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1988-04-27 第112回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十七日(水曜日)     午後三時三十二分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    石渡 照久君       工藤  巌君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    杉浦 正健君       鈴木 宗男君    谷川 和穗君       渡海紀三朗君    松田 岩夫君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    市川 雄一君       北橋 健治君    石井 郁子君       山原健二郎君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 燈一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局企画課長 谷   仁君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 四月二十六日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     石渡 照久君 同月二十七日  辞任         補欠選任   青木 正久君     鈴木 宗男君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 宗男君     青木 正久君     ───────────── 四月二十五日  私学助成大幅増額、四十人学級即時実現に関する請願竹内勝彦紹介)(第一六六四号)  私学助成大幅増額等に関する請願外四件(村山富市紹介)(第一七八五号)  私学助成増額等に関する請願外四件(鍛冶清紹介)(第一七八六号) 同月二十六日  私学助成大幅増額等に関する請願上田卓三紹介)(第一八三七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三八号)      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  3. 嶋崎譲

    嶋崎委員 前回、私の質問は一時間でございまして、大臣法律案提案理由の一ページを終わりました。一ページの最後のところで、教育公務員特例法十九条の第一項と第二項に関する理解の仕方をめぐって、言葉をかえていいますと、十九条の第一項は教師自主研修権というものを規定した考え方であり、第二項はそれを前提にしつつ行政もまた研修に対して企画しサポートしていくことができるという、この二つ内容を持った考え方で、教育公務員の場合には、十九条第一項というのは、後で議論しますが、教師専門性という問題に関連して極めて重要な総論的な研修に関する規定であるということまでを議論したわけでございます。きょうはそれを受けまして、大正の提案理由の第二ページから三ページにかけて順次質問をいたしたいと思います。  大臣、これをお持ちですね、自分の提案前回も申し上げましたとおりに、この提案は騒然たる中で大臣が御提案になったものでありますから、それだけ確信を持っての御提案なので、答弁の主は大臣、そして局長はそれをサポートするという運営で、前回と同じように御答弁を賜りたいと思います。与えられた時間が二時間でございますから、私もなるべく短く質問をいたしますので、全体の法律条項全部を洗いたいと思いますから、簡潔にお答えを願うことをお願いを申し上げて、質問に入ります。  さて、今度の提案されております教師初任者研修という問題で、大臣提案理由の第二番目に、前段で総括的なことを述べた上で「以下、この法律案の概要について申し上げます。」と言って、「第一は、初任者研修を制度化することについてであります。」とあります。第一のこれは三つのパラグラフからできておりますが、初任者研修を制度化するという第一は、現行法制では何条と何条が問題になる点でございますか。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育公務員特例法第二十条の二に相当いたします。
  5. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それだけですか。——時間がありません。説明してあげましょう。教特法の十三条の二と第二十条、この二条が関連する項目でございます。修正案は第二十条の二として修正提案が行われております。  そこで、最初に教育公務員特例法十三条の二、これは御承知のように、これに関連しまして、第一のパラグラフの一番最後に結論的に、「教員職務特殊性にかんがみ、国立及び公立の小学校中学校高等学校、盲学校、聾(ろう)学校養護学校及び幼稚園の教諭、助教諭及び謙師条件附採用期間を一年とすることとしております。」これが問題の条項でございます。さて、この条項は、十三条の二の「条件附任用」という改正案は、国家公務員法の五十九条並びに地方公務員法の二十二条第一項のそれぞれを修正して、新たに教育公務員特例法の十三条の二として挿入したものでございますが、御存じですね。
  6. 中島源太郎

    中島国務大臣 そのとおりでございます。
  7. 嶋崎譲

    嶋崎委員 十三条の二は、「国立小学校中学校高等学校」、ちょっと盲、聾は省きますが、「に係る国家公務員法第五十九条第一項に規定する採用については、同項中「六月を下らない期間」とあるのは「一年」として同項の規定適用する。」こうなっていますね。国の小学校中学校高等学校の場合は、国家公務員法五十九条の六カ月を下らない期間を、この任用条件を一年と読みかえて同項の規定適用する、こう言っています。そして二項では、今度は地方公務員の場合「地方公務員法第二十二条第一項に規定する採用については、同項中「六月」とあるのは「一年」として同項の規定適用する。」こうなっていますね、それは書いてあるとおりですから。  さて、お聞きいたします。国家公務員法五十九条一項の任用規定地方公務員法二十二条第一項の規定は、趣旨は同じようだが、どこが違いますか。
  8. 加戸守行

    加戸政府委員 国家公務員法の方は「六月を下らない期間勤務し、」という条件でございますが、地方公務員法におきましては「六月を勤務し、」ということで、その六月を下らない期間と明確に六月と限定して書いているところに相違がございます。
  9. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それだけですか。
  10. 加戸守行

    加戸政府委員 それから国家公務員の場合には、六月を超える期間については「人事院規則でこれを定める。」それから地方公務員につきましては、人事委員会はその期間を「一年に至るまで延長することができる。」こういったニュアンスの差がございます。
  11. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今局長はこれはニュアンスの差と言いましたが、その差はどうしてなっておりますか。
  12. 加戸守行

    加戸政府委員 これは国家公務員法地方公務員法の解釈でございますので、私どもが直接的に申し上げるのはいかがかと思いますが、文部省考え方として申し上げさせていただきます。  国家公務員につきましては国家公務員一般の問題でございますので、人事院規則で定めれば、その六月を超える期間というのを、必要なものは人事院規則で定めることで統一的な取り扱いが保てる。一方におきまして地方公務員法は、異なる多くの地方公共団体におきます取り扱いでございますから、それが地方自治体の判断でばらばらになるということは好ましいことではない。しかもこれは任用制度の基本にかかわる事柄でございますので、六月という期間は統一的に地方公務員法規定をされたと思っております。ただ、その場合に、一年に至るまでの延長というのは各自治体の必要に応じてそれぞれの人事委員会において延長措置が講ぜられるようにした、そんな考え方取り扱い規定の差があると理解いたしております。
  13. 嶋崎譲

    嶋崎委員 国家公務員の場合の人事院規則ではどのような考え方に立っていますか、具体的に説明してください。
  14. 加戸守行

    加戸政府委員 これは、人事院規則の中では「条件付採用期間開始後六月間において実際に勤務した日数が九十日に満たない職員については、その日数が九十日に達するまで条件付採用期間は引き続くものとする。」こういう考え方で、六カ月の間の勤務日数が少ない場合にはこの六月の期間延長するというのが人事院規則考え方でございます。
  15. 嶋崎譲

    嶋崎委員 よくできました。そのとおりです。  そこで、国家公務員法の場合には、その六カ月を超えない期間とか、そして具体具体人事院規則準則にゆだねた。地方公務員の場合は、公務員法によって六カ月という期限を明確にした上で一年という、これもかっちり延長を認めている。国家公務員地方公務員の中には、そういう任用に際しての判断ニュアンスの違いを規定してきました。そのニュアンスの違う国家公務員法地方公務員法の共通しているのは、約一年であります。  そこで、今度の教育公務員特例法では、条件つき採用を六カ月から一年に延ばした。つまり一年にしたということは、国家公務員地方公務員との間にそういうニュアンスの違いがあるのに、教育公務員特例法ではその共通している一年だけをくくりまして、両法案の修正提案といたしているというふうになっておりますが、その共通した一年という考え方の基礎はどこにありますか。
  16. 加戸守行

    加戸政府委員 地方公務員法の上におきまして、六月を超えるものにつきまして、人事委員会規則で一年に至るまで延長することができる、つまり、条件つき採用期間はいかなる事由があっても延長する場合には一年が限度であるというのが地方公務員法考え方でございます。一方の国家公務員法は、法律の上では六月を超える期間人事院規則ということで、法律事体では一年と書いてございませんが、人事院規則によりまして一年を超えないものとする、つまり最大限一年であるという考え方がございます。そういったことで、私どもといたしまして、今回初任者研修期間を一年と設定して、勤務形態が変更されるということに伴って延ばし得る期間最大限は一年であるという考え方をとらさせていただいたわけでございます。  と同時に、もう一つの要素としましては、これは地方公務員には適用はございませんが、労働基準法の上で、一年を超える契約期間というものを、そういう契約の締結を禁止されておりますけれども、そういった要素も念頭には置いたということでございまして、いずれにしましても、基本的には、初任者研修期間一年間にあわせまして、その勤務特殊形態にあわせた一年ということを、国家公務員地方公務員両方教育公務員について規定を設けさせていただいた次第でございます。
  17. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで人事院規則は、先ほど準則昭和二十七年十二月四日の通知ですけれども局長が読み上げられたとおり、この場合の九十日、採用開始後六カ月において実際に勤務した日数が九十日に満たない場合、こういうことですね。だから、勤務の成績によって条件つき採用期間延長しているというのが公務員具体例です。同時にまた、地方公務員の場合の一年も実は勤務状況によって判断をするということで一年と規定しているわけです。  ところで、これらの一年延長片方は一年を限度に、片方は一年延長ですが、それはそれぞれ、公務員任用される場合には同じく研修を受けます、その場合の研修の結果としていろいろな評定もありましょうが、主として勤務した日数勤務状況というのが延長の基本的な理由になっております。  ところが、今度、我々の今問題になっているのは研修が問題になっているわけです。さて、国家公務員ないしは地方公務員の場合は、研修実施されていてもそれを理由にしての延期はしていない。なぜですか。
  18. 加戸守行

    加戸政府委員 通常、いかなる職種におきましても新採用職員に対します研修はございますが、その濃密の度合その他は多種多様でございますけれども、基本的にその研修そのものとのリンクということではございませんで、研修いたしますが、それは今回の初任者研修のような一年間にわたる、しかも大々的な研修という形態はとっておりません。そういうことで、一般的に申し上げますと、条件つき採用期間とリンクさせる必要性はないという判断が当然の前提としてあるのではないかと思います。また一般的に、この職務遂行能力実証困難性というのは、短い期間の軽度の研修を受けることによってその実証困難性が高まるという考え方もとっていないと思います。  一方、今回提案申し上げております初任者研修制度の場合には、このように指導教員によりまして指導を受けながら実務を遂行する、そういったような特殊な勤務形態になるわけでございますし、また、その判定すべき職務遂行能力と申しますのは、教員が全人格的な観点から児童生徒と接し、そして児童生徒の人格を陶冶していく、そういったような事柄職務の大きな基本的な内容でもございますし、そのような能力実証をするといたしますれば、初任者研修を受ける教員につきましては一年間の期間をかけて能力実証をするというのが適切である、こういう判断に立って提案を申し上げているところでございます。
  19. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、教特法上の教師研修ということを含めて、それを内容として一年に延長するという考え方ですね。それに対して地方公務員国家公務員の場合には、研修も含むけれども勤務、いわば研修としてのあり方よりも、公務員としての職務内容にたえ得るかどうかということで、その場合に九十日間とか一年間というのがあったりしているという違いがあるだろうと私は思います。  そこで、国家公務員教育公務員研修主体はだれですか。
  20. 加戸守行

    加戸政府委員 研修という言葉両用意味で用いられておりまして、両用と申しますのは、みずからを磨く主体という意味でございますれば教育公務員であれ国家公務員であれ研修をみずから行うわけでございますが、一方、任命権者側において便宜を供与しあるいは一定の必要な研修を命ずるという場合におきましては、その研修実施するという意味におきましては任命権者サイドでございます。したがって、研修主体性はという御質問でございますが、研修機会を提供し、あるいは研修実施を命じ、そして研修を行うという計画的、組織的な研修主体任命権者が持っているわけでございます。同時に、公務員あるいは教育公務員それぞれ個人個人の立場におきますれば、みずからがみずからを磨くという意味におきます研修主体でもあると思います。
  21. 嶋崎譲

    嶋崎委員 教育公務員特例法十九条一項と、国家公務員地方公務員研修とは違うのです。片一方職務を中心にして考えますが、教師の場合には職責でありまして、職務と貴任というものが問題になってまいります。だから「研究修養」、(研修)という意味国家公務員法地方公務員法に言う「研修」との違いがあることを踏まえておかなければなりません。国家公務員地方公務員の場合は行政研修主体でありまして、教育公務員のような教師の自主権、特に「研究修養」というものを前提にした研修権とは違うと思いますが、いかがですか。
  22. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員につきましても、国家公務員法あるいは地方公務員法規定適用があるのは当然でございまして、その適用を除外する場合には、教育公務員特例法規定におきまして、国家公務員法何条の規定にかかわらず、あるいは地方公務員法何条の規定にかかわらずという例文を掲げて規定をするのが通例でございます。その意味におきまして、地方公務員法におきます、例えば三十九条の「前項研修は、任命権者が行うものとする。」という規定はそのまま教育公務員である地方公務員にも適用になるわけでございます。しかしながら、教育のあるいは教員職務特殊性ということにかんがみまして、教員は、まさに生涯を通じて絶えずみずからを研さんし、研究修養に努めなければならないという、本人の自主性に期待し、そういった研さんの責務というものを定めておるわけでございまして、このことは、地方公務員法規定する任命権者が行う研修を排除する趣旨ではなくて、より広く、それに加えて教育公務員についてはみずからを磨くという責務を課しているわけでございまして、この責務の中には、自主的な研修のみならず任命権者が行う研修、この両方を含めて「絶えず研究修養に努めなければならない」という規定を設けたゆえんであると理解をいたしております。
  23. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ではお聞きしますが、国家公務員地方公務員は、四月一日から条件つきで入っているときに正規公務員として採用されていますか。
  24. 加戸守行

    加戸政府委員 国家公務員地方公務員も、四月一日に採用いたされました場合には、通常採用でございますけれども、すべて条件つきでございます。
  25. 嶋崎譲

    嶋崎委員 教師の場合はどうですか。
  26. 加戸守行

    加戸政府委員 国公立学校教員の場合は教育公務員でございまして、同様に六カ月間の条件つき採用となっております。
  27. 嶋崎譲

    嶋崎委員 同じ条件つき採用でも、公務員教育公務員は同じですか、違いますか。
  28. 加戸守行

    加戸政府委員 いわゆる六カ月間の条件つき採用期間適用を受けているという点は同様でございますが、この条件つき採用から本採用になるかどうかの判断基準と申しますのは、その職責遂行に必要な能力というものを持っているかどうかを判定するわけでございますので、通常行政事務を処理する能力があるかどうかということと、教員として児童生徒に対して教育に携わる能力を有しているかどうかという判定基準は異なるものと思います。
  29. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこは私と意見が違いますね。私は、教育公務員は、これから問題になる免許法に基づいて教員の資格を得た者が、競争試験ではなくて選考採用されていると思います。それに対して国家公務員地方公務員の場合はまさに条件つき採用であって、その間のいわば勤務の状態を見た上で正規採用する。条件つきという言葉は一致していますが、中身は、教育公務員国家公務員地方公務員とは違うと思うが、いかがですか。
  30. 加戸守行

    加戸政府委員 一般公務員であれ教育公務員であれ、その能力実証をするわけでございますが、その能力実証といいます場合には、つきました職種、例えば教育公務員でございますと教育に携わるといった、その職務遂行するに足る能力を有するかどうかという観点から判断されるべき事柄でございます。  なお、今先生から、採用の仕方が競争試験だけではなくて選考によるという、選考形態方法論が違うということの御指摘がございました。確かにそのとおりでございますが、採用段階と申しますのは、あくまでもある一定能力実証をしているわけでございますが、そのことによってすべて判断することは不可能でございますので、その後の六カ月の条件つき採用期間中におきます職員勤務遂行状況によりまして、それが完全に職員としてのあるいは教員としての職務遂行能力を有するかどうかのさらなる判定をするわけでございますが、ある意味では、採用時に不十分であった判定の補完的な役割を果たすのが条件つき採用期間意味であろうかと思っております。
  31. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その点は、教師の場合は教員免許制度に基づいて、その免許の中にはいろいろ議論があります、それが十分であるかどうかは別として、これには実習という期間が入っていて、実習があって、子供たちに対して接して教育をするという経験もまた重要な単位であります。だから、四月一日に学校に赴任しても、学校は四月八日ぐらいからしか始まりませんが、そのときからはもう教師として子供たち教育をつかさどる任務を持って赴任するものであります。その教師初任者ですから、教師としての必要な資質能力を開拓するために確かに努力をし、絶えず努力をするために研修をしなければならぬでしょう。しかし、この場合の六カ月の条件採用は、六カ月後に判定をするという性質のものではないと私は思います。したがいまして、今判定という言葉をあなたは使いましたが、六カ月で判定するということになると、地方公務員の六カ月の条件つき採用教育公務員条件つき採用は同じことになってしまいます。そうしますと、教育公務員特例法十九条一項、二項、第二十条にわざわざ規定した教育公務員研修というものの意味地方公務員研修意味の違いを明確にしなければならないことになります。いかがですか。
  32. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員地方公務員研修に関する規定相違は、先ほども申し上げましたように、教員の場合は教育者として児童生徒に接し全人格的な触れ合いをするわけでございますから、絶えずみずからを磨いてほしいという願望を込めて教育公務員特例法十九条の一項の規定が設けられ、かつ、十九条の二項あるいは二十条の各項におきまして、それぞれの教員研修に対する便宜供与なり研修奨励規定が設けられているところでございます。地方公務員一般につきましても当然研究修養していただくことは望ましいことではございますが、その事柄性質上、教員のようにまではこういった責務が要求されていないという差はございますけれども教員の場合の研修に努めなければならないという意味は、教員採用された後も生涯を通じて、みずからを磨き国民の負託にこたえてもらいたいという願いが十九条一項にあるということでございます。
  33. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ちょっと地方公務員法の三十九条を読んでごらんなさい。三十九条は「職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。」二項では、「前項研修は、任命権者が行うものとする。」と書いてあるのです。教育公務員特例法の十九条は違いますよ。「教育公務員は、その職責遂行するために、絶えず研究修養に努めなければならない。」教師はとにかく絶えず自主的に努めなければならないのです。これは、権利であると同時に非常に重要な規定であります。そして、二項で教育公務員任命権者が出てくるのです。任命権者は「研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。」なんです。二つの要件なんです。教特法十九条と地方公務員法三十九条の研修は、条文どおり理解すれば、教師という教育公務員特殊性前提にして十九条第一項、二項があるのだと理解すべきだと思います。しかも、地方公務員の場合の条件つき採用の六カ月は、学校先生のように確かに試験は通ってきた、そして国家公務員地方公務員として勤める条件一定程度そろっているが、ここに言っている勤務能率その他の問題について、つまり職務ですね、その職務一定努力が見られない場合は、国家公務員の場合は九十日と言い、片一方は一年、こう言っているのです。これに対して教育公務員の場合は、四月一日から、教員免許法免許を持った教師が現場の子供たちと接したりして実践をやった上で、十分であるかどうかは別として、四月一日から、教育公務員としてクラスを持ち、学級経営もやり、それからカリキュラムの編成もやり、それから教科書、教材の選定も行い、それをやることができるのです。根本的に私は違うと思うのです。その違いを前提にしないから、一年という国家公務員地方公務員限度枠をあたかも研修で延ばすことができるように位置づけたと理解するが、いかがですか。
  34. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほども申し上げましたように、地方公務員法三十九条の規定教育公務員についても適用排除はされておりません。三十九条も適用された上に、かつ、教育公務員特例法におきます研修の各規定が設けられております。これは、教員職種先生おっしゃいますように確かにいろいろな意味での責任度というのは高いわけでございまして、いわゆる教育というものが児童生徒の心身の発達という基本的な価値にかかわるものでございまして、そういった個人的な価値を高めるというのは、実践的な活動の場でそういった具体的な実践的指導力が要求されるわけでございます。と同時に、今申し上げた職務遂行する上のみならず国民からの負託を受けて教育をしている、そういう意味におきましては、教員の社会的な責任もなおさら大きいといった視点から、教育公務員特例法十九条一項の規定が設けられていると理解するわけでございます。しかしながら、条件つき採用期間と申しますのは、公務員全般につきまして、その仕事を遂行する能力があるかどうかという観点から判断される事柄でございますから、一般の行政職の公務員であれば行政職としての仕事を遂行し得るかどうかという観点、それから教員につきましては、教員という職務遂行する能力を有するかどうかという観点から、それぞれ能力実証が行われているということでございます。
  35. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だから、教育公務員特例法十九条に言っている「職責」というのは、その後に言っている「絶えず研究修養に努めなければならない。」ということなんです。この場合の職責というのは職務と責任ですが、その法源はどこにあるかというと、憲法や教育基本法にまでさかのぼるのです。だから、教育基本法の十条には「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」という第一項があって、一項の主語は「教育は、」です。そして、二項の主語は「教育行政は、」なんです。したがって、これに関連して、十九条に言うところの「職責」とは、職務と責任という観点に立った、国民に直接責任を負うという意味で、教師一般公務員との違いが教育ということに関して違っていなければおかしいと思います。いかがですか。
  36. 加戸守行

    加戸政府委員 教員公務員でございます以上、公務員制度上の諸規律を受けるわけでございまして、また国民の負託を受けている点についても同様な立場にはございますが、先生おっしゃいますように、教育という事柄、仕事の重要性にかんがみまして、教員には先ほど申し上げた特別な要求度が国民サイドからあるということを踏まえて、いろいろな教育公務員特例法上の規定等が設けられているわけでございます。その基本的な考え方の淵源が那辺にありやと申しますのは、先生おっしゃいますように、あるいは憲法あるいは教育基本法といった中にもそういった意味合いの事柄は当然あらわれているでございましょうし、また、教育公務員特例法の制度も憲法あるいは教育基本法という趣旨を踏まえた規定になっているものと理解いたしております。
  37. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それならば、今度はちょっと別の角度でお聞きしましょう。  教育公務員というのは、教師免許制度に基づいた専門性のある教育専門職として位置づけられますね。
  38. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員の多くは、と申しますのは語弊ございますけれども教育公務員特例法の準用を受けております例えば実習助手、寮母等のケースもございますが、教育公務員法律上の職種のほとんどは、今先生おっしゃいましたように、教育職員免許法による特別な資格を持って仕事に携わることを義務づけられている職種であると理解いたしております。
  39. 嶋崎譲

