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1988-03-24 第112回国会 衆議院 逓信委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十四日(木曜日)     午前十時一分開議  出席委員    委員長 塚原 俊平君    理事 小澤  潔君 理事 田名部匡省君    理事 虎島 和夫君 理事 額賀福志郎君    理事 牧野 隆守君 理事 田並 胤明君    理事 木内 良明君 理事 木下敬之助君       尾形 智矩君    亀岡 高夫君       久野 忠治君    佐藤 守良君       園田 博之君    谷垣 禎一君       戸井田三郎君    中村正三郎君       野中 広務君    深谷 隆司君       二田 孝治君    穂積 良行君       松田 九郎君    宮崎 茂一君       阿部未喜男君    伊藤 忠治君       上田 利正君    松前  仰君       鳥居 一雄君    森本 晃司君       阿部 昭吾君    佐藤 祐弘君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 中山 正暉君  出席政府委員         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         郵政政務次官  白川 勝彦君         郵政大臣官房長 森本 哲夫君         郵政省通信政策         局長      塩谷  稔君         郵政省放送行政         局長      成川 富彦君  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会         会長)     川原 正人君         参  考  人         (日本放送協会         技師長専務理         事)      中村 有光君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   林  乙也君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   松本 幸夫君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     尾西 清重君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     植田  豊君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     井上  豊君         参  考  人         (日本放送協会         総合企画室〔総         合企画局長) 中野 正之君         参  考  人         (日本放送協会         予算部長)   中野 正彦君         逓信委員会調査         室長      辛島 一治君     ───────────── 委員の異動 三月二十四日  辞任         補欠選任   久野 忠治君     松田 九郎君   森  喜朗君     中村正三郎君   渡辺 紘三君     戸井田三郎君   坂井 弘一君     森本 晃司君 同日  辞任         補欠選任   戸井田三郎君     渡辺 紘三君   中村正三郎君     森  喜朗君   松田 九郎君     久野 忠治君   森本 晃司君     坂井 弘一君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件(内閣提出承認第二号)  放送法及び電波法の一部を改正する法律案内閣提出第四〇号)      ────◇─────
  2. 塚原俊平

    塚原委員長 これより会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題とし、審査に入ります。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件審査のため、本日、参考人として日本放送協会出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 塚原俊平

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────
  4. 塚原俊平

    塚原委員長 趣旨説明を聴取いたします。郵政大臣中山正暉君。     ─────────────  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  5. 中山正暉

    中山国務大臣 ただいま議題となりました日本放送協会昭和六十三年度収支予算事業計画及び資金計画提案理由につきまして、御説明申し上げます。  この収支予算事業計画及び資金計画は、放送法第三十七条第二項の規定に基づきまして、郵政大臣意見を付して国会に提出するものであります。  まず、収支予算について概略を申し上げます。  事業収支におきましては、事業収入は三千五百十一億円と前年度に比べ四億二千万円減となっておりますが、これは、前年度において固定資産の売却による特別収入五十七億七千万円が計上されていたこと等の事情によるものであり、収入の基本である受信料収入は五十二億円の増加となっております。一方、事業支出は前年度に比べ百二十億二千万円増の三千六百三十五億四千万円となっております。  この結果、事業収支における不足額は百二十四億四千万円となっております。  この不足額につきましては、昭和六十二年度以前からの繰越金百二十四億四千万円をもって補てんすることとしております。  資本収支におきましては、資本収入は七百四億九千万円、資本支出は五百八十億五千万円となっており、このうち、建設費として衛星放送継続に必要な設備整備老朽の著しい放送機器更新整備等のために、四百四十億円を計上しております。  また、債務償還に必要な資金百三十七億五千万円のうち百三億二千万円が不足となりますので、長期借入金をもって補てんすることとしております。  次に、事業計画につきましては、その主なものは、あまねく全国において受信できるよう、テレビジョン放送においては、衛星放送継続に必要な設備整備を取り進め、ラジオ放送においては、中波放送局及びFM放送局建設を行うこと、視聴者の意向を積極的に受けとめ、公正な報道と豊かな放送番組を提供すること、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図り、受信契約増加受信料の確実な収納に努めること等となっておりますが、これらの実施に当たっては、極力業務の合理的、効率的運営徹底することとしております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に対応する年度中の資金需要及び調達に関する計画を立てたものであります。  郵政大臣といたしましては、これらの収支予算等について、慎重に検討いたしました結果、昭和六十三年度事業運営に当たって、特に配意すべき三点の事項を示した上で、おおむね適当であると認め、お手元に配付されておりますとおりの意見を付することといたした次第であります。  以上のとおりでありますが、何とぞよろしく御審議の上、御承認のほどお願い申し上げます。
  6. 塚原俊平

    塚原委員長 次に、補足説明を聴取いたします。日本放送協会会長川原正人君。
  7. 川原正人

    川原参考人 ただいま議題となっております日本放送協会昭和六十三年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、御説明申し上げます。  昭和六十三年度事業運営に当たりましては、極めて厳しい財政状況にあることを十分認識し、さらに収入の確保を図り、極力業務の合理的、効率的運営徹底するとともに、視聴者の要望にこたえて、放送全国普及とすぐれた放送実施に努め、公共放送としての役割を果たしてまいる所存であります。  まず、昭和六十三年度の主な事業計画について、御説明申し上げます。  建設計画につきましては、衛星放送継続に必要な設備整備を取り進めるとともに、放送番組充実のための機器整備を行うほか、老朽の著しい放送設備等の取りかえを実施することとしております。  次に、事業運営計画について申し上げます。  まず、国内放送におきましては、ニュース報道生活情報番組刷新特別企画番組積極的編成及び地域放送充実など、公共放送使命達成に徹し、公正な報道と豊かな放送番組の提供に努めてまいります。  また、衛星放送については、その特性を生かし、地上放送とは異なった魅力ある番組を編成して、普及促進に努めることとしております。  国際放送におきましては、国内の新送信設備全面運用開始に伴い、放送時間を拡充し、ニュースインフォメーション番組や各地域特殊性に即した番組を編成し、放送を通じて国際間の理解と親善に寄与するとともに、海外中継については、新たに海外放送機関との交換中継方式を導入し、効率的な受信の改善に努めることとしております。  契約収納業務につきましては、受信料負担の公平を期するため、受信料制度周知徹底を図るとともに、営業活動刷新と事務の効率化を推進し、受信契約増加受信料の確実な収納に努めることとしております。  広報活動につきましては、視聴者理解と信頼を一層強固にするため、積極的な広報活動と、衛星放送を中心としたニューメディアについての広報を一層推進することとしております。  調査研究につきましては、番組視聴状況等番組調査と、新しい放送分野技術開発研究放送技術発展のための基礎研究を推進し、その成果を放送に生かすとともに、広く一般にも公開することとしております。  以上の事業計画実施に当たりましては、経営全般にわたり、業務効率化を積極的に推進し、要員については、年度内三百人の純減を行うこととしております。  また、給与につきましては、適正な水準を維持することとしております。  これらの事業計画に対応する収支予算につきましては、事業収支において、収入総額三千五百十一億円を計上し、このうち、受信料については、三千四百億四千万円を予定しております。これは有料契約総数において、四十三万件の増加を見込んだものであります。  また、副次収入など受信料以外の収入につきましても、その増加に努めることとしております。  これに対し、支出は、極力圧縮に努め、国内放送費などの事業運営費減価償却費支払い利息など、支出総額を三千六百三十五億四千万円にとどめておりますが、以上によってもなお生じる事業収支不足百二十四億四千万円は、六十二年度以前からの繰越金をもって補てんすることとしております。  また、本年度債務償還のために必要な財源百三億二千万円については、借入金により措置することとしております。  次に、資本収支につきましては、支出において、建設費四百四十億円、放送及びその受信進歩発達に必要な調査研究を行う法人等への出資に三億円、放送債券償還等に百三十七億五千万円、総額五百八十億五千万円を計上し、収入には、これらに必要な財源及び事業収支不足に充当するため、前期繰越金減価償却資金放送債券及び借入金など、合わせて総額七百四億九千万円を計上しております。  最後に、資金計画につきましては、収支予算及び事業計画に基づいて、資金需要及び調達を見込んだものでございます。  以上、日本放送協会昭和六十三年度収支予算事業計画等につきまして、そのあらましを申し述べましたが、今後の事業運営に当たりましては、協会事業視聴者負担する受信料により運営されていることを深く認識して、一層効率的経営を目指すとともに、すぐれた放送実施して、協会に課せられた責務の遂行に努める所存でございます。  委員各位の変わらざる御協力と御支援をお願いいたし、あわせて何とぞよろしく御審議の上、御承認賜りますようお願い申し上げます。
  8. 塚原俊平

    塚原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ─────────────
  9. 塚原俊平

    塚原委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾形智矩君。
  10. 尾形智矩

    尾形委員 このたびの放送法の改正でございますが、その中でNHK民放の共存を認めておりますことは意義深いものがあると思います。それにいたしましても、なお、放送法NHK法であるとの感が強いわけでございます。NHK公共放送だと言われておりますが、公共性だけを言うならば、公共電波を用いて娯楽、芸能、歌謡及び報道等放送をするものである以上、NHK民放公共放送であることには変わりはないと思うわけでございます。そのような意味で、NHK受信料民放広告料経営を賄っているということぐらいが唯一のNHK民放相違点ではなかろうかと考えておるのが国民一般ではなかろうかというふうに考えておるわけでございますが、まず、公共放送定義についてお答えをいただきたいわけでございます。
  11. 成川富彦

    成川政府委員 NHKは、公共福祉のために全国あまねく受信できるように放送するという使命を持っておりまして、あまねく普及しなければいかぬという使命を帯びていることは御承知のとおりでございます。  それと、経営財源につきまして国民全般から特殊な負担金であります受信料をいただきまして、それを経営財源として経営していくという形でございまして、今先生お話がございましたように、民放の方、民放といいますか一般放送事業者の方はコマーシャル、広告収入によって賄っているというのが大きな違いというふうに思います。  NHKは、「目的」等にも書いてございますように、公共福祉のために、全国あまねく放送受信できるように放送すること、あるいは先導的な役割を果たしていくというようなことが求められているというところでございまして、それが公共放送としての役割というふうに私ども考えております。
  12. 尾形智矩

    尾形委員 新聞は毎日自宅まで配達をしてくるわけでございます。契約をしている間は料金を払うのは当然だ、これは皆さんそういうふうに思っておると思います。しかしながら、放送受像機それから受信機自分で高いお金を出して購入しているわけでございますし、また電気代自分で払っておるわけでございます。スイッチを入れればNHK民放も自由に見たり聞いたりすることができるわけでございます。それなのにNHKだけがなぜ集金に来るのだろう、そしてNHKにだけなぜお金を払わなければいけないのだろう、もしNHK報道が入らないテレビがあればNHKお金を払わなくてもよいのかという考え方、そういうことを考えておる国民も多いのではなかろうかと思っておるわけでございます。例えば、払わなくても水道や電気のように供給を中止されるということはないわけでありまして、極端に言えば痛くもかゆくもないということになるわけでございます。こういう現実をどのように整理をして考えればいいのだろうかというように私どもは思うわけでございますが、その点についてお答えをいただきたい。  それから、払わない場合にどういう措置をとることができるのか、またどういう措置をとっておるのか、そこの点についてもお答えをいただきたいと思います。
  13. 川原正人

    川原参考人 確かに御指摘のとおり、受信者の立場から見れば、情報とか映像というものは目には見えますけれども手はさわれないものでございますから、品物、ハードの方にはお金を払うという習慣はありますけれども、そういう目に見えにくいあるいは手でさわりにくいものについて対価を払うという習慣はまだ十分に徹底していないかもしれませんが、情報とかサービスには相当の経費がかかるということは皆さんだんだんおわかりいただいていると思います。  現実に今、民間放送と言われる事業でも年間に一兆四千億の経費をその収入として上げております。これは広告料という形で最終的には国民皆さん負担しているわけでございます。それから私ども収入は、今御提案しております予算にもありますように、六十三年度の場合で受信料は三千四百億円でございます。これだけのものは御負担いただくわけでございます。  確かに受信料というのは何だというところでいろいろ問題はあると思うのですけれども受信料というのはNHK公共放送として国民に対してなすべきサービス、これを十全に果たすために御負担いただくお金である。先ほども説明がありましたけれども全国にあまねく電波を届けなければならない、これはNHKの最大の使命でございます。同時に、番組の内容も質の高い番組を、そして採算とか利潤とかいう観点では取り上げられないような質の高い番組あるいは教育的な番組、これもNHK放送する使命でございます。あるいは新しい技術研究とか国際放送とか、そういうものが私どもの特に使命でございます。こういうものは利潤追求目的とした商業ベース放送局ではなかなかやりがたい、提供しにくいものでございます。やはり受信料という形で全国の方に御負担を御協力いただかなければ日本放送文化の向上というのはなかなか望めない、そういう趣旨でございます。これは、一般受信者にはなかなかわかりにくいところでございますけれども、私どもはそのことを繰り返しいろいろな機会に御説明申し上げながら、この受信料についての視聴者の御納得をいただこうと今努力しているところでございます。
  14. 尾形智矩

    尾形委員 私は冒頭から公共放送定義ということをお尋ね申し上げたわけでございますが、一般国民の中には、難しく考えるのじゃなくて、単純に、公共放送というのはどういうことかというところの定義、そしてなぜNHKだけにお金を払わなければいけないのか、そこらあたり説明が、今会長から説明していただいて私なりに理解をしておりますが、やはり国民一般そこらあたり理解がどうしてもまだ十分できていないのじゃないか。そういうような意味から公共放送定義をあえてここでお伺いし、そしてまた国民皆さんにもう少しわかりやすく、やはりこれはどうしても払わなければいけないんだ、先ほど申し上げましたようになぜNHKだけに払わなければいけないのか、おれはNHKを見てないぞというような極端なことを言う人だっているかもわからないのです。そういうようなことをさらに徹底さしていただく、これがやはりNHK受信料を払っていただく基礎になるというふうに私は考えて、実はあえてそのことについて質問したわけでございます。この点についてはこれぐらいにしておきたいと思いますので、ひとつ十分配慮して、私はNHK経営基礎になることだと思いますので、あらゆる機会徹底をするようにお願いをしておきたいと思っておるわけでございます。  次に、契約実態等について御質問をいたしたいと思います。  NHK資料によりますと、契約件数の内訳は、一般世帯が二千九百七十五万、それから事業所が六十万、その中に生活保護家庭など日五十万世帯が免除、軽減されているというふうに資料の中には出ておるわけでございます。特に事業所につきましては、全国事業所数が六百七十方、そのうちテレビを保有するものは百四十五万台で、契約率は一〇〇%に近いというふうになっておるわけでございます。しかしながら、一方では、全国ホテル旅館は約八万三千件あるそうでございまして、部屋数にいたしますと百三十二万室あると言われておるわけでございます。さらに、喫茶店とか食堂とかいういわゆる飲食店が約百五十万件もあると言われておるわけでございます。今どきでございますのでテレビのないところなどはないわけでございまして、これだけを見てもNHK算定をしておる事業所の二倍に数字の上ではなるわけでございますが、算定基準が甘いのではないかという意見もあるわけでございます。  算定基準が甘いという意味は、未契約者及びお金を払わない不払い者掘り起こし努力が、もっと端的に申し上げますならば経営努力が足りないのではなかろうかと考えられるわけでございます。親方日の丸式に、安易に受信料さえ値上げをしておれば安泰という殿様商売的な感覚がNHK経営陣の中にあるのではなかろうかということも一部言われておるわけであります。現にNHK体質オリンピック協賛体質だと言う人もいるわけでございます。と申しますのは、四年に一度値上げをしておれば大体安定だ、今回の場合は五年になっておるようでございますが、今まではどうも四年に一回値上げをしておればということに現実にはなっておるようでございます。経営努力なくして安泰はないわけでございまして、そういう意味から、算定基準がどうであるか、それから不払い者現実にどのくらいいるのか、そこらあたりを教えていただきたいと思います。
  15. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  今先生から大変厳しい御指摘があったわけでございますけれども先生のお挙げになられた事業所との契約の問題で御説明申し上げますと、私ども承知のように立入調査権がないという状況がございます。そういった中で実態を正確に把握することはなかなか難しいという状況があることはぜひ御理解いただきたいのですけれども、しかし、私ども決して親方日の丸的に殿様気取り仕事をしているという御指摘は当たらないと私は思っております。  と申しますのは、ホテル旅館あるいは喫茶店食堂といういわゆるサービス業の場合は、大変小規模の事業所事業者が多いわけでございまして、そういった場合には営業と住居とが一体になっている場合がございます。そういう場合に、世帯契約をした場合、それは一つ契約でいいんだという判断もせざるを得ない、そういう形態も事実問題としてはあるわけでございます。  それから、ホテル旅館などの部屋数あるいは設置機器の数でございますけれども、これも先生の御指摘のとおりでございますが、これもまた民宿や小旅館の場合、必ずしも全室にテレビを設置しているというわけではございません。帳場等に置いているケースもございますし、それからすべての部屋に置いてないという場合もございます。そういった実態も考えまして、私どもとして実態調査もしながら、現実にどの程度の設置数があるのかということを調べているわけでございますが、それによりますと、私ども調査なんですが、世帯対象となるホテル旅館などの全体の約八〇%がテレビを設置していると考えております。一つホテルあるいは旅館平均台数はどのくらいなのかという点で申しますと、私ども算定としては一応七・三台くらいというふうに、全国のレベルでございますからそういった推定をいたしております。これで全体として四十九万台が対象だと考えておりますので、一応それを対象にして今営業活動をやっているところでございます。  しかし、私どもとしてはこれで十分だと思っておりません。現実に、冒頭に申し上げました立入調査権がなくていろいろな形で推定せざるを得ないという状況がございますので、私どもは六十三年度から新しい営業活動を展開しようと思っております。これは従来の仕事の延長線上ではなくて、抜本的に仕事やり方を変えて、各世帯の場合でも全戸点検というような形を含めた新しい仕事やり方を考えておりますけれども、そういった仕事の改革の中で事業所につきましてもより一層の契約徹底ということをお願いしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  16. 尾形智矩

