運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1988-04-22 第112回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十二日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 戸沢 政方君    理事 逢沢 一郎君 理事 井出 正一君    理事 今枝 敬雄君 理事 太田 誠一君    理事 保岡 興治君 理事 坂上 富男君    理事 中村  巖君       上村千一郎君    大石 正光君       木部 佳昭君    佐藤 一郎君       塩崎  潤君    穂積 良行君       松野 幸泰君    宮里 松正君       稲葉 誠一君    清水  勇君       山花 貞夫君    山田 英介君       安藤  巖君  出席国務大臣         法 務 大 臣 林田悠紀夫君  出席政府委員         法務大臣官房長 根來 泰周君         法務大臣官房審         議官      稲葉 威雄君         法務省民事局長 藤井 正雄君  委員外出席者         参  考  人         (東京大学名誉         教授         千葉大学教授) 星野 英一君         参  考  人        (筑波大学教授) 穂鷹 良介君         参  考  人         (日本司法書士         会連合会会長) 牧野 忠明君         参  考  人         (日本土地家屋         調査士会連合会         会長)     多田 光吉君         法務委員会調査         室長      乙部 二郎君     ───────────── 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     穂積 良行君   稻葉  修君     大石 正光君 同日  辞任         補欠選任   大石 正光君     稻葉  修君   穂積 良行君     赤城 宗徳君     ───────────── 本日の会議に付した案件  不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案内閣提出第五二号)      ────◇─────
  2. 戸沢政方

    戸沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として東京大学名誉教授千葉大学教授星野英一君、筑波大学教授穂鷹良介君、日本司法書士会連合会会長牧野忠明君、日本土地家屋調査士会連合会会長多田光吉君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ、本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案について、参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。御意見の開陳は、星野参考人穂鷹参考人牧野参考人多田参考人順序で、お一人十分以内に取りまとめてお述べいただき、次に、委員からの質問に対しお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず星野参考人にお願いいたします。
  3. 星野英一

    星野参考人 御紹介いただきました星野でございます。  私は民法専門でございますが、登記事務コンピューター化に当たりまして留意すべき事項について審議いたしました民事行政審議会委員として参加しておりました。コンピューターのことにつきましては必ずしもよくわかりませんけれども、一応若干の質問をいたしまして納得いたしましてこの答申案に賛成したわけでありますので、ごく大まかに私がこれについて考えましたことをお話しして御参考に供したいと存じます。  登記簿コンピューター化ということは、民法考え方そのものに触れることなく不動産登記仕組みをいわば変えるということだけでありますから、問題の根本は、不動産登記制度趣旨目的からいたしまして登記事務コンピューター化が必要ないしは極めて望ましいかということ、つまり言うなれば目的達成のための技術としての適否ということにあろうかと思います。私は、大局的に見ましてこれが大いに望ましいものと考えた次第であります。  そこで、不動産登記制度趣旨でありますが、私の専門上、民法の問題に限って申し上げますと、言うまでもなく第一番目には、民法百七十七条に定められておりますとおり、民法百七十六条によって当事者間の意思表示のみにより移転した物権得喪変更、簡略化いたしまして物権変動と呼んでおりますけれども、これを第三者に対抗する要件として必要なものということであります。売買における買い主の例をとって申し上げますと、取得した物権確保ということに簡単に言えばなろうかと思います。さらに、登記をいたしましたことによって一たん確保いたしました物権が失われては困るということになります。もちろんどのようにして失われるかということが問題ですが、いずれにしても登記簿変造等がなされないということがここでの重要な要請かと思われます。  以上申し上げましたことは、これは既に買って所有権を取得したという場合でありますが、第二番目に、買う前のことであります。買い主というのは必ず登記簿を現在調べているわけですが、一体その意味は何だろうかと申しますと、これは現在の民法百七十七条によりまして、売り主が仮に他の者に売ってしまって所有権がその買い主との間では買い主に移転しておりましても、自分が先に登記をすれば完全な所有権者になりますので、売り主やその相続人による二重売買等を心配しないでよいということであります。その限りにおきまして、登記簿上の売り主から買った買い主を保護するという、いわゆる取引の安全という目的に役立つということになるわけであります。これが我が民法上の登記の持つ大きな意味の第二ということになります。  そもそも申しますと、実は我が民法におきましては、物権当事者意思表示のみによって移転するというシステムをとっております。これはフランスシステムでありますが。そこで、移転いたしました物権第三者に対抗するために登記が必要であるというこの民法百七十七条自体がこの意思表示のみによって移転するというシステムにつけ加わりますことによって、取引の安全を保護するということになります。このことは日本民法百七十六条、つまり意思表示のみによって不動産物権が移転する、こういう規定しかなかったという場合を考えてみればすぐにわかるかと思われます。  実はフランスにおきましては、フランス民法典ができました一八〇四年から約五十年間このような状態が続いたものであります。したがいまして、フランス民法における例を考えてみますと、今の意味での取引の安全ということの内容が明らかになろうかと思います。もしも意思表示だけで物権変動が行われるという百七十六条だけがあった場合を考えてみますと、既に他の人に売ってしまいますと、その者は完全に無権刺者になってしまいますので、第二の売買がなされましたときに、買い主は全く権利を取得することができません。そこで、不動産を買う者、あるいは実際は不動産抵当権をつけて貸し付けを行う者の場合が多いわけでありますが、つまり銀行の場合が多いわけでありますが、フランスでもそこが問題になったわけでありますが、それらの者が大変困るということが起こりました。そこで、フランスでは民法典制定後約五十年いたしましたところで、我が民法百七十七条に当たる規定を置きましてこの事態に備えたということであります。このようにして、買い主売り主によって先に譲渡がなされているということを恐れなくてもいいということになるわけであります。その限りで取引の安全が図られたということになります。  なお、登記の第三の意味といたしましては、我が国には明文の規定はありませんで、これはドイツ民法にはあったかと思いますが、我が国では判例によりまして、不動産登記簿権利者として登記されているときには一応権利者と推定されるということにされますので、権利者第三者などから文句をつけられました場合に権利確保しやすいということが言えるわけであります。これはさきに申し上げました登記の第一の意味と似たものでありまして、これも大ざっぱに申しまして権利確保ということになろうかと思われます。  不動産登記制度がこのような意味を持つといたしますと、これに対して要請されますものは次の点ということになりましょう。  第一に、登記簿が容易に偽造変造されるということを防ぎ、さらにはその滅失、棄損からこれを防ぐということによりまして不動産上の物権確保を確実にするということであります。  第二は、物権を取得しようとする者に現在の権利状況を迅速、正確、容易に示すということでありまして、これがいわゆる公示機能ということでありますが、これを十分に発揮させるということによっていわゆる取引の安全を図るということであります。  そこで、現状はこの点に関してどうかと申しますと、別に著しい弊害があるということは言えないわけでありますけれども、若干の問題があるようにも見受けられます。つまり、登記簿自体閲覧がなされるということに伴う若干の問題があるように思われます。そのためにその持ち出しや偽造変造がなされる、あるいはひどい場合には抜き取りがなされるという事例がたまにあるようでありまして、これは新聞にも報道されているところであります。このようなことによりまして権利そのものがなくなるということはありませんけれども、しかし、正しい登記を回復するために若干手続が必要になりますから、その限りで権利者はいろいろな損害をこうむるということになるわけであります。  また、簿冊自身を見るということによりますその摩耗ということもあるように思われまして、私は不動産取引に関連したことなどはほんの数回しかございませんけれども、そのわずかの例でも見られたところであります。また、このわずかの経験から申すのはどうかと思われますけれども閲覧にかなり時間がかかる、大変場所が混雑しているといったようなことも事実のように思われました。つまり、権利確保のためにもあるいは公示機能を十分に果たすというためにも、よりよい方法があればその方が望ましいというふうに感じられるわけであります。  さらにこれを積極的に申しますと、ある制度というものは、その運営のための時間が少なく、より少ないスペースで済み、より少ない労力で運営できるということ、つまりより効率的であるということが望ましいことは言うまでもありません。私の見ますところ、登記コンピューター化ということはこの趣旨に合致しているというふうに思われます。住民基本台帳が既にコンピューター化されているわけでありますけれども、その他いろいろなところで各方面で種々のデータコンピューター化されているということも、これが今申し上げました意味での効率化を図るということを示しているものだと思われます。  もちろん、言うまでもありませんけれども、新しい制度を採用するに際しましては、常に考えるべき点が一、二ございます。  第一は、新しい制度、ここではコンピューター化でありますが、そのために現在よりも不便な状況が生じたりすることはないだろうかということ、あるいは現在存在する前述の危険はそれによってなくなるといたしましても、新しい型の危険が発生しはしないかという問題であります。いかなる制度も常にプラス、マイナスを持っているからであります。  コンピューターという機械に関する危険の問題につきましては、これは穂鷹参考人から御説明があろうかと思われますので、そこに譲りたいと思いますが、民法的な見地から申しますと、コンピューター化ということは要するに現在の簿冊磁気テープにかえるというだけのことでありまして、内容そのものは変わりませんので、いわば図書館のカードをコンピューター化するのと同じということになります。それどころか、実はコンピューター化をいたしますと検索が容易になるという面があります。もちろんここは、また他面ではプライバシーの侵害ということを考慮しなければならない問題もありますけれども検索化の容易ということは確かにございます。  また、私どもはこの答申最後の点にもつけ加えてありますように、将来にわたりましては、不動産に関するその他いろいろな情報登記するということも可能にするものでありまして、この点は、現在の簿冊主義よりはさらに進んだ方向に行こうかと思われます。この点では、現在のやり方よりはさらに便利になるということが言えます。また、この簿冊そのものを見ないでも、いわばそのコピーに当たるものが直ちに得られるということになりますので、この点はやはり現状に比べて便利、少なくとも現状より不便になるということは考えられないように思われます。  第二の問題点というのは、新制度採用に伴う費用と新制度による効率化に伴う長期的な効率化というもののバランスを図るということでありますが、この点は私どもの問題ではございませんで、むしろここにいらっしゃる皆様方の問題でございますけれども、私の感想を申し上げますと、二十一世紀に向かっております日本といたしましては、ここで決断してよろしいことではないかというふうに考えております。  つまり、世界各国を見てまいりますと、登記簿コンピューター化方向に若干進みつつはありますが、現実に進んでおりますのはスカンジナビア等程度のようでありまして、他は、フランスを初めといたしまして若干の国で台帳コンピューター化を進めているようであります。したがって、我が国がこの台帳登記簿というもの両方につきましてコンピューター化をするということは、世界においてパイオニアの地位を占めるということになるのではないかと思われます。ただいま台帳及び登記簿と申しましたが、実はこれは昭和三十五年に台帳登記簿の一元化を行いましたので、両者を一度にコンピューター化できる、実はこういう利点が我が不動産登記法には存在するということでありまして、我が国登記簿というものは大変有利な地位にあるわけであります。この点におきましても、我が国が他国に先んじまして、世界に誇り得る制度を持つことになるのではないかというふうに私は感じた次第でございます。  以上でございます。
  4. 戸沢政方

    戸沢委員長 星野参考人ありがとうございました。  次に、穂鷹参考人にお願いいたします。
  5. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 筑波大学穂鷹でございます。  私の専門は、データベースを中心としました大規模な情報システムの構築に関する研究でございますので、その専門分野立場から意見を述べさせていただきたいと思っております。  まず、本件とのかかわり合いでございますが、不動産登記システムにつきましては、パイロットシステム評価委員会設立以来、それから民事行政審議会設立以来関与をいたしておりました。それから商業登記システムにつきましても、民事行政審議会のところで関与いたしておりました。  まず、結論的なことを先に申し上げますと、登記事務コンピューターで支援するということでございますが、これは実現は非常に難しいところもあると思いますが、極めて自然なことであろう、このように思っております。正解であろうというふうに思っております。  情報処理観点から申し上げますと、通常の事務処理コンピューターによる処理も、処理という意味では同じでございます。その時代その時代で最も望ましい手段を選択するのがよろしいわけでして、コンピューターの非常に著しい発達の結果、従来の事務処理の重要な一部分をコンピューターによって行うことがもろもろの観点から考えて有利になったからそれを使う、非常に自然な考え方ではなかろうか、このように思っております。  以下、コンピューターで支援する際の技術的な側面につきまして、五つの点につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。  一つは信頼性であります。これは、一度登記簿に書いたものが失われずに常に同じ状態で再現できるかということに関すること。  二番目は安全性であります。これは星野参考人が述べておられましたことですけれども改ざんのおそれがないか、変造のおそれがないか、そういったものに関する技術的な検討でございます。  それから三番目は、サービス性とでもいいましょうか、どのような便利な機能が提供されるのであろうかということに関しての意見。  それから四番目は迅速性でございまして、スピードがどの程度速くなされるであろうかということに関して。  五番目、最後でございますが、経済性、十分安くこれができるのであろうかどうか。  こういう諸点につきまして、参考意見を申し述べたいと思います。  まず最初の信頼性の件でございますが、これは一度書いたものがいつでも再現できるかということでありますが、何せ今度考えております情報磁気ディスクという電子的な装置に入りますので、目ではしかと見れないわけです。若干の不安点があるかと思いますが、一般にこういうシステムは一〇〇%確実という方法にはできないのでありますけれども費用を投入しさえすれば、その確実性を一〇〇%に限りなく近づけることができる。これは費用とのバランスの問題になるわけであります。  現に構想中のこの登記システムに関しましては、私の見るところ、明治以来日本でいろいろの事件が起こりました。自然災害であるとか社会的な変化とか、そういうようなものはいろいろございましたけれども、そのようなものが再び起きても多分大丈夫である。これから先どのような大きな事件があるかそれはわかりませんけれども日本が経験した明治以来のさまざまな事件、そういうようなものに対しては十分信頼性がある。その信頼性の具体的な保障の方法でありますが、これは三階層のネットワークを用いまして、情報をいわば三重で安全を図っている。登記所のところにまずデータがございますが、それがもしアベイラブルでなくても、利用可能でなくても、地方法務局レベルでその内容の復元を図ることができる。さらに、少し時間はかかりますけれども、偶然にも地方法務局レベル情報アベイラブルでなくても、中央のセンターでさらにそれを保全することができる、こういう仕組み信頼性確保されていると思われます。  二番目の安全性、つまり改ざんのおそれ等に関しての件でございますが、これは登記簿を直接利用者が手にするということがなくなり、そういう意味で、プログラムを介してでなければ直接に見ることはできなくなりますから格段に安全性は増す、そういうふうに思われます。現在は非常に危険な状態にありまして、登記簿そのもの閲覧に供されておりますけれども、そこで、登記簿そのものが目の前にあるわけですから、若干それを書きかえるというようなおそれがあるわけでありますが、今度はそれが直接利用者の手に触れることはないわけで、その意味では格段に安全性が高まる、このように思っております。  三番目のサービス性について。これはどのような便利な機能が提供できるのであろうかということに関してでございますが、謄抄本編集機能を初めとしまして、従来は、登記簿というのは記載順に読んでいくよりほかに読む手段がなかったわけでありますが、それが電子的な記録媒体に入ることによりまして、いろいろな観点から登記簿を調べることが可能となります。例えば、今は登記簿記載順番だけでありますけれども、それを登記所の職員が例えば名前によって迅速にどこに情報があるかというようなことを見ることができたりします。あるいは関連の官庁、地方公共団体に自動的な通知をなすことであるとか、あるいは統計の作成というようなものに関しましても、ほとんど人手の介入なしに自動的にそれをすることができます。それからさらに、新しい要求が生じた場合には、プログラムさえ用意すれば多種類サービスを将来追加できる可能性を持っているわけであります。  四番目の迅速性について。どれだけ処理がスピードアップされるかという点でございます。謄抄本作成に関しましては、特に現在事項を正確に確定するという作業、これは非常に変更が多かった登記簿に関しては人間にとっては非常に難しいことなのでございますが、そこはコンピューター機能によって非常に迅速にできます。これに反しまして登記それ自身、記入ですね、これに関しましては現状では余り速くなりません。少し改善されるかというくらいのところでありまして、これは一層の研究が望まれるところであります。将来はそれがだんだんとスピードアップされるであろうということは予想されております。  最後経済性ですね、システムは安上がりにできるかということでございますが、初期投資は莫大であります。これは特に、現在紙の上に載っかっている登記簿ディジタル信号として媒体の上に載っけなければいけませんので、これには移行の作業がかかりますし、システム開発初期投資、それからコンピューター設置等もございますので、初期投資は莫大ということになるかと思います。  運用コストにつきましては、これはさま変わりに非常に安くなるということは余り考えられないのではないかな。むしろ同じ程度費用でより高機能サービスが提供されることをもって、この仕事、新しい登記システムというものを進める価値があるというふうに判断すべきではないであろうか。世の中が複雑になりましてさまざまな複雑な処理要求がなされるわけでありますが、そういう場合にも同程度運用コストでそういう新しいサービスに対応することができるような可能性があるというふうに言えるのではないかと思います。  結論でございますが、新登記システムは、情報処理技術だけでこれを行うものではございません。必ずそれを人がきちんと運用するということが大前提でございます。両方なくてはいけません。コンピューターを導入することによりまして人間が非常に単純な作業から解放されまして、より高度な質の高い仕事をすることができる、そのようなことになるのではなかろうかというふうに思っております。登記簿というのは、これは人間寿命よりははるかに長いものであろうというふうに私は思っております。恐らく今つくった登記簿というのは日本国と同じだけの寿命をこれからは持つに違いないというわけでありますから、非常に長い間それを保全されなければいけないので、それがきちんと保全される体制を今後つくることが大切であろう、このように思っております。  以上で意見の陳述を終わります。
  6. 戸沢政方

    戸沢委員長 穂鷹参考人ありがとうございました。  次に、牧野参考人にお願いいたします。
  7. 牧野忠明

    牧野参考人 ただいま御紹介いただきました日本司法書士会連合会会長牧野忠明でございます。  国会議員先生各位におかれましては、かねて国政に没頭され、豊かな国家社会建設のために日夜御腐心賜っておりますことについて、心から感謝を申し上げます。我々司法書士団体に対しましても、日ころ深い御理解をいただき、御指導、御鞭撻を賜っておりますことについても、心から御礼を申し上げます。  本日は、目下国会審議にかかっております不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案に関しまして、司法書士会がこの法案に最もかかわり合いの深い職能団体であるという御理解をいただきまして、その団体を代表してここに参考人として意見を申し述べる機会を与えていただきましたことにつきましても、衷心より深く感謝を申し上げる次第であります。  この法律案は、最近の我が国社会経済の発展と並行して激増しつつあります登記事件処理するための抜本的な対策として、従来の紙登記簿中心とした登記事務処理システムを、コンピューターを導入したブックレスシステムに改革していく道を開くための法律案であると我々は理解をいたしております。  現行の登記事務処理システムコンピューター化していくというその基本方向につきましては、高度情報化社会あるいは高度ハイテク時代という一つの流れに沿った極めて先見性ある選択であるとして、我々もこれを評価しているところでございますが、率直に申し上げて、まだ類例のない画期的な構造改革でありますがゆえに、コンピューターシステムが全国に普及するにつれて、国民の不動産取引の態様がどう変化し、ひいて司法書士の業務、制度にどのような影響がもたらされるのか、全く予測がつけにくい問題であるだけに、場合によっては司法書士一万六千名、補助者、家族を入れますと十余万名になんなんとします我々社会的集団の命運にもかかわる極めて重要な問題である、こういう認識もありまして、コンピューターシステム導入の個別具体的な問題につきまして、我々団体内部においてもいろいろと議論があったところでございます。  私どもは、これらのコンピューターの関連問題も含めまして、さらに広く国民の権利保全に十全に機能する登記制度はいかにあるべきか、そういう視点に立って、登記法の改正すべき問題点を煮詰め、昨年七月第四十五回日司連定時総会において「登記法改正大綱(日司連試案)」として団体意思を確定し、その趣旨登記法改正において実現されますよう、昭和六十二年九月十四日法務大臣あてに、同年十月五日法務省民事局長あてにそれぞれ要望書を提出いたしました。これについて事務レベルの協議の場を設定していただき、今日に至っている次第であります。  他面、昭和六十年九月法務大臣から民事行政審議会に対しまして「電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり特に留意すべき事項について意見を承りたい。」旨の諮問がなされまして、その審議が開始されるに当たり、司法書士団体からも民事行政審議会委員及び幹事として代表者を送りまして、昭和六十二年十月五日答申が出されますまでの間、諮問に係ります事項に関連しいろいろの意見を申し述べさせていただきました。例えば、登記情報公開制度に伴います登記事項証明書あるいは閲覧制度の問題あるいは外部端末機の問題あるいは監査システムの問題、あるいはさらに将来的な問題としてコンピューターを使った総合的な物件情報を活用していくという方向づけの問題、それから陰に隠れておりますけれども登記情報の物件検索システムの問題、そういったいろいろな問題についても意見を述べさせていただいたところでございます。  今次法律案が、登記事務処理コンピューター化を実現するためのそれに限定されたものでありますとはいえ、ただいま申し述べましたような経緯を踏まえて法律案が煮詰められ、提案されております状況でありますがゆえに、我々団体登記事務コンピューター化に関連して要望してまいりました改正点の幾つかがこの法案の中に実現を見ております。例えば登記事項証明書、これは従来の謄抄本でありますけれども、これについては、A登記所においてB登記所の管轄物件についても請求することができることとされたこと、あるいは閲覧制度登記事項の摘要を記載した書面の交付という形で残すことができたこと、また閉鎖登記用紙の保存期間の延長が図られたこと、さらには担保権に関する登記の抹消手続の特例の実現を見たことなどなどであります。総じてこの法律案は、登記事務処理コンピューター化を推進していくための基本となる必要不可欠の法律案であると理解できますので、本院において何とぞ御可決賜りますよう、我々団体といたしましてもお願いを申し上げる次第であります。  我々の団体の関心は、さらにこの法律案可決後の法の施行段階にも向けられているわけでございまして、主に政省令、通達等の段階のレベルになると思いますけれども、これにつきましても、十分我々司法書士職の団体意見をくみ上げていただきまして生かしていただきますようお願いをしてまいるつもりにいたしております。今次不動産登記法改正はコンピューター関連に限定された法改正でございますけれども、国民の権利保全に機能する登記制度という将来的な展望に立ちました場合に、我々はさらに幅広く第二、第三次の登記法改正を希求しているわけでございます。  御高承のどとく、今日の国民の経済取引、特に不動産取引においては、登記制度は欠くことのできない重要な法律手続の制度であると評価され、高い信頼が寄せられておるところでございます。例えば不動産売買取引におきましては、当事者が司法書士に立ち会いを求め、司法書士の登記要件事実の調査確認に基づく判断をもとに、欠缺なく登記手続が完了するであろうという心証を得た上で代金の決済あるいは物件の引き渡しなどが行われることが常態となっておる現況にございます。しかし一面では、偽造された書類による登記申請やあるいは無資格者の代理による権利変動の実体を伴わない架空の登記申請等、不正不実の登記によって国民一般が予期せぬ損害をこうむるという事案も後を絶たない現況にあるわけでございまして、このことは国民一般の登記制度に対する信頼を高める上からも、あるいは予防司法という視点からも極めて憂慮すべき事態であり、早急に改善策を講じなければならないことが痛感される次第であります。  我々司法書士団体は、明治十九年登記法制定以来百余年の長さにわたりまして、登記制度に最もかかわり合いの深い団体として社会的分業関係の中で専属的にその事務を分担し、今日に至っております。これまでの経験を踏まえ、さきに申し述べました不正不実の登記を防止するための現行登記制度の改善点について、例えば登記代理権の問題あるいは登記原因証書を必要的添付書類とすることの問題等々、我々なりに問題点を煮詰めまして法務大臣あてに要望もいたし、今後それらの問題点についても協議を継続していこうという御内意を得ているところでございますが、どうかひとつ本委員会における登記法一部改正案の御審議を通じまして、国民の不動産取引の安全と円滑化に登記制度がより十全に機能していくためにはどうあるべきかという向後の登記制度のあり方についても国会の名において御示唆賜りますよう心からお願いを申し上げまして、参考人としての意見陳述を終わります。ありがとうございました。
  8. 戸沢政方

    戸沢委員長 牧野参考人ありがとうございました。  次に、多田参考人にお願いいたします。
  9. 多田光吉

    多田参考人 ただいま御指名をいただきました日本土地家屋調査士会連合会を代表する会長多田光吉でこざいます。  私どもは、表示登記に関する充実強化のために創設された調査士法に基づいて組織をつくっておるわけでございます。こうした中で、今回提出をされております不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案、これは突き詰めて申しますとコンピューター化に移行ということでございますけれども、このコンピューター化についてどうあるべきかということについて、我々の業務の中の影響というものも考え、そうした中で我々は協議を続けてきたわけでございます。  まず結論から申し上げますと、内閣提出不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案につきましては、日本土地家屋調査士会連合会は、不動産登記制度の充実を基本とする改正と受けとめまして、本国会においてぜひ成立できますよう特段の御配慮をお願いを申し上げる次第でございます。  法の改正案につきましては、日本土地家屋調査士会連合会のこれまでの対応と経過について概要を申し述べまして、御参考に供したいと思うわけでございます。  このたびの法改正案は、昭和六十年五月一日法律第三十三号による電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律に定める「電子情報処理組織を用いて登記を行う制度その他の登記事務を迅速かつ適正に処理する体制の確立に必要な施策」としての改正、こう理解をしているわけでございます。したがって、登記事務の簡素合理化、迅速化をコンピューター化によって処理をするという施策の改善ということに考えておるわけでこぎいます。  私どもは、登記事務処理の簡素化、合理化については、昭和四十七年から法務省と改善方策について寄り寄り意見の交換を数度にわたり行ってきているわけでございます。さらに、昭和五十八年におきまして東京法務局板橋登記所において実施されました登記コンピューター化の実験システムをつぶさに視察をいたしまして、近代化情報化社会の中にあって、登記行政の国民に対する情報サービス、こうした施策が一番おくれているということを確認をいたしまして、法務省といろいろ協議の場において登記事務処理の迅速化にコンピューター導入をより進めてほしいという提言もいたしておるわけでございます。こうしたことで、私どもはこのコンピューター化導入の問題については積極的に進めるべきである、さらに、これについて諸問題があるとするならば日本土地家屋調査士会連合会としては協力をするという意思表明をいたしているわけでございます。  御承知のとおり、不動産登記制度は、不動産に関する物権得喪変更登記簿に記載してこれを公示し、一般に公開をして不動産取引の安全に資する制度としているわけでございます。このことは、不動産登記制度機能が国民の不動産権利の保護、国民の社会経済の活動に大きな役割を果たしてきているところでございます。  不動産登記事件の動向は、戦後の一時期、経済の急激な発展がありまして、国民所得が増加するに伴いまして国民の不動産に関する関心が非常に高まり、人口の都市集中その他住宅の需要供給、そうした面から非常に土地の細分化した登記事件が多くなってきたわけでございます。その状況を見ますると、登記事件の趨勢は、法務省の統計によりますと、昭和五十一年度二千万件、謄抄本の交付事件が二億八千万件、昭和六十二年度には、登記事件につきましては二千六百万件ですか、謄抄本の交付については五億二百万件、昭和六十二年度の総数においては五億二千八百万件という膨大な事務処理を負担いたしているわけでございます。これに対して、登記所におきます登記事務処理に当たる人員の数は、昭和五十一年度から六十二年度まで十年の間にわずかに五百六十七人しか増員がされていない状況にあって、当然事件処理において大きく事務の停滞を来しているのが現状でございます。  さらに、これに関連して私どもの土地家屋調査士業務である表示に関する登記事件処理の問題でございますが、不動産の表示に関する登記登記簿の表題部になす登記でありまして、権利の客体である不動産自体の物理的な状況を客観的に公示することを目的としているのでありまして、登記の手続には登記官の職権主義として実地調査権が付与されておりまして、登記の申請があったときは積極的に原則として登記官が実地調査を行い、そしてその申請の事実を確認して登記される、こうした手続がなされるわけでございます。  しかしながら、登記所の量的な登記事件事務処理の体制が十分でないところから、国民の不動産取引に関する、権利に関する登記が優先されてあって、権利の基本とする表示に関する登記の実地調査が特別な事案を除いては実施されていないのが現状でございます。連合会は常に登記行政の効率化に調査士制度の活用万策について提言をいたしているところでありますが、このたび山積する登記事務の、コンピューター導入によって事務処理の迅速化が図られる。こうした改正は、登記事務の省力化による余剰の人員をもって表示に関する登記の充実に対処する機構整備が図られるのでありまして、表示に関する登記制度の充実強化が期待されるところでございます。  次に、私どもがこのコンピューター化の法改正について要望を提出してある事案につきまして、二、三申し上げたいと思うわけでございます。  一番目に、コンピューター化の導入に伴って登記事項の移記の際に、表示に関する事項については、現に効力を有しないものであっても移記をしてほしい。このことは、法務省といろいろ協議をした中でこうしたことも配慮するということの確認も得ておりますけれども、さらに再確認の意味で申し上げたいと思います。  表示に関する登記申請手続は、その不動産登記された時点からの変動、経過を基礎として調査をする必要があるわけでございます。特にメートル法の書きかえをした関係での地積の表示、合筆地積の表示あるいは地目変更等、そうした地積の表示がある点で丸められております。また、手続上表示をしないことになっているものでも必要とする事案がありますので、これについては現に効力を有しないものであってもすべて移記をしてほしい。  それから二番目の問題でございますけれども、地番、家屋番号、住居表示番号からも検索できるようにしてほしい。これは現状における土地の所有者あるいは関係者においても、住居表示については十分承知しているけれども実際に登記に記載されておる地番についてはよくわかっていないというのが現状でございますので、こういう点も検索できるようにひとつお願いをしたい。  それから三番目でございますけれども、休眠抵当権について一定年数の経過もしくは名義人の行方不明等の場合、元本及び最後の二年分の利息を供託して抹消できる手続の検討、この問題につきましては、私ども現在業務の中で、公共事業あるいは十七条地図作製その他、地図混乱地域の解消等について登記権利者の承諾を必要とする場合が非常に多くあるわけでございます。しかし、こうした休眠抵当権については、行方不明者あるいはその存在がないという事案が非常に多くある。それで登記業務の処理に影響を来しているのが現状でございます。こういう点も勘案をいただきまして、何らかそうした抹消する手続をしてほしいということが現状でございます。  また四番目といたしましては、閉鎖登記簿の証明書発行ができるようにしてほしい。これはコンピューター導入によってこうした手続がなされるということの確認を得ておりますので、申し上げておくだけでございます。  その次に、不動産に関する総合情報システム、これは民事行政審議会答申最後に提案をされてございますけれども登記情報システムコンピューター化に移行される。そうした中で一番問題になりますのは、地図の情報管理ということであろうかと思うわけでございます。国土庁は最近、地図の電算化による情報の推進について積極的な推進万策を進めておる。その中に私ども非常に懸念するものは、登記制度における公法上の筆界の確認、そうした正確性を持った情報でない。私ども考えておりますコンピューター化情報提供、これは不動産登記法に基づいた権利の範囲を明確にする情報でなければならない。こうしたことも配慮しながら、今後におきましては地図情報を含めてコンピューター化方向に検討をいただきたいということを申し上げたいわけでございます。  以上、まとまらない状況でもございますけれども、これらにつきましていろいろ法務省と協議を続けております。コンピューター化の導入がなされた時点におきましては、その後の行政の運用につきましては法務省とも協議をいたしまして、積極的な協力をしていく心構えでございますので、よろしくお願いを申し上げます。  以上をもって終わります。ありがとうございました。
  10. 戸沢政方

