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1988-02-26 第112回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十六日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    粟屋 敏信君       池田 行彦君    石渡 照久君       稲村 利幸君    上村千一郎君      小此木彦三郎君    大島 理森君       海部 俊樹君    熊谷  弘君       倉成  正君    後藤田正晴君       佐藤 文生君    志賀  節君       自見庄三郎君    杉山 憲夫君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       田中 龍夫君    田中 直紀君       武村 正義君    谷垣 禎一君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       西岡 武夫君    林  大幹君       林  義郎君    細田 吉藏君       松田 九郎君    村上誠一郎君       村田敬次郎君    村山 達雄君       渡部 恒三君    井上 一成君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       佐藤 敬治君    辻  一彦君       斉藤  節君    坂口  力君       水谷  弘君    宮地 正介君       森田 景一君    田中 慶秋君       楢崎弥之助君    岩佐 恵美君       岡崎万寿秀君    中島 武敏君       藤原ひろ子君    山原健二郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官         兼内閣審議官  増島 俊之君         総務庁長官官房         審議官     新野  博君         総務庁長官官房         会計課長    八木 俊道君         総務庁行政管理         局長      佐々木晴夫君         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁教育訓練         局長      長谷川 宏君         防衛庁人事局長 松本 宗和君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         防衛施設庁建設         部長      田原 敬造君         防衛施設庁労務         部長      山崎 博司君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         環境庁企画調整         局長      森  幸男君         環境庁自然保護         局長      山内 豊徳君         環境庁水質保全         局長      渡辺  武君         沖縄開発庁振興         局長      塚越 則男君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         国土庁大都市圏         整備局長    北村廣太郎君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省入国管理         局長      熊谷 直博君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省アジア局         長       藤田 公郎君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁次長   日向  隆君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省健康政策         局長      仲村 英一君         厚生省保健医療         局老人保健部長 岸本 正裕君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省社会局長 小林 功典君         厚生省保険局長 下村  健君         厚生省年金局長 水田  努君         社会保険庁年金         保険部長         兼内閣審議官  佐々木喜之君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房審議官    伊藤 礼史君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         食糧庁長官   甕   滋君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君         通商産業省機械         情報産業局次長 岡松壯三郎君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 植松  敏君         特許庁長官   小川 邦夫君         中小企業庁計画         部長      田辺 俊彦君         運輸大臣官房審         議官      金田 好生君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         運輸省国際運輸         ・観光局長   中村  徹君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省海上技術         安全局船員部長 野尻  豊君         運輸省港湾局長 奥山 文雄君         運輸省航空局長 林  淳司君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         労働省労政局長 白井晋太郎君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君         建設大臣官房審         議官         兼内閣審議官  福本 英三君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省河川局長 萩原 兼脩君         建設省道路局長 三谷  浩君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治大臣官房総         務審議官    小林  実君         自治省行政局公         務員部長    芦尾 長司君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月二十六日  辞任         補欠選任   愛野興一郎君     中島  衛君   海部 俊樹君     村上誠一郎君   倉成  正君     石渡 照久君   小坂徳三郎君     田中 直紀君   左藤  恵君     杉山 憲夫君   佐藤 文生君     谷垣 禎一君   浜田 幸一君     松田 九郎君   林  義郎君     玉沢徳一郎君   原田  憲君     熊谷  弘君  三ツ林弥太郎君     武村 正義君   村山 達雄君     自見庄三郎君   渡部 恒三君     鈴木 宗男君   大久保直彦君     森田 景一君   坂口  力君     斉藤  節君   児玉 健次君     岩佐 恵美君   佐藤 祐弘君     山原健二郎君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     倉成  正君   熊谷  弘君     原田  憲君   自見庄三郎君     村山 達雄君   杉山 憲夫君     粟屋 敏信君   鈴木 宗男君     渡部 恒三君   田中 直紀君     小坂徳三郎君  武村 正義君     三ツ林弥太郎君   谷垣 禎一君     佐藤 文生君   玉沢徳一郎君     林  義郎君   中島  衛君     愛野興一郎君   松田 九郎君     浜田 幸一君   村上誠一郎君     大島 理森君   斉藤  節君     坂口  力君   森田 景一君     大久保直彦君   岩佐 恵美君     岡崎万寿秀君 同日  辞任         補欠選任   粟屋 敏信君     左藤  恵君   大島 理森君     海部 俊樹君   岡崎万寿秀君     藤原ひろ子君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。村山富市君。
  3. 村山富市

    村山(富)委員 まず冒頭に、竹下総理韓国を訪問されましてお帰りになったばかりですから、その所見を聞きたいと思うのですが、我が国の最も近い隣の国韓国で、初の平和的政権交代盧泰愚民主党総裁韓国六人統領に就任されました。六・二九宣言に基づく直接選挙によって軍事政権から民政に移管したことを私どもは心から歓迎をし、民主化勢力の運動の成果であると高く評価しているところであります。平和と民主主義基調にしたより一層の日韓友好親善、南北朝鮮の平和的統一中国との関係など、アジアの平和、世界の平和にとって日韓は極めて重要な役割があると思うのです。そして当面は、何よりもソウルオリンピック成功といった問題もあろうかと思います。大統領就任式出席をされました竹下総理所見を承りたいと思います。
  4. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今、村山さんが御指摘なすったと同じような心境で私も参加をしてまいりました。何よりも、民主的政権初移譲でございますから、関係者お話を承ってみましても、初めての民主的政権移譲のセレモニーであるからいわゆる先例がない、だからこれが先例になるんだというような意気込みが感じられておったことは大変喜ばしい環境であったと思う次第であります。  盧泰愚大統領と私との会談の中にも、今御指摘なすったように、日韓関係そのものアジア全体の平和や世界の平和のためにも大いに役立つことである、そうして何分、東京オリンピック参加が九十四でございますが、今度は百六十一というような、その規模の大きさも示すように、まさにこれが成功というのが、これまた外交的な観点から見ましても、アジア世界の平和というものに志向した成果を生まなきゃならぬという意気込みが感じられたことは大変喜ばしく感じたところであります。  私も、個人的な関係を深めますと同時に、当面の朝鮮半島情勢に関する認識とかあるいは経済問題等個別にも話をしましたが、可能な限り早い機会にお許しを得て外務大臣に訪韓してもらいまして、可能なことならば三月の適当な時期と思っております、そこで外相会談を行って、その後、一昨年の十二月からちょうど選挙等がございまして中断されております両国の閣僚会議というようなものも具体的に進めていく方向で話し合いをいたしてまいりました。  いずれにせよ、国会の大事な機会を与野党の理事会等で調整していただいて私が訪韓できたということに対しては、韓国側も、日本国民全体が民主的政権移譲を祝福してくれておる一つの証左ではないか、こんな発言も中にあったことをつけ加えさしていただきます。
  5. 村山富市

    村山(富)委員 そうして国際友好親善を深めようとしておるやさきに、去る二十四日、大阪入りをした自民党渡辺政調会長は、選挙応援演説の中でこういうことを述べられたというふうに新聞が報道されています。  中国は、資源は石炭もあれば銅、鉄、石油と何でもあるが、残念ながらお金がない、技術がない、年間の国民平均所得は一万三千円、山西省あたりにはまだ穴を掘ってその中に住んでいる人がいっぱいいる、そういう国だ、これは政治が余りよくないからだ、はっきりしている。こういう演説をされているわけです。  これはまことに不穏当な発言だと私は思います。戦後、先輩の皆さんが一生懸命努力をされて日中永遠の平和の基礎を築かれてきた。しかし、残念ながら最近は、雲の上発言等もあって何となくぎくしゃくした。特にまた光華寮問題等もございまして、今、日中間はぎくしゃくした、何とか解決しなきゃならぬ問題が横たわっているわけです。お互い皆さんがこの解決のために苦労されていると思うのですが、こういう時期に自民党最高幹部が、中国という国はこういう国なんだ、政治がよくないんだ、こういう認識を持たれた発言をしている。これは、私はやはり大変影響は大きいと思うのです。  渡辺さんという人は時々あちこちで放言するものですから、例えば毛針発言とか、それからまた少女趣味なんという発言もされていますけれども、これは国内問題ですからね、何とかお互いに話をすれば理解し合えるかもしれない。しかし、今度の発言国際問題なんですよ。私は、事はやはり重大だと思うのです。まして、竹下総理は訪中を今検討されておる、こういう時期でもあるわけです。私は、総理総裁としてのあなたの見解をこの際承っておきたいと思うのです。
  6. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 御指摘なさいました自民党政調会長発言につきましては、私も帰りましてから、二十五日、きのうの朝刊等を読ましていただいたところでございますが、内容をつまびらかにしておるわけではございません。しかし、政調会長が、責任ある政治家として、日中友好関係を重視する政治家であろうというふうに私はこれを確信しておるところでございます。
  7. 村山富市

    村山(富)委員 日中友好を重視しておると確信しておると。こういう発言日中友好を重視している気持ちから出る発言ですか。私はまだ発言内容をつまびらかにしていない、こういう総理のお言葉でしたけれども、これほど重要な問題を、真っ先にその真意を確かめるのがあなたの立場じゃないですか。ちょっとその発言では了解できませんね。
  8. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 恐らく今役員会が開かれておるところでございますから、当然この問題についての意見交換なりもあっておると思うわけでございますけれども弘自身、この渡辺政調会長という政治家日中友好というものを基調にしておる政治家であるというふうには確信をいたしておるところでございます。  ただ、村山さんおっしゃったように、これだけのものならばここへ臨む前にきちんと責任者としてよく事情を聴取しておくべきではないかということについては、言われてみればなるほどそのとおりだなという反省をもいたしたわけでございます。
  9. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃひとつ、これから十分その発言の中身を確かめて、その上で見解をお聞かせいただきます。それまでこの質問を保留します。いいですか。これは、これだけでここでなにするわけにはいきませんから、後でお聞きをさせていただきます。  次に、この予算委員会審議の中で、国会決議やあるいは統一見解やあるいは選挙の公約というものはお互いに守らなきゃいかぬ、これは民主政治議会制度の根幹の問題ですから当然だと私は思うのです。これは政治家にとって最も大事なことだというふうに私は思います。  しかし、残念なことに、この国会決議の扱いについての一連自民党発言を見ますと、二月四日に渡辺政調会長、これは渡辺政調会長が出ますけれども渡辺政調会長は、国会決議を見直して一般消費税導入せよ、こう述べております。さらに、国会決議はあっても一般消費税導入は可能である、こういう発言もされておるわけです。続いて、山中自民党税制調査会長発言でありますが、国会決議にとらわれず新型間接税導入すべきである、こういう発言をされておるわけですね。それに加えて、あなた、竹下総理は、新型間接税導入国会決議に沿うとまで述べておるわけです。  この発言にはずっと一連性がありますか、どう思いますか。
  10. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 まず、昭和五十四年十二月の国会決議の問題を特に重点的に御質問でございますが、私はいつも申し上げておりますとおり、あの決議というものは、主人側、私は国会で指名された行政機関の長で、ございますから、主人側決議というのはいわば私ども行政府に対して拘束力を持つものであるということはいつも考えております。  ただ、いささか誤解仲を生みますのは、財政再建手法として、いわゆる一般消費税(仮称)によらないで、そこで行政改革をやりなさい、歳出の節減合理化をやりなさい、さらには税制抜本的改正をやりなさい、その手法の順序からして税制改革を否定するものではないというふうなことを私なりに申しておるわけでございます。  ただ、国会決議解釈というのは、これは有権解釈はあくまでも国会そのものにあることでございますので、その決議解釈そのものを私が余り定義づけるわけにはいかない立場にあろうかと思うのでありますが、素直にそういうふうに私なりに読んでおるということと、当時たまたま私が大蔵大臣でありましたので、偉い先生方がお集まりになって決議をおつくりになるときのオブザーバーとして参加しておりた幾ばくか体験から、私なりの素直な感じを申し述べておるということでありまして、国会決議そのものは、あくまでも有権解釈国会、具体的に言えば議院運営委員会でやられるべきもので、私が国会決議そのものの定義まで言うのは差し控えるべきだろうと思っております。
  11. 村山富市

    村山(富)委員 今いみじくもお話がございましたように、国会決議の有権的な解釈については、これはあくまでも国会が決めるのです。私はあなたの発言を聞いていまして、この国会決議でおとりになっているあなたの見解というのは、新型間接税導入は当たって都合の悪いものを歪曲解釈することによっていいところだけつまみ食いしてすり抜けようとしておる、極めて悪らつな意図によるものであると私は言わなければならぬと思うのですよ。  たまたま私は歪曲という字を調べてみましたら、歪というのは不正と書くんですね。広辞苑を見ましたら、こう書いてあるのですよ。歪曲とは「正しい事実をゆがめ曲げてわるくすること。」あなたのこの決議解釈は全くそのとおりじゃないですか。正しいことを曲げて悪く解釈しているじゃないですか。私は、広辞苑で言っているそのままだと思うのです。  あなたは、国会決議は重く受けとめています、こう言っていましたね。その重く受けとめるという意味は、どういう意味なんですか。国会決議された決議解釈は議運がする、国会が決める。その国会解釈も聞かないままに、勝手にあなたがつまみ食いして歪曲をして、そして自分なりの見解を述べられて、重く受けとめる、こう言っているわけです。その重く受けとめるという意味は、やはり国会決議は守らなきゃならぬものだというふうに受けとめているわけですか。どうなんですか。
  12. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これはいつも申し上げますように、行政府の長たる内閣総理大臣を指名するのは国会にあるわけですから、主人が決めた国会決議というのは、これは使用人を拘束するものだというふうに私は考えております。その点だけは筋をちゃんと立てておるわけでございますが、今、歪曲、確かに正しいことを曲げるという広辞苑解釈は、これはあるいはまた曲解であるかもしらぬ、私の方は極めて素直な解釈をしておるかもしらぬ、こういうふうにも考えられます。
  13. 村山富市

    村山(富)委員 ここで押し問答をしてもしようがないけれども、今私はあなたの答弁を聞いていまして、なるほど言語明瞭、意味不明瞭だなと思いましたよ。これはやはり私は、行政府の最高責任者として、特にあなたは経験豊富な議会運営を任じているわけですから、もっとこういう決議の扱いについてはまともに受けとめて、きちっと守ってもらわにゃいかぬというふうに思いますから、そのことだけは一言申し上げておきます。  今、税制改革問題が一番大きな政治の課題になっておるわけでありますけれども税制改革を求める国民の声は、あなたがおっしゃるように相当高まっていると私も思います。しかし、税制改革という言葉は同じでも、税制改革を求める中身が違うんじゃないですか。これは今恐らく国民の皆さんは、自分が払っておる税金を適正公平だと思っている人はほとんどいない。内閣総理大臣官房広報室が六十一年二月に実施した「税金に関する世論調査」を見ますと、不公平感を訴える人の回答率がサラリーマンを含めたあらゆる業種、階層を通じて七〇%以上、最高で九六%に達していることが示されております。このことを示しているわけですね。そこで、多くの国民は、不公平を正せ、こう要求しておるわけですよ。それを期待して税制改革を求めているわけです。  政府はそうではなくて、その国民の声を逆手にとって、すりかえて、大型間接税を導入しようとたくらんでおる。ここに同じ税制改革という言葉を使いながら、あなた方がやろうとしておることと国民が期待していることとは違うのですよ。そのことを私はしっかり認識をしてもらう必要があると思うのです。  このことは、政府も今までこの委員会における質疑の中で、税制改革は不公平税制の是正をやります、不公平税制の解消をします、こう答弁をされております。今度の税制改革の目的の中に、不公平税制を解消するという目的がありますか。
  14. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その点はかつての国会決議でも言われたことでございますし、また、税制調査会が先般公聴会に臨まれるに当たりまして委員の中で一種の思想統一をされた、その中にも不公平感の是正ということが述べられております。
  15. 村山富市

    村山(富)委員 あなたもこの委員会における質疑の中で、不公平税制を解消したい、解消する、こういう意味の答弁がございましたね。これは総理の答弁とは、聞いていると若干違うのですよ。総理は、不公平感が存在する、できるだけそれを薄めたいと思います、こういう意味の答弁ですよ。あなたは、不公平税制を解消をする。どっちをどういうふうに理解したらいいのですか。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、正確に申せば総理の言われることが私は正しいと思いますのは、国会でお決め願った税制が、現在ある税制が不公平であると申しますことは、それは行政にある立場としてはやはり差し控えるべきではないか、そこから出ている現実に不公平感があるということを何とかしたいと申し上げる方が正しい言い方ではないかというのが、総理が言葉を大変に気をつけて使っておられるゆえんであると思います。  先ほど申し上げました税制調査会の「税制改革の基本課題」、二月五日のものでございますが、その中には、「サラリーマンの重税感、不公平感を解消するための不公平税制の是正及びより一層の所得税・住民税の減税。」と書いてございます。ここは「不公平感」ということと「不公平税制の是正及び」云々と言っておりまして、ちょっと言葉を両方に使っておられますが、いずれにいたしましても、現実に不公平感が納税者の間にあって、その原因はやはり税制を改めることによって除去しなければならない、こういう問題意識であることは間違いないと思います。
  17. 村山富市

    村山(富)委員 不公平感が存在して現実の税制の中に不公平的なものが存在しておる、これは改めなければならぬ、こういうお話ですね。そこで税制改革を今やろうとしているわけですね。  それでは、今ある税制の中でどういう点がこれから改革をしようとする不公平の税なんですか。そのことを私は明らかにしてもらいたいと思うのです。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 便宜ただいまの続きを御説明申し上げますと、まず、サラリーマンの重税感、不公平感を解消するため所得税・住民税の減税。次に「資産に対する課税の適正化。」がございます。「有価証券譲渡益に対する課税及び公平な執行を担保する方策。」次に「相続税についての軽減・合理化。」第三に「土地に関連する税制の見直し。」れらはすべて不公平感に直接関係をするものでございますが、もう一つ、「現行個別消費税体系の矛盾を是正する方策」「我が国に適した課税べースの広い間接税の導入の」これは「是非」、導入と言っておりません、「是非」と言っておりますが、これらのことであろうと思います。
  19. 村山富市

    村山(富)委員 今おっしゃったのは、政府税調の基本問題小委員会が決めた「税制改革の基本課題」ですね。そうですね。  私が聞いているのは、あなたはこの委員会で、不公平税制を解消する、こう答弁されたのですよ。だからあなたも、今の税制の中には不公平があるというふうにお認めになっているのでしょう。あなたが考えて、この点は不公平だ、この点は改める必要があるというふうに考えて検討されれているのじゃないですか、その検討されている税はどういうようなものですか、こう聞いているわけですよ。
  20. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま調査会の「基本課題」をかりて申し上げましたが、私どもこれにつきましては認識を一にしておりますので、政府といたしましては、調査会の御努力にもお願いをしまして、ただいま御紹介いたしましたような点につきましての是正を図りたいと考えております。
  21. 村山富市

    村山(富)委員 私はこれから税制問題を議論するのに、政府は一体何を考えているのか、何を対象に不公平と認めて改めようとしておるのか、これはたくさんあると思うのですよ。検討した結果、これはできなかった、これはできたというようなことがあるかもしれませんよ。しかし、今検討しておる不公平の税はこんなものだ、これは改めなければいかぬと思って検討しているものはあるのでしょう。それを明らかにしてくださいよ、全部ずっと。それがなければ質疑できぬじゃないですか。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは、多少長くなりますが、お許しをいただきたいと思います。  昨年抜本改正をお願いいたしました中に私どもの考え方がかなり出ておるわけでございますけれども、クロヨンという言葉の正確さ、当否は別といたしまして、やはり所得税、殊に中堅サラリーマン等々に重税感が非常に大きい、それに対して事業所得その他の所得は果たしてどうであろうかという、よそとの不公平感がございます。これは、やはりその事業所得等々に対する例えばみなし法人の問題であるとか、そっちの方から直すべき問題も具体的にあるわけでございますけれども、所得税そのものの累進構造であるとか、やはり例えば昨年お願いをいたしました配偶者特別控除であるとか、そういうところから直すべき点が幾つか所得税そのものにある、住民税でもそうでございますけれども、それが第一と思います。  次は第二に、資産に対する課税が十分であるかどうかということについても問題があるということは、例えば有価証券の移転につきまして、譲渡益に対する課税につきましてしばしば当委員会でも御指摘がありまして、これにつきましては昨年一部重課をいたしましたが、行政を全からしめるためにはやはり何かの担保する方策を考えなければならないというのが私どもの問題意識であります。  相続税につきましても、昨今の土地の値上がりが急激であることのほかに、昭和五十年以来改正をいたしておりませんから、社会の変化に即応していないところがある、また、それと別に土地そのものに対するいろいろ関連の税制が必ずしも公正感を与えていないのではないか、このような点があると思います。  それからもう一つは、個別の間接税と申しますのはただいま物品税でございますが、税額の半分を自動車が占めておる、残りのまた非常に大きな部分をいわゆる家庭電気製品が占めておるということは、かつての物品税からいうといかにも税目が限られてきてしまって、一部の商品が非常に大きな税金を背負っておる、あるいはそれを消費する人が非常に大きな税金を背負っておることから、対外的にもこれは輸入障壁であるといったような議論を呼んだりいたしておりまして、ここらにも問題がある。  これらが私どもの改めたいと思っている点でございます。
  23. 村山富市

    村山(富)委員 私はやはり直接税、今ある物品税、いろいろな税制の中で、これはどうしても不合理だ、これは不公平だというようなものがずっとあると思うのですよ、今お話があったようなものも含めて。今あなたがおっしゃったのがすべてじゃないでしょう。ひとつ、これから政府が不公平を解消するために検討しておる税の項目について、全部資料で出せますか。
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、たびたび申し上げておりますとおり、昨年の抜本改正がお認めいただけずに廃案となりましたその事態にかんがみまして、再度それにかわる将来に向かっての抜本改正を御提案を申し上げたいということを考えつつ税制調査会等々においてただいま御審議をいただいておる、その御審議のいかんによりまして御提案する時期そのものをはっきり申し上げ得ないというのが現状でございますので、ただいまのようなことをそれに先んじまして申し上げることは、事の本来から申しますと差し控えるべきことであろうと存じます。
  25. 村山富市

    村山(富)委員 国会税制改革問題で議論をされておるわけでしょう。その質疑の中で不公平税制を解消する、こういう答弁があったわけですよ。あなた、されましたよ。解消するということは、存在しているから解消するのでしょう。その存在しているものは何なのか、それを明らかにしてくださいというのに、できないのですか。そうでなければ私どもは、やはりこれだけ不公平税制を是正してくれという国民の声があるわけですから、その国民の声に、期待にこたえにゃいかぬ、国会では議論せにゃいかぬ。議論する際に政府の方の見解がまだ明確でないというのでは、これは議論のしようがないじゃないですか。だからそういう意味では、私はやはりさっき言いましたように、検討した結果どうなるかそれはわかりませんよ、わからないけれども、少なくとも政府なり大蔵省が今ある税の中ではこういうものが検討に値する不公平だなというものがあるはずですよ。それを全部出しなさい、こう言っておるわけですよ。
  26. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほど私が申し上げましたことが大局的に申し上げまして不公平感を解消したいと思われる幾つかの項目でございますけれども、それを具体的に申し述べるということになりますと、それにつきまして政府がどうしたいかということをおのずから申し上げることになろうと思います。それはしかし、政府が税制改正の形で御提案をするということで御審議をいただくべきことであろうかと思います。
  27. 村山富市

    村山(富)委員 いや、それは結果が決まってから国会に提案するというのでしょう。だけれども、その提案をする前に今検討しておるわけでしょう。それは、税調が今公聴会をやっていますね。それは公聴会で議論してもらうこともいいでしょう。国会でも大いに議論せにゃいかぬというので議論しているのでしょう。公聴会は、政府税調がどう考えているという考えを出すかもしれませんよ。国会は政府が対応しておるわけですから、政府がどう考えています、何を検討していますというようなことを出してくれるのは当然じゃないですか。そうでなければ議論できませんよ、これは。
  28. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 政府税制調査会におきましても、どういう問題が不公平感を生んでいるかということについてただいま御検討中でございますから、そういう意味では、その御検討を待ちまして政府としての見解を御提案の形で申し上げたいと思っておるところでございます。
  29. 村山富市

    村山(富)委員 それでは国会審議のしようがないじゃないですか。今政府税調がこれをいろいろやっています、その結論を待って、そして政府はまた検討してからまとめて国会に出しますと。では、それまで税制問題については国会の中では議論のしようがないじゃないですか。議論できないじゃないですか。国会でも大いに議論していただきたい、こう総理は言っているのじゃないですか。しかもこの委員会の中で、あなたははっきり言ったのですよ、不公平税制を解消すると。それなら、今検討している不公平税制の項目というのはわかっているのじゃないですか。だから、政府はどう考えて今不公平税制をやろうとしているんだなと、そのことを受けて私どもは十分検討して、そしてお互いに十分議論を尽くして、いい結論を出していくというのが国会の任務じゃないですか。明確なお答えをしてくださいよ。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどお時間を拝借して、多少長くなりましたけれども、所得税、住民税等に関し、あるいは資産について、有価証券譲渡益、また相続税、土地、個別の消費税体系等々につきまして申し上げたところでございまして、これらが私どもが不公平感のだ存在しておると考えております、問題意識を持っております領域でございます。その中で具体的に何がどうかということになりますれば、それはただいま税制調査会でも御検討願っておりますが、いずれ政府の最終的な見解をまとめまして、不公平感が存在すればそれを直さなければならないのでございますから、政府の御提案の形で御審議をお願いいたしたい、こう考えておるところであります。
  31. 村山富市

    村山(富)委員 少し受けとめ方の理解が違うかもしれませんけれども、政府税調は政府税調の立場で、今公聴会をやったりして国民の声を聞いているわけでしょう。政府は政府で国会に対して対峙してお互いに議論をしているわけでしょう。その議論の中に議論の対象になるようなものを積極的に出し合わなければ、これは議論になりませんよ。それなら、政府税調が結論を出すまで国会の議論は待ってくださいというのなら、それはそれでしょう。しかし、それでは国会の任務は果たせませんよ。総理も大いに国会の中で税制問題については議論してください、こう言っておるわけでしょう。私どもはやはり議論し合って、国民のためにいい結論を出すように努力せにゃいかぬ、それが国会の任務だ、こう思っておるわけです。その議論がしやすいようにお互いに協力し合うというのも当然でしょう。  しかもあなたは、たびたび言いますけれども、この委員会で不公平税制を解消しますと言っているわけですから、解消しますという限りにおいては、今の税制の中ではこういう点がなるほどやはり不公平だなということがわかっておるからそうおっしゃるのでしょう。そういうものを出してもらわないと、これは議論のしようがないじゃないですか。それなら、政府税調の結論が出るまで国会の議論は待ってください、そう言うのですか。どうなんですか。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 改めたいと思っている領域はどういうことかというお尋ねでございましたから、先ほどお答えを申し上げました。具体的に何をどうしたいのかということにつきましては、政府が国会にそれを申し上げます前に政府として政府税調の意見を聞きたいと思っているわけでございます。これは、政府と政府税調の関係は政府の内部問題でございますから、税調の意見も聞きまして、その上で政府がよく考えまして具体的に御審議を仰ぎたい、こう考えておるわけでございます。(発言する者あり)
  33. 奥田敬和

    奥田委員長 静粛に願います。
  34. 村山富市

    村山(富)委員 もうくどくど申し上げたくないのですけれども総理も、不公平感が存在すると。不公平感が存在するということは、不公平があるから存在するのでしょう。あなたは、不公平税制は解消すると、こうおっしゃったのです。不公平税制を解消するというその明確な答弁がある限りにおいては、なるほどこういう税が不公平だなということが前提にあっておっしゃったと私は思うのです。  そこで、政府税調の役割と国会の役割ですけれども、政府税調は政府税調の立場で国民の声を聞きながら結論を出していく。国会国会で大いに議論をし合って、そしてどういう方向で税制改革をやるべきかなということを見出していく。その過程の中で政府税調の考え方と国会の意見とあるいは食い違うものもあろうし、一緒になるものもあるでしょう。お互いに任務を持ってやればいいじゃないですか、任務を持って。税制改革について国会で大いに議論してください、こう言われているのでしょう。だから議論をするために政府の考え方も出してくださいよ、資料も出してくださいよ、そうでなければ議論ができぬじゃないですか、そう言ってお願いしているわけですからね。私は、少なくとも項目ぐらいはやはりきちっと示してもらいたいと思うのです。ただ、項目を示したからといって、結果としてそれがそうなるかどうか、それはわかりませんよ、これから先のことだから。しかし、国会の中で大いに議論するためにはお互いに議論のしやすいような資料を提供していくということは当然の話じゃないですか。それを私は求めているわけです。
  35. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 問題の領域につきましてはもう二度にわたりまして御説明を申し上げたわけでございますが、さらに具体的にそれをどう考えるかということをただいま政府部内で検討いたしておるわけでございます。国会は国政の最高機関でございますから、国会に対して責任を負っておりますのは政府でございまして、政府税調ではございません。政府が国会に対する責任を全うするために税調の意見を聞いておるわけでございますから、それを聞きました上で国会に対しまして政府としての責任ある態度を申し上げたい。
  36. 村山富市

    村山(富)委員 いや、そうすると何ですか、政府税調の結論が出るまでは政府としては物が言えません、それまで税制改革の議論は待ってください、そういう意見ですか。
  37. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 再三にわたりまして問題のある領域につきましては私が自身でここで御説明を申し上げております。具体的に何かということにつきましては、さらに慎重を期しますために政府部内で政府税調の意見も徴しました上で政府の責任ある考えを決めたいと存じますので、その上で国会の御審議を仰ぎたい、こういうことでございます。
  38. 村山富市

    村山(富)委員 いや、そうすると何ですか、政府税調の結論が出るまでは国会の議論はできないということですか。
  39. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まことに恐れ入りますが、国会が御議論されますことは、国権の最高機関でございますから、これはもう何なりと政府としてはお答えを申し上げる務めがあると思っております。
  40. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃ、その資料を出してくださいよ。そうでなければ議論できませんよ、これ。
  41. 奥田敬和

    奥田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  42. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を起こして。  本件の処理に当たっては、理事会で協議することとして、質疑を続行していただきます。ただし、総括質疑中に結論を出すという形で続行していただきます。村山君。
  43. 村山富市

    村山(富)委員 じゃ、その上でまた質問をさしていただきたいと思いますが、ただ私は一、二点、こういう点はやはり是正した方がいいのではないかと思われる点について若干申し上げてみたいと思います。  それは、この四月からマル優が廃止されるわけですね。これは言わせれば、選挙公約を無視していますし、公党間の約束を無視してやったんですよ。  その結果どういう現象があらわれるかといいますと、一つは、今までマル優の枠内で預貯金を持っておった人の利子は、これはマル優で無税だったわけですね。そういう方々が今度全部分離課税で二〇%。国税一五%、地方税五%取られるわけでしょう。マル優の枠以上に預貯金を持っておった人は三五%分離課税がかかった。それが二〇%に下がるのです。今まで全然利子に税金がかからなかった、わずかしか預貯金を持っていなかった人が二〇%取られる。三五%納めなければならぬ人は二〇%に下がるのです。これは明らかに金持ち優遇じゃないですか。  しかも、どういう現象が起こるかといいますと、例えば標準家族で夫婦子供二人で四人。この標準家族の場合の年収四百七十七万円までは今度改正されまして一〇・五%の税率ですね。この四百七十七方円の中に利子所得がありますと、その利子所得は確定申告ができれば一〇・五%で済むんですよ。確定申比口ができないために分離課税なんですよ。そうすると、その利子の分の税金は国税一五%、住民税五%。二〇%を納めなければならぬ。これは矛盾じゃないですか。わかりますか。  標準四人家族で四百七十七方円までは一〇・五%の税率ですね。ところがサラリーマンには確定申告ができないんです。だから分離課税で取られるわけです。そうすると、仮に四百七十七方円の中に利子所得がありますと、その利子所得については分離課税で一五%取られるわけです。確定申告をすれば総合課税で一〇・五%で済むんです。そうでしょう。それは矛盾と思いませんか。
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 先般の昨年の臨時国会におきましてこの点を御審議いただきましたときにもいろいろ御議論をいただいた点でございますが、何千万口、何億口という預金利子につきましての課税でございまして、今回新しく郵便局にもお願いをする、地方公共団体にもお願いをする、初めての事務をお願いをするという等々の事情も総合いたしまして、身体障害者、母子世帯、お年寄り、こうした方々につきましてはゼロ、その他の方々につきましては二〇ということで、全体としてのマクロ的な見地から実質的に効率的な、公平な仕組みを御提案をし、御審議をいただき、可決をしていただいたところでございまして、そうした点も十分踏まえた適切な改正であったのではないかと私どもは考えておるわけでございます。  また御指摘のように、でございますから、四百七十七万円以下の方につきましても一〇・五でございますが、国税としては一五、それは平均的には、やはり下に所得があって、その上の利子所得ということを考えますと、国税としては一五%というところが適切な水準ではないかというふうな御提案をいたしたところでございます。
  45. 村山富市

    村山(富)委員 もうわかり切ったことは答弁せぬでいいのですよ。今言ったような矛盾がありますからこういう矛盾はやはり直した方がいいのじゃないですか、こう言っているわけですから。これはまたいずれ時間があったらやりますからね。  それから、標準世帯の給与所得に対する課税最低限は二百六十一万五千円ですね。それから配当所得は五百九十一万七千円なんですよね。一生懸命汗を流して働いて取った勤労所得は今申しましたように二百六十一万五千円が課税最低限です。じっと懐手しておって配当でもらった所得については五百九十一万七千円が課税最低限ですね。これは明らかに矛盾じゃないかと私は思うのです。こういう点は私はまたいずれ議論する場ができましたら議論しますから、一応意見だけ申し上げておきます。  そこで、この不公平税制の問題は後にまた譲りまして、次の質問に入りたいと思うのですが、総理は施政方針演説の中でこういうことを述べられておるのです。「日本は、世界で一、二を争う長寿国となり、まさに、人生八十年時代を迎えております。本格的な長寿社会の到来を控え、公平で安定した社会保障制度の確立を図るため、」云々、こう述べておるわけですね。「安定した社会保障制度」とは一体どういうことを想定しているわけですか。
  46. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大要的なことを申し上げましょう。  将来の社会保障制度の構想、これは二十一世紀初頭の長寿社会に備え、今村山さんお読みになったとおりでございますが、政府が推進すべき長寿社会対策の指針として出したものが昭和六十一年六月の長寿社会対策大綱、これを閣議決定して出した。それで、国会の議論の中ではもう少し年金とか医療とかそういうようなものについての、定量とまでは言わないにしても具体的なものを展望を示すべきではないか、これが国会の議論が行われておるわけであります。  そこで先般厚生大臣からお答えしましたように、およその姿をお示しすることとしておって、今関係各省において鋭意作業をしておるという段階でございます。だから長寿社会対策大綱を閣議決定しておりますが、その大綱に沿って年金と医療等の社会保障を初め各施策の総合的推進というものを永末さんの質問に答えて少し詰めたものをお出ししよう、それを鋭意検討しておるというのが今の段階でございます。
  47. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃ具体的にお尋ねしますけれども、私は国民年金を例にとって考えてみたいと思うのですね。  今、国民年金の加入者は、任意加入被保険者を含めて千九百五十一万四千人おるわけです。だから、年金制度の中ではやはり大変大きな保険になっているわけですね。現在国民年金をもらっている年金額が幾らかということを調べてみましたら、五年年金が二万七千六百二十五円です。十年年金が三万二千四百五十円ですよ。最も長く加入しておって最高に今もらっている人の年金額が四万六千三百円。今、国民年金をもらっている人の平均年金額は二万八千八百十八円なんです。 これじゃ老後の生活はできないのじゃないですか。公的年金が二万八千八百十八円ですよ。  しかも、今度の予算を見ますと、〇・一%物価スライドしておるわけです。年金額は五十九円上がったんです。そして掛ける保険料は三百円上がっているんですよ。平均二万八千八百十八円の年金額をもらっている人ですよ。この人たちの年金額が五十九円上がったんです。そして納める掛金は三百円上がったんですよ。マイナスじゃないですか。これが今の国民年金の実態なんですよ。物価が安定していることは結構ですけれども、このままずっと物価が安定していますと、物価スライドですから年金額は上がらないわけです。掛金だけは確実に三百円ずつ上がっていくんですよ。これが国民年金の実態なんです。  営々と四十年間国民年金の掛金を掛けてきて、今、月七千七百円ですから掛けてきて、そして六十五歳から国民年金をもらうようになったら、仮に五万円としますと年間六十万円ですよ。これじゃ老後の生活できませんよ。生活保護をもらわなければならぬですよ。生活保護をもらわなければならぬような公的年金が年金と言われますか。総理、どうですか。これは厚生省の問題じゃないですよ。——まあいいわ。あなた答えるなら答えなさい。
  48. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 今御指摘のように、国民年金の加入者は他の年金制度に比べて老後の保障について考えると非常に低いじゃないか、こういう御指摘、それはそのとおりだと思うわけでございます。  ただ、これまた非常によく御存じのとおりでございますが、基礎的年金は国民生活の基礎的部分をカバーする、こういう考え方でございまして、さらに、国民年金の加入者について言えば、御指摘のように他の年金のように比例報酬部分がない、いわゆる二階建て部分がない、その点の御指摘であろうかと思うわけでございますが、その点については今後十分に検討していかなければならない、また改善していかなければならない大きな課題であると考えております。
  49. 村山富市

    村山(富)委員 今言いましたように、四十年間掛けてきて、六十五歳から年金もらって生活保護をもらわなければならないような生活になるんですよ。これが国民年金の実態なんです。だから、今厚生大臣から言われましたように、これじゃやはり私は公的年金とは言えないと思うのです。  しかも、現状を見ますと、もう国民年金なんか掛けたってしようがないと言って若い人はもう国民年金から遠ざかっているのですよ。そしてしかも所得の低い方々は、なるほど申請免除、法定免除という制度がありますね。この申請免除、法定免除で免除されている人が何ぼあるかといいますと、一一・九%あるわけです。滞納者が一七・九%。三割近くがもう今掛金を掛けていないのです。しかも、うんと金を持っている高額所得者はもう国民年金なんか相手にしていないのですよ。みんな民間の保険会社の年金に入るのですよ。だから国民年金の実態というのはもう崩れていきよるのです。  そういう現状を考えた場合に、今厚生大臣からお話がありましたように、少なくとも基礎年金というのは共通した基礎年金なんだから、この部分はやはり国が最低生活が保障できるような意識でもって位置づけをする、その上に個人営業者も商売している人も農業している人も、何らかの形で自分の所得に見合って報酬比例部分を設定して、そこに掛金を掛けて被用者年金と同じような年金がもらえるような仕組みというものを検討してしかるべきではないか。こういう検討をすることが長寿社会で安定した社会保障を確立することになるのじゃないですか。どうですか、総理大臣、あなたお聞きになって。
  50. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今おっしゃる大筋そのとおりでございまして、したがって、公的年金制度に関する関係閣僚懇談会、これに七十年をめどに公的年金制度を一元化するという方針を再確認して、いま一方、六十四年の次期財政再計算期において地ならしすることができるものは地ならしするという申し合わせが行われて、そうして関係各省で具体化が進められておる。したがって、そういう構図を描いて、そうなると、あるいは六十四年の国鉄共済の問題も村山さんお考えになっているかもしれませんが、それはそれ、別として、年金一元化問題については今おっしゃったような考え方佐基づいて昭和七十年度をめどとして制度を一元化しようということが今基本的な方針として協議が進められておる。その前段階の、これのもとになりましたのが、ちょうどきょう傍聴席にいらっしゃいますが、大原さんを中心とする年金プロの、年金プロと言っては、まあ年金プロですね簡単に言うと、その方々のお集まりで構築された理論に基づいて今それが進められておるという段階ではないかな、こう私は問題意識を持っております。
  51. 村山富市

    村山(富)委員 今、私は具体的に国民年金のことを言ったわけです。やはり国民年金もそういう年金の体系に変えていく必要があるのではないか、そうでなければ基礎年金というのは魅力がなくて、もう崩れてしまいますよ、国民が投げ出しますよ、こう言っているわけですからね。そういうものも含めて検討したいというように思いますか。
  52. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 しかし、あの基礎年金を構築するときは、やはりそれは皆一生懸命で相談して、あれは悪いことをしたとは決して思っておりません。が、今おっしゃった魅力が薄らいできているのではないかとか、こういう御指摘、私も理解できないものではございません。  したがって、最終的にはやはり公的年金制度の一元化というものを七十年をめどにやるのですから、今のおっしゃった理論等でこれからまさに関係閣僚で、年金担当大臣というものもできておるわけでございますから、これから進めていこうということであります。
  53. 村山富市

    村山(富)委員 やはり基礎年金ですから、この基礎年金という土台が崩れたら年金の体系はがらがらっといきますよ。そういう大事な位置づけになっておる年金であるだけに、私はやはり国民が期待し魅力を持てる、そして国民も協力して年金を盛り立てていく、こういう仕組みに変えていく必要があると思います。  これ以上言ったって、なかなか総理も口を割りませんから先へ進みます。  その次に、今度は国鉄の、今お話があった共済年金ですね。これは一応六十四年まではめどがついておりますね。六十四年まではめどがついておりますけれども、今国家公務員やらあるいはNTTやら日本たばこやら等々が金を出し合って財政調整をしてカバーしておる。これも六十四年で切られるわけです。  試算を見ますと、六十五年以降は毎年三千億円ぐらい財源不足があるわけですね。国鉄の関係者というのは大変不安に思っていますよ。ある意味では、国鉄というのはやはり戦前、戦中、戦後を通じて日本の経済復興のためには大変な大きい役割を果たしているわけですから。一番おったときは六十二万人おったのですよ、六十二万人。今は二十六万人しかいませんからね。だから成熟度がうんと高まって、そして金が払えなくなったのでこの結果になったわけです。それだけに、どんなことがあってもやはり優先してこの共済年金の財源を確保して払わなければいかぬ、こういうふうに思うのですが、六十五年以降はどうなさるつもりですか。
  54. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 六十四年度までは、御承知のように処理をいたしております。六十五年度以降の問題につきましては、基本的に公的年金に対する国民の信頼を確保する上で、この国鉄共済年金の問題については処理をしていかなければならぬというふうに基本的にまず考えております。  これからの進め方といたしましては、日本鉄道共済年金問題に関する閣僚懇談会がございまして、その中に鉄道共済年金問題懇談会を先般つくりまして、有識者によりましてこの国鉄共済問題についてどのように進めていくかということについて今御相談をいただいておるところでございまして、秋ごろにはこの御返事がいただけるわけでございます。その内容を踏まえまして、我々といたしましても関係者の御協力もいただきながら十分に対応してまいりたい、かように考えております。
  55. 村山富市

    村山(富)委員 今まで、先ほどお話がありました大原先生の質問に答えて、「その後速やかに対策を講じ、支払いの維持ができるよう措置いたします。」これがその当時答えた政府の答弁なんですね。  確かに六十四年までは、今申しましたように支払いの方法は決まっているわけです。しかし、六十五年以降は皆目見当がついていない。しかも、六十五年以降どうなるかというと、一年間に三千億円近い財源不足があるわけです。それを今言われたような答弁だけでは、ああそうですかと引き下がれませんよ。あれからもう年は経過しているわけですから。あなたが今答弁されたのは、そのときに答弁された答弁と全く一緒じゃないですか。全然進歩も何もないじゃないですか。検討もしていないんじゃないですか。  しかし、これは厚生大臣が答弁するのは無理じゃないですか。あなたは国鉄共済年金のことを詳しく知っていますか、いや、大変失礼だけれども。これはむしろ大蔵省が担当でしょう。どうですか、どうするつもりですか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま藤本大臣が御答弁されましたように、これは年金問題担当の大臣のもとに関係閣僚が集まりまして協議をいたしました。その結果、各界の有識者にお願いをいたしまして懇談会をつくっていただきまして、それを今藤本大臣の言われましたように、文字どおり各界の方が入っておられますので、この問題をどうするかということをただいま懇談会で御検討をいただいておりまして、その御答申をいただいて政府の閣僚懇でも将来の問題を考えよう、今こういう中途の段階におります。藤本大臣がその御担当の大臣でおられるわけでございます。
  57. 村山富市

    村山(富)委員 それじゃいずれにしても国なりあるいはこれは清算事業団が今担当しているわけですから、国なり清算事業団で責任を持って優先的に共済組合共済年金は確保します、支払いができるようにしますということは答弁できますか。
  58. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 最初にお答え申し上げましたように、公的年金に対する国民の信頼性を確保するためにこの国鉄共済問題については処理をしていかなければならない、これはもう大前提でございます。  手順につきましては先ほど御答弁を申し上げたとおりでございまして、その秋の有識者によります懇談会の結論を伺いまして、十分に対応してまいりたいと考えております。
  59. 村山富市

    村山(富)委員 いやいや、もう経過はいいですよ。懇談会でいろいろやっていくことも知っていますよ。ただ、結論としては、今多くの関係者はうなるんだろうかと不安に思っているわけですから、心配なく、国と清算事業団が責任を持って措置をしますということの約束をしてくださいというのです。
  60. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 最初申し上げましたように、公的年金に対する国民の信頼を確保するために十分に努力をしてまいる、そういうことでございまして、先生の言われていることと私の答えは同じだと思います。
  61. 村山富市

    村山(富)委員 全然違うよ。努力しますと言ったって、こういうことをして努力して必ずそうしますと言うのならいいけれども、努力してますというのは違うじゃないですか。私が言っておるのは、どのようなことになろうとも共済年金の支給については国と清算事業団で責任を持って措置をします、御心配なく、こういう答弁をしなさいというのだ。ちゃんと教えてあげているんだ。
  62. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 表現の違いでございまして、先生の言われるとおりでございます。
  63. 村山富市

