう考えております。
  7. 貝沼次郎

    貝沼委員 私が今指摘した点を配慮して今後対処していくということでありますから、恐らく今後はこういう逆のやり方はやらないと思います。  と申しますのは、昭和五十三年四月以降、実はちょこちょここういうことをやっておるのでありまして、それ以前はこういうことは全然やっていないわけです。ですから、そういう原子力委員会を軽視するようなそういう方向はとるべきでない。しかも人事というのは、私が言うまでもなく、一たん外に出てしまったならば、その後原子力委員会でオーケーをしなかった場合、これはその人の人格にもかかわってくる問題でありますから、慎重にやらなければならない。したがって、その根底においては、根回しその他が全部やられておるけれども、ただ内閣決定してから原子力委員会にかけるというようなことは、国民の目から見てこれは逆ではないか。どうせ、どっちを先にやらなければならないということは法律にも何もないわけでありますから、国民の納得のいくようなそういう方向でやっていただきたい。  特に、官房長官の時間がないようですから急ぎますが、この原子力委員会政策決定ですね、そういう場合にも今まで国家権力、つまり時の内閣政治介入というものがなされておったということがちょこちょこ話題になっております。これは、もう宇野大臣一番よく御存じだろうと思いますけれども、例えば再処理の技術をどこに決定するかというような場合に、当時の原子力局長は随分苦労されましたが、時の内閣総理大臣によってもう身柄を預けないかとか何か言われて、ついに原子力局長をやめたという記事が本人の言葉で語られております。  あるいは、俗昨言うCANDU炉、つまりカナダの原子炉でありますりけれども、これの導入問題をめぐってもいろいろと政府からの力が加わり、ついに原子力委員会において投票し、そうして原子力委員長は、結局おれは一票しか行使することができなかったというようなことがあります。これも政治介入の問題です。あるいは、古くは例えば田島事件とかあるいは四十八年の理研の問題とかいろいろなことが出ておるようでありますけれども、とにかく政策決定人事と、これだけは国民の目に明確にしておかなければなりません。  そこで最後に、官房長官の時間がないそうですから、もう一度決意を伺っておきたいと思いますが、今後こういう政策決定原子力委員会独自性主体性というものを尊重しておる以上、政治介入はしない、こういうことを明確にここで言っていただきたい。それから原子力委員長――まあこれは後でまた聞きます。ではそれだけ……。
  8. 松井隆

    松井政府委員 ただいま先生指摘の点、二、三御指摘があったと思いますけれども、私どもそういう問題につきましては、原子力委員会は常にやはりその原子力に関する識者を多数集めまして、そういう過程で議論し、いわばそのナショナルコンセンサスという形でつくっておくわけでございまして、私の了解している限りでは、そういう形で原子力委員会はすべて政策決定しているというふうに承知しております。
  9. 貝沼次郎

    貝沼委員 だから、そういう答弁をすると長くなるから、それは科学技術の方でまたしっかりやりますけれども、私は今政府の姿勢を聞いておる。  要するに、そういう主体性独自性を持って原子力委員会がいろいろなことを決定しますから、それは原子力委員長閣僚なんですから、そんなことを言ったって、無理な話は無理な話なんだけれども、少なくとも政府としてはその独自性を認めて、尊重して、政治的な介入はあったかなかったかという確認は別として、そういうことはしていきませんということを明言していただきたいということを言っているわけです。
  10. 小渕恵三

    小渕国務大臣 原子力委員会のよって成立したゆえんを十分承知をいたしまして、政府としては、それを守っていくことは当然のことだと存じております。(貝沼委員最後がようわからなかった」と呼ぶ)原子力委員会が設置をされましたそのゆえんを十分承知をいたしまして、政府としては、その委員会がその法律に基づいて存在していくために努力をいたしていくことは当然のことだと思います。
  11. 貝沼次郎

    貝沼委員 努力するのは当然ですけれども、努力だけでなく、そういうことはいたしませんということを明確にしてください。
  12. 小渕恵三

    小渕国務大臣 政府としては、当然のことでございますが、特段の政治介入その他、はかっていくことはあり得ないと存じます。
  13. 貝沼次郎

    貝沼委員 それから、こういうことが起こった場合に、原子力委員長が厳然としていなければならないという問題であります。この人事の問題でも、原子力委員長が何となくぼやけておった感じがする。したがって、原子力委員長は今後、例えば原子力産業の一般産業化とか、そういうことが問題になってきておりますね。原子力産業というのは特別なものです、放射能を扱いますから。独占企業です。にもかかわらず、一般産業化の話がどんどん出てきておる。そういたしますと、それに対する決定というのは重大な意味を持ってくるというようなこと、あるいは国際的な問題というようなことを考えた場合に、もっと厳然とした姿勢を持ってやっていただかなければならないと思いますが、その決意をちょっと述べていただきたい。――官房長官、結構です。
  14. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 原子力委員会また委員長として、原子力の平和利用の番人として、その重要な責務、任務を果たさなければならないことは当然のことでございまして、貝沼委員のお励ましにもこたえまして、原子力委員会委員長はさらにリーダーシップを発揮いたしまして、原子力平和利用の推進のため、また平和利用の番人としての役割をしっかり果たしてまいりたいと思います。  なお、人事の面につきましても、お話のとおり、原子力委員会同意を得ることを目標としてさらに努力を続けてまいりたい、このように考えます。
  15. 貝沼次郎

    貝沼委員 しっかりお願いしますよ。  それで、例えば内閣であるものを決定する、それから、それと違う意見で原子力委員が、これは複数ですから、合議制ですから、そこで方向が決まってくる、それが合わない場合だってあり得る。それが恐らく普通でしょう。その場合に、原子力委員長内閣の側に立って判断するのですか、原子力委員会の側に立って判断をするのですか。そこのところを明確にしていただきたい。
  16. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 原子力委員長は国務大臣でもございますから、内閣原子力委員長という両面の性格を持っておりますけれども、要は原子力の平和利用というものに重点を置いて、その立場に立つということの方が大事だと思います。
  17. 貝沼次郎

    貝沼委員 じゃ、その問題は時間がありませんので……。  次に、宇宙ステーションの問題でございます。  これは、宇宙ステーション計画というのが発表されてから、平和の目的に限るということでずっと来たわけでございますが、最近、宇宙ステーション計画に米国の国防総省が直接入ってくる、こういう変化が起こってまいりました。したがって、大変軍事色の強い印象があるわけでございます。政府はこういう事態に対して、宇宙ステーション計画の性格に変化ありと見るのかなしと見るのか、この点、簡単にお願いいたします。
  18. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生、宇宙基地につきましては、もう過去二年近くアメリカ、ヨーロッパ、カナダ、日本でやってきております。私どもといたしましては、幸いにいたしまして今交渉が大詰めに近づいているわけでございますけれども、日本としましては、宇宙の平和的利用という基本原則にのっとって対処をしておるつもりでございますし、今後ともその基本的な方針にのっとりまして対処してまいりたいと思っております。
  19. 貝沼次郎

    貝沼委員 そんなの答弁にならないのですよ。要するに、変化があったと見るかなかったと見るかという質問をしておるのに、そんなあれじゃだめですよ。もう一回言ってください。
  20. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 申しわけございません。私は、変化はないと見ております。
  21. 貝沼次郎

    貝沼委員 変化ないそうですけれども、一体どこで変化がないのか、私は大変不思議であります。  というのは、昨年の二月五日、米国の下院科学技術委員会の証言で、国防総省は宇宙基地での研究を認める、また六月二十六日、米国の下院で法案が可決されております。その中で「宇宙基地は研究、実験、軍事的問題を解決するための特別研究に利用される」こうなっている。それから「防御的、攻撃的を問わず宇宙兵器の実戦的実験、配備には、それが米国内法や条約に違反していれば利用されるべきでない」こうなっているわけですね。つまり、SDI兵器の開発、配備も既存の法律に反しない限りこれは認められておるわけでございます。宇宙兵器の実戦的実験や配備を禁じた小委員会可決の法案は大幅にこれを修正されまして、軍の利用の道が大きく開かれたと報道されておりますが、これはうそですか。
  22. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  私どもが承知しております限り、アメリカもほかの国も、この宇宙基地を平和の目的のために使おうということにつきましては意見が一致しているわけでございますが、他方、先生今御指摘のようなアメリカといたしましても、アメリカというか国防省でございますね、国防省といたしましても、特に国防省もユーザーの一つとして宇宙基地というものを使う道だけは残しておいてくれと言っているようなことは承知しております。しかしがなら、具体的な計画は国防省として持ってないというふうに承知しております。
  23. 貝沼次郎

    貝沼委員 具体的計画があるとかないとかじゃないのですよ。要するに、一つはここに認められておるのです。ですから、初め計画と話し合いしたときと今は明らかに違っておる。それから、平和の目的でアメリカと日本が意見が一致しているとあなたは今おっしゃいましたけれども、平和の目的という解釈はアメリカと日本じゃ全然違いますよ。それはそうでしょう。同じですか。答えてください。
  24. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 平和の目的につきましては、先生確かにおっしゃいますように、アメリカと日本とが少し違っているのは事実でございます。
  25. 貝沼次郎

    貝沼委員 ですから、ここは国会ですから、そんないいかげんな答弁をしないようにひとつしていただきたい。平和の目的という言葉はあるけれども、その内容において、アメリカの場合はこれはもっと広い意味で使われているでしょう。軍事も入るでしょう。非軍事とは言ってないでしょう、アメリカの場合。日本の場合は一応非軍事。ですから、解釈は国によってみんな違うところに今問題があるわけですけれども、とにかくあなたが今意見は一致しておるなんということを簡単に言うから、そんないいかげんなことは言わないでいただきたい。意見が一致しないということは食い違いがあるということでありますから、これは危惧があるというふうに見るのが正しいわけでございます。違いますか。
  26. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生、繰り返しになりますけれども、確かに御指摘のように、平和というものにつきまして日米の意見が少し違っておることは事実でございます。しかしながら、この立場自身従来からアメリカとしてはとっておる立場でございますし、日本としては平和の利用というものはこういうものだというふうな立場をとっておりまして、その点につきましては今の時点とその前の時点と違っているわけではございません。しかしながら、私どもとしましては、日本の平和の宇宙基地への参加というものにつきましては日本の立場というものを守って参加していきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。
  27. 貝沼次郎

    貝沼委員 それで外務大臣、今くどくどと議論はできませんが、アメリカの場合は、平和の目的に限るということについては、例えば国家安全保障のための研究は合致するわけですね。そういうようなことが非常に軍事的なにおいをぷんぷんさせておるということで、日本としては、平和利用に限るという国会決議その他から照らして考えると非常に問題がある。しかも、今この交渉過程においては、外務省では交渉中ですからこれは公にできません、私はそれを聞こうとは思いません。思いませんけれども、じゃ外務省は何をバックにしてその交渉をしておるのかといいますと、国民の中にもこういういろいろな議論があるのだということを持っておった方がいいのではないか。何もアメリカと対決するために言っているわけではありません。それを理解してもらうための話であります。  したがって、そういうことが明確にならないと、やはり参加を決定するということは私は難しいのだと思いますね。それは、もしもこういう軍事的なにおいがあってちょっと危惧があるなという場合は、大臣、純理論的に考えて、日本の国会決議等と勘案して、この宇宙ステーション計画に参加するということは私は間違いだと思うのですね。そういう場合は参加できない、こういうふうに判断したいと思いますが、大臣のお考えをお願いいたします。
  28. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど平和の定義についての貝沼委員の御発言がございました。確かに、日本的平和とアメリカ的平和では意味が、スケールが違う、こういうふうに思います。例えば、原子力に関しましても、私たちはあくまでも平和利用のみ、これは基本法において明らかにしておりますが、アメリカはその原子力を核として、兵器として持ち得ることが平和の維持につながる抑止である、こういう解釈でございますから、したがいまして、平和というものは戦争をしないということでございますから、さような意味合いにおきましては、究極の目的は一つであっても、解釈にはあるいはそれぞれ場面によって、ケースによって違う問題があるかと存じます。  ただいまの宇宙基地はやはり平和につながるものとして、私たちは今日その問題に関しましては枠組みを決めて、実務者レベルの話し合いをさせておるところでございますから、常に我が国はいろいろな問題において、平和国家である、世界においても唯一の憲法を持っておるわけですから、そうした意味であらゆる面においてチェックするということは大切なことだろうと思います。
  29. 貝沼次郎

    貝沼委員 あらゆる面においてチェックする、これが問題ですね。あらゆる面においてチェックする、平和のためにチェックする。  では、チェックされておるんだと思いますからお尋ねいたしますが、今、平和につながるといわば日本政府は信じてやっているわけですね。しかし、信じるなんというのは、こっちの方の考えでありまして、事実はそれに反する場合は間々あることでございます。何もアメリカを疑っているわけではありません。交渉というのはそういうものだろうということであります。したがいまして、それならば、それを信じるに足る証拠、その担保、それは何ですか。それを示していただきたい。
  30. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 私は交渉担当者の一人といたしまして、今交渉の経過、こうこうだと申し上げるわけにはいかないのでございますけれども、日本の国会決議あるいは日本の基本的な平和利用の立場が条文にきちっと入りますように努力してまいりたいと思っておりますし、努力しているつもりでございます。したがいまして、ちょっと今経過中の点は御勘弁願いたいと思います。
  31. 貝沼次郎

    貝沼委員 僕は経過を聞いているんじゃないんですよ。経過なんか聞いておりません。向こうは平和目的に限るだろうと信じておるというから、言葉だけではわからないから、こういうことがあるから間違いありませんという歯どめ、担保、それは端的に何ですかということをお尋ねしております。
  32. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 国会決議、衆参両院の国会決議がございますし、あるいは宇宙団法、そういったような日本の法律あるいは日本の国会の御決議等々が具現できるように対処してまいりたいと思っております。
  33. 貝沼次郎

    貝沼委員 これは何ぼやっていてもらちがあきませんな。  国会決議の話が出ましたから、宇野大臣にちょっと確認しておきますけれども、国会決議の解釈は、これは本院において解釈されるわけですね。これは国会決議ですから本院において解釈される。これは政府答弁、当時加藤防衛庁長官あたりが何回も答弁しておりますから、したがって、政府が勝手な解釈をして国会決議を曲げないようにひとつ御注意いただきたいと思います。それについての所感をちょっと。
  34. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 平和に関する国会決議は幾つもあると思いますが、政府は常にその国会決議を尊重しております。
  35. 貝沼次郎

    貝沼委員 こういう宇宙開発、したがって、今交渉中とか、あるいはこういう平和が脅かされる可能性のあるものが入ってくるような事態になっておるときに、予算もつき、そして六十三年度予算の中に入っておるわけですね。この予算案にちゃんと入っております。そういうようなことも本当にもっと検討して、場合によっては、ここから削らなければならぬ場合だって出てくるわけですから、そういうことも議論しなければならないわけですが、これはまた常任委員会のときにじっくりとひとつやらせていただきたいと思っております。  次は、武器輸出問題でございます。これは大変有名な問題でございます。有名な問題で、私も過去五、六年間の議事録を全部読んでみました。よく同じことを聞いて同じことを答えているなという感じがしたわけでありますが、とにかく何といいますか、言葉が多いんですね。言葉の解釈が多い。そこで、去る二月十八日に発表された一九八九年度の米国国防報告と軍事情勢報告、これを見ますと、日本と米国との関係において、一つは日米欧の軍事技術共有の促進、それからもう一つは九〇年代の日本の防衛努力推進の必要性とか、あるいは日本の戦時受け入れ国支援体制ですね、こういうことが述べられております。防衛庁長官は今回のこの国防報告などをどういうふうに受けとめておられるのか、簡単にひとつ御答弁願いたい。
  36. 瓦力

    ○瓦国務大臣 米政府は従来から効果的な国防力の強化に努力する、こうしたことを同盟国である我が国に対しまして一層の努力を期待する、また、こうしたことは従来から変わらないアメリカ側の姿勢であり、今回の国防報告におきましても、その変化はない、私はかように考えております。また、我が国といたしましては、自衛のための効率的な防衛力を整備するという従来の考え方をもって対処してまいるわけでございまして、今回の米国の国防報告につきまして所感を求められますと、今申し上げましたように、従来の米側の考えは従来どおりである、かように考えております。
  37. 貝沼次郎

    貝沼委員 一月の二十日、長官が訪米されまして、そして次期支援戦闘機FSXの共同開発だけでなく、他の武器技術についても共同開発を推進する、こういうふうに提案をして、米側も同意した、こういういきさつがあります。このことは日本の平和原則とされてきたいわゆる武器輸出三原則、これがなし崩し的に形骸化されるのではないかという心配があるわけでございます。  そこで、SDIの参加に伴って一九八三年十一月八日に対米武器輸出に関する交換公文が取り交わされておりますけれども、その中で、我が国はFSXなどの共同開発で米国以外の第三国への開発技術の移転は事前の同意が必要、四条六項ですね、ということになっております。先般の当委員会での質問でも、そこまでの答弁があったようでございます。日本政府としては、武器輸出三原則の立場から一般的に、一般論的に理論的帰結として、いろいろな約束がありますけれども、一般的な理論的帰結として同意を、第三国に輸出してもよろしいですかとアメリカから同意を求められたときには、一般論ですよ、一般論の理論的帰結としては常にノー、できません、こう答えるのが私は正しいと思いますけれども、この点についての御答弁をお願いしたいと思います。
  38. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 技術供与の問題は、武器三原則によらないということで、日米間において技術協力をすることは日米安保体制のために必要だということが、その当時の官房長官談話で明らかにされております。したがいまして、事前に話があるわけでございますが、そのときには諸般の事情を勘案しますから、したがいまして、イエスもあればノーもある、こういうふうに考えております。
  39. 貝沼次郎

    貝沼委員 私は、政府がいつもそう言うが、そうじゃない、政府の気持ちとか行動とかそんなことを聞いているんじゃないのです。こういう条約とかあるいは日本の国会決議とかそういうようなものを考えたときに、これは、第三国に対して輸出をしたい、それの同意を求めてきた、それに対して日本は常にノーと言うのが理論的帰結ではありませんかということを尋ねておるわけですが、いかがですか。
  40. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)政府委員(外務省) 米国が第三国移転について同意を求めてまいりましたときは、ただいま大臣から御答弁申し上げましたとおり、政府といたしましては、個々の具体的なケースに応じまして、米国にもともとの技術を供与した趣旨、それから国会決議等に基づいて我が国が堅持しております武器輸出三原則、これらを踏まえまして、イエスまたはノーを判断するということでございまして、理論的な帰結として必ずノーだということは言えないのではないかというふうに考えられます。
  41. 貝沼次郎

    貝沼委員 理論的帰結として必ずノーでない。ノーでない場合もあるというのは、どこに根拠があるのですか。
  42. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)政府委員(外務省) どこに根拠があるということではございませんで、従来国会で行われております諸決議、それから我が国の法制を見ましても、これはもちろん問題が問題でございますので慎重に対処すべきことではございますけれども、いかなる場合でもノーと言わなければならないという解釈は出てこないのではないかというふうに考えております。
  43. 貝沼次郎

    貝沼委員 政府はそういうような態度を一生懸命説明するわけです。私が聞いているのは、理論的帰結を聞いている、純理論的なことを聞いておる。純理論的な答弁をお願いしたい。
  44. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)政府委員(外務省) 申しわけございませんが、私も純理論的に御答弁したつもりでございますけれども、理論的な問題といたしましては、必ずいかなる場合にもノーと言うべきだという結論は出てこないというのが政府の考え方でございます。  ただし、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、問題が問題でございますので、個々のケースの検討に当たっては、当然ながら非常に慎重な検討を加えるべきということは、それは従来より政府が申し上げている点でございます。
  45. 貝沼次郎

    貝沼委員 もう時間がなくなりましたから、それじゃ、もう一点だけ。――では、時間がもうなくなりましたからもう一点の、例えばNATOとの関係においての質問をしようと思ったのですが、ちょっと時間が足りませんのでここで終わりたいと思いますけれども、とにかくこういう武器の輸出の問題にしても、やはりはっきりいたしません。それからさらに、この日米科学技術協定の問題も私はやりたかったのですけれども、時間がありませんから、委員長にお願いしたいと思います。  この日米科学技術協定の中身は、この国会で議論しても何も出てまいりません。そこで、アメリカでは公聴会を開いたり、国民の声というものをいろいろ聞いております。日本の場合はそういうことがありませんので、果たしてどういう方法でやったらいいのかわかりませんが、ひとつ当委員会におきましても、日本の国民の声というものを率直に聞く場というものを御検討願いたいと思うわけでございますが、委員長、よろしくお願いいたします。
  46. 奥田敬和

    奥田委員長 貝沼君の御提議に対して理事会の場で協議させていただくということで御了承ください。  この際、森本晃司君から関連質疑の申し出があります。貝沼君の持ち時間の範囲内でこれを許します。森本晃司君。
  47. 森本晃司

    森本委員 まず最初に、緊急ではございますが、大蔵大臣にお尋ねを申し上げたい、質問に入る前にお尋ねを申し上げる次第でございます。  去る土曜日二十七日、野党四党が共同修正案を出しましたが、これに対する大蔵大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 野党四党の共同予算修正案が二十七日に提出されたことを承知をいたしております。また、その内容も私なりに読ませていただきました。  ただ、野党の方からもっと具体的に御説明を承る機会があるというふうに承っておりますので、正式にはそれを十分承りましてから申し上げるべきが本来でございますが、とりあえずどうかというお尋ねでございますので、政府の立場を申し上げますと、本来、六十三年度の予算は、御承知のように、行財政改革を着実に前進させるということと同時に、内外の課題にこたえまして、NTT株の売り払い収入の活用等によりまして、公共事業を大幅に増額をする、こういうことを考えまして編成をいたしました。そういう努力が具体化しておりますのが六十三年度の予算であると政府は考えておりますので、したがいまして、編成をいたしました政府の立場といたしましては、これが最善のものと考えております。  なお、編成に当たりまして、昨年の暮れに野党党首からもお話を伺いまして、その上で編成に当たったという経緯もございまして、政府といたしましては、各方面の御意向を考えながら最善のものを編成いたしたというふうに考えております。
  49. 森本晃司

    森本委員 もう一点、宇野外務大臣にお尋ね申し上げたいわけでございますが、よろしゅうございますでしょうか。  日中平和友好条約が締結されてことしで満十年になります。この十年間の日中関係についてどう評価されているのかという点一点と、それからもう一つは、中国首脳が日本のマスコミとの会談で友好条約の継続を望むと表明しているようでございますが、日本政府としてどう考えていらっしゃるのか、お尋ね申し上げます。
  50. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おっしゃるとおり、日中平和友好条約、十年を迎えます。この間、日中間の関係は非常に改善されまして、私、現在一番よい状態が持続されておるのではないか、かように存じます。もちろん平和友好条約と同様な重さを持って日中共同声明がございますし、さらに四原則というものもございますし、あらゆる面において、今一つの中国としての我々との関係はまさに最高だと私は考えております。したがいまして、この平和条約が十二分に果たしてまいりました役目を考えますと、これは当然、中国が望まれるならば、我々としても望むところである、かように考えてよいのではないか、こう思います。
  51. 森本晃司

    森本委員 それでは、当初の質問に入らせていただきたいと思います。  まず最初に、国土庁長官にお尋ねを申し上げたいと思うところでございます。  今回の内閣改造で我がふるさとから国土庁長官、そしてきょうもお見えいただいておりますが、環境庁長官が大臣に御就任になられまして、我々の大先輩でございますし、私も大変うれしく思うと同時に、敬意を表するところでございます。この場をおかりいたしまして、おめでとうございますと遅まきながらでございますが、申し上げさせていただきたい。それで、きょうは国土庁長官並びに環境庁長官質問をさせていただきたいと思っておるところでございます。  国土庁長官、四全総がうたっている国土の均衡ある発展と多極分散型国土づくりを目指し、今、日夜大変御苦労をいただいておるわけでございますが、一方でまた笛吹けど踊らずということで、総理も大変いら立ちを示しておられるというふうな声も聞くことがございますし、なかなか今回のこの問題、遅々として進みにくいのではないだろうかと思うところでございますが、この地方移転の問題をどう考えておられるのか、決意並びに今後の考え方をお述べいただきたいと思います。
  52. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 政府関係機関の東京三十三区からの移転の問題につきましては、御指摘もございましたように、四全総にも明記されておるわけでございますし、同時にまた、昨年十月政府が決めました緊急土地対策要綱の中にも明示されておるわけでございます。今日東京一極集中と言われている。過密になっている。となりますと、いろんな都市・産業機能を二十三区から移転してもらいたい。それにはやはり政府が率先垂範して政府機関も移転を図るべきではないかということでございます。そのために、一月の二十二日であったと思いますけれども、四つのカテゴリーを決めまして、それに該当する機関は原則として二十三区の外に移転することにしようじゃないかということで、各省庁で今その機関の選定に当たっていただいておるわけでございます。  竹下内閣、発足したのが十一月でございますので、したがいまして、移転の問題は六十三年度予算案には計上されていないわけでございます。急遽調査費を予算に計上するということを通じて、この問題と予算との連係を図ったわけでございます。そういうことでもございますので、七月中には政府関係機関決定をしたいな、そうすると、八月までに各省庁が大蔵省に予算要求書を出すわけでございますので、その中で盛り込むことはできるじゃないか、六十四年度予算案には計上することができるじゃないか、こういうことで進めているところでございます。
  53. 森本晃司

    森本委員 七月をめどに今連絡会議が始まって、該当の機関約二百機関を探しているところだ、またそれを推し進めていきたいというところだ、こういう長官の御答弁だと思いますが、第一次の出されました二十機関十一部隊、この内容を見てみますと、私ずっと一点一点きょうここで申し述べることは時間がございませんのでできませんが、当初出されたこの第一次に出てきた内容を見てみますと、例えば警察庁が動く、総務庁が動く、あるいは北海道開発庁が動くといっても、公庫ビルの中であったり一つの建物の中であったりする場合が非常に多いわけでございます。また、防衛庁が動くといっても、結局は最後赤坂だけが残るだけで、あとはくるくるっと回っていくという感じ。科学技術庁は確かに全面的に出ていきます。あるいは法務省を見ましても、これも果たしてどれだけの空き地ができるかという点等々を考えてみますと、非常に難しい問題がある。その辺が明確になっていない問題と、移転したところで、言うならば、面積があかない、人数もわずかであるというところが今批判されているところでございます。  一つ一つ挙げるわけにはまいりませんが、出ていない省庁では経済企画庁、環境庁。国土庁が出ているといいながらも、これは大蔵との共管の部分である。それから外務省が出ていないという、こういった何となくはっきりしない候補地が挙がったわけでございます。総じて言いますと、人数もそんなに明確になっていないし小幅である。面積も果たしてそこに空地ができるかどうかということもわからない。それから移転先についても十分になっていない。跡地利用をどうするのかということも、具体的なその利用計画もない。一部はありますけれども、そういう状況であります。  こういった状況で、同じような流れで二百機関をまた推し進めていくとするならば、私は今抱えている問題を解決するようなところには至らないであろう。しかもそれには相当多くの抵抗がある。職員の皆さんの移転についてもいろいろと考慮していくという問題が出ておりますけれども、ただそれだけで解決する問題ではない。よほど思い切った発想と思い切ったリーダーシップを発揮して政治的にやらないと、この問題は出てこないのではないだろうか。各省庁に任せて、それがそれぞれ小出しの状況で出てくるだけでは、本当の一極集中を免れない。大きなブロック機関も一つどんと出ていくというふうなぐらいのものを今度の二百機関の選定に当たってはやらなければならないかと思うのです。  例えば、これは私の私案でございます。幸い国土庁長官、先ほど申し上げた私と同じふるさとでございますけれども、同時に文部大臣も御経験された方でございますので、非常に御理解をいただけるかと思うのですが、一例ではございますが、例えば文部省の中にある文化庁、この文化庁はやはり日本のふるさと奈良へ持っていって、それでそこに動かしていくというぐらいに大きなブロック機関の移転等々を考えていく必要があるのではないだろうか。何も私が奈良だからといって特に奈良びいきの話をしているわけではございませんけれども、幸い関西学術都市もできる、そういうところへまとめて持っていく、そういった考え方に立たないと、なかなかこの問題は解決していかないと思うのですが、いかがでございましょう。
  54. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 率直に経過を申し上げた方が御理解いただきやすいのじゃないかな、こう思います。  竹下内閣が発足したのは十一月の初めでございました。そして総理大臣を座長にする土地対策関係閣僚会議が設置されました。十一月の下旬に二回目の会議が持たれました際に、自民党の幹事長から、政府機関の移転問題をここで決めたらどうかというお話があったのですけれども、内政審議室の方ではこの問題は先にしてほしいという希望を聞いておったものでございますから、私から、次回に相談させてほしいとお願いをして、その際はこれを議題にしなかったわけでございます。そして、ぜひ予算内示前の間にもう一回開きたいと申し上げておったわけでございますが、どうしても都合がつかない、こういう結果になってしまったわけでございます。  私が心配いたしておりましたのは、政府の方針と予算との関係でございました。そういう中で総理の方から、一省庁一機関、まずどういう機関を移転させられるか名前を挙げてほしいという御希望が出てまいったわけでございます。その中で今おっしゃったような機関が出てまいったわけでございました。そして同時に、予算との整合性の問題につきましては、調査費を国土庁の予算に計上するということで整合性を図ったわけでございました。  そういう中で一月の二十二日に第三回土地対策関係閣僚会議を開きまして、四つのカテゴリーに属するものは原則として移転をするのだ、こういう方針を決定させていただき、続いて閣議におきまして、その方針を同様に決定させていただいたわけでございました。そして今は国の機関等移転推進連絡会議が設けられまして、事務的にどういう機関を出すか、また土地をどうするか、受け皿をどうするか、いろいろな問題を進めていく過程にあるわけでございまして、その最終的なゴールを七月と、こう予定をしているわけでございます。  同時に、与野党の国会議員で新首都問題懇談会がございます。同時にまた自民党の政務調査会に政府機関等の移転に関する調査会が設けられております。これは首都機能移転に関する調査会ですね。首都機能を一括移転をするという問題が中心の課題になっているわけでございます。そういうこともございますので、首都機能が一括移転が行われてもそれについていく必要のない政府関係機関は一切この際二十三区の外に出てもらおうではないかということにしているわけでございます。そうしますと、首都機能一括移転問題と今回の政府関係機関の移転問題とは並行して進めていくことができる、こう考えておるわけでございます。  今森本さんがおっしゃいました文化庁の問題は、首都機能一括移転の際に課題になることだ、こう思っておるわけでございます。首都機能一括移転の場合にも、首都機能を分散立地させることも可能でございます。そういう場合に、分散立地させる分都方式をとることにして、文化庁は奈良県に持っていこうではないか、こういう結論も予想されるわけでございます。今はせっかく首都機能移転に関する調査が進められている際でございますので、それとは切り離して、矛盾しないように並行して政府関係機関の移転問題を進めていこうということで進めておるわけでございます。  こういう経緯でございますので、四つのカテゴリーに属するものは原則として二十三区の外に移転する。各閣僚とも政策としてこれをきちんとしたものに仕上げていかなければならないということについては一致しておりますので、必ず期待どおりの政策としての実現を果たすことができるのではないかなと思っておるところでございます。
  55. 森本晃司

    森本委員 国土庁だけではなく、やはり今度の連絡会議の中では官房副長官が議長になって、総務事務次官、国土事務次官それから大蔵事務次官等々が副議長になられるので、大蔵省また同時に総務庁も大変な関係があるかと思います。  そこで、きょうは総務庁長官にお見えいただいておるわけでございますけれども、長官が今非常に威勢のいい発言をぽんぽんされているというふうにも書いてございましたし、またこの新聞記事等々見ますと、ある省庁はろくな機関を出してこないのはおかしいじゃないかという発言をされた。されたかどうかはわかりませんが、総務庁長官として現況並びに二百機関を推進していくのにどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  56. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 政府機関等の地方移転につきましては、総務庁といたしましては、人員、機構の管理をいたしております関係から深い関心を持っておるところでございます。今回国土庁がおまとめになりました移転の原則につきましては、よくこれだけ進められたというふうに私ども評価をしているところであります。  実は私もこの問題について非常に関心を持っておりまして、国土庁がかつて示されました首都改造計画なども細かく読ませていただいたところでありますが、それによりますと、昭和六十年代の前半において基本的な方針を決めて、後半においてそろそろ取りかかるかというくらいのペースで考えておられたようであります。それを竹下内閣が成立をいたしましてから、わずかの期間にこれだけ進めてきたということは大変な努力だというふうに思いますし、何か私が発言したことにつきまして国土庁長官と意見が違うようなことをマスコミはおもしろおかしく書いているところがありますが、それは言葉の端々を取り上げてつくった話でありまして、私の方は完全に意思統一しているところでございます。
  57. 森本晃司

    森本委員 首都移転に関しまして今国土庁長官からお話がございましたが、遷都問題でございます。  これは、奈良から都がスタートいたしまして、京都、鎌倉それから江戸というふうにいきまして、江戸幕府ができて四百年、さらにまた明治政府ができて百二十年、東京が今ブラックホールになりつつあるので、この問題については何とか解決しなければならないということが、これはもう今や日本の大きな課題にもなってまいりました。我が党の夏の政策フォーラムでもこの遷都問題が大きな論議を呼んだところでございますし、先ほど長官の答弁の中にもございましたように、自民党の調査会でも三年をめどに御検討いただいている。さらに、先般関西で開かれました関西財界セミナー、この財界セミナーで日向方斉前関経連会長が地名まで挙げて遷都論を論じられた。あるいはまた宇野関経連会長も遷都問題について触れておられる。財界の方で地名を挙げてやったのはもう初めてのことでございますし、その後の中部財界セミナーにおいても遷都論が論じ始められた。     〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕  こういった今各地、各層からのいろいろな論議が出ておりまして、分都もあればあるいはまた展都もあるという問題で大きく包んで遷都論が今話題になっていると思います。この機会を逃して東京の一極集中の流れを変えることができないのではないだろうか。また、遷都先についても各地が挙がっています。仙台の方も挙がっておりますし、中部も挙がっている、関西も挙がっている。それぞれの地域で候補地が挙がっておるわけでございますが、これはどうしてもやはりそれぞれの利害の大きく絡んでくる問題でございますので、私はまず遷都論問題あるいは先ほどのその機能の移転問題にしても大方針を決めなければならないのではないだろうかというふうに思います。特に、二十一世紀の日本の首都をどういうとらえ方をするのか、この問題どうあるべきなのかという問題から取り組んでいかなければならない問題ではないかと思うところでございます。  したがって、この問題については、遷都論については特に国民的合意が必要でありますが、国土審議会の中に首都圏整備特別委員会というような超党派の会議がございます。私は、もうこれだけ盛り上がってきたのでございますから、この遷都問題についても各党あるいは各地域でやっているのではなしに、協議機関を国土庁の中に超党派で設けて進めていくべきではないだろうかと思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  58. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 首都機能の一括移転、首都移転ということになってまいりますと、単に国土政策の見地からだけでは決められない、もっといろいろな角度から総合的に検討しなければならない重要なことだと思っております。幸いにしていろいろなところでいろいろな議論が行われておりますので、やはり国民全体の論議になって熟した結果を見て政府としてはいずれにするか判断をすべきだ、こう思っておるわけでございます。  国の機関の中に今おっしゃいましたような機関をつくるということは、既にそういう方向を決意したということにもなるわけでございますので、やはり政府機関の中にそういう意味の機関を加えるということにつきましてはいま少し時間を経た上で結論を出すべきじゃないかな、こう思っておるところでございます。
  59. 森本晃司

    森本委員 次に、日米公共事業問題に移らせていただきたいと思います。  先日行われました日米公共事業協議に対しまして、アメリカ側は、竹下総理が一月訪米した際に外国企業が日本市場参入の経験を積むのに十分な措置をとる、このように約束したにもかかわらず、先般の協議内容は不十分であったとして日本の姿勢を批判していると伺っております。その主な理由は、一つはプロジェクトの数が少なかったということ。もう一つは、プロジェクトの範囲がほとんど工事に限られておりまして、アメリカが得意とするエンジニアリング設計などは含まれていなくて、参入しようにも参入できない、そういったところに不満があるように聞いておりますけれども、不調になった、我々はある意味ではこの間の会談は決裂したのではないかなというふうに思っておりますが、不調になった原因は何なのか、外務大臣にお尋ね申し上げます。
  60. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 公共事業にお答えする前に、先ほどの森本さんの日中平和友好条約でございますが、付言をしたいと思います。  日中平和友好条約には、日中両国の永遠の平和、これがうたわれておりますので、したがいまして、日本側といたしましてはこの条約は十年たったら自動延長とかそういうようなことではなく、永遠に持続さるべきものである、かように考えております。  なおかつ、ただいまの公共事業に関しましてでございますが、一応私とシュルツさんとの間におきましても話を進めてございますし、また総理とレーガンさんとの間におきましても、実務者で協議させようということになっておりまして、現在のところは中断ではなくして、言うならば継続審議になっておりますから、さらに我が国としてはアメリカに対しましても十二分に日本の公共事業のいろいろなことがございます、そうしたことに関しましても、習熟してもらうように努力をしておる最中である、こういうふうに御理解賜りたいと思います。
  61. 森本晃司

    森本委員 外務大臣、済みません。そのアメリカが今強い批判をしているのは、私が申し上げました二点のような理由ではないかと思うのですが、その辺はいかがでございましょう。
  62. 佐藤嘉恭

    佐藤(嘉)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、私どもがある種の提案をいたしたわけでございますが、アメリカ側の反応と申しますのはいろいろございますけれども、日本の公共事業に対する関心が非常に強いという観点から、ぜひこの日本の制度に早く習熟したい、こういう立場であることは間違いないところでございます。  ただ、アメリカ側といたしましては、この日本の公共事業について多くの企業が関心を持っているということを踏まえまして、できるだけ広いアメリカの企業がこの機会を得られるように、そういう観点からの意見の表明がございましたことは事実でございます。ただいまなお協議が継続中でございます。大臣から御答弁がございましたように、一層その協議を深めてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  63. 森本晃司

    森本委員 運輸大臣にお尋ね申し上げます。  特に強い反発を出しているのは、アメリカ企業を優遇する特定公共事業から、民間の事業だからあるものを省いている、こういったところに不満を表しているのではないだろうか。確かにアメリカが言っているのは民間の事業でございますので、これは非常に難しい問題が多々あるかと思いますが、国が全く、運輸省が全く関与していないというのではなく何らかの形で関与している、しかもそれが役員の方々には運輸省のOBの方がたくさんいらっしゃる、重要な位置を占めていらっしゃる、そういう状況で果たして運輸省が無関係だと言えるのかどうかという点でございます。  これはちょっとお答えにくいかもわかりませんし、同時に今協議を進めていただいている最中でございますので、その大事な地点に立っておりますので、大臣としてもお答えいただきにくいかと思いますが、やはりこの点の問題が大きなネックになっているのではないだろうかというふうに思うわけでございますが、どうそれをクリアし進めていくかということも含めて運輸大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  64. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 まず、原則的なことを申しますが、空港のターミナルビルというのは、これはやはり純然たる民間会社か、あるいは地方公共団体の加わった第三セクターで事業が行われているわけでございまして、本質的に公共事業とは言いがたい、ですから、今回の協議の対象にはなり得ないと私たち考えております。  それから、アメリカが非常に参入をというか、着工を欲しているターミナルビルについてでありますけれども、こういったものの発注は、あくまでも民間企業たる会社あるいは第三セクターの自由はゆだねられておるわけですから、政府はこれについて関与できないということでございますが、確かにおっしゃるようにこういった関係会社に運輸省の出身者が多いことは確かでございますけれども、しかし、民営化しました国鉄もそういう意味ではかつての国鉄の人たちがかなりの数幹部を占めておりますし、かといってこれはあくまでも民営化したわけでございまして、そういう意味でアメリカと日本と協議しますと、ここら辺のパーセプションギャップというのが非常に埋めがたくて苦労しているのが現況でございますが、何とかそれを埋めて向こうの理解も取りつけながらこの問題を円満に解決したいと努力をしている最中でございますので、ひとつ御了解いただきたいと思います。
  65. 森本晃司

