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1988-04-15 第112回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十五日(金曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       井出 正一君    遠藤 武彦君       工藤  巌君    古賀 正浩君       佐藤 敬夫君    斉藤斗志二君       杉浦 正健君    谷川 和穗君       渡海紀三朗君    松田 岩夫君       綿貫 民輔君    江田 五月君       嶋崎  譲君    中西 績介君       馬場  昇君    有島 重武君       石井 郁子君    山原健二郎君       田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君  委員外出席者         防衛施設庁施設         部施設対策第二         課長      柴田 桂治君         沖縄開発庁振興         局振興第四課長 池田  登君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   古賀 正浩君     綿貫 民輔君 同月十五日  辞任         補欠選任   井出 正一君     遠藤 武彦君   綿貫 民輔君     古賀 正浩君 同日  辞任         補欠選任   遠藤 武彦君     井出 正一君   古賀 正浩君     綿貫 民輔君     ───────────── 四月十四日  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号) 同月十五日  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第三九号)  地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五三号) 同月十四日  私学助成大幅増額、四十人学級即時実現に関する請願寺前巖紹介)(第一四〇一号)  私学助成大幅増額、大規模校舎解消に関する請願田中美智子紹介)(第一四〇二号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七四号)  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第四六号)  国立学校設置法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山原建二郎君。
  3. 山原健二郎

    山原委員 義務教育施設費国庫負担法につきまして質問をいたします。  この法案によりますと、施設費国庫負担割合が六十三年度十分の五・五となっているわけですが、なぜ三分の二にしなかったかということを最初に伺っておきたいのです。
  4. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案申し上げております施設負担法の一部改正におきましては、原則的にいわゆる児童生徒急増市町村におきます負担割合一般市町村の二分の一よりもかさ上げいたしまして三分の二とするという立て方をとっているわけでございますが、御承知のように、昭和六十一年度から六十三年度までの間におきましては、特例的な補助率かき上げについて補助金等特例法によりまして政府全体の補助金がすべて十分の五・五とされております、その横並びを勘案いたしまして、この施設負担法におきます負担割合も十分の五・五とさせていただいているわけでございます。これはかつての補助金問題閣僚会議決定に基づきまして補助率の総合的な見直しが行われ、特例的補助率かき上げにつきましては、かき上げ補助制度は残しつつもその圧縮を図るという観点から決定されたわけでございまして、その政府全体の横並びとの関係において、当法案におきましても六十三年度に限り十分の五・五という措置を講じておるわけでございます。
  5. 山原健二郎

    山原委員 今おっしゃった特例法法律規定はどうなっておりますか。
  6. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいまの御質問意味がちょっと正確に把握いたしかねましたので、恐縮でございますがもう一度お願いいたしたいと思います。
  7. 山原健二郎

    山原委員 こういう意味です。第十五条「義務教育学校施設費国庫負担法の一部改正」の項では、「附則第三項中「十分の六」を「十分の六とし、当該市町村の設置するものを含め、昭和六十一年度及び昭和六十二年度にあっては、十分の五・五」に改める。」というもので、法律規定昭和六十二年度までの措置となっているものではないかということですが、このことを確認したいと思って伺ったのですが、そうですね。
  8. 加戸守行

    加戸政府委員 十分の六と申しますのは、昭和六十年度の措置といたしまして三分の二を十分の六に引き下げ、そして六十一年及び六十二年度につきましては十分の五・五とされてきたわけでございます。今回提案いたしておりますのは六十一年度から六十三年度までということで、今までの六十一、六十二に引き続きまして六十三も十分の五・五という提案を申し上げているところでございます。
  9. 山原健二郎

    山原委員 法律規定としては六十三年度までとは書いていないわけですね。それをあえて六十三年度まで延長する理由はないのではないかと思いますが、この点は恐らく横並びあるいは他とのバランスというお答えになると思いますが、この点も確認しておきたいのです。
  10. 加戸守行

    加戸政府委員 今までの施設負担法におきます附則特例におきましては、基本的に、この児童生徒急増市町村地域に対しますかさ上げ措置が五十八年度から六十二年度までの五年間の措置という形で法律上の規定があったわけでございまして、このままで放置いたしますれば六十二年度をもってかさ上げ措置法律上の根拠を失うわけでございますので、今回改めて六十三年度から六十七年度までの五カ年間にわたりますかさ上げ措置のいわゆる五年間の延長措置を講ずることといたしたわけでございますが、その中におきまして六十三年度分についてはなお引き続き十分の五・五とするという考え方で、現行法にございます六十一及び六十二年度に対する措置を六十一年度から六十三年度までという、六十三年度分についても十分の五・五とする措置を付加したわけでございまして、基本的には六十二年度をもって一般的なかさ上げ措置が切れるのを、六十三年から六十七年までにつなぐことに伴って措置をさせていただいた。その理由は、先ほど申し上げましたように、他の補助金等におきましてはすべて六十一年から六十三年までの措置が講じられているわけでございますが、これは他の制度は六十二年度をもって切れる制度じゃございませんから特段の改正をしない状態で続く、ただ、この児童生徒急増市町村の場合についてだけは今申し上げたような事情があるからでございます。
  11. 山原健二郎

    山原委員 本来なら六十二年度までであって、三分の二に引き戻すのが当然だと私は思っておるわけです。文部省みずからが負担割合を低める必要はないのではないか。文部省マンモス校解消条件整備に取り組むという姿勢が本当にあるとするならば、また昨年十月に閣議決定をしました「教育改革推進大綱」、これは臨教審答申に基づく閣議決定でありますけれども、そこでは「過大規模校早期解消に努め、学校規模適正化を推進する。」と閣議決定をしているわけですね。そういう点から考えまして、本格的に取り組むという姿勢を持つならば、あえて文部省がここで他とのバランス論あるいは今おっしゃったような年次の切り方問題等で六十三年度を十分の五・五にする必要はないのではないか。本当に今の過大規模解消するという原則に立つならばそういう姿勢をとるべきではなかったかということを私は本当に思うのです。やはりこの学校規模適正化あるいは過大規模校早期解消というのは今まさに国民の求めていることでしょう。しかも、そのことを閣議でも決定をして、臨教審に基づいてやるんだということまで決めておいて、このところだけはやはりまた十分の五・五で試算をするというやり方は、どうもそういう意味での文部省の腹の据わり方、これに反発せざるを得ないのです。この点あえて伺っておきたいのです。
  12. 加戸守行

    加戸政府委員 それぞれの地域に応じます地域特例補助金かさ上げにつきましては、先生承知のように、僻地・過疎地域、山村、離島、特別豪雪地帯等の各種の補助金かさ上げ措置があるわけでございます。これらはいずれも六十三年度におきましては三分の二から十分の五・五へのかさ上げ措置引き下げが講じられているわけでございまして、もちろん児童生徒急増市町村につきましても、財政事情等はございましょうけれども、それぞれの地域の実情というものを勘案いたしますと、それらにおきましては十分の五・五でありながら、児童生徒急増市町村のみを三分の二の補助率とすることにつきましては、バランス、公平を欠くという観点から、政府全体の横並びということで、六十三年度につきましては十分の五・五と提案をさせていただいているところでございます。
  13. 山原健二郎

    山原委員 こういう国民の切実な要求、この点ならばこの委員会全部の各会派が一致できる問題ですよね。しかも国民の求めている問題、そういうことについてはいろいろな理由はつけているけれども、やはり文部省の腹は決まっていない。ところが一方では、この間からこの委員会で問題になっておりますように、今度の臨教審に基づく法案が出てきまして、これに対する例えば日教組の二月の定期大会あるいは三月の中央委員会決定に対して異例の通達を出すという、一方では国民的合意の達していないものについては文部省は非常に強圧的な態度をとり、そして国民的合意が得られているもの、当然やるべきもの、しかも閣議決定しておるものについては何となく文句を並べて、その実行に向かって前進をしないということを私はどうしても指摘せざるを得ないのです。こういう点にこそ、また臨教審そのものもこういうことをやるならば国民に喜ばれるわけですけれども合意のないものばかりやろうとしているところに問題があるわけですから、この点は強く指摘しておきたいと思います。  私があえて申し上げるまでもなく、本法律については、昭和四十八年度に小中学校校舎新増築の負担割合を二分の一から三分の二に上げまして、それ以来五年ごとに延長してきたものですね。ところが六十年以降横やりが入ってまいりまして、六十年度には国の補助金等の整理及び合理化並びに臨時特例等に関する法律ができて十分の六に下げられ、さらに昭和六十一年度から六十二年度にかけては国の補助金等臨時特例等に関する法律で十分の五・五に引き下げられる。今回の提出法案では、この負担率考えてみますと、今後どういうふうに推移することになっているのでしょうか。
  14. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、政府全体としましては、国の補助金等臨時特例に関する法律によりまして、地域かさ上げ措置につきましては六十三年度まで高率補助は十分の五・五まで引き下げることとなっているわけでございますので、今回の法案におきましてもその横並び提案申し上げているということは申し上げましたが、六十四年度以降の問題につきましては、政府全体としての取り扱い関係省庁で協議しながら方針を固めるということになろうかと思います。
  15. 山原健二郎

    山原委員 今のお話ですと、関係省庁で話し合うということは、六十四年度からは三分の二に戻すということではないのですか。その点はどうなのですか。話し合いによってそれも決める、こうおっしゃるわけですか。
  16. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますように、このままの措置でございますれば、法律上は昭和六十四年度以降はすべて三分の二という形になっているわけでございます。しかしながら、六十四年度以降の取り扱いにつきましては、国の財政状況あるいは今後の状況推移等も勘案しながら、予算措置としてどのような対応をするのかということは、関係省庁の中でそれぞれ御相談を申し上げながら方針を固めていく段階が参ると考えておるわけでございます。
  17. 山原健二郎

    山原委員 法律では六十四年度から三分の二に戻すとなっているのでしょう。その法律をそんなふうに解釈されたら審議できないじゃありませんか。今出ている、あなた方が出されたこの法律では、六十四年度からは三分の二になるということですわね。ところが加戸局長の言われるのは、いや、それもこれから各省庁話し合いによって決まるのだということになると、私どもここで審議しているのはこの法律です、ここで間もなく採決するわけですが、採決したって、その中身は変わるということになってまいりますと、これはちょっといただけないですね。幾ら何でも、法律に六十四年度からは三分の二にすると書いているのですから。それを今、私と中西先生質問が終われば採決に入ることを理事会で決めたわけです。その採決に入って私ども賛成しようと思っているのですけれども、その成立したものが、法律はできた、その法律中身は六十四年度から三分二だ、ところが、いやいや、またこれから話し合いをしてそれは変わるかもしれませんよということをおっしゃるということになりますと、これはちょっと今法律審議としては大変やりにくいですね。これは全くこの法律を決めていいのかどうかわからなくなってきましたよ。
  18. 加戸守行

    加戸政府委員 今回提案申し上げております施設負担法の一部改正案におきましては、六十三年度は十分の五・五、六十四年度以降におきましては三分の二という提案を申し上げているわけでございまして、来年度以降におきまして法律改正がない限り三分の二となるということでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、現下の財政状況等にかんがみまして、今後の取り扱いというのは一〇〇%確定ということではなくて、法律としては三分の二へ戻ることを前提といたしておりますが、いろいろな考え方財政当局等にもおありでございましょうし、そういったいろいろな御相談を受ける立場にある、しかしながら、文部省といたしましては、補助金かき上げが基本的に原則が三分の二であるという考え方に立って協議、相談には対応してまいりたいと思っているわけでございます。
  19. 山原健二郎

    山原委員 これは本委員会に対して大変に不親切な答弁ですよ。法律で六十四年度から三分の二になるわけです。だからあえて私は聞いておったのですけれども法律ではそうなっているけれども、後でまた法律ができて、六十年から六十一年に行われたような補助金カットが出てこないかということになると、局長はその辺について確たる信念もおありにならない。文部省としてはそうだけれども、後で話し合いが行われてどうなるかわからぬという意味でしょう。三分の二に戻すことは私ども賛成です。大賛成ですけれども法律上そうなっても本当にそのとおり施行されるかどうか疑問だということになりますと、これは中島文部大臣にお伺いしたいのですが、六十四年度から三分の二が継続されるのかどうかはっきりしないままことで法律そのものは決めるということになりますと、本当にこれは、国民に対して私どもも非常にあいまいな採決に臨まなければならぬということになりますけれども、この点はどうお考えでしょうか。
  20. 中島源太郎

    中島国務大臣 私どもも、急増地域におきます小中学校施設整備は急ぐべきである、育ち盛り学童生徒諸君教育環境整備することでございますから、校舎整備は急ぐべきである、こう思っております。したがって今回の法律も六十七年度まで原則三分の二で御提案をいたしております。ただ、先ほど言いましたように、国の方の特例法横並び——なぜ横並びにせにゃならぬのだ、そのお気持ちはわかります。しかし、国の財政とのやりくり、これはやはり私どもやりくりをいたしておりまして、六十三年度は横並びで、六十三年のみ十分の五・五で、たってお願いをいたしましょう、こういうことでございます。したがって、この法律がそのままいけば当然六十四年から十分の五・五が三分の二に戻る、こういうことでございますが、ただ、先生が御指摘いただきますと、その時点の問題、これまた国の問題でございますから当然私どもは三分の二で頑張るというふうに政府委員お答えをいたしておりますし、私もそのとおりでございますが、そのときどういう事情が起こるのか、そのときどうするかという御質問をあえていただきますと、そのときまたいろいろな状況が出てまいりましょうし、したがって関係省庁とよく折衝もし、打ち合わせもしなければなりませんが、その状態を勘案して私ども決めていかなければなりません。ただ文部省としては、お願いをいたしております三分の二に戻すということを原則に鋭意折衝をいたします、御質問いただきますとそういうお答えになる、こういうことでございます。
  21. 山原健二郎

    山原委員 私が何でこういう聞き方をするかといいますと、これは四月十日の日本経済新聞に「高率補助金補助率カット 六十四年度以降も継続」こうなっている。だからここを聞いておかないと、結局「大蔵省は五月にも、自治、建設、厚生、運輸、農水、文部各省OB学識経験者による補助金問題検討会を設け、本格的な作業を始める。」こうなっていますね。そうしますと、せっかく三分の二に戻るのだと思いましても、私の方は六十三年度から戻すように修正案を後で出そうと思いますけれども、この法律ができましてもまた補助率がカットされることになるのではないか。今のお話によりましても多分にそのことが予想されるわけですね。  そうしますと、本当にここで六十四年度から三分の二に戻すということを法律として確定をするならば、本来ここへ大蔵大臣あるいは総理を呼んでいただいて、そして大蔵省考えなら考えを明らかにして、大蔵省文部省統一見解を明らかにして法律というものは成立していく、そうすれば文部省としても、今大臣がおっしゃったように十分の五・五でいいなどとは思っていらっしゃらないわけですから、三分の二に引き戻したいという強烈な意思を持っておられるわけですから、そこまでのことをやってここで確定をしていくことが恐らく文部省にとっても非常に有利な条件になるというふうに私は思うのです。そういう意味であえてこの問題を取り上げたわけですが、初めからいやいや、法律は三分の二に引き戻すんだけれども条件によっては変えるかもしれませんよというような態度では、閣議決定の方向には向かないのではないか。そういう意味ではここで確たる信念を持って御答弁いただかないと、後で変わるかもしれませんではちょっと法律採決に当たって非常にやりにくいということを申し上げたいと思うのですが、この点いかがですか。
  22. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほども申し上げましたように、政府全体といたしましては、補助金等特例に関します法律によりまして六十三年度までかさ上げ措置引き下げが行われているわけでございまして、今回の提案もその全体とのバランス、均衡をとって提案を申し上げているわけでございまして、六十四年度以降につきましては、現時点におきましては、当然に三分の二へ戻るシステムは、当施設負担法のみならず他の補助金に関しますかさ上げ措置につきましても同様な考え方でいるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、六十四年度以降の取り扱いにつきましては政府の中でどうするかということがまだ確定しているわけでございませんので、そういった問題につきましてはその時点において、それぞれの情勢のもとにおいて政府全体として御決定いただく事柄でもありますし、文部省政府一員でございますのでそういう意味の含みのある答弁をさせていただいたわけでございます。  ただ、今提案申し上げております考え方は、六十三年度は十分の五・五であり、六十四年度以降は三分の二という提案をさせていただいているところでございます。
  23. 山原健二郎

    山原委員 時間がありません。本当ならここでもうちょっと論議すべきだと思いますが、法律は三分の二に六十四年度からなるんだけれども、各般の事情によってどうなるかわかりませんよということではちょっと受け取りがたいんですね。やはり文部省としてあるいは文部大臣として、この法律がここで採決をされ成立されたならば、六十四年度には必ず三分の二を確保して、他の横並びなどあろうけれども国民的合意国民の喜ぶことをしなければならぬわけですね、しかも閣議決定をしているわけだから、これは不退転決意で通してみせるということぐらいは聞かせてもらわないと、後で法律ができても変わるかもしれませんよなんて言われたら、これはたまったものではありません。この点は文部省断固たる決意として、大規模校解消という前々から国民の願っていることに対して本当に不退転決意でやるかどうかということを示してもらいたいのです。大臣いかがでしょうか。
  24. 中島源太郎

    中島国務大臣 御提案趣旨はまさにおっしゃるとおりでございまして、六十七年まで三分の二でまいりたい、ただし六十三年度だけは特例横並びで十分の五・五でお願いをする、こういうことでございます。  ただ、今お願いをしているその先のことでございますので、六十四年以降断固として頑張れ、それは私どもももちろん意に含んで頑張ります。しかしそのときに、いろいろ諸情勢もございますし、政府一員であります私どもとしては、そういう気持ちを十分踏まえつつ折衝もいたし、それから各省庁との連携あるいは国、地方役割分担財源配分、そういうものがございますから、御趣旨を踏まえながら進んでまいることはもちろんでございますが、強いてそのときのことをお尋ねいただきますと、そういう情勢が起こる、そういう中で考えていかなければならぬ問題ではあります、こういうことをつけ加えながら、御趣旨は体してまいりたいと存じます。
  25. 山原健二郎

    山原委員 先ほど申しましたように、本当に国民的合意のない幾つかの法律が今度の国会で出ています。一つの国会へ六つも法律が出てくるとは私も初めての経験なんですけれどもね。しかも一方では、例えば日教組なら日教組大会で決めた、中央委員会で決めた、それは政治活動だなんという全く勝手な理由をつけて、しかもそれに対しては非常に抑圧的な通達を出しておいて、そういう国民的合意のない、これから十分論議をしなければならぬものについてはあらかじめ強圧的態度をとり、一方、国民がもう何年も前から大規模校解消という、日本の教育にとって本当に大事な子供たちを行き届いた教育で育てていく、こういうものについては何となくあいまいである、断固としてかち取るという姿が見えないのですね。そのことを私は今度の国会で痛切に感じております。  中島文部大臣、御答弁は非常に言葉を選ばれておりますし、また丁寧な御答弁をなさっていますけれども文部省自体がやっていることは、一方では抑圧的態度合意のないものを押し切るのだ、一方では国民的合意に達しているものに対しては何となくあいまいで、諸般の情勢バランス論ということで、そういう姿勢が非常に浮き彫りになっていることは残念至極です。私は主客転倒だと思っておりますので、あえてこの問題を取り上げたわけでございます。  時間の関係もありますので次に移りますが、政令市町村、これが負担割合は七分の四となっておりますが、この政令市町村における過大規模校及び大規模校が一番大きな比重を占めた問題となっているわけでございまして、これを政令市町村について格差をつけるということはおかしな話だと思うのですね。マンモス校解消のために三分の二補助にしてはどうかということ、これは加戸局長の方から一言伺いたいのです。  それからもう一つは、危険校舎解消のために、これは文部省が努力をされまして千点の緩和措置が継続していますが、前回、五十八年度の本委員会での附帯決議では「危険建物改築事業に係る補助基準の緩和措置の恒久化等に努めること。」としております。今日まで単年度の措置となっていますが、恒久化について文部省は概算要求の段階では出されたと聞いております。なお恒久化について一層の努力を求めたいのでございますが、この点、大臣の御見解を伺いたいのです。
  26. 中島源太郎

    中島国務大臣 これはおっしゃるとおりでございまして、現在千点緩和措置がとられております。これは一年ごとということに現在なっておりますが、このことについては私どもも恒久化したいという気持ちは十分ございますし、また各市町村からも強い御要望がございますので、現在のところは、残念ながらという言葉を使っていいと思うのですが、まあ続いておりますから残念ながらというよりも幸いにしてというのが正しいのかもしれませんが、結果的には一年ごとにこの千点緩和を続けておるという状態であります。今後も千点緩和は続けていくということでありますが、できれば一年ごとというよりは恒久化したい、これはそのとおりでございまして、私どもも努力し頑張ってまいります。
  27. 加戸守行

    加戸政府委員 政令都市のことについてお答え申し上げます前にちょっと……。  先ほどから教育助成局長通達が抑圧的な通達というお言葉がたびたびございましたけれども、私どもの立場としましては、法令によって禁止または制限されている行為、いわゆる違法行為を行わないようにという法令を遵守する立場、法令を遵守するように指導する立場にある文部省としての通達を出させていただいているわけでございます。  政令都市につきましては、今申し上げました一般的な児童生徒急増市町村に対します措置が三分の二になっておりますけれども、この本則的な三分の二の中にありまして、いわゆる財政力指数が一・〇以上の市町村並びに政令指定都市につきましては七分の四という措置を講じているわけでございます。これらはすべて六十三年度におきましては十分の五・五に引き下げられておりますので同様な扱いでございますが、六十四年度以降におきまして原則補助率が三分の二に戻ります場合におきましても、政令指定都市は今の七分の四という形に戻るわけでございます。  この理由といたしましては、指定都市については、一般の児童生徒急増市町村の場合と異なりまして、政令指定都市全体を急増地域として見るかどうかということではなくて、政令指定都市の中の特定の区、一部の地域におきましてそういった急増状態がある場合も指定をするという考え方に立っておるわけでございます。並びに、政令指定都市は非常に財政規模が大きいわけでございまして、また、他の急増地域に比べまして児童生徒の急増が比較的緩やかであるというような、他の急増市町村に比べての異なる特殊事情があるわけでございますので、学校施設整備に係ります財政負担も比較的短くなっているか軽くなっているという事情を勘案いたしまして、今申し上げ財政力指数一・〇以上の急増市町村と同様に、政令指定都市につきましても、三分の二と二分の一のちょうど中間的な金額でございます七分の四という措置をとらせていただいているところでございます。
  28. 山原健二郎

    山原委員 加戸局長が最初に言われたこと、「教職員の服務規律の確保について」という通知ですか、これは私は一定の反論を持っています。でも国庫負担法の審議ですから、今度法律審議に入りましたときに、この問題については本当に巧妙な文章表現のもとに非常に法律に抵触する通知を出しているわけですから、これはその時点で論議をしたいと思っております。  もう一つ、沖縄の教育の問題についてお伺いしておきたいと思うのです。  沖縄県の学校教育基本調査によりますと、六十二年度版で見ますと、三十一学級以上の過大規模校は小学校十、中学校六校、二十五学級以上の大規模校は小学校四十六、中学校十七校が存在しておる数字が出ております。その割合は小学校で二四・三%、中学校で一四・六%となっておりまして、これは本土と比べてどういう状態になるかわかりませんが、私どもの試算によりますと、本土の二・四倍というゆゆしい状況になっております。  文部省としては、沖縄の過大規模校、大規模校について一定のお考えは持っておると思いますが、きょうは沖縄開発庁もお見えいただいておりますのでお伺いしたいと思うのです。これは、米軍の土地収用による基地の存在によりまして学校用地が狭められていることもありますし、それとともに、公用地そのものを取得困難にしている事態があるわけですが、文部省はこれは御承知と思うのです。もう時間がありませんから質問だけいたします。  那覇市の場合特に過大規模校が集中しておりまして、小学校十八校中何と七校が那覇市にありまして、規模も三十六学級から四十六学級という超過大学校が四つもございます。中学校も六校中三校あります。しかもこれが三十六から四十六学級というものですから、こうした沖縄の過大規模校解消について、開発庁また文部省はどういう対策を持っておられるか。時間の関係で簡単にお答えいただきたいのです。
  29. 加戸守行

    加戸政府委員 文部省の把握しております状況といたしましては、沖縄県におきまして三十一学級以上の過大規模校は、昭和六十二年五月一日現在で小学校十八校、中学校六校でございまして、合計二十四校、沖縄県の小中学校総数に対します比率が五・七%でございます。ちなみに全国平均が三・五%でございますので、全国平均に比べればかなり沖縄におきます過大規模校の比率は高いというぐあいに承知いたしております。  文部省としましては、全体的に沖縄県のみならず全国的に過大規模校の分離・解消等の方策を鋭意進めているわけでございまして、沖縄県につきましても同様な観点からそういった対応を御指導申し上げてまいりたいと考えております。
  30. 池田登

    ○池田説明員 お答え申し上げます。  過大規模校状況につきましては、ただいま局長の方から御説明があったとおりでございます。ちなみに昭和四十七年、復帰時点でございますが、沖縄につきましてそのときの過大規模校数は小学校が三十五校、割合が一四・五%ございました。このことから見ますと、復帰後、県あるいは市町村の御努力によりまして、過大規模校解消は着実に進んできたものというふうに私どもとしても考えておりますが、先ほど来御指摘もございますように小学校において全国平均を大幅に上回る状況にございますので、沖縄開発庁といたしましてもその解消に努めていくこととしておるところでございます。  具体的に申し上げますと、過大規模校の分離新設につきまして、従来から、建物につきましては沖縄振興開発特別措置法に基づきまして六十年度まで十分の九、六十一年度以降十分の八・五という高率補助を行っております。それから用地につきましては、児童生徒急増市町村等公立小中学校規模適正化特別整備事業費補助、これは本土と同じ補助率になってございますが、その対象として整備を促進してきたところでございます。  特に、昭和六十三年度予算といたしましては沖縄教育振興事業費、これは総額でございますが、九十六億八千八百万円、前年度に比べまして約四億四千七百万円、四・八%増の予算を確保しております。このうち分離新設校分といたしましては、建物について十五億九千四百万円、用地につきまして七億七千四百万円の予算を一応計上させていただいておりまして、今後引き続きその解消に全力を挙げてまいりたいと考えております。
  31. 山原健二郎

    山原委員 この沖縄の問題で、具体的に二点ばかり防衛施設庁と開発庁の方に伺いたいのです。  那覇市の天妃小学校、これは面積が五千九百平米、千二百名の生徒が入っております。この面積ですと大体百九十六名が適正規模なんですね。五倍も詰め込んでおるという状態なのですが、これはいろいろな問題がありますけれども、沖縄の場合を含めまして用地費のかさ上げということがどうしても必要だと思います。この点についてどうお考えになっておるかということ。  それからもう一つは、防衛施設庁の方に伺いますけれども、これは普天間第二小学校、よく御存じだと思うのですが、ここは設立されて十九年の学校ですが、設立以来普天間基地の爆音に悩まされ続けて、滑走路の延長線上で離着陸するそのすぐ真下に小学校があるのです。そしてこの爆音、私もおりましたが、四十五分間に六回も授業が中断をするという状態、これが当たり前になっているわけです。授業が成り立ちません。また、子供は集中力がなくなり、情緒不安定の子供が出てくるという状態もあるようでございます。また、先生方の健康にまで影響を出しておるということが言われているのですが、ここは移転問題と基地の拡張問題が絡みまして、防音施設がつかないどころか、タイルがはがれ、この施設の設備もなされておりません。現地での解決が先行するのは当然のことですけれども文部省としてもあるいは防衛施設庁としても、解決がつく間だけでも子供たち教育は確保しなければならぬ、解決がつくまでいつまでも防音装置ができないなどということはこれはもってのほかですね。そういう意味で、この点は防音施設をつける積極的な措置をとるべきだと思います。これは施設庁に強く要請をしたいと思います。  また、この問題については、文部省としても、子供の教育を確保するという意味施設庁とも合い議をされまして絶対に解決をするという立場をとっていただきたいと思いますが、最後にその二点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  32. 池田登

    ○池田説明員 お答えをいたします。  天妃小学校につきましては、先生御指摘のとおり非常に狭隘なところにあるということは私ども承知をしております。現在那覇市の方でいろいろ考えておるようでございますが、これは仮にの話でございますが、これを分離新設するとすれば、現行の補助制度のもとで六十三年度から対象となり得るというものでございますが、市の方では、当面、近隣に適当な学校用地がないために早急に分離することはやや困難な状況にあるというように聞いておるところでございます。  そこで、御質問の用地補助率の引き上げについてでございますけれども、学校用地といいますものは非償却資産でございまして、その取得は起債等による設置者負担が原則となっております。この用地制度は、過大規模校教育上さまざまな問題を有しておる、及び児童生徒急増市町村等において財政負担が一時的に集中すること等にかんがみまして、期限を限った臨時特例的な補助制度として設けられておるものでございまして、このような趣旨から見て、沖縄の特殊事情を考慮して特別に補助率を引き上げるということには性格上ややなじみにくいものではないかというふうに私どもとしては考えておるところでございます。
  33. 柴田桂治

    ○柴田説明員 御説明申し上げます。  先生御指摘の宜野湾市立の普天間第二小学校が、普天間飛行場の騒音によりまして障害を受けているということは、私ども防衛施設庁も十分存じております。ですが、これは実は宜野湾市から同校の移転計画があるので移転先地において防音工事の補助をやってもらいたいという要請を受けております。したがいまして、同市の要請を踏まえながら、移転計画が具体化した時点で移転先において防音工事を補助したいと思っております。  ただ、この移転計画が具体化するまでの間、一応応急対策といたしまして、窓を閉じた状態でも授業が行えるように空調の補助工事を防衛施設庁は既にしております。したがいまして、これによりまして航空機騒音による障害は相当程度緩和されているのではないかと思っております。
  34. 加戸守行

