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1988-04-01 第112回国会 衆議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月一日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 中村  靖君    理事 愛知 和男君 理事 岸田 文武君    理事 北川 正恭君 理事 鳩山 邦夫君    理事 町村 信孝君 理事 佐藤 徳雄君    理事 鍛冶  清君 理事 林  保夫君       逢沢 一郎君    青木 正久君       工藤  巌君    古賀 正浩君       佐藤 敬夫君    斉藤斗志二君       谷川 和穗君    渡海紀三朗君       松田 岩夫君    宮里 松正君       江田 五月君    嶋崎  譲君       中西 績介君    馬場  昇君       有島 重武君    石井 郁子君       山原健二郎君    田川 誠一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 中島源太郎君  出席政府委員         文部政務次官  船田  元君         文部大臣官房長 古村 澄一君         文部大臣官房総         務審議官    川村 恒明君         文部大臣官房会         計課長     野崎  弘君         文部省初等中等         教育局長    西崎 清久君         文部省教育助成         局長      加戸 守行君         文部省高等教育         局長      阿部 充夫君         文部省高等教育         局私学部長   坂元 弘直君         文部省学術国際         局長      植木  浩君         文部省社会教育         局長      齋藤 諦淳君         文部省体育局長 國分 正明君         文化庁次長   横瀬 庄次君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部少年課長  遠藤 豊孝君         環境庁大気保全         局大気規制課長 浜田 康敬君         外務大臣官房外         務参事官    田辺 敏明君         外務大臣官房文         化交流部文化第         二課長     遠藤 乙彦君         大蔵省主税局税         制第一課長   杉崎 重光君         厚生省生活衛生         局企画課長   佐野 利昭君         厚生省児童家庭         局母子福祉課長 柏崎 澄雄君         通商産業省生活         産業局窯業建材         課長      和田 正武君         労働省労働基準         局安全衛生部化         学物質調査課長 冨田 達夫君         建設省住宅局建         築指導課長   立石  真君         文教委員会調査         室長      高木 高明君     ───────────── 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   杉浦 正建君     宮里 松正君 同日  辞任         補欠選任   宮里 松正君     杉浦 正健君     ───────────── 本日の会議に付した案件  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  文教行政基本施策に関する件      ────◇─────
  2. 中村靖

    中村委員長 これより会議を開きます。  文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林保夫君。
  3. 林保夫

    ○林(保)委員 皆さん御苦労さまでございます。  百十二国会になりまして、なかなか本格審議に入れないことを残念に思いながらも、なおやむを得なかったという事情もございまして、きょう初めてでございますので、数が少々多うございますけれども、率直な御答弁をちょうだいいたしたいということをまず冒頭お願いしておきたいと思います。  大臣御就任以来、既に以前からそうだと思いますが、文教関係文部省あるいは学校関係といったような視点から見ますと、もう毎日のようにこれは、これはというような問題がたくさん出ております。いいこともあれば悪いこともある。そういう中で大変御苦労だと思います。そういった意味で、私、冒頭事務局の方に内容をというよりも背景をお聞きいたしまして、こういうことをしたいのだといって、お話を簡単に承りまして、それらについて大臣の御所見をそれぞれ承りたい案件がございます。  これを申し上げる前に、高知学芸高校皆さん方のあのような惨事、あってはならないことが起きたことに対しまして、地元の皆さん、さらには関係者、また、今救援あるいは解決に向かっていらっしゃる内外の皆さん方に対して敬意を表しながら、なおこういうことは今後避けなければならぬ、こういった視点で、文部省さんも三月三十一日に通達を出されたようでございますので、その骨子とポイントを簡単でよろしゅうございますが、事務局の方から承りたいと思います。
  4. 中島源太郎

    中島国務大臣 事務局からお答え申し上げる前に、高知学芸高校お話でございますので……。  二十七人という亡くなられた方を出しまして、また負傷者の方も今懸命に加療に努めておられますが、亡くなられました方々の御冥福をお祈りいたしますのと同時に、負傷されました方々の御全快の一日も早くあらんことをお祈りしておる次第でございます。  また、二十四日の悲惨な事故の第一報が入りました後、直ちに関係省庁連絡をとりまして、それぞれの協力を得ることができました。その後、文部省からも上海並び高知学芸高校に職員を派遣いたしまして、事故現地並びに学校それから政府対応、この三者が三位一体で事後処理に当たるような態勢をとらせていただきました。また、私も、御理解を得まして過日高知学芸高校の校長、理事長さんとお会いをいたしまして、こちらの態勢を御報告いたし、また御要望の点をつぶさにこちらにいただくようにということを申し上げておきました。たまたま章曙日中国大使ともお会いできましたので、私からもいろいろな要望に対し対処方をお願いをいたし、章曙中国大使からも、直ちに本国政府連絡をとる、このような御意向をいただいて今日に参っておりますことを、冒頭に哀悼の意を表しますのと同時に御報告を申し上げ、あとのお尋ねについては政府委員からお答えをいたさせます。
  5. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣の真摯な姿勢に対して敬意を表します。しかしこれからの問題でございますので、これからどうするんだという視点で、事務当局の方から、通達に関連いたしましてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  6. 西崎清久

    西崎政府委員 事故そのものにつきましては大臣から申し上げたとおりでございまして、現時点におきましては、昨日現在で四名の重傷者が帰ってまいりまして、まだ残っておりますのが四名でございますが、この四名につきましては、きょうとあすの二日間で全部日本に帰国できる予定と承知いたしております。  先生お尋ねの今後の問題でございますが、私どもといたしましては、一月の半ばの段階で、海外修学旅行についてはいろいろな留意点を示して都道府県教育委員会等指導をしたところでございますけれども、今回の経緯にかんがみまして、昨日付で事務次官通達を出しまして、今後の海外修学旅行についての取り扱いにつきましてそれぞれの教育委員会知事部局等注意を喚起しておるところでございます。  要点を簡単に申し上げますと、海外修学旅行につきましては、旅行経路でありますとか交通機関現地の状況についての事前調査の問題、それから引率体制、万一の事故発生の場合の緊急時の連絡体制医療体制、そういう点について周到な準備を整えて、関係業者に余り過度に依存してはいけないというふうな留意点を示しまして、これからの海外修学旅行実施に当たっては、教育委員会承認あるいは知事部局への事前届け出というふうな措置も講じて、遺漏のないような措置を講ずるべしというふうな形で指導をしておるところでございます。  この点は指導通知だけでは足りないと思いますので、四月の下旬までの間に、私ども都道府県等を招集いたしまして、担当指導主事等協議をしたいと思っておる次第でございます。  以上でございます。
  7. 林保夫

    ○林(保)委員 文部省の手はそれだけかなという感じをこの間通達内容を見まして思ったのですが、ただいまのお話で私は二つあると思うのです。  届け出承認ということでございましたね。届け出承認があれば——慎重に計画することはわかるわけですが、その実効ある措置ができるかというのを、文部省さん一々コースを回ってみられるわけじゃないし、どういうふうにして確認されるのだろうか。それから、国内の修学旅行ですとみんな大体事前にどなたか引率される先生が回っておられて、そのコースならいいだろうというような結論で何かやっておられるやに聞いておりますけれども海外の場合にはこの間の通達では必ずしもその点がはっきりしていなかったような印象を受けたわけですが、その辺を局長さんはどのようにお考えでしょうか、ひとつ具体的に。
  8. 西崎清久

    西崎政府委員 先生おっしゃいますように、具体の個々修学旅行についての実際の計画なり周到な配慮というのが大事でございまして、承認届け出とは申しましても、その中身が問題だ、確かに御指摘のとおりでございます。今回の高知学芸高校につきましても、事前に教員が現地調査をしたやに、まだ確認は十分いたしておりませんが、そう聞いております。しかしこのような不測の事態が起きたわけでございますが、今後の問題としては、事前届け出あるいは承認に当たって、それぞれの学校計画を当事者として教育委員会なり知事部局の立場で事前に承知をした上でチェックをして、そして学校側と周到な準備についての協議を重ね、これでよかろうということになってゴーサインが出るというふうな形にしたいと思うわけでございます。  やはり今後の問題としては、往々にして海外になりますと旅行業者にほとんど任せるとか、それから現地調査が非常にしにくいとか、そういういろいろな従来のケースもございますので、その点については学校が主体的に取り組むということに私ども指導の重点を置きたい、こういうように考えておる次第でございます。
  9. 林保夫

    ○林(保)委員 最後に、大臣にこの件について御所見をいただきたいのですが、自由にビビッドにやること自体、自主的にやることはいいと思うのです。しかし、だれが見ても客観的に無理だというときは、やめさせる勇気文部省なり教育委員会に与えていただくような方向大臣から御示唆いただけたら幸せだと思いますが、いかがでしょうか。
  10. 中島源太郎

    中島国務大臣 今度の事故は大変悲惨なことでございまして、これを十分今後に生かさなければいかぬと思います。  ただ、二つの点を申し上げなければならぬと思いますが、さはさりながら、海外を含めた修学旅行というものの、新しい事象に触れ新しい体験を積む、この点の意義あることは認めていく必要があろうと思います。その有意義なことを認めつつ、今おっしゃいますように、届け出を受けてその承認をいたすについて、それに無理があるというような感じの場合には勇気を持ってそれを指摘できますように、それがあってこそ事前届け出承認が生かされるわけでございますので、先生の御意思は十分に生かしてまいりたいと思います。
  11. 林保夫

    ○林(保)委員 次に移りまして、宗教法人の問題が近ごろ新聞に割と出ております。割とと言った方がいいのか、よく出ていると言った方がいいのか、これは見方によると思いますが、本来新聞記事にならぬ方がいいのですけれども、それがなっておる。本国会でもかつて参議院その他でいろいろな質疑応答もあったやに議事録で拝見いたしまして、去る三十一日に宗教法人に対して文化庁通達を出しまして、きっちりやるということでございましたが、その内容、どういうところをどういうふうにするのか。それから、総務庁の方も監査という形での問題提起をしておられて、国税庁もまた税の問題でやっておられた。過日、総務庁長官は、文部省及び国税庁調査するので総務庁はやらないということを言っておりましたが、それらの軽重の度合い及び今回文化庁がやろうとしておられる内容につきまして、簡単でよろしいですが、まず御説明いただきたいと思います。
  12. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 ただいま先生が御指摘になられましたように、最近、宗教法人について社会的な非難を浴びるような事例がいろいろ報道されておりまして、これは私どもとしては大変残念なことでございます。実際に報道されております事例は、ほとんどが脱税とか税の申告漏れあるいは税制について何かの点をねらうものであるとか、いずれも終局的には税制に絡んだ問題であると思っております。しかし、このような税制に絡んだ問題をやりやすくするというような意味で、宗教法人法設立認証等具体的な宗教法人所轄庁都道府県知事ということにされておりますけれども、その都道府県知事認証事務が少し不十分ではないか、あるいは甘いのではないか、いろいろな御指摘も付随してなされているというような実態にあると私どもは認識しておりまして、そういう意味で、昨日付で各都道府県知事に対しまして、宗教法人に対する認証事務取り扱い等についての指導通達でございますが、都道府県知事注意を喚起したというものでございます。  その内容といたしましては四つほどございまして、一つは、設立認証に当たってその宗教団体としての実体を有していることを十分審査すること。もう一つは、主たる事務所の移転が非常に安易に行われますと実質的には新たな宗教法人設立と異ならない場合があるわけでございますが、こういう点について十分注意をすること。三番目に、最も問題になっております収益事業につきまして、規則明記をしないで事実上行っているものについては、これは宗教法人法上当然でございますけれども規則への明記をすること。そして、規模とか内容につきまして著しく不適切な場合には、これを改めるように指導すること。最後に、不活動法人というものが悪用される例もございますので、不活動法人実態の把握に努めて、不活動法人であるということがわかった場合には、解散等について指導などをして必要な措置を講ずべきであるというようなことでございます。  宗教法人法が施行されましてからこれまで三十年たっているわけでございますが、各所轄庁におきましてはこういう認証事務やり方については大体定着をしてきておりますので、そうした実態に即しまして、新しいことを言っているわけではございませんで、認証事務についてこれまで定着したやり方についてさらに適正化、厳正にそれを実行するようにというような意味で申し上げたつもりでございます。  それから、宗教法人に対する事業調査につきましては、現在御審議をいただいております六十三年度の予算案の中で計上をお願いしているわけでございますが、従来もほぼ定期的に行ってまいりました調査の一環といたしまして、これは昭和五十年が最後だったと思いますので、その後の変化が非常に著しいということで、この際宗教法人公益事業、それからその他の事業ということで、事業を中心にして抽出調査をしたいということでございます。全法人の約一割程度を対象といたしまして、今申し上げましたように事業全般について実施をいたしまして、そして最近いろいろ起こっております問題にも対処する、なお長期的には宗教法人制度の適切な運営にも資していきたい、そういうようなことで二年計画でその調査計画をしているところでございます。
  13. 林保夫

    ○林(保)委員 もう一度横瀬次長にお伺いしたいのですけれども宗教法人というのは十八万ある。これが多いと言う人はいても、少ないと言う人は余りいないでしょうね。これが都道府県監督の場合と文化庁監督の場合とは違いがあると思いますが、宗教法人ができて以来三十年間、そういったものが一体どのくらいあって、今おっしゃったような解散命令を出した事例が幾つあったかという点、数字だけで結構ですが、資料をお持ちでしたらお答えいただきたい。
  14. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 宗教法人に対する所轄制度につきまして最初に若干御説明申し上げたいと思いますが、個々の寺社とかあるいは教会、神社、そういう一つ一つ法人につきましては都道府県知事所轄をしておりまして、それを包括する教団でありますとかあるいは宗派だとか、そういうものを包括法人と言っておりますが、この包括法人につきましては文部大臣所轄をするという制度になっております。したがいまして、都道府県知事所轄する法人の数は、全体で十八万三千ほどございますが、そのうちのほとんど全部でございまして、文部大臣所轄する法人は三百余程度でございます。  そこで、ただいまのお尋ね解散命令のことでございますけれども宗教法人法規定によりまして、宗教法人実体を備えなくなったという要件が限定して列挙してあるわけでございますが、その要件に当てはまると認められたときには所轄庁は裁判所に対して解散命令を請求することができるという規定になっております。実際にこれがどのくらい行われたか、ちょっと私も今数字を持っておりませんが、実際にはほとんどないと思います。そこまでいかないで、各所轄庁では、そういった実態があったときはその責任者を捜し出しまして、実際に行われていないなら解散をした方がいいのではないかというような指導を行いまして、その中で実際に自主的に解散をしていただくという方向をとっているのがほとんどでございまして、そういう例はこの十年間の一年当たりの平均は約百件程度でございます。
  15. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣、お聞きのような実態でございますし、私どもも実際にこういう政治活動をやっておりますといろいろな面で接点が多うございます。大ざっぱに申し上げると、もともと神や仏は悪いことをするわけはないという前提でいろいろやっておるのですが、新聞週刊誌に出ているようにいろいろな問題が出ております。そして内部については恐らくアンタッチャブルになっていますよね。そうすると、ここらあたりに対して、私も所信表明の中で大臣がどういうことを言っておられるかということを見たわけですけれども、もっと踏み込んで、こうあらねばならぬじゃないかというおしかりも、文部大臣ならやはり出していかなければならないのじゃないか、こういうようなことも感ずるわけですが、大臣としてこれからどのようなお考えでどのように対処されますか、承りたいと思います。
  16. 中島源太郎

    中島国務大臣 宗教法人についてお尋ねでございました。  確かに宗教法人につきましていろいろな話題が最近多過ぎるように思います。しかし、宗教法人そのもの宗教法人法に基づきましてその目的はあくまでも宗教活動のためにつくられたものでございますし、大方はそれに準じて行われておると思いますが、ただ一部であってもその宗教法人制度そのものを悪用するということがあるような場合にはまことに遺憾なことでございまして、これにつきましては少なくとも、いろいろな収益がございましょうけれども、それは宗教のために、そして公益法人たるものの設立目的をしっかりと踏まえなければいかぬと思っておりますので、悪用するものについては厳しく対処すべきである、このように思います。  今政府委員からお答えをいたしましたように、実態調査ももう十数年前にいたしたから日にちがたっておりますので、六十三年度、六十四年度二カ年かけましてその実態調査を、約一割程度のものを抽出をいたしまして実態を明らかにしたい、こう思っておりますし、それに先駆けまして、過日、その対応に一層慎重に、あるときには厳しく対処するようにということを都道府県知事あて通知をいたしたところでございまして、先生のおっしゃいますように、全部を疑うことではございません、宗教法人たるものとして立派に宗教活動を続けておるものが多いと思いますが、一部であれ、そのようなことがある場合には厳しく臨んだらどうかという御意思はよく理解できますので、趣旨を体して、調査の結果、またさらに検討をいたしたいと思います。
  17. 林保夫

    ○林(保)委員 憲法上信教の自由ということがありまして、これをどう読むかということはいろいろな学説もあるようでございますけれども、しかし、憲法上やむを得ぬから自由ではなくて、これはいいから自由にしているという解釈を私はとりたいと思うわけですが、とにかく、それに対して県なり文部省文化庁なりが認可していますと、それこそお墨つきになってしまいます。そういったことから、入信した信徒あるいは氏子との違和が出ますと余計におかしくなってしまうという実情がございますので、ほかに御担当大臣がおられませんのですから、ひとつ大臣にしっかりその辺のところの仕分けなり指導なりをやっていただくほかはないと思いますので、その辺を念を押しておきたいと思います。よろしくお願いを申し上げます。  次に入ります。順序が逆になったわけでございますが、大臣所信表明演説を読ませていただきまして、私も、いわゆる教育に対する理念というのは一体何だろうか、こういうことで、ついでと言っては悪いですけれども、過去十代くらい前までになりますか、大臣所信表明をずらっと読ませていただいたわけです。そういたしますと、大臣は、「教育は、国家社会発展基盤を培うものであり、次代の日本を担う青少年を育成する上で一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題であります。」こういうふうに断定しておられます。それから前の塩川文部大臣は、「教育国家百年の計であり、」その後は大体同じなのですが、それから順序が後先になりますけれども海部文部大臣は、やはり「国民的な重要課題である文教刷新充実に渾身の力を」、これは五十二年です。それから砂田文部大臣は五十三年ですが、「教育学術文化は、永遠に変わることのない国政基本であります。」それから内藤文部大臣は五十四年ですが、「国政の最重要な課題である」。それから谷垣文部大臣は五十五年ですが、「国政基本」である。それから田中文部大臣は、「国政基本」である。小川文部大臣は、「国政基本」である。それから瀬戸山文部大臣も、「国政基本」である。それから森文部大臣は、ちょっと表現があいまいですけれども中曽根総理言葉を引用いたしまして「教育改革を断行する時期に来ている」、こういうようなことで、趣旨はやはり同じような趣旨だろうと思います。六十年の松永文部大臣は「教育国家百年の大計」。海部文部大臣は、「国政の最も重要な課題」として教育改革を進めなければならない。塩川文部大臣は、「教育国家百年の計」である。先ほど申し上げたようなことを言っているわけです。そのように、何となく国家基本教育にありというような印象を持ちながらも、表現の差があり、かつ、時代的にあるいは大臣がかわれば少し変わっておるかなという感じでございます。  大臣は、本所信の中で先ほど申し上げましたように述べておられますが、そのようにおっしゃられる以上は、それなりの国政上の重要課題、これは当たりさわりのない言葉だと思います、しかしそれに伴う質と実をしっかり踏まえていただかなければ、教育改革が大きな命題になっておりますけれども、これはなかなか難しいな、賛成する者もあれば反対する者もある、その中をかいくぐってでも、国政上の重要課題でありますのでやらなければならぬ、こういうことだろうと思いますが、その辺につきまして大臣の御認識を冒頭にひとつ改めて承って、決意を示していただきたい、このように考えます。
  18. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃいますように、私は、「教育は、国家社会発展基盤を培うものであり、」「一日たりともゆるがせにできない国政上の重要課題であります。」こう申し上げました。しかし、言葉表現はともかく、国家百年の大計であり、国政重要課題であることはおっしゃるとおりでございまして、私の認識もまさにそのとおりでございます。しかも、私どもが今行おうとしております教育改革、まさに本格実施の年を迎えておりますし、その教育改革そのものは教育基本法に基づき、教育基本法はまた日本憲法に基づいておりまして、日本憲法で示しております理想的な国家をつくるための中心はやはり教育である、そういうふうに教育を位置づけたのは教育基本法でございますので、いろいろな意味で、それを中心といたしまして、国民のすべての方々の理解を得つつ進めるべき問題だと思っております。先生のおっしゃいますように、進めるについていろいろな御意見はあろうと思います。しかし、それを担当いたしまして進めるべき省庁は文部省であるという自負も持っております。しかも、どのように進めるかにつきましては、社会の推移を見まして、その推移を前提として臨時教育審議会で三年間御審議をいただき、その数多い御指摘をもとに当面進めるべき八項目というものを閣議決定をいたしておりますので、それにのっとりましてスムーズに着実に進めていくということが私どもに与えられた任務であり課題である、こう思いますので、今国会にも種々法案を御提出いたしておりますので、付託早からんことを、そしていろいろな御意見がありましても、御論議をいただく中で御理解を得てスムーズに成立し促進できますことを望んでおりまして、先生おっしゃいますように御意見がいろいろあればこそ論議を早めていただきたい、このように考えております。
  19. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のおっしゃったように、意見があればこそ議論を深めて早めるということは私どもももろに賛成でございますが、なお状況の認識という点で大臣はどのようにお考えになっておるだろうかなということで、二つについて視点を変えて伺いたいと思うわけです。  一つは、ここに持ってきました教育改革に関する第一次答申の中に、「戦前の教育」、「戦後の教育」、「教育の現状」という中で、ちょっと読みましょうか。一つは、「我が国の教育国家社会の発展の原動力となってきた。諸外国と比して初等中等教育の水準が高いことなどは評価されている。」二番目に、「他方、国際化への対応のおくれなどの問題があり、制度運用の画一性、硬直性による弊害が生じている。受験戦争やいじめ、青少年非行などの教育荒廃は憂慮すべき事態で、その根は学校、家庭、社会のあり方などと絡み合っている。」三番目は、「科学技術文明のもたらした物質中心主義と心の不在、自然との触れ合いの希薄化、生命を尊重する心の不足などの問題がある。」四番目に、「明治以降、欧米諸国へ追いつくことを国家目標の一つとし、教育も先進国の科学技術、制度の導入などを急速に推進するため効率性を重視し画一的なものになった。近年の我が国の教育は時代の変化と社会の要請に立ちおくれている。」こういうふうに出ているわけです。あえてこれを長々と読みましたが、文部省皆さんはこれはそらんじておられることだと思うのですけれども、何かこういう認識の上に立ってやらなければならぬなというものがなければならぬと思うのです。  率直に申し上げまして、前の塩川文部大臣を批判しどうこうするわけではなくて、逆に塩川大臣は、こういう問題がある、いじめ、非行あるいは学校教育水準、技術的、科学的にはまだよそと基礎的な部分でおくれているというようなことをかなり強く言っておられました。それと同じようにおっしゃってくださいというのではなくて、大臣が今の主として学校教育、それについてどのような御認識をお持ちになって、だからこそ今おっしゃった八項目をやるのだ、こういうことをお聞かせいただきたいと思うのです。
  20. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は、日本教育水準そのものは、初等中等を含めまして全体の水準は高いところにあると認識して間違いではないのではないかと思います。  ただ、今おっしゃいますように、明治以来全体の水準を早く高めたいという意欲が先に立ちまして、振り返ってみて画一的ではないかと言われますと、それを否定し得ない点がございます。特に、一方で社会そのものが成熟度を増しますと国際化、多様化、個性化をいたしてまいります。その社会の変化にみずから対応できるようなたくましく心豊かな青少年を育成する、そして八十年の人生を通して意義ある社会人として全うするということを考えますと、教育そのものがここで社会への対応を迫られておるであろう、それが前提となりまして臨時教育審議会で御審議をいただいた、そして画一性から個性重視の教育、こう打ち出されたわけでございまして、私は、教育そのものも、それは学校教育もそうでございますし生涯教育も社会の対応も含めまして、個性化、多様化を重視していくべき時期に来ておる、それに沿って今教育改革を進めるのである、このように認識をいたしております。
  21. 林保夫

    ○林(保)委員 そこで、個性化の問題は後にしまして、第二の視点に移りたいと思うのです。  国際化の問題でございますけれども、やはりこれだけ本当の意味で世の中が変わってきた。しかし、国際化というその化がついておる時代はまだお化けが出ているのです。本当の国際化になっていないと思うのです。それに追いつけ追い越せでいかなければならぬという立場にあると思うのです。しかし大臣の、教育程度が高いという認識、これは本当にそうだという断定なり確信なりを持てるのだろうかという疑問に対しましては、大臣はどのようにお答えになるでしょうか。
  22. 中島源太郎

    中島国務大臣 私は率直に申しまして、今も初等中等を含めてと申し上げたわけでございますが、概して日本教育が大きく分けてアメリカ型を志向したのだろうかイギリス型を志向したのだろうかということになりますと、全体の底辺を早く高めていくという点では、総体的に高めるという点ではアメリカ型を志向したかな。そういう中で、初等中等教育におきましては、特に小中学校におきましては、その充実度は世界的にも認められておると言っていいのではないかと思うのでございます。ただ高校から上になりますと、さて高校時代からそれぞれ専門化していっていいものであろうか、あるいはもうちょっと全体を高めるべきであろうか、それを受けて立つ大学あるいは大学院制度の中でそれが充実しておるだろうか、こういうことになりますと、率直に申し上げまして、高等教育におきましてはより活性化してしかるべきではないか、より高度化してしかるべきではないか。そういう面も含めまして現在大学審議会に諮問を申し上げまして、まさに高等教育をこれから活性化し、高度化し、個性化していくにはどのようにしたらいいか、御審議をいただいておるところでございます。  そういう意味では、全体に文部大臣として自信があるかと申されますと、むしろ、初等の方に自信はあるが上をもうちょっとしっかりせにゃいかぬのではないか、率直にそう考えます。
  23. 林保夫

