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1988-04-19 第112回国会 衆議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十九日(火曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 菊池福治郎君    理事 笹山 登生君 理事 鈴木 宗男君    理事 月原 茂皓君 理事 松田 九郎君    理事 串原 義直君 理事 水谷  弘君    理事 神田  厚君       阿部 文男君    石破  茂君       衛藤征士郎君    遠藤 武彦君       大石 千八君    金子 一義君       川崎 二郎君    北村 直人君       小坂善太郎君    杉浦 正健君       田邉 國男君    武部  勤君       玉沢徳一郎君    中島  衛君       長谷川 峻君    鳩山由紀夫君       保岡 興治君    石橋 大吉君       沢藤礼次郎君    田中 恒利君       竹内  猛君    前島 秀行君       安井 吉典君    武田 一夫君       藤原 房雄君    吉井 光照君       吉浦 忠治君    藤田 スミ君       山原健二郎君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産大臣官         房審議官    伊藤 礼史君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省構造         改善局次長   内藤 克美君         農林水産省畜産         局長      京谷 昭夫君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      竹島 一彦君         農林水産省経済         局国際部長   塩飽 二郎君         自治省財政局指         導課長     二橋 正弘君         農林水産委員会         調査室長    羽多  實君     ───────────── 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   熊谷  弘君     鳩山由紀夫君   近藤 元次君     金子 一義君   保岡 興治君     北村 直人君   玉城 栄一君     吉井 光照君 同日  辞任         補欠選任   金子 一義君     近藤 元次君   北村 直人君     保岡 興治君   鳩山由紀夫君     熊谷  弘君   吉井 光照君     玉城 栄一君     ───────────── 四月十八日  米の輸入反対等に関する請願(藤田スミ君紹介)(第一五九七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農用地開発公団法の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)      ────◇─────
  2. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農用地開発公団法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。串原義直君。
  3. 串原義直

    串原委員 竹下総理は十七日の夕方、静岡県熱海市内で開きました自民党の婦人部活動者研修会講演をされたというのでございますが、その講演を私は直接聞いたわけではありませんから、この報道によりまして伺いたいのであります。  その際に竹下総理は、レーガン・アメリカ大統領との間では牛肉オレンジ輸入自由化問題について共同作業で痛みを分かち合うと確認してきた。つまり、とり方によりますならば、竹下総理がかつてアメリカに行ったときにもう既に自由化はやむを得ない方向であるがごときの話し合いをしてきた、こういうことを婦人部研修会で述べられた。さらに、佐藤農林水産大臣決断をし、国境措置国内措置が必要だとなれば、政府与党一体となってバックアップしていくと話し合っておるのであります。こういうことをあわせて婦人部研修会で述べたというのであります。さらに、昨日の竹下総理記者会見によりますと、もう一足踏み込んで自由化やむなしと受け取れるような見解竹下総理は述べられた、こういうふうに報道されておるし、また記者諸君も語っているわけであります。つまり、言いかえますならば、牛肉かんきつアメリカ要求のように自由化はできない、こういう姿勢と受けとれないのであります。農林水産大臣は先日の本委員会における私の質問に答えて、自由化は困難である、困難ということは自由化はできません、こういう立場であることを明確に答弁されました。といたしますと、竹下総理姿勢とあなたの姿勢は受け取り方によると大きな段差がある。言いかえますれば閣内統一とも言える段差がある。これは重大なことであります。きょうスミス次席代表も来ておられるようでありますが、いよいよ山場に差しかかったこの問題、これではいかがかと考えますので、この際明確にお答えを願っておきたいのであります。いかがですか。
  4. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 日曜日の竹下総理発言等関連をして、おっしゃる結論は、閣内統一ではないか、こういうことでございます。私は竹下内閣の一員といたしまして、また農林水産関係を担当する責任者といたしまして、閣内統一はない、あってはならぬ、かように思っております。ただ、今までもいろいろ議論されてまいりましたけれども、またいろいろな報道等もございまして、私自身も多少いら立ちもあれば、また神経質な点もあれば、苦慮いたしております。今委員おっしゃるには、一月の竹下訪米の際にもう決まっておったのではないかという推測もまたされるわけでございますけれども、そういうところで一月にでも決まっていれば私の苦労はないわけであります。また私の苦労は、竹下総理が申されておりますように私がどう判断をするか、決断をするかということ。これを私は率直に受けとめておりますし、そういう意味ではいろいろな角度からいろいろな議論もございましょう、詰め方もございましょう。そして私が、とにかく決裂するのは簡単だけれども決裂してはならぬということで三月三十一日話し合いは継続しようということで合意した、私の提案をのんでもらった。その線に従って三局長が渡米をし、そしてこの間帰ってまいりました。まだまだ詰めなければならない点がたくさんある。しかしその中身は一々言えるものではない。今おっしゃるようにスミスUSTR次席代表が来日中である。その機会をとらえてさらにまた話し合いを進めなければならない、詰めなければならない。そうしたことを、いろいろなところでいろいろな議論がございますけれども、最終的に私自身が総合的にどう判断するか。  今はとにかく余りにもかけ離れておりまして、話にならぬわけであります。我が方は自由化は困難である、向こうは四月一日完全自由化実施と去年から言っているわけでありますから、それを崩してはいないわけでありますから、そういう意味においてとにかく話し合いを続けなければならない。そして結果は生産者にも当然理解を仰げるもの、流通関係者消費者にも大変心配をかけておりますので、そういうことをわかっていただけるような措置を講じなければならない。しかし、時代はどんどん変わってきておりまして、国際化時代であるというのは中川・ストラウス会談のときよりもっと厳しいものがあることは承知しながらも、日本農業行く末を、食糧政策推進ということを考えながら慎重にも慎重に取り組んでおる。そして、四月中にどうだとかこうだとかいう話もありますけれども、多くの方々心配をかけておりますので、ひとつその心配を一日も早くほぐさなければならない、私はそういうことを強く願望いたしておるということでございます。
  5. 串原義直

    串原委員 あなたが大変重大な時期に当たって苦労されていることについては敬意を表したいと思っているところでございますが、つまり、この問題については、いろいろな話があるだろうけれども責任者であるあなたの決断以外にない、あなたの決断結論である、こういうことであろうと今の答弁を聞いて思うのでありますが、この際、確認をさらにしておきたいと考えます。
  6. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今日までの経緯、今日行われておる話し合い、いろいろなことを総合的に含めて私自身日本農業行く末、我々が考える食糧政策推進、こういうことを頭の中から放してはならない、その責任は私にある、こういうことでございます。だれがどのように取り決めようとも後始末は私が責任を持ってやらなければならぬのでありますから、しかし幸い私の決断するそのことを総理も言っておられるわけでございますし、私は真剣である、こう申し上げておるわけでございます。
  7. 串原義直

    串原委員 関連して具体的なことを触れさせていただきます。  農水省からいただきました情報、さらに新聞報道にもございますが、農水省眞木経済局長らとスミス次席代表との事務レベル協議で、アメリカ側自由化時期の明示は不可欠として早期自由化を求めた、同時に日本自由化するまでの期間日本がとる代償措置として、一つ輸入枠拡大、二つは畜産振興事業団運用改善、三つはオレンジジュース生産、販売への行政指導撤廃、四つは他の農産物の関税引き下げ、この四項目を要求した、こうあるのであります。これはどういう姿勢で対応されますか。
  8. 塩飽二郎

    塩飽説明員 お答え申し上げます。  先ほど先生からお話のございました農林省の関係局長訪米した際のアメリカからの主張でございますが、御案内のように先月末の佐藤大臣訪米の際のヤイター代表との合意、二国間の話し合いによる解決を引き続き努力していこうという合意に基づいて三局長が四月十二日から十四日まで三日間にわたってスミス次席代表事務レベル協議を継続して行ったわけでございます。その際、従来からアメリカ牛肉かんきつ自由化問題に関連して主張しているものがより具体的な姿で示されたわけでございます。今お話がございましたように、アメリカ基本的に、ことしの四月以降、牛肉及びオレンジ並びにオレンジジュースの三品目につきまして自由化をすべきであるという大変強い立場を踏まえながら、もしそれが実現できない場合にも早期自由化をする時期を明示すべきである、それが不可欠であるという主張を崩しておりません。  さらにまた、自由化時期までの期間内における牛肉あるいはオレンジオレンジジュースについての輸入枠拡大。それから、御案内のように、牛肉輸入につきましては、畜産振興事業団がそのほとんどにつきまして、国内牛肉価格に対する悪影響を防止する見地に立ちまして、国内価格安定制度とのリンケージのもとに運用を行っているわけでございますが、その運用面での畜産振興事業団の具体的な業務の改善。さらに、オレンジ果汁について、現在、我が国輸入割り当て制度のもとで輸入を行っております濃縮果汁のほかに、我々消費者が直接に消費する形態での果汁輸入はごく少量を除きまして認めていないわけでございますが、これの輸入即時自由化。さらにまた、濃縮オレンジジュース輸入した場合に、我が国温州ミカン果汁との共存を図る見地に立ちまして、現在、一定比率に基づく混合を義務づけて流通をさせているわけでございますが、それの混合義務を即時撤廃するといったような問題がアメリカから、自由化時期の明示の問題にあわせまして具体的な主張として出てまいったわけでございます。  私どもは、先ほど大臣からも御答弁を申し上げましたけれども日本肉牛産業あるいはかんきつ産業が抱えます大変困難な実情ですとか、あるいは我が国がこれまで農産物の分野につきまして市場開放、アクセスの改善のために努力してきた経過でございますとか、あるいはまたアメリカが、例えば食肉輸入法について、輸入制限条項をバックに主要供給国輸出制限自主協定を結んでいる、そういった実態を指摘しつつ、これらの三品についての自由化実施我が国にとって極めて困難であるという実情を指摘しつつ反論をしてまいったわけでございます。  その結果、アメリカ側自由化の時期の明示が不可欠という立場を依然として崩しておりませんので、日米双方立場には依然として大変な立場の相違が残っているわけでございますが、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、今週、日米高級事務レベル協議という定期の協議が、東京におきまして日米関係省庁間で行われることになっております。スミス次席代表が既に昨日来日しておりますので、日米高級事務レベル協議の合間の時間的な余裕を活用いたしまして、引き続きスミス代表との論議を重ねていくことにいたしているわけでございます。
  9. 串原義直

    串原委員 あくまでも二国間協議でこの話し合いは進めてもらいたい、そして、先ほど大臣答弁された、自由化は困難であるという姿勢に基づいて話し合いをしてもらいたいと思う。  ところが、ただいま御答弁をいただきましたように、聞いておりますと、私としては何ともこれは、二国間協議の中ですからいろいろな話が出るだろうけれども話し合い内容が、まさに内政干渉とも受け取れるような感じを持つわけなんですよ。例えば、畜産事業団牛肉輸入事業から手を引いてもらいたいという要請。今お話しのように、オレンジジュースの行政指導問題では、輸入オレンジジュースミカン類との混合を強制されていて直接一〇〇%ジュースとして小売できない点について、輸入を阻害している、だから撤廃しろ、こういう話。いま一つは、自由化をした場合に、課徴金水準の問題まで突っ込んで話が出てくる。こうなりますと、私は、いささか内政干渉とも受け取れるようなアメリカ姿勢である、こう言わざるを得ないのであります。その辺についてどんな見解をお持ちですか。
  10. 塩飽二郎

    塩飽説明員 お答え申し上げます。  アメリカ牛肉輸入あるいはかんきつ輸入につきましての具体的な要求の要素につきましては先ほど申し上げた内容でございますが、これについては、今先生の方からお話のありましたような、アメリカの身勝手ともいう主張という見方も確かにあろうかと思います。  しかし、アメリカは、先ほど御答弁申し上げましたように、牛肉にしろあるいはかんきつにしろ自由化主張しているわけでございますが、この自由化というのが実は幅広い概念でございまして、現在日本は、牛肉にしろオレンジにしろ、輸入割り当て制度のもとで、国内需給実情を勘案しながら、毎年、可能な範囲内で輸入枠を設定するというやり方で輸入を許容しているわけでございます。自由化という場合には、当然そういう輸入割り当て制度を撤廃するということが基本であることはもちろんでございますが、同時に、例えば牛肉につきましては、畜産振興事業団牛肉輸入相当部分につきまして、みずからが輸入者立場に立って買い付けをし、買い付けした牛肉を、国内牛肉価格安定制度との関連性を保持しながら、一定価格水準のもとで放出をいたしているわけでございますが、輸入割り当て制度が仮に撤廃された場合に、そういった畜産振興事業団牛肉輸入についての具体的な操作がどういう形で残っていくのかということについては、自由化要求するアメリカ立場としては、当然そういう問題についても大いに関心を持たざるを得ないのではないかというふうに推察されるわけでございます。  同様のことがお話のございましたオレンジジュースにつきましても、自由化という場合には輸入割り当て制度を撤廃することが基本でございますが、それに加えて、自由化までの経過期間における輸入数量増大のペースがどうであるとか、あるいは、現在国内温州ミカン果汁との混合比率を義務づけているわけでございますが、その比率が引き続き維持されるものであるかどうか、そういった問題について、狭義の自由化問題とあわせて、アメリカ日本市場に対するこれら三品の輸出増大見地から関心を持つであろうことは大いに推察されるわけでございます。
  11. 串原義直

    串原委員 アメリカ立場とすれば関心を持つではございましょう。しかし、それをこの話し合いの中に要求要請として出してくるということは身勝手ではないか、私が受け取る感じでは内政干渉とも言えるものである、こういうふうに主張したいわけなんですよ。アメリカではそう思うでしょう。日本はそうはまいりません。日本には日本立場がある。したがって、農水大臣が言われるように、随分と苦労しているということになるわけだ。諸君苦労しているわけだ。  アメリカは無理はないなんという話を我々は承知をしながら話をするということはいかがかと思う。アメリカ立場で言えばそういうことはあるでしょう。しかし日本はそうはいかない。日本には日本立場があります。国内事情もあります。こういう立場できちっと対処してもらいたい。あなたとここでそのことを深めて議論するつもりはないが、きちっと対処してもらいたい。大臣、このことをお願いします。
  12. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今私が多少のいら立ち、また神経質になり過ぎる点もいろいろあると自分で自覚をしながらも、冷静に対応を進めておるそのことからして、いささかあるいは場違い、あるいは誤解を招いてはいかぬと思いますけれども国内消費者の一部におかれても、畜産振興事業団は何ぞや、あるいは食管制度なんというのはなくていいんだ、こういう議論がある。これが国際化の中で直ちにアメリカに活字になって送られる。私はこのことを、そうおっしゃる方をただ責めるわけにはまいらぬ、私どもが私ども食糧政策推進についてもっとわかってもらえるように説明すれば、そんなことを言われなくても済むのにという気持ちを持ちつつも、さて、そういう中にあって、アメリカ側アメリカ側立場で、まあ私から勝手なことを言っておるという表現はいたしませんけれども、今冷静に対応しておると言いながらまたそれと違うことを言うわけにはまいりませんけれども国内における一部の消費者方々にもわかってもらってない部分アメリカと同じようにある、それは事実であるということは率直に認めながら、私はそういう意見は正していかなければならない、我が国食糧政策がそこにあるんだということをもっともっと強調しなければならない、この原則の点において違いがあったのではとてもじゃない、実は苦労の存するところそこにあり、こういうことなんでございます。いろいろ言いたいことはありますけれども、この程度でお察しをいただきたいと思います。
  13. 串原義直

    串原委員 それでは大臣、もう一言お答えください。  四月十二日から十四日まで、ワシントンで三回ばかり一連の事務レベル協議が行われたわけですね。アメリカ自由化時期の明示を求め、日本が拒否した場合は、五月四日に予定される関税・貿易一般協定、つまりガット理事会紛争処理小委員会パネル設置を表明した。これは前から言われていることでございますが、その際に、日本側自由化は困難であるという立場をきちっと表明をしたというふうに報道されているわけでございまして、また、従来から大臣を初め政府立場答弁をいただいているとおりでございますが、仮に今申し上げたような事態になった場合、なることを期待はいたしませんけれども、五月四日にガットパネル設置問題をアメリカ要請した場合、日本自由化は困難である、パネル設置に賛成するわけにはいかない、当然のことですけれどもこういう立場で対処するわけでございますね。いかがですか。
  14. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 仮にというお話、まさにその時期が来ていないわけでございますから、五月四日の定例理事会において、ガットの場でどのようになるか、これは仮にというお話でございますが、私といたしましては、二国間においてまず一生懸命に努力し合って話し合わなければならぬ、そして平和的な決着点を見出そう、そのために継続をしよう、こういうことで三月の末に合意をしたわけでありますから、そういう意味で、今仮にとおっしゃられましても、仮にそうなった場合はこうだ、ああだということを私が言及するわけにはまいらない、こういうことでございます。  しかし、重ねて申し上げますが、どのような機関でどのような話し合いになろうとも、我が国農業推進する上において生産者の足腰の強い、その体力というものをどうつけていくか、そして、多くの関係する方々にどう理解を仰いでいくか、そのことについては全責任を持たなきゃならぬ、こういうことでございます。
  15. 串原義直

    串原委員 先回の委員会でも申し上げましたが、まさに正念場でありますから、ひとつ腹を据えて対処願うことを強く改めて要請をして、本日の本題でありますところの農用地開発公団法改正問題に移りたい、こう思う次第でございます。  農業基盤整備の目的は、私が申し上げるまでもなく農業生産増大生産性を高めるということであるはずであります。ところが、実はこれは本当に現存する問題ですからここで指摘をしたいわけでありますが、私の近くのある村でございますけれども、こういうことがありました。七十アールほどの農業をやっていらっしゃる農家でございますが、跡取り、つまり後継者は勤めに出た。お父さんとお母さんはもう七十歳にそろそろ手の届く年寄りということになった。まあこのまま農業を従来のように継続するわけにはいくまい、このままの姿でどなたかが受託をしてくださって農業をやってくれないか。つまり、どなたかが経営規模拡大を図りながらうちの農業田畑を継いでやってくれないか、こういうふうに考えて関係者に話をしたけれども、だれもやりましょうと言う人がないというのでありますね。やらしてくださいと言う人がない。実はこの実態に驚いているという事実があるわけでございます。私の住んでいる町のお隣でありますから、そんなに農業条件が悪いところではございません。それでもそういう実態があるわけであります。数年前には考えられなかったことですね。  これはどういうわけかというと、つまりは農産物価格制度がだんだんと後退をする、価格が下げられることになってきた。今連日議論になっておりますように、農産物自由化問題で日本農業の将来に対していささか自信を持てなくなった等々の問題が出てまいりましたために、規模拡大をやって農業をさらに前進させようという意欲のある人たちが非常に少なくなったということからではないか、私はこう思うのであります。つまり、自分の家の先祖伝来田畑兼業農家になっても間違いなく守っていこうとするけれどもお隣の農地まで引き受けて農業経営規模拡大してやっていくという意欲に欠けてきている。私は、これは重大な問題じゃないかというふうに実はこの話を受けとめたわけであります。そして、このことは私のお隣の村のAという方の問題だけではないだろう、全国的にもそういう傾向にあるのではないかとすら思うほどであります。これはまさに日本農業の将来にとって重大な事態だと思っておるわけでございますが、この事態大臣はどんなぐあいに受けとめておられますか。
  16. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 日本全国的に見た場合に、いろいろなところがあろうかと思います。それをまず画一的に考えて物を律してしまったのではいかがかなというところから、その地域、その地域実情に合った形での地域農政がある。その地域農政の中に今委員おっしゃるような場所もある。しかし、規模拡大をやろうという、そういうところには意欲すらないではないかという、今お話でございます。  いろいろなところがあるかと思いますが、私自身正直申し上げて、私の地元でも大いに意欲を持って親戚じゅう全部任してくれ、規模拡大をやるから、そのかわりこういう条件でああいう条件でということで本当に農業というものを魅力あるものに仕立てていこうという努力をしておる農業青年も事実ございます。そういうものの数が多いか少ないかということになりますと、あるいはまだ少ないかもしれません。  そういう中にあって、理屈っぽい話になりますけれども、私が参議院におりました当時でございます。私が農林水産委員長を参議院でしておりましたときに、農地の所有権、利用権、これを分離してそして規模拡大をしていこうというはしりの議論が始まったように私は記憶いたしております。それから随分たっておりますが、農地改革以後自分田畑自分でという物の考え方、その後時代の変遷等を考えながら判断しかねておる農家方々もたくさんおられる。そういう中にあって所有権、利用権の分離による物の考え方で規模拡大ということがどの程度進んできたかということになると、私どもが当時想像しておったほどには進んでいないのではないか。しかし、これはどうしても進めなければならない。しかしそうなった場合に、今農業に携わっている人に、それじゃあしたから遊んでいればいいのか、そういうことにはならない。ということになりますと、私は国民の声であり、天の声であると思っておりますが、一極集中、こういう物の考え方を改めて、そして第四次全国総合開発計画というものが昨年の秋策定されましたけれども、そういうことが実効が上がっていく、そういう中にあっていろいろな労働力の分配という問題も改めて考え直される時期が来るのではないか。その時期の一日も早からんことを願っておる。こういう考え方で、非常に幅広な物のとらえ方になってまいりますけれども、そういう議論が定着していきませんと、いつまでたっても山村に近い農業ほどわかりにくいものになっていくのではないか。だから、急がなければならぬ。こう思っておるところでございます。
  17. 串原義直

    串原委員 私は、実はこのごろこの問題は事ほど簡単な問題ではないと受けとめさせていただいているところでございます。機会を改めて大いに議論をしたいと思っているところでありますが、日本農政、いささか従来一貫性がなかった。言い方を変えるならば、生産性が落ちてきて食糧の足らない分は外国から買ってくる、そしてそれで埋めていく。結果的にこういう方向になってきたところに農業後継者が年々減っていくという現象が起きてきている、こういうことになってきていると思うわけであります。今大臣も将来を憂慮しながら御答弁になりましたけれども日本農業の将来というものに対して明るさが見えない限り、基盤整備、規模拡大というものは事ほど計画どおり進んでいかないであろうという危惧の念を私は持っているわけでございます。  そこで、そういう状態の中でそのところに視点を当ててみた場合に、農用地公団、この存在意義というものについて政府はどのように受けとめていらっしゃるか、この際伺っておきたいのであります。
  18. 松山光治

    ○松山政府委員 農用地開発公団につきましては、御案内のように昭和四十九年に創設されまして、当時の国内の畜産物の需給をめぐる諸事情、そういったものを背景にいたしながら未懇地、主として農業開発の余地の大きい広大な未墾地を持つ地域を対象にいたしながら濃密な畜産生産団地をつくっていく、こういう仕事をやってきたわけでございます。  今回、その後の公団をめぐる諸事情を考慮いたしまして、そういった未墾地開発を主体とした事業から既耕地の整備保全といったようなところに仕事の重点を移します事業制度の仕組みに切りかえようといたしておるわけでございますけれども日本農業の構造改善を進めていく上でその基礎的条件を整備するために必要な農業基盤整備事業でございますけれども、その農業基盤整備事業を的確に推進していく上で非常に重要な実施機関の一つである、このように考えておる次第でございます。
  19. 串原義直

    串原委員 今回この法改正に当たって、私は重要な文言であると考えているのですけれども、「農畜産物の安定的供給」という文言を削除されましたね。これはどういうことですか。
  20. 松山光治

    ○松山政府委員 今回、目的規定につきましても見直しを行ったところでございますが、これは、従来の未懇地開発を主体とした事業から既墾地の整備保全といったようなものに重点を移す事業制度に切りかえたということに伴うものでございます。こういう新しい事業制度に切りかえてきたゆえんにつきましては提案理由説明においても申し上げたところでございますけれども、やはり従来の事業につきましては、畜産物をめぐるその後の需給事情の変化等々の状況の中で、大規模な未懇地開発を主体とする現行事業についてのニーズがかなり落ちてきておるという実態一つあるわけでございます。  他方、先生からも御指摘がございましたように我が国農業をめぐる状況は大変厳しい事情にあるわけでございますが、そういった状況の中で、国民の理解と信頼が得られるような健全な日本農業の発展を図っていくという観点からいたしますれば、やはり構造改善を進めまして生産性の向上を図っていかなければならない。そのために必要な基礎的条件として農業生産基盤の整備を積極的に進めていく必要がある、こういう政策課題がもう一つあるわけでございます。そういう政策課題に対応するものとして、しかも、過去に基盤整備についての大変な実績と、かつ能力を持っておる公団事業を既耕地の整備保全を中心とした事業の面で活用することとしたい、こういう事業制度の切りかえに伴うものとして新しい目的規定といたしましては、生産性の向上と構造改善に資するという点を一つ入れることにした、こういうことであります。  ただ、これによって農畜産物の安定的な供給ということがないがしろにされるということではもちろんございませんで、国民に対しまして農畜産物の安定的供給を図ることは、農政の大きな課題であると同時に、御指摘がございましたように農業基盤整備の目的でもあるわけでございます。私どもといたしましては、そういう考え方のもとに公団の新事業を含めまして農業基盤整備の事業の的確な推進に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  21. 串原義直

    串原委員 言うまでもありませんけれども、これからの日本農業の中で畜産はやはり引き続いて重要な位置を占めると思う。草地畜産の位置づけは高くなきゃいかぬ、こういうふうに考えているのでございますが、畜産基地建設の現行事業を廃止する理由というのはどこにあるのか。私は、コストの低い畜産経営のためには草地畜産を取り上げていかなきゃならぬ、継続してやっていかなきゃいかぬのではないか、こう考えるのですよ。いかがですか。
  22. 松山光治

    ○松山政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、今回の改正に当たりまして私どもやはりまず念頭に置きましたのは、これまでいろいろと御苦労いただいてまいりました未墾地開発に主体を置いた事業に対するニーズ、特に大規模な開発に対するニーズが昨今の状況の中で年々減少してきているという事情が一つあるわけでございます。そういうことも含めまして行革審からも一定の見直し検討の答申も出されているという事情も一つございました。  他方、先ほど申し上げましたような既耕地整備の必要性、これは依然として大きなものがある。そういうことを念頭に置きながら今回の改正案を作成するに至ったわけでございますが、先生御指摘のとおり、草地畜産というのはやはり依然として重要な課題であるわけであります。したがいまして、今回の改正におきましては、公団事業といたしましては、まず現在実施しております事業、これはたしか二十三地区ですか、あるわけでありますが、これについては当然のことながら継続実施していく。さらにまた、事業に入ります前の調査を行っておるものもございますけれども、これにつきましても地元の要望等を踏まえながら必要な事業化を行っていくというふうなことをいたしておるわけでございます。もちろん、草地開発にかかわる事業はこれにとどまらず、国営、県営、団体営、いろいろな各種のレベルのものがございます。私どもとしては、そういった各種のレベルの事業を今後とも有効に活用しながら草地畜産の問題に取り組んでいく必要があるだろう、このように考えておる次第でございます。
  23. 串原義直

    串原委員 そういたしますと、私の手元にも農水省で御用意いただきました「草地開発事業等の概要」というのがございまして、各種の事業がここにございます。御答弁のようにいろいろな事業がございますが、今の御答弁によりますというと、まだ日本には要望もあるし、草地畜産という立場で開発をしなければならぬところもあるけれども、このいろいろな、各種の事業というふうに表現しておりますが、公団以外の各種の事業、これによってこれからの草地畜産は具体的に要望にこたえていくことができる、こういうことですか。
  24. 松山光治

    ○松山政府委員 今までの公団事業の特色は相当大規模な草地開発を伴うものであり、かつ同時に上物施設を一体的に整備する、そういう意味ではかなり事業規模としては大きな事業を集中的にやってきたわけでございますが、そういったものについてのニーズが最近減少しておるという実態にあるわけであります。で、先ほど申しましたように、いろいろなレベルの草地開発にかかわる事業がございますし、中には上物、下物、一緒にあわせ整備する事業もあるわけでございます。  これからの草地畜産といいますか、畜産の飼料自給の問題の持っていき方については、あるいは畜産局の方からお答えする方が適当かもしれませんけれども、従来にも増しまして、生産コストを低くする畜産を発展させていくことの必要が高まっておる、そういう意味での飼料問題の重要性は依然として大きいわけでございまして、ことしの二月に制定されました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」、これにおきましても、飼料基盤に立脚した経営を基本として経営体質の強化を図り、生産コストの低減に努めていくんだという報告がたしか出されております。そういう観点で飼料基盤の整備拡充の問題につきましては、やはり一つには既耕地の土地利用集積を進めまして、それの活用を図るという側面が一つと、もう一つは、地域のニーズに応じて、かつ同時に開発コストの問題には十分留意せにゃいかぬとは思いますけれども、そういう配慮のもとに先ほど申しましたような草地開発事業制度を有効に活用していく、またそれで十分対応し得るのではなかろうか、このように考えておる次第であります。
  25. 串原義直

    串原委員 基本的な考え方は御説明でわかりましたけれども、これは答弁によりますと、計画をしている、調査をしている地域までであるということのようでありますが、将来大規模な草地畜産開発事業の要望が出てきた場合にはどう対応しますか。
  26. 松山光治

    ○松山政府委員 国営の草地開発自体、たしか四百ヘクタール以上というふうなかなり大がかりなものでございますから、私は十分対応できるのではないかというふうに思っておりますけれども、状況が非常に基本的に変わるといったようなことに相なりますれば、その段階でいかなる形で事業の円滑な推進に努めるべきかこれまた考えるべき話かなというふうに思っております。
  27. 串原義直

    串原委員 それでは具体的な問題に入りますが、農用地総合整備事業と呼ばれる事業でございますけれども、この事業のねらいというものが農業生産性向上と農業構造改善を図るということにあるといたしますならば、この事業計画の策定に当たりまして、先ほど私は危惧をして当初触れましたけれども、農地の流動化による経営規模拡大あるいは中核農家の育成、地域によりますれば生産組織の育成ですね、そしてそこに何をつくるか、つくった場合の販売ですね、市場との関連、いろんな課題が出てくるわけでございます。これを全体的に結合させませんと、私が申し上げるまでもありませんが、成功いたしません。この問題を具体的に検討、計画、推進しなければなりませんが、今申し上げましたような重要課題についてどこの機関で検討し配慮していくということになるんですか。
  28. 松山光治