    加戸政府委員 普天間第二小学校の件につきましては、文部省としては騒音発生原因が特定できる場合にはその原因者においての対応ということを基本としているわけでございまして、ただいま防衛施設庁の方でいろいろな対応をお考えいただいている段階でございますし、良好な教育環境を確保すべきという観点から、文部省も防衛施設庁あるいはその他の関係省庁に対しまして協力要請を行いますとともに、そういった施設の良好な条件を確保するための最大の援助を惜しまない覚悟でございます。
  35. 山原健二郎

    山原委員 終わります。
  36. 中村靖

    中村委員長 中西績介君。
  37. 中西績介

    中西(績)委員 義務教育学校施設費国庫負担法、これは昭和四十八年から児童生徒の急増地施設整備に当たって二分の一の補助を三分の二に引き上げるということになったわけでありますけれども、途中で国の負担割合の変更などがあったわけであります。その面積は十五年間で二千五百四十五万二千平方メートルに上っておるわけでありますけれども、予算の面では総額どれだけこれに注ぎ込んだか、明らかにしていただきたいと思います。
  38. 加戸守行

    加戸政府委員 いわゆる補助対象面積として十五年間の予算に計上いたしましたのは、先生今おっしゃいましたように二千五百四十五万平米でございますが、この十五年間に補助した実績としましては二千四百三十六万平米でございまして、補助面積は予算に比べて実績は若干下回っております。しかしながら、予算で計上した金額はこの十五年間で一兆五千五百三十五億円でございますけれども、今申し上げました補助面積は低くなっておりますが、実際に補助執行いたしました金額は一兆六千九百七十四億円でございまして、実績の方が予算を上回って金額的には執行しているという状況にございます。
  39. 中西績介

    中西(績)委員 ということになりますと、この十五年間、国が一兆五千億を超える負担をするという状況が出てきたわけでありますけれども、残念ながら六十年度三分の二の補助率を十分の六に切り下げ、さらに六十一年度十分の六を十分の五・五に、そしてこれは二年間やっておるわけであります。さらに今度のこの法律を見ますと、三分の二については六十七年までといたしますけれども補助率は同じように十分の五・五ということになっています。そうすると、六十年から六十一年、六十二年、六十三年とわたって負担率を切り下げたためにどれだけの金額が切り下げられたか、この点についてどうですか。
  40. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいましたように、六十年度は三分の二から十分の六へ切り下げられました結果として、いわゆる金額的な削減額は約四十二億円でございます。それから六十一年度、六十二年度、御承知のように三分の二から十分の五・五へ引き下げられました結果としての予算による削減額は、六十一年度が約六十一億円、六十二年度が八十八億円でございます。それから六十三年度は、今の予定でございますけれども、事業量が減少いたします関係上、一応削減予定額が四十九億円という状況でございます。
  41. 中西績介

    中西(績)委員 そういたしますと、総額約二百四十億程度になるわけでありますけれども、この点、今私たちがここでもう一度論議をしてみなくてはなりませんのは、六十年の十二月二十一日に、大蔵、自治両大臣が覚書を手交いたしまして、これは三年間を経過いたしますともとに返すということになっております。ということになりますと、この金額をもう一度読み返して、それぞれの各省庁に対してどのように償還をしていくのか。もし一遍にしないということであるなら、来年はこれだけの分、例えば四十九億なら四十九億、これは六十三年度の分でございますと、このように六十四年度からは、それに該当する量が問題でありますけれども、該当する分については、もしこれを従来のものについて復元をするということになれば、文部省はそれを今度は予算の中に組み込まなくちゃならぬということになってくるわけですね。ですから、従来の線については今言われておるようなこの金額、一兆六千九百七十四億円を今まで負担してきたが、当然しなくちゃならぬ約二百数十億円について、そのまま放置をして大蔵省は知らぬふりをするのかどうか、これが一つと。今度は、これがもし復元をするということにならずとも、六十四年からは新しくこうした取り決めがなされておりますから、この金額については文部省予算で今度補てんをしていかなくちゃならぬ、予算を組み込まなくちゃならぬということになってくるわけですね。この点について、どうとらえたらいいのか。この二点についてお答えください。
  42. 加戸守行

    加戸政府委員 ちょっと先ほどの答弁の補足をさせていただきたいのですが、削減額につきまして、六十年から六十三年までの数字を申し上げましたが、六十年度、六十一年度は予算の執行実績ベースでございまして、六十二年度、六十三年度につきましては予算べースで削減額を申し上げました。  ところで、今先生のお尋ねは二つございまして、第一点は、今までに二百数十億の既に地方負担となった分についての取り扱いのことでございますが、これはいわゆる補助率かさ上げ引き下げることによりまして国の補助は減ったわけでございますが、その削減額に見合う分につきましては、地方財源措置といたしまして臨時財政特例債という形での起債を認めまして、それについては元利償還費全部について後年度の地方交付税措置がなされているわけでございますので、地方の結果的な負担としては従来と変わっていないわけでございまして、問題は国と地方との財源配分あるいは分担のあり方ということになるわけでございますが、それは既にこの六十年から六十三年度におきます措置としましてはそういった財源措置等が行われているわけでございますので、今後の問題は別としまして、過去の分については既に措置済みだというぐあいに理解いたしております。  問題は、六十四年度以降に補助率が三分の二に戻った場合の文部省の対応でございますけれども、そうなりました場合には、当然削減に見合う額が新しく新規需要分として国庫補助金の中に追加計上せざるを得ないというぐあいに考えております。
  43. 中西績介

    中西(績)委員 公債で措置をされると今言われましたけれども、そうすると公債比率がもう上限に達していて、その借り入れなり何なりが困難になっておる分についてはどうしておるのですか。それはまた何か特別措置か何かをやっているのですか。
  44. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど申し上げましたように、補助率かさ上げ分の引き下げに相当する額につきましては、いわゆる臨時財政特例債として全額政府資金による起債を認めているわけでございまして、そのために起債が困難になるという状況ではないと理解いたしております。
  45. 中西績介

    中西(績)委員 では、これは特別措置をしておるので何も問題ないということに今の答弁はなっていますが、よろしいですね。  そこで、先ほどちょっと出たのだけれども、この十分の五・五、財政事情は相当好転をしつつあるときに三カ年ということになっておるのですけれども、そうすると、来年からこれはもう徹底して、さっき申し上げたように大蔵、自治両大臣の覚書に沿って実現できると私たちはとらえてよろしいですか。
  46. 加戸守行

    加戸政府委員 先ほど山原先生の御質問にもお答え申し上げたわけでございますが、六十四年度以降の取り扱いにつきましては、政府全体の中での対応という形になるわけでございますので、諸情勢の推移あるいは国、地方役割分担あるいは財源のあり方等総合的な事情を総合勘案しながら適切に対応していきたい、そう考えているところでございます。
  47. 中西績介

    中西(績)委員 大臣、今のような答弁でやっておると、これはまたやられますね。そういうことでは私は大変不満です。  と申しますのは、財政状況は物すごく好転しているのじゃないか。ここ十日くらいの間の新聞の論調なりあるいは大蔵省のとらえておる指数等についても、相当好転しているということは明らかになってきていますね。特にこれは、私たち、もう去年の予算委員会のときにもある程度指摘をしたことなのだけれども大蔵省の試算をしておる税収が昨年は四十一兆円ということで見ておったわけでありますけれども、これは少なくとも六兆円くらいまだ拡大されるのではないかということを言っておったところが、まさにそれに合致するような大体六兆円という金額が出てき始めたわけです。確かに、所得税なりあるいは住民税の減税措置一兆八千億くらい補正予算で繰り入れましたから、その全額はないにいたしましても、この前のものを見ますと四十五兆四千五百億円程度に、補正予算を二兆三千六百億くらい上回っている。これを加えますと、本年は四十五兆四千五百億くらいになるわけですね。ところが、財テクの動きなどを見てみますと、さらにまだこれは増額されるのではないか、税増収があるのではないかと言われています。  こうなってまいりますと、自治大臣が今度の予算委員会の中で、最初はトーンが高くて「完全にこれを」ということで言っておりましたけれども、時間がたつとだんだんトーンは下がっておりましたけれども、これだけの財源があるといたしますと、今度はやはり正式にこの覚書の文面どおりにもとに返してもらうということにならぬと、そういう癖をつけておかないと、いつまでもだらだら、だらだら「当面」という言葉を使い、いろいろな言葉を使って引き延ばされていくわけでありますから、この点については大臣は、むしろ自治大臣に「トーンを下げちゃいけませんよ」というぐらいにぜひ言ってもらって、この点について完全にもとに修復させるという体制をぜひとっていただきたいと思いますが、どうですか。
  48. 中島源太郎

    中島国務大臣 お答えは二つございまして、一つは、例えば自治大臣の例を引かれまして、これは三年間の暫定措置じゃないか、確認しろということ。これは私どもも御提案しておりますように三年間の暫定措置、その中の六十三年分、これを十分の五・五、こう御提案をいたしておりますので、それはさようお酌み取りいただいてよろしいのだと思います。ただ、六十四年以降のことについて、頑張れということでございますが、六十四年以降は、ここに御提案をいたしておりますように、このままいけば当然六十三年の暫定分は自然解消されるわけでございます。ただ、その場合、段々の御質疑を聞いておりますと、文部省としてはこのこともさることながら、六十四年がどのくらいな差額が出るか知れないけれども、それがもし戻ったとした場合、その差額分はその予算内で組み込んでその分も頑張らなければいかぬじゃないか、こういう二つの御激励だと思いますので、その点は重々よく今拝聴しておりましたので、大きい意味からの御激励でございますから、その両方をやはり考えていかないといけませんので、またそれも文部省は当然それで頑張るわけでございます。当然頑張りますが、やはりこれは政府答弁の中にありますように、そのときの諸情勢あるいは国、地方役割分担あるいは財源配分、こういうことを申しますが、そういうことが出てくる、出てくる中でやはり頑張ってまいりましょう、こういうことでございます。
  49. 中西績介

    中西(績)委員 大臣、いろいろ言われましたけれども、これだけはやはり、従来のように一年といえばそのときは過ごしたとしてもまたその次に二年というようなぐあいに次々に引き延ばされる可能性というのは、昭和五十年代の後半もう嫌というほど我々は経験をしておるわけです。ですから、少なくともこうした問題については、この時期にこそ一度正規の状況、正規のペースに返してどうするかということを考えておかないと、私が一番恐れるのは、臨教審なり財政審なりいろいろなところで出されておる答申を見ると、また再び教育予算に手をかけてくる可能性、これだけではありません、ほかの問題と一緒にまた出てくる可能性もあるわけです。ですから私は、その点を考えると、一度線を引き直して、その上に立って正式にこの論議をしていかないと、これを残したままいった日には、いつまでたってもこれは解消できないですね、一度許していますからね。この点だけは何としてもこれから後の対応の仕方としてぜひ持ち続けていただきたいと思うのです。よろしいですか。
  50. 中島源太郎

    中島国務大臣 総体的に頑張ってまいります。
  51. 中西績介

    中西(績)委員 そこで、これらの問題と同じように、予算の面でたくさんそうしたのが出てくるわけです。既に六十三年度の予算が成立しましたので、八月に向けて、五、六、七の三カ月で、文部省がそのときになってあわてたってだめなので、少なくともこれからどういう基本的な態度を持つかということが極めて重要な課題になってくると思いますね。ですから私は、ここで数点にわたって論議をして、皆さんの態度なり決意をぜひ固めさせていただきたいと思うのです。  それは、まず留学生関連の問題ですが、近ごろ官房長を中心として、いろいろな検討機関を設けるとかこれを拡大していこうとか、いろいろな話が次々に出てきています。私はこれを聞いておりまして、先般の二月二十七日の予算委員会一般質問の中でも確認をいたしましたけれども、外務大臣は留学生問題でODA予算の増額を確認しました。あるいは大蔵大臣は、特にアジア周辺の国に対して果たさなくてはならない一番大事な務めで金を惜しんではならないということを言っています。ところが、この留学生問題を論議する際に私がひっかかるのは、これを拡大すればするほど文部省の他の予算を食いつぶす可能性があるわけですね。だから、留学生問題についてほかの省庁の皆さんは、幾らふやしたっていいよ、こういう態度で臨んでくるだろう。ですから、全体のODA予算、一般のものが七千億を超える予算になっておりますけれども、これを一兆円にあるいは一兆三千億円にということを盛んに外国からも言われているし、日本国内からもこれを増枠をしようということが言われています。そのことはいい。そのことはいいけれども、これを全部今度ひっかぶらなくてはならぬ文部省の予算は一体それではどうなるのかということになる。  そこで、お聞きするのですけれども、国費一万人、私費九万人、計十万人ということを十二年後には実現するということを明らかにしています。これはひとり歩きでなくて、内容を具備したものにしていきたいということをこの前大臣も確認をいたしました。そうなりますと、単純に計算をいたしましても、一年間に七千人ぐらいずつふやさないと十万人ということになかなかなりにくいのですね。そうしますと、それに要する経費、この前出されたいろいろな答申なり勧告の中に出ておりますような今考えておられる中身からいたしますと、今の計算でいって年次別に一年間に大体どれくらい費用が要るのか、これは文部省は計算してありますか。
  52. 植木浩

    ○植木(浩)政府委員 先生今おっしゃいましたように、平均いたしますと年に七千人近い留学生数の増加ということが推定できるわけでございますが、二十一世紀初頭十万人の受け入れを目途にという場合に、前期と後期に一応分けてございまして、十八歳人口が増加する昭和六十七年までは前期として、その間には留学生数の増加の方は着実にふやしていこう、そのかわりに受け入れ態勢とか基盤の方の充実に力を注ごう、それから、昭和六十七年から七十五年までの後期につきましては十八歳人口が減るわけでございますが、そのころは受け入れの基盤もでき上がっているという前提のもとに大幅な留学生数の増を見込む、こういうことでございます。そういうわけで、前期は留学生数が年々一六・一%ふえていく、それから後期は一二・一%ふえていく。数からいいますと前期よりは後期の方がはるかに年々留学生の数はふえるわけですが、率からいいますと今申し上げたようなとおりでございます。  それで、今の率を使いまして、これは仮の試算でございますが、現在の六十三年度の留学生予算百八十三億ということを基礎にいたしまして、仮に機械的な計算を留学生関係経費として計算してまいりますと、昭和六十七年には年間三百億台になる。それから、一番最後の昭和七十五年には八百億円台になるというような感じで推定をいたしておるわけでございます。
  53. 中西績介

    中西(績)委員 そうしますと、先ほどもちょっと触れましたけれども、ここ数年大体三百億程度あれしなくてはならぬということになってくるわけですから、そうなってまいりますと、この五年間、文部省予算を見ますと、シーリングが続いたために〇・八から〇・九%の伸び率、わずかであります。ということになってまいりますと、全体の総枠というのは余り変わらない状況の中でこの部分はどんどんふえ続けていくということになるわけですね。ということになってまいりますと、大臣、これはぜひ大臣決意をしなくてはならぬと思いますけれども、六十二年度から六十三年度でも四九・二%増で、うんとふやしましたと言っておりますけれども、これから後はさらに拡大率は大きく膨らんでくるわけですね。したがって、これは特別措置をしないと文部省予算はもうたまったものじゃない、こういうことにならざるを得なくなってくるのですね。この点、外務省なりあるいはその他の関係省庁なりとこれからどのような話をして決着をつけていくのかということをまずお聞きしたいと思います。
  54. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の点はそのとおりだと思います。そのとおりということは、十分心していかなければならない。おっしゃるように、今の御指摘はODA予算がこれから全体として七年間倍増、五年間倍増という、それはいいけれども文部省、どうするのか、とういうことでございます。文部省も、その分ODAを使うかどうかは別としまして、留学生そのものだけ考えてもそういうふうに伸びていく、これはもう総枠の中で特別措置をしなければいかぬのじゃないか、こうおっしゃる点はよくわかります。どの点を特別措置するかという点も、これからいろいろ知恵も絞り、はっきり言って作戦も考えなければならぬと思いますが、おっしゃるように何かどこかで根本的に基礎構造を見直して、特別措置、大きい意味でいえばそうでございましょうけれども、何か突破口を考えなければいかぬのだろうな、この六十三年度はもちろん御承認いただきました予算枠で頑張るわけでございますが、おっしゃるように、当面八月の概算要求に向けて相当心して知恵を絞ってみたいと思いますし、知恵を絞った上で頑張っていきたいと思います。
  55. 中西績介

    中西(績)委員 そうしないと、今ODA予算をどんどん増額をするということで、無償あるいは有償いろいろの形態がございますけれども、従来までのODA問題については、その基本的なとらえ方あるいは査察等について十分なあれがされておりませんから、これがどのように消費されていったかという点について多くの問題をむしろ抱えておるというのが現状ではないか。しかも、先般からいろいろなところで聞いてみましても、日本の企業を中心としてむしろこれが海外に進出をする手だてになっておるやに言う人だっておるわけですね。ですから、こういうことを考えますと、ますますそのために、例えば私たちは直接フィリピンに行って調査をしてみまして、一番問題は何かといったら、この前もNHKでもやっておりましたけれども、漁港をつくるわけですね、そして公司をつくるわけです。そうすると、それに対して補助をします。ところが、今度はそこの住民を全部追っ払うわけですね。漁民はそこに住めなくなってとてつもないところに追いやられて、補償もなしにやられておるために、日本の援助のために今度はおれたちはやられたということになっているわけですね。だから、これはもう反日感情も大変なものです。あるいは工場を誘致しているところへ行ってみましても、同じように川崎製鉄の問題でもそうですね。だからそういうぐあいに全部が大型プロジェクトでやっていますけれども、その結果は、住民あるいは国民、人民にとってはちっともそのことが自分たちのためになっているなどという感覚はなく、むしろ反感すらあるという、これが今の現状ではないか。そして、しかも外務省は、きょうはいないから私が言いますけれども、外務省の連中、今度は送電線をつくっておるというミンダナオ、これは報告が上がってきているから、こっちで資料をもらうと、全部それはちゃんと向こうへ行っておることになっているけれども、我々が行って今度帰ってきたところが、ぜひ会ってほしいということを盛んに言うからおかしいなと思って聞いてみたところが、外務省の役人はミンダナオには一回も行っていませんと言うのです。在外公館の旅費が全くありませんというのがこの答えですよ。こういう実態なのです。  ですから、そういうことを考えあわせていきますと、今こそ人間対人間、その中で、本当に我々がお互いの国で文化的にも交流する中から十分それを学び取るという態度が必要だし、そのことが国際化を言う場合には今一番大事だと思う。であればあるほど、この点は文部省予算の中だけで消費をするというふうなみみっちい問題ではないわけです。しかも、この報告の中に出ておりますように、極めて重大な政策だということまで明らかにされておるわけですから、この点はぜひ別個の予算をどうしてとるか、文部省の皆さんがこれは総力を挙げ、知恵を絞って、他の省庁との関連をどう位置づけていくか、そのためには、私がこの前から言っておるように、やはりアスベストと同じように何かプロジェクトみたいなものを徹底してつくって、そこで、政府の全責任なんだ、ただ単に文部省だけの問題ではないということをどのようにみんなに知らせていくのか、その中で論議をして結論を出していくかというぐらいにぜひ積極的に取り組んでほしいと思うのですが、よろしいですか。
  56. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃる意味、よくわかります。ぜひ応援をいただきながら、内部では、先ほど申しました知恵を出し合い、作戦会議を開き、こういう言葉をあえて使わしていただきますが、いろいろ見直しながら頑張っていきたいと思います。
  57. 中西績介

    中西(績)委員 予算のことだけできょうは終わりますけれども、そのほか国費と私費の関係だとかいろいろな点については、この次また質疑の時間をもらいまして十分論議をしていきたいと思っております。  次に移ります。  そこで、もう一つ問題が出てまいります。それは、第五次の教職員定数改善計画、これは文部省の提出された資料によりますと、昭和五十八年以降六十三年度まで、大体児童生徒の増減に対応いたしまして、教職員定数の自然減少数の中で教職員定数の改善がなされてきています。ところが、来年度から六十六年度まで三年間にわたってはどうなるかといいますと、自然増減がこの三年間で三万六千六百人、ところが学級編制改善、四十人学級ですけれども、これが二万四千三百九人、配置率の改善で二万一千二百四人ですね、合計しますと四万五千五百十三人ですから、結局その差八千九百十三人が今度は不足するというようなことになるのです。今までは減少する教員の数、その範囲で全部あてがってきたわけですけれども、今度はそういうわけにいかなくなるのですね。減少する数よりも充てなければならぬ数の方が多いわけでありますから、そうすると、一年単純平均しますと二千九百七十一人上積みをしなければならぬということになる。今まではその枠の中でやったけれども、今度は新たにこうした約三千名を上積みして組み込んでいかなければならぬ。これは単純平均ですからなにですけれども、一番最後の年なんというのは相当の数に計画ではなっているはずですね。私はこのことを考えますと、今上積みをしていく額が六十三年計算でどうなるか、この点についてお答えください。
  58. 加戸守行

    加戸政府委員 今先生おっしゃいましたように、十二カ年の改善計画を着実に推進を図っているわけでございますが、御承知のような五十七年度からの抑制策等によりまして進捗率がやや低めになっているという事実はございます。ただ、昭和五十五年から五十七年にかけましてはいわゆる教職員の自然増がございましたが、その増員に上積みして改善数が図られたという過去の経緯もあるわけでございますけれども、五十八年度以降、おっしゃいますような財政状況との絡みもありまして、自然減の範囲内で対応してきているわけでございます。御承知のように、差し引きまして自然減を上回る増員数が八千九百十三名残されているわけでございますけれども、厳しい財政状況の中にありまして、今後の改善数、相当数ございますけれども、着実な推進のために目標に向かっての努力をするわけでございます。ただ、あと残されました六十四年度以降の三カ年につきまして、定数問題は常に毎年度、毎年度の予算の勝負になるわけでございますので、そういった各年度におきます財政状況の中で最大限の努力をしてまいるという形になるわけでございます。  なお、今申し上げました約八千九百名、九千人近い数字でございますが、その所要額といたしましては、これは将来におきますベースアップ要因等もございますので不確定ではございますけれども、単純に申し上げますと約二百六、七十億円に相当する額になるのではないかという計算をいたしておるところでございます。
  59. 中西績介

    中西(績)委員 そうなってまいりますと、年度別にずっと改善措置を遂げていかなくちゃならぬわけですから、この分もまたこれから後文部省の三年間内における負担増として出てくる、こう考えなくちゃなりません。ですから、確認をしたいと思いますが、あくまでもこの点については、今まで数年間私たちは大臣なり担当の局長に、これはどんなことがあってももう後退することはできないわけですから、六十六年度までにはこれだけのものは完全に完成するということを今までは目標にしてやってきたし、やるということを決意をしてきたわけでありますけれども、この点はもう間違いないですね。
  60. 中島源太郎

    中島国務大臣 目標が定まっておりますから、最大限の努力をする、また続けておるということは、何回も申しておりますが、間違いございません。
  61. 中西績介

    中西(績)委員 特に私がなぜこれを毎年毎年繰り返し申し上げるかといいますと、今まで計画はされたけれども財政的にという言葉を使いさえすれば簡単にと言っていいぐらいにそれを引き延ばしたり、先ほど一番最初の問題じゃありませんけれども、必ずそれが出てくる可能性があるからです。それは、いよいよ来年が大変な、予算問題で文部省、本当に文部省の全力を傾けてやらなくちゃならぬ時期だから、特に私はこの点を強調しておるわけですね。ですから、今言われましたように、この約九千名の増員で二百七十億程度のものが必要だということを言われておるわけであります。ですから、どこからひねり出してどのようにこれを確保していくかということが最大の課題になってくるわけでありますから、この点も、先ほどの別個の枠でとらなくては到底不可能じゃないかと思われる留学生問題などとあわせて考えておかなくちゃならぬと思うわけですね。このように幾つも問題なり条件がありますから、したがってことで強く指摘をし、そして決意を皆さんに促しておるわけですから、この点理解をしていただいたと思いますので、次に移ります。  次に、義務教育費の国庫負担金の抑制措置の問題であります。  一番最初に出てまいりましたのは、六十年度に教材費、旅費の一般財源化をいたしまして、ここで三百五十三億円文部省予算から自治省の一般財源にさせられてしまったわけですね。ところがそれだけではなしに、六十一年からいよいよ共済費の追加費用、恩給費の負担率の切り下げ、二分の一から三分の一に切り下げ、しかも三年間の暫定措置とするということでもって八百四十二億円、あるいは不交付団体に係る退職手当の積算率の引き下げが九十三億。六十二年度が、共済長期給付経費の負担率の切り下げ、同じく三分の一にすることによって、二年間で三百七十億、さらに退職手当の積算率の切り下げ四十一億。六十三年度、退職手当の積算率の引き下げで三十二億。合計しますと千七百三十一億円、こういう国庫負担金の抑制措置が出てきたわけです。  そこで、これから年度的に六十三年度で解消して、さっきの話と同じように復元をしなくちゃならぬ分が、具体的に言いますと、そこにございますように千二百十二億円あるわけですね。この分が今度はまた来年問題になってくるということになりますと、こうしたものをもとに返すということになってきたときに、果たしてこういうものまで我々がひっかつぐことができるかどうかというのはこれは大きな問題ですね。この点、私が言っておることは間違いであるかどうか、局長、もう一回確認をしてください。
  62. 加戸守行

    加戸政府委員 ただいま先生おっしゃいました昭和六十年度から六十三年度にかけます旅費、教材費あるいは共済追加費用、恩給費あるいは共済長期給付、あるいは政令県の退職手当の積算率に伴います削減額は、ほぼ先生のおっしゃったとおりでございます。ただ、昭和六十一年度の政令退職手当の積算率の引き下げに伴います措置先生九十三億円とおっしゃいましたが、私どもは九十二億円というぐあいに一億円の誤差がございますが、金額的には先生の大体おっしゃったとおりでございます。  それから、六十四年度に仮に共済長期給付あるいは追加費用等の経費を三分の一から二分の一に戻すとしました場合には、六十一年度、六十二年度の削減額を総計いたしますと千二百十二億円でございますが、これはその後のベースアップの関係等もございますので、二分の一に戻すとすれば千二百十二億円をさらに上回る金額になるであろうと予想しているわけでございます。  おっしゃいましたような財源的な問題は確かにあるわけでございますが、先ほど先生定数の積み残しのことで二百六、七十億のなお余分な経費が要るということのお話がございましたけれども文部省として一番頭が痛いのは、実はそれよりも教職員のベースアップがきた場合の金額の方がはるかに大きいわけでございまして、そういった問題もございますし、今のこういった六十年から六十三年度におきます措置も、主として教職員のベースアップに対する財源をどういう形で確保するのかというやりくり算段の中から出てきた、やむを得ない措置であったという事情もひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  63. 中西績介

    中西(績)委員 それで、今お答えをいただいて、私の言っていることは間違いでないということになり、こうした財源が当然として必要だということになってくるわけですね。  そうなってまいりますと、今言われましたベースアップの問題ですけれども、これは私も指摘をしようと思っておったのですが、相当の金額が必要だと言われております。しかし六十二年度と今年度は違いますよね。ベアは大体一%、民間の場合を見ましてもアップいたしておりますからね。ですから文部省、六十三年度計算でいきますと、一%アップすればどれだけの費用が必要なんですか。
  64. 加戸守行

    加戸政府委員 教職員に対します義務教育国庫負担金で文部省が予算を計上しております昭和六十三年度の予算ベースで、仮に教職員のベースアップが一%ということでありますれば、その場合の必要な国庫負担におきます増額経費は約二百二十億円程度と見込んでおります。なお、このほかに文部省予算におきましては公立学校職員の人件費等もございますので、文部省予算全体としては三百数十億になりますけれども義務教育国庫負担金の関係だけで申し上げれば二百二十億円程度でございます。
  65. 中西績介

    中西(績)委員 そうなってまいりますと、ことしは一%というわけにいきません。これはもうはっきりしているのです。最低額が国庫負担の場合だけをとってみても二百二十億、全体のものを入れると三百三十億ぐらいになるでしょう。これは場合によっては五百億近くの金額になる可能性だってあるわけです、今ここで私がパーセントを申し上げるわけにいきませんけれども。これまた大変な必要経費になってくるわけです。  先ほどから私が指摘をしたものだけ申し上げてみましても二千億近くの金をどのようにこれから措置していくか、これは大変大きな問題になってくるわけです。では、果たして今までの文部省の総枠の中におきまして、私たちが知恵を出し合ったとしてもそれだけのものが確保できるかどうか、ここが問題になってくる。ということになると、今度は弱気になって、私はさっきちょっと助成局長にその弱気の一端が出たのではないかなという感じがしたのだけれども、そのベア分等でまた大変な負担をということになっていますからね。これはまだ後の論議になってくるのだけれども、公務員特例法によって必要な経費だってまた出てくるのですよ。だから、これがつぶれれば私が今まで指摘をしたようなものだけが拡大をされるわけだけれども、あなたたちが頑張ればこの分だけはまた上積みをしなければならぬということになってくるのです。そうすると、二千億をはるかに超えることは必至ですね。今度は弱気の部分はどういうふうになって出てくるかというと、先ほどの自治大臣あるいは大蔵大臣の覚書について今年度いっぱいだと言っておるけれども、これをある程度延ばしてもいいじゃないか、こういう気持ちを、口では言わぬけれども気持ちの中に持ち始めると、そこいらをつかれ始めるとまた簡単にやられてしまうという可能性が出てくるのです。ですから、約二千億近くのものを私たちがこれからどのようにしていくのか、これが今予算が成立した後の文部省にとって一番の課題だろう、私はこういうふうに考えるわけです。ですから、先ほどから一つずつについてずっと決意を聞いてきましたのもそこにあったわけであります。二千億などという膨大なものについてどういう対応をしていくつもりですか。
  66. 中島源太郎