    森本委員 アメリカから見ますと非常に公共性の強い民間事業でございますので、今運輸省も、恐らく外務省もいろいろと御苦慮いただいているところかと思いますが、どうかアメリカ側にも十分理解しやすい形で話を進めていただきたいと思いますし、また同時に、参入できる機会をいろいろな形でつくっていただいてはどうかというふうに、目下検討中のところでございますので、私の方からそのようにお願いをさせていただきたいと思います。  さらに外務大臣に、今回の対象プロジェクトが少なかったという話を聞くわけでございます。十四と十六の違いがあるわけです。だけれども、それを一つずつ聞いてみますと、既に終わったものとか、あるいはこれはいろいろな、例えば成田のような場合の関係もありますけれども、そういったことも十分わかるわけでございますが、なぜかこの公共事業だけに限らず、例えば関西空港のときもそうでありましたけれども、日本の場合、どんと出さないで小出し、小出しにやっていく。言われりゃちびりと出す、また言われりゃちびりと出す。何となく日米外交がもう一歩基本的な、特にこういう通商の問題では基本的な流れがあった方がいいのではないだろうかというふうに思うわけです。  アメリカがよく日本側に対してツーレート、ツーリトルというふうにも言ってくる。このプロジェクトをもう少しどんと出せないものなのか、また譲れるところはどこまで譲り、譲れないところはここは譲れませんよということをはっきりしていく必要があるのではないか、私はそのように思いまして、一時逃れ的な対応ではなくして、もっと大綱を示して、これは公共事業に対する基本政策がないからそういう押したり押されたり、押したり押されたり、あるいは小出しという状況になっているのではないだろうかと思います。基本政策を示すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。
  66. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理と大統領との間におきましては、縮小均衡にあらずして拡大均衡だ、個々の問題は十二分に協議しましょう、これが原則になっておりますし、また日本といたしましては、開かれた日本、世界に開かれた日本、こうなっておりますから、私たちといたしましてはやはりそういう方向で基本政策を決めてまいりたいと思います。  ただ、この経緯におきましては、最初はアメリカも、関西国際空港ということでそれは合意に達した、すると今度は。民間と言いますから、ではひとつ大規模な民間の、例えば民間活力の事業等を出しましょう、するとすぐさま公共事業と、だんだんと向こうの方からも次から次へと参りましたから、あるいは応対がおくれた面があるかもしれませんけれども、今森本委員が言われたことは大切なことでございますから、そうした基本方針でやっていきたい。また、公共事業と申しましても各省が関与いたしておりますから、外務省といたしましても各省の御意見を伺いながらやっておりますが、ただいまのお説は私は十二分に理解できるお説であると考えております。
  67. 森本晃司

    森本委員 建設大臣にお尋ね申し上げます。  今回の一件のプロジェクトに外国企業の参入を認めるために、外国での工事実績を指名基準に加味する、今回の六事業についてはそういう提案をされたようでございますけれども、国際化時代にあって、日本が公共事業の参入を受けるに当たっては、単にその六事業だけではなしに、外国での工事実績をもっと検討対象にしていくという流れをつくっていかなければならないと思うのですが、いかがでしょう。
  68. 越智伊平

    ○越智国務大臣 公共事業は、御承知のように国民の税金で賄っております。したがいまして、より立派な工事、また、より安くやらなければなりません。したがいまして、ただいままでは国内の実績を見ていたわけりであります。しかしながら、今回総理が習熟の意味で外国の実績を加味してもどうかというようなお話を提案しております。でございますから、日本の制度あるいは地質、気象とか技術面、こういうことも含めまして、ひとつ外国の実績も加味しながら円満に進めていく、このことが大事である、かように思う次第であります。  また、この実績の見方等につきましても、十分研究、検討いたしまして進めてまいりたい。また、プロジェクトにつきましては、外務省初め各省庁とよく連絡をとりまして、円満に解決するように進めてまいりたい、かように思う次第であります。
  69. 森本晃司

    森本委員 建設大臣にもう一度お尋ねいたします。  外国での実績を今後建設基準の中に入れるという、見直しを始めるということですか、どうですか。
  70. 越智伊平

    ○越智国務大臣 基本的には国内の実績ということであります。そして、いろいろ各国と話し合う場合には多国間で協議をする、こういうことでございますけれども、今回のアメリカとの場合につきましては、外国の実績を加味する、こういう姿勢で臨んでいる次第であります。
  71. 森本晃司

    森本委員 最後に、外務大臣にもう一度お尋ね申し上げたいと思います。  先ほど外務大臣が開かれた日本という言葉を使われました。確かに、国際化の中でこれから競争もしなければならないが、同時に協調と調和を図っていき、開かれた日本というものを目指していかなければなりませんが、今回のこの公共事業でアメリカが非常に厳しい状況で、日本が誠意を見せない以上、協議を打ち切って三〇一条へ移行するぞというふうな、三〇一条発動も声となってきているというふうにも伺いますし、これは包括貿易法案の審議が大詰めを迎えているために、アメリカ政府の強い姿勢を示す意味でも三〇一条の発動を承認する公算が多いというふうな声もあるようでございます。  そこで、今回のこの、今中断中とおっしゃいましたけれども、この協議を今中断しているのを再開するに当たりまして、どのような姿勢で臨まれるのか、また、この協議の今後のめどはどういうふうになっているのかということをお尋ね申し上げたいと思います。
  72. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど今回の協議は中断ではなくして継続審議中だ、こういうふうに申し上げましたので、近く我が国といたしましても協議再開はできる、かように存じております。そして、その再開に際しましては、先ほど私が竹下・レーガン会談、その内容を申し上げましたが、そうしたことを基本線として話は続けられるであろう、そして、また開かれなければならない、かように考えております。
  73. 森本晃司

    森本委員 中断ではなく継続がまた再び協議の場になってくるかと思いますが、どうか日本とアメリカの摩擦がぎしぎししたものにならないように、また、他の通商貿易にも影響するようなことがありますと、大変なことでございます。どうか外務大臣、御心労が多いことかと思いますけれども、よく検討いただきまして、実りあるものにしていっていただきたいというふうに念願します。  それでは、最後環境庁長官にお尋ねを申し上げます。  非常に河川や湖沼の汚染が全国的な話題になっております。これは年々大きくなっているわけでございます。これは非常に残念なことでございますが、先般環境庁が調査いたしました調査結果によりますと、全国ワーストファイブの中に、私と環境庁長官国土庁長官が住んでいる奈良県の川が三つも入っているということでございます。これは、そのBODの基準を選ぶ基準のとり方にも、確かに雨量が少ないときにとったというふうな問題もありますけれども、いずれにしても建設省の河川調査でも大和川がワーストツーになっている。  我がふるさとの川が今こんなに汚れているということになりますと、私のみならず環境庁長官も非常に胸を痛めてくださっているのではないだろうか。恐らく環境庁長官として就任しているときに、何とか泳げるぐらいの川にしていこうじゃないかというふうな決意を持って臨んでくださっているかと思いますが、いかがでしょう。
  74. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 初めに、お祝いのお言葉をいただきまして、心から感謝を申し上げます。  さて、あの結果が出たとき、私も大変ショックを受けました。日本じゅうの川がこんなに汚れている。特に、奈良県の中心の大和川が大変な汚れ方だという事実認識を強くいたしました。したがって、その後予算編成のときも閣議で特に発言いたしまして、結局この汚れを解決するのは下水道の推進しかないという意味の発言をいたしまして、建設大臣もそれと同じ意見をお述べになりました。  また、予算を政府決定をする前の日は大臣折衝になっておりますが、このときも新規予算のお願いと加えて特別な発言をお許しを願って、下水道の推進をやっていただかないと、特にそこに思い切った予算を配分しないと、これからは大変なことになるという意味のことを申し上げました。おかげで、今度の大蔵大臣が予算説明のときも特にこの問題を取り上げていただいた説明を聞きまして、私も違った意味で非常に感動いたしております。  したがって、二〇%以上の予算配分がふえたわけでございますが、そういう中で大和川の状態を見詰めました場合に、これは一部工業排水もありますが、ほとんどが生活雑排水による影響でございます。だから、今も申しましたように、この処理ということはいろいろなやり方あるけれども、結局奈良県の場合は流域下水道を一日も早く完備していく、それに伴う公共下水をどんどんやっていく、このことに建設省にも特に悪いところには十分な傾斜配分をお願いしつつあるし、また、厚生省で昨年度から新規事業で合併浄化槽の計画があるし、ことしはその非常に多額な要求を昨年よりもしておられますので、これらの事業を取り入れて頑張っていただければワーストワンをもうなくすることができるんじゃないかという期待も持っております。  ただ、ここで言えるのは、奈良県政が非常におくれているのじゃなしに、奈良県の大和川というのは、本来古い土地であるし早くから開けた土地で、一次産業基盤としてはもう最高の土地で、言いかえると天井川という名があるわけで、だから災害には非常に弱い、また、いわゆる渇水時はもう一番早く川の水が流れないようになってしまう、こういう人工の川でございますから、新しいいわゆる市街化、これからどんどん奈良県なんか特に人口急増地帯になるとこの弱点が出ておるわけで、川の河床をうんと低くする。そうしてまた川上には調整ダムをつくって常時水が流れるようにする。水量と非常に関係が深うございますから、そういう都市構造を進めていくことが本奈良県の場合は大事じゃないか。現在、初瀬ダムとか布目ダムの建設も近く始まりますけれども、そういうこともあわせて奈良県の対策を先生お考えいただければ非常に早く解決できるんじゃないかと思います。少なくとも寺川のワーストワンは来年度は見えないように私も頑張りたいと思いますので、先生もひとつ格段の御支援をお願いいたしたいと思います。
  75. 森本晃司

    森本委員 時間が参りましたようでございますので、ひとつ環境庁長官、いろいろ御尽力いただいておりますが、ぜひともどもに何とか清らかな川にしてまいりたいと思います。環境庁長官から大蔵省に対する御要望もあったようでございますが、また引き続きそういったところに特段の御配慮を大蔵省としてもお願い申し上げたい。  さらに、建設大臣お見えいただいておりますが、環境庁長官が先ほど申し上げました下水道のこと、それから厚生大臣お見えいただいておりますが、合併浄化槽の推進、ぜひよろしくお願い申し上げたいと思います。せっかくお見えいただいておりますので、一言ずつおっしゃっていただいて終わりにさせていただきたいと思います。
  76. 越智伊平

    ○越智国務大臣 奈良県の大和川初め、大変汚濁が全国的に高いようであります。これは、先ほど環境庁長官からお話がございましたように私も要請をされておりますし、いろいろ調べてみましたところ、下水道の普及率が二四%ですか、全国平均が三七%、これは県御当局あるいは市も非常に熱心なんですが、ただ立ち上がりがちょっとおくれておるようであります。でございますから、重点配分をいたしまして、川がきれいになるように努力をいたしたいと思います。
  77. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 合併処理浄化槽でございますが、先生御承知のように経済性もございますし、非常に小回りのきく事業でございまして、特に人家連檐でない農村部では非常に有効なシステムだと私どもは考えております。そこで、六十二年度は補助制度を創設いたしまして、六十三年度は五倍の予算を要求しておるところでございまして、今後とも強化充実に全力を挙げてまいりたいと考えております。
  78. 森本晃司

    森本委員 ありがとうございました。国土庁長官もひとつぜひよろしくお願い申し上げます。  以上でございます。
  79. 宮下創平

    ○宮下委員長代理 これにて貝沼君、森本君の質疑は終了いたしました。  次に、柴田睦夫君。
  80. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最初に、大蔵大臣に一点伺います。  きのう大阪で参議院選挙区選挙の補欠選挙が行われました。結果は御承知のように、直間比率の見直し、すなわち大型間接税の導入を公約し、新聞のアンケートで間接税は広く浅く課税すべきと答えました自民党候補が敗れて、いかなる形であれ新大型間接税導入を阻止することを訴えた我が党の候補者が当選しました。大型間接税に対する大阪府民の審判が下されたわけです。これが国民の声であると思います。審判に示された国民の声に耳を傾け、大型間接税の導入をやめるように要求をいたします。  審判を受けての大蔵大臣の所見を伺います。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 選挙の結果は私個人といたしましてはまことに残念なことであったと存じておりますが、それがただいま言われましたような理由によるものとは考えておりません。
  82. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大型間接税の問題が理由ではない、こういうことを言っておられるのであれば、これはまた国民からさらに厳しい審判が下されるであろう、このことを言っておきます。そして私は、こういう問題をやる、大型間接税を決めるというのであるならば、これは国会を解散して信を問うべきだ、税制協は解散すべきだ、このことを申し上げ、さらに、我が党はこうした悪税を許さないためにさらに奮闘する、この決意を申し上げて、次の問題に移ります。  次は、米軍の有事来援研究問題についてお尋ねいたします。  防衛庁長官はことし一月の日米防衛首脳協議で、日米防衛協力の指針、ガイドラインに基づく新しい研究を日本側から提案したと言われます。この点につきましては各党からの質問で背景などから説き起こされて説明されましたが、ここで聞きたいのは、その際に提案された事項に限って、それがどんなものであったかということ、また、合意された研究の名称について、マスコミの方でもいろいろとなっておりますのであえてお聞きしたいと思いますけれども、防衛庁でのこの研究の正式名称は何というものであるか、この点を長官にお伺いいたします。
  83. 西廣整輝

    西廣政府委員 まだ研究が始まっておりませんし、具体的な研究の題名とか決めておりませんが、防衛庁長官と国防長官との間で出ましたお話は、防衛庁長官の方から日本有事における米軍の来援の問題の研究をいたしたいということでございますので、一般的には有事来援の研究を行うということになろうかと思います。
  84. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私は、これは大臣から提案されたということでありますので大臣にお聞きしたいわけですが、今のとおりでございますか。
  85. 瓦力

    ○瓦国務大臣 我が国有事の場合に米軍の来援が迅速かつタイムリーに行われるかどうかということは日本安保体制の中における核心部分でございますし、この問題につきまして米長官にさように提案いたしましたところ、カールッチ長官の同意を得たわけでございます。我が国の安全、このことをより信頼の高いものにしていく、このことは大切なことでございますから、かような研究を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  86. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 名称が決まっていない、研究をしたい。そうすると、その研究というのはどういうところに発展していくのか、このことが決まっていないということになるわけであります。もうアメリカ依存というような結果になることが考えられます。しかも今までの研究から、日米共同研究につきましては、研究が決まったという発表はしても、その中身などその経過などは国会でも発表されていないわけです。これは議会制民主主義という問題と重要なかかわりを持っているわけです。  防衛庁長官、あなたは日本側からこの新しい研究を提案したということですけれども、米軍来援の研究を提案する場合に、受け入れ国である日本との間に戦時受け入れ国支援協定と米軍の日本における戦時行動を保障する米軍のための戦時立法、これが前提といいますかそれと一体になるものである、ならざるを得ない、これはいわば常識であると思うわけです。この協定の問題やあるいは国内的措置について、これを頭の中に入れて構想しながらこの新しい研究の提案をなされたのでしょうか。長官の頭の中を聞いているわけです。
  87. 西廣整輝

    西廣政府委員 本席でたびたびお答えしておりますように、今回の研究はガイドラインに基づく研究であります。したがって、ガイドラインの枠組みの中、つまり本研究が直ちにこれが立法なり予算なりそういったものに義務づけられるものじゃございませんし、結論というのは、出ました後、それはそれぞれの政府にその取り扱いがゆだねられるものでございますので、先生のおっしゃいますようにそれが協定なり有事法制なりというものに直ちに結びつくものではないということはたびたびお答え申し上げているとおりでございます。
  88. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それらのことが出てくるということは二十六日の午後から言われておりますけれども、長官、最初からそういう問題は頭の中にありましたか。
  89. 西廣整輝

    西廣政府委員 先般上田委員の御質問に際し、私が、可能性の問題として、この研究を行っていきます過程あるいはその結果において、例えば平時あるいは戦時の受け入れ国支援、そういった問題にかかわる問題が出てくることはあり得べしということを申し上げましたが、なればといってそういった協定なり有事法制の問題を研究するものではないということは変わっておらないわけでございます。
  90. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 その過程なり結果から出てくるということは、長官、頭の中にありましたか、こういう質問です。
  91. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま防衛局長から答弁がございましたが、私、補足して申し上げますことは、ガイドラインに基づいて研究をするということは、両国の立法、予算、行政上の措置を義務づけるものではないわけでございますし、日本有事の場合にどうあるべきかということを、米軍の来援が得られるかどうかという問題について先ほど申し上げましたように研究を進めるということでございますれば、まず研究をしていただく。それは私は、今委員が御指摘のように各般の問題があるであろう、それは踏まえながら、まずガイドラインに沿って研究をしていただくというようなことを日米双方で話し合ったということで御理解いただけると思うわけであります。
  92. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 各般の問題が出てくるという頭があった。そうしたら、二十六日の午前中まではそうしたものは関係ないということを言われたのは、これはもう隠した答弁であると言わざるを得ないと思うのです。  ところで、ガイドラインに基づく研究であると言っておられますが、ガイドラインに基づく研究につきましては、この防衛白書を見てみますと、第一項、第二項の研究として主な研究項目八つが挙げられ、第三項の極東有事研究というものがあるわけであります。そういう分類がしてありますけれども、その中のどれに該当する研究でありますか。
  93. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来お答え申しておりますし、大臣もお答えしたように、我が国有事におけると書いてございますから、第一項になるということは当然のことでございます。
  94. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この防衛白書の中で、アイウエオカキク、ここまで主な研究項目を示しているわけですが、その中のどれに入っているのかというのが質問です。
  95. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、第一項と申し上げたのはガイドラインでございまして、手元に白書を持っておりませんのでガイドラインについて申し上げますが……(柴田(睦)委員、白書を示す)ただいまのアイウエオで言いますと、作戦計画の研究の延長線上のものでございます。
  96. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今まで私たち防衛庁の方からいろいろとレクチャーを受けてまいりましたが、そのときの中では、この分類からいえばクの「補給、輸送、整備、施設等後方支援に関する事項」である、こういうふうに説明を受けてまいりました。今、イの方のものである、こう言われましたが、その点をはっきりとしていただきたいと思います。
  97. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事来援計画の研究と申しますのは、繰り返すようでございますが、日本有事においてどういうタイミングでどの程度の規模の米軍の来援があるかということを詰めるものでございます。そして、さきに上田委員の御質問のときにお答えしたように、それに関連して日本側の支援の問題、例えば輸送支援、そういった問題も出てくるかと思いますが、その問題につきましては日米の相互支援の研究というものがございます。  ただ、相互支援の研究というものは、個々の作戦計画の研究であるとか有事来援の研究であるとか、そういったことのために相互支援の問題まで引き続いてやるということではなくて、相互支援の研究あるいは後方支援の研究については、もろもろの研究なり計画研究を通じて出てきたもの、そういったものがある程度出そろった段階で改めてやるというふうにお答えを申し上げております。
  98. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁長官は、これまでの間に、作戦研究や共同訓練などを積み重ねた上に立って研究に取り組む、こう答弁しておられます。確かに日米間で各種の共同訓練が繰り返し行われてまいりました。統合軍の指揮所演習あるいは師団規模の実動訓練にまで及んでおりますし、これには国民の多くの犠牲があるわけであります。  これを見るたびにも大変なことをしているということを感じるわけでありますが、この研究で来援するアメリカ部隊としての想定、これはさきにアメリカ陸軍、この陸軍装備の事前集積、それから空軍、海軍、これにつきましては先日出ておりますが、その中でアメリカの海兵隊の装備、この装備の事前集積ということもあり得るのかどうか、お伺いします。
  99. 西廣整輝

    西廣政府委員 事前集積、いわゆるポンカスの問題まで話が進むかどうか、そういった内容が必要となってくるかどうかということは今後の研究にまつということは前々から申し上げておりますが、いずれにしましても、海兵隊というのは現に日本に駐留いたしておりまして、海兵隊が新たに日本のために、日本有事のために必要となるという事態はそうないと思います。  いずれにしましても、具体的な今後の研究の内容について、今からこういったものがありこういったものがないということをはっきり申し上げることはできないということは御理解いただきたいと思います。
  100. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 海兵隊はなさそうだ、しかし、ないとは断言できないということでありますが、海兵隊というのは海洋戦略の上においても攻撃部隊として大変な任務を背負っている部隊であるわけです。  そこで、防衛庁は、我が国が欲する時期に必要な兵力の来援を受けるために、輸送や事前集積ということも含めて勉強したい、アメリカ側の要請もあるので問題を絞らないで勉強したい、こんなことを言っておられますが、この研究では、米軍装備の事前蓄積、それから来援する米軍の輸送、補給ということ、これが出ていると思いますけれども、これをもう一遍確認したいと思います。これを研究するのかということです。
  101. 西廣整輝

    西廣政府委員 たびたび繰り返すようでございますが、我々の研究のねらいというのは、あくまで日本有事に際して適切な時期に米軍の支援が、我々が必要とする規模で来援がある、あらせるためにはいかにすべきかということを研究するわけでありまして、来た部隊に対していかなる補給をするかとか、そういった問題が研究の主たるテーマではないということを先ほどから申し上げているわけであります。
  102. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それがテーマではないということでありますけれども、そこから当然――そこまで研究の過程で出てくるということはいかがですか。
  103. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨、必ずしも十分理解したかどうかわかりませんが、例えば輸送の問題を取り上げますと、有事日本に来援するための米軍の輸送量というものは大した量ではないと私は考えております。それよりも、もうその段階では既に有事に入っておるわけでございますが、その段階における一億数千万の日本国民の生存を維持するための輸送、そういった問題の方が輸送としては非常に大きな問題である。したがって、我我はそういったことであろうと思いますが、いずれにしましても、今回考えますのは、いかなる規模のものがどの時点で来なくちゃいけないかということを米側とよく詰めておきたい、そういう研究をいたしたいということでございます。
  104. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 輸送の問題が出ましたのでお聞きしますけれども、米軍の輸送という問題を見ますと、迅速性ということから航空機が大量に使われる。例えば一個師団の米軍を輸送するということになりますと、これは米日の莫大な航空機が必要で、自衛隊の輸送機ではとても間に合わないわけです。人員の輸送だけでなくて補給品の輸送もありますし、あるいは返送という問題もあります。となりますと、民間航空機や商船のリースということが出てきますし、あるいはパイロットなどの民間人の利用ということも出てくるわけであります。  ガイドラインでも「日本及び米国は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動を緊密に協力して実施する。」こうありまして、国と国であって、自衛隊と米軍というだけではないわけです。日本国の協力ということを挙げております。そうしますと、民間航空機や商船などの活用ということも出てくるのではないか。  さらに、米軍装備の事前集積を研究対象にするということになれば、そこから自衛隊施設の共同使用だけではなくて、新規施設の利用、さらには集積装備の維持管理や装備調達の費用負担の問題が絡んで出てくる。こういう問題も研究の過程で必然的に出てくるのではないか。  補給という問題では、これは民間労働者の労務提供、鉄道、道路などによる輸送で民間輸送手段の活用にも研究が及ぶ、こういう研究につながっていくというように考えられるわけであります。このことについて御見解を伺います。
  105. 西廣整輝

    西廣政府委員 おっしゃるとおり、陸軍部隊について仮に重装備までその時点で持ってくるということになれば、それなりに輸送量がふえてくるということもございますので、状況によってはポンカスということで、輸送量をできるだけ少なくするということでそういう問題も上がってくるかもしれないということで、ポンカスの問題も含まれるであろうというふうに申し上げておるわけであります。  なお、戦時の状況について私余り先走っていろいろ言う立場にございませんけれども、航空輸送について言えば、危険というものはほとんどない。しかも戦争中の日本に観光客が押しかけるということもございませんので、航空輸送量としてはかなりの余裕があると思いますが、米側が自分たちの軍隊について日本側の輸送手段を用いるか用いないかという問題もまた米側の判断によるものでございまして、必ずしも日本側の船舶なりの輸送手段に依存をするということは考えられないと思います。
  106. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 防衛庁の方では、この研究は米軍が日本に到着するまでを対象に限定する、こう答弁してまいりました。そして二月二十六日になって初めて、この研究の結果あるいは過程で、戦時受け入れ国支援協定の問題も出てくると考えます、こう言って、新たな国内的措置なり協定が必要となる場合も当然出てくると思う、そういう趣旨のことを述べられました。  この受け入れ国支援や新たな国内的措置というのは、米軍が到着までに関連する範囲のものを言っておられるのか。さきに、そこまで限定するというような答弁がそれ以前はありましたが、それとも、米軍が日本で行動する配備、展開、それに関連する、すべてに関連するものを言われるのか、このことをお伺いします。
  107. 西廣整輝

    西廣政府委員 今回行いますのは、繰り返すようで恐縮でございますが、有事来援のための研究でございますから、有事来援に直接関連して、今回は研究でございますからそれ自身何らの措置を必要としないわけでございますが、仮にそれを実施するとすれば新たな協定なりあるいは新たな何らかの法制上の措置なりを必要とするものが出てくる可能性があるということをお答え申し上げておるわけであります。  それでは例えばどんなものがあるかということになりますと、仮にポンカスというものが具体的な議題に上がり、そしてそういったことを考えるということになれば、今回の研究においてはポンカスが必要であるという見解にとどまると思いますが、それを仮に本当に実施しようということになれば、ポンカスをするための新たな施設の提供が必要になるということもありましょうし、場合によってはそれを管理するのをどちらが金を負担するかという問題も出てくるかもしれません。そういった問題を申し上げておるわけであります。
  108. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 最初は来援までに限定する、こう言っていたでしょう。だから聞いているので、来援までのことがその研究の過程で出てくるというのか、来援した後の配備、前線への展開というところまでこの支援協定あるいはこの秘密立法、こうしたものが出てくるのか、来援までなのかその先も含むのか、どっちか、こう聞いているのです。お答え願います。
  109. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは今まで御答弁申し上げていると同じように、来援までの話であります。
  110. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 しかし事は有事の来援であるわけです。来援した米軍は当然に配備され前線に展開する。これが予定されなくちゃならない。そうすると到着地域から前線へという場合は、場合によっては航空機まで使わなくちゃならぬような遠い前線ということも考えられるわけです。前線と前線への後方支援体制ということに分けるならば、後方支援体制全般の問題をこの研究でやろうということではないのかということをお尋ねいたします。     〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
  111. 西廣整輝

    西廣政府委員 これまた数次にわたりお答えしていると思いますが、日本に到着してから先の話というのは、現に日本におる米軍というのはあるわけでございますから、決して来援に伴って生じる問題ではなくて、米軍の国内における現配置から戦場への間をどうするかという問題で、来援研究に伴って新たに生じてくる問題ではございませんので、その種の問題が今回の研究の課題に入ってくるとは思っておらないわけであります。
  112. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 どうも今度の研究を小さく小さく見せようとしているように見られます。事前集積だとかあるいは日本に到着するまでの支援だとか、ここには何か考えがあるんじゃないかというように思わざるを得ないのです。今の現状では、アメリカ軍が来てもそこから国内を移動するということは実際にはできない体制になっております。だから戦時受け入れ国支援協定や国内的措置、すなわち有事立法、これも米軍のための戦時立法が必要ということになるわけで、これはもう日本全体に網をかぶせるものでありまして、この点を考慮しているのではないかというように考えるわけであります。  防衛局長は一昨年の十一月二十日の衆議院内閣委員会で私が質問したとき、指針にございますように、必要な分野において我が国から米軍に対していろいろな支援が行われることが重要であるということはもう当然のこと、こう認めて、後方あるいは通信その他についても今後研究していく対象、こう言っておられます。このような支援研究を進めているのでありまして、これは戦時HNS、この研究だと言っても間違いではないと思うのです。現に一九八八年度のアメリカ国防総省報告では、一九七八年の日米ガイドラインに基づく戦時HNSに関する研究も進められていると明確に述べております。  さらにことしの二月十八日、アメリカ議会に提出されました一九八九年度軍事情勢報告では、日米防衛協力の指針に基づく共同研究は、将来有事における基地受け入れ国支援協定に結びつく可能性がある。こう述べて、日米間で有事を前提とした新たな軍事支援協定への期待を明らかにしているわけであります。ということは、最初に言いましたように、日本全体をかぶせる、そうした戦時HNS研究をこれを機会に大いに進めよう、こういう意図を持っているのではないか、このように思うわけです。これについての見解を伺います。
  113. 西廣整輝

    西廣政府委員 仮にも今回の研究というのは日本国と米国との、よその国との研究でございますから、研究するに際してはしっかりしたその枠組みなり範囲ということを決めませんといたずらにどこまでも延びてしまうとか、そういうことではエンドレスな研究になってしまいますので、そういうとり方は私どもいたしておりません。  先生お尋ねのようにガイドラインにはたくさんの研究をするようになっております。例えば通信、情報、その他もいろいろ入っておりますけれども、我々今までやりましたのは作戦計画研究であり、シーレーン防衛の研究であり、インターオペラビリティーであればそのうちの通信関係について今やっているということで、やはりそれぞれの研究にはそれぞれの目的なり範囲というものを決めてやりませんと、それがこれに関係あるから、だろうということでずるずるずるずるやっていったのではどこまでやっていいかわからないということになりますので、それぞれの枠組みがあるということを申し上げておるわけであります。  今回やろうとしておる有事来援研究というものは、日本有事に際して米側がタイムリーにどの規模のものがよく来るかということについての研究をやろうということでございまして、それに派生して生ずる問題についてまで手を伸ばしていくということではございませんので、その辺を御理解いただきたいと思います。
  114. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それじゃ、米軍の行動に関してともかく日本国全体にわたって有事立法の問題やあるいは戦時HNS協定、こうしたものが派生的に出てくる、こういう研究へも進んでいくということが明らかになってまいりました。  そこで有事立法の問題ですが、今度の研究でも民間の船舶や民間の航空機を活用するということ、さらに国内における米軍部隊の支援体制ということで、民間部門の能力の活用を研究するその過程では法制上の問題も明らかになってくる、これはもう必然だと思うのです。例えば民間航空機が五十機米軍のために必要、その要員も必要ということになれば実際にはどうして集めるか。有事において募集、契約ということはできないでありましょうし、これをどうするか、こうした研究を進めていくことによって、米軍のために自衛隊法や航空法や電波法など国内法制の改変、改正をしなければ目的を達せられないという問題が浮かび上がってくるでありましょう。  政府の方は、国内的措置なり協定が必要となる場合も当然出てくるということを言われました。この有事立法の問題については防衛庁で既に研究をしているということを言われておりますが、そうした問題に関する有事立法、このことも出てくるという可能性があるということでありますか、お伺いします。(発言する者あり)
  115. 奥田敬和

    奥田委員長 お静かに願います。
  116. 西廣整輝

    西廣政府委員 御質問の趣旨がよくわかりませんが、有事法制につきましては、私は、大きく分けて三つの有事法制があろうと思います。  一つは、有事、いわゆる戦時において国民生活を守り、国民の安全を守るための、いわゆる国民一般のために必要な法制というものがあろうと思います。もう一つは、自衛隊の行動にかかわる法制というものがあると思います。有事、自衛隊が有効な防衛活動をするために必要な法制というものがあろうと思います。第三番目には、米軍が自衛隊に協力して日本防衛のために行動する、その行動のために必要な法制というものがあると思います。その三つに分かれておると思います。  そのうちの一つ、自衛隊の行動をいかに有効に行うかという法制につきましては、さきに、福田内閣当時でございますが、当時の防衛庁長官からお願いをして研究をさせていただきたいということで研究を始めまして、そうして現在のところ、自衛隊そのものの法律、それから各省が既にお持ちになっている各省所管の法律、それに関連して必要な研究は終わっております。以後は、現在存在しない法律で自衛隊の行動のために必要なものとしてどういうものが必要であろうかという研究をやるということで、内閣の安全保障室の方で今仕分け、研究の準備をされておるという状況でありまして、大きく分けた三つのうちの国民全般にかかわる部分、それから米軍の行動にかかわる部分についての有事法制の研究はまだ行われていないというように承知をいたしております。
  117. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 行われていないと言われましたけれども、昨年五月二十五日の衆議院外務委員会で、有事法制研究について、どこの省庁ともわからない問題あるいは在日米軍等に関する問題などもあろうかと思いますが、その種についてはどういった問題点があろうかという詰めをやっておりますし、その際、米軍とも十分調整をとってやっていくということになろうかと思います、こう防衛局長は答弁しておられます。それから一年近くになりますが、アメリカ側との調整はやったのかどうか、お伺いします。
  118. 西廣整輝

    西廣政府委員 米軍の行動にかかわる有事法制の研究というものは、言うなれば安全保障条約に基づく米軍の行動にかかわる問題でございますので基本的には外務省の御所管にかかわると思いますが、私から申し上げますと、有事における米軍の行動というのは、我が国安全のために自衛隊と共同対処行動をとるわけでありますから、実体的な行動態様として私は自衛隊に非常に似通っているというか、ほとんど重なっておるものだろうというふうに考えております。  そこで、現在、御承知のように自衛隊の行動にかかわる法制研究というのは研究をいたしておるわけであります。自衛隊にかかわる研究が終わりますれば、それがほとんどのものについて米側についても必要なものであるということになろうかと思いますけれども、そういう意味で、米軍は米軍、自衛隊は自衛隊ということで分けて研究しなくても、自衛隊の行動にかかわる研究をまず先行させるということで私はしかるべきものだろうというように考えております。
  119. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そうしますと、有事法制研究ができれば米軍の問題についてもすぐにできる、そういう趣旨に伺いました。  外務大臣、申しわけありませんが、では一点だけ。この日本有事を前提にした研究と日本有事のための事前集積であるということをこの国会ではずっと言われてまいりました。そうなれば、事前集積は日本有事に限って使用されなければならないわけです。一方、外務大臣は、この事前集積を極東有事、すなわち米国有事のために使用できるということも答弁されました。しかし、この研究は日本有事のための研究である、こういうことも後で言われたことも知っております。この場合、米軍が日本から前線に直接出撃する、これは事前協議の対象になるのですか。
  120. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 事前協議は、累次お話ししておりますとおり三つのケースがありますから、したがいまして、我が国の施設、区域から極東有事のときに作戦並びに行動をするということは事前協議の対象になる、こう申し上げておるわけです。
  121. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 要するにポンカスを、日本のためだからといって日本に運ばせる、運んだものを米軍が極東でも中東でも使えるというようなことになりますと、日本が侵略を受ければ米軍が来援する、そのためである、こう言って国民に協力させておいて、実際は日本が単独で攻撃を受けるようなそういう状況はゼロに近いわけですから、その中で日本が米軍部隊の支援体制づくりを目指すというものにほかならないと思うわけです。これは国民を欺くやり方だというように思います。  きょうの答弁を聞いておりますと、この有事来援研究、これが国民の基本的人権、言論、表現の自由やあるいは徴用徴発、いわば国民総動員という形のものにつながっていく、そういう危険性を感ぜざるを得ないわけです。現にこの共同演習、ますます大規模になっております。これはアメリカの海洋戦略とのつながりでありまして、対ソ戦争に日本が組み込まれる、こういうことを意味するわけです。国家主権と国民主権を守る、そして恒久平和主義を守る、そして議会制民主主義を守る、それから基本的人権を守る、この憲法の大原則、これを守るためにもこんな危険な研究はやめることを要求して、この部分についての質問を終わります。
  122. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 やはりきちっとしておかなくちゃなりません。もう先ほど来累次、西廣防衛局長お話ししているとおりでございますが、外務省としての見解もこの際明らかにしておきませんと、一方的にこれで終わりますでは困りますので、私からまとめてお答えいたします。  今回の有事来援の研究はあくまでも日本有事の場合の第五条に限られてのことでございます。また、これと有事立法とは全く次元が異なりまして別個の問題である。したがいまして、有事来援の研究をしたから有事立法へつながる、必ずしもそうではございません。このことも明らかにいたしておきたいと思います。  また、ポンカス等の問題に関しましても先ほど来申し上げたところでありまして、過般、有事来援に関しましてはいろいろお話があるであろうからもう少しお時間をちょうだいして勉強しますと、こう言っておるわけですから、今、今日の質疑応答に関しましては私の見解はそうである、こういうふうに申し上げておきます。
  123. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 今の答弁を伺いましても、先ほどの私の意見を変えなければならない理由は全くないということを申し上げて、次の大企業の人減らし合理化問題について、まず雇用問題についてお伺いいたします。  雇用情勢は統計では改善の傾向を示しておりますけれども、不安定雇用者が増加する、高齢者の雇用、雇用の地域間格差、企業の海外進出による産業空洞化、問題が山積みしております。  地域間格差では、いわゆる企業城下町と言われる地域に本当に深刻な問題が起きております。岩手県の釜石市では、二月の五日に新日鉄釜石製鉄所の残された最後の高炉の休止を来年三月に行うということを会社が労働組合に示しまして、地元市民に深刻な衝撃を与えております。今日、既に製鉄所の大幅な規模縮小によりまして市民生活や商店の営業に深刻な影響を与え、雇用状況もひどくなっております。このまま最後の高炉の火が消されれば、人口六万の市民は四万人に減少し、町は疲弊してしまうだろうと言われております。新日鉄の大合理化計画は、我が国の鉄鋼生産が九千万トンを割り、新日鉄丸は沈没するとまで言ってきました。  しかし、その後景気は回復し、鉄鋼生産は今年度一億トンを超えると言われておりますし、三月期の決算では大幅収益も見込まれております。新日鉄丸は沈没するどころか、三月期では黒字になる見通しであります。合理化の前提がなくなったと思うのですが、通産大臣、お伺いしますが、釜石市の高炉の休止を含む鉄鋼の合理化計画の見直しを行うように指導したらどうかと思うのですが、御所見を伺います。
  124. 田村元

    ○田村国務大臣 鉄鋼業の最近の状況を見ますと、内需が堅調に推移いたしております一方で、輸出は円高の進展等によりまして減少しております。総体として先行きには不透明なものがございます。こういう不透明な業界に高い国内炭を買わせておるわけでありますから、私も大変板挟みで苦しんでおりますが、率直に言って、先行き不透明と言わざるを得ません。  また、新日鉄を初めとして我が国鉄鋼大手各社の合理化計画は、昭和六十年の秋以来でございましょうか、秋以来の大幅な円高の進展等によりまして業績が悪化しております。また国際競争力も低下していることも踏まえまして、生産体制の合理化を行わざるを得ない状況に至ったために策定されたものでありまして、今後我が国鉄鋼業が生き残っていくためのやむを得ざるぎりぎりのものというふうに私どもは考えております。通産省としましては、関係省庁と連携しながら、今後とも鉄鋼関連不況地域における雇用対策及び関連中小企業対策に万遺漏なきを期してまいりたいと思っておりますし、労働省にも御協力をお願いを申し上げておる次第でございます。  なお、釜石市について申せば、新日鉄もさまざまな新規事業を展開して地域の活性化に努力しておるところでございます。通産省としましても、各種地域対策はもとより、バイオテクノロジー関連プロジェクトの推進を計画しているところでございます。いずれにしても、あらゆる対策を講じて地域の活性化に協力をいたしたいと考えております。
  125. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 先行きが不透明だということ、こうおっしゃいましたけれども、景気の回復というのは現実の問題になっております。そして、町がつぶれる、こういうような状況の中で、町の状況をこんなに極端に悪化させないということのためにやはり通産行政は努力をしなければならないということを申し上げたいと思います。  新日鉄、鋼管、川鉄、住金、神鋼の鉄鋼大手五社は、一昨年から昨年にかけて大合理化計画を発表しました。八九年度末までに四万四千人、約三割の人員を減らそうとしておりますが、下請関連企業を含めれば十万人を超える大量の人員削減で、雇用情勢に大きな影響を与えることになることは明らかであります。しかし、大手の収益は今日大幅に改善してまいりました。各紙が報道しておりますが、前年度と比べて四千億の増益だと言われております。しかもこの要因について共通していることは、人員の削減による合理化が大きいと言っていることであります。きのうの日経新聞でも、「高炉大手五社の回復ピッチはきわめて速い。五社合計の実質経常損益(株式売却益を除く)は前期の四千億円の赤字から六百億円の黒字に転じる。」こう言っているわけであります。この点については、鉄鋼の経営者自身も認めております。鉄鋼の経営者団体であります日本鉄鋼連盟が発行しております「鉄鋼界報」の二月十一日号には、「経常損益は合理化によるコスト削減と原材料費の低下等によって、売上原価が減少し、前年同期の二百七十一億円の損失から二百四十億円の利益に回復した。」と、明確に合理化、人員削減のためであるということを挙げているわけです。  人員削減が収益改善の大きな原因になっているということははっきりしていると思うのですけれども、この点について通産省、鉄鋼大手五社の最近三年間の従業員数はどう変わっているのか、この従業員数の変化を教えていただきたいと思います。
  126. 鈴木直道

