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柴田参考人 柴田徳衛でございます。
ふるさとと申しますと美しい自然に囲まれた豊かな伝統、
文化の場、これをすぐ想像されます。ところが、戦後、考えてみますと、貧しい後進国
日本が一刻も早く先進国に追いつくよう、そして
経済の高度成長、これに懸命に努めて、確かにハイテクの大
工場や本社のインテリジェントビル、これらが輝かしく
建設されまして、世界からも金持ち国と言われるようになりましたけれ
ども、
先ほどのふるさと、こういう私たちのイメージというものが現在いろいろ荒廃し、過疎地帯が広がっている。
機能が
集中している
東京も、周辺の居住区というものには過密、
住宅難、交通難、こういうことが広がっていていろいろ国民生活に困難が来ている。こういう
状況では、せっかくいろいろ施設が世界最高水準に発展しても次の本当の
日本国民の活力が出てくるだろうか、こういうことが憂えられるわけでございます。そういう
意味で、今回の
法案が出されまして、特にその第一条で「住民が誇りと愛着を持つことのできる豊かで住みよい
地域社会の
実現」ということがうたわれておりますので、私、こうしたところをぜひこの次の
日本の発展のために
実現させていただきたい、こういう気が強くするわけでございます。
以下、章を追って私の感想といいますか、願いを言わせていただきたいと思いますけれ
ども、第二章、
分散、これをうたっておりまして、「国の
行政機関等の
移転等」、こういう章になっております。現在言われております司法、立法まで含めた首都の全体的な
移転、いわゆる
遷都、これは当面困難かもしれませんし、また、
行政機関でも
一つの省の
一つの局のどの課を外へ移すか、
地方へ移すかとなると、今いろいろ案は進められているそうですけれ
ども、いろいろ困難があるかもしれません。しかし、
政府の同じ局の同じ課の仕事の中でも、
東京の二十三区、都心になくても済む、むしろ
地方に移した方が能率が上がる、こういう面もいろいろあるのではないかと思われます。
例が適切でないかもしれませんけれ
ども、例えば大蔵省の主計局、主計官の方とか主査の方、これは折衝で大変お忙しくて本省で頑張っていただかなければならないかもしれませんけれ
ども、データの整理、計数整理、資料の保管こういうようなたくさんの作業というものは、現在ファクシミリとかテレビつきの電話とかビデオテックスとかいろいろの
技術が
開発されておるようでございますので、それらがありますれば主計局の中になくても、極端に言えば北海道か沖縄にその場所はあっても作業というものがむしろ能率よくいく、こういう面もあるのではないだろうか。同じく、大会社の本社でも重役室あるいは受付というものは丸の内かあるいは大手町にどうしてもなければならないかもしれませんけれ
ども、計数調査、
法人税の計算等々の多くの仕事というものは、オンラインでつなげば環境のよい
地方に置いてもかなり済むという面があるのではないか。
実は私、ニューヨークのマンハッタン、ウォール街辺の本社を
幾つか回って見たのでございますけれ
ども、どうも印象として
東京の本社より床面積が狭くて済んでいる。
経済の活動は大変大きい
機能をしているけれ
ども狭い。いろいろ聞いてみますと、
先ほど言いました下働きといいましょうか、純事務的なことはバックオフィスあるいはサポーティングオフィスと申しまして、ネブラスカとかテキサスとかとんでもない遠くでオンラインでつなげて瞬時にしている、こういう
状況が出てきておりますので、これなどひとつ、
日本の
東京あるいは大都市の事務
機能というのでも将来の
検討材料ではないだろうか。
ただ、こうしたことを
日本で進めますには、本
法案の第六章の高速交通、通信体系の
整備、これをぜひ図っていただきたいと思います。特に二十九条にせっかく、「経費の低廉化に配慮しつつ」という字句が出てまいりますけれ
ども、私先月まで外国にいたせいか、
日本の電話、郵便、
高速道路料金は国際的に見てどうも相当高いのではないだろうか。この辺もこれを機会にいろいろ
検討していただいて、この辺の便宜、低廉化を図る。そうしますと、
