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1988-04-22 第112回国会 衆議院 文教委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十二日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    石渡 照久君       工藤  巌君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    杉浦 正健君       谷川 和穗君    渡海紀三朗君       松田 岩夫君    村上誠一郎君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    北橋 健治君       石井 郁子君    山原健二郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         人事院事務総局         任用局企画課長 谷   仁君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 四月二十二日  辞任         補欠選任   谷川 和穗君     村上誠一郎君   綿貫 民輔君     石渡 照久君 同日  辞任         補欠選任   石渡 照久君     綿貫 民輔君   村上誠一郎君     谷川 和穗君     ───────────── 本日の会議に付した案件  教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第三八号)  昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七四号)      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬夫君。
  3. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 初任者研修質問に入ります前に、文部大臣に、三月二十九日付のこの服務規律通知についていろいろな御意見があるようでございます。国民期待にこたえるためにいろいろ教員資質向上あるいは研修等の充実を図るということは大変大事なことでありますが、公務員として当然守るべき規律に反するようなことがあっては教育全体に対する信頼を損なうことになりかねない。この問題について文部大臣として服務規律の確保についてどういうふうなお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思うのです。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 「教育は人なり」、こう言われます。特に教育基本法においても教育人格の完成を目指す、こういうことが第一条に書かれておるわけでございまして、そういう意味教育そのもの信頼の上に立つ、特に学校教育が広く国民から信頼を受けるということにその基本があると思うわけでございます。したがって、そこに服務する教職方々が少なくとも法律違反をするようなことがあったりあるいは教育中立性を損なうようなことがあって、学校教育そのもの国民から信を失うことがあってはこれは大変なことでございますので、そういうことがありませんようにという通知をいたしたわけでございまして、私ども教育を守り、教育を進め、さらに教育を改革していく上に一番重要な基本姿勢である、こう思いましてこのような通知を出したというふうに考えておりまして、この服務規律は、その趣旨にのっとりまして守られますように今後ともお願いをしていきたい、このように強く感じております。
  5. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 助成局長からもこの件について……。要するに、学校先生たち学校の中での校規みたいなものに子供たち違反した場合には大変厳しく取り締まるわけですね。そして、教える側の自分たちが例えば政治的行為、特に六十二年度の日教組の運動方針の中に、初めから、「今年度から実施されている初任者研修試行阻止のため、集会、デモ、署名・決議などによる反対行動を行う」と断言しているわけです。こういう部分について本当に違反があったときには、厳しく文書発行元としてその問題をきちんと処理するという態度が大変重要かと思いますが、局長にその決意をお示しいただきたい。
  6. 加戸守行

    加戸政府委員 私どもの立場といたしましては、法令に従った行動をとっていただくことを心から期待しているわけでもございますし、また、教育公務員のみならず一般公務員もすべてそうでございますが、採用されましたときには服務の宣誓を行いまして、法令及び職務上の義務に従うことを宣誓するわけでございます。そういった意味におきまして、私どもの出しました通達の趣旨は、違法な行為に及ばないような事前の警告的な意味でございまして、具体的な行動が行われ、かつ、それが法令違反することが明確であります場合には、重ねて厳正な措置をとるような指導を行う考えでございます。
  7. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 これはもう古くて新しい問題でありまして、一度注告を与え指導したものについて再度繰り返すという問題については、もっと毅然とした態度が必要になってくるべきだと私は思います。ぜひその努力を御期待を申し上げます。  次いで、初任者研修質問に入りたいと思います。  教員というのはやはり子供人格形成について大きな直接的なかかわり合いを持つわけでございまして、その教師像というものについては今までいろいろ語られてきているわけでありますが、望ましい教師像というものを、簡単で結構でありますが、文部大臣はどうお考えでありますか。
  8. 中島源太郎

    中島国務大臣 二つ申し上げさせていただきたいと思います。  教員としての教育者使命感、人間の成長発達についての深い理解、幼児、児童生徒に対する教育的愛情教科等に関する専門的知識、広く豊かな教養、そしてそれらを基礎とした実践的指導力が求められておる、役所的に申せばそういうことで正しいと思います。  一つ加えさせていただきますと、私は、やはり生涯学習という見地からも、教師そのものが、そして万人が、与えられた人生の中で常に啓発をし、意欲を持って学んでいく、そういう先を見ながら学び、研修をする集団である、したがって教師生徒に対しては先行ランナーであり、生徒はまた後発ランナーである、したがって先行ランナー後発ランナーのよきペースメーカーであり、また後発ランナーの痛みも喜びも分かち合えるものでなければならない。そういうもので、確かに教室の中では向き合って教え、教えられますけれども人生を歩む中ではすべて前を見ながら研修しつつある人間像一環として教え、教えられるものである、一つ付与すればそういう形がより好ましい教師像ではなかろうか、私はそう思っております。
  9. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 加戸助成局長にも同じ質問をお伺いしたいと思います。
  10. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま大臣が申し上げたとおりでございますが、私ども、現在の教員のあり方につきまして基本的に考えております事柄というのは、やはり子供に対する理解愛情情熱というのが基本になると思います。また、そういった教員子供たちから信頼を受けるためには、当然それに必要な実践的指導力なり学問的知識も身につけた上のことでなければ、児童生徒理解あるいは協力は得られないという面もございます。そういうような教員使命感情熱というものを今の教員方々が持っていただければありがたいし、もちろんそのためには裏づけとなる、子供たちから尊敬されるような実力を持っていただきたいと思っているわけでございます。
  11. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 実は素朴な疑問なんですが、先生になろうという気持ちを持って大学に入学をして、そして一生懸命、知識における学問というものと教師になろうとする心の持ち方、こういうものを四年間勉強するわけですね。それが採用になった後、また初任者研修しなきゃならぬというのは一体問題がどこにあるのかな、要するに大学の四年間課程の中でそういうことを含めてやっぱりきちんと教えていくという大学課程なり制度なりというものがつくられていかなければいけないんではないかな、そんなことを素朴に疑問として感じているわけですね。  データがあるかどうかわかりませんが、例えば教職員採用のとき面接があって、教師聖職であるのか労働職であるのかといういろんな面接をした場合に、まさに教師聖職であるんだという決意先生になりたい、そういう答え方をした初任者人たちというのは、もし体験があるんならどの程度の割合になるものですか。
  12. 加戸守行

    加戸政府委員 教員資質向上は、養成採用研修すべての段階を通じて資質の判定がされるわけでございますけれども、現在の採用試験につきましての改善方を私ども指導申し上げておりまして、各都道府県教育委員会におきましても、採用段階面接あるいは適性検査等多様な工夫をさしていただいておりますが、御承知のように志望者が非常に多いわけでございますので、個々人の面接に要する時間というのは極めて短いわけでございますし、また、その中で教員を志望した動機なり取り組み姿勢というのは簡単には、質問されますが、もちろん私ども統計的なデータはつかんでおりませんけれども面接試験でございますから当然、かくかくしかじかの動機意欲を持って子供たち教育取り組みたいというような模範答弁が返ってくるのがほとんどであろうと理解いたしております。  事柄は、そういった模範答弁が現実に就職した後の学校現場で生かされるかどうかということでございまして、そういう意味におきます視点からは、私ども、今申し上げた初任者研修のような実践の場でそういった気持ちなりあるいは意欲の盛り上げということを期待している次第でもございます。
  13. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 もっと具体的にお答えをいただきたいのですが、教師になるときには採用試験のときに面接があって、私は子供たち愛情を持ってしかも理想に燃えて教師になりたい、そういうお答えをして、教員生活に入って一年くらいたったら全く違う人格になるという。私は先生になっている友人もたくさんおりますが、どうもその世界に入った瞬間にいろんな形でいびつになっていくという傾向になっていくんじゃないかな。それはやはり、大学年間の中でただ学問知識だけの、それから技術だけのことじゃなくて、大学年間教育システムの中に問題もありはしないかなという気がしてならない。こういうものに対して、今後新しい国際化時代とか多様化した個性の時代に向かって大胆に取り組んでいこうという気概がおありなのかどうか。  けさのある新聞に、筑波大学自己批判報告書を出したというようなことで、最後の方に、「一般教育科目で確たる教育目標もなしに授業が行われてきた。担当者意欲に欠け、誤った人員配置をしている。」こんなことを、日本の代表である筑波大学大学制度の中で自己批判をみずからするというのは、これはいい意味で取り上げていいのか。このまま継続していったら一体どういうことになっていくのかな。この問題について少し局長の方から、現時点で教育現場の中でどういう問題点があり、これをどう改良・改善していこうとしているのか、この辺について御意見をお伺いしたい。
  14. 加戸守行

    加戸政府委員 教員養成段階におきます教育が極めて重要であることは、言をまたないところでもございます。先ほど申し上げましたように、養成採用研修のすべての段階の第一ステップでございます教員養成段階におきましても、そういった点におきまして、今回、私ども、この初任者研修の創設に関します教育公務員特例法改正のみならず教育職員免許法改正案も提案さしていただいておりますが、その中におきましては、例えば一つの例でございますけれども教育実習の場合に事前事後指導を一単位付加いたしまして、その内容としては、例えば他の校種あるいは他の施設等におきます実習なり経験体験というものを一単位として付加しようと考えておりますが、それは、学校教育といいますものはもちろん学問的な知識並びに実践的指導力基礎を培うものでございますけれども、やはり多人数による集中的な講義等によっては達成されないこと、つまり学生が自分の肌で体験をすることによって教職というものはこういうものであるのかということを理解していただく、そういった意欲を養っていただくというような意味事柄でもございますし、あるいはカリキュラムの問題といたしまして、例えば特別活動とかあるいは生徒指導に関する科目を必須化しようというような考え方で提案さしていただいておりますけれども、これらの教員養成制度改善の中にありましては、今申し上げた先生趣旨に沿うような方向での施策として資するものを盛り込んでいきたいと思っておるわけでもございます。
  15. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 時間もないわけでございますので、具体的にもっとお聞きしたいこともたくさんあるわけでありますが、それはそれとして、今度の初任者研修中身について少し御質問申し上げたいと思うわけです。  一応大学年間課程を経てそして採用され、その中で実際に現場に従事するための一つ研修機能として初任者研修という制度を導入しようということだと思うのです。この初任者研修はどんな方法で行われるのか、少し詳しく中身についてお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者は就職した当初の時期でございまして、これはすべての職種についても言えることでございましょうけれども、特に教員の場合につきましては、採用されました教員としての自覚を高めますとともに、円滑に教育活動に入っていって、そして可能な限り自立して教育活動を展開していく、そういった素地をつくる上に非常に大切なことでもございます。一般職種と違いまして、教員自身が一本立ちして一人で教壇で教えるという役目を負うわけでございますから、この時期に組織的あるいは計画的な研修を行いまして、一生涯にわたります教員としての職能成長について欠かせないものを身につけていくということをねらいとしているわけでございます。今回、初任者研修制度を創設して任命権者にその実施義務を課すこととしたのも、そのゆえんは今申し上げたところでございます。  具体的な内容でございますが、初任者研修制度におきましては、初任者経験豊かな指導者指導を受けながら当面する教育問題を究明してその改善策を工夫していくことが効果的である、そういった観点から、初任者学校に配置いたしまして、それぞれ学級とかあるいは教科科目をすべて他の先生と同様に持っていただきながら、かつ、一年間にわたる研修を受けるということといたしております。  具体的には、初任者は、校内における研修といたしまして年間七十日間程度指導教員による具体的な指導を受けていただく、それから校外における研修といたしまして年間三十五日程度教育センター等におきます講義・演習あるいは実際の他の校種あるいは他の施設等の参観、そういった実地の経験を積んでいただくという二つのコンビネーションによってでき上がっているわけでございますけれども、そのほか一年間を通じましてそれぞれ毎日毎日が研修の場である、研修の時期であるという理解のもとに、例えば校内指導体制に基づきまして、先輩教員から各般にわたる指導助言を仰ぎ、またそれをみずからのものとしていくということを想定しているわけでございます。  具体的には、今申し上げましたマン・ツー・マン指導といたしましては、経験豊かな先輩教員から、それぞれの一年間教育課程流れに沿いまして、あるいは授業進度児童生徒発達段階等を考慮し、あるいは個々の具体的な事例に即してアドバイスを受けながら研修をするという形になりますけれども、その場合には、なるべく教員の自主的な意欲ということでみずから取り組む課題を新任教員自身にも持っていただいて、そういった問題意識に応じて先輩教員から指導をする、そういう意味では、影の形に添うごとく先輩教員が温かい目で見守り、かつ、必要なアドバイスを与え、それが過度のアドバイスではなくて、新任教員が悩んでいることあるいは問題解決に取り組んでいるときのサゼスチョンを与える、そんな方法指導教員による指導を展開していただけたらと思っているわけでございます。  それから、校外における研修といたしましては、これは教育センター等におきます、いろんな使命感なり教育技術なりいろんな理論的な講義、もちろん実践的な指導力向上に資するような講義等を受けるわけでございますが、これも今申し上げた新任教員に対します指導教員指導あるいは学校進度等に連関させながら今のような理論講義を行っていただきますとともに、例えば宿泊研修等におきます集団新任教員同士の悩みを打ち明けた意見交換なり、あるいは相互交流を図っていただく。さらには、社会福祉施設とかあるいは児童福祉施設あるいは社会教育施設といったいろんな諸施設、場合によりましては民間企業等施設も参観いただきまして、学校以外の分野でどのような形で授業活動が展開されているのか、そこで働いている人たちがどんな取り組みをしているのかということを広い視野から受け取っていただくというようなことを考えているわけでございます。  さらに付加いたしますれば、今申し上げた事柄は、都道府県段階におきます任命権者の行う研修の主たる内容でございますが、これと並行いたしまして、国のサイドにおきまして、文部省としては全国的な洋上研修を企画いたしておりまして、新任教員のうちの一部が洋上研修に参加をしていただいて、その場におきまして広い知見を得ていただき、あるいは全国的な教員相互交流も図っていただくという、いろいろな盛りだくさんな施策考えているわけでございまして、結論的に申し上げますれば、メーンポイント校内における七十日間のマン・ツー・マン指導による研修並びに三十五日間程度校外における教育センターを中心としました研修、さらに付加的な意味で国と任命権者が協同して行います洋上研修、この三つが中核的な存在になりますけれども、もちろん三百六十五日が研修という意識で取り組んでいただくことを期待しているところでございます。
  17. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 今の海上研修だとかあるいは企業訪問とかというのは、確かにそれは大学年間の中での教員養成課程の中では割と触れられない部分なのかもしれませんが、教育現場の中で先輩教師アドバイスをいただきながらとかということは、教育実習課程の中で当然経験をしておられることですね。何かダブルで同じことをやっていくような気がしてならないのです。  私は、少なくともこれからは、そういう国際的な広い視野人間像だとか子供たち愛情を持って接する段階教師像というものの中に、やはり従来の発想では考えられないような充実した機会というものをもっと与え続けていく。初任者研修制度というのはそういうものだけじゃなくて、もっと奥の深いものにしていくという発想が将来必要になってくるんじゃないかな。洋上研修をして二週間海を渡るくらいであったら、本当に大胆にアメリカとかイギリスへ一カ月くらい派遣して、実際に海外日本人学校現場での仕事を一カ月させてみる体験とか、あるいは先回に教職適性審査会の設置の提言をしたんですが見送りになったようでありますが、五年、十年、十五年後においてその実践体験した教師をもう一度再適性検査をしてみる、そういう中でリフレッシュさせてあげる、そういう考え方をこの制度の中の一環として取り上げていかないと、何か大学でやったと同じことを、また同じような繰り返しの中で、実質的には制度はできたけれども意味がだんだん薄れていくという形になっていくんではないかな。  時間もないので、一つだけ別の質問をしたいのでありますが、教員海外派遣制度というのは今も残っておりますね。この人たち平均年齢というのは一体何歳くらいになっておられますか。
  18. 加戸守行

    加戸政府委員 お答えの前に、教員養成とのダブりがございましたので、一言触れさせていただきたいと思いますが、今現在、教員養成段階では、小学校教員になる者につきましては四週間の教育実習、中学校高等学校教員になります者については二週間の教育実習がございます。しかしながら、例えば六十二年度のケースでございますと、教員免許状を取得される方が実数十三万八千人でございまして、そのうち教員に就職される方は二万八千人でございますから、言うなれば、教員になれるかなれないかわからないような方が教育現場にたくさん教育実習に来られているというような実態もございますし、また特定の出身校に偏りがちでございますので、たくさんの実習生が来られますと、そこで十分な教育実習ができるかどうかという問題がございます。そういった点では、今回の初任者研修の場合は非常に密度の高い、しかも専任の教員をもって指導するという体制でございますので、質的にも相当大きな違いがあるだろうというような考えを持っておるわけでございます。  ところで、先生今御質問ございました、文部省におきまして教員海外派遣を行っておりまして、現在、年間約三千人程度先生方を、短期派遣としましては二週間、長期派遣としましては一カ月間の派遣を行っておるところでございますけれども、大体その長期派遣の場合の平均年齢が四十四歳でございまして、短期派遣の場合の年齢が四十一歳というのが現在の状況でございます。
  19. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 もう質問時間もほとんどありませんが、私はイメージとしては、定年間際先生たちがもっとたくさん海外派遣に出ておられるのではないかなと、こういうふうに思っておったのですが、そんなことはありませんか。こんなに若い人たちばっかりですか。ちょっと年度別ぐらいに、もしわかっておったら……。
  20. 加戸守行

    加戸政府委員 教員海外派遣の場合に当たりましては、退職前に相当するような先生派遣いたさないこととしておりまして、派遣して帰ってこられてから海外派遣の成果を教育現場に生かせることをねらいとしております。そういう意味では、職種によりまして校長先生教頭先生は当然年齢層の高い五十代の方が派遣されるわけでございますが、と同時に、中堅教員を三十五歳以上の者に限りまして派遣をいたしておりまして、近年そういう意味では若手の派遣、三十五歳以上の中堅層の方の派遣もふえてまいりました。そういった関係で、平均いたしますと、先ほど申し上げたような年齢が以前に比べますと若い年齢に下がってきているという現状ではございます。
  21. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 最後質問になりますが、大臣、どうか初任者研修というものをもっと意義あるもの、深みのあるものにしていくためには、そういう初任者の中でもやはり教師として理想に燃えているうちに海外教育を手ざわりさせたり、海外企業に触れてみたり、世界流れの変わりみたいなものを体験させたりということも、ぜひこの仕組みの中に加えていただく努力をお願い申し上げたいと思うのであります。実際に伸びる人材を伸ばしていく研修でなければならないと思いますし、その意味で、教育界というのはどっちかというと、その中に入っていきますと、考え方行動が割と抑圧されていくような機関になっているんじゃないかなという気がするわけですので、そんな意味で、例えば教職適性審査会設置なんという問題が前にありましたように、そういうものと組み合わせを考えながら、こういう制度の、教職員として身も心も大きな、人の信頼を得るような形になっていく教師像というものをつくり上げていくために御努力をいただきたい。最後に一言だけ、そのことについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  22. 中島源太郎

    中島国務大臣 大変建設的な、そして明るい御提案をいただいて感謝をいたしますが、先ほどから先生御指摘のように、やはり大学で学ぶその範囲、そこでは資質もあり、教育も全うしたとしても、新たに社会人として、特に重要な教鞭をとられる方々にとりましては、幅広い知見を得ていただくために、先生おっしゃるように一つ方法として海外の知見も広める。そういう意味では、六十三年度から、二十五歳以上三十五歳までの若い教職員方々にイギリスあるいはアメリカに二カ月間研修に行っていただく。当面は四十人、四十人とまだ少ない人数でありますけれども、これをさらに広めてまいりたいと思っておりますし、先生が今おっしゃいましたように社会人として立つ、そして烈々たる意欲と気迫を持ち、また人間を愛する愛情教育に挺身する意欲、そういうものを持ちつつ、さらに御自分が大きく成長しつつ後輩を指導する、こういう形に育っていただきますように、私どもも万全の努力、環境整備をしてまいりたい、このように考えております。
  23. 佐藤敬夫

    佐藤敬夫委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  24. 中村靖

    中村委員長 馬場昇君。
  25. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、質問に入ります前に委員長に強く抗議をするとともに、要請を申し上げておきたいと思うのです。  中村委員長も相当長い議員の経験もあられるわけでございますし、私も長期に国会議員をやっております。そしてこの文教委員も相当長期に務めておるのですけれども、少なくとも委員長という職はこの委員会を運営する責任者ですから、万遺漏のないように、各党から出ております理事さんたちにいろいろなことを諮問して、そこの合意を得て委員会を運営しておるわけでございまして、これがルールでございます。ところが先日、理事会で合意を得ないまま委員会を開会された。こういうことは私の文教委員経験の中で、あるいは長い国会議員の経験の中で余り例を見ないのです。少なくとも委員長理事会の合意を得て運営をする、この原則から一昨日は逸脱をした、こう言わなければなりません。  それから、この委員会はスムーズに運営が行われておるわけです。我々が出しました議員立法もこの委員会に付託されております。政府が出しました法律も付託されて、我々の提案した議案もこの委員会にある。政府が提案した法律案の中で著作権法、その当時は私学共済もあったわけでございますけれども、著作権法と国立学校設置法がこの委員会に付託をされて、しかも趣旨説明があって審議中でございました。これは委員長も御存じと思いますけれども趣旨説明をすれば国会法の慣習によりまして審議中ということになるのは明らかでございます。この審議中の三つの法律があるのに、それが継続しておるのに新しく提案されたものの趣旨説明を求める、こういうことは従来ございませんでした。それで、我が党の理事は、そういうルール違反のことはやるべきではない、現在審議中のものを整々として審議しようじゃないか、こういう主張をしておるのに、合意のない委員会を開いて、そして委員の動議によって、きょう審議されておりますようなこの初任研を中心とする三つの法律趣旨説明をやらせた。こういうことは国会のルール違反である、許せない行為だと思います。私どもは、そういうルール無視の委員長のもとで審議することはできない、こういうことで一昨日は審議に応じませんでした。そういう中で野党第一党の社会党を抜きにして審議を進め、採決まで強行した。私はこの委員長態度は許すことはできない。この責任は強く追及さるべきものであると私は思います。  そこで、今後こういうことのないように強く抗議をし、要請をまずしておきたいと思います。  そして、今質問に立ったわけですけれども委員会は成立をしておりません。私は、この間も理事会で聞いておりましたら、国民の負託にこたえて慎重に審議すべきだという意見が出ました。そういうことで、いろいろなことがありましたけれども、きょうは慎重審議をしようと思って質問に立ったのですが、成立をしていない。ルール違反です。私はきょうずっと質問を続けますけれども、私が質問をここでとめましたときには、私が見て成立していないと確認して質問を中断いたしますので、これは私の質問の持ち時間ではない、外してもらうということを最初に委員長に了解をとっておきたいと思いますが、いかがですか。
  26. 中村靖

    中村委員長 ただいま馬場君から、一昨日の委員会の運営につきまして御意見あるいは御指摘がございました。そのことについて委員長としてお答えを申し上げたいと思います。  衆議院の先例によりますと、「審査案件が数個あるときは、議題とすべき順序は、委員長が定める。」ということになっております。これが通例でありますけれども、「委員会に諮って決したこともある。」このように衆議院の先例集にはうたってあるわけでございます。原則として、当然各党から出ておられます理事の皆様方に諮って合意のもとに委員会の運営をすべきものと心得ておりますけれども、合意が調わないときには委員会の運営ができませんから委員長の職権においてこの運営をする、あるいは委員会にその運営をお諮りして決定をしていくということに先例でなっておるわけでありますから、先例に基づいて委員長委員会を運営いたしましたので、御指摘のとおりではない、私はそのように申し上げておきたいと思います。  定数の問題等については、御指摘に従いまして、御指摘があれば出席委員の確認をしてその定数を満たすように努力をいたしたい、このように思っております。
  27. 馬場昇

    ○馬場委員 委員長は重大なミスを犯しておるのです。それに気づかないところが非常に残念です。今言われた先例は私はよく知っているのです。調べておるのです。委員会に数個の議案が付託されたときにその順序をどうするか、こういうことについては理事さんの意見を聞いて委員長が決める、そしてどうしても決まらないときには委員の皆さんに相談して決める、そうなっている先例は私も知っているのです。これは付託された状態の議案についてでございまして、審議中の議案についてはそれはそういう慣例ではない。これは明らかにそうなっておるのです。審議中ですから、もう趣旨説明をしたのは審議中という先例でございますから、今委員長が把握しておられますのは、付託された審議していないもので、どれから今から審議を始めましょうかというときにはそのとおりです。審議中のものを入れかえたという先例はないわけです。  ところが、ずっと詳しく調べてみますと二、三ある。これは、委員長理事会に諮って満場一致すべての政党がそれでよろしいという了解を示したときに限る、こうなっておることを申し上げ、委員長理解が間違っておるということを申し上げたいと思います。  今の最後、定数については努力しますではない、成立していなければ審議できないのですから、成立していないときは審議しません、そう言わなければならないのです。だから、今成立しておりませんから、私は質問をしばらく留保いたします。
  28. 中村靖

    中村委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  29. 中村靖

    中村委員長 速記を起こしてください。
  30. 馬場昇

    ○馬場委員 半数そろったようでございますので、質問をやりたいと思います。  先ほど自民党の委員からも質問があっておったようでございますが、大臣、最近の文教行政を見ておりますと、基本的にやはり憲法、基本法の精神から見て非常に逸脱しておるというようなことを私は感じております。そしてまた、文部省の綱紀が緩んでおるのじゃないか、こういう疑いを持つような行いがしばしば行われております。  さらに、文部省が行政を進めようとしておるときに、国民の中にはいろいろな意見があるわけですが、例えば、そういうことだから、文部省は、そういう国民のあらゆる意見を吸収しようという形で諮問の機関をいろいろつくっておられる。ところが、そういう国民のいろいろな意見を聞こうという諮問機関、そういう中から、文部省がやろうとする施策に対して批判する者あるいは反対する者、こういう者は除外してしまうというような行いが起こっておるわけでございまして、私は、まさに法律違反、民主主義に反するような教育行政が非常に行われておる、これは非常に遺憾なことだと思うし、文部大臣文部省の最高責任者ですから、そういうことが行われないように厳重な監督、そして行われたものに対しては善処をするという責任が文部大臣にはあるわけでございます。  そういう立場から、具体的に三点について、最近行われましたことについて文部大臣意見を聞き、文部大臣に善処を求めたいと思います。  それは、先ほど自民党の委員の方からも御質問があっておりましたし、既に我が党も、私も一回は質問を申し上げた事項でございますけれども、六十三年、ことしの三月二十九日、そこにおります助成局の加戸局長が、「教職員服務規律の確保について」という教育助成局長通知を出しました、この問題でございます。  これにつきましては、文部大臣質問をしていろいろ議論もしたところでございますけれども文部大臣、その議論を思い起こしていただきたいのです。この前の議論で、この通知趣旨は後段の趣旨徹底にありますという答弁をいただいたのですが、私は、その中段がどうしても憲法違反だと思うのです。これはやはり善処しなければ、消えるものではないのです。それを今から私は読み上げますが、大臣、よく聞いておいてください。  「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修の実施を妨害するために、示威運動や署名運動の企画・指導等を行うこと、そのような目的を有する文書、図画等を発行し、回覧に供すること等は政治的行為に該当するものとして禁止されているところであります。」このくだりは、この前も大臣とよく話をしましたけれども、明らかに憲法十六条の国民の請願権を侵害しております。憲法二十一条の言論、出版、表現の自由の侵害でございます。これがこのまま残されてひとり歩きをいたしますと、まさに戦中の治安維持法の体制の再現につながってくる、こういう恐ろしさ、危険なものでございます。  そこで、大臣がこの前私に言われましたように、憲法十六条、二十一条は厳として侵すべからざるものであって、ここに書いておるものはそれを侵害するということでございますので、この部分は少なくとも撤回され、訂正されるような措置を講ずるべきじゃないか、こういうぐあいに私は思いますが、大臣いかがでございますか。
  31. 中島源太郎

    中島国務大臣 三月二十九日の助成局長通知についてのお尋ねでございます。  二点申し上げたいのですが、この趣旨は、後段に書かれておりますように、教育信頼国民から得るためには、いやしくも教職にある方々が違法行為を犯したりあるいは教育中立性を損なうようなことがあって国民信頼を失うことがあってはいけない、そのことがないようにという通知でございます、私はこう申し上げました。中段におきまして馬場委員が御指摘の点につきましては、憲法二十一条、これは集会、結社あるいは出版、表現の自由を保障したところでございますけれども、これには抵触をいたさない。なぜならば、この通知にあります「示威運動や署名運動の企画・指導等を行うこと」の前に、その「実施を妨害するために」という言葉がございます。「妨害」という言葉になりますと、これは要するに人事院規則によりまして「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施を妨害すること。」があってはいかぬ、こういうことでありますので、その「妨害」とは何かということが問題でありましょうが、実施が困難になるような妨害のためにそういう行動をすることは違法になりますよ、そういうことをここに明示したわけでございます。  また、先生が十六条の点にお触れでございますが、十六条は平穏に請願する権利を有するということでございまして、これは、平穏に請願をされ、そして妨害行為には至らないという点においては憲法に保障されたとおりでございまして、今私が繰り返して申し上げれば、これは国の定めた政策を妨害するようなこれこれの行為、こういうふうに申し上げておるわけでございまして、この中段に書かれましたものと後段で締めくくりました部分は同一の精神に統一されておるということでございますので、先生のおっしゃることは当たらない。法律違反することのないように、そして教育中立性が損なわれることがないように、これで統一されるべきものと私は考えます。
  32. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、例えばここに「署名運動の企画・指導等」と書いてありますね。署名運動の企画、それから署名運動を指導する、こういうことは、初任研はけしからぬと思うからひとつこれに反対する署名運動をやろうじゃありませんか、そしてお互いの仲間に署名運動をひとつやりましょう、こういうことなんですね。これは妨害になるのですか。——これはあなたには聞いてない、大臣だ。
  33. 中島源太郎

    中島国務大臣 私はその点を申し上げておるわけでありまして、一つ一つの請願あるいはそういう企画そのものが、一つ一つは憲法違反だ、それ一つ一つは憲法違反だと申し上げているわけではありません。これは憲法に保障されておるわけでございます。その前段で「妨害」という言葉がございますね。一つの国の機関また公の機関が決定した政策が妨害されるということはいかぬということが書かれてあります。その妨害するためにやる妨害とは何かということは、この前も馬場委員との間で質疑をいただいたわけでございますね。妨害というのは、定めたものが行えない、そういう意図で行われるものはやはり違法である、この妨害という言葉に私は比重を置いて考えておるところでございます。
  34. 馬場昇

    ○馬場委員 だから、私は妨害について言っているんですよ。署名運動を企画すること、それを指導することが妨害に当たるのですか、それを聞いている。例えば、初任研はこういう非常に大変な問題点があります、そういう文書をつくってそれを皆さんに見せる、こんなことが妨害に当たるのですか。ちゃんと署名運動の企画、指導、文書・図画をつくって供覧する、供する、こんなのが妨害になるのですかと聞いているのです。——大臣ですよ。大臣と今討論しているのですから、局長は……。
  35. 中島源太郎

    中島国務大臣 この通知をお読みいただけばわかるように、妨害するためにそういうものが行われるものはいかぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  36. 馬場昇

    ○馬場委員 これは大臣も御存じと思いますけれども、例えば、今私たちのこの国会にも、初任者研修制度はやはり問題がある、やめてくださいという署名をとって請願が出ているわけでしょう。それを私たちはここで審議するわけですからね。だから、そういう署名をとるというようなこと、そしてそれを、そういう運動をしましょうということで指導をするということ、そして、それについては中身はこういう問題ですよということで供覧すること、これは妨害じゃないでしょうということを私は聞いているのですよ。この間の、妨害というのは例えば暴力でもってそれを阻止するとか違法の行為を起こすとかいうものであって、憲法十六条にあるいは二十一条に保障されたこういうことは妨害じゃないんです、だから妨害というのは、こういうのは結構です、署名運動も結構です、企画するのもあるいはそれを指導するのも結構です、文書図画を供覧するのも結構です、しかし違法の行為を、例えばそういう署名簿を持って殴り込むとかあるいは暴力を振るうとか、そういうことはいけない。それは暴力行為なんかいけないというのはわかっているんだから。ところが、この文書がそのまま行きますと、これは御存じのように県の教育長に行きましたけれども、余りにひど過ぎるから市町村の教育長とかなんとかにこれをおろしていないのです、ほとんどの県がそうです、これはおかしいと思っているんですよ。だから、そういう意味で行政の皆さん方の意図も通じていないんだから。今大臣が言うように違法行為はしちゃいけませんよ、従来はそういうことでした。例えばストライキを指令すると、ストライキはいけませんよ、それはどんどん出ている。それはもうあなた方の指導のあれで、私たちはストライキは違法だと思っていないけれども、その違いはありますけれども、皆さん方が違法行為はいかぬよとおっしゃるのはわかるのですよ、皆さん方の立場であればそうでしょう。そういう意味でここのところは誤解を招くから、大臣、この辺は今言ったように素直に、違法行為はいけませんよ、こういうことですからというようなことを、この通知が誤解を受けないように、あなたの方で本当に意図するところをはっきり徹底するようなことをなさってはいかがですか。
  37. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは再三御質問がありまして、私どもは憲法に準じ、教育基本法に準じて教育行政を進めておりますので、いやしくも違法行為教育中立性が損なわれてはいけません。そこで私は、再三申しておりますように、憲法十六条そして憲法二十一条に反するものではない、こう申し上げておるわけで、そこでそれを過ちがないように、妨害するためにこういうことをしてはいけませんよ、それは違法に相なりますということを念のために予告をいたしておる、そういう通知でございますので、私は、意を尽くして案文をつくった通知である、そのように認識をしております。
  38. 馬場昇

    ○馬場委員 あなた、ちょっと理屈が合わないですよ。署名をするのは妨害じゃないでしょう。署名をするのは妨害ですか。署名をする行為そのものは妨害じゃないでしょう。(加戸政府委員委員長」と呼ぶ)いや、これはあなたがやったんだから、あなたは言うなれば被告なんですよ。——大臣、少なくとも署名をするということは、どういう署名であっても、例えばここで暴力行為を起こそうという署名なら違うかもしれませんが、しかし、初任研というような国民みんなに賛成、反対があるようなものですよ、そういうものに賛成なら賛成の署名、反対なら反対の署名、これをとるのは当たり前であって、これは妨害に値しないのです。初任研についての賛成か反対かの文書、図画をつくって、こういうことですと見せるのは妨害に当たらない。妨害に当たらないものを妨害する行為の中に含めて書いてあるから問題があるのです。その辺ははっきり整理をして、大臣が言うこと、答弁するその気持ちはわかるのです。だから、そこがはっきりわかるように整理をして、誤解のないようにしてください。どうですか、大臣
  39. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるように誤解がないようにいたしておると思います。強いて繰り返して申し上げれば、憲法十六条、憲法二十一条の規定もよく存じております。したがって請願そのものも、第十六条に平穏な請願、こう書かれております、この平穏な請願そのものは違法ではございません。したがってわかりやすく「妨害するために」とわざわざ書いてございます。これが、私が意を尽くしておると申し上げておる点でございます。
  40. 馬場昇

    ○馬場委員 これは例えば、いろいろ行政の言葉とかは国民にわかりにくいこともある、それで誤解を与えることはいけないので、平易な言葉で説明しなければならぬ、誤解があったらそれを正すような言葉をまた親切に使わなければならぬ、当たり前の話ですよ。ところがこれを読んで、私たちもあるいは教職員も父母も、あなたが言うような、妨害して違法行為を起こすようなことをしてはいかぬということは、あなたの意図はわかるが、ところが署名運動をするのが何で妨害だろうかな。妨害という言葉をつけて、それを後ろ盾にして署名も禁止しよう、あるいは文書、図画を配布するのも禁止しよう、こういうねらいがあるのではないか。そう疑うのは決して疑い深い人じゃないと思う。素直に考えればそうなる。だから、平穏に署名をすること、平穏に文書、図画をまくこと、これは決して妨害ではないのです。そういうことを今言っておられるのですから、この文書はそういうことですということをやはり国会で、あなた方がこの文書を出しているわけだから、ここでそう答弁されるべきです。そういう意味でぜひ大臣の善処方を要求しておきます。  時間が参りましたので、この続きの時間は後でまたやります。
  41. 中村靖

    中村委員長 この際、休憩いたします。     午前十一時三十五分休憩      ────◇─────     午後一時二十二分開議
  42. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。馬場昇君。
  43. 馬場昇

    ○馬場委員 教職員服務通知について、午前中の文部大臣の答弁は理解するところもあるのですけれども、この文書が残りますと、そういう大臣の答弁のように実際は動かないというおそれがございますし、また、実際動かないことを願っていらっしゃるのじゃないかとさえも思われますので、午前中私が言いましたように、大臣の意図がはっきりわかるように何らかの方法でまず善処を要望して、一応この問題はおいて次に入っていきたいと思います。  そこで、これもまた先般我が党の中西委員大臣質問をしたところでございますけれども昭和六十三年三月二十二日に、文部省の高石事務次官が衆議院立候補の表明をやったということに関してでございます。これは、本当に地位を利用した公務員違反の疑いがあると私は思っておるわけでございますけれども、この具体的事実は、中西委員も説明したのですけれども、三月二十二日午後六時のRKB毎日ニュースワイドで放映されたことでございます。それによりますと、そのキャスターが申されたのは「次の衆議院議員選挙で福岡三区から文部事務次官高石邦男氏が出馬の意向を明らかにした。」こういうことを放映したわけでございます。そして、その説明といたしまして「文部省の高石事務次官はきょう、福岡県粕屋郡志免町で行われた選抜高校庭球大会の開会式に出席した後、RKBのインタビューに応じました。高石氏はこの中で、近く退官する予定だが、現在は役所の仕事を一生懸命やる立場にある。しかし、地元で勝手連のように担ぎ上げようという動きが高まっていることは感謝していると、国政選挙への意欲を示した。さらに続けて、政治的発言の力となるには衆議院と参議院を比較した場合衆議院です、地元の盛り上げを考えていかなければならない、このように高石氏は初めて衆議院選挙への出馬の意思を明らかにした上で、自民党安倍派や中曽根派から誘いがあることを明らかにしました。」こういうようなRKBのキャスターの報道であったわけでございます。  文部省の事務次官というのは事務方の最高責任者であるわけでございますが、今この委員会で審議しておりますようにこういうときに、また別の報道によりますと、地元に頻繁に帰ってこのような政治活動をしておるという報道も聞いておるわけでございます。また、衆議院と参議院と比べたら衆議院だ、まさに参議院の軽視とも言えることを文部事務次官が発言をする。いずれにしても地位を利用して選挙運動をする、非常に大切な文教委員会の審議をしておるときに事務方の責任者が政治的中立を侵すような発言をする、これは私は許しがたいことだと思います。これを監督するのは文部大臣ですよ。先般中西委員からこの指摘がございまして、その後、文部大臣は高石事務次官に対してどういう措置をとられたかということについてお伺いしておきます。
  44. 中島源太郎

    中島国務大臣 馬場委員御指摘の件については、去る三月二十二日福岡県で行われた全国選抜高校庭球大会の開会式と聞いておりますが、それに出席をいたしまして祝辞を述べた、これは公務でございますから御承認いただけると思いますが、その後、地元のテレビ局でございますか、報道関係者から短時間のインタビューを受けた。過日、中西委員からも御指摘がございまして、その後、その発言について、私も責任者として当時の事情を、テレビはビデオで見るわけにいきませんので、新聞報道なども参照いたしまして当時の事情をくみ取ってみました。  二つございまして、その中で高石次官は、自分は今、ちょっとペーパーがございませんので字句の一字一字は間違うかもしれませんが、国家公務員の身であるし、立候補その他については、質問がありましたけれども、ノーコメントであるし決めていない、これが前提となっておりますので、私は当然そうあるべきだ、こう思います。したがって、その点はそういうことで、今後も職務遂行のために専念をいたすべきである、これは私が自分自身に言い聞かせるのと同時に、高石次官を含めた全職員に申し上げたいこととして心に思っております。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕  後段に申されました、少なくとも憲法に定められました両院の意義につきまして誤解を招くような発言があったとすれば、これは遺憾なことでございますが、その前提として、まさに先生おっしゃいますように、国家公務員はその注意力のすべてを職務に専念すべきであるということも定められておりますし、行政府としてまた立法府に審議をお願いをいたしておる重要な時期に職務専一に考えることが当然である、そのように思います。これは今後のことだけでなく、職員とも話し、伝えておるところでございまして、私の気持ちは職務専念を専一に考える、このことに徹してまいりたいと思いますし、今後とも文部省全体の中にこれは当然のことながら徹底していくように努力したいと思っております。
  45. 馬場昇

    ○馬場委員 高石さんは、今大臣が言ったように職務に専念をしますなんということはこのインタビューで一言も答えていない、言っていない。ただ、「近く退官する予定だが、現在は役所の仕事を一生懸命やる立場にある。」と言っただけで、あとは勝手連のような担ぎ出しが地元で高まっていることに非常に感謝しております、そうして、政治的には参議院よりも衆議院だから地元の盛り上がりを考えていかなければならぬ、そのキャスターが言いましたように、まさに立候補を表明をしたということをおっしゃっておるわけでございますが、実は、大臣はこの事実について高石事務次官に事情をお聞きになったのか、そしてどういう措置をとられたのか、具体的に答えてください。
  46. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは二つに分けまして、事前には、中西委員御指摘の以前につきましては、高石次官個人から報告もあるいは相談も受けたことはございませんし、私も相談を受ける立場にはないと思っております。その後御指摘がありまして、これは当人ももちろんでありますけれども、これは第三者的にやはりいろいろ確認をすべきことと思いましたので、テレビは見られませんでしたけれども、そのとき報道されました内容をできるだけ第三者と申しますか当人以外も含めまして聞き及びまして、主観にとらわれずに当時の状況をできるだけ正しく把握しようというふうに努めてまいったところでございます。その後、高石次官には直接この点について話しあるいは指示をしたということは、現在そういう時間を持っておりません。
  47. 馬場昇

    ○馬場委員 先ほども私は、教職員服務についてという助成局長通知について質問したのですけれども、物すごい通知を出しておる。この前新聞にも報道されあるいはこの委員会で中西委員も追及した。それなのに、いまだ監督する任にある大臣が本人からの事情も聞いていない。まさにあなたこそ職務怠慢ですよ。大変な問題でしょう。あなたが聞く前に、実は衆議院、参議院の議院運営委員会でも取り上げられておるわけです。そして、近いうちに参議院の議院運営委員会に高石次官を呼んで事情聴取をするという動きもあるわけです。そういうときに、こういう問題を国会でも取り上げられたのに全然注意もしない、呼んでもいない。  私は、聞くところによりますと、きょうの新聞なんかによりますと、これまた総理府の事務次官が国会議員に立候補したいということで、この国会の最中の五月二日に退官するということがきょうの新聞に載っておりますけれども、高石さんも退官してやるならそれは話は別です。しかしそれでも私はおかしいと思うのです。というのは、高級官僚がやめてからすぐ国会議員に出る、そしてあたかも高級官僚は自民党から出るのだという、この発言によりましても安倍派や中曽根派から誘いがかかってきておるということを言っているわけですが、いやしくも高級官僚は政治的中立だから、例えば自民党やほかの党じゃなしに、退官してからしばらくは期間を置いてから出るというならわからぬでもないけれども、まさに事務次官、官僚というのは自民党、しかも各派閥からだというような印象を国民に与えるということはもってのほかだと思うのです。  それで、これは大臣に厳に申し上げておきますけれども、衆議院の議院運営委員会でも問題になったし、参議院でも問題になった。参議院では本人を呼んで聞くという。そのときに、直接の上司のあなたが何ら事情も聴取しないし処置もとらないということは怠慢だ。監督不行き届きだからこういうことが起こってくるのですよ。その点については、厳に事情を聴取して善処されることをまず要求しておきたいと思います。  これは問題を残しておいて、次の問題に入って、後でまたまとめをしたいと思うのですけれども、もう一つの問題がございます。  これはきのうの新聞で報道されておるわけですけれども大臣、私は教師をしておった経験もありますが、戦後の日本の学校教育の中で社会科というのはシンボル的な教科であったと私は今でも思っておりますし、事実そういう役割を果たしてまいってきたわけでございます。ところが、この社会科を地歴と公民に分割をしよう、こういうようなことが教育課程審議会で実は議論されておるのは、大臣は責任者でございますからもう御存じのとおりでございます。ところが、これでいろいろ議論があったのは御承知と思いますけれども、社会科を擁護する学者、研究者を学習指導要領の作成協力者会議から実質解任した、こういうような新聞報道が行われておるわけでございます。  これによりますと、  文部省は二十日、新しい学習指導要領の作成に携わっていた学者・教師集団を大幅に入れ替え、この中で、社会科解体に反対の質問書を出した七人の大学教授をそろってメンバーから外した こういうことが書いてございます。そして、その人たちは、  問題の高校社会科六科目指導要領作成には、約五十人の大学教授らがメンバーに委嘱されていた。ところが、文部省は二十日付で、このうち、 氏名は省略いたしますけれども、  五教授を再任しないで更迭し、新メンバーと入れ替えた。また、小学校社会科の協力者である二教授も同様に再任しなかった。   これら七氏は、いずれも社会科の解体に反対し、昨年十二月一日付で、同審議会委員あてに出された日本社会科教育学会の質問書に名前を連ねていた。 そういう人たちである。この協力者は、任期は一年です、しかし昨年の四月には全部更新されておる。ずっと指導要領改訂に携わってきて、もう六、七割方でき上がっておるのですよ。それにずっと携わってきておるのです。昨年も一年ごとですからずっと再任されて、この人たちは昨年は全部再任をされた人たち、全員が再任されておるわけでございます。そして、これは何か解任ではないではないかというやじが出ましたけれども、この一年ごとというのは全く形式的で、従来の例をずっと見ますと、これは一年ごとですから毎年毎年同じ人たちが、同じ指導要領改訂をやってきているのですから再任されてきておった。そして七、八割方でき上がっておる、こういうときにいよいよ仕上げの段階になって社会科解体に反対する人を再任しなかったというのは、どう見ても、新聞が「解任」と書くように国民もそう思います、私も実はそう思うわけです。そうなってきますと大臣、これは本当に文部省が、自分たちがこうやろうと思う、それに批判する人とか反対する人はみんな除外してしまう、文部省の思うことに賛成する人だけでいろいろな協議会なんかをつくってやっていく、こういうことになるわけでございます。このようなやり方は是と思われますか非と思われますか、文部大臣どうですか。
  48. 西崎清久

