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1988-02-24 第112回国会 衆議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年二月二十四日(水曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 奥田 敬和君    理事 近藤 元次君 理事 佐藤 信二君    理事 野田  毅君 理事 宮下 創平君    理事 山下 徳夫君 理事 上田  哲君    理事 村山 富市君 理事 池田 克也君    理事 吉田 之久君       愛野興一郎君    池田 行彦君       石渡 照久君    稲村 利幸君       上村千一郎君   小此木彦三郎君       海部 俊樹君    倉成  正君       小坂徳三郎君    後藤田正晴君       佐藤 文生君    志賀  節君       鈴木 宗男君    砂田 重民君       西岡 武夫君    林  大幹君       細田 吉藏君    松田 九郎君       三原 朝彦君    村田敬次郎君       渡部 恒三君    井上 一成君       井上 普方君    上原 康助君       川崎 寛治君    菅  直人君       佐藤 敬治君    辻  一彦君       坂口  力君    冬柴 鉄三君       水谷  弘君    宮地 正介君       田中 慶秋君    楢崎弥之助君       児玉 健次君    佐藤 祐弘君       中島 武敏君  出席国務大臣         内閣総理大臣  竹下  登君         法 務 大 臣 林田悠紀夫君         外 務 大 臣 宇野 宗佑君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 中島源太郎君         厚 生 大 臣 藤本 孝雄君         農林水産大臣  佐藤  隆君         通商産業大臣  田村  元君         運 輸 大 臣 石原慎太郎君         郵 政 大 臣 中山 正暉君         労 働 大 臣 中村 太郎君         建 設 大 臣 越智 伊平君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     梶山 静六君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 高鳥  修君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      粕谷  茂君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 瓦   力君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      中尾 栄一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      伊藤宗一郎君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 堀内 俊夫君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 奥野 誠亮君  出席政府委員         内閣法制局長官 味村  治君         内閣法制局第一         部長      大出 峻郎君         総務庁長官官房         審議官     新野  博君         総務庁長官官房         会計課長    八木 俊道君         防衛庁参事官  小野寺龍二君         防衛庁参事官  福渡  靖君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛庁長官官房         長       依田 智治君         防衛庁防衛局長 西廣 整輝君         防衛庁経理局長 日吉  章君         防衛庁装備局長 山本 雅司君         防衛施設庁長官 友藤 一隆君         防衛施設庁総務         部長      弘法堂 忠君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         経済企画庁調整         局長      横溝 雅夫君         経済企画庁物価         局長      冨金原俊二君         経済企画庁総合         計画局長    星野 進保君         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         科学技術庁原子         力安全局長   石塚  貢君         国土庁長官官房         長       清水 達雄君         国土庁長官官房         会計課長    佐々木 徹君         国土庁土地局長 片桐 久雄君         法務省民事局長 藤井 正雄君         法務省刑事局長 岡村 泰孝君         外務大臣官房外         務報道官    松田 慶文君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省経済局長 佐藤 嘉恭君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         大蔵省主計局長 西垣  昭君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省理財局次         長       藤田 弘志君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         厚生大臣官房総         務審議官    黒木 武弘君         厚生省生活衛生         局長      古川 武温君         厚生省年金局長 水田  努君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房審議官    伊藤 礼史君         農林水産大臣官         房予算課長   上野 博史君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         食糧庁長官   甕   滋君         林野庁長官   松田  堯君         水産庁長官   田中 宏尚君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業省通商         政策局次長   吉田 文毅君         通商産業省貿易         局長      畠山  襄君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局次長 岡松壯三郎君         資源エネルギー         庁長官     浜岡 平一君         資源エネルギー         庁長官官房審議         官       逢坂 国一君         資源エネルギー         庁公益事業部長 植松  敏君         中小企業庁長官 岩崎 八男君         中小企業庁計画         部長      田辺 俊彦君         運輸大臣官房会         計課長     黒野 匡彦君         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         総括審議官   丹羽  晟君         運輸省海上技術         安全局長    間野  忠君         運輸省航空局長 林  淳司君         労働大臣官房長 清水 傳雄君         建設大臣官房総         務審議官事務代         理       中嶋 計廣君         建設大臣官房会         計課長     鹿島 尚武君         建設省建設経済         局長      望月 薫雄君         建設省都市局長 木内 啓介君         建設省住宅局長 片山 正夫君         自治省財政局長 津田  正君         自治省税務局長 渡辺  功君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  上谷  清君         参  考  人        (日本銀行総裁) 澄田  智君         予算委員会調査         室長      右田健次郎君     ───────────── 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任  小此木彦三郎君     鈴木 宗男君   小坂徳三郎君     三原 朝彦君   左藤  恵君     石渡 照久君   浜田 幸一君     松田 九郎君   大久保直彦君     冬柴 鉄三君   岡崎万寿秀君     児玉 健次君   東中 光雄君     佐藤 祐弘君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     左藤  恵君  鈴木 宗男君     小此木彦三郎君   松田 九郎君     浜田 幸一君   三原 朝彦君     小坂徳三郎君   冬柴 鉄三君     大久保直彦君     ───────────── 本日の会議に付した案件  昭和六十三年度一般会計予算  昭和六十三年度特別会計予算  昭和六十三年度政府関係機関予算      ────◇─────
  2. 奥田敬和

    奥田委員長 これより会議を開きます。  昭和六十三年度一般会計予算昭和六十三年度特別会計予算昭和六十三年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  この際、お諮りいたします。  井上普方君の質疑に際し、最高裁判所上谷民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 奥田敬和

    奥田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  井上普方君。
  4. 井上普方

    井上(普)委員 私は、質問要旨皆さん方に配ってあるのでございますけれども、この質問順位は不同でございますし、人間がこういうような男でございますので、どこからどう質問するようになるかわかりませんが、ひとつお許しのほどお願いいたしたいと思います。  まず、きょうは日銀総裁においでいただいておりますので、日銀総裁にお伺いいたします。  一昨日でしたか、川崎先輩質問に対しまして、日銀総裁は、この円高急落じゃない、こういうお話があって、私どもには、国民にはどうも納得できないのでございますが、急落じゃないのなら何なのですか、ひとつお伺いいたしたいのです。
  5. 澄田智

    澄田参考人 お答えを申し上げます。  ドル急落でないというような意味合いのことを申したわけでございますが、これは急落ないし暴落という言葉の意味でございますが、国際金融におきましては、ドル急落暴落という場合にはドルの信認が大きく損なわれて、そうして基軸通貨としての機能に非常に支障がある、こういうようなドル下落を通常意味しているものでございます。  そういう意味におきまして、確かに六十年の九月のプラザ合意以来今日まで二年半の間におきましては、ドル下げ足の速かった時期はございます。また、しばらく落ちついていた時期もございます。そういうふうなジグザグでドル下げ足の速いときにはかなりドルが下がった、こういうことではございますが、しかし、そもそもプラザ合意においては各国ファンダメンタルズ、すなわち、例えば日本アメリカの間の双方の対外不均衡というものが非常に大きい、こういう大きなファンダメンタルズ為替相場が反映するものでなければならない、こういうことで、それまでドルが非常に過大に評価されておりました、そういう過大なドル評価というものを漸次是正をしていく、こういう合意が行われているわけでありまして、そういう線に沿って――これは為替相場のことでございますので時に急激に振れやすい、どうしても相場というものは思惑等も働いて、投機も働いてかなり極端に振れることもございますが、今日までのところ、日米の非常な不均衡というものは当時から今日までなお続いているわけでございます。少しずつ最近は改善方向にあるわけではございますが、しかし基本的にはそういう状態でございますので、ドルが下がるということは、これは変動相場であり経済ファンダメンタルズを反映するという意味においてある程度やむを得ない面ということがある、そういう意味で冒頭申し上げましたような急落暴落というものに当たるようなものではないのではないか、こういうことを申し上げた次第でございます。
  6. 井上普方

    井上(普)委員 総裁、そんなことをおっしゃいますが、私ちょっとお伺いしたいのです。このプラザ合意、すなわち六十年の九月二十二日のプラザ合意、これは今日の事態を予想してやられたのですか。あなたは、ファンダメンタルズが反映するのが、これが円ドル相場のもとだ、こうおっしゃって、まあ急落とかあるいは暴落とかいうような定義は、これは今おっしゃられたとおりだろうと思う。しかし、世の中はそうはまいりません。二百四十円から百七十円に九カ月で下がったのは、これは急落と我々常識的に考えるのは当たり前の話。では、あなた方はそういう今日の百三十円前後を想定してこのプラザ合意をやられたのですか。どうなんです。
  7. 澄田智

    澄田参考人 お答えを申し上げます。  私ども、プラザ合意の当時ドル過大評価をされておった、そういうふうには思っておりました。そしてそれはある程度是正をされなければならない、こういうことには合意をしたわけでございます。各国ともそういうことでございました。その後の状態は、これはいわゆるJカーブ効果などというものが働いて、そして国際収支の大幅不均衡是正というのにはなかなかすぐには効果が出ないというようなこともございますし、それからまたプラザ合意の当時と、その後六十一年に入ってから石油価格が大幅に下落をいたしました。これもむしろ、石油に弱い円というようなことになりますと石油価格下落円高方向に作用する、こういうことに国際マーケットにおいては動いたわけでございます。いろいろな要素が加わりまして今日の状態になってきたわけでございます。  プラザ合意の当時、そういう予想をしておったかどうかというお尋ねでございますが、通貨当局の立場から為替市場予想、それからどういうところまで為替が動くであろうかというようなことを申し上げるということは、これは市場に不測の思惑投機をさせることになります。そういう種になるものでございますから、私どもそれは十分慎んで、今までそういうことは申し上げておりません。
  8. 井上普方

    井上(普)委員 私は、アメリカドル対策というもの、相場を見ますと、アメリカ一つ戦略を持って臨んできたのではないかと思われるのであります。すなわち、国際競争力を高めるのだという一つ戦略を持ってやってきた。ただ、日本通貨当局並びに当時の大蔵大臣なんかは、どこまで下げればいいんだという戦略を持たずにプラザ合意あるいはまたルーブル合意というのをやられたのではないだろうかと思われてならないのであります。ですから日銀当局は、これは大量に介入して五百数十億ドルもともかくドルをふやしておる、六十年から今日に至るまで。慌てふためいてそういうことをやって、しかしアメリカはそれに協力しなかった。これが今日まで来たのではないか。ことしになって初めて共同介入が大々的に行われたというようなことを聞いておりますけれども、しかし、今までアメリカ態度を一貫して眺めてきたときに、彼らは戦略的な意図を持ってこの円相場に臨んできたのではないか。それに対して我が国戦略的な目標もなくずるずると今日に来て、今日の円ドル相場がつくられておるのではないかと私は思わざるを得ないのであります。  それはあなた方は通貨当局でございますから、大体この付近を目標にというようなことは言えないでしょう。しかしながら、そこらあたりは私自身としましては通貨当局に対して不信感を持たざるを得ないのが今日の現状であると申さなければなりません。この間国民国内経済は非常な激動をして、路上に職を失う者があふれたことがございます。また、倒産した企業もたくさんある。少なくとも国としては、円ドル相場に介入する、各国との合意をするというときには、一つ目標戦略目標等を持って臨んでいただきたいことを強くお願いいたしておきたいと存ずるものであります。よろしゅうございますな。  そこで、もう一つ日銀総裁がおられますので、ちょっとお伺いいたしておきたいと思います。  このごろ私は、非常に物価情勢が危ないんじゃないか、また上がってくるんじゃないだろうかという感じがしてならないのであります。この点について、特にマネーサプライが四十七年当時のような上昇を来しておる。対前年比で比べますと、今でございますと一三%くらいになっておるんじゃないですか、増加が。ここらあたりをひとつ御解明願いたいと思います。
  9. 澄田智

    澄田参考人 今お尋ね物価現状でございますが、一月の総合卸売物価は〇・七%前月より下落をいたしております。こういうようなことで、昨年の秋までは一時建設資材等中心にかなり物価上昇テンポが速まった時期がございます。この時期には懸念もいたしておった次第でございますが、その後、昨年の十月以来円高が進んだということもございますし、原油価格が落ちついているということもございまして、またその増産も行われまして輸入もふえたというようなことで落ちつきを取り戻しまして、現在のところは落ちついている状況である、こういうふうに考えております。  ただ、これが今後とも安心できるかということになりますと、金融が非常に緩和されている状況でございまして、おっしゃるように、マネーサプライ、現在の一番新しい数字は、やはりこれも一月のマネーサプライでございますが、一一・九%前年に比べてふえている、こういうところでございます。このような増加実体経済活動をかなり上回るテンポで伸びている、こういう状況でございまして、金融が非常に緩和をされている。金融緩和自体は今の内需中心経済拡大に貢献をして、そして今日の日本の景気の拡大を招いているその役割を果たしているわけでございますが、しかし将来を考えますと、やはり節度ある金融機関貸し出し等も我々は要請しているところでございますし、十分に物価の先行きについては目配りをして、そして注意深い態度金融政策運営をしていかなければならない、かように存じている次第でございます。
  10. 井上普方

    井上(普)委員 マネーサプライは一月では一一・九%の前年度増ということになるし、またマネーサプライ流通速度が非常に低下している。ちょうどニクソンショック当時の状況と非常によく似ているカーブを示しておるように思われてなりません。ここでもしも石油価格高騰すると、しばらくはそういうことはないでありましょうけれども、しかし海外において何が起こるかわからない。ならば、あの狂乱物価のような、四十七、八年のような状況が来ないとも限らないというおそれを持たざるを得ないのであります。十分にこの点ひとつ日銀当局大蔵当局お考えの上に今後の金融政策等々を進めていただきたいことを強く申し上げておきたいと存じます。いかがですか、大蔵大臣
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのところいろいろな状況は落ちついておりますけれども、国際情勢全く何が起こるかわからないというのが世界でございますから、それに対応いたしまして我が国経済微動だもいたしませんように、常に気をつけながら運営をしてまいらなければならないと思います。
  12. 井上普方