    鈴木(直)政府委員 鉄鋼大手各社が決算期に発表しております有価証券報告書によりますと、御指摘の三年前と昨年、これは六十二年の九月と六十年六月と比較してまいりますと、六十二年九月、昨年の九月の段階で約十六万一千二百人でございまして、これはその三年前に比較しますと約二万六千五百人の減少、こういう数字になっております。
  127. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そこで、労働省にお伺いしますが、労働省は雇用保険制度の雇用安定事業として雇用調整助成金制度を運用しておられますが、この制度は労働者の雇用を守り失業を予防するためにあるんだ、こう称しているのですけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。
  128. 中村太郎

    中村国務大臣 雇用調整助成金の趣旨につきましては、おおむねお説のとおりでございます。つまり、景気の変動あるいは産業構造の転換等によりまして事業活動の規模を縮小する場合、企業主におきましてその従業員に対しまして職業訓練とか教育訓練とかあるいは出向とかあるいは休業等を通じて雇用の維持、確保を図るということにつきまして、賃金等に一部助成をいたしまして、この制度によりまして雇用の維持、失業の予防を図るという趣旨のものでございます。
  129. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 鉄鋼大手五社は現在もこの雇用調整助成金の支給対象になっているのですが、鉄鋼大手の支給の対象時期はいつからいつまでですか。
  130. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 お答え申し上げます。  鉄鋼の大手五社の行っております事業は、高炉による製鉄、また、その関連事業であろうと考えられますが、これにつきましては、現行雇用調整助成金制度の改正前の制度であります景気変動等雇用調整給付金制度時代の対象として、昭和五十三年二月一日から五十三年七月三十一日まで六カ月間指定されております。それから、現行雇用調整助成金制度に移りましてからは、五十七年十月一日から五十九年九月三十日までの二年間、また、六十一年二月一日から六十三年六月三十日までの間を指定いたしております。
  131. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、この間に鉄鋼大手五社に支給した雇用調整助成金の金額は実績で幾らになりますか。
  132. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 雇用調整助成金の支給実績につきましては、委員御承知のことだと存じておりますが、企業別には把握いたしておりませんで、業種別に集計いたしております。それによりますと、鉄鋼大手五社の属する鉄鋼業に対する休業、教育訓練に係る雇用調整助成金の支給実績は、五十七年度二十七億円余、五十八年度六十六億円余、五十九年度二十億円余、六十年度七億円余、六十一年度八十二億円余、それから六十二年度につきましては、四月から十二月分まで集計いたしておりますが、百二十九億一千四百万円となっております。
  133. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 鉄鋼業では、この五年間に就業者数が約四万九千人減っております。大手五社では、この三年間だけで今言われました二万七千人を減らしております。  資料を見ていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。――では、配ってください。  資料1の表1を見てもわかりますように、鉄鋼の削減数、削減率、大手五社、これは非常に高いわけです。雇用調整金は労働者の雇用を守るために支給されたはずなのに、鉄鋼大手五社の雇用状況を見るとその効果が見られないのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  134. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 鉄鋼大手五社の雇用調整なり雇調金の利用に関しての御質問でございますが、鉄鋼大手五社につきましては、一昨年来の不況期において雇用調整を実施するに当たりまして、でき得る限り失業の予防、失業の発生を避けるという観点から、雇用調整助成金制度を活用して休業、教育訓練及び出向の形による雇用調整を主体に行ってきておりまして、離職者につきましては、定年退職や自己都合退職等に伴う人員減により対応することとし、これまで雇用調整を理由とする会社都合による解雇は行っていないと承知いたしております。このような状況から見ましても、雇用調整助成金制度は失業の予防に役立ってきているものと考えております。
  135. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 大変な雇用調整金が出されながら大変な人減らしが行われてきたし、さらにこれからも行われようとしている。やはりこれは大企業などの、特に鉄鋼大手などの合理化、全然いけないというわけじゃないのだけれども、大量人減らしという問題については、これを制限する、このことがどうしても雇用問題のために必要であるというふうに考えるわけであります。  そこで、二枚目の資料2を見ていただきたいのですが、これは新日鉄八幡製鉄所の労働部が六十一年の十月ごろ製鉄の労働係長会議に提示しました内部文書であります。この文書は「下期雇用調整助成金集合教育の実施(技術職)について」という表題がありまして、その下に「雇調金教育については、本年三月以降各部門の積極的な取組みで、大きな成果をあげてきたところであるが、下期の教育について次の様に取り組むこととしたい。」こう言っております。  ここに書いてありますように新日鉄八幡の六十一年度雇用調整金教育についての方針文書になるわけですが、ここでは、その中段の方ですが、「収益改善策として雇調金教育工数の大幅積み上げが、本社より要請されている。」ということも書いてあるわけです。これは「収益改善策」というように書いてあるのですけれども、「雇調金教育工数の大幅積み上げが、本社より要請されている。」ということで、失業予防のための雇用調整金を収益改善策と位置づけて、しかも本社から受給額まで指示するということです。これは結局雇用調整金獲得の営業活動だ、全く驚くべきことだというように思います。  そこでもう一遍伺いますが、労働大臣、雇用調整助成金というのは企業の収益改善のためにあるものか、それとも労働者の失業の予防のためにあるものか、明確に伺いたいと思います。
  136. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま配付されました資料を拝見させていただきました。ただいま拝見したところでございますので、この資料の性格等私どもつまびらかにいたしませんが、雇用調整助成金に対する事前の計画の届け出、また、支給に当たりましての申請等のチェックに当たりましては、法律で定められた生産規模の縮小でありますとか休業、教育訓練あるいは出向の実績に基づいて厳正に審査して計画を認め、あるいは助成金を支給するという方針でおるわけでございます。結果的にそれが収益にどう影響するか、その他につきましては、それが直ちにこの雇調金の支給や計画の承認に関連するものではございません。
  137. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 それでは、文書の左側の中段の方を見ていただきたいのですが、「上期要請七〇〇〇工/月」の下に「半期三億」と書かれているところです。これは本社から八幡製鉄所に六十一年上期の雇用調整金の要請額です。工数というのは、一カ月で延べ七千人の教育訓練を行うということです。その隣にあります「上期実績九〇〇〇工/月」の下に「半期四億」とありますが、これは要請に対する実績です。この評価については一番上の方で「本年三月以降各部門の積極的な取組みで、大きな成果をあげてきた」と言っております。さらにその右の方を見ますと、「下期要請一三〇〇〇工/月」「半期五・五億」こういうことです。  そこで、この文書で指摘しております時期の六十一年度の上期と下期の新日鉄八幡製鉄所の教育訓練の雇用調整金の支給実績は幾らになっておりますか。
  138. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 最初のお答えの際申し上げましたが、雇用調整助成金の支給実績につきましては企業別、事業所別には把握しておりませんので、新日鉄分幾らということは申し上げかねますが、鉄鋼業に対する支給実績は六十一年度で八十二億八千三百万円、六十二年度四月から十二月分までで百二十九億一千四百万円でございます。
  139. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そういうことは言ってもいいはずだと思うのですが、実は新日鉄八幡のこの期間の雇用調整金の対象になる教育実績、これは労働組合の資料に公表されているわけです。  六十一年の十月から六十二年三月までの六カ月間で、累計の工数は八万五千五百八十二人日、月平均工数な一万四千二百六十三人日になります。本社からの要請であります月一万三千人日をはるかに達成しているわけです。これを試算してみますと、本社からの要請金額であります五億五千万円を上回って七億円以上になることはほぼ確実であります。  そこで労働省に伺いますが、雇用調整金を企業の収益改善策とまず位置づけて、本社から雇用調整金の受給目標を指示するというようなやり方というのは、雇用調整金制度の趣旨に反するのではないかと思うのですが、お伺いします。
  140. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま資料を拝見させていただきまして、御指摘のようなものが出ておりますが、先ほども申し上げましたように、この資料の性格等どういうものかつまびらかにいたしておりませんが、雇用調整助成金制度がその法律に定めた目的のもとに使われ、かつ実績に基づいて支給されているということでありますが、その結果が収益にどのように影響したかということにつきましてはコメントはできない状況でございます。
  141. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 雇用調整助成金制度というのは、雇用調整をやったその実績に基づいて申請をして支給を受けるというのが法律の制度でありますし、それを反対に、先に幾らもらうためにこれだけの教育をするというやり方というのは非常に問題であるわけです。  さらに重要なことは、この収益改善と位置づけられた雇用調整金目標達成のために何がなされたかということです。それは、雇用調整金獲得のために新たな余剰人員がつくり出されております。その余剰人員をどのようにしてつくり出したかというと、シームレス工場では、これまで四組三交代でやってきた勤務編成を二十年前の長時間労働を前提とした三直三交代に編成がえして余剰人員を生み出しました。雇用調整助成金の趣旨と全く逆のことがやられております。余り人員を減らし過ぎてしまいましたので、薄板工場では生産が追いつかずに二万トンも注文があったのにあえてこれを断る事態ということまで起きております。  人が足りないのでしたら臨時休業や定年延長の凍結をやめればすぐ解決する問題です。しかし、それを会社はやろうとはしない。四組三交代から長時間労働を前提とした三組三交代への編成がえは、労働時間短縮を推進する政府や労働省の方針、このことを早くからうたわれておりますが、この方針に逆行しているのではないでしょうか。大臣、いかがですか。
  142. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 六十年の春以来の円高あるいは国際競争力の低下等により生産が縮小してきた。そういう中におきまして、生産性を向上させながら長期的に見た生産活動を続けていく中にありまして、労働時間の取り扱い等につきましていろいろな変更なり改善がなされていると思いますが、こうした問題につきましては関係当事者間におきまして十分協議を重ね、納得いく姿で実施されていくことが望ましいと考えておりまして、そういうことで関係労使が十分話し合いをする中でそうした変更がなされてきたものではないかと考え、やむを得ないのではないかと考えております。
  143. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 労使間の話し合いに任せる、すべてをその前提に立って言われますけれども、そういう姿勢だといつになっても時間短縮という政府の方針、国際的にも非難を受けておりますけれども、これが実現できないということになってしまうわけであります。  それで、先ほどの資料に戻りますが、真ん中のところに「教育開始以来七カ月を経て、一部では職場での教育だけでは、カリキュラムの行きづまりも出て来ており、何らかの打開が必要である。」と書いてあります。  では、実際にどうして行き詰まりを打開したかということですが、これは資料の右側の方に書いてあります。それは真ん中の「ねらい」のところで「所内コンピュータ装備の高まりへの戦力底上げ」、そのためのコンピューター研修、さらに下から四行目の「雇調金を活用した多能工化教育」。これは通常の会社内教育でやるものであって、雇調金の対象にならない教育、それを雇調金を利用してやっているわけです。  また、ここには書いてないのですけれども、雇用調整金支給の対象者以外の人まで集めて映画の「植村直己物語」を見せて、これを再就職教育としたということがあります。先日のテレビで放映されましたので私も見たのですけれども、映画自体はいい映画でありますからこれを上映すれば人は集まるでありましょう。しかし、再就職のための技能教育という趣旨には合わないと思いました。強いて教育に結びつければ、南極大陸のようなところででも一人でやっていける、安心して会社をやめられる、そういう教育ということになりかねない、とんでもないことであります。労働省、探検家の映画を見せるのが雇用調整金の趣旨に合ったカリキュラムと言えるのか、お伺いします。
  144. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 先ほどの労働時間の問題、それからただいまの植村直己の映画の上映の問題など、ただいま初めてお話を承ることでございますので、私どもその実情について承知いたしておりませんが、雇用調整助成金の金額を支給するに当たりましては、事前に計画を出していただき、かつ実績届を受けて金額を支給することにいたしております。そういう中で、現実のカリキュラムなり時間の配分なり、そういうものを見て、この制度の趣旨に照らして納得できるものかどうか、合理的なものであるかどうか判断して支給しているというのが実情でございます。
  145. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 私は具体的な問題を提起したわけであります。これは今初めて見るということですから、それはやむを得ませんけれども、こういう問題が出てきているということから、この問題も調査し、雇用調整金の厳正な運用を図ることが必要ではないか、このことを調べるのかどうか、お伺いいたします。
  146. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 委員指摘のとおり、私ども、雇調金の運用が適正にいっているかどうか、内部でしっかりチェックする必要があると考えております。特に昨年来からの雇用情勢の悪化に対応いたしまして、助成金の助成率のアップを図りますとかあるいは助成期間の延長を図ってまいりました。そうした特別な扱いがそういう目的に沿って十分な実効を上げているかどうかも含め、その運用につきまして内部で十分なチェックをしてまいりたいと考えております。
  147. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 では、この問題は事情を聴取する、そのように聞いてよろしいですね。――大臣が納得されました。  それでは、会計検査院の方にお伺いしますが、こういう問題、これは雇用調整金の申請を乱用しているわけです。こうした悪質な雇用調整金申請の乱用につきまして、検査院としても厳正な調査をして必要な措置をとらなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  148. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 お答えいたします。  雇用調整助成金につきましては、ただいまお話がございました点を十分念頭に置きまして検査を実施してまいりたい、このように思っております。
  149. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 この収益改善策として雇調金獲得の指示というのは、新日鉄の本社から出されておって、全国にある新日鉄の各事業所に指示されていることは間違いないわけです。また、鉄鋼のリーダーであります新日鉄がこういう姿勢でやっているということは、その他の鉄鋼大手企業でもやっているかもしれません。資料1の表2で示しておきましたけれども、この六十三年度予算では五百八十四億円の巨額になっております。公金である雇用調整金は厳正な執行が必要であります。検査院は、雇調金の調査に当たってはこのような点も踏まえて厳正に調査する必要があると思いますが、いかがですか。
  150. 吉田知徳

    吉田会計検査院説明員 ただいま御指摘がございましたように予算額も非常にふえております。実績額も増大しておりますので十分検査を実施してまいりたい、このように思っております。
  151. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 次は、労働者の人権問題です。  私は、上場企業で最近三年間で千人以上人員削減を行った企業がどのくらいあるかを調べてみました。資料一の表を見ていただきたいのですが、二十八社に及んでおります。二十八社の人員削減数は十万五千人になりまして、短期間で大量の退職者を出すために職場では何がやられたか、大変な問題です。  例えば石川島播磨重工では、わずか一カ月半の間に七千人減らしております。これは表向き希望退職ということになっております。しかし、これまで何十年間も勤めてきた人が、会社の都合ですからやめてください、こう言われて、はいそうですかというわけにはいかない、実際は退職の強制であるわけであります。石川島では退職強要にどういうことが行われたか。高血圧の労働者に対して、高血圧の労働者の就労が禁止されている高いところに上って橋をかける橋梁会社に強引に出向させたり、奥さんを病気で亡くして子供を抱えて生活をしている労働者に常時長期出張が必要な会社に出向させる、そんなやり方をとつておりますが、全く非人道的と言わなければなりません。  石川島の労働者は、現在十一人が東京都労働委員会に、二人が地方裁判所に、八人が東京弁護士会にこの人員削減に関連する人権侵害問題を訴えております。去る十七日に、東京弁護士会の人権擁護委員会では、石川島播磨重工の労働者から使用者に退職を強要されていると人権救済の申し立てを受けていた件につきまして、会社の退職勧奨は説得の範囲を超え、従業員らに退職を強要するものであり、人権侵害だとして、異例の最も重い処分である警告及び勧告書を会社に出しました。  労働者の基本的人権を侵害する退職強要、こうしたことは絶対にあってはならないことであります。法務大臣、一つの企業の大量人減らしで、裁判所、労働委員会、弁護士会、合わせて二十一人が申し立てをしている事態、そして弁護士会もこう言って人権侵害であると勧告している事態、このことからも人権侵害の状況というものは、またこれはマスコミなどもいろいろ伝えておりますから知られているところです。行政として人権問題を所管する法務大臣に、こういう事態、知られている事態についてどう考えていらっしゃるのか、所見をお伺いいたします。
  152. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 企業におきまする労使間の問題につきましては、まずは専ら所管をしておられまする労働省等が適切に対処をしていると承知をいたしておりまするが、具体的事案につきまして労働問題の枠を超えるしような人権侵犯事案があります場合には、関係者からの申告がありますれば人権擁護機関としても対応してまいりたいと存じます。
  153. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 ただもうこれが社会的な問題になっている。個別なことを言っているわけじゃないんです。そういうものについて日ごろから人権侵犯を許さないとう立場におられる大臣として、これが好ましいことかどうか、好ましくないことであるということはもうみんな当然だと思うのですけれども、そういうことではございませんか。
  154. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 ただたいまも申し上げましたように、法務省といたしましては、人権を啓発するという立場からこういう問題にかかわるわけでございまして、したがって、当事者から申告がありますれば、人権擁護の見地からこの問題に携わってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  155. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 なかなかこういう社会問題になっていることについての表明がございませんけれども、これは人権問題を担当される大臣として、こういう個別の問題というだけでなくて、政治全般の問題として把握していただきたいということを申し上げておきます。  次に、大企業の人減らしの矢面に立たされているのが、どこでも女性と中高年齢者であります。資料3を見ていただきたいのですが、これも新日鉄八幡の文書であります。  この文書は昨年の九月に八幡製鉄所の幹部会で確認されたもので、人員対策の八幡製鉄所の方針です。ここで「ローリング」とありますが、この「ローリング」というのはより方針を練り上げるという意味だそうです。この肝心なところがちょっと見にくくなっておりますので、下の方に拡大しておきました。これを見ていただきたい。「人員対策のポイント」として早期退職を決め、「従来の二~一・七倍の早期退職をおりこみ、うち女子は六十一~六十五年度で対象者百二十名すべてを男子は五十才以上対象層に対して各年一・八%→四・六%→五・一%の比率まで大幅にアップする計画とする。」としております。この文書で明らかなように、会社はすべての女子を早期退職の対象にしております。(発言する者あり)
  156. 奥田敬和

    奥田委員長 静かに。静かにお願いします。質疑時間はあとわずか残っていますから。
  157. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 そして、今日技術系の女子の人人に早期退職という名の退職強要が執拗に行われておりまして、実際にはもう四十人の人がやめさせられております。技術系の女子職員は、夫が労働災害で亡くなったためにその身がわりとして八幡に勤めた人などが多いわけで、本当に苦労してきた人たちが多くて、今やめさせられたら生活の当てもない人がたくさんおります。こうしたやり方は血も涙もないやり方だと私は思います。男は五十歳以上、女は全員、ここには何の合理的理由もありません。ただ女子のみを理由としたことであることは明らかであります。これらは憲法、民法の九十条、雇用均等法の趣旨に反するものであり、労働省としては速やかに調査し、この計画をやめさせるように指導していただきたい、またすべきだ、こう思いますが、御見解を伺います。
  158. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいま御提起になりました問題につきましては、実情をまだ十分調査をいたしておりませんので、コメントできません。  しかし、一般的な事項といたしまして、男女雇用機会均等法におきましては、他に合理的な理由がなくして、ただ単に女性なるがゆえに、言うならば性別によって男子との差別的待遇をすることは禁止しておるわけでございまして、そのような事実がありますれば適切な指導を行ってまいりたいと考えるところであります。
  159. 柴田睦夫

    柴田(睦)委員 具体的に示しておりますので、その点を調べていただきたい。  時間が参りましたので、高齢者雇用の問題、触れたいと思っておりましたけれども、これは省略せざるを得ません。  そこで最後に一言。  今、鉄鋼の需要は大きく回復しておりまして、三月期の決算では大幅な利益が見込まれております。実際に生産現場では設備の休止予定を延長したりしております。中には人員を削減し過ぎて注文を断っているところも出ております。このようなところに適正な人員を配置するとともに、政府も推進しております年休の消化、週休二日制、所定内労働時間の削減、時間短縮の実行、こうした措置をとれば十分雇用は確保できるわけであります。鉄鋼大手の大幅な人員削減の合理化計画は、労働者はもちろん地域経済などに、雇用情勢に重大な影響を与えるものであり、この合理化計画の見直しを行うように労働省、政府一体となって鉄鋼会社に強力に指導すべきであるということを要求して、時間が参りましたので、質問を終わらしていただきます。
  160. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて柴田君の質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十六分休憩      ────◇─────     午後一時三分開議
  161. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。菅直人君。
  162. 菅直人

    ○菅委員 最近アメリカでは大統領選挙の各党の予備選挙が始まっているわけですが、その中でも日本に対する貿易の不均衡是正の問題などがかなり大きな政治課題になっているわけです。  そういう中で、ついせんだってもいわゆる包括貿易法案の中に知的所有権を含めた幾つかの点でかなり厳しい法改正が用意されている、特に関税法三百三十七条についてそういった改正が用意されているという報道がしきりにあるわけですが、この中身は、私が知る限りで言えば現在でも大変厳しい条文になっているといいましょうか、いわゆる正式な裁判をすることなく、ある種の行政委員会のような形で特許法違反だとかあるいは商標法違反だとか著作権法違反という形で税関で品物をとめてしまう、その手続が現在でも半年あるいは九カ月程度で大変短いのが、今度は九十日以内という、事実上、国の制度の差を考えれば反論する余地がないくらいに短い期間において処分を決定してしまおう、そういう内容だというふうに伝えられているわけです。  この問題について通産省としてどういう認識を持って、あるいはどういう対応でこの問題に対処されようとしているのか、まず見解をお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
  163. 村岡茂生

    ○村岡政府委員 先生指摘のように関税法三百三十七条の問題というのは難しい問題でありまして、二つの側面を持っていると思います。特許権等はこれは保護されねばならない、こういう要請と、それから同時に、その保護が過剰にわたる、あるいは保護主義に利用されるという問題を排除しなければならない、こういう二つの側面を持っております。  現行の関税法三百三十七条は先生の御指摘のような問題を既にはらんでいるわけでございますが、今回改正しようとしているところの産業被害要件の削除、これ自体は論理的には知的所有権の保護のためになくてもいい条項であろうと思います。しかし、実質面で過剰保護にわたらないかという点を眺めますと、先生指摘のデュープロセスが必ずしも担保されていない、あるいは被提訴人がもし勝った場合、シロと最終的になったときの損害を補てんするような措置がない。  さらに加えて、これらの措置が米国産品と比べて輸入品についてややデュープロセスに欠けている、つまり米国産品については慎重な裁判所による審理等が担保されているわけですが、そういう点が担保されてないという意味でやや問題があると私ども思っております。単純に被害要件を削除したからこれはいかぬ、ガット上違法だと言うことはできないと思いますが、そういう実態面も含めて言いますとやや問題があると思っております。それで、私どもといたしましては、累次米国に対しまして松永大使の手紙等で意見を申し述べ、かつこの法案が適切な形で通るようにお願いしているところでございます。  なお、最近の状況によりますと、こういうような点も少々念頭に置いて上院下院双方において、提訴を受け仮排除命令を出すまでの間に担保等の措置をITCはとることができるというような規定を入れようとしているように考えております。私どもといたしましては、今後とも米国政府に強く申し入れるとともに、ウルグアイ・ラウンドにおきまして、立法論も含めて、これらの制度は国際的にいかにあるべきかということを検討してまいりたいと考えております。
  164. 菅直人

    ○菅委員 それにまさにダブるかのように、今ウルグアイ・ラウンドの問題が出ましたが、ガットそのものの中でも現在知的所有権の保護をめぐる各国間協議がなされているというふうに聞いております。その中で特に米国は、この知的所有権というものの範囲の中に企業秘密を含ませろということを主張している。日本やヨーロッパ諸国は、それでは余りにも知的所有権の範囲を拡大するし、まして企業秘密というものが非常に、何といいましょうか、範囲が明確でないことを考えると、まさにこれもアメリカの一種の保護貿易主義の手段として使われるのではないかという懸念を持っているわけですが、この問題をめぐっての通産大臣の御見解を伺いたいと思います。
  165. 小川邦夫

    ○小川政府委員 御指摘のトレードシークレットの議論を含めまして、アメリカは広範な範囲での知的所有権制度の充実問題をガットのトリップミーティングと申します知的所有権関係のグループで提案しております。  個々の交渉内容は必ずしもオープンにできないということになっておりますので、交渉そのものの実態を御説明することはできませんけれども、日本としてこの問題をどう受けとめているかという一般論という形で述べさせていただきますと、こういったトレードシークレットの議論というのは、一方で確かに企業秘密が知的所有権という確立した制度の中で保護されてない分野でも何らかの保護は必要じゃないかという議論は、アメリカを中心に、あるいはヨーロッパその他の一部でもそういう議論が出ていることも事実であります。他方、先ほど御指摘がございましたように、トレードシークレットもその一つではないかと思いますが、概念が明確でないままに直ちに法的規制に入ることが適当かという問題もございまして、トレードシークレットもそのカテゴリーに入ると思いますが、そういった問題については慎重な対応をする必要があると日本の政府関係者は考えているところでございます。
  166. 菅直人

    ○菅委員 さらにこれは防衛庁、もちろん外務省にも関係することですが、SDIをめぐる日米の協定の中にも「実施の過程において創出された秘密の情報を保護することを目的として、両政府は、それぞれの国の国内法及び日本と米国との間の協定の枠内において、すべての必要かつ適当な措置をとる。」等、いわゆるSDIは関連しての開発された技術についていわば網をかぶせようという条項が入っているわけです。さらに、さきに他の同僚委員からも話がこの場で出ましたが、いわゆる防衛技術の秘密特許制の問題が指摘をされております。  さらに、最近のいろいろな議論の中では、今防衛庁が導入しようとしているイージスシステムあるいは次期支援戦闘機の開発などにおいて、アメリカのいろいろな軍事関係の機密が日本に漏れることをアメリカとして恐れる余りにそれをすべて何らかの網をかぶせよう、そういうふうな流れも見え隠れしているわけですが、こういう問題について防衛庁としてどういうふうな見解をお持ちか、基本的認識をお聞きしたいと思います。
  167. 山本雅司

    山本(雅)政府委員 大臣のお答えする前に、事実関係を簡単にお答え申し上げます。  防衛庁では、日米相互防衛援助協定に基づきまして米国から種々の技術援助を今までも受けております。その技術援助を受ける場合に、SDIにしろあるいはライセンス生産にしろ、その秘密を保護するための枠組みというのは既にでき上がっております。このでき上がっている枠組みについて、アメリカ側から、現在の枠組みでは非常に不十分である、これを強化すべきであるというような要請が最近になって出てきたわけではございません。したがいまして、防衛庁といたしましては、今までの枠組みの中で、今までどおり防衛秘密問題というのは国内的にはちゃんと保護していきたい、こういうように考えております。
  168. 菅直人

    ○菅委員 ついでにもう一、二点、問題指摘を続けますと、日米科学技術協定の改定交渉が非常に難航しているということもせんだっても指摘をされておりました。さらには、アメリカの国立衛生研究所にビジティングフェローという形でかなりの日本人が研究員として研究に参加をしているわけですが、その研究員の削減というようなことをアメリカ議会の中で取り上げられていたこともいろいろと指摘をされております。これはあるいは科学技術庁なのかもしれませんが、こういう問題についてどういうふうに認識をされておりますか。
  169. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 そういった動きがアメリカの一部にあるのかもわかりませんけれども、アメリカ政府といたしまして、あるいは今、日米科学技術協力協定の協議中でございますけれども、この目的は両方がお互いに交流をふやそうという観点からで、私はアメリカ政府も同様な考えであろうというふうに思っております。
  170. 菅直人

    ○菅委員 きょうはどういう問題が日米間に特にこういった技術問題あるいは知的所有権問題をめぐって起きているかということを、私の知る一連の問題について指摘をしてみたわけです。  通産大臣にそういう問題を全体を含めてお尋ねをしたいのですけれども、私は、今の日本とアメリカの関係というのは、まさによく言われるように完全に新しい段階に立ち至っていると思うわけです。その中で、特に貿易のいわゆる金額の問題、数量の問題ということも、あるいは既にガットで指摘をされたいろいろなアンバランスの問題やアメリカにとってのアンフェアだと言われるような問題も確かにあります。しかし、もう一方で、この技術をめぐるいわば日米間のさま変わりをした状況というものに対して、日本の政府が基本的にどういう認識を持って、将来に向かってどういう立場をとろうとしているのかというのが、私は残念ながら余りはっきりこれまでの対応から見えてこないわけです。  ある指摘によれば、アメリカの科学技術の発展が日本に比べていわば足踏み状況にある一つの理由として、アメリカが余りにも技術に対して軍事の網をかぶせ過ぎたのじゃないか。アメリカのいわゆる秘密特許というものをかぶせれば軍事的な技術は民生に活用できなくなる。あるいは研究開発もアメリカの国防総省からの資金で研究開発をする、そうすると、優先的に軍事には使えるけれども民生にはなかなか使えない、人も回らない。逆に、日本はそれらの網が事実上ないことによっていわゆる民間の技術開発がそのまま民生に対していろいろな製品として活用できた、あるいは技術開発がオープンな形でここまで進んできた、そういうかなり有力な指摘もあるわけです。私は、ここで日本が間違ってでも何か、いわゆるアメリカの本来の趣旨とは違うようなねらいを持った科学技術の一つの秘密にせよというようなことに乗って、そういうものの手足を縛るようなことになれば、まさに技術立国としての我が国の将来は危ういというふうに言うことができると思うわけです。  そういう意味で、私はこれは特に通産大臣の所管だと思いますけれども、この科学技術問題の一つの態様に対して、基本的なスタンスとして技術というものはオープンであるべきものなんだ、もちろん、保護は保護として特許制度や知的所有権制度でやるべきですけれども、保護の問題と秘密の問題は違うわけですから、保護すべきものは正当な権利として保護するけれども、基本的には人類のだれもが利用できる技術である、そういう立場をとっていくということが必要だと思いますが、大臣の認識を伺いたいと思います。
  171. 田村元

    ○田村国務大臣 基本的にはあなたがおっしゃるとおりだと思います。ただ、国際的な関係というものがありますから、日本だけが我が道を行くということはなかなか難しい。国際協調の枠組みの中でまた論じられなければならない面も持っておるわけです。でありますから、我々は友好国としてアメリカを遇しなければなりませんが、同時に、言うべきはきちっと言うという日本の毅然たる姿勢というものもまた堅持しなければなりません。  そういうこともあって、私も今日まで技術のみならずいろいろな面で随分苦労してまいりましたけれども、今菅議員がおっしゃったことは基本的にはそうだと思いますけれども、やはり国際的な面に眼を広く向けなければならぬ点もあるのではないか。同時に、日本がやはりこれからやっていかなきゃならぬ重点は、外国の基礎技術をもらって応用するということより、むしろ日本自身で基礎技術を開拓していく、開発していく、日本のものを開発していく、そして日本の判断によってそれで対外的に対応していくということも必要ではなかろうかというふうに思います。
  172. 菅直人

    ○菅委員 外務大臣、そして防衛庁長官にも一言ずつ見解を伺っておきたいと思います。
  173. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 基本的には今通産大臣がおっしゃったとおりであると私は思います。  今度知的所有権をウルグアイ・ラウンドにおいて議題に供するという問題は先ほど政府委員からお話があったとおりでございますが、事ほどさように世界はどんどんと新しい場両を迎えておる。本来ガットは、貿易並びに関税と、動きは物に限られていろいろ議論されたのですが、物が動く以上はサービスがつくじゃないか、そのサービスについても議論しないのかというようなことになりますし、さらには物をつくるためには知的所有権が必要じゃないか、だからそれも議論しないのかい、こういうふうにだんだんと広がっておることも事実でございます。  したがいまして、通産大臣がおっしゃいましたように世界と協調をし、また世界に開かれなければならない日本でございますが、もちろん私たちの立場というものも鮮明にしながら今後そうした問題に対処をしなくちゃならぬ、これが私たちの考えであります。
  174. 瓦力

    ○瓦国務大臣 主として所管される通産大臣、また外務大臣からもお答えになりました。  防衛庁といたしましては、事柄の性質上、枠組みの中で守るべきは守っていかなきゃならぬという課題もございますが、今のところ順調に推移もいたしております。また、民間に対しましてさようなことを聴取しておりません。よって、外務大臣また通産大臣、所管大臣から見解が述べられた、そのとおりだと思います。
  175. 菅直人

    ○菅委員 それでは次の問題に移りたいので、外務大臣、防衛庁長官、どうもありがとうございました。  せんだっての総括質疑の中で、伊方の出力調整運転試験について、特に食物に与えた被害について若干の指摘をしたのですが、きょうはちょっと技術的な問題を一、二お尋ねをしておきたいと思います。  まず、伊方の実験の場合、出力を五〇%に落としていわゆる六時間運転をしたというふうに報告がされているわけです。その六時間の間にどういう状態で運転がされていたのか。具体的には制御棒がどの位置にあったのか、まずそのことをお聞きしたいと思います。
  176. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 御承知のとおり、制御棒につきましては一定の刻みに即しまして上げ下げが行われるようになっておりまして、二百二数ステップがあると承知をいたしておりますけれども、その二百二十数ステップにつきまして百数十ステップの操作が行われたと承知いたしております。
  177. 菅直人

    ○菅委員 もう一回聞きますが、出力五〇%のときに大体どの位置にあったわけですか。ステップが一・六センチだとかいろいろ書いてありますが、ある報道によれば、炉心から約九十五センチの位置に制御棒があったというふうな報道もありますけれども、具体的に燃料棒と制御棒の位置関係がどういう位置にあったのか、それを聞いているのです。
  178. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 二月十二日の実験でございますが、御質問の制御棒の位置につきましては、全体が二百二十ステップのうちの百三十ぐらいのところでございます。
  179. 菅直人

    ○菅委員 ということはこういう理解でいいのですか。これは純技術的な問題ですが、そのステップが高さに対応するとすれば、燃料棒があって、その制御棒が大体半分ぐらいのところにおりた状態で六時間運転された、そういうふうに理解していいのですか。
  180. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 制御棒についての御質問でございますが、その制御用の制御棒がそういう位置にあったということでございまして、今言いました調整用の制御棒でない、安全系、何か問題があったときの制御棒というのは別にたくさんあるわけでございますので、それは上の方に全部上がっているわけでございます。
  181. 菅直人

    ○菅委員 そんなとき、燃料棒というのはそういう半ばおりた、いわゆる制御用の制御棒がおりた状態で均一にいわゆる反応を起こしているのか、あるいは均一ではなくて制御棒がおりているところまでは反応が遅い、あるいはなくて、おりてない部分だけ反応を起こしているのか、それはどちらです。
  182. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 フラックスの、中性子の分布を御質問だと思いますが、普通の運転の場合にはなるべくゆがみのないように、プラス・マイナス五%以内におさまるように制御いたします。それは分布といたしましてはコサインカーブになりますので、真ん中のところが膨らんでいるといいますか、そういう形で上下は余り燃えてないという状態になります。
  183. 菅直人

    ○菅委員 いや、ですから制御棒がおりた状態でどうなっているかと聞いているのですよ。六時間の状態でそれがどうなったかと聞いているのですよ。
  184. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 御質問の趣旨がちょっとよくわからないのでございますが、調整用の制御棒はそういう状態にあります。ボロンで調整をしまして燃え方が均一になる、ゆがみのない、コサインのカーブにプラス・マイナス五%以内におさまるような形に制御されているわけでございます。
  185. 菅直人

    ○菅委員 必ずしも的確な返答になってないのですが、少し視点を変えてみたいと思います。  今回、六時間いわゆる五〇%での運転をやったわけですが、例えばこれをもっと長期に、二十四時間とかあるいは一週間とか一カ月とか半年とか、長期にこの五〇%状態のままで運転するということは現在の法律とか基準に反することですか、それとも反しないことですか。
  186. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 安全上の問題としては全然問題ございません。できます。
  187. 菅直人

    ○菅委員 法律上と聞いたのですよ、あるいはこれまでの基準上。
  188. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 基準も法律上も一切、一〇〇%出せるものを五〇%で運転したからといって法律上問題になるという性格のものではございません。
  189. 菅直人

    ○菅委員 いや、大臣もよく聞いておいてください、これが若干性格が違うのですよ。つまり、自動車で百キロ出せる車を五十キロで運転する、これは確かに百キロ出せるものを五十キロで運転するのは当然だ、もっとブレーキだってよくきくだろうからいいだろうということになるわけです。ただ、私が知る限り原子力発電所というのは、基本的にいわば百キロというか一〇〇%で運転することを予定してつくられているわけです。ですから、私はどうも、いろいろこの間から科技庁や通産省の担当者と話をしていて、五〇%の運転というものを予定して発電用原子炉というのがつくられているのだろうか。できるということと、それを予定してつくってあって長期にそれを運転できるということは若干違うのです。これが一時間、二時間と六時間、八時間とまた違う状態も起きるわけです。そういう点でもう一度、技術的な問題は改めて聞きますけれども、例えば今言ったような伊方のあの六時間の運転の状態を半年間続けたとして、どういうふうになりますか。全く問題が起きませんか。それとも、燃料棒に非常に不均一な燃料の消費が起きる、そういうことはありませんか。
  190. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 何か誤解があると思いますが、今問題になっておりますのは上げ下げ、上げて下げて上げて、それを頻繁に行ってした場合に疲労その他に問題があるのではないかということでございまして、一〇〇%の出力のものを五〇%で運転したからといって不安全になる、こういうものではございません。全く法規上問題ございません。ですから、燃料は三年間一つのものを炉心に入れてやるわけでございますが、それは当然一〇〇%出力で設計しておりまして、燃料はそういう意味では五〇%で運転しますとその分だけ使わないといいますか、さらに長く運転できる、こういうことになるわけでございまして、安全上の問題も法制上の問題も全くございません。
  191. 菅直人

    ○菅委員 今の回答が本当に正しいのかどうかはいつかの機会に確認をしようと思いますが、つまり石油のガソリンなら半分使ったらあと半分また流れてくるというのはよくわかるのですよ。ただ、制御棒というのは固体ですから、反応が進んで部分的に燃焼が進んでない場合に、それが果たして残った燃焼が不均一な部分に対してその後やることができるというのか。そのあたりが、お答えになっている方も私の質問がよく理解してもらってないのかもわかりませんが、あるいは私の誤解なら誤解で明確に言ってもらいたいのですけれども、つまり燃料棒というものが均一に燃えるのか。不均一に燃えてしまえば、結局残った部分というのが不均一な形で残るのですね。今言われたのは短期の問題で、確かに短期の問題もたくさんあります。では、今の点をもう一回聞いておきましょう。
  192. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 燃料を上手に燃やすといいますか、設計に従って上手に燃やすということはやっておるわけでございますから、その燃料を一年ごとの定期検査のときに移したり配置を変えたりということはやるわけでございます。ですが、御質問のような五〇%で運転したからといって何か安全上問題が出てきたり、制御上問題が出てきたり、こういうことにはならない。事実そういうことをやっているということではございませんので、五〇%よりはそれは一〇〇%で運転した方が経済的にいい、これはもう当たり前のことでございますが、ただ御質問は、五〇%なんかでは不安定になるとかあるいは……(菅委員「不均一に燃えるかと聞いているのです」と呼ぶ)そういうことはないように配置しているわけでございます。
  193. 菅直人

    ○菅委員 どうも私が聞いているのは、まだ安全かどうかという議論の前に、燃料極自体が不均一に燃える、そういう運転の仕方をやった場合に不均一に燃えるんじゃないですかと聞いているのです。
  194. 逢坂国一

    ○逢坂政府委員 どういうふうに御説明したらいいのかわからないのですが、要はそういうことはないようにやっているわけでございまして、燃料はどういうふうにやるかといいますと、大体三分の一ずつ毎年取りかえるわけでございます。その取りかえるときに不均一にならないように、炉心の中央が燃えやすいというのはこれはわかると思いますが、だから炉心の周辺から炉心に移し、そういうことを三年間燃料がある間三分の一ずつやる、こういうことでございまして、不均一に燃えるんじゃないかという御質問の趣旨は、どうも私としては理解できないのでございます。
  195. 菅直人

    ○菅委員 この問題はもう一度私の方もよく調べてみて、これはイデオロギー的な問題とかなんとかじゃなくて技術的な問題ですから、あれしてますが……。  もう一つ、なぜこういう議論をしたかというのは、大臣、次の質問をしたかったからなんです。つまり、今回の伊方の出力調整運転試験は、通産省やあるいは科学技術庁の言い方あるいは四国電力の言い方も、今すぐにこういう運転の仕方が必要なんではない、しかし将来こういう運転の仕方がエネルギー需要の関係で、原発のエネルギーだけでも電力だけでも余る時期が来る、そうなったときにこういう運転が必要になるから、そういう意味で試験的にやったんだという見解なわけです。  そこで、それじゃ今後本格的にいわゆるこういう出力調整運転を今言いましたように五〇%に下げて、六時間じゃなくてもっと長くやるとかあるいは頻繁にやるとか、そういう状態に今後移ることが懸念をされるというか、少なくともそういう可能性があるからこういう実験をやったという見解のようですが、そういう運転をする場合には、例えば原子力安全委員会等においてそういう運転がいいのかどうか安全性を改めて審査をするというお考えがあるのか、それとも一切そういう改めての審査は必要がないというか、そういうことをやる予定はないと考えておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  196. 浜岡平一

