○泉
参考人 それでは、
先生の御
質問の第一点の方から申し上げます。
NHKと民放の併存体制というのは民放にとっても望ましいことだし、私たちは、
NHKと民放の併存体制というのは、今後とも世界に誇る
一つの
放送体制としてよいものにしていきたいという基本的な姿勢を持っております。ただ、今回法改正で、従来
NHKに準拠するような民放のあり方、
昭和二十五年に決まった
放送法というのはそういうものだったわけですが、今や全国に置局されております民放の立場を考えますと、
NHKに準拠じゃなくて、日本の
放送文化というものを
NHKと民放が両方手を携えて視聴者に供給しなければならないという立場からいきますと、
NHKの性格をもう少し明確にしてほしいという期待を持っております。
今回の改正案で拝見いたしますと、
NHKの「目的」の中に、「豊かで、かつ、良い
放送番組」というような表現をしてございます。これは
NHKだけじゃなくて、
放送全体に目的として望まれるポイントだと思います。したがって、それだけが
NHKの目的じゃなくて、いわば
放送番組の中で
NHKは、スポンサーに依存しております民放のどうしてもできない
放送文化の面、そういうものをやはり重点に置いていただいて、視聴者に
放送文化を偏らない形で均てんしていただきたいという期待を持っているわけでございます。そういうふうに
NHKの目的というものがさらに明確化されますと、受信料の制度というのも、受信料の徴収義務に近い、もっと自信のある受信料の徴収制度もできるのではないかというふうに思うわけです。
御参考までに申し上げますと、二年前にイギリスのピーコック調査
委員会がBBCに対しまして、公共
放送としての番組のタイプは、キーワードといたしますと知識、文化、批判、
実験の四つだ。具体的な例としては、
一つはニュースとか時事報道、ドキュメンタリー、科学、自然に関するような番組、二つ目には高度の芸術番組、三つ目には商品テスト、政治、イデオロギー、哲学、宗教等すべての領域を
対象とした批判的な
意見とか賛否両論を明らかにすべきだ。そしてあわせて、受信料というものは物価にスライドするなど
一つのシステムづくりをすべきじゃないかというようなことを提案しておりますが、これなども他山の石として、大いに参考になることではないかというふうに思っております。
そのような役割、それから受信料の性格を明定いたさない形で、何となく合理化でやっていけとか、任意業務を拡大したりアルバイトみたいなところで何とか財政をやっていきなさいというような言い方ですと、やはり苦し紛れに傍系の事業の拡大を招いたり、要らざる民放事業との摩擦が起きかねないので、そういう点での今後の行政の
一つの監視を、十分厳しくやっていただきたいというふうに考えるものでございます。
〔虎島
委員長代理退席、
委員長着席〕
それから、
先生の御
質問の第二点の、番組の規制というか、私たちは番組についての規制というふうにとらえておりますが、私たちは決して、自信を持って威張れるような番組をつくっておりますということは申し上げません。私たちもいろいろじくじたる面もありますし、それだけに一生懸命
努力もしているわけでございます。長年にわたってこれは息長くいろいろな方策を
議論し、実行してまいっております。
特に最近におきましては、新聞と違って、オンタイムですと、現場の人間がつくった問題がそのまま流れますので、やはり番組制作の段階で職員の基準マインドを徹底させるべきじゃないか。そのためには社長が全社の社員教育をすべきである。民放連でも、全国の民間
放送の社員教育担当者を集めまして、今後は社員教育の中で、別に番組制作に携わっている人、いない人にかかわらず、
放送基準というものを
放送人として身につけなさいという教育をぜひしてほしいということでお願いして、そういう方策も進めております。
しかし、番組をよくするということは民放にとっても永遠の課題でございまして、これでいいということはありません。息長く時間と忍耐を持ってやらなければいけませんし、また、悪いものをチェックするだけでなくて、よいものを引き出してやるというような
努力も要るかと思います。したがって、法による規制、それから第三者によるチェック、そういうものは本当に番組をよくするために働くだろうか。やっぱり私たちのそういう自律のやり方をバックアップしていただけるような方式こそ望ましいのではないかというふうに思っております。したがいまして、今回の法律ができましても、この省令にゆだねられたような
部分は十分私たちと御相談をいただきまして、そういう自律の効果を発揮できるような方法をおとりいただきたいというふうに期待するわけでございます。
それから三点目の有料
放送についてでございますが、二十一世紀を踏まえますと、情報化社会というのは情報が有料になっていく時代だと思います。したがって、民間
放送が必ずしもいつまでもスポンサーのお金だけに頼っている時代ではなくなると思います。したがって、有料
放送を導入することに踏み切っていただいたのは大変結構だと思います。
しかし、役務だとか料金について認可制を取り入れられたのは少し行き過ぎではないか。これは仏つくって魂入れずといいますか、この民活推進の時代にちょっと逆行するのではないか。余りにも心配が先に立ち過ぎているような気がいたします。
こういう有料制の発展というものは、市場原理に従った自由な営業活動を認めることによって拡大していくわけですから、もし御心配があるなら、そういう心配があらわれた時点でそれを防ぐような措置を講じても遅くはないのではないかということで、有料
放送につきましては賛成でございますが、その
運用につきましては、ぜひもっと自由度を広めた、認可じゃなくて届け出制にするとか、そういうことをお考えいただきたいという希望がございます。
以上、三つに対してお答えいたしました。