    戸沢委員長 多田参考人ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 戸沢政方

    戸沢委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎潤君。
  12. 塩崎潤

    ○塩崎委員 ただいま星野先生、穂鷹先生、そして牧野司法書士会連合会会長多田日本土地家屋調査士会連合会会長の四方から大変貴重な御意見を賜りまして、私どもに大変参考になりましたことをまずお礼を申し上げたいと思うのでございます。  質問の時間が与えられましたので、若干の御意見をぜひとも承りたいと思って質問をさせていただきたいと思います。  まず、四方ともこの法案についての御意見は、コンピューター化、しかも時代の要請に沿った非常に緊要な改正である、ぜひとも早く可決をしてくれというような御意見だったように思うわけでございます。そこで私は、確かにこの法案を早く可決をして、そして今大変要請の多い登記処理問題を迅速に解決しなければならない、こんなふうに思うところでございます。四月十一日の朝日新聞の夕刊でございますが、ここに「境界で相談急増 首都圏の法務局 十センチにもこだわり」、五十九年には約三千八百件であった相談事項が六十一年には六千八百件、六十二年も相談件数のほぼ半分に当たる約六千六百件に上った、こんなふうに示されているわけでございます。  そこで、星野先生、ひとつぜひとも伺いたいのは、確かにコンピューター化によって処理の迅速化が図られるのですけれども、このように、狂乱地価のせいもございまするけれども、いろいろ登記についての申請がふえてくる。コンピューター化だけで果たして不動産登記法が現在の要請にこたえられるであろうかどうか。この点について、先生は構成委員であったというように今言われました。そのような点についてどんなような御意見が法制委員会であったかどうか、あるいはまた、この点について先生はどのように考えられるか、まずその御意見を承りたいと思うのでございます。
  13. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  その委員会内容につきましてはちょっとお話しすることはなかなかできませんが、いずれにいたしましても、先ほど穂鷹参考人もお話しいただきましたように、コンピューター化というのは要するに今までの簿冊磁気ディスク、テープにかえるというだけのことでありまして、問題は、それを運用する人ということが当然伴うわけであります。したがいまして、このコンピューターにしたことのほかに、いろいろ、それを使う登記官のさらに一層の資質の向上であるとかあるいは登記官の働きやすい場をつくるとか、そういったような問題が当然出てこようかと思いますけれども、仮に現在の状況のままでいたしましても、とにかくそれによるメリットは非常に大きいだろうというふうに私どもは考えた次第でございます。
  14. 塩崎潤

    ○塩崎委員 先生は民法教授でございますし、私も民法を大学で専攻したときに、不動産登記法の話を我妻先生からたびたび聞かされました。明治三十二年の法律で大変古い法律だ、したがっていろいろと権利保護の観点から不備が多いと、我妻先生らしくいろいろ書いておられたのを今思い出すのでございますが、私は、例えばコンピューター化に当たって、権利保護の観点から果たしてコンピューター化だけで足りるか、あるいはコンピューター化する際に当たってこういった点をインプットして権利保護に当たることが適当ではないか、こんなような意見があったかどうかですね。  例えば、先生御承知の登記原因証書を添付して登記申請をするわけでございますけれども登記原因証書はいかなるものが適当であるか、いろいろ意見もあるようでございますけれども、非常に大事な証書でございます。そして、今も多田会長も言っておられましたが、やはり登記の歴史というものは大変大事で、今おっしゃったように権利の公示力、公信力はないようでございますが公示力はあるという解釈で、大変大事なものでございますが、例えば権利証のようなものを、内容を検討してインプットしていって登記の真正を確保していく、このようなことを議論にならなかったかどうか、この点について星野先生の御意見を承りたいと思います。特に、もう御承知のように地面師の暗躍、したがっていろいろと土地が詐欺によって権利を失い、しかし権利はどうせ取り戻しはできるというお話はありましたけれども、それまでの大変な苦痛、損害、これを考えますと、私は、地面師の横行が今最も激しい今日でございますから、不動産登記法の改正に当たってはこの点が当然論議をされたと思うのですが、いかがでございましょうか。
  15. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  私の理解では、不動産登記法の本体と申しますか、あるいはもっと申しますと、ただいまの御質問はどちらかといえば民法などに関連することかと思いますけれども、今回の法改正に関しましては、民法そのものには触れるということは一切しておりませんので、その問題について余り議論したという記憶は実はございません。おっしゃいました問題はむしろ非常に一般的な問題かと思いますけれども、これは御承知のとおり、我が民法そのものの不動産物権変動のシステムというのはフランス法によっているわけでありまして、登記というのは対抗要件にすぎないと言うと語弊がありますけれども不動産物権変動は意思表示売買なら売買だけで完了する、しかしこれは当事者間では完了するけれども第三者に対抗するには登記が要るということになっております。このシステムフランスから参ったわけでありますが、ドイツあるいはスイスあたりのシステムですと、これは登記をしなければそもそも所有権が移転しないというシステムをとっております。  ちなみに、フランスの場合でありますが、登記簿そのものシステムはこれはまたドイツと違いまして、我が民法不動産登記簿システム、これはドイツをとっているわけでありますが、フランスの場合には売買契約書そのものをかつてはただ手で写しておったわけでありますが、最近はそのものを公正証書にいたしましてファイルしておくというだけのシステムをとっております。ドイツあるいは日本式の、これはいわゆる物的編成主義ということになりますが、物的編成主義というものを維持する限りは、どうしてもこれに記載できる事項というものは限られざるを得ないということになります。これがコンピューター化されますと、今おっしゃいましたように、ある程度ふえ得るということにはなるわけです。ある程度と申しますか、私も最後に申し上げましたように、非常に多くのものが入り得るということになりまして、ある意味ではフランス登記簿の便利さというものをもとり得るという可能性ができたわけですね。  ただ、今度は問題になりますのは、ドイツシステムをとりました場合に一体どの部分がどのような効力を、つまりどの記載がどのような効力を持つかという問題は、また一つ一つ考えてみなければならないという問題が出てまいります。これは例えばただいまドイツ法の公信力の問題についてお話がありましたが、ドイツにおきまして登記簿に公信力があると申しましても、どの部分に公信力があるかという問題がやはり一つありまして、例えば登記の公信力と申しましても、物、不動産現状の記載に関しては公信力はないということになっております。したがって、今の場合の日本では要するに物権変動の対抗要件としての意味しか持ちませんので、そうするとこの物権変動の対抗要件としての意味を持たせるためにはどこまで記載すればいいかということを考えれば足りるわけでありますから、そういたしますと、いろいろな記載を入れることは可能になるという点で、実はフランスでも非常にいろいろな公法的な権利関係を記載するということをやっております。もっともこれは義務的な記載ではありませんが、できるということになっておりまして、ある意味では非常に便利になる、今後も便利になるかと思いますが、反面、それに伴いましてその記載の、一体実体法的にどういう効力を持つかという問題を一つ一つ考えなければならないという問題が起こってこようかと私は考えております。  そこで、おっしゃいました点は、実は今までのところはそれほど、この審議会といいますか、一般的にも考えられていないのではないかという感じがいたします。ただ、もっとも、思い切ったことを考えますならば、日本民法のような物権変動意思表示のみによって生ずるというシステムを改めてしまって、登記をしなければ物権が変動しないというシステムに変えるということはどうかという問題がそもそもありますし、例えば公信力を認めたらどうかという考え方もありますけれども、前者に関しましては、私どもはたしか三十年ぐらい前に研究会をいたしまして、当時の民事局の方などにもおいでいただいたかと思いますが、これは学者の研究会ですが、そこでは、この登記物権変動の効力要件と申しますか、つまりドイツ、スイス式に改めたらどうかというような意見になったように記憶しておりますけれども、そこまでいくということはもちろん当然今日の段階では考えられるものでもございませんし、その問題については今回余り検討しなかったし、また、する必要もなかったというふうに私どもは実は考えた次第です。
  16. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私はもう地面師の横行から見ても、ぜひともこの不動産登記法権利確保観点からの改正は喫緊の問題だ、こんなふうに思っているのでございます。今登記原因証書を挙げましたのもその理由の一つでございますが、例えばもう一つは、登記済み証といいますか権利証を持っている人は少ない、したがって権利証の交付に関連して保証人制度がありますが、これについてのいろいろな乱用または詐欺的なことが多いことは御案内のとおりでございます。私はぜひとも法制審でこの不動産登記法の問題を権利確保観点から御検討していただいて、また早目に提案していただきたい。これが先ほどの牧野会長の御意見でもあった、こんなふうに私は思うわけでございますので、この点を星野先生にお願いしたいと思うのです。  もう一つ、穂鷹先生にお願いしたいのでございますが、今穂鷹先生が申されましたのは、信頼性安全性サービス性迅速性経済性、この五点からコンピューター化の特徴というか、メリットを言っておられました。そこで、このようなメリットがあるとすれば、将来、先ほども申しましたように、コンピューターにいろいろな内容をインプットするようなことも考えられますし、例えば登記申請人の便利も考えて、あるいは権利者の便利も考えて、司法書士が端末を持って登記所との間をコンピューターでつないでいく、こんなことが考えられるかどうか、穂鷹先生の御意見をひとつ承りたいと思います。
  17. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 お答えいたします。  登記簿に対しまして、閲覧に当たります読み取るという操作に関しましては、司法書士の方とか外部の方が使うような端末を外部に出すことは、内容を変えませんからそれほど難しくはないと思っております。ところが、内容を変える件に関するような、登記の申請みたいなものに関しましては、これは校合のときに非常に問題があると思いますので、それが遠隔地でできるかどうかということに関しては今回は議論をいたしませんでしたし、相当難しい問題があるように思っております。閲覧に関しましては、プライバシー云々の問題を除けば技術的には可能であろうと思われます。
  18. 塩崎潤

    ○塩崎委員 私は、コンピューター化によって便利性、迅速性そして閲覧等の容易さ、このようなことが進むこと、特に司法書士が登記代理人になることがほとんどなんですから、端末によって連携していくようなことをぜひとも考えていきたいと思うのです。  なお一つ、星野先生は対抗要件と言われましたが、国民は対抗要件以上に登記の重要性を考えているというふうに私は理解しています。したがって、登記についての間違いがないように、司法書士の方々の制度不動産登記法でうんと活用するような方向をひとつ考えていただくように星野先生、穂鷹先生等に特にお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  19. 戸沢政方

  20. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 各参考人皆様方には、大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。社会党の稲葉誠一でございます。  星野先生にはこの前も何かのときに参考人としておいでいただいたように記憶いたしておるのですが、いろいろお伺いをさせていただきまして、今度の不動産登記法の改正そのものについては、コンピューター化についての議論よりもむしろ基本的に不動産登記法が抱えておるいろいろな問題があるはずなんですが、それが全然と言っていいほど今度の場合には出ていないわけです。将来の問題として残されておるわけなんですが、そこを具体的にどうしなければいけないかということが私は大きな課題だというふうに考えておるわけでございます。不動産登記法が抱えている諸問題、殊に今後不動産登記法なり、あるいは実体法の民法にもかかわってくるかとも思いますが、そういう点を含めてどういう点が問題でどういう方向へ進むべきなんだろうか、こういう点についての御意見をぜひお聞かせをお願いいたしたいと思うわけです。  今塩崎さんからも御質問がございましたように、結局、フランス民法流の意思主義を不動産にとっておるということからいろいろな問題が起きてきているようにも私考えられるわけですが、一つの問題は公信力の問題でございますね。公示の機能から公信力の問題へとだんだん世の中が移ってきているのだという意見の方もございますし、それから、公信力を三十年ぐらい前から当然認めるべきだという御議論の方も大学教授の中にはいらっしゃいます。その場合に、静的安全というものと動的安全というものをどういうふうに対比していくのか、その条件をどう整備していくのかとか、あるいは公信力議論というものは、現実にはもう与えられているのだからそう議論する必要もないではないかという議論もございますし、その他いろいろな問題があると思います。その点、全体を含めまして星野先生の御意見をぜひ承らせていただきたい、かように思います。
  21. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  これは先ほど塩崎先生からも御質問があった問題と全く同じかと思いますが、恐らく二つあろうかと思います。  一つは、登記に入る以前と申しますか、つまり売買契約があるかないか、どのような契約であるかということをいかにして立証するかと申しましょうか、登記の際にその点をどれだけ確認するかという問題かと思います。これは言うまでもなく非常に重要な問題かと思いますが、私もどうも日本の実情に疎いものですから甚だお恥ずかしい次第でありますけれども、これは国によりましていろいろな形でなされているように思います。例えばフランスなどでは対抗要件主義をとっておりますが、トラブルはかなり少ないと言われておるのです。それはなぜかと申しますと、あそこは公証人制度が非常に発達しておりまして、そこで大体幾らかでも不動産を持っているような人は、ちょうどかかりつけの医者がいるようにかかりつけの公証人というものがいる。そしてやりますので、公証人がかなりよく知っているわけですね。自分の管轄にある不動産について知っておりますし、また、何かにつけ十分にそれを調査いたしてやるということのようであります。  そして実は、そういうものを背景にいたしまして一九五五年に不動産登記法の大々的な改正をしたわけでありますが、この改正は先ほど申し上げましたように、もともとフランス登記簿というものは契約証書をただつづるということだけであったけれども、もう一つ、実は人的編成による権利者の索引がついておったわけであります。そこで、フランス登記簿というのは実は年代順編成主義というのが厳密な言い方になりますが、人的編成の索引があったということになりますので、しばしば日本ではフランス登記簿は人的編成主義だというふうに言われております。やや不正確かと思いますけれども、実質的にはそう間違いはなかろうかと思います。  ところで、人名による索引を一九五五年にカード化いたしました。さらに今度は物的編成によるカードをつくりまして、そのカードも比較的地上の建物の多いあるいは物権変動の多いところの都市と農村とに分けまして、結局三種類の色分けのカード、キャビネットに入るようなかなり大きいカードでございますが、それで一種の索引をつくったということでございます。そこでそれとの関連で、登記をいたしますものを普通の証書ではなくて公正証書にするということにいたしました。そこでいわば登記の真正を確保するということにしたわけであります。これがフランスシステムでありますが、ドイツは御承知のとおりでありまして、これはそもそも物権変動のためのいわゆる物権契約というものを登記所でいたしますから、そこでまず間違いなくなされるということになります。  問題は、日本でどうかということになるわけでありますけれども、これは日本の実情その他を考慮いたしまして十分に検討すべき事項であろうと考えております。具体的に登記の手続あるいは司法書士さんのあり方といったようなものにつきまして、私は十分な情報をまだ得ておりませんものですから、その点は今後の検討が必要かと考えております。  それから公信力の問題でございますけれども、先ほどもお話がありましたように、若干の学者の方が公信力を認めるべきだと言っておられるわけであります。ただ、どちらかと申しますと今までは大体多数の方がやはりちょっと無理ではないかと言っておりました。それは、これも先ほど御指摘がございましたようにいわゆる静的安全と動的安全の調和ということでありまして、どうしても動的安全の方にはかりが傾きまして、結局あれによりまして真の所有者というものの権利が害されるおそれが若干ある。それをどう考えるかということですが、従来の考え方で参りますと動的安全を認めた、つまり登記簿の公信力を認めたという制度、これはドイツ、スイスにございますけれども、ドイツでそれが認められました機縁というのは、実はプロイセンにおきます大農場制度から参りまして、大農場に対しまして大いに資本を投下いたしまして農業の大規模な拡大を図ろうといたしましたときに、銀行から金を借りなければならない。実はそのために特にラントシャフトという銀行をつくったわけでありますが、銀行が貸し付けるに当たりまして抵当権確保しなければいけないということで公信力を認めるということを非常に強く言って、そこで公信力制度というものが認められるに至ったということが言われておりますけれども、結局問題は不動産がどの程度取引されているか、不動産取引の量ということ、あるいは特に売買のみならず抵当権設定の量というものがどのくらい多いかということに一つはよろうかと思います。御承知のとおり、動産に関しましては占有に公信力を認めておりますのは、動産というものは非常に取引が頻繁に行われるからだと言われております。  もう一つは、不動産所有に対する国民の意識というものが問題になるだろうと言われております。というのは、かつて言われておりましたことは、我が国民は不動産というもの、特に所有権は非常に大事だ、先祖代々のお宝であると言ってなかなか手放さないといったような傾向がある。今でもあるように私は存じております。そこでこの公信力などを認めて、場合によってはそれが失われてしまうということになるとちょっと我が国民の意識に合わないのではないか、こういう点が言われまして、今の二点を考慮すると、どうも静的安全の方にはかりが傾くのではないかということが従来言われていた点であります。  これに対しまして、もちろん、いやその程度はやむを得ないのだ、むしろそれよりも動的安全をより図った方がいいというのが従来の考え方でありましたが、最近比較的実は議論がなされておりませんけれども、最近のように非常に不動産取引が頻繁になったという状況のもとでどうしたらいいか、これもまた両面ございまして、非常に取引が行われるのだからやはり買い主の方を大いに保護したらいいというふうに考えるか、逆に、これは第一の問題にも関連しますけれども、例えばたまたま自分の持っております土地について間違った登記があったためにその権利を失ってしまうということがよりふえることが危険であると者えるか、これは極めて微妙な選択だということになるのではないかと私は考えております。これは私としてもちょっと今のところ、まだどちらか個人として踏み切ることができないのでありますけれども、おもしろいことは、韓国などでもそのような問題を考えているようであります。実は韓国の民法というのは日本民法を非常に参考にしてつくったものでございますけれども、ただこの物権変動に関しましてはドイツ式のシステムを一応とりましたが、公信力は認めていないわけです。しかし公信力まで進むべきではないかという議論があるということを実は昨年伺ったわけでありますが、そういった議論なども参考にしながら、これも今後さらに検討を進めるべき事項かと考えております。
  22. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 星野先生、例えば田から乙に不動産所有権売買で移転しますね、意思主義ですから。それで今度は甲から丙へ売買がされますね。それで丙が登記すると、丙が対抗力があるということで事実上丙の所有権になるわけですね。その場合、甲は乙に対して既に所有権は意思主義によりますと移っているわけですから、無権原者になっているはずですね。それを丙が、善意無過失が必要なことかちょっとよくわかりませんけれども、買って登記してしまえば所有権者になるわけです。これは、そこで公信力というものを認めた結果としてそういう議論が出てくるのではないのでしょうか。そこはどういうふうに理解したらよろしいのでしょうか。
  23. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  ただいまのように民法百七十六条、百七十七条の二重譲渡のシステムをどう説明するかということは非常に議論がございまして、ただいまお話のような見解も実は最近割合有力に唱えられてきたわけでございますけれども、どちらかというとこれは少ないのではないかと思います。  と申しますのは、先ほどもちょっと触れましたように、百七十六条だけしかない状況ですと意思表示だけで所有権が完全に移ってしまいますから、あとは仮に甲に登記がございましてももうどうにもならない。甲に登記があるから甲のものだと信頼して買っても、丙は全く無権利者から取得したということになります。ところが、なぜフランスで百七十七条に当たる条文を入れたかと申しますと、例えば二重売買の弊害があった、つまり今の丙が害されるということがあったからでございます。そうなりますと、結局丙は登記をすればいいということになるわけですが、ということは結局、説明といたしましては、甲は乙に所有権を移転しても、またさらに丙に売って丙が登記を備えれば丙は完全な所有権者になるということですから、甲は乙に売ることによって完全に無権利者になったのではないと言わざるを得ないのではないか。民法百七十七条がむしろ二重譲渡の場合に丙の所有権取得を可能にしたものであって、したがってこれはいわば民法百七十七条によってそのようなことが認められるもので、公信力による取得とは若干違うのではないか。公信力というのは甲が全くゼロの場合を考えているわけなので、この場合は甲が所有権者であって、なお丙に売って丙が登記を備えれば所有権を取得し得るというだけの権利しか乙に売っていないわけでありますから、その限りで甲に何か残っていると説明すればその方がむしろ適切ではないかという考え万の方が多いように思われまして、私自身はそういう考え方をとっておる次第でございます。
  24. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ありがとうございました。  穂鷹先生にお伺いしたいわけですが、それは、今度の民事行政審議会答申の中で「今後の検討課題」というところが二つございますね。最後の項で「不動産に関する総合的情報システムへの対応」というのがあるわけです。いろいろ書いてあるわけなんですが、これが今後の一番大きな問題だ、私はこういうふうに思うわけなんです。ちょっと抽象的に書いてあるものですからよくわからない点があるのですが、不動産に関する総合的情報システムというものをどういうふうにあるべきものを考えて、そこに至るプロセスをどういうふうに行政当局なり、あるいはその他のところもあると思いますが、していかなければいけないのか、そこら辺はどういう御意見なんでしょうかお聞かせ願えればと、こう思うわけです。
  25. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 お答え申し上げます。  これにつきましては、民事行政審議会答申の後の二項は初めはなかったのでありますけれども委員の中に登記情報システムの重要性について、将来の発展につきましての意見が出されまして、将来のことに関しましてそれを有効に使おうという意見が積極的に出されまして、私もその一人であったわけですけれども、こういう条項を入れていただいたわけであります。  そのときに、どういうステップで将来具体的なことにうたってありますようなことにたどりつくかということについての議論はなされませんでしたので、ここでは私は自分の考えだけを申し上げてお答えしたいと思いますけれどもデータベースの方の考えでは、一つの事実は一カ所でとらえるという原則があります。一つの事実は一カ所で管理するという意味ですね。一つの事実を一カ所で管理しないといろいろな弊害がある。例えば皆さん方は今キャッシュディスペンサーというようなものをお使いで、銀行のカードなどというものは何種類も持っているかと思いますが、それは一人の人の財産というものに関しては同じものなんですね。それが、違うような形でいろいろ持たなければいけないということは、結局管理の主体が違うたびごとにいろいろなものを持たなければいけない、カードも何種類も持たなければいけないというようなことがあります。そういうことをやりますと管理が非常に難しくなるので一カ所に置くというのがデータベースの基本的な概念なんであります。  不動産についても同じことでありまして、不動産につきまして、片や建設会社がこのように見る、国土庁がこのように見る、あるいは法務省がこのように見る、おのおのの見方によって別々になされるということは、そこの間に情報というものが違ったふうに解釈されてしまったりするので不都合ではなかろうか。一つの事実というものは一カ所で管理するということであるならば、非常によく整理されている不動産に関する情報というものが、法務省の情報をもとにしまして、ほかの使い万と協調して一カ所で管理して多様なサービスというのが提供できるような道を開くのではないか、そういう意味合いで私は受けとめておりました。
  26. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 穂鷹先生、今お話がありました国土庁と法務省とのいろいろな関係、殊に地図の問題が中心になるかとも思いますが、これは多田さんからも先ほどお話が出たと思うのですが、これは国土庁と法務省との間で相当立場が違うというか、いろいろな点がありまして、考え方が違うようなところもあるのでございましょうか。
  27. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 お答えいたします。  私は国土庁については余り詳しいことは知らないのでありますけれども、一つの土地を見たときに、その土地の状態というのは一つしかないはずだと思うのですね。それがどこでオーソラィズされるかということが問題でありますけれども、例えばデータのインプットにしましても、同じものについて違う人が扱うとしますと、データのインプットを複数箇所で行わなければいけないわけですね。ですから、例えば法務省で苦労してお金をかけてデータを入れているものが、別の官庁で別の目的のためにやるときにはまたお金がかかる。今度は民間会社か何かがその土地のことについて情報をつくろうと思うと、自分のところでまたデータを入れなければいけない。一カ所で非常に効率よくきちっとしてデータが入っておるものであるならば、同じ努力を方々で繰り返さない万が社会としては全体ではメリットを受けるのではないか。かつ、そこに入れられている情報というものについても矛盾がない。ですから、土地に関するような情報というのは、扱い万はいろいろな方法があるけれども根は一つであるというふうに考えるのが非常に得策ではないか。一つの情報を一カ所で管理するという原則がここにも生きるのではないか、このように考えたということであります。
  28. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 日本司法書士会連合会の牧野会長にお尋ねをいたすわけでございますが、登記の不正不実の防止、このためにはどうしたらいいかということが中心になるわけですが、司法書士の方々が今裁判で損害賠償の訴えを随分起こされていますね。この前認められたのでは大阪のがありまして、これは過失相殺が九割ありまして、不動産業者からのあれで一割だけ認められたということですが、全体の金額が大きいものですから物すごい金額のあれですけれども、司法書士の方が病気で入院されているときにあれした事件のようですけれども、いずれにいたしましても、そういうふうなことの中で司法書士の責任というのは非常に重くなっていますね、判例を見ますと。肯定されたのと否定されたのとありますが、それを項目別にして、私、法務省の方に頼んでありまして、午後よく説明してもらうことになっておるわけなんです。  いずれにいたしましても、そういうふうなことを考えたときに、不正不実の登記をどうやって防止すればいいのかということ、そういうことを中心にしての日本司法書士会連合会としての考え方の問題と、もう一つ、日司運の試案というのがございますね。これはいろいろな点を希望しておられるのですけれども、それを遠慮なくここでおっしゃっていただきたい、こう思うのです。大きく分けると二つか三つになる、こう思いますけれども、わかりやすく御説明願えればと思います。
  29. 牧野忠明

