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1988-03-24 第112回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 竹中 修一君    理事 近岡理一郎君 理事 月原 茂皓君    理事 戸塚 進也君 理事 前田 武志君    理事 宮下 創平君 理事 田口 健二君    理事 竹内 勝彦君 理事 和田 一仁君       有馬 元治君    石川 要三君       内海 英男君    江藤 隆美君       河野 洋平君    中村正三郎君       宮里 松正君    武藤 嘉文君       村井  仁君    森下 元晴君       谷津 義男君    五十嵐広三君       大出  俊君    角屋堅次郎君       広瀬 秀吉君    井上 和久君       鈴切 康雄君    塚田 延充君       浦井  洋君    柴田 睦夫君  出席国務大臣         農林水産大臣  佐藤  隆君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 小渕 恵三君  出席政府委員         総務庁行政監察         局長      山本 貞雄君         北海道開発庁計         画監理官    大串 国弘君         防衛庁参事官  児玉 良雄君         防衛庁参事官  鈴木 輝雄君         防衛施設庁施設         部長      鈴木  杲君         法務省人権擁護         局長      高橋 欣一君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君         農林水産大臣官         房長      浜口 義曠君         農林水産省経済         局長      眞木 秀郎君         農林水産省構造         改善局長    松山 光治君         農林水産省農蚕         園芸局長    吉國  隆君         農林水産省食品         流通局長    谷野  陽君         農林水産技術会         議事務局長   畑中 孝晴君         食糧庁長官   甕   滋君         林野庁長官   松田  堯君         水産庁長官   田中 宏尚君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局経済部調         整課長     関根 芳郎君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         文部省教育助成         局施設助成課長 遠山 耕平君         厚生省生活衛生         局食品保健課長 大澤  進君         厚生省生活衛生         局乳肉衛生課長 難波  江君         通商産業省基礎         産業局化学肥料         課長      坂野  興君         建設省住宅局住         宅生産課長   城戸 義雄君         内閣委員会調査         室長      大澤 利貞君     ───────────── 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   井上 和久君     武田 一夫君 同日  辞任         補欠選任   武田 一夫君     井上 和久君 同月二十四日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     中村正三郎君   川端 達夫君     塚田 延充君 同日  辞任         補欠選任   中村正三郎君     大村 襄治君   塚田 延充君     川端 達夫君     ───────────── 三月二十四日  国家機密法制定反対に関する請願工藤晃紹介)(第一〇一三号)  同外一件(寺前巖紹介)(第一〇一四号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一〇一五号)  同(矢島恒夫紹介)(第一〇一六号)  国家秘密法制定反対に関する請願伏木和雄紹介)(第一一〇八号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  農林水産省設置法の一部を改正する法律案内閣提出第六号)      ────◇─────
  2. 宮下創平

    宮下委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が都合により、指名によりまして、私が委員長の職務を行います。  内閣提出農林水産省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。角屋堅次郎君。
  3. 角屋堅次郎

    角屋委員 きょうは、農林水産省設置法の一部を改正する法律案について、過般、本委員会提案理由説明があり、そして本日、休憩なしのぶっ通しで審議をいたしまして法案の処理をするということを理事会でお決めになっておりますが、その理事会決定に基づいて、久方ぶりに農政関係の諸問題等も含めて大臣並びに政府委員お尋ねをいたしたいというふうに考えておるわけでございます。  我々は、この設置法の一部改正そのものについては、今日の農林水産省が国際的な非常に難しい問題に対応していかなければならぬ、大臣がしばしば関係国に訪問いたしまして直接折衝に当たるということもなかなか困難でございますから、それに対応する体制をとるということには基本的に賛成であります。  まず、当面のガットを中心にした国際的な諸問題について若干お尋ねをいたしたいと思っております。  佐藤農林水産大臣は、昨年十一月六日、私と同期の竹下内閣発足に伴いまして、参議院、衆議院を通じて自民党内の農政通と言われる佐藤さんが農林大臣になられたのは、まさに人を得た、こういうふうに私も思うのでございますが、あれはたしか就任早々間もなくの時期に大臣とある会合でお会いしましたら、就任のお祝いと同時にこの時期御苦労さんだなとみんなから言われているんだよと言われましたけれども、しかし、内外情勢が難しいときに農林大臣に御就任になること自身は、古い言葉で言えば男子の本懐、政治家の本望ということであろうかと思うのでありまして、これは単に政府・与党あるいは国民に対してばかりじゃなしに、野党の我々の期待にこたえるという、そういう責任感でぜひ対応してもらいたいものだ、こういうふうにこいねがう一人でございます。  そこで、御案内のとおりガットにおきます十二品目提訴に基づいた昨年十二月早々ガット総会、そして本年二月に持ち越されまして、二月のガット理事会日本としては、落花生、雑豆を除く十品目について、もちろん粉乳であるとかあるいはでん粉であるとか、こういった問題については、この条文上の解釈問題あるいは国家貿易にかかわる問題、こういうことについて基本的な日本見解を述べながらも、全体としては、ガットの紛争の場合の処理手続と国際的な関係というものも判断をして、これを受け入れるという態度を表明したことは私ども承知をいたしておるわけでございます。  しかし、本来我が党の立場からいえば、政府見解そのもの、あるいは政府がこれを受諾すること自身、あの二品目以外の他の品目をつまびらかに検討してみますれば、これはやはり沖縄パイン缶詰等は、戦後、占領下の中で見出したパインの問題が、今日自由化の荒波に立たされるというふうな、沖縄農業実態からしては極めて問題の多い、そういう問題も含めてまことに遺憾な選択であったというふうに率直に思うわけでございますけれども、しかしそれはそれとして、ガット総会あるいはそれに引き続く理事会で十品目について議長が最後にこれを採択決定するときに、日本主張あるいは各国がそれに関連して述べた意見、こういうものを全部テークノートして、そして採択ということになったことは、私ども議事録その他を通じて承知をいたしておるところであります。  そこで、この十品目について基本的には受け入れるということになりますと、当然のこととしてこれに対する自後の国境措置あるいは国内措置というものをどうしていくかということは、まさに地域産業に大きな影響を持っておる関係農民からすれば、どういうふうな対応措置を講じてくれるかということはやはり真剣なこれからの問題でございまして、これについては農林省としてはプロジェクトチームをつくって鋭意検討中、こういうことを私どもも聞いておるわけでありますが、具体的にこれらの品目自由化の時期あるいは国境措置生産対策等対応について、基本的にどう考え、今どういうふうな検討段階にあり、進めていかれるのか、こういう点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  4. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 あえて角屋先輩と申し上げますが、超党派的な農政懇談会等を通じまして、参議院時代から常日ごろ叱咤激励をいただいてきたところでございまして、心から感謝をいたしておる次第でございます。今後とも、また難しい局面を迎えておりますが、御指導、御鞭撻をお願い申し上げたいと思います。  今、ガット違反とされた十品目についての今後の対応、基本的な考え方についてただされたのでございますけれども、今後のこの件の処理、これにつきましては、国内農業に不測の悪影響を与えることのないようにすることがまず大切な基本でございます。  乳製品でん粉については、輸入数量制限撤廃は行わない方針米国などとの話し合い等に臨む考え方でございます。米国側相当程度理解をしてくれておるものと承知をいたしております。  それ以外の品目につきましてはガットに適合する措置に移行することとなりますが、品目別地域別には、四月一日からでも数量制限撤廃自由化になるのではないかという心配もあった地区もあるようでございますけれども、今委員からお話がございましたように、プロジェクトチームで真剣に検討をしておるところでございまして、各方面の意見を聞きながら、国内措置国境措置について最大の努力を払ってまいりたい、こういうことで今取り組んでおるさなかでございます。二月一日に発足いたしまして、いましばらくの時間的猶予をいただきたい。  そして、その内容スケジュール等が決まりましたならば、一日も早くそれを関係者には周知徹底する、御理解をいただく。そして、あるものは、これはこのように、またあれはあのようにということで品目ごとにいろいろ対応が違ってくると思います。しかし、スケジュールとしてはこういうことでということを、明確に一日も早くプロジェクトチームの成果の結果をお示ししなければならぬ、こういうことで事務当局を督励いたしておるところでございます。     〔宮下委員長代理退席委員長着席
  5. 角屋堅次郎

    角屋委員 恐らくこの十品目、特に粉乳あるいはでん粉の問題は、大臣が明確にお答えになった御方針でこれから対応されると思いますけれども、自余の品目については、比較的対応を早くしていく部面とぎりぎり相当なところまで遅くなる部面、これは問題別によって率直に言って出てこようかと私は思います。  同時に、この問題の対応は、単に日本でこういう方針を決めて単独で実施すればよろしいというのではなしに、やはり関係国とそういう問題について話し合いも進めなければならぬ。そして同時に、それらの日本対応策について、関係国もそれはそれでいいだろうというふうなことで対応策を進めていくことは、これからの推移であろうと思いますが、関係国との協議問題ということについては、この十品目の問題についてはどういうふうにやられるのでございましょうか。
  6. 眞木秀郎

    眞木政府委員 本件につきましては、国内におきます国内対策あるいは国境措置等プロジェクトチームでの検討の中で、やはりこれの検討状況等をにらみながら、関係各国、特に提訴当事国でございますアメリカへの説明、そこの中で理解を求めていくということがやはり必要になるわけでございます。御指摘のとおりでございます。  アメリカに対しましては、去る二月に当省におけるプロジェクトチーム設置、これによる検討を進めるといった点を踏まえて、今後の手順等につきましてアメリカ側に対して説明を行ったところでございます。具体的な内容につきましては、まだプロジェクトチームで作業中でございますので、これを踏まえて検討する、実務家レベルでよく検討してまいりたいということを向こうに説明をいたしました。  その中で、特に自由化が困難である、輸入数量制限撤廃を行わないとしておりますでん粉それから乳製品につきましては、アメリカ側に対してもその旨改めて説明をいたしました。この中で、この二品目につきましては、特にアメリカとの関係では、貿易実態アメリカからは貿易と申しますか輸入実態がほとんどないわけでございますので、代償等は必要がないと言ったわけでございますが、アメリカ側代償が必要であるということで、まずとりあえずそういう見解の交換と申しますか、そういうことを行ったところでございます。  具体的には、先ほど申し上げましたプロジェクトチーム検討状況に応じまして、その他の関係国からまた申し入れ等がある場合には、これに対応して適切に措置してまいりたい、このように考えております。
  7. 角屋堅次郎

    角屋委員 いわゆるガット、この成立は、一九四八年一月一日にこれが発効して、当初一九四八年には十九カ国の加盟でスタートした。日本がこのガット加盟したのは一九五五年であります。逐次ガット加盟国がふえてまいりまして、今日では九十六カ国ということに相なっておりますが、その中には、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、西独、日本等先進国もあれば、インド、ビルマ、パキスタン、タイ、韓国、ブラジル、メキシコ等相当数発展途上国があり、共産圏ではキューバ、チェコスロバキア、ユーゴスラビア、ポーランド、ルーマニア、ハンガリー、この六カ国も含めた九十六カ国の加盟国で今日形成されておるわけでございます。  これにソ連中国が、この加盟国には共産圏でも入ってないわけでありますが、これはソ連中国加盟を選択してないということなのか、あるいはガット加盟国の方で加盟について問題があるのか、その辺のところを簡単にひとつお話しを願いたいと思います。
  8. 眞木秀郎

    眞木政府委員 ただいま委員指摘のように、いわゆる計画経済主義諸国、これらの国々も、現在の平和な状況のもとでやはり貿易をふやしていこうということで、ガットには大変関心を持っているわけでございます。そういうことで、まだ直接加盟していない国々も、例えばオブザーバーというような資格で出席をして、こういう自由貿易圏内における先進国あるいは開発途上国を含めたいろいろな議論を聞いておりますし、また、その中の幾つかの国は既に加盟をしておる国もございます。  しかし、やはり基本的に計画経済諸国国々は、例えば貿易にいたしましてもやはり国家貿易というような形で輸出入を規制している国々が多いわけでございまして、それがガットに入りますと、いわゆるガットの基本的には自由貿易考え方に立った規則なりルールに従わなければならないという問題がございまして、そういう国々ガット規則に従ってやることについてはいろいろな問題もあるということがございます。それからまた、仮に加入を申請いたしましても、やはりそこを見きわめる必要があるということで、政治的な問題も絡めてそれに対していろいろ意見を言う既に加盟している国々もございます。  基本的にはそういう国々ガット世界に入ってやっていただくことが好ましいというのが一般的な考え方のように観察をしておりますけれども、そういう問題もございまして、まだすべての国々、ただいまおっしゃったような国々も含めまして幾つかの国々は、そういう準備を進めながら、やはり加盟をしたいという国としばらくは様子を見守っていたいという国があるというふうに見ておるわけでございます。     〔委員長退席宮下委員長代理着席
  9. 角屋堅次郎

    角屋委員 日本が、ガット発足、その後における加盟後、いわゆる工業関係は国際的に見て日本最先端を行くという状態で、今日貿易摩擦問題等も生ずる状況でございますが、反面、残念ながら農業サイドになりますと、いわゆるアメリカ等から比べれば農業面では中進国というふうな状況に置かれているわけでありまして、それだけに、農産物の十二品目問題、これから大変厳しい重要な段階に来ております牛肉オレンジ問題、こういうものを考えてまいりますと、日本最先端を行く工業面輸出貿易黒字は確かに稼いでおるわけでありますが、同時に、アメリカ債務国に転落するという事態の中で、日本世界でもいわば最大債権国というふうな段階に来ておるわけであります。  しかし本来、工業と違いまして、農業そのものは、従来からもガットの舞台でも、国家貿易品目取り扱いであるとか、いろいろ農業の、それぞれの国におけるいわゆるできるだけ国内生産で自給を確保する、これは食糧安全保障という問題も基本的にはありますけれども。そして足らざる点、あるいはその国内生産で非常にコスト高であってむしろ安い外国からのものを入れた方がよろしいという、ある程度各国自由裁量の幅という中で農業問題については処理さるべきが、ガットの問題におけるこれまでの伝統の流れの中にあったというふうに私は理解をしておるわけであります。  そういう点で、過般の十二品目、その中の十品目の問題に対する日本政府側の代表の意見の中でも、いわゆる成立以来の過程に触れ、その基本的な認識に触れ、そして十品目を取り扱おうとするそのパネル報告について具体的に各項目に触れて意見を述べたところは、私ども承知しておるところでございます。  このニューラウンドが今話し合いが既にスタートしておりますけれども、そういった問題の中で、やはり各国農業の持つ基本的な性格あるいは事情、あるいは基本的に国内生産に対する重要性というものを考えた上に立った新しい農業問題、食糧問題に対するガットにおけるニューラウンドを通じてのルールが形成されていくということが本来望ましいわけでありまして、そういう中で、日本の十二品目問題、今非常に大詰めの段階に来ておると言われます牛肉オレンジ問題も、本来ならばそういうニューラウンドの中で各国それぞれ新しいルールづくりをどうすべきかということで論じられてしかるべき問題だと思うのであります。  政府自身も述べておりますように、また、ガット理事会各国からいろいろ意見も出ておりますけれども日本のこの問題に対する取り扱いについては賛成しながらも、これはこの案件に対する賛成であって、これが全般的にやられることについては態度を保留するというふうに率直に意見を申し述べておる国が幾つもあるわけであります。  私は、アメリカの今日日本に対する、特に農産物に対する異常なバッシングジャパンバッシングという背景は何かということをいろいろ考えさせられるわけであります。私は、多くの時間をかけてこの問題に触れようとは思いません。日本が第二次大戦で敗れ、その後アメリカ日本の復興について大きな力を尽くした、この敗戦国が今日GNPではアメリカに次ぐ第二位まで伸び上がってきた、そしてアメリカが諸般の情勢財政赤字もあれば貿易赤字もあれば、双子赤字で、これをどうするかで苦悩しているときに、日本がそういう状態まで伸びてきた。そこで、軍事的な問題は後ほどのえびのの問題で少し触れますけれども、とにかくこういうアメリカ状況等から見てもう少し市場開放をやるべきだという強い要請の背景には、日本の急速な経済発展経済力アメリカ双子赤字等も含めたいろいろな難問題というものが交錯しておることが、日本に対するジャパンバッシングの一つの有力な背景にあろうかと思います。  そうはいっても、アメリカ自身、常に、日本市場開放アンフェアであるということをいろいろな問題で言ってきておりますけれども農産物関係は、大臣も御案内のとおり、アメリカ自身加盟国の非常に少ない時期に、一九五五年の三月にウエーバー条項というのを決定をし、ガット上ではこれは合法的な取り扱いを受けておるわけであります。  およそ世界最大農産物輸出国であるアメリカがこういうものを期限つきでなくいつまでも続けるということ自身が、ガット上では一応合法的な取り扱いになっておりますけれども、絶えずこれが問題にされ、今回のこの十二品目問題でも日本がこういう問題を取り上げ、各国からもそういう問題が指摘されておるということは御案内のとおりであります。しかも、牛肉等輸入については国内法でさらに制約を加えるということさえやっておって、後ほど触れます牛肉の問題については、日本自由化を明示しなければ交渉のテーブルに着かないといったような態度は、我々としては、厳しく批判されなければならない、こういうふうに考えます。  日本国民世論調査は、従来から、世界で最も好きな国といったらまず筆頭に挙げるのはアメリカである、世界で最も嫌いな国といってまず筆頭に挙げるのはソ連である。しかし最近のアメリカのいわゆる公共事業に対する参入問題とか、あるいは日本心臓部まで迫ろうとする農産物牛肉オレンジあるいは米まで及ぼうとする最近の情勢を考えますと、日本国民の中でも、アメリカは余りにもむちゃくちゃじゃないか、国際的に見ても日本立場から見ても、日本農業の置かれておる立場というのをもっと理解すべきじゃないかというほうはいたる意見が台頭しておることは間違いございません。  農業団体も三月の早々に、牛肉オレンジ自由化反対というようなことで御承知のような総決起集会をやりましたし、きのうは、もっと幅を広げで消費者団体も含めて、日比谷の野外音楽堂自由化に対する反対集会がございまして、私も出席をしたのであります。総理府の農産物等自由化問題に対する世論調査の結果も、大臣承知でありますけれども、それを見ても、少々割高ということがあってもやはりできるだけ食糧国内で自給すべきであるというのが七〇%を超えておることは我々も承知しておるわけであります。  日本国内でも、名前は一々挙げませんけれども団体でいえば経済団体、日経連だとか経団連だとか、いろいろなところは従来からもいろいろ言ってまいりました。いわゆる学者とか評論家という中にも、僕らのような農村出から見ると実に腹立たしいような——そういう諸君は、一月でも二月でも、北海道でも東北でもいいんだけれども、みずからもそういうところへ現実に行って、農業実態あるいは農作業の実際の体験をするということをやらしてみたらどうだというふうな怒りを感ずるような現状離れ評論等を従来からも見ておるわけであります。  そういう意味では、日本農業は、国際的には外圧を受けながら、国内的には内圧さえ、当たらざる批判まで受けて、非常に厳しい状況に置かれておるという認識を私は持っておるわけであります。農林大臣としては、こういう内外の厳しい情勢の中で、農政を担当しながら、外国の厳しいガット上の注文等日本農業立場でさばきながら、次代の農村の青少年の諸君に明るい希望をどう与えていくかということ、これはまさに佐藤農林大臣の手腕にかかっておるところが大きいというふうにさえ感ずるわけであります。  そこで、当面の緊急な事態に来ております牛肉、かんきつ問題に対する対応について、大臣にお伺いをいたしたいと思います。  アメリカ側日本に対する主張、これは先ほど言ったウエーバー条項とか牛肉に対する彼らの国内法でとっておる措置とかということをまつまでもなく、かさにかかった非常に強圧的な態度だ。そういうことにかかわる限りにおいては、かつて日本中国日中平和友好条約を結ぶときに、中国アメリカソ連はいわゆる覇権主義の国であるということを厳しく言ったわけでございますけれども、なるほど力は衰えてもアメリカは軍事的には西側の核超大国、また経済的には、少々競争の立ちおくれの部面もありますけれども巨大な産業国家であります。しかも国土は日本の二十五倍、その中に、資源も日本にないものまで相当ありますが、人口は二億三千万、そして、そういうところで世界最大農産物輸出国ということに位置をしております。  このアメリカが、日本のような非常に狭い国土、しかも山が七割を占めておる、平場で農業をやらなければならぬ、また沿岸、沖合、国際にかけて、後ほど触れますけれども、漁業をやらなければならぬ、国民食糧を安定的に確保しなければならぬという厳しい状況に置かれて営々努力しておる日本に対して、国家貿易品目として現にガット上では十七条四項(a)で米あるいは大麦、小麦、裸麦、バター、それに牛肉等も含めてちゃんと登録してある、不可侵とは言いませんけれども、その登録してある国家貿易品目牛肉にまで迫ろうとする、一体何たることだという激しい憤りが私どもに沸き上がってまいるわけでございまして、牛肉オレンジ問題については断じてアメリカ側の要請を受けるわけにいかぬという強い姿勢で臨むことが基本方針でなければならぬ、私はそう思うのであります。  大臣も、法案の審議で、この内閣、農林水産の衆参両院関係では日切れ法案を含めて重要法案がやはり相当控えておる、その中で心なかなか積極的に進まざる点があるけれども、竹下総理の命とあらばアメリカにも行かなければならぬ、夜もちょっとおちおち寝られぬような、そういう気持ちが率直に言って大臣の心境の中にあるかと思うのであります。  しかし、佐藤農林大臣は戦後五十一代目の農林水産大臣であります。私が三十三年五月に初当選して、この春で三十年になりますけれども、歴代の農林大臣の中では、福田さんも総理になられ、それから鈴木さんも総理になられ、私と同期のニューリーダーの安倍さんも早晩総理になるんじゃないか、こういうことでありましょうから、何も佐藤大臣に総理を目指せと私は言いませんけれども、歴代農林大臣、その後に農林水産大臣に名称が変わりましたけれども鈴木さんの場合は、二百海里の新しい時代で何回もソ連との間を通って、我々も超党派議員団を派遣しなければならぬということで櫻内さんを団長として派遣をするという中で、二百海里時代の中の日ソの交渉なんというのは鈴木さん、後ほど総理になられましたけれども、随分苦労された。  福田さんは、ちょうど私の三重の関係を含めて、東海の伊勢湾台風当時の農林大臣で、連日地元の人を連れて福田大臣を訪ねて、災害対策を万全にやってくれというようなことで言った方でありますけれども、とにかくずっと私が当選して以来の歴代農林大臣を見ても、厳しいときにその試練を乗り越えた大臣も幾らもおられる。農政のベテランの佐藤農林水産大臣が訪米をちゅうちょするようなことがあってはいかぬ、みずからこの難局を打開するのはおれ以外にないということで訪米をしてもらいたいというふうな気持ちを率直に言って持つわけであります。  牛肉、かんきつ問題に対する我が党並びに私が率直に申し上げました考え方は、考え方として述べたとおりでありますけれども牛肉、かんきつ問題に臨まれる、そして近く訪米されるというふうに思うわけでありますけれども大臣の基本的な考え方について率直に御答弁を願いたいと思います。
  10. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今、角屋委員から、今日に至る歴史的経緯等についても段々の御意見がございました。その今日までの流れについては、その認識はほとんど私と同様であると、感じ入って承りました。  私は戦後五十一代目ということだそうでございますけれども、明治十四年農商務省設置以来、当時は農商務大臣と言わずに農商務卿という肩書であったそうでございますけれども、それから数えて私が百十九番目でございまして、何か因縁めいたものを感ずるわけであります。火も消さなければなりませんが、また新たな構築もしなければならぬ、かように緊張の連続でございます。  そういう意味で、今、後段に申されました牛肉、かんきつ、この問題については非常にアメリカ側態度がけしからぬではないかというお話でございます。三月末というこの大きな節目を迎えまして、私も感慨こもごもでございます。中川農林水産大臣とストラウス当時のUSTR代表と話し合ったときに随行したのも私でございました。量的な問題が中心でございました。しかし今、自由化を明示しなければテーブルづくりはしない、話し合わない、こういうかたくなな態度でおられますし、また、いろいろな刺激的な言葉も伝わっておりますので、私自身不愉快に思うこともございました。  しかし、この三月末を迎えまして、私自身は、同盟国というものがその意義は何であるかということも、実は自分に繰り返し繰り返し言い聞かしておるわけでございますし、この際いら立ちにいら立ちを私が重ねたのでは、同盟国としての関係はどうなるのであろうか、そこらはひとつ冷静に、私自身も円満な解決に向けて平和裏に同盟国らしい話し合いができることを期待しながら、あと幾ばくもなく三月末を迎えるわけでございますが、そのときまで精力的にあらゆる手だてを講じながらテーブルに着く努力を、今一生懸命しておるところでございます。  訪米にちゅうちょすることなかれ、こういうお諭しでございます。私は、歴代大臣が困難な問題を乗り越えてきたその足跡を振り返りながらも、私自身は困難に当たって逃げないという政治家の信条、これが大事だと心得てきた私でございますので、訪米をすることについてやぶさかではございません。しかし、何としてもテーブルに着く、話し合うということができなければこれは話し合いにはならぬということで、先ほど申し上げましたとおり、そのことについて全力を傾けておる、必ずわかってくれるものと期待をしながら私は冷静に今対応をいたしておるところでございますので、御理解を賜りたい、こう思っております。  なお、テーブルに着いたならば、我が方の主張自由化は困難であるということを率直に話し合って、そして円満解決に向けてさらに最善を尽くしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。
  11. 角屋堅次郎

    角屋委員 引き続き同僚の我が党の五十嵐さんからも同じ持ち時間で質問が展開されますので、今の牛肉オレンジ問題に対する大臣の御答弁を承ったところで、牛肉、オシンジ問題についてはこれで一応質問は終わりといたしまして、次の問題に入りたいと思います。  農林水産省設置法一部改正では、冒頭に申し上げましたように、農林水産省に新たに農林水産審議官を設置するということに対しては私どもは基本的に賛成でありますが、少しく、この設置を法案としてお願いする農林省の考え方立場というものについて、これは法案でございますので提案理由説明もございましたが、御説明を願いたいと思います。
  12. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 角屋先生の今の農林省設置法の改正を行おうとする趣旨についての御質問がございましたので、私の方から簡単にその経緯等につきましてお話し申し上げたいと思います。  我が国の農林水産業を取り巻く最近の国際情勢は、先生、先ほどからお話がございましたように、国際経済構造の変化等を背景にいたしまして、国際収支の不均衡等一段と厳しさが加わっているわけでございます。これら農林水産業をめぐります国際問題は、従来の個別農林水産物の国境保護措置の問題というものから国内農林水産政策全般にかかわる問題へと拡大をし、質的に大きく変化をしているところでございます。  今回の設置法の改正につきましては、このような情勢対応しまして、農林水産行政の強力な推進を図るために早急に体制を整備することといたしまして、全省的な立場から各局間の調整を要する重要な国際問題等につきまして事務レベルでの最終政策調整を行うとともに、最近の国際交渉等に見られますように、高級レベルの対外交渉あるいは国際会議等に対応する職といたしまして次官クラスの農林水産審議官を設けていただきたいということを考えるに至りまして、今回御提案を申し上げた次第でございます。
  13. 角屋堅次郎