    中島国務大臣 御質問の意図が大体その辺におありだろうと思いながら伺っておりましたので、個々の御指摘、これはありがたい御指摘でありますが、先ほど総体的に頑張りますとお答え申し上げたのは、そういうところでございます。まさにそのときに、もう少し細かく言えば、先生の御指摘は、先ほどのODAの外務省関係の例につきましては、私ども文部省でございますから、そこまでそのとおりとは申し上げられませんけれども、それ以外のところは重々拝聴いたしておりました。先生のおっしゃるように、むしろ言わせていただければ、それは国の歳入がより上方修正、上方修正、そしてもう再びこれは下がらないという確固とした税収その他が確保されることはもちろん望ましいことでございますし、それは大蔵省で一生懸命やっておられると思いますが、それによって枠が取っ払われればそれはそれで結構でございますが、そのときの情勢の推移がございますし、その推移の中の財源配分もございます。したがって、そういう中で我々は我々で省内で作戦会議も開きと申し上げたのはそういうことでございますし、御激励を得ながら頑張ってまいる、先ほど総体的にやりますと申し上げたその決意はそういうことでございます。よろしくお願いいたします。
  67. 中西績介

    中西(績)委員 わかったようなわからぬような感じだけれども、二千億という大変な額ですからぬ。私が一つずつ確認しましたのは、例えばこの留学生問題についてはODAという関係がございますから、これから予算が膨大になっていくわけですから、その中のどの部分を関連のものとして利用できるかということですね。そうしたものとあわせて、そこからどう確保すれば文部省の枠の中の予算を食わずに済むのかということになってくるわけです。  私は、これは人の悪口になるから今まで余り言いたくなかったのですけれども、無償供与なりいろいろなことをする、そのことによってはね返りのあるような分についてはやはりみんながそれを守って増額しようということになる。口では留学生問題は大変大事だからとみんな言うけれども、では予算をどうするかというときには、これは金になって返ってこないのですよ。だから結果的には、この分については多くの人々が最後の締めをしていく段階では賛成と言いにくくなっていくのですね。私はそこを一番恐れておるわけです。海外に向けて企業がどんどん進出していったり物を持ち込んで行くということになれば、政治的にはその点との関連が出てくるわけですから、そういう面についてはどんどんふやしてもよろしいと言うのでしょうけれども、留学生については一々そういうものははね返ってこないわけですから、こうした問題が特に今大事なのになかなか論議がそこに発展し得ないという弱さがある。であれば、ことしぐらいはみんながその気持ちになっておるならもう少し予算の確保ができておったのではないかということを私は考えるのです。ですから、そこいらをどう打ち破るかということになると、世論をどう起こしていくかということになるでしょうから、ぜひ文部省が中心となって、官房長を中心としていろいろ論議をするようでありますから、その中で文部省は旋風を起こすぐらいに派手に立ち回っていただくことが大事ではないか。そういう面についてもぜひ大臣がその立論なり展開の仕方を本格的に考えておいていただかなくてはならぬと思うのですよ。ですから私はこの点を特に取り上げて言ったわけです。  それから義務教育費国庫負担法の問題を一つ取り上げてまいりましても、この場合だって大変な額になっておるけれども、共済に実害がないからとかなんとかというような気持ちが片隅にありますと、これはどうしたって押し切られる可能性が強いのですよ、今までの経緯を見ていますと。そうでなくて、我々の枠というのはまだまだ必要なんだということを言うためには、少なくともこれを返してもらわなければならぬのですよ。その上に立って、今度は予算というものをどのようにつけるということを論議をしていかないといけないと思うのですね。これを削るということを前段に置いてやったら文部省の予算というのは全然ふえない。〇・二%程度だということにならざるを得ないのが今までの現状なんですよ。だからこの点もぜひそうしてもらわなくてはならぬし、さらにこの教職員定数の問題等につきましてもそうです。  特に、私がここでもう一つお聞きをいたしたいと思いますのは、義務教育費の国庫負担金の見直しなどにつきまして、先ほどもこれは触れましたけれども、臨時教育審議会第三次答申、新行革審の答申、財政審の答申にそれぞれ出ておりますけれども、これをずっと見ますと、合理化だとかいろいろなことをすることによって財政を切り詰めろということが盛んに言われておるわけですね。とすると、また今度出てくるのが、この前から問題になっておる事務職員、栄養士の問題です。本年は適用除外になりましたけれども、来年はそういうものが全部出てきた中でまたこのことが論議される可能性があるわけですね。特に、今皆さんは答申だとかそういうものを尊重するという立場に立って、これは立たなくてもいいのだけれども、そういう立場に立とうとするわけですから、ここをどのように乗り切るのか、この点もう少し深く論議してみたいと思うのですが、どうなのですか。
  68. 加戸守行

    加戸政府委員 先生が今おっしゃいましたように、臨時行政調査会におきましても義務教育費国庫負担制度の見直し等の御指摘があるわけでございます。また、先ほど申し上げましたように毎年のベースアップというのが文部財政を、文教予算を圧迫する大きな原因にもなっているわけでございまして、特に昭和六十四年度予算編成に当たりましては、昨年に比べてベースアップが春闘相場でも〇・九ないし一%上がっているという状況がございますので、昨年に比べますとなおベースアップ財源が大幅に必要になってくるという状況の中にありまして、これは政府全体の予算編成の事柄ではございますけれども、当然に、その中でも相当程度の金額を占めます学校栄養職員並びに事務職員の国庫負担制度というものにつきまして、財政当局の方から種々検討の要請も受けることになろうと思うわけでございます。  従来、この職種につきましても学校の基幹的な職員であるという考え方につきまして、制度の根幹を維持するという視点から文部省もこの維持に努めてきたわけでございますけれども、六十四年度予算編成におきましても当然この議論が再燃するであろうという予測はしておりますが、その中にありましても文部省としての姿勢を保ちたいと考えておるところでございます。
  69. 中西績介

    中西(績)委員 この問題については、ことしは適用除外になりましたけれども、来年になってまいりますと、先ほど言う二千億という膨大なものが考えられる。少しでもそれを軽減するということになってくると、文部省の側で知恵を絞ってこいという言い方をされるのではないか。そのときに、先ほどから私が言っておりますような共済の追加費用だとか恩給費の負担率の切り下げ、こういうようなことが手っ取り早く今まではされてきておるわけですし、事務職員あるいは栄養職員は基幹職員であるということをお互いに確認してきておるだけに文部省は今まで頑張ってきましたね、しかしこれだけの額になると大きな枠がふえないことにはどうすることもできないから、ここに手をかけなければならぬよ、こういうことにならざるを得なくなってくるのです。しかも、先ほどから申し上げておるようないろいろな答申の中身を見ますと、人件費を云々だとかなんとかいうことが全部出ていますね。ですから、こうしたことを考え合わせていきますと、この点について今までより以上の決意なりなんなりをしておかぬと、ここには相当な抑圧が出てくるということを考えなくてはならぬわけですよ。これは私たちが常識的に考えてもそうだけれども、おまえさんのところで結論を出してこいと言われたら、どこかをやろうとすれば、まあ、しようがないというような格好になるのが我々の弱さなのですね。ですから、それを乗り越えるという決意とこれから後の対応、そのことが今一番大事じゃないかなと思うわけです。  ですから、私は大臣にぜひ答えていただきたいと思いますのは、文教予算というのは、今までの方式でシーリングにかけられてやられた日には完全にパンクです。パンクであれば開き直る以外にはない。その開き直る方策、どのようにして開き直るかということがこれからの問題だろうと思うのです。ですから、従来の各大臣にずっと要請してきたのですけれども、文教予算は少なくとも国家百年の大計だとかなんとか言います以上、聞くところによると、国家百年の大計だから今度の公務員特例法上げなければならぬとかなんとか言う人もおるらしいけれども、これは別にしまして、とにもかくにも別枠、特別枠の確認、どこかで確認できるようにしなければいかぬと思うのですね。閣議の中でどのようにすればそれができるかということを考えていく時期になっておるのではないか、この点どうですか。
  70. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。  私は、現状を見ますと、どこかで枠外獲得を目指していかなければならぬ問題だと思います。その点をどのようにしていくかというのは、技術論とそれからいろいろな情勢もございましょうけれども、その中で、中西委員おっしゃるように、それならば例えば世論を喚起する、それから総体的にこれは重要課題ではないかという合意のあるものについて、そういうものから突破していくチャンスではないかとおっしゃっておられるわけでございまして、その意味もよくわかります。私もはっきり申せば、これは各党の御援助、御協力、御鞭撻もいただかなければならぬと思いますが、おまえ今の枠内でやれるのか、枠外獲得を目指すのかといえば、私の心情からいって、これは何とか枠外獲得を目指して頑張らなければいかぬ問題であろうと率直に思います。
  71. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、枠外にするためには、例えばODAならODAみたいに、幾つかの分野においてみんなにどうそれを打ち込んで確認をさせ、総体的な枠外ができれば一番いいわけですね。だから、それができない場合の次善の策としては、何かを目標にしてこれをやり上げていくという気概、皆さんはすぐれた頭脳の持ち主ですから、そうした面におきまして今度はもうしり込みしていたのじゃだめだと思いますから、開き直っていってぶち当たる以外にはないわけですから、その気概と皆さんの意気込みによって大蔵省なり政府部内をどうまとめるかということが今一番大事ですから、この三カ月間、ぜひ取り組みを強めていただきたいと思います。  そこで、時間がありますから、アスベストの問題についてお聞きしておこうと思うのです。  アスベスト問題については文部省が通知なり何なりを出したかということをきょうお聞きしましたところ、いただきましたのが、六十二年十一月十一日各都道府県教育委員会に対しまして官房の指導課長の方から通知が出されています。その裏打ちになっておるものは、六十二年十月二十四日の環境庁大気保全局大気規制課長名で出されました各省庁に対する、これは通知ですか、「アスベストによる大気汚染の未然防止等について」というものが出されております。これを裏にいたしまして出されていますが、先般の質問のときにどれだけの量があるかということをお聞きしましたけれども、小規模のものを含まずに千三百校台あるということが五月の調査で明らかになってきています。しかし、それ以降に出されたこの通知では、本格的に文部省がどのようにこれに対応し、どのように各地域であるいは各現場で対応せよということにはなりかねておるのではないか。この点はどうですか。
  72. 加戸守行

    加戸政府委員 昨年の十一月に先ほどの環境庁の通知を受けまして、文部省の方も周知徹底をさせていただいたわけでございますが、内容的には、大気に排出されますアスベストの問題を視点といたしまして、アスベスト対策工事を行う場合の留意事項、法令、通達、あるいは参考資料等を添付させていただいたわけでございます。  文部省の対応といたしましては、既に昨年の五月、全国におきます公立小中高等学校におきます吹きつけアスベストの使用状況を調査させていただきまして、全国的には千三百三十七校という数字を把握したわけでございますが、六十二年度におきましては大規模改修工事の一環といたしまして既に三十六校が吹きつけアスベスト対策工事を施工されたわけでございます。六十三年度の取り扱いにつきましては、現在まだ申請が出てまいっておりませんけれども、相当大幅な対策工事の補助金の申請があるものと予想しているわけでございまして、私どもは、各地域の実情に応じまして、それぞれ老朽化いたしました吹きつけアスベストに対します対策を、それぞれの市町村段階におきます取り組みの段階に応じ、国としても万全の対応をしたいということで、先般成立しました六十三年度予算の中におきましても、この大規模改修を大規模改造と名称を改めますとともに、工事限度額を一校当たり最低二千万円以上でございましたものを、吹きつけアスベスト対策工事に限りましては四百万円以上ということで下限額を大幅に引き下げまして、万遺漏なさを期したいということで現在進めているわけでございます。
  73. 中西績介

    中西(績)委員 今進めておると言いますけれども、この程度であっては、この前も指摘をいたしましたように、再度通知を出すなり何なりしまして、これを早急に撤去するなりあるいは改装するなりをやれというものを出さないと、なかなか取り組まぬと私は思うのですよ。ですから、六十二年度の場合には、今も言われましたけれども大体千三百校以上あるにもかかわらず三十六校程度しかこれを利用いたしておりませんね、三分の一補助についても。ということになりますと、残る千三百一校というものは依然としてそのまま放置されているということになっておるわけでしょう。ですから、この前から言っておりますように、何年間かの期限をつけてこの計画を出して実施をせよと言うことくらい、各都道府県ごとぐらいにそれを出して、そしてその際には、この工事責任者なりあるいは対応できる責任者をつけてということまで含んで細かく対応の仕方をしておかぬといかぬのじゃないか。ですから、私がこの前申し上げたのは、三分の一という補助では、体育館一つを扱うにしても三千万も小さな小学校でもかかるわけですから、この額たるや大変な額になるわけですから、だから補助率を少しでも引き上げる、そして年限を決めてこれだけの期間にやりなさい、そのためには、これより以上の細かい内容等を付して、環境庁が示しているものをさらに裏打ちをした上で、どのようにするかということを明確にしていく必要があるのじゃないかと私たちは考えておったわけですね。ですから、この通知等について何かそうした原案なり何なりを、この前から約二週間たっていますから既に論議なさったかどうか、その点をお聞かせください。
  74. 加戸守行

    加戸政府委員 昨年の通知におきましては、専らアスベストの大気排出等の規制あるいは人体への影響、工事に当たりましての留意事項という、配慮すべき点についての指導を通知で行ったわけでございますが、それ以外におきましては、主管課長会議あるいは事務担当者会議等におきまして、それぞれその時期に応じまして得られましたノーハウなり資料の提供あるいはアスベスト対策工事についての積極的な奨励というようなことを指導してきているわけでございますし、また、六十三年度予算要求をしました時点から文部省考え方を御説明申し上げ、それぞれの市町村の対応方をお願いしておる段階でございます。  いずれにいたしましても、市町村におきましては、それぞれ吹きつけアスベストの劣化あるいは露出といった当然緊急度の高いところから工事にかかっていただくわけでございますけれども昭和六十二年度におきましてはいわゆるアスベストに関する措置がなかったわけでございますので、大規模改修の一般的な工事の中に含めまして、アスベストもその補助対象とするという指導をいたしまして、今申し上げた三十六校が措置されたわけでございます。なお、一般的に、こういった学校の小規模改修的なものにつきましてはむしろ地方交付税で一般的な財源措置がされておるわけでございますが、吹きつけアスベストの児童生徒に与えます安全度あるいは緊急度という視点から、文部省といたしましては、大規模改造費の中で先ほど申し上げた工事下限額を大幅に引き下げますとともに、これを積極的に国の補助対象とするという形で取り組みをしておるわけでございます。  そういう意味におきましては、文部省の対応としては、私どもは少なくとも今までこの問題に関しましては早期にいろいろな手は打っておると理解しておるわけでございますが、なお先生の御指摘がございますようにいろいろな問題等も残されておりますし、ただ年次計画と申しましても、市町村におきますそれぞれの劣化状況等も違う、あるいは当面危険がないものもございますし、また工事の方法が撤去がよろしいか囲い込みがいいか封じ込めがいいか、それぞれのノーハウが一〇〇%確立しているわけでもない。その中にありまして地域の実情によって対応していただく、そういった考え方を基本といたしまして、そういう申請がございます場合には、文部省としては優先的にこれを採択して不安を取り除きたいという考え方で対応しておる段階でございます。
  75. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、従来のペースでもって各市町村なり県段階における状況判断によってやっていく、かいつまんで言うとこういうことを言われたのではないかと思いますね。私はそれじゃいけないと言うのですよ。予算面におけるそうした問題等についても本格的に論議をして、今指摘されるようないろいろな問題が出てこないように、文部省はこの時期に私は最優先課題としてこれをやるべきだとこの前から言っておるわけです。そのことが文部省の行政サイドの態度として、人命をとうとぶということが前面に出ていかぬと、こうした問題については早急に解決がつかないわけです。なぜかというと、金がかかるわけですから、自治体は金を出さなければならぬから、見たらまだこれはいいだろうとか、こういう主観的な判断によってこれを決めてしまう可能性だってあるわけでしょう。ところが、実際にはそのことが大きな被害を与えておったという例だって今あるわけです。ですから、こうした点についてもう一度時間をとって論議をし尽くす必要があるだろうと私は考えています。ですから、この前からちょっと触れましたように、この急増地域におきましては三分の二あるいはこれを十分の六だとかという措置をとっておるわけですから、今のような三分の一措置で早急にやれといったって無理かもしれない、これこそ本当に計画の中で出てきた問題じゃありませんからね、臨時に出てきたことですから。しかも、今まではこれを全部が認めたわけでしょう、通産だって建設省だって全部が認めてきてつくられたわけですからね。だから、そうした中身の臨時措置として、緊急措置としてどうするか、ここが私はアスベスト問題の今一番の課題だろうと考えておるわけですから、この点について大臣どうですか。
  76. 加戸守行

    加戸政府委員 先生おっしゃいますこと、よく理解できるわけでございますが、今のアスベスト問題というのは、基本的には市町村それぞれの補修的な経費でございますものをこういった大規模改造事業の一環として実施をするという文部省姿勢はお酌み取りいただきたいと思いますし、また金額自体も、アスベストのみに限りますればそれほど市町村の財政負担あるいは財政状況を圧迫するような程度のものではございません。そういう意味で、今の対応におきまして、予算措置としても的確な対応であったのではないかという感覚を私ども持っているわけでございます。ただ、段階的な実施の問題等につきましては、画一的にこうしろということではなくて、まさにその市町村におきます緊急度、安全度、あるいは工事が適切かどうか、そういった業者の選択等の問題もあるわけでございますので、文部省姿勢としては、アスベストに関する限りは優先的に採択をするという姿勢を示しているわけでございまして、そういう意味におきます現状の対応、もちろんそのほかにもいろいろな安全等の問題もございますから、環境庁初め各省庁との緊密な連絡の問題もございますけれども、遺憾ないような対応を十分にしてまいりたいと思っております。
  77. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、この問題についても、この前各省庁もみんなこれは緊急な課題だということをそれぞれ認め合っておるわけですから、ぜひ文部省、他の建築にもあるわけですけれども特に学校関係、大変な中身を持っているわけですから、この点でプロジェクトなり何なりを組んで早急に、どうすればこれがいち早く短期間のうちに解決がつくか、こうした問題についての論議をし尽くしていただいて、そこでもって我々に報告できる態勢をいち早くとってもらうように、この点よろしいですか。
  78. 加戸守行

    加戸政府委員 既にこれまでアスベストに関連いたします関係省庁、環境庁を中心として緊密な連絡会議を持っているところでもございますし、今後とも文部省といたしましても、各省庁との緊密な連携のもとに、文部省所管の事項につきましては適切に対応してまいりたいと思っているところでございます。
  79. 中西績介

    中西(績)委員 くどいようですけれども、今までのような各省連絡会議みたいなものでは期間が物すごくかかるんですよ、我々の経験からしましてもね。だから、それを短期間にどう繰り上げていくかということになれば、そういう特別なプロジェクトかなんかをつくってでもやるという決意をし、そして期間を決めてでもこれをやり上げていくぐらいにしないと結論はなかなか出てこない。それは皆さんが一番よくわかっているんじゃないですか、行政者の皆さんが。だから私はその点を指摘をしておるわけですから、ぜひこれを、私はまだあきらめませんから、必ずそうした機関的なものと援助的なもの、そうして期間を切るということ、期限を切るということ、これらについてぜひ当たっておく必要があろうと思います。  その問題と関連づけて、私立学校はどうなっているのですか。
  80. 加戸守行

    加戸政府委員 私立学校につきましては原則として学校法人みずからが整備する建前になっているわけでございまして、私立学校におきます吹きつけアスベストの工事を行います場合には、日本私学振興財団の方におきまして長期低利の資金の貸し付けを行い、援助するという仕組みになっているわけでございます。また、私学振興財団におきましても、こういった申し込みがあれば優先的に対応することといたしておりまして、既に都道府県を通じまして各私立学校に対する通知を行っているわけでございます。ただ、現在までのところ融資の実績はないわけでございますけれども、今後、各都道府県におきます取り組みの動向を踏まえましてさらに対応策について真剣に検討をしたいというところでございます。
  81. 中西績介

    中西(績)委員 私立学校の場合には調査か何かしましたか。それが一つと、もう一つは、低利と言いますけれども、何%の利子ですか。
  82. 加戸守行

    加戸政府委員 私立学校につきましては公立学校に対するような調査はいたしておりません。これは公立学校の場合につきましては、文部省として、先ほど申し上げたように大規模改造事業の中で対応しようという考え方、並びに六十三年度以降におきます予算措置との関連におきまして全国的な概括状況を把握したいということで行ったものでございますので、それぞれの個別の工事の必要性というのは、公立学校でございますれば各市町村、私立学校でございますれば学校法人、それぞれがみずからの設置する施設についての対応ということになろうかと思うわけでございます。  なお、今申し上げました長期低利の融資につきましては、貸付利率が現在のところ五・一五%でございまして、これは金融情勢により変更することがございますが、貸付期間が二十一年でございまして、そのうち据置期間が三年あるということでございます。
  83. 中西績介

    中西(績)委員 私立学校の場合には特にまたその点が、財政的な問題等を含めまして非常に困難な面がありますから、この点はどの程度これから出てくるかわかりませんけれども、いち早くなくすということを前提にして、いろいろな手だてを、どのようにしていけばそういうものが把握でき、いち早くやらせることができるか、この点どうですか。
  84. 加戸守行

    加戸政府委員 それぞれの学校におきましては当然その工事をしたときの記録が残っているわけでございますから、吹きつけアスベストを使用したかどうかというのは当然把握ができている事柄だと思います。  問題は、吹きつけアスベストを使用している場合に現在学校において児童生徒の安全上問題があるかどうか、あるいは緊急度合いはどうか、劣化の度合いとか露出の度合い、あるいは近い将来に悪影響が出てくるかどうか、その場合の対策工事はどのような形で行うのかというのは、設置者みずからにおいてお考えいただく事柄でございますし、基本的には、吹きつけアスベストに対する注意を喚起いたしますとともに、設置者の適切な対応あるいはそれに向けての文部省の対応ということになろうかと思います。
  85. 中西績介

    中西(績)委員 私はこのことをなぜ申し上げるかといいますと、この前も問題になりました、あなたたち文部省の直轄の東大だってこうした問題が起こっているということなんです。しかも、詳細な検討なり調査なりあるいはそうした問題点を集約できるような東大においてすら、そうした問題が依然としてあるということなんです。  ということになってまいりますと、財政的に全部自分が支出をしなければならぬという私立学校なんかの場合、これは急に起こってきたわけですから、こうした問題等について、隠しおおせれば知らぬ顔しようか、悪い言い方だけれども、こうしたものがないとはいえないと私は思うのですね。ですから、今局長が言いましたように、建築基準なり建築した時期からいたしまして内容的にそういうものがありそうだということで、調べればわかるんだということを言っているわけですから、この点についてもいち早く実施をする。しかも東大のように、あたり構わず大変な迷惑をかけておるにもかかわらず依然としてそれを隠し通していこうなどという態度があるわけでありますから、そういうことにならないようにするためには、今申し上げたように、少なくとも細かい指示と細かい問題指摘をしながらこれからどうするか、こういうことに対しては私は文部省がどんどん指導して構わぬと思うのですよ。ほかのことはいかぬことだけれども、こういうことだったらどんどん指導しなさいよ。入ってはならぬことについては土足でも踏み込もうかというのに、こういうことになると慎重に慎重にやるから問題なんです。  ところで、この東大問題は、この前私は指摘しましたが、片づきましたか。
  86. 加戸守行

    加戸政府委員 東京大学につきましては、吹きつけアスベスト対策工事ではございませんで、アスベストを含んだ建材の取り除きのためにアスベストが飛散したという状況でございまして、この事柄は十分なるアスベストに対する認識がない段階で行われたという意味におきまして、まだ確実なるノーハウを持ち合わせない点で遺憾な点があったと反省をしておるわけでございますが、現在は工事を中断しておるわけでございますし、文部省としても、適切な対応をするよう指導しているところでございます。
  87. 中西績介

    中西(績)委員 だから、先ほどから私が申し上げておるように、吹きつけだから問題で、これを使用した板、これを使用した場合には余り問題でないという認識がまだ依然として専門家の中にもあったわけです。ところが、これを今度取り外すということになりますと、今も局長が言いましたように問題が出てくるわけでしょう。ですから少なくとも、アスベストという問題を考える場合に、吹きつけだけですべてだというこの考え方をまず文部省はなくしてもらわなければ困るわけです。そして、現在ある板になっている分、この問題についてはいち早くどれだけあるかということを調査をしていただいて、この処理の仕万について専門家、今直接これがいないといたしますならば、通産なりいろいろなところで研究会が幾つもあるわけですから、私が文部省がそういうところとプロジェクトを組めと言うのは、そういう意味も含んで総合的に対応していくということがなければこの問題を解決することは不可能だと思うからです。ですから、ぜひこうした問題を含んで、東大の問題を一つの契機として、我々が経験をした大変な、この対応の仕方については大きな課題をここでもらったわけですから、ぜひこの点について東大側に対してもう一度私は指摘をしてもらいたいと思うのは、指摘をされておったにもかかわらずそれを隠し通していったというところに問題があるわけです。ここを知ってもらわなければいかぬです。ですから、この前私が指摘しましたように、これを隠した人たちというのは刑法上からも問題があるのです、法律的にも。そういう問題があるにもかかわらず全部知らぬ顔して対応してきたわけですから、ここをひとつ取り上げてもらって、今後そうした問題が起こらないような措置をするにはどうしたらいいかということを広いところで論議をしていただいて、方針化していただいて、その上でこうした通知をもう一遍出しなさいというのが、私の今まで皆さんに何回となく申し上げてきた内容であるということをおわかりいただけましたか。
  88. 加戸守行

    加戸政府委員 アスベストが問題になりましてからそんなに時間がたっているわけでもないわけでございますために、また、あるいはいろいろな学識経験者、研究者等の英知を集めましても決定的にこれがベストという方法がまだ確立されているわけではない段階におきます、途中段階のいろいろ遺憾な事態はあったわけでございますし、そういった点では、先生の適切な御指摘を踏まえまして、文部省としても万遺漏ない対応に十分努力してまいりたいと思っております。
  89. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、最後に通知を出しなさいと私は言っているのです、あるいは通達をぜひ出すべきだ。このときにこそ出さなければいかぬ。だから局長、ぜひ課長名ではなくて局長名で今度は通知を出すべきではないか。そのことを十分知った上で——大臣もそのことについて御理解をいただけますか。どうですか。
  90. 中島源太郎

    中島国務大臣 アスベストの問題は事は健康に関することでございますから、重要なことだと思います。実態もいろいろありましょうし、その対策もありましょうし、それから、その対策のノーハウを持っている施工者の数もまだ少ないのかもしれませんが、そういうことも含めまして、対策を急ぐように省内でまずよく相談をしてみます。
  91. 加戸守行

    加戸政府委員 文部省も従来からいろいろな各関係省庁とも協議いたしておりますし、貴重なデータ等が得られ次第各都道府県にも流して通知をしている、あるいは指導しているわけでございまして、通知、口頭いずれを問わずそういう的確な対応をしたいと思っております。  と同時に、教職員の違法な行為につきましても、違法行為が起こらないような事前の指導を申し上げることは当然の責務と考えております。
  92. 中西績介

    中西(績)委員 終わります。
  93. 中村靖

    中村委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  94. 中村靖

    中村委員長 この際、本案に対し、北川正恭君外一名から自由民主党提案による修正案が、また、山原健二郎君外一名から日本共産党・革新共同提案による修正案が、それぞれ提出されております。  両修正案について、提出者から順次趣旨の説明を求めます。北川正恭君。     ─────────────  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正   する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  95. 北川正恭

    ○北川(正)委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案の施行期日は本年「四月一日」としておりますが、既にその期日は経過しておりますので、これを「公布の日」に改めるようとするものであります。  何とぞ委員各位の御賛成お願い申し上げます。
  96. 中村靖

    中村委員長 山原健二郎君。     ─────────────  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正   する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  97. 山原健二郎

    山原委員 ただいま議題となりました義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案に対する修正案について、御説明申し上げます。  案文は既にお手元に配付されておりますので、朗読を省略させていただきます。  修正案趣旨は、政府の原案が、児童生徒急増地域における公立小中学校校舎の新増築に対する国庫負担の割り増し特例期間を昭和六十七年度まで延長するものであります。しかしながら、昭和六十三年度につきましてはその割り増し特例も十分の五・五と抑えております。  我が党の修正は、この昭和六十三年度分に係る引き下げを認めず、一般的な特例負担割合である三分の二を負担すべきものといたしております。また、同特例についての財政力指数が一・〇〇を超える市町村及び指定都市に係る引き下げ措置昭和五十八年度から導入されたものでありますが、義務教育に対する国庫負担ということにかんがみ、それ以前の状態に戻すことといたしております。  以上でございますが、何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  98. 中村靖

    中村委員長 これにて両修正案趣旨の説明は終わりました。  この際、山原健二郎君外一名提出の修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣において意見があればお述べいただきたいと存じます。中島文部大臣
  99. 中島源太郎

    中島国務大臣 御提案のありました義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案に対する修正案につきましては、政府としては反対でございます。     ─────────────
  100. 中村靖

    中村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに、義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案及びこれに対する両修正案について採決に入ります。  まず、山原健二郎君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 中村靖

    中村委員長 起立少数。よって、山原健二郎君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、北川正恭君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  102. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、北川正恭君外一名提出の修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  103. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  104. 中村靖

    中村委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、町村信孝君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四党共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。佐藤徳雄君。
  105. 佐藤徳雄

    佐藤(徳)委員 提出者を代表いたしまして、ただいまの法律案に対する附帯決議案について御説明を申し上げます。  まず案文を朗読いたします。     義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   義務教育諸学校教育における施設の果たす役到の重要性にかんがみ、政府は次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 児童生徒急増市町村の小・中学校校舎の新・増築費に係る国の負担割合特例措置について、昭和六十四年度以降その完全実施に努めること。  二 児童生徒急増市町村等における小・中学校施設整備事業について、その必要事業量等の確保に努めること。  三 公立文教施設整備については、教育方法の多様化への対応等その質的整備の充実に努めること。  四 危険建物改築事業に係る補助基準の緩和措置の恒常化に努めること。 以上でございます。  その趣旨につきましては、本案の質疑応答を通じて明らかであると存じますので、案文の朗読をもって趣旨説明にかえさせていただきます。  何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げて、終わります。
  106. 中村靖