    尾形委員 説明がございましたように、立入調査権等がないわけですのでなかなか難しい点は私はよくわかるわけでございますが、現実状況に照らし合わせまして、例えば皆さんホテルとか旅館にそれぞれお行きになった場合にほとんどもテレビがあるということ等も考慮いたしまして、なお努力をしていただきたい、かように考えておるわけでございます。  それから、受信契約集金態様について質問を申し上げたいと思います。  資料によりますと、口座振り込みが六四%になっておる、それから委託郵便局で五・二%、合わせて約六九%、集金が三〇・八%ということになっておるようでございます。問題は、約千人の正規の職員と四千人に及ぶ委託集金人でございます。五千人もの集金人がおりまして全体の三分の一の集金よりできておらない、新規開拓も年々減っているというところに問題がないだろうかと考えるわけでございます。しかも、人件費等を主とする集金経費は年間実に六百億円を超えておるわけでございまして、総事業収入の約二〇%に当たると言われておるわけでございます。さらに、集金人の給与につきましては御案内のとおり固定給と歩合給の二本立てになっておるわけでございまして、これは当然でございますが、問題は、歩合給は担当地域の銀行振り込み分についても一件は一件として扱われているようでございます。この実態も教えていただきたいと思いますが、さきに申し上げましたように銀行振り込みは六〇%を超えているわけでございますから、集金人皆さんは何もしなくてもこの歩合給を受け取れる仕組みになっておるということでございまして、この現況についてお知らせをいただきたいと考えておるわけでございます。  それからもう一つ、時間がございませんので関連をして伺っておきたいわけでございますが、安定経営をしていかなければいけないわけでございますが、人員の問題があるわけでございます。  一万五千人体制ということでございまして、これを六十五年までということですが、努力の結果六十四年で達成できるということで非常に喜ばしいことでございます。これはいろいろ調べてみますと、人員の削減等による積極的な取り組みでということよりも、むしろ定年退職とかということでこういう形になっておるようでございますが、人員の整理ができないと申しますか、さらに努力していかなければいけない、それができにくい理由の一つに強力な組合が存在をしているということも言われておるわけでございます。そこらあたりの点について、現実はどうかということについてもお知らせをいただきたい。  いろいろ言われておりますが、時間がございませんのでこれくらいにさせていただきますが、一万五千人ではなくて一万人体制でもやれるのではないかというような極端な意見もあるわけでございまして、ここらの点については専門家ではないのでわかりませんが、経営努力、それからまた、いわゆる人員整理等を含めた対人対策等についても見解をお示しいただきたいと思います。
  17. 松本幸夫

    松本参考人 先生から今、口座が大分ふえているのに集金人の数は減らないし、職員の数も減らない、さらに収納契約のための経費がかかり過ぎているんじゃないだろうかという御指摘がございましたけれども、確かに私どもも今の六百億を超える契約収納費、これは人件費を含めてでございますけれども、これは決して少なくないというように思っております。これは何としてもこの経費を圧縮してまいらなければならないという覚悟をして、六十三年度から新しい業務体制を徹底いたしまして、できる限り経費の削減と業績の向上を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  ただ、一言言いわけがましくなりますけれども、七割を超えているのになぜそれだけの人間が要るのかというお話でございますけれども、実を申しますと口座振替は既にもう七〇%を超えているという状況がございます。ただ、残っております訪問集金の方、これは各所に散在しておられるわけですけれども、この方々が九百万まだおいでになるわけです。それに三千百万の契約、これを維持してまいりますのに、どうしても毎年取次量をふやしてまいりませんと、三千百万の中で移動していって減少という現象が起こるわけでございます。減少を超えて増加を図ってまいりますためには毎年三百十万を超える取り次ぎをやってまいらなければならないという実態がございます。これも一つの人手のかかる状況とお考えいただきたいと思います。  それからその三千百万の受信者を維持し、同時に今度は二千万を超える口座を維持していく、このことのために発生してまいります情報量と申しますのは一年間で一千二百万から一千三百万の情報量があるわけです。これは移動するとかあるいは支払いの方法が今までの訪問集金から口座集金に変わるとか、あるいは機器が故障しているから廃止したいとか、いろいろな形の情報がございます。そういったものを確実にフォローしてまいりませんと、現金にかかわる問題でございますからどうしてもトラブルのもとになるという意味で申しますと、千二百万から千三百万の情報処理、これも人手ですべてやらなければならないという状況がございます。こういった、口座の増加に直接比例して業務がすぐに軽減されるという状況にはなかなかないわけでございますけれども、私どもとしては、今はもうコンピューターコストもかなり安くなってまいっておりますので、できる渡りコンピューターを利用した形で仕事を合理的に進める方法をこれから徹底してまいりたいと思います。  今、先生が御指摘になられた六百億を超える額が大き過ぎるじゃないかという御指摘に対して、私はこれで十分だとは思いませんけれども、六十七年度を目指して新しい業務体制を定着させることによって経費率、先ほど先生二〇%というお話もございましたけれども現実には一八・六%ということでございますが、これを一五%台には六十七年度には抑えたいというふうに思っております。さらに、六百億を超えております契約収納費も五百億円台に、まずターゲットとしてでございますけれども抑えていきたいというふうに考えているところでございます。  それから、先ほど銀行振り込みが多いのに受託者に歩合給を払っているじゃないかという御指摘がございましたけれども、これも若干誤解と申しますか、私どもの今やっておりますのは、口座料金を設定いたしましたのが昭和五十九年度からでございます。その当時の口座の状況というのはどうであったかと申しますと、四九%ぐらいの利用率しかなかったわけでございます。ここでこの口座をできるだけ進めて収納の安定を図る、さらには要員の効率化を図るという考え方から口座料金を設定したわけですけれども、おかげさまで今これが七〇%を超える状態になっています。五〇%を割る口座利用率でございますと、集金に参ります人が、おれが来るから口座にしないでくれというような傾向が非常に強くございました。そういったことがあっては口座の推進ということになりませんので、口座を受け持ち数の中に加えたということが一つございます。それは六千ないし七千の受け持ち数を持っているわけでございますけれども、その中にいる口座の受信者も含めて、口座の受信者も移動いたしますから、そういったいろいろな口座受信者の管理を含めた地域管理という考え方で、口座の受信者も受け持ち数の中に入れてある部分の手当の基礎数にしたということでございまして、口座に対して歩合を払っているという仕組みではございませんので、御理解いただきたいと思います。
  18. 塚原俊平

    塚原委員長 植田参考人。――時間になっておりますので、簡潔にお願いします。
  19. 植田豊

    ○植田参考人 お答え申し上げます。  NHKは五十五年度から純減約二千人、一二%の要員削減に取り組んでおります。これが定年等の退職、自然減で積極的ではないのではないかというような御指摘でございますが、実は四十五歳以上の職員には希望退職という制度をとってございます。それから、五十五歳、五十六歳あたりには選択退職という制度もとってございます。また、五十五歳以上になりますと、早期退職をして関連団体に転籍をしてもらうというようなこともやってございます。それから、これは例年の人事異動で職場をかわるあるいは長年してきた仕事をかわってもらうというような、人事異動という形でも人を減らしてございます。この人員の削減が先生承知のとおり非常に難しい問題でございます。  特にNHKの場合には、全体としてのサービス量を減らさない、質的にも量的にもNHKならではのサービスを確保していくという中での人員削減でございます。仕事の仕方を全体として見直すとか、いろいろなことをやっておるところでございます。  それからもう一つ、組合に関しての御指摘がございました。今日までの要員削減は、五十五年度からおおよそ千四百五十人減らしてまいりました。この間、毎年組合と協議をしながら削減をしてきておるわけでございますが、組合はすべての計画に協議に応じてきております。公共放送の労働組合としての自覚あるいは公共放送の立場についての組合としての理解を示してくれているものと私どもは考えております。また、当然のことでございますが、組合員の権利を守るという側面もございます。十分に組合に理解を求めながら今後とも実施してまいりたいと思います。  なお、今後のことでございますが、私どもは一万五千でよしといたしておりません。衛星放送あるいはハイビジョン等の新たな取り組みもございますが、さらに効率化に努めながら新しい仕事に取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。
  20. 尾形智矩

    尾形委員 時間が来ましたので、ありがとうございました。
  21. 塚原俊平

    塚原委員長 園田博之君。
  22. 園田博之

    ○園田委員 ただいまNHKの六十三年度収支予算の御提案をいただきまして、大変厳しい収支になっていると思います。  私は、六十三年度予算を執行するに当たって、経営効率化をお進めいただかなければならぬわけでございまして、そのことについてどういうお考えでお進めになるのか聞いてみたいと思っておるわけですが、まずその前に、六十二年度予算事業収支ゼロで組まれてあると思います。六十二年度の終わりに当たって、この六十二年度予算の執行についてどのようにお取り組みになって、そしてさらに、この決算の見込みをある程度お示しいただければお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  23. 井上豊

    ○井上参考人 六十三年度予算の前提といたしまして、現在六十二年度事業運営努力している最中でございますけれども、まず収入面につきましては、受信料収入について、私ども、普通契約とカラー契約という二本立てでいるわけでございますが、カラー契約への普通からの契約変更に積極的に取り組んでおりまして、六十二年度中に全体といたしましても四十八万件増を見込んでおりましたカラー契約というものを、五十六万件ぐらいまで伸ばせるのではないかというふうに見ているわけでございます。また副次収入につきましても、大型企画番組の海外との共同制作でありますとか、番組の多角的な活用を促進しております。  それから支出につきましても、これは衛星放送二十四時間放送体制を整えまして、また国内番組充実に努めておりますけれども国際放送につきましても、これを八俣送信所の整備四カ年計画の最終年度と位置づけまして、新しい送信設備整備も完了したところでございます。  そういう意味で、現在いよいよ年度末にかかっているわけでございますけれども先生お尋ねの六十二年度の決算といいましょうか、これは現在まだ進行中でございますので、四月、五月に最終的なまとめをいたしまして、五月末には郵政大臣に御提出するということでございますけれども、現時点での見込みでは、事業収支でおよそ五十億円ぐらいの改善ができるのではないかというふうに見ております。  つまり、収入では、先ほど申し上げましたようにカラーの増加ということがございますので、受信料におきましても十五億円強の増収が見込めるのではないかというふうに思いますし、副次収入等につきましてもかなりの増収が期待できるだろうというふうに思っております。また支出につきましては、予備費を二十五億円組んでいるわけでございますけれども、ことしは台風も割合少のうございまして、選挙もございませんでしたので、二十億円ぐらいの残が出るのではないか。そのほか五億円ぐらいの事業運営費の残が見込めますので、つづめて申し上げますと、収入で約二十五億、支出で二十五億の残ということでございますので、全体といたしましては五十億円程度の収支改善になるのではないか、こういうふうに見ているわけでございます。
  24. 園田博之

    ○園田委員 五十億円程度収支が改善できる、こんなことで、六十二年度もいろいろ御努力はしておられるのだろうと思います。  六十三年度はさらに厳しい予算になりましたので、予算執行に当たっては、さらに収支改善への努力というのはお続けをいただかなければならぬわけでありまして、さらに厳しいからというだけじゃなくて、やはり経営効率化という問題は、このNHKの性格上大変要求が厳しくなってまいりますので、永遠の課題として進推していただきたい。そのためには、今までのように、やはり中長期的に計画を策定しながら、そして毎年その計画に基づいてそれを推進していく、こういう形で今後も進めていただきたいと思うわけであります。  そこで、六十三年度予算に関しましては郵政大臣意見が出されておりまして、この厳しい現状とその打開の必要性を深く認識して今後努力しなければならぬ、こんなことを郵政大臣意見として出されておりますが、このことについてNHKとしてはどういうふうに受け取っておいでなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  25. 川原正人

    川原参考人 この六十三年度NHK予算に対する郵政大臣の御意見は、私どもとしては、このとおり肝に銘じてこれを実行していかなければならないというふうに思っております。  特に、三項目の中の第一点の、営業活動刷新を積極的に進めて受信料増加を図れ、あるいは効率化経費節減を徹底しなさいというこのことについては、私どもも、現状をもって決して満足をしておりません。営業活動については、既に六十二年度から新しい構想を展開してその準備に入っておりますけれども、特に六十三年度からは、今までの仕事やり方を抜本的に変えてこの営業仕事刷新を図る。そして受信料増加も、実は、既に営業の第一線の諸君は大変な努力を重ねてくれておりまして、六十一年度の決算でも予算に対しまして十億円の増収を図ることができましたが、今六十二年度の決算の最終段階でありますけれども、恐らく予算に対して十五億円以上の増収が図れるだろうと思います。  しかし、これでもうよしとするわけではございません。さらにこれに一段と拍車を加えるような形で、経費率も落としながらかつ増収を図ってまいりたいと考えておりますし、全般的な効率化につきましては、私どもが五十五年度から、これは六十五年度を目標に、一万七千人のピーク時の人員を二千人、一二%削減しようという計画で着々やってまいりまして、これも一年早く実現できるというふうに考えておりますが、これも、これで終わりでは決してございません。といって無限に人が減るわけでもございませんけれども効率化については、少なくとも今ぐらいの効率化は、私は、当然当分の間続けなければならぬものだと思っております。  しかし、効率化というのが単に人減らし、経費の節約だけではなくて、私としましては、もっと多角的な事業の展開を図るべきだ。一方では衛星放送とかニューメディアの展開も必要でございますけれども、いろいろな形で私どもが蓄積してまいりました番組の素材あるいはノーハウというものをもっと一般に活用していただいて、それによって収入を図れる道があるはずである。これは、NHK本体がどこまでそのような活動ができるかはいろいろ難しい問題もあろうかもしれません。関連の事業等と力を合わせまして、もっと私どもの持っておりますいろいろな財産を多角的に活用することによって収入を図る道があるはずでございますし、またそういう過程の中で、要員のもっと効率的な仕事の仕方というものも出てくるだろうと思います。そういう点はぜひこれから力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  26. 園田博之

    ○園田委員 六十三年度も大変厳しいわけですが、これが六十四年度以降ということになりますと、今お話のありました衛星放送の本放送だとかあるいはハイビジョンだとか、このニューメディアへの取り組みというのは、こういうものもNHKには大変な期待がかかってまいりますので、これはこれで一生懸命取り組んでいただかなければならぬわけでありますが、しかし、これがまた経営上新たな困難ということにもなるわけでありまして、そういった意味では、六十四年度以降も大変厳しくなってきます。だからといって、安易に受信料の改定によって経営を改善するということになりますと、これは国民負担が増すということになりますので、やはりできるだけこういう方法を避けなければならぬ、こう思っておるわけです。  そこで、今会長からもお話をいただいたわけですが、受信料を何とかして収納できるような体制を安い経費でとるということ、それが大変必要でありますし、また、要員の問題もそれなりに努力をされていると思います。また、やはり経営効率化というようなことになりますと全般的に進めていただかなければならぬわけですが、それ以外のことで、NHKのお取り組みになった効率化ということで今までの成果といいますか、あるいはまた新たにこういう方面でも取り組んでいかなければならぬ、そういうことがありましたら、重ねてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  27. 川原正人

    川原参考人 効率化ということで申し上げますと、どうしても節約とか、そういうやや詰める方の仕事になりますが、これは先ほど申しましたように、やはり最大のものは人間がもっと能率的に働く、そして人間の数を減らすということが最大の一番メリットの出る数字でありますけれども、やはり片一方で新たな仕事もどんどんNHKはふえてきておりますので、人間だけではなくて、仕事やり方を変えることによって通常の経費なんかも相当節約してまいっております。今年度予算におきましても、一般事業費等はもう頭から五%のマイナスシーリングということで予算を編成いたしました。それから、これまでにおきましても、毎年度、大体前年度に比べまして五十億ないし六十億円の経費の節約というものは繰り返してやっております。  ただ、これはいつまでも続くものではございませんので、およそ一つの限界があろうかと思います。私先ほど申し上げましたように、これからはやはり新しい収入の道をいろいろ探していかなければならない、それを考えるべきだということで、実は郵政大臣の御指摘にもありますけれども衛星放送普及の促進を図れ、これはただ衛星の数、受信者の数をふやせばいいということではなくて、当然この衛星には相当の番組経費もかかりますので、これにつきましては、衛星の番組をごらんになって受益をされる方にある程度の経費はやはり負担していただかなければならぬ、そうでないと事業としては成り立ってまいりません。それから、先ほど申しましたように、通常の仕事の面でも、NHKが持っておりますいろいろなノーハウといいますか、番組素材とか、場合によれば不動産のようなものも今までとは違った形での活用の仕方がいろいろあるだろうと思います。そういう面でやはり収入の補いをもっともっと図っていきたい。  しかし、そういうことをやりましても、今の受信料で五カ年間何とかやりくりしてまいりましたけれども、もともと本当はこれは三年の計画でお願いしました現行受信料でございます。四年、オリンピックというのは、いかに何でもこれは型どおりではまずいと私ども思いますけれども、五年間とにかく辛抱し、あるいはかなりの無理をして延ばしてまいりましたけれども、実質的にはやはり六十三年度だけとりますと二百億円以上の赤字が出ております。もちろん私ども効率化をやりますけれども、やりましても、これ以上現行受信料で六十四年度以降財政を賄うことは少しく困難ではないか、六十四年度にはやはり何らかの新しいことをお願いせざるを得ないのではないかというふうに考えております。
  28. 園田博之

    ○園田委員 いずれにせよ、大変困難だということは我々としても認めざるを得ないと思うのですが、何度も申し上げましたように、効率化についてはさらにいろいろな角度からひとつ御努力をしていただかなければならぬ、こんなふうに考えております。  そこで、今会長からも若干衛星放送についてはお考えをお聞きしたのですが、ハイビジョン、衛星放送、まさにニューメディアでありますから、大変期待が大きいわけです。しかし、今言いましたように、経費もかかってくるだろうと思います。衛星放送だけじゃなくて、これにかかる経費といいますか、ハイビジョン、衛星放送にかかる経費をひとつ参考までにちょっとお聞かせいただいた上で、これらをどうやって効率的に実施、普及あるいは促進をさせていこうとしておられるのか、この辺についてもちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  29. 井上豊