    ○西崎政府委員 事実関係につきまして私から先にお答えを申し上げますが、先生御指摘の協力者会議の問題につきましては、一昨年の九月から発令が行われ昨年の三月末終了、そして昨年の四月に発令、ことしの三月末終了という段階でございます。経過的に申し上げますと、教育課程審議会が走っておりましたから、その協力者会議の使命としては、教育課程審議会にいろいろな問題点なり課題なり取りまとめの労を提供するというふうな役割が主であったというふうに申し上げられようかと思います。  しかし、このたび任期が終了いたしまして新たに協力者会議を発足させるということでございまして、その間に昨年末、教育課程審議会の答申が出されたわけでございます。したがいまして、教育課程審議会の答申の趣旨に沿って指導要領を年末までにつくる、そのプロセスで協力者会議はいろいろな御審議なり御協力をいただく、こういう性格のものでございます。したがいまして、今回任期満了に伴いまして新たに協力者会議をお願いするに際しましては、やはりこれから一年間常時出席していただける方、これをまずお願いしたいわけであります。  それから第二点としては、ポストの異動が若干ございましたし、ポストに若干着目した任命等委嘱をお願いしているという場合には、その辺も加味したことは事実でございます。  それから第三には、教育課程審議会の答申を生かして指導要領をつくるわけでございますから、その趣旨についてよく御理解をいただいて、その趣旨に沿って協力者会議でいろいろ御議論いただける方をぜひお願いしたい、こういうことでございまして、全体五百数十人でございますが、具体的に申し上げますと全体が五百七十二人、今回五百九十四人の任命をいたしております。若干ふやしておりますが、新たに委嘱した方が百四十五人おられるわけでございます。  先生御指摘の、三月末で任期が切れたまま再びお願いしなかった方が百二十三人おられる、こういう経緯でございまして、この点につきましては、事実関係の経緯と若干の考え方と申しますか事柄としては、以上のように私どもは取り運びをさせていただき、この委嘱は大臣委嘱ではございません、初中局長名義の委嘱でございます。  以上でございます。
  49. 馬場昇

    ○馬場委員 何かの協議会とか諮問機関とかというものをつくる場合には、国民はいろいろな意見を持っているのだから、その国民意見を聞くために、やはりその代表としての諮問機関とか教育機関を設けるわけですから、例えば賛成の者もおる、反対の者もおらなければならぬわけですよね、そういうときに反対の者を切り捨てる、こういういろいろな諮問機関とか協議会の運営はいけないということは大臣はお考えでしょう。
  50. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃる意味で、いろいろな私的な機関もございますし、公的な審議会、諮問機関がございます。これは幅広い意味で御意見を伺う、あるときには自由な立場で御意見を開陳していただくこともあれば、あるときには御専門的な立場でそれぞれ意見を出し合って、それをおまとめいただく、また、時にはこちらから正式に審議会に御討議いただく内容を諮問を申し上げて、その諮問の内容について御答申をいただく、いろいろな方法がございますけれども、そのためには、ある審議会におきましては私がその委員を任命申し上げることもあり、また臨教審のように国会でこれをお決めいただく場合もあり、あるいは私が申し上げて総理が委嘱なさる場合もございますけれども、その委員の募り方と申しますか委嘱の仕方というのは、中立でそして人格高潔で一般国民から信頼を得られる方ということが大体基準になろうかと思っております。
  51. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、端的に質問に対して答弁してもらいたいと思うのですが、こういういろいろな諮問機関とか審議会とかをつくるときには、何のためにつくるかというと、やはり大臣なら大臣あるいはそれをつくる人たち国民意見を聞きたい、例えば教育課程であれば教育課程意見を聞きたいということで、幅広く国民の意向を間違いなく吸うためにつくるわけですから、賛成の者がおろうと反対の者がおろうと、それを議論して大体この辺にあるということをまとめて答申を受けるなり参考にするなりするわけですから、偏った者だけを委嘱して文部省に反対の者は切り捨てる、こういうことがいけないことは当然のことでございます。  そこで文部大臣、今例えば服務規律の通達のこととか高石事務次官のこととか今のことも申し上げましたけれども、文部行政というものについて、大臣は責任者ですけれども、非常に国民の批判がある、あるいは不信もあるということは謙虚に大臣は聞いておかなければいけないと思うのですよ。事実、臨教審ができましたときも、これは法律ができてできたわけですから、表向きはそうですけれども、巷間伝えられるところによりますと、例えば、当時つくられました中曽根首相、これをつくられた意図はたくさんありますけれども、その中の一つに、文部官僚には任せておけないということがあったのだということを巷間、報道なんかで伝えられておるわけです。私はそういう気持ちもあったのじゃないかというぐあいに思うわけでございますし、事実、臨教審もこの答申の中で、文部行政は姿勢を正しなさいということを最終答申の中に書いているでしょう。  私が今三つ言いましたようなことなんかも、その中の一部に入っておるのではないかというぐあいに思います。そして、臨教審の答申の中にもはっきり、文部行政の政治的中立は当然のことであるというふうに書いてございますし、教育改革の方向としては、この臨教審の文言をかりればこういう答申が出ている、「画一よりも多様を、」と書いてある。「硬直よりも柔軟を、」と書いてある。「集権よりも分権を、」と書いてある。「統制よりも自由・自律を重んじる」、これが教育改革の方向である。文部行政はその方向で展開すべきであるというぐあいに臨教審も書いているわけです。  そういう意味で、今日の日本の中において文部行政というのは、謙虚に反省をして、もちろん憲法、教育基本法にのっとり政治的中立、民主主義を守る、そういうことをきちんとして姿勢を正さなければ、この後あらゆる具体的なことをやっていかれても国民は信用しないんじゃないか、そういうことについて大臣決意を聞いておきたいと思います。
  52. 中島源太郎

    中島国務大臣 今のおっしゃることについてはよくわかります。前段に政府委員からお答えいたしました点からの敷衍した御質問と思いましたので、私はあえて審議会の委員の任命あるいはその性格についてやや詳しく申し上げたわけでございます。  おっしゃるように、そこではいろいろな意見を集約していただくわけでありますから、甲の意見、乙の意見あるいは丙の意見いろいろありましょうけれども、そういうものを自由におっしゃっていただいて、そして一年なり二年なりその経過の中で賛成、反対あるいはいろいろな意見がありましょうけれども、一応一つのおまとめをいただく、あるいは方向として御答申をいただく、こういうことが必要でありますし、その答申をいただきました以上はそれを尊重いたして行政を進めるということが必要であろう、こう思っております。  そこで、前段の、そういう審議会でそういうことがいろいろ審議される、これはもう重要なことであり、尊重すべきことでございます。その審議に従って、どういうメンバーでなおかつこれを進めていこうか、特に局長からお答えした点はその協力者メンバーのことでございますので、全体像では、大きい意味で間違いない方向を出していただいて、その中で局長任命をいただきしながら多くの方々の御協力を得るということでございまして、これは五百何十名という方々が三月いっぱいで期限がお切れになった、その後さらに五百九十名ぐらい新たに御委嘱したと思うわけでございますけれども、その点はまた、先ほどの審議会のあり方、それがあるからこそ次の協力者メンバーのあり方が決まってくるのでございまして、前段と後段とは当然つながっていく問題でございますから、私は、後段の委嘱につきましては局長に任せ、そしてその任せる方向は審議をいただいた方向から過ちのないようにこれを考えていくのが当然な道であろう、こう思っております。
  53. 馬場昇

    ○馬場委員 この協力者会議というのはもうずっとこの人たちがメンバーで入ってやってきているのですよ。そして、もう大体七、八割方できているのですよ。そういう中で、例えば協力者会議のメンバーであっても一色にしてはいけないと私は思います。これが民主主義ですよ。そういう意味でこれはぜひ守ってもらいたい、こういうぐあいに思います。  臨教審の答申なんかについては、今大臣の御答弁、決意のほどがなかったのですが、これはどうなんですか。文部行政の反省というのは、臨教審で文部行政の改革というのが出ているでしょう、わざわざ一項が出ているわけでしょう、これについての大臣決意はどうだというふうなことを聞いたのですが、どうですか。
  54. 中島源太郎

    中島国務大臣 臨教審から数多くいただいた中で、文部行政に対しても御鞭撻をいただくというか御示唆をいただいておりまして、これは最大限に尊重してまいりたいと思っております。
  55. 馬場昇

    ○馬場委員 文部大臣、あなたはなられたばかりですけれども、やはり文部行政に対する不信というものもあってこういう審議会なんかもできたのです。そして臨教審から答申が出ました。ところが、今文部省がやっているのを見ますと、その中で、みずからが反省しなければならぬようなことが臨教審の答申の中にもあるのに、それは全然やらない。自分たちが今までやろうと思ってできなかった、そういうところをつまみ食いだけしている、そういうような文部行政が今行われて、そういうところから出てきた法律がこの国会にもかかっているという事実は厳然たるものがありますから、文部大臣、それは頭に置いておいてください。あなたはなったばかりですからよくわからないかもしれないけれども、そういう反省を持ちながら大臣としての職務を全うしてもらいたいということを要求しておきます。  そこで、教育改革の臨教審答申にかかわる法律が出ているわけですけれども大臣、今国民が求めておる最も切実な教育改革、こういうぐあいに変えてくれ、改革してくれというものは何か。例えば裏から言うと、児童とか生徒とかあるいは父母とか教師、言うならばすべての国民教育における最大の苦しみとか悩みというのは何か。その最大の苦しみ、最大の悩みをよくしてくれ、改革してくれというのが国民の願いになると思うのですが、大臣は今国民教育改革において望んでおる最大のものは何だと思われますか。
  56. 中島源太郎

    中島国務大臣 数多くございますけれども、それを集約して申せば、教育というのは学校教育、生涯教育とございますから、教育について何が大事かと言われますと、教育全体のことに相なります。したがって、生涯を通じて教育というか学習にいそしむ体制をつくる、これも必要でございましょう。そうしますと、その中ですべての人間が八十年の与えられた人生意欲を持ち、前を向いて、日々これ学習し向上するということが一番の必要なことでございまして、そのためには、先ほども申しましたけれども先輩経験を後輩が受け、そして、その後輩はさらに後輩にその知恵を与え、愛情をもって後輩を育てる、これが教師像であり生徒像である、このように考えまして、そういう意味で、人が人を育てる教育の重要な問題は、やはり「教育は人である」と言われるその人の、教職にある方々資質向上、そしてそれを信頼してすくすくと育っていくような青少年の教育環境を整備すること、すべてを離れて率直に何が大事かと問われますと、その辺が私の頭と心に浮かぶところでございます。
  57. 馬場昇

    ○馬場委員 ちょっと広い、教育全般についてお答えになったのですが、今の学校教育について児童や生徒が一番悩んでいること、あるいは父母が学校教育について悩んで、こうしてもらいたい、あるいは教師がこうしてもらいたいと悩んでいること、苦しんでいること、そしてそれを解決してくれと、学校教育に今一番深刻に望んでいるものは何だと文部大臣はお考えになりますか。
  58. 中島源太郎

    中島国務大臣 今度は学校教育と限定をされたものでございますから、私は、学校教育は生涯教育基礎的な重要な部分である、こう思っておりまして、そこで、私は、八十年の人生を社会人としていかに過ごし全うするかという大目的のために、新しい知識意欲を砂が水を吸い込むように次々と吸い込んで、すくすくと育つような学校教育環境をつくりたいというふうに思うわけです。もっとはっきり言えば、そういう大きい目標が、えてして目前の受験というか進学に一番の目標が絞られてしまって、それぞれの伸び行く幼年期から少年少女時代に目前の受験勉強に追われてゆとりを失っておるということが一番の不幸さではないか。それを取り除くためには、おっしゃるように今までのような画一的な教育から多様化、個性化の教育に向けていかなければならない。そのためには、それを教える教師像というものがまさに社会の変化に対応できるような多様化、個性化、そして生徒の人間性、創造性、個性を引き出せるような教師像でなければならない。そこに私は学校教育の今直さなければならない根本的なことがあるのではなかろうか、私はそう思っております。
  59. 馬場昇

    ○馬場委員 教育基本法教育のあり方というのは指し示されておるわけですから、それは私どもも十分理解しておるわけでございまして、文部大臣理解してもらわなきゃならぬわけですが、今具体的には教育基本法の指し示す教育の方向に学校の営みが行われておるかどうかということで、さらに具体的な苦しみとか悩みとかということをお尋ねしたわけでございますが、なかなかかみ合わないのですけれども。  今大臣も言われましたが、やはり私は、文部省は本当に児童生徒から、あるいは教師から、父母から、今何が一番苦しみか、悩みか、どうしてもらいたいのかということを常に吸い上げて、世論調査でもして、その置かれておる現実というのを十分理解して、その上に行政が積み上げられなければならないわけですから、そういう調査とか何かをよく持っておらなきゃならないわけで、そういうのをお持ちだったら、そういうところでどういうのが一番出てきておるだろうかというようなこともお持ちであれば説明してくれという意味で言ったのですけれども、今一言、二言出ましたね。私もそれは一緒なんですよ。やはり今の父母が望んでいるのは、教育基本法にのっとって言えば、本当に一人一人に行き届いた教育をして、その人の個性を伸ばしていって、そしてその人の人格を完成させていくというのが教育の目的ですから、その行き届いた教育というのと、個性が伸ばせるようにやることを望んでおるのが一番大きい望みであります。そのほかに、やはり何といっても、今大臣が言われたように、入試地獄という言葉がよく言われますね。あるいは受験戦争という言葉が言われますね。教育というのは平和な環境の中で、静かな環境の中でやらなきゃならないのに、その平和であるべき環境が、学校が、試験地獄だとか入試戦争だとか、戦争とか地獄というおよそ教育とは関係のないような言葉が教育界の中に言われておる。ここが非常に問題だと思うのです。それだけ深刻だと思うのですから、どうしてその入試地獄という地獄の言葉を取ってやるのか、受験戦争というこの戦争という言葉をなくしていくのか。それをなくしてくれという悲痛な叫びというのが子供にも親にもある。ここが一番大事なことじゃないかな、こういうぐあいに私は思います。  ほかにもたくさんありますけれども、特に緊急のものは、この間、文部省でも発表なさいましたけれども、最近は教育費の父母負担が物すごくふえているわけですね。例えば、最近の報道なんかで見ますと、教育費によって親が貧乏になる、教育費貧乏という層があらわれてきておる。そして、教育費で痛めつけられて教育費地獄に家庭が追い込まれている、こういう状態がある。これも父母は、もうこの地獄とか貧乏では本当にやり切れないわけですから、この教育費の問題を何とかしてくれないか、こういうことがある。それからまた、そういう背景には、先ほども大臣が言われましたが、やはり学歴社会というのが何としてもそういうゆがみというのをつくっている遠因にもなっているわけでございまして、こういう点の是正をやるべきだ。  今ここに初任者研修制度を議論しておるのですけれども、私は、この一番の悩みというものに対して文部大臣が今後どうしてこれを解決していこうと思っているのか。こういう今の私が言った、例えば入試地獄の問題、行き届いた教育の問題、あるいは教育費貧乏の問題、学歴社会の問題、これをどうやって解決していくような教育改革をやろうと思っておられるのか、その展望をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  60. 中島源太郎

    中島国務大臣 一遍にお答えできればいいのですが、二つに分けてお答えさせていただきたいと思うのです。  やはり、消費支出の中で教育費の占める割合がだんだんふえるということは、教育の機会均等を損なうものでもございますし、この点は三つの方法でこれをできるだけ克服していくことが必要であろうと思うのですね。一つは公財政支出でございますけれども、国公立はもちろん私学に対しましても助成の拡大と申しますか、そういう意味で私学自体の経常費の負担を少なくする、それによって学納金の高上昇をできるだけ防ぐということが一つあると思いますし、またもう一つは、育英奨学という面で、学ばんとして優秀であるけれども経済的に事情が許せないというような生徒諸君が学びの場を得られるように、育英奨学制度を拡充することもありましょう。また、いつも申し上げているように、特に教育費負担の多い年齢層というのが四十五歳から四十九歳あたりがやはり消費支出に占める教育費の負担が大きいところでございますから、もし税制上で所得税を含めて何らかの減税措置がとられる場合には、特にこの年代層に格段の配慮があってしかるべきだということは私も委員会を通じても申し上げているところでございます。  もう一つの試験地獄の方でございますが、私ははっきり言って、例えば一つの全体像が上がることはよろしいのですけれども、仮にもある特定の有名校を出ることが人生八十年の生涯の保証になるというような過ちは払拭させなければならない。これから人生八十年の生き方を支えるものは、やはり自分の能力、個性、それと努力というものが織りなしていくものであって、学歴が自分の生涯を定めるというものではないという、学歴偏重社会をまず取り除くことであろう、こう思うのです。そしてもう一つは、それぞれの学校において試験の方法をもう少し、全部丸暗記しなければ試験に通らないという問題ではなくて、私も含めてそうですが、それぞれ得手、不得手の部分がありますから、一応中学には中学の水準の教育を、高校では高校の水準の教育をマスターしたらあとは得意な部門で勝負できるような、そのように入試制度を改革していくことも必要でありましょうし、またそのように教育してくださる教職員諸君の多いことによって、今おっしゃったお二つのことは解決に向かうのではないかと思っております。
  61. 馬場昇

    ○馬場委員 今、解決の中の一つ部分をおっしゃった答弁として聞いたわけです。それも一つでしょう。しかし、やはり入学試験について、これは高校入学、大学入学とあるわけですが、今いろいろなことをやっていますけれども、もう朝令暮改で、あれは基本的な解決にならないと私は思う。だから本当に入学地獄、試験地獄と入試地獄というのをどう解決するかというもう少し抜本的な踏み込んだことを、これは知恵を出せばあるのじゃないか。それから学歴社会というのは、大体学校に格差があるわけだし、例えば大学でいいますと、大学を出るときに工夫をすれば、極端に言うと各大学ごとの卒業証書を出すか出さないか、あるいは大学卒業の一律の国家試験をするかどうか、こういういろいろなことが具体的にあると思いますけれども、学歴社会にならないような学校の卒業の仕方、抜本的ないろいろなことがあると思うのです。とにかくそういう基本的な、今地獄と言われるところ、戦争と言われるところ、この辺の基本的なところに取り組んでいくという教育改革というものに、文部大臣、ひとつ方向性ぐらいは大臣のときに何か出して着手をしてもらいたいということを申し上げておきたいと思います。  そこで、きょうは初任研の法律の問題ですので具体的にそれに入っていきますけれども、とにかくこの初任研には莫大な予算が要るわけです。それで、私は初任研にかかわる予算と教育予算全体とのかかわりについて質問をしておきたい。  その前に、この前質問いたしましたように、だんだん教育予算が全予算に占める比率が落ち込んでおる。総予算がどんどんふえておるのに、あるいは防衛予算なんかどんどんふえておるのに文教予算はほとんどふえていない。全体の教育予算というものをふやすことは基本であるし、この間も言いましたように、戦後落ちついてから三十数年というのは少なくとも国家予算の十一%前後でずっと推移してきた。それがゼロシーリングだ何だと始まりまして、一〇%を割り、九%を割り、現在八・一%ぐらいに教育予算の全体予算に占める比率がなっておる。教育予算というのは聖域だ。人間の心と体と命をつくる、だから少なくとも一〇%以上は必ず聖域として確保していくんだ、そういうような基本的な教育予算を増額するという立場は終始堅持して実現に向かって努力していただきたいのですが、きょうは初任研にかかわって申し上げますと、全体がとれなければ予算が少ないわけですから、少ない予算ならば重点的に使わなければならないというのは当たり前のことです。昭和六十三年度の初任研の試行に国の予算が五十三億円計上してありますね。ところが文教予算はずっとほとんどふえていない。六十一年から六十二年には文教予算全体で十六億円しかふえていないですね。それから六十二年から六十三年の文教予算は二十八億円ふえております。試行は六十二年から始まったわけですけれども、六十三年度の予算で見ると五十三億円。文部予算全体が十億円から二十億円しかふえていないのに、初任研の試行の予算は五十億円以上ふえておる。じゃ、この初任研をやる試行の予算というのはどこから持ってきたのかと当然思うわけです。全体がふえていない、しかしこれはふえておる、どこからこれを持ってきたのか。これはどういうことになりますか。
  62. 加戸守行

    加戸政府委員 予算編成は、それぞれ要求時点におきます概算要求基準によって一定の制約がございます。そして年末の具体的な予算折衝の事務折衝過程を経ましてできるわけでございますけれども、既に要求の時点におきまして、文部省といたしましては、六十二年度に引き続き六十三年度におきます初任者研修の試行に要する経費六十億円を要求させていただいたわけでございまして、それが具体的な調整の結果五十三億円として予算に計上されたわけでございます。これは文部省なりのいろいろな金目のやりくり算段等もございますけれども、お金はどこからどこへとひもつきで色がついているわけではございませんので、文部省全体の中で政策のプライオリティー、重要さあるいは緊急度その他を総合勘案し、このような結果が出たというふうに私は理解しております。
  63. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、この前も言いましたように、人件費はどんどんふえているわけです。総予算はふえないわけでしょう。そうしてこういう初任研が出てきた。結局、投資的経費といいますか条件整備の経費といいますか、そういうものを削ってしまっている。これは新しいこういうのを導入するしないは別として、重点的に配分するという意味で、人件費が大体七六%以上でしょう。投資的経費はわずかでしょう。それがふえないのに、こんなのにどんどん金を使っていく。やるんだったらその分だけ余計とらなければいかぬというのが私は原則だと思うのです。  そこで、これは局長にも聞きますが、六十三年度の試行で国が五十三億円組んだわけですけれども、地方は六十三年度試行でどのくらい金がかかるのですか。トータルでいいですから。
  64. 加戸守行

    加戸政府委員 この経費のうちの主要な部分が人件費相当のものでございまして、いわゆる指導教員の定数分並びに非常勤講師の報酬の二分の一補助が主体でございますので、そのほかに国の経費としては、直接の事業関係費あるいは洋上研修等の船のチャーター料その他もございますけれども、大ざっぱに申し上げますればこの倍額ちょっと、六十億程度が都道府県の負担額になっておると思います。
  65. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、地方財政も今物すごく逼迫しておるわけです。今言われましたように正確な数字は六十億ぐらいじゃなかろうか。倍額だ。国の補助は二分の一、高校は全額持つわけですし、洋上研修とかいろいろ宿泊研修とか地方で持つ分も多いわけですから、これよりも非常に多い、倍額ぐらいはあるというのは当然の話であります。本当に今の段階で、これだけ教育予算が抑えられている中で、国、地方合わせてこの試行にこれだけの金を使わなければならないかどうかという点については私は非常に疑問に思っておりますが、同じ金の問題ですので、初任研を全面的に実施した場合その費用はどのくらい要るのか、国の費用、地方の費用について説明してください。
  66. 加戸守行

    加戸政府委員 お答えの前に、今の地方の負担の話でございますが、当然指導教員の定数につきましては二分の一の給与費は地方交付税で措置されるわけでございますし、その他の経費につきましても財源措置等についての意を払ってまいりたいと考えております。  それで、御審議いただいております当法案が成立しました場合に、私ども六十四年度からの本格実施を想定しておるわけでございますが、附則にございますような段階実施ということもございますけれども先生の御質問は多分全面的に実施された場合ということでございましょう。その場合の教員採用見込み数が実はまだ確定いたしておりません。これは一つには、複雑な要因がございますが、いわゆる児童生徒の自然減に伴います教職員の減並びにそれに見合います教職員増員十二カ年計画の中でどの程度の増員を図ることができるかという他動的な要因も一つございます。それから、年度途中の退職者をどの程度見込むのかという問題等もございます。さらに、試行の方法と同じように本格実施を行うのかどうか。つまり、今申し上げた定数措置あるいは非常勤講師等の措置を現在の試行と同じような比率で行うかどうかということは、試行の結果によって要求時点で判断する必要がございますが、そういった複雑な変動要因等が多々ございますけれども昭和六十二年度におきますような試行の状況と全く同じベースで年間採用見込み人員、新採人員を約三万人と想定いたしました場合のこれに要します国庫負担額は、現在のところ約二百八十億円程度ではないかということを、今申し上げた仮定を前提といたしておりますけれども、人件費ベースとして想定しておるわけでございます。
  67. 馬場昇

    ○馬場委員 後で段階的実施とか云々とかということについては質問をするわけでございますが、大臣にお尋ねします。  さっき言いましたように、ことしの文教予算全体は去年よりも二十八億円、去年はおととしよりも十六億円、その前の年は前年度よりも減っているのですよ。文部予算が大体十億円、二十億円しかふえていない中で、初任研をする予算が、例えば私どもが三万人採用するというふうに推定し六十二年度の試行で計算いたしますと、地方負担というのが大体四百三十二億ぐらいになる、一県市当たりで八億円ぐらいだという計算も出ておるわけでございますが、いずれにしても今全体で八百億ぐらい要るのではないか、この初任研を行えば。そういうことで文部省の予算の中では何百億になるのか、とにかく十億か二十億円しか今ふえていないという状況の中で何百億という金が要る。そうしたら、これがもし今までのように全体がふえなかったら、もろにほかを削ってこなければできないわけでございまして、実際上は不可能だ。この初任研をするためにふえる予算というのは、原則として今日まで通常ベースでずっと予算が動いてきたものとは別枠にするんだというようなことであれば、ほかにしわ寄せというのは余り来ないわけでありますが、そういう覚悟が大臣にはあるのかないのか、その辺を覚悟のほどを聞かせていただきたい。
  68. 中島源太郎

    中島国務大臣 二つ申し上げたいのですけれども一つは六十三年度予算でございます。これは二十九億と申しますか二十八億五千四百万、これだけふえまして四兆五千七百六十六億、これは御承認いただいた六十三年度予算でございまして、御存じの上でおっしゃっておられると思いますけれども一般会計との比率が年々下がる、一般会計の中には——わかっておっしゃっていると思いますが、したがって一般歳出と比べれば一四%ぐらいをキープしております。その中で新たな投資部門に施設費が食われているのではないか、こういうこともございますが、一方で言えば、これから重点と思われるところに、例えば学術研究、基礎研究など、必要ではないかという部分にはことし四百八十九億計上いたしまして昨年よりも数十億ふやしておりますし、例えば留学生対策が必要ではないかということの御意見を背景にいたしまして二六%ほど昨年よりもふやしまして百八十数億円を計上いたしております。また特に、先ほどおっしゃった私学の補助の施設その他にはまさに三七%ぐらい昨年よりふやしておりまして、そういう面では与えられた中で重点項目に重点配分をする、これはまた私どもの責務であろうと思うわけでございます。そういう意味ではまさに、この初任者研修をお願いをする以上は、今御審議をいただくに当たりまして、少なくとも試行して、どこにいい面があり、どこを改めるべき面があるか、また地方におきましても、突然というよりは、やはりなれていただくための試行を行っていく、そういうことで、これは重要政策部門であろうということで計上さしていただいておるわけでございますので、その点は御理解いただけると思うのです。それはそれでございます。そして、今後いろいろな意味で、少なくとも留学生だけを見てもさらにふやさなければならぬではないか、六十四年度予算で総体的に頑張れ、こういう御要望、御鞭撻であればそれはよくわかりますので、一応六十三年度は御理解いただき、六十四年度は総体的にまた御鞭撻をいただきながら予算獲得あるいは八月の概算要求時に与野党の御声援を得ながら頑張っていきたい、こう思っております。
  69. 馬場昇

    ○馬場委員 今の話を聞いていて、全然気迫も感じないし、だから安心もできないのです。例えば留学生がどうとかなんとかおっしゃるが、そういうのはODA予算ならODA予算で別枠にするとか、例えば人件費が七六・五%になっているんだからこれはシーリングから外してくれとかいって、そして全体予算をふやします、こうふえました、従来の予算の編成をこう変えました、こういうことで、だから文部予算はこれだけふえました、そういうことになってくると気迫も感ずるんですけれども、こっちをふやすためにはこっちを削る、全体で二十八億しかふえていないんだから、こちらが三十億ふえました、こちらが何十億ふえましたと言っても、それはどこかから削ってきておることに間違いないわけですから、そういうことで全体を考えなければ、重箱の隅を突っついてその中でのやりくりでは、とにかくこういうことはほかを犠牲にするだけだ。こういうことで、ぜひ全体をふやすことをやってもらいたいのですが、そういう意味から、少なくとも私は、ここで大臣に確認しておきたいことが二、三点あるのです。  しわ寄せを絶対にしてはならないという意味で二、三申し上げますと、まず、ただいまやっております第五次学級編制及び教職員定数の改善計画、十二カ年計画で四十人学級と教職員の配置の改善をずっとやっておりまして、いよいよこの六十三年度で九年目になったわけですね。そして九年目の六十三年で四十人学級の進捗率は四〇・五%、配置改善の進捗率は四五・〇%である。これはこの前も質問いたしまして、あと三年で第五次の改善計画、十二カ年計画だからあと三年ですが、これで全部予定どおり完成するという御答弁があって頑張っておられるわけでございますが、この初任研が出たから、第五次改善計画が達成できないとか内容を変更するとか、こういうことは絶対に考えてはいけない、予定どおり完成していただきたいと思うのですが、どうですか。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 加戸守行

    加戸政府委員 第五次定数改善十二カ年計画につきましては、着実な推進に努めているところでございます。  今後の計画につきましては、私ども引き続き六十六年度達成を目標といたしまして着実に努力を重ねるわけでございますが、先ほど先生もお触れになりましたように、これは財政上の大きな理由、影響が相当あるわけでございますので、単年度単年度予算編成の中で苦労してまいっているわけでございます。  先ほど初任者研修につきまして御質問ございましたけれども、初任研に要します経費が、いろいろな仮定条件を置いたといたしましても人件費ベースで二百八十億円と申しましたが、これは実は今の国庫負担金ベースで申し上げますと、教職員のベースアップに換算いたしますれば一・三%に満たない程度の金額でございますので、むしろ今後の財政を圧迫する原因は教職員のベースアップが毎年度何%あるのか、そういったことを今後の予算編成の上でどういった形で処理していくのかという方が、数字的に申し上げますとはるかに初任研定数を上回る大きな制約要因になる危険性があるわけでございます。そういった点の問題があることをお含みいただきまして、初任者研修に関しましてはこの十二カ年計画とは外枠で定数を要求してまいりたいと思っているわけでございます。
  71. 馬場昇

    ○馬場委員 これは全く根拠のない別の問題を持ち出して、今の局長の答弁は大体逃げていると私は思うのです。例えばこの初任研をやることによって——第五次の改善計画は必ずあと三年で十二カ年計画は達成する、こういうことを予算委員会で総理大臣から文部大臣からみんな言っているわけです。だからこれは予定どおり達成いたします、そう答えればいいのに、人件費がふえております。ベースアップなんか日本じゅうどこでもやっているじゃありませんか、他の公務員も。ベースアップが余計あったらこの改善計画にあたかも影響を与えるごとく、初任研よりもベースアップの方が余計影響を与えますよとは何ですか。ベースアップはこの十二カ年計画の中でずっとあってきているのですよ。だからこのことは、この間も大臣が言いましたように、ベースアップは別枠に文教の特殊性からやりなさいということも言って、努力すると大臣も言っているのですけれども、この私の質問に対して、ベースアップなんかを言うことで局長は逃げて予防線を張っている。  私は大臣に聞きますけれども、少なくともこの約束、公約しておるあと三年間、六十六年までに完全実施を完成する、このことについては、初任研の導入によってそれはいささかも揺らぐものではないということをぜひ大臣にここで確約していただきたい。
  72. 中島源太郎

    中島国務大臣 教職員定数改善につきましては、昨年からも大変な御鞭撻をいただいております。六十六年四十人学級完成を初め、教職員定数四五・〇%、これをぜひとも完成させるように頑張ってまいります。
  73. 馬場昇

    ○馬場委員 これは確約を今までずっと総理大臣以下あなたもやっているわけですから、ぜひそうしてもらいたいと思うのですが、これは局長でいいですけれども局長これはどうなるんですか。六十二年に指導教員が五百七十六人、六十三年のことしの予算の中に五百十七人、計千九十三人初任研の指導教員が入っていますね。これは、例えば初任研がもし実施されるとした場合には初任研の予算であって、こういうのは当然教職員の配置改善の中に含まれる人数だと私は思うのですが、絶対にこの人数というのは初任研があっても配置率改善は予定の一〇〇%になるように、教職員研修代替教員という配置改善の二千四百人という数字があるわけですから、これはきちんと配置改善でとっていくわけですね。
  74. 加戸守行

    加戸政府委員 六十三年度予算におきまして、先生今おっしゃいましたように初任者研修に要します定数として千九十三名を計上いたしております。これは現在、六十二年度もそうでございましたが、六十三年度の時点におきましても現在の教職員定数改善十二カ年計画の総数の中に組み入れて積算をいたしております。これが六十四年度以降本格実施になります場合には初任研定数として正規に措置をする予定でございまして、その場合には、現在は一種の間借りの状態でございますが、初任研試行によります定数措置を本格実施に移行しました分については、いわゆる本来の研修等定数として十二カ年計画の当初目的に従った配当をするという考え方でございます。
  75. 馬場昇

    ○馬場委員 今言われましたように、当初計画の研修代替教員というのは二千四百人が計算してあるわけだから、それに戻すということでございますので、それはぜひそうしてもらいたいと思います。  それから大臣、毎年の予算編成の中で、それは与野党を通じて文部省も一番苦労してきたのが、義務教育国庫負担法の中からいろいろなものが削られていっているわけですよ。その中で、特に去年も苦労しましたのが、この国庫負担法の対象から事務職員、栄養職員を外そうという大蔵省の攻撃に対して、与野党を問わず文部省を挙げて反撃してこれを外さないということに成功してきておるわけでございます。そこで、私はこの初任研で例えば人件費が非常に要ると言うと、ちょうど補助金削減をする臨時措置法が三年で切れて、六十四年からどうしようかという状況になる。この補助金削減の臨時措置法があるときには自治省と大蔵で国と地方の負担は変えないという覚書があったということも一つの武器になったのですが、これが今度法律が切れましてその覚書がなくなるということになりますと、この初任研でたくさんの人件費をくれと言うと、またぞやそれをてこにして、じゃあ事務職員、栄養職員は国庫負担から外してくださいと大蔵省が言うのじゃないかという心配を私はしておるのです。これは杞憂であってくれという質問を今しているわけですけれども、絶対にそういうことのないように、例えばこの初任研の人件費を取るというときに、そういう国庫負担金から事務職員、栄養職員を外す、こういうことは絶対に話が違う話ですからあり得ない、しないということをこの場で確認をしていただきたいと思います。
  76. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃった事務職員の方々、栄養職員の方々は、私どもも基幹的な職員というふうに認識をいたしておりますので、できればこれはもう定着というか決着させたいところでございますけれども、他省庁から出てまいります場合にはまたお力を得まして、ぜひこれを貫きたいというふうに頑張る決意でございます。
  77. 馬場昇

    ○馬場委員 ぜひひとつこれは頑張ってやっていただきたいと思います。  もう一つは、これは先ほどから何回も言っているんですけれども、念のために申しますと、この間からも、文教予算全体の人件費が七六・五%というのはもう異常ですよ、給与支払い省と言ってもいいんじゃないか、政策的経費なんというのはあとの二十何%ではほとんど出てこないんじゃないかということを議論したわけですけれども、この初任研によってまたぞろ人件費の七六・五%が七七%になり、八〇%になるという危険性もまた感ずるわけでございます。この人件費の占める比率というのを全力を尽くして予算獲得の段階において下げていく、あるいは人件費を予算編成のやり方によってシーリングの別枠にするとか、あるいは人件費を文部予算の組み方の中において別枠にするとかいろいろな工夫を凝らして、少なくともこの七六・五%は下げるということを大臣、頑張ってもらいたいと思うのです。
  78. 中島源太郎

    中島国務大臣 全く同感でございまして、頑張ってまいりたいと思います。
  79. 馬場昇

    ○馬場委員 そこで大臣、四十人学級が昭和六十六年で実は完成するわけです。このごろ文教行政というのは、対予算とか対大蔵とか政府全体とかという考えからいくと、何というか日が当たっていない。逆に言うと、ほかから押されぎみだということで、教育をよくするという展望というものを国民が余り持っていないという気持ちがございます。そこで、私はこの際、あと三年で四十人学級が終わるんだ、そうした場合は行き届いた教育というのが何よりも大切です。これはもう個性重視の教育は、行き届かなければ個性なんか重視されないわけですから、そのためには学級の定数を少なくするというのが絶対要件で、よその国に比べてみて、日本の一学級の定数の多いのは大臣も御承知のとおりでございます。だから私は、この四十人学級が三年後に終わったその次には、例えば三十五人学級だ。三十五人学級を第六次とつけるかどうかは別として、何年計画かでやっていく、そのためには予算は相当要るわけですから、例えばこういう予算が要る、それを実現するために頑張るんだというような青写真というようなものを少し文部省考えられてはどうか。四十人の次はこうするんだという青写真を出していただく。それは臨教審、臨教審とおっしゃるけれども、臨教審答申何でもやるんだ、初任研もやるんだとおっしゃるけれども、そういうところを教育改革でやらなければ、臨教審というのは管理強化のつまみ食いをしたにとどまるということになるのです。だから、四十人学級の後の三十五人学級、こういうものの年次計画、財源とかをこうやるのだという展望を大臣はお持ちですか。
  80. 中島源太郎

    中島国務大臣 まさに教育改革は中長期的なものでございますから、そういう面でこれから中長期的に考えていくということは必要であります。ただ、今具体におっしゃられますと、その前の御質問で、教職員定数をぜひ予定どおりやれ、こういうことで、私も不退転の決意で頑張るつもりとお答えをいたしましたけれども、その宿題がやはり大き過ぎまして、六十四年にも頑張ろう、六十五年にも頑張ろう、まずその前段のお約束を果たすことに全力を集中してまいりたい、こう思っております。
  81. 馬場昇

    ○馬場委員 やはり子供や父母がおるわけですし、それがさっき言いましたように受験戦争、受験地獄の中にあえいで、悩み苦しんでおる状況ですから、文教行政はそれに明るい展望を持たせるということは非常に大切なことだと思うのです。それで、中長期という中で、少なくとも行き届いた教育をするためにはこうするのですよ、そして予算はこれだけ要るから御協力願いたい、そういう国民のコンセンサスあるいは盛り上がる力がなければ、文部省と大蔵省を比べたら、力関係というか、頑張ればこっちの方には国民の世論はつくんだから、国民の世論がつかなければ大蔵省に負けるのだから、そのためには明るい展望を与えて協力を受ける、大臣、そういう方向で頑張っていただきたいと思います。  次の問題は教員養成の問題、教員の選考、採用のあり方について聞いておきたいと思います。  大臣御承知のとおり、教員養成は、大学で専門教育を受けて免許状を取る、そういう教員養成の仕方になっておるわけですね。このごろの受験者にとっては教員の選考というのはもう激しいですよね。その激しい競争試験の中から選考されて採用されておるというのが今日の教員養成、そして教員選考、採用の実情になっておるわけでございますが、この教員養成と選考、採用に問題はないか、こういう点について文部省はどう理解されておりますか。
  82. 加戸守行

    加戸政府委員 教員資質向上は、養成採用研修すべての段階で意を払うべき事柄だと私ども考えております。その意味におきまして、現在の大学教員養成につきましては、教育職員養成審議会におきます二カ年の審議の結果を踏まえまして、昨年十二月に答申をいただきました。その内容を骨格としまして、現在教員養成制度改善のための教育職員免許法改正案を提案させていただいておるわけでございますが、この主たる考え方といたしましては、現在の教員養成におきまして、卒業されます方の学問的な知識はそれぞれ一定のレベルには達しているということでございますけれども、個々の現場の実態で、特に時代の変化あるいは児童生徒の個性化といったものに対応するような教育という視点から考えてみますと、例えば特別活動であるとかいうような分野、あるいは新しい教育機器が出てまいっておりますので、そういう機器の利用等についての教育大学においてもなお充実していただきたい、そういった観点から教員の免許基準の改正を行いたいと考えているところでもございます。  それから、教育実習に関する問題が一つございまして、実際上は、学校教育実習でお見えになる方の数が非常に多うございまして、行き届いた教育実習ができないような状況もございますし、そういった視点から、教育実習の単位は現在のまま据え置きますけれども、それぞれ一単位ずつふやしまして、その一単位につきましては、教育実習に関する事前事後指導、あるいは本来の免許を取るべき校種以外の校種あるいは各般の社会教育施設等におきます実地体験も、その教育実習単位に加算することができるというような方向での改正を提案申し上げているところでございます。  それから、採用段階事柄でございますが、先生おっしゃいますように、従来から教員採用につきましては各般の問題が指摘されてきたところでもございますし、文部省としてもいろいろ指導通知は流しておりますが、現在のところ主力となりますのがいわゆる学力検査が大きなウエートを占めているわけでございますけれども、これに加えまして、面接あるいは実技検査、さらには適性検査等の多様な選考方法によりまして、教員として真にふさわしい人の選考に御努力をいただくように都道府県教育委員会に対する指導を行っているところでございますし、また今後ともその改善の努力を続けてまいりたいと思います。  特に大きい問題といたしましては、採用時期の内定の問題がございまして、これはこういうことを申し上げて大変恐縮でございますけれども、いわゆる教職員定数が確定しますのが年末の予算編成でございますし、そういう意味では、ある程度事実上の定数の確定を見込んでから採用を決められるというような県もかつてございました関係上、文部省としてもこの採用内定時期を早めるように各県に督励をいたしておるところでございまして、それぞれ採用内定時期も各県におきまして繰り上がってきている状況はございますが、依然として民間企業の内定時期に比べますとおくれている状況がございます。  教育界にいい教員を招致するためにもこういった改善も必要であろうと思うわけでございまして、現時点における採用、選考のあり方が適切であるかどうかについていろいろな御意見もございますけれども、各界の御意見を承りながら改善の努力をさらに続けてまいりたいと思っております。
  83. 馬場昇

    ○馬場委員 きちんと専門教育を受け、免許状を持っておる、そして激しい競争試験の中で選考されて採用されてくるわけですから、考え方によってはもう一人前以上と言っても言い過ぎではない側面もあると私は思いますが、余り時間がありませんので次に移ります。  一九五八年、昭和三十三年に中教審が答申をしていますね。この中に、教員採用に仮採用制度を設けてはどうかとか、あるいは教員養成審議会の中で、試補制度を設置してはどうかとかいう議論が行われました。一九七一年の昭和四十六年に、同じ中教審で、一定期間の任命権者研修を受け、その成績で採用決定を検討してはどうかとか、そして昨年の臨教審答申の中でこの問題が議論されましたときに、有田第三部会長なんかが盛んに最初言い出しましたのは、問題教師の処分をどうするかという関係で、こういうのが持ち出された側面がございました。例えば、一年間研修をして、その後教職適格審査会というようなものをつくって、そこでかけて選考、採用してはどうか、こういうような話がございました。しかしこれは国民の入れるところとならず、もちろん実現していないわけでございます。  ここで、その関係をちょっとお聞きしておきたいと思いますが、この試補制度というものと今度あなた方が行おうとしておる初任研というものはどう違うのか、あるいは試補制度はせずに初任研をなぜしたのか、この辺のことを答弁してください。
  84. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいました昭和三十三年の中教審答申あるいは昭和三十七年の教養審建議と申しますのが、いわゆる試補制度と言われているものの提案でございまして、試補制度に関しましては昭和二十二年の教育刷新委員会でも既に建議がございまして、その後昭和四十六年の中教審答申まで四回にわたる答申、建議がなされております。  この俗称試補制度と申します考え方は、特定の身分におきまして教員を一年間勉強していただきまして、そういった実地訓練の後に試験を行う、あるいはその実地訓練の成果を評価いたしまして教員に正式に採用する、あるいは教員免許状を出すとか、いろいろな方法等はそれぞれ提案の時期によって違いますけれども考え方としましては、特別な身分において実地訓練を行わせたその結果、その成績を判断して教員採用するかしないかを決める制度でございます。  これに対しまして、今回提案申し上げております初任者研修制度は、初任者が円滑に教育活動に入りまして、可能な限り自立して教育活動を展開していく素地をつくるという観点に立ちまして、教員をいわゆる教育公務員として採用いたしました上で一年間初任者研修を受けていただくということで、もちろん条件つき採用の問題がちょっと別にございますけれども基本的には試補制度とは全く異なる、いわゆる教員として採用した上で研修を受けていただくという制度でございまして、採用するかしないか、あるいはそういった判定をまって教員採用されるというような試補制度とは全く異なるものでございます。  ところで、このような試補制度をとらないで初任者研修制度をとった理由でございますけれども、やはり試補制度を御主張なさる方もいろいろございますけれども、試補制度の大きな問題といたしましては、この制度におきましては条件つき採用期間の問題を除けば教育公務員として採用した上で研修を行うということでございますから、それとは違う特別な身分を創設するということが、公務員制度基本に係る問題でございましていろいろな問題があるということ、さらにそういった試補のような不安定な身分でございますれば、採用されるかどうかわからないのに試補になって一年間訓練を受けてみたけれども採用されなかったということであっては、そういう予測が立つ状況のもとでは、教員志望者が、本当に教員になりたいという方が減るのではないか。そういう意味では、本来よい教員教育界に誘致するという視点から見ますと、現在提案申し上げている初任者研修制度の方が試補制度よりもはるかにすぐれている、こういう考え方で、現時点の状況に立ちまして提案を申し上げているところでございます。
  85. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣、今局長が答弁したのですが、私が心配しておるのは、後で条件つき採用期間を六カ月を一年に延ばしたということの問題点は指摘するのですが、きょうは優秀な人の採用という面のところでちょっと今触れているのですけれども、いみじくも今局長最後に言いましたが、今まで他の公務員と一緒に条件つき採用期間が六カ月だった、今度は教員になると初任研といって半人前みたいな扱いをされながらしかも条件つき採用が一年になった。他の公務員よりも六カ月延びるわけですからね、条件つき採用というのが。そうしますと、やはり条件つき採用というのは身分は不安定ですよ。公務員法上からいってもいろいろな正式採用よりも不安定です。そうすると、やはり身分が不安定という感じは受験する者からぬぐい去られないと思うのです。  そうすると、今局長が言ったように、優秀な人材が不安定なところには集まらない、こういう格好になるわけでございまして、そういう点については、優秀な人を教育界に迎えるという立場からいうと、この制度というのは優秀な人に対して拒否反応を受けるという結果を招くおそれがある。このことは大臣にきちっと申し上げておきたいと思うし、これは答弁すると局長が言ったような答弁をなさると思いますから答弁を求めませんけれども、そういう問題点が、非常に心配があるのですよということをきちっと申し上げて、もし大臣が、そういう心配はありませんよという何か答弁があったら答弁してください。
  86. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは今局長が答弁を申し上げたように、試補制度というのと初任者研修が明らかに違うのは、初任者研修というのは、公務員という教職の立場をもって一年間研修をするわけでございまして、片方は資格を持たずに一年間やった後で資格を持てるかどうかというのが試補制度ですからね。——ええ、一年にしましたけれども、一年の試補制度と一年の研修というのは明らかに違うものでございまして、その点の御心配はないと思います。  それから、それによって試補制度を行ったら優秀な人間が来なくなるかもしれぬ、こういうおそれはあるかもしれません。しかし、ある一方で、資格を持ちながら一年間研修、しかもベテランの円熟した先輩指導を受けられるということは、新たに社会に立つ方にとってはむしろ不安よりは安定感の方があるのではないか、強いて聞かれれば、そのように考えます。
  87. 馬場昇

