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1988-05-13 第112回国会 衆議院 文教委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十三日(金曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    石渡 照久君       工藤  巌君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    杉浦 正健君       渡海紀三朗君    松田 岩夫君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    北橋 健治君       石井 郁子君    山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人日本         音楽著作権協会         理事長)    芥川也寸志君         参  考  人         (社団法人日本         芸能実演家団体        協議会専務理事) 小泉  博君         参  考  人         (社団法人日本         ビデオ協会専務         理事)     亀井寿三郎君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   嶋崎  譲君     村山 喜一君 同日  辞任         補欠選任   村山 喜一君     嶋崎  譲君     ───────────── 四月二十八日  私学助成大幅増額等に関する請願外九件(中西績介紹介)(第一九九七号)  在日留学生対策の充実に関する請願園田博之紹介)(第二一五三号) 五月九日  教育公務員特例法等改正反対に関する請願石井郁子紹介)(第二三五四号)  同(金子満広紹介)(第二三五五号)  同(野間友一紹介)(第二三五六号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三五七号) 同月十日  教育公務員特例法等改正反対に関する請願石井郁子紹介)(第二四二二号)  同(矢島恒夫紹介)(第二四二三号)  同(山原建二郎紹介)(第二四二四号)  同(石井郁子紹介)(第二四七二号)  同(浦井洋紹介)(第二四七三号)  同(金子満広紹介)(第二四七四号)  同(矢島恒夫紹介)(第二四七五号)  同(山原健二郎紹介)(第二四七六号)  同(中路雅弘紹介)(第二五五五号)  同(山原健二郎紹介)(第二五五六号) 同月十三日  教育公務員特例法等改正反対に関する請願石井郁子紹介)(第二五八二号)  同(岩佐恵美紹介)(第二五八三号)  同(金子満広紹介)(第二五八四号)  同(経塚幸夫紹介)(第二五八五号)  同(児玉健次紹介)(第二五八六号)  同(田中美智子紹介)(第二五八七号)  同(山原健二郎紹介)(第二五八八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第四六号)      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として社団法人日本音楽著作権協会理事長芥川也寸志君、社団法人日本芸能実演家団体協議会専務理事小泉博君、社団法人日本ビデオ協会専務理事亀井寿三郎君の御出席を願い、御意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 中村靖

    中村委員長 この際、ただいま御出席になりました参考人各位に対し、一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  芥川参考人小泉参考人亀井参考人の順にお一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対しお答えいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。  それでは、芥川参考人にお願いいたします。
  5. 芥川也寸志

    芥川参考人 発言機会を与えていただきましたことを深く感謝いたします。日本音楽著作権協会芥川でございます。  今回の著作権法の一部を改正する法律案内容につきましては、御案内のとおり、実演家演奏家皆さん、それからレコード製作者皆さん、この著作隣接権者権利保護期間を二十年から三十年に改める、このことと、それから俗に言われます海賊版、これは「著作権等を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布目的をもつて所持する」だけで罰則対象とするという、この二点でございます。  海賊版の方からお話しさせていただきますけれども、実は著作権審議会における中間まとめという段階では、海賊版ということを知りながらこれを陳列する行為罰則対象とするという、中間まとめがございました。しかし、この審議会の答申が報道機関に流れまして、テレビニュースなどで「陳列罪」というタイトルのもとに報道が行われまして、その結果、ビデオレンタル店などは、中身は奥の部屋に隠しましてケースだけを店にずらっと並べる、そういうような商法を考え出しましたり、あるいは通信販売というようなものが激増いたしまして、これでは法改正をしても実効が上がらないということで、今回の、「頒布目的をもつて所持する」だけでという補強が行われたわけでございます。  海賊ビデオにつきましては、専門でいらっしゃいますビデオ協会亀井専務がお見えでございますので、後ほど具体的なお話が伺えると思いますので、私はその背景等につきましてお話を申し上げたいと思います。  大体、海賊という言葉は非常に下品な言葉でございまして、果たして国会の中で大きな声でしゃべっていいかどうかもわからないのでございますけれども、大体世界じゅう、あえて著作権を侵害してコピーをつくって安く売る、そういう行為をパイラシー、海賊というふうに国際的に呼ばれております。したがいまして、ここでも海賊という品のない言葉を使わせていただくことにいたしますけれども、全世界的に見ますと、大変残念なことでございますが、海賊メッカというのは我がアジア地域でございます。これは不思議に思われるかもしれないのでございますけれども、地球上最大の著作権制度過疎地帯、これは我がアジア地域でございます。アフリカ諸国は、かつてほとんどが先進諸国植民地であったという事情もございまして、知的所有権に関する何らかの政策が行われておりまして、実際にその著作権管理する実効が上がっているかどうか、機能しているかどうかということは別問題といたしまして、管理協会もたくさんできております。それから南米は、皆様よく御存じのようにラテン音楽メッカでございまして、早くから著作権管理協会がたくさんできております。そういう地域と比べますとアジアは非常におくれておりまして、先年アメリカシュルツ国務長官が御夫妻でシンガポールを訪れて、何でも御家族のお土産にというのでポップス音楽のテープをお買いになって、ホテルで奥様に、これはとても安く買えたと言ってお見せになったら、奥様が、それは海賊版だ、御存じですか、というような会話があったそうでございまして、それで早速、その日のリー・クアンユー首相との話の中に、著作権法改正お話が盛り込まれたというエピソードがあったぐらいでございます。台湾は新しい著作権法ができておりますけれども、実はこれは有名無実と言ってもよろしいかと思います。私が先日見ましたレコード日本レコードと全く同じ、ジャケットも写真も同じ、もちろん中身もまるきり同じ、ただ違うところは、非常に少ない部分ですけれども、「遠藤実」という三文字が消してありまして、そこに私の知らない中国の名前がちょんちょんちょんと書いてある。こういうわけで、日本作曲家日本権利者作品が使用されていても、事実上は無権利状態になっております。  こういう海外から上陸する海賊版というのが困りものでございまして、音楽著作権協会はもう随分前から、十年ほど前、もう少し前になりますか、昭和五十年だったかと思いますが、大蔵省関税局に、東京税関での輸入差しとめについての要請を申し上げました。しかしこれは実施に至っておりませんけれども、一昨年ですか、昭和六十一年五月に東京と大阪の税関に御協力を要請しましたところ、七月になりまして大蔵省関税局特別審査官制度というのが設置されまして、各主要税関に配属されました。その効果もありまして現在は少しずつ少なくなっております。各税関からのいろいろなお問い合わせにお答えをしたり、それから私どもの職員が出向きまして御協力申し上げるということでございますけれども、昔は例えばフィリピンからの輸入、これが、昭和五十九年度は二十二万本ありました海賊版が、昨年度は九万本ぐらいに減っております。  そして、このような海賊版海賊行為というものを絶滅するためには、これはもちろん著作権制度アジア地域に確立していくということ以外にないわけでございまして、世界じゅう権利者アジア地域が非常に大きな迷惑をかけているということを考えますと、アジア地域における著作権制度先進国であります日本が、外交上でも、知的所有権保護につきましてアジア各国に働きかけをしていくということが非常に大切なのではないかというふうに考えております。  アジア著作権管理業務が行われております地域は香港と韓国でございますけれども韓国は昨年の七月に新著作権法が施行されまして、万国著作権条約にも加盟いたしました。そしてこの条約は十月一日から発効しております。万国著作権条約は遡及いたしませんので、十月一日以降に演奏された日本人作品につきましては使用料の徴収が当然行われるべきなのでありますけれども御存じのとおり、とにかく韓国では放送とか一般の公演では日本音楽演奏禁止になっております。一国の音楽を演奏させないというようなそういう状況というのは、世界じゅうどこを探しましてもどこにもございません。しかも隣国であるということを考えますと、その友好関係発展させるという点から全く異常な状態が続いているわけでございまして、私どもは、こういうことも何とか政治の力でこのような規制が早く解かれることを強く望んでおります。  また、近隣諸国に非常に大きな影響力があると思われます中国でありますが、中国は昨年の四月に版権法草案国務院提出されました。ことしじゅうにも法制化されることが期待されております。つい先日ですが、先月の四月一日に国家版権局、これは政府機関でございますが、これの監督下中華版権代理総公司というのが設立されまして、今まで深い眠りについていた巨大な象がやっと目を覚まし始めたかなという印象を持っております。  それから肝心の日本国内でございますけれども著作権思想普及の度合いというものが一国の文化的な水準を推し計る絶好のバロメーターとなるということがよく言われるのでございますが、最近この五、六年ぐらいで、かなり日本国民各層の間に著作権に関する関心が高まったように思われます。  この問題は直接本改正案とは関係ございませんが、日本音楽著作権協会は昨年の四月から、業界の皆様お話し合いの上でカラオケ管理を始めております。営業用としてカラオケを使っている五坪以上のお店からは著作権使用料をいただいているわけでございますが、中には、あれはお客が勝手に楽しんで歌っているだけであって使用料などとんでもないという方もいらっしゃったのでありますけれども、先日の三月十五日にカラオケ歌唱にも著作権が及ぶという最高裁判決がおりまして、これが新聞とかテレビニューストップ記事になりまして、このようなこともあって、争いそのものはもちろん決して好ましいことではありませんけれども国民の間に、著作権というものが存在する、そして、人間精神の活動の所産、知的所有権の尊重ということが国民の幸せのために非常に重要な意味がある、そして一国の文化的な発展のためには不可欠のものである、この制度は非常に大事なものであるということを、少しずつではありましても、国民各層の間に浸透させるという点で効果があったのではないかというふうに考えております。  それでは著作権思想普及はこれで十分なのかといいますと、これは残念ながらまだまだでございまして、現実に海賊版の横行がそれを証明しているように思います。他人のものを盗むと罰則がある、したがってそれが嫌だから盗まないというのはまことにおかしな話でございまして、盗みは悪い、盗むことは悪いことだという道徳観がまず確立されるべきであろうと思います。しかし、著作権思想普及現状といいますか、まだまだ海賊行為が横行しているという現状と、それから、先ほどお話し申し上げました最高裁カラオケ判決が反面教師として著作権思想普及に大きな効果があって、いい結果を生んでいるということなどを考え合わせますと、頒布する意思のもとに海賊版を所有するだけで著作権を侵害する行為とみなして罰則対象とするという本改正案は、まことに適切なものであると思います。一日も早い成立を心から期待する次第でございます。  それから、もう一点の隣接権の問題でございますが、隣接権保護期間延長、これはかねてから隣接権団体が強い要望をお出しになっていたわけでございます。現在、隣接権保護期間二十年という国が日本を含めてわずか十一カ国、それもバルバドス、コンゴ、ニジェールというような、大変失礼な表現かもしれませんが、地図で確認したくなるような国もございます。アメリカの七十五年というのは別格といたしまして、イギリス、フランス、オーストリア、カナダ等五十年という国が多いところから、かねて隣接権団体は強く五十年を主張されていたわけでございます。このお気持ちは痛いほどよくわかるのでありますけれども、二十年を一挙に五十年ということになりますと、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということになってはいけませんし、まず二十年を三十年に段階的に延ばしていくという本改正案は、これもまことに当を得たものだと思っております。しかし、いずれは著作権制度維持発展とともにこれは当然さらに延長されるべきであると考えております。私は著作権団体代表でございまして、隣接権団体代表である小泉さんがいらっしゃいまして、そのお話の前にこのようなお話をするのは失礼のきわみと思いますけれども委員長より全体にわたっての発言という御要請もありましたので、あえて発言をさせていただきました。  一番最後に、私事で大変恐縮でございますけれども、私の父は小説家でございまして昭和二年に自殺をいたしまして、そのとき私は二歳でございました。小さな子供三人を抱えて柱を失った一家というものは、大抵の場合は悲惨な環境をたどるわけでございますけれども、私は父の著作権のおかげで好きな音楽の勉強もできましたし、そしてそれで世に立つこともてきたわけでございます。一人の人間にとりましては、著作権制度というものはその人間の一生の運命を左右いたします。同じように、一つの国にとりましてはその文化的な発展あるいは文化が栄えるかどうか、ひいてはその国が栄えるかどうか、その運命を左右するのが著作権制度であると考えております。釈迦に説法とはこのことかもしれませんが、願わくは、速やかに御審議を賜りまして一日も早くこの法案を成立させていただくことを心よりお願いしたいと思います。  まことにありがとうございました。(拍手)
  6. 中村靖

    中村委員長 ありがとうございました。  次に、小泉参考人にお願いいたします。
  7. 小泉博

    小泉参考人 芸団協小泉博でございます。きょうは発言機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。  芸団協は、現在いろいろな種類芸能人団体、五十八団体が集まりました協議会でございますので、きょうは職業芸能人立場で、今回の法律改正案についての意見を述べさせていただきたいと思います。  このところ、科学技術発達とかそれから工業社会というようなことで、国際的にもいろいろと問題が起きておりまして、その中で著作権というものがなかなか追いついていかない、今後どういうことになるのかということで心配をしている方もいっぱいいらっしゃるのですけれども、ほとんど毎年のように国会著作権に関する審議が行われるようになりまして、ようやくそのバランスがとれてきたということで、私ども権利者といたしましては大変心強く感じているところでございます。  まず、今回の改正案の中で私どもに最も関係のある著作隣接権保護期間延長ということでございますけれども、実はこれは旧法時代には、芸能実演家の中で演奏歌唱というものは著作者というふうに認められておりましたので、著作権がございました。そのために死後三十年の保護があったわけでございます。それが昭和四十五年、新法が成立しましたときに、著作隣接権ということで、行為後、要するに実演を行ったときから二十年という大幅な権利後退があったわけでございます。私ども大変びっくりいたしまして、その成立したときからもう既に私どもの先輩がいろいろと陳情をいたしまして、これはおかしいのではないかということで申し上げていたのですが、新しく著作隣接権というものが認められてレコードの二次使用料というようなものが入るから、そういうもののバランス上いいじゃないかというような、余り理由にならないような理由でそのまま押し切られてきていたということでございます。したがって、非常に長い間、私ども機会があるごとに、これはおかしい、ぜひ改めてほしいんだということを申し上げ続けてきたわけで、十八年間にわたる私どもの悲願であると申し上げてよろしいかと思います。しかも、その十八年の間に日本人平均寿命というのはどんどん延びる一方でございまして、今ではもう本当に世界一の平均寿命を誇るというようなことでございますし、また、機械・技術発達録音の機器・機材というものの進歩は目覚ましいものがございます。したがって、一度録音・録画されたらそれが劣化しない、画質が劣化しないという、非常にすぐれたものができるように、また手軽に使えるようになりました。今後例えばDATというようなディジタルによるテープレコーダーが普及発達してまいりますと、恐らく半永久的に劣化しないまま、一度固定された実演が残されていくであろうというような事態が起きるわけでございます。そうなりますと、芸能人の場合に大変困るのは、二十年前に自分の演じた芸と競争して仕事場の取りっこをしなければならないというような、まことに不思議な状態が生まれるわけでございます。これは殊に伝統芸能の世界に生きる芸の方たちにとりましては大変深刻な問題でございまして、伝統芸能というのは昔のそれを忠実に伝えていくということでございますので、二十年前でもその内容というのは全く変わらないということでございますから。  これに関しまして、先日落語の柳家小さん師匠お話をしましたときに、小さん師匠が、「年をとって芸が枯れてきたなんというようなことを言うんだけれども、あれは全くごまかしでしてね、年をとれば頭の回転は悪くなるし、口跡も悪くなるし、はなしは忘れるし、とにかく昔の芸に比べると大変に質が悪くなっておりますよ、ですから昔のものを見たり聞いたりすると、とてもこれはかなわぬな、自分でもそう思います」というようなことをお話しておりました。これは謙遜の意味を含めてお話しになったのだと思いますけれども、一面ではこれもまた真理であろうというふうに思います。  またその一方では、自分のかつての未熟な芸をまた固定して使われたくないというケースもあるわけでございます。これはある有名なオペラ歌手の方なんですが、二十五年前に収音収録された自分の歌が非常に自分で気に入らなかった。それがCDで売り出されるということになったので、これをぜひやめてほしいということでお願いしたのですが発売されてしまったということで、これは旧法時代演奏歌唱の死後三十年というものが経過措置として残されておりましたのでそれにひっかかりまして、それでトラブルが起きたのですけれども、一応円満に解決をしたというような事態もございます。そういうふうなことで、芸能実演家のその実演というものの固定は、我々にとりましては非常にいろいろなケースが考えられて複雑なものでございます。  よく著作隣接権とそれから著作者権利著作権との対比が話されるのでございますけれども、一つ決定的に違うのではないかと思われる節がございます。それは、著作者皆さんは、自分著作物が何度も使われて、それに対して正当な使用料が払われればそれできちんと生活が成り立つし、また次の創作が可能であるということなのでございますけれども芸能実演家にとりましては、一たん自分の芸が固定されますと、その追加報酬をもらうぐらいではありがたくない、あくまで自分の芸の場をふやす方が先決でございます。ですから、なるべくなら基本的には何度も何度もお勤めをしてほしくないというところがございます。追加報酬というのは、放送の上で最も強く認められた分でも三分の一程度というようなことでございますので、そういうことよりか、やはり自分の芸を常に新しく鍛えていく上でも仕事の場が欲しいというのが本当の気持ちでございます。その上に、自分仕事の場を失うだけではなくて、ほかのいろいろな種類芸能人仕事の場まで自分の芸の固定物によって奪ってしまうという、そういう非常に恐ろしい結果があるわけでございます。このことは芸能人自身も余り気がついていない人が多いのでありまして、追加報酬がもらえないならしようがないといってあきらめてしまえばそれで済むかというと、そうはまいりません。ほかの人の仕事の場をそれが奪っているんだということも、芸能人権利をお考えになる上で、ぜひ先生方に御理解をいただきたいというふうに思います。  そういうことで、ちょっと話が脱線して申しわけなかったのですけれども、できるだけそういう意味保護期間というのは長い方が仕事場の確保に役立つというわけでございます。今回二十年から三十年ということに延びますと、十年間延びるということは大変違ってくるということでありがたいと思いますが、先ほどちょっとお話ししましたように、実は旧法時代保護新法になっても経過措置として私たちの場合には残っておりましたので、実演家の場合には昭和六十五年までは権利の切れるというものがほとんどなかったわけでございますが、六十五年が過ぎると一斉に利用が始まってしまうのではないかということで大変はらはらしておりました。第一小委員会のこれに関する審議が始まりましてから今度の法案提出まで今回は非常に早く進められまして、私ども、立法府それから行政府の皆さんにも大変ありがたいというふうに感謝している次第でございます。これで七十五年までは大丈夫だということになったわけでございますけれども、ぜひそういうふうに一日も早くしていただきたいし、私ども、先ほど申し上げましたような理由で、なお著作者との対比、これは死後五十年でございますから、そういう上でも、今後一層の延長をぜひ考えていただきたいということを希望している次第でございます。  それから次に、もう一つの法案改正の目玉であります百十三条関係のものでございますが、これはもう最近、先ほど芥川さんからのお話がございましたように、不法に作成されましたものの横行というのは目に余るものがございまして、取り締まりができないために不法行為をするものが我が物顔にお金をもうけているという状況は、これは法治国家としては非常に情けないことでもございますし、社会的にも非常にまずい風潮であるということが言えると思います。この点は先生方皆さん御心配いただいて今回の法案改正ということになったわけでございますけれども、今回、所持しているだけで侵害とみなすということで、この改正によって取り締まりがやりやすくなったということは大変にすばらしいことだというふうに思います。ただ、これを実効あらしめるためには、やはりしばらくは相当激しい攻防があるのではないかというふうに思いますけれども、芸能産業の保護、経済的な意味での保護と同時に、国民の間に正しい著作権思想普及するという意味でも非常に大事なことだというふうに思いますので、権利者側としても、この法案が通った上は、それを実効あらしめるために努力をしていかなくてはならないであろうと思います。  今回の改正は、そういう意味でどちらも私どもにとりまして大きな期待で見詰めているという法案改正でございますので、もちろん十分な審議を尽くしていただくのは結構なんでございますけれども、どうぞ一日も早く実現をしていただきますように心からお願いをする次第でございます。  今回の法案改正はそういう意味で私ども大歓迎ということで先生方にお願いするわけでございますけれども、この発言機会を得ましたので、私ども実演家立場でなお二、三ちょっとお話ししたいことがございます。  それは、第一小委員会の報告にございますように、ローマ条約加入という問題、これは私ども芸能実演家がやはり最初からこの一日も早い加入をということでお願いしていた問題でございます。そのための条件整備というものも、芸団協としてはこの間に世界各国の管理団体などと連絡をとり合いまして進めているところでございますけれども、第一小委員会の報告にもございます日本の国際的な地位とか、それからローマ条約の加盟国も現在三十二カ国にふえている、隣接権制度は国際的にも定着している、それから国内におきましては、日本の場合にはこの条約に加盟することを想定して日本著作権法が定められておりまして、隣接権制度はもう日本に入っているんだというふうに私どもは理解しておりますので、それがいつまでもローマ条約に入らないというのは非常におかしなことでございます。もちろんいろいろな条件整備の必要というのはあるのでございますが、それを理由にいつまでも延ばしていると、かえって条件の整備がおくれていってしまうのではないかというふうに私どもは考えておりますので、このローマ条約の加入というのは、ぜひ著作権法の上での次のスケージュールにのせていただきたいというふうに希望している次第でございます。  それから、実演家にとりまして現在の著作権法の上で一つ問題が大きくなってまいりました問題として、映画的著作物に関する問題がございます。現在著作権法の上では、この映画の著作物に関しては劇場用につくられた映画を想定してつくられたというふうに私どもは解釈しております。ところが、現在のようにビデオディスクとかビデオカセットとか、そういう映像に関するものが家庭の中にまでレコードのようにどんどん簡単に取り入れられてくるという時代になりまして、事情が大きく違ってきております。したがって、この映像が伴うものはすべて映画的著作物であるという解釈はもう実情に合わなくなってきているんではないかというふうに私どもは考えております。実演家にとっては今後の仕事場の確保にとりましても非常に大きな影響を与える問題でございまして、これに対して何らかの見直しをぜひしていただきたいというのが私どもの希望でございます。私どもにとりまして、第三小委員会といいますか、これはもう今から十四、五年くらい前になるのではないかと思いますが、第三小委員会でそのころに、ビデオグラムに関してはこれは映画的著作物であると考えて差し支えがないというような結論を出されてしまったということが大変不幸だったと思うのです。現在のようなビデオの機器・機材の発達というものを全く想定しないままで一つの結論が出て、それが現在まで尾を引いているということを考えますと、この問題はぜひ今後の取り上げていただく問題として御理解をいただきたいというふうに思います。  それからもう一つ、新法が成立したときからこれも私どもが問題にしておりまして、その成立時に既に参議院の文教委員会では附帯決議としてついておりました実演家の人格権の保護の欠如ということでございます。これは著作権法の上で人格権を保護しなくても民法上で何とかなるんだろうというようなことで、今まで要望し続けていながらそういうことで過ぎてきてしまったんですけれども、ただ、著作者に関しましてはその名誉、声望を害するようなことがあってはいけないというような規定が、著作権法の上で幾つかそういうような条文がございます。それから、世界の中でも西ドイツとかイタリアとかいうところは著作権法の上で実演家の人格権の保護ということをうたっております。ですからこれは、著作権法の上ではっきりと、事前に実演家の人格権を汚すような使い方をしてはいけないんだということを皆さんが認識していただけるように、はっきりと書いていただければありがたいというふうに思います。これは著作者との対比の上でもぜひそういうふうに書いていただけないものだろうかということを私どもは常々希望しているわけでございまして、これも新法成立時からの私どもの悲願であるということが言えると思います。最近のように、いろいろな録画物などが勝手に利用されておりまして、例えばカラオケビデオであるとかそれから放送の上で「NG特集」などという不思議な番組が生まれてまいりまして、これは我々から見ると一体何なんだというような問題がいろいろございます。そういうところで、現場のディレクターから実演家が、こういうふうに使うけれどもいいねと言われて、いや、それは困りますと言うわけにはいかないという事情がございますので、そういう点をひとつ御配慮をいただきまして、この問題もぜひスケジュールに上げていただきたいとお願いする次第でございます。  以上、簡単でございますけれども、私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 中村靖