    村山(富)委員 言われるとおりですね。それなら最初から言われるとおりと言えばいいのに。  それから、年金の問題はたくさんあるのですけれども、やはり私は、総理、閣議決定というのは七十年までに一元化を完了する、こう言っているわけですね。こういう決定なんです。その七十年までに一元化を完了するためには、やはり国民年金の問題やら、あるいは今申し上げました国鉄共済年金の問題やら、やがて日本たばこもそうなるでしょうねの問題やら、そういう問題を解決しなければならぬ、そうでなければ一元化できませんよ。  あなたはかってこういう答弁をしていますね。理論的には一元化は可能だけれども現実的には困難だという答弁をされたこともありますよ。そういうことだけに、私はやはり今申し上げましたような問題をクリアしていかなければ一元化は難しいのではないか、こういうふうに思いますから、そういう点はひとつ十分意見として申し上げておきます。  それから、もう時間がありませんから進みますけれども、厚生年金の今もらっている年金額の平均というのは十二万八千円です。それだけに、この企業年金の持つ重さというのは大変大きいものがあると思うのです。あなたもわざわざ施政方針演説の中で、企業年金の育成をしなければいかぬということを述べられていますね。そういう観点から申し上げまして、この企業年金の問題について若干お尋ねしたいと思うのです。  最近の新聞を見ますと、大蔵省と厚生省が金融業界を擁護するかどうかで縄張り争いをしている、こういうような新聞報道がありますね。二月十九日の新聞なんか見ますと、年金基金の資産運用についで、生命保険業界、信託業界、それから都市銀行等々が対立した格好になって、一方に大蔵省がつき、一方に厚生省がついて縄張り争いをやっておる、こういう新聞報道もされておりますね。総理が施政方針でわざわざ企業年金の育成ということを言われたことは、そういう金融業界を育成するために言われたことじゃないでしょう。やはり企業年金がまともに勤労者のために老後の生活が保障できるようなものにしていこう、そういう意味で大事だから育成しなければいかぬ、こういうふうに言われたと思うのですが、その点はどうでしょう。
  64. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大分私も今記憶を呼び戻してみますと、昭和五十八年でございましたか、今先ほど議論のあった国鉄共済救済といいますか、国家公務員等共済組合法の改正をしていただいた、すなわち電電とか専売とか、要するに国家公務員で、労働者連帯という言葉をそのころ使わせていだきましたが、労働者連帯というもので六十四年までの構築をしてもらったということです。  そのころ私いろいろお答えしているのを整理してみますと、そのころはじゃその次はすぐ地方公務員に広げていくのではないか、こういう議論がありまして、したがって、労働者連帯の精神というものは大変大事でございますけれども、今そこまでは考えておりませんということを私はお答えしてまいりました。  その次の段階が、第二段階がいわゆる先ほど来国年、厚年の基礎年金導入、あれが第二段階ではなかったかなと思います。それからその次が給付の一元化というスケジュールになって、それが進んでいって公的年金の一元化というものにたどりつく。  それに加えて、最近のニーズから見て、今御指摘がありましたようにいわゆる自立的、公的年金にのみ頼ることなく、みずからの判断で老後生活の安定等そういう問題についての奨励といいますか、する環境をつくっていくことが大事だろうというふうに私は思っておるところでございます。だから、国鉄共済から次は、要するにどんどん進んでまいりまして、今まさはそういう自主的な民間年金等の組み合わせというようなものが今のニーズに対応しておるんじゃないかな、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  65. 村山富市

    村山(富)委員 いやいや、私が今質問しましたのは企業年金のことですね。わざわざ総理が施政方針演説の中で触れていますからね、企業年金を育成しなければならぬということを。ところが最近の新聞なんか見ますと、今言いましたように金融業界の縄張り争いで争奪戦が行われておる、この企業年金基金の運用について。だからそれはあなたが言われたのは、金融業界を育成するために言ったのでなくて、あくまでも老後の生活を保障するために健全に企業年金を育成しなければいかぬといる意味でおっしゃったのではないのですか、こう聞いているわけです。
  66. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 企業年金を育成するというのは、おっしゃったような考え方でございます。  ああして各金融機関がその運用についてしのぎを削っておるとでも申しましょうか、それはまた自由主義経済の中で、むしろ企業年金側から見ればメリットもあるわけでございますから、いろんな議論が行われるのは結構なことではないかと思っております。
  67. 村山富市

    村山(富)委員 それで、この長寿社会対策大綱というものが閣議決定されていますけれども、それを見ますと、その中にもこういうふうに書いてあるわけです。  「公的年金制度を補完する企業年金制度の普及を図るため、企業及び被用者の多様なニーズに柔軟に対応できる条件の整備を推進する。また、将来にわたり安定した企業年金の運営を可能とするため、資産運用の効率化を一層推進する。」こうあるわけですね。  この対策大綱の中身について、これは大蔵省、厚生省、どういうふうに受けとめていますか。
  68. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 本格的な高齢化を迎えまして老後が長期化するわけでございまして、ょり豊かな老後を送っていくためには年金の内容をよくしていかなければならぬ、これはもう御指摘のとおりでございます。ただ、これは非常に御存じの話でございますけれども、公的年金というのは負担と給付が裏腹でございまして、たくさん給付を受けようと思えばたくさん負担をしていかなければならぬ、こういうところに一日つの限界、限度があるわけでございます。  そこで、これから先のことを考えますと、企業年金、この育成に全力を挙げていかなければならぬというふうに考えておりまして、六十三年度につききましては、この改正のために法律案を提出を予定しておるようなことでございまして、十分に育成強化のために、育成普及といいますか力を入れてまいりたいと考えております。
  69. 村山富市

    村山(富)委員 今私が申し上げましたのは、これは厚生省と大蔵省と両方に見解を聞いておこうと思って言っているわけですからね。。この長寿社会の企業年金をそのために育成せにゃいかぬ。「将来にわたり安定した企業年金の運営を可能とするため、資産運用の効率化を一層推進する。」こういうふうに長寿社会対策大綱で決まっているわけですね。こういうふうに決まっておることを素直に受けとめて企業年金の育成を図るとすれば、新聞で報道されているような縄張り争いが起こったり、厚生省と大蔵省がこう新聞で対抗したように書かれたりなんかすることはないと思うのですね。だから、あえて私はこういう対策大綱で決まっておる受けとめ方の理解について両方の見解を聞いておこうと思って今尋ねたわけですから。
  70. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それですと、厚生年金基金の積立金の運用の問題でございますね。先ほどの問題でございますね。(村山(富)委員「企業年金ね」と呼ぶ)はい。ですから、その運用の問題ですね。  今藤本大臣が言われましたように、法律改正を御検討でございますから、よく厚生省と御相談をしてまいります。
  71. 村山富市

    村山(富)委員 それから、これは二月二十三日の新聞の報道ですけれども、この企業年金というのはイギリスやアメリカで大変進んでいるわけですね。こういう情報がずっと流れているからでしょう、欧米の投資顧問会社が年金への参入を要望しておるというふうに報道されているわけです。こういう欧米の投資顧問会社の要望に対して、大蔵省はどのように対応するつもりですか。
  72. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま厚生省で法律改正を御検討中でございますから、その御相談の中でその問題についても考えてまいりたいと思っております。
  73. 村山富市

    村山(富)委員 いや、それは考えてもらわなければならぬことは当然でしょうけれども、こういうことがどんどんそれは考えている間に進んでまいりますよ。ですから私は、やはりここらの段階で大蔵省の見解をちゃんと述べてもらっておいた方がいいのではないかというふうに思うのですが、どうですか。
  74. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 両省で協議中でございますので、また最終的に政府としての見解を申し上げる時期に来ておりません。
  75. 村山富市

    村山(富)委員 これはいずれにいたしましても、さっきから言っていますように、今厚生年金は十二万八千円ぐらいのものですから、本当の意味で老後の生活がそれでできるとは言えないと思うのですね。それだけに企業年金の持っているウエートというのは大変大きいのですよ。この企業年金というのはあくまでもやはり加入者のものなんですよね。加入者のものであるだけに、加入者が主人公なんです、よく総理も言われますように。ですから、その主人公が大事にされるような、主人公の意向が十分反映されるような資金運用というものを考えてもらう必要があるということを前提に私はやはり判断してもらわなければいかぬと思うのですね。  そういう意味で、それだけ意見を申し上げておきますが、縄張り争いをして金融業界から振り回されてもてあそばれるのではなくて本筋はきちっと踏まえて守っていかなければいかぬということだけを申し上げて、もう一遍ひとつ決意のほどを聞かせてもらいたいと思うのです。
  76. 水田努

    ○水田政府委員 厚生年金基金の改正、なかんずく今先生の御指摘の資金運用の問題については現在大蔵省と鋭意協議中でございまして、近く私どもその結論を得て法案を提出できる、このように考えている次第でございます。  それからなお、先ほど、ちょっと技術的な面で大臣の御答弁を補足をさせていただきたいと思いますが、国鉄共済の問題につきましては、解決の方法は大変困難な問題がございますので、国鉄特委で特に社会党の方から、広範多岐な各界の意見を聞いて、国鉄の年金の受給者に不安を与えないように、こういう言葉がございまして、ハイレベルの有識者懇を設けまして現在鋭意御検討を願っているわけでございまして、その支払い遅延を起こさないための方策としては、先ほど先生の御指摘された国の責任という面あるいは清算事業団が追加費用を持つ等の問題も多々あろうかと思いますが、いずれにしましても、関係者が納得できる結論を得るということは非常に難しい問題が多々あるということで、目下それを鋭意有識者懇で御検討いただいているということだけを補足をさせていただきたい、このように思います。
  77. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がないものですから先へ進みますけれども……
  78. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと待ってください。
  79. 村山富市

    村山(富)委員 もうわかりましたからいいです。  今度は医療問題についてちょっとお尋ねしたいと思うのですけれども、老人医療というのは御存じのように無料で出発したわけですね。それがだんだん一部負担が取られるようになりまして、現在は外来で月の最初に行ったときに八百円、それから、入院をしますと一日四百円、これは今までは三百円で二カ月でしたけれども四百円で期限なしにずっと取られるわけです。ですから、それだけ一部負担がふえてきたわけです。これは保険で見てもらえるものです。ところが、それ以外にお世話料というのがあるのです。お世話料。これは調べてみますと、大体平均で月に二万七千五百円。東京あたりでは五万円ぐらい取られるらしいですね、平均して。それがやはり自己負担でかかるわけです。  それから、室料の差額、俗に言われる差額ベッドですね。これが大体一人部屋、二人部屋で平均三千五百五十三円。最高はもっと高いですよ。もっと取られますよ。それから、三人部屋で二千三百七十六円。これは一日ですからね。どうかすると、大部屋でカーテンだけ張って、そして差額料を取っているところもありますよね。ですから、今はもう保険だけではなかなか病院にも入れないという状況なんです。それにかてて加えて付添看護料が平均一日に八千五百円、どうかすると一万円取られるところもありますね。ですから、一カ月入院したら大変な金がかかるわけです。今の制度の中では本当に貧しい人が入院もできないというのが現状なんですよ。そういう状況にありながら、これからどんどんお年寄りがふえていくわけですから、したがって老人の医療費も膨らんでいくわけですね。これは毎年毎年伸びていますから膨らんでいくわけです。この老人医療費をどう賄っていくかというのがやはり大変大きな問題になっているわけですよ。  そして、先般老人保健法が改正されまして、健康保険組合やらそういうところに按分率を掛けて、そして金を拠出してもらう。その負担に耐えかねて、小さな健康保険組合なんかはもう赤字になっておる。保険料を精いっぱい上げて、なおかつ赤字になっておる。こういう現状なんです。ですから、老人保健がもう全部の保険者に負担がかかっにてきている。そして、あっぷあっぷしている。にもかかわらず、国はだんだん負担を減らしていく。これが今までとっている政策なんです。こういう現状をやはり何とかして見直していかなければいかぬというふうに思うのですが、こうした問題の打開について今お考えになっていることがあれば、お聞かせください。
  80. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 老人医療費、これは現状におきましても、また将来にとりましても、医療費全般にとって極めて重大問題であります。今全体の約三〇%が老人医療費でございますから、これの見方、見通し、非常に難しいわけでもありますし、また、これは医療費全体に大きな問題でございます。  今御指摘のようなことで、老人保健法の改正を行いまして六十五年に見直しをしよう、こういうことも決めておる、これも御承知のとおりでございまして、全体の負担の公平を図りながら、今言われましたように、健康保険組合、政管健保等の実情も十分に見まして検討してまいりたい、かように考えております。
  81. 村山富市

    村山(富)委員 医療保険も同じように七十年代に一元化するという方向で今作業が進められていると思うのですね。この老人医療費の負担というものはやはりすべての保険団体を危うくしている、もう負担に耐えかねている、こういう現象をつくり出している。そもそも、老人医療を保険制度でカバーしようとするところに無理があるのではないか。ある意味では、七十歳以上のお年寄りについては国民全部で負担をし合って、老人の医療ぐらい見てあげようじゃないかというので出発したのですよ。ある意味では、社会保障制度の根幹なんですよ、これは。それをやはり保険の仕組みの中で財源をカバーしていこうというところに無理があるのですよ。だから、これは基本的には国が社会保障制度としてちゃんと位置づけて責任を持つというぐらいのものに変えていく必要があるのではないかというふうに私は思いますよ。  そのためには、一つは、やはりそういうふうな考え方の転換をしていくということが大事だ。もう一つは、医療問題というのは、金を支払う側の立場から考えて財源をどうするかというだけの議論ではなくて、医療を供給する側の体制はこれでいいのかということについても議論せにゃいかぬと思うのですね。ですから、俗に言われるような検査づけや薬づけや不正やら何かがあって、非常に医療費は野放しに高まっていくというような現状はやはりどこかで規制をして、そして正常にする必要があるというふうに私は思うのです。その一環として地域医療計画をどうするかとかあるいは家庭医の存在をどう位置づけていくとか、いろいろな議論がされていかなきゃならぬと思うのです。その家庭医の配置等の問題についてはどういうふうにお考えになっていますかということが一つ。  もう一つは、お年寄りというのは慢性病が多いわけですから、したがって、そういうお年寄りに限っては、ある意味では家庭医というものがあればその家庭医に登録をして、そして健康診断から健康相談から健康指導からやってもらえるというような関係をつくっていって、そして今の診療報酬体系で賄うというような考え方は改めてやるような思い切った改善策を講じていかなければ、このまま野放しにしておきますと医療費はどんどん膨らんでいって、もう負担に耐え得なくなるというふうに私は思うのですが、そういう点についてはどうお考えですか。
  82. 仲村英一

    ○仲村政府委員 お答えいたします。  おっしゃるとおり、老人人口がふえまして、残念ながらお年寄りは病気をする確率も高いわけでございますので、医療費が増高するというのは避けられない傾向だろうと思います。一方、医学、医術が進歩いたしまして、今まで治らない病気もだんだん手が加えられるようになるということもあるわけでございまして、おっしゃるように、医療費というものが今後さらに拡大を続けるというのは重大問題として私ども認識しておるわけでございます。  そこで、今おっしゃいましたような医療の供給体制からそれをどのように考え直すかということで、六十年十二月に医療法を改正いたしまして、病床を効率的に活用するというふうなことでの地域医療計画を各県に今策定していただいておりまして、今年度中で八割程度の都道府県がそれをつくるということがございます。  それから、地域医療の中で家庭医的な機能を持ったお医者さんがどんどんふえるということは非常に重要なことでございますので、私どもも先般懇談会を設けましてその結論をいただいておるわけでございますが、今直ちに、おっしゃいましたような登録制に結びつけるかどうかについてはいろいろの問題がまだあると私ども思いますので、さらに検討する必要がありますが、地域の中での患者さんの流れをうまくするということのいわゆるシステム化と申しますか、そういう点については非常に重要なことがございますので、今後もそういう方向でいろいろな工夫をしていくことは必要だと考えておるところでございます。
  83. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がありませんから、また別の場で掘り下げた議論をしたいと思うのです。  次に、シルバーサービスの問題について若干質疑を行つていきたいと思うのです。  厚生省の人口問題研究所の推計によりますと、昭和五十九年には寝たきりのお年寄りが六十万人ぐらい、それから痴呆性の老人が六十一万人ぐらいで百二十一万人ですね。それから、昭和七十五年になりますと、寝たきりが百十七万人、それから痴呆性が百二十四万人。昭和百年になりますと、寝たきりが二百十六万人、痴呆性が二百四十三万人で四百五十九万人、こうなるわけですね。それだけにこういう方々の介護をどうするかということは大変大きな問題になると思うのです。  そこで、厚生省の方もいろいろな研究会やら何かをつくっていろいろ検討を加えておられるようです。その考え方を聞いてみますと、これから公的にそういう痴呆性の老人に対するシルバーサービスというのは、自分で負担をし得ない所得の極めて低い人、そういう人に救貧対策としてサービスをしていく。自分で支払い能力のある者は全部、シルバー産業がどんどん入ってまいりますから、そのシルバー産業にお願いをする、こういう考え方ですね、そうじゃないですか。
  84. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 六十二年版の白書の中の記述を念頭に置かれてのお話だと思うのですが、そういう救貧的なものは国でやる、それから所得のある人は民間でやる、そういうふうに誤解されるということは、これは私どもから見れば全然考えてないわけでございまして、そういうことはありません。  また、老後が長期化し高齢者がふえてくる、そういう方々に対して今後どういうサービスをしていくかという問題については、まさに国、地方の公的サービスと民間サービスとがどのように役割分担していくか、そのあたりについてはこれから一つ一つ具体的に考えていかなきゃならない問題だと考えております。
  85. 村山富市

    村山(富)委員 もう現にシルバーサービスの分野に民間の企業がどんどん進出してきているのですょ。私がいろいろ聞いて調べた範囲では、例えば住宅に関連したサービス、一般の有料老人ホームですね、有料老人ホームに入るために、入居するための一時金が大体一千万から三千万ぐらいかかる。そして、入居しますと食事代と管理費だけで月に大体十万円ぐらいかかる。だから、お二人で入りますと二十万円かかるわけです、  それから、介護関連サービスというのを見ますと、ホームヘルパーの方が派遣されますね。そうすると、一時間に大体千円から二千円ぐらい取られるのじゃないですかね。  それから、入浴をさせてもらいますね。何か車で行って、その車を使って入浴のサービスをするらしいのですが、総理、寝たきりのお年寄りを業者が車で行ってそして入浴させてあげるわけですが、それは一回分どのぐらいかかると思いますか。あなたは御存じないでしょうから想定でいいです、大体どのぐらいのものだろうかなあと。
  86. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 想定が余りにも違うと軽べつされますから、お答えを差し控えさせていただきます。
  87. 村山富市

    村山(富)委員 それはそうでしょうね。サービスも行き届いてお年寄りには大変喜ばれていると聞いておりますが、一回に一万円ですよ、一回に。だから、月に三回入ったら国民年金なんかもうすっ飛ぶわけです。その上に、例えば福祉機械器具に関連する業者がどんどん入ってきますね。これはいろいろな機械器具を売り込むのでしょうけれども。  こういう産業がどんどんふえてまいりますから、だからやはり健全なサービスをしてもらうためには健全な企業を育成する必要があるというので、厚生省も融資の制度を考えたり、あるいは減税する措置を考えたりいろいろ検討されていると思うのです。しかし、それにも増して豊田商事みたいな、一番だまされやすい人々が多いわけですから間違いが起こる可能性もあるのではないかというふうに私は思いますから、せめてこれからはそういう分野に対しては、例えばいろいろな意味における情報を老齢者に提供するとか、あるいは消費者の知識経験の不足につけ込んだ取引を迫るなどの悪質な商法、不当な取引をしている者に対しては禁止をするとか、あるいは名前を公表するとか、そういうような予防措置をやはり何らかの形でこれから考えておく必要があるのではないか。そうでなければ、もう過ちが起こったらそれはとんでもないことになりますからね。そういう点は今から十分検討しておく必要があるのではないかというふうに思うのですが、その点はどうですか。
  88. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 シルバーサービスの最も大事な点は、適切なサービスがお年寄りに行き届くということでございまして、御指摘のような心配があれば、これはもう行政指導その他十分に対応していかなければならない、こういう問題だと思います。  また、そういう関係者の倫理観という問題も大きい問題だと思いますけれども、我々の責任において十分に、そういうことがないように、お年寄りが食い物になるようなことのないように十分に配慮してまいりたいと思います。
  89. 村山富市

    村山(富)委員 これは、私は、やはり今からそういう予防措置をある程度講じておかないと、お年寄りというのはこれから一番ねらわれるわけですよ、ある意味では、そういう悪徳業者に。  これは、訪問販売の問題なんかは通産省が関与しているわけですが、通産大臣、今申し上げましたようなシルバー分野に民間の産業がどんどん入り込んでいく、ふえていくという可能性があるわけですね。それで、訪問販売をしたりあるいは文書で送って、そして予約をして売りつけたりなんかするようなことが起こり得るのではないか。だから、今から的確な情報を提供するとか、そういう悪徳業者がわかったら直ちに停止するとか、あるいはまた名前を公表するとか、そういうようなことを今から予防措置として十分考えておく必要があるのじゃないかというように私は思うのですけれども、そういう業務を所管している通産大臣としてのお考えを聞きたいと思うのです。
  90. 田村元

    ○田村国務大臣 シルバーコロンビアその他いろんなことが言われておりますが、今村山さんおっしゃったこと、全く私も同感でございます。
  91. 村山富市

    村山(富)委員 私がこれまで年金それから医療、シルバーサービス、こういうことを具体的にいろんなことを意見で申し上げましたのは、一つは今の現状というものをやはり十分御理解をいただいて、本当に老後を安定した社会保障制度をつくってもらう必要があるという意味で申し上げたわけです。  もう一つは、今度政府が税制改革をやろうとしておる、その税制改革の目的の中にたびたび老齢化社会が到来するということを言っているわけですよ。ですから、老齢化社会が到来をするから、そのために税制改革をする必要があるし、大型間接税の導入をする必要があるのです。こういうことでありますか。
  92. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国民福祉充実のためには安定した財源が必要である、この考え方が一つあります。それから、最近言われております高齢化社会の問題。  本格的な税制改正をほとんど行ってこなかったこの十年間の推移を見ますと、特にガラス張りの勤労者の源泉所得税のウエートの増大が著しくて、他面その裏腹として、個別消費税制度をとる間接税のウエートの低下が顕著であります。また、家計調査における勤労世帯の直接的な負担もしたがってかなり上昇をしておる。そういう意味において抜本的改正が必要ではないかというのも、私は不公平税制という問題から来る一面の考え方として位置づけさるべきであろうと思っております。  そこで、今後高齢化社会というものを予測すれば、いわゆる稼得能力のある者の数が少なくなるということになりますと、この勤労所得というものにどうしてもウエートがかかり過ぎる。そうなると、勤労意欲の低下とか、あるいは納税意欲が阻害されやしないかというような一般論としての考え方があるわけであります。そうなると、勤労の段階のみでなく、やはり消費の段階というものに着目した安定的な考え方というものもこれから協議してみようじゃないかというので、所得、消費、資産ということに対して勉強をしていただこう。きょうは、村山さんの話は、どちらかというと不公平税制の問題はいわば勤労所得と資産所得の間の問題件対して非常にお触れになりました。それば確かに私は結構だと思います。そういう議論が税制調査会へ正確に伝えあれて税制調査会が機能するわけでございますから、そこで今私は高齢化社会に対する財源問題というので間接税の分野からそれを申し上げてみた、こいうことであります。
  93. 村山富市

    村山(富)委員 いや、私は今まで問答の中で理解しておりますのは、これは総理が政府税調に諮問しておる諮問の中にもやはり高齢化社会の到来ということを言われていますよね。高齢化社会が到来することはもう確実なんです。そして、今いろいろ議論してまいりましたように、お年寄りがふえていくことも確実なんですよ。金が要ることも確実なんです。そのために間接税の導入が必要なんですというのですか。それも一つの理屈だ、理由だと。そうですか。
  94. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そういう場合におきまして、いわば勤労所得、直接税についての重圧感というものを感じていらっしゃる方向から必然性を持って出てくるのが消費の段階に着目する税制のあり方というふうに発展していくんじゃないかな、こう思ってお話を申し上げておるわけであります。
  95. 村山富市

    村山(富)委員 そうしますと、今これまでずっと議論してまいりましたように、老齢化社会が到来するから、そのときの負担が大変だ、勤労者の負担も大変になる、だから今から考えておく必要があるんですという理屈ですね。私は、今まで申し上げましたように、老齢化社会が到来して金がかかるから、国費や公費で負担をする分野がどのくらいか、個人に負担をしてもらう分野がどのくらいかということが明確にされる必要があるということが一つです。  もう一つは、高齢化社会というのは、まあ十年、十五年先ですよ、二十年先ですよ。それをあなた方は、伝えられるところによると、秋に臨時国会を開いて税制改革をやって、大型間接税を導入しようというのでしょう。国の予算は単年度予算ですから、ことし入った金はことし使うのですよ。高齢化社会の到来に備えて、その金は蓄積をしてためていくんですというならある意味ではわかりますよ。だけれども、そうじゃないでしょう。だから、私にいわせれば、高齢化社会の到来を口実に使って税制改革をやろうとしているのじゃないですかと言わざるを得ないと思うのですよ。  おとついでしたか、民社党の米択委員が、これは赤字国債脱却のためではないかというようなことを言われていましたね。私も全く同意見ですよ。これはいろいろ資料で調べてみますと、国債が大体百五十九兆円ですか、ぐらいある。それからいろんな防衛費やらすべてを含めた負担繰り延べしたものを総計しますと、大体三十三兆円くらいある。後年度の負担繰り延べ額が約二十一兆円、防衛費及び公共事業の国庫債務負担行為、継続費が約二兆円、こういうものを全部トータルしますと、それは莫大な金になりますよ。しかも、その上に、前の中曽根総理が気前よくやはり諸外国に約束しておるものですから、例えば中南米に四十億ドル、ASEANに二十億ドル、イスラエルに百万ドル、こういう資金の調達を約束しているじゃないですか。こんなものを賄っていくために財源が必要なんじゃないですか。そのために税制改革をやって、もっと薄く広くみんなから負担してもらう必要があるというのでやろうとしているのじゃないですか。そして、今は薄く広くたけれども、高齢化社会になったら金がもっとたくさん要る、そのときには厚くいただきますよというためにやるのじゃないですかと私は言わざるを得ませんよ、どうですか。
  96. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先日から申し上げておりますとおり、高齢化社会になったときに、その費用を保険料で負担するか租税で負担するか、それは選択の問題が確かにございますけれども、いずれの場合でも老人に稼得能力がございませんから、生産年齢人口がそれを負担しなければならないということはもう極めて明らかなことでございます。それは大変なことであろうと実は思うものでございますから、そのことがわかっておりますので、こういう社会の共通の費用は広く薄く、いわば年寄りになる人々も含めまして負担をしてもらわないとこれから来る生産年齢入口の人には大変でございまして、そういう意味ではいわば薄く広い間接税というものがその一つの方法ではないかということを申し上げておるわけでございます。  まだ早いだろうとおっしゃいましても、もう十年余りで二〇〇〇年でございますから、決して早いとは思えない、今からそういういわば広く薄く負担をするという国民的な合意をつくっておくことが大事なことではないかと思っております。それまでにこの金をためておこうというようなことではもとよりございませんし、他方で財政再建を助けるためということも一義的な目的ではないということだと思っております。
  97. 村山富市

    村山(富)委員 もう時間がありませんからくどくど申しませんけれども、高齢化社会になってお年寄りがうんとふえてくればそこで働いている勤労者、いわゆる生産年齢人口の方々の負担が大変になる、だから今からそういう理解と認識を持っていただく必要があるといってPRして、そしてその時点が到来する寸前に何らかの形で税制改革をやってそして皆さんから負担をしてもらうというなら何ぼか話はわかりますよ。だけれども、まあそれは十五年や二十年先の話なんですよ。それを六十四年から税制改革をやって、薄く広くもらわなければいかぬというのはどうも理屈が合わぬじゃないですか。ずっとためていくのならわかりますと僕は言うんだ。ためていくならわかります。ためていくのではなくて、使うのでしょう。  だから、今負担をしている人が、仮に新税が行われたらその新税のものまで負担をして、そして年をとったら年金をもらうでしょう。しかし、年金もわずかなものです。しかも、いろいろな意味で自己負担がふえてまいりますよ、社会保障の。これは今でもそうですから、ふえてまいりますよ。そうすると、今から納めた金は今使ってしまう、これは残るわけじゃないのですから。そして、自分たちが老齢になったらその負担もしなきゃならぬ。税金も払わなきゃならぬ。生活もしなきゃならぬ。どうなりますか。二重も三重も負担がふえていくじゃないですか。  だから、どうも皆さんがおっしゃるのは、高齢化社会の到来のためにという理屈が私にはわからないのですよ。それは今からうんと議論をして、そしてPRをして、そして二十年先のことをよく理解してもらう。そのときには金がかかりますからひとつ協力してくださいと言ってPRをしながら、まあ二年か三年か四年か知りませんけれども、かけて、そして老後に備えていくというのなら幾らか理屈はわかるけれども、何も拙速で慌ててやる必要はないじゃないですか。ある意味からしますと、三百四議席を持っておる、政権の安定しておるこの時期以外にやる時期はないというふうに判断をしてやられるのかどうか知りませんけれども、財政の状況を見ますと、景気はいいというふうに言っていますけれども、しかし内容は、さっき言いましたように、百五十九兆円から借金があるし、繰り延べして払わなきゃならぬ金はあるし、防衛費は膨らんでいくし、いろいろな意味で財政支出はふえていくわけですから、しかも返さなければならぬ金はふえていくわけですから、したがって、そういう財源のためにも必要なんだというふに言えばどうですか。そういうことのために今一生懸命検討しておるのじゃないですか。どうですか。
  98. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、十年、二十年先と言われますが、二十年というよりは十年というふうにむしろ私ども物を考えておりますものですから、余り長い時間が残されているとは思っておりません。話はわかった、そのときにと言われましても、なかなか税金というものは、いざ現実にちょうだいするまでには時間がかかるものでございますので、わかったということでなくて、制度としてつくっていただいて、そして国民にも習熟をしていただくということは大事なことであると思っております。そんなに遠い先のことだとは実は思っておらないわけでございます。
  99. 村山富市

    村山(富)委員 これはもう押し問答になりますから、これ以上言ってもしようがないと思うのだけれども、何遍も言いますが、高齢化社会になると金がかかる、そのときに皆さんの負担が大変になります、だから今からやはり用意して、できるだけ負担が軽減されて済むようにしたいのですという意味でやるのなら、今から金をためていけばいいじゃないですか。そうすれば、そのときに使える金があるから皆さんの負担は軽くなるでしょう。それはしないのでしょう。そのときに金が要るようになったら、そのときにはやはり皆さんから金をいただかなければいかぬわけです。同じ理屈じゃないですか。だから、今から取ろうとする金はどこに使うのですか。高齢化に備えて使うのじゃないのじゃないですかというふうに私は言っているわけですよ。理屈はわかりますか。
  100. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まず、こういう御議論がありまして、政府でもいろいろ世論の動向を見たり国民の御意見を聞いたりしながら、ある段階ではひとつ御提案をして、御審議をお願いしたいと思っておるわけでございますが、そういうことにはやはりおのずからある程度の時間もかかりますし、それからそれを今度施行をしていく、国民が習熟をされるといったようなことを考えてまいりますと、実は余り長い時間が残っていないというふうに思っておるわけでございます。
  101. 村山富市

    村山(富)委員 これはまた後々まで議論が進んでいくと思いますから、私の意見だけ申し上げておきます。  何度も言いますけれども、高齢化社会の到来に備えて国民の皆さんに理解を持っていただく必要があるし、今から金を調達していく必要があるのです、安定した財政基盤をつくらなければいかぬというために税制改革をやるのですというのなら、今から取る税金の中から高齢化社会のために備えていく、金をためていくというのならある意味では理屈はわかります。しかし、今いただいた金は今使われるのでしょう。残る金じゃないじゃないですか。だから、高齢化社会件なって金が要るようになったら、やはり要る金は皆さんから負担してもらわなきゃいかぬのですよ。私に言わせたら同じことなんです。だから、今から取ろうとする金はもっと違うところに使いたいと思ってやっているのじゃないですか、こう言っているわけですからね。私の意見は意見として申し上げておきます。これから議論が深まっていくでありましょうから、そういう点も含めて私どもも大いに議論をさせていただきたいというふうに思っています。  もう時間がございませんから、最後に一つだけ。  外国人労働者の問題が、先般もスリランカの問題で議論になりました。これは法務省の資料を見ますと、「入管法違反事件引渡し・引継ぎ件数」というのがありますけれども、総数で五十七年に三千八百十四件あったものが六十一年には一万五百七十三件にふえているわけですね。三倍になっています。「資格外活動者及び資格外がらみ不法残留者の稼働内容」、不法で働いている人ですね、そういう者の実態を法務省が調べていますけれども、それを見ますと、ホステスで働いている人が三千四百一名、それから土木作業員が八百六十三名、ストリッパーが百三十七名、売春婦が百二十九名、工員が四百八十五名、雑役が二百七十三名、給仕、店員、料理人、その他とあるわけですね。大体こういう業務に働いておる。これが現状だと思うのです。  法務省の役人の人が「ジュリスト」に文章を書いていますけれども、この文章が一番現状をあらわしていると思いますから、ちょっと長いのですけれども読ませてもらいますと、「不法就労外国人の実態を理解するだめの参考にもなると考えられるので、」という前置きで書いているわけです。「被摘発者の性別は、女性が全体の約六割に当たる三五五人で、男性は約四割に当たる二四六人となっている。国籍別では、フィリピン三三三人、パキスタン七〇人、タイ六三人、中国(台湾)五七人、バングラディシュ三七人等の順で一四カ国に及んでおる。」このうち男性の場合は東京都、大阪府、千葉、愛知県等が最も多い。「女性の場合には全国に及んでおり、これは主としてその稼働職種の差異に起因しているものと考えられる。」稼働職種は今申し上げたようなところですね。そして「稼働実態を見ると、稼働の動機は、自発的に稼働先を求めて来た者が二七八人、ブローカー、暴力団等から稼働先を斡旋された者が二一五人であり、稼働期間は、一月以上六月未満」、こういうふうな実態が証明されておるわけです。「このような不法就労の内容から見ると、これら不法就労外国人の存在は、単に労働市場に対する影響だけではなく、風俗や、さらには先般発生したエイズ患者の疑いありと報ぜられたフィリピン女性のケースのように公衆衛生の分野にも悪影響を及ぼすおそれがあり、看過できない。」こういうふうに言われているわけです。  これは、よく聞いてみますと、入国する際にチェックする方法はないと言うのです。出国する場合に、本人がもう帰りたくなって、私は不法で働いていましたと言って申し出る、金は一銭もありませんと言えば旅費を渡して帰さないといかぬ、こういう扱いになるので、出るときには幾らかわかるけれども、入国するときには全然つかみようがないのですという現状ですから、これからどんどんそういう者がふえていくのではないかというう心配があるわけです。恐らく労働省は労働者の立場で、国内の労働事情やら雇用問題やらいろんな関連の中で野放しに受け入れるわけにはいかぬというのは当然でしょう。だといって、これだけ国際化を主張しているときに、全然受け入れないということもやはり無理があるのではないかと思いますので、私はもう時間がありませんから多く申しませんけれども、やはり何らかのルールをこしらえてきちっとする必要があるのでなないか。そうでないと、これは人権問題にまで発展しますよ。現にあるわけですから。  例えばけがをした。けがをしたけれども、不法に働いていますから届け出ることもできない、賃金はもらえない、しかし公にすることができないというので泣き寝入りする人もたくさんある、こういういろいろな問題が派生してきて、日本の国というのは人権も無視されたこういう国なんだということが国際的に言われるようなことになりますと、これは日本の今後の外交上の問題にも発展する、友好上の問題にも発展するというように思いますから看過できないと私は思うのです。  そこで、やはり何らかのルールをつくっておく必要があるのではないかというように思いますし、特に西ヨーロッパの場合なんかは、今はもう西ドイツなんかはトルコの人を、トルコ語を教えて、そうして出国してもらっている……
  102. 奥田敬和

    奥田委員長 村山君に申します。約束の持ち時間が切れております。
  103. 村山富市

    村山(富)委員 はい。しかも、トルコの人なんかの外人を労働力が足りなくてどんどん受け入れたときは、単純労務の方にどんどん入れたものですから、ある意味からしますと、労働情勢の中では差別的なものができてきておるというような深刻な問題もあるように聞いています。ですからこれはまかり間違うと大変大きな禍根を残すというような要因にもなりかねない、こういうことも心配されますので、私はこういう点を一つお尋ねしておきたいと思うのです。  これは、竹下総理もフィリピンは行かれて、アキノ大統領に、多様な角度から検討させていただきたいというような発言もしておるようですから、十分ひとつ内閣として取り組んでもらいたいと思うのですが、現行入管制度では、一たん入国した場合に、不法就労しているのかあるいは不法就労していたのかがつかまえにくい。欧米諸国の場合のように入国許可あるいは居住許可とは別に労働許可の制度を設け、職業安定機関等がチェックできるようにすることを検討すべきではないかというように私は思うのですね。ですから、全然オミットはできませんから、ある程度入国許可した場合は、その入国した者の就業についてチェックできるような、安定所に届け出るとか、あるいはいろいろな手続を経て、そして働けるような、そして日本の労働者と同じような労働条件で働けるような、法の適用も受けられるようなそういうものを考えておく必要があるのじゃないか。ですから私は、今のような野放しの格好でやみで入ってくるのではなくて、何らかのルールをつくっておく必要があるのじゃないかというように思うのですが、どうでしょうか。
  104. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいまの御意見につきましては、今の外国人労働問題に対する一つの御提言であるというように拝聴いたしておるわけでございます。  ただ、労働省としましては、現在の雇用失業情勢の厳しさの中で単純に受け入れるということにつきましては、さらに悪影響を及ぼすというところを大変懸念をいたしておるわけでございますけれども、そのことを踏まえまして、実は労働省におきましては昨年の十二月に、今までは単純労働者を受け入れないというのが原則でございましたけれども、多様な意見もありますので、それらのことを踏まえまして、学識経験者による外国人労働者問題研究会を発足させたところでございます。今鋭意御検討いただいておりますが、この結論が大体三月に出てまいりますので、その後におきましては、それらの結論を踏まえながら調査会等を設置いたしたいと思っております。その際、先生の御意見などにつきましては十分検討させていただきたいと思います。
  105. 村山富市

    村山(富)委員 じゃ、時間が参りましたので終わります。どうもありがとうございました。
  106. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて村山君の質疑は終了いたしました。  理事会の協議により、保留分の質疑を行います。上田哲君。
  107. 上田哲

    ○上田(哲)委員 総理、誕生日おめでとうございます。  総理の誕生日を目指してお約束の大型間接税の定義が御提示されるものと期待して壇上に立ちました。いかがでございますか。
  108. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 上田さんは、私と四歳違いの同じ誕生日でございますので、誕生日は当たって私の答弁をプレゼントしろというと表現は適切じゃございませんが、あるいは期待感もあったかとも思います。が、あのときにお答えいたしましたとおり、非常に理屈の上で批判を受けることを承知の上で、私なりに考え方をまとめてみましょう、こう正確に答えました。  したがいまして、その後、私が国会においてこれまでの発言等を振り返り、勉強してきております。で、なるほど大型間接税という言葉は私自身は使っておらぬなということもわかりましたが、しばらくそれこそ苦悩、苦吟をしつつ、批判を受けることを承知の上でまとめるわけでございますから、いましばらくのお時間をおかしいただきたい、こういうことをプレゼントいたします。
  109. 上田哲

    ○上田(哲)委員 予算委員長理事会における正確なお取り計らいは、大型間接税についての定義である、見解であるとか解釈ではない、明確な定義である、そしてそれを本予算委員会中に提示される、この二点であります。このような御認識のお約束として受け取ってよろしゅうございますか。
  110. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 期待感が、予算委員長の御指摘もそのような考え方を期待していらっしゃるという感じを私自身も受けておりますが、それはまさに定義という言葉に当たるものになるかどうか、それは私自身、率直に自信がございませんが、真心込めて勉強をしてみます。
  111. 上田哲

    ○上田(哲)委員 この問題を提起いたしましたのも、総理がこれを受けとめられましたのも、総理の言われる税制改革について真摯な議論を展開してもらいたい、私どももさまざまな見解がございますけれども税制論議を深める、進める、こういう出発点として位置づけておるわけでありますから、総理の定義は、税制論議を深めるため、進めるために踏み込んだ力強いものであろうというふうに期待をいたしますが、よろしゅうございますか。
  112. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 力強いということも非常にこれはとり方は難しいことでございますが、私の頭の限りを尽くして力強く考えてみようと思います。
  113. 上田哲

    ○上田(哲)委員 言葉のあやになって申しわけありません。もう一遍申し上げますが、税制論議を深める、進めるためのたたき台と申しましょうか、出発点である、こういう強い御認識で提示されるというふうに承ってよろしゅうございましょうか。
  114. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 そもそも上田さんの御提案自身が税制改正を深めるためのものだという前提でお求めになったと私自身理解をしておりますので、これでは深める材料にならぬと言われるようなものを出すわけにいかぬし、したがって本当に苦吟しておるということでございますが、税制改正の論議を深めるためのこれは大事な御提案だという問題意識だけは十分持って勉強させていただいております。
  115. 上田哲

    ○上田(哲)委員 本予算委員会中というお約束でありますから、私は一日も早く、きょう御提示いただくことを期待しておりましたが、そういうお約束でありますから、きょうでなければならぬという言い方には一〇〇%ならぬと思います。必ず本予算委員会中に明確に提出されるというふうに期待をいたしますが、よろしゅうございますか。
  116. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私も常識的に、予算委員会が済んだ後でお答えすべきものじゃないと思っております。
  117. 上田哲

    ○上田(哲)委員 税制論議の出発点たるべく、強く期待をいたします。  それではポンカスをやります。ポンカスについてしっかり議論をしたい。  そこで、瓦防衛庁長官、あなた、たくさん聞きませんから、一点、二点だけ確認をしておきます。  これまでの御答弁を精査いたしますと、ポンカスについては、ガイドラインに基づき米軍の有事来援のあり方を二、三年かけて共同研究する、こういう言葉になると思います。これでよろしゅうございますね。
  118. 瓦力

    ○瓦国務大臣 先般訪米の際に、米国防長官に私の方から申し上げ、さらに国会質疑を通じまして有事来援についてお答えをしておるわけでございますが、有事来援の問題につきまして、今委員お話しのとおり、ガイドラインに沿い研究してまいりたい、かように申し上げております。
  119. 上田哲

    ○上田(哲)委員 結構です。この言葉から問題を進めます。  非常に政府の答弁が揺れておりまして、あいまいでありまして、これではこの問題の本質がぼけてしまいます。そうあってはなりません。出発点は、確認いたしましたように、まあもっと分解をすれば、ポンカスとは、まずガイドラインに基づくのである、そして二つ目は米軍の有事来援のあり方をやるのである、そして二、三年かけて共同研究する、この三つのお考えが表明されたわけであります。  さて、私は、このことを出発点としてしっかりした整理をしなければならぬときだと思っておりますから、六点に分けて整理をいたします。  その第一は、このポンカスはアメリカ議会の承認がなければできないはずであります。アメリカ議会の承認が必要であります。大臣、アメリカ議会の承認は得られるという見通しをお持ちなんですか。
  120. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ガイドラインに基づく研究は、行政措置であるとかあるいは立法にかかわる、そうしたこと、いわゆる前提条件がございますので、有事来援につきましては防衛庁長官の責任において研究をする、そしてその期間はどのくらいかという御質問もございまして、二、三年かかるであろう、こいうことを申し上げたわけでございますが、そうした研究を踏まえながら、あるいは予算に基づくもの、そしてまた立法にかかわる問題というようなものが生起するようなことでありますれば、私は、国会あるいはこれはシビリアンコントロールという大切な手順もございますから、それを踏まえながら御相談をしてまいるということに相なると考えておるわけでございます。
  121. 上田哲

    ○上田(哲)委員 どうも取り違えておられる。アメリカ議会の承認がなければできない規定になっておるはずであります。明確に、イエス、ノーでいいです。
  122. 瓦力

    ○瓦国務大臣 協定上の問題ということに今委員お尋ねでございますが……(上田(哲)委員「いや、協定上の問題じゃない、アメリカ議会の承認」と呼ぶ)アメリカ側はアメリカ側の決定が、日米双方それぞれこれらの問題について検討がなされるわけでございますから、アメリカ議会でそれが承認を得られるかどうかという問題は、いわゆる結論がどういう形になりますか、その状況を見なければなりませんが、アメリカの問題、かようになるわけでございます。
  123. 上田哲

    ○上田(哲)委員 アメリカ議会は承認しなければならぬだろうと言っているのですよ。
  124. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生御指摘のように、アメリカには一九八四年の国防歳出法の第七百六十四条というものがございまして、ポンカスサイトの創設についての追加的なコミットメントというものにつきましては議会の事前の承認がなくては行ってはいけないという条項がございますので、おっしゃるとおりでございます。
  125. 上田哲

    ○上田(哲)委員 長官、これぐらい勉強しなきゃだめですよ。あなた大変なことを一つ言われたんだ。両方の議会の承認が要る。結構なことですな、これは。日本国会の承認も要るということになることをよく覚えておいてください。こういう大事なことを言ってくれたということは、あなたを歓迎いたします。  私が聞いているのはそうじゃない。ポンカスをやるときには、今、防衛局長が明確に答弁したように、アメリカ議会の承認がなければできないのですより。いいですか。ところが、例えば西廣防衛局長がこれまで答えてこられた答弁によると、アメリカ議会は大変消極的であると答弁されておる。アメリカ議会は消極的である。アメリカ議会が承認するかしないかわからないものをやりましょうと約束をしてきたなんという話は、これはどういうことになるのですか。これ一つでも私は大変な間違いだと思いますし、ふらふらしていると思いますよ。とめましょうか。  まあ議論を先に進めますが、大事なことは、ガイドラインに基づきというのがあなたの最初の言葉なんだ。まさしくガイドラインに基づいている。ガイドラインは基づいて、七八年からずっといろいろな研究をしてきた。例えばシーレーン共同防衛計画、例えば日米共同作戦計画、インターオペラビリティー。例えば前者二つは既にアメリカ軍司令官と統幕議長との間で調印をされている、防衛庁の二階の会議室で。しかしこれらは米議会の承認なんか要らないのです。国会にも明らかにされない。しかし、ポンカスは米議会の承認がなければ実施されないのですよ。そんなことをちゃんとやってないでどうするんだということを言いたいが、それはちょっときょうは横に置く。  私が言いたいことは、これだけは確認しなければならないことは、ガイドラインに基づいて研究をいろいろ進めてきたが、見えるところ見えないところ、サインもしてきたが、今回のポンカスについてはそれとは完全にレベルが違うのであって、米議会の承認なしには実施できないというウエートがある。このことだけは正確にひとつ確認をしておいてもらわなきゃならぬのです。これは西廣局長が確認されたから、そのことは重大なことだということを明確に指摘をしておきます。  なぜそうかというと、予算措置が伴うからです。ほかのものは、シーレーンの共同計画だって別に予算は要らないのです。これはプランです、机上プランです、研究です。これは実施を前提とするものだから、議会の承認がなければ金が使えない。ここに大きな違いがある。これが一点。  第二点は、これまでのものと違うのは、これまでのシーレーンであれ共同作戦計画であれインターオペラビリティーであれ、これらは現有勢力の上に基づくプランであります、研究であります。今回は明らかに、日本の防衛構想が変わるとこの前防衛局長は答弁された。戦力見積もりが変わる。これは国会の答弁にもいろいろはっきり出ています。これまでは現有勢力をいろいろ動かしていく計画であった、研究であった。ポンカスは明らかに日本の戦力見積もり、防衛構想そのものの変化を来すのである。この点がこれまでのものとは全く違うのだということを、これはひとつはっきりしておいていただかなければならない点であります。国会としても同じような延長線上の議論では済まぬのです。  先を急ぎますが、第三に、この問題は民間の領域に踏み込まざるを得ないということです。これまでのものはまさに軍事面、軍隊と軍隊の話です。これから先は民間部門に入っていかざるを得ないということになってくるのです。  一遍開きましょうか。これはそれでいいですね。
  126. 西廣整輝