    ○井上参考人 衛星放送につきましては、先ほども申し上げましたけれども普及促進、難視の解消ということでやってきているわけでございますが、六十三年度に予定しております衛星放送実施全体経費といたしましては、百五十五億というふうに予定しております。ただし、これは番組を制作いたしましたりあるいは衛星放送電波を出しますための施設の運用費でありますとか、それから受信技術あるいは広報、保険料等、さらには人件費、減価償却費等を入れた総額でございます。  それから、先生お尋ねの、そのほかのニューメディアといいましょうか、そういうことでございますけれども、全体の経費として出すのはなかなか難しゅうございます。例えば、テレビジョンの文字多重というようなものは、厳密に文字多重だけの全体のコストということでは難しゅうございますので、これは直接経費というふうにお考えいただきたいのでございますが、文字多重に使っております経費といたしまして、六十三年度予算ではおよそ三億でございます。  それからハイビジョンでございますけれども、私ども今予定しておりますのは、これは事業費、建設費を入れましておよそ二十四億程度を予定しているわけでございます。
  30. 園田博之

    ○園田委員 いずれにせよ、特に衛星放送につきましては本放送に移行して相当な経費もかかってくる、なるべく負担を避けなければならないとしながらも、場合によっては受益者の方々に負担をしていただく、こんなこともこれから議論をしなければならないんじゃないか、私もそう考えております。いずれにせよ、こういった面での期待が大変大きくなりますので、ひとつ質的にも内容を高めてもらうと同時に、経費もなるべく少なく、こんなことでまた御努力いただきたいと思います。  それから話がちょっと変わりますが、NHKが特に最近関連企業をおつくりになって、そしてこれに業務を外注する、こういう仕事がだんだんふえている、こんなふうにお聞きしておるわけですが、部外委託というのがどの程度進められているのか、あるいはそのことによってどのくらい経費が従来より減っているのか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  31. 植田豊

    ○植田参考人 先生指摘のように関連団体にさまざまな業務を委託してございます。番組制作でありますとか番組制作のための技術業務、あるいは辺地の共同受信施設の保全関係とか視聴者相談業務、あるいは警備、受付等々の業務を委託してございます。  今日まで、昭和五十五年からの効率化計画でおおよそ千四百五十人の削減をしてまいりました。この削減のうちおよそ三分の一、五百五十人ほどの分がこの乗務委託でございます。ただし、この五百五十人をそっくり出向させてこういう仕事をさせているという趣旨ではございません。業務委託に当たりまして、見直しによる人の削減をまずいたします。これを、五百五十人中二割程度の人を減らすということをまず考えております。それから、早期退職による転籍分が二割強ございます。さらには、この業務委託に当たりまして純然たる外注に一部切りかえるというようなことも織り込んでおります。この五百五十人中出向をいたしておりますのは二百二十人でございます。今日まで千四百五十人の削減をいたしましたが、このうちの出向総数は二百二十人、一五%程度でございます。  なお、要員削減千四百五十人によります人件費の節減額でございますが、六十二年度ベースでおおよそ百二十五億円に相当いたします。効率化に伴います以上の業務委託費が、六十二年度ベースで五十億円ということでございます。
  32. 園田博之

    ○園田委員 経営効率化についていろいろお聞きをしたわけですが、最後に申し上げたいのは、やはりそのことを理由にNHK本来の目的を逸脱して国民の信頼を裏切ってはいけない、このように思いますので、今後NHKとして番組の質的向上その他国民の期待にこたえられるような経営をしていただくようにお願い申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  33. 塚原俊平

    塚原委員長 二田孝治君。
  34. 二田孝治

    ○二田委員 私、この発言者席に立ちましてからちょうど一年有余の月日がたってしまったわけでございます。あのときはちょうど大河ドラマというようなことで伊達政宗をやっておりまして、私も、地方の活性化のためにどうかひとつ私どもの地方でも大河ドラマを取り上げてほしいということをお願いしておったわけでございます。  ところで、今は伊達政宗からかわりまして武田信玄になっておりますけれども、これについての世間の評価は大変よろしいようでございます。前と比べまして視聴率等はいかがなっておるのでございましょうか、お教えいただきたいと思います。
  35. 尾西清重

    ○尾西参考人 毎回違うのでございますけれども、あるいは今度の「武田信玄」は伊達政宗の影響を受けたのかもしれませんけれども、伊達政宗は二〇%から三〇%ぐらいのところでございましたけれども、今度の「武田信玄」は四〇%以上、一番高いときで四九%を超えております。
  36. 二田孝治

    ○二田委員 そういうことで、甲斐地方は日本全国で大変有名になっておるわけでございます。  NHK民放と違いまして日本全国あまねく、どこにでも電波が参ります。そういう意味で、恵まれない地方にも光を当ててもらわなければならぬということは公共放送の重大な使命一つではないかと思います。こういった番組の編成過程とか編成会議と申しますか、そういうものはどういうシステムで行われているか、御教示をお願い申し上げたいと思います。
  37. 尾西清重

    ○尾西参考人 先生の御質問、大変広範にわたると思いますが、特に大河ドラマを取り上げて申し上げますと、このドラマを担当しておりますドラマ部で提案をしてまいりまして、そしてその提案を採択するという過程で決まっていくものでございます。もちろん、私ども地域に偏向することのないように考えてはおるのですけれども、やはりドラマとして一年間続くかどうかということは大変難しい問題でもございますので単純に各県ごとにやっていくわけにもまいりませんので、そこら辺のところ御了承いただきたいと思います。
  38. 二田孝治

    ○二田委員 よく理解できました。ひとつ大臣もその辺のところ、恵まれない地方にも配慮をお願い申し上げるところでございます。  ところで、私の与えられたテーマは経営効率化という問題でございましたが、これにつきましては先ほどから尾形先生そして園田先生から大分御質問があったわけでございます。一部重複するのが大分出てくると思いますけれども、なお一層の掘り下げた御答弁をお願い申し上げる次第でございます。  先ほどから申し上げておりますとおり、NHK収入の九七%以上は受信料収入でございます。受信料こそはNHK経営の根幹であるわけであります。ところで、NHK経営効率化の問題を論じます場合には、やはりどうしてもこの受信料の問題は避けて通れないものだ、こう思うわけでございます。  お尋ねしたいのは、NHKは毎年六百億円以上、実に事業支出の一八%以上の経費受信料収入のために使っておるのでありますけれども、これは大変過大な経費ではないかと私は思います。まず現在、実際のところは受信料収入にどのぐらいの経費をかけておるのか、また、これの来年以降の見通しについてお伺いしたいと思います。  第二点は、御存じのように、先ほどのお話のとおり五十九年度より口座振替料金制を設け、そして口座化がもう既に相当程度進んでおるというふうにお伺いしております。しかし、また一方、予算計画書を拝見するに、契約収納費はそれほどには減っていないようであります。これにつきまして、口座比率の現状などは先ほど答弁あったわけでございますけれども、もし口座比率が上昇しているならば契約収納費が余り減らない理由について御説明をお願いいたしたいと思います。
  39. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  契約収納費が今、年間どのくらいかかっているのかということでございますが、六十三年度契約収納経費が六百三十二億円ということでございます。これは六十二年度の六百三十三億一千万円に比べて一億一千万円ほど減になっておりますけれども受信料収入の中で占める割合は一八・六%ということになっております。この六百三十二億円のうち、委託しております受託者の事務費でございますとかあるいは職員の人件費等のいわゆる人的経費が八割を占めているというのが現状でございます。これが五百二十三億円ということになります。残る百八億円、これが契約収納関係の資材費でございますとかコンピューターの運用経費という形にかかるわけでございます。  ただ、私ども六十二年度から既に具体的な準備に入っているわけですけれども、六十三年度から新しい業務体制を営業活動の中にどうしても実現したいというふうに考えまして、コンピューターコスト等もこの数年間は思い切って投入してまいって、コンピューターのサポートによる効率的、効果的な業務の運営を志してまいりたいと考えておるわけでございます。そういった先行的な投資も先ほど申しました百八億の中には入っているわけでございますけれども、私どもとしては、そういった新しい業務体制を築くことによりまして六十七年度には今六百三十億を超えております経費を五百億円台には引き下げてみたい。そしてまた経費率も、先ほど先生が御指摘になりました一八・六%というものを一五%台に引き下げたいと考えているところでございます。  一方で口座の問題はどうなのかということでございますけれども、先ほどもお答えいたしましたが、昭和五十九年度年度当初は五〇%を割っておりました口座の利用率が現在は既に七〇%を超えております。七〇%を超えたというのになぜ経費がなかなか減らないのかというお尋ねでございますけれども、これは先ほども申しましたように、七割を超える口座利用ということでございますが、残っております散在している訪問集金の方というのが九百万を超えている。同時に三千百万を超える契約者、これを確実に維持してまいりますといいますか、この方々にかかわります移動情報でございますとか支払い方法の変更等のいろいろな情報処理をやってまいりませんと、どうしても確実な契約者の管理ができないわけでございますので、そのための情報量というものが一年間に千二百万から千三百万という数に達する情報量があるわけです。これはすべて人手でやらなければならないということがございます。それから、既に契約者が三千百万を超え三千二百万になろうとしておりますが、あと残っております、散在している訪問集金の方々、あるいは未契約の方々というのは恐らくまだ三百万をかなり超える数でいらしゃるだろうと思っております。この未契約の方々というのは、既にこれだけ契約の数がふえてまいりますと説得になかなか手間がかかると申しますか、そういった必要性も当然出てまいるわけでございます。  そういったことでどうしても人手がかかってしまうということがございますので、私どもとしては、今口座がこれだけ高口座時代になってなおかつ経費が減らないという実態をどういうふうに解決すればいいのかということで、仕事の流れを徹底的に分析してまいりました。そしてその結果、幾つかの課題を私どもとしては見つけ出したわけでございますけれども、その一つは、未面接の方に対してどういうふうにお目にかかるのか。なかなかお目にかかれない方々に対してどういうふうにお目にかかるのか。これは、単身世帯の方が七百八十万から九十万いらっしゃいます。それから、扶養家族を持っておられて働いておられる婦人の方が九百万を超える敬いらっしゃるわけです。そういった方にはなかなかお目にかかれない。そういう方にどういう形でお目にかかればいいのかということを十分な情報管理ということもいたしまして、そのサポートによって効果的、効率的な仕事を進めてまいって、そしてこの契約収納費というものをできるだけ節減する方向に努力してまいりたい、かように考えている次第でございます。
  40. 二田孝治

    ○二田委員 ただいまの御答弁で大変な努力をしているということは理解できたわけでございますけれども、ただいまのNHKによる抜本的な経営効率化方策、または新営業構想と言ってもよろしいかと思いますが、その具体的内容につきましては、では、NHKの考えはわかったのでございますけれども、郵政省はどのように考えているのか、お教えいただきたいと思います。
  41. 成川富彦

    成川政府委員 六十三年度収支予算につきましては、既に御案内のとおり非常に経営的に厳しい状況になっているところでございます。それで、契約収納関係経費につきましても六百三十二億円ということで事業支出に占める割合が一八・九%、約二割というようなことになっておりまして、その収納業務効率化というのはNHKにとっての喫緊の課題といいますか重要な経営課題の一つというふうに私どもも認識しております。NHKにおきましては、六十三年度から要員の効率化あるいは経費の節減というようなことで取り組むと同時に、受信料収入の確保を目的とした新しい営業体制の導入に取り組んでいただいているところで、先ほど来御説明のあるとおりでございます。  私どもといたしましても、今申し上げましたような経営効率化とか経費の節減等々によりまして、あるいは収入の確保を図ることによって経営の安定に資することが大変重要だと考えておりまして、より一層その努力を求めていきたいと思っている次第でございます。いわばその新営業構想の実現に向けて一層努力をしていただきたいと望んでおるところでございます。
  42. 二田孝治

    ○二田委員 この受信料収納問題につきましては、その中で最も重要な問題は、先ほどもお話にありましたとおり受信料の不払いについての問題点ではないかと思います。最初に申し上げましたように、NHK収入三千五百十一億円の九七%は受信料収入であります。これがなくしてはNHKの存立はあり得ず、まさに受信料こそはNHK経営の根幹であり命であると言っても過言ではないと思うわけでございます。したがいまして、受信料不払いの問題につきましてはNHKの財政上のゆゆしさ問題であります。そしてまた、そればかりじゃなく、受信者間の公平負担を図る見地からも見逃すことができない重大な問題であると思います。NHKにおきましては、経営効率化を推進しつつも、受信料収納の確保に全力を挙げて取り組まなければならないと考えます。  そこで、六十二年度、今日までの受信料の不払いの現状とその対策はどうしているのかについてお伺いいたします。
  43. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  現在、六十二年度上半期末の滞納数というのは九十八万九千ぐらいの件数になっていると思います。それから、契約拒否という形で、契約交渉しても交渉に応じないという方がおよそ十四万七千ぐらいの数になろうかと思っております。  これはどういう原因で起こるのかという点で申しますと、一つは、都市部を中心として単身世帯、共働きの世帯の方が非常に多くて昼間いらっしゃらない、なかなかお目にかかれないということから、面接困難な世帯増加ということが一つの原因であろうかというふうに思います。それから、もちろん最近の視聴者の意識の多様化ということも一つの原因になっているかと思っております。  先生指摘のように、私どもとしては何としてもこの滞納あるいは契約拒否という事態を解決しなければならないというふうに考えておりまして、五十八年の十二月以降外務職員の夜間、日曜の活動の強化というようなこともいたしておりますし、同時に、業務体制全体を見直してできる限りの説得活動を続けるということを考えているところでございます。そういった結果、このところ数年の間の滞納、契約拒否という数は一応歯どめがかかっているというふうには私どもとしては考えているところでございます。  しかし、これから先、従来の説得の仕方で果たして滞納なり契約拒否というものに対して対応し切れるのかということを考えますと、私どもとしては従来の繰り返しではいかぬだろうというふうに考えております。そのためには、民間のいろいろな企業の説得活動についてのノーハウがございますので、そういったものも十分取り入れまして、従来とかく法律によって決められているのだから契約してほしい、払ってほしいというところに傾きがちだった活動を、できるだけ幅の広い形で、番組についての情報サービスもしよう、あるいは説得の仕方についての民間のノーハウも活用していこうということで、幅広い活動を通じてこれから先もこの滞納、契約拒否対策には当たってまいらなければならぬと考えております。
  44. 二田孝治

    ○二田委員 受信料の問題につきましてはこの辺にいたしまして、次に、これは収納問題に関係があるのでございますけれども、六十三年度NHK予算書によりますと、事業収支差金マイナスの百二十四億四千万円、債務償還必要財源百三億二千万円については借入金をもって措置するほどの極めて厳しい財政状況にあるわけであります。  そこで、現在免除されている受信料についても見直しを行いまして、必要なことについては別途また社会政策上の問題は譲るべきものではないかと思います。現在免除されている受信料状況と免除廃止に向けての考え方をお伺いいたしたいと思います。  あわせて、現在の受信料免除措置の見直しについて郵政省ほどのようにお考えなのか、お教えいただきたいと思います。
  45. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  受信料の免除措置につきましては、NHKの立場というものとその社会的な使命ということを考えまして、従来、社会福祉的あるいは教育的な見地からも免除措置というのを実施してまいっておるわけでございますけれども、しかしNHKの置かれている財政状況等も考えまして、あるいは国会の審議でもいろいろ強い御指摘もちょうだいいたしまして、私どもとしては五十三年から逐次、免除措置の縮小というものを図ってまいりました。現在のところでは社会福祉的なものと、それから教育的な見地から実施しているものが中心でございます。  その免除額は年間で百十九億という額に達しております。私どもとしては、現在の財政状況等を考えまして、何としてもこの免除措置をできるだけ早く廃止すべきだというふうに考えております。しかし協会が独自に、従来とってまいりました措置を一方的に廃止するというのは、これはいろいろ社会問題という点でも問題があろうかと思います。  そういった意味で政府、国等関係機関の理解を得て、そして財政措置を講じていただいて、そして我々としては直接の免除は停止したいというふうに考えているところでございます。できるだけ早い理解を得たいというふうに考えているところでございます。
  46. 成川富彦

    成川政府委員 今、松本参考人からの話にもございましたように、現在のNHK受信料免除措置につきましては、社会福祉的見地あるいは教育的な見地から実施しているものでございます。  先ほどもお話ございましたように、近年財政事情が苦しいというようなことあるいは免除の社会的な必要性の度合いというようなことを考えまして、逐次免除措置を縮小してまいっております。  現在残っておりますのは、先ほど話がございましたように小中学校あるいは社会福祉施設等に対しまして百十九億円の受信料免除が六十三年度予算では見込まれているところでございます。  私どもといたしましても、NHKが本来みずから負担すべきものかどうかというような負担のあり方につきましては再検討してみる必要があるんじゃないかというふうに考えております。
  47. 二田孝治

    ○二田委員 大体NHKも郵政省も私の考えと一致するようですので、非常に結構なことだと思います。  以上をもちまして、時間でございますので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  48. 塚原俊平

    塚原委員長 穂積良行君。
  49. 穂積良行

    ○穂積委員 私も、公共放送NHKの健全な経営の維持発展はよりまして、我が国の文化水準がより一層向上することを願う者の一人であります。  先ほど郵政大臣及び川原会長の今回提案されました案件についての意見を伺っておりましたが、何よりもNHKは、まず公正な報道と豊かな番組の提供ということを念頭に業務を進めていくということはまさに基本問題であると思います。  そこで、私はNHKに遠慮をするなと申し上げたい。私ども与党も長期政権のおごりが見られるような場合には遠慮なく報道していただいて結構だと思いますし、また野党の皆さんは健全な批判精神によって国政を誤りなくするということは若干ためらいがあるような場合には、これも遠慮なく報道なさってはいかがでしょうかとまず申し上げるわけでございます。  そこで、大臣はこのNHK収支予算事業計画及び資金計画について「おおむね適当」であると認定され、三点の意見を付されておりますが、特に今の公正な報道ということに関しまして、予備知識なりなんなりなしに大臣の御所見をまず伺っておきたいと思います。
  50. 中山正暉