    井上(普)委員 微動だにもしないといったらえらい力強い、微動だにもしないというのは非常に心強いのでございますけれども、しかし海外要因もあり、かつまた一次産品も少し値上がりの状況が起こっておるようにも思われるのでございます。それから、商品市況を見ましても、やはり上がっておるように思われます、国内情勢を見ましても。こういうような動向を考えますと、今この金余りの金が住宅建設であるとかあるいは土地取得の方に走っておるけれども、あるいは株の取得の方に走っておるけれども、何かの契機があれば、インフレマインドを引き起こさないとも限らないと思います。こういうことになりますと一番困るのは社会の弱者であります。勤労者であります。このことをひとつ十分に御理解の上で、金融財政体制を整えていただきたいことを強くお願いいたしておきたいと存じます。  そこで、私は土地の問題につきましてひとつお伺いいたしたいと存じます。  地価がここ六十年以来異常な高騰をしてきたことは、私がここでちょうちょうするまでもございません。この土地につきましては、これは考えてみますと、国の政策が変わったときに、何か起こそうというときに必ず土地高騰が起こっておることは、御存じのとおりであります。  私も日本不動産研究所の資料をいろいろ見てまいりました。そうしますと、昭和三十三、四年くらいの高度成長政策が起こり始めると、まず工業地地価上昇する、続いては商業地上昇し、住宅地上昇してくる。これはいつも二〇%以上を超えている、こういうときには。一〇%で落ちついたなと思っておりましても、昭和四十三年、ちょうどたまたまそのとき新産都市の指定とかあるいは工業整備地域指定ということがありましたので、局地的に暴騰しております。四十三年になりますと、これは御存じのとおり都市計画法という法律をつくりました。そうしますと、市街化区域が暴騰してきた。もう数字ではっきりとあらわれておるのであります。そしてその後、御存じのとおりニクソンショックによる金余り、それから昭和四十七年の田中内閣における列島改造論、これが非常な期待を持たしたがために、ニクソンショックと相まって狂乱地価を招いたのは御存じのとおりであります。常に何か政策をやる際には、地価はどう動くだろうかということを念頭に置きながら政策を立案しなければならないのが、これが日本の政治の実態じゃないだろうか、こう思うのであります。  私も今、政府は一体どういうような対策を今までとってきただろうか、こう思って見てみました。そうしますと、政府昭和三十九年ぐらいから土地対策に取り組んでおります。三十九年ぐらいには地価閣僚会議というのをつくった。そして答申が出ています。昭和三十九年から四十八年、九年に至るまでにはたくさんともかく答申が出て、地価対策閣僚協議会というのをつくってやってきております。しかし、今度の六十年からの土地対策は、前内閣のことを申してまことに恐縮なのでありますけれども、土地対策に対して何ら手を打っておらなかった。そして六十一年の六、七月になりまして、ようやく、これは地価は大変だというので対策を立てられて発表しておることは御存じのとおりです。非常に後おくれになってきた。  しかも、その間において引き金になったのは何かと申しますならば、これは国有地売却引き金になった。西戸山土地売却、続いては紀尾井町の土地売却、これが引き金になって、もちろんその間には、客観的には中曽根内閣は、東京を国際金融基地にするから、事務所用地といいますか、非常に少ない、これをふやすのだという大々的な宣伝を行った。しかし、あの数字自体も過大評価であったことは、これは土地対策委員会においてはっきりしたところなんです。こういうように対策をやっていない、ここに今日の地価の狂乱、上昇があると思うのですが、いかがでございます。
  13. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 今、井上さんが過去から今日に至る経過をいろいろお述べになりました。全く私も同じような気持ちを抱いているわけでございますけれども、何としても日本経済発展のスピードが速過ぎたな、こんな感じがするわけでございまして、そのときそのとき先手を打って考えなきゃならない先手が必ずしもうまくいかなかった、これが大きいのじゃないかな、こう思うわけでございます。同時に、地価高騰している中で公開入札をやりますと、当然高い値段をつけて取り合いになることはこれまた決まっているわけでございますけれども、余りにも用地が不足しておって、いろいろな配慮が欠けておったのじゃないかな、こう思ったりしているわけでございます。  私は、地価高騰が始まったのを五十八年と見ているわけでございまして、それはなぜかといいますと、東京二十三区の中に五十八年で二けたの上昇を示しているところがあるわけでございます。東京が世界の三大金融センターの一つになった、世界の企業が東京に用地を求めて殺到してきた、そういうことから始まっておるわけでございまして、そういうことで、五十八年を起点として五年間で見ますと、二十三区は住宅地商業地も三倍にも上昇をしているわけでございます。  そういうことから考えますと、やっぱり先手先手を打たなければいけないな、こんな感じを持っておりまして、今は、例えば関西国際空港の建設関係の地域あるいは関西文化学術研究都市の地域、あるいはまた総合保養基地として大リゾート基地の整備が始まろうとしたりしているわけでございますけれども、そういうところで地価上昇の気配が見えました場合にはすぐに監視区域の指定ができるように準備していきなさいよ、こういう対応をしたりしているわけでございまして、やっぱり先手をとっていくことが一番大事じゃないかな。将来、過去の過ちを繰り返さないようにするためには、そういうことで地方団体においても積極的に努力、工夫をしてもらおうというような考え方で指導を続けているということでございます。
  14. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、これを見てみますと、昭和四十年の十一月に、閣僚協が初めてつくられて地価対策について答申を出しています。それから、その次が昭和四十三年の十一月に地価対策についてこれまた閣僚協が答申を出しております。それからその次は、昭和四十五年の八月にこれまた地価対策について答申を出しております。昭和四十八年にこれまた出しております。四十年代はこのようにたくさん出しているのです。しかし、五十年に入ってからの地価対策閣僚協議会というのはなくて、六十二年の三月に初めて地価対策関係閣僚会議というのが出されておる。この間、自民党の、政府地価に対する無関心さというのが十年続いてきたと思うのです。五十八年からそれだけ上がったのであれば、当然過去の経緯からするならば閣僚協がつくられ、答申が出されなければならない、対策が出されなければならない。それが六十二年の三月になって初めて対策が出されたというところに今度の地価狂乱の責任がある。政府は、上がってしまってから何しようかという態度に終始したと言わなければならない。とするならば、このたびの政府の責任たるや甚だ重いものがあると申さなければなりません。しかしその根底には、地価土地に対する理念が欠けておるんじゃないだろうか、私はそのように思われてならないのであります。  地価に対する理念といいますのは、実はイギリスにおきましては、今世紀初頭に田園都市構想というのが発表されました。当時、その前後でございますが、ロイド・ジョージのごときは、道路であるとか港湾をつくったら地価が上がる、その増価した分が個人の所有になるのは不届きだ、地価増価利益、開発利益の吸収ということをロイド・ジョージは言っています。残念ながら日本はそういうことはなくて、開発利益の吸収を政府がやるべきだという論議が行われ出したのは昭和四十年ごろからにすぎません。実に六十年おくれている。そこにはやはり地価に対する理念というものが歴代内閣にはなかったのではないだろうか、私はこのように思われてならないのであります。  実は、私もこの国土利用計画法というのを昭和四十九年につくりました。奥野さんにはこの前申し上げたのですが、ひとつもう一度お聞き願いたいと存ずるのであります。  この国土利用計画法というのは、田中内閣が国土総合開発法という法律を出してまいりました。これは開発と規制と両方含めた法律であったので、国会におきましてこれを廃案にした。しかし、狂乱物価のこの際において土地の規制、地価の規制というものはやらなきゃならないという国民合意といいますか、そういうもとにつくられたのがあの国土利用計画法であります。言いかえますならば、地価規制法があの土地利用計画法であるのであります。私ども、当時議員立法でこれをつくりました。もちろん、経済企画庁の御助力を得ましてこの国土利用計画法はつくりました。しかし、これは地価抑制法なんです。そのときに各党、共産党は除いておりますけれども、自民党から、社会、公明、民社に至るまで、この法律の第一条にうたってございますけれども、土地というものは国民共有の資産である、だから公共の福祉に土地というものは使わなければならないという論議、大論争が起こりまして、現在の自由主義経済、社会主義経済のもとにおいて、少なくとも最大公約数の土地に対する理念というものがあの国土利用計画法の一条、二条には盛り込まれたと私は思っております。あの土地の理念に対しては、私自身は異論を持っております。異論は持っておるけれども、少なくともこの国会においての最大多数が合意した理念があれに盛られておるはずであります。  私も先日、久しぶりにこれの読み直しをいたしました。そうすると、四十九年の十二月の二十四日に、国土庁の事務次官の「国土利用計画法の施行について」という通達がなされております。下命通達だと出しております。これは私も読み返しますと、当時のこの立法に至るまでの間の各党の合意が全部ここに出ています。私はこれに異論があったのでありますけれども、客観的に見ますと、合意がここに盛り込まれておると思います。すなわち「目的」「基本理念」につきましては、「法は、第二条に国土利用の基本理念に関する規定を設け、この基本理念に基づいて総合的かつ長期的な国土利用政策の展開を目指しているものである。従って、この基本理念は、およそ、国、地方公共団体を通じて国土利用に関するあらゆる計画の作成に当たって尊重されなければならないことはもとより、官・民、法人・個人の別なくすべての国民土地に関する行動の指針となるべきものであって、国民のための限られた資源である土地について、公共の福祉優先の思想の定着を図ろうとしているものである。」「国民のための限られた資源である土地について、公共の福祉優先の思想の定着を図ろうとしているものである。」したがって、「国土利用計画」というものは、「基本理念に即して、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、長期にわたって安定した均衡ある国土の利用を確保することを目的として策定されるものであり、国土の利用に関する行政上の指針となるものである。」きっちりと書かれているのです。当時の国会の大多数の政党の大体の客観的に合意したことが忠実にここに書かれています。  それに基づいて他の公法、私法というものがその後直されたかといいますと、直されていない。甚だ残念に思う。土地というものは国民共有の資産であり財産である、したがって、これを利用する際には、常に公共福祉優先の思想というものを先に立てて土地利用というものを図らなければならないということが、あの国土利用計画法の合意であります。  しかし、その後の考え方、政府のやったことはどうだ。土地は単なる資産である、商品であるという考え方に貫かれておったのではございませんか。ここに今日の土地地価混迷の原因があると思うのでございますが、国土庁の長官、いかがです。
  15. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 国土利用計画法の制定に当たって御苦労をいただいたことも承知いたしております。その中にも公共優先の思想が盛られております。また、そのために、国土利用計画法の中にも土地取引の規制などもうたわれておるわけでございますし、また土地所有権に対しまする私権制限、都市計画法を初めといたしましていろいろな法制ができ上がっておるわけでございますけれども、なおもう一段進めていくべきではないかという考え方は私も持っているわけでございます。また、そういう考え方に立ちまして、大槻さんを会長にする行政改革審議会の方で私権制限のどこまでいけるかということも論じていただいているわけでございますので、その答申を受けましてまた立法を進めていかなきゃならない、こうも考えておるわけでございます。  同時に、やはりそういう気持ちを国民皆さん方にもっと強く持ってもらうように我々としては努力をしていかなければならないな、こう感じておるわけでございます。殊に大都市を考えますと、大地震でも起きますと大混乱になるんじゃないかなと常日ごろ心配しているわけでございまして、消防ポンプの入らないような道路もたくさんあるわけでございますから、道路を広げて緑地をふやしていくことが基本だと思うのでございますけれども、そうしますと再開発という問題になりますし、やっぱり道路を広げ緑地を出しながら土地の利用度をふやす、容積率をふやしていく、環境をよくする、その中で土地の供給をふやすことが私は一番大事な手法じゃないかな。そういうために、都市計画法の高度地区の中には狭さ制限、低さ制限もあるわけでございますけれども、なかなかそれが利用しにくいような状態にある。ですから、おっしゃいますように法制を進めていくことと同時に国民の理解を深めていく、両方努力していかなきゃならないな、こう思っているところでございます。
  16. 井上普方

    井上(普)委員 国民の理解を深めていくこと賛成なんです。しかし、この公共の福祉というものは、国民の側から見るならば、憲法二十五条の生存権の確保、これを中心にしたものが公共の福祉であるという考え方。奥野さんの今のお考え方は、公共の福祉とは行政に協力することだという思想があるんじゃないだろうか。私の杞憂であれば、誤解であればこれはまことに幸いなのでありますが、常に行政サイドから見た、国民に与えるんだという考え方にきておるのが今までの考え方で、したがって、土地収用法の改正もそういう目からひとつやろうじゃないかという発想が出てくると私は思う。この民主主義の時代でございます。かつまた、憲法二十五条に言うところの生存権の確保、これがまず公共福祉の先頭に立って土地立法をやられなければならないと思うのであります。  この問題につきましては、後で同僚の菅君から質問があると思いますので、私はこの程度にさせていただきたいと思います。  しかし、今までの内閣のやり方というものは、全く土地というものは、これは資産であるというよりも私有権にともかく非常に重きを置いて、国民の中にはそういうような観念が広がっておる。上はおてんとうさんまで、下は地球の中心まで自分のものだというような考え方があることは事実です。これはしかし明治の地租改正以来できた思想なんです。利用しなければ土地というのは何の値打ちもない。そこに資本を投じ、あるいは労働することによってその土地というものは値打ちが出てくる。土地それ自体につきましてはこれはないんであって、利用権というものを優先させる考え方、これがまず必要である。これを中心にして今後の土地政策というものは進めていかなければならないと私はかたく信じておるものであります。この国土利用計画法も、地価の抑制をやるんだ、抑制をやる際には国土利用計画というものがかっちりとできなければ抑制というものはできない、こういう思想に立ってつくられておるのがこの法律であり、まさにこれは土地というものの概念、理念というものを新しくつくった法律であると私は考えておるものであります。  きのうも総理大臣にひとつこのことを読んでいただきたいということを私はあらかじめお願いしてあったのですが、御意見をひとつ承りたいと思います。
  17. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 いわゆる国土利用計画法をおつくりになる当時からの歴史を踏まえての御意見でございまして、私も同感という感じを率直に受けておりますが、私自身の反省から申し上げてみますと、土地は生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤として、しかも限られた資源である、そういうことを大体第二条は書いてございますね、今整理したものと法文とを比べてみますと。なるほどそのとおりだ。したがって、適正かつ合理的な土地利用の実現を図らなければならぬというのが基本になっておる。  とかく土地というものを商品として見ておるんじゃないか、こういう御指摘でございますが、しかも奥野大臣からのお答えの五十八年ということがありまして、みずからを振り返ってみると、金融の国際化、自由化を一生懸命でやっておった時代でございます、私自身がその衝にあって。そのときにオフィスビルの需要ということは当然私どもの予測の中にもありました。その考え方も、あるいは商品として考え、商品としてとらえるような考え方が私自身にもあったんじゃないかな、こういう反省を含めながら、御意見に対して私は賛成でございます。
  18. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、商品としてとらえて今日に来たというのは、こういう土地に対する理念ができておるにもかかわらず、そういう面でしか、すなわち旧来の考え方でしか処置できなかったことが今日の地価上昇を来した原因ではないかと私は思います。  そこで、ひとつここでお伺いいたしたいんですが、土地を競売する、一般公開入札にするというのは、土地を商品として考えての行為ではないかと思うのでございますが、どうでございますか。
  19. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 国有地の関係についてお答えいたしたいと思います。  国有地につきましては、これは国民共有の貴重な財産でございますから、公的部門に活用を図ることを原則としております。それから、将来にわたりまして国の利用が見込まれない国有地の処分に当たりましても、あくまで公用、公共用優先の原則のもとに地方公共団体等に買い受け勧奨を行いまして、利用要望のあるものにつきましては、計画の内容を十分審査しました上で地方公共団体に優先的に払い下げているわけでございます。  問題は、その地方公共団体等から買い受け要望がないものでございます。これにつきましては国も使わない、公共団体も使わないということになりますから、当然民間への処分ということになります。民間への処分となりますと、処分の適正性、公平性を確保するために競争入札によらざるを得ない、こういうことになっております。ただ、これにつきましては現在地価対策の関係で、地価高騰地域におきましては国有地売却は、公用、公共用の場合を除きまして見合わしているところでございます。  国有地の関係は以上でございます。
  20. 井上普方