    角屋委員 冒頭に触れましたガット問題で私もう一つ感じておることは、国際連合食糧農業機関、FAOと従来言っておりますが、これは、農業問題について各国のいろいろな状況を分析しながら、そしてまた人口の増大傾向に対応していかに国際的に食糧を供給していくかという立場から、これは数年前になりますけれども、「FAO二〇〇〇年の農業—二十一世紀への挑戦—」、久方ぶりにもう一回読み直してみたのですが、大体この農業問題を議論するガットの場というのは、もっと買えとか自由化しろとか、そういう議論じゃなくて、世界食糧問題、あるいは開発途上国等も含めた人口の急激な増大に対して先進国としてどう対応するのか、開発途上国自身のプロパーの農業発展についてどうサポートするのか、いろいろな問題がグローバルに議論されているのですね。ガットというのは、日本がこれを自由化せい、あれをどうだというような形で、アメリカにしたって各国にしたって、それがいいとか悪いとかということじゃなくて、グローバルな議論だ。  基本的に言えば、各国食糧安全保障問題、あるいは二十一世紀を展望した急激な人口増加に対する国際的な食糧の供給状況、生産状況はどうなるのか。食糧は、雨量の多いところもあれば少ないところもあり、土壌の関係がいろいろあり、一たん耕地を他の物に、宅地やその他に変えてしまうと、再び返らない。食糧は命の糧でありますから、したがって、ガットの議論というのは非常に短絡的であって、もっと国際的視野に立った、先進国開発途上国も含めた人口増加に対し、飢餓の人口が数億という今日の事態の中でどういうふうにしていくかという人道的な立場も含めたそういうことが根底にあって、現状の中で日本自由化の問題をどうするのか、あるいは他の国の自由化問題をどうするのか、あるいはニューラウンドの中ではそういうFAO的な感覚を基調にした議論がなされなければならぬ、農業の問題は断じて売り買いの問題ではない、そういうふうに思うのですね。  この「FAO二〇〇〇年の農業—二十一世紀への挑戦—」というところは、どの程度の知能のあるのがガットのメンバーで協議するのか知りませんけれども、こういうところに基調を置いて具体的な問題を議論することがなければならぬということは、こういう問題をいろいろやっておるのを見て私の痛切に感ずることなんです。これは次の問題に入る前に意見として申し上げておきたいと思います。  盛りだくさんなことを、平場から山から海に至るまでいろいろやろうと思っておりますので、次に入らしていただきます。  このごろ財界の諸君とか心なき評論家諸君に、食糧安全保障というようなことは歯牙にもかけないという傾向が非常にあるのですね。これは基本的に間違いだと私は思うのです。国会でも、もう深く触れませんけれども食糧自給力強化に関する決議なんというので内海さんが提案をされて、当時、武藤農林水産大臣がこの決議の趣旨に基づいて最大限の努力をしてまいりますと答弁しているのですね。これは国会の変わらざる食糧問題に対する基本的な見解だ、私どもはこれは今日でも基本的に続いておると受けとめておるわけです。  そういう自給力の問題で考えますと、もう大臣はベテランでありますから十分御承知のとおり、主要国の穀物自給率を見ますと、日本は一九七五年四〇%、八二年には三三%、今日それをさらに微減をさしておるわけですけれども、イギリスは同じ一九七五年六四%、今日では一一一%。西ドイツが当時八〇%、今日九五%。フランスが当時一五二%、今日では一七九%。アメリカは当時一七四%、今日一八三%。カナダは当時一七一%、今日二二二%。いわゆるサミットで顔を合わせようかという国々は、これは一九七五年と対比しました八二年の数字を申し上げましたが、着実に穀物自給率は上げておるわけです。  にもかかわらず、日本は四〇%が三〇%の初めまで落ち込んでおる。経済大国だ、世界最大債権国だ、こんなのは将来ともに続くのかどうかは国際経済の波動の中でわからない。今は金があるから、飽食のような状況にあるからというので、心なき評論家なんというのは勝手気ままなことを言っておる。第一次オイルショックの例を見るまでもない。  そういうことで、主要な先進国食糧自給、特にイギリスなんかは第二次世界大戦で食糧では随分苦労した。だから、一定の食糧は確保しなければならぬと身にしみた体験がある。これは日本だって大なり小なり同じことなんですけれども、そういう体験に基づいて、かつて七つの海を支配したイギリスは食糧自給には積極的である。だから、一九七五年の六四から今日は一一一まで引き上げておる。サッチャーさんが国際舞台で女性宰相として堂々とやれるのも、食糧にはちゃんと安心のできる基盤を持っているということだ。竹下さんがこれから自給力低下なんかになったら、国際舞台で金がございますというだけでは迫力がない。  そういうことで、国会の決議の問題もありますが、主要な先進国の穀物自給率の上昇傾向から見て、今言われておる畜産とかあるいは米とか、こういう心臓部にまで及んでくるということになると、非常に重要な穀物自給率そのものが極めて低下をするような状況に追い込まれかねない。  最近テレビを私見て、具体的なデータまでとっておりませんけれども、著名な、農林省の総合研究所なんかに関係をしておりました千葉大の唯是康彦教授が、もし日本が米の自由化をやられたとしたら、どういうシミュレーションの結果が、いろいろな仮説は置きますけれども、出るのかということで、外国からやがて五百万トン近く米が入ることになるだろう、逆に言えば、日本の一千万トン台の米は半減をするだろう、それによって百万を超えるような失業者が出てくるだろう、日本の農家は二百五十万戸が百万戸を割るだろう、これは一定の仮説を置いてのいわゆるシミュレーションの結果ですけれども、これは全くの素人じゃなしに、食糧問題については本も著されて、相当詳細を承知した上に立っての一つの予測データが出ておるわけですね。  米の問題までアメリカが、議会の舞台も含めてやってくるなんというようなことは全くけしからぬ話だというふうに思うのですね。そういう点で大臣は、食糧自給率あるいは食糧の安全性、安全保障という問題に対してどういう御認識を持っておるか、お伺いしたいと思います。
  14. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 御存じのように、我が国の食用農産物の総合自給率は七割程度を維持しておりますけれども、カロリーの自給率は五割程度、穀物自給率は三割程度となっておるわけでございます。そういう状況の中で、主要食糧、これは我が国でひとつできるだけ自給をしていく。もちろん需要と供給のバランスも考えなければなりませんけれども、米については完全自給をしていく。先ほど国会の決議も引用されたわけでございますが、そのとおりでございまして、一部の主要農畜産物についてはまだまだ割っていくのではないか、こういう予測もあるようでございますが、今の自給率をさらにまた割り込むようなことがあってはならない。我が国の国民に対する食糧の供給というものは、私どもは、国内で自給したものと足らざるところ安定的な輸入体制、これをあわせて国民食糧の安定供給体制をつくっていく、こういうことに考えておるわけでございます。  なお、いろいろな評論家が、いろいろな財界人がというようなお話もございましたけれども、農協自体にもいろいろな批判がございます。農政にも批判のあることは承知しておりますけれども、第一線にある農業者も、このままではいけない、何とかひとつ、農業の採算性の追求もしながら国民に安定供給をしていく責任を果たそうということで、改革に改革を重ねていこうという一つの自覚症状が顕著でありますときに、権力をもって我々が行政を進めるわけにはまいりません。そういう状況の中でいろいろな評論家や財界人の一部の方々がいわれなき因縁をつけられるのはいかがなものか。私自身、経団連現会長にもたび重ねて、今自覚症状顕著なときにそっと見ておいてくれ、要らざる意見は言わぬでほしい、こういうことを率直に申し上げた経緯もここで御報告を申し上げて、私の考え方を御理解いただければありがたい、こう思っております。
  15. 角屋堅次郎

    角屋委員 米の問題について少しくお尋ねをいたしたいと思います。  米の問題ということになれば、食管制度の問題あるいは米の流通にかかわる問題では米流通研究会報告というのがあったりして、また同時に、農政審議会ではセクション別にいろいろ検討して、まあ三月末というのは少しずれるかと思うのですけれども、焦点の問題についてはひとつ議論の取りまとめをやろうという段階に来ておるわけです。そういう問題については時間の関係上触れるゆとりはございませんが、一つは、昔は豊作を喜んだのですけれども、最近は豊作になると、ああ過剰米が出るんじゃないか、農林省は豊作を喜ぶよりも米余りの方を心配するという、現実はそういう状況が腹の底の気持ちの中には出ておる。ことしの十月末には持ち越しが二百三十万トンになるのじゃないかというようなことが言われたりするわけですね。  そこで、具体的なそういう問題に対する対応というよりも、最近、米の一人当たりの食べる量が減ってきておる。一番米を食べた最高というのは、統計上では昭和三十七年の百十八・三キロが一番最高だろうと言われているのですけれども、それから六十年になりますと七十四・六キログラム、六割ぐらいにまで落ち込んでおる。  数年来、米消費拡大純米酒推進議員連盟というのがございまして、御熱心なたくさんの超党派の議員の先生方が参加をしておられて、根本龍太郎先生が会長当時に、満州の大同学院の同窓ということで、後輩でありますけれども、そんな関係があって、おまえ副会長をやってくれぬかというようなことでたまたま私お引き受けして、現在長谷川峻先生が会長ですけれども、この間も小沢事務局長等も含めて大臣にお願いもしたのですが、米の消費拡大というのは農林水産省も、熱心とは言いませんけれども、相当やっておられるのです。  これは強制的に食べよというわけにいきませんけれども、いろいろな諸工夫をしないと、せっかく米は国内自給だ、私も全面的に賛成であります。そうである限りは消費者の共感を得なければならぬわけですから、米が備蓄で想定されるもの以上に出てきて、第一次の過剰米対策、第二次の過剰米対策、再び第三次の過剰米対策というようなことになると、なかなか国民の共感が得られないということになる。     〔宮下委員長代理退席、戸琢委員長代理着席〕  そういった点で、米の問題はいろいろ減反等の問題もかかわり、農林水産省自身が立てておる緊急対策等の問題もかかわりますけれども、いかにして消費を拡大するかということを考えてまいらなければならぬ。  私どもは米の消費拡大の一環として純米酒推進ということを言っているのですね。最近は農業団体、農協の幹部も純米酒を飲もうというようなことで役員会では方針を決めて、全国的に純米酒をどれぐらい飲むようになったのかわかりませんけれども、私どもの選挙区の店頭でも酒屋さんには純米酒というものがずっと掲げられるようになったのですね。我々の運動の成果が、看板を立てたというところにも少し出ているのかなと思ったりするのですけれども、米の消費拡大、純米酒——純米酒というのは一つのタイトルでありまして、日本の国酒であります日本酒の消費というものについて安定的な確保をする。農林水産省としても格段の努力をすべき問題である、大蔵省にもかかわりますけれども、そういった問題についての御見解伺いたいと思います。
  16. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 米の消費拡大、そして純米酒の議連のことにまで触れられたのでございますが、副会長であります委員の私も部下でございまして、一議員として連盟に参加をしておりまして、その御意見は重々承知をしておるところでございます。  私は率直に物を言う方でございますので誤解があってはなりませんけれども、いろいろな統計があります中で、都会部と農村部に分けた米の消費の減退率というのがございまして、それが農村部にだんだん減り方が大きいということがありまして実は愕然といたした次第でございますけれども、米の消費拡大は真剣に全国民的運動としてひとつ御協力をお願い申し上げたい、我が方も一生懸命にやっておるところでございます。  なお、需給バランスのことについても過剰問題等触れられたわけでございますけれども、四十年代の過剰時には一兆円の金を、国民の税金を使う、また五十年代には二兆円の後始末の金が必要だ、今度はその当時ほどの数量ではないにしても、第三次過剰ということで世に問われたならばこれは大変なことになるということで、生産者団体にも汗を流していただき、また流通関係者にも御協力をいただき、もちろん消費者のニーズも頭に置きながら緊急対策等も取り組んだ次第でございます。  いろいろ御意見賜りましたが、この程度の御答弁でよろしいかどうか、よろしくお願いします。
  17. 角屋堅次郎

    角屋委員 今、農村部まで米の消費の減退が及んでおる。これは最近、米の問題のこれからの対応は系統団体も真剣に取り組まなければならぬ、米についてはせんべいその他もひとつ御婦人の方も食べるようにしようとか、農協の役員は純米酒を飲むようにしようとかいろいろ取り組んできておるわけです、事態がこういう状況だけに。ところが、従来の米価運動だとか最近の自由化反対だとかいうときに、東京へ上がってきてパンを食べておるのか米を食べておるのかといって一々は見ておりませんけれども、案外うどんを食べたり、パンでちょっとハンバーグでも食べようかというようなことがあるのじゃないか、あれあたりのところは、東京へ出てきても、率先垂範、農協の幹部は米消費拡大で実践をしておるという姿を、僕は時々ハッパをかけるのですけれども、示してもらいたいものだ。こういうふうにかけ声だけではだめだと思うのですね。大臣のおっしゃる、農村における、生産点の消費が落ちておるということは、もっと現場から消費が拡大するようにやってもらいたいものだと私どもも思っております。  そこで次に、非常に難しい問題で短時間で議論することはできませんけれども、構造政策上の問題について少しくお尋ねしたいと思います。  かつてECでは、価格政策から構造政策への転換といって、マンスホールドプランといいまして、私どもEC本部へ行って構造政策の議論を、国会から派遣されたときにいろいろ幾たびか訪ねて議論したことがございますが、この構造政策というのは言うべくしてなかなか難しい。しかし、大局的に見ればこれはやはり進めなければならぬということだと思いますが、農林省が構造政策をポイントとしてどういう点に着目して進めていこうとするのか、少しく御答弁を願いたいと思います。
  18. 松山光治

    ○松山政府委員 先生御指摘のとおり、現下の我が国農業をめぐる状況を考えるにつけましても、構造改善を積極的に進めていく、非常に重要な課題であるというふうに認識いたしておるわけでございます。  私どもといたしましても、昭和五十五年の農用地利用増進法の制定を初めといたしまして、制度面あるいは予算面でいろいろと努力もいたしてきておりますし、それなりの実績も上がってきておるというふうに認識はいたしておる次第でございますけれども、ただ、現下の情勢の厳しさあるいは期待される程度にかんがみますれば、なお格段の努力を必要とするだろう、このように考えております。  そういう認識に立ちながら、地域の実態に応じまして農地の売買や貸し借りあるいは農作業の受委託といったような多面的な形で取り進めてまいりまして、中核的な農家の規模の拡大あるいは能率的な生産組織の育成を図っていく必要があるのではなかろうか、このように考えておるわけであります。  その場合、特にどういう点に着目するのかという御質問があったわけでございます。やはり地域の実態に応じましてそれぞれの取り組むべき課題が異なるというふうに思っておりますが、基本的な諸点といたしましては、関係機関なり団体の密接な連携を図りながら農地の貸し借りの掘り起こし活動を強化していくといったような問題が一つあろうと思いますし、かつまた、前提となります土地基盤の整備を推進していくということも重要な課題であろう、さらには、農村におきます安定的な就業機会の確保をどのようにして図っていくか、こういった幾つかの課題があるわけでございまして、こういった課題に地道に取り組んでいく必要があろう、このように考えておる次第でございます。
  19. 角屋堅次郎

    角屋委員 構造政策の問題を進めるに当たっては、これは諸論があるわけでございまして、日本の場合に、農業基本法論議を池田総理といろいろ展開したことがございますけれども、あの当時は、基本法ではいわゆる自立農家の育成、協業の助長というようなのが柱だったのですけれども、このごろは自立農家というのはもう農林省も農政審もだんだん言わなくなって、中核農家だと。小倉武一さんの「基本法農政を超えて」というものをきのう改めて読み直してみたのですが、それには深く触れませんけれども、柱を、表現を変えていくというのはここでは深く触れませんけれども、どういう構造政策を進めるに当たっても結局は人の問題になる。優秀な人材、若い世代の諸君農村で、厳しい状況下でも自分が農業をやっていくんだ、食糧の担い手になるんだという人材を得なければならない、人を得なければならない。  そういう、人を得なければならぬときに、最近ではフィリピンからお嫁を迎えるとか、フィリピンだけじゃありません、その他の国からも迎える運動というのが若干ありますけれども、フィリピン大使館の、十年近くおられた女の方が、そういうことを議論する会合で、商売のような人が仲立ちをして、日本の慣習と違うフィリピンの女性が簡単な見合い程度で何もようわからぬ形でこちらに来るのは問題だと意見を言っておられる、そういう報道も私は見ているわけです。  全体的には外国人労働者の問題を国際化の中でどうするかということが議論されておる。だけれども外国人労働者の、日本でどういう受け入れ態勢をどの程度やるか、これは率直に言って、極めて慎重な姿勢で、必要なことについてはやはりやる必要が国際化時代にはあるだろう、こう思いますけれども、この後継者の嫁さんを外国から迎えるというのは、あんなのはと言っていろいろ女性の評論家は厳しく批判しますけれども、来ない人にとってはこれは深刻な問題でありまして、来ていただいている人に私は批判や意見を申し上げるつもりはないのですけれども、しかし長期的に見ると、これはなかなか問題だと思うのです。  むしろそういう点については、農林水産省は構造政策、優秀な後継者を得るという立場から花嫁あっせんをするわけじゃないのだけれども、政策上、地方公共団体なり農業団体なりあるいは市民団体なりのいろいろなアレンジの中で農村に後継者が来れるような政策誘導というものをやはり考えないと、構造政策をどうやろうといってみたって、地帯によっては昔から嫁不足というのはあったのですけれども外国から嫁さんを迎えなければならぬのは最近の事態ですね、それほど深刻な一面があらわれていると思うのです。  こういったフィリピン等から花嫁を迎えるという事態について、私先ほど若干これらの後継者の花嫁問題を申し上げましたけれども、農林省として誘導的に手を打っていくという施策が考えられていいと思うのですが、大臣いかがでございましょうか。
  20. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 花嫁さんのお話が出ましたけれども、愛情には国境がない、こういう原則、一つの哲学というか、特に今日の国際化が進む中で、それはそれ、確かにそのとおりだ。外国の方と結婚をしてうまくいく人もあるし、うまくいかない人もあるだろうという現実も承知をいたしております。しかし、そのことの是非について農林水産省としてコメントするのはいかがかな。しかし、たまたま先ほど人口問題等についてもお触れになった委員でございますから率直に申し上げておきますと、ファミリープランニングをちゃんと立てた上で、そして話し合った上で結婚はされるべきものであるという一つの考え方を率直に申し上げておきたいと思います。  なお、構造政策を進めるについてはやはり人の問題だ。これは何が重要かといえば、農業に魅力がなければならぬのでございますから、そういう意味において魅力ある農業ということに我々は最善を尽くすべきだ。それには、戦後農地解放によってみずから耕作権と所有権と利用権を得た農家が、その農地を価値あるものとするための土地改良事業も必要でございましょう、また農業者と農家というものを仕分けをして考える今日の実態も必要でございましょう。そういう意味から私どもは構造政策に取り組んでおるところでございますが、その基本はおっしゃるように確かに人づくりである、見てわかるような中核的、先導的な農家というものがなければならぬ。  しょっちゅう何か看板が変わるみたいで、表現が変わるじゃないかと言われるのでありますけれども、基本法の精神を曲げておるわけではございません。時代の流れに沿って、その都度わかりやすく言おうと思った努力の結果がまたそういう表現の変え方をしておるという部分もございますので、御理解をいただきたい、こう思っておるわけでございます。
  21. 角屋堅次郎

    角屋委員 林業関係の問題に入りたいと思います。  森林の持つ公益的機能あるいは経済的機能、あるいは国際的に森林の緑の重要性というものについて今さら触れるまでもないわけですが、日本の場合は国土の七割が森林である。これがやはり国有林、民有林ともに厳しい状況下に置かれておる。  大臣は、予算委員会等の御答弁の中で、最近は材価の上昇等もあって明るい兆しも見えておるがと言いながら林業の御方針について答弁をされておるのを私も承知しておるわけですけれども、これは最近、内需拡大、公共事業にNTTの売却益等も入れて、公共事業は去年も補正予算を組まれ、ことしは、大体従来のパターンから見ればゼロかあるいは若干の割り引きすべきところを、大体二〇%近く伸びる、そういう影響等もあろうかと思います。  この山の問題では、私ども林業対策特別委員会というのがあって、この内閣委の我が党のメンバーの広瀬さんが委員長で、私も副委員長で、最近国有林なんかに軍事基地ができたり演習がどんどん拡大したりいろんなことがあるものだから、もう今さら私の出番でもなかろうと思ったのですが、国有林軍事利用問題小委員会委員長ということを仰せつかって、過般、えびのにVLFの海上自衛隊の超長波の送信所をつくるというので、調査団長で行って現地を調査してまいりました。  帰ってまいりましてから大臣にも申し入れの際にいろいろ申し上げましたので、時間の関係もありまして深くは触れませんけれども、こういう国有林のところへVLFの送信基地で相当なスペースをとって、細かい数字は申し上げませんが、切り土があり盛り土があり、いろいろあるわけですね。ああいうところにそういう送信所、八基アンテナを建てるわけですけれども、せっかくこれからまだ育っていく木まで伐採をして、そしてやろう。調査団を代表して私自身大臣にお会いしたときに、国有林の管理運営を基本としながらと前置きして言われたのですがね。  最近、北海道から熊本営林局に至るまで、数年来の国有林利用の自衛隊の演習その他を見ると、件数が非常にふえているのですね。それでこれは北海道と九州で非常に多いのです。こういったところも、我が党の場合は基本的な見解があるから、その点では大臣の方は我々の方はということで違う立場もありましょうけれども、国有林の中でいろんな演習をやるのはできるだけ抑えたがいいというのが私の気持ちなんですね。  あのえびのにできるVLFの海上自衛隊の送信所については、絶対農林省としてはノーと、協議を求められたけれども売り渡しはまかりならぬ、所属がえまかりならぬ、ノーと言ってくれと言ったのですが、その辺のところ、国有林の軍事利用の問題も含めてどういうお考えでございましょうか。
  22. 松田堯

    ○松田(堯)政府委員 防衛庁など国の機関がその行政目的を達成するために国有林野を利用することは、公用としての利用、このように考えているところであります。  したがって、このような場合には、当該の土地がその利用目的から見まして必要か否かの検討とあわせまして、国有林野事業の管理経営との調整、また環境保全対策、さらには地方公共団体の意向等を総合的に勘案しながら判断をしているところでございます。
  23. 角屋堅次郎

    角屋委員 地方の代表団が来たときに、防衛庁にも私、代表団と一緒に行き、農林省の方は、大臣に引き継いでの第二回の農林省交渉は林野庁の長官とやったのです。私はその会ったときに、林野庁の長官の答弁を聞いておって随分腹が立ったというあれがある。  林野庁の場合は、民有林も含めた全体的な問題がございますが、特に国有林については今日なかなか経営上厳しい状況にあって、しかも林業全体の中では指導的な役割を果たしていかなければいかぬ。いいのは国有林を見てくれ、あなたの私有林の方は国有林をまねせいというぐらいに国有林はやらなければならぬ。そんなときに、自衛隊の国有林野への入林状況は、五十九年が三百五十三件、六十年が四百九件、六十一年が四百件というようなことで、これは北海道と、熊本が一番多いのですね。  これは軍事的判断というのがあるのかどうかは別として、そういうことも含めて本来の使命に専念する気迫というのか考え方というのがちっとも出ていない。私は三十年農政の道でやってきたので、ちょっと腹が立ったのだけれども、それを大臣ならともかく私からしかりつけるわけにいかぬものだから、少し感情を抑えたんだけれどもね。  そこで、防衛庁からも来ていただいているのですが、えびのにつくろうとする海上自衛隊の送信の能力というものはどの程度のものなのか、それを少しく御説明願いたいと思います。
  24. 鈴木輝雄

    鈴木(輝)政府委員 お答えいたします。  えびの市に建設を予定しております超長波、VLFと申しておりますが、送信所から送信いたします電波がカバーいたしますエリアにつきましては、我が国の主要海峡等の防衛で行動いたします我が国の潜水艦の海域をカバーしてございます。  超長波の到達する範囲といたしましては、種々の条件がございまして一概に申し上げられませんが、えびの市から我が国の主要海峡の一つであります宗谷海峡まではおおむね千海里程度ございますが、この辺が到達する一つの目安になるのではないかと思います。また、電波の到達いたします潜水艦の深度でございますが、超長波は水中約十数メートル程度までは通過するものと言われております。
  25. 角屋堅次郎

    角屋委員 防衛庁関係はやがて、今次国会で審議が日の目を見るかどうかは別として、その審議の俎上に上るときには防衛の議論をしなきゃならぬという機会がございますから、今御答弁のございましたVLFの性能その他の問題も含めて、防衛論議はそのときに譲るということで、えびのの問題については、冒頭来申し上げておりますように、農林水産大臣あるいは林野庁長官というのは、本来みずからが背負っておる林業全般あるいは国有林野事業というものの発展ということに気を置いてやっていく、そして今言われたような問題にどう対応するかということでやるのであって、公の関係でございますなんて簡単に右から左へという感覚、それ自身が問題だ、先ほど腹を立てたというのはそういうことです。  次に、農林水産省の試験研究機関の外国人研究者受け入れ態勢の問題について少しく触れたいと思います。  私のところの三重県には国立の養殖研を置いていただいておりますし、それから、機構の改編がございましたが野菜・茶業試験場があるわけです。私は、少し前になりますけれども、久方ぶりに野菜・茶業試験場に参りましたら、外国人の研究者が数名来ておって、ある外国人の研究者というのは、もちろん宿舎の施設がありませんから、市内の適当なところに下宿をして、それでバスであるところまで参りまして、あと二キロぐらいのところは自転車で試験場に来る、そういう研究者がございました。  日本は、今日、経済的には非常に進んでおる、経済大国である、世界最大債権国であるというようなことを言っておりますけれども外国人の留学者の問題は非常にクローズアップして取り上げられ、今日、円高状況の中でそれには一定の配慮をしなきゃならぬ、大使館だってなかなか運営に大変だという、地価高騰の中で厳しい状況に追い込まれておるわけですが、半年とか一年とか二年とかいって、送られてくる国では相当のベテランの研究者がやってくるわけですけれども、その研究者は、資料もいただきましたが、農林水産省の試験研究機関では、昭和五十九年度には百五十一名、六十年度は百八十七名、六十一年度は二百十四名、やはり相当権威ある研究者、まあ若手の人もございましょうけれども、そういう人たちが来ておる。  筑波学園都市の場合は学園都市で政策的にやったわけですから、それはある程度ちゃんとできる。他の国立の農林省の試験場に行ったのは、もちろん基本的には試験場の職員の住環境、生活環境を整備するというのが本来でありますけれども外国からおいでになった方にも、宿舎の問題やら、あるいは少し外国人らしい施設の問題やら、そういうことを配慮するという新しい国際化時代への対応が農林省としても出てこなければならぬ。  これは全体的な問題ですよ。留学生の問題やらいろいろあります。留学生は着目されますからそれには手を打たなきゃならぬ。だからそういう点で、各国国々が違ったのが来ますから、がさっと入れるというのが適当かどうかという問題もありますけれども、宿舎の問題あるいはそれに関連する施設の問題というような点については、やはり新しい目で国際化に対応する受け入れ態勢というものをつくる必要がある。日本からも向こうへ行く。さすが日本に行ったら——後輩に、日本へ行ってこいよ、なかなか研究も進んでおるし受け入れ態勢もいいし、日本へ行け、これはやはり日本が国際的に理解される一つの側面になる。  そういう面で、この辺が、農林水産省ばかりではありませんけれども、少し欠けているのじゃないか。これは内閣全体の一つの国際化時代への問題として計画的に進めていく必要があるというふうに思うのですけれども大臣いかがでございましょうか。
  26. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 技術研究部門というのは非常に地道な分野でございますが、今日社会では極めて重要なポジションであると心得ております。我が方の農業技術会議におきましてもそれなりの考えを持ちながら努力をしているところでございますので、農業会議の事務局長から補足をさせます。
  27. 畑中孝晴

