○船田
政府委員 昭和六十三年度
文部省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。
昭和六十三年度の
文部省予算につきましては、文教は
国政の
基本であるとの認識に立ち、
教育、
学術、
文化、
スポーツの諸
施策について、その着実な
推進を図るため、
臨時教育審議会の
答申を踏まえ、
所要の予算の確保に努めたところであります。
文部省所管の一般会計予算額は、四兆五千七百六十五億九千四百万円、
国立学校特別会計予算額は、一兆八千百八十三億四千二百万円となっております。
以下、
昭和六十三年度予算における主要な
事項について、御説明申し上げます。
第一は、
初等中等教育の
充実に関する経費であります。
まず、
義務教育諸
学校の
学級編制及び
教職員定数の
改善計画につきましては、いわゆる四十人
学級の実施について、小
学校は児童減少市
町村以外の「その他市
町村」内の
学校の第三学年まで、中
学校は「児童減少市
町村」内の
学校の第三学年まで、それぞれ
施設余裕校について実施することとしたほか、教職員配置についても
所要の
改善を行うことといたしております。
次に、教職員の資質の
向上を図るため、新規採用
教員等
研修、免許外教科担任
教員研修、
教員の海外派遣、
教育研究グループ補助、
教育研究団体への
助成など、各種
研修を実施することといたしております。また、
初任者研修制度につきましては、その円滑な実施を図るため、初任者
研修の試行を
拡充し、全都道府県・
指定都市において実施することといたしております。
道徳教育につきましては、
児童生徒の豊かな人間形成を図る上で極めて重要な
役割を担っていることにかんがみ、その一層の
充実を図るため、
家庭・
地域社会との連携のもとに、奉仕的体験、
生活体験等を通じて道徳的実践力の
育成・強化を図る事業などを新たに実施することといたしております。
次に、
児童生徒の
問題行動について適切に対処するとともに、
児童生徒の健全な
育成に資するため、自然教室
推進事業の
拡充を図るほか、引き続き生徒指導
推進校の指定、生徒指導担当
教員の
研修等の
各般の
施策を
充実することといたしております。
義務教育教科書の無償給与につきましては、これを継続することとし、
所要の経費を計上いたしております。
幼稚園
教育につきましては、保護者の経済的な負担の軽減を図るための幼稚園就園奨励費補助を行うなど、一層の
振興を図ることといたしております。
特殊教育につきましては、心身障害児の職業的自立のための進路指導等の実践研究を新たに実施するほか、
特殊教育就学奨励費の
充実など、その
施策の
振興に努めることといたしております。
教育内容につきましては、その
改善について、昨年末、
教育課程審議会からの
答申がありましたが、これを受けて
学習指導要領等の改訂を行い、その趣旨の徹底を図ることといたしております。また、
学校におけるコンピュータ利用のあり方等についても引き続き研究を行うことといたしております。
教育方法につきましては、その
改善・
充実を図るため、引き続き総合的な
調査研究を
推進するほか、
教育機器を利用した
教育万法開発のための特別設備の
助成等を行うことといたしております。
また、海外子女
教育・帰国子女
教育につきましては、日本人
学校の増設、
児童生徒数の増加に対応し、派遣
教員を増員するとともに、中国等帰国孤児子女
教育研究協力校を
拡充するなど、帰国子女受け入れ態勢の
整備を図ることといたしております。
さらに、
児童生徒等の健康の保持増進に係る事業の
推進に努めるとともに、
学校給食につきましても、豊かで魅力ある
学校給食を目指して、
学校給食
施設・設備の
整備を図ることといたしております。
次に、
公立学校施設の
整備につきましては、校舎等建物の新増改築事業について
所要の事業量を確保するとともに、
児童生徒急増地域における小中
学校校舎の新増築に係る特例措置の延長、部室
整備に対する補助制度の創設、吹きつけアスベストの改修に対する補助制度の
拡充等の
制度改善を行うこととし、これらに要する経費として、二千六百七十六億円を計上いたしております。
なお、
定時制及び通信
教育の
振興、理科
教育及び産業
教育の
振興、英語
教育の
充実、地域
改善対策としての
教育の
振興など
各般の
施策につきましても
所要の経費を計上いたしております。
第二は、
私学助成に関する経費であります。
まず、私立の
大学等に対する経常費補助につきましては、
昭和六十二年度に対して十億円増の二千四百五十三億五千万円を計上いたしております。このほか、