    ○林(保)委員 実は私も大臣と同じ見解でございまして、上をもうちょっとしっかりしなければならぬのではないか、こういうことでございます。それは前々からも多少気づいておりましたけれども、諸外国に比べてどうかなという視点をひとつ、統計上の問題ですけれども、見ていくことも大事だと思うのです。  過般、これはNHKだったと思うのですが、テレビ放送されました中で、そこでは大学という言葉を使っていると思うのですが、本当は韓国の高等教育の進学率ですが、急速に高くなっている。しかもそれは国家目標にしてやっているという状況です。中国も、今は大変低いけれども学問に対する熱意が大変沸き起こっている。私も少し調べてみましたけれども、データ上日本は諸外国に比べてそんなにおくれているとは言えないと思いますが、この辺についての数字をお持ちでしたら事務当局の方から御説明をいただきたいと思います。進学率の問題と人口比の問題とあると思いますが、お手持ちのデータで結構でございます。
  24. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 大学への進学率についての日本と韓国の比較の数字でございますが、昭和六十二年度で比較をいたしますと、日本の場合には十八歳人口に対する四年制大学あるいは短期大学の進学率として三六・一%でございます。なお韓国の場合には同様の計算で進学率をはじきますと三二・九%ということで、かなり近い数字になっていようかと思います。
  25. 林保夫

    ○林(保)委員 そういう数字だと思います。ただ進学率ということになりますと、少し日本よりも高いというデータも出ていると思います。これは文部省の調べなので局長もお持ちだと思いますが、高校への進学は八二・五、大学への進学は四〇、日本が、高校への進学が九二・三、大学へが三五・六ですから、人口当たりということになりますと日本の方が実質上高いわけですけれども、高校から大学へ行くという進学率からいくともう既に韓国の方がかなり高くなっているというように認識していいと思うのですが、局長、間違いございませんでしょうか。
  26. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 高等学校卒業者の中で大学へ進学する者の率ということで別途計算をいたしますと、日本が四一・一%、韓国が三八・二%、毎年高等学校の卒業者数等が変わってきますので年度のとり方によって若干違ってくるケースがあるのかと思いますけれども昭和六十二年度で計算いたしますと、日本が四一・一%、韓国が三八・二%、どちらも大体四割前後というような数字に相なろうかと思います。
  27. 林保夫

    ○林(保)委員 新聞、テレビの報道よりも文部省さんの方が、文部省設置法の中にもきっちりそういうことを調べるということになっているので、確実な数字をお持ちだと思いますので、これは異論は唱えません。しかし、なお韓国に行かれた人の話あるいは新聞報道などで見ますと、韓国が大変教育援助を家庭及び子弟にやっておる。特に一九八六年に開校した韓国科学技術大学、KITというのだそうですが、これは約半数の学生が高校二年修了で飛び級入学者であって、授業料、食費を含めた寄宿料などは全額免除、そして月五万円の奨学金が支給される。しかも兵役の免除まである。そのかわり、教育関係とかそういう団体、会社などに卒業したら勤めなければならぬという義務を課しておるということになっておりますが、日本よりも大変手厚いやり方をしておるなという感じでございます。  日本と対比いたしまして、日本はいわば成熟社会でございますので、ほっておいてもみずからの資力とみずからの能力を持って入っていくという違いはありますけれども、これから教育改革を私どもが二十一世紀に向けて手がけていかなければならぬ場合には、こういうこともあるという事実を踏まえてやっていかなければならぬと思うのですが、阿部局長さん、諸外国で韓国みたいにやっているところは異例だと思いますけれども日本よりもっと恩典のあるところがいっぱいあると思うのです。そのことについては後で触れたいと思いますので、大体どんなお感じで見ていらっしゃるか。進学する場合の経済的あるいは社会的優遇措置が諸外国ではどのように出ておるか、それに対して日本はどうも低いのじゃないかという感じを私は持っているのですが、局長はどのように御判断しておられますか、それを先にお聞きして、その後で大臣の御見解を承りたいと思います。
  28. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 諸外国の育英・奨学制度あるいは授業料免除と申しますか授業料の徴収の有無といったことで比較してみますと、ヨーロッパ系統の例えばドイツ、フランスあるいはイギリスといった種類の大学につきましては、大学レベルでございますけれども授業料を取らない、あるいは授業料を取るけれどもそれについては別途の援助措置が講ぜられておる、また育英・奨学の制度等もかなり充実しておるというような傾向があると思います。ただ、大学への進学率は二〇%前後あるいは二〇%を若干超したかというぐらいのところで、ヨーロッパ諸国の場合には比較的少数の者に手厚い援護をするという形の大学進学に対する援助措置がとられておるというふうに感ずるわけでございます。これに対しましてアメリカあるいは日本というようなところは、私学が相当のウエートを占めておりますし、そういった意味では援業料等につきましては通常の額を徴収するという仕組みになっておりますが、育英・奨学の面につきましては遺憾ながら米国あたりの方が日本よりも充実した育英・奨学制度があるような印象はぬぐえないところだと考えております。
  29. 林保夫

    ○林(保)委員 今韓国のお話を申し上げましたが、局長の方からも、先進国はそんなに大きくはないようなお話がございました。それで、大学進学率が低いところはそれをふやそうという援助をしたりして努力をやっているように思うのですが、大臣はその辺日本がどのような立場にあるようにお考えになっておられますか、またこれからの方向をお聞かせいただきたい。
  30. 中島源太郎

    中島国務大臣 確かに教育の機会均等ということが非常に必要でございますので、できるならば教育費の家計上の負担は過大にならないように私ども気をつけていくのは当然であろうと思います。  諸外国の制度がどのようになっておるか、つぶさに世界の比較をいたしたわけではございませんが、ただ、日本の場合には私学の占める率が比較的多うございます。私学を例にとって保護者の負担というデータがございますが、先生御存じのように、私学の幼稚園ですと大体三十万前後、私学の高校で六十万前後という家計負担があるわけでございますので、これにつきましては、一方では、家計にお困りの方で優秀な生徒の方々を育英・奨学の方でできるだけ御面倒を見ていこう。もう一つは、消費支出に占める教育費の割合でございますけれども、平均いたしまして七・三%ぐらいと思いますが、特に四十五歳から四十九歳あたりは一二%を超えておりまして、たしか一二・四%ぐらいになっておると思います。そのように、消費支出の中で教育費の占める割合が多い年齢について、これは所得税減税が行われる場合にはその辺に特段の配慮をいただきつついくべきではないか。百九国会では一度行われましたけれども、今後も機会があればぜひその点の、教育費の負担が重いというような年代について特段の配慮は払われるべきではないかな、このように考えております。
  31. 林保夫

    ○林(保)委員 まさに大臣おっしゃいましたように、私も教育減税をこの際ぜひやるべきだ、この御注文を結論として申し上げようと思ったのですが、大臣のお口からはしなくもそれが出ました。  そこで、これは大臣も御承知だと思いますが、四十五歳から四十九歳、五十歳から五十四歳の教育費の年齢別負担を見ますと、これは総理府の統計でございますけれども、極端に上がっていますよね。これは人生の上では当然の負担でしょうから、そしてまた、教育は百年の計だとか国の基本的な重要課題だと言っているのならば、これは配慮するではなくて、当然政府みずからが進んで措置しなければならぬ問題だ、このように私は思うわけです。特に今日のように円高になって、御承知のように卸売・消費者物価が安定しているとか多少下がったとか申しますけれども、本来、諸外国から比べたら物価はその半分でもいいわけですよ、物価水準ということから申し上げますと。そこらあたりが、御承知の留学生問題とかあらゆる問題に関連してきておりまして、私は、新しい時代に機能しない政治、行政になってしまったなという実感を濃くしているわけです。  そういった中で、昨日取り寄せました総務庁統計局の家計指標を見ますと、大臣は今一二%と言われましたけれども、去年の十二月は教育関係が名目で一七・七、実質で一三・七という、よそがならされましたから余計に際立って出てきておる。これに対してどのような手を打っていくべきか、どういう思案をしておられるか、まず事務当局の方へ先に伺いたいと思います。
  32. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘の家計調査にもあらわれておりますように、四十五歳から四十九歳あたりの消費支出に占める教育関係支出の割合が大変高い、御指摘のとおりでございます。先ほど大臣からお答え申し上げましたように、こういうふうな教育費負担が過大になるということはぜひとも避けなければならない、教育の機会均等の理念を実現するためにもこれは重要なことでございます。  そこで、では具体にそれをどうするのかということでございますけれども、私どもが進めております策としては二つのアプローチがございます。  一つは、これは申すまでもなく歳出面のアプローチでございまして、例えば先ほど来お話のございますように育英奨学の問題でございますとか私学助成、そういった個人あるいは教育機関に対する補助を充実することによって負担の軽減を図るというのが第一でございます。負担の軽減を図るもう一つの方法はいわゆる税制上の措置でございまして、それだけの負担を持つ家庭に対して何らかの税制上の措置をとるべきではないか、こういうことでございます。その税制上の措置として、先ほど大臣お答え申し上げましたように、そういう教育費負担が非常にかかる年代層に対して所得税の軽減措置を講ずるということではなかろうかということでございまして、昨年の秋の国会でそういう趣旨で所得税の軽減について改正を見たということでございます。現在また引き続き税制の全体的な改革が進められておりますけれども、そういった観点からこの所得税の問題についての対応を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  33. 林保夫

    ○林(保)委員 事務当局が大変御努力しておられることは日ごろの接触でよくわかるのでございますけれども、何か大変厚い壁があって、大蔵省の方がうんと言わぬ。私どもの党といたしましてもかねてより教育減税をやれということでいろいろな提言をいたしてきております、これは皆さん御存じのとおりでございますが、何をやるかといいますと、学校へ納付する納付金ですね、授業料、入学金、これが主体だと思うのですが、加えて修学旅行、遠足、見学費、学級費、生徒会食費などを挙げておりますけれども、その柱になるものを、私らに言わせますと、文部事務官の判このついた領収証とかそういうきっちりしたものは、所得減税の中で基礎控除に入れることができるような方法をとれないものかと思いますけれども大臣はどのようにお考えになりますか。
  34. 中島源太郎

    中島国務大臣 お答えする前に、先ほど消費支出の中で教育費の占める割合を申し上げました。私の記憶で申し上げました数字は、六十一年度の全国勤労者世帯の数字で申し上げたということを付言いたしておきます。  それから、今申されました学納金でございますけれども、私どもは学納金そのものはできるだけ過大にならないように低く抑えられるようにということを望んでおりますし、また入学金以外の学納金は、速やかに納めるのを何とか少し弾力化して、そう急がなくてもというようには助言をいたしておるところでございます。ただ、学納金そのものに対する減免措置、こういう御質問であろうと思いますけれども、そういう点では、例えば義務教育だけで社会に出なければならないような青少年の方々もいらっしゃいますし、また一方で、学納金を納めるに至らない所得水準の方もいらっしゃいます。そういう方々への特典という面での整合性も考えなければいけませんので、そういう点をよく検討してまいりたいと思いますし、先生のおっしゃることが直ちに実現できるかどうか、これは慎重な御答弁にならざるを得ないと思います。
  35. 林保夫

    ○林(保)委員 その点がポイントなのでございますけれども、川村総務審議官からも、文部省がたびたび要求したのだけれどもなかなか大蔵省がうんと言わぬのだというお話、総務審議官ではなくていろいろな人からも聞いておりますが、その接点をといいますか、どういう対決になっておるのか、この機会にひとつはっきりとお示しいただきたいと思います。
  36. 川村恒明

    ○川村政府委員 ただいま御指摘のいわゆる教育費控除の問題でございますけれども先生から御指摘がございましたように、かつて文部省としても、そういう教育費の負担軽減を図る方策の一つとして、教育費控除という制度をつくってほしいということを要望してきたということがございます。これは昭和三十九年から五十二年ごろまでそういうお話を税務当局の方にもお願いをしておったということがございます。  ところが、この問題について考えてみると、教育費にお金がかかるということは、国民のいろいろな生活態様の中での一つのケースでございます。そういう国民がいろいろな生活をしておってお金が特定のケースにかかるというのは、これは必ずしも教育費だけではない。例えば寒いところに住んでおられる方には、寒冷地だから特別の暖房代が要るからその寒冷地の暖房代の控除もすべきであるとか、最近ふえております単身赴任というふうな生活形態をしている場合には、単身赴任に要する経費をどう考えるかというようなこともございまして、私どもとしては、もちろん教育費というのは家計の中で一番重い支出でございますから、これの控除をということは申し上げたわけでございますけれども、最近国民生活が非常に多様になってきている、その生活形態が多様になってくる中でそれぞれの事情に応じてそういう控除制度をつくっていくことは、税体系全体の中から見てもどうしても複雑なものにならざるを得ない。それから、先ほど大臣が申し上げましたように、一方において義務教育だけで働いておられる方をどうするのか、どういう税制考え方をとるのか、いろいろございますけれども、おおむねこれは公平・簡素なものであって中立的なものでなければならないという考え方に立つとすれば、先ほど申し上げたようないろいろな生活態様の中からいろいろな特定の要素を抽出するということは、簡素という概念と必ずしもなじまないであろうし、先ほどの義務教育を出ただけで働いておられる方の立場を考えると、公平という観点から見れば必ずしもそれが適正なものとは言えないのではないかというふうな御議論があるわけでございます。  そんな議論をずっと我々としてもやってまいりまして、それで、この問題につきましては臨教審でも非常に大きな問題としてお取り上げをいただいたわけでございますけれども、臨教審における審議でも、結局、そういう個別の控除方式というよりも、先ほど申し上げました中高年齢層のところに着目をして、そこの所得税の大幅な軽減を図るべきではないかという御提言をいただいたということでございまして、私どもはその臨教審の提言を受けてその中高年齢層に対する所得税の軽減ということをお願いして、それが先ほど申し上げましたように昨年の秋の国会で一部実現を見たということでございます。  昨年の秋にやっていただいたところで申し上げますと、例えば給与所得者の場合、夫婦二人・子供が二人いるという家庭の場合に年収八百万の収入がある、それに対して所得税と住民税がどれくらいかかるかということでございますけれども、昨年秋の改正を平年度ベースに直しますと、例えば年収八百万の家庭は改正前は所得税と住民税を合わせて約百二十万円ほどが課税される、それが改正後には平年度化された場合に百四万円くらいになるということでございますから、その軽減額が約十六万円くらいにはなる、率にしまして一四%くらいの軽減になろうかということでございまして、こういう趣旨制度改善が進められたというのは、従来の経緯から見れば大きな進展ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  37. 林保夫

    ○林(保)委員 不公平にならないように、不均衡にならないように、またそれぞれの折衝の経過はあると思うのでございますけれども、今大臣がおっしゃられましたような統計、この十二月の統計でも大変大きなあれになっておりますし、それから、教育国家百年の計だと言い、教育は国の基本だというようなことを言うのは、決して個人が子を育てていい跡継ぎをこしらえる、そしてそれができない人との不公平ではなくて、国全体としてやらなければならぬ国民を育てる課題であるという視点に立つならば、決して不公平とか不均衡とかという視点にはならないと思いますし、またそのことによって、進学できない人は親が頑張ってでもやってやろうというような気持ちになるのじゃないかと思いますので、大臣も、難しいけれどもこれから御努力される決意を示していただきたいと思います。  先ほど来申し上げているように、それぞれ各国々とも、韓国は韓国の、中国は中国の、米国はアメリカなりの、英国はイギリスなりの社会の成熟度に従った制度をつくっておる。日本も今や父兄負担が多大になっており、過日も新聞文部省調査だというので出ましたけれども、私大の納付金が入学時に百万円時代に入ったというのを見て、私の知り合いの多くの人が、これは大変な時代になったな、あなたも文教やっておるならこれを何とか抑えるような方向にいかぬのだろうかという提議がございました。  その一つは、今の父兄なり生徒が納めるお金の負担をどのように軽くするかという問題が一つ。それから、先ほどおっしゃられましたような文部省なりにあるいは国なりにこれに対して助成する、あるいは援助するという仕方が一つあると思います。それでもう一つあるのは、前回の委員会でも私は前の大臣に大分申し上げたこともあると思うのですが、いわゆる私学というのをとらえていくと一番わかりやすいのですが、国公立でもよろしいけれども、余りにも国民からの寄附が少な過ぎる。国際交流協会の河野理事長のところへ視察で行きましたときも、泣くように言っておられた、と言っては理事長に失礼でございますけれども、全く集まっておりません。そこらを総理なり文部大臣なりがひとつ腹組みをされて、こういう状況では成熟社会と言えないのではないか、ゆとりがあればここらを国として必要なんだから助けてくれ、こういう訴えを出してもいいように私は思うのです。  今三つの視点で申し上げましたが、それについてそれぞれの御見解を大臣からひとつお聞かせいただきたいと思います。
  38. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃる意味はよく理解できます。できるだけ教育の機会均等の上からも教育費負担が過大にならないことは私どもが常に心しなければならぬことでありますので、三つのうち、とにかく私どもは歳出面で頑張っていかなければいけない。それから育英・奨学の問題、あるいは私学助成の問題で、ことし六十三年度の予算を計上いたすにつきましても、格段の先生方からの御鞭撻も得まして、六十三年度は一応二十九億円増の四兆五千七百六十六億円で賄ってまいりますけれども、さらに今後とも来々年度に向かいましてはこの辺の格段の努力をいたす必要があろうと思っておりますし、また一方の税制面におきましても、先ほどの所得減税が行われる場合には教育費過重負担年齢層に対する特段の配慮というものをまず進めていくべきでありましょうし、また先生冒頭におっしゃいましたように、諸外国と比べてなお知恵を出せる余地はないのかということにつきましては、私も先生の御指摘を踏まえまして鋭意勉強をいたし、検討いたしたいと思います。
  39. 林保夫

    ○林(保)委員 ありがとうございました。私も大臣に倣いましてこれから勉強いたしまして、もう少し工夫しないと、ただ教育改革をやる、やると言いながら、実質が伴わないようではこれはどうにもなりませんので、さりとて今の現状がいいとはなかなか言えませんので、やはりよりよくするための大人の責任と世代の責任があると思うのです。ある以上は、そういうようなものを、御苦労でございますけれども文部大臣あるいは総理大臣が中心になってやっていただかなければならぬと思うのです。  きょうは多くは触れませんけれども、例えば私どもこういう立場でいろいろ仕事をしておりますと、文部省が幾ら努力してもし切れない問題があります。過日の中国における列車事故もそうでございましょうし、生徒が先生を刺したという問題、外国から来ている人が留学の意に燃えて来ながらも飢えて死ぬというような事態、そのほか社会で起こる青少年層の、学齢層の皆さんがやる問題、いろいろございますね。そこらの制度上の問題、制度外の問題は、私も政治をやっておりますから何分の一かの責任を負わなければならないし、特にそういうことでリーダーシップをとれる総理と文部大臣にはひとつ言うときにはきっちり言っていただきたい。やはり子供は大人を見て育ちますから、よく学校で言われているように、鉛筆一本、消しゴム一つ持って帰ってどうしてという声まで出たのでは教育になりませんので、ですから、そこらをきっちりやらなければ本当の意味教育の魂は入らないと私は思います。そういった視点でこれからも、先ほど合意いただきました教育費の負担の問題、それからもう一つはそういう大人の倫理というか姿勢の問題について、昔は割といろいろなことを言うていた人がおったのですけれども、今はなかなかお年寄りも、民主主義の時代で、子や孫を甘やかすわけではございませんけれども言わぬようになっております。そこらあたりでどっちがいいかわからぬような事態になっている。そこらあたりはひとつ、大臣に御苦労をかけるのでございますけれどもきっちり言うていただきたい。私どももそれにあやかってまたやる。こういうことにしたいと思いますが、大臣いかがでございましょうか。その点一つだけ、冒頭の質問といっても長くなりましたけれども、承っておきたいと思います。
  40. 中島源太郎

    中島国務大臣 御趣旨はよくわかりますので、勉強しつつ頑張ってまいりたいと思います。
  41. 林保夫

    ○林(保)委員 それで、今国会で私どもがやらなければならない八本の法案がございますし、ポスト臨教審の臨時教育改革推進会議、これらもございまして、容易ならぬ責任を負わされた時期だと思うのでございますが、時間が過ぎましたのでポイント主義で質問させていただきます。  まず一つは臨時教育改革推進会議、これは文部省の提出ではございませんけれども、なお大臣にひとつお願いしておきたいことがあるのでございます。いろいろな私どもの接触あるいは検討を通じまして、委員七名でございましたか、これを国会人事に格上げしていただきまして国会も共同の責任を負って、監視するだけじゃございませんけれども、一緒にやるような形にしていただくわけにはいかないでしょうかという質問でございますが、大臣いかがでございましょうか。
  42. 中島源太郎

    中島国務大臣 臨時教育改革推進会議について御質問でございました。この委員についての御質問でございますが、その前段でちょっと申し上げてお時間をいただきたいと思います。  この問題の前に、臨教審の三年間の御審議がございました。これはまさに国民的な視野で、そして国民的な合意を得つつ進める教育改革について御審議をいただいたものでございますから、この委員の任命につきましては、国会同意を得て委員方々を決めさせていただいて御審議をいただきました。そして、大変数多い御提案でございましたので、それを十分尊重いたしながら八項目にまとめまして閣議決定をいたしていただきましたので、今それを着実に進めることが私どもの任務だと心得ておると先ほど申したのですが、それはまさに文部省が進めるべき任務を負っておる。  ただ、その着実に進めるにつきまして、なお大所高所から御意見をいただきつつ、それがスムーズに進むように推進役をお務めいただく機関というふうな意味で、この臨時教育改革推進会議を総理府に置かせていただく、その意味は、教育改革を進める上におきまして各省の調整が必要になるであろう、そのときにいい意味での推進役になっていただこう、そういう希望があるわけでございます。したがいまして、臨教審の委員国会同意を得て決めさせていただいたわけでございますが、その流れで、今後の推進役だものでございますから、七名の委員国会同意をいただかなくてもこの推進役として十分な方々をお選びできるのではないか、このように考えて現在国会同意をお願いしておらないわけでございます。しかし、先生のお気持ちは、しっかりやれる人選をしてくださいという希望と御激励の意味で受け取らせていただきたいと思います。
  43. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のお気持ちはわかりました。私どもは、国会の同意人事にして国会に対する報告義務を負ってもらってしっかりやらなければ歯どめがかからないのではないだろうかというふうにも考えておりますので、これはまた別途相談させていただくことにしたいので、大臣のお気持ちはよくわかりました。  それと関連いたしましてなんでございますが、第十四期の中央教育審議会、これについて事務局はどういう構想を持っておられますか、お聞かせいただきたいと思います。
  44. 川村恒明

    ○川村政府委員 お尋ねの中央教育審議会でございますけれども、これは、文部省設置法に基づいて設置せられておる審議会、文部大臣の諮問機関でございます。  十四期というお話がございましたけれども、ちょうど昭和五十八年の十一月に委員の任期が切れまして、それ以来発令をしていない、委員お願いしていない、したがって、ほぼ四年近く活動を休止しておるというのが現在の状態でございます。  ただ、この中央教育審議会は、その法律に基づく所掌にございますように、これは教育学術文化に関する重要施策について文部大臣の諮問に応じて審議をする、こういうことでございますので、これから教育改革の推進その他、文教施策全体を推進していくときに必要な課題があれば、当然これは中央教育審議会にまた御審議お願いしなければならないということでございまして、そういうつもりで現在諸般の準備を進めておる、こういう状況でございます。
  45. 林保夫

    ○林(保)委員 これも、いわゆるポスト臨教審の問題だけで片づかない多くの問題があろうと思いますので、例えば懸案になっております九月入学の問題だとか、いろいろな問題がありますので、いずれは開かざるを得ないだろうと思います。  それからもう一つ聞きたいのですが、六年制中学の問題です。これはこのままで御決定になるのですか、それとも中教審あたりへもう一度かけるとか、何かの手続をとられるようにされるのですか。冒頭時間がなくてその辺を伺えませんでした。途中ですけれども、ついでにひとつ聞かせていただきたいと思います。
  46. 西崎清久

    西崎政府委員 昨日でございますが、中等教育改革の推進に関する調査研究協力者会議、吉本二郎先生が座長でございますが、この会議から、先生指摘の「六年制中等学校の在り方と課題について」という審議のお取りまとめをいただきました。  内容につきましては、本日報道も行われておりますが、六年制中等学校の意義と課題につきましてるる研究を進めていただき、その取りまとめをいただいた後、結論的に申しますと、今後の後期中等教育の問題につきましては、全体の問題として、例えば専修学校と高等学校の関係とかいろいろ課題があるわけでございます。それからもう一つは、設置者の動向もある。それらの点について十分行政当局、あるいはいろいろな検討の機会もあろうということで、直ちにというまだ御提言ではなくて、もう少し慎重に検討をしてはどうかというふうなお取りまとめになっておりますので、この協力者会議のまとめをいただいて、今後私どもも検討いたしますし、必要ある場合にはまたいろいろな各方面での御意見などもちょうだいしながら、この方向を踏まえて対処してまいりたい、こんなことで今考えておる次第でございます。
  47. 林保夫

    ○林(保)委員 局長、六年制中学校に移行したいというような具体的な希望そのほかで、ヒアリングもしておられるかどうかわかりませんけれども、どのような要請が教育現場から来ておりますか。その辺を少し御説明いただきたい。
  48. 西崎清久

    西崎政府委員 私どもも、この協力者会議の検討にあわせまして、各都道府県教育委員会、指定都市の教育委員会等ともずっと接触を保ち、ヒアリングをしてきたわけでございます。  まず第一点として申し上げられますことは、高等学校生徒のピークが昭和六十四年でございます。したがいまして、設置者としては六十四年のピークという問題をまだ抱えているプロセスではなかなかこの六年制中等学校の具体の設置についての計画が立てにくい、十分検討は進め研究はするが、その設置については六十四年のピークの後にしたいという御意向が非常に強うございます。しかし、中には具体的に、専門的な課程で考えてはどうかとか、専門的と申しますのは例えば体育とか外国語でございますね、あるいは普通科で考えてはどうかという御意見、複合的な形で考えてはどうか、さまざまでございます。都道府県もいろいろ内部で検討していただいておるわけでございますので、そのようないろいろなプロセスでの御意見はございますけれども、設置者としての具体の計画というものはまだちょうだいできていない段階でございます。
  49. 林保夫