    井上(普)委員 しかし、この国有地売却に当たりまして、まず紀尾井町の土地、司法研修所の跡地ですな、あれは公開入札しましたな。あれはどういう手続で、どういうようにしてやったのですか、お伺いしたい。
  21. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 研修所跡地につきましては、公用、公共用の取得要望がなかったことと、それから周辺の高層、不燃化の進捗などから再開発の用に供する必要性も乏しい、それから当時民活のときでございまして、その民活の企画小委員会からも一般競争入札による処分が適当という判断をいただきまして、公開競争入札に付したわけでございます。
  22. 井上普方

    井上(普)委員 ちょっとお伺いしますが、そのときには土地鑑定をやっていますか。鑑定書を取り寄せていますか。
  23. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 内部的な作業でございますが、入札する場合には大蔵省の方で鑑定し、あるいは内部で監査機構がございますから、予定価格を決めまして、それはもちろん公表はいたしませんが、それで入札をしております。
  24. 井上普方

    井上(普)委員 土地鑑定をする場合には、これは地価公示法という法律がある。これは鑑定する場合には、その近傍類似の公示価格というものを参考にしてつくらなければならないということを御存じですね。  そこでお伺いするんだが、この地価公示法という法律を理財局は御存じですか。
  25. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 地価公示法という法律があることは知っておりますし、それから、私どもが土地の鑑定をいたします場合に、公示価格を、規準(のりじゆん)と言っておりますが、規準(のりじゆん)にしまして予定価格等を算出しております。
  26. 井上普方

    井上(普)委員 それじゃ、地価公示法の第一条の二にはこう書いてあるのを御存じですか。「土地の取引を行なう者の責務」「都市及びその周辺の地域等において、土地の取引を行なう者は、取引の対象土地に類似する利用価値を有すると認められる標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。」とあるのを御存じですか。
  27. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 知っておりますし、あくまで一つの指標としまして、鑑定そのものは取引事例で鑑定しておりますが、あくまで公示価格も一つの規準として使っております。
  28. 井上普方

    井上(普)委員 それで、建設省の局長来ておるかな。――土地収用法において土地取得する場合、価格算定にはどういう手法をもってやっておられますか。
  29. 望月薫雄

    ○望月政府委員 お答え申し上げますが、詳細にちょっと十分な御答弁ができないかもしれませんけれども、基本的には公示価格というものも踏まえながら地価の鑑定をしっかりした上で価格を決める、こういう考え方に立っております。
  30. 井上普方

    井上(普)委員 国民から土地を収用する場合は、この地価公示法によって土地鑑定が、評価がなされ、その評価を基準として国は土地取得しておるのは、これは御存じのとおりです。しかし、国が土地を売る場合はそれを規(のり)である、地価公示法は規(のり)であるというような考え方が成り立つと思いますか。常識的には成り立たぬでしょう。どうなんです、これは。法文解釈上、今の大蔵省の言い分なんて認められるのですか。
  31. 藤田弘志

    ○藤田(弘)政府委員 ちょっとこれは建設省の話になろうかと思いますが、実際の収用価格におきましても、やはり取引事例価格とか公示価格等を勘案しながら、収用委員会が起業者、土地所有者等の申し立てた価格の範囲内で裁決することになっております。どんぴしゃり別に公示価格に合っているというわけではございません。  それで、国有地につきましては、国民共有の貴重な財産でございますから、財政法で、あくまで適正な対価によらなければならないということで、時価ということになっております。その算定のときに公示価格を規準にしておる、こういうことでございます。
  32. 井上普方

    井上(普)委員 あなた土地収用法の専門家じゃないのだよ。へ理屈言ったら困る。収用法のときにはあくまでこの公示価格というものが基本になって、それに足すのでございますから、せいぜいいっても地価公示の六割、五割増しぐらいしか伸びないと思うのが今の常識じゃございませんか。どうです、経済局長、それくらいじゃないですか。せいぜい伸びて六割増しぐらいになっておるのが実態じゃないですか、伸びてもだ。
  33. 望月薫雄

    ○望月政府委員 ちょっと私、今その辺の具体的な数字を明確にお答えできませんので……。
  34. 井上普方

    井上(普)委員 基本的には地価公示を基礎としてやっておることは間違いございませんな。
  35. 望月薫雄

    ○望月政府委員 いや、それも踏まえて、かつ近傍類地の取引価格等ももちろん参考に入れてやって評価いたします。
  36. 井上普方

    井上(普)委員 そこで、大蔵省あるいは国が一般公開入札をやる場合に、紀尾井町のごときは近傍類似の標準価格の三倍で売っている、あるいはまた西戸山においても二・八倍だ。それから六本木の林野庁の土地にいたしましても大体三倍で売っています。これが指標になるとお考えですか。この地価公示法の責任官庁はどこなんです。これで三倍になるのが指標になりますか。
  37. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 当時は地価高騰のさなかでございましたし、また事務所用地が非常に払底しておったときでございますから、ああいうさなかで競争入札で土地の値段をつけますと幾らでも高くなってしまうのじゃないかな、こんな感じがするわけでございまして、時期としては非常に悪かったな、こう思っております。  おっしゃっているとおりに、何で地価公示をやっているか。やはり一般の指標にしたいし、また国や地方公共団体が買い取る場合の指標をつくらなければならぬわけでございますから、これが指標になる。それが二倍だ三倍だというのは、私は地価公示法の精神から考えますと大変不適切な結果だった、こう思っております。
  38. 井上普方

    井上(普)委員 まことに不適切だ、責任官庁の長はこうおっしゃっておられる。一般公開入札に際してもやはり枠がなければならない。しかもこの法律によるというと、「土地に対する適正な補償金の額の算定等に資し、もって適正な地価の形成に寄与することを目的」としておるのがこの地価公示法なんです。近傍類似の公示価格の三倍あるいはそれ以上で売ることが、これが規(のり)である、こういう考え方はどうです。大蔵大臣、責任者としてどう考えますか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現実に起こりました問題として、国有財産の処分が、当時いろいろな複合的な理由があったにしましても、土地価格の上昇一つの話題を与えたことは確かであります。  そこで問題は、国有財産の処分ということは、これは国民の財産でございますから、できれば最も自由な競争のもとに成立する価格、しかもその面だけから申せば、国民の財産でございますから、一番最大の金銭的な利益が国民に帰属するように売らなければならないというのは、これは会計法自身のまた原則であると思います。問題は、そういう原則が昔からございますけれども、片方で地価問題というのが非常に大きな社会的な問題になって、そうやって国が会計法の原則にのっとってやったことが大きな意味国民的な利益に結局なるのかならないのかという、また別の法益の判断というものがきっとあるに違いないわけでして、いわばそういう意味では二つの法律の求めておる目的がやはりそこでぶつかっておるのだろうと思います、正直に申しますと。  そこで、過去に起こりました、今紀尾井町のお話もございましたわけですけれども、会計法的な観点からいえば、仮に千万円で売れるものを三百万円で売れば、国民的な財産の損失を与えたかどうかという会計検査院の立場からの批判を避けられないであろうというような問題がございますから、そういう場合に、しかしそれはそうであっても地価上昇に非常な拍車をかける結果になれば、大きな国民的利益はそれで確保されるかどうかというまた別の法の目的がございます。地価公示法の目的がございますから、結局そこは行政で、法律で解決ができなければ行政で現実的な妥協と申しますか、接合点を考えざるを得ないという問題であったのではないか。そこまで至りませんで現実に土地の処分が行われました。行われました結果、井上委員の言われるように、地価上昇についての好個の話題を、国がやったことでございますから、提供したことはこれは事実であったと思います。  そのような反省に基づいて、政府は後に、国有財産の処分というものは、公用、公共用は別でございますが、民間に払い下げることはこの際やはり問題ではないかということに立ち至りまして、その後大都会における、東京などにおける国有財産、土地の処分をいたしておりません。もともと件数としては非常に少のうございまして、年間に五件とか七件とかいうものでございました、一万数千件の中で。ですから、従来問題はなかったのでございましたが、たまたまあのときにああいう大きな問題になりまして、その後地価上昇がやはり潜在的には続いておりますから、国有財産の処分というものをこの際しばらく見合わせようということで、現実に行政上のいわば接点を求めて、今後に問題を起こさないようにただいまいたしておるというのが現実であろうと思います。
  40. 井上普方

    井上(普)委員 私も会計法及び予決令でやられておることは知っております。知っておりますけれども、土地につきましてはこういうように枠がはめられているのです。後からつくられた法律なのですよ。後からつくられて、この地価公示法というのは、やはり公共の土地というものは国民共有の資産である、しかも地価というものが国民の生活権に及ぼす影響が非常に強い、だからこれに対しては一定の適正な価格というものをつくらなきゃならないという目的でこれはつくられているのです。これがつくられたのは四十年に入ってからです。地価高騰が起こり出してからつくったものです。それには標準地について公示価格を指標として取引を行うように努めなければならないとある。  国は、こんな法律は規(のり)であるとさっきは言っている。こんなばかな話があるかと言うのです。土地収用のときには、この地価公示法というものが大きな働きをして価格というものは決定せられるのです。国が土地を買う場合にはそういうような方法でやられている。人民からは、そうやって土地を公示法によってとっている。国が売る場合は、あれは規(のり)じゃと言って無慈悲でいいのかどうかということなのです。  あなたのおっしゃるように、古い会計法あるいはまた予決令とこの地価公示法との接点をどこにするかという問題はありましょう。あるけれども、土地売却する場合にはまず適正な地価をつくるのだという国の方針がなければいかぬのじゃないですか。土地をこれからも売っていくでしょう。それには土地利用計画がその土地にあるということが中心でなければならない。それによって、一般公開入札をやっても公示価格よりもはるかに高いというときには、これはやめなければならないと私は思うのですが、どうです。  ここらあたりはっきりさせてもらわなければ、後々地価問題については話ができないのです。あくまでも今までの政府の考え方というものは、土地というものは商品であるという考え方に立脚してこういうような考え方が出てきておると私は思う。大蔵省のごとき考え方が出てきているのだと思う。土地というものは国民共有の資産であり資源である、こういう考え方に立つならば、公共の福祉優先という立場に立って、ずっと私の考えから後退しても、地価を形成するということは、適正な地価に抑えるということは、これは公共の福祉に最もかなう道だと思う。それを平気で捨て去って、商品として考えておるのが今の現状じゃないですか。どうでございます。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今までの御質問、それから政府委員のそれに対するお答えを聞いておりまして、まず土地収用法との関係でございますが、これは買うとき、売るとき、大変に違う物差しであるのはおかしいではないかというのは、確かに一つの適切な御指摘だと思うのでございますが、土地収用法のときにどうしておるかについて、実は類地比準といったようなこともあるのだということで、政府委員が自分の御所管でなかったのかもしれません、必ずしも明確なお答えができておりませんで、その辺のところはきちっと、どうなっておるのかもう少し私どもで検討いたさなければならない問題がありそうに伺いました。しかし、それは一つのポイントであることは私も認めます。  それから次に、確かに会計法は国土利用計画法よりははるかに古い法律でございますけれども、この際に後法優位の原則が働いていいかどうかというのは、私は問題があるように思います。確かに会計法は古い法律でございますけれども、しかし現在でも大切な一種の基本法でございますから、会計法でやはり国としては、国民の財産はこのような場合、公用、公共用の需要がないときに、やはり公入札でいわばハイエストビッダーに売る、そういう物の考え方、それは会計法は古い法律でございますけれども、一般論といたしましては私は今日でも妥当している考え方だと思うのでございますね。ですから、後法が優位になるということは必ずしもこの場合に言えないだろう。  と申しますことは、実は国土利用計画法ができましたときに、その適用を会計法との関連で国有財産についてはどうするかということを、厳密に言えば法律的に答えを出しておくべきであったかもしれない。法律的に答えが出ていなければ、行政庁の間で一つの理解にお互いの間でやはり達しておくべきであったのではないかと思われます。事実は両方とも十分に行われておりませんでしたから、紀尾井町の土地の処分のような場合には会計法の考え方に従って行政としては進んだ。しかし、結果はこうなった。それは国土利用計画法の意図するところと甚だ異なるではないかという御指摘があったことはよく理解のできるところでございます。  そこで結論としては、もちろん国有財産、土地は基本的にはまず公用でございます、次に公共の用途、この優先は変わりません。それがございません場合に、というのは、実は自治体なんかには売りたいと思うが買いませんかという勧奨までしておるわけでございますが、それがないときには個人に売るということで先ほどのようなことに、公入札になったわけでございますが、問題がございますから、行政の間でここしばらく大都市における国有財産の処分は控えようではないかということに、今現実に各省庁の間の合意ができておる。私どもそれに従って、国有財産が今後こういう土地情勢で土地価格を刺激するような形で処分されることはどうも問題があるということで、控えることにいたしております。  そういうことを現にやりつつございますが、実はそこで、これは井上委員は御承知でいらっしゃるに違いないことでございますけれども、もう一つ悩んでおりますのは、国鉄の問題があるわけでございます。これは国鉄再建という、これも国民に対して大きな負債を負っておる国鉄の問題でございますので、これはどうするかという差し迫った問題がございまして、国有財産の方はせいぜい年に三件とか五件ぐらいでございますから、まあいわばとめておけばいい。国鉄の方はそういう再建の現実の目的が絡んでおりますものですから、これをどうするかというのは大変に頭の痛い問題でございます。が、いずれにいたしましても国有財産については、もう民間への払い下げということは、東京のような大都市においてはこういう情勢が続きます間はしばらく控えておこう、行政としてはそういう決心をいたしております。
  42. 井上普方