    嶋崎委員 専門職ですかと聞いているのです。いかがですか。
  40. 加戸守行

    加戸政府委員 専門職という定義は法律上はございませんが、通常の用語として私どもは専門職という言葉を用いております。
  41. 嶋崎譲

    嶋崎委員 臨教審も、教師は専門職であるという前提ですべての立論が展開されているのは御存じでしょう。
  42. 加戸守行

    加戸政府委員 臨教審答申あるいは中教審答申、さらには教育職員養成審議会の答申等におきまして、専門職という観点は強調されているところでございます。
  43. 嶋崎譲

    嶋崎委員 局長行政官の試験を受けたのですから、「教育法」という法学全集の本ぐらいは読んだことはあるでしょう。これには始めから終わりまで、教育権に基づく教師専門性というのは、我が国の憲法、教育基本法、教育公務員特例法に貫いている基本的性格だと、そこらじゅうに書いてありますよ。田中耕太郎先生の戦後から始まって今日に至るまですべてそうですよ。だから、我我の言葉によればなんというような単純な内容の性格のものではありません。  では、お聞きします。専門職というのはいかなる要件を含んでいると思いますか。
  44. 加戸守行

    加戸政府委員 私ども理解しております専門職というのは、それぞれの道を深くきわめ、その道に秀でている方を指しておりまして、英語を使って恐縮でございますけれども、この専門職の用語は日本からスタートしたのか外国から来たのかわかりませんが、一般的に、例えば英和辞典等を見ますと、プロフェッションということで専門的職業というのを指しておりますが、通常挙げられております例がティーチングプロフェッション、いわゆる教職でございます。それからクレリカルプロフェッション、これは牧師というような意味でございます。それからジューディシャルプロフェッション、これは裁判官、それからメディカルプロフェクション、医師というような形で、いろいろな専門職というものの定義がございますが、そういったような、その道で人格的な、かつ、その道をきわめていくというような者をいわゆる専門職と我々は理解いたしております。
  45. 嶋崎譲

    嶋崎委員 あなたは行政官なの。文部教官じゃないの。あなたは教育の専門職の資格を持っていないの。だから、言っていることが抽象的なのです。  専門職というのは、第一に教育課程の編成権というものを持っているのですかいないのですか、どうですか。そういう能力があるかどうかだ。
  46. 加戸守行

    加戸政府委員 教育課程の編成権とおっしゃいましたが、教育課程のその「編成」という言葉の用い方について具体的な事例に即して考える必要があると思いますが、通常教育課程を編成するというのは、学校におきます教育課程でございますれば学校長にあると理解いたしております。
  47. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だから、それに対する専門的な能力を持っていなければならないでしょう。学校全体で、一年生から四年生までの幼児的な性格を持った子供たち能力を引き出すためのカリキュラム編成、今度は四年から六年ぐらいまで、中学に行けばまた変わるのですから。そうでしょう。だから、そういう子供たち能力の発展に合わせて、ないしは人間的な成長の発展に合わせてどのように教育していったらいいかという、教育課程の編成というものについて熟知していなければならないのです。これが第一点。  もう一つ聞きますよ。教材の選択権というのはどうですか。
  48. 加戸守行

    加戸政府委員 教材の採択権という言葉でございますれば学校長でございますが、この教材の採択・使用につきましては教育委員会の承認を得ることとされております。
  49. 嶋崎譲

    嶋崎委員 校長や教育委員会が決めたものを教師が選ぶのじゃないのです。結果としてはそうなりますよ。現場の教師が、自分がクラスを持ったときに、その教育課程を編成するときに、どういう教材がいいかという判断力がなければ教師としての資質能力がないのです。そんなこともわからぬのですか。役人だからわからないのでしょう。  それからもう一つ聞きます。三番目、子供に教育する授業というものについて、授業というものの権利、授業権はどう理解しますか。
  50. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもは授業権という言葉は使っておりませんが、実際にその授業を実施されますのは個々の教員であることは、学校教育法二十八条の規定によりまして、児童生徒教育をつかさどる教員が授業を行われるということでございます。
  51. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうでしょう。だから教諭は教育をつかさどるなのです。だから教師は教授、つまり教えるための教授ということ、ないしは授業というものをみずから自律的に行うという権利を持って赴任しているのです。  もう一つ聞きましょう。成績の評価に関するいわば権限というのはどこにありますか。
  52. 加戸守行

    加戸政府委員 個々の児童生徒の学業成績を評価するのは個々の教員でございますが、その児童生徒が学年の課程を終了したかあるいは学校を卒業するかどうかの認定は学校長が行うこととされております。
  53. 嶋崎譲

    嶋崎委員 学校長が行う前に、それぞれの学級経営の責任者である教師が、この子供たちはもういいなと判断をしたときに校長が認めているだけですよ。校長が現場に行って考えたのじゃないのですよ。校長はそんなことわかるはずがない。全校生徒千二百人もおるような学校の場合、校長は生徒の名前なんか覚えられないのです。したがって、これまた成績の評価ということについても、子供たちを評価する能力というものは教師にとって必要な専門的な能力なのです。  じゃ、子供の懲戒権はどうですか。
  54. 加戸守行

    加戸政府委員 児童生徒の懲戒権という意味でございますれば、校長及び教員がそれぞれ有しております。
  55. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だから、子供を懲戒するというのは大変な教師教育的機能なのです。どうしてこれを懲戒しないで立派な子供に育て上げるのか、それを考える全権的な任務とその判断の基本は現場の教師そのものにあって、それは一人の教師だけではいざというときには決まりません。学校全体で共同で議論しなければいかぬでしょう。そして最終的には校長の責任において発動するでしょう。けれども、一人一人の教師にとっては、子供たちの懲戒というものに対してどのように判定するかの現場における判断は、まず一人一人の教師が基本でなければならぬ。これは否定することができぬと思う。  もう一つ聞きましょう。生活指導というものに対してはどうですか。
  56. 加戸守行

    加戸政府委員 これは事実上の行為でございますが、児童生徒に対する生活指導というような事柄でございますれば、担任の教員あるいは学校としての生徒指導を担当する教員等がそれぞれ行うことになろうかと思います。
  57. 嶋崎譲

    嶋崎委員 僕は、今ざっと六つ挙げたのですよ。最初に専門職とは何かと聞いたら、局長は、人格的にすぐれているとか抽象的な話をしている。学校教師免許を持って、四月から赴任した瞬間にクラスを持ってこれらの専門職的な対応ができるかどうかが、最初に言った資質能力という問題なのです。これは否定しませんね、大臣
  58. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
  59. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今のことが、もし教師の専門職の中身としてこの幾つかが位置づけられるとすれば、四月に条件つき採用で入った教師も、これらのつまり専門職的な資質能力を持っているという前提で、入ったときからクラスを持って学級経営をやる、そういういわば研修が始まるのです。それは否定しませんね。
  60. 加戸守行

    加戸政府委員 四月に採用されました教員が、先生おっしゃいますように、多岐にわたる特に専門職的なそういった観点からの仕事に従事する、そのために必要な研修を行うわけでございますが、と同時に、学校におきましては、先生お挙げになられました事柄以外に、多岐にわたる校務分掌がございます。そういった学校諸活動全般につきまして仕事の遂行ができるということもあわせて必要でございますので、それらの面に関する研修もあると思います。
  61. 嶋崎譲

    嶋崎委員 研修だけですか。免許を持って赴任したときは、この専門職の条件を備えているという判断に立つからこそ子供たち教育が任せられるのです。確かに、子供を教育していくときには年次を重ねた先生と比べると教え方に上手下手があるかもしれない。同時にその指導の仕方について未熟である点があるかもしれない。しかし、未熟であるということは教育的に必ずしもマイナスではありません。子供とともに歩むという判断に立つときには、そういう教師の姿を見ることもまた、子供たちが勉強しなければならぬなという一つの激励になるときもあれば、そんな教師をばかにする子供もいるでしょう、いろいろなタイプがある。しかしいずれにしても、教師専門性を持った専門職として赴任しているという限りにおいては、今言ったことを肯定なさるとすれば、国家公務員地方公務員研修教育公務員研修は違うと考えなければならぬが、いかがですか。
  62. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは先ほどからお答えいたしておりますように、地方公務員法三十九条に描かれております研修も踏襲しております。ただ、先生のおっしゃるように教特法第十九条の一と二を合わせまして、今先生がお挙げになりました少なくとも専門職と言うには、幾つかの資質を備えていなければならないし、また、その前におっしゃった、教育というものは憲法、教育基本法にのっとる、その教育基本法の第一条には教育とは人格の完成を目指す、したがって教師も常々研修、それはまた前回お示しになったように研究修養である、その修養部分は人格の完成を目指す重要な部分だ、こういうことでありますから、地方公務員法三十九条に示された要するに行政研修、それにプラスそういう自己研究修養がなければならない。それを補うものが第十九条の二で、行政研修、その施設、あるいは方途、計画を立ててその実施に努めなければならないという一種の義務規定をここに置いておるわけでありまして、それぞれ三十九条と教特法十九条は相関連するものである、そのように先ほどもお答えをいたし、私もそのように考えております。
  63. 嶋崎譲

    嶋崎委員 先ほど私は全文読み上げたのですよ、三十九条。そして教特法の十九条を読み上げたのですよ。その違いがなくて、抽象的、一般的国家公務員研修なんだ、教師の場合には研修特殊性をプラスしているんだというものなのか。教師は最初から憲法や教育基本法を軸にして、十九条というのは、教育公務員研修のいわば特殊性を総論的に述べたという意味国家公務員法地方公務員法とは違う研修意味を持っている、これが私の主張です。これだけで議論しても時間がないですから、意見の違うところは違いっ放しで、次に行きましょう。  では、条件つき採用六カ月、これは公務員と同じように、今までは六カ月間たてば任用された。国家公務員地方公務員の場合は、この六カ月のときは条件つき採用でも正規任用を行われていないのです。採用はされているけれども勤務成績が悪いときには九十日間延ばすとか、わざわざそういう規定をしなければいけなかったのです。教育公務員の場合は、四月一日から学校に行きますと、教師としての資格を持って赴任をしたが、六カ月間ぐらいは初任者としての努力をしなければならぬ期間という意味で六カ月はあるが、それでは研修がだめだからやめさせたという例は全国に今まで幾つありましたか、挙げてごらんなさい。
  64. 加戸守行

    加戸政府委員 六カ月の条件つき採用期間を経過して正式に任用するかどうかは、職責遂行するに足りる能力実証が得られたかどうかということでございまして、研修の成績がどうであったかということは関係なく、いわゆるその教員教員としての職務遂行できるかどうかという観点からの判断によって正式採用としているわけでございます。
  65. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ならば六カ月で足りるじゃないですか。何も一年間研修して判定する必要はないですよ。国家公務員地方公務員の六カ月を、こっちはちゃんと研修と研さんというものを見てやるのですから、校務分掌についても専門職としての資質能力についても、六カ月の努力があればそれでいいじゃないですか。なぜ延ばすのですか。
  66. 中島源太郎

    中島国務大臣 先ほどから嶋崎議員がおっしゃっておりますように、研修が三十九条プラス十九条。三十九条の場合には概して職務勤務能率、こう書いてあるのです。それにプラス十九条の一項では、自己研究と自己修養に努めろ、こういうことでありますね。だから、一方では六カ月でありますけれども、一方はまさに先生が先ほどおっしゃっておりますように専門職として、人が人を教えるわけであります。その人の教育というのは、やはりカリキュラムの一つの単位というのは一学年、その一学年を通して教育し、そして一方で研修する、そこで一年を通じての初任者研修を置いた、こういう意味があるわけであります。したがって、先ほど言ったように、条件つき採用期間が普通は六カ月である、この教育公務員に身を置くものは一年間である、これは合理性がある、このように考えております。
  67. 嶋崎譲

    嶋崎委員 だって、今局長研修と関係ないと言ったじゃないですか。別だと言ったでしょう。今までの教師は全部六カ月で正規教師ですよ。それを一年に延ばすのは、研修のために必要だという意味で、特殊性があるから延ばすと言っているだけで、採用について一年に延ばすか延ばさぬかは別じゃないですか。どっちですか。
  68. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるように、採用については、六カ月であれ一年であれ、採用の方法というか基準と申しますか、それは同じでございます。六カ月と一年と採用方法が違うのかというと、これは同じであります。だからそこは同じでありまして、ただ、おっしゃるように一年間を初任者研修に必要な期間、こういうふうに定めましたので、初任者研修を行う者については一年間が条件つき採用期間である、こういうふうに置いた、こういうことであります。
  69. 嶋崎譲

    嶋崎委員 条件つき採用六カ月で、今までの教師はみんな絶えず研修すると判断し、校務分掌についても専門職としても一定判断ができるなあというので、今まではみんな現場の教師になったんですよ。それでも研修をもっとやった方がいいというのがあなた方の提案の一年という意味でしょう。しかし、一年やるという研修は、大臣、一年やってから判定するんじゃないのですよ。大臣は、この間の鍛冶公明党議員の質問に対して、一年して判定すると言いましたよ。僕はちゃんと聞いて、中西君もメモしてある、僕もしてある。議事録を見ればわかる。一年して何を判定するんですか。今の六カ月条件つき採用という格好で採用するということと、研修を一年やるということとは別ですよ。これは別です。六カ月で今まではある程度の判定は入ったかもしれない。その判定一般公務員判定とは違いますよ、研修というものを媒介にしていますから。ところが、六カ月の段階で教師として採用されてきた、今度は一年間に研修を延ばしていく、だったら、一年後に本採用ということではなくて、六カ月で採用していって、研修はあと半年やったっていいじゃないですか。それをなぜ一年の条件つき採用としたのですか、理由を言ってください。
  70. 加戸守行

    加戸政府委員 本委員会においてもたびたび申し上げておりますが、この条件つき採用期間を一年として提案させていただいております理由は、今回の初任者研修制度の導入によりまして、一年間指導教員による指導あるいは校外における研修等を受けながら勤務に服する、実務を遂行するという、言うなればこの初任者につきましては勤務形態が特殊なものとなっておりまして、一面においては勤務であり、一面においては研修であるとという両面性を持っている、また勤務そのものが指導を受けながら遂行されている勤務形態である、そういう意味におきまして勤務特殊性がある、それが第一の理由でございます。そして第二の理由といたしましては、教員職務児童生徒との人格的な触れ合いの中で職務遂行されるわけでございまして、その教員の本来的な性格は、今申し上げましたように、児童生徒の一年間の発達段階の中で職務実績が発揮されていくわけでございます。そういう意味では、他の職種に比べまして非常に勤務能力判定するにつきましては困難性が伴っている。  この両方理由があるわけでございますが、今回の初任者研修制度の導入によりまして、基本的には勤務形態が一般の職種とは著しく異なった勤務形態になり、そして、このような勤務状況の中で勤務遂行能力職務遂行能力判定するには一年間が必要であるという観点から提案を申し上げてあります。あくまでも勤務遂行能力職責遂行能力実証困難性があるというのが、六カ月を一年に延長申し上げている主たる理由でございます。
  71. 嶋崎譲

    嶋崎委員 加戸さん、皆さんが法制局と議論したときは、その一年の意味をこういうふうに法制局は理解したのだよ。  四月に赴任するでしょう。学校が始まるのは四月七日ぐらいなんだ。そして五月、六月とやって、七月に入ると夏休みに入る。今度夏休みの研修をどうするかという、途中に研修が一回入るわけ。これは校外研修あり、校内研修もありますね。そして二学期に入る。二学期は、今度は秋の行事その他がある。これも初任者にとっては初めてですね。寒いところ、我々北陸なんかで言うと雪と教育が大問題になります。だから、一年間研修することは一学年の研修をすることになるという意味で、一年の研修には意味があるな、これが法制局が一年ということを了承した理由です。あなた方と議論したはずです。  ところが、研修を一年やるということと、六カ月の研修が終わったところで条件つき採用するということと、そのあと六カ月研修をやるということとは別なんです。そう思いませんか。あとの質問がありますから、時間も余りありませんから、簡潔に答えてください。別じゃないならないと言ってください。
  72. 加戸守行

    加戸政府委員 一年間の研修を行うことによりまして一年間の勤務形態が変わる、そういった特殊性にかんがみて、一年という評価をするということでございます。
  73. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それは一つの理由なんです。私は一年は了承しませんけれども、一年間の意味は一学年を研修として経験するという一つのタイムラグ、時間的な限度でしょう。しかし、条件つき採用の六カ月がなぜ一年まで、一年に条件つき採用を延ばすんですかと聞いておるのです。  そこで聞きます。今回の改正案教育公務員特例法の附則三条では「小学校中学校及び高等学校並びに」、あとの学校名は簡単にするために省きますが、「昭和六十四年度から昭和六十六年度までの各年度においては、同項の規定にかかわらず、特定小学校等の教諭等に採用される者の数の推移その他の事情を考慮し、政令で指定する学校の教諭等に対しては、これを実施しないことができる。」と書いてある。附則の第三条は、同じ四月に赴任した教師が、片や法律でもって六カ月で条件つき採用は終わりますよと言っているのです。そして、六十四年から六十六年までのこの三年間は「採用される者の数の推移その他の事情」、これは後ほど聞きますが、それによって同じ教師の中でも六カ月の条件つき採用と一年の条件つき採用というものを担保する附則を決めておるのです。だから、一年しなければ条件つき採用にならないということには法律ではならないの。いかがですか。
  74. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案申し上げております法律の本則におきましては、小中高等学校それぞれの教員につきまして初任者の場合には条件つき採用期間を一年といたしております。が、この附則の三条の第一項におきまして、昭和六十六年度までの間におきます初任者研修実施しない校種を定めることができるといたしておりまして、その校種に属する教員につきましては同附則三条二項によりまして条件つき採用期間の一年とする規定適用しないことといたしております。これは初任者研修実施しない教員につきましては従来どおりの勤務形態でございますから従来どおりの条件つき採用期間とする、しかし初任者研修実施する教員につきましては勤務形態が特殊なものとなるということで本則におきまして一年とする規定をそのまま適用する、こういう立て方でございます。
  75. 嶋崎譲

    嶋崎委員 本則で決めていても、本条で本文で決めておっても、附則でここで決めた以上は——では、六十四年度にはどの学校でどれだけ初任者研修をするのですか。
  76. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十四年度にどの校種を実施するかということは、六十四年度予算要求におきまして文部省としての要求の姿勢を明らかにし、本年末の予算折衝におきまして具体的に推定するわけでございますが、また、私どもといたしましては、今の段階においては、それぞれの教職員採用数の推移並びにその他の事情等を判断して考えていきたいということでございまして、予算要求の段階において確定をさせていただきたいと思っております。
  77. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ほかの委員にはあなたは一四%と答えたのですよ。ほかの委員には初年度小学校一四%と答えておるのですよ。私の場合はなぜ答えられないのですか。ほかの委員には答えてなぜ言わないのですか。
  78. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十二年度から初任者研修の試行を実施しておりますが、六十二年度は全採用教員数の約七%に対する試行をいたしました。そして現在、六十三年度におきましては五十七都道府県指定都市におきます全採用見込み教員数の約一四%に相当する試行を行うということで答弁申し上げたわけでございます。
  79. 嶋崎譲

    嶋崎委員 わかった。それはわかった。それならば、この附則の三条でわざわざ三年間を担保した理由は、初年度では絶対に全員はできない、二年度もできない、三年度もできないから、このいわば限定的附則の条項で担保をしたわけでしょう。だから、ことしの七月にやる概算要求では初年度の初任者研修は何人くらいを想定していますか。要求ですから成るか成らぬかは別だ。要求はどのくらいと考えておりますか。
  80. 加戸守行

    加戸政府委員 現在までの私どもの立場といたしましては、六十四年度予算要求の際の概算要求基準がどのような形で設定され、その枠の中で文部省としてどのような要求ができるかということを考える必要があるわけでございますが、その条件を無視いたしまして文部省として現時点でどうしたいかという意味でございますれば、初年度は教員数を一番多く抱えております小学校の校種から実施をしたいなと私は現時点で思っておりますけれども、これは概算要求の基準によって予算の枠内で処理できるかどうかという問題等がございます。その場合でございますと、小学校でございますので一万三、四千名程度の教員を対象にするという形になろうかと思います。この数字はちょっと今つかみで申し上げましたが、確定の数字ではございません。
  81. 嶋崎譲

    嶋崎委員 早くからそう言えばいいんですよ。校種としては第一番目に小学校小学校の場合にあなたの概算要求したい願いは初任者の全体ですね、今の言い方は。それは間違いありませんね。小学校の場合の初任者全部ですね。それを概算要求するのですね。間違いありませんな。
  82. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもは、附則によりまして実施する、実施しないというのは校種別で考えておりまして、小学校という校種を考えました場合には、小学校採用されます教諭、助教諭並びに講師、肩書は違いますけれども新採の教員の方を全員、小学校でございますれば小学校教員全員を対象としたいと考えております。
  83. 嶋崎譲

    嶋崎委員 初年度はそこまでで、あとは留保する。そうしますと、二年度は中学ですね、その考え方でいけば、六十五年度は。その次は高等学校という三段階を考えているのじゃないですか。違いますか。
  84. 加戸守行

    加戸政府委員 これは繰り返しになりますが、毎年度の予算の勝負でございますのであくまでも確定的なことを申し上げるわけにまいりませんが、いろいろな諸般の要素を抜きにして文部省として計画をしたいという意味でございますれば、小学校中学校高等学校という段階を踏むのが至当な順序ではなかろうかということを事務的には今念頭に置いております。
  85. 嶋崎譲

    嶋崎委員 さあ、そこで行きましょう。小学校が仮に要求どおり全員初任者をやったとしましょう。これは一年間の条件つき採用ですね。中学はまだやってないのですから、中学の教師は六カ月で採用ですね。高等学校も同じですね。同じ教諭の資格を持って入って、六カ月で条件つき採用教師になる人と、一年間条件つき採用教師になる人、同じ資格を持った教師がこういうことになる。これは法の前の平等という観点から見たらどう理解しますか。
  86. 加戸守行

    加戸政府委員 条件つき採用期間が一年の方と六カ月の方とにつきまして、その方が教員としての適格性を有するかどうかという判断の基準は両方同じでございます。ただ、その判断をするに要する期間が六カ月をかけて観察し判定をするか、一年をかけて観察し判断をするかということでございまして、しかもその判断の基準というのは、全く恣意的なものではなく、それぞれ合理的な判断基準が裁判例によっても求められているわけでございます。  要すれば、その教員を正式採用するに当たって、教員としてふさわしいかどうかということを六カ月かけて判断をするか一年かけて判断をするかという判断期間の違いでございまして、判断の結果は同一であろうと考えております。
  87. 嶋崎譲