    ○畑中政府委員 先生御指摘のように、海外からの研究者は毎年大体二百名を超えるぐらいおいでになるようになりまして、筑波ではかなり水準の高い宿舎をつくっておりますが、地域の大変不便なところに私どもの試験場がある場合が多いわけでございますので、そういう場合には、いろいろな施設にあっせんをいたしましたり、韓国とかあるいは東洋系の方は比較的日本の家庭に下宿をしたいというような方もおられますのでそういうところに下宿をしていただいたり、いろいろなことをやりましてできるだけ御満足のいくようにしておるわけでございます。  それとまた、本年度の補正予算等も利用いたしまして、具体的には果樹試験場の興津の支場でございますが、国内の方を受け入れる研修生の寮をつくりますときに、外国向けという——外国向けというような区別をするのはどうかということもございますけれども、従来は畳の部屋などが多かったわけでございますが、ベッドの、外国のどこから来られた方でも住めるようなそういう部屋を幾つか用意をするとか、そういったことも通じましてできるだけ快適に住んでいただけるようにしておるところでございます。  また、全体として、来年度からは筑波に研究交流センターというのを農林版のものをつくりまして、それは国内のいろいろな方が集まって研修をしたり実験をしたりということだけではなくて、海外から来られる方々の研修なりあるいは研究なりというようなものをできるような共同実験室をつくるとか、いろいろな形でこれからの国際化時代に対応してまいりたいというふうに考えております。     〔戸塚委員長代理退席、月原委員長代理着席〕
  28. 角屋堅次郎

    角屋委員 次に、調査捕鯨の問題について最後にお尋ねして、終わりたいと思います。  これは経緯はもう詳しく触れません。日本が捕鯨国として歴史的にも民族的にもずっと伝統的にやってまいりました捕鯨が、捕鯨条約参加国の中で捕鯨をやっておる国は数カ国で、あと環境団体だやれ何だというところのプレッシャーを受ける国々がたくさんあって、そのために、商業捕鯨については、結局日本の商業捕鯨をどうするとかいろいろなことで、一九九〇年以降もう一回見直しということがございますが、中止になる。  そこで、科学的な見地から見て調査捕鯨をやらなければならぬという問題意識は捕鯨団体にもありましたし、農林水産省、特に水産庁関係にもありました。国会では、六十二年七月二十九日に衆議院の玉沢農林水産委員長の提案によって、全会一致で「鯨類の捕獲調査の実施等に関する件」ということで、一九九〇年に予定される商業捕鯨の再開を目指して「不退転の決意をもって関係各国理解を求めつつ、また必要とあらば国際捕鯨取締条約からの脱退をも辞さぬ覚悟で、今漁期からの鯨類の捕獲調査の実現に向けて最大の努力をすること。」というのが決議の第一項で述べられた。農林省で最近褒めていいと思うのは、英断をもってこれにこたえて、アメリカなんというのは日本に対しては何でも厳しいことをバッシングで言う方だけれども、それを乗り切って長期展望の中の鯨問題、そして一九九〇年以降の商業捕鯨の再開に備えてやられたということは、私は敬意を表する次第でございます。  この現状とこれからの問題についてどう考えておるのかという点、簡潔にお答えを願いたいと思います。
  29. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 ただいまお話ありましたように、一九九〇年までに行う鯨資源の包括的評価、それに必要な基礎資料を得るということで、現在科学的知見を得るための調査を南氷洋において行っておりまして、四月早々には調査船も帰ってこようかと思っている段階でございまして、調査は着々と進行しているわけでございます。御承知のとおり、捕獲限度頭数は三百頭ということでやっておりまして、海域の調査も大体円滑に進んでいるようでございます。  それから今後の扱いでございますけれども、今後の調査につきましては、現在実施しております調査捕鯨、この結果も十分見まして、それからことし五月にIWCの年次総会というものが開かれますのでそこの審議も見るわけでございますけれども、従来から国会からもいろいろな決議をいただいており、我々としても調査捕鯨の必要性というものを十分認識しておりますので、そういう模様を見ながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  30. 角屋堅次郎

    角屋委員 質問を終わるに当たって、近く訪米されます佐藤農林水産大臣に、我々の要望も含めてひとつ成果を上げられるように期待をいたしまして、私の農政全般を含めた質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  31. 月原茂皓

    ○月原委員長代理 関連して、五十嵐広三君。
  32. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今もいろいろ話が出ていたようでありますが、牛肉オレンジ農産物交渉が大詰めを迎えているわけでありまして、この機会でありますので、ガットの現状だとかあるいは農産物交渉の我が国の態度、そういうようなことからお伺いをしたいというふうに思うわけです。  私どもも、ガットというのは、殊に貿易立国という我が国の性格からいって非常に重視すべきものだということについては、もう全く同感といいますかそういう気持ちでいるのであります。しかし、だからこそ大事なのは、ガットが本来の精神に立った制度のあり方や運用というものが望ましい。そういう点から考えると、今のガット状況というのは一体どうなんだろうかということについて大変疑問を持たざるを得ない多くの点があるのじゃないかというふうに思うのです。これからお話を伺うわけでありますが、こういういろいろなゆがみをそのままにしておいて日本の農民にだけ一方的に犠牲を強いるというようなことになれば、日本の農民もなかなか納得がいかないというのは当然であるというふうに思うわけです。  この前の十二品目の問題が決まった理事会においても、その後で各国の代表がさまざまな意見を述べたようであります。我々はその要旨だけを実はお伝えを聞いたのでありますが、その中で例えばECなんかが、今回の採決の内容というのは日本だけに適用されるものであって普遍化されるものではない、こういうような話をしてみたり、類似の話を各国の代表からそれぞれなされていたようであります。我々があれを見ていますと、これは日本だけに適用なんだ、同じようなことをおれたちの方に適用されちゃかなわないよ、それは普遍化されては困るというのでは、一体ガットというのは何なんだろうという感じが実際の話するわけであります。  本来ガットの一番頭のところにある原則の第一は、いわば無差別の原則というか、あそこで言う最恵国待遇の原則というものがあるわけであって、特定の国に特定の利益を与えるということはガットの精神からいってしないのだ、それは普遍化されるべきものだ、それは裏返しで言いかえれば、特定の国に不利益を与えるということもあってはならないことだ。その無差別の原則という意味からいうと、今のガットの取り決め等については大変納得のいかないものがあるというふうに思うのでありますが、この点についてまず御意見伺いたいと思います。
  33. 眞木秀郎

    眞木政府委員 お答え申し上げます。  今委員指摘のいわゆるガットのパネルの報告は、いろいろなパネリストの判断が入って作成されるわけでございまして、それに基づいてそれを理事会採択するかどうかという議論が行われるわけでございますが、これまでのいろいろな経緯を見ましても、我々が同じようなケースであると考えられるものにつきましても異なった判断が下されている例も見受けられるように思います。  今回の十二品目のパネルの報告書につきましても、これはやはり我が国の十二品目についての輸入制限措置、これをめぐります事実関係等に即してパネリストが日米間の個別紛争の解決を図るという観点から作成されたものでございまして、これまでの同じようだと我々が考えられるケースに比して違った見解もある場合もございますし、必ずしも裁判における判例的な位置があるというふうに我々は考えてはいないわけでございます。  ただいま言及されましたように、ECがそういうコメントを付して採択賛成をしたという事実もございます。また、我々もこの中では、例えば乳製品でん粉につきましての判断につきましては賛成することができない、あるいはまた国家貿易についての解釈にも疑義があるということを明確にしておるわけでございます。  したがって、このケースが今後また提起されるべきケースがあるとすれば、そういう場合にどのように適用されるかにつきまして、やはりそれが判例的効果を持つものではなくて、個別個別の案件に即して判断が加えられたものという見方を我々はとっておるところでございます。
  34. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今、眞木局長さんからお話があったように、判例としていつもそういうものが適用されるというものではないのであって、これはパネラーによっても判断が違うこともあるだろうし、その状況状況で異なる判断が出てくる可能性もあるわけでありますから、そういうそのときどきの個別の問題における裁定というふうに限定的に受け取るべきであろうというふうに思われるわけで、今の御意見のとおりであろうと思うのであります。  同時に、一方、各国で行っているさまざまな農産物輸出入規制、これの現状なんかを見ても、一体何で我が国だけがつるし上げられなければいけないのかというような思いが非常にするのであります。  そこで、改めて二、三お聞きしてみたいと思うのですが、当面の、いろいろ交渉しているアメリカでありますが、アメリカはよく言われておりますようにガット第二十五条で取得した酪農品あるいは落花生、砂糖などの十品目輸入制限を現にしているわけで、いわゆるウエーバー品目というものの存在について我が国としては一体どういうぐあいにごらんになっておられるのか、御意見伺いたいと思います。
  35. 眞木秀郎

    眞木政府委員 お答え申し上げます。  ウエーバーというのは、御案内のとおりガット二十五条の規定によりましてガット上の義務を免除されるというもので、一々個別に申請をいたしまして、加盟国の特別の手続を経て承認をされるあるいは承認をされないということになるわけでございます。  アメリカの場合、一九三三年の、これは大不況時代のことでございますけれども、このときに制定されました農業調整法の規定、ここでいろいろな価格支持を行っているわけでございます。これを守るためには海外からどんどん輸入がされるということではそのプログラムが実施されないということで、昭和三十年、一九五五年にウエーバーを申請して認められたというものでございます。  このときには日本等多くの国々、ヨーロッパの諸国もそうでございますけれども、いわゆる国際収支上の理由から輸入制限ができるというような状況でございました。このとき、国際収支不足を理由に輸入制限ができない、いわゆるIMF八条国ステータスを持っていたのは米国とカナダだけでございまして、まだ多くの国が戦後の復興期でございまして、ヨーロッパ諸国もマーシャル・プラン等の援助を受けておりまして、日本もまたそのような時代でございました。  したがって、アメリカがこれを申請したときには、議会の非常に強い意向もありまして、いわゆる農業調整法に基づく価格支持を実施しなければ、アメリカガット自身にうまく参加して機能できるかどうかというような問題もあったわけでございます。したがって、これが何らかの偶然と申しますか、そういうことで認められてしまって、そのときのウエーバーが、対象品目も無制限でございますし、期間も無期限というようなことで認められたという一つの歴史的な事実といいますか、偶然的な事実があって、これが今日に及んでいるわけでございます。このときは日本ガット加盟をする寸前でございまして、仮加盟国状態日本も実は賛成をしたというような状況でもございました。  しかし、その後こういう状態が続いておりまして、その反面、日本のいわゆる残存輸入制限、IMF八条国に移行して以後も残っております輸入制限が、ずっとこういうものとの絡みで、いわゆる灰色と申しますかグレーエリア的な扱いで、これを余り問題にするとどうかというようなこともありまして、余りさわらないという状況が続いておったわけでございますが、最近、御案内のとおりアメリカがこの問題を非常に問題にし出した。  我々は、これについては、いわゆるガット上合法であるかあるいは合法性がきちっと与えられていないかという違いはございますけれども、やはり実態的には同じ問題でございます。したがって、ガットの場におきましてもあるいは二国間の場におきましても、実質的な不公平という見地から問題にしております。日本だけではございません、ニュージーランドその他の国々も問題にしておるわけでございます。  しかし、現在のところアメリカは、この問題を現在始まっておりますウルグアイ・ラウンドの交渉のテーブルにはのせるということは言っておりますけれども、なかなかこれを廃止するなりそういうことをしないということで、我々はこれを不当で大変問題であるということで指摘をしておりますし、今後ともガットの場におきまして、このウエーバーの小委員会もございます、そういうところでも引き続き指摘をしてまいりたい、このように考えておるわけでございます。
  36. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今ちょうど食肉でやっているわけでありますが、御承知のようにアメリカ自身には食肉輸入法というのがある。それで、アメリカに来る牛肉輸入制限を現にそれによってしているわけですね。この存在にしてみても全く納得のいかない話であって、経過等については省略して、手短なお答えで結構なんですが、この存在なんかについてもどういうぐあいにお考えになっておられるか。
  37. 眞木秀郎

    眞木政府委員 今委員指摘アメリカの食肉輸入法でございますが、過去の一定期間のアメリカに対する食肉の輸入に基づいて一定の枠をあらかじめ設定をしておきまして、それを基準に、その枠を輸入が超えそうな場合には輸入禁止をするということで、もしこれが仮に一方的に発動されますと、ガット上違法な状態が存在すると我々は考えております。米国側はこれに対しまして、豪州、ニュージーランド等のアメリカに対する食肉輸出国に対しまして自主的な輸出制限をさせるというような形でガット上違法な状態が現出するのを防ぐというようなことでやっておるわけでございまして、これはやはり実質的には輸入制限的効果を持つわけでございますので、我々も問題にしておるわけでございます。  ただ、この問題は、日米でいろいろと指摘をしておりますけれどもアメリカ側は、たまたま我が方がアメリカに対する牛肉輸出というものがございませんので実質的な貿易利害がないというようなこと、仮に問題とするならば、向こうの話し合いの中での言及でございますけれども日本ガット提訴するならしてもいいではないか、いずれにしてもやはりウルグアイ・ラウンドで問題にはするということを言っておる、こういうような状況でございます。
  38. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 それから、何年か前に大豆で日本も痛い目に遭ったわけでありますが、輸出管理法があって、これまた大統領の一方的な権限で輸出をストップする、制限するというような法律の存在もアメリカにあるわけですね。これなんかもどういうぐあいにお考えですか。
  39. 眞木秀郎

    眞木政府委員 アメリカでは一九六九年にこの輸出管理法というものが制定をされまして、国家安全保障あるいは外交政策あるいは国内における物資の供給不足というような事由がある場合には、例えば食糧等につきまして輸出規制を行うことができるということになっているわけでございます。過去におきましても、この法律に基づきまして、一九七三年、昭和四十八年でございますか、食糧が不足をした時代に大豆等の輸出禁止を行った、あるいはまた一九七四、七五年には対ソ連、ポーランドに対する穀物の、小麦の輸出規制等を行ったというようなことがございます。  したがいまして、我々日本のようにかなりの量を輸入に依存をしてその安定供給を図るということが食糧政策上非常に大事な政策になっておる国々にとりまして、輸出国側の一方的な事情によって輸出規制が行われる、そういう可能性があるということは非常に問題だと思っております。アメリカ側は、一九七三年の対日本等に対します大豆の輸出規制につきましては、あれは政策上の非常に誤りであった、これからはこういうことはしないということを言っておりますけれども、事実上そういう法律があり、また、本当に国内で供給が不足した場合にはやはり自国の国民に対する供給を優先するということはこれまた考え得ることでございます。  したがって、我々といたしましては、この問題につきまして、先ほども申し上げましたウルグアイ・ラウンドの場におきまして、一般的に、ガット上も食糧等の危機的な不足といったような状況を回避するために、輸出の規制等、一時的にではございますが行えるという規定がございまして、その要件等も非常にあいまいで必ずしもはっきりしていない、こういうことでは、一方的に輸入の制限なり、輸入の方をもっともっとアクセスを広げろということと権利義務上のアンバランスがあるのじゃないかということでございますので、日本の新しい提案の中で、こういう点も踏まえてひとつ多国間の場でこういう問題を解決していこう、こういう考え方対応していきたいと考えておるところでございます。
  40. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 アメリカだけでなくて、もちろんほかの国々もそうだ。ECは大変高い可変課徴金が六十四品目あるわけで、事実上輸入制限を行っておるような形になっている。これはECとしてだけでなくて、各国別にそれぞれの独自な対応もしているわけでありますから、これは事実上で見ると非常に大きな制限が課せられていると言えるんじゃないかと思う。あるいはカナダにしたってアメリカと類似の食肉輸入法が存在をしている。何か最近の報道なんかで見ると、一部の乳製品などについて、カナダ国内の酪農を守るためということで輸入制限がむしろ強化されているというような実態等も伝えられているのでありますが、これら等についても、手短で結構です、御意見をいただきたいと思います。
  41. 眞木秀郎

    眞木政府委員 ECにおきましては、共通農業政策の基本と申しますかその中で、いわゆる可変課徴金、それと表裏一体をなします輸出補助金という形で域内の価格を一定水準に保つという操作を行っておるわけでございます。いわゆる国際価格が非常に低い水準にある場合に域内の価格が高い場合、その差を可変課徴金として徴収するということは、委員指摘のとおり輸入制限的効果を持つわけでございまして、先ほどの普通小麦の例をとって申し上げますと、輸入課徴金は国際市場価格のおおむね二・七倍というようなことになっておりまして、そういう輸入制限的効果を持つということはやはり否定し得ないところであろうと思います。  ただ、ガット上の問題といたしましては、こういう輸入数量的制限効果はありますものの、またアメリカを初め多くの国々がこれに対して非常に強い批判を行ってはおりますけれども、ECとしては、過去の東京ラウンド等の機会を踏まえて必要な代償を払っておるということと、きちっとこれが違法であるというような規定もございませんために、必ずしも違法的な状態ではないという形で、現在まで、いろいろと問題とはされておりますもののいろいろ推移をしてきておるということでございます。  また、カナダの食肉輸入法の問題でございますけれども、これもアメリカをまねしたというような感じを私ら持っておるわけでございますけれども、一九八一年に制定をされまして、仕組みはアメリカの場合と同様でございます。特に米加隣接をしておりまして、その間でのこういう食肉その他のいろいろな食糧についても同様でございますが、いろいろ問題が起こっておるわけでございます。これまでは自主規制でそこの問題が実際上生じないようにやってきたわけでございますけれども、八四年の暮れには、その翌年八五年の輸入量が急増するというようなことをカナダ側が危惧いたしまして輸入割り当てを実施したという経緯がございます。  また、乳製品につきましても、委員指摘のように乳製品についての輸入制限を強化する、やはり国内の牛乳の供給管理をきちっとやるという見地から行ったものだと見ておりますけれども、そういうような実態があることは委員指摘のとおりでございます。
  42. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 今のようなさまざまな問題がある、殊に日本のような最大輸入国という立場から考えるとなおさらそうなんでありますが、全体として考えてみて、ガットというのは輸出国には非常に都合のいい格好になっているけれども、どうも輸入国側にとっては十分な権利というものが保障されていない、むしろ一方的に義務ばかり課せられているという傾向があるのではないか。殊に日本の場合で考えると、食糧の自給率が非常に低い。こういう食糧自給率の低い国がそれなりに国内の生産を高めていこう、自給率を少しでも向上させようということの努力をしている、そういうことに対する関心というもの、これは全くガットの中で払われていない、こういう問題も実は我々痛感をするわけで、これにつきましては、新ラウンドについて日本側がそういう見解というものをまとめて主張しているということはよく承知しているわけであります。  今ずっと局長からもお伺いをしてきたところでありますが、どう考えてみてもガットの現状というのは大変ゆがんでいる。本来であればガットというのは無差別な公平な通商の自由というものを確保していく、そういう秩序というものを確立していくというのが目的だけれども、その公平さにおいて非常に問題がある。ガットはそういう意味では今日大手を振って胸を張って各国にその規制を求めるという状況にあるのかどうか、ガットの権威というのは現状からいって一体どうなのかという感じを深めざるを得ないというふうに思うわけなんです。  したがって、こういう中で日本が一方的にどうもジャパン・バッシングというような状況になっているということは、それは日本の農民にとっても国民にとっても納得がいかない。少なくとも今のウルグアイ・ラウンドの討議というものが、三年なり四年なりかかって一定の新しい公正な秩序というものがそこで確立されて、そういう中で日本はどうせいということになるのであれば僕はやはりそれに服すべきものだろうというふうに思うのでありますが、やはり農民の一番不満のところは、何だ、アメリカアメリカでウエーバーはあるしあるいは食肉輸入法があるし、そんなことをやっておりながら、なぜ一体我々だけがやられなければいけないのだ、アメリカだけじゃなくて他の国々についても、今ずっとお聞きしてきたがそういう状況じゃないか、ここのところが納得のいかないところなんです。だから、今さまざまな議論になっている問題等についてもやはり新しいラウンドで十分に論議をしてもらって、そしてそれに服するべきでないかという感じが非常にするわけなんであります。  大臣がお出になりましたから、手短なお答えで結構なんですが、いかがでしょう。
  43. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 どうも大変失礼いたしました。  今、ガットの法理上の、あるいはガットの運営上のいろいろな不公平性とかそういうことについてお触れになったようでございますけれども、その中の後段の方のお話だけ今聞いておっても、確かにそういうことも言えるでありましょう。  しかし、現実問題として、昨年暮れにウルグアイ・ラウンドに向けての我が国の提案をしたところでございますし、また、それ以前に十二品目問題があり、また、牛肉、かんきつ問題は中川農林大臣時代からの経緯がずっとあって議論をしてきたことでもあり、いろいろな経緯をたどる中で、実はことしの一月に両国首脳間で話し合いに出た、例示をされた牛肉、かんきつは、テーブルづくりをしながら話し合おう、こういうことでございましたが、いまだにテーブルができないということでございますので、それはそれなりに、ひとつ三月末という大きな節目を迎えて、今慎重に対応をいかがすべきか、まずはテーブルづくりである、こういう状況にあるわけなんです。  現実問題と、それから、今現在の時代におけるガットの存在意義、価値観というものとちょっと切り離した見解を申し述べて恐縮でございますけれども、さよう御理解をいただければありがたいと思っております。
  44. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもそこのところが納得のいかないところなんです。さまざまな矛盾を持ってしまって、ガットが本来の精神を非常に生かし切れないでいる。ここのところをまずきちっとすることで共通の納得のいく秩序ができて、それに服していくということが本来であって、それはそれなんだということでは、これはちょっとやられる方がたまったものではない。そして、この間のガット理事会の裁定の後のように、それはこのことだけなんだよ、普遍的なものでないんだよ、日本に限った問題だ、おれの国に同様のことを言われても困るよということを次々に言っているなんという状況は、これはおかしいと思うのです。まるで紳士なき紳士協定みたいなものです。納得がいかない。私はそういうぐあいに思うのです。  この間ガット理事会乳製品でん粉を我が国は留保した。一括して受けたけれども、しかし、この二品目についてはパネルにおける解釈に我が国は同意できないという見解を明快にしながら、これについては我が国はもちろん今日も納得していない、こういうことであろうというふうに思うのです。ですから、あそこのところでは皮一枚で我が国の国家貿易品目に対する考え方というものを守っていくことがともかくもできたと言えると思うのです。  しかし、今、目の前にある牛肉の問題で、もし我が国が何年後であったってその自由化ということに踏み切るということになるとすると、国家貿易品目に対する我が国の論理というものが、この前せっかくそうやって頑張ったのだけれども、そんなものなんか消し飛ぶような格好でその論理構成というものは明らかに崩壊するのではないか。これがその次に米につながってくるということも論理上当然のことです。  大臣、私は今度の牛肉に対して、それはガット提訴になった方が有利とか不利とかさまざまなことがあるかもしれないが、やはりここは日本は頑張りどころだ。それは我が国の農政全体に重大な影響を与えるということで、我々がともかくも頑張り通してきた。おととしの十一月も国家貿易品目としての通報をガットにしているわけですね、あるいは四年前のときにも、向こうはあのときはブロックさんですか、いろいろ言ったが、しかし我が国側としてはそれに対して、そんなような話はした覚えがないということで一貫して態度を貫いてきているわけです。ここのところはやはりその踏ん張りどころであって、この牛肉の問題で、もしそういう国家貿易品目における基本的な我が国の態度というものが崩壊するようなそういう判断を今したら、これは大変なことになる、こう実は私は思うわけなんです。  恐らく同じような気持ちで大臣も頑張っておられるんだろうと思うのでありますが、この際大臣見解伺いたいと思います。
  45. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 まず米については、これは包括貿易法案の中に盛るとか盛らぬとかということもございますが、これはもう前々から申し上げておるように、言わずもがな、自給をしていく、自由化はいたしません、こういうことでございます。  牛肉、かんきつは、一部輸入をしてまいりましたということで米とは違います、その牛肉、かんきつは我が国の主要な品目でございますから自由化は困難でございますということで、繰り返し繰り返し言ってきたわけでございますが、今もその考え方に変わりはございません。  報道にはいろいろな書き方がございますけれども、ある人がガットに持ち込んだ方がいいと言ったとか、どうだとかこうだとかとありますけれども、私は、かつての十二品目問題のよって来る経緯と牛肉、かんきつのよって来る経緯と、その次元を異にするという経過だけは明確に区別をしながら、申し上げるとするならば、三月末に大きな節目を迎えるということは事実でございますから、その節日に向かって、まず話し合おうということでテーブルづくりに専念をしておる。もう幾日もないのにそんなものはどうせできぬよとあるいは言われるかもしれませんが、私は必ずそういうものができるものと期待をしながら冷静に対応を進めておるところである、こう申し上げておるのでございます。
  46. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 よく大臣が、守るべきものは守って譲るべきものは譲る、こう言っておられるわけですね。その守るべきものは守るというのは、私はまさにここのところではないかというふうに思うのです。ECあたりの模様を見ても、だめなものは絶対だめだという構えをECは崩さない。我が国もそういう態度というものをきちんと持っていかなければ、私は国の権威にもかかわるというふうに思いますから、そういう点を特に強く要請したいというふうに思うのです。  さて、農林水産審議官の設置でありますが、賛成であります。むしろ遅きに失したという感じがするのであります。殊に、二百海里の問題だとか今度のガットだとか、これからもさまざまな大変なことが続くに違いないわけであって、ぜひひとつ頑張ってほしいと思うのです。  そういう意味からいっても、この審議官の設置だけでなくて、この際全体の体制をしっかりそういう状況対応できるようなものに強めていく必要があるのではないかというふうに思うのです。もっとスタッフも強化をしてほしい。あるいは、経済局の中に国際部がある、そしていろいろな保険だとか何だとかの課がたくさんあるようでありますが、そういう点からいうと、本来組織論からいうと、もう国際局というものがあっていいのではないか。ちょうど官房長官もおいでになられました。各省庁について厳しい規制が行われているに違いないとは思うのでありますが、こういう国際的な経済状況の中では、私はもうそろそろ我が国も国際局ぐらいの組織ができていいのではないかというふうに実は思うわけなんであります。  特に、在外公館に農務官を派遣している。最近、お聞きしますと、年々かなりふやしているようではありますが、これも、実際に今、日本が置かれている状況から、一日も早くこれに対応する能力をつけていかなければならぬ。アメリカは非常にタフな攻め方をしてくる、あるいはアメリカに限ったことでないわけでありますが、こういう中で本当にそういう環境に耐え得る我が国の能力を持っていくという意味からいうと、今の在外公館への派遣の現状というものはもっと飛躍的に強化する必要があるのではないかと私は思うのでありますが、今農務官の状況はどういうことになっているか、お伺いをしたいと思います。
  47. 眞木秀郎