    井上(普)委員 私は、これはしばらくとめておくことはそれで結構だと思うのですが、しかし問題の根本的な解決にはならない。  しかし、法律をつくるときには、これは法制局で、どの法律と衝突するか、整合性を持たせているものができておるはずなんです。法制局長官、どうなんです、これは。
  43. 味村治

    ○味村政府委員 御指摘のとおりでございまして、私ども法律案を審査いたしますときには、その法律案が憲法に適合しておるかどうかということがまず第一でございますし、その次には、法律体系として整合するかどうかということでございまして、つまり既存の法令との優先関係、これを審査いたしまして、優先関係に疑問の生じないように案をつくるということをやっているわけでございます。  なお、先ほどから伺っておりますが、収用価格につきましては、憲法の二十九条三項に、私有財産は正当な補償のもとに公共の用に供することができるという規定がございまして、正当な補償と申しますのは、最高裁判所の判例によりますと、完全な補償と申しますか、土地でございますればその土地と同じ程度の代替地を取得するのに必要な価格である、価値である、こういうふうに解釈されておることを、先ほどからの御議論がございましたので、申し添えておきます。
  44. 井上普方

    井上(普)委員 それは、土地収用の場合には原則として代替地を与えるというのが原則なんです。これは憲法二十五条との関係になってくると私は思う。だから、そういうようなところから考えますと、法制局長官、今私がお伺いしているのは、会計法とこの地価公示法との関係をどうするんだということを聞いているのです。あなたに聞いているのですよ。
  45. 味村治

    ○味村政府委員 先ほどから大蔵省の政府委員から御答弁申し上げておりますように、会計法上は、国有財産を競売なり入札なりによりまして売却しなければならないというふうに規定をしているわけでございます。それに対しまして地価公示法の方は、これは大蔵省の政府委員もおっしゃったことでありますが、第一条の二で公示価格を指標として取引を行うよう努めなければならない、「標準地について公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。」ということでございまして、これは努力義務であるというふうに解釈されるわけでございます。  この標準地につきましての公示された価格と申しますと、その標準地の価格の判定方法につきましては、これは標準地についての正常な価格でございましょうが、その第二条の第二項によりまして、「前項の「正常な価格」とは、土地について、自由な取引が行なわれるとした場合におけるその取引において通常成立すると認められる価格」、こういうふうになっておりまして、自由な取引が行われるとした場合の価格として鑑定があったもの、このように理解するわけでございます。ただ、それは鑑定でございますので、あくまでも頭の上でのことであるということでございますので、努めなければならないという趣旨の努力義務、先生のお立場からいたしますと徹底しないということかもしれませんが、努力義務として規定してございますので、必ずしもこの公示価格に従って取引をしなければならない義務というのはここからは出てまいりません。したがいまして、会計法とは抵触はしないわけでございます。
  46. 井上普方

    井上(普)委員 私は、この公示価格で全部ともかくやれと言っておるのじゃない。先ほども申しましたように、土地収用法におきましても公示価格の大体六割増しぐらいのところで平均的にやられておるのが実情じゃないか。しかし、二倍ないし三倍というのは、これは指標にはなってない。ここらあたりはっきりさせてもらわなければならぬ。これは二倍ないし三倍で売られる場合が指標になっておるのか、常識を疑うよ。  努めなければならぬという努力義務は、これは国もすべてにかかっておる問題なんです。私はこう思ったのです。国というのは偉いところだから人民どもはこれに従え、国民はともかく国は例外になるのかいなという感じが私はしておるのだ。今もはしなくも宮澤大蔵大臣が言われたように、これから国鉄用地の売却がある。そうなってくると、一般公開入札でするなら公示価格の二倍、三倍になっていって、全くこの法律は死文になってしまう。適正な地価の形成に寄与することを目的とするこの地価公示法というのは死文になってしまう。  どうするのですか。人民から土地をとるときには地価公示法を指標としてやっている。国が売るときにはこんなのはほったらかしで、二倍ないし三倍で売っていく。こんなことが許されていいのだろうか。ここらあたり政府の考え方を統一してもらわなければいかぬ。どうですか。委員長、これをやってもらわなかったら、後の話が続かない。
  47. 奥野誠亮

    ○奥野国務大臣 今は地価対策が政治の大きな課題になっているときでございます。本来、地価というものは国民総生産の名目的な伸びに従って上昇するということが一般的な姿でなかっただろうかなと思っております。それを離れて非常な上昇を示してきたのがこれまででございまして、ようやく鎮静化を始めたところでございます。したがいまして、公開入札の原則を上昇中のところでとられますと、またべらぼうな高い値段がつかないとも限らないわけでございます。そういう意味で、そういう地域における公開入札は自粛しようじゃないかということになっているわけでございまして、JRの土地の問題につきましても、そういう意味で処分する場合には一々私たちのところに御連絡をいただいているわけでございまして、そういうおそれのないところで処分はするけれども、そういうおそれのあるところでは公開入札はしない、あるいは信託方式等で地価を顕在化させない、そういうような方向で利用を図るとかというようなことで苦心をしておるわけでございます。  処分の方法と地価公示法の考え方、お互いにみんなそれぞれ国法でございますから考えてもらわなければならない。前内閣のことでございますけれども、監視区域を指定しましたときに、国や公的な機関も届け出なければならぬかどうかという議論があったときに、こういう問題について適切な配慮をするのだという配慮規定を置いたわけでございまして、配慮規定を置かれているということは、会計法で決められておりましょうと、そういう問題についても十分留意しなければならないことが国法として明示されたのだ、こう考えておるわけであります。
  48. 奥田敬和

    奥田委員長 ちょっと井上委員政府委員の答弁も聞いてやってください。望月建設経済局長
  49. 望月薫雄

    ○望月政府委員 これは先生には釈迦に説法みたいな御答弁になって恐縮でございますが、収用のときは、御承知のとおり基本的には、現実は事業者ができるだけ任意買収で解決しようというのがまず私どもの現実でございます。そういったときに任意買収の価格というものはどういう価格でやっているか、こういうことになりますと、一般的には近傍類地の価格が非常に基本になっているということはもう御案内のとおりでございます。それでなおかつ話がまとまらないというのがいよいよ収用裁決ということに来るわけでこざいますが、年間大体百件前後ございますけれども、そういった中で決める裁決の価格、決められる価格というものは、当該事業で既に任意買収等を行っている価格というものを基本に踏まえなければならないという現実もございますので、その意味では近傍類地価格というものが大変効いてくる。先ほど法制局長官から御答弁ありましたように、代替地の確保などということもその中に入っているものでございますが、制度の建前として……(井上(普)委員「今のところをもう一度言ってごらん」と呼ぶ)近傍類地の価格というものを十分検討した上で、任意買収価格というものをはじいて事業者は協議に臨んでいるわけでございますので、それでなおかつ買収ができないという物件について収用という手続が参るわけでこざいます。そういった意味で、任意で買収してきている価格の水準というものは収用価格と無関係ではあり得ないわけでございまして、その意味で近傍類地価格、これが非常にポイントになっていることはもう先生も御案内のことと思います。  ただ、制度の基本的な構えとして、地価公示法においても、収用事業あるいは収用適格事業で土地を買うときには公示価格というものを規準として、規準というのは要するに字が例の標準としてですか、規準(のり)ですね、規準として算定した土地の価格を考慮しなければならない、この辺の基本は十分踏まえながらの任意交渉に臨んでおる、それが収用価格に及ぶ、こういうふうな考え方でございます。
  50. 井上普方

    井上(普)委員 経済局長さん、あなたそう言うが、人民から土地を買うときにはすべて土地鑑定士に鑑定してもらって買っているでしょう。土地鑑定士は地価公示というものをともかく最大の参考資料にしておるのが現実じゃないですか。地価公示というのはそれほど離れておるものですか。近傍類似の価格を算出するのに地価公示価格というものを最大のよりどころとしてやっているのが、今の規準としてやっておるのが現状じゃないですか。そのとおりだろう。――そのとおりなんだ。それなら、人民から土地を買うときにはこの公示価格でやるんだ、国が売るときにはこんなのは全然あってなきがごとしというのでは話にならない。これは政府が一応考え方をまとめてもらわなければ、今大臣の御答弁があったのは現状を糊塗するにすぎないじゃないですか。基本的な問題としてこのことは考えてもらわなければ論議が進まないと私は思う。
  51. 奥田敬和

    奥田委員長 速記、ちょっととめておいてください。     〔速記中止〕
  52. 奥田敬和

    奥田委員長 速記を起こして。  大蔵大臣から答弁を求められております。宮澤大蔵大臣
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど来の井上委員お尋ねに対しましてお答えを申し上げます。  土地収用法の場合も、また国有地売却の場合も、その価格につきまして地価公示法に言う価格を規準とするという意味では、同じ物差しを用いまして価格を算定しているという意味では、規準が尊重されるということでは差別がございません。差異がございません。  次に、土地収用の場合と国有地の売り払いにおける場合とでは、他方は売却であり他方は買い入れであるといったようなことから価格に多少の差が出ますことは、これはその経済行為の性格の違いから来るものであると考えます。  最後に、地価公示法第一条の二に定められております「公示された価格を指標として取引を行なうよう努めなければならない。」という努力義務につきましては、政府関係各省庁ともこれを尊重すべきことはもちろんのことであります。
  54. 井上普方

    井上(普)委員 それでありましたならば、今のお話でございましたならば、一般公開入札ということはできなくなりますな。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国有財産につきましては、現実の問題といたしまして、このような土地価格の高騰の情勢があります間は、大都市におきましては払い下げをしばらく留保しておきたいと考えております。
  56. 井上普方

    井上(普)委員 それは当面の策であって、やがてこれは国鉄用地の売却もある。しかもそれは、一般公開入札ということになりましたならば、最高の価格で売ることになっている。会計法はそうなっている。それならば、これはまたまた問題は起こってくる。でありますから、そういうようなここらの公示法と会計法との接点をどうするかということをひとつお考え願わなければ、私はその御答弁には納得できない。
  57. 奥田敬和

    奥田委員長 井上委員に申します。  本問題の質問を留保していただきまして、本問題の質問を総括の最後まで留保していただくということで御了承願いまして、ほかの件についての質疑に移っていただきたいと思います。
  58. 井上普方

    井上(普)委員 私は次に国鉄の売却問題について質問しようと思ったのですが、そのことがなかったら私はちょっと続きができませんので、ひとつこの問題は理事会で御協議願ってお願いしたいと思うのです。続いて私の時間は、理事会にお任せします。
  59. 奥田敬和

    奥田委員長 それじゃ井上委員質問は留保して、理事会の協議にゆだねることで御了承願います。  次に、水谷弘君。
  60. 水谷弘

    ○水谷委員 冒頭、本日総理は韓国に御出発をされるわけでございますが、どうぞお元気で行ってきてください。これからの韓国の将来を考えますと、日韓友好の上で、韓国が民主化路線の中でますます発展をしていただきたい、また、朝鮮半島の和解、その平和の構築のためにも御努力をいただきたい、こういう思いでいっぱいでございます。率直な総理の御感想を一言承りたいと存じます。
  61. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 今御指摘がございましたように、民主的手続で選ばれ、民主的な方法で政権が移行していくということにまず御祝意を申し上げるということが一点でございます。  それから、総じて言いますならば、かつて近くて遠い国と言われておりましたが、本当に近くて近い国という印象づけが両国国民の間に私の訪韓が一つの契機ともなればこれ以上の幸せはないというふうに考えておるところでございます。
  62. 水谷弘

    ○水谷委員 それでは、補正の質疑のときにも税制について総理にお伺いをいたしました。この総括質疑の経緯を私もずっと見守ってまいりました。国会決議、さらには政府統一見解、選挙公約、こういうものを踏まえて、国民は昨年の売上税に対し、この大型間接税の導入は許さずとあれだけの国民的な世論が巻き起こり、国会においてそれが廃案になったわけであります。今総理から政府税調に諮問をされ、政府税調は基本的な基調をもとにしていろいろ今税制改正の議論をお進めいただいているわけでございますが、総理に対するいろいろな質疑の中から、いわゆる国民が税に対する不公平感をお持ちになっていらっしゃる、その不公平感がどこにあるかということに対する御認識に我々と大きな開きがあるような気がいたしてなりません。いわゆる直接税の不公平感が、そのまま間接税の導入に道が開かれるような御答弁に終始しているように私は伺うわけでございます。  やはり今一番国民が税に対する不公平感を持っておられるのは、ついこの間の百九国会、いろいろ議論があり、キャピタルゲインについては多少の改正がなされたわけでございますけれども、しかし有価証券譲渡益に対するキャピタルゲイン課税が行われていないということについて国民の皆さんの現在の税に対する不公平感というのは一番ある。もう一つは、急激な土地高騰の中で、いわゆる土地が大変な利益を醸し出している。そのものについて、勤労所得を中心に大変な税を支払っていらっしゃる国民の側から見れば、額に汗して御苦労しておられるその所得には厳しい税がかけられながら、片方ではそういうものについての明確な税の対応がない。私は、これが一番大きな不公平感を醸し出させている問題だと思うわけであります。  全国上場株式の時価総額、昭和六十一年度中に二百三十六兆円から三百五十五兆円に、約百二十兆もの増加を記録をしている。このうち二五%が個人の保有であり、個人株主のキャピタルゲインはおよそ三十兆に上る、このような推定の計算もございます。仮に税率を平均二〇%としても、六兆円もの税収になる。個人保有の株式時価総額は、昭和六十年末で四十八兆、六十一年末で七十兆円と、一年間に四五%の増加を見ている。この個人保有株式の資産増加額二十二兆円だけをとっても、年間雇用者所得の六十一年度百八十三兆円に対して一二%のウエートを占めているわけであります。この場合、いわゆる大事なことは、公正な税務執行を確保するための、譲渡の際に公的書類を提供する本人確認制度。この本人確認制度については、税調においても、その納税者番号制について小委員会の発足をなさって取り組んでいかれる、こういうことになっているわけでございます。  いずれにしても、私どもは税調のその方向を見詰める大事なポイントに、一つはこのキャピタルゲイン課税をどういうふうに取り扱われるのか、そしてその納税者番号についてどういう方向を出されるのか、さらにまた、土地税制の見直しについても明確に挙げていらっしゃるわけであります。我が国の資産の半分以上を占めるのは土地でございます。これに対する明確な方向が税調の中で確立をされてくること、これが我々が税調の方向を見守る一番重要なポイントと見ております。  ところが、どうもそうではなくて、いろいろなところの発言やら、また先ほど申し上げました総理の御発言を聞きますと、どうしても間接税の方に力点が置かれた議論が先行しておる。このようなことで、政府がまた再び大型間接税をお出しになるようなことがもしあるとすれば、今若干去年と状況が違うとか、国民の中に間接税に対する理解が深まったとかというお話を承っておりますが、決してそうではない。国民の皆様方のお気持ちというのは厳しく、あの我々が売上税にノーというサインを送ったことに対し、政府は一体どういう対応をするかということについては厳格な、明確な眼をもって注視をしておられるわけでございますが、私は総理に、そのことを税調の中でこれから御議論いただくことには違いありませんけれども、この今申し上げましたキャピタルゲイン課税、土地の資産に対する適正な課税のあり方、これについてどういうお考えで、決意で臨んでいかれるか、これをお尋ねを申し上げるわけでございます。
  63. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 いつも申し上げておりますように、税制改革論議が盛り上がったのは、水平的であるとか垂直的であるとか申しますが、いずれにせよ税に対する不公平感というものが土台にあって、今日これだけ税制改革の議論というのが進んできておるというふうに私自身問題意識を持っておるところでございます。  そこで、今御議論なすったのは、まさに所得、消費、資産等についての、いかにあるべきかということを諮問申し上げておる段階でございますが、資産所得の中におきますところのいわゆる譲渡所得について特に不公平感が強い、こういう御指摘があったわけでございます。こういうような御指摘というのは、当然のこととしてそのまま正確に税制調査会にも伝えるわけでございますが、税制調査会で、それこそ今詰めた議論をしよう、こういうまさにその機に到達していらっしゃるということを私も承知いたしておりますので、今まで過去にも何回か審議していただいたことがございますけれども、その経過等をここで申し上げてみても、今度は税調そのものの意気込みがまた新たになっておりますから、今その御審議の段階を慎重に見守っておるという立場であるというふうに申し上げた方が正確だろうと思います。
  64. 水谷弘