    中山国務大臣 私ども民主主義国家日本では、放送法の根底に、内容には我々政治、行政はタッチをしないという、そういう基本的な行き方があると思います。  先般ソビエトの放送協会議長アクショーノフさんが来られたときにも、自由な取材の問題で議論がありまして、日本のマスコミがソビエトに対する偏見があるというような話がありましたのですが、そのとき、あなたの国は政治がすべて、公共放送ということ、本当の国家放送と申しますか国営放送という形でやっておられますから問題ありません、我々の方は内容には触れられませんので、そのことに関してもお互いひとつ自由な取材を国内どこでもやらしてもらう、ソビエトの場合はいろいろ制限があるようでございます。日本はソビエトの放送会社が来られても、自由はどこへでも行っていただくというようなことで、そういう基本的な問題で議論をいたしましたが、私ども民主主義国家の誇りというものがそこにあるわけで、おのずから視聴者が、それは対する政治判断というのをそれぞれの観点で見ていただくことが自由主義国家としての立場、明らかに偏向があった場合には、かえって民衆がその放送をした放送機関に対して批判を浴びせるべき、そういう高度な政治的な生育に期待するのが特殊法人としての、特にNHKではないだろうか、私の政治感覚として、全郵政省の責任を持つ者としてもそんなふうに感じております。
  51. 穂積良行

    ○穂積委員 NHKが今後長期に自分使命を考えていく場合、やはりかなり長期的な視点で取り組むべき問題が幾つかあると思います。  一つは、先ほど来質問にも出ておりますが、衛星放送を今後積極的に普及を図り、内容のいい番組を提供していくということだろうと思いますが、その衛星放送については現在どの程度普及しているのか、伺いたいと思います。
  52. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  六十二年の七月から新編成を開始したわけでございますけれども、その当時十五万世帯というふうに推定しておりました。その後六十三年二月末現在五十三万弱というふうに考えております。それで個別受信が十八万弱程度かというふうに思います。それに共同受信、これは集合住宅でございますとかCATVあるいはホテル等でございますけれども、それが三十五万弱、それに大東島、小笠原等のいわゆる再送信受信局が千五百ぐらいの数かなというふうは考えております。これは電子機械工業会等の出荷台数から推定したものでございます。
  53. 穂積良行

    ○穂積委員 今五十三万世帯といいますと、先ほどトータルの衛星放送のコストがたしか百五十五億というふうにお答えがありましたが、およそ一世帯で三万円くらいになるわけですね。そのような状況が、今後世帯数がふえるにつれて一世帯当たりのコストが下がっていくだろうと思うのです。  そういう中で、衛星放送については技術的にもますます万全を期していただきたいと思うのですが、最近BS2でトラブルが起こったというふうに聞いておりますけれども、これについてはどういうことだったか。また昭和六十五年度に打ち上げ予定のBS3についての信頼性の確保といった面ではどのように注意しておられるのか、その辺を伺いたいと思います。
  54. 中村有光

    中村参考人 お答えいたします。  昨年末から二件のふぐあいがございましたが、現在BS2は安定に管制されております。私どもは今後の二チャンネルの衛星放送には支障ないと考えております。  またBS3の方は今製造の段階にございます。十分な信頼性を確保されるよう関係機関に要請しておりますし、関係機関によりましてはBS2の経験を生かして試験を強化するなど、信頼性の確保を最優先課題として取り組んでいくと認識しております。
  55. 穂積良行

    ○穂積委員 衛星放送の本格化でさらに期待されますのは例のハイビジョンの普及だろうと思います。ハイビジョンは御承知のとおり、映像なり音声で飛躍的な品質の向上が図られるはずでありますが、このハイビジョンと衛星放送普及との関係について、放送行政を預かる立場からはどのように考えておられるか、伺いたいと思います。
  56. 中山正暉

    中山国務大臣 一九六五年、日本でオリンピックがありました翌年にNHKにいらっしゃる技術者の方々が開発をされたすばらしいテレビ、縦が三で横が五・三三というシネマスコープ型であり、走査線が今のテレビは五百二十五本でございますが千百二十五本という、そういうきめの細かいテレビジョンが日本で開発されたということで、それが実験段階に今入っている。昨年十一月六日が私の就任した日でございますが、その後十一月二十五日に第一回目のハイビジョンウイークというのがありまして、それで実際のスタートを切ったという形になっておりますが、六十五年に本放送をやりたい、BS3という、ブロードキャスティング・サテライトと申します衛星を利用してやりたいということでございます。  実はこれは省内で願望をいたしておることがありまして、ちょうど一九九〇年、花の博覧会というのが四月一日から開催されますので、何とかそれに間に合わないだろうかと。花という美しいもので、花と緑で世界に平和を呼ばうというような趣旨での博覧会を美しい映像で世界に報道することができ、また持ってこられないような花、世界で一番大きい花、臭くてそばに寄れないような花だそうですが、スマトラにあるそうでございます。そんなものもハイビジョンで会場からお見せするとか、そういう形でハイビジョンのスタートを切っていただけたら、日本で開発されたこの国際性――今どういうふうにそれを均一化していくか、世界じゅうに、すべての方々にそういう高度な日本技術を受け入れていただくかという、これはまた各国とそういう折衝もしなければなりませんが、そういうものでハイビジョンに期待をしております。  これは、例えば映画の場面でも、重ね撮りができますものですから非常に経費を節減できる映画ができるとか、それからファッションの世界では、顔写真だけ入れておいて衣装を変えればそれで自分に似合う着物がわかるとか、それから印刷とか、この用途の広さというのは、二十一世紀まであと十二年ばかり、その間に十五兆円GNPに追加できる、そういう経済的な効果も非常に大きい、いろいろと申し上げれば切りのない期待が、この高度な精緻な映像による情報化社会にはうってつけのものだ、かように私は期待をいたしておる次第でございます。
  57. 穂積良行

    ○穂積委員 衛星放送と関連があるかと思いますけれども、ことし韓国でオリンピックが開催されます。そのオリンピックの放送につきまして、これは国民の期待にこたえられるように万全を期していただきたいと思うのですが、その費用ですね、コストはどんなふうになっているものかここで明らかにしていただきたいと思います。また、実際に放送するに当たってどのような時間あるいは時間帯を予定しているのか。さらにつけ加えて申し上げたいのですが、この際希望を申し上げれば、韓国の実態、社会、経済、政治なども我が国民理解が行き届くようなことを念頭に番組どもつくられてはどうかと思うわけですが、その辺について一連の問題をお答えいただきたい。
  58. 尾西清重

    ○尾西参考人 まず費用でございますが、ソウル・オリンピック大会の放送権の交渉につきましては、前回のロサンゼルス同様、民放連とNHKと一緒になりましてジャパン・プールというものをつくりまして韓国側と交渉に当たったわけでございます。長い交渉の末にようやく三千五百万ドルの放送権料と大会協力費が千五百万ドル、合計五千万ドルで合意をいたしました。韓国側の強い要請がございまして、このほかにオリンピックの体操競技の中継をNHKが無償協力する、大体これは二百万ドルくらいの費用が見込まれますけれども、そういうことで合意が成り立っております。  NHK民放連の放送権料の分担は、NHKが八〇%、民放連が二〇%という割合でございます。ロサンゼルスのときはNHKが八六・七%、民放連が一三・三%ということでございましたので、それに比べますとNHK負担が軽減されております。  放送に要する費用でございますけれどもNHK負担します放送権料五十八億二千万円くらいになりますか、それに加えまして番組制作費が約八十九億円、総額六十七億一千万円程度が必要かと思われます。  この放送計画でございますけれども、まだ民放連との間にも具体的個別のところで懸案が残っておりまして、放送計画を決めるに至っておりませんけれども、ロサンゼルス大会のときが百五十五時間くらいでございました。したがって、私どもとしてはそれを下回ることはない放送計画を考えたいと思っております。  ハイビジョンにつきましては、開会式、閉会式、それと大会期間中に一日約二時間程度のものはハイビジョンの実験放送としてお伝えしたいというふうに考えております。
  59. 中山正暉

    中山国務大臣 私も郵政大臣になりましてテレビを買いかえまして、三十七インチの一番大きいのを入れましたのですが、それで衛星放送も見るようにしました。この間のカルガリーのオリンピックで、一般放送でカルガリーが余り実況されなかったということでいろいろな不満もあったようでございます。これはいわゆる時差の関係があることもあったようでございますが、逆に言えばカルガリーのオリンピック以来衛星放送に大変注目が集まったのではないかという感じがしておりまして、この普及もひとつ大いに図ってまいりたいと思っております。  それからまた、今韓国の話が出ました。白川政務次官が年末に韓国へ行ってくれまして、先般呉明長官、これはオー・ミョンとお読みするんだそうですが、逓信部長官が私どものところへ新年早早お越しいただきました。そこで私は、日本におられる韓国の方、六十七万人に及ぶわけでございますが、私の地元の大阪を考えてみましても十九万八千人大阪府下におられます。大阪市内だけでも十二万人。大阪市内にはあなたの国の名前のついた高麗橋、コリアン橋という橋もありますというような話もいたしまして、ぜひひとつ、日本にいらっしゃる六十七万という韓国の方々があなたの国で実施されるオリンピックに誇りを持たれると思いますので、この際いかがでございましょうか、ハイビジョンで実験放送をやらせていただけませんでしょうかということを申し入れました。呉明長官は大いに乗ってくださいまして、ぜひそういう方向で進みたい、開会式と閉会式をハイビジョンによる実験放送をしたいということをおっしゃっていただきまして、韓国へ一遍来てくれと御招待状もいただいております。  韓国にKTAという、日本で言えばKDDみたいなものがあるわけでございますが、会場から光ファイバーで引いてそれを衛星で日本へ送ってくるという、その実現に向けて今鋭意努力いたしておりますし、立ちましたついででございますが、この間アメリカからCATVの役員の方々九名ばかりお越しいただきました際にも、我々はアメリカにおいて、日本のハイビジョン方式で取り入れることに投票をしましたという大変明るいニュースをアメリカからも代表が持ってきてくださいましたが、先生のおっしゃった韓国についての報道も最近は民放を含めまして非常にふえていると思います。近くて近い国にしようという、文字どおり一衣帯水の韓国との関係が映像を通じて、今までは余りにも報道されなかったように思いますが、日本に在住しておられるたくさんの韓国人の皆さんのことも勘案をして、大変いいムードになっているという感じを持っております。
  60. 尾西清重

    ○尾西参考人 私、先ほど制作費八十九億と申しましたが、八・九億の誤りでございました。おわびして訂正をいたします。
  61. 穂積良行

    ○穂積委員 時間がなくなりましたので、これは意見だけ申し上げて質問を終わらせていただきます。  私は昨年の質疑でも、質の高いものには金がかかるのは当たり前だ、NHKは、質の高い、文化水準を向上させる番組編成ということは遠慮しないでやってもらいたいということを申し上げたのです。もちろんコストということで、受信料にどうする、こういう話がありますからその辺の兼ね合いだと思いますが、その受信料問題で、これは他の議員も質疑されると思うのですけれども、長期的に考えた場合、やはりNHKはもっと勉強を続けていただきたいと思うわけです。最近、郵政省の御協力によって私も勉強させていただいているのですが、イギリスの公共放送BBCの将来はどうあるべきかということに関連してピーコック委員会のリポートが出されている。この報告は、NHKの将来を考える場合にも非常に示唆に富むものと思っております。  いずれにしましても、これら外国の勉強の度合いなども横で見ながら取り組んでいっていただきたいのは、将来、受信料から有料放送への進展といいますか、そういうことについてどのような考えで対処すべきか。特に、現在非常にコストがかかっている受信料徴収について、低コストでNHKの必要とするものを国民からいただくという基本精神に立って、その技術開発も含めて検討を続けていただきたいということでございます。そのような意見を申し上げ、NHKに検討を期待して、私の質問を終わらせていただきます。  なお、一つつけ加えさせていただきますと、教育テレビは今たしかステレオ放送になっていませんね。音楽番組で非常にすばらしい名演奏などがステレオになってないのは残念だと思うのですが、その辺はひとつ検討課題として、一音楽ファンとしての要望をつけ加えさせていただいて、私の質問を終わります。
  62. 塚原俊平

    塚原委員長 虎島和夫君。
  63. 虎島和夫

    ○虎島委員 与えられた時間が往復十分間でありますので、御答弁にはひとつ御留意のほどをお願い申し上げておきます。  まず第一には、海外放送の問題であります。  今回の予算を見ますと若干ふえておるようでありますが、全地球的に見た場合、日本の海外放送、短波放送が地球をカバーしている範囲、これがいわゆる難視聴区域を除いて何十%ぐらいに該当するのか、まずお伺いしたいと思うのです。
  64. 尾西清重

    ○尾西参考人 お答え申し上げます。  現在、必ずしも受信状態はよくないというところが南米西部、それからインド亜大陸、西アジアでございます。それから南アフリカ、この地域が今の受信状態で申し上げれば最もよくない地域でございます。何十%という言い方はちょっとあれでございますけれども
  65. 虎島和夫

    ○虎島委員 そこで、今承りますと、今日もですけれども、近い将来、日本と大変深いかかわりを持たなければならぬ地域がいっぱい含まれているわけですね。しかも、そういう地域日本からの情報が極端に不足しておる地域と大体類推されるように思います。したがって、今、難視聴区域を含むあるいは全然電波の届かない区域に対する対策は国策上も喫緊の要務であると私は思います。  したがって、このことについては、郵政大臣の命令放送というのがあるわけであります。命令放送をした場合には経費もちゃんと持ってあげなさいというようなことになっておるわけでありますが、今るる承っておりますと、前質疑者に対する答弁でも、NHKは財政が大変窮迫しておる、いろいろ合理化をやるけれどもだんだん限界が見えつつあるということのにじみ出るような御発言になっておるわけであります。予算書を見てみますと、海外放送に要する経費約三十億、これに対する国費の投入は大体半分、十四億何がしであります。この点についてはもう少し国の予算として充実を図る必要があるのじゃないかということが一つ。  もう一つは、現在電波の届いておらない地域に対する基本的な施設の拡充計画をどう立てておられるのか、事業計画と絡んでお伺いしたいと存じます。
  66. 川原正人

    川原参考人 御指摘のとおり、短波の放送、聞こえないことには何の役にも立ちませんので、ぜひ全世界に聞こえるようにしたいと思っております。  それで、先ほど尾西が申しましたように、インド亜大陸、インド、ビルマ、あるいは中近東ですね、それから中南米が非常に聞こえにくいわけなんで、私どもとしては、これは日本の基地からの電波は非常に難しいですから、その地域の近くに放送の基地を借りましてそこから放送を出したい。既に北米にはカナダの基地を借りまして放送しておりますし、ヨーロッパに対しましてはアフリカのガボンで借りておりますけれども、似たようなことを、具体的には今郵政省、外務省の協力を得まして、例えばスリランカとの折衝とか、あるいはフランス領ギアナというのがございます、これは南米の北の方でございますが、そういうところの基地が借りられないものかという折衝を具体的に始めております。必ず何らかの成果が上げられるものと思っております。  ただ、経費につきましては、これもまた相当の経費がかかってまいりますし、国際放送は人件費等を含めれば全部で七十億円ぐらいはかかっておりますので、ぜひまた国の援助をお願いしたいと思っております。
  67. 虎島和夫

    ○虎島委員 そうしますと、会長が今おっしゃったような措置を終わるとして、運営費は別にして総額どれくらいの投資を必要とするわけでありますか、承っておきたいと思います。
  68. 川原正人

    川原参考人 外国にそもそも放送基地がない場合に放送局をつくってあげなければなりません。これはやはり一カ所で五十億円ぐらいはかかるだろうと思います。それから、それを今度は借りまして、そこで放送する、これはいろんな国々の物価によって違いますけれども、やはり年間に数億円の経費は運用費としてかかってくるだろうと思います。
  69. 虎島和夫

    ○虎島委員 大変な経費も要るわけでありますから、投資も要るわけでありますので、NHK自体でなくて後で大臣の御所見も承りますけれども、郵政省としても、ひとつ最大の関心の一つに入れて御対応いただきたいと思うわけであります。  ところで、ただいま短波放送について承ったわけでありますが、映像放送については六十三年、どのような御計画であり、先進国ではどのような放送状況にあるのか、簡明にお答えいただきたいと思います。
  70. 川原正人

    川原参考人 これからの国際放送は、やはりもう映像を中心として、日本の国情なりなんなりを訴えなければ私はだめだと思うのですけれどもNHKの力ではやはりこれも限界がございまして、今衛星放送の中で「トゥデースジャパン」というタイトルで、きょうの日本ニュースというのを、毎晩三、四十分に要約しまして、これを、日本語もつけますけれども、英語のアナウンスをつけたものを放送しております。これを今さしあたっては、海外の放送局に、使わないか、買わないか、あるいは逆に交換をしないかということを積極的に進めております。もちろん、そのほかにも、いろいろ私ども番組を海外に販売する、提供することによって日本の実情を十分に紹介できると思っておりますけれども、これはやはり限界がございますので、私としましては、国の協力はもちろんいただきたいし、財界等の協力もいただいて、何か特別な第三セクターか第三者法人みたいなのをつくって、そこにいろんなお金を集めて、そして外国のテレビ局に、これはスポンサーをつけて日本番組を提供しなければとても十分なことはできない。そういうことをぜひ進めてまいりたい。これは郵政省におきましても、そのような構想のために、たしか調査費も用意されておられるやに聞いております。
  71. 虎島和夫