    中村委員長 ありがとうございました。  次に、亀井参考人にお願いいたします。
  9. 亀井寿三郎

    亀井参考人 亀井でございます。  本日は、参考人として発言機会を得られまして大変感謝申し上げております。ありがとうございます。  昨年の秋に、著作権審議会第一小委員会から、海賊版の陳列等については著作権侵害として扱うことが適当であろうというような御報告をいただきまして、これがマスコミに大々的に報道されまして、私どもビデオソフト業界としてはもう欣喜雀躍、大変感激して喜んだわけでございます。  ビデオ協会につきましてちょっと説明さしていただきますが、ビデオソフト業界が芽生えましたのが約二十年前でございます。当時はまだソフトも業務用が主でございまして、理由はまだハードの普及が十分でなかったということでございます。ところが昭和五十年にベータ型、五十一年にVHS型のホーム用のデッキが発売されまして以来、家庭用のVTRが急速に普及したわけであります。  昭和四十年代におきましてもビデオソフトの海賊版というのは散見されました。ビデオ協会昭和四十六年に任意団体として発足いたしました後、五十三年に社団法人として認可されたわけでございますけれども、任意団体当時もこの海賊版につきましてはもう最大の問題として対応したわけでございます。  まず、協会の統一シールをつくりまして正規の商品にこれを貼付する、海賊版にはこれが張られてないということで識別の便宜に供し、またそれのないものは海賊版であるということで、流通の面でも注意を促すというような効果を期待したわけでございます。ところが印刷技術が、まだ当時は御承知のようにコピーが十分できる時代でございました。シールそのものがコピーされてしまってその効果もだんだん薄れてきました。  次に手を打ちましたのは、カセットのケースでございます。ちょっとここに見本がございますのでごらんいただきますが、普通のビデオカセット生テープは、市販のものはこのふたが黒くなっております。これをこのカーキ色に統一いたしまして、正規の商品には全部このケースを使う、べータには白いふたを使うというようなことで対応をしたわけでございますが、実はこのふた自体がまた流通してしまいました。これも効果がなくなったということで、業界としてはいろいろと苦慮してきたわけでございます。  著作権というのは御承知のように私権でございまして、権利者みずからがまず守らなければならない、防衛しなければならないということで、余り他人に期待するわけにはいかないわけでございますので、できるだけの自助努力で闘ってきたわけでございますけれども、どうも後追いになってしまう。しかも、ホームユース用のビデオデッキが全国的にこういうふうに普及してまいりますと、コピー行為も全国的に分散してしまったわけでございます。かつては、音楽テープの海賊版事件など私もレコード協会に三十年近くおりましてかなりの事件とかかわり合いを持ちましたけれども、かなり特定された地下組織で大量につくっていたわけです。ところが今日ではもう全国的にこれが行われている。特に昭和五十六年ごろからですか、ホームユース用のビデオデッキが一〇%を超えて急速に普及し始めたのに対応しまして、ホームユース用のビデオソフトも各ソフトメーカーが大量に市販し始めた。この販売用のソフトがレンタルの需要を掘り起こしたわけです。  ビデオ協会としましても、このレンタルにつきましては、レコードのレンタルのようなああいう前車の轍を踏むことなく、明らかに頒布権が既に与えられておりますので、ここでひとつルールをきちっとつくって合法的にビジネスをしていただこうということでルールをつくったわけでございますが、まず新規参入の業者が非常にふえた。一本仕入れて後はコピーで賄って、それをレンタルに回すという行為が非常に増加してまいりました。  そこで、昭和五十九年の秋に、ここにいらっしゃいます芥川さんのところのJASRAC、それから文芸関係著作権団体、映像関係その他の著作権団体、さらには関係の企業、今日では約七十社ほどになっておりますが、これらが大同団結いたしまして、ビデオ著作権保護監視機構という自主的な防衛かつ調査・摘発機関を設置いたしました。ビデオ協会はその中心的な活動を果たさせていただいておりますが、当時、五十九年の末でレンタル店が約三千店ほどでございます。その後、今日一万五千とも二万店とも言われるほどにふえております。これは無為供手してふえたわけじゃございませんが、その間には、アメリカの映画協会も年間の予算数億円を投じて日本日本支社をつくり、海賊版を撲滅すべく対応され始めました。これが昭和六十一年の二月だったと思います。  それから、同年の四月に警察庁も不正商品取締官を設置されまして、いわゆるにせブランド商品、それから海賊版等の商標法・著作権法違反の事犯を取り扱う専門の役職を設置されて対応されました。  我々民間の取り締まり、摘発かつ啓蒙機関であります八団体も連携しまして、不正商品対策協議会というのをまたつくりました。これもやはりその年、六十一年の夏でございます。さらに、企業内でも海賊版に対応するための委員会組織をつくっていろいろ活動しております。ビクターグループあるいはパイオニアレーザーディスクグループ、このように民間でそれぞれ組織をつくって活発な活動を続けているにもかかわらず、なかなか海賊版が鎮静化しない。これは一体なぜだろうか。  先刻もう御推察のとおり、まずは著作権思想普及がいまだしという感じ、特に新規参入の業者というのは著作権に余り理解のない方たちが非常に多いわけです。先ほど申しましたように三千店が二年足らずで一万五千店、さらには、これは予測ですけれども二万店とも言われますが、そのほとんどが、中には脱サラもあり、その他もろもろの業種から参入された方たちでございます。そういう人たちも、自分海賊版を扱わなくても周囲で海賊版を扱っているとするとどうしても対抗上扱わざるを得ない。昨年、私どもの方もお店に対してアンケート調査をいたしましたが、その中で、何とか海賊版をもっと撲滅してもらえないのか、権利者は一体何をしているのだというような強い不満が出ました。  そういう時期に、例の陳列罪の話が出てきたわけでございます。正規の業者は本当に欣喜雀躍、今にも廃業したいという業者も随分おりましたし、また現実に廃業した方もおりますけれども、この情報に力づけられて今は一生懸命頑張っているところでございます。この法案が一日も早く施行されることを一日千秋の思いで皆さんお待ちになっていると思います。  ところで、我々が実際どういうふうにそれでは対応してきたかということを多少申し上げて御参考に供したいと思いますが、まず海賊版を扱っている店の情報を得ますと、今の監視機構等々の組織の専従者が現地へ訪問してそれを確認いたします、果たして海賊版であるかどうか。それから同時に、それらの組織の職員が数名の班を組んで重点的にある地域を、ローラー作戦と申しておりますが、巡回して訪店をし調査をしております。そこで海賊版がありますと、まずいろいろと基本的な知識をお話しして了解を得て、やめていただくように努力をするわけでございますが、そのときに、海賊版の処理につきましては所有権を放棄していただきましてできるだけ回収するようにさせていただきます。とにかく、法律的に訴えて云々というよりも、まず海賊版をこの世の中から排除することが先決でございます。そういうことで、もしも海賊版を出していただけないなら、供出してもらえないような業者の場合は、これはやむを得ませんので法に訴えて手続をとる。不幸にして民間の団体の場合は強制力がございませんので、それ以上どうしても突っ込めません。当初は民事訴訟でいろいろと損害賠償等も求めましたけれども、これまた時間がかかる、費用もかかる、最後はやはり裁判官の和解の勧告で終わってしまいます。すべて今までそんな結果に終わっております。そういうことで、どうしてもこれはやはり一罰百戒、刑事告訴で社会的な信用面でのダメージを与えるしかなかろうかということで、昭和六十年ごろから刑事告訴に重点を変えました。  民事の場合も同様でございますけれども、まず著作権侵害につきましては侵害の事実を立証しなければなりません。そのためにはやはり物で証拠を調えなければなりません。ところが、今のソフト業界市場というのは劇場用映画のビデオパッケージが中心になっておりまして、特にレンタルの場合は一回見ればまあよかろうというようなことでレンタルの需要が多いわけですけれどもレンタル店というのはまず会員制でお客を把握します。利用するには身分証明書、運転免許証あるいは学生証を提示して会員になって、それからレンタルソフトを借りるわけでございますが、海賊版のソフトを借りるにしても、まず地元の住所でないと極めて不自然でございますね。我々中央に本部を置いて幾ら調査員が多くなっても、やはり調査員の名前、住所でというわけにはいかないわけでございます。現場の、あるいはその近くの知り合いをたどって借りる。ところが、借りてもレンタルですから物は返さなければなりません。そうすると証拠は手元に残らないわけです。そこで我々は、そのレンタル商品を、いわゆるそういう海賊版を扱っている店というのは店頭ダビングサービスという行為を行っておりまして、千円前後でコピーをしてくれるわけですね。これは明らかに違法行為でございますけれども権利者側ですからみずから承知の上でコピーをするわけですのでこれは問題ないと思いますけれども、そこで海賊版のコピーをまず一本つくる、これを持ち帰りまして、海賊版であることの鑑定書をつくるわけです。この鑑定書というのは、本物の映像の権利が、いつ、どこで発生し、だれが持っているかという、権利の所在がまず確認されなければなりません。その辺の書類づくりから始まりまして、それとどこが違うのかという真贋の商品の違いを克明に鑑定書の形でまとめまして、これを告訴状につけて警察に提出するわけです。当然に本物も同時に添付するということになりますが、三年くらい前までは、この告訴状を警察に受理していただくまでが大変な仕事だったわけですね。警察側も余り著作権違反事件については御経験がございませんし、やはりもっと社会的に重要な強盗殺人事件の方に目が向けられるのかどうかわかりませんが、いずれにしてもどうも敬遠されがちだった。先ほど申しました不正商品取締官の設置以来、各所轄署も競って海賊摘発に乗り出していただき、今日そういう点では大変私ども助かっております。  ところで、警察はその受理した告訴状に基づきまして一応内偵をいたします。これは警察庁から御事情をお聞きいただければもっと詳しいのかもしれませんが、私どもが拝見しておる限りで申し上げますと、まず内偵し、ある日突然強制家宅捜査をする、そこで一応海賊版を全部押収してくる。この押収というのは没収ではございません。とにかく任意提出の形で持ち帰ってくる。それからがまた大変でございます。大体、海賊版というのは何百本、ときには何千本の在庫でございますので、そういうところが今まで摘発を受けている規模でございますが、その持ち帰ったものをまず整理いたします。一本一本海賊版であることの立証をしなければなりません。これは権利者側に鑑定依頼がなされます。権利者側は、先ほど申しましたように、克明に本物との違い、もちろん権利があるものは所在をはっきりさせなければいけませんけれども、そういうような鑑定書をつくりまして警察の方に御報告する。警察は、海賊版であることが確かめられた後、それが果たして、どこで、だれによって、いつごろつくられたかということをまず調べるわけでございますが、まずこれは通常は判明いたしません。先ほど申しましたように、全国的にとにかくコピー行為が分散してしまっている。レンタル店というのはモニター用のビデオデッキを持っていますから、これを二台つなげればコピーできてしまうわけですね。ですから、レンタル店海賊版製造能力をすべて持っているんですけれども、その店がつくったという証拠がどこにも残らないわけです。  それから、通常やはり多いのは、カバン屋と称しまして、地下組織でつくりました海賊版をかばんに入れて持ち歩く。もちろんワゴン車か何かに乗ってくるわけですけれども、それで現金でそこで取引をする。かなり安いはずです。追加の注文をしようと思っても、一方的に売り込みに来まして、相手方の所在は全く不明でございます。時に電話番号を置いてまいりますけれども、そこへ電話をかけても全然別なところにかかってしまう。これは海賊版を持って歩いているので、店頭展示じゃございません、とにかく所持して、海賊版を持って歩いて商売している人たちです。こういう行為をしているところに対しては警察も手が及ばないわけですね。現場を押さえない限り、持っているだけではどうしようもない。  お店を対象にした捜索のお話の続きを申しますが、そこで海賊製造本犯が不明だとすれば、後は頒布権侵害で立件するしかないのですね。ところが頒布というのは、御承知のように著作権法に定義規定がございまして、有償無償を問わず、譲渡または貸与という物の移動が伴わなければならないというふうに解釈されております。旧法時代は、流通過程に投ぜられたものは頒布状態にあるという解釈もあったのですけれども、現行法では、定義規定があるためにといいますか、在庫状態では頒布とはいえない。結局、海賊版を目の前にしていても、製造本犯をつかまえるか、あるいは頒布の事実、いつ、どこで、だれに、どのソフトを貸し出したか、そういうことが立証されない限りどうにもならないのが今の状況でございます。日本著作権法、大変よくできているように私らも思いますけれども、実際に実務との間の乖離というのはそういう点で非常に大きいなというふうに日ごろ痛感しております。  それで、何人かの消費者を訪ねて警察側も証言を得て調書をつくり、頒布権侵害で立件するわけですけれども、これもそう何百人というわけにもいかぬわけですね。実際に店頭にある海賊版というのは何百本、何千本でございますし、それが何回も頒布、レンタルされているわけですから、違法行為自体は相当な規模に上るわけですけれども、実際に起訴し得る犯罪行為の規模というのは極めて規模の小さいものになってしまう。  一昨年の秋に福岡で大々的な手入れをいたしました。四万五千本の押収をしてまいりました。処理するのに警察で約六カ月かかりました。もちろん私どももいろいろとお手伝い申し上げましたけれども、それでレンタルの足をとるのにコンピューターを使って整理をしたくらいでございます。それほどに警察も手間暇かけて送検する、起訴する。ところが、規模が不幸にして今申し上げましたようにほんの一部に限られてしまいますので、裁判の結果も当然予測されるわけですけれども、非常に軽微なもになってしまう。大体、今まで告訴をしましたのが六十一年の初めから今日まで百二十八件ございます。その間で起訴されましたのが五十六件、そのほかのものはまだペンディングでございますが、その五十六件のうち四十七件は略式命令で、五万円ないし最高二十万円で済んでしまっています。海賊版を何本も置いてチェーン店を展開して、それでもなおかつ二十万円で済んでしまっているというような実績でございます。最近では、懲役刑も統計上は邦・洋合わせまして九件出ておりますが、いずれも大体三年程度の執行猶予でございます。悪いやつにすれば痛くもかゆくもありません。むしろ商売ができないようにすることの方が彼らには打撃のようでございます。民事で押さえようと思っても同じような立証作業をしなければなりませんし、被害を立証するにしても、今のと全く同じように小規模に終わってしまいますのでこれも余り効果がない。やはり海賊版を全部店頭から撤去する、商品がなければ商売になりませんので、それがやはり一番効果的な方法だとかねがね私ども考えていたわけでございます。  時間がどうも足りなくなりましたが、そういうことで、その背景等もいろいろとございますけれども、私どもとしてはできるだけ、我々でできることは全力を尽くして今までやってきましたし、また今後ともそのつもりでおります。  ビデオ協会五十三社、ビデオソフトメーカー並びにその関連企業で構成しておりますが、まずこの海賊版が最優先の問題でございまして、これでは正規の事業が成り立たない。映像というのは御承知のように相当な先行投資をしてつくり上げているわけで、これを回収することができなくなれば次の映像著作物ができなくなる、こういうような関係もございます。諸悪の根源はすべて海賊版だと私ども思っておりますが、今回の法案を速やかに御審議いただき、一日も早くこれが施行されますように業界を代表して切にお願い申し上げます。  ありがとうございました。(拍手)
  10. 中村靖

    中村委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  11. 中村靖

    中村委員長 これより質疑に入ります。  まず、参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松田岩夫君。
  12. 松田岩夫

    ○松田(岩)委員 お三人の方から、それぞれのお立場で大変貴重なお話を承りまして、ありがとうございました。現在、政府の方から提案されております著作権法の一部改正案の一刻も早い成立を私自身も心から願っておりますが、その思いを一層強くしたわけであります。  その関連で、今回取り上げられました二点のほかにも、実は今お三方からそれぞれ新しい問題も既に提起されておられるわけでありますが、何といってもこの根っこにありますのは、芥川先生もおっしゃいましたけれども、やはり私ども日本人の物の考え方、創意とか工夫とかいったようなものを根っことして大事にするかしないか、そういったことまで及んでおると思うのでございます。それをきょうの問題に絞って言えば、著作権思想といいますか、そういったものの普及とか浸透といったものをもっともっと図らねばならぬなとしみじみ思ったわけでありますが、では一体それをどうしていったらいいのだろうかということになりますと、これまたなかなか難しい、まさに長い民族の歴史にまでさかのぼる問題になるのだろうと思うのでございます。  そういう意味で、こんなことを質問するとそれだけで何時間もかかってしまうのですが、私自身は十五分ということでございますので、もしよろしければ一言か二言、芥川先生から、私ども日本人がこれから文化国家として本当に羽ばたいていくためにはまさに文化や芸術、学問の分野でもっともっとそういう創意や工夫を大事にする、その根っこの制度的な担保が著作権なわけでございますが、どうしていったらいいのだろうかということについて、もう少し御助言を賜れたらと思うのでございます。  時間がございませんので私、最初にお三方に対します御質問をすべて申し上げさせていただきますが、よろしくお願いをいたします。  それから、小泉先生からお話を承りまして、特に小泉先生からは新しい問題点をいろいろ提起されました。新しい問題を一刻も早く審議会等で御審議願って、まさに時代の変遷に対応するように、この著作権法そのものを後追いではない、常に問題の先取りをしていくようなそういう対応をしていくことが、先ほど申しました著作権思想を本当の意味普及していくためにも必要だと思うのでございます。そうした意味で、今度取り上げられております隣接権保護期間延長、二十年を三十年、さしあたり最低限のことだ、一刻も早くもっと延ばしてほしい、と同時に、まさに著作権条約にも早く入って国際的な立場でも日本はもっともっと積極的な態度をとっていくべきだというような御趣旨のこともおっしゃいました。著作権条約にも私自身としても一刻も早い加入が望ましいのではないかと思っておりますが、そのためにも、どちらが先になるのかあれでございますけれども、加入に当たってのとりわけ外国の演奏家の方々とのやりとり、権利保護の問題といったような、条件整備というような言葉皆さんおっしゃっておられますが、そういったことの対応を一刻も早くしていく必要もあるのだろうと思うのでございます。先ほどそうしたことにもちょっとお触れになりましたけれども隣接権条約に入るための条件整備といった面で、小泉先生の方から、一体どんな対応を今実際になさっておられるのか、ちょっとお聞かせ願えたらと思うわけであります。  最後に、亀井先生の方から、今まさにおっしゃいましたが、業界として自助努力をしていくということが大前提だとおっしゃいました。私もそう思います。今度の改正、海賊版を単に所持するだけでも罪として問えるというふうに改めること自身は大変な進歩だと思います。しかし、また考えてみますと、そもそも本物か海賊版かというところが問題の分かれ道で、そこのところがあいまいでございますと、いかに所持だけでも取り締まれるというふうにいたしましても、本物か海賊版かということでまた対応が不十分になってしまう。そうした意味でも、本物と海賊版とを本当にうまく峻別する方法、そのための業界のあり方、秩序、いろいろな工夫がやはり要るのだろうと思うのでございますが、そんなことについて、全部お答えいただくととっくに十五分過ぎてしまうのかもしれませんけれども、お時間の許す限り教えていただけたらと思うわけであります。  いずれにいたしましても、きょうはお三方の先生方、お忙しい中を本当にありがとうございました。私ども、一刻も早い成立を期して、頑張らさせていただきます。
  13. 芥川也寸志