    ○馬場委員 六カ月と一年のことを聞いたのだけれども、試補の答弁は先ほど局長がされたのでわかりましたから。ただ、私は、そういう心配があるということで、今の答弁は少し違っていますから、腹に置いておいてください。  次に研修というもの、研修とは何か、そして、その研修のあり方について大臣にお聞きしておきたいと思います。  研修というのは、憲法や教育基本法の原点に立って研修を行うということはもう当然のことでございます。大臣もそう考えておられると思うのです。かつて最高裁の大法廷でこういう判例が出ております。これは昭和五十一年ですけれども、「教育は一人一人の子供の可能性を豊かに開華させる文化的な営みである。教員の創造性、自主性が十分尊重されなければならない。研修もまた自主性、自発性が十分尊重されなければならない。」教員の創造性、自主性も十分尊重されなければならない。研修も自主性、自発性を十分尊重してやらなければならない。「任免権者が研修を企画立案するときも教員の自主性、自発性を尊重する方法で行うべきである。」こういう最高裁の大法廷の判決が出ておりますが、これに対して大臣、当然のことと思いますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  88. 中島源太郎

    中島国務大臣 この点に関しては全くおっしゃるとおりでございまして、教育公務員特例法の十九条でございますか、ここにおきまして、研修について任命権者はその研修施設、方途あるいは計画を立てて、その実施に努めなければならない。その内容でございますが、まさにそう言っては失礼でございますが、もしはっきり言わせていただければ、教員というものは、やはり教員そのものも多様化、個性化、そして画一的なサラリーマン化していくことは望まずに、もっとおおらかにそれぞれの個性を生かし、そしてまた生徒児童諸君の個性、人間性を引き出すような、そういう教師像というものを私自身も望んでおりますし、研修というものは当然それを考えながら進めていくべきものであると考えます。
  89. 馬場昇

    ○馬場委員 当然のことで、この研修はどうあるべきかということについて、ぜひその基本原則を押さえて研修をやっていかなければならぬということを大臣も御答弁をいただいたわけでございます。その部分については非常に安心をするわけですけれども、この法律によりまして教特法二十条の二を新設して、任命権者に初任研を義務づけていましたね。そして十九条では、教育公務員は、その職責を遂行するため、絶えず研修に努めなければならぬ、こういうことになっているのですが、これは絶えず教職員研修に努めなければならないという、これは義務ですよ。この任命権者研修義務と、教員が自主的、自発的に研修をやらなければならぬということになっているこの研修との関係はどうなっておると考えておるのか。本来補助的にやらなければならないものが、任命権者研修について補助的な立場であるものが、義務ということに押しつけてそれが中心になってしまうというおそれはないのか、これはどうですか。
  90. 中島源太郎

    中島国務大臣 具体には政府委員からお答えさせますが、基本的に申しますと、例えば教育公務員法の十九条の規定でありますけれども、「職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」これは言うなれば生涯かけてということでございます。生涯学習の精神からいってもそうでございますし、特に、その職にある間は絶えずということは、一定期間を限ったものではございません。また同時に、それは一方にありながら、さて任命権者がその研修というものについては施設、方途、計画を立ててその実施に努めなければならない。これは一つの方向を立て、そして一つ施設、計画を立て、その中で研修ができるようにしなければならぬ。これは両々相まって行うべきものでありましょうし、その中で、特に任命権者に与えられました義務規定というようなものを率直に遂行していく必要があろうと考えます。
  91. 馬場昇

    ○馬場委員 この初任研をやる目的に、教員資質能力の一層の向上を図るため初任研をする、こう書いてありますが、ここで言う資質というのは具体的にどういうことを指しているのですか。
  92. 加戸守行

    加戸政府委員 資質能力というのは一語として用いておりますけれども、いわゆる資質能力といたしましては、教員がその職務を遂行するに足りる本来的に持ち合わせている資質、それが具体的に、あるいは対外的に発揮される能力というような意味でございまして、資質と申しますのは、教員教員としての職務を遂行する上で、それぞれの今まで過去に蓄積しました学識なりあるいは全人格的な性質、そういうものも含めまして本人が持っている一種の人間として蓄積してまいりました能力なり、学識なり、その全人格等を総合して資質と私ども考えております。
  93. 馬場昇

    ○馬場委員 余りよくわからなかったのですけれども、余り時間がございませんから、資質論争はここでしばらくおくといたします。教育行政が研修で余り過度に研修を、計画とか実施とかいろいろなことが過度になりますと、いわゆる教職員は本来自主研修をしなければならぬと先ほど言ったように義務づけられておるわけでございますから、教育行政が義務としてやる研修を余り過度にすると自主研修が損なわれる、あるいは逆に自主研修意欲まで失わせるという結果に、これは事実、後で申し上げます初任研の試行の中でそういう問題も指摘されておるのですけれども、こういうことで大臣、行政側がやる研修が非常に過度になったりして自主研修を逆に損なわないように、自主研修意欲を損なわせないように教育行政は研修考えるべきだと思うのですが、どうですか。
  94. 中島源太郎

    中島国務大臣 具体には、方法論でお尋ねであれば政府委員から申し上げさせますが。——そうですか、では基本論として、私はそれはないと思うのです。先ほど申したように、自己啓発みたいなものは絶えずということがございますし、任命権者が行いますものはやはりその方向を出し、そして誤りないように一つ施設、計画を立てる、こういうことでございまして、そしてその方法も、先ほどお尋ねになりましたように、型にはめるのではなくて、むしろ多様化、個性化を引き出すように行うわけでございますので、それによって意欲が損なわれることは万々ない。むしろ任命権者が行う研修の場をよりふやすことによって生涯かけての自己啓発を助けることができるかもしらぬ、そのように思っておりまして、相反するものでは絶対ないというふうに考えます。
  95. 馬場昇

    ○馬場委員 私が言っているのは、新任に入ってきたときから教職員におる間は自主的に、自発的に研修を絶えずずっとやるわけですね。私が言ったのは、今大臣も言っておられましたが、それを初任のときに行政が、任命権者が過度に介入して型にはめるようにしたら自主研修とか自発性を損なうのではないか、こういうようなことを今言ったわけでございます。  それから、過度というのは、型にはめるというようなことと、もう一つは時間が多過ぎるということも過度ですね。余りにも負担が重過ぎるというようなことで、型にはめるとか余りにも時間が多過ぎるとか、そういうことを初任のときにやったならば、ずっと自発的、自主的にやる研修にマイナスになりはしないか、こういう質問をしたわけです。どうですか。
  96. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は、その御心配はないというふうに思いまして、お答えをいたしました。具体には政府委員からお答えさせます。
  97. 馬場昇

    ○馬場委員 では、大臣が御心配はないとおっしゃいましたが、御心配がある、実際出ているということは後でまた質問いたしたいと思います。  ここで、別の変わった角度から大臣質問します。  これは臨教審も答申しているんですね。臨教審答申に、原則を書いておる部分ですけれども教育改革の最も重要な基本的視点は個性重視の原則であると書いてあります。この中に、画一化、硬直化、現場の創意工夫の減退、他律性の助長にしかならないような過度の瑣末主義的な統制管理の行政体質、これが今の文部省にある、これを改革しなければならない、これが臨教審の答申です。私が言った過度というのは、この過度も実は含まっておるわけでございます。  それで大臣、これは原則論の話ですけれども、個性豊かな教育行政、臨教審から今こうして指摘されているのですから、これは改めなければならぬと言っているのですから、改めるということは、個性豊かな教育行政ということになりますね。個性重視の教育は個性豊かな教育行政から始まる。個性豊かな教育行政であって初めて個性豊かな研修が行われるのです。また今度は、個性豊かな教員があって初めて個性を尊重する教育ができるわけですよね。この辺についての文部大臣の見解はどうですか。
  98. 中島源太郎

    中島国務大臣 今臨教審の書類が手元にはございませんけれども、今おっしゃった点は、その前段にもう少し大きい視点がございまして、そして、明治以来日本の教育が進んできた道を見ると、平たく言えば、先進国に追いつき追い越せということで全体の水準を上げようとしてきた。したがって、振り返ってみると画一的という面があるというのが前段にございますよね。そして、そういうのを踏まえて、画一性から個性重視の教育に持っていくべきだという大前提が臨教審では示されたというふうに私は記憶をしておるわけでございます。  それは何かと申しますと、やはり社会そのものが国際化、多様化、個性化をしておる。それはなぜしたか。それは社会が成熟度を増すとそのような変化をする。その変化に対応できるようなたくましく、心豊かな青少年を育てるべきである、逐条のものが今手元にはございませんが、私は臨教審の御提案の精神をそのように理解をいたしておるわけでございまして、その点で、今までのような行政の姿勢も個性化、多様化を重視して教育を行うべきであるぞ、こういう御指摘があって、それで多種多様な御提言があるわけでございますので、そのおっしゃる意味は、そういう意味では文教行政を預かる文部省といたしましても十分理解し、把握しておるつもりでございます。
  99. 馬場昇

    ○馬場委員 一番最後のところはわかるのですけれども、追いつけ追い越せなんというのは、物事を判断する場合に、過去にこういういいことがあった、こういう悪いことがあった、それで現在はこうなっておる、だから将来はこうしなければならない、こういうことで物事は考えるのが普通でしょう。私が言うたのは、今の文部行政の中にこういう体質があるということを臨教審が指摘して、そして、そういう個性重視の原則にのっとらないような現在の文教行政の体質というのは改革をされなければならない、こういうぐあいに書いてあるわけですから、何か大臣は、教職員を管理するとかなんとかというのはつまみ食いしておるけれども自分たちが反省して、こうしなさい、ああしなさいというのには弁解ばかりしている。  今の個性重視の原則、もう一遍読みますよ。教育改革の最も重要な基本的視点は、個性重視の原則である。画一化、硬直化、現場の創意工夫の減退、他律性の助長にしかならないような過度の瑣末主義的な統制・管理の行政体質、これは改革しなければならないとあるわけですから、はっきり書いてあるのです。  そこで、私が言うたのは、じゃ大臣、急にそこで見られてもなんですが、私が言うのは、例えば個性豊かな教育行政があって個性豊かな教員研修もできる、個性豊かな教員教育すれば初めて個性豊かな教育ができて個性豊かな子供が育っていくのだ、こういう原則で、教育行政は今まで悪かったところがあれば改めなさいよ、こう言っているのですが、どうですか。
  100. 中島源太郎

    中島国務大臣 御趣旨はよくわかります。ですから反論することもないのですが、今先生がおっしゃったのは第二章からお引きになりまして、私がさっき記憶にありましたのは第一章の第一、「我が国は、明治以来の追い付き型近代化の時代を終えて、」この部分を申し上げたわけであります。それで、第一章の前段にそれがあったと申し上げたのはこの部分でございまして、それを受けて「これまでの我が国の根深い病弊である画一性、硬直性閉鎖性を打破して、」と。ですから、これが前段の第一章にかかる部分であるというふうに私は記憶しておった、こういうことを申し上げたわけでございます。
  101. 馬場昇

    ○馬場委員 時間も迫ってくるのですが、具体的なことでちょっと質問申し上げます。  任命権者指導教員を命じると書いてありますね。これは任命するのですかそれとも職務命令ですか、どっちですか。
  102. 加戸守行

    加戸政府委員 任命権者に括弧して市町村立学校教員につきましては服務監督権者である市町村教育委員会というぐあいに、服務監督権者という括弧書きがあると思いますが、これは任命権者服務監督権が分離されていなければ、例えば県立学校につきましては都道府県教育委員会が任命権並びに服務監督権を有している、それから小中学校教員につきましては市町村教育委員会が服務監督権を持っているわけでございますが、いずれにいたしましても服務監督権者たる立場におきまして、県立学校教員については都道府県教育委員会が、それから小中学校、市町村立学校教員につきましては市町村教育委員会が命課をするということでございます。
  103. 馬場昇

    ○馬場委員 私が聞いているのは、任命行為なのかあるいは職務命令でそうしなさいというのか、どっちですか。
  104. 加戸守行

    加戸政府委員 公務員法制上の任免その他の進退という意味におきます任命権の内容としての任免行為ではございませんで、いわゆる服務監督権に基づく職務命令でございます。
  105. 馬場昇

    ○馬場委員 次に、主任が今いろいろ議論があります、反対もありますが置かれておるのですが、この主任を命令するときには校長の意見を聞いてということになっておりましたですね。ところが今度は、指導教員を命令するときには校長の意見を聞いてというのはないのですが、これはどういうことですか。
  106. 加戸守行

    加戸政府委員 これは、今回提案申し上げております地方公務員法上の改正案におきましては、本来の服務監督権の内容としての職務命令を任命権者または服務監督権者が発するということを規定したわけでございます。しかし具体的なこういった命課を行います場合には、当然に当該教員が所属いたします学校の校長の意見を聞くことが適当でございますし、また必要でもございますので、現在、昭和六十二年度、六十三年度におきます試行に関しましては、文部省としては学校長の意見を聞いて教育委員会が命ずるようなモデル条項で指導をいたしておりまして、現実に運用されております実態は、校長の意見を聞いて教育委員会が命ずる場合と、あるいは教育委員会が校長に委任をいたしまして学校長が発令をし、教育委員会に報告している、こういった二通りのケースが試行の段階で存在いたしております。
  107. 馬場昇

    ○馬場委員 じゃ、この法律が施行された場合、今度は試みじゃなくて施行された場合には、校長の意見を聞いてということになるのですか。
  108. 加戸守行

    加戸政府委員 法律の上では校長の意見を聞くことは規定されておりません。それはすべて、服務監督に関しまして、地教行法の上でも市町村立学校職員の服務監督は市町村教育委員会が行うという規定がございますけれども、この服務監督権を行使するに際しましては、一内容としての職務命令を発する場合に当たりましても、実際問題としては校長の意見を聞くことが適切かつ必要でもございますし、学校長の意見を聞いた上で教育委員会が服務監督権を発動する、これが実態でございます。そういう意味では、従来の例えばいろいろな取り扱いと同様に、教育委員会が当然に校長の意見を聞かれることと思います。あるいはさらに、教育委員会がその服務監督権の行使を学校長にも委任をするというケースもございます。
  109. 馬場昇

    ○馬場委員 次に、指導教員指導助言ですね。この指導教員が職務遂行に必要な事項を指導助言する場合、こういうこと、こういうことをあなたは研修しなさい、こういう指導助言をするのか。例えば、これはこうしなさい、これを勉強しなさい、研修しなさいというのじゃなしに、具体的にこいつはこうしなさい、こいつはああしなさい、こういう指導助言なのか。これはどっちなんですか。
  110. 加戸守行

    加戸政府委員 法律の上で、職務の遂行に必要な事項に関する指導または助言と規定いたしておりますが、これは初任者がそれぞれの段階がございますので、例えば一年間学校におきます教員の職務展開のプロセスがございますから、初めの段階ではこういったような事項を勉強してください、あるいは中途の段階ではこういった事項をというように、その時期によりまして必要な研修を、こういうことに重点を置いてもらいたいという意識喚起のような指導助言もございましょうし、あるいは初任者が教壇に立ちまして職務を遂行するわけでございますが、これは授業のみならず学校運営全般の話でございますけれども、その都度必要な適切なアドバイスを与える、あるいは教員の方から求められて指導教員アドバイスをするケースもございましょうし、指導教員の方が積極的に助言を与える場合もございましょう。そういった各般にわたります一般論としての段階別の抽象的な事項に関する指導もございますし、個個具体的な職務遂行段階におきます適切なアドバイスも多様にあると思います。
  111. 馬場昇

    ○馬場委員 ちょっと聞きたいのは、例えば学級経営なら学級経営で、学級経営にはこういうことも勉強して、こういうことも勉強して、そして立派な学級経営を行わなければなりませんよ、だからそういうことを研修しなさいよと言うのか、学級経営はこうしなさいと言って指導するのか、そのどっちですか。
  112. 加戸守行

    加戸政府委員 この指導教員の場合は新任教員の個に即して指導するわけでございますから、具体的にその学校の場で、例えば授業の場等で展開されておりますその授業形態の中で現実に初任者教員がいろいろな形で職務遂行されている、それを実地に即しましてアドバイスを与える、その場ではなくて終わった後というような形が非常に多いと思いますけれども、そういった点では、事項としては例えばいろいろな校務分掌がございますから、主となりますのが学習指導でございましょうけれども、あるいはその前段階としての教材研究もございます、あるいは学級経営もございます、あるいは児童生徒の悩みに相談に応じるその接し方あるいは生徒指導の問題、各般にわたる事項がございますが、一般的に申し上げれば、先ほど申し上げましたように、一年間流れの中で、一学期はこんなことを重点的に考えなさい、二学期になればこういうことを考えなさいというような抽象的な指導もございますけれども、多くは個に即した具体的な教育現場におきます実地の指導アドバイスというのが主たる部分を占めるであろうと思っております。
  113. 馬場昇

    ○馬場委員 では、具体的な例で申し上げますと、指導教員がこういう助言をした、例えば学級経営なら学級経営をこうしなさいと言った、個に即してでも何でもいいですから。ところが、その先生がそれに従わなかった、私はそれは間違っていると思う、私はこうすべきだと思うと言って、指導教員がこうせよと言った指導助言に従わなかった場合、これはどうなるのですか。具体的に例えば処分の対象になるのかならないのか、こういうことはどうなんですか。
  114. 加戸守行

    加戸政府委員 指導教員は、申しますれば指揮監督をするわけではございませんで、言うなればお兄さんのような立場で弟に温かい目で見守りながら適切なアドバイスを与えるわけでございますから、恐らくこうしなさいということではなくて、私の過去の豊富な教育体験からすればこうした方がいいのではないでしょうか、そういうようなアドバイスになると思います。これは職務命令ではございませんで、そうした方がいいのではないでしょうかという意見に対して、そのとおりに従う場合もございましょうし、それを取り入れない場合もございましょう。それは新任教員がみずから主体的に判断する事柄でございます。ある意味では、先輩教員は立派な方ですから余り間違っていないと思いますけれども、仮に間違っていることをおっしゃるとすれば、それは反面教師として初任者教員は受けとめるであろうと思います。
  115. 馬場昇

    ○馬場委員 お兄さんにもいろいろおりますからね。いいお兄さんがおれば非常に幸せですけれども、いろいろなお兄さんで大変な苦労する人もおるわけですから。  そこで、例えばお兄さんになる人、指導教員、この人はさっき言ったように指導教員を命ぜられるわけでございますが、教諭の任務の中に「教育をつかさどる。」とありますね。この指導教員指導助言というのは「教育をつかさどる。」という範疇に入るのですか。
  116. 加戸守行

    加戸政府委員 学校教育法二十八条におきましては、「教諭は、児童の教育をつかさどる。」という規定がございます。これは教諭の主たる職務を規定したものでございまして、既に裁判例等でも明らかになっておりますけれども学校教員は校務の分掌をいたすわけでございますから、学校におきますもろもろの仕事を分担すべき立場にございます。そういう意味におきましては、先輩教員として後輩教員指導助言をするというのは校務分掌の当然の一内容でございますけれども、今回計画いたしております初任者研修制度は、一年間にわたりマン・ツー・マン指導するという、その職務のウエートが極めて、内容的に申しますと、新任教員に対する指導が中核になるわけでございますので、その旨を教育公務員特例法改正によりまして指導教員の職務内容を明らかにしようとしておるものでございます。この規定がないからといって、先輩教員として後輩教員指導助言することが職務でないということではございません。
  117. 馬場昇

    ○馬場委員 たくさんの問題があるのですけれども、地教行法の第四十七条の二の第一項の非常勤講師のことですけれども、この中で特に「高等学校にあっては、」「定時制の課程授業を担任する非常勤の講師に限る。」定時制に限ると書いてあるのはどういう理由ですか。
  118. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案しております地教行法四十七条の二の改正案におきましては、いわゆる非常勤講師の派遣制度を規定しようとしたものでございまして、市町村立学校教員研修につきましては任命権者である都道府県教育委員会初任者研修を行うわけでございますけれども、具体的な研修はそれぞれ所属する学校で行われるわけでございます。したがいまして、その学校の職員の、言うなれば非常勤講師の経費と身分等はすべて、市町村ということが建前でございますので、市町村からの要請がございますれば、都道府県側におきまして非常勤講師を市町村に派遣して、県の非常勤講師が市町村に派遣され、県が報酬を負担し、身分は県のままで、市町村の業務に従事をするという制度を設けたわけでございます。  ところで、高等学校につきましては、市町村立の全日制高等学校は、市町村教育委員会が所管し、かつ、教員の任命権を市町村教育委員会が持つわけでございますので、その場合の研修につきまして必要な教員は市町村が手配する原則でございます。ここで書いております高等学校にあっては定時制の場合に限るとございますのは、定時制の高等学校につきましては都道府県教育委員会が任命権を持っているわけでございますし、またその研修も都道府県が行うわけでございますので、その場合は、市町村立の定時制の高等学校の非常勤講師につきます市町村の負担ということではなくて、都道府県から派遣できるようにしよう、そういった制度の違いによって規定を変えているわけでございます。
  119. 馬場昇

    ○馬場委員 具体的な問題、まだたくさんありますけれども、時間がありませんが、これは抽象的なことで、大臣、二年試行、六十一年、六十二年試行した、この試行について、例えば初任研の試行を受けた者、あるいはその人がおる学校のほかの先生、あるいは初任研の試行を受けておる先生から授業を教わった児童生徒、あるいはそういう者を持っている父母、こういうものからこの初任研の試行はどうだったのかということについて、例えば試行結果をよく調査をして、こういう点がよかった、こういう点が悪かった、一言で言うと、総括というようなものは文部省は具体的にどうやってしておりますか。
  120. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修の試行は昭和六十二年度からスタートしたわけでございますが、この一年間の結果につきましては、私ども初任者研修の試行を実施しました三十六の都府県指定都市の教育委員会から概括的な報告を求めておりまして、そういった報告が参ってきている段階でございます。  このほかに、試行の対象となりました教員並びに試行の指導教員として新任教員指導に当たられた先生並びに当該試行対象教員の所属する学校長から、それぞれ意見なり感想なりという形でのいろいろな御意見をちょうだいしておるところでございまして、今そういったいただきました意見都道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会を通じて集約中でございますが、今文部省の方に参っております概況から見ますと、大変初任者研修につきまして理解が得られ、成果が上がっているというような評価をいただいているところでございます。
  121. 馬場昇

    ○馬場委員 大臣に申し上げておきますけれども、例えば物事を試行したら賛否があるのは御承知のとおりです。ところが、今概括的な報告を都道府県教育委員会から受けておると言うが、都道府県教育委員会が本当の試行のよかった点、悪かった点の正しい総括をしておるかどうかということは問題がございます。その問題が一つ。  それから、文部省がそういうよかった、悪かった点の総括を今報告を受けておるならば、それについて、試行してみたところが、国民の税金を使って大変問題を起こしてやっているのですから、こういういい点があった、こういう悪い点があった、そのことを国民の前に明らかにして、じゃ例えばこれを本格実施をしていいものか、して悪いものかとか、あるいは実施するときにはどういう点を注意しなければいけないかとか、そういう国民意見を聞くということが非常に必要じゃないかと思うのです。例えば諸外国の例、アメリカなんかでも教育改革を一項目しようと思うなら、大体二、三年はその現実の調査をして、それをみんなで議論して、大体実情はこうなっているということの意思統一をしてコンセンサスを得て、じゃこういうぐあいにやろうか、それはこうした方がいい、ああした方がいいということで、物事をする場合には大体二、三年そういうことをやっている。それで、教育改革は国家百年の大計ですから進めておるわけです。だからこの問題についても、試行をやったのだから、ぜひそういうよかった点、悪かった点を集めて、それを本委員会にも出していただく、国民の前にも明らかにしていただく、そして国民の批判を受けて今後の行政をするというような段取りというのはぜひやってもらいたいと思いますが、大臣どうですか。
  122. 中島源太郎

    中島国務大臣 これはおっしゃるように、試行をしてみまして、その結果、いい点はともかく、やはり改めるべき点、そういう点に耳を大きくかすべきじゃないか、根本的には私はそう思っております。しかし、お受けになった方の意見あるいは任命権者側の意見も個々に出てきたものを私も拝見しましたが、ところが私が一番心配しておるのは、御父兄の方あるいはお子さん方がどのように考えておられるか。やはり生徒児童諸君を教育するということが主でありますから、教育される児童生徒諸君がどう受け取っておるかということにぜひ目と耳を大きくして知りたい、こう思っておりまして、今集計中でございますからパーセンテージは申し上げられませんけれども、拝見したところでは思ったよりも私が心配していた分が少ない、こういうことがございまして一安心をいたしました。  ただ、それだけで足りるものではございませんから、しかも一年間試行した範囲が全体の恐らく七%ぐらいのことでございましょうから、さらにそれを五十七都道府県市に試行を行いまして、そうしますとさらに幅広い御意見をちょうだいできるわけでございますから、第一年目、これを十分しんしゃくしながら、そして二年目の試行の結果も見たい、このように思っておりますが、まとめが出ましたらどういう意見が何%、どういう意見が何%、これはできるだけ早く公表をさせていただきたいと思っております。
  123. 馬場昇

    ○馬場委員 今、ちょうどそのことを法律をつくろうといってこの国会で審議しているわけです。審議しているのだから、中間であろうとどうであろうと、この国会に、大体試行の結果の総括はこうですということを、みんなにそれを配って、そしてこの審議の材料にすべきだというのが当然の行いだと私は思うのです。  例えば私どもが調べたところによりますと、大臣、たくさんの問題点があって、問題点の方が多い。例えばこういうことがございます。まず新任の教師、初任研を受ける教師というのは年間四十日も幾らも外に出るわけですから、子供と同僚教師と接する機会が非常に少ない。こういうことがあって、例えば現場を離れてセンターに行ったり宿泊したり洋上研修なんかも行うわけですから、そういう子供と同僚と接する機会が非常に少ないというのは何か改善しなければならぬ問題だという点とか、あるいは週に一回不在をする、あるいは週に一回指導教員授業をする、あるいは代替教員が来る、そうすると、受ける子供の側からとってみますと、どれが本当の自分先生かとか、授業の継続性というのがなくなってくる。そうすると、学習面とか精神面で子供が非常に不安定になる。そうすると、新任教師と他の先生生徒信頼関係というものにいい結果は出ない。こういうことも報告されております。  それから、これは受ける教師からいいますと、研修課題が非常に多過ぎる。こういうことを報告しなさい、こういうことをレポートを出しなさいと言われて、非常に多忙な毎日を送って、そして何か言うと初任研だということで、一人前に扱われないような格好で実はそういうことが行われる。心身にとって非常に負担が多過ぎる。こういう話もございます。  それからもう一つは、学校の行事がいろいろあるわけですね。ところがそれに参加ができないという場合も非常に多い。だから学校の行事とか学校運営全体にかかわり合えない。こういうこともございます。  それから、これは二次答申の中にも書いてあるわけですから、本当はやはり学校全体として協同的な指導体制を確立する必要がある。ところが、指導教員マン・ツー・マンとかいうのはこれは縦であって、学校全体が協同的に指導体制というのをつくることが少ない。そうしてやはり指導教員によって上から一方的に押しつける研修指導になってきておる、研修内容が押しつけが非常に多いのだ。こういうこともございます。  やはりそういうことからいいますと、先ほどから言った研修の原則、自主性、自発性というのが損なわれる、こういうことがあります。そして、例えば具体的に言うと、自分の学級の子供にいじめが起きた、先生研修に行っておる、そうするといじめの発見がおくれる、そういうようなことがあって、非常に手当てがおくれますといじめなんというのは的確な指導ができないんですよ。しょっちゅう見ておらなければいじめ問題なんかは非常に難しいのです。そういうことに手抜かりが出て非常に申しわけないというような結果が出たとか、こういうたくさんのことがあるのです。  だから、今大臣が言われましたが、その試行の総括というものを一日も早くまとめられて、あるいは中間報告でもいいですから、ぜひ私は、例えばこの法案を審議しているこの委員会に直ちにでもいいから、中間報告で集まっている分だけでもいいから出してもらいたいということを要望しておきますが、大臣、この総括をこの委員会に出すということについて、そしてまた国民の前にも公表するということについてお約束してください。
  124. 中島源太郎

    中島国務大臣 そのお答えの前に二点ばかり……。  マン・ツー・マンでやって学校全体がこれに参画すべきではないか、それはまさにこの指導教員初任者を中核として全校的にこれに協力していこう、これが精神であるということを一つ申し上げておきます。  それから、まさに今おっしゃった点が心配の点でありますので、私も耳を大きくして、こう申し上げたわけでありますが、意外とその点が少なかったように思いましたけれども、今集計を急いでおるようでございますので、具体にはその集計結果がいつ出るかによって変わりますけれども、その点はちょっと事務の方に急がせるように申してみますが、その点の確約がございましたらちょっと政府委員から、今集計中なものでございますから。
  125. 馬場昇

    ○馬場委員 出していただけますね。
  126. 中島源太郎

    中島国務大臣 それが集計中ですから、いつごろ集計できるか……。
  127. 馬場昇

    ○馬場委員 いや、出すなら出すでいいですから、きょうのところは。
  128. 中島源太郎

    中島国務大臣 ですから、その点は処理中のものでございますから、具体の点で政府委員から。
  129. 馬場昇

    ○馬場委員 いや、処理中のものあるいは結果でもいいから、とにかくこの委員会にそれを出してくださいということです。時間がないですから、出すか出さないかでいいのです。今出せとは言わぬから、いつ出すか出さぬかでいいから。
  130. 加戸守行

    加戸政府委員 年度末までの報告を求めておりまして、ほとんどが出そろっている状況でございますが、一〇〇%全部がそろうまでを待っておったわけでございますけれども先生の御指摘もございましたので、でき得べくんば一〇〇%、間に合わなくても最終的におよその九十数%というような状況でも、早急に集計をしてその結果をお出しするようにしたいと思います。
  131. 馬場昇

    ○馬場委員 ここで今審議をしておるわけですけれども学校授業をするときに、教材は後で持ってくるから一応授業せい、勉強せい、これじゃ授業にはならぬわけです。だから、本当にこうでしたということで、これはこうしなければいかぬ、これは例えばよかったとか悪かったとか、そういうことをして議論しなければならないのに、全く教育的配慮というか、あるいは国会の審議権というものの権威とかいうものを無視された、そんなことで研修をやれといったって、いい研修はできませんよ。  そこで、もう一つ次の問題に入りますが、大臣、すべての公務員とかは法のもとに平等であることは御承知のとおりでございます。ところが、この教育公務員だけが条件つき採用が六カ月から一年になっているわけです。だから、これで一年にしたのは何で一年にしたのか。条件つき採用期間が今まで六カ月だったのを一年にしたのはなぜか。初任研を一年にすることと条件つき採用を一年とすることと関係はあるのかないのか、これはどうですか。
  132. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案しております初任者研修制度につきましては、初任者新任教員学校現場に配属されましてから、一年間にわたる研修を受けるわけでございます。したがいまして、従来の教員と異なりまして、研修を受けながら勤務をする、そういう形態では勤務形態が、片一方の目から見ますと勤務でございますし、反対の方から見ますと研修という二面性を持った勤務形態になるわけでございます。しかも、その勤務の内容と申しますのが、先輩教員あるいはその他の方々指導助言を受けながら、極端に申し上げますと一〇〇%一本立ちではない状態の中で勤務をされていくわけでございますので、その勤務の形態が非常に特殊性といいますか、通常の従来の教員の勤務とは異なってくるわけでございます。と同時に、学校におきます教員の職務の特殊性からいたしまして一年間にわたる授業を展開するわけでございますが、これらの教員の勤務形態から見まして、その職務遂行能力を判断いたします場合に、従来のような形態と異なるこういった形態におきます職務遂行能力は、初任者研修の期間一年間に合わせまして、その勤務遂行能力の実証を得ることが適当だ、こういう判断をいたしまして条件つき採用期間を一年としておるわけでございます。
  133. 馬場昇

    ○馬場委員 条件つき採用というのは、これはもう法的にいいましても、選考とか採用の補完的なものですよ。良好な成績で勤務した者を採用する、だから選考、採用の補完的なものが条件つき採用です。この初任研というのはこれはもう研究し、修養し、研修するわけですから、採用の補完的なものと研修をするものというのはもう性格も内容も全然違っている。これを一緒にする必要はない、こういう問題がございます。  いま一つは、国家公務員、地方公務員も六カ月ですよ。教員だけが何で一年で条件つき採用にならなければいけないのかということです。  もう一つは、この法律によりますと、六十四年から六十六年までに政令で指定する学校は実施しなくてもよいとなっている。聞くところによると、予算の都合上、六十四年は小学校なら小学校、六十五年が中学校、六十六年が高等学校、多分こういうふうに傾斜的に、段階的にやるんだろうというふうに今聞いておるわけでございます。そうすると、同じ大学教職専門の知識をもとに同じ免許を持って、小学校に入った人は条件つき期間が一年、中学校に入った人は条件つき期間は六カ月、高校も六カ月だ、こういうことになりますと、この条件つき期間の差は一般的にどうしても理解できない。はっきり言って公平の原則に違反しておる、こういうぐあいに思うのですが、これはいかがですか。
  134. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま申し上げましたように、初任者研修を受ける教員は、研修を受けながら勤務をするという勤務の特殊性があるわけでございます。そして、教員の職務が、いわゆる児童生徒に対します全人格的な触れ合いの中でその職務を遂行する能力があるかどうかという判定でございますので一年としているということを申し上げましたが、このことは一年間をかけて教員として職務を遂行するに足りる能力があるかどうかの実証を得るということでございまして、その能力の判定基準は条件つき採用期間が六カ月であろうと一年であろうと変わりはないわけでございます。ただ、その判断の尺度は同じでございますが、そういった尺度に適合するかどうか、一生涯教員として勤務するにふさわしい適格者であるかどうか、そういった視点から能力の実証をするのに、従来の六カ月よりも今回の初任者研修期間一年に合わせて一年ということにしているわけでございまして、それは勤務の特殊性に由来するものでございまして、六カ月と一年の差におきますその差は合理的な差であると私ども理解をしているわけでございます。  それから、先生が今おっしゃいました附則におきまして段階実施を想定いたしておりますが、初任者研修を実施いたします校種教員につきましては条件つき採用期間を一年に延長いたしますけれども、まだ初任者研修を実施する段階に至らない校種教員につきましては従来どおり六カ月の条件つき採用期間といたしておりますのは、今申し上げましたように、初任者研修を受けながら勤務をするという特殊な勤務形態になっているかいないかによります差でございまして、これはいわゆる平等の原則に違反するものではないことは当然だと思っております。
  135. 馬場昇

    ○馬場委員 もう全然理屈になっていないですよ。  そこで、例えば、大臣に聞いてもらいたいのは、新任して一年間教員として学級担任も持つわけでしょう。すべての責任を負わせられているわけだから一年間担任を持つわけで、その他もいろいろやるわけです。教員としてすべての責任を負わせながら、片一方では条件つき期間を延長している。これは厳密に言いますと、公務員法上、身分の不安定な状態というのを半年延ばすことになるのですよ。そうして必ず採用するという保障もないのですよ。全くこれは不条理なことじゃないですか。そして、今の公平の原則に反するけれども、条件つき採用期間を一年としたのは、今局長が答弁したのと本音は違うんじゃないですか。臨教審において、当初、さっき言った第三部会長などが言った教職適格審査会方式、適性審査会の設置を見送ったものだから、初任者に対して条件つき採用期間を一年間に延長するというものを設けて、そういう意見に対してサービスしているんじゃないですか。けしからぬ話です。  例えば、こういう点についてあなた方がそういう態度をとることが、初任研を受ける先生から今度は教育を受ける児童生徒とか、その周辺におるところの教員とか、あるいはまた初任研を受けながら授業教育を受けている児童生徒とか、初任研を受けない先生から教育を受けている児童生徒とか、これらはみな差別されてきますよ。全く児童生徒、父母の不安というのはこういうところに非常に多くあるわけです。  もう時間が来たわけでございますのでやめますが、こういうものは拙速にやってはいかぬ。さっき言ったようにみんなが議論してそしてコンセンサスを得る努力を数カ年かかってする、そしてそういうものが法律をつくるかつくらないかを決める代物である、そういう決め手になるようなことである。また、これは教育問題にとって大変な禍根を残す問題であるということを私の質問最後文部大臣に申し上げて、時間が来ましたので終わります。
  136. 中村靖

    中村委員長 鍛冶清君。
  137. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 提案になっております、俗に言います初任者研修法案についてお尋ねをいたします。先ほどの馬場委員質問と重なる点があるかもわかりませんが、御容赦いただきたいと思います。初任者研修法案とこれに若干関連いたしまして一般教員研修の問題でお尋ねをいたしますので、よろしくお願いを申し上げます。  最初に、本会議で総理にお聞きしました内容を重ねて文部大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  二十一世紀を担う主人公は、私が申し上げるまでもなく現代の青少年の方々でございます。その彼らを教え、はぐくんで、個性を伸ばし、心の扉を開いていく主体者は、何といっても青少年と直接かかわりのある親であり教師であると私は思います。親のことはここでは一応おきまして、教師の問題でございます。学校教育の成否、これが立派に成功するかしないかということは、その制度やカリキュラム、それから枠組み、こういったいろいろなことを工夫しながら変えていく、よりよい方向に変えていく、ないしは施設等をつくっていくということも極めて大事でありますけれども、最終的な決め手というのは、一つ一つの教室で行われます授業である、そしてそれを担当しておられる教師の皆さん方にかかっておると言っても私は言い過ぎではないと思っております。  先ほど来、文部大臣も言っておられましたが、「教育は人なり」という言葉が古来よりございます。まさに私はそうだと思うのでありまして、今申し上げましたように、学校施設、設備等も充実することは当然のことですけれども、それよりもさらに大切なことは、教師そのものの皆さんの人格識見、指導力量、子供に対する愛情等々である、こういうふうに思っておりますが、この点について大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  138. 中島源太郎

    中島国務大臣 全く鍛冶委員がおっしゃいますとおりでございまして、これから二十一世紀に向けてこの社会を担っていくのはたくましく、心豊かな青少年諸君でございます。その発育、そして教育につきましては殊さらに心すべきことであると思いますし、それに直接携わる教員の皆様方の資質向上が非常に急がれるところでございます。それには、資質基本はおありでございますけれども、その上にさらに、たゆまざる研修の中で実践的な指導力を養い、教育愛情を持って臨んでいただく、そして多様化、個性化する社会の中で、それに即応できるような児童生徒諸君のいい面をすくすくと伸ばしていただける、そのような教員像が確立され、そしてそういう教職にある方々がふえていくことを心から望み、私どもも努力をしてまいりたいと思っております。
  139. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 その点についてのお考え大臣も私どもと同じ方向のように承りました。そういう意味で、私は、教員の皆さんの研修、これはほっておくだけでは、いろいろな技術を含めてまた使命感を含めてすべて万般うまくいくということではないだろう。私たちが小さいときからいろいろ教わり、またいろいろな技術アドバイスを受けながらそれを踏み台にさらに高い境地に達していくという形が確かに一番順当であり、一番早く成長できる道であろうと思いますが、そういう意味での研修、今回初任者研修制度がこの法案によって施行されようとするわけでございますけれども、そういう意味からいっても私どもはこれは大切なことではないかというふうにも思っております。  御承知のように、昭和四十九年に人材確保法案が通りました。そして、さらに最近は児童生徒数というものが減少してまいりまして、教員採用枠というものもだんだんと狭まってきておる。ですから、以前に比べますと相当資質の高い方々教員になってきつつあるというふうにも思うのでございますが、最近の新任教員資質についてどのようにお考えになっていらっしゃるか、伺いたいと思います。
  140. 中島源太郎

    中島国務大臣 教員資質についてでございますが、私は、根本的に教員方々基本的な資質は皆さんお持ちであろうと思っております。ただ、これからは、申し上げましたように、社会の変化に対応できるような生徒児童を育てるためには、社会的な視野の広さ、知見の広さと同時に、やはり教師像そのものが、生徒児童諸君の個性、人間性を引き出せる、そのような心の広い、そして個性的な教員像であってほしい。したがって、先ほども申し上げましたように、はっきり申せば、画一的なサラリーマン化するような教師像からよりたくましい、心豊かな教師像であってほしい、私はそういう希望を含めて申し上げております。
  141. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 最近、勉強はできるし頭はなかなか切れるけれども子供の扱い方がわからないといったような教師がふえてきている、心がつかめない教師がふえてきているというような話もちょくちょく耳にするようになりました。それから、教師として若干資質が向いていないのではないか、ほかの方には向いているけれども教師としてはいかがであろうかというような方々、それから使命感に欠ける、こういった方々も時々耳にすることが多くなってまいりました。いろいろな意味で、先ほども申し上げましたが、教員としてそれを目指して採用をされた方々、よく「鉄は熱いうちに打て」ということわざもございますが、やはり新任のときに研修というものをしっかりとしておくことが、多少手間暇をかけましても、それから十年、二十年、三十年、四十年と将来を展望しますと、極めてそれがプラスになり、自分自身の自主研修という立場で自分自身もぐんぐん勉強し伸びていくことができるのではないか、こういうふうに私は思っております。現にいろいろな企業等でも、それこそ有給で一年間研修をするというようなことが大体通例になっておりまして、そういう意味からも、子供さんを預かるということ、それはすなわち日本の将来を預かるということでございますので、しっかりと研修はしていくべきではなかろうか、その視点はあくまでも子供のためにというところに置いていかなければならない、こういうふうに実は思うわけでございます。  そういうことを前提にしながらお尋ねするのでありますが、確かに新人の研修は不可欠でありますけれども教員について特に初任者研修法律によって制度化するというのはどういう理由があるのか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
  142. 加戸守行