    ○虎島委員 外国の進んだ状況も聞きたかったんですが、短波放送に限って申し上げても、私の調査によりますと、アメリカは日本の十倍くらいの時間を放送しているんですね、二千七百時間くらい。日本は二百八十時間か九十時間程度と思います、今度三時間延びて。西ドイツでも日本の倍ですから、ぜひこれはひとつ充実していただきたいし、それから郵政省の予算だけでやるというのには、私は問題があるようは思うのです。  今、日米間の経済摩擦とか、あるいは農産物交渉等を見ておりまして、非常に日本実態を知らな過ぎる。このことは、郵政省だけじゃなくて、外務省その他が持っておる予算をもう少し一元的に、効率的ぽ使う、その中心に郵政大臣が座られるという措置が私は絶対必要じゃないかというふうに思います。  したがって、それらの点も含めまして大臣の御所見を承りたいのですが、もう一つは、私の長崎県というのは非常に国境線でありますので、電波の混信が、特に外国電波との混信が著しいわけです。したがって、放送法に言う、あまねく日本全国で適正な状況で、ラジオなりテレビ、中波なりテレビ受信できるようにしなければならぬという趣旨が達成されておらないわけです。したがって、これを、従来は外国の電波が届かないようにやってきたのですけれども、むしろ積極的に受け入れるという措置もあっていいんじゃないか。つまり、周波数の調整、これを韓国とやる必要があるんじゃないかというふうに思うのです。そして、お互いが聞けるものは聞くという選択をする権利を聴視者の方で持つということが必要じゃないか。  またもう一つは、日本のことも、先ほど一部触れられましたけれども、韓国に知ってもらう必要があるんじゃないか。そういう意味では、周波数の相互調整の問題あるいは日本との文化交流の問題に果たすNHK役割、これをどう韓国内で活用してもらうかということ等を含めますと、先ほど大臣の御答弁にありましたが、韓国から訪韓の御要請があるならば、ぜひこれを受け入れられまして、そして国際混信の解消あるいは文化の交流等々について御論議なり御歓談いただければと思うわけであります。昨年の五月に、たまたま田名部理事も一緒に、盧泰愚さんと一時間余り歓談する機会がありましたが、大変にフランクな人でありまして、恐らく郵政大臣とお会いになれば意気投合されることは間違いないと私は確信をいたしておるわけであります。  御所見を承って、質問を終わりたいと思います。
  72. 中山正暉

    中山国務大臣 私もこの間NHKを見させていただきましたら、十八地域、二十一カ国語で放送をしているということでございますが、まだ少ないような気がします。世界には百七十ぐらいの国があるわけでございますが、私は短波を自分でも聞くのが好きでございまして、朝七時のBBCの日本ニュースなんというのは、いろいろな意味で大変政治的な価値もあると思いますし、その中で一遍、チェコ暴動のときに言っておりました話で、百五十カ国の言語専門家でアングラ放送まで聞いているということをその放送の中で聞いたことがございました。すごいな、さすがかつて太陽の沈まない国と言った英国のそういう情報収集能力といいますか、そういうものに私敬服したわけでございます。おっしゃるように、まだ日本はカバーできないところがありますし、私も自分で海外旅行に行くときには短波を持っていってホテルの窓のところに置くのですけれども日本放送、残念ながら聞いたことがない、つかまえたことがありません。最近、ある電機会社が、どこででも簡単にキャッチできるというコンパクトなものをつくり出したようでございますので、今度はあれを買って持っていこうと思っておるのですが、おっしゃるようは、それよりも一番いいのはやっぱり映像だと思います。  言葉がわからないと、日本放送をやりましても、海外にいる日本人は聞きますけれども、言葉がわからない場合はこれはどうしようもありません。そこで、映像は言葉がわからなくても見ると大体わかるということで、映像は発展していくべきだという感覚を持っております。  それから、今先生指摘になりました、いろいろな電波が入ります。九州なんか特にひどいんじゃないかと思いますが、それに対する今、呉明さんからの御招待に、私もできるだけ早い機会に行ってお話をしたいと思っておりますが、今の先生の御提案をひとつ向こうでも話し合ってみたい。特に、乱数表を読むような不思議な電波もあります。中波を使って日本海の真ん中あたりで、漁船でやっているんじゃないかという説もありますが、そういう怪電波に対しても、我々はちゃんとした国策として――海外放送をするにしても、やはり国策というものがあって、それを継続する意思があってこそ国家だと私は思いますから。命令放送と、名前はなかなかいきな名前がついておるのですが、中身についてはこれは命令ができませんので、それはNHKの特殊法人としての公共性を尊重した感覚でやっていただくことに私は期待をしたいと思います。本当に貴重な御提言、ありがとうございました。
  73. 虎島和夫

    ○虎島委員 終わります。
  74. 塚原俊平

    塚原委員長 阿部未喜男君。
  75. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 NHK皆さんには、きょうは年度末の御多忙な中を出席をいただきまして、大変御苦労に存じます。  まず大臣にお伺いしたいのですが、大臣、それぞれの委員会は、その審査の過程等を通じて、委員会の意思として附帯決議などをつくることがしばしばございます。附帯決議が付された場合には、委員長から本会議にその旨が報告をされて、附帯決議は国会の意思になるわけでございますが、この附帯決議は、私は非常に重いものだというふうに受けとめておるのですが、大臣のお考えはどうでしょうか。
  76. 中山正暉

    中山国務大臣 国会の委員会で法案に対する意思を表明していただいた後に、これはもういつも、見ておりますと、賛成、反対の立場を超えて附帯決議というものは付されるようでございますが、これは国会の中だけではなしに、世界的な大きな意思表示、国会の意思表示として貴重な、価値のあるものだと私は思っております。
  77. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 御出席をいただきました大蔵政務次官の御感想はどうですか。
  78. 平沼赳夫

    ○平沼政府委員 郵政大臣と同じ見解でございます。
  79. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 NHK会長のお考えはどうでしょうか。
  80. 川原正人

    川原参考人 私ども、国会の附帯決議というのは本当に重要な意味を持っているもの、これは、できるだけそれを尊重し、守っていかなければいけないというふうに考えております。
  81. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、大臣にお伺いしたいのですが、附帯決議には法の運用や業務の運営などについて留意すべき事項などを盛られたものもありますし、具体的に措置を求むるような事項もございます。例えば本委員会における国際放送に対する政府負担金の増額という問題は、ここ十数年、毎年NHK予算は対する附帯決議として付されております。毎年同じ附帯決議がつけられるということは、附帯決議に対する認識が浅いのではないか、政府はどうお考えだろうかというふうに考えるのですが、この点についてお考えがあれば承りたいと思います。
  82. 中山正暉

    中山国務大臣 これは三権分立の建前から国会の立法機関としての意思を示されることで、それを政府が実行するかどうかというのは、これは今の経済大国・財政小国でございますから、その辺の問題もかかわりになってくるのじゃないだろうか。三月末になりますと、国債、公債発行残高が百五十九兆円という、ピラミッドを逆さまに担いで走っているみたいな国家でございますから、ひとつその辺の政府の財政に対する御配慮も先生にお願いをしておきたいと思います。
  83. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 国の財政の問題については予算委員会等を通じて、六十二年度の決算では税の自然増収だって一兆円を超すのではないかと、かなりゆったりしてきたと思うのです。この論議は別にしましょう。  私が申し上げたいのは、少なくとも法律で定められた事項について国が忠実にそれを守るように委員会が要望した場合でもなおかつやらないのか、おやりになるのか、この辺です。
  84. 中山正暉

    中山国務大臣 先ほど御質問いただいた虎島先生のすばらしい御提言のように、私はODAというような海外経済援助も非常に必要だと思いますが、ODA、海外経済援助をすると同時に、日本というのはどういう感覚でやっているかということを外務省とか通産省とか農林水産省とかが相寄りて、国際放送の中身というものをNHKに提言できるような、そんなまとまりをつける、その中心に郵政省が座ってくれという御提言があったわけでございますが、国会でおつけくださいました附帯決議、先生のように特にそういうことに大変意欲を持っていらっしゃる先生が御参画いただいてできました附帯決議に対しましては、今後のことでございますが、私は郵政省におります者として省内でもそういう御意見を、郵政省は一般会計は非常に少ないのですけれども、また、ひとつ御支援をいただいて、そのために努力をいたしたいと思います。
  85. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 今の大臣の御発想も私は非常にユニークな発想として受けとめますけれども、実は先ほど来気になるのですが、NHK会長が国の御協力をいただきたいということをしばしば繰り返して申しておられましたが、私はNHKの財政に国が協力してはいけないと思っているんですよ。これはNHKの独立という立場から、公共放送という立場から、国からお金をもらおうなどという根性はそもそも間違いだ、これははっきり申し上げておきますよ。  そこで、私はまずNHK予算書について問題があると思うのですが、NHK予算書の中に国際放送に対する「交付金収入」という項目があります。しかし、法的には放送法三十三条、三十五条の規定によってこれは国の負担金になっているわけです。ならば、これは負担金ではないのですか。政府負担金とすべきであって、交付金というふうに考えるところにそもそもニュアンスの違いが出てくる。私は交付するというのと負担をさせるというのは違うような気がするのですが、NHKの会計の項目には「交付金収入」、こうなっておりますが、なぜ政府負担金収入とならないのか。これはどうお考えですか。
  86. 林乙也

    ○林参考人 御指摘のように、命令放送に対します政府からの資金の受け入れにつきましては先生のような御指摘もあろうかというように思います。  この名称につきましては、放送法の施行規則等におきまして定められた名称のもとに国から交付をいただいておるということでございまして、いわばそこらあたりはネーミングと申しますか、名称法の問題ではなかろうかというふうに考えております。
  87. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 ただやはり、交付金と呼ぶ呼び方をするところにそもそも発想が誤っておる。これは法文上明確に命令分については国の負担とするということになっておるわけですから、政府負担金と――しかし、取り扱い規定でそうなっておればこれをつくった方に問題があるのですから、確かにネーミングの問題です。しかし、ネーミンングの問題だけれども、その辺に問題の根本があるような気がしてなりません。  そこで、かねてからこの議論をしてきておるのですが、非常に難しいのは、国際放送には御承知のように、NHKが本来業務としてやらなければならない国際放送があり、そして大臣が命令をする国際放送があるのです。この区分ができないのですよ。会長、これはどうしてもできませんか。
  88. 川原正人

    川原参考人 ある時間の中、非常に形式的に分ければできないことはありませんが、放送番組としては非常に不体裁というか、聞く側のあれから言うと非常におかしな番組になりますし、番組の効果を著しく削減してしまうと思いますので、やはり今のように番組としては一体化して、一番必要な情報、こちらが主張すべきことを一本で放送するのが一番いいと私は思っております。
  89. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 そこで、大蔵省当局にもお見えいただいておるつもりですが、大体、国際放送の国の負担金は国会の附帯決議に従って増額をしてきたのですか、こないのですか。
  90. 平沼赳夫

    ○平沼政府委員 厳しい財政状況の中でございますけれども、事の重要性にかんがみまして極力国際放送に対する負担金というものは努力をしてきたつもりでございます。  細かい数字は……(阿部(未)委員「細かい数字はいい」と呼ぶ)よろしゅうございますか。六十三年度におきましては、わずかということでおっしゃられるかもしれませんが一千四百万増額をいたしまして、そして総額十四億五千四百万、これを六十三年度予算では計上いたしておりますし、さらにまた海外への提供に関する調査研究費として五百万円を計上しているわけであります。  引き続きこの問題は、行革審の一つの答申もございますし、また前川レポートでもこの辺は特に重要だという指摘もございまして、我々としても精いっぱいこの辺の拡充には努めてまいりたい、こういうことで、少しずつでございますけれども、毎年予算のアップはさしていただいておる、こういうことでございます。
  91. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 私が国際放送の中で本来業務と国が命令した分が、その費用の分担がなぜ截然と区分できないかということをお伺いしたのはそこにあったのです。恐らく大蔵省は、金額で幾らかふえれば増額した、こうおっしゃるのです。しかし、国際放送に要する全体の枠の中で国が負担をする割合がふえない限り、それは増額とは言えないと私は思うのですよ。例えば、おたくが地方交付税を出す場合でも、国税の三二%、それがふえなくて増額と言えるかどうかです。国税収入全体が広がれば三二%の額も大きくなるはずなのですよ。しかしそれは増額とは言わない。同じようにこの場合も、国際放送全体が大きく膨らんでくれば、当然今までの経緯からしても国の負担分はそのパーセンテージに従って金額がふえてくるのであって、それは増額ではない。増額と言う以上は、国際放送に要した総額の中の何%かをふやしていって初めて増額である。ちなみに、私は数字を持っておるから申し上げますが、大体二四から二六・九まで今まで負担しておった経過があります。ことしの国の負担分は二二・一%、これは私から言わせれば減額だと言わざるを得ないのですよ。こういう事態になっておる。  そこで、これは毎年毎年附帯決議をつけるのは大変だからもうこの辺でひとつ切りをつけたらどうか、切りのつけ方は、その負担分の割合をつけてしまう。例えば国が四とNHKが六。六十二億ぐらいはかかっておると思うのですね。そういうような割合をつけておけば毎年議論する必要はない。全体の予算が小さくなれば国の負担も減ってくる。全体の国際放送予算が膨らめば国の負担もその割合によってふえてくる。その決め方はお話し合いでやってもらいたいと思うのですが、郵政大臣は非常に博学であり、しかも頭脳明晰で発想はユニークですから、この割合、六対四がいいのか、五対五がいいのか、五・五対四・五がいいのか、これを大臣在任中に、政務次官もお見えですから、何とかひとつ決めてもらいたいと思うのですが、どうですか。NHKのお考えもあわせて聞かせてください。     〔委員長退席、額賀委員長代理着席〕
  92. 中山正暉

    中山国務大臣 おだてられますとついぽるっと言いそうでございますが、これは財布の中と相談でございますから、ひとつ寄り寄りそういう機会に、先ほど私にユニークとおっしゃいましたが、先生の御発想も大変ユニークでございますので、その辺ひとつユニーク同士でまた話を継続していきたいと思います。
  93. 平沼赳夫

    ○平沼政府委員 一つの御提言だと思いますので、郵政当局ともよくこの問題を検討させていただきたいと思っております。
  94. 川原正人

    川原参考人 確かに毎年度この折衝で私の方も政府の関係の方も大変なエネルギーをお使いになっていると思うので、できれば何か一つのルールがあれば大変ありがたいと思っております。
  95. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 NHKもそういうことを期待されておるけれども、私は、それが一番納得し得る線ではないかという気がするのです。もちろん国の財政等何も考えずに言っておるのじゃないのです。しかし、金額にしてみて、大体総額負担しても今の相場で六十二億程度で、仮に半分負担しても三十一億程度なんですから、話し合ってできない相談ではないと私は思うのです。先ほど前川レポートやら行革審、いろいろお話がございましたが、実はこれは、今は亡くなられましたが大平先生が大蔵大臣のときに、必要な金は国が負担します、私は、前川レポートよりも行革審の答申よりも大蔵大臣の約束の方が重いと見ておるのですよ。これは忘れぬようにしておいてください。そういう約束の上に立って今私が申し上げた提案について、幸い郵政大臣も検討してみようというお言葉ですから、私はきょうの質問はこれで切りますが、またこの次できたらやりますから、そのことを申し上げて、この点については終わります。  その次に、衛星放送についてでございますが、大臣、かねてから私は、本来放送衛星というものは宇宙開発事業団というものがあって国の施策として宇宙開発をやっていく、それができた場合に、NHKはユーザーとしてそれを利用して、そのかわり料金を払う。そうするとNASDA、宇宙開発事業団の方はその料金をユーザーからもらって、幾らかは国に返すこともできるでしょう、事業団の資金にすることもできるだろう、そういう性格のものだと思っておったのですが、実はNHKが出資をしてしまった。したがって、私はきょうは放送衛星については余り言いません。今NHKが行っておる衛星放送について少し伺いたいと思うのです。  私はかつて、経営皆さんが、衛星放送を開始すれば多くのニューメディアの開発が期待されて、難視解消だけではなくてNHKの財政にも大きく寄与するだろうということを繰り返しお話しになっておったころ、それは少しはしゃぎ過ぎではありませんかということを申し上げた記憶があるのでございます。今こういう事態になって、会長はこの衛星放送についてどういう御感想をお持ちでしょうか。     〔額賀委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 川原正人

    川原参考人 衛星放送事業として独立させていくのは生易しい仕事だとは思っておりません。決してはしゃぐような気持ちでは運営しておりませんが、ただ、これだけ受信者皆さんからお預かりした受信料を投入して、しかも衛星自体は大変高い能力を持っております。この高い能力を持った衛星を十分に活用してその効用を受信者にまたお返しする、これは当然私どもがやらなければいけないことだと思っております。その意味でともかく早く、これは確かに当委員会の決議もございますし、本日の郵政大臣意見書にもありますが、衛星放送を早く普及しろということもしばしば言われておりますし、この普及を早くすることがまず当面の第一の目的であらう、そして普及を促進しながらこの衛星放送一つ事業として十分に独立したものとして視聴者の方に享受していただけるように最大の努力をしていきたい。しかし、これはそう簡単な仕事だとは思っておりません。非常に努力の要ることだと思っております。
  97. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 これは今会長がおっしゃるとおり、あのBS2がいろいろな故障を起こして本放送ができなくなって、それ以来NHK経営皆さんも非常に反省をされ、心配をされておると私は思うのです。しかし、当初はかなりはしゃいでおられたのです。だから私がはしゃぎ過ぎではないですかと申し上げたのですが、これはもう繰り返しても仕方のないことですけれども、しかし、私の試算によりますと、放送衛星のBS2a、b、それから今投資をやっておりますけれどもBS3、この打ち上げ準備、地上施設、これを合わせますと、今年度分まで入れますとNHKの投資は五百十五億円ぐらいになる、しかもこれは人件費などは含んでいないはずですが、大体こういう額になりますか。
  98. 川原正人