    芥川参考人 著作権思想普及はいかにして図られるべきかという御質問で、私の手に余る大きな御質問でございます。  私ども身近のせいもありましてついうっかりしておりますけれども、ここ数年、我が国における著作権制度の改正というのは非常に数多く行われておりまして、恐らくこれだけ数多く著作権法を手がけている国はほとんどないのではないかというくらいに思っております。そういう点で文化庁の御努力を非常に高く評価いたしますが、私ども民間の団体も一体になって著作権思想普及に努力することがもちろん必要かと思います。  大きな遠因をたどりますと、例えばアジア地域がどうして世界じゅう著作権制度の上で最大の過疎地帯になってしまったのかといいますと、著作権思想というものは西洋、ヨーロッパから生まれた思想でございまして、それに対して東洋の人間にはある別種の価値観というか別種の人生観がどこかにある。そして、西洋的な著作権制度を相入れない心情を持っているということもあるかと思います。ヨーロッパの先進諸国の協会の方が非常に一生懸命に東洋の国を訪れまして、そして政府関係の方に著作権制度の確立を説かれるわけですけれども、そのときに、ヨーロッパの方々は皆一様にけんか腰で、権利を侵害している、これは私たち権利だとやるわけなんですが、そうすればするほど何か交渉がうまくいかないという感じを強く持っております。そういう点では私たちこそが中心になってアジア制度の確立のために努力しなければいかぬと思うのですけれども著作権制度普及するという点では、遠く尋ねていけば例えば儒教の精神などがありまして、いいものはみんなで分かち合えというような、権利を主張するのは非常に不道徳という教えがあるかもしれません。これが二千年以上もたった東洋で浸透しているとすれば、孔子というのはとても偉い人なんだな、事によると偉過ぎてよくなかったのじゃないかなという気もいたしますけれども、そういう価値観という点でもう少し考えていかなければいけないのじゃないか。  もう一つは、私ども、今の著作権の問題で一番大きな当面しておる問題にホームテーピングという問題がございます。これは世界じゅうで非常に大きな問題になって、日本でも最近著作権審議会の中に新しい第十小委員会が生まれまして既に五回の審議をしておりますけれども、これは要するに技術の進歩が人間の心をさいなむという問題でございます。日本人は箱庭とか盆栽とか、ああいう全宇宙を小さいものの中に凝縮するみたいなことに非常にすぐれた才能を持っておりまして、それが最近のコンピューターとかICあるいはチップとかいう非常に小さい優秀なものをつくっていくところに生かされていると思いますが、そういう極めて高い技術水準というものが逆に人間の幸せに暮らしていこうとするやさしさとかいたわりとかいう心の問題、つまりこれは文化の問題だと思いますが、それとぎくしゃくする問題を生じているわけです。問題の性質は違いますが、ホームテーピングというのはちょうど自動車の排気ガスにちょっと似ております。NHKのFMでおもしろい音楽放送しますと、全国で十万、二十万という単位でラジオから複製がとられてしまいます。全くそれに対して無権利状態になってしまいます。つまり、田んぼの中で自動車が一台走っていて、それが出す有毒ガスというのはもちろん問題にならないわけです。ですから、それぞれの御家庭でどなたかが録音する、その権利の侵害というのは微細なものなのです。ところが、これだけ東京に車が集中しますと、その排気ガスで人間の健康が侵されてしまいます。それとちょうど同じように、法制度によって文明の利器、確かに自動車は大変便利なもので必要なものでありますけれども、そういう文明と文化という問題、要するに著作権が侵される、そういう文化というものをやはり法制度によって調和を図っていく、そうしなければ人間は幸せにはなれない、そこのところが一番根幹の問題ではないかと思います。  お答えにならなかったかもしれません。失礼いたしました。
  14. 小泉博

    小泉参考人 お答えいたします。  ちょっと時間がございませんので、かいつまんでお話しいたします。  ローマ隣接権条約に加入の際の条件整備ということでございますけれども、これはもちろん、日本著作権制度新法に変わったときに隣接権制度を既に取り入れているわけでございます。ですから、日本状態がそれにふさわしいように定着したら、また国際的にもそれが定着したら日本も入ろうという意思は十分あったのだろうと思いますが、それに関しての条件整備ということが今度の第一小委員会審議の途中でいろいろ問題になったようでございます。  それに関して、私ども実演家団体といたしましては、もう既に昭和四十四年から五十三年にかけまして、国際組織がいろいろございまして、FIAとかFIMとかIFPI、FIAというのはアクターですから俳優の国際組織、FIMは音楽家です。それからIFPIというのはレコードビデオの製作者の団体で国際的な組織でございます。それが採択いたしましたロンドン原則というものがございます。それに基づいて、外国盤レコードの二次使用料に関する二国間の双務協定をヨーロッパの八カ国、それから中南米の五カ国と既に結んでいるわけでございます。条約に入ったときにはそれに基づいてお互いの権利を処理しようという約束ができております。それは、十三カ国の製作したレコード日本放送局で使われた場合には実演家権利使用料に関する交渉とか使用料額の決定、それから徴収金の使途についての権原を芸団協がゆだねられているということでございます。これはA、Bと二つタイプがございますので、その辺のところはちょっと省略させていただきますけれども、このローマ条約にフランスも最近加入いたしましたので、この七月にまたこの三つの国際組織会議がジュネーブであるのですが、それに芸団協としても代表を派遣いたしてなお折衝を続けよう、ぜひフランスとの間でもそれを結ぼうということでございます。  それから、条約加入の際に、第一小委員会では、レコードの貸与権についても条約上の義務ではないけれども国民待遇ということで認めようということになっているので、そのための条件整備も必要であろうかと思いますけれども、これはやはり二次使用料と同じような形で私どもの間で何とか条件の整備を進めようじゃないかという話しかけをすれば、この貸しレコードというのは日本の割合に特殊な一つの社会的な現象でございますので、向こうの方もそれに関しては多分、というより、一緒になってローマ条約に入ってほしいということはみんなが切望しているわけなので、きっと快くそういう交渉には応じてくれるであろうと思います。もちろん余り安心しているわけではございません。厳しいやりとりがいろいろあると思いますけれども、基本的には一緒になって考えていこうという実演家同士のお互いの協力の姿勢がございますので、その点は大丈夫であろうと私たちは考えております。ですから、そういう点で誠意を持って交渉に当たっていこう、この七月からこの問題についても国際組織に相談をしていこうと考えております。  以上でございます。
  15. 亀井寿三郎

    亀井参考人 まずケースでございます。昔は手書きで非常にお粗末なものでございましたけれども、その後、例の複写機、ゼロックス等ですが、これが従来白黒だったのがカラー複写機が出てまいりました。カラーコピー機というものがプロフェッショナルに使われております。それを使ってもとの原稿をそのまま通しますと一瞬にして同じようなものができます。ただし、よく見ますと色がにじんでおります。最近非常に巧妙になってきましたので、そっくりそのまま色を重ねてオフセットの印刷をするとか、あるいは写真をそのままつくるとかというのも多少ございますけれども、これはもうわかりません。ただ、そういうことで国内作品、国内で出たものにつきましてはそれらからのコピーが多い。それから、外国でとにかく上映されてとりあえずビデオになった、日本ではまだビデオにならない、上映もされていないというものがいち早く輸入されまして、日本語ワープロで重ねてスーパーインポーズを入れます。これは本物の製品が日本にございませんので、海賊業者が適当に映画雑誌等から写真をレイアウトしまして、それは著作権は彼らかもしれませんけれども、それで独自のジャケットをつくるわけですね。それにはもちろんメーカーの名前も何も入っておりません。——これなんかは海賊版でございます、必要ならば回覧させていただきますけれども。それから現物につきましては、先ほども申しましたように一般市販のカセットを使いますと、ここが真っ黒でございます。これははっきり海賊版でございます。このふたをたまたま入手して本物らしく見せた場合に違うのは、このとめネジでございます。これはプラスのネジで海賊版はとまっています。本物はあきません、ネジは入っていますけれどもあけるすべがございません。それから、ロット番号というのがこの裏側に穴で刻印されております。ですから、素人の方にはなかなかそこまでは御無理だと思いますので、実は昨年の十月以来、いわゆる印刷物でホログラムという技術発達いたしまして、見る角度によって図案が違う、DCカードなんかにもよく出ていますね、マスターカードなんかに。こういうシールを統一的にビデオ協会で作成いたしまして、これを本体とパッケージと両方に張るようになりました。ですから、昨年の十月以降の作品については全部これが張られている。ただ、市中にあるものまで全部張り切れませんので、当分の間はこれが張られてないからといって海賊版とはちょっと言い切れませんけれども、これからだんだんと入れかわってくると思います。これによって本物がわかればあとは海賊という時代が来ると思います。それから、ビデオ協会のメンバー以外の、洋画メーカーだとかピンク物をやるアダルトなんというのがありますね。彼らもやはり海賊で困っておりまして、アダルトの作品なんかも統一マークをつくって張るようになってきております。それほど海賊というのは深刻な問題になってきております。それから、あとは業者が海賊を仕入れなきゃいいわけですから、この場合にまず識別は今のようなことでやってもらうわけですけれども、あとは値段ですね。やはり海賊版の売り込みは安いですよ。余り安かったらこれはまさに海賊と思っていただかなきゃなりません。  以上、そんなところです。
  16. 松田岩夫

    ○松田(岩)委員 時間が参りましたので終わります。  どうもありがとうございました。
  17. 中村靖

    中村委員長 江田五月君。
  18. 江田五月

    ○江田委員 参考人皆さんには、本日、お忙しい中、お時間をお割きくださいましてありがとうございます。私は社会民主連合の江田五月でございますが、きょうは社会党・護憲共同という会派の一人として質問させていただきます。  もう皆さんから、待ちに待った法案で一日も早くというお話がございまして、亀井さんからは、もう業界の皆さんは一日千秋の思いで待っておられるという言葉もございました。私も、我が会派でこの法律案の担当を命ぜられまして、張り切って四月の二十日には質問をと思っておりましたら、ほかの法案が先だというので延びてしまいまして、この間の事情は皆さんそれぞれ伺っておられるかもしれませんが、私どものどうも非力を皆さんにおわびをしなきゃならぬし、この国会でもまだいろいろ不安要素もあるような次第で、申しわけなく思っておりますが、今後とも、我々も一日も早い立法を目指して頑張ることをまずお約束をしたいと思います。  ところで二、三伺いたいのですが、まず亀井参考人に伺いますが、この海賊版、確かに大変なことで、この立法によって摘発の実が上がり、海賊版が市場からなくなるということをぜひ果たしていかなきゃならぬと思いますが、しかし、現実にはなかなか人間の知恵というのは大変でして、何かやるとまたいろいろなものが出てきてやるわけですね。  私は、一つの方法としてはビデオのレンタル業界の秩序形成、今回は海賊版対象にして法改正をするわけですが、やはりそれだけではなくて、現在一万五千店から二万店というビデオレンタル店がある、しかし、この協会加盟で許諾を得てレンタル業を営んでいる業者というのは、そのうちのどのくらい、恐らく五千店ぐらいでしょうか、残りがいわば無秩序のままでやっているわけで、レンタル業界としてはできるだけたくさんの、できればすべてのビデオレンタル店というものをひとつきちっと協会に加盟させて、協会主導のもとで一つの秩序をつくっていくということを目指さなければならぬと思うのですが、そういうことについて現状と見通しを、時間が余りありませんので、ひとつ簡潔にお答え願いたいと思います。
  19. 亀井寿三郎

    亀井参考人 まことにごもっともな御意見でございます。  まず、協会加盟約五千五百店ぐらいになりました。全国のレンタル店の数が実際にわかりませんので、何分の一になるかちょっとわかりませんけれども、急速に今加盟店がふえております。なぜかといいますと、実は我々の方で流通正常化特別委員会というのを昨年の秋に設置いたしました。実は海賊版を置いてある店にも正規の商品が流れ込んでしまっているわけです。これは我々の力で何とか阻止しなければならないわけですけれども、普通の正規のビデオ販売店から小売で買ってきてそれで海賊業者も店頭に置く、こういうことまではなかなか阻止しがたいわけですけれども、通常は営業として仕入れる場合のルートというのはある程度管理されなければならないわけですが、幸いに頒布権がございます。今まで海賊海賊海賊一筋に来ましたので、どうも頒布権の方の対応がおくれてしまいましたけれども、まず流通ルートをきちっと整備する、そのためには商品の供給契約をこの際きちっとする。  具体的に多少例を申しますと、まず契約をメーカー、店直接契約にする。中間流通業者が介在する場合は三者契約にする。三者契約が困難な場合は、中間流通業者にその小店のリストを提出させて、末端の配給ルートまで把握できるように供給側はする。同時に、契約のないところにはとにかく商品を流さないということでございます。  東映の場合でございますが、六月からもう既に実施に入りますが、物流だけは、商品倉庫から中間業者を経由する取引であっても直接ショップの方に流す、中間流通業者から横流れがないということです。末端のディーラーまで直接メーカーの方から商品を供給いたしますので、そこからまた横流れということになりますとこれはもう問題でございますけれども、大体取引額というのはその店の規模によってある程度のレベルが出てきておりますので、過大な注文があれば発見できるというような状況でございます。  そういうことで、契約がなければ商品が入手できないというような状況をもう一つつくりましたのは、現在セルとレンタルと両方のルートがございます。どうもそのセルの方のルートからレンタルルートに横流れがある。邦画作品につきましてはセル用とレンタル用と峻別して取引をしておりますが、昨年来東宝がプリシード方式というのを採用しまして実施いたしまして、レンタル店にだけ二週間ないし最近では半月と言っていますが、先行して商品を供給する。今のビデオソフトの消費市場というのはやはりレンタル中心でございますので、レンタル店にお客が行くわけですね。そこで商品がなければどうしても正規の店へ行くということになります。したがって、商品がなければ商売ができないような状況にするには、まず正規の店だけに商品を先行して供給するという、そういうシステムも同時に実施しております。  最近では、協会のレンタルシステム加盟店の申請が、従来月に二百件ぐらいでございましたけれども、三百件ぐらいのペースにふえてまいりました。ことしじゅうには八千件あるいは九千件近くになるんではなかろうか。その間に海賊版業者は撲滅して、少なくなっていくであろうというようなことでいろいろと考えております。
  20. 江田五月

    ○江田委員 ありがとうございます。芥川参考人でしたか、自動車の排気ガスみたいなもので、一つ一つは小さいけれども全部集まったら大変だというお話で、やはりこういう権利についての秩序をきちっとするには、集中的な権利処理機構というのをいろいろな形でつくらなければどうしようもないので、その意味では業界秩序というものも大切なポイントだろうと思うので、ぜひひとつ業界代表者として皆さんの御努力をお願いしたいのです。  ちょっと話は変わるのですけれども小泉参考人から、実演家としてはとにかく自分の芸の場がたくさんあることが本当は大切なんだというお話がございましたが、芸の場をたくさん設けることはもちろん基本でしょうが、同時にやはり、こういう今のような芸というものがある物に化体をするといいますか、物に集約をされて、その物が出回っていくというような時代に、それらのビデオ著作物実演家権利というものがないですね。これは一体、こういうことで満足ということでは恐らくないのだろうと思うのですが、ビデオ著作物実演化の権利をどういうふうに求めていくのか。恐らく、小泉参考人芸能実演家皆さん立場とそれから逆に今度はビデオ協会亀井参考人の方の立場と、これは相反することにひょっとしたらなるのかという気がしますが、御両人から、さらに原著作者ビデオ著作物に対する権利ということを芥川参考人の方から、あるいはそれぞれ皆さんニュアンスが違う、立場が違うお答えになるのかと思いますけれども、その順番でひとつ、ビデオ著作物に対する原著作者、それから実演家権利についてどういうお立場であるかを聞かせてください。簡単で結構ですよ。
  21. 小泉博

    小泉参考人 江田委員の御質問にお答えいたします。  ビデオ著作物というものが著作権法上でははっきり位置づけられているわけではございません。これが全部映画的著作物ということで位置づけられてしまっているというところで、私どもは、先ほど申し上げたような問題提起をしているわけでございます。ですから、かつての劇場用映画を想定した形での映画的著作物というもので、すべての権利が映画製作者というところに集められて強力な頒布権を持っているという状況でございます。これが最近は、例えば放送の場合には隣接権がございまして、それの録音録画物とかというようなものが使われた場合には報酬請求権があるのですが、映画の場合にはそれが全く映画製作者に帰属しているためにだめであるということ、それからテレビ映画の場合にもそれが言えるというようなことでございまして、その点については、放送著作物か映画の著作物かということは私どもにとっては大きな違いが生じている。それの非常にあいまいな部分、放送局が下請業者に出すためにあいまいな部分が生じてしまっているという不都合なことが起きております。ですから、これはやはりそれに基づいてお互いの契約慣行といいますか、そういうものがきちんと交わされなければいけないだろうということなんですが、現在のような強い形でぴしっと決められておりますと、それに対しての交渉を幾ら持っていっても、既に既得権として握っているわけですから、そこのところは、例えば立法府の先生方なり何なりがそういうことをどうしたらいいのだろうということで取り上げているというような状況がございませんと、なかなか相手もあることで難しいという状況がございます。ですから、そういう上で、ぜひ皆さんの間でその問題を取り上げていただけるようなことになると、それに基づいて私どもの方でも、そういう問題があるからということで、契約慣行をきちんとしようというような動きに持っていけるのではないかというふうに期待をしているわけでございます。  そのようなことでお答えになるかどうかわかりませんが……。
  22. 亀井寿三郎

    亀井参考人 映画の製作段階で了解していたことが、ビデオというような媒体が新しく出て、極端に言いますと目的外使用ではないかというようなそういう議論だと思います。  私はもともと市場流通の面からどうも見がちなんでございますけれども権利者はできるだけ一本化して許諾手続ができるようにということが望ましいのではなかろうかと思っております。したがって、映画のように参加者が極めて多い著作物の場合は、やはりどこかで一本化されていくことが全体としてうまくいくのではないか。ただし、実演家、まあ監督さんもそうだし、照明さんもそうだと思いますけれども、やはり製作者との間の契約の問題でこれは片づけられないのかなというふうにかねがね思っております。  それから、映画というのは劇場で上映されるということが一つイメージされるわけでございますけれどもビデオも、フィルムがビデオにかわっただけで、劇場で上映される時代というのはもう既に間近に来ております。既にビデオシアターという形態での業務がありますし、ハイビジョン時代になりますともうそれこそビデオテープでどんどん業務用にそれが使われる。現在でもCCTV、いわゆるホテル内の上映等業務用に市販のビデオと全く同じものが使われているわけでございますね。そういうような状況でございますので、レコードが個人向け、ホームユースというところから最初はスタートし、レンタルという業務用が出ていろいろと問題になったのと違って、もともと映像というのは業務利用が多かったいきさつがございますので、その辺もあって事業経営側の立場もいろいろと状況は変わってきていると思いますけれども、やはり流通の面を考えながら協議をしていったらどうかなというふうに私は思っております。
  23. 芥川也寸志

    芥川参考人 時間がないようでございますので簡単にお答えしますと、ビデオの原著作者権利につきましては大体保護されておりまして、今のところそれほど問題はございません。
  24. 江田五月

    ○江田委員 松田委員から、どうやったらこの著作権思想普及できるかというようなお話がございまして、私も、例えばここは文教委員会で、この問題は文部省が管轄をしておりまして、教科書の中などで、もう少し子供のころから著作権あるいは知的所有権の問題なども扱っていかなきゃというようなことについて、参考人皆さんの御意見も伺いたかったのですが、時間が参りましたのでこれで終わります。ありがとうございました。
  25. 中村靖

    中村委員長 有島重武君。
  26. 有島重武

    ○有島委員 参考人には大変御苦労さまでございます。  このたびの法改正につきましては、衆議院、参議院に音楽議員連盟というのがございまして、皆様方からも既にいろいろなお話を伺って、文化庁の方にもいろいろお話をした、そんな経過もあったわけでございまして、きょうは、こうした席でまたいろいろとお話を伺いましたが、時間が大分過ぎておりますので、私は一つだけ著作権思想普及ということについて、何か御意見がおありになったらお聞かせをいただきたいと思います。  こうして法律をつくっていく、これは確かに国民に対して著作権思想を押しつけていくといいますか、たがをはめていくということになるわけでございますけれども、さっきも芥川先生からちょっと御発言があったようでございますが、そのほかにお考えがあるのだったらお聞かせいただきたい。著作権資料協会というのがおありになるそうですね。そこから出ている漫画本を私拝見しました。なかなかよくできているなと思ったのですけれども、いろいろな手段を並行して今後もやっていかなければならないんじゃないだろうか。その辺のことを承っておきたい。
  27. 亀井寿三郎

    亀井参考人 今回の法改正をもしも施行していただくことがはっきりすれば、実は私かねがね用意しておりますのは、こういう法律になったので十分注意していただきたい、刑事罰の対象になりますよ、というようなことをポスター、パンフレット等でまず店を教育する、当面法改正後の問題としてはそういう手だてを準備しております。  それから、一般向けにつきましては、先ほどちょっと触れました不正商品対策協議会というのがございます。JASRACさん等も入っていただいておりますし、警察の幹部も三人入って運営しておりますが、そこで今漫画本をつくっております。これは著作物だけではなくて、いわゆるにせもの、ブランド商品等も含めまして漫画で解説するように、今原稿が大分固まってまいりました。著作権資料協会でも先般漫画本をおつくりになりましたけれども、私どももそんなことで、とりあえずはわかりやすいパンフレット、小冊子をつくって配布しよう。  それから、将来のことにつきましては、著作権関係分野の皆さんと共同で一般消費者に対する啓蒙運動、これはますます積極的に続けていかなければならない。そのための話し合い、準備も水面下で、まだ表へちょっと出しにくい状況でございますけれども、多少している実態がございます。  私から申し上げられるのはその範囲でございます。
  28. 小泉博