    加戸政府委員 研修は多様なものがございますけれども教育公務員特例法第十九条第一項に規定がございますように、教員はその職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならないという一般的な研修に対する責務が規定されておりまして、これは他の職種についてはございません規定であります。  それは何と申しましても、学校教員がそれぞれ教壇に立ちまして、全人格的な触れ合いを通じて児童生徒指導していく、そういった重要な職務であることにかんがみまして、みずからも勉強を常に絶えずしていただくと同時に、それは自分のしたい研修であると同時に、例えば基本的に必要な形で行政側によって提供された研修を受けるということも含めまして、研修を行う責務を規定したわけでございます。  これは抽象的な規定でございますので、この規定のみによりまして、それぞれの個人の主観的な判断によってこういう研修をする、しないということがあっては困るわけでございます。例えば教員の場合、特に新任教員につきましては、自分が自立して一本立ちして可能な限り円滑な教育活動を展開していく素地をつくる重要な時期でございますので、全国の教員につきまして行政側の判断によりこの程度内容研修を実施し、それを受けてもらうという基本的な考え方、方針を立てていただき、その方針に基づいて研修を実施する、そういう研修の機会を提供するということが必要になってくるわけでございます。  その意味におきまして、今回提案を申し上げておりますこの初任者研修制度と申しますのは、新任教員採用された後に、一年間にわたります例えば指導教員による指導あるいは校外研修等によりまして、教員としてのステップを踏み出す一年間にわたりまして、基礎的なあるいは実践的な研修を受けていただくことを行政側の判断として、方針として定めることを義務づけ、かつ、行政側の義務づけられました任命権者におきます研修指導教員が受けていただくことによって、より今後の教育活動を展開する貴重な素地を培っていただく、そんな視点からこのような法案を提案させていただいている次第でございます。
  143. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この初任者研修については、昨年度から、六十二年度から試行をやられているようであります。この成果というものを、私もいろいろな報道機関の出版物等を通じて読みましたりいろいろお聞きはしておりますが、この試行を一年間行ってみた成果、これは文部省としてどういうふうな認識をなさり、受けとめをされているのか。よかった点、悪かった点、また他の同じ教員でも対象教員とならなかった方々、地域によって同じところで研修を受けられた方、受けられなかった方、こういう方々に対する影響といいますか波及といいますか、どういうような感覚で受けとめられているのか、そういったことを調べられておれば、認識があればお答えをいただきたいし、またこれがやらなかった学校等にどういうふうな影響を今与えておるのか。一年間やった結果をひとつ総括して、認識した点をお答えいただきたいと思います。
  144. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十二年度におきましては、三十六の都府県指定都市におきまして、二千百四十一名の新任教員を対象として初任者研修の試行を実施させていただきました。試行におきましては、校内研修といたしまして指導教員による指導年間七十日程度校外研修として教育センター等における講義や、他の校種等の参観を年間三十五日程度ということで実施していただいたわけでございます。この日数につきましては都道府県によりまして若干の差はございますけれども、おおむねこういった基準に従ってやっていただいているわけでございますが、試行はいずれの県市におきましても順調に行われておりまして、特段の大きな問題は生じていないと考えているわけでございます。  現在、各都道府県指定都市教育委員会からの報告並びに試行対象教員あるいは指導教員あるいは試行対象教員の所属する校長先生方の意見をただいま集約中でございますが、現時点までのおよその感触として私ども把握していることを申し上げますと、各県市から寄せられました意見のおよそ共通しておりますことが、一つは、対象教員が自主的、意欲的に研修取り組み、そして資質能力の向上が著しいという意見が寄せられております。さらに第二点目といたしまして、この初任者研修の付随的な効果と申し上げると恐縮でございますが、学校全体としての計画的、組織的な研修指導体制が整備され、校内の活性化が図られた。第三点としまして、初任者を育てていこうとする雰囲気が教職員全体に醸成され、教員としての使命感の自覚や教員としてのあり方を考え一つの契機となったなどの意見が多いわけでございます。  それから問題点としまして、いろいろ私どもが気にしておりましたのは、一つは、例えば新任教員の負担の問題でございまして、この負担につきましてもただいま数字は集約中でございますけれども、寄せられました回答の多くを見てみますと、負担は感じていない、あるいは負担はあるけれども自分のためになると思って頑張っているという意見が圧倒的でございまして、大変負担であるという意見は数としては極めて少ないと私どもは今の状況を途中段階として認識いたしております。  さらに、子供との触れ合いの問題も気にいたしておりましたけれども、これも、確かに子供への影響は多少あるけれども児童生徒の方が先生の立場を理解してくれている。そういうことで、ある意味で、このような研修の結果として児童生徒との触れ合いが減ったために大変困るというような感じの意見というのは、そんなに多くないと私ども思っております。  正確には試行の結果を集約したいと思っておりますが、一般的に申し上げまして、問題点としてはいろいろございます。そういった問題点は、確かにこれからの本格実施に向けまして改善をすべき点あるいは改良すべき点多々あると思いますけれども、概括的な傾向としましては、非常にいい、好評であると、私どもちょっと自画自賛でございますが、感じておる段階でございます。  それから、初任者研修の試行の対象とならなかった教員の方からは、試行対象となった教員に対して、うらやましい、自分もこういうのを受けたかったとか、あるいは先輩教員の方からそれをうらやむ声等もいろいろございまして、大変だなというような感じではないというぐあいに私どもは思っておりますけれども、個々具体的な精査というのはこれからも必要でございましょうし、また、六十三年度の試行の状況もすべて踏まえた上での対応というのが必要になると考えております。
  145. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大まかにいいということなんでしょうが、大変いい方の話ばかり、若干問題点も一、二触れられてはおりましたが、いい方の話が多かったのでありますが、全国連合小学校長会の「初任者研修(試行)の実施状況に関する調査結果」というものがございまして、これはあるマスコミの報道の中にあったのですが、それを見ておりまして、なるほどこういう問題点もあるし、こういう考え方もあるなというふうに共感できる、これは検討に値するのではないかということが問題点として幾つか指摘をされておりました。そのことをお尋ねをしながら、文部省考え方をお聞きをいたしたいと思います。  まず、こういう意見があったのですね。実際一年間やってみて、その結果「初任者研修対象教員は定数外で配置し、初任者研修期間中は指導教員の担任学級の副担任の形で位置づけ、指導を受けさせる。そのうえで、研修が終わった二年目に、欠員が生じた学校へ定数内教員として赴任することにするのがよい」、こういう意見。さらには「学級担任をする前に、六カ月とか一年間研修期間とする体制がよい。いったん学級担任にしてからでは、児童や保護者などへの影響が大きい」、こういったような意見が述べられておったのでございますが、こういった点についてはどういうふうに考えていらっしゃるのかお尋ねをいたします。    〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  146. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま二つの御意見がございました。  一つは、いわゆる定数外として担任外とするというような御意見も出ていたようでございますけれども、このことにつきましては、初任者研修といたしましては、新任教員も教壇に立ち本来の教員としての活動をさせながら指導教員による指導、あるいは校外における研修を受けていただくという措置を講ずることの方が本来の教員が実地に即してまさに自分がその場で自分を磨いていくということになる、こういう観点からの現在の構想あるいは試行段階ではそのような形でスタートしているわけでございまして、そういう点から申し上げますと、この定数外、担任外ということになりますと、財政面からいいますと三万人の教員を増員しなければならないという一つ技術的な問題もございますし、それから実態的にもその場合には一種の見習い的な存在になってしまって、教壇に立って教えるという立場ではないという点の問題はいかがであろうかということで、あくまでも指導教員が影の形に添うがごとく指導申し上げることによって、新採教員がその研修を受ける間、初任者研修の間に一本立ちしていくプロセスを経ていくということが適当ではないかという考え方で、現在の施策を進めているところでございます。  それから第二の、学級担任を外したらどうかという御意見でございますが、これは地域によりまして学級担任を外しているケースもございますけれども、この試行の段階におきまして、文部省としましてはできる限り学級担任または教科科目の担任ということをガイドラインとしてお示ししたわけでございまして、そういったガイドラインを受けまして多くはそういう学級担任をしていただいていると思いますけれども、確かに学級担任を、例えば指導教員の方が学級担任であってその副担任にするというような運用も、それは弾力的にあり得る事柄でもございますし、その学校、地域の実情に応じまして、そういった運用の問題としては、主担任にするか副担任にするかというようなことは、それぞれの任命権者あるいは市町村の実情に応じて判断できる事柄ではないかということで、本格実施の場合にあくまでも学級担任を原則として求めることは文部省としてもしない方がいいではないかというような感じで、現在考えているところでございます。
  147. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 ちょっと財政の問題が出たのですが、確かに財政の問題というのは大切な大きな要素ではありますが、事教育に関する限りは、財政的に多少負担が多くなっても、いわゆる子供のための本筋に基づいた判断で試行なさるという方向をまず優先させるようにこれはやるべきであろう、こう思います。どうかすると、えてして、もう財政がだめだからいいことであってもやれないというようなことがありますが、そういうことではなくて、初任者研修を初め新しい試みの中で、子供のためにまた二十一世紀の日本のためにも、これはやらなければならぬという本筋がはっきりしておれば、私は潔く取り組むべきであろうと思います。  一応そういう御意見を申し上げておきまして、たくさん意見がございますので、次から次にお尋ねをいたします。  私もこれはおもしろい考え方だなと思っておるのですが、どういうお考えかお聞きしたいのです。それは「大学の単位修得を三年間で済ませ、あと一年をインターン制のような形で学校現場に配置して研修を積ませるなど、大学教育課程教員免許制度との関連を考えるべきだ」、これは養成にかかわることかもわかりませんが、それを初任者研修と一緒にしたような考え方意見のようでありまして、おもしろい考え方だなというふうに思っておりますが、これについては当局ではどういうふうにお考えでございましょうか。
  148. 加戸守行

    加戸政府委員 一つの御意見であり得ると思います。ただ、教員資質能力と申しますのは、養成採用研修の過程を通して次第に向上していくものでございまして、大学養成教育学校現場におきます研修との関連性を考慮することが重要なことだと思っております。しかし、養成教育には単に教員としての実践的指導力向上だけではございませんで、幅広い人間性の育成や豊かな教養の体得など、多方面にわたりまして教員資質能力の基礎を身につけることが求められているわけでございます。  そこで、技術的な問題を申し上げて恐縮でございますけれども、私ども直観的に感じます一つの問題が、毎年教員免許状を取得されている方、現在の制度の上でございますが、例えば六十二年度におきますと、実数といたしまして十三万八千人の方々教員免許を取得されております。ということは、この十三万八千人の方が年間に、小学校の場合でございますと一カ月、中学校高等学校教員でございますと二週間の教育実習を受けられているわけでございますから、仮定の話でございますが、志望者が変わらないとすれば、この方々が二週間や一カ月ではなくて十二カ月間学校に、しかも十何万人という方たちが配置された場合には、学校としては恐らく実習の体をなさないような状況になってくるのではないか、学校側の物すごい負担といいますか、学校教育に対する影響も極めて大きいのではないかという問題を一つ直観的に感ずるわけでございます。  それから、大学教育の立場として、三年で基礎教育といいますか理論教育はよくて、あと一年間教育実習的な考え方で、大学教育としてそれで成り立ち得るかどうかという問題もあると思います。その点は諸外国におきましても教員養成は四年制または五年制でございまして、例えば欧米先進諸国におきましても四年間大学教育を受けた後にさらに一年とか一年半の教員に必要な課程を履修するとか、あるいは西ドイツのような試補制度のような形もございますけれども、そういう意味では、諸外国の教員養成のレベルと比べまして日本がそういったレベルの低下を来すおそれはないのか等の問題もございますし、慎重に検討しなければならない事柄ではないか、そういう意味では、今申し上げた大学養成教育学校現場における研修との相互関連においてこの問題を一つの参考意見として私ども考えさせていただきたいと思います。
  149. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、やはり小学校長さん方の御意見で、個々に意見を述べた中で問題点の指摘があっておるのですが、それに対する対応、どういうふうにお考えになるのかお尋ねしたいと思います。  まず「試行対象教員が担任する学級の経営上の問題点」として幾つか指摘があっております。一つは「校外に出る研修が多く、試行対象教員の負担が多すぎる。児童と落ち着いて接触させたい。」これは先ほど局長もちょっと触れておられたと思いますけれども。次は「学年初めの研修出張は、特に学級経営に支障をもたらす。」それから「指導教員や補教に行くベテラン教員との指導技術の差に、児童が戸惑っている。」「学級担任をさせて、長期の研修を行うのには無理はないか。特に小学校の場合、児童との触れ合いを最も大切にしなければならない点で、学級経営上に問題がある。」、「過密な研修計画のため、教師としての自主性、特に自己研修姿勢が損なわれないかと心配。」である、こういった意見がございますが、これについてはどういうふうにお考えでございましょうか。
  150. 加戸守行

    加戸政府委員 研修のために学校行事との兼ね合いの問題が第一点としてございました。校外研修につきましては、確かにそのような問題が生ずる可能性が十分あるわけでございます。今後改善を要する事柄でございますけれども、試行段階におきましてもいろいろな工夫がされておりまして、例えば校外研修につきましては学年始めや長期休業期間にウエートを置いてそちらを活用するというケースもございますし、それから校外研修が予定されている曜日には、これは特に中学校高等学校のケースでございますが、初任者授業担当時間を組まないように時間割り編成を工夫する、あるいは小学校の場合でございますと専科教員による授業時数にするというような、そういった調整もしあるいは学校行事との調整を図って、児童生徒への影響を極力少なくするような方向で努力されておるわけでございまして、これは試行の二年間の成果を踏まえて本格実施のときにも相当御努力をいただけることと思います。  そういう意味では、第二点の問題の、今申し上げた学年始めは、いろいろなスタートの時期でございますので、その時期はいろいろな、教員そのものとして自分が初めて学級経営、学校運営に携わるわけでございますから、研修のウエートは、学年始め、特に四月の時点では少し軽減した方がいいのじゃないかと私ども思っておりますし、本格実施の際に意を払うべき事柄であろうと思っております。  それから、第三点のベテラン教員指導との差があるということは、これは事実でございまして、初任者校外研修を受けるときには指導教員が穴埋めの代替授業をするわけでございますけれども、これはさすがに長年の経験豊富な方でございますので、その差があることによります児童生徒の戸惑いがあることは当然だと思うわけでございます。しかしながら、それは指導を受けました教員がその初任者研修の期間中にだんだんと向上していってベテラン教員との格差を縮める努力はされることでございますし、途中のプロセスのこととして避けられないことではないかなと思っております。  それから第四点としまして、学級担任を外した方が学級経営の困難性を過大にしなくてよろしいのじゃないかという御意見でございますけれども、学級担任の問題につきましては、ちょっと先ほどもお答え申し上げましたけれども、学級担任を必ず要求するということではなくて考え方の問題でございますが、学級担任としてベテラン教員が後ろから支えるか、あるいは副担任として見習わせておいてそのうち学級担任にするか、その辺は学校の職員構成なり、その学校の感覚、判断によって対応できる事柄であろうと思っております。  それから第五点目が、過密ダイヤで自主性が損なわれるのではないかという御意見でございまして、過密ダイヤの点につきましては、例えばこれは研修内容のミニマムエッセンシャルズを探り出しまして、そういった必要最小限のものに抑えていくという努力も必要でございましょうし、また研修内容の精選といった点で今後大きな課題と私ども考えておるわけでございます。何でもかんでも詰め込めばいいのではなくて、本当に新任教員が一本立ちしていくために必要なものという視点から、研修内容というのは年々改善を加えていくべき事柄であろうと思います。ただ、自主性の問題につきましては、これはまさに指導に当たられます指導教員との関係の問題でございまして、私ども試行段階におきましても教員の自主性を生かすように、例えば新任教員がみずからテーマを選んで、自分が課題を見つけてその課題について指導教員指導を仰ぐようにするとか、あるいは新任教員の個性に応じまして、その立場立場を考えながら指導教員が適切な指導を行っていただくようにいろいろ御説明申し上げているところでもございますし、指導教員新任教員に対する対応の仕方によりまして自主性あるいは個性がどのように伸ばせるかということが非常に大きな問題だと思いますし、今後とも意を払うべき事柄だと思っております。
  151. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 続いてお尋ねをいたします。  「教育センター等での研修実施上の問題点」として、これも幾つか挙がっております。一つは、「特に年度初め、できれば一学期間は校外に出る研修は少なくしたい。児童となじみ、人間関係をつくる大切な時期であるから。」多少さっきと重複はしているようでございますが、こういう意見もあります。また「洋上研修は夏季休業中などに集中的に実施してほしい。」それから「在勤校での研修内容教育センター等での研修内容との調整を図ることが大切。」である。何か場合によったら重複したりなんかすることもあるというふうにも聞いておりますが、こういった点についての指摘もあっております。こういった点についての対応をどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  152. 加戸守行

    加戸政府委員 私も文部省に入省しましたときに新任の職員研修を受けたわけでございますが、朝から晩まで過密ダイヤでばっとやられますと余り記憶に残ることはないという点もございます。そういった点では、教員に就職した直後におきまして過密ダイヤで詰め込むということは、かえってそれだけ研修を受けてもらおうと思ったことが逆効果になりかねない面もございますし、一般的な反省としましては、学年始め、就職した直後の時点におきます研修は比較的緩やかなものにしていき、だんだんその密度を高めていくという工夫が必要であろうと思いまして、その御意見は、一学期はやめるという意味ではございませんが、学年始めの時点におきます対応については考慮する余地があろうかと思っております。  洋上研修の問題につきましては、これは私どもの都合を申し上げて大変恐縮でございますが、予算要求をいたしましたときには、果たして予算がとれるのかどうか、要求した隻数が確保できるのかどうかという不安がございました。船の予約には予約料が要るわけでございますが、国の予算には予約した後のキャンセル料を計上いたしておりませんので、したがいまして、予算がつきましてから船の手配をした時点におきましては、夏休みは一隻しか確保できなかったために、十一月に二隻目を実施せざるを得なかったという状況がございまして、六十三年度におきましては、手回しよくではございませんが、すべて夏休みに実施をするという、夏季休業期間中に三そうの手配ができたわけでございます。そういった点では今の問題は解消されると思いますが、今後本格実施に向けて、例えば洋上研修の隻数をふやすといたしました場合に、それが夏休み等で十分確保できるかどうか、それは今後洋上研修を拡大した場合にも問題は同じように残る可能性はあると思いますけれども、でき得べくんば夏季休業期間中の洋上研修にしたいと思っております。  第三点の校内研修教育センターとにおきます研修内容が重複しているではないかという御意見は、先ほど申し上げました試行対象教員等への意見調査によりましても、そういった御意見はかなりいろいろ出ておるわけでございますので、ここは配慮すべき事柄でございまして、いわゆる校内研修とセンター研修との間に相互有機的な関連性を持つ必要があるわけでございます。そういう意味では、教育センターにおける研修のスケジュール、内容がどのようになっているのかということを踏まえながら校内研修も行われる必要がございますし、また逆に、センター側におきましても、一学年の学校経営、学級経営がどのような形で、進度で進んでいくのかという状況を踏まえながらセンター研修内容のあり方につきましての考慮をする必要があろうかと思います。こういった点は、貴重な御意見として今後の本格実施におきます私どもの対応すべき事柄であろうと認識している次第でございます。
  153. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、「学校運営上の問題点」として、これも多数意見が寄せられています。  「初任者研修を最優先するため、校内で行う研修の時間確保が困難になる。」「指導時間を予定通りとることが困難で、時間外の指導になることが多い。」「試行対象教員研修出張と学校行事との重なりを避けるための行事日程の調整が難しい。」「専科教員を副担任として出張時の指導を行っているが、校外研修三十五日の影響は他の教員にも及んでいる。」こういう学校運営上の問題点について指摘があっております。これについて御意見をお聞きしたいと思います。
  154. 加戸守行

    加戸政府委員 確かに昭和六十二年度の試行は鳴り物入りで始めたわけでございまして、各都道府県、指定都市におきましても大変精力的、意欲的な取り組みでありました。そのために、学校としても意識過剰の点はあったと思います。したがいまして、この初任者研修の試行を成功させるためにということで、こういった初任者研修を中心、最優先といった形になった面もなきにしもあらずと思います。しかしながら、これからの問題としましては、初任者研修のみならず、教職員の例えばライフステージに応じた研修とかあるいは校内のすべての研修、いろいろ相互有機的に全部行われる必要があるわけでございまして、教員がみんな切磋琢磨をしていく中にありまして、ただ一番レベルが低いと申し上げては恐縮でございますけれども、未熟な段階新任教員でございますので、どうしても学校としてはそれにウエートをかける必要が出てくるであろうと思うわけでございます。  それから、指導時間の問題としましては、確かに授業時間の組み方あるいは校内の職員体制のあり方、あるいは教職員配置数の問題等、相当有機的関連の問題があるので、その他副次的要因もあり得ると思いますけれども、そういった教育諸条件の整備等によって今後徐々に解決をしていける事柄ではないかと思っております。  それから、行事日程との調整の問題はそのとおりでございまして、学校行事自体が今のところ非常に多い状況にございますので、例えば新任教員研修学校行事との調整という問題は一つの大きな課題であろうかと思います。その場合に学校行事にどうしても参加する必要があるか、あるいは初任者研修の方を優先するのか、その辺の相互のウエートの比較の問題もございましょうし、日程調整ということはそんなに大きな困難な問題ではないと私は思います。そういった調整は、いろいろ工夫されればある程度の解決はなし得る事柄ではないかと思っております。  それから、三十五日間の校外研修のために他の教員への影響が大きいという意見でございますけれども、これは基本的に、校外研修のための問題としては、先ほど申し上げたように例えばある程度の休業期間中にまとめて実施をするという期間、実施の日程の問題等もございますし、また、それぞれそういった校外研修に出るための代替教員の措置につきましては、定数上あるいは非常勤講師等の措置もしておるわけでございますので、私は、確かに他の教員への影響がある程度は避けられないと思いますけれども新任教員を温かく包み、そして全校の教員によって新任教員意欲を盛り上げていこう、そして初任者研修の実を上げようという空気が校内に出ること、そのことを期待もしているわけでございまして、全くの影響を避けるというわけにはいかないと思いますけれども、その影響が多くあっていいということではございませんので、その辺の工夫も今後の一つの課題として受けとめさせていただきたいと思います。
  155. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に指摘されているのは、指導教員指導業務上の問題点が幾つか指摘があっております。  「指導教員自分の学級を担任しながら試行対象教員指導をすることは大きな負担になる。学校行事や試行対象教員の学級事務の処理などが優先されるので、指導時間を計画的にとることが難しい。指導時間を勤務時間内にとるのが難しく、どうしても勤務時間外になりがちである。指導教員は職員会議校内研修会などに出てもらう必要があるが、非常勤講師ではそこが問題。」これも先ほどのいろいろな質問の中でダブっている向きも多少あるようですが、こういう指摘についてどういうふうにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。
  156. 加戸守行

    加戸政府委員 確かに、指導教員にはいろいろと御負担をおかけしていることと思うわけでございます。特に指導教員の場合、自分のクラスを担任した上で指導教員という形になりますればかなりな負担になるであろうと思います。そういった点では、今の校内の校務分掌のあり方としてそういう改善ができるかどうかという問題も、もちろん学校におきます職員構成との関連もあるわけでございますが、工夫を要するところでもあろうかと思います。  しかしながら、一般的に申し上げまして、私どもは、初任者研修におきます指導教員の役割としては、新任者に対する研修指導助言を行いますとともにみずからも磨くという意味がまだもう一つ側面的にあるわけでございまして、中国の古いことわざでも「教学相長ず」と申しまして、教えることは学ぶこと、つまり新任教員に教えることは指導教員にとってもみずからを磨くということでもございますし、そういった点で、だからといって負担が多くていいということではございませんが、負担の軽減緩和につきましては、校内の協力体制をとっていただければありがたいなと思うわけでございます。  ただ、初任者研修の試行の場合は、いわゆる試行の結果として今後の改善策を探るためでございましたために、教育委員会の方から指導教員に対して相当な量の研修内容の報告等を求めていることと思います。そういった点では、試行段階におきましては指導教員はいろいろな報告、レポートを作成したりするというための過大な負担がかかっていると思いますけれども、本格実施になりますればそのような詳細、膨大なデータをとるための報告は必要なくなるわけでございますので、本格実施段階は試行段階よりは指導教員への負担は大幅に緩和されるであろうと予想いたしております。  それから、非常勤講師が指導教員になることについて、例えば職員会議等に出られないのでいろいろ問題があるということは確かにそのとおりでございまして、学校運営流れというものは指導教員は知っておく必要があるわけでございまして、ある意味では新任教員と不離一体の関係で温かく見守る、そのためには内容を十分承知している必要があるわけでございますから、それは学校運営体制のあり方として、職員会議には非常勤講師は参加させないということについて私はいかがなものかなという感じがしないわけではございません。ただ、それは職員会議のメンバーということではなくてオブザーバーというような意味で、学校流れがどうなっているのかということは当然指導教員にも知っておいていただきたい事柄ではございます。
  157. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、予算措置についての問題点が挙げられております。  一つは、「試行対象教員の出張回数が多く、一般旅費を圧迫している。旅費の加配か別枠措置が必要ではないか。」それから、「指導教員指導業務は労力、時間の上からも大変な努力を要する。主任手当と同様、指導業務についての手当を配慮してほしい。」こういうようなことが予算措置についての問題点として指摘されておりますが、これについての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  158. 加戸守行

    加戸政府委員 新任教員の出張回数の多いのは当然に校外研修、場合によりまして宿泊研修、さらには洋上研修というような校外におきますいろいろな研修の機会が多いことに由来するものでございます。  文部省といたしましては、初任者研修の試行段階におきまして、これらの校外研修に要する旅費につきましては二分の一の国庫補助を行っているわけでございまして、結果的には、その裏打ちとなります二分の一の措置が都道府県において十分に講じられなかったことに原因するのではないかという感じがいたしますが、都道府県に対しましてもその辺をよくお願い申し上げてみたいと思います。  なお、本格実施になりました段階におきましても、試行段階と同じように、私どもはこの初任者研修を受ける教員校外研修に要する旅費につきましては国庫補助の対象とするように最大の努力をいたしてまいりたいと思っております。このことによって一般旅費への影響を避けるように努めたいと思っております。  それから、指導教員の労務過多という問題でございまして、その過大な負担のために一種の手当を考慮してよろしいのではないかという御意見等もございます。これは、指導教員の勤務の実態が本格実施以降どのようになるのかという状況も踏まえ、かつ、都道府県教育委員会、指定都市教育委員会あるいは学校長会等の御意見も踏まえまして、その手当の問題については十分考慮する必要があると考えております。
  159. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 校長会での最後に、人事上の問題点というのが挙げられております。  これもお尋ねしたいと思いますが、「試行対象教員の三人配置校は学校運営上の問題が多い。三人配置は避けるべきではないか。」それから、「増置教員は四月一日付で配置をしてほしい。試行対象教員二人につき一人の増置教員では同一日の研修の場合どうしても補教が困難である。非常勤講師でよいから加配が必要ではないか。」こういったことが意見として挙げられておりますが、これについてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  160. 加戸守行

    加戸政府委員 現在の試行段階におきましては、一人配置校の場合には非常勤講師一名、新任教員二人配置校または三人配置校につきましては教職員定数一名という考え方で予算の積算を行っておるわけでございまして、そのことによる問題と思うのでございます。  確かに、三人配置校といいますものは学校運営上いろいろな問題が生ずると思います。しかしながら、新任教員のこれは人事配置の問題でございまして、要するにその人事異動計画の中でどのような形で穴埋めをしていくか、その関係上、ある学校においては三人、四人という新任教員の配置、特に大規模校については生じ得るケースだと思います。そういった点では、これからの人事行政の問題でございますけれども人員配置につきましての都道府県あるいは指定都市教育委員会の可能な限りの努力というものも必要になるわけでございましょうし、一面におきまして、三人配置校に対する文部省側の国としての配慮の姿勢というのも必要になるだろうと思います。両面におきましての、今後の努力すべき課題であろうと思っております。  それから、増置教員は四月一日付で配置してほしいとの御意見でございますが、試行段階におきましては、試行対象学校あるいは試行対象教員の確定の時期の問題等もございまして、いわゆる加配教員は初めから予定しておくということができないわけでございまして、四月一日付の配置に間に合わなかった事例はあり得ることと思いますし、また実際にあったようでございますけれども、本格実施になりますれば、およその段階で退職教員数と定数等が確定すれば新採教員の見通しが立つわけでございますから、そういう意味では、人事配置面におきまして具体的な、どのような形でどの学校新任教員が配置されるという状況というのはある程度事前段階では確定できるわけでございますので、今申し上げました加配教員が四月一日付ですぐ配置できるような体制に努力をしていきたいと思っております。  それから、試行対象教員二人について一人の増置教員の場合では、同一日の研修の場合どうしても補教が困難ということでございます。御指摘のように、教員定数のほかに、今先生おっしゃいましたような非常勤講師でも加配するということは望ましいことではございますけれども、二人配置校について見ますと、通常は中規模以上の学校でございますから、校内教員の協同的な体制で対応するということは、私は今の教員の定数配置状況から見ればそんなに困難なことではないのじゃないかなと思っておりますけれども、今後いろいろな問題点によりましては工夫すべき余地はある事柄だと認識いたしております。
  161. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 校長会におけるいろいろな指摘事項というものを細かくお尋ねを申し上げたわけでございますが、それぞれこれはいろいろと正していくといいますか、手直しをすべきものはしながら、いい形で実際には取り組みたいというふうな御意向が一貫してうかがわれたと思いますが、実際に実施する際には、こういう試行での経験された中で問題点はぜひ解消しながら、よりよき効果が発揮できるような運営をこれはぜひやっていただきたい。もう一年試行をやるようでございますが、ここらあたりでも手直しをして、また、こういう考え方でやった方がいいのではないかと思われるようなことがあればどしどしそれを実施の中で昇華させ、よりよい方向にひとつ持っていっていただきたい、こういうふうに思います。  次に、初任者研修制度においての指導教員による指導、先ほどからこれはいろいろと言われておることでございますが、このねらいとするところは一体どういうところにあるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  162. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修におきましては、いわゆる経験豊かな教員が、みずから教員生活の多年の経験の中で得ましたものを、初任者に対しまして、その初任者それぞれの個々の実態に応じまして、その立場に立った系統的あるいは組織的な時宜を得た指導を行うということが初任者の力量を育て上げるのに非常に役立つ、また効果的であると考えておるわけでございまして、そういう意味におきまして指導教員による指導という形で、私どもマン・ツー・マンと呼んでおりますけれども、その新任者に対し、指導教員が影の形に添うがごとく温かい目で見守りながら適切なアドバイスを与えていくということによりまして、だんだん段階を経て新任教員が自立をしていくというような方向へ持っていく、その誘導をしていただくということを考えているわけでございます。  そのことは、必ずしも指導教員自分考えを押しつけるということではなくて、新任者、初任者が持っておりますその個性を生かし、本人の適性を伸ばしていくという観点からの御努力をいただくように、指導教員につきましてもそういった観点からの指導が十分行えるような方法考えてまいりたいと思っております。
  163. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 一応考え方としてはお聞きいたしましたが、具体的にどういうような指導をしていくのかという内容、どういう形で指導していくのか、この点についてひとつお尋ねをいたします。
  164. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修は一年間にわたるわけでございまして、そういう意味では学校の一年間流れの中でそれぞれの対応すべき事柄は違ってくるわけでございますが、個々具体的な事例に即して、現地で実地の場で指導をしていただくということになるわけでございます。  具体的な内容といたしましては、基本的には担任の教科科目指導力を高めていただく、そのためには指導教員自分の持てるノーハウを提供してあげるということでございますし、それからこれは非常に新任教員の苦手な分野でもございますが、個々の児童生徒の適性、能力等についての理解を深めることでございまして、これは長年の経験に培われた先輩教員としての過去の体験がまさにその事例として生かせる事柄でもございますし、新任教員に対する指導としては非常に役立つ事柄だと思っております。それから、学級経営等の力量を高めることなどを考えているわけでございます。  それで、具体的な事例で申し上げますと、そのほかに、例えば授業を開始します前の指導案の作成について、自分ならこういうぐあいにつくっていたけれどもというようなアドバイスは非常に有益でもございましょうし、学習指導あるいは教材研究、学級経営とか児童生徒理解、あるいは生徒指導、校務分掌等すべて、万般にわたりましてそれぞれ個に即した具体的な指導を行うことを考えているわけでございます。  ただ、一年間にわたります研修でございますから、今申し上げた初任者に対する指導が、言うなれば連続して指導が行われるという点では、断片的な指導ではなくて一年間を見通してそのステップ、ステップにおきます指導を行っていただく必要があるわけでございます。そういう考え方で、いわゆる連続性を考慮いたしまして、基本的には一週間に二日程度というような目安でのガイドラインをお示ししているところでございます。
  165. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは本会議場でも御質問を申し上げた内容でございますが、指導教員による指導と言っても、やはり指導教員一人で初任者指導というものはなかなか大変なところがあるだろうと思います。そういう意味で他の教員の協力も必要であろう。そういう意味では、校内において学校長を初め、ひとつ力を合わせてこの指導教員を中核としながら指導体制をつくって、指導教員が第一義的に指導するという体制づくりが大切であろうと思います。そしてバックアップした中で先輩アドバイスをそれぞれいい形で行っていく、こういう形が一番いいのではないか、こういうふうに思っておりますが、こういう点についていかがでございましょうか。
  166. 加戸守行

    加戸政府委員 御意見として、例えば教員集団の中で教員は育つ、したがって指導教員ということを特定しないで集団体制の中で教員指導を行えばいいじゃないかという御意見も一部には私ども聞いております。しかしながら、集団指導体制と申しますのは、全員が指導するということはとりもなおさず全員が責任を持っては指導しないということになるわけでございます。これはいろいろな現象を見てもそうでございますけれども、全員が責任を持ってやろうということでございましたら、だれかがやるだろうということでだれもやっていなかったということは、グループの中でよくあり得る事柄でございます。  私どもは、初任者研修制度につきましては、学校内で指導教員を特定いたしまして、経験豊かな指導教員が第一義的に初任者研修に当たるということによりまして、それぞれの初任者成長過程に即し、また初任者の個性等に応じた指導を系統的に行うことを期待しているわけでございまして、そのことによって教員個々の力量向上期待しているわけでございます。しかし、もとより、その初任者指導にあたりましては、学校全体としての協同的な指導体制を整備する必要があるわけでございまして、今申し上げた指導の中核になる方を明確にして責任ある指導を行っていただくとともに、御指摘ございましたように、指導教員が第一義的にその指導に当たるとともに、全体の校内の協力によりまして盛り上げていくということは当然必要なことでございますし、指導教員だけが浮いてしまう、その人だけに任せっきりになるということがあってはならないと思います。また、ちなみに、今回の試行におきましても、各県あるいは各学校からの報告をとってみましても、指導教員のみが指導しているという事例はほとんどございませんで、校内の協力指導体制がとられるということによりまして学校全体の活性化も図られているという報告が多いわけでございまして、私はやはり、初任者段階についての校内体制というのは、自分の後輩を盛り上げようという気持ち学校先生にございますならば、必ずや校内指導体制はできるものと思っております。
  167. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私も、今お答えがあったことは大切なことだと思っております。質問の中で第一義的にと申し上げたのは、指導教員は、自分がしっかりと責任を持つということを前提としなければいけないだろう、いろいろ試行があった結果のものをあれこれと私も読ませてもらいましたけれども、その中で集団体制がいいというようなことを書かれたのもございましたけれども経験の上からいくと、私どもも、それは確かに責任を持たない無責任体制になる可能性が非常に強いような気もするわけでございまして、今言ったような方向で、いわば両々相まってしっかりと研修体制をつくっていくということが大切だろうと思います。  また、地元で携わった人にも私はいろいろ聞いてみましたけれども、やはり指導教員としても自分自身が大変勉強になるということを言っておりました。やはりある程度漠然といろいろなことは積み重ねてきたつもりだけれども、いざ担当して責任を持って教えようということになると、どうしてももう一遍自分のものを整理してきちっとした形でやらなければいけない、これは自分にとっても確かに負担としてはあったけれども、いい体験であったというようなことをお聞きしたこともございます。こういったことを含めながら、ひとついい形で実行できるように進めていただきたいと思います。  次に移らせていただきまして、教育センター等校外における研修につきましては、初任者学校をあげるということについて批判的な意見があるわけでございますけれども、この校外研修はどういうふうに効果があり実効あるものであるのかというお考えなのか、この点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  168. 加戸守行

    加戸政府委員 現在試行いたしております初任者研修もそうでございますが、本格実施の際も同様に私ども考えておりますのは、指導教員による指導校外教育センター等におきます研修を二つの大きな柱と考えておるわけでございまして、教育センター等におきます研修は、初任者の所属します学校の枠を超えて多くの教員とみずからの実践について語り合いまして、また、所属校では得られない体験を通して初任者指導力を伸ばす契機となるということで、今後の教育実践に自信を深める効果を私ども期待しているわけでございます。他方、初任者校外研修に出向くことによりまして、その担任する学級や教科科目教育活動等に影響を与えるという問題もございます。そういった点で、実施に当たりましては、初任者が赴任校に赴任します前とか、あるいは夏季休業期間中にまとめて校外研修を実施するとか、あるいは児童生徒教育に対します影響を十分に配慮しながら指導研修の効果を上げるような、そういう日程的な意味の工夫というのが当然必要になる事柄でございますし、また本格実施に当たりまして、試行の結果を踏まえながら検討すべき大きな問題の一つであると理解をいたしております。
  169. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 校外のセンターにおける研修の具体的内容ですね、こういったものは大体どういうふうな形で行われてきておるのか、またどういうお考えでいらっしゃるのか、この点についても少し突っ込んでお考えを承りたいと思います。
  170. 加戸守行

    加戸政府委員 校外研修につきましては、先ほど申し上げました校内研修と相互に有機的な関連を持たせながら行う必要があるわけでございまして、初任者に対しましては、教育についての理解を深めさせるとともに、さまざまな体験を通して幅広い知見を得させるということを目的としているわけでございます。  その具体的な内容といたしましては、例えば、主として教育センター等研修施設において行います当面する教育問題あるいは教員としての心構え、学習指導、学級経営、児童生徒理解生徒指導公務員としての服務等々に関します講義・演習等を行いますとともに、例えば近隣の学校におきます授業参観であるとか、初任者の研究授業へ参加していただくとか、あるいは養護学校等の他の校種の参観あるいは青年の家等の青少年教育施設の参観、それから教護院等の児童福祉施設の参観、さらには民間企業の参観といったいろいろな分野におきます幅広い体験、さらに、野外文化活動や奉仕活動を体験していただく、こういったさまざまな組み合わせを考えているわけでございまして、このほかにも、校外研修一環としましては、いわゆる合宿的な宿泊研修もございますし、それから文部省が都道府県、指定都市と協同して開催いたします船によります洋上研修というものもございます。こういった教育センター等校外における研修につきましては、今申し上げたとおり校内研修との有機的な関連を持たせながら行うわけでございますが、私どもの目安としては年間三十五日程度をガイドラインとしてお示ししたわけでございますが、この点につきましては、都道府県段階それぞれにおきましても、三十五日を実施されているところ、あるいは三十日の実施をされているところ、県によりましては二十五日で終わっているところ等々もございます。それは各県の実情あるいは研修体制の整備の問題とも関連する事柄でございますが、今のような盛りだくさんの内容では、どのようなものが初任者にとって身につき、どのようなものがそれほど役に立たないのか、そういった精選は図る必要がございますけれども一般的に申し上げますれば、学校等の校内授業の問題はございますけれども、幅広い体験、いろいろな体験を積むということは、とかく閉鎖的でございます学校社会の中にだけ生きるということではなくて、いろいろな分野を知るということは新任教員にとって大いに役立つことではないかと私は思っておりますし、このような校外におきます教育センター等研修に力を入れてまいりたいと思っておるところでございます。
  171. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今のお答えでいろいろ多角的にやるという方向はわかるのですが、もう一つちょっとわかりにくいのは、センターにはいろいろなメニューを置いて、そして各自で自由にいろいろ選択できるという形をとる方がいいのではないか。その結果が今言ったような形であれば結構なわけでありますが、やはりそういった形にしておきませんと、一つには、何か画一的にやられるとかお仕着せでやられるというような批判もないわけではありませんし、特に校外研修についてはそこらあたりの考え方が必要であろうと思いますが、この件についてはいかがでございましょう。
  172. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修について御提言をいただきました教育職員養成審議会の答申の中におきましても、こういった教育センター等におきます研修におきましては、多くのテーマを設定いたしまして、新任教員がみずからのテーマを選択して研修が行われるような工夫をすべきであるという提言もございます。もちろんこれは、今試行段階でございまして、一遍にそのような形にはいかないと思いますけれども、そのためには多様なテーマの選択ができるようなそれぞれの講師陣なりグループ分けなりいろいろな問題はあると思いますけれども、これからの校外研修における内容を高め、かつ、今申し上げたような、本人が問題意識を感じている、課題意識を持っているものについて取り組んでいただくということは、当然多様性の問題としてこれから考えていかなければならぬことでございますし、また都道府県に対してもそのような指導をしてまいりたいと思います。また、現にそういう形で、ある程度の多様な選択ができるようなコースを設けている県もございますけれども、非常に少のうございますので、これを五十七都道府県指定都市に広めていくような努力を文部省としても今後考えているところでございます。
  173. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 教育センター等校外研修初任者学校をあけることになるわけですが、それによって児童生徒教育に支障を来すことがないような配慮は当然必要であると思いますけれども、このために具体的にはどういう措置をおとりになるのか、お聞きをいたしたいと思います。
  174. 加戸守行

    加戸政府委員 一つ方法としましては、先ほど申し上げましたように、校外研修の期間を例えば学年初めや夏季休業期間中等の長期休業期間にまとめてある程度実施をしたり、あるいは校外研修が予定されている日におきましては、特に中高等学校の場合は可能でございますけれども初任者授業担当時間を組まないような工夫とか、そういった児童生徒に対する影響は与えないような工夫というのが一つございます。と同時に、学校をあげる場合につきましては、初任者が担当します学級とかあるいは教科科目授業を離れる、そういう事柄につきましては指導教員がこの代替授業を行うとか、あるいは教頭先生、専科教員等のほかの教員がかわって授業を行うということによりまして、初任者の担当授業について自習とかあるいは合併授業にならぬように学校で配慮、工夫をする必要があると考えておるわけでございます。そのためにも、教員定数を措置したり非常勤講師を配置したりするという条件整備が必要になるわけでございますから、国のサイドにおきましてもそういった努力を重ねますとともに、現場におきますそういったいろいろな工夫、努力というものをお願いしたいと思っておるわけでございます。
  175. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これは、本格実施をいたしますときにも、指導教員による指導の日数、それから教育センター等校外研修の日数については、国としてそれぞれ七十日程度、三十五日程度というふうに基準を示してあるわけでございますが、そういう場合に、これは本会議でもお尋ねをしたのでございますが、七十日、三十五日研修しなければならないということを絶対これは守らせるというようなことでなくて、各都道府県の学校の実情に応じて弾力的に日数の調整を図るということをこれは認めてやるべきではないか、いわばその七十日程度、三十五日程度という程度の方に重点を置いて弾力的に考えるというふうにすべきであると思いますが、これについてお答えをいただきたいと思います。
  176. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修制度は、初任者資質能力の向上を図るために極めて重要なものでございますから、いわゆる全国の教育の水準確保という観点からは、ある意味でもこの初任者研修につきましても一定の水準の確保、つまり初任者研修という事柄に関します一定の水準の確保が必要であると考えておるわけでございます。そのためには、研修方法研修日数等基本的な事項につきましては国の基準を示す必要があると思っているわけでございまして、今先生おっしゃいましたように、一応校内研修七十日程度校外研修三十五日程度という基準を定めております。  この基準の考え方は、一年間におきます授業の週が三十五週ということを前提といたしまして、校内研修七十日だと、三十五週ございます毎週二日、指導教員による指導をする場合に、一年間流れの中で、それぞれ移り変わりにおきまして、あるいはクラスの進度に応じて、連続性を保ちながら指導の効果を上げていくには毎週二日程度というのが適当ではないかという判断、並びに校外研修につきましては、学校をあけるとしても週一日が限度であろうという観点から、三十五週毎週一日、年間三十五日程度という基準をつくったわけでございます。  そしてこれは、このことと付随的に出てくる効果の問題もございますが、実はこれは、今申し上げました七十日、三十五日、つまり週一日あるいは週二日ということを前提といたしまして、例えば代替の指導教員の定数をカウントする、あるいは非常勤講師の措置をどうするというような予算上の積算の基礎にもなっているわけでございます。  しかしながら、今の研修日数につきましては、現在行われております初任者研修の執行の状況や結果を踏まえて本格実施の際は判断すべきでございますから、またこの場合、当然地域の実情や学校の実態に応じてのある程度の弾力的な取り扱いは認めていく必要があるわけでございます。そういった点では、大幅に日数を短縮しますと、そのための教職員定数は要らないではないか、非常勤講師の措置も要らないではないかという結果になるわけでございますので、私どもはそういう意味では、今の財政的な対応をする場合の論拠として、これだけのことがあるからこれだけの措置が必要であるという組み立てをしているわけでございます。  しかしながら、今申し上げたように、これは一年間の七十日、三十五日、毎週通す話でございますから、例えばの話でございますけれども、例えば四月当初の時点におきましては、新任教員にとって非常に負担の多い時期でございますので、その際は、例えば指導教員にいたしましても指導する前の準備というものが必要でございましょう、そういった期間を考えれば、四月初めからすぐ毎週二日を指導しなければならないということでもございませんでしょうし、その辺の取り扱いにつきましてはある程度の弾力性というのは当然都道府県においてもお考えいただいてしかるべきことだと思っております。
  177. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いろいろ個々に弾力性の問題についてもお尋ねをしているわけでございますけれども、やはりこの初任者研修、新任の教員研修を受ける方々は十人十色で、一人一人個性があると思いますし、それからまた受け入れてやる学校一つ一つも、同じ学校の状況というものは全くないわけでございまして、いろいろな事情があるだろうと思います。一応の基本線というものは守らなければいかぬと思いますけれども、やはりこの新任の教員の皆さんが本当に指導教員につき、また校外研修をやる、校内研修をやる、また校長先生初め学校のいろいろな温かい配慮の中での指導を受けながら、いい形でこの一年間研修を終えて、さて、それから後、本当に子供のためにも個性を生かして生き生きとやる、こういうことになることが一番大切だろうと思いますし、そのためにはやはり、こういう研修に参加する人たちが、先ほどもちょっとメニューの問題で申し上げましたけれども、各人でいろいろ選択できるような形ないしは重箱の隅をつついたような形ではなくて、もっと弾力的に考えて、創意工夫をしながら各都道府県、各学校でやれるものはうんとやってよろしいというふうな、ひとつ相当なそういう弾力性を持たせてやらせる方向の方がかえって非常にいい形で機能するのではないか、こういうような思いから質問も申し上げているわけでございまして、こういう点について、ひとつまとめた形でお答えをいただきたいと思います。
  178. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど国の基準ということを申し上げましたけれども、それは全国の一定の基準、最低基準というのを全国レベルとして合わせたいという意味では、研修日数は何日程度あるいは研修方法としては指導教員による指導校外研修との二本柱という程度を国の基準として定めておるわけでございまして、新任教員成長していきますプロセスにおいてどのような形で研修の効果が上がるのか、そういった効果を一応予測した上で、問題は、機械的な研修をしたから初任者研修の実が上がるわけではございませんで、まさに初任者がそれぞれ一本立ちして立派な教育を展開していただくということが究極のねらいでございますので、内容方法等につきましては、都道府県あるいは市町村それぞれの御判断によります自主性を尊重し、その弾力的な取り扱いというのは当然行われるべき事柄でございます。要は、そういった効果を上げるためにどうすればいいかということを各県それぞれ御工夫いただけることだと私どもは思っておるわけでございますし、また、その事柄文部省として干渉するつもりはございません。  ただ、一つ基本的な事柄としましては、これだけの研修をするのだからこれだけの定数が要り、これだけの予算措置が要る、そういった場合に、実はそれはやっていないということになりますと、それは困るわけでございますので、そういった財政的な措置に見合うような内容の行政的な対応をしていただきたいということでございまして、それ以上に内容に立ち入り、踏み入って、個個の研修がこうだということまでは申し上げるつもりは文部省としてはございません。
  179. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 どういうものでも新しく実行するには勇気も要りますし、またメリット、デメリットもあると思います。しかし、その中で、一年間の試行の期間もあります。また六十三年度もやられるようでありますが、六十二年度に試行された限りにおいては、確かに幾つか問題点というものは厳しい指摘もあっておるようではございますが、大方はやはり、やってよかったというふうな大まかな意見で、集約をして申し上げればそういう御意見が強かったようでございます。そういう意味で、こういう問題はやはり大局観に立った上で、デメリットをできるだけ克服する形で実行していく必要があるだろうというふうにも思っております。これはひとつ努力を傾けていただきたい、御要望を申し上げたいと思います。  初任者研修制度でございますが、この実施に当たっては段階的に実施するというふうなことで言われているわけでございます。この段階的に実施するのはどういうわけなのか、これをちょっとお尋ねをいたしたいと思います。
  180. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修は現在試行いたしておりますけれども昭和六十二年度は全教員数のわずか七%でございますし、五十七都道府県指定都市に全面的に六十三年度試行をお願いしておりますけれども、これも採用教員数の一四%程度でございまして、これを一〇〇%に一挙に持っていくということは、各県におきましても、それだけの準備態勢なりあるいは研修のプログラムなり研修体制を組むということが大変難しい問題もございます。さらには、これだけの全面実施を行うということになりますと、財政的な負担が、今申し上げました教員定数の措置、あるいは非常勤講師等の報酬の措置、補助金の措置等も、あるいは国の場合のみならず地方における負担も大きいわけでございまして、なだらかな形で実施をしていくということが適当と思っておるわけでございます。さらに、これは学校種別間の一つの問題でございますけれども、小中学校につきましては今児童生徒数の減少期に入っておりまして、児童生徒の減少に伴います教職員定数の自然減があるわけでございますが、高等学校の場合につきましては六十四年度がピークでございまして、六十五年が横ばい、そして六十六年度から生徒が減少していくという状況でございまして、教員の定数につきましても同様なこれに比例した傾向があるわけでございますので、時期的に見ますれば、高等学校につきましては後回しにした方がよろしいというような客観的な状況があるわけでございます。  そういった意味で、私どもは、学校種別につきましてはそれぞれの校種別に段階的に実施していくことが、財政的な意味におきましてもあるいは都道府県指定都市の対応状況におきましてもそれぞれ適当ではないかということで、本来ならば全面一括実施ということができればなお理想ではございますけれども、現下の状況にかんがみまして、政令におきまして、初任者研修を実施しない校種段階的に指定をしていくということを附則で規定しようとしているわけでございます。
  181. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 本当にごく一部だろうと思いますが、私の知っているところも試行段階教育センターですか、校外研修をやるときにそこで一斉にやる、そうするとセンターの容量が、研修はそれだけじゃありませんから、いろいろそこを使うということでもう全く余地がない、これで一斉に始まったらどうなんだろうというようなところもございまして、確かに今お答えがあったような形の中でいろいろな問題があるだろうと思います。さらには、段階的にやってもなおかつ財政的にいろいろな面で大変なところもあるだろうと思いますが、そういうところに対してはひとつきちっとした形で目を届かせながら、特に建物だとか財政的な問題だとかいうことについてはできる限りの援助措置をしていただきたいし、目配り、気配りをしてやるべきだと思いますので、御要望を申し上げておきます。  それでは次に移りまして、児童生徒が個性に応じた適切な教育を受けられるようにするために、数々の教育条件の整備改善というものは必要なわけでございますけれども、四十人学級の問題でございますが、これが昭和五十五年から六十六年度までの十二カ年計画で実施するように小中学校の第五次教職員定数改善計画が進行中なわけでございますけれども、いろいろと指摘される議論の中で、この四十人学級との絡みがいろいろと言われております。初任者研修制度が創設されるに伴ってこの計画の達成がおくれるとかそごを来すというようなことがあってはならないと思うわけでございますが、この点についてひとつお答えをいただきたいと思います。
  182. 加戸守行