    ○松山政府委員 特定地域農用地総合整備事業の進め方の問題になるわけでございますが、御案内のように、地域全体としての農業構造の改善が図られるような計画をつくり事業の実施に努めていく必要があるわけでございます。そこで私ども今考えておりますのは、調査、計画を行います段階から都道府県あるいは普及所、市町村、農協、農地保有合理化法人等々といった地元の関係機関、こういった関係機関をどういう形で組織するかはこれから具体的に検討する必要はあろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういった関係機関がお集まりをいただく協議会等のような形をつくりながら、狭義の事業内容のほかに、農地の流動化の問題でありますとか中核農家なり生産組織の育成の問題でありますとかあるいは作物の選定の問題等々、そういった関係事項について十分御協議いただく、その結果を踏まえまして全体としての事業計画をつくり、本事業の効果的な実施を図っていくというのがまず一つでございます。同時に、この事業と関連いたしますその他のソフト事業の問題もあるわけでございまして、そういった協議話し合いの中でソフト事業との密接な連携の問題にも特段の配慮をしていく必要があるのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。これらの措置を通じまして、調査、計画段階から事業実施後にわたりまして地域ぐるみの農業構造の改善への取り組みが行われる、そういう形で規模の大きく、かつ生産性の高い農業地域の形成が図られることを期待しておるところでございます。
  29. 串原義直

    串原委員 現場における、今御答弁のような機関をつくる、協議会のような組織をつくって検討していくということでありますが、その場合、事業の採択条件あるいは採択基準、それから事業の実施についてはどの程度の年次計画、五年くらいでやろうと考えていらっしゃるのか、あるいは一カ所当たりの事業費、およそどの程度のところを想定されていらっしゃるのか、お答え願います。
  30. 松山光治

    ○松山政府委員 特定地域農用地総合整備事業は、都道府県知事の申し出に基づきまして、農用地等の農業資源に恵まれており、農業生産性向上と農業構造の改善が急速に図られる可能性が高い地域、特定の地域でございますが、そういうところで区画整理等のいわば面整備の事業と、それから農道なり用排水施設といいました線的な事業を一体として、かつ総合的に実施していく、こういう事業でございます。  それで、申し出にかかわる要件といたしましては、やはり生産性の高い農業の展開が可能な集団的な農用地が相当存在しているということが必要でありますし、かつ地域の生産基盤の整備の状況からいたしましてその早急な整備を必要とする地域であるということがまず第一に必要なことではなかろうかと思っております。農業生産の中核的な担い手が確保される、あるいは確保される見込みであるといったような地域における人的な要件というのもまた非常に重要なことではなかろうか、こういうふうなことを考えておるわけでございます。と同時に、この種の事業でございますから事業の受益面積の要件が当然要るわけでございまして、面的事業なり線的事業についてそれぞれ定めることにいたしたいと思っております。それで、この事業につきましては実はまだ六十三年度は調査の段階にとどまってございまして、六十三年度に二地区において事業実施のための国直轄による調査を実施することとしておるわけでございますけれども、したがいまして、これらの具体的な基準につきましては事業着手の段階までに具体的に詰めていきたい、このように考えております。  それで、そういう意味ではまだ検討課題でございますが、やはり同じような工種の事業が県営なり国営なりいろいろございますので、そういったものとの関連を頭に置きながら具体的な面積要件は考えていく必要があるだろう。例えば面的事業について申しますと、県営圃場整備事業、これの採択要件が六十ヘクタール以上ということになっておるわけでございますけれども一つのまとまりということを頭に置いて考えますと、やはり六十ヘクタールはかなり上回らないといかぬのだろうというふうに思うわけでございます。また、線的事業についていいますと、今農道の中でも広域農道については受益面積千ヘクタールというものがございますし、そういったものも一つ頭に置きながら具体的に基準を定めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  一地区当たりの事業費なりそれの所要工事期間というお尋ねがあったわけでございますが、そういう意味ではこれから具体的に各地区の実情に即して定めていきたいというふうに思っておりますけれども、今多少頭にあるものも含めてごく大ざっぱな感じで申し上げますれば、この種の事業の規模といたしましては大体一地区当たり総事業費八十億程度のものを予定することになるんだろうか。別にそれで画一的に考えるということではございませんけれども、その程度のものになろうか。その程度の事業規模でございますれば、今の公団事業の実施体制その他からいたしますれば五、六年なり七年程度で事業の完了が見込める、大体そういうイメージの事業というふうにお考えいただいたらいいのではなかろうか、このように考える次第でございます。
  31. 串原義直

    串原委員 おおよそわかりましたが、本事業に対する国庫補助率、県、市町村、受益者の費用負担割合、あるいはその償還条件をどのように考えておるのかというようなこと、あるいは既存の事業、いろんな事業がありますけれども、既存の事業を利用する場合と比較してどのようなメリットが公団の事業の場合あるか、これは大事なところだろうと思いますから、お答えを願いたいと思います。
  32. 松山光治

    ○松山政府委員 特定地域総合整備事業の補助率なり償還条件につきましては、ただいまも申しましたように、事業計画として具体化してまいるのがこれからでもございますので、今後具体的に詰めたいというふうに思っております。いろんな既存の事業の補助率なり償還条件というものもあるわけでございますので、そういうこととのバランスを頭に置きながらこれを具体的に詰めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  既存の事業との関係でそのメリットは一体どういうことにあるんだろうかという御質問でございます。特定地域総合整備事業の場合には県営事業との関係、圃場整備事業としてやっておりますのが県営でございますから、それとの関係ということがまずあるわけでございますけれども、この事業の一つの特色は、公団は御案内のように農業生産基盤の整備に関します総合的な技術力を有しておる、かつ技術者等の要員なりあるいは資金を短期間に集中的に投入できる、そういうことを通じて早期の事業効果の発現を図り得る、そういう特性を持っておる、その公団を活用して事業を実施していくということでございますので、そこのところにまず一番大きなメリットがあると思いますし、かつ、これまでにもない形のものとしてのいわば面事業と線事業とをかなりまとまった形で総合的、一体的に実施していく、それをできるだけ効果の早期発現が期せられるような形で公団の持った諸特性を発揮してこの事業を実施していく、そういうところにこの事業の特性を認めたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 串原義直

    串原委員 あと二、三伺いたいと思っておりましたが、時間が参りましたので、最後に大臣、一言お答えを願いたいのですけれども、今、担当の局長から御答弁をいただきました。本事業を実施するに当たって重要なことは、メリットがなければいけないと私は考えているところであります。現在いろんな立場実施されておりますところの既存の事業と比較してメリットがなければいかぬ。当初から議論しておりますように、日本農業の将来にとって一つの展望を持つということでないと、本事業の本当の目的達成というものは前進をしていかない、目的達成のために本事業は前進していかない、こう思うのでございますので、メリットを持たせるような事業、この検討を、これから検討するという話でありますから、強く要請しておきたいと思いますので、大臣からそれに対する考え方をひとつお述べ願いたいと思います。
  34. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農地改革があって以来、農地というものがいかに価値のあるものになっていくか、これが農業の振興、推進にとって何としても大事なことであるということで、基盤整備事業というものが年を重ねるごとに、予算上困難な時期であってもこれだけはもっともっとつけなければならぬということで関心が高まってまいりました。今委員おっしゃるように、そういう中にあって新しい事業を価値あるようにしていかなければならぬと思いますし、積極的におっしゃるような形でひとつ推進をしていかなければならない、こういう法律改正の一つの節目にそういうことが発展的にまた理解されるようにしなければならぬと強く考えておるところでございます。
  35. 串原義直

    串原委員 終わります。
  36. 菊池福治郎

    菊池委員長 安井吉典君。
  37. 安井吉典

    ○安井委員 きょうの法案に入る前に、農林水産大臣が御出席でございますから、現在の牛肉オレンジ交渉の問題について、串原委員からも質問がございましたけれども、私もちょっと触れたいと思います。  大臣を初め三局長訪米をされるなど、大変御苦労さまです。ただ、新聞の報道等で向こうとのやりとりを聞いていますと、いわば恫喝的な言葉を向こうが吐いているような気がしてならないわけです。先ほど串原委員内政干渉というふうな言い方もされましたけれども日本農業の問題を真剣に考えている立場からすると、そういうような言葉を向こうに投げかけたいような気がするわけであります。日本は決してアメリカの植民地ではないのですけれども、まるでそうであるかのような言い方で責め立ててくるようなことは全く許せないことだという気がいたします。  ところで、報道によりますと緊急首脳会議政府・与党では今週中に持って、月内の決着を目指して日本側の態度の決定をしていくというふうに伝えられております。その前にきょうじゅうに党内の意思決定もするという報道もあります。先ほど閣内統一という言葉もありましたけれども、私はむしろこれからが問題なので、官邸主導という表現も実はあるのですけれども、そういう官邸主導型で一つ統一が行われるのではないか、その統一内容というのは新聞のいろいろな言葉を総合してみましても国内調整に全力を挙げていく、つまり近いうちに自由化をすることを前提にしてその際の条件をどう詰めていくかということが調整なんだと私どもは受けとめざるを得ないわけであります。そういうようなことになりますと、先ほど大臣はいろいろおっしゃっておりましたけれども、そういうような言葉で最終的には何か統一されてしまって、結局は近いうちの自由化、そのための条件整備、そういうところに何か落ちつかされてしまうのではないかという心配があるのですが、もう一度大臣に伺います。
  38. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 大変御心配をかけておりますが、そういう御心配をされること自体がまた今後の交渉にどう影響するかということを私は率直に申し上げなければならぬのでございます。そういう意味で私は、今申されますように官邸主導であるとか何であるとか、新聞の書き方もいろいろございます。テレビの報道の仕方もさまざまでございます。全部が全部とは言いませんけれども、極めて遺憾な点が多いわけでございます。しかも一部の、これも一部でございましょうけれども、評論家筋においては、アメリカ内政干渉という言葉も今出ましたが、そういうことを皆さんに思わせるような発言もあるということを甚だ遺憾に思っております。だれが主導しようとも、農林水産省は挙げて今後の農林水産行政に責任を持って当たらなければなりませんし、困難な問題としていろいろ議論をされてきて、ストラウス・中川会談以来、特に牛肉かんきつに象徴されるように、この難しい問題が議論されてきた経緯、この始末はだれが主導しようと私ども責任を負わなければならない、私自身がまた責任を負わなければならない、こういうことでございます。こうした話をしていると、また新聞がどうだこうだと言いたくなるわけでございますけれども、余り言うとまた言論統制みたいなことを考えているのかなどと言われても困りますし、我が国は民主主義国家で自由主義国家でございますから、それはそれとしてそんたくしながらも、甚だ遺憾な点が多いということは率直に申し上げておきたい、こう思います。
  39. 安井吉典

    ○安井委員 大変強い責任感を持って農林水産大臣が頑張っておられることを私は評価したいと思います。ぜひ自由化を絶対しないということで責任を果たしていただきたいということを申し上げておきたいわけです。  竹下外遊の前に佐藤農水大臣訪米されて大詰めの交渉をするのではないかという話も流れているわけですが、これについてはどうですか。
  40. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 率直に申し上げまして、ガットの法理論上からいけば、また五月四日定例理事会があって、そこにパネル設置の問題があるのではないかどうか、それについては拒否するのかしないのかという議論も先ほどございましたけれども、常識的にそういうことは推測されても、私といたしましては一日も早く決着をつけたい。そのために、決裂するのではなくて、話は継続していこう。そして、何を考え何を求めておるのか、そういうものを全体的に把握した上で、日本農業の将来、足腰の強い生産者をどう育成していくか、消費者のニーズもやはり考えながら理解を仰ぐにはどうするか等々、各般の観点から総合的な結論を下さなければならない、こう思っているわけでございまして、竹下総理が訪欧される、その前にやらなければならないという極端な理屈はないと思います。しかし、先刻申し上げますように、五月四日定例理事会、またガット一つの節目の時期を迎えるわけでありますから、そういう意味では一つの節目である。しかし、いつの幾日までにやらねばならぬということではない。一日も早く皆さんが安んじて農業生産にいそしむ、消費者方々からも理解をいただける、アメリカも、平和的に解決してよかったなと言われるようにしなければならない、こう思っております。
  41. 安井吉典

    ○安井委員 きょう農協の自由化反対の大会が開かれます。そしてまた、私はこの委員会で自民党の委員諸君が発言されるのもずっと伺っておりまして、あくまで自由化をしないということが日本農業を守る唯一の道だという主張にも私の方も全く同感であります。ですから、よもや自由化を前提としての交渉が進むとは私は思いません。この委員会がこの間決議をいたしました。それだけはどんなことがあっても最小限守っていただきたいと思いますが、大臣どうです。
  42. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 国会での決議また当委員会での決議、いろいろな決議がございますけれども、その都度それをそんたくをするという考えは、ここでそれぞれが発言をいたしておるところでございます。
  43. 安井吉典

    ○安井委員 いずれにいたしましても、日本農業の将来を左右する重大な段階であるだけにしっかり取り組んでいただきたいということを申し上げて、時間の制限がありますので、きょうの法案の問題について若干触れてみたいと思います。  先ほどの御質問の中でいろいろな問題がかなり明らかになっておりますので、なるべくダブらないような方向でいきたいと思います。  今度の改正によって、新しい公団は現在やっている仕事を一定期間存続し、同時に新しい事業をやっていくというふうなことのようであります。現行事業の存続期間というのは「当分の間」というふうに書かれているわけですが、事業事業によって終期が違うと思うわけでありますけれども、大体どれぐらいのうちに終わるというふうなことを考えておられるのか、まずそれから伺います。
  44. 松山光治

    ○松山政府委員 昭和六十三年度現在、公団が事業を継続しております区域でございますが、二つの種類の事業がございまして、広域農業開発事業が十一区域でございます。それから、畜産基地建設事業が十二区域でございます。多少地区によりましておのずから完了年度には違いがございますけれども、これらにつきましては昭和六十七ないしは六十八年度ぐらいには完了する予定で今仕事を進めておるわけでございます。  それから、現在全体実施設計ないしは調査計画という段階にございます地区の扱いも一つあるわけでございますけれども、これらの地区におきまして現行の事業を実施するかどうか、これから具体的な精査を行い、かつ地元の意向を踏まえて判断していく、知事から申し入れがあった場合に具体的な検討をやっていくということになるわけでございますけれども、仮に現在そういう形で調査の対象になっております地区のすべてにおいて事業を実施するというふうに考えてみますと、これらが完了するのは大体昭和七十年代の初めごろというようなことになるのではなかろうか、このように見込んでおる次第でございます。
  45. 安井吉典

    ○安井委員 実施の範囲を政令で定めるというふうな書き方になっているようでありますが、きょうここで一つ一つ言っていただく必要はありませんけれども、大体どういうような形で政令に書いていくのですか。
  46. 松山光治

    ○松山政府委員 現在、公団事業を頭に置きながら、阿蘇区域でございますとか津軽西部区域でございますとか、そういった十数区域で事業の開始に必要な事前の、これは国による直轄調査でございますが、それを行っているところでございます。これらの地区の扱いは、ただいま申しましたように、調査の結果を踏まえまして事業実施の可能性なり必要性というのを考えながら地元の要望に基づいて実施していくということになるわけでございます。政令上どういう形で書くのかという話でございますが、これから政令の書き方については関係当局とも相談したいと思っておりますけれども、やはり具体的な区域名、例えば市町村名といったようなものでその地域を明らかにしていくことになるのではなかろうか、このように考えている次第でございます。
  47. 安井吉典

    ○安井委員 現在の事業の実施について、行革審答申等にもいろいろな指摘もありました。コストダウンをもっと図るべきだとかいろいろな指摘があったりしているわけでありますけれども、その他のいろいろな事情をも考慮してどういうふうな方針でお進めになるおつもりなのか、今の段階でのお考えを伺います。
  48. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘のように、行革審の方からも御指摘をいただいておりまして、それを踏まえながら公団事業の効率的な実施ということに特に意を用いていく必要があろうかと思っております。  それで、これからの公団事業の中身の問題といたしましては、公団事業は当初は酪農が中心の事業という感じが強うございましたけれども、その後の畜産物の需給事情をめぐる状況変化の中でかなり肉用牛の方にウエートが移ってきているという実態もございますし、これからの事業につきましてもおのずから肉用牛を中心としたものに重点が移っていくのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。  具体的な事業の実施に当たりまして基本的に考えなければいけないことは、関係者理解と支持が得られるような事業の進め方ということに相なるわけでございまして、そうなりますれば、事業の効率的な実施あるいは低コスト生産ができるような事業内容ということを考えてまいることが必要でございます。そういう観点から、既に昨年関係局長通達も出しまして公団にも指導をいたしておるわけでございますけれども、例えば開発予定地をやはり厳選していく必要があろうと思いますし、かつまた土地利用の仕方を考える場合でも、例えば急傾斜地などをいたずらに草地化するのではなくて、むしろ放牧利用に使うといったような地形条件に応じた土地利用ということにも意を用いる必要があるだろうと思います。畜舎の整備につきましても、これは地域実情に応じてできるだけ費用のかからないようにということで、去年の四月には工事単価について一定の上限を設定したということもございます。こういうふうなことを中心として、できるだけ経済的な事業の実施に努めたいものだ、このように考えておる次第でございます。
  49. 安井吉典

    ○安井委員 そこで、先ほども串原委員から畜産の問題についてお触れになりましたけれども、この間の十二品目の中にも乳製品が一つの課題になり、現在は牛肉です。そういったようなわけで、国際的な圧力とでもいいますか、そういうようなものが非常に畜産にかかってきているという状況にありますけれども日本農業が将来成長産業であり得るのはやはり畜産だろうと思うのですね。ですから、今度公団の仕組みが変わっていくという段階において、一つは畜産そのものについて政府としてどういうお考えでいくのか、今のような自由化問題がどうあろうとも、コストダウンという大きな課題があります。いかなる外圧にも耐え得るような畜産づくりをするということが日本農業一つの大きな課題ではないかと思います。そういうような意味で、草地畜産というのを先ほど強調されたのは、私も全く同感です。今後の畜産の生産性だとか経営のあり方などについての基本的な考え方をまず第一に伺いたい。  それから、第二に伺いたいのは、今度は公団の問題なんですけれども、今日まで草地畜産ということに公団が果たしてきた役割というのは評価してもいいのではないかと思うのです。そして、そういう中で畜産関係の技術がかなり蓄積されているのではないか。その蓄積された技術が、現在やっている仕事が終わってしまったらもうおしまいで、あとは農業土木的な仕事だけになってしまうというふうなことでは非常にもったいないと思うのですね。ですから、公団における畜産技術とでもいいますか、そういうようなものをどうして生かしていくのかという問題があります。その二点について伺います。
  50. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 我が国農政の中で畜産の占める地位というものは極めて重要だということはもう御案内のとおりでございます。  畜産局長からさらに補足をさせます。
  51. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 畜産の我が国農業政策における基本的な位置づけにつきましては、ただいま大臣から申し上げたとおりでございます。  若干補足させていただきますと、御指摘のとおり、国際化の進展等の事態に対応しまして、肉用牛の生産はもちろん、酪農を含めましたいわゆる大家畜の国内生産の推進に当たりましては、生産性を向上させ、コストの低減を図りながら消費者のニーズにもこたえていくということが基本的に重要であると考えております。したがいまして、その手段として、国土条件等の制約がございますが、可能な限り自給飼料に依存した粗飼料依存型の経営というものを考えていくということが大変大きな課題であると考えておるわけでございます。本年二月に策定、公表いたしました「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」におきましても、飼料基盤に立脚をしました酪農あるいは肉用牛経営を育成しまして、経営体質を強化し、生産性の向上を図ることがこれからの畜産施策の課題であるという方向が示されておりまして、今後とも飼料基盤の整備拡充を図るために、開発コストにも留意しながら草地開発事業等の推進を積極的にしてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  52. 松山光治

    ○松山政府委員 お尋ねの公団におきます畜産の技術系の職員の活用の問題でございますが、現在、公団では技術系の職員としては、畜産関係の職員二十二名の方に頑張っていただいております。四十九年に公団ができまして以来、全国各地で畜産を基軸とした総合的な事業をやってまいったわけでございますけれども、これを比較的短期間の間に集中的に行うということでございまして、実施上いろいろと技術的な課題が生じたようでございます。そういった技術的な課題を実際に即しましていろいろと解決してきてくれておるわけでございまして、そういった成果につきましては、昨年の一月現在で約三十種にも及ぶ報告書として公表もされております。したがいまして、そういうことを通じまして、公団において蓄積されました畜産技術の成果というのは、ほかの事業にも活用されておるというふうに聞いておる次第でございます。  今回の改正によりまして、御指摘のように、事業の主たる業務が変わるわけでございますけれども、まだ当分の間、現行の事業が継続されるわけでございますから、当然そこで頑張ってもらわなければいかぬと思っておりますし、かつ新規の事業につきましても地域農業を全体としてどのように振興していくか、こういう観点から面整備、線整備、そういったものが行われるわけでございますけれども、先ほども御指摘ございましたように、その上にいかなる農業を構築していくかということも、これまた重要な課題になるわけでございます。そうなってまいりますれば、一般的には地域農業のあり方を考えるときには、畜産との関係をどう考えるかといったようなことが当然論点にもなるわけでございます。そういう意味で、新しい事業におきます地域農業振興計画の構想づくりなり、営農計画の策定あるいは公団が受託事業として今度の事業でも予定いたしております上物施設の建設といったようなこともございますので、そういう面におきまして、今後とも公団の畜産関係技術が生かされていくし、また関係者には頑張っていただかなければいかぬ、このように考えておる次第でございます。
  53. 安井吉典

    ○安井委員 新規事業の問題については、これも先ほどの御質問でかなり明らかになっているように思うわけですが、私も心配するのは、現在、同じような事業を政府農業基盤整備事業としておやりになっているわけです。ですから、一般的な事業をやる部分と今度公団がやる部分との区分がうまくつくのかどうかという点です。採択の基準をもっと明確にしておくことが必要なのではないかということです。そういったのは政令事項とか政省令でいずれ明らかにされていくものだと思うのですが、受益面積はどうなのだとかそういったような概要でいいと思います、きょうの場合は基本的な考え方だけでもお話を願いたいと思うわけであります。また、コストの方も公団にやってもらうと何か割高だというふうな考え方が農民の間にあるような気もいたします。それだけに、公団にやってもらうよりは今までの県営でやってもらった方がいいとか、あるいはその逆の場合も出てくるかと思います。そういうような場合はどちらが選択権を持って処理するのか、そういうようなこともあると思います。  それから、石狩川下流左岸地区等の仕事は一応めどがついているわけでありますけれども、長期的にそういったような仕事が次々うまく出ていって仕事がつながれていくのかどうか、そういう年次計画をつくれと今言っても無理かもしれませんけれども、長期的な見通しを明らかにする必要があるのではないかと思いますが、どうですか。
  54. 松山光治

    ○松山政府委員 新たな公団の事業と従来から行っております国県営のその他の土地改良事業は、事業の種目といたしましては、今回の公団の事業が既耕地が対象になることから同じものである、こういうことになるわけでございます。  しかし、今回の公団事業の特色といたしましては、全国津々浦々でこれを画一的にやっていくということではございませんで、農用地等の農業資源に恵まれ、農業構造の改善の可能性の高い一定地域におきまして、知事からの申し出に基づきかつ通常の形で実施いたします場合にはどうしてもその完成に長期間を要するといったようなかなり規模の大きいもの、しかも面事業と線事業とを一体として総合的に実施していく、これが総合整備事業の特色であるわけでございますけれども、そうなってまいりますと、おのずから国県営の事業とは性格を異にするというふうに私どもとしては考えておるわけでございます。  もちろん先生御指摘のように、採択条件なりをできるだけ早く明らかにしなければいけないと思っておりますけれども、今申し上げましたような今度の新しい公団事業の特色、ねらいを十分踏まえながら、調査の段階できちんと調整をいたしまして混乱が生じないように十分配慮していく必要があるのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。  採択要件の考え方でございますけれども、今申し上げましたような趣旨のもとでの一定地域というのが一つございますと同時に、やはり受益面積の要件が一つ必要でございます。  総合整備事業の面的な事業につきましては、今主体になっております県営が六十ヘクタールでございますけれども、これではちょっとやはり小さ過ぎるわけでございますので、これをかなりの程度上回る事業規模を一つ想定する必要があるだろうし、線的事業については広域農道が千ヘクタール受益地といったようなことになっておるということを十分頭に置く必要があるだろう。さらに、特定地域農用地等緊急保全整備事業という形で、一定地域で地形なり地質なり、その他の自然条件の特殊性に起因いたしまして農用地の排水条件の著しい悪化、その他の広範囲にわたりまして農業生産を著しく阻害しておる、そういう障害を急速に解消していくための大規模な農業用用排水施設の整備というのを予定しておるわけでございますけれども、これにつきましては現在類似の国営土地改良事業、内水排除事業と呼んでおりますけれども、これが千ヘクタール以上の規模でも行っておりますので、そういうことも念頭に置きながら具体的な要件を定めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  特に、これら新しい事業の見通しの問題につきましては、今総合整備事業の方につきましてはことしの予算で国の直轄調査といたしまして二地区で地区調査に入っておりますので、これからの調査結果を踏まえて、事業化できるものについてはできるだけ事業化していきたいと考えておりますし、特定地域農用地等緊急保全整備事業については六十三年度から石狩川下流左岸地区につきまして事業着工に入る予定でございます。それ以外の地区の問題につきましては、先ほど来申しておりますような要件を満たす地域について、具体的な地域の要望がございました場合にそれを事業として具体化していく、こういう構えで臨みたいと思っておりますが、先生から御指摘がございましたように、公団の事業が割高だというふうに私どもは決して考えておりませんけれども、一部そういう批判を受けることがあったことも事実でございます。恐らく先進的なモデル性といったようなことが目を引いたのではないかというふうに思っておりますけれども、やはり関係者方々から公団事業をやってもらってよかったといったような、成果が高まるような効率的な事業の実施、それをベースとしたこれからの公団事業の展開ということが非常に必要になってくるのではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  55. 安井吉典

    ○安井委員 新事業の問題についてはこの上とも十分な配慮を願っておきたいと思います。  次に、公団の組織や定員の問題でありますけれども、これはかつての行革大綱で政府機関全体についていろいろな指摘が行われて、組織縮小あるいは効率化というような名前で答申があって、それに伴う措置が今日まで行われてきていることだけは間違いありません。しかし、そうはいいながらも、農業基盤整備という仕事は非常に重大であることは言うまでもありません。そういう両方の状況の中で、今度の改革によって公団で働いている職員の側に雇用不安が残るということでは、これはもう絶対に許せないと思うわけであります。あるいはまた、労働条件がそれによってダウンするというようなことも困ると思います。何しろ、政府機関として政府そのものが自分の考える仕事を実行するためにこういうようなものをずっとつくってきている、それが政府機関であります。したがいまして、そこで働いている方々の雇用問題について責任を持つのは当然だと思うのでありますが、局長からもそれから大臣からもこの際はっきりお考えを伺っておきたいと思います。
  56. 松山光治

    ○松山政府委員 公団の組織、定員の問題につきましては、これまでも公団の事業の実態に即していろいろと御努力をいただいてきた経過があるわけでございますけれども、公団が今後とも国民的な理解と支持のもとに安定的に事業を実施していくためには、効率的な業務運営ということに格段の努力を傾注していただく必要があろうというふうに考えるわけであります。  一方、今回の公団法の改正に当たりまして、公団職員の間に雇用面での不安が生じるといったようなことがないようにすることも、新しい制度のもとにおきます公団の安定的な業務運営上やはり必要なことであるというふうに考えておる次第でございまして、こういう考え方のもとに私どもとしても対応していきたい、このように考えておる次第でございます。
  57. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 おっしゃるように雇用問題、労使問題は、時代の変遷はございますけれども、それぞれの人たちがその職場で生活の糧としてやっておるわけでございますから、それを大事にしなければならぬ、当然のことだと思っております。職場の安定ということは当然のことと心得ております。
  58. 安井吉典

    ○安井委員 大臣からはっきりおっしゃっていただいたわけでありますが、公団の今後の運営の問題についても、監督だとか規制はできるだけ緩めた形で自主性を尊重するというようなことが、一つの機関ですから、機関の発展のために大事な問題ではなかろうかと思います。  もう三十年を超える年数を重ねている公団でありますから、内部でも十分に人材もそろっているというふうなことで、最初のときは農林省の天下りみたいな格好でスタートせざるを得なかったと思いますけれども、今は、農林省との関係は一切断て、そんな乱暴なことを言うつもりは私はございませんけれども、役職員の内部登用であるとか内部人材を育成するとか、そういうようなことで仕事に励みができて、日本農業の発展のためにも一つの役割をきちっと果たせるように今後とも育てていくべきだと思うのです。どうですか。
  59. 松山光治

    ○松山政府委員 公団は政府関係機関といたしまして、法の定めるところに従い国の実施する機関、したがいましてその特殊性なり公共性からくる一定の制約というのは当然あるわけでございますけれども、御指摘のようにそういった範囲内で、ひとつ活力のある業務ぶりで、公団の果たそうとしている役割を十分果たしてもらいたいものだ、私どもとしてはそのように考えておる次第でございます。  職員の配置の問題は、これは公団の問題ではございますけれども、恐らくいろいろな要素を勘案してやっていただく必要があるのだろうと思います。主務省庁との密接な連携の問題というのも一つあろうかと思いますし、かつまた、今先生から御指摘ございましたように三十年の歴史の中で内部職員の中からも職務経験の豊富な職員が育ってきているといったような事情もあるわけでございます。こういった諸事情を踏まえながら、適材適所という観点に立ちまして、これからの公団業務の目的なり業務内容から見てふさわしい者が登用される、それを通じてひとつ公団が活力のある仕事をやってもらいたい、このように念願するものでございます。
  60. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 安井委員の言われることは極めて常識的な御意見を述べられたものと理解をいたしております。ただ、つけ加えて申し上げまするならば、本日先ほど来私が当委員会答弁をいたしておりますように、世間の見る目は農業に対して、一部であっても評論家に至るまで非常に厳し過ぎる面がございます。そういう中にあって、お互いの職場が理解をされるように誠心誠意その目的を果たしていかなければならない、かように思っておるところでございまして、私も政府関係機関の職場におった経験もございますので、そこらは極めて常識的な考え方を持っておるつもりでございます。したがいまして、公団職員におかれては誠心誠意お勤めをいただきたいと念願をいたしております。
  61. 安井吉典