    ○浜岡政府委員 先生御高承のとおり、電力の負荷は年間を通じまして大変大きな変動がございます。一番ピークになります真夏の八月の昼間と、それから年末年始の真夜中あたりをボトムといたしますと、ピークを一〇〇にいたしましてボトムが四分の一ぐらいになるというような状況でございまして、出力調整の論議があるのは、このボトムの四分の一の領域に原子力の出力が近づいたときの議論でございます。御高承のとおりでございます。  私どもは、従来、大臣からも申し上げましたように、日常的な出力調整運転を行うことは、現在の電源構成及び電力需給の関係から見まして当面必要ないと考えております。ただ、通産省としては運転計画の届け出等を通じまして運転状況を詳細に把握をいたしておりまして、将来、日常的な出力調整運転を行うというような計画が出てまいりました場合には、念には念を入れるという観点から、その時点でその必要性、それから機器及び燃料の健全性、制御性能、運転操作性等の面での安全性につきまして、改めて慎重に検討するということにいたしたいと思っております。
  197. 菅直人

    ○菅委員 きょうはその回答を伺ってこれ以上の議論はとめたいと思いますが、今の言われたことは、少なくとも今後この出力調整運転を日常的にやる場合には、必要性、健全性あるいはいろいろな性能を含めて安全性を改めて検討する。ですから、改めての検討の結果が出ない限り、いやこれは法律に許されているからどんどんやっても構いませんということではないという認識だというふうに理解をできると思います。  これは大臣、最後に、なぜこの問題を申し上げたかといえば、原子力発電所のいろいろな制御のやり方等について私もそれほど詳しく知っているわけではないですが、いろいろな書物を見ても、例えばこれは新聞等ですが、基本的には原発というのは一〇〇%出力で運転するように設計されているがと大体頭に振られているのですよ。つまりこれは、百キロで走るのとさっき言ったように五十キロで走るのと若干違うのですね。つまり、百キロで走る方が一番安定で、一番いわばフリーな状態で、それを下げたり上げたりするのもなかなか大変ですし、下げた状態のままで運転するというのは、経済的にメリットがないということはしきりに言われているわけですが、それが技術的にもそれをもともと予定してつくられたのかどうかというのは、私が知る限りでは、できるということとそれを長期間運転することを予定してつくるということは若干違うわけですね。  そういう点で、ぜひ今の最後政府委員の一つの答弁というものをもう少し前に進めて、本当に原子力発電をこれ以上どんどんふやして、そうするとふやせば当然ながら電力需要に対して出力調整をしなきゃいけないような事態がたくさん起きてくる、そのときにどんどんこういうことをやる、やる場合には改めて検討すると言っているけれども、そういう方向へ一方で進んでいるという、そういうことを含めて、原子力というものを何といいましょうか、そこまで出力調整をしてまで使うようなところにまでウエートをふやすのがいいのかどうか。この点については、もう少しまさに予見なくエネルギー政策全般としても検討いただきたいと思いますが、ぜひこれだけは大臣に見解をお願いしたいと思います。
  198. 田村元

    ○田村国務大臣 私は原子力についてはもちろん素人で無学であります、法学部ですから。ところが、ブリックス事務局長あるいは内田委員長等の発言は、私はブリックスさんにも会いましたけれども大丈夫と言い、そして科学技術庁、通産省等の専門家が大丈夫と言う以上、やはり所管大臣としてこれを信ずる以外にないと思うのです。これはひとつ御理解を願いたい。  と同時に、一面またあなたのおっしゃる意味もわからないでもありません。確かにおっしゃったように、イデオロギーも何もない、むしろ純粋に聞いているのだということでございます。ちょっとこの問答を聞いておりますと、少し国会の議論としては高度過ぎやせぬでしょうか。非常に難しい専門的な問題が入っている。ここは一度原子力委員会なり、あるいは通産省でも結構ですが、とりわけ科学技術庁等の本当の専門家と東工大の理学部を卒業されたあなたのうんちくのほどを傾けて一遍十分話し合われて、その上で場合によっては私に教えてくれませんか。私は素人でこれ以上のことを答えようがありません。私は部下を信じ、学者を信じております。
  199. 菅直人

    ○菅委員 私も必ずしもこれの専門家ではありませんので、まず、まさに専門家を交えてのそういういわば意見交換の場をいろいろな形で、国会という場に限らずぜひ私も用意したいと思いますので、そのときには、大臣の今の答弁を含めてぜひ御協力をいただきたいと思います。  それでは通産大臣、もう結構ですので。  次に、今税制改正問題が、昨年来といいましょうか何年間か大変な議論になっているわけですが、その中で、野党は一致をして不公平税制を是正する、そのことをやらないでおいて次の議論に入るというのはある意味ではもってのほかだということを申し上げているわけです。  その不公平税制の中で、いわゆる所得税の不公平税制もまだまだ問題が残っておりますが、いわゆるキャピタルゲイン課税というものを本当にやる気があるのかどうか。自民党の政調会長は、何か少女趣味のようなことを言うななんていうことを言われたとかというように報道されておりますし、株の売買利益でかなり稼いだ方も同じ自民党にもおられるようですし、そういうことを含めて大蔵大臣に、このキャピタルゲイン課税をどこまでやる気があるのか、本当にやる気があるのか、そのことをまずお聞かせいただきたいと思います。
  200. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本来、所得税の原則から申しますれば、いかなる種類の所得もこれを総合して課税をする、そうあるべきものでございますが、まあこれにつきましてはいろいろな理由あるいはいろいろな事情から多少の例外はございますが、そういうことが原則でございますから、したがいまして、いわゆるキャピタルゲインというものもできるだけ総合課税の対象にすべきものである、これが基本の考え方でございます。  そこで、今回の税制改正に当たりましてもそういう考え方は当然貫かれておりまして、今、政府税制調査会におきまして今度の税制改革の基本課題というのについて意思統一をしておられますけれども、その中でも、これはせんだっても申し上げたかと思いますので簡単に申し上げますけれども、有価証券譲渡益に対する問題あるいは相続税についての問題、土地に関する問題等々について特に検討をするということを言っておられます。
  201. 菅直人

    ○菅委員 その中で、せんだっての公聴会ですかの参考人の発言の中でも、グリーンカードならぬクリーンカードをつくってこういった株式売買をガラス張りにすべきではないか、そういう提案も出されております。これについて大蔵大臣としてはどういう御見解ですか。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 株式のキャピタルゲインを、キャピタルロスを含めまして間違いなくまんべんなく公平に行政にのっけて課税をするということになりますと、何か一つの仕組み、工夫がありませんとなかなかそれは簡単ではないのではないかという意識は私ども常に持っておりまして、今の何かそれがどういう名前になりますか、例えば今おっしゃいましたような種類の方策が必要なのではないか、そういうことが可能であるか、また他にどういう影響を及ぼすであろうかというようなことを、ただいま税制調査会が小委員会を設けて検討を始めていただくことになったところでございます。
  203. 菅直人

    ○菅委員 多少前向きな答弁というふうに理解をしたいと思いますが、この株式と並んで、先ほど大臣も指摘のあった土地の売買というものが、やはり一つのキャピタルゲインとしてかなり膨大に存在をしているわけです。これはせんだっての質疑の中でも、土地政策のあり方としての面からも幾つか申し上げたのですけれども、この土地についてどういうふうな形の税を考え得るのか、個人の場合、法人の場合について、大臣にお考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、土地の価格が落ちついておるあるいは需給関係が安定しておりますような場合と、それからそうでないような場合とでは、やはりおのずから考え方が違ってまいるのであろうと思います。私の大先輩でありました水田さんは、何度も大蔵大臣をされまして、私には、長い目で考えると税制で土地問題に余り影響を与えるということは実際は可能でない、長い目で見ればそれは余り期待できないのだということを言っておられましたけれども、それは長期にわたってのことでございまして、現在のように土地の需給あるいは価格に非常に大きな変動がありますときには、税制がやはりその事態を反映してそれに対応しなければならないということであろうかと思っております。
  205. 菅直人

    ○菅委員 私は、宮澤大蔵大臣からのその答弁を何度か私自身の質問の中でも聞いたのですが、私はその水田先輩がおっしゃったことをもう一回白紙に戻して考えていただいた方が政策的にいいんじゃないか。つまり、長期にわたって影響がないか、逆に長期こそ影響があるのか。例えば最近の土地の所有状況を見ても、東京都心部は個人所有の土地がほとんどなくなりつつあるわけです。ほとんどが法人所有の土地になってきているわけです。  一般的に言われることは、個人の場合はやはり相続の問題もありますから、かなり高くなった場合にはどこかでそのまま維持が難しくなる。しかし、法人の場合はもちろん相続という制度はありませんからそのまま持ち続け、しかも簿価が安ければ特にそれで利益という形で税金を取られるわけではない。しかも含み資産が大きくなれば、金融機関はそれに見合った金は幾らでも貸してくれる。ですから、一時的でも利益が上がれば、とにかく土地にさえかえておけば、自由に売ることもできるし、いわばそのまま寝かしておいて金融の担保価値として利用することもできる。  ですから、現在もかなり大量の法人所有の土地が、首都圏を含めて未利用の形のままで臨海部などを中心に残っている。あれだけある意味では利益というものを求める企業がなぜそういうことが可能なのかと言えば、結果的には土地というものが今申し上げたような形で、つまり一般的な意味の利用はされないけれども担保として金融としては十分もう活用しているから、土地そのものは何もいじらなくていいんだという形になっているわけです。私はそういう点で、長期的に考えてこそ税制がこの問題に意味があるんじゃないかと思うわけです。  その場合、自治大臣にもお越しをいただいておりますけれども、せんだっての質疑でも言いましたけれども、地方税法には時価と書いてあるんですね、固定資産税の課税対象は。これはなぜ時価にできないんですか、自治大臣。
  206. 渡辺功

    渡辺(功)政府委員 お答えいたします。  固定資産税に時価と書いてあるけれどもなぜ時価ではないかということでございますが、固定資産税の税の性格からいう時価ということで、それは正常なる価格ということを固定資産評価基準で決めております。そういう意味におきまして、時価とあるのは市場価格そのものであるということではございませんので、固定資産税体系の中で整合のとれた形で時価ということを理解して、それによっているわけでございます。
  207. 菅直人

    ○菅委員 それではついでに聞きますが、公示価格というのにできないんですか。
  208. 渡辺功

    渡辺(功)政府委員 公示価格というものと固定資産税の時価というものはおのずから性質が違うと私ども考えております。なぜならば、固定資産税というのは毎年毎年課税されるもので、基礎的な自治団体である市町村の財政需要を賄うものでございます。そうした性格からいたしまして、ただいま申し上げました正常なる時価ということにしておるわけでございます。  で、どういうところが違うかといいますというと、例えば売り手と買い手が非常に均衡がとれていないような形で地価形成をされて、それが取引価格というものの通常の形を形成しているところと、例えば田舎の方なんかで相互の売り手と買い手がかなり均衡した状態で地価形成が行われているところを考えますというと、公示価格と固定資産税の時価というのは、あるところではかなり接近し、あるところでは開いてくる、こういうことは当然のことでございまして、必ずしも公示価格でいかれない、こういうことが一つございます。  そのほかに技術的な問題といいますか、もうこれは絶体絶命の問題でございますが、固定資産税は一億六千万筆の評価をしております。そしてまた標準地だけでも、前回三年前の評価がえのときでも四十二万地点ございますが、公示価格の地点は一万七千地点程度で、しかも大分入れかえをしたりするというようなことがありまして、それによるということは技術的には不可能でございます。また同時に、三年ごとの評価がえでございますから、公示価格に順応してしょっちゅう課税標準を変えていく、これも不可能でございます。そういったような事情によりまして、同一にはできないということでございます。
  209. 菅直人

    ○菅委員 もう一回だけ聞きますね。じゃ公示価格というのは、正常な価格じゃないのですか。
  210. 渡辺功

    渡辺(功)政府委員 私の方からお答えするのは適当かどうかわかりませんが、取引のための目標となるようなそういう趣旨のものであるというふうに私どもは理解しております。
  211. 菅直人

    ○菅委員 この問題は、既に他の委員質問理事会預かりにもなっている問題に関連していますので、これ以上詰めるのはやめますが、なぜこういうことをキャピタルゲイン課税のときに言ったかといいますと、キャピタルゲイン課税というのは必ずしも譲渡のときに、いわゆる売買のときにかかるという性格だけではなくて、その資産を持っていることによって保有税がかかれば、それは一種の緩やかなキャピタルゲイン課税になるわけなんです。ですから、例えば十億の資産を持っている人がそれに対して何%かの税金がかかる、あるいは何百億かの土地を持っている人がそれなりの保有税がかかるというのは、それも一つのキャピタルゲイン課税の性格を持つわけですね。  しかし残念ながらと言いましょうか、現時点ではその評価が、今の政府委員の話によれば時価であって時価でないわけです。普通の常識で言えば、時価というのは時の値段と書くわけですから、時の値段というのは、普通は物価のあるべき値段で物価指数なんか出ていないわけで、まさに売買価格が基準になって出ているわけで、それに対して税をどうかけるか、何%かけるかという話は別ですよ。少なくとも時価というのはそう認識されているわけですし、そういう意味ではもう少し、まさにいわゆる売買価格なりあるいは公示価格に近い水準で固定資産税を評価をしてかけておけば、私はそういった大規模土地所有に対してもう少し土地利用を促進する効果があるはずだ、またこれまでもあったはずだと思うわけです。  もちろん、一つだけ念のため申し上げておきますと、その場合に小規模住宅を所有している人に対して減免をするということは、せんだっての総括でも言いましたように別個に考えられることですが、そういう意味で私は、法人の土地所有のキャピタルゲイン課税の面からも、大規模な土地を所有している地価評価をもっと実勢価格に近づける。せめて公示価格に水準として、筆数が一億六千万筆あってこちらが何万筆というのは、それは政府内の調整でやり方さえ流用すれば幾らでもやれるわけですから、そういう形でやるべきだと思いますが、どうですか、自治大臣。
  212. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 話がそれるかもしれませんけれども、自治大臣として土地問題あるいは土地税制、こういうものに触れる問題はいわば固定資産税のみであります、地方税の中で土地を対象とする税金は固定資産税だけでございますから。その中で、この土地問題を地方税の中で解決をしようと言ってもなかなかできる問題ではございません。それから、税全般の議論としては当然あり得ることでございますけれども、そういうことを考えますと固定資産税、今税務局長からお話がございましたように普遍的な、自主財源として大変大切なものでございます。地方税約二十六兆円がございますけれども、その中で約五兆円、土地にかかるものはそのうち二兆円でございます。既に一兆幾ら、いわば小規模宅地に対する減免措置を行っておりますから、これをどうこうすることができるかどうかということになりますと、あるいは大幅にこれに課税しろということでないかと思いますけれども、そういうことになりますと税の公平性その他に及ぼす影響がございますし、固定資産税という性格からいいまして、今の問題をあるいは増価税的なものに振りかえることはどうかという感じがいたします。  土地の増価税あるいはその他の問題についての菅先生の御提言を私も読ましていただきましたけれども、まさに土地税制の抜本改正というか、土地税制だけではなくて税制全般をも変革をしなければできないような御提言でございますから、大変興味深くは読ましていただいたわけでございますが、現在私の自治大臣としての権能の中からいいますと、その千分の一も実はやれる可能性がございません。ですから、税全般の体制として、これから土地税制ということよりは税全般の議論として御提言をなされ、そして税全般の議論がこの中で進展をするならば、それなりの私は対応があろうかとも思っております。
  213. 菅直人

    ○菅委員 竹下内閣をその馬力で、竹下内閣成立に向けて頑張られた自治大臣が、千分の一なんていうそういう謙遜なことを言われないで、まあ三分の一ぐらいはやれるんだとぜひ言っていただきたいと思います。  この問題で再度大蔵大臣に伺いたいのですが、今の議論をお聞きいただいてもおわかりというか、もともとおわかりなんだとは思いますが、つまり土地に関するキャピタルゲイン課税というのは、売買のときと保有のときと、私はその両方相まって成り立つんだろうと思っているわけです。しかもその場合に、個人所有の場合と法人所有の場合と、それもまたある意味では基本的な考え方を軌を一にすべきではないか。  一般的には、税というのは総合課税方式がいいと言われていますけれども、土地のキャピタルゲインというのが、何度か申し上げたように、個人の才覚とか企業の才覚によって値が上がったというよりは、社会的な費用によって道路や港湾やあるいは経済活動全体が上がることによって価値が上がるわけですから、それを個人のものあるいは企業の個別のものにするというのではなくて、それは社会に還元をするという考え方をとるという意味で、私は、土地にかかる譲渡益課税も個人にかかる課税も基本的には同じ考え方で整理をし、譲渡のときにどういう形で取り、保有のままの場合にはどういう形で取る。そのことが、実際の今の社会をごらんになったらわかると思いますが、これはもう何回も言ったことですけれども、今の若い人は家を持っている、あるいは親が家を持っている人と持っていない人で新しい階級だとさえ言われているのですね。給料はそんなに差はありません。同じような努力をすれば同じようにある程度頑張れます。住宅だけはもうとても階級差なんですよ。そこまできてこれだけの不公平なんですね。  生まれたときに親が持っていた、あるいは何かあったというのとなかったというのではこんなに不公平になるというのは、私は社会状況から見ても大変な大きな問題だ。そういう点で、キャピタルゲイン課税の有価証券に対する課税については若干前向きな動きをされているようですが、土地に対しても、社会的不公平を正すという意味からも積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、もう一度御見解をお聞きしたいと思います。
  214. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、一般的に相続税が富の再配分という機能をいたしておるということは、これは恐らく広く認められているところでございますから、そこで一つ今おっしゃいましたような問題に税がかかわり合っていることは間違いないところであろうと思います。  次に、しかし昨今のように、土地の譲渡について短期譲渡を非常に重く課税をする、中期はその中途ぐらいでございまして、長期の方はどちらかといえば比較的課税を緩めて土地の供給を促進する、こういうことになっております税制は、ただいまの土地問題の解決に一翼を担おうと努力をしている証左でございます。このことは、譲渡については個人はもちろんでございますが、法人についても別途課税を分離して重課しておるようなことでございますから、そういう機能は確かにやっておりますが、菅委員の言われましたようなそういう社会的ないわゆる富の不公正、再配分ということについてはやはり相続税というものがその機能を持っているのではないかというふうに思いますが、必要がありましたらまた専門家がお答えを申し上げます。
  215. 菅直人

    ○菅委員 このテーマはもうこれで終わりにしますけれども、今申し上げた中で十分お答えいただけなかった問題は、法人というものが結果においてまさに相続税がないという、もちろん法人に相続税を入れろと言っているわけじゃないのです、ただ結果において相続税という形態がないということで、どんどん土地というものがいわば法人所有に変わっていく。ですから、逆に言うとこれはたくさん土地を個人で持っている人も自分で会社をつくってそちらに移していって、そうやるのが一番節税になるなんというのは、これはもう節税講座の常識になっていまして、それは別に個別のことを言っているのじゃないのです。全体が、個人、法人を通してそういうキャピタルゲインというものが適切に課税されていないという現状があるわけですから、そういうことをもう一度ぜひ検討課題に入れていただきたいということを申し上げまして、このテーマについては終わって次に移りたいと思います。自治大臣どうぞ、結構ですから。  次に、高齢化社会という言葉が今、きょうは総理おられませんけれども、竹下総理が税制改正問題を議論されるときに常に頭に振る言葉になっているわけです。しかし、これまでの議論、同僚委員質問に対しても、じゃ本当に高齢化社会の中でどういうものがどういうふうなサービスを提供して、さらにどういう形でその負担をするか、あるいはその中でどういうものを税という形で負担をし、どういうものを他の形で負担をするか、残念ながらそういう議論は一向に聞こえてこない。ただ形容詞として高齢化社会というものが言われているだけで、これでは口実にだけ使われて、やってみたら相変わらず高齢化社会に対しては非常に厳しい形で、他にその財源を持っていく、そういう不安、不満を国民の多くが感じていると思うわけです。  そこで、もうちょっと具体的な問題を幾つか聞きたいのですが、現在医療保険の中で国民健康保険、政府管掌健康保険そして健康保険組合の財政が、特に老人保健制度への拠出金のかなりの増大の中で、六十二年度さらには六十三年度以降にかなり厳しくなる制度が生まれてきているというふうに言われておりますが、この三制度のことし、来年、ことしの決算見通し、来年の予算見通しを簡単に説明してください。
  216. 下村健

    ○下村政府委員 政府管掌健康保険の状況でございますが、六十三年度は一応収支均衡、六十三年度も一応収支均衡の見込みを立てております。保険料も一応現状維持という格好でございますが、お話のように老人保健拠出金が六十二年度、三年度実質負担においてはかなりふえてきているという格好でございます。六十一年度の老人保健拠出金七千百九十七億円、六十二年度が九千六百三十億円、六十三年度が九千二百億円という形で逐次膨らんできているというふうな格好でございます。  それから健康保険組合でございますが、六十一年度の赤字の組合数が二百九十四、これが六十二年度にまいりますとかなり、千を超えるところまで赤字組合の数がふえてきているという格好でございます。老人保健拠出金が六十一年度五千三百億、六十二年度の見通しが七千五百億という格好でございます。  それから国民健康保険でございますが、これはまだ六十一年度の状況しか明確にわかっておりませんが、六十一年度で見ますと、前年に対する状況から見ますと赤字保険者の数が減っておりますが、赤字額自体は増大してきている。その中で老人保健拠出金が前年度に対して九・五%増という格好でございまして、現状は老人保健の拠出金の負担がかなり重くなってきておりますが、全般的にまだ現在のところ財政が非常に窮迫するというところまではいっていない。先を見ますと老人保健の拠出金の伸びが非常に大きいものですから、先行きについてかなり厳しい見通しを持ってきているというのが現状ではないかと思います。
  217. 菅直人

    ○菅委員 今の中でも出ておりますが、特に老健法の加入者按分率を八〇、九〇として六十五年度から一〇〇にする、そういう中で被用者保険である政管あるいは保険組合の財政状況が特に六十二年度以降大幅に悪くなるということが今の数字からもある程度わかりますし、多くの関係者の見通しから出てきているわけです。そういう中で老健法の中に六十五年見直しという規定も入っているわけですけれども、今後のこういった医療保険制度の中期的といいましょうか、六十五年度をまたいだ中期的な見通しとして、このまま何もしないで手をこまねいていてやっていけるとお考えなのか、それとも何らかの抜本的な改革が必要とお考えなのか、厚生大臣お聞きしたいと思います。
  218. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 老人医療費の負担の問題から健康保険組合また政管健保の財政が悪化してきているという御指摘はそのとおりだと思いますけれども、なお国保も財政状況は御承知のように苦しいわけでございまして、今医療保険制度全体が財政状況は非常に苦しい、こういう現状認識が一つあろうかと思います。  そこで、今後の問題についての御指摘でございますが、六十五年には国保改革の推移も見なければなりませんし、また老人保健制度の推移の帰趨というものも見きわめていく必要があると思いますので、その時点で全体的な医療保険制度のあり方について必要があれば検討してまいらなければならないというふうに考えております。
  219. 菅直人

    ○菅委員 六十五年というのはそんなに十年先の話ではないわけですね。今六十三年度予算を審議をしているわけですから、それから言ったってあと二年、実際にはことしぐらいからいろいろな問題を考えておかなければ、とてもこれだけ大きな制度を一カ月や二カ月で動かせないことは厚生大臣もよく御承知だと思うのです。そういう議論をしようと思っているときに、きょうの朝の新聞に健保連が老人医療費についての提言をするんだという報道が出ておりました。内容についてはいろいろな意見があり、私にとっても大変検討すべき問題あるいは必ずしも賛成できない問題、いろいろと含まれておりますけれども、その提案そのものについて厚生大臣としてどういうふうにお考えをお持ちなのか。  具体的に申し上げますと、老人保健という制度をいわゆる保険制度から分離をして、保険制度といいましょうか、他の健康保険制度から分離をして税収によって賄うべきではないか。これは以前から、老健法をつくる段階から、本来保険というのは加入者相互のいわば相互補助というものがベースであって、必ずしも加入者と言えない人に対しての援助というのは、これは保険ではなくて社会保障ではないか、社会保障というのは保険料から賄うのではなくて、租税から賄うべきではないかという有力な意見が与党自民党の中にもあったということを私は承知をしているわけですが、そういう問題も含めてこの提言に対してどのようにお考えか、考えをお聞かせいただきたいと思います。
  220. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 この御提言はすべて私どもつまびらかに承知をしているわけではございませんが、言われていることに関して考えてみますと、今後の高齢化社会における負担の基本的なあり方を御提言されたものと思います。しかし、これは税制をめぐってその基本的な問題についての御議論が行われているところでございますので、今後とも老人医療費の負担のあり方については国民の合意を得ながら広く検討していかなければならない問題だと思います。  御指摘の議論は老健法制定当時からあった議論として私もよく承知をいたしております。
  221. 菅直人

    ○菅委員 これは大蔵大臣にも大変重要な問題だと思うのでお聞かせをいただきたいのですが、今この老人保健の負担を、負担といいましょうか財源をどうするかという議論があります。また一方、、年金制度、いわゆる基礎年金制度を導入するときに基礎年金というものをどういう形で運営するのがいいのか、これまた保険料でやるのがいいのか国庫負担でやるのがいいのかという議論があったわけです。  ちょっと一つだけ聞いておきますが、現在、いわゆる国民年金、基礎年金への未納者が大変多いと聞いておりますが、どのくらいが未納者になっておりますか。
  222. 佐々木喜之

    佐々木(喜)政府委員 お答えいたします。  国民年金の保険料納入状況のお尋ねでございますが、国民年金の保険料を毎月納付していただくわけでございますけれども、毎月分の保険料、納めるべき保険料の総合計に対しまして実際に納付されました保険料の比率、検認率と言っておりますが、この比率、一番最近の実績、昭和六十一年度で八二・五%でございます。
  223. 菅直人

    ○菅委員 つまり八二ということは一八%もの人が国民年金に入ってないということなんですね。これは私の実感でも、三十代、四十代の特に女性の人と話をしていると、いや、あんなのに入ったって、とても私たちがもらうころにはもらえないんじゃないのというのをほとんど十人会えば二、三人の人から言われるということでもあるわけです。それだけいわば日本の年金制度が国民の中で信用がないということなんですね。  私は、またあの制度がつくられるときに、月五万円、物価スライドということになっておりますが、それはフルに掛金を掛けた人がもらえる金額であって、実際には現状でももちろんそこまでいっておりませんし、まして未納者が多いあるいは未納期間があればそれが全部削減されるわけです。そういう点から言えば、せめてシビルミニマムとしての、最低基準としての基礎年金は、私は、そういうふうに掛金によって多いから少ないから、期間が長かったから短かったから削減するというやり方ではなくて、基本的には一定額は国の責任として、世代の責任として保障する、その上乗せに国民年金の上にもいわゆる厚生年金のようなものを設けて、その部分は掛金によって払った人が受け取る、そういう意味での基礎年金であるべきだと思いますが、厚生大臣いかがですか。
  224. 水田努

    ○水田政府委員 お答えいたします。  国民年金はフルペンション、月額二千円でスタートしたものが、フルペンション現在五万二千二百円というものを保障するまで充実してまいっておりますが、これを可能としているものは、公的年金という形をとって後代の人が先輩の年金の財源を支払うという形をとっていることから可能となっているところでございます。この国民年金につきましては、もう三十六年以降、大変国民の方の御協力をいただいて社会保険料方式で納付するという形が国民の中に既に定着をいたしておりますので、私どもこの形を維持しながら、国民の皆さんが、一〇%前後の未納はございますが、これは特に大都市部の人口移動が多いことがかなり大きく影響していると思いますけれども、毎月納付であるとか、自動振り込みというようなことを加味しながら、この制度を維持するということでなければならないと思います。  先生の御指摘の税方式に切りかえるということにつきましては、今後非常にふえていく給付について、安定的に税でその財源が確保できるかどうか、これはやはり大きな国民の選択の問題ではないか、このように考えておる次第でございます。
  225. 菅直人

    ○菅委員 この問題について、大蔵大臣に最後に全般的なことを御見解を聞きたいのですが、つまり先ほど申し上げたように、高齢化社会の中で確かにいろいろな負担が、国民的負担が増大をしていくということは十分予想できるわけです。しかし、その中身をどういう形で財政的に負担をし、あるいは内容的にも、きょうは余り細かく触れませんでしたが、例えばこの老健法の中の老人施設などのように、家庭と医療機関あるいはその間にあるいろいろな施設等で賄うか、そういう中身、トータルの話があってこそ高齢化社会ということの議論になっていくし、あるいはその負担のあり方の中で、税の問題にもつながってくる。そういうものを一切議論をしないまま、現在のような税制議論の形容詞にだけ使うというのは、ある意味では不見識とも思えるわけですが、そういった問題についての大蔵大臣の見解を伺いたいと思います。
  226. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 将来に向かいまして、社会福祉の水準なりあり方をどういうものにしておくかということは、結局給付が高ければどういう形にせよ負担も大きい、そういうトレードオフになるわけでございますから、国民が将来に向かってそういう選択をしていかなければならないわけでございます。  そこで、ただいま菅委員の言われましたようなことは、せんだってこの委員会でも御指摘がございまして、厚生省と私どもとで中心になりまして、細かいことはなかなかできにくいのでございますけれども、将来どのような問題があってどのような対応が可能であるかという、何かそういうデッサンのようなものでも出せないのかという委員会の御審議の途中でのお求めがございまして、御審議中に間に合いますようにそれを資料としてお目にかけたいと思っております。実は私どもとして、こういうことを将来を展望いたしまして、少なくとも国会に資料として御提出するというようなことは初めてなものでございますから、各省庁の間のはっきりした合意がもう既にあっての上ではなかったわけでございますので、いろいろなことを模索しながら、ある程度のごくごく大まかなデッサンをお目にかけたいと思っております。  しかし、それはそれといたしまして、将来に向かってさらにある時期にまいりますと、もう少し具体的にどのような給付、どのような負担、どの部分が税であり、どの部分が保険料であるかといったようなことはやはりだんだんに考えてまいらないといけない。その場合には、しかし国民負担というのがいずれにしてもどのぐらいになるかということもまた、これこそ国民のコンセンサスで決めていただかないとならない問題でございますから、そういう問題を将来に向かって持っておりますことはそのとおりであろうと思っております。
  227. 菅直人

    ○菅委員 この審議の中で、税制について与党委員の方から野党に対案があるかというように聞かれた委員もありましたけれども、しかし、私はあえて政府にこの高齢化社会の青写真があってその中でこういう税制議論をするのならば、それは一つの実りあるものだと思いますが、今言われたように、今からじゃあ準備しましょうというのであれば、やはりそれを十分検討さしていただき、あるいは野党としてもそれに対する案を考えて議論を進めるべきではないか。そのことを申し上げて、最後に血液製剤のことについて若干お尋ねをしたいと思います。  もう何度かいろいろな委員の方からこの問題については指摘がありました。医薬品副作用被害救済基金法というものが昭和五十四年に生まれているわけですけれども、その中に副作用、「「医薬品の副作用」とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応をいう。」こういうふうに規定をされているわけです。この規定から考えて、今回の血液製剤によって生じているエイズ患者の発生というものはこの副作用に当たると思いますが、いかがですか。
  228. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の解釈でございますので、私からお答え申し上げますが、ここに出ておりますように、第二条でございますが、「「医薬品の副作用」とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応」ということになっております。したがって、医薬品の本来有する薬理作用によって発現する作用と解するべきであると考えておるわけでございまして、例えば先日来問題になっております血液凝固因子製剤にいたしましても、最初に製造承認されたのは五十三年の八月ごろでございまして、その当時はエイズ感染という問題はなかったのでございます。  その後において、不幸にしてエイズウイルスの作用というものがだんだん各方面で出てまいりましたけれども、本来この血液凝固因子製剤にはそのような作用はなかったということは明らかでございますので、ここにいう、いわゆる今回の血液凝固因子製剤によるエイズの感染というのは、医薬品本来の副作用とは解することはできないというように考えております。
  229. 菅直人

    ○菅委員 私は、大臣なぜこの部分でそれだけ薬務局があるいは厚生省が頑張られるのか、よくわからないのです。今局長も読まれたし私も読みましたけれども、普通に読んでこのいわゆる医薬品副作用被害救済基金法二条の二項ですか、「この法律で「医薬品の副作用」とは、医薬品が適正な使用目的に従い適正に使用された場合においてもその医薬品により人に発現する有害な反応をいう。」と書いてあるのです。薬理作用が何とかかんとかなんて書いてないのです。  つまり、薬を使って、それが例えば心臓の薬を間違って別の用途に使ったとかというのであれば適正な使用じゃないでしょう。あるいは本来のその打つべき場所じゃないところに打ったからといってなるなら、それは適正なあれではないでしょう。しかし、適正に使用されていてその中で生じた、まさに人に発現した、有害な反応が生じたわけです。それを何か薬の薬理作用だ何だといって勝手に解釈を薬務局でしているけれども、そんな解釈はどこにあるのですか。これは自然の解釈で、いわゆる社会常識に照らした解釈で当然いくべきじゃないですか。まして、この医薬品副作用基金はサリドマイドやスモンのああいった中で、いわば原因とあれを非常に認定しにくい中で、無過失責任についてもある程度救済を認めるためにこういう制度をつくったはずなんです。そういった点で、この解釈をそういうふうに狭く狭く解釈するのはおかしい。これは大臣の立場として改めてもらいたいと思いますが、どうですか大臣。これは大臣やってください。
  230. 坂本龍彦

    ○坂本(龍)政府委員 私から一言先にお答えさしていただきますが、この制度ができましたのは、医薬品というものはいろいろな研究をし慎重に作業を行っても、やはり副作用というものは医薬品の本来の作用の中に含まれている。それに対して、そういう副作用による被害が出ましたときに、個々のケースにおける救済では必ずしも十分ではないので、医薬品の製造業者があらかじめある程度の拠出をしながら、個別の責任問題とは別に救済をしよう、こういう趣旨でできておりますので、やはり医薬品そのものの作用によって起こった被害、こういうものを救済していこうという趣旨のもとにできているということから、私どもはそういう本来の制度の適用というものをそういうものに限定するということは当然であろうと考えておるわけでございます。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  231. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 薬害であるかどうか、またそのためにはこれが薬の使用による副作用であるかどうか、こういう議論をしているわけでございますけれども、その議論のつまるところは、不可抗力で非常に同情すべき余地のある方々に対して救済をどうすべきかというところがポイントであろうかと思うわけでございます。  先般の総理の御答弁にもありましたように、そういう方々に対しては政治の力そのもので対応すべきである、こういう御答弁もされたわけでございまして、私どもも薬害であるかどうか、また副作用であるかどうかという議論は別として、これは政治そのものの力で対応すべきものだというふうに考えておりますので、よろしく御理解いただきたいと思います。
  232. 菅直人

    ○菅委員 時間が参りましたので、この問題は今大臣も言われたように、救済そのものについては総理大臣答弁を含めて全力を挙げられるということなので、それはそれとしてぜひその方向でお願いをしたいと思いますが、これはこの法律の解釈論というよりは、今後もあるいは不幸にしてこういった事象が起きる可能性もあるわけです。そのときに、実はこの問題でも、厚生省は御存じだと思いますが、昨年の秋でしたか、この救済基金を使えないかというのが患者の皆さんの中から、あるいは関係者の皆さんの中から要請があったわけです。  それを今言われたようないわば厚生省流解釈によって、何かガラスの粉が入ったのとウイルスが混入したのと同じような説明を私は受けましたけれども、そういう扱いでこれは副作用のこれには該当しないんだなんという言い方を、拡大解釈をするという考え方は、私はこれはこれとして非常に問題を残していると思うわけです。ですから、決して今の厚生大臣の答弁で納得したわけではありませんが、このことを特に申し添えて私の質問を終わりたいと思います。
  233. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  次に、中村巖君。
  234. 中村巖

    中村(巖)委員 まず最初の問題は、いわゆるプライバシー保護法に関連をする問題でございます。  総務庁は、現在、行政機関の保有する電子計算機処理に伴う個人情報保護法案という名前のいわゆるプライバシー保護法案、こういうものを立案をしておって近く国会に提出をされる、こういうことでございます。このいわゆるプライバシー保護法というものがこの段階で出されるということは、まことに時宜に適したというか、むしろ時宜におくれている、こういう感なしとしないわけでございまして、もう既に各省庁におきまして電子ファイルの形で保有をしておるところの情報というものは大変な数に上るわけであります。  六十二年一月現在で、十五省庁で千三百ファイル、十二億件、こういう情報を保有しておる。こういう情報を保有しておりながら、国民の側からするならば、どこにどういうふうな情報があるんだということがはっきりしておらない。そしてまた、そのためにそれを開示をされることがない、こういうことになって、大変不安感もあるわけであります。そこで、早期の法の制定が望まれるわけでありますけれども、新聞に一部伝えられるところによりますと、どうも今国会は大変に難しいんじゃないか、各省庁との折衝がうまくいっていない、こんなことも言われているわけでございます。  そこで、まずこの法案について今後の立法の見通し、つまり国会に提出をする見通し、あるいはどうして今国会に提出ができないのか、提出ができるのか、できない事情があるのか、その辺のことを伺います。
  235. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 法律の専門家である中村委員から、当庁が進めております個人情報保護法案につきまして関心をお持ちいただいたことを大変感謝申し上げます。  当庁といたしましては、ただいま御指摘のように、国が持っております数多くの電算処理されました個人情報、これがみだりに流出等をすることがないように保護をするということを最大の目的にいたしまして法律を制定したいということで準備を進めてきているところであります。ただ、個人情報につきまして誤ったものがあってはいけないということで、その個人に限って開示をして、間違ったところがあれば過ちを訂正することを申し出ることができる、そういう内容になっているものでありますから、何分件数が大変多いので、一体現実にこういう法律が制定された場合に事務量がどの程度になるのかなどということを中心にいたしまして、各省庁間でなお若干の調整を要するというのが現在の段階であります。各省庁から第一次案を示しまして意見を聞きました上、第二次案を示しまして、さらに今週中にでもそれの最終的なヒアリングをしたいというふうに考えておりまして、できれば私どもといたしましては、既に委員指摘のように先進各国、特にサミット参加国のほとんど全部が制定しておる、イタリアがただいま国会に提出中であるというふうに聞いておりますが、そのような状況にございますので、日本においても速やかに制定すべきであろう、このように考えておるところでございます。
  236. 中村巖

    中村(巖)委員 その法案の内容でありますけれども、伝えられるところによりますと、まず、その電子情報ファイルというものをつくるに当たっては総務庁長官に対して事前に通知をする、あるいはそのファイル簿なるものを公衆の閲覧に供する、さらには他の目的にそのファイルを利用することを制限をする、個人情報をその本人自身に開示をする、さらに個人情報について本人からの訂正申し立て権を認める、こういうようなことが骨子になっておるやに伝えられているわけでございますけれども、そういう内容になるのかどうかということ。今、長官の方から、今最終の折衝ということでありますけれども、どの辺がこの法案をつくるに当たって各省庁との間に問題点となっているのか、その辺をお聞かせをいただきたいと思います。
  237. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 今、各省で協議中の行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律案ということで協議をいたしております中身は、先生がおっしゃったほぼそのようなことをその骨子といたしておるわけであります。私ども臨調の答申を受けまして研究会を開催する等によりまして検討を行ったところ、各国の法制も大体そういうことであるということで、今おっしゃいましたように、個人情報ファイルの公示だとか、あるいは自己情報の開示・訂正請求、あるいは個人情報の目的外利用・提供の制限、個人情報の正確性及び安全性の確保等を骨子として今協議をいたしております。  これに対しまして各省庁の意見でありますけれども、これは全く我が国にとって新しい制度でありますから、公示や開示請求の適用除外の範囲だとか、あるいは他の法律の規定による類似の制度との調整の問題、それから、先ほど大臣が申しましたように、開示請求等への対応体制の問題、このあたりについてやはりいろいろな御議論がありまして、これについて逐一個別のファイル等を点検しながら今調整をいたしておるという段階でございます。
  238. 中村巖