    牧野参考人 まず第一点の不正不実の登記の問題でございますけれども不動産取引はかっては大きい地主さんたち相互間の取引であったように伺っておりますけれども、近代社会になりましてだんだん中産階級化、不動産それ自体も商品化していくという過程の中で不動産取引も非常に活発化してまいりまして、しかも高額化してくるという中でいろいろな登記が、言うなればためにする材料に使われるという傾向が出てまいりまして、新聞情報等で出ましたように詐欺事件その他非常に社会問題化してきつつある。  そういう中で、司法書士は不動産登記関係の当事者申請のほとんど八割ぐらいを代理している実態にございますけれども、代理人としての職責は残念ながら司法書士法にも明定されておりませんし、ましてや不動産登記法には全く触れられていない。どこで司法書士の責任が追及されるようになってきたかと申しますと、結局登記手続について代理することという、これは業務規定でございますけれども、嘱託人から代理権の授与がある。その前段はいろいろ議論はございますけれども民法上の委任契約類似の契約ではないか。その委任契約の中からいわゆる善良なる管理者の注意義務あるいは信義則に基づきます注意義務、こういったものが出てくるであろうと解釈上考えられるわけでありまして、その辺が、現実に司法書士が代理した事件が例えば詐欺その他の事件に発展してまいりますと、受託する場合に本人の意思を十分確認したかどうかというところを非常に問われまして、不十分であれば善良なる管理者の注意義務に違反している、こういったことで損害賠償請求がされるケースが出てきているわけであります。  この前の京都の問題は、印鑑証明等の偽造に基づきまして、偽造した印鑑証明書とその実印を持って本人があらわれて登記がえをしたわけでありまして、それが登記になったわけですけれども登記官についてはそこまで細心の注意をもって偽造の印鑑証明書まで見破るほどの注意義務は課せられなかったわけでして、ただ司法書士に対しましては、その印鑑証明なり実印を信用して保証書等をつくって登記申請をしたという背景もございまして、本人意思を確認するに専門職として不十分だったということで責任が追及され、二千八百万円の損害賠償請求をされているわけであります。  したがって、我々としましては、まず、司法書士法の中でも例えば登記代理権の権利義務の問題あるいは概念規定、そういったものを今後十分整えていただきたいと思うと同時に、不動産登記法の中におきましても、恐らく登記にかかろうとする人たちは、主として不動産登記法を見ましてどういう条件になっているかということを了知してその申請にかかられると思うわけでありまして、司法書士法までつぶさに精査されて登記申請にかかられるという方は、一般国民の方は非常に少ないのじゃないかと思われます。今の状況を見ますと、司法書士法の中では、業として行う場合に司法書士でなければいけない、その他特段に法律に許されている人は別だけれども、という規定がございますけれども不動産登記法の方は全くだれでも代理ができるというフリーの状態になっておりまして、しかもその代理人の権利義務的なものも全くうたわれていないわけでありまして、非常に整合性に欠けるというわけであります。  したがって、そういう法制度的に、不動産登記の八割ないし九割を代理しております司法書士の代理権の中身についてもきちっと整えていただく、それに基づいて一般国民の方もそれに従った形の対応をしていただくということであれば、かなり不正不実の部分がセパレートされていくのではないかというぐあいに我々は考えているわけであります。そういったことも関連しまして、先ほど申しましたようにコンピューター関係だけでなしに、これから先不動産取引をめぐります国民の権利保全に登記制度がどう機能していかなければならないか、そういう視点に立って問題点を提起しているわけでございます。  まず大命題は、これはいろいろ講学上も叫ばれておりますけれども不動産に対します物権変動の正しい実体を登記情報の中に反映させていく、そこが登記制度が担っている極めて大きな社会的な命題だろうと思うわけであります。それを我々は真正の確保だとかあるいは真正の担保、こういう表現をとっておりますけれども、それを確保するために一つの手当てが必要である。その一つが先ほど申しました登記代理権についての概念の規定といいますか、あるいは法制度的な整備といいますか、こういったことをぜひひとつ図っていただきたいということであります。  これは一つの例ですけれども、AがBに土地を売りまして、中間金を払ったり最後の残金を払ったりするのでその所有権移転登記をする期間が若干延びていたわけですね。だからさっき先生のお話にもありましたように、実体的な権利はあるいは移転しているかもわかりませんけれども、まだ登記名義は売り主のAのまま残っている。その売り主Aがあるいは第三者と結託したのか、あるいはBを困らせるためにやったのか、その辺はわかりませんけれども第三者登記名義のAとの間で二億円程度の根抵当権の仮登記がなされた。いざ登記しようと思いましたらそういうものがその時点で入っていたということで非常に大騒ぎになりまして、それを整理するために何がしかの失権あるいは多大の損害をこうむったケースもございます。  その代理人をやったのはだれかということを調べてみますと、全く資格のない、そのお金を貸した者の従業員がこの代理人としてやっている。それが見よう見まねで根抵当権登記の申請書、添付書類をつくりまして窓口に持っていきますと、本人出頭主義という原則がありますけれども、現在の状況の中ではそれはチェックされないということで、整っておればそのままストレートに通過をし、受理され、登記が完了する、こういう非常にウィークポイントがあるわけでございます。したがって、その辺が整理されていかなければ、正しい権利変動の実体を登記情報として反映させていくということの手当てがいま一つ足りないのではないか、こういうことが言えるのではないかと思うわけであります。  それからもう一つは、登記原因証書というものが今も不動産登記法規定で必要的添付書類になっております。しかし片方におきまして、それが初めから存在しない場合、あるいは提出ができない場合には申請書の副本でもよろしい、こういうことになっておるものですから、非常に激増した登記事案処理の過程の中においては、原因証書よりもむしろ副本でやってもらいたい、その方が調査にも便利だし登記事務処理もスムーズにいくということで、口頭でそういう処理がされた一時期がありました。  しかし、原因証書の持つ機能を考えてみますと、どういう実体的な法律関係がそこで成立しているのか、そういったことを審査する上で非常に大事な書証でございますし、登記が済んだ後でも、例えば裁判上の争いになりました場合に一つの書証として非常に大きな役割を果たしていく、こういうような非常に大事な書類であろうというぐあいに我々は考えておりまして、これは私署証書でありますけれども、ぜひひとつ提出できない場合は副本というようなことをやめまして、原因証書がある法律行為については必ず原因証書を出すという体制をとっていただきたい。このことが、今言いましたような書証にも役立ちますし、実体的な正しい権利関係を登記情報として反映させることにも役立ちます。それから、盛んに言われております中間省略の登記、これは認められておりませんけれども現実にはあるわけでありまして、それを防止するためにも、登記原因証書を必要的添付書類とすれば必ず整理されていくというぐあいに考えるわけであります。  それから、もう一つ現在の登記手続の中で是正すべき問題は、例えば保証書の問題です。先ほど出ましたけれども、これもその登記所登記した人二人が保証人にならなければいけない。ところが、不動産登記の所有が一般化しましてたくさんの人が持つということになりますと、そういう条件に合った人を探し出すということも非常に困難な状況になっておりますので、この辺については、例えば司法書士は登録という制度がございまして身分も保障されておりますから、司法書士が十分確認して保証するという道を開いても国民のためになるのではないかというようなことを提案しているわけであります。  そのほか、例えば譲渡担保の登記の問題とか、抵当権に弁済期を入れたならばこれはいつ弁済期が来ているとかいったことが容易にわかるとかいうことで、一応そういう見直しのことも出しております。  それからコンピューターに関連しましては、今次法改正の中で乗っかっていきます以外に、先ほど議論にも出ましたような外部端末装置を条件が整ったらぜひひとつ出していただきたいというような問題。それから、コンピューターといいますと膨大な登記情報管理をするわけでございますので、予期されているとおりのシステムで動いているかどうかといったことは第三者的な機関が十分チェックするといいますか、システムを監査する体制も将来的には必要ではないかというような、将来的な展望に立ったシステム監査制度の問題。それから登記済み証の作成につきましては、コンピューターでつくろうというお話もありましたけれども、先ほど申しましたように非常に大事な書証にもなりますので、ぜひ今までどおり登記原因証書に登記済みの判こを押していくというようなスタイルにしていただきたいとか、そういう面をいろいろ言ってございます。  我々が一番重要視しておりますのは、第一の、登記の真正確保のためにいかにすべきか、こういう視点からの提言でございますので、立法当局におかれましても十分御勘案をいただき、また、国会におきましても御理解をいただきまして、そういう方向づけをしていただきますように心からお願い申し上げたいと思うわけであります。ありがとうございました。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今、会長は京都の例を言われましたが、私の言ったのは大阪の例なんです。ほかにもありますから、それはきょう午後ずっと聞きたいと思っております。  それから問題になりますのは、これは民法百八条の双方代理の規定の例外になるわけですね。双方代理でやるわけでしょう。委任契約ですね。委任契約では何どきでも解除できるわけですな、民法では。そうすると、受けた場合に、法務局へ出した、それがまだ登記簿に記載されない前に法務局の方に向かって片方の人が委任契約を解除してきたと言ったときに、司法書士として一体どういうふうにしたらいいのか。そこでまた損害賠償の責任を問われたのでは大変なことになりますし、そこら辺がどうもよくわからない点がありまして、今後の課題として法律論とか実態を少し勉強させていただきたいと思うのですが、いろいろな問題がたくさんございます。ですから、皆さん方の方でも遠慮しないでどんどんいろいろな要求を出していただいた方がいいと私は思います。  それから、土地家屋調査士会の多田会長にお尋ねしたいのですが、まず、土地家屋調査士というのはどういう仕事をやるのか、一般の人はよくわからないのですよ。表示の登記、表示の登記という話をされますね。表示の登記というのは一体どういう登記なのかということ自身が、権利の移転の登記や何かとどういうふうに違うのかという点が一般の人にはよくわからないですね。そういう点を簡略に御説明願いたい。  それから、要望の中で、移記の場合に現に効力を有するものに限るのですか、だんだん記載事項を簡略にしてしまうものですから、後で調べようと思ってもわからないようなものが出てくるわけですね。ですから、今言われた要望事項の一の問題だとか、その他たくさんの問題があります。  それから、何か地図の情報管理の問題で、国土庁との関係とか何かいろいろ言われましたけれども、具体的にどういうことなんでしょうか、御説明を願えればと思います。
  31. 多田光吉

    多田参考人 ただいま御質問になりました調査士業務がよく理解されていないということですが、私ども、常にPRということで調査士業務に対する理解ということを非常に求めているわけでございますけれども、なかなか国民に対しては、言葉の上でも非常に、土地家屋調査士は一体何をやるのだろう、勝手に人のところの調査をしたりする、何というか財産調査とか、よく言ういろいろな資料づくりのようなものをするというような印象にあるわけでございます。  私ども、これは法律制定当時に、昭和二十五年に台帳法の改正がありまして、固定資産税ですか税法の改正に伴って、税務署が所管していた土地台帳、家屋台帳、これは台帳は税制の基礎でございますけれども、これが登記所に移管された。その時点から、それまで税のために台帳がつくられていた、要するに土地家屋の戸籍ですね、これに該当するものが土地台帳、家屋台帳であった。それが正確性を持っていない、現地と符合しないものが非常に多いということから、今度は、登記所に参りますと登記権利の基礎になる客体である、そうした正確性を守らなければいけないということで、これをするには特殊な技術と能力が必要である、そうした法的知識あるいは特殊技術を必要とするということで土地家屋調査士は設定されております。  これは、登記の申請につきましては税制度の中の踏襲ということで申請義務を課しているわけですね。その申請義務を課している関係から本人が申請する、所有者が申請をする義務を負う。しかしながら、そうした特殊技術を必要とするものであるから本人申請がなかなかできない。そうした者が利用するために土地家屋調査士制度を定めて、そうした表示登記の正確性、こうしたものをやる。表示登記と申しますのは、権利登記の基礎になる物が、権利登記があっても物の特定がなされない、そこで表示登記において権利の客体とするものを明確に公示をするという表示登記という制度が、これは台帳一元化は三十九年ですか、に新たに設定をされた、こういうようなことですね。  そしてそこには、問題になります、要するに今までの台帳の性格が登記簿の中にその一環として一元化されて、そのときに表示登記制度というものができた。ですから、登記制度の中に権利登記とそれから表示の登記と二つありまして、要するに、登記簿の表題部になされる登記につきましては表示に関する登記、それからそのほかのものにつきましては権利に関する登記、この二本立てになったわけでございます。しかしながら、これは連係として非常に密接な関係があって、一本化の中でもって運営されているわけです。  そこで、私先ほど申し上げました不動産に関する総合情報システムへの対応ということでございますけれども、現に建設省は、国土調査地図が多目的に広く使われるということを目途として、地図の上から、実際に今地図の表現を――法務省の方の不動産登記法の中では、物の特定をする機能を持つものということで、法第十七条地図をもって土地の位置を確定する機能を持つ図面を整備するということに法律はなっておるわけでございますけれども、ただ、実際には法務省でもまだまだ十分な整備がなされてないということから、法務省においては今その整備を、国土庁が行う地籍調査の地籍図をもって十七条地図整備に充てているという現状でございます。  そうしたものを、これは測量にはいろいろな方法がありまして、最も正確性を持つものについては座標数値による測量ということで、実際に測量の中でもいろいろな種類がございますが、図面から読み取って数値を表示とするというようなものもありますし、そうした数値とそれから実際の図面によって見るもの、こういうものは一般国民の側からすると、目で見えない数値であらわすものについては理解できないということから、十七条地図で図面をもって表示をしている。内容的なものは運用の中で現地において確認をした数値によって現地の位置を定める機能を持つ、こういうようになっているわけですが、建設省では今までつくられたすべてのものを図面の上から数値を読み取って、それをコンピューターに入れて情報を提供する。今法務省の方で考えております不動産に関する総合的情報システムは、先ほど星野先生が言われた、情報が一貫した中でやられるのであればそういう問題は起きませんけれども、行政の中で建設省から出されるもの、あるいは国土庁から出されるもの、法務省から出されるもの、いろいろなものが錯綜して、私ども考えておりますのは、要するに境界が一番問題になるわけですが、境界を明らかに現地に復元できるような、指示できる要素を持たなければならないということで、境界に対しての理論と申しましょうか公法上の境界、要するに登記権利に守られる境界というものは登記をされて初めて第三者への対抗要件ができるということで、そうしたものが統一された中で今後考えて総合的情報システムの対応をしてまいりたい、そういう意味でございますので、よろしゅうございますか。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間が参りましたので、これをもって参考人の各位に対する質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  33. 戸沢政方

    戸沢委員長 中村巖君。
  34. 中村巖

    ○中村(巖)委員 参考人の先生方にはお忙しいところを本委員会に御出席を賜りまして、御意見を開陳していただきまして大変ありがとうございます。御意見も大変明快でございますし、また、他の同僚議員も既にお尋ねをいたしましたので、余りお尋ねすることもないのですけれども、簡単に少し聞かせていただきたいと思います。  最初に星野先生に、ちょっと先生のお話の中にプライバシーのことが言及されましたけれども登記に限りませんで、コンピューター化というかコンピュータリゼーションというものをやりますとプライバシー保護の問題に触れてくるところがあるわけでございまして、端的に言えば、登記の場合でもコンピューターであるがゆえに簡単に名寄せができてしまう、こういう問題も起こるわけでございまして、それなりにプライバシーの保護というような問題を考えておかなければならないだろうというふうに思うのですけれども、その点に関する先生の御意見を若干敷衍してお話をいただきたいと思います。
  35. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  今回は名寄せはやらないということでさしあたりプライバシーの問題は対処できていると思いますけれども、実は先ほどもちょっと触れましたように、フランスにもありますように、名前を見ればその人の持っております不動産が全部出せるというシステムでございますね、これがいいかどうかということはなかなか難しい問題かと思います。さしあたり、特に日本の場合にはプライバシーの関係でこれはやらない方がいいという意見も強かったと思いますが、若干今のところは疑念を持っておりますものですから、私自身もこれでよろしいと思っておりますが、先ほど来お話しの長期的な見地から申しますと、どちらがいいかというのはかなり問題があろうかと思います。  現にフランスでそのようにやっておりますが、これもちょっと余計なことを申すかもしれませんけれどもフランスではフランス民法に一八〇四年のころにはこの百七十七条に当たる条文がなかったのです。それは、実は登記に対する非常な反情がございまして、その一つの理由が実は今の点だったのでございますね。プライバシーという言葉は当時はなかったかと思いますけれども、これは非常に変な話で、貴族なんかが革命で非常に困りまして、土地にたくさん抵当権がくっついている、それが見られるのが嫌だということで一括して不動産登記制度そのものに反対し、かつ不動産登記を対抗要件にするということ自身に反対してしまった、そういう歴史があるようでございます。  したがって、これは既に百何十年前から問題になってきたことなんですけれども、逆の点から申しますとある意味では非常に便利だということもあるわけで、これはもちろん銀行の味方をするというわけではありませんけれども、一般的に申しまして、人と取引をする場合には必ず相手の資力を調べて信用がなければ取引できないということになりますので、どの程度不動産を持っているかということを調べたいというのは、一般的には債権者となろうとする者にとっての強い要求だろうと思われます。ある意味では、それができますと非常に便利になるということはあります。しかし他面、やはり自分の持っております不動産についてこれだけ持っているということを知られるのはどうもちょっと恥ずかしいと申しますか、あるいはいろいろな意味でぐあいが悪いという場合もあるわけでございますから、この辺の調和ということが大変難しいのではなかろうかと思っております。  そこで、実はもう一つは、プライバシーというものは一体どの範囲まで及ぶかというのは非常に難しいプライバシーの方からの問題もございまして、将来は、これが問題になりましたときには、プライバシーについてこの問題が含まれるというふうに一体国民が一般に考えているかどうかというその辺の意識調査みたいなものと、それから他方、いい意味でのある人に属する不動産を全部一括して調べてみたい、こういう要請との調和をどう図るかという問題がやはり非常に微妙になろうかと思っております。しかし、さしあたりは、とにかくこの問題はいずれにしてもプライバシーの保護を重視しましてパスしておりますので、これで現在のところは結構なことかと考えております。
  36. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、穂鷹参考人にお伺いをいたします。  コンピューター化をする、登記についてもそれをやるということについては、これはある意味時代の趨勢であって、必然的にある時期にはやらなければならないことだろうというふうに思っております。ところが一方で、科学技術というものは日進月歩でございまして、いろいろ先を見通すと、将来コンピューターそれ自体がどうなってくるのだろうかみたいなことがあると思います。  そこで、大変漠然とした話で申しわけないのですけれども登記コンピューター化そのものがこれからスタートいたすといたしましても、十五年あるいは二十年かからなければならない仕事、事業でございます。その間に今のこういうシステムそのものが陳腐化してしまうというような、あるいはもっと画期的な技術的なものが出てくるのじゃないかということが考えられるわけですけれども、その点についてどういうふうにお考えになっておられるかということが一点と、もう一つは、先生は安全性ということからすれば大変安全性があるということをおっしゃっておられるわけですけれども、私どもは余りそういう科学技術に通じませんものですから、世間でよくハッカーとかいうものがコンピューターを破壊をするというか、コンピューターに侵入して何らかの手を加えるというようなことがあるということを聞いておりますので、登記のディスクというかそれを守るということについて、本当に安全なんだろうかという疑問が生ずるわけであります。そのことについてもお伺いをしたいと思います。
  37. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 お答えいたします。  質問は二件かと思いますが、まずコンピューター技術の進歩に伴う陳腐化の件でございますが、これはあり得ると思います。そのために、古い技術を使っていると非常にコストが高くなりまして、国民に迷惑をかけることになるわけですから、法務省はこのシステムを維持するときに常に最新の情報をつかんでおって、必要とあるならば、ゆっくりで結構ですから新しい技術というのは常に入れて、一番安上がりのシステムをつくるようにやはり努力すべきである。ただし、そういうことを考えても現在やろうと思っておる仕事というのは決してむだにならない。移行ということで、一たん情報というのをディジタルの情報に直すということは、そういう新しい技術革新があったときにも非常に役立つことでありまして、これはそういう将来の発展のためにも今やって全然むだのない作業である、こういうふうに思っております。私は先ほども意見で申しましたけれども登記情報システムは別にコンピューターでなくともいいと思っております。将来非常に人種改良が行われまして、スーパーマンが生まれまして、登記情報をそらんじてしまうという人がたくさん世の中に出てきたらその方々にお任せして、またコンピューターはやらなくてもいいわけでありまして、その時代その時代で一番安い安定的なものを使えばよろしい、そういうふうに柔軟に考えております。  それから二番目の、安全性のことに関しましてですけれども、先ほど閲覧等のことに関しましては非常に安全になると申し上げたのでありますが、実はこれはそういう意味では安全なんですけれども、内部的な人たちが、内部犯罪といいましょうか、そういうことがあった場合にはこれは非常に脆弱なものとなります。逆にシステム内部に精通している者が情報変更等をやりますと、何せ媒体が電子的なものでありますから、破壊の及ぶ範囲というのは非常に多くなる可能性がありますので、この面に関しましては、コンピューターを使う側の管理体制というものをきちっとつくる必要があると思う。先ほど、参考人のどなたかがシステム監査というようなことをおっしゃったかと思いますが、私はそういうシステム監査が内部的にちゃんとあるべきである、そのように思っております。  それから、ハッカー等の件に関してでございますけれども、先ほど私は司法書士等の事務所の方に主に閲覧目的とする端末というのは持ち込むことが可能だというふうに申し上げましたけれども、その場合にはハッカー等のおそれは絶対にございません。それは、ハッカーの場合には、その端末からプログラム作成する能力というか、かなりシステムに関係の深い情報を見るような、そういうプログラムを起動する能力を持っているわけですけれども閲覧目的とする場合には、もともと端末を立ち上げたときにできる能力には限りがあって、ハッカー的なところに進むことはまずできないようになっておりますので、その場合には心配はございません。  以上でございます。
  38. 中村巖

    ○中村(巖)委員 次に、牧野先生、多田先生にお伺いをするわけでありますけれども牧野先生は先ほどのお話の中で、こういうふうにシステムがブックシステムからこういうシステムに変えられたときに、司法書士全体に対してどういう影響があるかということは必ずしもわからないのだというふうにおっしゃっておられるわけですけれども牧野先生、多田先生、両先生に、一体こういうふうなシステムになったときに何か危険性を感じておられないのかということをお伺いをしたいと思うわけでございます。  先ほどの話に外部端末機の話もありましたけれども、外部端末機が司法書士さんのところあるいは土地家屋調査士さんのところにだけ置けるというのならまだ話もいいのですけれども、それはどこへでも置けるみたいな話になると、司法書士さん自体がその部分の仕事がなくなって困るというようなことすら起こり得るのじゃないかというふうにも考えておりまして、全般的にこういうふうにシステムが画期的に変わるということに対する危惧がおありになるかならないかということについてお伺いをいたします。
  39. 牧野忠明

    牧野参考人 コンピューターの問題は、かなり論争されまして、十年近くたっておるわけでございますけれども、当初はやはりコンピューターによって物すごく事務が合理化されまして、今まで登記事務で扱っていた登記所の人的な余裕がたくさんできまして、窓口サービスが徹底をして、それによって司法書士という職能の介在する余地がなくなってくるのではないかというような、非常に短絡的なといいますか、そういう危惧があったことも事実でありますし、それから、第一回目の本委員会において今後登記事務それ自体内容はこのままでいいかどうかということも検討に値する問題だというような意味の発言も政府委員の方からありましたように、またこれからどう変わるかも予測できないわけであります。  しかし、登記事務はすべて機械が処理するわけではないわけでございまして、適正であるかどうかということの判断、それから登記申請に集約される前段の法律行為の問題、その辺はやはり人あるいは専門職能がどうしても取引の中に介在をして整理をしていかなければ十全に権利の保全に機能していかない、そういうような面はあるであろうというぐあいに考えるわけであります。したがいまして、その辺に焦点を合わせた法制度的な確立といいますか、整備といいますか、それを我々は心から望みますし、お願いをしている、こういうことでございます。
  40. 多田光吉

    多田参考人 私ども日本土地家屋調査士会連合会といたしましては、非常に長い期間法務省といろいろ話をいたしまして、さらに私どもいろいろな非常に緻密な計算をするものですから、すべてがコンピューターを活用しているのです。そうした経験の中から、コンピューターによる入力時点での管理ができれば正確性についてはある程度確保できるのであろう。そうした理解の中で、今後について問題になるのは閲覧制度が面倒になることと、それから地図の問題がどうしても何らか手当てをしないと調査士制度そのものの本来の業務が正確に行えないということはございますけれども、今後の改正の問題として考えていくということで、今回についてはコンピューター化に関する問題に限定して改正だ、そういう印象で理解をしておりますので、よろしくお願いいたします。
  41. 中村巖

    ○中村(巖)委員 終わります。どうも大変ありがとうございました。
  42. 戸沢政方

    戸沢委員長 安藤巖君。
  43. 安藤巖

    ○安藤委員 参考人の方々御苦労さんでございます。共産党の安藤でございます。先ほど来いろいろ貴重な御意見を承りましてありがとうございました。  まず最初に星野先生にお伺いをしたいと思うのですが、このたびコンピューター化によりまして、Aという管轄のところに住んでいる人がほかのBという管轄の登記所の管轄の土地あるいはその他の不動産についても今度は登記事項証明書というのですか、そういうのがとれる、そういう点では非常に便利だということがうたわれておるのですが、こういう利用度といいますか、これは一般の国民にとって相当高度な利用度というのがかち取られるだろうかとちょっと疑問に思うのですが、その辺は先生の学者としての御研さんの立場からどのようにお考えでしょうか、お伺いしたいと思います。
  44. 星野英一

    星野参考人 お答えいたします。  実は学者としてこういうことにはやや疎い方でございまして、実務家の方の方がよく御存じかと思いますが、私の非常に狭い経験から申しまして、割合これは便利ではないかと実は思っております。と申しますのは、ちょっとお恥ずかしいのですけれども、私も地方にちょっと土地を持ったりしておりますと、このような場合に例えば抵当権をつけたようなこともございますし、あるいはそれの購入といったような関係に関しましてこれがとれるということが大変便利なので、この制度は、もちろんそれは土地がない人にとっては全然問題にならない、不動産登記というのはそもそも不動産がなければ問題がない制度でありますけれども、最近は、私の見る限りでは、別荘とかいわゆるリゾートのマンションといったようなものがかなり盛んに購入されておりまして、しかも、それも案外従来でしたら余り持てなかったようなというと少し語弊がありますけれども、かなり多数の人が持つようになってまいりましたので、実は私もその一人でございますけれども、この点は一般の人にとってもかなり便利になるのではないかと私などは思いますけれども、現実の数などにつきましてはちょっとつかみかねております。
  45. 安藤巖

    ○安藤委員 次に穂鷹先生にお伺いをしたいと思うのですが、先ほど来話がありましたけれども、今回のコンピューター化に当たっては名寄せのプログラムはつくらない、そういうことはもうやらないということを伺っておるのですが、これはやろうと思ったら簡単にできるのかどうか、それをお伺いしたいと思うのです。  それからもう一つは、先ほどの例えば司法書士さんの事務所で閲覧のかわりになるような、読み取りですか、それはできる。それにつきましては、これもやろうと思えば簡単にできるのかどうか。そして、閲覧にかわって登記事項証明書、証明書は判こが要りますから無理でしょうな、要約書ですか、そういうのもボタンを押して簡単にできるようになるのか。  それからもう一つは、先ほどハッカーの問題につきましてそういうことはないというふうにおっしゃったのですが、相当精巧なそういうこともできるような機械を備えつけて、もともとそういう読み取りのためではあるけれども、読み取りももちろんできますから、より高度な操作ができるような機器を備えつけていろいろな操作をやるということになれば、不法侵入ということもできるようになるのかなという気がするのですが、その危険はないのでしょうか。まずこの点をお伺いしたいと思います。
  46. 穂鷹良介