    小泉参考人 私からも一言お答えさせていただきます。  私の体験で申し上げますと、著作権資料協会で出している漫画本でございますが、私は、これを録音・録画の機器・機材を売っている店に恐る恐る持っていきまして、何とかここへ出入りする人に渡してくれないかということをお願いしたのでございます。そうしましたら非常に快く置いてくれまして、それから一週間ほどたってそこに参りますと、あれが非常に評判がいいのでもっとたくさん持ってきてくれないかというような要望がございました。ですから、ああいう機器・機材を買っている皆さんは、若い人が多いのですが、何の抵抗もなく、そういうものを持っていって読もうという意欲はあるようでございます。それからもう一つ、第十小委員会、これはホームテーピングの問題で、私も委員をしておりまして、そこでの審議の中で、総理府の統計調査がございました。その発表の中で、若い世代ほどそういう私的録音・録画に対しての使用料についての理解度が深い、こういう結果が出たという報告がございました。それからもう一つ、私ども団体にニューミュージックの団体があるのでございます。この対象ファンはもちろんうんと若い人たちでございますが、そういう方のファンレターの中に、貸しレコードから録音してあなたの歌を聞いたのでごめんなさい、というようなことが書いてあるというのですね。  ですから、私が考えますと、日本の若い世代というのは非常に素直に、割合抵抗なく、こういう問題についてはもうある程度理解をしているのではないだろうかという期待が大変持てるわけでございます。ですから、先ほど江田先生がおっしゃっていましたように、せめて中学生ぐらいからこの著作権思想がどんなに国の文化にとって大事であるかということを訴えれば、日本の教育程度の高さからいけば十分理解をしてもらえるのではないかという希望的な観測を持っております。  お答えになるかどうかわかりませんが、以上でございます。
  29. 芥川也寸志

    芥川参考人 先ほど申し上げたのですが、罰則を強化して著作権思想普及を図るというのは、非常に情けない感じがいたしますけれども、現在の状況ですとこれも仕方がない。先ほどちょっと最高裁お話をいたしましたけれども、JASRAC、私どもの協会も、警察庁の御協力を得まして、全国的に今話題になっております海賊版ビデオの刑事告訴をしておりまして、昨年だけでもう六百万本ほどの海賊版を押収しております。今度の改正案が成立いたしますと、こういう点でさらにやりやすくなりまして、実効がうんと上がるというふうに期待しております。  それから、先ほど江田先生がおっしゃいました教科書でございますが、これも私は前に申し上げたことがあるのですけれども、また教科書協会にも再三足を運んだのでございますけれども、まだ実効がないようですが、やはり文部省のおひざ元として、中学校ぐらいの社会科には知的所有権というものを、我が国の工業製品の優秀さをうたう項目はたくさんございますけれども知的所有権を大事にしなさいというところはどこもございません。それから、同じ知的所有権でも工業所有権の方は、例えば発明協会もございますし、かなりいろいろ進んでおります。それに比べて、文化の領域の著作権の方は非常におくれております。先生おっしゃいました資料協会なども非常に貧弱でございまして、私どもは、もっと出資をして資料協会を強くして、一種の著作権情報センターあるいはPRのセンター、あるいはアジア地域との連絡のセンターというふうに発展させていかなければならないと思っております。ぜひ先生方のお力をおかりしたいと思います。
  30. 有島重武

    ○有島委員 法改正と並行して、普及といいますか教育、こういうことも大切なんだなと思っているわけでございます。きょうは後の方もいらっしゃいますし、時間がありませんけれども、こうした問題について、今後、こちらも努力をしていきたいし、またいろいろお考えを承ってまいりたい、そう思っております。  ありがとうございました。
  31. 中村靖

    中村委員長 北橋健治君。
  32. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋でございます。  参考人皆様におかれましては、本日は、御多用のところ、私ども文教委員のために貴重な御意見を聞かせていただきまして、心より感謝申し上げたいと思います。限られた時間でございますので、一問ずつお伺いをさせていただきたいと思います。  先ほど亀井参考人から、福岡県の方で大規模な海賊版ビデオの問題が発覚したということでございますが、たまたま私の選挙区は福岡でございまして、大変恐縮をしております。私も詳しい実情はわかりませんが、アメリカの方では海賊行為を行っている店というのは極めて少ないであろう、一割を切るのではないかという話も聞きます。その反面、日本ではひょっとすると半分くらいは行っているかもしれないという状況も耳にするわけでございますが、その日米の間で大きな違いがあるというのは、取り締まりの体制だとか刑罰、量刑につきましても日本の方が極めて軽いということもあるようでございますし、そしてまた、著作権思想とかいろいろな問題があろうかと思います。亀井参考人としましては、こういったアメリカに比べて日本は非常におくれている、これを是正していく場合に、今はビデオ協会の専務理事というお立場でございますけれども、仮に文部大臣でありますとか閣僚というお立場になられた場合にどういった政策を事務当局に指示されるでしょうか、それを亀井参考人にお伺いします。  そして、小泉参考人におかれましては、先ほども意見開陳の中でございましたけれども、映画的著作物にかかわる問題で、実演家の人格権保護という非常に大きな問題があるというお話を聞かせていただいたわけでございます。「NG特集」という話もちらっと出ましたけれども、そのほかにも具体的に大変お困りになっている実情その他があれば聞かせていただきたいと思います。  まず、お二人からお伺いします。
  33. 亀井寿三郎

    亀井参考人 私は、日常とにかく海賊ばかり追いかけておりまして、目先だけしかわかりませんので、今の御質問に十分お答えできるかどうかわかりませんが、まず罰則が相当違いますですね。これはかねがね意見を出させていただいておりますが、日本の刑法における刑事罰のバランス論がどうもおありだということで、なかなか罰則の強化が難しい。アメリカの場合は非常にその辺は重いということ。それから、FBI自身が民間の情報によって非常に強力に取り締まりをしているということ。これは日本の警察庁が活動が鈍いということじゃございませんけれども、最近の日本の警察の場合を見ますとFBIに匹敵するぐらいの活動をしていただいているものと思いますけれども、やはり立証作業の問題、これがかなり違うと思います。イギリスの場合のように、とにかく現場へ民間の識別能力のある人をまず連れていってそこで押収する。とにかく法律自体がもう海賊版頒布自体が在庫も含めまして違法ということになっていますので、これはかなり効果があると思います。  一番望ましいのは、先生方並びに文化庁の担当の皆さん方にも大変失礼な申し分でございますけれども、今回こういうようなお計らいをいただきながらなお欲張ったことを申し上げますけれども、香港あたりは専従の担当官が八十名を超えるほどございます。香港はかっては大変な海賊版マーケットだった、それが現在、それほど人手をふやして摘発して、海賊版であるかどうかの立証責任を所持者の方に持たしているわけです。五本以上持っていればこれは営業目的頒布目的海賊行為であるということで、とにかく没収できるわけです。それはそうでないよと言うのはお店の方に責任があるわけです。これは大変効果的な方法だと思いますが、できればそういう時代になってほしいなというふうに思います。
  34. 小泉博

    小泉参考人 お答えいたします。  映画の上での実演家権利というのは、これはもう一般の方の認識とは大変違っておりまして、例えば私の場合、最近自分の出た怪獣映面が放送で何度も流されているのですが、それに関しては視聴者の方はその報酬は私がもらっているだろうというふうに思っているようでございますけれども、これは実はもう全く一銭も入ってこないというのが実情でございます。これは映面製作者に頒布権が最初から預けられているということでございます。しかし、テレビの放映まではまあまあということでみんな我慢をしていたのですが、最近それが今度はビデオのカセットにして売り出されるというような利用がされているということですね。これは私の友人の、それで賞をとったような主演俳優さんが、「ビデオカセットにして売り出したのを私の息子が誕生日のプレゼントだよと言って贈ってくれたんだけれども、おれは全然知らなかった……」と言うのです。ですから、一言のあいさつもなくそういうものが売られてしまっているというこの実情も、恐らく世間の皆さん御存じないだろうというふうに思います。  それには、今の著作権法上で処理しようとすると、出演時にすべての利用を想定してきちんとした契約を結びなさい、いわゆるワンチャンス主義ということで、そういう対応をしないのがいけないんだというふうに言われてしまうのですが、しかし、昔の劇場用映画に出るときにはもちろんそんなことは全く想定もしておりません。それから、今後そういうビデオが、例えば都市型のCATVみたいなものが普及してまいりますとどんどん使われるであろうということは目に見えておりますし、カセットだけではなくて、あるいはディスクになって売り出されたり、衛星放送というようなものでどんどん流されるというようなときに、実演家権利というものが全くそこで除外されてしまっているということは大変な問題でございまして、例えば貸しレコードであれだけきちんと実演家権利を認めていただきながら、貸しビデオの上では全然認めていないというのは一体どういうことなんだというような疑問も当然あるわけでございます。ですから、そういうような問題点があるということですね。  それから、著作権法上では放送に出演した場合の権利というのは割合きちんと定められておりますが、それでも放送局が下請に出した場合に、映画資本の会社に下請に出すと、これは映画的な著作物であるということで、実演家の方から何か言っても全く相手にしてくれないわけです。ところが、放送資本の会社の下請に出しますと、これは多少何か放送の番組ではないのだろうかというようなことで、権利というふうには言えないんだけれども、何らかの形で多少処理をいたしましょうというようなことで処理をしているというような、同じ扱いのものというふうに我々で考えているものが違った対応がされているというような実情がございます。  以上でございます。
  35. 北橋健治

    ○北橋委員 貴重な御意見、まことにありがとうございました。次回の委員会で、私の質疑におきまして十二分に参考にさしていただきたいと思います。  あとわずかな時間でございますが、芥川参考人にお伺いいたします。  同僚委員の方からの質問でも、これまで著作権思想普及定着化につきましては参考人の御意見を拝聴さしていただいたわけであります。私もそれに重なるわけでまことに恐縮でございますが、私も音楽の愛好家でございまして、シューマンやシューベルト、モーツァルトが特に好きであります。この三人に共通しているのは、その芸術が極めて純粋無比であるということと生活で大変苦労したということであります。特に、最近「アマデウス」という映面を見ましたけれども、モーツァルト、最後はレクイエムのためのお金をもらってそれを握り締めながら死ぬような悲惨な最期、生活に苦しんだというような事情もございまして、当時の著作権がどのように保護されていたのか私は存じ上げませんけれども、やはりもう少しあそこで芸術家の作曲というものに対して一定の社会的保護というものが制度化されておれば、もっと長生きをしてもっとすばらしい作品を残したのではないか。その意味におきまして、芸術の発展のため、文化の発展のためには、著作権のこういった思想普及というものが制度化されるということが極めて肝要であると考えております。  その意味で、先ほどから参考人の御意見をお伺いしておりまして大変貴重な参考になったわけでございますが、芥川さんは今音楽著作権協会理事長というお立場でございます。今でも文化庁の中でいろいろこの問題についてお取り扱いされておりますけれども、やはりこの著作権の思想普及の問題は文化全体のレベルにかかわる、その国民の民意そのものにかかわってくる重要な、かなり広範囲にわたる問題であると思います。したがいまして、その対応する行政の方も、文化庁のみならず幅広い省庁間の対応が必要であろうかと思っておりますが、音楽著作権協会理事長立場を離れて、例えば仮に内閣にそういった専門の閣僚が任命されるということになりまして参考人がその他位につかれた場合に、事務当局に対してどういうふうにして指示をされて、そして、それは文部省のみならずいろいろな官庁になるわけであります、一定の権限を行使できるわけでありますが、そういうお立場に立たれた場合に、どういった具体的な政策をこの著作権の思想普及のために指示されるでしょうか、聞かせていただきたいと思います。
  36. 芥川也寸志

    芥川参考人 文教委員会でシューマンとかシューベルトという名前が出て大変感激をしております。  著作権問題というのはもちろん経済問題でございます。しかし、半面は非常に重要な経済問題ではありますが、あとの半面は文化の問題であるというふうに思っております。そして、非常にしばしば起こっている誤解は、著作権法の第一条で言うところの「文化的所産」というもの、これは音楽とか文学とかあるいは建築とか、そういういろいろな文化的な所産というものと文化そのものとの混同があると思います。文化的所産というのは、著作権法では正しい表現だと思いますが、少し古いものでお役所流に言いますと文化財ということになるかと思います。そういうものに対する法律というのはございますけれども、文化そのものに関する法律というのは著作権法しかないわけです。したがって、我が国の文化が将来いかにあるべきかということを考える法律的な足がかりというのは、著作権法しか今のところないわけです。ですから、著作権法抜きにして日本の文化を考えるというのはおかしいと思います。  しからば、文化というのは何かといえば、決して遊び半分に楽しむ音楽とかそういうものだけではございませんで、人間の精神活動、人間というのは精神の躍動によって生きていく動物ですから、それが人間らしさであるし人間のとうとさですから、人間が一生懸命に考え出したもの、それをほかの人間が受けとめて、それでそのすばらしい精神の躍動が伝わってくる、文学作品で言えばそれを読んだ人が感動する、つくった人と同じ精神的な躍動というものが伝わってくる、そして、いろいろな大勢の人たちがそれと同じような精神的に燃え上がった状態になっていく、人間らしさを取り戻すということが芸術というものの本質だと思います。そういうものがもし人間社会の中からなくなったら、あるいは人間社会の中でそういうものが弱くなってしまったら、それは人間の生活というのは非常に不幸になると思います。ですから、文化というのは、人間がいかに生き生きと環境に挑戦しながら少しでもいい環境をつくっていこう、生き生きと毎日を生きていく、そのこと自体が文化だと思います。したがって、文化政策というのは政治の根本だ、政治の一番もとになるものは文化政策だというふうに私は思っております。ですから、そういう点で文化というものを考えていただき、そういう点で著作権法というものをとらえていただければ、私は非常にすばらしい未来が来るのではないかというように思っております。
  37. 北橋健治

    ○北橋委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。  私どもも、皆様方の御要望を踏まえまして、この法案の早期成立につきまして、微力でございますが全力を尽くすことをお誓い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  38. 中村靖

  39. 山原健二郎

    ○山原委員 共産党の山原でございます。  著作権法がかかるたびに参考人としておいでいただいて、本当にありがとうございます。また、日ごろから著作権思想普及のために御努力をされておられる皆さんに、心から敬意を表明いたします。  皆さんが質問されましたので、私は、一つは、この委員会におきまして過去において幾たびか著作権審議の中で附帯決議をいたしております。その一つがローマ条約に加盟の問題ですが、きょうは小泉参考人の方から、条件整備の問題もあるけれどもいつまでも延ばせないというお話がございました。まことにそのとおりだと思いますし、この附帯決議を今ここでいただいて持ってきたわけですが、何回か決議をしているのです。ところが一向に進まないという事態がございまして、これは我々としてどうすべきかということになるわけですが、この点について、簡単で結構ですから小泉芥川参考人から一言ずつお伺いしておきたいのです。
  40. 小泉博

    小泉参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、日本著作権法の中に隣接権制度というのが取り入れられているというのはもうおわかりだと思いますが、ただ、これがなかなか条約加入に至らない一つの大きな原因としては、条件の整備というものもありますが、その前に放送事業者の方たちが、外国の曲に対してレコードの二次使用料を払うということが経済的負担が大きい、こういうことから反対をされているということがやはり大きな原因の一つになっているというふうに私ども理解をしております。最初のうちはともかく、これだけ日本が経済的に発展してきて、経済大国ということはもう世界が認めているというときに、放送事業者の経済的負担が非常に大きいのでなかなか加盟できないんだということは、国際的にはもう通用しない議論であろうというふうに思います。ですから、後は本当に条件整備ということで、外国に実際にそういう二次使用料とかあるいは貸与権にかかわる報酬というものをどう処理していったらいいか、こういうところを詰めていけばよろしいのではないかというふうに考えております。
  41. 芥川也寸志

    芥川参考人 簡単にお答えいたしますけれども権利者立場条約加盟を心から望んでおります。今、小泉専務がおっしゃいましたように放送事業者の反対というものがございます。しかしこれも、かつては絶対反対というところから最近では慎重にということでございまして、文化庁の御努力もありまして、もう少しの辛抱というつもりで頑張っております。
  42. 山原健二郎

    ○山原委員 附帯決議の一番新しいのは百四国会のものですけれども、とにかく政府としては検討を急いで加盟を急ぐという決議になっているわけですね。ところが決議をしても全く進まないという、原因は今お話しのとおりでございますけれども、これはいつも決議をする側としてはやはり幾らかでも進まないと話にならぬという気持ちを持っておるものですから、あえて御質問を申し上げたわけです。  それからもう一つの、例の著作権法第三十条の私的録音・録画の複製の問題でございますが、年間八十億曲というものが録音されているということで、しかもその中で作詞・作曲家あるいは演奏家は何の恩恵も受けていない、売り上げも減るという重大な問題があるわけですが、これについて、この解決には録音機器メーカーへの報酬請求権として包括的に徴収することが現実的だと私どもは考えております。また、国会の附帯決議の中にもいわゆる賦課金制度の確立ということが出ておるわけでございますが、これは急務だと思うわけですけれども、この点についてどうお考えでしょうか。これもお二人の先生に伺っておきたいのです。
  43. 芥川也寸志

    芥川参考人 ホームテーピングにつきましては、先ほどもちょっと触れましたが、この問題が一番最初に起こりましたのは昭和五十二年でございまして、著作権審議会の中に第五小委員会が設置されまして、これが昭和五十二年十月でございます。そして五年間経過いたしまして、結論が出ませんでした。そのときの結論が出ない三つの理由、一つは当事者間で合意がないこと、一つは著作権思想普及がいまだし、三つ目の理由は国際的な動向をもう少し見定める必要がある、こういう三点でございました。その後、著作権資料協会の中に著作権問題に関する懇談会というのができまして、権利者、それからメーカー、それから中立の学者の先生方が入りまして懇談を続けました。そしてまたちょうど五年を経過いたしまして、一応の結論を、当事者間の合意はありませんでしたけれども、一応懇談会としての結論をまとめまして、そしてその結果、今度は第十小委員会というのが設けられたわけでございます。これが昭和六十二年の十月でございまして、何とちょうど十年間を経過したわけでございます。その間に、先生おっしゃいました衆参両院の附帯決議がたびたびつけられております。そして現在は、報酬請求権制度を導入したらどうなのかということを前提にしまして、第十小委員会で既に五回の審議が続けられております。これは、この十年間にヨーロッパ各国で既にいろいろな法制度が施行されておりますし、そういうヨーロッパ先進国の一つの見本というものができておりますので、それを手本にしまして、我が国にもそういうホームテーピングに関する新しい法改正を行っていくという道が一番妥当な近道であろうということで、今鋭意審議を進めておりまして、これは御心配かもしれませんけれども、今私自身の感覚で申しますと非常にいい方向でどんどん審議が重ねられているというふうに思っております。もちろんいろいろ問題が多いのですけれども権利者であります著作権協会としましては、メーカーの方々と対決するというのではなくて、著作権制度の維持というものは我が国の文化的な発展のために必要欠くべからざるものであるから、その制度維持発展させていくために、メーカーの方々にどうか私たちの相談に乗ってほしいという形でもって、メーカーの方々の協力をお願いしております。そして今、メーカーの方々との間にもいい関係で話が進んでいるというのが実情でございます。
  44. 小泉博

    小泉参考人 私からも一言申し上げさせていただきますが、この三十条というのは、「著作権者の権利を不当に害しない限り」というようなベルヌ条約の精神に基づいておりまして、特別な除外制限規定としてあるわけでございます。フェアな使い方をしている限りは私的録音・録画とか私的な複製というのは構わないということなんですが、これはもう現在これだけ大量になると、アンフェアな使い方になっているというのはだれが見ても明らかなことでございまして、それをどういうふうに解決していったらいいのかということで第五小委員会、それから今お話がありました懇談会で、十年ぐらいにわたってそれが話し合われながら解決していないというところの根本は、結局は、これはもう日本の政治の一つの優先順位みたいなものが、まず経済の復興、それから産業の優先というようなこと、次にそれが文化の方にどういうふうに向いてくるかというようなところにかかわってくるのではないだろうかというふうに、これは私見でございますけれども、そういうふうに考えております。
  45. 山原健二郎

    ○山原委員 あと二つですね。  一つは小泉さんに伺いたいのですが、これは映画の著作権の問題で、この著作権は企業に帰属するということになっておりまして随分問題になってきたわけですが、本来総合芸術として成り立たせている監督や俳優などの芸術家の人たちにも著作権が及ぶようにすべきであるという要求、これは切実な要求であろうと思います。これについてお考えを伺いたいということ。  もう一つは芥川さんにお伺いしたいのですが、これも前から問題になっている写真の分野の著作権保護の期間の問題です。公表後五十年となっておりますけれども、これを文学や音楽と同じように死後に起算するよう改めてほしいというこれまた切実な要求があるわけですが、これについてはどういうふうにお考えになっておられるか、伺っておきたいのです。
  46. 小泉博

    小泉参考人 お答えいたします。  映画の著作物の中における実演家権利というのは、著作権法の十六条の「著作者」の例示の中に実演家というのが残念ながら入っていないんですね。監督は入っております。ですから、一応監督さんは映画を一緒につくった著作権者であるということで権利者として認められているわけでございますが、ただ二十九条においてその権利は一切映画製作者に帰属するということで、一回与えられた権利がまた取り上げられているというような不思議な結果になっているのです。ただ監督さんの場合には、著作権者として認められたために著作者人格権という譲渡不能の権利がございまして、そのために、これをテレビに放映するとかビデオカセットにするとかということで多少の編集が必要である、その編集料としての、要するに同一性保持権を行使しての権利のお金というのが入ってくるということが実情でございます。実演家の場合には、先ほど申し上げたように全くそういうものからはオミットされてしまっている。  それで、先ほど申し上げたように、今度は放送番組までビデオカセット化するときに、これは放送の物であるのか映画の物であるのかというような議論が生まれてきてしまっているということで、再三申し上げているように、映画の著作物をそのままビデオの映像著作物ビデオソフトというものにまで敷衍して考えているというところに、いろいろな問題があるのだろうと思います。劇場用の昔の映画の場合の製作者は、あれだけの資本を投じ、あれだけの大がかりなものでつくっていたので、これはこの法律ができるときの審議の段階では、製作者に帰属させないと流通が妨げられるということで決まったということはある程度やむを得ないのかもしれません。しかし、それが現在のように、映像の作品というものがいろいろな形で普及してきたときに、依然としてその強い権利が残っているということが問題であるというわけでございます。
  47. 芥川也寸志