    ○林(保)委員 同じように承りたいのですが、今度導入いたします新テスト、時間がないのではしょって申し上げますけれども、私学の参加が危ぶまれるという報道もございましたり、文部省も積極的に説明会をやったりなんかしておられますが、大体どんな状況でございましょうか、どの程度私学の参加を見込んでおられますでしょうか。
  50. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 昭和六十五年度からの入試改革ということを目指して準備を進めておるわけでございますけれども、この改革のねらいとするところは、学力検査一辺倒でなくて、受験生の能力、個性あるいは適性というものを多面的に判断する入試にしたいというものでございまして、そのための方策としていわゆる新テストということも考えられておるわけでございます。私どもといたしましては、こういった入試改革のねらいなりその趣旨なりについて各私学の十分な御理解をいただきたいということで、先般も説明会等も実施をいたしました。既に第一次の中間報告を出しまして以来、二年余りにわたって御検討をいただいてきております。  ただ、これにつきましてはことしの夏までに各大学でこれを利用するかどうかということを発表していただくということを予定しておりまして、それぞれの大学で現在検討中でございますので、何校入るかというたぐいのことにつきましては現在の段階では確言できないわけでございます。昨年の暮れに、全私学に対しましてこの問題についてどういうふうにお考えかという意向調査をいたしたわけでございますが、そのときの大体の状況といたしましては、何年から入るかどうかということは別にしても、この問題についていわば前向きという姿勢を示されたところが既に数十校あったわけでございます。  これが具体に昭和六十五年度の当初からどうなってくるかということは、まさにこれから夏までの間に各大学で最終的な詰めが行われるわけでございますけれども、できるだけこの制度趣旨が理解されて、多くの大学で利用されることを私どもとしては希望している次第でございます。
  51. 林保夫

    ○林(保)委員 現場がどうかということをあえて聞きましたのも、実は私もこういう立場ですので、割と積極的に歩いて見ています。そうすると、いろいろな意見がございまして、文部省のやることは全部正当性がないという意見もございますし、やはりやらなければならぬというのも入りまじっています。冒頭大臣に申し上げましたのも、リーダーシップをとっていただきたいという意味での話でございましたけれども、そういうものと関連いたしております。  その辺を踏まえまして、今度の新テストにつきましては私なりにはっきりと原稿にも書いたわけですけれども、十二月にテストを受けて、それをもとにして最終的に私学なら私学がやろうとすると結果的に三月末になりますよ。これではちょっと長過ぎるぞ、何とか短縮できぬだろうかという問題とか、これは今の教育制度とも関連しまして、九月入学でもあれば両方バランスがとれてやれるのじゃないだろうか、こういうこともありますので、これも議論すれば私も長い話をしなくてはなりませんのでまた後に譲るといたしまして、そういう中で、今受験生に聞いてみますと、どうなってもいいから早く内容を出してもらいたい、こういうようなことも出ておりますので、こういう声がありますことをひとつ率直に申し上げまして、大臣どういうふうにお考えになっておられるのか。今二つの問題ですが、六年制中学の問題と二つ、ちょっと大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  52. 中島源太郎

    中島国務大臣 たまたま六年制中学の問題も含めまして、引き続き新テストの御指摘もございました。  六年制中学問題はきのうおまとめをいただいたわけでございますので、これからよく検討をしていくところと政府委員お答えしたとおりでありますが、新テストにつきましても、その前段は、先ほど申し上げましたように個性化、多様化をしていく、それには学校教育自身が個性化、多様化を進めていくのと同時に、次の段階に移りますときに、受験者の個性、人間性、創造性をできるだけ引き出してテストできるような、そして各学校が建学の精神に基づきまして自由な選抜方法をしていただく、これが大前提でございます。そして、どのようにしたら自由な方法がとれるであろうか。例えば学校によっては学部によって小論文を出して検討するところもありましょうし、あるいはそれでもわからなければ直接面接をして受験者の方々の能力を引き出すというようなこともあろうと思いますが、ではそれを各教科においてできるであろうか、やはりそれをやる場合には教科が絞られてくるのではないだろうか。それぞれの学校で、うちの学校のこの学部はこういうテストをしたいという場合には、一教科あるいは二教科に絞られてくるであろう。ではそのほかの教科・科目についてどのようにしたらいいのであろうか。その場合には例えば新テストのこの部分を参考にいたしましょうというふうに、自由に参考にしていただくメニュー方式としてこれを御提案をしたらいいのではないか。これは要するに、協議会の先生方に御審議をいただきましておまとめをいただきましたので、私は、個性化、多様化のために新テストは有効だというおまとめをいただきまして、その進み方、ねらいというものを私学の方々にも十分理解していただくようにということで御説明申し上げ、御説明の機会を複数で持っておるわけでございまして、先生、ある場合にはしっかりやれという御激励でありますけれども、そういう面を踏まえまして、新テスト先にありきではなくて、個性化、多様化が先にあって、そのために新テストは有効であろうという実態を進み方の上で御理解いただくように努力をしたい、こう思っております。
  53. 林保夫

    ○林(保)委員 大臣のおっしゃるのはそのとおりだと思います。しかし受ける側としましては、これは天の声、地の声と言っていいのでしょうか、毎回変わってもうどうにもならぬという声がございますので、そこらあたりを大臣文部省皆さんにリーダーシップをとってもらってきっちりやっていただく以外にないのではないか。堂々めぐりの議論でございますけれども、ひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  それから次に移りまして、初任者研修制度でございますが、法案を用意されて、私ども審議しなきゃならぬ立場に立つと思いますが、今試行をやっておられましたが、どういう段取りになっておりますか、その辺を事務局から。
  54. 加戸守行

    ○加戸政府委員 初任者研修につきましては、臨教審答申を受けまして現在法案を提出さしていただいておりますが、その前段階といたしまして、昭和六十二年度から初任者研修の試行を各都道府県お願いいたしまして、現在三十六の都道府県・指定都市におきまして、二千百四十一名の新任教員を対象とした初任者研修の一年間にわたる試行を終了したところでございます。六十三年度につきましては、これを五十七都道府県・指定都市全部におきまして全校種について試行していただくということで、現在予算案で五十三億円の経費を計上いたしておりまして、予算成立後、この六十三年度におきます全国的な試行を実施していただくということでございます。  これらの試行の考え方といたしましては、いわゆる本格実施に向けまして、各種の初任者研修の問題点を解明し、そして具体的な本格実施へ円滑に移行できるような、そういう考え方のもとに試行をお願いしているわけでございます。
  55. 林保夫

    ○林(保)委員 この件、内容審議はまたこれからするといたしまして、私は、前回の大学審議会の設置に関する学校教育法でしたか、あの審議のときに塩川文部大臣にこういう質問をしたのです。これに関してやりなさいという陳情と、絶対やるな、反対だというのは幾らありますかと言ったら、よくわからぬとか知らぬとかいうようなことでございましたけれども、この初任者研修に関しまして中島文部大臣にも同じ質問をいたしましたら、いわゆる陳情が来ているか来てないか、その中の賛否がどうなっているかという質問を大臣にいたしますと、どういうことになりましょうか。
  56. 中島源太郎

    中島国務大臣 初任者研修につきましていろいろな御意見があることは承知をいたしておりますが、私へ直接には、これが賛成とか反対とか、個人的にあるいは書類でということは特にはございませんけれども一つのことを進めます間にいろいろな御意見があろうとは思います。  ただ、今局長も申しましたように、初任者研修というのはその前段に、教育は人づくりである、だからこそ国家の重要な政策であり百年の大計である、こう申し上げておるわけで、それを実際に行われる方は、これは人が人を教えるわけでございますから、しかも、それに当たられる教員の方々の資質というものは全国民がやはり大変期待もし、注目をしておると思いますので、特に初めて教鞭をとられる方にとりましてもこれは初めての経験であり、初めての教員という一つの社会人としての第一歩でございますから、この点で、基礎資質はございましても、さらにその上に実践的な指導力を養っていただく、幅広い知見を得ていただく、そして教育に対する意欲をみずから持っていただくという意味におきましては、指導力にすぐれた、そして実践活動を積み重ねられました先輩の知恵と指導を得られるということが教員の方々にとりましても大変有意義でありましょうし、また教わる生徒諸君にとってもそれは有意義なこと、幸せなことである、そのように私ども考えておりますので、限られた時間ではありますけれども、一年間、その初任者研修の実を上げていただく、そういう意味を含めまして、心を込めて百十二国会に法案を提出させていただいておりますので、これを御審議の上、御可決をいただきまして、ぜひ順調に進めさせていただきたい、このように考えております。
  57. 加戸守行

    ○加戸政府委員 関係団体の賛成、反対の状況についてちょっと補足させていただきます。  この初任者研修につきましては、当然のことではございますが、都道府県教育委員会あるいは市町村教育委員会の関係団体、あるいは各種学校の校長会、教頭会、それから教育関係のいろいろな団体、それから教職員団体からも賛成あるいは実現のための強い要請、要望等を受けておるわけでございますが、一方におきましてこの初任者研修に反対をする一部教職員団体の強い動きがあることも事実でございます。そういったような賛否両論のような形でいろいろな御意見等を承っております。
  58. 林保夫

    ○林(保)委員 今の御答弁で大体の雰囲気はわかりましたし、私どもは、初任者研修を進めるという党の方の方針もございまして、いろいろな陳情そのほかの声を今聞かしていただいておりますが、大学審議会の設置に関する法案のときと違いまして、大変多くのぜひやってくださいということが来ておりますので、これらの意見も聞きましてしっかり審査させていただきたい、このように考えております。  以上、とうとう時間が来てしまいましたが、最後大臣に、大変種々申し上げましたけれども、アンノーンといいますか未確定の問題、これこそ我々が解決しなければならない問題だというのが、文教課題の中には、国家百年の計と言われるだけに大変多いと私は思います。そういう意味文部省皆さんを含めまして御苦労をかけると思いますが、どうぞひとつしっかりリーダーシップをとるところはとっていただきましてやっていただきますよう、もう答弁は要りませんから、やっていただきますよう希望いたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  59. 中村靖

  60. 山原健二郎

    ○山原委員 石井議員の質問の冒頭を拝借しまして、理事皆さんのお認めをいただいて、高知学芸高等学校の中国における修学旅行団の遭難の問題について発言をいたしたいと思います。  この学校は全県に子供たちが散らばっておりまして、犠牲者の中にも各郡にまたがっております。したがって県民全体が何らかの関係を持っておりまして、そういう意味で高知県民全体が哀悼の意を表明しておるところでございます。私もこの場をかりまして、謹んで哀悼の意を表明し、またお見舞いを申し上げたいと思います。また、不眠不休で事に当たっていただいた佐野校長を初めとする学校関係者あるいは医療機関あるいは外務省その他の関係者皆さんに対しまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。また文部大臣におかれましては、急遽来県いただきましてお見舞いをいただいたことに対しまして、これまたお礼を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。  まだ悲しみのさなかでございますが、補償問題について二、三お伺いをしたいと思います。  現在、この問題につきまして、県あるいは学校、遺族などの間で共同の対策会議が持たれております。しかし、事は外国との関係でございますから、幾ら遺族の皆さんが御奮闘されましても、なかなか容易に解決できない面があるのではないかという大きな危惧の念があることはもちろんでございまして、その意味で日本国政府、特に文部省、外務省におかれましては、この遺族を含む関係者皆さんに対して期待にこたえる態度をぜひとっていただきたいと思います。その意味で今回、学校災害見舞金を極めて異例の早さで支給されるという措置をとられたことに対しましても、昨日の新聞を読みますと佐野校長も感謝の意を表明しておるところでございますが、こういう敏速な措置をとられたことに対しましてもお礼を申し上げる次第でございます。  そこで、一昨日問題になりました学校災害見舞金と、相手側の国が国家賠償金を出した場合にはこれが相殺をされるというお話があったわけでございますが、まさかそれではどなたも納得しないと思います。この点について外務省としてはどういうお考えを持っておられるか。外務省おいでいただいておりますが、いかがでしょうか。
  61. 中島源太郎

    中島国務大臣 お答えをいたします前に、お触れいただきました高知学芸高校の今回の事故についてでございますが、死傷者を数多く出しました大変不幸な出来事でございまして、私からも改めて亡くなられました方々に哀悼の意を表し、また、負傷なさいました方々の全快の一日も早からんことをお祈りを申し上げる次第でございます。  文部省といたしましても、事故の第一報が入りまして直後に、関係各省に連絡をとりまして、それぞれ上海、それから高知学芸高校に職員を派遣をいたしまして、事故現地学校並びに政府対応、この三位一体で事後処理に当たる態勢をとりまして、事故の翌日に対策本部をつくりまして、対応万遺漏なきを期させていただきました。  当然のことながら、私も各委員の御理解を得まして高知に参りまして、先生理事長その他にお会いする機会を得まして、心から哀悼と、並びに対策についての御報告を申し上げた次第でございまして、まことに当然のことながら、山原委員がわざわざそれにお触れをいただきまして、恐縮至極に存ずる次第でございます。それにつきましても、事後対策に万全を期すように今後も努力をいたしますことをまず冒頭に申し上げさせていただきまして、政府委員の答弁にかわりたいと思います。
  62. 田辺敏明

    ○田辺説明員 お答えいたします。  事件発生以来、外務省としてもできるだけのことはやらせてきていただいたつもりでございます。浜田政務次官にも現地に行って直接指揮をとっていただく等々やってまいりましたし、我々も、まさに自分たちの問題として受けとめて親身になってやってきたつもりでございますし、今後ともこの問題、そういうふうな姿勢でやっていきたい、こう考えております。  今の先生の御質問でございますけれども、中国の補償制度等について今検討している最中でございますが、その過程の中で、もし今先生が御指摘になったような何らかのいい便法があるならば、できるだけそういうふうなことが実現するように我々としても働きかけていきたい。今一生懸命検討している最中ということでございます。  今後ともよろしくお願いいたします。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣、ありがとうございました。わざわざ御発言いただいて感謝いたしますが、外務省の方にもう一問だけ。  いろいろの風評もあるわけで、週刊誌等を見ますと、外務省の方は、相手がああいう国情の違う国柄でございますので及び腰になるのではないかというふうな記事も出ておるわけでございます。まさかそういうことはないと思いますが、実質的にこの問題についての解決を見るまで最後まで努力をしていただけると思っておりますが、単なるメッセーンジャーではなくて、実質的にこの問題について解決をされるという御意思を持っているかどうかを伺っておきたいのです。
  64. 田辺敏明

    ○田辺説明員 先ほど親身になって御協力、御助力申し上げたいと申し上げたことは、まさに単なる御遺族の方の、内容を向こうに伝え、また向こうが言ったことをオウム返しに伝える、そういうメッセンジャーとしてとどまるのではなくて、もっと踏み込んで、できるだけの協力をやっていきたい、こういうことでございます。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  66. 中村靖

    中村委員長 石井郁子君。
  67. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 質問を予定しておりますテーマを最初に申し上げたいと思います。  高等教育に関係いたしまして授業料の値上げの問題です。それから、私立大学の問題を取り上げたいと思っています。続きまして、今大変話題になっておりますガンダーラ仏の真贋問題について。また、ちょっと内容は変わるのですけれども少年警察隊の問題について。最後に、高校社会科の解体問題について御質問したいと考えております。よろしくお願いいたします。  初めに、大臣の所信でも、高等教育の改革と充実が重要な課題であるというふうに述べられておりますけれども、国民にとって今最も切実で、また非常な重圧感となっているのは授業料問題だというふうに思います。高い学費は、臨教審でさえ家計の大きな圧迫原因と認めているものであります。  国立大学の学費は、八九年度授業料が三万六千円アップになりまして三十三万六千円です。その結果、初年度の納入金が五十一万六千円となり、ついに五十万円を突破する、こういう事態になっております。一九七〇年には学費は一万六千円でした。今回の値上げで実に三十二倍になります。この間の消費者物価の上昇が二・八倍ですから、異常な値上げと言わなくてはなりません。私学も百万円時代を迎えようとしています。将来に備えて子供が生まれる前から貯蓄を始める、学資保険で準備をする。国民生活白書を見ても、子供が大学を迎える四十代というのは家計が非常に赤字になっているということがございます。  大臣に伺いますが、このような事態は国民応分のものとお思いでしょうか。
  68. 中島源太郎

    中島国務大臣 二つ御指摘がありました。まず前提として、高等教育を活性化、充実化していくということが緊急の課題であると私も考えております。  一方におきまして、教育費、授業料その他含めまして、これが過大になりませんように、これは私どもは心しなければならぬと思います。ただ、各年と申しますか、社会の状況その他を含めまして授業料が逐次改定をされていく、今回また三千円程度上がる、こういうことでございまして、教育の機会均等の上から見ますとできるだけ負担が少ないことを望むわけでございます。  一方で、文部省がやらなければならない問題は、国公立ももちろん、それから私学の占める割合も七十数%になっておりますので、この点を文部省の方でどのように御協力できるか。その点では、少なくとも私学に対しましては私学助成あるいは向学の精神に燃える若者たちのために育英・奨学の道をさらに充実をしていく、そういう面での歳出面でより一層努力をいたさなければいかぬであろうと思います。  また一方で、税制面ではどうするか。先生おっしゃいますように、四十代後半に支出の中での教育費の負担が多いということもデータの上からも承知をいたしておりますので、所得税減税が行われる場合には、その特に教育費の負担が重いと感ずる年代層につきまして特段の配慮は行われるべきであろう。  せめて、そういう三方面でできるだけの努力をいたしていきたい、こう思っております。     〔委員長退席、鳩山(邦)委員長代理着席〕
  69. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 いろいろ述べられたわけですけれども、学生の家庭の実情をちょっと見てみますと、非常に変化が生まれています。  これは、東京地区の私大教職員連合が首都圏の私大に入学した学生の家庭の年間収入を調査したものですけれども、昨年春に入学した学生の家庭の年収は、税込みで一千万から一千五百万という層が全体の一四・六%で第一位であります。前年の調査では年収六百万から七百万が一五・四%で一位でありまして、年収一千万—一千五百万の層というのは三位だったわけです。ですから逆転したわけであります。また、年収八百万以下の層というのは、昭和六十二年度には六一・二%でありますけれども、これはさかのぼりますと五十九年度では七四・二%でありますから、大幅に減少しているわけですね。つまり、低所得者層が非常に大学からはみ出されているといいますか、行きにくくなっているということが非常に年々進んでいるわけであります。私は、これはやはり教育の機会均等の原則を実質上崩してきているというふうに言わざるを得ないと思うわけです。この点についてはいかがでしょうか。
  70. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 ただいまの御調査は多分東京地区についての調査だろうと思いますし、東京地区について特に家賃の値上がりその他で特別な事情にあるということ、御指摘のようなことはあり得ることだろうと思っております。  私どもといたしましては、いずれにいたしましても、家計の負担を著しく増加させることがないようにというような基本的な精神を持ちながら、大臣が先ほどお答えしましたように、育英・奨学の充実の問題、あるいは私学に対して助成を行って学費の値上げをできるだけ防いでいくというような諸般の措置を総合的に講じながらこれに対応していかなければならない、こういうふうに感じているところでございます。
  71. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 そもそも学費というのは無償制が原則ではないでしょうか。また世界的にもそれが趨勢だと思うのです。国際人権現約のA規約十三条の締結国は西ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー、オーストラリアですね。こういうところでは高等教育が無償実施、イギリスでは授業料の相当額が政府から大学に対して支出されております。社会主義諸国が完全無償であることは言うまでもありません。  その点で伺いますが、一九七九年に批准されながら保留となっています国際人権規約A規約十三条第二項C項、ここでは「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」こう書かれておりますが、この人権規約を批准していながらこのC項を保留しているのは、日本とアフリカのルワンダだけであります。まさに教育後進国だと言わなくてはなりません。一九七九年の第八十七国会でも、法的解釈は別にして、将来保留を解除する方向に努力する、こういうことがありますので、日本政府として当然この項の批准を行い、授業料の軽減措置をとるべきだというふうに考えます。そしてまた、これ以上の値上げは絶対すべきでないというふうに考えますが、その辺で文部省の決意のほどをちょっと伺いたいと思います。
  72. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 御指摘にございました国際人権規約の第十三条第二項C項は、高等教育の機会確保のためにとられる手段の一つとして、締約国が無償化を漸進的に実現することを求めているというものでございますが、我が国の現在の学校制度の体系というものは、先生御承知のように、私立学校について相当程度のウエートがかかった体制がとられております。特に高等教育の場合には七〇%から八〇%というウエートを私学が占めているというものでございますので、こういった高等教育について私学を含めて無償化を図っていくということは、我が国の高等教育のあり方の根本を覆すということに相なることでもございますので、現在の時点において、従来の方針を変更して漸進的にせよ無償化の方針をとるということは適当ではないということで留保しておるわけでございまして、この方針については変わりがないところでございます。  ただ、もちろんできるだけ高等教育の機会均等を図っていくということは大事なことでもございますので、先ほど来お答えを申し上げておりますように、政府の財政が大変厳しい時期ではございますけれども、私学助成の充実あるいは育英・奨学事業の整備といったような方向で、いわばそれを補助するような仕組みを整えていくべき鋭意努力をしているところでございます。
  73. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 文部省がそういう姿勢ではやはり大変困ると思うのですね。大学の授業料の問題についてもっと前向きに御検討されるべきだというふうに思います。  時間がありませんので、学生寮の値上げについて一言伺います。  六十三年度の予算では、学生寮の寄宿料、これが月額三百円から四百円。というのは、旧寮から新しい規格寮いろいろありまして、値上げが盛り込まれております。今回一斉値上げに踏み切った根拠をちょっと御説明いただきたいと思います。
  74. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 国立大学の寄宿料につきましては、従来から国家公務員宿舎の使用料を参考としながら、諸般の状況を総合的に判断をして改定を行ってきたところでございまして、昨六十二年の六月から公務員宿舎使用料が平均して約二五%程度アップと相なりました。こういったことを考慮して六十三年度四月から改定をすることにしたわけでございますが、この改定に当たりましては、実際の引き上げを行いましたのは、新新寮の場合で一〇%前後というような引き上げを行ったわけでございます。  なお、この機会に、非常に長い間、いわゆる旧寮、新寮につきましては例えば月額百円というような状態で据え置きになっておったわけでございますけれども、これらにつきましても一般住宅事情との対比等から考えましてやはり引き上げを行うべきであろうということで、公務員宿舎並みの計算方式等を用いて適正と思われる額に引き上げたわけでございまして、念のために申し上げますと、従来百円であったものについては月額四百円に引き上げたということでございます。
  75. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 三百円、四百円というのはわずかの額のようですけれども、実は学生寮の問題は非常に様子が変わってきているということなんですね。実は私も学生寮におりましたけれども、二十数年前では一月三千円で二食と光熱水費、そしてまた設備維持費というのですか、そういうことだったのですね。ところが、今は寄宿料が、旧寮は安いわけですけれども、新寮では二千四百円ですね。そのほかに光熱水費も自己負担となっているわけです。もちろん食事はこの中に入りません。ですから光熱水費、寄宿料、いわば部屋代的なものが丸々自己負担となっているわけです。私は、やはりこういう点で、文部行政というのが結局学生の勉学条件をかつてよりも後退させているということですね。学生に負担を転嫁しているという点では非常に問題だというふうに思うわけです。  しかも、この寮生負担が果たして寮生の寄宿舎の改善につながるのかどうかという点でいえば、寄宿舎の実態というのもいろいろ伺ってみますと、寮の食堂がないだとか、それからこんろも二百人に一人しかないだとか、洗濯機も二百人の寮に一台、こういうことです。これでは、一般の下宿代並みに上げるということですけれども、一般の下宿とはまるで条件が違うということがいろいろあるわけですね。そういう点で、時間がありませんのでこれ以上申し上げませんけれども、ぜひとも学生寮を完備する。殊に、今都心の地価暴騰で非常に下宿料も上がっています、賃貸料も高いという中では大事なことだというふうに考えるわけです。そういう点で、こういうところについて値上げをするのではなくて、大学での学生の勉学、また生活条件を整えるということこそが高等教育の充実ではないかというふうに思います。そういう点で私は、臨教審の教育改革がこういう点では非常に学生の生活を犠牲にしていくものだ、これは本来の高等教育改革とは言えないということを強く申し上げたいと思います。  続きまして私学の問題ですが、今局長も言われましたように、我が国では私立大学が高等教育に占める役割、果たしている役割が大変大きいわけです。そういう点で、この私立大学が文字どおり学校教育法に示された学術の中心として発展していくという点では、先ほど言われましたけれども、この私学助成の充実とともに、管理運営が民主的に行われているということが不可欠だというふうに思います。その点で、この管理運営の問題で非常にいろいろ問題を抱えているという大学が依然として後を絶ちません。  あの九州産業大学事件は重要な教訓を示したと思うのですけれども、その教訓は、経営と教学を混同しない、それぞれをきちっと確立するという点にあったと思うのですけれども、まずその点から伺いたいと思います。
  76. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私学の学校経営の問題でございますが、私学の学校経営の問題は、最終的にはどこが責任を負うかというとそれは理事会が責任を負うというそういう建前になっております。ただし、理事会が事柄を決定する場合に、教学に関係する事柄については、教学の関係者と十分意思の疎通を図り、教学の関係者の意向を尊重して運営していくことがこれまた私ども当然のことだというふうに考えておりまして、そういう観点から各大学に一般的な指導をしているところでございます。
  77. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 基本的なそういう筋が示されているわけですけれども、そのことが本当の意味で徹底されていれば私が今から取り上げるような問題は起きないと思うのですけれども、残念ながら非常に重要な事態がいろいろ起こっております。  ちょっと事例を挙げて申し上げますが、それは四天王寺国際仏教大学がございます。四天王寺という名前でわかりますように大阪ですけれども、聖徳太子のゆかりの寺ということで大変伝統も格式もあるわけですけれども、ここで非常に、これから申し上げますような問題があるわけです。  初めに伺いますけれども、大学には教員組織表がありますけれども、それはどのような性格のものと考えられていますか。
  78. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 教員組織表というのは、実際に教員を配置している実態を文書で明確にあらわしたものが教員組織表だと思います。
  79. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 教員組織表は、先ほどの御説明ですと、当然大学の教授会を経て文部省に届いている、こういうふうに考えてよろしいですね。
  80. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 各大学の教員組織表と申しますか、教員の名簿、担当科目等につきましては御報告を受ける仕組みにいたしております。
  81. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今昭和六十二年の大学の教員組織表をちょっと見ているのですけれども、この教員組織表に載っている教員はみんな専任教員というふうに考えてよろしいですか。
  82. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 その表を見ておりませんので何とも申し上げかねますが、専任の場合は専任、兼任の場合は兼任というふうに区分されているのが普通だと思います。
  83. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 これは文部省からいただいたのですよ。この資料ではその区別がありません。文部省は、だから当然全員が専任だというふうにこれを見て御理解されるわけですね。
  84. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 大学から提出があったものを差し上げたそうでございますので、専任の名簿であろう、こういうことのようでございます。
  85. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 そうすると大変なことなんですね。これは学内の先生に調べていただいたのですけれども、この中には昭和六十一年度所属一覧と比較しても専任でない教員が入っているわけです。十三名もございます。それからまた、ここでは五月一日現在となっていますが、五月一日現在ではまだ教授会でこの人事が決定もされていない、そういう方の名前も載っている。それから、この大学は四年制と短大を持っていますけれども、短大所属の人が大学にいる。また、大学の人が逆にこの表に含まれていない。つまり、大学の構成人員の正確なところは一体何なのかがこれではわからないということでもあるわけです。合計数で見てもこの当時で専任は四十八人、表には六十人になっている、こういうことはいいのですか。
  86. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 ちょっと質問の御趣旨がわからないのですが、私どもがいただいておる大学の教員組織表は、大学の方からいただいたものではございますけれども、今先生がお挙げになった六十名、これは四十何名だ、このそごの数字はよろしいかという、その六十名の数字の根拠がよくわかりませんが、いずれにしましても、こういう教員組織でもって教育活動を行っていく場合に、例えば私どもが全体としてこれでいいか悪いか判断する場合には、中身の問題ではございませんで、これらの教員組織で十分設置基準を満たしておるかどうかという観点から数字を見ざるを得ないわけでございます。いずれにしても、四十何名という数字とこの表に上がっておる六十名という数字とのそごの関係というのは、ちょっと今のところ私ども理解しておりません。
  87. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 これはもう設置基準に照らしても設置基準が守られていないということではないのですか。ですからここでは補助金の不正受給という問題も当然絡んでくるわけですね。私は既に昨年文部省にこういうことでいろいろと資料もいただきました。ですからその後文部省も大学といろいろコンタクトもとっているようですけれども、何らかの指導もされているようには思うわけですが、実際調べていく中で非常に重要な問題が幾つかあるわけです。  実は「怪文書の研究」というのがありまして、一九八七年の九月にこの大学の実態について暴露されています。設置基準の問題で言いますと、大学の設置にかかわって文部省への提出書類というのはでたらめこの上なしだ。だから、学生定員数に対して教員の数は出てくるわけですけれども、その必要な教員数が果たしてあるのかないのかという問題等々あるわけですね。  一つの例として社会学科の新設ですけれども昭和六十一年に新設されていますが、この新設に当たっても大学の教員に対しては実にでたらめな事柄が行われているわけです。これはその新設のときの書類ですけれども、「「履歴書」「教育研究業績書」提出について」という依頼文書です。しかし、ここではどの学科が新設されるのかは何も書いてないわけです。これをもらった先生方には、一体自分はどの学科の教員になるのかわからない書類になっているわけです。書類は提出させるがそのコピーもとらせない。そして認可がおりましたと初めて言われて、自分はどの学科の所属のどの専攻の教員だということがわかる。こんなことがありますか。だから、教授会の議は一切経ていない。書類の作成自身も教員には判を押させるだけだということが行われています。教員の担当教科も勝手につくり変えられるということであります。この社会学科というのは完成しないとまるで全貌がわからない、そういうものであります。  どうですか。だから、この怪文書によれば、この構成人員で毎年億単位の補助金が支給されているのじゃありませんか。こうした疑惑がある以上、この大学について補助金の使途及び学科新設の問題を洗い直すべきだというふうに思いますが、いかがですか。
  88. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私ども、学科新設につきましては適正な申請書で文部省に提出したというふうに承知はいたしておりますが、補助金の問題につきましては、補助金というのは、経常費助成というのは御承知のとおりに当該大学に所属する教員、それから在籍する学生定員内実員に着目して計算するわけでございまして、仮にその学校が設置基準上の基準に満たない先生しかいない、言いかえれば設置基準上五十人必要であるにもかかわらず専任教員が四十人しかいないという場合であっても、私ども補助金算定上は四十人の教官で算定をして補助金を出しているところでございます。では、その四十人と五十人の問題はどういう問題かといいますと、それはむしろ教務関係の指導として、設置基準から見て十人足りないからぜひとも早急に十人の専任教員を補強すべきであるという指導を一方でいたしますけれども、経常費助成は、現在おる専任教員、あるいは講師も含みますが、それから在籍学生定員内実員に着目いたしまして、その数字で補助金を算定しておりますので、補助金上不正があったというふうには直ちに私ども理解いたしておりません。
  89. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ただいまの御答弁は一般的には補助金がどのように支給されるものかということは述べられたと思いますけれども、この大学の実態に照らして、実態が果たして適正なのかどうかという点ではどうですか。そのことには触れていないわけでして、ぜひともこれは解明するという点でそれなりの文部省としての指導をするべきだということを申し上げているわけですけれども、いかがでしょうか。
  90. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 私どもとしては適正に補助金も算定されておるというふうに考えてはおりますけれども、せっかくの先生の御指摘でございますので、もう一度よく精査をしてみたいというふうに考えております。
  91. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 こうしたいろいろな問題が起こる根本には、申し上げましたように実は教授会がもう全く開かれていないというか、教授会の議を経ていないという問題があるわけですね。だから理事者側がもう一方的な強引な運営をしているということでありまして、私はやはり、最初に申し上げましたように経営と教学、これが混同されているということがこんな事態を起こしているし、名前を挙げて恐縮ですけれども、この奥田学長代理という方になってから特に運営がひどくなっているという点で、こういう非民主的な運営がほしいままにされているという事態がありますので、ぜひともこの奥田学長代理以降の大学の経営についてちょっと見直していただきたいというふうに思うわけです。  教授会が非常に無視されているという点でいいますと、こういう公開質問状を先生方が出される、おかしな話ですね。つまり、卒業生の認定というのは当然教授会の議を経なければいけないわけですけれども、卒業認定が教授会にもかからない。だから学生のだれが卒業したのかわからないということが起こっている。大学の先生がわからなくてどうするんですか。そういう点で、経営者に対して、理事会に対してこういう公開質問状を出していらっしゃるわけです。  また、カリキュラムにつきましても、もう思うままにというか、勝手に理事会が、学長代理が変えていく。だから、専門でないところにどんどん人が配属されるということになるわけですね。ある先生は四年間にわたって専門の授業を持たされない、別な自分の専門でないところに行かされる。これで一体大学の機能は果たせるのか、本当に教育に責任が負えるのかという点では、やはりちょっと考えられないようなことですね。そういう点で、本当に民主的な手続や運営を踏みにじっためちゃくちゃなことがありますので、それは補助金の問題とも絡んでくると私は思うのです。絡まざるを得ないと思います。  という点で、九州産業大学といえどもここまでひどくはなかったのではないかというふうにも思われます。明らかに学校教育法や学則に反することを行っているわけでありますので、そういう点でもこれはぜひとも文部省監督官庁としてきちっと指導すべきだというふうに強く申し上げたいと思います。御答弁を願います。
  92. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 先生指摘のような事実があればやはり問題だと思いますので、私ども関係者から十分事情を聞いて必要な指導はいたしたいというふうに考えております。
  93. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 最後に、その点でどのように指導されたのか、どういう実態文部省として明らかにされたのか、この委員会にぜひとも御報告いただきたいと思います。いかがですか。
  94. 坂元弘直