    穂鷹参考人 四点ほどあったかと思います。  まず最初の、名寄せが簡単かどうかということでございますが、一登記所内での名寄せはできるだろうと思います。漢字コードの問題がありまして、同じ漢字の文字が与えられている人でも当用漢字等にない複雑な文字の場合には違った文字として、外字登録というふうに言っておるのですけれども、なされてしまうような場合がありまして、その場合には名寄せというのはそう簡単にはいかない、そういうことになると思います。  それから、司法書士のところに端末を設けることは簡単かという御意見でございましたが、これは技術的には簡単でございますけれども、端末をたくさん引きますと、そこの端末が引かれている、管轄しているところのコンピューター、法務省側のコンピューターの方にその分のある程度の余裕を持たなければいけないわけです。ですから、人気登記所のところに非常にたくさんの方が要求しますと、技術的には可能なのでありますけれども、その分システム側の方で構えなければいけない。一人の人にサービスをするのと百人の人にサービスをするのとちょっと違いまして、百人のときに百人用の余裕を持たなければいけないので、そういうことも勘案しなければいけませんから、どの程度の端末がどの登記所に接続されるかという調査等を経なければできない。そういう意味で、技術的には簡単であるけれども、実際に引くというときには別途需要の調査等がなされなければいけない。かつ、これは一たん機械を入れてしまいますと、その分についてはメーカーにお金を払わなければいけないわけです。たくさんお客さんが来るだろうと思って開店したところが実はお客さんが来なかったということになりますと、これは予算のむだ遣いになりますので、そういう意味で、需要予測といいましょうか、その辺が別の難しい問題になろうかと思います。  それから、要約書等も簡単かということ、これまた今と同じことでございまして、回線等に余裕を持たせればそれは技術的には可能であります。ただし、その回線等をNTTから借りたときにやはり月に幾らかのお金を払わなければいけないわけでありまして、費用との勘案で決められるべきことかと判断いたします。  それから、先ほどのハッカーの件でございますけれども、これは内部に協力者がいない限りは絶対にできないです。そういうことでございます。
  47. 安藤巖

    ○安藤委員 次に、牧野先生と多田先生にお伺いしたいのですが、今度はコンピューター化によって閲覧は要約書をもらう、謄抄本登記事項証明書を発行してもらう、こういうことですが、何か手数料が今までの謄抄本をもらうよりも上がる、だから閲覧閲覧の手数料よりも上がるということを考えておられるようですが、そういう手数料の増額ということについて、これは上がらぬ方がいいと思うのですけれども、その点について先ほど多田先生でしたか、謄抄本の関係で、聞き間違いだったらお許しいただきたいのですが、昭和六十二年度で五億二千万件ですか、あるというふうにおっしゃったのですが、これは相当な全体の額ですけれども、こういう手数料の増額という点についてはどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
  48. 牧野忠明

    牧野参考人 連合会からは民行審の委員に出まして、いろいろコンピューター導入に関連した諸問題について意見を申し述べました。その中の一つで、例えば要約書につきましては従来の閲覧にかわるものであるのでなるべく詳しい情報が出せるように配慮してもらいたい、詳しい情報を出すためにはそれらの入力をしなければいけないわけですね。したがって、お金との絡みの中で現に効力を有する事項中心コンピューターの中に入力していく、こういう方向答申が出たわけでございますけれども、我々の希望としましては、少なくとも登記簿の記載事項といいますのはその物件の一つの歴史でございますので、特に所有権等につきましては少なくとも十年かそこらくらいさかのぼった形で調査できるような入力をしていただけないものであろうか、こういうような希望を出したところでございます。  ところが、それに対してはそれ相当の入力の経費が要るという金の絡んだ問題になってくるわけでありまして、今度のコンピューターシステム化につきましては受益者負担という大原則が立てられておりまして、特に乙号収入を中心にしましてコンピューター経費を見ていこう、若干甲号経費も入っていくことになると思いますけれども、そういう体制の中で我々がそういう余分な入力を要求すればそれなりにまた経費がかさむから手数料を上げなければいけない、こういうことになってくると思いますけれども、これは国民のために余り好ましいことではないと思っております。したがいまして、その辺の接点をどこに求めるかが問題でございますけれども、単に乙号収入だけを中心にした財源によってコンピューターシステム化をしていくということでなしに、いわゆる甲号事件の登録免許税収入というものは莫大なものがございますので、その辺も、これは登記事務システムの問題ですから、国会の方の御配慮を煩わしまして、どんどん甲号収入もつぎ込んでいただいて、国民のためになるコンピューターシステムが完成しますように御配慮をいただきたい、こういうぐあいに思うわけでございます。
  49. 多田光吉

    多田参考人 先生の御質問、もっともなことですね。国民の側からすれば負担のかからないことが最もいいということは言われるわけですけれども、このコンピューター化がそうした登記情報を提供するということで国民に大きなサービスをするということになるわけでございますけれども、その財源をどこへ持ってくるかといたしますと、先般制定されました登記特別会計法ですか、これに基づいて乙号事件の手数料を特別会計によって行う、これを財源として登記コンピューター化を進めている状況でございます。  こうした中、登記制度で一番おくれているのは地図の整備がなされていない、要するに登記はされてあるけれども、物を特定する機能を持った性格になっていない。そうしたことから地図整備について非常に関心を深めているところでございまして、そうした財源の確保を図りながら登記制度の充実のための方策を考えてほしいということでございまして、これについては、なるべくそうした財源を確保しながら登記制度の充実強化に効果的に機能してほしい、こう思っておるわけでございます。よろしくお願いします。
  50. 安藤巖

    ○安藤委員 最後にもう一つ牧野先生にお伺いしたいのですが、先ほど閲覧の関係については要約書を交付してもらうということで要求は実現をしたというふうにおっしゃってみえておったのですが、今おっしゃいましたように、移行のときに現在効力を有する部分だけ、特に甲区の場合ですと現在の所有権者だけ、前のは全然なくなるわけですね。だからこれは閉鎖の方で簿冊を見てもらえばいいというようなお話を伺っているのですが、そういう点については、現在効力を有するものだけしか移行しないという点について、閲覧をする場合、今度は要約書ですから、そういう点についていろいろな御不便をお感じになるというようなことはございませんでしょうか。
  51. 牧野忠明

    牧野参考人 従来ですと、登記簿を一冊出していただければ、その一物件についての大体の状況はわかったわけです。今まででも、例えば粗悪移記の閉鎖とかなんとかで、過去の登記事項が閉鎖に入っている場合もありましたので、その場合は両方見なければいけないということもございました。今回は、主として移行された現在状態におきまして、現在効力を有する事項だけしかないわけですので、不動産取引というそういう重要な権利変動にかかわります物件調査の場合は、現在事項証明だけでは、あるいは要約書だけでは役に立たない、どうしても閉鎖登記を見て過去からやはり精査していく必要がある、こういうことで要約書についての手数料、それから閉鎖登記簿についての手数料、これは二つ負担をしていただくということにならざるを得ないのではないかと思うわけであります。したがって、できればなるべくたくさんの情報登記簿の中にも入れていただきたい、こういうのが我々のお願いでございます。
  52. 安藤巖

    ○安藤委員 どうも先生方、いろいろありがとうございました。これで終わります。
  53. 戸沢政方

    戸沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時二十二分休憩      ────◇─────     午後一時二十四分開議
  54. 戸沢政方