    ○水谷委員 私が伺っているのは、税に対する不公平感、直接税に対する不公平感がそのまま間接税移行という形で道を開かれているような、それが至るところにうかがえるわけであります。直接税における不公平感の是正こそまず真っ先に手をつけていかなければならない。それが国民の中に、まさに税の不公平を是正し、抜本的な改革に政府は本気になって取り組んでいるという、これがまず真っ先であって、その先にいろいろな議論を起こしていくことになるわけであります。そういう意味お尋ねをしているわけでございます。直接税の中における不公平感、不公平の是正、これを総理は本格的に取り組むおつもりがございますか。
  65. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 まさに今おっしゃっておるのは、特に資産所得の中の譲渡所得等についての不公平感というものを指摘しながらのお尋ねでございます。これはまさに直接税の中における位置づけでございますので、それは当然のこととして、これらに対する調査が真剣に行われるべきものであるというふうに私も思っております。
  66. 水谷弘

    ○水谷委員 調査が真剣に行われるべきものではなくて、直接税の中における不公平是正のために総理はしっかりお取り組みをされるかどうか、こうお尋ねをしております。
  67. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 実は私もいつも言葉を選びますのは、税制というのは租税法定主義ですから、いろいろな税は国会の議決をもって行われてきておる。それだから、それが不公平税制だという表現は差し控えて、不公平感があるというふうに申し上げておるわけでございます。したがって、現実不公平感がいろいろ議論されておるのはそのとおりでございますから、私どもはこれらに対しては十分関心を持って臨んでおる。今税調へ諮問したところでございますものですから、私自身の考え方ということを間接的に税調で調査していただいておりますという表現でお伝えしたわけでございます。
  68. 水谷弘

    ○水谷委員 次に移ります。  前回も牛肉、オレンジ交渉について御質問いたしました。きょうの新聞の報道によりますと、「米国農民組合など五つの米国の農業団体が連名で、牛肉・オレンジ問題に関連して、米通商代表部の対日強硬姿勢を批判するとともに、現行の協定に沿った交渉を進めるよう求めた決議を採択した。」こういうアメリカの国内の農業者の皆さん方の動きが報道されております。どうかひとつ、前回伺っておりますから政府の対応の姿勢は十分わかっております。自由化、そのようなことは一切行わず一日も早くテーブルに着いて交渉に臨む、こういう基本姿勢をどこまでもひとつ貫いていっていただきたいと思います。  沖縄のパインの問題につきましては、たびたびここで議論がございました。私から申し上げるまでもなく、沖縄の生産農家は約千五百六十戸、粗生産額が十八億、これはパイン生産の国内産の九五%のシェアを占めている。パインの関連業界が約十万人、県の人口の八%、総売り上げが六十億という数字を私は聞いております。  沖縄が復帰をし十五年、いまだに米軍統治下の二十七年間のおくれを取り戻すことができない。特に農業においては、本土に比べて大変な格差があり後進性がある。そういう中で、今このパイン生産農家は大変な将来に対する不安を持っておられるわけであります。  私は、そういう問題の中で、幾つか基本的なことについて私たちが認識をしておかなければならない問題がある、こういうふうに考えているわけであります。パインの自由化をごり押しするなら軍用地を返せ、沖縄県の北部の東村慶佐次区の方々がそのようなことをおっしゃるまで追い込まれておられる。御存じのとおり、戦後米軍基地の建設によって優良な農地が減少し、農家は山地などを開拓してパイン栽培を始められた経過があるわけであります。  日米安保条約に基づく今日の沖縄は、また我が国の安全にとっても大切な地位にあるわけでありますが、いわゆる基地を提供をする、こういうことであっても、一番大事なのは、その周辺の地域の皆様方の合意と、また協力がなければできないわけであります。沖縄の私の同僚議員、沖縄選出でございますが、その議員から、今沖縄のその地区の住民の皆様方のお気持ち、すなわち沖縄の心、それを私も教えていただいておるわけでございます。米軍基地への思いやり予算、今回いろいろな議論がございました。そういう中で際限なく続くこういう思いやり予算を片方に見ながら、我々がどういう思いで今日までやってきたのか、一体そういうことを政府は本当にわかってくれているのか、こういう沖縄の皆様方の心というものを私どもは、これは単なるパインという一産物の問題ではなくて、本当にそれを受けとめて対応していかなければならない。防衛庁長官、どう思われます。
  69. 瓦力

    ○瓦国務大臣 水谷委員御指摘のように、沖縄におきましてのパインの問題は極めて深刻な問題で、生活を営む農家にとりましても極めて今日深刻な課題だ、かように理解をいたしております。  施設庁といたしましても、いわゆる駐留米軍の施設等地域の皆さん方の理解をちょうだいしながら運営しているわけでございますが、さきにそうした問題も心配いたしまして、国防総省の方へ、周辺農民の窮状にもかんがみてでき得る御協力を賜りたい、こうした要請もした、そういった経緯もあるようでございますが、今後理解を得ながら、施設関係の問題に取り組んでいく者といたしまして、いかなることが御協力できるのか、なかなか限られた範囲内であろうと思いますが、そうしたことを検討してまいりたいと思っておりますし、当面は農林省が中心になりましてこの問題御心配いただいておることでございますので、私どもも今委員御指摘のことを踏まえながら手伝うべきこと、御協力すべきことがあれば取り組んでまいりたい、かように考えております。
  70. 水谷弘

    ○水谷委員 外務大臣、いかがですか。
  71. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 沖縄の基地の問題と今のパインの問題でございますが、沖縄が本当に我が国日米安保体制のために尽くしていただいておる、そのことに関しましては常に外務省は感謝をいたしております。そのために、基地の統合、整備という問題に関しましても十二分に話し合いをしつつ、ある程度の進展もあるわけでございます。  そういうような関係の中におきまして、やはり我々といたしましてはガットの精神も生かさなくちゃならぬ。しかしながら、基地という観点から見た場合の確かにパインというものの産業、これがだんだんと圧縮されておるという姿は見るに忍びないということは、私自身も実はガットの総会に出席をされました相手国の責任者にはっきりと申し上げた次第でございます。しかしながら、いかんせんそのときには既に十二品目がパネル報告となって参加九十五ヵ国に通達された後でございますから、しかし最後の努力をして、よく農林省とも連絡をし合いながら二月の理事会まで延期をしてもらった。その間にいろいろな方策を講じましたが、二月の理事会においては御承知のとおり我々といたしましても一つの結論に達せざるを得なかった、さようなことでございますから、今後重要な産業として受けとめまして、不測の被害が出ないように、悪影響が出ないように、こういうことを十二分に考えながら、外務省といたしましても農水省と十分連絡をとって国内措置に全力を挙げていきたい、かように考えております。
  72. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣行かれました。この前も現地を見てくるとおっしゃっておりましたが、まさにお約束どおり沖縄へ参られました。農林水産大臣御苦労さまでした。パイン生産農家を初め地元村民ら約五百人の参加であった、こういうふうに伝えられております。これからなんです。これからどうするかを皆さんは見守っておられる。そういうわけですから、大臣には後でまた質問がありますから結構ですから、ひとつしっかりお願いをしておきます。  ここで改めてこのガット裁定を、我が国が八品目自由化を認め二品目は自由化を認めない、その残りの二品目についてはガットでは灰色、こういうガット裁定を受諾をする、その最終的な態度を決められたときに、政府と与党が「農産物十二品目問題に関しては、左記の事項につき申し合わせる。」という申し合わせをなさっております。  一、一括採択を受諾するに当たっては、乳製品及びでん粉については、数量制限の撤廃は行わないとの方針を堅持すること。  二、ガットに適合する措置に移行させる品目については、我が国農業への不測の悪影響を回避するため、移行に妥当な期間の確保を図るとともに、所要かつ適切な国内措置、国境措置を確保すること。  三、以上の措置については、関係国の理解を得るよう最大限の努力を行うとともに、これに伴い生じるいかなる事態に対しても政府・与党一体となって対処すること。   昭和六十三年二月一日 というこの申し合わせ事項、私も幾たびかこういうことで政府・与党一体となってやってまいりますというようなお話を承っておりますが、この国会の場で、このことについて政府・与党が責任を持って対応するということを改めて明確にしておいていただきたい。まず農林水産大臣
  73. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃるとおりの申し合わせを、二月二日ガット理事会の前日に腹を固めましたときにその申し合わせをお願いしたところでございます。申し合わせをいたしました以上は、今言われた三項目、申し合わせそのものを当然のことながら守るということでございまして、誠実にその申し合わせに沿って進めているということをそのまま理解していただきたいものだと思います。
  74. 水谷弘

    ○水谷委員 総理、確認をいたします。
  75. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 農林水産大臣からお答えがありましたが、政府・与党の申し合わせにつきましては政府としてこれを堅持してまいります、このようにお答えした方が適当かと思います。     〔委員長退席、近藤(元)委員長代理着席〕
  76. 水谷弘

    ○水谷委員 何度も確認して恐縮でございますけれども、乳製品そしてまたでん粉、これは私が長々申し上げるまでもなく、他の八品目に比べて国内農家に対する影響は格段に大きいわけであります。特にまたこのでん粉は水産の練り製品の増量剤、お菓子の材料、あらゆるところまで用途が今拡大をしておる。自由化すると、これは米の問題、また麦、こういうところまで影響を及ぼす性格のものである。また乳製品については、これが自由化になるということになりますと、輸入した脱脂粉乳は攪拌されて生乳にするようなことが行われることもできる。日本の酪農全体に打撃を与えることは、もう間違いないわけであります。さらにまた、国内で供給されている肉の七割は酪農によるものだ。そうなると、これは肉の供給にまで響いてくる。さらには、国家貿易品目である。  こういうことになりますと、私は政府が八品目を認められたそのことについて納得しているわけではありませんけれども、しかしまあこの二品目について数量制限の撤廃は行わないと明確に政府の方針を今お決めになっているわけでありますから、どうかこれは、終始生産農家の皆さん方は、こう言っているけれども政府は本当にこれを守ってくれるのかな。この間、公明党の調査団がガット勧告受諾の真っ最中、北海道へ飛びました。そのときにも、皆さん方から出てきた御心配はそのことでございました。今政府はでん粉、乳製品は自由化しないと言っているけれども、またぎりぎりぎりぎり押されて譲るのではないか。そうなったときはどうしたらいいか。断じてそういうことのないようにしっかり頑張ってくれ。このように私どもは悲痛なお訴えの中に励ましを受けてきたわけでありますが、先ほど総理が明確におっしゃってくださいましたとおり、ひとつやっていっていただきたい。  次に、この二項目目に「移行に妥当な期間の確保を図る」とあります。大臣は参議院の予算委員会で、八品目の自由化時期については個別に対応するが、長時間をかけてはいられないので、適切なスケジュールを示していきたい、こういうふうに御発言になっております。生産者団体の皆さん方のお声を私伺いますと、この八品目の自由化までには、それはごくごく一部のものについてはまた検討の余地があるかもしれませんけれども、短くとも三年ぐらいの期間はどうしても欲しいな、そういうお話も来ているわけでございます。  しかしながら、一九七九年十一月「通報、協議、紛争解決及び監視に関する了解事項」、この了解事項の中で「妥当な期間内に」と、この勧告を受けた国は「妥当な期間内に」という表現が明確にあるわけであります。ですから、いろいろなことが言われております。ずるずるずるずる延ばすことは、また国際的に批判を浴びるのではないか。しかし、国内の生産農家に対しては、政府が十分な手だてをした上でなければ自由化に踏み切るということは許されない、こういう問題も片方にあるわけであります。この自由化の時期という問題について、今プロジェクトチームをつくりながら真剣に農水省は取り組んでおられるということでありますけれども、これは特段の慎重な、明確な対応をされませんと大変なことになります。これは交渉事になると思いますけれども、この時期というものは我が方からこれを検討した結果、こう申し上げていくのか。まず我が日本の国からこれを申し上げていく、そういう考え方でおられるのか、それをひとつ承っておきたい。
  77. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 八品目の移行の時期でございますけれども、数量制限撤廃、この時期でございますけれども、慎重な対応をしてまいりたい。そしてこちらから言うのか、先様から言うのかということでございますが、日米間での話し合いも必要でございます。その前に、やはり我が方はプロジェクトチームで慎重な対応で最善の努力を傾けた対応策というものを、まず答えを出さなければいかぬわけでございます。特に、国内関係者の皆さんからは、八品目はもう四月の一日からでも数量制限撤廃をするのではないか、こういう認識で受けとめられておった経緯もあり、そうではないのである、スケジュールを立てるに、この品目はどうだ、あの品目はどうだということでスケジュールを立て、内容的に対応策を決めるのに多くの時間をかけるわけにはまいらぬ。それはなるべく早くやらねばならぬ。しかし、数量制限撤廃の時期は、それぞれの品目についていろいろな配慮も必要だ。対応策がやはり定着をする、それが実効を上げる、さあ数量制限撤廃はそれじゃその時期でいいでしょうという時期、これを決めなければいかぬわけでこざいます。そういう意味で今一生懸命に努力をしておる。  話は戻りますけれども、こちらからするのかということになりますと、我が方は十品目をガットの理事会の場ではこれを一括のんだわけでございます。そして今、先ほどお話があったように、二品目は、乳製品、でん粉につきましては、とにかくアメリカ側も理解を十分してくださるものと期待をしつつ、これはまず別である。数量制限の撤廃は行わない。八品目については、こちら側からやはりこれは相当な時間が必要だよ。特に先ほどパインのことを例示をされたのでございますけれども、沖縄の戦中戦後、今日までの歴史的経緯、いろいろなことを考えますと、殊のほか慎重でなければならぬ。だから、スケジュールを早く決めても、実施の時期というものはある程度の期間を持たねばならぬ。このようなことはこちらからアメリカ側に説明をしなければならぬ、こう思っております。
  78. 水谷弘