    ○安井委員 この際、まだいろいろお聞きしたいこともあるのですけれども、どうしてもきょうは取り上げておきたいと思ったことがあります。それは農用地公団事業についてもそうですし、それから一般の土地改良事業についてもそうですが、農民の負担が非常に累積してその支払いに困っているという、そういう問題であります。これは問題は二つ別々なんですけれども、性格がよく似ているものですからあわせてきょうひとつ議題にしていただきたいと思うのでありますけれども、どちらの事業も、公団の事業もあるいは一般的な土地改良事業も、一番最初、計画を立てたときからもうどんどん実施期間が延びているというのが軒並みの状況であります。そしてその間に単価が上がる、諸物価も上がる、それからまた工事の質的な向上もそういう長期の間に果たされたというようなこともある。そういうような結果、当初の計画した工事費がずんと膨れ上がって、受益者負担は増大をするわけです。一定の据え置き期間を経てからいよいよ受益者負担の返還が始まるということになってまいりますと、一番最初やるときに判こをついて約束した額よりも非常に膨れ上がった額になる。昔の場合はその際も農家の収入は農産物、畜産物の価格が上がってきたものですから支払い能力はあったのかもしれませんけれども、しかし最近では生産調整、あるいは水田の場合の減反、そういうようなことやら価格そのものも伸び悩んでいる、こういうようなことで農業収入は横ばいまたはむしろ縮小しているというふうな状況で、したがって返す金は膨れるが、それを支払うべきお金の方はどんどん減っていくというふうなことで、いろいろな問題が各地で起きているわけです。特に土地改良事業の場合は、私の北海道などは五割に近い田んぼが転作を強いられているというふうなことでありますから、水田で生産性を上げていくということで多額の費用をかけたのが、支払う段階は畑の収入で払わなければいかぬ、こういうようなことにもなるわけです。  一つの例を北海道旭川市のペイパン土地改良区について挙げてみますと、これは旭川市の郊外の、郊外といっても大分奥になるわけでありますが、その米作地帯の土地改良区の一部に下南部地区というのがあるわけです。そこでは五十四年度に道営の防災事業としてため池の改修工事が行われた、それから五十六年度は道営圃場整備事業が着工されて六十二年度完工。二つの事業がちょうど重なってしまった。約三十数戸の地区です。そして、そこで地元負担金の合計は二億六千九百三十四万円余り、これを農林漁業金融公庫からの借入金として払わなければならなくなったわけですね。六十二年度の償還金は、利息が六・五%で千七百四十五万円余り。十アール当たりに直してみますと三万百八十四円払わなきゃいけない。ピーク時ではこれは五万二百九十六円になります。この辺の農家でも十アール当たりの粗収入はせいぜい十五万円ぐらい。ですから、所得率を四五%に見ても反当たりの所得というのは六万七千円ぐらいで、これで生活費なんですよ。六万七千円が生活費なのに、土地改良のだけでも現在でも三万円、高いときは五万円も払わなきゃいけない。これじゃもう暮らしていけないというふうなことになって、組合員の中でも大変混乱が起きて、ペイパン土地改良区の古小高組合長はことし自殺をしたわけですね。新聞にも報ぜられております。これがただ一つの原因だったかどうかはわかりませんけれども、こういう大変な事態の処理についての心労の結果であったということだけは間違いないと思います。よく調べてみますと、この土地改良区は去年の十二月二十二日の約定日に農林漁業金融公庫へ六十二年度の元利償還金千七百五十万九千円をちゃんと償還しています。きちっと償還をしたわけですね。しかし、これは東旭川農協から三十四名の組合員の組勘の引き去りで処理はしても、それじゃとても払えない人がいっぱい出てくるわけです、組勘がもう赤字になっちゃっているという人さえいるわけですから。そこで結局農協が一時借り入れを八百五十万円ぐらいして、それでようやく返還しているわけです。したがって、そのあとを借りて返しているわけですから、これを一体後どうするのかという問題が残っていて、現在旭川市と東旭川農協とペイパン土地改良区の三者間で対応策を検討しているというふうな事情があります。  私は一つの例を申し上げたわけでありますけれども、全国至るところにこういった種類の事態が起きているのじゃなかろうか、そう思うわけです。こういうわけで政府の方も六十三年度の予算の中に土地改良事業等償還円滑化特別対策事業ですか、これで一億二百万円の予算計上、それから公団の方については利子補給としての助成額六十万円、これだけ計上をされているわけです。ただ、聞いてみますと、まだこれをどういうふうにして——何といったってこの額が全国の土地改良事業のそれに対して一億二百万円、それから公団事業でも借金整理にわずか六十万円。政府の予算ですよ、これに同額県が乗せるのだそうでありますけれども。こういったような状況でこういう仕事に取り組むという熱意は買います。これは評価いたしますけれども、その内容はどうも農村の現状に当てはまるようなものになっていないのじゃないかという思いがあるものですから伺うわけです。どうですか。
  62. 松山光治

    ○松山政府委員 お答えに先立ちまして、事情を必ずしもつまびらかではございませんけれども、ペイパンの土地改良区の理事長さんはこれまで土地改良のために随分御尽力いただいた方と承っておりまして、御不幸に心からお悔やみ申し上げたい、このように考えておるわけでございます。  今、ペイパンの土地改良区を例に挙げまして負担金の問題御指摘があったわけでございますが、私どもも現下のもろもろの情勢の中で、土地改良をめぐる負担金の問題は非常に重要な問題だ、このように認識をいたしておりまして、いろいろな事情があるわけではございますけれども、できるだけ予算の重点配分等を通じまして早期完成を図っていく、あるいは事業の実施面でも経済的な工法の実施等を通じまして事業費の増高をできるだけ抑制していく、こういうことを一方で進めながら、償還に困難を感じている事例につきましての対応といたしまして、いろいろと制約はあるわけでありますけれども、例えば六十一年度にはステップ償還制度、六十二年度には計画償還制度、六十三年度に新たに今御指摘のございました償還円滑化特別対策事業というのを一般の土地改良、公団事業の対象農家、このそれぞれについて講じることといたしたわけでございます。  この六十三年度の事業について、あの金では不十分ではないかという御指摘、御心配をいただいたわけでございますけれども、御案内のようにこの事業は、一定の要件を備えました土地改良区なり公団の事業対象農家が償還金の返済を行うのに必要な金、公団の農家の場合には年償還額の三分の一以内という形をとってございますけれども、それを農協等の金融機関から借り入れまして償還金に充てていく、その場合の利子負担を少なくするということで、例えば農協の融資機関といたしますと、農業近代化資金の基準金利が今六・七%でございますけれども、それを念頭に置いた基準金利六・七%と自創資金の四・〇五%、その差額のものを都道府県と両方で負担しよう、こういう仕組みになっておるわけであります。六十三年度の事業規模として想定しておりますのは、ただいま先生から御指摘のありましたのは利子補給額でございますが、年度の初めからすぐ実行に移すわけではございません。特に公団事業の場合には来年の二月に償還期が参りますので、そうすると二カ月分の利子補給分、こういうことになるわけであります。事業規模といたしましては、一応一般のものが百七十六億円の融資枠を想定しておるのでありますけれども、現在都道府県等を通じて実情を調査しておりますが、この百七十六億円自体が六十二年度に都道府県を通じましてかなりの土地改良区について調査をいたしました結果をベースとしておりますので、まず十分ではないだろうかと思っております。  同じく公団の関係のものにつきましては、六十三年度の融資枠は二億五千万ということにいたしてございます。これも昨年都道府県を通じて行いました調査をベースとしておりますので、枠として不足することはないのではないだろうかというふうに考えておる次第でございます。
  63. 安井吉典

    ○安井委員 予算計上が少ないので、公団については六十万円。これは二カ月分だとおっしゃったが、一年分にしても、月三十万円ですか、三百六十万円かなんかですね。都道府県が同じ額乗せるにしても、私はけたが違うのじゃないかなと思ったのですが、よく聞いてみますとなるほどずっと実績を調べるのですね。調べて、それの三分の一を対象にするということでまずがさっと落とすわけですよ。そういう中で差額利子を補給する。ところが、実際は六分七厘なんというのは農協でほとんどありません。七分から七分二厘ぐらいで農協は貸しているわけです。ですから、六・七%と四・〇五%の差額だけを県と国が補給するのだ、そういうふうに表向きは非常にきれいにできているのですけれども、中身を調べてみればみるほど、最後をきれいにするために途中で三分の一だけを対象にするとか、ありもしない一つの基準をつくるとか、私はどうもそんなようなことがあるような気がしてなりません。伺いますと、まだ要綱ができてないそうでありますし、下部の土地改良区に聞いてみてもまだ実態がよくわからぬということのようです。したがいまして、実態がだんだん上がってくるそういうふうな状況を見ながら、ことしの予算は既に通ってしまっておりますけれども、これからの段階でもっと内容を精査して実効のあるものにしていただきたい。ことしできなければ来年度でもということもありますけれども、そういうような改善努力をお願いをしておきたいと思います。ともかく、これでもやろうということになったことだけはいいことだと思いますよ。しかし、どうせおやりになるのならもっと実効のあるものにしてほしいということを申し上げて、これはお願いだけにとどめておきたいと思います。大臣、いいですね。
  64. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ことしの新規の特別対策事業、利子補給のことについての御意見でございますが、この問題は私もそう威張って言えないのです。しかし、おっしゃるようにこの仕組みを芽を出したというところに意味がある、そしてまた来年度、来々年度に向けて実効あるものに固めていく、こういうことで希望はひとつ持っていただきたい、こう思っております。
  65. 安井吉典

    ○安井委員 希望を持ちます。  時間が来たようですからこれで終わりますが、いろいろな問題がありますけれどもそれを残します。ただ最後に大臣、農林水産省が土地利用型農業についての構造立法を進めるということで当初の予定法案の中にも出ておったわけで、いろいろな事情があったということも私も仄聞しておりますが、これについて今後どうされますか。それだけ最後に伺います。
  66. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 稲作などの土地利用型農業規模拡大生産性の向上は今後の農業、農村のあり方の基本にかかわる重要な課題でありますし、このため各般の手法について幅広い観点から検討する必要があると考えております。今後さらに現地の実情等も十分に踏まえつつ地道な検討を積み重ねまして、立法を要する事項については関係者のコンセンサスを得てできるだけ速やかに成案を得るように努力をいたしたい。この国会に間に合えばと思った節もございましたが、そういう意味では間に合わなかった。なるべく早く成案を得たい、こう思っております。
  67. 安井吉典

    ○安井委員 終わります。
  68. 菊池福治郎

    菊池委員長 竹内猛君。
  69. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農用地開発公団法の一部を改正する法律案関連をして幾つかの質問をいたしたいと思います。  時間の関係から本会議を控えておりますから、途中で時間を残して本会議に出てその後にまた続けるということになると思います。  そういう点でまず最初にこれは大臣にお聞きしなければならない問題だ。というのは、毎日の新聞に日米牛肉オレンジをめぐる自由化の問題が出ています。報道に載らない日はないぐらい出ている。十九日、きょうアメリカスミス次席代表政府・自民党とが会う。竹下総理はきのうの記者会見で、最高責任者として農林大臣の判断が位置づけられる、こう言っている。交渉中両者が国内的には譲り過ぎてたたかれるときに問題が解決するんだ、こういうことをきのう記者会見で言っていますね。交渉とはそんなものではないか、軟弱で、譲らないと言ってもやるかもしれないが、体制側だ、こういうふうなことを記者会見で言っておられます。農林大臣はきのう決算委員会国内、国際措置についても幅広く考えながら決着を生み出したい、こういうふうに答えております。輸入課徴金の導入をすると全責任を負うことは農水省であり、農相だとその責任の所在を明らかにしております。だんだん日米の交渉が、責任の所在が明らかになった。今まではだれが責任をとるかということが余りはっきりしなかったが、今度はかなり明らかになったというふうに感じます。  そこで、農業団体はきょう牛肉オレンジ輸入反対の集会を開く。また、経団連の斎藤会長は農産物自由化はせきとめられない、時間をかけて日米の間で話し合いをするほかはない、原則は自由化賛成だ、こういうことを発表されている。こういう点についてまず経過はいかがですか。
  70. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 最初に自民党とスミス次席代表が会うということが記者会見で云々とありましたが、とにかくだれがどう言おうと先ほど来答弁を申し上げておりますし、昨日、参議院の決算委員会におきましても答弁をいたしておりますように総合的に判断をして、そしてこれからの農政に間違いのないようにやらなければならない。その決断は私がしなければならないということで、いろいろ先ほども話が出ておりますけれども、だれが主導だとかどうだとかという話もありますけれども、どたなたがどうやられようと私の方で責任を持って、今後の食糧政策推進、これからの農政の積極的な展開を図っていかなければならぬその責任は私どもにあるわけでございますから、そういう意味におきまして今いろいろな角度からの検討が進められております。事、外交交渉でございますので、政府間でやっておることについてその一々を申し上げるわけにはまいりません。しかし、誠意を持って取り組んでおる。報道の書き方や評論家の言い方や一部財界の言い方やいろいろなものがございますけれども、それをもととして進めるわけにはまいらない、こう思っておりますので、ひとつその程度でよろしくお願いいたします。
  71. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、だんだん日にちが詰まってきているようですが、私は、日本の場合ガットに入ったのが三十年、アメリカもそのころ入っていると思うのですが、アメリカガットに入っていながら自分の国の必要な農産物を防衛するための措置をとって、今十九品目ぐらいはウエーバーの措置をとっている。日本でも三十六年に農業基本法というのをつくった。この十三条というのはまさに外国の輸入、そしてそれに対する農業者の受ける打撃、これに対しては十一条との関係もあるけれども、その十一条の関係だけで十分に回復できない場合には課徴金であるとか、あるいはこの保護措置をとる、こういうことを決めているんだ。三十六年の十二月の農業基本法で。国内法ですよ、これは。にもかかわらず、一体アメリカは、例えば課徴金の場合においてもそれに対してけしからぬという文句をつける、保護しようとすればそれもけしからぬ、過保護じゃないかと一々国内の農政にアメリカからけちをつけられ、文句をつけられて黙っているという手はない。これはおかしいですね。どうですか、農業基本法との関係で。
  72. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農業基本法の示すところも承知をいたしておりますが、今、二国間で話し合いを進めておるところでございます。冷静にも冷静に対応しよう、話し合いを続けよう、こういうことでやっておるわけでございます。  先般来私も当委員会でもしばしば申し上げておりますが、私も言いたいことがあるけれども、じっとこらえているのであります。それを黙っている手はないと言われても、私が黙っていないで言いたいことを言ったのでは冷静な対応ということにまた水を差すことになりますので、私はこらえにこらえにこらえて、そしてやっておるわけでございます。決裂してしまえとおっしゃるなら、それは一番簡単でしょう。そうはまいりません。やはり冷静な対応を進めるために二国間で着実な話し合いを進めていかなければならぬ、こういうことでございます。ということは、責任を負わなければならぬわけでございますから、その責任の重要さを考えるとそういう答弁になるわけでございまして、もちろん責任はあるあると言いながらも、いろいろな方々がいろいろな意見を言われる。聞き耳は持たぬのかと言われれば、聞く耳はちゃんと持っております、こういうことでございます。
  73. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 農業基本法の十三条はそういうことを言ってはいない。歴史が判断をすることだからこれ以上この問題を追及することはやめるけれども、しかし、我が国の食糧の自給率といいますか、これは各国に比べて、量にして五〇%、カロリーにして七〇%を外国から輸入している。食糧の自給率が低いというのは世界一だということは前から言っている。こんな国は世界のどこにもない。生命の源を他国に任せるというようなことは——ガットのような国際会議では他人の食卓のメニューを一々云々する前に、今アフリカのような飢餓に飢えている国の問題あるいはソ連のチェルノブイリの事故による放射能の汚染によるところの食物の輸入流通というようなものについてもっと検討した方がいいじゃないかという声もある。きょうの読売新聞を見れば十二段抜きで汚染食物がイタリーから入っている、こういうことが出ている。だから、本当に今アメリカが言うようにむちゃくちゃに何でも力で押しまくる。農産物も工業製品もあらゆるもの、建築にまで口を出して日本が植民地化をするような今感じがするというのは国民の感じだ。だから、農林大臣はこの前大変不愉快だどいう言葉を使った。あれはいい言葉だと私は思うのです。国民は大変不愉快ですよ。今のアメリカのやり方については極めて不愉快だ。だから、最後の段階だからまあ言いたいことも言って歴史の中に一ページを飾るというぐらいの佐藤農林大臣の決意を聞かしてもらいたい。
  74. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 予算委員会で不愉快だと言った発言はそのとおりでございます。まさに不愉快でありました。しかし、これがまた三十分もしないうちにアメリカに、ワシントンに届く、活字になる、それが交渉にどういう結果になるか、友好国としていかがであるか。反省もいたしておりますが、しかし、私はいかなる事態にあっても冷静に話し合いを進めて、円満な決着を図りたい、こう思っておるわけでございまして、私自身の考えはもう委員十分御承知でございましょうからくどくは申し上げません。私自身はとにかく歴史に残る評価とは、まさに歴史がこの後私に点数をつけるでありましょう。そのときに落第点をつけられないように私は全力を挙げておる、こういうことでございます。
  75. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これ以上この議論はするわけにはいきませんから、そういう歴史的に立派な足跡を残すように佐藤農林水産大臣に要望して、農用地開発公団の法案の改正に進んでいきます。  私は、この公団ができるときいろいろな経過がありました。当時、警視総監をやられた方が前の理事長をやっておって、やはり警察の関係はよく理解ができるけれども農業の気持ちはどうも理解ができないじゃないかというようなことで、非常に失礼だったけれども農林水産省の大和田啓気さんを理事長に迎えてやった。大和田さんともしばしばお話をして、まあ十年後くらいになると仕事が一定の限度に来るであろう、そのときにはこの公団の性格をどうするかというようなこともお話をいたしました。その中で、何とか立派な技術を持っている方々地域の非常に隅々でいろいろな開発をされる方々の生きがいと希望というものを消さないように、あるいはまた海外に出て開発の指導をされているそういう技術者についても情熱を持ってやれるようにということで非常に心配をしてまいりましたが、行革審からいろいろな指図を受けまして、その指図の乾かないうちにこの法案が出たということはまことに当局の努力に対して感謝をしたいと思います。感謝ばかりしていてもしようがないから、将来末永くこれが繁栄するように頑張らなくちゃならない。長期の見通しというのは一体どうなっているのか、それを聞きたい。
  76. 松山光治

    ○松山政府委員 公団のこれからでございますが、現在実施中の事業それから現行事業に関連いたしまして調査をいたしておりますもの、これの事業化の問題、当分の聞こういうものが主体になっていくわけでございますが、新しい事業につきましては、御案内のように従来の未墾地開発を主体にいたしましたものから既耕地の整備保全というものに重点を置いた事業に切りかえまして、国の直轄調査の結果等を踏まえながら新事業の趣旨に則した的確な事業展開を図っていく必要がある、このように考えておるわけでございます。このうち、特定地域農用地総合整備事業でございますが、これは六十三年度におきましては国の直轄調査といたしまして二地区で調査をいたしてございます。そのほかに地区調査の前段になります基本調査を実施している地区が幾つかあるわけでございますけれども、こういった調査地区での意向なりあるいは構想等がまとまり次第逐次事業化していくということを考えておると同時に、これ以外の地区につきましても、本事業の目的なり要件に該当するものにつきましては、地元の意向を踏まえながら順次調査の上事業化していくという段取りになろうかと考えておる次第でございます。  もう一つの特定地域農用地等緊急保全整備事業でございますけれども、六十三年度には石狩川の下流左岸地区で着工する予定をいたしております。これ以外の地区につきましても、本事業の目的なり要件に適合し、かつ事業実施の要望があるというものにつきましては今後その事業化を検討してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  77. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今後の公団の運営等々について先ほど安井委員からもかなり細かい質問がございましたが、やはり公団の運営というものは、労使というか、理事者と現場で働く者が心を一つにして、しかもその働いた成果が農民なり国民全体から評価される、こういう運営でなければならない。それについてどういうふうに考えますか。
  78. 松山光治

    ○松山政府委員 公団がその目的のとおりに、かつ国民的な理解と支持のもとに安定的な業務運営をやっていく、こういうことのためにはやはりもろもろの状況を念頭に置きながらその効率的な業務運営に努めていただく必要があるというふうにまず考えております。と同時に、やはりその事業を通じて国民の皆さんの評価を受けるわけでございますけれども、公団の業務運営が安定的な形で行われますためには、公団におきます労使関係の安定というのもこれまた重要な課題であろう、このように考える次第でございます。
  79. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今日まで北海道や岩手や福島やあるいは島根、熊本、大分等々でかなりの開発工事をしてきたわけだけれども、そのトータルとして、情勢の変化もあるとはいえ、やはり必ずしも所期のような形でなくていろいろな負債の問題が生じてきていることは事実だ、それは全部じゃありませんが。そこで、今までの事業をしたその後始末とこれからの新しい事業とのかかわり合い、今までのあれは過去のものだからそれはそのままにしておいて、後始末は別なものをやって、これからはひとつ土地の開発もするし、管理もする、こういうような形にいくのか、その辺のかかわり合いはどうされるか。
  80. 松山光治

    ○松山政府委員 公団がこれまで事業実施の対象に指定をしてまいりました地区数六十九、そのうち四十六の地区で事業が完了いたしております。継続中のものについての扱いは、先ほども申しましたように、これからも引き続き公団事業としてやっていくわけでございますから、当然公団とのかかわり合いは続くわけでございますし、かつまた完了地域の問題につきましても、これはなおかなり長期にわたる償還の問題もあるわけでありまして、公団との間はなお一定のつながりのもとにいろいろと物を考えていく必要のある状態にある、このように考えておる次第でございます。
  81. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これからの仕事として、国営あるいは団体営の土地改良、こういうものとのかかわり合いが当然出てくるだろうと思うのですね。そのかかわり合いについては今度はどうされるか。
  82. 松山光治

    ○松山政府委員 新しい事業は、従来の未墾地開発プラス上物施設の整備、そういう事業形態ではございませんので、事業種目といたしましては、既存の国営なり県営の土地改良事業と異なるところがないという可能性もあるわけでございます。  ただ、今回の新しい公団事業の特色は、全国津々浦々でということではございませんで、農業生産性の向上と農業構造の改善という非常に重要な今の農政課題を踏まえながら、農用地等の農業資源に恵まれ、かつ農業構造の改善の可能性の高い一定地域で、知事の申し出に基づいてやっていく。通常の事業ではなかなか長期間を要するといったような規模の大きな土地改良施設等の整備を、公団の持っております技術力なり機動力なりあるいは資金の調達力を活用して短期間のうちに一体的、かつ総合的にやっていこう、こういうことでございます。したがいまして、全国の農用地を対象としてその整備水準の向上を図ります一般の国営なり県営の土地改良事業とはおのずから性格を異にしておるわけでございますし、むしろ一般の事業と相まちまして基盤整備の効果がより一層高まる、こういうように考えておる次第でございますけれども、調査計画の段階から両者の調整を図りながら新事業の円滑な推進に努力していく必要がある、このように考えておる次第でございます。
  83. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これはまだまだ検討する必要があるわけですが、土地改良事業の問題についても、負担のことについて先ほど安井委員からお話がありましたが、私もこの負担の問題についてちょっと質問したいと思うのです。  ある県を調べてみると、自治体が、市町村が八十八ぐらいある。そこには農協が百二十ちょっとありますね。土地改良区は三百二十あるということで、自治体も統合する、農協もできるだけだんだん統合する、それは法律でやっていくことですが、土地改良区というのは何で三百二十もあるのか。古い町村、合併前の町村ぐらいにできているのか。そうすると、そこには理事長もいるし職員もいる、建物もある。そういうような負担を農民にかけて、しかも米価は下がる、減反はする、機材については原価も明らかでない、そしてアメリカから今度はどっと物がくるといったら農業はおかしくなるじゃないか。土地改良に魅力を持たなくなってくる。そうすると困るから、一方においては、公団におけるところの雇用の問題が出るし、地元ではそういう三百二十もの事業体を持っていくというのはちょっと不都合な感じだね。だから生産地域別とか水系別とかに整理して土地改良事務所というのはもう少しきちんとしたらどうだ、それはどうなんですか。
  84. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良区は六十一年現在の数字で、全国で約八千四百あるわけでございますが、事柄の性格上、水系別に構成されるという場合も多いわけでございまして、そういう意味での制約といいますか条件づきがあるということはあるにいたしましても、御指摘のように、零細あるいは小規模のものが多いという実態にございまして、やはり運営基盤を強化し、水管理の効率化を図っていくという観点からいたしますれば、何とかしなければいけない、特に合併を進めなければいかぬ、こういう状態にあるわけでございます。  このために、昭和五十五年度から土地改良区の運営基盤の強化と事務的、技術的能力の向上という点を図りますために合併を促進するということで、土地改良区育成強化対策というものを実施してきておるところでございます。その結果、一土地改良区当たりの面積規模との関連で申しますと、千ヘクタール規模以上のものでふえておりまして、それ以下のもので減っておる、土地改良区の総数自体も、これはいろいろな要素がさらにあるわけでございますが、五十五年が九千余ございましたけれども、ただいま申しましたように、それが六十一年には八千四百にまで減っておる、こういう実情にあるわけでございます。  さらに、六十三年度におきましては、土地改良区の合併を一層強力に推進する、こういう観点から、県全域にわたります統合整備基本計画を樹立してもらう、そのための助成措置を新たに講じることとしたところでございます。これからもこういった施策を通じまして土地改良区の合併問題に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  85. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それは町村や農協の合併よりも非常におくれている。そして負担が二重、三重にかけられている。私のところでも、用水の負担金、排水の負担金というものをかけられて大変困っている農家があります。そういうところを見ると、やはり土地改良区というものはなるべく水系別に整理をしてそういう負担を軽くすると同時に、維持管理費というものをもっと考えてもらわなければ困る、こう思いますが、その維持管理についてはどうですか。
  86. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良施設は特定の農家を受益者として、しかもその発意に基づく申請事業として行ってきているわけでございます。こういうことからいたしましても、当該施設の維持管理は原則として受益農家が自主的に行うということになっており、そのほとんどが受益農家によって構成されます土地改良区によって管理されておるわけでございます。  しかしながら、近年、施設の高度化、大規模化が進む、あるいは兼業化の進展によりまして集落共同体の自主的管理機能が弱化いたしますとか、農村の混住化に伴います農業外利用が増加する、さらには施設ストックの増大に伴いまして整備補修の必要性が増大する等々がございまして、管理費が増大する傾向にもあるわけでございます。  こういう状況にかんがみまして、私どもといたしましては、施設を造成いたします際に、管理費ができるだけ少なくて済むような施工のやり方、例えば集中管理方式を採用するといったようなことをまずやっておるわけでございますが、特に公共性の高いダムなり頭首工等の施設につきまして、国の直轄管理あるいは都道府県の管理に対する助成といったようなことも施設の実態に即して考えてきております。さらには、土地改良区等が管理いたします施設に関しましても、定期的な整備補修に対する助成、あるいは県土連によります施設の管理技術指導に対する助成、さらに、緊急かつ多額の費用を要します管理設備の修繕工事に対する助成といったようなことを行いまして、管理費の事務負担の軽減に努めておる次第でございます。
  87. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 公団の今後の運営の問題について、雇用の不安のないように、そして労使が非常に信頼し合って進めるように、また関係の受益者がそれに対して敬意を表し、感謝できるようにするために、運営の民主化という問題がある、内部登用という問題がある。先ほどもありました。こういうようなことについて、これは局長並びに大臣から、私の質問ではこれがこの問題については大体締めくくりになりますが、一言お答えをいただきたい。
  88. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先ほど安井委員にお答え申し上げたとおりでございますので、ただちょっと、さっき公団職員の誠心誠意云々という言葉が、私、答弁したと思いますが、役職員というところを職員と言ったように私は思うので、委員長にお願いでございますが、議事録をひとつ御訂正させていただければありがたいと思いますが、お取り計らいをお願いいたします。あとは先ほど答えたとおりでございます。
  89. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 もう時間も、本会議が始まる間際になりましたから、ひとつ農家負債の問題について、前々から私は現地調査をし、ここでもしばしば発言をしてきました。いつも同じように金融課に任せてあるというようなことばかりで、平面的な、三年間ぐらいは同じようなことを聞いてきたから、これじゃいかぬ、それでは愛情がないじゃないかということで、一つや二つの法案はつぶしても、これは、いい答えが出るまでは頑張らなければいかぬ。社会党としては、いろいろな調査をして一つの法案を出そうということで準備はしておりますが、最近金融課の方も少し中身も充実させて充電したようだから、その充電した中身について説明を求め、同時に大臣からもそれについてなお押さえのお答えをいただけばありがたい、こう思っております。
  90. 伊藤礼史