    戸沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。稲葉誠一君。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 不動産登記法及び商業登記法の一部を改正する法律案について質問をいたします。  この前、電子情報処理組織による登記事務処理の円滑化のための措置等に関する法律というのが通ったわけです。この法案について、附帯決議が衆議院でされているわけです。これについて、その後の履行状況等を中心にお聞きしたいと思うのですが、   政府は、本法の施行に伴い、次の諸点について格段の努力をすべきである。  一 電子情報処理組織を全国の登記所に設置し、登記事務の円滑な処理を図るための長期的・総合的計画を速やかに樹立するとともに、登記業務の充実に必要な予算・人員の確保、施設・設備の整備、職員研修の充実につき遺憾なきを期すること。 これが第一ですね。  それでお聞きするわけですが、まず、変なことを聞くのですけれども、電子情報処理組織というのは何なんですか。こういう言葉を初めて聞くのですけれども、このときに聞いたのですが、これはちゃんと法律用語として確立しているのですか。
  56. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 俗に申しますとコンピューターでこざいますが、法律上は電子情報処理組織という日本語が用いられているようでございまして、立法例もございます。道路運送車両法など幾つかの法律でもってこういう言葉が用いられておりますので、この法律もそれに倣ったわけでございます。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 コンピューターと電子情報処理組織と違うというのじゃないですか。これはどうなんですか。
  58. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 コンピューターという言葉を用います場合に、どういう意味内容で使っているかということによりますけれども、電子計算機というハードと申しますか、その機械のみをいうような語感がするわけでございます。ところが、この電子情報処理組織というのは、ハードとそれを動かすところのソフトを含めた一体的なシステムという意味でこういう言葉を使っているわけでございます。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、長期的・総合的計画、これはどこにあるのですか。
  60. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 いわゆる円滑化法の附帯決議でこのような趣旨が議決をされまして、法務省におきましては、円滑化法五条の規定によって、昭和六十年九月に民事行政審議会に対しまして法務大臣から諮問を発しました。電子情報処理組織を用いて登記を行う制度の導入に当たり留意すべき事項について答申を求めたわけでございまして、昨年十月にその答申が得られました。それに基づきまして今回の法案を提出させていただいたわけでございますが、法務省としましては、この答申を踏まえまして全登記所の事務をコンピューター化するための長期的・総合的計画の樹立に鋭意努めているところでございます。さきに、昭和五十三年に法務局を整備強化するための総合計画というものを樹立いたしておりましたが、電子情報処理組織による登記を実現するという新たな事態を迎えまして総合計画をこの観点から見直して、計画を長期的視野に基づいて今鋭意策定をしているところでございます。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 長期的・総合的計画があって初めて今度の法案が出てきたというならわかるわけです。長期的・総合的計画というのは今策定中だというのだから、結局できていないわけですね。それでなぜ今度の法案を急いでやらなければならないかというところが一つの問題点になるわけですけれども、それはそれとして、長期的・総合的計画というのは具体的にはどういうことを言っているわけですか。まず、長期的というのは具体的にどういうことなんですか。
  62. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記事務につきましては、先生御承知のように戦後一貫して非常な事件増に見舞われておりまして、今なおその趨勢が続いております。これまで百年にわたりまして登記簿という簿冊を用いて登記事務処理を行ってまいったわけですけれども、現在の物的、人的施設のもとにおきましては、この簿冊による登記事務処理は早晩行き詰まりを来すということが予測されるわけでございまして、これから二十一世紀を迎えて新たな時代を見通した場合に、現在の先端技術を駆使して、登記事務処理についても全く違った観点から登記事務の迅速かつ円滑な処理を図らなければならない、そういう意味合いにおきまして、将来の長期的展望の上に立って、この際ブックシステムから解放された新しい登記事務処理形態を求めなければならないというふうに考えて、登記事務コンピューター化ということに踏み切りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私のお聞きしているのは、長期的・総合的計画というのは具体的にあるのかと聞いたら、今策定中だというのでしょう。それで、一体どういういろいろな問題点がある、それをどういうふうに長期的にやっていこうとするのか、そういう点がどうもよくわからないのです。早晩簿冊主義が行き詰まるという意味の話ですが、決して言葉じりをとらえる意味じゃございませんけれども、そうすると、現在は行き詰まってないということですか。それが一つです。まあ、どうでもいいようなことですけれどもぬ。  長期的というのはどういうふうに長期的なのか。長期的というのはいわば縦の線ですね、総合的というのは横の線だ、こう思うのですが、それをどういうふうに理解して、どういう点が問題なのでどういうふうに段階的にやっていこうとするのかとかなんとかという計画がある程度あって、そして今度のこの法案が出てきたというのなら私もわかるのですが、それがあるようなないような、どうもはっきりしない点があるように思うのですけれども。そこはもう少しわかりやすく、縦の線、横の線、これを御説明願えませんか。
  64. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 先ほど申し上げました法務局を整備強化するための総合計画と申しますのは、法務局において所掌いたしております登記を初め戸籍、国籍、供託、訟務、人権擁護といった各般の事務を総合的、一体的に遂行するために、法務局としては今後どのような施策に基づいて、どういう構想を持って行政を進めていかなければならないかということを私ども観点から全体的、総合的に組み立ててみたいということで始めたものごでざいまして、かなりの期間をかけてその計画を練り上げたわけでございますが、折しも財政の窮之の時期に立ち至りまして、予算面あるいは人員面でもその計画の実行が思うに任せない、こういう状況になっております。そこで、このコンピューター化時代に合わせまして、全体的にもう一度見直してみたい、こういうことでございます。  その五十三年の総合計画におきまして、既にその当時法務省民事局におきましてはコンピューター化の計画を持ちまして、それの研究開発に着手をしていた時期でございますから、その中にも既に一項目は設けまして、将来の方向は示しておりました。しかし、いまだ開発の途上でありましたから、極めて大まかなものであったわけでございます。それを今回さらに具体化し、計画としてはっきりしたものにしたいというふうに考えて鋭意やっているところでございます。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 各般の事務というと、それ全体を見直すのですか。コンピューター化というのは、登記だけの問題なんですか。戸籍の問題その他ございますね。人権の問題はちょっと無理かもわかりませんが、そういうものもコンピューター化ということのジャンルに入るのですか、入らないのですか。どうもよくわかりませんが、どういうことなんでしょうか。
  66. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 今私どもが当面求めておりますのは、登記事務の電算化でございます。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかるのですけれども、民事局のいろいろな仕事があるでしょう。そうすると、例えば人権の問題などをコンピューター化するといったって、とてもできる問題ではないと思うのです。供託もあるいはできないかとも思うのですが、戸籍の問題などは、場合によってはできないことはないような気もするのですがね。わからないですよ。私もわからないから聞いているのですよ。わかって聞いているのじゃないですからね。わからないから聞いているのですから。  そうなってくると、今局長は各般の事務についてと言われたものだから、それでは各般の事務というのは一体どうなってきて、それの中でコンピューターになじむものとなじまないものとがあるだろう、常識的にこう考えられますね。そうすると、なじむものは一体何なんだろうかというようなことがちょっと頭にきたものですから、ちょっとお聞きした程度の問題です。
  68. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 先生御案内のように、法務局の所掌事務のうち登記の占める位置は非常に多うございまして、七割を超えております。そして、組織全体として私ども登記事務をやっておるわけでございますが、その登記事務の中で大きな変革が起こりますと、それがほかの事務処理体制にも影響を及ぼす、あるいは組織全体に影響を及ぼす、そういう中で、登記だけではなくて、ほかの事務を含めてどういうふうにやっていくことが効率的、かつ職員の立場からもあるいは国民の立場からも一番望ましい行政が遂行できるかという観点から見直してまいりたいということでございます。  この登記コンピューター化一つとってみましても、二十一世紀までかかるという長丁場の仕事でございますし、そのでき上がった姿というものとその途中での体制というものが変わってまいります。そして、それに必要な人員をどういうふうにして捻出するかというようなことについてもいろいろ考えなければならないわけでございまして、そういうでき上がりの姿を想定しながら計画を策定している、そういうことでございます。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 このときに、十年間でたしか千八百億というふうな経費がかかるとかという説明というか、計画があったように記憶しておるのですが、そういうことを書いた書物もありますけれども、それは一体どういう根拠で出てきて、それは現在でも生きているのですか。全部見直しになるのですか。どういうふうなことなんですか。
  70. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 それは、一時そういうような試算をして、限定された部分について計算したというようなものもございますが、現在の段階ではそれではなくて、基本的には全庁やるということになっております。そして、それに要する費用は五千億を上回るのではないかというような試算になっております。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、千八百億というのは現在はもう不要になったというか、廃止されたというのか、計画内容が全然違うというふうに承ってよろしいのですか。あれはたしか十年計画だったですね。今度の場合も一応十年計画ということでいくのですか、いかないのですか。
  72. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 それは現在のところでは御破算になったというふうに御了解いただいて結構でございます。現在の計画では、前から申し上げておりますように、大体二十一世紀までということでございますので、今が一九八八年でございますから、十二年ぐらいはかかるということでございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで問題になってきますのは、五千億という数字が今出ましたね。一体それはどこからどういう形で出てきた数字なんですか。これはわからないですね。今言われたでしょう。言われた以上は根拠がある程度なきゃならぬわけですね。厳密な根拠というのはなかなか難しいと思いますよ、こういうことですから。しかし、それはある程度のあれは必要なんじゃないですか。
  74. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 これは、現在板橋でやっておりますパイロットシステムというのがございます。その中で、登記簿冊からコンピューターデータを移しかえるという作業をやっておりますが、その経費とかあるいはコンピューター運用コストとか、そういうものを積算いたしますと、現在のところではそのぐらいではないか。ただ、先生御承知のように、コンピューター運用コストというようなものは日進月歩で変わっておりますので、どのぐらいのところになるかということはわからないわけではございますが、一応移行のためにかかっているコスト等を現在の時点で考えてまいりますと、全国の筆個数との比例で申しますと、大体それぐらいになるのではないかということでございます。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その五千億というのは、全国の登記所を全部電子情報処理組織ですか、する場合にかかる何の費用なんですか。
  76. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 移行経費と、それから完全に終わるまでの運用コストと申しますか、コンピューターを導入して、そしてそれを動かしていくための費用、それを全体として五千億を超えるというふうに申し上げておるわけでございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、登記特別会計がありますね。これは現在の予算では全体としてどれぐらいで、それに何か上増ししているのですか。一般会計から導入しているのですか。そこら辺のところは現在はどうなっているのですか。
  78. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記特別会計では、歳入といたしまして登記手数料がございますが、これが大体三百九十億でございます。それに一般会計からの繰り入れがございまして、その他がございまして、六十三年度の特別会計の予算規模は大体一千億でございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 毎年一千億であって、私の聞き方が悪いのか、理解の仕方が悪いのかわかりませんけれども、それが十年間もかかってどうして五千億で済むのですか。私の理解の仕方が足りないのかもわかりませんよ。
  80. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記特別会計では、特別会計に組み入れられております歳出予算は、これは登記に関するすべての費用でございます。この中で、コンピューター化のために要する経費というものはこの中の一部でございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、コンピューター化に伴う経費というのはどのくらいですかと私はお聞きしているわけなんです。ということは、一千億という数字を聞いたものですから、私の今まで聞いていたものと非常に違うものですから、それで聞いているわけです。
  82. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記情報システム実施経費は四十八億でございます。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、このあなたの方から出た法律案関係資料がございますね。いろいろな問題がずっとこうあるわけですね。いろいろな説明がずっとありますね、二十三ページ以下に。三十三ページのところに「今後の検討課題」というのがあるでしょう。ここで「以上のほか、これに付帯して、登記情報利用手数料収入以外のコンピュータ化のための財政的基盤の整備及び不動産に関する総合的情報システムへの対応について今後検討すべきである。」こういうふうになっていますね。  そこで、問題は、登記情報利用者、いわゆる乙号というのは謄抄本の交付の問題でしょう。それだけでは足りなくなってくるのじゃないですか。   全国的規模でコンピュータ化を推進していくためには、これらの利用者に更に重い負担を求めなければならない事態も予想される。一方、登記事務のコンピュータ化のメリットは、当面直接的には、登記情報の公開の面に現われると考えられるが、将来登記の申請者(いわゆる甲号利用者)の側にも、事務処理の迅速化及び精度の向上等のメリットが還元できる可能性が十分にある。   したがって、今後、コンピュータ化が登記制度利用者にもたらす影響を慎重に見守り、乙号利用者の負担の状況、コンピュータ化のメリットの還元の状況等を勘案して、甲号利用者にも相応の負担を求める等コンピュータ化推進のための財政的基盤を整備強化する方策を検討すべきである。 こういうふうになっていますね。これは結局、乙号だけではなくて甲号の利用者にも負担を設けるということですね、これを見ると検討課題にはなっていますけれども。  私が疑問に思いますのは、乙号の手数料というものと甲号のあれとは全く違うでしょう。片方は税金でしょう。片方は手数料でしょう。税金からこれを賄うということになると、新たな立法が必要なんじゃないのですか。私はよくわからないのですよ、よくわからないから聞くのですよ。この言っている意味はどういうことなんですか。具体的にどういう数字が出てきてどうなるのかということが一つと、それから同時に、新たな立法なり予算措置、予算措置はもちろん必要だと考えられますが、新たな立法か何かも必要なのではないだろうか、こう思うものですから聞いているわけです。
  84. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記事務のコンピュータ化によりまして、当面、非常にメリットが大きいのは乙号事務であると考えられます。現段階におきましては、その最もメリットが大きいと思われます乙号事務から生じますいわゆる乙号手数料、これをもって特別会計における歳入の主たる財源とする、こういうことで進められているわけでございます。  しかし、コンピュータ化による効果というものは、単に乙号事務だけに限りませんで、確かに甲号事務についてもある程度の効果が生ずることは間違いございません。そういう観点から申しますと、乙号利用者の手数料のみをもって登記事務全体、つまり甲号、乙号全部の費用を賄うということになりますと、負担の公平という面からいうと確かに若干問題はないわけではないと思います。そこで、この答申に出ておりますが、「甲号利用者にも相応の負担を求める」、こういうことが考えられるわけでございます。その方策としてはいろいろあろうかと思いますが、これは何分にも国の財政制度のあり方に関係してくることでございますので、この答申に指摘されておりますような状況も勘案しながら、関係省庁と十分協議をしていきたいと思っております。  現状では、先ほども申し上げましたように、特別会計における歳入は手数料のほかに一般会計からの繰り入れがなされておりまして、半分以上が繰り入れでございます。これなどはやはりその方策の一つというふうに考えられるのではないかと思います。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今乙号の手数料というのは法律で決まっているのですか、政令で決まっているのですか、省令で決まっているのですか、何で決まっているのですか。
  86. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 手数料をいただくということ自体は法律で決まっておりますが、額は政令で決まっております。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それで、今幾らになっているのですか。
  88. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 謄抄本の交付手数料が四百円、閲覧が二百円でございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それが、この法律が通ってコンピューター化が進むに従って、まず乙号の手数料はどういうふうに変化するのですか。どの程度いくということなんですか、今考えているのは。その辺がわからなければ全体の計画が出てこないでしょう。
  90. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 今後コンピューター化の計画を進めていく上におきまして、受益者負担の観点から乙号手数料について若干の増額を考えなければならないとは思っております。しかし、現段階ではまだそこまでには至っていないわけでございまして、これにつきましては早晩その時期が参ると思いますが、いろいろなコスト等の積算をいたしました上で手数料の増額を考えるという段取りになろうかと思います。
  91. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 早晩の話じゃなくて、この法案が通ればあなたの方はすぐやるのでしょう。やらなければ、全体としての計算ができてこないのじゃないですか。あるいはやらなくて済むのですか。そこはどうなっているのですか。
  92. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 少なくとも今年度はやる考えはございません。
  93. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 甲号の方は、これは税金ですね。そうすると、これを上げるときはどうするのですか。法律を変えなければいけないのじゃないですか。ここにおっしゃっている意味は、それを上げるのではなくて一般会計からの繰り入れをふやすというだけの意味ですか。甲号の登録税か何か、あれもふやすという意味ですか。それだけでは賄えないという意味ですか。ここら辺のところはどうなんですか。
  94. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 この答申趣旨は、今申し上げたような五千億円という額でございますと多分乙号手数料のうちで賄える見込みが非常に強い。しかし、今後の物価の変動の過程とかいうことで、乙号手数料、乙号といいますか、階抄本の閲覧、交付手数料等をそんなに上げられないということも考えられるわけでございます。そんなにどんどん上げられない、つまり値上げができないという事態も考えられるわけでございまして、その場合には、メリットがどういうふうになっているかという負担の公平、つまりそういう事態というのは要するに謄抄本にそんなに高い金を払うのはちょっとおかしいのではないかという国民の声だろうと思います。その場合には、しかしコンピューター化はやらなければならないとすれば、それはどこから出すかということになるわけでございます。  それで、現行制度の予算の立て方と申しますのは、先ほど来申し上げておりますように、このコンピューター化による利益というものは主として登記情報の公開の面に及ぶということで、手数料収入によってコンピューター経費は賄うという仕切りができておるわけでございます。一応割り振りとしてはそういう仕切りになっている。つまり、仕切りの上では乙号事務に要する費用は手数料収入から賄い、甲号のための費用は一般財源から繰り入れていただいてそれで賄うという仕組みになっているわけでございますが、その仕切りをどうするかという問題があるわけでございまして、その仕切りをもし変えるとすればそれは法律の手当ては要らないわけです。しかし、ほかの手段で何かやろうということになりますとどういう手段があるか、これは今後検討してみるということだけでございますので、私どもも確たる見込みが立っているわけではございませんが、あるいは法律で何か手当てをしなければならない事態があるかもしれない、こういうことでございます。
  95. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の局長さんのお話を聞いていますと、少なくともことしいっぱい乙は上がらないというのでしょう。そうすると、おっしゃる意味は来年からは上がるということですよね、反面解釈すれば。どういう理由づけで上がることになるのですか。政令だからあなたの方はできているのじゃないですか、実際問題としては。ただ発表しないだけの話で、案はできているのじゃないですか。全体の五千億の中身が出てこないから、こういう経費でこれだけかかる、それは乙号でやるんだとか甲号でやるんだとか、甲号でやるということは、一般会計からの繰り入れだけでやるのかあるいは甲号のものもアップしてやるのか、そこら辺のところが全体としてわからないから何だかよくわからないということなんです。ただ、乙の方は来年からは上がるらしいということだけはわかるのですが、どうも私にはよくわからない。メリット、メリットと言うけれども、甲号の申請者は具体的にどういうメリットがあるのですか。そこがまたよくわからない。現在だってメリットがあるわけでしょう。登記制度によって申請して受け付けられているようなメリットがあるわけだから。これによってどういうメリットがふえるのですか。そこが何だかはっきりしませんね。  僕の質問は次から次に行っちゃってまずいですね。ちょっと切った方がいいと思うのですが、まず、乙はことし上げないというのはわかった。すると、来年度は上がる可能性がある、反面解釈でそうなる、こういうことですね。
  96. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 ことし上げないと申しましたのは、今年度の歳入予算の中にそういうことは考慮に入れておりませんからことし上げる考えはないということでございます。来年上げるかどうかということは、これはまだ何も決定をしていることではございません。  それから第二の問題でございますが、甲号事務につきましては、登記事務処理が電算化されますと、登記申請を受けてそれについて登記の調査をし、校合をして登記をするという判断をする、その知的判断作用の部分においては登記官がやるわけでございますから、従前とは何も変わりがないわけでございます。しかしながら、コンピューターのワープロ機能を使いまして、記入事務におきましては確かに若干の効果が出てまいります。事務処理が今よりは迅速にできるという効果が出てこようかと思います。また、個々の登記の記載例というものを多数コンピューターに記憶をさせておりますので、それに基づいて登記事務を行うことになりますから、今までよりは登記の記載における過誤というものも減少はしてまいるであろうと思います。そういういろいろなコンピューター化により正確かつ迅速に事務処理を行うという面では、甲号事務につきましても何がしかの効果はあると言ってよろしかろうと思っております。
  97. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 藤井さん、あなたは非常に良心的だから何がしかの効果があるなんて言うでしょう。そうすると、何がしかの効果があるので甲号の利用者が払う金を上げられてしまったのではかなわないのじゃないですか。今だって、その日に申請したものはその日のうちに処理することになっているのじゃないですか、登記法で。それがやられていないのでしょう。やられてないところに問題があるのじゃないですか。やるのは当たり前なんだから。当たり前のことを当たり前にやって、そうして申請者から余計に金を取るというのは筋が通らないじゃないですか。そう思いませんか。
  98. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 お言葉でございますが、甲号事件の申請者から余計に金を取るという考えは現在ないと思います。
  99. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そういうふうに受け取っていいのですか。乙号だけのあれでは足りないということになってきて、それで甲号にメリットがあるから「甲号利用者にも相応の負担を求める」とここに書いてあるじゃないですか。これはどういう意味なんですか。これは甲号利用者からも今よりも、どういう形かは知らぬけれども余計に取ろうということじゃないのですか、「相応の負担を求める」というのだから。今と同じなら、こんなことを書く必要ないじゃないですか。そう思われませんか。私の理解が違うのかな。話が食い違っているかもわからないですよ、ちょっとわかりませんけれども
  100. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 甲号事務につきましては登録免許税が徴収されているだけでございまして、この登録免許税について今これをどうこうするという考えがあるとは承知をいたしておりません。この答申の末尾に書いてございます「今後の検討課題」と申しますのは、コンピューター化に関連いたしまして現段階ではまだ具体的な提言を審議会としてするには至らないが、長期的に見て検討すべきテーマである、こういう御意見がございまして、こういうことが付記をされたということと承知いたしておりますので、この検討課題として書かれております事柄は、今直ちにこういうふうにやれという御提言だとは必ずしも考えていないのでございます。
  101. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはそのとおりですよ。今直ちにやれということは考えていないけれども、そういうことが問題となってくる可能性があるからそういうことを言っているのじゃないですか、検討課題というのですから。だから私の言うのは、「甲号利用者にも相応の負担を求める等」と書いてあるから、甲号利用者の今の負担というのは登録税でしょう。そうすると、登録税をふやすということは新たな立法が必要なんじゃないですか。そういうことを言っているのですよ。そういうことはないのだというなら、ないでいいのですよ。一般会計から回すだけなんだ、登録税を上げるなんということはないというのならそれでも構わないのですけれども、そこら辺がどうもよくわからないから聞いているわけなんですよ。
  102. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 素人でございますけれども、大体コンピューター化していくのに五千億程度かかる、こういうわけでありまして、コンピューター化が完成するのには十五年ないし十七、八年くらいかかるだろうということでありまして、平均化すれば毎年三百億経費がかかるというわけであります。それで、特別会計は現在手数料と一般会計と両方で賄われておるわけでありまして、一般会計が大体ことしは五百五十億というわけであります。だから一般会計から出してもらうのを余計しなければならぬ、こういうことになると思います。  そしてまた、ここの「今後の検討課題」ではいわゆる乙号利用者の手数料、これが特別会計の手数料になりまするが、それを必要とあらばもう少し多くすべきじゃないか、こういうことが書いてあるのでありまして、どういうメリットがあるかということになりますると、不正防止につきましては相当メリットがあると思います。また、コンピューター化しますると遠隔地でも検索をすることができる、こういうこともメリットになると思います。そういうようないろいろメリットが出てくると思いますので、そのときの情勢によりましてどうしても一般会計からすべて賄えないという場合には手数料を考えなければならぬ、こういうことになるのじゃないかと思います。
  103. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は今の点でいろいろお聞きしてきたわけですが、それはこの前の附帯決議の関連その他いろいろあるわけです。それと、今言った「今後の検討課題」の一は今その程度にしておきますが、「甲号利用者にも相応の負担を求める」というのがただ一般会計から回すというだけならわざわざ「今後の検討課題」としてこういうふうに書く必要はないはずなんでして、ちょっとここのところが私にはよく理解できないところなんです。  それから二の「不動産に関する総合的情報システムへの対応」、こう書いてありますね。きょう午前中筑波大学穂鷹先生が参考人においでくださいましたが、お聞きしたらこれは初めは入っていなかったと言っておられましたね。どういうわけで入ってなかったのですか。
  104. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 これは、このこと自体が基本的に登記コンピューター化ということでございますので、直接の関連ではないということで、私どもから特にこの点について御検討いただきたいという問題点の中には含まれていなかったわけでございます。ただ委員の方々は、それぞれ国民の立場というものを反映した委員の方々が入っておられるわけでございまして、国民の立場からいうとそういう行政サービスが総合的な形でなされるということが望ましいのだという御趣旨でこういうことの意見提起があったわけでこざいます。ただ私どもとしては、これは各省庁にわたる問題でございましてなかなか難しい問題を抱えておりますので、そう急にできる問題ではないということで、こういう形で取り上げさせていただいたという経過になっております。
  105. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 お話の中にありました各省庁と関連するということ、それはどこの省庁とどういう点が関連するわけですか。主に国土庁でしょう。その他もあるかもわかりませんけれども、そこのところはどういうことを言っておられるのですか。地図の問題もありますね。そこら辺、何がほかの省庁との関連で問題になるのですか。それをどういうふうにしようというのですか。
  106. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 これは、どういう情報を盛り込むかということに関係するわけでございます。例えば市街化調整区域でございますとかあるいは住居地域、あるいは第一種とか第二種とか、あるいは防火地域とか、そういうようないろいろな地域指定があるわけでございます。あるいは建ぺい率の指定とか、そういうような情報をどの程度入れ込むかということと関連するわけでございまして、いろいろ建設省とも関係するわけでございますが、それぞれ各省庁にまたがる情報を取り入れる。とにかく登記簿さえ見れば、自治体へ行く手間もない、あるいは税金のような問題を入れるといたしますとそれは地方自治体なんかとも関係することになるだろうと思いますが、そういうようないろいろのことを委員の方々は考えておられたように記憶しております。
  107. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 委員の人が考えるのじゃなくて、あなた方はどう考えているかということを聞いているのですよ。委員が考えるといってそこへ責任転嫁と言っては語弊がありますけれども、そうじゃなくてあなた方はどう考えているのか。まず国土庁との間に地図の問題が一番大きな問題としてあるのじゃないですか。そこら辺の問題だって、ちゃんと解決しなければいけないのじゃないですか。私の言うのは、コンピューター化の前に、これからお話ししますが、まだほかにいろいろな問題点があるじゃないか。それをどういうふうにしていくかということの明確な指針というものが一〇〇%あれとは言いませんけれども、ある程度ないとわけがわからなくなってくるのじゃないですか。これだけ先へ行っちゃった、あとのことはずっと先送りだということでは意味がないんじゃないか、私はこう思うわけですね。  そこで、いろいろな問題点の中で一つお聞きしたいのは、きょうも午前中議論が出ましたね。公信力の問題が出ましたけれども、私は乙れは率直に言うとなかなか難しい問題だと思うのですよ。立法論もあるだろうし、日本の法律の民法の百七十六条がフランス流の意思主義をとっているところからいろいろな問題が出てきているわけだと思うのです。これはよくわからないのですね。日本民法はどうしてフランス流の意思主義をとったのでしょうか。そこのところがどうもよくわからないのです。何でこういうふうになっちゃったのですか。きょうは民法の問題じゃありませんから私はそこへ入りませんけれども、私にはどうもよくわからないのですよ。
  108. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 民法制定当初のいきさつにつきましては、私全くつまびらかにするところではございませんので、的確なお答えは到底いたしかねますが、我が国登記法は明治十九年、法律第一号で制定をされております。当時我が国は列強に伍して、国家としての自立性を確立するというために近代法制を整備するということに大変力を入れていた。その法律と名のつくイの一号として登記法が制定されたわけでございますが、その基盤となるようなものが極めて不十分であった。土地建物に関する私権というものがどの程度確立されていたか、また、それを登載する公簿というものをこれからまさにつくろうとするものである、そういう時代に一体登記というものが国民にどの程度利用されるものかということもまだ十分詰めた調査もなされていなかったでございましょうし、そういった我が国の置かれていた近代化前夜のような状況から考えますと、果たしてドイツ法流のがっちりした仕組みというものが導入できたかどうかということはかなり疑問ではなかろうかと思います。余りお答えになりませんが、そんな感想を抱いております。
  109. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ここは大学の研究室じゃないわけですからこれ以上いいのですけれども、私がわからないのは、意思主義をとったのでしょう。じゃ、なぜ「対抗スルコトヲ得ス」という条文が今度は入ってきたのですかね。これがまたよくわからないのですよ。
  110. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 それはまさに、フランス法に倣ってそういう制度が取り入れられたというふうに理解すべきではないかと思います。
  111. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、あなたが地下へ行って梅謙次郎先生にでもよくお話を聞いてこないとわからぬかもわからぬですよ。いろいろな点でよくわからないのは、公信力の点について学者の意見がいろいろ分かれていますね。きょう星野先生にもちょっとお聞きしたわけですが、いろいろな議論があるのですが、しかし事実上は公信力というのは与えられていると見ていいのではないでしょうか。そこら辺はどうなんでしょうか。ケースによるかもわかりませんけれども、与えられない場合ももちろんありますけれども
  112. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 我が国の法制におきましては、動産につきましては特別の規定がございまして、これは民法百九十二条が公信力を与えたものだというふうに理解をされておりますが、不動産についてはそういうたぐいの規定がない。したがって、何人も自己の有しないものを他人に与えることはできないというローマ法以来の原則に従って考えますと、やはり公信力というものは日本の法制では認められていないというのが明治以来の解釈であろうかと思います。これが静的安全に奉仕をするということになっているわけでございますが、しかしそういう登記を作出したことについて真実の所有者にある程度の帰責事由があるという場合には、解釈によって事実上公信力を認めたに近いような扱いがなされておりまして、民法九十四条二項の類推適用という判例理論によって、大体そういう考え方がある面では確立されているというふうに言えようかと思います。
  113. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その点で私が疑問に思いますのは、裁判所で競売がありますね。強制競売がある。任意競売がある。任意競売は別として、強制競売がある。あれは一体だれとだれとの売買になるのですか。
  114. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 これは私法上の売買と同じでございまして、債務者と買い受け申し出人との間の売買ということになろうと思います。
  115. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ですけれども、これは裁判所で強制競売で所有権を取得した、ところがそれがその前の段階で瑕疵があったというので、裁判所で取得したものについても、競売法で取得したものについても、公信力がないということで真正な登記の回復請求か何かで全部壊れてしまうのですか。これじゃ競売法の意味がなくなってしまうんじゃないでしょうか。この考え方はおかしいんじゃないですか。  私、ちょっと調べてみたことがあるのですよ。そうすると、競売法については公信力を認めるという説が学者の中で相当あるのですね。相当じゃないけれども、ある学者の方は言っておられるのですよ。これはおかしいんじゃないですか。競売で裁判所でちゃんと買って、公権力で買って、公権力で買ったわけじゃないけれども、公権力を媒介として買ったのでしょうけれども、それが完全な所有権を取得できないで後になって取り返されてしまうというのでは、これはどうなんですかね。そこだけ公信力を認めるとまた全体が壊れてしまうからという議論があるかもわかりませんけれども、これはどういうふうに理解したらいいのですか。競売法による競売は、強制競売の場合は公信力を認めなければおかしいんじゃないですか。
  116. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 公の機関が関与しているという意味では買い受け人の信頼の大きいものがあろうかとは思いますけれども不動産所有権移転という面においてはやはり同じに扱われるものではなかろうかと思います。強制競売の場合においては民法五百六十八条で担保責任が規定されているということからも、やはりそういうふうに解釈すべきではなかろうかと思います。
  117. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 現行法の解釈としてはそれ以外にないのですよ。それはそのとおりなんですよ。だから、競売法による強制競売の場合は公信力を認めて、完全な所有権を取得できるように法を考えるべきではないかという意見が前に大分あったのですよね。これは兼子一さんがそういうことを言っておられるのですよ。それで私も、ああなるほどなと思ったことがあるのですがね。そこら辺のところがどうも。ただ今の場合、法律で立法してそこだけ認めてしまうと、ほかとの均衡がとれなくなってしまうという議論があるかもわからないですね。だから、ちょっと私もいろいろな問題点があるのかとも思いますけれども、そういう議論がある。今言ったそこら辺のところはあなたの方でも研究していっていただきたいのですが、私の方も研究したいと思うのです。  それからもう一つは、不動産の場合、所有権の移転に効力発生主義を認めておる日本の特別法もあることはあるのですか、あるいはないのですか、あるいはそれに近いものもあるのですか。これがまたよくわからないのですよ。
  118. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 所有権の移転についてはないと思います。ただ、根抵当権などはやや登記を効力要件にしているという規定が幾つかあるわけでございます。
  119. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから不動産については、意思主義の原則が今言った根抵当の問題とか共同担保の問題とか、いろいろありますね。ああいうところでもだんだん壊れてきているのではないでしょうか。私もよくわからないから聞いているのですよ。  もう一つわからないのですが、鉱業法の六十条ですか、これはその後調べていないので間違っているといけませんが、それではやはり効力発生主義的な考え方になっているのですか。そこはどうなんでしょうか。
  120. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 登録の関係につきましては、幾つか登録を効力の発生要件にしているものがございます。たしか鉱業法もその一環だというふうに記憶しております。
  121. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ですから、不動産の場合は意思主義によって所有権が移るというのは、実際の常識とはかけ離れているところもあるのじゃないかと私は思うのです。いろいろな面からその例外ができてきているのじゃないかというふうに思うのです。私も率直に言うと、この点はよくわからない問題なんですよ。殊に公信力の問題は、人の説がいっぱいあってわからないですね。  私がちょうど午前中も問題にしましたように、甲から乙へ売ると、意思主義ですから当事者間では所有権が乙へ移ってしまうわけですね。それが甲から今度は丙が買って丙が登記すれば、日本の場合は丙に所有権が移るというわけでしょう。所有権が移るのかどうなのか、対抗することがこっちはできないということは所有権が移るということに結果的にはなるのだと思うのですが、それはもう甲が無権原者になっているんじゃないですか、乙に所有権が移ってしまっているのですから、意思主義で。そこから買ったときに登記すれば移るということは、やはりそこで公信力を認めたんだというふうに考えていいのじゃないかと私は思うのです。近ごろそう言う学者もおられるためにちょっと聞いたのですが、率直に言ってよくわからないのです。みんな言うことが違いましてよくわからないのですが、ここは大学のゼミナールじゃないからやめにします。いずれにしても、これは非常に大きな難しい問題ですね。いろいろな面からひとつ研究しなければいかぬと思うのです。  そこで、原則と例外とがひっくり返っているのが不動産登記法にあるように考えられてしようがないのですね。登記原因証書の問題ですよ。まず法律はどういう建前になっているのですか。
  122. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記原因を証する書面は法律によって必要的添付書面となっておりますが、あらゆる所有権移転、物権変動において常に登記原因を証する書面があるかというと、そうは言えないわけでございます。したがって、それがない場合には出しようがございませんが、そういう場合でも、登記済み証を作成する素材とする意味合いにおいて申請書副本を提出させるというのが現在の不動産登記法の建前になっております。
  123. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 今の建前についてちょっとこれからお聞きしますが、ちょっと前へ戻ってしまって恐縮ですが、意思主義の例外というのは三百九十八条ノ四の二項、六の四項、九の四項、三百九十八条ノ十六ですか、ちょっと間違っているかもわかりませんが、そういうところでずっとあるわけですね。だから、近代法というか取引の中ではどうもそういう傾向に将来行くのではないか、こう思うのですが、それは私の問題意識なんです、はっきりしていないのですけれども。  今お話がありましたのは、登記済み証、登記原因証書の問題ですね。これは今どうしてその例外というものが活用されているのですか。日本じゅうで私が聞いた中で、登記原因証書をちゃんとつけるところと、そうでなくて申請書の副本でやるところとが何か地域的に分かれて違うらしいのですね。むしろ法務局は、処理能力からいって申請書の副本の方が簡単だということで、それを奨励はしないのだけれども、暗黙のうちに奨励したような格好になっているのじゃないですか。まず、地域的にどういうふうに違いますか。
  124. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記原因証書の提出状況が地域的にどうなっているかは、私どもにはわかりかねます。登記所において、登記原因証書よりも申請書副本の提出を慫慂しているというようなことはございません。登記所サイドから見ますと、提出された書類に従って書面審査で、登記官の形式的審査権でもって登記の受否を決定するわけでありますので、その際に、登記原因証書があるのに登記申請書の副本を提出してきたのか、ないから副本を出してきたのかということは判定しようがないわけでございます。確かに物の本を拝見いたしますと、現実に所有権移転登記においては申請書副本が非常に多く使われているということは述べられているわけでございますが、事実とすれば、法の趣旨には沿わないことであろうと思います。
  125. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の聞いた範囲では、関西地方は主として登記原因証書をつけさせておる、関東から来ると申請書の副本でやるところが多いというふうに、実務をやっている方から直接お聞きしたのですが、法の趣旨に合わないというふうに今言われましたね。そうすると、原則と例外、例外の方があれになってしまえば法の趣旨に合わないですね。なぜ法の趣旨に合わないようなことが行われておるのでしょうか。
  126. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記原因証書は、登記原因証書にあらわれている行為によって所有権が移転したということが示されているものでなければならないわけでございます。したがって、確かに売買契約はなされたけれども直ちに所有権が移転するというような記載になっていないものは、それを原因証書にして移転登記をするわけにはいかないというふうに解釈をされております。そうなりますと、実際問題としては、確かに契約書はあるけれども原因証書たる適格がないという場合が案外多いのではないかということも考えられるように思います。
  127. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは表面的な理論でして、実際はあれじゃないですか、売買契約書なんかみんなあるけれども、それを出したら金額がわかっちゃう、税金がかかっちゃうからということで申請書の副本でやるのじゃないですか。脱税の手段に使われているのじゃありませんか。それからもう一つは、契約書といったって何通もある。何通もあると言ったらおかしいのですけれども、裏契約書をつくっていまして、契約書を仮に出す場合、法務局に出す場合なんかも実際の金額とは違う金額の契約書でやっているのじゃないかと思うのです。脱税の手段に使われているのじゃないですか、申請書の副本というのをずっとやってきているというのは。基本的に欠陥があるのは、登記原因証書というものをはっきりさせて、それでやるのが原則なんだということで、例外でやるより、もし偽ってやったという場合にはちゃんと制裁規定を設けるようにしなければいけないのじゃないですか。何にもないでしょう。何にもないからみんなやっているのじゃないですか。みんなやっているうちに慣習になってしまうのじゃないですか。だからこの辺のところは、原則は原則なんだ、例外というのは極めて例外なんで、それが原則みたいになっているのでは全く法無視ですよ。もうだめじゃないですか。私はそう思いますがね。  ここら辺のところは、なぜ申請書の副本でやるかということはあなた方はわかっているはずですよ。ただ、それは推測だから言えないと言うのかもわからぬけれども、ちゃんとした制裁規定や何かを設けなければだめじゃないですか。私はそう思います。
  128. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 私ども正直に申しまして、なぜそういうことが行われているのかよくわかりません。あるいは先生がおっしゃったように売買代金がそのまま表に出るのを嫌うということも、それは想像として考えられないことはないように思います。登記所サイドからしますと、いずれにしましてもそれはちょっとわからないわけでございます。  それでは、原因証書があるのにそれを使わないで申請書副本を使うという場合に制裁規定を置くということになりますと、これは例えば過料を科するとかなんとかということをお考えかどうかわかりませんが、それは一つの制裁として考えられないことはないですけれども、そういうふうにして何でもかんでも公権力でもって、罰則でもって規制をするということがこの場合ふさわしいかどうかという問題もあろうかと思っております。
  129. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も公権力で罰則を設けるということを言っているわけじゃありませんでして、その制裁というのはいろいろな中身があるかと思うので、そういう点についても考えてみる必要もあるのじゃなかろうかという程度のことなんで、それをやれということを言っているわけじゃ決してありません。誤解されるといけませんのでね。これはどうも少し、そんなことを言ったって、実際の売買契約書と違う売買契約書をつくって、金額を変えてですよ、低い金額を法務局に出して、本当のものはどこかにしまっておく。言うなればこれは幾らでも現実に行われているらしいので、そのことを見つけるといったってこれはなかなか見つからないものですから、公権力をあれしていくというのは余り私も賛成はしないわけですが、いずれにしても、どうも少し行き過ぎじゃないかというように感じるわけです。  そこで、今あなたのところの法務省民事局におられるのですか、藤原勇喜さんという方がいらっしゃって、非常な勉強家のようですが、「ジュリスト」で「不動産物権変動の法理」ということで一九七七年九月十八日札幌で座談会をやっておられるのに出席をされておられるのです。非常によく勉強されて、いいことを言っておられるのです。この方は長い実務の経験から言っておるのだと思うのですけれども、「実際には、ほとんど申請書副本を出してきていますので、取引の実態はよくわからない」こう言っていますね。そういうふうなことで、実際には今の登記原因証書でやってもらいたいんだというふうなことを言っておられるのですね。だからあなたの方としても、登記原因証書でちゃんとしてやってほしいということをもっと強く出していいのじゃないかと思うのですね。  この方は、中間省略登記に関連して言っているところなんですけれども、「不動産登記法の精神は、権利変動の過程と態様を公示するのが理想だと理解しています。」これはこのとおりですね。ただ中間省略登記をああだこうだ言うと、いや、それは形式的審査権だから、中間省略なのか何だか登記官としてはわからないんだ、こういうことになるのでしょう。そうするとどうにもしようがないんだと言っているわけですが、そういう中でこの方は「今の形式審査の範囲内でそれを実現しなければいけないということになりますと、いかにしてそういう過程と態様を公示するかという問題があるわけです。そこで私は個人的には登記原因証書を活用できないだろうかと思っています。」こう言っておられるのですね。それで結局「権利変動の過程と態様にあまり意味がないとしますと、我々実務の方からは、もう登記原因の記載はやめたらどうかという意見がでてくるわけです。登記実務では、今の判例なり、民法考え方なりを基準にして、それを一歩進め、そんな意味のないものなら、登記原因を書くことはもうやめたらどうだ、さらに原因証書も廃止するという考え方もあるわけです。」こう言っているわけです。「私はむしろ逆の考え方をとりたいと考えています」こう言っているのですね。  だから、登記がずっと変動の態様を明らかにしないということなら意味がないので、実際に実務をやっておられる方は、それならもう登記原因の記載もやめたらいいじゃないか、あるいは原因証書も廃止したらいいじゃないかという説もあるんだ、こう言っている。この藤原さんはそれに反対だと言っていますけれども。だからもっとちゃんとしてやる必要があるのじゃないかと私は思うので、あなたの方としては登記原因証書を活用するためにはどういう方策をとったらいいとお考えなんですか。あるいはもう例外があるのだから本人がないと言っているのなら何ともしようがないのだ、こういうことですか。
  130. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記原因証書が存在する限りは、それが添付書類として出てこなければならないものでございます。登記所の方ではわからないということを決して私は逃げ口上で申し上げているわけではございませんが、本来、登記原因証書が出てくるべきものでありまして、私どもとしましてはこれを廃止するとかなんとかという考えはございません。したがって、甚だ勝手な言い方でございますが、登記を申請される側の代理人となる司法書士の方々には、登記原因証書が存在するならば法律の規定に忠実にそれを添付して出していただくのが本筋ではなかろうかと思っております。  この方がここで登記原因証書を活用すべきだとおっしゃっているのは、あるいは本来存する登記原因証書のほかにさらにそういったものをつくれという御趣旨を含んでいるのかもしれません。その辺のところはよくわかりませんが、登記原因証書と申しますのは登記原因をあらわしているもので、登記原因というのは、通常の場合ですと物権変動をもたらした意思表示を記載しているものということでございますから、それはその意思表示をしたときにつくられた、あるいはその意思表示を証するためにつくられた書面でございまして、登記をするときに改めてつくる書面とは違うように思います。そこのところを一応区別する必要はあるのではなかろうかと思っております。
  131. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 確かにそうですよね。登記申請するときにつくる書類と、前からちゃんとできている、前からちゃんと契約ができていて、そして初めて登記申請になるわけですからね。  そこで、私はよくわからないのは、一つは登記原因証書というものの適格性の問題で、遺言書は遺贈による所有権移転登記登記原因証書になり得ないというのですか、これはどうなっているのでしょう。
  132. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 遺言書によって財産処分をあらわしている場合でも、その財産処分、つまり権利移転の効果が生ずるのは死亡のときでございまして、遺言書のみでは所有権が移転したということを証するものにはならないというふうに解釈いたしまして、そういう先例になっております。
  133. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 じゃ、それは戸籍謄本もつければいいのですか。
  134. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 遺言書と戸籍謄本と両方備わっておればよろしゅうございます。
  135. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それならこういう先例というのはおかしいんじゃないですか。おかしくはないけれども、戸籍謄本をつけて出せばいいんですよという先例集を出したらいいじゃないですか。あなた、そんなのおかしいじゃないですか。前は遺言書でもちゃんとやっていたわけでしょう。先例集でずっと適格性を認めていたのがひっくり返ったわけでしょう。だれが見たって当たり前の話ですね。遺言書と戸籍謄本がくっついていればだれがいつ死亡したかわかるんだから、登記原因があるのですから。それならそういう先例集を出せばいいんだと思うのです、私は実務はわかりませんからあれですが。  それから、こういう意見が前に議論されたというふうに聞いておるのですが、率直に言うと私も迷っているというか、いろいろな議論があるのですね。それは登記原因証書に公証制度を導入し、その公証権限を司法書士に与えることの可否が論議されたことがあるというのですよ。どういうような経過からこういう論議がされたのでしょうか。おわかりですか。これは、前の司法書士法の一部を改正する法律のときにそういうのが出てきたらしいのですね。
  136. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 そういう御意見があったのかもしれませんけれども、それが公式に提言されたとは承知していないのでございます。
  137. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 提言されたとは言っていないのですけれども、こういう議論があったということは、立案の過程において清水さんが言っているのですよ。清水さんが三課長のときかな、言っているものですから、公証制度を導入することはいいか悪いか甚だ議論があるところらしいですね。私もちょっとどういう点がポイントになってくるのかよくわかりませんけれども、こういうことが議論されたと清水さんは言っておられるのですね。この問題は公証制度のあり方全体の問題として検討すべきものだ、こういうふうになって取り上げられなかった、こう言っているのですね。民事局の人が聞きに来たけれども、私の方もここら辺まで詳しく出題範囲を教えなかったのです。申しわけないと思うのですけれども、全部教えてやったのでは全然興味がなくなってしまうから、そこまでは教えなかったのですが、これはどういうことですか。公証制度全体のあり方から見てこれをどういうふうに論議する――いや、私はこの意見に賛成だと言っているのじゃないですよ。公証制度を導入しろと言っているのじゃないですよ。学者の中にもいろいろな議論があるのですよ。
  138. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 午前中の星野先生のお答えにもございましたように、フランスとかドイツでは不動産取引は公正証書によるという仕組みになっているわけでございます。これによって登記の信用性がかなり高まるということは明らかでございますし、先ほどの原因証書の問題も、公証の過程で原因が存在するということを一応認定した上で公正証書がつくられるということになれば、それだけはっきりしたものができるということになるわけでございます。そういう意味では、物権変動の過程をきっちりあらわすということのためにはそうすることは一つの手段だろうというふうに考えられます。  ただ一方で、そうすることは国民に対して余計な負担をかけることになりますし、それから、それを担当する者をどうするかという、まさしくそれがその問題でございますけれども、問題になるわけでございます。現行の制度では公証人がやるわけでございます。これは国家公務員の資格でございますから、そういう公証という限りにおいてはそういう公的な存在でなければならないわけでございますが、それを単に資格を持っているということだけで例えば司法書士にやらせていいかどうかというのは、これは制度の根幹にかかわる問題でございまして、十分検討しなければそう簡単には結論が出る問題ではない。  まず第一に、先生がおっしゃっているように、不動産取引について公証制度を導入するのがいいのかどうかという問題がまずあって、そして仮にそれがいいとした場合に、それをやるための手段というのはどうしたらいいかという二段構えの問題で、これはなかなかそう簡単に結論の出る問題ではないだろうというふうに思っております。
  139. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私がもう一つ疑問に思っておりますのは、こういうことなんですよ。民法の百八条がありますね。双方代理の禁止の規定ですね。ところが司法書士のところに売り主買い主両方が来て、そこで双方代理になって書類がつくられて申請するわけですね。これは双方代理の規定には該当しないのだといういろいろな説がありますね、これはそれで別として。そこで、申請はされた。片方の依頼者は、売り主でもいいですね、法務局に向かって、いや、司法書士に対する委任契約ですから、委任契約は解除しましたよと。解除というのかあるいは撤回というのか、とにかく解除しましたよと言って法務局へ来たときに、片方の代理権はなくなってしまうわけですね、普通ならば、契約解除ですから、委任は何どきでも取り消すことを得となっておりますから、なくなってしまうでしょう。そうすると片方だけで出てきたときに、片方が、当事者本人が来れば別として、そうでない場合は、それがわかっているときには法務局としてはどうするのですか。受け付けてしまったら、後から損害賠償の問題なんか起きてくるでしょう。困ってしまうのじゃないですか。  ここら辺のところがごたごたしていてどうもよくわからないですね。一体どの段階で解除ができるのか、あるいは委任契約の解除あるいは撤回、出したものを撤回することができるのか、どの段階になったらできないのか、その場合一体だれがどういう責任を負うのかとか、本当にこれはわからないですよ。実際問題として、わからなくてみんな困っているのではないですか。
  140. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 実務的には、登記所から司法書士に通知をいたしまして司法書士に善処を求めるというやり方をとっております。
  141. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、これは善処を求めてどうするのですか。善処を求めたって、片方は解約になってしまっているのではないですか。それは代理権はないのじゃないですか。それは電話で法務局へ言ってきただけだというだけなら、私はこれはちょっと問題かと思う。ただ内容証明で委任契約を解除して、配達証明をつけてそれを法務局へ持ってきたときには、法務局としてはそれをどうするのですか。
  142. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 先生御承知のように最高裁の判例がございまして、このように委任契約と売買とが相互に関連づけられているというような場合には、登記義務者と司法書士との委任契約は、その契約の性質上、民法規定にかかわらずそれは特別の事情がない限りは解除ができないのだというふうに解釈をされております。その解釈に従いますと、特段の事情がないならば解除はできない、つまりその委任関係は存続をしているというふうに解釈せざるを得ないであろうと思います。  先ほど申し上げましたのは、司法書士に登記所の方から連絡をいたしまして、何とかうまく解決をしなさいというふうに勧奨をする。これは行政のあり方としてもまず第一にやるべき当然のことだろうと思いますが、それでも功を奏しないと、そのうちに後続の登記申請があらわれるというふうな事態にもなってまいりますと、前の登記申請を無視するわけにはまいりませんから、やはりそれは登記を実行すべきものであろうというふうに考えます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その最高裁の判例というのはどういう事案によるかもわかりませんし、あるいは俗に言う救った判例なのか、あるいはもうしようがない、これ以外考えられない、かえって非常に混乱してしまうから、多少法律的には無理があるけれどもこれ以外ないということで、無理に抑えつけてしまったような意味かもわかりませんけれども、私もよくわかりませんが、実際にはそのことによって、しかし司法書士が、解除したのにどんどん申請してしまって権利が移転してしまったのだ、損害をこうむったのだということで損害賠償の請求などをされたことはないのですか、あるのですか。これも後で聞きたいと思っていたところなんですが、どうなんですか、これは。今の最高裁の判例からいけば、ないというふうに見ていいかと思うのですけれども、その点は絶えずごたごたしているのじゃないですか。問題は、民法百八条、双方代理の規定のらち外だというところに、私は何か問題があるような気がしてならないわけです。  遺産分割の場合、配偶者が亡くなった、それでお母さんがいる、子供がいる。そうすると、お母さんと子供とは利益相反でしょう。利益相反だから、一人の代理人が代理できませんね。そんな乙とをやったら全部破棄されてしまうでしょう。無効だとされてしまいますね。だから、双方代理でずっと登記所へ申請していっても、片方から異議が出たときには、そこで利益は相反してくるのじゃないですか。利益相反関係に入ってくるのじゃないですかね。利益相反関係に入ってくるのをそのまま受け付けてしまうというのはどういうものですかね。私も理論的に固まっていないのですが、どうもよくわからないですね。身分法の場合は非常に厳格ですね。非常に厳格であって、財産法の場合はそんなに厳格にすることはない、緩やかでいいのだということなんですかね。実際が私にもよくわからぬ点なんですが、どういうふうに理解をしたらいいのですか。
  144. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 これについては考え方がいろいろあると思われますが、一つには、登記の申請は私人から登記所という公的機関に対して登記という処分を求める公法上の行為であるということで、したがってこれは民法に、いわゆる法律行為ではない、直接には民法百八条には当たらない、こういう考え方もございます。  もう一つは、まさに今先生おっしゃいました実質論で、これは当事者間において新たな利害関係をつくり出すものではない、いわば義務の履行に類するものであるから、百八条のただし書きの方でもってこの適用を免れるのだという考え方もございます。  また、少数ではございますが、やはり利益相反だという考え方もないわけではないように思います。  現在までの通説は、とにかくこれは双方代理が許されるということで一貫してきておりますので、当面私どもはそのように取り扱っているわけでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 初めから利益相反だということを言っているわけではないのです。片方が、いや、それはあれだからというので委任契約を解除したときには、利益が相反状態に入るのじゃないかと言っているのですよ。それを、両方を代理人だということを強引にというか何というか、そのままずっと受け付けて最後までいってしまうわけですね。いかないと不動産取引に非常に混乱が起きる。そこら辺の問題があるから最高裁もいろいろ配慮しているのじゃないかと私は思うのですが、この点は私はよくわからないところですね。  そこで、代理権の問題についていろいろあるわけですね。司法書士の登記申請代理権の問題について、けさちょっとありましたけれども、そこで一つの議論の進め方として、昭和五十三年に法律改正になりましたね。このときに初めてこの代理権という規定が入ったのですか。代理という問題が出てきたのですか。その前はなかったのですか。
  146. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 申しわけございませんが、代理という言葉を使っていたかいないか、今明確な記憶はございません。ただ、解釈上は代理というふうに解釈をされていたようでございます。
  147. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私の言うのは、昭和五十三年に改正がありましたね、そのときに司法書士の申請代理権という言葉が入ったのかどうかということを聞いているわけですが、それは後でいいです。  もう一つは、不動産登記法の二十六条で代理権の規定がありますか。どういうふうになっていますか。
  148. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 「登記登記権利者及ヒ登記義務者又ハ其代理人登記所ニ出頭シテ之ヲ申請スル」という規定になっております。
  149. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その不動産登記法二十六条の代理というのと、司法書士法の五十三年の改正のときにできた代理というのと範囲が違うという説があるのですが、どうなんですか。
  150. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 範囲が違うというお説があるかどうか、私は承知いたしておりません。これを読む限りは、特に範囲が違うとは思えないところでございます。
  151. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 不動産登記法二十六条の方が、司法書士法に書いてある代理よりも意味が広いと言うのですよ。広義だということを言う人がおられるものですから、私はお聞きしておるわけです。私はわからないのですよ。わからないから聞いているのです。わかって聞いているような、そんな人の悪いことはしないですから。わからないから聞いているのです。
  152. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 不動産登記法の二十六条に言う「代理人」には、例えば法定代理人などもここに含まれる、そういう意味では、こちらの方が広いという解釈は可能かと思います。
  153. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 司法書士会連合会の人たちは、登記の真正を確保し不正不実登記を防止するためには、現行登記制度の改善合理化を検討してほしい、そういう中で登記を代理することができる者の範囲を限定すること、こういうのが必ずといっていいくらい要望として入っているわけです。こういうことについて、イエスとかノーとかということではないのですよ、あなたの方はこれについてどういう理解の仕方をされておられるのですか。
  154. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 日本司法書士会連合会の方の御要望の趣旨は、代理人となれる者の範囲を限定する、それは司法書士という資格を持った者に限るという趣旨であるというふうに理解をいたしております。
  155. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なぜ司法書士の方はそのことを強く要求されるのでしょうかね。ただ職域だけの問題だけですか。そういうふうなことを限定していないためにいろいろな弊害が現実には起きているから、弊害を除去するためには自分たちとしてもそれだけの責任を負うから、厳格なぴしっとした規定ではないかもわかりませんけれども、そういう意味のことを入れてほしいということを要求されておるのじゃないかと私は思うのです。そうすると、あなた方の理解の仕方は、それは司法書士だけしかできないのだ、ほかの者はできないのだという理解の仕方なんですか、必ずしもそうではないのだ、そこまでではなくて、主として司法書士の人にやってもらいたい、法律の専門職としての司法書士にやってもらいたいという意味で緩やかにとっておられるのですか、これはどういうふうに、結論じゃないですよ、あなた方の理解の仕方ですよ、それをお聞きしているわけなんです。
  156. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 司法書士会の方がおっしゃっておられるのは、いろいろ不正不実の登記が行われているが、司法書士という資格を有する者のみが代理できるというふうに限定をすればそういう不正不実の登記が少なくなる、無資格の方が、一般の方が代理をしていることによって不正不実の登記が多くなっている、こういう御認識を表明されているのだと理解をいたしております。
  157. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一般の人が代理しているというのはどういう意味ですか。
  158. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 司法書士の資格を有しない人ということでございます。
  159. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 司法書士の資格を得ない人が業として代理することはできないのじゃないですか。それは条文にあるのじゃないですか。そうじゃないのですか。
  160. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 司法書士の資格を有しない人が業としてこれを行うことは、司法書士法によって厳に禁止されております。
  161. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その司法書士法の規定ですね、土地家屋調査士法も行政書士法もそれから何とか士、いっぱいありますが、全部一緒ですか。大体八つあるのですが、海事代理士を入れると九つになるのですが、まあこれは別として、大体その書き方は同じに書いてありますか。これはどうなっていますか。
  162. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 書き方は若干違うと思います。しかし、述べていることは基本的には同じであると思います。
  163. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、登記に不実な記載とか不正な記載があるということは、どこからその原因が出てくるのですか。どういう理由によって出てくるというふうにお考えなんですか。
  164. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 不正不実と申しますのは、原因は多種多様であろうかと思います。一般的には、私法上の取引関係で紛争が生じて、やれ解除をしたとかというような、紛争から生じる場合もございますし、極めて悪質なものになりますと、登記済み証その他の関係書類を偽造してその土地を奪うというふうな形の登記があらわれる場合、その他登記所登記簿改ざんしてその種のことを行うといったような場合まで広く言えば含まれることになります。
  165. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私が前に申した司法書士の登記代理権の問題、ちょっと逆だったのですが、逆といいますか、昭和五十三年の改正により司法書士法第二条に定められたものであって、これを調べてくださいね、その代理権は不動産登記法二十六条の申請代理権よりも広い意味だ、こう言っているのですね。不動産登記法の方が広いという意味ではない、逆なんです。司法書士法の方が広いのだ、こう言っているわけですね。今局長が言われたのは、法定代理人が入れば広いというのは当たり前の話ですが、そうではなくて、司法書士法の方が、二条に決められたものの方が広いのだ、五十三年に改正の中で決められたものの方が広いのだ、こういう理解をしている人がいるものですからお聞きしているわけなんですね。前に言ったのは逆だったのですが、そこら辺のところはよく研究してください。私の方もこの問題についてはいろいろな形からさらに一層追及していかなければいけないというか、勉強しながらやっていきたいというふうに思っているわけです。  そこで、これはお知らせしておいたのですが、登記申請手続の依頼を受けた司法書士に過失があるとして、依頼者のこうむった損害は賠償すべき義務があるとされた事例というのは相当あるのですね。それは肯定の場合もあるし否定の場合もあって、両方あるわけなんですが、これはどういう場合に過失があるとして損害賠償の責任があるというふうにされたのですか。あるいは、逆に否定をされたのはどういう事例なんですか。大体ジャンルと言うと語弊があるかもわかりませんが、項目別といいますか、こういうのはどういうふうに分かれますか。ここに「判例時報」のことしの新年号があります。これは大阪の一部認容の判決、これは確定していますね。コメントの中に肯定例と否定例があるのですが、ここのところはどういうふうに分けて理解したらいいか、説明できる範囲内で御説明願えればと思うのです。
  166. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 いろいろ裁判例があるようでございますが、これの事案をあらまし見た限りでは、なかなかこれを類型化することは現段階では困難なように思います。例えば、保証書により登記申請をした場合において同一性の確認を怠ったという場合でも、肯定例もあれば否定例もございますし、あるいは司法書士の事務所印とか職印を盗用されて損害賠償を認められたような例とか、受任をして長期間放置をしておいたために委任義務の懈怠で損害賠償が認められたような肯定例もございます。また否定例としましては、印鑑証明書、委任状などの印影の不一致に気がつかなかったといっても、それはこの際そこまで義務を認めるのは酷であるということで責任が否定されたような例もございまして、その事案事案に応じましていろいろな具体的事件についての判断がなされておりますので、まだこの程度の裁判例の数では、これを類型化し基準化するということはちょっと難しい、もう少し判例の集積を待たなければならないのではないかと思っております。
  167. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 判例の集積を待たなければといっても、こういう判例がたくさん出ては困るわけですよ。ですから、判例の集積ではなくて、ただ認められたものを見てみますと、全部見たわけではございませんけれども、非常に司法書士にとって過酷ですよ。こんな注意義務を要求されてはとてもたまったものではないですよ。かなわないですよ。  殊に、大阪の、これは確定していますけれども、九割不動産業者である原告に過失相殺を認めていますから、一割だけですけれども、一割だけだといっても、請求額が物すごいから、千五百五十万円を払えというふうに認められているのでしょう、判決の批評をするわけじゃありませんから言いませんけれども。これはいろいろ事情がある、この人が病気で入院していたわけですね。そういうような事情や何かがあって、こういうふうな申請はしない方がいいですよというようなことで忠告したようなことまで出ているのです。「被告から取引に否定的な忠告がなされていたにもかかわらずこれを無視している」、こうこれに書いてあるのですね。それでいて損害を認められたのじゃ、これはかなわないと思いますよ。だけれども、これは判決のことを批評してもしようがありませんから批評はしません。  そこで、考えられるのは、司法書士に対する注意義務が物すごく強く要求されているのですよ。これをずっと見ますと、要求されている。一方において登記官の方は、国の方は形式的審査だということで全然と言っていいぐらい責任がないわけです。全部司法書士にかぶせてしまっているわけです。だから、さっきの登記申請事務の委任の契約解除の問題でもそうでしょう。自分の方では形式的審査権だからそんなものとてもとてもといって、司法書士の方で善処してくれ、善処してくれと法務局では言うのです。そんなこと、善処してくれと言われても、どうやって善処するのだかわからないじゃないですか、こう私は思いますね。どこかに問題点が伏在しているように考えられてならないのです。この判例なんか見てみますと、確定していますからあれですけれども、この過失を「売主の行為能力の有無の確認、登記申請添付書類の真否についての調査、売主の意思の確認などを怠った過失」と言っているのですね。これは売り主が、ちょっと状況が普通と違いますから、確認してくれという依頼があった事案のようですけれども、私がこれを見たときに思いましたのは、こういう注意義務が司法書士に求められておるならば、それは公証人の場合はどういう注意義務が求められるのですか。
  168. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 公証人の場合も、本人が人違いでないこと及びその本人の意思に間違いがないということを確認するという、一応そういう義務があるわけでございます。
  169. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、公証人と登記官吏と司法書士との確認義務というのはどういうふうに違うのですか。
  170. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記官なり公証人の場合には、これは公務遂行上における過失が問われることになります。したがって、それは公務の上でどのような職務上の義務が課せられているかという観点から判断をされることになろうかと思います。司法書士の場合には、これは嘱託人と司法書士との間の委任契約に基づいて、その委任の本旨はどのようなことであって、どういうところに注意義務の懈怠があったかという観点から判断をされることになると考えます。
  171. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは結論でしょう。善良なる管理者の注意ですか、善管注意ですか、私の聞いているのは、登記官の場合は形式的審査権なんだ、それから来るところの過失というものと、それから公証人も形式的審査なんですか、全く登記官吏と同じですか。僕の友人なんかも公証人がいるのですけれども、因ってしまうと言うのですよ。変なのを頼まれて、内容なんかで断れるのがどこまでできるのか困ってしまうことがあると言うのです。これは明らかに公序良俗に反するというなら別に構わないわけですね。  私の持っている疑問は、登記官吏の注意義務というものと、それから公証人の持っている注意義務と司法書士の注意義務というのは、片一方は公務上の義務かもわかりませんけれども内容的に差があるのですか。結局、司法書士の注意義務は一番重いということになっているのでしょう。そういうことにならざるを得ないんじゃないですか。
  172. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 シチュエーションが違いますので、厳密な意味での比較はできないと思いますが、登記官の場合には審査対象が限られているわけでございまして、その書類さえ間違いがなければそれでよろしいということになるわけでございます。それから、司法書士の場合にはそういう手が縛られているわけではございませんので、その委任契約の過程と申しますか、いろいろの情報、それから例えば挙措動作とかあるいは書類の持ってき方とか、いろいろなものを総合判断して、そういう確認を怠った過失があるかどうかということが決定されるということになろうかと思います。  その点においては基本的には公証人もそんなに変わりはないと思いますが、ただ、近ごろ不動産というものの価値が非常に上がったということと、それから当事者が非常に信用のおける人であれば、これはそんなに神経質になる必要はないわけでありますけれども、そうでない場合、そのシチュエーション、シチュエーションによってどの程度の注意義務を果たすべきかということは違ってくる、これは事柄の性質上当然のことだろうと思います。そういう意味で厳密な比較はなかなか難しい、宙でどうだというふうには申し上げられない。この大阪のケースも、一つの過失だけで言っているわけではなくて、いろいろな事情を認定した上で、そういうものをあわせて見ると過失があるんだ、こういうふうに言っておりまして、そのうちの一つの事情が欠けたときに一体どうなるかということは必ずしも明確ではないわけでございます。そういう意味で、先ほど局長が類型化は非常に難しいというふうに申し上げましたのは、具体的な事案によって判断が非常に微妙に変化する、先ほども申し上げたように肯定例、否定例というのもありますが、これはかなり事実認定の問題、具体的なシチュエーションによって変わってきている例ではないかというふうに思っております。
  173. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この判決の中にもありますように、これは「理由」の中ですけれども、「法は司法書士に対し、業務に関する法令及び実務に精通して公正かつ誠実にその業務を行うことを要求し」、これは司法書士法第一条の二ですが、「その資格を厳しく制限する一方で、前記業務に関してはほぼ独占的な地位を付与しているのである。」こういうふうに判決で指示しているわけですね。そうすると、ほぼ独占的な地位を付与しているということは、これはどういうふうに理解をしたらいいですか。登記申請代理権というものはほとんどこの司法書士が持っているし、また、持たなければならないように、法の趣旨がそこにあるんだというふうにこれは理解してよろしいのでしょうかね。
  174. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 司法書士が登記手続の代理についてほぼ独占的な地位を持っているというのは事実として述べられておることでございまして、これは現実の登記事務を見る限り、まさにそのとおりであろうと思います。一般人と申しますか、司法書士会に入会している司法書士でない者は、この司法書士法で決められた司法書士の行うとされている業務を行ってはならないということが決められているわけでございまして、業としてやれるのは司法書士の資格を持って司法書士会に加入している者に限られるということになっているわけでございます。
  175. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、私の言うのは、この要求しているところは非常に過酷というか、随分いろいろな大きなことを要求しているわけです。そうしていながら、その地位については、それは徐々に上がってきましたよね、それは司法書士法の改正で自律性というものも随分出てきている、自主性というものも出てきているということを言って、高まっておるわけですけれども、そこでほぼ独占的な地位を付与しているというならば、そのことは事実上登記代理権というものを認めているということに、そこに密着せざるを得ないところにまで現実には来ているのではないか、こういうふうに私は理解して、それにふさわしいものをやはり与えなければいけないのではないか、こういうふうに考えておるわけです。  あるいはあなたの方から言わせればジャンルが違うとか、いろいろ議論が出てくると思うのですよ。それはまた別のところでゆっくり私の方も研究したいと思うのですけれどもね。法務省の考えている登記代理権の問題というのは、ただ業としてのシェアの問題を中心に考えているようなんですね。必ずしもそうでもないですか。そうですか。今までどうもそういうふうな色彩にとれるのですけれども、そうじゃないならばそうじゃないというふうにお答え願えませんか。
  176. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 ほかの業種との関係は、一つの事情として申し上げております。それは確かにほかの業種との関係があることもそのとおりでございますけれども、今求められておりますのは、司法書士に完全な独占的地位を与えて、司法書士にあらざる者は登記申請について代理をしてはならない、代理ができるのは司法書士に限る、そういう法制度を求められているわけでございます。  これは、ある事柄を一般人にできないようにするというからには、それはそれ相応の合理的な理由がなければそこまでの強い規制はできないのではないか。現実に司法書士が登記の代理についてほとんど圧倒的なシェアを持っておられることはまさにそのとおりでございますが、一般人を代理人資格から排除するというだけの理由があるかどうかでございます。もし、司法書士が代理をした事件については不正不実の登記は少ないが、司法書士にあらざる者が代理をした事件については不正不実の登記が多いというような事象でも顕著にあらわれておりますならば、あるいは代理を独占するということについての合理的な理由がある、また社会的、国民的なコンセンサスも得られるのではないかと思いますけれども、私どもが経験的に承知しております限りではそこまでは言えないのではなかろうか。むしろ、いろいろ不正不実の登記が行われますが、それらについてはまずほとんど司法書士の方が恐らく情を知らないで利用されているという場合でございまして、これはもう圧倒的に司法書士が事件を取り扱っているのが多いから、割合としても当然そうなるだろうと思います。むしろ、悪い人はそういう利用の仕方をするのではないかという気すらするわけでございます。  そういうことも考え合わせますと、今この段階で規制をさらに強めるというのは、今の行政のあり方とすれば、これはむしろ逆行するものではないか。今の段階でそこまで行政的に規制を強めるということはとても許されないのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  177. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 時間が来ましたので、私の質問を終わらせていただきます。
  178. 戸沢政方