教育研究装置
施設整備費補助についても、
大学院最先端装置、情報処理
教育装置等の
整備を図ることとし、
昭和六十二年度に対して二十億円増の七十四億円を計上するなど、
教育研究の
推進に配慮いたしております。
また、私立の
高等学校から幼稚園までの経常費
助成を行う都道府県に対する補助につきましても、
昭和六十二年度に対して十億円増の七百三十五億円を計上いたしております。
日本
私学振興財団の貸付事業につきましては、
政府出資金二億五千万円及び財政投融資資金からの借入金二百二十七億円を計上し、自己調達資金と合わせて五百七十億円の貸付額を予定いたしております。
また、専修
学校につきましては、
職業教育の
高度化を
推進するための
所要経費を新たに計上するとともに、
教員研修事業等に対する補助、大型
教育装置に対する補助の
拡充等を図るなど、専修
学校教育の一層の
振興を図ることといたしております。
第三は、
高等教育の
整備充実に関する経費であります。
まず、
大学入試の
改善につきましては、
昭和六十五年度
入試から
臨時教育審議会答申を踏まえた
入試改革を実施することを目途に、
大学入試センターの
所掌事務の変更等の
所要の
準備を進めていくことといたしております。
また、
国立大学の
整備につきましては、総合研究
大学院大学を創設するとともに、三重
大学に
医療技術短期大学部を併設するほか、十八歳人口急増に伴う
大学入学志願者の急増に適切に対処する等、
教育研究上緊急なものについて、
整備充実を図ることといたしております。
このほか、特に、
大学院につきましては、最先端設備の
拡充を図るとともに、
教育研究上必要性の高い研究料、専攻の新設等を行うことといたしております。
附属病院につきましては、
教育、研究、診療上特に必要性の高い
分野及び
社会的
要請の強い
分野について、診療料、救急部等を新設するなど、その
充実を図ることといたしております。
なお、
国立大学の授業料につきましては、諸般の情勢を総合的に勘案し、
昭和六十四年度入学者から、これを改定することといたしております。
次に、育英奨学事業につきましては、
昭和六十三年度から奨学金貸与人員を増員するなど、その
改善を図ったところであり、
政府貸付金七百三十九億円、財政投融資資金三百三十億円と返還金とを合わせて、千五百六十三億円の学資貸与事業を行うことといたしております。
また、
公立大学につきましては、医科
大学、看護
大学等の経常費補助及び新たに
整備を図ることとした情報処理
教育設備を含めた
教育設備
整備費等補助について、
所要の
助成を図ることといたしております。
このほか、
大学改革を
推進するため、
我が国の
高等教育に関する
基本的
事項について
調査・
審議する
大学審議会の運営、放送
大学の受講の機会を拡大するための地区センターの設置等放送
大学学園の
整備等の
各般の
施策につきましても、
所要の経費を計上いたしております。
第四は、
学術の
振興に関する経費であります。
まず、
科学研究費補助金につきましては、独創的・先端的な研究を
推進し、
我が国の
学術研究を格段に
発展させるため引き続き
拡充を図ることとし、
昭和六十二年度に対して三十八億円増の四百八十八億八千万円を計上いたしております。
次に、
重要基礎研究につきましては、
加速器科学、
宇宙科学、
生命科学等の一層の
推進を図ることとし、これら
重要基礎研究に要する経費として五百六十五億円を計上いたしております。
また、
学術研究体制の
整備につきましても、
国立天文台を創設するとともに、すぐれた
若手研究者の
育成に資するための特別研究員制度の
拡充、
大学と
民間等との
共同研究の
充実を図るなど
各般の
施策を進めることといたしております。
第五は、
社会教育の
振興に関する経費であります。
まず、地域における
社会教育活動の拠点となる
公立社会教育施設につきましては、引き続きその
整備を図ることとし、このために必要な経費として七十九億円を計上いたしております。
また、生涯
学習の
観点から、地域全体で生涯
学習に取り組む体制の
整備及びその
推進を図るとともに、青少年、成人、婦人、高齢者など各層に対する
学習機会の提供、地域
活動の促進、新たなメディアの活用等による多様な
学習情報の提供に努めるほか、
社会教育主事、
社会教育指導員等の
養成確保、民間の
社会教育活動の
推進にも努めることとして、
所要の経費を計上いたしております。
さらに、青少年の
健全育成に資するため、青少年の野外
活動や
家庭教育の
充実に努めるとともに、青少年に豊かな