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  107. 中村靖

    中村委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中島文部大臣
  108. 中島源太郎

    中島国務大臣 公立義務教育諸学校の施設についてのただいまの御決議につきましては、御趣旨に留意し、今後検討してまいりたいと考えております。     ─────────────
  109. 中村靖

    中村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 中村靖

    中村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  111. 中村靖

    中村委員長 内閣提出昭和六十二年度における私立学校教職員共済組合法の年金の額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。嶋崎譲君。
  112. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ただいま議題となりました法律案に関連いたしまして、まず最初に、先般中国の上海で事故が起きましたことに関連し、高知学芸高校の修学旅行災難にかかわる給付の問題で、私学共済の組合員であられる方並びに家族の方がおられました。いわゆる大変新聞でも報道されました剣道の達人川添哲夫先生は、組合員の期間が十五年十一カ月ということで、私学共済のいろいろな適用が行われることと思います。もう一人は、息子さんの猛君という方が高知学芸高校に在学中でございましたが、そのお父様の石黒聖士さん、この二人について私学共済と深くかかわりますので、現在までの短期給付や長期給付や貸付金などについてどのような対応になっているか、まずお聞きしたいと思います。
  113. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御質問のございました高知学芸高校の川添教諭の件でございますけれども、ただいま御指摘がございましたように川添先生は高知学芸高校で奉職していただいておりましたので、この私学共済組合の組合員であったわけでございます。  そこで、今回のこの不幸な事件になりまして組合としての対応を今進めているわけでございますけれども、この川添先生につきましては、私学共済組合としては短期給付と長期給付の二つの対応があるわけでございます。  まず短期給付につきましては、弔慰金として標準給与月額の一月分ということでございますので約三十二万円でございます。それから長期給付につきましては、まず遺族共済年金が支給されるわけでございまして、これは私学共済から支給されるわけでございます。この遺族共済年金につきましてはいわゆる労災との関係がございます。制度上労災との調整の規定がございますので、労災の方の確定を待たなければこの年金額を確定することは困難でございますけれども、現時点で私どもが試算すれば約六十万円、五十八万九千円ぐらいのことになろうかということでございます。それからもう一つは、いわゆる基礎年金でございますけれども、御遺族につきましては国民年金から遺族基礎年金が支給されるということでございまして、奥様とお子様お二人ということでございますので、この基礎年金が百万円程度ということでございます。それで、先ほどの遺族共済年金と基礎年金両方を合算いたしますと約百六十万円、百五十九万一千円ぐらいの年金額になろうかということでございますが、これはただいま申し上げましたように別途労災との関係がございますから、年金については現在労災との調整をしているということでございます。  なお、先ほど申し上げました短期給付の弔慰金につきましては、これは私学共済として単独で支給ができますので、去る四月六日に私学共済からこの分について差し上げたということでございます。  それからもうお一人でございますけれども、これは生徒の方の石黒猛君がお亡くなりになったわけでございますが、この方のお父様は私立高知高校の職員をしておられます。でございますから、そのお父様の方に対して私学共済からやはり短期給付がなされるわけでございます。その短期給付につきましては、家族弔慰金、それから家族埋葬料ということになりまして、家族弔慰金の場合は標準給与月額の七〇%、埋葬料は同じく七〇%に若干の付加金ということになります。両方合算をいたしまして六十万三千円ということでございまして、これまた既に御遺族の方に差し上げてある、こういう状況でございます。
  114. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 今御説明をお聞きしまして、短期給付の方は川添先生の場合は既に四月六日に支給され、三十二万円の支給が終わっていると聞いております。  問題は遺族給付の件でございますが、遺族の共済年金に関連して、これは公務中の災害でございますから労災保険給付というものが絡んでくるわけであります。労災保険給付を絡ませますと、私の調べたところでは八十五万五千百円ぐらいになると思います。ところで、この分を差し引きますから、労災保険の分は引いて、遺族共済年金は五十八万九千八円という給付になるのではなかろうかと思います。それに、おっしゃられた遺族基礎年金百二万三百円、これを加えまして長期給付というものが処理されることになるのではないかと思いますが、こういう現状に対しまして、長期給付関係についてもきちっとした対応をしていただきたいということを要望申し上げておきます。  ところで、大体学校で御勤務なさっておりますと、共済関係の一般貸し付けとか住宅をお建てになったりする場合の住宅の貸し付けなどについて何かおありではないかという気が私はしますが、調べてありますか。
  115. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済の福祉事業の中で一般貸し付け、住宅貸し付けがございます。川添先生は両方御利用に相なっておりましたけれども、若干プライバシーに属することでございますので、その額自体は差し控えさせていただきますが、御利用になっておったということでございます。
  116. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私、大臣のところで御判断をいただきたいのは、研修中の事故であり、この遺族共済年金も五十八万、遺族年金を入れて百五十八万ぐらいになりますけれども、御家族の立場その他を考えてみて、このいろいろな貸付関係についても特別な御配慮をいただけるかどうか検討いただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。いかがですか。
  117. 川村恒明

    ○川村政府委員 この福祉事業におきます一般貸し付け、住宅貸し付けでございますけれども、この資金の原資は御案内のとおりこれは長期の経理からの積立金、それを運用でやっている、こういうことでございますので、こういう貸し付けにつきましては、やはりそこで定められた利息をつけて返還をしていただくというのが制度の仕組みで、それをいたしませんと長期経理の方にまたこれが響いてきて、将来の年金の方にも大げさに言えばはね返ってくる、こういうことになるわけでございますから、現在の仕組みとしてはこれは返還をお願いしたい。ただ、その返還をしていただくにつきまして、規定上即時返還というような規定もございますけれども、その辺の運用につきましてはこれから十分また御相談をしていかなければいかぬことかと思います。
  118. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その御配慮のほどをお願い申し上げておきたいと思います。  さて、今度の提案されました私学共済年金の物価スライド、〇・一%でありますが、もう既に御承知のように恩給のアップ率一・二五、これに対して厚生、国民、共済は横並びで〇・一ということになっております。この十分の一にも満たない物価スライド、この指数についてはどう御判断になりますか。大臣お答え願います。     〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  119. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘がございましたように、今回の改定をお願いしていますのは〇・一%でございます。恩給が別途改定をされるということでございまして、恩給の改定につきましては、これは従前から恩給との改定率、特に共済との改定率の差がどうかという御指摘があるわけでございますけれども考えてみると、恩給という制度先生御案内のとおりに成り立ちが共済とは基本的に違う。これは御案内のとおりに国家補償的なもの、ですから、恩給への掛け金というものは、若干ございましたけれども、基本的にはないという仕組みになっている。それに対して共済制度というのは、御案内のとおりに年金数理に基づいて労使折半でこれを成立させていくという仕組みでございますから、若干仕組みが違うということではなかろうかというふうに思っております。  さらに申し添えれば、恩給制度というのはもう新しく発生しない既に過去の話でありますし、すべてが既裁定者でもありますし、それから恩給の対象となる方の九〇%以上はかつて軍人であった方、もちろん文官もございますけれども、ほとんどの方が軍人であったというようなこともございまして、恩給と共済というものをにわかに比べることが適切かどうか。やはり年金制度は年金の考え方に立って、将来の年金数理も考えながら長期的な制度の安定を目指しつつこれを進めていくということではなかろうかというふうに思っております。
  120. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 この制度は、現状はそうですが、では七十年の一元化に向けて、全体の年金の検討課題の中で今までのような扱いでよろしいと大臣はお考えですか、いかがですか。——審議官じゃないですよ。こういう問題は大臣です、基本的な問題ですから。
  121. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘のように七十年に向けて現在の年金制度、厚生年金、国民年金、各種の共済制度、そういうものの一元化ということが政策目標になっているわけでこざいまして、これは当然進めていかなければならない。その際に、一元化といってもこれはいろいろな対応があるわけでございまして、今御指摘の掛金率の問題もあるし、いろいろな問題があります。そういう中で全体的な、国民全体の老後の生活保障としての年金制度の安定ということの中で、いろいろな対応が図られなければならないであろうということでございまして、先ほどちょっと申し上げましたように、恩給というのは若干過渡的な、今だんだんその対象者も少なくなっているというようなことでございますから、七十年度以降の一元化の中では、やはり年金制度全体の安定という中で議論を進めていくべきではないかというふうに思っております。
  122. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 全体の年金制度との関連ですから余り時間をとらないよう、私もなるべく短い質問をしますから、川村さんも短い回答で、急ぎましょうよ。  恩給問題というのはいろいろ議論のあるところでありまして、NATOなどの防衛費の中には軍人恩給を入れて計算したり、そのほか扱いについてはいろいろ問題もあります。軍人のみが戦時中に国家に奉仕して犠牲をこうむったのではなくて、国鉄職員だって、戦争中に中国や朝鮮に出かけていって、そして戦後引き揚げてきて、国鉄共済やら年金が五十一年にパンクしたわけです。そうしますと、戦争という戦時中の情勢の中での国家補償という観点からの対応ということになると、さあ軍人恩給だけが特別でなければならぬ理由は必ずしもないと思いますが、そういう議論はやっている暇はありませんから、今後とも七十年に向けて恐らく見直す必要があるという判断は私も同じでございます。  さて、本題に入ります。今回の〇・一 %のアップ率が私学共済の場合に適用されている人はどのくらいいますか。
  123. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘は、今回の年金改定が〇・一%の適用……
  124. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 では、ひっくり返して質問しましょう、わかりやすくするために。  六十一年度末の退職年金者の中で、従来の共済方式の従前額の適用者は現行の中でどのぐらいいて、どのぐらいのパーセンテージになりますか。
  125. 川村恒明

    ○川村政府委員 失礼をいたしました。  年金改定の対象となる方は、まず、現在年金の受給者が約七万百九十八人でございますが、その中で従前額保障の対象となる者というお尋ねであろうかと思いますけれども、従前額保障の制度の対象となる者はこの中で九千八百十八人ということでございます。
  126. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その数字、正確かな。僕は七千四百三十八人とつかんでいますけれども。そして一万七千四百四人中四二・七%というふうに数字をつかんでいますが、まあ数字は少々違ってもいいです、基本的考え方が問題ですから。そういうことで、つまり〇・一%のアップ率が適用される方は総体的に見ますと割と少ないということになるわけです。  そこで、当然ですけれども、前回二%アップの際に幾つかの適用した個別の項目がございます。例えば旧法適用の最低保障額、これにも一・六%適用する。昭和二十九年から三十六年十二月までの旧法適用の最低保障額ですね、その人たちの最低保障額。これとか、新しく更新の組合員であった者で従前額のうち七十歳以上の老齢加算部分の特例、これも適用があると思いますし、遺族年金や寡婦年金の加算、これも〇・一は適用になると思いますし、私学恩給財団の年金の部分、つまり私学共済から支給されている部分、これらも〇・一は当然適用になると思いますが、そうですね。
  127. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の中で、いわゆる三十六年以前の分につきましては旧法部分でございますから、これは今回の改定率でございませんで、先ほどの恩給に準じてこれは政令で定めるということでございます。
  128. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは最低保障額のかかわりを言ったのです。では、いいです。  このように、年金制度昭和六十年を境にして改革が横断に行われた中で、従来の共済方式の年金者、それからまた裁定がえをした場合の人たち、そういうのを含めまして、この〇・一%の適用についてはいろいろな条件が付されているということでございます。〇・一%、典型的なのは、六十一年四月以降の新共済によって生じた事由、そういう場合の年金に〇・一%というのは原則として適用されるということになるわけです。  さて、こういう実情の中で物価スライド問題と賃金スライド問題というのがあるわけですけれども、今回は言うまでもなく物価スライドですが、前回の法律が決まる改定に際しまして、五年後の見直しのときには物価スライドと賃金スライドを含めた政策スライド問題について検討するということになっているわけでありまして、そういう意味で、昭和六十四年度の、この私学共済は一年おくれていますから六十五年になりますが、横並びで見ますと農林と私学共済を除きました部分は六十四年度見直しになりますから、その見直しに際して、物価スライドに対して賃金スライド問題をどのように加味するかということが議論になるだろうと思います。したがいまして、今回は物価スライドですが、政策スライドとして賃金スライド問題も今後の改定に際して重要な要件として判断しなければならなくなりはしないか、こう思いますが、いかがですか。
  129. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の点につきましては、実は前回この制度改正お願いしたときに随分御議論がございまして、この法案につきましては参議院段階で一つは法案の修正があった。この私学共済組合法に一条の二という規定がつけ加わりまして、年金額の改定に当たっては、国民の生活水準、賃金その他諸事情に著しい変動が生じた場合には速やかに改定の措置を議すべきということが一つ入ってございます。ただ、基本的に毎年の改定につきましては物価スライドでいくということでございまして、財政再計算期、厚生年金は六十四年、御指摘のとおりでございます。私学共済につきましては直接再計算はございませんけれども、やはり七十年の一元化に向けて制度の改善といいますか、いろいろな地ならしをしなければならぬ、そういう地ならしの作業の中で今御指摘のように全く物価スライドでいいのか、賃金スライドを入れるのかどうかということは一つ議論になるのだろうと思います。私どもは、参議院でそういう法案修正をしていただきましたから、この賃金の要素というものを改定の時期に考えるというのは基本的な姿勢として受けとめておりますが、これを制度的にどういう形で表現していくかということは、御指摘のようにこれからの一つの大きな課題ではなかろうかというふうに思っております。
  130. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 去年、ことしでも賃金は低くて三%、四%台ないしは五%台の賃上げが全国的に行われている状況ですから、五年間ということになりますと、かなりのいわば賃金スライドの条件というのを判断せざるを得ない、一つの改定との関連が出てくるのじゃないかというふうに思いますので、これを今後の課題として、全体の問題ですけれども文部大臣も年金関係の閣僚会議のメンバーでしょうから、しっかり頭に置いて対処していただきたいという要望を申し上げておきます。  随分委員がおりませんが、これで委員会は成立しているのですか。食事ですか。食事ならいいけれども、いないのなら質問やめますよ。
  131. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長 代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  132. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長 代理 速記を始めてください。  嶋崎君。
  133. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 さて最近、来年度つまり昭和六十四年度に向けて、新しい年金制度が発足してからまだ一年半そこそこでありますけれども関係者は早くも次期財政再計算、それにかかろうということで、いろいろ動きが始まってきております。そこで、次期の財政再計算に当たりましては、この保険料率のいわば改定だとかいろいろな要素でもって保険料率の改定をやらなければなりません。それに当たりまして、次期の財政再計算に入っていく、しかも今年度からかからなければならぬ年金はどれと、どれと、どれですか。
  134. 川村恒明

    ○川村政府委員 財政再計算自体は、現行の制度で進められております各種年金すべてを対象とし、これが将来的にバランスがとれるかということでございますから、計算自体は制度全体について行わなければならないというふうに思っております。
  135. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 法律では、公的年金制度には、通例、法律の定めにより、少なくとも五年ごとに行わねばならないということにしてあります。そこで、聞くのですが、厚生年金は前回、いつ改定をやりましたか。そして計算は、つまり基準時点、計算の基準の起点はいつおとりになったか御存じですか。
  136. 川村恒明

    ○川村政府委員 厚生年金は前回、五十九年の四月にされたと承知しておりますけれども、詳細につきましては承知しておりません。
  137. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 じゃ、僕が教えてあげましょう。  厚生年金は六十年の十月に改定するのですが、その一年前、数値の評価はおっしゃったように五十九年の四月一日から始めたのです。一年前ですね。それから共済グループは五十九年の十月から始めました。それから国公は五十九年十月、それから地方公務員関係は五十九年十二月、これらはつまり六十年から六十一年にかけてですが、六十一年になりますと私学、農林が入りますから、私学、農林を除いて、厚年と共済グループは皆五十九年の段階でスタートしたわけです。そうしますと、前回から見て五年目というのは六十四年でありますから、ことしの四月からもう既に起点時期に突入しているというのが現状であるというふうに考えなければならぬと思います。  ところで、問題の私学共済と農林共済は一年おくれでありますから、前回の場合にも一年おくれで始まりました。しかし今度は、六十四年の年金改定は単に財政の再計算という時点にとどまらず、特に共済の場合は前回は非常に単純なことで対応したのですが、今度は改めて再計算をしなければならぬというのが五年目の対応の重大課題であります。したがいまして、共済その他はもう既に年金率改定のための算定、保険料率の算定のためのデータをそろえ始めている、こういうふうに理解しなければならぬと思います。私学共済は一年おくれますけれども、共済横並びでありますから、当然に来年の六十四年に方向づけが行われるということになれば、今から私学や農林共済についてもそろそろ準備にかからなければならぬ時期に入っていると判断しなければならぬと私は思っておるのです。そういう意味で、年金の六十四年度改定に向けて、私学共済もその準備に入るような様相に今なりつつあるのかどうか、まだ関係は全然ないのか、いかがですか。
  138. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘のように、前回は、国共済でいえば五十九年十月でございまして、私学共済は六十一年十二月ということでございます。当然、五年に一回、私どもの私学共済につきましては法律上再計算をしろという規定はございませんけれども、これは共済組合として当然やらなければいかぬことでございます。それで、今御指摘のように、年金制度の大宗たる厚生年金は六十四年四月ということでございますが、ただ、私どもの私学共済は制度上、国共済に準ずる部分が大変多いわけでございますから、前回のときも国共済と私学共済が一年ずれたということがございます。それで、今御指摘のように当然、基礎的なデータその他の事務的な準備は私学共済でも現在進めていただいておりますけれども、全体の運びとして、再計算をし、それに伴う掛金率の改定のみならずその制度の諸般の改正を六十四年の四月にするかどうかということにつきましては、なおもう少し、国共済との作業の状況でございますとかそういうことも勘案しなければならないのではないかというふうに考えております。
  139. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 これは問題意識だけを持っておっていただけばいいです。そういう意味で、世論を喚起しておく時期だという意味横並びを頭に置かなければならぬということです。私学共済だけ別個だというわけにいかぬのですから、特に今から議論しますが、国民年金の基礎年金導入から以降、もう私学共済は密接不可分な、拠出金を出して交付金をもらっておるんですから、今から全体の関連を考えておかなければならぬという意味で、六十四年というのは大事な節であるよ、したがってその一年前だよということだけは、時期的にしっかり判断して今後の対処に向かわれることを要望して、次の質問に移ります。  さて、昭和七十年一元化という問題が大きな方向づけとして決定されております。ところが、この一元化という問題についてはいわゆる一本化、負担・給付を含めていろんな考え方を一本化していく、一口で言えば厚生省が全部管轄するというような方向になるのか、それとも現在やっているような基礎年金のいわば財政調整、このような財政調整の方式でいくということなのか、七十年に向けてはどっちが可能性としてあると思いますか。——大臣にはこれはわからぬかな。閣僚会議大臣が一つも答えられないのではおかしいよ。
  140. 川村恒明

    ○川村政府委員 これから七十年にかけて将来のことでございますし、この一元化という言葉の中にもいろいろな意味が含まれているわけでございます。御指摘のような、制度自体をまとめてしまう、あるいは財源をお互いに出し合って公平な負担を図るというやり方もある、いろんなことがございまして、現在これにつきましては閣僚会議もございますが、その前に、今御指摘のようなこの六十四年の地ならしのところから、まずどんな地ならしがあり得るかというところの相談を今事務的にしろという御指示がございまして、今事務的な相談をしている最中でございます。でございますから、これから七十年に向けてどういう一元化の具体の姿があり得るか、これはこれからよくそういう相談もし、関係者の御意見も伺い、将来の動向等も見ながら検討していかなければならないことかというふうに思っております。
  141. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 恐らく一本化ということはあり得ないと思います。今までの、竹下さんが大蔵大臣のころの国会における回答だとか、国鉄問題に関連して閣議で決められてきたいろいろな方式とか、そういうことを考えてみますと、とても一本化ということはあり得ない。ただ、これから議論になります四共済統合というような問題を、六十五年から七十年までの間に地ならしの方式としてどんな形が出てくるのかというようなことが残っていると思うし、今度は厚年と共済グループとの位置づけをどうするかというような、それぞれ個別の課題を持ち越しながら七十年に滑り込んでいくのではないかと私は見ております。  そこで、これから重要になるのは六十四年の見直し、来年の財政再計算の見直しといわゆる率の改定ということを想定して、私学年金の場合に今から考えなければならぬことは、現在の、つまり六十年から六十一年、正確には六十一年から六十四年まで、この間、現実に具体化されているこの時期の私学年金と他の年金とのかかわり合いで今何が問題か、これが一つ、今から議論する大事な柱であります。第二番目の柱は、今度は六十五年から六十九年までの間の、つまり一元化までの過程における財政調整その他はどういうふうに問題点をはらんでいるのか、これも私学共済と密接な関係があります。これが二番目のポイント。それで三番目は七十年以降、こうなるわけです。段階別に特徴をとらえてみるとそういうことです。  そこで、昭和五十九年から始まりまして六十年に行われました年金の改定では、大きく言って二つ、小さく言って三つ、そういう問題があったと僕は思うのですが、そう聞かれても答えるのは大変でしょう、僕が整理してありますから言います。  そのときに問題になった点が大きく言って二つあるのです。  一つは何かというと、国家公務員共済と公共企業体関係の共済をどう統合するかという問題。これは一口で言うと、具体的に言えば国鉄共済年金をどう救済するかという問題です。これが国鉄の共済年金に関連する財政調整五カ年計画という問題であります。この調整に際して、自民党の皆さんは、私学共済も農林共済も入れてこの財政調整の中にほうり込もうとしたのですが、我が党が国会質問した結果、そんなことはできぬということになりまして、私学共済と農林は外れたわけであります。したがって、国鉄を救済したのは国家公務員共済とそれからNTTと専売とで財政調整をやるということになった。幸いにここは外れましたから、この問題に関しては私学共済は今のところ直接関係はありません。  ところで、二番目の問題は、これは私学も非常に密接不可分であります。この六十年の法律改正の二番目の重要な問題は、まず昭和六十年の四月に国民年金法の改正がありました。そして、続いてその年の十二月に四つの共済年金が改正をやりました。私は党の政審会長をやっておりましたから、全体はひょっとしたら川村さんよりはるかに詳しいのだろうと思うのですが、したがいまして問題は、昭和六十年四月の国民年金法の改正で、国民年金に対する厚生年金の定額部分を統合して基礎年金を導入しました。これが一つ。もう一つは、四つの共済についても法の改正を行うことによって基礎年金を導入しました。  だから、国民年金法の改正で基礎年金、それから四つの共済で基礎年金、これを合わせて一つとすれば、大きな改正というのは二つあったわけであります。一つは国鉄救済という観点での国家公務員と公共企業体との統合という観点の問題点。もう一つは、基礎年金というものを導入するに当たって、私学も密接不可分ですが、厚年並びに四つの共済の基礎年金に対してこの私学共済はどのような対応を迫られることになったか、これが重要な問題になってまいります。  さあ、そこでお聞きします。これはどんなことがあっても大臣ですね。昭和五十九年二月二十四日の閣議決定、これは当時は大臣ではありませんけれども、これによりますと、今のような統合が行われるに当たって閣議ではこういうことを決定したのです。基礎年金導入や新しい年金制度を導入するに当たって「昭和六十一年度以降においては、以上の措置を踏まえ、給付と負担の両面において制度間調整を進める。」これが第一点。「これらの進展に対応して年金現業業務の一元化等の整備を推進するものとし、昭和七十年を目途に公的年金制度全体の一元化を完了させる。」ということを決定しておるのです。これは閣議決定ですよ。その閣議決定に基づいて六十年、六十一年と動いてきたわけです。さあ、今やいよいよ六十四年の改定を前にして、これらの問題に関する給付と負担の両面の制度間調整、事務の一元化、さらに七十年の一元化、こういう重大な閣議決定の基本方針について、現在竹下内閣で何をなさっておられますか。
  142. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるように五十九年の閣議決定、それから六十二年の申し合わせ事項がございまして、七十年一元化というものが目標に掲げられております。その間に先生おっしゃいましたように基礎年金部分ができまして、そして厚生年金、それから共済グループ、これをまさにこれからどうしていくかという御質問でありますけれども先生は、先生方の御指摘で今私学共済、農林その他が国鉄仲間入りに対してやや助かっておるではないか、こういう御趣旨だと思いますが……(嶋崎委員「いや、そんなこと言ってませんよ、そんなことありっこない」と呼ぶ)それではそれは修正いたしますが、これからにつきましては、年金体制の充実といいますか、公的年金が十分その機能を発揮するという体制をとるためには、私どもはやはり七十年に向けて一元化を促進していくべきであろう、これは当然でございますけれども、それに対して模索しながら、ただその間で六十四年度地ならし部分もございますけれども、それを踏まえまして七十年一元化に向かっていくべきであると考えております。
  143. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 まだ何もまともに検討してないのですよ。しかし、質問するのに今うまい言葉をおっしゃった、地ならしとおっしゃったですね。その地ならしでいきましょう。  私学の場合、これから来年六十四年を境にして六十四年から六十九年まで、それから七十年以降、こういう段階を考えたときに、地ならしする際に山を三つ越えなければいけないのです。川村さん、この三つわかる、わからないでしょう。僕から説明しましょう。  一つは何かというと、基礎年金の基金の制度の改革なんです。基礎年金制度の改革、これが第一点。これが今私学と密接不可分にありますから、質問します。  二番目は、国鉄共済年金制度の改革の問題です。しかし、これは今度は国鉄だけじゃないのですよ、来年からは専売が入るのです。専売はもう来年でつぶれるのです。今までは専売は入っていませんでした、国鉄救済だけで来ましたが、六十四年度以降は三万人体制から二万人体制になる専売ですから、これがまたえらい問題で、年金は完全にパンクであります。そうしますと、この二番目の段階では、国鉄共済年金改革問題並びに専売の年金を含めてどう改革するかという課題があるのです。  三番目は、今度は法律の上では六十歳支給、そして六十五歳、つまり六十歳から六十五歳、この間のいわば年金の状況をどうするか、開始年齢をどうするのか、それからいつからやるのか、定年との関連はどうなるのかという、一口でいいますと年金と雇用の関係をどうするかという問題。  この三つがあるのです。この三つを来年の六十四年の改定に際して政府はきちんとした方針を持って臨まないと、問題は解けないわけであります。  さて、第一からいきます。今の第一の場合に関連して申し上げますと、御承知のように基礎年金が導入されて、基礎年金のいわば財政、この負担をどうするかということで、これが政府は今までとんでもない方針を決めてきたのです。三分の一は国ですよ、そして三分の二は保険料ですよということで判断をしてきたのです。一口で言いますと、保険方式による基礎年金制度というものを導入したのです。これが私学やら、それらと密接不可分になるのです。掛金を掛けておいて、交付する金は全然少ないのです。だから、財政はパンクしていくのです。国民年金なんというのは基礎年金はあっという間にパンクしますよ。そうしますと六十五年以降はえらいことになるのです。これをどうしてやったかというと、中曽根内閣の行政改革の圧力で、国からは金が出せぬというので、三分の一が国、そして三分の二が保険料という形の保険料方式をとって、しかも保険については国民年金特別会計というものを設けたんです。これは、うちの党の方針はこの年金は外履きにして外に見えるようにしておけと言うのを、国民年金の中に内履きに抱え込んだのですから、非常に混乱するのです。国民年金の問題点がそのまま継続しますから、さらに矛盾が解けないという問題が出てきているわけであります。  さて、そこでお聞きします。この基礎年金のいわば構造的な欠陥というものがどこにあると思われますか。
  144. 川村恒明

    ○川村政府委員 基礎年金制度は、ただいま先生からお話をいただきましたように、三分の一は国が負担をする、残りは保険数理でこれを賄っていくという仕掛けでございます。これは、これからの高齢化社会に向かって基礎年金の支給分は随分ふえていくだろう。この仕組みというものが公的年金制度として基本的な欠陥があるのかどうかということでございますけれども、現在の公的年金制度の仕組み、それから高齢化社会への動向というものを考えたときに、現在の基礎年金の仕組み、三分の一を国が負担し残りを年金数理で持っていくという考え方がそれほど致命的なものであるのかどうか、やはり基本的にはこういう仕組みでやっていくことが一番いいということで、国会で御審議をいただき、法律が成立して、現在の制度が進められているというふうに理解をいたしております。
  145. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 川村さん、ちょっと勉強せぬといけませんね。そんなことを言っていたら私学共済は大変ですよ。  今から具体的に質問しますけれども、基礎年金制度の致命的欠陥というのはこの保険制度にあるのです。先進国で基礎年金制度が賦課方式をとっていない国はありますか。保険制度をとっているのは我が国だけですよ。これは行革の影響じゃないですか。これを賦課方式にしないで保険方式をとっているために、国民年金基礎年金というのは会計がパンクするのです。国民年金の基金は今幾らあるのですか。二兆円足らずですよ。厚生年金は何ぼありますか。六十一兆円ですよ。厚生年金に一年間に支給するのはどのぐらいだと思いますか。二兆三千億円ですよ。今基金は二兆円しかないのです。それを集めて交付して二兆三千億円使っていくのですから食い込んでいくのですよ。五年もしたら国民年金の基礎年金勘定というのはパンクしてしまうのです。今の制度は壊れるのです。そうすると、私学の皆さんが掛けてきたお金は今のままでいきますとパアになるのですよ。具体的に数字で示しましょう。  そこで、お聞きしましょう。この基礎年金を導入したことによってすべての制度の年金から毎年拠出金というものを出していく。そして、そこから今度は私学の人たちは交付金をもらうのです。もちろんそれには国庫補助が入りますよ。その場合に大きなギャップがあるのを御存じですか。拠出と交付の間のギャップは、例えば厚生年金はどのくらいあると思いますか。
  146. 川村恒明