    芥川参考人 写真のことは門外漢でございまして深く考えたことはございませんけれども権利保護期間というものは、それぞれさまざまな権利がございますので、その権利間の整合性といいますかそういう点から一概に申せないと思いますが、権利者立場から申しますと、どんな場合でも、権利が制限されるよりも権利が延ばされるということの方が私は賛成でございます。
  48. 山原健二郎

    ○山原委員 時間が参りましたが、きょうは亀井参考人にお尋ねいたしておりませんが、廃業まで追い込まれるという実態の話もございまして、しかもこの法律の通ることを非常に大きく期待しておられるということを伺い、また実物も持ってきていただきまして拝見をさせていただきまして、大変ありがとうございました。  私ども、この法律は早く通すべきである、会期末を迎えまして情勢は多少混迷状態にありますけれども、しかし、衆参を通じて、これは成立さすべきだという考えでは恐らく各党とも一致しておると思いますので、その意味でこれからも私どもも努力をしたいと思います。  三人の参考人皆さん、どうもありがとうございました。
  49. 中村靖

    中村委員長 以上で、参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ当委員会に御出席いただき、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会代表して厚くお礼を申し上げます。  午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十九分休憩      ────◇─────     午後二時十六分開議
  50. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。江田五月君。
  51. 江田五月

    ○江田委員 著作権法の一部を改正する法律案質疑をさせていただきます。  先ほど参考人お三方からいろいろ意見を聴取いたしましたが、皆さん待ちに待った法案で、一日も早く成立させてほしいということを申されまして、とりわけ亀井参考人のお言葉ですと、一日千秋の思いで待っている、こういうことでございました。私どもも一日も早くということで、四月二十日の委員会に私はもう質問を用意いたしまして、「委員長」とこう手を挙げるところまでいっておったのですが、ほかの法案が先だということで、まことにきょうの関係者の皆さんには申しわけなく、私ども社会党・護憲共同所属の議員の力のなさを恥じておりまして、ひとつ委員会皆さん、一日も早いこの法案の成立に御努力をいただきたいと思っておる次第です。  参考人質疑の中で、やはり亀井参考人の話ですが、アメリカなどでは著作権法違反というものは非常に社会的に非難も厳しいし、刑罰も重い、日本ではまるで軽い、こんなお話がありまして、今回は、百十三条の刑罰の関係では改正ということになりまして、百十九条は改正になりませんので、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」ということは変わらないわけですが、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」というのが重いか軽いか、これはいろいろ議論のあるところと思いますが、この刑罰が重いか軽いかというのはある意味では法律によるわけです。しかし、社会的な非難の程度を超えて刑罰だけを重くするというわけにもいかない。社会的に非難が強ければそれに伴って刑罰も重くなるのでありまして、法律に書いてある法定刑をそれだけ取り上げて、これは重いか軽いかという議論はやはりできないのだろうと思います。やはり著作権というものがどれだけ社会の中で重んじられておるか、著作権思想というものがどれだけ普及徹底しておるかということにかかわってくることだと思うのですね。それで、「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」が仮に軽いとするならば、それは我が国で著作権思想というものが十分普及徹底していないからで、著作権思想あるいはもっと広げて知的所有権人間の知的な創造力というものに対する評価、その財産的価値、こういうものの思想の普及徹底というものを一層行っていかなければいけないことだと思っております。  この点はいろいろな方法が考えられると思いますし、きょうも、参考人意見陳述の中でも質問の中でも出ておりましたが、私はちょっと問題提起だけをしたのですが、さまざまな方法の中で、その一つとして、例えば学校教育の中で著作権思想あるいは私的所有権、工業所有権、無体財産権、こういうものに対する重視を徹底させていく、定着させていくということはこれから大変大切になってくるだろうと思います。貿易摩擦という観点からも、著作権あるいは工業所有権の貿易摩擦ということも既に随分問題にもなっておりますし、これからますます問題になっていくわけです。また、各団体からも強い要請があって、例えば著作権関係でいえばJASRACあるいは芸団協レコード協会その他の皆さんからも要請がある。けさほどの参考人質疑では芥川参考人から、とりわけ長い間自分は教科書でとにかく取り上げてくれという要請をしてきたけれども、全然そのことに、この言葉は使われていないと思いますけれども、のれんに腕押しで反応がないというような趣旨の、いら立ちの言葉もあったわけです。また工業所有権関係でいえば、これは文部省所管じゃありませんけれども、特許庁とか弁理士会、発明協会、特許協会その他、いろいろ要請が続いておりまして、私自身もこの委員会で何度も質疑でお尋ねをいたしております。また、著作権関係法案質疑の際には、附帯決議で著作権思想普及徹底、これは必ず登場してくるとか、さらには、最近でいえば、六十二年十月十六日の「著作権審議会第一小委員会審議結果について(ビデオ海賊版関係)」の4その他の(2)にも、「海賊版の作成・頒布の問題は、3に示した対策を構じることにより直ちに解決するものではなく、今後とも、著作権思想普及・徹底や権利侵害に対する取締りの強化をはじめ、」云々、こういうことでございまして、大変大きな課題になっていると思います。  そこで、これは既に以前にも私はこの委員会で聞いたことですが、現在、著作権思想普及徹底が学校教育の中でどういうふうに取り扱われているかということについてまず伺います。     〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  52. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 著作権改正案を御審議いただくに当たりまして、江田委員から、冒頭に、一日千秋の思いという言葉をお使いなって御鞭撻をいただきました。ありがたく思っております。  基本的なことだけ申し上げておきますが、おっしゃるように、著作者権利保護することによりまして知的創作活動を促進する、いわゆる文化活動を一層促進するために重要な位置づけをされておる法律でありますし、著作権思想普及徹底というものも宿題になっておるわけでございます。具体にはこれから初中局長からお答えさせますが、高校の一部では、商業学校などでは教科書の中にもこれが記載されておるようでございます。あとは中学、小学校でも、例えば小学校でどの程度のことが言えるかは別といたしまして、文化人を育てるという意味では社会人を育てることにも通じるわけでございますから、いわゆる道徳という面で、個の大切さあるいは他人の権利の大切さというものを何らかの形で、思想普及の一端として取り上げる道はあるだろうし、それは現在でも行われておる。中学、高校でどのようにこれを取り上げていけるか、私も一生懸命勉強してみたいと思っております。  今の事実と今後の推移については初中局長からお答えをさせます。
  53. 西崎清久

    ○西崎政府委員 著作権問題に関しましての学校教育上の扱いの現状を、簡単に申し上げたいと思う次第でございます。  一つは学校教育の中でどこまで盛り込めるかという問題、それから発達段階で著作権の問題をどういうふうに扱うか。これは江田先生十分御承知でございますが、現在高等学校におきまして「政治・経済」、それから「現代社会」において権利という形で財産権という取り上げ方はございますが、財産権の中身として著作権があるという事柄は取り上げられていないというのが現状でございます。しかし、高等学校の「商業法規」では財産権を細かく分けまして無体財産権とし、無体財産権の中で著作権と工業所有権に分ける、工業所有権をさらに細分化して、著作権も教科書で申しますと約半ページぐらい取り上げられているという点は、先生も御案内のとおりでございます。中学校につきましては、やはり財産権の保護という観点での財産権という言葉は出てくるわけでございますが、この財産権の中身として無体財産権、著作権という取り扱いは、指導要領なり教科書には出てまいらない。それから小学校は、ただいま大臣からのお答えにありましたように、他人の権利保護する、他人の権利を尊重するという教育を道徳教育の中で行う。社会科でも若干そういう他人の権利を尊重するというふうな問題としての考え方は教育としてございますけれども、やはり発達段階から著作権まで踏み込むということは現状としてなかなか難しい。  現状の御説明を申し上げれば、以上のようなところでございます。
  54. 江田五月

    ○江田委員 大臣の方から、冒頭に、大切な課題なのでしっかり勉強してみたいというお話がございました。今、局長からの答弁をお聞きのとおり、現実は著作権とかこういう知的所有権というものの扱いは、高等学校のそれも普通科でなくて工業科ということになるのですか、この一部で取り扱われているにすぎないのですね。財産権というと、それだけぽっと出すと、具体的な物に対する権利、土地とか建物とか金の貸し借りとか、知的所産に対する権利性というものはすぐには出てこないのだと思います。ですから、人のまねをしてはいけないよ、人が自分で考えたことは大切なことなのですよ、自分自分で考えたことも人にまねをされないということは自分で言えるのですよ。そんなことをずっと教えていかなければいけないのじゃないかと思います。  教科書が今学習指導要領に基づいてつくられておって、検定制度が、このこと自体には議論はいろいろありますし、私もそれなりの批判を持っていないわけではありませんが、それはきょうのところはさておき、やはり次の指導要領改訂の段階で、長い懸案ですから、この問題はぜひ真っ正面からひとつ取り組むべきだと思うのですが、大臣いかがですか。
  55. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 おっしゃるように、この知的創作権と申しますか、他の権利を尊重する、また創作のとうとさを知る、この点は著作権の思想の普及の一端でございますから、いろいろ勉強してみたいと申し上げましたのは、まさに指導書あたりにどう盛り込んでいけるか、この点を具体に事務的に研究してみたい、こう思っております。それによりまして、おっしゃるように教科書その他に知的段階に沿ってどのように盛り込めるか、その第一段階としてまず指導書にどのように書けるか。盛り込めるか、その辺からも研究をしてみたい、そういう意味を含めてさっき申し上げたところでございます。
  56. 江田五月

    ○江田委員 その指導書の中でどう盛り込めるか研究してみたいという、それは大切なことなんですが、もう長いんですね、随分前から言われているんですね。今始まったことなら「さあ、これから研究してみたい」で済むんですけれども、そうじゃないんで、もう本来随分研究も進んでなきゃいけないんですね。局長いかがですか。これまでどういう研究、勉強がなされてきたか、そのあたりをひとつ御説明ください。
  57. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御案内のとおり、教育課程審議会は三年余にわたりましていろいろと教育課程の中身を検討してまいりまして、その間において私どもとしては、例えば工業所有権、特許権等各方面から陳情、要望が出てまいっておりますので、それらの陳情、要望は教育課程審議会提出をいたしまして、こういう知的所有権等の知的財産権の問題もいろいろ各方面から御要望があるということは、教育課程審議会にも御披露しておるわけでございます。  教育課程審議会は、相当詰めた議論をしていただいたわけでございますけれども、特にこの知的所有権の問題を個別に取り上げて審議するところまではまいりませんでした。しかし、昨年末の答申におきまして、幼児児童生徒の生活とか意識の変容というものが今後予想される、これから社会の変化もいろいろと予想される、そういう社会の変化なり児童生徒の意識の変容、生活の変化に対応できるような教育課程、教育があるべきだ、情報化社会、国際化の問題もございますけれども、そういう取りまとめをいただいておりますので、この知的な財産権の問題についても私どもはその一環として文部省としての検討がゆだねられているというのが現状だ、こう理解しております。したがいまして、ただいま大臣からのお答えがありましたように、今各教科・科目別に協力者会議を開いて一年余をかけて指導要領の作成を作業として行うわけでございますので、例えば中学校の公民科であるとか高等学校の「現代社会」とか「政治・経済」等の科目において、このような財産権問題を指導要領でどこまで取り上げられるか、しかしこれは大臣からのお答えにもありましたように、指導要領自体は先生御案内のように非常に短い、精選されたものでございますから、いろいろ財産権の個々具体まで書き込むことはなかなか至難ではないか、さすれば、先ほどもお話しありましたように、それらを敷衍した形での指導書なり指導の実際の問題として、知的な財産権の問題をどの辺まで扱えるか、この辺を私どもは現在の研究課題として取り組んでまいりたい、こういうふうに思っているわけでございますので、若干そういうふうな作業をこれから鋭意進めてまいりたい、こんな考えでおる次第でございます。
  58. 江田五月

    ○江田委員 そうですね。教育課程審議会に陳情、要望があるのは著作権知的所有権のことだけじゃないと思うのですね。いろいろな要望がいろいろとあって、応接にいとまがないという状態かとも思いますけれども、各方面の御要望の中でも、それはどれも皆あれですが、とりわけこれはということになるのでしょうけれども、しかし、今局長がちょっとおっしゃった情報化とか国際化とかを考えますと、とりわけこういう知的所産に対する価値の尊重ということはこれからの日本の社会の発展のいわば基礎の一部をなすものだと考えなければならぬわけでして、これはほかのものもたくさんありますからその中でということではなくて、ひとつ本格的に考えていただきたい。三年以下の懲役、百万円以下の罰金というのでは軽いな、もうちょっとこの部分には法定刑を重くしなければならぬなと社会が思うようなそういう社会を、刑が重いばかりがいいわけじゃないですけれども海賊版、最近は質もいいのができて、別に海賊版だからといってぼけているわけでも何でもなくて、安いからいいじゃないか、何が悪いというような社会通念というのが、著作権思想普及によってそういう社会通念が変わっていくというところまで持っていかなければいけないわけですから、もう一度ひとつしつこいようですが大臣の覚悟を聞いておきたいと思います。
  59. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 先生のおっしゃる思想の普及というものはまさに大事なことだ、このように思いますので、心して進めてまいりたいと思いますし、たまたま私も、政府委員からも、指導書の中で書く方がむしろしっかり書けるかもしらぬ、そういうことも含めまして具体に進めてまいりたいと思っております。
  60. 江田五月

    ○江田委員 ぜひひとつ、これはもう与党、野党なんという問題ではありませんので、努力をして、私たちも努力をしてまいりたいと思いますし、よろしくお願いを申し上げます。  さて、今回の改正は、今もちょっと触れました百十三条の海賊版ビデオに対する取り締まりの改正と、それから著作隣接権の存続期間を長くするという、そういう二つがあるわけですが、まず便宜、海賊版ビデオのことについて伺ってまいります。  午前中も参考人の方々から意見をお聞きしたんですが、その際にも現在の摘発の実態、その苦労、こうしたことについて亀井参考人からのお話がございましたが、果たして今どういう摘発の実態になっているのか、あるいは被害額というものは一体どのくらいと予測をされるのか、こういう現状というもの、この法改正が必要に至る現実の姿というものをひとつ明らかにしてください。
  61. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 まずビデオ海賊版にかかわります現在までの摘発の状況でございますが、これは、邦画に係るビデオソフトにつきましては、関係権利者団体が五十九年の十月にビデオ著作権保護・監視機構というものをつくりまして、そこで侵害行為の監視、それから摘発の告訴をするというようなことをやっているわけでございます。邦画に係りますそうしたその機構関係の六十二年度中の告訴件数は十九件でございました。それから一方、洋画に係りますビデオソフトにつきましては、アメリカの映画会社の団体でございますアメリカ映画協会が、六十一年の二月に日本支社を設立いたしまして、そこで侵害行為に対する同様の調査・摘発を行っているわけでございますが、そちらの方の、アメリカ映画関係の六十二年度中の告訴件数は六十九件でございました。この二つ、十九件と六十九件、合計八十八件というのが六十二年度中の告訴件数ということになろうかと思います。  それから、次に市場に出回っているビデオ海賊版の数量でございますが、これは権利者団体昭和六十二年の四月に調査をいたしまして推計をしたわけでございますが、これによりますと、六十二年の四月の段階におきまして五百五十万本、これは価格にいたしますと六百億円相当のものが出回っているというような推測をしているところでございます。ビデオ全体の数量と申しますと、およそ適法のものが千二百五十万本ぐらいというふうに言われておりますので、五百五十万本といいますと全体の流通の三〇%程度に当たろうかというふうに思っております。
  62. 江田五月

    ○江田委員 今、適法なものが千二百五十万本、それにさらに海賊版と言われるものが五百五十万本という、そういう趣旨でよろしいのですね。だから、五百五十万本というのは千八百万本の三〇%、そういう趣旨ですね。
  63. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 そのとおりでございます。
  64. 江田五月

    ○江田委員 邦画十九件、洋画六十九件。洋画というのはアメリカの映画協会の日本支社が監視をし告訴をされたということだと思いますが、アメリカだけですか、その他の国はどうなんですか。
  65. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ビデオソフトに関しましては、言ってみますとアメリカの映画、メジャーの映画会社のものについては、先ほど申しましたアメリカ映画協会の日本支社というものが扱っている、それ以外のものは一応、邦画が大部分でございますけれどもビデオ著作権保護・監視機構というものが扱っている、こういうふうに考えていただければと思います。
  66. 江田五月

    ○江田委員 アメリカの映画を除く洋画も含む邦画が十九件で、洋画・アメリカ映画が六十九件というのは、何か随分数字に隔たりがあるようですが、これはその海賊版の実態というものを反映をしているのですか。
  67. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほど申し上げました海賊版の五百五十万本の内訳のようなものでございますが、洋・邦の割合というのは大体五対五ぐらいになっているというふうに言われております。ただ、先ほど申しましたように、アメリカ映画会社というのはアメリカ映画のメジャーのものでございますので、洋画の全部ではございませんので、洋画の部分がかえって少ないくらいだというふうに考えております。したがいまして、この十九件と六十九件というのは、ある程度そのときの、大量にレンタル店でそういうことが行われているというようなことがわかった件数のようなものでございますので、全体とすればごくわずかなものでございますから、そういういわば偶然性のものがある程度重なったものだというふうに思っております。
  68. 江田五月

    ○江田委員 十九件対六十九件というのは、別に、適法、違法も含めてビデオ全体の洋画・邦画の分布を反映しているわけでもないし、海賊版が出回っているその量を反映しているわけでもなくて、たまたま六十二年にそういう件数であったということですね。そうすると、その海賊版の本数ですね。これは、件数は本数とは違うわけでしょう。ですから、一件当たり一体どのくらいのバラエティーがあって、平均何本ぐらいになるのですか。
  69. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 済みません。今その平均の数を持っておりませんが、今の告発、告訴を受けまして警察当局が押収したその本数を申し上げますと、邦画のビデオが二万一千本、それから洋画のビデオが四万六千本ということになっております。そういたしますとそれを件数で割っていけば出てくるわけでございますが、大体それで申しますと、邦画の方が一件当たり千本でございましょうか、それから洋画ビデオの方は千本弱ということになりましょうか。
  70. 江田五月

    ○江田委員 押収をしたものが六万七千本、これが業界の調査ですが、海賊版として出回っているのが全部で五百五十万本、この差は非常に大きい、こういうことになって、何とかしなきゃ、こういうことになるのでしょうがね。この押収ですが、これはどういう押収の仕方をしているのですか。
  71. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは告訴を受けまして、警察がそこに内偵をして、そして、これが間違いないということになりますとそこで強制捜査に入るわけでございます。そして、告訴を受けた会社といいますか、厳密に言えば権利者でございますが、権利者のそのビデオ、それだけを押さえることができるということで、現在のこの「頒布」について罰しているというだけですと、どうしてもそういうふうに、実際に頒布が起こって告訴を受けたその会社のものだけしか、ほかのものは海賊版であっても押収ができない、そういう関係になるわけでございます。そういった意味で、摘発をいたしても海賊版全部を押収することができないという意味で、その取り締まりの実が上がらないというような実態になっているわけでございます。
  72. 江田五月

    ○江田委員 押収した物件は最終的にどうなっていますか。
  73. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは廃棄をしているということだそうでございます。
  74. 江田五月

    ○江田委員 任意提出で領置で、そして所有権放棄で結局廃棄と。つまり犯罪を組成するものとして押収をして、判決で没収をして廃棄という手続ではないんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
  75. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほど申しましたのは、押収したものでございますのでこれはそのように警察の方で廃棄をしているわけでございますが、そのほかに今おっしゃった、お互いに相談をした上で任意に提出をするといったものでございますが、それがございまして、六十二年度中のそうした回収本数といいますか、それは邦画関係のものが五万二千本、それからアメリカの映画関係のものが十一万六千本というような実績があります。
  76. 江田五月

    ○江田委員 なるほどね。それにしても、五百五十万本からすればまだ微々たる数量だということですね。  さて、改正をいたしますと一体この数字がどの程度改善されますか。恐らく押収とか任意提出、領置とかいう数字もずっとふえるだろうけれども、それよりも、五百五十万本という方の数量が減ることの方が効果として重要だろうと思いますが、その辺の見通しというものは何かありますか。
  77. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 その辺の数値は推定はなかなか難しいものでございますので、私どもも具体的には押さえておりませんが、おっしゃいますように、頒布目的による所持ということで構成要件が該当するようになるわけでございますので、レンタル店でもって強制捜査に入ったときに、そこにその海賊版があればそれは所持ということにおおよそなるというふうに考えられます。そこで今までの実態からすればかなり前進するだろうというふうに考えているわけでございますが、今の、現在の制度によりまして頒布行為についてだけ取り締まりをやっております経過から見ましても、先ほど申し上げましたように六十二年度は五百五十万本という海賊版の数でございますが、これは六十一年度は七百万本ぐらいあったというふうに言われておりますので、これも相当にその取り締まりをやった結果としてそういうふうな効果が全体として出てきている、そういうふうに考えるわけでございます。したがいましてこれも、今おっしゃいましたように、これを「所持」という今回の法改正を行えば、全体に出回る海賊版の数には相当の効果が出てこようというふうに考えております。
  78. 江田五月