    眞木政府委員 ただいま委員指摘のとおり、国際経済情勢の大きな変化の中で、農林水産業につきましても、場合によっては国内政策の問題にまで切り込んだ形でのいろいろな議論が行われる、またいろいろな貿易案件がふえてきております。さらにはまた、やはり開発途上国に対する国際協力、国際農林水産業協力というものも重要性を増してきておるわけであります。  こういうような状況のもとで、外務省への出向という形を通じまして、俗称農務官と呼んでおりますけれども農林水産省の職員の在外公館への派遣を行っております。また、その充実に努めておるわけでございまして、最近五カ年間の推移を見てみましても、五十八年度には四十二名、三十三公館ということでございましたけれども、六十二年にはこれが六十六名、五十六公館と大幅に拡大をしてきておるところでございます。特に重要な大使館等におきましては複数配置ということも行っておりまして、対応をきちんとできるようにということに努めておるところでございます。  外務本省自身その全体の充実を図るという方針と伺っておりますので、この中でまた我々としても人員の充実等につきまして適切な対応を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。
  48. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 例えばワシントンに今農務官が何人いるか、あるいはジュネーブのガットのところには何人いるか、あるいはブラッセルのECには何人派遣しているか、その辺を聞いてみれば大体わかるのじゃないかと思うのですが、その数だけちょっとお知らせください。
  49. 眞木秀郎

    眞木政府委員 ただいま米国には参事官一、書記官二、計三名でございます。ジュネーブには参事官一、書記官一、計二名ということでございます。それからFAOがございますイタリアには公使一、書記官二の三名ということで、複数に配置をしております公館は八公館、こういうことになっております。
  50. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 例えばこの東京にあるアメリカ大使館、ここに農務官は一体何人配置されていますか。
  51. 眞木秀郎

    眞木政府委員 在東京の米国大使館におきましては、本国から派遣されております農務官、これは我が国の場合と違いまして農務省の海外農業局、FASから送られてきておる農務官ということでございますが、これが五名、参事官が一名含まれております。これにかなりの数の日本人のスタッフがついて仕事を行っている、こういう状況承知しております。
  52. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 私の聞いているのでは、ローカルスタッフといいますか、農務官五名に配するに秘書だとか職員だとか、日本人を含めてこの五名のほかに十二名いるそうですね。ワシントンの方も恐らくそういうローカルスタッフというのは何人かついているのでしょうが、この間聞きましたら、これは何だかほんのわずからしいですね。  大臣、これは全然ボリュームが違うんですよ。それは年々幾らかずつふやしてきているといったって、こんなことでは追いつかないですよ。向こうで情報を集めて、また、日本の考えを聞いてもらったり、いろいろなことをときどきに分析をしたり、山ほど仕事があるに違いない。二人や三人でどうやってやっていけますか。審議官を設置することは結構だ。結構だけれども、そのことだけで済むものじゃない。この際もっと全体の体制を強化しなければいけない、僕はそう思うのです。  佐藤大臣の御意見と、せっかくおいででありますから官房長官の御意見をこの際お伺いしたいと思います。
  53. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 委員がおっしゃるような気持ちは私にも実はあるわけでございます。急速な国際化、そういう中にあって対応し得る組織、スタッフ、そういうものはいかがかということになりますと、まさに今言われたような気持ちもございます。しかし一方では、行政改革の中でスクラップ・アンド・ビルドということもございます。また、関連した意見であえてつけ加えますならば、外務省と我が農林水産省と縦割り行政と批判されない横の連絡、これもまた頭に置かなければならぬな。  また、もっと細かいことを一つ例示いたしますれば、この国際化の中に今度改めて農林水産審議官を認めていただく、その法律をぜひ通していただきたいという中にあって、非常に細かい話でありますけれども、私自身が英語にはあんまり堪能ではない。あんまりどころじゃない、全然堪能ではないです。委員は語学には相当たけておられるのではないかと思いますけれども眞木経済局長くらいになりますともうべらべら何でもしゃべるということでございます。同時通訳とまではいかなくても、それに近いものが、大臣の海外のいろいろな表敬——表敬といっても陳情これありあるいは交渉に似た形の要請もある、そういう中でどうなんだということになると、この間も考えておりまして、予算の点もいろいろあるし、それじゃパートでもいいからそういう者を物色してはどうかということまで、実は率直に申し上げて、ここで話をするような話ではございませんけれども、そういうこともつけ加えて申し上げまして、いろいろ工夫しておるということはひとつ御承知おきをいただきたいと思います。
  54. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 農水大臣からすべてお答えでございますが、少数精鋭主義というのが元来日本の外交も含めまして行政サイドの対応の仕方でございましたが、御指摘のように、特に国際的ないろいろなトラブルが多くなってきておる時点におきましては、情報の収集にすれ対議会対策にすれ、やはり多くの人員を必要とすることは現実だろうと思います。そういう意味で民主主義は若干、むだとは申しませんが、いろいろな角度から働く人たちが縦横この情報収集に相努めない場合には適切な情報が入らない、そういうことで、仮にもそのことをもって事を判断するというような事態になってはいけませんので、今後ともさらに強力な体制を整えていかなければならない。  その一環として農水省でもこの農水審議官を新たに設置するということのようでございまして、恐らく横文字で言えばバイスミニスター、こういうことであろうと思いますので、そういう資格と権限と、そしてそれにふさわしい能力の人が今後とも対外国の折衝に当たられるということは大変意義の深いことだというふうに思っております。  しかし一方、農水大臣が言われますように、政府全体としましては行政改革に基づきまして総定員をできる限り削減していかなければならないという方向も一つの方向でございまして、その調整を図り、整合性を求めつつ新しい時代に適切な人員の配置を心がけていくべきものだ、このように考えております。
  55. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひ一日も早く強化をしてほしい。在外公館への派遣は三年サイクルでやっているらしいのです。そういうことでまた非常に有能な人材が養成されてくる。それが一番の我が国の農水省の宝になってくるわけですから、そういう力をやはりしっかりと養っていくようにしてほしい、このことを特にお願い申し上げておきたいというふうに思います。  二十二日にヤイター通商代表とリン農務長官が一緒に記者会見をなされて、日本側が自由化に応じないという場合にはガット提訴する、そして通商法三百一条、すなわち不公正貿易慣行に対する対抗措置などの対応策検討する、四月の第一週にその行動を起こす、こういうことを言ったようですね。農水大臣はこういうアメリカの交渉態度についてどうお考えですか。
  56. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 実は今おっしゃるような話を、きのうも朝九時から夜九時まで十二時間、農林水産委員会でそういうことも含めていろいろ議論に相なりました。この昨日の報道について、農林水産大臣として、じっとしているのではなくてひとつ反論をせよ、コメントせよ、記者会見せよというようなお話がございました。  しかし、私といたしましては、ぎりぎりの段階、まさに秒読みと言ってもいい段階にいら立ちにいら立ちを重ねるようなことがあったのでは相ならぬ、言いたいことはたくさんあるけれども、ここはじっとこらえてテーブルづくりに期待をし待っておる、こういうことを申し上げたわけでございまして、これにまた一々具体的なコメントをすることが今後にどうなるか。私は余り遠慮しない性格でございます、しかしこの点については、この時期において、遠慮がちに、控え目に、冷静にと自分で自分に言い聞かせておるところでございます。
  57. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 非常にアメリカ側の交渉の態度というものがエキサイトしてきている、これは農産物交渉だけではなくて、例の公共事業参入の交渉についてもそうだし、全体的に最近そういう傾向が非常に目立っているのではないかというように思うのです。  そこで、我々も若干交渉経験のある人の話をお聞きしますと、一言で言うと、とにかくアメリカは驚くべきタフだ。それは、一方的に徹頭徹尾アメリカ側の利益というものを繰り返し押しつけてくる、それは驚くべきぐらいのエネルギッシュな交渉の態度だ。なかなか日本流の謙譲の精神だとかちょっと意味不明な話だとか、こういうようなことで対抗のできるような状況でないような感じがするのです。  それは、私は別にけしかけるわけでもないし、対決した方がいいとか争うべきだということを今申し上げているのではないのでありますが、相手がそれだけタフな状況でやってくるとすれば、こっちもきちっと力を持って、今の日本というのは相当な力量、権威を持った国なんだから、やはりそのタフさに対抗できるような我が国の交渉の態度であっていいのではないか。正面から言うべきことはきちんと言う、議論を尽くして、そこで道を開いていくということでなければ僕はいかぬのではないかという感じがするのです。どうも日本側の構えにおいてやはり反省すべき点があるのではないかという感じが私はしてならないのです。  今の大臣のお話も聞いた、それも一つの考え方かもしれぬ。考え方かもしれぬけれども、本当にそれでいいのかな。長いこれからいろいろな交渉が次から次に歴史的に続くわけですね。そういうときに、今のようなやり方だけでこれは毎年対応していくのですか。私は、そういう意味では我が国の交渉態度についてこの際ちょっと考え直していく必要があるのではないかというぐあいに実は思うのです。  それともう一つ問題なのは、これもいろいろお話を聞いたり見たりしておりますと、官僚の皆さんはなかなか一生懸命やっている。殊に眞木局長は、何遍も何遍も行って本当に苦労している。我々も本当に腹の底から御苦労さまとその労をいたわりたいという気持ちでいっぱいですよ。  どなただって必死になってやっておられる。それはよくわかる。よくわかるのだけれども、この間もある新聞に出ていた。どうもそうやってみんな官僚の皆さんは苦労しているのだけれどもアメリカ側の、官僚に対する不信感が非常に強い。それはなぜか。トップと話をしてみると、トップは非常に妥協的だ、官僚はかたいことばかり言ってきているけれども、いずれはそんなものは崩れるのだ、こういうものがアメリカ側に強くあるのではないか、こう言われている。それで私もやはりそんなような感じがするのですよ。     〔月原委員長代理退席、近岡委員長代理着席〕  例えば、この前一月に竹下総理が初訪米をした。レーガン大統領と首脳会談を持った。このときに農産物の話が出た、あるいはシュルツ国務長官も十二品目に関して言及した。報道の伝えるところで我々が知る範囲でありますが、官房長官が随行なされて、その後記者会見でお述べになっているわけだから、我々はそれを見て承知しているのでありますが、竹下総理のこのときの発言というのは、日本自由貿易の恩恵を最も享受した国であることを国民はもっと認識しなければならない、日本農産物最大輸入国ではあるが、それだけでなく消費者の立場をもっと考えることも重要だ、こうお答えになっているんだそうですね。  これは日本国民向けの話じゃないですか。国民はもっと認識をしなければならない、消費者の立場をもっと日本では考えなければだめだ。これは、アメリカに行ってレーガンさんとこんな話を何で一体そこですることで終わるということになるのですか。どう考えてもわからないですよ。これは意味不明なんてものでない。  少なくてもアメリカに行ってレーガンさんと、アメリカの大統領とお話をするということであれば、だれが考えてもそこで、そうおっしゃるけれども日本の穀物の自給率というのは三〇%そこそこだ、カロリーベースでいっても五〇%ぐらいのものだ、そういう中で自給力を少しでも持とうということも大切なんですよ、あるいは世論調査をしても、農民だけでなくて七割以上の国民が、基本的な、基礎的な食糧というものは自給しなければならぬという答えが出ているのです、消費者もそう思っているのです、あるいは、日本の国土条件というのはアメリカとは随分違うのです、こういうような話を一生懸命してアメリカ側理解を求めるというのが本当じゃないですか。それが、あそこへ行って、日本自由貿易の恩恵を最も享受した国であることを国民はよく認識しなければならぬ、こんな話をレーガンさんの前でしても何になるのですか。これは私はやはりおかしいと思う。  あるいは十二品目についても、理事会できちっと対応したいと思うというような趣旨のことを言っておられるのですね。どういうぐあいに通訳されたのか知らぬけれども、きちっと対応すると言えば、受け取る側にすればああ解決だなということ以外の何ものでもないですよ。こういうトップの交渉の姿勢の中で、官僚に何ぼ言ってもということで、官僚の皆さんが死に物狂いで頑張ってもそれは限界があるじゃないですか。  私はさっきから、審議官の話あるいはそれをめぐる体制の話、こういうことでお伺いしてきたのでありますが、同時に一番大事なのはこういうトップの交渉の態度である、ここがしっかりしてもらわなければ、これから次々に難問が出てくる中で対応していけるものじゃないというふうに思うのですが、大臣いかがですか。
  58. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 首脳会談のことについて私はそう踏み込んだ議論をする立場にはございませんけれども、レーガン大統領と竹下総理との間での応答、そのことはちゃんと記録に残っておりますから、その中で確かに消費者のという言葉に触れておられるところはありますけれども農業者のみならずとかという表現もあったかと思います。  いずれにいたしましても、今日の段階になりますと、農林水産省といたしましても、生産者の立場に立つ、これはもとよりでございますけれども、流通関係者にも理解が得られるように、そして消費者ニーズにこたえていくという、これは三位一体の感覚で物事を取り進めていくというその姿勢は明らかにしており、またそういう立場で進めておりますので、そういうことをおっしゃりたかったのではないかなと想像をいたしておりますけれども、その応答ぶりについて細かく的確な答えは、もしあれなら眞木局長から答えさせますが……。
  59. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 大臣、僕が質問している趣旨はわかりますか。そういう、今余りどうとかこうとか言っても言えるものじゃないのだろうから。しかし、それはみんな感じていることだと僕は思いますよ。  そこで、いよいよ牛肉オレンジは大詰めを迎えた。私は実は、大臣承知のように、去年の十一月の時点から、十二品目に関して、その前の加藤大臣も訪米していない、佐藤大臣にぜひ訪米してもらって、大変な問題だから大臣みずからアメリカで交渉してほしいということを農水委員会でもあるいはその他の席でも大臣に随分お話を申し上げたつもりでありますが、結局十二品目では責任担当大臣佐藤さんがアメリカに行かないまま、あるいはガットに行かないままあれは決まってしまった。これは結局出番がなかったということですよ。反省はありませんか。
  60. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 私は、農林水産省の責任者として、今日の農産物貿易問題等に関する重要な問題について、私が農林水産大臣として出番があるとかないとかではなくて、日本の国としてどうであろうか、また、竹下内閣としてどうであろうか、こういうスタンスの上に立っておりますので、私は、そう私が出なくても、外務省、外務大臣とももちろん連絡をとりながら、ガットの場におきましては、特に十二月のガットの総会におきましては、ガット自体が農産物問題だけではない、いろいろな話があることはもう御承知のとおりでございまして、そういう意味で外務大臣が総括をして行かれた、窓口として行かれた、こういうことでございまして、その前に十分な横の連絡、すり合わせをいたしておりまして私ども対応をしておるところでございます。  反省はないかと言われれば、私自身あの結論についてはぎりぎりの選択をしたのであって、苦渋に満ちた選択をした、こういうことでいろいろな意味を含めているのです。ただ済まなかったでは済まない、しかしまた、この先どうするかという展望も持たなければならない、そういうときにぎりぎりの選択、苦渋に満ちた選択をした、御理解を願いたい、こういうことで申し上げているわけでございますので、これも委員承知のところでございますけれども、御理解を賜りたいと思います。
  61. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 例えばヤイターさんだとかリンさんなんというのは、この前何遍も来ていて、我々ごときが野党の立場で、やはり自由化反対なのでお会いしたい、こう言ったら、大使館で申し入れた次の日に会ってくれたですよ。小一時間議論を交わした。そういうエネルギッシュな活動というものがあっていいのではないですか。僕は反省がないかというのはそのことですよ。あの結果についてどうこうというよりは、大臣アメリカに行って議論をして、日本の農民の立場を一生懸命お話をするような、そういう場というものを結局持つことはなかった、そのことについて僕は申し上げているわけですよ。  それは大臣、何ぼ一生懸命やってもできないものはできないかもしれない。結果というものは必ずしも行ったからいいということになるのではないかもしれぬ。しかし、そこがやはり人事を尽くして天命を待つというか、燃焼し切ったという気持ちがなければうまくないと僕は思うのですよ。ましてそのもとで多くの官僚が汗水流して頑張っているんだから、そういう点からいうと僕はどうかなと思う。  牛肉オレンジの問題もいよいよ目の前だ。まさに大詰めである。しかもさっき言ったようなアメリカ側態度。当然訪米するということであろうと思います。今回も行かないなんてことになるわけがない。それは、結果のいかんを問わず、担当大臣が十二品目でも牛肉オレンジでもアメリカと体を張って話をするような機会を持つに至らなかったということになれば、僕はやはりそれは担当大臣として一体適当なのかどうかということだろうと思いますよ。  何か、聞くところによると官邸筋が消極的だ、新聞報道等では、どうもちょっと抑えているのではないかというような記事もちらほら見える、そんなことはないと思いますが、この辺のところを、佐藤大臣それから官房長官、御意見をいただきたいと思います。
  62. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 牛肉、かんきつの問題について農林官僚が汗をかいているが、大臣はのほほんとして座っているではないか、そういう言い方まではおっしゃらないけれども、それでいいのか、こういうことでございますが、私は、先ほど来申し上げましたように、もうぎりぎりの時期を迎えておって、この期に及んで申し上げることは、こうして冷静に今対応しておるそのこと自体がまた行動の一つでもある、ただ飛びはねて歩くだけが行動ではない。相手の反応を見守りながら、そしてちゃんと整理をしながら、そして先行きを見詰めながら、さあどうするか。それはまさに具体的に言えば、テーブルづくりをぜひやってくれ、テーブルに着いてくれ、テーブルに着かないうちに私がひょこひょこ出かけていくわけにはまいらぬ、こう言っているのでございます。まあしかし、それでもなおかつ、テーブルづくりなんかできないでもいいからお前は行くべきだとおっしゃれば、御意見として拝聴をいたしておきます。  なお、私の訪米についていろんな書き方があるようでございますけれども、どなたが交渉されるにしても、担当大臣は私でございますし、そして、食糧政策は日本国家ある限り存続するわけでございますから、後々までも我が農林水産省が責任を負わなければならない問題である、ここまでは本当は言わなくてもいいのですけれども、あなたからそこまで言われればそう答えておきたい。
  63. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 まあその気概でやってほしいと思いますが、お聞きしますが、それじゃ、テーブルができないということになればあなたは訪米する意思は全くないのですか。
  64. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 テーブルは必ずできるものと期待をいたしております。
  65. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 わかりました。  官房長官、お願いします。
  66. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 農産品の自由化問題は、我が日本国民食糧問題、生存権にかかわる重大な問題でございまして、今佐藤農水大臣みずから申されましたように、重大な問題として今お取り組みのさなかでございます。  したがいまして、今回の牛肉、かんきつをめぐって農水大臣が訪米するか否かにつきましては、農水大臣といたしましても、諸般の情勢を現在考慮しつつ、国内における生産者あるいは消費者、あるいはまたそれぞれ各党各委員考え方あるいは役所の基本的な考え方、こういうものを総合的に判断をいたしまして今熟慮中だろうというふうに拝察をいたしておるところでございます。先ほど来農水大臣の御答弁をお聞きをいたしておりまして、現時点においてはまことに冷静に、静かに、ひたすらアメリカ側がテーブルに着くことをこいねがっておる立場でございますが、気持ちとしては、満を持して、この問題については全責任で解決をいたしたいという大変な熱意を感ずるわけでございます。  いずれそうした意味で全責任を持つ農水大臣がみずからのお考えにおいてこのことは決すると思いますので、先ほどお話ございましたが、官邸筋云々ということにつきましては、今この食糧問題については政府全体の課題であるとは承知をいたしておりますが、今回のこの対処につきましては全幅の信頼を農水大臣に持っておるところでございますので、今はそれを静かに見守っておる、こういうことでございます。  しかし、いずれにしても期間があとわずかに相なってきておることでございますので、いたずらに日を置くことはできませんし、三月の末には過去の協定が一応終わることになっておりますので、そうしたことを踏まえ、アメリカ側の対処につきましても十分考え方の中にこれを入れながら立派な対応をしていただけるものだ、このように考えております。
  67. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 ぜひひとつ農水大臣、頑張ってほしいというふうに思います。しかも、大臣は相当とにかく気迫に満ちた方だろうというふうに思いますが、アメリカのタフさかげんに負けぬで、言うべきことはきっちり言って、そしてしかも我が国のいわゆる国家貿易品目の壁というものをしっかり守ってほしい、そうでなければ後は大変だというふうに思いますから、強く要望申し上げておきたいと思います。  官房長官、忙しいところをおいでいただいて恐縮であったのでありますが、一点お伺いして終わります。もう時間がそろそろないのでありますが、手短に質問いたしますのでお答えいただきたいと思います。  北海道の問題でありますが、九十年前に制定された北海道旧土人保護法にかわって、アイヌの差別撤廃と復権を盛り込んだ、新しい精神を背景とした法律というものをつくろうということで審議を続けておりました横路北海道知事の諮問機関、ウタリ問題懇話会が、長い間の議論を終えて、一昨日、二十二日ですか、最終報告書をまとめて横路知事に提出をいたしました。  その骨子とするところは、五つばかりあって、「アイヌの人たちの権利が十分に尊重され、その社会的、経済的地位が確立されるよう権利宣言を定める」「差別が存在している現状を改善するために、アイヌに対する人権擁護活動の強化を図る」「アイヌ語、文化の継承、普及を援助し、国立のアイヌ民族研究施設を設置する」「アイヌの自主性が最大限に確保される「自立化基金(仮称)」を設置する」、それから、「経済的自立を図るための産業政策を継続的に審議するため、アイヌ民族の代表を含む審議機関を新設する」、こういうこと等を盛り込んだ報告が出ました。  道は、この報告書に基づいて基本方針をまとめて、新年度早々にも国に要請をしたい、こういうことのようであります。先ごろの横路知事のコメントを見ましても、そういう趣旨のことが言われているわけであります。  そこで、政府といたしましては、そういうような道の作業が行われて知事が要望をいたしました折には真剣な御検討をいただきたい、こういうぐあいに思いますが、官房長官いかがですか。
  68. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 結論を申し上げれば、その北海道知事さんからのお話を承りました以降、勉強さしていただきたいと思いますが、この私的諮問機関であるウタリ問題懇話会から北海道知事に対してウタリにかかわる報告がなされたということは、私も新聞報道等で承知をいたしておるところでございますが、まだ内容につきまして十分承知をいたしておらないところでございます。  今、この報告に対して道としてどういうふうに対応されるかということを御勉強中だと聞いておるのですが、今先生からは、その結果、政府の方に出してきたら、こういうことのようでございますが、知事さんから正式なお話がございますれば、誠意を持ってこれを承りたいと思っております。  ただ、この北海道知事さんからの報告を受けてこれを法律化するかどうかということにつきましては、冒頭申し上げましたように、その内容その他拝見した上でないと申し上げられませんし、また、聞くところによりますと、いろいろ法律化すべきことについてはどうかなという考え方を持っておる向きもあるということでもございますので、今申し上げられることは、政府としては慎重に対応いたしたい、こういうことしか答弁できないと思いますが、御理解をいただきたいと存じます。
  69. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 道もまだその報告を得てこれから議論をするところであろうと思いますから、その検討がなされて出てまいりましたら、ぜひひとつ誠意を持って御研究を賜りたい、こういうぐあいに思います。よろしゅうございますか。
  70. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 はい。
  71. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 あとわずかしか時間がありませんが、あらかじめお渡しをいたしておりました「肥料の内外価格差と「円高メリット」」についてであります。  この表は、元島根大学の教授で、今東京工芸大学の教授でもありますが、社会農学研究所の所長である安達生恒さんの作成した資料であります。  ごらんのとおり、昭和六十年の一月から六月平均に比べて六十二年の七月から十二月までの平均の円高による肥料の値下げ指数を示しているわけであります。国内価格は着レール渡しのメーカー売り値で、輸入価格は輸入港着渡しで、輸出価格は輸出港発本船渡しで計算をしております。国内価格は全農の資料、輸出入については大蔵省の資料によって作成をなされたようであります。  この二年半ほどの間で値下げ指数は、尿素でいいますと、国内価格は六五%に下がったが輸入は三九%にもなっている。あるいは塩化カリは国内が六九%だが輸入は五一%だ。硫酸カリは国内が七一%だが輸入は五一%だ。重過燐酸は国内が八八%だが輸入は六八%だ。そして製品と輸入原料との対比で見ますと、高度化成は、製品が国内価格八二%に対して輸入原料の燐安は五四%まで下がっておる。尿素は三九%、塩化カリは五一%。また過燐酸は、製品が国内価格八八%に対して原料の燐鉱石は五四%。さらに輸出との対比で見ますと、硫安は国内価格の七七%に対して輸出価格は四六%にもなっておる。これは同じ品物を同じ条件で一定の時点で比較したものでありますから非常にわかりやすい。  まずお伺いしたいのですが、この数字には間違いがないかどうか。余りにひどい価格差であると思うのでありますが、それについてどうお考えになっておられるか。一方で農家に対し農産物だけいろいろ締めつけておいて、こういう点を放置されるということは非常に問題があるのではないか。  時間がありませんから一緒に聞いておきますが、この主要な原因が肥料価格安定臨時措置法によるものだということは改めて言うまでもない点であります。こういうような制度的な要因について政府側はどうお考えになっておられるか。通産省もおいでになっていると思いますが、農水省、通産省それぞれどうお考えになっておるか。  それから、この前予算委員会で一定の方針をお示しになったようでありますが、きょうは公取もお見えになっておりますが、この肥料価格安定法は来年の六月の末でしたか切れることになるわけでありますけれども、公取としてはこの法律をどのように見ているか、再延長についての見解はどうなのかということについて伺いたいと思います。
  72. 吉國隆

    吉國政府委員 まず、先生がお話しになりました数字の点でございますが、数字の動きとしてはおおむね先生がお話しになったような状況であると私ども承知をいたしております。  国際価格と国内価格の比較というのは、品質の問題もございますし、包装形態の違いがございますし、また、先生もお触れになりましたようなどこ渡しのものであるかという運賃の違い等もございますので、直接の比較がなかなか難しいということが基本にございますが、価格の変化率についてお触れになりました点につきましては、輸入価格がまさに円高のせいで非常に大きく下がってきていることに対して、国内価格も懸命の努力によりまして下がってはまいっておりまして、国産の肥料価格も六十一肥料年度では一一・四%の引き下げ、さらに六十二肥料年度におきましても五・六%の引き下げというような状況に相なっておるわけであります。国内の加工経費等はそういった円高によってメリットを受ける部分もございますが、それ以外の要素もあるというような状況でこのような推移になっておるのかというふうに思っております。  また、肥料価格安定法の関係でございますが、この法律は、肥料が国内農業生産にとりまして不可欠な資材であるということから、その価格、需給の安定を図っていくことを一方で踏まえ、また、肥料工業の健全な発展に資することを目的として制定をされまして、その後数次の改正が行われまして、現行の法律では六十四年六月三十日に廃止することにされているわけでございますが、私どもこの法律の今後の取り扱いにつきましては、一方で肥料の供給ということを考えながら、今後関係者意見をよく承りまして検討してまいりたいと思っているところでございます。
  73. 坂野興

    ○坂野説明員 ただいま先生御指摘の数字の件についてでございますが、傾向としては大体そのような数字になろうかというふうに理解しております。  ただ、先生の御説明にもございましたように、条件が異なるということで、国内価格につきましては、最寄り駅の着オンレール、また包装込みという価格であるのに対しまして、輸入あるいは輸出のものにつきましては、ばら物が大宗でございますし、また……(五十嵐委員「同じ品物を同じ条件で比較して聞いているでしょう。あなた全然答えが違うんですよ。この表を見たんですか」と呼ぶ)ちょっとよくわかりませんが、国内価格につきましては、消費地の最寄りの駅の、貨車で積んである状態で包装込みの価格ということになってございます。それから、輸出入の価格につきましては、船で渡すという価格でございまして、その態様も大部分がばら物であるということで、多少ストレートに比較しにくいということを申し上げているわけでございます。
  74. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 あなたこの表をよく見ているんですか。同じ品物で同じ条件のものを二年半の期間で比較しているわけなんです。それで一体どれだけ値段が下がっておるかということを言っているんだから、あなたの言うのは全然違う話ですよ、同じ条件のものの比較なんだから。それから、さっき局長のお話でもちょっとそんなお話をしたけれども、それは違う話で、この表をよく見てお答えくださいよ。
  75. 坂野興

