○坂上富男君 私は、
日本社会党・
護憲共同を代表して、
教育公務員特例法及び
地方教育行政の
組織及び
運営に関する
法律の一部を
改正する
法律案に対し、
反対の立場から
討論をいたします。(
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まず第一に、本法案は
国民的合意を欠いたまま成立が強行されようとしている点であります。
本法案は、
臨時教育審議会の答申に基づき今国会に
提出されたものであります。この
制度に対しては、教職員を中心に教育界から強い疑義が出されており、また、先日も学者、文化人の方々が今国会での本法案成立に
反対する声明を出されております。しかるに
政府・文部省は、教育関係者、特に教職員団体などとの事前の話し合いもありませんでした。本法案は、
初任者研修に藉口して教職員団体を弱体化することを目的とした弾圧立法ではありませんか。これでは臨教審の言う幅広い
国民的合意を基礎とした教育改革の実現とは全く矛盾し、
国民合意を欠いた法案と言わなければなりません。(
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第二に、本法案の審議が国会のルールを無視して強引に進められたことであります。
教育は国家百年の大計と言われます。それだけに拙速は最も戒められなければなりません。ところが、本法案の審議に当たっては、著作権法の一部を
改正する
法律案など先に付託された法案を飛び越して
委員会での強引な趣旨
説明と審議入りが行われたのであります。審議中の案件を飛び越して審議が行われた例もありますが、それはあくまで
全会一致で合意した場合のみであります。しかも
委員会の審議は、これほどの重要法案にもかかわらず、審議はわずかの二日間にすぎず、
委員会における
参考人の
意見聴取も公聴会も一切行われず、我が党議員の質問時間を残し、混乱のまま
採決があったとして本
会議において議決されることは到底容認することはできません。(
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第三に、本法案は
教育公務員特例法第二十条に違反し、無効であります。
本法案は、新任
教員に一年間の研修を義務づけようとするものでありますが、一年間の研修を新任
教員に義務づけることは、本来の研修のあり方から著しく乖離しております。
教育公務員特例法は、
教員は「研修を受ける機会が与えられなければならない。」と言っていますが、これはあくまでも
教員の自主的、自発的な研修の保障を意味しているのであります。
指導教員による
指導、教育センターでの研修、宿泊研修、洋上研修などを新任
教員に義務として押しつけることは、この趣旨に違反するものであります。
教員にとっての
資質能力の中で最も大切なものは、子供に向き合う情熱であり、子供の心を理解する力であり、単なる教育技術ではありません。確かに新任
教員は、教える技術は経験豊かな
教員に比べて劣るかもしれません。しかし、そのことだけで子供が新任
教員を評価することはありません。これは我々も、かつて子供のころ
学校で経験したことであります。若さの特権であるひたむきさ、年齢から来る親近感、新任
教員の魅力は、教える技術の経験
不足を補って余りあるものであります。臨教審も、
教員の資質の
向上は責務の自覚に立ち、
教員みずからの
向上心、不断の努力に期待するところが大きいと述べておりますが、押しつけの研修はこの指摘と矛盾しているのであります。
臨教審は、教育改革の原則として個性重視の原則を打ち出しました。だとするならば、子供の個性を大切にし、個性を重視する教育を行うためには、
教員もまた個性豊かな
教員でなければなりません。しかし、
指導教員による
指導や長期間の上からの研修の義務づけは、
教員の個性を奪うこととなり、個性重視の原則とは自已矛盾するものであります。このことは、鋳型にはまった
教員、さらに言えば、国定
教員づくりにつながるという危険が払拭できないことでもあります。教特法第二十条は教職員の権利であって義務ではないのであります。
本案は教特法第二十条に真っ向から違反するもので、無効であります。
第四に、本法案は憲法第十四条に違反して無効であります。
教員だけが他の公務員と異なって
条件づき
採用期間が一年に延長されなければならないのか、依然として不明であります。研修が一年であることと、
条件づき
採用期間が一年となることとイコールではありません。にもかかわらず、一年としたこととは、一年間の研修いかんによっては
教員として本
採用しないというたくらみが根底にあるのではないかという疑いをぬぐい切れないのであります。しかも、
実施しない
学校では従来どおりというのも、公平、平等の原則からいって間違いであり、憲法十四条違反の無効の法案であると言わねばなりません。
今こそ
初任者研修制度の
導入をやめ、偏差値教育の是正、入試地獄の解消、学歴社会の改革、学級規模の
縮小など行き届いた教育の実現、父母
負担の軽減等々の施策を
推進することこそ、父母、
国民の期待する真の教育改革の道であることを強調し、
反対討論を終わります。(
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