○
近藤元次君 私は、
自由民主党を代表して、ただいま
議題となっております
昭和六十三年度
予算三案に対し、
賛成の
討論を行うものであります。(
拍手)
最近の
経済情勢を見ますと、為替相場は、昨年末のG7による共同声明の発表以降、
円高・ドル安の
局面が一段落をし、安定した動きを示しております。また、国内景気は、
政府の累次にわたる
経済対策の効果とも相まって、昨年中ごろから大きく好転をし、今や拡大
局面に移行しており、雇用情勢も
改善傾向にあるなど極めて順調に推移しているのであります。これは、困難な
局面に際し、果敢に
対応した
国民の英知と
努力のたまものであることはもちろんでありますが、それとともに、
政府の的確な
政策運営によるところも大であります。このことについて、まず
政府に対して敬意を表するものであります。しかしながら、他方では、大幅な対外不均衡等を背景に諸外国との間に種々の
摩擦が激化しつつあるなど、困難な問題も抱えているのであります。このような現状を踏まえ、さらに将来を
展望した場合、二十一世紀に向けて
我が国が進むべき道は、対内的には、真に豊かで活力のある
経済社会の建設を目指し、対外的には、各国との協調を図りつつ、国際社会に占める地位にふさわしい役割を積極的に果たしていくことであります。
本
予算案は、かかる
展望を踏まえて、内需
中心の持続的成長と
財政改革の強力な推進を柱に、この両者のバランスをとりつつ、「
世界に貢献する
日本」という
立場にも十分意を払いながら編成されているものであり、
政府はもとより、
財政運営の責任政党たる我が
自由民主党としても、現状において行い得る最良、最善の
予算であると
考えるものであります。(
拍手)
以下、
政府原案に
賛成する主な
理由を申し上げます。
まず、
賛成の第一は、
内需拡大、雇用の安定等、
経済及び
国民生活の各面にわたって十分な対策が講じられていることであります。
具体的に申し上げますと、
一般公共事業費については、NTT株式の売り払い収入の活用分を含め前年度当初
予算に対して二〇%増という高い伸びを確保するなど、
内需拡大に最大限の配慮を払っているのであります。また、雇用対策についても、
改善傾向にある雇用情勢をさらに確かなものにするために、産業間、地域間、年齢間において見られる不均衡の
是正を図ることとして、新たに産業・地域・
高齢者雇用プロジェクトを
実施することとしております。さらに、
社会保障関係費、
中小企業対策費等のその他の
経費についても、真に必要な施策について重点的な配分を行うなど、厳しい
財政事情のもとでその効果が最大限に発揮されるようにめり張りのきいた
予算配分が行われているものであります。なお、
政府開発援助、いわゆるODA
予算については、前年度比六・五%増と
防衛費の伸びを上回り、
一般歳出中最高の伸び率を確保しており、国際的責務に取り組む
我が国の並み並みならぬ意欲は、国際的にも高い評価が得られるものと確信をするものであります。
以上のとおり、本
予算案は、内需主導型
経済構造への
転換、
国際経済摩擦の解消、雇用の安定、
国民生活環境の
整備等に資するように、
経済の各面にわたって積極かつきめ細かな配慮が払われているのでありまして、現下の
経済情勢に十二分に
対応し得るものと高く評価をするものであります。(
拍手)
賛成の第二は、
財政改革が着実に前進を見ていることであります。
今後、急速に進展する人口の高齢化や国際社会における
我が国の責任の増大など、
財政需要の増大を
考えた場合、
財政が一日も早くこのような社会
経済情勢の変化に弾力的に
対応し得る力を回復することが肝要であり、
財政改革の強力な推進が依然喫緊の
課題であることは論をまたないのであります。このため、本
予算案におきましては、
歳出の徹底した
見直し、
節減合理化等に取り組むことにより、
公債発行総額としては一兆六千六百億円の減額、
特例公債発行額では一兆八千三百億円の減額を行っているのであります。この結果、
公債依存度は一五%台にまで引き下げられ、
特例公債が発行された五十年度以降では最も低い水準となるなど、六十五年度までに
特例公債依存体質から脱却をし、
公債依存度を引き下げるという
努力目標達成は今や現実のものとなりつつあります。
しかしながら、このような
努力にもかかわらず、
公債残高は依然として累増傾向にあり、六十三年度末では百五十九兆円に達する見込みであります。また、その利払い費は十一兆円を超え、実に
歳出予算の約二割を占め、
社会保障関係費の十兆九千億円をも上回る最大の
経費として、依然大きな
財政の圧迫要因となっているのであります。
財政再建の