    戸沢委員長 山田英介君。
  179. 山田英介

    ○山田委員 前回の審議に引き続きまして二度目の質疑に立たせていただくわけでございますが、前回の折に申し上げましたとおり、我が国不動産登記制度、公示制度は既に百年の歴史を有するに至り、その過程でさまざまな登記法、公示制度の変革がなされてまいりました。今回、登記二法、ここにかかっておりますが、いわゆる簿冊からコンピューターシステムへとこれが移行されることに関する改正法案ということでございますけれども、その意味ではまさに隔世の感、あるいは時代を画する、あるいは大変革、不動産登記制度にとってはそういう局面を迎えたものである、このように認識をいたしております。  それだけに、第一次ともいうべき今回の不動産登記法改正に当たりましては、もちろん今回の不動産登記法改正の中にそれを盛り込めとかという乱暴な議論を申し上げるわけでは全くありません。この第一次ともいうべき不登法改正、ここを一つの大きなスタートラインととらえて、今世紀中にブックレスシステムへ移行させようという大きな目標を掲げてのスタートになるわけでございますので、この際、我が国不動産公示制度が抱えるさまざまな問題点を新たな気持ちまたは新たな決意に立って真剣に洗い直しをしていこう、そうして、国民が一層信頼するに足るところの公示制度を目指していかなければならないであろう、かように考えるわけでございます。  そこで、前回は特に登記代理概念あるいは登記代理権をどうするかというところに論点を絞りまして、大臣、民事局長、そして審議官と質疑応答をさせていただいたわけでございます。今回は、コンピューター化移行につきまして直接的にかかわりのある問題を何点かお尋ねいたし、なおできましたならば、登記の真正担保という観点から極めて大事でございますもう一つの柱、稲葉先生初め同僚委員の方々からもいろいろな質疑がなされたところでございますが、登記原因証書というものにつきましての議論を深めさせていただければと存じております。  そこでまずお尋ねをいたしますが、昭和六十一年度法務局・地方法務局首席登記官会同が持たれまして、そこで今回のコンピューターシステム移行に当たって改正すべきいろいろな事項についての検討案が出されております。私はそのコピーをここに持っておるわけでございますが、特に第一点は登記済み証の作成についてでございます。  この「不動産登記法改正事項検討案」によりますと、その作成につきましては、「指定登記所登記官は、申請による登記が完了したときは、登記所備え付けの用紙を用いて、コンピュータ・システムにより登記済証を作成するものとする。このため、指定登記所登記を申請する場合は、登記原因を証する書面の提出が不能であるときでも、申請書副本を提出することを要しないものとする。」それで、「申請書に添付された登記原因証書の取扱い」ということも検討されておりまして、「指定登記所に提出された申請書に添付された登記原因を証する書面は、その申請に係る登記が完了した場合であっても・申請人から謄本を提出して原本還付の請求がされた場合に限り、これを還付するものとする。」このように検討されたようでこざいます。  それでお伺いしたいことは、この登記済み証の作成に当たりまして、債権契約あるいは物権契約等の事項が網羅されているといいますか、記載をされております原因証書というものはやはり登記済み証の素材として従来どおりの役割を持たせるべきではないのか。仮にコンピューターシステムにより登記済み証が作成されるにいたしましても、それはむしろ認証の部分にとどめて、現行どおりの原因証書を登記済み証の素材として活用すべきであり、それを継続すべきである、かように存ずるわけでございますが、この点につきましては、検討案にはそうなっておりますけれども、どういうお考えでおられるのでございましょうか。
  180. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 この点は基本的に、先生御指摘のように、原因証書の持っている意味というものを考えまして、当分の間は現行法どおりの扱いをするという方向で考えており、将来の考え方としては、認証部分と申しますか、登記済みを証する部分についてはコンピューターで打ち出して、それは偽造ができないような形のものにして、それを原因証書に編綴するというようなことができないかということを考えているわけでございます。
  181. 山田英介

    ○山田委員 審議官の御答弁によりますと、基本的に原因証書を登記済み証の素材として将来ともに用いていく、こういう御答弁だと承りました。  そこで、もう一点我々が心配いたしておりますのは、現に効力を有する登記事項のみをいわゆる簿冊から磁気ディスクに移行する、こういうふうに言われているわけでございます。確かに乙区欄における担保権の設定、そしてそれが抹消されたものにつきましてはこれは全く意味がない。これは移行させないでよろしいわけですけれども、特に甲区欄の、不動産の公示制度が求めております実体的な権利変動の過程を如実に登記簿に反映をさせるというところに大きな理想、理念というものがあるわけでございますから、それを踏まえますと、この甲区欄の事項につきましては、その物権が甲から乙、乙から丙、丙から丁という形で転々流通売買されていく過程というのはやはり移行すべきではないかな、このように私は率直に思うわけでございます。そういうことになっているのか、あるいは全く甲区欄についても現に効力を有する登記事項のみを移行するということであるのか。  仮にその場合に、譲渡担保なんという所有権登記がなされておりますが、これは現実に約束の日時に弁済がなされれば、その譲渡担保を登記原因として所有権を取得をしたそのいわゆる登記というものは抹消されてもとの所有者の名義に戻るということになりますので、そのあたりはどういうふうにお考えなのか。  それから、仮登記がついていてその後所有権の移転が何回かなされた場合等につきまして、そのいわゆる仮登記から現在の所有者の間における転々流通した形の登記事項はどうなさるのか、その辺もあわせまして簡潔にお答えいただければと存じます。
  182. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 コンピューター登記簿への移記につきましては、先生のおっしゃいましたような御意見があることもよく承知をいたしております。ただ、登記データの移行作業というのは大変膨大な量でございまして、お金のことを言うようですが、大変な経費と労力を要する。そこで、能率的実施とコスト節減という観点から、移記する事項は現に効力を有する事項のみに限るというふうにいたしたいというのが現在の私ども考え方でございまして、これは枚数過多による移記とか実際上行っております粗悪用紙の移記の場合にはそういうことでやっておりますので、それとも整合するものではないかと思っておるわけでございます。確かに先生のおっしゃるような過去の所有権の来歴についての需要があることも確かだと思いますが、その需要の頻度と申しますか、それの使われ方と経費とのバランスの問題に帰着するのではないかという点を御理解いただきたいと思います。  それから、移記する範囲につきまして、譲渡担保の場合には最終の譲渡担保で取得をした所有権のみを移記するというのがこれまでの移記のやり方でございまして、今回も同じやり方を考えております。仮登記のついておる場合には、そのもととなった所有権登記は生きておりますから、当然移記をすることになります。
  183. 山田英介