    中村(巖)委員 もう一点、内容的なことに関してでございますけれども、伝えられるところによりますと、これはいわゆる個人信用情報という民間の持っておるところの情報に対しては適用がないんだ、こういうことでございます。そこで、適用範囲の問題になってくるわけですけれども、主たるものは政府の各省庁の持っておる情報についてであろうと思います。しかし、その周辺には、いわゆる地方自治体の問題もございますし、あるいはまた政府関係諸法人の問題もあるわけでございますけれども、その辺の適用範囲についてはどういうことになるのでございましょうか。
  239. 佐々木晴夫

    佐々木(晴)政府委員 現在検討中の個人情報保護のための法案は、おっしゃるとおり国の行政機関を対象といたしておりますけれども、これは行政に対する信頼性確保のための方策ということで、臨時行政調査会の答申を踏まえたものであるということが一点、また、行政機関においては、法令に基づいて職権により、また公的信用を背景に膨大な量の個人情報を収集しているというその二点から、まず国の行政機関を対象としてこうしたような保護体制を整備をすべきであるということから、対象をそのようにいたしておるわけであります。  もちろん、今おっしゃいますように地方公共団体、それからいわば国の行政機関の外縁部分であります特殊法人の問題が一応ございます。これにつきまして、そういうことを前提として地方公共団体にも条例をつくっていただくといったようなことをただいま考えておる、また特殊法人もいろんな種類がございますけれども、これにつきまして、それぞれその整備に努めていただくというふうなことで考えておるわけであります。  なお、ちょっとこれは先回りをいたしているのかもしれませんけれども、そういうことで民間の企業にはこれは対象にいたしておりません。ただ、これにつきましては、毎年行革の閣議決定を年末にいたしますけれども、六十三年の行革大綱で各省庁でもってそれぞれ研究をしていくというふうなことを定めておるわけでございます。
  240. 中村巖

    中村(巖)委員 民間の個人信用情報については適用がない、こういうことでありますけれども、民間の個人信用情報についてもこれはやはり同じような規制が必要であるということになろうかと思うわけでありまして、今日、民間の信用情報機関、全情連であるとか全銀協であるとか、あるいは株式会社で運営をされているところの信用情報センター、こういうものがたくさんあるわけでございます。ここにそれぞれが情報を蓄積をいたしておりますけれども、これについてもやはりどういう情報がどこに集積をされているのかということがはっきりをしない。したがって、情報の開示を求めるといいましても、どこへどういうふうに求めたらいいのかわからないし、また、開示請求権そのものも法的に認められておらない、あるいは情報の訂正請求権というものも認められておらない、こういうことになるわけでございまして、これは大変不都合なことでございます。  この個人信用情報につきましては、従来いろいろのことが言われております。六十一年の三月には大蔵省も銀行局長通達を出しておりますし、同じく通産省も同じ時期に産業政策局長通達、こういうものを出しておるわけでありますし、六十年の四月には経済企画庁の方で消費者信用適正化研究会の報告というものがあるわけでございます。そこで、そういうことになればやはりこの問題についても立法化を進めなければならぬのではなかろうかというふうに思いますけれども、今何か仄聞するところによると、経済企画庁においてはさらに研究を進めているということでございまして、この帰趨はどうなるのか、この立法化問題はどうなるのか、経済企画庁の方からお話をいただきたいと思います。
  241. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 お答えさしていただきます。大変に法律に明るい、特に学者の先生に立法化の問題でございますから、多少ちょっと私の答弁では不足になるかもしれません。しかし、私どもの今提起しておる問題点なども含めまして、お答えいたします。  情報化の進展に伴いまして、個人信用情報を含む個人情報の一般につきまして、その収集あるいはまた利用が進んでいることはよく承知しておるところでございます。個人情報の不適正な収集、利用は消費者に不測の損害を与えるというおそれがございますために、個人情報の保護は消費者保護の観点から重要課題であるととらえておる点においては、私は全く先生と同一意見でございます。  このために、経済企画庁といたしましては、六十二年の四月ごろから、国民生活審議会の消費者政策部会個人情報保護委員会において個人情報の保護の実情あるいはまた個人情報の保護のあり方について、立法化を含めまして、このときにまた先生の御意見などもいろいろと御開陳願いたいと思っておりますが、検討を行っていこうという前向きな姿勢で考えております。今後、本年秋に予定されておりまする同審議会の取りまとめ、あるいはまたその結果などを踏まえまして、消費者保護に万遺漏なきように一生懸命で適切にこの問題には取り組んでいくことをお約束したい、こう思っております。
  242. 中村巖

    中村(巖)委員 プライバシーの保護と車の両輪と言われておりまして表裏一体をなすのだろうと私どもは思っておりますけれども、この問題に情報公開の問題があるわけでございます。政府の各行政機関が持っている情報を公開しろということ、情報公開をするということがいわば民主主義にそぐうものであって、ガラス張りの行政というものが実現をされなければならない、こういうような意見が非常に強いわけでございます。ところが、情報公開法というのは今日制定をされておらないわけでございまして、情報公開法全般につきましては、五十八年三月の臨調の第五次答申におきましても、積極的かつ前向きに検討すべきである、こういうことが言われておりますし、あるいはまた六十三年行革大綱におきましても、この情報公開の制度化の問題についても引き続き所要の研究調査を進めなければならない、こういうことになっているわけでございます。  情報公開、いろいろな難しい問題は中に含んでいることは事実でありますけれども、やはり何といっても政府が情報を独占をしておって国民の側に情報が乏しいということでは真の意味の国民主権主義というものは実現ができないというふうに思っております。プライバシー法との関係におきましても、この六十三年一月二十四日の朝日新聞によりますれば、自民党の有馬元治議員は、やはり情報公開法の方が先ではないか、こういう御発言もなすっておるわけであります。この点について総務庁の方で情報公開法をなぜつくらないのか、なぜつくれないのか、その点をお話しをいただきたいと思います。
  243. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 ただいま御指摘のように、情報公開という問題は、より一層公正で民主的な行政運営を確保し、行政に対する国民の信頼を確保するという観点からしてもぜひ取り組まなければならない課題であるというふうに認識いたしておりまして、行革大綱等でも、それについての研究をしていくことにいたしておるところであります。  検討すべき問題として考えておりますことは、いわゆる国家秘密の保持、個人のプライバシーの保護や企業情報の保護との関係で、これらの要請と国民の開示請求権との調整をどこに求めるか。二番目といたしまして、国民一般に対する情報開示制度と行政処分の利害関係人等に対する情報開示制度との関係をどう調整するか。三番目といたしまして、開示請求権の救済制度についてどのように考えるべきか。四には、諸外国等の運用実態から考えてみて、この制度を設けた場合の社会的な費用対効果の問題をどのように考えられるかなどの点が挙げられると思います。  これらの点につきまして、ただいま学識経験者の皆様方にお集まりいただきまして情報公開問題研究会を開催して鋭意専門的な調査研究を行っていただいているところでありまして、いずれこの結論を待って対処をいたしたいと考えておるところでございます。
  244. 中村巖

    中村(巖)委員 情報公開の問題については、私は政府はどうも前向きでない、後ろ向きであるというような感じがしてならないわけでございまして、強く情報公開法の早期制定を求めたいというふうに思っております。しかし、時間がありませんのでこの問題は終わりまして、次の問題に入らせていただきます。  二番目の問題は、外国人労働者、なかんずく単純労働者の問題についてでございます。  既に新聞紙上等でいろいろと報道をされておりますように、外国人が日本に入国をいたしまして単純労務についているという実態が今非常に多いわけであります。単純労務にもいろいろありますけれども、男性であれば土木労務者とかあるいはまた各種の工場における軽労働というようなもの、女性であればホステス業務というような単純労働についているわけでありますけれども、それについて、やはり何といっても実際上の就労の条件というものが大変に悪い。労働条件が悪いということはいろいろなところで報道されているとおりでありまして、賃金一つとらえましても、日本人に比べて大変低い賃金である。あるいはまた労働時間等についてもそういう実態があるわけでございまして、あるいはまたその雇用の期間等の問題についてもいつ首になるかわからないというような状況もある。こういうような外国人労働者、これが正規に働いているのではない、単純労務者に関する限りは、やはり今、日本の出入国管理及び難民認定法におきましては入国が規制をされておりまして、しかも、単純労務に従事をすることができないことになっているわけで、入国資格の中で単純労務というものはないわけでありますから、そういうことではありますけれどもやはり劣悪な労働条件のもとに置かれている。しかも、今そういった状況に大変多数の外国人労働者がいるわけであります。一説には五万から十万いる。法務省に言わせればそんなにはいないだろう、滞在期間を超えて滞在をしているのは三万ぐらいのものじゃないか、こういうふうにおっしゃるけれども、滞在期間も何もない、入国した次の日からもう働いているという状況にあるわけです。そういう現状にある。  そのことについて、まず労働省としてはどういうふうに認識されて、どういうふうに対処をされようとしているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  245. 中村太郎

    中村国務大臣 お説のように、単純労働による外国人労働者の不法就労が毎年ふえております。しかし、不法なるがゆえになかなか実態の把握は困難でございます。しかし、労働省としましては、実態把握のための情報収集に目下相努めておるわけでございます。  先生御承知のとおり、労働基準法を初め労働関係法規というものは、外国人であろうと日本人であろうとも、日本国内の労働である限りにおいては適用されることは御承知のとおりでございますけれども、万が一違法、悪質な法違反があった場合には厳正な態度で臨むというのを基本方針といたしておるわけでございます。
  246. 中村巖

    中村(巖)委員 そこで、こういうような現状があるということを何とかしなくちゃならぬのだというふうに思いますけれども、今後単純労働者の入国規制問題について労働省としてはどうするつもりなのか。昨日付で「八七年海外労働情勢」というようなものを労働省も発表をしておられる。その中身は私はつまびらかにしておりませんけれども、新聞に報ぜられるところによると、やはり単純労働者の入国というものは困るのだ、これは将来にわたって禁止をする方が国策に合うのだというような姿勢で書かれているように報ぜられているわけでありますけれども、今後先行き、将来に向かって労働省としてはこの問題は、では絶対に入国を認めないという方向で物を考えていくのかどうかということについてお答えをいただきたいと思います。
  247. 中村太郎

    中村国務大臣 単純労働者の受け入れということにつきましては、従来から、我が国への雇用あるいは労働市場への影響をおそれまして、これを受け入れないということで進んでまいったわけでございます。今の雇用情勢等を考えましても、今のような姿勢を今後とも維持することは原則だとは思っておりますけれども、多様な御意見もありますので、昨年の暮れに労働省内に学識経験者によりまする外国人労働者問題研究会を発足させました。この研究の報告が三月に出てくる予定でありますので、それらを踏まえながら、なお労使代表あるいは学識経験者等の意見を徴すべく調査会を新たに設置をいたしまして、その中で多角的に多方面からの検討をいたしたい、このように考えております。
  248. 中村巖

    中村(巖)委員 余り明確でないのですけれども、この問題について言えば、やはり外国人単純労働者が日本に流入をしてくるという実態があるわけでありまして、そのことは、言い直せば、外国人、殊にアジア及び中近東の外国人に日本の労働市場を開放してほしい、こういった要請というものがあることになるだろうというふうに思うわけで、もちろん日本の側にも需要があるからそういうことになるわけでありますけれども、今後、こうやっておきますとやはりノービザで来日をする、あるいはまた観光目的で来日をする等々の形で来日をしながら働いてしまうという現実というものは今日よりさらに拡大をすることになるだろうというふうに思うわけでございます。  外国からの日本の労働市場を開放してもらいたいという要望というものを前提に、こういう国債的な観点から、外務省としてはこの問題についてどういうふうにお考えになられるのか、その点を外務省に伺いたいと思います。
  249. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間も経済界といろいろお亜話をしておるのでございますが、確かに日本の経済成長が著しく、なかんずく最近におきましては円高がそれをあおります。そんなところから、やはり世界の日本に対するいろいろな期待というものもあろうかと思われます。それに際して、日本の国内的な問題でまだまだ調整をしていかなくちゃならない問題があるな、現状でいいのか、あるいはもっと調整してあげるべきか、こういう問題があろうかと私個人は考えておりますので、そういうお話も申し上げましたが、ただいまは一応慎重な態度で臨んでおりますけれども、労働省を中心として、多様な変化に対して対応できるよう検討したいと考えております。
  250. 中村巖

    中村(巖)委員 この問題の最後に法務省に伺いたいわけでありますけれども、現状の法制のもとで、大量のいわば不法就労者と称せられる者が生じているわけでございます。現状の入国管理法制というものを続ける限りにおいては、現状が変わらないのみならず、さらにはもっともっといわば中近東諸国あるいはアジア諸国からどんどん人間が日本にやってきて、そして、それはもう強制退去なんだ、資格外活動をすれば強制退去、滞在期間を過ぎて滞在をしていれば強制退去なんだ、こういうふうにやりましても、イタチごっこみたいなもので、もっとも問題の解決にはなってこないんじゃないか。だから、この入国管理法制という観点からそこに問題はありはしないのかということが言えると思いますけれども、法務大臣としてはいかがお考えでしょうか。
  251. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 中村先生は法務委員会で御活躍でございまして、この点についてはよく御承知のことなんですが、ただいまもおっしゃいましたように、観光目的で入国をしてまいりまして、そのまま不法に日本にとどまって労働をする、こういうケースが非常に多いわけでございます。  そこで、入国管理の面におきましては非常に厳重に対処しておるのですが、まず空港や海港におきまして上陸を拒否された者は、六十二年中に四千百五十一人あります。それから不法在留者として摘発された違反者数、これは一万一千三百七人に及んでおるわけです。そういうように非常に厳重にやっておりまするが、今ビザは、ビザをとってこなければいかない国とビザが要らない国と、こういうように分かれておりまして、やはりビザをとるときに相当その国の人に周知をさせて、単純労働者は日本において認められていないのだということを明確にしていかなければならぬだろうと思います。それからまた、入ってきました者が労働をするおそれがある、観光ばかりではない、かように考えられる者は、やはりそこで厳重にチェックをして帰ってもらうようにしなければならない。まだ在留しておる者につきましては、これもよく調査をいたしまして、警察やあるいは労働省と十分連絡をとりまして対処をしていかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。  今も外務大臣がおっしゃいましたように、日本が経済的に非常に大きくなってきたということから、日本で労働をしたいという人たちが極めて多くなってきておるわけでありまして、これからどういうように対処していくのが最もいいか、労働政策の面におきまして労働省、また入国管理の面におきましては法務省、そうして大きく外務省というように各省においていろいろ検討が重ねられておりまして、これから法務省といたしましては、そういう各省と十分検討を重ねて対策を立てていきたいと存じておる次第でございます。
  252. 中村巖

    中村(巖)委員 それでは別の問題に入ります。  次は、牛肉の価格の問題でございます。  御承知のように、日本におきます牛肉の価格というものを消費者の側から見ますると非常に高いということが言われておりまして、私自身もそういうふうに思っているわけです。スーパーなんかへ行ってみまして牛肉の価格を見ましても、百グラム五百円以上でなければまともな牛肉は買えない、豚肉ならば二百円ぐらいでも買えるという、こんな実情にあるわけで、もうちょっと牛肉を食いたいんだが高くて食えないじゃないか、こういう消費者の声というものは非常に大きいわけでございます。  これは日本の農水省の政策にもかかわりがあるわけでございまして、農水省の方にお尋ねをするわけでありますけれども、まず農水大臣に、牛肉の小売価格というのは高いと思っておられるか安いと思っておられるかということから伺っていきたいと思います。
  253. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 安いか高いかということでございますけれども、品質格差が非常に幅が広うございましてなかなかお答えしにくい問題でございまして、率直に申し上げますが、なかなか、いや安い、いや高いということは一言で言えないわけでございます。しかし、感じとして、皆さんが受け取っておられる感じからいけばどうなのか、おまえ知っておるのかと言われれば、高いぞ、そして特に輸入の肉なんかは一体どうなっているんだ、そこらを少しわかりやすく言え、こういうことを言われておりますので、私としましてはそのようなことを頭に置かなければならぬな。  今、感じの問題でございますけれども、一般論として申し上げますと、国産牛肉の小売価格は、最近、国内供給が伸び悩んでおるわけであります。そういうこともありまして横ばい、和牛肉については強含みということで、これがやはり消費者に対して割高感を与えているのではないか、こう思っております。  また、品質的に国産牛肉に比べて劣りますけれども輸入牛肉の小売価格、これは輸入量の増加あるいは事業団の売り渡し価格の引き下げによって安くなってきておるという説明も、確かに行政の立場からいうと言えるのであります。六十一年四月ごろからずっと考えてみましても、去年の暮れぐらいまでの間に、カレーライスやあるいはシチューに使う肩肉なんかは百六十円台のものが百二十円台前半になる、百二十三、四円になるというようなこともありまして、そしてまた円高差益も、役所流の説明をさせれば、これは四百六十億絡みで大体還元はしているんだという説明は一応つくわけでございますけれども、しかし、いずれにしても、生産コストの低減を図りながら安定的な供給に努めていく、そして適切な輸入操作によって牛肉消費の安定を図っていく、もちろん流通につきましても一段とまた努力を重ねていかなければならぬ、こう思っております。
  254. 中村巖

    中村(巖)委員 確かにいろいろな牛肉でも等級がありますから、国産和牛の高級なものは高い。これは高くたってまあある程度しようがないというか、これはお金持ちの人たちが食べるわけでありますから構いませんけれども、いわゆる乳用牛ですね、ホルスタインを中心とする安い牛肉、国産のその他和牛と言われるもの、それからさらには輸入牛肉、こういうものはもっともっと安くならなければ消費者の口に入らぬ、こういうことだろうというふうに思っております。私ども庶民とすればそういう感覚であるわけであります。  先ごろ農水省は、この二月に「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」、こういうものをお出しになられました。私も読ましていただきましたけれども、ここに書かれているとおりであったとしても、肉の価格の低減化ということはなかなか難しいのではないかというようなことでございました。基本方針のとおりかもしれませんけれども、具体的にどういうふうに低減化を図るおつもりであるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  255. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 牛肉の小売価格の引き下げにつきまして現在私ども進めておりますのは、国産牛肉につきましては、昨年の七月以来、全国約五千四百店舗にわたります食肉販売店を通じまして、国産の乳用種の牛肉の値下げ事業を現在実施しております。また、国産牛肉で充足できない需要につきましては、品質的にやや劣る部分がございますが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり輸入量の増加あるいは売り渡し量の増加、さらにまた、この輸入の一元的窓口になっております畜産振興事業団からの売り渡し予定価格の引き下げ等を通じまして、牛肉の小売価格の引き下げを図っておるとごろでございます。  中長期的には、ただいま先生からお話ございましたように、今月の十六日に策定、公表いたしました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」において明らかにしておりますように、当面、国内での生産コストを二〇%ないし三〇%引き下げる、また、流通の改善を通じてこのコスト引き下げを消費者価格に的確に反映をさせていく、さらにまた、国内生産で不足する分については適切な輸入オペレーションを図りまして小売価格の引き下げ、安定というものを推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  256. 中村巖

    中村(巖)委員 今は牛肉の価格の問題についていろいろな問題が言われておりますけれども、一つ私が考えますのに、牛肉は昭和五十年から畜産物の価格安定等に関する法律の中に組み込まれまして、そこで安定上位価格、中心価格、安定基準価格という安定価格帯というものを設定して価格安定に努める、こういうことになっているわけでありまして、それを畜産振興事業団がつかさどっているわけでありますけれども、その制度自体が牛肉を高くしているのではないかということも言われております。  まず第一に、畜産事業団というものが輸入牛肉を殊に一手に取り扱うということが必要なのかどうか。今まで国産牛肉については、安定基準価格を割り込んで買い上げをしなければならなかったということはないわけですね。専ら今畜産事業団がやっているのは輸入価格の設定、こういうことだけをやっているわけで、もう畜産事業団を通じて牛肉の価格の安定を図る必要はないのではないかということが一点。それから、今いうところの安定価格帯の設定というものが輸入牛肉を中心とするものであるならば、今の状況に対して合理性を欠いているのではないか、もう少し輸入牛肉が低い水準で市場に出回るような体制というものをつくる方がいいのではないか、こういうふうに思われますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  257. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 ただいま先生からお話ございましたように、国内産の肉用牛の生産を安定させていくために、畜産物価格安定法に基づきまして、国産の牛肉、枝肉でございますが、これの市場価格を一定の安定帯の中で変動、安定させていくという仕組みがとられておるわけでございまして、その価格帯の範囲内では自由な取引でございますが、これを外れるような事態につきましては畜産振興事業団が一定の市場介入をしていくという仕組みがとられておるわけでございます。この仕組みは、牛肉に限らず豚肉あるいは特定乳製品、脱粉、バター等の特定乳製品についてもとられているところでございまして、国内におきます大家畜等の畜産安定のために必要な制度であると考えております。また、ただいま申し上げました機能とあわせまして、国内の価格安定制度と矛盾のない牛肉輸入が行われるために、輸入の窓口につきまして一元的な機能を発揮する畜産振興事業団が置かれておるという一面もあるわけでございます。  現実に国内の安定をするために安定帯価格が毎年度決められておりますが、私ども、コストの変動に応じまして、六十一年度以降漸次この安定価格帯を引き下げてきております。ただ、残念ながら国産牛肉の需給事情、先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、国内供給がやや十分でないということがございまして、現実の実勢価格が少し高含みであるという事実がございます。したがいまして、この安定帯価格制度自体が国産牛肉の引き下げを阻んでおるというふうな実情にはないという認識を私ども持っております。  いずれにしましても、輸入オペレーションの適正化を図りながら、国内の生産コストの引き下げ、生産力の増強を図りながら、合理的な価格安定制度の運営に努めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  258. 中村巖

    中村(巖)委員 この価格安定帯の中心価格というものは過去何年間かの需給実勢価格で設定をされるんだ、過去これだけの値段で売れてきたから今後もこれでいくんだ、こういうふうな設定であるわけでありまして、その需給実勢価格、国内産の牛肉の実勢価格によって安定価格帯を設定するということになります。その安定価格帯によりまた輸入牛肉の値段というものが縛られるわけでありますから、輸入牛肉それ自体も安くならない。要するに、輸入牛肉をも含めて牛肉全体の供給がふえれば、需要供給の関係でありますから牛肉は下がる、こういうことになるわけであります。ところが、いわばこの安定価格帯のために輸入牛肉の価格設定が、畜産振興事業団がやっている価格設定というものが、これは競りでありましても指し値になるわけですから、そういうものが高過ぎる、こういうことだろうというふうに思っているわけでございます。その点を何とかしなければいかぬのじゃないかというのが私の一つの考え方でございまして、その御検討をいただきたいということが一点でございます。  それからさらに輸入の量の問題でございますけれども、輸入量というものを今畜産振興事業団は限っておるわけでございまして、そのために畜産振興事業団の汚職事件なんというものも発生をしているわけであります。この量を飛躍的に拡大をするということが必要ではないかということでございます。先ごろの基本方針等の中におきましても、昭和七十年度における牛肉の需要というものを部分肉ベースで八十から八十八万トンだ、そして実際、国内生産量が四十八万トンだから三十二万トンないし四十万トン輸入をするんだ、こういうふうに書かれておるわけでありますけれども、需要の中から国内で生産ができる部分を除いたその差額だけを輸入するというようなことでは、それは牛肉を下げることにはならない。輸入量を拡大をして牛肉の全体の量のだぶつきというものが起こらない限り牛肉の値段は下がらない、こういうふうに思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  259. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 牛肉の価格安定制度の適切な運用については、私どもも十分努力をしてまいりたいと考えております。特に輸入についてのお話でございますが、国内で生産できない、国内需要を賄い切れない部分については私ども輸入の増加を図ってきておりまして、六十二年度には、前年度に比べまして約二七%増の二十一万四千トンの割り当てをしております。また六十三年度以降につきましては、御承知のとおりアメリカ、豪州との間の協定が本年度で切れまして、これからいろいろ構想を進めていくわけでございますが、とりあえず六十三年度上期の枠といたしましては、前年の同じ時期に比較しましておおむね一〇%増の割り当てを暫定的に実施いたしまして、当面の需給安定を図ることに考えております。  いずれにいたしましても、先ほどお話のございました酪農、肉用牛の近代化の基本方針に沿いまして、価格制度の運営なり輸入制度の適切な運営に努めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  260. 中村巖

    中村(巖)委員 最後に総務庁に伺って、質問を終わりといたしたいと思います。  総務庁は、昭和五十六年の七月から九月は、牛肉を中心とする畜産物の生産及び流通に関する行政監察というものをおやりになったわけでございます。また最近この種の行政監察というものをおやりになる御意向があるやに伺っているわけでありますけれども、この辺について、早急に畜産振興事業団を含めた牛肉の流通関係、生産関係についての行政監察を行うお考えがおありや否や、それについてお伺いをいたします。
  261. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 先刻来お話ございますように、畜産振興事業団において若干事件がございました。それらを見ておりまして、私は、やはり流通機構などに問題があるのではなかろうかというふうに考えておりましたが、今回、私が総務庁長官を拝命することになりましてからずっと実は行政監察のプログラムを見ましたところ、昭和六十四年度に牛肉についての行政監察をやるという、いわば三年ごとの繰り返しのプログラムをつくっておるわけでありますが、そういうふうになっておりましたので、これはいろいろ問題もあることであるから、繰り上げて速やかにやったらどうかという指示をいたしたところでございまして、六十三年度に、畜産事業団だけではなくてやはりその周辺部分にもいろいろ問題があるのではないかと考えておりますので、それらも含めましてひとつしっかり行政監察をやってみたいというふうに考えておるところでございます。
  262. 中村巖

    中村(巖)委員 私、あと残りの時間を遠藤和良委員に譲りまして、これで終わらせていただきます。
  263. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、遠藤和良君から関連質疑の申し出があります。中村君の持ち時間の範囲内でこれを許します。遠藤和良君。
  264. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 私、ここで少々気分を転換させていただきまして、お人形のお話をさせていただきたいと思うのでございます。  最初に、文部大臣にお尋ねを申し上げますが、青い目の人形、御存じでございましょうか。
  265. 中島武敏

    中島国務大臣 お尋ねの青い目の人形につきましては、大変な歴史があるというふうに存じております。  これは、かつて明治時代から日本に宣教師として来られておったアメリカの宣教師の方が、大正時代アメリカに帰られたときに、ややそのときに日本の移民に対しての冷たい風が吹き始めておるということを大変気になさいまして、この際、日本のひな祭りに際してアメリカからあの青い目の人形を善意の贈り物として贈ろうということで、昭和二年のひな祭りの日に青い目の人形が、ちょっと体数忘れましたが、大変多い人形の数を各学校に贈られたということでございまして、それを日本の各学校に配りまして、青い目の人形の童謡がそのときできましたのかどうか、大変心温まるものとして受け入れさせていただいた。そして日本からは、日本の小学生ですか、当時一銭ずつカンパをして、今度は黒い目の人形をお贈りいたした。その後、戦争の過激な進行とともにその人形たちも過酷な歴史の運命にさらされながら今日に参っておりますが、そのきずなの温かさというものは今日まで続いておる、心温まる逸話として承知をいたしております。
  266. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 さすが博学でいらっしゃいまして、私は青い目の人形を聞きまして、黒い目の人形は外務大臣にお尋ねをしようと思ったのですが、こちらの方も御答弁がございました。  実はこれ、正確に数を申し上げますと一万二千七百三十九体日本に来たようでございますが、これが現在どのようになっておりますか、御存じでしょうか。
  267. 松田慶文

    松田(慶)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のとおり、昭和二年三月三日、合計一万二千七百三十九の青い目のお人形が届きました。その後六十年の星霜を経て、ただいま確認できております数字では二百十四が我が国の各地に保存されております。
  268. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 実は私、その二百十四体のうちの一体をお持ちいたしました。これは、私の選挙区でございます徳島県には一体しかない貴重なものでございますが、ペンシルバニアから参りましたアリスちゃんでございます。委員長の御配慮をいただきまして、実物にはなかなかお目にかかれないのではないかと思いますので、大臣の皆様にもお目を通していただきたいと思いましてお持ちいたしました。
  269. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと高く見せてください。
  270. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今でも横にすると目をつぶるのです。それでママ、ママと泣きます。これは当時衣装がたくさんついておりまして、これが当時着た衣装でございますけれども、その後、日本の方がつくった衣装なんかもあるわけでございますが、大変うれしいのにはパスポートがついておりまして、人形を本当に人間として扱われたようでございまして、特別旅行免状というパスポートがついてございます。これは今、徳島県の名西郡神山町というところの神領小学校にある貴重な人形でございますが、私、皆様の温かい御理解を賜りまして、きょうここに持ってくることができたのでございます。名前をペンシルバニアから来たアリスちゃんと言います。  人形の歴史を考えてみますと、昭和十六年に第二次世界大戦が始まりまして、全国の人形は敵性人形ということで、竹やりで突かれたり児童の前でガソリンで焼かれたりした大変悲しい運命をたどるわけでございますけれども、この人形は当時神領小学校の先生をされておりました阿部ミツエさんという八十八歳の方、今八十八歳ですね、六十年前でございますので二十八歳ですか、だれにも言わずに物置に隠して保有をされたものがたまたま見つかったというようなわけでございます。  今、文部大臣から詳しい説明がございましたけれども、この人形を贈る計画をされた方はアメリカ人のシドニー・ルイス・ギューリック博士でございまして、二十年間日本に来ておりまして、お帰りになったときに日本人の移民の排斥運動に直面したわけですね。ちょうど大正十三年に新移民法がアメリカの議会で採択をされまして、非常に日米間に嫌な関係が起こりそうであった。それを心配されまして、世界の平和は子供からということで日本に友好の手を差し伸べられた。このアメリカの動きに対して、日本側では渋沢栄一さんが中心になりまして日米関係委員会をおつくりになりまして、そして人形の受け入れ組織を日本側につくられたわけでございます。国際児童親善協会という組織ができたのでございます。  資料によりますと、アメリカでこの計画が発表されました折に、二百六十万人のアメリカ人がこの日本に人形を贈る運動に参加された。そして日本のおひな祭りに届くためにニューヨーク、サンフランシスコの港に集合いたしまして、郵船会社五社の協力をいただきまして一万二千七百三十九体のお人形が日本に届けられたということでございます。それに対して日本では一銭運動というのを日本の小学校の子供たちがやりまして、当時のお金で二万六千九百九円集まったという記録がございます。大体二百六十一万ぐらいの方々が参加をしたようでございます。こうしてアメリカの方では、日本から贈られました五十八体の返礼人形のうち二十四体アメリカの美術館等に今保存をされておる、こういう状態のようでございます。  そこで、この感動の日米友好史でございますけれども、これを発掘をしまして、ことし答礼人形の里帰り展を日本でやろうという計画が進んでいます。これは国際文化協会が行う企画でございますが、この四月二十七日から日本の全国十都市で九月七日まで開催をする、こういう計画であるわけでございます。これにはこの二十四体の答礼人形は全部里帰りをする、そして日本に残っている青い目の人形も三十四体が出品をされる、こういうふうな計画であるわけでございまして、この私のお持ちいたしましたアリスちゃんもこの展覧会に出品をされる予定でございます。  こういう麗しい行事に対しまして外務省あるいは文部省はどのような形でこの事業を応援をしておるのか、そこをお伺いしたいと思います。
  271. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 外務省も積極的にその運動を御推薦申し上げようということで努力しておりますが、これは後から政府委員から説明をしてまいりたいと思っています。  私も昭和二年はまだ幼稚園でございまして、幼稚園を代表して県庁へその人形をもらいに行った代表の一人でございますので、非常に懐かしいことを御質問賜りましてありがとうございました。
  272. 松田慶文

    松田(慶)政府委員 財団法人国際文化協会は、昭和六十年以来いろいろな形でこの青い目、黒い目の人形の修理であるとか訪問について御尽力をいただいておりますが、いよいよ全米二十四の博物館あるいは美術館との調整を了しまして、この春、先ほどのお言葉のとおり四月から全国十カ所で里帰り展が行われます。これに先立ちまして来る四月四日、在ワシントン日本国大使館におきまして、全米二十四の地方から集まった里帰りお人形のいわば出発式と申しましょうか壮行会と申しましょうか、ワシントン名士各位をお呼びして、そこで盛大な出発式を行うことを外務省としてアレンジ申し上げております。またこの展覧会そのものにも後援名義を付与させていただいておりますし、実はいろいろな博物館からお借りするお手伝いもさせていただきました。万般大変心温まる催しにお手伝いをしたいと思っております。
  273. 中島武敏

    中島国務大臣 御指摘のように大変心温まる催しでございますし、また私どもとしても日米六十年間の友好のきずなを再確認をする、そして日米の友好と親善をさらに高めるという意味でも交流面でも非常に有意義なことでありますので、文部省としてもこの催しに後援をさせていただくということにいたしております。  詳しくは政府委員から……。
  274. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございまして、六十年前の大変心温まる話にその源を発しているわけでございますが、学校教育あるいは社会教育、そういった点からも大変有意義でございますし、国際理解を増進させるという意味でも教育的に大変意義のあることでございますので、文部省としても積極的に後援をするということでございます。
  275. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 国際文化協会の皆さんのお話を承りますと、外務省も文部省も大変積極的に応援をしていただいておる。特に外務省ではアメリカの日本大使館の方々が、どこに人形があるのか調査が始まりまして以来大変な御尽力を賜っているということでございますが、何か人形を輸送してくる費用等につきましても大変御苦労されているというお話を承っているわけでございます。これはもちろん民間団体がする事業でございますので、そういった面での補助といいますか助成というのはなかなか難しい問題ではないかと思うのでございますけれども、できればそういう面も含めましていろいろ御支援を仰ぎたい、こう切望するのでございますけれども、よく事情をお調べの上、御支援をお願いしたいと思います。
  276. 松田慶文

    松田(慶)政府委員 この展覧会の実施につきましては、輸送を初め万般の経費がかかるわけでございますが、ワシントンの大使館における各種行事を中心に外務省としてささやかながら何ができるか、ただいま前向きに検討を進めておるところでございます。及ばずながらの御後援をしたいと思いますが、輸送全体につきましては、ただいま協会の方で国内の諸団体、諸会社と御協議中と承っておりまして、外務省は側面からお手伝いしたいと考えております。
  277. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 ことしは答礼人形の里帰り展が行われることが決定をいたしているわけでございますが、来年はひとつ青い目の人形の里帰り展をアメリカでやってはどうかという意見が出されているようでございます。私は大変有意義な企画ではないかと思うのでございます。ちょうどことしは、この人形の発案者でございますギューリック博士が来日されまして百年に当たる年でございまして、今、きのうでございますけれども、このギューリック博士のお孫さん御夫妻が日本に来ていらっしゃるのでございます。きょうはこの青い目の人形がある横浜の小学校を御訪問されておりまして、これから熊本の方にも向かわれるという話でございます。ちょうどあの人形も人間の年齢で数えれば還暦を迎えたわけでございまして、六十一歳になるわけでございますので、できればこういう時代、歴史的なそういうふうな美しい日米友好の歴史というものを再現するという意味から、ぜひ青い目の人形のアメリカにおける里帰り展に対しましても、外務省、文部省、全面的な御支援をお願いを申し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  278. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 仰せのとおり、昨今は日米間が何かぎすぎすいたしておるときでございます。そうしたときに、こうした本当に心温まる交流が計画されておるということは大切なことでございますから、そうした試みに対しましても、当然外務省といたしましては御支援を申し上げたいと思う次第であります。
  279. 中島武敏

    中島国務大臣 大変心温まる企画でもございますし、また諸団体とも計画上いろいろ御相談しながら、できるだけの後援はさせていただきたいと思います。
  280. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 大変前向きの御答弁をちょうだいいたしたわけでございますが、私も昨年夏アメリカに参りまして、いろいろな方々、各界各層の方々と御懇談をさせていただきました。包括貿易法案をどうするかということで議会の中では大変ないら立ちを募らせているときでございましたが、マンスフィールド駐日大使はこんなことを言っております。日米関係ほど重要な二国間関係はない、あるいはまた大西洋の時代から太平洋の時代になった、こういうふうな時代認識に私、同感するものでございまして、やはり日米関係というのは大変重要な関係である。これが最近のように、関西新空港の参入問題あるいはFSXの開発の問題あるいは農産物の自由化の問題等、いろいろぎくしゃくした関係があるわけでございますけれども、私は物とか金の摩擦よりも、交流というもっと根っこの部分、やはり心の理解というものが最大重要視されなければならない問題だと思うわけでございます。  この今の時代に、アメリカの小学生と日本の小学生の心を結ぶようなイベントを今度は日本の方から起こすときではないかな。具体的に何がいいのかわかりませんけれども、新しい人形を贈る運動でもよろしいかと思いますが、いろいろお考えになりまして、こういうアクションをぜひお考えになってはいかがか、こういうふうに思うわけでございますが、外務大臣、いかがでございましょうか。
  281. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般も本会議場で外交演説を申し上げましたときに、物の交流、物の奉仕も大切だけれども、やはり我が国の外交においてややもすれば欠けがちだと言われる心の外交というものを心がけねばならぬ、かように申しておりますから、今申されました委員の一つの提案も、私たちといたしまして十二分に尊重していきたいと思います。
  282. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 文部省にお伺いしたいわけでございます。  いわゆる修学旅行でございますけれども、こういう時代でございますので、海外にもどんどんと修学旅行に行くようにしてはいかがか、こういうことをかねて我が党は主張してきたわけでございますが、最近の状態はどのようになっておりますか。
  283. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生指摘の高校生に関する海外修学旅行の問題でございますが、沿革的には先生案内のとおりでございまして、昭和四十三年ごろから私どもは指導通知を出しておりますが、その時点では、まだ海外への修学旅行という実態あるいは航空機利用という実態はなかったわけでございます。しかし最近におきまして、私どもの調べによりますと、六十一年度でございますが、全体で、公私立の高等学校につきまして学校数では百三十四校、参加生徒数が二万八千九百四十人、このような数になっております。しかし、百三十四校のうち私立が百二十六校でございまして、私立が非常に多いというのが現状でございます。
  284. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 確かに公立高校の例というのは少ないわけでございますね。私立の学校はかなりの数が行っております。これは、公立高校というのはなかなかいろいろ問題もあろうかと思うわけでございますけれども、やはり積極的に、若い年齢のときにカルチャーショックを受けるといいますか、国際人としてのそういう機会がある時代に日本も入った、このように認識するわけでございまして、今後ともこの海外修学旅行に公立学校の方々もどんどん行けるような措置というものをぜひお考えいただきたい、このように思うわけでございますが、大臣、いかがですか。
  285. 中島武敏