    ○伊藤(礼)政府委員 農家負債の問題につきましては、地域や経営部門等による差異が大変大きいわけでございます。これを一概にとらえることは適切ではないと私ども考えておりますが、農家の負債問題を大きく分けますと、第一に、既に借り入れました制度資金の償還負担がその後の経営環境が変化いたしまして過重になっているというようなケース、それから第二に、農用地開発公団事業や土地改良事業の負担金等の償還に困難を来しているケース、第三に、農業経営の中でも特に畜産経営の場合、一部において借入金に大きく依存しつつ急速な規模拡大を行いまして、結果として多額の固定化負債を抱えているようなケース、このような三つに分かれるというふうに考えております。  そこで、農林水産省といたしましては、全国の平均で見た場合の農家の借入金と貯蓄の状況からして、画一的な対応をいたしますよりは、むしろ個別農家の負債の実情に応じた具体的対策を講じていくことがより効果的なものであるというふうに考えているわけでございます。  そこで、ちょっと長くなって恐縮でございますが、農家の負債対策といたしましては、既に借り入れました制度資金の償還が困難となっているような場合には、個々の農家実情に応じまして条件緩和等の措置を講ずるように指導いたしますほかに、六十三年度に新たに講ずる対策といたしまして、第一に、農家の債務整理のための自作農維持資金につきまして、特定の要件を満たすものにつきましては貸付限度額二千二百五十万円、一般の七百五十万円の三倍というような新しい限度を創設いたしましたと同時に、農用地開発公団事業及び土地改良事業の負担金の問題につきましては、農協等の資金を活用いたしまして償還の円滑化を図る場合に、その金利負担が自作農維持資金並みの四・〇五%となるよう利子軽減措置を講じているわけでございます。これらはいずれも構造改善局において担当しております。  さらに、先ほど申しました畜産経営の負債対策につきましては、酪農及び肉用牛経営の体質強化を図るために、六十三年度から五カ年計画で融資総枠一千百億円に上る大家畜経営体質強化資金、末端金利は同じく四・〇五%、特認が三・五%以内ということでございますが、これの融通あるいは養豚経営の合理化を図るための養豚経営合理化資金、これは六十三年の融資枠が二百億でございまして、末端金利は同様でございますが、これの融通、これを行うとともに、個別経営指導に対して助成措置、六十三年度約六億円を投ずることとしております。これらは畜産局が担当しております。  以上のように、農家の負債対策につきましては、関係各局が連携をとりながら全省的な課題としてその充実に取り組んでいるところでございまして、農林水産省といたしましては、今後ともこのような態勢で、関係各局が連携をとりながら負債を抱えた農家が一日も早く経営再建ができますように、個々の農家実情に応じて対応していく所存でございます。
  91. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農家負債の問題についてはしばしば御提言等もいただいております。対策室をつくれ、それぐらいの心構えでやれというようなことも率直な御指摘をいただいておるところでございますけれども、特に最近負債問題についてはいろいろな御意見がございます。しかし、この対策については画一的であってはならない。先ほどもお言葉にございましたように、愛情を持ってというお話がございましたが、それは個別に丁寧に扱わなければならない、こう心得ております。そして系統金融あるいは制度金融、両々相まって措置すべきものと心得ております。  あとは今事務局から御答弁申し上げたとおりでございますので……。
  92. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間が来てしまって、きょうは大蔵省に来ていただいておりますので、少し順序は飛ぶわけで恐縮ですが、この際、ただしておきたいことが一つある。  それは、この前も、読売新聞の論説を読んで、役所のメンツというようなことが書いてあったからいろいろやりとりしたわけですが、その後も依然として中海・宍道湖の干拓の問題が前進するのは不当である、あれはもうこの際何としてもこの辺で切りかえてもらいたい。鳥取県では条例の運動に入っています。恐らくこの委員会で地元の野坂浩賢君が漁業の問題に関連をして深く質問をすることになろうと思いますから、私はそういう細かいことについては触れませんが、ともかく九百九十億という金を必要とする。現在七百二十億くらいの金を使っているでしょうか。また現在六十億の金が今、三月いっぱいに実施できないで、五月いっぱいまで地元の関係の意見を聞くという話になっている。これだけ世論からたたかれて、これは与党も野党もないですね。すべてのところであれを進めるということがない今、減反をしているときに、なお今日まででき上がった四地区のその分配といいますか、耕作するだけでもあの値段では何もできないと言っているときに、これからなお金をかけてやるということは非常にむだな話なんだ。だから、大蔵省としても、こういうものについての検討をしてもらい、ここでは、それではすぐやりますということはできないかもしれませんが、ひとつこういう意見があるということだけは事実ですから、聞いてもらいたいし、それから農林水産省については、この前の松山構造改善局長答弁なんというのは、とてもよそへ持っていったら笑われるものだ。ああいう答弁ではぐあいが悪い。もう少し、今までこうしてきたからこれをやるのだということでは困る。幾つかの問題もこういうふうにやろうと思ったけれども、情勢が変わったからこれに変えたんだということがたくさんある。情勢が変わったから金もかかったんだという話もある。ところが、そこだけはどんどんやっていくのだということはおかしいのだ、これは。そういうおかしい、つじつまの合わないことについてはやはりしっかり判断をしてもらいたいということで、大蔵省からの御意見も聞きたい。それから農水省の方からも、その点につきましては、まだ話し中だから結論は出ないだろうけれども、来年の予算の編成もありますからね、それらも含めてちょっと一言聞かせてもらいたい。
  93. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 大蔵省にも答えるということのようでございますが、このごろ決断しなければならないことばかり多くて、非力ではございますが、これは今、三月末のものを五月末までに延長いたしまして、そして地元の集約した意見を待っておるところでございますので、地元がどう出てくるか、その意見についてここでそれを包んでしまう、押さえ込んでしまうようなことは、いささかこれはまた私が不謹慎なことになりますし、ただ一般論として言えば、従来から申し上げておりますように、むだにむだを重ねるというような結果、そういう評価を受けることがあってはならない、これは一般論として当然のことながら申し上げられることでございます。
  94. 竹島一彦

    ○竹島説明員 お答えいたします。  中海の干拓事業の件につきましては、委員初めいろいろな方から御指摘なり御意見をいただいておりまして、大蔵省としてもこの事業の取り扱いについて非常に慎重、しかし決めるときには決めるという気構えを持って対応していかなければならぬと思っております。ただ、具体的な内容につきましては、従来から農水省の方から御答弁がありますとおり、まずもって両県の対応、意見というものが出てきませんことには、事業そのものが地元の要請から始まったということもございますけれども、現状を一番理解しているはずの両県の御意見というものを伺って、かつそれを農林水産省がどういうふうにこなされるかというのが、あと五月の末ということでございますので、そう長い時間ではないと思いますけれども、まずそういうことを伺ってから、財政当局としても六十四年度予算に向けて、六十三年度予算の執行の問題もございますけれども、判断をさせていただきたい、このように思っております。
  95. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 今まで使った金の始末やら、これからの方向やらいろいろそれはある。あるが、中央で聞けば地元だという、地元で聞けば中央だという。球の投げ合いでは困るので、責任の所在をちゃんと明らかにして、その始末をちゃんとしなければならない。今神風が吹いているんだから、神風に乗って、それで世論の中で、元冦のときには神風に乗って勝ったんだから、神風に乗ってちゃんと始末をする。それは国民的合意ですよ。それをひとつやってもらいたいということで、次の福島県の現地調査の民の声、野の声、この大柿ダムのことについては本会議が終わってからじっくりやります。  ここで一応中断させていただきます。
  96. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十三分休憩      ────◇─────     午後三時二分開議
  97. 菊池福治郎

    菊池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹内猛君。
  98. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 休憩前に引き続いて質問いたしますが、前に申し上げたように、今度は土地改良、構造改善事業が具体的に進んでくる中で大変典型的な問題になっていて、何としてもこれは確かめておかなければならない問題があります。  過ぐる四月十、十一、十二日と三日間にわたって、私どもは福島県の大柿ダムとそれから会津の日中ダムの現地の調査をいたしました。その中で、全国にあるのかどうかわかりませんが、ともかく自治体が受益者の負担を全部やる、こういう決議をしておるわけです。そのような例が他にあるだろうか。まずそれからお伺いします。
  99. 松山光治

    ○松山政府委員 今御指摘の地区は、大柿ダムというダムをつくりましてそこから水を引く、請戸川地区の国営かん排事業かと思いますが、こういった国営かん排事業の場合には相当公共性の高い施設を含めた大規模なものであるということで、御案内のように、県営事業なり団体営事業と比べますればかなり高率の国庫負担率を設定して事業の推進に当たっておるところでございます。  問題はその国庫負担残の扱いということになるわけでございますけれども、県それから地元の間においてこれをどのように負担していくか、それぞれの地元の地域振興の考え方等にもかかわる話でございますので、各地区あるいは同一の地区内におきましても、この地区の場合には三つの町がかかわっておるわけでございますけれども、それぞれやはり自主的な判断にゆだねてございますので、負担の持ち方にはかなり各地区千差万別というふうにお考えいただきたいと思います。  今お尋ねのように、ダムを含んだ大規模な国営かん排ということで、市町村が国営かん排の負担のすべてを負担することにしているようなそういう例があるかどうかというお話でございますが、ダムを含みました国営かん排事業の地区といたしましては、この地区だけが国営かん排事業の地元負担のすべてを負担する、こういう考え方で対応しておる、こういう実情でございます。
  100. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この地区だけといっても、これは大柿ダムを中心とする三つの町とそれから会津の方の日中ダムを中心とし、新宮川ダムの関係もあるものも、全額負担をしている町と十分の五、十分の一というように負担をしているところがある。まあその十分の五、十分の一は別にしても、全額負担をしているところがある。福島県には少なくともこういうところが二カ所あることだけは事実だ。そこで、大柿ダムが来年度から償還をしなければならないというところになってきて問題が明らかになった。  三月九日の衆議院予算委員会の分科会で、社会党の上坂昇代議士と佐藤徳雄代議士がこの問題を質問をいたしました。構造改善局長は、しばらく時間をかしてくれ、こういう話でありますけれども、時間は既に一カ月以上過ぎている。一体、この場合の受益者というのは法律上何を指すのか、まず受益者から説明をしてもらいたい。
  101. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良事業におきます受益者ということでございますが、一般に土地改良法の定めておりますところの、三条で定めておりますが、土地改良事業の施行区域内にあります、例えば農用地でございますれば、所有権に基づいてそれの使用収益している所有者、あるいは使用権に基づいて使用収益しております場合には、原則は使用収益権者でございますけれども一定の手続をとりました場合には、所有者等いわゆる三条資格者と呼ばれているものが受益者に該当する、このように考えております。
  102. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 それでは、この三つの自治体が、国営の場合には一〇〇のものの六〇が国、二〇が県、その二〇を自治体が負担をした、そのときに、後でうまくやるから土地改良をつくる、水を引くことに協力してくれ、こういうささやきが後ろからあったということは既に明らかにされている。だから、そのとおりになれば問題はないんだよ。うまくやるから問題はないんだけれども、そうじゃない。現実にこの間に計画変更もあったし、工法の変更もあった。こういうときに、受益者である農民とは余り相談をしないで、三つの町の責任者と請戸川の水利組合が話をして決めた。ところが、現在支払いが、九十二年までの支払いの中で、大変負担が多いわけですね。約四倍になっている。こうなってくると、これは自治体の財政が破綻をするということで、各町村が何とかならないか、こういうことを要請をしておるわけです。  それから、一体、この面積が三千八百七十ヘクタール、対象農家が三千八百六十三戸、そのうち水田が三千七百九十ヘクタール、畑が八十ヘクタールという形で、完全な水田です。このようなところで当初の四倍もの負担金を元利で払わなければならないという形になって問題が出てきた。さてそのときに、一体この負担金の最終の受益者としての負担金というのは幾らになるのか、この問題を明らかにしない限り話は前の方へ進まない。大体幾らになりますか。
  103. 松山光治

    ○松山政府委員 国営の土地改良事業につきましての負担の仕方の問題につきましては、先生案内のように土地改良法の第九十条の各項におきまして定められておるわけでございます。まず都道府県にその一部を負担させることができる、こういうことになっておるわけでございますが、都道府県から以降の負担の仕方については三つございまして、三条資格者、いわゆる受益者から直接都道府県が徴収するというやり方、それから土地改良区から都道府県が徴収するというやり方、もちろんその場合は土地改良区は定款の定めるところによりまして組合員である受益者から徴収するということになるわけであります。それからもう一つは市町村から取る、こういうやり方に相なるわけでございます。市町村から取るという場合は、市町村はこれまた条例によりまして全部または一部を受益者たる三条資格者から取るというやり方になるわけであります。本地区におきましては、市町村が全額負担するということが決められておるということでありますけれども、徴収の仕方といたしましては県条例に基づきまして県が土地改良区から徴収する、その土地改良区に対して国営の負担分を関係の町が全額助成するということを議会の議決で決めておる、こういうことになるわけでございます。  どれぐらいの額を負担することになるのかというのを現段階におきます事業見込みをベースで申し上げますと、町別の年当たりの償還額といたしましては、小高町が四億七千六百万弱、浪江町が五億二千六百万弱、双葉町が一億八千二百万円強、こういうふうな数字に相なるわけでございます。
  104. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうしますと、受益者というのは純然たる農家ですね。それから、議決した場合に町が負担をする場合には税金で負担をしなければならない。町の中には農民だけじゃありません。サラリーマンもいれば中小企業もいればその他もいる。したがって、従来程度の前の額のようなものであれば、これはあるいは負担できたかもしれない。けれども、それの何倍もになって三百十四億、こういうことになってくると、これが明らかにされた場合には大変ですね。今まで二〇%は地元が持つという形で、農家の皆さんもこれは全然負担をしなくてもいいと思っていた。だからしたがって町の人たちは負担なんか考えていない。そうすると、結局町が負担をするとなれば債務負担行為というものをやらなければ支払いができないでしょう。そこで浪江町の場合でも十八億のものを百億三千四百万払わなくてはならない。小高町は十五億八千万を八十四億五百万、双葉町も六億九千三十八万七千円が三十八億七千万払わなくてはならない。このように非常に負担額が多くなっている。それが明らかになったら、これは住民が、町民が大騒ぎになりますね。農家の皆さんがわかったら、これも大変だ。国は県に貸した金を取る。県は自治体から取る。では自治体は一体どこから金を持ってくるんだ。土地改良区から持ってくるとすれば、金がかからないから頼むと言ったものが、今度は金がかかると言ったら、これはある意味のいわゆる詐欺行為と言われても仕方がない、土地改良、ダムづくりの、ですね。これはどうなんです。
  105. 松山光治

    ○松山政府委員 国営の事業に要しました地元負担分につきまして市町村がそれぞれいろいろと助成されておるという例は間々あるわけでございますけれども、全部、しかも三町村そろいまして国営の分は町で負担するんだというふうな形をとられているのは極めてまれなケースでございます。いろいろな事情がございまして、事業費の増高も来しておるということも考えますれば、三町には大変御苦労をおかけするわけでございますが、町で全部負担するということをお決めになりましたときにも恐らくいろいろな議論があったんだろうと思います。町の農業振興という観点からやはりそういうことが必要だということで、恐らく町議会としても御判断になられたのであろう。法律論は別にいたしまして、やはりまずは関係の町と土地改良区との間の話し合い、あるいは町のいわば相談相手たるべき県との間の御相談、町の御苦労は御苦労としてあるわけでありますから、我々もこれからの持っていき方について県ともよく相談したい、このように考えておるところでございます。
  106. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は簡単ではありませんから、きょうは時間が足りないから、問題だけを提起して、また別のときにじっくりやりますけれども、事業が始まってからなぜ負担がふえたかと言えば、物価の値上がり、労賃、資材の値上がりで百二十六億二千五百万ふえたと言っている。工法の切りかえによって七十七億八千五百万ふえたという。これは後でいいから、この期間に物価がどれほど上がったか。ほかの地区だってダムをつくっているのだから、そこだって同じだ。労賃が一体どのくらい上がったか、何人くらい使ったか、それから資材、こういう資料を出してもらいたい。そうしないとこれは議論になりません。百二十六億二千五百万円という値上がりですね。工法のそれもそうですね。  きょうは自治省が見えておりますけれども、これを自治体に負担させるということを盛んに言っております。一体自治省の中ではこの種のものに対して負担を要請された場合に、例えば交付金であるとか起債であるとかいろいろなことがありますけれども、それをできる道はあるのですか。そういうものに対して救済の道はありますか。ちょっと自治省の方からお伺いしたい。
  107. 二橋正弘

    ○二橋説明員 かんがい排水事業の性格から申し上げまして、先ほど来お話がございますように、本来の受益者が存在するものでございまして、市町村が当然に負担するというふうな仕組みに制度上なっておるものではございません。仮に市町村が肩がわりとして負担するということにいたしました場合でも、市町村がみずからの判断で行っておるというものでございまして、そういう個別の市町村の負担に対しましてただいまお話がございましたような財源措置をするというふうなことはございません。
  108. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 自治省としてはそういう今のようなお答えである。そして受益者である農家には、金はかけなくてもよろしいから協力してくれと言って調印をとり、そして計画変更も何もどんどん理事者だけでやってきた。そして今度、現在になってみれば、いろいろな形で金がかかった、負担がかかった、返さなければならない、最終的には農家から取るということになるでしょう。そういうことになるのじゃないですか、それは。どうですか。
  109. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほど申し上げましたように、このケースの負担のルートにつきましては、まず県、それから県が土地改良区に、したがってそのルートのときには土地改良区が受益者からというのが一般的な形でございますけれども、このケースの特殊性は、その場合に受益者が負担しなくてもいいように町がその分を全部土地改良区に助成するということを町議会として議決されておるという点でございます。したがいまして、先ほども申し上げましたように法律上の建前、理論は別といたしまして、そういう事情を踏まえながら、町として非常に御苦労をおかけしておるわけでございますけれども、どのような形で償還問題をやっていくか、やはり現地でまずは御相談いただく必要のある話ではなかろうか、このように考えておる次第でございます。
  110. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この問題は法律だけでは処理のできない問題だ。もう法律の違反ともいうべき問題であって、本当にダムをつくるときから一人一人の農家の三条資格者の署名をとって、そうして三分の二の同意を得てやっているわけじゃない。町が安易にこういうものを決めた、だから自治体が負担できないのはこれは当たり前なんだ。そういうような状態は政治を外れた問題なんだね、これは。日中ダムでもそうですからね。我々は、こういう問題については断固として、補助金の出し方、使い方に対しては調査をしてこれからやりますが、もう時間がないから大臣にこの種の問題に対する感想をお聞きしたい。
  111. 松山光治

    ○松山政府委員 ちょっと事実関係で説明させていただきたいと思いますが、事業の発足に当たりましては当然受益者の同意はとられてございます。ただ、その同意は、その際に、町議会が全部地元負担を持つからということが恐らく前提になっておった、こういうことでございますし、それから今計画変更手続を行っておりますけれども、ことしの四月末で既に三分の二以上の同意がとられておるというのが実情だ、そういう報告をいただいております。
  112. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先般、予算委員会の分科会でこのことについていろいろ御意見を賜りました。その際私からも申し上げました。これは特異なものであるという感想を申し述べ、そして若干の時間をおかしをいただきたいと私がお願いを申し上げたところでございます。そういう私の感じ方、これを受けて事務当局で鋭意検討を進めさせておるところでございます。しばらく時間をおかしいただきたいと思います。
  113. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 時間がないから、これで私はきょうの質問はやめるけれども、しかしこの問題の結末がついたわけじゃないですから、今から大柿ダム、日中ダム、宍道湖・中海、河北潟、たくさん類似するものがありますから、そういうものについて国の補助金の取り扱い方に関連をする問題でありますから、政治問題としてこの問題は大事なことになっていますから、今後こういうことの再び起こらないようにするために、さかのぼった問題を取り上げて、しっかり具体的なものを通じてやっていきます。きょうはとりあえずこれでおしまいにしますけれども、了解をしたわけじゃありませんからね。了解はしない。非常に疑問を持ちながらやっている。それで、先ほどの資料はぜひ出してもらいたい。  質問をひとまず終わります。
  114. 菊池福治郎

    菊池委員長 水谷弘君。
  115. 水谷弘

    ○水谷委員 法案の審議に入る前に牛肉かんきつの問題で若干御質問をいたします。  先ほど来、大臣の決意、答弁、伺っておりまして、従来からのしっかりした決意と覚悟で最後まで日米交渉に臨まれる、そのことは私も伺っておりましてよくわかりました。しかし、総理が内閣記者会との懇談の中で、レーガン大統領との間では共同作業でお互いに痛みを分かち合うことで解決しようと確認している、日米両国政府は譲り過ぎだと国民から批判される解決が一番平和的だ、これは報道内容でございますから全部がこのとおりだとは思いませんけれども、今国民の中で、牛肉かんきつのこの問題についての日米交渉が、将来の我が国の選択に断じて誤った選択をしてはならない、国民が本当にあの選択は正しかったと、将来そう御納得をいただけるような交渉の結果で終わらなければ、これほどまでに努力をし真剣に取り組んでこられているそのことが水泡に帰してしまう。いよいよ大詰めを迎える現段階において、総理のこの発言は、その真意は一体どこにあるのか、これは総理自身に伺わなければわからないことではありますけれども、平和的に解決することだけを最優先するという考えではないと思いますけれども我が国農業そしてまた国民食糧の安定供給、また食糧の安全性、あらゆる角度から考えた上でのぎりぎりの選択は許されるかもしれませんが、いたずらに譲り過ぎ、そして平和的解決というのは、私は、断じて行うべきではない、こういうふうに考えているわけであります。大臣も同じ御決心だと思いますが、いかがでございましょう。
  116. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 竹下総理記者会見で申されておるその報道も、私、目を通しました。その報道がどの程度適切であるかどうかはここで論及を避けたいと思いますが、一月行われた日米首脳会談において、牛肉かんきつの問題を例示をして、そして話し合いのテーブルを、困難な問題について、また懸案の問題について話し合いをしようということに合意をしたというふうに、私は当時からそういう説明を受けておるわけでございます。それに加えての解説が総理からいかがなされたか私は関知しておりませんけれども、譲り過ぎてもいけない、硬直してもいけない、私の言葉をもってすれば友好国として平和的に決着点を見出す、その結論は勝ったとか負けたという評価を受けるような結論であってはならない、友好国としてそれが当然の選択である。今のところ、ではどういうふうにしたらいいのであろうか、先様は真意はどのようなことであるのであろうか。それをより具体的に、こういうことで実務者同士で話し合いをしておるところでございますから、そういう意味で注意深くこれを見守っておる。いろいろな方がいろいろな言い方をしますけれども、私は最終的な判断を総合的にしなければならない、その結果は今委員おっしゃるように将来禍根を残すようなことがあってはならない。あのときのまとめ方のために日本の農政がこんなことになってしまったというような評価を受ける、私が午前中申し上げた言い方をもってすれば、落第点をつけられるようなことがあってはならないということで、これは歴史が評価をすることではございましょうけれども、そのつもりになって鋭意努力をしておるところでございます。
  117. 水谷弘

    ○水谷委員 これ以上申し上げるつもりはございません。いよいよ最後の詰めになるわけでありますが、国民の皆様方、当然生産に携わっておられる当事者の皆さんが政府に信頼をおき、そしてこの交渉の成功を願っているわけでありますから、最後まで大臣の決意をひとつ前面にかざして、党内ももちろんでありますけれどもアメリカ政府に対しても体当たりで御努力をいただきたいと思います。  我が国がいわゆる牛肉においても大変な拡大を続けて今日まで来ている。そこで、いわゆる枠の問題と自由化の問題はアメリカ一つの思想でありますから、どんなに枠が拡大されようとそれが自由化されていなければ何にもならぬという彼ら一流の論理はあります。しかしながら、何度も申し上げておりますけれども、どうも納得ができないのは、自国が食肉輸入法という国内法を持って、輸入規制ではないけれども輸出国各国に自主規制を、現実的にはそれを力によって強いている。我が国も昭和六十一年以来ずっと輸入の枠を拡大をして、五十九年の交渉に比べれば大変な枠拡大を続けながら今日に至っているわけであります。アメリカ食肉輸入法のトリガー水準でいけば、我が国はその水準を計算に当てはめれば大体十万トンくらいがトリガー水準水準であります。その倍以上のものを我が国輸入をしておる。アメリカ国内消費の七・三%、この程度しか実際には輸入をしていない。こういう全く論理が通用しない中での交渉なのでありますから、我が国はあるべき道筋というものをしっかりと主張し続けて、最後までこの問題に対するしっかりとした結論を得られますように重ねて申し上げておきたいと思います。  本題に入らせていただきますが、今回の農用地開発公団法の改正は、いわゆる抜本改正という名に値するものであるわけであります。六十一年六月十日、臨時行政改革推進審議会、ここにおいて農用地開発公団に係る答申がなされ、そのことを中心にして検討し、今回の改正の成案を見られる、それだけではございませんが、現在の農業さらには将来における我が国農業のあり方、総合的に御検討をされた上で本法案が提出されたものと考えております。本法案を提出に至った基本的な考え方、いわゆる行革審の指摘事項等をどのように踏まえ検討し本法案の成案を見られたのか、これは概括で結構でございます、大臣、まずお尋ねをいたしたいと思います。
  118. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 このたびの制度改正は、六十一年六月の行革審答申、これを踏まえて抜本的見直しを行った結果である、こういうふうに御承知おきをいただきたいと思います。残余は事務方から答えさせます。
  119. 松山光治

    ○松山政府委員 六十一年六月の行革審の答申におきましては、御案内のように他の特殊法人と並びまして、農用地開発公団につきましても各般の御指摘をいただいたわけでございます。例えば、今後の事業に当たっては、酪農経営の入植方式の廃止でございますとかあるいは造成方式の見直しの問題等々、現行事業につきましての抜本的な効率化という御指摘もございました。そのほかに先生お話しのございましたような公団をめぐる事情の変化を踏まえた五年以内の抜本的な公団のあり方の見直し、こういう御指摘をいただいたわけでございます。私どもといたしましては、この答申を踏まえまして現行事業のあり方につきまして、酪農経営の入植方式の廃止を初めといたしまして、できるだけ効率的に公団の事業が行われ関係農家にも満足していただけるようなそういう事業の方に持っていく、そういう趣旨の指導を公団に対しても行ってきておるところでございます。  今回の制度改正は、今の行革審の答申の趣旨は公団をめぐるもろもろの事情の変化を踏まえてあり方について見直すように、こういう御趣旨でございます。公団をめぐる事情としてはいろいろな事情がございますけれども、大規模な未墾地開発を主体といたしました、そういう意味での畜産基地の形成を主体といたしました事業でございましたけれども、その後の畜産をめぐるもろもろの事情の変化の中で、通地も少なくなるあるいはそういった大規模な事業に対するニーズも少なくなる、こういう事情の大きな変化があるわけでございますし、片や農業の構造改善が農政における最重要課題の一つに今なってきておる、そういう状況が一つあるわけでございます。  それらの事情を踏まえまして、従来の公団の事業の特色でございました大規模な草地造成、畜舎等の施設を一体化したそういう事業を主な業務としては廃止をいたしまして、既耕地の整備を特定の地域において行い、その地域農業構造改善に資するような形での事業を急速に行っていく、こういうことを主眼といたしました新しい事業制度に切りかえることにしたつもりでございます。そういう意味で、大臣からもお答え申し上げましたように今回の制度改正は、六十一年六月の行革審答申を踏まえて我々なりの見直しをした結果だというふうに考えておる次第でございます。
  120. 水谷弘

    ○水谷委員 先ほど来からの議論にもございましたけれども、国営や県営また団体営等でこれから進めようとしている事業、特にそういうものについては既存の事業があるわけであります。それでこの行革審の指摘であれ何であれいわゆる公団に対するいろいろな指摘の背景には、なぜ公団なのだ、なぜ公団でなければならぬ、公団が事業を興していく政策上の位置づけといいますか、公団でなければできない、公団でやることが最もふさわしいものなのだといういわゆる基盤整備であれ、構造事業であれ、この事業の中で、公団でなければならない、なぜ公団なのか、こういう問いに対して本当に納得できるような政府姿勢見解の表明というものは非常に大事であろうと思いますが、その点についてはいかがですか。
  121. 松山光治

    ○松山政府委員 公団は、昭和四十九年当時の畜産物をめぐるもろもろの需給状況、その他の事情の中で畜産物の供給安定体制を整備することが必要になっている、そういう時代的な要請を背景にしながら創設された組織でございますけれども、その後、御案内のように、多くの地域でその特色を生かしながら農業基盤整備事業の重要な一翼を担う組織としていろいろな蓄積を重ねてきたわけでございます。  公団を当初必要といたしました背景につきましては、その後の状況の変化が一つあるわけでございますけれども、別途、先ほども申しましたように、我が国農業の構造改善をいかに円滑にかつ早く進めていくか、その場合の前提条件となる土地基盤整備、農業基盤整備をいかに円滑に地域実情に応じて進めていくかということが重要な政策課題になっているわけでございます。  土地基盤整備事業、農業基盤整備事業につきましては、いろいろなクラスの事業があるわけでございます。これは、それぞれの農業基盤の整備を必要とする地域の広がりなり地域実情なり、それらが区々であるということによるのだと思うわけでございますけれども、やはり集団的に農用地が相当程度まとまって存在しており、かつその置かれたもろもろの農業的な条件その他からいたしますれば、その地域での既耕地の整備なり保全を速やかに行うことによって相当な農業構造改善への効果を期待できるような地域が現にある、そういう実態を踏まえつつ、かつ四十九年以来蓄積してまいりました公団の技術力なりあるいは機動性なり資金の調達性、調達能力といったようなものをフルに活用して、そういった地域農業の基盤の整備をできるだけ速やかに進めるというようなことで頑張ってもらいたい、こういう位置づけのもとに私ども今回の法律改正を予定したところでございます。
  122. 水谷弘

    ○水谷委員 大臣、今局長からお話ございました集積された技術力、いわゆる力量、機動性、それからいわゆる事業費を短期に集中的に投入できる体制等々、私も公団の果たす役割というものは重いものと考えております。そういう意味で、今後ともこの公団並びにこの事業が我が国のいわゆる土地基盤整備、それらの事業推進の中で大いに元気を持って頑張っていってもらいたい、こう思っております。大臣、この位置づけはしっかりしたものとして将来とも位置づけをしていくべきだ、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  123. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農業基盤整備事業は、内外ともに極めて厳しい状況下にある中で、我が国農業の発展を図るための基礎的条件を整備するものとしてその重要性が一層高まっておると判断をいたしております。このような認識のもとに、農用地整備公団の新事業についても、農業基盤整備事業の重要な一環として位置づけ、法改正の趣旨に即しつつ、事業の効率的実施に努めてまいる所存でございます。
  124. 水谷弘

    ○水谷委員 ただ、今農業をめぐる状況というものは非常に厳しい状況にあります。その先行きについては大変な不安をお持ちになって、生産者の皆様は展望がなかなか開けない、そういう中で取り組んでおられるわけであります。こういう時期にまたこれから本案で想定をしておりますような大規模な事業を起こしていくということになりますと、果たしてそれにふさわしい地域、地区というものがその関係者の同意をしっかり得た上でまとまっていくものなのか、農地の集積等が間違いなく図られていく、そういう見通しはあるのか、こういうふうに考えますと、これからの時期に大規模な事業というものは果たしていかがなものなのかな、実はこういう考え方ももう一方のこちらにあるわけです。  もう一つ、こういう時期だからこそ、やはり国が、その将来の方向に向かって励みになるような、その地域を本当に活性化させるような、公団のやったあの事業を見てみろ、ああいうふうにすばらしいものだ、だからやろうじゃないか、こういうふうな事業が本当に起こせるのか、また起こしていくべきではないか、こういう議論も片方にある。しかしながら、この先行き不安視されている中でのこういう事業の推進というものは、大変な覚悟と分析と、特に事前評価といいますか、徹底した事前評価を行った上で事業に着手していかなければならない、もう失敗は許されない。あの臨調で指摘をされたような指摘事項、さらにはまた会計検査院も意見表明という形で事業に対しての注文をつけておられる等々、これからこうやって抜本改革をしたこの農用地整備公団、新たに発足する農用地整備公団は失敗は許されない、そういうことから考えますと、これからのこの事業を推進していく基本的な考え方は従来の発想とは違う考え方に立っていっていただかなければならない、こういうふうに考えるわけですが、この点はいかがですか。
  125. 松山光治