    ○山田委員 これは公示制度の理想と、それから局長おっしゃいますように現実的に移行費用、コストとのかかわりで最終的に政治的な決断といいますか、判断をしなければならない問題だろうということは私もよくわかります。諸外国の例では、スウェーデンでございますか、既に磁気ディスクに移行した、現に効力を有する登記のみを移行したのだけれども、その後いろいろと不都合が出ておるやに聞いておるわけでございます。当然御当局はそういう点も踏まえられて検討されているのだろうと思いますが、その辺の評価はどういうことになっておられますか。
  184. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 スウェーデンでも、御指摘のような問題もあるようでございますけれども、基本的には現在事項で間に合うと申しますか、まれなケースについてはそれで対応する。ただ先生もおっしゃるように、これが現実にどの程度の必要性があるかということに帰着するわけでございまして、現実にその必要性があってどんどん申請が来ますと、これはまた登記所の方でもたまらない、非常に事務煩瑣、一々閉鎖登記簿を引っ張り出さなければなりませんので、その意味での非常にロスが出てくるということがございます。ですから、今後そういうことを踏まえてみまして、これまで粗悪等の移記の結果を見ましても、それほど閉鎖登記簿の利用頻度が高いわけではないという実績があるようでございます。それで、今後コンピューター化を逐次やっていくわけでございますが、その過程で何かまた不都合な点が起こりましたら、そのときにはどの範囲のものを移行するかということを改めて考え直してまいりたいと考えております。
  185. 山田英介

    ○山田委員 そういたしますと、先ほど仮登記以降の登記につきましては全部これは現に効力を有するという見方、そういう位置づけ。そうなりますと、今申し上げました譲渡担保につきましてはまさに現在の移記作業と全く同じ譲渡担保の所有権移転の登記だけ、その直前の所有権を証する事項については、これは現に効力がない、そういう御判断で局長さんから御答弁があったと思うのですが、今の審議官の御答弁からいたしますと、それはむしろ譲渡担保については、現に効力を有する、厳密に解釈すればそういうことだけれども、しかしこの譲渡担保につきましては、一般人が錯誤に陥る、一般の申請人の方等が紛らわしく、間違えられやすい、そういう一つの性格があるというふうに一面考えられるわけでございますが、それは例えば例外を設けて、譲渡担保の直前の所有権移転登記された事項については、これはやはり磁気ディスクの方へ移記しておくということもあり得るのではないかな。この辺はいかがでございますか。もう結論は出してしまっているのですか、そういうふうにしないというふうに。
  186. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 譲渡担保で所有権移転登記がなされて、通常の過程に従って弁済によって所有権が戻る場合には移転登記がなされるべきものですから、これで不都合はないと思うわけでございます。譲渡担保契約が解除されたというような場合ですと抹消登記がなされるという筋合いになろうかと思いますが、そうなりますと、一つ前の所有権登記が生き返るということになります。これは一般的に売買による所有権移転の場合でも同じことでございまして、特に譲渡担保の場合に別に考える必要はないのではないかと思っております。
  187. 山田英介

    ○山田委員 次に、移記作業についてですけれども、これは実際に膨大な簿冊にある登記事項磁気ディスクにずっとインプットしていくわけでございますから、膨大な量になるであろう、作業になるであろう。これを実際に担当される方々はどういう方々なのか。そして、現在の移記に際しましてもよく移記ミスというものが発見されるわけでございますが、この辺、不動産権利変動、得喪をずっと公示しているわけですから、非常に重大な一つ一つの事項であり、このミスをいかにして防止するか、あるいは限りなくゼロに近づけるかということは極めて大事な観点だろうと思いますが、この点につきましてはどのような対処をなさるのでございますか。
  188. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 従来のブック登記簿からコンピューター登記簿への移記、移行の作業は、各地方法務局に設けますバックアップセンターでこの事務を行うという考えでおります。具体的には移記の、移行の作業は、従来のブックの登記簿をもとにしましてコピーをして入力原稿を作成するというところから始まりまして、移行データの入力、そして校正、修正、移行ファイルの作成、移行確認、こういうふうに順次進んでまいるわけでございますが、可能な限りはこれを外部委託することによって効率的に処理をいたしたい。最終的にはバックアップセンターの登記官が移記校合を行って最終的な確認をする。その過程で同段階もチェックの過程を設けまして、移記のミスは可能な限り撲滅するという考えでおります。
  189. 山田英介

    ○山田委員 ちょっと質問が前後いたしますけれども、今回の不動産登記法改正案を拝見いたしますと、従来より保存期間を長目にいたしまして、不動産登記用紙を、土地につきましては五十年閉鎖登記簿保存、建物は三十年でございましたか、そのように現行法で定める期間より一層長い期間保存しよう、そういう改正内容になっておりますけれども、この百年を超える我が国の公示制度データの集積、その閉鎖登記簿の一枚一枚は我が国の国土の一区画一区画の極めて大事な、いわゆる制度発足以来の権利変動というものが経過としてずっと記されている。その意味では極めて貴重な資料であり、閉鎖登記簿である。法律の上では一応五十年、三十年というふうにされておられますが、私は実質的にはこれは永久保存をすべき対象であろう、かように存じます。しかし、紙ですから、長い年月の間では朽ち果てるということもあるわけでございますので、コンピューターの発達した技術の力を活用してイメージ処理をする中で、いわゆる紙ではない、永久にそれが、消されない限り朽ちることもなく永久保存ができる、こういう姿勢で臨んでいただきたいなと思っておりますが、この点についてはいかがでしょうか。
  190. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 閉鎖登記簿の保存期間につきましては、昭和三十五年に、それまで三十年であったものを二十年に短縮するという改正をいたしておりますが、これについては短過ぎるといういろいろ御批判もございまして、民事行政審議会答申の中にもそれが盛り込まれましたので、今回、土地は五十年、建物は三十年というふうに延長して保存をするというふうに改正をさせていただきたいと思っております。  ところで、それから先の保存ということになりますが、現在こういう先端技術は日進月歩でございまして、私どもとしましても、いつまでも紙の登記簿で置いておいていいものか、今後の技術の進展に応じまして、近い将来これを例えば光ディスクに格納するというふうな形で保存をできる可能性があることになりはしないか。そうなりますと登記所の場所を大きく占領するということもなくなりますので、長期に保存は可能と言えば可能になります。データの劣化を防ぐようなことができるかどうかという新たな問題は生じてまいりますが、御指摘のような方向で考えてみたいというふうに思っております。
  191. 山田英介

    ○山田委員 コンピューターシステムに移行された場合には、簿冊システム、ブックシステムと違いまして、一定の手数料を納めて、現行では簿冊をめくってその物件についての情報を読み取るわけでございますが、コンピューターシステムになりますと、そういう形は少なくともあり得ないわけでございます。どうして当該不動産に関する情報を入手できるかといいますと、これは今回の改正法案の中でも触れられておりますけれども、一つには登記事項証明書、もう一つは登記事項要約書というこの二種類があります。  この登記事項証明書というのは当該物件についてのすべて、磁気ディスクにインプットされているすべての情報を出していただくことができる。しかし登記事項要約書、それはすなわち現在の簿冊閲覧制度にかわるべきものだという言われ方も聞いておるわけでございますが、伺うところによりますと、この登記事項要約書の事項の中には、いわゆる所有権登記であれば年月日、登記原因、所有権を取得するに至ったその登記原因がどうも入っていないようだ、こういう、これは特に登記実務者の皆さんからも御心配の声を伺っております。  その後、法務省の幹部の方とお話し合いをさせていただく中で、船橋で現在実験されている一号機を本年のしかるべき時期に板橋に持ってまいりまして、そこからブックレスシステムのスタート、当初はブックシステムと並行処理ということになるのかもしれませんが、このいわゆる一号機にはもうシステムとして登記事項要約書のシステムが組み込まれていますから、そこから登記原因を出そうということになるとシステムを組みかえなければならぬのだろう。二号機以後につきましては、これからさらに今回の一号機の実験の結果、評価、検証を踏まえてこれをどうすればいいかということになるわけでしょうから、私はできれば一号機からぜひお願いをしたかったなと思っているのですが、特に閲覧あるいは登記事項要約書を確認する手段として、所有権の移転、物権の変動等具体的に登記申請手続がなされるわけでございますので、これはぜひ二号機からそういうシステムを組み込んでいただいて、少なくとも要約書の中にも年月日、登記原因、これはどうしても出していただくように強く要望申し上げたいわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  192. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 登記事項要約書の記載事項は法務省令で定めることを予定いたしておりますが、今仰せになりましたように、現段階のシステム設計では登記原因とその日付というのが入っておりません。そこで、さしあたり板橋出張所を第一号として指定して動かすに当たりましては、ここでは今のシステムがそうなっておりますので、登記原因を要約書に出すわけにはまいらないわけでありますけれども、かねてから日司連からもそういう御要望がございますので、私ども民事局といたしましては、確かに登記原因の記載が一つの有益な事項であると考えますので、できるだけ早い機会にそういう御要望に沿えるようなシステムが実現できればと思っております。
  193. 山田英介

    ○山田委員 あと一、二点、簡単で結構でございますが、ブックレスシステムの実験庁、これは時の法務大臣が指定登記所を指定される、そしてそれが複数、十、二十、百というふうにだんだん拡大をしていく。それで、そういうブックレスシステムが実際に運転開始された場合に、このコンピューターシステム全体について改めて今度は検証、評価をする一つの委員会といいますか、現在板橋のパイロットシステムについてはその検証とか評価の委員会が設置されているわけでございますが、このいわゆるブックレスシステム全体についての検証、評価をする委員会等は設置すべきではないかなと存じますが、この点はどういう御見解でございますか。
  194. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 まず板橋でブックレスシステムをやるわけでございますが、その稼働状況につきましては、パイロットシステムで行ったと同様にその道の専門家に検証、評価をしてもらい、それを踏まえてさらにシステムの改善を図っていかなければならないと考えております。
  195. 山田英介

    ○山田委員 残された質疑時間でどこまで議論を深められるかということでございますが、第一回目の審議、それから本日先ほどまでの審議の中でるるやりとりがされて問題点等がそれなりに浮き彫りにされてきたのかなと存じますが、改めまして私なりにちょっと整理をさせていただいて、重複する点もあるかもしれませんけれども質問をさせていただきたいと思っております。  まず第一点は、登記原因証書の関係でございますが、現行制度のもとでは登記の真正を担保する措置は具体的にどういう形でとられているのでしょうか。そして、それで果たして十分であると御評価されているのか、あるいは不十分な点もありますという御認識なのか、まとめの意味でちょっとお願いしたいと思っております。
  196. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 真正を担保するための方法としては、現行法では第一に、登記は原則として登記権利者登記義務者またはその代理人が出頭して申請しなければならないという共同申請の原則がとられているということ。この共同申請に当たりまして、その申請書もしくは代理人による場合には委任状に押捺されている判と印鑑証明書による照合ということが行われることによってその意思が確認されるという仕組みになっております。第二に、申請書には登記義務者の権利に関する登記済み証が添付される。この登記済み証が添付されるということは、これは登記義務者がその所有権移転登記申請をしているということを推知させる資料であるということが言えようかと思います。もちろん、これがない場合の保証書という機能も果たすわけでございます。三番目に登記原因証書、これは登記原因の内容に沿う文書が作成されているということによって登記原因が真正であるということを一応推認させる資料になると考えます。その他、第三者の許可書その他書面の添付によってこの登記の真正を確保しようというのが不動産登記法の建前であると考えております。
  197. 山田英介

    ○山田委員 不動産登記法の三十五条で、まず原因証書は必要的な添付書類である、こう原則的に決められております。だから、初めから原因証書が存在しない、あるいは提出することができない場合には副本で申請ができる。これは四十条で例外的に規定が置かれている、こういう仕組みになっております。私はそれは十二分に承知した上で、以下、質問させていただくわけでございます。  そこで、くどいようでございますが、法第三十五条で必要的添付書面とした原因証書、この立法の趣旨は一口で言うとどういうことでございましょうか。
  198. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 直接的には登記済み証を作成するということに非常に意味があるわけでございますが、そのほかに先ほどから問題になっております登記の真正を担保するという機能も同時に期待しているというふうに考えております。
  199. 山田英介

    ○山田委員 前回の審議のときときょうの先ほどまでの審議のときで浮かび上がってきた論点の重要な一つは、初めから論理的に登記原因証書が存在をしないというようなときは例外として除いて、しかしその他の登記原因が現実に発生をする、存在をする、そういう登記申請については登記原因証書の提出強制ができないのかどうかというところが論議のポイントになっているわけです。  それで私も御答弁等を伺っておりまして、三点ないし四点ほど民事局長あるいは審議官から指摘がなされておるのを私なりに整理してみますと、一つは登記原因証書自体の真正担保は一体どうするのかということがいま一つわからない。いい答えが出ない。それから二つ目は、現行の採用している真正担保の手法と重複する部分があるのではないか。例えば印鑑証明書。登記原因証書の適格要件を見直して、そこに実印を押させるというふうにした場合でも、要するに現行の真正確保方法と重複をするではないか。それからもう一つは、民法百七十六条の物権の変動等については「意思表示ノミニ困リテ基効力ヲ生ス」、このいわゆる民法の意思主義とのかかわりで、提出を強制することはいかがなものか。さらにもう一点言われたところは、登記申請のためだけに原因証書をつくるというものではないだろう、便宜的に作成させるというようなことであれば、それは余り意味がないのではないか。  私は、今までの質疑応答の中でそのように大体局長も審議官も御答弁なさったのだろうと思いますが、大体こんなところでございますか。ほかに何かございましたら……。
  200. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 大体仰せのとおりでございます。     〔委員長退席、今枝委員長代理着席〕
  201. 山田英介

    ○山田委員 原因証書自体の真正担保は一体どうするのかということにつきましては、登記実務家として司法書士がそこに関与する、かかわる、そういう中でこの原因証書自体の真正というものはかなりの部分確保される、担保されると私は思います。具体的な登記実務の現場での司法書士の対処の仕方等に思いをいたせば、現実的にそれは言えるわけでございます。  それから、現行方法と重複をするということにつきましては、例えば印鑑証明書のシステムを考えてみた場合に、実印が委任状に押されている、そして印鑑証明書が添付されてくる、それを突き合わせる。本人申請の場合には申請書の登記義務者のところに実印が押されますから、そことの照合をする。仮に、新たな適格要件をつけたところの生まれ変わった原因証書に署名、捺印をさせる、その場合の捺印は実印だ。こうした場合に、印鑑証明書を突き合わせる書類が一件ふえたということで重複というイメージは確かにあります。イメージというか、重複でございますが、しかし、その他のいろいろな債権契約的なものも含めて物権契約というものが記載をされた、その意味不動産取引に関するいろいろな情報がたくさん記載されたその登記原因証書に自署して、そして実印を押す、それが印鑑証明書と合っているかどうかダブルチェックということも、これは現実にあり得るわけでございまして、私は、そういう観点からいたしましても、現行とられている真正担保、確保の手法とダブるからそれは要らないんじゃないかということにもならないんじゃないかなというふうに存じます。  それから、これは後ほどまた触れたいと思っているのですが、原因証書そのものが、確かに実印、判こという部分で見ればそういうことでございますが、登記申請手続に添付書類として出された登記済み証、それから印鑑証明書、あるいは実印を押した委任状、あるいはまた住民票、そういう他の添付書類の一つ一つとこの原因証書を比較対照した場合に、まさに審議官もおっしゃっておられたかと思いますが、いわゆる物権変動の過程あるいは物権変動があったという事実をこれは記載をしているわけでございますから、要するに、物権変動の存在を直接的に表現をするそういう書面であるという意味においても他の添付書類とは全く違う機能を持つものではないか、こういうふうに見ることもできるわけでございます。したがいまして、単に重複するのではないかということだけでとどまらずに、やはりダブルチェックとか書類の持つ性格、機能の違いというところにももう一歩立ち入って着目をされていく必要がある、こういうふうに私は考えます。     〔今枝委員長代理退席、委員長着席〕  それから、民法百七十六条意思主義との関係についてでございますが、先ほど来、また御答弁の中にもありましたけれどもフランス民法はこれはもう意思主義をとっております。その流れをくむ日本民法も同じ、要するに意思主義をとる。しかしフランスにおいても、お話がありましたように公証人が公証した原因証書というものの提出を強制している、しかし一方にフランス民法は意思主義である、こういう仕掛けになっています。日本の場合でも、民法は確かに意思主義を採用しておりますけれども、発生した物権変動の成立要件は意思主義である、しかし、そのことを如実に登記簿に反映させるべく登記を実行するわけですから、そのときに一定の要件具備といいますか、例えば原因証書あるいはそれにかわり得べき物権変動の存在を確認できるものを手続法が求めるということについては、これは今申し上げましたフランス法の仕組みからいっても、それを例にとりましても特段に矛盾するものではない。実体法で成立をしたことを実際に公示することが求められるわけですから、そのときに手続法の上から、こういうものをそのときは出してくださいよと言っても、これは別に矛盾するものではありませんということになると思います。  それから、登記申請手続のためだけに原因証書というのはつくられるものではない、ともかく登記ができれば、そのために便宜的につくっておけばいいんだということであっては絶対ならぬと私も思います。むしろ登記の真正を担保するという機能のほかに、将来において不動産取引をめぐる紛争、トラブルというのを予防していく、例えばそういう機能というものも積極的に認めていく、あるいはそれを持たせるためには現在の原因証書というものをもう一度洗い直して、その適格要件を含めてどういう位置づけにすればいいかということを積極的に考えていくということが大事であると思います。  それから、証拠保全とまでは自信がありませんけれども、後日紛争が発生した場合に、登記原因証書を素材とした権利証が厳然として残されているとすれば、そこにいわゆる事実関係を疎明させるという意味においては原因証書に極めて有効な機能を持たせ得るのではないだろうか。それは、今使われている、今これでも原因証書ですよ、認めますよというその意味の原因証書ではなくて、今後、将来にわたってどうあるべきかという不動産制度全体の検討の中の位置づけ、その中で検討していかれたときにでき上がる原因証書、そういう意味でとらえていただいていいわけでございます。  そうなりますと、原因証書というのは本来法三十五条で原則的に必要的添付書類だ。もしそれが理論的に登記原因がない、登記済み証が初めから存在しない保存登記とかあります、それから、提出することができない場合には例外的に副本ですよ、こういう仕組みになっているわけでございますが、それをフランスの例では提出が強制をされている。こういう事例もあるわけでございますので、そういう原因証書提出強制にたえ得る原因証書の適格要件の検討あるいは位置づけ、意義づけというものを、今すぐというわけにはとてもいかないわけでございますが、今後、このブックレスシステムに移行するこの際重要な課題の一つとして踏み込んだ議論をし、そしてできるだけ早期に方向性あるいは成案などを得るよう最大限の御努力をいただかなければならない、私はかように思うわけでございます。  そういう中で、現在この三十五条で期待をされているわけですから、その物権変動の事実、存在というものがあったのかどうか、そういう登記原因をできるだけ本当に確認できるような機能も現に持たせているからこそ三十五条で必要的添付書類と決めているわけでございますので、そのことを十分踏まえた上で現在使われている登記原因証書というものの性格づけ、意義づけ、どうしたら真正確保のために生かしていくことができるだろうかという方向で、今後真剣に御検討をいただきたい、こう思うわけでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  202. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 それでは先に私の方から、非常に難しい問題でございますので、私、的確にお答えできるかどうかわかりませんが、考えておりますことを申し上げたいと思います。  先ほど先生の要約された理由というのはほぼそういうことで申し上げたわけでございますが、その根底にあるのは、それによって国民に負担が生ずる、負担が生じた場合に、その負担と効果とが見合うかどうかということがあろうかと思います。特に問題は、やはり真正担保ができるかどうかというところでございまして、巷間言われておりますところによりますと、中間省略登記というのは随分行われているというふうに言われておるわけですが、それがそのままの形で続くような状況での原因証書の作成でございますと、今でも中間省略というのは売買とかなんとか書いてあるわけですから、それが続くようなものであれば何の意味もないということになるわけで、国民に負担をかけるだけの制度になる。  そうだとすれば、その場合にどういうふうにしてそういう真正を担保できるかということが問題になるわけでございまして、これは先ほど稲葉委員の御質問にお答えした点でもありますけれども、公証制度というのを導入するということは、これはフランスがやっておりますとおり、できないことではないと思います。ただ、それが国民の納得が得られるかどうか、それからそれについてそれの真正というものを公証するに当たって一応審査しなければいけないわけですが、それがどういう形で審査でき、そしてその担い手をどういう人にするかというような問題について踏み込んだ議論をしてみないと、なかなかこれについて決断をすることはできないのではないか。特に国民の理解を得るということについて、私どもとしては非常にどういう手順を踏んでその点について国民の理解を得られるだろうかということを考えておりまして、国民のコンセンサスが得られれば、これはいろいろな方策が考えられるわけでございますので、そういう動向を見守った上でなお十分検討してまいりたいと思っております。
  203. 山田英介

    ○山田委員 その点は大変私もよく理解できます。それで国民のコンセンサス、それから具体的に言えば登記原因証書を強制するということに見合って、例えばそうすることによって中間省略登記というようなものが要するに絶滅されていくということになるのであれば、それはむしろ国民のコンセンサスが得られたと見ていいだろう、あるいは登記原因証書の提出強制ということもあり得るだろう、極めてわかりやすいわけでございます。  実は、私も中間省略登記が水面下でかなり増加しているというふうに推察ができる。それから、実際は売買による所有権移転登記であろうはずなのに、真正な登記名義の回復を登記原因として申請されてくる。それは、甲から乙へ移転したのが実は丙だったんだ、ここでとどまればいいのですが、丁だ、その先だ、こういく場合も極端な例としてはあるようでございます。要するに、そういうことが絶滅されていく方向ではっきりとした効果が期待できるということになれば、例えばこの原因証書の提出強制ということも十分意味を持つ。これは非常にわかりやすい。そのためにまた中間省略登記あるいは真正な登記名義回復、それは不登法上真正な登記名義の回復を登記原因とする登記申請は認められているわけですから、要するにこれを悪用したといいますか、利用して、本当は売買による移転なのにこれを何度も利用する。いずれにしてもこれはいけないわけですよ。ですから、そういうものをなくしていくために、一方において不動産公示制度を支えている職能集団、司法書士のサイドにおいても懸命な努力が必要であるということは当然言えるわけでございます。  そこで、これは鶏が先か卵が先かというようなことにもなるわけですが、今の中間省略登記も、いろいろ考えてみますと、田舎の方の人口が余り多くない地方における登記申請の実態と、それから大都市部における登記申請の現場の実態というのはかなり違うようでございます。特に中間省略登記あるいは真正名義の回復を原因とする登記等は、主に大都市部等で隣の人の顔もわからないというようなところでの登記事案において起こりがちである、これもまた事実であろうと私は思います。  そうなってきますと、私も現実に取材をしてそれなりに確認をして発言をさせていただいているわけですが、例えばA不動産会社が売買による所有権移転登記の申請書を、登記義務者の必要書類も権利者の必要書類も全部A事業者が持ってまいりまして司法書士の事務所を訪ねた。そのときに、これがAからBという移転の形になっていますけれども、司法書士としても、これが登記法が全く予定していない中間省略登記なのか、あるいはそうじゃない、本当にAからBへの債権契約、そして物権契約があって、代金の決済が済んで登記申請手続を委任したということなのかというのは、その段階ではわからないわけです。  そうなると、司法書士はどうするかというと、要するにその売り主買い主をここに呼んできてください、こうやるわけです。いや、買い主はいつでも連れてこられますが、売り主は病気しておりまして病院に入っておりますので連れてこられませんとなった場合に、大都市部における司法書士はどうするかというと、本人を確認するために、あるいは意思を確認するために病院に行くわけですね。本人と面接するわけです。こういうことで来ておりますけれども、あなた、本当にこの物件について所有権移転して構わないのですねという確認をとるわけです。それで要するにこれは真正だなということで確信をして受ける、これが通常の姿でございます。これがほとんどの姿でございます。  ただ、その場合に、登記権利者と義務者を連れていらっしゃいと言った場合に、承知しましたと連れてくる場合があるのです。連れてきたのが実はA事業者と意を通じた、そういう登記義務者本人じゃないのを登記義務者ですというふうに連れてくる場合がある。その場合には確認の手段が、やればいろいろな方法があるのでしょうけれども、そこに例えば登記原因証書というものを出さなければ所有権移転できないのですよ、こういうことになっていた場合に、ではここに署名、捺印をしてください、そこに自分で署名した、そして判こを押そうと思ったけれども、そこで実印を、通常持っていないわけですから、見破ることができるという、例えば真正担保機能というものも果たすことができるわけでございます。  そうなってまいりますと、これは中間省略登記だなとわかる。A事業者に、どうなんですか、AからBという形ですが、実はこの中に甲さんが間に入っているのじゃないですか、これはAから甲、甲からBへと、中間省略しないでちゃんと実体に即した登記の手続を、あなた、しなければだめですよ、そうしないと我々は八条で、要するに嘱託拒否ですよ、こうできるわけでございます。  ですから、鶏が先か卵が先かと私申し上げましたけれども、これはやはり例えばそういう司法書士の側からいえば、原因証書というものが要するに強制されていないから、詰めて詰めていくと、ここのところがなかなかネックなんですねという言い分がある。主張がある。いや、しかしそう簡単に強制はできませんよ、三十五条、四十条との関係からいって、そう簡単にできませんよ。では、やるためには、中間省略の登記がほぼ抑止された、減少させることができたという実績あるいは見通しというものが、少なくとも心証が得られなければ法改正なんかとてもできませんよ。これではどうにもぎすぎすして行き詰まってしまうわけでございます。  そこで、もう時間がありませんが、真正名義の回復を原因とする、ちょっといかがわしい、おかしいなというような感じの登記もふえる傾向にあると言われておりますけれども、それについても全く同じことが言えると私は思っております。登記官の皆さんは、我が国の公示制度というものを本当に迅速に、しかも他の国のシステムに比して全く遜色のない、あるいは、確かに公信力は与えられていないけれども世界一の正確な我が国登記システムなんだというところを理想として目指して、誇りを持ち、あるいはまた使命感を感じて、そしてまた情熱を燃やして頑張っておられる、これは事実でございます。いわゆる提出された書面の審査の範囲内といいますか、権限内でもってそういう理想に燃えてやっておられる。とともに、しかし、その登記申請に至るまでの実体面における調査というものは、いろいろ議論してきて、司法書士はやはり善良な管理者の注意義務をもってできるだけ正確を期すために最大限の努力をするという、この両々が相まって国民の信頼に一層たえ得る公示システムというのができ上がるわけですから、そこのところはやはり司法書士と民事局がというか、登記官が本当に力を合わせていかなければならない。ですから、責任だけは非常に重い。しかし、司法書士としても責任の重さというものを十分考えて、そこにまた使命感を燃やして頑張るわけです。  ですから、司法書士が間違うであろうときでも間違えないで済むような例えばシステムというものも、御信頼をいただいてつくってあげることも非常に大事なことなのだと私は思うわけでございます。司法書士も何も意識して中間省略登記あるいは真正名義、そんなことはあり得ないわけでございまして、司法書士の登記実務家の目をもってしても、対処をもってしても要するに見破れない、システム上そういうことであるとすれば、このシステムは変えなければならないでしょう。それは司法書士に特段の何かをしてあげるということではなくて、そういう真正担保のチャンス、システムというものを、その条件を整備してあげることによって、登記官の努力と両々相まって世界一の公示制度我が国に確立をし、そして発展をしていく、こういうことになろうかと思うわけでございます。中間省略登記がなくなるということがわかれば、あるいは真正名義の回復を原因とする登記申請、いかがわしいのがなくなる、実際にそうなれば初めて原因証書提出の強制をやりましょう、法改正をやりましょう、まさにそこのシチュエーションからだけではこれはなかなか解決しない、なかなか前に出ない、この原因証書というのはそういう極めてデリケートな問題でもあろうかと私は思うのです。  それで、時間が参りましたので、私はこれをぜひ確認をいただきたいと思っておりますが、民事局局付の検事さんで浦野雄幸さんが昭和四十二年五月五日に司法書士の研修会で講演をなされた「公信の原則と登記制度」というのが出ております。大変わかりやすく、また、示唆に富んだお話になっているわけでございますが、大事なところでございますので、一部読ませていただいて、私の質問を終わらせていただきます。   これは立法論となって恐縮なのでありますが、原因証書を簡易に公証する方法がとれないだろうかとすら考えるのです。現行法上原因証書は必要添付書面になっておりますけれども、原因証書が初めからない場合や提出できない場合申請書副本でよろしいということになっておるわけです。しかし、申請書副本が出された場合、登記官がその実体関係が有効に成立していることを形式的に審査しているのだということは全くナンセンスなのでありまして、原因証書とりわけ申請書副本というのは登記済証をつくる以外には実質的に何の役割りも果たしていない。しかし、登記済証をつくるためにのみ原因証書を出させるというのは登記所側から申せば筋のとおらないことなのであります。つまり、登記済証は登記所でつくってやったらいいのであって、原因証書を出させることはないと思うのです。何のために原因証書を出させるかと申しますと、やはりこれはその原因証書によって形式的にでも物権変動が正しく行なわれているかどうかということをチェックし、正しい登記がなされることを保証するからこそ出させる実益があるはずなのです。ところがいつのまにかそれがそういう制度でなくなってしまっているわけです。と申しましても、実体的権利関係を登記官が審査しろといっても、これはできないことであります。これは裁判所手続を経なければできないことでありまして、登記所がそんなことをやっておったのでは、ますます登記がおくれてしまう。それよりもむしろ皆さん方が現実に双方の申請人から依頼を受けて間違いのない原因証書をつくる、あるいはすでに作成されているそれを簡易公証する、そしてその公証された原因証書でなければ(申請書副本は認めないことにして)登記ができないというようにしたら、私はわが国において公信力をあえて認めなくとも、登記がこれを信頼する人を保護するという役割りを十分に果たし得るだろうと思うのであります。また、現にそれだけのことを実質的にはしておられるのでありまして、そういう制度を設けることは決して思い上がった意見ではないというぐあいに考えられるのであります。私はそういう制度こそまさに登記への信頼を実効あらしめる一つの大きな母体になるだろうと考えるのであります。  引用が長くなりましたけれども昭和四十二年の時点で問題点を非常に明確に指摘をされていると私は理解をいたしたものですから、あえて読み上げさせていただいたわけでございます。  それで、最後に林田法務大臣に、今までの議論、やりとりをお聞きになられて、そして今申し上げました法務省民事局付の、しかも登記第三課付の検事さんが司法書士の皆さんの前でこういう講演をなさっておられた、既に四十二年の段階で法務省にはこういう御意見が間違いなく存在をしているということを踏まえまして、法務大臣から一言御所見を伺いまして、私の質問を終わらせていただきます。
  204. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 四十二年当時よりも不動産の価値は飛躍的に重要になってまいっております。その際におきまして、登記を真正ならしめるためにはいろいろな手段が必要でありまするが、特に今指摘をされておりまする証書が非常に重要だと存じます。  これからさらに、法務省といたしましても急いで検討をいたしまして、司法書士が今大いに努力をしていただいておるわけでありまするから、司法書士の努力とも相まちまして、司法書士の使命を十分果たしていただきまするように検討を重ねたいと存じます。
  205. 山田英介