先ほど言いましたいわゆるバックオフィスといいましょうか、
機能の
分散が現在の
状況でもかなり進められるのではないだろうか。
それから続きまして、この法の第五条、
民間施設の
移転の
促進という項で、教育
文化施設の
移転も取り上げられておりますけれ
ども、私思いますのに、オペラ、バレエ、交響楽団、古典劇、こういうものは経営上かなり
規模が大きくて、普通ですとよほど
人口の多い、
経済力の多い大都市にないと経営が成り立たない。国民の
文化的要求が高まってまいりますと、そういういろいろ
文化、芸術の施設のあるところへまた全国から人が集まってくる、大都市がますます大きくなるという面もあると思いますので、これらは
文化政策として、幸いここまで
日本の
経済力も強くなりましたので、相当の
文化援助、資金
援助をしながら、例えば大変伝統、歴史、芸術の豊かな京都とか金沢、仙台、こういったような都市にそうした
中心を移して、
文化の拠点都市といいましょうか、こういうものを育てていただけると大変また幸いなのではないだろうか。
それから国立大学がまだ二十三区内に十前後あるような気がいたしますけれ
ども、これらが
東京の二十三区になければ教育、研究がどうしても進められないならばもちろん仕方がございませんけれ
ども、その辺がどうだろうか。この辺の
検討も期待したいと思います。
第三章の
地方への
権限の委任努力というところでございまして、これは私は明治以来の中央集権的な形を、ここで発想を大きく転換して真の
地方自治というものを強化して、前の章の
分散の成果を実際に上げていただきたいという気がするわけであります。
具体的には
地方自主財源の強化ということになると存じます。税金論議で間接税をめぐって今大変論議が行われているようでございますし、それ自身大変貴重なことでございますけれ
ども、同時に国税と
地方税の再配分もこの機にいろいろ再
検討をしていただいて第三章の中身を充実していただきたい。よく
地方税を強化するとその税収入が大都市に偏ってますます
地域格差が大きくなる、こんな論議がございますし、現状ではそういう面が確かにあると存じますけれ
ども、例えば所得税の課税所得の低い
部分、税率の低い
部分を
地方税とし、その高い
部分、累進課税の高まる
部分は国税とする、もしこんな工夫が可能だとすれば、
地方税収の
地域格差はかなり緩和されるのではないだろうか。
それから次に補助金でございますけれ
ども、いわゆるひもつき補助金は、強化された
地方税源という方にできるだけ移していくなり、あるいは
地方交付税の方へ繰り込む、こういう方向でひもつき補助金をできるだけ減らしていく。
それから
地方債でありますけれ
ども、本
法案の第十八条で起債の特例などいろいろ御苦心の跡が見られまして、今
地方自治法の第二百五十条で、当分の間国による
地方債起債の許可が必要という句がございまして、許可制というものが厳としてあるわけでございますけれ
ども、考えますと、私はこの「当分の間」と申しますのは、後進国、貧乏国
日本が資金不足に苦しんでいる間はいろいろ国の
規制が必要だと思いますけれ
ども、現在は
状況が大きく変わっているのではないか、この辺は自由化してそれぞれの
地方が創意工夫でいろいろな仕事ができる、そして
地方自治というものをぜひ進めて、その面での中央というものができるだけ身軽になっていくという方向を、この第三章を通じて出していただきたい。
それから、第四章の大都市
整備でございますけれ
ども、今
東京都心部から湾岸にかけていろいろビッグプロジェクトというものがメジロ押しで、何兆円
計画というのがメジロ押しでございますけれ
ども、これも、これが進んだ場合に
地価騰貴が一層進んで市民生活が困難になるのではないか、災害は大丈夫だろうか、そんな心配が、私はされるのでございます。
最近、これは海外で聞いたので聞き違いだとおわびしますけれ
ども、地下の相当深い
部分は
公共用と考えてそこは地下鉄を自由に通してどうだろうか、こんな案があるといううわさを聞きました。もしそうした案があるとすれば、同じ考えを今度は地面の上に持ってきて、