    加戸政府委員 教職員定数につきましては、義務教育学校の場合十二カ年計画で昭和五十五年度にスタートをしまして、今九年目を迎えているわけでございます。そして、残り三カ年の昭和六十六年度までの間にこの計画の最終ラインが来るわけでございますけれども、四十人学級につきましては、小学校は既に児童減少市町村の学校につきましては四十人学級が達成されておりまして、現在昭和六十三年度につきましてはその他の市町村の第三学年まで進んでいるわけでございます。したがいまして、残り六十四、六十五、六十六の三カ年におきまして学年進行によりましてこれを達成することが予定されているわけでございます。一方、中学校につきましては、現在生徒減少市町村の中学校につきまして六十三年度をもって第三学年で完成をするわけでございますので、問題は、六十四年度からその他の市町村におきます四十人学級の第一学年がスタートできるかどうかということが六十四年度予算におきます大攻防になるわけでございまして、文部省といたしましてはこれを達成すべく六十四年度最大の努力を払いたい。通常のケースでございますと、六十四年度予算で第一学年が措置されますれば通常は学年進行で第二学年、第三学年といくわけでございますので、六十四年度予算におきます中学校のその他市町村の四十人学級を第一学年について実施できるかどうかということが問題になるわけでございますので、全精力を注いでこれに努力をしたいと思っております。  と同時に、先生今おっしゃいました、この初任者研修に要します定数の問題がございまして、現在は、昭和六十二年度、六十三年度両年度におきまして試行段階でございますので、第五次教職員定数改善計画の枠の中で研修等定数を使用させていただいて試行を行っている状況でございますが、この法案が成立いたしますれば、六十四年度からの本格実施を行います場合に、本格実施となりました校種につきましては試行の分野からは外れますので、別建てで措置をするということでございます。別建てで措置する結果として、今まで初任者研修の試行のために使用していた定数は本来の研修等定数として使用したいと考えている次第でございます。
  183. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはぜひとも強い決意で実現をしていっていただきたいと思います。  次に、条件つきの採用制度の件でお尋ねをいたします。  今回の法案には、教員について条件つき採用期間を一年とする改正案が盛り込まれているわけでございますけれども、この制度中身は一体どういう制度なのか、これをまずお尋ねいたしたいと思います。
  184. 加戸守行

    加戸政府委員 条件つき採用制度は国家公務員法あるいは地方公務員法に規定されているわけでございますけれども、これらの趣旨は、職員の採用が競争試験または選考によって行われ、一応の能力の実証が得られてはいますものの、これだけでは職員としての適格性をすべて実証したとは言いがたいということから、採用された職員が公務員として真に適格であるかどうかを、採用された職において実務に従事した成績に基づきましてさらに実証するチャンスを任命権者に与えようとしているものでございます。すなわち、競争試験または選考試験によって採用されました職員は、これらの手続を経まして学力とか、知識とか、人物、性行、体力等について一応の能力の実証を得ているわけでございますけれども、具体的な割り当てられた自分がついた職務について、その職務の遂行能力を真に有するかどうかというのは、まさに自分の携わっている仕事を通じて初めて明らかになる場合が少なくないわけでございます。そこで公務員法の建前におきましては、職員の採用はすべて条件つきのものとしまして、実地の勤務についての能力の実証が行われて初めて正式採用となる余地を任命権者に与えるということにいたしまして、これによりまして職員の採用を能力の実証に応じて行うとの成績主義の原則を貫徹しようとしているわけでございます。  ただ、ここで一言申し上げておきたいのは、正式採用になるかどうかの判断基準の問題でございまして、法律では全く触れておりませんけれども、御承知のように、国家公務員法、地方公務員法には分限の規定がございまして、職員を免職する場合の要件として、その職務を遂行するに足りる適格性を有しない場合、または心身の故障があってその職に適しない場合等の要件が国家公務員法、地方公務員法、一般の職員について規定がございます。この原則は、このような条件つき採用期間の職員を正式採用する場合にも同様にこれに準じた考え方で判断されるべきであるという裁判例もございますので、恣意的な判断によって正式採用にしないということではなくて、一般職員の分限免職に準ずるような一つ考え方というのが根本的な理念としてあるということを前提としていることを申し添えさせていただきます。
  185. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 分限の問題が今のお答えの中に出たわけでありますが、これを適用する場合に、普通の公務員の皆さんは半年間、ところが教員は一年間ということになると、一年間それがいつ適用されるかわからぬというようなことも含めて他の公務員との均衡を失するということになるのではないか、こう思うのでありますが、この点についてはいかがでありましょう。
  186. 加戸守行

    加戸政府委員 今回、教員の条件つき採用期間を一年といたしますのは、提案申し上げております一年間初任者研修の実施に伴いまして新任教員の勤務形態が変わってくる、つまり研修を受けながら勤務をする、つまり表面的に見れば勤務のようでございますが、それは指導を受けながらの勤務であって、研修との両面性を有するというような形でございまして、実際に勤務する状態が、例えば今申し上げた週二回程度マン・ツー・マン指導であるとか週一回程度校外研修であるとか、そういう形での勤務形態が一年間続くわけでございます。  またさらに、教員の仕事と申しますのは、全人格的に子供たちと触れ合う仕事でございますから、教員としての適格性を有するかどうかは、児童生徒に対する理解がどの程度あるのか、それは人格的な面でも評価しなければならないという、他の職種には見られない勤務能力の実証をするというのに非常に難しさがあるわけでございまして、そういった点から、このような初任者研修を受ける教員につきましては一年間をかけてその能力の実証を図るということでございます。そのことは、他の公務員と職務形態が違いますので、例えば憲法におきます法のもとの平等であるとか国家公務員法、地方公務員法に規定しております平等取り扱いの原則に違反しないことは明らかでございます。  なお、念のために申し上げさせていただければ、六カ月の期間を一年間に延長することによりまして、その能力実証の判断基準が変わるわけではございません。六カ月で適格かどうかということを判断する基準と一年かけて適格かどうかということを判断する基準は全く同じでございます。言葉をかえて申し上げますれば、六カ月よく見たけれどもこれは不適格ではなかった、適格だという方が、一年たったらこの方は不適格になるとかそういうことではございませんで、それは判断する期間が短いために、本来ならば不適格であったはずの人が不適格ではないというぐあいに、まだ不適格であるということの実証が得られないという場合もあり得るでしょうし、逆の場合もあると思いますけれども、ある意味におきまして、その六カ月の勤務についてその人の勤務能力を判断するか、一年間かけてその人の勤務能力を判断するかという判断する期間の違いでございまして、判断の基準はあくまでも同じだということでございます。
  187. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 初任者研修段階的に実施されるということはなるわけでありますが、段階的実施と条件つき採用期間の延長との関係、これはどういうふうになるのかお尋ねをいたします。
  188. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、教職員新任教員につきまして条件つき採用期間を一年に延長するといいますのは、初任者研修を受けるということによりまして勤務形態が他の初任者研修を受けない職種との間に差があるわけでございまして、言うなれば勤務形態の特殊性があるわけでございますので、そのことを理由として条件つき採用期間を一年としているわけでございます。したがいまして、例えば校種によりまして段階的に初任者研修を実施いたします場合には、その初任者研修を一年間受けます校種教員につきましては条件つき採用期間を一年に延長し、まだ本格実施に至らない、一年間初任者研修を受けるに至らない校種教員につきましては従来どおり六カ月の条件つき採用期間とするということでございます。
  189. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 初任者研修制度に関することについては大体そういうことで今回終わらしていただいて、研修全体の問題に若干踏み込ませていただいて、関連しての質問をさせていただきたいと思っております。  当然教員の皆さんは、その資質能力を向上していくためには初任者研修だけで終わるものではないということは、これはもとよりのことでございますが、初任者研修以後の教員の現職研修ですね、これについてはどういうふうに整備をなさっていかれるおつもりなのか、お尋ねをいたします。
  190. 加戸守行

    加戸政府委員 教員としての資質能力は養成採用、現職研修の各段階を通じて次第に形成されていくものでございます。教職経験職能成長に応じた現職研修の重要性ということは申し上げるまでもないことでございますが、文部省におきまして、従来から都道府県が実施します現職研修に対する助成措置を講じますとともに、都道府県教育委員会に対しまして、各教員教職の全期間を通じて必要な研修に参加することができる機会を確保するために、現職研修の体系化を図るように指導してきたところでございます。  昨年十二月の教育職員養成審議会の答申におきましても、初任者研修は言うなれば教員の生涯研修の第一ステップであるという考え方のもとに、初任者研修に引き続きまして、現職経験五年程度あるいは十年程度さらには二十年程度といいました一つ一つの区切りのある時期におきまして、いわゆる教員のライフステージに応じた研修を実施していただくなど、現職研修の体系化をさらに進めるべき旨の提言をいただいているところでございます。  文部省といたしましても、今の答申の趣旨を踏まえまして、教員の場合には生涯研修だという視点のもとに、そういった施策を講じ努力してまいりたいと思っておりますけれども、この初任者研修のような一年間の大々的な研修ということではなくて、それぞれの五年、十年、二十年程度の時期に応じた、どの程度の期間の、どの程度内容研修であればいいのかということは鋭意研究いたしまして、この答申の趣旨を生かすように今後努力してまいりたいと思っております。
  191. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 教員研修と同時に、教員資質向上ということが研修一つの大きな目的でございますから、資質向上ということにかかわり合いがあるということで、提案を含めてちょっとお尋ねをしたいのでありますが、いわゆる適格性を欠く教員というものがよく問題にされます。先ほどからの御答弁の中にもちょっとありましたが、精神性の疾患をお持ちの教員等に対する休職処分の状況といったもの、これはどういうふうに現状なっておるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  192. 加戸守行

    加戸政府委員 指導力の欠如とかあるいは異常な行動をとられる、そういったような教員としての適格性に問題のある者がどれくらいいるのかという御質問でございましたけれども、この把握は非常に困難でございますけれども、例えば精神性疾患を理由として行政上の分限休職処分を受けております教員の数は、昭和六十一年度におきまして千七十八人でございまして、全教員数の中に占める割合は〇・一一%でございます。過去の傾向等を見ましても大体〇・一%をちょっと超えた程度の推移でございますが、六十年度から六十一年度にかけては若干の数がふえてまいっております。これは表面上出ました医師の診断統計、明らかに職務に従事させるわけにいかないという考え方で行政措置がとられた教員の数でございます。他の職種におきましてもそれぞれこのような形の分限休職処分というのがございますけれども教員の場合につきましては、一般職種に比べると、やはり精神的な問題というのは特に児童生徒に与えます影響という点を考えると、私どもかなり深刻に問題として受けとめている次第でございます。
  193. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 適格性を欠く教員というものが問題にされるということは、採用段階での選考の方法にやはりちょっと不十分な点があるのではないかなというふうに考えることもできるわけでございますが、何らかの改善措置というものはとられているのかどうか、この点についてお尋ねをいたします。
  194. 加戸守行

    加戸政府委員 各都道府県教育委員会、指定都市教育委員会におきましては、教員としてふさわしい資質能力を備えた人材を確保するために、各県にそれぞれの教員採用、選考の改善を図ってまいってきているところでございます。特に教員としての適格者を採用するためには選考においても多様な方法が行われておるところでございまして、その資質を多角的に評価するために、例えば適性検査の実施などについて積極的な取り組みがなされているところでございます。  ちなみに数字で申し上げますと、昭和五十七年度におきまして都道府県指定都市五十七のうち適性検査を実施しておりましたのが三十県市でございましたけれども、六十三年度におきましてはその数が四十八県市までふえておるわけでございます。さらにまた、昨年度からも幾つかの県におきまして教員採用試験改善のための諸課題について実践的な研究を進めていただいているところでございまして、こういった研究結果も踏まえつつ、さらに教員採用改善が図られるように指導してまいりたいと思っております。  ただ、事は、こういった適性検査等の実施あるいは面接によって人物を判断するといいましても、短期間の多数の志望者によります倍率の高い選考でございますので、こういった研究が確定的にこれがいいということが出るとはなかなか思えませんけれども、少なくとも今までよりは適格者確保のための研究をしていただき、また努力をしてまいりたいと思っております。
  195. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 各教育委員会では一たん採用されました適格性を欠く教員についてはどういう対応策を講じていらっしゃるのか、これもお尋ねをいたしたいと思います。
  196. 加戸守行

    加戸政府委員 なかなか表面上は出ない問題でございますけれども、私ども各県の担当者方々とざっくばらんなお話し合いをさせていただくと、一番問題にしておりますのはこの適格性を欠く教員の対応の問題でございます。そういった点はそれぞれの任命権者において深刻に問題意識を持っておられる事柄でございますけれども一般的に申し上げますと、適格性を欠く教員につきましては、学校教育委員会におきましてその実情を的確に把握し十分な指導を行うということのほか、必要に応じまして、例えば授業時数を軽減してあげるとかあるいは教育センター研修所におきます研修等を行うとか、さらに、それでも極めて問題が多い教員につきましては、場合によっては休職あるいは免職等の分限上の措置を講じているということでございます。このほか、各県におきましては、それは一部の県でございますけれども、健康診査会を拡充するとか、教員に対する相談機能を充実するとか、あるいは校長、教頭等の管理者に対する精神衛生に関します研修の実施等、種々の対応策は講じているところでございまして、また、今後とも教育委員会、学校が密接な連携をとりながら適切な対応を行うように指導をする考えでもございます。  しかしながら、この問題はそういった今まで申し上げたような事柄では基本的には解決できないなかなかな悩みがあるわけでございまして、一つ教員の人権の問題ともかかわりがあるわけでございますし、一方におきまして教育を受ける側からの苦情その他もございます。そこの調和というものをどうやってとればいいのか、真剣に取り組んでいかなければならない大きな問題であると認識をいたしております。
  197. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 この問題をあえてこういうふうにお聞きしているのは、本来からいえばさわりにくい、確かに個々の人権に関する問題で、こういう議事録に残る場で質問していいのかどうか迷ったような問題ではございますけれども、私もあちこち現場を回っておりましたりすると、いろいろなところで、時々そういう話をよくお聞きするわけです。  私が思うのは、精神的な疾患を持って本当に病気だと断定されておればこれまた別でございますけれども、ところによっては、自宅待機というような言葉もひょっこりあちこち回っていて聞くことがありまして、何かなというと、どうも若干教員として不適格だからさっき言った研修所やらいろいろなところへ配置がえさせられて、実際には担当していないというふうなことが言われているわけですね。  さっきもいろいろなことを、少し負担を軽くしながら云々というようなお答えもあったのですけれども、私は、本質的に教員として本当に向いてない方であるならば、なるべく早い機会に、一番いいのはさっき御質問申し上げたように採用段階でそういうものがわかれば、教員としては向いてないけれども事務職としてはすばらしい能力を持っているとか、いろいろな手に技術を持っていてこの方面でやらせればすばらしい力を発揮する方だとか、こういう方々も当然おられるわけだと思います。そういったものが早くわかる形で、何かそういう形で職をかわっていくとか、ないしは教員というのは人確法によって待遇が普通の公務員よりもプラスされた形で多くなっておりますから、私はその点からも非常に難しいのかなとは思いますが、一般の事務の関係、例えば図書館とかがありますが、そこらあたりでも、いわゆる教育委員会関係の中での、教える方ではなくて、ちょっと大変だろうけれどもこっちの方にかわるとか、今の日本の風土の中ではこういうのがなかなか理解されにくいところがありまして、本当に教員がだめなら一切合財人間としてもだめだというような考え方が走っているものですから、こういう風潮は私は変えなければいかぬと思うのですけれども教育というものが子供のためにというのが一番主眼に置かれなければならぬと思いますので、そういう意味からいえば、今言われたように調和といいますか、調整という言葉を使われたと思いますが、確かに厳しいところでありますけれども、私は、これは何らかの形で、教員として不適格であるならばほかの方に転向できるような形に、側面的に援助しながら持っていく方法はないものかなというふうに思うのです。  これは確認して私が調べたわけではないからわかりませんけれども、東京に出てあちこち回っておりますと、いろいろ話の中でこういう自宅待機という言葉を聞いて僕もびっくりしましたけれども、そういう教員の方が東京都の場合ですと二百二十人ぐらいいらっしゃるのだというような話も聞くわけです。これは休職ではない方でございまして、実際の実務である教える方には当たっていない方がいる。中には極端なのは、もう何年か前にありましたように、何か学校の門まで来て判だけ押して車の中にずっとおったというような、ああいうようなことを聞くとびっくりするわけでありますけれども、そういうことは例外としてみても、教師としては残念ながら余り向いてないというような方がいらっしゃるようです。東京都の場合二百二十人ぐらいいて、それが年間に約二十億円くらいの経費がそれにかかる、経費と言ったら悪いのですが、かかっておるというようなことも聞くわけです。大変お金の問題などを出して若干気が引けるような気もするわけですけれども、私が申し上げたい真意は、さっきから申し上げているように、御本人も大変つらいことでございましょうし、ほかに向く道があるならば早くそういう方向に向ける方途というものは何かないのか。これは採用段階を含めてさらに一層努力をなさる必要があるのではないか。そして、こういったところで使われる費用を子供のためにまた教員の皆さんのためにも、全体的にいい形でこれを活用していくというのが大切ではないかなというふうな思いがしておりますので、御質問を申し上げたわけでございます。そういう意図を踏まえてもう一度お答えをいただきたいと思います。
  198. 加戸守行

    加戸政府委員 確かに先生おっしゃるとおりでございますが、難しい問題であることは、例えば教員の場合でございますと、教員免許状を持って教諭として採用されているわけでございまして、一般職種のようにこの仕事には向かないからこの仕事にというわけにはいかないわけでございまして、教諭、児童生徒教育をつかさどる職務を遂行する教員としての採用でございまして、そういう意味では、今申し上げたような精神状態その他に極めて問題が大きいから他の事務というわけには、今の教育公務員の身分制度のあり方からしていかないわけでございます。  それから、極めて難しいのは、そういった方々に対します転職のお勧め等は事実上なされていると思いますけれども、そういった方々が、自分がそういう状態でおかしいということを自覚なさっていらっしゃらない方も相当いらっしゃるわけでございまして、そういった転職の勧告等にもなかなかお従いいただかないというような問題等もございますし、そういった点は、各都道府県教育委員会におきましても大きな悩みとしてある事柄だと思います。現実の実態が、教職員の定数というような中のある程度部分を占め、かつ、それは実際上教育現場の成果としては生かされていないという実態が結果的には生じているということもあるわけでございますので、その辺は英知を絞って今の日本的な風土、土壌の中でスムーズな解決策というものが考えられないのか、これは文部省としても長年知恵を絞りながらも、あるいは考えつつも、とつおいつ思案に暮れている状況でございます。基本的には、そういった方々の疾病が治り現場復帰をしていただくということが理想でございますし、そのためにいろいろなそういった精神的なリハビリなり努力なりというのはそれぞれの各県においても行っていただいておるわけでございますが、それによっても回復されない方の措置というものにつきましては真剣に考えてまいらなければならない、しかし出口がなかなか見つからない、そんな状況で、大変答弁としては申しわけないと思いますが、現状を赤裸々に申し上げさせていただいた次第でございます。
  199. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これからは提案になるのですが、提案申し上げることが、そういったことをまずなくすること、ならないようにするための方途に幾らかでもつながるのではないかということで、ちょっと提案を申し上げたいと思うのであります。  教師教員方々で大分お知り合いの方がおられるのですけれども、話を聞いておりますと、子供好きで教育熱心な方で本当に頑張っている人でも、やはり十年、二十年、三十年とやっているその中で、あるときふっと子供とのずれができるようですね。何となく嫌気が差しちゃう、何か自信をなくすというのか、ちょっと具体的な表現はよくわかりませんが、そういうこともあられるようです。  確認をせずに言うのでございますが、去年かおととしか、たしか四十歳を超えたベテランの女性教師の方が、本当に優秀な方だったようですが、自殺なさったというようなことがありまして、私はその報道を見まして非常に心の痛む思いがしたわけですけれども、その先生も、やはり毎日根詰めてやっていく中でストレスもたまってきて、そして、そういうような思いで何かのときにぱっとされたのかなというふうな、本当の心情というのはわかりませんけれども、大変心の痛む思いがしたことがございます。  そういう意味で、特に教師の皆さんは、小さい子供さんやらそれこそまた反抗期のお子さん方まで含めていろいろなところで教育に携わっていただいておるということの中で、今休職というものをちょっと申し上げたのですが、この休職の制度を、ああいう精神障害の方とかまたは産休の方とか、こういう方々が休職の対象に一応なるようでございますけれども、もう一歩この休職の制度を生かして考える道はないのか。例えば、十年ぐらい教員として頑張ってこられたら十年に一度ぐらいは御自身からの希望があれば休職を認める、それで例えば一カ月間ぐらい海外に行ってくるとか、教務からも離れて半年ぐらいはどこか回ってひとつストレス解消も含めて充電するといいますか、私どもやはりいろいろな仕事をやっていて、時々気分転換するというのがまた本来の仕事に対するすごいエネルギーになるわけですね。だからそういう意味で、この休職というものを拡大した形でひとつ考えられないものかということなのですね。だからそういうことであれば、一年ぐらいの中でそういう対応をするのであれば、どうぞ十年間たったならば一度ぐらいはそういうことは希望されても結構ですよ、できれば有給で、今八割ですかが休職では出るようですが、それを適用した形でやれば一番いいのだろうと思いますが、そういう形がとれないものか。あるいはまた、思い切って休職三年間あるうち場合によったらほかの仕事につく。教員をやっているけれども、こういう仕事をちょっとやってみたいと思っていたら、ちょうどそこに飛び込める余地もあったという場合には、そういう教員以外のところで職についてみる、そこで一生懸命やる、それで二年か三年やってみて、三年ぐらいたってもう一遍教員に返ってみようと思えば復職を許すという形でやるというようなことはどうなのかな。その中でもしもそっちの方がいいということになればそっちの方でずっとおやりになればいいわけだし、休職ということの制度をそういう形でうまく活用していく、そうすればそういうストレスの解消にもなるし、例えば子供さん相手にまだ対応できると思っておったのがなかなか対応できなくてノイローゼになりかかったとか、そういうところが、これがうまく活用できますと、また新たな意味での気分転換となって、教師としての職務に再び精励できるという方向も考え得るのではないかなというふうなことでございます。  これは提案でございますので、そういう考え方の中で、やはり教員の皆さん方にも研修だと、何だとか厳しくやるところはやらなければいかぬのだと思いますけれども、反面、またそういうところの配慮というものもなさっていただきたいし、する必要があるのではないかな、私はこういうふうに思っておるわけでございますが、この点について御意見があればお考えを承りたいと思います。
  200. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま先生から傾聴すべき意見、しかも思い切った御提言等も多々ちょうだいしたわけでございます。  教員海外研修等につきましては、そういう適切な研修の機会等を得られることを配慮することは、教員資質向上の面からも重要だと考えておるわけでございます。現在、幾つかの県におきましては、休職という方法によりまして学校、研究所等の職務に関連があると認められる学術研究を海外または国内で行うことができることとされている、これは数が非常に少のうございますが、そういった県もございます。また一般的には、新教育大学へ現職教員を二年間修士課程に現職のままで派遣をするという制度も存在しておるわけでございます。  なお、教員につきましてはそういった長期研修等のいろいろな施策は講ぜられておりますけれども、今先生お話がありましたような、例えば十年程度の一定の勤務経験を有する者に一年とか三年とかいう一定の期間の休暇を与えるというのは、外国でもサバティカルイヤーというような制度で認められているところもあるようでございますけれども、日本の場合、教員についての御提言でございましたけれども、これは他の公務員制度と関連する事柄でございまして、やはり公務員制度上の身分の問題としての措置に関係するわけでございますので、私ども、御意見を承りまして、ちょっと慎重に検討しなければいけないことかなと思っております。色よいお返事ができないのは恐縮でございますが、先生がおっしゃいましたいろいろな方途等も含めまして、私ども内部的にも十分考えさせていただきたいと思っております。
  201. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 きょうは、きょうお聞きしてのお答えですからまあその程度かなとも思いますが、何回も粘り強く、しつこくお聞きしていきたいなというような気もしておりますが、ひとつ御努力をいただきたい。  条件つき採用の方は、特例でもって一年間に延ばすという方は、ほかの公務員との関係があっても必要とあらば延ばしているわけですから、この件についてはほかの公務員に気兼ねをするというのじゃなくて、やはり教員というのはまた特別である、特に子供さんの心を扱う、体も扱うのですけれども心も扱う分野というものが大きいわけですから、やはりその分のストレスというものは大変であろう、そういうふうな意味合いを含めてこれはぜひひとつ実現ができるように御努力をいただきたいし、私たちも立法府としてお役に立つことがあれば労を惜しまずに一緒に実現を目指していきたいというふうにも思っておりますし、さらには、教員免許法の中でも、今度は、外で経験のある実力を持った方が特別な免許で学校の中に入ってくるということもまた認めようという形に趨勢としてなってきているわけですね。だから、外からも入るけれども、今度は内の人も外に出ていって外からの空気を吸ってまた戻ってくるということもむしろあっていいのではないかなという気が私はするのです。特に、我々は、専門外のことで話を聞いているときに、その今やろうとしておることでひらめきで何かすごい知恵が出てくることがありまして、やはりそこの専門だけということではなくて、特に教員の皆さんは幅が狭いということが一部には言われているわけでございますから、そういうことを活用しながら何かできる方法があるといいなというふうに思っておるわけでございます。ひとつ努力をお願いいたしたいと思います。  それから、これは最後の御質問にいたしたいと思っておりますが、これも提案でございます。こっちは少しまた研修で締めつける方の話になるかもわかりませんが、現職教員研修が確かに今制度としてあるわけですけれども、どうも私はそれがちまちましているような気がしてなりません。自分が実際に研修を受けたことがありませんから実感として申し上げにくいのですけれども、いろいろお話を聞き、はたから見ておっても、ちまちまして、いろいろな研修があってどうもすっきりしないような気がいたします。これも例えば、十年ないし十五年たちましたら全教職員にとか、今でも五年たったらですか何日間かは研修があるとかいう制度には義務づけられているわけでございますけれども、これをもう一つ思い切って、研修をするセンターといいますか、大がかりなものをつくったらどうだろうか。例えばこれから大学を新しくつくるというのは、大学生が六十七、八年ごろから減ってくるわけですから考えにくくなるだろうから、そのかわり、全国を七ないし十ブロックに分けて、町中だと土地が高いから田舎の方へ少し引っ込んでもいいと思うのですが、空気のいい、環境のいいところで、大学一つつくるつもりでお金をかけて研修センターを全国に幾つか、そういうブロックの中で一つずつ、それこそ大きなものをでんとつくってしまう。そして、一日とか二日とか三日とか十日とかいうような余りちまちましたことを言わずに、一カ月とか半年とか場合によれば一年とかぐらいそこで研修をやってみる。今は大学先生を含めて研究という分野は大変評価されるのですが、教えることの上手な先生は余り評価されない。そういう中で、教えることの上手な先生を招いて、小中学校でもそういう先生方はいらっしゃると思うのです。教科担任をさせたらベテランだ、管理職ではちょっと無理だけれども、性格的に合わないけれども、そういう方面で教えることについてはすばらしいというような先生を随分見てきております。ですから、そういう先生方の中で優秀な方をそこの講師ぐらいに据えてしまって、待遇もよくしてやって、そこで大がかりに情報交換等、いろいろな先生方経験を持った方々が十年ないし十五年ごとに、そこはいろいろ検討すればいいのでしょうが、一定年月を経たならば必ずそこに一度は行って、あらゆる地域の人が集まった中でみんなで研修し合う。それこそ百人、二百人とかいうちゃちいのじゃなくて、場合によったら何千人ぐらい入って寝泊まりができるようなところをつくって、研修を思い切って伸び伸びと本当にいい形でやれないものかな。私ども門外漢がえらい大それた言い方をしておるのかもわかりませんけれども研修についてはもっともっと腹を据えて大がかりに、しかも教員の皆さんが本当に喜んで、行ってよかった、むしろもう一遍行きたいというぐらいの雰囲気の中で、いろいろなことを考えながら研修ができる、そういうセンターをつくってやるというふうなことも考えられたらどうかなと私は思っております。  これも提案でございますけれども、こういう考え方について専門的なお立場からどういうふうにお考えなのか。私は、むしろ我々のような直接担当していない者の意見を取り入れていただいてやるとまた非常に楽しいのではないかなという気がしておりますが、この点のお尋ねをいたしたいと思います。
  202. 加戸守行

    加戸政府委員 先生から非常に示唆に富んだ、かつ、壮大な御提言をちょうだいいたしまして、お話をお聞きしておりますと、ブロックごとでございますと地方公共団体、自治体にお願いするのはどうも筋が違うような感じがしますので、多分国においてということになろうかと思います。そこで、役人流の答弁になりますけれども、そういったブロックごとの大きな施設をつくっていく、そこに職員を置かなければならない、また教員定数もふやさなければいかぬという意味で、今は行政改革のあらしが吹き荒れておりまして文部省自体の職員もどんどん減っている状況でございますので、減る中で新しい職員がひねり出せるかなというのが役人流としてはすぐ直感的に考えるわけでございますけれども、いつまでも行政改革のあらしが吹き続けるわけではございませんし、また財政再建もいずれは成るでございましょうし、そういった意味で、今後の現職研修の中核という観点から見ますれば、私の在任中は難しいといたしましても、後ろで聞いている文部省の若手幹部が必ずやいつかの時代に、先生のこのような構想をという気持ちになっていくものと私も思っておりますし、単なる御提言として軽く受けとめるわけではなくて、私ども教員資質向上の観点からの一つ施策として、先生のお気持ちを十分受けとめさせていただきたいと思います。
  203. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大臣も随分お答えが遠のきましたので、最後に、今まで御質問申し上げたこと、また提案申し上げたことを含めて締めくくりに御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  204. 中島源太郎

    中島国務大臣 鍛冶委員からいろいろな御提言をいただきまして、特に底に流れるものがあくまでも児童生徒に対する教育を中心にお述べになりまして、しかも「教育は人なり」という、教員自身が常に向上心を持つ、それからもう一つ温かみを御質疑の中から感じましたのは、どれだけ御熱心な方でも、どの職業でも、何年かあるいは何十年かの間にはふと自分の立場に疑問を持つ、あるいは特に人と人との教え、教えられる職種でございますから、そこに何か通じ合わなくなったのではないかというようなこともあるでしょうし、その点、幅広い知見とまた幅広い人的交流によってその隘路がぱっと開けるような機会をつくり持つことも大切なことだと思うわけでございます。そういう意味で、先生の御指摘はブロック、ブロックでとおっしゃいますが、それはひとついろいろ知恵を出しまして、新たなそういう壮大な建物を建てなければできないという問題でもございませんでしょうし、今ある施設をどのように活用するかということによりましても、御趣旨の点は徐々に実現できる方法はあると思いますし、また前段で、いろいろとお気づきのいい面、それから注意すべき面を事細かく御指摘いただきまして、大変参考になる御質疑と思いつつ拝聴いたしておりました。御指摘の点を十分心に置きまして努力をいたしてまいるつもりでございます。ありがとうございました。
  205. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 質問を終わります。
  206. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長代理 嶋崎譲君。
  207. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私に与えられた時間が、政党の枠がございまして一時間ということでございますが、公明党の鍛冶さんが御好意で少し前におやめいただきましたので、できればその時間を私の与えられているおしまいまで質問をさせていただくようにお願いをしつつ、質問に入りたいと思います。  さて、先般の文部大臣のこの法案の提案理由は大変騒然とした中で行われました。よかったか悪かったかは言いません。ああいう騒然とした中で御提案なさっただけに、よほど自信を持ってこの提案をなさったものと私は受け取ります。したがいまして、私は大臣の提案理由に従って質問いたしますから、大臣が主としてお答えを願いたいと思うのであります。御承知のように、この文章は文部大臣の責任において出された提案理由でありまして、局長はそれを補佐する役割でございますから主にならずに、大臣が主で局長が補佐するという立場に立って、今後の質疑お答えを願いたい。いかがですか、そういう対応ができますか、大臣
  208. 中島源太郎

    中島国務大臣 そのとおりお受けをいたします。
  209. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大臣の提案理由の前に、簡潔にこの法案の提案をしている要約部分がございます。お持ちですか。九ページを開けば簡潔に今度の提案理由があります。これを受けて大臣の責任において提案理由の説明が行われておりますから、まずこの提案理由の最初から入りたいと思います。  まず最初に、最初の二行は提案理由の説明ですから、三行目、「学校教育の成否は、これを担当する教員資質能力に負うところが極めて大きく、」とあります。「資質能力」と、中に点がありませんから、英語に直しますと「資質能力」なんて言葉がありますか。国際的にはこんな「資質能力」という言葉がありますか。
  210. 中島源太郎

    中島国務大臣 英語ではどうお答えするかわかりませんが、「資質能力」という言葉はあると思います。
  211. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 「資質能力」というのは具体的にどんなことを検討されて使われた言葉ですか。
  212. 中島源太郎

    中島国務大臣 「学校教育の成否」というのが前段にございまして、「これを担当する教員資質能力」、こう申しますのは、いつも申し上げておりますように、教員というものは人づくりをいたしますまさに教職でございますので、教育愛情を持つ、そして指導する立場でございますから、実践的な指導力を持っておる、そして幅広い知見を持っておる、そしてみずから絶えず研修にいそしむような向上心を持っておる、そういうことを含めまして「資質能力」というふうに考えておるわけでございます。
  213. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まず、教師の「資質能力」というのを私流に理解しますと、例えば教師は専門性を持っているがゆえに、その専門性の中身を持っているかどうかは資質の重要な要件だと思います。  ところで、教師教育を行うときには現場できちんとした教師の立場に立って対応するわけでありますから、当然その教師には幾つかのまさに資質に基づいた能力が必要だろうと私は思います。  まず資質の場合に、例えば学校先生が教材というものを選択する能力、同時に教材研究の能力がなければいけませんね。これは資質にとって極めて重要であり、また同時に、カリキュラムその他を編成する自分のいわば教育的な企画を子供段階的発展に即して検討していく、ある意味では研修を企画する、自分自身でやっていく、そういうような資質が能力として発揮されなければならぬでしょう。同時に、集団子供を相手にするのですから、学校を経営していくという場合の教師子供の関係というものをどういうふうにしていくかという能力がこれまた資質に基づいて外にあらわれる、対象化されて能力となると思います。  恐らく「資質能力」というのは、さっき局長が答えたのを黙って聞いておりましたら、いろいろなことを言いましたが、資質というのは簡単に言えば教師としての基礎的な素養を身につけているかどうかということであって、それが能力、外にあらわれるとおっしゃいましたから、外にあらわれるというのは資質が対象化される、外にあらわれるということを意味しておる、それ全体を含めて教師の「資質能力」、こういうふうにおっしゃったものと理解しますが、大臣いかがですか。
  214. 中島源太郎

    中島国務大臣 前半の部分で申し上げたいこともございますが、まず基本的にはそのとおりだと思います。
  215. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そういう観点から、我々は「資質能力」というものを大ざっぱにまずつかんでおきましょう。お互いに共通したカテゴリーの内容をつかめないままにやっているやに思いますが、一定程度、あいまいであっても漠然とした共通項がありそうだなという前提で事を進めることにいたしましょう。  さて、節が変わりまして、「現下の教育課題を解決し、また教育の質的向上を図るため、教員には、」ここで途中を省きますが、「使命感、」「教育的愛情、」「専門的知識、」「これらを基盤とした実践的指導力などが求められております。」と言っておりますね。さて、「現下の教育課題」というものと今ここに書かれている教師の「実践的指導力」というものの関係について、大臣はいかなることを構想されておられますか。
  216. 中島源太郎

    中島国務大臣 「実践的指導力」と書きましたのは、ここにありますことを包含をいたしております。ただ、「現下の教育課題」と申しますと、広く言えば、今までの教育のあり方が画一的ではなかったかと言われればそれは否定できない、したがって画一性から個性重視の教育、こういうものが打ち立てられております。したがって何が個性重視なのかということになりますと、社会自身が成熟度を増しますと社会が多様化、国際化、個性化をしてまいる、その社会の変化にみずから対応できるようなたくましく、心豊かな青少年を育成しよう、それが教育の新しい方向である、こういうふうに思っておりますので、それに即して指導できるような実践的な指導力、ここに書かれております四項目につけ加えれば、先生がおっしゃった「現下の教育課題」とどういうふうに連係するかという意味でつけ加えれば、そういうことであると私は考えております。
  217. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ここの言葉は、「現下の教育課題を解決し、」で点が打ってある、そして「また教育の質的向上を図るため、」ですから、「現下の教育課題」というのを「教育の質的向上を図る」としたところに問題があるので、それを「教育課題」と考えて「教育の質的向上を図るため、」と読むのか、それとも「現下の教育課題」といえば例えば入試制度にあらわれるような教育の問題もありましょう。また同時に、現場に起きてきているいじめやその他の問題もありましょう。つまり、現場に起きている学校内の教育課題、しかし学校内に限らない、これは家庭における教育ないしは家庭における子供のしつけその他と密接不可分、それらを含めて「現下の教育課題」と考えると、教師が「実践的指導力」を持てば解決できるほど今の教育課題は簡単ではないと私は思います。したがいまして、ここで言っている「現下の教育課題」を今大臣がお述べになった学校現場の中における教育課題的なものにとらえて、そして「質的向上」のために「実践的指導力」、こう読みかえるとすれば、読みかえられる日本語であるかどうかは別として、そういう共通の理解で入ることにいたしましょう。  私は、教師が今から言う研修を行ったら、「現下の教育課題」のたくさんの問題が解決できるという代物ではないと思います。教師の今から行う研修によって教師の質が高まったらそれで現下の教育問題が解けるほど、今日の教育をめぐる状況は単純な問題ではない社会問題だ、これは臨教審答申にるる述べてありますから、お読みになったとおりであります。  さてそこで、「実践的指導力」という言葉、これもわかったようでわからない言葉でありますが、私に言わせれば、教育というのはともに学ぶということが非常に大切であります。ともに学ぶということなしに指導力は発揮できません。その場合に、「実践的指導力」という技術的な指導性の専門家ができても、ともに学ぶということがなければ「実践的指導力」とは言えないと思います。したがって、専門的知識教育的愛情、それから使命感という三つの構成要件を内容とする「実践的指導力」とすれば、もっと「実践的指導力」には形容詞をつけるか中身を膨らませる必要があると思います。ここでは議論はいたしません。  さあ、次は少し議論をいたしましょう。  さて、次のパラグラフ、「このような教員としての資質能力は、教員養成教育のみならず、教職生活を通じて次第に形成されていくものであります。」これが前文ですね。「その場合、教員自身が研さんを重ねることによってその資質能力を高めていくことが基本となることは、もとよりでありますが、」と言って、「が」がついている。「もとよりでありますが、」ここではこの「が」が大事なんです。「これとともに、教員任命権者教職生活の全体にわたって適切な研修の機会を提供することが必要であります。」これは抽象的に言えばこのとおり。これは教育の法制でいったらどこの条文の何で書いてありますか。
  218. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは、御指摘であれば教育公務員特例法の第十九条並びにその二項であると思います。
  219. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さてそこで、そこから入りましょう。  教育公務員特例法の第十九条は、「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」と書いてありますね。「研究と修養」です。さて、今から問題はなる、一言で言う「研修」とは、十九条第一項に言う「研究と修養」を含めた「研修」という意味ですか。
  220. 中島源太郎

    中島国務大臣 この第十九条は、ここで書きましたように、先生がわざわざ御指摘になりましたように、「もとよりでありますが、これとともに」と、ここでつながるわけでございますね。その「もとよりでございますが、これとともに」というのが第十九条の一項と二項と同じものか、こういうことだろうと思います。  私はこれを解釈いたしますのに、第十九条の一項というのは、教育公務員のそれぞれが「その職責を遂行するために、絶えず」というのがございますから、「絶えず」というのは四六時中と申しますか、自分の生涯を通じてと申しますか、より限定をしたとしてもその職責にある間、「絶えず研究と修養に努め」る、こういうことであろうと思うのです。これは「絶えず」という言葉がございます。第二項は、それに対しまして、「任命権者は、教育公務員研修について、」その施設、その方途、その計画を立てて「その実施に努めなければならない。」ということでありますから、絶えず研修にいそしむ、そういうものの方向性あるいはそういう施設、どのように研究、修養に資するかということを計画を立てて、そしてそれに努めなければならないという義務規定である、このように考えております。
  221. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 僕が聞いているのは、その中身の一項、二項は別のときにやりましょう、今から我々が問題とする教員の「研修」という言葉です。第十九条第一項で言っているところの「教育公務員は、その職責を遂行するために、」職責ですよ、責務じゃありませんよ。これはまた後で議論しましょう。「絶えず研究と修養に努めなければならない。」この「研究と修養」の二つを含めて「研修」と呼んでいるのではありませんかと聞いているのです。いかがですか。
  222. 加戸守行

    加戸政府委員 ちょっと、法律技術的なことなので私からお答えさせていただきます。  教育公務員特例法の十九条第一項で「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」ここで書いております「研究」と「修養」は、十九条の見出しが(研修)となっておりますように、いわゆる「研修」の内容をブレークダウンした形で「研究」と「修養」と書かれていると思います。したがいまして、十九条の一項は、教育公務員が絶えず研修に努めなければならない一般的な責務を地方公務員よりも付加して規定をした。つまり、国家公務員、地方公務員の場合におきましてはこのような規定はございませんで、「勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。」そして、そのような研修任命権者が行うというのが地方公務員法の規定でございます。特例法は、一般の地方公務員に比べまして教育公務員は「絶えず研究と修養」、縮めますれば「研修」に努めなければならないという、教育公務員としての責務を規定したものと理解いたしております。
  223. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 要らぬことを答える必要はないんですよ。私が聞いているのは最初お答えになったことで済んでいるのですから、時間がむだです。地方公務員法の関係は今すぐ第二問で質問しますから、そこで簡潔に答えてください。あなたが言わんとしていることは皆質問の中に入れてありますから。  十九条の「研修」というのは「研究」と「修養」ですね。さてそこで、「修養」というのは何でしょうか。
  224. 中島源太郎

    中島国務大臣 先ほどの資質と能力に関係するわけではありませんが、「研究」と「修養」というふうに分けましたのは、教育公務員方々教育に対しまして知見を広く広める、あるいはその職責にある者についてその分野の研究をする、そういう分野。「修養」となりますと、先生おっしゃいますように、教育基本法にありますように「人格の完成」、こういうものを目指しましてそれぞれが、「ともに学ぶ」とおっしゃった、大変いい言葉をおっしゃったと思っておりますが、そういう意味で、限られた分野あるいはその研究というのではなくて、おのれの人格を完成するためを含めた修養。そういう意味で「研究」と「修養」とをあえてここに分けて、第十九条では括弧で(研修)とくくってありますけれども、「研修」を強いて分ければその二つになるということを示しておるのであろうと理解をしております。
  225. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 昭和五十一年、最高裁の大法廷では「教育」というものを実に簡潔に説明しております。教育は「人間の内面的価値に関する文化的な営み」こう規定しております。つまり、教師子供たちに接触していくときに、人間の内面的な価値を引き出すために文化的な営みを行うのが教育意味だ、いろいろな議論があったけれども、最高裁大法廷は裁判の結果こういうふうに集約した規定をなさって判示されているわけです。ですから、教育というのは文化的な営みでありますから、その意味研修、研究といわば教養というもの、これが非常に重要になってくるわけであります。ですから、広い文化的教養を持つように常に努力をしなければならないということですから、それはあくまで教師の自主的な研修によって広がっていく部分であります。行政研修で皆さん方が企画をして、教育センターに行って接触をして教育実践的指導力を学び考えるだけではとてもその能力は身につかない、幅広い人間の内面的な要求が重要であるということを規定しているのだというふうに理解しなければならぬと思います。  さてそこで、大臣が先ほどおっしゃいましたこの十九条の第一項は、「絶えず研究と修養に努めなければならない。」努力しなければならないです。それで第二項では、行政のこれへの対応を規定いたしております。「教育公務員任命権者は、教育公務員研修について、それに要する施設研修を奨励するための方途その他研修に関する計画を樹立し、その実施に努めなければならない。」と言っているのです。  さて、ここで第一項と第二項の関係でありますが、その前にお聞きしますが、先ほど局長が言いましたけれども、地方公務員法のいわば研修規定と教育公務員法で言う研修とはどこが違いますか。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  226. 加戸守行