    西廣政府委員 今御質問のうちの二点目、三点目についてお答え申し上げますが、先生のおっしゃっている部分、そのとおりの部分もありますし、また見解を異にする部分もございます。  まず第二点目の従来の研究、例えば作戦計画研究については現有勢力、恐らく先生のおっしゃっているのは米軍でいえば既に日本に駐留している兵力、それを前提にして作戦計画が立てられているというようにおっしゃいましたけれども、決してそうではございませんで、我々が現在やっております作戦計画研究というのは、米側が現に日本に駐留しているものも含めまして、さらに有事来援をする部隊、そういったものも前提にして研究をいたしております。ただ、その際に、あくまでその来る、増援される米側の兵力の規模あるいは時期等については一定の仮定でやっておるということで、その来援時期なり規模というものについて詰めた研究をいたしておらないという意味でございまして、その点は違いますと申し上げたと思います。  それから第三番目の御質問の、民間に関係があるというお話がございました。その点について私は否定いたしませんが、従来の研究が民間に関係がないということは決してない。これは新たに有事来援する部隊が活動する際にも、あるいは現に日本に駐留しておる部隊が有事作戦行動をとる場合にも、民間のもろもろの状況と関連する部分があるいはあるやに思います。その点は新たに来援するもの、あるいはそうでなく既におるものにかかわらず、有事において米軍の行動に関連をして民間とのかかわり合いというものはあろうかと思います。それについての研究というものはそれなりに駐留米軍の地位協定あるいはそれに伴う関連取り決め、それの運用の問題として研究さるべき問題であるということは事実でございますが、ポンカスといいますか有事来援に限って生じる問題ではないということを御理解いただきたいと思います。
  127. 上田哲

    ○上田(哲)委員 若干の修正をしてもいいです。言葉のあやを訂正しても結構です。現有勢力という言葉が非常に厳密な言い方でなかったから、厳密に言うならば米軍の来援と一口で言うけれども米軍の来援というのはアメリカにある軍隊がみんな来るわけじゃないのですから。ハワイの二十五歩兵師団、カリフォルニアの第七歩兵師団、ワシントン州の第九歩兵師団、これはわかっているのですから。これが来てくれるだろうと言われていたのと、これが来ることを前提として戦車やその他をがっちり用意するということは、これは全然レベルが違うのであって、これまでの計算とは違う。おっしゃるように防衛構想、戦略見積もりが変わるということはそのとおりでありますから、お認めいただいたとおり。  さらに、民間がここに入ってくるということを認められたのだが、それは今までもないわけではないと言われている。それは例えば六十一年の防衛白書の中に出ている、明確にHNSと書いてある中に例えば逗子でありますとか、それから三宅でありますとか、さらに思いやり予算というのがここに書いてある。それはだから民間をいろいろ痛めるよというとになっているのだが、ポンカスをやるようになっての民間というのは意味が違うのです。これは明らかに、例えば不動産の貸与、施設改修等の基地保全、演習場の使用許可、航空管制、私有地での演習許可、演習による損害の補償、弾薬、石油等貯蔵施設の提供、道路、港湾、鉄道等の整備及び使用許可。これは今までの逗子に住宅をつくろうか、思いやり予算で労務費を一部員担しようかなどというのとは違うのであります。  民間を巻き込むことになるんだというのはそのとおりだが、少し今までもやっているから変わらないのだというのではない。大きくポンカスを前提とすれば、この民間を巻き込むという度合いは変わってくるわけであります。この点はもう言うまでもないことです お認めになったとおりです。先を急ぎますが、しかし今私が申し上げたのは、民間を包含することになるんだといっても、例えば道路、港湾、鉄道の使用なんというのは、これは大変なことですよ。大変なことなんですが、これは平時HNSです。受け入れ国サポートの平時の状態を言っているのです。  大事な第四点は、このポンカスの研究ということになると、ポンカスをやるときはという話はしていませんよ、まだ研究段階に絞って言っているのですが、ポンカスをやるんだという研究になると、受け入れ国支援の態様というのは今申し上げたような平時のサポートではなくて戦時のサポートにならざるを得ない。これがさっき長官から確認をした二番目、有事来援のためのあり方をやるのですから、有事つまり戦時です、戦時にやってくるときの対応をこちらでどうサポートするかということをやるのですから、これは当然に内容が違ってまいります。  第一点で申し上げたアメリカ議会が承認しなければならぬというのは、予算の支出だからだということですが、予算の支出だということのもう一つの因子は、受け入れ国のサポートが財政面、軍事面にわたってなければならないということを付加しているわけです。だから、これで戦時サポートということになれば、ポンカスということになれば、当然に戦時HNS体制に入らざるを得ない。研究は今私が申し上げたような平時HNS、サポート体制ではなくて、戦時のサポート体制を研究対象にせざるを得なくなってくる。これが非常に大事な四番目の点であります。いかがですか。
  128. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいま御指摘の件につきましても、実は私、若干見解を異にするので残念でございますが、まず申し上げたいのは、このホスト・ネーション・サポート、これは直接的には担当は外務省でございますのであるいは補足される点があるかもしれませんが、私の知り得るところによりますと、おっしゃるとおり受け入れ国援助については平時のものと有事のものがあろうと思います。  そこで、これはアメリカ国防省の同盟諸国の防衛費責任分担に関する報告書、これは一九八六年のものでございますが、私はそれを参考にして申し上げたいと思いますが、その中に平時の、いわゆるピースタイムの受け入れ国援助の中に、「事前配備施設を提供または運用すること」というのがございます。つまり、ポンカスというのは、平時あらかじめ置いておくということで、そのための施設を提供する、あるいは場合によってはそれの維持管理をするということで、これは平時の受け入れ国援助の一つの典型的な例として挙がっているのではないかと思います。そういう意味で仮に、先走った論で恐縮でございますが、ポンカスをやるということになりますと、そういう平時の援助問題というものが生じてくる可能性があるということはおっしゃるとおりであります。  そこで今度は、先生御指摘の有事における、ウオータイムにおける受け入れ国援助ということになめますと、これはいわゆる来援したといいますか、アメリカが派遣した部隊、あるいは既に駐留している部隊も含めてでございますが、戦闘行動することに伴うもろもろの受け入れ国の支援でございますから、確かにポンカス等でより多くのものが来る。現におる、駐留しておる部隊以上のものが来るということで、支援の量がふえていくということはあろうかと思いますけれども、質的には来援した部隊に特有の援助があり、事前から駐留もている部隊にはまた別の援助があるということではなくて、有事行動する米軍に対する受け入れ国側が支援しなくててはならない内容についてこれは同質のものではなかろうかというように考えておりますので、ポンカスということでそれがいわゆるWHNS、戦時における受け入れ国支援の問題に新たな問題を生じてくるということではないのではないかというふうに考えております。
  129. 上田哲

    ○上田(哲)委員 詭弁のきわみであります。いいですか。受け入れ国支援というのは幾つかの態様があるのです。その幾つかの中で、そもそも有事来援というのだって幾つかあるのです。大きく分ければ二つで、いざというときには向こうから空と海で運んでくるということとあらかじめ置いておくということと、この二つです。そして、この二つは分かちがたいのですが、ポンカスというのは持ってくるのですよ、明らかに。いいですか。持ってくるのでも、平時と戦時はそれはあるのです。しかし、防衛庁長官以下何回も答弁されているように、だからさっき私が確認したように有事来援じゃありませんか。平時来援とは言ってないじゃないですか。平時の場合でもさっき言ったように幾つかの問題が出てくる、サポートとしては。  あなた方は、防衛白書の中でだって明らか逗子や三宅その他を含めてHNSという言葉を使っているじゃないですか。しかし今度は、わざわざ米国防長官のところに日本の防衛庁長官が出かけていって、有事来援のポンカスをやりましょう、有事来援のあり方を研究しましょうということになれば、出てくるサポートは何が平時ですか。これは有事じゃありませんか。有事のことを研究しなきゃ何の研究になりますか。こんな詭弁は到底許されない。これはいけないです。はっきりしてください。
  130. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどの御質問では、ポンカスによってWHNS、有事受け入れ国支援の問題が生ずるというような話だったので私申し上げたのですが、ポンカスというのは、有事来援を容易にするために平時から重装備等そういったものを事前に配備をしておくということで、平時からそれをあらかじめ準備しておくというところが非常に特徴的なわけでございまして、そこから生ずる特殊な問題としては、平時からその種装備品等をあらかじめ集積しておくことに伴う施設だとかその維持管理という問題がそれに直接関連して生ずる問題であることを申し上げたわけでありまして、有事来援するということにつきましては、従来から有事来援するものは当然あるわけでございますが、それらについての行動についてはまさに戦時における米軍の日本防衛のためのもろもろの行動に伴う支援がいかにあるべきかという問題で、これは従来から存在しておった問題であろうと申し上げておるわけであります。
  131. 上田哲

    ○上田(哲)委員 全然よくわからない。私は単純に聞いているのですよ。防衛庁がお書きになっているHNSというのは、さっきから言っているように逗子だの三宅だの思いやりだと言っている、こう書いている。それはいろいろな形で、平時HNSとして規定もされているというところで理解をしておきましょう。しかし、今度わざわざアメリカへ行って約束してきたのは有事来援だというのです。有事来援は戦時HNS体制に研究テーマが入っていくのは当たり前じゃないか。そこのことをはっきり聞いているのですよ。イエスかノーかではっきり答えてくださいよ。
  132. 西廣整輝

    西廣政府委員 よく御理解いただきたいのですが、御承知のようにガイドラインに基づく研究というものには三つの研究対象がございます。一つは、日本有事の際に日米が有効な防衛活動をする、そのための研究協議であります。二番目は、いわゆる六条事態、日本周辺の極東地域において日本の安全に重要な影響がある事態における米軍の活動等に伴う諸問題の研究協議というのがあります。それから演習訓練といった問題。そのうち防衛庁が担当いたしておりますのは一番目と三番目の演習訓練の関係でありまして、六条事態の方は外務省が御中心になってやっておるということであります。  そこで、我々そのガイドラインの枠組みに基づきまして、先生御指摘のようにかねがね作戦研究であるとかシーレーン研究であるとか、その種の研究を進めておったわけであります。そこで、先ほど申したように当然作戦の中には、アメリカが日米安保の条約は基づいて各種の支援をしてくれるわけでございますが、その際に来援する部隊としては、単に日本に既に佐駐留している米軍にとどまらず、七艦隊であるとかあるいは陸上部隊、空軍部隊も含めて来援する部隊というものがあって初めて共同作戦が行われるわけでありますが、その数なり時期というものについては、当面その研究というものが進んでおりませんので、一カ月後ぐらいにはこのぐらいが来るだろうという仮定を置きました研究をしておりましたが、これをやはりもう少し詰めないと本当の意味の作戦計画なりその他の計画というものが詰まっていかないということで、我々としてはそれを米側と研究しながら進めようではないかということであります。  一方、先生の御質問の受け入れ国援助の問題と申しますのは、一つの研究に関連してそれをやるということではなくて、米軍の平時、さらには有事における行動は伴う各種の日本側が行うべき支援の問題ということは、それはそれなりに非常に大きな問題点であろうと思いますが、それは必ずしもガイドラインの枠組みの研究対象に果たして入るかどうかということもまだ明確でないし、やられるにしても、これは先ほど来申し上げているように日米安全保障条約に基づく地位協定、さらにそれの関連取り決めの運用の問題として、第一義的にはこれは外務省がまず中心になってお考えになり、我々も御相談にあずかるという代物であろうと思いますので、私どもが今回研究しようとしている有事来援研究の範疇には入らないということを申し上げておるわけでございます。
  133. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁の管轄か外務省の管轄かということを聞いているのではないです、これは。それならひとつ防衛庁も外務省も一緒にした政府の最高責任者から答えていただかなければ論議にならないですよ。ただ、一つ大事なことをぽろっと言われた。ガイドラインの中に含まれるものかどうかもわからぬと。これはまさに私が五点目に指摘しようとしているところなんですが、そこまで広げてしまうと話がぼやける。  はっきりしておきたいのですよ。いいですか。アメリカからハワイの二十五歩兵師団以下もう軍隊の名前はわかっている。そういうものがどっと来援するのです。ヨーロッパで有名な言葉はなっている、身一つ、体一つで兵隊が行けばすぐ戦争ができるように、そのために戦車から大砲からみんな置いておくのだ。大変なことになるんですよ。その研究をしようというのは平時体制じゃないじゃないですか。有事来援のために研究をするのだというのだからこの研究の中には有事HNS問題が、サポート問題が入ってこないじゃ研究にならないじゃないかということ、これははっきりしているんだ。こんなことではだめですよ。こんなばかなことで論議ができると思いますか。これははっきり答えてください。ちゃんとした答えでなければ時間のむだでは私は困りますよ。時計をとめて幾らでも考えてください。頭の上を風が通ってしまえば済むという問題ではありません。重大な問題です。
  134. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 私、もしおっしゃってこられたことをきちっと理解しておりませんでしたらば申しわけないのでございますけれども、いわゆる戦時HNSと言われる、アメリカが呼んでおりますいろいろな態様、そこまでいくかどうかということもまだわかっていない。研究を始めるというのは、まさにその方向へ行くかどうかということをも含めての研究だと思います。
  135. 上田哲

    ○上田(哲)委員 これは困る。アメリカがどう思っているか知らぬと言うけれども、アメリカは一九八六年八月は出している米国防省の「共同防衛への同盟国の貢献度」という公文書の中に「米国と日本の間には公式の HNS協定は締結されてはいないが、日本が実際に行っている自発的な平時HNSは顕著な貢献をしているし、戦時HNSの可能性に関しても、一九七八年の日米防衛協力に関する指針に基づき研究が進められている。」と書いてあるじゃないですか、現在進行形で。明らかにこのことが、否定されるかどうかは別にしても、概念として含まれないなんていう話は話にならない、議論にならないですよ。こんなことでもって時間をかけてもらったのでは質問ができない、これは。はっきり答えるまで待ちますから。
  136. 西廣整輝

    西廣政府委員 先生の御質問の趣旨は、私もう一回整理して申し上げますと、今回の研究は有事来援の研究である、つまり有事の研究である、したがって、有事のHNSというものは必然的にそれに伴って行われるであろう、こういう御質問の趣旨だと思いますが、そういうことになりますと、従来例えば作戦計画研究をやっておりました。作戦計画というのは当然有事の問題でございまして、作戦に伴って、有事におけるHNSの問題その他もあるはずでありますし、あるかもしれないということはアメリカ側の国防報告に書いてあるわけでございますが、それはそれとして、HNSならHNSの研究を行われるであろうということで、それは防衛庁が直接的にまず一義的にやる立場にはございませんので、有事の作戦研究は作戦研究で行っている。同様にして有事来援研究も行うということを申し上げておるわけでございまして、その点、御理解をいただきたいと思います。
  137. 上田哲

    ○上田(哲)委員 委員長、これはめちゃくちゃじゃないですか。今例に挙げられた日米共同作戦計画とかあるいはシーレーン防衛計画にHNSなんか関係ないですよ。これは明らかにアメリカの議会承認が必要とされるのであり、それにはHNS問題、受け入れ国がどういう支援をするかということがくっついているんですから、そこのくっついているものとくっつけてないものを一緒にして、しかも、これは防衛庁じゃなくて外務省だなんというのは、そんな話では、これは全然質問できません。ちゃんとしたものをやってください。
  138. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと理事集まってください。——政府側の答弁を整理していただくということを条件にいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ────◇─────     午後二時三十二分開議
  139. 奥田敬和

    奥田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。西廣防衛局長
  140. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほどの御質問に関連して、整理をしてお答えを申し上げます。  今回の有事来援の研究は、従来からの共同作戦計画の研究と同様、指針に基づいて行われるものであり、指針はその前提条件といたしまして、研究、協議の結論は、日米安保協議委員会に報告され、その取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねられるものであり、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではございません。  なお、研究の具体的内容につきましては、今後の研究によるものでございますが、陸軍部隊につきましてはいわゆるポンカス、資材の事前集積の問題も含まれると考えられますし、海軍部隊については何個空母群が、空軍部隊については何個飛行隊がそれぞれどの時期に来援するか等が研究課題になるものと思われます。  また、それら部隊の来援あるいは事前集積に関連をしまして、日本側の受け入れ国支援、いわゆるHNSの問題も研究の結果出てまいると考えております。しかし日米間の相互支援の問題は、ガイドラインによりまして作戦研究あるいは今回行います有事来援研究等、各種の研究を通じて明らかにされた項目がある程度出そろった時点で、改めて相互支援に関する研究として将来研究が行われることになると考えております。(上田(哲)委員「WHNSは入っているのですか」と呼ぶ)はい、平時及び有事と申し上げましたが。
  141. 奥田敬和

    奥田委員長 上田哲君。
  142. 上田哲

    ○上田(哲)委員 長い御答弁がありました。一点大事なところだけ確認をいたします。  この研究にはWHNSが含まれるということですね。
  143. 西廣整輝

    西廣政府委員 この研究の結果あるいは研究の過程においてWHNS、いわゆる有事における受け入れ国支援の問題も出てくるというように考えております。
  144. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。極めて明快なことであります。  さてそこで第五の質問に入りますが、そうなりますと、これは根本的に次元が変わってくるんです。今るる申し述べられた前提に、ガイドラインの中でということがいろいろ言われておりました。ガイドラインの中で行われたこれまでの研究はたくさんあるんですが、これはガイドラインから始まったといいながら、ガイドラインを出るしかないんです。ここが非常に大きな問題です。実はこれが今まで詰めてきた最大の問題であります。WHNSが含まれるか含まれないかということの問題を通ってきたのはこのことが最大の問題であります。  WHNSということになると、例えばドイツの例は既に資材装備費で、これは一九八五年版の西ドイツの国防白書に出ている数字でありますが、資材装備費で六億七千万ドイツマルク、年間運営費が七万ドイツマルクを例えば経費で支出するとか、非常に大きな負担も出てまいります。そして今回のポンカス、ガイドラインの中なんだから、ガイドラインの中では、いずれの政府とも法的、予算的あるいは行政的に拘束しないと書いてあるのです。だからいいんじゃないかとおっしゃるが、ところが、アメリカの「共同防衛への同盟国の貢献度」の公式報告によれば、そういうふうにガイドラインは書いてあるが、「したがって、公式かつ拘束力ある取り決めは、日本で緊急立法が可決されて初めて可能となる」こうなっているのです。つまりガイドラインの中でやることはできない。ガイドラインを超えて、国内の立法と、WHNS協定を結ばなければポンカスはできないということをアメリカが公式に言っておるのです。いいですか。WHNSを含むんだということを認められた以上は、当然WHNSの問題としてこの支援協定を結び、それと表裏一体となる有事立法をつくらざるを得ないということになる。いいですか。これは避けて通れないことになるはずですが、いかがですか。
  145. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど御答弁申し上げたとおり、ガイドラインに基づきます研究、協議といいますのは、あくまで研究、協議でございまして、それ自身直ちに実施に移されるというものではございません。  なお、先生具体的な御質問のポンカスにかかわる問題、それが新たなる協定なり、あるいはそういった裏づけなしにはできないのではないかということにつきましては、例えば米側が自分の負担において装備を集積する、あるいはそれを管理するということであれば地位協定の範囲でできるものはあろうかと思いますが、いずれにしましても、先ほど申し上げたように、研究の結果、どの種のポンカスになるかとか、そういうことも何もわかりませんので、おっしゃるとおり、新たな国内的措置なり、あるいは協定なり、そういったものが必要である場合も当然出てくると思います。
  146. 上田哲

    ○上田(哲)委員 はい、わかりました。大変なことですよ。これは大変なことですよ。まさに協定なり、国内法現なりがなければならないということになるのです。それはそうでしょう。明らかに、例えばドイツの場合に例をとるわけじゃありませんけれども、例えば核兵器による汚染の除去、基地防空、捕虜の安全確保、負傷者の取り扱いなんというのは全部WHNSに入ってくる。これをどこまでやるかやらないかということは研究対象でありましょうけれども、このことを含めて、協定なしにはアメリカはオーケーするわけないのです。アメリカに、協定を結ぶか結ばないかわからないよというようなことを言って、向こうが共同研究するわけがないのです。これは当然支援協定と、それに伴う国内立法が必要になるということですね。しかもアメリカの要請によっては、アメリカと日本の支援協定より前に日本の有事立法、緊急立法がなければならないと言っている点についてはどうしますか。
  147. 西廣整輝

    西廣政府委員 アメリカの国防報告に書かれておりますのは、私も十分理解しているかどうかわかりませんが、米側が言っておりますのは、現在ガイドラインに基づいて各種の研究がなされておる。その研究の中身によっては、将来有事立法といいますかそういったものが必要になるものもあり得るだろうということが書かれていると思います。それ自身私は否定するものではございません。  ただ、何度も申し上げますように研究はあくまで研究である。その実施に際しては、現行協定なり現行法の中でできるものもあればできないものもありまして、アメリカ側の言うとおり、できないものがある場合には日本側として国内措置が必要だということもまたもっともなことだと思っております。
  148. 上田哲

    ○上田(哲)委員 完全に答弁が矛盾してまいりました。かつてのときに、防衛庁長官は、有事立法は国内のことだからやらぬとおっしゃった。これは明らかに訂正しますね。今の答弁と食い違う。また統一見解を求めてとめてもいいんだが、急がなければならないと思うから先に急ぐのですが、この見解をきちっと統一してもらわなければならない。どう統一してもらわなければならないかというと、いいですか、私はポンカスはあしたからやるだろうと言っているのではない。やらないためにやる研究はないのですから、やることをひとつ想定してやるわけでありますが、研究段階は絞って私は議論しているのだが、この研究段階で全然意味のない研究ということはあり得ない。  とすると、アメリカ側は、ガイドラインの中ではだめだと言っているのです。ガイドラインの中ではだめなんで、それを超えるものとして支援協定を結びなさい、そして、それに先立って有事立法をつくりなさい、このアメリカの言い方に対して、このことを除外して研究はできませんね。当然これは研究テーマ、やるかやらないか知りませんよ。有事立法をやるかやらないかは別な問題でしょう。別な問題でしょうが、有事立法を先につくって、それで支援協定を結ばなければ、ポンカスの研究や有事来援の研究はできないということになっているのですから、このことは認めますね。長官、この間の答弁とあわせて……。
  149. 西廣整輝

    西廣政府委員 ただいまの御質問に対して二点お答えいたしますが、有事法制研究、現在防衛庁で行い、かつ、現在は安保室の方で仕分けが行われている研究がございます。これに関連して、従来防衛庁長官が、これは自衛隊の行動にかかわるものであるということを申し上げておると思います。それは、昭和五十二年だったと思いますが、当時の三原防衛庁長官総理のお許しを得て、自衛隊の行動にかかわる有事法制の勉強をさせていただきたいということで研究が始まったものでありますので、あくまで自衛隊の行動にかかわる分野だけの研究でありますから、当然のことながら、米軍の行動なりあるいは米軍もしくは自衛隊の行動とかかわりない国民一般にかかわる有事法制の問題は研究いたしておりませんので、そのようにお答えしておったと思います。  それから第二番目の、それでは研究の結果、先生のおっしゃる有事の受入国支援なりあるいは有事法制というものにかかわる問題が出てくるではないか、だから研究はできないのではないかということでありますが、私どもはそうではございませんで、あくまでこれは、直ちに立法なり行政の措置を義務づけるものではないけれども、研究をすることについて、問題点の洗い出しを含めてそういう研究をすることそのものは非常に重要なことであるというふうに考えておる次第でございます。
  150. 上田哲

    ○上田(哲)委員 非常に重要なことですからね、よく聞いてもらって、しっかり答えてください。  私が指摘しているのは、この研究を進めるためにはWHNSを離れるわけにはいかない。そのことは、ガイドラインを超えなければだめだとアメリカが言っている。そのためには支援協定を結ばなければだめだと言っている。支援協定を結ぶためには、その前に日本の有事立法法制というものを議論しなければ研究にならぬと言っているのです。今の答弁は、自衛隊のための有事立法のことはやらないと言ったが、そうすると、アメリカのための有事立法の研究はするのだということになるのですね。これが一つ。  それから、有事立法をやるべきかどうかと言っているのではない。日本の有事立法法制の議論を含めなければこの研究はやれないのではないかということを言っている。  縮めて言いましょう。自衛隊のためじゃなくて、アメリカのための有事立法法制の研究をやるのですかやらないのですかということが重大な問題になる。なぜかというと、国内有事立法なしには有事来援研究が成り立たないのだということをアメリカははっきり書いている。「フォーマル バインディング アグリーメンツ ウッド ビー ポシブル オンリー アフター ザ パッセージ オブ エマージェンシー レジスレーション イン ジャパン」いいですか、オンリー アフターですよ。——まじめに聞いてもらいたい。オンリーアフターですよ。アメリカが日本における緊急有事立法をつくることにおいてのみオンリー アフター、支援協定は成り立つ、有事来援研究ができると言っているのです。これだけはっきり言っているのだから、問題をきちっと詰めて言いますよ。  自衛隊のためにはやらないと言われた有事立法を、アメリカのためにはやるのですか。そのためには、その前提としてアメリカのための有事立法法制の研究をすることでなければポンカスはできないじゃないですか。はっきりしてください。これはいいかげんな答弁は困る。はっきりしてください。
  151. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず前段の方、アメリカが国防報告でどう言っているかという点について私申し上げますと、私の読み方が間違っておるかもしれませんが、一九七八年のいわゆるガイドラインですが、日米防衛協力のためのガイドラインは、将来HNS協定をもたらすことになり得る研究の実施を定めている。しかし、指針の前提条件は、これらの研究の結論が日米いずれにも立法、予算ないし行政上の措置を講ずることを義務づけるものではないと明記しているということで、アメリカ側ははっきりガイドラインに基づく研究の性格というものを理解して書いておりますので、この種研究をすることについて、有事立法がなければ云云ということではないというように私どもは理解をいたしております。
  152. 上田哲

    ○上田(哲)委員 全く答弁になっていない。私は絞って聞いているのですよ。何も自衛隊云々と私の方から言っているのじゃない。この前は有事立法を考えないと答弁があったから、あれはどういうわけだと言ったら、あれは自衛隊についての有事立法だ、だから、そもそも、何遍も防衛庁は答弁もしているように、この有事来援問題がなければ安保条約は意味がないのだ。その一番肝心のところで、いよいよ日米安保体制が本格化する。その有事来援問題をやるときに、WHNS支援体制に入らなければ研究ができない、そこまで来た。そしてそのためには、アメリカがもうガイドラインではできなくて支援協定を結ばなければならぬと言っている。支援協定を結んだものはアメリカの議会にかける。そして、明らかに日本にもかけることをさっき口走った。そこまでは追及すまい。いずれにしてもそういうものを、支援協定をつくらなければならぬ。つくる前提は、まず日本の有事立法がなければだめだとアメリカが言っているのだから、その有事研究をするんだったら、まず日本の国内有事立法の法制化を議論の対象にしなければこの議論は進められないではありませんかと言っているのだから、イエスかノーかを答えてもらえばいいのです。このことをはっきりしてくれなければ、ほかの話ではだめだ。時間を使われては困る。同じのをやってもらったんでは時間がないんだ。
  153. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず第一に、日米防衛協力のための指針のところに、「研究・協議の結論は、日米安全保障協議委員会に報告し、その取扱いは、日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。」ということが一つございます。(上田(哲)委員「だめだ、そんな答弁をしてもらっては。時間がなくなる」と呼ぶ)申しわけございません。  それからもう一つは、今先生が引用されました中に、御承知のとおり、これらの研究は必ずしも米国政府にとって云々とあったあとに、この研究計画は緊急時においていかなる支援が、そしてそれがいかなる仕組みによって可能となるかについてより明確な理解を得ることに大きく貢献するものであるということでございまして、これは日米の間に、どういう性格の研究をするかということについて誤解はないものと思います。  それから、今有事法制のことが話題になりましたけれども、これについては従来から申し上げておりますけれども米国との間で話し合うことでは全くございませんで、しかしあくまで一般論としてお話しいたしますと、今回の有事来援の研究を離れますれば、いわゆる安保条約第五条における米軍の行動に関連する国内法上の問題につきましては、今後の問題としてこのような研究も行う必要があろうかと一触似的には考えておりますけれども、現在政府の内部で具体的に検討を行っているということではございませんで、今後の検討課題だと思っております。
  154. 上田哲

    ○上田(哲)委員 じゃもう一遍言いますが、私はそんなぐずぐずしたことを聞いていないのです。WHNSを含まざるを得ないとおっしゃる。そうすればアメリカとの協定が必要になるんだ。その協定の前には有事立法が必要だとアメリカが言っておるんだ、ガイドラインじゃもうだめだと言っておる。地位協定というのは、動かさなきゃできますけれども、地位協定なんて答弁じゃ受け付けませんよ。そうなっているんだ。となれば、この研究を進めるということのための唯一絶対、オンリーアフターとなっている前提の有事立法というものを研究テーマにするんですか、するんですかということを聞いているんです。いいですか。  ドイツの例が、たくさん例があります。アメリカは既に十一カ国とWHNS協定を結んでいるんですよ。世界の潮流になっているんですよ、アメリカの軍事体制の。今度出てきた本年度の米報告にもちゃんと出ていますよ、こういうことが。そういう中で、私が例えば政府に対して二月の六日に、このドイツとの協定文を出せと言った。きょうに至るまで出ないんだよ。きょうに至るまで出ないんだよ。きのうも要求したけれど出ないんだ。こんなものは国会図書館にあるんだ、ちゃんと。それでも出してこない。こんな形で、こんな答弁でできますか。国の防衛の大変な問題になっているときに、はっきり答えてもらいたい。有事法制をその有事来援研究のためにやるのかやらないのかはっきりしてもらわなければ、質問はできないじゃないですか。あとの答弁は要りません。イエスかノーかを答えてください。
  155. 斉藤邦彦

    斉藤(邦彦)政府委員(外務省) 二つのことを申し上げさせていただきたいと思います。  一つは、繰り返しで恐縮でございますが、この防衛協力のための指針に基づきます研究は、「その取扱いは、日米両国政府のそれぞれの判断に委ねられるものとする。」という枠内で行われるものでございます。したがいまして、この研究の結果をどういうふうに具体的に取り扱うかということは、これは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねられるわけでございますので、したがいまして、研究の結果、どういう行動を日本政府がとるか、あるいはどういう話を米国政府との間にするかというのは、これはそれぞれの政府の判断にゆだねられることでございます。  それから、もう一点申し上げさせていただきたいことは、ただいま上田委員の方から、事前集積の問題を研究で取り上げるのであれば当然後方支援の問題が出てくるということを言われました。その点はそのとおりでございますけれども、事前集積の問題が取り上げられてそれが具体的に研究の結果がどういう内容になるかというのはこれは将来の話でございますけれども、仮定の問題として例えば一つのケースを申し上げますと、先ほど防衛局長の方からの答弁があったところでございますけれども、現在の米軍の施設、区域にその事前集積という形で大きな資材その他が蓄積されてその管理を米側が行うという形であるとすれば、これは現在の地位協定の範囲内でできることでございます。したがいまして、事前集積が行われたから新しい日米間の協定が要るということには必ずしもならないわけでございまして、それは将来の問題ということでございまして、必ずそこに結びつくということにはならないと考えられる次第でございます。
  156. 上田哲

    ○上田(哲)委員 こんな、時間を費やさないでください。あと五分しかありませんよ。大事な問題じゃありませんか、委員長。  研究の結果どうなるかわかりませんという答弁じゃだめですよ。研究を始めるに当たってWHNSを認めているじゃないですか。そうしたら、アメリカが言っているその前提条件から入るのか入らないかということを、行ってみなければわからぬということで、これはおかしいじゃないですか。行ってみたら有事立法をやるんだ、そんなばかなことはないじゃないですか。向こうはオンリーアフターと言っているんですよ。協定を結ぶかどうかその前提となる有事立法をするかしないかもわからぬで、アメリカは研究にのりますか。こんなでたらめなことを、ちゃんと答えようとしないで、国会を目をふさいでこのまま議論が進んでしまうということが危険だと私は思うから、これは有事立法ということが向こうの条件として出ているんだから、結果の問題でなくて入り口の問題としてやるのかやらないのかということを明確にしてくれるということは、ハウスの問題、シビリアンコントロールの問題だと思うから、イエス、ノーをはっきりしてください。そうでなければ応じられません。
  157. 西廣整輝

    西廣政府委員 有事におきます国民生活の安全を守り、かつ、防衛行動を有効に行うためは有事の法制にかかわる研究を行うということは、重要でかつ必要なことだと私どもは考えております。そういった観点に立って、防衛庁としましては自衛隊の行動にかかわる有事法制の研究をさせていただいておりますが、現在のところ自衛隊の行動にかかわる研究にとどまっておりまして、まだ米軍の行動なりあるいは米軍及び自衛隊の行動とは関係のない国民生活一般にかかわる有事法制の研究までは進んでいないというように承知をいたしております。
  158. 奥田敬和

    奥田委員長 上田君。上田君。——速記をとめて。     〔速記中止〕
  159. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を起こして。  政府側より答弁を求めます。外務大臣
  160. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど来の問答を聞いておりまして、もう一度整理をしてそれから私の考え方を申し述べたい、こう思います。  そこで、今回の有事来援に関しましては、これは防衛庁プロパーでございますが、外務省が随時緊密な連絡をとっておりますから、したがいまして、外務省といたしましても、有事来援の研究がいわゆるガイドラインの一環である、そういうことで始めることは大いに結構だ、こういうふうに私たちは申し上げておるわけでございます。  続きまして、その有事来援のときには、いわゆる有事立法というものはどうなるんだというふうな内容の御質問がございました。したがいまして、それに関しましてはそれぞれが考えるところであって、特に指針の中には、日米両国はこの研究の結果によって予算を組むことだとか、あるいは法律をつくることだとか行政措置をとることはくくられておりません、義務づけられておりません、それぞれの判断です、こういうふうになっておりまして、これは私この間から何回も答えています。(上田(哲)委員「そんなことは聞いていない」と呼ぶ)いや、やはり言わせてください。私の考え方を申し上げておる。  それから上田委員の方からは、もし、当然有事だから、有事のときにはアメリカがポンカスをするに際しても、アメリカの議会の了承を必要とするじゃないか、アメリカの議会の了承のためには日本がそれだけの準備が必要じゃないか、だからこの研究に際しては有事立法等々の準備があるのか、こういうふうにだんだんと話は展開するわけでございますが、私は先ほど来のお話を聞いておりまして、まず研究によってその結果どうなるかということを政府委員として申し上げておったわけでございますが、しかし、すれ違いになっておりますから、そこでせっかくの大切な問題を今質問されたわけですから、私といたしましては有事来援にっいての研究からはいろいろな問題が生じるであろう、こういうふうに思いますから、したがいまして、慎重に検討したいと思いますのでお時間を下さい、これが私の答弁でございます。よろしゅうございますか。
  161. 上田哲

    ○上田(哲)委員 防衛庁は。
  162. 瓦力

    ○瓦国務大臣 外務大臣答弁と同じでございます。
  163. 上田哲

    ○上田(哲)委員 慎重に検討する時間をいただきたいということでありますから後に譲りますが、この有事来援問題というのは、どうしても国内有事法制を前提とする仕組みになっているのでありまして、そのことなしにアメリカとの研究が成り立たないという入り口論なのであって、やってみなければわからぬという話ではない。そこのところを私はしっかり指摘をしておきます。  この問題は、三つの問題が大きくクローズアップされなければならないと思います。第一は、これによって日米安保は七八年のガイドラインののりを越える、大きく跳躍する段階に入るんだという点が一番大きい問題。第二は、これによってNATOと同じレベル、NATO体制と同じところへ行かざるを得なくなるということ。第三に、これに対してシビリアンコントロールとしての国会の機能が甚だ危うくなっているという点であります。総理は、去る一月二十七日に本会議で、有事来援の研究は大変結構だというふうに言われているわけであります。今、ほとんど大臣が答弁されないことが甚だ残念でありまして、お聞きになっていただいて、こうした問題について総理の御見解を伺いたい。
  164. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私自身も、ガイドラインの問題につきまして前提条件の第二番目に書いてありますことについては、両国政府の判断にゆだねられる問題であるから、上田さんとの問答を聞きながら、やってみた段階においていろいろ出てくるのじゃないかという印象がまだ私にはございます。上田さんの方はまさにこのオンリー アフター、こういう前提でNATOの場合の例を引きながら、そうなるよという前提で御質問なすっておる。我々の場合は、それは米国の考え方であろうと、やはり共同研究した結果、このもろもろの問題が出てくるであろう、そこのところの見解の相違ではないかなという感じを受けまして、したがって、外務大臣がまとめてお答えになったというところへ帰着するな、こういう印象で受けとめておりました。  ただ、それ以上に上田さんがおっしゃるのは、オンリー アフターという向こうにも考えがあれば、そこまでどんどん進んでいった場合に、シビリアンコントロールの機能が大変薄らいでいくようになってはいけないぞ、その考え方は私はそれなりにちょうだいできる考え方であると思います。
  165. 上田哲

    ○上田(哲)委員 オンリー アフターというのは、実は日本に向かってアメリカが出している文書でありますから、そのことを念のために申し上げます。  私は六問申し上げたいと思っておりましたが、時間がなくなります。そこで、最後の六間を簡単に申し上げる。  外務大臣は、この有事来援の問題は日本有事の場合に限るのである、こうおっしゃっている。ところが、あなた方がおっしゃる、この研究はガイドラインからだとおっしゃる。ガイドラインには日本有事と極東有事と両方書いてあるのです。そうすると、日本にたくさんの、一千台以上のタンクやその他がいっぱい集積されているものが、特にもっといっぱいデータを出したいのですけれども、当然極東有事の際に使われる。これは一体どうして極東有事には使わせないというふうな保証をとられるのかということを時間があればもう少しじっくり詰めるところでありましたが、このことは後の議論に譲るとしても、どうしても譲っておけない問題は、このPOMCUSのPの方のことではなくてCUSのUSというのはユニットセッツであります。POMCUSのUSはユニットセッツであります。一定量の単位軍団の問題なんです。したがって一個師団以上のことになるのです。一個師団ということになれば、これは当然安保条約に基づく事前協議の対象になるのであります。これまで核について事前協議が行われるべきかどうかという議論がありました。その問題はその問題として、明らかに一個師団を超える装備が常時備蓄されるということになる、身一つ持ってくればすぐ戦闘行動がとれるということになれば、この問題は明らかに事前協議の対象にならざるを得ない。これは大臣、どのようにお考えですか。
  166. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 第六条に関する交換公文では三つのことが書かれておりまして、配置における重大な変更、装備における重大な変更並びに我が国の施設、区域より発する戦闘作戦行動と、事前協議の対象でございます。それについての口頭了解はその翻訳だろうと思いますが、そこには一個師団以上と書かれておりますから、そういう事態ならば当然事前協議の対象になります。
  167. 上田哲

    ○上田(哲)委員 わかりました。これは大変明快です。明らかに一個師団以上の装備が備蓄される場合には事前協議の対象になる。  じゃ、ちょっと時間が一分残りましたからもう一遍戻りますが、極東有事の問題を含むのですか。含まないとすればどういう区分をつけるのですか。
  168. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今回の有事来援の研究、これはあくまでも第五条、日本有事、これに限定されることであって、極東有事には及ばない。これは私がしばしば申し上げておるわけであります。
  169. 上田哲

    ○上田(哲)委員 いや、だからどういう区分ができるのですか。そっちは行かせないとおっしゃるが、使われるだろうと私たちは心配をする。使わせない保証はどういう……
  170. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私たちは、そういうことはないということでやっていきます。
  171. 上田哲

    ○上田(哲)委員 それじゃ押し問答になるわけで、もう少しデータを付して議論をしなければなりません。時間が参りました。  私はポンカスという問題、有事来援の問題が、単にガイドラインの延長線上の問題だということで評価されてはならぬということを立証したいと思いました。最終的に時間がありませんでしたが、外務大臣が明快に、これは事前協議の対象になるということを答弁されたということからしても、このポンカスの問題というのが、これまでと次元を異にする非常に大きい問題だということがその一言をもっても立証されたと思います。言うべきは、ハウスがこの軍事体制の跳躍時点に対してどのようなシビリアンコントロールの機能を持ち得るかどうか、この点はひとつ総理を含めてしっかり守っていただきたい。シビリアンコントロールがまれにも、我々の知らないところで協定が結ばれ、有事法制が行われ、思いもかけない段階に軍事体制が進んでしまうことのないように、国会の監視機能をしっかり立てるということでなければならないということを総理にしっかりお約束いただき、そうした研究の経過の問題は国会にきちんと報告をする、このことを総理からお約束をいただいて終わりたいと思います。
  172. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 今私がはっきり申し上げておきましたが、やや後の上田委員の御発言ではちょっと濁ったような感じを持たれたのじゃないかと思いますから、もう一度はっきり申し上げますが、配置における事前協議の対象はどうなるかという問題は、明らかに一個師団以上、こういうふうに書かれておりますので、私は配置におけるというお話をしたわけでございまして、そこだけはしっかりお聞き取り願っておきたい、かように思う次第であります。
  173. 上田哲

    ○上田(哲)委員 後でやりましょう。  総理
  174. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 いつも申し上げるように、やはりシビリアンコントロールの最高の場所は国会である、そういう精神で、これは逆手にとるわけじゃ決してございませんが、中期防衛が正しいということを平素言い続けておるわけでございますから、あくまでもシビリアンコントロールというものは大事にしなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
  175. 上田哲

    ○上田(哲)委員 井上委員質問も保留しておりますので、それらの明晰な御回答をいただくことをお願いして、終わります。
  176. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、吉田之久君。
  177. 吉田之久

    吉田委員 私は、質問の本論に入ります前に、総理に申し上げたいと思うのです。  総理、先ほど来の上田質問に対する政府の答弁の状況を見聞きいたしまして、事防衛に関する問題、シビリアンコントロールが一番重要であるにもかかわらず、政府の政治的な判断に基づくべき簡潔な答弁があれほどの時間を要して、まず政府委員局長らと相談して、それからでしか答えられないという、こういう姿を国民が見ましたときは、これは官僚政治である、このような延長線上に本当のシビリアンコントロールが望めるのだろうかという非常な不安を感じざるを得ないと思いますし、本委員会の一員といたしまして私もそのことを痛感した次第でございます。  今、有事来援を本当に研究しようとするならば、当然有事立法の法制化を急がなければならないのは政治の常識であります。私ども民社党は、早くからこのことを申してまいりましたが、その歩みはまことに遅々たる状況にあります。今進んでおりますのは、自衛隊が自衛隊員の命とそして武器、弾薬を守るためにどうすべきかというところまでしか進んでいない。国家を守るべき自衛隊員の生命、財産を守ることはもとより大事でありますけれども、そんなことでは本当の防衛はできないはずでございます。にもかかわらず、依然として何かはれものにさわるような状況でおられる政府、大臣の様子を見ますと、私は非常に心もとないものを感ずる次第でございますが、総理はどのようにお考えでございますか。
  178. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今の問答を聞いておりまして、いわゆる研究の前提条件、あるいはそれに基づくところの今日までの日米両国の話し合いの経過、そういうことが基本に行われておりましたので、私も静観をいたしておりました。しかし、元来、今吉田さんおっしゃるとおり、政治的判断を要するものは進んで、自衛隊そのものは私が最高責任者でございますから、そういう対応をすべきであるという御主張は、私も十分反省しながら聞かせていただいたというふうに御理解をいただきたいと思っております。  それから、有事立法の問題は御案内のとおりでありまして、三原防衛庁長官時代でございましたか、自衛隊の行動に関するという前提つきであの研究が開始され、今御指摘なすったとおりの段階でございますので、今後これについては十分慎重に対応しなきゃならぬ課題だというふうに思っております。
  179. 吉田之久

    吉田委員 特に今後政治的判断に属する問題につきましては、一々官僚に伺いを立てるのではなしに、まず総理初め政治家が答えられるべきである、いろいろな各論や技術論、専門的な問題は政府委員が答えられるのは当然でありますけれども、この辺の姿勢をまず確立していただきたいと強くお願いを申し上げる次第でございます。  さて、きのう総理が盧泰愚新大統領とお会いになりまして、私ども国民は、和やかに語られ、握手されておるお二人の姿に非常にうれしいものを感じたはずでございます。そして、まさに時代は変わってきたという実感を覚えました。私ども少年の時代は、日本と昔の朝鮮、それはまことに暗い関係にありましたけれども、これからともにパートナーとして新時代を築いていく日本の最高の指導者として、さらに決意を新たにされていることと思う次第でございます。  同時に、私は別の意味で、日本も変わったなと最近実感したことが一つあります。それは総理のおっしゃるふるさと——私のふるさとは奥野長官や堀内長官と同じ奈良県でありますけれども、この間奈良へ帰りましてある人に聞きましたら、奈良の小学校で先生が、これはかなり上級生を対象にされたんだろうと思うのですが、おまえたちが大きくなったらどんな親孝行をしたいかというアンケートをなさったようであります。そうすると、意外や意外、意外なのか当然なのかよくわかりませんけれども、しっかり勉強していい学校に進んで、いい会社に入ってできるだけいい月給をもらって、そして、できるだけ高級な老人ホームに父母を入れてやりたい、こういう答えが圧倒的に多かったそうでございます。総理はどうお感じになりますか。
  180. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 老人施設、四つ区分がございますが、それらの施設そのものを否定する考えは私にもありませんけれども、やはり今のアンケートそのもので感じましたのは、何だかそれこそほのぼのとした親子関係とかそういう感情が薄らいだ反応じゃないかなというふうな気持ちで聞かしていただきました。
  181. 吉田之久