    川原参考人 正確な数字はまた担当の理事からお答えいたしますけれども、大体そんな額になっていると思います。
  99. 井上豊

    ○井上参考人 BS2号はa、bということで二機で、私どもが投資をしました総額はおよそ三百五十億でございます。それから、BS3は六十六年最終完成ということで現在投資の過程にございますけれども、六十三年度予算では衛星本体に約三十八億程度を予定しております。地上施設等を入れますと、これまでに全体で、地上施設は五十五年以来でございますけれども、六十四億程度投資をしておりますので、全体としては先生指摘の数字になろうかと思っております。
  100. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 BS3は、ことしだけではなくて、ことしまでの分を含めると百十五億ぐらいになるはずですね。
  101. 井上豊

    ○井上参考人 六十年度から六十三年度までで百十五億五千万程度になります。
  102. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 大体この数字に間違いがなければ、今日まで衛星放送を行うためにNHKが行った投資、その他の設備を合わせると実に五百十五億、これは大体NHK長期借入金総額を上回ります。もしこのことなかりせばNHKが長期借り入れをしなくても済んだ、あるいはNHK債券の方、放送債券の方が五百四十五億ですから、これに近い額になってくる。大変な投資になっておりながら、実はそれに見合うものはない。難視解消だけがわずかにいけたかもわかりませんが、これとて金になっていないわけです。  そうすると、この膨大な金をつぎ込んで何も収入がないという事態は一日も早く解消しなければなりませんし、努力をいただいておるようでございますけれども、残念ながらNHKは最近中期的な計画がない。これは大臣の方からも中長期の計画を要請されておるようですし、附帯決議でも中長期の計画は要請しております。しかし、中長期の計画がないから一体いつごろからこれが、例えば料金をいただくならどういう形でどのくらいの額をいただくのか、そういうことが視聴者にとっては全然わからない。今受信料を払っておる皆さんは、ある人は見もしない衛星放送のために莫大な受信料負担をさせられておるという結果になっておるわけです。一日も早く中長期的な、特に衛星放送についてはこういうふうになりますという方向を示してもらわなければいけないもうぎりぎりの段階に至っておる。それにしてもまだ食の問題などは完全に解決したわけではありませんから、料金を取ると言えばまたいろいろ問題が出てくるだろうと思います。思いますけれども、それらのことを含めながら中長期の計画を出さなければならぬ時期に来ているのですが、お考えがあれば聞かせてもらいたい。
  103. 林乙也

    ○林参考人 先生指摘のように、現在までNHKといたしましては衛星放送に多額の投資をいたしてまいったわけでございます。放送衛星は将来のメディアといたしても非常に大きな可能性を秘めておる主要なメディアになるというように考えられるわけでございますし、現在まで開発に注いでまいりました経費の成果というものを速やかにサービスの形で受信者の方々に還元すべきものというふうに考えておりまして、基本的には私どもといたしましては、衛星放送経費につきましては衛星放送受信者に御負担いただきたいというか、御負担いただくのが適当であろうというふうに考えておるところでございます。  現在の時点におきましては、衛星放送はなお番組等の面におきましても研究調査、開発の段階でございまして、現在の時点におきましては試験放送として一般受信者の方々に御負担をいただいておるところでございまして、六十三年度事業計画予算におきましてもそれを前提として計画いたしておるところでございますが、六十四年度予算編成時までには、ただいまお話のございましたような衛星放送の今後の計画も含めまして、また財源負担のあり方も含めまして、NHKといたしまして結論を持ちまして事業計画、また予算に織り込み、国会でも御審議いただきたいというふうに考えておるところでございます。
  104. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 今の御答弁で大体了解ができますが、来年度予算編成までには、今私が御質問申し上げました諸問題等の見通しを含めて来年度予算は編成される、そういうふうに理解してよろしゅうございますね。  それでは、最後ちょっと時間がオーバーするかもわかりませんが二、三分。  NHKの財務諸表が私は非常にわかりにくいのですが、先ほども同僚の虎島議員が国際放送については約三十億、こうおっしゃったのですね。確かに予算書では三十億となっておりますし、あるいは契約収納についても三百六十億、こうなっているのです。それともう一つ初めの方に非常に見やすい円グラフがございます。この円グラフでは受信契約受信料収納は六百三十二億と倍に近い金額、それから国際放送についてもこれは三十億ではなくて六十六億九千万、こうなっています。円グラフを見る限り国際放送には六十六億かかるんだな、受信契約受信料収納には六百三十二億かかるんだな、こう思うのです。ところが予算書を見ると全然違うのです。なぜこういう違った数字が出てくるのか。僕は前から非常に不思議で見にくいのです。国民が見たってこれはわかりませんよ。なぜこういうことをやらなければならないのか。
  105. 井上豊

    ○井上参考人 先生指摘のように、確かにその円形グラフの数字と各予算科目に記載の数字は異なっております。これは先生重々御承知のことだと思いますけれどもNHK予算科目は基本的に業務目的別に体系づけられているわけでございまして、人件費とそれから減価償却費は管理上全体を一本として予算計上しているわけでございます。したがいまして、予算編成時点におきましては、いわゆる物件費につきましては予算科目に従って計数整理をいたし、予算計上するわけでございますが、各業務の全体のコストといたしましては、この円形グラフに示しましたように事業支出業務予算ということで、物件費に人件費と減価償却費を加えまして全体の総コストを表示しているわけでございます。私どもとしては全体の総コストを容易に把握をしていただくために参考としてこの円形グラフを用いている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  106. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 最後になりますが、それでは会長、できますならせっかく参考に円グラフをつくっていただいているわけですから、明らかに予算書の数字と円グラフが違うわけですから、なぜ違うか、例えばこれをもう少し仕分けをして、この契約収納六百三十二億の中には実は人件費が何ぼある、それから減価償却費が何ぼある、よって六百三十二億になるんだ、したがって予算書の数字とは違うのです、そこまで書いてもらわなければ、ふっと見て、同じ項目でこんなに数字が倍も違うということは常識的にはなかなか理解しにくいのです。私は、内容を知っています。知っていますからもうそれ以上は言いませんが、せっかく円グラフを親切につくるならそこまで今後はやってみてもらえますか、どうですか。
  107. 井上豊

    ○井上参考人 先生指摘もございますので、来年度以降といいましょうか、今後のこういう資料につきまして十分検討させていただきたい、こういうふうに思っております。
  108. 阿部未喜男

    阿部(未)委員 今まで御質問申し上げましたように、NHK経営も私はもう率直に言って非常に苦しい、厳しい状況の中で財政運営をやっておると思うのです。何とか立て直さなければなりませんし、しかも衛星放送というものが率直に言って大きな荷物になっています、財政的には。その解決も図らなければならぬ大変な時期だと思いますので、私どももそれぞれ視聴者を代表する者としてできるだけの御協力もいたしますが、ひとつ当局それからNHKの方も万全を期して努力をいたしていただくようにお願いをしまして、質問を終わります。
  109. 塚原俊平

    塚原委員長 鳥居一雄君。
  110. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 御苦労さまです。  予算案の審議になるわけでありますが、公共放送というのは一体何なのだろうか、こういう位置づけを確認し、そしてさらに今後NHKの果たすべき使命役割、これを遂行していただく、そういう一つの節目だろうと思うわけです。公共放送公共放送たるゆえん、これは政治的中立性、これが厳格に担保されなければならないだろうと思います。国営放送ではない、国家権力から中立である、そういうことの一つの保障としてただいま議論のとおり受信料制度というのが確立されて今日に至っておる。そして、これまで見てまいりますと、料金の設定の仕方、これをこの仕組みの上からいいまして親方日の丸になっては相ならぬ、こういう非常に重要な要素も実はあるだろうと思います。  こんなことを考えるのですが、実は過去を振り返ってみますと、料金の改定というのは一つのリズムみたいなものがございました。ことしはオリンピック開催の年でありますが、同時にまたアメリカの大統領選挙が行われる、NHKの料金の改定の時期である、こんなことが言われるわけです。つまり改定と同時に三年間の経営計画が明示され、初年度黒字を生み出す、そして二年度目はとんとんといいますか、やや黒字、三年目は赤字、そして三年間の収支をとると、上げ幅によりますけれどもやや黒字かやや赤字か、そして四年目、しばらく辛抱、四年が終わりますと次に改定期がやってまいる、こんなような過去の一つのリズムがあったように思うわけです。ですから、今期思うことは、過去の料金改定に当たりまして、上げ幅をどういうふうに抑えていくのかという非常に大きな課題があるだろうと思います。今後の経営に当たりましての見通し、お考え、これを聞かせていただきたいと思います。
  111. 川原正人

    川原参考人 過去三回ほど、確かに御指摘のように四年ごとに料金を改定させていただきました。そのことはございますが、私どもとしては、いつも同じようなそういう型で経営をしていいとは毛頭考えておりません。このような類型的な料金政策は、私どもみずから早く脱去しなければいけない。もちろん理想的には、料金は上げることなく、受信者負担をふやすことなく経営が進められれば、それにこしたことはないわけでございます。  これは、御承知のとおり、今NHK受信料の中心をなしておりますのは、テレビ受信機をお持ちの方から、主としてカラーテレビの料金を中心に収入を得ているわけでございますけれども、このテレビの普及というのがもう限界に達しております。したがいまして、どうしてもその伸び率というのが一%そこそこしかない。しかし私ども、一方ではいろいろな新しい事業も展開しなければなりませんし、同じ仕事をしていても、例えば放送権料等、目に見えてウナギ登りの分野もございますし、職員の処遇にしましても、これはやはり社会的に相当な処遇をしていかなければならぬということを考えますと、一%ちょっとの収入だけでいつまでも経営するというのは非常に困難でございます。どうしてもある程度時期を得て料金の改定をお願いせざるを得ないというのが、今でも私はそうだと思いますけれども、ただ、いつまでもこのようなパターンではいけないので、新しい収入をもっと探していかなければいけない。  大変困難な化事ではありますけれども衛星放送というものをもし順調に普及させることができて、そしてこれについてまた相当な御負担をその受益者からちょうだいすることができれば、これはかつてのカラーテレビのようにいくかどうかわかりませんけれども受信者のふえるに従って収入がふえるという一つの形ができ得るはずだと思います。ただし、これはそう簡単な仕事ではありませんけれども、しかし、このことをまず、私ども、今後の経営の中での最大の眼目として、大変苦しい仕事ではございますけれども、ぜひそれを進めてまいりたい。これは、郵政大臣からも国会からも早く普及を進めろと言われていることも私どもそのとおりと考えまして、この普及を進める中で、そういうNHKの将来の経営の展望を開いていきたいというふうに考えております。  しかし、それだけでなくて、金額としてはまだまだ少額ではございますけれども、例えばNHKの持っておりますいろいろな番組の素材とかノーハウとかあるいは技術のいろいろな発明、工夫の特許とか、こういうものをもっとフルに活用しまして副次的な収入をさらに上げ得るはずだ。この面でももっと努力をいたしまして、もちろん、一方経営効率化ということは当然ございますけれども、それとあわせまして将来の経営の展望を開いていきたい。  少なくとも、私としましては、来年度、恐らく料金問題を何らかの新しいものを御提案すべき段階に今来ていると思っておりますけれども、その中では、また三年計画で四年のパターンというようなことを踏襲する考えはございません。もっと長期的な展望を持って、当分の間、一つの料金体系を定めましたらそれで経営ができるような、そういうふうな一つ計画を立ててみたいと今考えているところでございます。
  112. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これからを展望した場合に、一つ衛星放送の位置づけ、また今後の展開ということが非常に大きな要素になってくるだろうと思います。  先ほどの答弁の中に、五十三万世帯という現在の普及率でありますけれども、独自放送が始まりましてちょうど一年たつわけでありますが、ことしの夏の時点あるいは年末の時点、これで普及率をどのぐらいと見ていらっしゃいますか。百万台を突破できるころ合い、これが一つのめどになってくるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  113. 林乙也

    ○林参考人 六十三年、ことしの二月末現在で衛星放送受信世帯全国で五十二万強というところでございますが、今後の普及見通しといたしましては、独自編成開始一年後のことしの七月ごろには、できれば百万世帯の普及ということを私どもとしては期待しておりますし、また年末時点では、確かなことは現在の時点で申し上げられませんけれども、百万から百五十万世帯の間ぐらいまでの普及というものを期待いたし、それに向けて努力を注ぎたいというように考えておるところでございます。
  114. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 これからの衛星放送への取り組みでありますけれども番組編成上の方針、放送実施体制、衛星放送への投入経費、この見通しについて御説明を伺いたいと思います。
  115. 林乙也

    ○林参考人 まず衛星放送の編成方針でございますが、御案内のように、放送衛星は衛星一局をもって一挙に全国をカバーできるという特質を持ちますと同時に、高画質、高音質の放送が可能な、地上放送に見られない特質を持っておるわけでございます。昨年の七月、免許方針の改定を受けまして、NHKといたしましては二十四時間の放送を編成して実施してまいっておりますし、またその際には、世界各国のニュースをいわば時差を超えてリアルで放送するというようなことなどもいたしておるわけでございまして、今後とも、現在まで行ってまいりました二十四時間放送を生かした編成を進めることによりまして、衛星放送受信者の一層の普及促進を図ってまいりたいというふうに考えております。  また、その番組の編成の実施に当たりましては、地上の編成との有機的な連携や、国内、海外からの番組調達などによりまして、経費徹底的な節減を図ると同時に、関連団体との協業などによります、極力効率的な要員体制をもって充てるということを考えております。  しかしながら、衛星放送への投入経費につきましては、六十三年度におきましては百五十五億ということを予定いたしておるわけでございますが、今後の普及の伸展に対応いたしまして、独自の受益感のある魅力的な番組サービスというものを考えていく必要があるというように考えておりまして、そのためにはやはり経費の増額も必要になってくるであろうというように考えております。しかし、これは同時に、衛星放送に必要な経費財源といいますか、その負担をどういうように考えていくべきかということとの絡みの中で結論を出していかなければならないところでございまして、いわば、衛星放送に対する受信者のニーズ、受益感、普及の程度、衛星放送に対する必要な経費そこらあたりを総合的に勘案しながら今後の衛星放送計画を策定いたしてまいりたいというように考えておるところでございます。
  116. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 今日までの開発経費が今御指摘のとおりございました。今後衛星放送を確立し、そして視聴者がどんどんふえることになるだろうと思いますが、非常に期待も大きい。そういう中で、NHK会長発言として、付加料金という道がある、こういう御発言があったかに聞いておりますが、このあたり、どういうめどをお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。  さきに放送政策懇談会あるいは民放連で衛星料金につきまして一つの考え方が実は述べられております。民放連の方では、NHK衛星放送受信料によって維持運営されるべきである、広告や有料方式によるべきではない、また、受信料は暫時別建て、これを考えるべきではないか、こんなような考え方を披瀝しておりますが、会長のお考えを伺いたいと思います。
  117. 川原正人

    川原参考人 付加料金という言葉を私は使った記憶が今ちょっと定かではないのですけれども、いずれにしましても衛星につきましては何らかの料金を新たに設定して御負担をいただきたい、しかもできるだけ早くそうしたいというのが私の気持ちでございます。  それで、理論上は全体の受信料の中で衛星も賄っていく、少なくとも今までの開発段階は、これはNHK一つ仕事としまして、新しいメディアを開発し、新しい技術を開発していくということが私ども仕事でもございますので、これは今までの受信料の中で開発させていただいてまいりました。同じような理屈、思想を貫いていくならば、将来とも、本放送になっても、それはNHK全体の仕事一つである、そしてその全体を受信料という形で受信者負担していただきたいというのも理屈としてはあろうかと思いますけれども現実受信者の側からごらんになった場合に、全然衛星の設備をお持ちになっていない方がかなりの金額を、しかもいつまでも御負担いただくというのは、やはりこれは受信者の感情からいってそぐわないのではないか。やはりこれはスタートの段階では衛星をごらんになっている方に負担していただく、将来的にもしすべての受信者、ほとんどの方が衛星をごらんになれるようになれば、これは料金は結局一本にならざるを得ない、すべきものだと思いますけれども、途中の段階ではそうなるのではなかろうかというふうに考えているわけであります。  そういう料金体系をどのように言うのか、私ちょっと言葉の使い方は必ずしも今正確に知らないのですけれども、そういうふうな別の形で料金はちょうだいしたい。しかし、これはあくまで受信料一つである。したがって、コマーシャルとか有料放送、ペイテレビということは私ども今は考えておりません。
  118. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 衛星放送に続いてBS3によるハイビジョン放送、高精細度テレビ、これに非常に大きな期待が寄せられているわけであります。今回のNHK放送記念日に、国内五都市を結んだハイビジョンの実験放送が行われたと聞いておりますが、実験の成果、それからさらに衛星による実験をどういうふうに考えておられるのか、伺いたいと思います。
  119. 中村有光

    中村参考人 ハイビジョンの実験につきましては、実際の衛星の電波を使って、全国の皆様にできる限り見られるチャンスをつくっていくということで、今回放送記念日を中心に三日間の実験を行いましたが、各地でもって大変好評をいただいております。
  120. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 中波のラジオ放送でステレオを実現させようということで、これまでにBTAが室内実験、屋外実験をずっと続けてこられました。もちろんNHKはこれに参加しておられますけれども、開発状況はどうなっているのか、AMステレオという放送、ニューメディアの技術的な特徴をどういうふうにつかんでいらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  121. 中村有光

    中村参考人 NHKでは中波のステレオ化ということにつきまして十年来研究開発を行ってまいりました。最近では、六十一年度から放送技術開発協議会という場において、民放ともども一緒に技術的な検討をしてまいっております。これらの結果は間もなく中間報告の形で出されてまいると伺っておりますけれども、私どもの感触としまして、AMという狭い周波数の幅の中でステレオを送るということ、FMに比べればどうしても薄いと思いますが、若干のステレオの効果ということについては出てくると思います。  ただ、中波という波の性格上、技術的には大変混信の妨害を受けやすいということで、この点については若干マイナスの点ではないかというふうは感じております。
  122. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 NHKにおける実用化について、経営上プラス要素としてとらえることができないのかどうか、このあたりについてはいかがでしょうか。
  123. 中村有光

