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角屋委員 冒頭に触れました
ガット問題で私もう一つ感じておることは、国際連合
食糧農業機関、FAOと従来言っておりますが、これは、
農業問題について
各国のいろいろな
状況を分析しながら、そしてまた人口の増大傾向に
対応していかに国際的に
食糧を供給していくかという
立場から、これは数年前になりますけれ
ども、「FAO二〇〇〇年の
農業—二十一世紀への挑戦—」、久方ぶりにもう一回読み直してみたのですが、大体この
農業問題を議論する
ガットの場というのは、もっと買えとか
自由化しろとか、そういう議論じゃなくて、
世界の
食糧問題、あるいは
開発途上国等も含めた人口の急激な増大に対して
先進国としてどう
対応するのか、
開発途上国自身のプロパーの
農業の
発展についてどうサポートするのか、いろいろな問題がグローバルに議論されているのですね。
ガットというのは、
日本がこれを
自由化せい、あれをどうだというような形で、
アメリカにしたって
各国にしたって、それがいいとか悪いとかということじゃなくて、グローバルな議論だ。
基本的に言えば、
各国の
食糧の
安全保障問題、あるいは二十一世紀を展望した急激な人口増加に対する国際的な
食糧の供給
状況、生産
状況はどうなるのか。
食糧は、雨量の多いところもあれば少ないところもあり、土壌の
関係がいろいろあり、一たん耕地を他の物に、宅地やその他に変えてしまうと、再び返らない。
食糧は命の糧でありますから、したがって、
ガットの議論というのは非常に短絡的であって、もっと国際的視野に立った、
先進国、
開発途上国も含めた人口増加に対し、飢餓の人口が数億という今日の
事態の中でどういうふうにしていくかという人道的な
立場も含めたそういうことが根底にあって、現状の中で
日本の
自由化の問題をどうするのか、あるいは他の国の
自由化問題をどうするのか、あるいは
ニューラウンドの中ではそういうFAO的な感覚を基調にした議論がなされなければならぬ、
農業の問題は断じて売り買いの問題ではない、そういうふうに思うのですね。
この「FAO二〇〇〇年の
農業—二十一世紀への挑戦—」というところは、どの程度の知能のあるのが
ガットのメンバーで協議するのか知りませんけれ
ども、こういうところに基調を置いて具体的な問題を議論することがなければならぬということは、こういう問題をいろいろやっておるのを見て私の痛切に感ずることなんです。これは次の問題に入る前に
意見として申し上げておきたいと思います。
盛りだくさんなことを、平場から山から海に至るまでいろいろやろうと思っておりますので、次に入らしていただきます。
このごろ財界の
諸君とか心なき
評論家の
諸君に、
食糧の
安全保障というようなことは歯牙にもかけないという傾向が非常にあるのですね。これは基本的に間違いだと私は思うのです。国会でも、もう深く触れませんけれ
ども、
食糧自給力強化に関する決議なんというので内海さんが提案をされて、当時、武藤
農林水産大臣がこの決議の趣旨に基づいて
最大限の努力をしてまいりますと答弁しているのですね。これは国会の変わらざる
食糧問題に対する基本的な
見解だ、私
どもはこれは今日でも基本的に続いておると受けとめておるわけです。
そういう自給力の問題で考えますと、もう
大臣はベテランでありますから十分御
承知のとおり、主要国の穀物自給率を見ますと、
日本は一九七五年四〇%、八二年には三三%、今日それをさらに微減をさしておるわけですけれ
ども、イギリスは同じ一九七五年六四%、今日では一一一%。西ドイツが当時八〇%、今日九五%。フランスが当時一五二%、今日では一七九%。
アメリカは当時一七四%、今日一八三%。カナダは当時一七一%、今日二二二%。いわゆるサミットで顔を合わせようかという
国々は、これは一九七五年と対比しました八二年の数字を申し上げましたが、着実に穀物自給率は上げておるわけです。
にもかかわらず、
日本は四〇%が三〇%の初めまで落ち込んでおる。
経済大国だ、
世界最大の
債権国だ、こんなのは将来ともに続くのかどうかは国際
経済の波動の中でわからない。今は金があるから、飽食のような
状況にあるからというので、心なき
評論家なんというのは勝手気ままなことを言っておる。第一次オイルショックの例を見るまでもない。
そういうことで、主要な
先進国の
食糧自給、特にイギリスなんかは第二次
世界大戦で
食糧では随分苦労した。だから、一定の
食糧は確保しなければならぬと身にしみた体験がある。これは
日本だって大なり小なり同じことなんですけれ
ども、そういう体験に基づいて、かつて七つの海を支配したイギリスは
食糧自給には積極的である。だから、一九七五年の六四から今日は一一一まで引き上げておる。サッチャーさんが国際舞台で女性宰相として堂々とやれるのも、
食糧にはちゃんと安心のできる基盤を持っているということだ。竹下さんがこれから自給力低下なんかになったら、国際舞台で金がございますというだけでは迫力がない。
そういうことで、国会の決議の問題もありますが、主要な
先進国の穀物自給率の上昇傾向から見て、今言われておる畜産とかあるいは米とか、こういう
心臓部にまで及んでくるということになると、非常に重要な穀物自給率そのものが極めて低下をするような
状況に追い込まれかねない。
最近テレビを私見て、具体的なデータまでとっておりませんけれ
ども、著名な、農林省の総合研究所なんかに
関係をしておりました千葉大の唯是康彦教授が、もし
日本が米の
自由化をやられたとしたら、どういうシミュレーションの結果が、いろいろな仮説は置きますけれ
ども、出るのかということで、
外国からやがて五百万トン近く米が入ることになるだろう、逆に言えば、
日本の一千万トン台の米は半減をするだろう、それによって百万を超えるような失業者が出てくるだろう、
日本の農家は二百五十万戸が百万戸を割るだろう、これは一定の仮説を置いてのいわゆるシミュレーションの結果ですけれ
ども、これは全くの素人じゃなしに、
食糧問題については本も著されて、相当詳細を
承知した上に立っての一つの予測データが出ておるわけですね。
米の問題まで
アメリカが、議会の舞台も含めてやってくるなんというようなことは全くけしからぬ話だというふうに思うのですね。そういう点で
大臣は、
食糧自給率あるいは
食糧の安全性、
安全保障という問題に対してどういう御
認識を持っておるか、お
伺いしたいと思います。