    吉田委員 私も、大変複雑な思いでそれを聞いたわけでございます。すべては物と金の時代に変わろうとしているのか。しかし、それだけでは国家の将来あるいは人間関係というものは大変不確かなものになると思うわけでございまして、この辺もいろいろ御配慮をいただきたいと思うのです。  同時に、聞きました話では、いよいよ開通間近い瀬戸大橋でありますけれども、あれをみんなテレビで見ているわけでございます。ある一人の人は申しました。こんなすばらしい瀬戸大橋ができる、おれたちやはり税金を納めているかいがあるな、こういうことを言った人がいます。同時にいま一人の人は、それにしても、おれたちの税金が本当にすべて正しく使われておるんだろうかどうだろうか。例えば、公共事業仮に百億円の予算がある、それを大手ゼネコンが引き受ける、それを下請に、孫請に、ひ孫請に、その間いろいろ指導監督、責任は持つのでありましょうけれども、その百億の金がそのまま下へは流れておりません。国民の実感するところ、それは結果的には六十億ぐらいの実額でその事業が行われたのではないだろうか。おれたちの納めた税金が、本当に完全に有益に使われているだろうかという非常な疑問を持っていることは事実だと思うのです。  同時に、今アメリカを初め外国企業が、日本のそういう事業に参入を希望してきております。これもとどめることができなくなると思います。そういう歴史、経過の違う外国の企業がいよいよ参入してきた場合、こういう入札の仕組みあるいは下請、孫請の現状、そういうものと問題が起こらないだろうか、うまくリンクするんだろうかという点で非常に疑問、心配を感ずる一員でございますが、総理はいかがお考えでございましょうか。
  182. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 最初の瀬戸大橋を見て、財政投融資も入っておるにいたしましても、そういうインフラ整備の実態を見ることによって自分たちの税金の使われておる先ということを見て、いわばイギリスにおいて初めて議会制度ができたのは、要するに税金がどうして使われるかというのを国民が監視しようというのでできたわけでございますから、それは私はそういうふうに国民の多くが見てくれるようになることを望む一人でございます。  それから今度は、公共事業分野における外国企業、今の場合、米国企業と言った方がいいんでありましょうが、の参入等の問題については、今おっしゃったようないろいろな関係、下請、孫請等のお話がございましたが、それらが習熟することは大変大事なことじゃないかなと、まあ下世話な言葉で言えば、なれてくるということは、双方にとってもやっぱり大事なことじゃないかなというふうに思って承っておりました。
  183. 吉田之久

    吉田委員 ちょっと気になるのですが、習熟する。しかし、現状は私は本当に正しいとは思わないんですね。いわば徳川時代の組制度と今の商社とがドッキングしたような格好でゼネコンが成り立っておる、非常に古い体質を持っていると思うんですね。そういう日本の体質になじめとおっしゃるのか。むしろ、アメリカの企業はどういう体質を持っているのか定かに知りませんけれども、やっぱり国際的にどこでも通用する、そういう新しい体制を日本が真剣につくっていく、そして、その中で国民の疑惑を解いていく、そういうことが今一番大事じゃないかと思うのですが、総理はちょっと私の質問にお答えになっていないような気がいたしてなりません。
  184. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 この間から習熟するということを公共事業の問題で私も言っておったものですから、ついその言葉が出たわけでございますが、日本の既存の制度、今動いておる制度そのものに外国の企業も習熟してください、日本の方もまた外国企業の方のあり方に習熟していきましょう、こういう言葉で使っておるわけでございますが、実態から見た場合は、それは原則だけは両方が踏まえて、むしろ原則に習熟しようというのが本当のところであろうと思っております。下請、孫請、そういう構造そのものに習熟してくださいというより、双方の原則だけはお互いまず理解し合っていくことが大切ではないかというふうな考え方の方が正しいお答えになるかと思います。
  185. 吉田之久

    吉田委員 次に、税金の問題に触れたいわけでございますが、総理は先ほどから、税制改革は渾身の努力を振り絞ってやっていきたい、とは申す一方で、予見を与えたくないとかいろいろおっしゃっているわけでございますが、私は改めて、やっぱり国会そのものの最も重要な仕事は、国民に対する課税をどうするか、そして、その集まった金を国民のためにどう使うかということ、いわば国会の最も最初の仕事であり最後の仕事はこの税制問題だと思うんですね。  試みに、明治六年の七月二十八日に政府は地租改正条例を布告いたしております。これに対して猛烈な反対運動が起こった。実はそれが国会開設、自由民権運動の原点になっておるようでございます。  それから、翌明治七年には、一月十七日に板垣退助外七名が「民選議院設立建白書」の中で次のように述べておられます。「夫れ人民政府に対して租税を払ふの義務ある者は、乃其政府の事を与知可否する」大変難しい文句ですが「与知可否するの権理を有す。是れ天下の通論にして、復喋々臣等の之を贅言するを待ざる者なり。」要するに、当時は「臣等」というのは参議のことだろうと思うのですが、今は官僚であるのか大臣であるのかよくわかりませんけれども、そういうことに対して余りいろいろと余計なことを言うべきことではない、あくまでも国会でそれを論議すべきだ、こう申しておるわけでございます。  明治十三年の四月十七日、国会開設期成同盟が天皇に上願した「国会を開設するの允可を上願する書」の中にも次のような文章があります。  いろいろ前文を省略いたしまして、「則租税を天下に徴し、及び既に収めて国家の共有物と為れる所の租税金を処置するには、政府一己にして之を為す可き義あることなく、必ずや全国人民と共議せざるを得ざる可く、而して租税を全国人民と共議するには、国会を開設せざるを得ざる可ければ也。」大変難しい表現でありますが、要するに、租税を国民から取る、またそれを使う、そのために国会をつくるべきだ、こういう歴史的な経過があるわけでございます。  ですから、私は最近、政府税調にいろいろ答申を求めていらっしゃることはわかりますけれども、やっぱり本格的な、大事な議論は、ここ国会で政府と私どもがなすべきことだと思うのです。そういう基本的なことは、まず我々が検討し、方針を決め、そしていろいろ各論にわたって検討を求めるというのが本来の筋ではないかと思うのでございますが、総理はいかがお考えですか。
  186. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 大体、先ほども申し上げましたように、議会制度というのができたのが、ちょっと何世紀だったか忘れましたけれども、イギリスにおいて羊毛からあがなう税金の使い道を監視するというようなことからできたというふうに私記憶しておりますが、日本の場合も明治二十三年の七月一日が第一回選挙でございます。したがって、議会制度ができましてから再来年でございますか、たしか百年になるわけでございますが、国会というのは、イギリスの場合いわば使い方の方から先に入ったといいますが、いずれにせよ、当時地租が十五円の税金を納めた者が有権者という時代でございますけれども、税というものに関連があって、やっぱりそれこそ習熟してきたというのは、私も厳然たる歴史的事実だと思っております。  そこで、私はいつも申しておりますように、国会の中における議論を正確にプロの、プロ集団と申しますか、税制調査会等へ絶えずこれを周知させながら勉強してもらった者がそれを作業して、今度は法案としてまた国会に相談していく、こういう方法が現代なじんできた制度になっておるのじゃないかなと思っております。
  187. 吉田之久

    吉田委員 おっしゃるとおりだと思います。ですから、この国会の論議というのは、私どもが聞いて総理らがお答えになる、それでございますから、できるだけ明快に、余り周囲のことを気にしたり、こう言ったらどういう反応が起こるだろうかとか、そんなことを気にし過ぎて論議したんじゃ、これはお答えもできませんし、国会としてその任務を果たしたことにならないと思うのですね。  私はそういう意味で端的にお伺いいたしますが、もし仮に政府税調が、五十四年国会でも一般決議をいたしております一般消費税(仮称)、これによらないという経過があるにもかかわらず、名前は別として、ほとんどそれと同種同根のものを答申してきた場合は、それはだめですよと政府は明確にお答えになりますね。
  188. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あの国会決議を見ますと、その構造、仕組み等について国民の理解を得られなかった、だから、国民の理解が得られるような環境の変化があれば別といたしまして、同じものが出てくるというようなことはちょっと私の予測の段階にはないと言わざるを得ないかなと思います。
  189. 吉田之久

    吉田委員 まさに総理のそういうお考え方に基づいて、実は去年かなり形を変えた売上税を出してこられたと思うのですね。ところが、この売上税も全部廃案はなったわけでございます。これは国民が許容しなかったということになると思うのです。とすれば、この売上税、名前を変えても去年お出しになりました売上税とほぼ同工異曲のものは、これは提出できないと御判断なさいますね。
  190. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 一般消費税を原点に置いて例外品目とかいう問題の変化が売上税の中には入ってきておりますが、やはり私は、売上税というものが出てきた経過の中には、よく言われる課税ベースの広い間接税というものの概念が非常にあったから出てきたと思うのであります。したがって、税制調査会なりあるいは国会の議論を聞いておりましても、いわば今の個別物品税の中における不公平感等からくるいわゆる課税ベースの広い間接税、こういうものは議論の中には十分出てくるものではないかなというふうに思います。
  191. 吉田之久

    吉田委員 ですから、いろいろな経過はありましたけれども、課税部分の広い、いわば薄く広いそういう間接税。だとすれば、これは単段階、多段階がありますけれども、できるならば多段階、かつ累積排除型から選んでいくとすれば、結局残る選択肢は随分限られてくると思うのですね。EC型の付加価値税そのものとは言いませんけれども、何かそれに近い、かつ日本になじむもの、その辺に絞り込んでいかないと答えが出ないのではないか。十も二十もいろいろなタイプがあるとは私ども思われませんので。ですから、小倉税調会長もEC型付加価値税に近いものと言っておられたり、あるいは少しそれをまた引っ込めたりなさっておりますが、私は当然の帰結がそこへ行くと思うのです。  しかし、もともと一般消費税(仮称)や売上税が日本に最適だと思ってこの十年間試行錯誤か錯誤試行なさってきたのかどっちかわかりませんけれども、結局EC型のインボイスが日本の複雑な流通になじまないだろうということから、そういう二つの方法を今日まで選んでこられた。それがだめだから、またEC型のインボイス方式に戻るということは、これは振り出しに戻るということになりますね。その辺で十年間堂々めぐりを繰り返しているにすぎない。いわば日本の間接税の論議は袋小路に入ってしまっているというふうに私は思うのですが、そうお考えになりませんか。
  192. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 だんだん大蔵大臣からお答えいただいた方が適切かという感じもしないわけでもございませんが、確かに小倉税調会長が言っておられる税理論を構築した上での整合性と申しますか、それはEC型付加価値税の根幹に私は存在しておるのじゃないかという私なりの、今ま税調等でもそういう議論がなされてきたわけですから、それを私も否定するものじゃございませんが、袋小路に入ったかどうということになりますと、そもそも十年間と今日の違いというのは、本当に国会速記録を見てみますと、これほど税制論議が行われたのは、国会ではかつてはなかったということが言えると思うのであります。したがって、国民の皆さんみんながこの税論議の中へ参加していただいておるような環境が熟したから、袋小路へ入ったというよりも、むしろそこからやっぱり頭をもたげてきたというと表現が適切じゃございませんが、みんなが冷静になって顔を出してきた、こんな感じが私はしております。
  193. 吉田之久

    吉田委員 十年たちまして、十年たったら竹下さんが総理大臣になられた、これは確かに大きな変化に入りますが、私は税制論議の方は堂々めぐりをしておる、そしてもう一度振り出しに戻っているような気がするのですね。ですから、この間大阪で総理は、この国会決議を斜めに透かして読んだり裏から読んだりいろいろして、一般消費税(仮称)はだめだろうけれども、消費一般にかかる税制を否定しているものではないというふうな解釈を試みられて問題になっているわけでございますが、よもや、今や凍結受精卵をいつでも使える時代ではありますけれども、十年前のそれとほとんど同質のものをもう一度使うというようなことは、これはなさらないですね。
  194. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私の発言自体についてのことでございますが、あの当時、これは私は大蔵大臣でございましたので、幾ばくか、のめり過ぎておる感はあったかもしれませんが、各党の税の専門の先生方とあの決議をつくりますときに、全くみんなが合意に達したのが、いわゆる一般消費税(仮称)は、あの場合、それの手法をとらないとしても、消費一般にかかる税制を否定することは論理の上からまずいんじゃないかというのは、これはまさにコンセンサスができたからいわゆる一般消費税(仮称)という言葉になすった、それをオブザーバーとしてそばから見ておった、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  195. 吉田之久

    吉田委員 だから、十年間国民はいろいろとこの間接税のあり方にそれなりに、賛否は別として、注目し始めたことは私ども認めます。しかし、それにしても、手法は限られておる、かつ残された選択肢は余りにも少ない。そういう場合にどうすればいいのか。私はやはり時間を置くしかないと思うんですね。やはりここで、どんなにお急ぎであろうとなかろうと、この秋とかあるいは早急に法律を成立させようという短兵急な考え方をこの際捨てて、本当にじっくりと論議をする、国民は全部論議したがっていると思います。  そしてたまたま、国民や自民党が反対するような大型間接税はこれを絶対やらない、これは前総理が明言なさっているのでございますが、私はこの国民や自民党員がという言葉の置き方自身がおかしいと思うんですね。自民党員も全部国民なんでしょう。だから人間や男がとか人間や女がというのと同じような並べ方で、全然おかしいと思う。だから国民が反対するような間接税は導入しない。そうすると、国民の意思を聞くしかない。それは国会かもしれません。しかし既に国会では去年問われて、それがノーということになったわけでございますから、これは次なる国政選挙、できれば次の衆議院選挙、それがいつ行われるかは知りませんけれども、この衆議院選挙で各党がそれぞれ、おれたちはこの現状においてこういう間接税が一番いいと思うということを公約として掲げる、各党とも掲げる。各候補者もそれぞれ自分の公約を掲げる。そしてその選挙をくぐって結果を見る。その選挙結果によって判断するしか今日の民主主義の国家においてとるべき国民合意の道はないと思うわけなんでございますが、総理はそのようにはお考えになりませんか。
  196. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 国民や党員という言葉を使われたのは、党の会合で言われた発言でございますので、これは許容いただけるといたしまして、その次の原則論の問題でございますが、いま一つ考えなければいかぬのは、いわば今日の不公平感というものは、やはり勤労所得者の層から出てきた場合、このままにしておった場合に、まさに年年勤労所得税のシェアがふえていくことに対する不公平感というものが、そんなにゆっくりしておることに耐え得るのかな、こういう感じもございますので、いろいろ議論を申し上げておるところでございます。
  197. 吉田之久

    吉田委員 国民の、特にサラリーマン層の不公平感、それは間接税導入も一つの方法だろうとお考えでございましょうが、もっと根底にあるものがあると思うのです。それは、我が国の所得税法第百二十条が先進国家間にその例を見ない条文になっているからだと思います。納税者はすべて賢明であり、正直であり、完璧であるという前提に基づいて成り立っておるのがこの条文だと思うのです。その条文は、第一に納税者が自分の所得額の計算ができること、第二に納税者がみずから自分の所得税額の計算ができること、第三にその計算の結果として、自分の納税額が配当控除額を超えているということを知ったときは申告書提出の必要ありと認識して申告を行う、こういう形になっているんですね。  だから所得基準の申告体制という形になっておるのですが、もう時間がありませんので聞きませんけれども、こういう税法で税体制をとっている国は先進国間におきましては日本以外にないと思うのです。ですから、我が国の申告書の提出は納税者の主観的判断の混入を十分に許しておるわけなのでございます。にもかかわらず、問答無用に所得が一〇〇%捕捉されているのがサラリーマンでありまして、ここにサラリーマン階級のいら立ちの一番の源泉があると思うのですね。  まずこの辺から法律をやはり改正し、そして「乏しさを憂えず等しからざるを憂う」という言葉がありますけれども、何でおれたちサラリーマンだけが全部仮借なくやられて、それ以外、自分で申告しない人は免れておる、しかられたら慌てて申告をする、そんな国家があっていいのか。これが不公平税制感を持つ最大の源泉になっていると私は思うのですね。その辺からでもいろいろ手直しをなさるべきであると思いますが、いかがですか。
  198. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは私どもも同感でございます。まず行政の面におきましては、勤労所得以外の事業所得等々の把握を十分にするという行政の工夫の問題があるわけでございます。これは努力を続けますが、同時に制度の上でもやはり問題がある。それは一つは、累進の構造が非常にきついというときに、十分に把握されているところほどそれを十分に受けるという問題がございますし、またその他の所得につきましては、例えばみなし法人の場合の給与の扱い等々がいわば非常に事業所得に甘いといったようなこともございますから、配偶者特別控除もそのつもりでさせていただいたわけでございますが、制度上も工夫すべき問題があろうと思います。
  199. 吉田之久

    吉田委員 現行の税制の制度の中でもなすべきことがいっぱいあると思いますので、その辺もひとつ絶対忘れないように。  それから最後に、田中君とすぐ交代いたしますが、遷都問題でございまして、奥野長官もいろいろ御苦労いただいておるようでございますけれども、初め一省庁一機関の移転、それからもう少し数を調えて移転しよう。それにしても遷都とか展都とか分都とか総理おっしゃっていますけれども、私は大原則をきちんと決めなかったら解都して解けてしまう、分解の解の解都になってしまうんじゃないだろうかというふうな気がするのですね。  だから、東京周辺に首都を置いておこうというならいいですよ。どこかへ本当に遷都しようとするならば、今の東京より北に移そうと将来するのか、あるいは西へ移そうとするのか、おおよそその辺のことを、まず大もとをお決めになって、そしてそれからそれに従うように徐々に決めていくべきではないか。梶山自治大臣が「個々の機関を地方に移すことも大事だが、その大本を決めるべきではないか」とおっしゃることは私極めて同感なのでございますが、この辺、長官どのようにお考えでしょうか。
  200. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 現在の東京は日本全体を見渡しました場合に一極集中、しかも過密、これを解決をするために、民間の企業につきましても東京を離れていただけるような企業については離れてもらいたい。むしろ政府はそのためにもみずから実践して政府関係機関を移すべきじゃないか。その場合にも、御指摘になりましたように、首都機能を一括して移転すべきだという議論もあるわけでございます。  現在政府が進めようとしておりますのは、それとは矛盾しない四つのカテゴリーに属する政府関係機関はこの際二十三区の外に移転しようじゃないかということでございます。一番多いのはやはり東京のみを管轄する機関ではない地方支分部局、おおむね関東地方を管轄する地方支分部局ということになってくるだろうと思います。それは二十三区の外に出しますけれども、やはり関東一円から出かけてまいりまして割合に便利なところでなければならぬ、こう考えるわけでございます。  また、これまでは何か国で一つの機関を設けようとする場合には東京に立地して怪しまなかったと思うのであります。これはやはり考えを直していこうじゃないか。多極分散型の国土形成を頭に置いて立地を決めていこうじゃないかということでございます。四つのカテゴリーに属しまするものは、首都の一括移転がありましても並行して進めていけるものでございますので、御指摘確なりましたふうに、どこへ首都を一括移転するのかということを決めなくてもこれはこれで並行して進めていける、こういう判断に立って努力しているところでございます。
  201. 吉田之久

    吉田委員 田中君にかわります。
  202. 奥田敬和

    奥田委員長 この際、田中慶秋君から関連質疑の申し出があります。吉田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。田中慶秋君。
  203. 田中慶秋

    田中(慶)委員 最初は総理にお伺いしたいわけでありますけれども総理は昨日韓国の大統領、盧泰愚さんの就任式に行かれて大変友情を深められたことと思います。そういう中から韓国はむしろ民主化とオリンピックを成功させよう、こういう形で今日合い言葉で国家挙げて取り組んでおられると思います。日本もまたそれに対して協力しようということでありますから大変すばらしいことだ、こんなふうに考えております。  そこで問題は、あした総理が一般質問には出てまいりませんので、そういう点できょうこのことだけ、通告はしておりませんけれども、冒頭に考え方を求めたいと思うわけであります。  ということは、オリンピック、すなわち東京オリンピックを中心としてだんだんメダルが少なくなってきている、こういうことでありまして、韓国のオリンピックにもどれほど期待できるかということは、今後どういう形で力を入れていくかということになろうと思います。  そこで実は日本で一番、我が国のお家芸と言われる柔道問題、御案内のように、きのう全柔連と学柔連の判決が出ました。法治国家でありますから法を守りながら、そして伸び伸びと、私も柔道をやってまいりましたから、現場にあるいはまたその選手に迷惑をかけらやいかぬ、こんなことを考えたときに、文部省が、それぞれお骨折りいただいて統一見解を出したりいろんなことをしております。しかし堂々ときのうのブラウン管を通じて最高裁まで争う。こんな形であってはいけないのではなかろうか、こんなふうに思います。そういう点で、細かい点についてはあした一般質問の中でいろんな形で詰めてみたいと思いますけれども、まさしくソウルに行かれた感想を含めて、総理見解をお伺いしたいと思います。
  204. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 昨日国会のお許しを得てソウルへ参りまして、私は平和裏における政権移譲というもののすばらしさというものを本当に痛感してまいりました。今後とも両国の親善友好関係を進めるということと同時に、当面はオリッピックを成功裏に導くために我々の可能な限りの御協力を申し上げるべきである、このように感じたわけであります。  そこで今度はオリンピックの問題について、メダルの点にお触れになりましたが、私を含むみんなが、かつてのようなことが期待できないではないかというある種の寂しさを日本国民感じているんではないか。それで中曽根前総理がスポーツ懇談会というのをおつくりになりまして、それを私引き継いでおるわけでございますが、これで具体的な選手強化対策というものも考えよう。そんなことを言ったって、田中さんが見れば、竹下さん、もうすぐだから間に合わないではないか、あなた四年後のことを考えているんではないかとあるいはおっしゃるかもしれません。そういう向きの御発言をなさる人もございますが、あのスポ懇の検討結果をまとめて文部省で今度専門的に議論してもらおうと思っておるわけであります。  それで柔道の関係につきましては、私も柔道の世界にずっと進んできておりますので、本当に遺憾のきわみだ。したがって、文部省一生懸命でいろいろ調整されたわけですが、きのうのテレビ等を見て、柔道マン、愛好者みんながだめだなと感じたと思うのでございます。これからも国会でも、この議員連盟等もございますし、一層正常化の姿に進むことを、文部当局は文部当局でやりましょうが、我々愛好者としてもそれぞれの立場で協力しなければならぬ課題だというふうに思っております。
  205. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひソウル・オリンピックまでそのような形で御期待をしたいと思いますし、私どももそのような形で頑張ってみたいと思っております。  そこで実は土地問題に今度入らしていただきたいと考えているわけであります。  実は今地価が高騰し、サラリーマンのマイホームがその夢さえ奪われようとしているわけでありますけれども、そこにはやはり幾つかの問題があるわけです。需要と供給の問題もあるでしょうし、あるいはまた今の財テク問題もあろうと思います。しかしその中で具体的にできること、できないこと、行政が関与をしているために土地が上がっている、こういう問題も具体的にあるわけであります。  そこでこれは建設大臣初め関係者皆さんからお答えいただきたいわけでありますけれども、一つにはこの昭和四十五年の線引き問題、このときの線引き問題に対しては具体的に基本姿勢がなかった。これが今日の線引きの混乱を招いているわけであります。長官が地方自治体にもっと線引きの見直しをして宅地を供給してくれと言ったところで、それぞれ根拠がないわけであります。その根拠たるものを明確にしない限り、これから永遠にこの問題は続くであろう、こんなふうに思うわけであります。  そこで私はこの線引きたるものの根拠、例えば駅から何キロであるとかあるいは幹線道路から何メーターであるとか、こういう見直し基準があって初めて線引き問題の論議はされるのだと思うのです。それが現在お持ちでない、これらに対して明確にお答えをいただきたいと思います。
  206. 越智伊平

    ○越智国務大臣 線引きの問題でありますが、線引きはその都市の都市化の進行状態あるいは一定地域の人口及び人口密度の問題等々を考慮の上、各地域で、その都市、その県でその特性を生かしてこの線引きの変更をする、こういうことになっておりますので、お説にありましたように一概に道路の周辺何メーターとか駅から何メーターというのはちょっと、その都市都市の特性を生かして進めてまいりたい、こういうことで指導をしてまいりたい、かように思います。
  207. 田中慶秋

    田中(慶)委員 大臣は余りにも現場認識が足りないと思います。今の建築基準法は建設省が打ち出して全国にちゃんと指導しています。あるいは都計法、都市計画法も同じように指導しております。今度の線引き問題もその指導性がないところに問題があるわけですから、やはりこういう問題というものは明確にしない限り、いつまでたっても線引きの見直し論というものは絶えず全国的におさまらぬと思います。  そういう点で今大臣が言われたことについて私は理解できません。はっきり申し上げて、そうしたらそれぞれの地域でごね得になってまいります。ここの町は広がるとかここの町は今後人口をこういうふうに伸ばしたいとか、こういう形になってきたのでは主体性がないと思います。そういう点で新都市計画法の施行時からこの問題は間違っていた、ですからはっきりしたその根拠というものをこれからつくってもらいたい、その辺についてつくっていただけるかどうか、明確にしてください。
  208. 越智伊平

    ○越智国務大臣 都市計画につきましてはその地域地域で、先ほど申し上げましたようにその特性を生かして、ここはどうしようか、これはどうしようかということで進めていくべき問題でありまして、例えば道路がつきますとその道路から何メーターとか、駅ができますと駅から何メーターを市街化区域にせい、こういうふうに言いましても、地域の方々、それぞれのお考えがございましょうから、その市あるいは町村、県、ここらでよく御協議いただいて、できるだけ速やかに自然の動向に従ってやっていくのがいいんでないか、こういうふうに思います。ただ私の方でここはぜひ市街化区域にせよというようなことを言うべきものではない、こういうふうに考えております。
  209. 田中慶秋

    田中(慶)委員 意見がかみ合わないと思いますね、考え方が、とらえ方が違うわけですから。根拠がないから根拠をつくりなさいと言っているわけです。一つのマスタープランが何もない。ですからマスタープランをつくって——何もそれを画一的に全国そうしなさいと言っているわけじゃありませんから、そのマスタープランをつくったらどうだということを提案しているわけです。  もっと具体的に言いましょう。例えば調整区域でも公団や公社と民間とが宅地開発をしておりますりところが、公社公団等については租税特別措置法というものがあるから税制問題で優遇されてまいります。そういう点で、民間との競合の中で逆にそのことによって地価を高騰させている原因もあるのです。ですから、そういう問題を含めて皆さんがそういう一つのマスタープランをちゃんとしたらどうだということを私は提案しているのです。そのことを明確にしてください。
  210. 木内啓介

    ○木内政府委員 大臣の御答弁の前に若干技術的な御説明をさせていただきます。  先生のおっしゃるように、法律、政令、通達等で基準はありますのですけれども、それは若干抽象的な感じがしまして、先生のはもっと具体的にというお話だったと思います。で、大臣御答弁申し上げましたように、地方の実情でいろいろ都市計画が変わりますからなかなか具体的な基準ができないということ、そして四十五年の第一回の線引きは、最初のことでもありましたし、確かにおっしゃられるようにちょっと多過ぎるかなという感じのものもありました。しかし、その後線引きの見直しを二度やりまして、今度見直しに当たってはこういうところは、例えば区画整理の計画がしっかりできているところとか、それからこういうところは入れるように、あるいは保留フレーム等をつくって弾力的にするようにというふうな指導をしてまいっております。そういうことを今後とも続けてまいりたいと思っておるわけでございます。
  211. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしてもきょうは限られた時間でありますから、またあした一般質問でやる予定でありますので、きょう明確にならない分はあしたでもっと詰めたいと思います。  例えば、いいですか大臣、今平均で五ヘクタールの開発をしようとしますわね、宅地造成を。そうしますと用地買収が約一年、事前協議、許認可、認可を受けるまで大体一年から二年かかります。そして工事にかかります。宅地を完成するまで四年かかるんですよ、四年。いいですか。そうしてその間の金利の問題やら、さらにはまた図面や書類だけで二トン車に一台もあるんですよ。それだけではありません。この中で、例えばこの地域開発を、宅地造成をするときに減歩率やあるいは公共公益用地、こういうことを含めて、二割から三割が公共用地、公益用地を含めると大体三割から四割減歩をしなければいけないわけであります。  さらに地方自治体の上乗せ、要するに都市計画上の上乗せ基準、こういうものがあって、学校が必要だから学校用地出せ。その学校用地を出すに当たってはきれいに造成したものが一平米一万二千円ですよ。詐欺みたいなものですよ。こういう形のものでやっている以上は決して良好な安いいい土地は、あるいはいい宅地は、幾ら国土長官が骨折ったって、こういう許認可の中でこういう問題点があるわけですから、それを改善しなければいけないと思うのです。その辺について明確にしてください。
  212. 越智伊平

    ○越智国務大臣 今のお話につきましては同感であります。期間が非常に長い、そして手続が非常に複雑、このことには同感であります。でございますから、この点につきましては審査等を並行的にやっていくような指導をいたしたい。また手続の簡素化等につきましてもどういうふうにできるか検討をしまして指導をしていく、要は早くやっていく。  それから今の公園とか道路、これはやむを得ないと思いますが、学校等の問題につきましては、今お説のように一万二千円でよこせというようなことはちょっとどうかな、こういうふうに思いますので、よく検討して指導してまいりたいと思います。
  213. 田中慶秋

    田中(慶)委員 道路、公園の問題も、発想を変えればもっと、例えば法律上は六メーターの道路を要求される、しかし八メーターの道路をつくらせられたり、今歩道が必要でありますから、両側に歩道をつけますと、六メーターの道路でも大体一・五メーターの両サイドの歩道をつけると九メーター。しかし、現実には法的にはそんなことないわけです。あるいは、道路と河川がラップすることによってもっと有効的に使える。しかし、そこには河川法という古い法律があってなかなかできない。あるいはまた、公園はできないと言っておりますけれども、公園と遊水地があるわけです。目的は余り変わりませんね。ところが、公園と遊水地をもっと立体的にすることによって、あるいはラップすることによってもっともっと公益用地や公共用地というのは少なくできます。そのことによって現実には良好な宅地が安く提供できるのです。  私はそんなことを考えているわけでありますし、そのことについて恐らく大臣も御検討されていると思いますけれども、この辺をもっとお互いに、建設省の内部なんですから、縦割り組織といいますかセクショナリズムにならないでその辺をもっと明確は指導してやっていただきたいし、また、法の改正が求められるのであれば法の改正を求めたいと思います。
  214. 望月薫雄

    ○望月政府委員 先生の今お話しの中で、宅地開発に当たっていわゆる指導要綱の厳しさ、いろいろと御指摘がございました。私どももこういった点については数年前から、この行き過ぎ是正について関係県あるいは市町村を強く指導しているところでございます。  そういった中で、特に宅地開発に当たっての公共施設の整備についてもうちょっと知恵が出せないかという点でございいます。おっしゃるとおりでございまして、私どもも、そもそも宅地開発に当たって公共施設が望ましい水準であることは当然必要でございますけれども、例えば洪水調整池と公園というふうな具体例もございます。こういったものについてはできるだけ多目的空間として活用しよう、お説のとおりでございまして、六十一年以来具体的に指導してまいっています。  それで、実績を見てまいりましても、一年間で、公園と駐車場あるいはテニスコートなどと洪水調整施設、こういったものを重用的に共用しているものが百五十件を超えている、こういう状況でございまして、おっしゃるような方向で、あらゆる部門で私ども強力に努めてまいりたい、かように思っております。
  215. 田中慶秋

    田中(慶)委員 限られた時間でありますので、次に、その問題を含めながら申し上げたいと思います。  例えば住宅関連にしても、住宅公団があり、地方には住宅供給公社があり、かつまた土地開発公社があり、さらには土地助成公社があり、こういう一連のものがたくさんあるわけであります。そこで私は、少なくとも法律を若干見直しをすることによって、目的は同じなんですから、行政改革の一環としてこれらの見直しが必要じゃないか、こういう問題について、これは総務庁ですか、こういう一連の問題をぜひ明確に指導して、もっともっとスリムになることが期間を短縮できるわけでありますから、あるいは地価の高騰を抑制することもできるわけですから、この問題について明確なお答えをいただきたいと思います。
  216. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 先ほどの宅地供給の問題につきましては、実は総務庁といたしまして行政監察をいたしておりまして、その点については既に委員御指摘のとおりでありますが、ちなみに申し上げますと、実は事前協議等の段階で非常に時間がかかっておるということでありまして、大体申請があってから三カ月以内に片づいたものは二二%、それから、長いのになりますと二年以上かかっているものが約四分の一ある、そんな状況でありまして、大体七八%が三カ月以上かかっておる、そういう状況であります。したがいまして、総務庁といたしましては、宅地開発要綱の行き過ぎの是正等について勧告いたしまして、また、緊急土地対策要綱にもお取り上げいただいておるところでありまして、積極的に進めてまいりたいと存じます。  なおまた、ただいま御指摘のありました公団、公社等の問題についてでございますが、国の方はより広く全国的な立場で考える、公社はそれぞれの地方自治体が独自の行政需要に基づいて設立をしておるものでありますので、ただいまのところ、それを統合せよというお話には、ちょっと総務庁、そういう姿勢には乗りかねるという状況でございますが、御指摘でございますので、今後また勉強してまいりたいと存じます。
  217. 田中慶秋

    田中(慶)委員 限られた時間でありますので、もっと具体例があるわけでありますけれども、あしたもしあれでしたらこの辺を詰めさせていただきます。  そこで、実はこれは最後にこれらの問題、道路を含めて総理見解を求めたいわけでありますけれども、例えばサラリーマンですね、平均賃金が大体年間六百万だとしますと、そのサラリーマンの人たちがマイホームの夢を実現するためには大体三年か四年、すなわち三倍から四倍が本当の意味での住宅持ち家政策じゃないかと思うのです。そういう点について、これは制度上の問題じゃなく、政治的な判断としてやはりそのような形の問題を取り上げていかなければいかぬじゃないかと思うのですけれども総理、この問題についてお答えをいただきたいと思います。
  218. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 土地対策特別委員会等のときに拝見させていただいた野党共通の土地対策要綱の中に、大体年収の五倍、それから家賃だった場合は二〇%というような数字が書かれておりまして、これは理屈は別として政治の一つの目標として考え得ることだな、まあ特殊な事態があることも承知しながらも漠然と私もそんな感じでもって見ておりました。
  219. 田中慶秋

    田中(慶)委員 道路問題と河川問題は、通告をしておきましたけれども、これはあしたに延ばさせていただきながら、そこで実は留学生問題に触れさせていただきたいと思います。  日本の今日の政府が、総理が「世界に貢献する日本」、こんな形で大きなスローガンを上げております。そこで、留学生十万人の受け入れ対策も具体的に目標として求められております。そういう点では、国が行うもの、さらには今、民際外交という問題があるわけでありますから、民間が行うもの、明確に区別をする必要があろうと思います。しかし、留学生は主として日本語研修を含めますと大体六年間日本に滞在するわけでありますから、よき日本の理解者として私たちはこういうこれからの国際化の中で大変評価をしなければいけない。しかし、この六年間に円高が大変進んでおりまして、留学生のすべてが大体二倍から三倍の苦しみを味わっているのが実態であります。  そこで、私は総理に申し上げたいのは、これからの一つは、政府でやるもの、あるいはまた政府が住宅や寮という問題を建設して提供しなければいけない。もう一つは民際外交の立場で、日本は今日の経済がこれだけ発展しております、そこで海外に企業進出をしたりあるいはまた海外に多くの輸出をしている企業が多いわけでありますから、今日では設備の近代化とかいろいろな形の中でそれぞれの企業が空き家、寮の空き家あるいはまた社宅の空き家があるわけであります。そういう問題を含めながら、それを提供させるような指導というものがあってもしかるべきじゃないか。しかし、民間の企業の中では、これらの問題については税制問題の措置の問題やら、少し改善をしなければいけない問題もあろうかと思います。そういう点で、これらに対する見解をいただきたいと思います。
  220. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 あるいは文部大臣からもっと専門的なお答えがあった方が妥当かとも思うのでありますが、留学生問題、御指摘のとおりであります。  それで、日本政府が奨学金を支給する国費留学生の数の拡大を図りますとともに、授業料の減免措置、今おっしゃった円高などで相手国側から見れば思いも寄らぬ問題がございますから、そして、私費留学生対策につきましてもこの宿舎の整備等の問題がございますが、今お話しになりました民間の企業が合理化その他、いわば一方的に言えば社員住宅とでも申しましょうか、等々を活用して留学生の受け入れに協力してやろう、もうこういうのが経済同友会等でも逐次行われておるという話を聞きまして私も大変勇気づけられます。これらが、いわゆるあっせんの問題でございますとか、それから今おっしゃいました税法上の問題も存在するでございましょう、そうしたものをいま少し総合的に考えたらおっしゃる趣旨が生かせるんじゃないかなと、私も心からそう感じたわけであります。
  221. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、留学生を大切にすることは、やがて日本が、それだけ大きな社会的な投資みたいな形の中で日本を理解されてくると思います。そういう点を含めて、制度でできるのか、あるいは具体的に手法としていろいろなことをまとめて呼びかけていくのか、ぜひそういうことをこの際積極的に行っていただきたいということを要望しておきたいと思います。  時間の関係で最後になりましたが、日本の経済が今日まで発展しているのには、一つには、トリプルメリットと言われるように金利の問題もあるでしょう。一つには原油が安いという問題がある。ところがこの原油、御案内のように、日本では、産油国じゃありませんからもう一〇〇%近く輸入をされている。ところが、このペルシャ湾の問題一つとっても、ペルシャ湾を通過されている船舶の中で大体五六%が日本に向かう、日本で使う船であります。原油船でありますから、そういう点では、この船舶が攻撃を受けても、あるいはまた大変危機に直面しながらそこに働いている人たちあるいはその船を運航されている皆さんは大変な環境で働いているわけです。  しかし、私たちはこれだけ日本が成長され、日本で温かい経済を迎えられているわけでありますけれども、しかしこの人たちの気持ちを察し、家族を察したり、あるいはその人たちの仲間や職場、海員組合とかそういう人たちのことを考えたときに、私は本当にありがたいと思うし、済まないと思うし、もう一つ制度上何かしてやれないかな、こんな気持ちもあるわけでありますけれども、現実には何もできない。ただ漠然とその人たちの努力に感謝しているわけでありますけれども、政府としてこれらの問題をどのように理解し、どのように対処されているのか、お伺いしたいと思います。
  222. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 先般ある集まりで、日本の代表的な船会社の社長さんと、また石油会社の社長さんから、日本の船員たちが本当に矢弾の下を命がけで運航して日本に油を供給している、自分たちとしては危険手当は出しているけれども、それプラスアルファ、何か国でこの人たちの努力に報いるべく報償して願えないかというお話がございました。余りにも日本人は文化的、文明的な生活になれまして当たり前のことになっておりますけれども、昔、子供のころ「きょうも学校へ行けるのは兵隊さんのおかげです」という歌がありましたが、まさにこうやってきょうも明かりがともるのは船員さんのおかげでございまして、私たちやはりそれに厚くこたえ、感謝もし、評価もしなくちゃならないと思っております。  しかし、国家がそれに報いる、メンタルサポートということなら、これは私が云々するよりも総理大臣にお聞き願いたいと思います。
  223. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに一九六〇年代の高度経済成長を支えたものは、十三年間、いわゆる二ドル原油、一ドル七十五セントから二ドル三十セントぐらいまでの間でございました。これは単なる経済発展の問題だけからとらえた問題でございますけれども、今御指摘なすったペルシャ湾からの船舶輸送の確保、それに対して、また本当に今石原運輸大臣からいみじくも言われましたように、危険な環境にもかかわらず果敢にその任務を遂行しておられる、済みませんなという気持ちはだれしもございますが、ただそれだけで済むものじゃないなという感じは私もいつもあるわけでございます。  したがって、これらに対しましては、それは外交上から申しますならば、幸いに両国に対して窓口開かれております日本がイラン・イラク両国に対しての自制を働きかけて、湾岸情勢の緊張の背景にあるイラン・イラク紛争というものの解決に努力していくということが、これは今政府としての一つの大きな外交政策上の問題でございますが、今石原運輸大臣からいみじくも申しましたような、本当にきょうもこうしておれるのもと、こういうような心情というものをまず為政者たるものがいつも持って対応していかなければならぬというふうに考えております。
  224. 田中慶秋

    田中(慶)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。ありがとうございました。
  225. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて吉田君、田中君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  226. 菅直人

    ○菅委員 竹下総理は昨日韓国の大統領就任式出席をされて帰られたばかりということで、大変御苦労さまです。  その韓国も現在大変な何といいましょうか都市化が進んでいるというふうに聞いておりまして、その中で都市をどうするかあるいは土地をどうするかというときに、聞くところによりますと、とにかく日本のようにはしてはならない、もっと言えば東京のような町にしてしまったんではだめだ、そういうふうに言われているという話を聞きました。他山の石のその悪い例に我々の国が、あるいは町がなってしまっているのは大変残念なわけですけれども、そこで特に総理に、この土地、住宅あるいは都市政策について、基本的な問題で幾つか見解をお尋ねをしたいと思います。  先ほどの田中委員質疑の中でも総理は、現在の目標として年収の五倍程度で住宅が持てるように、あるいは月収の二割程度でそれなりの賃貸住宅が借りられるように、それを一つの目標と考えるべきだ、自分もそういうように考えることに同意するんだということを言われておりました。私もその目標は一応の達成目標としてあり得ると思うわけですが、じゃ一体どうやっていつまでにその目標に達成をしようとするのか、このことが残念ながらこれまでの政府なりあるいは自民党なりの議論の中で必ずしも出てこない。例えば現在の議論は、土地の値段が三倍ぐらいに上がった、ちょっと鎮静化した、だからこれで地価抑制はもう達成されたんだ、あとは地方分散だ、政府機関の地方移転だと。これはこれで進めるべき点もあると思いますけれども、じゃ例えば政府機関を地方に移転をしたから、先ほど総理も合意をされた目標に三年後に、五年後に、いやそんなに急がなくても十年後には確実にその目標が達成されるんです、そこまでのプランが国民に示されるならば、それはそれなりの納得になると思うわけです。しかしそうでなければ、都市に生活をするということについに議論をいわば土地の値上がりがとまった時点でもう終わりにして、あとはいわば話を東京の話、都市の話から地方の話にすりかえてしまっている。そういう意味では、現在、首都圏に生活をしている人口は三千万です。日本の全人口の四分の一です。大阪圏とか々名古屋圏を入れれば、大都市に住む国民の数というのは過半数と言っても間違いないと思うのです。そういう中で一体どういうふうに、いつまでにその先ほど総理がみずから認められた目標を達成するのかということだと思うのです。  たしか昨年の暮れのある新聞に、近未来風に竹下総理のことが書かれておりました。たしか二十一世紀になったときに過去を振り返って、いやあの竹下政権というのはなかなかすばらしいものであった、あのときに都市政策を変え、土地政策を変えたおかげで今は非常にいい水準の住宅が持てるようになった、そういう囲み記事を書いた新聞がありましたけれども、本当にそうなるためには、やはり竹下政権のもとで今日の時点で、例えば十年間の住宅整備計画などをちゃんとつくって、その目標をいかにしていつまでに達成するかということを明確にする必要があると思うわけですが、そういった基本的な点についてまず総理見解を伺いたいと思います。
  227. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 私有財産制度というのも厳然と存在しておる、そして計画経済を土台としていない、こういう原点はございますものの、私が野党の皆さん方のおつくりになった、昨年読ませていただいたときに、また経済企画庁でそういう御論議をなすった数字を見たときに、本当に五倍と二〇%というのは一つの政治的考え方だなと思いました。勇気がないから、それを目標だと言うほど私も自信があって申し上げておるわけではございません。近未来的なというお言葉がございましたが、昔さんのもう少し中期な目標でもお立てになればなお立派だろうと私は率直に思いますが、私なりにそうしたあの経済企画庁の構想、それから野党の共同提案等を見させていただいたときに、一つの政治家として念頭に置かなきゃならぬ課題だな、こういう問題意識を持った程度であるいはあるのかなといって今話を聞きながら反省もいたしておるところでございます。  そこで、結局せんじ詰めると、やはり第四次全国総合開発計画というのは、その一つの中期目標を示す大きな計画ではなかったか。したがって、少なくともそれの進んでいく初年度として六十三年度というものを位置づけてみたいなという気持ちがございます。私が一省庁一機関分散などと申し上げたのも、既に御案内のとおり概算要求が済んでしまった後の話でございますので、今どれだけのものが予算にきちんと盛り込まれておるという課題ではございませんが、これとてその大目標の四全総の初年度の一部にでも位置づけていただけるとしたら自分なりに幸いであるというふうに考えておるところであります。  と同時は、土地対策というのは、やはり通勤距離という、そういう高度交通システムというものによってまた左右されてくる一面もございますだけに、まさにそれらを総合的に組み合わせた四全総というようなものに一歩一歩努力していくということではなかろうか。  大変期待に胸を張って答えるほどの私お答えができないことを残今側に思っております。ただ一つだけ、そうだ、金融措置などによって若干鎮静した、それで済んだ済んだなどと言う考えは毛頭ございません。
  228. 菅直人