    ○川村政府委員 厚生年金におきますギャップは私ども制度を主管しておりませんので存じませんが、私学共済で申しますと、例えば昭和六十二年度の拠出金は四百二十一億円、それに対して基礎年金からの交付金は百六億円、こういうことでございます。もっともこれは、交付金は百六億円でございますが、もう一つ、先ほど先生御指摘の国庫補助が百四十七億ございますから、要すれば四百二十一億出した、それに対してもらった方が百四十七億と百六億を足して二百五十三億、これが六十二年度の姿でございます。
  147. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 念のために申し添えておきましょう。数字だけ頭に入れておかれた方がいいんじゃないですか。  厚生年金の場合は、六十二年度で拠出金と受け取る交付金の差は約一兆七千億円です。そんなふうにして金を納めたが、もらう方は全然少ない、こういう仕組みになっておるわけです。それはなぜかというのは後で聞きます。  さて、その次に私学共済にいきましょう。今おっしゃったのは六十二年度をおっしゃいました。六十三年度はどうなっていますか。——これは僕が数字を言いましょう。六十三年度は四百六十二億六千六百万、大体四百六十二億と見ていいです。そして交付されたのは二百八十億。さてここで、ちょっと印象づけるアップ率を言いましょう。交付金のアップ率、六十一年は一七%、六十二年は二五%、六十三年は六〇・五%、物すごい勢いで国民年金基礎年金から交付金がふえておるのです。この調子で三年もいって同じか逆転するようになったときは、今度は国民年金の基礎年金はパンクしてしまうのです。この調子でいったら四、五年先ですよ。だから、今のところ確かに六十三年度でいいますと四百六十二億に対して交付金は二百八十億、去年に比べて八十億もふえております。そういう意味では六〇%もアップしていますから形の上ではいいように見えるが、全体で見るとこれは大問題であるぞという判断をしておかなければならぬということであります。  さて、私学共済の場合に、大体単価は幾らで計算してありますか、拠出していく場合の単価はどのくらいで計算していますか、六十一年、六十二年、六十三年について。
  148. 川村恒明

    ○川村政府委員 基礎年金の拠出金の積算単価でございますが、昭和六十一年度は八千六円、六十二年度は八千三百十一円、六十三年度が八千九百九十三円でございます。
  149. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうしたら、拠出金の全国平均はどのぐらいですか。御存じですか、五千五百円ですよ。一人当たり平均五千五百円に相当する拠出なのに、私学の場合には八千円の拠出をしているのです。他の共済に比べて相当高い負担を強いられて拠出しているよということをまず念頭に置いておかなければなりません。これが重要な一つのテーマであります。どうしてこんなふうに拠出しているのに、交付されるものとの間にギャップが起こるのですか。
  150. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま先生のおっしゃった単価の中には国庫補助分が入っているのではないか、私も数字がよくわかりませんけれども、ちょっとそんな感じがございます。  それは余計なことでこざいますが、この差が出るのはどういうことかということでございまして、こういう新しい仕組みをとったときに、私学共済の性格がそこで出てくるわけでございます。御案内のとおり、私学共済組合というのはその特徴として成熟度が非常に低いということでございます。つまり、戦後私学が一貫して充実をしてきた、組合員もふえてきた、大学もふえてきたということで、現役の方がかなり多い。それに対して年金をもらう方は少ないという形でございますから、出す方は非常に多くてもらう方が少ないということになりますので、こういう差が出てきているわけでございます。
  151. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 一口で言うと成熟度が問題なんです。厚生年金の六十二年度の成熟度はどのぐちいか御存じですか。——わからないでしょうね。ちょっと言いましょうか。国家公務員共済組合の成熟度六〇、地方公務員共済の成熱度が三三、今問題になっている私学共済は一九・九、それから厚生年金は二五・九。さあ、問題は国民年金です。国民年金の成熟度が拠出金と交付金との関係で密接不可分になってくるのです。これは表面に出ているのは私の資料ですと三四・六%なんですが、問題は、国民年金の場合は御承知のように保険料の免除者がおるのです。今どれぐらいいるかといったら、二百二十五万人いるのです。それから保険料の滞納者、これが問題なんです。当然掛けておかなければならないのに、こんな制度は先行き危ないなというのか何かで、今の掛金を掛けぬ人がどれぐらいいると思いますか。四百二十万人いるのです。そうしますと、これを除いて成熟度が計算されているのです。そのいわば分母、分子の細かな数字は挙げませんけれども、それで成熟度を計算していますから、今のところ三〇%台に見えるのです。ところが、これを入れて計算しますと何ぼになると思いますか。何と五〇%近いのです。四九・八%になるのです。えらいこっちゃ。つまり国民年金に関しては成熟度は五〇%にもなるということになりますと、これの基礎年金に相当する部分をほかの年金でカバーしてやらなければ基金は維持できぬということです、一口に言って。  では、どんな仕組みで現在運用されているか御存じですか。例えば私学共済の場合には、拠出するときは二人分なんです。もらうときは一人分なんです。国民年金は一人分で一人分もらうのです。二人分拠出していて一人分しかもちえぬのですから、半分だけ交付金は少なくなっていくという構造になっていくわけです。とれが、成熟度なるものによって国民年金基金制度というものを支えている仕組みなんです。重要な仕組みなんですよ。だからこれはパンクするのです。厚生年金は基金が六十一兆円もある。片一方は二兆円しかない。だのに、一年間に二兆三千億円要るんだから食い込んでいくわけですよ。  これは、私が演説ばかりしていてもしようがない。質問になりませんけれども、結論を申し上げますと、これは、厚生年金並びに私学共済を含めて共済四年金、厚生年金と共済年金から国民年金を救済をしていくための財政措置でしかないということです。重大なことですよ。この私の判断は正しいですか、間違いですか。
  152. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の点がまさに現在の公的年金制度の基本的な問題ではないかというふうに思います。結局、これまでそういうふうに、厚生年金でございますとか共済組合、共済組合がまたそれぞれに組合を、国共済、地共済云々と立てるということになる。そこに入らない方は国民年金という仕組みになっている。そうしますと、そこでおのずからその組合に属している方の収入も違います、あるいは年齢構成も違うということで、それぞれの共済の立場で自分のところだけがいいという仕組みをすれば、それはそれでいいのかもしれないけれども、そうすると結局、今御指摘のように国民年金に全部そのしわが寄ってしまう。それを今おっしゃるように、ほかの共済組合で手を出すということがいいのか、いや、それはそういう共済組合が手を出すべきことじゃなくて、もっと別途の形でその負担を考えるべきと思うのかという御指摘だろうと思います。  現在、形としては先生御指摘のように、先ほどの数字にもございましたように、我が私学共済は拠出金を出したけれどもわずかしか返ってこないというような形になって、結果としてそれは国民年金の方を助けている形になっているわけでございます。でございますので、こういうふうな各種の公的年金制度がいろんな制度に分かれてやっているのがいいのか、あるいはそれをもう少しまとまった形にすべきではないか、方向としてはやはり一元化という方向にそこで向くべきであろうというふうに思うわけでございます。ただ、その一元化をどういう形でやるかは、先ほど先生から御指摘いただきましたように幾つかのやり方があるので、それはこれから検討しなくちゃならない。しかし、方向としては一元化という流れの中で国民全体が負担をなるべく公平に、給付の方もなるべく公平にという方向に向くということは、これはやはりそっちの方向へ進めていかなければならないことではないかというふうに思っております。
  153. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 その回答は、御無礼だけれど、ごまかしなんです。最初に言ったでしょう、基礎年金制度は保険制度なんです。先進諸国はどこの国をとったって保険制度をとってないのです。社会保障制度を適用しているのです。ところが我が国は保険制度、三分の二が保険で、三分の一が国でやるという保険制度をとったところに、成熟度で豊かなところは余計出せや、助け合いしようやということになる。私学は確かに二一〇〇年ぐらいまで安定していますね、私学共済年金の基金は。そういう先まで安定しておったって、七十年に一元化するというのでしょう。そこじゃ頭をなでられるのですよ、なでられざるを得ないのですよ。必ず地ならしの対象になりますよ。こんなものをこれだけ突出できますか。まあ、それは後回しにして、議論しましょう。  そうしますと、問題は、保険制度という大前提の制度がいいのか悪いのかという議論がなされないまま、あなたのおっしゃるように助け合いで、あたかもいいところ、成熟度の低いところが助け合うんだというのはきれいごとに見えるけれども国民年金基礎年金基金はつぶれてしまうのですよ。七十年にいかないうちになくなっちゃうのです。そういう意味で、今の問題の回答になっていない。我が党が提案している西欧型の財源の方式、これを考えて基礎年金制度というものを検討しなければいかぬ。財源問題は別途検討する。うちはちゃんと財源は別途の所得型付加価値税という方式を出していますけれども、それはおくとして、考えなければならぬ問題点があるということを申し上げておきます。  さて、——自民党だめだね。委員が来ておらぬよ。昼飯が長過ぎるんじゃないか。野党が質問しておるときぐらい、たくさんの党が敬意を表さなきゃ。採決ばかり急がぬで。  さて、これでおわかりになったと思う。つまり、昭和六十年度の年金改定に際して、六十四年度までの現在やっている国民年金基礎年金基金ですね、これに関連する拠出と交付金による運営、この制度が非常に行き詰まりつつあるということ、したがって、この年金の改革をどうするかということをやらなければ七十年の一元化の方針は出てきませんよ。これが今までの議論のまとめであります。  次は、第二番目の点だけ言っておきましょう。最初に言った六十年度年金改定の三つの山のうちの一つは、今の議論で終わったわけですが、今度は二つ目の議論。二つ目の山は、御承知の国鉄共済の救済措置である財政調整五カ年計画です。これが六十四年で切れるわけです。来年で切れるわけです。したがって、この六十年から六十四年までの国鉄共済年金がいよいよ六十四年で完全に行き詰まってしまう。このときには私学は幸いに援助せぬで済んだ。しかし、政府閣議方針や今までの閣議決定、私の国鉄の質問のときにも、ただオウム返しに言葉だけ、責任持ちます、責任持ちますと言って、どんなふうに責任を持つのか、中身は全然ないわけです。いまだにないんですよ。昭和六十五年から六十九年までの間の財政措置政府は責任を持つ、こう言っています。そのときに、一年間に何ぼ不足するのですか、五年間に幾ら金が余分に要るのですか御存じですか。言っておきましょうか。一年間に約三千億、掛ける五年、一兆五千億の金を準備しておかなければいかぬのです。  そういう意味で、国鉄共済については、六十五年から六十九年までの間について今の助け合いの延長はもう実現できないのです。地方公務員もいややと言った。私学共済もいややと言った。農林共済もいややと言ってきている。そこで、国公とそれからNTTとたばこで援助してきた。そのたばこは来年からパンクするのですから、六十五年から六十九年までの間は今度は専売の共済年金を含めて、どのようにこの年金財政というものを考えていくのか、どのような負担と給付をやるのか、これがいよいよ第二番目の大問題になります。  そこで、六十五年から六十九年までのこの五年間、第二段階目、これに当たってオール共済でいくのか、オールジャパンでいくのか、どう御判断ですか。これは大臣だろうな。川村審議官は役人だから、こんな政治の方針なんて決められるわけがないんだから、こういうときには大臣の御判断が要るんだが、無理かな。
  154. 中島源太郎

    中島国務大臣 それはまさに、六十四年の再計算期におきまして地ならしをすると私が申し上げましたその三つのうちの二つを今おっしゃったわけでございますけれども、私ども、まさにそういう問題を含めて六十四年に地ならしをしつつ七十年に一元化と申し上げました、その一元化に向かっていくわけでありますけれども、その基礎年金、それから厚生年金を含めたオールでいくのかあるいは共済グループ一元でいくのか、これはまさにこれからいろいろ考えることだと思いますが、私どもが言っておりますのはオール一元化を目指す、そういうことで考えるのだと思います。ただ、その中に申し上げましたように六十四年度地ならし部分がございます、こう申し上げたわけでございます。
  155. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 大臣、それは閣議や歴代の大蔵大臣が言うているのと違いますよ。オールジャパンはだめなの。これは全然問題にならぬの。つまりすべてで助けるなんて成りはせぬのよ。そうすると残ったのは四共済なんです。四共済はどうするか、それでも成らぬの。地方公務員共済なんというのは、人を助ける場合にはまずうちの中で助けて内部でコントロールしなければならないのです。私学共済というのはほかとは違うのです。後で問題にしますが、停年は長いし、若い人は早くやめますし、豊かなんです。そして、いろいろな意味で国公に準じていますから、ベースも一〇%ほど高いのですよ。そんな状態が今日ありますから、さあ、それならおまえのところは豊かだから、ひとつオール共済で国鉄も専売公社も助けましょうやなんという提案をしたら、その大臣は吹っ飛んでしまいますよ。できやせぬのです。そうするとえらいことになるのです。どうするかということになるのです。それは政府の責任でやってもらいたい。国鉄の土地でも売るなんて、そんなに簡単に言うてもらっては困りますよ。  これは文部大臣の管轄じゃないから、これ以上はもう聞きません。聞きませんが、はっきりしていることは、国鉄を助けるために、六十年の段階は四共済から私学共済は外れることができた。しかし、六十五年から六十九年のときには私学共済を含めて四共済という形の統合をやらなければいけませんから、ここでひとつ助け合いの話が出る可能性があると僕は思います。しかし、私の考え方はだめということですよ、できませんということです。  そこで、ではどうするんだという大問題が二つ目のハードルです。これが六十四年、来年の法律改正のときにはきちんとした方針を持って今から対処しなければならない課題なんです。その改定には、まさに今から指数の準備を始めて、そして一年前から来年の法律改正に臨むべく、国公済に準ずるにしても、私学も対応しておかなければいけませんよというのです。これが二番目のハードルをめぐる問題であります。  ちょうど区切りがいいから三十五分でやめて、まだあと三十分残っていますから、三つ目のハードル、雇用と年金に関連し、そこで私学共済の雇用と年金、これの特例、特別な扱いの問題やその他の問題を後段にやりたいと思います。  私の前段の質問は終わります。
  156. 鳩山邦夫

    ○鳩山(邦)委員長 代理 この際、暫時休憩いたします。     午後一時三十三分休憩      ────◇─────     午後二時三十分開議
  157. 岸田文武

    ○岸田委員長 代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  委員長が所用のため、指名により私が委員長の職務を行います。  質疑を続行いたします。嶋崎譲君。
  158. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 午前中といっても変な時間でしたが、先ほどまでの質問で、昭和六十四年度に横断に年金制度の改定時期に入るということで、六十五年から六十九年までの段階に備えて、今日までの年金制度の運用のもとで、越えなければならないハードルが三つあるということを申し上げたわけであります。  その第一のハードルは、国鉄共済がパンクをするということから、国鉄共済年金をめぐって、いわゆる国公と公共企業体の年金統合でもって五カ年の財政調整計画というものを行ってきた。これは、六十五年以降については政府は責任を持つということを決定しているだけであって、どのような対応をするかいまだ明らかになっていない。この問題と私学共済との関係でいえば、今日の段階で、本来ならば四共済が一緒になって国鉄年金の再建計画に協力することが必要だという自民党の提案があったのだけれども政府も最初はそのような方針だったけれども、我が党の質問の中でそれは無理だということになりまして、地方公務員共済が外れ、そして私学、農林共済が外れて、今日まで国鉄の年金財政の五カ年調整が行われてきた。そういう意味で、今日までは、私学共済は年金の第一段階では、現行の段階では直接関係がない形を取り入れた。しかし、六十五年から六十九年の段階に来ると、四共済を統合しつつ対応するのか、今までのような成熟度を前提にして、私学共済の歴史と伝統を考えれば別個の扱いで対応するのかという問題について検討せざるを得ない時期に来た。したがって、その問題について政府は今後の共済、四共済についてどのような六十五年から六十九年までの対応になるのかについて来年までには方針を決めなければならぬ、そういう課題がある。これが第一のハードルの問題でありました。  第二番目のハードルは、国民年金基金の問題に関連して、現在進行中の年金制度のもとでも、私学共済は拠出金を出し交付金をもらいながら国民年金基金の運用に貢献してきている。しかし、今日の我が国の年金制度の基礎年金、つまり一階建ての年金については保険制度をとってきているがために、それぞれの年金の成熟度を基礎にして拠出と交付の関係というものが行われているために、今のところ基礎年金の基金についてはぎりぎり運用が行われているけれども、単年度をとってみると、基金が二兆円しかないのに二兆三千億円毎年支出しなければならぬという状態ですから、現在は拠出と交付並びに国庫補助金で単年度プラス・マイナス・ゼロという運営はしているけれども、今後はどうしてもこの基金に手をつけざるを得ないのが実態だという意味で、いわば基金の破綻が目の前に来ている。したがって、この問題もまた、昭和六十五年から六十九年までの年金体制をどうするかという際には、国民年金の基金の運用について抜本的な改革をしなければならない。それをやらないと私学共済の今日までの協力がどうなるか、その他の年金の協力がどうなるかという新たな問題を出すことになるので、そのハードルを越えなければならない。これが第二のハードルであるということを申し上げました。  これら二つにもう一つ重要なのは、第三のハードルであります。今から時間が短いので、こんな私学共済年金というのは簡単に質問もなしに上げられる法律のように皆さんお考えか知りませんが、我が国の全国民の来年以降の年金制度にかかわる重大問題であるだけに、そんなに短い時間で審議してよろしいかどうか、大変私は疑問であります。しかし、私に与えられた時間は特別大きい時間をもらってもあと三十分しかないのでありますから、簡潔に問題点を指摘して質問をいたしたいと思います。  三つ目のハードルは、六十五歳年金開始という基本前提があるのだが、しかし当面は六十歳から年金開始して、そして六十五歳までについては、本法は六十五歳と書いておいて、同時にまた、附則では六十歳開始、そしてその過渡期においては労使折半でこれを負担する、そして同時に、前倒しでこれを運用するというのが六十年の法改正で決められたことであります。この点は御承知だと思いますが、臨調は何と言っているか、大臣御存じですか。どんな見通しだったか御存じですか。大臣でなければ審議官。時間がないぞ。
  159. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま手元に資料がございませんので、調べて後ほど……。
  160. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 資料じゃない。こんな単純なことをどうして覚えておかぬかね。臨調は、昭和六十五年に六十五歳定年という方向でいこうという方針なんです。とてもできぬでしょう。いかにできもせぬことを言っていたかということを言っているようなものです。したがって、私の質問は本来、昭和六十五年六十五歳と言ってきたその臨調答申について大臣はどう思いますかという質問なんです。時間がありませんから、これはできぬでしょう、できぬと言われればいいのです。不可能と思いますとおっしゃってください。
  161. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘のように、前回の制度改正で支給開始年齢は六十五歳ということを本則で規定をしたわけでございます。これは国会でお決めになった法律規定でございますから実施をしなければならない。ただ、同時に、その法律におきまして「当分の間」は六十歳ということでございます。やはりこの法律の本来の趣旨というものは踏まえながらその方向へ進んでいかなければならない、さように考えております。
  162. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 しからば、六十歳定年のままで六十五歳開始を行ったらどうなりますか。
  163. 川村恒明

    ○川村政府委員 仮に六十歳で定年を迎えられ、支給開始年齢は六十五歳ということになれば、年金を受給するのは六十五歳からでございます。ただ、この私学共済について申し上げますと、私学共済……
  164. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 私学共済はいいです。後でやるから。  これは、我が国の社会は物すごい勢いで高齢化社会へ進んでいるが、中高年層の雇用、定年制の問題、これを解かなければ実施はできぬということなんです。おわかりですね。だから、今の問題は私のようにお答えいただけばいいんです。  次の質問。さて、雇用はどの省が担当していますか。
  165. 川村恒明

    ○川村政府委員 雇用は国民全体にかかわる、また制度全体にかかわる問題でございますけれども、直接的には労働省が御担当に相なると思っております。
  166. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そのとおりです。では定年はどの省ですか。
  167. 川村恒明

    ○川村政府委員 民間企業における定年の扱いは多分労働省の御所管かと存じております。
  168. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 年金はどの省ですか。
  169. 川村恒明

    ○川村政府委員 年金はそれぞれの制度、所管が分かれておりまして、厚生年金につきましては厚生省の所管でございます。
  170. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 要するに、年金は基本は厚生省なんです。それで共済、四共済は大蔵ですけれども、何といっても厚年を軸にして七十年のいわば一元化問題が基準になっているのですから、担当は本来は厚生省が主管だというのが基本だと思います。今のところばらばらになっているから、権限は同じように見えているだけであります。  さて、六十五歳から実施で、附則で当面六十歳ということにしていますが、こうなりますと問題は労働省、厚生省、それから私学や地方公務員、国家公務員を扱う文部省等、こういうそれぞれが縦割りの行政でやっていたのではこの問題は解けないのです。そのためにはこの一元的な検討、運用がまさに必要なわけです。そこで年金問題には、御承知のように官房長官のところで各省連絡調整を行うという機関を設け、担当審議官もおるのです。ところが官房長官のところではお手上げなんです。正直言いましてどうにもなりませんというのが現状なわけであります。  そこで問題は、今後このような雇用と年金を将来本法で言っている六十五歳にして、当面しばらくの間六十歳でやるにしても、雇用と年金の連動というものが可能になるような仕組みはどうしたらいいか、ここは非常に重要な問題になります。どうしたらいいと考えますか。
  171. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘の問題は大変に難しい問題でございまして、一方、その雇用を決める、これは民間における自由な雇用の原則ということがございます。その民間における自由な雇用の建前というものを尊重しつつ、それに適合した年金制度、年金制度先生が先ほどから御指摘いただいておりますように、これは一つの公的な非常に広く言えば社会保障制度でございますから、それに民間の実態に適合した年金制度をつくるということがやはり基本ではなかろうかと思っております。
  172. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 労働基準法改正というのは今国会で問題になっているのです。労働時間短縮に関連して、つまり労働時間を週何時間にするかということが非常に重要な問題になっているのです。これはこれと密接な関連があるのです。これは私学共済の問題にも関係するし、すべての公務員にも関係する問題になるんです。ここでは、我々は週四十時間という問題をひっ提げて問題にしています。つまり労働時間、労働基準法問題を全政府方針としてどうするか、そしてそれをどう具体化するかということと密接不可分であります。いま一つは、六十五歳開始ということを段階的に実施しようということになれば、今度は中高年雇用という問題をどのようにしていくかという社会的、法的な対応が必要になってくるのです。  これら二つについて、これはとても各省で担当できるような話でないだけに、これから先の年金を六十五歳に持っていくためには、今は六十歳から始めて六十から六十五歳が途中非常に難しい問題を抱えているけれども、これを解くためには、私学や共済年金や厚年の中だけで議論しておったって年金問題は解決できないのです。したがって、これらの全体にわたってどのような時間短縮というものを制度化するか。そして中高年の雇用、それにはミスマッチ問題もある、たくさんの課題が出てきます。そういう労働行政。特にその中ではワークシェアリングということを制度化していかないとこの問題の解決はできないのです。  そういう意味で、今年金と雇用という問題をまず全体の年金体系の中で考えますと、そういう大問題を抱えた中で、しからば私学共済年金の受給者たちは、この雇用と年金の関係はどういう現状になり何が問題だというふうにお考えですか。
  173. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいまおっしゃいました基本的な雇用と年金の関係、そのとおりだと思いますけれども、事私学共済組合に限定をして申し上げますれば、この私学共済組合というのは幾つか特色がございますけれども、一つは現職で、現役で組合員でおられる方でかなり高齢の方がある。共済制度というものは御案内のとおりに老齢に基づいて支給するのではないので、退職という事態が起こったときに支給するわけですけれども、現在の私学共済組合での平均的な退職の年齢というものをとってみますと大体六十五歳前後でございます。でございますから、六十五歳で退職されるというのが平均的な姿だ。そうだとすれば、仮に支給開始年齢を六十五歳に引き上げても、もちろんそれ以前に退職される方もありますから個別の問題はありますけれども、全体として見れば結果的にはちょうどいい姿になっておるのではないかということでございます。
  174. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 ムード的な回答としては大体よろしい。しかし、この問題点は、もっと正確に言いますとこういうことです。  在職老齢年金というものをどうするのかというのが制度上の問題なんです。つまり、六十歳から六十五歳まで在職はしているが、年金はどうする。六十五歳を超えた人が在職をしているが、それとの年金はどうあるか。そのときに共済と厚生年金はどこが違うのか。そして、特に私学共済と厚年その他とはどこが違うのか、どこが特殊性があるのか。こんなふうに問題を整理してかからなければならぬ問題であります。  さて、そこでお聞きしますが、アメリカの場合は、いろいろな議論をやりましたけれども、定年を随分先に持っていったのを御存じですか。アメリカの選択はどこまで、何歳ぐらいまで認めていますか。——御存じじゃない。七十歳です。七十歳定年という意味じゃないですよ。七十歳までは働く意思があれば働きながら、在職年金との対応をどうするかということで財源を議論したのです。随分議論した。日本みたいにまず財源ありきで始めるのじゃないのです。実情を検討した上で、そういう制度をつくって動かそうとしているのです。  スウェーデンはどうなっているか御存じですか。——知らない。スウェーデンはこれこそ部分雇用、部分年金。これが将来我々でも検討になるわけです。つまり、在職している人たちの中で年金をもらえる場合に、部分年金の適用と、同時に賃金はダウンしてきていますから、ダウンしても構わぬということではないけれども、部分雇用的性格とをミックスしたのがスウェーデンの方式であります。  したがって、我が国で雇用、年金問題を考えるときに、そういう先進国の経験で、まず在職老齢年金問題をどう制度化するか、これが来年以降の重要な課題であるということを申し上げておきたいのです。  さて、私学の場合をお聞きしますが、私学共済の場合に、昭和六十年の段階の資料しか私は見ていませんが、六十一年の段階も大体こんなものじゃないかと思うが、六十年を横に見まして、六十五歳以上の高齢組合員は、私学共済の場合には組合員の中で占めている率はどのぐらいか御存じですか。
  175. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合におきます六十五歳以上の組合員の数でございますけれども、これは六十一年度で一万五千百七十二人でございます。組合員全体に対しまして四・二七%でございます。
  176. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 国家公務員、地方公務員、農林水産、それぞれどのぐらいだと思いますか。
  177. 川村恒明