    ○坂野説明員 変化率ということで申しますと、それぞれが同じもので比較しているということで、確かに御指摘のとおりでございます。ただ、絶対価格で国内価格と輸入価格はこうだという比較につきましては、今申し上げたように条件が異なっているということを御説明申し上げているわけでございます。  それから、肥料価格安定法の取り扱いにつきましては、今まで安定法につきましてそれなりの役割を果たしてきたわけでございますが、来年六月にこの法律が切れるということになっておりまして、その後の法律の取り扱いにつきましては、ユーザーあるいはメーカー等の意見も踏まえつつ、農林水産省関係省庁とも連携を図りつつ、今後の取り扱いについて決めてまいりたいというふうに考えております。
  76. 関根芳郎

    ○関根説明員 お答えいたします。  先生御案内のとおり、肥料価格安定臨時措置法は肥料メーカーとユーザーとの間で共同して価格を協議しまして取り決めるということで、これが独占禁止法の適用除外ということになっておるわけでございます。  一般論から申しますと、事業活動における公正かつ自由な競争の維持促進という独占禁止法の基本的な考え方からしますと、このような適用除外というのは必要最小限度の例外的なものでなければならぬというふうに考えておるわけでございます。  肥料価格安定臨時措置法につきましては五十九年に延長がなされたわけでございますが、この延長時には、同延長期間内におきまして化学肥料工業の構造改善の徹底が図られる、この法律がなくても肥料の適正かつ円滑な取引が実現されるように最大限の努力が払われるというようなことで、公正取引委員会もやむを得ないというように考えておったわけでございまして、今後同法の再延長というのは回避されるのが望ましいというふうに基本的に考えております。
  77. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 時間が参りましたのでこれで終えたいと思いますが、今の円高による変化率については、これはとにかく国内輸入ではその変化率が二年半で二倍も三倍も開いてきている、こういうことというのは非常に問題があるわけであって、ぜひひとつよく検討を加えていってほしい。そうでなければ、農家にだけ厳しいことを押しつけていったって、これまた納得がなかなかいかないということになるわけでありますので、そのことを特に要請したいと思うのですが、大臣どうですか、もしあれでしたら一言、それで終えたいというふうに思います。
  78. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 各セクションの担当にお聞きになったわけでございますけれども、極めて重要な問題でございますし、今後とも検討を続けさせたいと思っております。
  79. 五十嵐広三

    ○五十嵐委員 どうもありがとうございました。
  80. 近岡理一郎

    ○近岡委員長代理 井上和久君。
  81. 井上和久

    井上(和)委員 私は愛媛県から選出をされた者でありまして、今話題になっておりますオレンジ牛肉自由化問題というのは特に大事な問題であります。つい先日も生産者と消費者の大会というのが行われまして、四千名に余る皆さんがお集まりになりまして、この自由化を断固阻止しようというような大会が開かれました。また私、いろいろと農家の庭先で皆様のお話も何軒かお伺いをしてまいりました。そういうことを総合いたしますと、本当に今ミカン農家の方々の生活は大変な状況にありまして、この皆さん方の自由化問題に対する認識というものは、想像を絶するような本当にすごいものを私も感じておるわけであります。  先ほどからの御議論を伺っておりましても、大臣も真剣に取り組んでいただいておるということを感じるわけでありますが、ぜひともより強い姿勢を持って頑張っていただきたいということをお願いする次第であります。  特に今、アメリカの通商代表部のヤイター代表の、今月末までに両国が自由化で合意できない場合、四月上旬にガット提訴することになるであろうというふうなお話が出ておりまして、大変ふんまんやる方ないような気持ちがするわけでございまして、大臣も、先ほどからの御議論でそういうふうな節も感じました、ぜひともこれについてしっかりと頑張っていただきたい、このことを特に希望する次第であります。  自由化問題を含めまして、私に対する御答弁をお願いしたいと思います。
  82. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今おっしゃいますように、非常に厳しい環境の中に、いよいよ難しい問題でございまして、私も緊張の連続でございます。もともと私は、行動する方がどっちかといえば得意で、じっとしているのは得意じゃないのです。そういう意味で先ほどもお答えをしておるわけなんで、じっとこらえて、そして結果というものを、我々の主張というものを有利に導くために冷静な対応をしておるということでございます。昨日来の報道等につきまして、アメリカ側の言わんとする意味はわかるけれども、私もまた言いたいことはたくさんあるけれども、私自身がいら立ちにいら立ちを重ねるようなことがあっては同盟国としてお互いの利益にはならないという考え方で、今冷静な対応を進めておるところでございます。  しかし、秒読みの段階になりまして、私はあくまでも話し合いのテーブルというものができるものと信じ、期待をし、そのときを待っておる、こういうことでございます。テーブルに着きましたならば、我が国の主張を申し述べ、そして理解を求める、牛肉、かんきつの自由化は困難である、こう申し上げておるわけでございます。
  83. 井上和久

    井上(和)委員 このテーブルにアメリカが着かない。着かすための努力は具体的にどういうふうになさっておられるか、これについてお知らせください。
  84. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 あらゆる手だてを実は講じておりますので、じゃだれとだれがだれにどうしたとかこうしたとかいう、いろいろなアプローチをかけておるわけではございますけれども、それをここで言うということはちょっといかがなものか、正直申し上げてその中身については差し控えさせていただきたい。最善の努力を重ねておる、こういうことで御理解を賜りたいと思います。
  85. 井上和久

    井上(和)委員 実は五十九年四月九日、日米牛肉オレンジ交渉の妥結をなさいまして、山村農林水産大臣がお帰りになりまして記者会見をなさっております。そのときに、四年後は日米摩擦、農業摩擦はこんなものではなくもっとすごいものになる、向こうの空気はこちらで思っていたようなものではない、こういうふうな要旨のお話がありました。また翌日の参議院の予算委員会におきまして、協定が切れる四年後は、アメリカは今回よりさらに厳しい自由化輸入枠拡大を求めてこよう、したがって協定が切れる昭和六十二年までに日本農業の体質改善に全力を挙げる、こういうふうに述べておられるわけであります。  この山村さんの話をまともに考えてみますならば、既にその時点でオレンジ牛肉自由化というのはもう避けられないのだ、だからその用心といいましょうか対策として、しっかりと日本農業自由化対応できるような農業に改善をしておかなければならない、こういうふうに考えられると思うのですが、いかがでしょう。
  86. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 井上委員おっしゃいますように、確かに四年前、当時の現職大臣山村さんはそういうことをおっしゃっただろうと思います。しかし、それはそのときの予測でございまして、実を申し上げますと、私は中川一郎農林水産大臣のときに、中川・ストラウス会談に、当時、党の総合農政会長代理の立場で随行いたした者でございます。あの当時から、とめどもなくどんどんいろいろな意見が出てくるだろう、しかし何としても体質改善も重ね、日本の主要作目、基幹農産物、こういうものについて足腰の強いものに育てていかねばならぬ、それからさかのぼる約四年前に私も感じておったことでございますので、山村さんのときもやはりそう感じられたのかなと当時を思い出しておるところでございます。
  87. 井上和久

    井上(和)委員 これにもありましたように、日本農業の体質改善に全力を挙げる、こういうふうに言われておるわけでありまして、全力を挙げて具体的にはどういうふうなことをおやりになりましたか、お聞きしたいと思います。
  88. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 なかなか時間のかかることでございまして、一生懸命に努力を重ねてきたわけでございますけれども、ただいま現在、私自身が先ほど来申し上げておるように自由化は困難であるということを明言いたしております。ということは、自由化をしてもいいという状況にはないということでございまして、それでは具体的にどういう内容の運びをしてきたのかというのは、実務方から答えさせます。
  89. 吉國隆

    吉國政府委員 かんきつ農業の体質改善につきまして進めてまいっております措置の概略について御説明申し上げます。  まず、需要の動向に応じた生産体制ということで、先生よく御承知のように園地転換対策を進めてまいっておりまして、五十四年から五十八年度まで三万ヘクタールの転換を進めたわけでございますが、さらに引き続きまして五十九年度から六十一年度まで一万ヘクタールの園転を実施いたしてまいっております。また、最近の需給事情に応じまして、それに引き続く計画生産措置についても促進を図っているところでございます。  また、品質の面での競争力を強化していくということが非常に重要でございますので、品質の向上という点から温州ミカンの糖度の高い品種への転換ということで、改植、高接ぎ等を進めてまいっておるところでございます。例えば青島温州といったような品種がございますが、五十三年の二千七百八十ヘクタールに対しまして六十一年は五千五百五十ヘクタールということでふえてまいっておりますし、こういった高糖度系の品種がミカン栽培面積の一割近くになっているという状況まで今日の段階は進んでまいっております。  また、体質強化という面から、かんきつ産地整備事業といったような事業によりまして農道等の基盤整備を進めていく、これは当然機械化等の基礎にもなってまいるわけでございますが、また、堆肥舎等の生産施設を整備して地力の向上を図っていく、あるいは選果施設等についても技術の進歩を取り入れた施設の整備を図っていくといったような各種の事業を進めてまいっているところでございます。
  90. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 私の方から肉牛生産につきまして簡単に補足をさせていただきます。  前回の日米、日豪取り決めの合意以降、五十八年十月にこれは公表されておるところでございますが、第一次酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針に基づきまして、EC並みの価格の実現を基本目標として、長期的な視点に立ち、肉用牛生産の総合的振興、合理化対策を実施してきたところでございます。  この結果、一九八〇年、五十五年以降の我が国の価格でございますが、一九八〇年の為替レートで円換算して比較してみますと、我が国を一〇〇とした場合、西欧諸国は一九八〇年には七〇でございましたけれども、一九八六年には九〇となっておるというようなことから推定されますとおり、着実に生産性の向上が図られてきているものと考えております。飼養規模につきましては、繁殖経営ではいまだ零細でございます。肥育経営については着実に拡大をしているという傾向が見られるところでございます。  さらに、本年二月におきまして、我が国酪農及び肉用牛生産を取り巻く諸情勢の変化に対応いたしますために、一層の生産性の向上とその成果の価格への反映を主眼といたしました新しい酪肉基本方針を公表したところでございまして、今後、この新基本方針に即しまして、飼料基盤に立脚した経営の育成、経営感覚にすぐれた農業者の育成等、各般の施策を引き続き積極的に展開してまいる所存でございます。
  91. 井上和久

    井上(和)委員 ミカンの場合、園地の転換を三万ヘクタールあるいは現在引き続いて一万ヘクタールお取り組みになっておるというような話でございまして、確かにことしなんかの場合、天候のかげんもありましたけれども、余計に収穫があり過ぎたといいましょうか、予想以上にとれた。ということは同時に技術があるわけでありまして、私どもが見ておりますに、農家の皆さんは摘果作業を非常に熱心に奨励もされ、やっております。一生懸命摘果に励んでおられるのですが、こういうふうな作業は、私は見ながら、米の減反と同じような意味だなという気がするわけであります。樹木には能力がありながらその実を外すわけでありますから、農家の皆さんにとりましては、作業も苦しいでしょうけれども、精神的にも大変苦しいだろうな、そんな気持ちがするわけであります。  ただ、言えますことは、この過剰なる状態が、どういうふうなバランスをとっておれば日本の国の果樹の状態としてはいい状態なんだということがわかるはずなんですね。それについてどのような御指導をなされておるのか、お伺いをしたいと思います。
  92. 吉國隆

    吉國政府委員 需要の動向につきましては、先生御承知のようにミカンの需要は残念ながら近年相当減ってまいっております。これは、私どもの見方といたしましては、やはり消費の多様化といった傾向が反映しているという面が非常に強いのではないかというふうに見ておるところでございます。そういった長期的な見通しというものを頭に置きながら、先ほど申し上げましたような園転計画を、生産者団体等も含めた場で御相談をしながら取り進めてまいっている状況にございます。  また、年々の需給に応じての摘果等の調整措置、こういった問題につきましてもそのときどきの需給予測に応じまして進めてまいっておるわけでございます。昨年は果樹農業振興法に基づきます生産出荷安定指針というものを定めて計画生産を進めたわけでございまして、これに基づきまして、先生お話しのように生産者の立場では大変御苦労もおありだと思いますが、需給の安定を図って価格の安定を図るという見地から、全国的に御協力をいただいてそういった措置を進めたところでございます。  結果的には、摘果はやっていただいたわけでございますが、天候等の関係でミカンが肥大化をいたしまして、現状としましては前年に比べて価格も相当程度低落をいたしましたし、また、ミカンジュースの過剰在庫が問題になっているというような状況になっているわけでございますが、今後とも私どもできるだけ的確な需給見通しを立てながら、需要に応じました生産が行われ、市場が安定をするということに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  93. 井上和久

    井上(和)委員 的確におやりいただくということでありますが、ただ、現場を回っておりますと、国のあるいは指導所、普及所の指導どおりせぬからあそこの経営はうまくいっておるんだという話が聞かれるわけなんであります。これは非常に残念なことなんです。農協やあるいは改良普及所から技術指導員が来られて、こういうふうにしなさい、こうしなさい、それをちゃんと聞いて、その反対のことをしておったらちゃんとうまく経営が成り立つんだというお話がありまして、私は聞きながら本当に残念なことだなと思いました。それは、言いかえれば全体のバランスがしっかりとれていない。つくるときはみんながつくる、そういうことがあるからこんな結果になるんだとように私は思うわけでありまして、非常に残念に思ったわけであります。どうか、しっかりとした見通しの正しいものを立てて、農家の方の努力がむだにならないように、少なくとも反対のことをしておったら成り立つんだなんていうことが出ないように頑張ってもらいたいと思います。  特に、愛媛におきましてはミカンが何回も申し上げますように大変重要な作物でありまして、愛媛県自体の産業として最大のものでございますのでぜひともお願いをしたいのですが、今、ミカン農家の皆さんはこういうことを言っております。農家の皆様は、自動車とミカンと両方を私たちがつくっておるならば、ミカンの自由化をしなさいと言われても、私たちは、ああ、それはそうだなと思います。というのは、アメリカの姿勢というものを視察をされたり見てこられたことをお話しになるときに、あらゆる方がそう言うんですね。六百八十億ドルでしたかの工業製品による、アメリカで言う赤字が、日本で言う黒字がある、だからアメリカでは農産物の少々くらいの自由化は絶対にやらなければならぬのだ、こういう意見がだれに聞いても一貫しておった、そういうふうな話が紹介をされるわけなんです。  そうするときに農家の皆さんは、先ほど申しましたように、それはそうかもわかりません、アメリカから日本を見たら、確かに工業製品でそれだけの利益があって、黒字があって、だったらオレンジ牛肉ぐらいの話は聞かなければならぬというふうに向こうは言うかもわからぬ。しかし、それは日本の側に立ってみると、確かに先ほど言いましたように農家の皆さんにしたら半導体とミカンは一緒につくってないわけでありまして、全然違うのであります。だから、アメリカから日本状態がそのように見えるのであるならば、これは日本国内問題としてこのことには対処をしてもらうしかないのじゃないかという意見が、農家のお話というか皆さんの御意見としてあるわけなんです。私はこれを伺いまして、なるほどな、それはそうだというふうに思いました。  日本工業製品における黒字が農家の皆さんにちゃんと渡るものであるならば、そんなには言わない話になるわけでありますが、それはなるわけがないわけであります。だから、これは国内の問題としてどのようにとらえるかということを私はお伺いをしたいと思います。
  94. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま先生は、アメリカの言い分につきまして、日本国とアメリカ関係から黒字幅五百億ドルを超えるような話の関連で御提起になったわけでございます。まずその点につきまして、私ども少し違った考えも、当然でございますが、あります。  というのは、ガットにおきます自由な原則というものは、あくまでも、これは一つの考え方といたしまして、立地条件を利用いたしまして競争した場合に自由な競争が行われるという精神に立っているものだろうと我々は思うわけでございます。農業工業を比べてみた場合に、農業の場合にはやはりそれぞれの国々、それぞれの立地条件の差というものが厳然としてあるわけでございまして、そういう意味におきまして、ガットの条項といったようなものがそういう形をはっきりと意識して立てられたかどうかは別といたしまして、農業におきますガット数量制限の根拠というものを置いているということでございまして、私どもはそれ以上に、アメリカ日本の問題あるいは日本アメリカ農業の問題というものを、あらゆる機会をとらまえまして、交渉の場であれあらゆる会合の場であれ、相手方たるアメリカ主張をしているわけでございます。これが第一点でございます。  それから、先生のおっしゃるように、しからば国の場合の差をどういうふうに考えるか、国内の問題をどういうふうに考えるかということでございますけれども、先生の御指摘の点にもございましたように、具体的にアメリカの言うものをそのまま受けとめた場合に、日本の農民は我慢をしろ、こういうことでございますけれども、私ども先ほどのような論理に立っておりますので、日本農業立場というものを毅然とした態度主張をしておる、こういうことでございます。  なお、あえて申し上げますと、国内の中で工業的な視点に立たれる方、あるいは農業実態を全然無視をしていろいろの評論をなさる方々、そういう方々に対しましては、農林水産省として、これもまたあらゆる機会をとらまえまして説得といいますか誤解を解くといいますか、そういう努力を傾けているところでございます。    〔近岡委員長代理退席、前田委員長代理着席〕
  95. 井上和久

    井上(和)委員 大変難しくてわかりにくい御答弁でございました。  次に、食糧の自給率、穀物の自給率、先ほども御論議がございましたが、こういうものがだんだんと下がっておりまして、昭和三十五年は八二%であったということでありますが、五十九年には自給率が三一%、これは世界の中で最低の水準である、こういうふうに言われておるわけであります。輸入化等がどんどん進みますと食糧全体についての自給率が下がるでありましょうし、また、これの影響でお米もという話になってきますと大変なことでございます。  この二月に総理府が発表いたしました食生活・農村の役割に関する世論調査、こういうのがございました。ここでは、米を含めました食糧国内生産を望む、こういうふうに食糧の自給を望む人というのが全体の七〇%を占めておったわけでございます。これは大変意味のある答えだというふうに私は思うわけでありますが、政府はこの我が国の食糧の自給率というものにつきまして、現在、穀物の場合は三一%だったと思いますが、これについて高い方がいいというお考えだろうとは思うのですけれども、具体的にどのぐらいならいいと思っておられるか。
  96. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘食糧の自給率の問題でございますが、御案内のとおりでございまして、我が国の食糧農産物の総合自給率、金額ベースで考えた場合七割程度になっているわけでございます。カロリーで計算をいたしました場合には五割程度、穀物の自給率で計算をした場合に三割程度となっております。この三割程度というのはかなり低い数字のように思われますけれども、我が国の山がちな、七〇%以上は森林であるという国土の状況、そういったようなことから畜産に必要となる飼料穀物の大部分を輸入せざるを得ないというふうなことになりますれば、このような結果にならざるを得ない必然性があると思います。  ちなみに、これは大ざっぱな計算でございますけれども、現在輸入しております飼料穀物、そういったものを我が国でつくるといたしますれば千四百万ヘクタール必要であります。現在の耕地面積は五百三十六万ヘクタールということでございますので、そういう数字をお考えいただきますと、この我が国の低いと言われている数字のよって来るゆえんがおわかりだと思います。  しかしながら、穀物、食糧といったものはやはり国民生活の活動を行う上で基幹的な物資でございます。農林水産省といたしましては、今申し上げましたように、食糧国民生活にとりまして最も基礎的な物資であるという具体的認識の上に立ちまして、現在の我が国国民一億二千万人に及ぶ方々に食糧の安定供給を図っていくことこそ農政の基本的役割と認識をしているところでございます。  このために、六十一年十一月に出されました農政審議会の報告を踏まえまして、国民の方々の納得し得る価格で食糧の安定供給に努めることを基本といたしまして、先ほど触れさせていただきました国土条件の制約のもとで、可能な限り生産性の向上を図ることを中心に各般の施策を展開をいたしまして、国内で基本的な食糧供給力の確保に努めなければならないというふうに考えております。米等現に国内で自給する体制が確立しているものにつきましては、需給の均衡を図りつつ国内自給を図ることがまた必要である、そういう基本的な認識に立っているところでございます。
  97. 井上和久

    井上(和)委員 穀物自給率の三一%、今これがやむを得ないということですが、端的にこれは現時点では低いという認識なんでしょう。それともこれでいいという認識なんですか。低いという認識なら上げなければならぬということになるわけなんです。  それについて、もうちょっと具体的な数字を挙げて言ってください。
  98. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 いろいろな国がございますけれども、発達した諸国、特にサミットに参加されるような各国との比較等をいたしますと、先生御指摘のとおり、この穀物の自給率の三一%というのは列国の中で最低でございます。ECの中に入っておりますオランダ等の国がございますが、それと比べますと大体似たり寄ったりのことかもしれませんが、いずれにしろ、アメリカ等と比べれば、当然のことでございますが国土の大きな国々等と比べますと低いというふうに言わざるを得ないと思います。  ただ、先ほどもこの低さの原因ということにつきまして、我が国の食生活の中で現在ふえていきます肉用牛等食肉というようなものを考えますと、その飼料の基盤であります草地といったようなものを考えますと、なかなかに我が国のように山がちの国ではこれを供給する能力はないわけでございます。そういう意味で、現実的なものは合理的だというようなことはあえて申し上げませんけれども、この三一%といったものにつきましては、いろいろな経済的な原因からこういう結果にならざるを得ない側面も持っているということは認識しているわけでございます。  ただ、先ほど先生御指摘の点をもっと端的に申し上げれば、先進諸国の中で低いという認識は十分あるわけでございまして、あらゆる努力を傾けまして国内の供給力というものをふやしていかなければいけないというふうに考えるわけでございます。  ただ、数字といたしまして、私ども過去に長いいろいろの論議がございました。自給率といったようなものを、為替の変動等々ございますので、これを目標という形で掲げましてそれを上げるというような考え方に立ちますと、いろいろな意味で変動がありますので、政策目標にはならない。したがって、私どもの言葉の言い方は、いろいろの言い方はございますけれども農政審議会の報告に沿いまして「食料供給力」という言葉に置きかえまして御説明、御報告をしているところでございます。
  99. 井上和久

    井上(和)委員 オレンジ牛肉自由化のことにつきまして、これはまだ具体的にされたわけではないのですが、ガットヘの提訴がなされたとすれば、どういう裁定が下されるとお考えですか。
  100. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 国際化ということだから当然のことなのでしょうけれども、ここでの議論が、私どものやりとりがもうそのまますぐファックスで流れるわけでございます。そこで、ガット提訴されるのを期待をしているがごとき発言は私の方はできないわけでございます。  だから私どもは、ガット提訴されたらどうなるかという今の御質問でございますが……(井上(和)委員「期待するというのはちょっとおかしい」と呼ぶ)いやいや、だからそういうふうに受け取られたのでは困るのでありまして、我が方は自由化困難である、こう申し上げておるわけでありますから、ここでガットにいった場合はどうなるか、どのようになるかということは答えるわけにはまいらぬのでございます。誤解に誤解を重ねてまた交渉がしにくくなる、これはテーブルができた上でのことでございますけれども、そういうことで差し控えさせていただきたいと思います。
  101. 井上和久

    井上(和)委員 食料品につきましてはいろいろなことが条件として言われるわけであります。一つは見ばえ、見た目というのですか、これがどうか、二つには味がどうか、三つには値段がどうであるか、四つには安全であるかどうか、この四つぐらいが食品チェックの項目であるというふうに私は思うわけであります。この四項目につきまして、どれも大事なチェックポイントだと思うのですが、この四つのことで実はこの間のときにも伺ったのでありますが、余りはっきりしておりませんでした。ここで改めてこの四つについて、大事な順番について教えてもらいたいと思います。
  102. 谷野陽

    ○谷野(陽)政府委員 ただいま御指摘のように、食料品につきましてはいろいろな側面から考えなければならないわけでございます。  四つの点をただいまお挙げになったわけでございますけれども、現在のような食料品が量的に一応充足をされているというもとにおきます消費者のニーズというものにつきましては、おのずと一つの流れがあるのではなかろうかというふうに考えております。先般総理府で発表になりました食生活・農村の役割に関する世論調査におきましては、総数、これはいろいろな種類の方々を合計した総数でございますけれども、その中で一番多いものが「安全な食料を供給すること」というのが「食料供給への期待」のトップを占めておるわけでございます。これに続きまして並んでおりますのが「安い食料を供給すること」、それから、「品質のよい食料を供給すること」、こういうことになっておるわけでございます。  量的な充足が行われているという現状のもとにおきましては、やはり安全というのは、ただいまの世論調査でも出ておりますように食料品の基本でございます。これにつきましては、現在食品衛生法その他で国会での御決定をいただきまして、一種の強制法規と申しますか、そういうものが存在をするということからいたしましても最も基本的な属性でなければならないというふうに考えておるわけでございます。  それから価格、味、外観等でございますけれども、これは現在のような非常に多様性のある食品が出回っておる、かつ、消費をされるサイドからいたしましても、いろいろなTPOと申しますか場面でそれを選択して消費される、こういう事態におきましては、どちらが先ということではなくて、いろいろなニーズにこたえたようなものを供給していくという時代になっているのではなかろうかというふうに思うわけでございます。もちろん価格は安い方がよろしゅうございますし味もいい方がよろしいわけでございます。また、外観につきましては多少の御議論はございますけれども日本の食文化の伝統からいたしますと、日本料理等は姿かたちというものが大変重要な要素になっておるわけでございますから、これもあながち順位が低いというふうに言うことはなかなか難しいわけでございまして、これらの点につきましては、多様化する消費者のニーズに対応するようなバラエティーのある、それぞれ特徴を持ったものを供給していくということがこれからの食料品供給の重要なポイントではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  103. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 実は質問の御通告をいただいておりまして、私ちょっと分科会の議事録を見まして、この四つの問題は全部重要なものだから順番をつけろと言われてもちょっと困ったなと思いまして、私、見識がございませんので、実務者から答えさせます、こう言ったのです。  全く見識のない答弁をしたな、こう思っておりまして、私があの分科会と相前後いたしまして食糧の安全ということについての予算委員会での答弁で、安全でないものは食糧でない、こうわかりやすく一口で言っている経緯をあわせ考えますと、この間分科会でお答えしたのはいよいよもって見識のない答えであったな、そういうことでございますので、安全問題はもう言わずもがな、安全でないものは食糧と言わないというぐらいのつもりでひとつ取り組んでいかなければならない。あとの三つの問題はもちろん全部大事である、こういうことでございます。
  104. 井上和久