    ○菅委員 私は、残念ながら今の竹下総理見解というのは非常に不満なんです。これは党派とかということを超えて、特に世代の差が非常ににじみ出ているような気がするのです。  つまり、住宅というのは大根やお米のように毎日食べたりするものではないのです。ですから、やはり一つの単位で言うと三年とか五年あるいは十年という単位で、就職をしたときに家をかわる、結婚したときは家をかわる、子供が一人生まれ、二人生まれたときにもうちょっと広い家にかわる。ですから、去年上がったからことしすぐ困るかと言えば、まあまあ何とか我慢できるのです、半年、一年は。しかし、これが二年、三年、五年とたつと、その不満というか、あるいは老後を含めた不安というものはますます大きくなるわけです。  現実に、私も三十代、二十代の多くの人と話をしていて、例えば新しく新入社員になる、都心の会社に勤める、まあ三十分とは言わないけれども四、五十分のところに家を持とうと思えば、初任給の半分近く、少なくとも三割や四割は出さなければとてもふろのついたようなところには住めない。あるいは、結婚をしてそれなりのマンションなりに住んだりしようと思えば、やはり少なくとも一時間半は通勤を覚悟しなければとてもそういうところは見つからない。  今の総理の話は、四全総とかいろいろ努力をするからそれを一歩として考えてくれ。私は、それが十年後に達成するということを見通した一歩であるなら、それはそれで一つの方針として評価するにやぶさかではないわけですが、しかし残念ながらこれまで、四全総が最初じゃないわけで、三全総もあり、二全総もあり、あるいは閣僚会議も今回が初めてじゃないわけで、何回も閣僚会議をつくられ、何回も土地住宅政策について提案を出して、これだけ豊かな国になったと言われながら、これだけますます、特に若い世代にとってひどい状況になっている。  この住宅の問題の認識は、非常に世代間の格差が認識そのものにある。奥野国土庁長官は、さきの質疑なりで、渋谷の方に四百何平米かの土地を持っておられるというのを資産公開で挙げておられましたけれども、もうそんな土地を持つなんということは今の三十代、二十代にとっては、それは野球選手で一番売れた野球選手であろうが、一番売れる歌手であろうが、とても持てないわけです。相当会社で成功した人であろうが、とても個人には持てないのですよ。こういう現状に対して、私も一年や二年でどうこうしろというのが無理なのはわかっています。せめてこの二十一世紀までの間に何とかそういった竹下総理の今言われた目標を実現するんだ、そのためにはありとあらゆることをやるんだというその決意を、私はぜひ竹下総理にもう一度聞かせていただきたいと思います。
  229. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 私もたびたびここでお答え申し上げてまいりましたように、マイホームの夢を砕いてしまう、そういうことは将来の日本にとって非常にゆゆしい問題だ、だからこの問題は何としても解決しなければならないという気持ちを多分に持っているわけでございます。  同時にまた、今の地価高騰は、東京中心でございました、それがだんだんと名古屋圏、大阪圏に移ってきました。もしそのままでございましたら全国に移っていっただろうと思うのでございますけれども、幸いにして今はここでおさまっているわけでございます。東京圏におきましても、今御指摘ございましたように三十キロ先まで行かなければならない、五十キロ先まで行かなければならないというような事態になってきているわけでございます。やっぱり東京一極集中がこういう事態を生んでいるのだから、やはり多心型の都市構造をつくっていく、あるいは多核、多圏域型の地域構造をつくっていく、そして職住近接の地域社会にしていかなければならない、これが今の東京都を中心にする都市改造の考え方であることは御承知いただいていると思います。  鈴木都知事が、今は東京の中央にばかり集中している、やはり副都心をつくっていかなきゃならない、そんなことから、大崎、渋谷、新宿、池袋、それから上野、浅草、東京湾の臨海部等、七つの副都心をつくろう、そこでやはり住宅地もある程度造成していきたい。そういうことでなければ交通は大混乱に陥ってしまう、とても職住近接の都市どころではない、こう考えているわけでございますし、また四全総では、業務核都市を周辺につくっていこうじゃないか、横浜・川崎、八王子・立川、それから浦和・大宮、それから筑波と何といいましたか、それから千葉。さらに、もう一つ先に副次核都市をつくっていこう。横浜・川崎の先は厚木だ、立川・八王子の先は青梅だ、さらに大宮、浦和の先は熊谷だ、さらに千葉の先は木更津であり成田である。やはりそれぞれの核をつくっていって、そこに集まってきてもらう。そうであるならば、ある程度職住近接の地域社会もつくっていける、したがってまたマイホームの夢を復元させることも可能だ、こういう考え方で努力しているわけでござしいまして、ぜひ私たちもマイホームの夢を捨てるような考え方に立ってはならない、強く考えながら努力を続けていきたいと思っています。
  230. 菅直人

    ○菅委員 私は、奥野長官の気持ちは多とします。しかし、残念ながら今の話を聞いても基本的に一つ抜けているのです。東京が分散をしたらそれで解決するのか。日本の社会というのは自由社会ですから、幾ら町をたくさんつくったからといって、それで東京が本当にちゃんと先ほどの目標になるかという保証は何もないし、今までの歴史の四十年間はどんどん広がっています。昭和十年、二十年、三十年に比べて現在はもっと広がっています、都市部は。それでありながら、この土地の値段がめちゃくちゃな状況というのは変わっていないわけです。  何が抜けているか。これは都市に生活をするノーハウというのか都市に生活をするという考え方が、あるいはそれをうまくやっていくという考え方が日本の社会にあるいは日本の法制度の中にないということだと私は思うのです。ヨーロッパとかアメリカにも日本の東京に匹敵するような大都市はありますけれども、少なくとも日本の東京のようなひどさはないわけです。そういうことを考えると、単に分散をしたらそれで何とかなるでしょうというのは、歴史を見てもあるいはヨーロッパの事例を見ても必ずしも私はそれはならないと。つまり、例えば二十三区の中にあるいは山手線の内側に今だけの人間がいてさえちゃんとした良好な住宅というのは提供できるはずだし、都市の中であるいは東京圏の三千万の人たちの中でできるはずなんです。  これからいつまでにという話が残念ながら竹下総理から現時点で聞けませんでしたから、それは後ほどもう一度聞かせていただくことにして、それではいかにしてそういうことを実現をするかということに議論を進めていきたいと思います。  私は、まずいろいろな事例を調べてみて、都市をつくっていく上であるいは土地問題を解決していく上で二つの大きな手法があると、大体の学者とかいろいろな人のものを見て思いました。  一つは都市計画、特にヨーロッパは計画なきところに開発なしというのが原則です。聞く話によれば、ある道路があって、ここに土地がある、あいている。しかしそこには、西ドイツでいえばBプランというような形で詳細な地区計画が立てられている。ですからそこの土地は、家を建てる場合は何階建てのこういう外壁の色をしたこういう建物を建てなければいけない。逆に言うと、建てないならばそれは自治体なり国が買い上げて建てる人に売ります、そういう形で、原則的にそこに何を建ててもいいとか何に使ってもいいという自由はないのです。原則規制なんです。例外的にこういう条件を満たすものをつくっていいというふうに、例外自由という形になっているわけです。  しかし、日本の都市計画——都市計画は一応建設大臣ということになっておりますが、私は単に建設大臣の責任とか建設省の責任ということを超えて、基本的な考え方が、原則的には自由なんだ、おれの土地なんだ、何をやったって構わないんだ、しかし例外的に建ぺい率がどうとかなんとか言われるからいろいろ制約があるんだ、原則自由で例外規制という考え方というよりは、それで成り立っちゃっているわけです。そういう意味で都市計画というものの考え方が、極端に言えば日本にはなかった。そのことと、後に述べるあるいはこれまでも幾度かこの委員会や土地の委員会で述べた土地税制のあり方の基本的考え方、都市計画と土地税制の組み合わせが、私は本当にその目標を達成するための一つの手法の柱だろうと考えるわけです。  そこで建設大臣、今申し上げた都市計画というものの考え方が、計画なきところに開発なしというのが原則だ、私が知り得た知識でいえばそう考えるわけですが、大臣として都市計画についてどういうふうにお考えですか。
  231. 越智伊平

    ○越智国務大臣 御高説を拝聴いたしましたが、我が日本ではやはり日本なりのただいままで都市計画、これはやっていたわけであります。ただ、最近非常に地価が高騰いたしまして、これは何といっても最終的には需要と供給、土地にいたしましても住宅にいたしましても需要と供給の問題でありますから、我が建設省といたしましては、土地をできるだけ有効に利用する、したがいまして、先ほど来御議論のございましたように線引きの問題、また再開発の問題等々を有効に利用いたしまして供給を多くしていく、こういうことをただいまは考えておる次第であります。
  232. 菅直人

    ○菅委員 ここは非常に重要なところですから、あえてもう一度、これは大臣でなくてもいいですからお聞きしますが、都市計画というのは、計画なきところ開発なしというのが原則だというふうに考えるといいましょうか、ヨーロッパでもなされているわけですが、そういうふうに建設省としては考えておられますか。
  233. 木内啓介

    ○木内政府委員 先生のお話のように原則自由、例外規制とかというふうな言葉は一応よく言われる言葉でございますけれども、私どもの都市計画法の体系としましても、都市計画は御承知のように整備、開発、保全の方針というふうなものから発しておりまして、一応基本的には、原則的には、原則的な規制はなされているというふうに考えているわけでございます。ただ先生のおっしゃるように、特にヨーロッパの西ドイツのBプラン等に比べますと確かに詳細性に欠ける。したがいまして、詳細性に欠ける点からきめ細かな規制とか誘導というのに欠けているという点はあろうかと存じます。  しかし、これに対しましては、先生御承知のように最近地区計画制度というものを導入しまして、より詳細な土地利用計画の策定を進めているところでございます。ただ、しかしながら、一般的に地区詳細計画を一般化するというふうなことは、日本の現状においては今まだそこまで行ってないのではないか、むしろ地区計画等の積み上げを図っていくというふうなことが大事じゃないかと考えている次第でございます。
  234. 菅直人

    ○菅委員 総理、これは細かい議論のようですがぜひ聞いていただきたいのですけれども、もう一回聞きますよ、建設省。  今私が言ったことに対して簡単に答えていただけばいいのです。計画なきところ開発なしという原則が都市計画の原則だと考えるけれども、そういう理解でいいかということです。いいならいい、悪いなら悪いではっきり答えてください、考え方だから。
  235. 木内啓介

    ○木内政府委員 基本的には正しいと思いますけれども……。
  236. 菅直人

    ○菅委員 それで結構です。  基本的に正しいというふうに建設省の担当者も言われましたが、残念ながら日本の都市計画はそうなってないということなんです。今建設省の担当者の言われた都市計画法十二条の四ですか、地区計画という計画が、多分これは西ドイツのBプランなどを参考につくられたのが昭和五十五年です。それでさえ五十五年ですからまだ数年前なんです。確かに地区計画というのが考えられているわけですが、条文のつくり方を含めて規制なんですよ。規制条件をふやすのですよ。つまり、計画という形よりも相変わらず規制という考え方が強いのです。  今ここにそういう都市計画に関連した法文をずらっと並べてみたものがあります。たくさんあります、とにかく絡んだ話は。国土利用計画法、都市計画法、建築基準法、国土総合。開発法、首都圏整備法、近畿何とかかんとか、全部で三十、四十あります。法律ばかりたくさんあるのですょ。幾ら聞いても、あれはこの法律に、これはこの法律に、これはああやっています、こうやっています。じゃ例えば、この都心で今地上げが起きている。ああいう事態に対して都市計画がちゃんとしていれば、この地域は、じゃ緑にしましょう、この地域はじゃ再開発をしてこうしましょう、そういう計画を中央区なり千代田区なり港区なり渋谷区で立ててそれが法律効果を持ってやっているのですかといったら、部分的にはいろいろあるかもしれないけれども、基本的にはないのですよ。ほとんどの部分でないのです。地区計画という法律ができても、新しいニュータウンをつくるときに使われている事例は幾つかあるけれども、残念ながら日本ではまだやられていない。最後に担当者の言った、日本にはまだなじまない、確かになじまないかもしれません。なぜかといえば、それは都市計画というのは強制力だからです。しかし、強制力を持った計画を国民合意の中でつくるというやり方、つまりそれが計画なんですね。その計画がなければ開発はできません、それを貫いたことによって今のヨーロッパの町ができているわけです。  そういう点で、これは専門家も言っておりますけれども、今の日本の都市計画に関する法律体系を全部もう一回洗い直す必要がある。既存の法制を改廃をして、例えば国土計画あるいは地方計画あるいは市町村計画あるいは地区計画という形で例えば四段階に整理をして、まさに規制だけで調整をするのではなくて、計画がなければ開発はできませんという原則にのっとって法体系の改革が必要だと私は考えるわけですが、これは建設大臣、そうだとは答えられないかもしれませんが、せめて大いに検討してみようくらいは答えてください。
  237. 越智伊平

    ○越智国務大臣 お話にございました都市計画法でありますけれども、欧州と日本とは地形も違いますし、いろいろ違ったところが多々あると思います。しかし、せっかくのお話でございますから勉強をしてみたいと思います。
  238. 菅直人

    ○菅委員 これは本当に都市をつくるというのはまさに社会科学ですから、実験はなかなかできないとすれば、外国とか歴史に学ぶしかないわけであって、比較的うまくやっているところの手法で日本が取り入れられるものは取り入れるという方向でぜひ検討してみていただきたいと思います。  次いで、土地税制について幾つか申し上げてみたいと思います。  実はこの議論は何度も、竹下総理はおられませんでしたけれども、土地対策の委員会とか、あるいは予算委員会でさきの内閣当時に私の方からも提案をいたしました。細かく言えばいろいろあるわけですが、これも何度か私が引用した例ですけれども、あえてもう一度引用したいのですけれども税制で大変参考になったと私が考えたのは台湾の土地税制です。これは簡単に言うと、二つの考え方、つまり土地はできるだけ平均的に使いましょうという考えなんですね。では、具体的にどういう制度があるか、固定資産税が累進課税になっているのです。ある地域ごとの平均単価を出して、七百平米まで持ってている人には税率一%、その二倍、三倍、五倍、十倍、百倍持っている人は二%、三%、最後は五・五%まで税率を上げていくのです。そうすると、たくさんの土地を持っている人はなかなか持ち切れなくなる、自分の家だけの人はそんなに負担はかからない。平均地権という考え方でそれが実行されておりました。  もう一つは漲価帰公。膨張する価格が公に帰ると書いて漲価帰公。これは、土地の値段を、まず基準値を決める、日本で言う公示価格のようなものを基準にして自己申告された基準値を決めて、何年後であっても、それが五年後であろうが五十年後であろうが売ったときの差額、物価上昇とか若干の修正はしますが、差額に対して、これは土地増価だ、これは個人の力で土地の値段が上がったんじゃない、公の力で上がったんだからそれは公に帰すべきだ、いわゆる土地増価税という形で、これも何倍値上がりしたかによってその差額に対しての累進課税が実行されているわけです。  大蔵大臣、今キャピタルゲイン課税の議論がいろいろと始まっています。私は、土地に関しても基本的に土地増価税というものを導入して、まさにキャピタルゲインに対して、これは株の場合以上に、つまり株の場合は個人のリスクと個人のいわば才覚によって利益を上げるのでしょうけれども、土地の場合はみんなの税金によって利用価値が上がって値段が上がるわけですから、キャピタルゲイン課税というのはもっと必要なわけでして、そういうことを含めて土地増価税の導入ということを検討すべきだと思いますが、いかがですか。
  239. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御承知のように土地の譲渡所得につきましては、短期のものについては非常に厳しく、中長期のものについてはそうでもございませんが、かなり大きな譲渡所得税を課税をいたしております。
  240. 菅直人

    ○菅委員 そこで一つ大きな穴があいているのですね。それは法人なんですよ。つまり土地増価税には国によっていろいろな制度がありますが、今の私が申し上げた例の台湾であれば、土地増価税は個人でも法人でも全く同じにかかるのです。ですからいわば一種の再評価で、別に売らないときにかかるわけじゃありませんが、売ったときにはかつて買った値段の差額に対して税金がかかるので、その会社が黒字であるから赤字であるからということは関係ないのです。御存じでしょうが、今の土地転がしなんかは、利益が上がりそうになると、赤字会社に利益を集めてしまうんですね。それはできないようになっているんです。そういう意味では、土地税制は法人税あるいは個人の所得税体系からも分けてあるわけですけれども、法人税に関しての土地増価税の導入をすべきだと思いますが、どうですか。
  241. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは原則論としては、法人におきましても土地の売却によって所得があれば課税を受けるということは、これは菅委員も御承知のとおりのことでございます。その場合に、赤字会社などが間に入りましてその所得を消そうとするそのような行為であればその行為は否認することができるはずでございますから、制度としてそんなに私は欠陥があるわけではないと思う。ただ問題は、実現しないときのポテンシャルな利益というものに課税をするということには、大変に限度があるだろうというふうに思います。
  242. 菅直人

    ○菅委員 いや、最後のあれは別に実現しないときにかけろと私が言っているわけじゃありませんよ。売却をしたときに差額に対してかけるべきで、これは基本的考え方なんです。土地の増価というのは、いわば会社の努力によるものでもない。個人の努力によるものでもない。それは公の努力といいましょうか、公の力によるものであるから、個人が十万円で買った土地が百万円になろうが、何とか株式会社が十万円で取った土地が百万円になろうが、売ったときの差額に対しては同じように税金をかけるべきだ、それについてはどうですかと聞いたんです。
  243. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、例えば法人が土地の売却によって利益があった場合には、法人がその他の営業等々によって損失をこうむっておっても、別除してその部分に課税をしろ、こういうことでございますか。
  244. 菅直人

    ○菅委員 そうです。それが土地増価税です。キャピタルゲインというのはそういうものです。キャピタルゲイン課税というのはそうでしょう。ほかで損してたら株でもうけたのはかからないでしょう。
  245. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっと政府委員からお答えをさせていただきます。
  246. 菅直人

    ○菅委員 いや、いいです。大蔵大臣が答えられないことを政府委員が答えられるかどうかわかりませんので。私は別に今すぐ入れるということを返事をしろというのではなくて、本当にまじめにこれはぜひ検討してもらいたい。つまり土地のキャピタルゲインを課税する上で、今のやり方というのは非常になまぬるい、というよりは原則がないということなんです。さっき台湾の税制を引き合いに出しましたが、漲価帰公という、キャピタルゲインは公のものに戻すという原則がないということを言っているわけで、ぜひ検討していただきたいと思います。
  247. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変失礼いたしました。  法人の場合にも、その土地の保有年限が短期の場合、二年以内の場合は三〇%、五年以内の場合は二〇%、それより長期の場合にはそういうことになりませんですが、それだけは別除しておるそうでございます。
  248. 菅直人

    ○菅委員 ですから、そういういろいろな細かい措置がとられていることそのものを含めて、私は、土地税制というのは非常に何か細かくゆがめられておる、基本がないんです、基本が。何か基本で、何をやっているかわからないんです。  ここばかりではいけませんから、保有税にいきます。自治大臣よく聞いておいてください。つまり、日本の土地税制の中で、固定資産税、都市計画税あるいは特別土地保有税という形の保有税がありますけれども、大体の学者の話なり専門家の話を聞きますと、地価の抑制に最も効果があるのは、保有税を適正化することだというのが大体の識者の議論です。  例えば、この例も、あるときに挙げたかもしれませんが、竹下総理には初めてだと思いますが、銀座の土地が坪一億だ、これをどうやったら値を下げられるか。簡単なんです。地方税法に書いてあるとおりに税金をかければいいのです。つまり、地方税法には時価に対して固定資産税をかける。一億であれば、一億に対して一・四%といったら百四十万です。十坪の土地に千四百万の固定資産税が条文どおりかければかかるのです。十億で買った土地が千四百万の税金が取られたのではとても持ち切れない。十坪でどんな商売やったって、銀座の真ん中だって持ち切れない。では、一億じゃなくていいから八千万でだれか買ってくれないか、五千万でもいいよ、一千万でもいいよ、ばば抜きのばばになるのですね。そういう意味で保有税というのは非常に実は土地の抑制には効果があるというのが大体の識者の見解です。  ただ一つだけ問題は、小規模な自分だけの家を持っている人に周りが高くなったから追い出すような土地の税金をかけていいのかどうかという議論がこれまた一方であるわけです。私はそういう意味では、ナショナルミニマム、シビルミニマムという考え方から、現在でも地方税法では二百平米までの減免措置を決めておりますが、例えば三百平米までは定額制と率の選択制にするというような形で、先ほど言った台湾の累進課税の一番シンプルな形ですね、少ないところはこれだけで結構ですよ、多いところはちゃんと時価に合わせて取りますよ、せめてそのくらいをやるべきだと思いますけれども、いかがですか。これは自治大臣に一応お聞きをしましょうか。
  249. 渡辺功

    渡辺(功)政府委員 固定資産税についてのお尋ねがありましたのでお答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のように、保有のコストを増大させる、管理費用の増大ということを通じて地価抑制に効果があるのではないかという議論が多くあることは私どもも承知をいたしております。それを否定するというだけの私どもも材料を持っておりませんが、しかし、それがすべてだろうかということにつきましては、私どもはいささかやはり見解の相違をするところもございます。  具体的な、先ほどこうした問題については実験ということもできないということを委員御指摘があったわけですが、まさに一つの先例的なものとしまして、よく御承知のカリフォルニアのタックスレボルトがあります。あそこの固定資産税は非常に時価を反映した姿で行われたわけですが、その場合、地価抑制という保有課税の効果、それが達成されたか、そうではなくて、むしろ保有課税の方が崩れたといいますか、そういう状態になりまして、時価評価ということから、いわば基準時点倍率方式のような形に変わりまして、今むしろそういう意味での機能を喪失してしまったというようなことになるわけでございます。したがいまして、保有課税のそういう効果というものは、ある部分ではそういうことがあると思いますが、それはついて非常に大きな期待をするということはいかがなものだろうか、やはりそれにはおのずから限界があるのじゃないだろうか、こういうことを考えているところでございます。
  250. 菅直人

    ○菅委員 これは総理もぜひお聞きいただきたいのですけれども、この保有税問題というのは本当にすごい議論があるわけですょ。それで自治省は、きょうの答弁はあれでも多少は、半歩ぐらいは前に行きましたが、これまでの答弁は全部、固定資産税というのは自治体の財源だから、そんなことを土地の税制なんかに使うのは、言葉をちょっと乱暴に言えば真っ平御免だという言い方だったわけですよ。しかし、まあ少なくとも効果がある。カリフォルニァで効果がなかったかどうかは別として、世界じゅう調べて効果のあるところもたくさんあるし、もちろん私はこれで全部がうまくいくと言っているのじゃなくて、さっきも言いましたように都市計画というものがあって、先ほどちょっとやじがありましたけれども、細分化するじゃないかと、都市計画の中で細分化しないような計画を立てれば、今の地区計画だってそれは可能なわけですから、そういうやり方と組み合わせれば、これは一番ある意味では税制の中では効果の広い方法だというふうに私は思うわけです。  これは、次には自治大臣に直接お答えいただきたいのですが、せんだってのこの委員会でも、その中で東京都が都市計画税を二百平米以下をたしか半分にしようという計画がある。私は、結論を申し上げれば、今でさえ固定資産税の減免もあるわけですし、先ほど私が言ったように、小規模の住宅だけについてはある程度地価上昇の悪影響を避けるために安くするというのは、私は決して国民的公平からいっておかしくない。それに対して何か自治省が、聞くところによると、あるいはこの委員会でも不均一だから好ましくないとかと言われていますけれども、全然論理が矛盾しているのじゃないですか。また、自治大臣といえども、自治体が知事の発議のもと、もともとあれは野党が出していたのをさらに追加したのですけれども、発議のもと出そうとしているものにまして横やりを入れるなんというのはもってのほかじゃないですか。大臣、どうですか。
  251. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 都市計画税の原則についてはもう既に御案内のとおりでございますから私からとやかく申し上げません。しかし、東京都が人口定住の確保を図るという理由でいわば都市計画税の負担の軽減、これを地方税法第六条第二項の規定で臨時緊急の措置として行うということでございますが、これは都市計画税のいわば理論と申しますか目的というか、課税区域内の土地及び家屋の利用価値が向上するという受益関係で実は課税をする目的税でございますので、これに不均一課税をすることはいかがなものか、これは理論上どうしてもおかしいなという感じがいたします。さりとて、しかし自治法上許されている権限でございますから、これは文理上は違法ではないということが言えるわけでありますが、決して適当ではない。  そういうこともございまして、一月の十一日、十二日、東京都知事が主税局長を伴って大臣室に参られましたので、ぜひこの点は思い直しをしてくれ、こういうことができますと全国各地に飛び火をした場合にいわば都市計画税の本質がゆがめられてしまう、そして都市計画税が例えば住宅地のみ減免をする、あるいはそういうことになりますと、それ以外のいわば土地に対して課税をされているわけでございますから、その他の課税によって受ける利益を住宅用地だけが享受をすることが果たしていいのかどうなのか、こういう問題もございますので、菅委員が言われようとするいわば土地税制というものを政策税制として活用しろという意味はわかりますけれども、おのずからそういう税制の限界がございまして、土地対策に強力にそれが作動するかどうかという問題は残念ながらそういうふうにはとられませんし、むしろ都市計画を進めていくことに力点を置いていきたいと思っております。
  252. 菅直人

    ○菅委員 残念ながら全く私の質問の答えになっていないわけです。既に固定資産税では二百平米までの二分の一、四分の一減免が地方税法に入っているわけですよ。それは都市計画税と固定資産税の性格の違いというのを言われるかもしれませんが、まさに都市計画というのは各自治体がやればいいわけですから、東京都という自治体が自分のところの都市計画にとってこれは減免してもいいと言っているのなら、全然それをとやかく言うことはないわけですよ。私が住んでいる武蔵野市は東京都よりもっと前から都市計画税の減免をやっていますよ。それは自治省も知っておられるでしょうけれども、大臣はともかくとしてですね。そういう意味で、今の答えは自治省のこれまでの旧来的な慣例を単に述べられただけで、今のような状況に対する政策的な立場を全く反映していない。もう一回ぜひ検討していただきたい。
  253. 梶山静六

    ○梶山国務大臣 すべて御承知の上で意見を述べられていると思いますけれども、私は減免をすることが悪いと言っているのじゃございませんで、不均一課税が好ましくない。ですから、お下げになるならば、いわば住宅用地もその他の用地も画一に行われることが……(菅委員「固定資産税は不均一ですよ」と呼ぶ)都市計画税は目的税でございますので、それはもうよく御案内のとおり御理解のとおりでございますので、それをあえて不均一課税がよろしいということは私は申し上げることができません。
  254. 菅直人

    ○菅委員 この議論はここでとめます。つまり、それは今だって固定資産税は累進課税にもなっていないし、ただ減免措置があるわけです。もちろん都市計画税もこれまでそういう例は非常に少なかったでしょう、あるいはなかったでしょう、不均一課税は。しかし東京都がそれをやろうと言っているわけです。それが今自治大臣が言うように、理論上そうであるからと言われるには、私には少なくとも、どちらを選ぶかというのはまさに自治体が決めればいいことであるという意味での一つの理論であって、それ以上の理論には聞き取れません。これはこれで議論はとめます。  もう一つ、土地を含めた相続税について、私は一つの考え方として、いわゆる都市部の相続税と地方の相続税をそれこそ金額で分けるというのはなかなか難しいかもしれませんが、ある考え方として、例えば三百三十平米までの住居用資産は面積で控除されるか、それとも税率を選ぶか、どちらか選択制にする、そういう形で考えていけばいいのではないか。その場合にもちろん、五十何年以来、五十一年ですか、その後変わっていない相続税の控除の金額も引き上げ、あるいは土地で言えば三百三十平米までを選択制にする。どちらの適用を受けてもいい、そういう形を導入することが私は適切ではないかと思いますが、大蔵大臣、どうですか。
  255. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何かありそうなんですが、どうも私はうまい考えが浮かばないように思っておるのでございますが、今のお言葉をそのままとりましたら、仮に百平方メートルの土地をどこか地方で持っている人は、一平方メートル一万円であると百万円でございますが、東京で持っている人が一平方メートル百万円でありますと一億円でございますから、一億円の財産に課税をしないということに東京の場合にはなる。いかにもそれはちょっとつらいなという感じがいたすので、なかなかそこは地域によってということも難しゅうございますし、どうもいい知恵がない。まあ、言ってみれば小規模の居住用のあるいは業務用の土地について三割とか四割とか評価減をやっておりますけれども、こういうことでありますと土地の高いところには有効に働くわけでございますからそういうことであると考えられますけれども、一定の面積で非課税にする免税するとなりますと、単価の高い安いがこれだけ開きますとどうもうまい説明ができないんじゃないかと思います。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  256. 菅直人

    ○菅委員 うまい説明をするには、先ほど申し上げた土地増価税とリンクさせればいいわけですよ。つまり使っている間はいい、百坪までは。相続で受けてもいい、税金はかかりませんよ。しかし売ったときは、親の代に決まった基準値に対してそれより高い値段で売れば土地増価税が取られるというふうになれば、公平さは私は十分担保できる、こういうふうに思っておるわけです。  これは検討しておいていただきたいことでとどめますが、もう一つ、実は東京都にもたくさん農地があります。農地については相続が私の理解では猶予をされる。二十年間猶予された後は、そのまま農地で使っていれば免除される。大変な価格ですね。こちらに三十坪で何億円とかけて、こちらでは何千坪、農地ですから一反、二反という表現か一ヘクタールがいいのかわかりませんが、私は何かこれは実感として、農地解放のときの議論をいろいろ聞いていますけれども、農地というのは生産財としてできるだけまさに平均的に使うべきだという考えでああいう大規模地主を変えていって、小規模かもしれませんが中規模の自作農をつくった。今、都市における土地というのは、生産財というよりは生活財なんですね。まして市街化区域の中の土地なんというのは、まさに生活財そのものだと思うのです。住居なり、あるいは一部それは工場とかなんかはあるかもしれません。  そういう意味で私は、この農地の相続における優遇措置というのが、もし残すなら残すで、例えば都市計画でそこは農地として、空閑地として、あるいは緑地として永久的にそれを残すという方針があるところについて認めるというのは私はいいと思うのです、都市計画上。ただ、そうではなくて、あしたからはマンションにするかもしれませんが、きょうの間は農地かもしれませんという形で、一方で今言われたように、一平米百万円の土地でたった百平米で一億で相続税が取られるのに、隣では百平米どころか千平米、一万平米であっても取られないというのは余りにも不公平じゃないかと思いますが、これはとりあえず担当大臣の農林大臣、いかがお考えですか。
  257. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農地の相続税の納税猶予制度、これは農地価格の高騰に伴う相続税負担の増大に対処して、農地の切り売りを防止し、スプロール化しては相ならぬ、こういうことで防止をし、農業経営の存続を図るために昭和五十年に設けられたものでございます。御案内のとおりだろうと思います。  大都市近郊においてもすべての農地が宅地化するわけではなくて、そこでまじめに農業を営む人がいるという現状がございます。これが生活財としてである、生産財としてではない、こういうようなこともおっしゃいましたが、やはり生産財として都市の生鮮野菜、葉菜類等に使われ、都内の生鮮食料市場において、細かいことを申し上げて恐縮でございますが、わかりやすくするためにコマツナ、ツマミナ、ウド、そういうものは東京都内で生産されるものが一番大きいということになっております。そこで、この制度が農家が営農を継続するために大きな意義を持っておると私どもは考えております。
  258. 菅直人

    ○菅委員 農林大臣のお立場でそう言われるのは結構ですし、私も都市における農地の役割を無視しているわけじゃないのですよ。先ほど言いましたように、それならそれで、そこはずっと農地として確保しましょう、都市計画でもしてそこはいわば永久的に、将来もし変えるとしたら公園か何かにすることはあっても、まさにスプロール化した家をつくるのはやめましょうという地域なら地域でそうしたらいいと思うのですよ。ただ、現実はどうですか、現実は。必ずしも農林大臣が言われるようには現実はなっていないわけです。私は毎日通っていますからね。つまり、当然ながらある部分ではマンションをつくり、ある部分では駐車場をつくって現金収入があるから、今さら農地を売ったりするよりは持っていた方が断然いい、それは将来的にも安心だから農業を続けていこう、そういう形の農家が多いということも、これは大臣もあるいはよく御承知じゃないかと思うのです。  私は、それがいい悪いを議論しているんじゃないのです。最初に言いましたように、都市で生活するノーハウを確立するためにいろんな要素があるけれども、そこで優先的に何を要素にするのか。わざわざ線引きをして市街化区域をつくったのは、建設大臣、市街化区域というのは、御存じのように十年以内にですか、たしか市街化しましょうと言って市街化区域をつくったわけですよ。生産地域にするなら生産地域にすればいいので、市街化区域から外せばいいのであって、これもここでは問題指摘にとどめますけれども、私は、まさに総合的な都市政策としてぜひ検討していただきたい。  同時に、もう一つだけ申し上げます。  今、自治体が非常に困っているのです。都市計画なんてやっても、いろいろな自治体計画をやっても計画が成り立たないのです。いろいろな絵をかいても、土地がもう勝手に、それこそ先ほどの農林大臣じゃありませんけれども、切り売りされて、ここは緑を残したいと思っても残らないのです。じゃ、市が買えるかといったら金がないのです。  そこでどうすればいいか。一つ私は方法があると思うのです。それは、土地にかかる相続税を物納を奨励する、物納を有利にして地方税化したらいいのではないか。つまり、土地に対する相続税は地方税にして、物納の方が売ってお金で払うよりも有利になるように、例えば百坪で一億、坪百万円で一億払わなければいけないときは七十坪で結構だ、そういう形をとれば、私は三十年、五十年、百年という間に自治体にだんだんと土地が集まってきて、それを公園用地にしたりすることができる。これはいかがですか、大蔵大臣
  259. 奥田敬和

    奥田委員長 大蔵大臣の前にちょっと農水大臣が答弁を求めております。
  260. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど、二十年間営農を続ければと前段言われ、後段には、おっしゃることはあすあすにもマンションになる、こういうようなお話でございましたが、前段の二十年間営農をすればこれを免除する、こういうことになっておりますので、念のため申し上げておきます。
  261. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは一つのお考え方かもしれないと思いますけれども、税の方の立場からいいますと、財産を保有するのに土地を持つかあるいは有価証券を持つか、預金を持つか等々いろいろな選択があり、現実にその選択が国民によって行われている、その中で土地だけを別除して、相続税の対象から一遍外してその部分だけを地方税にするということは、そもそも相続財産を一括して評価して相続税を課税するという物の考え方から申しますと、まことに田舎っぽいことを申すようですけれども、ぶこつなことを申すようですけれども、なかなかやりにくいところでございます。
  262. 菅直人

    ○菅委員 総理大臣、今までの議論を聞かれていてよくおわかりいただけたんじゃないかと私は思うのです。それぞれ理屈はあるんですよ。大蔵省には相続税の考え方があり、自治省には保有税の考え方があり、農林省には農林省の考え方があるのです。そういうまさに縦割り行政の中で、この四十年間現実にできた東京あるいは大阪という町がどうなのか。誇れる町なら、いや、それは皆さんそれぞれの、それこそ総理大臣の好きな言葉で言えば、つかさ、つかさの皆さんが頑張ってよくやっていただいたせいでこんないい町ができましたと言えるでしょう。逆に今回の場合は、つかさ、つかさの皆さんが頑張れば頑張るほどだんだんばらばらな土地政策になっておるわけです。私は、土地政策ほどまさに縦割り行政の弊害のあるものはないと言っても言い過ぎではないと思うのです。  そういう意味で、もう一つだけその面で、これも大分議論が煮詰まってきておりますが、いまだになかなか前向きの返事がいただけないのですが、土地の値段。これはせんだって井上普方委員の方からもそれに関連した議論がありまして矛盾が出ておりますけれども、奥野国土庁長官だけではないのですが、つまり、日本の土地の値段が公的にも私的にも税金の評価でもばらばらになっている。せんだっても聞きました。おかしいんじゃないですかと言ったら、いや、それぞれ政策目的があってばらばらになっていますというのがそれぞれの大臣のお答えでした。  それはそうでしょう。それぞれ政策目的があるんでしょう。それは土地政策という政策以外の政策目的があるわけです。私は、土地政策あるいは都市政策という観点からすれば、当然ながら地価に対する公的認定制度は一元化をして、そして、もしそれに例えば実勢価格に近い公示価格に固定資産税評価や路線価格を合わせたとしたら、いろいろと税率が高過ぎるのであれば税率で調整すればいい、あるいは控除が必要なら法律で控除をつくればいい、あるいは現在の公示価格制度が地点の数が足らないというのであれば、現在の地方自治体がやっている固定資産税評価の制度をいわば引き継いで、地方の事務移管というのがいいかどうかは問題かもしれませんが、今の国土庁がストレートにできなければ各地方自治体にお願いをして、その価格をいわゆる公示価格にほぼ匹敵するような価格ですべてのことを一元化してやるようなやり方が必要なんじゃないか。これはできれば、とりあえずはやはり国土庁長官にお聞きしましょうか。
  263. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 御指摘になりましたように、地価公示価格、都道府県の地価調査、それから相続税の評価額、固定資産税の評価額、何か一つにできないものだろうかという意見、絶えずあるわけでございます。現在はこの三者が毎年研究会を持ちましてお互いに話し合っておるようでございます。今の段階ではお互いに参考にし合うというにとどまっているわけでございますけれども、将来ともこれをどう発展させていったらいいか、大きな研究課題だと受けとめております。
  264. 菅直人

    ○菅委員 以前よりはこれまた半歩前進という感じがしますが、もう一つこれに関連して、せんだってもここの審議の中で登記の中間省略というような言葉が出ました。つまり、現在の土地の登記制度というのはいろいろな手法が使われています。私は、土地に関する情報とでもいいましょうか、これは非常にオープンにし得るものだと思うのです。例えば、キャピタルゲイン課税の議論をここでしておりますと、株の売買を把握するのは非常に難しいというような言い方があります。じゃ土地の売買が非常に難しいかといえば、土地というのは庭に穴を掘って埋めて隠すわけにいかないのですよ。航空写真で見れば土地というのは全部わかるわけですよ。ですから、この土地がだれのもので、どういう形で登記されて、幾らの公示価格がついて、あるいは売買をしたときには幾らの売買価格であったか、そういうことを全部記録すれば土地税制あるいは土地政策全般が非常にすっきりしてくる。  これも台湾の事例を引き合いにばかり出して恐縮ですけれども、私が調査に行ってきましたら、台湾の場合は大部分の都市が、コンピューターの中にXY軸で全部土地の面積というか形がインプットされていて、そしてそれに対する日本で言う公示価格とか売買価格が全部インプットされているわけです。そうしておけば、よく言われる原野商法なんということも生まれないし、例えば地価を抑制しましょうなんと言ったって、どの値段で抑制するのかわけがわからないというようなことも含めて私はもっと整理すべきだ。これは法務省にもかかわる話ですが、やはり担当としては国土庁の仕事だと思いますが、その点はいかがですか。
  265. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 この前も先生からそういうお話があったわけですが、御承知のように、我が国の不動産登記制度はまず当事者が申請をいたしまして、そして審査は書面で審査をする、こういうことになっております。また、これは公開をされておりまして、だれか見に行きたいという場合はこれを公開をしておるわけであります。しかしその数は非常に膨大に上っておりまして、まず申請をもってやるのでありまするから、価格をそのまま申請をするというのはなかなかその人にとって難しいだろうと思います。虚偽の申請があればそれを記載しなければならぬ、こういうようなことでありまして、そうすると意味がないわけでありまして、やはり登記制度とは別に公示をした価格を書くというのでありましたならば別個にやっていくのがいいだろうと思います。しかし、非常に示唆に富んだ御説でございまするから、将来の問題として検討いたしたいと存じます。
  266. 菅直人

    ○菅委員 法務大臣は府知事もされていたわけですからこういうことには理解があるかと思いますが、今申し上げましたように、今までの法務省の登記制度であればこうだということは、それはそうかもしれません。しかし、先ほどから言っておるように、土地政策として必要であれば、まさに新しい制度としてそういうものを考えたらどうかということを申し上げていたわけです。  土地問題ばかりになりますが、もう一つ、現在、政府の方から土地政策について私の目から見る限り抜本的なものは余り出てこないわけです。なかなか難しいことはわかりますが、土地の基本的な法律、土地基本法というものをやはり考える必要があるのではないだろうか。つまり、余りにもばらばらにあり過ぎるこの状況ですから、土地というものに対する基本的な考え方、あるいは都市計画というものに対する基本的な考え方、あるいはその中での国と地方自治体と住民の権限なり責任、あるいは土地税制についての先ほどから申し上げているような基本的考え方、あるいは今申し上げた土地行政の一元化、こういうものを一つの理念として柱に立ててそういった法律をつくるべきじゃないか。政府がどうしてもつくられないというなら、これは野党でもつくらなければいけないという議論が実際に進んでいるわけですが、総理大臣、そのことを含めて、また今までの議論を含めてどういう覚悟で、最初に申し上げたように目標は私と総理大臣も基本的には共通です。しかし、その目標に対してどういう形で、いつごろまでに実効がちゃんといわゆる十年後なら十年後に上がるのかというときの手段が何も示されていない。そういう点も含めて、土地基本法の問題も含めて御見解を伺いたいと思います。
  267. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 都市政策、そして土地対策、それは一つの考え方の上に立っての御議論は謹んで拝聴させていただきました。私と二十二歳の年齢差もございますので、あるいは世代の違いという感じもいたさないわけでもございません。  それともう一つは、若干私の発想がよく言われる田舎っぽさというのもあるのかなというような反省をも含めて承っておりましたが、税制というものについての御議論については、必ずしも増価税の問題は未実現の所得に対するものではございませんけれども、基本的に未実現の所得に対する課税というのにおのずからの限界というものがある。今地方自治の基本財源の一つになっております固定資産税にいたしましても当初からそういう議論があったわけでございますが、若干私的な考え方を交えてお答えいたしますならば、今いろいろおっしゃったような御議論を総合して印象として申し上げると、やはりあの戦争に負けましたときに農地解放が行われた、ああいう大きな背景がないと率直に言って、なかなかできないものだなと、こういう感じが一つ強くいたしました。  それからもう一つは、憲法二十九条の財産権の問題というのが、これは私も土地基本法については各党からのいろいろなお考えを整理しながら興味を持って見ましたが、そこのところにひっかかりがあるな。現行のもろもろの規制法があるわけでございますから、それをどういうふうな組み合わせで現実問題として対処していくか。やはり財産権の問題についての一つ跳び越さなければ、クリアしなければならぬ問題があるので、にわかに基本法結構でしょう、こういう気持ちに私は一生懸命心を整理しながらいまだ到達していないというのが現状でございます。  素直なお答えを申し上げます。
  268. 菅直人

    ○菅委員 当初の総理見解に対しても申し上げましたが、残念ながら今の総理見解には、まさに素直であればあるほど残念だという感じですね。  やはり私は、確かに大変難しい問題だと思います。私も、農地解放のときのいろいろな資料を今読んでいます。当時、農地委員会というのができていますね。それはもちろん占領下ですけれども、小作の人が五割、自作の人が大ざっぱに言って二割五分、地主の人が二割五分、そういう委員会を各地域、各県、国、全部につくって、そしてああいった方針に基づいて、たしか五町歩ですか、それ以上の土地については買い上げて払い下げるというやり方を通して、そして戦後の一つの新しい社会体制が生まれてきたわけです。  残念ながら日本では、都市に住むということの先ほど申し上げたようにノーハウが蓄積されてない。ヨーロッパで十九世紀にいろんな土地の売買が自由化された中でも、やはりこれではだめだということで都市計画がなされているわけです。別に社会主義国がやっているというのじゃないのです。いわゆる資本主義国、自由主義国でも都市政策というのは非常にしっかりとなされているわけでして、総理が、まさに竹下内閣というものが国内の政策として歴史に残るとすれば、この土地問題に本格的に手をかけスタートした内閣であるか、私はそれが歴史の評価に残るか残らないかの非常に大きな要素だと思っておりますので、半ば期待を込めて、しかし同時に今のような御返答では残念ながらという言葉を申し上げて、土地の問題を終わって、次の問題に移らせていただきたいと思います。  次は、土地から一転しまして、海のことをちょっと申し上げてみたいと思います。  今非常に日本が豊かになりあるいは余暇の増大というものが必要だというふうに言われているわけですけれども、残念ながら長期の休暇をたとえ企業が認めたとしても、子供連れで十日、二十日、一カ月と、ゆっくりしかもそう高くない費用で楽しむという体制に我が国はなかなかなってないように思うわけです。そういう意味で、これからの余暇の滞在型のレジャーというものを考えた場合には、一つは海、一つは山というのでしょうかね、森林といいましょうか、そういうもののそういう意味での活用というものがもっと考えられていいのではないかというふうに思うわけです。  そういう中で、最近たしか、ついせんだっての新聞にも、クイーン・エリザベス二世号ですか、それを日本の企業がリースをして日本で運航しよう。私も余り長い期間船に乗ったことはありませんが、二日とか三日の船旅をしてみると、確かに陸にいて電話がかかって走り回っているときに比べると、何か自分が少しゆっくりして豊かになったなという雰囲気になるように思います。そういう点で、日本は四面海に囲まれているわけですし、これはクルージングというのでしょうか、大きな船に乗ってゆっくり旅をする、ある意味ではその船の上に乗っているときの楽しさをゆっくり味わっていく、こういった面ももっと開発というのでしょうか、もっとそれを推し進めてもいいように思いますが、特に海に造詣の深い石原運輸大臣として、そういった問題についてどういうふうな積極的な考え方をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
  269. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 大変ありがたい御提言でございまして、実は既に海員組合から提案がありまして、年金を使いました年金客船の構想があって、これは既に調査費をつけまして、一応調査が終わりまして、その答申といいましょうか、結果を今待っております。  それから、これはまた違う方から提案がありまして、中学生、高校生の修学旅行の客船をつくったらどうかという案もございますが、いずれにしろ、いろんな事情が重なって今海運も造船もピンチでありますけれども、ここでそういう事業を国家的に展開するということになれば、造船も非常に活況を呈すると思いますし、また船員の雇用の問題にもつながりまして、私は将来の展望の中で非常に可能性のある一つのプロジェクトだと思っております。  現にまた、観光を促進するためにいろいろプログラムを持っておりますが、地方公共団体と関係企業が客船旅行懇談会というのも設けておりますし、そこでいろいろアイデアを練っている最中でございます。
  270. 菅直人

    ○菅委員 非常に積極的な話ですが、例えばそういう中で今、日本は輸出がいわば輸入に比べてといいましょうか、ちょっと多過ぎるという議論もあるわけですが、例えばかつて見本市というものを、船が各地に行って日本のものを持っていって、それぞれの国の人たちに見てもらうというようなことをやっていたわけです。そのいわば逆で、いろいろな特に東南アジアの国々を回って、そういうところのものを日本の人たちが見てくる、あるいはそれを積んで帰ってきて日本の港で公開する。  昔は東京駅発上海行きという切符があったというのを私の友人から聞いたわけですけれども、例えば東京湾から出発をして神戸や福岡を通って、韓国を通り上海に行って往復をする。そういう中にそういった国際交流、さらには輸入の振興とでもいいましょうか、そういうものもあわせて考えてみればというように思いますが、もう一度そういう問題も含めて運輸大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  271. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 大変結構なアイデアだと思います。  それから、先ほど申しました年金客船あるいは修学旅行の客船などが実現しましたら、そうべらぼうに遠くへは行けませんから、やはり日本を中心にした、例えば台湾あるいは中国の上海あるいは韓国のいずれかの港、それからまたソビエトのウラジオストクといった、そういう割と間近な港を周遊するという構想なども今検討中でございますが、非常に可能性のある、上海だけではなくて、日本の近隣の諸国の代表的な港を周遊するということで、いろいろな形で諸国との関係も深くなりますし、また発展途上国のお役にも立てるのではないかという気がいたしております。
  272. 菅直人