    中島国務大臣 今政府委員からお答えしましたように、二万九千人のうち公立は千七百人程度が海外修学旅行に行っておられると思いますが、これからは国際化の時代ありますから、できるだけ国際的な環境に触れ視野を広めるということは、これは結構なことだと思っております。  ただその点で、一つは父兄の費用負担の問題がございます。それから安全性の問題ももちろんございますけれども、こういうことを含めますと、今まで慎重に対処してきたということが事実であろうと思うのでございますが、これから、海外修学旅行を含めまして留意すべき点につきまして取り計らいをいたした点もありますので、その点の具体的な内容は政府委員からお答えさせますが、まさにおっしゃるように、これが負担の面、安全性の面をクリアしながら広まることは結構なことだと思っております。
  286. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げましたように、文部省としても留意事項を示しながら、これを積極的に都道府県等の判断で行うことは差し支えない、こういう姿勢でおりまして、実は一月十九日でございますが、全国都道府県の指導部課長会議を行いまして、海外旅行についての留意点、それから航空機利用についての留意点、必ずしも文部省は禁止するものではない、各都道府県なり学校において、それぞれ教育的あるいは費用負担、安全性、事故の防止等いろいろ配慮しながら、必要あるものは実施することは差し支えない、こういうふうな指導をしておりますので、公立につきましても、それぞれこれからは各都道府県、学校の判断で実施が行われる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  287. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 アメリカの大学に参りまして大変うらやましく思いましたのは、どこの大学も大変キャンパスライフが充実しているのでございますが、日本の大学もそうあるべきだと私は思います。  そこで、特に国立大学の学生寮、これを充実整備をいたしまして、今円高で大変留学生が困っているわけでございますけれども、留学生もこの寮に入って一緒に勉強ができる、こういうふうなことを考えるべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  288. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 留学生にとって宿舎の問題は一番重要な問題の一つでございます。文部省といたしましても留学生用の宿舎も年々増設をいたしておりますが、今先生が御指摘のように、既にある一般の学生寮の中にも留学生に積極的に入っていただきたいということで今お勧めをしておりまして、現在千三百人ほどの留学生が一般の学生寮の中に入っております。今後ともそういった留学生専用の宿舎のほかに、一般の学生寮の中にも留学生に入っていただく、こういう方針でやってまいりたいと思います。
  289. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 スタンフォード大学に参りましたときにへラー教授にお会いいたしましたら、今度スタンフォード大学と京都大学が協力いたしまして京都市内に日本研究センターを創設する考えである。何かヘラー教授のお話ですと、建物が六億円でオペレーションが五億円である、日本の文化と技術を学ぶセンターにしたい、こういうふうな考え方のようでございます。確かに日米のそういうセンターというのは重要な意味を持つと思うのでございますが、この計画に対しまして文部省はどのように協力をしているのでしょうか。
  290. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 ただいま先生からお話ございました点、スタンフォード大学の関係者も文部省に参りまして、私どももお目にかかったりいろいろ御相談に応じたこともございます。現在スタンフォード大学が中心になりまして、アメリカのスタンフォード大学等の学生に対します日本語、日本文化あるいは現代日本の経済、社会、技術、そういった問題についての教育充実を図りたい、こういうことで京都にスタンフォード京都センターをつくりたい、こういう計画をお持ちでございます。その際、図書館の利用であるとかあるいは食堂の利用であるとか、その他専門的な内容等につきましても京都大学側の協力を得たい、こういうお話で、今京都大学側とスタンフォード大学との間でいろいろと協議中でございます。  文部省といたしましても、先ほど申し上げましたように、いろいろアドバイスをしたり日本の高等教育制度について御説明を申し上げたりいたしておりますが、双方の大学で協議中でございますので、さらにアメリカと日本の教育、学術交流の促進という観点から私どもといたしましても対応してまいりたいと思います。
  291. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 話が変わりますけれども、洋上学校船構想でございますが、これは我が党の委員長が中曽根総理のときに文部大臣並びに総理に進言をいたしまして、検討をするという大変前向きの御答弁をいただいておったわけでございますが、新しい閣僚の皆さん、特に文部大臣、運輸大臣はこの洋上学校船構想についてどのような所感をお持ちでしょうか。
  292. 中島武敏

    中島国務大臣 洋上学校につきましては、これは確かに青少年にとりまして、一つの船の中で、自然環境件に触れますでしょうし、それから人間関係も深めることができるという意味で意義あることと存じます。  ただ、先ほども海外修学旅行のときに申しましたように、やはりこれは日数にもよりますけれども、安全性それから費用負担、この点でいろいろ検討すべき点があるであろう、こういうことが課題になっておったわけでありますが、今滋賀県あるいは一部の私立学校でこれを実施しておられますので、ただ外から見て有意義かどうかと言うだけでは申しわけないということで、この滋賀県の例あるいは私立学校の例で、教育内容の向上度と申しますか、それから安全性あるいは費用負担その他の点でこれをモデルにしていろいろ勉強してみた、こういうことでございます。それから、六十三年度から一部これは試行してみようということも考えておるわけでございます。  詳しい方法につきましては政府委員からお答えさせます。
  293. 西崎清久

    ○西崎政府委員 洋上学校につきましては六十三年度から試行をいたしたいということでございまして、具体的には自然教室事業というふうな事業を従来からやっております。これは御案内のとおり、主として山とか高原で少年自然の家あるいは青年の家で行われる授業でございますが、この事業の中で、船を利用して洋上研修的な授業をやるものについては補助対象にしようということで、予算積算の中にもそういう形での補助が可能なように補助要綱を改めて六十三年度から実施をいたしたい。目下各都道府県、市町村を通じまして、具体的にそういうふうな試行をしてくれるところがあればぜひ申請をしてほしい、こういうふうな呼びかけを行っておるところでございます。
  294. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 新しい時代の日本人の新しいライフスタイルの中で、海を今までにない形で活用していこうということで運輸省も検討しておりますが、例えば海員組合などから提案を受けております年金客船、あるいは修学旅行に新しい客船をつくって使うとか、あるいはそれをそのまま洋上学校にするとか、いろいろアイデアもございました。一方では海運界の不況、それから船員の雇用の問題、また造船の不況がございまして、これは運輸省にとりましても非常に検討すべき大事な未来につながる問題だと心得ております。
  295. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 今文部省では、いわゆる自然教室推進事業の中で試行的に船中泊を伴う授業について補助を行う、こういう予算がつけられたようでございますが、私はこの事業とともに、船の建造につきましてもやはり運輸省等が中心になりまして検討をさらに進めていただきたい。建造費に対してどういう形で助成をしていくのかということが大変重要な問題ではないかと思うわけでございまして、重ねてその点を含めまして御答弁をお願いします。
  296. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 従来も造船、船舶の海運会社の提供については運輸省も積極的に援助をしてまいりました。またこのたび関係法を変えまして、係留したまま使うような船舶の建造についても積極的に考えようとしておりますが、委員指摘のように、新しい用途に使う船舶についても当然こういった援助が試みられてしかるべきだと考えております。
  297. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 ワシントン条約に関連する問題について通産大臣にお伺いしたいのですけれども、スペインから輸入されましたローランドゴリラ二頭、これにつきまして、いわゆるサーカス生まれであると虚偽に申告した疑いで輸出国のスペイン政府が輸出許可書を取り消したというふうな伝わり方をしておりますけれども、正式な公電は入ったのでしょうか。
  298. 田村元

    ○田村国務大臣 正確に事実関係を御説明申し上げます。  御承知のこのゴリラは、昨年五月、ワシントン条約及び外為法上適法な手続によって輸入されたものであります。通産省では、輸入承認を出す際の手続の一つとして、養殖されたゴリラであるとのスペイン管理当局の発行した輸出許可書について、その内容の真偽を先方に直接問い合わせましたが、真正なものであるとの確認を得ました。昨年十一月末に至りまして自然保護団体から、当該ゴリラは養殖されたものではないのではないかという指摘がありました。それでこれを受けて、養殖場等についてスペイン当局に照会しましたが、スペインからはまだ回答を得られておりません。  本年一月末にスペインの管理当局が本件の輸出許可を取り消す方向で検討中との報道は確かにありました。そこで、二月の十七日、こうした報道内容等につきまして外交ルートで問い合わせましたが、現在までスペイン側から正式な回答が来ておりません。  ただ、非公式に、感触としてという程度に言っておきたいと思いますが、養殖か否かはっきり言えない、それから既に輸出されたものの輸出許可の取り消しは法的に相当困難である、だからといって、しかしゴリラについてはスペイン側への返還を要請したいとの意向がある、ちょっとこれは矛盾しておるのですけれども、というような向こうからの感触は得ておりますが、公式には何らまだ受け取っておりません。
  299. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 いわゆる許可証は取り消さない、しかし返還はしてください、こあ大変虫のいい話になるわけでございますが、こういうことに正式になった場合、日本国政府としてはどのような対応があるのでしょうか。外務大臣、どうですか。
  300. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 先ほど通産大臣の方から御答弁ございましたように、現在、スペイン当局の方からは正式な回答が参っておりません。したがいまして、我が方といたしましては、正式な回答を急ぐようにといって督促しているのが現状でございます。その返答が参りましたときに、その返答いかんによりまして、関係当局とも協議いたした上で適切に処置したいと思っております。
  301. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 お人形からゴリラの話になって申しわけないのですけれども、ゴリラは生きているのですね、しかもまだ幼いゴリラでございます。いわゆるスペイン政府の対応次第だというふうな感じを受けるわけでございますけれども、やはり日本の国はいわゆる野生動植物の密輸入大国であるとかいうふうな国際的な声もあるわけでございまして、向こうの出方ばかり待つのではなくて、ある程度時期が来れば、積極的にこれは通産大臣、外務大臣が直接電話をするとか、何かはっきりしたアクションを起こしてこの問題の結論を急ぐべきではないか、このように思いますけれども、いかがですか。
  302. 田村元

    ○田村国務大臣 おっしゃることはよくわかるのですが、何さまこの輸出が適正であった、真正であったということを向こうははっきり公式に言っておるわけです。それから、こちらから何ぼ問い合わせをしても返事がないということでございます。ただ何となく感触は得ておるという程度のことでございます。大体報道に頼っておる部分が多いわけです。でございますから、何とかしなければならぬのでしょうけれども、実際には一種の風聞で何となく振り回されておるような感じがないでもないのです。  でございますから、スペイン側の正式な回答をとにかく待つことが必要だと思います。その上でワシントン条約の趣旨にのっとって適切に対応する。仮にゴリラの返還について正式に求められた場合は、我が国においては、この手続が適正に行われたということを考慮しながら、輸入業者の費用負担や返還費用等の問題についてスペイン側とも十分に相談した上で、ワシントン条約の趣旨にのっとって対応しなければいけないというふうに思っております。
  303. 遠藤和良

    遠藤(和)委員 質疑の持ち時間がなくなったわけでございまして、最後に要望でございますけれども、大臣、これはある意味で事務レベル等に任しておくのではなくて、大臣みずからが、これは国際的な関係もございますものですから、ワシントン条約に絡む問題については去年の十二月一日に国内の規制法もできました、きちっと水際でも国内でもやっておるということを示すために、大臣みずからが行動を起こされることを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  304. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて中村君、遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  305. 上原康助

    ○上原委員 大蔵大臣、大分お疲れのようですね。最初にちょっとだけ税制改革についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  若干重複する面もあって恐縮ですが、本委員会でのいろいろ質疑のやりとりなど、政府の首相や大蔵大臣の御答弁を聞いて感ずることですが、要するに税制改革の焦点はやはり不公平税制の是正が先だという国民の声というか認識というのが次第に深まってきたのじゃないのか、こういう気がしてならないわけですね。また、この四、五日ないし二、三日の動きを見ても、自民党の前首脳というか有力な方々が、二、三年くらい時間をかけてやっていいんじゃないのか、何も今秋、この秋にすぐ税制改革をやるというそんなせっかちなことをやらぬでもいいんじゃないのか、こういう声なども次第に出てきているわけですが、改めて所管大臣の御見解を聞いておきたいと思います。
  306. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 しばしば申し上げておるところでございますが、シャウプ税制以来三十何年でございますが、基本的な変更をいたしませんでした。その間我が国は非常に大きな変化をいたしまして、今この時点に立ちまして本来税制の抜本的改革が必要である時期と考えますが、いわんや間もなく高齢化社会の到着が必至であるということ、あるいは我が国の国際化というものが非常に急速に進んでおるというようなこともございまして、この際抜本的な税制の改革をいたしたい。政府としては以前から考えておりました。昨年も国会に御提案をいたしたわけでございますが、一部はお認めいただきましたが、全体としては廃案となったわけでございます。  政府が考えておりますことは、何といっても、今上原委員の言われましたことにも一部関係をするのでございますが、一部の納税者、殊に中堅勤労所得者に非常な重税感がある。それは全部が事実かどうかは別といたしまして、勤労所得とその他の所得との扱いあるいは捕捉の仕方が均等でないのではないかということもございますし、また、現実に非常に累進度が高くなっておりますから、改正をいたしませんので所得が上がっておりますのでそういう重税感というものはもっともなところがある。それをできるだけ緩和をいたしたいということが一つ。それから法人税につきましても、国際的に均衡のとれた負担というものが求められるようになっておりますから、我が国は高温過ぎるということがございます。相続税も昭和五十年以来改めていない。  そのようないわゆる直接税のかなりの重い負担というものが勤労意欲あるいは企業意欲を損なうまでに至っておる。他方で、別の理由によりまして、かつて相当大きな比重を占めておりました間接税の比重は今二七・何がしというところまで下がってしまったわけでございます。しかも、我が国は個別間接税をとっておりますが、物品税などは非常に少数の品物に大きな税負担が集中しておるということで、ここにも一種の不公平感があるといったようなことでございますから、この際、この抜本改正に当たりましてやはり直間比率もぜひ改めさしていただきたい。それは、我が国がこれだけ高い所得水準になり、また所得が平準化しております国でございますから、高齢化を迎えての社会の共通の負担は広く薄く国民に負担していただくことができるし、またそうでなければ若い人の負担というものは非常に重くなるということが必至である、大体このような観点から改めまして税制調査会に諮問をして、今御検討願っておるところでございます。  一昨日、土曜日にお尋ねがございましたときに私がお答えをいたしましたことは、従前お答えいたしましたことと実は同じ趣旨でございまして、大変に事態は、殊に昨年の後でございますので、できるだけ急いでやりたいと思っております。ただ、税制調査会にはいつまでという御答申の期限を切ってはおりませんので、したがいまして、この国会に提出するのかという佐藤委員からお尋ねがございましたときに、できるだけ急いでやらしていただきたいと思っております、与党の中ではやはり秋というものが非常に大事な時期だという御意見があって、それは私どもももっともなことだと思っておりますが、何分にも昨年もああいうことがございましたので、できるだけ国民の御意見をよく聞きたいと思いまして、ただいま公聴会などをお願いをいたしております、そういう意味のことを申し上げましたので、私どもとしてはできるだけ早く成案を得まして国会で御審議を願いたい。じんぜん日を送っていいということは全く考えておりませんので、土曜に申し上げましたことは、したがいましてそういう意味ではございません。できるだけ急いで成案をまとめたい、そのためにただいま国民の各層の御意見を伺っておるということでございます。
  307. 上原康助

    ○上原委員 まあえらい長々とこれまでの経過も含めて御答弁あったわけですが、中身は私は全く素人ですから触れませんが、しかし国民一般が受けているのは、不公平税制の改正を先にやる、主として所得税減税ですね、もちろん事業税その他いろいろ是正しなければいかない部分もあるでしょうが。また、どうも政府の総理にしても大蔵大臣にしても、かなり心境の変化というか、情勢をにらみながら答弁を強めたり緩めたりしている節がないとは言えないと思うのですね。政府税調も何か五月段階までかかるという一部の見方もあるわけでしょう。また、けさほどもお答えあったんですが、野党四党で共同提案をいたしております。これには不公平税制等の是正ということで、具体的に項目を挙げて提示をしている。こういうことなどを総合的に判断をして税制改革というものをおやりになるというのが、私は国民のコンセンサスを得る方法での政治じゃないかという気がするわけですね。  じゃ改めて、法案の成案はいつになるのか。今国会中にお出しになるのですか。あくまで秋を目指して強引に推し進めようとするのか、そこが知りたいわけなんですね。中身は、こういう野党が具体的に提案しているものを含めて、これからいろいろと国会なりあるいはまた国民の声を聞いて時間をかけてやるというのが大方の国民の声になりつつあるのではないですか。ここを私たちは非常に注目をし、また政府の姿勢というものもぜひそうあってほしい、柔軟性を持ってもらいたい、これが国民の声にだんだんだんだん大きくなりつつあるということは間違いないと思うのですが、簡潔でいいですから、改めて御見解を聞いておきます。
  308. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこで、税制改正を考えるについては、いろいろな意味での不公平あるいは不公平と思われているいろいろな要素を是正することが国民の要望ではないかとおっしゃいますことは、先ほどから申し上げたことにも関連いたしますが、そのとおりであろうと思っております。いやしくも不公平感を生ずるような部分は改めてまいりたいと考えておるところでございます。  なお、先週の末に野党から共同修正案をちょうだいいたしまして、これは別の機会にいろいろ具体的に御説明も承れる、政党間においてそういうお話もあるように存じておりますから、それを承ってから申し上げるべきでございますけれども、私どもとしては、けさ申し上げましたように、このたびの予算案は最善のものと考えておりますし、また、税制につきまして抜本改正を税制調査会で御検討願っておりますから、税制関連の問題については全体的に整合的に抜本改正の形で検討さしていただきたいというのが私どもの考えでございます。  なおそこで、ただいまもこの国会には提案をしないのだろうということをおっしゃいましたが、先週申し上げましたことは、そういう意味ではございません。税制調査会において広く国民の意見を聞いておられまして、その点私どもはできるだけ国民の各層の御意見を承って税制調査会に答申を考えていただきたいと思っておりますが、早ければ早い方がもとより好ましいことでございまして、この通常国会には御提案を申し上げることを政府は考えていないという意味を土曜日に申し上げたわけではございません。できるだけ早く成案を得たい。ただ、総理の演説にもそういうように申し上げておりますのは、税制調査会にいつまでという期限を申し上げてございませんからどの国会ということを申し上げませんでしたので、土曜日に申し上げましたことはこの国会では政府は提案を考えていないという意味に御解釈をいただきませんように、それが私の真意ではございません。
  309. 上原康助

    ○上原委員 まあ建前は、やはり所管大臣でもうずっと税制改革を進めてこられたわけたからそうおっしゃらざるを得ないと思うね、宮澤大臣のお立場からすると。御心中はある程度わかりますよ。しかし私たちが見て、実質的には今国会提案というのは非常に難しい情勢になりつつあるということだけは間違いないと思うのです、これは諸般の情勢からして。急がば回れという話も出ているんじゃないですか。そこをぜひ十分受けとめてもらいたい。余り三百議席の数を背景に、頼りに強引にやるということになると、これは恐らくまた二の舞を踏みますよ。宮澤さんも余りせっかちにならずに、宰相を目指すならば、もう所得税減税を断行するんだ、税制改革は間接税を含めて二、三年時間をかけて国民の意見を十分聞いてからやるんだということになれば、まあやはりこの竹下さんの後に宰相になられるかもしらぬが、余りこういうことをせっかちになっておやりになると容易じゃないと思いますよ。今私が指摘したことについてはどういう御認識をお持ちですか。
  310. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御友情のあふれる御忠言、感謝をいたします。
  311. 上原康助

    ○上原委員 まあその程度でこの点は一応次に進まざるを得ませんが、いずれにしましても、税制改革というのは所得税減税を先行すべしである、国民の不公平感、不公正を直すべきである、野党四党はその直す方向についても具体的に提示をしている、このことは国会審議なりこれからのいろいろな面でより取り入れていただくことを重ねて強く御要望を申し上げておきたいと思います。  次に、防衛問題について触れさしていただきますが、せんだって総括の中でうまくこなし切れなかった面を含めて、大変限られた時間の範囲でまたできるかどうかわかりませんが、やってみたいと思うのです。  そこで最初に、まず一、二点、確認というかお考えを防衛庁長官に聞いておきたいことは、防衛計画大綱を見直すお考えはない、別表を含めて、こういう御答弁だったんですが、その点は間違いございませんね。
  312. 瓦力

    ○瓦国務大臣 大綱を見直す考えはございません。
  313. 上原康助

    ○上原委員 大綱ということは、私がお尋ねしていることは別表も不離一体のものとしての理解としていいですね。
  314. 西廣整輝

    西廣政府委員 別表と大綱本文とが不離一体であるかということについては累次御答弁を申し上げていると思いますが、基本的に大綱の考え方と別表というものは一体としてできておるということは、私ども申し上げております。ただ、何度も申し上げますように、大綱別表というのは現在の大綱ができた当時の兵器体系、その当時の現に持っておるあるいは予想される装備体系というものを前提としてつくっておりますということが注書きしてございまして、装備体系等が変われば、大綱の同じ考え方の中で大綱別表の内容も変わってくる仕組みになっておるということもあわせて申し上げておきたいと思います。
  315. 上原康助

    ○上原委員 そういう拡大解釈が詭弁だというのですね、西廣局長。あなたはいつも、せっかく大臣が答えたものをあなたが軌道修正をしている。そうしますと、今の答弁からしますと、別表は見直す考えがあるということですか。
  316. 西廣整輝

    西廣政府委員 別表を含めて大綱だということを私先ほど申し上げましたが、その大綱そのものに、今も私が申し上げたように、時代によって長い時間がたちますと装備体系というのは変わってまいります。装備体系が変わってきて、仮に例えば防空装備としては航空機というものが廃れてすべてミサイルにかわるということになれば、航空機という部分がなくなりミサイルという部分がふえてくるということがあると思いますが、そういった形で、兵器体系が変われば変わるという前提で、大綱別表にその旨注釈が加えてあるということを私は申し上げておるわけであります。
  317. 上原康助

    ○上原委員 六十年の九月でしたか、防衛計画大綱の枠内ということで中期防を策定をしたわけですが、私たちはその段階から実質的には大綱も別表も変質、変更されてきたと見ているわけですね。  そこで、今いろいろ含みを持たした御答弁をなさったわけですが、要するに防衛力整備のあり方というものは、国際情勢あるいは兵器の近代化、そういうものに伴って改善をしていくんだ、こういうことをしばしば言ってきておられるわけですね。それとその背景には、絶えず指摘されておりますように、いうところの極東ソ連軍の大幅な増強ということが必ずくっついてきている。では、具体的に極東ソ連軍の増強という場合に、どういうものを根拠にして防衛庁は見積もりなりあるいはシナリオをお立てになっているのか。まず六二防白でもいいですから、何を基準にしてそういう見積もりをやっておられるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  318. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 極東ソ連軍の増強につきましては、我々の入手し得るあらゆる資料を見まして、それで判断しているわけでございます。この中にはもちろんアメリカの各種報告もございますし、それから国際的に認められている研究機関の報告もございます。そのほか我が防衛庁自身の情報に基づいて判断している部分もございます。それを総合して判断した結果でございます。
  319. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと抽象論で抽象的ですが、後でまた具体的にお尋ねします。  そうしますと、洋上防空体制というのも、そういったあらゆる資料に基づいた上の判断ですか。
  320. 西廣整輝

    西廣政府委員 洋上防空の必要性につきましては、これまた再々お答えしていて恐縮でございますが、従来から洋上にある艦艇あるいは船舶の防護のために防空機能というのは持っておりますけれども、そういった船舶、艦艇等を攻撃する航空機、あるいは航空機が発射するミサイル、そういった空からの脅威というものが逐次軍事技術の進歩によって変わってきております。そういったものの趨勢というもの、将来への見通し、そういったものを踏まえて洋上防空の研究というのはいたしております。
  321. 上原康助

    ○上原委員 ぜひ私がお尋ねすることについてお答えいただきたいわけですが、あなた言うように軍事技術等の進歩に伴いといったら、何でもできるんじゃないですか。核装備でも何でもできるんじゃないか、将来。いつまでもそういう抽象論でごまかされたら私は困るというんだ、防衛論議というのは。  そこで、では外務省いらしておりますね。今度のINF全廃条約の中で、極東に配備されているINFは幾らで、幾ら撤去されるのですか、お示しください。
  322. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 極東に配備されておりますSS20は百六十二基、核三弾頭ということになっております。
  323. 上原康助

    ○上原委員 百六十二基ですね。防衛庁、防衛庁の防白をいろいろ……
  324. 奥田敬和

    奥田委員長 上原君に申します。  今の答弁は、防衛庁小野寺参事官です。
  325. 上原康助

    ○上原委員 まあどこでもいいです。とにかく百六十二基ですね。失礼しました。  それで、私がなぜこのことをまず挙げたかといいますと、六十二年の防白の四十ページ、ソ連極東軍が著しく増強されているから防衛力の整備は必要なんだ、だからイージスだ、OTHだ、FSXだと、もうどんどんエスカレートしていくわけですね。そして防白の中では絶えずこのようにオーバーエスティメートというか、オーバーな見積もりを防衛庁はどんどんやってきているわけですね。  この中で、今百六十二基だと言っている。しかし防白にはSS20は百七十基と書いてありますね、これは三十八ページ。これだけでもミステークであるという、一つの防衛庁の必要以上のソ連脅威論を強調している点が具体的に皆さんがつくってあるものでわかる。もう一つ、その三十九ページには、あたかもSS20の配備が我が日本が射程距離にあって今にも飛んでくる、攻撃されるであろうかのように、このように図示をして恐怖感を与えている。これが一、二例ですね。ほかにもたくさんありますよ、バックファイアの配備の問題にしても。今私が指摘したことについてはどういうお考えなのか。  そしてもう一点、これだけ防白の中で、SS20の配備が極東ソ連軍の戦力が非常に強くなってきている、脅威だ。しかし、これは三年以内に明らかに撤去されるわけですね、全面的に。そうされますと、我が方の防衛体制なりこういう防衛情勢を見積もる上においては、重大な変化が起こらなければならないはずなんです。  ここを私はせんだってから指摘をし、そういう状況であるにもかかわらず、なぜ防衛費がGNPの一%をどんどん突破をして、さらに後年度負担をどんどんふやして次から次から高価な買い物をしていくかという、この疑問に対して解明をしてもらいたいというのが私たちの指摘であり、また国民の求めている軍事費に対する疑問だと私は思うのですね。お答えいただきたい。
  326. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問とその前の先生の御意見とにあわせてお答えしますが、先生の御意見では、大綱というものが軍事技術の進歩等に伴って変わり得るものであるということから、核でも何でも持てるではないかというような御意見でございました。ところがそうではございませんで、大綱にはっきり書かれておりますように、我が国が整備の対象としているのは限定的な事態、つまり通常兵器による、地域的にも目的も……(上原委員「もうそれはわかっているからいいです」と呼ぶ)いや、おわかりであれば、当然今おっしゃるような疑問は起きてこないというように私考えておりますので申し上げたいのですが、我が国が持つべき防衛力というのは通常兵器による限定的な事態に対するものである。したがって、核を持てたりそういうことはできないわけでございます。  それからもう一点申し上げますが、白書にあります我が国周辺の軍事力というものは、周辺の軍事力そのものについて必要な範囲で書かれておるということでございまして、それがすべて我が国の防衛力の対象になっておる脅威なりあるいはよその国の軍事力が書いてあるものではないということを御理解いただきたいと思います。
  327. 上原康助

    ○上原委員 防衛局長、あなた頭がいいのでどういうふうな答弁も伸縮自在になさるでしょうが、私は何も核を持てるとかそういうことを言っているのじゃないのですよ。あなた方が言うように、必要最小限度とか限定的かつ小規模の防衛対処と言うならば、このようにどんどんエスカレートしていくことはないのじゃないのか、明らかに限界というものがあってしかるべきじゃないかということを私は指摘をしているわけですね。あなたの論理に立てば、軍事技術等の進歩に伴いというのは当時の計画大綱の柱ではないのですよ、ここは繰り返しませんが。その矛盾点を私は言っている。あなたは今、百六十二と百七十のことについては答えなかった。  それともう一つお答えしていただきたいですが、同じこの防白の中でソ連脅威論だ、あおっている中で、大綱策定時はSS20の配備はゼロ基ですね。TU22Mバックフフイアもゼロ。だが現在、八七年はSS20は百七十基、バックファイアは八十五機。バックファイアは極東に幾つ配備されているの。
  328. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 昨年の防衛白書でSS20約百七十と書いてございますのは、そのとおりでございます。その時点におきましては、確かに正確な数字がわからなかったわけでございますけれども、米ソ軍縮交渉の合意の段階で初めて百六十二という数字がはっきり出てきたわけでございます。したがって、百七十というのは確かに推定値であったということは事実でございます。  それから、バックファイアについてお尋ねでございますけれども、現在極東に八十五機配備されているというふうに見られております。
  329. 上原康助

    ○上原委員 推定値なら推定値と書けばいいじゃないですか。あなた、一基でも二百五十キロトンの爆弾三弾頭装備しているのよ、このSS20は。それだけでも日本の三分の一は吹っ飛ぶんだよ、万一来た場合は。それだけ皆さんがいかに国民向けにインチキなPRをしているかというのは、これでも明らかじゃないですか。それが一つです。  もう一点。ソ連脅威論の虚構性、ごまかしを指摘を――あれはそんな爆弾は積んでいないの。  もう一つ、極東に配備をされている地上軍の件なんですが、これは現在どうなっているのですか。防衛庁長官
  330. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 現在、極東ソ連地上軍は四十三個師団、約三十九万人というふうに見ております。
  331. 上原康助

    ○上原委員 四十三個師団で三十九万人ですと、ソ連の地上軍の戦闘即応態勢のカテゴリーはどういうふうになっていますか。
  332. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 極東にございますソ連の各師団は、充足率が高いもの、低いものといろいろございます。例えばモンゴルに駐在しているソ連軍の充足率は非常に高いというふうにされておりますし、それ以外にもかなり低いものもございます。非常にまざっております。
  333. 上原康助

    ○上原委員 そんなちんぷんかんぷんな答弁を求めているのじゃないですよ。カテゴリーはどうなって、その高いもの、低いものの中身を聞いているのですよ。
  334. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 各師団のカテゴリーにつきましては、ちょっとこの場で申し上げることは差し控えたいと思います。
  335. 上原康助

    ○上原委員 何がこの場で申し上げられないですか。いろんな専門誌に出ているじゃないですか。皆さん防白をつくる場合にその程度のことも検討しないで防白をおつくりになったり防衛力整備の策定をやるのですか。だから私がこの間から言っていることは、シビリアンコントロールの問題にしても、専門の参事官がそういう立場、防衛庁長官はもう黙して語らず、総理大臣は集団安全保障なんかない、シビリアンコントロールを守っていますと。制服がつくったものをそのまま受けてどんどんどんどん買い物をしているのが今の実態じゃないですか。そこに危険性を私たちは感ずるからいろいろ指摘をしているわけですよ。  じゃ、どういうカテゴリーになっておって、どうなっているの。お答えください。
  336. 瓦力

    ○瓦国務大臣 今質疑を伺いながら、我が国の防衛政策につきましては大綱策定当時から委員指摘のとおり、平時から保有すべき防衛力の整備に取り組んでおるわけでございますし、また白書に記載されておることにつきましては、入手し得る資料をもとにいたしましてこれを記載し、またその事実を国民に理解いただくという、そういう努力は白書の一環としていたしておるわけでございまして、その内部の詳細にわたることにつきましては事の性質上御報告できないことがあるといたしましても、極東ソ連軍の増強は、これは現実の問題として増強されておることは間違いのないところでございます。  INF合意並びに今米ソ間で行われております戦略核初めこれらの問題につきまして、私どもは注目いたしておるところでございますし、最大の関心を持っておるところでございますが、しかし軍事バランスは、やはり現実的には通常兵器も含めてバランスがどう保たれるか、世界の平和、均衡がどう保たれていくかということも私どもは関心を持ちながら、これらの動静を見守っておるわけでございます。  今、委員指摘のうちのカテゴリー、これらはつきまして事の性質上御報告できるもの、そしてまたでき得ないものは当然あるわけでございます。我が国のようにすべてのことがある面では国会の質疑等を通じまして報道され、また知り得る体制と、そうした体制でない国の問題もありますから、その状況につきまして把握する中におきましてもなかなか困難なわけでありますが、それ相応の資料を収集しつつ正確にお伝えをする、そういうことに取り組んでいるわけでございます。
  337. 上原康助

    ○上原委員 それは何にも秘密じゃないんです。秘密じゃないよ、そんなのは。私は、防白にあるからどういうふうな背景でこれが書いてあるかということを聞いているのですよ。皆さん、SS20のこういう写真を載せてあるでしょう。「ソ連の軍事力 一九八七より」と書いてあるよね、これ。確かにこんなに怖いのがあるよと言って見せている。「ミリタリー・バランス」は皆さん毎日六法全書をお読みになるように防衛庁は読むのでしょう。「ミリタリー・バランス」とか、軍事戦略研究所が出しているものとか、そういうもの、専門誌なら幾らでも出ているじゃありませんか、カテゴリーなら。出ているじゃありませんか。  私がなぜこれを問題にするかというと、このSS20、バックファイアの配備、地上兵力、確かに七六年、三十一個師団、約三十万人というようになっている。八七年、四十三個、三十九万人。これだけが押し寄せてくると大変な危機感だなというのが見るとわかる。わかるというよりそういう印象を与えようとしているのが、これのシナリオなのです。ストーリーなのです。  もう皆さんが言わなければ、ソ連の各師団は、戦闘即応態勢の点では次の三段階に分かれている。カテゴリーI、完全装備し、定員の七五から一〇〇%の兵力を充足した態勢、これがカテゴリーIですね。カテゴリーII、戦闘用車両を完全装備して、定員の五〇から七五%の兵力を充足した態勢。カテゴリーIII、戦闘用車両を可能な限り完全装備し、定員五〇%以下の兵力を充足した態勢。この三つに分かれているのです、ソ連の地上軍は。そして極東ソ連軍に配備をされているのは、ソ連自動車化狙撃師団というのが大体一応この中心にはなっている。だが、この師団は、師団編成はどうなっているのですか。わかっていながらこういうことを一切伏せて、ただたくさん来てやるよ、たくさんあるよと宣伝しているのが今の極東脅威論の中身であるということを、私は今一部を明らかにしているのにすぎないわけですよ。お答えください。ソ連の師団の編成はどうなっているの。(発言する者あり)
  338. 奥田敬和

    奥田委員長 静かに答弁をお聞きください。静かにしてください。
  339. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 委員指摘のとおり、ソ連の師団には三つのカテゴリーがあるというのは事実で、そのとおりでございます。ただ、極東にあります師団が、どれがどのカテゴリーに属するかということを申し上げられないということでございます。  ソ連の一般的な師団の編成と申しますと、機甲師団が一万五百人、それから機械化狙撃兵師団一万二千五百人が代表的な師団の編成でございます。
  340. 上原康助

    ○上原委員 もう本当に何をか言わんやですね。こういう「ミリタリー・バランス」の分類の上から考えてみても、ソ連は欧州部及び極東師団のうちの約三五%がカテゴリーIあるいはIIなんですね。だから、皆さんがこれで分析をしている面から見ても、むしろ師団編成は七〇―七六年段階が多いのですよ、計算すると。三十一個師団で三十万というと、一師団九千六百七十七人になる。四十三個師団で三十九万というと、確かに師団は多いかもしらぬが、たしか一師団九千六十九人ですかね。だから中身を検討してみると、防白の中でいかにインチキくさいかというものが明らかになる。こういうふうに脅威論をあおっている。だから私は、今度八八年の防白を皆さんがどうお書きになるか非常に注目して関心を持っている、このSS20とかバックファイアとか。  じゃ、もう一点聞きましょう。バックファイアが最近日本周辺に飛行したことがあるのですか。具体的に明らかにしてください。
  341. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいまの防衛白書の表現でございますけれども、できるだけ正確を期すという観点から師団数とそれから兵員数と両方挙げているわけでございます。したがって、平均数字を出しますと、今委員指摘のとおりでございます。  バックファイアの飛行につきましては、一九八五年まで日本海における飛行が確認されておりましたけれども、最近は我が方では確認しておりません。
  342. 上原康助

    ○上原委員 千九百八十何年ですか。
  343. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 五年です。
  344. 上原康助

    ○上原委員 今何年ですか。このバックファイアというのは、あくまでもアメリカの第七艦隊とか、要するに海上機動部隊に対する対抗措置としてバックファイアの警戒というものをソ連はやっているのですね。何も日本を爆撃するとか日本に侵攻するとか、そういうことは全くない。だから、第七艦隊なり日米合同演習をやって、オホーツク海とか日本海に機動部隊が進出をした場合にバックファイアのあれというのが少しずつある。だが八五年以降ないのですよ。八五年以降何ら日本周辺の飛行というものはやっていない。こういう実態。  何のためにこんな質問をするかという人もいるから、よく聞いてください。私が指摘をしているのは、いかにソ連脅威論というものが虚構であるかということを今指摘をしているわけです。  もう一つ指摘をしておきたいことは、イージス鑑であるとかそういうことを非常に強調しておられるわけですが、ソ連の海洋戦略の中でソ連太平洋艦隊の役割というのはどういうふうに防衛庁は想定をしておられるのですか。
  345. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ソ連の海軍の役割というのは、これはまさに推定する以外にございませんですけれども、幾つかの役割が考えられます。  一つは、ソ連の戦略核兵器を持っております潜水艦、これを保護するという役割が考えられます。それから一つは、もちろんソ連本土に対する防衛という面も考えられますし、それから第三番目には、いわゆるソーレーンに対する攻撃という役割を持っているというふうに、その三つが大体考えられるのではないかと思います。
  346. 上原康助

    ○上原委員 恐らくシーレーンとおっしゃるだろうと思って聞いたわけですが、これは朝日新聞が書いた「核戦争の最前線・日本」という、いろいろアメリカの情報公開法に基づいて取り寄せた資料を訳して書いた専門書なんですが、この「ソ連太平洋艦隊の役割」の中で一番皆さんが強調している「海上交通路の攻撃」というのは、第五番目にしか入ってないのですよ。専らアメリカの攻撃型原潜に対して、あるいはその海洋監視システム、要するに洋上防空システムに対してどう対処していくかというのが主席な任務で、海上交通路を守る船団護衛とかそういうものに対しての攻撃役割というものは、第五番目なんですよ。  だから、ここで私が言いたいことは、防衛費の一%の枠を拡大をさせ、ソ連脅威論をあおっているけれども、実際の問題としては、イージス艦の導入にしても、あるいはOTHレーダーにしても、すべてはアメリカの現在の核戦略の補完をする立場での防衛力の整備計画でしかない。日本の自主的な判断あるいは本当に必要最小限度、小規模侵略に対する対処ということでの車守防衛の概念に立ったものでない。そのためには、これだけ三兆七千三億の防衛費というものを計上するということに対しては、余りにも軍拡路線であるということを指摘をしたいがために今いろいろと問題を指摘したわけです。これについて防衛庁長官、御見解があれば聞いておきたいと思います。
  347. 西廣整輝

    西廣政府委員 ソ連海軍の存在理由については、ソ連というのは御存じのようにもともと海外依存度の非常に少ない国でありまして、海軍力というものの建設は遅かったわけで……(発言する者あり)
  348. 奥田敬和

    奥田委員長 答弁中は静かにしてください。
  349. 西廣整輝

    西廣政府委員 遅かったわけでございますが、そもそもは沿岸警備から始まり、次いでソ連の海軍力の力点というものは海洋国のいわゆる制海、シーコントロールというものを妨害するための潜水艦勢力というものに第二番目に力が入れられた。さらに、核軍備が続くに従いまして戦略核ミサイルを搭載した潜水艦、そういったものに力を入れてきている。  そして最近といいますか、もう十数年たちますが、ソ連海軍というものは、海洋国でないにもかかわらずオーシャンネービーといいますか、大洋に乗り出して、しかも航空母艦等も持った海軍、いわゆる沿岸警備から海上交通の破壊を目的とした海軍、あるいは戦略核の海軍、さらにはオーシャンネービーというように、今やすべての機能を取りそろえた海軍に変わってきつつあると思います。
  350. 上原康助

    ○上原委員 それは見方の違いとか、いろいろ軍拡をどうしても推進をしていこうという立場に立てば、そういう方針をやらざるを得ないと思うのですが、しかし言われているほどソ連極東軍の強化ということは、私たちが考えてあり得ない。むしろINFの廃絶ということにすれば、今こそ日本が本当に専守防衛、そういう立場に立って憲法の理念に基づいた安全保障のあり方、平和政策というものを確立をすべき時期だということを改めて指摘をしておきたいと思うのです。  そこで、次に進みますが、さっき「防衛計画の大綱」の見直しは考えていない。だが、既に着々と大綱の見直しが進められている。二、三日のこの新聞報道を見ても、いろいろなことがリークされて載せられている。  一点確かめておきたいことは、この「防衛計画の大綱」に基づいて策定したという中期防の中で、検討事項としていろいろ載っけてありますね、「その他」のところで。こういうものはどのように次期防では取り扱うのか、明確にしていただきたいと思います。
  351. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず初めにお断りしておきますが、次期防については今後の問題でありますので、次期防について確たる見通しを申し上げる段階にございませんが、御承知のように現在の中期計画では検討事項が一三項目ほどあります。  一つはFSX、次期支援戦闘機でございまして、これについてはまず検討の上所要の措置を講ずるということで、この期間中は検討を終え、必要な措置を講ずるということになりますので、現在予算を御審議いただいておりますが、FSXにつきましては、日米で新しいものを共同でF16の改造型という形で開発をするということになっておりますので、次期防においてはその開発が恐らく継続されるであろうというように想定されるわけであります。  さらにもう一つありますのは、先生の御質問にありましたOTHレーダーでございますが、これについても検討の上、必要な措置を講ずるということになっております。したがいまして、これはまだ検討が終わっておりませんので結果がわかりませんが、仮にこれが我が防衛にとって極めて有効なものであり、かつ地理的な土地の問題とかいろいろ含めて持ち得るものであるという検討結果が出ますれば、用地の取得であるとかそういったことに進むと思いますが、そのあたりは今後の検討にまたなくちゃならぬということになります。  第三番目に、空中給油機の問題がございます。これは中期計画期間中は検討のみ行うことになっておりまして、この期間中に具体的な施策を着手することになっておりませんが、これはまた今後の検討の結果によって次期防にどう反映されるかということが変わってまいると思いますので、今後の検討の結果次第であるというようにお答え申し上げたいと思います。
  352. 上原康助