    嶋崎委員 違いますよ。片一方は、条件つき採用を六カ月のときにもちゃんとした研修をやるのよ。指導教官を置いてやるかどうかは別ですが、やはり研修はするのです。そして採用になるのです。同じ初任者でも六カ月で採用になる人とそうでない人とができるということは、一年やってきた人は本物の判定に合格した人、六カ月はそうでないということ自身は、同じ教師の資格を持って現場に赴任した教師にその差異があるということは、法の公正という立場から言っていいのですかと聞いているのです。
  88. 加戸守行

    加戸政府委員 条件つき採用期間趣旨と申しますのは、その方が将来三十何年間にわたって教壇に立って教育するにふさわしい方であるかどうかということを、選考採用段階では不十分でございましたものを補完する制度として設けられているものでございます。その意味におきまして、この条件つき採用期間の運用の問題でございますが、どの期間をかけて、何カ月かけて御察してその判断が得られるかという意味で、いろいろ六カ月にするか一年にするかという考え方があるわけでございまして、あくまでも今回の制度と申しますのは、一年間にわたりまして指導教員による指導を受け校外研修等を受ける、そしてその勤務形態が特殊なものとなるというととにかんがみて一年間にするわけでございますから、従来の初任者研修を受けない職種教員につきましては、初任者研修に比べますれば短期間の極めてウエートの軽い研修を受ける状態でございまして、勤務形態が一年間にわたって特殊なものとなるわけでございませんので従来どおりの六カ月で判断をする、そういう差異があるわけでございまして、これは勤務形態の差によります合理的な差でございまして、法のもとの平等に違反しないことは明らかであると私ども考えております。
  89. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それでは、附則の三条にこう書いてある。「特定小学校等の教諭等に採用される者の数の推移その他の事情を考慮し、」というのはどういう意味ですか。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  90. 加戸守行

    加戸政府委員 これは初任者研修という一年間にわたる大規模な行政施策の実施でございまして、そのためには学校としての受け入れ態勢等の問題もございますし、また教員の需給状況というのを考える必要があるわけでございます。そういう意味におきまして、例えば一つの具体的な例でございますけれども児童生徒が増加している段階において、例えば高等学校教員の場合にそれを初年度から実施するということが適当かどうかという問題もございます。そういった点で職種間におきます採用状況の見通しも立てる必要がございますし、それから、その他の事情といたしましては国及び地方の財政状況等もございますし、具体的に申し上げますと、私ども一つの例として申し上げましたが、文部省が概算要求する時点におきます予算編成のあり方等も関連をいたしますが、そういった教員の需給状況とか国、地方の財政状況等を総合勘案いたしまして、どの校種から段階的に実施するのかを判断するということでございまして、先ほど申し上げましたように文部省としての願望はございますけれども、その願望がそのとおり達成するかどうかは今申し上げた状況によって左右される可能性があるということでございます。
  91. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今、局長いろいろ言われたけれども、その数及び事情というのは二つです。一つは、児童生徒の推移に伴う教師の需給関係。もう一つは、財政状況でしょう。この二つをここでは「数の推移その他の事情」というふうに理解して説明されたわけですね。これはそう確認しますよ。  この附則の第三条は、当分の間という今までの法律用語を使わずに、昭和六十四年から六十六年までと年度を特定化しておいて、その上で今言った数及び特別な事情を考えると、財政的にも全員は無理だな。だから、三年間担保したのょ。だから、ここに「数の推移その他の事情を考慮し、」という言葉を入れたのです。そうしておいて二項では、研修しない場合には六カ月採用はありますよ、別の場合にはありますよと特定している。二項でそれを起こしたのです。このような附則で年度をきちんと指定して、そして数及びその他の事情を考慮しという条文を生かすことによって経過措置を決めた意味はどこにありますか。
  92. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもは基本的には、本則で規定されておりますように、でき得べくんば昭和六十四年度に全校種の全員に対して初任者研修実施することが、公平の原則からは望ましいと考えております。しかしながら、現下の教員の需給状況とか国、地方の財政状況等から考えまして、この施策を一遍に単年度で全面実施をすることは極めて難しいという判断に立ちまして、附則におきましては、六十六年度までの間は初任者研修を「実施しないことができる」と書いておりまして、実施しようと思ったら実施することはできるわけです、それは財政状況その他の状況が許せばでございますが。したがって、ある校種についてはこういった諸般の状況等にかんがみ「実施しないことができる」ということによりまして段階実施の道を附則で開いたということでございまして、本則で書いておりますように、本来ならば全校種について一斉に本格実施をすることが理想ではあろうというぐあいには思っております。しかし、それは許されない現下の状況の中で、附則におきまして段階実施規定するという考え方で、しかもそれは当分の間という規定をいたしませんでしたのは、間をあけるということは、ある校種とある校種の間が離れ過ぎるということは、ある教員はついて見れば初任者研修ということを一年間受けることができる、その他の校種は受けることができないということにつきましては、やはり全国的な教育水準の維持向上という観点で問題がございますので、できる限り短い年度で接続的に実施したいという考え方で、附則三条を設けている次第でございます。
  93. 嶋崎譲

    嶋崎委員 きのう、法制局の専門の審議官とちゃんと議論をしたのです。この法律をつくるとき法制局と皆さんとは物すごく研究をした、討論をした。そのときにこの附則三条で救済したのです。それはどういう意味かというと、本来ならば、同じ教免の資格を持った教師が四月一日から赴任したとき、片や一年間の条件つき採用、片や半年の条件つき採用というのは法のもとの公平さを欠く、本来ならば欠くのです。ところが、ここに言っているように「数の推移その他の事情」を考えると、また財政的にも、一度に法のもとの公平さを実施することばできない。だから三年間という期限を切ってこれを担保として、きちんと担保をとって三年間、その三年間を過ぎたら今度は違うのです、当分の間じゃないのですから。三年間が過ぎたらその差はなくするという前提でこの附則は入っている、こう理解すべきだと思うが、どうですか。
  94. 加戸守行

    加戸政府委員 あくまでも条件つき採用期間を一年とするゆえんは、初任者研修を受けることによってその勤務形態が特殊なものに変化する、そういった観点から一年と六カ月の差がついているわけでございまして、附則三条一項では、先ほど申し上げました諸般の事情により一斉に実施できない校種というのが出現するわけでございますから、その初任者研修の対象とならない校種の教員につきましては従来どおりの勤務形態でございますので、その初任者研修実施されるまでの間につきましては六カ月の条件つき採用期間適用するということを、勤務形態特殊性の変化が生ずるか生じないかによって差をつけているということでございます。
  95. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうじゃないのです。この附則第三条の見出しを見てごらんなさい。「初任者研修実施等に関する経過措置」なんです。その経過は三年間と指定したわけです。その三年間の中では六カ月の条件つきもあれば一年の条件つきもあるよ、そういう特殊性というものを、本則では一年に持っていきたいということはあるけれども、実際には財政事情を考えたらできないのです。だから三年間を担保して、その法の公平さを欠かないように猶予期間を置いたという意味で、法のもとの公正さをこれで担保したんだというのが法制局の見解なんです。私はきのう法制局の審議官とやっています、名前は挙げませんけれども。  だったら、逆に聞きますよ。三年間たって、ここに書いてあるように全員に対する条件づき採用が一年になるような研修ができるということでなければならぬと思うが、いかがですか。
  96. 加戸守行

    加戸政府委員 これはもちろん附則で年度を指定いたしておりますから、附則三条一項で書いておりますそれぞれの年度の間は初任者研修実施しないことができるということだけでございますので、その期間が切れました昭和六十七年度からは本則へ戻りまして、任命権者はすべての小・中・高・盲・聾・養学校職種の新採教員に対します一年間の研修実施義務が生ずるわけでございます。そのことに伴いまして、本則におきます条件つき採用期間規定も全員に適用されるという結果になります。
  97. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今の局長答弁だと、三年後には一年条件づき採用というふうに全員の研修ができるという前提でなければ、三年間の経過措置という意味はなくなるんじゃないですか。三年経過しても、いい人と悪い人とまた差があるのですか、できる人とできぬ人と差があるのですか。
  98. 加戸守行

    加戸政府委員 繰り返しになりますが、昭和六十七年度からは小中高等学校、特殊教育学校の新採用教員全員に対しまして初任者研修実施することが任命権者に義務づけられるわけでございますし、また、この初任者研修の対象となる教員条件つき採用期間が一年という形でそろうわけでございます。そういう意味では、このような初任者研修を全面的に実施をする義務というのは、六十六年度までは猶予期間がございますが、六十七年度は全面実施になるということを法律上、附則三条の規定によりまして解釈することができるわけでございます。
  99. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、これだけに時間をとっておるわけにいきませんから二点だけ整理しておきましょう。今後の議論ですから議事録に残しておきます。  第一点は、現在の三年間の中に、昭和六十四年から六十六年までの間に一年間の条件づき採用初任者教師と六カ月の採用初任者教師がいるという意味で、この三年間は同じ資格を持った教師にその差があるという意味で、公務員としての法の公正さを欠いている、これが第一点。聞いておいてください、局長。  第二番目は、しかしそうはいっても、財政事情もあり数の推移もあるから三年間は担保をしておきましょう。その三年の間にこういう仕事をやってみて、そして全員ができるな、言葉をかえて言えば、財政事情がよくなることを前提として、六十七年以降は全員一年間条件づき採用になるために全員の研修を行うという意味で三年間というものの猶予を決めている、これが附則の意味だ、私はこう理解します。  その二点について簡潔に答えてください。時間をむだにしないでください。
  100. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修を受けるか受けないかによりまして勤務形態が変わるわけでございます。そういう意味でその差はございますが、今申し上げましたように、初任者研修実施するかどうかというのは、それぞれの県におきます県内の研修体制を整備するために、全教師に一遍にやれるか、段階的にやるか、あるいは財政的な事情によりまして全部できるかできないかという諸般の要素がございますので、そういった状況のもとにおいて、初任者研修実施する、実施しないの職種間の、職種といいますか校種によります差が出てくるわけでございまして、そのことに伴って勤務形態に運動し、条件つき採用期間を一年とするか六カ月とするかという違いがございますけれども、このことは合理的な取り扱いの差でございまして、法のもとの平等に反しないことは先ほども申し上げたとおりでございます。
  101. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこは意見の打ちっぱなしにしておきましょう。  それで、僕は法制局を呼ばなかったのは、法制局は、憲法の法の前の公正という原則から見てこういう差があるのは本来はおかしいと思う、しかし三年間という猶予期間を当分の間でなくて決めたということは、三年後には全員を実施する、つまり差別をなくするということになる担保だから、三年間の猶予という意味でこれは適法だ、そう判断をしましたと言うので、呼んでみたって、これは適法だと言うのですから、それならあなたはあしたは来なくていいよ、途中の討論の経過を教えてくれるのならいいけれども、それは僕には教えましたけれども、ここでは言いません、それなら来ぬでよろしいというふうにしたのです。したがってまだ時間もあることですし、三年間猶予がありますから、いずれ一般質問のところで改めて議論をし直すことにいたしましょう。  そこで、三年したらこの法律の附則は消えるわけですから、その段階でどのように対処するかの判断の一つのめどになるというふうに理解ができますね。大臣いかがですか。
  102. 中島源太郎

    中島国務大臣 附則第三条に関しましてはそのとおりでございます。
  103. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それでいいのです。当面三年間という担保で、差別はあるが、我々はこれは認めませんよ。例えばこれは、片一方は六カ月の条件づき採用だから、こっちも仮に研修は一年やっても採用は六カ月で条件づき採用ということで、ほかの教育公務員と同じ扱いができるわけだ。にもかかわらず、こっちは一年でやって、片一方は六カ月というように差異を設けることは法の前の公正を欠く。これが私の主張です。これを議論している時間がありません。そこを明らかにした上で、三年後には検討し直すということを今大臣がおっしゃいましたから、次に行きましょう。  さて、今まで研修を六カ月間やってみて、これは教師に本採用できぬなというようなケースは全国で幾つありましたか。
  104. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほどから申し上げておりますように、研修によりまして成績を評価するのではなくて、現実に勤務されておる勤務の実態から、勤務成績に基づきまして職責遂行能力があるかどうかを判断するわけでございます。  具体的な例といたしまして、現在までのところ、条件つき採用期間六カ月のもとで全国の公立学校でございますが、新採教員、毎年三万人程度ございますけれども、ちょっと年度が確たる数字ではございませんが、過去三カ年でございますが、多分五十八年度、五十九年度、六十年度だったと思いますが、一名、二名、一名ということで、年に一人か二人程度が正式採用にならないケースでございます。ただし、これ以外にも途中で本人の自発的意思によりまして教員をやめたいということで退職される方がございますが、条件つき採用期間に正式採用にならなかったものは今のようなケースでございます。
  105. 嶋崎譲

    嶋崎委員 大臣、今お聞きになったでしょう。一年間に一人ないしは二人くらい、それは研修だけじゃないんですよ。という例があるとすれば六カ月間で採用できる十分な客観的根拠があることになる。そうなれば九九%くらいですよ。したがって条件づき採用を一年に延ばす理由はない、こう私は思います。研修は一年で終わりだという考え方はあっていいと僕は言っているのです。しかし条件づき採用は六カ月で、一年の研修をしないで赴任した人と同じような採用条件適用すべきであるというのが私の主張です。これについては意見が違うのですから、もうこれ以上はやりません。大臣、これで十三条の二の問題は終わったのです。  さあ、今度は二十条の二の問題。第二十条の二では、「小学校等の教諭等の任命権者」、これは県教委ですね。任命権者は「その採用の日から一年間の教諭の職務遂行に必要な事項に関する実践的な研修実施しなければならない。」こうなっていますね。さて、ここで聞きます。教育公務員特例法十九条では、教師は「職責」を果たさなければならないと書いたが、二十条の二では「採用の日から一年間の教諭の職務遂行に必要な事項」に変わった。「職責」がなぜ研修に際して「一年間の教諭の職務遂行に必要な事項」、「職責」がどうして「職務」に変わったのですか、その内容を言ってください。
  106. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員につきまして、「絶えず研究修養に努めなければならない」というその目的として、「その職責遂行するために」という規定がございます。「職責」といいますのは、先生おっしゃいますように、ある意味では職務と責任という形でブレークダウンできるわけでございますが、ここで言っておりますのは、教員がみずからを磨く際には、その自分の職務遂行するためであると同時に、さらに広く社会的な責任の要請といいますか、責任を果たすためにという抽象的、道義的な意味での責務規定いたしております。  今回、二十条の二におきまして「教諭の職務遂行に必要な事項に関する実践的な研修」という規定を設けておりますのは、採用されました教員がそれぞれの仕事、職務遂行するために必要な事項についての実践的な研修でございまして、先ほど申し上げました教育公務員特例法の上での広い社会的な責任を果たすための事項についての実践的な研修という書き方はいたしておりません。このことは、具体的にそれぞれの配属されました学校においてみずから行う事柄についての実践的な研修でございまして、教育公務員特例法でなお広く求めて本人が社会的に責任を果たすための特別なそういう形での研修までを、実施を義務づけているわけではございません。しかしながら、職務遂行に関する必要な事項についての研修でございましても、ひいてはそれは広い社会的責任を果たすために役に立つ研修も包含されていくことになろうかとは思います。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今の局長のあれによると、十九条一項に言う「職責」とは職務と責任だとおっしゃいましたね。そして、その責任は、その後に言っている「研究」と「修養」、その修養を含む広い文化的な教養という意味で、直接子供たちや親たちに対して責任を負うためにはその責任を果たさなければならぬということですね。ところが十九条の一項には、その「研究」と「修養」は、その前に「絶えず」と書いてあるのです。「絶えず」なんです。つまり、四月に入って子供たち教師として責任者になったときには、職務と責任に関する絶えざる努力をするというのが第十九条の第一項なんです。ところが、あなた方がやろうとする行政研修、これは職務であって職責ではない。ということになると、職責に伴うようなその間の初任者の勉強は、あなたたちが研修を始めると物すごく忙しいのです。今までやっている試行では現場の先生方は忙しい、忙しいと言っているのですから、こんな状態のときに、職務と責任というものを絶えずというふうに十九条で言っていることの阻害になりはしないかということを私はおそれるのです。なると言っていない。おそれるのです。したがって、ここでわざわざ「職務」と言ったのは、肝心の教師としての全人格的な職責というもののある側面をアプローチして規定をしたと考えざるを得ない。  その「職務遂行に必要な事項」というのは、具体的な中身は何ですか。
  108. 加戸守行

    加戸政府委員 教員職務は多岐多様にわたるわけでございますけれども、具体的に申し上げますれば、学習指導、教材研究学級経営児童生徒への接し方、生徒指導あるいは諸般の校務分掌等もそれぞれ含まれておると思いますけれども、こういったような学校の中で教員としての仕事を行いますに際して、それぞれ必要と考えられる事項についての実践的な研修任命権者に義務づけているわけでございます。
  109. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ここでは余り抽象的な議論をやっていてもしようがないけれども、十九条一項で言っている(研修)というのは「研究」と「修養」なんです。この両者から成っていて、そして、この「修養」というのは文化的・社会的教養ということを含んでいるというのは局長答弁されたとおりです。ところが、初任研の場合はこれを職務に関する研修というところに限定したわけです。法律的には限定したわけです。そして、それをさらに「実践的な研修」と言ったのです。そうすると、ここで言っている「職務」というのは「実践的な研修」というものと関連させてみると中身は何ですか。「修養」は必要としないのですか。
  110. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案しております「職務遂行に必要な事項に関する実践的な研修」というのは、こういうものを実施しなければならないということを任命権者に義務づけたわけでございます。先ほど申し上げました教員としての仕事を行う際の、例えばそれぞれの学習指導を中核といたしました事前事後の準備であるとか、あるいは児童生徒への接し方等々、各般にわたる学校職務と関連して行う研修を義務づけているわけでございますが、研修であります以上は、当然のことながら、教員の使命感を持ってもらうための、例えば諸般の講義等もございましょうし、あるいは幅広い知見を一般的な教養として持ってもらうということも必要でございましょうし、さらには他の企業あるいは他の施設等の参観等によりまして、あるいは新任教員相互間の交流を深めることによりましていろいろな知見、体験等を得、そのことが結果的にはそれぞれの職務遂行の上に役立つ形の研修になるであろうと思います。しかし、法律の上で書いておりますのは、「実践的」というのはその場で実際的に即役立つというような観点ニュアンス研修を義務づけているわけでございまして、それ以外の研修実施してはならないということではございません。
  111. 嶋崎譲

    嶋崎委員 ここも意見の相違を明確にしておきましょう。十九条第一項で言う(研修)とは「絶えず研究修養」なんです。それが教師の持っている自主的な教師としての研修なんです。非常に大事なことなんです。それに対して今度は、ここで言っている「職務遂行」ということになると、公務員一般なんです。国家公務員地方公務員の「職務遂行」ということとここで言っている「職務遂行」は言葉の上では一致してくるんです。ところが片一方教育公務員特例法ですから、十九条第一項では(研修)と言って、そして第二項で行政のサポートすべき課題を明らかにしているわけです。だから、同じく一年間の教師研修という場合、片や「実践的な研修」でもいいですよ、しかしその研修は、「職務の」というふうに限定してしまいますと、公務員の能率的な行政的側面、こちらにウエートがかかりがちになるのですよ。恐らくあなたは、役人ですから行政の方しかわからぬかもしれません。しかし、文部教官や私たちのように教師の現場から見ますと、あなたと意見が違うのです。我々は「教育」というものを人間の能力を引き出すためにつかさどる大事な文化的な営みと思っております。だから、外から「職務」と言うのと研修というものの中身は違う。だからこそ十九条一項、二項で起こし、二十条に長期研修を決めたのです。そういう意味で、一つだけきちんとした判例を挙げておきましょう。  昭和四十四年三月五日の松江地裁の判決。これは教育行政の任務に関する研修について出た判決であります。「教育公務員研修は、その職務特殊性、並びに一般に研修が本人の意思に反して行なわれる場合は十分な効果を期待できないこと、教育公務員特例法十九条、二十条が教育公務員研修につき自主性を基調とし、これを奨励するため任命権者研修計画の樹立とその実施を命じていること等に鑑み、」皆さんがやっていいのです。しかし「事前に当該教職員の意向を確かめ、その意思を尊重して実施することが望ましい。」こういう判決があるということを頭に置いておいてください。ですから、あなた方が上から与える研修だけではなくて、教育公務員研修の場合には、現場の教師たちの意向、学校での教師の集団的な検討の意向、その最終責任は校長です、それを受けて行政研修というもののあり方が規定されるように十九条、二十条は解釈すべきであると判示しているのです。これだけ申し上げておきましょう。したがって、これから後の質問はこれに関連をいたします。  さて、二十条の二の第二項は、「任命権者が定める初任者研修に関する計画は、教員の経験に応じて実施する体系的な研修の一環をなすものとして樹立されなければならない。」大臣は、この説明の二ページの最初にこういうふうに言いました。「この時期に」、つまり初任者研修ですね、「この時期に現職研修の第一段階として、組織的、計画的な研修実施し、」「第一段階」ですよ。内容的には大臣はこうおっしゃった。法律では「体系的な研修」と言っているが、これは、初任者研修の上に五年研修、十年研修、そういう一連の現職教官の研修の将来計画を含めて、初任者研修にひっかけて将来の体系的研修を構想している条項なんですか、条項でないのですか。
  112. 中島源太郎

    中島国務大臣 これはおっしゃるように、私は途中までは嶋崎委員とずっと一緒でございます。肝心なところが違うのがちょっと不思議なのですけれども。したがって、嶋崎委員がおっしゃるのと私と一致しておりますのは、第十九条の一項というのは、「研究修養」というのは「絶えず」その生涯を通じて努めなければならない、こういうことであります。したがって、その第二項に、行政研修もそれをやらなければならないという義務規定があるわけでありますから、それは五年、十年、二十年というようなことは設定しておりません。しかし、例えばここでは五年、十年、二十年というふうに、それは五年、十年、十五年、二十年になるのかどうかはあれですけれども、その職責の過程において体系的に研修していく、初任者研修はその一環である、そのように位置づけているわけであります。
  113. 嶋崎譲

    嶋崎委員 では、大臣の今の意味は、この体系的な最初の第一歩という意味は、臨教審の中で言われている五年研修、十年研修ということと関係ない、そう理解しますよ。よろしいですね。
  114. 中島源太郎