    ○川村政府委員 国家公務員共済組合につきましては、これは六十年度の数字でございますけれども、六十年度で六十五歳以上の方が七百二十九人でございますから、全組合員に対して〇・〇六%でございます。農林年金につきましては、昭和六十一年度の数で三千八百六十六人でございまして、全体の〇・七%、こういうことで乙ざいます。
  178. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 だから、今は六十五歳と僕は言ったのです。非常に少ないから、ほかのところはみんな六十歳を基準にしてパーセンテージをはじいておるのです。六十歳でいきますと、いかに少ないか申し上げましょう。国家公務員の場合は六十歳以上というと、六十年の数字で〇・二二ぐらいだったと思います。ちょっとメモで僕の資料が正確かどうかわからぬが、地方公務員は〇・一八、農林水産は一%未満です。大体大まかに言って、きょうのこの数字はそんなに違わないと思います。つまり、これは何を言わんとしているかというと、私学共済の場合は六十五歳を超えている人が四%台あるのに、他の三共済をとると〇・数%、〇・一%台だということ。ということは、私学共済の場合には、六十五歳以上の教職の方々が現実にはいわば高齢組合員として存在をしている。これは他に比べて特殊的であるということになるのです。  そこで、これに対する対策です。厚生年金の場合は、御承知のように六十五歳を超えれば在職していても支給されます。そして、この厚生年金との関連は、私学の場合には重要になってくるわけです。御承知のように適用除外がありますから。慶応とか早稲田とか明治とか法政とか立教とか、たしか三十四校ぐらいあったんじゃないかと思う、それがつまり長期給付については適用除外になっていますから、これは厚生年金扱いになります。したがいまして、六十五歳を超えても組合費を、つまり共済費を納めなくてもいいという厚生年金と同じ資格要件になります。ところが、私学共済に入っている人たちは、六十五歳を超えた人が全体の四%台おりますが、その人たちは、御承知のように共済の積み立てをやりながら実際は年金は取得できないという仕組みになっているわけです。これは御承知のとおりですね。したがって、この六十五歳を超えている私学共済の組合員に対して厚生年金に準じた処置をとるべきだと思うが、いかがですか。
  179. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいまの私学共済に加入していない三十数校、この学校は私学共済でございませんから厚生年金そのものに加入をしておられる、こういうことでございます。厚生年金は御指摘のようなことで六十五歳以上が出る、私学共済は在職している限りは組合員である、こういうことでございます。そこは一見アンバランスがあるようでございますけれども、一つ問題点として申し上げますと、私学共済の特色としてもう一つの特色がございます。高齢者が多いということがございますが、同時に非常に若い職員が多い。特に若い女子の職員が多うございまして、この方々は幼稚園が中心ですけれども、若い期間に大体十年ぐらい勤めておやめになるという方がございます。こういう方にとっては、六十五歳からの支給開始ということはそれほど意味のないことになる。しかも六十五歳から私学共済も支給するようにするとすれば、それは私学共済の財政に非常に大きな影響がある。ただいま先生御指摘のように四・何%の方が現在は組合員としてお金を払っていただいておるわけですが、この四・何%がお金を払うのをやめて、もらう方に回ってしまうということでございますから、これは年金財政に直ちにはね返って、しかもそれは、ただいま申し上げましたような若い女子の職員の方にもろに掛金率としてかかってくる。この方々は通常六十五歳までおられませんから、結果として掛け捨てのような形になるということもございます。  これは私学共済の独特の問題でございまして、その三十数校の私学はみずからの選択でそういう形、現在の厚生年金という制度を選んでおられることでございますから、それはそれ、これはこれとして、現在の私学共済の運用を続けていくことがいいのではないかと思っております。
  180. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それも根本に返るのです。つまり保険制度を前提にしたこの基礎年金基金制度とも密接不可分なんです。特に国民年金と関係もあり、厚生年金とも関連を持つ若い人たちが年金からとことこ離れていくという、特に幼稚園の先生とかそういう人たちは掛け捨てでやめていってしまうんですよ。そういう問題も含めて、年金制度全体の基礎年金、つまり基礎年金、二階、三階建てをやるときの基礎は、社会保障的なものを最初にこの間から言っていることをきちんとやって、それで二階は報酬比例でやって、三階は職場というものの特殊性を生かせる仕組みで、一階をきちんとして全国的な年金体制としてやっていくことと密接不可分なわけです。  したがって、そういう問題があるということをここで指摘しておきまして、来年度以降の課題について、この私学共済の特殊性を生かしながら、ただ保険制度の枠内で考えれば今の審議官の意見はそのとおりなんです。その制度でいいかを含めて検討しなければならぬ時期に入るのですから、今までの延長線上でいいのかどうかを含めて、六十五歳以上の組合員についての措置は可能かどうかを検討していただきたいということを申し添えておきます。これは回答は要りません。  時間もあと五分ですから、最後に一つだけ重要なテーマを指摘しておきましょう。最後は、今までは年金でいきましたが、短期給付問題。これは医療制度と密接不可分であります。もう時間がありませんから老人保健制度や退職者医療制度などについて説明をしたりする時間はありません。結論だけ申し上げましてお聞きします。  短期の給付の掛金率の引き上げを予定しておりますか。その場合に引き上げ率はどのぐらい、実施はいつどろですか。これについて答えてください。
  181. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済の短期給付の収支の状況が最近急激に悪化しているということでございまして、従来ずっと黒字で参りましたけれども昭和六十一年度以降、これが急激に悪化をするということでございます。  ただ、従来の私学共済は短期給付が比較的黒字基調で参りましたために、現在のところ実質剰余金、積立金がございますので、当面はそれの取り崩しで対応してまいりたいということでございます。現在のところ、いつからどういう形で掛金の改定をするかということについては検討中ということでございます。
  182. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そんなのんきなことを言っておれぬのですよ。この財政指数を見ましたか。短期給付の収支状況というのを今説明されましたが、私の手元に数字がありますよ。これでいきますと、十年間、六十年まではずっと黒字だったのが六十一年と六十二年で急速な赤字になってきていることは御承知のとおりですね。それで、しかも六十一年度は約二億円の赤字です。ところが何と六十二年にはこの三十倍、六十六億円になっておるのです。  さて、この二年間の剰余金はどうなっておりますか。この数字によりますと、剰余金は六十一年は二百五十八億、六十二年は百九十二億になっているのです。取り崩しを始めておるのですよ。こう見ますと、結果としてこの一年間に何と六十億ぐらいを崩しているということになるのです。そうしますと、今のような按分率を前提にして考えていきますと、この六十一年、六十二年の趨勢でいくと共済年金の剰余金は枯渇してしまうよという事態が五、六年先と想定して考えなければなりません。これまた大変重要な問題です。  これは、御承知のように老人保健制度、つまり各共済年金その他に所属している人でも、六十五歳になれば、公務員の場合には一年間はよそよりはいい特権がありましたけれども、実際には国民健康保険に切りかえていくわけですから、そうすると、国民健康保険に切りかえられた分についてこれまた拠出しながら支えていくという、この仕組みが問題になっているところにこの拠出金が問題になってきている背景があるわけです。医療費は一年間十九兆円、大半が老人医療費であることは御承知のとおりです。したがって、今の老人保健制度や退職者医療制度というものを前提にしたかっての改革が、今やそれぞれの各年金の財源、基金についての剰余金をどうするかという問題がこれまた新たな問題になってきている。ということは、私学共済の場合も、この二年の数字を見ても大変な新しい傾向値としてこれをとらえ直さなければならぬ。ということになるわけです。だから、まだ当分は、掛金率は検討しているとかいないとか言っておりますけれども、もう恐らく六十三年には掛金率の引き上げは必ず問題にせざるを得ないようになります。今年の後半から来年にかけては、特に六十四年以降になれば当然問題になります。したがって、私学共済の短期についても、この基金の剰余金との関連において、今までの按分率算定方式を基礎にした延長線上でいいのか、これまた制度上の重要な問題であります。この問題の検討をしていただきたいと思います。  もう時間がありませんから、あと一問。  私学共済組合法で第百二十六条の五の問題です。御存じですか。任意継続をした組合員の資格要件に関係する規定です。つまり、今の現状ですと、この百二十六条の五に言っておりますように、「退職の日の前日まで引き続き一年以上組合員であった者」、こういう規定です。ほかの国家公務員は違いますね。国家公務員は退職の日までです。前日じゃないのです。退職の日まで引き続き一年以上組合員であった者が資格要件なんです。同じ国家公務員に準ずる私学共済の方々が、一日前というのは三月三十一日です。ところが、国家公務員は四月一日になるのです。そうしますと、いろいろなことが違ってくるわけです、次の年に入るのですから。  私は、かつてここで、東京教育大学がなくなって筑波大学に移るときに、四月一日付でやめるのか、三月三十一日でやめるのかということをひとつ大問題にしました。皆さんの御協力のおかげで四月一日にしまして、退職金その他の算定をさせていただいて、大変いい結果が出たことを私は記憶しております。それだけに、私学共済の場合について国家公務員並みに、この法案の不備について、私は不備と思うが、確かにぜいたくを言うなという議論はあります、今の時代ですから。そういうぜいたく言うなという議論はあるが、国家公務員に準ずるとすれば、この前日をとって国家公務員並みに措置すべきだ。この法律改正というのは、私学共済にとって一つの重要なテーマだと思う。この点についてどう思いますか。
  183. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済のこの部分の、御指摘のいわゆる任意継続組合員でございますけれども、任意継続組合員の資格につきましては国共済の規定をそのまま準用しておりますから、全く同様の扱いになっておろうかと承知しております。
  184. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 そうすると、私の見解は間違っているということですか。
  185. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま申し上げましたように、先生御指摘の問題は、任意継続の組合員の資格がどこから発生をするかということでございまして、現在の国家公務員共済組合法の規定を今御指摘になったわけでこざいますけれども、私学共済組合は基本的に国家公務員共済組合に準じておりまして、ただいま御指摘の規定につきましてもこれをそのまま準用しておるというふうに承知しております。
  186. 嶋崎譲

    ○嶋崎委員 それならばそれで結構なんです。私は、この私学共済の方と国家公務員のものを正規に見比べてきておりませんから、そういう問題点をお聞きをしていたので、それであれば結構でございます。  時間が参りました。以上で終わります。
  187. 岸田文武

    ○岸田委員長 代理 鍛冶清君。
  188. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 私は、公明党・国民会議を代表して御質問を申し上げます。  午後の開会が、私が所用があって遅くなっておくれたことをまずおわびを申し上げます。  最初に、本法律案の質疑に入る前に、私学の問題について大臣にちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  私は、我が国の学校教育の中で私立学校が果たしてきた役割は極めて大きいと思っているわけでございますが、ともすれば、文部省の施策は国公立の学校を中心に動いている嫌いがあるのではないかというふうな気持ちもいたしておるわけです。しかし、これからの日本の教育考えますと、私学ということについては極めて重要であるし、これは取り組みをきちっとしていかなければならないと思うわけでございますけれども大臣は、この私立学校の果たしてきた役割というものについてどのような認識をお持ちであり、また、どのように評価をなさっておられるのか。  また、今後生涯学習社会の建設という流れが強く出てまいります。そうしますと、その中で文教政策のこの生涯学習社会に絡む問題は極めて大きな課題となってくると思うわけでございますけれども、こういう流れの中での私学の位置づけについて、どういうふうに大臣はお考えになり、その振興をやろうというふうにお考えなのか、最初にお伺いをいたしたいと思います。
  189. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の私学につきましては、我が国の学校教育の中で量的にも非常に大きい部分を占めております。また、量だけでなくて質的にも、それぞれ建学の精神に基づきまして多様な、そして個性的な教育を進めてきていただいておりますので、まさにこれから教育改革を進める上におきましても、ますます私学の占める重要さが増していくであろう、こう思います。  また、後段でお示しになりました生涯学習との関連でございますけれども、まさに生涯学習の一環が学校教育であることは確かでありますが、その中でも特に専修学校などは、生涯学習の重要な一環として位置づけてよろしいのではないかと思っておりまして、これからも私学振興のためにあらゆる努力を続けてまいりたい、こう思っております。
  190. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 一応お考えをお聞きいたしました。これは言葉だけではなくて、私学の今後のあり方についてはお言葉を着実に実行をしていただいて、私学の振興に大いにプッシュしていただきたいということを御要望申し上げておきます。  そこで、法律案についての質問に入らしていただきます。多少前の同僚委員質問とダブることがございましても、御了解をいただいてお答えをいただきたいと思います。  この法律案が通過いたしますと、年金額の改定がなされるわけでございますが、この改定措置によって私学共済が支給する年金給付額はどの程度の増加になってくるのか。また、それが年金財政に与える影響はどういう形で及ぼされていくのか。これをまずお伺いをいたしたいと思います。
  191. 川村恒明

    ○川村政府委員 今回お願いをしております改定でございますけれども、これは前年度の消費者物価指数の上昇率を基準にしてアップをお願いしたい、具体的に申し上げますと、〇・一%の年金額の改定をお願いするわけでございます。これに要する経費でございますけれども、私学共済の年金給付全体の中でこの〇・一%アップに伴う増加額でございますが、これを平年度にいたしますと約五千八百万円というふうに私どもは算定をいたしております。  そういたしますと、これが年金財政にどういう影響があるのかというお尋ねでございますけれども、これを財源率で計算をしてみるとどれくらいになるかということで試算をしてみますと、大体千分の〇・〇二程度の影響ではないか、こういうことでございます。  ですから、大変厳密に申し上げれば、この〇・〇二分の掛金の改定ということも考えなければならないわけでございますけれども、この程度の財源のことであるならば、これは現在、長期の積立金の運用をいたしておりますが、長期の積立金の運用におきまして、その利益差を若干充当すればこれは対応できるのではないかというふうに考えているところでございます。
  192. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 今回の年金額の改定は、昨年一年間の消費者物価が〇・一%上昇したことを受けての改定ということになっているのでありますけれども、消費者物価が上昇した場合に、年金についてもその改定を図ることは政府として当然のことであろうと思います。それ自体に異存があるわけではございませんけれども、現実に社会で生活をいたしておりまして、そこの受ける感覚からいたしますと、一般の勤労者の方々、働く方々の賃金の動向とのバランス、このことが非常に必要になるし大切になるのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、お尋ねするわけでございますが、この間の給与所得者の賃金というものはどの程度上昇をしているのか、どういうふうに把握をなさっていらっしゃるのか、お伺いいたしたいと思います。
  193. 川村恒明

    ○川村政府委員 昨年一年間の賃金の上昇のことでございますけれども、一般の勤労者の賃金の上昇率というのはなかなかつかまえ方が難しいわけでございまして、例えば労働省がやっております毎月勤労統計調査というところで、これは従業員の規模が三十人以上というふうな事業所で押さえておられますけれども、そのアップ率を見ますと、定昇込みで大体二・何%ということでございます。ちなみに公務員でございますけれども、六十二年の人事院勧告に基づきます給与の改善率というのがちょうどそれに当たろうかと思いますけれども、六十二年度の人勧に基づく給与の改善率は一・四七%、こういうことでございます。
  194. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 年金を受給される方というのは、いわば社会的弱者の方だと思います。こういう表現をしていいのかどうかはわかりませんけれども、社会的に言えば比較的弱い立場にいらっしゃる方に当たるのではないかと思うわけでございます。そういうことから考えてみまして、一般のサラリーマンの所得がそれだけ上がっているということになれば、年金額の改定に当たっては、物価の動向だけを指標とする、こういうようなことではなくて、勤労者の皆さんの賃金もあわせて指標とすべきではないかなというふうにも思うわけです。こういうことがこれからの、特に高齢化社会ということが言われておりますけれども、その高齢化社会に当たって、お年をとられた方々の生活をより豊かに安定したものにしていくというふうに思いますし、それが不可欠ではないかと思うのでございますが、この点についてお尋ねをいたします。
  195. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいまの物価スライドか賃金スライドかという点につきましては、これは昭和六十一年の制度改正の際にも随分御議論いただいたところでございます。私ども政府側で提案をいたしました法案では、これは消費者物価指数が上がった場合に自動的にこれをスライドする、いわゆる自動スライド方式、五%を超えて上下した場合にはそれでスライドをするという万式で改定を行うということでございます。ただ、その間の国会の御審議がございまして、参議院段階における法案修正がございまして、この一条の二という規定が挿入をされまして、国民の生活水準とか賃金とかその他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、速やかに年金の改定をすべきというふうな規定も入れていただいたわけでございます。そんなことで、基本的に年金額というものが何をもって基準とすべきかということについて、そういうふうな御指摘もあるわけでございます。  今年度の場合、たまたまそういうことで物価スライドでやらしていただいておりますけれども、五年に一遍の財源の再計算をするようなときにその標準報酬の再評価をする、その際にそういう賃金の要素も当然入れていかなければならないのではないかというふうに思っておるわけでございます。ただ現在、こういう公的年金制度の基本となっております厚生年金も物価スライドというスタイルをとっておることもございまして、今回そういうことで〇・一%の改定をお願いした、こういうことでございます。
  196. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 これはぜひそういう方向で努力もしていただきたいし、実現もしていただきたいと思うのであります。御要望申し上げておきます。  老後の所得保障という観点からいたしますと、年金と恩給というものについては同じような性格を持つものであるというふうにも考えられます。今回は、恩給につきましては一・二五%の引き上げがなされると聞いているわけでございますが、年金との間にこういうふうに格差を生じているというのはどういうわけなのか、これをお伺いいたしたいと思いますし、同時にまた、今後このような格差は当然解消していかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございますが、この点につきましてもあわせてお答えをいただきたいと思います。
  197. 川村恒明

    ○川村政府委員 確かに、今回の改定に当たりまして、六十三年度の恩給の改定は一・二五%ということで進められているわけでございます。この恩給と年金の格差の問題というのも一つ問題のあるところだというふうに私ども承知しておりますけれども、あえて申し上げれば、恩給という制度は年金とは基本的な性格が違う。つまり恩給というのは基本的に国家補償的な性格でございまして、もちろん、当時恩給制度があったときも、いわゆる組合員に当たる職員は恩給納付金というような形で若干の掛金に相当するお金は払っておりましたが、基本的にはこれは雇用主である国が恩恵的に考える、国家補償として与えるという性格のものだという位置づけで参ったわけでございます。それに対して年金制度というのは、御案内のとおり、これは雇用主と本人がお互いに折半でお金を出し合って、それで年金数理でもってこれを長期的な視野のもとに運用していく、こういうことでございます。そういういわゆる保険制度という仕組みをとっておるということもございまして、その国家補償的なものとそういういわゆる保険制度というものはどうしても一緒にするのは困難ではなかろうかというふうに、あえて申し上げればそういうことになろうかと思います。  それから、もう一つ申し上げますと、恩給というのはもう既に過去の制度でございまして、対象となるのは、これから新たに恩給の受給者というのができるわけじゃございません、すべて過去に、恩給の既裁定者と我々申しておりますけれども、そういう方でございます。現在まだ二百万人ほどおられますけれども、そういう過去の制度だということと、それから恩給の受給者というのはほとんどが、二百万人の中で百九十七万人がいわゆる軍人でございます。いわゆる軍人恩給の対象になる方でございまして、もちろんそれ以外に若干文官恩給の対象になる方もございますけれども、軍人という極めて特殊な職務で御苦労された方やその遺族であって、しかも大体皆さん非常に高齢だというようなことがございまして、そんな事情がございますので、一般的な公的年金制度とこれをにわかに一緒にするのはどうかというような、そういう議論があるところでございます。  ただ、これから全体的な流れの中で公的年金制度というものを老後の所得保障として位置づけていくということから考えれば、こういうふうな形で毎年格差があるということはいかがかというようなこともございます。やはりこれからの七十年に向けての一元化の過程で、これもしかるべき対応をしなければならない問題かというふうに考えているところでございます。
  198. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 いろいろ御説明あったとおりのことは承知の上で、老後の所得保障という観点からのお尋ねをしているわけで、その点については、お考えとしてはほぼ同じ立場に立たれるようにも御答弁でお聞きをいたしました。そういう方向で今後はぜひ進めていただきたいというふうに、これも御要望を申し上げておきます。  次に、年金額の改定についてお尋ねをいたします。  私学共済法第ニ十五条で準用する国公共済法第七十二条の二によりますと、物価の上昇率が五%を超える変動があった場合に、その上昇率に応じまして自動的に年金の額が改定されるというふうになっているわけでございますが、これは物価が五%以上アップしなければ年金の改定はしないという趣旨であるといたしますと、これはちょっと問題があるのではないかと思います。年金を受給されていらっしゃる皆さん方の生活を守るという立場からいたしますと、少なくとも消費者物価が上昇した場合は速やかにこれに連動した形で年金額が改定される、そういう方向で制度上の措置をとるのが大切なことではないかというふうに私は思うわけでございますが、この点についてお伺いをいたします。
  199. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいまの自動スライド条項の問題でございますけれども制度改正によりまして五%を超える増減があった場合にこれを自動的に改定をする、それでは五%に満たない増減があったときは変えないのか、こういうことでございますけれども、これは制度趣旨としては、五%を超えれば、その際に、超えるというのは単年度という意味でございませんで、ともかくある一定の改定をしたときから二年でも三年でもあるいは一年以内でも、五%を超えれば動かすという趣旨規定でございます。ですから、ある年度で物価が三%上がった、その次の年度で二%上がったけれども三%、二%だから上げないということではないわけでございます。ただ規定趣旨がそういうことでございますから、物価変動が五%に達するまではこの規定は動かないということでございます。そうしますと、最近のように物価の変動がそれほど大きくなく安定しているときに五%に達するまでは上げないよということになりますと非常に長い期間がかかる。その閏年金受給者は、物価は少しずつでも上がっているのに年金の方は改定しないということになる。そのためにこうやって特別の法律を制定して改定をお願いする、こういうことになるわけでございます。  ですから、そういう年金受給者の方の生活は日々営まれているわけでございますから、物価変動が少しでもあったときに、五%になるまでは上げないよということではなくて、そのときどきに応じた弾力的な運用ということも考えなければいけないのではないか、それは御指摘のとおりだと思っております。ただ、現在の法律規定がそういうことで、五%に達するまではともかくためておいて、五%を超えたときにまとめてやるという方式になっておりますから、これからの制度改正の議論の中で、御指摘のような点も含めてそういう時勢に応じた弾力的な運用措置というものもひとつ検討していかなければならないのではないか。ただ、これは法律改正という事項にもなります。そういうことにつきましてまたお願いをするときもあろうかと思っておるわけでございます。
  200. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 お願いするときもあろうかとか、余り遠慮したことではなくて、私はむしろこの問題については、今御答弁の中にもありましたように他の制度との関係があるということは重々わかりますけれども、ひとつ文部省として関係省庁にも積極的に働きかけてぜひ実現に努めてほしいと思います。重ねてお答えをいただければと思います。
  201. 川村恒明

    ○川村政府委員 御指摘のように他の制度との関係、いろいろなこともございます。この制度自体を国会での御審議で決めていただいたということもございますけれども、ただいま御指摘の趣旨を体しまして、なお十分に検討させていただきたいというふうに存じております。
  202. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 我々も立法府の立場でこれは強力に推し進めていきたい、こう思います。ひとつ格段の努力を御要望申し上げておきます。  次に、私学共済の経営状況についてお尋ねをいたしたいと思います。  私学共済は他の制度に比較いたしまして経営状態が比較的良好であるというふうにもお聞きはしておりますけれども、現在短期経理、長期経理の状況は一体どういうふうになっておるのか。また、特に長期給付についてはどのような将来見通しを持っておられるのか。お尋ねをいたしたいと思います。
  203. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済の行っております事業、短期経理、長期経理の収支の状況でございます。  まず医療制度、その医療給付を行っております短期給付でございますけれども、短期給付につきましては、従前やや黒字基調で参ったわけでございますが、昭和六十一生度に老健法の改正というふうなことがございまして、六十一年度の決算ではこれが二億六千四百万程度の赤字というようなことになってきているところでございます。  それから、年金給付の方の長期給付の状況でございますけれども、長期給付の方は、昭和六十一年度の決算でございますと、収入が二千七十五億でございます。それに対して支出が九百三十八億ということでございまして、収支差が千百三十七億あるわけでございます。この収支差はもちろん将来の年金給付の財源として積み立てていくということになるわけでございます。こういう形で、私学共済は年々長期給付の財源を積立金として保有しているわけでございますけれども、二十九年に発足以来これまでの積立金の累計は約一兆一千五百四十四億円、一兆円を超える保有資産を持っておるというようなことでございます。  そういうふうに保有資金はあるわけでございますけれども、将来の収支の見通しについてお尋ねがございましたが、これからの将来を推計いたしますと、組合員数自体はそれほどふえることが見込まれない一方、年金受給者がこれから急激にふえていくというふうなことが考えられるわけでございまして、六十一年十二月に財源率の再計算をいたしました際にその長期の見通しをやったわけでございます。そのときに前提として、毎年のベースアップが五%ある、それから資産の運用利回りが七%というようなことで計算をする、それで将来の推計をいたしますと、現在保険料率は干分の百二という率でございますけれども、仮にこの現在の率を据え置いたままで今申し上げましたような前提でやっていきますと、昭和八十三年度にはもう単年度収支が赤字になる。さらにそれから十年たって昭和九十三年には、ただいま申し上げましたような形で保有してまいりました積立金も全部食いつぶしてしまうということになるわけでございます。つまり、現在のままの保険料率で参りますれば九十三年には完全に破産をするということでございます。  そこで、仮に保険料率を引き上げさせていただく、五年ごとに千分の十五、十五パーミルぐらい引き上げていくという形にすればどうなるかということでございますが、そういう計算をしますれば、昭和百年ごろに至って長期経理の運用は安定をする。ただ、安定はいたしますけれども、そのときの掛金率は千分の二百二十二ということで大変高い掛金になるということでございまして、いずれにしても長期のこれからの見通しというものは必ずしも明るいものではないということでございます。
  204. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 短期経理の問題につきましては、先ほども嶋崎委員からもたしか御指摘があって論議が交わされておったように思いますが、老人保健法の一部改正によりまして拠出金が急増したということで、最近は極めて困難な状況になりつつあるというようなことでございますけれども昭和六十三年度以降はどういうふうに対処をしていくつもりなのか、お伺いをしたいと思います。  今もちょっとお答えの中に掛金率のことがございました。これは上げれば簡単に済むということかもわかりませんが、これは安易にそういった手を打つべきではなかろうというふうにも思うわけです。私は、老健法のあり方を含めた医療制度全体の中でこの問題は対応を考えなければならない大切な問題である、こういうふうに思うわけでございますが、この点についてお伺いをいたします。
  205. 川村恒明

    ○川村政府委員 短期経理の状況でございますけれども、先ほど申し上げましたように最近非常に悪化をしている。この制度ができて以来ほとんど黒字基調で参りましたけれども昭和六十一年度に単年度の収支で赤字が出た、こういうことでございます。ただ、従来黒字で参りましたために、その間の累積の積立金というのが現在ございます。昭和六十一年度で申し上げますと、単年度の収支が、収入が八百十九億に対して支出が八百二十二億で、差し引き二億四千七百万の赤字になっているわけでございますけれども、その当時累積利益金が二百六十億ほどございましたから、その二百六十億ほどの累積利益金の中でこの収支差をのみ込んでいった、こういうことでございます。ただ、六十二年度の決算はまだ出ておりませんけれども、六十二年度に多分その収支差は前年よりもかなりふえまして約六十億くらいの赤字になるのじゃないか、こういうことでございます。仮に六十億赤字が出ましても、ただいま申し上げましたように二百五十億ほどの累積利益金がございますから何とかしのいでいけるということで、しばらくはこの累積利益金を食いつぶしながら対応していくということではないかというふうに思うわけでございます。  こういうふうに短期経理が非常に苦しい状況になっておりますのは、申し上げるまでもございませんけれどもいわゆる老健法の問題でございまして、老健法の改正によっていわゆる積算の方法、従来の医療の実績率をどんどん加入者按分率という方法に切りかえが進められているわけでございます。その六十一年度の制度改正で、従来の加入者按分率が四四・七%だったものが八〇%になった。これが将来一〇〇%にまでいくわけでございますから非常に苦しい状況になるというのは御指摘のとおりでございます。でございますから、これから先の見通しをどうするのかということでございますけれども、短期経理自身の立場からいえば、累積の利益金を食いつぶした時点で掛金を引き上げるという極めて単純な作業になるわけでございます。  ただ、こういうふうにふえてくるということは、今御指摘がございましたように現在の医療制度自体の問題があるのだろうと思います。つまり、二十兆円に近い医療費自体を何とか抑制する方法はないかとか、あるいはそれだけの国民医療費というものがかかるとするならばそれをだれが、どういう形で負担をするのかというようなことでございます。それは特に老健法に象徴されますように、主たる対象となる方はやはり七十歳以上の老齢の方でございまして、それが医療費の多くの部分を占める。七十歳以上の方は、多くの場合収入はなくて支出だけということでございますから、そうするとやはり世代間の助け合いも考えていかなければならない。ただ私学共済の立場で申しますと、私学共済自体は現在のところそれほど多くの対象者を抱えているわけではございません。制度としては非常に若い制度でございます。その辺の全体の様子というものを考えながら進めていかなければならないことだと思っております。  したがって、ただいま御指摘がございましたように、いたずらに掛金の引き上げをするというのはとるべきではない、財政の中であるいはそういう医療費の動向の全体を見ながら適切な対応というものを考えていきたいというふうに私どもも思っているところでございます。
  206. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 長期給付について、現在国から補助が行われているわけでございますが、そのほかにも、私学振興財団とそれから都道府県からも補助が出されておるという現状があります。この内容についてお尋ねをいたしたいと思います。
  207. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合につきましては、ただいま御指摘のように、国の補助のほかに私学振興財団と都道府県からの補助がなされているわけでございます。  私学振興財団の助成措置でございますけれども、これは大きく分けて二つの助成がございます。一つは、これは私学振興財団の経緯からして、昭和二十九年にこの制度ができましたが、それ以前に私学恩給財団という古い制度がございました。そういうものがございましたし、それから私学共済組合が発足した当時においても、その長期給付に対して、長期給付方式では嫌で、従来の恩給財団方式の方を選択するというふうな方もあった、もろもろのそういう昭和三十六年以前の古い方、昭和三十六年十二月以前に退職された方につきましても年金の改定というのは当然あるわけでございますけれども、その年金の改定によって増加した額というのがあるわけでございます。これをだれか負担をするかということで、これがただいまの私学振興財団からの助成ということになっております。つまり、昭和三十六年十二月以前に退職された方の年金の改定に伴う増加分を見ていただく、その全額というわけにもいかない、ここは国と私学振興財団で折半をしようということで、私学振興財団の方が百分の八十二、残りの百分の十八を国が負担をするということでございます。ですから、そういう分についての助成が一つございます。それからもう一つは、長期給付にかかわる掛金で、いろいろな形で過去の経緯を引っ張ってまいりまして財源が不足している、私ども整理資源と申しておりますけれども、その長期給付の中でのもろもろの不足した資源の二分の一に相当する額ということで、この二種類のものを私学振興財団から助成をするということになっております。現在、一番目に申し上げました三十六年以前の恩給財団の年金などの分で約二億九千万円、それから二番目に申し上げました整理資源の分で七千五百万ほどでございまして、合計で三億六千九百万ほどのものを私学振興財団から組合の方に助成をしている、こういうことでございます。  それから都道府県補助でございますけれども、これはこの制度ができたときの沿革にさかのぼるわけでございますけれども、二十九年当時、私学というものはやはり我が国の公教育に対して極めて大きな役割を果たしている、しかも私学というものは単に国の教育制度一般のみならず地域における教育の向上にも資しているということがございまして、都道府県から私学共済組合に補助することができるという規定を議員立法でこれを設けていただいたということがあって、そういうことがやられているわけでございます。現実に申し上げますと、二十九年以来その長期掛金の掛金率の千分の八相当というものを助成をする。この千分の八を半分ずつ割りまして、千分の四を学校法人分、千分の四を組合員分ということでございますから、学校法人も組合員の方も、両万ともこの都道府県の補助のおかげでその分、掛金率が下がっている、こういうことでございます。この補助金が、六十一年度の補助金の決算額で見ますと、全国合わせまして五十八億九千百万円でございます。その前年度が五十七億六千万ほどでございましたから、対前年度一億三千万の増ということで、これは着実に増加をしている、こういう状況でございます。
  208. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 そこで、都道府県からの補助金は全体としては増加してきているというふうにも聞いているのですけれども、都道府県によりましては、大学や高等専門学校に対しては補助していなかったり、また減額しているというふうなところもあるというふうにも聞いております。私の出身地の福岡では組合員に対する補助のみで学校法人に対しては補助していないようでございますけれども、この都道府県からの補助金のことについては文部省としてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、承っておきたいと思います。
  209. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま申し上げましたように、法律上は都道府県がこれを補助することができるということでございまして、多くの都道府県がやっていただいているわけでございます。  昭和六十一年度の実績で申し上げますと、全国で二十四の都道府県がすべての学校、つまり大学も高校以下もすべて含めて、私立学校に対してただいま申し上げました補助が行われているわけでございますけれども、それ以外の県につきましては、大体高校以下の学校については補助しているわけですけれども、特に大学、短大、高専について補助していない。ただいま御指摘の福岡県の例が、手元に資料がございませんが多分そういうことだろうと思いますけれども、県によって大学にはしないよ、高校以下にするよ、あるいは大学レベルにするにしても組合員分の補助はするけれども学校法人分は面倒見ないよ、こういうような対応があるわけでございます。  なぜこういうことになるかということでございますけれども、結局基本的には都道府県の財政事情ということに尽きるのだろうと思いますが、現在、交付税におきまして積算がない、つまり高校以下につきましては交付税におきまして財源措置がなされているわけでございますから、交付税の財源措置という裏打ちがあるものですから、高校以下の学校に対する助成はほとんど行われているわけですけれども、大学とか短大については財源措置がなされていないわけでございますね。財源措置がないということがございますと、都道府県の財政事情もございまして、これはそっちの方は少し減らそうかとか、するのをやめようか、こんなことになるわけでございます。  私どもも、せっかく国会での修正において補助することができると入れていただいた趣旨から見て、そういうことではぐあいが悪いので、ぜひ大学の方にも千分の八相当のものを出していただきたいということで、かねてそういう機会のあるごとに都道府県の庶務担当課長会議その他で要請しているわけでございますし、今後ともそういうことで、この法律趣旨に即した助成が行われるように指導してまいりたいと思っております。
  210. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 次に、国庫補助について行革関連特例法によって削減をされているわけでございますが、私学共済年金に対する国庫補助金の削減額はその利子分を含めて現在どの程度の額になっているのか、お尋ねいたしたいと思います。
  211. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済に対します国庫補助の縮減の問題でございますけれども、いわゆる行革関連の特例法におきまして、これは私学共済だけでございませんで、厚生年金、その他の共済年金すべて横並びでございますけれども、その補助の一部を縮減する、具体的に言えば四分の一カットするということでございまして、昭和五十七年から六十年までそのカットが行われました。六十一生度以降はもちろんこれはもとに戻っているわけでございますけれども、その四年間に削減をされてしまったという額がございます。その四年間、五十七年が十五億、五十八年が十八億、五十九年が二十億、六十年が二十三億、これだけになりまして、累計いたしますと七十六億円でございます。  その七十六億円でございますけれども、もしこの補助金が縮減されていなければ当然その分の運用ができたわけでございますから、その間の運用の収入というものも見込めるわけでございまして、これを仮にこの私学共済の予定の運用利回り五・五%でやりますと十八億ぐらいになるわけでございます。でございますから、この縮減の額はということになりますと、その本体だけで七十六億、利子が十八億、合計九十四億円が縮減された形そのままになっている、こういうことでございます。
  212. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 大変な額になっておると思うのですが、これは国全体の考え方の中からも判断しなければならぬ問題でございますので、私は最後に大臣にお尋ねをいたしたいと思っておりますが、この私学共済の法律改正は大体毎年行われておりまして、そのたびに我が党の議員なり私もいろいろと御質問申し上げてきておりまして、論議は大体尽くされてきているようにも思いますし、今お答えのありました国庫補助の削減というものは、長期的な年金財政の安定ということを考えました場合に、このまま放置しておいてよいという問題ではないと思うわけです。速やかに国において回復の措置を講ずべきであると思うわけでございますけれども、この点につきまして大臣決意をお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  213. 中島源太郎