    中村参考人 NHKにとりまして中波放送というのは、音声の放送メディアの中で特に非常災害のときの最も有効な情報メディアと考えております。そういう意味で、外国の混信の深まる中でできるだけ強い電波を出してどこでもいつでも聞こえるということを心がけているわけでございます。  ステレオということは魅力ある問題ではありますけれども、第一番目にはやはりサービスエリアエリアが小さくなるとか、混信の問題を十分慎重に検討してこの問題を進めていかなければならないのではないかというふうに思っております。
  124. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 今ラジオについては受信料契約受信料収入を見込めない形の現状だと思うのですね。ですから、新たなAMステレオの実施という段階で経営上何らかの形でプラスにできないのだろうか。NHKとしては非常に踏み切りにくい環境の中にあるだろうと思いますけれども民放が一斉にAMステレオを実現するといった場合に、やはりNHKとしてもこれはやらざるを得ないんじゃないかと思うのです。この点、会長、いかがですか。
  125. 川原正人

    川原参考人 やはり現実にはNHK民放の方方と一緒に、ある意味で切磋琢磨、競争の中にありますので、状況の展開の中ではいろいろな対策は考えなければいけないかと思っておりますが、もう少しその辺の客観情勢を見きわめて、また技術的ないろいろな特性も十分に見きわめて対処していきたいと考えております。
  126. 鳥居一雄

    ○鳥居委員 終わります。
  127. 塚原俊平

    塚原委員長 午後一時十五分に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十九分休憩      ────◇─────     午後一時十九分開議
  128. 塚原俊平

    塚原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件について質疑を続行いたします。松前仰君。
  129. 松前仰

    ○松前委員 最初に放送衛星についてお聞きいたしたいと思います。  BS2bにつきましては、いろいろ新聞発表等もあって、故障も起こっておりますけれども、現在これに対してどのような対策を考えておられるでしょうか、郵政省の方からお答えいただきたいと思います。
  130. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 BS2b、先生に大変御心配おかけいたしまして、二つほど最近トラブルがあったわけでございます。  一つはテレメトリーエンコーダーの関係、あるいは推進系の遮断弁のトラブルというようなことで、いずれも予備系あるいは手動に切りかえて順調に動いてはおります。衛星放送も安定的に行われているわけでございますけれども、私どもこういった事故は決して再発させてはならないということで、いろいろまた気を配っておるところでございます。こういう経験にかんがみまして、これからのBS3にそういう教訓を生かすことでございますとか、とにかく信頼性の向上ということについて万全を期したいというふうに考えております。
  131. 松前仰

    ○松前委員 現在これの故障が起こっているわけなんですけれども、これに対してどういうふうにアクションを起こしておられるかということでちょっとお聞きしたのですが、そこをちょっとお願いしたいのです。例えば恐らく故障解析ですか、原因追求というのですか、そういうことをやっているのか、その辺はどうなっておりますでしょうか。
  132. 塩谷稔

    ○塩谷政府委員 今申し上げましたことをもう一度詳しく申し上げますと、テレメトリーデータが受信不能となる現象、これはテレメトリーエンコーダーをA系統からもう一つのB系統に切りかえて対処したということでございます。  それから二次推進系の遮断弁のヒーターのサーモスタットの動作が不安定になったという点、これはサーモスタットによる自動制御から地上からの遠隔操作による制御に切りかえて運用を継続しているところでございます。  そういうわけで、いろいろこの点についての手当てによりまして、現在のNHK実施しております二チャンネル放送への支障はないというふうに判断しております。  なお、宇宙開発事業団におきましてもこの点について、どういう事故原因かということについては調査検討を進めているというふうに承っております。
  133. 松前仰

    ○松前委員 NHKさんの方はその辺についてはどう掌握しておられますでしょうか。
  134. 中村有光

    中村参考人 テレメトリーエンコーダーの故障の解析につきましては宇宙開発委員会の第四部会で調査が行われている状況にございます。通信・放送衛星機構及び宇宙開発事業団からアメリカにも人を派遣されて、調査の結果がその部会に報告されるというふうに聞いております。その結果を待ちまして、我々もできるだけ安定な運営に努めたいというふうに思っております。
  135. 松前仰

    ○松前委員 今はっきりしましたけれども、原因追求ということをやっていらっしゃるということはよくわかりました。  それで、今度の放送衛星の故障につきましては、テレメトリーエンコーダーという非常に重要なところが故障しておるということなので、切りかえたはいいのでありますけれども、もうあと一つしかないという状況になっております。これが残りの一つが故障しないということは絶対に保証できないのでありますので、もし故障したときにはどうするかということについてはどなたかお答えいただけますでしょうか。
  136. 中村有光

    中村参考人 先生も十分御承知のことと思いますけれども、今の技術的なレベルでは、二つの組み合わせによって片方が故障しても片方は故障しないというような形でシステム全体が構成されているというふうに思っております。私どもは短期間に続けて故障するということは絶対ないというふうに考えております。また、それを期待しているものでございます。  ただ、万が一にもそういうような状態があるとすれば、そのときには何らかの代替的な処置を考えてまいりたい、こういうふうに思っております。
  137. 松前仰

    ○松前委員 これ以上やりたくございませんが、技術的にいって絶対故障がないということは絶対あり得ないわけでありますから、故障があるということを前提にいたしましてこれからの対処をしていただきたいと思っております。というのは、全部だめになってしまいますからもう全くそれであきらめだということではなくて、電波が出ているということを頼りに何らか、テレメトリーエンコーダーが壊れても放送電波は出ておりますから、これを生かすというような方向で運用手順を考えていただきたい、これがやはり現場の考え方だろうと私は思っておるわけでございます。しかも実験衛星でありましたらばこれは原因追求でいけると思いますけれども、今現在いろいろ問題になっておりますオリンピック放送等を放送して五十万世帯くらいの加入者を得たというようなことで、もっとこれを広げていくということで受信機がかなり売れているということになれば、その人たちに対する責任ということもございますから、もう一つが壊れたときにどうするかということをぜひともきちっと今考えていただきたい。不可能かどうかということは考えなければわからぬと思いますので、今ここでどうするかというお答えをいただくつもりはございませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。  では次に移らしていただきます。  郵政省にお聞きいたしますけれども、ハイビジョンの方式につきまして世界的動向はどういうふうになっているか説明をしていただきたいと思います。
  138. 成川富彦

    成川政府委員 ハイビジョンの世界統一規格につきましては、国際無線通信諮問委員会、ITUのCCIRの場で審議中でございます。昭和六十年に日本と米国とカナダと共同でスタジオ規格について提案したのでありますが、勧告は至らずに、提案があったということな記録はとどめるというような状態になっております。昨年の十一月に再びCCIRの会議が開かれたわけでありますが、その場にヨーロッパ側が日本と異なる方式を提案いたしまして、世界統一規格については予断を許さない状況にあるというのが現状でございます。  日本が提案しております千百二十五本あるいは六十ヘルツ等々のスタジオ規格につきましてはアメリカで国内規格として採用されつつあるというような状況にあります。日本としても、できるだけ世界統一規格で国際的な番組交流等がしやすくなるようにという観点から、ぜひそのようになってほしい、世界統一規格でいけるようにしてほしいという希望を持っております。  我が国が提案している方式が世界統一規格として採用されるようにしたいということで、ECとの間でも最近作業部会というのを開きまして意見交換等をしたわけでございますが、いろいろとハイビジョンの展示等デモンストレーション等もしながら、日本の立場をあらゆる機会理解していただくような努力をしていかなきゃいかぬというふうに考えておるところでございます。
  139. 松前仰

    ○松前委員 最近の報道によりますと、オランダのフィリップスなんかが別な方式でやろうというようなことを言っておるようでございまして、ヨーロッパの方がどうもなかなかうまくついてこないというような、ついてこないといいますか、これに同調しないというような感じがしております。  そこで私が心配するのは、日本がこの方式一つについてもまた孤立化するんじゃないか。これは全然次元は違うかもしれないけれども、家庭用のVTRの方式が二つあって、技術が非常に優秀なところと思われるところが孤立してしまうというようなことがあったわけですね。そのメーカーは撤退するということを発表したりしておったのでありますけれども、そういうことになりかねないのじゃないか。日本技術は非常に立派だけれども、周辺がみんなで団結して日本をやっつけるというようなことになるんじゃないか、そんな気がしてしようがないのですが、その辺はやはり孤立しないように努力をしてもらいたいと思うのです。これも郵政省さんの努力だと私は思うのですが、その辺のお考えを、これからそういうことをどういうふうに対処するかというのを、今お聞きしましたけれども、さらに決意としてちょっとお願いしたいと思います。
  140. 成川富彦

    成川政府委員 先ほどの御答弁の重複になるかもしれませんが、日米加との間では、民間ベースでは昨年、同一歩調でやろうじゃないかということで、先ほど申し上げましたように、六十年にもCCIRの場は提案しておった次第でございます。  ヨーロッパとの間では、今先生お話しございましたように、ユーレカ計画というようなことで独自の方式を開発したいというようなことをヨーロッパ側、EC側は考えているようでありまして、その間の隔たりがあるわけでございますが、日本の立場を理解していただいて世界統一規格として採用されるように、あらゆる機会を通じて努力をしていきたいというふうに考えております。
  141. 松前仰

    ○松前委員 貿易摩擦等でかなり日本も痛めつけられておりますから、そういうことも勘案しながら、十分この方式が生きるように対処していただきたいと思っております。  次に調査研究についてちょっとお伺いしたいと思いますが、日本自体もそうでありますけれども、一時は非常に効率的な研究ということで、仕事に直結した研究をしろということでもって、かなり日本全体がそういうムードにあったわけであります。現在、この貿易摩擦等が起こるような状況の中で、基礎研究というのが非常に重要視されてきたということなんでございますけれども、その中でNHKは科学基礎研究所というのをやめてしまったわけですけれども、今後のNHKにおきます基礎研究というのはどういう方向で進めていかれるか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  142. 中村有光

    中村参考人 NHK技術研究の特色と申しますのは、基礎から応用まで一貫して行う、直ちに放送の現場に応用できるというところに特色があろうかと思います。ハイビジョンについても二十年前の基礎研究というものの成果が生きた形であるというふうに思っております。かような意味で、十年、十五年、二十年先の放送を支えるということのための基礎研究ということは、大変大事であるというふうに認識しております。
  143. 松前仰

    ○松前委員 NHK研究自体につきましては、私も知っているわけでありますが、かなり独創的な面がずっとあったことは確かだと思います。トランジスタが発明されてから、それをいち早く日本テレビジョン放送機器に応用するということは、NHKのリードでもってこれが進んだということがございますし、放送衛星につきましても、受信機NHK技術である。家庭用VTR、今普及しておるのも、もともとはNHK技術研究所の特許であったというようなこともあるということで、ほとんど日本技術界の先端をリードしておったということは十分承知しておるわけでございます。  しかしながら、最近はアメリカあたりからも言われておりますけれども、独創性というのを、そういう状況があってもさらに独創性を要求されてきている。研究の独創性ということで、日米間の研究交流ということまで摩擦の原因になってきているというような状況でございます。そういうことも、摩擦を解消するためということではございませんけれどもNHKの将来といいますか、これから先の事業、これが本当にうまくやっていけるといいますか、本当に独創性に富んだ、世界に冠たるNHKという形になっていくには、さらに基礎的、独創的研究をしていかなければならない、そのように思っておるわけでございます。  その研究体制、今おっしゃられた中で、企業に直結したといういうようなお話もございましたけれども、私はそれにプラスして、さらに独創的な研究というものをどんどん研究員の中から吸い取って――吸い取ってといいますか、アイデアを生かして研究を広げていくというような体制をさらにつくっていかなければいけないんじゃないか、そういうように思っておりますが、その辺についてのお考えをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  144. 中村有光

    中村参考人 研究を行うに当たってその資金と申しますか、経費と申しますか、これも大変大事であると思いますが、それ以上に非常に大切なのは研究者、人である。特に先生おっしゃられました独創性ということについては若い研究者を育成するということが最も肝心なことだというふうに思い、その方向でもって努めておる状況でございます。独創的な研究を世界に振り回すというよりも、自分自身が独創的な研究を持って、なおかつ世界との共同研究なりそういうものを推し進めていくということがこれから大切なのではないかというふうに考えておる次第です。
  145. 松前仰

    ○松前委員 お金の面等のお話が出たのですけれどもNHK研究所ですと民間や大学の研究所とは大分違うと思うので比較にはならないと思うのでありますけれども研究といえども非常に厳しいところがあるわけでありまして、アメリカあたり研究所、それに日本の大学の研究所、こういうところですと、研究自体にお金がなかなかつかない。どうしてもつかないということで、研究者自身が努力をするというようなことがしょっちゅうあるわけでございます。やはりいい研究をどんどんしていかないとその研究費もついてこないし、自分お金を取ってくる、こういう形が今の、アメリカもそうでありますが、日本の大学もそういう形になってきている。非常に厳しい面が今あるわけでございます。  それらをNHKにずばり適用するというわけではないのでございますけれども、そういうお金のつくといいますか、みんながお金を出してくれるような研究をやれるような状況に持っていく。今おっしゃいましたように、人は大事である、若手をどんどん育てるということをやっていただけるということなんでありますので、ぜひともその方向でしっかり頑張ってくださるようお願いしたいと思います。そういう若手からどんどん新しいことが生み出されるような、そしてそのアイデアがいいものであればどんどん採用するという雰囲気をNHKはつくっていっていただきたい。そしてまた、非常に研究所が活性化される、非常にすばらしい研究所であるというようなことになっていくようにお願いしたいと思っておる次第でございます。  お金になる研究というのではなくて、ちょっと誤解を招くといけないので最後に申し上げますが、御承知だと思いますけれども、アメリカあたりでは、お金を出させる研究というのは、その見返りは要求しないですね。そこに投資をするだけであり、それに対して見返りを要求しない。だから、お金を出した者が特許権を取るとか、そんなばかなことはしないのでありまして、日本の官庁は全然違うのですね、それは。宇宙開発事業あたりでいろいろ仕事をやっていると、出向者は全然名前が上がってこない、官庁から来た人の名前だけがどんどん出る、こういう形では全くだめなのであります。これはちょっと余計な話でありますが、本当はそういう方向でもって、そういう場でもってお話しなければいけないと思いますけれども、そういうこともありますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  ちょっと余計なことを申し上げましたが、次に、国際放送といいますか、国際化といいますか、こういうことでちょっとお聞きしたいと思います。  日本は、今、国際社会の一員として非常に影響力が強い国になっておりますけれども、現在、けさもちょっとお答えいただいたと思うのですが、NHK番組において、番組交換といいますか、国際社会に乗り出すというようなことでのNHKの御努力というものを、ちょっと大ざっぱなお話ですけれども、お聞かせいただきたいと思いますが、会長、いかがでございましょう。
  146. 尾西清重

    ○尾西参考人 お答え申し上げます。  NHK番組がどの程度海外で見られているかということだと思いますけれども日本の文化あるいは言語というものは世界でも大変ユニークでございます。これまで番組頒布といいますか番組交流といいますか、そういうものの隘路になっていたことは事実でございます。しかし、先生言われましたように日本国際的地位の向上と申しますか、そういったことと相まって、近年日本に対する関心が極めて高くなっております。  例えて申し上げれば、数年前に放送いたしました「おしん」というような連続テレビ小説、これなど、私ども日本向けの放送として制作したわけでありますし、日本放送が終わればそれで終わりというふうに考えていたわけでありますけれども、その後香港、シンガポール、タイ、中国、韓国などでこの番組を放映いたしましたところ、六〇%から八〇%というような高視聴率を上げる結果になりました。そのことが一つの導火線になりまして、例えば中近東のイランあるいはヨーロッパのポーランド、ベルギーなどでも大変大きな反響を呼んだというふうに聞いております。  また、NHK番組が海外のさまざまな国際コンクールで数々の賞を得たこともございまして、NHKのソフト制作能力に対する評価が大変高まってまいりました。そういったことから、例えば「大黄河」でございますとか「地球大紀行」あるいは「日本・その心とかたち」というような大型シリーズが外国で関心を呼びまして、購入予約が集まってきているというような状況になっております。  さらにごく最近では、NHKが長年蓄積してまいりました教育番組のノーハウというものが発展途上国から注目をされまして、中国でありますとかペルーでありますとか、そういった国々から教育ソフトの研修といいますか、あるいは教育ソフトそのものをNHKから学びたいというような要請も寄せられております。ただ、こういう教育番組の海外への頒布というのは、日本の国家としてのありようというものに大変重要な意味があると思うのですけれども、何せ英語版をつくるということがどうしても必須条件になります。しかし、英語版をつくるということになりますと、また、それにかなりのお金がかかる。お金のない国を相手にお金をかけてわざわざ国際的に通用するものをつくらなければならないということで、この点だけで言えば、英語圏の番組に比べまして我々は不利な立場にあると言えるかもしれません。今後の問題としましては、特にこういう教育ソフトの途上国への頒布ということにつきましては、我々の努力ばかりではなくて、公的な資金というものが導入されてしかるべきではないかと考えております。
  147. 松前仰

    ○松前委員 公的資金ということで、お金が足らぬという話になりましたけれども、これについてもいろいろ工夫をすればできるんじゃないかというように思います。今企業が海外進出して安い労働力でいろいろなものをつくっているというのがありますね。そういうことだってこれに適用することができるのではないか。それはどういうふうになるか、細かい検討をしなければわからぬですけれども、そんな工夫も考えてやっていただきたいなと思っております。  それで、あと、海外で番組を買ってくれないというようなこともあるらしいのでありますけれども、その辺についての御努力はいろいろなPR等でやっていただいて、この国際番組交換というものは非常に重要な問題ですから、よろしくお願いをしたいと思います。  時間がございませんので、予定したのを少し飛ばして、予算についてちょっとお伺いしたいと思います。  放送番組の制作費用なのでありますが、ことしの予算で千四百六十二億七千八百七十七万二千円、昨年に比べまして百四十三億六千六百万円ぐらいプラスになっているわけです。放送番組の制作費用というのはことしは減るのじゃないか、こう私は思っておったのです。なぜかというと外郭団体をおつくりになった。エンタープライズ等がたしかそうだと思いますけれども、そういう外郭団体に番組制作を任せるから、それによって合理化されてNHKの中で使う費用というのは減るのではなかったか、そういうふうに思うのでございます。これを見ますと百四十三億、けたは違ってないと思いますが、こんなにプラスされているということになると、何の目的で外郭団体エンタープライズ等をおつくりになったのか、お答えをいただきたいと思います。
  148. 尾西清重