    中島国務大臣 例えばそういう御提言もあるということを、もちろん記憶にとどめた上で申し上げておるわけでございます。
  115. 嶋崎譲

    嶋崎委員 わかった。今の段階はそれでよろしい。これをさらに新たに問題にしていくとすれば、現職研修研修問題について新たな議論をし直さなければなりませんから、きょうはこれでよろしい。  さて、次は三項です。今度は、「任命権者は、初任者研修を受ける者の所属する学校の教頭、教諭又は講師のうちから、指導教員を命じるものとする。」と書いてある。任命権者というのは、これはここに書いてあるように、「地方教育行政組織及び運営に関する法律第三十七条第一項に規定する県費負担教職員については、市町村の教育委員会。次条第一項において同じ。」こう書いてありますね。さて、任命権者初任者研修をやる場合の指導教官を命ずるというのは、だれがどんな手続で命ずるのですか。
  116. 加戸守行

    加戸政府委員 この第三項の規定は、都道府県立学校と市町村立学校との間に差があるわけでございまして、高等学校、特殊教育学校等の都道府県立学校教員につきましては、都道府県教育委員会が服務監督権を含む任命権者たるの立場に立ちまして指導教員を命ずるわけでございます。それから県費負担教職員でございます市町村立学校教員につきましては、服務監督権者でございます市町村教育委員会指導教員を命ずる。その命じ方といたしましては、当然ながら、学校の中でだれが指導教員としてふさわしいかという判断から、学校長の意見を聞いて当該学校の中の教頭、教諭、または講師の中から選任をするという形になろうかと思います。
  117. 嶋崎譲

    嶋崎委員 それでは聞きましょう。主任の場合には、命ずる方式には三つあった。これは委員会で大問題になったですね。諸澤教育局長の発言と文部大臣が意見が違って、それで諸澤さんの発言を取り消したのです。そういう経験が私、十何年前にありますから。この命じる方式には、A薬、校長の意見を聞いて教育委員会が任命する。B案、教育委員会の承認を得て校長が命ずる。C案、校長が命じ、教育委員会に報告する。この三つのうちのどれですか。
  118. 加戸守行

    加戸政府委員 六十二年度、六十三年度におきまして、現在初任者研修の試行をいたしております。その試行段階として、文部省が各県に流しましたモデル案では、学校長の意見を聞いて教育委員会が命課をするということになっております。おおむねそのような形で措置されておりますが、県によりましては、教育委員会からの内部委任を受けまして校長が命じ、教育委員会に報告をしている県もございます。そういった点では、取り扱いにつきましては、今先生から主任の命課の方法について三通りの御指摘がございましたけれども、どのような形でなされるかということは、都道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会が実情に応じて判断をされることと思います。基本的には、法制上は、この教育公務員特例法の改正によりまして服務監督権者である教育委員会指導教員を命じるとしか書いてございませんけれども、その運用は、その県におきまして主任の場合と同様に多様な方法があり得るだろうと思っております。
  119. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、ここで一つ確認をしておきましょう。任命権者指導教官を命ずるとは、各県の教育委員会における実情に基づいて、服務監督権者である例えば校長がそれを決めて報告をする場合もあれば、同時にまた、教育委員会が現場と相談をして任命するという場合もあるということで、これは多様なんですね、今の回答でいきますと。だから、ABCどれですかと聞いたのに対して、Bの場合もあればAの場合もあればCの場合もあるという意味ですね。
  120. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案申し上げております教育公務員特例法新設規定の二十条の二の第三項では、服務監督権者が当該学校の「教諭又は講師のうちから、指導教員を命じる」という書き方、規定のいたし方をしております。したがいまして、教育委員会が命課をする権限を有しておりますが、実態的な運用の問題としまして、これ以外にも教育委員会が持っている命課権を内部委任によりまして学校長にゆだね、学校長が命課をし教育委員会に報告するとか、あるいは教育委員会の承認を得て命課をするとか、いろいろな方法が実際上は既に試行段階でもございますから、本格実施の場合もあり得るだろうということを申し上げているところでございます。
  121. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今のは議事録にきちんと残りましたから、それぞれ県段階で任命の方式については多様だということですね。学校長だって、現場の教師に相談もしないで、上から「おまえ」という命令を出すこともあるでしょう。この間は、うちの馬場委員に対して職務命令だと言いましたね。職務命令ということになれば、基本は服務監督権を持つ校長が命ずるのでしょう。任命権者は、当然最終的に任命する権限を持っているわけですが、しかし、途中で校長さんが指導教官というものを判断するときには、その学校先生方の中でこの人にしたいなという意向が当然まず手続としてあって、そして、それが地教委や県教委に報告されていくというのが筋だと私は思っています。したがって、実情に応じてその選考のプロセスはいろいろあるという今の確認だけで、あとは現場の教師たちで対処してくださればよろしいと思います。  さて、今度は第四項、「指導教員は、初任者は対して教諭の職務の」また「職務」になっておるのです。「職務遂行に必要な事項について指導及び助言を行うものとする。」これは、今度は指導教員指導・助言という意味であります。さて、この指導教員は、非常勤講師を派遣してほしいというふうに教育委員会などに言ってきたときに、非常勤講師を派遣することになっていますね。これは地教行法の改正によって行うことになっています。その場合に、現場の教頭や主任や教諭の中から指導教官を選ぶわけだが、非常勤講師が欲しいという場合の非常勤講師は指導教官として来るのか、それとも指導教官は内部で決めるが、例えば初任者が何人もいるというようなことでそれだけでは十分でないから、その教育をサポートするために非常勤職員を送るという意味か、どっちですか。
  122. 加戸守行

    加戸政府委員 この地教行法の規定の改正によりまして、いわゆる市町村立学校におきます非常勤講師を都道府県委員会に派遣を求めることができる制度を設けおります。これは初任者研修実施のために必要な場合ということでございまして、形態としましては、先生が今おっしゃいました二通りの方法、すなわち派遣された非常勤講師が指導教員としての指導に当たる場合と、校内で指導教員を命課した後にその後補充の意味で非常勤講師を充てる場合と、二通りがあり得ます。
  123. 嶋崎譲

    嶋崎委員 わかりました。  さて、そうしますと、現場で選ばれた指導教員初任者との間には、この間から局長がたびたび答弁なさっているようにマン・ツー・マン方式によるところのつまり教育研修活動を行う、こう言ってきましたね。それと同時に、大臣局長も、ほかの委員質問の中で、しかしマン・ツー・マンだといってみても現場の教育の協同の中でそれを推進しなければならぬとも言いました。そう確認してよろしいですね。指導教官は校長が選んであげるか現場の声を聞いた上で任命するかは別として、協同の作業の一環としてなさるということは確認できますね。簡単に答えてください、もう時間がありませんから。
  124. 中島源太郎

    中島国務大臣 指導教員と新任教員が中核になって、全校的にそれをサポートしていく、こういう考えであります。
  125. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そうしますと、それはそれでいいでしょう。  そこで、もう時間がありませんから一つだけ質問しましょう。文部省は、今の高等学校中学校小学校にどれだけ非常勤講師がおるか、六十年でも六十一年でも六十二年でもいい、確認していたら数字を出してください。
  126. 加戸守行

    加戸政府委員 手元に資料を持ち合わせておりませんので恐縮でございますが、非常勤講師の数は高等学校で一番多いと思っております。そしてその数は数万を超えておる、十万のオーダーにかなり近い数字ではなかったかとおぼろげながら記憶いたしております。
  127. 嶋崎譲

    嶋崎委員 その非常勤講師に二つの種類があるのを御存じですか。知らないはずはないでしょう。簡潔に答えてください、時間がありませんから。——わからないですか。では説明しましょう。  非常勤講師には、地方公務員法二十二条で規定される臨時任用の常勤的講師、産休代用だとか育児休業法十五条等のものです。もう一つは学校教育法二十八条、教師教育をつかさどると書いて、後の方に非常勤が書いてありますが、この学校教育法二十八条同法施行規則で適用されている非常勤の二種類があるのです。これは確認できますね。もう時間がありませんから結論だけでいいです。
  128. 加戸守行

    加戸政府委員 いわゆる時間講師と呼ばれております時間単位で雇用されている講師と、先生おっしゃいますように、好ましい形態ではございませんが、常勤的な形態に近い非常勤講師が存在するというぐあいに実情を理解いたしております。
  129. 嶋崎譲

    嶋崎委員 文部省、六十年、六十一年ぐらいでいい、六十二年はちょっと無理だろうと思うので、その辺の数字をつかんでおったら、今すぐでなくていいから、後で資料を下さい。いいですね。
  130. 加戸守行

    加戸政府委員 手元に資料は持ち合わせておりませんが、非常勤講師については把握した数字がございます。しかし、果たして時間講師と今おっしゃったような常勤的な非常勤講師と分類していたかどうか、ちょっと定かではございません。
  131. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そういう調査ではだめなんです。皆さんが現場を調査するときには、非常勤講師について、特に今申し上げた大事な学校教育法二十八条、教育をつかさどるのですよ、その非常勤講師が高等学校や中学や小学校にどれだけ配置されているかということをつかまないでどうするのです。今の学校教育の現場がどういう定数で動いておるかがわからぬじゃないですか。したがって、私は資料要求としては、そういう地方公務員法二十二条に基づくところの非常勤と、それから学校教育法二十八条によっている施行規則四十八条の二で採用されているところの非常勤、これを分けて、せめて六十年でもいいから、六十一年でもいいから、全国調査した資料を提出を願いたい。いいですな。
  132. 加戸守行

    加戸政府委員 今の分類された数字がございますれば提出いたしたいと思いますが、分類ができているかどうか。非常勤講師全体の数字はともかくお届けさせていただきます。
  133. 嶋崎譲

    嶋崎委員 努力しなさい。  さて、そこで聞きます。非常勤講師と言われる人の待遇はどうなっているか御存じですか。知っているはずでしょう。聞きましょう。  赴任旅費、こんなものは一つもありません。外出した場合の旅費、これもない。それからもろもろの休暇、これもありません。共済組合、健康保険、厚生年金、これもありません。雇用保険、互助組合、これもありません。  非常勤講師の時間給というのは平均幾らぐらいか御存じですか。知らないでしょう。わからないでしょう。あなた助成局長ですよ。これは平均二千円。待遇はこういう実情なんです。わかりますね。  その数については朝日新聞の調査があります。新聞社が調査した。だけれども文部省の方はそれについて今まで具体的な数字で対応していないのです。だからそれを出しなさいと言っているのです。その数字を挙げている時間はありませんので、今は申し上げません。  つまり、現場にいる非常勤講師の中には、同じ教育をつかさどる非常勤講師がいて、この非常勤講師は待遇が大変に悪い状態で、非常に安い賃金で働いて現場の教育をつかさどっているのです。わかりますね。  さて、今度の改正の指導教官の場合、指導教官もしくは必要なときには非常勤講師として、地教行法で保障された非常勤講師が派遣されることになります。それはそのとおりですな。そうしますと、学校現場ではどうなるか。同じ学級の経営を行い、きちんとした教育に携わっている非常勤講師で大変待遇の悪いのが現実にいる。そこへ今度は指導教官を入れて、初任者研修のために大変きちんとした条件を持った方が非常勤講師としてお見えになる。  さてここで、前者の非常勤講師は職員会議に出ていると思いますか、出ていないと思いますか、どっちですか。
  134. 加戸守行

    加戸政府委員 個々の実態はつぶさに承知しておりませんが、通常形態でございますと、非常勤講師は職員会議には出ていないのではないかと思います。
  135. 嶋崎譲

    嶋崎委員 出なければいけないのよ。学校を協同で経営しているのでしょう、非常勤であっても教育をつかさどっているのですから。組合の分会の話をしているのではないのですよ。職員が集まって、教師が集まって、一年間の行事を計画したりカリキュラムの編成をやったり教材を検討したり、同じことをするのですよ。そういう人たちがほかの教師と協同しないでいたら、現実の非常勤講師の機能はあり得ません。同じことが、今度派遣される非常勤、これも学校経営全体の中にいなければ、指導教官が初任者先生に対して指導することはできぬでしょう。そうすれば、今度新たに派遣される非常勤講師も同じように、協同のための学年研修会的な性格のものから全体の年間行事に関係するものを含めて、一緒に協同して参加するということになるはずですが、いかがですか。
  136. 加戸守行

    加戸政府委員 今回の地教行法の規定に基づきまして派遣される非常勤講師の場合でございますと、その方が指導教員に充てられるのかあるいは指導教員の穴埋め教員としての立場に立つのかという違いはあると思いますが、少なくとも、指導教員の立場に立たれる非常勤講師につきましては、学校の経営の流れというものを承知していなければ初任者教員に対する指導が十全を期せませんので、でき得べくんばそういった学校経営の流れに出席させていただくことが望ましいと考えております。
  137. 嶋崎譲

    嶋崎委員 そこで、もうあとの時間がないから、まだ中西委員質問に立つことになっておりますから、問題を残しますが、指導教員というものを皆さんが、僕が言う主任のように現場で推薦するということにしたのなら、何も法律でわざわざ仰々しく、指導・助言のための指導教官といって任命しなくていいのです。現場でお決めになればいいのです、初任者のためになる人を。そしてみんなで協同して、初任者研修というものを校内の研修としてはやれるのです。校外研修の場合はいろいろなことがありましょう。しかし校内研修の場合、わざわざ指導教官の任命というものを法律事項として起こすというのは、これはその指導教官が指導・被指導という職場における上司とその下という関係をつくる性格を持つ法律事項だと私は思います。これは議論する時間がありません。したがって、そうじゃなくて、現場の教師たちがみずから、初任者の人たちが早く研修をしていくために、おまえはベテランだし、しっかり横についていてやれよと、みんなが協同でやってその任務を与えるというふうにしさえすれば、わざわざ法律事項で指導教官を任命して、そして指導・被指導の関係というものをやる必要はない。例えばマン・ツー・マンで、ときにはその教師の授業参観をやる、そしてそれに対して意見を述べる、そのときに初任者教師指導教官との間に教育で意見が違うことがあり得るわけです。片一方専門性を持った教師として赴任しているのですから、ただ若いというだけである。片一方はベテランだからといっても、教育の仕方は上手かもしれないが、別な意味で欠格条項があるかもしれない。これはわからぬですよ。したがって、その指導教官の持つ性格というのを学校における協同の経営という中の一環として位置づけるということであるならば、わざわざ法律事項で起こす必要はないというのが私の見解です。  皆さんは、その間に指導・被指導の中でベテラン教師を早くつくりたいというのかもしれないが、しかし、初任者研修で一年間も条件つきでやったってしょうがないんだから、一年やって教師はベテランになるんじゃないのです。現場に行って聞いてごらんなさい。一年間皆さんの研修を受けて、指導教官に指導されたらベテラン教師Kなれるというほど、教育の授業というのは甘くない。そんな短時間で全人裕的なエデュケーションというものが行われるものではないと私は思う。それが教育行政の違いです。行政は、能率を上げるためには研修をすればするほど早く事を覚えるけれども教師の場合には、絶えず粘り強く教育実践の経験を積んでいかなければだめだ。そういう意味で、指導教官の指導・助言は、学校教育法の教育をつかさどる、初任者研修をつかさどる考え方の中と外とでは大変に問題を残す、問題が残る、このことを申し上げて、時間が参りましたので、私の質問を終わります。  最後大臣に、私の全体の討論でどういう感想をお持ちになったか、感想だけ聞かしてください。
  138. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育全体の教職員がその生涯を通じて研修しなければならない、また行政研修はそういう機会を与え企画をしなければならない、そういう精神は非常に近いことをおっしゃるわけです。したがって全部は否定いたしませんけれども、その結果、私どもはそういうものを踏まえて、この初任者研修が意義あるもの、このように考えて御提案いたしておりますので、一層の御理解をいただきますようにお願い申し上げておきます。
  139. 嶋崎譲

    嶋崎委員 今後に大論争を残しまして、質問を終わります。
  140. 中村靖

    中村委員長 有島重武君。
  141. 有島重武

    ○有島委員 初任者研修の制度化をめぐりまして、教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案の審査をさせていただきます。  既に、非常に細かい論議の展開がございました。私は、これらを踏まえて、総括的な質問をまずさせていただきたいなというふうに思っております。  それで、どこの職場にありましても、就職をした人たちが研修をするのは当たり前なことでございますね。また、これは初任者に限らず研修というのはあって当たり前だと思います。ただし、これが法律事項でもって制度化されなければならぬということがどうかなと、いささかおかしいところがある。これも今議論があったから私は総括的に言いますが、現に試行が始められておる、それも結構なことだと思います。ところで、これが今回仮に法律として成立されなくても、この試行は進んでいくわけですね、大臣
  142. 中島源太郎

    中島国務大臣 初任者研修をお願いいたしておりますが、すべてに一斉にできない場合、その経過措置にあるものは試行が続いてまいります。
  143. 有島重武

    ○有島委員 だから、この試行はここ一、二年はどっちみち進んでいきますね。
  144. 中島源太郎

    中島国務大臣 どの部分とは今申せません。それは概算要求で私どもが頑張った結果でございますけれども、その経過措置に入る部分については試行が続いてまいります。
  145. 有島重武

    ○有島委員 進んでいくんですね。  それで、これは来年度成立じゃどうしても困るんだという、こういった決定的な理由が何かあるんだったら、一言おっしゃってください。
  146. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育というものは人づくりでございますし、また「教育は人なり」とも言われております。その初任の間に実践的な指導力あるいは使命感を養っていただくということは、常々希望をいたしておるところでございますし、また六十二年度の試行の結果、いろいろなアンケートを見ますと、これが大変効果を上げておるという結果が多いものでございますから、これは今回ぜひ御成立をいただきたい、そういう意味で御提案申し上げておるわけでございますので、速やかな御賛成と御成立をお願いしたい、こう思っております。
  147. 有島重武

    ○有島委員 「善は急げ」と申しますから、それは早い方がいいとお思いになるのはいいかもしれない。ところが、善悪よくわからぬという人たちもいるわけです。それで試行をしているわけでしょう。試行するというのは大いにやって結構ですが、まあ、そんなに急いでどこへ行くというようなせりふもあるわけです。だから、今の大臣のお答えの中には、早い方がいいというだけの話なんだ、どうでもことしでなければ困る、この点でこうやるのだ、そういう決定的なものは余りなかったというふうに私は受け取ります。  次に行きますが、これも随分この委員会で議論の種になったのですが、教育公務員特例法によりまして、「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、」これを妨害する政治行為は禁止する、そういったことですね。そういった何か通達をお出しになったやに承っておりますが、この通達の文章でちょっと紛らわしいところがあるわけですね。それで随分議論を醸しておる。初任者研修を制度化するかどうか、これをこの委員会で、立法府で今審議をしておる、そういったときでございますね。そのときに、通達の文の中に「初任者研修実施」、こう書いてある場所があるのですね。まだ実施していないわけなんで、これは行政府の越権行為であるというような疑いがあるんじゃないか。僕はあれを見た途端にそう思ったのですね。よくよく読んでみると、あるいは今までのこの委員会での御答弁を承っていると、いや、これは初任者研修実施じゃなくて初任者研修の試行の実施である、こういうお話でございましたね。これは紛らわしいから御訂正になる必要があると私は思います。訂正の御用意がおありになるかどうか。これも大臣に承ってもよろしいのだけれども、いかがですか。
  148. 中島源太郎

    中島国務大臣 紛らわしいということはその箇所だけでよろしいかどうか、ちょっと一言添えさせていただきますが、何回も申し上げておりますように、この局長通知は、学校教育の信頼を国民から奪うようなことをしてはいけない。それは一つには、その違法行為あるいは教育の中立性を損なうようなことがあって、国民から学校教育が信頼を失うことがないように、これが使命でございます。じゃ、それはどういうことかと申しますと、例えば「国の機関又は公の機関において決定した政策」が実施される場合に、それを妨害するようなというふうに書いておるわけでございまして、それが前段でございます。ここで申し上げておる「例えば」というのは、現在試行を行っております初任者研修実施、このようにお読みいただければ正しいと思います。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  149. 有島重武

    ○有島委員 だから、そこを、今大臣がおっしゃったような説明が必要なんだ。そうでないと、これは「例えば初任者研修実施」ということに書きっ放しでございますと、既に実施されていることになって、それならこっちは審議する必要はないわけですよね。しかし審議をしていただくように御決定なすった、それが閣議の決定というのでしょうね。だからその辺は紛らわしい問題がある。現実に僕は、地方の議会に二、三問い合わせがあってそれで話をしているときに、このことは向こうから聞いてきたのです。どこかから知恵を与えられたわけじゃございません。地方議員さんから、あれ、もうこれは実施しちゃったのですか、こう言われた。僕も読んでみて、よく読んでみれば、このつもりなんだろうね、まさかこういう非常識なことはしないでしょう、こういうことです。これはわざとこういうふうにやったのか、あるいはこういった文書についてはこういうふうに書くというのが何かならわしであるのか。さっき大臣がおっしゃったように、きちんとだれにでもわかるように書くべきなのであるということですね。  これは委員長委員長に言ってよろしいですか。このままの文章では、ちょっとこれは行政府のオーバーラン、越権の疑いが十分あるというふうに私は感じるから、でも、これは委員会の問題ですから、このことについては委員長にお預けしたいのです。受け取っていただけますか。——委員長委員長にお聞きしています。
  150. 加戸守行

    加戸政府委員 ちょっと技術的なことが一つございますので説明させていただきたいと思いますが、教育助成局長通達の前文では「ストライキを含む全国統一闘争を組織しています」、それから後段で、「初任者研修の試行阻止のための集会、デモ等の反対行動を行うこととしております」というこの前書きを受けまして、「ストライキ、争議行為は法によって禁止されております」、そしてまた、いわゆる「公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修実施を妨害するために、」この文脈からいたしますれば、臨教審六法案粉砕反対のためのストライキは違法でございますよということと、初任者研修試行阻止のためのデモ、署名運動の企画等は禁止されておりますよという流れになっているわけでございまして、現在国会で審議されている法案の実施を妨害するためにと読まれる方はないのではないかと思います。
  151. 有島重武

    ○有島委員 委員長、いかがでしょうか。私はそういった説明をこれ以上聞いているということではないのです。今の御説明も大体承っているし、大臣の御説明も承った。このことについては御判定委員長にお任せしたい、ないしは委員長をめぐって理事会にお預けしたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  152. 岸田文武