    中島国務大臣 御質問の、行革関連特例によりまして四分の一縮減されております件でありますが、これは今お答えしましたように五十七年から六十年まで、この特例期間が過ぎましたら速やかにもとに繰り入れる、利回りをつけてもとに繰り入れていただくことになっておるわけでありまして、これは速やかにという言葉がついておりますので、速やかに繰り入れが実現いたしますように努力をいたしたいと思います。
  214. 鍛冶清

    ○鍛冶委員 では、質問を終わります。     〔岸田委員長代理退席、北川(正)委員長代理着席〕
  215. 北川正恭

    ○北川(正)委員長 代理 林保夫君。
  216. 林保夫

    ○林(保)委員 中島文部大臣初め皆様、御苦労さまでございます。  御提案になっております私立学校教職員共済組合法の年金額の改定の特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、二、三御質問申し上げたいと思います。  詳しい問題に入ります前に、これはたしか発足が二十九年と聞いておりますが、私学共済事業の経緯及び現段階の状況はどうなっておりますか、成熟度の問題を含めまして、事務局の方から御説明いただきたいと思います。
  217. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合の沿革等のお尋ねでございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、私学共済組合は昭和二十九年に設けられた制度でございます。その前身としては私学恩給財団というふうな制度がございまして、若干の経緯を経て現在の姿になったわけでございます。  その趣旨といたしましては、当時、教育基本法第六条に基づいて、そこで教職員の待遇というものは適正を期されなければならない、教員というものは全体の奉仕者として極めて重要な職責を有しているわけだから、それにふさわしい処遇の安定が図られなければならないというようなことがございまして、そこで当時、現在もそうかと思いますけれども、特に戦後の私学の状態というものは経営的にも大変に不安定な時代がございましたから、特に私学の教職員の処遇の安定を図るということが重要だということで、こういう制度が設けられたというふうに承知をしているわけでございます。  そこで、二十九年に発足をし、それから昭和三十六年には制度改正があって、全体の公的な年金制度あるいは公的な医療制度の一環としてこれが組み込まれて現在に来ておるわけでございます。そういう経過がございますから、必ずしも全部の私学がこれに加入しているということでもない。二十九年の発足当時に、従来もう既に厚生年金に入っちゃったからそっちの方がいいというようなことを言ったところもございますし、それから、さらにその後四十年代の終わりにもう一度再選択の機会がございましたけれども、そのときにも入らないというところもあったりして、結局三十数校が私学では入っておりませんけれども、全国にございます一万三千の私学のほとんどが現在この制度に加入をしていただいておる。もちろん新しくできるものはすべて強制的に共済組合に入っていただく、こういうことでございます。  そんなことで、年々組合員の数もふえてまいりまして、現在組合員数が三十六万五千人でございます。これは組合員数でございますから、被扶養者の数もそれくらいあるということになります。  それだけの組合員を擁しまして、いわゆる長期給付事業、つまり私学共済年金に関する事業ということが一つ。それからいわゆる短期給付事業と申しておりますけれども、これは主として医療費の給付でございます。医療費のほかに若干の、例えば御不幸があった場合の弔慰金を差し上げるとかいうのもこの短期給付事業の一環でございます。そういう短期給付事業で申し上げますれば、年間大体八百億ぐらい、八百二十二億程度の支出をしておる、こういうことでございます。それからもう一つ、福祉事業という制度がございまして、これはいわゆる宿泊施設、私学共済組合の場合にはガーデンパレスと称します宿泊施設でありますとか、その他の保養所というようなものを経営するとか、あるいは直営病院として下谷病院と申しておりますけれども、病院を一つ持ってこれを経営する。あるいは組合員が人間ドックに入るときにその人間ドックに要する経費を補助するとか、それからまた貯金事業というのをやっておりまして、組合員が例えば住宅を建てたいというときに、その長期の経理の積立金から資金を運用いたしまして、組合員にこれを貸し付けるというふうな事業をやっております。このたぐいの事業で、全体の福祉事業の事業規模がやはり同じく八百億円ぐらい、八百三十六億円というようなことでございます。  そういう長期、短期、それから福祉事業という三者の事業の運用でもって、私学の振興に貢献をしているというふうに考えておるところでございます。
  218. 林保夫

    ○林(保)委員 引き続きまして、今回の法改正趣旨につきまして、将来公的年金の一元化問題など多くの問題を抱えておりますが、もちろん今回はそこまで踏み込んでないという判断を私どもしておりますが、それらとの関連につきまして、今回の法改正の意義について事務局の方から御答弁いただきたいと思います。
  219. 川村恒明

    ○川村政府委員 今回法律改正お願いしておりますのは、ただいま申し上げました共済組合の三つの事業の中のいわゆる長期給付、つまり年金の給付事業にかかわる部分でございまして、この年金の額を消費者物価指数に応じて改定いたしたい。つまり、昨年一年間で消費者物価指数が〇・一%改定をしておりますので、年金受給者の立場からいえば、年金の実際的な生活保障ということでいえば、少なくとも物価に応じた年金のスライドというものが必要だということでお願いをしているわけでございます。  この制度の基本の仕組みから申し上げますと、この私学共済法自体では、物価がアップした場合に物価にスライドして年金額は改定をする、ただしそれは五%に達するまでは改定をしないという仕組みになっております。物価の変動が二年でも三年でもかかって五%に達すれば、初めてそれは五%変えるというのが制度の仕組みでございますけれども、そういうことでは年金受給者の生活を守る立場からいえば極めてぐあいが悪い。生活は毎日やっているわけでございますから、そこで特例措置として、五%には達していないけれども、特に物価に応じた年金の改定をお願いしたいということで法律を御提案した、こういうことでございます。  そういうことでございますので、ただいま御指摘になりましたこれから七十年に向けての公的年金の一元化というその大きな流れの中で、特にそれと連動した形でこれをお願いしているということではないということでございます。
  220. 林保夫

    ○林(保)委員 私どもの党といたしましては、もう臨調でも出ております公的年金の一元化をどうしてもやらなければ、日本列島の上に一億二千万人がおって、その公平感を欠くというような面もございまして、かねてより提唱しておるところでございますが、そういう大きな視点を踏まえながら、現状において一体私学共済年金の実態がどうなっておるか、この辺をこれから承りたいと思います。  ちょうだいしております資料の「私立学校教職員共済組合の現況」の中に、先ほど川村審議お答えになりましたように、加入学校数一万三千四十四校、組合員数三十六万五千五百二十人、このように出ております。また、先ほどもお話がございましたように、二十九年の発足当時の加入選択の問題、そしてまたその後、四十八年でございますか、これによる措置そのほかがございまして、これまた現在三十四校が未加入となっておる、こういうことでございますが、二十九年以来の整理の方向及びなぜ加入がされないか、まあ向こうの方が有利だ、厚生年金あるいは健康保険の方がいいというようなこともあると思いますが、文部省はそれをどのように認識されておられるのか。公的年金の一元化に向かっていく場合に、私学は一本にした方がいいのか、あるいはまたこのままでずるずると行って最後にがちゃっと締め切るような形にした方がいいのか、ひとつ実情と率直なお考えを承りたいと思います。
  221. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の私学共済への未加入校の問題でございますけれども、現在加入校が差し上げました資料にございますように一万三千校ほどあって、現在未加入という学校が五十校ございます。正確に申し上げますと、短期、長期両方とも入っていないという学校が三十校、それから短期のみの非加入が十六校、長期のみの非加入が四校、こういう状況でございます。  それで、この制度の発足の経過等から考えれば、つまり私学の教職員の職責の重要性にかんがみ、またその特性に応じた処遇の適正化を図るという観点からすれば、やはりすべての私学にこれに加入をしていただくというのが一番望ましい姿ではないかというふうには思われるわけでございます。ただ、その二十九年の時点におきましても、既にその時点で健保なり厚年に入っておられたというところはそれなりに既得権があるわけでございますから、やはりその既得権は尊重しなければならないということで選択加入になった、こういうことでございます。  それから、昭和四十八年の際も、この法律は修正をしていただいたわけでございますが、そのときに未加入校は加入すべきということで法律上の規定整備をされた。ただ、その際にも、既にその時点で厚生年金なり健康保険に加入をしておられる、現実にそういうことでもう組合員として定着をしているところがございますから、これを例えば学校法人の方で、理事者の方で一方的に私学共済に入るんだとか、あるいは国の方で私立学校は全部入るんだと強制的に加入をさせることはできない。それは直接の、それまでに既に厚生年金なり健康保険で掛金を払っておられる組合員が主体でございますから、やはり組合員の意向を尊重しなければならない。でございますから、四十八年にできるだけこの制度に入るようにということで法律を制定していただいた際も、やはりそれは組合員の過半数が同意をしなければこちらへは入れないということにしたわけでございます。その際に、文部省の方としても、せっかくのこういう議員立法の趣旨でございますし、やはり私学として一体としていくためには入っていただく方が望ましいということで指導はしたわけでございますけれども、それぞれの学校で組合員と相談をする、組合員の過半の同意が得られないということで、結局ただいまも申し上げました学校がその際に加入しないで現在に至った、こういうことでございます。  でございますから、私は先ほど基本的な立場として入っていただく方が望ましいという原則論は申しましたけれども、現実の問題としては、既に今ここへ入っていない学校、私学共済に加入をされていない学校というのは、もうそれぞれ四十年近い期間、厚生年金なり健康保険に加入し、それなりの掛金を払い、制度を運用してこられた、あるいは大きな規模の大学でございますと独自の健保組合を結成し、独自の資産を抱えるというふうに制度として運用が定着しておりますから、これを今の時点に立って何が何でも私学共済に入るべきということはいかがであろうかというふうに思っております。でございますから、そういうような制度の実態で、もちろん今後新設されるであろう私学については当然私学共済組合に入っていただくべきだと思いますけれども、現在加入していない学校をあえてこの時点で入るべきということはいかがであろうかというふうに思っているわけでございまして、現在の形で運用されることが望ましい。  ただ、これから七十年にかけてただいま御指摘がございましたように制度の一元化、制度と申しましょうか年金の一元化ということが図られる中で、そういう問題についても、もう一度それは年金制度あるいは健康保険制度全体の立場から見直しをしなければならないということになることもあろうかというふうに思っているわけでございます。
  222. 林保夫

    ○林(保)委員 文部省のお考えは大体わかりました。  ここに資料をちょうだいして見ておりますと、適用除外校に慶応とか早稲田、明治、法政、立教の大きな学校がずらっと並んでおります。そしてその理由として、一つは「加入により掛金負担が増加する」という点がある。ここらあたりが組合員の皆さんが反対される理由だと思います。それから二番目には「未加入校の健保組合の保養施設」、これは大きな学校だから大変な資産だと思いますが、それらが私学共済に継承されてしまって、持っておるのがなくなってしまうというようなこともあるような資料がここにございますが、まず掛金の負担が私学共済と比べて大体どれくらいになるのか、ラウンドで結構ですけれども。二番目の理由は、またそれはそれなりに大変大きな保有資産の帰属の問題でございまして、これは大きいと思いますが、その辺の感覚についてどのように文部省はお考えになっておられるか、お聞きしたいと思います。
  223. 川村恒明

    ○川村政府委員 掛金率の問題でございますけれども、例えば長期の掛金の場合に、私学共済でございますと本人負担が五二・二五ということでございます。それに対して、厚生年金でございますとこれが六二・〇ということでございますけれども、これはちょっと、それぞれの積算の基礎が違ったりなんかしておりますから一概に高い低いということを比較することは困難ではなかろうか。極めて一般的な形で申し上げれば、むしろ厚生年金の方が掛金率が高いということがございますけれども、例えば共済組合の場合には、標準報酬月額を算定する場合には諸手当も込みであるけれども、公務員の共済の場合は本俸だけであるとか、若干制度の違いがございますから、にわかに比較することは困難ではなかろうかと思います。  それから、第二点の保有資産の問題でございますけれども、これはそれぞれの御指摘のように確かに大きな学校が多い。大きな学校の場合に独自の健康保険組合を結成することはできるわけでございますから、その際に、これまでの過去の長い蓄積の中で資産を持っておられることは当然あるわけでございます。そういう現実的な問題ということもあって、それはその加入をちゅうちょさせた。つまり、四十九年の時点で既にそういう資産の保有状況なんかもあったということじゃなかろうかと思っております。
  224. 林保夫

    ○林(保)委員 次に移りまして、私学共済年金の財政状況に入りたいわけでございます。  まず、ここに資料で標準給与の平均月額二十五万八千五百四十五円、こう出ておりますが、これは公立学校の平均値、そしてまた、一般の民間の給与あるいはまた公務員の一般給与と比較してどのような状況にございますでしょうか。数字があれば数字をちょうだいいたしとうございますし、なければどこよりは高いけれどもどこよりは低い、大体いいところだとか、ちょっと私学は高過ぎるのだということであれば、それなりにお答えを率直に承りたいと思います。
  225. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の私学共済の標準給与月額でございますけれども、御指摘のとおりに私学の場合は二十五万八千五百四十五円、こういうことでございます。これは先ほど御答弁申し上げましたように、私学共済の場合はこの標準給与というときには諸手当込みの額で二十五万八千五百四十五円、こうなっておるわけでございます。それで一方、公立学校共済、公立学校の先生の場合にはこれが本俸だけでやるということでございますので、その積算の基礎は違いますけれども、公立学校の場合はその本俸だけで計算をした平均額でも二十六万八千九百四十六円でございますから私学よりも高い、本俸だけをとっても公立の方が高い、こういうことでございます。厚生年金の場合はこれが二十三万七千二十二円でございますから、厚生年金よりは高いが、公立学校共済よりは低いというのがこの現状でございます。
  226. 林保夫

    ○林(保)委員 それと関連いたしまして、本法第二十二条に標準給与の等級及び月額表というのが出ておりまして、一級から四十四級まで八万円から大体四十七万円までございます。これは大体いつごろに設定されて、私は古いのだとちょっともう実情にそぐわなくなっているのじゃないだろうかという感じもいたしますけれども、その辺の文部省の御判断ですね。今回は改定されないのでございますけれども、もう改定の時期に来ておるとか、いや、これで実は物価そのほか給与も抑えられているからもう十分なんだとか、この辺のところを承っておきたいと思います。
  227. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘になりましたその標準給与と申しますのは、多分この私学共済組合の年金の算定基礎額になる月額ではなかろうかと思います。これは本人が実際に出るその給与を一定の算式でもって標準的な額にこれを読みかえる、その額を基礎にして、それに対して千分の何がしという率を掛けたり月数を掛けたりすることでございます。その計算の基礎になる額ということでございますけれども、それは昭和六十一年十二月に、いわゆる財源率の再計算と申しておりますけれども、この年金制度が今後ともどういう形で運用できるか、掛金率がどの程度が適当かということを算定する際にその基礎として決めた、こういうことでございます。これ自体は毎年改定をするということでございませんで、財源率の再計算をする、あるいはその他の制度改正があるというときにその改定を行う必要があろうかというふうに思っております。  なお、私学共済はその財源率の再計算というのは大体五年に一遍、これは各共済共通ですけれども、五年に一遍やっております。前回が六十一年の十二月でございましたから、次回は六十六年にはその財源率の再計算をしなければならないのではなかろうかというふうに思っているところでございます。
  228. 林保夫

    ○林(保)委員 そうすると、今急にどうこうということはないようですが、上限が高過ぎるのか低過ぎるのか、この辺の感覚はどうなのでございましょうか。これよりもっと給料をもらっているとすればここに圧縮されているという問題があると思いますし、一般に給与が低いとすると四十七万という数字は大き過ぎるということになるのでしょうか。どんな関係になっているのでしょうか。その一点だけ簡単に。
  229. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま申し上げましたように、この標準給与というのはそれぞれの年金の額の算定基礎でございまして、これ自体は各共済組合、それから年金を含めて共通でございます。ですから、第四十四級で四十七万というのが頭打ちというのは各共済共通の制度でございます。
  230. 林保夫

    ○林(保)委員 これから年金問題を考えていきます場合に、もう少し上限、下限について工夫をしていくとか、あるいはもう少し段階を割るとか、あるいはいっそ整理して短くするとかという課題がありますから、そういう質問をしたわけでございますが、横並び、こういうことで了解してよろしゅうございますね。  それでは事業の内容に入りまして、いわゆる長期給付の問題について、大体どんな財政状況になっておるか、まずその辺から、ここ数年の傾向及び見通しを御説明いただきたいと思います。時間がございませんので、少しはしょってお願い申し上げます。
  231. 川村恒明

    ○川村政府委員 長期経理の収支状況でございますけれども昭和六十一年度で収入が二千七十五億、それから支出が九百三十八億で、収支差が千百三十七億でございます。こういうふうに毎年収支差が出てまいっておりますので、これは順次保有資産として長期経理に積み立てていく、積み立ててそれで将来の年金支出に備えるわけでございますが、現在その積立金が一兆一千五百四十四億ほどに達しているということでございます。
  232. 林保夫

    ○林(保)委員 かなり余裕金が出ておるように思いますが、しかし前から比べますと、これもまた少し下がっているのじゃないだろうか。長期的には大体どういう見通しになりますでしょうか。
  233. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合はその特色としていわゆる成熟度が低い、つまり組合が非常に若い。組合員が年々ふえていってその人たちがどんどん掛金を払う。一方、退職をして年金をもらう方がまだ非常に少ないわけでございます。ですから掛金の方、払う万が多くてもらう方が少ないということでずっと参っておりますから、トレンドでいえば年々保有資産はふえる一方でございます。ちなみに、ただいま保有資産が昭和六十一年度で一兆一千億あると申し上げましたけれども、ちょうど十年前の昭和五十一年では保有資産は二千億でございました。二千億がこの十年間にちょうど五倍ほどになった、こういう状況でございます。
  234. 林保夫

    ○林(保)委員 もう少し聞きたいのですけれども、時間がございませんので短期給付の問題で、これは法の二十条にありますが、十四項目ございますね。医療給付、それから家族療養費とかあるいは最後の十四の災実見舞金とかありますが、この最近の支出の増減の傾向を大体のところをお伝えいただきたいと思います。
  235. 川村恒明

    ○川村政府委員 短期給付でございますけれども、短期給付は収入の方は年々ふえておりまして、昭和六十一年度の決算額で八百十九億でございます。収入の方はふえておりますが、同時に支出の方がまた大変ふえておりまして、六十一年度でございますと支出が八百二十二億でございますから、差し引き二億四千七百万の赤字ということでございます。これはトレンドといたしましてはここ十数年以上ずっと黒字基調で参りまして、毎年大体二十億から三十億ぐらいの黒字があった。これはまた累積の利益額として積み立ててまいったわけですけれども昭和六十一年度以降、老健法の影響等もございまして急速にこの赤字がふえていくであろうというふうに見込まれているところでございます。
  236. 林保夫

    ○林(保)委員 ただいま御質問申し上げたのは、そういう傾向はわかりましたけれども、なおこの中でどこが一番ふえて、どういうところが減っているかというのは大体どんな感じになっておりますでしょうか、十四項目ございますけれども
  237. 川村恒明

    ○川村政府委員 この短期給付というのは保健給付、災害給付、休業給付とございまして、保健給付というのは本人なり家族なりが病気になったときに療養の給付をする、つまり医療費を見るということでございますし、災害給付というのは災害に遭ったときの弔慰金等の問題、あるいは休業給付というのは病気になったときの傷病手当とか出産のときの出産手当とかそういう経費でございます。  支出の万で増加要因として大きいのはただいま申し上げました療養の給付で、国民の医療費全体が上がっておりますからこの部分の伸びが多いわけでございますが、それは傾向としては大したことはないわけで、一番大きいのは老人保健法、いわゆる老健法に基づく拠出金、この制度昭和五十七年にできまして、これは平たく言えば七十歳以上のお年寄りの医療費の面倒を国民みんなで見ようということでございます。つまり、各組合が組合員の頭数に応じて七十歳以上の方の医療費の所要額を支出するという制度昭和五十七年からできました。その制度でだんだんと各共済組合に対する負担の適正化を図ってまいるというようなことがございまして、それでこの老健法に対する支出が非常にふえている、これが収支を悪化させている最大の要因でございます。
  238. 林保夫

    ○林(保)委員 それからもう一つ、簡単に、三番目に、先ほど審議官おっしゃられました福祉事業の現況、悪くないように聞きましたけれども、これからの見通しなり、剰余金でもって何か大きなことをやるとかそういうことがあるのかないのか、もうこの辺で打ちどめにして少し戦線整理した方が一元化に向かっていいのかという点と、時間がございませんので一緒に国庫補助金、今年度以降どれくらいあったらいいのか、あるいはまた都道府県補助金、あるいは私学振興財団の助成金、これらの見通し、少しロングレンジでこうなるのだという見通しを御説明いただきたいと思います。
  239. 川村恒明

    ○川村政府委員 まず福祉事業の関係でございますけれども、福祉事業としては、いわゆる保健事業で先ほど申し上げました人間ドックの関係とか、医療施設として病院の経営でございますとか、それからガーデンパレス等の宿泊施設の経営あるいは貯金事業、貸付事業とございます。  この辺の事業としましては、例えば宿泊事業で申し上げますれば、全国七地区に一応拠点となるガーデンパレスという宿泊施設整備し終わったということもございまして、これは特にこれからふやしていくというようなことはなかろうと思っております。それから貯金事業でございますけれども、これは利用者の数も多いし、これからこの方面にはできるだけ力を入れていった方がいいのではなかろうか。貸付事業は、現在市中金利がこういう状態で非常に低くなっておりますので、現在のところは利用者はむしろ減っている状況でございます。ただこれは、市中金利がまたどうなるかわかりませんけれども、仮に金利がまた上向くようなことになればこちらの貸付事業の方の利用者もふえるか、いずれにしても、私どもとしては、そういう借りたい希望者があるときにできるだけその需要に応ずるようにしておく、それだけの資金の蓄えをしておくということが必要ではなかろうかと思っております。  それからもう一つは、これからの国庫補助なり都道府県補助なり私学振興財団の助成の問題でございますけれども、結局その補助の一番大きな国庫補助につきましては、基礎年金の拠出分の三分の一を負担するということでございます。これは、今後国庫補助自体はふえる、つまり基礎年金への拠出分は年々ふえていくわけでございますから、法定上その三分の一を負担する、国庫が補助をするわけでございますから、国庫補助はふえるけれども、基礎年金への拠出額もふえていくということでございます。これは結局、これから年金制度全体が成熟していく中で、別の言葉で申し上げれば、高齢化社会が進む中で年金受給者が非常にふえてまいりますから、現在の形のままでこの制度が運用できるかというのは大きな問題、やはりそこで年金制度の一元化という一つの問題が出てくるのであろうかというふうに思っております。  それから、都道府県補助につきましては、これは毎年微増でございますけれども、都道府県の方も頑張っていただいて補助がふえておるわけでございますから、私学振興の重要性という観点から都道府県においても引き続きこの補助をふやしていただければというふうに思っておるわけでございます。  それから、私学振興財団の助成と申しますのは、先ほどちょっと申し上げましたけれども昭和三十六年以前に退職された方の年金が改定された増加分を見るといういわば義務的な経費に充当されますので、年金の改定がある場合には、今後とも私学振興財団からその分の補助をいただく必要があろうかというふうに思っておるわけでございます。
  240. 林保夫

    ○林(保)委員 少し視点を変えまして、最後の質問になろうかと思いますが、年金の支給開始年齢が六十歳から六十五歳になる。高齢・長寿社会を迎えまして、まだ立派な経験を持った貴重な人材が無にされる心配もございます。したがいまして、これをどのように活用していくか。私学ばかりでなくて教育全体の問題、生涯学習としてもそういう視点が必要だろうと思います。長年の経験を残させるということ、そしてまた後進の指導といった点もあるかと思いますので、この点につきましてどういうアイデアがありますか。加戸局長、ひとつお知らせいただきたいと思います。
  241. 加戸守行

    加戸政府委員 学校で長年勤務されて退職されました方、それなりのすばらしい能力をお持ちの方々でもございますし、私ども、例えば今一つの方法としましては、現在初任者研修の試行ということを行っておりますけれども、この中におきましても、いわゆる年間七十日程度の校内研修に従事いたします指導教員につきましては、当該学校の教頭または教諭、さらには退職された教員を非常勤講師として活用するという三通りの方法を考えておりまして、ただいま提案いたしております初任者研修の創設に係ります教育公務員特例法案の中でもそういった規定を設けようとしているわけでございますが、現在試行段階におきまして、地域の実情あるいは学校の実情によりまして校内で指導にふさわしいベテランの教員が得られない場合には、退職教員をもって指導教員としている事例が、現在試行いたしております三十六県市の中でも、これはブロックによって傾向が違いますが、十五県市において九十四人の退職教員が活用されているわけでございます。またそのほかに、指導教員に充てられました後補充として退職教員を活用する事例もあるわけでございまして、そういった意味で、初任者研修の試行でそうなっておりますし、本格実施になりますと対象校が一遍に七倍以上に広がるわけでございますから、その学校や地域によりましては、校内で十分な指導教員が得られない場合にはそういった退職教員を活用するという事例はさらに拡大していくのではないかということを予定しているわけでございます。それはある意味では現在の教育界におきます予備軍という、言葉は悪うございますけれども、退職された教員の活用に大きくつながるという考え方で、もともと退職教員の活用を前提としてスタートさせた制度でございませんけれども、結果的にはそうなる傾向というものを私どもは期待しているわけでございます。そのほかに、退職された教員が今申し上げ教育界以外でもその道を生かして老後の第二の人生を歩まれるいろいろな方途につきましても、文部省としても積極的に考えていかなければならない時代に来ていると私どもは思っております。
  242. 林保夫

    ○林(保)委員 最後に大臣にお聞きしたいのでございますけれども、二点ございます。  一つは、大臣の私学振興にかける熱意といいますか、これは日本の社会的、国家的要請にも私学がこたえておるという実情を踏まえまして、さらに一層どのようなお考えでおやりになるのかという点が一点。  ただいまお話しいただきました退職教職員の経験、能力を生かす、これは本人にとっては年金をもらうよりももっと生きがいに関係する問題でございますので、多々ますます弁ずるということもございまして、積極的な対策を文部省がこれからとっていただきたい、この二つを私は要望いたしますので、大臣もひとつおこたえいただきますように御答弁いただきまして、本日の質問を終わりたいと思います。
  243. 中島源太郎