    ○坂元政府委員 今私が御答弁申し上げましたような趣旨で十分調査及び必要な指導をいたしました結果については、また後刻委員会なりあるいは先生に直接御報告いたします。
  95. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ぜひともよろしくお願いしたいと思います。  さて次に、ガンダーラ仏の問題について特に文化庁お尋ねをいたします。この問題は真贋論争というシビアな問題として今大変注目を浴びているわけですが、国会でも三月九日の予算分科会、また二十三日の法務委員会でも取り上げられました。所管の文教委員会でもあり、当然質問しなければならないと思ったわけであります。  このガンダーラ仏と申しますのは、昨年四月二十九日から五月三十一日まで、奈良国立博物館で「菩薩」特別展として中に出品されたものであります。この博覧会はそのころからマスコミでも話題になりましたので、そのせいかどうか、史上三位の参観者があったということを聞いております。本物かにせものかというシビアな問題ですから、マスコミも注目しているし、また参観者はもとより国民各層が関心を寄せている、当然明らかにしなければならない問題だと考えています。しかし、この問題をめぐるやりとりを見てみますと、どうも文化庁あるいは奈良国立博物館の対応は何かあいまいな点が非常に多い、問題にすること自体がおかしいという態度に終始しているように思われるわけです。  それで、まず大臣に伺いますが、三月九日に大臣は結論として、だれが見てもだれが聞いてももう少しわかりやすく検討したいと思うというふうに御答弁されておりますが、検討はどのようにされたでしょうか。
  96. 中島源太郎

    中島国務大臣 ガンダーラ仏はやはり文化的な一つの資産でございますから、それの真贋につきましては大変な関心がありますし、たしか分科会でもそのような御質問がありましてお答えをしたところでございます。  どのように進んでおるか、あるいは今後も進めるかということについては専門家からお答えをさせますが、その経過で、これは間違えるといけませんからちょっと読ませていただきますと、ガンダーラ仏の真贋については、特別展の終了後奈良国立博物館において開催された研究協議会において、贋作とは言えないという結論を得たようでございます。その後も亀廣記念医学会側において研究が続けられているということは聞いておりますが、報道などから判断する限り、贋作と決定づけるような事実はないと聞いておる。そういう経過を踏まえまして、さきの予算委員会で私からも奈良博物館においては贋作ではないと考えているということを述べたものでございまして、これから科学的にどのような精査をしていくのか、そして精査されたのか、今後どうであるか、これについては専門的にお答えを申し上げた方がいいと思いますので、政府委員からお答えをさせます。
  97. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 御指摘のガンダーラ仏につきましては、ただいま大臣からもお話がございましたように、昨年、オリエント博物館の田辺さんという方から展覧会の最中に贋作ではないかという御指摘がありまして、そういうことがあったものですから、七月に奈良国立博物館にこれを科学的、客観的な立場から検討するように指導いたしました。その結果として、その七月にただいま大臣が御答弁申し上げました研究協議会を開催したわけでございます。  そこでの一つの結論と申しますのは、これは田辺さんも入っておられまして、そのほかにインド・ガンダーラ美術史の専門家あるいは東洋考古学、彫刻技術あるいは文化財保存化学などの専門家八人から成る協議会でございましたけれども、田辺さんは仏像全体について贋作であるというふうな御主張をなさいましたが、ほかの方々は、一部に後で補った点は見られるものの仏像本体は贋作とは言えないという見解で一致したということでございます。  このような流れと、それからもう一つ、先ほど大臣からお答えいたしましたように、その後、今の方々がいろいろおっしゃっておられます。その点は新聞報道等ではある程度まとまっていろいろ報道されておるわけでございますが、そういったものに対しての奈良国立博物館の判断というものも、それがいずれも贋作を決定づけるような事実には当たらないというふうに言っております。  これをどういうふうに公表といいますか、国民に御理解いただくための手段をとるかということでございますが、私どもも、昨年七月の研究協議会の議論の内容については、いずれにしても国民の皆さんに御理解いただけるような形で整理をして発表するようにという方向で、奈良国立博物館を指導してまいったわけでございます。その一方で、この事件に関しまして国家賠償法に基づく訴訟が提起されまして、私どもその訴訟の当事者になったということもございますので、それとの関係もいろいろございますけれども、私どもとしては、今申し上げたように奈良国立博物館の考え方をまとめてというか、その議論の流れについては改めて整理をして公表するように、そういう方向で今現在指導しているところでございます。ただ、この協議会に御出席なさった方々の同意というものをとる必要もございますので、もうちょっと時間がかかるかもしれませんけれども、そういった方向でぜひ指導していきたいと考えております。
  98. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ちょっと御答弁の表現で確かめますが、贋作とは言えないという表現をされていますけれども、それはイコール本物であるということと考えていいのですか。
  99. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 研究協議会の結論については、それぞれの研究者の方々の御意見があって、そして最後に座長がまとめられたという形をとっておりまして、そこでは贋作とは言えないということだったので、それを受け取りまして、奈良博物館としては現在贋作ではないという判断をしているわけでございます。これは、贋作ではないということは本物であるということだと思います。
  100. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、文化庁次長の御答弁は非常に重大な御答弁だというふうに思いますね。今、研究協議会の議論、そして結論を文化庁の立場でお話しいただいたのですが、私は読ませていただきました。これは六十二年の七月十七日、国立博物館長名で記者発表の速記録というものがありますね。これは非公開でしたからわからないわけで、研究協議会の議事録も当然出してほしいということがありますけれども、それは見ることはできませんが、館長名で記者発表の速記録を当事者である亀廣氏へ送られているわけです。これは間違いありませんよね、奈良国立博物館側が作成したものですから。記者会見の内容も随分出ております。これを読む限りは、文化庁の御答弁とは百八十度違うのです。文化庁の御答弁では八人中、田辺さんは当然贋作を主張されている方ですね、その一人を除いて全員が贋作とは言えない、だから本物だと認めた、こういう御答弁ですけれども、この記録を読む限り、そういう言い方では私は大変研究者を冒涜するものではないかと思うのです。といいますのは、まとめとして最初に御報告された樋口座長は決して断定はしていません。これによって実はあれが本物かにせものかという断定はできない、できなかったと言っているわけです。そのことは最初と最後の二度にわたって述べていらっしゃいます。断定ができないのでいろいろ疑問も残る、これから明確にしていかなければいけない、こうおっしゃっているわけです。だから、当時はこういう記者発表でしたから、マスコミも決着はつかなかったというふうに主に新聞報道されたのではありませんか。ですから、これを読む限り、あれは本物であるという主張をされた方はお一人でありまして、ほかの方は、もちろん贋作と言う田辺さんも含めて残る方々は贋作とは言えないという形で、むしろ逆に言うと、積極的に本物だという主張はだれもされなかったのですよ。これが研究協議会の実態なんじゃないですか。  私は、文化庁はそういう全く結論をゆがめたような御答弁をすべきじゃないと思いますし、そして、この協議会に参加されている研究者の名前はわかっているわけですから、一体この研究者に対しても、これは一人一人研究者の生命がかかっているわけでして、そういう名誉に対してもそういうことで済ますわけにはいかないと思うのです。いかがですか。
  101. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 私も先ほどの御答弁で、研究協議会の結論としてどうであったかという御質問に対しては、それは贋作とは言えないという結論であったということを申し上げたつもりでございます。  それで、今先生も、樋口座長のまとめというものもそうであった、それから、私どももこの研究協議会の議事概要等を見ておりまして、それぞれの委員のまとめというものは、これはいろいろ言い方はございましてニュアンスはございますけれども、共通的にまとめるとすれば贋作とは言えないということだと思います。それで、そのこととそれから奈良国立博物館の現在の判断は一応別のことでございまして、この研究協議会の結論を一つの基礎といたしまして、それから、その後も奈良国立博物館のいろいろな知見に基づいて贋作であることの根拠に対していろいろ検討してみて、その総合的な結論として現在持っておりますのは、贋作ではない、そういうことを申しているわけでございます。これは奈良国立博物館の見解であるということでございます。
  102. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 研究協議会は、だから宿題というか課題を残して終わっているわけですから、どうなんですか、引き続いてこの協議会を再開というか開くという御予定はございませんか。
  103. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 この点につきまして、このガンダーラ仏の問題につきましては、本来学術的、科学的な検討をしていくべきものだと思いますが、これがだんだん、訴訟というようなことも起こっておりますし、これをめぐっていろいろな著述も出ておりまして、そういうところから考えてまいりますと、これを今こういう協議会というような形で判断をするのはいかがなものかと私どもは思います。しかし、奈良国立博物館のこの問題に対する判断についてはなるべくわかりやすく明らかにすべきだというふうにも思います。贋作だという御主張をなさっている方のその主張の根拠というものも、最近いろいろ整理されたものが出ておりますので、それに基づいて奈良国立博物館にそれに対する考え方をできるだけ早く明らかにするように私どもとしてはただいま指導しておりまして、先ほど申しました研究協議会における議論の内容の明確化ということとあわせて、奈良国立博物館の現在のそれぞれの根拠に対する考え方を明確にする方向指導していきたいと考えております。  それから、訴訟の提起がございます。これは大変残念なことでございますけれども、しかし私どもとしては、その訴訟の上でも誠実に私どもの主張を明らかにしていくという必要もあろうかと思っております。
  104. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 できるだけ早く明らかにしていきたいということで、それは大変結構だと思うのですが、そのためにも必要なデータは積極的に公表していくということが大事になってくるわけですね。そういう点で一つ、非常にこれもはっきりさせていただきたい問題があります。  今、ガンダーラ仏は古代オリエント博物館に移されておりますね。古代オリエント博物館が本物かにせものかを研究するために、政府の機関であります筑波の高エネルギー物理学研究所、そこで調査をしてほしいということで運び込んだわけです。これは昨年の十一月二十三日であります。しかしこの調査をめぐって、聞くところによりますと、文化庁は、調査をするなとかあるいは調査の発表についていろいろ条件をつけるとかしてとめる、そういうことをやっているのではありませんか。     〔鳩山(邦)委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 私どもとしては、そんなことは全く断じてございません。
  106. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 既にこれはNHKに放映されました。これがここへ運び込まれたことや、それから予備調査が行われた、この時点ではNHKは放映しているのですね。しかし次の日、本調査に入る段階で実は半日調査がストップしています。再開はされましたけれども、そのデータを民間の手に渡すなということで、ストップがかかっているという問題であります。高エネルギー物理学研究所の機械というのは日本にただ一つだということで、そこの調査結果が非常に重要になってくるわけでありますけれども、一体、国立の機関で調査をしたら結果を公表するのは当然でありますし、昨年十一月の段階でありますからもうデータも出ているわけですね。そういうことをなぜ公表を急がないのでしょうか。そうすると、文化庁の御答弁ですと、とめているのは高エネルギー物理学研究所の判断でとめているというふうに考えていいのでしょうか。
  107. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 これは私どもとは全くかかわらない話でございますので根本的によくわからないわけでございますが、前にこの高エネ研の問題について、まだ結果が出ていないということで、ごく最近でございますけれどもそういうお話がございまして、私どもで若干調べてみたところでは、共同研究という形で高エネ研でやられているのだそうでございます。したがいまして、これは高エネ研のいわば機関としてやっていると言えるかどうか。というよりも、この研究の遂行とか実施とかあるいは責任とかというものは、そういう共同研究していらっしゃる共同の研究者の方々にあるというふうに思います。したがいまして、その方々のいろいろな御判断によって、実際やられたかどうかもわかりませんけれども、その御判断によってこの事柄が動いているというふうに思います。私どもは全くこのことについては関与しておりませんので、わかりません。
  108. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 関与したら重大な話ですね、研究活動を妨害したということになりますからね。それはそうだと思うのですが、しかし事実は、そこで調査が行われていることは事実なんです。しかし結果は出ていない。  それではここで改めて伺いますが、文化庁として高エネルギー研究所に、その結果を早く何らかの形で依頼者に渡すように、渡すというか公表するようにということを御指導なさるべきではありませんか。
  109. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 これはいわば訴訟を受けていることでもあるわけでございますので、私どもとしてそういうような、文化庁が高エネ研に対して指導の関係というものももちろんございませんし、今のような関係もございますので、指導するというのはいかがなものかと思います。ただ、そういうお話がありますれば、私どもとしてもどういうことになっているかというような問い合わせといいますかそういうことはしてみたいとも思いますけれども、これは指導という関係ではもちろんないと思います。
  110. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この問題は、国民の目から見て一向にわかりにくいのは、文化庁も積極的に真実を明らかにするというふうには見えない。それから先ほど来のお答えでは、奈良博と略称しますけれども、奈良博が本物だと判断しているから文化庁もそうです、こういうことですね。いわば奈良博自身の対応というか見解が問題になるわけです。  そこで伺いますが、それでは、奈良博自身がこのガンダーラ仏をメーン展示とした根拠、つまり日本へこれを輸入をした、そして展示に値すると判断した、それなら奈良国立博物館自身がそのことをやはり国民に言うべきです。そういうこともされていないわけです。どうですか。一体奈良博がこれを本物として展示に踏み切った根拠、協議会以前の展示に至る経過、その点ではどのような手続とどういう根拠でこれをメーン展示としたのか、文化庁はどのようにつかんでいらっしゃるのですか。
  111. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 奈良国立博物館の、問題になっております特別展「菩薩」という昭和六十二年四月二十九日から五月三十一日まで開かれた展覧会についてでございますが、これは奈良国立博物館の特別展という形で昭和五十九年度ぐらいから準備をいたしまして、出品作品の候補のリストアップをするとかあるいは具体化のための事前調査をするとかというようなことを行っているわけでございます。  それで、この当該ガンダーラ仏につきましては、一九八五年から八六年にかけましてアメリカのクリーブランド美術館、それからニューヨークのアジア・ソサイエティー美術館で開催されましたクシャーン彫刻展というのがございまして、その際に展示をされた。そして、アメリカの代表的な東洋美術史家の多くによって高い評価を受けたという情報をカタログ等から得ておりまして、有力な展示候補の一つにしていたわけでございます。その後、昭和六十一年八月ごろにアメリカで開催しておりましたこちらの東大寺展に随伴をしておりました館員が、この作品について確認をいたしました。そしてその後も、六十二年一月に別の館具が渡米をいたしまして実査確認をしたということでございます。  通常、外国の作品について我が国の展覧会に出品といいますか展示をするというような場合には、大体こういうような外国で行われた権威ある美術展というものでどういう評価を受けたかということをまず調査をいたしまして、そしてさらに、一度は実際に現物について調査をするというような形をとって注意を払っているわけでございまして、この当該ガンダーラ仏につきましても、そういうような外国の作品を我が国に持ってきて展示をするという際の必要な注意というものは払われていたというふうに思います。
  112. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 文化庁はそういうふうに判断されているのでしょうけれども、これは非常に奇妙なことでして、このガンダーラ仏自身を展示するというふうに決めるに至って、専門家が実際に見たのかどうか、この目を通しているのかどうかという点では、そういう手続は踏まれていないのです。渡米されて一月に奈良博の館員が実物を見たということですが、この人はガンダーラ仏の専門家ではありません。それから外国の展示で、そしてクシャーン展で評価を得たということですが、それもカタログで見たということだけでありまして、そういうカタログを見て、所有者であるウォルフという人から、これは本物だ、信じなさい、私の言うことは信じてくださいということで、信じて決めている。すべて、この人が本物だと言ったから本物だろう、こういう経過で事柄が進んでいるのです。だから今日のような問題が起こったのだと思うのです。  私が伺っているのは、奈良博自身が本当にこれを本物だというふうに立証というか主張できる根拠として一体何があるのか。クシャーン展に出品された、それだけじゃないですか。ウォルフ氏が本物だと言っている、それしかないのですよ。そういうことでこの「菩薩」特別展のカタログもつくられています。このカタログの中には、解説の中にはこのガンダーラ仏は本物と、もちろんそのときはにせものと言うわけにはいかないでしょうけれども、そう断定をしておりまして、これは美術品として最高峰に位置する傑作の一つだ、こういう高い評価まで与えられているわけです。一体そういうふうに言える根拠は何なのかという問題があります。  それから出土地についても、ミンゴーラ出土というふうにここにははっきり断定をされています。しかし、断定をするような根拠は一体何があったのか。それは後になってこういう問題が起きてきて、いろいろ出て追及されてきて実はいろいろなことがわかってきた、これが実態なんですね。私は、国立博物館が、国の機関が展示する仕方としては非常にずさんなやり方だというふうに思います。  ちょっと急ぎますけれども、もう一つの問題は、今そういう問題が明らかになったのは、残念ながら売買をめぐる疑惑がいろいろ起きてきた、当事者がいろいろなことを申し立てるようになってからこういう問題になってきた。これは本来逆さまです。きちんとした手続を踏んでいればそういうことをしなくて済んでいるわけですけれども、こういう形になっているわけです。  そこで伺いますが、国立機関の職員がこういう古美術品の仲介とかあっせんというのは普通に行われていることなんでしょうか。
  113. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 このガンダーラ仏の職員が仲介したというようなことについての事実につきまして、奈良博にその照会をいたしました。奈良博の報告では、これは仲介したと言われる奈良博の室長でございますが、その室長が相手先に頼まれてアメリカの古美術商に対して照会をしたといいますか、そういう事実についていろいろ確認をした、そういうような個人的な便宜を計らったということがあるようでございますけれども、今の、公的な機関が私人間の取引の仲介をするということがあるかというお尋ねにつきましては、私どもは、それは公務員の職務としてできることではない、したがいましてこの場合は好意的な、個人的な立場でなされたものだというふうに考えております。
  114. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ところで、売買には契約書が一般に必要だと思うのですけれども、この件では契約書は発行されたのでしょうか。
  115. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 これは、契約の当事者が私人間でございますので、私どもとしてはそれはわからないことでございます。
  116. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 文化庁はこれから奈良博等と話をする場合に、国立博物館は国の機関でありますから、それを所管する官庁としてぜひともみずからの手で真相を解明すべきだというふうに私は思うのですけれども、残念ながら今の御答弁と対応ではまだそうなっていないということでありますが、実は文芸春秋、あと数日後に発売予定の五月号に、この問題で当事者が投稿されている原稿のゲラを私は入手いたしました。四月号には古代オリエント博物館の研究部長の田辺さんが論文を発表されておりますけれども、この五月号のゲラを読みますと驚くべき事実がいろいろあるわけです。ぜひとも雑誌が発行されてから御検討いただきたいと思うのです。  まず、所有者はアメリカのウォルフという人ですね。今あなたは普及室長が個人的な好意であっせんをした、こういう話ですが、展示は国立博物館として展示をされたのですね。その展示に至るところでは、この買ってほしいという話は実は奈良博の方からあったいうのですね。それで、あくまでも奈良博が仲介を一切行ってきたのではありませんか。ですから、所有者のウォルフという人は一貫して、これは奈良博に買ってもらうものだというふうに考えているわけです。そういう交渉をしてきたからです。  これは一月五日のこのウォルフという人の普及室長への手紙です。ここには「私のギャラリーと貴殿の博物館とのこの初取引が、心から長く楽しい友情の始まり」云々とある。だから、博物館にこれを売るんだというふうに書いているのですよ。これはその後もずっとそうなんですよ。そういう経過なんです。その買うはめになったと言っていいのかどうか、買うことになった亀廣氏という方も、奈良博だから、奈良博がいわば保証しているから買うということで、すべて話は奈良博という建物の中で進んでいるのですよ。館を挙げてその中で行われているのですよ。これがどうして個人の話ですか。個人だったらそんな博物館を使うことはできませんね。これは国家公務員としてどういうことなんですか。  そういう点では、幾つかの事実がほかにもあります。結局その売買が行われるようになってから、ウォルフという人には三分の一だけは支払われたわけですけれども、その後まだ支払いがないという点で督促が進むわけですね。そういう手紙もございます。こういう点では、ウォルフという人は、契約の実践はあなたに完全に責任がありますと言っている。この「あなた」というのは普及室長のことです。そして金利も請求しているわけです。それで困って、この普及室長が、何とかこれを本物だという断定をして早くこのけりをつけなければいけないというふうに考えて開いたのが、あの七月の研究協議会であったということじゃないのでしょうか。  実はその点でも、余りこういうことはしたくはなかったのですが、これはその普及室長のウォルフ氏あての手紙の下書きなんです。この中にそういうことが書いてございます。早く売買契約書を取り交わすことが必要だ、だから売買契約書を送ってくださいと六月十二日付でこれをしたためています。それから金利については、もう少し待ってください、今真贋問題が起きていますけれども、それについては七月三日に学術討論を行うことを決定しました、そこで決着をつけようと考えています、こう言っているのですね。これはどういうことですか。  そういう点では、私はやはり先ほど申し上げましたように、こんなことになる前に、奈良国立博物館当事者が、そして文化庁自身が真実を知っていたはずですから、もっと早くにきちんと手を打つべきだというふうに思うのです。これはどうしても、奈良国立博物館と文化庁のこの間の責任は免れないというふうに思います。だから問題がまだ残っているわけですね。そういうことを含めて文化庁はいかがですか。  その前に、もちろん輸入に当たっては館長名で鑑定書も出されていますね、税関を通すときに。ここでも、その館長名の鑑定書の中身は、これは本物です、だから通してほしいとある。しかし、そのときに館長はこれを見てもいないのですよ。それをそう鑑定書が書けるというのは、こんなことは日常茶飯にあるのだろうかという点では、私ども実は驚くわけであります。いかがですか。
  117. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 基本的にはそのガンダーラ仏の真贋をめぐる問題であろうというふうに思います。したがいまして、先ほど申しましたように、奈良博物館がこのガンダーラ仏の真贋について、その贋作だという主張に対する奈良博物館の見解につきまして詳細にできるだけ明らかになるように、国民の前に明らかにするような形で仕事をするように指導していきたいということは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから、今の通関手続のお話でございますけれども、これは関税定率法上の問題でございまして、外国からそういうものを輸入する際に、製作後百年以上たっているものにつきましては定率法上の助成の扱いを受けるということでございまして、その証明を博物館がしているわけでございます。その奈良国立博物館が自分のところで外国にある仏像を借用して出品するという場合には、当然これは博物館としてそれを証明する。しかし、このガンダーラ仏につきましては、実際の輸入者は亀廣さんという方であったわけでございますので、このことについては別の形でその証明がなされるべきであるわけでございますが、そのときに奈良博物館は、この仏像を亀廣さんから借用して特別展に出品する予定になっていたということもございまして、そこで好意的に館長名でその証明をしたということでございます。実際の輸入者は亀廣さんであり、また、通関料もその亀廣さんが負担しているということでございます。その点は、博物館が過度に関与したということではないというふうに思っております。
  118. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 何か好意的にだったら何でもできるんですか、国の機関は。それは非常におかしいと思うのですね。いろいろなことで真贋論争が起きてから、奈良博もいろいろ証拠を集めにかかっているということで、これは西川館長の手紙ですけれども、六月二日付で、この像はどこから手に入れたのかと展覧会が終わってからそれを聞いているんですね。一体ミンゴーラ出土とする根拠は何かと言っている。おかしいと思いませんか。このカタログにははっきりミンゴーラ出土と断定をしているのに、館長が、出土とする根拠は何かと、六月になって聞かなければいけない。これは国民から見たらとても信じられない話ですね。奈良国立博物館といえば大変学術的にも権威のあるところじゃないですか。やはりそういうずさんさがたくさんあるわけですね。出土についても、出土地がわからないものは大体考古学でも資料としては三等資料じゃないですか。ここではウォルフ氏は、ミンゴーラ近くの何とかで秘密の発掘人からある美術商が買って、その美術商から私は買いました、その美術商の名前を言うことはできませんということで、その時点でこれは盗掘品だということもはっきりしているんですよ。だから、この問題はパキスタン政府との関係の問題や、また、今なおまだ所有者だと主張されているウォルフ氏との問題もある。これは文化庁としてきちっと何らかの対応をしなければ、大変な国際問題にもなるのではありませんか。私は、少なくともこのカタログは、今の時点でこのまま続けて出していくとしたら国民をだましていることになるわけですね、ミンゴーラ出土とは言い切れないわけですから。そういう点では、本当に確かめもしないで、ここで高い評価を得ているからそれで信じました、一体日本文化行政というのはそんなものですか。研究者はそんなことでは勤まらないですね。私もちょっと研究者の端くれでしたけれども、やはり事実を確かめたりして、そうしてやるのじゃありませんか。そのことを失ったらもう研究者の生命は終わりだと思うんですね。  この問題は、いずれにしましても幾つかの大変重要な問題を含んでいるわけです。そういう点で、私は、奈良博とそして文化庁自身が積極的にこの問題の解明に取り組むべきだというふうに言いたいと思います。特に、この奈良国立博物館には六万数千人の参観者、子供たちももちろん入館しているわけです。だから、やはり真実を明らかにする、真実を隠ぺいするようなことがあってはならないと思うわけです。そういう点でも、こういうことが起こるいろいろな背景もあるんだろうと思うのですね。その一つは、文化庁の予算も大変少ないという苦慮もあるのじゃないかと思います。日本文化国家と言いながら、世界の国の中でも政府一般会計に占める割合が〇・一%にも満たないわけでしょう。〇・〇六七%ですね。そういう点では、そういう率直な苦労も含めてやはり国民にきちんと責任を負うべきだと思います。  大変時間がありませんので、もっといろいろ申し上げたいことがあるんですけれども、やはりこの問題も国会で明らかにしてほしいと思いますので、最後に、ちょっと大臣所見をぜひ伺いたいと思います。
  119. 横瀬庄次