    ○岸田委員長代理 委員長としてお預かりさせていただきますので、どうぞ質問の方はお続けいただきたいと思います。
  153. 有島重武

    ○有島委員 じゃ、お預けいたしましたね。院の権威を損なわないようにお願いをしたい、それだけのことです。別に他意はございません。  それから教育公務員特例法、そしてその条件つき採用期間、従来六カ月の規定があったということですね。それで、従来のことを承りたいのですけれども、この規定によりまして不採用になった人員というものはどのくらいあったのでしょうか。これは六十年、六十一年、六十二年ぐらいで結構でございますから、御報告をいただきたい。
  154. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど嶋崎先生にお答えしました年度が、ちょっと一年間違っておりましたので、ここであわせて訂正させていただきたいと思いますが、公立学校教員、年間約三万人程度の採用があるわけでございますが、昭和五十九年度は条件つき採用期間中の免職処分が二名でございます。それから六十年度が一名、六十一年度が二名。大体一名ないし二名というのが毎年度の傾向でございます。
  155. 有島重武

    ○有島委員 不採用の数が非常に少ないことはよくわかりました。  不採用理由が私は二通りあろうかと思うのです。私の知っている不採用は、本人がお家に不幸がございましてどうしても田舎に帰らなければならないということでした。それで、この期間中だったものだからみずからやめていったということもありました。そういった本人の生活事情という理由と、ほかに教員の資質において欠陥を認められたからやめていただいたというような例もあるのではなかろうかと思います。これは数人という今の数字でございますけれども、この辺の不採用理由はどんなふうですか。
  156. 加戸守行

    加戸政府委員 処分理由はさまざまでございますが、基本的にはその性格、行動に問題があるという観点からのものが一つのパターンでございまして、もう一つのパターンが精神疾患と思われるようなケースでございます。  具体的な事例として幾つか申し上げさせていただきますと、例えば五十九年度で二名免職処分がございました。一つが体罰、教科経営が不良、研修に不熱心、校長の指示に従わない、PTAに暴力を振るうなどで適格性を欠くと判断されたケースでございます。それから二番目が、いわゆる事務処理能力が著しく低い、勤務にたえない、そういったようなことで適格性を欠くというのが五十九年度の理由でございます。  六十年度の理由は精神性疾患によるものでございまして、適格性が欠如しているということで免職になっております。  それから六十一年度につきましては、一つが、生徒に対する処分決定前に処分案を生徒に漏えいしたとか、あるいは授業における指導性が欠如している、女生徒との交際をする、無免許運転をするなど問題行動が多く適格性を欠くという事例でございます。もう一つが、教員としての基本的素養に欠け、教科指導や校務処理がずさんで、教員としての節度を失するなど適格性を欠く、こういったものがここ近年の処分の理由でございます。
  157. 有島重武

    ○有島委員 一年に延長しなければならない、これは法律上の何か形式論的な問題も随分あるように今までの議論などで承りました。整合性がなくなってしまうから一年にしたんだ、こういうことでしたね。それで、一年の延長によって、今までは年に一人か二人ということでしたけれども、不採用者というのはふえていく可能性がありますか。
  158. 加戸守行

    加戸政府委員 ここ近年、教育の世界におきまして、問題行動教員とかいろいろな指摘があるわけでございます。その中の多くは精神的な疾患、あるいは精神的な異常ではございますけれども休職には至らない程度の方とか、そういった方々の問題というのが大きく取り上げられております。そういう意味におきまして、教員として本当に適格であるかどうかということは、この条件つき採用期間中に十分観察し、あと三十数年教員として勤務できるかどうかということを適正に判断する必要があるわけでございますけれども、それが過去ともすれば安易な判断に流れていたということがないわけでもございません。  現下のそういう問題指摘の中にありまして、どの程度その判断の場合の基準というものを置くのかという問題はございますけれども、基本的にはやはり、今の日本の、何といいますか、一たん採用した職員につきまして、これはどうしてもみんな人情が移りますから、できれば学校の中で抱えておきたいという風土の中では、今申し上げた条件つき採用期間中の免職処分が今までのケースに比べて急激にふえるという状況にはならないだろうというふうに実態的な見通しとしては思うわけでございますが、果たしてそれでいいのかどうかという問題は依然としてあり得ると思います。しかし、今申し上げましたように少なくとも外見的に異常な行動といって発現する場合でございますから、条件つき採用期間が六カ月から一年に延長されたことによって数が著しくふえるとは思っておりません。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 有島重武

    ○有島委員 今インターンの話が出ましたね。先ほどからの問答を聞いておりまして、いわゆる試補制度というものを以前随分問題にしましたが、その試補制度と今回の初任者研修と紛らわしい点があるように思いました。そこで、決定的にこの点で違うのだということがあれば御説明をいただきたいと思います。
  160. 加戸守行

    加戸政府委員 いわゆる試補制度と言われておりますものは、昭和二十二年に教育刷新委員会からの建議がございまして、その後の流れで、四回にわたります各種審議会の答申、建議がございますが、おおむねの考え方といたしましては、学校を卒業し教員免許を取った方を一年間特別な身分に置いて実地訓練を行わせ、その一年間の実地訓練の結果を踏まえて試験その他の成績判定をいたしまして、その中から教員採用するあるいは教員免許状を正規に出すとか、そういった性格のものでございまして、言うなれば、教員採用するかしないかの自由裁量を採用側が持つという、極めて身分不安定な特別の身分の形態のものでございます。具体的には、例えば西ドイツで採用しております試補制度と申しますのは、大学を卒業いたしまして各州の文部省が第一次試験を行いまして、その中で合格した者を、これはそれぞれ州によって違いますが、一年半程度の実地訓練、研修を行わせ、その結果、第二次試験を行って優秀な者を採用するというのが典型的な試補制度でございます。  今回導入いたしております初任者研修制度は、臨時教育審議会の第二次答申に提言されましたものを受けて実施するわけでございますが、これは従来と同様、教員として採用いたしまして、条件つき採用期間という条件はついておりますけれども、今までの教員と同じように採用し、そして採用された後に一年間にわたる研修実施するということでございまして、今回の制度提案におきましては、条件つき採用期間初任者研修期間に合わせて六カ月から一年間と延長はいたしますけれども、基本的には従来の一般公務員採用の状態とは変わらない形で行われるものでございまして、試補制度とは全く性格の違う、つまり採用するかしないかの自由裁量行為を持っている、その中から選抜して採用されるという不安定な身分の試補とは全く異なるものと理解いたしております。
  161. 有島重武

    ○有島委員 そうすると、給与体系や何か、試補制度の場合には一年いたのが一年分に換算されない、今度の場合にはちゃんと一年目、二年目とキャリアとなっていく、そこら辺が違う、一言で言うとそういうことでしょうか。
  162. 加戸守行

    加戸政府委員 これは、試補期間中の身分をどのような形で法律規定するかということとかかわる問題でございます。しかし、現在の提案申し上げております初任者研修制度というのは、通常職員と同じようにそこから勤続期間もスタートしますし、年金期間もあるいは在職期間も算定の基礎になる。通常、試補制度の場合はいかがでございましょうか、立法の仕方次第でございますけれども、多分そういった制度の適用のない形になるのではないかと思います。
  163. 有島重武

    ○有島委員 試補制度そのものが、しっかりした定義が余りありませんから無理もないと思うけれども……。  先ほどの不採用規定ですけれども、これは別に針小棒大に言うわけではないけれども、将来乱用されると困るなということはだれでも考えると思うのです。乱用の歯どめというのは何かありますか、ありませんか。
  164. 加戸守行

    加戸政府委員 条件つき採用期間中の職員につきましては、例えば地方公務員法の分限保障の規定適用されないことになっております。しかしながら、分限保障の規定と申しますのは、勤務実績がよくない場合、または心身に故障がある場合、その他職務遂行するに足る適格性を有しない場合には免職することができるという一般の規定でございまして、この規定適用は受けませんけれども、実際上判例等におきましては、これに準じて、分限保障を受ける一般職員に比べると裁量の余地はやや広がるものの、合理的な判断基準が必要であるということで、今申し上げた考え方に準じた判断基準によりまして免職が可能かどうかということを判定されるわけでございます。  現在まで過去の事例といたしまして、分限免職をされたいわゆる条件つき採用期間中の職員の事例につきましても、すべて訴訟等において裁判所が認容したところでございますけれども、認容する場合には、今申し上げましたようにあくまでも合理的な基準というのが内在的にあるわけでございまして、全くの自由裁量あるいは恣意的に免職することは許されないというのが裁判例の考え方でもございますし、また現実の運用もそうでございます。ただ、将来におきます乱用の可能性というのは確かに、これは乱用されてはならないことでございます、しかし一方におきまして、一たん採用された後におきます教員についていろいろな問題の提起等がございます。なぜ採用の段階あるいは条件つき採用期間中に適切な処理がなされなかったのかというような、後から問題を生ずるわけでもございますし、そういう意味ではまさに教員としてふさわしい方を判断する、乱用ではない適正な措置が、かつ、慎重に適正な判断というのがあってしかるべきであろうというのが私ども考え方でございます。
  165. 有島重武

    ○有島委員 今の考え方はいいけれども、制度上歯どめがありますか。
  166. 加戸守行

    加戸政府委員 それは、合理的な判断基準を超えた免職の場合でございますと裁判所における救済があるわけでございますし、また幾つかの裁判例もございますから、各任免権者側においては極めて慎重を期した対応をすることと思っております。
  167. 有島重武

    ○有島委員 今までも乱用という例はなかったし、将来もないようにということですね。  先に行きましょう。この研修のねらいでございますが、臨時教育審議会の答申を見ます限り、大臣もたびたびおっしゃっておるとおりでありまして、実践的指導力、使命感、幅広い知見、こういうことですね。ということは、現在の新任教師には実践的指導力が欠けておる、それから使命感が欠けておる、幅広い知見が不足である、こういう御判断で、それを克服するための研修である、そういうことでしょうか。
  168. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は、初任者の皆様方は基礎的な資質を持っておられると一応考えております。ただ、その方々にとって初めて教鞭をとられ、そして人が人を教える教室に立たれるわけでありますので、知見をより広めていただき、そして、まさに初めて教壇に立たれるわけでありますから実践的な指導力を早く身につけていただきたい、さらに資質を向上させていただきたい、そういう意味指導教員の先輩の方々の指導・助言を得ながら資質向上を早めていただくための期間である、そのように考えております。
  169. 有島重武

    ○有島委員 今大臣のおっしゃったとおりですね。それで今試行をやっていらっしゃるが、その試行によってそういった効果が上がっているのですか。
  170. 中島源太郎

    中島国務大臣 いろいろなアンケートを拝見してみましたが、概して研修によってその効果は上がっておる。それからもう一つは、その指導を受けました初任者だけでなくて、初任者研修のあることによって学校全体が関心を高め活性化した、そういう御意見が多いように感じました。何%というのはちょっと手元にございませんけれども、詳しくは政府委員からお答えさせます。
  171. 有島重武

    ○有島委員 先に質問をなさった委員の方々の要求に従って、ここにアンケート調査、これをきょう拝見をいたしたわけでございます。後々またこういった議論があるかもしれませんけれども、せっかくいただいたのですから、私もこれに触れさせていただきたいと思います。  これは文部省という名前がきちんと入るのでしょうな。文部省の責任のある調査ですか。
  172. 加戸守行

    加戸政府委員 お手元に本日お配りさせていただきましたアンケート調査は、文部省が各部道府県指定都市教育委員会を通じまして、初任者研修の試行の対象となっております学校の校長、指導教員並びに初任者研修の対象となっております新任教員に対しましてアンケートの回答を願ったものでございまして、文部省が調査をお願いし文部省でまとめたものでございまして、文部省という署名がないのは大変失礼いたしております。
  173. 有島重武

    ○有島委員 それにしてはちょっと素人っぽいところがございまして、わざとそういうふうにやったのかそれとも素人っぽいのか、少し承っておきたいところがあるのです。  この一ページでございますけれども、bという項目がある。これは「新任教員が不安なく教育活動に取り組むことができ、教師としての在り方や研修の進め方等がおのずと身に付く制度だと考えている」、問いの一の「初任者研修をどのように考えていますか」というところのbです。それで、校長さんの二八・九%はそのように初任者研修を評価しておる。ところが、裏返して言うと七〇%以上の方々が評価しておらぬということになるのじゃないか。
  174. 加戸守行

    加戸政府委員 この調査は、それぞれ校長、指導教員、対象教員にすべて無記名でアンケートの回答をお願いして、しかも、可能な範囲でということで強制はいたしておりません。  今先生おっしゃいましたb欄は、それぞれの項目につきまして校長先生は複数の回答をされておりますので、合計欄は校長先生の数よりも多いわけでございますが、そのうちの二八・九%が今のような回答でございまして、大多数の六八・五%は「新任教員の資質・力量等を高め、実践的指導力等の向上に役立つ」という極めて高い評価をいただいているわけでございまして、合計いたしますと九七・四%の方がこの評価をされておるというふうに私どもは受けとめております。
  175. 有島重武

    ○有島委員 指導教員は今の問いに対して三五・九%ですね。それから、対象教員の方々がむしろ三四・七%ですね。これは積極的な答えをしているわけですね。あとはちょっと消極的なんですね。  それから、その上の欄を見ますと、aというのとbとの関係が、aというのは後から何か取ってつけたみたいに見えるわけです。それで書き方も違うのですね。ほかのは全部どのように考えている、考えている、考える、こうなっているんだけれども、ここのところだけはちょっと言いっ放しみたいなことで、aを読んでみますと「新任教員の資質・力量等を高め、実践的指導力等の向上に役立つ」、と考えているというふうにはなっていない。それは別に言葉じりをつかむわけじゃないのですよ。こういったところで馬脚をあらわすということがあるんだから。僕たちも、こういったアンケートでも随分苦労してやったから、こういうのがよく見えるわけです。この欄は校長先生六八%、同じような問いで。ところがbの方は、もっと詳しく聞いてみるとこれが二八・九%に減っちゃっているわけです。この減り方が、初めは六八%あったのが二八・九%に減る。これは何だか間違いだったんじゃないかなと思うのですね。もう一遍よく検討し直してください。だれが見てもおかしいなと、ちょっとした統計をやっている、あるいはアンケートをとっている玄人に見せてごらんなさい、ぱっと見てそう言いますよ。  それから、二枚目の問いの三、「初任者研修において、どのような研修内容を特に重視すべきだと思いますか」という問いなんですね。この中では、学級経営とか教育技術、指導方法等、こういったものについて研修してもらいたい、ここのところに大体ピークが集まっているわけだ。校長先生にしても大体二七%、三〇%。それから指導教員についても二六%、三〇%。対象教員についても二七%、二七%。これが一番集まっていて、あとは何だか〇・幾つだとか一・四だとかいろいろ書いてある。一般教養に期待します、という人は校長さんで一・四、指導教員で〇・六、対象教員では〇・七。だから、さっき大臣がおっしゃった中で、これはちょっと一般教養については余り本気にしておらぬ、むしろ技術的なことを期待しておる。bとcは足せば二七%と三〇%だから五七%になる、そういうわけにいかないのですよ。これはきっと、僕はそのアンケート用紙を見ていないけれども、重複した人が答えています、そんなふうな答えがここには出ておりますね。それから、こっちが考えていることと一年間研修をやった人が考えていることと、大分ズレがあるなということは認識しなければならぬと思うのですね。  それから、四ページ目の校外研修期間を年間三十五日とすることについてどうだということですね。七十日にすることについてどうだというのもありますけれども、三十五日の方でやりましょう。そうすると、これはbで適当な期間であると思っている人が、校長先生で五五・九%、指導教員が五〇%、対象教員では四一%、約半数の人たちは適当だなというふうに思っておる。ところが、もっと短縮すべきだという人も随分いるんですね。校長先生で三九・二%ですか。これも相当参考になるものでしょうね。  それから、五ページ目の問い六の「初任者研修制度は、初任者の実践的指導力等の向上にどのように役立っていると思いますか」、これが一番大変なところだ。このaの「教科指導力等の力量が向上した」あるいは2の「学級経営等の力量が向上した」、これが先ほどの問い三の一番期待されている項目に相対応している答えになるわけでしょう。それから、教師としての使命感を増したとか、視野が広くなったとかいろいろな問いがあるんだけれども、それははかばかしくないんですね。それから、指導力の力量向上というのが一番あるわけなんだけれども、これが校長先生で二一・二%、十人に二人くらい、五人に一人くらいの校長先生が、ああ確かに効果があったな、こう思っていらっしゃる。それから指導教員もやはり二一%です。  この試行のアンケート、後の方に、児童生徒との触れ合いについてという、何か随分問題になっているのも出ておりますね。  時間がありませんからこの程度にしておきますけれども、この試行はやはりもう少しやってみないとだめなんじゃないかなという感じがしませんか。私は、これは一年だけじゃまだちょっと不足だと思う。カンフル注射とかそういった頓服薬じゃないから、これは教育のことだから、漢方薬みたいなものだから、そんなに結果が早く出てくるとは思いませんということがあるかもしれませんよ。ですから、もう少し試行をしっかりやって、それで、このアンケートなんかももう少し考えておやりになった方がいいのじゃないか。これを拝見して、そういうような感想を持ちました。  それから大臣、今回、一番最初の大臣の所信表明に対する質疑というところで、わずかな時間をいただいたので私が大臣にお尋ねした問題でございますけれども、この教育改革全般というのが三つの柱に支えられている。その第一番目が生涯学習社会の建設ということでしょうね。それから二番目が個性、それから三番目が新しい時代への対応、こんなことになっているわけですね。  それで、この生涯学習社会への転換、こういった大きな枠の中にあっての新しい教育技術あるいは教室も、今までのトイメンに向かい合っているだけのやり方、それは随分いろいろな工夫がされているわけですけれども、そういったこと等教育の方法の「バラエティーも随分これからも変わっていくだろう、そういうことをみんな含んでやっていくわけでしょう。そうしてその中での生涯学習ということでございますけれども、従来は、教師みずからの自覚といい、あるいは親たちの期待といい、あるいは行政府の皆さん方からの期待といい、教師たるものは完全無欠であってもらいたい、文句をつけられないようにしてもらいたい、そして、この指導要領によってちゃんと決まっていることはきちんと教え込んでもらいたい、こういういわば完全主義であり、また権威主義であったものが、これからはその権威がなくなっちゃう、なくなるというわけじゃないけれども、従来の権威主義とはちょっと違ったふうに踏み出さなければならなくなってきたわけですね。教師だからといって完全ではない。それで、このアンケートの中でもって僕が一番感心したのは、指導教員になっていらっしゃる方々の大部分の方々が、この指導をやったことによって自分の勉強になりました、という項目があるんですね。これはもう非常に胸を打たれる。これはよかったなと評価をするのです。ですから、今度新しい教員の方々もそういった生涯学習の人なんだ、それから教えている人たちも、指導教員になったのはおれはそのキャリアがあるからだ、わしのとおりにやれば今後間違いないぞというわけにはいかぬというところ、これが非常にいいところだ、それは評価していきたいと思うんですね。  その問題と並行して、もちろん教員はそうなんだけれども、教わる子供たちも、自分たちは不完全、未熟なんだから教わる一方というんじゃなしに、不完全で未熟でもその子たちなりに歳下の子供たちの世話を見てあげる、人間性の中にはそういった本性をみんな持っているんだし、それは後後の生涯学習、こういったことを支えていくもとにもなるんだし、道徳のもとにもなるんだから、なかなかやりにくいでしょうけれども、異年齢児混成の教育実践の場をなるべくたくさんおつくりなされる、これが並行していかないと、僕はこの教育研修も片手落ちになっていくんじゃないか、こういうふうに思う。  そこで、あのときにはそのお答えをいただけないではしょっちゃったのですけれども、文部当局におかれましても、異年齢混成の教育実践ということを奨励もし推進もしたいというような御意図であったけれども、どんな形でもってやっていらっしゃるのか、御報告をいただきたいと思うのです。
  176. 西崎清久

    ○西崎政府委員 かねて先生から、異年齢の混成教育ということで御提案があることは私どもも十分承知いたしておるわけでございます。特に小学校は一年生から六年生までの年齢段階の異なる教育が行われておるわけでございますから、やはりそれぞれの発達段階が異なりますし、それぞれの発達段階が異なる子供たちが、例えばクラブ活動とか学校行事とかゆとりの時間で、いろいろな形で合同のと申しますか、異年齢が合わさった教育が行われる、これは大変好ましいことであろう。これはそれぞれの学校教育の方針によりまして、個別の学校取り扱いの問題になるわけでございますけれども、私どもも事例をかなり集めておるわけでございます。  最近、この事例につきましてまとめをしようとしておりまして、その事例集としての中身でちょっと申し上げますと、異年齢集団活動の意義というものをひとつ取り上げてみたい、それから異年齢集団活動の進め方、これは事例によりまして内容を構成してまいりたいというふうに思っております。それから最後には、個別の異年齢集団活動の事例を二十事例ぐらいまとめまして、これを事例集の中に取り込みたい、こういうふうに考えております。今編集作業が進んでおりますので、大体七月か八月段階では指導事例集として刊行ができるというふうなことになっておりますので、できました暁には先生のお手元にもお届けしたい、こういうふうに考えております。
  177. 有島重武

    ○有島委員 文部省でつくっていらっしゃる資料がもしおありになったら、いただけますか。
  178. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま申し上げましたように、現在原稿の段階でございます。原稿が校正段階にこれから入るわけでございますけれども、でき得べくんば刊行段階までお待ちをいただきたいわけでございますけれども先生が非常にお急ぎであるということでありますれば、校正段階で何らかの形が整いましたところでお届けができればというふうに考えております。
  179. 有島重武

    ○有島委員 なるべく早くその資料をいただきたい。  大臣、今お答えがありましたけれども、授業の内容についても実はこういうことがあろうと思うのです。例えば六年生に四年生の算数なんかをもう一遍数えて、六年生自身が分数がうまくいかぬ子がたくさんいるわけですよ、二分の一プラス三分の一が五分の二になってしまうのがたくさんいるわけだ。それが小さい子に教えるんだということになると、俄然わかるようになってしまうということがあるのです。これは塾なんかでも実験済みなんですね。それで、子供というのは教わる一方、親からも何かを習えとか、塾へ行けとか言われ、はけ口がないというのが現在の状況なんでありまして、これはもっと大胆に踏み出さなければならないときじゃないかというふうに私は思うわけです。だからくどいように言うのですけれども大臣、推進するんだというその御決意をひとつ承っておきたい。
  180. 西崎清久