    中島国務大臣 私学に関します重要さと申しますものは、当初御指摘いただきましたときにお答えをいたしたとおりでございます。まさに人づくりでございますから、私学で教鞭をとられる教職員の方々が安んじてその職責を全うしていただくというために、福利厚生制度を完備することが必要でございまして、今御提案を申し上げておりますこの私学共済の制度も、まさにそれを目指しておるわけでございます。  また、先生が先ほどおっしゃったように、その長期的な安定を目指して一元化を目指すべきではないかという御指摘がございました。まさにこれは、五十九年の二月の閣議決定でも、七十年を目途といたしてこの制度全体の一元化をすべきである、こういう閣議決定がされておりますし、また、昨年の関係閣僚懇談会におきましてもそれが再確認され、さらにその途中におきましては、財政再計算年度であります六十四年に地ならしすべきものは地ならしをしつつ検討して、七十年一元化に、こういうことでございますので、それを目指していくこともこれまた年金制度安定のために資するものであろうと思います。  最後に、先生御指摘の退職教員の方々は、長い間教鞭をとられまして、まさに円熟期に入りつつ職を退かれた方も多いわけでございますので、原則的には教頭あるいは教諭の中から指導教員を充てるということではございますけれども、一度退職された方々を非常勤講師としてその任に当たっていただくということは、生きがいもありますし、また先輩のかけがえのない知識と経験を後輩に与えていただくという面でも、両々相まって大変貴重な御提言だと思います。現在も数十名、百名近く退職教員の方々が指導に当たっていただいているそうでございますが、今後先生の意を体しまして、これをさらに広げていかれるように切望もし、努力をいたしたいと思います。
  244. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。特に大臣が年金一元化の問題に触れていただきまして、これはただ単に立場の問題ではなくて、国家、民族の老後の問題に関するこれからの一番大きな課題だと思いますので、単に文部省とか厚生省だけに限らず、聡知を絞って案をつくり上げる、こういうことで情熱を傾けて、ともどもにやりますことをひとつこの際申し上げまして、感謝して質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
  245. 北川正恭

    ○北川(正)委員長 代理 石井郁子君。
  246. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私学共済法改正案審議に当たりまして、二、三の問題点に絞って質問をいたします。  まず、私学共済の運営姿勢についてお伺いしたいと思います。およそ教育の場には民主主義は貫かなければならないというふうに私は思いますし、憲法と教育基本法の精神に立って教育を進めるというのはそういうことであるというふうに理解するわけですが、まず初めに大臣にこの点での御確認をいただけるでしょうか。
  247. 中島源太郎

    中島国務大臣 冒頭の御質問でございまして聞き落としたら失礼でございますが、教育そのもの、これはまさに、どの方向でどのような精神で行うかということについては、教育基本法がございます。教育基本法は、先生おっしゃいますように日本国憲法をもとにいたしまして、日本国憲法で言っておる民主的な国家をつくるその根本は教育であるというふうに教育を位置づけておる基本法でございますので、それにのっとりまして教育はあるべきこと、これはまた国公立、私学押しなべてその方向であろうと思います。
  248. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私の質問趣旨は、憲法や教育基本法を貫く精神というのは、教育の場に民主主義が徹底されるということではないかという中身で御質問したのですけれども、そういうふうに大臣の御答弁を受け取りまして、そういう点で考えますと、私学の経営姿勢を見ますと、必ずしもそういうふうになっていないというか、民主主義に反するような事柄がいろいろ行われている、そういうことがあるわけですね。  先日、私も、この委員会でも四天王寺国際仏教大学の事例を取り上げざるを得ませんでした。余りにも前近代的で非民主主義的な運営というのがあちこちで見られるのではないかという点で、その結果が教職員の不当な解雇ということになってあらわれているわけですね。この事例は全国に及んでおりまして、中高関係で見ましても各県にまたがっております。  時間がありませんので全部申し上げませんけれども、三十名近くの不当解雇事件という形で行われているわけです。先日、新聞でも、福井工大では勝訴ということが報道されておりました。ですから、多くの事件では、地裁、地労委などでは経営者側がほとんど負けているということになっているわけですけれども、まず、文部省はこういう教職員の不当な解雇という事件についてどのように把握されていますか。
  249. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私ども、全国でどの程度の先生がおっしゃるような意味での不当解雇があるかないかということについては把握いたしておりません。基本的に、文部省の私学行政の立場といたしましては、人事に関することというのはそれぞれの私学が自主的に適正に行うべきものであるというふうに理解いたしておりまして、その人事にかかわる問題が不当であるあるいは不当でないというような評価は私どもが軽々にするのではなくて、仮にそれが労働事件にかかわるものでありましたならば、地方の労働委員会あるいは裁判所というところで判断すべき事柄である。文部省としては、あくまでそこには一定の線を引いてその種の問題には対応すべきだというふうに考えております。
  250. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 しかし、現実に社会的な問題となっているわけで、知らないでは済まされないし、また、人事問題だということでタッチができないということではないわけですね。というのは、私学の教職員に対する扱い万、待遇の問題として起こってきているわけでありますし、それは言うまでもなく、私学の教育条件にはぬ返る問題であります。この私学の教員の地位という問題、一方的解雇というような事態で大変不安な状態に置かれている問題があるわけですけれども、そういう点で改善するおつもりがあるのかないのかということをお尋ねしたいと思います。
  251. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私学の教員が一方的に解雇された場合に、それぞれ解雇した方については、先生の立場から見て不当であるかどうかというような評価は別といたしまして、理事者側にはそれなりの理由があるわけでございましょうし、それから、今度解雇された方の立場から見れば、あくまでそれは不当であるというような意見をお持ちの場合も多いと思います。そういう個々の事例については個々具体的な判断をしなければ、一概にこれが不当であるあるいは不当でないというふうに言い切れないのではないか。特に、その種の問題が労働問題、労使問題にかかわって事件が発生してまいりますと、それは文部省で判断するのではなくて、先ほど申し上げましたようなしかるべき機関で判断をすべき事柄ではないかというふうに考えているところでございます。  ただ、一般的に教職員の身分取り扱いを行う場合には、法令に違反しない、あるいは学内諸手続に違反しないように適正に行うようにという一般的な指導は私どもも従来からいたしているところでございます。
  252. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 実は、この私学経営の問題、また私学の教員の不安定な立場というか身分の問題は、私学共済の運営に反映していると考えなければならないと思うわけです。現行法では、組合員の資格取得あるいは資格喪失などの権限は一切学校法人に任されております。これは極めて重大な問題だと思うわけです。私学共済の掛金拠出をしているのは経営者だけではなくて、一般の教職員も折半主義による責任額を負担しているわけです。今申し上げた事柄は、個々の裁判の事例でいろいろありますけれども、現実には多くが一方的解雇であります。そうなりますと、経営者の全く一方的な届け出によって資格が剥奪されております。  ですから、一つは、教職員が異議を申し立てるような不当労働行為が歴然とした問題については、少なくとも資格剥奪を保留するということは、この私学共済の財政負担の建前からいっても、また趣旨からいっても当然ではないかと思います。  また二つ目には、先ほどの事例で申し上げましたように、このほとんどが経営者側が敗訴して終わっているように、明らかに不当労働行為なわけであります。また解雇権の乱用ということが行われているわけでありますけれども、教職員が勝訴したとき直ちに資格喪失の取り消しの措置がとられなければならないということは当然ではないかと思うわけです。しかし経営者の方はそれを行っておりません。また、私学共済組合もそういう指導を積極的にしていない。勝訴しても共済組合員としての復活手続を拒否したために、そのこと自身が裁判となった、こういう例もありまして、これは本委員会でも過去に取り上げられてきております。長崎の玉木学園ですね。そういう点での厚生省の行政指導もありますし、また国会で問題になってきたという点も考えまして、こういうことが今なお残っている、あるいは継続されるというようなことではなくて、やはり文部省としてこういう問題について何らかの対処をはっきりとすべきではないかと考えるわけですけれども、いかがですか。     〔北川(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  253. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合の組合員資格の件でございますけれども、ただいま御指摘のような解雇という事態が生じたときに、これは一般の雇用関係、先ほど御答弁がありましたのと全く同じでございますけれども、その個々の解雇の事由の是非について私学共済組合が個々に個別に判断をするということは、実際問題としては非常に困難なことでございます。でございますから、私学共済組合としては、その学校法人から資格喪失の報告書の提出があればそれで一応組合員資格が喪失をする、事務処理の体制としてはそれしか方法がないのではないかと思っております。  ただ、今御指摘のように解雇の効力について、それが争われた、その結果判決が出た、それが労働委員会でございますとか裁判所で解雇無効の決定とか判定が出れば、それは当然組合員資格喪失ということを取り消して組合員の資格を確認することになるわけでございます。この場合に、私学共済組合の取り扱いといたしましては、これは国民年金とか健康保険なんかも同様でございますけれども、一応そういう判決が出た時点で、正確に言えばこれは本来確定判決まで待つべきところかと思いますが、組合員の利益ということもあり、確定判決以前であっても、その組合員資格喪失の決定を取り消すということをしているわけでございます。  それから、そういう建前になっておっても、実際にやっていないではないかという御指摘がございました。これは個々の事例の問題でございまして、私どもが直接一つ一つの事情について申し上げるわけにいきませんけれども、私どもとしてはそういうふうな、確定しなくても判決が出た場合にはきちんとした取り扱いをするようにということを、私学共済組合から各学校法人等に対して指導をしてもらっているという状況でございます。
  254. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 やはり、共済組合員の資格取得、また剥奪という最も重要な問題について、そういうことが経営者サイドで一方的に行われるということは大変問題だというふうに思うわけです。だから、そういうことが起こってくるのも、この私学共済の経営に本当に組合員の意見、立場というものが十分反映し切っていない、もっと改善できる点があるのではないかということになるわけです。  私はそういう意味で、これまでにもたびたび要望されており、また委員会でも質問もあったと思いますけれども、この運営審議委員に、教職員や労働者の代表を入れるということを本当に真剣に考えなければならないときに来ているというふうに思うわけです。とりわけ教職員の大多数の声を反映しているという日教組私学部の委員をぜひ加えるべきだという点は、強い要望として出されておりますし、検討するときに来ているというふうに思うわけでして、ぜひとも前向きに御検討いただきたいというふうに思いますが、いかがですか。
  255. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合には、その業務に関する事項を審議する、理事長の諮問機関でございますけれども、運営審議会が設けられているわけでございます。この運営審議会は、先生も御存じのとおりでございますけれども、いわゆる三者構成になっておりまして、単に学校法人の代表者ばかりでございません。学校法人の代表者と組合員を代表する者と学識経験者、三者構成でできているわけでございます。  この組合員を代表する者あるいは学校法人を代表する者、これはやはりそういう人たちの意向が反映されなければならない。これは文部大臣から委嘱をするわけでございますけれども、その人選に当たっては、それぞれの私学の団体から推薦していただくという仕組みにしております。  具体的には、全私学連合という組織でこれを推薦していただいているわけでございまして、これまでの私学共済組合の二十九年以来の運営の実績等を見ますと、それぞれ適切な代表が選ばれ、その意向が反映されて、私学共済組合は健全な運営をなされておるというふうに承知しております。こういう現在の仕組みというものを改めるということは考えていないところでございます。
  256. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 なかなかその辺では押し問答になろうかと思いますので、時間の関係で打ち切らざるを得ないわけです。実態はいろいろ問題が起きているということは申し上げたとおりでありまして、最初に言ったように、経営やまたは私学の教育という機関の立場からもきちんと民主的な運営がされる、あるいは民主主義が貫かれるという点で、ぜひとも改善すべきだというふうに思います。  次に、生徒の急減対策や低賃金対策の一つとして考えられているわけですけれども、私学では講師制度というのがかなり広がって採用されています。この講師制度について文部省がどのように把握されていますでしょうか。
  257. 西崎清久

    ○西崎政府委員 御指摘の講師制度の問題でございますが、御案内のとおり学校教育法におきましては原則が教諭でございます。教諭がいろいろな事情で得られない場合は、教諭にかえ助教諭または講師を置くことができる、こうなっておるわけでございまして、講師には常勤と非常勤とございます。  私ども、全体の学校基本調査での統計としましては、本務者、兼務者という形の調査をいたしておりまして、必ずしも常勤、非常勤の講師の調査はしておりませんが、兼務者という形で挙がっておりますのは、私立高校全体におきまして約三〇%という形の兼務者が挙がっておるわけでございます。この兼務者の中には非常勤を含むというふうになっておりまして、その中で講師は約八割程度ということになっておる次第でございます。
  258. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大変高い数字だというふうに改めて思います。一年間の期限につき雇用というか採用ということで、専任講師、時間講師、常勤、非常勤といろいろな形があるわけですけれども、私どもが聞いている数では、持ち時間数にして四〇%から五〇%を占めている。実際の学校教育の中で果たしている役割はいろいろあると思うわけですけれども、そういうふうに聞いているわけです。ですから、先ほどの兼務者三〇%あるいは持ち時間にすると四〇%、五〇%、こういう点では一体教育上好ましいというふうに文部省は御判断でしょうか。
  259. 西崎清久

    ○西崎政府委員 高等学校教育におきましては専任の、そして教諭であることが望ましいというのが学校教育法の一つの路線でございます。ただ、現在、高等学校教育の実情を考えますと、いろいろな教科・科目の多様化ということもありますし、教科によりましては外部からそれぞれ専門的な方々を招くというふうな場合もございまして、一概に非常勤講師がよろしくないということもいかがかということはあるわけでございます。  しかし、学校の姿として、高等学校設置基準では、半数以上が専任でなければならないというふうな設置基準がございますので、専任者が半数を割るようなことでは、学校教育の建前として、法令上の問題としてもよろしくない、こういうことが申し上げられるわけでございますが、やはりそれぞれの地域なり学校の事情によりまして講師、非常勤講師の任用が行われるということはあり得ることだというふうに考えておる次第でございます。
  260. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 こうした講師の方々は、ほとんどが専任の方と同じような仕事を実際学校の中で担っていらっしゃるわけですね。しかし、一年間の期限つき雇用ということで、私学共済組合員としての資格を与える手続がとられていないのではないでしょうか。私学共済としてこういうことについてどうお考えになっているのでしょうか、また文部省としての見解をお伺いしたいと思います。
  261. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合の組合員資格でございますけれども、これは私学共済法に規定がございまして、その専任でない者あるいは臨時に使用される者、つまりそういう常時勤務に服さない者については組合員としない、それ以外の者はする、こういうことでございます。  それで、ただいま御指摘のような講師の実態、これはなかなか把握が困難でございまして、例えば専任でない者といっても、何をもって専任云々と決めるのか。これは運用といたしましては、そこで得ている給与の額、そこで得ている給与でもってそれが主たる生計の支えとなっているということであるならば、それは講師であろうが期限つきであろうが、これは組合員とする、これは共済組合としては制度上、二カ月間以上雇用される実績があれば組合員にするわけでございます。二カ月なければ組合員になれない。そこで、その二カ月という期間があり、かつ、それが専任としての実態があるということであるならば、それは組合員にするわけでございますが、そうではない、いろいろあちこちでかけ持ちをしているとか、あるいは期限が極めて短いということであればこれは組合員にできないわけでございます。結局それはケース・バイ・ケースの判断で判定をしているということでございます。
  262. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それでは、一年間の期限つき採用ということで、しかし現実には毎年毎年更新で、いわば万年講師というふうに呼ばれている方々が多いわけですけれども、そういう方々は共済組合員の資格は十分取得できるというふうに考えてよろしいわけですか。
  263. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま申し上げましたように問題が二つあって、一つは雇用の期間の問題でございますね。雇用の期間は、私学共済では二カ月以上の実績があれば組合員にいたします。それからもう一つは、講師ということで、多くの場合、そこで主たる生活の支えを得ていない、ほかのところでも得ているということであるならば、これは専任である者というふうには読めないわけでございますから、それはしない。そこで、肩書が講師であってもその生活の主たる部分、生計の主たる部分をそこで得たものでもって支えており、その雇用期間が二月を超えるということであるならば、それは組合員の資格があるということでございます。
  264. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 なかなか講師の実態が十分つかみ切れていないというお話もございましたので、私学に対しては公費助成が行われているわけでありますから、講師の実態についてぜひとも文部省としても調査を行う必要があるのではないかというふうに私は考えております。そういう点で本当に、共済組合員の資格がどういう範囲で実施されているかという点でもその実態を把握する必要があるのではないかと思うわけですが、いかがですか。
  265. 川村恒明

    ○川村政府委員 そういうそれぞれの私学は、基本的に民間の組織でございますから、雇用の仕方についてもそれぞれの私学に応じた実態があるのだろうというふうに思っているわけでございます。私学共済組合の立場からすれば、そういうことでそれぞれの学校法人から、これは組合員の資格があるということで届け出があれば、それを認めて組合員資格とするわけでございます。そこのボーダーラインにあるものを調査をするのは実際問題としてなかなか困難で、結局第一義的には、それぞれ学校法人の御判断でこれを進めていくということが最も適切な方法ではないかというふうに考えております。
  266. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ですから、やはり学校法人のというか経営者側からの届け出によって判断するしかないわけですね、現在のところは。そこのところで、いろいろと実態を必ずしも正確に反映していないようなことが起きているということを最初のところで申し上げたわけでありまして、この私学共済組合法の精神で本当に組合員の資格取得ということについてもっときちっと把握する。そういう方法では、届け出で済ますということにとどまらないでやるということで、文部省の御決意を伺いたいというふうに思うわけです。
  267. 川村恒明

    ○川村政府委員 私学共済組合は、現在組合員が三十七万人ぐらいいるわけでございまして、これを私学共済組合が直接一人一人を管理と申しましょうか、その資格の取得、それから喪失その他をチェックするということは、現実の事務的な対応からいってもなかなかできることではない。やはりそれは、それぞれの学校法人において学校が適切に運営されているわけでございますから、その運営の実態に基礎を置いてその制度を進めていくことが、制度全体としての円滑な進め方からいえば一番いい方法ではないのか。でございますから、私学共済組合でもって一人一人の組合員を、三十数万人が常時資格を得たり喪失をしたりすることは延べ数にすれば非常に多い数があるわけであります。そういうことを私学共済組合で事務として処理することは適切ではないというふうに考えているわけでございます。
  268. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 それぞれの私学で運営が適切に行われているというふうに御判断されるところが私どもと違うわけですが、一つ事例を申し上げたいと思うのです。  それは、ことしの三月三十日、宮崎県の延岡学園では二名の講師の雇用の契約拒否ということが行われております。この二人は校務分掌教員と同じく校内でいろいろな役割をされており、また担任も受け持っている。ところが、組合に入ったという理由だけで契約を拒否されるということなんです。  一方、この学校は生徒数はこれまでの最大規模で、教員が足りない。二人の先生は正規の免許を持って、生徒からも慕われている。先生がやめるのだったら僕たちも学校をやめたいという声まで上がっているわけですね。そういう教員を契約を拒否して、臨時免許を持った講師を入れる、こんなことが行われるというのがあるわけです。私は、こういうことでは本当に私学の教育の質の低下ではないかと思います。青森でもこういうことが行われていると聞いています。だから、こうこうことを称して不当解雇がふえているというふうに最初に申し上げたわけです。  だから、この講師制度というのが教師の管理や組合対策という形で用いられているというか、そういう実態があるわけです。文部省としても、この教育の質を下げるような、そして学校の経営をかえってやりにくくするようなこういう問題についてきちっとした指導をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  269. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 一般的に、高等学校以下の所轄庁は都道府県でございます。その種の問題が生じた場合に、一般的な指導をするのは私ども都道府県に任せておるということでございますが、先ほど来申し上げましたとおり、文部省としては、人事管理というものはそれぞれの大学が自主的に判断をする事柄ではありますけれども、適切な手続に従って適法な人事取り扱いを行うようにという一般的な指導はしているところでございます。
  270. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この次にちょっと申し上げますけれども、この講師制度が恐らくこれからも年々ふえていくことが予測されるだけに、生徒の急減という時期を迎えてそういう方向が非常にふえていくと思われますので、しっかりとした文部省の指導をしていただかなくてはならないというふうに強く申し上げておきたいと思います。  私立高校の急減対策についてでありますけれども、来年度で中学卒業生がピークを迎える。それ以降急激に生徒減が予測されているわけですけれども、この生徒減について文部省としてどのようにつかんでいらっしゃるでしょうか。
  271. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 来年度全国平均で申し上げまして、都道府県によっては時期が若干ずれるわけですが、全国的には昭和六十四年に十五歳人口がピークになるのは先生御指摘のとおりでございます。  これに対する対策といたしましては、私どもとしては、既に七年前に公私立高等学校協議会というものを各都道府県に設置をして十五歳人口の急増急減に対処する、言いかえれば公私立高等学校の適正配置、入学者等の配分について調整を図るため、各都道府県においてこの協議会を設置して、関係者による十分な協議を行うよう指導してきたところでございます。したがって、六十四年度を目指す急増対策を立案するに当たっても、それからその後の急減対策を立案するに当たっても、この公私立高等学校協議会で公私立の役割分担、それから公私立高等学校の総収容定員の比率をどうするかというものを決めて、その協議会の結論に従って、マクロの十五歳人口の収容計画を立て、あるいは十五歳人口の急減に対応するための、公私の数的な役割分担を決めて対応してきているというふうに私ども理解をしているところでございます。  一方、そういうような公私の役割分担を明確にするということと同時に、私立学校がこれまた独自にそれぞれの地域事情に適応した、建学の精神を生かした特色ある学校経営をすることによって応募者がたくさん来る、そういう経営努力も必要であろうというふうに考えているところでございます。  ちなみに経常費助成の問題でございますが、経常費助成というのは今でも、これは高等学校以下の経常費助成は所轄庁であります都道府県が行っているところでありますが、この都道府県が行う経常費助成を算定する場合には、教員の実員と生徒数を基礎にいたしまして、教員給与費とか生徒経費等を算定しているわけでございます。したがって、急減期になって、例えば世上言われるように、学級編制をある高等学校で従来からの四十五人から四十人に減らす、そうすることによって免職なり首を切らないで従来の先生方を張りつける、そういう工夫をした場合も、それ以後の経常費助成については、現在配置されておる教員の実員に着目いたしまして経常費を算定いたすわけでございますので、その点については、経常費補助の上では問題がないんではないかというふうに思っております。  ただ、私どもとしては、従来からも努力しているところではございますけれども、一般的に都道府県が行う経常費助成に対する国の一部補助につきましては、これからも鋭意増額に努力してまいりたいと考えているところでございます。
  272. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大分先の方までいろいろお答えいただいたのですけれども、公私の役割分担という形でお答えいただいたのですけれども、しかし、私学はいろいろ大変な経営の問題としてこの急減期を迎えるわけでして、文部省としての抜本的な急減対策というのは、何か協議会の結論待ちというふうにも今聞こえたのですけれども文部省としてのそういう意味での姿勢というか対策というか、そういうことはいかがなんでしょうか。
  273. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先ほども御説明申し上げましたとおりに、高等学校以下の所轄庁は都道府県でございます。しかもそれぞれの都道府県で実情が違うわけでございます。私立のウエートの高い都道府県、そうかと思いますと私立がほとんどない都道府県、それぞれの都道府県において実情が違うわけでして、そういう意味から申し上げますと、各高等学校以下に経常費を直接補助しているところは都道府県でございますので、個々の都道府県が、先ほど申し上げましたような公私立高等学校協議会の協議の場などを通じまして、適切に具体的な対応の仕方を考えていくべき筋合いのものではないかというふうに考えているところでございます。  ただ、私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますとおりに、高等学校以下の経常費助成を都道府県が行う場合の一部財源補てんをして補助しておりますけれども、その財源補てん的な国の行う各都道府県に対する経常費助成の総額については、今後とも増額を図っていくよう努力をしてまいりたいというふうに考えているところでございます。
  274. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 各都道府県で行われております協議会で御検討されている内容については、私どもにもっとわかるような形でお示しもいただきたいと思うのですけれども、その動きは文部省から見て、この急減期に十分対応できるような内容になっていると御判断されているわけですか。
  275. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 急増期にどういうような総定員を割り振るかということも、私学関係者と公立学校関係者が十分協議して、今の急増期に対応しているわけでございます。  それから、急減期に私学がどのぐらいの十五歳人口を収容するか、あるいは公立の定員をどうするかということにつきましても、私学の経営を十分踏まえまして、公私で協議して決めているわけでございます。その急減期における私立の収容定員をどのぐらいにするかという点につきましては、私学の関係者も、私学の経営を十分考えた上でその収容定員について賛成をしているというのが各都道府県の公私協力協議会の実情のようでございますので、私どもとしましては、何とか急減期にも私学経営を、もちろん先ほど言いました文部省もそれなりの努力はしなければいけませんけれども、対応はできるんではないかというふうに思っているところでございます。
  276. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私はやはり、対策の中でまず第一に考えなければいけないのがこの教員の身分の安定確保という問題だと思うのですね。既に教員がいつでも首を切られるという状態に置かれているという点での一時雇いがふえているわけでありますから、そういう問題にどう対応するのかという点では、これは大変深刻な問題がこれからいろいろ出てくるというふうに思わなければならないわけです。そういう点で、文部省として、この私学助成の一定の御努力があるわけですけれども、ぜひともそういう問題でも一層検討されなければいけませんが、生徒の急減少という時期を迎えて、私学助成の抜本的検討をすることで取り組まないと大変な事態になるというふうに思うわけです。今非常に私学関係者が危機感を持っていらっしゃるわけで、教員の方々もそうですけれども、そういうときこそ公私の格差をなくしていく、私学の教育条件をよくしていくチャンスとして考えて、本当に抜本的に私学の教育条件を向上させる、改善するという点での検討をするときではないかというふうに思うわけです。そういう点で、協議会任せではなくて、文部省としての私学助成のあり方ということを含めた検討を、本当に取り組むのかどうかということを再度伺っておきたいと思います。
  277. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先ほども御説明申し上げましたとおりに、現在行われております高等学校以下の経常費助成につきましては、ある生徒数があって、その生徒数ならばこの程度のいわゆる標準的な教員数を設定いたしまして、その標準的な教員数に見合った給与費の二分の一を補助しているという仕組みはとっておりません。生徒数が少ない、それにもかかわらず教員をたくさん抱えておるというところにつきましても、教員の実員で対応をしているわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、先ほど来申し上げておりますとおりに、現在行っておる国の経常費補助の一部補てんのための高等学校以下の経常費助成の充実をこれからも図っていくことによって、対応できるんじゃないかというふうに考えているところでございます。
  278. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 委員長にもお願いしますが、本委員会にもこの私学助成のあり方をめぐっての小委員会なりを設置して、急減期という大変な事態への対策についてぜひとも今後検討するという点をお願いしたいと思いますが、委員長の御見解を伺いたいと思います。
  279. 中村靖

    中村委員長 理事会において御相談させていただきたいと思います。
  280. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 以上で質問を終わります。      ────◇─────
  281. 中村靖

    中村委員長 内閣提出著作権法の一部を改正する法律案及び内閣提出国立学校設置法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  順次趣旨の説明を求めます。中島文部大臣。     ─────────────  著作権法の一部を改正する法律案  国立学校設置法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  282. 中島源太郎

    中島国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  現在の著作権法規定する実演、レコード等の保護期間は、現行法制定当時、著作隣接権に関する国際条約の要求を満たすものとして定められたところでありますが、我が国における著作隣接権の保護の充実を図る見地から、これを延長する必要が生じております。  また、近年の家庭用ビデオ機器等の普及に伴い、権利者に無断で複製されたビデオ・ソフト等のいわゆる海賊版が大量に市場に出回り、著作者等の権利が侵害されているという問題が生じております。  著作権法は既に海賊版を頒布する行為については罰則の対象としておりますが、このように広範に行われる海賊版の頒布の状況に適切に対応するためには、海賊版を頒布の目的をもって所持する行為を、罰則の対象とする必要が生じております。  これらの必要性に基づき、所要の措置を講ずることが、今回の著作権法の一部改正趣旨であります。  次に、本法律案の内容について申し上げます。  第一は、著作隣接権の保護期間の延長についてであります。  現在、著作隣接権の保護期間につきましては、例えば、実演に関してはその実演を行ったときから、レコードに関してはその音を最初に固定したときからそれぞれ二十年と規定されておりますが、諸外国の状況や実演家、レコード製作者等の果たしている著作物の伝達者としての役割と文化的使命等を考慮し、これを三十年に延長しております。  これに伴い、国内の商業用レコードの製作業者が外国レコードの原盤の提供を受けて作成した商業用レコードを、他の者が商業用レコードとして複製、頒布する行為を処罰することとする期間及び旧法下において保護されていた演奏歌唱及び録音物の保護期間の残存期間の上限につきましても、それぞれ延長の措置を講じております。  第二は、ビデオ・ソフト等の海賊版を頒布の目的をもって所持することについて、権利侵害とみなすことであります。  すなわち、著作権、著作隣接権等を侵害する行為によって作成された物を情を知って頒布の目的をもって所持する行為について、新たにこれらの権利を侵害する行為とみなし、これを罰則の対象としております。  最後に、施行日等についてであります。  この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案提案いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。  続きまして、このたび、政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、総合研究大学院大学の新設、短期大学部の併設及び廃止、大学入試センターの所掌事務を改めること等について規定しているものであります。  まず、第一は、総合研究大学院大学の新設についてであります。  これは、学部を置かない大学院のみの大学を設置し、国立大学共同利用機関との緊密な連係及び協力のもとに教育研究を実施しようとするものであります。  なお、総合研究大学院大学は、本年十月一日に設置し、昭和六十四年度から学生を入学させることとしております。  第二は、短期大学部の併設及び廃止についてであります。  これは、三重大学に同大学医学部附属の専修学校を転換して医療技術短期大学部を併設することとし、また、京都工芸繊維大学に併設されている工業短期大学部については、これを廃止し、同大学工芸学部及び繊維学部に統合しようとするものであります。  なお、三重大学医療技術短期大学部は、本年十月一日に開学し、昭和六十四年四月から学生を入学させることとするものであり、京都工芸繊維大学工業短期大学部は、昭和六十四年度から学生募集を停止し、昭和六十五年度限りで廃止することを予定しているものであります。  第三は、大学入試センターの所掌事務を改めることについてであります。  これは、大学入試センターの所掌事務につき、国公私立大学が共同して実施する試験に係る業務を行うこととするとともに、大学に入学を志望する者の進路選択に資するための大学に関する情報の提供を加えようとするものであります。  このほか、昭和四十八年度以後に設置された医科大学等に係る昭和六十三年度の職員の定員を定めることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。(拍手)
  283. 中村靖

    中村委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十日水曜日に委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会