    ○菅委員 海の話を今しているわけですけれども、もう一つ海にかかわる話をしてみたいと思います。  今、お手元にこういうパンフレットをお配りをしております。部数が余りたくさんないので、あるいは閣僚の皆さん全員に行き渡りませんかもしれませんが、ぜひごらんをいただきたいわけですが、こういうサンゴの海ですね。特にこの三ページ目、四ページ目には、ハマサンゴとかあるいはアオサンゴとかいろいろなサンゴがたくさん群生をしている。ぜひまずゆっくりごらんをいただきたい。特に運輸大臣には、運輸大臣は書かれておる本の中にも石垣島のあたりの話も出ていますから、多分自分の目で見られたこともあると思いますが、こういう非常にきれいな海が日本の中にあるわけです。  このサンゴがどこにあるかといいますと、石垣島の白保というところの海岸に群生をしております。私も二度ほど出かけまして、そう深くない海ですから、水に潜ってというか、実際にこの目で見てまいりました。  総理大臣、いかがですか。こういう自然をぜひ残していこうじゃないかというように思うのですが、こういう自然保護について総理大臣の基本的な見解をお聞かせをいただきたいと思います。
  273. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 かつての時代と違いまして、そういう資源保護に関する国民的関心が高まってきておるということは、私もよく問題意識は整理しておるつもりでございますが、私もちょっとこの飛行場の問題、少し詳し過ぎるものでございますから……(菅委員「まだ飛行場まで言ってませんから」と呼ぶ)そういう後に続く御意見を予見しながら、この辺にしておきます。
  274. 菅直人

    ○菅委員 余り予見なく、まずはこのサンゴの写真を見ていただきたいわけですが、実はこの白保海域のサンゴについて、国際自然保護連合、IUCNという団体が、今総理の方から先に言われてしまいましたが、この白保地区に計画をされている飛行場計画についてぜひ見直してほしい、北半球でもう非常にまれになっているサンゴをだめにしてしまうことになるので見直してほしいという決議がなされたわけであります。  環境庁長官、環境庁はこのIUCNのいわゆる政府機関としての政府機関会員ということになっておられるわけですし、それになっているなっていないを問わずしても、やはり我が国の残された非常に数少ないこうした自然のサンゴ礁の保護をこの決議の精神を踏まえて頑張られるというふうに信じているわけですけれども環境庁長官として御意見を聞かせていただきたいと思います。
  275. 堀内俊夫

    ○堀内国務大臣 ただいまお話がありましたIUCNが決議を採択されたことを聞いております。私どもとしてはかけがえのない自然環境を保全するという認識で仕事を進めておるわけでございますから、この決議も大変な応援をしていただいておると受けとめておるところであります。
  276. 菅直人

    ○菅委員 非常に環境庁長官として前向きなお返事をいただきましたが、いろいろ専門家の意見はあろうと思います。しかし、実際にこの白保地区に対しては、私が聞いているところでは、この国際自然保護連合自体が調査団を派遣をして、そしてこの地域のサンゴの調査をしたわけです。  今アオサンゴについていろいろな議論がありますけれども、現実には、ここにも計画が書いてありますが、アオサンゴだけではなくて、いろいろな種類のサンゴが本当に足の踏む余地がないような形で群生しているのです。これは自分の目で自分の体で体験したことですから、決して誇張ではありません。リーフがあって、その間のかなりの海域に相当の密度で、ここにあるようないろいろなサンゴがありました。私も名前は後で見て、ああアオサンゴというのかハマサンゴというのかということを知りましたけれども、こういう状態です。また、私が聞くところによりますと、沖縄海域にはかってはこういうものがたくさんあったところも多かったようですけれども、ここにもたくさん写真が出ておりますが、土砂が流れて、非常にヒトデが繁殖をしたりして死に絶えている、同じ石垣の中でも北の方の海域ではやはりかなりのサンゴがだめになっている、そういうことがあるわけです。  そういう意味で再度、運輸大臣はある意味では板挟みかもしれませんけれども、運輸大臣としてこういった自然保護ということと運輸計画の問題と両方あると思いますが、御見解を伺いたいと思います。
  277. 石原慎太郎

    ○石原国務大臣 最初は二千五百メートルの滑走路の予定だったのですけれども、こういう事情もございまして二千メートルに短縮して、その計画変更にのっとってのアセスメントを今お願いしているわけでありますが、運輸省としてはその結果を待つということですけれども、ここまでは役所が示唆してくれた答弁ですが、これ以上言うと怒られるかもしれませんが、私、おっしゃるとおり、あのあたり非常に詳しいのです。  それで、石垣の西側、竹富から新城、黒島へかけてのサンゴ礁というのは、世界で比類のない、バリアントの多い、すばらしいサンゴ礁でしたけれども、ダイバーがたくさん入り、いろいろな開発も行われて、一、二年のうちにほとんど絶滅いたしました。白保のサンゴ礁というのは、海から回って遊びに行きにくい地域なものですから、むしろ残っておりますけれども、やはりあそこで海の中を一部埋め立てするということになれば、いい変化はまず絶対にない。ある変化は決して好ましいものでない。私も前に環境庁におりましたから大変胸を痛めておりますけれども、できればいろいろ候補地もほかにないでもないような気がいたしますし、便数もそれほど多くもないので、なおいろいろ考慮の点があるのではないか。  これはやはり石垣市と沖縄県がお考えになるべきことでありますし、国としては自然を守り、また石垣も恐らくたくさんのお客さんを運んで何をするかと言えば観光開発ということでありましょうし、やはり海中の観光資源というのは石垣の観光にとって欠かすことのできないものだと思います。それを飛行場をつくることで阻害してしまっては元も子もないなという感じがしますので、ひとつ多角的な検討を現地の方々にしていただきたい。私も海を愛する者の一人として熱望しております。
  278. 菅直人

    ○菅委員 大変海を愛する大臣の気持ちがあらわれているように思いますので、きょうはこれ以上申し上げるよりはここでとどめておいた方がいいのじゃないかと思いますので、ぜひよく、お持ち帰りをいただいて見ていただきたい、そのように思います。  さて、次に——そうですか、沖縄開発庁長官が……(発言する者あり)
  279. 奥田敬和

    奥田委員長 静かに願います。  粕谷沖縄開発庁長官。
  280. 粕谷茂

    ○粕谷国務大臣 菅委員からは私に対する質問はなかったのですけれども、このことの所管は運輸省でございますが、全体としての沖縄県民の生活を守る、また地域の発展向上を図るという点で私どもの職務があるものですから、この機会にちょっと御理解を得たいと思って申し上げさせていただきます。  今月の初めに国際自然保護連合の総会があって、そこで、プランク博士でしたか、生態学の専門家でございますが、その人の報告などがあって、自然保護というような決議がされました。私も重大な関心を持ってその報道を見詰めておりましたけれども、しかし、行政的には我が国には政府で定めた環境アセスメントの制度があるわけでございますから、当然その制度の手続に従って適正な判断を求めていく。それから、事業者は県でございますので、西銘知事を初めとして県は非常に意欲的にこの問題に取り組んでおります。  今運輸大臣からも御説明がありましたように、いろいろな環境保全の立場から、当初の計画を変更しまして、できるだけ自然の保全に役立つようにということで、五百メートルを削って対処しようというような努力もしているわけでございます。それからまた一方において、確かに開発すると自然に大変な影響を与える、こういうことは私たちも十分承知をしております。ですから、開発と自然保護の調和をどうとるかというのがこれからの大きな問題でありますけれども、しかしまた一方では、住んでいる人々の生活の向上ということも考えてさしあげないといけないことじゃないか、私はこんなふうに思うのです。  ちなみに、菅先生御承知と思いますが、今使われている現空港は、暫定のジェット空港なんですね。ピーク時には一日四十二回ぐらいの離発着があって、非常に過密なんです。さりとてこれを、離島で形成されております沖縄ですから、どうしても空路に交通手段の依存がだんだんと高まるわけでございます。その需要にこたえていくためには、便数をふやすというのはなかなかできない状況にあります、滑走路が千五百メートルということでございますので。結局航空機の機材を少し大きくする、これ以外に今のところなかなか知恵が出ない。そうなれば、暫定空港の暫定を外し、そしてB767というような二百三十人でしたかの航空機にかえていくというようなことを早急にいたしませんと、ますます混乱をしていくような状況にある、こういう背景もありますので、その辺をひとつ御理解をいただきまして、できるだけこの環境の保全と開発が調和のとれるような、そういう結論を出すように我々も非常に願望いたしておるところでございます。  以上のようなことでございますので、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  281. 菅直人

    ○菅委員 余韻を残して終わりたかったのですが、沖縄開発庁長官の方から少し細かい話があったので、総理大臣、先ほどの話にちょっと戻りますが、ここに写真がありまして、どのサンゴがどの地点の写真かというのが全部書いてあります。ここにある写真は、ほとんどが五百メートル動かしても埋まってしまうところに生息しているサンゴです。確かに五百メートル短くするという計画変更は出ているわけですが、そこにアオサンゴがかなり群生しているから、特にそれが重要だから外したのだというのが事業主の県の見解のようです。アオサンゴも私は大変重要だと思いますが、必ずしもアオサンゴだけでない、たくさんのサンゴが群生している、しかも学術的に見ても非常に珍しいということなわけです。ですから、当然ながら五百メートル北に、南を切ってもこれは全部なくなりますし、また、そのアオサンゴは守らなければというところまで県も来たようですけれども、実際にこの五百メートルを残したら、じゃ残りの海域が汚れないでサンゴが生息できるかといえば、私も専門家じゃありませんが、たくさんの事例を実際に聞いたり見たりしてきて、ちょっと土砂がどうっと流れると、サンゴというのはそれほど強い生物じゃないんですね。ですからそういう意味では、埋まったところは全部だめになることはもちろんですし、残そうと言っているところも、私は常識的に考えてほぼ絶滅をするであろう、このように思っております。  ですから、常に自然保護と開発のいわば選択というのはあるわけですけれども、今開発庁長官がいろいろと言われましたけれども、私はここのサンゴに関する限りは、サンゴを全部だめにして飛行場をつくるのか、それともサンゴを残してほかの手だてを考えるのか、飛行場の用地も、県のかつての調査では、別の地域でも二千メートル程度の用地ならとれるという調査報告も出ておりますし、そういった意味でぜひ……(発言する者あり)
  282. 奥田敬和

    奥田委員長 静かに願います。
  283. 菅直人

    ○菅委員 そういうことで一応この話はこれでとどめたいと思います。  それでは次に、原子力発電所の問題について少し総理見解を伺いたいと思います。  実は竹下総理大臣、私はこの間、物すごく大勢の人たち、特に婦人の人たちから原子力発電所の問題、特にせんだって行われた伊方の出力調整試験について不安だ、ぜひ取り上げてくれということを非常に多くの人たちから意見をいただきました。私は、そういう皆さんと話をし、あるいはそういう皆さんの議論をいろいろな出版物などを合めて私なりに一般的な知識を超えて再度いろいろな話を聞いてみました。  総理大臣、あれはやはり不安なんですよ。つまり、幾らチェルノブイリのような事故は日本では起きませんと言われても、本当に起きないのか、万一起きたらどうなるのか。今ヨーロッパであの原子炉から出た放射性物質が現実にどのような影響を与えているのか。確かに原子力安全委員会は二度にわたる調査報告書を出されております。私もかなり詳しく読んでみました。確かに技術的にこうやった、ああやったというのがあり、日本は型が違うからとかワィードバックがどうであるからこうであるからとかいろいろ書いてありました。しかし、本当にチェルノブイリのような事故が我が国で起きないとだれが保証できるのか、あるいは起きた場合にどれだけの被害を及ぼすのか、それに対して多くの国民の皆さんが不安を強く持っている。特に、子供を育て、ある意味では食べ物を直接に扱っている女性の皆さんの不安というのは非常に大きいわけです。  今回の伊方の出力調整試験がそういう声をいわば無視して行われたということは、この技術的な問題は技術的な問題としてまたいろいろとありますけれども、私は、まさに国民が反対し何とかが反対する税制はやらないという気持ちではありませんが、少なくともそういう人たちの疑問や不安に対して十分こたえ切れていないまま強行するというふうな姿勢は決してとるべき姿勢ではないし、百歩譲って千歩譲って原子力開発を進めょうという立場に立たれる人にとっても、私はそういう態度をとるべきではなかった、そのように思うわけですけれども、この国民の不安に対して十分にこたえることができるのか、できているのか、今後どうするのか、総理大臣の基本的なお考えを伺いたいと思います。
  284. 田村元

    ○田村国務大臣 この原子力については、東工大の理学部を出ておられるあなたの方がはるかに私より詳しいだろうと思うのです。ですから、むしろ折を見て実際に理学部を出られたあなたの御意見を一遍伺ってみたいなという気持ちもあります。  そこで、伊方の問題でございますけれども、出力調整運転は、先般来日した国際原子力機関のブリックス事務局長も述べていますように、海外においては既に実用原子炉において日常的に実施されておりまして、技術的にも十分確立されたものであるということを言っております。  もう既に菅委員は十分御承知と思いますけれども、ブリックス事務局長は、二月の十五日月曜日に東京プリンスホテルでの記者会見において、出力調整運転について概要こういうことを述べております。出力調整運転については、フランス、西ドイツ、スウェーデン、そして米国等の多数の施設で日常的に行われており、安全性が実証されたものである、電力需要が変動するのは当然だし、電気事業者がその負荷に追随するのは当然である、チェルノブイリ事故とは全く関係のない話である、専門家がこう言っております。  四国電力伊方発電所における出力調整運転試験につきましては、原子力安全委員会の内田委員長が二月十日に出された談話にもございます。それはさっき十分読んだとおっしゃったから簡単に申しますと、「今般の出力調整運転試験は、安全審査の段階で安全性が確認された基本設計及び基本的設計方針の範囲内であり、安全上の問題はない。」こういう談話にもありますように、安全審査で安全性が確認された範囲内でのものでございまして、安全上全く問題がなかったと承知しております。試験については、予定どおり終了したものと承知しております。  しかしながら、従来原子力発電が国民の理解と協力を得ることが大前提であるということは当然でありますけれども、これに着実に開発を進めてきはしたものの、今回の試験についてはその安全性について国民に必ずしも十分理解が得られたとは言いがたい、そういう中で実施されたことは残念ながら事実であります。通産省としましても、今後とも安全確保なくして原子力利用なしという理念のもとで、原子力発電の必要性と安全性について国民の一層の理解が得られるように努力してまいりたいと思っております。  私、実は三重県の南部でありますが、私のところでも今原子力発電問題で騒ぎが起こっております。率直に言って、通産省ももちろんそうでございますけれども、電力会社の広報活動というものが十分に一般の庶民にわかりやすい姿で浸透しておると言えるかどうか、私はそういう点で、これからこういう点についてもきめの細かい配慮をするように強く指導していきたいと考えております。
  285. 菅直人

    ○菅委員 総理はいかがですか。
  286. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 試験そのものの点につきましては通産大臣から正確にお述べになりまして、私も、それ以上の知識を持ち合わしておるわけではございません。  それから後段の、通産大臣のお考え方というものは私も、いかなる立派な政策といえども国民の理解と協力を得ることなくしてできない、したがって、ょり広報活動等安全性への理解を深めていく努力を進めていかなきゃならぬ課題だ。原子力問題というのはやはり息長く、かつての時代とは多少の相違はございますものの、その安全性というものに対しての理解と協力は一層求めながら進めていかなきゃならない問題であるというふうに感じました。
  287. 菅直人

    ○菅委員 そこで、先ほど申し上げたように、やはりチェルノブイリの原子力事故というのは、それが型がどうであったということもありますけれども、原子力政策を今世界で一番積極的に進めている国はソ連、フランス、日本というふうに理解をしておりますけれども、そういう非常に積極的な国で起きた。あれは型が悪かったから、操作が悪かったからといっても、ソ連だってそれなりの技術力を蓄えてきている国ですから、私は、一般国民の中で同じような事故が起きないということについて心配があるのは当然だと思うわけです。  特に私が心配をしておりますのは、今この報告書には技術的はどういうことが起きたかということは書いてあるし、もちろんある程度その後のいわば放射能汚染がどうなっているかということも書いてありますが、現時点で一体どういうことになっているのかということなんですね。あの事故からまだ二年はいきませんか、つまり現在、例えばECの中で、食物に残留している放射能のいわば許容基準を統一的に決めようという議論が起きております。それに対して、非常に緩くしよう、つまり、緩くしなければ汚染されたものが食べられないから緩くしようという議論、いやそれは余計危ないのだからきつくしようという議論があるということが既に報道されております。  そういう中で私が一つ聞きたいのは、このチェルノブイリ事故が起きて、その後そういった許容基準値を国によって逆に上げたような例があるというふうな指摘があるのですが、これは厚生省でしょうか、そういう事例は、ヨーロッパの国々でチェルノブイリ事故が起きて、当初こういう基準値だったけれども、それょり緩くしたというような事例がありますか。
  288. 古川武温

    ○古川政府委員 ただいま委員申しましたように、ECは統一の基準をつくっております。そして昨夏、基準を変えようという議論があり、その際に、委員御指摘のようにさらに緩めろ、あるいはこれをきつくしろ、こういうふうな意見が分かれまして決定に至らず、現在の基準を六十四年の末まで延長する、こういうことでございます。EC以外では、スウェーデンが基準を緩めるというふうな動きがあると承知しております。
  289. 菅直人

    ○菅委員 今のスウェーデンの事例ですけれども、スウェーデンでは特にトナカイ等の野生の肉について当初の基準値を五倍程度緩めたというふうな資料がありますが、これは事実ですか。
  290. 古川武温

    ○古川政府委員 事実でございます。
  291. 菅直人

    ○菅委員 総理はおられませんけれども、通産大臣あるいは科学技術庁長官あるいは厚生大臣かもしれませんが、私は先ほど通産大臣は私に原子力問題についての個人的見解をそのうち聞きたいというふうにおっしゃいましたけれども、原子力の根源的な矛盾というのはまだ解決されていないというふうに思っております。そういう意味で、廃棄物の問題を含めてそういう問題が完全に解決された技術だとは思っておりませんし、そういう意味でこれを選択すべきかどうかというのはかなり大きな疑問があるというのが私の考え方ですけれども、特に、今申し上げたように、私もソ連に事故の後行く機会があって、向こうの人に聞いてみました。あれは本当にもう操作ミスが重なって重なって、考えられない操作ミスをやったからああなったのであって、技術が悪かったんじゃない、こう言うのですね。技術はパーフェクトだから今後も今までどおりやりますと言うから、ソ連共産党中央委員会のメンバーでしたけれども、私が、その議論は、私の国の政府とよく似ていますねと言ったら、いやそれはあなたの国も技術が進んでいるからそうでしょうと言って、どうも私が言った皮肉は通用しなかったようですけれども、しかし、現実にソ連という国で大量の放射能が原子力発電所から、これは漏れたという段階じゃないんですね、大臣も御存じでしょうが。その影響が現実に今の今になってまだ残っているわけです。  今厚生省が認めたようにトナカイ等の野生動物というのがどの範囲を示すか私もわかりませんけれども、少なくとも今までの濃度では、いわゆる許容基準ではもうほとんど食べられない。そうなると全部を廃棄してしまうか、許容基準を緩めてまあ多少このぐらい食べても平気だろうから大丈夫だろうということでやってしまうか、そういうことにもう既に、ソ連本国じゃありませんよ、スウェーデンですらそういう事態が起きているわけです。私はそういう意味でお聞きしたいのですが、こういったチェルノブイリ級の事故を想定して我が国は対策を持っておられますか。
  292. 伊藤宗一郎

    伊藤国務大臣 御指摘のとおりチェルノブイルの事故は大変重大な事故でありました。我々もその事故の重大性は正しく認識をし、直ちに我が科学技術庁の、先生も御承知のとおり原子力安全委員会におきまして、我が国の原子力発電の安全確保対策につきまして謙虚に反省をいたし、この事故が我が国の原子力発電の運用のために反映すべき事項があるかどうかということを慎重に十分に検討いたして報告書をまとめたところでございます。先生御承知のとおりでございます。その結果、このチェルノブイルの事故の要因が我が国の原子炉施設には当てはまらないという確信を持ちました。  また、そのさきのアメリカのスリーマイルアイランドの事故の教訓も十分我が国の原予力発電に生かされておりますので、現在の安全規制や防災対策の基本について早急に改める必要はないという、そういう確信も持たしていただいたわけでございます。しかしながら、あつものに懲りてなますを吹くというぐらいの気持ちで原子力行政には相努めなければなりませんので、従来からも慎重に実行しておりますことをさらにひとつ念には念を入れるということで、七項目にわたる——従来から実行はしておりますけれども、改めて念には念を入れる形で実行すべき事項として七項目挙げまして、それの推進、実施のために鋭意、科学技術庁、原子力委員会、原子力安全委員会、またそれぞれの局が実施、推進を今進めておるところでございます。  その七項目は、御承知でもございましょうけれども、「原子力発電所の個々の設計の改良に応じた適切な安全評価及びそのための研究の確実な実施 原子炉の異常事態に関する知識の把握・整備及び運転管理面への反映 原子力発電所の従事者一人一人の高い安全意識の醸成 人的因子及びマン・マシン・インターフェースに関する研究の拡充 シビアアクシデントに関する研究の一層の推進 原子力防災体制及び諸対策の充実並びに緊急時対策に関する国際協力の充実 安全性に関する情報交換、研究等に対する国際協力の推進」この七項目に相なっております。以上であります。
  293. 菅直人

    ○菅委員 時間も迫ってまいりましたので、きょうの原子力問題についての質疑は、技術的な問題はあえて触れませんでした。技術的な問題もいろいろ聞いてみました、通産省の担当者やあるいは科学技術庁の人たらから。いろいろと私なりに疑問はありますので、またそれはそれで申し上げたいと思うのですが、特にこれは総理大臣にぜひそれこそ予見なく聞いていただきたいのですが、ヨーロッパの国々でもいろいろな政策をとっています、原子力政策については。もう既に原子力からの撤退を決めた国もあります。日本よりもある意味では原子力に対する依存度がたしか多いオランダでしたか、どこでしたか、そこでさえ撤退を決めた国もあります。あるいは全くその方針を変えていない国もあります。ソ連の最近の報道によると、ソ連の中でさえ——中でさえというのでしょうか、当然というのでしょうか、新しい原子力発電所の設置は反対だという住民運動が起きているということも聞いています。  もちろん、エネルギー政策全般の中での現在の状況とか将来の状況とか、いろいろと考える必要はあると思いますけれども、私は残念ながら現在の人間の英知の中で言えば、原子力技術というものはまだまだパーフェクトなものというふうには言えない点があると思っておりまして、それを含めて最終的な選択は国民的な選択になるわけですが、余りにも現在の日本の国論というのでしょうか、この問題に対する国論は両極端なんですね。これは通産大臣も経験されたと思うのですが、非常に心配されている皆さんからすると、本当にもうこんなことをやっていたら間違いなくこの半年、一年のうちにはチェルノブイリのような事故が起きて大変なことになるということを、いろいろな根拠からそういう心配をされている。一方、通産省や科学技術庁や安全委員会の皆さんの話を聞けば、何でこんなに心配されるのかわからないと言って、その差はほかの政策テーマと違って非常に両極端なんですね。  これは一つのこの問題に対する現在の政府なりそれを指導する立残のやはり大きな怠慢もありますし、同時に、この問題をもう一回まさに予見なく二十一世紀、二十二世紀に向かってこれ以上進めていいのか、あるいはこれ以上進めることをやめて方針を変えるべきなのか、私はそれを問い直すときが今来ているというふうに思いますが、最後に重ねて総理見解をお聞きしたいと思います。
  294. 田村元

    ○田村国務大臣 今おっしゃったことは、やはり我々担当者として肝に銘じなければならぬことだと思います。日本は非常に神経質になっておりますが、私はヨーロッパへ行ってIEAの会合に出て、原子力発電に対して、これのむしろ拡大を求める声がヨーロッパに強いということをこの目で見て、その会議参加していささかちょっと驚きましたし、ブリックス事務局長の確信に満ちた私に対する説明を聞いて安心をいたした。といいますのは、私は被爆者なんです、はっきり言って。長崎でやられたのです。被爆者手帳を持っているのです。それだけに私のときにこういう問題を、やはり唯一の被爆国である日本の国民がどういうふうに考えておるかということを把握して、いろいろな面で語りかける必要があるということは痛切に感じております。通産大臣を仰せつかった私の一つの大きな役目だとも思っております。でございますから、もちろん私は技術的なことは学がありませんのでこれはもう専門家を信ずる以外にありません。疑うより信ずる以外にありません。でございますから信じていきますけれども、これの運び方という点では十分の配慮をしていきたいと考えております。
  295. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 今通産大臣から切々とお答えがありたとおりでございます。
  296. 菅直人

    ○菅委員 では、終わります。
  297. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて菅君の質疑は終了いたしました。  次に、山原健二郎君。
  298. 山原健二郎

    ○山原委員 総括質問の最後になりましたが、御苦労さまです。  最初に、竹下総理の地元の問題ではありますけれども、同時に国政上の大問題であります中海・宍道湖干拓淡水化問題について伺います。  これは本委員会でどこまで来ておるかといいますと、先日辻委員に対しまして総理は、状況が大変に変わってきている現実も無視できないとの認識を示されました。その認識に立つならば、当然の帰結として事業を見直すという結論が出てくるのではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  299. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 先日辻さんにもお答えいたしたところでございますけれども、御指摘どおりでございます。  これが事業化いたします前、まあ私どもの地方では昭和の国引きなどと申しまして、農地が干拓によって造成され、そして淡水化することによってかんがい用水が確保されなどなどで大変な大きな反響でございました。それで、県議会に所属いたしておりますとき、もちろんこれが推進方の決議も全会一致でいたした記憶もございます。しかしながら、今日状況が違ったと申しますか、そういう時代の環境とは確かに違ったと思いますが、私自身も言葉を選んでおりますのは、それこそ担当県である鳥取、島根両県自身でお考えになる問題でございますので、今たまたま行政府の長でありますけれども、私自身のコメントは可能な限り控えるようにいたしておるところでございます。
  300. 山原健二郎

    ○山原委員 地元両県の考え方を踏まえるのは当然でありますけれども、同時に、この事業は国の直轄事業なんですね。したがって、両県の意向を聞くという場合におきましても、国としては今日の段階でこういうふうに思うのだがどうだろうかという聞き方が正しい意見の反映の仕方ではなかろうかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  301. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 恐縮ですが、私から答えます。  中海干拓事業は、鳥取、島根両県波び関係者の強い要望を受けまして、干拓地の造成と中海・宍道湖の淡水化による干拓地及び周辺耕地に対するかんがい用水の安定的確保を目的として進めてまいりました。本事業着工後の事情の変化に対応いたしまして計画の内容の見直しを行ってまいりましたが、経営規模が小さく平たんな農用地に乏しい当地域において干拓地を活用して高生産性農業を可能とする、また周辺農地等にかんがい用水を安定的に供給するといった意義を持っております。  今後の進め方でございますけれども、あわせてお答えをしておきたいと思いますけれども、この事業につきましては、促進を要望する声がある一方、中海・宍道湖の水質悪化を懸念する声があることは十分承知しております。このような事情を踏まえまして、昨年九月には、本格淡水化の検討に資する目的で、水質、魚介類等に極力大きな影響を与えないよう配慮しつつ限定的淡水化試行を行う案を両県に提示をいたしまして、現在御検討を願っておるところでございます。今後両県の考え方を十分聞いた上で進めてまいりたいと考えております。
  302. 山原健二郎

    ○山原委員 この限定試行についても大変厳しい批判があることは御承知と思います。また、本格事業になりますと、これはもう圧倒的に反対ですね。あの宍道湖といえばヤマトシジミでございますし、奈良、京都、松江という三大国際文化観光都市でもありますし、そういう点から考えまして、私は地元の意向というのは、これは、何よりも重視さるべきは地元住民の意向ではないかと思います。  先ほどの質問に対しても、総理はいかなる問題でも住民が納得せずにやるわけにはいかぬのだというお話がありましたが、まさにそのとおりでございまして、私はここへ幾つかの資料を持ってまいりました。それは、圧倒的に反対が多いのですね、現在の段階では。当初はもちろん知りませんよ、増産運動の時期ですから。私の党は初めから危惧の念を持っておりましたから県議会においても反対をしております。でも、今ではもうこれは保守、革新を抜きにして反対なんですね。署名の数からいいましても、例えば朝日新聞の沿岸住民アンケート、これは一月に行われておりますが、反対七三%という数字が出ておるわけでございます。  ちょっと竹下総理の地元の新聞ですけれども持ってまいりましたが、これは青年会議所が出された意見広告ですね。一面を使いまして、もう御承知と思いますが、「干拓地は利用する、しかし淡水化はしない。」という、こういうのが全新聞に出ておる、こういう状態ですね。  それからまあついでに、新聞を出しましたから、総理には大変恐縮ですけれども総理が首相に就任されたときの地元の新聞もございます。これは朝ですね、総理にとっては恐らく生涯のうち一番記念すべき日であったと思うのですが、その朝は地元から贈られたシジミを食べて出られたということですね。しかもここへ、「恩返ししなきゃ」と書いているのです。私は恩をあだで返すのかという質問をしたいぐらいですけれどもね。こういう状態でございまして、もうほとんど反対なんですね。  そうしますと、この住民の意向というものをどう見るかということが大事だと思うのです。私は、両県の意向というのは、総理の考えておられるのはこういう住民の意向なのか、あるいはそれを含めた知事や県議会の意向なのか、それを今聞こうとしておるのではなかろうかと思いますが、それはどっちでしょうかね。
  303. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 済みませんですな、私から答えて。  両県の意向を聞いておるところでございますが、両県の意向というものは、いろいろな方々の、今お示しになったいろいろな声がございます。そして、反対も確かに強いということも聞いております。しかし、両県がそういういろいろな声を土台としてどのような結論を出して私どもは言ってくるか、私自身としてはそのときには最終判断をしなければならない。私が最終判断できないときは総理からしてもらうこともあるかもしれませんけれども、農林水産省として的確に対応いたしたい、かように思っております。
  304. 山原健二郎

    ○山原委員 農水省としては、これは農水省が所管をしておる事業ですから、今大臣がお答えになったようなお答えをすると思うのです。けれども、もともとあのときから比べますと、いわゆる米づくり、酪農などの農地造成を中心に目的としたわけですが、もう減反ははるかに島根県においても行われているわけですね。その数字を申し上げる必要はないと思いますけれども。そうして、情勢はそういう意味では変わった。また、農産物の自由化の問題が出てくる。そういう中で一体どうするのか。しかも、今まで七百億というお金が投入されております。これから九百九十億というお金が投入される、そういう情勢なのかということが当然考えられなければなりません。私は、ここで、綸言汗のごとしという言葉がありますけれども、天子の言葉は一遍出たら後へ戻ることはできないんだという言葉でございますが、それではだめだと思うのですね。これだけの反対がある。もう新聞を見ましてもあらゆる数値を見ましても圧倒的な反対がある。それでもまだこの事業をやるのかという点ですね、これについては当然お考えにならなければならぬと思いますが、同時に、仮に両県知事がもうこの情勢ではお断りをしますと言えばおやめになりますか。これは総理にお伺いしておかないといけないと思います。
  305. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 予算委員長の命によって答えさせていただきます。  今委員おっしゃるように、決して硬直した考え方で対応してはならない、慎重にも慎重に対応してまいりたい、こう思っております。
  306. 山原健二郎

    ○山原委員 じゃ、この問題について最後に総理大臣にお伺いしたいのですが、私はふるさとという言葉は好きです。だから「ふるさと創生論」というものも読ましていただきました。それから同時に、この問題は総理の地元の問題ではありますけれども、そういう意味では「ふるさと創生」がまさに試金石だ、この問題をどう解決するかというのはあなたの哲学の試金石だと私は思っているわけですが、これに対してどういう御見解を持っておるか伺いたいのです。これはもう総理だけしかお答えできませんから。
  307. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 確かに、御指摘なさいましたように、それは米つくり一生懸命でしようという時代でありました。私も一農村青年のリーダーの一人でありました。そうしてそれは全県的な規模で、たびたび申すようですが、昭和の国引きなんていい言葉かどうか、今振り返ってみて必ずしも適切な言葉ではなかったかとも思いますが、それに基づいていわゆる中海の干拓地はできたわけでございます。できたけれども、農業を営むためにはもとよりかんがい用水の関係の土地改良をきちんとやらなければいかぬ。それから一方、宍道湖の方では、当時私ども一生懸命、それは昔の話でございますから、残念ながら御党の同志は県議会にいない時代でございましたけれども、みんなと一生懸命になりましていろいろな計画を立てまして、率直に言って漁業交渉なんかの間へも入りましたり、全部完全補償というものも、これも実は終わったわけでございます。したがって、今まで投入したいわゆるお金の始末も率直なところしなければならぬという問題もございます、これは現実問題として。  そこへ一方、いわゆる自然環境保全という運動から大きな運動が起こっておりますので、その辺こそ、知事さんみずからだけの考えではなく、それこそ多数の皆さん方の、議会をも含む話をお聞きになった上で御決定されるであろう、両県の知事さんでございますから。したがって、それの御返答をお待ちしておるというのが、総理大臣になったからといってそう出しゃばるべきものではないと、心しておるつもりでございます。
  308. 山原健二郎

    ○山原委員 両県の知事の意向というものがかなり重要になってきたという今の御答弁であったと思います。これからは住民の問題あるいは両県の問題になってくると思いますけれども、ぜひ冷静に今日のこの現実を見詰めていただいて、まかり間違えば大変なむだ遣いになるわけでございますから、その点で最終的に決断をしていただきますように要請をしまして、この問題での質問を終わります。  次に、税制問題について一言伺います。  この問題について幾つかの答弁をされておりますが、一つ例を挙げますと、二月十九日の参議院の予算委員会で、我が党の吉川春子議員の所得、消費、資産の均衡のとれた税の構築とは直間比率の見直しかという質問に対しまして、総理はそのとおりであると答えておられますが、これは確認してよろしいでしょうか。
  309. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 所得、資産、消費に対していわばどれぐらいのあんばいがいいかということを今税制調査会へ諮問申し上げておることでございますので、まさに見直しということを念頭に置いて御議論をいただいておるであろうというふうに思っております。
  310. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、御答弁は、議事録によりますと「結果として出てくるものが直間比率ということになるであろうというふうに思います。」こういうふうにお答えになっておりますが、これは確認してよろしいわけですね。
  311. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 結果として出るものがとあえて申しましたのは、私が大蔵大臣時代、本院でも参議院でもいつも言っておりましたのは、直間比率というものはあらかじめ決められるべきものではなく、結果として出てくるのが直間比率だということをいつも言っておりましたので、その言葉の整合性をも含めまして、今でもそういうふうな使い方をさせていただいております。
  312. 山原健二郎

    ○山原委員 直間比率と申しますと、私はやはり、今七対三といいますか、七二対二八というパーセントになっているわけでございますが、これを少し変える、あるいは六対四にするとか五対五にするとかいうことになりますと、これは明らかに大型間接税であるというふうに考えるわけです。去年売上税が問題になりましたときの売上税の数値につきましては、三兆円あるいは二兆八千億円、あるいは五兆という数字が出てきましたが、六対四になりましても五対五になりましても、それよりさらに金額が大きくなることは間違いありません。そうしますと、これは明らかに大型間接税であるというふうに言わざるを得ないのです。  そこで、総理の答弁をいろいろ資料に基づいて見てみますと、どうしてもわからないのですね。例えば、この間テレビを見ておりましたら、テレビの解説者が、この問題については竹下総理の答弁がどうも理解ができないというお話がありました。それを聞きましても、これは私だけではなかろうと思うのです。例えば、国会決議である「いわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等につき十分国民の理解を得られなかった。従って財政再建は、一般消費税(仮称)によらず、」という決議が一九七九年十二月の国会決議です。あのときは、御承知のように大平内閣で一般消費税で出まして、全国沸き立って、そして選挙が行われて、国民の意思というのは一般消費税に対するノーという答えが出たことは間違いありません。それに基づいて国会決議が十二月に行われているわけですから、これはどう見ても一般消費税だけでなく、同じ構造を持つ大型間接税全体を否定をした決議であるというふうに考えざるを得ません。  だから、その後の推移を見ますと、総理は時にはこういうふうにおっしゃっておられるのですね。この決議は重いというふうにもおっしゃっておられます。渡辺政調会長はどう言っておるかというと、あの決議は見直すべきだというふうに言っています。見直すべきだということは、あの決議はいわゆる大型間接税に対する足かせになっている、だから見直すべきだ、こういうお話だったのですが、最近大阪で総理発言されているのはどうかといいますと、大型間接税導入国会決議に沿うものである、こういうふうになってくるわけですね。  ちょうどこの問題につきまして各紙の報道を私ここへ持ってきました。幾つか各紙がこういうふうに出ておりますけれども、その中で総理発言、こういうふうになっています。「二十一日の大阪での首相発言のうち、」というところで、これを肯定するような、この決議がいわゆる大型間接税導入にとってむしろ逆に必要になってくる。これは「首相側近の一人は同日「うまいことを考えたものだ。あの言い方なら決議を見直すどころか、逆にあった方がいいことになる」」こういうふうに言っていますね。だから、あの決議というものは一定の足かせになっておったから見直すと言っておったのが、あの決議はむしろあった方が大型間接税を導入するに都合のいいということになってくる。これは決議が、シロがクロにここで逆転をするわけですね。これは単なる言葉のあやではなくて重大な食言であると私は思います。  牽強付会という言葉がございますけれども、大変恐縮ですけれども、牽強付会というのは自分は都合よくこじつけることというふうに辞書は書いております。したがって、この国会決議という、一般消費税を含む大型間接税をノーという国民の意思を反映した決議が、今度は逆に大型間接税を進める決議にすりかえられるという、これは大変なことですね。この点について総理はどうお考えでしょうか。
  313. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これは御党の議論、衆参で聞いておりますが、若干の認識の相違がありますのは、あのときの税制議論というのは、財政再建どうしてやるか、ここから始まりたわけでございます。したがいまして、財政再建に関する決議ということにまずなっております。すなわち「国民福祉充実に必要な歳入の安定的確保を図るとともに、財政によるインフレを防止するためには、財政再建は、緊急の課題である。」公債をやたらと発行してインフレにしちゃいけませんよという二つのことから財政再建という問題が、まず最初に財政再建ありきということになるわけでございます。  それからその財政再建のやり方について書かれてあって、政府が用意しましたいわゆる一般消費税(仮称)は、その仕組み、構造等について十分国民の理解を得られなかった。したがって財政再建は、一般消費税(仮称)によらず、まず行政改革による経費の節減をやりましょう、それから歳出の節減合理化をやりましょう、そうして税負担公平の確保、既存税制の見直し等を抜本的に推進することによって、その後もう一つ大事なことは、財源の充実を図るべきである、こういうことが決議の趣旨になっておるわけでございますので、あくまでも財政再建決議であって、それの手法として我々が一生懸命やってまいりました、この重い重い決議に従いまして、それこそ行政改革によりまして経費の節減をやりましたり、歳出の節減合理化、けちけち大蔵大臣と言われながら一生懸命やってまいりまして、なお五十九年あたりをめどにいたしておりました税の抜本改正ということには手が届かないままに、すなわち税負担の公平の確保と既存税制の見直しということを抜本的に推進することが残っておる。だから、この決議に従って財政再建ということを考えれば、税の問題を、これは避けて通るわけにはいかない問題だというふうに素直に素直い読んでおりまして、別に初めから、今おっしゃっていただきました牽強付会などというようなことではなく、素直も素直、これ以上の素直がないぐらいに読んでお話をしておるというのが、私の毎日毎日、大事に大事に言っておることでございます。     〔委員長退席、佐藤(信)委員長代理着席〕
  314. 山原健二郎

    ○山原委員 そういうふうに言い張っていかれると思うのですけれども、どう考えても、そしてその後で売上税問題が出まして国民の意思は明確になってきたわけですね。私は率直に言うと、三百代言という言葉がありましたけれども、ここで使うつもりはありませんが、むしろ今のような経過まで含めてごたごたおっしゃることがますます国民にわからない。総理大臣ですから、やはり国民と国会にわかるような、正面からこれを見ていくということが大事ではなかろうかというふうに思います。  もう一つは、公約の問題ですけれども、これは今まで何遍も出ましたが、竹下首相の場合も、一昨年の同時選挙のときには、大型間接税反対中小企業連絡会に対して大型間接税に反対しますと確約書が出ています。これはいろいろ理由はつけられると思いますけれども、これを見た選挙民は、やはり竹下候補も反対をされておるというふうに思うでしょう。それはもう素直なとり方ですわね。  中島文部大臣、文相にはこれからしばしばお目にかからなければなりませんけれども中島文相は、中小企業連絡会に確認書を提出とともに、大型間接税反対中央連絡会議のアンケートへも、また同連絡会議へ誓約書も提出をされ、同会議の反対集会にも御本人が出席されております。これも、中島候補に対して選挙民は、中島候補は大型間接税反対という明確な態度をとっておられるということで投票されたと思うのですね。あのときの選挙の最大の争点は税金問題でございましたから、これは間違いないと思います。  その点から考えますと、私はこういう問題は、これは教育の立場からいっても大変問題なんですね。選挙の最大の争点が何となくぼやかされたり偽りであったりするということは、これは日本の教育にとっても大事な問題なんです。だから私は、中島文相は、もし竹下内閣がこの大型間接税をやるならば、竹下総理に対して、そういうことはやめてもらいたい、子供に範を垂れてもらいたいと言うべきであろうと思いますし、あえてやるならばこの内閣から去ってもいいのではないかというふうにさえ思っているのです、教育というものはそれほど重要な中身を持っているわけでございますから。この点から考えましても、多くの自民党の議員の皆さんが公約にこれを掲げておられることは間違いありません。それで選挙が行われたことも間違いありません。この点について中島文相の御見解を一言伺いたいのです。
  315. 中島武敏

    中島国務大臣 申されます国民のあり方でございますが、日本国憲法に、日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動する、こういうことでございますから、まさにこれから国会で御審議をいただくところに従って行動いたします。
  316. 山原健二郎

    ○山原委員 名答弁といえば名答弁かもしれませんけれども、ちょっとやはり内心じくじたるものがあると思うのですよ。大型間接税反対というのは私も一緒ですから、その点では一致するのだけれども、本当にこの意味ではやはりもう少し国民は対して素直になる必要があると私は思います。時間の関係でこれ以上申し上げませんけれども、やはり大宰相としては、本当にこういう問題について直視をして、さまざまな形のゆがみをつくったらいかぬということだけは申し上げておきたいと思います。  次に、農業問題についてお尋ねをしたいと思います。  今度のガットの提訴受諾の問題については、私はどうしても納得がいきません。これは、全国農民が三千万の署名を集めまして、そして多くの自民党の議員の皆さんは紹介議員になってきたわけですね。そういう経過から申しましても、またアメリカの理不尽な要求、これは政府みずからが今日まで言ってきておるわけですから、こういう点から見ましても、またガット裁定の中に含まれているさまざまな解釈の問題点ですね、例えば国家貿易品目さえもクロにするというようなやり方について、これは納得がいきませんが、これを受諾したことに対しては撤回をせよということを今日まで追ってまいりましたけれども、このことについてここで時間をとるつもりはございません。  一つは、この問題で、この間佐藤農水大臣は沖縄へ行かれました。沖縄でどんなことをお感じにたったか、一言伺っておきたいのです。時間がありませんから簡単にお答えください。
  317. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 どんなことを感じたか簡単に答えるということでございます。  沖縄に参りましてパイン畑も見ました、大勢の方々に出迎えられて、我々の生活を何とかしてくれと切々たる陳情もございました。戦中、戦後いろいろな歴史的経緯をたどってきた沖縄だけに、歓迎もされながら期待もされて出迎えられましたけれども、いよいよ責任は重いということを感じた次第でございます。
  318. 山原健二郎

    ○山原委員 沖縄におけるパイン農民を中心とする那覇市の集会というのは一万三千名と言われております。もし、パインを自由化するならば基地を返すという声まで起こっているわけですね。私も沖縄へは三十回行っておりますけれども、現在米司令部のありますあの端慶覧、あそこは伊佐という沖縄における最大の水田地帯であったわけですね。あれを奪うときには千名の米海兵隊が一列横隊に並びまして一人一人の農民の胸に銃剣を突きつけて奪い取ったのが今の瑞慶覧基地です。「千名の銃剣をもて恫喝し奪いし土地は伊佐の美田ぞ」私は、一番最初に行きましたときに、そういうつたない歌をつくったのでありますけれども、ここから追われて酸性土壌の丘の方、北の方にパインをつくって今日まで生きてきた。これが今つぶされようとしているわけですね。これは大変なことです。  そういう意味で、このガット裁定受諾の問題は、これからも尾を引きます。そして、それはいよいよ牛肉とかんきつに来ておるわけでございますが、必ずしもガットの理事会において日本は孤立しておりません。ガットの理事会における各国の発言をずっと調べてみますと、むしろ裁定案に対する日本の反論に理解を示す発言が少なくなかった。十カ国の発言のうち五カ国が裁定案の問題点の指摘をしているわけです。  これは朝日新聞の二月四日にこう書いてあります。「紛争当事者の日米両国が賛成なのに、第三国の反対で全会一致方式の採択が流れたら、受け入れを決めている日本政府の立場がなくなる。結局、二日のガット理事会では、カナダやEC、北欧諸国などが裁定案の論理に疑義を表明したにとどまり、一括採択が実現したので、胸をなでおろした政府関係者も少なからずいる。」こういうふうに書かれておるわけですね。日本国が主権を貫いてもちっともおかしくない。そして、それは必ずしも孤立する情勢ではないということをこのことは示しておると思います。問題は結局、総理が日米首脳会議に一月に参られましたときに、レーガン大統領に対してきちっきちっと対処すると事実上裁定受諾を約束をしてしまったことに大きな問題があるのではないかと思いますが、この点について首相はどういう御見解を持っておられるでしょうか。
  319. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 具体的には農水大臣からのお答えが適切かと思いますが、日米会談の際にこの問題についてきちんと対処するということを申し上げたのは事実でございます。きちんとというのがどういうふうに訳してあるかと思ったら、プロパーマナー、こう書いてありましたから、適切といった言葉の方が適切だなあと思って、後から日本語で言うきちんとというのがちょっと英訳は難しかったのかなあとも思ってみましたが、そういうお話をしたことは事実でございます。したがって、帰りまして関係者が協議した結果、いわばきちんと対処をした、こういうことになるわけでございます。
  320. 山原健二郎