    ○西崎政府委員 大臣のお答えの前に若干申し上げたいと思います。  先生おっしゃいますように、確かに異年齢を合わせた教育というのは大変有効なことだとは思うわけでございますが、やはり教科の授業、先生が例として挙げられました数学とか国語というふうな形で行われる授業につきましては、やはり原則として同年齢の学級集団で行うということが現在の学校教育の一つの建前、姿でございます。今私どもが事例集をつくってこれを全国に広げようとしておりますのは、やはりその前の段階で、学校行事であるとかクラブ活動、児童会、生徒会活動、それから学校給食もあり得るわけでございますが、まずその段階における異年齢の教育というものが事例としても行われておるわけでございますから、その点についての事例集で参考に供したい、こういう段階でございまして、教科の授業についてまで異年齢教育をどのように考えていくかにつきましては、現段階では私どもとしてはそこまではまだ考えていない、こういう段階でございます。先生の問題提起として承らしていただきたいと思っております。
  181. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生の異年齢の学習につきましては、大変意義ある御提言だと思ってこの間も拝聴しておりました。この点については初中局の方に、今お答えをいたしましたが、今後も研究をさせたい、こう思っております。  また、もう一つ申し上げれば、その前段として、人を教えつつ自分も勉強なり研修をする。これは、先生いつもおっしゃっておりますように、生涯学習の一環としましても、人間はいつでも、どこでも、学び加え、学び補う必要がある。したがって、失礼ですが私流の言い方をすれば、すべての者が八十年の生涯を前を向いて走っておるランナーであり、先輩は先行ランナーであり後輩は後発ランナーである。先輩のランナーは後発ランナーの苦しみも喜びも痛みも知りながら最高のペースをつくっていく、後発ランナーは先発ランナーの背中からいろいろなものを教わりながら自分の進路を過ちなく進んでいく、これがお互いの生涯学習の生きがいであり、先輩・後輩ともに学びつつ研修し、研修しつつ教える、こういう形ができていくことが望ましい、私どもはそれを望んでおる。その点では先生と全く同じ考え方であるということを申し上げたいと思います。
  182. 有島重武

    ○有島委員 これは言うべくしてなかなか困難だし、先生方もこれまた実際には厄介な場合がある。だけれども、なれてしまうとまた非常に手が省けるということもあるかもしれない。だから、生涯学習ということは、ただ、いつでも、どこでも学べるということだけでなしに、どんな立場であっても下にも教えていくんだ、そういうようなことが教育界にみなぎっていく。子供たち子供たちなりに人に教えてみることによって、先生方をまた新たな目でもって尊敬する、その効果も大変大きいと思っています。  それで、もう時間がなくなってきたけれども、公明党が昭和六十一年の四月に「学校教育に関する校長・教員・父母の意識調査」、こういうのをいたしました。これは中島文部大臣は御承知かしら。
  183. 中島源太郎

    中島国務大臣 承知をいたして、拝見もいたしました。ただ、きょうは手元に持っておりません。
  184. 有島重武

    ○有島委員 発表に至るまで四、五年準備をいたしまして、準備に至る前に、これは厄介だけれどもアンケート調査でもしなければならぬかなと思った。僕たち議員だと、校長先生のお話を一番聞きやすいのですね。それから先生方のお話、陳情においでになった方々のお話を延長して、今度はどんどん現場に行って、現場の先生のお話を議員が聞くということはなかなか難しいことでしたけれどもやってみた。それから父母のお話というものも、これは多少我が子かわいやでもって感情的なものもたくさんございましたけれども、やはり母親の方々、父親の方々とでは随分また見方も違うんだな、そういうことをいろいろと聞いて回って、それを整理しようということになって、国公私立三万六千百十一校全部を対象にしたわけですね。それでもって、校長先生三万三千百十三人、回答率が七一・六%でした。教員の方々は無作為抽出でもつて三万三千百五十三人に当たって、回答率が六五・五%、やや低い。それから、父母の方々は七二%の回答率でございました。  それで、この方々に聞きましたが、校長先生の在職年数なんかで見ますと、これは三年から五年の方々が一番多かった。教員の教職経験年数では二十一年以上の方々が一番多くて、四年から九年、十年から十五年、十六年から二十年の方々のお答えが非常に多かったのです。そういったことでございました。  それから、第一問は、教師として自信を持って教えられるようになるためには大体何年ぐらいかかるかというものですが、校長先生は大体四、五年だろうというのが三九・二%、大体四〇%。ところが教員の方々は、いや、そんなものじゃない、自信を持って教えられるのは十年以上である、こう言っていらっしゃる方が一番多くて、四、五年だという方がその次に多い。その二つを足して大体七〇%。僕たちはそういった基礎認識を持っているわけであります。  それから、教師職務の中で、子供の教育に本当に専念したいのだけれどもなかなかできにくいという項目を幾つか挙げたんですが、その一番は「学校行事が多すぎる」というのです。二番目は「会議が多すぎる」。それから児童生徒の転出転入の整理、出席簿の保管だとかの事務が多い。その次に来ているのが「研修の回数が多すぎる」というものです。  そういったのがある一方、第九問は、教員の資質の向上について何が一番効果があるだろうかというものですが、この中に「教員研修」というのを教員みずから出しているのですね。そうすると、僕たちの聞き方がちょっとおかしかったのかなと今思うわけなんですが、前の問いの教員研修というものと、それから本当に自分たちが資質向上をしていくにはやはり研修をしたいんだという、この「研修」という言葉の中に多少のずれがあるんだなということを思っています。  そういうことが幾つかあるわけなんですけれども、これは私たちは私たちなりに本当に大労力を使ってやってみたものだが、私は、これはおれたちがやったんだから権威があるとは言わない、僕たちがやったんだから僕たちなりの偏りは避けられないのじゃなかろうかと思っていますが、文部省文部省でもって、この質問の立て方や何かをひとつ参考にしていただいて、その時点の、こういった聞き方で、この方法でやったらばこうだった、そういったずれを冷静に測定していくということが大切なんじゃないのかなと思います。  これは今ちょうど教育改革の夜明けみたいなもので、その中でもって学校教育学校教育というのは教育の中でも柱ですが、学校教育の中では教員の問題が一番大変なわけですから、今はそれよりも一歩踏み出すか出さぬかというところですね。だから、これは僕は拙速はよろしくないと思うのです。拙速じゃない、一年、二年やりました、それでもってアンケートもとりましたというのだけれども、このアンケートもややお粗末なところがあるわけだ、どうにもちょっとそういうところがあるわけだ。ですから、これは本当に慎重の上にも慎重を期して進めなければならぬ。それから、さんざん考え抜いたんだからこれで押していけということではなしに、やはり反応を聞いていく、それで、こっちがねらっていた効果がどんなふうにずれていくのかということもよく議論しながら、考えながら、修正しながらやっていく、これが試行というものでしょう。この試行をもっとしっかりやってもらいたい。  時間が来ましたから、私の質問は以上で終わります。
  185. 中村靖

    中村委員長 北橋健治君。
  186. 北橋健治

    ○北橋委員 民社党・民主連合の北橋健治であります。大臣並びに政府委員各位におかれましては、長丁場の質疑で大変お疲れだと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。  先般の本委員会におきまして、私どもの林委員の方から総括的に、ただいま議題となっております法律案の問題点について政府の見解をただしたところでございます。私も初任者研修制度というものは教員の資質向上に当たって大変大きな意義があると一定の評価を与える一人でございますが、しかし、仮にこの法律案が施行されましても本当にその立法目的が貫かれるかどうか。といいますのは、教育の現場におきましては、学校の中におきましていろいろな問題で不毛な対決というものも見られるところであります。そういう意味で、初任者研修制度提案された文部省の意図が今後の教育現場に生かされるように、そのことを念じつつ、以下、政府の見解をただしてまいりたいと思います。  まずは、きょういただきましたアンケート調査について一、二お伺いをしたいと思います。きょうちょうだいいたしました資料でございますので、あらかじめ質問通告はしておりませんが、お許しをいただきたいと思います。  この「昭和六十二年度初任者研修の試行に関するアンケート調査」を文部大臣はごらんになられまして、率直にどういった御感想をお持ちでしょうか、まずそこからお伺いいたします。
  187. 中島源太郎

    中島国務大臣 このアンケートに関しましては、相当率直な声を反映しておるというふうに存じました。例えば、研修の方法あるいは研修内容について相当それぞれの建設的な意見を率直に言っておられます。また、その期間の長さに対しましても相当率直な御意見を言っておられる。したがって、そういう参考にすべき点もございますし、また全体の評価といたしましては、そういう率直な御意見を反映している上で、大変効果があるという者が非常に多いということは大変喜ばしいと思いますし、反映した声をよく尊重いたしながら、そしてこの初任者研修の法案を速やかにお認めいただきたい、このように考えておるところでございます。
  188. 北橋健治

    ○北橋委員 私も、このアンケート調査を拝見いたしまして、おおむね九割程度の校長並びに指導教員の皆さん方が非常に高い評価を与えていることに、深い理解を示すものであります。  ただ一点、大変気になりましたのは、この中で、この初任者研修制度について必ずしも肯定的な結論を持っていない方が一部にいらっしゃる。特に、実際に現場の教員をいろいろと指導された指導教員の中にも、わずかですが、一%にも満ちませんけれども、画一的な内容を一方的に押しつけるものであるといった回答が寄せられているようでありますが、この点については文部省としてどのように考えておられるのでしょうか、お伺いいたします。
  189. 中島源太郎

    中島国務大臣 具体にはまた政府委員からお答えをする点があればいたさせますが、私は、この声が一%弱ということではありますけれども、ではあっても、その中に、画一的な研修を押しつけるものであるという考えがあることは残念なことでございまして、私どもはあくまでも、それぞれの個性、自主性、そして意欲を高めるために、なおかつ、先輩の指導教員指導・助言を受けるということでございます。  おかげさまで、先生おっしゃいますように九〇%近い方々がこの意義を認めていらっしゃる、疑問を持たれる方が一%に満たないということは、私どもは大勢としてこの意義があると言われるお気持ちを酌み取ることで間違いないと思いますが、なおかつ、言わせていただければ、この方法はあくまでも個性を重視して伸ばしていく方法の一つであるということを再度申し上げておきたいと思う次第でございます。
  190. 加戸守行

    加戸政府委員 今回のアンケート調査は、無記名で率直な御意見をいただいたわけでございまして、確かにいろいろな見方があると思います。ただ、試行段階でございますので、試行におきます問題点を探るということが大きな意味を持っているわけでございまして、現に、そのようないろいろな批判なり改善すべき点という御指摘を踏まえまして各部道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会も改善されるでございましょうし、文部省としても、全般的な意見に謙虚に耳を傾けながらよりよい初任者研修の方向へ持っていくようにしたいと考えております。
  191. 北橋健治

    ○北橋委員 私たち民社党・民主連合は、この初任者研修制度に対しまして一定の評価を与えるものでございます。とりわけ大学、短大での養成段階を終えて初めて教壇に立たれようとされている新採用の時期は、教師としての使命感に目覚めておられます。将来よき教師に育っていく上で決定的に重要な時期であります。こういう時期に集中的な研修機会を与えられるということは、新採用教員が円滑に教師としての生活に入っていけるようにするとともに、教員の資質向上を図る上で極めて大きいと思います。そういった意味で、この初任者研修制度をぜひ円滑に全校的な協同体制のもとで実施していっていただきたいのでありますが、しかし、昭和六十二年度の試行の状況を見ますと少し気になることがありますので、その点について政府の見解をただしたいと思います。  それは、六十二年度から初任者研修制度を試行するに当たりまして、現場においては根強い抵抗、反対論というものがある。あるところでは、その制度を文部省からやってみないかという話があった段階で、それは困るということで、教育関係機関に強く働きかけることなどを通じて、その初任者研修制度の試行を返上したところがあると聞いておるのですけれども、それは事実でしょうか。事実関係を教えてください。
  192. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十二年度におきまして、この初任者研修の本格実施前提といたしまして、試行により問題点を解明し、また円滑に本格実施に移行するという考え方で、三十都道府県指定都市分の予算を計上したわけでございます。そして、五十七都道府県指定都市に対しまして六十二年度からの希望を募ったわけでございますが、結果的には三十九部府県指定都市の要望がございました。もちろんその中には、全校種にわたらない、例えば小・中は実施するが高校は実施しないといったような部分的な実施もございましたけれども、予算上の関係で、私ども名のりの遅かった三県には御遠慮いただきまして、三十六都府県指定都市でスタートさせていただいたということでございます。なお、この六十二年度に名のりを上げたけれども実施できなかった三県につきましては主として予算上の理由でございまして、もちろん県内の教職員団体の反対等の意向はあったでございましょうけれども、その反対のために断念をしたということではなかった。そういう意味では、六十二年度は、名のりを上げていただいた都府県指定都市につきましては、今申し上げた予算上の制約を除きましては初任者研修の試行が円滑に実施できたと思っております。  なお、六十三年度の実施の問題につきまして一部報道等がございましたが、市町村段階におきまして内々の打診の段階で、本市町村では実施しがたいというような形で返上といいますか、初任者研修の試行をお断りしたというような事例はあったようでございますけれども、私どもは、全般的に申し上げて、教職員団体等の反対により結果的に試行ができなかったという事例はそんなに多くないと思っております。
  193. 北橋健治

    ○北橋委員 そんなにそういった事例はなかったと答弁をされたわけでございますが、そうしますと、一部ではあるけれどもそういった現場の反対によって試行をあきらめたといいますか、見送ったところがあるということでございますね。
  194. 加戸守行

    加戸政府委員 現在までの試行、都道府県指定都市という任命権者レベルではございませんでしたが、具体的に実施をします市町村等におきましては、初任者研修の試行はちょっとことしは勘弁してほしいというようなケースは幾つかあったと聞いております。
  195. 北橋健治

    ○北橋委員 現場の方から当面初任者研修の試行を見合わせてほしい、そういう話があったことは事実であるという答弁でございますが、しかし、今後この法律案が成立をし、法律が施行されていく段階におきましてそのようなことが再び繰り返されるとするならば、立法した意味がまた問われてくるわけであります。その意味で、試行の段階においてそのような問題点が一部地域にあったということでありますけれども、そのような経験を通じて、今後文部省がこの初任者研修制度を進めていくに当たりましてどのような教訓を学び取っておられるのか、お伺いしたいと思います。
  196. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま御審議いただいております法律案が成立いたしますれば、六十四年度からは段階実施ではございますけれども本格的な実施に入るわけでございまして、その校種の職員教員につきましては全員を対象として五十七都道府県指定都市におきまして初任者研修実施するわけでございますので、今、学校によって実施ができないという事態が起こらないように、関係方面への理解を求め、また父兄への理解を求めるという形で、円滑に実施できるように、文部省としても、都道府県あるいは指定都市教育委員会に十分指導いたしまして、円滑な実施を期してまいりたいと考えております。
  197. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省のその姿勢はよく理解できます。そこで先に進めますけれども、今、教職員団体の中には、いわゆる初任者研修制度は断じて容認できない、組織の総力を挙げてこれに立ち向かうという趣旨の運動が展開されているやに聞いております。そしてまた、文部省の方としましても、先般の委員会で私どもの林委員の方から質疑いたしましたように、仮に違法ストライキが実施されるような場合に対して文部省の毅然たる姿勢を示した通知をされておると聞いておるわけでありますが、仮に不幸なことにそのような違法ストライキが見られた場合にはどのような対応をされるのでしょうか、お伺いします。
  198. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和四十一年以来、不幸なことでございますが三十四回にわたります全国的な統一ストライキが実施されてまいりました。その段階都度、都度でございますけれども文部省としてはやむを得ず、厳正な措置をとられるよう各都道府県あるいは指定都市教育委員会指導申し上げているところでございます。今回のケースにつきましても、仮にストライキが実施されるような事態に至りました場合には、もちろんそのストライキの程度、内容、規模、態様等にもよりますけれども、それぞれの過去の経験に徴し、それぞれの任命権者側において適切な措置がとられるよう、文部省としては指導申し上げるつもりでございます。
  199. 北橋健治

    ○北橋委員 その点についての文部省の見解はわかりました。この法律案の中には、条件つき採用期間の中で、教師としての資格に欠けるかどうかをチェックする機能も与えられていると私ども理解するわけであります。実際問題、教員の中には、これが本当に教師だろうかという人もたまにはいらっしゃるわけでありまして、教師としての資質に明らかに欠けている方が、一たん採用されるとなかなかやめていただくわけにもいきません。そのために生徒や父兄に多大な被害が及ぶ例というのが実際にある、こういうことが何回も報道されているわけであります。その意味で私どもは、いたずらに教員希望者や新任教員に対して不安感を与えることがあってはならない、そのことは当然でありますけれども、この条件つき採用制度の運用に際しては、適切かつ慎重な配慮のもとに、適格性に欠ける教師についてはチェックを厳正にすることも必要であると考えるのですが、具体的な運用はどのようにされるのでしょうか、お伺いします。
  200. 加戸守行

    加戸政府委員 各種問題のある教員につきましては、これは新採教員のみならず現職教員についてもそうでございますけれども、臨時教育審議会からは厳しい御提言、御指摘等をいただいているところでもございます。この事柄、非常に難しい問題があるということは、前提といたしまして日本の、こういう自分の職場におかれます職員につきましてはどうしても人情が移るわけでございますから、できる限りは抱えて一緒に仕事で走っていきたいという気持ちがあるわけでもございます。しかし、その結果として児童生徒に相当あるいは多大な迷惑をかけるという事例もあるわけでございまして、そういった点も踏んまえまして、今回の初任者研修に連動する話ではございませんけれども条件つき採用期間の適切な運用ということは必要な事柄でございます。ただ、これが乱用の事態に至らないように慎重を期する必要はございますけれども、慎重の上にも慎重を期した上で、適切に国民の負託にこたえるということが必要だと思います。要は、児童生徒というものに与える影響と教員の身分保障、人権との問題でございまして、その比較考量というものは単純にはできない事柄でございますけれども、一般的に申し上げますれば、国民から非難を受けるような形に結果としてならないような適切な条件つき採用期間の運用ということが望まれるわけでもございますし、今後私どもとして適切な対応を考えてまいりたいと思っております。
  201. 北橋健治

    ○北橋委員 文部省として、この問題について一定のガイドラインといいますか、省令なりあるいは局長通知なりその他、そういった見解を示す準備があるんでしょうか。     〔委員長退席、町村委員長代理着席〕
  202. 加戸守行

    加戸政府委員 極めて抽象的な表現、言い回ししかできないわけでございますけれども、既に、過去の最高裁判所判例等でも、この条件つき採用期間の免職の基準といいますもの、合理的な客観的な基準、判断基準というものが必要だということが言われておるわけでございます。ただ、何をもって合理的な判断基準かというのは、社会通念、良識に照らして判断するしかないわけでございまして、過去の条件つき採用期間に免職されました事例というのもございますし、また、その事例は各部道府県指定都市教育委員会にも流しているわけでございますが、過去のそういう容認された事例というものは十分承知した上でそれぞれの任命権者側において判断する事柄であると思います。文部省側でそういう意味の具体的な基準を示すことは極めて難しい事柄でございますけれども、ただ、英知を集め、国民の負託あるいは信頼を裏切らないような方向での考え方というのが示せればいいなと思いますけれども、技術的に申し上げて、今ここで確たる自信を持って答弁する段階ではないように思っております。
  203. 北橋健治

    ○北橋委員 少し角度を変えまして、一年間の条件つき採用期間の間に、適正かつ慎重な配慮をしつつ一定のチェックをするという姿勢は理解できるわけでありますが、この法案とは直接関連はございませんが、既にもう教員として一定期間経験を積まれたベテランの先生方等の中にも、新聞報道されているのを見ておりますと、時には教師としてはとても資格に欠けているとしか思えないようなそういった方も中にはいらっしゃるわけであります。そういった意味で、教師の資格というものについて、今は一たん免許が与えられますとよほどのことがない限りはそれが剥奪されないわけでありますが、例えば裁判官のように再任制といった制度がありますように、教師についても資格について何らかの新しい方法を検討されたことがあるでしょうか。
  204. 加戸守行

    加戸政府委員 教員免許につきまして一定の期限を付す、あるいはその更新時に一定期間研修を義務づけるというようなことは、教員の資質の向上を図る上ではそれなりの意味があることでございます。しかし、このことにつきましては、仮に免許の更新ができない場合には教員資格を失って失職するわけでございますので、現在の我が国におきます公務員制度あるいは我が国の従来からの雇用慣行といったものの関連を十分慎重に考慮する必要があるわけでございますし、また身分が不安定になるということのためにすぐれた人材が逃げるというおそれはないのか、そういったことに留意して、いろいろな慎重な検討が必要な事柄であろうと思っております。  実は、昨年十二月に答申をいただきました教育職員養成審議会におきましてもこの問題は御議論いただきましたけれども、現時点では、免許の更新制を導入することについてはなお慎重に今後検討を続ける必要のある課題であるということで、積み残しになっているわけでございます。そういった点で、今のは一つの提案といいますか考え方ではございますけれども、今の日本の土壌にこれが適するのかどうか、あるいは教育関係者がどういうような気持ちをお持ちなのか、そういった点も踏まえて、性急な結論ではなくて、慎重に検討していくべき事柄だとは認識している次第でございます。
  205. 北橋健治

    ○北橋委員 繰り返すようですけれども文部省としては、今後引き続きこの免許の更新制については鋭意検討されると理解してよろしいのですね。
  206. 加戸守行

    加戸政府委員 前回教育職員養成審議会での積み残しの検討課題とされておりますので、なお教育職員養成審議会におきましても今後種々の議論がなされることであろうと思います。  ただ、この場合には、小中学校教員だけの問題であるのか、あるいは大学におきましても、当然に大学の教員の任期制の問題等もまた議論があるようでもございますし、横の関係もいろいろ見ながらという必要もございますが、いずれにいたしましても、教育職員養成審議会におきます積み残しの検討課題であるということは事実でございます。
  207. 北橋健治