必要性はいささかも減じていないのであります。税の自然増収が見込まれるからといって、
歳出合理化の
努力が鈍るようなことがあってはならないのであります。むしろ、このようなときこそ、
政府におきましては一段と気を引き締め、
財政改革を一層強力に推進されんことを強く要望する次第であります。
賛成の第三は、防衛
予算について十分な配慮が払われていることであります。
昨年末、
米ソ間で
INF全廃合意が
実現されたことは、我が党としても核兵器全廃への輝かしい第一歩を記したものとして高く評価をいたしております。引き続き、戦略核兵器、
通常兵器の
削減へとさらに前進することを希求するものであります。しかしながら、これをもって直ちにデタントが成ったかのごとき、あるいは
我が国の防衛力
整備が
世界の潮流に逆行するかのごとき説を立てるのは、現実を見ない、いかにも短絡的、夢想的な
考えと言わざるを得ません。この記念すべき
INF全廃条約締結のまさにその日に起こったソ連機による
我が国領空侵犯事件は、このことを象徴的に物語るものであります。
好むと好まざるとにかかわらず、
世界の平和が均衡と抑止により維持されていることは、冷厳な事実であります。それかあらぬか、西側諸国の間で
通常兵器のアンバランスによる危機感を惹起し、大きな論議を呼んでいることは御承知のとおりであります。防衛力
整備の
必要性は増しこそすれ、いささかも減じていないのであります。片方で食糧の自給自足、いわゆる食糧安全保障を熱烈に主張しながら、他方では国の存立の基本である防衛の
必要性を否定するがごときは、本末を転倒した極めて不可思議な意味不明の論議と言わざるを得ないのであります。(
拍手)
防衛の
必要性を認め、かつ、西側同盟国の一員としてこれをサポートしていくとの
立場に立てば、本
予算案に盛り込まれた防衛
予算の評価はおのずから決するものであり、防衛関係費総額の
規模、在日
米軍駐留
経費の
負担、いわゆる
思いやり予算等は、いずれも極めて妥当なものと言わざるを得ないのであります。もちろん、いたずらに防衛
予算の拡大を意図するものでないことは、昨年一月二十四日の閣議決定において、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、節度ある防衛力を
整備する、そのように鮮明にしているとおりであります。また、
思いやり予算についても無制限に
負担を行おうとするものでないことは、さきの
予算委員会において外務大臣が言明をいたしたとおりであります。
有史以来、守りをおろそかにして国を維持し得た例を知らないのであります。今、論ずるべきは、いかにして
我が国の安全を確保するかであり、真に守るべきはGNP一%枠ではなく、貴重な
国民の生命と財産であることを、この際強く申し述べる次第であります。(
拍手)
この際、
税制改革問題について一言申し上げます。
今後の
高齢化社会の
到来、
経済社会の一層の国際化を
展望するとき、
税制の抜本的
改革の
実現は避けて通れない
課題であり、
税制改正を検討するに当たっては、
我が国の来るべき将来を
展望し、将来における望ましい
税制の
あり方、すなわち、新しい
時代の税体系を構築していくという中長期的視点が必要なのであります。そのためには、
国民の税に対する
不公平感を払拭するとともに、安定した歳入基盤を提供し得る
税制を目指し、
所得、
消費、
資産の間で均衡がとれた、公平かつ簡素な税体系を構築することが不可欠なのであります。
与野党間において実りある論議が行われ、
国民に十分納得のいく
税制改正が行われんことを希求するものであります。
さて、今回、
野党三
会派から我が党に対し
政府予算案に対する修正共同要求が行われたのでありますが、これは
所得税減税を
中心とした
大幅減税、すなわち
税制改正が主たる
内容となっているのであります。この
税制改正の
内容は、端的に申せば、中長期的視点を欠くのみならず、
減税に対する恒久的
財源の裏づけすら欠く極めて不完全なものと言わざるを得ないのであります。
私は、
与野党間において
意見、
政策に相違がある場合は、委員会等与えられた場で十分に
意見を闘わすべきであり、それが
国政について
国民の理解を得る最善の方法であり、
国会に籍を置くものの責務であると
考えるものであります。(
拍手)しかるに、今回の
予算委員会における突然の
審議中断は、
質疑者の質問
内容とは全く関係のない、
修正要求の回答の時間切れを
理由としたものであります。これは
野党諸君が日ごろから強調する
議会制民主主義にもとる到底許すことのできない行為であり、猛省を促し、私の
予算三案に対する
賛成の
討論を終わります。(
拍手)