    ○松山政府委員 公団事業の実施に当たりましては、従来から地域条件を十分頭に置き、かつまた関係者との入念な相談を踏まえながら、地域農業の振興に役立つということを主眼といたしましてこれを取り進めてきたつもりでございますけれども、公団事業をめぐる状況が、先生今御指摘がございましたように全体として大変厳しいものがあるわけでございます。そういうことを頭に置いて考えましたときには、特に従来以上にやはり念には念を入れた事前の調査なりあるいは関係者の間の打ち合わせ、協議といったようなものを重ねながら、事業をやってよかったと言われるような事業の推進を図る必要があるわけでございますし、またそうするように私どもも公団を指導してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  126. 水谷弘

    ○水谷委員 その事業の見通しといいますか、この事業を推進していく上での入り口になるところが実は一番大事な問題だと思うわけであります。いわゆる言われている事前評価という問題でございます。今調査をやっていらっしゃる、あらゆる角度からいろいろな調査をなさる、その調査が終結をしていく。さてそこで、この事業が本当に将来において必要な事業であり、受益者が農業を営まれていく上で見事にそれが改善をされメリットを受けられ、そして将来の展望も開かれる、さらにはその地域社会、地域経済に活力が与えられていく、そういうあらゆる角度からの事前評価、この事前評価に私は、従来の事業をずっと見ておりますと、やはりもう少し総合的な視点から、また予測されるあらゆるファクターを全部打ち込んで事前評価をしておけば、こういう大変な状況にならなくて済んだところがあったのではないかなと思うようなことを感ずるわけであります。  この事前評価を適切に的確に行っていく、事業計画を策定する中ではいろいろ指摘をされております。例えばこれからの特定地域農用地整備事業を進めるに当たっては、幹線である農道とか、またさらにはかんがい排水等の施設とかいろいろなものが入ってくるでしょうが、幹になる部分は比較的問題が起きてこないだろうと思うわけですが、その幹に出てくるかなり多くの土地改良事業、圃場整備事業等がきれいにといいますか適切に幹のもとにぴしっと整備されていくような形になっていきませんとこの地域一体の整備は行われないわけでありましょうし、この農用地整備事業の目的もまたそこにあるはずであります。  そうなってくると、農地の流動化、いわゆる規模拡大についての具体的な手法、さらにはそこをしょって立っていくのはやはり人であります。どんなに事業が、いろいろな計画が進んでも、百五十ヘクタールなり二百ヘクタールなり三百ヘクタールなりのその地域の整備を図ろうとするときには、そこにおられる中核農家、いわゆる担い手と言われるその人が、どういう方がいてどういう力量と情熱と取り組み姿勢を持ってそこにおいでになるか、おられない場合はどういうふうにそれをつくっていくか、この人づくりの問題。さらには個別経営だけで対応できない生産組織の育成という問題も出てくるでありましょうし、また一番問題になりいろいろな指摘をされているのは、整備はできた、しかしそこに導入する作物が当初予定をしておったものではもうどうにもならぬ、さてほかの作物は一体あるのか。どんなものをつくってもこれは採算に合わないということからその開発された農用地が遊休になり、さらには遊休が度が過ぎて荒廃に至るという現象も間々見えてきていたわけであります。  そういうことからすれば作物の選定、さらにはその作物が市場へ行くアクセス、いろいろな周辺の問題等々、本当に事前評価といいますか、この計画、この調査の結果が将来事業へつなげていくそのための徹底した評価、従来にない評価を私はやっていただきたい。地元のいろいろな要望を尊重することももちろんであります。単なる地元の要望だけを受けて事業が進み過ぎては弊害を起こす問題もあるわけであります。そういう意味局長、ひとつその点についての今後の取り組み、お尋ねをしておきたいと思います。
  127. 松山光治

    ○松山政府委員 どの土地改良事業につきましても、その事業を行いまして、一定の整備を行いました後でどのような営農を展開するかということが重要であることはもちろん論をまたないところでございますけれども、今度の公団が予定しております特定地域農用地総合整備事業、かなりの広がりのある特定の地域を対象にいたしまして面事業と線事業を一体的に整備していく、しかもその地域農業構造の改善に資すると同時に周辺への影響も考えながらこれを進めていく、こういうことになるわけでございますから、先生御指摘のように、その地域農業の今後のあり方についてどう考えていくかということについて事前の入念なイメージアップが必要なことはもうおっしゃるとおりでございます。  そこで、私どもといたしましては、調査、計画の段階から関係県あるいは普及組織、市町村、農協、農地保有合理化法人等々といった地元の関係機関の間でひとつ緊密な連携、御相談をいただきまして、この事業で予定いたします事業の内容はもちろん当然ではございますけれども、そのほかに御指摘のありましたような農地の流動化の問題でありますとかあるいは中核農家なり生産組織の育成の問題、作物の選定の問題等々、この事業を契機としてどのような形で地域農業を展開していくかということについてひとつ入念な協議をしてもらいたいと思っておるわけであります。そういうプロセスを経ながらこの事業の実施を行いますと同時に、当然のことながらこの事業と関連いたしますソフト事業との関係ということも問題になりますので、それとの間の密接な連携にも特段の配慮をしていく、こういう考え方のもとにこの事業の円滑な推進に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  128. 水谷弘

    ○水谷委員 よくわかりました。もう少し踏み込んで申し上げれば、我が国にはもっともっとすばらしい人材がたくさんおいでになるわけです。国が事業をして失敗したらはっきり言って終わりなんですよ。これは許されないのです。ですから公団がみずから出かけていって事業をする以上は、ありとあらゆる内外の有識者、専門家、例えば牛の肥育だったらその専門家は農民の中にいらっしゃる、全国に散らばっている方においでいただいて検討していただいてもいいではありませんか。あらゆる知恵を絞って、現在の行政機構の中で県とか市町村とか国、こういう枠をはみ出したもっと広い知恵、知識を集めて失敗のない事前評価をしていく、こういう態勢を、公団が専門家に委嘱されても結構、何でやっても結構ですが徹底してそれをやっていただきたい、これは将来のために申し上げておきますので検討していただきたい、こう思うわけであります。  それから局長大臣もお読みになったと思いますけれども、エコノミストの三月十五日号に「牛肉自由化——生産者は訴える このままでは肥育農家は全滅する」という座談会の記事が載っております。私ちょっと時間がございませんでしたので直接この御本人に御確認をする機会がございませんでした。しかし、この中にいわゆる公団が行われた事業の中に入植され、現在も苦労をなさりながら一生懸命御努力をしておられる方のお話が実は出ております。いろいろ問題点はたくさんあるし、またこれから努力をしていかなければならない点もたくさんあるわけですが、細かいことで恐縮でありますけれども、この中で私が特にひっかかった点がございます。  それは、事業が完成し完了した後入植者がお入りになる、そしてそこで生産活動を開始していく、農業を経営されていく、そのされていく中から出てくる要求といいますか、これはこういうふうに直さなければならない、これはこういうふうに拡大をしたい、ここをこういうふうに利用をしたい、こういうふうなお考えは当然当初の机上の計画とは違って、現場へ入って生活をなさり、そこで肥育を開始をされていけばいろいろな問題が起きてくる。そのときに、例えば牛舎を畑に建てたい、そして頭数をふやしていきたい。畑に牛舎を建てたいということで国に何回もお願いをした。しかし今まで認めたことはないから絶対無理だ、そういうことはできない、こういうふうに入植する時点で条件が明確に付されている。その条件どおりでなければならない。  例えば畑に傾斜がある。その傾斜があるのを平らかに改造をしてしまってはいけないとか、傾斜は傾斜のままにしておきなさいとか等々、実際にお入りになった方がいらっしゃらなければ、そんな事業は何のためにやったかわからぬ。お入りになって苦労していらっしゃる、そこからいろいろな要望が出る。それに対してはその事業の本質を損わない限り、もっともっと柔軟に対応をして、御本人の要求が本当に適正なものであるかどうか、いわゆる四角定規で条文でびしっとやるのではなくて、もっとその対応をしっかりしていきませんと、これは申しわけないことをしているな。私はこれを見て、公団はこんなかちんかちんな頭でやっていたんじゃ申しわけないな、実はこう思ったのです。局長、これをごらんになりましたか。——ごらんになりましたね。どんなふうにここのところの記事、それからまた、こういう直接の名前が上がっての指摘であれば公団はすぐ調査をしてみなければいけませんね。事実はどうだったのか、いかがでございますか。
  129. 松山光治

    ○松山政府委員 おおむねあそこに出ている記事は事実だったようでございますけれども、農用地を施設用地に切りかえるといったような多少いろいろと議論のあり得る話は入っておるにしろ、先生御指摘のように、公団の事業目的を達成するという点で適当かどうかという観点から、弾力的に判断できるところはやはり弾力的に判断していく必要があるのじゃなかろうかというふうに私としても思いますし、公団の方にもそういう線で相談してみたいと思っております。
  130. 水谷弘

    ○水谷委員 その事業の目的が全くとんでもないものにすりかえられてしまっては困る。しかし、その目的に沿った上で改良するとか、ちょっと変えていくとか、こういう前向きの要求に対しては、後ろ向きの要求など受ける必要ありませんが、前向きの要求はできる限り積極的に取り込んであげて、そこに入植された方が見事成功なさるようにひとつバックアップをお願いをしていきたいと思います。これはもう氷山の一角だと思いますよ。まだいっぱい要求はおありになると思うのです。私がなぜこれは申し上げたかといいますと、公団事業が完了した後の受益者に対するいろいろな対応というものまで含めて、これからの取り組みをお願いを申し上げたい、実はこう思っているわけであります。答弁は結構でございます。  次に、先ほど来からも議論がございましたが、今年度の事業として、負債対策に対する公団事業償還円滑化特別対策事業ということで、事業の芽が出ました。さっきも大臣おっしゃいましたように、これは芽を出したということに意義があり、今後はその内容等においても大きく充実を図っていきたい、こういうお話でございます。本当にいろいろな負債については一概に申し上げられません。これはもういろいろな要素があるわけでございまして、現在の負債がこれだけあるからこれは国が何とかせいという簡単な問題でないことはよくわかります。本人が努力をしなければならない部分も当然あるでしょう。  しかしながら、公団事業の場合は農家負担といいますか、農家自身が抱えられる負債金額全体が余りにも大きい。そこへもってきて、先ほどからお話があるとおり、農業をめぐるこの十数年、特に激変に次ぐ激変が起きてきているわけであります。国が事業を起こしそこにお入りになった。しかしながら、国際経済また国民経済、また農業そのものの状況の中で大きな変化が起きてきた。その変化の中で御自身が消化できる変化はいいけれども、消化し切れない変化の中で本当に御苦労しておられる方がたくさんおいでになるとすれば、国の事業であるだけに、これは国がそれ相応の対応をしてあげることが、だれが考えても、農業者以外の国民から見ても御納得をいただけるものであろうと私は思うわけです。ですから、この新しく出てきた公団事業償還円滑化特別対策事業、それと従来もおやりいただいている負債対策事業、これらを総合的に充実し、そして本当に将来なるほどそうやっていけば途中であきらめなくともこれは乗り切れるわい、こうお感じになれるような対応をぜひお願いをしたい。そこで先ほどから本年度は六十万、六十万ではどうにもならぬとかいろいろ議論がありますが、私はそうは思いません。これはスタートですからこれから先の内容とこの事業の展望をお聞かせいただきたい。  時間がもう余りありませんので続けて申し上げます。私から申し上げるまでもありませんけれども、西ドイツの場合はいわゆる構造政策、土地基盤整備というような明確な事業に乗っかって、その事業に参加される場合の受益者の負担というのは無利子です。利子はありません。これは西ドイツでもそこまでこの事業に対する重さというものの国民合意が図られて、基幹的な特に国が行うような事業については無利子制度というものまで用意されている。小さなものは別であります。私はそれに公団事業が匹敵するかどうかそこまでは明確には指摘はできませんけれども、そこら辺まで踏み込んだ考え方といいますか、そういうものも背景にお持ちになっていただきたいな、実はそんなふうに考えておるわけであります。具体的なこれからの円滑化事業の展望をちょっとお示しをいただきたい。
  131. 松山光治

    ○松山政府委員 前提としての負債問題の考え方を若干御説明をさせていただきたいと思いますが、公団事業に参加いたしました農家先生案内のように畜舎等の経営施設まで整備いたしました大規模な農家のほかに、増反いたしました農家でありますとか共同牧場に参加した農家でありますとかいろいろな形態のものがあるわけであります。特にいろいろと議論の対象になりますのが大規模経営でございますが、関係道県が実施いたしました実態調査によりますれば順調に経営が行われておりまして、償還も円滑に行われているというのが最近の実績で六、七割というような話でございます。若干困難が認められる農家というのが二割程度。かなり償還に困難を来しておる農家が一割ということで、同じ入植農家の中でも経営によってかなり状況が違っておるというのが一つあるわけでございます。  困難を来しておる農家の事情をいろいろと見てみますと、飼養管理技術がいささかまずかったというような話でありますとか、そういった事情がかなり多うございますので、したがいまして、飼養管理技術なり管理経営能力の向上が非常に重要な課題であるというふうに考えております。そういう意味で、道県なり市町村等で構成されます特別指導班による経営指導を強化いたしまして、まず健全な経営を営んでもらう、そういうことをやっていくというのが基本にあるわけでございます。その上で、償還の困難になっております各農家に対しまして、先生お話ございましたような自創資金の提供でございますとか、あるいは天災であるとか不慮の事故等、やむを得ない事由によりまして経営不振に陥っておる農家に対します公団の償還金の支払い猶予の措置といったようなものを講じてきたわけでございますが、お尋ねのございました公団事業償還円滑化特別対策事業でございますけれども、ことしの予算で実施することにしたわけでございます。  それで、この事業の主な内容といたしましては、まず対象農家でございますが、公団事業の年償還金が百万以上で所得の償還率が一割以上の農家をまず対象に考えまして、農家の申請に基づきました上で道県知事が再建の見通し等を審査して対象農家を決定する、こういうふうに考えたいというふうに思っております。それで、借りかえの限度額、年償還額の三分の一以内、こういうふうに考えておるわけでございますが、その期間は最大十年間、条件といたしましては末端の金利負担が四・〇五%になるように国と県とで利子補給をしていく、大体今回の措置の中身はそういうことでございますけれども実施に当たりましては地域実情を踏まえながらこの措置のねらいが生かされるように適切に運用していきたい、このように考えておる次第でございます。
  132. 水谷弘

    ○水谷委員 六十二年十二月二十八日において閣議決定をされました六十三年度の行革大綱、この中で指摘をされているのが、公団改組に伴い公団の組織・定員等について大幅な合理化を行う、このような指摘がなされているわけであります。この方針そのもののいわゆる合理化というものについて真っ向から否定をするわけではございません。しかしながら、これから新たな整備公団としてこの公団が位置づけられ、事業を推進する、そういう中でやはり公団でお働きになっておられる皆さん方の将来に対する不安があったり、またその身分が不安定であったり、そういうことでは大変問題であるわけであります。  そういうことで、いわゆる必要な技術者の要員の確保、また身分の安定、さらにはやはり新規職員の採用ということも必要になるでしょうし、また新たな事業を起こすためにはその職員に対する新たな技術習得のためのいろんな機会もつくっていかなければならない等々、当然むだはあってはなりませんけれども、しかし、まず合理化あり、数字合わせというようなことにならないように、これからのこの組織の運営のあり方について、具体的に今申し上げました点も含めて御答弁をいただきたいと思います。
  133. 松山光治

    ○松山政府委員 行政改革大綱についてのお話があったわけでございますが、公団が国民的な理解なり支持を得ながら安定的に事業を遂行していく、こういうためには、各般の面にわたりまして効率的な業務運営ということに努力をしていただく必要があろうとまず考えるわけでございます。と同時に、新事業の遂行に必要な要員の確保、あるいはまた職員におきまして雇用面において不安が生じないようにするといったようなことも、新しい制度のもとで公団が安定的な業務運営を行っていく上で必要なことである、こういうふうに考えておる次第でございます。こういう考え方のもとに新規採用の問題も含めまして意を用いた運営指導をしてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  134. 水谷弘

    ○水谷委員 どうかひとつ身分の安定等々、不安のないようにしっかりとした対応をお願いをしたいと思います。  次に、これは基盤整備全体に係ることでちょっとこの際お尋ねを申し上げておきたいと思いますが、今、各地に私ども伺って、皆様方のおっしゃることは、確かに基盤整備は必要だ、やりたいと思う、しかし、こう農産物価格が低迷を続け、農業がこれから本当にどうなっていくか、そういう状況がある。事業費を償還できない、どう計画を立ててみてもとてもでないが償還ができない。片方では農産物価格が低下していく、米価も昨年から、この傾向は続いていくのかなと現場の皆さん方はお感じになっていらっしゃる。そこへ事業を起こしていくという意欲はどうしても出てこない、こういうことがございます。特に、これは平地ならまだいい。ところが、これから本当に手を入れなければいかぬというような地域は山間地帯また傾斜地、こういうところがこのままではどうにもならない。農地の集積どころか何にも起きない。後継者はいない。  この間伺いましたおたくの老夫婦は、八十二歳と八十歳の老夫婦お二人で山間で農業をやっていらっしゃる。私も一時間ほどそこでいろいろお話を伺ったんですが、もう涙が出そうでした。十一戸の集落なんですけれども、その地域の全員後継ぎがいないのです。そういうふうな地域で、さてそこにここの地域農業を生かしていくためにはやはりここに人がいなくちゃいけない。人がいなくちゃいかぬが、ここの基盤を整備しないことには山間でばらんばらんになっている耕地をどんな有能な人が来たってこれは生かすことができない。  さて、ここに事業を起こしたら一体どのくらい金がかかるのかな。平地では九十四万とか九十五万とか、十アール当たりの事業単価が平均単価として出てきている。昨年の構造改善局長通達等でこれからの基盤整備、圃場整備、土地改良事業等についてはその地域実情またはいろいろな条件を勘案して、一律の仕上がり、いわゆる完成の状況ではない、メニュー方式と一口に言われている、そういうことで事業単価も引き下げることもできるだろう。いろんな努力をしておられますが、しかしながら、いずれにしてもこれから必要になってくる山間地域、傾斜地、従来の工事費の五割増し、場合によっては倍以上かかってくることが想定をされてくる。しかし、そういう地域こそこの事業を導入してあげなければいけない。となると、今のような事業費の配分率、補助率、これでやっていけるのかどうなのか。そういう点についてはどうか徹底して検討し、これについてはそういう地域方々が本当に納得して事業に参入できるような方向性をぜひ出していっていただければな、こう思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  135. 松山光治

    ○松山政府委員 中山間地帯におきます基盤整備の問題でございますが、中山間地帯の多くは当然農林業が主業である。この地域において人口の定住と農林業を中心とした土地利用が有効に行われるということは、地域の振興だけではございませんで国土の適正な管理なり自然環境の保全といった点からも極めて重要である、このように認識をしておるわけでございます。  ただ、今先生から御指摘がございましたように、土地条件等にもなかなか恵まれておらないということで基盤整備もおくれがちであるという実態があるわけでございます。こういう事情を踏まえまして、振興山村あるいは急傾斜地帯、過疎地域等で行う事業につきましては、従来から一般よりも有利な補助率を設定いたしますとともに、採択基準の緩和を図っておったところでございます。六十三年度新たに振興山村それから過疎地域実施いたしますいわゆる農免農道の整備事業につきましては、その採択基準を五十ヘクタールから三十ヘクタールに引き下げる措置を予定しておるところでございます。今後とも中山間地帯の事業整備の必要性を踏まえながら、農家負担にも配慮いたしました事業の推進を図ってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  136. 水谷弘

    ○水谷委員 時間がございませんので、また同僚議員に譲ります。  今ずっと御質問を申し上げてまいりました。大臣、この事業はどうか一つ一つ成功していっていただきたい。そういう意味で一番肝心なのは、将来そこでお仕事をされる農家の方の心、考え、それがぴしっと反映をされませんと、最終的にはこの事業は成功はしないのだろうな、こう思うわけであります。事業を起こしていく計画段階からいろいろ手続上は関係者がそこに参入できる、参加できるそういう手続、制度はございます。しかしながら、現場へ私どもが行きましていろいろ聞きますと、なかなか言うことを聞いてもらえないんだ、言ってくればいいじゃないかと言ったってどうも役所のお偉い方々に言えないんだよ。何か地域住民の関係農家の皆さん方が各段階ごとにそこに参入できる、調査、計画、実施、完成、そして実施の中でも段階ごとにいろいろな形で関係者、特に農家方々がその事業推進にいろいろ感じたこと、その地域に住んでいらっしゃるわけですから、そこの地形のことだとか土質のことだとか、本当にそれこそ生き字引みたいに詳しい古老がたくさんおいでになる。そういう古老の御意見を聞いていればこんな問題起きなかったというようなことも伺っているわけです。等々、どうかこれからの事業を進めるに当たっての関係者方々の参入、参加、どういう形がとれるのかひとつ私も研究してみますけれども、制度として、一般的ではなくて、いつでも戸をあけて待っていますよ、こういう形ではなくて、どうかそこら辺の参加する道というものをいろいろ御検討いただければありがたいなと思うわけでございます。局長、何かありましたら……。
  137. 松山光治

    ○松山政府委員 公団事業もそうでございますし、一般の土地改良事業も同じだと思いますけれども、事業効果を十全に発揮するためには、関係者の意向を十分聞きながら入念な打ち合わせ、協議を経て計画がつくられていく、そういうものでなければなかなか血の通った仕事にならない、おっしゃるとおりだと思っております。私ども、そういう考え方でこれまでも努力してきておるつもりでございますけれども、今の先生の御指摘も踏まえまして今後ともそういう努力を傾けていく、今までよりもよりいいやり方がないかどうかということの検討も含めて対応してまいりたいと思っております。
  138. 水谷弘

    ○水谷委員 終わります。
  139. 菊池福治郎

    菊池委員長 藤原房雄君。
  140. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 農用地開発公団法の一部を改正する法律案につきまして若干の御質疑を申し上げたいと思いますが、同僚委員からも先ほど来いろいろ質疑がございまして、私どもまたいろいろ今日までの農業を取り巻く諸情勢について検討し考えまするところ、今回の改正はまさしくその時にかなったといいますか、新しい時代に即応した一つのあり方だろうと思います。そんなことで、これからの農用地整備公団の新しい発足に当たりましては、それなりの意味理解しておるつもりであります。しかしながら、この法律に入る前に、同僚委員からもいろいろお話あったわけでありますが、今牛肉かんきつの問題で交渉の真っ最中でございますので、一言だけ、また同じことになるのかもしれませんが、基本的な姿勢といいますか、この問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  確かに、現在のアメリカ日本に迫るいろいろな諸問題につきましては理不尽な何点かがあって、私ども日本の今日まで築いてまいりました畜産振興という道は堅持しなければならない、このように思うわけであります。そういう中で、過日我が党の矢野委員長アメリカに参りまして、関係方々ともいろいろお会いしましてお話をしているようでございますが、そのお話にも非常に交渉の厳しい状況等については伝えられておるところであります。過日の交渉に当たりまして、大臣初め担当の方々、どんなにか御苦労なさったことかと思うのであります。  しかしながら、日本の国も三十年代から、畜産経営につきましてはそれぞれの一つの大きな理想を掲げまして着実に今日まで進めてきたことも事実でありますし、そしてまた北海道におきましては、スケールメリットを生かしまして大規模な形で酪農を中心にしましてECに肩を並べるようなところまで進んだのではないか、そこまで今日まで努力をしてきたわけであります。  畜産等につきましては、また新しい計画を立てまして進めておりますが、三年前にこの交渉がありましたとき以来、農林省の皆さん方は大変心を砕きながら頑張っていらっしゃったことだろうと思います。そういうこと等を踏まえまして、私も現地へ行ってまいりましたが、やはり農業というのは二年や三年でかじ取りができるわけではありませんで、どうしても五年、十年というスパンで物を考えていただきませんと、あっちからこう言われた、こっちからこう言われたということで、かじ取りというのは簡単にはいかぬ。実際に農業に携わる方々はいろいろ苦労していらっしゃる。そういうことを考えますにつけまして、ぜひひとつ農林大臣にも、いよいよ大詰めにまいりましたこの交渉、先ほど来いろいろお話がございましたが、日本農業を守るために、そしてまた先々禍根を残すことのないように交渉にひとつしっかり当たっていただきたいと思います。  先ほど、三人の局長さんがアメリカへいらっしゃった、さらにまた、最近の新聞報道によりますと、アメリカの非常にかたい姿勢ということの中である程度の自由化等につきましてもやむを得ないのかといういろいろな報道がなされておるようであります。これは、交渉事でありますから相手のあることでありますけれども、しかし今日まで貫いてまいりました意思というものを、これはきのうきょうじゃなくて、今日までいろいろな角度から検討し、いろいろな立場からの総意というもので大臣は交渉に当たってきたことだろうと思います。この強い決意というものを最後までぶつけて話し会いをどこまでも進めるべきだろうと思いますが、大臣のお帰りになってこれからまた交渉に臨むに当たりましての基本的な決意といいますか、最近の心境等も含めてお話をいただければと思うのであります。
  141. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 けさほど来御答弁を申し上げておりますが、ただいま現在再交渉を私がするという環境には至っておりません。一日も早く友好国として平和的に解決をしたいという念願を持ちながらも、今日まだそういう事態にあるということを非常に残念に思っておりますが、それはそれといたしましても、三月三十一日合意をいたしました話し合いは続けようということでの話し合いは続けておるわけでございまして、きょうも眞木経済局長、USTRのスミス次席代表等との間で実務者同士の話し合いが行われておるわけでございます。  そうしたこともあわせ考えながら、もちろん国会における御論議、いろいろなところでいろいろな方々心配をされるにつけ発言をしておられるその経緯を全部頭の中に置きまして、最終的な決着に向けて最善の努力を今進めておるところであるということでございまして、このことが将来日本農業に禍根を残すようなことがあってはならない。農業はもともと保守性向の強いものであるとは承知しながらも、特にまた畜産、酪農ということを考えますと、歴史の浅い日本においてまだまだ欧米から見る目と我々が考えておることとの違いもございますし、そういう実情というものを三月末にはわかってもらえなかったわけでございまして、その点は極めて残念でございますけれども、まだまだその点についても説明をしなければならない。  話し合いを進めるにしても、双方の意見を足して二で割ればいいというものじゃない。私は、我が農林水産省が、また私が時の責任者といたしまして将来笑われるような結果になっては相済まぬということで、慎重にもまた真剣に努力を積み重ねておるところでございます。何としてもひとつ一日も早く円満な決着を図りたい。決裂をするのは簡単でございます。話し合いを続けることは困難の上にまた困難を重ねておる今日にございますけれども、こらえるべきはこらえて今努力を重ねておるところでございます。
  142. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 さて、法案に入りますが、今度の改正で公団の目的というのが改正になったわけであります。法律の一番大事な骨になります公団の目的、従来までは農用地の開発等による「農畜産物の安定的供給と農業経営の合理化」、この「開発」云々というのは「整備保全」という言葉に言いかえられ、「農畜産物」云々というのは「農業」という形に、「安定的供給と農業経営の合理化」というのは「生産性の向上と農業構造の改善」こういうことになるわけであります。この「開発」、今までの公団法によりますと、確かに未墾地の開発というのが一つ大きく前面に打ち出された目的であったということからしますと整備保全ということになるだろうと思うのでありますが、「農畜産物」が今度は「農業」という形に、また「安定的供給と農業経営の合理化」というのが「生産性の向上と農業構造の改善」、このように目的が変わったことに対しまして、これは農林省当局のお考えと今後の農業に対する基本的な物の考え方がその根底にあるのだろうと思いますが、その辺のことについてお伺いをしておきたいと思います。
  143. 松山光治

    ○松山政府委員 日本農業の健全な発展を図りまして国民に対する安定的な食糧供給の確保を図っていくという農政の基本的な考え方、これは何ら変わるところなく、今回の改正においても私どもはそういう農政の基本的な展開、方向というのを頭に置いて検討を行ったつもりでございます。ただ、そういう農政を推し進めていくに当たりましての当面する現実的な課題が、御案内のように、今の日本農業の置かれておるもろもろの条件の中で生産性の向上を図り農業構造の改善を図っていく、そういうことを通じて足腰の強い日本農業の育成を図り、国民の皆さんの信頼にこたえていくということが当面する農政の最大の課題の一つであろう。  片や、農用地開発公団をめぐる事情といたしましては、従来からやってまいりました大規模な未墾地開発と申しますか、畜産開発に対するニーズ自体がやはり減少するという方向にある。そういう状況を踏まえまして、従来の未墾地の開発を主体といたしました事業から既耕地の基盤整備なり既耕地の整備なり保全というものに事業の重点も移す、そういう新しい事業制度をつくるということで目的自体の書き方を変えたということでございます。もとより、農畜産物の安定供給というのは非常に重要な農政の課題でもございますし、基盤整備事業を行うことによる目的の一つでもあるわけでございまして、そういうことを頭に置きながら新しい公団事業も進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  144. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 今度の改正に当たりましては、六十一年六月の臨時行政改革推進審議会ですか行革審、ここの答申というのは大きな契機になったのだろうと思います。この行革審でいろいろな指摘がなされているわけでありますが、我々からしますと、ちょっとどうかなと思う一面もあります。しかし、新しい時代に即応して変えなければならない時点である。行革自身は、私どもも当然時代の流れの中で考えなければならぬだろうと思いますが、個々の問題になりますと、すぐできることと時間をおかなければならぬもの、いろいろあろうかと思います。  この答申の指摘の中の一つとして、「公団事業の約八五%は国及び道県の補助金で賄われているが、莫大な国等の助成を受けている農家が見られる結果となっている。」こういうことがありますが、しかし、このような助成措置によって手厚く助成した結果、酪農等の畜産経営というものがある程度の成果をおさめたのではないか、こう思うのであります。しかし、それにも功罪、プラス・マイナス、メリット・デメリット、いろいろあったろうと思います。今もそういうことがいろいろ言われておるわけでありますが、何せ今も大臣お話の中にもございましたように、畜産がわずか二十年か三十年の短い期間にここまで成長するということでありますから、それだけの投資というのは当然必要なことであったのだろうと思います。  これはもう何も過去のことを論じて過去のことだけにこだわっているわけではありませんが、今までの公団とは違って、今度は整備公団と装いを新たにするわけでありますから、やはり今までの公団の行き方とは違った一つの新しい日本農業の基盤をつくる大事な役割を担うのだという明確な指針といいますか、使命感といいますかそういうものがなければならぬという意味で私は申し上げるのです。過去のいろいろな問題点の指摘のあったことにつきまして、それを反省の材料として、これからこの整備公団というものは新しい装いでいくのだということについて、要約するとどういうことになりますか。この法案を提出するに当たりまして、そういう過去の反省も含めてこれからのあり方についてのお考えというものを、基本的なことだけでもお聞きしておきたいと思います。
  145. 松山光治