    ○水谷委員 農林水産大臣、やはりすぐ自由化になるのではないのか、こういう感じというのはどうしても若干あるのです。そこら辺の誤解が、例えば私栃木県でございますが、我が県のトマトの産地がございますが、既に食品メーカーからいわゆる農家との契約面積を減らされてくる、こういうようなことが、もうあれが決まった、いわゆるガット勧告を受けた、そのことによってそういういろいろな動きが現実に見えている。ですから、私は、そういう時期の問題を、これはすぐ発表しろなどとそんなことはとんでもない話でありまして、本当にしっかり検討した上で、これは時期を定めていかなければいけません。しかし、と同時に、今現実にこういうことが起きている、そのことについても、大臣はこれはしっかり手を打っていただきませんと大変なんです。ですから、その点、大臣ひとつ。
  79. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私、不敏にいたしましてどうも広報が下手でございまして、何かガット理事会で受諾、譲った、そのことが直ちに新しい年度、すなわち四月一日から実施されるのではないかと確かに思っておられる方が多いのですよ。これはまずかったな、そう思われないうちにもっと広報を的確にやればよかったなという率直な反省を実はいたしております。ここでの受け答えも全部そのまま報道されるわけでもございませんが、そういうことについては生産者にも、流通関係者にも、また加工業界にも徹底するようさらに努力をいたしたいと思います。
  80. 水谷弘

    ○水谷委員 徹底というよりもそういうことで、例えば契約面積が既に減らされてくるとか原料買い入れ価格が抑えられてくるとか、こういうこともあるのですから、そこをひとつ明確に指導していただかなければなりません。それだけ申し上げておきます。決して大臣PR下手じゃありませんよ。――いやいや決して。私も声が大きいけれども大臣も随分声が大きいですから、決して下手じゃありません。ただ、明確に事態をとらえて最善の努力をしていただきたいと申し上げておきます。  あと一つ、ちょっと時間がございませんので余り細かく申し上げられませんけれども、この前の公述人の御出席をいただいた折のその御意見の中に、いわゆる食料品に占める農産物の原価というお話が実はございました。正確な数字ではございませんけれどもとおっしゃって、約三割くらいではないかということであります。残り七割は加工、流通その他のお金になるわけであります。  そこで、この自由化というものに対応する国内対策として国境措置、それから生産対策、またさらに加工、流通対策、いつも大臣がおっしゃっているこの三つ、これをセットで同時に進めなければ対応できない。まさにそのとおりでございまして、生産対策だけが行われたとしても、いわゆる加工の世界、流通の世界、これが明確にされなければ我が国における食品産業全体、生産者もそうでありますけれども、そこが大変な状況になるわけであります。  そういう意味で、私の手元に一例がございますけれども、確たるものではございませんけれども、この例を見てみますと、百円の缶ジュースがあるとします。現在その缶ジュースの缶代が二十七円、果汁原料代が二十円、包装、ダンボール、メーカーマージンなどが八円、流通マージンが四十五円、大体こういう構成になっている。これが自由化をされて果汁原料が例えば半分に下がったとする。しかしながらそれ以外のものがそっくり同じであるということになりますと、自由化還元額はわずか十円であります。それで、問題は缶代なのです。缶代は、外国から輸入すれば約半額でこれが入ってくる、缶代の内外価格差がクリアできない、ここに加工食品の見過ごしてはならない問題点があるわけであります。ですから、製品がそっくり海外から入ってきた場合は太刀打ちができない、そういうことになるわけであります。  そういう意味で、これから国内対策を進めていかれるわけでございますけれども、この自由化の対応として、いわゆる農水省だけが生産段階、そういう形を担当されているのでは当然だめであるために、先ほどの政府・与党申し合わせ事項にあるとおり、全省庁挙げてこの問題にお取り組みになるという御決心であるわけであります。  通産大臣、具体的な問題でなくて恐縮でございますけれども、私が今申し上げた考え方はおわかりいただけたと思うわけでございますが、どうかひとつそういう視点でこの自由化に対して通産省としてもしっかりお取り組みをいただきたい、こう考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  81. 田村元

    ○田村国務大臣 基本的には、率直に言いまして農水省の所管でございますから、私どもが余り立ち入ったことを申し上げるのはどうかと思いますが、現実に今おっしゃったとおりだと私は思うのです。でございますから、例えば通産省が担当する部門、流通部門もございましょう、あるいは中小企業対策もございましょう、あるいはその他いろんな分野で製造部門その他に対しても対応ができるわけでありますが、その点十分農水省の意見を徴しつつ、共同して日本政府として対応していくということは、仰せのとおりであろうと思います。
  82. 水谷弘

    ○水谷委員 総理、総理府が二月二十一日に、昨年九月に行った食生活・農村の役割に関する世論調査の結果を発表されております。この世論の動向を見ますと、米は日本人の主食として最もふさわしいとする人が年々ふえてまいりまして、九五%に達しております。さらに食糧の生産、供給の原則として、安い食糧は輸入する方がいい、こういうふうにお答えになった方はわずか一九・九%、二割弱。外国産より高くても食糧は生産コストを引き下げながら国内でつくる方がいいというのが三一・九%。少なくとも米などの基本食糧は生産コストを引き下げながら国内でつくる方がよいと答えられた方が三九・三%、こういう国民のお考えの姿をこの調査は教えてくれております。  私は、やはりここのところを政府もしっかり見据えていただいて、その上で我が国の食糧の安定供給という政府の大切な役割を果たしていかなければならない、こういうふうに考えるわけであります。総理、この点についていかがでございますか。
  83. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 今の世論調査の数字で見ましても、いわゆる食糧というものの自給率というものは高い方がいい、こういう結果が出ておるんじゃないかというふうに私も聞かせていただきました。と同時に、しかし委員もおっしゃいましたとおり、いわばそれは努力をして適正価格に近づけていくということが前提にあるのも事実でございますので、おととしの暮れでございましたか、農政審から答申をちょうだいした、あの線でやはりこれから努めていかなければならぬのだなというふうな感じが今のお話を聞きながらいたしたところでございます。
  84. 水谷弘

    ○水谷委員 次に、全国農協中央会が実態研究報告を機関に委託をされまして、そのものの報告をされておられます。これは農産物が収穫された後に使用される農薬、収穫が全部済んでしまった後に農薬が使用される、ポストハーベスト・アプリケーションというわけでございますが、これの調査を全国農協中央会が日本子孫基金、外村晶東京医科歯科大学教授が代表世話人でございますが、ここに研究委託をされました。その研究結果が報告をされております。  その中で、やはり今自由化の問題がここまできた。最近のデータを見ますと、すさまじい勢いで輸入農産物がこの数年ふえてきているわけであります。そういうことでこのポストハーベスト、アメリカでは連邦規則で五十八の品目が収穫後に使ってよろしいという農薬として認められているわけであります。  ところが、これに対する我が国の対応は、これは衆参の農林水産委員会また本委員会においても、この輸入食品の残留農薬の問題について種々今までも議論があったところでございますが、いまだにこの対応が確たるものがなされておらない。多く申し上げられませんけれども、また改めてこれは御指摘をさせていただきますが、収穫後に使用される薬剤が食品添加物に指定されていれば、これは当然食品衛生法で規制されるわけであります。また、食品添加物や天然物以外の薬剤が収穫後に使用される場合は、農薬として収穫後に使用すると登録されていることがまず一つは必要になる。その上で安全使用基準と残留農薬基準が設定されていれば、これは法制面では十分な対応と言える。しかしながら、現在、我が国の農薬で収穫後にそれが使用できるというふうに明確になっているものは、臭化メチルを収穫後に小麦に使用する場合しか明確になっていない。それ以外のものについては全く何の対応もできていないという実情であるわけです。アメリカ連邦規則で五十八品目ものポストハーベストが認められている。これらが使われている農産物が我が国に輸入されてきている。これからも来るであろう。さらには、アメリカだけではなくて、世界各国でこれらのものはポストハーベストとして使用されている。これに対する我が国の水際における対応というのが余りにも不明確であり、何の対応もなされていない。  このことについて厚生大臣、これは参議院の厚生省の委員会における発言の中で、「六十年から本格的にその準備に取りかかって、これについての明確な対応、すなわち農薬の残留基準等の設定を含めて取り組んでまいります。」とおっしゃっておりますが、現在どうなっているのか、またこれからどのようにしていくのか、それを含めて御答弁をいただきたい。
  85. 藤本孝雄

    ○藤本国務大臣 輸入農産物を含めまして、輸入食品の安全確保、この問題は極めて重要な課題でございまして、今後最大限の努力を払っていかなければならないと思っております。  そこで、今御指摘の収穫後の農薬につきましては、御承知のように我が国では一般的に収穫後に農薬を使うということではございません。したがって、御指摘のとおり残留農薬基準というものはないわけでございまして、ただ、輸入農産物の安全確保のために、現在WHOの基準を使っておるというのが現状でございます。しかし、御指摘のように我が国独自でこのような収穫後の農薬についての残留農薬基準、これをつくらなければならないという御指摘はまさにそのとおりでございまして、六十年からこれに、調査研究に取り組んでおるところでございます。関係省庁の御協力を得まして、早急に整備を図ることを考えております。
  86. 水谷弘

    ○水谷委員 総理、私短い時間のやりとりですから、細かいことは御理解いただけないかもしれません。しかし、このいわゆる輸入食品に対する安全性の問題は、輸入食品に対する排除とか輸入を抑制するために行うべきことでは決してないのであって、これは我が国だけではなくてFAOまたWHO、この安全基準というのはいつも修正をしなければならないような基準であるので、我が国が現在の科学水準、これをもって本当は、世界に貢献する我が国であるならば、食品の安全性、農薬の残留基準というものは日本の基準に見習え、あれが本当に安全基準だぞと国際社会の中で通用する基準を我が国がつくっていくべきだ。そうしていかなければ、五年十年また次の世代、いわゆる食品公害という問題が議論をされておりますが、堆積し蓄積していったその被害は子孫にまでこれは及ぼすわけであります。これは、ほかの問題ももちろん大事でありますけれども、どうか食品の安全性にかかわる、この輸入食品だけではございません、食品添加物の問題も、もっともっと厳しくやらなければならないことは山ほどございます。そこにしっかりとした対応をぜひしていっていただきたい。総理、一言で結構でございますが、御所見を承って、私、次の委員にかわりたいと思います。
  87. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 輸入食品、それのみならず国内における添加物、これに対しても、いかにも先進国として誇り得る基準を持つべきである、その御意見には私も賛成でございます。
  88. 水谷弘

    ○水谷委員 ありがとうございました。
  89. 近藤元次

    ○近藤(元)委員長代理 この際、冬柴鉄三君から関連質疑の申し出があります。水谷君の持ち時間の範囲内でこれを許します。冬柴鉄三君。
  90. 冬柴鐵三

    冬柴委員 公明党の冬柴鉄三でございます。きょうは短い時間ではありますけれども、安全保障政策に絞ってお尋ねをいたしたいと思います。  我が国の防衛政策は、憲法及び昭和三十二年の「国防の基本方針」並びに五十一年の「防衛計画の大綱」、以下大綱と略称いたしますけれども、その枠組みの中で決定されるべきものであることは疑問の余地はございません。そして、この三者を貫く防衛哲学は専守防衛に尽きるのではないかと私は考えております。大綱はその上に立脚をして、いわゆる基盤的防衛力構想というユニークな防衛戦略思想に基づき、防衛力の整備計画を具現化したものと理解をいたしております。  そこで防衛庁長官に伺いますが、昭和六十二年版防衛白書の九十一ページには、「政府は、」「「大綱」の基本的考え方の見直しはもちろん、別表の修正も考えていない。」このように明記されていますが、現在においてもこの考えに変更はないと思いますが、この点についてまず御確認をいただきたいと思います。
  91. 瓦力

    ○瓦国務大臣 ただいま委員御指摘のような経緯を見まして防衛計画大綱が策定されたわけでございますが、私は、極めてこの大綱は大切なものである、長官就任以来かようにこれを受けとめておりますし、今後さらにこの大綱の目指すものを大切にしていかなければならぬ、かように存じておるわけでございます。もとより、我が国が平時から保有しておくべき防衛力の水準、これを大綱に盛りまして、それを達成するがために中期防衛力整備計画、これに取り組んでおるわけでございますが、この大綱の見直し、さらに別表修正、これらにつきましては、変更する、かようなことは考えておりません。
  92. 冬柴鐵三

    冬柴委員 竹下総理にも今の点を御確認をいただきたいと思います。
  93. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 まさに現在、大綱の見直しとか別表の修正とか、それは全く考えておりません。
  94. 冬柴鐵三

    冬柴委員 本年は現在の中期防衛力整備計画の後の防衛力整備計画の作成に着手される予定とも伺っておりますが、長官、その点はいかがでございますか。
  95. 瓦力

    ○瓦国務大臣 六十六年以降の防衛力整備のあり方、こうしたことにどう取り組むか、こういうことでございますが……
  96. 冬柴鐵三

    冬柴委員 いや、ことしやるかどうか、着手されるかどうか、それで結構です。
  97. 瓦力

    ○瓦国務大臣 着手するかどうかでいいですか。私は、本年具体的な検討に着手したい、かように考えておりますが、その方針等につきましては、目下検討を重ねながら取り組んでまいりたい、かように考えております。
  98. 冬柴鐵三

    冬柴委員 このポスト中期防につきましても、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、大綱の基本的枠組みのもとで、これに定める防衛力の水準の達成を図ることを目標として作成作業に入られるものと信じていますが、その点につきましても防衛庁長官の御確認をいただきたいと思います。     〔近藤(元)委員長代理退席、委員長着席〕
  99. 瓦力