    加戸政府委員 地方公務員法におきましては、「職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。」と規定しておりまして、これは地方公共団体の能率的な運営に資するという観点からの研修を受ける機会ということでございまして、その研修の前段階に目的が書いてあるわけでございます。つまり、勤務能率の発揮、増進のための研修と私ども理解しておりまして、その研修内容が若干、研修そのものの言葉というよりも、勤務能率の発揮、増進のためにという修飾語がかかっていますために、二項で「前項の研修は、任命権者が行うもの」とされております「前項の研修」というものの「研修」の内容は、狭いものとなっていると思います。一方、教育公務員特例法の十九条につきましては、「その職責を遂行するために」でございますから、書き方が、「勤務能率の発揮及び増進のために」というよりも、「職責を遂行するために」という目的語によりまして、感覚的に少し広がっているのではないかと私は理解をいたしております。  そこで、ここで言っております「絶えず研究と修養」と言っている内容は、地方公務員法で「任命権者が行うものとする」とされている研修よりも広い内容を持ったものが、教育公務員が「絶えず研究と修養に努めなければならない」内容であろうと理解いたしております。
  227. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 地方公務員法で言っているところの「能率」というのは、行政学上の行政能率というものを想定した、これがいわば研修ですから、専ら行政研修基本なんです。それでいいのです。  ところが、教特法十九条は「研究」といわば「修養」なんでありまして、極めて独自な研修の特殊な理解というものを位置づけたというふうに、この法律趣旨を読むべきだと思います。  そこでお聞きしますが、この十九条は学問の自由と関係がありますか、ないですか。
  228. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員特例法におきましては、教育公務員が「絶えず研究と修養」に努めるという、研究すべき内容あるいは研究しようとする内容というものにつきまして、憲法との関連は直接はないものと思っております。
  229. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さあ、そうでしょうか。憲法二十三条に言う学問の自由に基づいてつくり出されたその研究の成果というものは、そのまま教師の研究の中に取り入れる努力をしなければならないし、また同時に、学問の自由の中で問題にされる文科系の教養に相当するような多くの研究成果というものも、また知らなければならないと思います。  例えば人類の発生。子供たちに、人間は昔腹ばいになっていたんじゃないかな、わからないけれども。そのときに、人類学や考古学というものについての最低の研究成果について共通の認識になっているものについて、教師は一定程度理解度を持っていなければならぬでしょうね。例えば健康の場合に、御承知かどうか知りませんが、こうやって手を動かすのと前かがみで手を動かすのと、肩の作用は全然違います。整形外科の常識です。私は肩が痛いからすぐわかるのです。それはなぜかというと、人間は昔腹ばいになっていたということから、二本足で立っていったときに起きる体の整形の構造の変化というのは、もう人間の常識になっている。そういうものを言えば、子供たち姿勢の問題から始まり、子供たちの運動のあり方というものが子供の心身の成長に非常に大きな影響を持ちます。  ですから、単にここで言う「研究と修養」という問題は、学問の自由と無関係だという局長理解は、これは平行線です。皆さん方の有権解釈はいつも「ない」と言ってきたのです。小中高等学校にはありません、これは大学ですと言ってきたのです。しかしこの考え方は、私は基本的にはそうではないという理解です。イギリスのアカデミックフリーダムは、小中高校を含めてこの学問の自由という問題を前提にしていることは、御勉強なさっているから御承知のとおりでしょう。  さて、こういうふうに考えてみますと、十九条の第一項に言う「研究と修養に努めなければならない」教師公務員の場合は努めるものとするなんです。こっちは努めなければならないんです。公務員法とはそこの規定が違っております。したがいまして、教師子供たちと接していくためには、絶えず研究と修養のために努力をしなければならないという意味で、自主的に研修をしていくという、自主研修権と教育法学では言われている権利がここに認められているという理解を私はいたしますが、大臣いかがですか。
  230. 中島源太郎

    中島国務大臣 そこが先ほどから申し上げているところでございまして、十九条の一では、自主研修という意味を主に書いてございます。「とともに」と出しましたのは、その第二に、今度は任命権者はその実施に努めなければならないという責務を書いておるわけでございまして、この二つが両々相まって行われるところに意味があるということで、この提案理由の中で「が、これとともに、」という言葉でつなげた理由はそこにございます。
  231. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 二つがつないでいいんです。いいんですけれども、私が質問したことにお答えになってない。第一項で言っているのは、教師の自主研修権と称せられる教育権の問題が基本にあるよと。そうしますと、第二項の教育行政が対処しなければならないことに対して、教師側は要求する権利もあるし、つまり自主研修を可能にする条件を行政に援助してくれということを言い得ることを意味し、同時にまた、行政側はその研修を可能にするように努めなければならないというふうに二項は書いていると私は理解いたしますが、いかがですか。
  232. 中島源太郎

    中島国務大臣 その意味は、先ほど申し上げたことの繰り返しになると思いますが、その第十九条というのは、あくまでも第十九条一と二と分けておるところでございまして、それは権利と義務、両方ここにあるということでございますので、ただ権利だけをここに書いたものではない、こういうふうに理解しております。
  233. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ここだけで議論していますと時間をとりますからやめますが、一項、二項の意味は、他の公務員法と比べてみるとおわかりのように、片一方の研修任命権者が行う研修なのです。ここは、まず教師の絶えず努力しなければならぬ目標をきちんとうたって、それに対して行政は企画したりサポートしたりするような形でつまり努力しなければならない、こう書いてあるわけです。そういう意味で、権利と行政上の義務が規定されているという理解で対応していくことにいたしましょう。  さてそこで、行政研修、これは現行法の法制のもとで行政が行う研修、今までいろいろ全国的にたくさんトラブルを起こしてきた経過があります。この行政研修というのは、今言った教師の自主的な研修権とどのような関係があると理解されていますか。
  234. 中島源太郎

    中島国務大臣 御質問でございますが、先に政府委員から答弁をさせます。
  235. 加戸守行

    加戸政府委員 地方公務員法の規定におきまして地方公務員研修任命権者が行うこととされておるわけでございまして、一般的に行政サイドで対応する研修は地方公務員法の規定に基づくものでございます。教育公務員特例法はこの地方公務員法の規定を排除しておるわけではございませんで、十九条一項は教育公務員の「絶えず研究と修養に努めなければならない」責務を規定したわけでございますので、ある意味では、ここの十九条一項に基づきまして教育公務員が行います「研究」と「修養」は、自主的研修もございますしそれから地方公務員法の規定に基づいて任命権者が行う研修もあるわけでございまして、いわゆる根拠規定が何によるかということの違いはございますが、十九条一項で「絶えず研究と修養に努めなければならない」内容は、自主的研修並びに行政研修の双方を含むと私ども理解いたしております。
  236. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、大法廷はこの判決のときに大変苦労をしたのですよ。今のような行政側の有権解釈と教育学説並びに判例に基づく考え方とが対立したままになっているので、大法廷は折衷案として昭和五十一年の御承知のあの最高裁の学テ判決を下すことになるのです。ですから、おっしゃるように、私は何も今私の考え方を押しつけようと言っているのじゃありません、しかしここは、教育研修というものの位置づけをめぐって、大変大事な争点になる大きな法の理解の問題だということを申し上げておきたいのです。  さてそこで、行政研修に対して、教師はその指導助言に対して批判することができますか。
  237. 中島源太郎

    中島国務大臣 これは基本的には、今政府委員からも答弁をいたしましたように、第十九条の一の研修というものを二つに分けてはございますけれども、「研究」と「修養」と分けておりますが、この十九条の規定の第一項にあります「研修」は自己研修と行政研修を含めたものである、こういうことでございますので、双方相まって行われるべきものであります。
  238. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、わざわざ第二項は、行政研修教育中身までコントロールし得るような性質の行政の研修であり得ていいのかどうか、これの適法が問われているのが我が国の教育裁判なのです。ですから、私は、教育学説や判例に基づいた考え方基本だと思っていますが、皆さんは行政側の有権解釈をなさるでしょう。そこの違いがあるが、事研修という問題の基本考えるときには、教師の自主権というもの、自主的な研修権を認めた上で行政がそれを援助する、サポートするという性質のものであって、行政が研修の主体になるということはできないと私は理解をいたします。  例えば、学習指導要領を法規のように貫徹させようとする講習会は、行政研修の補完性、つまり教育研究に対してそれを補完していく補完性に沿うのか沿わないのか、これもまた今の教育の中で大変に争われている問題であります。これもなかなか結論が出ません。しかし、このように教育内容について行政が主体となって研修をする、それは一般公務員研修、能率を問題にする研修問題であって、教育公務員法で言うところの教師研修には出過ぎるものである、それは適法とは言えないおそれがありますよというのが、今日まだ結論は出していませんが、慎重に対処しなければならない一つの見解だ、こう理解すべきだと私は思いますが、いかがですか。
  239. 中島源太郎

    中島国務大臣 まさに先生がおっしゃったように、学校における教育というのは、学習指導要領に基づきまして各学校において編成される教育課程に従って行われてまいります。したがって、教育の自由というのは、先ほどは憲法の学問の自由を敷衍しておっしゃったわけでありますが、したがって自由に教育する権利を有するという御主張ももちろんあることは存じておりますが、しかし、国が必要かつ相当と認められる範囲で教育内容について決定する権能を有するということは、昭和五十一年五月二十一日の最高裁学力調査判決の示すところで明らかであるというふうに承知をいたしております。
  240. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 回答になっていませんけれども、まあいいです。ここで意見の相違はあっていいのです。対立したまま行きましょう。行政側から見た皆さんの研修の正当性を主張し得るように法を解釈して運用する、それに対して私たちの方は、憲法の学問の自由とそれから教育権の自由は密接不可分であり、そして、小中高においても学問の自由というものを前提にしなければ教育の自由と自主権はあり得ない、こういう対立した構造の中で今からの議論に入っていきたいと思います。  そこで、教育公務員特例法の今度は二十条の第二項が問題になりますが、校外自主研修という問題、校内では学校の中ですから、校外のいわば自主研修をどのように法律制度的に保障しておりますか。
  241. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員特例法におきましては、二十条の二項で勤務場所を離れて行う研修のことを規定いたしております。これは授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、勤務時間中であっても学校外で研修ができる根拠規定でございます。校内におきましてはこのような規定は直接ございませんけれども、本人が勤務に支障のない限り、自分の職責遂行のために必要な研修をみずからが行うということは、本来の勤務に支障がない限りは当然に許されることでございまして、二十条二項はそういった勤務場所を離れた研修の規定でございますので、校内についての直接の規定はございませんが、自分の本来の職責遂行に支障のない限り「研究」、「修養」を行うことは許されると思います。
  242. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そんなことを聞いているんじゃないのですよ。二十条の二項は、「教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて、」校長さんの承認を受けて、まず学校基本ですね、その承認を受けて、「勤務場所を離れて研修を行うことができる。」それで第三項で、「任命権者の定めるところにより、現職のままで、長期にわたる研修を受けることができる。」つまり学校の外で行う研修についてはかなり積極的な校外研修を認めておるが、これにはまた教師の自主的な研修中身としながら、ある意味では、この二項を読みますとわかりますように「本属長の承認を受けて」ですね。「承認を受けて」というのが大変重要な意味になってきます。今、初任研を言っていないのですよ、まず教師一般研修をきちんとして、その上で初任研の場合はどうなる、こういうふうに位置づけておかないと、ごっちゃに議論していると、はっきり問題が整理されませんから。ここで言っている二十条の二項は、「本属長の承認を受けて、勤務場所を離れて研修を行うことができる。」この場合に、その承認の中身をどう理解しますか。研修計画を長に出して、そしてこのようにやりますという吟味をして、校長の裁量に基づいて判断をして出かけますか。いかがですか。
  243. 加戸守行

    加戸政府委員 勤務場所を離れて研修を行う場合の本属長の承認でございますが、これは本属長が承認する際にいかなる条件を付するかによって異なるわけでございます。  例えば、この二十条二項を根拠として自宅研修等が行われるわけでございますけれども一般的に申し上げまして、公務員につきましては職務専念義務がございます。その職務専念義務を除外する根拠規定がこの二十条二項でございますから、給与を受けて、かつ、職務以外のことに従事するという場合は、一般的には他の公務員には認められていない制度として教育公務員に認められているわけでございますので、その場合、例えば夏季休業期間中のような長期休業期間に自宅研修という形で、勤務場所を離れて自宅で研修を行う場合につきましては、それが実態的に、実質的に本人の勉強になる研修を行っていただくかどうかという意味におきまして、例えば一定の計画を出していただく、あるいは事後の報告を求めるということが、特に長い場合の自宅研修等につきましては、そのような本属長の承認の条件として付されているケースが多いと理解いたしております。
  244. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この法律の「長の承認を受けて」という意味は、自主的に研修の計画を自分で立てて、そして、さあ、これで行きますよという、ある意味では形式的手続条項なのです。しかし、勝手気ままなことをできるはずはない。現在まで行政で皆さん方が認めている中身でいうと、自宅研修、それから定例研究会、これは皆さん方行政では認めてきたことです。そのほかに、学会さらには民間の教育団体、そこで一つ問題になるのです。組合の教研が問題になるのです。  そこで、ここで言っているこの承認という場合の扱いについて、今まで言った前者の場合、自宅の場合であれ定例研究会であれ、学会や民間研究学会、こういうのは通告で大体みんなパスなのです。もちろん自宅のときに、朝から晩まで家へ帰ってひっくり返って寝ているようなことを出すわけがない。ですけれども、それにはおのずから、公務員の専念義務がありますから、それには一定の本人の努力と限界があることは言うまでもありません。  さて、そうしますと、この場合の長の承認という意味が非常に重大に現場ではなるわけでありまして、学校先生方校外研修というものに出かけるときに、自分研修の自主的な研究計画を立ててそして校長の承認を得るんだが、そのときに、校長の承認だけが重要なのではなくて、校長の承認は形式的だという意味は、職員会議が重要なんです。そのときに、教師全体が集まって、そういう研修自分らの仲間の中でいいか悪いか、例えば長期の時間に一定程度出ていくというようなことが問題になるでしょうから、職員会議でみんなの了解を得なければいかぬでしょう。それが「協同」というものです。先ほど局長もおっしゃったでしょう、指導教官も現場教師たちと協同でとおっしゃいました。これは後で問題にしますよ。だからそういう意味で、協同ということを頭に置きながら、同時に自主的な研修計画をこの法に基づいて承認事項として処理させていくという法の趣旨は、これまた校外自主研修権というものをここで実は認めてきたのが今までの考え方である。もちろん長い間、教育センターをつくった、理科研修センターをつくった、五十年代から皆さん方がいろいろな研修のための条件整備をなさってこられた、それで、そういうところでいろいろな研修が行われてきたこともみんな承知の上で、それにもかかわらず、そういう条件整備をやっていたが、やはり研修は、教師の自主研修を前提にした上で運用していこうという慣行や考え方がこの法の中にあったと私は理解しますが、いかがですか。
  245. 加戸守行

    加戸政府委員 残念ながら嶋崎先生のお考えと私ども考えとは違うようでございまして、あくまでも地方公務員の場合には、住民あるいは国民の税金によって負担された、そしてそれは勤務時間における勤務を遂行することを前提としているわけでございまして、それを研修の場合に、二十条二項によりまして研修ができるというゆえんのものは、一つには、ここに書いてございますように「授業に支障のない限り、」ということでございますが、と同時に、「本属長の承認」と申しますのは、当該職員が行います研修が本人にとって有益なものであるか、あるいはその研修学校、勤務場所を離れるということについて、国民の目から見ても納税者の目から見ても当然の、教員の自主研修を認めるべき性格のものであるかどうかという諸般の事情を勘案しながら、国民の負託を受けて教育を遂行する教員が、そういった資質能力の向上のために役立つか、あるいはそれは国民の目から見て妥当なものであるか、そういうような視点から総合的に判断して、いわゆる責任を負う本属長がみずからの判断と権限において承認をする事柄ではないかと思います。  ただし、この二十条二項の規定は、十九条一項で教員が「絶えず研究と修養に努めなければならない。」というその一般的な責務を受けて、その責務が果たせるように研修の機会を与えようとする規定でございますから、そういう意味では、一般公務員に比べて教育公務員に大幅な研修の機会を与えようとした趣旨であることは事実でございますけれども、この制度があるがゆえに教員気持ち、自主性、自由な判断において独自な行動が当然に認められるべきであるという考え方は、文部省としてはとっていないところであります。
  246. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今の学校の外における自主研修制度的保障をめぐって、皆さん方は、やはり公務員の専念義務免除の一形態という理解をしているのです。これは有権解釈です。私たちは教育法学説並びに判例に基づいた判断をいたしております。  御承知のように昭和四十四年三月の松江の地裁判決は、「教育公務員研修は、その職務の特殊性、並びに一般研修が本人の意思に反して行なわれる場合は十分な効果を期待できないこと、」教師期待にこたえられないような研修は十分な効果を期待できないこと、「教育公務員特例法一九条、二〇条が教育公務員研修につき自主性を基調とし、これを奨励するため任命権者研修計画の樹立とその実施を命じていること等に鑑み、事前に当該教職員の意向を確かめ、その意思を尊重して実施することが望ましい。」という、教育行政のあり方について、つまり教師の自主権に対して教育行政はこのような対応であることが望ましいという判決を下したのです。したがいまして、これも、あなた方の有権解釈と教育法学説や判例による私たちの今日の考え方との間では争点になっている問題であって、皆さん方の行政の有権解釈のみが唯一の法の運用解釈だと断定するのは、余りにも権力による支配と言われる意味もまたそこに含んでくるわけであります。ここでまた、教育基本法の不当な支配問題が重要になってきます。  御承知のように、これまた、教育法学説と判例は私たちの考え方と皆さんの意見の相違を明確にしております。最高裁の学テについての判決は、教育基本法十条一項が「排斥しているのは、教育国民の信託にこたえて自主的に行われることをゆがめるような「不当な支配」であつて、そのような支配と認められる限り、その主体のいかんは問うところでないと解しなければならない。」「憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為がここにいう「不当な支配」となりえないことは明らかであるが、他の教育関係法律は教基法の規定及び同法の趣旨、目的に反しないように解釈されなければならないのであるから、教育行政機関がこれらの法律を運用する場合においても、当該法律規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き、教基法一〇条一項にいう「不当な支配」とならないように配慮しなければならない拘束を受けているものと解される」、これが最高裁の学テ判決であります。だから、皆さん方の解釈は解釈として現にあるのです。我々とは意見が違う。しかし、行政による研修と対応をなさるときには不当な支配にならないように配慮するというふうに解して法の運用をしなければならぬ、これが最高裁判決の趣旨であります。  したがいまして、学校の外における校外研修の自主権の問題についても、松江判決並びに今のような判決などを含めて、私たちの言う法の考え方、そういうふうに判決は判示しているという理解と皆さんの理解との間に相違がある。その相違がある中で、皆さんのやっていることは違法ではない、しかし適法でもないぞと言われるようなことについては慎重な対処をすべきである、それが公務員の行政の持つ中立性という問題です。  これはちょっと脱線しますが、先ほども馬場委員が言っていましたけれども教育行政の中立性というのがありますね。そうしたら、教育の最高の高官が現職のまま政治的な立場を明らかにし、衆参二院制度という憲法の制度に一定の価値判断を下すようなことはこの中立性に明らかに違反している。私の例を申し上げましょう。私は国家公務員でした。立候補することを決意したときに電話一本で教授会に辞表を提出しました。国家公務員の地位利用や、そういう大学における自分の研究の地位利用ということでやれば大学に迷惑がかかる。恐らく文部省は、私がそんなことをしたときは大問題にしたいでしょう。当時は井上正治問題とかたくさん問題のあったときですから、私は毅然と辞表を出して行動しました。それだけに高官がやっている、まさに教育の政治的中立性ということを基本に据えなければならない文教行政の高官がそのような立場をとるときには、辞表をお出しになって行動すべきだと私は思う。そういう意味で、馬場委員が先ほど言われたことについて、大臣も本気になって、これは人に言われてやることではありません、本人が自主的に辞表を出しておやめになるのが筋というものですし、私自身は国家公務員でしたからそのように対処してきましたので、大臣、よく頭に置いて対処してください。これはちょっとわき道にそれました。  さて、与えられた時間が参りました。いよいよこの、今までの基本を前提にして、初任研適用の個別条項の理解に入りたいところでありますが、鍛冶さんが二十分ほど早くおやめいただいたその時間を持たせていただければあと二十分やりますが、私の与えられた時間が二十二分までなんです。だけれども、私はその関係で早く始めたのですが、委員長がだめだと言えばやめますけれども委員長の判断をお願いします。
  247. 中村靖

    中村委員長 あらかじめ各党の協議によりまして各質疑者の持ち時間を決めておりますので、嶋崎君には、持ち時間が終了いたしましたら質疑を打ち切っていただきたいと思います。
  248. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それならば、来週の次の委員会で重要な法律事項そのものについて、現場教師の側からすると、今度この法律が出たらどこまでがどう対応できるかという多くの問題点をはらんでいるのですから、それについて立法府が一定の解釈と判断を示すことは現場教師たちが職場で対応していく一つの判断になるわけですから、そういう議論はきちんとこの委員会でやっていただくように委員長に強くお願いをして、質問を残して終わりたいと思います。
  249. 中村靖

    中村委員長 林保夫君。
  250. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣初め皆様、御苦労さまでございます。  教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その背景及び実情、さらにはこれからの展望につきまして、率直なお伺いをいたしたいと存じます。  教育のかなめはやはり先生といいますか、教師の皆さんであることは言うまでもなく、子供児童生徒を愛し、教育情熱を持つすぐれた教師を確保することは、これはもう教育の前提条件でございますし、また、今の教育改革の重要な課題でもございます。先般の臨時教育審議会の第二次答申や教職員養成審議会の答申においても、教員資質向上を図る、このための重要な政策課題として初任者研修制度が提案されておる、このように理解しておりますが、この制度を創設する目的なり精神は何か、改めて大臣の御所見を伺っておきたいと存じます。
  251. 中島源太郎

    中島国務大臣 「教育は人なり」と言われますように、教育者資質向上はぜひとも必要でございます。そのために初任者研修制度を御提案申し上げておりますけれども、これは初任者実践的な指導力使命感を養う、また幅広い知見を得ていただくということを一口で言えば目的といたしておるわけでございます。同時に、初任者研修を契機といたしまして、その初任者のみならず他の教職員研修意欲が刺激されまして、学校全体の活性化が図られることもあわせて期待をいたしておるところでございまして、そういう教師像によって新しい児童生徒諸君が個性化、多様化の中ですくすく育っていただけるような、そういう環境づくりの重要な部分として御提案を申し上げておるところでございます。
  252. 林保夫

    ○林(保)委員 局長おられますか。——まず冒頭、この制度を実施いたしますとどういう効果があるのか。よくなるという期待を持ってやっておられると思いますが、事務的にどう御判断しておられるか、お答えいただきたいと思います。
  253. 加戸守行

    加戸政府委員 この研修制度が存在しない段階との比較でお答え申し上げさせていただきますと、いわゆる今の新しく教員になられる方々は、それだけの一定のレベルを持った学力を有して入ってこられるわけでございますけれども、最近の子供たちの多様化したそれぞれの個性に対応する生徒への接し方、あるいはその対応というものにつきましてはまだ未熟な段階でもございますし、そういった点では豊富な経験を持ちます教員による指導によって、自分子供たち児童生徒に対する理解を深め、あるいはその対応について実地について経験を積みますことにより子供たちの中に溶け込んでいけるようになる、そういう意味での効果を一つ期待しておるわけでございます。  それから、校外研修校内研修を問わず、いわゆる一年間研修によりまして、教育に対する情熱なり使命感というものを、先輩教員が持っている心も受け継いでいただきまして、教育に対する真剣な取り組みが行われるようになるであろう。そういう意味では、子供たちに対します教育的な愛情情熱というものが初任者研修の期間を通じて養成されていくであろうということでございます。  さらに、技術的な話でございますが、初任者の場合には、いろいろなカリキュラムの組み方、あるいは教材研究、あるいは学習指導等におきましてもまだまだ不十分な段階でございますから、この初任者研修を通じまして生涯の教員として自立して一本立ちしていくというような効果もねらっているわけでございまして、もちろん教員学校生活の中で成長していくわけでございますけれども、少なくとも、初任者研修を受けることによりましてその自立なりあるいは教員としての適格性というものを今までの教員よりもより早く、そして着実に身につけていくことができる、そういうような効果を期待しておるところでございます。
  254. 林保夫

    ○林(保)委員 常識的に申し上げまして、どこの社会でもといいますか、公務員でも一般の会社でも、私も同じ立場で長年通信社におったわけですけれども初任者研修しないところはないですね。私ども、臨教審の答申を見てびっくりするといいますか、今までも研修制度はあったことはあったのですよ、それがどうしてできなかったのか、その辺が極めて異質であって、やはり臨教審はやらなければならなかったという実情につながっているのではないかと思うのですが、大臣の御所見をちょっと先にお聞きいたしまして、それから後で局長に、どうしてそういうように異常になっていたのか、戦後の研修の経過に触れて少し御説明をいただきたいと存じます。
  255. 加戸守行

    加戸政府委員 大変不幸なことでございますが、いわゆる教員に対します、新任に限りませんが、いろいろな研修という事柄につきましては、かつて道徳教育の観点からの教育課程の改訂がございまして、その講習会を実施しようとしたときに強い反対闘争がありまして、そういった過去のいろいろな不幸な経緯はございましたが、いわゆる行政研修教育委員会が行います研修についての強いアレルギー等が教育世界にあったわけでございます。そういう意味では、こういういろいろな形でございますけれども研修を実施しようといたしましても強い反対運動等が展開される、そのために腰がびびってしまうというような状況が過去あったことが、ある意味ではこういう研修を進めようとする場合の心理的な圧迫要因にはなっていたのではないかという感じはするわけでございます。  しかしながら、研修の必要性はつとに叫ばれていたわけでございまして、特に教員資質向上を求める声も強くなってまいったわけでございます。昭和五十年代に入りましてからは、各般の行政、教育委員会等が行います研修について、文部省といたしましても、各種の補助措置等を講じまして、例えば新規採用教員研修であるとか五年の教職経験をした者の研修であるとか、あるいは文部省におきます中央の研修であるとか、各般の研修施策を展開することによりまして、いろいろな研修の方途が講ぜられ、進んできたという状況になってまいっておるわけでございます。  現時点におきましては、行政側が行います研修についての強い反対といいますか、実力行使で阻止をするという状況が過去に比べますと減ってまいっておりまして、そういう意味では、私ども考えております初任者研修も何とか円滑に実施をできるのではないかという期待を今寄せているところでもございます。
  256. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、今局長からお聞きになったように、やりたくてもできなかった、こういうこと自体が、本当に教育国民が憂えている今一番のポイントだと私は思うのです。私は野党だから申し上げるのではなくて、国民の立場からして、政権を担当しておられる方々並びに教育行政を担当しておられる文部省、一体この責任は大臣どういうことなのですか。その点をまず伺わないと、初任者研修制度、この検討をやる前提がはっきりしなければやってみたってもとのもくあみだと思うのです。また、やろうと思ったが反対が強いからやめたなんということになれば恥の上塗りになるという懸念をいたしますがゆえに、大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  257. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生の御懸念は大変当を得た御指摘でございまして、私どもは、そういう過去の経過を踏まえまして、今回自信を持ってこの法案を御提出申し上げ、過日、委員長の御指名によりまして趣旨の御説明を申し上げる機会を得まして、こうして御審議に入っていただいたことを大変ありがたいと思っております。できるだけ速やかに御賛成をいただきたいと思っておりますが、その趣旨は、先ほど申し上げましたように、教育の根幹であります人づくり、その教職にある方々研修を行う、これは早くから御希望があったわけでございますが、ただ、その点で、私どもはさらに試行を行いまして、その試行の結果もアンケートをとりまして、それぞれいい面、悪い面を正しつつ、幸いにして効果があったという御意見も非常に多いものでございますから、直すべきとこは直しますが、その御意思に従ってこの法案を御提出いたした次第でございまして、この研修をぜひとも実行に移したい、このように考えております。
  258. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣の御担当になられて以来の姿勢及び決意は私どももよく理解をいたしますので、それはそれで結構だと思います。  時間の節約の関係から、調査室からいただきました資料を見ますと、「戦後の新任教員研修制度に関する主なる提言」といたしまして、昭和三十三年の「教員養成制度改善方策について」、三十七年の「教員養成制度改善について」、四十六年の「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本施策について」、四十七年の「教員養成改善方策について」、五十三年の「教員資質能力の向上について」、五十八年の「教員養成及び免許制度改善について」、そして五十七年五月三十一日の文部省初等中等教育局長通知教育採用及び研修について」、それを子細に改めて読ませていただきました。これでかなりのことができるなという実感であることは事実なんです。そして臨教審の答申がございましたね、それで初任者研修の試行を始められた。こういう手順だろうと思いますが、局長、そう理解してよろしいのでしょうか。それで、今やっている試行がどういう段階にあるかについて御説明を、事務的にもひとつつけ加えて御説明いただきたいと存じます。
  259. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま先生読み上げられました各般の各審議会あるいは調査会等の、答申あるいは建議という形で教員資質向上についてのいろいろな御提言を従来からいただいたわけでございまして、古くは昭和二十二年の教育刷新委員会の試補制度についての建議でございまして、それ以後、あるいは昭和四十七年の教育職員養成審議会の時点から初任者研修というような考え方の答申も建議をいただきまして、その後いろいろな流れを経ながら、先生おっしゃいますように、臨時教育審議会におきまして第二次答申で初任者研修の提言がございましたものですから、私どもは、教育職員養成審議会に初任者研修のあり方についての諮問を行いますとともに、予算要求をいたしまして、昭和六十二年度からこの初任者研修の本格実施を前提とした試行に踏み切ったわけでございます。  昭和六十二年度から実施をいたしております初任者研修の試行は、予算上は三十都道府県指定都市で予算を積算いたしたわけでございますが、希望いたしました任命権者でございます都府県指定都市が三十六に上りまして、もちろんこの三十六がすべての校種を実施しているわけではございませんで、一部の県市におきましては特定の校種、例えば高等学校は実施しないとか特殊教育学校は実施してないという、全校種ではないものも一部含まれておりますが、この三十六都府県市に対しまして、予算上は二千百九十名の新任教員に対して一年間にわたる試行を行っているところでございます。  この試行の形態は、校内研修といたしまして指導教員による指導年間七十日程度校外における研修といたしまして教育センター等における年間三十五日程度研修、一応この二つを大きな中核といたしましてモデルをつくりまして、このモデル案で各都道府県に流したわけでございます。各都道府県指定都市におきましては、それぞれの地域の実情に応じまして、そのモデルどおりではございませんで、県の判断によりましていろいろな工夫をしながら、一年間にわたる試行を行っていただいたわけでございます。  その成果につきましては、各任命権者側から今報告を求めまして内容を精査しているところでございますし、また、試行の対象となりました教員あるいは指導教員、試行対象教員の所属する校長先生方、全員でございますけれども、なるべく全員に近い形で意見をお聞きして、今その意見を集約中という段階でございます。大臣が申し上げましたように、私どもは、手前みそでございますが大変大きな成果を上げていると考えるわけでございます。  この試行制度を、昭和六十三年度におきましては全国五十七都道府県指定都市すべてにおきまして、また、小中高等学校も盲・聾・養護学校もすべての校種について試行いただくということで、新任教員四千百六十名を対象といたしまして、一年間の試行を行いたいと考えております。六十三年度予算におきましては、それに要します所要経費五十三億円を計上して、今、全国五十七都道府県市でスタートを切っている段階でございます。
  260. 林保夫

    ○林(保)委員 六十二年の三十六をちょっと読み上げていただけませんでしょうか。それから五十七も注釈があれば、具体的に名前を言っていただきませんと、どこがどうなっているのかわかりませんので、御面倒でもお知らせいただきたいと思います。
  261. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修の試行の対象となりました三十六都府県市を北の方から県名、市名を読み上げさせていただきます。  まず都府県の分でございますが、岩手県、秋田県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、新潟県、富山県、岐阜県、静岡県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、鳥取県、島根県、岡山県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県、以上が都府県分で、三十二都府県でございます。それから、残り四つが指定都市でございまして、京都市、大阪市、北九州市、福岡市、以上の三十六都府県市ということになるわけでございます。  それから、学校種別で一部実施をしていない県が今三十六の中に含まれてございます。もし必要がございましたら申し上げさせていただきます。
  262. 林保夫

    ○林(保)委員 私も教師でもなければ何でもございませんので、具体的にどこがどういう構図になっているかわからないんですけれども、例えば青森と北海道がないから寒いところはやらぬのかなと思ってみたり、途中大事なところがちょっと抜けていますね。それらは、やりたくなくてやらなかったのか、やりたくてもできなかったのか。その辺の背景を率直に承っておきたいと思うのです。
  263. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、六十二年度予算におきましては所要経費三十億円を計上いたしましたが、これは三十都道府県指定都市分でございまして、私どもの見積もりとしては、二十五県と五つの指定都市というカウントで予算を積算いたしたわけでございます。そして、もちろん初めから全都道府県での試行は困難でございまして、私どもは、各都道府県にお流しをしまして手を挙げられる県、つまり本県では六十二年度の試行を行いたいというような県を募ったわけでございまして、その結果として名乗りを上げてまいりましたのが三十九県市になったと思いますが、既に予算上の措置その他で三十六県分でいっぱいになったわけでございます。  それはなぜかと申し上げますと、県によりましては、高等学校はやらないとか中学校はやらないという分もございましたり、人数も縮小した県もございましたから、三十県市を超えて三十六まではいけたわけでございますが、それ以上は予算措置の対応がないということで、三県につきましては六十三年度に見送っていただきまして、今読み上げました三十六都府県市の試行をしたわけでございます。  一般的に申しますと、これだけの試行をするためにはある程度教職員団体側の理解というのも必要でございますし、県の判断として、本県ならばスムーズに試行に入っていけるという判断があったからではないかと思いますけれども、それは内部の事情でございまして、具体的に教職員団体の反対があるから六十二年度はできないということを正式におっしゃったわけではなくて、文部省といたしましては、六十二年度におきます試行を募りました結果が今申し上げたように予算をいっぱいに満たす程度の形で出てまいったものですから、名乗りを挙げた順番から円滑に試行をお願いした、こういう状況でございます。
  264. 林保夫

    ○林(保)委員 今お言葉にありましたけれども、一部教職員団体が何とかというお話がありましたけれども、何かこれとの労働協約とかあるいは交渉事がないとできない性質のものなんですか、そうではないんでしょうかという点と、それから今度の六十三年度が五十七でしたかね、これで漏れているところがあるんでしょうか。ということは、今度の立法措置で対象とするところは全部入っておるんでしょうか、それともそうではないのかという点を明らかにしていただきたいんです。
  265. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修の試行にいたしましても、これは公の機関として都道府県教育委員会あるいは指定都市教育委員会が言うなれば管理運営事項の一つとして例えば実施要綱等を決められるわけでございますから、これは地方公務員法上に言う職員団体との交渉事項には該当しない事柄でございます。しかしながら、この初任者研修の試行に対しまして強い反対の動き、行動がございますれば、当然に末端の学校におきます混乱がある程度予想されるわけでございますので、そういった実際上の配慮という観点から、六十二年度に先走って手を挙げたために激しい突き上げ、反対が来るという蓋然性といいますか、そういうおそれといいますか、そういった不安を持たれた県もないわけじゃないと思いますけれども、そういう形でそれぞれの思惑等はございましたが、試行をやるかやらないかについて教職員団体と協議をされたということは昭和六十二年度についてはなかったわけでございまして、むしろ教育委員会が決定しようとすることに対する抗議行動その他座り込み等の事例はございますけれども、六十二年度はそういう形で三十六都府県市がスタートしたわけでございます。六十三年度は全国的な試行ということでございますので、私どもは全国の都道府県指定都市にお呼びかけをいたしましたところ、現在、四十七の都道府県並びに十の指定都市のすべてにおいてこの初任者研修の試行をしていただくということで進められているわけでございます。ただ、一部の県市におきましては、教職員団体の強い反対行動等はございますけれども、このことを交渉事項とはいたしませんで、その抗議申し込みに対する応対をしているというような状況はございます。しかしながら、あくまでも基本は、先生おっしゃいますようにこれは教職員団体との交渉事項ではございません。
  266. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、今度の六十三年の場合、文部省さんはいろいろなしっかりした見方を持っておられると思うのでございますが、今おっしゃった中でどうもできそうにないなというところがあるのでございますか。あるとすればどことどこなのでしょうか、教えていただきたいと思います。
  267. 加戸守行

    加戸政府委員 この問題は、初任者研修の試行を実施いたしました場合の県単位の職員団体の動向が大きく物を言うわけでございますし、また、その教職員団体が発します指令を受けた学校分会等でどのような行動がとられるのかという問題とも関連するわけでもございます。  そういった点で、たびたび当委員会でも問題になりました教育助成局長通達と申しますのは、六十三年度試行に向けて、この阻止・撤回のための各般の行動が本部の方で方針が決められるということで、それを受けた各県段階の対応で違法行為が出ないようにという観点からの通知を出させていただいたわけでございますけれども、私どもとしましては、今の見通しとして五十七都道府県指定都市が、スムーズに円滑にとまでは完全に申し上げられませんけれども、何とか全面試行は行っていただけるのではないかという期待を持っているところでございます。これはあくまでも、具体的な強い反対行動、対応ということが予測されないわけでもございませんので、確たる一〇〇%の自信を持って申し上げるわけにいきませんけれども、この初任者研修につきましては、各任命権者側におきまして相当かたい決意で試行を実施していただくということでございますので、私どもは、初任者研修は五十七都道府県指定都市において全部試行をいただけるものと理解をいたしております。
  268. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、今お聞きのように混乱する、何か大変なことが起こるという蓋然性が懸念される状況というのはやはり異常だと思いますね。それをどのように克服するか、この辺はそれぞれの意見の違いはあっても実務の問題でございますので、私はまさに不幸な事態になっておるなという実感を禁じ得ないのでございますが、大臣はどうお考えになりますか。もう一度現下の状況について率直にお答えいただきたい。
  269. 中島源太郎

    中島国務大臣 そう杞憂されるような蓋然性があるということは、もしあるとすればまことに残念なことでございます。したがって、これは先ほども申しましたように、私どもは臨教審答申を得まして自信を持って御提案いたしておりますが、なおかつ、試行の中からいろいろな声を酌み取り、そして、それを実際に試行したところで確かに効果があったということで、また幅広く御意見を集約されまして、それが世論となりましてスムーズにことしの試行が行われ、その試行を通じてさらによりよき形の初任者研修が実行に移りますことを期待し、努力をいたしてまいるつもりでございます。
  270. 林保夫

    ○林(保)委員 最後に、実に淡々としてどういう措置をとられるかということをお聞きしようかと思ったのですが、たまたま加戸教育助成局長が今お触れになりました三月二十九日付の「教職員服務規律の確保について」、過般の文教委員会でかなり議論になっておったと思いますので、私も改めて一体どういうことなのだ、こういう観点で局長に常識的な答弁をお願いしたいと思います。  まず第一点は、臨教審の答申におきましても、一部の教職員団体の違法な争議行為に対する反省が求められております。これは大臣に聞かなければならぬ問題かもしれませんけれども服務規律の確保をさらに図らなければいかぬ。新聞で見ましても、私ども国民の立場から見ましても、ある問題が起こる、そうすると大騒動になりますね。そして、子供や父兄をほっておいて、教師教育委員会あるいは地方公共団体あるいは文部省と対決が起こる。本来、愛情を持って学を深め子供を育てる場にあってはならないことが起こっておりますよね。文部省はどういう点が問題だとしておられるのか。三月二十九日付の「教職員服務規律の確保について」の概要をこの機会に、棒読みで読んでいただいても結構ですから、御説明いただきたいと思います。
  271. 加戸守行

    加戸政府委員 臨教審答申は、一部の教職員団体の行動につきまして、関係者の自覚と反省を強く求めたいということを申しておりますと同時に、文部省に対しましてもそれぞれの苦情といいますか提言をいただいているわけでございますから、ある意味ではけんか両成敗のような書き方でないわけではございませんけれども、そういった事柄文部省の対応にもそれぞれ反省すべき点がないわけではございませんが、従来から教職員団体の行動によりまして学校現場で大きな混乱が起きているという状況は、大変悲しいことでございますけれども昭和三十年代に入りましてから今日まで続いているわけでございます。  そこで、文部省といたしましては、法令に基づいて行動していただくということを基本といたしておるわけでございまして、また私ども行政の立場でも、違法行為学校教育現場で行われるということはできる限り避けたい、また仮に違法行為が起こりました場合には、それに対する厳正な処分をとっていただかざるを得ないし、そのことがまた再び学校現場に大きな混乱をいや増すというような結果にもなることを避けたいとの気持ちが強いわけでございます。したがいまして、従来から、教職員団体におきまして違法なストライキ等を計画されあるいは指令が出ました段階におきましては、文部省といたしまして、違法なストライキを行わないよう、かつ、違法なストライキが行われました場合には厳正な措置をとるようにという通達を出してまいったわけでございますし、さらに、いわゆる国政選挙、衆参両院の選挙あるいは地方統一選挙等におきまして、教職員公務員法あるいは公職選挙法等の規定に違反するような違法な行為を行わないように具体的な行為を細部に示しまして、それに対する適切な対応を都道府県にお願いしてきたという過去の事情があるわけでございます。  私ども、法によってすべて縛るということだけを本意とするわけではございませんけれども教職員の行われております違法な活動につきましては、法を知らないために教職員行動に参加するあるいは行動をとられるということがないように、法の規定に基づきまして適切な指導を行ってきたつもりでございます。  六十三年三月二十九日の通達は、文部省教育助成局長通知でございますけれども先生のお言葉でございますので、通知文全文を読み上げさせていただきます。   日本教職員組合は、本年二月一日から三日にかけて開催された第六十四回定期大会において、「教育臨調路線」と対決し、「初任者研修制度」、「教育職員免許法改悪」に反対するため、ストライキを含む全国統一闘争を組織し、不退転の決意でたたかう等を内容とする昭和六十二年度運動方針を決定し、その後三月二十四日に開催された第百十七回中央委員会においても、臨教審関連六法案を阻止するため、国会審議の山場でストライキを含む全国統一闘争を組織してたたかう等とした当面の闘争方針を決定しています。また、昭和六十二年度運動方針においては、今年度から実施されている初任者研修試行阻止のため、集会、デモ、署名・決議などによる反対行動を行うこととしています。   いうまでもなく、公立学校教職員は次代を担う国民の育成という極めて公共性の高い職責を担うものであり、公務員たる教職員が争議行為を行うことは、法律で厳に禁止されているところであります。また、公立学校教育公務員については、他の地方公務員とは異なり、その職務と責任の特殊性にかんがみ教育公務員特例法により政治的行為が国立学校教育公務員と同様に制限されているところであり、国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修の実施を妨害するために、示威運動や署名運動の企画・指導等を行うこと、そのような目的を有する文書、図画等を発行し、回覧に供すること等は政治的行為に該当するものとして禁止されているところであります。それにもかかわらず、国民からの厳しい批判を無視し、ストライキ等の違法行為を含む闘争を行おうとし、また、政治的行為の制限に違反するような反対行動を行おうとしていることは全く理解に苦しむところであり、誠に遺憾であります。   貴職におかれては、教職員が争議行為政治的行為の制限に違反する違法な行為を行ったり、教育の政治的中立性を疑わしめる行為をすることにより、国民学校教育に対する信頼を裏切る結果を招くことのないよう教職員服務規律の確保は努められるよう願います。   なお、貴管下市町村教育委員会に対しても、このことの周知徹底について遺憾のないようお取り計らい願います。  今読み上げましたのが通達の内容でございますが、これを出しました趣旨は、この通達に書いてございますけれども、日教組の運動方針並びに中央委員会におきます外部に出されました決定に基づいて、各都道府県におきます学校現場等におきまして、この運動方針あるいは闘争方針等を受けて、いわゆる法を知らないがために違法な行為に及ぶことのないよう教職員に注意を喚起したわけでございまして、一つが、六法案粉砕のためのストライキに対しましては法律で禁止されている違法な争議行為をしないようにということでございますし、二つ目は、初任者研修の試行が六十三年度五十七都道府県指定都市でスタートするわけでございますが、これに対します阻止闘争がいわゆる教育公務員特例法、それに基づく国家公務員法並びにそれに基づきます人事院規則で定める政治的行為に該当する行為を行うことのないように、いわゆる人事院規則の規定をそのまま引き写して通知を流したわけでございます。  その中で、「公の機関において決定した政策の実施、」のところに「例えば初任者研修の実施」という言葉を入れておりますのは文部省サイドで入れた考え方でございまして、それ以外のこの違法行為に関します部分は、人事院規則の条文どおりの規定を引いて周知徹底を図ろうとしたことでございまして、私どもは、学校現場におきまして法を知らざるがゆえに違法な行為に及ぶことのないように注意を喚起させていただいたということでございます。  なお、付言させていただきますれば、従来の通達と違いまして、まだ運動の具体的な指令が発出されておりませんので、「厳正な措置をとられるよう」という従来の例文はこの中には入れておりません。
  272. 林保夫