    ○山田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  206. 戸沢政方

    戸沢委員長 安藤巖君。
  207. 安藤巖

    ○安藤委員 私は、前回質問をいたしました続きがあるのですが、それはちょっと後にいたしまして、登記簿閲覧の問題からお尋ねをしたいと思うのです。  今度のこの改正案によりますと、閲覧という制度はなくなる、登記事項要約書というものを出します、こういうようなことですが、先ほど来ちょっとお話を伺っておりまして答弁もいただいた中に、今回のコンピューター化に際して、移行の際に、現在効力を有するものだけ、だからそれ以前のものは、例えば甲区のものでも現在の所有権者だけということで、それ以前のものは移行しない、登記ファイルに入力しないということになるわけです。そうしますと、それは簿冊として残る、だからその限りにおいては簿冊閲覧するという制度は残るのだなと思っております。  そうしますと、後で手数料のときにもお尋ねしようと思っておりますが、現在の効力のある登記事項要約書はいただく、その前のを見たいと思えばまた別に手数料を払って簿冊閲覧する、こういう仕組みになるわけですか。
  208. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 そのようになります。現在においても、それはそうでございます。
  209. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、不動産登記法の二十一条に、手数料を納付して登記簿閲覧を請求することができる、こうなっておるわけであります。この二十一条の閲覧の関係のところは、移行された分に関しては空文になってしまうわけですか。
  210. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 これにつきましては、登記事項要約書という制度に置きかわるわけでございまして、閲覧制度の適用はないということになります。
  211. 安藤巖

    ○安藤委員 今おっしゃった、要約書を交付することに置きかわるというのは、この改正案ではどこに手当てがされておるのですか。
  212. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 これは百五十一条ノ三という規定でございまして、これで第四章ノ二「電子情報処理組織ニ依ル登記ニ関スル特例」という規定の中の一つとして書いてあるわけでございます。そして、この特例というのは、明文で排除しなくても当然に特則になるもの、つまりコンピューター磁気ディスクを見てみたって、そこから登記事項は何も出てこないわけでございますから、それは当然特則であるということが読めるという趣旨で考えております。
  213. 安藤巖

    ○安藤委員 読めるということをおっしゃるのですが、それは磁気ディスクに入ったものを見せろといったって無理な話だということは重々承知の上ですが、乙の二十一条が生きている。私、この二十一条に従ってどうしても登記簿もしくはその附属書類の閲覧がしたいんだ、手数料は払うということになってきた場合は、今おっしゃったような特例があってこうこうこうなっているから、今回はこの百五十一条ノ三の五項ですか、これでいくのですからそれで我慢してください、こういうような説明をするということになるわけですか。
  214. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 お説のようなことになるわけでございます。
  215. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもおかしいなと思う。どうもこの辺、整合性がないんじゃないかなという気がするのですがね。  ところで、これはよくあることなんですが、例えばAという人が東京都の港区に住んでいるとしますね。ところが、この人が江戸川区の何町の何丁目に不動産、土地を同筆か持っているようだ、債権の関係もこれあり、差し押さえもしたいというようなことを考える、これはよくあるだろうと思うのですがね。そういう場合に、その人が江戸川区の何町ということはわかっている、何丁目もわかっている、しかし何番地なのか、またこれは枝番ももちろんわかりませんが、そういうのを調査するときは、これまででしたら登記簿閲覧をして、その何丁目のところの簿冊を持ってきていただいて見るわけですね。そして発見することがよくあるのです。今度こうなりますと、要約書を交付申請をしましても、ずばっとそれが出てくればいいのですが、それが出てこない場合があるのだろうと思いますね。そういう場合は、その人は一体どうしたらいいのですか。
  216. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 コンピューターで名寄せといいますか、そういうものはやらないという建前になっておりますので、私どもとしてはそういう要望についてどういうふうに配慮するかというのはいろいろ苦慮しているわけでございますけれども、非常に限定された区域内については、そういう不動産の所在を所有者の名前から探してあげるというようなことをしてもいいのかなというようなことも考えております。ただ、私どもとしては、少なくとも住居表示から不動産の所在がわかるというような仕組みはつくりたいというふうに思っておるわけでございます。
  217. 安藤巖

    ○安藤委員 今の前段のお話ですと、甲野太郎氏はどこどこに住んでおってこういう人だ、この人のを江戸川区の何町の何丁目で探してもらえぬかと言えば、今のお話からすれば探してあげますよということで探していただいて、それに該当する要約書をいただくことができる、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  218. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 そのような方向で今検討しております。
  219. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、それはそのコンピューターシステム計画もきちっとやる、そういうものを特にシステム計画としてハードの面で入れ込まなくてもちゃんとできるわけですか。
  220. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 そういう事態を想定いたしまして、どのくらいの狭い区域にするかということはまだ、なるべく狭い区域にしてせいぜい起番区域ごとだろうというふうに思っておりますけれども、つまり番地が一連出ていますが、その番地ごとの区域ごとだろうと思いますが、そういう方向システムの中には一応組み込んでおります。  ただ、それを悪用ということがあっても困りますので、前から問題になっておりますプライバシーの問題がございますので、それをにらみながら直接申請人にタッチさせるというようなことはしないで、常に登記所の職員に聞いていただいて、登記所の職員が調査した上しかるべくお教えするというような形で、乱用はできるだけ防止するような形でやりたいということで、システムの中には組み込んでいるわけでございます。
  221. 安藤巖

    ○安藤委員 この閲覧の関係で、日本司法書士会連合会の方からいろいろ協議をなさった過程で、これは午前中参考人の御意見になかったような気がするのですが、印字をして、印字というのは字であらわして、例えば今の何丁目、これは全部これだけですというふうにして、これは紙にしてこれだけです、そしてそれを閲覧するというような要求もしておられるように聞いておるのです。そうしますと、要約書というのは、この前からいろいろお伺いしておりますと一枚十筆ぐらいだというふうに言っておられるのですが、それをもっと幅広くこれとこれというように一つの町名、どこで区切るかは一応別にして、十筆ということではなくてもっと幅広くこれだけのものがこうありますというふうに出して、それを閲覧することができるように、こういうようなことはお考えにならないのですか。
  222. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 不動産を特定していただければ、例えば何番から何番までは出してくれというふうに言われれば、これはコンピューターの操作で何筆でも出ます。もちろんそれに相応する手数料はかかるわけでございますが、抽象的に全部下さいというような請求は認めない。要するに、どういうところのそういうデータが欲しいかということだけは特定していただくという仕組みになっております。
  223. 安藤巖

    ○安藤委員 ですから、今行われている閲覧、これと比較しますと大分不自由、不便になるなという気がするのです。それは確かに午前中参考人星野先生もおっしゃったように、それからいろいろ御意見を伺っておりますと、まさに原簿そのものを見せて、それを閲覧をしてもらうということで、それしかないわけです。だからいろいろ紙の質も悪くなるし、くしゃくしゃにもなるしということはあろう。それからたまには事故もあるということで、よくわかるのですが、やはりいろいろな不便があるなということを思うものですから。  私が思うには、それはパチンコ屋みたいに台をたくさんつけるというようなことは到底できませんよというような話は前もって伺っておるのですが、この前板橋へお邪魔しましたときに、閲覧をしておられる方がほとんど満席で閲覧をしておられた。数えましたら大体二十人近くみえたかなというふうに思うのです。あそこは相当忙しい出張所だというふうに伺っておるのです。しかし、今度は端末機だけ置くという登記所もあるのだということもお考えになっておられるようだし、全部が全部二十台要るわけではないと思うのです。大体五台のところ、あるいはもうちょっと少ないところ、多いところ、大体平均五、六合ぐらいを各登記所に置けばそれでいいのではないかなという気がするのです。そんなこと言ったって千百七十カ所あるのだぞというふうにおっしゃるかもしれませんが、それで計算しても大体六、七千台。  それで、それは端末機で読み取ることができるというだけのディスプレー装置ですから、そうなったら、これは日進月歩で、値段は、ワープロの場合の話でございますけれども、今いろいろな操作ができて、ちゃんとコピーした紙も出てくるというような相当精巧なものでも一台十万円を切っているというような状況にあるわけですね。だからそういうことからすれば、そういう読み取りだけができるというものだったらもっと安くできるのではないか。そして、さらに時間がたつに従って値段も低下していくということは十分考えられるのではないかと思うのです。だから、大ざっぱに計算をしてみても大体六億円ぐらい。  もちろんそれだって大したお金でございますけれども、今度は物すごい莫大な費用をかけてとにかくおやりになるわけです。公示それから公開というような制度不動産登記法があるわけですから、これをきちっと維持していく、これが国民に対するサービスの低下を招かない、不便さをもたらすというようなデメリットをなくす、こういうようなことから一遍考えてみていただく値打ちはあるのではないかと思いますが、そのことは全く考慮の外だということなのか、それなら一遍考えてみようかということになるのか、どうなんでしょう。
  224. 稲葉威雄

    稲葉政府委員 先生おっしゃったような現行の閲覧制度は、本来は一筆ことに二百円の閲覧手数料が必要だということになっておりますが、実際には一筆見たいといっても一冊を貸すというシステムにならざるを得ない。本当を言えば、その一筆分だけ外して見せてやって、あとはこちらにしまっておくということの方がいいのかもしれませんが、それは非常に手間がかかるということからそうなっているわけです。そういう意味では、全部を見るというこれは、制度的にいえば少し悪用と申しますか、制度本来のあり方からいうと違った使われ方をしているのではないかということが基本にございます。  それと、先生御指摘のような方式でございますが、要するにディスプレーに映し出して閲覧に供するという方式でございますが、これについても民事行政審議会で検討がされました。そしてお手元の法律案関係資料の中に民事行政審議会答申が載っております。その二十四ページに出ておりますが、結局、表示装置の数が多い、それから管理要員が要る、設置面積が多くなる、コンピューター運用経費がかさむ。結局、コンピューターの場合にはデータを選別してそれを線でディスプレーのところに持ってくるという経費がかかるわけで、そういうような経費がかかるわけでございまして、むしろ紙に打ち出した方が安くつくということがございます。  そういうことで、現在の閲覧の利用というのは安価だというところに非常に支えられているわけでございますけれども、安価というのはかなり危険なことを承知の上で、先生御指摘のような危険性を承知の上で原本を閲覧に供しているということから生まれてきているわけで、かなり前近代的なシステムになっている。その前近代的なシステムをもっと安全性のあるシステムに変えようとすると、そこではある程度違った形にならざるを得ないので、その中でもできるだけ安価に情報を提供したいということでこういう要約書の制度をつくったわけでございまして、かつてこの点は非常に検討したわけでございます。非常になじみやすい、今の制度からいうと先生おっしゃるように非常になじみやすい制度でございますが、検討した結果としてなかなか難しいということに現在のところはなっております。
  225. 安藤巖

    ○安藤委員 午前中の参考人の方の穂鷹先生でしたか、将来の話ですが、それぞれの司法書士さんの事務所に装置を置いて、そしてボタンを押して読み取るというようなことはできるのだということもおっしゃってみえたと思うのですが、そうやって司法書士さんの事務所でそれぞれそういう装置を備えて読み取るということをおやりになるとなれば、そういうことで賄うことができれば、今まで登記所へ来て閲覧をするというようなことが事務所でできることになるわけですから、その分だけ登記所に備えるそういう読み取り機というのは減るわけだろうと思うのですね。そして、自分の必要なところだけ、今まででもそれは全然関係ないところを探したってしようがないので、やはり必要なところを閲覧しておられると思うのですが、しかも、先ほど言いましたように読み取り装置というのはそれだけのハードしかない、設計しかしていないということにしておけば操作も簡単だし、先ほども要約書に登記原因が載らないという点、これは考えるというふうにおっしゃったのですが、だから、そういうようなことも一挙に解決がつくのじゃないのかな、そして閲覧という制度がぴしっと残るのじゃないのかな、こういうふうに思いますので、しっかり検討して、もう結論がついたとおっしゃらずに、引き続いて御検討を要望しておきます。  そこで、先回いろいろお尋ねをしまして、一番最後のところで、人員の関係で、これはもちろん大ざっぱな話ですが、全部これを移行するまでに延べどのくらいの人手が要るだろうか。当然これは人件費にもかかわってくるわけですから、そういうような予算計画というのもきちっと立てていかなくてはならぬだろうと思いますから、そういう点でお尋ねしておるのですが、ではどのくらい要るというふうにお考えなんですか。
  226. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 前回、バックアップセンター一庁でその業務に従事するための職員が三人程度必要であろうということを予測として申し上げたわけでございますが、これが順次移行庁がふえてまいりまして、全国的に展開をした場合の最盛期における所要人員がどのくらいであるかということは展開計画次第でございまして、それがなかなか実は算定困難でございます。バックアップセンターの業務は、移行作業とそれ以外のバックアップ業務と両方含んでおるわけでございますので、それを全部込みにして考えなければならないわけでございますが、現段階で一応の展開図を描いて機械的に算出をしてみますと、最盛期において職員の数として三百人余りの職員が必要なのではないか。バックアップセンターの要員としてはそれぐらいが必要なのではないかというふうに一応試算をいたしております。
  227. 安藤巖

    ○安藤委員 そうしますと、これは全部移行が完了して、おっしゃるように最盛期に五十のバックアップセンターで三百人要る。そうしますと、これは最盛期ですから、私、先ほど三人とおっしゃったので、これは百五十人かなと思ったのですが、三百人、ずっと三百人要ることになるわけですか。
  228. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 ただいま申し上げましたように、バックアップセンターでは、当面移行作業を行うと同時に、既に移行が完了しましてコンピューター稼働を始めたものにつきましてのもろもろのバックアップ業務、それは障害対策もございますれば研修その他いろいろございますが、そういうバックアップ業務等を含めて両方の業務を行うわけでございまして、今最盛期と申し上げましたのは、移行が最も多く行われる時期にその両方を含めたものとして三百名余りの者が必要であろうということを申し上げたわけでございます。したがって、十数年たちまして、移行が全部完了して、全部がコンピューター化庁になった後は移行作業がなくなりましてバックアップ業務のみになりますので、それから先はバックアップセンターの要員は減ってまいるということになります。
  229. 安藤巖

    ○安藤委員 最盛期三百人ですと、それからまた徐々に減っていく、それ以前は徐々にふえてくる、等差級数か何か知りませんが、そういう計算をすると、これはもっとふえるわけですね。最盛期の必要人員が三百人ですから、それまでどんどんふえていく、それからまた減っていくわけです。だから相当な人数が要る。  それから、情報センターですか、この前のお話では、これも最盛期ですか、三十五人というふうにおっしゃったのですが、それも今のお話のいわゆる最盛期という話ですか。
  230. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 センターは移行を行いませんので、したがって、これは全国的に展開が終わった段階で三十五名程度必要である、そういう状態に落ち着くということでございます。
  231. 安藤巖

    ○安藤委員 移行作業には、この前は外部に委託するというようなお話もあったのですが、どの項目のどれを移行するかということもきちっと監督し、それが正確に行われるかどうかを管理監督する方も必要だと思うのですが、そういう人たちも含めての話だというふうに今お聞きしましたけれども、この人たちはどういうふうにして確保していかれる計画なんですか。
  232. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 前回も申し上げたことでございますけれども、中長期的にはともかくとしまして、短期的には、移行作業が始まり、しかしコンピューター化によるメリットというものがまだ生まれていないという状況でございますので、人員につきましてはかなり窮屈な状態になることは避けられないと思います。これにつきましてはできる限り内部の努力でもって対処いたしたいと思いますが、それによって対処できないものにつきましては、やはり関係機関の御理解を得て増員に努力するほかはなかろう、こういうふうに思っております。
  233. 安藤巖

    ○安藤委員 内部でまず努力をする、それで賄えない場合はほかのいろいろなことも考えるというお話ですが、内部で努力されるとおっしゃるのですが、これは今までもいろいろ議論がなされてきましたし、私どもも要望を申し上げてきましたし、そして請願も採択されてきておりますし、とにかく登記所は人手が足らなくてきりきり舞いしているという状況です。これはまだしばらく続くと思うのですけれども、内部で人を何とかやりくりといったって、これはいよいよ移行作業に入ったから何々法務局からあるいは地方法務局から、どこどこの出張所から一人持ってこようかというようなことで人を集めるなんということは考えておられないと思うのですが、どうです。
  234. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 現時点において既に登記所というのは慢性的に人員不足の状態にございますから、内部努力と申し上げましても、しかく容易なことではないというのは先生御指摘のとおりでございます。ただ、現下の定員事情と、効率化を図るために逆に増員を要するという矛盾した命題を抱えておるわけでございまして、私ども大変つらいところでございます。これは職員の理解も得ながらその方策を切り開いていかなければなりませんし、精いっぱいの増員努力もいたしたいと思っております。さらに、一時的にはOBの能力の活用なども考えなければならないのではないかと思っております。
  235. 安藤巖

    ○安藤委員 そこで、お金の方ですが、人件費が要るわけです。あるいは外部の人に依頼をすればそれなりの報酬を支払わなくてはならぬと思うのですが、お金の方の手当てというのは、先ほど来も予算面、資金面についていろいろお話があったのですが、特会の方だけで賄っていくということをお考えになるのか。あるいは、少しずつ移行されていきますから、手数料の値上げは今年度はやらない、来年度やるということは決めていないというお話ですが、移行されていくに従って手数料も上げていくということも含めてそちらの方で賄っていくのか。特会の方で全部賄っていくということをお考えなのか。あるいはその点については、人件費も含めてですからまた別途大蔵省、総務庁にちゃんと渡りをつけて、手当てはちゃんとつけてもらえるというような見通しはもちろん立てておられるだろうと思うのですが、その辺の話はいいのですか。ちょっと心配になるものですから。
  236. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 コンピューター化の経費は特別会計で賄わなければならないわけでございます。その過程において、手数料について受益者負担の原則に立ってある程度の増額をしていただくということも考えなければならないであろうと思っております。そのほか、歳入の増を図るにつきましてはいろいろ工夫を要するところでございますが、これはこれから特別会計の規模とにらみ合わせながら予算上大いに工夫を要するところではないかと思っております。
  237. 安藤巖

    ○安藤委員 これは大いに工夫を要するところじゃないのかな、だから相当頭が痛い話じゃないのかなというふうに思うのです。先ほどお話のあった登録税関係の方からの、一般会計からの問題は壁の話もありますし、いかにしてその壁を動かすか、少し穴をあけて突き破ってもらうかというお話もあろうかと思うのですが、先ほどおっしゃったように受益者負担ということで手数料の値上げ、これもまあお考えになっておられると思うのですが、もろにそちらの方でということになりますと、参考人の方々も牧野さんとか多田さんは国民に対して非常に大きな負担だというふうに言っておみえになるわけです。  そこで値上げの問題ですが、今度は登記事項証明書の交付あるいは要約書の交付ですね。閲覧二百円、謄抄本四百円、これを二段階か三段階に分けて値上げすることをお考えになっているのではないかという話を聞いたのですが、どうですか。
  238. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 コンピューター化された場合に、乙号利用者にとりましてはかなりメリットは大きいものがあろうかと思います。そういうことも考えまして、手数料については増額を検討いたしたいと思っておりますが、今まだ具体的にどうするということを申し上げられるほどの腹案があるわけではございません。
  239. 安藤巖

    ○安藤委員 人数のときにも申し上げたのですが、具体的な計画を細かくきちっとはじき出すということは難しいと思うのですが、例えば四百円を五百円に上げて、二百円を三百円に上げて、また何年かしたら今度はそれを六百円に上げる、四百円に上げる、こういう大まかな計算を立ててそれに伴ってコンピューター化を進めていく、そういうような計画がないと、これは二十一世紀に完成するんだとおっしゃるのですが、来年度はどことどこと幾つの登記所コンピューター化する、その次がまたさらに幾つ、その次が二十とか三十というようなことで計画を立てておられないとおかしいと思うのです。それに見合った資金計画、収入計画というのは今ここでは言えないとおっしゃるかもしれませんが、立てておられなかったらおかしいと思うのですよ。だから、先ほど私が言いましたように、それに従って手数料の料金値上げは大体二、三年なら二、三年幅ということでおやりにならなければ賄えないのではないかと思うのですが、そういうことは考えておられないのですか。  それからもう一つは、今度国または地方公共団体などの謄抄本も有料になる。それから、商業登記簿の関係の閲覧を有料にする。だから相当、あれも有料にする、これも有料にする、これは値上げするということで資金計画をお立てになっていると思うのです。大まかなそういう話ぐらい聞かせていただかないと、これは国民に対する非常に大きな負担になるわけですから、それはやはり話していただきたいと思うのです。値上げはずっとしないというわけじゃないと思うのです。国または地方公共団体謄抄本の手数料は、では今度は幾らにするのか、一緒にするのかどうかということもお尋ねしたいと思うのです。
  240. 藤井正雄

    ○藤井(正)政府委員 コンピューター化の推進には資金計画を伴わなければならないのはもちろんでございます。その資金計画とのにらみ合わせでといいますか、予算とのにらみ合わせで今後の移行の庁数もおのずから決まっていくことになるわけでございます。さしあたり今乙号手数料のお話がございますが、これは私どもも確かに近いうちに値上げに踏み切らなければならない、資金計画の上からいきましてもそうしなければならないというふうに思っておりますが、それがいつでどのぐらいかということをここで申し上げられるほどの段階にまだ至っていないということを御了承いただきたいと思います。  それから、商業・法人登記閲覧はこれを有料にするということを今回の法案の中に盛り込んで御審議をお願いしているわけでございますが、国、公共団体の関係の乙号手数料につきましては、民事行政審議会答申の中でもこの無料制の見直しをせよということが指摘、提言をされておりまして、これは私ども考えなければならないと思っておりますが、なかなか各方面との関係がございまして、今直ちにこれに踏み切れるだけの段階に至っていないわけでございます。
  241. 安藤巖

    ○安藤委員 この手数料の関係で最後に大臣にお尋ねしたいと思うのですが、今お聞きいただいておりますように、手数料はいつになるかわからぬがとにかく値上げをするということは考えておる、そしてこれが午前中の参考人の方々の御意見では、国民に対する相当大きな負担になるのだということは言っておみえになるのですが、一般の国民にとってこのコンピューター化がどのくらい本当にメリットがあるのだろうか、それだけ値上げをされてそれだけの受益者としての負担でちゃんと帳じりが合うのかどうか、これは問題だと思うのです。  午前中、星野先生に、その点は学者先生だから余り御存じないかなと思いましたけれどもお尋ねしましたら、例えば今度のメリットは遠隔地の自分の持っている不動産謄抄本を行かなくてもとれる、非常に便利だというふうにおっしゃったのですが、それに加えて星野先生は、やはり不動産を持っている人じゃないとそういうメリットはないだろうな、あるいはリゾート地に別荘など持っている人じゃないとメリットはないだろうな、こういうお話もあったわけです。となりますと、そういう不動産を持っていない一般の人たち、これはメリットがあるのだろうか、あるいは自分が住んでいるところだけは何とか持っているが遠隔地に持っていない人にはそうメリットがないのじゃないかなと思うのです。ところが、自分の住んでいるところの自分の土地の謄抄本をとりに行くと値上げになっているということになると、果たして一般の国民に対してメリットがあると言えるのだろうかという気がするのですが、その点、大臣は今度のこの改正案についてそういう点から見てどういうふうにお考えなのか、お答えをいただきたいと思います。
  242. 林田悠紀夫

    ○林田国務大臣 今、国民はだんだん資産を持つようになってきております。特に田舎から都会へ出てくるという人が非常に多くなりまして、田舎の方に先祖伝来の田んぼも持っておるというような方も相当多いわけです。また、都会へやってまいりまするとマンションに住まわれるという方が多いわけでありまして、マンションの個別の部屋の登記というのはなかなか難しいわけです。そういうようなことで登記がはるかかなたにあり、あるいはまた改ざんのおそれがあるというような心配もあるわけであります。したがって、どうしても登記が正確に行われ、すぐ検索をして自分の財産がわかるということは非常にメリットがあるのじゃないかと思うわけであります。そういうときに当たりましてコンピューター化をしていきまするから、今先生おっしゃいましたようにあちこちのものがこれによって引き出されて簡単にわかるということだけでも大きいメリットになるのじゃないかと思うわけです。特にこれから権利関係が非常に複雑になってくる時代でありまするから、そういう時代に先駆けて登記コンピューター化されておるということは時代を先取りしたわけでありまして、大変有意義なこと、かように存ずる次第でございます。
  243. 安藤巖

    ○安藤委員 どうも大臣答弁、全面的に納得するわけではございませんが、時間が参りましたのでこれで終わります。
  244. 戸沢政方

    戸沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会