土地の私有権というものは都心部では地上の例えば二階までとか十メートルまで、それはまさに私有権の対象であるが、それから上の
部分は公有である、こういう考え方はいかがかと思うのでございます。
東京の都心部では、例えば千代田区、港区にあるビル、それ以上高いビルを建てたいという場合は都庁とか千代田区役所、港区役所、こういうところに相談して、まず
地域の住民が必要とする
住宅とか保育園、図書館、老人の施設、こういうものをその上五階、十階、二十階、こういうぐあいにつくります。そうすると、それぞれ
建設の許可が出て高層ビルが建っていく、こういう考え方はいかがでしょう。それからまた、それがない既存のビルが都心にあるわけでございますけれ
ども、そういったところからは
公共用地を使っているとみなして、相当の負担金なり特別都市
計画税といいましょうかを徴収して、それを都市の生活環境のいろいろ公的な施設に使っていく、こういう考え方な
どもあり得るのではないでしょうか。現在、
地価が高いから公的施設ができない、これは事
実現状はそうなっておりますけれ
ども、公的施設をそういうぐあいにつくる力がない、つくれない、だからして
地価がどんどんとめどなく高くなってしまっている、こういう面もあるのではないだろうか。
それから、固定資産税、都市
計画税、第十四条にたまたま不均一課税、こんな句が出てまいりますし、現在もいろいろ
制度は進んでおるようでございますけれ
ども、個人の居住用の
部分というものはごく低い税率にしておく、けれ
ども名寄せをして、相当の高い固定資産になってきたというような場合には税率を高額にしていく累進的な税率、これも考えられないだろうかどうだろうかということをひとつ御議論の材料にしていただければ幸いでございますし、こういった方向で、現在坪一億円とかいうようないろいろの
地価の姿というものが少しでも変えられれば、本章第五章にある
住宅供給、市街地の高度利用、これにも通じていただけるのではないだろうか。
また、高層ビルの上の方に市民が住む、それがいい悪いは別にして、もしそうなって下のオフィスに通うとなれば、現在の交通難というものもかなり姿が変わり得るのではないだろうか。さきに
東京湾沿いにハイテクを駆使した兆円単位のビッグプロジェクトがメジロ押しという案があると聞きましたけれ
ども、私はまず当面、それよりもむしろ過密化した大都市の居住環境の改善、そこに住む人々が本当に生活しやすいふるさとづくり、これをぜひ進めていただきたい。高齢者、赤ん坊を連れたお母さんにとって、例えば四階建て、五階建ての中層アパートの階段、それから駅や横断橋の階段、これらは
一つの例でございますけれ
ども、大変困難を与えるのではないか。そういうようなところにエレベーター、エスカレーター、車いすや乳母車で通れるいわゆる緩い傾斜のスロープ、こういうものをつくるだけでも、
東京全体として、あるいは
日本の大都市全体としまして大変な内需拡大になるのではないか。市民全体も住みやすくなるし、それのみならず膨大な内需拡大というものができるのではないか、
住宅事情が少しでもよくなれば、それだけまた内需がうんと拡大していくのではないかと思うわけでございます。
私に与えられた時間が大体来たようでございますけれ
ども、全体としまして、戦後ここまで突き進んできました中央集権的な
経済成長、発展、これで確かに大きな成果を上げてきたわけでございますけれ
ども、ここで発想を転換して、二十一世紀に向けて
先ほどのふるさとづくりと申しましょうか、活力のある二十一世紀の次の世代づくり、高齢者を大事にしながら次の世代をつくっていく、そういう都市づくり、
地域づくり、この辺を目指しながら、この
法案の趣旨、第一条でいろいろありますけれ
ども、いろいろ発想の転換を図りながら新しい芽を出していただき、新しい
日本の発展のめどをいろいろ探っていただき、国会の先生方、この場でいろいろまた討論をしていただくことを国民の一人としてぜひお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。(
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