    横瀬政府委員 先ほど申しましたように、奈良博の見解につきましてできるだけ早く明らかにするように努めてまいりたいと思っております。
  120. 中島源太郎

    中島国務大臣 御質疑を伺っておりまして、こういう問題は重要美術品をめぐることでございますから、やはり早く釈然としたいという気持ちは皆様もお持ちだと思いますので、今政府委員からお答えいたしましたように、奈良博の問題につきましてはしかるべく速やかに明らかにしたい、こういうことでございますので、私もそれを望んでおります。
  121. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 ぜひともその方向でよろしくお願いしたいと思います。  それでは、少年警察隊という問題で伺いたいと思うのです。警察庁を呼んでおりまして、大変お待たせして申しわけありません。  青少年が健全に育つようにということは国民すべての人たちが望んでいるところでありますし、そういう方向学校、地域、家庭もいろいろ努力をしていると思います。ところが、ジュニアポリス、少年警察隊あるいは少年防犯隊というような名称で、そういう組織がこの一、二年の間にといいますか全国にできつつあるわけです。まず文部省はそういう問題を承知していらっしゃるでしょうか。
  122. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 一部の県でそういう少年防犯隊のようなものがあるということは聞いております。
  123. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 警察庁はいかがですか。
  124. 遠藤豊孝

    遠藤(豊)説明員 委員の御質問にございました、我々防犯少年クラブと呼んでおりますが、地域における防犯活動をその活動内容一つとしております少年健全育成組織についてでございますが、全国におきましてこのような団体は二十七団体、把握してございます。  このいわゆる防犯少年クラブでございますが、地域社会の小学生あるいは中学生、こういった少年たちで構成されるものでございまして、地域社会が行う防犯活動あるいは社会奉仕活動等に少年の参加を求めまして、地域社会の一員としての活動を通じて少年の健全育成に資することを目的にしているものと承知しております。
  125. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 この組織の結成経過とか規約を見ますと、警察がみずからこの組織に非常に積極的に関与しているというか主導しているということが明らかですけれども、例えば現職の警察の方が学校訪問されて、ぜひともこういうものをつくりたいと言われたり、規約自身に、これは静岡の例でありますけれども事務所は静岡県警の少年課に置くとか、指導には少年課が当たるとかとはっきり書いてありますので、警察の関与という点は間違いありませんね。
  126. 遠藤豊孝

    遠藤(豊)説明員 静岡県の例について御説明をいたします。  当初、地元の警察署長が地域の方々に提案をいたしまして、それを地域の方々が採用され、地域の自治などが中心となって設立され、それがまた他の地域にも普及しているものと承知しております。  なお、地域の方々が具体的な設立準備を進める過程では、警察官からほかの事例等について御説明を申し上げたり、あるいは学校などに伺って御理解を得る努力をしていることと思います。  それから事務局を警察に置くあるいは警察の指導を受けるという規約の記載でございますが、まず事務局を警察に置くという規約でございますが、これは他に適当な場所がなかったために一部の団体におきまして警察署がこのような協力の仕方をしているものでございます。  それから警察の指導を受ける旨の規約上の表現でございますが、このような規約の有無にかかわらず、現地の警察におきましては、警察が少年の非行防止及び健全育成に携わる機関の一つであるということを認識いたしまして、地域住民の方々の自主性を尊重しつつ、必要に応じましてあるいは指導助言を申し上げ、あるいは御協力を申し上げている次第でございます。
  127. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 そうしますと、こういう組織をつくるということは、警察庁としては促進というかそういう方針で臨んでいるというふうに考えていいのでしょうか。
  128. 遠藤豊孝

    遠藤(豊)説明員 いわゆる防犯少年クラブでございますが、ただいまも申し上げましたように、地域社会の方々が中心となりまして、地域社会の活動に少年の参加を求め、あるいは地域の防犯活動、あるいは社会奉仕活動、こういった地域の一員としての活動を通じまして少年の健全育成に資することを目的としたものである、このように理解しております。  このような地域住民の方々の取り組みにつきましては、私どもは、少年の非行防止及び健全育成を図る上で好ましいものと評価しておりまして、かつ、これを推奨することとしております。また、現地の警察におきましても必要に応じまして指導あるいは協力を申し上げている、このように理解しております。
  129. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 非常にこれもはっきりしないのですけれども、そうしますと、こういう組織の責任というものは一体どこにあるのでしょうか。というのは、防犯活動というのは非常に危険を伴うような仕事だと思いますし、そういう事柄をしているときにいろいろな事故だって起こりかねないわけですね。それから子供の組織ですから当然指導も必要になってくるわけですが、一体だれが指導するのかというような問題。  それから学校にも関係してきているわけでして、そういう点で、一体この組織はそういう地域のいろいろな団体と警察と学校と一緒になってつくっている公的な性格のものなのか、それとも全く民間のものなのかという点でも非常にあいまいなんですね。その点では規約を見る限りでも、公的なようでもあるし、しかし何か地域の民間の人たちが非常に自発的にやっているもののようにも見えるのですが、そのあたりをひとつはっきりしていただきたいと思うのです。
  130. 遠藤豊孝

    遠藤(豊)説明員 御質問にございましたパトロールということでございますが、静岡県の例で申し上げますと、保護者それから地域の世話人の方々が少年と一緒に自動車に乗りまして月に一、二回程度、夜と申しても七時から八時ぐらいにかけまして町内を回って防犯を呼びかける、こういった活動のようでございます。少年がこういった活動に参加するに当たりましては、少年にふさわしい活動の範囲内で、かつ、保護者や地域の世話人の方々が付き添いまして、安全には十分な注意を払って行われていると承知しております。  このような活動は、地域の住民の方々の少年の健全育成を願う熱意のあらわれというふうに私ども評価しております。ただし、これが少年の健全育成を目的とした活動でございますので、少年が不幸にして事故に遭うことがないような特別の御配慮を必要に応じまして保護者や世話人の方々お願いをいたしております。
  131. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 これは重大な問題をはらんでいると思います。  これは警察のパンフレットですけれども、子供たちが警察の制服を着て、パトロールというか行進をしているわけですけれども大臣、初めてお聞きになったかもしれませんが、静岡では学校がこの結成の会場に使われたり、それから校長がそこに出席をしてあいさつをしたりという形でされているわけで、だから地域住民から見ると、学校そして警察挙げてこういうことをしているというふうに見えているわけですね。しかし、私はやはり本来そういうことをすべきでないというふうに考えています。そういう点で、時間がありませんので、ちょっと一言、大臣の御見解を伺っておきたいと思います。
  132. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘の点につきましては、手元で九月ごろの新聞を参考に見させていただきました。具体の例がございますが、現地の状況がどうであるかは詳しく存じておりませんけれども、その新聞紙面などを通して拝見いたしますと、これはある意味では非行防止、防犯ということで、かぎのない自転車に盗難防止のステッカーを張りましたり、そういう面では御苦労なことをいろいろやっておられるなとは一面で考えます。そういう発意は私はある意味で理解できると思うのですが、しかし行き過ぎがあってはいけませんので、この点では保護者の方々の御理解を十分に得ていることが必要であろうと思います。  また、今のパンフレットそのものは私は拝見しておらないのですが、そういう服装に関しまして、今お示しになったのを拝見しまして、それの一つのいい社会的な活動の例といたしまして、選挙管理委員会などではよくたすきをかけて、そして投票に行くことを勧めておられます。たすきがいいのか腕章がいいのか、何かその活動にふさわしいものがあるのだろうが、これまたよく地元あるいは社会活動とした上でも、保護者の方々あるいは少年少女御当人等、そこでよく合意を得て、ある意味でこの辺が適当かなということをよくお考えいただいておやりになったらいかがかな。それを今拝見したものですから、そういう率直な感想を持ちました。
  133. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 時間が来ましたので、本日の質問はこれで終わりにいたします。高校社会科についてもぜひとも申し上げたいことがあるのですけれども、また改めてお尋ねしたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
  134. 中村靖

    中村委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ────◇─────     午後二時四分開議
  135. 中村靖

    中村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。斉藤斗志二君。
  136. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 文部大臣の所信に対しまして幾つか質問をさせていただきたいというふうに思いますが、それに先立ちまして、先般、中国は上海での修学旅行における列車事故におきまして、高知学芸高校の多くの生徒並びに先生が亡くなられました。謹んで哀悼の意を表したいというふうに思います。また、けがをされた方も多数おられまして、お見舞いと一日も早い回復を祈りたいというふうに思うわけでございます。犠牲となられた方への補償につきましては十分なる対応をしていただきたい、そしてさらに再発防止に万全を期していただきたい、強く私の方からも要望お願いを申し上げておきたいというふうに思います。大臣にその決意だけお伺いしたいというふうに思います。
  137. 中島源太郎

    中島国務大臣 御指摘までもなく、今回の高知学芸高校の悲惨な痛ましい事故におきまして多数の死傷者を出しました。私からも冒頭に、亡くなられました方々の御冥福をお祈り申し上げ、同時に、負傷されました方々の一日も早い御全快をお祈りいたす次第でございます。  私ども事故の情報入手直後から、関係各省と連絡をとりまして、また、閣議におきましても各省の御協力を得るようにお願いをいたしまして、その後、現地上海あるいは高知学芸高校の方に職員を派遣いたしまして、現地とそれから学校とそれから政府対応と三位一体で事後処理に当たる、こういう態勢をとらしていただき、また事故の翌日、対策本部も設置をいたしました。  それで、今の後段にお述べになりました点につきましてでありますが、日本体育・学校健康センターからの災害共済給付、その中の死亡見舞金でございますが、実は早急に手続をとるようにという指示をいたしまして、おかげさまで昨日一人千四百万円でございますが、死亡見舞金をこちらから学校の方にお送りいたしました。したがって、学校の方から御遺族に対しましては、多分四月三日ごろと伺っておりますが、現金をお手渡しできる準備が整っておるわけでございます。  なお今後とも、まだ事後処理が多々ございましょうから、万全を期すように努力をいたします。
  138. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 大臣、ありがとうございます。大臣には、事故後すぐに高知の方にお飛びいただいたというようなこともお伺いしておりまして、大変感謝申し上げる次第でございます。  私は、現代の日本教育の状況、教育荒廃が盛んなる中、まさしく教育改革をしなければならないというふうに思っております。そういう中で中島文部大臣をお迎えいたしまして、大変前向きに教育行政に携わっておられるということで、私は大変心強く思っておるわけでございますが、御経歴を拝見させていただきますと大変多彩な御経歴をお持ちでいらっしゃいまして、私は大変すばらしい大臣をいただいてうれしいなという感じでありますが、ここで大臣教育哲学といいますか、教育に関しましてどのようなお考え、また、御自身がお子さんをお育てになられる、そういうことに当たりまして、どのようなお考えを持ってそういった教育に当たられたか、お聞きしたいと思います。
  139. 中島源太郎

    中島国務大臣 斉藤委員からわざわざ哲学をお聞きいただくほど、また、私にそれだけの人格も学識もございませんことを恥じますが、しかし一言で言えば、人生八十年の時代を迎えております今日、幼年期からその人生八十年をいかに意義ある社会人として過ごし全うするか、これがやはり人間の目的であろうと思うわけでございます。その限られた人生八十年の生命そのものが、また長い親から先祖の哀歓を経て現在の限られた生命がありますし、その生命はまた子々孫々につながる、その限られた一瞬の生命であるからこそ、自分の生命をとうとび、また同じ時期に珠玉のようにともっております幾多の生命を尊重する、そこにやはり道徳心というか公共心と申しますか連帯感と申しますか、そういうものの中で自分の将来像を描きながら、その将来像に一歩でも近づくために、砂が新しい水を吸い込むように日々新しい知識を吸収し、そして育っていくのが青年像のたくましさ、心豊かさであろうと思っておりますし、その中で、さらに社会自体が変化し、多様化し、個性化しておりますので、その社会の変化にも対応していける対応力がなければいけない。そのためには教育そのものが個性化、多様化に向かっていくべきであり、その中で、教育という名前を、強いて言うならば学校教育は生涯教育のごく基本的な基礎部分である、したがって、学校教育も大切であるけれども、生涯かけて学び加え、学び補っていくことが大切である、こういう理念に基づきまして、私どもは精いっぱい努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  140. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 大臣のプロフィールを読まさせていただきますと、「彫りの深い顔、均斉のとれた体は若いころ乗馬やボクシングで鍛えた故か。」とありまして、スポーツにもまた文化面にも、これは後ほど時間があれば質問させていただきたいと思いますが、映画をおつくりになったり、また著書に「個性的街づくり——ハイヒールと糞尿」という大変しゃれたタイトルで、しかしながら大変奥行きの深い御本も出版されておるということで、まさしく個性的であり、また近代的な大臣だということだと思います。「好きなプロ野球チーム」はというところを読みますと「個性あるチーム」というふうに書いてあるのですが、それでよろしいのですか、大臣。——私自身教育に多少携わってまいりましたけれども、私は親から、おまえはおれより偉くなれ、そういって育てられてきたわけでございます。多くの青年がやはりそうして育てられてきたのだと思います。私の親も多分、私からいえば祖父になりますけれども、おじいちゃん、おばあちゃんから、我々の世代より立派になれよ、こう激励されて育ってきたというふうに記憶しておるのであります。  ここで大臣のお父様、中島知久平氏大臣のことでちょっとお聞きしたいのでありますが、大変進取の気性に富んだ方でありまして、飛行機を最初におつくりになった方、そしてロマンに満ちた方という評価でありますが、明治に既にヨーロッパに渡り、ロンドン、パリで親しく航空事情をお調べになられたり、また明治末でしょうけれどもアメリカにもお渡りになっている。そういう点大変国際通でもあるということで、まさしくすばらしい大臣だなというふうに思うのであります。  そこでお聞きしたいのでありますが、私は中島源太郎大臣にはお父様よりもっと大きくなっていただきたいというふうに思うのでありますが、知久平大臣大臣を三回やられているのですね。記録によりますと、鉄道大臣、軍需大臣、続いて商工大臣と三回やられておるということですが、私から見ると、ぜひ大臣も一回だけじゃなくて四回くらいやっていただきたいという激励を申し上げたいのですが、ひとつ決意のほどをお聞きしたいと思います。
  141. 中島源太郎

    中島国務大臣 激励をいただいて大変恐縮、痛み入ります。ただ、私の父のことをお触れいただきましたが、父の時代は、すべての者が平和を希求しながら結局戦争を避けられなかった不幸な時代を経過をいたしております。もし私が父を乗り超えられる、あるいは私どもが父の代をお互いに乗り超えることができるその一番の使命感は、再び過ちを繰り返さない、再び戦争のない平和的な国家を維持し向上させる、それに日々献身できることが父親の時代をさらに超えていく一つの使命ではないか、そのように考えておりまして、そういう意味で頑張れということであれば、私は渾身の力を込めまして父の代を超えていくように頑張りたいと思います。
  142. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 大臣、ありがとうございます。それでは本題の教育改革に入りたいと思います。  今国会教育国会とも呼ばれるほど重要法案が多々あるということでございます。私は教育はまさに国家百年の大計であるというふうに思っておりまして、先般終了いたしましたけれども、臨時教育審議会の答申に沿ってこの教育改革が行われるものだというふうに信じております。それで、教育改革は今や審議の段階から実施の段階に至っておるという状況でありますが、今後どのような課題に重点を置いて教育改革を推進されていくのか、お考えをお聞きしたいというふうに思います。
  143. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるように臨時教育審議会で三年間の御審議をいただきました。  ただ、その前提が既にございまして、日本は、初中教育を中心といたしまして世界の教育の中で高い水準を保ってきたと私は考えております。しかし、翻って考えてみて、その教育が画一的ではなかったかと言われますと、それを否定するにややちゅうちょする面がございます。しかも、先ほど申したように社会そのものが多様化し、変化しておりますから、その社会の変化にも対応できるように教育自身が個性重視の教育を進めるべきだ。では、それはどのようにしたらいいのかということについて、三年間の御審議をいただき、数多くの御指摘をいただき、その御指摘を受けまして、当面進めるべき八項目に絞りまして閣議決定をしていただいております。  その第一点は生涯学習の点でありますし、それから初中教育、高等教育の充実・活性化を含めまして御指摘をいただき、そして、閣議決定をいただきました面をスムーズに、着実に進めることが私どもに課せられた任務であり課題である、このように考えまして、その線に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  144. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 中曽根前内閣のときに臨教審答申が出されたわけであります。そのときも、答申に関しては最大限尊重するという内閣の方針でございました。現内閣でもその方針に基づいてぜひ力強くこの教育改革を進ませていただきたいというふうに思うわけであります。  今大臣が触れられました生涯学習の振興でございますけれども、まさしく今までは学校教育が社会教育に比べてどちらかというとウエートが高かったような感じがいたします。これは相対比較でありますが、そういう感じがいたしておりましたが、やはり全ステージにおいて人生の全段階におきまして、そしてあらゆる場所でそういった教育が行われなくてはならない。そういう意味では、いつでも、どこでも、だれにでも幅広い教育がなされる、それがまさに生涯学習体系への移行を目指すものだと私は思っております。  そこで、教育基本法の初めに「教育目的」というのがございますが、大臣教育目的というのはどのようにお考えでいらっしゃるか、お聞きしたい。
  145. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃいますように、これから教育を進めるその根底は教育基本法にございます。そして教育基本法は日本憲法にのっとっておる、こういうことでございまして、第一条に「教育目的」としては、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」こうございますが、その第一条の前段に、憲法に示されたこのような理想的な国家を担うものは、その中心は教育であるというふうに教育を位置づけられておる。この教育基本法の精神を特に貫いて私どもは努力していかなければならない、このように考えております。
  146. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今、生涯学習体系への移行への決意をお聞きしたわけでありますが、文部省では現在社会教育局というのがある。しかしながら、これを近々生涯学習局に組織がえをするやにお聞きしておるのでありますけれども、私はそれは文部省としての意気込みを感じさせるものだと思っておりますが、その組織変更等々は間違いございませんでしょうか。
  147. 齋藤諦淳

    ○齋藤(諦)政府委員 この七月一日を予定いたしまして文部省の組織編成がございまして、社会教育局を生涯学習局として第一局にする、こういう組織編成について予算をお願いし、なお政令の改正を準備しているところでございます。
  148. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 国民が期待している生涯学習体系への移行でございますので、文部省、先頭に立ってぜひ頑張ってくださることをお願い申し上げておきます。  与えられた時間が余りないので、少しはしょって前へ進ませていただきますけれども、心豊かでたくましい青少年の育成ということがこの所信の中でもうたわれておるわけでありますけれども大臣は就任以来、心豊かでたくましい青少年の育成を強調されておられます。確かに体格等々は立派にはなっておるのですが、体力とか運動能力がうまく整っていない、しかしながら精神力も十分でない、どちらかというと過保護に育ってきたのが現代青年ではないかなというふうに思うわけであります。また青少年の非行、いじめ等の問題行動は一時期に比べて減少しているものの、依然大きな社会問題だというふうに私どもとらえております。したがいまして、二十一世紀の我が国を担う心豊かでたくましい青少年を育成することは、まさしく国家の重要な責務であるというふうに思いますが、今後どのような施策を講じられていくのか、お聞きいたしたい。
  149. 中島源太郎

    中島国務大臣 教育内容の具体的な面は政府委員からお答えをいたさせますが、たくましく心豊かな青少年をつくる、これには三つの方法があろうかと思います。  もちろんスポーツに親しみながら、心豊かなという面では、先ほど申しましたように、自分の存在に対する尊重と同時に、他の幾多の生命と存在に対して尊重をする、こういう心の上では道徳教育を中心にそれを進めてまいる、こういう点が一つ。同時に、教室の中から自然に親しむような教育を展開をする、こういう点が一つございます。三つ目の点は、そういういじめその他の非行の中からは、そこに走る以前にやはり少年少女諸君の心から出たいろいろなシグナルがあると思うのでございますが、そのシグナルを見落とさずに吸収して対応できるような資質の高い教師像が求められる、このように思っておりますので、私どもは道徳の問題、それから教育内容の問題、同時に教師像の問題、この三つが総合されて、もちろんまたその周辺には学校と社会と家庭というものがございますが、それらが総合されてつくられていくべきもの、このように考えております。
  150. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今大臣にお聞きいたしまして、大変的確な方針を述べられていると私は思いますが、青少年にとりまして教育環境の整備ということも十分配慮されなければならないのだというふうに思います。  まず四十人学級の整備でありますけれども教育の大事な一時期に四十人学級に触れないで卒業されてしまう生徒もおるわけでございまして、ぜひ計画にのっとって間違いなく整備を遂行されるようお願いを申し上げたい。その整備の問題、四十人学級、これを間違いなくやっていただけるかどうか。  それからもう一つ、過大規模校の解消、これもやはり非行との非常に大きな関連がありまして、どうしても面倒を見切れない、手が届かないところが非行とか教育荒廃の原因の一つだという指摘がございます。  この二点、四十人学級と過大規模校の問題についてお伺いしたい。
  151. 加戸守行