    ○北橋委員 私ども民社党・民主連合も、また私自身も、この制度を直ちに導入すべきであるとか、これはかなり評価に値すると言っているわけではありません。しかしながら、現在の教員に対しましては、父兄の間からその資質に対して少なからぬ疑問を寄せられている方も少なくないわけでありまして、何らかの形で父兄の方々のそういった要請にこたえて、教員の方が少しでも資質が向上されるような、そういった制度的な問題を文部省としても真剣に引き続き検討していただきたい、そういう意味で申し上げたわけでございます。今後とも引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。  さて、このいわゆる初任者研修制度が円滑に、そして効果的に実施されていくに当たりましては、何といいましても指導教員の方の任命、その方の指導にかかっているところ、まことに大であります。——時間の関係で質問通告していない点が多々出てまいりますが、お許しをいただきたいと思います。  この指導教員の任命につきまして、きょうのアンケート調査を見てもわかりますように、中には、本当にこの方が指導教員なんだろうか、このアンケートは本当なんだろうかと、思わず目を疑いたくなるものがあると思うのですが、一%未満とはいえ九人の方が、このような制度は押しつけである、子供をないがしろにする制度であると言っているわけであります。まことにこれは遺憾であります。もちろん、この指導教員の方が間違っているとかという気持ちはありません。ありませんけれども、すぐれて指導教員の任命の仕方は重要であるということを物語っていると思います。  政府としては、今後、指導教員の任命に当たってどのような基本方針で臨まれるのか、まずお伺いいたします。
  208. 加戸守行

    加戸政府委員 指導教員が果たす今回の初任者研修の中の大きな役割というのは申し上げるまでもない事柄でございますし、また、指導教員による研修が今回の初任者研修制度の大きな柱でもございます。その意味におきましてすぐれた指導教員を得ることは必要でございますけれども、御承知のように、今回の制度は、新採教員が配属されました学校におきまして、その学校の中の教頭先生あるいは中堅教諭の方、あるいは場合によりましては非常勤講師等によりまして、校内での適切な指導体制というのを勘案した上で、校内のバランスの中で必要な指導教員を命じていただくわけでございます。  そういう意味におきましては、学校間のいろいろな、大規模校、小規模校の違い、あるいはその学校に配属されております職員構成あるいは校務分掌等の関係によっていろいろな制約があり得ると思うわけでございますが、でき得べくんば、その中にありまして、私どもは、初任者指導に当たって一番ふさわしい、その学校の中のベストな方を選んでいただきたいという気持ちはございます。しかしながら、これは個々の学校の事情によって変わるわけでございますので、結果的に申し上げれば、大変恐縮でございますけれども、それは必ずしも、十分な指導力を持った先生方が指導教員に一〇〇%選ばれる、一〇〇%という保証はないわけでございますけれども、可能な限り新任教員の実践指導力の向上に資するような先生指導に当たっていただくことをお願いし、また、これは都道府県教育委員会、指定都市教育委員会に対しましてもお願いをしてまいりたいと考えております。
  209. 北橋健治

    ○北橋委員 具体的なイメージについては描かれていないわけですね。文部省としても、それを一定のガイドラインを示して地方におろすよりも、むしろ、現場でよく話し合っていただいてベストな方を選ぶのがいいというお考えのようで、その点はよく理解できるわけです。しかしながら、具体的に例えば退職された教員の方を非常勤講師として選ぶ、そして円熟したそういったベテランの先生に来ていただきまして教えていただくとなりますと、そういった報酬などの財政的な措置も必要になりますので、続いてお伺いしたいと思うのですけれども教師にも一般労働者と同じように定年制があるわけでありますが、しかし、子供を慈しみ、そして育てるということは、校長の場合六十歳ですか、ちょっと早過ぎるのではないかというように率直に私は思っております。むしろ、政治家にも定年はないわけでありますけれども、それは政治家として思い切りその能力を発揮するためには年は関係ないということに基づくわけでありまして、学校先生につきましても、やはり六十歳という定年制はちょっと早過ぎるのではないかと自分は率直に思います。そういった意味で、退職をされた先生方の中には非常に有能な、指導教員としてふさわしい方がたくさんいらっしゃると思うわけでありまして、そういった方を非常勤講師として選んで、一定の報酬等財政的措置を今から検討すべきではないかと思うのですが、その点いかがでありましょうか。
  210. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、今回の制度の内容といたしましては、新任教員の所属します学校の教頭、教諭または講師のうちから指導教員を命じることといたしておりまして、この講師の中には非常勤講師が含まれているわけでございます。そして、いかなる指導教員を充てるのがいいのかというのは、先ほど申し上げましたように、学校職員構成、あるいは中学校高等学校でございますとその新任教員の教科等によっても異なってまいりますけれども、その中にありまして、現在の試行段階におきましては、私どもは、例えば今先生がおっしゃいましたような、退職された校長先生、教頭先生あるいは教員の方方の中で、在野で優秀な方を選ぶことも指導をしたわけでございまして、現実には六十二年度の試行段階におきまして、指導教員のうちの七%が今もおっしゃった退職された教員指導教員に充てられているケースでございます。このほか、指導教員の代替措置としての穴埋め教員としても非常勤講師が活用されている事例が十数%あると思います。そういう意味で、豊富な貴重な教育体験を持ち、かつ、来りくる若い後輩の方々に自分の豊富な体験を引き継ぐということは、退職された教員にとってもまた生きがいでもあろうと思いますし、それは地域の実情等でお任せしておりますけれども、また、それぞれの任命権者あるいは市町村段階の判断によっていかなる措置をとるかということはお任せしておりますけれども、その中で、本格実施のような大量な初任者研修になりますれば、今申し上げた非常勤講師の活用という形のものも相当ふえてまいるのではないかと思っております。  文部省としましては、既に試行段階におきまして、これらの非常勤講師につきましては、現在の制度上の建前は例えば小中学校でございますと市町村費負担でございますけれども、それを全額都道府県負担にしていただきまして、二分の一を国庫補助をするという形で現在試行を進めているわけでございまして、これが本格実施になりました場合につきましても、文部省としては二分の一の国庫補助措置を講ずべく最大の努力をしたいと思っております。これはある意味では、非常勤語師というのは市町村の職員であり、報酬は市町村の負担でございますけれども、今回の初任者研修が都道府県レベルで、任命権者としての都道府県教育委員会実施する性格のものであることにかんがみまして、常勤職員と同様な財政的な措置を講じたいと考えているところでもございます。そういう意味の措置によりまして、結果的に私どもは、今先生のおっしゃっていましたような、退職された優秀な教員が再び後輩を指導するチャンスを与えられるということは非常に好ましいことではないかと思っておりますが、先ほどの繰り返しになりますが、地域の実情によって違う点はあろうかと思います。
  211. 北橋健治

    ○北橋委員 この退職教員指導教員に活用するという方法につきましては、民社党もかねがね主張しておるところでございまして、文部省としましても、ぜひともその趣旨をお酌み取りいただきまして生かしていただきたい、このことを要請しておきます。  次に、もう一点だけお伺いしたい点は、幼稚園教員初任者研修についてであります。幼稚園の先生につきましては、当面は都道府県の教育委員会研修実施するということになるわけでありますけれども、「三つ子の魂百」までと申しますが、この幼稚園時代の幼年期の教育というものはまことに重要であります。そういった意味におきまして、これに対しても本格的な行政面からのバックアップを早急に整備すべきであると思うのですけれども文部省は、大体いつごろをめどに幼稚園教員について本格的な実施に移ろうとしているのか、お伺いいたします。
  212. 加戸守行

    加戸政府委員 幼稚園につきましては、規模が極めて小さいという事情がございますし、配属されております教員に余裕がない、それから、幼稚園自体が各市町村段階の設置でございまして、それぞれの市町村について見ますと、採用される幼稚園の教員の数というのは極めて少ない、何年に一回というケースもあり得るわけでございまして、そういった点で実際的に非常に研修をやりにくい面がございます。  今回の法案におきましては、附則におきまして、初任者研修とは異なる研修を六十七年度までに、これは任命権者である市町村ではなくて都道府県教育委員会実施をしていただくということで、法律案を今御審議を願っているわけでございます。具体的には、その異なる研修といたしましては、教育職員養成審議会の方で御提言のございました「十日程度の園内における保育の実践に関する研修及び十日程度の研修会の受講など年間二十日程度の研修実施することが適当である。」という答申に基づいた対応を六十七年度までに考えていきたいというふうに思っております。小中高等学校以上のレベルにおきまして現在構想しております初任者研修のようなものにつきましてはまだ将来の問題として、今申し上げた教員の配置状況の改善とかによりまして指導教員が確保できるような段階になった場合には、幼稚園についてもそういった考え方を広げていく必要があるものと思っております。
  213. 北橋健治

    ○北橋委員 一定条件が熟すれば幼稚園の教員についても本格実施を考えておられることは理解できるわけですけれども、今のお話では、それほど難しいハードルを越えなくてもできるのではないかと思うのですが、かなり近い機会に本格実施に移ると理解してよろしいでしょうか。
  214. 加戸守行

    加戸政府委員 これは極めて難しい問題が一つございますのは、例えば小中学校でございますと任命権者が都道府県でございまして、そういった大きな袋の中でのいろいろな対応というのはできるわけでございますが、市町村立の幼稚園の場合でございますと、それぞれ単位が市、町、村でございまして、そこに一つあるいは二つしか幼稚園がない場合、しかも職員が数人で新規採用が何年に一回というような状況でございますので、少なくともこれは小中高等学校と同じように都道府県レベルで本格的な対応というのは考えていかなければならない事柄で、いろいろな技術上の問題もございます。また、教員の配置状況小学校中学校のような形に恵まれた状態ではございません。大規模の学校でございますといろいろな教員、余裕教員と言うと言葉は悪うございますけれども、クラス担任以外の教員もたくさんいらっしゃいますけれども、幼稚園の場合の教員配置状況は違う。その点が将来どの程度改善されていくのか、あるいはそれに要する経費の問題等もございますし、今ここでいつごろということを申し上げる段階にないことを大変恐縮に存じております。
  215. 北橋健治

    ○北橋委員 たまたま私の子供は四歳と二歳でございまして、幼児教育で今苦労しているときだから余計そう思うのかもしれませんが、一般の御父兄の方に聞いてみましても、小学校に入って義務教育の段階になりますと教育費の負担についてもかなり軽減されるわけです。実際、子供が小さいときは親の家計というものは苦しゅうございまして、大変な苦痛の中で幼児を育てているような状況であります。  そういった意味におきまして、これからの教育のあり方につきましては、生涯学習ということが言われてきておりますけれども、特に幼児期のときの教育について、文部省もこれまで鋭意努力されているとは思いますが、特に教育費の負担という面から見ましても、あるいはこの初任者研修につきましても後送りになっているということから見ましても、幼児を抱えている父兄から見ましたら大変残念なことだと思うのであります。そういった意味におきまして、この問題につきましての文部大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  216. 中島源太郎

    中島国務大臣 北橋委員おっしゃいましたように、生涯学習の中で特に幼児期の教育というのは大切でございます。したがって幼稚園、幼稚部におきますこの初任者研修は一日も早く実施に移すべきでありますし、それを目標に努力をいたします。今現在何年からとはっきり申し上げられないのは残念でありますけれども、とりあえず六十四年度の概算要求を第一段階といたしまして、これが早く全面的に実施できますように全力で頑張るつもりでございます。
  217. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございます。ぜひよろしくお願い申し上げます。  時間も参りましたので、最後に文部大臣の御決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思うのであります。  とにかく、いわゆる初任者研修実施に当たりましては、教育の現場で、その一部に大変激しい反対運動が今展開されておるわけであります。教育の現場でのそういった対決だとか混乱というのは別に今に始まったことではなくて、例えば国旗の掲揚、国歌の斉唱という国の基本にかかわることについても今まで頻繁に繰り返されてきておりますので、父兄の方ももうなれっこになっております。しかし、こういったことがこの制度の実施に当たりましてまた起こるとなりますと、父母や子供たちはそっちのけにした不毛な対立が繰り返されるということになります。私は率直に申し上げまして、この初任者研修制度が、法案施行後、実際の現場において大変な混乱が起こることを非常に心配をしておるところであります。  臨教審の第二次答申の初任者研修制度提案したところを見ましても、この「実施に当たっては、校長のリーダーシップのもとに、指導教員を含め学校全体としての協同的な指導体制を確立することが肝要である。」とうたっております。言うはやすくで行うはがたしかもしれませんけれども、まことに重要なポイントであります。そういった意味で、この実施に当たりましては、今まで学校の現場に見られたような不毛な対決あるいは一部の反対運動による混乱、そして初任者研修制度の形骸化、そういった事態が起こってはならないと考える次第であります。その意味で、一部にはこれからも引き続き、不当な介入やその制度の形骸化をねらう働きというものは非常に頻繁に起こってくると思いますが、大臣としては、父母や国民の大いなる期待にこたえて、不退転の決意で、この制度を円滑に、効果的に実施していただきたいのであります。  そのことを大臣に強く要望し、最後大臣の決意をお伺いしまして、民社党・民主連合の質問を終わります。
  218. 中島源太郎

    中島国務大臣 激励をいただきまして、ありがたいと思っております。  この初任者研修は、教育公務員そのものの研修のみならず、学校全体の活性化、それによって生徒児童諸君によい影響を与え、そして父兄、国民から信頼される学校教育を培う、その意味で三位一体で努力していく一つの方向であるという自信を持ちまして、今御審議をいただいておるわけでございまして、この成立・実施を含めましては、各県市ともどもに万全の努力をいたしてまいることをお誓いを申し上げます。
  219. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございました。これで終わります。
  220. 町村信孝

    ○町村委員長代理 山原健二郎君。
  221. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、この初任者研修に関する法案は、教員採用試験に合格したいわば一人前の教師に対する洗脳であると考えておりまして、断固として反対の決意を最初に表明いたしまして、その立場で質問をいたしたいと思います。  このような法案につきましては、当然賛否もありましょう。そして、国会の中でも現に意見が割れている問題ですね。まさに国民的合意にはいまだ達しておりません。したがって、こういう法案についての取り扱いは極めて慎重を要します。また、慎重審議を行うのが当然のことです。それは、当文教委員会のまさに国民に対する責務であるということをまず申し上げておきます。  当初から私の主張しておりますように、例えば参考人の招致あるいは国民各層の御意見を承る公聴会、特に参考人としましては、日本教育学会の代表あるいは日本教育方法学会の代表、また教員養成に携わる学者、研究者の招請、こういうことはこういう法案を取り扱う過程において当然のことでございまして、今日までこの委員会はそのことを行ってまいりました。したがって、この前の新テストの導入をします国立学校設置法ですね、これなども、御承知と思いますけれども、実に十年間の経過、さらに小委員会を本委員会に設けまして一年間検討し、しかも、法案審議に入りましても五日間の審議をいたしております。そういうものを多数の力で採決をするというのは、これは文部行政あるいは文教行政を考える上で適切なことではありません。したがって、今二巡目の質問に入っておりますが、四十八分という時間を決められておりますけれども理事会において私は、これには納得できない、当初一人四時間程度の質疑は必要であるということを申し上げてきたところであります。まだ二巡目も残っております。また三巡日の質疑が行われても決しておかしくはない法案ですね。そういう点をまず申し上げて、質問に入りたいと思います。  文部省、随分変わりましたね。先日からのこの問題についての御答弁を聞いておりますと、文部省はかつて、戦争が終わりましたときに新教育指針を出しております。それの一部を読んでみたいと思います。新教育指針の一部にはこう書いてあります。  「何事につけても上からの命令にわけもわからずしたがふことなく、自ら考へ判断して、最も正しいと信ずることを行ふといふやうな自主的態度を養はねばならない。」これは新教育指針の一ページにあるのですね。これが戦後における民主教育文部省側の見解であったのです。そして、国民はひとしく戦前の教育に対する反省の上に、新しい教育を求めて生き生きと活動を展開しておりました。もしこの民主的教育が本当に妨害をされずに発展をしておりましたら、日本の教育は大きな花を開いておったと私は確信をしております。  この間、NHKのテレビの「はっさい先生」というのがございまして、大臣もごらんになったと思いますが、あの最後のところで、「学校は劇場のように楽しいところでなければならぬ」という、これはバーナード・ショーの言葉だということが出てまいりますね。私は、本当に学校というところは楽しくてたまらぬところでなければならぬと思うのです。ところが、先日文部省が発表しましたあの高等学校の中途退学者ですね、年間十一万名を超しているという数字が出まして、恐らく胸の痛まなかった者はないと思います。実に百三十校分の生徒が一年間に消えていっているのですね。これはどこに原因があるのかということです。だれがこの原因をつくったかということを本当に反省しなければならぬと思います。多様化の問題とかあるいは管理主義とかいうものがないまざって、そしてこのような事態を起こしている、文部行政が引き起こしたこの結果について、だれが一番反省をしなければならぬかといえば、文部行政を行ってきた文部省当局であることは間違いございません。このことを指摘しておきたいと思います。  今度の法案の提案に当たりまして文相は、「教員には、従来にも増して教育者としての使命感、幼児、児童生徒に対する教育的愛情、教科等に関する専門的知識、そしてこれらを基盤とした実践的指導力などが求められております。」と書かれておりますね。私は、この言葉そのものに異論を挟むつもりはございません。それは、どうすればそれが養われるかという問題が今問われているわけでございます。私は率直に文部大臣にお伺いしますが、新採の教員で一番大切なこと、保障されなければならないものは何でしょうか。一言で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  222. 中島源太郎

    中島国務大臣 一つの資質といたしましては、基本的な資質は皆さんお持ちでございましょうけれども、特に新任教員に対してとおっしゃられれば、やはり根本的には教育に対する愛情でありましょうし、また次には、その実務に入られる最初の段階でございますから、実践的な指導力を養いたい、こういう意欲が大きいのではないかと私どもは考えます。
  223. 山原健二郎

    ○山原委員 それはそういうお答えもあると思います。私は、教師の経験を持っております。私、小学校教師もしたことがあります。高等学校教師もしたことがあります。旧制の中学校教師もしたことがあります。私の経験からしますと、一番大事なことは学校に早くなれるということです。そして、学校とはどういうところかを学び、生徒の心を早くつかむということですね。教員同士のきずな、そして生徒とのきずなを強くすることであり、何よりも生徒との触れ合いの中から教師としての自覚と使命感が芽生えてくるのでございます。これは私の経験でもありますけれども、恐らく現場で教育に携わっておる方はみんなこのことを実感として受けとめておると思いますが、この点についての大臣の御見解を伺いたいのであります。
  224. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃることは大事なことであると思います。
  225. 山原健二郎

    ○山原委員 今度の初任者研修ですね、校内七十日でしょう、校外で三十五日。これも校内においては週二回ですかね、そして校外は週一回。その上に宿泊研修四泊五日がございます。その上に洋上研修、これは指定された者でありますけれども。こうなってまいりますと、自主的な研修などできる余地はもうなくなってしまうのです。だから、自主的研修の問題についていろいろと加戸局長が御説明されておりますけれども、実際には不可能な状態をつくっていくわけです。これはこの法案の一つの重大な欠陥です。  しかも、けさ出されましたアンケートを読ませていただきましたが、文部省が集められたアンケート、これは例えば六ページを見てください。六ページには「初任者研修の試行対象教員にとって研修は」、この回答がどうなっているかというと、「別に負担に感じない」というのはわずか一九・八%ですね。そして、「負担に感じるが、自分のためだと思って頑張っている」、自分のためだと思って頑張っている、ということは負担に感じているのですね。これが何と六六・四%でしょう。それから「大変負担である」が八・一%ですね。約八割は負担に感じているのですよ。だから、アンケートを出されていいことばかりおっしゃるように思いますけれども、ここが問題なんです。教師にとってここが一番の問題なんです。  それからさらに、「児童生徒との触れ合い等の時間について」、これは「研修時間の確保を工夫し、児童生徒とのコミュニケーションが図れるよう配慮しているので、さほど影響はない」、「さほど」がつくのです。この「さほど」が問題なんですよ。これが一番このメリットを強調する数ですけれども、これはわずかに一九%ですね。そして、「何ともいえない」という方がいらっしゃる。またこれが問題ですね。「何ともいえない」、これが二〇・八%。「多少影響はあるが、研修の成果がいつかは児童生徒に反映されるものと確信して研修に参加し、かつ、児童生徒理解を示している」、これは随分かわいそうなお答えですよ。遠慮して遠慮して書かれているのですね。これが四一・三%。「児童生徒との触れ合う時間が少なく、学級経常等がやりづらくなっている」、よく思い切って書かれたものだと思いますよ。これが一四%でしょう。  こういうふうに考えますと、子供との触れ合い、教育にとって、新任の教師にとって一番大事な問題が、今回の試行によって大きく疎外されておるという証明なのです。私はそのことを指摘せざるを得ません。  私のところに、研修を受けた方の幾つかの手紙が寄せられております。その手紙の出だしはこうなっています。「最初に大声で「たすけて下さい」と叫びたい……。」「わたしは採用試験にやっと合格になり、今年の四月ある中学校に初任校として勤務することになりました。わたしは胸を弾ませて勤務先に臨みましたが、」その学校初任者研修試行の指定を受けていたのですね。「朝から晩まで息つく暇も無い日々の中、私は生徒の名前すら数人しか覚えていません。他学年の先生の名前すら覚えられないぐらい忙しいのです。」「こんな学校のなかでの毎日は、わたしにとって苦痛以外のなにものでもありません。毎朝学校に行くのがとても辛いです。」「いま、毎日精神安定剤を服用しながら授業をおこなっている。もう肉体的にも精神的にもボロボロの状態である。いっこうに学校になれることができず、年間の初任者研修の計画だけが着々と作られていく。」「これだから授業をしていても面白くない。わたしはどこか逃避行してしまいたい気持ちだ」こう書いております。  私は、こういうのを見ますと本当に、生徒の名前を一番先に覚えなくてどうして教育ができますか。ここでは子供が疎外されている。しかも、あなた方の調査によっても今申しましたような数字が出てくるわけですね。その意味で私はこの初任者研修は——研修を私は否定するものではありませんよ。研修というのは大事なものです。また、教師相互が切磋琢磨するのは大事なことです。それを保障するのが教師研修に対する行政機関の任務でなければならないと思うわけです。  例えば鹿児島では、新規採用の途中で蒸発したり行方不明になった先生が八人もおられると聞きます。また、ある県では初任者研修制度を受けた一人がやめています。この方の例を調べてみますと、一週間病気で休んだのです。新任教師ですから、その後で、それを穴埋めするために毎日二時間の指導のついた研修が行われまして、参観授業もやらされる。けれども、参観授業をやるといっても、生徒の名前もまだ覚えていない中ではとてもできるものじゃありません。結局この方はメニエール氏病になって、そして子供に接していないものですから、とうとう山中に逃げ込むという事件も起こっているわけです。こういう例を挙げますと、それは少数の者の出来事だとおっしゃるかもしれませんけれども、そうではないと思うのです。もともと免許を持っている、一人前に試験に合格した者です。そして、先ほどからも論議されましたように、これは競争試験ではない。一般の公務員競争試験があって成績の発表もされますが、そういうものとは違って、持っておる教師の特別な任務というものを考えますと、選考で人物評価もされている。だから、担任もやらされておれば校務分掌も持っておるという一人前の教師です。それをこういう形で長期にわたって研修するということは、一体何を考えているのか。これは、文部省の持っている今日の見解による教師の洗脳以外の何物でもないということを言わざるを得ません。  これはある調査ですが、「初任研修制度に関する実態について」という報告がなされておりますが、それによりますと、研修に追われて、倒れる寸前、多くの教師が多忙、そして気疲れを訴えています。また、正式な教員と思われない。実習生と思われ、いつまで学校にいるのかと問われたりする。指導教員が子供の前で口を出すので「ひよっこ先生」と呼ばれる。こういうことが書かれているわけでございます。  新任教師にとりまして、学校行事に参加できないということも大変なんです。一年目の学校行事とは新任教師にとっては学校を知る上で最も大事なものでございますし、職員会議に出て、先輩の先生方はどのような論議をしているかを知ること、これも学校を知る上で極めて重要なことでございます。それも研修優先で参加できない。これでは教員との触れ合いもなくなってしまう。ひどいのになりますと、家庭訪問をやめさせて、それの途中で校外研修に連れ出すという例もございます。こういう例を幾つか把握することができるわけですが、これは今申しましたように、文部省が行われましたアンケートの中にも出ておると思います。  また研修ノートですが、これは実に一日七十項目のノートを出さなければならぬ県もあるわけでございまして、先生がいないから、センターの研修日には学校へ行かない子供も生まれてくる。宿題をやってなくても先生がいないから構わないという子供も生まれてくる。子供が「先生またいないのですか」と言い出す。研修日の次の日は学級の荒れが目立つ。先生が入れかわり立ちかわりになるので継続した授業ができない。おくれが出てくる。そして担任の言うことを聞かなくなる。必死になって生徒の心をつかもうとしてもこれではできない。できないどころか、子供たちを学習のおくれという形で犠牲にする結果も生まれているわけでございます。  これが一年間続くわけですね。このような実態について文部大臣はどうお考えでしょうか。
  226. 中島源太郎