    ○江田委員 まあ数字は難しいですから、何ともお答えいただくのも困難だろうかと思いますので、それはいいのですが、今のお話の中で、頒布目的の所持であればもうそれで構成要件が該当とおっしゃるのですが、私は、そう簡単でもないんじゃないかという気がするのですね。それは、文理解釈をちょっと聞いておきたいのですが、百十三条一項の二号ですね。「著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物を情を知つて頒布し、又は頒布目的をもつて所持する行為」で、「頒布目的をもつて所持する」というのは、やはり「情を知つて」でなければいけないのでしょう。「情を知つて」というのは「頒布し」だけにかかるわけではないと思うのですが、いかがですか。
  79. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 おっしゃるとおりでございます。先ほど非常に簡単に申し上げまして誤解を生じ、申しわけございませんでした。「情を知つて」、海賊版であることを知って「頒布目的をもつて所持する」、これが全体の構成要件かと思います。
  80. 江田五月

    ○江田委員 したがって、店に並べてあればそれは頒布目的の所持だ、そこまでは簡単に、合理的に、疑いを入れない程度にだれでも推測できますよね。しかし、それが海賊版であるということをまずは立証しなければならぬし、さらに、海賊版であることを所持しておる者が知っていたということも立証しなければならぬ。午前中の参考人意見の中には立証責任転換というような意見もありましたけれども、これは立法論としてはいろいろあるかもしれませんが、今回の立法で立証責任転換まで考えるというようなことは到底ないのだろうと思いますので、そういう要件はやはり摘発をする側で立証しなければならぬものだと思いますが、この点はいかがですか。
  81. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 その点もおっしゃるとおりだと思います。午前中に参考人の方からもいろいろと説明がございましたけれども、押収といいますか、一たん強制捜査によってレンタル店から持ってきた海賊版と思われるビデオについて、それぞれ海賊版であることの証明をいたしまして、その結果で次の手続を進めるということになろうと思います。ですから、もちろんそういう手順を踏むわけでございますけれども、全体として見れば、これまでのように頒布をしたという証拠のあるものだけについて回収できるのではなくて、店に置いてある、所持されておるもの、もちろん先ほど申しましたように「情を知つて」、「頒布目的をもつて」の所持でございますけれども、そういったものであれば今の「頒布」以上に、広く回収することができる、そういう効果を持っているというふうに申し上げたいと思います。
  82. 江田五月

    ○江田委員 午前中、亀井参考人から、監視をしてあそこは怪しいというのを見つけた、しかし会員でなければ借りられない、しかも会員になるには住所なども身分証明書とか運転免許証とかで確認をされるから、よその者が行ってもすぐに身分がばれてしまってとか、いろいろ苦労して借り出しても返さなくてはいけなくて、そこでこれをダビングしてなど、非常に面倒くさい手続がいろいろとあってなかなか大変なんだ、こういうお話がありましたね。頒布目的の所持ということに構成要件が広がっても、その部分はなかなか容易になるわけではないし、また、確かに捜査の便宜ということは大切ではあるけれども、一方で、捜査の便宜だけに事が流れるというのは危険なことでもあるわけです。したがって、そういう摘発の苦労が何もなしに、どんどん店へ入って罰することができてというのがいいのかというと、これまた別の障害が出てくるわけですし、そういう摘発の苦労が今のような点でそんなに軽減されるわけではないのじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  83. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 その店が海賊版を持っているというところまでの立証過程といいますか探索過程といった点については、おっしゃるように慎重にしなければいけませんから、その点について、まず海賊版があるということを知るというところまでは、今までとそれほど変わらないと思います。ただ、その後の、頒布行為を立証するということと、それからその店に海賊版が所持されているということの立証の仕方は、随分違ってくると思います。そこのところは非常に簡単になるというふうに思っております。
  84. 江田五月

    ○江田委員 繰り返しますが、海賊版であること、これも亀井参考人が言っていましたね、一々もとの物といいますか真正な物を確かめて、それとの対比で海賊版の方もきちっと提示をして、そしてその両方の真贋を鑑定し、どこが違うかということをきちっと明らかにして海賊版であることを証明しなければならぬ、これもなかなか大変な苦労だ、しかも一本一本と。たくさんあれば以下同じということで処理できるかもしれませんが、少なくともこれは一種類ずつ鑑定しなければいけないですね。そういう手間は変わらない。あるいはまた、そういう店を探し出して海賊版であることを知っているということを証明する、さらにそれを頒布目的をもって置いていることの証明、これはある程度の間接的な事実から推論することができるかと思いますが、そうしたことを立証する手間は今までと変わることはなくて、ただ、頒布目的の所持ということでその部分がかなり容易になり、また摘発の範囲も広がる、こういうことだと理解をしたいのですが、いかがですか。
  85. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今回の改正で御提案を申し上げております点は、まさに「頒布する行為」ということに「情を知つて」、「頒布目的をもつて所持する行為」を加えたいということだけでございますので、おっしゃいますように、最初の海賊版であるかどうかという判断については同じ構成要件でございますので、同じように慎重でなければいけないし、同じような手間がかかるというふうに思います。
  86. 江田五月

    ○江田委員 陳列罪にしようと思ったら、箱だけ置いておくとかかばんに詰めて歩くとか通信販売とか、いろいろなことができて、法の網の目をくぐる形態が一般に出てきた、そこで「所持」ということにされた、そういう参考人の説明がありましたが、これはそういう説明でいいですか。  それから、それでは「所持」というものはどういうものとお考えか。具体的な対応が幾つか例示的にあると思いますが、それをお知らせください。
  87. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほども出ておりましたけれども、当初、第一小委員会では、その点につきましては「陳列する等の行為」というふうになっていたわけでございます。これは「等」というのが入っておりますので全体を含んでいると思いますけれども、仮に「陳列」ということだけにいたしますと、先ほども例が出ておりましたように、例えば化粧箱のみを陳列いたしましてカセット本体については陳列をしないというようなもの、それから訪問販売とか通信販売というような、そもそも店に陳列をしない販売方法のもの、こういったものは処罰の対象にならないということになってまいりましたし、またそういった事例が非常に多いということがだんだんわかってまいりました。ビデオ協会の方でも、単に「陳列」では困るというような話も出てまいりまして、それでいろいろな検討をした結果、この「所持」ということになったわけでございます。  そこで、この「所持」とは何かということでございますが、これは構成要件として考える場合には、支配の意思で事実上財物を自己の支配下に置く状況だということでございまして、単に物を把握したりあるいは身につけているということでなくてもよい、社会通念上支配があると考えられる状態であれば足りるというふうに考えられております。  例えばどんなことかということでございますが、レンタル店における状況に即して申し上げますと、例えばレンタル店でカウンター内とかあるいは倉庫に所持保管をする行為、それから、ユーザーに宅配方式でレンタルするために訪問販売をするときに事務所等に保管をする行為、それから、レンタル店に販売をしたり貸与をしたりするときに、いわゆるカバン屋と称する者がおるわけでございますが、そういう運んでいるときの携帯する行為、こういったものが所持に含まれるというふうに考えております。
  88. 江田五月

    ○江田委員 「陳列等」というのでしたら「所持」に変えてよかったと思いますが、「陳列等」だと「等」は何かというので、ちょっと構成要件として刑罰法規の罪刑法定主義に反するような感じがしますね、「等」といいますといかにも漠然として。ですから「所持」の方がはっきりしておりますが、その「所持」でもぎりぎりのボーダーラインというものはあると思うのですが、今おっしゃるようなことはすべて「所持」に当たると思います。例えば海賊版ビデオを売買契約した、それだけで「所持」になりますか。質問をちょっと加えますと、お店がそれをつくった人間と売買契約したわけですよ、販売するために。それだけで「所持」になるか。
  89. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先ほど御説明申しましたが、自己の支配下に事実上財物を置くという、論理的に申しましてそういう定義をしているわけでございます。それで申しますと、今の契約しただけだということはまだ引き渡しを受けていないという意味だとすれば、それはまだ「所持」のうちに入らないというふうに思います。
  90. 江田五月

    ○江田委員 日本の民法では意思主義ですから、契約だけで所有権は移るという解釈になるのでしょうけれども、したがって、所持というのは所有とは違う、しかし、自分で握っているという握特とも違う、管理下に置いているという状態であるということですね。これはちょっと細かなことですが。  ところで、頒布目的で所持するということに構成要件がなると、非常に大きな違いは、頒布する行為という場合には、頒布する行為に供されたものだけが犯罪を組成したものになるわけですね。したがって、判決の手続によって没収できるものというのは非常に限られてしまう。しかし「頒布目的をもって所持する行為」になりますと、所持されているものはすべて犯罪を組成するものになるから、したがって、強制捜査の段階から、押収できる範囲も任意提出などいただかなくてもぐっと広がるし、また没収できる範囲もぐっと広がって、その意味で業者にとっては大打撃、摘発する側にとっては大きな武器になる、どんとまとめて面倒見ようというわけで没収できるということになって、この点は非常に大きな違いが出てくると思いますが、いかがですか。
  91. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 私が先ほどからお答え申し上げております趣旨も大体そういうことに則しておりまして、そのとおりだと思います。
  92. 江田五月

    ○江田委員 こういう法改正で、海賊版をひとつ大いに取り締まるということにしていただきたいと思います。  一方で海賊版というものがこうやって取り締まられていっても、きょうの午前中の質疑でもちょっと伺ったのですが、いろいろな形で人間はいろいろ知恵を出してきますね。また何が出てくるやら予想もつかぬようなことを考えつくということもよくあることでして、そこで、こうした海賊版が出回っていかないということを考える場合に何が必要か。今例えば技術の水準が大変に上がったことによって、海賊版であるから質が悪い、自分はそんな演技をしたんじゃない、そういう演奏をしたんじゃない、海賊版だから随分自分の演技や演奏と違って質の悪いものが出回って、これはけしからぬと、そうとばかり言えないような、非常に質のいい、質がいいというとちょっと言い方が変ですが、そういう海賊版が恐らく今出回っているはずですね。そこで、海賊版という言い方がいいのか悪いのかわからないけれども、いろんな形でのダビングをされたりしたケースでも、本来のもとのマスターテープ、あるいはマスターテープから、権利者がつくる販売用あるいはレンタル用のテープ以外に、いろいろなところでつくられていくわけでして、模倣のものであっても模倣と言えないほど質がよくなってしまうわけですから、そういうものにも権利者権利がかぶさっていって、そしてきちんと著作権料がそこから入っていく、そういう業界秩序というものがきちんとできればそれはそれでいいわけで、海賊版を一方では取り締まり法規で取り締まっていくと同時に、権利者権利がきちんと隅々まで及んでいく、そして著作権料というものがきちんと権利者のところに届いていく、そういう業界秩序なりあるいは著作権、本件の場合ですとビデオテープレコーダーというものをめぐる秩序ができ上がっていくことが大切だというふうに思うのですが、そうした取り締まりとはまた別の観点からのビデオテープレコーダーをめぐる販売、頒布、貸与、こういうものについての秩序というものをどういうふうに形成されようとお考えでしょうか。
  93. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいまの御質問はいわゆる無許諾レンタルのことだと思いますが、現在邦画につきましては日本ビデオ協会が窓口になりまして、加盟各社の頒布権の行使についての事務を代行して、それで個々のレンタル店とレンタルについて許諾契約を結んでいるというようなやり方をとっているわけでございます。これが先ほど御説明がありましたように全国で一万五千店というふうに推定されるわけで、これは一万五千店以上かもしれませんが、一応その程度に推定されるビデオレンタル店のうちで、適法にそういう契約を行ってレンタルを行っている、そういう店が約五千五百だというふうに言っておりまして、したがいまして、残りの一万店あるいはそれ以上の店が現在のところまだ無許諾レンタルということになっているわけでございます。これは、無許諾ということも当然頒布権を侵害する行為でございますので違法なことであるということで、これをぜひ早くレンタルの契約がなされるようにしていくということが非常に大事だということでございます。  そこで、先ほども御説明がありましたように、ビデオ協会としてはいろいろな特別委員会を設けまして、いろいろな方法でこれが促進されるように努力をしているということでございまして、文化庁としてもそうしたことで必要があれば指導もしていくというやり方でこれを促進していきたいというふうに思っているわけでございます。
  94. 江田五月

    ○江田委員 これはなかなか業界の実態がいろいろ複雑で、私なども聞いてはすぐ忘れるので、今も聞いてきたばかりなんですけれども、例えばビデオからビデオへと、テープからテープへという、そういうダビングですとこれはだんだんぼけてくる、悪くなる。しかし、最近では例のカラオケなんかによくあるレーザーディスクですね、レーザーディスクがマスターテープ、テープじゃないわけですけれどもマスターソフトで、そこに入っている映画をビデオテープにダビングをするというような形ですと、もう質としてはそんなに質の落ちるものではない、非常にいいものがどんどんダビングでできてくるというようなことになっているわけですね。そういう実態をひとつよく踏まえてやる必要がある。  あるいはまた「先ほどの亀井参考人お話ですと、これからどんどん協会に加盟の業者がふえてくるだろうというお話ですが、これもいろいろあって、一方で貸しレコードの商業組合というのがありますね。この貸しレコード商業組合は、レコードだけでなくてコンパクトディスクも自分のところで扱っておる。貸しレコードの方はもう既にいろいろな手当てがなされておりますから、貸しレコード商業組合に入らないと安定した適正な商売ができない、そういう業界秩序が一応できて、まだいろいろな問題は御承知のとおりありますけれども、それはもう置いておいていいわけですね、一応できましたからね。そういう業界が一方にあって、そしてビデオレンタルの方は、例えばコンパクトディスクを扱いたい、そうすると、コンパクトディスクは貸しレコード商業組合が取り仕切っておりますから、貸しレコード商業組合の方に入らなければいけない。貸しレコード商業組合は、コンパクトディスクを扱うビデオレンタル店に対しては、ビデオレンタルの協会に加盟をするものでなければ自分のところは自分の商業組合の会員と認めない。そういうようなことをやっていることも一つあって、協会に入る会員の数が最近ぐっとふえてきているという実態もあるやに聞くのですが、そうしたことをひとつ十分調査認識の上、業界の正常な、適正な安定した秩序形成のために文化庁として努力をされるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  95. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ビデオソフトのレンタル店につきましては、貸しレコードにおける日本レコードレンタル商業組合のような組織というものがまだできてないところでございます。先ほどの日本ビデオ協会のレンタル契約を結んでいる店というような形でしかいわば一つのまとまりというものがないというような状態になっておりまして、これは通産省といった関係省庁とも十分連絡をしながら考えていかなければならない問題だと思いますけれども、おっしゃいましたように、そういう秩序をつくっていくためにはどうしてもある種の全体的な把握ができるような形というものが必要だというふうにも思いますので、十分そういった認識を持って関係方面の動向についても見守っていきたいと考えております。
  96. 江田五月

    ○江田委員 一つまた別な話を伺いたいのですが、この百十三条一項二号と百十九条、このビデオ海賊版に対する取り締まり規定の保護法益は何でしょう。
  97. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 改正する部分というのは百十三条の一項二号の方でございますが、いずれにいたしましても「侵害する行為とみなす」場合でございます。これはそれ自体、例えば「侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布する行為」というもの自体は、それはその本物をつくった著作権を持っている人の権利を直接侵すものではないけれども、しかし形としてはその権利を侵害するものと同じであるということから、「みなす」という規定をつくっているわけでございます。したがいまして、この保護法益と申しますとちょっと難しくて確としたことが申せませんけれども、やはり全体として著作権、著作人格権等々の権利そのものだというふうに思います。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  98. 江田五月

    ○江田委員 ちょっと質問が丁寧でなくて申しわけなかったのですが、百十三条は「当該著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為」云々、こうなっているわけですから、これが保護法益だというふうに理解をするのだろうと思うのですが、そうしますとこの規定によって著作者人格権も保護されておる。ビデオソフトというのは映画的著作物だ。映画的著作物というのには著作者人格権というのは一体どこにあるのか。つまり映画のもとにある例えば製作者、まあ製作者は原著作者ですからいいけれども、出演者の著作者人格権というのも、頒布権だけでなくてこの百十三条に言う保護法益に入っておるのかどうかということをちょっと伺いたかったのです。
  99. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 映画の著作者というものにつきましては著作権法第十六条に挙がっておりまして、これは、そのもとになった小説とか脚本とか音楽著作物著作者を除き、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」というふうになっておりまして、これらが著作者である。別に二十九条でございますかに、それらの著作者著作者であるけれども著作権の帰属は原則的には「映画製作者に帰属する」という特別の規定が別にあるわけでございます。そこで、あくまでも著作者は今申し上げました制作、監督等々の方々も入るわけでございますが、映画の著作者人格権は、私が今申し上げましたこの十六条のそれぞれの方々についてそれぞれ認められると考えるわけでございます。  ところで、出演された方とおっしゃいましたけれども実演家につきましては、これは隣接権ということになりますので、隣接権については御存じのように人格権が規定されておりませんので、それは入らないというのがこの解釈だと思います。
  100. 江田五月

    ○江田委員 百十三条は著作隣接権も特別に書いてあるわけなので、今著作者人格権というのを言いましたが、著作隣接権というのもあって、実演家隣接権者ですから、ですから映画的著作物については著作隣接権というのはどうなるのかという問題があって、これはそのほかも全部包含して書いているということで、映画の場合のことを特に頭に入れて書いておるというわけではないのだということなのかもしれませんが、それはいいです。  次に、二十年から三十年という方もちょっと伺っておきたいのですが、この二十年から三十年は、けさの芥川参考人の御意見ですと、例えばアメリカは七十五年、これは日本では望むべくもないかもしれないが、英、仏、オーストラリア、カナダでしたか、ちょっと国名は忘れましたが、それらは五十年、ですから段階的にひとつ三十年ぐらいでというのは当を得ておると考えているわけで、三十年で満足できると思っているわけではない、そういう趣旨の御意見がありましたが、なぜ一体三十年なんですか。三十年でこれはいいのですかという質問だと、どうお答えになりますか。
  101. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 今回提案をいたしましたこの著作隣接権保護期間延長につきましては、御存じのように著作権審議会の第一小委員会という専門家の委員会審議をお願いいたしまして、そこで結論が出たものを法案化しているわけでございます。したがいまして、なぜ三十年にしたのかということにつきましてはこの第一小委員会審議の結果ということでございますが、第一小委員会審議におきましては、保護期間著作権と同じ五十年にするということにつきましては、やはり著作隣接権者というものは著作者著作権そのものではなくて、著作物の公衆への伝達媒体としての役割というものを重視して認められている、著作権に隣接する権利である。文字どおりそういうことになるわけでございまして、そこで著作権と同じ程度保護を認めるということにつきましては、この専門家の委員会の中で消極論が非常に強かったということで、三十年までの延長にするということが適当だという結論が出たわけでございますが、これは、国際的な約束でございますベルヌ条約の基準でも著作権は五十年になっておりますが、ローマ条約では二十年、これはいずれも最低基準でございますけれども、基準的にいいましても、国際的にも、そういうふうに著作権著作隣接権の間に差があるというようなことも一つの認識だというふうに思います。  それから、先生が今お挙げになりました国際的な状況でございますけれども、これも著作権の方につきましてはベルヌ条約同盟の国におきましては五十年というのが国際的な大勢でございますけれども隣接権につきましてはさまざまでございます。  例えば主要国について申し上げますと、西ドイツとかフィンランドとかノルウェーというような国は二十五年、イタリアはレコードについて三十年、実演について二十年というような大変短い国もございますし、フランスとかスウェーデンは五十年、イギリスにつきましてはレコードについてだけ認められておりますが、五十年というような長い方の国もございます。それからアメリカでございますが、アメリカ合衆国は実は著作隣接権制度を認めていない国でございまして、したがって隣接権条約の締約国ではないわけでございます。先ほど七十五年と申しましたのは、あれはレコード著作物として認めておりましてそれで七十五年という、これは著作権の一つとして認めているわけでございます。  そういったことでございまして、そういう国内とか国際的な動向というものも見まして三十年という決め方をしたわけでございますが、先ほどの御意見にもございましたように、実演家団体とかレコード製作者団体は今回の三十年に延長するということにつきましては大変評価をしていただいておりますけれども、将来的にはさらにその延長されることを希望しているということは伺っております。そこで、著作権の第一小委員会審議結果の中にも、今後とも著作物の利用手段の発達とか利用実態の推移とか国際的な状況の変化とか、そういう著作権制度あるいは隣接権制度をめぐる環境の変化というものが起こってきた場合には、そういった動向を踏まえて必要に応じて検討を行うことが必要であるというような、審議の報告の中にわざわざそういう一項をつけ加えておりますので、文化庁といたしましては、そうした御意見を踏まえまして、今後必要に応じてこの著作隣接権保護期間のあり方につきましても検討をしていきたいというように考えております。
  102. 江田五月