    ○山原委員 アメリカ側としては、やはりきちっと竹下首相がされたことに対して、ガットに提訴中のものについては受諾をされるものと受け取ったのではなかろうかと思います。  もう一つ、私はこの農産物自由化の問題につきまして、一つは日米諮問委員会の一九八四年、四年前の九月に出されました報告書、ここに問題があると思うのです。日米諮問委員会はレーガン大統領と中曽根首相、当時、このお二人が創設をされまして、そして日米双方から代表が出まして報告書が作成されておりますが、その報告書の中にこういうふうに出ております。  これは全文を読むわけにはまいりませんので、一部だけ申し上げますが、「コメ、小麦、大麦、トウモロコシ、油糧種子の生産、牛の放、牧などは、機械と近代的経営技術の効率的な利用を可能にして、工業所得に匹敵する所得をあげるためには、はるかに広大な農地規模を必要とする。したがって、日本の農業政策は、農地規模の拡大を図るとともに小規模農地で効率的に生産しうる農産物への農業生産構造の転換を目指すべきである。」こういうふうに書かれておりまして、具体的には日本の農業は草花であるとかあるいはその他かんきつであるとかあるいは軽農業、すなわち養豚、養鶏というようなものになるべきであるというのがこの日米諮問委員会の報告書です。これは公式化されまして、中曽根首相は閣議におきましてもこれの実施を指示するという状態が出ております。  この路線は明らかに米を含めまして日本の農業の基幹産業に対してアメリカへ移譲するという中身になっております。これが背景にありますから、幾ら多くの方々が農産物自由化に反対と言っても、基本にこの路線があるということは大変重大な問題だと思いますが、これはどんなふうにお考えでしょうか。
  321. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 日米諮問委員会、過去の経緯の中での一つの現象をとらえての御質問でございます。政府委員から答えさせたいと思います。
  322. 山原健二郎

    ○山原委員 委員長、ちょっと待ってください。局長の答弁はいいです、よくわかっていますから。これは局長の答えるべき問題じゃないのですよ。レーガン大統領と中曽根首相、双方が合意に達してできた機関ですから、しかもそれがさまざまな問題を報告しておりますけれども、その中の農業問題のエキスの部分を私は言ったのです。これは日本の農政を含めて重大な中身を持つているわけですから、この路線を変更しなかったら米まで自由化するというのです。そういう中身になっておるのですから、これを変えるか変えないかが問われているわけですよ。一局長の問題ではありません。
  323. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今お話しのような、米にまで及ぶということを既に約束してあるではないかと言わんばかりのお話でございますが、そう言われたのでは困ると思いまして、事実関係を説明させようと思って政府委員と申し上げたわけでございます。  私から簡潔に申し上げますが、そうしたアメリカの押しつけというような形のものではないと承知をいたしております。しかし構造政策にせよ、いろいろな政策について今日的な農業政策の課題は多いのでございまして、真剣に農政審報告の線に沿いながらも、なおかつ具体的にいろいろな研究会を通じてその提言を受け、具体的な施策を進めていっておるところでございます。
  324. 山原健二郎

    ○山原委員 わかりませんね。アメリカの押しつけのようなものではないというならば、こんな言葉は出てこないのです。米や麦やあるいは酪農をアメリカに、率直に言ったら任しなさいという言葉になっているわけですからね。これはもう時間もありませんから言いませんけれども、やはり変えなければだめです。もう率直に申し上げます。日米諮問委員会というのはそんな甘いものじゃないわけですから、しかも、その中には日本に、自由化する場合には今の日本のいわゆる貿易規制が厳し過ぎる、これを緩和しなさいとまで書いてある。そんなこと、日本は合意しているわけですよ。向こうが押しつけるのじゃなくて、こっちが合意している。双方が合意しておるところに問題があるわけですね。これは農水大臣も後で研究をしてください。私はこのことは変えなければならぬと思うのです。  それからもう一つ。これに関連しまして、今度いよいよ牛肉、かんきつの問題が出てまいりました。アメリカは自由化を明確にしない限り交渉に応じない、ガット提訴するということを公式に通告をしておるということが新聞に出ておりますが、きのうの新聞には、竹下首相の側近の方が、牛肉、かんきつについては八年か十年で自由化するというのが新聞報道されました。私はびっりくりしたのです、はやそんなふうになってきたのかと。  それから、きょうの新聞を見ますと、各紙とも経済企画庁の首脳の方が、この二年間で牛肉は自由化する、そして、かんきつの方はもっと早いだろう、こういうふうに出ていますね。これは事実ですか。事実ですか。——私がばらまいておるのじゃない。新聞に出ておるのです。だれが言ったのですか。
  325. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほどの日米諮問委員会、日本とアメリカとの関係において市場開放、グローバルにいろいろ議論のあるところは承知しておりますが、先ほど農産物に対して米等にまで押しつけられ約束してあるのではないかという事実はないということを重ねて申し上げておきます。  牛肉、かんきつについてでございますが、私は前にもこの場でも申し上げたかと思いますが、いろいろな方々がいろいろなところでいろいろな発言をされたことが、的確にであればいいけれども、あるときは不的確に伝えられておる。今それをもとにして議論をするわけにはまいらぬ。決して報道について難癖をつけようと思うわけではございませんけれども、私はそのように理解しておりまして、新聞にこう出ておったからどうだこうだということを、ここでは私からは御返事申し上げかねます。  なお、それではどうなっていくのかということにつきましては、先刻来申し上げておりますように、早くテーブルに着いてください、テーブルに着きましょうや、そして話し合いをいたしましょう、こういうことで進めておるところでございます。話し合いのテーブルに着いたならば、我が方の主張を十二分にアメリカ側も理解してくださり、そしてある種の結論が出ることを期待をいたしておる、自由化は困難である、こう申し上げておるのであります。
  326. 山原健二郎

    ○山原委員 こういうことが新聞に、一つの新聞だけならば私は取り上げないつもりでしたけれども、全部の新聞にきょうは出ているわけですよ。経企庁首脳部というのはどういう方でしょうかね。経済企画庁、中尾長官ですね。そういう事実があるのでしょうか。
  327. 中尾栄一

    ○中尾国務大臣 これは、まず委員の仰せの言葉でございますから、また同時に出たことでございますから、率直に申し上げますが、これは農林省には何の関係もありません。同時に、あと一つは経済企画庁の中にも何にも関係ございません山ただ、私が記者懇をしたときのことが、そのときに多少言葉がスリップしているというよりは、恐らく私のわずか短い記者懇談会の中でございましたから、誤解をされたのではないかなということだけは私も判断をするわけでございます。  その点をちょっと説明いたしますると、私は御案内のとおりに農林関係のこともやってまいりまして、自由化阻止の小委員長も数年間やらしていただいた初代の委員長でございます。したがいまして、アメリカ側がどのような形で日本のところに要求してきておるかということのアイテムに至るまでも、内容に至るまでもよく知っております。よく知っておりますが、かつて八年前に、私どものこの日本の国にアメリカ側から五十三名、アメリカの議員、委員長クラスがやってきたことがございます。そのときに農林関係の上院の方の委員長はタルマッジという男で、下院の方はデガルザという委員長、そのもとにフィンドレーという実力者がおりました。このメンバーは全員九州の鹿児島、宮崎に行っているのです。そして和牛がどのような形で生育されておるか。一軒のうちに四頭か五頭、家族のように育っておる。ところが、アメリカの方は片や中堅クラスの農家でも十万頭ぐらい飼っておる。この差額から見ると、とてもではないけれども、えらいことになった。やはりこれは家族だなということで、これはとても自由化なんということは言えないということで、アメリカの議会の議会録にまでその言葉を残しておる。そういう努力を払ってきておる限り、我々の考え方は一つの定見がある。  自由化というものは、するべきものはしなければならぬけれども、してはならないものは断固としてしてはならないという段階の中に私どもは踏まえておるという点において、今までも幾つか、ビーフもある、シトラスもある、あるいは十二品目もある、あるいはまたウイスキー、ワインもある、それから米もある。そういう中佐あっても、守るべきものは断固として私ども見解において守っておるということは、先ほど農林大臣がおっしゃられたとおりでございます。そういう点においては、全く意見を異にするものではない。その点においてはどうか御理解のほどを願い上げたいと思います。
  328. 山原健二郎

    ○山原委員 だから私は何もデマを言っているのじゃなくて、こういうふうに新聞へ出ると、今でさえ農民の皆さんは大変な事態……(発言する者あり)赤旗じゃないよ。あなた農林水産のものばっかりやじるな。
  329. 佐藤信二

    佐藤(信)委員長代理 静かにしてください。
  330. 山原健二郎

    ○山原委員 静かにしなさい。これはあなた各紙に出ている。全部各紙のものを集めておるのですよ。だから、こういうことで揺さぶりをかけて、アドバルーンを上げて情勢をつくるというようなことは正しくないという意味で申し上げておるのですから、静かに聞いてください。  それで牛肉、かんきつについて農水大臣、困難だけれどもというお話がありましたね。困難だけれども、アメリカの強い要請があればやるという場合と、断固として断わるという場合と二つあると思いますが、これはどういうふうに考えたらよろしいですか。
  331. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 言葉はなかなか取り違えると後で面倒でございますのでちょっと申し上げますが、困難でもあると農林大臣は言ったがと今言われましたが、困難でもあるとは申し上げません。困難であると申し上げたわけでございます。でもではないわけでございます。あとは何かそれ以上、よろしいですか。いや、しゃべれと言えばまたしゃべりますけれども、時間がね。
  332. 山原健二郎

    ○山原委員 周囲がうるさいから。  困難であるということから、それで受諾をした経過があるから私は言っているのですよ。困難であればやはり日本の酪農あるいはかんきつ、かんきつなどに至っては選択的拡大を政府自身が今まで進めてきた最大のものですから、それを守るという立場に立ってもらいたいということと、もう一つは米の問題ですが、これは総理に伺いたいのですけれども、前の予算委員会で、私は中曽根首相にこの問題をお尋ねしました。中曽根首相は、一部たりといえども輸入するつもりはないと明確はこれを言われておりますが、この点は竹下首相も同じでございましょうか。
  333. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 これはやはり私、国会を大変尊重いたしますが、いずれにせよ、衆参両院において米の需給安定に関する決議、この趣旨を体し、国内産で自給するとの基本的な方針で対処してまいる所存であります。
  334. 山原健二郎

    ○山原委員 自由化はしないということですね。もう一回確認しておきます。
  335. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 決議のとおりですから、そのとおりです。
  336. 山原健二郎

    ○山原委員 この間、カリフォルニアの国府田農場の鯨岡さんの問題も出ております。また、総理府の世論調査の結果も、消費者を含めまして圧倒的多数が米の問題について極めて賢明な判断を下されておることは御承知のとおりでございまして、この点について、明確な立場で日本の農業を守り抜くという考えを明らかにする必要があると思います。  次に、教育問題について申し上げます。  最初に新テストの問題ですが、二月十五日に文部大臣に対して提出さいれました「大学入試改革について」、これによりますと、六十四年の暮れには新テストを実施する、こういうふうになっておりまして、まるで猫の目のような入試変更で受験生は振り回されているという記事を各紙とも出しております。中には、延期すべきであるということも出ておるわけですが、これは中身を見ますと、本年の七月までに各大学がこの新テストをどう利用するかということを決めなければなりません。これはもう大変なことなんですね。今度のテストの何科目をうちの大学は採用するかとか、そういうことを七月まででに決めなければならぬ。しかも、試行テストは十二月でございますから、試行テストもないままに、何の基礎的資料もないままに、あるいはこのテストが失敗するかどうかもわからないままにこれを決めなければならぬというようなことになりますと、これはもう大変なことでございます。  また、入試問題は各大学の学部、教授会が決めるものであることは学校教育法五十九条によって明白なところですが、この学部教授会の合意は得られておりません。ほとんど論議はなされていません。また、私学の場合、今度これを参加さすと言っておりますが、この合意も得られているとは思われません。  また、高等学校教育に重大な影響が出てくることは御承知のとおりでございまして、今まで高等学校は五教科五科目でやってきたわけでございますが、これが今度は一科目になるかもしれない、二科目になるかもしれないというような事態になりますと、高等学校の教育が重大な影響を受けることになるわけでございます。  これらの問題を考えますと、今度文部大臣は提起されました大学入試改革協議会というのは、これは文部大臣の私的諮問機関にすぎないわけですね、こんなことを考えますと、これは受験生にとりましては一生一度の重大な問題でございまして、毎年毎年制度が変わるということになりますと、全く政治の都合で子供たちを振り回すという結果になります。これはどうしても慎重にならざるを得ないのでございますが、この点についてもう少し慎重な、あるいは延期をして論議をするという必要が絶対にあると思いますが、この点について文部大臣はどうお考えでしょうか。
  337. 中島武敏

    中島国務大臣 ただいまは新テストを中心に御指摘でございました。そのテストがどうなのかということで不安があるということでございますが、先に新テストありきというのではなくても、御存じでしょうが、新テストの前に教育のあり方が先にあるわけでございます。それは、日本の教育水準は高い水準にございますけれども、社会が成熟度を増しますと、社会そのものが多様化、個性化をしてまいります。その社会の変化にみずから対応できるたくましく心豊かな青少年を育成しようというのがテーマでございます。そのためには教育も個性化、多様化しなければいけない、それには大学入試も個性化、多様化をしていこうというのが前提はございまして、個性化、多様化をするにはどうしたらいいかという御審議、御討論あるいは御意見をいただいて、そのためには新テストをする方が個性化、多様化によろしいということで今進んでおるわけでございます。  その前段としては、これは形は違いますが、十年間やってまいりました共通一次がございます。その共通一次によりまして今までの難問奇問がなくなった。さらに、今現在どうしても受験地獄と申しますか、その中で記憶力重点で受験地獄があるということが学生諸君に過酷な対応を迫られておると思いますので、今度の新テストは、国公立並びに私大、それから高校の方々に入っていただきまして、一般の高校の一応の水準をクリアしておれば受けられる範囲の水準のテストを底に置き、そして大学はそれを参考にいたしながら、それぞれの大学がさらに個性的、そしてその人間性を引き出せるような、自分の建学の精神に合ったテストをやりやすいということでやっておるわけでございましてももなみに十年間の推移を見ましても、例えば小論文は十年前四十七学部が採用しておりましたけれども、六十二年度では百六十九学部が小論文を採用しておる。一つの点では、そのようにただマル・バツでは引き出せない学生諸君の能力を引き出すという面でも効果を上げております。  その十年間の共通一次のいい評価されておる面をさらに軟善をいたしまして、共通一次は発展的に解消して新テストは移行する。これは、受験地獄から解放し、そして伸び伸びとした青少年を育成する、そういうことに資しているものでございますから、猫の目のように変わるのではなくて、大前提に対してチャンネルを合わしていっておるということでございますから、非常にやりやすくなるということで御理解をいただけると思います。
  338. 山原健二郎

    ○山原委員 わかりませんね。これはもう本当に形式的なことなんですよ。私は、この問題では十九年やってきております。共通一次をつくりましたときにも、これは衆議院の中に小委員会をつくって二年間系統的に調べた。小委員長は藤波孝生さんがやりましたね。そして、この中で、この共通一次をやった結果、実施の結果、その功罪を明らかにして新たな検討を加えていくというのが国会決議です。これもやられておりません。文部省は一度も国会に報告をしておりません。  しかも、小委員長報告はこうなっています。入試問題に関する小委員会を設置して検討した結果、試験の実施時期についても、「大学の入試は法に定めた高等学校教育の全課程が終了した時点で、その到達度を判定するという趣旨で実施されることが原則である。」こうして、この高等学校の三年間の教育というものを、これを保障するということが一番大事だ、これはもう何カ月もこの点で論議しているんですよ。  ところが、今度発表されましたものは、十二月の下旬に試験をやるでしょう。そうすると、高等学校の三年の三学期というのは飛んでしまうわけです。これは絶対にいかないというのが国会側の決定であったわけでございますが、これを完全に無視して、共通一次を廃止して新テストだ、これは中曽根さんがおっしゃって、そしてこれが今度の新テストの押しつけのもとになっているわけであります。これは共産党の主張ではありませんよ、全会一致の決定なんですから。しかも、共通一次そのものも、もともと中曽根さんが幹事長等しておりましたときに持ち出してきたものなんです。だから、それは国大協の決定も経まして行われたわけですけれども、今度はこういうやり方をしますと高等学校教育にとっても非常に重大な問題です。  私は、この問題は、率直に申し上げますが、拙速はだめです。また失敗します。去年も複数制度をとりまして、そのために十万人の足切りが行われた。今度はその経験によって一万三千人の足切りでとどまっておりますけれども、そういうふうに実施をしてみて、あるいは試行テストをやってみて、その成果に基づいて実施するならばいいけれども、それもなしにやるなどということは受験生に対する冒涜であります。これははっきり申し上げておきます。こんなことをやればまた失敗することはもう目に見えていますよ。  私はそういう意味で、これは総理に御見解を伺いたいのですが、たくさんの受験生の立場に立って、この点について御検討する意思がないか、一言伺いたいのです。
  339. 中島武敏

    中島国務大臣 今までの流れの中で評価されるべき点が多いということもございます。例えば、先ほど申しました、前の共通一次からいたしましても、難問奇問がなくなった、それから、社会人としてもまた開かれた、また推薦入学の道も開かれた、あるいは帰国子女の方々に対しても大変やりやすくなった、そういう評価を見た上で申し上げておるわけでございまして、さらに改善すべきは改善をし、そして新テストは予定どおり理解を得ながら進み、進みつつ理解を得る、この点で進んでまいりたいと思っております。
  340. 山原健二郎

    ○山原委員 日時が先に決まってそれに受験生を合わすというやり方は、これはもう改めなければならぬですよ。本当に皆迷惑しているのですよね。どの新聞を見たって受験生の恨みの声がいっぱいでしょうが。こういうことをただ簡単に決めまして、どの組織とも合意なしに、例えば大学の学部教授会あるいは私学、今私学だって皆わんわん言っているわけですよ。私学だって本当に困り切っているわけでしょう。高等学校だって困っているわけでしょう。そういう現実を見ないで、ある私的諮問機関が日時を決めればこれに基づいてやるなどということは、これは絶対教育上は許すべきことではないんですよ。このことを申し上げておきたいと思います。  もう一つは、社会科の問題でございますけれども、昨年暮れの教育課程審議会の答申、これは四十年続きました高校社会科を解体して地歴科と公民科を設け、世界史を必修とする、こういうふうになっているわけですね。審議会の審議経過を見ますと、これは結局政府側の見解の一方的押しつけ。  私ここに審議会の経過報告書を持っております。これは文部省がなかなかこの委員会に出さないものですから、これは秘密文書でもありませんし、これを見せていただきますと、この審議会の経過として、社会科を解体するなんという声はほんの二人しかいないんです。圧倒的多数は、四十年続いてきた社会科の問題について、これは継続すべきであるという声が強いのですけれども、これが突如変わってくるわけですね。  これまた新聞でございますけれども、どの新聞を見ましても、突然どうして変わったのかということが書かれておるわけです。この経過を見ますと、例えば各紙の報道ですが、これが発表されましたときに、「唐突な解体 教育課程審議会 本格的審議のないままあっという間に歴史独立 高校分科会で何が起きたか 世界史必修化で逆転少数派だった歴史独立論」、こういうふうに出ております。  今、私が申し上げておるのは、社会科をどうせいということで言っているよりも、少なくとも皆さんがつくった審議会というもの、その審議会の審議の経過あるいは多数の意見というものは尊重しなければ、審議会をつくった意味がありません。しかも、審議会をつくるときは、最近ではむしろ政府側は有利なメンバーによって構成されておることは間違いありません。そのメンバーでつくられた中でもお二人の教授がおやめになりまして、お一人の教授は、この方は、戦後四十年社会科教育を教育行政の側からつくってきた人間だが、私は右寄りだ、しかし、戦後教育の柱である社会科を通じて民主主義を根づかせることに人生をかけてきたのだという朝倉教授がおやめになりましたね。そのときに、まるでこれはクーデターだという言葉を吐いておられまして、二人の委員の方がおやめになっているわけでございます。  どうしてこういうことが起こったのかということで、さらにこの議事録を見てみますと、三月四日に社会科委員会で集中審議がされておりますが、歴史独立論を出した方はお二人だけ、反対が圧倒的に多いんです。歴史独立論者の田村氏も、「歴史を独立させるなら地理はどうなのだという議論があるので、現実問題として歴史を独立させることは難しいが、将来的にはそうなってほしい」とおっしゃっておられます。ここで議事録を見る限りにおいて独立論者の発言はこれまでであって、後は、「強行すれば現場は混乱する」とか「必修科目を置くなら、社会科という教科のねらいから、それは総合的な科目でなければならない。」とか「現代社会を大事にしてもらいたい。」とかいう声が圧倒的に続いている。にもかかわらずこれが消えるわけですね。  その消える原因がこれまた新聞に出ておるのでございまして、私はこの真偽を確かめたいと思うのです。というのは、こういうふうに新聞は出しております。文部省内の空気は現状維持でいこうというコンセンサスができておったんだが、中曽根首相、当時の首相に高石事務次官が会ってから急に流れが変わったということですね。高石邦男事務次官は二度も首相官邸を訪ねておいでますが、そのとき、歴史と地理は大切だという首相の意向が伝えられ、高石次官が引き受けたということである。彼が決断をしたのは、国会自民党委員から社会科再編を繰り返し追及されてきたのと、彼自身の政治的打算が重なった、こういうふうに書いております。  この政治的打算とは、高石事務次官が近く勇退し、福岡県知事選に自民党の推薦で出馬する話だ。こうなってくると、高校分科会長の諸沢さんも、元事務次官ですが、後輩の高石が決断したのなら、おれが悪役を買ってやろうと泥をかぶって、そしてそれから教科調査官には世界史必修や分割の理由づけを考えよという注文が出て、そしてこれが社会科を解体する基礎になっておる、こういう報道です。  教育というものが、高級官僚の保身あるいは猟官、そういうことによって変えられるようでは、これはどうにもなりません。したがって、審議会で審議された多数の意見というものが尊重されるのが審議会をつくったゆえんでしょう、なぜこういうふうになるのか、今後の日本の教育の問題としてこの点は事実関係を明らかにしてもらわなければどうにもならないという感じがします。しかもこの新聞は、全国の地方紙にも全部これが出ているわけですから、この点についての見解を伺っておきたいのです。
  341. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生御指摘の点につきましては、若干事実認識の点で私どもから御説明すべき点がございますので、お聞き取りをいただきたいと思います。今回の教育課程における社会科の再編成の問題は、大変長い経緯を経ておるわけでございます。昭和三十年代から課題でございました。  最近の例から拾いますと、既に昭和五十八年の中央教育審議会における小委員会報告で、「社会科の科目構成の在り方については再検討すべきである」というふうな内容が出ておるわけでございます。さらに、六十一年四月の臨時教育審議会の第二次答申においても、社会科の構成のあり方についての論議の結果の検討すべき点の指摘がございます。臨教審の三次答申、六十二年四月でございますが、この中でも、「国際社会の中に生きる者として必要な知識については、比較文化的視点を重視し、地理教育とあわせつつ日本および世界の歴史教育の中に織り込んでいくことが必要である。」こういうふうに中教審、臨教審も触れておりますし、それから、教育課程審議会自体も昨年の暮れに一挙にやりたということでは決してございません。六十一年の三月から第三委員会、社会科委員会でかなり議論をしてまいりました。いろいろとやっておるわけでございまして、その点についてはかなり十分な審議が行われておるということが第一点でございます。  それから第二点といたしまして、審議会における委員の賛成は二人であった、それが結果としてこういうふうになったのはおかしいという御意見でございますが、高等学校教育に関する分科会におきまして活発な議論がなされたことは事実でございます。積極的に主張される方もございました。しかし結果としては、高校分科審議会では満場一致でこの再編成は決議されておるわけでございます。さらに、十二月二十四日の教育課程審議会答申における総会におきましても満場一致で結論が出ておる、こういうことでございますので、そういう点につきましても御理解をいただきたい。これが第二点でございます。  それから、この社会科再編成につきましていろいろな新聞報道があるわけでございますが、これらの報道の内容については、私ども若干責任を持ちかねるわけでございます。私どもは教育課程審議会における審議を尊重し、そいてその答申をいただきまして、それから学習指導要領の検討を十分経た上での作成に入っていく、これから十分これを議論を尽くしてまいりたい。答申を尊重してこれからしっかりした指導要領をつくってまいりたい。こういうふうな考え方でおります点が第三点。  以上、事実関係につきまして若干御説明を申し上げた次第でございます。
  342. 山原健二郎

    ○山原委員 こういうことが当時大変うわさになりまして、また新聞にも出るということ自体、文部省、やはりかなり謙虚にならないとだめですね。もともと文部行政というのは何かというと、教育基本法十条二項によりまして、教育条件の整備なんですよ。子供たちが勉強できやすいように、先生が教えやすいように条件整備をするのが、不当な支配に服することなく、日本の教育行政の最大の任務です。そういう点では、本当に教育予算の面につきましても随分削られてきておりますけれども、こういうことになると、新聞にこう書かれること自体がこれは問題なんで、書かれたら、これに対して事実を明らかにして反撃をするとかということをしないと、全国民はこれを見ているわけですね。社会科の方たちにしましても、もう全国で反対の署名をなされておる。今まで文部省の仕事をお手伝いしてきた文部省側の人が反対の署名をしているという現状を冷静に見なければ、力で押し切るというようなことは断じて文部行政にあってはならぬことなんです。このことを申し上げておきたいと思います。  それから教育予算の問題について申し上げたいと思いますが、これは去年のこの予算委員会の総括質問のときに中曽根首相に私はお尋ねをしました。教育改革と行政改革とは違うのではないかということに対して中曽根首相は、これは違います、行革は行革、そして教育改革は教育改革だ、こういうことをおっしゃったのですが、当時大蔵大臣でございました竹下総理も、それは同じ考えでしょうか。     〔佐藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕
  343. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 行政改革行政改革、教育改革は教育改革、中曽根総理が当時おっしゃったことと一緒です。
  344. 山原健二郎

    ○山原委員 ずっと大蔵大臣をされてきておりましたこの数年間の教育予算の伸びというのを見ますと、だんだんだんだん減ってきております。総理大蔵大臣になられた、たしか五十五年であったと思いますが、五十四年ですか、この予算がもう一貫してずっと減っているわけですね。  例えば四十人学級の問題にしましても、あるいは学校給食の牛乳代、これは子供の骨格をつくる上で一番大事なものですけれども、これも次々と削られております。また、義務教育費国庫負担法に基づく教材費、これも国庫負担から外されるというようなことが続いておりまして、大蔵大臣をされておられ、総理大臣になられたわけですが、どうも竹下首相の考えの中には、教育改革と行政改革と別のものだという観点が薄れているのではなかろうか。やはり大蔵大臣当時の行政改革を主にする見解が教育予算の削減にあらわれているのではなかろうかというふうに思われるわけでございますが、これは私の考えが間違っているかどうか。
  345. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そういう御指摘がございましたので調べてみたのでございますが、一般歳出の構成比の中で文部省の予算は、昭和五十五年から六十三年度まで、実は、ふえてもおりませんが、ほとんど減ってはおりませんで、大体一三・九から一四・一の間を動いておる、非常に狭い幅で動いておりまして、歳出の構成比としてはほとんど同じでございます。
  346. 山原健二郎

    ○山原委員 私の計算と大分違いますけれども、これは時間がかかりますのでこれでおきますが、例えば竹下総理大蔵大臣当時に、教科書は有償にすべきであるという論者であったと思いますが、現在はどういうお考えでしょうか。
  347. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 別に論者であったわけではございませんけれども、当時、教科書というのは一、二、三、四、五と覚えれば一番覚えやすうございまして、小学校が千百円、中学校が二千二百円、締めて三百四十五億、一、二、三、四、五、こういうふうなことを覚えておったりいたしましたが、基本的に教科書問題について一つの見識を持っておったというわけのものでは必ずしもございません。が、いろいろなところからこの教科書無償制度に対する、存続すべきだ、あるいは批判的な意見等があったことは私も記憶いたしております。
  348. 山原健二郎

    ○山原委員 教科書問題はまことに重大な問題でございまして、毎年予算編成のときにも論議されるわけでございます。今宮澤大蔵大臣がおっしゃいましたけれども、一般会計に占める比率はずっと下がっておると思うのですね。これは今ここで申し上げても数字が合わないかもしれませんからおきますけれども、こういう状態ですね。  例えば、先ほど私が申し上げました子供たちの給食用の牛乳補助ですね、これがことしは二円六十銭に減っております。過去においては五円八十銭で、これを値上げをしてもらいたい、これは酪農農民あるいは父母の長い要求でございましたけれども、ずっと減り続けてきましてとうとう二円六十銭。子供の給食というのは子供たちの肉体をつくる上においても重要なものですが、そういうものまで予算を切り込んできているのですね。児童憲章によりますと、子供に対しては国家は最大のものを用意しなければならぬということになっているわけですが、この点については、竹下内閣はやはり教育予算を大事にする内閣になってもらいたいということを私はここでは申し上げておきたいと思います。  次に、今度の国会に臨教審答申に基づく法案が幾つか出ております。六本出ています。これは、初任者研修であるとか、あるいは教員免許法であるとか、あるいは教育委員会の強化をする法律であるとか、あるいは先ほど言いました新テストの法案であるとかいうものが出ております。ところが、先ほど新テストのときに申しましたように、国民的合意というのはないのですね。確かに臨教審の答申ではあるけれども、臨教審は数万語に及ぶ答申と審議経過の概要が出ておりまして、その中から法律が作成されてこの国会に出てまいりました。百十二国会には六本も出てくるということで、今までこんな国会初めてです。前代未聞だと思うのですけれども、その一つ一つがまだ多くの疑点を持っています。  例えば、初任者研修についてもそうですね。これも恐らく国民的合意はまだありません。あるいは免許法につきましても、学校の教師を三つの免許に分けるということにつきましても、これも合意のあるものではございません。  こういう点を考えますと、もう今出ておる法律というのは、結局は、いろいろ臨教審が答申をしました、自由化論などというのも出ましたけれども、結局は学校の管理体制を強化する、こういう中身になっておることは間違いないと思うのです。私は、今度の臨教審に伴うこれらの法律案を撤回をしてもらいたいというふうに考えておりますが、この点について、簡単でいいですからお答えをいただきたいのです。
  349. 中島武敏

    中島国務大臣 今おっしゃいました法案は、まさに用意はしておりますが、これから提出をいたすものもございますし、委員会で御審議をいただくことが多かろうと思います。  ただ、一つ申し上げておきたいのは、これらの法案の用意あるいはその臨教審のあり方、これは臨教審答申にもありますように、その心は教育基本法にのっとっております。教育基本法は日本国憲法にのっとっておるわけでございまして、これからの二十一世紀に向けまして平和国家の中核となるべき広い知見を得る青少年を育成するための方針でございます。そのための一つ一つのチャンネルを合わしていこうということでございまして、先ほどの社会科の問題にいたしましても、憲法にもございますように、日本国民のあるべき姿、同時に世界の国家の中の日本であるということを忘れないようにということがございます。  そういう点で、社会科で既に小学校あるいは中学校で世界の中の日本人のあるべき姿を教えておるわけでありますが、その習熟度に従って、高校に入りますとそれぞれ専門分野をより深く教えていくべきだ。それには歴史がございます。また、文化そのものが、その土地の風土と歴史とそこに住んでおります人々の魂の哀歓が織りなって文化が生まれてくるわけでございますし、そこの、今あります世界の中で、与えられた八十年の生命というものはいかに貴重であるか、まず自分の生命の貴重さを知り、そして同時に世界に生きとし生ける生命のとうとさを知る、これが基本でございます。そのために地歴を学ぶのは当然のことでありまして、そういうように一つ一つあるべき青年の姿像をスムーズに育成するために幾つかの法案をお願いをしておるところでございまして、世のお母様、お父様方にも御理解をいただける方向、このように自信を持って御提出をいたしたいと思っております。
  350. 山原健二郎

    ○山原委員 ここらになってきますと論争になるわけですね。  例えば社会科。四十年の経過を持っておりますけれども、社会科は、学習指導要領に基づきまして、「民主主義がその真価を発揮するためには、すべての人々が十分にその個性を生かしつつ、民主主義そのものの原理を理解し、尊敬し、実践していくことが必要であり、そのためには国民一人一人がよく教育されていなければならない。」という、これは学習指導要領の、憲法を基本とした平和的、民主的社会の形成者を育成するという立場から社会科というものがつくられて四十年の歴史を持っておる。その中に紆余曲折はありましたが、これを何とかかんとかせよということもあったけれども、ともかく四十年続いてきた。これを変えるためには、私は民主的な原理でいかなければだめだということを申し上げておるのであって、そのために先ほど社会科問題を出したわけでございます。  だから、同じように教育基本法にのっとりと言いながら、今、中島文部大臣と私の考え方、相当違いますからね、これをここですり合わせても、結論が恐らく今は出ないと思います。そういう意味でこの問題は、社会科問題については特に慎重な態度をとるべきであるということを、また法案につきましても、今大臣がおっしゃいましたけれども、国民的なコンセンサスが必要だということは、教育の原則として一番大事なことですね。そのことを抜きに、ただ法律によってこれを押し通していくということはしてもらいたくないということを申し上げておきたいと思います。  ここで、昨年の予算委員会で法制局長官にお尋ねをしたことがございます。これは日の丸、君が代についての法制上の問題についてお尋ねをいたしましたが、味村法制局長官からお答えがございました。ところで、その前に前の真田法制局長官のお答えがございまして、これを突き合わせてみますと多少の相違が出てまいったのでございます。それは、私が去年の予算委員会では唐突にお尋ねをしたという経緯もありまして、そのためにこういう誤差が出たのではないかと思いますが、改めてお伺いします。予算委員会で聞いたことですからやはり予算委員会でお答えをいただいた方がいいと思いますので、真田元法制局長官の御見解と一緒であるかどうか、一言お答えをいただきたいと思います。
  351. 味村治

    ○味村政府委員 御指摘になりました私の答弁は若干意を尽くさない点もございましたが、昭和五十四年四月十日に衆議院の内閣委員会で当時の真田内閣法制局長官が行いました答弁と異なる趣旨を述べたものではございませんので、そのように御了承いただきたいと存じます。
  352. 山原健二郎

    ○山原委員 今の明確なお答えでわかりました。  さて、もう一つの問題は、ポスト臨教審と呼ばれる臨時教育改革推進会議設置法、この問題でございますが、これはまことに屋上屋を重ねる問題ではないかと思います。  六十年六月、内閣に教育改革推進閣僚会議が設置されました。六十年七月に文部省に教育改革推進本部が設置されました。最終答申提出後には文部大臣を本部長とする教育改革実施本部が新たに設置されました。また、中央教育審議会も、六十三年度予算を見ますと、審議開始を前提とした予算となっております。  このように四つの組織が臨教審の答申推進の役割を持つ会議として設置をされておりますが、その上に内閣直属の臨時教育改革推進会議を設置するということでございます。単に臨教審の答申の実施を推進させるために幾つかの会議をつくっておられるわけでございますが、さらにこの上に内閣直属の会議をつくるということは、これは何を意味しておるか。単に臨教審答申を実現するだけでなくて——それならば機関があるわけですからね、幾つも。これをあえてここでつくろうとするのは、そのほかに何かをやろうとする意味があって設置をするのかどうか、この点を伺っておきます。
  353. 中島武敏

    中島国務大臣 ポスト臨教審についてお尋ねでございますが、これはごく素直に御理解をいただきたいのでございますが、臨教審で三年間御審議をいただきました。そして二十一世紀に向けて非常に示唆に富んだ数多くの御提言をいただいておるわけでございます。その中から、当面進めるべき八項目ということを主にいたしまして教育改革推進大綱なるものを昨年秋、閣議決定をいたしておるところでございます。したがって、私どもとしては、その方向に沿いまして着実に確実に教育改革を進めていくことが私どもに課せられた使命であり、課題である、こう考えております。  そこで、それをスムーズに進めるための推進役といたしまして新たにこのような機関を設けさしていただく。そして、各界各層の大所高所からの御意見を賜りながらスムーズに推進できることを期待をいたしまして、設置をお願いをしておるところでございます。
  354. 山原健二郎

    ○山原委員 これにつきましては、例えば政府は臨教審答申を最大限尊重するという立場で推進閣僚会議もつくっておられるわけですね。それまで設置をして、その上にさらにこういう会議をつくるということは、政府の上に君臨する会議を設置することになりはしないか。したがって、結局新たな審議機関という性格を持つのではないかと思われますが、今の御答弁によりますと、そういう性格は全く持たないというふうに理解してよろしいですか。
  355. 中島武敏

    中島国務大臣 教育改革を着実に推進するためのスクリュー的な役割を担っていただくべき機関と思っておりまして、第三者的にそれを監視するあるいはウオッチするという機関とは考えておりません。
  356. 山原健二郎

    ○山原委員 私が言いましたように、五つほど臨教審答申を推進する機関というものをつくっておられるわけですね。それでもまだ足りないということで、これをあえて内閣直属の機関としておつくりになるのか。もう一回それを伺いたいのですが、ちょっと屋上屋を重ねることになりはしないのでしょうか。
  357. 中島武敏

    中島国務大臣 教育改革を進めるということは政府の責任でございます。また、その直接の担当部局は文部省と認識をいたしております。しかし、これを進めるに当たりまして各省庁との調整、整合をとらなければならない面が多々出てまいります。この推進会議総理府に置いていただくということは、まさにその意味での調整機能も発揮していただくこと多かろうということで総理府に設置をお願いをしておるところでございます。それ以外の意味はございません。
  358. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろ教育問題について申し上げましたが、私は教育というのはやはり国民の合意に達するための努力が必要だと思うのです。教育問題については随分論議がありますね。そういう意味でなかなか一致しない面もありますけれども、しかしその努力を続けられることがまさに教育行政の一番大事な原点だと思います。  最後に、竹下総理、きょうお誕生日ということでございまして、大変恐縮な面もあるわけですが、事は教育に関係しておりますので、一言伺いたいと思います。  今度、いろいろ新聞、雑誌に出ております竹下首相の秘書の方に関する問題ですが、今の日本の教育の一つの大きなひずみがこういう形であらわれたのかなという感じがするわけでございますが、小学校の入学の問題でございまして、そういうところまで問題があるのかということを痛切に感じました。けれども、真相は私もよくわかりません。しかし一応、総理としてはこの問題について見解を明らかにすることが国民に対する責務ではなかろうかと思いますが、御所見がありましたら伺っておきたいのであります。
  359. 竹下登

    竹下内閣総理大臣 率直に言って私も驚いておりますが、よく事実関係を調査しなければならぬと思っております。
  360. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が参りましたので、これでおきます。
  361. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして総括質疑は終了いたしました。     ─────────────
  362. 奥田敬和

    奥田委員長 これより一般質疑に入ります。  答弁を求められている大臣以外の大臣は御退席いただいて結構でございます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。宮下創平君。
  363. 宮下創平

    ○宮下委員 最初に、税制改革の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今日までいろいろ税制改革の議論がなされておりますが、一歩でもこの議論を進めたい。国会の論議を見ておりましても、五十四年十二月の国会決議でありますとかあるいは中曽根総理の大型間接税に関する発言等の論議に終始している感がございますけれども税制改革の大きな転換期に当たりまして間接税の論議の門には入るべからずというようないわば直接税と間接税の間にカーテンを引いて、直接税の中の不公平とかそういうことは議論されますけれども、間接税自体の問題点等については今までほとんど触れられておりませんので、私は議論を深めるという意味でその点を中心にしてお伺いしたいと思うわけでございます。  そこで私も、今回の税制改正、転換期の税制改正でございますから大変重要なことだと思いますが、そしてまた税に対しておおむね政府側と共通した認識を持っておるつもりでございます。質問申し上げることによりまして、質疑の形をとりながら問題点となっております直接税、間接税の背景、特に問題点等を少しやってみたいと思いますが、その前に二、三問総括的な質問をお伺いしたいと思います。  その第一は、六十二年度の売上税法案を中心といたしました税制改正がこのような結果になったわけでありますが、新しい間接税を中心にした税制改革をやるということになりますと、その反省の上に立って今後取り組まなければならないと存じますけれども、いかなる反省に基づいてなされておられますか。  特に、私は今議論されておりますいろいろの政治立場からの議論等は一応おくといたしましても、まず国民的な合意の形成を目指した税制であるべきであるということを総理もおっしゃっておられますし、今税制調査会におかれまして、これは大蔵省、政府、直接ではございませんけれども、大蔵省の主管する税制調査会が公聴会等をやっております。私はその公聴会の前提になった税制改正の基本問題、これは、六十三年二月五日に税制調査会の基本問題小委員会が提示された問題点は大変よく、抽象的ではございますけれども、その間のいろいろな問題を整理されていると思います。これに対する一般公聴会が現在行われております。二十回行われておると聞いておりますけれども、三月の初めには完了すると思いますので、私はその点をちょっとお伺いしたいと思うのでございます。  全体として税制改革は必要であるとの認識が大勢を占めておるという報道もございます。それから焦点の新型間接税についても理解を示す意見が多くて、昨年の売上税のときとはかなり違った趣を示しているのではないかということがございます。また一方、キャピタルゲイン課税の問題とかあるいは不公平税制の影響が出ておりますし、所得税、法人税の減税等も議論されておるようでございますが、直接大蔵大臣が現地に赴いておられるわけではございませんけれども、全体としてのそういう背景なり、どのようにお聞き取りいただいておるのか、御意見か御感想を承りたい、このように思います。
  364. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 昨年の反省につきましては、当委員会におきまして既に何度か申し述べておるところで、お時間の関係もございますので詳しくは申し上げませんが、やはり政府の提案というものについて十分に国民各層におわかりをいただくだけの時間を持たなかった、それは政府内部の問題もございましたし、また国会におかれましてもいろいろな御事情から御議論ということにならずに廃案になっていったというような経緯がございます。したがいまして、国民にとりましては非常にわかりにくい、またわかりにくいと言われる理由もなきにあらずでございましたので、もともとどうも聞く耳を持ちたくない、しかも非常にわかりにくいというようなことが最初の印象であったものでございますから、それ以上に話が進められなかったということが基本にあったと思います。  その反省に基づきまして、今回は、前回なぜそのような過ちを犯したかということについて、まず国民の感じておられることを知っておきたいということが公聴会の一つの目的でございますし、しかし実は昨年のは廃案になりましたが、問題がないわけではないということを国民にわかっていただきたいということ。そうであるとすれば、どういう形でならば国民が、もちろん事の性質上大歓迎というわけにはまいりませんでございましょうけれども、いろいろな情勢からやむを得ないとお考えいただくか、そういったようなことを、いわばこちら側の案というものは現実に税制調査会もつくっておられませんし、持たないままの姿でできるだけ素直に国民の御意見を伺いたいというのがただいままでの公聴会の経緯でございます。
  365. 宮下創平

    ○宮下委員 ありがとうございました。  次に、最近の財政状況は比較的自然増収も見込まれております。特に昨年は異常なほどの、やはりこれは通常のケースと違いますが、租税弾性値価寺も二・一というようなことで、今度の補正におきましてもこの自然増収の見込みを変えておりますし、昨年の剰余金等も入れるというような、財政的には一時的には非常に好転したかの感がございます。そして同時に、一方、NTTの株式の売却等によって投資的経費が賄われるというような状況がありますので、一般的には、今こういう状況の、いわばフォローの風が吹いておるときになぜ税制改正をやらなくちゃいけないかというような意見も仄聞されるわけですし、そういう疑問を持つ方も多いと思いますが、私は、こういうときこそ落ちついた税制議論をやって、税も体系でありますし一つのシステムでございますから、これをあらゆる面から検討していく絶好のチャンスだと思いますけれども、その点についていかがでございますか。
  366. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 御指摘のように、この最近の自然増収にはやや異常と思われるような要素が、いわば一過性ではないかと思われるような要素もございますから、その点は将来に向かっては排除をして考えなければなりませんし、経済が好転をいたしておりますが、好転期には多少の増収がございますが、正常化しますとそうでないという過去の経験もございますから、片や特例公債をなるべく早く脱却したいという気持ちもございまして、余り大きな自然増をずっと期待をするわけにもまいらないという現実がございますが、幾らかそういう余裕がございますので、確かにおっしゃいますように、こういうときに来るべき高齢化社会に向かってシャウプ以来の抜本的な税制改正を考えるというのには、ちょうどまさにそういう点からも適当な時期であるというふうに私どもも考えております。
  367. 宮下創平