    井上(和)委員 大変丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございました。  といいますのは、この間、私たち愛媛県におきます自由化反対についての集会がございましたが、これが農業者・消費者総決起大会というふうになっておりました。生産者と消費者の総決起大会というものがあって、私は実は、農産物あるいは牛肉等自由化が進むということについては、生産者が総決起大会を開いて自由化、枠拡大を阻止しようということはよくわかるというか、すんなりそういう気がするのですが、消費者がその反対する総決起大会へやってくるとなりますと、これはちょっとおかしいんじゃないかなという気が初めぱっとしたわけです。  ところが考えていきますと、今言われました、確かにいろいろな意味があると思うのですけれども、特に安全という意味からいいまして、輸入をどんどんされて安ければいいんだということで押されたんでは、私たち消費者としても大変なんだというので、この自由化、枠拡大阻止の総決起大会に参加したというふうなことがございました。そんなこともございまして、確かに今安全でないものは食糧でない、そのとおりであると私も思います。すばらしい御答弁だと思います。  そう考えますと、輸入をされます農産物について、特に輸入における検査のことについてお尋ねをいたしたいと思うのですが、輸入件数、輸入数量、そのうちで検査した件数の割合、また不合格率、これがどういう変化をしたかということにつきまして、五十九年、六十年、六十一年分というのをお聞かせを願いたいと思います。
  105. 大澤進

    大澤説明員 ただいまの御質問にお答えいたしたいと思います。  輸入食品の昭和五十九年の輸入件数は三十六万四千二百二十七件、数量、つまり重量でございますが二千二百四十六万五千トン、検査した件数でございますが三万五千二百九、不合格率、つまり不合格となった割合でございますが、今の検査した件数のうち四百四十四件が不合格となっておりまして、パーセントで一・三%。昭和六十年は三十八万四千七百二十八件、これは輸入件数でございます。重量は二千二百六十六万五千トン、検査を必要とした件数でございますが、三万七千九百十三件、不合格率でございますが、不合格となった件数三百八件、割合として〇・八%。それから昭和六十一年でございますが、輸入件数四十七万七千十六件、重量は二千二百二十八万四千トン、検査した件数五万三千四百二十六件、不合格となった件数は五百五十八件、不合格率一・〇%、このようになっております。
  106. 井上和久

    井上(和)委員 今の御答弁にもございましたけれども、六十年から六十一年におきましては十万件もふえておるわけでございます。しかし検査件数の割合というのは減少をしておりまして、一方不合格率というのは、先ほどの発表にもありましたように一・三とか〇・八とか一・〇とかいうぐらいですから余り変化はないわけです。そうしますと、これは本当に完璧な検査がなされておるのだろうか。十万件もふえておって不合格率は変わらぬということは、それだけ正直にといいましょうか、いいものばかりが間違いなく入っておったのだろうかというふうな憂いが実はするわけでございまして、そういうことを含めまして、この検査体制はどういうふうになっておりますか、お答えを願いたいと思います。
  107. 大澤進

    大澤説明員 昭和六十年と六十一年の輸入件数ですが、およそ十万件ぐらい確かにふえておるわけでございまして、それに対して検査件数は、先ほど申し上げましたが六十年が約三万八千件に対して六十一年が五万三千四百件、約一万五千五百件の検査件数の増、そういう意味でおよそ十万件に対して検査した数が必ずしもそれほどふえてないのじゃないか、こういう御指摘でございますが、御承知かとは思いますが、検査率そのものは六十年は輸入総数に対して九・九%、六十一年は輸入総数に対して一一・二%、もちろんこの数字が高い低いというのは、小さな数字でございますのでそこは特別ここで評価すべきことじゃないのではないかと思いますが、そういう実際の推移をしているわけでございます。  しかしながら、食品の安全確保というのは今農水省さんからもお答えがありましたように大変重要なことだと私ども十分に認識しておりまして、輸入食品の監視あるいはチェック体制というものを充実していかなければいかぬ、かように考えております。  現在どういう体制でやっておるかと申しますと、海と空の港、全国二十カ所の検疫所において食品衛生監視員を配置して、輸入のその都度、届書が出てきますが、それらについて書類の審査を行う、しかもそういう審査の過程の中で、衛生上問題がある、理化学的なあるいは細菌学的な検査等が必要であれば、当然検疫所あるいは国立衛生試験所、こういうところにおいて化学的な検査をやる。さらには厚生大臣が指定した公的な検査機関、つまり指定検査機関というのがございますが、そこにおいて輸入業者自身による検査も指示する、こういうことによって水際において輸入食品の監視なりチェック、安全の確保を図っているわけでございますが、そういうところで食品衛生法に違反するようなものに関しましては当然水際で廃棄なり積みおろしを指示する、こういうことによって食品衛生法上問題のあるものについては水際でストップする、こういう仕組みで来ているわけでございます。  先生御指摘のように、検査率といいますか件数というものがさらに充実すべきだということは私ども認識をしておりまして、今後とも安全確保の観点から、食品衛生監視員の増員とか検査機器の整備、あるいは内外の情報、関係団体その他から食品輸出国におけるあるいは食品に関するいろいろな専門家等の情報を不断に集める等して、事前にできるだけ水際においてそれらの情報を活用しながらチェックに努めてまいりたい、かように考えております。
  108. 井上和久

    井上(和)委員 現在が二十カ所で七十五名だと思うのですが、六十一年はこのままだと思いますね。五十五年、五十八年はこの数はどうでしょう。
  109. 大澤進

    大澤説明員 食品衛生監視員の数でございますが、昭和五十五年は五十五名、五十八年においては六十一名、さらに昭和六十一年におきましては七十二名の食品衛生監視員を配置しているところでございます。
  110. 井上和久

    井上(和)委員 先ほど言いましたように十万単位で件数がふえておるわけでありますから、こういうふうなふえ方というか体制では十分でないのじゃないかという気がするわけであります。  一つは、横浜だったと思いますが、輸入の缶詰が山積みにされていて、底が裂けて汁が出ていたなんという話が新聞に大きく載りました。  あるいは、この間といいますか、夏でしたが、輸入牛肉から高濃度の農薬が検出されたというようなことがございました。しかもこの中では、DDTとかディルドリンあるいはヘプタクロールという農薬は人体に有害であるとして我が国では使用が禁止されているものでありますが、これが発見された。この事件は、我が国の検査の段階でこれが発見されたのではなくして、アメリカの情報によって発覚をしたというか発見されたというか、わかったものであるというふうに思うのでありますが、この検査で発見をできなかったか。あるいは、このアメリカからの情報が入るまでに約一カ月の期間があるわけですが、その間は大丈夫であったのかというふうな気がするわけです。これについていかがですか。
  111. 難波江

    ○難波説明員 お答えいたします。  輸入食肉の安全確保を図るために、医薬品とか農薬等のいわゆる残留物質につきましては、従来から諸外国の情報等できる限り的確に入手をし、残留の疑いの強い物質を優先的に検査するという方式をとっていたところでございます。  ただいま先生御指摘のDDT、ディルドリンあるいはヘプタクロールにつきましては、昨年の六月オーストラリア産の牛肉に係る残留の情報が、私ども入手するまで諸外国においてこれらに係る問題のあるような情報がなかったということで、残念ながら先に発見することができなかったわけでございます。もちろん、そういう事態が起きましてから、既にその時点で輸入されたものについても、事業団等の国内在庫についても検査をし、悪いものを排除するという措置を後で行ったというような状況でございます。  今後とも諸外国状況等的確に把握し、残留物質について効率的、効果的な検査を輸入時点で行うように、そして輸入食肉の安全の確保を図るというようなことで努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  112. 井上和久

    井上(和)委員 現在輸入されておりますオレンジの腐敗防止のために使われている薬品は、どういうものがございましょうか。
  113. 大澤進

    大澤説明員 輸入されているオレンジ、レモン等あるいはバナナ、これらに使用が認められている食品添加物でございますが、まずオレンジ、レモン等につきましてはオルトフェニルフェノール、ジフェニル及びチアベンダゾールという防ばい剤でございます。それからバナナにつきましてはチアベンダゾール、これらの使用が認められております。
  114. 井上和久

    井上(和)委員 OPPとかあるいはTBZ、こういうものは都立の衛生研究所の研究で発がん性があるというふうに確認をされておるわけであります。我が国では昭和五十二年までこのOPPは使用されなくて、五十二年から使用禁止が解けたというか使用を認めた、あるいはTBZは五十三年から認められたというふうになっておると思います。  発がん性があるということが公的な機関で正式に発表された、これは防カビ剤といいましょうか防腐剤といいましょうか、薬品でありまして、しかしそれでも大丈夫であるということの理由がわかりにくいのでありますが、今大臣言われたように、安全でないものは食糧でないというすばらしい御答弁の後で、こういう発がん性があるというのは安全でないということだと思いますので、これについてお答えをいただきたい。
  115. 大澤進

    大澤説明員 先生今御指摘されましたように、OPPにつきましては、もちろん公立の東京都の衛生研究所で発がん性の報告があったわけでございます。私ども厚生省でも、これらの事態を踏まえて追試験も行い、さらにその結果につきましては、昭和五十八年に厚生省の審議会である食品衛生調査会において検討していただいたわけでございます。  その専門家による検討結果は、OPPそのものにつきましては、摂取量は極めて微量であるということから動物では体内貯留あるいは蓄積等は認められず、そういう知見からすると、人に対するリスク、つまり危険というものは直ちに起こってくるものではない、こういう専門家の結論を得られたわけでございます。  なお、御参考までに申し上げますが、食品の規格に関する国際的な機関でございますFAO、WHOにおいては、一日の許容量をこのOPPについて設定しておりますが、体重キログラム当たり〇・〇二ミリグラム、こういうことになっております。  TBZにつきましても、催奇形性について指摘があったわけでございます。これにつきましても食品衛生調査会で審議されたわけでございます。この性状につきましては、閾値の存在は、催奇形性が一定のレベルから出てくる、こういうことなのでございますが、現在の使用実態あるいは摂取量から見て、これも極めて微量なもので直ちに問題になるものではない。しかも、慢性毒性試験でございますが、ラットでは体重キログラム当たり十ミリグラム投与しても格別問題、つまり毒性は出てこなかった。さらに御参考まででございますが、国際的な食品規格の機関でございますFAO、WHOにおいても、このTBZにつきましても一日の許容摂取量として〇・三ミリグラム・体重キログラム、こういうぐあいに認められているところでございます。
  116. 井上和久

    井上(和)委員 安全というのは大事であると思いますし、その一つだけをとらえますと確かに許容量とかいろいろなラインが引かれてあるかもわかりませんけれども、いろいろなものがふくそうしてとられますと大変なことになると思いますので、厳重な体制をとって監視をしてもらいたいと思います。  次に、森林行政についてお尋ねをいたします。  我が国の国土の面積の七〇%を森林が占めておる、御案内のとおりでございまして、今ミカン農家はもちろん大変ですが、林業農家というのはもっともっと前から、そしてなおなお大変な状況であるということが言えると思います。日本経済的な成長とか産業構造とか、いろいろな条件があったとは言いながら、結論として山林というものは今寂れようとしておる。山村から人はいなくなろうとしておるし、過疎の地域になろうとしております。  これが現在の姿であるというふうに私は思いますし、逆に言えば、これは最も悲しむべき出来事だというふうに思うわけでありまして、この二十一世紀を踏まえまして、日本の森林行政、林業のあり方について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  117. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 森林は、木材の供給のみならず各種の公益的機能を有しておりまして、国民経済の安定、国民生活の向上の上から極めて重要な役割を果たしてきておるわけでございます。  近年における森林・林業に対する国民の要請は多様化しており、二十一世紀に向けてこれらの要請はますます高度化するものと考えられます。  このため、木材需要の拡大、林業生産基盤の整備、森林の総合的利用の促進などの林業振興施策を総合的に推進するとともに、地域性を踏まえつつ国民のニーズにこたえた森林の整備を図ってまいりたい、かように思っておるところでございます。
  118. 井上和久

    井上(和)委員 今の日本の林業の状況というものは大変厳しい状況にある、それは材木の価格が低迷どころではなくしてもう破壊的な価格状況だと私は思うわけでありまして、輸入材には押されますし、また、日本の平均林齢が四ないし七林齢だと思います、中心が。そういうふうな状況からしますと、まだまだ伐採期には達しておりません。  したがいまして、今は日本全国押しなべますと、とにかく間伐期にあることは間違いがないわけでありまして、間伐をいかに行うかということが今の林業にとっては非常に重要な問題でありますが、二十年育てた間伐材一本が百円ぐらいでありまして、大根一本が百五十円したという話がありまして非常に嘆いたということが現実にあるわけであります。したがいまして、この間伐材等につきましても、政策としてしっかりとこれをとらえていただかなければならないと思うわけであります。  時間がありませんのではしょって申し上げますが、この間伐材につきましてはいろんな使い方を皆さん御研究になっておられます。これは私の一つの提案というかお願いなんですが、学校、いす、机、これらを間伐材でもしやれば、今、日本で間伐材が切り倒しになっておるのです、山の中にほうり捨ててあるのですが、これを利用しても十分にいけるだけのものがあるということが私どもの計算で出ておるわけなんです。これに取り組んでいただけたら、教育上も非常にいいというような話が出ております。本当の木でつくったいすに座って木の温かみのある机、これだと子供の情操の上からも非常にいいんだという結果が出たということも聞いております。  そういうことで、ぜひともこれに直ちに取り組んでもらいたいと思うわけですが、いかがでしょうか。
  119. 遠山耕平

    ○遠山説明員 お答えします。  学校用の机、いすについては、現在、日本工業規格、JISでその性能なり寸法なり材料等が決められているわけでございまして、この規格では、机、いすの材料というのは木製、金属製、それから合成樹脂を使用することができる、こういうことになっているわけでございます。私どもとしては、この日本工業規格に従って学校の方で机、いすを使用する、こういうことで指導をしているわけでございます。  現在、学校で実際に使われている机、いすでございますが、大体、机の甲板、いすの座るところ、それから背もたれ部分に木が使われていて、足の部分がスチール製、パイプ製というのが一番多く使われているようでございます。木材は、先生おっしゃるように非常にやわらかで温かみのある感触がある。しかしそれを全部木材でつくりますと少し重量があるという点がありますし、金属を非常にたくさん使うと冷たい感触になるけれども、丈夫さあるいは軽さというような点でそれぞれ材料に特色があるわけでございます。  私どもとすれば、これらの材料の特徴、それからその学校の置かれている地域の実情、学校の生徒の状況、そういうものを総合的に勘案して地方の教育委員会で適切に判断をしていただきたい、このように考えているところでございます。
  120. 井上和久

    井上(和)委員 校舎につきましても、何校か木造の校舎を再び今建てておられる、しかもそれがふえているというデータをいただいております。私は、大変すばらしいことであるし、これをしっかりむしろ文部省が進めるというふうにしていただくといいと思うのです。現時点におきましては、まだまだ山の学校で木造校舎が多いのです。これはむしろ逆にしなければならぬ、山の学校よりも都市の学校こそ木造の校舎でやると効果があるというように私は思うわけです。特にこれはお願いしておきたいと思うのです。  それと、ちょっとこれは質問のあれと角度が違うのですが、ついおとといでしたか、四谷一中の先生が刺されたという事件がございました。これは新聞記事なので大変恐縮なんですが、この生徒は日本語ができなくて、だから東京中華学校へ行っていた、しかしそれをお母さんが、これからは日本人として育てていきたいので、各種学校扱いの中華学校では卒業しても高校へも大学へも行けない、だから日本の公立中学校へ入学を希望して、少年は日本の中学校へ来た、そして、言葉のいろいろなことがあって学校を休んで、先生がそれを注意しに行って、そしてこんな事件になったということがあります。私も、実はこれだけじゃなくして、ほかのことからも御相談をいただいたことがありまして、とにかく日本の中学校を出ないと高等学校へは行けない、だからもう一回中学校三年だけをやって日本の高校へ入るというようなことも現実に聞いておるわけであります。  こういうふうなことが、今の国際化とか人間の解放みたいなことがどんどん進んでおる、こういうときにあって、これは日本の教育の中で私は大変重大な問題だと思うのです。これは、できた事柄はたった一つかもしれませんけれども、この裏にある、本当に隠されている問題というのは大変なものがあると思うのですが、これについてどういうふうにお考えか。
  121. 辻村哲夫

    ○辻村説明員 御指摘のような痛ましい事件が起こりまして、大変残念に思っておりますが、外国人子弟の受け入れの現状を申しますと、その子供たち一人一人の日本語の習得の状況というものもさまざまでございますし、その子供たちの住んでおります住まいというものもさまざまであるということから、通常の学校に入って子供も努力するし学校も一生懸命応援をして、そしてその学校になれさせる、そういう形のものと、それから帰国子女を対象にした研究協力校というようなものがございますが、そういうところに就学させて、そして日本語とあわせて日本の学校教育になれさせるというような形のものをやっているというのが現状でございます。  しかし、ただいま御指摘がありましたように、これからいわゆる国際化の進展ということで、こうした子供たち、日本語が十分でないような子供たちもどんどん日本の学校に学ぼうとする、そういう子供たちがふえるであろうということもございまして、六十二年度から、外国人子女と日本の子供とが一緒に学ぶ、その学ぶに当たってはどのような問題があるかというふうなことを集中的に研究していただくような研究校というふうなものを発足させたというのが現状でございます。  率直に申し上げまして、この面での経験の蓄積というものは少ないわけでございますけれども、ただいま御指摘のありましたような国際化の進展というものは疑うべくもないわけでございますので、これは一つの事件で、不幸な事件でございますけれども、我々も十分に留意をいたしまして、外国人子弟の問題につきまして今後さまざまな角度から検討してまいりたいというふうに考えております。
  122. 井上和久

    井上(和)委員 六十二年度からそういうふうな制度があるというようなことは私も聞いておるわけですが、制度的にごく一例というか、今、一部の人たちを試験的にというふうな段階だと思うのです。できるだけ早くそういうことを脱却をして、オープンな理想的な入学ができるような体制をぜひ文部省として進めてもらいたいというふうに思います。  林業の関係に戻るわけでありますが、今現在新林構がとり行われておりまして、いよいよ再来年でしたか、新林構の最終年を迎えるわけであります。事業自体は、林道の整備とかあるいは林班の整備とか、いろいろな面で、私、林業農家の一人といたしまして、政府が進めてこられた新しい時代への対応に向かう林業構造改善事業ということに対しては賛成をするわけであります。  けれどもこれからの、現時点の新林構が終わった後はどういうふうな方向になるかというのは、林政審の答申等を踏まえまして、今、森林の価値というものがあらゆる形で見直されていっておるわけでありまして、したがいまして、新林構も、今度やる例えば新々林構といいましょうか、にしてみましても、方向が変わらなければならぬだろうというふうに思うわけであります。そういうふうなことを踏まえまして、それについての御計画なり御所見を伺っておきたいと思います。
  123. 松田堯

    ○松田(堯)政府委員 林業構造改善事業につきましては昭和三十九年にスタートをいたしまして、先生おっしゃいました新林構につきましては昭和五十五年から行われておるわけでございます。  新林構におきましては、国産材供給体制の整備あるいは山村地域におきます林業者等の定住条件の整備といったようなところに焦点を当てまして進めているところでございます。まだ推進中であるわけでございまして、今後の構造改善事業のあり方につきましては、最近におきます国民のニーズの多様化とかあるいは二十一世紀には国産材時代が到来するといったようなことを含めながら、現在の新林業構造改善事業をレビューして検討を進めてまいりたい、このように考えております。
  124. 井上和久

    井上(和)委員 ちょうど愛媛県では、県産材の使用住宅の建設者に対して建設資金の一部を無利子で貸し付けるという制度を実施をいたしました。これは時限でございまして、三年間の限定でございましたから、昨年でこれは終わったわけなんですが、大変好評でございました。それで愛媛県とされましては、そのことについて時間が来ましたので、新しい方法として今度は住宅金融公庫に対する利子の補助金というのを出すという方向に改めたそうであります。こういうふうにして、愛媛県あたりでも一生懸命県産材使用ということを強力に進めておるわけであります。  こういうことを今、全国にぜひとも波及させるべきである。今、建設というものは非常に順調な推移を示しておると思いますが、その中でぜひとも木造住宅をしっかりふやしてもらいたいし、しかも国産材、県産材を利用してもらえるようにもっと行政が手を差し伸べるべきである、私はこういう意見を持っておるわけですが、これについて御所見を伺いたいと思います。
  125. 城戸義雄

    ○城戸説明員 木材需要の拡大を図るためには、その大きな部分を占めております木造住宅の建設の促進を図ることが大変重要だと私たちも思っております。また、その推進に当たりましては、地域に根差した住宅供給の推進あるいは地域地場産業の活性化などにも配慮することが必要であると存じております。  このため、建設省では、住宅金融公庫融資につきまして、ただいま先生の方から御指摘がございました地域優良木造住宅建設促進事業あるいはウッドタウンプロジェクトなどの事業を推進いたしているところでございます。この地域優良木造住宅建設促進事業と申しますのは、県産材の活用など地域特性を踏まえた優良な木造住宅について住宅金融公庫の割り増し融資と地方公共団体の利子補給をあわせて行うことによりまして、地域に根差したいい住宅を促進しようという制度でございます。昭和六十一年度にスタートいたしまして、今年度二年目でございますが、三十九道府県におきまして推進をされております。  なお、今後とも木造住宅振興のための施策に関しましては充実を図ってまいりたいと存じております。
  126. 井上和久

    井上(和)委員 最後に農林水産大臣に、今言いましたように林業の状況も大変厳しい状況でありますし、また、ミカン農家の方々も大変厳しい状況であります。そういうふうに現時点における日本経済的な構造等の中での立場自体が、林業にしましてもミカン農家にしましても大変な状況下にあるんだということを私は感ずるわけでありまして、そういうところで頑張っておられる皆さん方というのは大変な御苦労をなさっておるわけであります。ぜひとも農林水産大臣としてそういう方々のために力いっぱい頑張っていただきたいことをお願いをするわけであります。  特に森林につきまして、林業農家に対しましても一言御決意、御所見をお伺いをいたしまして、終わりたいと思います。
  127. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農業、林業とも、今日の厳しい環境の中に、それぞれ関係する人たちが一生懸命頑張っておられるわけであります。そういう中にあって、我々が考えておる食糧政策、これをまず消費者も含めて認識をしてもらわなければならない。昔の生産者は、生産者であり生産者そのものであった。今は、一つのものを生産するけれども、あとは全部消費者であるという場合が多いのでございまして、そういう意味において、消費者ニーズというものも十分含めて考えた私ども考え方をさらに徹底しながら、現場にある方と一緒になって努力をしてまいりたい。  特に林業につきましては、これは山の持つ意義、森林の果たしておる役割、それがまた川につながる。山、森、川、このことが、環境問題とあわせて一つの哲学がなければその認識はなかなか徹底しない。こういう状況にございまして、今度やがて行われる大阪の花と緑の万博におきましても、あれが大阪の箱庭で終わってはならぬ、建設省が窓口で、私どもと一緒になって進めておるわけでございますけれども、あの事業自体が、山の哲学、また森林に対する考え方、木材というものに対する今御指摘のあった考え方、それがまた教育の場にも及んだ形で徹底が図られ、そういう認識が改まっていくところに大きな意味がある、こういう認識で、これまた現場の方々とも一緒になって努力をしてまいりたい、かように考えております。
  128. 井上和久

    井上(和)委員 ありがとうございました。以上で終わります。
  129. 前田武志

    ○前田委員長代理 和田一仁君。
  130. 和田一仁

    ○和田委員 佐藤大臣、きょう私初めて大臣に質問する機会を与えられまして、大変うれしく思っております。と申しますのも、日ごろの大臣の御答弁、予算委員会あるいはきょうの御答弁を伺っておりましても、言語明瞭、意味明瞭で、大変わかりやすい御答弁でございます。特に、今我が国農水産業が大変大きな岐路に立っているようなこういう大事な時期に、その最高の責任者としての大変大事なお立場にある大臣が、いつも真摯にかつ情熱を持って責任あふるる答弁をされておるということは、国民にとっても大変わかりやすくて頼もしい感じがしておる、こう思うわけでございます。私はきょう初めてでございますが、全くの門外漢でございまして、ぜひひとつ従来以上にわかりやすい御答弁をお願いしたい、こんなふうに冒頭申し上げておきます。  昨今、とにかく国際化と自由化が非常に大きなうねりとなってきておるわけでございますけれども、同時に、そういう中で、世界各国それぞれが自分のところの国内事情を背景にいたしまして、そして利害得失を考えながらの国際場裏での交渉事が行われておるわけでございまして、そういうことの中で日本も今大変な国際化の波に洗われておるわけでございます。  今回のこの農水産省設置法、これで農林水産審議官を設置したいという御提案でございました。この我が国のこういった背景の中での国際的な農業交渉とかあるいはこれからの対処方針農業の今後のあり方、こういうことについて御質問をしていきたいと思っております。  最初に、バイスミニスターを置くというこの今回の御提案の背景事情について、大臣の御見解をまず伺いたいと思います。
  131. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 いろいろ御激励賜りましてありがとうございます。  我が国農林水産業を取り巻く最近の国際環境には、国際経済構造の変化を背景といたしまして、国際収支の不均衡等一段と厳しさが加わっており、これら農林水産業をめぐる国際問題は、従来の個別農林水産物の国境保護措置にかかわる問題から国内農林水産政策全般にかかわる問題へと拡大をしております。質的に大きく変化をしてきたという現実でございます。  今回の設置法改正は、このような情勢対応して農林水産行政の強力な推進を図るため早急に体制を整備することとし、全省的立場から各局間の調整を要する重要な国際問題等について事務レベルでの最終政策調整、これを行うとともに、高級レベルの対外交渉、国際会議等に対応する職として次官クラスの農林水産審議官を設けたいということで提案をした次第でございます。けさほど来このことについていろいろお言葉がございましたが、遅きに失したというような御指摘も午前中にいただいたところでございますけれども、いよいよその必要性が顕著になってきたわけでございまして、何分にもひとつ御理解を賜り、御賛同あらんことを重ねてお願いを申し上げておきたいと思います。
  132. 和田一仁

    ○和田委員 御答弁のとおり、強力な交渉体制を整備するというその立場は非常によくわかります。  そういうことで法律に基づいた新しいポストを一つつくろうということでございますけれども、私ども行政改革を進めていこうという立場から申し上げますと、それはそれで結構でございます、非常に大事なことですからぜひそういう新しいポストを有効に生かしていただきたいわけですが、同時に、そのためにそれがただ一つふえるということではなくて、そのためのスクラップがあるのかどうか、あるとすればどういうところをスクラップしてこれに対応しようとされているか、それをまずお伺いしたいと思います。
  133. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生お尋ねの今回の農林水産審議官を設置するに当たりましてのいわゆるスクラップの問題でございますが、農林水産省といたしましては、農蚕園芸局次長及び経済局担当の大臣官房審議官、これはそれぞれ指定職でございますが、一名ずつ計二名、並びに大臣官房参事官一名を廃止することとしておるところでございます。  この廃止の問題につきましては、先生御指摘の行政改革推進の中であるということから、法律職の農林水産審議官の設置に見合うものとして、査定当局との折衝の結果定めたところのものでございます。
  134. 和田一仁

    ○和田委員 今お聞きした組織の中で、農蚕園芸局次長さんのポストは、これは技官、技術職のポストというふうに伺っておりますけれども、こういう新しい審議官をつくる、その対応の中にこういう技官のポストをスクラップするということが支障があるかないか、また、そういうことでお進めになる中で、従来その組織がやっていた業務については今後どういうふうな対応をされるのか、それはそれで十分対応できる体制になっているかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  135. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘のとおり、農蚕園芸局次長のポストは技官のポストでございまして、現在局長と相携えまして各種の多様なる農蚕、植物、農産物の振興等の仕事に従事しているところでございます。  この点につきまして、今回の農林省全体の対応ということから、御指摘のとおりこのポストは農政上の展開の上におきましてもあるいは農蚕園芸局ひとりとりましても重要なポストでございますので、私ども考え方といたしましては、将来いろいろな問題、業務の運営上支障を来すことのないようにしようというようなことから、現在官房審議官という形で農蚕園芸局におきますところのこの農蚕園芸局審議官のポストというものを技官の方に充てていただきまして、農蚕園芸局のいろいろな運営上、技術的な側面での問題について万支障がないことをねらいまして、そういう対応措置をとらせていただこうかという予定にしております。  なおさらに、繰り返すようでございますが、農蚕園芸局はかんきつあるいは永年性植物の桑等々各般のものを持っておるわけでございまして、農林省全体と申しますか、あるいは省内内部の問題でございますが、官房等の人員をもっていろいろ支援体制を組んでいかなければいけないと考えておるところでございます。    〔前田委員長代理退席、戸塚委員長代理着席〕
  136. 和田一仁