    ○瓦国務大臣 当然、国際情勢であるとかあるいは経済財政情勢であるとか、こういったものを踏まえながら考えなければならぬことではございますが、私は大綱の基本的な枠組みを見直すというようなことの必要はない、かように考えております。
  100. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総理にももう一度その点について御確認をいただきたいと思います。
  101. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 御指摘がありましたとおり、平和憲法のもと、専守防衛に徹し、軍事大国にならない、こういう考え方で作業が進められると信じております。
  102. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ここで若干大綱の内容について伺っておきたいと思います。  まず初めに、大綱を採用するに至った動機でございます。  我が国の防衛力はどこまで大きくなるのか、際限のない増強を目指しているのではないか、このような国民の声にこたえて、海上自衛隊の主要装備を例にとりましたら、対潜水上艦艇は六十隻、潜水艦は十六隻、作戦用航空機は約二百二十機というように、陸海空三自衛隊ごとに具体的な目標を定量的に明示して防衛のあり方に対する国民合意を確立したいという点に最大の眼目があったと理解をいたしております。防衛庁長官、それでよろしいですか。
  103. 瓦力

    ○瓦国務大臣 委員御指摘のとおり、国民合意を確立したいということで装備を中心にいたしましてその政策を進めてきた、かようなことでございます。
  104. 冬柴鐵三

    冬柴委員 次に、脅威と防衛との関係についてでございます。  防衛の本質というのは、古今東西を問わず、外部からの脅威に対し備えることにあると考えます。その意味において、脅威を無視した防衛ということは考えられないと言っても過言ではないと思います。しかし、大綱が採用した基盤的防衛力構想はこの点まことにユニークでありまして、脅威の量だけを考えて防衛力の量は算定しない、このように書かれております。また、平時において限定的かつ小規模な侵略に対し十分な警戒態勢をとり得るものという観点から防衛力の量を追求したとし、これにより我が国の防衛力の規模を初めて具体的に明示し得ることとなった、このように説示をしているわけでございます。  この説示部分は、平和国家日本の防衛力のあり方を懸命に追求した努力の跡がうかがえると私は評価をしているわけでございますが、この脅威の量だけを考えて防衛力の量を算定しないという象徴的な表現の部分につきまして、脅威の質と対応しつついま少し詳細な説明をお願いしたいと思います。
  105. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど先生の御質問の中に防衛計画大綱をつくった経緯等について若干触れられましたが、その中の一つとしまして当時の国際情勢に対する認識というものがございます。それはどういうことかと申しますと、当時はいわばデタントの時代が若干停滞をしている時期、そういうことである程度の地域紛争等もまた生じておった時代でありますけれども、ただ基本的な枠組みとしましては、やはり核の相互抑止が効いておる、あるいは米ソ間を初め東西間のいろいろな話し合いも持たれている、そういったことで、直ちに軍事的な全面衝突が起きるとか、あるいは軍事力をもって現状変更がすぐ行われるだろうとか、そういう状況にはないという全体的な世界情勢の認識というものに立ちまして、我々が持つべき防衛力というものについては、従来、理論的に言いますと、日本に対して起きるかもしれない侵略事態、そういったものがどの程度のものであるか、それにまさに五分に対抗できるものをつくるべきであるという、いわゆる限定的な局地戦以下の事態に最も有効に対応できるものというものを目指しておったわけであります。  しかし、それは考えてみますとかなり大きな規模のものになる。それを追求するということになりますと、現状では余りにもそれはかけ離れ過ぎているし、なまじそういう高い防衛力をねらうとかえって現状のそれぞれの機能が跛行的になるといいますか、高いものまで低まるということになりかねない、いろんな問題も生じておりました。  そこで、そういった最初に申し上げたような国際情勢というものを踏まえまして、現在仮に日本に来るかもしれない脅威というものがある、しかしそれに一〇〇%対抗できるものを持たなくても、八○なりあるいは七〇というものを持っておれば、こちらが致命的な弱点というものがなければ、すぐ相手が攻め寄せてくるということはないんではなかろうかというのが基本的な認識になっております。そういう意味で、機能なりあるいは態勢に完全な穴があいておるということは避けたい。できるだけ網羅的にすきのないものにしたい。しかし、その力の高さそのものについて言えば、百点満点をねらわないで、七十点なり六十点なり、規模の小さいものでもともかく一応そろったものにしたいというのが基本的な考え方でございます。
  106. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう少し量と質との関係にどう対応する思想があったのか、その点について簡潔に、時間もありませんので、脅威の量にどう対応するのか、脅威の質、すなわち技術水準の向上に対してはどう対応するのか、御説明をいただきたいと思います。
  107. 西廣整輝

    西廣政府委員 まず量につきましては、一つは国内的にいろいろな制約がございます。もちろん財政的な制約もございますが、それ以上に、隊員を確保する、あるいは航空機をつくっても置くべき飛行場があるかないかといった施設的な制約もございます。そういうことを考えますれば、その当時持っておった防衛力の量というものをそう大きくは出られないではないかという前提で、いかにバランスのとれた兵力といいますか防衛力をつくるかというのが一つの前提になっております。  そこで我々が考えましたのは、まず、平時においてやらなければならないこと、これはすべてできなくちゃいかぬだろう。それは何かといえば、やはり警戒、監視であります。これはレベルは低いようでございますが、二十四時間、三百六十五日やらなければいけませんので、それを十分可能にするものでなければいけない。それともう一つは訓練、練度の維持であります。訓練が整々と行われ、あるときは訓練できるがあるときは全部船がドックに入っているというようなことでは困りますので、そういったことがない、訓練が十分できるような態勢でまずどの程度の防衛力の量が要るかというものを試算いたしました。しかる後に、先ほど申し上げた限定的・小規模事態に平時そういう形で持った防衛力でどの程度の防衛能力を発揮し得るかということを検証いたしまして、それで先ほど申したように七、八〇%の力があればいいだろう、足らざるものは少し足そうということで量的な一つの枠組みも決めたわけであります。  と同時に、質につきましては、先ほど来先生もおっしゃいましたように、防衛力というのはあくまで相対的なものがございます。そういう点で、相手方の行う、とるであろう侵略態様に対応できるだけのものは持ちたいということで、質的にはできるだけ高いものを求めていきたいということで決めております。
  108. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう少し簡潔に申しますと、量はいわゆる大綱別表を限度とする、こういうことではありませんか。再度お願いします。
  109. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱決定時の周辺諸国の軍備の動向及び科学軍事技術の動向から見れば大綱別表がしかるべき量であるということでありまして、これが不変のものとは必ずしも言えない。周辺の軍備の動向は非常に変わる、大幅に変わる、あるいは軍備の質というものが非常に変わってまいりますと、編成そのものにも影響を及ぼしますので、必ずしも別表どおりでそのまま推移するということは言えないと思います。
  110. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと今の答弁は矛盾をすると思うのですね。量を追求した、国民には、これしか持ちません、しかし質は脅威に対応して上げていきますよ、しかし量はこれだけです、潜水艦は十六隻しか持ちません、このように言われているんじゃないですか。その点どうなんですか。
  111. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱別表のところに備考がついておりますように、これはあくまでそのときの考えられる兵器体系、予想される兵器体系に基づくものであるということが注記してございますが、今私が申し上げたのは、何もふえる方ばかりではなくて、ある非常にすぐれた装備体系、一つのウエポンが出てまいりますと、場合によっては量が減ることもあるということも含めて、やはり相対的な面があり、変わるべき要素があるということは御理解いただきたいと思います。
  112. 冬柴鐵三

    冬柴委員 私はアッパーを聞いているのでありまして、上限を聞いているわけですが、その点どうでしょう。
  113. 西廣整輝

    西廣政府委員 その点につきましても、限定的・小規模侵攻というものについて、極めて大きな周辺諸国の軍備の動向というものに変化があった場合には、必ずしもあのとおりであるとは言い切れない、理論的には言い切れない部分があると思いますが、私は、あの別表に掲げております兵力量というものは、防衛力の量というものは、先ほど来申し上げたように、兵員あるいは施設、そういうものを含めて我が国が持ち得るかなり上限に近いものであるというようにお考えいただいて結構だと思います。
  114. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、次に移ります。洋上防空について伺います。  昭和六十三年度の防衛予算の特徴は、シーレーン、なかんずくその洋上防空に積極的に踏み出した点にあると考えるのであります。イージス艦の導入とかあるいはOTHレーダーの導入についての調査費の計上などがそれでございます。しかし、大綱別表によれば、海上自衛隊の基幹部隊及び主要装備はおおむね潜水艦による侵略に備えるものであり、洋上における経空脅威に海上自衛隊が独力で対処するという思想は盛り込まれていなかったのではないか、このように考えるのでございます。しかし、昭和六十三年度予算における海上自衛隊の洋上防空は、今までのこの流れとは隔絶した兵器体系の整備に着手した感を持つのでございます。  まず、六十三年度予算における海上防空の思想と、洋上という場所、場面において何からどのような兵器体系のもとに何を守ろうとするのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。
  115. 西廣整輝

    西廣政府委員 六十三年度予算ということでございますので、特徴的なものとしては、私どもは、イージスシステムを搭載した護衛艦、いわゆるイージス艦と言われているものが特徴的な要求の中身ではないかと存じております。  このイージス艦というものは、我々考えておりますのは、例えば船団護衛をする、あるいは護衛隊群として行動するというときの、主としてその船団防空を主任務とする中枢艦であるというように考えております。そして、これは決して最近新たに出てきた考え方ではない。例えば昭和三十年代から護衛隊群というのはございまして、その中の防空中枢艦というものにはターターというミサイルシステムを積んだ船をつくっております。それらのいわゆる性能向上型というようにお考えいただいたらよろしかろうかと存じております。御理解をいただきたいと思います。
  116. 冬柴鐵三

    冬柴委員 じゃ、今なぜ洋上防空に着手しなければならないのか、洋上防空とは一体何なのか、その点について簡潔に御説明をいただきたいと思います。
  117. 西廣整輝

    西廣政府委員 私、洋上防空というのは、定義的に言えば、防空の一機能、防空の中で洋上で行われるものというふうに考えております。現在お尋ねのイージス艦等は、その中における船の防空の問題であります。当然洋上で行われるわけであります。  そして、なぜこの時期その種の性能向上を図らなければいけないかということでございますが、従来の艦艇攻撃というものは、周辺諸国の軍備から見ますと、航空機が頭上に来て爆弾を落とすというものが主体でございました。もちろんかなり古くからミサイル等を持っておるものもございましたけれども、これらは主として核ミサイル、かなり破壊力の大きなもので命中精度をさほど問わない、そういったものが主体でありました。しかしながら、最近において精密誘導兵器と申しますか、空対艦ミサイルというものが非常に進歩してまいりまして非常に命中精度がよくなった。したがって非核のものであってもかなり有効に使えるようになっており、しかもそれを搭載する航空機が非常にふえてきたということで、それに対応するものが必要になったのではないかということであります。
  118. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今ちょっと資料を配らせていただきますけれども、いわゆるミサイルの射程が長くなったとか航空機の足が長くなったという点につきましては、大綱制定当時の翌年の昭和五十二年の白書と、それから去年、六十二年ですね、最新版の白書と比べてみましても、そこに資料を配ったとおりでございますけれども、当時既にツポレフ16バジャーという、行動半径が三千百五十、これは中距離ですけれども、こういう足の飛行機がもう既にソ連極東軍には配備されていた。これは白書にそのように報告されている。それからツポレフ95ベアという、これは非常に足が長い、八千二百八十五キロメートルの行動半径を持っていますが、このようなものがもう既にあった。二千機のうち五百機が爆撃機であった。しかも、ツポレフ16にはAS5ケルトという射程が三百キロというようなミサイル、いわゆるエア・ツー・サーフェスのミサイルが装備が可能であったし、またAS6キングフィッシュという二百五十キロの射程のものも可能であった。また、ベアにはAS3、射程が六百五十キロという非常に長いカンガルーというミサイルももう装着可能であった。それからベアについては、どの機種かということが白書には書かれていませんけれども、このベアにはAS4キッチンという四百六十キロ、非常に精度の高い、現在も現役のミサイルが装備可能であった、このようなことが兵器の本には書かれている。  そうすると、現在、非常に航空機の足が長くなったとか、ミサイルの射程が長くなったとか、あるいは精度が増したとかという形の脅威がここでふえたということにはならないんじゃないか、このように思うわけでございますけれども、この五十二年の防衛白書と六十二年の防衛白書、この十年の間に、いわゆる洋上防空をここでしなければならない、そういうような必要性がそこで格段に生じたという説明が、今の説明では不十分ではないか、このように思うわけでございますが、御答弁をお願いしたいと思います。
  119. 小野寺龍二

    ○小野寺政府委員 ただいま資料をいただきまして、まだ詳細に比較することはできませんですけれども、ちょっと見たところの印象を述べさせていただきます。  数字は大体合っているのでございますけれども、まず第一に、TU16バジャー、それからその下段にミサイルがいろいろ書いてございますけれども、TU16バジャーというのは非常に機種が多うございまして、どんどん変化しております。それで、必ずしも昭和五十一年、二年の段階で日本周辺にこのTU16バジャーとその下のミサイルとの組み合わせがあったということは確認されておりません。現在では、バジャーGというのがAS5、それからバジャーC改というのがAS6というようなミサイルを積んでいることが大体わかっております。ただ、こういう組み合わせで配備されているのはずっと後のことでございまして、恐らく一九七〇年代の末から一九八〇年代前半にかかってのことではないかと思われます。  それから、我々として一番注目しておりますのは、このTU22Mバックファイアでございまして、これは速度がマッハ以上でございます。さらに、低高度侵入能力がある、航続距離がバジャーよりも長いというようなことで、これがこのAS4というミサイルと組み合わさったところで非常に経空脅威が増大しているということでございます。  それから、ここにTU95ベアHというのが掲げてございますけれども、これは特にAS15ミサイルと組み合わせになりますと、これはもう戦略目標に対する攻撃ということで、日本周辺ということとは余り関係ないというふうに考えております。
  120. 冬柴鐵三