    ○江田委員 著作権著作隣接権関係する技術水準というものは、今大変な勢いで進歩をしている、まさにその進歩の真っただ中にある時期ですね。しかも国際的な動向というものは、これは私はそう知りませんけれども、まだまだ広い幅でいろいろな国々があってそれが今まだ動いている状況じゃないか。そういう技術進歩あるいは国際的な流れというものが動いている状況ですので、二十年を三十年に今回延ばすこと自体は各関係者とも皆歓迎をするところであることは間違いないわけですが、しかしこれで十分であるかというと、今後の推移を見ておかないとまた不十分ということにすぐなるかもしれない。そこで、今の小委員会の報告にもあったということですけれども、やはり事態の推移をよく見きわめながら、我が国がこうした著作権著作隣接権保護について国際的に見劣りのするようなことにならないように、別に世界を気にしなくていいといえばしなくていいのかもしらぬけれども、しかし、その世界の文化水準にきちんと合った、いや本当を言えばそれよりもっとずっと上の文化水準にいかなければならぬ国ですから、ひとつその点は間違いない対応をお願いしたいと思うのです。  さらに、今後の隣接権条約への加入の問題、これももう随分長い間の課題でして、もう本当に解決をしなければならぬことであります。諸団体意見調整、利害の調整といいますが、きょうの午前中の意見陳述でも、とにかく踏み出せばそれなりに利害の調整もできてくる、そういうお話もありましたし、やはりある時期で強いリーダーシップが期待される部門だろうと思います。  また、私的録音・録画の機器やテープに賦課金を課すというような形での報酬請求権の問題ですね。これも随分長き議論になっておりますし、また書物の関係の出版者の保護、こうしたことももう議論になって久しいわけで、こういう時期ですので、ひとつこの著作権というもの、我が国にとってこれから非常に重要な背骨の一つになる権利思想なので、文部大臣、これは大臣の強いリーダーシップが期待をされている部門じゃないだろうかと私は思います。  どうも嫌みを言うようですが、最近文部省は違うところで何かリーダーシップを発揮されようとしておるようで気にかかるのです。それもありますが、こういう文化というところで本当にしっかりしたリーダーシップを大いに発揮をして、国際的な文化水準にそれこそ追いつき追い越せということで頑張ってほしいと思いますが、最後に大臣の意気込みを聞かせていただいて、質問を終わります。
  103. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 おっしゃいますように著作権の問題は、先ほどの御質疑にもありましたように著作権思想普及も含めまして努力をしてまいりますし、また、これは知的創作活動の促進に資するものでございますから、今おっしゃいますように隣接権条約の加入につきましても、それぞれ外国の著作権の機関、それから我が国の機関、その間の調整その他、円満な秩序が保たれるという面を見きわめましたら速やかに加入をすべきである、このように考えておりますし、先生がお触れになりましたこれからの三点も、まさに第八、第九、第十小委員会で今検討をいただいているところでございます。出版物の問題ですとかコンピューター創作物の関係あるいは私的録音・録画関係、これもおまとめを得つつ精力的に進めてまいりたい、このように考えておりまして、御質疑の大要は、御鞭撻と受け取りましてしっかり進めてまいりたいと思います。
  104. 江田五月

    ○江田委員 終わります。
  105. 中村靖

    中村委員長 有島重武君。
  106. 有島重武

    ○有島委員 著作権法の一部を改正する法律案審査ということで、二、三の関連事項に触れてみたいと思います。  この法律は文化庁の所管ということでございますね。そこで、国の文化行政全般という一つの大枠ないしはもっと大きな枠についてただしておきたいと思うのです。  この前、教育につきまして文部大臣にいろいろ伺ったが、文部省の所管に限らず国として教育をめぐってどれほどのお金が動いているのだろうか、こういうことを申し上げた。国と地方でどのくらい、あるいはそれ以外にどのくらい、GNPに占める割合はどのくらいになっておるかということで、大体大きく言えばGNPの一〇%、小さく見ても七、八%までいっているんじゃなかろうか、そういう大きな渦の中で今文部省はその柱となって仕事をしておる、こういうような位置づけをさせていただいたわけです。たまたま今度は文化庁が中心でございますから、最初に、文化庁の所管に限らず国として文化にかかわる行政の範囲において、どれだけのお金が動いているか。いや、その前に、そういう面について文化庁として捕捉しておるかどうか。
  107. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 大変難しい御質問でございまして、文化というものについての定義はそもそもいろいろなものがございまして、人間が行って形成をしてきた成果の全体だというようなことを意味するというふうにおっしゃっている方もいらっしゃるくらいでございますので、文化というものの定義の仕方によって非常にさまざまだというふうに思います。  それで、文化庁が行政対象にしておりますのは文部省設置法に定義をされておりまして、芸術、国民娯楽、文化財あるいは出版、著作権並びにこれらに関する国民的生活向上のための活動というようなこととされておりまして、この範囲につきまして主に国の行政事務の任務を持っているわけでございます。ですから、文化の定義によっていろいろになりますので、それが一元的でもございませんので、御質問の国の文化行政にかかる全体というのが実際どのぐらいかということは、その定義によっていろいろ限定等が違ってきますので大変把握が困難でございまして、そのような集計もなされていないというのが実情でございます。  ただ、一番関連のあります外務省の文化交流あるいは外務省所管の国際交流基金というのがそれぞれ約百億程度ずつございますが、こういったものが文化庁が所管しております三百七十八億という予算、それに加わって少なくとも存在しておるということは申せますけれども、それ以上の集計というものは上がっていないのが現状でございます。
  108. 有島重武

    ○有島委員 それほど難しい高邁な議論ということで、というよりも、これは文化庁にそれを伺うのはちょっと無理かもしれないのですよ。これはまた後で大臣に伺うことにいたしましょう。  それでは文化庁に、今回の著作権法というものをめぐって、今のいろいろなプリントの問題がある、これは文書のプリントもあればビデオのプリントもあるが、現在どのぐらいのお金が、金額がうごめいておるのか。そこにこれから一つの法的な規制を入れていくわけですね。その向こう側にはどのぐらいのお金が動いておるのか、そのぐらいは捕捉していらっしゃると思うが、それも捕捉はしていらっしゃらないか。
  109. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これも、著作権あるいは著作隣接権全体にわたっての我が国のそれにかかっている金額はどのくらいかということは、まことに申しわけありませんけれども全体に把握はしておりません。  ただ、音楽著作権につきまして日本音楽著作権協会、JASRACが取り扱っております著作権料、著作権利用料につきましては三百五十三億というのが六十二年度の数字でございます。ほかに二つの、文芸とそれから放送作家に関する管理団体がございまして、これについても金額はわかっておりますが、それはそれぞれ二、三億の話でございますので、大きな三つの管理団体が掌握といいますか取り扱っております金額は大体三百六十億程度ということでございます。
  110. 有島重武

    ○有島委員 文部大臣、この前の委員会で教育費について、教育について動いているお金というのは、まあ大ざっぱにはこのくらいだろうということはあるけれども、そういったことをちゃんと捕捉しているお役所はどこかにあるのだろうか、別にないようだ、そうすると、文部省がやはりそういった捕捉をなすった方がいいんじゃないですか、そういう必要があるんじゃないか、そういう話だったが、それで大臣の御賛同を得たような気がしておるのだけれども、ではその後何らか作業にお入りになったか、あるいはお入りになるおつもりがあるのか、どうでしょうか。
  111. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 有島委員の過日の御質疑でそのようなことがございまして、教育関係で動く費用はどのくらいか、この御質問がありまして、私が四兆五千七百六十六億、こう申し上げましたが、それは文部省予算であって、全体でどのくらいなものか把握し、あるいは把握する機関がなければそれを把握する必要があるのではないか、こういう御質疑があったことは記憶をいたしております。  その後、申しわけございませんけれども、具体にその作業に入るまでに至っておりませんで申しわけないのでございますが、記憶は十分いたしておりますので、今後勉強させていただきます。
  112. 有島重武

    ○有島委員 記憶をしていただいたということは光栄に思わなければならないけれども、私は何か作業に入っていただけるかな、こういうわけなんですよね。ここで幾ら議論しても、今のその程度だったら余り議論のしがいもないな、こう思うわけなんで、またそっちは機会を改めて聞きますからね。それは教育改革ということもあるので、その範囲で考えても、通産省の関係でも外務省の関係でもいろいろやっているわけだし、それが個々ばらばらで今まではよかったかもしれないけれども、今後はそれらを全部総合して、インテグレートして進めていかなければならない。その総大将でいらっしゃるというお立場を文部大臣は持っていらっしゃるのだから、それを捕捉するということはどうしても必要だ、私はそう訴えたいわけなんですよ。それだから申し上げておる。  ところで、今や文化の問題だからこれはまた厄介ですな。だから、文化庁に与えられておるいわゆる文化、その範囲のことについては今文化庁が熱心に、本当によくやってくださっていると思うのですよ。だけれども、国で行うべき文化行政というものについて、これは文化庁に限らずいろいろなところでいろいろなことをやる。それをある程度捕捉していく。どの程度まで捕捉していくかというようなことについては、これはひとつ考えていかなければならない時期に来ているんじゃなかろうか。  と申しますのも、大臣御承知のように、国民一般の感覚といたしまして、これからの日本というものは、経済生活の重要性ということはもちろん、これはずっと大切でございますけれども、従来の国民生活とひとつ質的に変わって、文化面、教育面、いわゆるソフトの面というものも重んじていかなければならないんじゃないかということは国民みんなが感じているし、これはお金の使い方にどんどんあらわれているわけですね。そんなことはもう銀行に行って聞けばある程度の統計を持っておられる、国民生活局へ行っても大体わかってくるような問題でございます。そういったような現状認識といいますか、これからの見通しといいますか、そういった上に立って、教育とか文化といえども雲の上にあるわけじゃないので、そこに何らかの規制をしていく、奨励もしていく、振興もしていくということになれば、それらをやはり名目的にも捕捉する。そして、どのくらいのお金がどういうふうに流れておるかということも捕捉しておくべきじゃないのか。  今の文化庁の組織としては、これは文部省設置法に規定されているだけでございますから、経済企画庁だとか国土庁だとかその他の、そういうような庁とは違うわけなんで、特にほかのところまでいろいろと言っていくわけにはいかないというふうになっている。だから、もし文化庁にそれを命ずるならば文部省設置法を変えなければならない。あるいは一部変えてもいいでしょう、あるいはそれは別に文化庁なんかに頼むべきではない、文部省のメンバーでもってやりましょう、あるいはそんなことはとても文部省にもできるものではないから、これはやはり内閣の中に何かの適切なそういった機関を置かなければならないんじゃないだろうか。そういうようなことについてこの辺でもって考えなければいけないんじゃないだろうか、こう私は思うわけなんですよ。大臣の御所見はいかがでしょうか。
  113. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 有島委員のおっしゃる意味はよくわかります。それが組織上すべて文部省で把握できる権限があるかどうかは別といたしまして、おっしゃる一つ一つをとりましてもすべてにかかわってまいります。著作権法を御審議いただくについて冒頭の御質疑でございますから、例えば著作権法一つとりましても、先ほどから御質疑がありましたように、これは文化創造の基盤を培う上で非常に重要だ。じゃあ文化国家としてどこまでが文化の範囲か、こうなりますと、まさに教育基本法の前文には個性豊かな文化国家を培う、こういうことでありますから、これは教育全体を含めて文化に資する、こういうことにも相なりましょうし、また、具体に今進めようとしておる教育改革の生涯学習という項目一つだけとりましても、これは各省庁にわたる一つのものでございまして、そういう意味では、その調査上の権限あるなしにかかわらず、先生おっしゃいますように、教育に携わる者としましては全体像を把握することは確かに大切なことである、それはよくわかりますので、そういう意味で、いつまでに全体の、金額だけを把握することが先生の御質問ではないと思いますので、金額も含めまして自分の所掌範囲の及ぶ範囲はどの程度大きいものであるか、これはみずから調べ、体得する、これは十分必要なことだと存じます。折に触れまして勉強してみます。
  114. 有島重武

    ○有島委員 これは総理大臣とひとつ相談してくださいよ、本当に。お願いしますよ。  ところで文化庁の年間予算はお幾らですか。
  115. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 昭和六十三年度の予算が三百七十八億でございます。
  116. 有島重武

    ○有島委員 国家予算の何分の一くらいになりますか。それは千分の一か、万分の一か、どのけたですかね。
  117. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 〇・〇八%でありますので、千分の〇・八ということになりましょうか。
  118. 有島重武

    ○有島委員 大臣、お聞きのとおり一万分の八というところですか。さっき大臣、これから著作権の問題でも奮発して頑張っていきます、こうおっしゃった。今、時代の変わり目の中でもって、文化庁も傘下におさめた文部大臣でいらっしゃるわけですから、ここは文教委員会、こういう名前であるわけですよね。それはフランスの行き方と日本の行き方は違う。それからアメリカの文化行政の行き方と日本の文化行政の行き方は違います。だから、いろいろ理屈を言えば限りなくあるし、それから難しく言えば、文化の定義とは何ぞやみたいな、そんなことまでなっちゃうわけなんです。国の文化庁予算、文化予算というのかな、万分の八というのは、これはいつまでも続けていっていいというわけではないですよ。これを万分の九にして、あるいは万分の九・五になったとか、ふえましたとかいうこと、それは文化庁のお役人さんたちの一生懸命なさったお手柄としていいでしょう。しかし、私は、今は時代が大きく変わっておるのですから、一万分の八だったけたをせめて千分の一けた台に、百分の一けた台までは持っていこうというような、一つの大きな枠の変化といいますか質的な変化、それが必要なときなんじゃないかと思うが、いかがでしょうか、大臣。
  119. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 御趣旨はよくわかります。ただ、先生わざと二つに分けてお聞きになりましたわけで、当初は文化全体を包含してどのくらいなのか、二度目には文化庁予算は幾らなのか、こういうことでございました。したがって、文化庁予算が文化予算の全部でないということは重々御存じのとおりでございますが、文化庁予算三百七十八億というのは御存じのように、申し上げるまでもございませんが、史跡等の整備に百十二億円、それから第二国立劇場で十五億円程度、あとは芸術活動の特別推進に二億ちょっと、そういうようなものが一年間のすべてであるというようなことであります。したがって、これが文化庁予算ではございますが、文化活動全部の予算でないことはもちろんでございます。この点について、文化人を育てるという点では、先ほどもありましたように、少なくともこの著作権の思想の普及そのものにつきましても各小中高の教科の中でいろいろ入ってくるものでございますし、またそれぞれの分野において文化的な素質を伸ばす教育というものもございますから、そういうものを含めてもちろんお考えでございましょうから、これから六十四年度予算時期には、もちろん文化庁予算も頑張りますけれども、文化を伸ばす全体の面を含めて先生おっしゃっておると思いますので、それを含めて頑張ってまいるつもりでございます。
  120. 有島重武

    ○有島委員 今大臣のおっしゃった、六十四年度予算にどういうふうに反映していって、文化庁の予算としてはそれは変化はなかったけれども、全体としての文化にかかわるシェアというものが国家予算の中でどういうふうになっていったか、これは大切な問題だと思うのですね。ところが今は、まだ計量的にならぬわけですよ。観念的なわけだ。観念的な話というのは大蔵省が全然相手にしないわけです。一文化庁三百億には違いないけれども、この三百億というのはこれだけの影響力を持った三百億円なんだよということが、これが一つの説得力になるわけですよ。その上でもって国全体としてはこうなんだよ、ここら辺まで、大枠としてここまで持ってこなかったら日本の国は物笑いじゃないか、そういうことが議論されるようになりたいわけだ。僕たちもそういった議論をしたいわけだけれども、僕たちの調査能力じゃちょっとそこまでいかぬところもあるわけです。我々がやっても余り権威がない面もあるわけだ。だから、我々もそういった計量はしますけれども、国の機関としてもそういったことをやってもらいたい。六十四年には間に合わなかったかもしれないけれども、少なくとも六十四年からはそういう全般的な調査を開始するというお金がつく、それでもいいですよ。そうしないと、このままでもっていいというふうには大臣も思っていらっしゃらないと思うのですが、いかがでしょうか。
  121. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 おっしゃる点は一つの御鞭撻でありまして、確かにこれからは、思想としても先生のお言葉はよくわかります。もっと具体には、六十四年度対大蔵省折衝にも大変威力を発揮する一つの論争の基盤になると思いますので、先ほども、これからも予算その他で頑張りますと申し上げたその基礎根拠として持っておくこと、そういうものとしてもこれは大切だろうと思いますので、おっしゃるように、その点はできるだけ全体の水準を上げるために効果的に使える、使えると言っては失礼かもしれませんが、効果的あらしめるようによくその面は私自身把握して臨みたい、このように考えております。
  122. 有島重武

    ○有島委員 次に行きます。  国の教育とか文化とかいろいろ多岐にわたるわけでございますけれども、その一番の基本のところといいますと、どうも基本もいろいろ考え方があるけれども、言語の問題、言葉の問題、日本語の問題、これが非常に大切である。今は、文化といってもその土台に言語ということがあるのです。それから言語教育ということがあって、その言語を通じてまたいろいろなことが教育されていくということになるわけですね。その言語問題、そのまた基礎に日本語にかかわる研究、この基礎に大辞典の編さんということがあるのじゃないだろうか、そういうふうに私は考えているわけです。それで大辞典の編さんをお願いしているわけだが、大臣、日本語の重要性ないしは大辞典の編さんの必要性ということについて御見解があれば承りたい。
  123. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 委員から国語大辞典編さんについて言及をいただきまして、大変ありがたいことでございます。おっしゃいますように、国語の変化・発展の跡をたどるということで国語大辞典編集の意義そのものもございますけれども、我が国の歴史の流れ、それを見直すという点でも大変意義があると思いまして、今鋭意進めておるところでございます。  昭和五十二年から予算をつけましてこの作業に入っておるわけでございます。各年代を五区分いたしまして、相当膨大な資料になると思いますが、これを今やっておるところでございまして、まだ完成までには大分かかると思いますけれども、これに着手しております人員も、実は私も聞いてみて、微々たる人員でやっておるようでございまして、これから予算を逐次充実させながら、これに従事する人の数も逐次ふえてはきておりますけれども、この国語大辞典の編さんが少しでも早く完成にこぎつけられますように努力をしておるところでございますし、これからも努力してまいりたい、このように考えます。
  124. 有島重武

    ○有島委員 これにはお金はどのくらいついていますか。  それから、今もちょっとお話があったけれども、専従しているといいますか、専らそれに専門的にやっておられるその人員がどのくらいいらっしゃるのか。
  125. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 国語研究所で行っております国語大辞典の編集事業でございますが、六十三年度の予算は前年度に比べまして三百万円増の千二百十六万円という状況でございます。これは具体的な、これまでやっております国定読本の用例採集の範囲を文芸作品にも広げる、そういう趣旨で増額したものでございます。  それから、六十三年度には国語辞典を編集するための組織といたしまして国語辞典編集室というのも設けまして、そういった専任の体制を整えたというところでございます。
  126. 有島重武

    ○有島委員 大臣、いかがでしょうか。文化庁の予算が三百億というのもあるけれども、これは千二百万円という予算ですね。これも立派なものだ、本当にとうといお金だと思いますよ。だけれども、やはりよそから見たら出し惜しみというふうに見えるのじゃないですか。どこから聞いても、外国の人にもちょっとお話しできないくらい、何かけたが違っているのじゃないかと思うのじゃないですか。  これは、金さえふやせばどうにかなるという仕事じゃないことは私もわかります。それから順序を立ててやっていらっしゃることも伺っています。報告も受けていますけれども、この第一期、第二期、第三期、そういう前に、上代、中古、中世、近世、現代、こんなふうに五つくらいに分けて、現代から始まって、これもやりやすいところから手をつけていきましょうということで、これはいいですが、もう現代というのに取りかかってから今日まで数年を経ているわけです。ですから、最初のときには手探りでやっていることが非常に多かったわけでしょうが、現在は、どんなふうなめどで、どういうふうにやろうか、後はこの方式でもって押せばいい、こういう目安は大体ついていると私は思います。そうなれば、やはりそこに専門家の人に何人かついてもらって、そうすれば若い方々あるいは若い学者といいますか、あるいは学生さんといいますか、そういう方々が、これだけ給料をもらわなかったらおれは働かぬというのではなしに、こういった事業があったらやらせていただきたいというような人だってたくさんいると思うのですね。それは野方図にできないから監督はきちんとしていかなければなりませんが、そういったところに今はもう入っておると思いますけれども、その点はどうですか。
  127. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 先生に御理解いただいているようなそういう方向であるわけでございます。現在のところまでの、およそ五十二年からやってきておりますこの編さん事業につきまして、いわば全体とすれば準備段階にあるわけでございまして、それでこれまで、これは微々たる進行だとおしかりも受けているわけでございますけれども、まあ徐々でございますが、順調に進めてきているわけでございます。  それで、これからのことでございますけれども、全体として、こういう大きな事業について編集をするということは、おっしゃいますように当然我が国の全体の研究者の御協力を得ながら進めなければならないということでございますので、これは六十三年度予算でも、ほんのわずかでございますけれども、そういった意味の外部の研究者の協力を得るための措置もしておりますが、今後本格的な編集の段階に入っていきますときには、これをもっと拡大して、いわば全国的な研究者のネットワークをつくって進めていかなければいけない問題だということで、国語研究所もそのようなつもりで事業を進めていくということでございます。
  128. 有島重武