    ○和田委員 ぜひ支障のない体制を整えていただきたいと思います。  それでは、国際的な農業問題について御質問をさせていただきます。  今大変な問題になっております国際的な農業のいろいろな問題、これも私の認識から申し上げるならば、アメリカあるいはECその他の国々がそれぞれ農産物の生産が過剰になっている、こういうものの輸出による解消であるとか、あるいは自国内農業を何とか維持発展させなければならないという保護政策、こういうこと等大変な問題を抱えている中でこういう問題が多国間でいろいろ交渉が行われているという認識を持っておるわけでございます。端的な例が、今大変な問題になっているガットの問題であるとか牛肉オレンジ問題等々ではないかと思うのですが、全体的に見て今私が言ったような認識が間違っていないかどうか。  国際的な農業問題の根底に、農産物の生産バランスというものは、かつて非常に食糧が足らないという危機が言われていた時代とはまるで違ってきている、そして今や生産過剰基調というものでここ数年は推移してきている、こういうふうに考えておるのですが、こういう農産物の生産過剰基調というものは今後とも続くものかどうか。これからはそうではない、また食糧危機の状態になるという認識があるか、あるいはこういう基調は相当長期にわたって続いていく、むしろ増大するという認識か、その辺の見通しについてひとつ大臣の御見解をいただきたいと思います。
  137. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 世界全体の食糧の動向、需給状況、こういうことになりますと、その年その年によって違う気象条件の問題がある、あるいは人口の動態、人口増等による問題の地域もある、また国柄によって農林物資の統計がなかなかとらまえにくい国もあるということで、的確なことはなかなか言いにくいのでありますけれども、今委員おっしゃるように、中国、インド等も大分生産性を向上してきておる、アメリカ、ECは言わずもがな、輸出国として相当な過剰基調にあるということ等を考えますと、確かに全体的には過剰ということを感ずるわけでございますけれども、これを中長期的に見ますと、人口の動態では、人口急増によって食糧との関係のバランスが心配されておる国々もございますし、その他いろいろな要因がございまして不安定である、不安定要因があるということは率直に認めなければならぬ、このように認識いたしております。  なお、今申し上げたことについてもうちょっと詳しく実務方から答えさせます。
  138. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 ただいま大臣から基本的な動向の点についてお話し申し上げましたが、私から簡単に補足させていただきます。  先生御指摘のとおりでございまして、一九七〇年代にいろいろな局面がございましたけれども、過剰と不足の振幅の大きい時代であったというふうに考えております。私どもの記憶でも、大豆の禁輸等々の問題がございましたし、熱波等々によりまして生産が大分アップ・ダウンしたということがございました。最近におきましては、先進諸国の生産拡大がございました。それから中国、インド等の国内自給率の向上がありまして、大幅な過剰基調に推移しているというふうに申し上げてもいいのではないかと思っております。  しかしながら、中長期に申し上げますと、国連の推測等から見ましても、人口が、一九八五年現在の四十八億人から二〇〇〇年には六十一億人になろうということも言われておりますので、人口増による需要の増加が見込まれるところでございます。また、経済成長によります飼料用を含めました需要の増大という点もございます。耕地面積の増加のテンポは鈍化になるであろうということも予想されます。さらに、異常気象あるいは過度の放牧、森林の過伐等による砂漠化の進行といったような点もありますので、基調といたしましては不安定要因を抱えているというふうに言うべきであろうというふうに考えております。
  139. 和田一仁

    ○和田委員 食糧問題というのは大変大事な問題でありまして、この見通しを間違えてはなかなか長期的な対策は立てられないと思うのです。私は今国際化、国際化と申しましたけれども、国際社会の中で日本がこれから果たすべき責務というものは大変重くなってきておりますし、その中で日本が生存していくためには、やはり国際社会の孤児になってはだめであると思うわけです。そういう中で、食糧が余っていく傾向なら余っていく傾向の中での農業政策だし、不安定要因なら不安定要因の中で国際社会の一員としての責務を果たすという難しい選択を迫られていると思います。  これから基本的な考え方について大臣にもお考えを聞かせていただきたいわけですが、まず第一に、今の我が国の食糧自給率、先ほど来いろいろ数字が上がっておりました。確かに穀物ベースでは三割程度、カロリーベースで五〇%程度というような自給率だと思いますけれども、これが傾向としては下がってきているわけですね。三十年前から比べると確かに下がってきておるわけですが、これがここで踏みとどまっていればいいのか、あるいはこのままずるずる下がっていってしまうのも仕方がないのか、逆にこれを積極的な形で引き上げていった方がいいとお考えなのか、引き上げるとすれば大体どれくらいの自給率がめどとしてよろしいのか、その辺の見当を大臣の御見解として、大ざっぱな数字で結構でございますが、お聞かせをいただきたい。
  140. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 食糧の自給力向上については、国会の決議等もいただいておる経緯もございます。自給率についてどんどん割り込んでいってはならぬと私は考えております。物によって、需要があるのに供給が追いつかない肉牛のようなものもございます。もちろん、生産調整という形で非常に困難な対応を我慢して協力をしていただいておる稲作農家もある。そういう中で、総合自給率は七割、今おっしゃるようにカロリーでは五割、それからえさを含めた穀物の自給率ということになりますと三〇%ちょっとということでございまして、この三一%を割ってもいいということには絶対ならない。やはりこれ以上のことを考えながら、国内の自給力をつけながら主要農畜産物については自給をしていく、しかし足らざるところは安定的な輸入体制を図っていく、これをあわせて国民に安定的な食糧の供給をしていく、こういう考え方でございます。
  141. 和田一仁

    ○和田委員 農業の政策指導というものが、一年勝負の産業でございますから、そうころころ変わったのでは生産者としては大変なことになるわけで、そうでなく、やはりある程度中期展望という上に立って指導をしていただかないといけない、こう思うからいろいろお尋ねしたわけでございまして、どうぞひとつそういう意味で、今の自給率ではやはり不安だし、ましてや不安定要因の多い展望であるとするならば、これは何としてもそういう努力をして、自給率は適正なところまで上げていくということが何よりも大事だと思うわけでございます。  いま一つ、大臣、そういう展望の中で、かつて食糧というものに取り組む中で食糧安全保障論というのがございました。これは最近は審議会等の提言の中からも消えてしまいましたけれども、依然として食糧安保論というようなものは根強くあるようでございます。この食糧安保論というものを、私は私なりの見解を持っておりますが、大臣はどんなふうにおとりでございますか。
  142. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 恐らく委員考え方も私の考え方も似たようなことではないかなと私は想像いたしておりますけれども食糧安保論というのは古くて新しい問題である、こういう認識でございます。  そういう考え方に立ちますれば、二十年ぐらい前から食糧の国際分業論が、あるときは財政当局から、あるときは財界から流れた経緯もございます。しかし我々は、先ほど申し上げましたようにまず主要食糧については自給をしていく、足らざるところは安定的な輸入体制を図っていく、あわせて国民に安定的な食糧を供給していく、この責任を全うしなければならない、国家として当然のことである、かように考えております。
  143. 和田一仁

    ○和田委員 大臣の基本的なスタンスがわかりました。  それでは、当面大変問題になっておりますガットの問題についてお聞きしたいと思います。  この二月二日に農産物十二品目自由化勧告が採択されたわけでございます。この交渉をずっと国民は見てきたわけでございますけれども、この二月に一括採択されたということは大変ショッキングな一つの現象だったというふうに考えておるわけです。というのも、十二月のガット総会ではこの十二品目自由化勧告の採択をとにかく拒否をされましたよね、そしてそれが先に延ばされた、こういうふうになったときに、それはこのまま拒否されるのかなというふうに理解した人もおろうかと思うのですが、それが、一カ月ちょっとの期間を経て、この二月には一転して今度は採択に応じたということになったわけですから、おやおやこれはどうしたことかという受けとめ方が多かったと思うのです。その辺のどうしてそうなったかの事情を、私どもにもう少しわかりやすく御説明いただければありがたいと思います。
  144. 眞木秀郎

    眞木政府委員 この十二品目問題につきましては、パネルの討議を終えまして、昨年秋にその報告書の内容がまず日米両国に内示をされたわけでございます。我々はこの内容を十分に検討したわけでございますが、そのうち、ガットの条文の解釈の問題等につきどうしても受け入れることができないという部分がございました。  そういう中で、この十二月のガット総会におきましては、どうしても受け入れがたいという二品目につきましては、どうしても受け入れることができないということで分けまして、部分的に受け入れることをやむなしとしたものと受け入れられないというものを別々に分けた形での採択主張したわけでございます。しかしながら、このガットの報告書と申しますか裁定案は、一体的な、一つ一つのパッケージという形をしておったこともございまして、ガットの紛争処理手続、枠組みにのっとってこのパネル審査等が行われたわけでございますけれども、発言した多くの国が、このガットの紛争処理手続を尊重する、一部分だけに賛成をして一部分だけには反対をするというようなことでは困るという意見が圧倒的であったわけでございます。したがいまして、我々といたしましては、十二月の総会におきましては結論を出さずに、二月の理事会で改めて討議をするように申し入れ、これが入れられたわけでございます。  その後、我が国といたしましては、この十二月のガット総会における各国の議論等も踏まえて、どういう態度をとるべきかということにつきまして慎重に検討してきたわけでございます。その結果、この二月のガット理事会に臨むに当たりましては、加盟国の圧倒的意見というものが今申し上げたようなことでございましたので、それを尊重しつつ、実質的には我が国の利益を何とか確保していくということが大事であろうと考えまして、ぎりぎりの選択として、ガットの裁定案、いわゆる報告書案は受け入れるけれども、そのうち二品目自由化は困難であるということを、採択に当たっても法律の解釈上受け入れられないという立場からそこをはっきりと表明した上で、受け入れるものは受け入れたけれども、その二品目については自由化はしないという方針で、これにつきましては提訴当事国であります米国及び関係国理解を今後求めながらその方針を堅持してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  145. 和田一仁

    ○和田委員 経緯の中で、二月に入ってからは、そのうちの二品目粉乳・練乳とでん粉を除いては仕方がないということで、今申し上げた二つは法的な解釈に異議があるということで、これはだめですよ、こういうことを主張しておられるわけですね。  その主張している根拠というのはどういう根拠で、そして、その根拠がしっかりしていて、これは認められるものなのかどうなのか、なるほどという、そういう説得力のある異議であるかどうか、これをちょっと御説明いただきたいのです。
  146. 眞木秀郎

    眞木政府委員 ガット上、いわゆる農産品につきましては一般的には輸入制限という方法はとれない。そういう貿易の流れを変えるというようなことで合法的に認められているのは関税でございます。しかし、この一般的な禁止に対して一定の要件が満たされる場合には例外として輸入制限が認められるわけでございまして、ガット十一条の二項の(C)項に幾つかの要件が掲げてあるわけでございます。乳製品及びでん粉につきましては、そのうちの一つでございます対象の産品が農産品であること、農産品そのものの生鮮の場合はもちろん問題でないわけでございますけれども、農産品とあわせてごく初期の加工を施したものもその農産品の中に入るわけでございますが、その要件といたしまして、いわゆる保存性がきかないこと、ペリシャビリティーという要件がございまして、この要件に係る解釈等につきましては、他のいろいろな事例等あるいは我々の解釈からしてガットの報告書の考え方には同意できないということで、我々はこれを受け入れることができないとしたわけでございます。  認められるのかという御質問でございますけれども、報告書では認められなかったわけでございますけれども、我々はそれに対して異を唱えておるということでございまして、ここについての明確な決着なりそういうものは、ガット上はやはりここは違法とされておるという事実は残っておりますし、我々はそれを受け入れられないという見解もまたそこにあるわけでございます。そして、それは明確にこのガット理事会での議事録に記録されておるということでございます。
  147. 和田一仁

    ○和田委員 今のお答えですと、これは認められないわけですね。ということになるのですか、結果は。
  148. 眞木秀郎

    眞木政府委員 この点につきましては、いわゆるガットの裁定、判断がガット採択をされました場合でも、本来この紛争処理手続は調停的性格のもので、いわゆる司法的なものでないわけで、その結果が裁判の結果のように必ずしも押しつけられるものではない、当事国間で一定の理解なりそういうものができればいいというふうに我々は解釈をしております。したがって、我々はアメリカに対してもこういう事情について十分に説明をしておりまして、ある程度の一定の理解アメリカについては得られておると考えておるわけでございます。  さらに突っ込んで申し上げますと、仮にどうしてもできない場合には、対抗措置等いろいろな手続がございまして、それによってお互いにまた解決をするというようなことも過去の事例ではございました。
  149. 和田一仁

    ○和田委員 そうすると、それぞれの言い分があるわけですから、あるいは日本が異議を唱えてこれはだめですよということに対する代償措置も求められるかもしれないけれども、そういうことに対してもやはり言うべきことは言っていくということでこれからも交渉される、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  150. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 そのとおりでございまして、乳製品でん粉についてはアメリカ理解をしてくれているものと私は判断をいたしております。
  151. 和田一仁

    ○和田委員 自由化になっていく一つ一つの品目についてもお聞きをしたいし、今プロジェクトチームが組まれてその対応を立てておられるということですが、それがいつごろどうなるかということも伺いたいわけでございますけれども、もう時間がございませんので、これはまた別の機会にさせていただきます。  今、非常にホットな問題がもう一つございまして、これがいわゆる牛肉オレンジの問題でございます。これの交渉がいよいよ大詰めに来ている、先ほど来その話が繰り返されておるわけですが、これに対して大臣は、非常に慎重にかつ冷静に対応していい結果を招来したいという情熱をお持ちのようでございます。新聞等では、大臣が訪米して最後の折衝をしてこいというような政府の方の意向も私ども拝見をするわけですが、大臣自身はどうでございますか。今は行かない方がいいと判断されておるか、条件がまだ整ってないとお考えになっているのか、その辺をちょっと聞かせていただきたい。
  152. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 けさほど来申し上げておるところでございますが、まずテーブルに着いて話し合おう、こういうことにいたしておるわけでございます。ところが、自由化ということが前提でなければテーブルには着けない、ここが問題のところでございまして、私どもはあくまでも、テーブルに着いてください、こういうことを一生懸命にアプローチをかけておる。三月末は大きな節目と心得ておるということは昨年来申し上げておるところでございまして、もう秒読みの段階になりました。いろいろなことが報道され、いろいろございますけれども、このぎりぎり迫った時点において、なお冷静に、事態の厳しさをわきまえながらも冷静に対応しておるところでございまして、何としてもテーブルに着いていただきたい。  そのテーブルには着かないのだ、もう構わないのだ、四月一日からは自由化はもう決まっているのだ、こういうような言い方も報道はされておりますけれども、私は、やはりテーブルに着いていただきたい、必ずテーブルには着いていただけるものと期待をしながらこの秒読みの段階を迎えておる、こういうことでございます。  今そういう状況の中で、私個人が行くとか行かないとか、しかし私は難しいから逃げ回っているともし誤解があるとするならば、私は逃げ回るということが一番大嫌いな男でございまして、私が訪米することはやぶさかでない、いやそれ以上に、私自身農林水産省の責任者としてある種の解決を迫られておる、当然のことである。また先行きも、その始末がついた——決着がどうつくか、その結果によってはでございますけれども、私自身が、また農林水産省自身が責任を持って今後の食糧政策を進めていかなければならない問題である、こう答えておるわけでございます。
  153. 和田一仁

    ○和田委員 デリケートな交渉事でございますから余り突っ込んで申し上げません。ぜひ成果を上げていただくような御努力をお願いしたいと御要望しておきます。  大変限られた時間でございまして、もう一つだけこの審議官設置に関連してお伺いしたいと思いますが、国際的な問題といたしまして捕鯨の問題がございます。  これは国際捕鯨取締条約というものの中で今日本の捕鯨が、商業捕鯨が禁止されておるわけでございますけれども、いろいろこの経緯等伺っておりますと納得のいかない点が多いわけでございますが、私の理解からいえば、この鯨資源というものを有効に利用を図るために国際捕鯨取締条約というものは締結されている、こういうふうに理解しておるわけなんです。  これは間違いないと思いますが、それを一つ念を押しておきたいのと、資源であるならば、この資源が枯渇しないように努力するというのは当然でございますが、そういう取締条約の中で商業捕鯨が全面禁止されてしまっているということでございますけれども、こういう現状を踏まえながら、今農水省としては、捕鯨に対して、まずどういうアプローチからかつて盛んにやっておった商業捕鯨を復活していこうとされておるのか。  まず第一に、今調査捕鯨をやっておられるようですが、これは、科学的な根拠をしっかり認識してもらうためにもぜひ必要なことだと思いますから、やってもらわなければいけない。同時に、当面はほかの国では許されている生存捕鯨がなぜ日本ではいけないのか。これぐらいのことはすぐにでもやれるように努力して、沿岸の捕鯨で生計を立ててきた人たちの生存捕鯨は認めさせる。  ここから始めて、さらに調査捕鯨、これをきちっとやって、鯨資源というものはこういう状態であるということをはっきり立証できるような調査捕鯨も継続して、やがて商業捕鯨の復活にいくべきだ、こう思っておるのですが、いかがでしょうか。
  154. 田中宏尚

    ○田中(宏尚)政府委員 国際的な鯨に関します環境は、ただいま先生からもお話がございましたが、現在、御承知のとおり国際捕鯨条約というものが締結されておりまして、これでは、御指摘のとおり鯨類の保存と有効利用ということが条約の基本的考え方になっております。我々といたしましては、そういう条約上の立場にもちろん立っておるわけでございます。しかし、残念ながら、アメリカでございますとかあるいは西ヨーロッパを中心といたしましたかなりの国々では、鯨類は利用すべきではなくてむしろ保護すべきものであるという観念がかなり普遍的に行き渡っているわけでございます。  こういう中で、我が方といたしましては、一九九〇年まで商業捕鯨が全面的に禁止されておりまして、一九九〇年の段階でそれを包括的に見直すということに国際捕鯨条約での会議上なっておりますので、それまでの間に何とか資源状況なりというものを科学的、技術的に確定させておきたいということで、現在、三百頭というものを限度といたしまして南氷洋にミンククジラの調査捕鯨ということを行っておるわけでございます。  これに対しましてアメリカからは、アメリカの二百海里内での日本に対する漁獲割り当てを半減するというような、制裁といいますか処置がとられているわけでありますけれども、当方といたしましては、日本人の食生活なりあるいは文化、歴史、こういう中で長い間鯨が位置づけられてきた関係、それから、IWC、国際捕鯨条約そのものでの見解といたしましても、少なくとも、シロナガスクジラでございますとかこういうものは資源上問題があるといたしましても、我が方が調査いたしておりますミンククジラにつきましては、全海域で四十四万頭ほどいるというようなことで、資源上も格別問題がないという形になっておりますので、何とかこういう調査捕鯨というものを継続いたしまして、一九九〇年の包括的見直し、これに備えたいと思っている次第でございます。  それから、我が国沿岸での生存捕鯨といいますか、従来から行ってまいりました小型捕鯨を別途どうやって存続させるかということでございますけれども、ただいま先生からもお話がありましたように、生存捕鯨という形で、アメリカのエスキモーでございますとかごく限られた範囲ではございますけれども条約上認められているものがございますので、我が国といたしましても、ことしの五月に開かれます国際捕鯨条約の会議におきまして、生存捕鯨として何とかこれを国際的に認知してもらうという努力を、いろいろと苦しい側面なり困難な側面はございますけれども、何とか頑張ってみたいというふうに考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたとおり、今回の調査結果というものを十分踏まえまして、来るべき包括的な見直しなりあるいはことしのIWCの総会、これに臨もうと思っている次第でございます。    〔戸塚委員長代理退席、宮下委員長代理着席
  155. 和田一仁

    ○和田委員 どうぞ水産庁長官も新しい審議官と力を合わせて、そういう目的のためにひとつ御努力をしていただきたいと思います。時間がなくなってしまいましたけれども、もう一つだけお伺いしたいのは、私は、今農業が大変大きな転期にあるのではないかということを申し上げてまいりました。だんだん農業の担い手が減っていく、こういう現状の中で、構造政策について立法をされるというふうに伺っておったのが、何やらそれは今回見送るというふうに新聞報道で見ました。確かに今国会への提出期限は過ぎておりますが、そういうことでありますと、一体それはどうして見送ったのか、見送って、次はいつごろどういう姿勢で立法化に取り組むかをお聞かせいただきたいと思います。
  156. 松山光治

    ○松山政府委員 構造政策を円滑かつ着実に進めていくということは、大変重要な課題だというふうに私ども考えております。  そういう観点から、特に課題になっております担い手への農地利用の集積の問題、現に土地利用調整の仕組みにつきましては農用地利用増進法その他の法制があるわけでございますが、そういうものを前提にしながら、さらに加速する制度的な仕組みの必要がないかというようなことでいろいろと検討を重ねてまいりましたが、いろいろと議論のある問題でもございますし、かつまた、これからの農業の持っていき方につきましての基本的な問題でもございます。したがいまして、ここはもう少し時間をかけましてじっくりと検討を深めた方がいいのではないか、こういう判断に達したわけでございまして、もう少し実態も踏まえ、かつ幅の広い観点から種々検討を深めた上でできるだけ早く成案を得たいものだ、このように考えております。
  157. 和田一仁

    ○和田委員 もう締めくくらなければならなくなりましたので申し上げますけれども日本農業というものは、非常に狭隘な土地と、そしてまた、よその国のように広大な平原、平野の中でやる条件とは違って、急峻な国土で地理的条件も非常によくない上で経営されているわけです。したがって、小規模であり零細な産業ということになっておるわけでございますけれども、こういう現状を踏まえながら、先ほど来言っているような国際化、あるいは日本の社会構造も高齢化という中で、農業の担い手もまたどんどん減っていく、こういうことを考えますと、今農業指導というもの、農業政策というものが問われる意味は大変重たいと私は思うわけでございます。  これからの日本農業を導いていくのは佐藤大臣そのものであり、農水省の皆さんがいかに日本農業を育成発展させるかということにかかっておるわけでございまして、大変今大事な時期ではないかと私は思います。何といっても農業が一つの活力のある産業として日本の各産業の中に位置づけられていく、そういう基盤をしっかりさせていくのが今本当に大事なときだと思うわけなんです。せっかくのそういう構造立法についても、時間をかけてゆっくり慎重にというよりも、私は、至急に総力を挙げて検討して、日本の十年先を見ていただきたい、十年先に日本の農地が荒廃しておって、そして日本国民外国からの食糧に頼っているというような事態にならないように、ぜひひとつ御努力を賜らなければならない、こういうふうに思うわけでございまして、今後の農政の推進に当たって佐藤大臣の御見解をもう一回最後にお聞かせいただきまして、質問を終わりたいと思っております。大臣、どうぞ。
  158. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 今締めくくりでおっしゃいましたが、全くそのとおりでございまして、内外ともに大変な局面を迎えておる、そして、農林漁業関係者が、あるいは流通関係者が、そして消費者自体の考え方がやはり大きな節目を迎えておるという現実、現状認識は共通すると思います。  しかし、何としても先行きどうなるかという不安感が確かにあると思います。それは率直に私もそう思っております。その不安を解消するためには、将来展望をちゃんと描いて、例えば農政審の報告を時々引用させていただいておりますが、あれは各界各層の見識ある方々が出された結論でございますので、それを受けてさらに具体的に、あれは抽象的でございますのでさらに具体的に、例えば米流通研究会もあそこから出てきた、派生しておる考え方でございますし、そういうように農林水産各分野において、ひとつ具体的な将来展望の中に、ことしはこうする、来年はこうするということで、確かな展望とともに一歩一歩進めていくという、そこが一番大事なところではないかなと考えておるところでありまして、せっかく努力を重ねてまいりたい、こう思っております。
  159. 和田一仁

    ○和田委員 大臣、ひとつよろしくお願いいたします。  また、総務庁、厚生省、お呼びしながら時間がなくなりまして御無礼いたしました。おわびいたします。それでは終わります。
  160. 宮下創平