    ○上原委員 そこで、今お答えのあったFSXですが、これは日米で共同開発をする、F16をベース機として。冒頭あなたがおっしゃったように、既にその大綱別表を見直す布石として現在はF1というのは、いわゆる支援戦闘機というのはどのくらいで、どういう編成になっているのですか。
  353. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱におきまして、支援戦闘機能を持った戦闘機は三個隊を持つということになっております。そして、全体の戦闘機の保有機数のうち、支援戦闘機に当たるべきものは百機と我我は計画をいたしております。  しかしながら、現在持っております支援戦闘機は、T2という練習機を改造したもので、練習機を改造した形の支援戦闘機でありますので、約七十機をもって現在運用をいたしております。
  354. 上原康助

    ○上原委員 もちろん、そういたしますと、次期FSXもその範囲での研究開発、こう理解していいですね。
  355. 西廣整輝

    西廣政府委員 いわゆる支援戦闘機部隊に充当するFSXは、百機というものが大綱の枠組みであろうと思っております。
  356. 上原康助

    ○上原委員 大綱の枠組みですから、百機が上限ならそれ以上は取得できない、それ以上は考えていない、そういう理解でいいですね。
  357. 西廣整輝

    西廣政府委員 航空機につきましては、他の航空機もそうでございますが、部隊編成用のもののほかに教育用のものが若干ある、あるいはある航空機がそれで生産が終わりということになりますと、その段階で向こう使う期間、例えば二十年なら二十年間の損耗予備分を購入することになりますが、それは編成の外でございます。
  358. 上原康助

    ○上原委員 ですから、ずばり聞くといつもそういうことで濁していくわけね。例えば、これは大蔵大臣もよく聞いていただきたいのですが、潜水艦の耐用年数にしたって日本は十五年ですよ。諸外国は二十年はおろか二十四、五年、戦後四十年使っているのもあるのですよ。ソ連なんか、みんなそういうものを防白の中に計算して入れてある。失礼な言い方をすると、旧式のものも一つの隻数として、トン数として入っている。日本は十六年でもう皆退役をしていて、しかも今度また特殊潜水艦ということで、訓練用として別途仕立てようとしているわけです。護衛艦、いわゆる駆逐艦、戦艦、そういうものも日本はたしかこ十四、五年ですね。これはアメリカだってソ連だってもう三十年、四十年とずっと使っているんですよ、ある程度の改修はあるにしても。  だから、もう飛行機だってそう。高級グライダークラブだって、日本の自衛隊は。海上自衛隊、石原大臣いらっしゃるが、ヨットクラブですよ、高級ヨットクラブ。みんな次から次と新しいものだけ求めている。だから防衛費は幾らあっても足りなくなっていくんですよ。こういうことにもっとシビアに、本当に耐用年数どうなっているのか、諸外国ではどのような耐用年数でどういうふうに利用されているかということも、これからの防衛計画のあり方という面では綿密に精査をすべきことだと私は思うのですね。FSXにしても、今聞くと七十五機が限度である。それは百までは持てそうだと言っている。じゃ、百以上は取得しませんね、つくりませんねと言ったら、いや、それは情勢の変化によって変わるかもしらぬ。むだ遣いですね。これに対して大蔵大臣はどういう御見解なのか、大蔵大臣の御見解を聞いておきましょう。
  359. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 我が国の防衛は、数をそろえて相手を威圧することが目的ではありませんで、専守防衛でございますから、少なくとも精鋭なものも持っていてもらいたい。もとより、財政当局としては厳密に厳しく査定はいたしております。
  360. 瓦力

    ○瓦国務大臣 委員御承知のとおり、我が国の装備はそれぞれに限定もございますし、また武器輸出は厳に厳しくこれを、国会の決議等もございますから、今委員がおっしゃるように大国がそれぞれ講じておるようなことはできないわけでありまして、我が国一つ一つとってみますと、それはコスト高になるかわかりませんが、我が国を守るという上におきまして、それぞれを厳密にチェックしながら、また予算の面でも厳しい環境の中にある中で装備を進めておるわけでございます。このことは例年国会でも議論されておることでございますから委員も御承知と思いますが、今ほど大蔵大臣からの御答弁もありましたので、防衛庁長官として我が国の装備の問題につきまして私からも一言お答えをさせていただきました。
  361. 上原康助

    ○上原委員 大蔵大臣も、大変失礼ですが、そういうお考えでは「これは宰相になれるかちょっと疑問を持たざるを得ませんね。  それと、私が指摘をしたことはこれからいろんな面でその矛盾点というものが出てくると思うのです。指摘できると思います。その点だけを指摘をして、やはり今の防衛費がこれだけ、この間も指摘しましたように非常に突出しているという点、あるいはINFが撤廃をされて、アフガンだって撤退していくんでしょう、ソ連は。国際情勢から見ると、やはりここで一度立ちどまって、防衛費の膨脹というもの、今の防衛計画のあり方というものを、私は政権党の良識ある方々がもう一遍その点をじっくり考えることを強く求めておきたいし、必ずこれは正論として大きな世論になっていくと私は確信をいたします。  時間の都合がありますので次に移りますが、駐労問題について聞いておきたいと思うのです、これは確認をする意味で。  詳しいことを指摘をすればいろいろございますが、一つの問題点として納得しがたいことは、昨年の七月二日に、ああいう特別協定ができたにもかかわらず突如として大量解雇が発生をしたわけですね。いろいろ経過がありまして、九月十四日に、ことしの三月末まで解雇を留保するということになった。もうあしたから三月ですね。いまだに解決を見ない。同時に、これは十二月いっぱいに日米間で協議をして結論を出すということだった。これはもう外務大臣も防衛庁長官も施設庁長官も、みんなそういうことを私にも公式の場でも御答弁してきたし、そういう報告を受けてきた。だが、新たにまた特別協定を結んで、さらに駐労経費もふやそうという段階で、こういう解雇問題さえ日米間が取り決めたような方向で解決できない理由は一体何なのか、現在はどうなっているのか、ぜひひとつこの点は明確にしていただきたいと思うのです。
  362. 友藤一隆

    友藤政府委員 お答えをいたします。  まず最初に、昨年の七月に特別協定ができたばかりのころに人員整理通告があったのはいかがなものか、こういう御質問でございますが、これはその当時にもお答えを申し上げましたが、通告のございましたのは、沖縄の海兵隊クラブ、これは独立採算制で経営をいたしております。しかも、売り上げはドルで入ってくる、従業員の給料は円建てである、こういうようなことで我が方の特別協定の対象となっております措置そのものも他の機関に比べて十分に行き渡らない面もあったかと思いますが、そういった経営の特殊性をもちまして人員整理というような事態に至らざるを得ないほど日高の状況が進んだ、こういうことでございます。  私ども、大臣初め外務大臣も御一緒になりまして、これの人員整理を差し控えていただきたいということで交渉いたしました結果、先ほどお話しございましたように、九月に一時的に撤回をされまして、十六人は整理をされたわけでございますが、その他の人数については撤回になっておりまして、昨年末までに経営上の問題を協議する、こういうことになっておりまして、私ども、米側とこの点、クラブの経営状況何とか立ち行かないかということで検討してまいりましたが、まだ十分結論が出ておりませんので、現在継続中、こういうことになっております。
  363. 上原康助

    ○上原委員 いまだに継続中ということは、三月三十一日という期限がありますよ、あなた。防衛庁長官、そんな要領を得ない答弁では納得しかねます。あなたがカールッチ国防長官とお話しになったときに、このメモランダムに載っている。日本人従業員のことに関連して、「私から、現在懸案となっている沖縄の米海兵隊クラブの従業員の安定的な雇用の維持を含め、日本人従業員の雇用の安定確保に特段の意を用いるようカールッチ長官に要請したところ、同長官もこれを了解しました。」解雇しないということは了解したわけですね。
  364. 瓦力

    ○瓦国務大臣 沖縄の海兵クラブの雇用の問題につきましては、日本人従業員のこれらの問題につき外務大臣初め大蔵大臣といろいろ検討もした経緯は委員案内のとおりでございますし、また一月に訪米した際、今委員からお話しのとおりカールッチ国防長官に、私も大変懸案の問題でありましたからさようなことを申し出て、雇用の安定のために協力を願いたい、かようなことを申し出たわけでありまして、カールッチ長官はそのことにつきまして了解といいますか検討を、今申し上げました政府・与党の話し合いがなければその結果を案ずるところであったが、その措置を踏まえて評価して雇用の問題について検討してまいりたいということでございますから、私はさような形で米側が検討を進めてくれておる、よって今日まで解雇の話がないことは、米側の財政事情も踏まえながらぎりぎり心配をしてくれておることだ、かように考えるわけでございます。
  365. 上原康助

    ○上原委員 どうも納得しがたいのですが、十二月段階で日米協議をして結論を出すということ、これは政府間の約束ですよね、これが果たされていないということ。さらに六十三年度予算で二百八億何がしかの予算が組まれている、新たにまた諸手当の追加分ということの法案を、特別協定を提出しようとしている、四月段階では。こういう経緯を含めると、こういう解雇問題さえ事前に解決できないでそういうことができるんですか、一体。余りにもアメリカ側の言いなりじゃないですか、思いやり予算、そういうもの。既にもう解雇通告期間は過ぎています、四十五日。少なくとも、おっしゃったようにこれは解雇になるということはないですね。
  366. 友藤一隆

    友藤政府委員 先ほども申し上げましたが、協議継続中ということでございまして、協議が継続中に人員整理がなされるということはないと考えております。  ちなみに、解雇につきましては解雇発効の九十日前までに予告をする、こういうことになっておりまして、現在改めての通告というものは行われておりませんで、協議は継続中ということでございますし、先ほど大臣から御答弁ございましたように、将来の見通しというようなものもプラスに作用しておるというように私どもも考えておりますので、私どもとしましても今後も人員整理が避けられますよう米側と鋭意折衝を続けていきたい、かように考えております。
  367. 上原康助

    ○上原委員 実質的にはできない状況にあると思うのですが、早急に日米間の公式な結論を出すように、これは防衛庁長官、御努力いたしますね。
  368. 瓦力

    ○瓦国務大臣 この問題について常々心配しておられる上原議員のこともちゃんと念頭にございますし、そうした努力は今後とも精いっぱいやってまいりたいと考えておるところでございます。
  369. 上原康助

    ○上原委員 これは経緯もありますので、外務大臣の決意もお伺いさせていただきたいと思います。
  370. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほどからいろいろの問答がありましたとおりに、我が国も財政は豊かじゃございません。しかしながら、そうした中においてもやはり雇用の安定、これを最重点的に置きたい、そしてアメリカの方も非常にドル安で困っていらっしゃる、それを穴埋めしてあげたい、こういう気持ちでございますから、したがいまして今私たちが考えておることはアメリカ当局にも十二分に通じておる話ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  371. 上原康助

    ○上原委員 施設庁長官に重ねて申し上げておきますが、懸案事項を含めて早急な結論を出すように特段の努力を求めておきます。  次、基地問題について二、三お尋ねをさせていただきたいと存じます。  有事来援問題も含めて、要するに日米防衛協力の指針、ガイドラインができて以降、日米の共同訓練あるいは自衛隊独自の演習が異常に頻繁になされているわけですが、余りにも傍若無人というか、やり方が多い。  まず一点は、北海道では昨年十一月五日の深夜、陸上自衛隊七四式戦車三十両が国道を五十五キロにわたり轟音と地響きを上げて走行した。これは今までに前例がなかったことですね。さらには、八日の深夜から今度は自走りゅう弾砲五両が国道百五十キロを走行している。戦車の重量三十八トン、自走りゅう弾砲は二十五トンですね。たしか緊急車両以外は二十トン以上は通行できないと思うのですね、道路交通法上。なぜ自衛隊にはこういうような特別な通行ができるのか。既にもう何か有事立法かなされて、あるいはもう政令で書いてあるのかどうか、省令でそういった面。建設大臣、防衛庁長官の見解をお聞かせください。
  372. 瓦力

    ○瓦国務大臣 有事の際に戦車等の装軌車が自走機動を行うという必要は、これは十分考えられるわけでございまして、この種の訓練を実施して純度の維持を図る、こういう必要もございます。  今回の訓練に際しましては、関係機関と調整し、一般車両の通行が少ない時間帯を選ぶなど民間への影響力をできるだけ少なくする各種の措置を講じたわけでございまして、例えば道路の選定であるとかゴムパッドの装着であるとか誘導車の配置であるとか、かようなことをいたしましてこれを講じたところでございます。住民の方々に御迷惑をおかけしないように極力努めてまいる所存でございますが、こうした経緯を委員におきましても御理解をいただきたい、かように存じます。
  373. 越智伊平

    ○越智国務大臣 自衛隊の戦車初め車両が道路を通行いたしますのは、道路の保全上の処置が行われておる場合には道路車両制限令の除外、こういうことの取り決めをしてあります。したがいまして、保全上の処置、これが行われておれば私の方としては通行可能、こういうことであります。
  374. 上原康助

    ○上原委員 住民の迷惑を云々の問題は、迷惑をこうむっているから大きな問題になっているんじゃないですか。それは政府一体ですからね、建設大臣もそう御答弁せざるを得ないかもしれませんが、車両制限令第十四条で言ういわゆる道路の構造保全のための必要な措置、これが果たして守られているのか。これだけの重量の、しかも戦車ですよ、三十八トンもある。あるいは一方二十五トン。なぜ住民地域の公道をこういうような訓練をあえて強行しなければいかないのか、ここに大きな問題。何でももうできるんじゃないですか。まさか有事体制でないはずなんだ、今は。ぜひこういうことについては再検討すべきである。  そればかりでないですね。三沢のF16が低空飛行で秋田や青森やあるいは北海道周辺まで非常な迷惑をかけている。大分でもそうだ、九州でも。沖縄でもそうだ。まさに全国基地化になっているのが今の日米共同演習あるいは自衛隊の訓練状況じゃないですか。なぜ平時のときにこういった道路交通法も車両制限令も地位協定も無視をした訓練のあり方をやるのか、改めて外務大臣、防衛庁長官の見解を聞いておきたいと思うのです。
  375. 越智伊平

    ○越智国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、私の方はやはり必要な処置、今重量の問題がございましたけれども、これも十分クリアしたわけであります。でございますから。後の問題は防衛庁長官がお答えいたしますけれども、道路の通行だけはきちっとその処置をとっておる、こういうことであります。
  376. 瓦力

    ○瓦国務大臣 日米共同訓練は、双方の戦術技量の向上を図る上で有益であるとともに、有事における日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠である、機会をとらえて実施したい、かように考えております。  日米共同訓練を初め、自衛隊の訓練の実施に際しましては、安全確保に細心の注意を払う等、基地周辺住民の方々に御迷惑をかけないよう万全の措置を通じまして、関係の方々の御理解も得るよう、より一層努力してまいるつもりでございます。
  377. 上原康助

    ○上原委員 そうはいっても、多大な迷惑をかけっ放しなんだ。被害はどんどん出ているじゃありませんか。これではむしろ安全保障あるいは自衛隊に対する住民の理解、協力は得られなくなりますよ、今のような力によるこういった強行訓練というのは。それと、建設大臣も、ただ事務手続がなされているので認めざるを得ないということですが、やはり道路の保全という面からも極めて問題ですよ、キャタピラの戦車がどんどん公道を通行するということは。これは北海道道民の大きな反発を受けているという事実を政府は認識をすべきだと思います。  次に、これも自衛隊の訓練から起きた問題なんですが、極めて遺憾であると同時に、防衛庁の態度というものが本当に理解できないわけですが、昨年七月二十三日に発生した第一一徳丸事件。これはどうなっているのですか。
  378. 長谷川宏

    ○長谷川(宏)政府委員 お答えいたします。  御指摘の第一一徳丸が被弾したとされます事件につきましては、現在、海上保安庁の第十一管区海上保安本部が主体となって捜査中であります。現時点におきまして、同事案に関してコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。  なお、防衛庁といたしましても、嘱託を受けての鑑定の実施あるいは資料の提出等、海上保安庁の捜査に積極的に協力してきたところでありまして、今後とも司法当局の捜査等を見守りつつ、必要な協力を行ってまいりたいと考えております。
  379. 奥田敬和

    奥田委員長 上原君、大臣から答弁求められておりますから。越智建設大臣。
  380. 越智伊平

    ○越智国務大臣 道路の保全上は何ら問題ございませんから、そのことだけお答えをいたしておきます。
  381. 上原康助

    ○上原委員 あなたが大変まじめな方であるという点は理解しましょう。後の方は非常にふまじめですね。  一体、長谷川局長防衛庁長官も運輸大臣も、皆さん国会はどういうふうに認識しておられるの。昨年の七月の二十三日に起きた事件なんですよ。何回、捜査中、鋭意検討中と言ってきました。いつまでそういうような態度でこういう問題をうやむやにしようとするんですか。絶対納得できないですね、今の答弁は。冗談じゃない。
  382. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 この問題はあくまでも刑事事件として扱っておりますので、そのため十分な情況証拠の収集あるいはその鑑定、それから証言の収集を行っております。現在、鋭意刑事事件として調査を進めておるところでございます。
  383. 上原康助

    ○上原委員 これは刑事事件になっているんですか。
  384. 山田隆英

    ○山田政府委員 先ほど防衛庁の方から御答弁ございましたように、この件につきましては、海上保安庁の沖縄にございます第十一管区海上保安本部において現在捜査中でございまして、確かに先生おっしゃいますように、昨年の七月二十三日に事件が起こりましてから既に数カ月たっておるわけでございますが、御承知のように海上の事件ということで、非常にいろんな事件の痕跡等も残りにくい、物的証拠も限られたものであるということがございます。このため、関係者の証言や情況証拠等の収集を十分に行う必要がございまして時間を要しておるところでございまして、決してこの捜査を、相手が防衛庁であるからというようなことで手心を加える、あるいはうやむやはするというようなことは一切考えておりません。私ども、現在厳正に捜査を進めておるところでございます。
  385. 上原康助

    ○上原委員 それにしても、昨年七月に起きた事件がいまだに捜査中で、物的証拠の収集が困難とかいうことは通らないんじゃないですか、常識的に見て。第十一管区の担当者は、署長ですか、自衛隊が限りなくクロだと言っているじゃないですか。犯人はだれですか。なぜこれをうやむやにするんだ、一体。はっきりさせなさい。七カ月たっていますよ。
  386. 山田隆英

    ○山田政府委員 私どもは決してうやむやにしようというようなことではございませんで、先ほど申し上げましたように、厳正に鋭意捜査を進めておるところでございます。ただ、何分にも物的証拠等が非常に乏しいということでございまして、先生御承知のように、事件の後、漁船に残りました物的証拠といたしましては、非常に小さい二、三センチの金属片が二個あっただけでございます。そういうところから、あと関係者等から事情聴取をいたしておりますけれども、いろいろ難しいところがございますが、私どもといたしましては、できるだけ早急に捜査結果を取りまとめたいというふうに考えております。
  387. 上原康助

    ○上原委員 こういうのも、国会で何回か取り上げなければ、もうそのまま迷宮入りさせるような、うやむやにしている。だから自衛隊、防衛庁の演習とかそういう面からのニアミスにしたって、ばれると何とか認めるけれども、それじゃ私はいかぬと思いますね。運輸大臣、今御答弁ありましたが、あなたもおっしゃったように、これはうやむやにできるような事件じゃないんですよ。責任持って解明いたしますね。
  388. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 責任持って解明の努力をいたします。
  389. 上原康助

    ○上原委員 そのほかにもいろいろありますが、時間があとわずかしかありませんので、最後に、せんだっての予算委員会、この委員会で、石垣空港問題が取り上げられました。経過はいろいろありまして、我々も関心を持っていないわけじゃないわけですがね、石原運輸大臣の御発言に、沖縄、地元の関係者は非常に注目、関心を持っております。航空行政、空港管理を所管をするトップの御発言であるということ、それと国際自然保護連合のいわゆる決議ということもあって、国際的にも国内的にもますます関心を持たれていることは御案内のとおりであります。  そこで私は、担当のトップが、他に候補地がないわけではない、こういう御発言をしたということは、単に個人の感想としてこれを受けとめることは非常に問題があると思うのですね。そういう意味で私たちも、余りにもこの問題で賛否両論が拮抗、対決をするということは好ましくない、今第三の方法がないのか、次善の策がないのかどうか、政府も沖縄県も地元も英知を絞ってこの問題を、地元が空港が必要だと言う人々、あるいは自然環境はあくまで保全をしたいという立場でこの問題をお考えになっている人々の意も取り入れた形でやらなければいけないと思うのですね。恐らく大臣もそういうお気持ちでおっしゃったと思うのですが、改めてこの問題に対しての大臣の御見解を聞きたい。  同時に、相当この点については勇気あるあなたの御発言について、いろいろあるかもしれませんが、やはりこのことについてはぜひ、言っただけじゃなくして、これをそういう方向で解決するという政治力を発揮する責任も伴うものと私は思いますので、そういう観点からお尋ねをさせていただきたいと存じます。
  390. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 運輸省としましては、基本的にはこの空港に対する姿勢はいささかも変わっておりません。  それをさらに具体的に申し上げますと、私たちは石垣島に長い滑走距離を持った本式のジェット空港が必要だと思います。これは島の観光を含めた発展、活性化のために必要だと思います。そして、仮にそういう飛行場があるならば、先般宮古島に関してもそういう内諾といいましょうか、御存じかもしれませんけれども姿勢を決めましたが、東京からの直行便も当然認可されるべぎだと思います。しかし、あそこにつくる空港は沖縄県のあくまでイニシアチブでつくられる第三種空港でありまして、運輸省としましては向こうから要請がありまして空港法にのっとってクリアランスその他、いわゆる安全その他の条件というものを確かめた上で設置の許可をいたしました。しかし、それプラス、これが縦割り行政のいいところか悪いところか知りませんけれども、私、それがいい意味で働けば結構だと思いますが、環境庁のアセスメントという問題が起こってきたわけでございまして、これが的確にクリアされれば結構だと思います。  しかし、それについて私、いささか個人的な見解を申しましたけれども、私たちは現時点では環境に関するアセスメントの結果を注目しながら、その報告を待ちたいと思っております。
  391. 上原康助

    ○上原委員 答弁、違いますね。もう時間が来ましたが、運輸省の真意でない、大臣個人の個人的な見解ということでこれは逃れる問題じゃないと思いますよ、この点は。確かに環境影響調査がクリアしていない、これはもう十年になるのですね。だから私はあえて私の個人的見解で、これまでの過去多くを触れませんけれども、要するにあなたがおっしゃっているように、自然環境というのは、しかもああいう地域というものは一たん破壊すると、これは戻れませんよ。それはみんな共通だと思うのです。じゃ、一方、飛行場が必要だということの意見をどうするかということです。  したがって、あなたがそういう御発言をした以上は、政府部内においても、環境庁、それから沖縄開発庁、三者、政府全体としてこの問題にどう――県の仕事だからといって県におっかぶせるというのは、これは逃げですよ。そんな行政じゃ、政治じゃいかぬです、あなた行政官じゃないのですから。  そういうことでこの問題についてはぜひ対処してもらいたい。これは国際世論にしても県民世論にしても非常に大きく、重く見ているということだけは間違いないので、改めてどういうふうに調整をしてこの問題を解決をしていかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  392. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 環境庁は国家の権威において、その専門的な技術を駆使して、これから環境のアセスメントを行うはずでございます。その回答を私たちは待っているわけでありますが、また、なお加えますと、私は今までの経過からいっても、開発というものが生態系は影響を与えなかったことはないと思います。しかし、自然をそのままに放置するかあるいは人間の手を加えるかということは、まさに取捨選択、トレードオフの問題でありまして、私も環境庁の在任中にそういう許可を自分からしたこともございます。しかし、海の生態系の場合、特にサンゴの場合には非常にデリケートで、非常にもろいものでありますし、また、これが非常に希少な価値を持つならば、私は、環境庁はそういうものをしんしゃくしてそういう評価を下さなくてはならぬだろうと思います。そういう意味で、環境庁はかなり大事な問題にこれから取り組まざるを得ない。私は運輸省を預かる人間として、その結果を期して待ちたいと思っております。
  393. 上原康助

    ○上原委員 時間が来ましたので終えますが、きょう環境庁はお呼びしていませんが、極めて重大な御発言をしたということと、政府部内でもよく御検討をいただいて県なり関係市町村とも御協議の上、問題解決を図っていただくよう強く要望して、質問を終えたいと思います。
  394. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  395. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 まず最初に、外国人労働者の問題についてお伺いをいたします。  御承知のとおりに、この問題は今我が国でも非常に大きな問題になっているわけでありますけれども、ちょっと時間も制約をされておりますので、できるだけ簡潔にお願いをしたい、こういうふうに思います。  まず、日本での就労を目的として入国しようとする外国人に関する基本的な扱いはどうなっているのか、お伺いをいたします。
  396. 中村太郎

    中村国務大臣 御承知のように、今我が国は労働力人口の高齢化、あるいはまた産業構造の転換を背景としまして雇用失業情勢が極めて厳しい中にあるわけでございます。こういう際、外国の単純労働者を受け入れるということは、これにさらに悪影響を及ぼすおそれがあるのではないかというのが第一点。  第二点は、一部の業種に見られる求人難に対しましても労働条件の改善等国内での需給調整を図るべきでありまして、これを安易に外国人労働者を受け入れるというようなことになりますると、かえって国内での雇用調整をおくらせる、さらには労働市場への悪影響も及ぼすであろうということ。  第三には、単純に途上国あたりの失業者を受け入れることは、直ちにその国の経済発展とか雇用の拡大につながるとは思いません。相手国の雇用を拡大をし、経済の発展を遂げるためには、技能者の養成とかあるいは技術協力によって相手国自身の雇用の拡大を図るような協力をしていくべきではないか、それが本筋ではないかというふうに考えておるわけでございます。  そういう意味で、単純労働者の受け入れは従来から拒絶をしてまいり、またこれからも基本的にはそういう方向を踏まえるべきではないかというのが労働省の考え方であります。
  397. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 まず統計的に実情を確認をいたしたいと思います。  まず、昭和六十一年中に就労を目的として新規に我が国に入国した外国人は約五万五千人、二年前に比べて三〇%増というふうになっておりまして、六十一年末現在の在留者数約三万人で、二年前の五〇%増となっているというふうに理解をしております。  それからもう一点、外国人の不法就労の状況について同時に確認をしたい、こういうふうに思いますが、昭和六十二年上半期における状況ですと、これは法務省の摘発件数で、合わせて五千八百二名、前年同期比七八・五%増となっておって、このまま推移をいたしますと年間一万件を突破し、五年前の約六倍に達する見込みであるということであります。  さらに、中身を見てみますと、この違反者の大部分は東南アジア諸国の女性であるけれども、最近は単純労働は従事する男性の不法就労者の増加が顕著である。昭和六十二年上半期における男性の違反者数が前年同期比一七一・九%増の千九百十七名となっており、年間で五年前の約二十倍に達するという見込みである。さらにこれを国籍別に見ますと、フィリピンが四千四百三十六人ということで最多数を占めており、次いでタイ、パキスタンの順になっており、さらに最近ですとバングラデシュが非常にふえている。さらに就労内容を見ますと、男性の場合に千九百十七人のうちで土木作業員八百六十三名、工員四百五十九名等となっており、女性の場合ですと多くがホステスであるというふうに理解をしておりますけれども、その認識はよろしいですか。
  398. 熊谷直博

    ○熊谷政府委員 事務当局からお答えいたします。  私どもの持っている資料によっても、先生今おっしゃったとおり確認いたします。
  399. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 それでは労働省にお伺いいたしますけれども、今申し上げたような不法就労外国人の労働条件あるいは報酬は今どういうふうになっているのか、それが日本人の平均と比べてどのように評価をされているのか、お答えをいただきたいと思います。
  400. 野見山眞之

    ○野見山政府委員 不法外国人就労者の労働条件の実態につきまして統計的な把握はいたしておりません。私どもといたしましては、国内で働く労働者であれば、外国人を問わず労働条件において異なる扱いを受けてはならないということになっているわけでございますが、現実に外国人の就労に関して基準法に関する重大な法違反等がございました場合には、その情報の収集等に努めているというところでございまして、これらの法違反に対しては厳正な対処をしているということでございます。  これまで人権監督あるいは労働災害に関する調査あるいは申告等を契機といたしまして、あるいは新聞報道等を契機といたしまして私どもが把握いたしましたところでは、一般的に、日本人では充足できないような就労分野で働いているということ等もございまして、賃金や労働安全の面で問題があるのではないかというふうに考えているところでございます。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、これら不法就労者の就労の実態を把握するための情報収集等に今後とも努めてまいりたい、かように考えております。
  401. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話ですと、把握はしてない、まあもちろんそうだろうというふうに思いますが、多くのレポート等によりますと、日本人の状況と比べますと、日本人の平均と比べると非常に低い水準のものが報道されたりしておるのは御承知のとおりでございます。  それでは、今の外国人の不法就労に対して、まず労働省としてはどういう対応策をとっておられるのか、それが今後不法外国人労働者を減らす上で大きな期待を持てるのかどうか、お伺いをいたします。
  402. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 御指摘のとおり最近における外国人の不法就労が増加いたしておりますが、こうしたことを放置いたしますと我が国の雇用失業情勢やさらには労働条件にも悪影響を及ぼす要因にもなりかねないというふうに考えておりまして、労働省としてもこの問題に適切に対処していく必要があると考えております。このため、不法就労に絡んだ労働関係法規違反がある場合にはこれに厳正に対処することはもとより、出入国管理行政機関への情報提供等に努めることといたしておりまして、今般、こうした対応をさらに徹底するよう地方機関に指示したところであります。  さらに、不法就労問題の解決を図りますためには国内の事業主の十分な理解を得ることが重要であることから、不法就労に当たる外国人の雇い入れ等を行わないよう関係経済団体に対しても協力要請を行ったところでございます。今後とも関係機関との連携を強化しつつ、これらの対応をさらに推進することなどにより、この不法就労問題に対する適切な対処に努めてまいりたいと考えております。  そのようなことでございますので、直ちに目につくような効果を期待することはできないかと思いますが、地道な努力によりましてこの問題に適切に対処したいと考えております。
  403. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話のようにこれからいろいろと対処はしていただきたいと思いますけれども、この不法外国人労働者を減らすということはなかなか大変だろうなというふうに推測をされますし、今もその旨発言があったところであります。  それでは、外務省にお伺いいたしますけれども、昨年十二月、竹下総理がフィリピンを訪問した折に、アキノ大統領から日本で働くフィリピン人のために要望されたというふうに伝えられますが、どういう要望を受けられたのか、それに対してどのように対処しようとしているのかをお伺いをいたします。
  404. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理とアキノ大統領との会談の中で、アキノ大統領から総理に対しまして、日本で働くフィリピン人の保護及び福祉について日比両国間で協議が進められていることはうれしく思う、そういう発言がありましてから、日本の入国管理基準の緩和等につきよろしくお願いしたい、こういうような要望がなされました。それに対して総理の方からは、御要望に対しまして、日本では単純労働者を外国より受け入れないとの基本方針があります、しかし今後各方面から検討を加えていきたい旨応答されました。  以上です。
  405. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今、私がフィリピンの問題を取り上げたのは、最初に統計的な数字で申し上げたとおりに、圧倒的多数がフィリピンから来ているわけでありますね。そういう意味で申し上げるわけでありますけれども、フィリピンは、実はフィリピンの国内でこの問題がかなり大きな問題として扱われているというふうに思います。新聞等でも私の手元にあるだけでも四種類ぐらいの新聞がこの問題について大きく扱われております。  そのことに関連して私が聞いております内容をちょっとフィリピンの状況についてお話をいたしますと、フィリピンは一九八七年に新憲法ができました。あの新憲法の中にも、初めてであると私は思いますが、海外労働者の問題について憲法の中で言及をされております。  さらに、フィリピンが一九八七年から九二年までの中期開発計画というのをつくっておりますけれども、その中にこういうふうに書いてあるようであります。「フィリピン経済が、国内に雇用の場を十分に生み出せるようになるまでの間、海外雇用は当座の雇用をフィリピン人に供給し続けるであろう。海外雇用計画は、失業の問題、不完全就業の問題、外貨不足の問題を一時的に軽減する施策としてとり行わなければならない。」というようなことまで書かれているようであります。  そして聞きますと、去年の五月一日のメーデーにおいて、アキノ大統領が演説の中で海外契約労働者のフィリピン経済に対する貢献の問題についても触れられております。  それからさらに、現在のフィリピンの状況について理解する上で参考になるかと思いますのは、フィリピンにあります海外雇用庁の長官の言のようでありますが、日本に一週間ぐらい出張した経験も踏まえて言っているのですが、こういうふうに私は聞いております。  いろんなことを言っているのですが、日本には需要がある、私は海外雇用庁の長官であるからフィリピンから日本に向かう不法な労働力流出をとめようと努めているけれども、しかし日本には今後ますますフィリピン人の不法就労者はふえるだろうと言わざるを得ない、それはフィリピン国内には職がないからである、私たちの国の経済は非常に悪い、経済が回復するまでは私たちは国内に雇用の場を十分につくれない、合法、不合法を問わず、海外で働くしかないではないか。そしてもう一つ、考えるべき話なのかもしれませんが、日本国政府は熟練労働者なら外国人でも受け入れると言うけれども、しかしよく考えてみると、熟練労働者というものは先進国には多いけれどもフィリピンのような発展途上国には少ないと言わざるを得ないということを言っております。さらにはこういうふうに言っております。日本は超大国なのであるから、ある点では耐えてほしい、特にアジアの人に対してはこれも一つの援助であるというふうに考えてほしいというようなことを言っております。  そしてさらに、ある向こうの上院議員の言によりますと、ぜひ日本ももっと開放してほしい、そして何も永住させてくれというふうには言わない、日本が独特の文化を持った国であり、とても私たちに永住できるというふうには思わない、だからある意味では期限を限った形で開放するようなことも考えてはいかがだろうかというようなことも言われております。そういうことも聞いたりするわけであります。  先ほど私、新聞のことをちょっと申し上げましたけれども、きょうは中身のことについては触れません。これは十二月四日のマニラ・ブレティンという新聞、これは一面、さらにその続きも後ろの方に出て、日本における労働者の問題について上院からのレポートが報道されたりしております。そういう意味で、この問題は本当になかなか大変になるのだろうな、日本としては真剣にいろいろ考えなければならぬというふうに思ったりします。  それから、先ほど私は、この海外労働者の経済再建の上の貢献の問題にちょっと触れたりいたしましたけれども、これは八六年のデータでありますが、フィリピンの中央銀行経由で、これは海外ですね、海外契約労働者からフィリピンへの送金の額が六億八千万ドルということだそうであります。あそこの累積債務が二百何十億ドルだと思いますので、そういうふうに考えますと、随分大きな金額がフィリピンに流入するのだなというふうにもまた理解できるか、こういうふうに思います。  そこでお伺いをするわけでありますが、いわば経済大国日本というふうになって、そして近隣発展途上国に対する国際的な役割というのでしょうか責任等がいろいろ問われているわけであります。そして、先ほど申し上げたように、あるいは先ほどの話の中にありましたように、この問題は一つの援助というような性格も一方ではあるとも言える話だろう、こういうふうは思うのですね。そういう意味で、外国人労働者のこの問題と、そして日本の国際的責任というような問題についてどのように考えられるのかをお伺いをいたします。これは外務省にもそれから労働省にもそれから官房長官にも御意見をお伺いをしたい、こういうふうに思います。
  406. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 基本といたしましてはやはり労働市場の問題でございますから、先ほど労働大臣がお答えになったことだろうと私は思います。  もう一つの考え方といたしまして、フィリピンを例にとりますと、十四次の借款をこの間調印したばかりでございますが、先年日比間におきましては友好道路の建設というものをやりました。これは二千キロでございます。二千キロというと東京―下関往復だ、こう考えていただければいい。それだけの仕事においてその沿線においては恐らく雇用の促進がなされたのではないか。そういう面におきましても、やはりアジアの一員である日本としては考えていかなければならない、かように存じますが、現在といたしまして、外務省は極めて慎重でございますけれども、今伊藤委員が申されたような観点に立った場合に、これをどうすべきか各省とも十分御相談したい、こういう立場であります。
  407. 中村太郎

    中村国務大臣 先ほども申し上げましたように、外国人の失業者を単純に受け入れることそのこと自体では、その国の、相手国の経済発展あるいは技能の向上にもつながらないと思うわけでございます。どうしても相手国の就業機会の開発のためには日本で技術者の養成など十分協力をして、その人たちが帰って自分の国の雇用を開発する、あるいは新しい技術を導入してそれを普及させるというような前提がなければならないと思うわけでございまして、そういう意味で労働分野におきまする技能、技術の協力という面につきましては、全面的にこれを推進してまいりたいと考えております。
  408. 小渕恵三

    小渕国務大臣 開発途上国からの方々が日本に来て不法就労するという問題は、そうした国々と日本との彼我の間の所得差というものが歴然としている以上、なかなかこの問題の取り組み方というものは難しいというふうに率直に思わざるを得ないと思うのです。  しかし、今外務大臣、労働大臣が申されましたように、やはりそうした国々に就労の機会、雇用創出の機会をつくるということは、我が国としてもいろいろな形でのお手伝いができるのだろうと思いますから、第一は、そうした国々において労働力がその国においてやはり使われていくという形のものに対して全力を挙げることが必要だろうと思っております。ただ、実際入ってこられた方方をどうするかという問題につきましては、これは国が発展していく中では、かつて西欧の国家においてもそういう問題が起こったことも事実でございますので、日本としては諸外国の例を他山の石として考えながら各省庁間で十分研究していきたいというふうに思っております。
  409. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今いろいろとお答えをいただきましたけれども、この問題は非常に難しい問題でありますし、先ほど私は現地の新聞のことについてちょっと触れたときに申し忘れましたけれども、実は向こうの新聞にも、むしろフィリピンから日本に出るその労働者を抑える手だての問題についても言及をされたりしております。そういう意味では、これからまさにいろいろ研究をしなきゃならぬことだ、こういうふうに思いますが、私はそこで、今現在のこの状況を見たときに、この外国人労働者の受け入れに関して、政策の中身、今後の方向について、あるいはそれは原則禁止の政策の見直しということにもなるかもしれませんが、まさに真剣に検討すべき時期に来ているのではないか、こういうふうに思うのです。  そのためには何としても、日本の例えば職種別需給関係によるコントロールというのはどうやってできるんだろうかとか、あるいはビザ制度の見直しにしてもしかり、あるいは先ほど外国人労働者の報酬等が非常に低いであろうという推定をいたしましたけれども、最低賃金などの労働条件をどうやってちゃんと規制をすることができるかとか、そうした細かい検討をどうしてもしなきゃならない時期に今来ている、こういうふうに思うのですね。  さらにもう一つは、その検討をしていくときに、例えば役所や学者だけではなくて労使の代表も含めた形で十分な実態調査も踏まえながら検討を進めるべきであろう、こういうふうは思うわけであります。それは、もしも入れるようにした場合にはどういうふうにしたら実際の日本の社会に与えるマイナス効果を抑制することができるんだろうか、そのための制度をどういうふうにきちっとした形でつくることができるかということをちゃんとやらぬといかぬと思うのですね。今のようにいろいろこう入ってこないように対策はとる、しかし多分なかなか抑えられないだろうというような認識のまま推移するということは許されない、こういうふうに思うのです。そういう意味で、今申し上げたような検討をすべきだ、こういうふうに思います。  そういう意味で、労働省、外務省、法務省に改めてその件についてお伺いをいたします。
  410. 中村太郎