生活体験の機会を提供する少年自然の家につきましては、福岡県夜須町に第十一番目の国立少年自然の家を機関設置し、また、山口県徳地町に置く第十二番目の少年自然の家の設立
準備を行うなど計画的な
整備を進めることといたしております。
このほか、国立オリンピック記念青少年総合センターについては、
施設の総合的
整備のため、構想をまとめるとともに、
基本設計を進めるための
所要の経費を計上いたしております。
第六は、
体育・
スポーツの
振興に関する経費であります。
まず、
国民の体力つくりと
スポーツの普及
振興につきましては、広く
体育・
スポーツ施設の
整備を進めるため、
社会体育施設及び
学校体育施設の
整備に要する経費として
昭和六十二年度に対して二十三億円増の百六十八億円を計上いたしております。
また、
学校体育につきましては、
体育指導の
充実強化に努めるとともに、
学校体育大会の補助についても
所要の経費を計上いたしております。
さらに、生涯
スポーツ推進の
観点から、新たに全国
スポーツ・レクリエーション祭を開催するとともに、
家庭、
学校、地域における体力つくり事業の
充実に努め、たくましい青少年の
育成と明るく活力ある
地域社会の形成に資することといたしております。
このほか、日本
体育協会の行う選手強化事業や国際交流事業等に対して引き続き補助を行うこととし、特にソウル・オリンピック選手強化特別対策事業につきましては、その
拡充を図っております。さらに、
国民体育大会の
助成など
各般の
施策につきましても
所要の経費を計上いたしております。
第七は、芸術
文化の
振興と
文化財保護の
充実に関する経費であります。
まず、芸術創作
活動の奨励につきましては、芸術関係団体の創作
活動に対する補助、芸術祭、芸術家
研修等を行うための経費のほか、新たに、
民間等の協力も得て、国の内外において意欲的な公演を実施する芸術
活動の特別
推進事業の経費を計上いたしております。
また、
文化の普及につきましては、こども芸術劇場、青少年芸術劇場、中
学校芸術鑑賞教室、移動芸術祭等を実施し、
国民文化祭を開催するための経費を計上するとともに、中国引揚者や外国人のための日本語
教育等に係る
所要の経費を計上いたしております。
次に、
文化財保護につきましては、
国民の貴重な
文化遺産の保存、活用を図るため、国宝・重要
文化財等の保存
整備、埋蔵
文化財の発掘
調査、史跡の
整備・公有化を進め、また、天然記念物の保護及び食害対策を進めるとともに、国立劇場の事業を
充実するなど、伝統芸能等の保存伝承を図ることといたしております。
また、
文化施設の
整備につきましては、
地域社会における
文化振興の拠点となる
文化会館、歴史民俗資料館等の
地方文化施設の
整備を図るとともに、国立
文化施設については、かねてより
準備を進めております第二国立劇場について、実
施設計に着手することとし、そのための経費を計上いたしております。
第八は、
教育、
学術、
文化の国際交流・協力の
推進に関する経費であります。
まず、
発展途上国への協力等の
観点から、外国人留学生の受け入れの
拡充、受け入れ態勢の
整備、日本語
教育の
充実等を図るとともに、私費留学生に対する
施策を
充実し、
大学等はもとより民間団体など各方面の協力も得ながら、二十一
世紀を目指して、留学生に関する事業を積極的に
推進することとし、そのために要する経費として百八十三億円を計上いたしております。
さらに、ユネスコを通じた
教育協力、国連
大学への協力等についてもその
推進を図ることといたしております。
また、
学術の国際交流・協力を
推進するため、諸外国との研究者交流、特に次代を担う外国人
若手研究者の受け入れを
拡充するとともに各種の国際
共同研究、拠点
大学方式による
発展途上国との
学術交流の促進を図ることといたしております。
第九は、
教育改革の総合的
推進等に関する経費であります。
ただいま御説明いたしましたように
教育改革の着実な
推進を図るため
所要の経費を計上いたしておりますが、このほかに、
教育改革に関する
施策を円滑かつ効果的に
推進するため、総理府に
臨時教育改革推進会議(仮称)を新たに設置することに伴う関連経費を計上するとともに、
地方公共団体等への
教育改革に関する研究委託、民間の
調査研究機関等を活用しての
時代の
進展や
社会の
変化に対応した文教政策の立案に関する総合的
調査研究、入学時期に関する
調査研究などを実施するための経費を計上いたしております。
以上、
昭和六十三年度の
文部省所管の予算につきまして、その概要を御説明申し上げた次第であります。
何とぞよろしく御
審議くださいますようお願い申し上げます。(拍手)