    ○宮下委員 税制改正の必要について今お言葉がございました。私はやはり二つの側面があると思うのですね。  一つは、財政の現状が、公債依存度が非常に高いとか、あるいは長期債務残高が率として国際的に非常に高い、あるいは百五十九兆円の国債残高もある、あるいは国債の利払費が一般会計に占める割合が二〇%というようなことは、これは残念ながら先進国で第一位でございます。こうしたいろいろの財政の要請が片やございます。  また歳出面では、いろいろ議論のございますように、財政需要拡大の要因が多々あります。総理の言われる国際国家日本としての責務を果たすためのODAでございますとか累積債務問題あるいは防衛問題等々、いろいろ国際的な責務を果たすべき支出がこれからさらに増大が予想されます。それからまた国内的には、いろいろ議論がございますように、高齢化社会を迎えておる。それからまた同時に、アメリカの双子の赤字を解消していただいて貿易収支のアンバランスを解消する。同時に、我が国内において構造調整をやるということは、アメリカがある程度デフレ的な要因になった場合に、日本がそれを受けて立ってその需要を賄っていく。構造改革をやりながら投資的な、日本としても国際的な視点も踏まえながらやっていかなきゃいかぬ。いろいろこういうことがございますから、背景としては、私は、そういう点をまず考えていかなければならないと思います。  私が申し上げたい点は、税制改正はそういう事情だけからではない、税制改革の体系面からして本来的にこの際改革を要する諸点があるように思うわけであります。財政のあり方として抜本改正をやらなくちゃいけない。すなわちそれは、シャウプ税制以来四十年を経過しておりまして、我が国の社会経済の急激な変化がいろいろの面であらわれておりまして、既存の税制の手直しということだけではこれは対応し切れないというのが、我我、ここ三、四年税制改革にも一応携わってまいりまして、党としてもやってまいりましたが、そういう実感でございます。  そして同時に、税の不公平感の高まり、これはこの国会でもいろいろ不公平税制の問題について言われておりますが、捕捉率が低いとかあるいはクロヨンでございますとかそういう捕捉率の問題、あるいは不公平税制と言っていいかどうか、不公平感というようなことが正しいという御意見もございましたが、私もそうだと思いますが、こうした不公平税制というものは何であるか。言われているように、キャピタルゲイン課税がああいう形では不十分ではないかとか、あるいは公益法人等の収益事業に対する課税がどうだとか、あるいは中小企業のみなし法人課税は、私は、それなりの歴史的な沿革を持って今日まで来ていると思うのですね。だけれども、これを不公平だと感ずる人たちもございます。そしてまた、現に昨年の八月の改正では、事業者所得について、過去三年の平均をとって、それを超えるものは八掛けで頭打ちにするよというような改正もやっておるわけですから、制度的な改正もやっている。しかし、これをさらに個人と同じようにしていいものかどうか、あるいは法人成りとの関係はどうかというようないろいろな議論がございますが、こういうみなし法人課税の問題もあります。  また一部には、法人所有の土地、株式等の資産再評価について、税金を課すべきであるというような本委員会における議論もあります。それからまた、赤字法人もいろいろ社会的な利便は享受しているのだから、当然税を負担すべきであるという議論もあります。事ほどさように、不公平税制というものは、私は、これは避けて通れない、直していかなきゃいけませんけれども、その共通の認識が必ずしも得られていないと思うのであります。  そこで、例えば株式のキャピタルゲイン課税につきましても、これはやはり株が暴落するのでまずいとかいうようなこと、あるいは捕捉が非常に困難だということを今まで言われている向きがございますけれども、私は、結論的に言いますと、キャピタルゲイン課税というのは大変難しいと思います。そして同時に、二十八年に、シャウプ税制のときは二分の一総合課税でありましたけれども、これは捕捉が困難であるということによって、外形的な売買に着目した有価証券取引税というものが今日一兆七千億弱にも達しようとしております。したがって、できないからそういうことになってきているのですが、今これだけ問題になっておれば、当然議論をして、そしてどこに問題があるのか、あるいは、理論上はそういうことであっても、やはり税というものはコストその他の問題を考えてやらなければなりません。したがって、それを全体として考えて、キャピタルゲイン課税はこうあるべきであるというような議論は、当然私は避けて通れないと思います。したがって、そういうことを含めて、不公平税制についてはひとつ大いにやっていただかなきゃいかぬ。  しかし、仄聞するところによると、野党、またこの委員会における質疑を通じても、不公平税制のこういうことができなければ、新しい税の全体の、例えば間接税の問題について議論に入れないというのはこれはおかしいのでありまして、税は一つのシステムであり体系でございますから、同時並行的にそれは議論すべきであると私は考えます。そういう意味で、キャピタルゲイン課税は、私も、結果は非常に困難だと思います。しかし、結果は困難であっても、そのプロセスを明らかにして、問題点はこうある、費用対効果を考えるとお金がかかり過ぎてかえってまずいよとか、あるいは有価証券取引税を見返りにやめなくちゃいけないけれども、税収としてはかえってマイナスになるとかいろいろのことを明確にしていく必要があるのではないか、こう思うわけであります。  それから、抜本改正については、所得税の減税につきましては昨年幾つかの改正が行われました。配偶者の特別控除の創設でございますとか、サラリーマンの申告制度を導入するとか、それからまた累進税率につきましても、これはサラリーマンの最大の不公平感を抱く原因になっておりますが、十五段階あるのを十二段階にした。昨年の売上税のときは六段階ということでございますから、さらなるそういう減税が予想されるわけでございますが、そういう点は私は当然考えていかなきゃいかぬと思います。  それから法人税についても、今は四二%ですが、国際化時代に、やはり私は、租税原則の中に国際性というのは、これは欠くことのできない原則であろうと思うのです。そういう原則に立った場合に、法人税についてやはり国際的なレベル、日本は西ドイツに次いで高いわけでございますけれども、完全に均一にできないにしても、それとの均衡を持ってやはり減税をすべきではないかと思います。  なお、相続税についても本委員会でいろいろ議論がございますけれども、これも、かつて相続人のうち二%くらいが相続税を納めていたのが今七%くらいになっておりますから、何としてもこれも減税しなければいかぬ。そういうことで減税面は今いろいろ議論されております。私は、その点一々今の段階で、税調に御諮問なさっている段階で大蔵大臣に一応結論をお聞きするということではございませんが、いろいろの義諭を通じておりますと、大蔵大臣もそのようなことで方向づけをなされておるというように理解しております。  そういうことになりますと、どうしてもそれだけ歳入の方が穴があくわけですね。したがって、今言った所得税、法人税、相続税の減税をやりますと、レベニュー・ニュートラルということで考えたにいたしましても、これはもう、税は大きく分けまして直接税と間接税しかないわけでありますから、間接税の分野の問題というものをどうしても取り上げざるを得ないと思うのであります。したがって、私は今本委員会の議論を聞いておりますと、直接税の中だけの話が非常に多いわけでございますけれども、やはりそれは鉄のカーテンをおろすべきではなくて、そこは取り上げて中へ突っ込んだ議論をすべきだ、こう私は思うわけであります。まず、この全体の取り組みについて大蔵大臣、簡単に御姿勢を伺えればありがたいと思います。
  368. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいまの御説には全面的に私も同感でございますが、所得税につきまして累進構造をもっと緩和いたしませんと、中堅サラリーマン等々に非常に重税感が強い、そこから来ますところの一種の税についての不満足感、不公平感というものがやはりあるということは事実であると思います。  それから法人税につきましても、今日世界どこへでも本社を置けますような時代でございますから、国際的な均衡ということも大事である、おっしゃるとおりだと思います。さらに、先ほど冒頭に不公平と思われる制度について幾つか御列挙がありまして、それは私、全部そのように考えておりますが、一つだけ、実は間接税そのもの、物品税そのものにつきましても、現在の物品税というものは長年のいろいろな整理の結果大変にいびつなものになっておる、これ自身もまた、それ自身にも問題があるということを一つだけ申し上げておきたいと思います。  いずれにいたしましても、所得税、法人税等々を中心に思い切った将来に向かっての四十年い近い過去を抜本的に改正するといたしますと、これはいわゆる自然増だけでは到底賄えない。また、その程度の大きさの抜本改正をいたしませんと、この際の改正としては意味がないのではないかと考えております。
  369. 宮下創平

    ○宮下委員 今大蔵大臣が物品税等の問題について、間接税の問題についてお触れになりましたが、これから私は、間接税をめぐるいろいろの問題につきまして、特い間接税改正の必要性とその背景でございますね、租税制度というものも社会経済情勢の変化とともにやはり即応していかなければなりません、現在の間接税体系それ自体が時代の要請と変化に即応していない、基本的には私はそういう認識を持っておりますので、そういう点を中心にいたしまして、間接税の改正の必要性と背景、また課税ベースの広い消費税課税はなぜ現在必要なのかという点について若干触れてみたいと思うのでございます。  まず第一は、間接税論議、先ほど申しましたように、入ることはタブーであるというようなことは絶対ございませんので、本委員会でも大いに議論していただきたいのであります。そして同時に、税制も先ほど申しましたように一つのシステムでありますから、税制論議を全体として、間接税の中であっても個々の税目との、すべて他の関連、いろいろ個別消費税制度をとっておりますけれども、全体として議論を整合性を持ってやったらどうかなというように思っております。  そこで、時間の関係上、いろいろ詳しくお尋ねしたいと思っておりましたけれども、私は経済情勢の変化というものを五点ぐらいに絞って申し上げてみたいと思いますが、それに対する御見解も承りたいと思うのであります。  第一は、産業構造、就業構造が最近、日本の経済成長の結果大変変化してきております。これは、就業者が非常に多くなりまして、サラリーマン化という現象になっております。これは言うまでもなく、第一次産業というものは構造変化で大変少なくなって、三%くらいでございましょうか。それから第二次産業も逐次減ってはきておりまして、四十五年くらいの四四%から三七%くらいに減ってきております。それに比べまして流通業、サービス業あるいは金融・保険・不動産業、あるいは経済のソフト化、サービス化と言われるような業態がふえまして、例えば四十五年ぐらいで見ますと五〇%ぐらいだったのが今は六五%ぐらいになっておるというように、就業構造の変化。それからまた就業者の数も、四十五年から五十年くらいは六五%前後でございましたが、今や就業構造が変化しておりまして、雇用者の割合というものは七五%くらいになってきております。そのような変化が第一にあります。  それから第二は、生活水準が上昇いたしまして平準化をしておるという特色が、変化の中に、これはもう際立った変化としてあります。これは私が詳しく申し上げるまでもございませんけれども、よく言われます世帯間の所得格差の推移を五分位階層によって示すことがよく論ぜられております。私もこの五分位階層を見ますと、五分位階層というのは申し上げるまでもございませんけれども、国民全体の世帯を五等分いたしまして、最下層と最上級の比率をとるわけでありますけれども、これが、かつて終戦後は六倍程度であったわけでありますが、最近は二・九倍くらいで三倍を切っておるわけですね。そのことは、所得水準が上昇すると同時に上下格差が非常に縮小しておるということを意味しております。ちなみにアメリカなどは、大変縮小しているかと思いますとさにあらずで、九・五倍というようなことでございますから、我が国が非常にそういう面で生活水準が上昇し平準化しておるということは、これはもう明らかな、客観的な事実であります。  ただ、問題は次の点であろうかと思います。すなわち、税の不公平感の原因でありますと言われますが、サラリーマンの平均的なライフサイクルを見た場合に、四十代、五十代の結婚、育児、教育あるいは住宅取得等の家計上の支出の増加の非常に多い階層、これが非常に余裕感が乏しくて、これが基本的に不公平感の基礎になっておるという点は指摘しておかなければなりません。  それから第三に、消費の多様化とサービス化という問題があります。消費生活水準の上昇、平準化というのは今申し上げたとおりでありますが、その内容も高度化いたしまして、また、多様化しております。終戦後は我々も、食糧でありますとか被服でありますとか、そういう基礎的な、必要的な消費というものが非常にウエートを占め重要でございましたが、最近におきましては、教養、娯楽等のいわば随意的な、選択的な消費のウエートが非常に高まってきておりまして、ニーズが多様化してきております。そういうことで、消費の分野でサービス化が進行しているということは、これは家計消費を見ましても、家計消費支出の中の五〇%以上がこのサービス消費に充てられるような現状、水準に今なってきております。したがって、このことが税制大変影響があると私は思います、間接税全体を考える場合に。それが第三点。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕  それから第四点は、言われるように人口の高齢化の問題がございます。これはもういろいろ、たびたび議論されておりますように、我が国の高齢化が急速に進んでいく。それで高齢化社会に対しまして公的負担が増大いたしますから、それに対する備えはしなければならないということでございますが、私は、やはり本委員会でも議論がございましたように、社会保障給付の増大あるいは社会保障負担の国民所得との比率、その他税負担がどの程度になるか、将来見通しというものを出しまして、そして高齢化社会のもとで現在の社会保障制度の水準を仮に維持しよう、安定的に維持していくためには、それ相当の国民負担をぜひ考えなければならないというのは、これは当然なことでございますし、これを本院において、それはもうちょっと先のことだからいましばらく後でいいじゃないかという議論がございますが、私は冒頭に申し上げましたように、今こそこういう時点をとらえて間接税の問題とも絡めて私は議論すべきだと思います。  それから第五番目は、国際化の進展であります。これは私がちょうちょう申し上げるまでもございませんが、いろいろ貿易、投資の問題あるいは技術移転の問題でも、もう今や我が国は世界の中でも大変注目される経済大国になってきております。そしてこのことは、法人税の減税の問題は先ほど申し上げましたが、この間接税の面でもこれが非常に大きな影響を与えることは後でちょっと申し上げたいと思いますが、お酒の税金一つとってみても貿易摩擦問題につながりますし、今の物品税の個別消費課税制度でいろいろの問題が提起、アメリカからワインの問題あるいは自動車の問題、あるいはスイスからは貴金属時計の問題等等、課税されておるものとされないものとが、意識的に日本は貿易障壁をしているのではないかと思われるほど個別消費税に頼り切っておるわけでありますが、そういう点も国際化の視点から直していかなければならない、こう思うわけであります。  以上、社会経済情勢の変化を主要点に置きまして、そうした変化に対応する税制改革をやるべきである、これが私は改革の原点であると存じますが、御所見をちょっと承りたいと思います。
  370. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま五つの点にっいて、いわば過去四十年近い間の我が国の社会の大きな変化をお述べになられたわけでございまして、まことにそれらは私どもまさに御指摘のように考えております。ただ、お互いにとりましては、この四十年間毎日毎日を生きてまいりましたから、もうこういうことは当たり前だというふうに感じやすいわけでございますが、外から見ましたときにこれが日本のいわば世界的な脅威であると言われるゆえんであろうと思います。  他方で、税制そのものはその四十年近い間にほとんど基本的に動いておりませんから、おっしゃいますような意味でこれだけ大きな変化に今税制が即応しなくなったということは、もうまさに御指摘のとおりであると思います。そして、この五つ言われました中で、例えば高齢化であるとか国際化であるとかいうことは今後ますます進んでいくことでございますから、それらも考えながらこの際こういう事態に即応した税制を、過去を振り返り将来を展望して、国会におかれましてもお考えをいただきたいというふうに私ども念願をいたしております。
  371. 宮下創平

    ○宮下委員 間接税の問題にさらに突っ込んでちょっと申し上げたいと思いますが、間接税は、御承知のように直接税との違いは、直接税というのは納税義務者と税金を負担する担税者とが同一であるということを前提にしておりますね。申し上げるまでもなく間接税は、それが消費者に転嫁されていく、担税者と納税義務者が別で転嫁されていくということでございますけれども、類型的に見ますと四つの類型に分けられると思います。  一つは、酒税、たばこ消費税等の特殊な嗜好品に対する課税であります。それから二番目は、奢侈的あるいは趣味、娯楽、便益等、特定の物品やサービスに対する課税でございまして、これは代表的なのは物品税でありますし、また入場税、通行税等もございます。それから第三の類型といたしまして、道路整備のための特定財源、これは受益者負担を原則にする税でございますけれども、揮発油税等いろいろございます。それから第四は、印紙税、有価証券取引税、登録免許税等の流通税でございます。  この間接税は、そういったものの背後にある担税力に着目してそれぞれ課税される、税率が決まるということにされておりますけれども、特に問題は、間接税等の負担が長期的には最近傾向的に非常に低下傾向を示しておるということをはっきり認識する必要がございます。これは個人消費支出に対する間接税等の負担率の推移を見ましても明らかであります。三十六年ごろは約一〇%近い、個人消費支出の中でそういう間接税等の負担がありましたけれども、今は個人消費支出の中で六%ぐらいしか負担してないということで、年々低下をしてきております。  同時に、非常に重要な点は、そういった傾向を背景といたしまして直間比率が議論されておりますが、我が国の直接税の比率がついに七割を超えまして間接税は三割を切るというようなことでございまして、間接税の低下傾向が続いております。  その原因はいろいろございますけれども、一つは、直接税である所得税が累進構造をとっておる。そのために、これはGNPの租税弾性値と言っておりますが、これが、国民所得が一ふえた場合に租税はどのくらいふえるかという租税弾性値が一を大きく上回る水準にございます。これは直接税側の原因であります。  それから第二は、間接税側の原因といたしましては、間接税制度自体が非常に構造的な要因で硬直的な要因になっておる。それを申し上げますと、たばことか酒というものは消費がもう限界に来ておりまして、幾ら所得が多くなったといっても、多少はお酒を余計飲むこともございますが、消費それ自体はそんなにふえるものではございません。それから物品税も、これは八十五品目が今列記されておりまして範囲が限定されておりますが、この中身を見ますと、かつては奢侈的なものだと言われたものでございますが、自動車でありますとかあるいは電気製品等が七五%を物品税の中で占めているということであります。自動車は、今や軽自動車につきましても物品税は課せられておりますが、これはもう国民の足であります。どこの農村に行ってもそれは確保されておりますし、それからまた電気製品につきましても、冷蔵庫のないうちは余りないでございましょう。かつて三種の神器とか三Cとか言われてきておりますけれども、今や生活水準の上昇等によってこれが当然ということになっております。  しかし、同時に一方、サービスの部門が、先ほど申しましたように個人消費支出の中で五割を占めるということになりますと、サービス課税というものは非常にウエートが少ないということがございます。これは年々そういうような方向に来ております。  それからまた、これは多少専門的なことで恐縮ですが、従量課税のウエートが高いということも、価格上昇があっても、これは従量税でございますと税制改正しなければそれに即応した是正はできませんから、そういった原因によりまして低下傾向を示しておるものと思います。  特に租税弾性値を調べてみますと、五十一年から六十年平均で間接税の場合は〇・六五、すなわちGNPが一%伸びたときに間接税は今の日本の状況では〇・六五しか伸びない。それに対しまして所得税は、概略で申しましますと平均一・五くらい、直接税は一・三くらいということになっておるようでございます。それから、この五年間をとりましても間接税の伸びはさらに落ちまして〇・五弱、〇・四七。直接税の方は一・一ないし一・五というようなことでございますから、そういった原因によって低下傾向を示しておるということは、今後の税制を考える場合に、バランスのとれた体系としての税制改革を考える場合に客観的なそういう事実があるということはよく認識した上で税制論議をやらなければならないと思いますが、これに対する大臣の所見をちょっと承りたいと思います。
  372. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 片や所得税が累進構造をとっております。それだけでももう直間の比率というのはほっておきますと直税の方へ傾きやすいわけでございますが、他方で、今言われましたように、間接税の方が、言ってみますといろんな理由、それは例えば酒、たばこなどというのは、いつぞやの酒税の改正でもございましたように、価格弾性値の関連で税率を上げましても税収がふえてこないというようなことにもなってまいりました。また、国民の消費が、先ほど我が国の就労構造の変化のときにも言われましたサービス分野の就労がふえておるということは、サービスの消費がふえておるということでございますが、そういうふえていく消費について間接税がそれを全く追っていないというようなこともございます。  それから、従価税が少ないということもまさにそのとおりでございますから、片っ方で累進構造を持っているものに追いつけないのみならず、追いつけない状況を、新しいもの、新しいものを追っかけていけない、それ自身が硬直化しているという両方の理由から、大変に間接税の機能が小さくなってしまったということであろう、まさにそう思います。
  373. 宮下創平

    ○宮下委員 私は物品税の問題について五十九年度の税制改正を思い起こすわけであります。今の物品税の制度では限界があるということを先ほど申しましたけれども、一つの例として、あの年の税制改正でOA機器に対する物品税課税問題がございました。私どもは、OA機器、これは当然物品税の課税対象としていいのではないかと思いましたけれども、これはシャウプ税制のときには、要するに生産工程に組み入れられているような物品は課税対象にすべきでないというシャウプ税制の基本原則がございまして、OA機器でございますと、これはもう今パソコンでありますとかそういう個人の、大学生でも何でも家庭にございます、それと全く機能的に同じものが、在庫管理に使われたり、あるいは職員の給与管理に使われたり、事業用に使われているわけですね。そこに区別はございません。  そこで、私どもは、やはりシャウプ税制のそのときの原則に立ち戻るならばこれは入れるのは無理かなという感じもいたしましたが、しかしそれが大きな分野を占めていますから、当然物品税の世界だけで解決しようとすればこれを入れるべきである、両論ございまして、そして入れるという方向は出しつつも、なおかつシャウプ税制の原則とそれから業界その他の問題等もございましてこれが日の目を見なかったわけでありますが、この例などは、やはりこういう論争を通じまして課税ベースの広い間接税の検討とか直間比率の見直しという問題はもうどうしても避けられないということが醸成されてきていると思うのです、一例でございますけれども。  そして、たしか昭和四十八年ごろの政府税調の抜本改正の中においてすらこの問題がもう既にそのころから議論されておりまして、私ども五十九年の税制改正を担当いたしましたときにそのような問題を味わったわけでありますから、どうかそういう点も大いにひとつ国民の皆さん理解をしていただいて、物品税一つとってもそのような大きな問題がある。八十五品目を無制限に広げるわけにいかないし、またサービス課税が全然落ちてしまうということですから、そういう点を配慮してやるべきである、こんな感じがいたします。  時間の関係上そういう点だけ申し上げて、数点にわたりちょっと問題を申し上げたいと思います。  今数点にわたりいろいろ視点、背景等は御指摘を申し上げたわけでありますが、我が国は個別消費税を中心としている体系をとっておることはただいま申し上げたとおりでありますけれども、税負担の公平性あるいは税の中立性確保という租税の原則からいいますと、絶えず課税対象の見直しを要します。しかし、実際は、ただいま申しましたように、所得水準が向上したり国民の消費態様が変化いたしまして従来の高級品であったものがもう一般化されてきて大衆化する傾向もございますから、何が一体奢侈かの判定は、客観的に基準を見出すことは困難でございます。  それからまた、先ほどもちょっと触れました関係業界の個別の利害が絡みまして、課税物件の追加とか入れかえ等はなかなか困難であるということもございます。これは今大蔵委員会等でも議論されていると思いますけれども、課税されている物と課税されていない物との負担の不均衡問題というのは、これはもう、例えばコーヒー、ココア、ウーロン茶には課税されていて何で紅茶、緑茶は非課税であるかという議論がよくなされておりますし、家具につきましても、普通の家具、ケヤキ製の家具等は課税されるけれどもキリでつくったものとか漆塗りの家具は非課税になっておる、こういうことの矛盾等もございまして、今のリストアップ方式には限界があるということがあります。  それから、近来、サービス業を中心といたしまして、三次産業の国内純生産が多くなっていると先ほど申しました。就業者数が増加している。経済のソフト化、サービス化が進んでおる。そういたしますと、消費のサービス化が今後さらに強まっていくならば、先ほどとちょっとまた重複いたしますけれども、税の中立性の見地からいっても、これはどうしてもそこは何らかの手だてを講じなければ、物とサービスとの間が非常に不均衡になって中立性を欠くということがございます。そのほか、先ほど申しました間接税は課税対象が限定されておるというようなこと、たびたび、五十六年、五十九年等の改正で品目は追加してきておりますが限界がある。  それから、先ほど申しましたように、外国との関係でいきますと、外国は課税ベースの広い間接税を利用いたしておりますから、外国から見ますと我が国は特定のものに偏って負担を求めているために、その意図はともかくといたしまして、結果として輸入品に対して差別的な取り扱いをしておるということでございまして、この一つの例がお酒の問題。特に今度は酒税法の改正をお願いせざるを得ないわけでありますが、ウイスキーなんかは、スコッチウイスキー、これは級別制度もない。我が国の場合にはしかし級別制度を設けて従価制度をとっておるというようなことが不公平ではないかというような点が指摘されておるわけでございます。  そんなようなことで、このような矛盾を抱えておる現状からいたしまして、今後税制改正の中で間接税と消費税の役割をどう位置づけしていくかということが問われておりますし、これが大きな問題であろうかと思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  374. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 物品税のことでございますが、私は戦前の税務署長でございました。シャウプが来ましたときも自分で折衝に当たりましたし、その後のこともしばらく知っておりますけれども、あのころの物品税というのは、かなりカバレージの広いもので、歳入もございまして、一つのいい税であったと思いますが、今になってみますと、本当に御指摘のようにわずかな品物がほとんどの税収を背負っておる。自動車と家庭電気と。それはなぜだ、それは奢侈品だからという説明では実際ちょっと説明にならないようなことになっておりまして、これはどうかしなければいけないことでございますし、それがまたそれ自身でもいろいろ対外摩擦の理由になっております。及び、おっしゃいますように、サービスについての課税が行われていないということがございます。  酒につきましても、おっしゃいますように級別を残し従価税がございますので、これは国際的にガットなどでもいろいろ指摘を受けておりますことは御承知のとおりで、でございますから、物品税あるいは間接税、実は個別間接税、個別消費税につきまして、ほかのことは何もありませんでもこの際根本的に見直していただかなければならない事情に立ち至っておるということは、御指摘のとおりでございます。
  375. 宮下創平

    ○宮下委員 私は、所得税とそれから今いろいろ御答弁いただきました間接税の問題でありますが、やはりこの利害得失を考えて見ていく必要が一つの大きな問題だと思います。  所得税は、創設百年を経過いたしておりますし、シャウプ税制以来四十年で、もう定着した税の体系の中の基幹的な税目であることは間違いございません。しかしながら、所得税の問題点としては、たびたび指摘されておりますように、累進構造をとっているために、垂直的な公平を保つという点からは大変これはそういう税制が必要だと思いますけれども、今言ったように所得水準が高くなって平準化してきておりますからフラット化していくということはぜひ必要ですね。今の累進税率でありますからサラリーマンが多くの不満を持っておるわけですから、フラット化していくということは、イギリスの場合をとりましても最初の税率が三〇%弱でございますね。フラット化していく。このフラット化していくということは、世界的な趨勢であろうかと思うのであります。したがって、所得税の悪い面は除去しながらなお基幹的な位置づけをしていく。  しかし、間接税も同時にいい面と悪い面があります。所得税が累進構造をとれば、働けば働くほど税金も高く取られるというところに不公平感の原因があります。間接税の方は、そういった面で勤労意欲に対しては、消費の面に着目して消費の量的な面に即応して消費税を課するわけでありますから、勤労意欲に対してはそんなに致命的な影響はございません。ただし、間接税が言われる最大の欠点は、やはり逆進性という問題でございます。これは、例えばビールを一本飲みましても、三百十円のビールの中で百六十円近くが税金である。これはどんな高額な人が飲んでもまた低所得階層が飲んでも負担は同じでございますから、所得に対する比率が逆進性になるのは明らかであります。しかし、これは除去する方法は私はあると思うのです。これは税の体系の中でも考慮すべきだし、同時に、歳出面の中で、これは社会保障なりないしそういう面で手当てをして、税だけの世界でこれを解決しようと思ってもなかなか困難でございます。したがって、そういう問題は歳出の面をあわせてやはり考慮すべきである。  私は、そういう意味で、今後の税制改正は、やはりこういう所得税というようなものを基幹的にしつつも、なおかつ間接税全体の見直しをやって、そして結果として直間比率が、恐らく間接税の比率を高めざるを得ないでしょう。そういう結果が私は今後の税体系のあり方、システムとして非常にいいのではないかということを申し上げたいわけでございまして、言うならば、まあ言葉を言えば所得税と消費課税のタックスをミックスしたポリシーが必要ではなかろうかということだけ申し上げておきたいと思います。  なお、課税ベースの間接税の諸類型につきましてはいろいろ触れたい点がございますが、多段階あるいは単段階の中でどうだといろいろ議論が私もしたいわけでございますが、時間がございませんのでこれは省略させていただいて、また後日いろいろ議論する機会があったら申し上げたいと思います。  以上で時間の関係大蔵大臣に対する質問は終わりとさせていただきます。どうぞ大蔵大臣、結構です。お引き取りいただいて結構です。  それから、防衛の問題をちょっとお聞きしたいのです。  私は、二、三、防衛庁長官質問を申し上げたいのでありますが、まず第一は、申し上げておきますが、昨年末の米ソ首脳会談のINF交渉、全廃条約の調印が軍縮の一歩として歓迎すべきものとされておりますが、この条約は各国におきましてもおおむね好意的な評価が示されております。このような動きを受けまして、我が国の一部においては、米ソ間でINF全廃が合意されまして、さらに今月の二十一日、二十二日には米ソ外相会議が行われまして、戦略核兵器の削減交渉、これについてもいいような方向が出られるような傾向もございまして、こういう背景に我が国の防衛努力も控えるべきであるという議論が一部にございます。  しかしながら、他方、欧州諸国におきましては、INFの全廃後に核抑止力の一部の機能の欠如によりまして生じかねない戦略的な不安定な状況への懸念から、核の分野においてすら空中発射の巡航ミサイルあるいは地上発射の短距離弾道ミサイル等の核近代化計画を推進しているとも報道されております。通常戦力においてもその強化の必要性が言われておるのは当然であります。このように、NATO諸国は、核兵器がこのままなくなるというような安易な軍縮ムードに流されることなく、INF全廃後におきましても現実の情勢に即して厳しく将来に対応しているのではないかと私は思います。これが現実的な対応であると思いますが、NATOの諸国に対する最近のこのような動きについての防衛庁の長官見解をお伺いしたいと思います。
  376. 瓦力

    ○瓦国務大臣 防衛政策につきまして大変造詣の深い宮下委員にお答えをいたします。  NATO諸国におきまして、通常戦力のほかINF以外の核戦力の近代化に関しいろいろ議論が行われておりますことは承知をいたしております。このような動きは、NATO諸国が、INF条約署名を歓迎しつつも、現実の情勢を直視した場合に、通常戦力の分野で東側の優位が保たれたまま欧州が非核化する、こういうことは戦略的状況を不安定化させる懸念があるために、核戦力と通常戦力からなる抑止力の信頼性の向上を図ろうとするものである、かように認識をいたしておるわけでございます。NATOとしては、そのため、核戦力近代化の措置をとるとともに、通常戦力改善計画の推進を図ることとしている、かように承知をいたしております。
  377. 宮下創平

    ○宮下委員 軍備管理と軍縮の進展と我が国の防衛努力につきましてさらにお伺いしたいと思いますが、核兵器の五〇%削減が仮に実現したといたしましても、依然として大量の核兵器が残されるという事実には変わりありません。したがって、私はやはり核の抑止力、究極的な核廃絶までは核兵器の抑止力に依存しなければならないという点はずっと続くと思います。そして同時に、通常戦力が抑止力に欠くことのできない要素として重要な役割を果たしておりますけれども、INF全廃後においてその重要性は一層増大することは明らかでございまして、このことは過日発表されました米国の国防白書等においても強調されているところであります。  現実の国際情勢を見ますと、東西関係は依然として厳しいものがあります。我が国周辺におきましても、極東ソ連軍の通常兵力分野での増強は顕著なものがあると思います。そして、我が国は「防衛計画の大綱」によって防衛力整備を図っておりますが、いまだそれを達成していないということでございますから、したがって、我が国としては今後とも我が国を防衛するために必要な防衛力の整備を引き続き着実に行っていくということがぜひ必要でございますが、防衛庁長官の所感と決意をお伺いしたいと思います。
  378. 瓦力

    ○瓦国務大臣 まさに宮下と認識を一にするものでございまして、米ソ間のINF全廃条約の調印に加え、今後戦略核兵器の五〇%削減が実現するとしても、依然として核の脅威がなくなるわけではなく、また、このように核兵器が削減されていくとすれば、むしろ通常兵器レベルでの抑止の信頼性が重要となってくる、かように考えます。  他方、今日の国際軍事情勢について見れば、アジアを含む世界の各地域ではなお緊張や紛争が継続しておるわけでございまして、我が国周辺においては極東ソ連軍の質、量、両面にわたる増強と行動が活発化いたしております。依然として厳しいものがある、かように認識をいたしております。したがって、我が国の平和と独立を確保していくためには、日米安保体制の信頼性の維持向上に努めるとともに、我が国が平時から保有すべき必要不可欠な防衛力を定めた大綱の水準達成を図るべく引き続き効率的な防衛力の整備に努めていく必要がある、かように考えております。
  379. 宮下創平

    ○宮下委員 次に、次期防衛力整備計画について質問を申し上げたいと思いますが、先般公表されました米国防報告によれば、一九九〇年代における我が国の防衛努力につきまして米政府としても注目しておりまして、記述がございます。同盟国である米国の関心の表明をまつまでもなく、私は、我が国の防衛力整備につきましては、中期防の第三年目という節目を迎えた今日、技術の進歩もございますし、我が国の置かれた地理的なあるいは戦略的環境に照らしてみましても、より効率的な防衛力のあり方について長期的視点からさらに追求をしていく必要があろうかと思います。  政府が現在、将来の陸上防衛体制のあり方とかあるいは洋上防空の問題などの研究を行っていることは十分承知いたしておりますけれども、こうした研究の成果を踏まえましてさらに統合的な見地から効率的な防衛力の整備を図るためにいわゆる次期防の作成作業に取りかかるべきものと考えますが、瓦長官は次期防衛力整備計画をどのように考えているか、見解を承りたいと思います。
  380. 瓦力

    ○瓦国務大臣 中期防後の昭和六十六年度以降の防衛力整備のあり方につきましては、中期防終了まで佐改めて国際情勢、経済財政事情等を勘案いたしまして専守防衛等の我が国の基本方針のもとで決定を行うべきものと考えておるわけでございます。防衛庁としてもまだ具体的な検討作業に着手していないので現在その方針につき述べられる段階ではございませんが、私といたしましては、長期的な視点に立って計画的に進めるべきとの観点から中期的な防衛力整備計画を策定することが望ましいと考えております。年内にもその検討に着手していきたいと考えております。  いずれにせよ、昭和六十六年度以降の防衛力整備については、私としては、庁内で行われている各種の検討も勘案しつつ、我が国の地理的特性等を踏まえ、国際軍事情勢、諸外国の技術的水準の動向に有効に対応し得る効率的な防衛力のあり方を追求していくことが重要であると考えておる次第でございます。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  381. 宮下創平

    ○宮下委員 装備の日米共同開発について若干お伺いいたします。  米国の国防報告によりますと、米国が今後同盟国との共同研究開発を推進していくことが述べられております。戦後今まで、ソ連圏におきましては、ソ連のみが主要兵器の開発生産を実施いたしまして、それをその同盟国、友好国に供給するというようなことで統一的な兵器の整備が行われておりますが、西側諸国におきましては、各国がいわば相互の連携を行うことなく、個々に兵器の開発を進めてきた傾向が強かったことは否めない事実であります。したがいまして、米国は共同開発ということを、二重投資を回避するとかあるいは装備の共用性を向上させるとかいう点で強調したい。それから米国としても、米国の兵器技術の圧倒的優位の変化がございますから、同盟国のすぐれた技術を積極的に活用するというようなことを念頭に置いておるものと私は思います。  防衛庁長官は、一月のカールッチ国防長官との会談におきまして、日米共同開発を推進していくことを提案いたしまして、その賛同を得たということでございますが、今回の国防報告が指摘している点を踏まえますと時宜を得たものであると私は思いますが、この問題に関する防衛庁長官所見を承っておきます。
  382. 瓦力

    ○瓦国務大臣 米国は、同盟国との共同研究開発を今後推進することとしていますが、これは自由主義陣営における研究開発上の二重投資を避け、各国間の装備品の相互運用性等を向上させることにより、西側諸国全体の防衛力の効果的な整備を実施しようとする米国の強い意図のあらわれであると判断をいたしております。  私といたしましても、FSXの共同開発にとどまらず、各種の装備について米国との間で共同開発を推進していくことは、両国のすぐれた技術を結集し、効果的な装備品を開発するのみならず、より健全な日米の協力関係を発展させる観点からも重要である、かように考えております。
  383. 宮下創平

    ○宮下委員 きょうも議論がございました有事来援研究の問題について、ちょっとお伺いいたしたいと思います。  大変重要な問題でございますから、きょうも議論がございましたけれども、日米安保体制の信頼性を高めるという努力が重要であることは言うまでもありません。このために、今まで種々の努力が行われていることは私も承知しておりますけれども、しかしその中で、本当に米国は、我が国がいざ有事というときに米軍の部隊をどの程度来援に差し向けてくれるかという点こそ、日米安保体制のやはり中心であろうかと私は思います。  NATOにおきましては、これまで有事の米軍部隊の来援規模が明らかにされておりまして、また来援のために必要な各種施策も講ぜられております。私は、やはりこの点で日米防衛協力がいま一つ核心部分がきちんとできていなかったのではないかというのが正直な感想で、この有事来援の研究自体は遅きに失した感があるのではないかとすら感じます。この意味で、瓦長官がカールッチ米国防長官との間でこの米軍の有事来援の問題を提起されたということは適切なことでございますし、また、世界各国に対する防衛のコミットメントについて米国内に議論もあります現在、この問題を共同研究するということにつきまして日米の防衛首脳間で合意するところまで持っていかれた努力は、私は高く評価するものであります。  まずこの問題で、瓦長官が有事来援の研究を提起した真意をこの場で国民の前に明らかにしていただきたい、こう存ずるわけであります。
  384. 瓦力

    ○瓦国務大臣 本委員会でたびたびお答えしてまいりましたが、御指摘のとおり、我が国有事において米国から来援が確実かつタイムリーに行われるか否かが日米安保体制の核心をなすものであり、我が国としては従来から最大の関心を払ってきたところでございます。  他方、最近の米議会等において、困難な経済財政事情等から米国の対外コミットメントについて各種の議論がなされており、また米ソ間のINF全廃合意を契機として、今後は現実問題として通常兵器レベルの抑止の信頼性がより重要となってくることから、率直に言って我が国に対する米軍の確実な来援について関心を持たざるを得なかったところでございます。幸い、日米の防衛当局間において、今日までの指針に基づく各種の作戦研究等を通じ、この問題の重要性についての認識が高まり、研究の機運が生じてきたこともあり、またカールッチ米国防長官との会談機会も得られましたので、私からこの問題についての研究を提案したものでございます。
  385. 宮下創平

    ○宮下委員 今回の有事来援研究におきましては、何か新しい研究を始めたように誤解されている向きもありますけれども、これは五十三年ごろから始められております日米共同作戦計画の研究あるいはそれに引き続くシーレーン防衛研究等と同様なものでございまして、五十三年につくられました日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインに基づく研究を深めるものであろうと思います。  私は、ガイドラインというのは、我が国の防衛を現実的なものとして進める点で一つの画期的な転換点を示すものであるというように思いますが、この指針は、その前提条件といたしまして、事前協議や憲法上の制約に関する諸問題及び非核三原則は研究協議の対象としないという条件が第一。それから第二は、研究協議の結論の取り扱いは日米両国の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないということを明確にした上でのガイドラインでございます。したがって、この研究によりまして、有事法制の制定につながるといったような批判は当たらないものではないかと思うわけであります。  また、この研究においてポンカスが取り上げられております。きょうも議論がございましたが、この研究はあくまでも我が国有事の際の研究でございまして、我が国が有事でない場合について研究するものでないことは瓦長官も言われているとおりでございます。しかるに、一部におきましては、今回の研究によりまして国民の権利義務に関する有事法制の制定につながるものとか、あるいはポンカスは日本の防衛のためではなく、極東有事の際の米国の軍事戦略に巻き込まれる危険があるといったような議論がございますが、きょう上田議員も当委員会で議論されております。この点は、国民の皆さんに誤解があってはならない問題でございますので、ガイドラインの性格とかねらいあるいはガイドラインに基づく研究の枠組み、これまでの研究と有事来援研究との関連等を明確に説明をしていただきたいと思うわけであります。
  386. 瓦力

    ○瓦国務大臣 本日の委員会での質疑を踏まえながら、お答えをさせていただきたいと思います。  これまで日米防衛協力のための指針に基づき、我が国有事に際しての自衛隊と米軍の整合のとれた円滑かつ効果的な作戦の実施に資するため、共同作戦計画の研究やシーレーン防衛共同研究等を行ってきておりますが、これらの研究は、米軍の来援については一定の仮定を設けて行ってきたものでございます。米軍の来援の規模、時期等は、自後の防衛作戦に重大な影響を及ぼすものでございますので、今回この問題について研究することとしたものでござます。  今回の研究は、従来からの共同作戦計画の研究と同様、いわゆるガイドライン、指針に基づき行われるものでございますが、指針の前提条件においては、研究協議の結果の取り扱いは日米両国政府のそれぞれの判断にゆだねられるものであり、両国政府の立法、予算ないし行政上の措置を義務づけるものではないとされているところでございます。  研究の具体的内容については、今後の研究によるものでございますが、陸軍部隊についてはいわゆるポンカスも含まれると考えますし、海軍部隊については何個空母群が、空軍部隊については何個飛行隊がそれぞれどの時期に来援するか等が研究課題になると思われます。  また、それら部隊の来援あるいは事前集積に関連して、日本側の戦時及び平時の受け入れ国支援の問題も当然研究の結果として出てまいると考えられます。しかし、日米間の相互支援の問題は、指針に基づく作戦研究あるいは今回の有事来援研究等、各種の研究を通じて明らかにされた項目がある程度出そろった時点で、改めて相互支援に関する研究としてまとめて研究されることになります。  一方、有事法制は、有事における国民生活を守り、防衛を全うするために重要かつ必要なものであり、この研究は、むしろ今日のような平穏な時期においてこそ冷静かつ慎重に進められるべきものであると考えて行っているところでございます。累次、このことは政府として申し上げているところでもございます。しかし、現在行っている有事法制の研究は、有事における自衛隊の行動にかかわる法制上の問題の研究であって、有事の際の米軍の行動にかかわる法制上の問題は対象としていないわけでございます。  これら、今回の研究に派生して生ずる諸問題の研究については、本委員会で外務大臣が答弁したとおり、外務省を中心として今後慎重に検討されるものと考えております。
  387. 宮下創平

    ○宮下委員 我が国には、いわゆる安保巻き込まれ論といった議論もございますけれども、私は、日本の防衛という観点から見ますと、むしろ日米安保体制の信頼性を高めることによって、我が国に対する侵略の未然防止を図ることが重要であると思っております。  この問題は、米国側から見ますと、日本の防衛は日本みずから当たるべきで、米国はこれ以上コミットすべきではないという考え方もあろうし、さらに、いわゆるポンカスを行うといったことは米軍部隊の運用の柔軟性を損なうし、米国の新たな財政負担をもたらすことになるといった警戒論もあることと思います。  私は、率直に言って、この問題は大変難しい問題と思いますし、また、これから行われる日米の共同研究もとんとん拍子で進んでいくというようなものではなく、米側がどの程度まで応じてくるか不確かな点が非常に多いと思います。この点について瓦長官、どのように考えているか、お伺いしたいと思います。
  388. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  最近の米議会等においては、困難な経済財政事情等から、我が国を含む同盟国に対し、防衛努力の公平な負担を求める各種の論議が生じております。また、ポンカスについても財政負担の問題があるほか、多くの国へコミットしているアメリカの中には、米軍の柔軟な運用を確保する等の観点から、消極的な意見があることは否定できません。  今回の日米防衛首脳会談においては、ポンカスを行うか否かを含め、有事来援研究の具体的な内容は話し合っておらず、また、今回の合意はあくまで米軍の有事来援について共同研究するというものにすぎませんが、いずれにせよ、最近の米国の事情を考えると、カールッチ長官がこのたびの研究について賛成してくれたことを私といたしまして高く評価しているものでございます。  したがって、今後、研究の具体的な内容を検討し、さらに実際に研究を進める過程においては、日米間でさまざまな意見のやりとりも予想されますが、これを整理さらに調整していくことが、日米安保体制の信頼性の維持向上に資するものであると考えておる次第でございます。
  389. 宮下創平

    ○宮下委員 私は、我が国の防衛という国益、すなわち、いざというときには我が国の国民の生命財産を守るという立場から考えれば、こういう研究を進めていきまして、その成果が得られたならば、将来問題としては、米軍の来援に関する日米間の協定を締結することや、あるいはこれに伴う法令、予算上の措置について、日本としてもやるべきことはやるということは当然であると考えます。しかしながら、これは米国という相手があってのことでございますし、将来どうするかということは、それこそ日米両国がそれぞれの政治の場におきまして、その時点で判断すべきものであると考えます。したがいまして、今は政治レベルにおいてそれをどうするか、こうするかという議論をする段階ではなく、ともかくも、行政レベルでの研究がどこまで進められるかを見守るべき問題であると考えます。いずれにいたしましても、今後、この研究を進めるに当たりまして、瓦長官の決意のほどをお伺いしたいと思います。
  390. 瓦力

    ○瓦国務大臣 今後、有事来援研究の実施に際しては、相手方である米側の事情にも配慮しなければならぬことは言うまでもございません。この研究は、我が国防衛の柱をなす日米安保体制の核心をなすものといたしまして重要でございます。私といたしまして、できるだけ実りあるものになるよう、また最大限努力してまいる所存でございます。
  391. 宮下創平

    ○宮下委員 防衛問題は終わりまして、最後に、許認可等公的規制の緩和につきましてお伺いしたいと思います。  行政改革の一環として今努力されております許認可等の問題につきましては、これは行革の一環でございますから、総理が、行政改革の大八車は八合目まで来た、今ここで手を放すとふもとまで転げ落ちてしまう、したがって、私はこの行政改革の車を頂上まで持っていかなければならないという言葉にあらわされておりますように、行政改革に強い意欲を示しておられますが、今後の行政改革の課題を考えた場合に、我が国経済の国際化に対応いたしまして、我が国経済構造の調整を進めていくということが緊急の課題であります。そのためには、公的規制を抜本的に見直しまして、対外的にも開かれた経済体制をつくり上げることが必要であります。  そこで、総務庁長官に幾つか質問を申し上げたいと存じますが、現在、行革審におきまして公的規制のあり方について御審議が行われておるところでございますが、総務庁では、許認可等公的規制の緩和について、これまでどのように取り組んでおられますか。  それから、まとめて御質問を申し上げたいと思いますが、総務庁において各省庁の許認可の実態を統一的に把握していると聞いておりますが、その結果はどうなっておるのか、また総数は減っているのか、まずお伺いしたいと思います。
  392. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 時間が大分経過しておりますので、簡潔にお答えを申し上げたいと存じます。  まず、総務庁は、日ごろ各種の規制につきましては、行政監察あるいは調査等を通じて把握に努め、改善に努力しているところでありますが、特に最近におきましては、第二次臨調並びに旧行革審の審議におきまして指摘をされました五百十一事項のうち四百七十八事項、九三・五%に及ぶ改善を既にしているところでありまして、一括整理法案などで整理をいたしましたものが現在までに十三回成立を見ておるというところでございます。  なおまた、総務庁が把握しておる許認可の実態でございますが、昭和六十年七月の旧行革審答申におきまして、統一的な把握をすべきであるという御指摘がございまして、これに基づきまして、昭和六十一年、六一行革大綱におきまして、各省庁の御協力を得ながらその総数を把握しているところであります。昭和六十二年三月三十一日現在の許認可等の総数は一万百六十九件となっております。この総数は、前回把握をしておりますものが一万五十四件でありまして、前のものから比べますと逆に増加をしておるということになってございます。  これは許認可等の全部を言っておりますので、その中身について、なおあえて若干申し上げますというと、規制緩和をしたことによりまして、逆に手続的に、例えば許可とか認可とか免許とか検定とか、そういう強い規制は件数が減りまして、届け出とか提出とかというような弱い規制が逆にふえるという結果になったので、数の上ではふえておりますが、着実に規制緩和は進んでおるということであります。  なおまた、その他に増加をいたしました原因は、新たな制度が制定されたこと等によるものでありまして、投資顧問業の規制法で二十件、特定中小企業転換対策法で四件、労働者派遣事業法で十四件など、時代の変化に伴う新しいニーズに対応して、新法が制定されたり改正されたための増加ということでありまして、実態としては規制緩和は進んでおるというふうに把握をいたしております。
  393. 宮下創平

    ○宮下委員 最後でございますが、百十五件の増加、しかし、それは今申されたように、実質的に重いものは減っておるけれども、いろいろな状況によって件数としてはふえておる、こういうように理解いたしますが、最後に、行革審における公的規制のあり方についての調査審議に対しましてどのように協力していかれるのか、この点、大事な点でございますが、大臣の強い決意を最後に承りまして、質問を終わらせていただきます。
  394. 高鳥修

    ○高鳥国務大臣 ただいま新行革審におきましては、鋭意規制緩和問題にお取り組みをいただいておるわけでありまして、ことしいっぱいをかけまして御審議をいただき、御答申をいただくという予定で検討が進められているところでございます。  これに対しまして、私ども総務庁といたしましては、行政監察機能などの活用を通じまして積極的に御協力を申し上げまして、十分実りある規制緩和を実現したいというふうに考えております。
  395. 宮下創平

    ○宮下委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  396. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて宮下君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二十一分散会