    中島国務大臣 私も、お話を伺いましたりアンケートも率直に読んでみました。その中で、この初任者研修、三つ申し上げたいのですが、一つは、先ほどおっしゃるように教えながら研修する、それはやはり御負担がふえるということは確かであろうと思うのです。その御負担がふえる分をどのように受け取っておられるかというのが、実は私が関心を持ってアンケートを読ませてもらった中の一つでございます。それからまた校内研修、校外研修でどのような御希望があるだろうか、もっとこうしたらどうかという御希望があるであろう、その点の非常に率直な御意見もいただいております。それがまさに試みに行う、試行するという意味の、いい面や悪い面を知る、そしていい面は伸ばし、改めるべきは改めるという点の試行の効果であると私は思いますし、それを生かしまして、みんな資質を構えた方々だと先生おっしゃいますけれども、その資質を備えた方々が初めて教鞭をとられる場でありますから、その教鞭をとられるについてどの程度の時間が必要であろうか、やはりお子様を中心に考えますと、一つのカリキュラムというのは一年を通じてカリキュラムを組むというのが基本でありますから、その一年を通じて、児童生徒と接し、その中で教えかつ学ぶということが必要であろうということで、これを御提案し、かつ、御提案する前に試行を通じていい面、悪い面を聞き知る、こういうことでございます。  したがって、先生が幾つかお挙げになった点もこれは否定をするものではありません。そういう声もおありでありましょう。またその中で、さはさりながら、これは大変効果があるというふうにお答えになっている方々のいい面にも十分に耳を傾け、そして二年間の試行を通じて、さらに六十三年は六十二年と違って改善された試行が行われるでありましょうし、そしてこの国会、第百十二国会で御提案したことが、審議の結果、成立を見て、実行されますときには、私どもは、先生が最初におっしゃった、要するに私ども教育は、憲法に規定し、そして憲法に準じた教育基本法にのっとり、そして人格の完成を目指して、先生も、生徒も、そしてまたその先生を教える指導教員も一緒に努力してまいりましょう、そういう生涯学習に通じる大きな面の効果も踏まえつつ御提案をしておるところでございますので、その意味を御理解いただき、御賛成いただきますようにお願いするところでございます。
  227. 山原健二郎

    ○山原委員 教育を語る問題でございますから、いろいろ意見が双方にあるわけでございますね。私はそのことは大事なことだと思いますが、なお、研修はだれのためにやるかといえば、やはり子供のためなんですね。そして、新任の教師にとって一日一日が研修なんですね。私の聞いたところ、研修されている先生が、一日一日が私ども研修だ、ところが出張するたびに損をするような気持ちがする、こうおっしゃっておられます。これはもう本当に率直な気持ちだろうと思います。学校こそが最大に学べるところであり、新採教員にとって、学校にいて子供とのつながり、先生とのつながり、そして子供集団をつかみ、子供たちのさまざまな表現の中にある大切な問題を敏感に察知する能力、これが養われることが大事なんですね。子供の内面に迫ることのできる教師、子供の特徴をつかみ、その子供に合った指導ができるようになることが大事なのでございまして、あくまでも研修は子供を軸として成り立つものでございます。そういう意味で、本当にこの研修問題については議論を深める必要があると思います。  本日、時間の関係で十分なことを申し上げることができませんが、本当にそのことこそが教育公務員特例法に言う「研究」と「修養」に努めるということではないのかということを、単に法律を提出した立場としてどうしてもこれを通さなければならぬという気持ちだけではなくて、もう一度この原点に立ち返ってもらいたい、これが今文部省に求められていることだということを私なりに指摘を申し上げる以外に、きょう時間の関係でこれ以上進めることができません。  それで、私は今アンケートの報告はいただきましたけれども、報告書が出ているのですね。これは資料といたしまして、初任者研修制度の試行の段階の各県の報告書これは局長、ございますか。
  228. 加戸守行

    加戸政府委員 六十二年度の試行実施しました三十六都府県指定都市からそれぞれの報告書をちょうだいすることになっておりまして、全部はそろっておりませんが、今各県あるいは各指定都市におきまして報告書を作成し、提出をいただいている段階でございます。
  229. 山原健二郎

    ○山原委員 その報告書は恐らく県の教育委員会がまとめられて文部省に提出されたものと思いますが、これは非常に大事なものですね。しかも、秘密にすべき性格のものではないと思います。この委員会が本当に討議をして、あなた方が試行されたわけですから、試行の結果についてはこういう報告書が出ているということが当委員会に提出されて、初めてその試行に対する評価が出てくるわけです。このアンケートだけでは、アンケートもいろいろな解釈の仕方もあります、私がたった一ページだけを今申し上げたわけでございますけれども、これを本委員会の法案に対する審議の行われておる段階で提出をしていただきたいと思いますが、委員長、ぜひ文部省に対して要請をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  230. 町村信孝

    ○町村委員長代理 答弁がありますか。加戸局長
  231. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいまお話しのございました報告は、言うなれば行政庁と行政庁の間の内部資料でございまして、秘匿するつもりはございませんが、私どもの立場といたしまして、各県教育委員会が出されました資料をこの場へお出しするというわけには文部省の立場としてはまいらないと思っております。
  232. 山原健二郎

    ○山原委員 ここは国会ですよ。国権の最高機関と言われる場所ですね。しかも教育問題を論議している。しかも重要な法案を、今まさに重要な段階を迎えようとしているときですね。皆さんが公費を使って試行をやられたわけですね。初任者研修試行をやられた、その試行以外に、私たちはこれを評価する何物もないわけです。それが出ないということでどうして正当な論議ができるでしょうか。試行とは何か。こういう試行をやってみたが、こういう問題を持っており、またこういう有効な面もある、したがって、この本格実施をどうするかという検討材料として、それが提出されることは当然じゃないでしょうか。六十二年度の試行、そして六十三年度も続けるというのでございますならば、その結果をもって本委員会で審議するというのは議員としての当然の要求だろうと私は思いますが、あえてもう一度伺いたいのですが、当委員会にそれを提出することができないとおっしゃるのですか。
  233. 加戸守行

    加戸政府委員 まだ現在報告が三十六県市そろっていない、つまり途中段階であるということが一つでございます。それから、通例としてそのような県の文書でございまして、私どもは、仮に当委員会へお出しするとすれば各県の報告を集約した形でお出しすることで十分参考にしていただけるのではないかと思います。
  234. 山原健二郎

    ○山原委員 集約したものをここへ出されるとおっしゃるわけですね。
  235. 加戸守行

    加戸政府委員 繰り返しになりますが、まだ報告がそろっておりません。それぞれの県におきまして報告の集約にかなり時間がかかることと思いますが、仮に全部そろったといたしましても、当委員会にお出しするとすれば、その報告の中のポイント、ポイントを集約したものをお出しすることが私どもとしてはできる限界ではないかと思っております。
  236. 山原健二郎

    ○山原委員 これは私はフェアではないと思いますね。試行をやられたわけですからね。試行の結果についてどういうものが各県から出た、全部そろわなくても結横ですよ、三十幾つの県市でやられて、そのうちの例えば十でも二十でもあれば、これは同じような研修をやっておられるわけですから、それが私たちの判断資料になるのは当然のことでございまして、その功罪を明らかにして初めて、これを六十三年度もやるとか、あるいは本格実施をやるとか、そして、その法律はそういう意味では大丈夫だとかあるいは疑問があるとかいうことが出てこそ、この委員会の審議ができるわけでしょう。断じて納得しませんね。今集まっておるものだけでも出してください。当たり前じゃないですか。何のために試行をやったかわからぬでしょう。
  237. 加戸守行

    加戸政府委員 このような形でそれぞれの試行をお願いし、その試行の結果の報告を、文部省として各県の委員会考え方を受けとめるわけでございますから、文部省としてはそれは六十三年度試行あるいは六十四年度本格実施に向けての内部資料という観点からお願いをしているわけでございまして、都道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会は公にするということを前提にして作成した資料ではないと私は理解をしているところでございます。したがいまして、初任者研修の今後のあり方等につきましては、今申し上げた報告がそろいました段階でその内容を集約してお出しすることで十分足りるのではないかと私は考えております。
  238. 山原健二郎

    ○山原委員 今どなたかがおっしゃるとおり、これは法案の審議をして法案の成立を皆さん早くやってくれと要求していらっしゃるわけでしょう。六十二年に試行をやって、しかも国の費用で試行をやられたわけですね。そして皆さんの方は、これはいいから次の六十三年度もやります、そして六十四年度は本格実施をやりますとおっしゃっている。しかもその法律をつくろうとしているわけでしょう。だから、その法律をつくる段階においては、その報告書を私たちに提供してこそ、これは何党に限らず、それでこそ初めて本格的な論戦ができるわけでしょう。私はそういう意味で納得しません。委員長の適切な措置をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
  239. 加戸守行

    加戸政府委員 過去このような形での資料要求がございまして、それを提出したような形のものでは、つまり例えば三十六都府県指定都市のものを全部そのままの形で提出するということは私どもなかったように思いますし、またそれは、繰り返しになりますが、各県は当然のことながら内部資料として文部省で処理されることを前提として作成いただいているわけでございますから、それは県の立場というものもございますし、他の機関が作成した内部資料をこの場にお出しするということは文部省一存ではできない事柄だと思っております。
  240. 山原健二郎

    ○山原委員 これは本当に何も秘密の文書ではないでしょうし、各県が実施しまして、こんな困ったことがあります、こんないい点がありましたということなどを含めて、それぞれの県の評価が出ておると思うのですよ。それをもとにしてあなた方は一遍試行をやってみて、大丈夫だということで法案を出されたわけでしょう。その基礎になるものは、私たちはない、皆さんは持っておられる。全部とは言わなくても持っておられる。それを基礎にしてあなたは答えているんでしょう、この二日間ですかね。それを提出しないというのは本当に困りますね。ここで正当な審議のできるようにしてください。もう一回要求します。
  241. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修がどのような形で行われ、その反応がどうであったかということは、お手元に配付させていただきました所属校長、指導教員あるいは初任者教員のそれぞれの御感想なり感覚が示されているわけでございまして、おおむねの感覚的なものはこのアンケート調査によって御理解いただけるものと私ども思っております。  なお、任命権者でございます都道府県あるいは指定都市教育委員会から文部省に対します報告は、それぞれの立場におきましての文部省との間におきます内部資料として、公開を前提としないで作成された文書でございますから、文部省が他の機関の作成した文書につきましてその信頼を裏切って提出するという立場にはないということを重ねて申し上げさせていただきたいと思います。(「常識だよ」と呼ぶ者あり)
  242. 山原健二郎

    ○山原委員 そんなことは常識ではありません。冗談じゃないですよ。  問題が検察あるいは司直の手に移って、その資料提出の問題でそういうことはありますけれども、事は教育の問題でしょう。しかも隠れてやったあれじゃないですからね。しかも公然とそれらの県が出されているわけですからね。それはへ理屈というものですよ。そんなことじゃ本当に審議できないじゃありませんか。本当にそうお考えになりませんか。  この委員会委員の皆さんにそれを提供して、仮にそれを丸ごと提供できないというのであれば、あなた方の方で一定の集約をして出されるということもありましょうし、私はそれは当然のことだと思いますよ。そんなことができなかったら、これからの法案の審議だって、いつも大事な肝心の資料が隠されたままで私たちは論議をしなければならぬということになりますでしょう。そして、これには賛成だ反対だと態度を決めなければならぬということになりますでしょう。だから要求をしているのです。これはしつこい話じゃないですよ。私は当然のこととして三たび要求をいたしたいと思います。  これは委員長、どうぞひとつ委員長の、ちょうど町村先生に今はかわられておりますけれども、当然委員長席におられるわけですからね、お答えいただきたいと思うのです。これはもうぜひやっていただきたい。
  243. 町村信孝

    ○町村委員長代理 では、委員長から発言をいたしますが、ただいま理事会を別室において行っておりますので、理事の皆さんが戻った段階でまた御相談を申し上げて、委員長から御返事を申し上げます。
  244. 山原健二郎

    ○山原委員 私の後の発言問題についての理事会をやっておることは、私も伺っております。そこに私の見解も出して、私の質問中に、時間がもう遅いですから、直ちに——理事会をやっておられることは知っておりますが、今私の出した問題が理事会でかかっているという保証は全くありませんので、どうされますか。
  245. 町村信孝

    ○町村委員長代理 ただいま理事会中でございますので、山原君、質問を続行してください。
  246. 山原健二郎

    ○山原委員 私は理事会をどこでやっているのか知らないけれども、これは理事会に伝わらぬじゃないですか。どういう措置をとられますか。
  247. 加戸守行

    加戸政府委員 通常、県教育委員会等からの報告と申しますか、今回のケースにつきましては、私どもが懸念をいたしておりますのは、先ほどからの繰り返しになりますけれども、オープンになる文書ではないということを前提で各任命権者が作成されているものでございます。例えて申し上げれば、県財政当局の折衝した結果がこのようになっているとか、言うなればある意味で、来年度以降どのような措置を講ずるかについて、外へ出ては次年度以降の措置が非常にやりにくくなるようなことが記載されている可能性もございますし、そういう意味では、この審議の場といたしましては、初任者研修をどのようなものと各県が評価しているかということでございますれば、四十七都道府県のその報告書を集約した形でお出しするのが適当であろうと思っておるわけでございます。
  248. 山原健二郎

    ○山原委員 一番大事なところがあなたがおっしゃる中にだんだん出てきましたけれども、懸念を持っておられる、懸念を持っておられるところが率直に言って私たちが一番知りたいところですよね。そして今集約されるとおっしゃるのですから、この法案の審議の行われている間に今の集約されるものを提出していただけますね。     〔町村委員長代理退席、委員長着席〕
  249. 加戸守行

    加戸政府委員 まだ報告書が一部しか参っておりませんし、その一部を集約することは全体を集約することにならないと思いますし、当委員会の審議がいつまでか存じませんけれども、その期間内の提出は不可能であろうと思っております。
  250. 山原健二郎

    ○山原委員 文部省、不誠実ですね。この委員会に対する態度としては不見識ですよ。そんなこと許せますか、委員長。私は、この問題については時間を留保します。  きょうは人事院の方に来ていただいておりますので、条件つき採用期間延長の問題、この点について先に人事院の御見解を伺っておきたいのです。  まず第一番に、条件つき採用期間においては地方公務員法の二十九条の二によって分限及び懲戒についての適用除外が示されています。これが教員の身分を不安定に置くものであることは間違いないと思いますが、この点いかがでしょうか。
  251. 谷仁

    ○谷説明員 一般職の国家公務員採用につきましては国家公務員法によりまして行われているわけでございますが、この採用につきましては、職務遂行能力の有無を競争試験あるいは選考により検証して行うこととなっております。競争試験または選考におきます職務遂行能力の有無につきまして、すべてに万全を期することは困難でございますので、採用後の一定期間職務を通じまして最終的に確認するために、条件つき採用期間の制度が設けられておるわけでございます。その条件つき採用期間中の職員につきましては、そういう試験期間中にある職員でございますから、正式に採用された職員と全く同じ厳格な身分保障をすることは適当ではございませんので、分限の規定につきまして、国家公務員法の分限の規定適用除外といたしているわけでございます。
  252. 山原健二郎

    ○山原委員 今おっしゃったように、不安定な状態に置かれることは確認をされるわけですね。しかしながら、同法二十七条の「すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。」という、公正の確保をうたっておりますね。嶋崎さんの方から随分この点の質問があったわけですが、この公正の確保、「公正」というのはいかなる内容のものでしょうか。
  253. 谷仁

    ○谷説明員 人事院といたしましては、先ほど申し上げましたように国家公務員法を所管いたしておりますので、国家公務員法のお尋ねにつきましてお答えをさせていただきます。
  254. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょっとわかりにくかったですが、時間の関係がありますので次に行きます。  地方公務員法コンメンタールによれば、「一、勤務実績がよくない場合。二、心身の故障のために職務遂行に支障があり、またはこれにたえない場合。三、前二号に規定する場合のほか、その職に適格性を欠く場合。」に準じて行われることになっておりますが、そのとおりですね。
  255. 加戸守行

    加戸政府委員 御質問趣旨を受け取り方が間違えていたら御容赦いただきたいと思いますが、この条件つき採用期間中の免職の基準といたしましては、既に過去の判例等におきまして、合理的な判断基準によって免職をする必要がある、恣意的なものではないということが判示されておるわけでございまして、それにおきましては、いわゆる分限保障がございます正規職員の場合に準じまして、同様ではございませんけれども、その職務の実績が良好でない場合、あるいは心身の故障がある場合等の、将来公務員として、教員として任要するにはふさわしくないという適格性の判断が、当然客観的に合理的な範囲ということでございますから、社会的な良識の範囲内で判断される事柄だと理解しております。
  256. 山原健二郎

    ○山原委員 たくさんお聞きしたいことがあるんですけれども、若干の留保分がございますので、はしょっていきたいと思います。  これは私の質問内容の途中の問題でございますけれども指導教員の問題は、教員の間に指導・被指導を持ち込むことになることは明らかです。学校教育運営、あり方からいっても、そういう意味では非常に問題を感じております。指導・被指導によって研修を行うというのは自主的研修そのものを阻害する中身になるわけでございますが、この点について一言伺っておきたいのですが、いかがですか。
  257. 加戸守行

    加戸政府委員 指導教員初任者に対します指導を行うことは今回の初任者研修の中核となり柱となる事柄でもございまして、経験豊富な先輩教員が後輩に対しましてアドバイスを与えるということは当然指導・助言の一内容でございますし、指導・助言のない初任者研修でありますればおよそこのような形のものは意味がなくなるわけでございます。  ただ、先生が御心配なさっていますように、指導する教員指導を受ける教員との間の立場が支配関係に立つのではないかというようなニュアンスでの御質問でございましたけれども、あくまでもこれは先輩教員が持っておる豊富な経験に基づいた自分の判断によっていろいろな助言なり提言をするわけでございますから、それを受け入れる教員側におきまして適切に判断し、自分のものと受けとめて、自分で行動するということになろうかと思います。その関係におきましてはあくまでも主体性は初任者である新任教員が持っているわけでございまして、その場合の強制とかあるいは命令にわたる問題ではございませんので、自主的な判断においてみずからが先輩教員のアドバイスを受け入れ、あるいは事柄によりましてはそれを反面教師として受けとめるというケースもあり得ないわけではないと思います。  いずれにいたしましても、その指導を受けることが自主性を阻害するということではないと思いますし、むしろ、本人が将来一本立ちして二年目からみずからの判断で行動する場合の主体性をその指導を受けることによって培っていくものではないかと思っております。
  258. 山原健二郎

    ○山原委員 時間を若干残しますが、二つの問題ですね、先ほどの報告書の問題、これは審議中に必ず集約したものを提出をしていただくように要請をします。もう一つは参考人の問題ですね、これは必ずやるべきであるということを主張いたしたいと思います。それをやるのが本委員会の国民に対する責務であるということです。  ちょうど私の質問中に理事会を開かれたようでございますし、けさからまだ二巡目につきましても発言通告がございます。中西先生の発言通告がございますから当然これは質問を続行すべきであるということを申し上げまして、二巡目の一部を残しまして私の今の質問はこれで終わります。
  259. 中村靖

    中村委員長 これにて山原君の質疑は終了いたしました。  北川正恭君。
  260. 北川正恭

    ○北川(正)委員 動議を提出します。  本案に対する質疑はこれにて終局されんことを望みます。(離席する者、発言する者多し)
  261. 中村靖

    中村委員長 採決いたします。     〔発言する者多く、聴取不能〕
  262. 中村靖

    中村委員長 ……(聴取不能)原案のとおり可決すべきものと……(聴取不能)ただいま議決いたしました法律案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。——よって……(聴取不能)本日は、これにて散会いたします。     午後八時八分散会