    冬柴委員 今の説明のとおりだと思いますけれども、それじゃその防衛白書には、そのような詳しい、バジャーの何型が来ているとか書いてないじゃないですか。それから、今のベアについても、AS15を装着可能、このような表現がありますけれども、これは今言われたように戦略核でありまして、我々が脅威としてとらえて、これに対して防衛力をこうしなければならないという、比較すべきものではないと思うのですね。  そういう意味でこの防衛白書そのものを私はここへ書いているわけでありまして、今の説明では私としては不満でありますけれども、ここへ来て格段に距離が延びた、あるいはミサイルの射程が延びたから本土防空のために洋上防空に着手しなければならないという、その説明は納得ができないわけでございます。それはまたいずれ機会を改めて聞きます。  次に進みますが、イージス艦についてお尋ねをいたしますけれども、このイージス艦というのは艦隊防空システムの革命児だと言われておりまして、その目的はずばり空母艦隊の防空一本に絞られるとも書かれています。米国の海軍がイージス艦を持つ、こういうことは、一隻一兆円を超えるような航空母艦、そしてその上に載っている艦載機、これを直衛するからこそ存在意義もありますし、また費用対効率の原則から見ても保持の意味を見出すことができるわけでございますけれども、空母を持たない我が国の海上自衛隊がイージス艦を保有する意義はどこにあるのですか。そしてまた、このイージス艦によってどのような働きを期待し、具体的にどのような戦闘のシナリオを考えていらっしゃるのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  121. 西廣整輝

    西廣政府委員 海上防衛力を持つ意味そのものが国によってかなり違うと思います。今先生御質問の、例えばアメリカについて言いますと、アメリカという国は、日本に比べますと非常に海外依存度の少ない国であります。したがって、輸出輸入量というのは非常に少のうございます、日本に比べますと。主としてアメリカの海軍のその種海軍力というのは、彼らの軍事行動に伴うそのための所要というものが非常に多うございまして、例えば今先生おっしゃいましたように空母群を空から守る、あるいは揚陸強襲部隊、上陸用舟艇を守るとか、あるいはその他いろいろな部隊を守るというような意味がかなり強いと思います。  一方我が国は、御承知のように非常に海外依存度の高い、資源その他多くを海外に求めておるということで、有事といえどもそれらが途絶えますと国民の生存ができなくなってしまうということで、我々の主たる海上防衛力を維持している理由は、国民の生存のための海外物資の輸入というものに焦点を置いておるわけです。それにつきましても、やはり潜水艦の脅威と同時に航空機からの脅威がある。それを守るものはどうしても必要である。イージス艦のような船団のそばにいる防空中枢艦というものは、最後のぎりぎりの、発射されたミサイルなり相手の航空機なりを防ぐための最後の手段である。それがなくては船員の方々に船に乗ってくださいと言うわけにいかないというのが我々の考え方であります。  もう一つの使い方としましては、既に日本に対して着上陸侵攻が行われておる、例えば北海道なら北海道に侵攻されておるという、そういうところは多分その状況下では相当の航空優勢は相手方にとられておるだろう。そこへ増援部隊を送るあるいは避難民をそこから下げてくる、そういった場合にはどうしてもかなりの防空能力を持った部隊で護衛をして、そして行かざるを得ない。そういったためにもイージス艦のような高性能の防空艦が必要であるというように考えておる次第でございます。
  122. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それじゃ、イージス艦でオイルタンカーを守るつもりなんですか。あるいは鉄鉱石、そんなものを守るつもりで一隻が千億円を超えるような、そういうものを買った、こうおっしゃるわけですか。その点について……。
  123. 西廣整輝

    西廣政府委員 海上交通保護のための海上部隊の保護の仕方にはいろいろございますけれども、一番的確な例を申し上げますと船団輸送ということになろうと思います。商船団を守るということになろうと思います。船団輸送は、我々考えておりますのは、通常五十隻ぐらいの船団を八隻程度の護衛隊群で守る、その両翼に防空中枢艦を置きたいというのが従来から御説明しているものでございます。
  124. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そういうものに、それではバックファイアからAS4、このようなミサイルが発射される可能性がある、このようにおっしゃるわけですか。
  125. 西廣整輝

    西廣政府委員 先ほど来申し上げますように、技術の進歩で非核弾頭のかなり高性能のものが割合自由に使えるようになっている状況になりますと、発射する側が全く被害を受けないスタンドオフ攻撃といいますか、こちらの手の届かないところから攻撃できるということでございますので、その種の攻撃手段は十分とられ得るというふうに予測をいたしておるわけでございます。
  126. 冬柴鐵三

    冬柴委員 これは僕は驚きました。軍事専門家がどう言われるか。そういう油送船、貨物船とかそういうものに対してミサイルが発射される、そういうことはあり得ない、経済効率から見てもあり得ない、私はこのようなことを指摘して、次の質問に移ります。  大蔵省にお尋ねしますけれども、六十三年度、六十二年度もありましたけれども、OTHレーダーの調査費が計上されていますが、大綱別表においては航空警戒管制部隊は二十八個警戒群と定められております。そして、既に我が国は二十八カ所のレーダーサイトを持っております。そうしますと、このOTHレーダーを、今硫黄島にそのような地質調査をやられるようですけれども、整備するとした場合、これは大綱に定める定量、二十八個警戒群と言われているものを超えて二十九になるのではないでしょうか。どんな考え方からこの予算をつけられたのか、その点についてまず大蔵省からお尋ねをしたいと思います。
  127. 西垣昭

    ○西垣政府委員 個別経費の問題でございますので、私から御説明いたします。  大綱との関係をお聞きになりましたが、大綱と中期防との関係につきましては防衛庁の方からお聞き取りいただきたいと思います。  OTHレーダーでございますが、これは中期防衛力整備計画に従いましてその有用性等について検討が行われている段階でございまして、六十二年度予算におきましてもその検討のための経費ということで計上し、六十三年度につきましてもその延長として検討のための経費を計上しているわけでございます。  いずれにいたしましても、その設置場所を含めまして、これを導入するかどうかというのはこれからの決定でございまして、今のところの予算計上は検討のための経費ということでございます。
  128. 冬柴鐵三

    冬柴委員 中期防衛力整備計画の冒頭には「「防衛計画の大綱」の基本的枠組みの下、」ということが二回書かれております。総理、そのように書かれておるわけです。ですから、中期防でどうとかこうとかいう前に、大綱でどうなっているか。そうすると、検討いたしました、導入すべきである、こう決まるかどうかが今わからないのに、導入する、決めるということになると、二十八がふえて二十九になると私は思うわけですけれども、大綱では二十八しか持たない、こう言っているわけです。そういうものを一つふやす可能性があることを、大綱をいらわずに検討する費用をつけていいのかどうか、その点を聞いているわけでございます。再度お願いします。
  129. 西廣整輝

    西廣政府委員 大綱の航空自衛隊の体制の中に、航空自衛隊の基幹部隊として警戒管制部隊二十八と書いてあるのは事実でございます。この警戒管制部隊というのは、航空自衛隊の基幹部隊として、レーダーで敵を発見し、戦闘機を誘導、管制する部隊でありまして、レーダーであるからといって警戒管制部隊ではございません。レーダーは、例えばナイキ部隊も持っておりますし、艦艇も持っておるわけでございますが、それらは大綱に言う警戒管制部隊ではございませんので、そういった二十八の中には入りません。  同様に、このOTHレーダーと申しますのは、敵味方の識別だとか相手の数であるとか、そういったものを識別するものじゃございませんし、かつまた戦闘機等を誘導したりする、管制をする、そういう機能を持っておりませんので、いわゆる情報機能というように考えておりますので、先生お尋ねの二十八の枠組みの中には入らないというように御理解いただきたいと思います。
  130. 冬柴鐵三

    冬柴委員 それじゃ、別表のどこへ位置づけされるのか、その点についてお尋ねをいたします。
  131. 西廣整輝

    西廣政府委員 御承知のように、別表というのは陸海空自衛隊の中の基幹になる部隊を定めておりまして、すべての機材の数とかそういうものを掲げておるわけではございませんので、このOTHレーダーについては本文にあります情報機能の中で読んでおります。
  132. 冬柴鐵三

    冬柴委員 もう一つわからないですね、これは。  それじゃ、もう一つ伺いますが、現在二十八のレーダーサイトで航空機をコントロールできる本土周辺海域は約何キロぐらいまでの範囲になっているのですか。
  133. 西廣整輝

    西廣政府委員 これは航空機の飛んでおります高さその他と非常に関係ございまして、レーダーは御承知のように直進する性能を通常のレーダーは持っておりますので、ライン・オブ・サイトということでございますから、相手万の高さによって距離が非常に変わってくる。出力からだけ申しますれば数百キロ行くというようにお考えいただいて結構でございます。
  134. 冬柴鐵三

    冬柴委員 OTHレーダーが将来採用されるということになりますと、当然防空識別圏と申しますか、そういうものが非常に大きくなると思うのですね。そして今洋上防空研究会等で研究されていますように、いろいろなユニットで採用された場合には、当然いわゆるミサイルを積んでいる母機を要撃しなければならない範囲が今よりずっと拡大されると思うのです。その場合にも、現在航空自衛隊の作戦用航空機として約四百三十機ということが大綱で決められていますけれども、これはふやす必要がないのかどうか、その点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  135. 西廣整輝

    西廣政府委員 今、遠く洋上離れたところにおける防空作戦についての兵力量についてのお尋ねだったわけですが、実はまだそこまで検討が進んでおりませんが、我々としましては、まずOTHレーダーについて申しますと、現在レーダーでは見えないような先が見えるということは、できるだけ早期に探知をすることによって我が方の対応がいろいろ変わってくるわけであります。例えば、非常に早くわかればそれによって艦艇等の行動を、事前に回避して、相手の航空機が飛んでくる方向から回避ができるというようなこともございます。一方、今先生おっしゃられたように、そのような形で早く発見することによってこちらから要撃ユニットのようなものを発出する、戦闘機部隊なりあるいはレーダー搭載機等をつけて派遣をして、それを要撃するということも可能になろうかと思います。  しかし、そのためにどれだけの防衛力の量が要るかということについては今後の検討でこぎいますけれども、私どもは仮にその種機能が非常に有効であるということになりますと、その機能を持つことが大事であって、そういうものがあれば相手方は、爆撃機でございますから防御手段がほとんどない、爆撃機は戦闘機に対して非常に脆弱でございますから。したがって、日本がそういう機能を持っておるということで爆撃機が自由自在に飛び回るという行動そのものが非常に抑制をされる。ですから、相手が何機いるからこちらが何機要るというものではないんではないかというように考えております。したがって、それほど多くの兵力量はそのために追加する必要があるというようには考えておりません。
  136. 冬柴鐵三

    冬柴委員 そうすると、四百三十機よりも追加する必要はない、このように伺っていいわけですね。
  137. 西廣整輝

    西廣政府委員 実は検討をいたしておりませんので、それが航空自衛隊が持つことになるのか海上自衛隊がやることになるのかということも含めて何も検討してないものですから、数字について私明確に申し上げられないのも申しわけないのですが、いずれにしましても、現在の規模の中で考えるということもありましょうし、ふやすにしてもそれがどこの部隊で持つかということによって四百三十機が直ちに動いてくるものではないというようにお考えいただきたいと思います。
  138. 冬柴鐵三

    冬柴委員 時間がどんどん迫っておりますが、総理、私は、今のような検討を通じまして、大綱制定当時、まだ十年前ですけれども、一千海里シーレーン防衛のうち、潜水艦対策は十分予定されていたと思います。しかし経空脅威、洋上防空に対する体制は考慮外に置かれていた。これは五十二年版の防衛白書を読めばもうはっきりしていると私は思うのでございます。  それではなぜか、なぜそうしたのか。それは、中長距離の爆撃機から空中発射されるであろう長射程のミサイルにより対地、対艦攻撃という侵略は、その侵略の規模の大きさから見ても、我が国の国土や我が国へのタンカーや貨物船を対象に行われるという国際的政治情勢にはない、このような認識があったんではないか。万一奇襲的に行われ、限定的であったとしても、それは大綱の言う小規模侵略にはとても当たらない。そしてまた、そういうものを我が国の力、独力だけでは排除することができない。このような三つの理由から、平時における基盤的防衛力整備の範囲を超えるんだ、洋上防空ということは超える、こういうような判断によって大綱はシーレーン洋上防空、いわゆる経空脅威に対する対応というものは我が国の兵器体系から除かれたのではないか。じゃそれはどうするのか、それは日米安保条約に基づく米国からの協力を待って排除すべき事項に位置する、このように考えたのではないかと思うわけでございます。  そのように考えてまいりますと、シーレーン洋上防空への第一歩は大綱を逸脱する。先ほど総理は、大綱の枠組みの中で専守防衛、軍事大国を目指さない、このようにおっしゃいましたけれども、これはその逸脱した第一歩ではないか、このように思えてならないのでございます。  失礼ではございますけれども、憲法前文にこのように書いてあります。「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」「この憲法を確定する。」厳粛な宣言が今ほど明瞭に想起されるときはないのでございます。戦後我々は一貫して、なだらかに防衛に関する国民的なコンセンサスというものをつくり上げてきたと思うのでございます。それの集大成といいますか、それが「防衛計画の大綱」であり、そして財政的な裏づけとしての一%枠の遵守というものであったのではないか、このようには思うわけでございますけれども、最後に、時間が参りましたので竹下総理にお伺いいたしたいのですが、私が今挙げた防衛コンセンサスの尊重、軍事大国を目指さない、このような隣国に対する信頼醸成措置、そのようなものとこの洋上防空への踏み出し、その関連を総理はどのように認識していらっしゃるのか、それをお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  139. 竹下登

    ○竹下内閣総理大臣 いわゆる大綱は、我が国が保有すべき防衛力等に関して防衛の体制、防衛の構想などの基本的枠組みとなる事項を記述したものであって、個々の機能については、防衛上必要な各種の機能を備えるというところで読んでいただくべきだろうというふうに考えております。  確かに、御指摘なさいましたとおり、我が国の防衛というのは、なだらかなコンセンサスが徐々に国民次元に定着してきておるというふうに私も理解をしております。さらに、私は、今一%というお言葉もございましたが、当時の状態と今日の状態と、GNPの伸び率というものも変わってきておりますが、一%というものが果たしてきた役割というのは私なりに評価しております。したがって、防衛計画をみずからの持論として一生懸命主張いたしましたけれども、そういうことがあったという事実はいつまでも念頭に置くべきものである、こういう考え方を今日まで堅持しておるというわけであります。  いささかちょっと出過ぎたことを申し上げますならば、今のようないわば計画とか予算の中で議論していただいておるのが、これがまさに私が最も希求しておったシビリアンコントロールそのものじゃないかな。敬意を表します。
  140. 冬柴鐵三

    冬柴委員 どうもありがとうございました。
  141. 奥田敬和

    奥田委員長 これにて水谷君、冬柴君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十六日午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時二十八分散会