    ○加戸政府委員 四十人学級の問題につきましては、昭和五十五年にスタートいたしました第五次教職員定数改善計画の中で進捗しているところでございますが、御承知のように、小学校につきましては、五十五年のスタートの時点で、人口減少市町村の小学校につきまして第一学年からスタートし、ちょっと途中足踏みがございましたが、昭和六十年度で完成いたしております。そして、昭和六十一年度からその他の市町村につきましての第一学年から四十人学級を実施しているところでございまして、現在六十三年度になりますので第三学年まで進行いたしております。これを引き続き昭和六十四年から六十六年にかけまして、第四学年、第五学年、第六学年という形で完成させる予定でございます。  それから一方、中学校につきましては、昭和六十一年から人口減少市町村の第一学年をスタートさせておりまして、現在第三学年に向かうところでございます。六十三年度ではこれが完成するわけでございますので、六十四年度からはその他の人口減少市町村以外の市町村におきます中学校の第一学年をスタートさせ、六十六年で完成をするという形で今計画の着実な実施に努めている段階でございます。  それから過大規模校の問題でございますが、ピークでございました昭和五十七年度に比べますと約半減をしておるわけでございますが、依然千数百校残っております。これにつきましては、分離のための用地取得費の補助等も行いまして、早期の解消に努力しておるわけでございますが、これから児童生徒数も減少する方向に向かっておりますので、今の過大規模校と言われておりますもののうちの約八割以上はおおむね解消の目途がついているという状況でございます。今後ともまた努力してまいりたいと思っております。
  152. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 教育環境の整備の中で「高等学校教育の多様化・弾力化を推進するため、高等学校の定時制・通信制課程の修業年限の弾力化を図る」という項がございます。私は、まさしく時代の要請だなというふうに思っておるのですが、大事なことの一つに、教育水準を、例えば今定時制は四年以上ということになっているのですが、これを三年以上というようなことになるのだろうというふうに思いますが、その際には教育水準の低下等々は招かないのだ、それは時代がきちっと対応できるのだ、また環境がきちっと対応できるのだというふうに私は思っておるのですが、教育水準の低下という点についてだけお聞きしたい。
  153. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘の点につきましては、法案を提出させていただいておりますが、私ども考え方といたしましては、まさに先生おっしゃいますように、定時制四年の場合が三年になったというときに水準が低下してはならない、それが原則でございまして、その保証といたしましては、卒業の要件としての高等学校の八十単位、これは必ず従来どおり取得して卒業、こういう考え方を持っておりますので、その点については十分配慮しながら、三年間で卒業できるような措置を講じてまいりたい、こういう考え方でおる次第でございます。
  154. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 青少年の環境整備の中で、やはり年齢に応じての教育環境ということも大事だと私は思うのです。今試行中だというふうにお伺いしておりますけれども、例えば小学校低学年の一、二年の社会、理科を一緒にして生活科をつくるとか、そういうようなことを文部行政の中で鋭意努められていることを私は評価したいというふうに思っております。しかしながら、先生とか教科書とか、それが質の高いもの、またふさわしいものでなければ教育の実効は上がらないというふうに思っております。そこで教科書及び補助教材に関してでありますが、これは要望だけ申し上げておきます。次代を担う心身ともに健全な国民を育成するためには、どうしてもその学習指導要領にのっとった適正な教科書並びに補助教材を使うことによって教育の質を高めていただきたい、要望として申し上げておきます。  次に、教員の資質向上についてでございますが、実は最近の大手新聞に「学校教育改善へ強い期待」という世論調査が載っておりまして、一番大きな「学校教育への不満」を項目別に内容を見ますと、「教師の質に不満」というのが一番高いのですね。どうしても教師の資質向上というのは最優先にとらえなければならない課題だと私は思っております。そういう中で初任者研修とか現職研修とかいうことが出てきているのだというふうに思いますが、この初任者研修はどうしても取り組む大きな課題であるというふうに思っておりますので、大臣、その決意をお聞き申し上げたい。
  155. 中島源太郎

    中島国務大臣 おっしゃるように、人づくりに携わる教職員、これは教育は人なりという言葉もございまして、教職員の方々の資質の向上というものは、これまた教員が生涯を通じて日々刻々努力をされるべきこと、このように考えております。特に初めて教鞭をおとりになる教員の方々にとりましては、基礎資質はございましょうけれども、さらに実践に応じた指導力を身につけていただく、あるいは広い知見を備えていただく、そして教育に対してさらに意欲を持っていただくという面で、初任の間に円熟した先輩の指導を受けるということはごく大切なことであろうと思いますので、一年間という限られた期間でございますが、初任者の方々に対して研修期間を設ける、そういう意味で今国会にも法律を提出をいたしておりますので、御審議の上、速やかに御理解をいただきまして成立をし、これが進められるようにということを願っておるところでございます。
  156. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 実は三月二十三日の新聞をお持ちしたのでありますが、学校に関して二つの殺人事件が起きておるわけでございます。大臣もこれは御承知かと思いますが、一つは、教え子に先生が殺されてしまった気の毒なケースでございます。先生の御冥福を祈りたいというふうに思いますけれども、もう一つは、逆に中学の先生が夫婦を刺殺したと書いてあるのですね。これは同じ新聞ですけれども、このケース、まさしく先生への不信の念を与えるものだと私は思うのですね。こういう状況が起こるということは非常に嘆かわしい、残念なことだというふうに思っております。  この淡路島の食堂の件と申したらよろしいのでしょうか、これは教育委員会なり文部省は、この教師に対して、この事後にどのような処置をとられたか、お聞きをしたい。
  157. 加戸守行

    ○加戸政府委員 現在、その事件が発生いたしまして、警察におきます措置が行われておる段階でございまして、その状況、事実関係等が判明してから教育委員会対応する考えのように聞いております。
  158. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 このケースは、非常に国民の先生に対する不信を植えつけさせたということで、大変残念なことだと私は思っております。そして、実はこの初任者研修につきましても、どうしても創設して教員の資質向上を図ってほしいということで、これは一部ですが、私のところにこれだけの要望書が来ているのですね。国民の多くが期待をしておるということで、ぜひ早い機会の導入をお願い申し上げたいわけでございます。  この殺人事件のケースをとりますと、私は、同じキョウシはキョウシでもこういう「狂師」になってしまう。本当に先生は生徒の鏡である、そういった教師になっていただきたいのだけれども、まさしく狂った教師になってしまうのじゃないか。こういう日本語があるかどうかわかりませんけれども、この上の「教師」が本当の教師で、殺人を起こすような教師は下の方の「狂師」ですから、こういう先生をつくっちゃならぬということで、ぜひこの初任者研修の導入を早くお願い申し上げたいというふうに思います。  もう一つ関連して申しますが、日教組でポスターがつくられるという新聞記事を目にしたのであります。ちょっと読みますと、どういうイントロかといいますと、「一年半にわたった内紛でしみついた暗いイメージを払しょくしようと、日教組は三十日、」、これは三十日に発表したポスターの件ということでありますけれども、このタイトルが「ふれ愛 大切にしたいから 先生いかないで」、こういうようなキャッチフレーズでつくられているのです。私はこれはどんなものかなというふうに思っておりまして、「ふれ愛 大切にしたいから 先生いかないで」、これは「先生、日教組へ行かないで」、こういう意味にもとれないこともないなと思っておるわけでありますが、……(発言する者あり)この中で、こういう指摘もあるのですね。「初任者研修の余波で生徒は自習ばかりの状況を示す」というようなことが書いてある。こんなことはないのだと私は思うのでありますが、これは事実関係、たしかこういう状況ではないんだというふうに思うので、その点をただしたいと思います。
  159. 加戸守行

    ○加戸政府委員 ただいま試行いたしております初任者研修の内容といたしましては、七十日間のいわゆる指導教員によります校内研修並びに三十五日間の教育センター等におきます校外研修を想定して、おおむねこのような幅で各三十六都道府県、指定都市が試行をいただいておるわけでございます。  この校外研修と申しますのは、教育センターにおきます講義、そのほか養護学校等の他校種、青年の家等の社会教育施設あるいは教護院等の児童福祉施設等にもお出かけいただきますし、企業等の参加もしていただく、それから宿泊研修等によりまして教員の触れ合いを通じる、こういういわゆる所属を超えた形で教員の交流をしていただく、このことによりまして、お互いに実践的な指導力を切瑳琢磨し合っていくというような面もあるわけでございます。  このような校外研修につきましては、各都道府県とも御苦労をいただいておりまして、例えば学年初めであるとか夏季休業期間中に実施をしていただく、あるいは通常日でございますれば特に中高等学校の場合は担当授業時間をその日には設けないようにしていただく、あるいは小学校の場合でございますと半日研修にしていただきまして、残りの半日は専科教員にやっていただくというようなさまざまな工夫をしていただいておりますし、現実に出られます場合につきましては、当然その学校指導教員あるいはその他の教員が協力いたしまして代替の授業を行っているわけでございまして、まず自習のケースは試行に関しましては一件もないと承知いたしております。
  160. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今、そのような方針をお聞きいたしまして安心いたしました。授業に全く差しさわりがない、支障がないのだということで、このキャッチフレーズは、「ふれ愛 大切にしたいから 先生 初任者研修へ行ってしっかり勉強してください」、このような意味にとれるのかなと思う次第であります。  次に、時間が余りないので、大学入試の改善についてであります。これについてはいろいろ改善策がとられておるようでございます。今年度実施されました国立大学関係においての分離分割方式等々、少しずつ評価が高まってきているように思います。引き続き大学入試の改善に努めていただきたいということを要望として申し上げておきます。  次に、実は専修大学の件をお聞きするということでお願いしておったのでありますが、専修大学の件は先週解決したというようなこともございますので、これは割愛させていただきたいと思います。  そこで、次は留学生政策の推進、国際交流の推進、これはもとより大事なことでございます。留学生同士の問題もありますし、また教員の外国語に対する研修というのでしょうか、そういうためにもこういった問題の交流を積極的に進められまして、外国語教育、実は世論によりましても外国語教育に対する批判が非常に高いという現実がございますので、ぜひその改善に手を打っていただきたいと思います。  時間が余りないので、大変申しわけないですけれども、次に進ませていただきます。  実はスポーツの振興についてでありますが、一昨日ですか、スポーツの振興に関する懇談会の最終報告書が提出されたわけでございますが、この取り扱いについて大臣はどのようにされるのか、お聞きしたいと思います。
  161. 中島源太郎

    中島国務大臣 スポーツの振興というのは日々心しなければならない問題でありまして、一方には生涯スポーツ、だれでも国民全部がスポーツに親しむという点で、スポーツの施設並びに指導員あるいはプログラマー、そういうものの育成が必要だと考えておりますし、その中から、また一方では競技スポーツの振興、これはやはりオリンピックなどで日の丸がはためきますと、その競技が一斉に今度は国民の間に幅広く親しまれるということがございました。かつて女子バレーボールが大活躍をしてママさんバレーが全国に広がった、こういう相乗作用がございますので、その点につきましても心をいたしていかなければいかぬ。  そういう中でたまたまスポーツの振興に関する懇談会が、これは総理大臣の私的諮問機関でございますが、自由な討論の中で意見を体系的におまとめをいただきました。それを文部省で参考にさせていただきまして、これを正規の審議会で早急に具体的に取りまとめをしていきたいと思っております。私ども審議を諮問するとすれば保健体育審議会でございます。保健体育審議会に四月の中旬までにはお集まりをいただいて諮問を申し上げ、将来にわたりましての体系的な組み立てをいただきまして、その線に沿って努力をしていきたいと思っております。  細かくはかえって時間がございませんでしょうから、体系だけ申し上げました。
  162. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 今のスポーツに関して、私は基本的認識はまさしくそのとおりだと思います。そしてその中で、これは所信でも触れられておるのでありますが、「国際競技力向上のための施策」ということで述べられておるのでありまして、競技スポーツの好成績が民族、社会の活力を増大させるという立場から、国際競技力の向上を国の重要な政策課題として位置づけ、我が国の繁栄を維持発展していくために、国策としてのスポーツの振興を図っていく必要があるということが述べられておって、引き続き、日本選手の成績が国際大会で東京五輪以降低落を続けているというような指摘もあるわけでございます。  私はこの国際競技力の向上というのを大変大事に考えておる一人でございまして、この答申によりますと、スポーツ指導者の養成確保、それからスポーツ施設の充実、スポーツ振興のための財源措置等々が指摘されておるわけでございます。私としてはぜひこのような、これは確かに私的諮問機関ではありますけれども、今大臣文部省の中の審議会に委員会を設置して前向きに取り組まれるということでございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  もう余り時間がなくなりました。最後に、大臣は映画のプロデューサーをされたり、その中にはベストセラーといいますか大ヒットした「黒の試走車」というのがあって、田宮二郎さんが主演された映画があるのであります。実は文部大臣の件で地元で話をしましたら、いや、田宮二郎さんよりずっといい男だからなぜ大臣が主演しなかったのですかなんて話も出たのでありますが、今までどちらかというと経済的な豊かさを追求してきたが、これからまさしく精神的な、文化的な向上を求めなければならないという中で、本当に最適な大臣をお迎えしたと思うのであります。文化振興について最後大臣にお伺いして、私の質問を終わりたい、このように思います。
  163. 中島源太郎

    中島国務大臣 確かに、これからは文化国家の色彩を大きく出していく時代に入ってきたと思っております。その文化というのを一言で言うのは難しいと思いますが、やはり私はその地域の風土、それから歴史、そしてそこに生きとし生きてきた人間の魂の哀歓というものが織り合ってできた遺産であろう、こう思いますので、文化を進める上には過去から現在に至っております文化の保護、それからこれから将来に向かっての文化の振興、そして今現在ある文化をいかに高めるかという日常の活動、この三つに大別できると思うわけでございます。  特に今までの遺産を保護し保存するという面、それからこれからいかに振興させるか、この二つの面は特に国家の公財政支出が必要でございます。現在の文化の部分については民間の力をかりることができますが、前の二つについては公財政支出を相当きめ細かく対応しなければいけません。六十三年度は四%増、と申しましても全体で四百億弱でございます。六十三年度はこれで対応させていただきますが、さらに文化の向上のためにはこれからも公財政支出の面を含めまして一層努力をしてまいるつもりでございますので、御鞭撻をお願いいたしたいと思います。
  164. 斉藤斗志二

    ○斉藤(斗)委員 以上で終わります。
  165. 中村靖

    中村委員長 有島重武君。
  166. 有島重武

    ○有島委員 百十二国会文部大臣の所信に対する質疑の機会を得させていただきまして、喜んでおります。短時間でございますけれども、後々の道しるべになるような、あるいは後日の議論の端緒となるような質疑お答えを期待いたしております。  生涯学習の問題と初等中等教育の問題と国際交流の問題、この三つに絞って伺っておきたいと思います。  生涯学習を振興するに当たりまして、一つのかなめとして放送大学の全国ネットワークの実現、こういったことが課題であろうと思います。御承知かもしれませんが、私どもはこれはたびたび主張してまいりまして、つい先日も我が党の近江巳記夫代議士が質問主意書を提出いたしまして、その答弁書もいただいたことがございました。  放送大学につきましては、今は第一期計画実施されておるわけですね。これは昭和六十年から六十三年度末にかけて四年間と聞いております。というと、第一期があるのだから第二期というものがあるのだろう。あるならば第二期というのはいつからいつまでなんですか、これをまずお答えいただきたいと思います。
  167. 阿部充夫

    ○阿部政府委員 放送大学の整備につきましては、全国化ということがかねてからの私どもの念願でもございますし、もちろんこのプロジェクトは当然そうあらねばならぬことだろうと思っております。ただ、諸般の事情を総合的に判断をいたしまして、当初は東京タワーから電波の届く範囲というようなことで南関東地区を中心にスタートをしたわけでございまして、昭和六十年度に開学をし、学生を受け入れましたので、昭和六十三年度には最終学年に到着をして、いよいよ来年の春には第一回目の卒業生が出るというような時期にまで至ったわけでございます。  当初はその考え方を、何と申しますか、南関東でやっておりますものを例えば第一期計画というような言い方をしておったと思うわけでございます。それ以降どういう形でこの放送大学のエリアを広げていくかということはもちろん大きな課題でございますし、ちょうど六十三年度で完成年度に達するということでもございますので、現在はその完成年度に達するまでその整備に最大限の力を注いでいるところでございますけれども、あわせてこの時期に六十四年度以降の拡充の問題について検討したいということで、既に専門家の方々等もお願いをしましていろいろ御相談、検討等を進めている最中でございます。まだ具体にいつからどういう形でというのは現在鋭意検討中という段階にあるわけでございます。
  168. 有島重武

    ○有島委員 大臣、お聞きのように第一期はもうあとわずかで終わるわけですよ。第二期ということについてはいつからいつまでだというのはまだ決まってないそうですね。これはしっかりやっていただきたい。  それから、第二期計画の発表というのはいつごろになさるおつもりなのか、これは大臣に承りたい。
  169. 中島源太郎

    中島国務大臣 まさに第一期は六十三年度で完結をいたします。そして先生おっしゃいますように現在は関東だけがエリアでございまして、たまたま群馬県はそのエリアに入っておりますので、そこで学んでおる方の声はつぶさに伺うことができますが、大変張り合いのある日々を送っておる、これをぜひ全国に広めたい、こういう声が多いものでございますから、第二期計画は、内容の精査と、さらにこれを向上させることはもちろんでありますけれども、このエリアをいかに広くするかということがやはり私どもの務めであろうと思っております。  今現在進めておりますのは、有線放送によってこのエリアを広めようということでありますけれども、一方では、放送衛星を使ったらどうかということで、現在の放送衛星が予備衛星を使っておりますが、六十五年にはさらに三つ目の放送衛星、六十六年にはそれのまた予備衛星が上がるようでございまして、そのチャネルがあいておりますれば、それを使った場合どのような費用になるかということが一つ。それからもう一つ、失礼でございますが、お勤めになっておりましたり家庭におられましたりしてテレビを見ながらそれをビデオにとって御自分のいいときに学んでおられますので、いっそ全国にビデオを配付をしたらどのようにエリアがふえるか、こういうことも検討の一つであろう、こういう御示唆もいただいておりまして、それと同時に学習センターを全国につくっていく、これの基礎計画と申しますか、そういうものとそれから公財政支出との兼ね合い、こういうものをしっかり組んでいくことが重要であろう、このように考えております。
  170. 有島重武

    ○有島委員 私が伺いたいのは、第二期の計画というのはいつごろ発表なさろうと思っていらっしゃるか。大臣は、生涯学習を振興しよう、その生涯学習を制度としてつくって、そのかなめとしての放送大学、これは高等教育局から今度は生涯学習局というところへ移行なさる、こういうようなことも承っているわけですけれども、この計画、これは今年中にでも早急にやろうとか、それから来年回しになりますとか、そういう話を承りたかったんですよ。その中身はこういった問題がある、こういった問題がある、それは私も多少は承知をいたしております。それはまあここではいいですから、早急にお詰めになって、せめてそこは一つの目標を立てて仕事をしていただきたい。お願いをいたします。  それで、これは全国各県から早期実現の要望がおありになるかどうかですね。要望がどんな形でもって入ってくるんだろうか、届くんだろうか。それから、要望があればそれに対するいろいろな対応、お返事などをなさっていらっしゃるんだろうか、そういうことを承っておきたかったのですけれども、内々調べてみますと、余りそういったものがないということだそうであります。  これは、一つには認識不足ということもあるんじゃないかと思うのですよね。イギリスなんかの場合でございますと、旅行いたしておりまして、タクシーの運転手さんなんかに聞いても、うちの息子はこうだとか、あるいは私も聞いたことがあるとか、あるいは幾らの学費でもってこれだけのことができるとか、そういうことはBBCでもやっているとか、みんな知っているわけですね。それに比べまして、我が国でもって人に聞いてみると、放送大学、あれは何かアナウンサーでも育てるのか、そんなような認識の方もいらっしゃるようですし、それから、せっかく電波が出ております関東地域におきましても、現に国会内でも議員会館で聞こうと思っても、そこでは映らぬ。文部省内は映っているようですけれども、ここに大蔵省や厚生省もいらっしゃるが、そういう省内は、聞いてみれば余り映らないと言うんじゃないかと思うのですね。そういった認識不足がある。全国的にもある。これはもう少しPRなさるべきじゃなかろうか、それが一つです。  それからもう一つは、どういう手だてをもって問い合わせをすればそれに応じることができるか、そういったこともあわせてPRなさって、全国的にコンセンサスをつくりながら促進を期すべきじゃないだろうかと思います。  今の点はお答えいただけましょうか。——時間が余りないから、それじゃ後でもしチャンスがあったら言ってくださいませ。  次の問題に入ります。  第二は、初等中等教育でございますね。この初等中等教育の改善充実をする、そのかなめの一つとして教員の資質の向上、これは大変大切だと思いますね。これにつきましては後日詳しく審議すべきものでございますけれども、私はこの席でもって一つの原則を提示をしておきたいわけです。  それは生涯学習人間成長の原則といいますかね、生涯学習の原則、人間成長の原則とでも言っていいんじゃないかと思いますけれども、教師となるべき人はすべてやはり人格者であってもらいたい、知識もしっかり持っていてもらいたいし、教育の技能・技術をしっかりつけておいてもらいたい。時代がたてばそれをレベルアップしなければならない、それは当たり前なんですけれども、現実にお互いに完璧な人間というのはないわけだから、教師も一人のやはり生涯学習者である。それで、教えながらみずからも学ぶ人である。子供たちが人間成長をしていく、それを促しながらみずからも人間成長を志す。技術のこともあるけれども、一番の教師の資質向上ということの根底にそういった原則が流れていなければならないんじゃないだろうか。これからはいろいろな技術的な問題がいろいろ議論されると思いますけれども、それを一つの原則として確認をしておきたい。大臣のお考えを一言承っておきたい。
  171. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生指摘の、教師といえども生涯学習を歩みつつある過程の一人である、大変感銘深く拝聴いたしました。まさにそれが必要だと思っております。  人生八十年でございますが、いつの年代におきましても前を向いて向上心を持って歩み続ける。したがって、そういう教師像でありますからこそ生徒から見れば先行ランナーでありますし、先生から見れば優秀なる後続ランナーである。後続ランナーのために一番いいペースを保ちながら引っ張っていく。後続ランナーはまた先生と向き合って教わることもありましょうけれども、精神的には先行ランナーのひたむきな姿をおのが師として学んでいくであろう。その小さい技術論は別としまして、先生がおっしゃった今のお気持ちは大変感銘深く拝聴いたしましたし、それが一番必要な態度ではないかと率直に思います。
  172. 有島重武

    ○有島委員 それでは続きまして、初等中等教育の改善充実の目的というのは、次の時代を担っていってくれる子供たちを育成することだ、子供たちの成長の基礎を保障していく、こういうことであろうかと思うのですね。そうすると、今度は子供たちの立場に立ちまして、子供たちの知育、徳育、体育、この調和ある人間成長を促す教育、つまり子供たちが、自分たちは確かに背も小さいし、何も知らない面もたくさんあるかもしれぬ、育ててもらっている、そういった存在ではございますけれども、子供は子供なりに自分が成長するのと同時に、自分よりも年下の子供たち、年少者の世話を見る、いわゆる異年齢混成の教育の姿を学校教育、社会教育の中に導入すべきではないか。こういうことを私は昭和六十年でしたかこの席でもって提唱いたしました。何回かここで申し上げたこともございますけれども、これについて大臣の所信を伺っておきたいと思うのです。いかがでしょうか。
  173. 中島源太郎

    中島国務大臣 先生から直接伺うのは初めてでありますけれども先生の所信あるいはお言葉は私も目にいたしたことはございます。それで大変いい御指摘だと思いました。  身近なところでいえば、私どもが小さいころは確かに異年齢の仲間同士が夜暗くなるまで遊んでおった。その中から学んだものは意外と多かったと思うわけでございます。その中には赤ちゃんをおぶって子守をしながら一緒に隠れんぼうをしたり鬼ごっこをしたりいたしました。残念ながらそういう環境が日々刻々なくなっているわけでございますので、そういう意味で、社会と家庭とそれから学校というものが三位一体であるならば、おっしゃるように学校の中にそういうものが取り入れられないか。これは大変貴重な御指摘だと思いますので、そういう面で既に取り入れつつあるものあるいはこれから技術的にどうするか、この点については政府委員からお答えさせますが、先生の日ごろからの御指摘は貴重な御指摘として、私も敬意を持って拝見しておりました。
  174. 有島重武

    ○有島委員 私も、あちらこちらに参りますと各学校でこの種の試みがどういうふうに行われているか見てまいって、その都度また文部省の方にも、こういった例がありましたよということを申し上げておったのでございますけれども先生にとってみるとなかなか厄介だ。同年齢でどんどんやっていけば整然と進めることができる。だけれどもこれはちょっと手間がかかる。教育の学課の中にこれを直ちに持ち込むということには多少抵抗がある、そういうこともございます。ただ、掃除当番であるとかあるいは部活動であるとかそういうような中では心がけておるけれども、そういう実例をたくさん収集することによって、奨励するという形になりますか進めることができると思うのです。  今、大臣は、家庭教育学校教育、社会教育、これが三位一体となると申されましたけれども、一時代前ですと家庭の中に異年齢はあったわけですよ。このごろ兄弟姉妹が少のうございますし、親と子供、大人と子供という関係だけになってしまった。先生と子供という関係だけで、その中間がない。これはどこかで補正しなければならない。そういう点で、相当困難があってもこれは学校教育の方でもやっていかなければならないのじゃないか。大臣、御理解をいただいたから私は大変うれしく思っております。  そこで、これは就学前教育の中でも、例えば幼稚園なんかでも配慮している幼稚園もございますけれども、これは一般化して五歳児が三歳児の世話を見てやる、こういうことが初めから当たり前のように行われるようになるべきではないかと思うわけです。大臣の御理解と同時に——厚生省の方は来ていらっしゃいますか。これは厚生省、保育所におきましても同じことが言えるのじゃなかろうかと思いますので、ひとつそのように促進をしていただきたい。厚生省のお答えをいただきます。
  175. 柏崎澄雄