    ○林(保)委員 わざわざ読んでいただきましたのは、ほかでもございません、本委員会では毎回この問題が大変重要な問題として議論されながら、一般の人にはわかっていない、こういう政治ではやはりいかぬ、こういうことからわざわざお聞きしたわけでございますが、局長、このような政治的な行為についての注意勧告というのですか、そういうものをどういう問題のときに出されたか、実例をはっきりと言ってお示しいただきたいと思います。
  273. 加戸守行

    加戸政府委員 過去に教育助成局長教育助成局ができます以前は初等中等教育局長でございますが、歴代の局長通知を出させていただいております事例が、一つは、例えば春闘あるいはその他の場合におきましてストライキの方針が具体的に決定されました段階、あるいはストライキを実施する蓋然性、可能性が高い場合等につきまして、「教職員の争議行為について」という題名で、違法な行為、違法なストライキが行われないようにということの通達を流させていただいております。  それから、二つ目のケースが、先ほど申し上げましたように、衆議院選挙あるいは参議院選挙あるいは統一地方選挙等のようなケースでございまして、選挙が行われようとするたびごとに、当然のことではございますが、教職員団体におきまして特定の候補者を支持し、反対する等の行動が具体的な形で方針として決められました場合には、教職員が、またこれも法を知らないために、地方公務員法あるいは教育公務員特例法、国家公務員法、公職選挙法等の諸規定に触れる行為に及ばないような注意喚起の意味をもちまして、毎回の選挙のたびに具体的な事例を挙げ、行為につきましてその論拠を示し、通知を出させていただいてまいっているところでございます。
  274. 林保夫

    ○林(保)委員 そういったあれは、それなりの専門的な立場での御見解でなくて、私は常識として承りたかったわけですが、言うまでもなく過日来議論になっておりますのは、今回の通知について一部に、組合の活動を不当に制限する、こういう趣旨でのお訴えが随分出たと思うのです。その根拠として憲法十六条の請願権というのと憲法二十一条の表現の自由、ほかにありましたかね、大体その二つが出ていたと思うのですが、それについて、今度は常識というよりも明確な法解釈をひとつ専門の立場でお示しいただきたいと思います。抵触するのかしないのか、しないとすればどういう理由か、これが多くの議論のポイントだったと思いますので、承っておきたい。
  275. 加戸守行

    加戸政府委員 文部省といたしましては、組合の正当な活動に対してこれを批判したり介入するつもりは毛頭ございません。ただ、法令違反する行為が起きる危険性のあるものについての注意を喚起しているわけでございまして、組合の活動を仮に不当に制限するという表現が当たっているとするならば、違法な活動を今まで行っていたということになるわけでございまして、私どもは、違法ではない行動をとられることにつきましては、組合活動に毛頭関与するつもりもございません。  今回の通知内容は、いわゆる教育公務員につきまして、その職務と責任の特殊性にかんがみ、教育公務員特例法に基づきます国家公務員法並びにそれを受けた人事院規則で規定されておりますいわゆる教育公務員には制限されている政治的行為並びに、先ほど申し上げました地方公務員法の規定によって禁止をされております争議行為そのものを行うことのないよう求めたものでございまして、このような行為を行うこと自体が法律で禁止されているところでございまして、公立学校教職員が法によって禁止または制限されている行為を行わないよう服務規律の確保を求めるのは当然のことであり、また今後ともその趣旨の徹底を図っていきたいと思うわけでございます。組合が法令の範囲内におきまして適法な行動をとられることに私どもは関与するつもりは毛頭ございません。違法な指令等に基づきまして、教職員が知らずして法を犯すことのないようにということの注意を喚起しているところでございます。  それで、今回の通知と憲法十六条並びに憲法二十一条との関係でございますが、ただいままでの御質疑で政府委員には答弁のチャンスを与えられませんでしたが、今の御質問で答弁のチャンスを与えていただきましてありがとうございます。  憲法十六条におきましては、法律等の制定、改正等に関しまして何人も平穏に請願する権利を有するとしており、すべての国民に請願する権利を保障されているわけでございます。しかしながら、今回の通知は、このような憲法上の請願行為としてではなく、教育公務員特例法によりまして公立学校教育公務員について制限されている政治的行為、例えば国の機関または公の機関において決定した政策の実施を妨害するために示威運動や署名運動の指導、企画等を行うことのないように、厳密な法令によって禁止されております範囲内において服務規律の確保を求めたものでございまして、何ら憲法十六条に定める請願権を侵害するといった内容のものでないことは当然でございます。  それから憲法二十一条との関係でございますが、憲法二十一条では「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」と規定しておりますが、この表現の自由は、公共の福祉のため必要があるときには一定の制約ができると解されております。このことにつきましては、昭和四十九年十一月六日の猿払事件最高裁判決でも明らかにされているところでございまして、  行政の中立的運営が確保され、これに対する国民信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないというべきである。したがって、公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである、 判決文としてはちょっと飛びますが、  行政の中立的運営とこれに対する国民信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであって、その目的は正当なものというべきである。 とされ、国家公務員に対する人事院規則十四—七で定める政治的行為の制限は合憲とされているところでもございます。  今申し上げましたように、憲法で許容されているのは請願の権利、表現の自由ということでございまして、文部省としてはこれらに介入するつもりは全くございませんし、現在憲法の範囲内におきまして制定されております法令を周知徹底するのが文部省の務めであろうかと理解しておる次第でございます。
  276. 林保夫

    ○林(保)委員 今の局長答弁を聞きまして、これはまたこの委員会も異常なのかなということで逆にびっくりしたのです、あれほど議論になっていたからもう十二分に御説明になっていたと思っていたが。ただ、私も御質問申し上げる以上は、やはり原則は返って、どう解釈しておられるか問題になっている条項を聞いたわけですが、これは本当に困ったことだと思います。時間がありませんので、これからいろいろと一緒になって、新しい教育の二十一世紀に向かう事態を、本当に平静に大人の責任でつくらなければならぬという決意を、実は今一層かためたような次第でございます。  それで、時間がなくてあれなんですけれども、過般来、議員会館におりますと、異常というほどじゃございませんが、これは正常だと思いますが、大変多くの陳情が参っております。賛成と反対、当然のことです。それでこの前も大臣にちょっと申し上げましたけれども、前回、塩川文部大臣大学法案の質疑をいたしましたときに、これだけ反対が来ております、賛成はちょっとですと言ったんですね。それで大臣のところへ来ておりますかと言ったら、私のところへは来ていないということであったわけです。そこで、今度はどこまで来るかなと思ってじっと見ていたのです。そうしたら、初めは賛成が物すごく多かったですね。それからきのう、きょうにかけてはがきが物すごく多いのです。それで、きょうでやっと同数になったかなという感じで今質問に立ったわけです。  実情を率直に質問申し上げますが、まず大臣のところには来ておりますか、あるいは文部省は受けておられますか、塩川大臣に聞いたことと同じ質問を先にいたしたいと思います。
  277. 中島源太郎

    中島国務大臣 会館、それから文部省、それぞれ分かれておりますので、どのくらいの率になっておりますか、合わせたことはございませんが、賛成、反対それぞれ受けております。
  278. 林保夫

    ○林(保)委員 それで私も、別に公平を期する意味じゃなくて、大臣が見ておられぬのならやはり全文を読まなければならぬかなと思って今これを見ているところでございますが、最初に聞きました、初任者研修制度をどうしてもつくってもらいたいといって、これはえらい熱意だなと思って拝見したのですが、あらゆる団体が決議して持ってきております。全国都道府県教育委員長協議会とか教育長協議会とかというところもあったり、個別のところもあるわけです。そこらが何を言っているかといいますと、  これからの学校教育の一層の充実を図るために、特に教員資質向上が強く求められております。   そのためには、教員に対する研修の充実・強化を図ることが極めて緊急かつ重要な課題であり、とりわけ新任教員指導力向上のために、臨時教育審議会の答申でも提言された初任者研修制度の創設が急務であると考えます。   この制度が創設されますと、新任教員実践的指導力使命感の飛躍的な向上が図れることはもとより、各学校においても教職員が一丸となって研修等に取り組むという意識が醸成され、学校の活性化が図れるなど大きな効果をもたらすものと存じます。 だから早くやってくださいと言っておるわけですね。  それで、たまたま私が一番よく知っておりますのは、地元の人から来ているのですね。これは岡山県特殊学校校長会で、岡山県立誕生寺養護学校長、県立岡山聾学校長、県立岡山盲学校長、県立岡山養護学校長、県立岡山西養護学校長、県立東備養護学校長、県立西備養護学校長、県立早島養護学校長、岡山大学教育学部附属養護学校長、倉敷市立倉敷養護学校長、それらは   学校教育の一層の充実を図る上で、教員指導力向上を推進することは最も重要な課題である。とりわけ初任者指導力の育成が強く求められており、臨時教育審議会答申において提言された初任者研修制度の創設が急務である。   この制度の創設は、初任者実践的指導力使命感向上が図られ、各学校においても教職員が一丸となって研修等に取り組むという意識が醸成され、学校の活性化が図られる等大きな効果をもたらす。   そのため、いわゆる初任者研修法案(教育公務員特例法及び地方教育行政組織及び運営に関する法律改正案)を早期に成立させることを強く要望する。 大体、要望してきているのはそういう趣旨でございまして、私の実感としては大変たくさん来ているなと思いました。私の党も御承知のように教育改革をやらなければならぬということを党是として決めておりますだけに、早くやるべきである、立派にやらなければいかぬ。また後で御提起いたしますけれども、私は三年ごとの見直しなり五年ごとの見直しもやりながらこれに手を出さなければならぬという立場から考えているわけです。  ところが、最近になりまして、「臨教審関連六法案の廃案と教育諸条件の改善を求める要請書」というのが、日本高等学校教職員組合を初めとしてたくさん来ております。今まで反対の意見がかなり出ておりますからこれを読むのはやめてもよろしゅうございますけれども、私が非常に問題に思っておりますのは、臨教審関連六法案に対する反対というのがきょうのはがきの全部なんです。私どもは実務を考えて、いいものはいい、悪いものは悪いとしていかなければならぬ。それをひっくるめて全部を反対されるというのは、失礼ながら、わざわざ御署名をいただきながらもちょっとおかしいなと思うのです。それからまた、はがきが、これは指令によってやったかどうか知りませんけれども、私ども北方領土を返せといって一斉にはがきを出しますけれども、同じ文面のものが来ておる。しかし、それはそれとして、これも民意でございますから、どのような受け方をするか、はかり方をするか、私は今忙しくてもこれは謙虚に読ませていただくということにしておりますが、ただ一点、六法案一括して全部反対だ、こういうことではちょっと困るなという実感を禁じ得ないことを率直に申し上げます。  そこで、私はこれから、こういう状態であるがゆえに、初任者研修はみんなが納得のいくように、そして臨教審が答申しておりますので、それがすべていいとは言いません、しかしその精神が国民の声にこたえるものであればそれを踏まえてびっちりやっていただく、こういうふうにしたいという趣旨で、残された時間をひとつ質問させていただきたいと思います。これまた、わかりやすく常識的な御答弁でひとつお願いしたいと思うのです。ちょっとたくさんありますので、これからは簡単に答えていただいた方がありがたいと思います。  まず第一は、教員はみずから修練を積んだり教員集団の中での切磋琢磨により成長するものである、教員研修は自己研修にかけるべきだという考え方がかなり多いのですね。実は私も陳情を受けて驚いたことがあるのです。これは反対の方です。賛成の方ではなかったです。それで冒頭に申し上げたように、あなたたちは新しい職業について研修もしたくないのですか、要らぬのですか、こう言ったのです。さっき申し上げたように、世間を見渡して、どんな会社でもどんな公務員でも、そこへ入って研修がないところはないわけですね。それで、自分成長しようとすることは、人の意見を、先輩ならなおいいし、先生ならなおいいから、聞いてやるのが当たり前なんです。それを自己研修が一番いいと思いたがるようではちょっとだめだ、私はそう思ったのです。それで、どういうことですか、こう聞いたのです。きょうはせっかく常識的な話をしておりますから率直に申し上げたいと思います。そうしたら、林先生教師というものは生徒とともによくなるものなんです、こう言うわけです。学校を出ただけではだめでしょう。いや、それがいいのです。学校を出てなかなか教育ということがわからなくて無地な人が、肌を触れ合って泣いたりだっこしたり背負ったりして子供がよくなっていく、それにつれて教師がよくなって本当の先生になるのですと言われたので、私も本当にびっくりしたのです。  ひとつ、これは大臣ではなくて局長の方がお詳しいと思いますが、先生採用されるときの条件にそういうようなことがあるのでしょうか。生徒とともに年齢とともに成長していくというような、そんなものですか。これは何といってもやはり先生ですから、特定の専門職ですから、私も会社員として新聞記者になったわけですが、やはり専門職ですから、職に値するだけの器量のない人を私は採用しちゃいかぬと思うのです。そう思うのですが、その点どういうことで採用なさっておられたのか。しかもそれが、五、六人で来られた中で代表の方がそう言われたので私は実はびっくりしたのですが、その辺局長の責任がすべてではないと思います、それは地方の教育委員会あるいは採用権者の問題だと思いますけれども、その辺をまず一つ教えていただきたいと思います。
  279. 加戸守行

    加戸政府委員 研修の問題につきましては、教員自身がみずからの主体性、自主性において研修を行うということは大切なことでもございますし、また研修の成果もそれで相当上がると思います。しかしながら、昨年の春でございましたが、日本青年会議所が全国調査をいたしまして、教育に対する意識調査でございますけれども、社会に対しましては学歴偏重社会の是正が一番大切なことである、家庭に対しましてはしつけの問題が一番大切である、そして学校に対しましては教員資質向上が一番大切である、そういう意見が集約されておったわけでございますけれども教員みずからが、もちろん子供たちと触れ合いの中で育つことはその自己体験を通じて大切なことでございますけれども、そのことだけでは満足していないというのが今の国民意識ではないか、そういう感じがするわけでございます。  そして、自主的な研修のみでは自分の主観的な判断がございますから、自分がこういう勉強をしたい、これは自分は勉強したくないという選別があるわけでございますから、結果的に教員としての職員を全うできる資質能力の涵養を図ることは極めて困難であると思うわけでございます。また、研修の形態がいろいろございますけれども教員個人が自分の主観的な判断によって行うことだけでは困るわけでございます。それを離れまして、例えば一つの例でございますけれども教育課程の基準が改訂されればこれは全員勉強してもらわなければいけないということもございましょうし、例えば管理職でございますれば学校運営のための勉強もしていただかなければいかぬということもございますし、新採教員の場合も教壇に立ってこれから教育を展開する相手に全国共通で基礎的なこういう事柄というものは知っていただかなければいかぬこともございましょう。そういう公教育を実施していく上で必要不可欠な研修があることは明らかだと思うわけでございます。  そういう意味で、行政機関が一定の方針に基づいて教職の生活の全体にわたる適切な研修の機会を提供し、その第一ステップとしての初任者研修ということを、これは自主研修だけではなくて行政側が行う研修を受けていただかなければ、教員の個人個人の主観的な判断のみによりましては、全国的な教員資質の水準、ひいては全国的な教育水準の維持向上を図ることはできないと思うわけでございます。それはあえて、口が悪うございますけれども、全教員が皆さん御勉強なさるわけではなくて、勉強されない教員もいらっしゃるでございましょう。そういった方々に一緒に勉強していただくという機会を提供して、しかも条件整備をすることは行政の務めだと思うわけでございまして、あくまでも自分自分を磨くということが基本であることは先ほど来の御質問でもそうでございますけれども、それのみでは教員資質に対する今の国民の強い要請に対する回答にはならないというのが今回の初任者研修法案を提出させていただいている趣旨、ゆえんでございます。
  280. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、私は成熟社会になればなるほど、資格者がいっぱいおればおるほど、プロでないと通用しないと思うのです。それでないと電気一ついじれぬ、工事一つできないようになっています。だからそこらを、教育界と言わずほかにもそういう甘えの社会はいっぱいあると思うのです。それをどのようにきっちりと教育して、大勢が住んでいる中で事故を起こさぬように、立派に、お金をつぎ込んだら成果が上がるようにするととなると、やはりこれだけの条件が必要だというものがなければならぬ。そこらあたりが初任者研修の心構えの一つだというふうに私は理解して、今御質問申し上げているわけです。  そこで、こうなりますとやはり指導員の問題になってまいりますね。法案にあります指導員、いろいろ書いておられます。それを含めまして、局長、どういうことを指導員に期待し、どういう資格の人を指導員に採用しようとしているのかを常識的にわかりやすく御説明いただきたいと思うのです。
  281. 加戸守行

    加戸政府委員 指導教員によります指導は、従来学校内において初任者指導責任者が明確でないなど校内指導体制が必ずしも整っていないために、したがって指導もその都度の場当たり的なものになりがちであったということで、指導の効果が十分ではなかったという私どもは評価をしているわけでございます。その意味において、学校内で指導教員を特定しまして、経験豊かな指導教員が第一義的に初任者指導に当たることによりまして、初任者成長過程に即し、また個性に応じた指導を系統的に行おうとするものでございます。その意味におきまして指導教員に人を得るということは非常に大切なことでございますけれども、試行の段階からもそうでございますが、本格実施の場合におきましても、指導教員学校指導体制の中核となるという考え方から、今回の法案におきましては、改正法案では指導教員初任者の所属する学校の教頭、教諭または講師のうちから充てることとしていますけれども、実際上、六十二年度からの試行のスタートにおきまして、文部省としましては、教頭先生または経験豊富なべテランの教員ということで、場合によりましては退職されたベテランの過去の教員を活用するといういろいろな方法で、これは各都道府県指定都市の教育委員会にお任せいたしまして、それぞれの地域の実情、学校の実情等に応じまして、あるいは学校校内体制の整備等の関連におきまして、それぞれの教頭先生、ベテラン教員中堅教員あるいは退職された教員等の多種多様な活用を図っていただきまして、指導に当たっていただいているところでございます。あくまでもこれは、教員としての過去の豊富な体験を新しく参りました教員に与えるだけの材料を持っていらっしゃる方という観点からお願いしているところでございます。
  282. 林保夫

    ○林(保)委員 教頭を中心として多様な、退職した校長とか教頭、教員も使うというようなことでございますが、私は二点あると思うのです。  教頭を使うとしますと、忙し過ぎて複数制に教頭をしなければならぬというところまで踏み込んででもやる御決意があるのかどうかといった点が一点。  それから、そういう方々指導する教師ですが、これを選定する場合に、だれがどういう手法でやるかということがまた大変問題だと思うので、これもひとつわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  283. 加戸守行

    加戸政府委員 抽象的な言い方で恐縮でございますが、指導教員につきましては、教科領域について十分な力量を持っていること、あるいは初任者の悩みにこたえる能力を持っていること、さらには全校的な視野に立って指導できることなどを必要と考えているわけでございまして、その意味では、各学校教員構成の中でどの方がということは、具体的な判断になりまして難しいものもございますけれども教職経験豊かな、指導力にすぐれた教頭先生指導教員になるという場合も考えられるわけでございます。  教頭先生の場合ですと、校務負担がかなりかかるわけでございますから、校内分掌でも相当大幅な負担を軽減しなければいかぬという問題が出てくるわけでございまして、先生おっしゃいますように、一つ方法として複数教頭制の問題もあるわけでございますし、また、教育職員養成審議会の初任者研修に関します答申の中におきましても、「校内における研修指導体制を整備するためにも、主として指導分野を担当する教頭を新たに配置することについて検討する必要がある。」との指摘がございますし、今後検討する必要があると私ども考えている事柄でございます。  要は、それぞれの学校におきまして適任者が得られるかどうか、適任者が得られない場合には、他校からそういった指導教員に相当する方を人事配置によって持ってきていただくとか、さまざまな工夫をしていただくことになろうかと思います。
  284. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、今回の改正案では非常勤講師の派遣制度というのを導入するということになっておりますが、この構想をもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  285. 加戸守行

    加戸政府委員 初任者研修の実施に伴いまして非常勤講師を活用する道が二通りあるわけでございまして、一つは、指導教員校内で適任者が得られない場合に、退職されたベテランの、豊富な経験を持つ退職教員指導教員として登用する場合、それは非常勤講師として発令する必要があるわけでございます。それから二つ目は、校内指導教員を充てた場合に、定数措置がされている場合とされない場合がございますから、定数措置に該当しない場合につきましては、その補充教員という形で指導教員の穴埋めをするために非常勤講師を発令する、その場合も退職教員を非常勤講師として充てる。この二通りのケースがあると思います。  こういった事柄につきましては、現在の制度上は、市町村立学校におきます非常勤講師の報酬の負担は市町村の負担でございまして、一般教員は都道府県の負担並びに国庫半額負担でございますけれども、これが市町村の単独の財政負担になるわけでございますので、あるいは人材を市町村で得られないという場合もございます。そういう意味で、今回の法案におきましては、市町村の求めに応じまして、都道府県教育委員会が非常勤講師を市町村に派遣することによりまして、その非常勤講師として派遣された者が指導教員または指導教員の補充教員として機能していただく、その場合の身分は都道府県とし、かつ、全額都道府県の負担となるわけでございますが、二分の一の補助を試行段階においては講じているわけでございまして、一種の常勤教員と同様な措置を実質的に考えている、その趣旨が今回の法案としての非常勤講師の派遣制度でございます。
  286. 林保夫

    ○林(保)委員 時間がありませんので急ぎまして、次に入らせていただきます。  そういうふうにして指導するグループができ上がった、その場合に一番問題になりますのは、いわゆる校長、教頭などの管理職がリーダーシップをとって研修しなければならぬ、その範囲をどの辺に置くかという点を文部省としてはどうお考えになっているかという点を聞きたいのでございます。もちろん研修内容は大体こんな形で考えておる、検討しておる、これは細かく施行規則あるいはそのほか省令か何かに出てくるのか知りませんけれども、今考えておられます研修内容、その辺を承りたいと思います。
  287. 加戸守行

    加戸政府委員 これからの学校におきましては、従来と同様以上に、初任者研修の実施を初めとしまして管理職の果たすべき役割は非常に大きいわけでございます。そういう意味で、校長、教頭先生を対象とした中央研修というものを文部省において実施しているわけでございますし、また、都道府県におきまして校長、教頭の研修の充実に必要な経費の一部を文部省から支出をするなどの施策を講じてきているわけでございます。  具体的な内容としましては、例えば教育指導学校管理ということでございまして、現在の行政制度あるいは財政の仕組み、学校管理上の諸問題、学校経営の方法あるいは教育内容等につきまして、これからの教育課程の編成と展開であるとか、あるいは生徒指導の理論と実際、そういった事柄、さらには教育関係万般にわたります事柄等もございますが、文部省において行っております研修は相当密度の高い、また内容の濃いものでもございます。これは手前みそになるから余り申し上げませんけれども、少なくとも、これからの管理職の研修につきましては、管理職としての学校管理、適正な運営に資するための必要な事柄というのは、時宜に即して、また研修内容もいろいろ工夫し、対応してまいりたいと考えております。
  288. 林保夫

    ○林(保)委員 そうすると、研修内容についていろいろ意見があろうと思いますが、先般来の議論を聞いておりましても、かなり都道府県や指定都市の自主性を尊重すべきだという意見も傍らにあると思います。それをどの範囲で指導教員が受け入れて、あるいは科目として、あるいは課題として文部省は課せられるのか、その辺のところも伺いたい。
  289. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十二年度から行いました初任者研修の試行につきましては、各都道府県、指定都市それぞれノーハウを持ち合わせておりませんでした関係上、文部省の方におきましてかなり詳細なモデル案を送付いたしまして、参考に供したわけでございます。各都道府県指定都市におきましては、これを参考としてそれぞれの県の実態に即した内容初任者研修の試行を行っていただいているわけでございまして、私ども内容的な意味では、本格実施の場合はもおよその共通点、この点が基本である、あるいは日数等はこの程度が目安であるといったようなガイドライン的なものはお示しさせていただきますけれども、具体的な研修内容は、各任命権者側におきまして自主的に御判断の上、地域の実情に適合した研修を実施していただけるものと考えております。
  290. 林保夫

    ○林(保)委員 そういったことから、今度の法案を見ますと、「幼稚園等の教諭等に対する研修等特例を定めること。」として、「幼稚園並びに盲学校、聾学校及び養護学校の幼稚部の教諭、助教諭及び講師に採用された者に対する研修については、当分の間、初任者研修とは異なる研修を、任命権者が実施しなければならないものとする」ということになっておりますが、ここにある「初任者研修とは異なる研修」というのを具体的に少し詳しく御説明いただきたいと思います。
  291. 加戸守行

    加戸政府委員 幼稚園の教員につきましては、当分の間、初任者研修と異なる研修を実施することといたしておりますが、これは幼稚園の規模が非常に小そうございまして、一般的にそれに対応する園内の指導体制あるいは指導教員を得るということが極めて難しい実情もございますから、今後の幼稚園におきます教職員体制の整備というのを待たなければならないところでもございますし、また構成要素として教職員数が少ないということは、新任教員はある地区についてたまにしか、何年に一回しか新任教員がいないということ、あるいはまた市町村ごとでございますから、零細市町村になりますとそれぞれまた人数が少ない、さらに、任命権者は市町村教育委員会でございますので、市町村教育委員会がそういった研修を実施するということは極めて困難なことでございますので、今回の措置としては、そういった幼稚園教員に対します研修につきましては、任命権者ではございませんが都道府県教育委員会に責任を持って全県的な市町村立幼稚園等の研修を行っていただこうという考え方でございまして、この研修につきましては、異なる研修といたしましては、教育職員養成審議会の方の御答申をいただいておりますが、その中では「当面は、幼稚園の実態等にかんがみ、都道府県教育委員会は、十日程度の園内における保育の実践に関する研修及び十日程度研修会の受講など年間二十日程度研修を実施することが適当である。」という御提言を受けているわけでございますので、現在のところ、私どもこのような考え方に従って幼稚園教員に対します研修の計画を立て、かつ、それに見合う財政的な措置ということを近い将来において講ずる必要があると考えているところでございます。
  292. 林保夫

    ○林(保)委員 続きまして、今回対象外になっております私立学校初任者研修についてはどういう構想をお持ちでございましょうか。
  293. 加戸守行

    加戸政府委員 申し上げるまでもございませんが、国公立学校教員のみならず私立学校教員についても、その資質能力の向上を図ることは重要な政策課題でございます。しかしながら、私立学校にはそれぞれ独自の建学の精神や教育方針があるわけでございまして、ある意味では、県内の教育水準の一定的な維持という観点から行いますような今の公立学校初任者研修の場合と異なりまして、違う実態があるわけでございます。そういう点では、教員研修についてもそういった私学の実態を踏まえながら研修を実施する必要があるわけでございまして、そういう点では私学側がどのような考え方でこの初任者研修に対応するのか、設置者ごとのそれぞれの学校の実情に応じて、現在のところは公立学校の場合を参考にしながら自主的に判断して実施をしていただくということを予定しているわけでございますけれども、もちろん、一つの県の中におきまして私学がたくさんございまして、例えば私学団体のような形でそれが合同して私学の研修をやろうというようなケースが、あるいはそういった考え方の動向が出てまいりましたらそれに対する対応の仕方もございましょうし、さらには、私学の側におきまして公立学校教員研修に参加さしてほしいという希望が出ますれば、それを都道府県側において公立学校教員と一緒に受け入れて研修をする場合もございましょうし、それは実施の内容方法等に応じて国や都道府県がその協力体制をしていくということでございますので、しばらくは私学の出方といいますか対応の考え方を十分踏まえた上で考えることになろうかと思っております。
  294. 林保夫

    ○林(保)委員 矢継ぎ早でございますけれども、今度の初任者研修の実施に伴いまして、文部省は、国の予算としてどれくらいの金額を六十四年度想定され、都道府県その他の地方の負担が幾らぐらいになると想定しておられますか。率直にお答えいただきたいと思います。
  295. 加戸守行

    加戸政府委員 数字が確定していないので恐縮でございますが、仮定を前提とさしていただきますと、六十二年度、六十三年度で試行を行っております形態と同じように教職員定数を配置し、あるいは非常勤講師を配置するという前提に立ち、かつ、これは毎年度の新採教員の数によって左右されるわけでございますので、年度別の変動もございますし、また今後の教職員定数改善計画がどの程度の定数が確保できるかという他動的要因等もございますし、また年度途中の退職者を見込むのもかなり難しい問題がございますが、仮定の話として年間三万人、つまり六十二年度と同様な三万人程度ということでの新採教員を前提として、全校種についてすべて実施するという前提を置きました場合には、今の仮定条件の上で国費として人件費ベースで約二百八十億円、そして、国庫補助金を含めました都道府県の総財政支出額が八百億円程度になるのではないかということが、今現在私どもが簡単な試算と申しますか大ざっぱな感覚で出しているところでございます。今申し上げましたようにその前提となる条件がいろいろ変わると思いますけれども、金額的に申し上げれば、今申し上げた金目からはそう何百億円も狂うということではないと思っております。
  296. 林保夫

    ○林(保)委員 私が私立学校初任者研修を実施するのかどうかということを聞きましたのも、大臣、こういう意見があるのです。研修に反対する人は別です。ところがこれをやりたいという人は、国公立学校をやられると今せっかく私学がすぐれているとか横並びになっているのにまた差がついてしまうな、こういう実感を漏らした人もおりまして、私も実際、この初任者研修がうまくいったらそういうことになるような、まさに生徒先生の反映でもありますし、そんな感じがするのでございますが、そうすると、そこにどういう手を打つか。今すぐに私学の財政援助を強化しろとは言いませんけれども、今局長がおっしゃった数字だけから申しましても二百八十億と八百億、そういたしますと一千億幾らになりますね。そうじゃないですか。
  297. 加戸守行

    加戸政府委員 言葉足らずで失礼いたしました。都道府県の負担額八百億円の中には国庫負担額の二百八十億円を含んでおりまして、例えば義務教育学校におきましては二分の一国庫負担でございますが、高等学校教員に関しましては地方交付税で全額措置されておりまして、これは都道府県の全額負担ということになります。八百億円の内訳として国庫負担額が二百八十億円になる見込みということを申し上げたわけでございます。
  298. 林保夫

    ○林(保)委員 それはそれといたしまして、私学助成が今二千億ちょっとですね。それに対して、初任者研修で今度ばっとつぎ込む。「教育は人なり」と言いますけれども大臣、やはりお金もなければできませんですからね。そういうことの横並びをこれからどういうふうにとっていくのか。先ほど幼稚園の教員の場合も聞きましたけれども学校の栄養職員や事務職員の問題もありますし、養護教諭などの問題もありますので、そこら辺の整合性について、局長、もう少し事務的な展望を、私学はいつまでもほっておかぬのだ、将来ある程度考えなければいかぬのだとかほっておいていいのだとか、それから今申し上げたような事務職員や何かをどうするのかとか、全体としてのレベルアップを図る以上は片手落ちにならないような財政支出もしながらレベルアップしていく、こういうことが大事だと思いますので、その辺の事務的な見通しを伺いたいと思います。
  299. 加戸守行

    加戸政府委員 教員資質向上でございますから、国公立のみならず私学も同様でございますし、あるいは教員以外の事務職員、あるいは今回の対象となっていない養護教諭、さらには学校栄養職員等の研修の問題もそれぞれあるわけでございます。しかしながら、これだけの壮大な計画でございますし、先ほど申し上げましたような、今初任者研修法案で直接の対象としようとしている職種につきましても、附則で、財政上の理由その他によりまして校種別に段階的に実施していくということでございますので、そういう意味では、この校種段階実施が完成した段階におきましての問題として、今申し上げました幼稚園の教員に対する研修をどうするのか、私学に対する研修の援助といいますか奨励方策をどう考えていくのか、さらには事務職員等の問題をどう考えるのかという事柄が大きな課題として残されていることは十分承知しているところでございますが、財政理由ばかりを申し上げて恐縮でございますけれども、少なくとも大きな理由としてはそういった財政負担の問題があるわけでございます。  なお、事務職員等につきましては、今回の初任者研修は、教壇に立って子供たちと全人格的な触れ合いをするという点に着目して企画したわけでございますので、事柄の性質上、事務職員あるいは養護教諭あるいは学校栄養職員に対する研修は、今のような初任者研修とは異なる形態の研修として構想されるべきであろうとは思っております。
  300. 林保夫

    ○林(保)委員 いろいろございますけれども、そういった意味で、教育研修の体系化といいますか、さらにはまたその奨励策を、これを機会に、私の要望としてもよろしいのですけれども、もう一度教育界全体についてやっていかなければならぬと思うのです。笑い話のようですけれども研修する教員に対する研修も要りますよね、大臣。それから、それを任命する者、どういう仕組みをつくるかという教育委員会その他の任命権者、校長もいいですけれども、そういう者に対する研修もこれまた要るようなことになってまいりますので、先般大センター構想も出ておりましたように、これはやはり長い目で見て、しかも文部行政の中できっちりとそれを位置づけてやらなければならぬ問題だ、このように私は思うわけです。  そういった点で、冒頭申し上げましたように、やはり三年先、五年先にでも見直しながら、これはただ口で言ってけんかするだけの問題じゃなくて、実地によくならなければならぬわけですから、人が動き、物が動き、金も動くわけです、手当も要るわけですね。そういった点で、ひとつ大臣に、どういう御発想でお行きになるか承りたいと存じます。
  301. 中島源太郎

    中島国務大臣 林委員おっしゃいますように、初任者研修の御審議をいただいておりますけれども、先ほど申しましたように教育公務員段階的に自己の啓発と同時に行政研修というものが必要でありますから、生涯を通じましてその職にある間、例えば五年、十年、二十年、こういうふうに分けて研修を行うべしという御意見もいただいておるわけでございますので、そういうことも含めまして体系化していくことは必要であろうと思います。  また、先生おっしゃいますように、私学に対してもこれを進めたらどうか、こういうことでございまして、私学もこの研修を取り入れているところもあるようでございますが、「教育は人なり」と言うけれども、それなりに私学の方でそれがいいとするならば、これから私学助成の方でも格段の配慮をすべきではないか、こういうことでございます。これは与野党を問わず、そういう教育改革を中長期的に進める上におきましては、やはり公財政支出も考えていく必要がございますので、六十三年度は御審議いただき御了解いただいた経常費の中で行いますが、六十四年度を前にいたしましてさらに先生方の御鞭撻を得まして公財政の計上におきましても頑張っていきたい、このように思います。
  302. 林保夫

    ○林(保)委員 最後になりましたけれども大臣、すばらしい初任者研修と言えるのかどうかそれは別といたしましても、大臣文部省、さらには教育関係者が一致して教職員含めてやるとしましても、やはり社会の理解がなければどうにもならぬと思うのです。特に、先生の動きが激しくなりますと父兄の心配が出てくるおそれもあると思います。したがいまして、先ほど棒読みしていただきましたような問題一つとりましても、ちゃんとわかるようにしながらいかなければならぬと思いますが、それらについて事務当局はどのようなお考えでいらっしゃるのでしょうか。
  303. 加戸守行

    加戸政府委員 この初任者研修制度国民あるいは父母の理解を求めるということは、大変重要なことでもございます。その意味におきましては、私どもは、この初任者研修の試行でどのような形で父兄、父母が反応されるかということを大変心配しておったわけでございますが、現在まで、対象教員指導教員あるいは校長先生等からの意見を集約中でございますけれども、父兄からの反応が「ない」か、「理解が得られている」というのが大部分でございます。もちろん少数、レアケースとしては父母からの拒絶反応等があるということはございます。そういう意味では確かに一部の反発等はございますけれども、私ども初任者研修制度趣旨というものを理解していただく、一年間の措置でございますけれども、その成果が将来の三十数年に、これから続く子供たちの上にお返しができる、そういう意味で御理解を願いたいということで、国民あるいは父母の方にも十分な理解を求めましてこの円滑な実施に入っていきたいと考えておりますし、また、都道府県指定都市教育委員会のみならず学校におきましても、当然そういった地域、父母に対します理解を求める努力はされていると思います。私は必ずや父兄の理解が得られるに違いないと確信いたしております。
  304. 林保夫

    ○林(保)委員 重ねまして、内部のみの問題だけじゃこういうものはいかないのだということを強調いたしまして、またの機会に質問も申し上げ、御提起も申し上げ、御意見を承りたいと存じます。きょうは、夜遅くまでありがとうございました。終わります。
  305. 中村靖

    中村委員長 石井郁子君。
  306. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 本日、異例の委員会審議になりまして大変遅い時間になっておるわけでございますが、私が本日のしんがりということです。これは順番でこうなっているわけでございまして、お疲れがそれぞれ出ていると思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。  質疑に入る前に、一昨日の委員運営について一言申し上げたいと思います。  文教委員会は日本の未来を担う青少年の教育を取り扱う委員会であります。その委員運営はあくまで民主的で、教育を語るにふさわしい場であるべきだ、そのように思うのです。その意味からして、一昨日の運営と国立学校設置法の採決は大変遺憾であり、抗議を込めて一言表明したいと思います。  私は、国立学校設置法については補充質問を行うべきだと思っています。このことを強く求めたいと思います。  ただいま審議に入っている教育公務員特例法について言えば、徹底した審議を要求します。理事会で山原議員も申し上げているところでございますけれども質疑時間については、さしあたって一人四時間、計八時間を要求します。  また、重要な問題ですので、参考人についても、私どもはぜひ諸先生の御意見をお聞きしたいというふうに思います。  このことを申し上げまして、委員長の所見を伺いたいと思います。
  307. 中村靖

    中村委員長 ただいまの石井君からの御提言につきましては、各党理事方々と御協議をさせていただきたいと思います。
  308. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 本日ずっと議論されてまいりましたように、教員研修のあり方、またその内容ということが今後大変重要な問題になってまいります。そのことに深くかかわりますので、社会科解体問題について少しだけお伺いをしたいと思います。  一昨日、新聞報道によりますと、この秋から着手されるというか、学習指導要領の作成協力者会議のメンバーの更新の時期で、社会科教育学会に所属されております七人の大学の教授が再任されなかったということでありますが、理由はどういうことでしょうか。
  309. 西崎清久

    ○西崎政府委員 社会科を含めまして新しい学習指導要領をこの年末までに作成いたすわけでございますが、その基本は昨年末の教育課程審議会の答申でございます。  教育課程審議会の審議のプロセスにおきましても、各教科科目別に協力者をお願いしてきた経緯がございますが、最近の任期といたしましては三月三十一日で任期が切れる、こういう事態でございました。今後、やはり指導要領作成に向けて協力者会議を構成し審議をお願いする必要があるわけでございますが、やはり昨年末の教育課程審議会の答申の趣旨に沿って協力者会議を構成し御審議をいただく、こういう考え方で、新たなる立場で委員会の運営、協力者の委嘱を行ったということでございまして、結果といたしまして、今先生御指摘のような方々が今回入っていないということがございますが、私どもはあくまで指導要領を十全に作成するプロセスとしての協力者会議の構成を十分考えて委嘱をさせていただいた、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
  310. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それでは、この七人の先生方教育課程審議会の答申の趣旨に賛成できない、あるいはそういう立場に立てないという表明があったのでしょうか。
  311. 西崎清久

    ○西崎政府委員 先生御指摘の七人という方々がどなたとどなたであるかということはちょっと差し控えますし、七人という数字の人数についてもちょっとコメントを差し控えますが、全体で申し上げますと、三月三十一日現在、委嘱申し上げておりましたのが五百七十二人でございました。新たに委嘱した方々が百四十五人で、従来お願いしておりました方で今回委嘱しなかった方々が百二十三人おられるわけでございます。  先生が御指摘の方々もあるいはこの百二十三人の方々の中に入っておられるのかもしれませんが、私どもといたしましては、やはり今後の一年余にわたる協力者会議において十分御出席をいただけるようにというふうな立場、あるいはいろいろなポストの変更がございますのでポスト変更に伴うこともこれありで、ポストに着目したお願いということもございますので、そういう点もお願いの要件に入っておるわけでございます。  それから、第三点といたしましては、やはり教育課程審議会の答申の趣旨に沿って御審議をいただけるような方々をお願いする、こういうことでございまして、私どもがやはりそういう見地から新たなるお願いをした、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  312. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 二つの点で私はちょっと御意見を申し上げたいのですけれども委員の再任方針という問題は、これまでの慣例としては、いろいろな事情で本人から辞退の申し出がある、そういうケースが一般であったというふうに聞いているわけでありまして、この社会科の先生方についていいますと、もう作業が進んでおりまして、指導要領の改訂の問題でも七、八割方ができ上がっていた、そういう協力をされてきた。それが一方的に、御苦労さんということで再任されなかった。こういうことは、この先生方はもう何度も、一年ずつですよ、再任という問題はあった。ですから、大変異例な事態だと受けとめていらっしゃるわけです。  もう一つの問題は、この先生方が、特に高校社会科の解体という問題でいろいろ御意見を発表されていたということは事実であります。しかも、学習指導要領の社会科という問題ですが、社会科の教育課程についてはこれまで戦後四十年近く御努力をされてきましたし、これからも社会科の充実のために指導要領を作成するという側で協力するという意思をお持ちの方々だというふうに思うわけですね。だからその意味で、一つは、これから小中高の学習指導要領の改訂という大変な大事業が始まるわけですけれども、一体、社会科の教育課程について今まで中心を担ってこられた先生方を外して、果たしてこれが保障されるのかどうか、この点をちょっと伺いたいと思うわけです。
  313. 西崎清久

    ○西崎政府委員 ただいま先生のお話の中に、指導要領の内容が七、八割でき上がっているのではないかという新聞報道の御引用がありましたが、もし七、八割もできておりますれば、五百人余にわたる協力者をお願いする必要もないわけでございます。私どもとしては、課程審答申を昨年の十二月にいただきまして、新たなる立場から協力者会議を構成してこれから年末に向けて指導要領の内容について十分御審議をいただく、こういう立場でございますので、この点は最初に申し上げておきたいと思う次第でございます。  それから、端的に、先生お尋ねの社会科についての経緯と、今後文部省でどういうふうに対処するかという点についてのお答えでございますが、確かに戦後四十年にわたりまして社会科が日本の教育において果たしてきた役割というものは大きい点があったと思うわけでございます。しかし、この社会科の、特に高等学校教育における社会科のあり方につきましては、もう既に長い年月にわたりまして各審議会において議論がされてきた経緯があるわけでございます。そのような経緯があったところで、最終的には、教育課程審議会において、高等学校の社会科についてはいわゆる地歴科、そして公民科というふうにこれを分割し、科目は変わりませんが、それぞれの教科として十分なる教育が行われるようにという結論に至ったわけでございますので、私どもの立場といたしましては、教育課程審議会の答申を受けまして、それを尊重して、地歴科、公民科という姿での、高等学校のそれぞれの従来の社会科の科目等も内容を見直しまして、これからの高等学校教育の、生徒諸君に対する教育が十分に行われるようにという見地でこれからの指導要領を作成してまいりたい、こういうふうな考え方に立つわけでございまして、これから一年余、我々の責任も重かつ大であるというふうに認識している次第でございます。
  314. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この問題だけで時間をとるわけにいきませんので、教育課程審議会の答申の出る過程、これは後で少し問題にいたしますが、そういう問題もありますし、また、審議会の答申に対して国民や研究者は自由に意見を述べる権利もあるはずでありまして、そういう反対意見方々を排除するというか一方的に解任する、そういうのは大変問題を残しているというふうに思うのです。そういう点で、これは非常に重大な、今後の問題に尾を引いていると思うわけであります。  そういうことで、今問題になっています高校社会科の解体について、それでは伺うわけです。本当に一体どういうプロセスと手続を経て高校社会科解体、それから世界史の必修が決まったのかという点で、初めに簡単で結構でございますが、世界史必修がいつ、どのような審議の場で決定されたのかをちょっと御説明いただきたいと思います。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  315. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教育課程審議会の答申が出るまでの経緯を簡単に申し上げる次第でございますが、この社会科問題につきましては、昭和五十七年の中央教育審議会の審議、それから臨時教育審議会の審議、それぞれ経緯があったことは先生御案内のとおりでございます。  時間の関係もありますので、教育課程審議会に絞ってお答えをいたしますと、第三委員会というものが課題別委員会で設けられました。この第三委員会は社会科に関する委員会でございます。この委員会は八回討議をしておるわけでございますが、そのうち五回が社会科関係のこの問題についての討議をいたしております。その第三委員会における審議のまとめにおきまして、やはり社会科に属する各科目相互の関連性、高等学校教育全体の教科科目のあり方等について、社会科の枠を外してはどうかとの意見も出されたというふうな点が審議のまとめにございます。それから六十一年十月二十日でございますが、中間まとめにおきましても、社会科の枠を外すかどうかについて、いろいろ両論があることについてのまとめが行われております。それからさらに、社会委員会という教科委員会がございまして、ここでも社会科問題の討議がなされたわけでございます。これにおきましても、やはり両論併記という経緯がございました。最後に、高等学校教育分科審議会におきまして、最終的に高等学校社会科の問題が討議されまして、その結論といたしまして、十一月二十日のところで、高校分科審議会としてはこの分割が決められた、そしてそれが総括委員会に付されて答申にまとめられた、大体こういうふうな経緯になっておる次第でございます。
  316. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今の局長の御答弁ですと、何かいかにも教育課程審議会の教科委員会あるいは社会委員会の数回の審議を経てこの世界史必修がまとめられたというように聞こえるわけですが、事実は大変違うのじゃないでしょうか。  教育課程審議会自身は二年間の審議期間ですよね。その間に今話されたような委員会は数回持たれていたと思いますけれども、昨年十一月のまとめと、年末の答申というところで、この社会科の関係の委員会では、昨年の九月二十五日までだれもこういう解体が行われる、あるいは世界史必修というのを思ってもいなかった、そうなんじゃないでしょうか。これは、私どもは議事録を要求しましたら提出されていませんので、そういう点では残念なんですが、しかし入手したところでは、三月四日のこの社会科関係者では、現状維持が圧倒的意見、九月二十五日のまとめでも高校社会科については触れられないということで来たわけです。ところが、事態は、十月二十七日に突如として、この高校分科会で世界史必修が出てきたということじゃありませんか。じゃ一体何を審議してきたのですか、この二年間にわたって。おかしいですよね。そして十一月十三日に高校分科会が決定をする。しかし、この決定に当たっても大変もめたというふうに議事録はなっております。にもかかわらずこれを決定したという点で、ここに何かがあったのではないか。  そういうことで、これはいろいろ各紙が報道したわけですが、この委員会でもたびたび取り上げております高石事務次官の名前が出ているわけですけれども、高石事務次官の政治的打算が働いた。高校分科会の会長の諸沢さんが泥をかぶってでも強引に社会科解体を決める、それには中曽根前首相がやはり地歴独立、社会科解体をすべきだという意見があったということが話されているわけです。ですから、指導要領作成の協力者のメンバーの二人の先生が、これはもうまるでクーデターだということで辞任をされたのではなかったでしょうか。いかがですか。
  317. 西崎清久