    ○松山政府委員 行革審の答申というのが今回の見直しを行うに当たりましての一つの契機になったことは間違いないわけでございますけれども、当然のことながら公団をめぐる事情の変化あるいは農政上の課題と現下の課題、こういったものが実態としてその背景にあるわけでございます。  行革審からはいろいろと御指摘は受けてございますけれども、私どもこれまで公団事業の果たしてきた役割は大変有効なものがあるというふうに考えておるわけでございます。四十九年から六十二年度までの間に公団事業によって整備いたしました草地の造成量は約四万ヘクタール余にわたってございます。四十九年と六十年の間をとらまえてみますと、その間の国全体としての草地の整備量が十四万三千ヘクタールでございますので、その間公団が三万七千ヘクタール余を整備しておる、シェアといたしまして二六%程度が公団の事業にかかるものであるということ、これはある意味では大変なことだったのだろう、あるいは農道の整備も約千八百キロメートル、畜舎が千五百棟、サイロが約千二百、こういう事業の実行を通じまして、草地型畜産の定着によります主産地形成あるいは大規模な畜産経営体の創設といったような畜産部門における成果、それに加えまして、いろいろな意味地域開発自体に貢献していく、そういうふうな成果をおさめ得たのだろうというふうに考えておるわけでございます。  もちろん、一部の経営体に経営の困難を来すといったような問題がないわけではないわけでございますが、これらの形営体の問題につきましては、今後とも引き続き必要な技術指導なりあるいは要すれば償還の円滑化を図っていくための各般の措置等を講じながら、公団の事業が本当に日本の畜産開発のためにいいものであったという評価を確実なものにするような努力を我々は引き続き行っていかなければならないだろう、このように考えておる次第でございます。  それで、新しい公団の事業自体につきましては、そういった経過も踏まえながら、特に当面する農政の課題が農業構造の改善生産性の向上にある、こういう実態を踏まえまして、全国津々浦々ということではなくて、集団的な農用地が相当程度の規模のものとして存在している、その他その地域農業をめぐる諸条件からすれば、そこで一定の面的整備、線的整備を急速に行うことにより農業構造の改善に役立つ、そういう可能性を持っておる、あるいは必要性を持っておる地域を対象にいたしまして、公団の特性を生かした事業の実施を行っていこうということでございます。  それで、事業の進め方に当たりましては、やはりこれまでの経過、経験を踏まえて考えました場合にも、当面最大のポイントを置くべきことは、それがいかに地域農業改善のために役立つか、しかも、関係農家にもできるだけ経済的に負担をかけない形でやっていかなければいかぬ、こういうことをひとつ念頭に置きながら、新しい事業が地域農業の健全な発展と活性化のために役立つように、関係者に頑張っていただきたいものだと考えておる次第でございます。
  146. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 公団の果たしてきた役割については私ども高く評価しますが、今日までやってきたこと、工事のあり方とかいろいろな、きょうもどの委員からもありました。私も指摘をすれば数限りないのですが、そういうようなことを踏まえまして、今後は新しい時代に即応した、本当に日本農業の健全な発展のために他山の石としていただきたいということも込めてお話ししたのです。果たした役割はよく知っています。評価は幾らしても足りないぐらいですが、しかし、反省点も数多くあるぞということでございます。  会計検査院でもたびたび指摘になっておりますが、昭和五十八年度決算検査報告、この中に「意見を表示し又は処置を要求した事項」の中で「国営かんがい排水事業及びこれに附帯する道県営、団体営事業の施行について、事業効果の速やかな発現を図るよう意見を表示したもの」という中にいろいろなことが記されております。一つは「予算規模に比べて採択事業数が多いなどのため、国営事業が長期化していて事業効果の発現が遅延しているもの二十三事業」、これは今までの公団とは違う土地改良全体のことだと思います。しかし、基盤整備事業全体を見ますと、こういう一つの問題点も、公団の事業の中にはこれに類似した考え方があるのではないかと思います。  それからまた、この会計検査院の指摘の中にも、「国営事業が完了又はほぼ完了しているのに、水田の区画整理及び畑地かんがい施設の整備等を行う附帯事業が進んでおらず、国営事業と附帯事業との間には行を生じていて国営事業の事業効果の発現が遅延しているもの又はそのおそれがあるもの十四事業」、三つ目には、「水源施設の建設に係る補償交渉等が難航し、国営事業が長期化して事業効果の発現が遅延しているもの又はそのおそれがあるもの六事業」、こんなことが指摘になっておりますが、今までもこれは公団というふうに限らないのですけれども、こういう基盤整備事業や何かにとりましては、何より大きな面積で大きな事業なものですから、またこういう経済変動や何かがありまして当初の計画どおり進まないとか、いろいろなこともあります。ですから、跛行的なこともあったりいろいろなこともありますが、今度は集中的にそういう点はひとつやっていこうとか、今までとは違った形で考えていこうということのようでありますから、こういう点は一つはまた克服されるんじゃないかと思うのでありますが、今までに指摘されたこと等を踏まえまして、これからの事業に対しての取り組みといいますか改正点、今までのこういういろいろな指摘のあったことについては、今度はそういうことを克服していくためにこういうことを考えているんだ、そういう点についてお聞きしておきたいと思うのです。
  147. 松山光治

    ○松山政府委員 今先生から御指摘のございました点は、お話がございましたようにたしか国営のかん排事業について、それと関連する附帯事業についての御指摘を会計検査院から受けておるところでございます。私どもといたしましては、御指摘の点を踏まえまして、予算の重点的配分等を通じてできるだけ早期完了を図り、事業効果が早期に発現するように努力しておるところでございますし、附帯事業等の跛行の問題につきましても、情報の収集体制を整備いたしますとともにおくれている事業への重点配分を図る。あるいはまた補償の問題につきましても、これはなかなかやっかいな問題を伴う場合が多いわけでございますけれども、できるだけ早い段階から関係者との話し合いに入る等々の努力を行いまして、御指摘の点の是正に今努めておるつもりでございます。  公団事業自体につきましては、もちろん多々反省すべき点もあろうかと思うわけでございます。特に、これからの公団事業の実施に当たりまして我々関係者が心せねばならぬと思っております点は、地域のニーズというものをよく吸い上げ、かつまた、その地域において単なる事業の実施ということではなくて、その事業の実施の結果、いかなる形でその地域に新しい地域農業の展開を考えるかといったような問題についての関係者の間の詰めを随分とやらなきゃいかぬだろうというふうに思います。また事業自体につきましても、いろいろとこれまでも公団それなりの低コスト化への努力はしてきておるわけでございます。しかしながら、現下の農家をめぐる事情を考えますと、やはりできるだけ経済的な工法の実施等を通じまして農家負担の軽減といったようなことに努めていく、そういったいろいろな点があろうかと思うのでありますけれども、今申し上げたようなことも踏まえながら適切な事業の実施ということに努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  148. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 公団の事業に対する行革審の指摘の中にもありますけれども、先ほど同僚委員からもお話ありましたが、「自然の形状を大きく変更する農用地造成の廃止等造成方式の見直し等を行う。」ということが一つ挙げられておりますし、二番目には「サイロ等上物施設の簡易化、簡易な農道方式の積極的採用等を図るとともに、単位面積当たりの事業費、上物施設費につき厳しい投資基準を設けることにより、一農家当たりの助成額等についての限度を設定する。」ことや、そのほか何点か指摘になっておりますし、それから、先ほどお話のありました山村についての農畜産業と林業との関連の中で公団事業が果たすべき役割等についても述べられておりますね。  このことに関連しまして、今日まで公団の事業はややコストが高くついておるということ、午前中のいろいろな質疑の中でもそれは必ずしもそうじゃないんだといういろいろなお話をしておりましたが、今この時代のこんな大きな変化の中ですから、当時はよかれと思ってつくったものが何年かたちますとまた見る目が変わって、あんな立派なものが必要だったのかという議論になるのかもしれません。そういう一面はあるかもしれませんが、北海道の根釧の新酪農村なんかにつきましては、確かにこれは非常に設備投資が、上物が少し立派過ぎるのじゃないか。今になって見ましても、あすこまでのものが必要だったのかというような議論というのは当然ありますし、またそれが農家経営を苦しめる一つの大きな要因になっていることは否めない事実だろうと私は思います。  そういうことからいたしまして、最近はいろいろな工事に当たりましても地元にある程度選択性を設けて、選択肢を地元の農民の中で選んでいただくような方式とかいろいろなものを考えつつあるということもお聞きをしておるわけでありますが、これからのあり方としましては、使うのは当然農民でありますし、農民が営農しやすい、そしてまた健全経営でやっていけるような形のものが当然これは望ましいわけでありますから、あくまでもその主体者は農家個人にある、こういう考え方というものを念頭に置いての運営でなければ、同じことを繰り返すようなことでは相ならぬであろうと私は思います。そういうことについて、さっきもちょっとお話ありましたけれども、これからの公団のあり方については、今までのいろいろな反省の上に立って整理すれば何点か問題点があるのじゃないかと思いますが、そういう問題についてもお聞きをしておきたいと思うのです。
  149. 松山光治

    ○松山政府委員 先ほどの御答弁で申し上げましたように、要はニーズに応じて、しかも事業の執行に当たりましては、農家負担の問題もございますから、できるだけ経済的な形でやっていくというのが基本でございます。  それで、そういう場合の例といたしまして、今御指摘のございました行革審答申との関連について申し上げてみたいと思いますが、例えば、農用地造成のやり方にしましても、急傾斜地につきまして土を動かして多様なやり方をするというのじゃなくて、むしろ自然のままで放牧地に利用していくといったようなやり方をいたしますとか、あるいはサイロ等の上物施設の問題、できるだけ金をかけないようにという考え方と、それから片一方におきます——これまでの公団事業の話でございますけれども、一部受益者もできるだけいいものをというような感じもございまして、若干立派過ぎるじゃないかというお話もあるわけでございますが、行革審の指摘もございまして、私どもといたしましてはそういった上物施設の単価につきまして上限を設定する、そういったような指導も既に行っておるわけでございます。これまでもいろいろと御指摘を受けておりますような点を十分頭に置いた上で、関係者方々の御理解がいただけるようなそういう事業の実施に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  150. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 三十年代から始まりましたこの事業、公団のお仕事というのは、経験も浅かったという一面もあるのかもしれませんが、農業者にとっては意外なといいますか、業者ベースでお仕事がなされている。農業者が農業の観点からしますと表土なんというのは大事なものです。これをみんなはいでしまって土木的な作業で事を進められたのではたまったものではありません。何もこれは公団の仕事だけじゃなくて、土地改良全体についてこういうことが随分議論になったときがあったわけでありますが、最近はそういう点も随分変わってきた。確かに経験、技術の蓄積というのはそういうことだろうと思いますけれども農業基盤の整備ということであれば、農業者がそこで営農しやすい条件づくりということが大事なんで、土木的な発想でブルドーザーでガリガリ形だけ設計図どおりつくればいいということでは決してないのだろうと思います。  今後のことにつきましては、新しい未墾地ということではなくて、これは現在やっているものについては進めるわけであります。しかし、これからもまだ新しく切り開かなければならないところもあるだろうと思います。今までですと国内的な措置で物ができたといいますか対策が講ぜられればよかったかもしれませんが、今諸外国との競争の中で農業経営というものを考えていかなければならぬということで、少しでもむだがあったり、また農家に経済的な圧迫を加えるようなことがあってはならぬだろう。こういうことからいいまして、今までの貴重な経験というものをフルに生かしまして公団といたしましてもひとつ事業を進めていただきたい。何点かお話がありましたけれども、そのほかにも言いたいこともたくさんあるし、また局長もいろいろ整理なさっていらっしゃることだろうと思いますが、ぜひひとつそういう過去の経緯を生かしまして同じ轍を踏まないような、本当に日本農業の基盤確立というために公団が大きな役割を担っているという実績を一つ一つ積み上げていただきたい、こう思うわけであります。  さて、基盤整備、これは公団法ですから公団のことについてということになるのかもしれませんが、第三次土地改良長期計画、三十二兆円からの計画でありますが、現在進捗率が三五%ということで、これは日本全体の農業にかかわる意味からしますと非常に重要なお仕事の一つだろうと思います。また、構造改善局としましても、これは積極的に取り組まなければならない大事なお仕事の一つだろうと思うのでありますが、十カ年で三十二兆ということですが、これはもう何年たちましたか、五十八年からですから中ほどに来ているわけでありますが、一時経済の大変低迷した時代もありましたけれども、ここのところへきまして諸外国との競争条件、そういうことの中で基盤整備というのは非常に重要な役割を担う。こういうことからいたしまして、事業の達成について、今農林省としましてどのような御努力または見通し、お考えでいらっしゃるのか。これもちょっと一言お聞きしておきたい。
  151. 松山光治

    ○松山政府委員 第三次土地改良長期計画でございますが、御案内のように五十八年度以降の十年間に総額三十二兆八千億、このうちの二兆四千億は調整費でございますけれども、それに相当いたします農業基盤整備事業を実施することを目標としておるものでございます。  本計画の六十二年度までの進捗の状況でございますけれども、調整費を除きました三十兆四千億に対しまして約二九%、六十三年度予算を含めました見込みで先生御指摘の三五%。いろいろと日本経済の状態全体にかかわるような事情もございましてなかなか厳しい状況が一つあるわけでございます。私どもといたしましては、こういう事情を踏まえながら、例えば六十一年度からは財投資金を活用いたしました特別会計制度を拡充いたしますとか、いろいろな工夫を凝らしながらその推進に努めてきたところでございますけれども、昭和六十三年度におきましては、御案内のようにNTTの無利子資金の活用を図るということ等によりまして農業基盤整備費、おかげさまで一兆二十二億、対前年比一一七・八%という予算額を確保することができたところでございます。今後ともこの事業の重要性を十分念頭に置きまして、第三次土地改良長期計画の着実な推進を図っていくという基本的な考え方のもとにNTT資金の活用を図る等所要の予算額の確保に努めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  152. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 今までやってまいりました公団事業と従来の国営土地改良事業との事業の振り分けまた採択基準、この辺については大体理解はしているつもりでありますけれども、ちょっとお伺いをしておきたい。  それから、公団の業務として特定地域農用地総合整備事業と特定地域農用地等緊急保全整備事業、この二つの事業が柱になっているわけですけれども、これまでの調査を踏まえて、将来の予定区域は何年間にどの程度見込まれるのか。これは先ほど同僚議員が聞きましたら、これからですというお話ですが、実際ここでお働きになっている方々、また皆さん方も業務内容からしまして大体将来についてのお見通しというのはお立てになっていらっしゃるのだろうと思います。さしあたっては今までの継続した事業、それから新しいものとしましては石狩川下流左岸事業ですか、そういう事業も明記されておりますけれども、これらのものも含めましてどの程度見込まれているのかということと、それから、この事業における国の補助率また受益者の負担についてはどうなのか、その辺のことをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  153. 松山光治

    ○松山政府委員 公団の新しい事業と既存事業、国営なり県営の類似の事業との振り分けというふうに理解したわけでございますけれども、今回の公団の新しい事業は全国津々浦々で行うというたぐいの考え方ではございませんで、例えば農用地総合整備事業について申し上げますれば、一定の集団的な農用地が団地的に存在している農業構造改善の可能性なりその必要性の強い特定の地域を対象といたしまして面整備、線整備を一体的に実施していく、そういうことでございます。そういう意味では工種としてはダブる面があるわけではございますけれども、やはり一定の特定の地域に着目したそういう総合的な整備事業であるという点で、国営なり県営なりとその事業の性格を異にしているというふうに私ども考えておりますし、これからの調査計画を通じまして既存の事業との調整には十分意を用いていきたいと考えている次第でございます。  特定地域の農用地総合整備事業の実施のこれからの進め方の問題でございますけれども、昭和六十三年度には国の直轄調査といたしまして地区調査を二地区、それから地区調査の前段になります基本調査を数地区で実施する。これからそういった調査を通じ、地元の意向も把握しながら逐次事業化を進めていくということで、一種の年次計画的な形で、今具体的に御説明し得る段階にないことをまことに申しわけないというふうに思っております。地域実情をよく見きわめながら新しい事業の推進に努めたいということで御理解をいただきたいと思います。  他方、もう一つの保全事業の方でございますが、これは六十三年度におきましては、石狩川の左岸地区におきまして着工に移る。今直ちに調査ということではございませんけれども、同じような形で公団の力を十分発揮できるような事業の希望のある場合には、これを積極的に考えていくといったようなことで進めていきたいと思っております。  要件なり採択基準、特に面積的な要件の問題かと思いますが、総合整備事業につきましては面と線の二つの事業があるわけであります。面事業といたしましての圃場整備事業につきましてはこれから固めていきたいとは思っておりますけれども、県営が六十ヘクタール以上でございますので、ちょっと今度の公団の事業としては小さ過ぎる。これはもう小し大きな要件が必要であろう。あるいは線事業といたしましては、例えば広域農道が受益地千ヘクタール以上といったような基準がございますので、そういったことはひとつ頭に置いてこれから詰めていく必要があるだろう。保全整備の方については既に北海道でもやっておる事業の例も一つございますので、そういったものを頭に置いてこれから具体的に考えていく、こういうふうに実は考えておる次第でございます。
  154. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 去年の七月だったか八月ですか、最近土地改良事業等につきまして非常に負担が重いということで、各地でいろいろな、今後どうするかということがにわかに議論になって、地元で大問題になっておりました。それらのこと等を踏まえましていろいろお話を申し上げました。  私の選挙区の共和町のことやそれから函館の近辺の上磯、これらのことについてもお話申し上げました。一つは、共和町につきましてはいろいろなお話し合いの中から、一部では村なり農協なりの負担でということでありますが、双葉地区、双葉ダムを中心にしたところの倶知安町とか京極とか喜茂別とか、ここの関連のところですね。農民の方々自分たちが利用するということで最初つくったわけでありますから、それを放棄するなんという気持ちはないのですが、やはりこういう米価が下がり、また農畜産物の価格の下がる中で負担し切れないということで、少しでも負担の軽減ができないかということがこれらの人たちの大きな叫びであります。そのことを真剣にだれが考えるかということになりますと、地元では農家の負担をどうする、少しでも軽減するためにどういう方法があるかなんということを真剣に考える人は実際いないわけですね。  私も倶知安の方といろいろお話をいたしましたが、双葉ダムからの受益者負担、当初十アールで二千ぐらいと言われておりましたが、後々だんだんこれが高くなって十アール四万円程度、こんな状況になっている。工期が長くなっているうちにだんだんこういう形になってしまったんでしょう。地元の考え方もいろいろあるのです。多目的ダムですから、そういうところではいろいろな考え方があるのですが、大変な豪雪地帯と言われている倶知安ですから流雪溝で雪を流す、こういうことは駅前やなんかでもできておるのですけれども、ほかにも国道や、そのほかでもやりたいと思っても水源がないという。ですから、あるダムの水を使わしていただければ、多目的ですから、そういうことができればそっちの方で応分の負担をいただくとそれだけ農家の負担が軽減されるということです。  先ほど来もいろいろな話がありましたが、規制の緩和といいますが、それはもう当初ダムをつくるときに受益者ということできちっとつくる。当初どこどこがどうするかということの上に立って物事をするんでしょうが、しかし時代がこんなに変わりますと、それだけではなくてまた別な使用目的ができたりいろんなことがあったときに、それに参入する方法とかいろんなことを条件や何かによっては考えるような方向でいたしませんと、参加した市町村だけしか利用できないとか、余り規則ずくめで一歩もそれが動かないようなことになりますと、どうもこれは硬直的で道が開けない。  特に転換畑の方々は大変に負担が重くて、自分たちは直接水田ではない転換畑ということですから補助金は打ち切られる、そういう悪条件の中で何とか方法はないのか。地元としては流雪溝の水としてダムの水を使用する。水源がないということで非常に困っておるということならばそういうことはできないのかというような意見もあるのですけれども、こういうことは柔軟に地元のいろんな要望等を聞いていただきたいと思うのです。これはひとつ御検討いただきたい。  それから先ほど来もまたお話ありましたが、今までの公団のお仕事というのは、大体畜舎を建てるにしましても何にしましても、あの山奥に建築基準法にのっとって建物を建てなければならないという。人間様の住んでいるところよりも立派な、建築基準法できちっと土台を築かなければならぬ。今まで何年も前から何度も申し上げていることなんですが、これは県庁なんかに行きますと、建築担当の方は、国から補助金もらってすぐ壊れるようなものでは困るから、建築基準法という物差しに乗っかってちゃんとつくってもらわなければいかぬ。それは理屈としてわかりますが、農政担当の方によると、あんな立派なものもどうですかな、人間が住んでいる家よりも立派だという。これも何度か申し上げて、農林省でもいろいろ検討して、少しは緩和の方向に進みつつあるように思うのですけれども、これもちょっと現実的でない。  こういうことで規制の緩和ということがよく言われるのですが、現場に即した形で物事を進めていただきたい。それから、こういう規制等につきましても、これは農林省でお考えになっても会計検査院でまただめだということになるのかもしれませんが、これはよく将来に御検討いただくとしまして、もう少し現実に即した形で進めていただく。  ダムの問題も各地でいろんなことがありますが、なかなかほかの目的、建設当時その中に参入いたしておりませんとだめだというようなことで、時代がこんなに大きく変わる世の中ですと、やはりある程度そういう道も考えるようにしなければならぬじゃないか。  いずれにしましても、これから米価が上がるなんという状況にはないだろうと思いますし、また農畜産物がこれからまた上がるなんという状況にはないだろうと思います。そういう中で合理化をするという。施設費や管理費やそういうものだけはどんどんその時代の経済状況にのっとって値上げしていくという。こんなことでは、もう合理化とか健全経営とかと何ぼ言ったってできるわけがありません。そういう周辺整備のことにつきましてぜひひとつ御検討いただき、地元の農家方々がそれに即して営農の計画を立ててやっていけるような形というものをお考えいただきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  155. 松山光治

    ○松山政府委員 まず、双葉地区の問題でございますが、ダム等の主要工事はおおむね終了いたしまして、昭和六十四年度に完了の予定というふうに承知いたしております。  いろいろと御心配をおかけしておる農家負担金の問題でございますけれども、この地区の負担金の問題につきましては、関係の四つの町が何らかの助成を行うべく現在検討中であるというふうに聞いておる次第でございます。  なお、お話のございましたダムの融雪溝への利用の問題については、実は私ども今初めてお聞きしたようなことでございますので、事情をよく聞いてみたい、このように考える次第でございます。  建築基準法等の問題についてのお話もあったわけでございますけれども、畜舎につきましても建築確認等を受けなければいかぬといったようなことはもちろんあるわけでございますが、これまでいろいろと御指摘をいただきながら、例えば防火壁の設置義務が適用除外になっておるとか、自動火災報知機の設置義務につきましてもかなり弾力的な扱いになっておる等の運用面での変化が見られておるところでございます。先生から御指摘がございましたように、これだけいろいろと難しい時代でもございます。あるいは世の中も動いておる時期でもございますので、基本的な原則はきちんと頭に置きながら、その適用におきましては可能な範囲で、現実適用が可能なような弾力性を持っていくということはお説のとおりでございまして、私どももそういうことを頭に置きながらこれから対応していきたい、このように考える次第でございます。
  156. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 それから、去年八月ですか、上磯、大野地区の問題について申し上げましたが、地元でもいろいろな協議をいたしまして、それぞれの町や農協さんでいろいろなお話をしたようであります。農家方々も、自分たちの計画したものについてはそれは支払わなければならぬけれども、現在の農作物の収入では支払い切れない。いわゆる経済情勢の中での不安といいますか、そういうことを訴えておるわけでありますが、地元でのいろいろなお話で大体お話し合いがついて、去年の暮れですか確認書を取り交わした。それで、土地改良事業の償還円滑化特別対策事業ということである程度対処しましょうというお話になっているみたいなんですが、地元の方々にいろいろなお話を聞きますと、この償還円滑化特別対策事業によりまして、個々の農家が本当に今支払わなければならぬような現状から少しは支払いやすいような条件になるのかどうかということを大変気にしておるのです。  この償還円滑化特別対策事業について一つ一つお聞きする時間もないので後からまた御説明いただければありがたいと思うのですけれども、この中に償還方法として、なぜ七十二年度に最終償還額が到来するようにしなければならぬのかとか、貸付期間が六十三年度から六十七年度の五年間に限るのかとかいろいろなことを心配しておるのですよ。政府がいろいろ考えていることですから、当初の支払い条件よりも悪いことがあるわけじゃないだろうと思うのですが、もう少し現場でわかりやすい、理解しやすいような形のもので御説明をいただきませんとかえって混乱を起こすようなものです。  去年からこの土地改良事業をめぐりまして、今まで米価がある程度上がるような状況、経済状況もこういう中で、四十年代、五十年の初めごろそういう計画を立てておったものが、社会変動、二回のオイルショック、そしてまたここへ参りましてから低成長ということですから、当初の計画どおりいかない。いかないにしましても、何とか支払いのできるような条件というものがあればいいのですが、ここへ来まして、米価を初めといたしまして農畜産物が価格低迷ということで、専業農家として本当に一生懸命なさっている方はそこしか収入がないわけであります。兼業の方はまた別な道もあるかもしれません。農業を専業でやっていらっしゃる方に一番苦労が、苦労といいますか、支払いしなければならぬいろいろな諸条件の中で、機械を初めとしましてこういう施設や何かの問題について、土地改良を初め支払いに苦慮していらっしゃる。これは何とかしなければならないことだなと去年も申し上げたのですけれども、この辺のことについてぜひひとつ御検討いただきたいと思いますが、時間もありませんから一言で結構です。
  157. 松山光治

    ○松山政府委員 農家の負担の問題につきましては、本委員会でもいろいろと御議論をいただいたわけでございます。私どもとしましても、そういうことを踏まえまして、六十三年度から土地改良事業償還円滑化対策を実施することにしておるわけでございますけれども関係方々にもよく御説明し、これの有効活用を図っていただくという線でこれからも努力してまいりたいと思っております。
  158. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 大臣、こういう現況にありますので、農業を取り巻く非常に厳しい環境の中にあって、それぞれの施設や何か、土地改良を初めとしまして、そういったものは償還しなければならぬ非常に厳しい条件の中にありまして、そんな理不尽なことを言うわけじゃありませんけれども、現実に即した形でひとつ御検討いただきたい。さっき申し上げたとおりですが、どうですか、特に専業農家ですね。
  159. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 御質疑を聞いておりまして、現実的な物の考え方をにじませた御質問が随分出てきたように拝聴をいたしておりました。  今度のこの公団法の改正に当たって、これをまた新しい出発点といたしまして、そして飼料作物、えさについての、進んでいるかおくれているかといえばおくれをとってきたその部分を何としても取り返さなければならない。そして草地開発事業をまた進めていくとか、新たな使命感を持って公団もやってくれると思いますし、私どももまたその責任を持つ立場から最善を尽くしてまいらなければならぬ。しかし、それにしても農業者が事実本当に理解をしてくれる、そして農家の生活設計がちゃんとできるということでなければ投資をしたかいもございませんし、ここで御議論をいただいたかいもございませんし、法律をつくった意味もない、こういうことになりますので、そういうことにならないように真剣に取り組んでまいりたいと思います。  なお、償還、負担等の問題につきましては、しばしば御意見をちょうだいいたしておりますけれども、個別に随分いろいろな場合があることを承知いたしております。画一的な物の考え方ではなくて、そういう条件緩和措置とかということについては、まさに現実的に個別指導でどのような手だてができるかということを丁寧にやることが必要だ、かように考えております。
  160. 藤原房雄

    ○藤原(房)委員 どうもありがとうございました。
  161. 菊池福治郎

    菊池委員長 神田厚君。
  162. 神田厚

    ○神田委員 農用地開発公団法について御質問を申し上げます。  経済構造調整特別部会報告あるいは農政審議会報告にありますように、日本経済全体が国際化へと構造調整の進む中で、農業におきましても国際化への対応が急務の課題となっております。そのため水田農業確立対策に代表されるように土地利用型作物の生産性の向上、つまり国土の狭小さによる生産性の阻害要因の除去を早急になさねばならない状況でもあります。したがって今回、農用地開発公団を農用地整備公団に改組し、その目的を「農業生産性の向上と農業構造の改善」としたことは、現在の日本農業の取り組まなければならない重要課題と合致するものでありまして、時宜を得たものであるというふうに考えております。  また、現在第三次土地改良長期計画に基づき、基盤整備率を七割を目途として圃場整備事業等を推進しております。しかしながら、土地改良長期計画は昭和四十年より開始され二十二年経過しておりますけれども、一区画おおむね三反以上の区画整理のされた農地は四割程度しかございません。基盤整備事業はどうしても年月の要する事業であると考えられます。例えば、十アール当たりの圃場整備費用を見た場合、昭和五十三年五十五万円から、昭和六十二年九十四万円と約一・七倍もの上昇をしております。また、地元負担も十五万円から二十六万円と一・七倍の上昇を示しております。つまり圃場整備費用の上昇は農家負担の上昇となり、結果として農家の圃場整備意欲の減退を招いております。  そこで、御質問を申し上げますが、まず第一に、何ゆえに過去十年の間に単位当たりの整備費が二倍近く上昇したのか。過剰とも言える整備があったのではないかと考えますが、いかがでありますか。
  163. 松山光治