    ○柏崎説明員 御説明を申し上げます。  保育所におきます保育は、同年齢のグループによって行われる形態が中心とはなっておりますが、八時間という保育の時間の中で、例えば昼食の準備のときに異年齢児が一緒になってお互いに役割を持って助け合いながら準備をしていくとか、あるいは午後の自由遊びの時間に一緒になって遊ぶとか、いろいろな形で異年齢児の交流も部分的ではございますが行われているところでございます。  私ども、今後とも異年齢児混成の保育の実施方法等についてさらに研究、検討を進めまして、その一層の推進に配慮してまいりたい、かように考えております。
  176. 有島重武

    ○有島委員 では大臣、ひとつ促進をしていただきたい。お願いをいたします。  初中教育の改善充実の第三といたしまして、大臣も挙げていらっしゃいます高等学校の多様化、弾力化、これをすると言っておられます。これも大変重要なことでございまして、三つほどきょうは問題にしたいと思っております。それは六年制中等学校、それからもう一つは単位制高校、つけ足りみたいだけれども大学受験資格の検定というようなものもあるわけですけれども、それから第三番目に高校生の留学ということです。こういうことでちょっと触れてまいりたい。  初めに、六年制の中等学校について、きょうの新聞に報道されておりました。文部省の中等教育改革推進調査研究協力者会議は三月三十一日に六年制中等学校のあり方に関する最終まとめを公表した。それで、文部省としてはこのまとめを受けて対処していらっしゃるというお考えでございますけれども、今度六年制を、私立学校で今やっているわけですが、これを公立でやる。そういたしますと新たな教員免許制度が必要になってくるのじゃないだろうか、この制度を既に何か考えていらっしゃるのかどうか、簡潔にひとつ。
  177. 加戸守行

    ○加戸政府委員 教育職員養成審議会におきまして一昨年から三つの事項を審議いたしておりまして、一つが教員免許基準の改善、それから二番目が現職研修の改善、初任者研修等も含まれますが、第三にはこの六年制中等学校構想につきましてその教員資格をどうするかという、この三つを御審議いただいたわけでございます。  免許基準とそれから研修につきましては御答申いただきましたけれども、第三番目の問題は、教育課程審議会におきます議論が、いわゆる六年制中等学校のカリキュラム、その内容等が具体的に明らかになっておりませんので、私どもの立場としましてはそういった点の審議につきましては若干時間がかかったわけでございますけれども、結論的に申し上げますと、答申では中学校、高等学校を連携するような形で正規の学校として構想されるものである以上、現在の場合すべて校種ごとに免許状が定められておりますから、六年制中等学校につきましても教員免許状を創設する必要がある、ただし、その免許資格、基礎資格をどうするか、あるいは教職専門、教科専門の単位を何単位とするといったような具体的な事項につきましては、教育内容が定まって、あるいはそれに連動いたしまして検討し、具体的な教育課程審議会の答申に合わせた形で私どもの方は免許状の内容考えていきたい、こんな段階でございます。
  178. 有島重武

    ○有島委員 方向性、大変よくわかりました。  あと単位制だとかあるいは後から言う留学の問題、そういったことがあって、こうした多様化、弾力化あるいは個性尊重というようなことが進んでいく。これは時代の趨勢でありますが、こういうことが進めば進むほど、それでは最低保障といいますか、福祉の方では最低を保障してあとは公正な自由競争だ、こういうふうになるわけだけれども義務教育段階の中学まで及び高校、ここでいろいろあるけれども、これだけのことは最低、ミニマムとして子供たちに保障してやろうじゃないかというもの、今まではこれだけのことは履習させてあげましょう、こういうことで、これは学習指導要領によって明らかでございますね。それで、そのうちの特にこれだけのことくらいは、極端なことを申しますと、すべての高校卒業者は中学生の持っている教科書並みの知識は全部こなせるということをミニマムにしようじゃないかとか、そういうこともあり得るわけだけれども、そのミニマムエッセンシャルズというようなことを今後考えていかなければならないんじゃなかろうか。すぐにとは言いませんよ、そういったことを考えていかなければならないんじゃないのだろうか。  これは大ざっぱな話だから、大臣からもしお考えがあったならば承っておきたい。
  179. 西崎清久

    西崎政府委員 御指摘のとおり、高等学校教育は、進学率は九四%でございますから、多種多様な生徒諸君が入っておるわけでございます。ミニマムエッセンシャルにつきましては、お話にございましたように、指導要領の中で、卒業までに修得すべき単位数、これが現在は八十単位でございます。その中に必修単位として現在は三十二単位でございますが、その三十二単位の修得が必修としてミニマムエッセンシャルである、こういう姿になっておるわけでございます。  問題は、その三十二単位とか八十単位という単位数の問題と、それからもう一つは、先生おっしゃいますように、それぞれの単位の中の教科課程の程度と範囲、そのミニマムエッセンシャルをどういうふうに考えていくか、これが大変大事な点だと思っておる次第でございます。この点は、昨年十二月の課程審の答申でも、それぞれ高校教育の多様化の問題と教育のあり方の問題から、それぞれの科目の中身の範囲と程度を十分検討すべしというふうなことをいただいておりますから、私どもも一年かけましてその点は十分考えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  180. 有島重武

    ○有島委員 それでは大臣、御研究いただきたい。お願いします。  それで、三月の新聞報道でございましたけれども教育の国際化といいますか、海外教育施設を持つような学校ができておる。もう既に四つの学園がそういうことをして、姉妹校を提携しているというのも四百二十二校ある、こんなことを言っております。こうしたことが進むにつれて、今の問題、ミニマムですね。これだけはどっちみち確保する、あとはいろいろな質、いろいろなものがあって構わない、そういうようなことが必要であるんじゃないかと思うわけであります。  先にいきます。もう時間が余りないそうでございます。  今度は国際化の問題で、たった一つに絞ります。ホームステイの問題。若い人たちが外国と行き来するようになると、宿舎の問題がある、いわゆる寮ということがありますね。しかしそれだけでは手当てができない。みんな民間に家を借りるということもある。しかし、ホームステイということの意味合いは、国際交流、異文化の接触ということについて、若いときにこれを経験をしておくということは非常に大切なことじゃないかと思います。時間があったらもう少し議論もしたかったんだけれども、現在日本の若者がどのくらい向こうのお世話になっているか、アメリカが一番多いそうですけれども、大体幾つかの推定の数字もございます。それじゃ日本の方でどのくらいこのホームステイでもってお世話しているか、これも推定はできるわけです。しかし、これは飛ばします。  そこで、二年ほど前でございますけれども、ホームステイ減税ということが制度的に実施をされておるわけでございます。これは大臣も御承知かと思いますけれども、外務省の方、来ていらっしゃいますか。——外務省、簡単にちょっと説明してくれませんか。こういった制度があるんだけれども、その制度がどのくらい今活用されているか。
  181. 遠藤乙彦

    遠藤(乙)説明員 お答えいたします。  外国人をホームステイさせる事業は、草の根レベルの心の通う交流ということは大変有意義でありまして、近年我が国において大変活発化しておりまして、特に住宅事情のよい地方において大変活発でございます。  ホームステイ減税ということでございますが、これは中曽根前総理の提唱に基づきまして、ホームステイを側面的に促進することを目的としまして税制面で優遇を図る新しい制度でございまして、六十一年の四月から導入したわけでございます。この仕組みにつきましては、外国人を迎える家庭に対しまして謝金を支払うために寄付された資金、そういった団体や個人があるとして、それについては国際交流基金を通ずることでこれを免税とするという一方の措置、そしてもう一つは、ホームステイをやった家庭が謝金を受けた場合に、それを課税対象としないという二段階の減税措置でございます。これは制度実施以来周知徹底をいたしておりますが、現在のところまだ必ずしも活用は十分でないというのが現状でございます。
  182. 有島重武

    ○有島委員 大臣、そういった制度がありながら、現実に運用されてない。いろいろなネックがあろうと思います。これは外務省の仕事だから知らぬというわけにいかないと思うのですね。ひとつこれも御研究いただいて、促進をするということが一つの仕事じゃないんだろうかなと思うのです。  それから、きょうは大蔵省も来ていらっしゃるから、ホームステイを受け入れる家庭に対して何か新たな考え方を導入できないかどうかということを伺いたい。例えばホームステイとしてかかった費用のうち四十万なら四十万、六十万なら六十万、これを控除の対象にするといいますか、確定申告の際に経費として認めるというような方向ですね。そんなことを言い出すと、あれもこれもと押し寄せてくるからとてもとてもできませんなんていうことじゃなくて、これは今やはり一つの大きな時代の流れなんですから、その中でもって考慮してもらいたい。
  183. 杉崎重光

    ○杉崎説明員 先生おっしゃられたとおり、いろいろな形で家計の支出についてその一部分に着目して控除ができないかというお話、よくございます。基本的なものは基礎控除、私たち各人の納税者が一人三十三万円の基礎控除というのがございます。配偶者控除も三十三万円。そういうものは基礎的なものでございますが、それ以外のものでいろいろな控除ができないかということでございますが、税制調査会の基本的な考え方といたしましては、そうした個々の事情をしんしゃくして控除をつくるということはなかなか難しい問題であって、それは望ましいものではないということで、新しい特別の控除を設けることについては消極的でございます。
  184. 有島重武

    ○有島委員 時間が参りましたから、大臣に一言。今の問答を聞いていらっしゃって、何か御感想があったならば一言承って、それで質問を終わります。
  185. 中島源太郎

    中島国務大臣 いろいろ御指摘いただいてありがとうございました。  特に最後のホームステイの問題は、たしか昨年度三千人くらいの日本の子女が向こうでお世話になっておる、海外からは千五百名程度がおいでになって日本でお世話をしておる、こういうことでございまして、ホームステイに対する謝金と申しますか寄付に対しましては、国際交流基金を通じて非課税、また家庭に受け入れる方も課税対象にしない、これは確かにそういうのがあるということは知りましたけれども、なかなかまだ行き届いていないのじゃないか。どこに隘路があるのか。先ほどの放送大学と一緒に、何かPRが足らないのかあるいは手続にもうちょっと簡素化すべきところがあるのか、よく勉強してみたいと思います。
  186. 有島重武

    ○有島委員 委員長、ありがとうございました。
  187. 中村靖

    中村委員長 中西績介君。
  188. 中西績介

    ○中西(績)委員 私は、まず最初に、今問題になっておりますアスベストの問題について、各省庁に来ていただいておりますので、これを先に論議いたしまして片づけたいと思います。  このアスベスト問題で調査結果が出ておりますが、大学を初めとして小中学校、いろいろありますけれども、今東大の駒場第三体育館が問題になっておりますだけに、調査が的確になされたかどうかということを私は大変危惧をいたしております。したがって、全国の国立大学九十六校を云々ということでやっておりますけれども、この数字は正確ですか。六十二年六月、この分についてはどうなんですか。
  189. 古村澄一

    ○古村政府委員 全国の大学のアスベスト使用状況調査結果、一応私たちとしては三十万平米ということで調査結果を集約いたしましたが、御指摘のとおり、東大で第三体育館を壊しましたときに天井材の裏からフレキシブルシートというものが使用されているのが見つかったということでして、吹きつけのところは外から見てわかりますから、そういった点では調査は吹きつけのところは大体三十万平米全部集約できたと思いますが、そういった中に入っている問題というのは全部集約しているということにはなっていないだろうというふうに思います。
  190. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、吹きつけ部分についてはそうしてやったけれども、板になっている部分がいろいろありますね。こうした問題等についてはこの中には集約されておらないと考えてよろしいですね。——わかりました。そうしますと、六十二年五月、各都道府県教育委員会に対して調査を依頼してやった分がありますね。学校数で千三百三十七校、四万二百九十校中これだけのものがあるということになっておるわけですが、聞くところによると、廊下だとか給食調理室、こういうようなところはこの中には入っておらない。したがって、そういうものまで含めると、これだけに限定されるものでないということに理解してよろしいですか。
  191. 加戸守行

    ○加戸政府委員 先生ただいま御指摘ございましたように、昨年五月の調査につきましては、今のような廊下とか調理室の部分は調査の対象とはいたしておりません。これはいわゆる公立学校におきましてどの程度の概数であるのか、文部省としての対応考えるための把握をしたわけでございます。したがいまして、千三百三十七校以外に、例えば廊下部分等で使用しているケースも何十校あるいは何百校かあり得ると思います。しかしながら、文部省としましては、これら学校の中におきます吹きつけアスベストの対策工事でございますればすべて補助対象とするということでございまして、調査対象になっていないからということでは取り扱いの差をつけるつもりはございません。なお、学校におきまして今申し上げました文部省調査対象外の部分についてもそれぞれの実情を把握するように、指導はいたしておるところでございます。
  192. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、この数字というのは概略の調査であって、内容的にはまだまだ多くの問題が散在するわけでありますから、一応の調査であったというように理解してよろしいですね。それでいいですね。
  193. 加戸守行

    ○加戸政府委員 調査といたしましては、いわゆる校舎面積の大部分を占めます普通教室あるいは特別教室、体育館、それから寄宿舎といった事項に限定いたしましての調査でございますから、おおよその一般的傾向をつかむということが主眼でございました。
  194. 中西績介

    ○中西(績)委員 ところが、一番危険なのは廊下なんですね。たくさんの人が通るわけでしょう。それから、給食調理室などということになりますとなおさらのことですね。給食調理室などになってまいりますと、温度の上下の差があったりわんわん湿度が高くなってみたり、こういうようなことがありますから、いろいろ多くの問題がここには残っておるし、しかも食料を扱っておるところ、こういうことになりますから大変問題のあるところですから、落ちておるということがわかれば結構です。ですから、たとえ二千万という六十二年度の大型の助成金の範囲に入らずとも、やはり当然こうした問題は調査はしておくべきではなかったかということを考えるからこそ、今私はこういう指摘をしたわけであります。  そこで問題は、六十二年に大規模改修事業国庫補助、小学校で二十校、中学校で九校ということになっています。この分が二百四十一億円という金額になるのか、どうですか。
  195. 加戸守行

    ○加戸政府委員 御承知のように文部省としましては大規模改修事業に対する補助を行っているわけでございますが、六十二年度は、その大規模改修事業の中にアスベスト対策工事費も含めて補助をするということにいたしまして、六十二年度に申請がございまして補助を出しましたのが、小学校が二十四校、中学校が十二校でございまして、合計三十六校に補助をいたしております。補助金額の合計額は六億五千万円でございますが、これはアスベスト対策のみならず、その他の、例えばアルミサッシへの変更あるいは屋根のふきかえ等の改修工事等も含まれた総額でございまして、アスベスト部分のみの金額ではございません。
  196. 中西績介

    ○中西(績)委員 アスベストの関係で国庫補助を出されたものについて、私は二十校と九校というふうに理解をしておったのですけれども、今見ると、二十四校と十二校ということですね。その金額は六億五千万、これよりまだ少額だという答弁があったわけですけれども、そうすると、大規模改修事業費の二百四十一億というのは他の部分すべてを指しておって、このアスベスト関係からいいますと、金額からすると、これは五億になるのか四億になるのか、いずれにしてもわずかだ、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  197. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十三年度予算案におきまして、三百三十億の大幅増額をいたしました予算を計上させていただいておるわけでございますが、その大部分はいわゆる一般的な大規模改造に伴います経費でございまして、アスベスト部分は、仮定の話でございますが、調査いたしました千三百三十七校全部がアスベスト対策ということで工事が行われたとしましても、それに要する経費につきましての補助金部分は約六十億程度ではないかと見込んでおります。したがいまして、今申し上げました六十三年度に申請が出てきたといたしましても、金額的には二けたの小さい方の億の台ではないかという考え方でございまして、今申し上げた予算の中の部分としてはかなりパーセンテージは低いシェアであろうと想定いたしております。
  198. 中西績介

    ○中西(績)委員 今度は、大型の中のアスベストにかかわる対象を幼稚園から小、中、高、盲、聾、養まで含めて拡大をし、工事費としては今まで二千万だったのを四百万に引き下げ、最高は一億まで、年限も十五年というのを改めて経過年数を問わないということになったわけですね。そういたしますと、今私が申し上げたように、四百万というけれども、例えば廊下あるいは小面積の給食調理室など含めていきますと、それに該当しないということだってあり得るわけですね。四百万には下げたけれども、しかしこれは緊急課題だということでもって、こうした小規模であっても、たとえ二百万なり三百万なりであってもこれは実施するということにはならないのですか。
  199. 加戸守行

    ○加戸政府委員 学校の改修につきましては、一般的には地方交付税の上で、例えば小中学校につきましては五百万から七百万円ということで、一校につきましての交付税の積算基礎があるわけでございまして、これは自治体におきまして、小規模な改修等は当然地方交付税の措置によりまして対応いただくという考え方が前提になっておるわけでございます。  この大規模改造——大規模改修を六十三年度は大規模改造と名称を改めさせていただいておりますけれども、この考え方は、いわゆる一般的な恒常的改修ではなくて、大規模、言うなれば改築に準ずる程度のものにつきまして補助をしようという制度であったわけでございます。六十三年度は今先生おっしゃいましたようにアスベストという特殊な問題が出てまいりましたものですから、大規模改造という形で原則は二千万でございますけれども、アスベスト工事関係だけを対象とし得るように工事費限度額を四百万円以上にまで下げまして、一般的な大規模改造と言い得るものの限界まで補助をしようという考え方で対応させていただいているところでございます。
  200. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、調査によると、大規模改造に当たるような部分が千三百八校になっているわけですね。なのに、今申請のあった数というのはごくわずかということになっています。したがって、金額が千三百八校実施したとしても六十億程度ということになっています。  そこで、私は提案です。きょうは各省庁に来ていただきました。通産、労働、建設、厚生、環境、全部来ていただきましたけれども、例えば通産の場合には、これを製品として出すときにJISマークでこうした物を許したわけですね。あるいは労働省の場合であるならば、労働安全法あるいは特定化学物質等障害予防規則ですか、こういうような法律に当てはまっているのかどうなのかということをやらなければならぬ。建設省からいうと、建設する基準からいたしましても、設計の際にこういうのを取り入れてよろしいということに今までなっておったわけですから。それから厚生省の場合には、肺がんだとかいろいろなのが出たときに問題になるわけです。環境庁に至っては、これはもう当然ですね。そうなりますと、これは緊急課題の特別措置をやらなければならぬと僕は思うのですね。そうしないと、このまま放置しておくと、室内と屋外を調べてみた場合、今申し上げる時間がありませんから私は言いませんけれども内容的に屋外と室内における数量が相当違いがある、このことはもう明確なんですね。東大あたりでも調べているのを見ると、何十倍という量にまで達していますね。ところがそれをみんな隠しているのです。こういう状況が依然としてあるわけですよ。ですから、今は生徒がおる現状からして、今度はそれを処理するに当たっても、地域の人に了解を求め、そのことをちゃんと告知をしてやる必要があるわけでしょう。東大なんというのは告知も何もなしにむちゃくちゃに壊したわけです。指摘をしておったにもかかわらず、やめずに壊しているのですよ。足元の東大ですらそうですから、全国におけるそういう知識のない建築業者なりあるいは解体業者が、この工事にかかわった場合にはどういうことをやっておるかということを考えると、ぞっとしますよね。第一、マスクもせずに壊しているところがあるのですから。ところが、これが二十年後には肺がんになったり、石綿肺だとかあるいは悪性の中皮腫というのができて、できた人を調べてみたところがみんなそういう結果が出ておるということになっていますね。ですから、この分については本格的に、大臣、各省庁との連絡だけでなしに、プロジェクトか何かを設置してでも、短期間の間に特別措置なりをして、予算が六十億程度であるとするなら、私はいち早くやるべきだと思います。  そこで、各省庁の方に来ていただいていますから、私はその点で今極めて緊急課題であるということだけお聞きしたいと思うのです。各省庁それぞれ、最初に通産省の方にお願いしたいのです。
  201. 和田正武

    ○和田説明員 通産省といたしましても、本件は非常に緊急の問題と思っておりまして、各省庁と十分に連携をとりながら解決をいたしていきたいと思っております。特に代替品の開発について我々としても大変な関心を持っております。
  202. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、今まで通産の方はJISマークでこれを許可してきたのですから、責任は重大ですよ、二十年近く全部これを多用しているわけですから。  それから、次に労働省の方にお願いしたいのです。
  203. 冨田達夫

    ○冨田説明員 石綿障害防止につきましては、昭和四十年の末に肺がんとの因果関係がはっきりいたしました。それを踏まえまして法令の整備を図るとともに、以来労働行政の重点施策の一つとしてその予防の徹底を図ってきております。  今回、御指摘のような学校等の石綿除去回収作業についても重大な関心を持っておりまして、これについては、一昨年九月に作業基準を示してその徹底を図るように、関係業者等の教育を行ってきているところでございます。今後ともその徹底を図ってまいりたいと考えております。
  204. 中西績介

    ○中西(績)委員 それで労働省の方にちょっとお聞きしますけれども、東大はそういう点でちゃんと措置をしてやったのですか。
  205. 冨田達夫

    ○冨田説明員 今御指摘の東大の件については施工状況を確認しておりません。非常に残念なことだと思いますが、そのことが事実とすれば、そのようなことがないように今後関係者に対して徹底を図ってまいりたいと考えております。
  206. 中西績介

    ○中西(績)委員 次に、建設省にお願いしたい。
  207. 立石真

    ○立石説明員 お答えいたします。  建築物におきますアスベスト問題は、特に天井等に吹きつけられたアスベストが劣化しましてアスベストの粉じんが飛散するおそれとか、先生指摘のように建築物の解体の際にアスベスト粉じんが飛散するおそれがあるとか、そういうことで実際に飛散している例があります。そういうことによる被害が大きな懸念になっているところでございまして、建設省といたしましてもこれは重要な問題だと考えておりまして、これまでも対応技術の普及等に努めてきておりますが、さらに当面の対策としまして、全体的な建築物における使用の実態調査を進めると同時に、より具体的あるいは詳細なアスベストの処理のための診断・回収技術等について指針をつくろうということで、現在進めておるところでございます。
  208. 中西績介

    ○中西(績)委員 既に被害が出て大変な状況にまでなっているわけですから、特に都会におけるいろいろな地域の建てかえがどんどん進んでいっているという現状から考えますと、今からやるのではなくて、いち早くそういうのを出してもらって対応していかなければならぬと思うのですね。  それから、次に厚生省にお願いします。
  209. 佐野利昭

    ○佐野説明員 お答えいたします。  厚生省といたしましても、アスベスト問題は大変重要な問題だと認識いたしております。したがいまして、関係省庁とも十分連携をとりながら知見の収集に努めますとともに、厚生省所管の各種分野におきましても適切な対応策を講じてまいるつもりでございます。
  210. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、厚生省あたりは特に今問題になっておるだけに積極的に各省庁に呼びかけてでもこうした対応についてやらなければならぬわけですが、この点は抜けておると私は思うのですね。  肝心かなめの環境庁はどうですか。
  211. 浜田康敬

    ○浜田説明員 環境庁におきましては、大気汚染防止という観点から、特にこのアスベスト問題は重要な問題だということで取り組んでおります。そういう中で、特に五十六年度以来いろいろな実態調査とかモニタリング調査実施してきておりますが、幸いにいたしまして、現状では環境中のアスベストのレベルは健康に及ぼす影響という点から考えますとリスクは小さいということではございますけれども、検討会の先生方の御意見もございまして、やはり未然防止の観点からできるだけこのアスベストの大気中への排出の抑制を図る必要があるだろうということでございます。そういう意味で、吹きつけアスベストにつきましても、昨年十月あるいはことしの二月に厚生省と連名で各自治体に対しましていろいろな観点からの通知を出したわけでございます。また各省におかれましても、先ほど来答弁がございましたようにそれぞれの法律あるいは通知に基づいた指導を行われておりますが、私どもとして各省庁連絡を密にしていくということが重要であろうかと思いまして、私どもの呼びかけによりまして各省連絡会議というふうなものも適宜開催しております。そういう意味で、各省庁が十分連携をとって適切に対策が講じられていくよう私どもとしましても努力を続けてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  212. 中西績介

    ○中西(績)委員 リスクが小さいだとかなんとか、これは今言うときじゃないんですよ。当面問題になっている緊急課題として何をするかというものをきちっとやらなくてはならぬときに、やったところがリスクが小さいから何だかんだって、そんなとぼけた論議をしていたのでは困るのですよ。ですから、労働省あたり考えてみますと、例えば東大の問題を一つとってみましても、労安法からいたしましてもあるいは特定化学物質等障害予防規則違反からいたしましても、解体工事をこんなことで平気でやっておるという面からすれば、この法律からいきますとこれは本当は刑罰問題でしょう。こういうことを平気で行われておるという実態があるということを今私たちは見落としてはならぬと思うのです。  だからこそ、各省庁にきょう来ていただいたのは、やはり当面は解体工事なんかをやっておるところが一番問題になるわけですけれども、具体的に千三百幾らがわかり、しかも小規模のところの場合まだ入っていませんから、これがもっとうんとわかるはずなんです。そうしますと、こうした体制を今どうやって対応していくのかという問題があるわけです。ところが、文部省予算というのは補助金は三分の一ですよ。だから私は、こういう問題を考えますと、政府は、すべてのものが関与しながらこのように欠落があって今大変な状況になっておるわけですから、少なくともこの予算の補助金の率というのはうんと上げてでも緊急課題として処理をすべきではないか。例えば急増地域におけるあれで見ましても十分の六であったものを今十分の五・五になっていますけれども、これは緊急だからこそこうして年限を決定してその範囲内でやっていこうということでやっているわけでしょう。こういうことを考えますと、これはやはり三年なら三年の間に完全になくしてしまうというくらいの体制をとっていかないと困るのです。  そうしますと、必ず問題になってくるのが、例えば市町村の場合に赤字再建団体などになってまいりますともうどうすることもできません。例えば一つの体育館をやるとすると三千万かかるというのです。三千万かかれば二千万を自分で負担しなければならぬというのだけれども、公債比率からいうと借りるあれはない。このまま過ごしていかなくちゃならぬし、そのほかに廊下もあります、あるいは今さっき言ったように給食調理室だってあります。こうなっているわけです。そういうことになりますと、いち早くそうしたものを緊急課題としてどうしてやっていくかということをやるためには、そうした各省庁が知恵を出し合って短期間にこれを全部仕上げてしまうというぐらいのことをやってもらいたいと思うのです。上から吹きつけてまた押さえ込むものは何年かするとまただめになるのです。ですからやはり最終的には除去なんですね。  大臣、この点を含めてこの補助金問題、それから短期間に年限を決定しての特別措置をしていくくらいの提案を文部省からして、各省庁の関係全部を練り上げていただいて、この補正予算までにはこれをやり上げる、そうしたお気持ちはありますか。
  213. 中島源太郎