    ○西崎政府委員 教育課程審議会のプロセスにおきましては、それぞれの先生方がそれぞれの識見に基づきまして大変熱心な御討議をされた経緯があるわけでありまして、もちろん慎重論を述べられた方もありますし、積極論を述べられた方もございます。それがまさに審議会のプロセスであったわけでございまして、最終的な姿としては、高校分科会においても全員一致、それから総括委員会、総会におきましても全員一致という形で結果を見たわけでございます。  先生御指摘のプロセスについていろいろな報道があったり、あるいはいろいろなコメントがあるようでございますけれども、私どもは、やはりそういう問題についてはかえって審議会の先生方に失礼なことではないかと思うわけでございます。教育課程審議会の先生方は、みずからの責任において審議をし結論を出されたわけでありますから、内部的な圧力によってインフルエンスを受けたのではないかということは決して考えられないことでありますし、そういうことを私どもがいろいろ討議することについては、課程審の先生方にもかえって失礼ではないかというふうな気持ちでおるわけでございまして、課程審の先生方の責任においてこの答申は出されたものであるというふうに私どもとしては申し上げたいと思うわけでございます。
  318. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 最終的には満場一致というお話でございますけれども、高校分科会と教育課程審議会のいわば総会というか、そういう場ではそうかもしれません、そこが問題なんですね。しかし高校分科会では、社会科の解体を強力に主張されたお二人の先生方にいわば押し切られた格好にもなっているわけです。それでは、教育課程審議会の総会という場ではこの社会委員会に所属された先生方というか社会科関係者の方々というのは何人いらっしゃいますか。ですから、教育課程審議会の総会の場ではいわばそういう社会科関係者の意見が反映されない形で決まっている。審議の経過がそこに反映されるならいいけれども、反映されずにそういうふうに決まるというのは、今の審議会の一つのあり方を示しているわけですね。  もう一つ重大なことなので申し上げるわけですけれども、皆さんが臨教審、臨教審と言われるこの臨教審ではどう言っていますか。歴史独立ということを言っているだけですね。地歴科独立というのは臨教審にありましたか。どこから地歴料というのが出てきたのでしょうか。
  319. 西崎清久

    ○西崎政府委員 臨時教育審議会の答申におきましてもこの問題については触れられておるわけでございまして、そのくだりについて若干申し上げたいと思うわけでございます。  第三次答申、六十二年四月一日でございますが、ちょっとパラグラフを申し上げましょうか、先生御案内かもしれませんが。   国際社会に通用する日本人として、主体性を確立しつつも自らを相対化する態度と能力を有することが要請される。すなわち、日本文化はついて深い素養をもち、しかも、日本の在り方を相対化して、自らをらせん型に深めかつ高める視点が必要である。 そして、ちょっと飛ばしますが、  世界にはいかに異なる生活、習慣、価値観が存在しているかを具体的に学び、全世界的、客観的な視点から日本の在り方を相対化して見つめ直す態度と能力とを身に付ける必要がある。また、日本はアジアを離れて存立し得ないとの認識のもとに、近隣アジア諸国に目を向け、その実情を知る努力を怠ってはならない。このような国際社会の中に生きる者として必要な知識については、比較文化的視点を重視し、地理教育とあわせつつ日本および世界の歴史教育の中に織り込んでいくことが必要である。 こういうふうなことを述べておられるわけでございます。  臨時教育審議会は、やはり臨時教育審議会としての立場と役割があるわけでございますから、教科科目の構成とか分割とか必修の問題まで立ち入られることはお立場として控えられたというふうに思うわけでありまして、臨時教育審議会のこのような世界的な観点、地理教育と歴史教育とのいろいろなお考えというものを踏まえて教育課程審議会ではいろいろ御議論がある、教育課程審議会の役割としては教科科目の具体の問題について結論を出す、こういうふうな関係にあると私ども理解しておるわけでございます。
  320. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 文部省の方では、戦後社会科についてこの役割を終わったと考えられているのでしょうか、今の時点ではどのように評価されているのでしょうか、これもちょっと簡潔に一言伺いたいと思います。
  321. 西崎清久

    ○西崎政府委員 現在の社会科の目標は、広い視野に立って社会と人間についての理解と認識を深め、民主的、平和的な国家社会の有為な形成者として必要な国民資質を養う、こういう内容が社会科の目標でございます。この目標自体はやはり私どもとしては引き続き維持していく必要があるというふうに思っております。  しかし、今回、地歴科と公民科が分かれてそれぞれに目標を立てるという教育課程審議会が結論を出された背景には、やはり現在の時代的要請として、国際的視野に立って日本と世界との関係における青少年の育成という一つの大きな目標をあわせて立てるというふうなお考えがあるわけでありまして、この現在の社会科の目標だけではなくて、あわせてそういうふうな目標も立てた教育を社会科の各科目において行っていく必要がある、そういう意味においては教科としても地歴科と公民科というものを分ける必要がある、こういうふうなお考えが背景にあると思うわけであります。したがいまして、社会科の目標も地歴科あるいは公民科で引き継ぐわけでありますが、大きくは公民科において従来の社会科の目標は達成されるように、また内容も充実していかなければならない。そして地歴科は、従来の社会科の目標を引き継ぎながら、あわせて世界史的な観点とかグローバルな観点を取り入れたものとして新たに目標を構成していく必要がある。これは、これから一年間の作業が必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  322. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 社会科についてはもう余り詳しく言うまでもありませんけれども、戦後の民主主義を根づかせるということで、学校教育の中で大変大きな役割を担ってきた教科だというふうに私は考えています。特に高校社会科について、これは昭和二十六年の学習指導要領はこのように書いているのです。「民主主義がその真価を発揮するためには、すべての人人がじゅうぶんにその個性を生かしつつ、民主主義そのものの原理を理解し、尊敬し、実践していくことが必要であり、そのためには国民のひとりひとりがよく教育されていなければならない。」という民主主義の徹底、理解ということをはっきりうたっているわけであります。私は、この役割というのは今なお大変重要だというふうに考えています。  今回、そういう意味で、低学年の社会科を廃止し、そして中学校では社会科の時間を削り、高校のいわば社会科解体、余り理由が成り立たない形で強引に押し切ったという点では、学界また学校現場挙げて圧倒的なこれは反対意見なのですね。そういう点で、そういう意見に本当に文部省は誠実にこたえたのかどうかという点でも、こたえていないというふうに思うわけです。そうして、いわば議論を抑える形で協力者を解任するというのは、もはやこれは民主主義とは言えないというふうに私は言わざるを得ません。また、そういう面で教育内容の統制だということにもやがてつながるような重大な内容を持っているというふうに考えるわけです。この委員会でもいろいろ問われているわけでありますけれども教育の問題については、特に学界で意見が対立するという問題については、やはり公の場で徹底して審議を尽くす、そういう立場にぜひとも文部省が立っていただきたい、また立たなければいけない。見解の違う意見を封ずるとかいうようなことは絶対あってはいけないというふうに私は申し上げたいと思います。  さて、そういう点で、次に、今審議されている教特法の法案に即して審議に入っていきたいというふうに思います。  まず、研修のあり方ではっきりさせておきたいというふうに思います。やはり今回の改正の中心問題は、教員研修というものをどうとらえるのかということだというふうに思うのです。それは、教師の仕事というのをどういう性格のものとして見るのか、こういうことが大きな前提にあるというふうに思います。そのことで教員研修とは何かということでもうたびたび取り上げられているわけですが、教特法の第十九条の一項ですね。「教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならない。」この規定は教員に自主的研修の努力義務を課しているというふうに見ることができるわけですけれども、なぜこういう条項を起こさなければいけないのかということをちょっと伺っておきたいわけでございます。
  323. 加戸守行

    加戸政府委員 御承知のように、国家公務員法あるいは地方公務員法におきましては任命権者側が行う研修ということを念頭に置いた規定になっているわけでございます。一方、これに対しまして、教育公務員特例法におきましては教員の特殊性という観点からの規定が十九条の一項でございまして、これは教職といいますものが、その活動が人間の心身の発達という基本的な価値にかかわるものでございまして、高度の学問的な修練も必要とし、しかも、その実践的な活動の場面では個性の発達に即する的確な判断に基づく指導力が要求される職業でございます。そういう意味で、それにふさわしい能力は教員の一生を通じる不断の努力によって養われていくものでございますから、教育公務員特例法教育公務員に対しましてこのような「研究」と「修養」に努めなければならない責務を規定したものでございます。  しかし、このことは教員が自主的な研修あるいはほかの研修も含めてでございまして、行政側といいますか、任命権者側におきまして研修を実施し、教員のその研修への参加を求めることを排除するという趣旨に解すべきでないことは、教育公務員特例法の制定の趣旨から明らかであると私ども思っております。
  324. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 その後段のことは今特にここでは伺っていないわけですけれども、今御答弁のように、やはり教育という営みですね、そういう特殊性というかそういうものから来ているということで、やはり一般公務員研修と違う。その辺はどうなんですか。一般公務員研修と同列に論じられない、このことが十九条の意味だというふうに確認してよろしいですか。
  325. 加戸守行

    加戸政府委員 一般公務員でありましても国民の税金で負担されているわけでございますし、それぞれの職責遂行のためにはそういった研修をし、かつ、自己を磨くということが潜在的には要請されておると思いますけれども、それは一般的な常識的な感覚でございまして、法律上は先生おっしゃいますように、一般公務員よりも特に教職の重要性にかんがみまして、教育公務員が「絶えず」、ということは一生を通じてその職にある限り「研究」と「修養」に努めてもらいたいという願望と期待を込めてその責務を規定しているわけでございますので、確かにおっしゃいますように、制度の問題といたしましては、一般公務員に比べてはるかに教員の場合の研究、修養、研さん義務義務といいますか責務が課せられているというぐあいに理解いたしております。
  326. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私どもは、やはり研修のあり方が違うというふうに考えなければいけないと思うのですね。つまり、一般公務員の場合ははっきりと、地方公務員法では任命権者研修を課すということで最初から任命権者が特定されているわけですね。だから、一般公務員の場合は与えられなければいけない研修という位置づけだというふうに思うわけですね。それに対して、最初に伺いましたように、教員の場合というのは十九条の一項、また二十条の二項で自主的な研修、みずからが主体的にそういう研究、修養に努めるのだという、そこの強調がやはり大きな違いではないかというふうに思うわけです。そして、それは単に努力というあるいは期待されているということだけではなくて、そのために行政がそれを保障するということを含んでの内容なわけですね。こういう点では、国際的にも教員研修のあり方として常識のことだというふうに私は思うのですが、国際的な動向についての文部省の御見解をちょっと伺っておきたいというふうに思います。
  327. 加戸守行

    加戸政府委員 国際的な動向というお尋ねでございましたが、諸外国の情勢をつぶさに私ども知っているわけではございませんけれども教員に対しますこういった研修類似の形での研さんを求めている典型的な例といたしましては西ドイツがございます。西ドイツにおきましては、四年間大学を卒業しました者に対しまして教員採の一次試験を行いまして、教員にふさわしいかどうかの試験に合格した者につきましては一年ないし一年半の試補という身分に置きまして研さんを積んでいただき、その結果を受けまして二次試験を行いまして成績優秀な方を教員採用するというような形で、教員に至りますまでの間に非常に厳しい教育訓練が行われていると理解しているわけでございます。しかしながら、今の西ドイツのケースは試補制度でございまして、特に最近は、児童生徒の減少は日本と同様でございますので、一次試験に合格し一年ないし一年半の各州の法令で定めますこういった試補期間を経ましても、現実に教員採用されるケースは極めて少ないという厳しい競争の中をくぐり抜けるという制度でございます。  そのほかの制度としては、それぞれの欧米先進諸国等におきましても研さんの場の提供等はございますけれども、イギリスにおきましては仮採用制度ということで一年間の措置がございまして、それは教員が研さんを積んだ結果として正式採用を決めるという形でございます。この場合の仮採用から本採用への移行するプロセスというのは、比率的には、排除される教員の数の方が極めて少ないというケースがございますけれども、そういう意味では正式採用になるための各種の研さんをする、あるいはそれに対する教員の一年間の便宜供与というような形のものも行われている状況でございます。ちなみに、このイギリスの制度につきましては、現在の教員の質の低下を憂える観点から、今の仮採用期間を二年または三年に延長するという動きが出ているようでございます。  それからアメリカの場合でございますけれども、本来、アメリカの場合は特殊な雇用制度でございまして、当分の間は一年間で雇用が更新されますので、一年たっても採用されないというケースがあるわけでございます。そういった不安定な身分が、これは州により異なりますけれども、三年または七年続くという状況でございまして、教員としての資格を磨き、資質能力が認められました場合には、テニュアという地位を確保いたしまして、三年ないし七年間の後に獲得しましたテニュアの場合には教員は解雇されないというような形になるわけでございます。その間もかなり厳しい試練が続くというような状況に理解いたしておるわけでございます。  概括して申し上げますと、それぞれの国におきます教員資質向上に関します各般の施策で、私どもの承知しておりますのはそんなところでございます。
  328. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 確認したい点は、教員研修というものは自主的なものだ、その機会をいかに保障するかということを基本として考え教育公務員特例法趣旨、また精神もそういうことだという点を、あえてというか再度確認したいわけです。その上で行政の研修という問題もあると思うのですけれども、あくまでも自主的な研修を補う位置づけという点で、その辺ははっきりさせておかなくてはいけないのではないかと思うわけです。教育公務員特例法趣旨と精神という点で、再度自主研修の問題を確認したいわけです。
  329. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員特例法趣旨は、先ほど申し上げましたように教員の不断の切磋琢磨ということを期待し、またそれを責務として課しておるわけでございますが、本質的に地方公務員法三十九条の規定を排除しているわけではございませんから、当然地方公務員法の規定に基づく任命権者が行う研修を前提としているわけでございます。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕  しかしながら、任命権者が行う研修のみならず、教員の場合には自主的、意欲的にみずからを磨いてもらいたいというのが教育公務員特例法十九条一項の趣旨でございますので、先生おっしゃいますように、教員の場合には自主研修に努めるべき責務があると同時に、また、教員が自主研修をしたいといった場合に対します便宜供与等が十九条の二項あるいは二十条の二項等で規定されておるわけでございまして、両々相まって教員資質向上することを制度としても期待しておるところでございます。
  330. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今回の改正でこの二十条の二という形で一項、二項を新設しているわけですけれども、再度確認してきましたように、十九条との関係では、この新設というのはどういう意味を持っているのでしょうか。
  331. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員特例法十九条一項は、教育公務員がみずから研修に努めなければならない旨を規定したものでございまして、今回提案申し上げております教育公務員特例法の二十条の二の新設条項におきましては、任命権者が新規採用教員に対しまして一年間研修を実施しなければならないという任命権者サイドからの規定でございます。  さらに付言して申し上げますれば、地方公務員法の三十九条第二項で、「前項の研修は、任命権者が行うものとする。」という、任命権者が行う内容一つとして、重要なものとして、初任者研修の一年間実施義務都道府県教育委員会並びに指定都市教育委員会である任命権者義務法律上、課そうとするものでございます。
  332. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私ども理解では、十九条と二十条というのは非常に矛盾した内容を持つものでもある、こういうのが今度新しく加わったというふうに考えられるわけです。やはり法の構成からいって十九条の規定が基本だという点でいいますと、後で任命権者義務という問題では触れますけれども、十九条の自主的な研修をきちんと保障するということで、その辺は文部省としての立場と解釈をはっきりさせていただきたいと思うわけです。  任命権者義務についてということでは、一般公務員法にはそういうことでありますけれども一般公務員法にあるからそこに持ってきたというだけでは、今度は逆に、では教育公務員特例法は何だということになるわけですね。一般公務員法の研修内容教育公務員特例法研修内容がまた違う。これは明らかに法文上でも、地方公務員法では勤務能率、そういう向上、遂行状態を見るということになっているのに対して、教育公務員特例法では「職責を遂行」となっている。この「職責」というのは、やはり教師としてこれは国民に負託された全体の奉仕者であるという点から来る教師の職責という点での規定となっているわけでございまして、任命権者義務として課すという中身自身も違うというふうに思うわけです。そういう点で、十九条の規定というのをやはり基本に据えてあくまでもこの教育公務員特例法趣旨考えるという点では、何度にもなりますけれども、これを確認をしたいと思うのです。
  333. 加戸守行

    加戸政府委員 教育公務員特例法十九条の一項は、教育公務員について勤務時間の内外を問わず職責遂行のための研修の責務を道義的、理念的な意味において規定したものでございまして、この場合におきます「研究」と「修養」は、職務である研修のみならず自発的研修の双方に関する規定を包含するものでございまして、みずから研修をしてみずからを切磋琢磨すると同時に、任命権者側において実施します研修を受けて研さんに努めなければならない、両様の意味に解されるわけでございます。その点において、地方公務員法上の一般公務員と異なります点は、確かに先生おっしゃいますように自主的な研修ということの意欲を大いに期待しているわけでございますから、そのことに伴いましてそれぞれの、例えば二十条二項に基づく自宅研修とか、二十条三項の現職のままでの長期研修というような各制度がこの十九条の一項の趣旨を踏まえて設けられているわけでございますが、十九条の一項は、今申し上げましたように職務研修、自発的研修の双方を包含した、あらゆる機会を利用して自分を研さんしていただきたいという願いを込めて規定されたものでございます。
  334. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この点で大臣に一言所見を伺いたいわけですが、十九条の基本を尊重するということですね、研修のあり方として自主研修基本に据えて考えるということで、大臣の所見を伺いたいと思います。
  335. 中島源太郎

    中島国務大臣 十九条につきましては一項、二項にありまして、教育公務員がみずから絶えず研究と修養に努めるということと同時に、また第二項で任命権者の規定がございます。これは教育行政機関が一定の方針に基づいて教職生活全体にわたる研修を実施しまして、そして、教員に対して研修への参加を求めることを排除しているものではないわけであります。それを受けまして今回の初任者研修に関する法案を御提案したところでございまして、まさにおっしゃいますように、第二十条二の第一項の新設並びに第二十条二の第二項の新設によりまして、十九条にありますように、「教員経験に応じて実施する体系的な研修一環をなすもの」であるということを明記した次第でございます。
  336. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それでは、初任者研修試行の問題点について伺いたいと思います。  試行が一年間済みまして、ことし二年目に入っているわけでありますが、先ほども、この一年間どのような実態だったのか、各県教育委員会などから報告が出されているという点で報告書を提出していただくということがお話にあったわけですけれども、本当にできるだけ早くこの報告書を提出していただきたい。本来ならこの委員会審議中に出していただくのが筋だというふうに思うわけですが、この点再度御要望申し上げたいわけですが、いかがですか。
  337. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど馬場先生の方からも御要求があったわけでございますが、私ども任命権者が実施しました詳細な報告を受けておりますが、これはちょっと集約が難しゅうございます。しかし、初任者研修の対象教員の所属いたしております校長先生並びに初任者教員に対します指導を行いました指導教員、さらに初任者研修を受けました教員、その三者の方々それぞれにつきまして御意見をいただいておるわけでございますので、その集約、集計を急ぎまして、そのいただきました三者の意見の集約をできる限り早い機会に当委員会に提出をさせていただきたいと考えております。
  338. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それでは、試行の実態について文部省はいろいろと掌握をされていると思いますけれども、どういう問題点があるのか。先ほど大臣からもちょっと御意見というかがあったのですけれども、今まとめられた段階で、特にメリット、デメリット、特徴的な点を伺いたいというふうに思います。
  339. 加戸守行

    加戸政府委員 現在集約中でございますので全部を見たわけではございませんが、それぞれのケースについていろいろの問題はあり得ると思っております。例えば研修期間が、校内研修七十日間、校外研修三十五日間、それぞれ程度ということで実施をしていただいておりますけれども、多くの都道府県はこの七十日、三十五日というのをきちんと守っていただいておりますが、これに対しましてもう少し期間が短い方がいいのではないかという御意見も相当ございますし、あるいは児童生徒との触れ合いの問題にいたしましても、やはり児童生徒との触れ合いが欠けるという点においての問題意識を強く感じていらっしゃる先生方も、比率としては少数ではございますがあります。さらに、指導教員の負担の問題あるいは研修を受ける初任者研修教員の負担の問題についての意識も調査いたしておりますけれども、特に初任者研修の場合には、多少の負担は感じるけれども自分のためだと思って頑張っているというような御意見が非常に多いわけでございますが、一方において、大変に負担を感じているという御意見も少数ではございますが一定の比率ございますし、そういった問題は、今後の運用を通じまして改善をすべき一つの大きな判断材料として私どもは受けとめておるわけでございます。
  340. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私どももいろいろと伺うわけですけれども、ある県では成果と問題、課題というふうに何か文部省に報告しているようですけれども、見るところ、成果の方はそれほど書けることがなくて、むしろ問題、課題の方が多いというようなこともあるようですね。その中で、本当に見逃すことができないのは、一人の教員がずっと学習に責任が持てないというかそういう体制をとれないので、円滑な連携がとれないためにいろいろな教員が入るわけですね。そういうことで、円滑な連携がとれなくて学習の一部に重複とか欠落などが出てきている、学習進度がおくれがちだという問題も出ているのですね。それから、先生が何回かかわるので子供たちに落ちつきがなくなる、学習に対する不安感を持つ、そういう子供たちが出てきている、こんな深刻な話がございます。そういう点で、今お話しのように、研修の日数が長いということで学校としても学校の経営の体制をとるのが大変だ、そういう研修の計画を立てるけれども、実際に研修が効果的に上がったというようなふうには思えないというような話等々あるわけです。  そういう点で伺うわけですけれども、そういう問題点がもう相当わかっているわけでありまして、ことしの試行についてはまた同じようにやろうとするわけですか、何かこういう点での改善の手が打たれているのかということを伺いたいと思います。
  341. 加戸守行

    加戸政府委員 昭和六十二年度で実施いたしました初任者研修の試行対象教員は二千百四十一名でございますので、試行されました状況等をある意味ではウの目タカの目で欠点、長所を掘り出していけば相当あると思います。それはある意味では、試行というのは本来、本格的実施に備えまして問題点の解明をするわけでもございますし、また現実に、その教職員あるいは新任教員あるいは指導教員の負担の問題といたしましては、試行状況を報告するということをやっておるわけでございますから、その報告をするための事務がまた負担になっているという現象は確かにあると思います。この問題は本格実施になれば解消されるわけでもございます。そこで、いろいろな問題点というのを解明するために試行したわけでございますから、当然昭和六十二年度に試行いたしました三十六都府県指定都市におきましては、みずから実施した中におきます反省点あるいは改善すべき点はおわかりのようでございますから、当然六十三年度の継続した試行につきましては、対象地域は異なりあるいは対象教員はかわるわけでございますけれども、それなりの六十二年度の結果を踏まえました対応というのをお考えいただいているところだと思っております。ただ、六十三年度に新たに試行に入ります残りの二十一県市につきましては初めての形でございますけれども、これも既に試行を行いました県のノーハウ等も踏まえましてそれなりの対応をしていただくことであろうと思っております。そういう点では、六十三年度の試行は六十二年度よりもなお一層改善された道を歩むものだと期待もしているところでございます。
  342. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 どのように改善されるのかというのは今の御答弁からは余りはっきりしないわけですけれども、この試行の実態というのは非常に学校現場では深刻になっているのではないでしょうか。特にこういうことがあるのですね。これは東京の養護学校の例でございます。名前も出したいと思うのですけれども、港養護学校では高校一年に三名の女性教員ですけれども、そのうち二名が新任、一名が都合で休む日とまた初任研が重なると女性教員が一人もいなくなるということで、トイレの介助とか着がえなどに大きな支障が生じているということが言われております。立川聾学校では九名の新任教員がいます。一度に研修で抜けると、学校運営の問題だけにとどまらず、子供たちの安全にもかかわる重大な問題だ。養護学校は、御存じのように新しく入られる先生が大変多いのですね。こういうところで、新任者は逆に後ろ髪を引かれる思いで研修に参加しているということでは、研修にも身が入らない事態になっているということです。また御父兄の方も、先生方が一度に抜けるということで大変不安を感じておられるということですね。  ですから、今は試行ということでそれぞれピックアップされた状況で行われているでしょうけれども、これが全国的に実施されるということになったら、本当にどんなことになるのかという点では大変問題は深いというふうに思うわけです。特に辺地校なんかでも、かわりの先生がいないということで非常に問題があるということも聞いているわけでありますし、この試行についてはいろいろ各地から御意見が寄せられています。先生方は本当に、子供たちや親の目との関係でも、大変な思いで研修を受けているわけですね。子供たち研修を受けている先生を「ひよっこ先生」というふうに呼んでいる。だから、逆に子供との信頼関係が失われる。そして、教師の権威もかえって失墜しているわけですね。今、どうも文部省の方は、教師にもっと権威を持たせようというような動きにもなっていると思うのですが、私は、この初任者研修というのは、逆に先生の地位や権威を失墜させるということになっているというふうに思うのです。  また、研修を受けている先生は、七十項目の研修ノートを毎日点検される。この点検の作業に追い回されて、子供たちとの触れ合いができないということがあります。だから、ある先生は、これは立場的には教師であるけれども研修生だ、実際上これはもう研修生、こういう意識になっていくのですね、ならざるを得ないと思うのです。  それから、特に研修内容で私は問題にしたいのは、校外研修企業研修というのが大変入ってきています。どんなことをやっているのでしょうか。デパートの制服を着て九十度の礼をする、売り場で実習をしているのですね。一体こんなことが本当に教師研修になるんだろうか。それから、一日行軍であるとか軍隊式訓練まがいの強行登山だとか、これは戦前的な発想じゃありませんか。これが研修なんですか。文部省はそれをどんどん奨励するのですか。そういう点では、これは研修という名で教師研修にはならないというものになっているわけですね。そういう実態が非常にございます。簡単に、こういう実態について大臣はいかがお考えでしょうか。
  343. 加戸守行

    加戸政府委員 今いろいろな御意見等ございました。多くは教職員の負担の面でございますが、私どもは、こう申し上げては恐縮でございますけれども、勤務をしながら、かつ、一年間にわたる初任者研修を受けるということは当然教員の負担になることだと思います。負担にならないとするならばそれはもはや研修ではないわけでございまして、ただ、その負担が当該教員にとって、将来を考えて本人のためになるという意識を持って、我慢できるものかあるいは許容限度を超えるものかという問題ではなかろうかと思うわけでございます。そういった点では、私ども先ほど申し上げました意識調査の中におきましても、負担はあるけれども子供たちのためだと思って、あるいは自分のためだと思って頑張っているという御意見が圧倒的に多いのはその趣旨だと思いますし、また、私自身が洋上研修で乗り組みまして、研修生と話をざっくばらんにひざを突き合わして申し上げましたときにも、そういった御意見がございました。  それから、デパート等の企業研修のお話がございました。確かにある県におきましては、デパートで実地の訓練をいただいております。しかしながら、これは学校先生が、自分の住んでいらっしゃる学校以外の世界がどういう世界であるか、あるいは自分たちの教え子が巣立っていって就職する場がどんな場であるのか、その勤務形態がどんなものであるかということを体験することは非常に貴重なことでございますし、また、企業参観その他につきましては大変好評でございますし、新任教員も目が開かれたという御意見が多いわけでございます。  さらに、今教員の権威の問題についてお話がございましたけれども、お言葉を返しとうはございませんが、学校の穴埋めのそういった事柄につきましては、本人の意識が、将来の教員生活におきまして必ずや、初任者研修を受けた一年間がすばらしかったという形で、立派な教員に育っていただく、それこそが教員に権威を持たせるゆえんではないかと私ども考えております。
  344. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今の点で大臣、ぜひとも御答弁をお願いしたいと思います。
  345. 中島源太郎

    中島国務大臣 教職に身を置く方にとりましても、初任者というのは初めて社会人として教鞭をとられるわけでございます。そのときの研修というのは非常に必要だ。先ほどもおっしゃったように、社会的にはいろいろな新入社員に対する研修というのはほとんどあるではないかという言葉もございます。まさに人が人をつくる重要な職務でございますから、幅広い知見を得ていただく、そして実践的な指導力を養っていただく、こういうふうに私ども申し上げておるわけであります。そういう意味で、限られた時間でありますけれども、社会のあらゆる面を見ていただくということは、やはり教鞭をとる方にとって必要な研修一環である。今伺っておりまして、いろいろ工夫して研修をやっていてくださるなという感じを率直に持った次第でございます。
  346. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 デパートの売り場に立ってマナーを身につけることがどうして教師研修になるのか。大臣がそれを評価されるというのは私は大変疑うわけですけれども、その問題で、今洋上研修のことが出ましたので、ちょっと伺いたいと思います。  洋上研修講義内容は、私ども資料としてぜひとも提出していただきたいわけですけれども、どうですか、出していただけますか。
  347. 加戸守行

    加戸政府委員 洋上研修におきましては、十一人でしたか、ちょっと数字は不正確でございますけれども、各界各層の講師の方々、その中に私も含めてでございますが、それぞれの講義をいただいております。しかしながら、この講義に関しましては、速記、録音その他とっておりませんので、記録はございません。
  348. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 政府が行うということでありますし、講義には当然講義メモや講義ノートがあるのじゃないでしょうか。やはりこれは行政研修としてそれこそ権威を持ってやるわけですから、どうして記録ができないのでしょうか。これもおかしな話ですね。研修内容をオープンにするのは当然のことじゃないのでしょうか。オープンにできないからそういう処置をとったんでしょうか。それは大変問題だ。そういう点で、これは私も洋上研修を受けた方々からいろいろお聞きしているわけですけれども、第一回目の洋上研修は、加戸局長講義内容もいろいろ聞いているところでありますが、大変重大な講義内容になっているのですね。ちょっと申し上げたいと思います。  一つは、結団式におけるあいさつは、臨教審のこの精神でこれから教育改革に取り組むんだということで言っている。それをちょっと確認したいわけです。それから、教員である前によき日本人、社会人であれ、——これは、その抽象的な言葉だけでは何とも言えませんからおいておくといたしまして、要するに臨教審を強調しているということが一点です。  お二人目の講師の方は伊勢神宮と法隆寺、それはいいんですけれども、不易の思想ですね。不易と流行は表裏一体、これも臨教審で言われている話であります。中曽根さんが大変これを好まれたんだというふうに思いますけれども。だから、全部臨教審路線だということを一つ言いたいわけです。  それから御存じの、これはテレビにも映されましたけれども、バレーボールの三屋さん、これは根性を説いたということであると思いますけれども、ある方は北方領土の問題を取り上げていらっしゃるわけですね。その中で、ソ連によって不法占拠された問題という形で、(発言する者あり)いや、だからこれはあなた方の見解かもしれないけれども、自民党の見解かもしれないけれども国民の間には意見の分かれるところですよね。だから意見の分かれるという問題を言っているわけです。いいか悪いかは言っていません。  それから、特に日経連の方も講師として出ていらっしゃるわけです。  そういう点では、どうですか、講師は全く、まさに自民党の政策を宣伝される方々ばかりではありませんか。これはどうなんですか。公平の原則の問題からしても一方的な見解を、洋上研修でいわば閉じ込めて、一方的な自民党の政策をここで講義している、こういうふうに言えるのではありませんか。臨教審についても、一体臨教審というのは、それは答申がありましたけれども国民的な合意としてはありますか。そういう意味では大変重大だという点であります。  もう時間がありませんので、加戸局長にちょっと伺いたいわけですけれども、先ほど申しましたように現場の方では高校生がこのように言っているのですね、先生方初任者研修を受けると、一体僕たちはモルモットなのか、こういう声が出ているわけです。さて、どうですか、局長はこの第二回目の洋上研修先生方をモルモット扱いして大変恐縮でございます、こういうことをおっしゃってないでしょうか。これはあくまで試行で、やって間違うこともある、先生方研修を受けられていると同時に実験的な立場での研究台になっているわけです、これは重大な発言じゃないでしょうか。
  349. 加戸守行

    加戸政府委員 まずその講義内容の話でございますが、私は一昨年まで文化庁の次長をいたしておりまして、他人の講義を無断で録音する、あるいは速記をとるということは著作権法に違反することでございます。したがいまして、講師の了解なしには録音はできないというシステムをまず御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)  それから、この講演の講師団の話につきましては、それぞれ時期は三日間ずつでございますが、第一団も第二団も記者団が乗り組んでおりまして、第二回目の洋上研修の際には私の講義を記者団の方が聞いておられます。  それから、冒頭のあいさつで私が、臨教審に基づく教育改革を進めるべきときであるということを申し上げましたのは、臨教審答申を最大限尊重すべき政府の義務に基づきまして、私も政府の一員として申し上げたわけでございます。  それから、よき教師である前によき日本人であれということを申し上げたと思いますけれども、これは私の持論でございますが、そのことが非難されるべき筋合いではないと思っております。  それから、今記憶には余りございませんが、言うなれば試行でございますので、あるいはそういった先生方を、今後の問題解明のため先生方が土台になっていただいているということを表現する言葉として、「モルモット」を使ったか「試験台」を使ったか定かではございませんが、先生方には大変申しわけないが、皆様方の試行の結果が将来の後に続く後輩のための材料とさせていただくのだから勘弁してほしいという、そういった趣旨のことは確かに申し上げております。
  350. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 試行だからといって記録がないということで済むのかどうかという問題、そういう問題をいろいろ突っ込みたいわけですけれども、申し上げましたように、この洋上研修内容、非常に重要な問題を持っているというふうに思います。私はやはり、これが教員研修ということで、試行というのはそれを実施することを見込んでやっていらっしゃるわけですから、試行はこうだけれども、実際は全然違うことをやりますというのだったらまた試行の意味もないわけです、やはりそれが実際の場でやることの意味をそこで確かめているわけでありますから、こういうのが結局初任者研修の、行政研修中身だということになりますと、これは大変な問題だというふうに私は思うわけです。そういう点で、今後とも洋上研修その他の行政研修についてはやはり内容を公開する、あなた方はいいことをやっていらっしゃるのだったらどんどんと公開したらどうですか。どんどんと公開をして、そして国民的な議論を起こすという点で、非公開はやめていただきたい、研修内容は必ず公開をしていただきたいということを強く申し上げたいと思います。いかがですか、大臣の見解を求めます。
  351. 加戸守行

    加戸政府委員 その前に、実情認識から申し上げたいと思いますが、今回の、昨年実施をしました洋上研修は、第一団、第二団ともに、記者クラブに対しまして自由に申し込みをいただきまして、そして乗り組んでいただきました。その結果として、何しろ十日を超す洋上研修でございますので、記者団の方から三日間という形で、東京を出発し、釧路へ到着してまでの三日間、それから第二団の方は時期的には、多分大分から……。ちょっと記憶が薄れましたけれども、いずれにいたしましても記者クラブの取材には全部応じ、講師の話も自由に聞いていただくという対応をさせていただいたところでございます。(発言する者あり)
  352. 中島源太郎

    中島国務大臣 一連の中で御理解をいただくことが必要だと思いまして、こういう行政研修意味というものはありますし、私どもはそれは大切なことだと思っておりますし、その研修一環として洋上研修のことが取り上げられました。これは別に研修全体について非公開ということもないと思いますし、それからまた、研修の中で先生おっしゃるように臨教審のことが取り上げられた、これは私は大変ありがたいことでございまして、私どもは勝手に申しておるのではなくて、臨教審三年間の大変な御審議の中から生まれてきた声を最大限に尊重して私どもは進めたい、こう思っておるところでございますし、また洋上研修というのはもう一つ大きな意味がありまして、多くの県から出ておる方々がその間、一緒に起居をともにし、それぞれの体験、それぞれの長所短所を話し合って、またそれは、さっきおっしゃるように十九条の一と二がまさに一緒になったような、行政研修の中でそれぞれの県から出た方が一緒に話し合うという自己研さんの場でもある、そういう意味では大変価値ある、意義ある研修一環だと私は思っておりますし、そのように御理解いただきたいと思う次第でございます。
  353. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大変時間がなくなりましたので、きょうは人事院もおいでいただいていますので、ちょっとそちらの方に移りたいと思います。  条件つき採用期間の延長、これが今回の一つの大きな内容でありまして、このことで伺いたいと思うわけです。現行の公務員制度は六カ月が原則でありますが、まず、この六カ月を原則としているのはどういう根拠に基づいているのか、人事院に御説明いただきたいと思います。
  354. 谷仁

    ○谷説明員 一般職の国家公務員採用につきましては、職務遂行能力についての競争試験または選考により行うことになっております。競争試験あるいは選考におきまして能力のすべてにつきまして判断をすることは大変困難でございますので、条件つき採用期間の制度が設けられておるわけでございます。  すなわち、条件つき採用期間の制度につきましては、競争試験あるいは選考によりまして職員を採用いたしました場合の職務遂行能力につきまして、採用後の一定期間の職務を通じまして最終的に確認をするというものでございますけれども、その期間としては通常六カ月程度が必要であるという考え方に基づくものでございます。
  355. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 公務員の場合はもちろん公務員試験、そして採用試験をクリアしているわけでありますから、資格があるということを前提にしているわけですね。ですから六カ月以上延長という場合、これが例外的措置になっているというふうに思うのです。この例外的措置というケースですね、どういうケースがあるのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  356. 谷仁

    ○谷説明員 条件つき採用期間の開始後六カ月間におきまして実際に勤務した日数が九十日に満たない職員につきましては、その日数が九十日に達するまで条件つき採用期間が引き続くものというふうにされております。ただし、この期間は最長一年間でございます。
  357. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 だから、非常に具体的な理由に限って、そういう事由が発生した場合だけ延長ということだと思うのですね。今、この法改正では教員に限って一年間に延長する、この根拠は何ですか。これは人事院と文部省に伺いたいと思います。人事院の方からお願いします。
  358. 加戸守行

    加戸政府委員 本委員会でもたびたび答弁申し上げましたが、いわゆる一般公務員の六カ月の条件つき採用期間を、初任者研修の対象となります教員につきまして一年間にこれを延長することを提案しておるわけでございます。  これは、一年間にわたる初任者研修を受けますから、実際の勤務形態が研修を受けながら勤務をするという、ある意味では一つの仕事の遂行ぶりが勤務でもあり研修でもあるという形態、これは一つの状態でございますけれども、そういった教員の特殊な勤務形態になる、しかも、実際に職務を遂行する場合に職務遂行が本人の主体性において行われているか、あるいはアドバイスを得ながらやっているかということによりましてもまた違いは出るわけでございますが、いずれにいたしましてもそのような特殊な勤務形態になっているということが一つの理由でございます。  第二の理由といたしましては、これは教員全体について言えることでございますけれども教員の職務というのは一年間にわたる学級経営活動の展開の中でその職務遂行能力を判断するわけでございますが、通常の職種と違いましてその進度その他におきまして教員の勤務の特殊性が非常にあるわけでございます。したがって、それに基づいて具体的な職務遂行能力を判定するということは、特に教員の仕事が全人格的な職務でもある、子供たちとの触れ合いの中で子供たち信頼をかち取っていくということでございますから、そういう意味では、成長を遂げながら一年間の過程においてどのような形で職務が遂行できたか、研修が終わった時点で教員の職務遂行の実証といいますか能力の実証をするということが適当という観点に立って、一年間への延長を措置するべく提案させていただいておるところでございます。
  359. 谷仁

    ○谷説明員 一般職の国家公務員につきましては、条件つき採用期間については先ほど申し上げましたように六カ月と定めておるわけでございますが、教員の職務の特殊性によってただいま文部省からお話がございましたような内容の御提案がなされているというふうに承知いたしております。
  360. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 重ねてちょっと人事院に伺いますけれども、条件つき採用と正式任用では身分上はどういう違いが出てくるのでしょうか。具体的に御説明いただきたいと思います。
  361. 谷仁

    ○谷説明員 条件つき採用期間中の職員につきましては、国家公務員法の八十一条の規定によりまして身分保障に関する規定の適用除外となっております。正式に任用されました職員につきましては、法律に定められる事由によらなければ免職、降任等は行われないわけでございますが、条件つき採用期間中の職員につきましては、勤務成績その他その官職に引き続き任用しておくことが適当でないと認められる場合にはいつでも免職し、これを降任させることができるというのが、国家公務員法上の定めでございます。
  362. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それでは結局、六カ月の条件つき採用が一年に延長されるということで、教員は一年間身分上大変不安定というか、身分保障が適用されないということに置かれるわけですね。どうしてこういう一般公務員より地位を低下させることをあえてしなければならないのか、そういう問題が一つありますね。それじゃ新採用教員というのは一体一年間一人前扱いされないということで見ていいのでしょうか。
  363. 加戸守行

    加戸政府委員 法律制度的にはただいま人事院の方から答弁がございましたが、身分保障がないということではございません、法律上の分限規定が適用されないということでございます。しかしながら、実際問題として、条件つき採用期間中の職員を免職するに当たりましてはそれなりの合理的な理由が必要でございますし、最高裁の昭和五十三年の判決によりましても、そのことは任命権者の自由裁量でない旨明らかにされているわけでございます。具体的には今の分限規定に準じました考え方、つまり教員としての職務を遂行するに足りる適格性を有しない場合であるとか、あるいは心身の故障のために教員として身分を続けることができないというような、今の分限規定に準じました考え方で裁判所は判断しているわけでございますし、また現実の運用におきましてもそのような形で運用されているところでございまして、公務員として採用されて公務員として勤務しているという点におきましては身分に関しましては全く同一である、ただし、今申しました分限規定の適用が法律上はないということのみをもって不安定と言うことはできないと思います。
  364. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それはおかしいと思うのですね。現実に先ほどの人事院の御答弁はそうだったわけでありますし、人事院にもう一度伺いますけれども教員だけ一年間条件つき採用ということで身分保障が適用外になる、こういうことは公務員法上許されるのでしょうか。そういう点の問題点はないのでしょうか。
  365. 谷仁

    ○谷説明員 先ほど申し上げましたのは、一般職の国家公務員につきまして条件つき任用の場合の身分関係がどうなるかというお尋ねでございましたので、国公法上正式に任用された職員に適用される一部の規定、分限上の規定が条件つき任用期間中の場合には適用除外となっているということを申し上げたわけでございます。
  366. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 研修を受けながら勤務するという、何か大変苦しい御答弁がされているように思うのですけれども研修が本来の目的であるということならばなぜ六カ月の条件つき採用でいけないのか。身分保障の問題と研修の問題とは本来別のことではないのでしょうか。だから、行政の研修と条件つき採用の延長というのがセットになっている、ここが今最も重大なんですね。そういう点で大臣の御見解を伺いたいと思います。
  367. 加戸守行

    加戸政府委員 法律論でございますので、私の方からお答えさせていただきます。  いわゆる教員初任者研修を一年間実施するわけでございますが、その初任者研修の実施によりまして教員の勤務形態が大幅に変わってくるわけでございます。そういう意味におきまして今申し上げた条件つき採用期間を一年間研修にスライドさせているということは事実でございますが、もう一つの理由といたしましては、あくまでも教員の職務遂行能力の実証といいますものは先ほど申し上げましたように教員児童生徒との全人格的な触れ合いの中で評価されるべき事柄でもございますし、そういう意味におきまして、この教員の特殊な勤務形態があり、六カ月で通常の一般公務員と同様な観点で職務遂行の能力の実証を得ることは極めて困難だと考えまして、提案をさせていただいているところでございます。あくまでもこの事柄は、こういった教員の置かれます立場と、学校教育におきまして適格性を持った教員にいい教育を実施していただくことをどのようにして確保するのか、両面のサイドから比較考量すべき事柄でございまして、そういう意味におきます、現行制度の六カ月のままで初任者研修を受けた状態で十分な実証ができるかどうかについては、私どもは疑問に思っているというところでございます。
  368. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は、身分の不安定ということについて、先ほどから他の議員からも試補制度との差をわざわざ御指摘をいただいているわけでございまして、試補制度であれば身分の不安定ということがありましょうけれども、この初任者研修の場合には、教育公務員としての資格を持って、そして一年間、なぜ一年間かということは局長から申し上げましたように、教職にある者として一年間を通してその資質能力を養い、また資質能力の判定は一年をもって適正とする、これはまた私は正しいと思うわけでございます。ただ、今局長が言ったのは、そういう法律論ではあるけれども具体の問題であるという意味であると思いますが、さはさりながら、教職員として継続的にその職責を遂行できない理由、この理由をいろいろ確かめながら、その理由が確かに複数の目から見て適正であるというもの以外はこの身分がそのまま保障されるということでありますから、したがって、今までの御議論の中で試補制度、そしてこの研修、そして今の一年間の判定、この答弁をもってして御理解をいただけると私は考えております。
  369. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 局長が言われましたように、全人格的活動だからこそというか一年が要るんだというのは、だからこそ私は逆におかしいと思うのですね。身分を不安定に置いといてどうして子供と本当に真剣に教育活動に専念できるのかという点では、これは到底賛成できない、また矛盾をしている御答弁だというふうにも思うわけです。また、適格性を見るという大変重大な御発言もありまして、今後この点をめぐって本当に本格的な論議をしなければいけないというふうに思うわけであります。  そういう点で、大変まだ議論が続くわけでございますけれども、時間が参りましたので本日はここで終わりたいと思いますが、続いて二十七日の委員会ではぜひとも質問を行いたいということを申し上げて、きょうは終わりにしたいというふうに思います。      ────◇─────
  370. 中村靖

    中村委員長 内閣提出昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、去る二十日に質疑を終了いたしております。  この際、本案に対し、岸田文武君から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。岸田文武君。    ─────────────  昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  371. 岸田文武

    ○岸田委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案の施行期日は本年「四月一日」としておりますが、既にその期日は経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  何とぞ、委員各位の御賛成をお願い申し上げます。
  372. 中村靖

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  373. 中村靖

    中村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決に入ります。  まず、岸田文武君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  374. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  375. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  376. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  377. 中村靖

    中村委員長 次回は、来る二十七日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時五十六分散会