    ○松山政府委員 圃場整備事業の十アール当たり事業費の問題でございますが、その年の新規の採択をいたしました事業費単価を例にとってみますと、十アール当たり昭和五十三年度五十五万円でございましたものが、昭和六十二年度では九十四万二千円ということで、約一・七倍になっている点は御指摘のとおりでございます。  こういったように事業費単価が増高しております原因でございますけれども、労務費なり資材費などのいわゆる物価、賃金の上昇という要因が一つあるわけでございますが、そのほかに、転作に必要な汎用耕地化でございますとか、老齢化、兼業化に対応いたしました維持管理の合理化のための整備水準の上昇といったような要因が一つあるわけでございます。あるいはまた、平地部から中山間地帯への移行、水源開発の適地の減少といったような、施行していきます上での条件がなかなか困難になってきているといったような要素もあろうかと思っております。防災安全対策費の増加といったような要素も一つあろうかと考えておるわけでございます。こういったことは農家負担の問題にもそのままつながるわけでございますので、私どもといたしましては、各般の面にわたりまして、こういった事業費単価の増高を抑制していくという方向で努力を傾けたいと考えておる次第でございます。
  164. 神田厚

    ○神田委員 また、昭和六十二年で見た場合には、国営農用地が百十二万円、補助農用地が百一万円と国営の方が高いことになっております。この理由は一体どういうふうになっておりますか。
  165. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘のように国営の農用地開発の費用に対しまして補助事業の方が若干安いというような形になっておるわけでございますが、国営事業は、大規模な農用地開発を通しまして新たな主産地の形成等の広域的な地域農業を核といたします総合開発を図っていくということがねらいでございますから、採択要件といたしましても一地区四百ヘクタール以上というふうに大きくなっておるわけでございます。これに対しまして補助事業といたしましては、県営の場合で四十ヘクタール、それから団体営の場合で十ヘクタール以上ということで、採択要件が相対的に小さいということが一つございます。こういうふうなことで、国営事業は地域の総合開発という側面が非常に強いということもございまして、当然そうなってまいりますと幹線農道でございますとか水源施設といったような基幹的な施設の工事費等が必要になる。またその工事費が大きなものになってくるというようなことで御指摘のような傾向になるわけでございます。  ただ、そういうことで、国営事業自体につきましてはより公共的な性格が強いということもございまして、御案内のように負担率の面では補助事業よりも高い負担率を適用いたしまして事業の円滑な実施を図っておるというのが実態でございます。
  166. 神田厚

    ○神田委員 基盤整備の推進のためには整備費用を引き下げる必要があるというふうに考えております。農産物価格が低落傾向にありまして農家負担の上昇は当然ながら好ましくないことでありますし、また予算の増枠も非常に厳しい、こういうことでありますから、整備費用を引き下げるという考え方に立って、例えば積算方法あるいは入札手法等を抜本的に見直したらどうか、こういうふうに考えております。現行の積算方法あるいは入札方法等の改善策があれば、そういうことの上でこの整備費用の引き下げを図るべきだというように考えますが、いかがでありますか。
  167. 松山光治

    ○松山政府委員 事業費単価の抑制を図っていきますためには、例えば整備の水準というものと、どの程度の費用がかかるかといったようなものの組み合わせの中で関係の方にひとつ御判断いただくといったようなことでありますとか、できるだけ経済的な方法を採用していく等々各般の面での努力が必要でございますし、また私どもとしてもそういう線でいろいろと努力するような指導を強めておるところでございます。     〔委員長退席、鈴木(宗)委員長代理着席〕  今先生の方からお尋ねのございました積算方法と入札手法の見直しの問題でございますが、土地改良工事等の工事価格の積算方法、いわゆる積算基準につきましては、従来から土地改良工事等の特徴等工事の実態を踏まえました適正な基準の作成に努めてきたところでございます。他方、土地改良工事等でございましても、工事の施行に当たりましては一般建設業者への請負に付するというのが一般的な形でもございますから、積算基準の策定に当たりましてはほかの公共工事の場合との整合性にも留意していく必要があるというわけでございます。今後とも、こういった事情を踏まえながら工事価格の積算基準の適正化ということに努めてまいりたいというふうに考えております。  次に、入札手法の見直しの問題でございますけれども、工事の発注に当たりましては工事の規模なり内容等を考慮いたしまして、その工事施行の全般にわたりまして適正な施行能力を有する、そういう業者を選定していかなければいかぬわけでございます。  国営事業におきます業者の選定に当たりましては、各地方農政局長の定めます競争参加資格の審査を利用しまして該当の等級に格付されました有資格者の中から原則として指名して競争入札をやっていくというのがやり方でございます。この場合、各農政局では、計画をしております工事の種類なり規模等によりまして指名競争の参加選定会議を開きまして、有資格者名簿の中から信用度なり過去の工事等の実績なり経緯なり、専門技術者の状況等々を総合的に勘案いたしました上で該当する者を選定して、適正な業者の選定に留意しているということでございます。今後とも業者の選定等につきましては適正な実行がなされるように努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  168. 神田厚

    ○神田委員 農家の間から非常に整備費用が高いという声が聞かれておりますが、この点に対しましてはどういうふうに受けとめておられますか。
  169. 松山光治

    ○松山政府委員 できる限りの事業費の節減に努めておるつもりでございますけれども、御案内のような厳しい状況でもございます。いろいろと農家の方にも御不満も多いと思いますけれども、私どもとしては事業効果が有効に発揮されるように、しかもできるだけ費用のかからないようにという基本線で今後とも臨んでいきたいというふうに思っております。
  170. 神田厚

    ○神田委員 土地改良あるいは農用地開発事業等に対しまして、消費者のサイドからは消費者のサイドとして、あるいは生産者立場からは生産者立場としての意見がいろいろ出ているわけであります。例えば一兆円の基盤整備をやった場合にどの程度生産者にとって生産費の節減となって、また消費者にとってはどの程度のメリットが発生をするのかというようなことについて説明を求める風潮がございますが、その点につきましてはどういうふうに考えておりますか。また、基盤整備事業のGNPに与える影響、乗数効果はどの程度というふうに判断をしていますか。
  171. 松山光治

    ○松山政府委員 土地改良事業の実施に当たりましては、まず農家の皆さん、特に直接事業に参加される方々につきましては、その事業がそれぞれの経営にとってどういう意味を持つのか、そこをしっかりと踏まえていただいた上で事業の申請をしていただく必要もあるわけでございます。そういう意味では、事業計画の作成に当たりましては、調査の段階から農家だけではなくて土地改良区なり農協なり市町村等できるだけ幅広く地元の意向の把握を行う、また逆に、集落の説明会等を通じまして、事業の内容なり事業費なり、そういったことについてできるだけ説明するように努めてきておるところでございますし、今後ともそういう考え方に立って努力していかなきゃいかぬというふうに考えております。  他方、消費者との関係につきましては、そういう意味での直接的なつながりの機会ということもあるわけでございますけれども、やはり土地改良事業、日本農業構造の改善を図る上で非常に重要な事業でございますし、かつまたその事業効果、特に生産性の向上でございますとか農作物の生産の安定でございますとか、もろもろの面を通じまして、国民食糧の安定供給という点に大変な役割を果たしているということをこれからも事ある機会に御理解いただけるような説明を心がけていかなければいかぬというふうに考えておる次第でございます。  その一例というふうなことにあるいはなるのかもしれませんけれども、今先生から御質問のございましたGNPに与えます影響と申しますか乗数効果の問題でございます。基盤整備、農村地域を中心に全国的に実施されておるわけでございますけれども、事業費に占めます労務費の割合が高いという特徴、それから中小企業への発注率がほかの事業に比べればやはり高いという事情がございますし、それから用地費なり補償費の割合が小そうございますので工事費の割合が高い、そういう意味での景気浮揚効果が大きくて地域の活性化に資するといったような特徴を有しておるかと思うわけでございます。  そういう特徴を有しております農業基盤整備事業がGNPに対してどういうふうな響きを持つのかといった点、いろいろな試算があり得るわけでございます。これは建設部門の分析用産業連関表というものに基づいた一つの試算でございますけれども農業基盤整備事業の投入資材供給産業等への生産誘発効果、これは投資額の約一・八ないしは九倍でございまして、ほかの公共事業に比べましても遜色はないものというふうに考えておる次第でございます。
  172. 神田厚

    ○神田委員 次に、第三次土地改良長期計画の問題でございますが、これの進捗状況あるいはこれの事業計画達成のための具体的な方策、これについて農林省としてどのように考えておりますか。
  173. 松山光治

    ○松山政府委員 第三次土地改良長期計画でございますが、昭和五十八年度以降十年間に総額三十二兆八千億円、調整費二兆四千億円を含んでおりますが、そういう額のものに相当する農業基盤整備事業を計画的に実施していく計画でございます。  その進捗状況でございますけれども、五十八年度から六十二年度までの五カ年間の進捗率といたしましては、調整費を除きました三十兆四千億円に対して約二九%、六十三年度予算を含めましたいわば実施見込みといたしましては三五%というふうな実態になっておるわけでございます。なかなか厳しい実態であるといえば実態であるわけでございますが、そういう状況にかんがみまして、財投資金を活用いたしました特別会計制度の拡充を六十一年度から行う等々の工夫を凝らしながらこれまでも事業の推進に努めてきておるところでございますけれども、六十三年度におきましては、御案内のようにNTTの無利子資金の活用を図るということを中心にいたしまして基盤整備費、おかげさまで一兆二十二億円確保することができたわけでございます。私どもといたしましては、今後とも農業基盤整備事業の重要性にかんがみまして第三次土地改良長期計画の着実な推進を図っていく、こういう考え方のもとに所要の予算額の確保に努めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  174. 神田厚

    ○神田委員 次に、土地改良の受益者負担の問題でありますが、土地改良法によりますと、受益者に対してその者の受ける利益を限度として負担金の全部または一部を求めております。受益者の利益の限度、これはどういうふうに考えておりますか。
  175. 松山光治

    ○松山政府委員 事業実施に伴います農家負担の償還可能性の問題ということになるわけでございますが、事業の実施に当たりましては、地域農業の現状と将来展望を加えました営農計画を作成するわけでございます。その中で事業実施地区全体の年償還額が一つ予想される。他方、事業の実施に伴います年増加所得額といったものも予想されるわけでございますが、これらを対比の上、この事業の実施が受益者にとって負担可能かどうかといったようなことを判断しておるところでございます。
  176. 神田厚

    ○神田委員 次に、ちょっと視点を変えまして御質問申し上げます。  農用地の整備保全は、現在国、県、団体において実施をされておるわけであります。新たに農用地整備公団において同種の事業を実施する意義は一体どこにあるのか、その際、国、県、団体と公団の事業はどのように区分をするのか、この点について御説明をいただきたい。
  177. 松山光治

    ○松山政府委員 新しい公団の事業につきましては、事業種目は既存の国県営の土地改良事業と異なるところはない、例えば圃場整備事業あるいは農道の整備、かん排といったような事業になるわけでございますけれども。  公団の事業の特殊性と申しますか、私どものねらいといたしておるところは、農用地等の農業資源に恵まれまして、農業構造の改善の可能性の高い一定農業地域というものを対象にいたしまして、通常の事業ではかなりの期間がかかりそうだ、そう思われるような大規模な整備事業、それを公団の有しております技術力なり機動力なり資金調達力を活用いたしまして、短期間に集中的に実施していくということを考えておるものでございます。このために、全国の農用地を対象といたしましてその整備水準の向上を図ってまいります一般の国県営の土地改良事業とはおのずから性格が異なってくる、むしろ、一般の国県営の土地改良事業と相まちまして、事業の効果が一層高まるのではないかというふうに考えておる次第でございます。今後とも、調査計画の段階から両者の調整を図りながら新事業の円滑な実施に努めていきたい、このように考えている次第でございます。
  178. 神田厚

    ○神田委員 農家が基盤整備を行う場合、国、県、団体、公団、このいずれかを実施主体とするわけでありますが、その際、各実施主体によって農家の費用負担割合あるいは償還条件、これが異なってくるわけであります。各実施主体における農家の費用負担割合、償還条件がどういうふうになっているのか、これをちょっと御説明をいただきたいと思います。  同時に、財投資金の活用があるわけですが、これが財投資金を活用した場合には農家負担の増加となりやすい、こういうふうに考えられる面もございますが、その際、この財投資金の活用によって、当該公団によるメリットというのはどのようにあるのでありましょうか、その点をお聞かせ願いたい。
  179. 松山光治

    ○松山政府委員 農業基盤整備事業は、それぞれの事業の内容なり事業規模、事業主体によりまして補助率が違っておるわけでございます。新しい公団の事業の補助率の問題につきましては、面的整備と線的整備を一体として行う事業と、それから、農業生産の被害防止ということで必要な農業用用排水施設を整備する事業という二つの事業を予定しておるわけでございますが、国営、県営等々類似事業の補助率、これをひとつ参考にしながら、今後具体的に詰めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  なお、国の補助の残余の部分につきましては、地元で地方公共団体の補助がなされる場合もございます。したがいまして、それぞれの地域農家の負担割合が異なってくる、こういうことに相なろうかと思うわけでございます。現行の公団事業もそうでございますけれども、補助の残の部分は財投資金を活用いたしまして事業を進めるという形になっておるわけでございます。したがいまして、御指摘のように建設期間中の利子の問題が一つあるわけでございますが、そのかわり、財投資金を活用いたしまして集中的な事業実施を図るということで、工期の短縮を図り得るというメリットもあるわけであります。農家負担のことを考えますれば、できるだけ短い期間で事業の実施を図るように努めていく、こういうことが肝要ではないかというふうに考えている次第でございます。
  180. 神田厚

    ○神田委員 OECD報告のPSE値を算定する際に、基盤整備事業費用も加えてある。今、ウルグアイ・ラウンド等々でいろいろとこの農業補助の問題が出ておりますけれども、今後この基盤整備費用を、OECD、ガット、サミット等において、農業保護政策の中でどのような位置づけとしてアメリカ、EC諸国等に対して理解を得るのか、この点についてお答えをいただきます。
  181. 塩飽二郎

    塩飽説明員 お答え申し上げます。  OECDでPSEという、これはプロデューサー・サブシディー・イクイバレントという英語の略称でございますが、生産者がいろいろな農産物を生産する場合に、補助金でございますとかあるいは価格制度による内外価格差の効果でございますとか、政府の行いますもろもろの制度的な措置あるいは補助金による当該生産物を生産する上での効果、それを計測する手段がOECDで開発されまして、これに基づく主要国の農産物のPSEの算定が現実に行われているわけでございます。  ただいま先生の方から、PSEの中での農業基盤整備費の取り扱いはどうなっているかという御趣旨の御質問かというふうに理解したわけでございますが、ただいま申し上げましたように、あらゆる農産物の生産に、政府の補助金でございますとかあるいは制度的な措置がどのように反映されているのかということを計測する手段でございますので、PSEの算定の中には、農業基盤整備費もそれぞれの品目ごとにブレークダウンをした形で算入されているわけでございます。  しかしながら、このPSEの算定の中に基盤整備費を含めることにつきましては、私どもは、次のような問題があるのではなかろうかというふうに考えております。  まず第一は、当然のことながら、農業基盤整備を必要とする各国の国土条件なり農地の整備条件が非常に格差がございます。それからまた、気象条件あるいは国土条件に恵まれた輸出国と必ずしもそうではない輸出国の間で、相当の農業経営を行っていく上での条件の相違がございますが、そういった条件の差から、基盤整備の必要性なり必要額というものが当然出ているわけでございまして、そういう条件の差というものが必ずしも的確に算定に当たって考慮されていないのではないかということでございます。  それから第二点は、今申し上げたことと関係するわけでございますが、PSEをなぜ算定するかというPSE算定の目的とも絡むわけでございますが、ある国のある産品のPSEの額が大きい、少ないをもって、それが貿易に直ちに影響を与えているのではないか、そういうとらえ方をするものとしてPSEが算定されているわけでございますが、当然、PSEの一要素でございます基盤整備費と内外価格差とでは貿易に与える影響も、PSEの要素という点では同じでございますが、影響という点では非常に差があるのではないか。端的に言いますと、農業基盤整備費は非常に長期にわたって効用が発現して生産の中に化体をしていくべきものでございますから、ある年度のPSEの算定の中に含まれている基盤整備費の額をもって、直ちに貿易にそれだけの額の影響が他の要素と同様にあると見るのは行き過ぎではないかというふうに見るわけでございます。  さらにまた、食糧の安定供給確保でございますとかあるいは環境の保全など、農業が果たしている多面的な、必ずしも経済的な算定では包摂し切れない効用があるわけでございますが、そういった農業の果たしている多面的な価値といいますか効用というものが、PSEの中には的確にとらえられていないのではないか、そういう問題点があるというふうに私どもは認識をいたしております。  先ほど先生の方から御指摘がございましたように、このような非常に問題の多いPSEないしはそれに近い概念が、ウルグアイ・ラウンドの農産物交渉の中で、交渉の手段ないしは交渉の内容をはかるための手法として使われるべきであるという主張がなされておりまして、非常に問題の多い計測手法でございますので、私どもは、そういったものを交渉の対象あるいは手段として使っていくことは極めて不適切であるという立場をとっておるわけでございます。  ちなみに、日本は、昨年の十二月にウルグアイ・ラウンド交渉において、日本としての立場を反映いたしました農業交渉に対する日本の提案を提出したわけでございますが、その中では、交渉に当たりまして政府の補助金を対象とする場合にも、農業の生産基盤の整備を目的とする事業でございますとか、あるいは構造改善を目的とする事業等のための補助金は対象に含まないという形で提案を出しているわけでございます。
  182. 神田厚

    ○神田委員 わかりました。しっかりやってください。  それでは次に、AタイプのNTT資金の問題でございますが、公団がみずからAタイプのNTT資金の実施主体並びに転貸しができるようになるわけでありますけれども、これは現行制度の補助事業に対してどのようなメリットがあるのか、この点をお聞かせをいただきたいと思います。
  183. 松山光治

    ○松山政府委員 NTTのAタイプ事業についてのお尋ねでございます。  この事業は、国の補助金あるいは負担金の交付を受けないで実施いたします公共的な建設事業で、当該公共事業及びその関連事業によって生じます収益によりまして当該公共事業に要する費用を支弁できる、いわゆる収益回収型の公共事業でございます。  それで、農用地整備公団が今度事業主体等になるA型事業といたしましては、水田農業確立対策によります転作の推進等を図りますために、市街化区域等の水田を対象といたしまして畑地への転換を進めますとともに、土地改良事業として可能な範囲内で非農用地を創出いたします市街化区域等水田転換緊急特別対策プロジェクトというものと、農業用の用排水施設、ため池とか水路等でございますが、これの整備を行いますとともに、あわせてレクリエーション施設なり駐車場等の他の目的への利用を推進いたします農業用用排水施設他目的利用プロジェクト、こういう二つの事業を考えているところでございます。  このプロジェクトを実施しますメリットでございますが、前者につきましては、市街化区域等に存します水田が緊急かつ効率的に畑地等に転換される、そのことによりまして、当面する農政上の重要な課題でございます水田農業確立対策の円滑な推進に資するという点と、それから土地改良事業として可能な範囲内の非農用地を創出いたしまして公共施設用地に充てる等、社会資本の整備の要請にもこたえ得る等々のメリットがあるかと思っております。他方、農業用用排水施設他目的利用プロジェクトでございますが、これを実施することによりまして、農業用水の確保でございますとか水利用の安定や施設の機能の回復といったようなことなどが図られるわけであります。同時に、農業用の用排水施設なり施設用地といったものが有効に活用されるわけでございまして、これによりまして、おくれております社会資本の整備にも資していくといったようなことを考えられるのではなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  184. 神田厚

    ○神田委員 先ほど局長答弁にもありましたが、受益者負担の軽減のためには、工期の短縮と事務費の縮減を図る必要がある、こういうことであります。また、工期の短縮あるいは事務費の縮減及び事業の維持拡大、こういうものなくしては当公団の存続は将来的に難しくなってくるのではないか、こんなふうに考えておりますが、これらをどのように実施していくのか。現在、当公団の事業費に占める例えば事務費の割合は同%程度で、ほかの公団と比べてどういう位置にあるのか、こういう点について御説明をいただきたいと思います。
  185. 松山光治

    ○松山政府委員 公団の事務費の問題でございます。  事業の完了区域がふえまして、かつ小規模な事業実施区域がふえてまいるといったような状況の中で、五十年代前半に比べますと公団の事務費率は若干高くなってきておりまして、現在一四%から一六%ぐらいの水準で推移しておるわけでございます。私ども、公団ともどもこのような事態を重視しておりまして、公団事業の低コスト化、組織・定員の縮減、さらには公団事業の効率的な推進といったようなことにつきまして、昨年四月にも局長通達を発しておるわけでございますけれども、事業費、一般管理費の縮減に努めておるところでございます。  ほかの公団の事務費率との比較の問題でございますけれども、事業内容なり対象地域等が異なる問題でもございますので単純に比較することは適当ではないわけでございますが、あえて比較いたしますれば、やや高目かなというふうに考えております。いずれにいたしましても、事務費率の低減は公団としても重要な課題でございます。公団事業の効率化、業務運営全般の合理化と管理経費の徹底した節減に努めていただきまして、適正な管理費の水準になるように公団を引き続き指導してまいりたい、このように考えているところでございます。
  186. 神田厚

    ○神田委員 最後にお尋ねしますが、農地の流動化あるいは規模拡大、さらに基盤整備事業、これらをバランスをとってうまく推進していかなければならないということであります。  そこで、今回法案として準備をされましたが、いろいろな関係で見送りとなりました構造立法法案がございましたね。あれと当公団との関係はどういうふうなものとして考えられたのか、その点はいかがでありますか。将来またこの構造立法法案が出てくると思うのでありますが、そのとき当公団との関係はどういうふうになりますか。
  187. 松山光治

    ○松山政府委員 今国会への提出を予定しながらいろいろと検討をいたしてまいりましたが、いわゆる構造立法、問題が農業基本にかかわることでもございますのでもう少し時間をかけて、実態も踏まえながらかつ関係者のコンセンサスも得ながら、できるだけ早く成案を得たいということで今も検討をしておるところでございます。  私ども考えました問題意識といたしましては、土地の流動化がそれなりに進んでいるとはいうものの、やはり格段の政策努力を必要とするという状況を踏まえまして、今後農地の流動化を加速化し構造改善を円滑に進めていくためのフレームといいますかそういうものとしていかなることが考え得るか、こういうことで一般的なものとして考えたつもりでございます。  今度の公団の事業につきましては、そういった全体としての構造政策を進めていく上で、そのための基礎的な条件を整備するという意味で、農業基盤の整備というのが重要な意味合いを持っておるわけでございますが、これまで公団が長年にわたって蓄積してきております技術力なり機動性なりあるいは資金の調達力といったような特性を生かしながら、その特定の地域におきまして計画的、集中的に一定の農用地の整備保全の事業を実施するという意味で基盤整備事業の重要な一翼を担っていただく、こういうふうな関係に立つものとして御理解をいただければありがたいというふうに考える次第でございます。
  188. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  189. 鈴木宗男

    ○鈴木(宗)委員長代理 藤田スミ君。     〔鈴木(宗)委員長代理退席、委員長着席〕
  190. 藤田スミ

    藤田委員 私は、農用地開発公団法の一部改正案を審議するに当たって、実は先日、北海道の稚内市にあります農用地開発公団事業による宗谷丘陵区域広域農業開発事業というものを見てまいりました。この宗谷丘陵区域広域農業開発事業というのは、昭和五十三年の閣議決定の新北海道総合開発計画に沿うものとなっておりまして、こういうふうにうたわれたわけです。「根釧・天北等の土地資源に恵まれた酪農地帯においては、大型酪農経営を中核とする高生産性経営群と生産生活諸施設を機能的に配した酪農村の展開を目途に、我が国最大の大家畜畜産地域として、その開発を進める。特に、天北においては、広大な開発適地の活用を図り、開発可能地に乏しい地域における畜産の生産拡大に資するため、それらの地域と連携した生産拠点として機能させるものとする。」こう言われております。  また、手元にあります農用地開発公団北海道支社がつくった計画概要を見ましても、「本地域農業振興の方向は、畜産的開発を柱として、北海道農業の発展を図るとともに、可能な限り、国内農業生産力を高め、食糧の自給率向上を目指し、国民食糧の供給という国家的要請を担うものである。」と開発の基本方針はうたっているわけであります。  このような開発方針に基づいて宗谷丘陵区域広域農業開発事業が出発したことに間違いはありませんか。
  191. 松山光治

    ○松山政府委員 間違いはございません。
  192. 藤田スミ

    藤田委員 そして、この開発方針に基づき天北地域内の未利用山林原野を開発して肉用牛公共牧場を創設し、地域畜産農家規模拡大と所得の向上を図り、肉用牛の濃密生産団地を建設する事業が開始され、五十九年には二十四億六千万円、六十年には十三億三千万円、六十一年には十一億二千万円の事業費が投入されてまいりました。事業費を負担したのは国だけではありません。地元稚内市では、もう既に三十六億七千六百万円の負担を負っています。稚内市の年間予算は三百三十三億円ですから、この負担額はこの稚内市の予算規模では極めて重いものになっています。  ところが、この事業はうまくいきませんでした。当初酪農家から乳牛が産んだ雄の子牛を預託する予定になっていたにもかかわらず、牛が集まらなかった。牛が集まらなかった原因は何だったのでしょうか。
  193. 松山光治

    ○松山政府委員 本宗谷丘陵区域の公団事業でございますが、周辺の酪農家から乳用雄牛を預託育成するということを主体といたしました公共育成牧場、こういうことで事業を始めてきたわけでございますけれども、乳雄子牛の品薄感、あるいは肥育牛の枝肉価格の堅調といったような状況の中で、乳雄子牛が地域外に供給されるといったような状態がございまして、なかなか計画どおりに集まることが難しくなった、こういう状況があるわけでございます。そこで、乳雄の預託育成というのを主体とするものから、肉専用種なりあるいは外国種の繁殖素牛を飼育いたしまして子牛の供給を周辺の農家にやっていくといったような、そういうねらいを持った公共育成牧場、そういう方向で今計画の見直しが行われておるというふうに承知いたしております。
  194. 藤田スミ

    藤田委員 私は、今の答弁農水省自身がはっきりと原因を見ておられないというのですか、現象面だけ言っていて、そして本当のところを触れていらっしゃらないと思うのです。そもそも子牛が集まらなかった理由、こういう最初の計画をつぶしたのは農水省の牛乳の生産調整じゃなかったのですか。そして牛乳の生産調整と価格の引き下げのために、酪農家は預託をする牛を持てなくなったのです。そういうことでこの事業の第一歩からつまずかせた、これは農水省責任だと私は思いますが、その点はどう思っていらっしゃるわけですか。
  195. 松山光治

    ○松山政府委員 御案内のような酪農業をめぐる需給実態の中で、いろいろと各地域の酪農家には御苦労をいただいておるわけでございますけれども、私さっき申し上げたような状況が、今回のこの地域での計画見直しの背景にあるというふうに承知しておるところでございます。
  196. 藤田スミ

    藤田委員 その事業の変更というのも並み大低のことじゃないのです。私も見てきました。肉専用種の繁殖育成ということで現在二百五十頭いるこのアンガスという種類、さっき外国の牛とおっしゃいましたが、このアンガスという種類の牛を約三千頭にしようというわけでしょう。これだけの肉牛を輸入することができるのか。たしかこれは現在輸入割り当てがあるはずですね。また、約三千頭の牛を管理するためには十人以上の職員が要るだけではなく、経営を安定させるためにさらに三億円の運転資金、これが必要になってくるわけです。これだけの資金と職員を投入しなければ事業は成り立たないわけです。  それだけじゃありません。ここの工事は一期、二期、三期というふうに分かれておりますが、この第一期の工事についてもまだあと二十六億八千万円の事業費が必要になってきているわけです。稚内市にとってはこれまた非常に大きな重荷になってくるものです。私は、稚内市からこういう陳情書というのをいただきました。これは、一つには、繁殖素牛の導入の促進、それから二つ目に、事業工期内の建設利息の軽減、三つ目に、低利運転資金の融資、三つの点の必死の要請をしておられるわけです。私は、この場でこの三点について政府の誠意のあるお答えをいただきたいわけです。
  197. 松山光治

    ○松山政府委員 いろいろと状況が変わっていく、そういう状況の変化に現地が大変御苦労いただきながら対応していただいている、そういうケースであるわけでございます。  繁殖素牛の導入の問題につきましては、よく今の見直し、検討の実態も考えながらその円滑化が図られるような配慮はしなければいかぬというふうに思います。また、建設利息の問題につきましては、既に高率の補助を行っておることでもございますから、できるだけ早く建設を進めていくということで利子負担が総体的に少なくなるということを考えていくのであろう。低利運転資金の問題につきましては、繁殖用の肉牛の購入資金あるいは飼料費なり種つけ料等の育成資金につきましては、農業近代化資金の融資の道もあるわけでございますので、こういうこともひとつ活用していただいたらどうだろうかと思います。  なお、本地区の繁殖用の肉牛の導入につきましては、公団事業の対象といたしまして財投資金によることができるわけでございますので、いずれにしても私どもとしては地域のそういった努力をできる範囲で支えていくと申しますか、御協力申し上げていく、こういう基本的な考え方のもとに臨んでいきたいと思っております。
  198. 藤田スミ

    藤田委員 大臣、最初の話を聞いていて御理解をいただいたと思うのです。状況の変化に対応してと言いますが、状況を変化させたのは、これは農水省責任があるわけです。牛乳の生産調整を進め価格を引き下げ、そういう状況の変化に対応するために今非常に現地は苦労しています。現地の方はこう言いました。生産コストの引き下げや流通経路の開拓で、これからよい肉で少し値のよいものを販売し、またアンガス種など肉専用牛を導入して雌牛の農業供給で何らかの採算を図っていきたい、こういうふうに言われまして、担当の稚内市の方は、今牛肉価格が幾らだけれども、これが幾ら幾らぐらいに値がつけば事業が成り立つのだというふうな計算をしきりに私の前でもされたわけです。私は、これは非常にせっぱ詰まったあの人たち苦労の反映だというふうに思って胸が詰まる思いで聞いていました。  大臣も御存じだと思いますが、実際に牛肉価格は今下がってきているのです。だから、この事業の採算点を下回る可能性があることはだれの目にも明らかなのです。それにもかかわらず、今さらこの事業から撤退できないのだ、このままでは借金だけしか残らないのだということで必死になって取り組んでいるわけです。先ほど指摘したように、この事業をこんな惨たんたる状況にした責任というものを考えれば、私は、稚内市が要求している問題について節度を持ってこたえるべきだというふうに考えますので、もう一度大臣の誠意のある御答弁を求めておきたいわけです。
  199. 松山光治