    ○有島委員 すると、大臣もよくよく御承知だと思うのですけれども、これは現代の中でも昔の国定教科書というようなあたりからどんどん言葉が出てくる。これからも新聞だとか雑誌だとか、これはなかなか大変ではありますけれども、果てしなくあるわけですね。毎日毎日言葉というのは複雑になっておるわけだ。後でまた聞くけれども、「海賊版」なんという言葉は、昔は国会じゃ使わなかったわけだな。こういうものも出てきているわけですよ。いろいろ言葉はふえておる。  だけれども、そういった点からいえば簡単なのは上代なんですね。上代、中古というと、これは文献が残っているのは少ないんだから。古事記の研究とか万葉の研究とか、こんなのはたくさん本が出てしまっているわけですからね。これは整理すればいいというくらいでありますね。用語の例といったって、こんなに本が多くあれば、やろうとすればこれはあと一押しですね。  それから、一番困るのは中世、特に江戸時代でしょうね。これをいつから手をつけるんですかと聞きたいんだけれども、文化庁に答えられないわけなんですよね。なぜ手をつけないのですかと言いますと、またごちょごちょ言いますよ。これももっとお金をつけて「やれ」と言えばやるのですよ。ただ、このやり方も、実は本当に難しいに決まっている。それはいろんな学者がいるかもしれないだろうけれども、近松門左衛門ならその人の使った用語、その人の使った言葉というのが一つの学問体系ぐらいになるみたいらしいですよ。西鶴は西鶴、近松は近松、十返舎一九は十返舎一九、それぞれ一つの辞書ができるようですよ。それでもいいじゃないかと言うんだ。それだから国にお願いしたんだから。もしもそういうようなものを国が直接やらないとなれば、どこどこの大学に何年計画でもってお願いして、委託研究でこれだけのものをつくってくださいと言ったっていいですね。それが必ずしも国の権威を持った辞書の一部になるかどうかということはまた別としても、そういうようなことはもう今から始めなければならないのじゃないですか。これは教育予算でつくのか、文化予算でつくのか、何省から出るのか知りませんけれども、どこから出るお金でもいいから、これは国の方でもって促進して始めなければいけないんじゃないだろうか。文化庁がどうしてもやらなければならないものじゃないかもしれないので、ほかのところで「やるぞ」と言えば、文化庁は仕事をとられては大変だから、慌てて「うちでやります」と言うかもしれない。とにかく今から始めなければならないんじゃないでしょうかね。  大辞典の編さんとしてスタートなさった、これは本当に見上げたものです。それから十数年を経てですか、今度は一人の専任の方ができた。今までなかったのかということでびっくりするわけだけれども、これはゼロから一なんだから大したもんだ。これはもう本当にそれこそアドバルーンを上げて宣伝してもいいくらいなんだけれども、文化の、教育の基礎の基礎の基礎だから、非常に地味な話だからだれも褒めてはくれないかもしれないけれども、それこそ大したものだと思いますよ。ただ、それでいいかといったら、とんでもなくおくれているのではないだろうか。百年かかって何とかと新聞に出たことがあるけれども、百年でできるのですかねと、こう私は聞きたいくらいなんですよ。このテンポじゃできないですよ。百年でもってやろうとするならば、今からちゃんと江戸時代に手をつけなければならない、そう思うのです。頑張ってくれませんか、大臣。
  129. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 おっしゃる意味も激励と受け取らせていただきますけれども、五十二年から本年まで十年かかっております。ようやく今年にこの国語辞典の編さん室を設置したわけでございまして、これまで準備段階が随分かかったと言われればそうでございますけれども、おっしゃるように、上代から今日までの、いろいろな実験試行も行い、これから方向づけをして、そして、先ほど政府委員からお答えしましたように、専任二名を含めまして、それと民間の方々の御協力も、ようやく今まで八名なのをプラス十名、十八名という形でこれからそれぞれ手分けして行っていける出発点についた、こういうことでございますので、おっしゃいますように大変な作業でございましょうけれども、できるだけ急がせたいと思います。また、私も言葉の上で、余り知識はございませんけれども、今おっしゃった上代、奈良時代、八〇〇年ごろまでの中で、例えば文部省という言葉はどの辺にあるんだろう、こう思いましたら、七五〇年代に式部省をいっとき文部省としたという時期があった、そういう流れを見るだけでも大変参考になることも多いわけでございますので、上代から現代まで、これは国民としてもできるだけ早くつくり上げてもらいたいものだと、これは多くの方が待っていただくことでございましょうから、号令したから一挙にできるということではございませんけれども、それぞれの精進を一層高めていただくように、私も期待し、督励をいたしたい、こう思います。よろしくお願いいたします。
  130. 有島重武

    ○有島委員 現代が終わったならば中世に入ろうなんというのは、現代というのはまだ終わらないんだから、どんどんふえてしまうのですね。だから、気を確かにしてやらないと、何かお金が足りないから言いわけを言った、その言いわけを言ったのがあたかも真理のごとく通用してしまって、それに縛られてしまうみたいなことがあったら、やはり後代のお笑いぐさだと思うのですね。ひとつ、本当に頑張っていただきたいとお願いをいたします。  それで、著作権法の中に入るわけでございますけれども、今回の法律改正の要点というのも、隣接権保護期間延長する、これが一つ。二つ目は、いわゆる海賊版に関する規定でございますね。どうもそういうことで、実は数年間にわたっていろいろな方からいろいろなお話を伺って、それでもって文化庁の方にもお願いに行ったりしたこともあるわけで、ここまでまとめてくださったことについて、この点お礼を申し上げたいような、敬意を表したいような、そういった立場でいるのですが、だから、ほいほいでいいというわけにもいかないから、二、三点聞きたい。  初めに、さっきから海賊版海賊版というこの言葉だけれども、これは正式な法律用語といいますか、何か用語になっておるのですか。いつからこういうふうな言葉になったのか、その定義みたいなものはきちんとなっておるのかどうか。
  131. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 俗に普通に海賊版と申しておりますのは、法律的に申し上げますと、著作権法の百十三条の第一項第二号のところに「著作者人格権、著作権、出版権又は著作隣接権を侵害する行為によって作成された物」、これが正しいといいますか正確な、厳密な法律用語でございます。  それで、海賊版というのはなぜ海賊版となってきたかというのも、私も余りよくわかりませんけれども、先ほど参考人の方の一人がおっしゃっておりましたように、もとは英語でございまして、パイレーテッドエディションという言葉を英語国ではそういうふうに使っておるようでございまして、これを訳して海賊版というふうに一般には使っている。だから、このパイレーテッドエディションというのは一般的に外国で使われておる用語だというふうに理解しております。
  132. 有島重武

    ○有島委員 私たちが学生のときに、ちょうど戦時中であったわけですけれども、やはり海賊版というか、これはみんな本のことでしたね。別な名前もありましたけれども、これはさる国の地名だからここでは言わない方がいいかな。それでこういう海賊版を何とか版というふうに言っていたな。数学なんかのも、少し印刷が薄墨色みたいになっておりましたが、丸善では売ってないのだけれども、割と安く手に入った、そういうのがありました。  それで、きょうはビデオの話でございますけれども、現にこれもみんなゼロックスなのですね。そこらじゅうゼロックスに僕らは埋没してしまっているくらい大変なんだが、数年前著作権法の一部改正法案が当委員会にかかった、そのときの附帯決議がございましたね。   複写複製問題については、文献複写に関する著作権の集中的処理体制の確立に努めるとともに、出版者を保護するため出版物の版面の利用に関する出版者の権利の創設について検討を行うこと。 こういったわけです。この附帯決議というのは重んじてくださるということに当時なっていたわけだけれども、記憶がありますという程度か、重んじていただいておるのか、大臣どうですか。
  133. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 ただいまの御質問は、文献複写に関する出版者の権利といいますか、そういうものと、その権利の集中的な処理の問題でございます。  まず、出版者の権利に関する点の進捗状況でございますけれども著作権審議会に第八小委員会というのを設けまして、これは昭和六十年九月から審議をしておりまして、それ以来今日まで二十回審議を行いまして、我が国の出版の実態でありますとか、現行の法制下におきます出版者の地位、それから諸外国の法制というようなものを把握した上で、現在、出版者の法的保護の必要性とその保護内容につきまして、最終的なといいますか、論理的には総括的な段階にまで来ているわけでございます。  それで、この中で、出版物の複写複製の実態とか出版者に及ぼしております経済的な影響の状況でありますとか、そういうことにつきまして六十三年、つい先ごろの三月に、日本書籍出版協会等の四団体が「企業・大学等における出版物からの複写実態調査」という調査を行いまして、その結果を出していただいたものでございますので、現在それをもとにして検討を一層詰めているというようなところでございます。  それで、この取りまとめにつきましてもだんだんにそういう段階に来ているわけでございますけれども、できれば本年中にこの第八小委員会の何らかのまとめがなされるようにということで、私どもとしては期待をしているところでございます。  もう一つの文献複写に関する著作権の集中的処理機構の問題でございますが、これも五十五年十一月にそういった集中的処理に関する調査研究協力者会議というのを設けまして、五十九年にその結果が出たわけでございます。その結果に基づきまして、出版社の団体でございます社団法人日本書籍出版協会というような団体が、ほかの出版関係団体とともに集中的権利処理機構実行委員会というのをつくりまして、具体的な構想をいろいろと練っているわけでございますが、それとともに学協会の団体の方でいろいろな出版物を出すものでございますので、その学協会の団体でございます日本工学会という団体が、その立場において、著作権問題検討委員会というのをつくって、またこれも検討しているわけでございます。  一方、今度は著作権の利用者側の方でございますが、これも経済団体連合会等におきましてそういった特別の会をつくったり、あるいは大学の図書館におきましても全体の特別委員会を設けるというようなことで、言ってみれば、権利者側それから利用者側両方において、どういう集中的処理機構を設けていったらいいか、その内容についての問題点はどうかというようなかなり具体的な検討が進められてきている、その辺がかなり動いてきているというような状況に現在あるわけでございます。  私どもとしても、こういった処理の仕方というのは大変結構なことだと思っておりますので、権利者、利用者の両方の話し合いが円満に早期に形成されるように、必要があれば指導していきたいというふうに考えているところでございます。
  134. 有島重武

    ○有島委員 私の方にも、社団法人日本書籍出版協会、社団法人日本雑誌協会、社団法人自然科学書協会、それから社団法人出版梓会、そこからの実態調査という資料をいただいています。ここには数量が出ているのだけれども、細かくも書いてある。目の子で言って企業、大学などで一年間に約十四億枚の複写をしておる。その次には、企業、大学などで年間に三千六百八十三万冊の出版物から複写をしておる。それから、企業、大学等で複写された国内発行の出版物は年間三百四十九億円。そんなことが書いてありますね。これは企業、大学なんかで捕捉しやすいところでやったということでしょう。  文化庁の方では別に何かお調べがありますか。大体こんなところだろうと思っていらっしゃるか、あるいはいや、もっとあると思っていらっしゃるか。これはそちらにも行っているのだろうと思うのだが、この調査に対しての評価がありますか。
  135. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 この調査は、先ほど申しました出版者の権利に関する検討とかあるいは複写問題に関しての集中的処理機構の創設とか、そういう問題が進行しておる過程の中で、実際に出版物からの複写の実態というのは一体どうなっているのだろうかというのがわからないともっと具体的な話ができないという事情になってまいりまして、それでこの出版者四団体が行ったというものでございます。したがって、これ以外の私ども文化庁で独自でやったものというのは別にないわけでございます。したがいまして、この出版者四団体が行いました複写実態調査については、私どももその実施のときからかなりいろいろ教えていただいておりまして、この調査についてはかなり客観性を持っていると思います。  ただ、大学それから企業についての複写の実態というのがほとんど大多数でございますので、今、複写に利用された出版物の冊数というのが例えば三千七百万冊ということを言っておりますが、この全部が複写についての権利を侵している、権利侵害のものであるというわけではないわけでございます。例えば大学なども含まれておりますので、大学における図書館の複製、そういうものは著作権法上適法に行われているものもあります。それから学校等の教育機関における複製というのにも適法なものがございますので、この全部が違法なもの、権利者権利を侵害している複写であるとは言い切れないものでございます。しかし、そういった侵害しているものが非常に大量に行われていて、そして出版者の出版活動あるいは出版者の権利がかなり影響を受けているということは推測できるということで、今行われておるこの二つの検討についてはこの調査結果は非常に有用なものであると考えております。
  136. 有島重武

    ○有島委員 さっき六十四年度という話が出ましたけれども、来年ぐらいには何か対応策がまとまって出そうですか。
  137. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは今二つの動きがあるわけでございますが、出版者の権利に関する著作権審議会の動きにつきましては、第八小委員会まとめの段階に来ているということを先ほど申し上げました。そして、これも小委員会の中の問題でございますので私どもから明確に申し上げることはできませんけれども、本年中に何らかのまとめができればと事務的には期待をしているわけでございます。それから、集中的処理機構の問題につきましては、これは関係者の話し合いの段階に入っているもので、完全にそういう関係者が主体性を持ってやっているものでございますので、私どもとしてはそれを促進するということしかできません。これは自主的な話し合いを見ながら必要があれば指導して、早くまとめるようにしていきたい。  この二つがそろって複写問題の解決になっていくわけでございますので、ぜひ早くそういった解決の姿が出てまいりますように期待をしているということでございます。
  138. 有島重武

    ○有島委員 大臣、お役所としては今のお話なんだろうけれども、だから、来年ぐらいにはまとめていきたい、これは政治家が言ってもいいことだから、お役所が余り言っては越権になるでしょうが、大臣のお気持ちをひとつ表明しておいていただきたいというのが一つ。  それから、もう一つこの種のことを、さっきから話題になっております著作権思想といいますか、これは子供たちに対してもみんな徹底していかなければならないということでございますけれども、複写をすることによって大いに利益を受けておる大会社があります。文部省では何を使っていらっしゃるのか、富士ゼロックスを使っているのか、あるいはリコーを使っているか、キヤノンを使っているか、これが御三家というのですが、それ以下、三田とか幾つかある。こういうような会社は、そこはそんなことじゃなくて、こっちはもうければいいんだ、その原理でやっているのでしょう。また、それを使っている方も、そんな著作権のことまで考えてやっていないと思うのですね。ですからこれは、いろいろ審議会をやって新しい措置をつくる、考案してくれることになるのだが、大臣、それはそれでお願いしますが、そういうものも、できるだけそういった業者の人たち意見も聞いて、ひたすらもうけるという原理のほかに積極的に文化的な貢献もしていくのだという企業に、これは非常に理想論かもしれないけれども、その方向に少しでも仲間に入れて、相談の中に入れてやっていくということが大切なのじゃなかろうかと私は思うのですけれども、これは文化庁じゃなくて大臣に、御見解があれば承っておきたい。
  139. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 これも、先ほどから伺っておりました文教委員会の附帯決議の中にもそれが宿題として残されておると記憶いたしております。出版物につきましても政府委員からお答えしたとおりでございますし、今のそういうコピー機器その他の生産販売会社がもう少し文化的に貢献してもいいのではないか、これは報酬請求権制度と申しますか賦課金制度と申しますか、この導入についても検討を急ぐべしという附帯決議をいただいておるわけでございますし、これは役所的と言われれば役所的なのですが、これも第十小委員会で現在検討していただいておるところでございまして、先ほどのいわゆる著作権の集中的処理体制、機関の確立とか出版者の権利の創設にあわせて一緒に、たまたま相次いで御質疑がございましたので、それらも含めてこの検討を急いでいただき、そういうシステムが理解を得て確立できますように努力してまいりたいと思います。
  140. 有島重武

    ○有島委員 ドイツやアメリカでもいろいろな先例があるようでございます。一層の御研究をお願いしたい。  ビデオの方に入りますけれども、今全国で一万五千店ほど扱っているお店がある、その三〇%以上の店が海賊版ビデオソフトを扱っておるということですが、ビデオソフトが年間七百万本にも上る、売り上げが六百億円だと推定される。大体こんなところじゃないですか。さっきのプリントの方が約四百億円、こっちが六百億円、これだけでも一千億ほどはこの条文にかかわって動いている。さっき言ったのはそういう意味なのです。大蔵省もそういう話には理解があるので、割と道徳論みたいなものは余りわからない、わかりにくいわけですよ。それで、海賊版ビデオソフトの値段は正規の二五%から三〇%で、さっきも参考人からいろいろ話を聞きましたが、大体こういうことだそうです。こういった認識、どのくらいあれしているかという認識、これは文化庁の方で押さえていらっしゃいますか。今申し上げた数字は大体こんなものですか。
  141. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 海賊版の実態につきまして今先生がお挙げになったのは、ほぼそういうこと、そのとおりだと思います。  全体を申し上げますと、ビデオカセットの販売量全体は千二百五十万本、それが正規なものでございまして、それに海賊版が五百五十万本程度、お金にしますと大体六百億円ぐらい、合計いたしますと千八百万本の海賊版も含めてビデオカセットが流通しておって、その中の五百五十万本が海賊版である、そんな実態でございます。
  142. 有島重武

    ○有島委員 こういうことなら、実害というのが大体どのくらいになるだろうかということは計量できるものですか。
  143. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 これは実害というものの意味といいますかそれによると思いますけれども、この海賊版の五百五十万本の販売価格というのが六百億円ということでございまして、それで著作権法では、その民事上の損害については販売量といいますか、それでその販売額を推定するというような規定がございますので、この六百億円が通常に言えば被害額だということになるんじゃないかと思います。全体からすると、これは先ほどもちょっと申しましたように、大体ビデオカセット販売量の三分の一に当たるというような金額でございまして、それは、もしこういう海賊版が出てこなければその分が正規の権利者が恐らく頒布できたというものでございますから、それが損害に当たるんだろうというふうに思います。
  144. 有島重武

    ○有島委員 あと、この防止のための対応策ということでいろいろあるわけなんだけれども、さっきの参考人の方からもお話を少し承りましたけれども技術的に何か選り分けるというかそういう開発をやっている人がいるんじゃないか。僕も二、三話を聞くんだけれども、こういうどさくさのときなので何かやってというまゆつばものもあるかもしれぬけれども、そういうことについても技術的な解決法というか、あるいはやたらにプリントするのが不可能なふうに何かロックをする、何かの操作でロックしてしまうというようなことについても、文化庁の方ではいろいろと研究をしていらっしゃるか、あるいは研究したいと思っているんだけれども銭がないからできないと嘆いていらっしゃるか、どうですか。
  145. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 海賊版の作成を防ぐための技術的な方法としてどうかということだと思いますが、これはビデオカセットという商品について海賊版ができにくいという、ハードに対する対策でございますので、ちょっと文化庁の仕事ではないわけでございます。  ただ、私どもで承知しておるところによりますと、先ほど参考人からのお話がございました、正規のビデオカセットには特殊なホログラムのシールを張りつけるというのがございます。先ほど申しておりましたが、あれは、そういうホログラムを張りつけますとそれを複製することはできない、非常に困難である、複製の可能性が非常に少ないということでございまして、それは割に簡単なやり方であって、かつ、比較的有効な海賊版対策としてとられているようでございます。そのほかに、今度は複製そのものをできないようにするといういわば複製の防止装置でございますけれどもビデオテープ自体に特殊な信号を入れまして、それからする録画は非常に不完全な形で、あるいは再生した場合に画質が非常に劣化するというようなそういうやり方のものがございまして、これもいろいろなメーカーで採用されておりまして、我が国においてもこれからそういうものを採用していこうかという動きがございます。  こういうようなハードそのものについて海賊版防止対策が講ぜられていくというのも大変結構なことでございまして、文化庁としてはそういったことについて大いにこれが充実していくことについては期待をしているところでございます。
  146. 有島重武

    ○有島委員 細かい話が随分あるけれども、これは今度法改正をする、この法改正によってかなり効果が期待できるのでしょうね。そんなことを聞くのはちょっと失礼に当たるかもしらぬが、国民としては一番心配するわけだな。効果がある、その効果というのは大体どのくらいたつとわかってくるものか。この前も貸しレコードについては法改正ということをやりましたが、それは確かな手ごたえがあったというふうに認識をしておられるかどうかだ。そして今度の場合にはどうか。いかがですか。
  147. 横瀬庄次

    ○横瀬政府委員 貸しレコードにつきましては、おかげさまでそういう制度が、貸与権という制度ができて、そしてそれに基づいてレコードレンタルの業が行われるようになった、これでもって利用者、権利者両方が正々堂々と貸与ということができるようになった、こういうことでございますから、これはもうはっきりとそういうことが効果があった。これは、レコードレンタルというものが国民にとっても非常に全体に利用されているものでもあり、期待されているものでもあるわけでございますから、そういったものがきちんとできるようになるということはそれ自体として大きなメリットがあったと考えるわけでございます。  それから、今御質問の事項は海賊版対策についてだと思いますけれども、今度の改正案というものは、今までの「頒布」という行為をもって処罰の対象にするというところから、頒布目的、もちろん海賊版と知って「頒布目的をもって所持する」ということについて処罰の対象に加えようということでございます。その所持という外形については非常にわかりやすい外形態様をとっているわけでございますから、取り締まりの上で非常に明確になる、容易になるということで、海賊版という非常にあしき状態についてそれに対して有効な措置が講じられるとすれば、これもまた大変著作権制度の進展の上で、あるいは国民の文化生活の上で非常に望ましいことではないかということで、私どもとしては大変効果があるというふうに考えておりますし、権利者の方でもそれを望んでいるわけでございます。
  148. 有島重武

    ○有島委員 次に、隣接権の問題です。保護期間延長ということですが、この隣接権条約の加盟について大臣はどう考えているか、その方向ですね。アメリカ、ソ連なんかは加盟していないわけですね。それはいろいろ理由がある。日本でも、まだ条件が整ってない、未成熟である、そういう消極的な意見もあるわけですね。これはいつごろから、まあ時間の問題じゃないかと私は思っているわけですけれども、これはもう踏み切らなければいけないのじゃないだろうかというようなこと、大臣はどのように考えていらっしゃるかどうか。  それから、これをそれこそ来年から入ったということにすれば、我が国のこの支払いというものがどのぐらいになってくるか、そんなようなことを計量していらっしゃるかどうか。  大臣に、この隣接権についてのお考えを承っておきたい。
  149. 中島源太郎

    ○中島国務大臣 御指摘の隣接権条約の加入については、結論を申せば、できるだけ速やかに加入をすべきであるし、したいものだ、これは気持ちでございます。これは第一小委員会で御検討いただきまして、ことしの一月に報告を受けております。  これは外国の実演レコードあるいは放送を今度我が国で利用するに際する場合のものでございますから、今何を待っておるかと申しますと、先生御存じのように、外国の権利者と我が国の権利者の間の実務的な、恐らく契約上その他の実務の詰めが行われている段階というふうに承知をしておりますので、これが円満に理解ができますように、秩序が形成されるということの一日も早からんことを私どもは願っておるわけでございまして、今、私どものスタンスとすれば、その関係者の努力が早くまとまる、しかし、ただまとまるのを待っていていいのか、こういうことでありますから、時に応じて必要があれば、その関係者相互の話し合いを促進するように私どももお願いをしてまいり、それができた暁には速やかに加入をいたすべきもの、このように考えております。
  150. 有島重武

    ○有島委員 あと、著作権思想の啓蒙ということについてと思っておりましたけれども、先ほども同僚委員からの質疑がいろいろございました。また、けさほど私は参考人意見の中でもその件に触れましたので、以上でもって切り上げたいと思います。  委員長、ありがとうございました。
  151. 中村靖

    中村委員長 次回は、来る十八日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十三分散会