    宮下委員長代理 次に、柴田睦夫君。
  161. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 午前中から議論されておりますように、農業をめぐる国際問題、大変厳しくなっております。対外交渉を担当するために農水省審議官を必要としているということ、これは全く否定するわけではありません。しかし、一番大切なことは農業に対する政府の基本政策であり、外国からの農産物自由化要求に対してどのような方針態度で臨むかということであります。  我が党は、日本農業を守り、食糧自給率の向上を図るために、また、国民の食生活の安全を守るためにも、十二品目自由化をもとに戻し、これ以上の農産物自由化、枠の拡大をやめ、食糧自給率の向上を目指す対策をとるべきであると以前から主張してまいりました。  同じ西側圏にあり、同じような先進資本主義国が主でありますECと日本農業を比べますと、ECはアメリカに次ぐ小麦の大きな輸出国になっております。一九八四年で穀物自給率は一二六%、その中で小麦は一四五%、牛肉自給率は一一二%であります。これに比べますと、日本は、穀物の自給率は、計算はいろいろあるようですが三四%と極端に低く、米以外の穀物の輸入は極めて多く、それから小麦、飼料穀物、大豆、これはもう全面的に海外依存となっております。これは徹底した開放構造ということが言えると思うわけです。  そこで、まずお尋ねしたいのは、ECと日本の違いがなぜもたらされているのか、日本食糧の海外依存が今日の状況に陥っているという原因は何かということについてお伺いいたします。
  162. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御指摘の自給率の国際比較の問題でございますが、現在の食物構造等々から考えまして、日本における狭隘なる土地状況というものが、やや自然的条件の点ではございますが、挙げられねばならない点だろうと思います。先ほどの先生にも私お答えを申し上げたところでございますが、現在の食生活の中での畜産物の供給等におきまして、現在輸入しております飼料、えさの部分につきまして、それを全部国内で自給をするという観点に立ちますれば、現在の耕地面積五百三十六万ヘクタールの約三倍に当たる千四百万ヘクタールを必要とするという点にこれが如実に見られるところでございます。  ところで、一方、ECの問題でございますが、ECの中で、特に戦後のわずかなときに、低い自給率から約一〇〇%になんなんとするというイギリスの場合を比べてみますと、まずこれは耕地面積等におきまして、先ほど私が御説明しました日本の土地状況に対して極めて対照的な姿になっております。すなわち、日本の場合には七〇%が山地に覆われているわけでございますが、島国であるイギリスにおきましての耕地の広さというのは、比率からいっても大きゅうございます。  それから付加的に、やや技術的な面に及ぶところではございますが、戦後におきます小麦の反当収量というものを比べてみますと、我が国の小麦の収穫量といったようなものがいわゆる菜種梅雨あるいは収穫時におきます梅雨というものにかなり影響を受けて、例えば赤カビ病、赤さび病等々の発生が見られるところでございますが、イギリス等々におきましては、その気象条件に起因するところ多大だと思いますけれども、反当でいいまして約六百キロというような、かつて五百キロ程度だったものが六百キロというような技術的な進歩といったようなものがあずかって大きいという点があろうと思います。  さらにもう一つ、世上言われていることをつけ加えさせていただきますと、ECにおきます共通農業政策、そういったものの価格維持対策というものが挙げられようかと思いますが、この点につきましては、先生御案内のとおりECの財政の中に占める農業の価格維持政策の重圧といったようなものが大分挙げられておりまして、そういったものが議論されておるところに逆に示されるところでございます。  私が申し上げましたことを要約いたしますと、国土の状況あるいは技術的な面等々の総合的な結果、両者におきます穀物の自給率の差が出てきたものだろうというふうに推測されるところでございます。
  163. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 基本的には自然的条件の違い、もちろんこれもあるわけですけれども、今例に挙げられましたように、イギリスなんかは、それはいろいろ努力をして今日の状況になっているわけです。日本の場合は、戦後一貫してアメリカの過剰農産物について市場開拓が系統的に進められてきました。その中で、アメリカ自由化要求に次々に従っていって今日の日本農業をゆがめるという結果になっているということを見なくてはならないと思うわけです。  国民の胃袋をアメリカに任せるような、そういう状況になってはいけないと思います。食糧自給率を向上させ、最低限の食糧生産を維持するということは、国民経済にとっても絶対に必要であると考えますが、ここで大臣の所見をもう一度お伺いします。
  164. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 先刻来答弁を申し上げているのを繰り返すようで恐縮でございますけれども、自給率はえさも含めて穀類三一%、この自給率をさらに割ってもいいとは思っておりません。これをもう少し上げるような努力は当然していかなければなりません。米だけ過剰ということではなしに、これは生産調整でいろいろ御苦労をいただき協力をいただいておりますが、肉牛にいたしましても、これは実は需要に対して供給が追っつかない、そういう部分もございますし、そういうことで考えますと、主要食糧についてもう少し自給力をつけると同時に、自給率も今より悪くなるということがあってはならぬ、こう考えている、こういうことでございます。  なお、先ほどアメリカの余剰農産物で云々というお話がございましたけれども、私の記憶でも、戦後アメリカのララの放出物資によって我々が食をしのいできたという経験もあり、一概に共産党の皆さんがおっしゃるようなことはいかがかな、決して反論するつもりではございませんが、私の感じを申し上げておきます。
  165. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もちろん、日本人がそれで生きてきたということを私は否定しているわけじゃないわけです。大臣も反論しないと言うから、じゃ私もやめておきます。  次は、前川レポートに「国際化時代にふさわしい農業政策の推進」という項目がありまして、この中で農産物輸入に触れておられて、「基幹的な農産物を除いて、内外価格差の著しい品目については、着実に輸入の拡大を図り、」云々、こう言っておりますが、この点について政府はどう対応しているのか、時間が限られておりますので、簡単に答えてください。
  166. 眞木秀郎

    眞木政府委員 いわゆる前川リポートにつきましては、これが公にされました六十一年の四月、ほとんど同時に経済対策閣僚会議というところで、政府といたしましてはこの報告を参考として、関係の審議会等における調査審議を含めて検討を行うということに決定を見たわけでございます。  その関係審議会の中には、その一つといたしまして農政審議会というものもございます。農政審議会はこの年の十一月に報告を出したわけでございます。したがいまして、農産物貿易政策を含めまして、農政の基本方向につきましては、我々といたしましてはこの農政審議会報告を尊重して進めてきたところでございますし、また、今後もそのような形で進めてまいりたいということでございます。
  167. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 結局は前川リポートに沿ってその後農産物自由化が進められてきているというふうに見ます。  米、小麦、大豆、牛肉、豚肉、こうした主な農産物の行政価格が、一九八五年から八六年、八七年と引き下げられているわけです。これは結局、農民が犠牲になるということによって推進されてまいりました。だから、農民の怒りもだんだん大きくなって噴き上がっているわけです。  ことしの一月二十日の日経連の労働問題研究委員会報告、これを見ますと、「政府の補助に支えられ、不満を持ちながらも高価格を支払う消費者の犠牲の下で農業をいつまでも続けることはできない。」それから、「農業の各分野における段階市場開放計画を具体的に策定すべき時期であろう。」こう言っております。これは、財界の農産物輸入自由化の提言、自由化論であるわけですが、これについてはどう考えておられますか。
  168. 眞木秀郎

    眞木政府委員 日経連のこの労働問題研究委員会報告の農産物市場開放に関する提言につきましては、我々と見解を異にする面があるわけでございます。  ただいま委員言及されました「農業の各分野における段階市場開放計画を具体的に策定すべき」としておりますけれども、現在、ウルグアイ・ラウンドにおきまして、ウエーバー等を含むあらゆる農産物貿易に影響を与えるすべての措置、ウエーバー等を含む輸入数量制限輸入課徴金、輸出補助金等々ございますけれども、そういうものの措置を対象といたしまして、新しい秩序づくりのための貿易ルールをつくろうということで交渉が行われておるところでございます。我々といたしましては、こういう状況も踏まえて適切に対処する必要があると考えておるわけでございます。  また、「消費者の犠牲の下で」云々というくだりがございますけれども、これにつきましても、農政審議会報告におきましては、国土条件の制約のもとで可能な限り消費者の納得の得られる価格で安定的な供給を図り、生産性の向上を図っていくことが必要であるという提言がなされておるところでございまして、政府といたしましては、この農政審報告を踏まえていろいろな努力を続けていくということでございます。  また、先ほどの御質問の中で、農政審議会報告とその前にありました前川レポートとの関連につきまして、前川レポートをそのまま実施するというようなお言葉がございましたけれども、そうではございませんで、前川レポートの内容もいろいろと検討して、それを踏まえて農政審議会の報告が出されたことは事実でございますけれども内容は違っている面が多いわけでございまして、我々はこの農政審議会報告にのっとって農政を進めておる、こういうことでございます。
  169. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 行ったり来たりしておりますけれども、今の自由化論、これは財界だけではなくて、日経連が歓迎するような労働団体の中からも強く出されておりますが、これは私は正しくないと思っております。  去年の四月に農水省が発表した試算によりますと、農業生産が一〇%減少した場合、ほかの産業への影響は農産物減少額の一・八八倍の減少ということになっております。これによって新たに失業者が三十五万人発生するという試算です。三月二十日のNHKのテレビ報道で、アメリカの言うとおりに米の自由化を行えば、日本で発生する失業者は百六十八万人以上に達するということを千葉大の唯是教授が試算されているということでありました。現在の完全失業者は、この一月で二・八%、百六十八万人ですから、ちょうどこれと同じ数になります。今の産業全体から見て、企業の海外進出、いわゆる産業空洞化ということで失業などが試算されておりますが、こうしたものを加えると大変なものになるわけです。これは膨大な産業予備軍というものが生ずるということを意味するわけですから、現在就労している労働者の労働条件の切り下げにつながる、これもまた必然であるわけです。  農産物自由化は、労働者やサラリーマンにとっても、生活向上どころか、かえって自分の首を絞めるといいますか、生活条件を悪化させることにつながっていくと思いますが、この点についての見解伺います。
  170. 浜口義曠

    ○浜口政府委員 先生御質問の前段にございました昨年四月に発表いたしました農業動向に関する年次報告の件でございますが、私どもこの内容を出させていただいたのは、これまで農業生産は大いに減ってきているというようなことから、国民総生産に対する影響度が低いのではないかというような議論がよくありましたものですので、この昨年のいわゆる白書におきまして、確かに農業総生産のシェアは四十四年の六・八%から二・四%に下がったのでありますけれども、関連産業を入れますと一〇・九%と、依然として高い水準を保っているということを示したわけでございます。  それで、農産物自由化は行うべきではないのではないかというのが先生の御質問の趣旨だろうというふうに思いますが、これは先ほどから経済局長がお答えを申し上げておりますが、農政審議会の報告におきましてこの点について触れております。私どもはこの報告を尊重して対応していきたいということでございます。すなわち、ウルグアイ・ラウンドにおきます新しい農産物貿易ルールづくりの交渉に積極的に参加、貢献するとともに、その状況を踏まえ、我が国農業の健全な発展との調和を図ることを基本に、適切に対処してまいりたいということでございます。
  171. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 お答えになっておりませんけれども、私が言っているのは、結局農業がなくなっていけば失業者がふえるということを覚悟しなければならないし、そうなると失業の増加によって労働条件も悪くなる、購買力も低下をする、購買力が低下をすれば内需拡大どころか内需を減少させる、内需拡大ができなければ貿易の摩擦も深刻化するし、そうなるとますます農産物自由化が要求されてくる、こういうことで、内需拡大という面から見てもこの農産物輸入自由化はマイナスではないかというように考えるわけであります。  そこで、最後に大臣に、十二品目牛肉、かんきつ、それから米も問題になってきておりますが、こうした国際問題の交渉、これが交渉議題になっているわけですが、どういう方針で臨むか、もう一度この交渉に臨む基本的な方針をお伺いしたいと思います。
  172. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 ちょっとよく聞き取れなかったので、もしなんでしたらまた補足をさせますから。  十二品目についての基本的な考え方ということになりますと、これはもう委員承知のように、二品目はいわゆる灰色と言われている部分、残った十品目のうち二品目自由化は困難であるということで、これはわかっていただいているはずである。あとの八品目は、これは数量制限撤廃をする。しかし、それについては国内措置国境措置、これによってどのようにするか、こういうことについて直ちにするといっても、そうはまいりません。そういう意味で、急いでその対応を考え、それを発表し、そして、あるものはいつごろになるだろう、ほかのものはまたどの程度の期間を経てそういう対応措置をとることになるだろう等々、プロジェクトチーム検討するということで、既に二月一日に検討会を発足させ、その対応に努めておるところでございます。  米の問題にも触れられたのでございますけれども、米はもう言わずもがな、自由化はいたしません、完全自給をいたしてまいりますということでございます。しかし国内政策としては、これはいろいろ生産者にも御辛抱いただき、あるいは流通関係者にも御協力いただき、消費者のニーズにこたえるべく全力を尽くしております。これは貿易問題の外でございますけれども、包括貿易法案の中にこれが入るとか入らぬとかいろいろアメリカ側意見もあるようでございますけれども、これは明確に前国会、臨時国会におきましても私からも総理からも答弁を申し上げておるところでございます。  牛肉、かんきつについては、相当時間が経過しております。中川農林水産大臣以来、中川・ストラウス会談、あれ以来の歴史的な経緯がございます。しかし、これは自由化困難である。そして、一定量を輸入をするということについては忠実に履行をしてきた我が日本でございます。そういう中にあって、この三月末が一つの節目になっておる経緯もございまして、その節目を目前にいたしまして、慎重にも慎重に、厳しい環境にあることは承知をしながらも、冷静な対応をしなければならぬと私は自分に言い聞かせておる状況にございます。テーブルができることを強く期待をいたしておるわけでございまして、テーブルができますれば話し合いをし、我が国の状況を率直に理解を求めたい、このように考えておるところでございます。
  173. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 言われた中で、私たちも支持している点につきましては毅然としてやっていただきたいということを言っておきます。  次は、千葉県の北総東部用水事業についてであります。これは農業を育成するということで始まりましたけれども、現実には農家が大変苦しむような結果になっているという問題であります。  北総地域というのは、千葉県の中央部から北東部に広がる北総台地とその周辺の谷津田地帯であります。この地帯は土壌が比較的肥沃で温暖な気候に恵まれておりますけれども、水利条件に乏しい。そのために、台地の農業が畑作中心で、落花生やサツマイモなどの乾燥に強い作物に限られ、谷津田も含めて農業近代化の道が阻まれておりました。  この状態を改善するために、利根川と霞ケ浦の水をとって、佐原、八日市場、この二市、それから周辺の七町にわたる五千九百二十一ヘクタールの農地に農業用水を供給する北総東部用水事業が、昭和四十五年に閣議決定されてその後進められ、昭和五十六年の三月に完了しました。  この事業費は百九十八億一千二百万円であると言われておりますが、昭和四十五年当時の事業費は幾らであったか、それから今言ったところまでに途中で変更があったかどうか、お伺いします。
  174. 松山光治

    ○松山政府委員 北総東部用水事業につきましては、今先生おっしゃられたような状況の中で、この地区の水利用の安定を図るということで、水資源開発公団の事業として行われたものでございます。最終事業費約百九十八億でございますが、四十五年度に着工いたしまして、完了いたしましたのが五十五年度ということでございまして、ちょうど間に狂乱物価の時期が挟まっておるというような事情も重なりまして、増加いたしております。当初の事業費は約八十億円というふうに見積もっておったところでございます。
  175. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そこでもう二倍半ぐらいになっているわけです。ここに問題が生じてまいります。  それからもう一つ、北総東部用水事業に関連する事業として、千葉県営のかんがい排水事業、畑地帯総合土地改良事業、圃場整備事業、それから農地開発事業が一体となって現在進められているのですが、この事業費は幾らか、最初の見込みもわかれば、これも含めてお伺いします。
  176. 松山光治

    ○松山政府委員 御指摘のように、複雑な地形条件ということもあるのでしょうか、いろいろな事業が重なり合いながら脈絡のとれた形で行われておるわけでございます。  事業の着工年度あるいは完了見込み年度もそれぞれ区々でございますが、一応それぞれの当初事業費、当初に見込みました金額をまず申し上げますと、合わせまして約百九十七億円、現段階におきますそれぞれの最終事業費の見込みでございますが、約三百五十七億円、こういうことになっております。
  177. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 これも最初から大変ふえているわけです。  千葉県が計画しておりました五千九百二十一ヘクタール、これは水資源開発公団もそうですけれども、この五千九百二十一ヘクタールは、最初の計画から二市七町では受益面積が減少し、あるいはまた減少する計画に変更する、こういう見通しであるというように聞いておりますが、その点はいかがでしょうか。
  178. 松山光治

    ○松山政府委員 先生の方から一番最初に御指摘がございましたように、この地域は畑と谷津田が入り組んでおりまして水源に乏しい。したがって、作目といたしましても乾燥に強い落花生なりカンショなりを畑では主体にしておる。加えて、水田におきましては干ばつ対策で湿田にならざるを得ない。こういう状況をどうやっていくか、こういうことでやってきた事業でございますが、その後の様子を見ますと、水田につきましては当初見込みのようなことで進んでおりますが、畑につきまして、従来の営農方式でやっていきたいという農家がふえておることがございまして、今約四千三百ヘクタールの受益面積の見込みになっておるところでございます。
  179. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 とおっしゃいますけれども、現実に千葉県の方で状況を聞いてまいりますと、後で加えようと計画している地域ではなくて、最初の二市七町の中では、受益されるところが減って、最終的には二千五百ヘクタールくらい減ってしまう、こう言われているわけです。  国営、水資源開発公団営ですけれども、この施設であります用水路の六線、合計四十二・五キロ、揚水機場三カ所、加圧機場二十四カ所、この維持管理費というのは受益農家が負担することになるわけですが、受益面積が最初計画の五千九百二十一ヘクタールから減少することになりますと、地積割の維持管理費というものが最初計画よりも引き上がる、高くなるということになるわけですか。
  180. 松山光治

    ○松山政府委員 受益面積の点につきましてはちょっと食い違いがあるようでございますが、私ども、県の方から聞いておりますのでは、水田で約二千二百ヘクタール強、それから畑で二千ヘクタール強ということで、合わせて約四千三百へクタール、そういうふうに聞いておるわけでございます。  今お尋ねの水資源の開発施設の維持管理費の問題でございます。これは当該施設の操作なり維持なり修繕等に要する費用でございまして、原則といたしまして当該費用は千葉県とそれから関係の土地改良区でそれぞれ半々で負担する、こういうことになっておるわけでございます。  費用の中身から申しますと、受益面積の多寡によりまして変動いたします一種の変動経費とでも申しましょうか、使用電力料と燃料費等が一つあるわけでございます。それから、受益面積の増減にかかわりなしにいわば固定的にかかる経費が一つ、施設の補修費でございますとか基本料金的なものがあるわけでございまして、その限りでは受益面積が減少することによりまして増加する要素が当然あるわけでございますが、別途、六十年度からでございますが、この施設は非常に高度の公共性を有しておるといったようなことで、取水施設につきまして経費の半分を国庫補助するといったような措置も行ってございますので、当初の見込みよりも若干の増はあろうかと思いますけれども、それほど大きな増になってないのではなかろうかというふうに私どもは見ておるところでございます。
  181. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 前提が違いますので数字的には合いませんけれども、いずれにしろ減少すれば上がるということはわかりました。それから、受益農地を最初五千九百二十一ヘクタールとしていたのですが、それが減少するということでは一致します。  だから、減少すれば、百九十八億円の国の工事費のうち農家負担の一六%、三十一億円余りですが、これは受益農家だけで負担するということになるわけですか。
  182. 松山光治

    ○松山政府委員 工事費にその間におきます建設中の利息を加えたものに一定の割合を加えたもの、今、一六%というのがこの地区では一応地元の負担になっておるわけでございますが、通常の場合でありますれば二一%の負担でございますけれども、県が五%の上乗せをいたしまして一六%の負担をする、こういう一応の形をとっておるわけであります。  ただ、その場合にも、現実の受益農家での負担につきましては、先ほど私の方で申しました五千九百ヘクタールと四千三百ヘクタールの差、一千六百ヘクタールに見合う分につきましては、直接受益農家から徴収するようなことを今いたしておりませんで、県が無利子の融資を土地改良区に行って、そういう形で受益農家の負担を軽減さしておる、このように聞いております。  なお、この地区におきましては、関係の市町村が、市町村によって区々でございますが、それぞれ五%とかあるいは一〇%とかというふうな上乗せ助成もいたしておりますので、実際の受益農家の負担というのは一六%を掛けたものよりも低いというのが実情でございます。
  183. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 無利子融資といっても最後は返さなくてはならないということになるわけです。  農家の負担分につきましては、事業完了後二年間据え置き、その後十五年間元利の均等払いということで償還することになるわけですが、さきの三十一億円余りを五千九百二十一ヘクタールで割ると、一ヘクタールにつき五十三万五千円程度になります。利息を加えても百万円にはならないというわけです。十五年間でこれを割りますと、六万円程度でよいということになるはずであります。  ところが現実には、香取郡の山田町の土地改良区の一例を挙げますと、この総会では、水資源開発公団営事業費償還特別会計で、受益地の田十アールで二万三千円、畑五千六百円、畑のスプリンクラー二千円と合わせて七千六百円ということになっております。この工区で十アールの田と十アールの畑を受益地といたしますと、六十三年度の賦課金は、一般会計、それから水資源開発公団営事業費償還特別会計、それから特別会計、いろいろありますけれども、これを全部合わせますと、田では年間三万六千百円、これに通水量一立方メートルについて三円、畑は全部で二万百円、これに通水量一立方メートルについて九円を支払わなければならないということです。田を一ヘクタール、畑を一ヘクタール受益するということになりますと、賦課金が五十六万二千円ということになりまして、これに水の使用量を加えますと、六十万円を超えるということになります。  このような負担金を農家が十五年間も続けられるかという問題が生じてまいります。山田町の農家で、六十万円の負担金を二年間滞納して、もう支払いができないという人も、これは大きい方ですけれども、出ているわけです。それから、支払えない人がまだたくさん次々に出てきております。香取郡の耕地十アール当たりの生産農業所得というのは、千葉県の統計によりますと、六十一年度で十三万三千円ということになっております。ですから、二ヘクタールあっても二百六十六万円でありますから、この中から六十万円の負担金を払えという方がこれは無理だというふうに思うわけであります。  そして、千葉県営の関連事業につきましては、当初計画の二市七町分について言いますと、この二市七町分は昭和六十三年度で打ち切ろう、終わりにしようということが言われております。そうなりますと、これから三年先、また三年から五年先というときには、千葉県事業分、これは二五%の地元負担があるわけですから、この受益農家賦課金の支払いのピークになりまして、今払っておりますのに五〇%前後ふえるだろう、こう言われております。さっき言った六十万円の人は九十万円ぐらいになる、そういう年を迎えるということであります。これじゃ今の農業経営から考えてみてみんな行き詰まってしまうんじゃないか、こういう問題が生じてまいります。こういう状況に実際はなっております。  これは山田町の例を挙げましたけれども、北総東部土地改良区のことしの総会の決議を見てみましても、大体似たり寄ったりのその方向での計算が出ているわけです。こういう状況の中で、この農村、農家の救済ということを——まず、一体払えるだろうか、払えるという考えかどうかお伺いします。
  184. 松山光治

    ○松山政府委員 具体的な農家の負担額につきましては、先ほど申し上げましたように、工区によってあるいは農家によって、どういうふうな形の工事にかかわっているかによって区々でございまして、なかなか一律には申し上げにくいわけでございます。  私どもといたしましては、これが申請事業としてそれぞれの地域の中の話し合いの中で要請をされ、事業を実施してきている、そういう性質のことでもあり、かつまた、県におきましても、先ほどの上乗せ助成のほかに、いかに今回の水をうまく使って営農成績を上げていくかという観点から特段の営農指導対策も組んでおるというふうな状況でありますので、そういう状況の中で、ひとつ円滑な償還に努めてもらいたいものだ、このように考えておる次第でございます。
  185. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 ところが、今挙げましたような農家の収入、経営の実態というものから見て、またこの支払い金額が非常に多い、また多くなる、こういうことから見ました場合に、これを支払えという方が常識的に見て無理だというように見られるわけであります。  もともとこの北総東部用水事業も県の関連事業も、これが実現すれば谷津田の収穫もふえる、畑では陸稲がつくられる、作物選択の制約がなくなる、新しい時代の農業経営が約束されて、首都圏の農産物供給源にこの地域がなるんだ、こういうふれ込みで計画が始められたわけであります。ところが現実には、米はつくるな、農産物輸入自由化の波の中で農業経営は大変な状態になっております。これはもう午前中から議論があったところです。そういう中で、土地改良事業費は負担し切れない、だからもう農地を手離す以外にない、こういう状態が生まれてきております。  この問題に対して行政として救済策を講ずべきであると思いますが、農水省の方はどのように考えておりますか。
  186. 松山光治

    ○松山政府委員 なかなか厳しい農業をめぐる情勢でございますので、この地区のみならず各地で負担金問題が重要な問題になっているということは私ども認識をいたしておるつもりでございます。そういう観点からこの問題についてこれまでも取り組んできたつもりでございますが、何分にも高率の助成のもとで生じておる負担金問題ということで、おのずから制約があるわけでございます。  例えば、この地区に直接該当するかどうかは別にいたしましても、償還のやり方について制度的な工夫を加えるというようなこともこれまでもやってまいりました。また、六十三年度からは新しく償還の円滑化を図るための措置も予定をいたしておるところでございます。  この地区について申し上げますれば、そういった措置を有効に活用していただけるかどうかというふうな御相談が一つあろうかと思いますし、かつまた、まだ県営事業が進行中でございますので、できるだけ進度を早める形で効果が早期に発生するというふうなことも私どもとしてはこれからも考えていかなければいかぬ、一般的な話としてもそういう話はあろうかと思っております。また、具体的な問題については県ともよく相談しながらやっていきたい、このように考えておる次第でございます。
  187. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 そういう状況の中ですから、結局農家の経営が成り立つように、農業収入が上がるように、こういう指導だとか、いろいろ農水省として考える問題があると思うわけですけれども、その具体的な問題として、県なり、また農水省が考えている問題を言っていただきたいと思います。
  188. 松山光治

    ○松山政府委員 地区の具体的な事情によりましてどういう対応をしていくか、やはり県ともよく相談するということだろうと思いますけれども、国の措置といたしましては、ことしから予定しております償還の円滑化のための対策を御活用いただけるか、いただく必要があるかどうかというふうな問題が一つあろうかと思います。  ただ、何よりも水を有効に使っていただきまして収益を上げていただくということがやはり基本でありましょうし、そういうふうなことを含めて県ともまたよく相談していきたいと思っております。
  189. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 水を有効に使うといっても、結局その受益農地が減っているわけですから必要以上の水を使うはずはないし、それをどうするか、その余った水をどうするか、こういうことこそ考えなければならない問題であると思います。それから、収益が上がるように農家の経営を指導する、モデルをつくってそれを指導する、そういうことも考えなければならない。そして、この地域でこれだけの出費をしながらなお農業経営が維持できるような、そういう施策こそ政府がやるべきことであるというように考えるわけであります。  北総東部用水事業の問題について言いましたけれども、各地で国営かんがい事業が失敗しているというような話を聞くわけであります。千葉県の土地改良事業団体連合会でも土地改良事業に対する要望をいろいろしているわけですけれども、そういう中で、農家負担の軽減、それから土地改良施設維持管理に対する財政援助の拡充強化、こうしたことがいつも問題になってまいります。こうした問題について、政治的に検討すべき重大な問題だ、全国的な問題だというように思いますけれども、最後に大臣に所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  190. 佐藤隆

    佐藤国務大臣 農家負担の問題、土地改良事業に関連して千葉県の実例を挙げて御質問でございますが、今、農家負担の問題が、特に償還金等いろいろ関心が持たれておるという認識は私も一緒でございます。  であればこそ、今御審議をいただいております六十三年度予算案におきましても、先ほど局長から答弁申し上げておりますように、土地改良事業償還円滑化特別対策事業、こういうものを新規に盛ったりなどいたしまして努力を重ねておるところでございます。
  191. 柴田睦夫

    ○柴田(睦)委員 もう一つは、地震関係の質問を準備しておりましたが、時間が参りましたので、せっかくおいでの方には申しわけございませんが、これで終わります。
  192. 宮下創平

    宮下委員長代理 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  193. 宮下創平

    宮下委員長代理 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。浦井洋君。
  194. 浦井洋

    ○浦井委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、ただいま議題となっております農林水産省設置法の一部改正案に対して、反対の討論を行うものであります。  本改正案は、農業問題が今日国際的重要課題となっているので、主として対外交渉に当たる次官クラスの農林水産審議官を新たに設けるという内容であります。そのような特別職が必要とされていることを一概に否定するものではありませんが、肝心なのは日本農業に対する政府の基本方針と、そこから生まれる農産物自由化に対する政策と態度であります。  この点で、戦後、自民党政府農産物自由化に対してとった態度を系統的に見ても、また本日の委員会の審議からしても、政府農業政策の基本が、アメリカの理不尽な要求に卑屈に従い、また日本の財界の要求にこたえて、日本農業と農民を犠牲にし、農産物自由化を進めることにあるのは明らかであります。  それゆえに、全国でこれまでにない広範な農民が、政府日本農業つぶし、農産物自由化政策に反対し、激しい反対運動を発展させているのであります。  交渉に臨む政府の基本的態度自由化促進にある以上、交渉で重要な役割を果たす農林水産審議官が日本国民の利益を損ねる方向で機能することは避けられません。  以上の理由によって、私は本改正案に反対するものであります。  最後に、日本農業を守り、食糧自給率の向上を図るため、政府が十二品目自由化をもとに戻し、これ以上の農産物自由化、枠の拡大を拒否することを強く要求して、反対の討論を終わります。  以上であります。(拍手)
  195. 宮下創平

    宮下委員長代理 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  196. 宮下創平

    宮下委員長代理 これより採決に入ります。  農林水産省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  197. 宮下創平

    宮下委員長代理 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 宮下創平

    宮下委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────    〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  199. 宮下創平

    宮下委員長代理 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三分散会