    中村国務大臣 この件につきましては、労働省としましては、先ほど申し上げましたように単純労働者の受け入れはしないという方針を今日まで堅持をしておりますし、この原則は今後におかれましても引き継ぐべきであるというように考えております。  けれども、最近多様な意見がほうはいとして起こっておるわけでございます。そこで、労働省は昨年の暮れに、いろいろな角度を踏まえての御意見がありますので、従来の労働省の方針は方針として、新たな意見等を踏まえて多角的な総合的な研究をしたいということで、省内に学識経験者によりまする外国人労働者問題研究会を発足させました。今鋭意御検討をいただいておるわけでございますけれども、三月には大方報告がまとまる予定でございます。それが仕上がった時点で、今仰せのように、新しく学識経験者あるいは労働者あるいは使用者代表等を交えまして、多角的にそれぞれの各界各層の御意見などを踏まえて、新しい考え方といいましょうか、必要とあるならば今までの考え方を含めて見直しをせられてもよいではないかというふうな感じを持っているわけでございます。
  411. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 法務省といたしましては、まずビザの段階、それから入国の海港でありまするとかあるいは空港におきまして審査をいたしまして、不法な者は送り返す、また国内に入ってまいりまして不法滞在した者は調査をいたしましてまた送り返す、こういうような方法によりましていわゆる単純労働者の入国阻止に努力をしておるわけです。しかしながら、どうしても観光ビザで入ってくる者が多くおりまするので、これを日本の労働市場あるいは社会事情に対応いたしましていかにすべきか、労働省において研究をしていただいておるわけでありまするが、法務省も十分労働省と相談をしながらこれに対して対策を立てようと研究をしておるところでございます。
  412. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 外務省の基本的な考え方は先ほど申し述べたとおりであります。しかし、私もテレビ等見ておりまして、何か不法入国者、これを日本の入管が追っかけている、そういう光景は果たして東南アジアの方々にどう映るだろうかと考えてみたり、あるいは中小企業の経営者が悲痛な声で言っておられましたが、最近の日本の雇用者はほとんどいいところへ行かれるから、私たちのところには来てくれない、この問題をどうしますかと。これもまた国内における一つの大きな声じゃないか、こういうふうに考えますから、今労働大臣並びに法務大臣が専門的な立場でお話しなされましたようなことを我々も踏まえまして考えていきたい、かように思います。
  413. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 この問題は極めて重要な問題でありますので、鋭意検討をお願いを申し上げます。  次に、自動車の損害賠償責任保険の問題についてお伺いをいたします。  その前に、冒頭、大蔵省、運輸省にお願いをしておきますけれども昭和五十九年の十二月の自動車損害賠償責任保険審議会の答申で、五十九年度までの累積運用益六千五百七十四億円を保険収支の改善に充当すべしと述べられておりますけれども、それが今日までのところほとんど実行されておりません。また単年度収支の最近の好転等にかんがみて、まずは累積運用益の活用を答申どおりに実施すること、その次には、現在の情勢では可能と見られる保険料率の引き下げの実現を図っていただぎたいということを強く要望をしておきます。  本日は、この問題についてはおきまして、医療費の適正化の問題についてお伺いをいたします。  まず、先ほど申し上げた五十九年の自賠責審議会の答申の指摘事項のうちで、医療費支払いの適正化佐ついての実施状況がどうなっているのか、要点のみ説明をお願いをいたします。医療費支払いの部分だけで結構ですから。
  414. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 医療費支払いの適正化につきましては、まず第一に、自算会と損保各社におきまして医療費調査担当者に対する研修内容の充実を図っております。同時に、この医療費調査担当者の専任化とその増員にも努めておるところでございます。さらに損害保険協会におきまして、全国ベースでの集合研修を行うための総合研修所を新設いたしまして、来る四月から開校するというふうなことになっております。  それから第二点は、若干技術的な話で恐縮でございますが、交通事故医療に関する調査研究を強化するためは、医療費関係データを集積いたしまして、具体的な医療費請求事案の問題点を抽出するためのパソコンを活用した医療費事前調査システムというふうなものを充実いたしまして、全国ベースで拡充いたしております。  それから第三点でございますが、診療報酬基準案の作成ということでございます。これにつきましては、率直に申し上げまして当初の予定に反しまして大変おくれをとっておるということで遺憾なことだと思っておるものでございますが、一日も早い作成を目指しまして現在損保業界と日本医師会との間で鋭意協議を進めていただいているところでございます。  以上申し上げましたような措置を含めて、答申指摘事項の実施によります効果というのは次第にあらわれつつあるということが言えるかと思います。
  415. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今お話の出ました診療報酬基準案作成の問題に移る前に、厚生省にお伺いしたいのですが、交通事故の被害者の治療、これはかなりの部分が自由診療になっております。御承知のとおり、診療単価は健保の場合のざっと二倍以上、私が持っているデータだけでも二・一八倍という高い診療の水準になっております。健保利用者が被害者全体のどのくらいあるかといいますと、ざっと一五%程度という非常に低いものであります。五十九年六月の参議院の社会労働委員会において当時の吉村保険局長は、交通事故の場合に健康保険が適用になるということの周知徹底を図る、こういうふうに答弁をしております。この健康保険適用についての通達も昭和四十三年には出ているわけでありますが、一五%にとどまっている原因は一体どこにあるのか。自由診療と社会保険利用との診療内容に差があるのかどうか。もしもあるとすれば、医療行政から見て非常に不適当だ、こういうふうに言わざるを得ないと思いますが、いかがですか。
  416. 下村健

    ○下村政府委員 交通事故等の場合の医療はついて健康保険の適用の割合が大体一五%程度、これはお話のとおりでございます。最近数年間ほとんど変わっていない、大体一四、五%というところで推移をしているというふうに見ております。  その理由でございますが、これは必ずしもよく私どもとしては明確でありませんが、一般的に言いますと、交通事故等の場合の医療費というのは加害者等が負担をする、最終的にその負担になるということになっておりますので、そういう意味からしますと一応自然な形としてそういう結果が出ているというふうにも思われるわけでございます。  それから、診療内容の差がどうなるのか、これは実は私ども自賠責の方に出ている請求内容を子細に点検をしたことがございませんので、これも確実なことはなかなか申せないわけでございますが、一般的にあるいは常識的に考えてみまして、健康保険診療の場合とこの種の診療の場合と本質的に診療内容に差があるというふうにはちょっと考えられないわけでございます。
  417. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 これは、先ほども申し上げましたけれども、ちゃんと周知徹底を今後図っていきますというふうに答えているわけですね。そして今のお話のように、その内容についても差はない。言うならば、国民に対する啓蒙あるいは医師会への指導強化をどうしても図っていかなきゃいかぬと私は思うのです。それについて、今後さらにこの指導をしていくのかどうか、大臣の答弁をお願いをいたします。
  418. 下村健

    ○下村政府委員 交通事故による傷病の場合、患者が医療機関に被保険者証を提示すれば当然健康保険の診療を受けることができる。またその場合には、最終的には保険者の方から負担した医療費は加害者あるいは保険会社に対して請求をするという形になってくるわけでございます。私どもといたしましては、交通事故の場合も健康保険の対象となるということにつきましては、従来から通知やパンフレット等によりまして医療機関あるいは被保険者等に対して周知徹底を図っているところでございまして、今後とも健康保険が使えないというふうな誤解がありまして実際の医療の場において支障が生ずるということがないように、その点につきましては十分に徹底を図ってまいりたい、このように考えております。
  419. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 周知徹底を図っているといったって、一五%しか使ってない現状でそれが十分に行われているというふうにはとても考えられません。したがって、今、さらに周知徹底を図ってまいります、こういうお話でありましたので、ぜひ図っていただきたい。そして、その実施状況をぜひ報告をしていただきたい、こう思いますので、よろしくお願いをいたします。  次に、最初に問題といたしました診療報酬基準の問題でありますけれども、これは昭和四十四年の自賠審の答申以来の懸案の事項でございます。それで、私が昭和六十年三月の予算委員会質問をしたときに、大蔵省当局も昭和六十年度中をめどとして策定をするというふうに答弁をされました。また、その後の私の質問に対しても、その早期の作成を約束して、最大限の努力を傾中してまいりたいということでありました。ところが、日本医師会と損保業界との協議は二十九回に及んでいるということでありますけれども、診療報酬基準案ができていないという状況であります。では、なぜできないのか、いつまでにできるのかということについてお伺いをいたします。
  420. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 本件につきましては、かねてから先生に御指摘賜っているところでございまして、当省といたしましてもできる範囲で懸命の努力を重ねてきているところでございます。基準案策定協議の両当事者であります損保業界と日本医師会は、先ほど御指摘のとおり、六十年八月以来二十九回に及ぶ協議を行ってきておりますけれども、まことに残念ながらまだ合意は達していないというふうな状況でございます。  それで、協議の進捗状況について若干申し上げますと、基準案実施のための前提条件といいますか、すなわち、基準案と社会保険適用の優先順位というものをどうするかというようなこと、それから過失相殺の取り扱いをどうするかというふうなこと、医療費支払いのルールをどのように決めていくか、こういった前提条仲、それに加えまして、基準案の中に設定されるべき診療項目とその内容などにつきましては既は大筋の合意は達しておるのでございますけれども、肝心の診療項目ごとの料金の問題につきましては、引き続き双方が案を出し合うという形で現在協議を重ねているところでございます。  しかしながら、この問題につきましては、損保業界の方は、この基準案は医療費支払いの適正化のために策定されるものというふうな主張をいたしておりますのに対しまして、日本医師会の方は、これまで続いてまいりました現状水準を大幅に下回るような水準では会員医師の納得が得られないというふうなことを申しておりまして、料金水準についての両者の主張にはまだ開きがあるというふうな実情でございます。この点が現在までいまだ合意を難しくしている最大のネックになっておるというふうに見られるわけでございます。両者とも基準案を早期に作成する必要性というのは痛切に感じておられるところでございますので、日下は両者にとって合理的な料金水準は何かといったような観点で各項目ごとの料金水準についてさらに突っ込んで協議を進めていくというふうな手はずになっておるところでございます。  いずれにいたしましても大蔵省としては、関係業界をさらに強力に指導いたしてまいりまして、両者の合意が一日も早く達成するように努力を続けてまいりたい、かように思う次第でございます。
  421. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 料金の決定の問題はまさに肝心の問題でありまして、なかなか容易ではないと思いますが、しかし、これを決めなければ何にもならないわけなんで、よろしくお願いをいたします。  そこで、そういう問題を考えるときに、考えてみますと、自賠責審議会の中で厚生省はメンバーに入っておりません。今、適正な診療報酬基準案をやらなければならぬよということが昭和四十四年から何度もその答申に書かれて、そのために努力をされているわけでありますが、その診療報酬基準なるもの、あるいは医療行政を担当する厚生省が何で入っていないんだろうかというふうに思うのですね。これはなぜ入っていないんでしょうか。
  422. 宮本英利

    ○宮本(英)政府委員 自賠責審議会の委員の構成につきましては三つのグループから現在構成されておるわけでございます。一つは、自賠責保険制度自体にかかわる関係行政機関の職員ということでございます。二番目のグループは学識経験者、三番目が自動車運送、保険事業に関する有識者というふうなものによって構成されておりまして、現在のところ厚生省の関係者は委員になっておられないというふうな状況でございます。  しかしながら、この五十九年の自陪審答申におきまして、損害保険業界が日本医師会の協力を得て基準案を作成するということが求められたところから、現在日本医師会と交渉が行われておりますので、日本医師会関係者を臨時委員として入っていただいておるということでございまして、厚生省に関しましては、別途大蔵省、運輸省、厚生省という三省の協議会を通じまして基準案作成を含めた医療費支払いの適正化について協力をお願いしておるというふうな実情にございます。  厚生省関係者の委員への任命についてどう思うかとおっしゃられる先生の御提案だと承るわけでございますけれども、おっしゃられる御趣旨を踏まえまして、審議会会長その他各委員の方々にも御趣旨をお伝えしたいと思いますし、また厚生省の方ともよく御相談してまいりたいというふうに思う次第でございます。
  423. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話に沿って考えたときに、厚生省は大蔵省から委員の問題について相談をされたらどのようにされますか。
  424. 仲村英一

    ○仲村政府委員 ただいま大蔵省からお答えがございましたように、私どもとしては現在大蔵省、運輸省等制度を所管している省庁でございませんので、直ちに委員を出すということは考えておりませんが、三省の間に協議会が設けられておりまして、そこを通じまして私どもいろいろな形で必要に応じて適切に御協力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  425. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先ほど保険部長の報告にもありましたけれども、現在の最大の問題は医療費の料金の問題であります。それを決めるのに損保業界とそして医師会がある、その関係で大蔵省が鋭意中心になって進められているのでしょうけれども、進んでいないということになれば、当然厚生省としてはそれは前向きに考えなければいかぬ問題だ、こういうふうに思います。今のお話はそういうことだろう、こういうふうに思うのです。  大蔵大臣並びに厚生大臣にお伺いをいたしますけれども、この診療報酬基準作成のためには、そのお二人が損保業界並びに医師会に対して、適切な内容で、そして早期にこの基準を作成するように強いリーダーシップをとってやっていただきたい、こういうふうに思います。この医療費の支払いの適正化の問題については、先ほど来申し上げておりますけれども昭和四十四年の自賠責審議会の答申以来、四十八年にもなされ、五十九年にも強調されてきている。そして今日まででき上がっていない。大変な努力を途中されてきているわけでありますけれども、そういう状況であります。まさにこれは行政の怠慢としか言いようがないような状況だろう、こういうふうに思うのです。そういう意味でお二人の大臣に今後に向けての決意のほどをお伺いをしたい、こういうふうに思います。
  426. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 診療報酬基準案をつくりますのに審議会の答申もあって三十回近くも話をしておるということでございますので、大抵のことは三十回もやると話がつかなければおかしいわけでございますね。何かいきさつがあるのかもしれませんけれども、とにかく基準案をつくらなければなりませんと思いますので、厚生省、関係各省みんな力を合わせまして基準案をぜひできるだけ早くつくるように努力をいたします。
  427. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 自賠責の診療報酬基準の問題でございますが、これは御承知のように、自賠責制度の中の問題でございまして、基本的にはこの自賠責制度を所管する大蔵省と運輸省が対応すべき問題であると考えております。その意味におきましては、厚生省といたしましてこの問題に対する対応については限度、限界があることを御理解いただけると思うわけでございます。なお、私どもといたしましては、先ほど来政府委員が御答弁申し上げておりますように、関係三省の協議会があるわけでございまして、その協議会でこの問題についていろいろと検討を重ねてまいったわけでもございまして、その場におきましてなお今後御協力を申し上げる、その点についてはやぶさかではございません。
  428. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 重ねて厚生大臣にお伺いしますけれども、厚生省として医師会に対して本件についてその必要性並びに協力要請といいましょうか、そういうことをやったことはございますか、大臣としてございますか。
  429. 仲村英一

    ○仲村政府委員 日本医師会に対しましてこの問題に関しての指導というふうな形でのアクションを起こしたことはございませんが、先ほどから申し上げておりますように、三省の協議会の場でいろいろ私どもとしても御意見を申し上げるという立場でやっておるところでございます。
  430. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私はこの問題については数年研究もしてきたのですが、一貫しての印象は、これは印象で申しわけございませんが、厚生省がこの医療行政を扱いながら、この問題についていわば第三者的な感じがしてなりません。そういう意味で、先ほど大臣は、これから協力して一生懸命ということだろうと私は思いますが、ぜひこの問題についてはよろしくお願いを申し上げます。  それから、先ほど大蔵省の保険部長の方からも、また厚生省にもこの委員の問題についても相談するお話のようでございますし、ぜひこれは協力をして一刻も早く適切なる水準でこの制度が確立できるようにお願いを申し上げます。
  431. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今までの経緯はよく存じております。御意見の趣旨も私なりに理解をいたしております。ただ、先ほど申し上げましたように、この問題については我が省は所管をいたしておりません。したがって、御協力申し上げる点についても限度、限界があることは、これは御理解をいただけると思います。しかし、問題の内容から考えまして、できる限りの御協力はすることはやぶさかではございません。
  432. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今の大臣のお話は、私は若干理解できないですね。それこそ総理にでも、あるいはどなたかにでも答弁をしていただきたい、こういうふうに思うくらいであります。  厚生省はこの問題で、今の話を聞いてもそうでありますが、第三者的発言としか思えない。いかがですか。
  433. 奥田敬和

    奥田委員長 保険局長、答えますか。――下村保険局長、しっかり答えなさい。
  434. 下村健

    ○下村政府委員 お答えいたします。  ただいまの問題は、先ほどから伺っておりまして、自賠法上の医療の位置づけとか、医療というものについての考え方を少し明確にしておく必要があるのではないかというふうに私は思います。  先ほど保険の問題もあったわけでございますが、一応現在の自賠法上の医療の位置づけということになると、自由診療であるというふうに私どもは承っておるわけでございます。したがって、事故が起こった場合の医療の受け方については、被害者と医療機関との当事者間において話し合いがなされるもの、その結果生じた医療費について損害賠償の一部という形で自賠法によって保障がなされる、こう考えておるわけでございます。したがって、その自由診療の価格決定について厚生省がどれぐらいの影響力を及ぼし得るのか、あるいはどういう形で及ぼすべきかということについては、その辺の医療についての考え方をもう少し整理する必要があるのではないか、これが、要約いたしますと厚生省の見解になると思うわけでございます。  それから、保険の立場から申しますと、健康保険はいわばそういう場合の医療費の立てかえ払いをやっているという格好でございます。したがって、立てかえ払いをすることについて私どもは拒むわけもございませんし、それはそれなりに医療が混乱しないように私どもとしては十分立てかえ払いをすることを拒むようなことはするな、これは申しているわけでございますが、必ず立てかえ払いをしろ、あるいは立てかえ払いをする方が好ましいということは私どもとしては指導ができない、こういうことになってくるわけでございます。
  435. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は今の話を聞いておりますと、今決めようとしている診療単価が幾らに決まろうとも、厚生省としては余り関係ないよというような形にさえ聞こえます。これは大蔵大臣に、あるいはほかの方の方がいいかもしれませんが、大蔵省にお伺いしたいのですが、今のような厚生省のスタンスで、今一生懸命で進めているこの医療費の適正化の問題が進むと思われますか。
  436. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今お尋ねを伺ったり政府側のお答えを申し上げたりしておりまして、これはちょっと政府の中でやはり少しお互いに話をしてみる方がいいように思いますので、ここで公の立場をあれこれ述べましても問題の解決になるかならぬかと思いますので、しばらく私どもで、閣僚間で相談をさせていただきまして、なるべく事態が早く片づくように努力をさせていただきたいと思います。
  437. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 ありがとうございました。ぜひこれはよろしくお願いを申し上げます。  それから最後にもう一点、我が国の中期経済運営の問題についてお伺いをいたします。私の時間が非常に限られてしまいましたので、ざっと一括して私が申し上げますので、それぞれ関係者の御答弁をお願い申し上げたい、こういうふうに思います。  今我が国が直面しております中期的な経済政策の重要課題は、これは言うまでもありませんけれども、第一には、対外的には不均衡是正と国際社会への貢献ということでありましょうし、国内的には産業の活力の維持あるいは豊かな国民生活の実現をどうやって図っていくかということであります。これらの実現のために、内需主導型経済への転換あるいは経済構造の調整が必要であるということは、もう申すまでもありません。そのために、今後中期的にどのような経済運営あるいはどのような経済成長率を達成させていくかということが極めて重要な問題になります。  そこでまず、この急速に進む経済構造調整期間中には、産業によって、あるいは地域によっても、あるいは職種間でさまざまな雇用のミスマッチというような問題、いろいろなアンバランスが発生をいたします。さらには、産業空洞化問題もこれから大変大きな問題として懸念をされてまいります。そういう意味で、これらを、失業問題も大きな問題とすることなくやっていこうといたしますと、それを吸収するためには経済成長率をそれなりにちゃんと維持しなければならぬ。そうでないと、そういう実はいろいろなミスマッチの部分等を吸収することができないことになるというふうに私は思います。そういう意味で、国民経済のポテンシャルを損なわないようにして経済構造の調整を円滑に進めるために、そしてまた、失業率あるいはこれ以上雇用情勢を悪くしないようにするためは、実質の経済成長率はどのくらいが必要かということについてお伺いをいたします。私は、これはせいぜい四%台の成長がどうしても必要だろう、こういうふうに思いますが、そういうことについてお伺いをしたいということですね。  それからさらに、国際公約という問題から考えてみたいと思うのですが、今まで貿易不均衡の是正とか内需拡大策というのが我が国の世界に行ってきた公約であります。そして、実際今までも、「展望と指針」の中でも四%程度の実質成長率を踏まえて行われておりましたし、あるいは新前川レポートにおいても四%程度の実質経済成長率を前提にして考えられておりました。竹下総理にしても、貿易不均衡の是正の問題やら内需主導型経済成長の定着という、あるいはその努力ということは、日本の国際的な役割としてこういうものを強調されてきたりしております。この六月には、トロントのサミットも予定をされております。そういう意味で、この国際公約であるとかあるいは我が国の国際的な役割というような意味においても、私から見ますと、四%台の実質成長というのはどうしても必要なんじゃないだろうか、こういうふうに思います。また、こういうことを考えていくときには、いわゆる財政の問題につきましても、いろいろな問題で機動的に対応しなければならない、あるいは積極的に展開をしなければならない、こういうふうに思うわけであります。  以上申し上げたような状況の中で、ちょっと時間がありませんので全部、それぞれ要領を得た形で考え方を御答弁をお願い申し上げます。
  438. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 お答えさせていただきます。  問題点、全体で見ますと三点くらいにわたって御質問いただいたような感じがいたしますが、客観的な情勢からいきますと委員の御指摘のとおりの面もたくさんございます。今日の我が国の経済そのものが構造調整を円滑に、まず御指摘のとおり対外不均衡を是正すると同時に、国民生活の質を向上をさせることが喫緊の課題である、これはもう認識のとおりでございます。特は、円高に伴いまして製品輸入の増加あるいはまた輸出の停滞が生じまして、また海外生産の動きも活発化していることから、一部の産業や地域が厳しい環境にありまして、雇用機会の確保が重要であることは申すまでもございません。このためには内需主導による適切な成長路線を定着させることが不可欠でございます。内需は近年に比べて伸びを高める一方、外需はマイナスの寄与度を続けているということがこれも必要であろう、こう思っているわけです。  そこで、中期的な経済成長率というもののあり方につきましては、こうした基本方向に向かって現在経済審議会はゆだねまして、そしてもう既に出発しておりますけれども、四部会に分かれまして御討議を賜っておりまして、新しい経済計画の策定の作業の中で検討がまず進められるものであろう、このように思っておるわけです。  その中にあって、委員指摘のとおり四%ぐらいの経済成長率が必要なんじゃないか、こういう仰せでございますが、内需主導によりまして適度な成長路線を定着させることは、国際的にも、まさに御指摘のとおり調和のとれた対外均衡を達成し世界に貢献していく上でも基本となるものであろう、こう思っております。こうした観点から、十分にこれを踏まえまして、今後経済審議会において中期的な経済成長率のあり方についてはさらに検討が進められていく必要があろう、こう思っておりまして、目下進行中でございますからパーセントの点については触れることはできませんけれども、鋭意努力をして御期待に沿えるような方向に持っていきたいな、こう考えておる次第でございます。
  439. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今経済企画庁長官が言われましたように、経済審議会において御検討をしていらっしゃることでございますが、私どもとしてはできるだけ、もとより財政も寄与しなきゃなりませんが、ひとつ財政再建の途中であるということと、それから今おっしゃいましたようにやはり外需の方はマイナスにならなければいかぬという命題があろうか、これはなかなかネットの成長の足を引っ張るという問題がございますので、その辺のことも経済審議会なり経企庁長官に御考慮に入れていただきたい、こういうことを考えております。
  440. 中村太郎

    中村国務大臣 ことしの一月に雇用政策研究会から提案がありました。その中で、仰せのように仮に今後四%程度の成長をしたとしても、七十年には失業率は三%前後に上昇するであろうということでありました。その提言の中で、これからの失業率の引き下げをやるためには適切な経済運営、さらにはまたマクロの経済運営と雇用政策の調和を図っていかなければいけないという指摘があるわけでございます。そういう意味で、労働省としましても関係省庁と緊密な連絡をとりながら雇用政策に万全を果たしてまいりたい、こういう決意であります。
  441. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 どうもありがとうございました。
  442. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、滝沢幸助君から関連質疑の申し出があります。伊藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。滝沢幸助君。
  443. 滝沢幸助

    滝沢委員 委員長御苦労さま。政府の皆さん御苦労さまです。  私の持ち時間が極めて短いものでありますから端的にお伺いいたしますが、しかし御答弁の方も、私がこれから申し上げることは一々経過その他はもう速記録その他で十分勉強いたしまして、それこそ綿密、正確、丹念これ努めたことでありますから、説明は一切要りません。やるかやらぬか、きちんとそれだけをお答えを願いたい。お願いいたします。  そこで法務大臣、一言でありますから先にお伺いします。  人間がおよそ生まれまして名前をいただく、これは親の愛情の最たるものであります。大臣も人の子の親ならおわかりのはず。きょうも三千八百十四人平均これは生まれているということになります。ところが私のこのデータによりますれば、二三%は役所に行って、その文字はだめだといって受け付けにならぬ。そして同じく二八%のものは、みずから自分でその知識があって、この名前つけたいのだけれども、仕方がない、この文字にしようということをしている。いわゆる自主規制ですな。こういうことはいけない。せめて名前ぐらいは自由につけさせたらいかがなものか、こう思うのであります。これについて一言、戸籍法改正の意思ありやなしや。一言で結構。
  444. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 今のところありません。
  445. 滝沢幸助

    滝沢委員 まことに残念かつ愚かなことであります。分科会並びに当該委員会において十分にお伺いをさせていただきます。お帰りいただいて結構。  さて次の課題は、皇位継承にかかわる大喪、大礼等のことについてでございます。  これにつきましては、実は五十年三月十八日に我が党の受田新吉先生からこれに触れていただいておりまするほか、各党の各先生がこれに言及されていることでありますが、さらに私はこの議会の初日、つまり十二月の二十八日に質問主意書を提出させていただきまして、年越えて一月の十二日にその御回答をちょうだいしました。法律的にはこれは答えておりますよ。しかし、世間常識からいってこれは答えにならぬ。問われたこと、それに対して答えるものが答えでしょう。残念に思います。  そこでお伺いしますが、およそ終戦後四十年余り、しかもこのことが議論されて以来十数年間、しかも昨年は陛下におかせられましては御不例にわたられる。このような事態の中に、なおかついわゆる昭和二十二年の皇室典範によりますところの大喪の礼そして大礼ということをなし得るというのでありますが、それ以外詳細は一切はっきりしない。検討中。今もなお検討中でありますか。それとも決定しましたか。決定しましたらその大要についてお伺いをいたしたい。
  446. 山本悟

    山本(悟)政府委員 先生から先般内閣に対しまして質問主意書が出、それ佐対する閣議決定に基づきましたところの回答が出たことはよく承知いたしているとおりでございまして、中にも触れられておりますように、具体的な内容につきましては憲法の趣旨に沿い、皇室の伝統等を尊重して研究中である、こういう御回答を申し上げたところでございます。  その後も、御指摘のとおり確かに十年も前から私も、殊に五十四年あたりのときにたびたびこういったような答弁をさせていただいてまいったわけでありますが、現在におきましても具体の問題といたしましては鋭意研究を続けているというのが現状でございます。それに対しましていろいろな御意見等があることを十分承知をいたしておりますが、事柄の性質上、具体の問題といたしましてどうであるということはただいま現在におきまして御答弁申し上げる段階ではない、かように存じております。
  447. 滝沢幸助

    滝沢委員 議会軽視も甚しい。およそ四十年間国家の最高の課題について方針がない。国会で数数議論をされてもなおかつ十数年間これに対して何らの方針もない。どうするんですか。皇位継承の順序は数々ございますが、しかしそのいずれのお方もいわば生身の御存在であります。これは庶民、我々と同じに、いつ何ときに順序どのように御不幸な状態にならぬとも限らぬのでありますが、つまり、陛下が御崩御あそばしまするまでこのことははっきりせぬというのですか。これをはっきりすることが何が恐れ多いのですか。不敬も甚だしい。宮内庁が今日不敬にあらずして何者が不敬でありまするか。厳しくしかりつつ、いつこれは決まるのか、はっきり答えていただきたい、はっきり。
  448. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまお述べになりましたような御意見いろいろあることはよく承知をいたしております。ただ、こういったような儀式の具体的内容というようなものにかんがみてみました場合には、やはりその時代時代に最もふさわしいものをということが基本であろうと存じます。したがいまして、その考え方に基づきましてただいまは慎重に検討をいたしている。(滝沢委員「いつまでに検討すると言っているのです」と呼ぶ)これは必要になったときは必ず間に合うようにいたします。
  449. 滝沢幸助

    滝沢委員 でたらめな答弁はよして、休み休み言ってください。大体私はこのことについて十六カ条具体的に問うているのに、何ら具体的な答弁を内閣はよこしてくれませんものですから、そうしましたら某参事官が参りまして、いろいろと言いわけをしておりました。それが再度にわたりました。そこで私は、長官に伝えてくれ、いつまでにはっきりするのか、これをして職務怠慢にあらずして何ぞや、責任を感ずるならばおやめになったらいかがですかとまで申し上げた。しかし、電話一本来ないじゃありませんか。国会議員に対するこれは侮辱にあらずして何でありますか。どうしたのですか、長官は。国会議員がこれだけ誠意を込めてたびたび文書を出し、かつ審議官と話し合って、その審議官が忠実に持ち帰ってこれを御報告なさったならば、電話一本くらいが長官からもしくは長官にかわるべき者からあってしかるべきじゃありませんか。いかがですか。
  450. 山本悟

    山本(悟)政府委員 ただいまの経緯、先生の御指摘のとおりであろうかと存じます。ただ、長官から、あるいはかわりであれば私から言うということで責任を感じるわけでありますが、それから、御連絡も申し上げなかったということにつきましてのおしかり、重々身にしみますが、特別な他意があったものではないということは御了承賜りたいと存じます。やはり具体の問題といたしまして、御質問の主意そのものの中身につきまして申し上げるような段階でないというようなこともあったものでございますから、そういった事態になった次第であろうと存じます。
  451. 滝沢幸助

    滝沢委員 連絡がないはずはないでしょう。いろいろ参事官を通じて承りました、しかし今なお検討中でありますので御猶予くださいという電話ができないことはないでしょう。いかがですか。これをして不誠意と言わずして何ぞや。  そこで、視点を変えてお伺いいたします。実は官房長官、先内閣は靖国神社の参拝のあり方につきまして、いわゆる一拝方式なるものを考案されまして、これを実行されました。これはいわゆる宗教的行為ではないということでございますか、お伺いします。
  452. 小渕恵三

    小渕国務大臣 前内閣時代に、中曽根総理が靖国神社に参拝をされました。そのときの参拝の方式が、これが宗教的儀式か否かということでございますが、中曽根総理の参拝はこの内閣の形式によりまして行った行為でございまして、宗教的行為とは考えられません。
  453. 滝沢幸助

    滝沢委員 そう答えなければならない立場と思います。  そこで、実は宮中祭祀のことでございます。  実は、先ほどより議論申し上げておりまする皇位継承にかかわる大喪、大礼のことにつきましても、政府がないしは宮内庁がはっきりできないの、は、どこまでが国事行為で、どこまでが宗教的行為、どこまでが国家のなすべきこと、どこまでが皇室御一家がなさるべきことということについての区分けができぬということでしょう。そうでしょう。天皇に私なしという、これはいわば世界共通といってもいい理念だと私は思うのであります。そこで、賢所におかれまして陛下が日々これなさいまするいわゆる宮中祭祀のことは、宗教的行為として公事と認めがたいものでありますか、それとも、これはいわゆる天皇に私なしという立場におきますれば、国家のいわゆる天皇の国事行為というふうに解釈してもよろしいものでありますか、いずれでありますか。
  454. 山本悟

    山本(悟)政府委員 日本国憲法に基づきますところの国事行為というのは、憲法の規定に従って内閣の助言と承認により陛下が行われるというものであることは御案内のとおりでございます。そういう意味におきまして、ただいま御質問のございました事項は、その国事行為には当たっていない、これは申し上げざるを得ないことであると存じます。  ただ、これが皇室といたしましては、宮中祭祀というのは極めて重要なことといたしまして、絶え間なくかつ引き継がれまして厳粛にとり行われている、これもあわせて申し上げておきたいと存じます。
  455. 滝沢幸助

    滝沢委員 私が聞いていることと少しずれておりますが、まず承っておきます。  そこで、宮中におかれまして陛下がなさいますいわゆる宮中祭祀のことは、宗教的行為であるというわけですか。国事でないとしたら宗教的行為ですか。それとも私的行為であってそのいずれにも該当せずということでありますか、お伺いします。もちろんあなたに法律解釈承るのも、これはおかしな話ですが。
  456. 山本悟

    山本(悟)政府委員 宮中で行われております宮中三殿の祭祀、これはやはり一種の宗教という言葉、この言葉をどう考えるかということはいろいろあるかも存じませんけれども、宗教の範囲内のことであろうと存じます。そういう意味におきましては、先ほど申し上げましたように国事行為とは考えておりません。
  457. 滝沢幸助

    滝沢委員 宮内庁がそのような態度であってはこれは本当にどうにもならぬ我が国の今日の状況、こう思うのでありますが、しかし申し上げておきます。  この賢所におかれては、いわゆる前総理大臣の一拝方式なのですよね。陛下はかしわ手も打たれない、玉ぐしも奉奠されない、いわゆる御先祖各霊に対して深く拝をなさるだけであります。つまり、中曽根前総理大臣が一昨々年か九段の靖国神社で行われたことと陛下がなされておりますることは同じであります。一方がこれは総理大臣が公務としてこれをやってもよろしい。一方が天皇陛下がこれをなさることはいわゆる私的な行為、宗教的な行為、こうされることはいかがなことでありますか。これは官房長官いかがにお考えでしょうか。いや、前官房長官が一拝方式を私的諮問機関というものを通じて考案なさったのでしょう。
  458. 小渕恵三

    小渕国務大臣 天皇陛下の賢所での御行事のお話がございましたが、そのことと前総理が靖国神社で行いました一拝とはたまたまそういうことに相なっていることであろうと思いまして、その間の因果関係というものは特別なかろうと考えております。いずれにいたしましても、前内閣のときに、せっかくの靖国神社に参りましての総理の御参拝でございましたので、そのような形式を考案し、行った、こういうことでございます。
  459. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間がありませんから、このことについて最後に再度確認させていただきます。  先ほど、つまり間に合わせますとおっしゃいましたが、そこのところがちょっとはっきりしませんけれども、このようなことについての具体的な方法ないしは制度その他をいわゆる間に合わせるとおっしゃるのは、陛下が御崩御あそばしますまでには間に合わせるというふうに承るべきでありますか、確認します。つまり私が承りたいのは、これほどに重大なこと、これほどに長きにわたる御検討の結果、ここまでは検討された、昨年はここまで、ことしはここまで、今はここまで検討されて、なおこれだけが残っているというなら話はわかる。何年たっても同じことの繰り返しじゃ話‐にならぬじゃありませんか。いつ、たれが、どのような手段ではっきりするのです。明確にお答えを願いたい。
  460. 山本悟

    山本(悟)政府委員 一過の諸行事のうち国事行為として行われる国の行事という格好で行われますものは、これは当然のことながら内閣決定さるべき事項でございます。その意味におきまして、ただいま私の申し上げた言葉が悪いかもしれませんが、必要なときには十分そのときの内閣が御決定になるというように存じております。そうしてそれ以外の、国の行事以外の各種のこと、それもいろいろの数多くの行事がございます。これは皇室を御補佐を申し上げる宮内庁といたしまして十分に研究をいたしていきたい、かように存じております。(滝沢委員「いつまで」と呼ぶ)目下も十分に研究はいたしております。(滝沢委員「いつ決まるの」と呼ぶ)だから、決まるのは必要の生じたときということしか申し上げかねます。
  461. 滝沢幸助

    滝沢委員 大変残念な答えを何十年もされているわけであります。ひとつお帰りになりましたら長官に、私が申し上げているのは、言葉は厳しいけれども、命を賭してこの国を守り、戦った生き残りが申し上げているわけです。御同様の御心境の各位も多々おありかと存じますが、私は今、日本の国がこのようなことについてきちんとした方針を定めていわゆる国論を一致していかなければ真の平和などというものは実現し得ないという心境から申し上げているわけでありまして、言葉の強さ点はひとつこれは御了承をちょうだいしたいと思います。  ところで文部大臣、国語と国史の教育のあり方でありますが、私はこれはよりもっと充実をされるべきである。このことは先ほど申し上げました国家の基本のことにつきましてつながるもの、こういうふうに理解しているわけでありまするけれども、いかがなものでありましょう。この国語と国史の、いろいろと制度の変更等も今考えていらっしゃるようでありますが充実のために、教師の資格ないしは授業時間、こういうものについてひとつ改善の計画を持っていらっしゃいますか。
  462. 中島武敏

    中島国務大臣 詳しくは政府委員から御答弁させますが、国語はまさに教育の中心でございますし、国語を正しく理解し、また判断できるということは教育の基礎だ、こう思っております。  そして国語の教科時間でございますが、これから、小学校一年生、二年生、現在週八時間でございますが、これを八時間を週九時間にいたしてまいりたい。年間で小学校一年で約三十四時間、小学校二年でプラス三十五時間増ということにいたしてまいりたいと思っておりまして、これから学習指導要領改訂をいたしまして、その方向で進みたい、こう思っております。  また、国史につきましても、当然のことながら重視をしてまいりたいと思っておりますが、内容、細かくは政府委員から。
  463. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の点、大臣からお答え申し上げましたとおりでございますが、具体には昨年の課程審で小学校一年生、小学校二年生で現在八時間、八時間でございますが、これを一時間ずつふやす、これは指導要領に盛り込む予定でございます。  それから国史につきましては、日本歴史として小中で必修にしております。この内容はこれから指導要領で十分考えてまいります。それから高等学校につきましては、先生案内のとおり地歴科というのができまして、これはやはり日本史も世界史的な観点を入れる必要がある、それから世界史も必修にするというふうな観点で、日本史、世界史、いろいろとこれから指導要領の作業がございますので、御趣旨を踏まえて日本史についても十分検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  464. 滝沢幸助

    滝沢委員 教科書検定のことは、これは議論されてなかなか久しいのであります。裁判等も争われております。ところで、この誤れる記載のある教科書によりまして子弟が教育を受けます。それによって知的にないしは精神的に受けましたる損害に対してこれを補償するの道がありまするかどうか。あるいはまた、誤っている教科書が現にあるときに国民がこれを目にして確認しても、検定官でもなく著者でもない場合にこれをどうしたら是正することができましょうか、お伺いさせていただきます。
  465. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の点でございますが、先生案内のとおり教科書につきましては客観的で公正でしかも教育的配慮がなければならぬ。指導要領に基づきまして執筆者が執筆いたしますが、検定という一つのプロセスを通るわけでございます。その検定のプロセスにおいて、先ほど申し上げました三つの要件が十分備わり、誤りがないように、そういうことがないように心がけておるわけでございまして、先生指摘のような事態がないようにすることが私どもの検定の立場での務めでございますので、こういう点について努力するということでお答えとさせていただきたいと思います。
  466. 滝沢幸助

    滝沢委員 時間もありませんが、全然答えになっていないのですよね。それはわかっているのですよ、検定制度のこと。だから、それでもなおかつ間違った教科書が行われているときに、どうしたら国民の立場でこれを是正することができるかと聞いているわけでありまして、分科会、当該委員会等でお伺いさせていただきます。  最後にもう一つ、当用漢字、そしていわる現代仮名遣い。これは学問的に間違っているのです。歴史的にも正しくないのです。これを正統仮名遣い、正統漢字に復元するの道を講じてほしい。これはいかがですか。できますか、全然お考えの余地がありませんか。大臣、いかがですか。
  467. 中島武敏

    中島国務大臣 先生のおっしゃる本来の漢字、仮名遣いが正統であるとおっしゃるお気持ちはわかりますが、それ以外は不正統と言える立場にございません。戦後、いろいろ文化、教育の向上の中に平明化ということが一つ入っておりまして、それに即しまして現在まで来ております。これは定着をいたしておると思います。  ただもう一つは、これが絶対の幅だというのではなくて、よりどころ、目安ということにしておりまして、弾力化させておるということは御存じのとおりでございます。
  468. 滝沢幸助

    滝沢委員 定着はしておりません。そしてこれを誤りとする学説も強いものがあるわけでありますから、よりもっと御検討されんことを期待してやみません。  委員長、きょうは御苦労さまです。どうもありがとうございます。
  469. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて伊藤君、滝沢君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三月一日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時九分散会