    ○松山政府委員 なかなか厳しい環境条件の変化、その中で現地が一生懸命御尽力いただいている問題でございます。私どもといたしましても、現地の御努力がうまく実の結ぶように道とも相談しながら適切に対応してまいりたい、このように考える次第でございます。
  200. 藤田スミ

    藤田委員 今度は大臣にお答えいただきたいのです。  この宗谷丘陵区域広域農業開発事業というのは、さっき言いましたように一期工事もまだ完成していない、二期、三期の工事がまだ残っています。その一期工事で関係者が悪戦苦闘しておられるわけです。しかし、この事業も牛肉輸入自由化がなされるなら完全に吹き飛んでしまうでしょう。政府が閣議決定で夢見た我が国最大の大家畜畜産地域としての生産拠点が、関係者に巨額の負債を残して吹き飛んでしまうわけです。このような悪夢のような事態は決して認めてはならない。そういう点で大臣牛肉オレンジ輸入自由化は決して行ってはならない、その決意のほどを聞かせてください。私は宗谷に参りまして今なおかたく残る雪の冷たさに驚かされました。しかし現地の方は、今輸入自由化の問題をめぐってのこの状況の中でまさにそれ以上の厳しさ、それ以上の冷たい空気に包まれて不安におののいているのです。私は、そういう人たちに対して輸入自由化は絶対にやらない、認めないんだというそのお言葉を大臣に求めたいわけです。
  201. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今日社会においていろいろな立場方々がいろいろな苦労をしておる、今おっしゃる説明もわからぬではございません。私自身も今牛肉かんきつ自由化に触れられれば冷たい空気の中にさらされておるのであります。私はそれなりに真剣であります。自由化は困難である、こういう実情を説明しながら何とか今日の日本の現状をわかってもらいたいと思って説明に参りました。しかし、まことに残念ながらそれを合意するには至りませんでした。その点については私の非力もございましょう、申しわけございませんでしたとこの委員会でも先般来申し上げておるところでございます。それ以上重ねる言葉はございません。  しかし同時に、決裂したのではいけない。私どもアメリカを友好国と考えております。友好国との間で平和的な解決をせねばならぬと考えております。話し合いは継続しようと提案をいたしましたところ、それはわかった、こういうことで合意いたしました。そして今その話し合いが進められておる最中でございます。現実的な対応もしなければならぬと思っておりますが、我が国自由化は困難であると言ったその説明に対して、依然として四月一日からの完全自由化は当たり前と先様はおっしゃっております。そういう中にあって実務的にどうこれをほぐしていくか、こういうことに懸命の努力を続けておる最中であるということを今までの答弁でも申し上げましたが、改めてまたあなたにも申し上げておきたいと思います。
  202. 藤田スミ

    藤田委員 大臣はしきりに友好国ということをおっしゃいますが、今、日本に彼らが言っていることは友好国としてのアメリカ姿勢でしょうか、友好国に対して言っていることじゃないというふうに私は思います。話し合い日本が譲るということではありませんし、それからまた、現実的な対応というのは、まさに日本の酪農家の置かれている現実に対応していただきたい、そういうことを申し上げておきたいと思います。  同じように地域農家に深刻な影響を与えているのが根室の広域農業開発事業です。この事業に参加した酪農家は四千五百万から五千万の借金を抱えている、そして六十二年度からその借金の返済が始まっていくわけですが、とても返済ができないということで大変な状況になっています。農水省、なぜこのようになったのか、その原因を明らかにしてください。
  203. 松山光治

    ○松山政府委員 根室区域におきましては畜舎等の整備を行いましたいわゆる大規模農家、二百二十戸余の農家があるわけでございますが、その大半の農家につきましては公団事業の償還金、いろいろ御努力はいただきながら円滑に償還をいただいておるところでございますけれども、一部の農家におきまして、公団事業の償還の円滑な返済という点でなかなか難渋しておる、非常に御苦労いただいておる農家があるわけでございます。  これは根室だけの問題ではございませんで、農家によってかなり経営の状態に差が出ておるということでございますが、そういった一部の不振農家についての実情を調べた報告によりますれば、一つはやはり大規模な営農ということでもございまして、そういった大型の営農技術の習熟がおくれたというような問題が一つある。それから営農管理の不十分さといったようなこともあるようであります。さらには経営主が不慮の事故に遭われたといったようなアクシデントも償還金の返済等に難渋を来す原因の一つになっておる、こういうふうに承知をいたしておる次第でございます。
  204. 藤田スミ

    藤田委員 答弁を聞いていますと、御自身責任というものをちっとも考えておられないということに私は本当にいら立ちを覚えますよ。特殊な話じゃないのです。しかも、この根室は根室、中標津、別海町と一市二町がこの事業にかかわっているわけですけれども一つは先ほどから言われましたように基盤整備に金が非常にかかり過ぎた。そしてもう一つはむだな事業が非常に多かった。例えば真空サイロで一基三千万から四千万のお金を使ったというのです。しかし、気候が収穫期に悪くてそのサイロに湿ったわらを入れることが、吹き込むことができないで、気候と合わないこのサイロのために満足に使えない。また全般的に上物にお金がかかって、七五%の補助がついてもまるで自分でつくったと同じぐらいの負担になっている。  こういうことで、もちろんその前段には近代化した経営でということでしたが生産制限をやられ、それこそ施設をフルに使えなかった、そして償還ができなかったということもありますけれども、こんな真空サイロの話なんて聞いたらびっくりしましたよ。一体何をやっているんだというふうに考えたわけです。どうなのでしょう。
  205. 松山光治

    ○松山政府委員 根室地域のみならず、各地域でいかなる施設を導入していくかといったようなことを計画していくにつきましては、当然のことながら、個々の農家がお使いになるわけでありますから非常に具体的な相談が行われたものと了解をいたしておるわけでございます。若干先進的なモデル性というものが重視されまして、それぞれの関係農家におかれましても少し頑張られたというような面があるいはあったのかもしれませんけれども、私が申し上げたいのは、そういう状況の中で非常に立派な形で経営をやられている方と、残念ながらいささか経営上の不振の出ておる方と、そういう分化というか分かれが一つ出てきておる。  なぜそうなったのだろうかということをいろいろと聞いてみると、技術面の問題であったりあるいはアクシデントであったりというような事情があるようでございますので、せっかく投資したものでございますから私どもとしてはそういった施設が有効に活用され、予定されたような健全な営農が行われますように、まずは技術なり経営管理の世界での特別指導ということを県なり市町村が指導班をつくりまして、これを地道に今やっていただいておるところでございます。  さらに、償還に困難を感じておられる方につきまして、公団でも一部償還猶予の措置を講じていることもございますし、あるいはまた自創資金の活用という問題もございます。さらに先ほど来話の出ておる点でもありますが、六十三年度からは償還金の返済の困難な農家につきましてのいわば一種の援助措置として、公団事業の償還円滑化特別対策事業なども仕組んだところでございまして、私どもとしては可能な限りの努力を行いながら、参加農家が健全な経営展開をしていただくことを期待したいと考えておる次第でございます。
  206. 藤田スミ

    藤田委員 過去の裁量の問題に責任を転嫁されてはならないと思います。高利の負債に対する対応というものを六十三年度から取り組んでいかれるということですので、私はその実施の経緯を見て今後また取り上げていきたいと思いますが、こういうふうに非常に大きな夢を投げかけてそして始めた事業ですから、気がつけば借金だけが背中の上に乗っていたというようなことの決してないように重々心して対応をしていただきたいと思います。  今回の農用地開発公団法の一部改正案によりまして、今後農用地整備公団は新たな草地造成をしないということになるわけです。草地造成の重要性については今ここで改めて言うまでもありませんけれども、農林水産省として草地造成をやめ、輸入濃厚飼料に依存するという政策転換をしたとなっては大変なことになるわけです。この点、農林水産省として草地造成の今後の展開について明らかにしてください。また、今後の飼料の自給率をどのように高めていくのか、年次ごとの数字と具体的計画を示していただきたいと思います。
  207. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 飼料自給率の現状でございますが、六十一年の生産費調査で見ますと酪農で四一%程度、肉用牛の繁殖経営で六七%程度、肉用牛肥育経営で五ないし一二%程度と認識をいたしております。  今後の大家畜畜産経営におきましては、飼料基盤に立脚した経営を育成しまして経営体質の強化と生産性の向上を図ることが重要な課題と考えておりまして、先般二月に策定公表いたしました七十年度を目標にした「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」におきましても長期的な誘導指標をモデル的に提示をしておるところでございます。年次別に具体的にどうやっていくかということについては、地域的な違いとかその他条件の違いがございましてなかなか一律に目標を立てることが難しゅうございますので、そのような数値を長期的に持っておるわけでございませんが、いろいろ条件の違う経営形態ごとにこういう方向で飼料自給率を高めていくという目標値を基本計画そのものに付表として設定をしておるところでございます。
  208. 藤田スミ

    藤田委員 今御説明があったように私の手元にも五十一年から六十一年までの実績はあるのです。それに基づいて計算したら、これの延長線上で七十年までいかないというような話はおよそ説得力がないわけです。  だからもう一つだけ押さえておきたいのですが、結局こういうことですか、飼料の自給率は高めていくという方針、これだけははっきりしておいてほしいのです。数字を示せないというのは私は極めて無責任だと思いますが、しかし、自給率を高めるのか高めないのか、その方針だけははっきり聞かせてください。
  209. 京谷昭夫

    ○京谷政府委員 先ほど申し上げました基本方針においても明らかにしておりますように、飼料自給率の向上という方向で私どもはモデル経営における目標を定め、それに向かって関連の施策を進めていきたい、かように明らかにしておるわけでございます。
  210. 藤田スミ

    藤田委員 それでは次の問題に移ります。  今回の法改正でNTTタイプ事業についても農用地整備公団でやれることになったわけです。このうち、ため池整備の問題についてお伺いいたします。  私の地元は全国でもため池の非常に多いと言われていた地域です。もっとも最近は大分つぶれてしまいましたけれども、それでも多いわけです。このため池は今、町内会というのですか、小さな自治会の共有財産になっておりまして、市が管理をするというようなことになっているわけです。そういう中で収益性のある事業に取り組むなんといったってなかなかそういう仕組みになっておりませんで、ため池を整備するといったって、そのために駐車場をつくる、レクリエーションの施設をつくるといったって、なかなかこれが現実的ではないんじゃないか、これが地元の皆さんの圧倒的な声なんです。  そして大事なことは、ここが質問ですが、本来補助事業を行っているため池整備予算をふやすことこそが関係者から求められている点なんです。本来の補助事業で行っているため池整備事業をふやすことこそ求められていると考えますが、この点で農水省の御見解をお伺いしたい。
  211. 松山光治

    ○松山政府委員 NTTのA型として実施いたします農業用用排水施設他目的利用プロジェクト、これは今御指摘のございましたようなため池等の農業用用排水の施設について整備を行いますとともに、あわせて他目的な利用を図ることで、その収益をもって事業費の償還をしていく、こういう事業であるわけであります。  うまく乗るか乗らないかというふうなお話があったわけでございますけれども、例えばため池の場合に、しゅんせつによってつくり出されました用地をテニスコートとか駐車場等に利用していく、そこから得られる収益でもってこの償還をできるようなことを考えていくということで、私ども現在都道府県から要望を募り、いろいろと事情を聞いておる。これから実施の可能性、事業内容についての詰めに入るという段階でございます。  お尋ねのもう一つの点につきましては、確かに補助事業の予算をふやすというのも一つの手法でございますが、御案内のような全体としての経済事情、国の財政事情等のもとで、建設国債をふやさないで、かつ必要とされる社会資本の整備を進めていく、こういう観点、両方の要請を調和する一つの手法といたしましてNTTの売却収入の活用、その活用の仕方にもタイプが三つある、こういう形の事業になっておるわけでございますので、私どもとしてはそれぞれの実情に応じてうまく使っていただくように指導していきたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  212. 藤田スミ

    藤田委員 実際には現実的ではないと考えられるこういうNTTタイプ事業ですね。Aタイプ事業を一つの手法として活用してもらいたいという言い方に私は不安が残ります。しゅんせつをし、そしてそこに、堺には公園をつくり、そしてため池の汚濁を防止するそういういろいろな施設までこしらえる補助事業というのは非常に喜ばれておりますし、さすが農水省だというように言われているところもあるわけです。だから、そういうところの本来の事業こそ発展させるべきだということを重ねて申し上げておきます。  今回同じくAタイプ事業で、市街化区域等水田転換緊急特別対策プロジェクトを行うことになっているわけです。この事業は主に市街化区域の水田を畑地に転換するものであるわけですが、一度水田を畑地にすれば、市街化区域ではこれは宅地への転換を進めていく。また畑地にすることによって宅地への転換が非常にスムーズに進むというふうにも言われておりますし、そういうことなんですね。その点では、この事業は市街化区域内農地の宅地への転換を促進する性格を持っているんじゃないか。例えば、市街化区域内の国道などによって二分されている農地については宅地並みに課税すべきだという建設省の報告とこれは軌を一にしているわけで、本来市街化区域内ではあっても農業を守るべき農林水産省がこのような事業を推進することは私は極めて問題だというふうに考えますが、その点農水省の御見解をお聞かせください。
  213. 松山光治

    ○松山政府委員 申すまでもないところでございますけれども、市街化区域というのは十年以内に市街化を予定する区域ということで、そのうちの農地につきましてもそういった市街化区域の本来的な性格にかんがみまして、その転用については普通の農地とは異なりまして許可から届け出に切りかえておるとか、それから農業施策の面でも効用が長期に及ぶような投資はこれを避けまして、当面営農に必要な施策にとどめておるとかいったような、本来的な市街化区域内の農地の性格が一つあるわけでございます。  ところが、今後とも農業をなお継続したいという方もいらっしゃる。都市の環境保全といったようなメリットもある。そういう状況の中でやはり当面営農を継続するのに必要な条件の整備といったようなことは頭に置きながら私どもも考えていかなければならぬ、こういうことになるわけでございます。  ところで、今御指摘のNTTのA型プロジェクトのうちの市街化区域等水田転換緊急対策プロジェクトの問題でございますが、これは市街化区域内の農地についても共通の課題になっておりますのが一つ、水田農業確立対策が一つあるわけでございますけれども、このプロジェクトでは当面の営農に必要な範囲で行います畑地転換等に必要な経費を貸し付ける、そういう形でもって当面の政策課題でございます水田農業確立対策の円滑な推進に資していくというねらいが一つあるわけでございます。  他方、土地改良事業として可能な範囲内での非農用地の創出ということも一つ行いまして、住宅地等への転換をその部分では進めていく、それで、その地域の良好な土地利用の成熟ということを図ってまいりたい、そういうねらいでこの事業を進めようとしているんだというふうに御理解をいただければありがたいと思います。
  214. 藤田スミ

    藤田委員 私は、きょうこの問題で議論したい気持ちがいっぱいなんですが、時間がありません。ただ市街化区域内はもともと市街化を促進させる地域なんだというのは今農水省が言ったらいかぬことなんです。市街化区域の農地こそ緑地、空間、防災、そして子供の教育、さらには生産者消費者を結んでいく非常にかけがえのない大事な場所になっているのです。私はもうこれ以上この問題で議論をしませんけれども、認識をぜひ改めていただきたいということだけ申し上げておきます。  次に、今回の法改正で農用地整備公団は特定地域農用地総合整備事業として区画整理等々、各種土地改良施設の整備等を総合的に行うことになるわけです。現在全国各地で土地改良事業が農民に対する負担問題で大変な状況になっているのですが、果たして農用地整備公団がやれる事業があるのかどうかという点で私は極めて疑問を持っています。その点、現在の土地改良事業の問題点をどう考えていらっしゃるのか、農用地整備公団の方向性を明らかにしていただきたいわけです。  先ほどからの御答弁を聞いておりまして気になるなと思いましたのは、農用地整備公団がやる事業は従来の土地改良区や県、国がやる土地改良事業に比べて短期間にできるということをしきりに強調されるわけですが、それこそ従来の土地改良事業の問題点であって、それこそ改善すべきであって、それはそのままにちょっと置いておいて、早くやりたい人は農用地整備公団に頼みなさいというような言い方に聞こえて仕方がないわけです。これは非常に無責任じゃないかというふうに思いますし、従来の事業は事業期間が長いために金利負担が重くなるということも大きな問題であります。こういう改善こそ進めるべきではないかというふうに考えます。どうでしょう。
  215. 松山光治

    ○松山政府委員 今回の制度改正で予定しております特定地域の農用地総合整備事業でございますけれども、農用地等の農業資源に恵まれまして農業の構造改善の可能性の高い一定農業地域におきまして面的整備と線的整備を一体として総合的に行う、こういう趣旨でございます。公団の持っております技術力なり機動性あるいは資金の調達力といったようなことを活用いたしながら、できるだけ工期も短くして事業効果の発現を図っていく。通常の事業との交通整理の問題もあったわけでございますが、そういう意味では全国津々浦々でこれを実施するということではなくて、今申し上げましたような一定条件を備えた地域におきまして、知事からの申し出に基づき具体的な事業化を考えていくということでございますので、両者の調整につきましては調査計画の段階から入念に配慮していかなければいかぬのではないかというふうに考えておる次第でございます。  現行の土地改良事業をめぐるいろいろな問題があるではないか、こういう御指摘があったわけでございますけれども、御案内のような状況の中で基盤整備の問題は、これからの農業の展開を図る上での基礎的条件を整備するものとして非常に重要な役割を果たしておるというふうに認識をしておるわけでございます。しかしながら、物価、賃金の上昇に加えまして社会的な要請等に伴います整備水準の向上、あるいは地形条件が厳しい地域での事業実施がふえてくるといったような事情等で事業費が増大する、あるいは工期の長期化が見られるといったような状況が一つあるわけでございまして、そういう状況の中で地元負担の問題ということが今問題になっておるということは我々としても十分承知をいたしておる次第でございます。  したがいまして、私どもといたしましては今後とも事業費単価の抑制に留意いたしまして、整備の程度に応じました経費なり地元負担金をあらかじめ明示いたしまして、土地改良区等が適正な整備水準を選択する方式の徹底に努める等々、地元負担の問題にも十分留意した経済的な事業の実施、効率的な事業等の実施に努めていかなきゃならぬだろうと思っておりますし、同じことは今回の公団の新しい事業についても言えるところでございまして、そういう問題意識で公団の指導に当たってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  216. 藤田スミ

    藤田委員 次に公団職員の問題についてお伺いをしたいわけです。  今回の法案で公団職員の首切り合理化がなされるというようなことになっては大変なわけです。六十三年の行革大綱で公団組織・定員の大幅合理化を提言しているわけですが、農水省としては今回の法改正がなされても職員の首切り合理化をしない、してはならないわけですが、この点は明確に大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  217. 松山光治

    ○松山政府委員 農用地整備公団が国民的な理解と支持のもとに今後とも安定的な業務運営を確保していきますためには、何といいましても効率的な業務運営に今後とも御努力いただくということが非常に重要な点ではなかろうかと思うわけでございます。と同時に、これからの事業を進めるに当たりまして、雇用面で不安が生じないという点もまた公団事業の安定的な推進を図る上で重要であるというふうに考えておりまして、そういう基本的な考え方のもとに公団の指導に適切を期してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  218. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 雇用不安の起こらないようにしていかなければならぬと思っております。なお、今朝来このことについては再三にわたって御答弁申し上げていることもつけ加えておきます。
  219. 藤田スミ

    藤田委員 私はずっと本法案について問題点を指摘してまいりました。今政府が進めようとしている輸入の、あえて自由化とは申しませんが、しかし門戸開放に対応できるような考え方を露骨に貫かれているんじゃないかというふうに思えるわけです。この輸入自由化の問題でもう一度私は大臣に、これは国民の健康の問題としてぜひ御見解をお伺いしておきたいわけですけれども牛肉輸入自由化で深刻な打撃を受けるのはひとり農民だけではありません。消費者も実は大きな打撃を受けるわけです。それは何かというと健康の問題なんです。  私は手元に、昭和五十八年に厚生省の公衆衛生局栄養課が編集しました「循環器疾患・がん・糖尿病の予防と食生活」という本を持っています。これを見ますと、「脂肪の過剰摂取が虚血性心疾患の発症に及ぼす影響については、疫学的にも病理学的にも基本的にはほぼ解明されたといってよく、実験的にもそれを裏付ける成績が多い」というふうに書かれています。ちょっと専門用語ですが。また「疫学調査と動物実験の双方で、総脂肪摂取量が増加するとある特定の部位、特に乳がんと結腸(大腸)がんなどの発生率が増大し、逆に、脂肪摂取量が少ないと、発がんの危険度が低下するという結論が出されている。」そして、「我が国の場合も、食生活の豊かさにともなって脂肪過剰時代の到来が懸念されているところである。」こういうふうに厚生省の公衆衛生局は結んでいるわけです。  大臣、こういう問題は既にアメリカでは、一九七七年、昭和五十二年に発表されたアメリカ上院栄養問題特別委員会レポート、いわゆるマクガバン報告なんですが、それでも指摘されているわけです。このマクガバン報告は多くのアメリカ国民に衝撃的なショックを与えまして、同じ委員会のメンバーの一人ケネディ議員は、このマクガバン報告を見まして、我々は全くばかだったとその感想を漏らしているのです。それでこのレポートを見ますと、「先進国の食事は全く不自然でひどい食事になっていた。そのことに誰一人気付かなかった。しかも、こんな内容の食事が、先進国に多いがんも心臓病も糖尿病も生んでいた。我々は即刻食事の内容を改めねばならない。」こういうふうにマクガバン報告は言っています。  大臣アメリカでは、そういう中で、今国民の健康を守るという立場から牛肉の消費が急速に減ってきています。一九七六年に四十二・八キロ、それが一九八八年には三十二・八キロ、年間一人当たりの消費量は七六年から八八年の間に十キロ減りました。このためにアメリカの食肉生産者国内牛肉消費の低迷による過剰生産の恐怖を持っていて、そしてそのために日本に対して牛肉輸入自由化要求しているというふうに言われているのです。こういう考え方は、もちろん日本国民の健康などどうでもいいというような考え方であることは明確ですが、大臣としてこういう点をどうお考えでしょうか。
  220. 谷野陽

    ○谷野(陽)政府委員 ただいま御指摘の報告書につきましては、私どももそういうものを拝見いたしております。  ただいま御指摘のように、数年前に各国におきまして、成人病と食生活の関係につきましての関心が大変深まったわけでございます。そのような過程を通じまして、我が国の食生活につきまして、たんぱく質、脂質、炭水化物の組み合わせのバランスが大変よくとれておりまして理想型に近いということで、諸外国からも評価が高まってきておるわけでございます。私どもといたしましては、このような日本型食生活に対する理解を深め、その定着を図っていきたいというふうに考えておる次第でございます。  ただいま牛肉お話がございましたが、牛肉につきましても、その中に含まれております動物性の脂肪の問題は御指摘のような指摘があるわけでございまして、国産の牛肉の格付におきましても、近年むしろ脂肪の少ない方向へ誘導するようなことが我が国においても行われておるわけでございます。我が国の現在の動物性脂肪、特に牛肉の摂取量につきましては諸外国との間でかなりの絶対的な水準の差があるわけでございまして、現在の段階でこれが直ちに国民の健康に影響があるということはなかなか言いがたいのではないかと思っておるわけでございますけれども、ただいま御指摘のように、各国におきまして成人病と食物というような関心が大変高まっておるということ、その中で我が国の食生活に対する評価が高まっている、こういうふうなことを踏まえまして、私どもといたしましては、日本型食生活の定着につきまして、食生活の改善のための啓発を中心といたしました施策の展開を今後とも大いに努力してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  221. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今ほど食糧の安全問題について触れられたわけでございます。今、実務者からお答えをいたしましたその重複を避けて私から答弁するとするならば、御質問の中に先進国の食べ物が安全ではないと聞こえるようなふうに私、感じ入りました。食糧の安全については、先進国、途上国を問わず安全なものでなければならぬ、さよう心得ておるということを率直に申し上げておきたいと思います。  なお、食品の安全ということにつきましては厚生省の所管であります。我が方はまた、国民に安定的に食糧を供給するという立場から、安全という問題について殊のほか重大な関心を持つべきであろうと思っております。そういう意味におきまして、厚生省とも随時協議をしながら、国民に安全な食糧を供給していかなければならぬと肝に銘じておるところでございます。
  222. 藤田スミ

    藤田委員 これを最後にいたします。  大臣からせっかくお答えをいただきましたけれども、私が申し上げておりますのは、食の安全の問題ではなしに、牛肉等のとり過ぎによって脂肪をたくさん摂取することでコレステロールなどがたまり、成人病が多くなっているということでアメリカで問題になっているんだ。だから、日本型食事ということを農水省も強調されましたけれども、私もまた同感の立場であります。  ただ、そういう考え方に立てば、農水省がつくった酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針というのを見ますと、これはこの前私が質問いたしましたが、これは現時点までの需要推移を前提にして、こうした国民の健康問題を全く考えず、将来の趨勢を推定するというやり方をとっておられるのじゃないか。私はそうではなくて、国民の健康を守るという立場から、成人病を抑えていくという点で、こういう動物性の摂取の問題についても農水省は十分検討し、あるべき需要量を確定していくという立場に立つべきじゃないか。こうした国民の健康を食糧政策基本に据えれば、あのような過大な基本方針の需要見通しは出てくるはずはないし、また同時に、牛肉輸入自由化、それが安い安いというあおりの中で安易に受け入れられるはずはない、そういうふうに考えて申し上げたところでございます。  大臣に私は毎回、食の安全の問題について強調いたしますので、いささか食の安全をそういうふうに受け取っていただいた、そのお言葉はお言葉として私はしっかり受けとめますが、私が申し上げましたのは成人病との関係の問題でございます。大臣、最後にもう一言。御答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  223. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ではほんの一言。  安全問題については健康問題でございます。そういう意味において、成人病であろうと何であろうと重大な関心を持っておるのは当然のことでございます。共産党だけではなくて私どもも重大な関心を持っております。
  224. 藤田スミ

    藤田委員 終わります。
  225. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  226. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。山原健二郎君。
  227. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の農用地開発公団法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。  今回の法改正は、農用地開発公団の見直しを盛り込んだ昭和六十一年の行革審答申と昭和六十三年行革大綱に沿ったものであります。この行革審等の提言は、国際化時代に対応した農業構造への転換と称して、市場原理の一層の導入、農畜産物の輸入自由化促進、生産者価格引き下げ、零細農家切り捨て等を打ち出した前川リポートを踏まえたもので、こうした政策を前提とした公団の見直しを容認することはできないのであります。  公団設立時の目的であった九万五千ヘクタールの草地造成を五〇%以上も未達成のままにして、草地造成・畜産基地建設をやめることは、国土の有効利用等と結びついた酪農・畜産の振興、飼料自給率を含む自給率向上をますます困難にするものと思われます。それはまた、牛肉輸入自由化をも含みとした措置だと指摘せざるを得ません。このことは、公団法の目的から農産物の安定的供給との文言が削除されたことに端的に示されています。現在の公団による草地造成・畜産基地の行き詰まりは、政府の畜産政策、公団事業の欠陥によるものであり、その是正こそが求められていると思います。  法改正で新設される水田を中心とした既存農地の大規模団地化事業は、従来の土地改良事業が工期の長期化等の問題点を持っていたのに対し、事業の迅速化を名目に零細及び兼業農家切り捨ての規模拡大押しつけとなりかねないものであります。また、それは米の市場開放をも視野に入れた性急な基盤整備という性格を含むのではないかとの懸念をぬぐえません。  NTT株売却益を活用したAタイプ事業の導入は、NTTを公共企業形態に戻すべきとの基本立場から容認できません。しかも、Aタイプ事業として予定されている市街化区域等水田転換緊急特別対策プロジェクトは、市街化区域内水田の宅地への転換を推し進めるものであり、財界等による都市近郊農業攻撃の方向に沿ったものです。今回の法改正を契機に公団職員の大幅な合理化を進めるねらいがあることもまた指摘しなければならないと思います。  以上の理由から、本改正案に反対することを明らかにしまして、討論を終わります。
  228. 菊池福治郎

    菊池委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  229. 菊池福治郎

    菊池委員長 これより採決に入ります。  内閣提出農用地開発公団法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  230. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  231. 菊池福治郎

    菊池委員長 この際、本案に対し、笹山登生君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。水谷弘君。
  232. 水谷弘

    ○水谷委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表して、農用地開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     農用地開発公団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近の農業を取り巻く内外の厳しい諸情勢に対処してその体質強化を図るため、農業基盤整備事業の促進は喫緊の課題となっている。   よって政府は、本法の施行に当たっては左記事項の実現を図り、公団事業の円滑かつ効率的運営に遺憾なきを期すべきである。        記  一 事業効果の早期発現を図ることを旨とする公団事業の特性が十分発揮されるよう、必要予算の確保に努めること。  二 公団事業の実施に当たっては、地域実情等に応じ適切な整備水準が選択される方式の徹底及び管理経費の縮減等に努め、受益者負担の軽減を図ること。    また、従来事業の完了地区で償還が困難になっている者に対しては、その実情に応じ円滑な償還ができる適切な措置を講ずるよう努めること。  三 公団事業の推進に当たっては、地元関係者の意向等を踏まえ、長期的視点に立った地域農業の確立、農業構造の改善等に資するよう十分配慮すること。    また、事業完了後における営農等に対しても、国、地方公共団体及び農業団体が一体となって濃密な指導、助成等を行う体制を整備すること。  四 公団事業の円滑な推進に資するよう、必要な技術者等の要員確保とその身分の安定に努めるとともに、新事業の実施に対応しうる業務体制を整備すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  233. 菊池福治郎

    菊池委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  笹山登生君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  234. 菊池福治郎

    菊池委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。佐藤農林水産大臣
  235. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。     ─────────────
  236. 菊池福治郎

    菊池委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  237. 菊池福治郎

    菊池委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  238. 菊池福治郎

    菊池委員長 次回は、明二十日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十七分散会