    中島国務大臣 確かにアスベストの問題は人体に影響がございますから、これは重要な問題だと思います。私も千三百三十七校と記憶しておったわけでありますけれども、そのほかいろいろ廊下、調理室等を入れますとなおふえるということであれば、これはまたゆゆしき問題でありますので、せっかくの各省に対する御質問でございますが、今まで環境庁中心に連絡会議はあったようでございますけれども、現在その大規模改造の費用、予算は三百三十億、三分の一補助、ここまででございますが、先生おっしゃるように緊急に知恵を出し合えということは確かに必要でございますので、緊急に各省庁と連絡を密にいたしまして対策に知恵を絞ってみたい、こう思っております。
  214. 中西績介

    ○中西(績)委員 知恵を絞っていただきますけれども、これを壊すだけじゃだめなので、その予防策から全部を全体的にやるための、皆さんのすべての知恵を出し合った中で一つのそうした総合的な施策というものを打ち出していただき、しかも財政的には、そうした山村の学校だとか財政規模の小さいところだとかいろいろ困っているところがあれば、そういうところにはちゃんと財政的な措置までした上で、どう人命を守るか、健康を守るか、こうしたものが打ち出されて初めて、教育現場から人命を大事にするという、そういう心が生まれてこなければいかぬと私は思うのです。この点はやはり明確に示していただいて、他省庁と早期に練り上げて、これまた次の何かの機会に私の方から質問をいたしますので、ぜひその体制を整えていただきたい、こう思います。よろしいですか。
  215. 中島源太郎

    中島国務大臣 お話の大綱はよくわかりました。技術的には閉じ込めるのがいいのか剥離するのがいいのか、こういう問題も知恵を出して、それからまた費用の算定もありましょうから、そういうものも含めましてお答えとさせていただきます。
  216. 中西績介

    ○中西(績)委員 では各省庁の方、結構です。ありがとうございました。  そこで、私は、通告をいたしました留学生問題の財政問題からいろいろ同和対策問題等たくさんございましたけれども、きょうは一応それをおきまして、緊急な問題として、過日、三月二十九日に文部省教育助成局長名で通知が出されています。私、これは日教組に出されたものかと最初は疑ったのですね。日教組にそうした警告みたいなものを政策問題としていろいろ出されたのではないかと疑ったわけですけれども、出されている先が「各都道府県・指定都市教育委員長教育長殿」になっています。これはと思って、この中身を十分読ましていただいたところが、私は本当に目の前が真っ暗になりました。というのは、今までのあれからいたしますと、文部省助成局長が去年あたりまでここ何十年間か出されてまいりましたその中身というのを見ますと、こういう形式あるいは内容とは全く形が違うのです。  なぜ私が目の前が真っ暗になったかを説明しておかぬとあなたたちはなかなかわかりにくいと思います。と申しますのは、こういうものがひとり歩きをし始めますと、今度はこれを受けて「教職員の服務規律の確保に努められるよう願います。」ということになり、そして各都道府県・指定都市の教育長から全部の市町村長、そして県立であれば学校長、これに全部こういうものが行きます。そうしますと、実際にそうした問題等が出てくる過程の中ではどうなるかというと、校長は、いろいろ教員から現場で聞かれると、私は中身は知りません、教育委員会から言われました、職務命令ですということでもってすべて処理をしていくという傾向に今はなっていますので、そうしますと、今度は服務規律に反したということで処分をします。処分をすると、ここに出ておる中身が合法的であろうと違法であろうと構わぬということになるのです。  なぜかというと、私はそれを経験しておる。懲戒免職になった二十一名のうちの私は一人です。そして裁判所で論議をいたしまして、専従の執行委員はそのままであったけれども、現場の教師であった人々はどうなったかというと、現場に復帰させよという判決が出ました、復帰をしました、二日後にこれを今度は高裁にと持っていくわけでありますから、またもとどおりになる。その間には、和解をしたらどうかという勧告もあります。我々の側は受けようとしても、教育委員会は受けません。そして、今度は高裁でも和解をしたらという声があったけれども、やはりだめだ。結果は、前と同じように現場の人は職場に復帰ということになります。学校に復帰ということになるけれども、これまただめです。今は最高裁です。大臣、何年たったと思いますか。二十年ですよ。我々同僚二十一名の中で六人はもう亡くなりました。そして、今現場に復帰できるという人はその数わずかであります。ほとんどがもう退職をしていきました。あるいはまた、我々は知事との間で確認書を書きました。ところが、その知事との間における確認書は全部破棄されていきました。  こういうことになってきますと、これが違法であろうと合法であろうと、こうして出して処分さえさせれば効果は上がるということです。最高裁まで行けば莫大な財源と時間が必要になり、そして、現場の諸君には大変な影響を与え、現場は混乱をする。それが目的にこれは出されたと私は直感をいたしました、そういう経験を持っておるだけに。  今まで同じようなことがあったとしても、今までのような通知の形式をなぜこうまで内容的に変更したのか。今の文部省の体質、方針というのがそこまで来ておる。戦前と全く同じような弾圧政策、これだったら憲法二十一条も何もあったものじゃありません。だから、こうした内容であるということを自覚をした上で出されたと私は確信をいたしました。加戸という人は、助成局長という人は大変な人であるということ、そのことを私は感じました。(発言する者あり)これを読んだことがない人は黙っていてください。中身も知らないし、痛みも知らぬ人はここでは発言するあれはないですよ。しかも今発言権はないのですから。——このことを考えますと、今の文部省の体質がそこまで来たと断言してよろしい、こう私は思いますが、どうなんですか。
  217. 加戸守行

    ○加戸政府委員 三月二十九日付の教育助成局長通達を出したことについての若干の御説明をさせていただきたいと思います。  文部省といたしましては、従来から、教育公務員がルールを守ることを子供たちに教える立場にあるという観点に立ちまして、いわゆる違法行為に及ぶおそれがある場合につきましては、事前教育委員会通知を出しまして、遺漏のないような対応を常にしてきたわけでございます。  具体的に申し上げますれば、日教組等におきまして運動方針が決定され、あるいは具体的な指令が出されストライキの蓋然性が高まった時点におきましては、ストライキ等を防止するために、違法行為の起きないように各都道府県教育委員会並びにそれを通じまして市町村教育委員会におきまして、学校に対しましての注意を喚起し、万全の態勢をしていただくような体制を例年ずっととってまいっております。  このほかにも、通達を出す例といたしましては、選挙の直前になりまして、いわゆる教育公務員の立場におきまして許されていない政治活動あるいは選挙活動はこういうものであるということを具体的に事例を示しまして、毎年そのたびごとに通知を出しているわけでございます。  今回のケースにつきましては、先般の三月二十四日、日教組の中央委員会におきまして、「臨教審関連六法案を阻止するたたかいは、文部省交渉・国会対策を強化し、政府・自民党が断念しないときは、国会審議の山場でストライキを含む全国統一闘争を組織してたたかいます。」ということで、これが決定されております。そういった点が一つでございます。それから、二月一日から三日におきます日教組大会におきまして、六十二年度運動方針の中におきまして、一つは、「一九八九年度からの「本格実施」を断念させるため、闘争体制の確立を急ぎ、一九八八年度「試行」阻止のたたかいを結合します。」さらに、「「初任者研修」制度の「試行」にたいしては、その断念・撤回を基本に、集会、デモ、署名・決議など大衆闘争を重視してたたかいます。」こういう形での具体的な方針が決められまして、しかも、現在初任者研修法案を上程いたしておりますが、この国会の段階におきまして、近い時期にこのような闘いが具体化されるというような事態に立ち至りますれば、教職員が日教組の方針に従いまして行動をとられました場合に違法行為に及ぶおそれがございますし、そういうことのないようなことを祈りまして、具体的にこういった事柄に対します対応策について教育委員会通知をさせていただいた次第でございまして、これは通例の、私どもが従来とっておりました態度と同様でございます。
  218. 中西績介

    ○中西(績)委員 これを見たら、前回のものと今度のものを比較をしてもらうと、内容的には全然違いがあります。政治的というなら、前回のは、「日本教職員組合は、総評の売上税抗議ストライキの一環として、」云々ということになっているのです。ですから、これにはそういうものは書かれていませんよ。ここに書いてある問題になるようなことは書いてない。「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施、例えば初任者研修の実施を妨害するために、示威運動や」云々ということになっています。前のものにはそういうことは全然書かれていません。これだって、今言う論法からするなら「政治的行為」といって入れているわけですから、同じだということになるのです。  もう一つだけ、今の文部省の性格を規定づけるものがある。それは、「教育委員会の活性化について」というもので出されています。六十二年の十二月十六日です。ところが、今出されている教育委員会改正案にはないものまで含めてこの中にはうたってある。臨時教育審議会第二次答申に基づいてということで、教育委員の選任から教育委員の研修、待遇、研修はこうしなければならぬということまで全部やっていますよ。教育長の選任、教育長の待遇というように全部やっている。しかも、「教育委員会の運営」などを見ますと、地方教育委員会の性格と位置づけについてまで言及してあるのです。これはまだ法案が出る前ですぞ。しかも出た法案は違うんだよ。この中身を見ると、あなたたちが自治省から反対されて削ったものまで含めてここには出しているんですよ。活性化するためにはこれをやれと言って出しているんだ。ここに今の文部省の性格、規定づけがあると言うんだ。これはもう曲げようがないんだ。  これは参議院でやったでしょう。参議院で指摘されているはずです。今いろいろ言ったけれども、例えば指令が出されてから云々、それは具体的になってからでしょう。ここには具体的なものはまだ出ていませんよ。そのときに、このようにして「臨教審関連六法案を阻止するため、」云々から始まって、「たたかう等とした当面の闘争方針を決定しています。」とあるのです。それならば私は聞きたいと思うけれども、例えばここに言う「政策」というのはどういうことなんですか、答えてください。
  219. 加戸守行

    ○加戸政府委員 通知の中に、「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施を妨害するために」具体的な行動をとるということで書いてございますが、ここにございます「政策」と申しますのは、文部省あるいは都道府県教育委員会等それぞれの公の機関におきまして一定の方向のもとに行政の施策を進めるわけでございますが、その個々一般的な考え方、方策、それを政策と私どもは理解いたしております。
  220. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうなると行政は何でもできるということですか。そして、それに対して反対することは全くできないということでしょう。今あなたが言われるのはこういうことですか。とにかく文部省なりあるいは県教委なり地方教育委員会が行政的にこうやりたいということで方針を出して決めたら、それがここに言う、あなたが言っておられる政策ということになりますか。
  221. 加戸守行

    ○加戸政府委員 教育公務員の政治的行為の制限につきましては、教育公務員特例法二十一条の三によりまして、国立学校教育公務員の例によります。そして、国家公務員法の百二条を引きまして人事院規則の一四—七で具体的に制限が書かれておりますが、その中で使われておる言葉が「国の機関又は公の機関において決定した政策の実施を妨害すること。」とございまして、これを受けまして、人事院の事務総長通知の中に「政治的行為の運用方針」に関する解釈が出されております。それで、この解釈の中におきましては、「「国の機関又は公の機関において決定した政策」とは、国会、内閣、内閣の統轄の下における行政機関、地方公共団体等政策の決定について公の権限を有する機関が正式に決定した政策をいう。」ということでございます。具体的には、例えば初任者研修の試行が行われておりますけれども、これは都道府県教育委員会において行う決定をしているわけでございます。そういう意味では、今申し上げた事柄は、「政策」というのは各公の機関が正式に決定した政策ということでございまして、私どもはそういうふうに理解いたしております。
  222. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから、私が言うことに答えなさいと言うのだ。そういうことは私は大体わかっているのです。各行政機関なり公の機関が決定した「政策の実施」とあるから、その「政策」とは何かと聞いているのです。例えば市町村教育委員会が決定をしたことについて政策といいますか、私はこう言っている。たとえ小さなことであろうと何であろうと政策といいますか、こう聞いている。どうですか、聞いたことに答えてください。
  223. 加戸守行

    ○加戸政府委員 人事院規則の中で書かれております「政策」は、公の機関、具体的には文部省なり都道府県教育委員会といった行政機関が決定したものも政策と呼んでおります。
  224. 中西績介

    ○中西(績)委員 ですから、そうなるともう全部、何でも政策になるわけですから、この政策なるものは大変な中身になってくるということです。行政機関というのはまさに万能だということになるわけですよ。私はそのことを確認すればいいのです。あなたがそういうふうに、たとえ小さなものであろうと公的機関あるいは行政機関が決めたものは全部政策だと言っているわけですから。  そうすると、私は聞きますけれども、今試行になっておる初任者研修というのは政策ですか。
  225. 加戸守行

    ○加戸政府委員 試行の形態といたしまして、それぞれの試行対象校におきまして初任者研修を実施するということを都道府県教育委員会並びに市町村教育委員会が決定しておりますれば、これは政策でございます。
  226. 中西績介

    ○中西(績)委員 それじゃ、今度も試行のための予算をつけましたね、その際には款項目がちゃんとあってやりましたか。
  227. 加戸守行

    ○加戸政府委員 今の御質問の最後言葉がちょっと聞き取れませんでした。恐縮でございますが、もう一遍……。
  228. 中西績介

    ○中西(績)委員 昨年に続いて、初任者研修をことしも実施をするわけですけれども、この際の予算というのは、この人員を、四十人学級それから定数改善のための予算、その中にわざわざ組み入れたのは款項目がなかったからではないですか。
  229. 加戸守行

    ○加戸政府委員 六十二年度予算並びに現在の六十三年度予算におきまして、教職員の配置率改善の中に初任者研修の試行に伴います指導教員の定数を、経費を計上いたしておりますが、これは費目といたしましては義務教育費国庫負担金の中に予算上計上させていただいているわけでございます。
  230. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうしますと、法律はなくとも予算措置をしたということですね。
  231. 加戸守行

    ○加戸政府委員 予算措置と申しますのは、具体的な一つの施策なりを実施するために必要な経費が予算として計上されているわけでございます。
  232. 中西績介

    ○中西(績)委員 だから結局、法律があれば法律に基づく款項目があってその中で措置をするわけですが、ところが、これはないからああいうところでごまかしをやっているわけですよ。  さらにもう一つは、聞きますが、「政策の実施、例えば初任者研修の実施を妨害する」とありますね。「妨害」とは何ですか。
  233. 加戸守行

    ○加戸政府委員 「公の機関において決定した政策の実施を妨害すること」は、人事院規則一四—七の第五項第六号で規定されておるわけでございますが、この解釈につきましては、それを受けました人事院総長通知の「政治的行為の運用方針について」という中で書かれておりますので、それを読み上げさせていただきます。「「実施を妨害する」とは、その手段方法のいかんを問わず、有形無形の威力をもって組織的、計画的又は継続的にその政策の目的の達成を妨げることをいう。従つて、単に当該政策を批判することは、これに該当しない。」とございます。したがいまして、私ども考え方としては、初任者研修に対します単なる反対の意見表明は該当いたしませんが、何らかの有形無形の威力を用いまして、初任者研修の実施を阻止するために組織的、継続的あるいは計画的に活動が展開される事態は、具体的に事例に即してこの政治的行為の制限に該当する可能性が強いと考えておるわけでございまして、それに該当するかどうかは個々具体的な教職員の行動によって判断される事柄でございます。しかしながら、そういった事態が起きないような形で注意を喚起させていただいたということでございます。
  234. 中西績介

    ○中西(績)委員 今の答弁を聞いておりますと、主体者、行政の主観によってそれが決められるわけです。そうでしょう、今言ったように威力妨害という問題になってまいりますと。ですから、「妨害」とはどういうことを指すのですか、具体的に言ってください。あなたはそういうことをわかっていてここに通知を出しているのだから、言ってください。
  235. 加戸守行

    ○加戸政府委員 「政策の実施を妨害する」と申しますのは、通常の状態であれば政策が円滑に実施されることを予想しているわけでございますけれども、それを何らかの、今申し上げました有形無形の威力を用いて、具体的には、当局側が圧力と感じ、例えば一つの政策を中止せざるを得ない、あるいは断念せざるを得ないというような方向へ持っていくことを意図して、組織的、継続的、計画的に行動されることを、「実施を妨害すること」と理解いたしております。
  236. 中西績介

    ○中西(績)委員 そうですね。だから私は聞いたのです。あくまでも行政担当の人たちがそのことの判断を主観的にやれば、それが威力になるわけですよ。だから、今言ったとおりなんです。  そうなると、これは大変なことだということです。戦後これが決まったのが昭和二十四年ですから、こうした今あなたが読み上げられた十四—七の人事院規則に該当するいろいろな分野というのは大変なことになる、だからそのときにわざわざ文部次官の通知まで出ているのですよ。そうなっては大変だということでもって通知まで出されている。それからすると約四十年近くたっている。しかし、今までこんなことは出たことがないわけです。人事院に、こういうことが出たかどうかを聞いてみましたら、経験がありませんとこう来たのです。  ですから、今のような勝手な政策というものの解釈についても、さらに政策決定ということになれば、少なくとも私はこういうふうに感じていますよ。政治的目的のうちに、今あなたがおっしゃったような「政策とは」云々というのがずっとありますが、これは正式に決定されたものでなければならないはずです。ところで、初任者研修制度あるいは教育職員免許法改悪、それぞれ教育公務員特例法により云々ということ、こういうあなたが申されたような問題について、免許法を改正する法律案など全部どうなっているかというと、国会では提出はされておるけれども、いまだに審議がされておらないのですよ。ですから、これから審議がされて衆参両院で可決成立して、初めて正式に決定された制度として実施されるに至るというものであります。これがもし否決あるいは審議未了あるいは継続審議などになった場合には、これは法律としては現存しないわけです。今もまだ現存していないのです、提出はされてあっても。ですから、こうしたことを考えてみると、今の答弁からすると、国会における審議権を侵すようなことを平気で言っているということが一つです。  それからもう一つは、威力妨害ということ、妨害をするということを盛んに今言われていましたけれども、これが勝手に行政者によって、感じとしてそれを受けとめることができればそうだと言う。しかも法律がまだない中でですよ。だから、さっき私が言ったように、反対すらもしてはいけないということになる。やったときには処分すればいい、そうすれば何でもできる、そしてそれは裁判で争いましょうと。あなたたちは自分で金を出さぬからいいよ、みんな国の金でやるんだから。二十年も裁判をやってごらんなさい。個人のこうした問題をどうするかといったときに、二十年間もこれをやれなんていったってできるわけないですよ、個人では。だから私は、今のようなことが平気で行政者の感じでやられるということになったら大変だと思うのですが、この点で、政治的な目的というものを、国の機関あるいは公の機関において決定した政策、これを実施することを妨害するというふうにあなたは盛んに今言ったけれども、この点は「実施を妨害する」ということは、手段だとか方法のいかんを問わずに有形無形の威力をもって組織的、計画的または継続的にその政策の目的の達成を妨げることを言っておるわけでしょう。しかし、まだ実際行為としてこういうものは全然出てきてない。そして具体的には、あなたは指令が出されたと言うけれども、指令は出されてないのですよ。具体的にはそういうものが何もない中で出している。だから私はこれは警告だろうと思った、最初にもらったときに。私は佐藤委員からもらったのです。だからこれは組合に対する警告かなと思って読んでいたところが、よく読み返したらそうじゃないのです。ということになってまいりますと、何といってもこの問題は、「当該政策を批判する」こういうことで具体的にやってもいいということになっているわけですから、このことを今の段階でもう既に妨害が出るとか何とかいろんな予見をし、勝手に主観で決めてやられるということになってまいりますと、これは大変なことになってくるわけです。  ですから、この初任者研修等につきまして「政策」に当たる、こういうことにしていますけれども、政策の問題と、こうした妨害問題等を含めてあるいは「実施」という問題について、これは実施したかどうかという問題だって、ここでは結論が出ないうちに、こういうことを平気でやろうとしているのです。  ですから私は、何としてもこの点は、「威力をもつて」云々だということには決してならないということを、法律上はこういうように言っていますね。いいですか。「威力とは、人の意見を制圧するに足りる勢力を言う。」これは具体例として、危険が身に及ぶようなことを告げたり、会場での発煙筒をたき大会を混乱させるなどがこれに当たるとされている。これは大審院明治四十三年の二月と、最高裁では二十八年の一月三十日にこういう事例がちゃんと示されております。したがって、集会、デモ、こういうものは威力には当たらないわけです。署名だってそれが当たるとはならないのです。憲法二十一条に保障されているそういう基本的なものを平気で否定するという、しかも教育担当するところがこういうことを言うということになりますと、これは大変な問題であります。私は、この点で大変な内容をここでは示しておるということになると思うのです。  そこで、ぜひ大臣、聞いておいてください。今までを考えてみても、日教組の昭和三十一年の教育三法反対闘争だとか、三十三年以降の勤務評定反対闘争、三十六年の文部省学力テスト反対闘争、五十一年以降の主任制反対闘争等、これらを挙げていきますと、文部省は今まで一度たりともこういう中身のものを出したことはありません。これは文部省だけでなしに、人事委員会に対して私たちがそれを聞いても、初めてですということでびっくりした顔をします。したがって、これが人事院規則一四—七に違反すると言明をしたことがないということ、今度初めてこれが違反をする、そういう中身になっておるということ、私たちはこんなことを考えますと、本当に、先ほど一番最初に申し上げましたように、見ただけでぞっとするのです。真っ暗になる。ですからこの問題は、例えば免許法の問題等になってまいりますと、これから後の労働組合のそれぞれの労働条件にかかわる問題等が出てくるのです。しかし、全然話もせずに一方的にこうして行政を通じて流していくということになりますと、大体文部行政というのは、今や世界的に、こうした問題については、ILO、ユネスコの教員の地位に関する勧告九項などを見てみましても、すべてこうしたことはやはり話し合いをしてちゃんと片づけるべきであるということを言われているのです。国際化、国際的にということを盛んにあなたたちは言うわけですから、少なくとも世界のそうしたしきたりをもう一度学んだらどうですか。そして、当事者同士がまず話をするということが前提にならずに、一方的に、私が一番最初ショックとして受けとめたような弾圧だけを前提にしてやるようなこうしたことはあってはならない。大臣どうですか。——いや、もう時間がないから、大臣です。あなたなんかから答弁をもらおうと思っていない。大臣いかがですか。
  237. 中島源太郎

    中島国務大臣 段々の御議論を伺っておりましたが、そのもとは、三月二十九日教育助成局長通知にかかわる御質問でございますので、私もその通知を目にしておりますが、しかし、一番後段でございますが、この通知の要点というのは、法律に違反するような違法行為があったり、あるいは政治の中立性が損なわれるというようなことがあって学校教育に対する国民の信頼が損なわれてはいけない、これは当然のことでございまして、そういうことがないように服務規律を順当に進めてくれ、この心を私はやはり素直に御理解いただくべきであろう。先生おっしゃるように、憲法二十一条に決して触れるようなことではございませんし、今の二つの点、違法性と教育の中立性が損なわれることがないように、私どももそれは今後ともやはり心に置いていくべきことであろう、このように感じました。
  238. 中西績介

    ○中西(績)委員 今の大臣の答弁、いろいろ言っておるけれども、実際に政策を聞き、政策とは何かということを聞き、妨害とは何かということを聞いたときに、あなたが言われる憲法二十一条にかかわる問題が今のあれからすると完全に無視されておるから、私たちはだからわざわざそのことを聞いたわけです。そこが一番の問題ですし、もう一つは、四十年間に先ほど申し上げたような幾つかの問題があったけれども、そのときには全然出されずに、今の助成局長になって初めてこうした問題が四十年ぶりに出されたから私たちは言っておるのでありまして、ここが一番の問題なんです。だから、何か立身出世をするために目立つようなことをしたいというのなら別ですよ。(発言するものあり)この点は何としても問題があるのです。憲法に違反するようなことをやるのだったら問題があるのです。この点を十分認識しないと、大臣の答弁というのは答弁になっていない。  以上です。      ────◇─────
  239. 中村靖

    中村委員長 内閣提出義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。中島文部大臣。     ─────────────  義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  240. 中島源太郎

    中島国務大臣 このたび、政府から提出いたしました義務教育学校施設費国庫負担法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  義務教育学校施設費国庫負担法は、公立義務教育学校施設の整備に対する国の負担制度について定めているものであり、政府は、この制度のもとに、鋭意、公立義務教育学校施設の整備に努めてまいりました。  昭和四十八年度には、大都市周辺地域等における児童生徒の急増現象にかんがみ、児童または生徒が急増している地域にある公立の小学校または中学校の校舎の新築または増築に要する経費について国の負担割合を三分の二に引き上げ、昭和六十二年度まで、これらの学校の整備を促進するとともに、関連市町村の財政負担の軽減にも資することとしてきたところであります。  しかしながら、昭和六十三年度以降においても、児童生徒急増市町村は相当数存続することが予想され、中学校を中心にかなりの量の施設整備が見込まれております。したがって、今回、所要の改正を行い、もって児童または生徒が急増している地域にある公立の小学校または中学校の施設整備を円滑に進めようとするものであります。  次に法律案内容について御説明いたします。  まず第一に、児童または生徒が急増している地域にある公立の小学校または中学校の施設の整備を促進するため、引き続き、昭和六十七年度までこれらの学校の校舎の新築または増築に要する経費に係る国の負担割合を三分の二に引き上げる措置を講ずることといたしております。ただし、国の補助金等の臨時特例等に関する法律により、特例的補助率かさ上げについては、昭和六十一年度から昭和六十三年度までの暫定措置として補助率の引き下げが行われていることを考慮し、昭和六十三年度の国の負担割合は十分の五・五とすることといたしております。  第二に、この法律の施行期日を、昭和六十三年四月一日とし、また、今回の改正に伴い必要となる関連法律の規定の整備を行うことといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いいたします。
  241. 中村靖

    中村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十八分散会