    ○尾西参考人 番組制作費につきましても、一般番組制作費は六十三年度につきましては五%のマイナスシーリングでやっております。しかし、中にはマイナスシーリングが通用しない、例えば出演料でございますとか外に支払うべき性格のもろもろの経費がございます。こういうものについてはマイナスシーリングが適用されないわけであります。特に六十三年度番組予算増加の大きな要素となっておりますのはオリンピックと衛星放送でございます。オリンピックはNHK負担分が権料だけで四千万ドルでございますし、制作費が約八数億という数字になっておりまして、オリンピックの放送権料及び制作費それから衛星放送増加分がこの放送番組制作費の増加の主なものでございます。
  149. 松前仰

    ○松前委員 オリンピックの費用と衛星放送を足すと百四十三億よりも多くなるということですか。
  150. 井上豊

    ○井上参考人 今放送局長からお答えいたしましたように、一般経費につきましては全体の経費節減ということで五%のマイナスシーリングを行ったわけでございますけれども衛星放送とオリンピック放送につきましては、私ども国民の皆さまに、大きなイベントあるいは新しいメディアの普及、開拓という意味で重点事項に設定をいたしまして、予算も重点的な配分を考えたわけでございます。  そういう意味で、私どもの把握といたしましては、国内放送費の中で番組関係経費ということでとらえますと八十四億数千万円の増ということでございますけれども、そういう中で、衛星放送あるいはソウル・オリンピック経費につきましてはこれと同額あるいはこれを超えるものを予算措置したわけでございまして、そのほか全中継費あるいは報道取材経費あるいは制作共通経費といった点につきましては節減を図ったわけでございます。
  151. 松前仰

    ○松前委員 節減とおっしゃるけれども、この数字を見てそんなに節減されているような気が私はしないのであります。エンタープライズというものをつくることは制作費が大幅に減るということでつくられたと私は思うわけであります。でなかったらあれはつくる必要がなかった。そうしか見られない。NHKの中でつくった方がよかったですね。出向なんてわざわざさせないで、その人たちはNHKにおってやった方がよかったかもしれないと思うわけです。これは問題が非常に大きいと思うので、こういう予算の出し方、平気な形で出してきておりますが、これについては私なかなか承服できないわけでございます。これについてさらに努力をして、こういう格好でエンタープライズができたということについて、それが効果があるという格好に見てもらわなければ国民は納得しないと思うのです。会長、いかがでしょうか。
  152. 川原正人

    川原参考人 エンタープライズをつくりました目的は、もちろんそういう経費的にももっと合理的につくろうということでつくっているわけでございます。ただ、エンタープライズをつくりましてそこに番組を委託しましても、やはりエンタープライズはそれなりに人手もかかりますし、それから出演者への謝礼もかかりますし、取材費もかかりますので、エンタープライズに頼めばずっと安く入ってくるということには自動的にはなりません。つまりNHKのメリットとしては、将来、このエンタープライズがNHK番組をつくるだけでなくて、もっとNHKの従来つくっておりました番組を海外に売るとか、国内でも、いろいろなCATVとかビデオライブラリーですか、そういうところに販売するということによってエンタープライズが自分でどんどん収益を上げる、結果としてそれがNHK経費の減につながっていく、それを期待しているわけでございます。残念ながら今のところまだそれほど大きな効果は出しておりませんけれども、これは必ずそういう効果を上げるべく努力してもらうつもりであります。  それからもう一つ、エンタープライズに出向しまして、これは勘定の上ですけれども、少なくとも給与予算においてはかなりの節約が出ているわけです。ですから、それとの比較で考えますと、エンタープライズをつくったなりの経営全体としての効果は出ていると思っております。もちろん将来もっと効果を出してもらわなければ困ると思っております。
  153. 松前仰

    ○松前委員 時間が来てしまいましたが、最後に申し上げますけれども、最初の会長お答えによりますと、NHK業務範囲というのは非常に大きく広がることにつながってくることになりますので、これは放送法の改正との問題が非常にございます。現時点で放送法改正についていろいろなところからいろいろな意見が出されている、今おっしゃったような危険を感じながら皆さんは言ってきているというのが現状でございます。ですから、これは放送法の改正のところの問題になってきそうなので、そちらの方でディスカッションさせていただくことにしまして、きょうはこれで終わらせてもらいたいと思います。ありがとうございました。
  154. 塚原俊平

    塚原委員長 伊藤忠治君。
  155. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 私は、まず最初に六十三年度収支予算の問題を中心に質問をいたします。  NHKとしては六十三年度事業運営について「計画概説」で、極めて厳しい財政状況にあるが、極力業務の合理的、効率的運営徹底により、受信料値上げをせず、公共放送としての役割を果たしていきたい、このように方針を明らかにされているわけであります。しかし、そうは言いますけれども視聴者のニーズというのは高まる一方ではないかと私は思います。多様化、高度化、視聴者のニーズはそのように高まっていくと思うのです。こういうニーズにこたえていかなければいかぬ、事業活動はこたえるための適切な活動の拡充というものが望まれると思うわけでございます。  私の理解なんですが、事業計画を見ましたときに、放送番組放送時間の拡充ということが中心に据えられておりますけれども、とりわけ施策の中心をなしますのは衛星放送を二十四時間、時間を拡大する、これがメーンではなかろうかという理解でございます。また、建設計画を見ましても、これは放送設備、その中には新たな機器を導入して非常に質的に強化していくという面もございますし、放送局などの施設の拡充ということなどが建設計画の中では重きをなしているのではないか、このように私は全体を読ませていただいて理解をするわけでございます。  このように考えましたときに、何といっても事業は拡充していかなければいかぬ、しかし収入財源というのは受信料値上げをせずにやっていくわけですから、非常に厳しい中で予算の執行をやらなければいけない、何としても収入をふやす増収対策に重点を置いて事業運営を図らざるを得ないというところにいくのではなかろうか。当然それは受信料収納率を上げるということが六十三年度収支予算の面で見ると増収対策の極めて重点課題ではないか、このように私は理解するのですが、この点についてNHK当局の御見解をまず伺いたいと思います。
  156. 林乙也

    ○林参考人 御指摘のように、NHK事業運営に当たりましては、公共放送としての責務を十全に果たしていくということが何よりも前提となるわけでございますが、その経費を賄う上で収入面について格段の努力を払うことは当然のことでございます。特に現在のNHK事業収入におきましては、受信料収入が九七%という割合を占めておるわけでございまして、受信料の増収に努めるということが必要でありまして、六十二年度に対して六十三年度は五十二億の増収を図るというように考えておるところでございます。これは営業活動刷新等々の措置の中で実施してまいりたいと考えております。  また、これと同時に、NHKの保有いたしております資産あるいはノーハウというものを積極的に活用する中で副次収入増加を図っていくことも必要だと考えておるところでございます。なお、副次収入の額といたしましては年間二十八億でございますから、ごくわずかな割合ではございますけれども、その中におきましても六十二年度に対して二億三千万円の増収を図るというようなことで、NHK経営努力の中で公共放送としての業務の運営を極力期してまいりたいと考えておるところでございます。
  157. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 今御答弁をいただきましてよく理解できるわけですが、六十三年度の増収対策で何としても確保したい、予算に計上されておりますのが五十二億円、件数にしまして四十三万件。一口に五十二億円というのですが、つまり六十二年度受信料収入総額が三千三百四十八億円、これにプラス五十二億円ですから、私はその実態から見ますと、五十二億円の増収対策を達成させるという点においても非常に大変なことじゃないかと実際思います。そう簡単にいくものじゃない。つまり、収納率も九六・三%ですか、資料ではそのようになっているわけで、口ではそう言います、金額だけでも五十二億円といえば何か五十二億円すっといけるような感じはしますけれども、相当これは大変なことじゃないか、私はそのように思うのです。そういう認識というのがNHK側にもあると私は思うのですが、だからこの新営業体制、これを導入をしてその成果を上げるために本腰を入れてやろう、こういう施策が出されているんじゃなかろうかと思うのですが、この新営業体制の中身について、具体的な方策についてひとつ簡潔に説明をいただきたい、こう思います。
  158. 松本幸夫

    松本参考人 お答えいたします。  今先生指摘の、営業活動が五十二億円の増収ということを一口に言ってもそれは大変だろうという御指摘でございますが、全く私もそのとおりだというふうに思っております。現場の連中の非常に積極的な活動の中でそれが確保されていくということでございますので、さらに一層の努力が必要だというふうに思っております。  この新営業体制というのを、どんな内容であるのかというお尋ねですので若干御説明いたしますと、五十年代に入りまして料金の改定を三回お願いしたわけでございますけれども、この経費率というのを見てみますと、料額改定の前年度経費率というのが二〇%近くになると料額の改定が行われておるという経緯がございます。  私どもそういった経緯を見まして、そういう営業体質からも脱却していかなければならぬというふうに考えまして、業績の向上ということを一つの柱とし、もう一つ経費率の圧縮ということを二番目の柱といたしまして従来の営業活動のありようというものをフォローしてみたわけでございます。徹底的にこの仕事の流れというものを分析してみました。そして、私どもとしてはこれには三つの課題がある、この課題を克服することが受信料制度を守り、収入を確保し、経費率を圧縮していくということにつながるんだというふうに思っているわけでございます。  その一つは、なかなかお目にかかれない人が大変多い。先ほど来いろいろ御議論いただいておりますけれども、単身世帯の方が非常に多い、あるいは御主人を持っておられて働いておられる婦人の方が非常に多いということでなかなかお目にかかれないということで、面接困難というふうに私ども言っておりますけれども、これが一つの大きな課題だ。そして契約支払い拒否というものが出てきておる、これにどういうふうに対応していくのかというのが二つ目の課題ではなかろうか。三つ目は、今大変世の中の動きが急でございまして、世帯移動が大変多うございます。世帯移動が多いということは、私どもの今の契約仕事の単位が二カ月でございますので、どうしてもそのタイムラグが出て未契約というのが残ってしまうという状況がございます。  この三つの課題を克服するということが私どもとしてはどうしても必要だというふうに考えまして、六十年度から真剣な検討に取りかかった次第でございます。私どもとしては六十三年度から実施に着手して六十七年度に定着させたいというふうに考えております。  具体的な手法としてどういうことがあるのかという点で申しますと、私どもは未契約を把握して既契約者とともにコンピューターに登録してみようというふうに思っております。そのことによって全世帯管理の基盤を整えていくということが一つ必要じゃなかろうかと思います。  それからもう一つは、面接困難な方の移動の管理というのをどういうふうにするのかという点で申しますと、これはいろいろな実験をしてみたのですけれども、空き家点検という形で空き家をフォローするということが非常に有効であるということも実証されております。そういったことを含めまして未契約者の圧縮ということを徹底的にやってまいりたいと思っております。それから、夜間、休日の訪問をできるだけ強化して、会いやすい時間にお訪ねして、そして契約収納に当たってもらうということも一つの方法ですし、さらには民間のノーハウを導入した効果的な営業活動の展開というものも開発してまいりたいというふうに考えております。ただ、いずれも日々の活動を低下させないで進めてまいらなければなりませんので、これは慎重かつ着実な配慮が必要であろうというふうに考えております。  私どもとしては暫定的なコンピューターシステムの運用を第一段階、六十三年、四年というふうに考えておりますが、さらに新システムによる本格運用を六十五年以降というふうに考えて仕事を進めてまいるつもりでございます。
  159. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 具体的な方策については説明をいただきましてよく理解をさせていただきました。そのほかに業務の合理化だとか効率的な運営について提起をされているわけです。  とりわけ、その中でも要員の削減問題、これは同僚議員の中からも厳しい指摘がございました。一万五千名体制というよりも一万名体制でいけ、こういう発言もあったところでございますが、しかし歴史的に見ますと十年間に二千人削減をされてきているわけです。六十四年には一万五千人体制、こういうことになるわけです。六十三年度予算でも三百人の純減なんです。  私は思うのですが、人は少なければ少ない方がいい、そういう単純なものではないと思うのですね。とりわけ知識集約型の産業といいますか、NHKの場合には非常に知的な仕事をされるところでございますから、メーカー製造部門じゃありませんから、新機種をどんどんと入れていけば人が減っていくというような、そういう性格の事業じゃないことはもう全体がわかっているわけですね。ですから、もちろん効率を上げなければいかぬ、人も少ないのはもちろんよろしい、しかし、そこにはやはり事業に課せられています使命を達成しなければいかぬ、放送の質を守らなければいかぬ。人の削減についてもおのずから限界があるのじゃないか、私はこう思うわけです。ですから、一万五千名台の中で三百名の純減というのは率としては非常に高い、こう思います。こういう認識を私はしているわけであります。  もちろんNHK協会側からすれば、いろいろな厳しい環境などを認識をなさって、これからも要員削減のために継続して努力をする、こういう姿勢をお持ちなのかもしれませんが、しかし、それは気持ちとして持たれるのは結構ですけれども、実際にどんどん人が減らされていけば、どこかで仕事をカットしてこれを委託業務に回すだとか、あるいはどこかで手抜き工事が起こってきてNHK本来の放送の任務にたえることができない、質が低下をする、そういう不測の事態を招来せしめるということでは大変私は問題だろう、このように思っているわけでございます。  そこで質問いたしますが、六十五年度以降もこのようなテンポで要員削減を継続されるのかどうか、その点について御質問いたします。時間の関係で簡潔にお答え願います。
  160. 植田豊

    ○植田参考人 先生指摘のとおり今日まで千四百五十人の削減をいたしてまいりました。それに上乗せをしてさらに六十三年度三百ということでございます。部内的にも、業務の見直し等も抜本的な措置をとらないことにはなかなか人が減らない、なおかつ放送番組サービスの質と規模をしっかり守っていかないことには国民の御支持が得られないわけでございますから、この点の責任を果たしながらなおかつ引き締まった体質をつくっていかなければいかぬ、こういう使命を負っているというふうに思います。  ただ、私どもとしては、六十四年度一万五千人を達成いたしまして、さらにその後も、これまで程度の効率化努力はできるし、やらなければならないというふうに思っております。その際、先ほど申し上げましたように、番組の質を落とさない、なおかつ、先ほど来お話しの衛星放送、ハイビジョン等のニューメディアにも積極的に取り組んでいく責任がある、こういうことを前提としながら、この効率化を不断の経営課題として引き続きしてまいる責任がある、かように考えておるところでございます。
  161. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 今、厳しい環境の中で、収支の問題、特に増収対策、業務の合理化、効率的運営の問題について質問させていただきました。  そのように見てまいりますと、六十四年度以降は、現在の受信料体制でいくということについてはどうしても展望が持てないように私は思うのです。端的に言いますと、受信料というのが収入の大宗を占めているわけですから、受信料値上げということは近い将来避けて通れないんじゃないかと私ははっきり申し上げたいと思うのです。それを避けるために無理に無理を重ねてやっていくと、結局、事業に課せられている任務そのものまで全うできなくなる。そういう行き詰まった段階で苦慮されるというよりも、早い段階から展望を持って打開策の検討に当たっていただきたい、このことを強く私は要望申し上げたい、こう思うわけであります。  その前に、何といっても、NHKとしても重点施策として進められてまいりました衛星放送の普及問題であります。聞くところによりますと、これはソウル・オリンピックを契機に五十万台から百万の視聴者者が衛星放送視聴者に拡大をしていくだろう、このように聞いております。今は試験放送の段階ですから、これを当然本放送に切りかえていくという、そういう態度も決めていただかねばいけない、踏ん切りをつけていただかなければいかぬ、私はこう思うわけでございます。  衛星放送をこれから拡充していこうということになれば、番組充実にもお金がかかりますし、当然放送衛星打ち上げを中心にしました費用の負担分も増加をするわけでありますから、そういうものも見込んで収入財源を確保しようと思いますと、どうしても、衛星放送視聴者に対してはそれだけのメリットがあるわけでありますから、一般視聴者との間には不公平が起こります。この公平化を図るという点で、衛星放送料金、これの設定というのが当然課題に上ってしかるべきじゃないのか、私はこのように思うわけであります。もちろん、その料金をどのようにやっていくのかということはこれから専門家の皆さんの検討にまたなければいけませんが、一つの方法としては現行料金の中に含めるということだって言われておりますし、もう一つは衛星料金を別建てで取っていくという方法も考えられるのではなかろうか、このように思うわけでございます。  私が結果として言いたいのは、収入財源を新たにつくるというのは、衛星放送という分野、やはりこれに求めていく以外に現実的な解決方法はなかろう、こういう考え方を私は強く持っているわけでございまして、いずれにしても、そういう料金体系、受信料体系を変える場合には、視聴者の公平負担、あるいは過大な負担とならないような方法で受信料体系の見直しをする時期に今日来ているのではないかということを私は強く認識をするわけでございますが、この点について、NHK当局並びに郵政大臣としての見解をいただければありがたい、かように思います。
  162. 川原正人

    川原参考人 私も非常に同様の気持ちを持っております。ただ、NHKが料金を上げないことにきゅうきゅうとして人だけを減らし、あるいは仕事を縮小していくということは、これはとるべき施策ではありません。NHKはやはり国民に対しましてすぐれた文化財であるテレビ番組をより充実してより福祉に役立てるということ、この文化的な財をもっと国民の役に立てるということが使命でございます。  また、衛星放送とかハイビジョンとか、こういう新しいメディアを積極的にNHKがその任務として開拓していく、これまた当然の仕事だと思っております。そのために必要な経費は、これは、率直に受信者の方々に御理解を求めて御負担していただくしかないと思っております。そしてそれは恐らく、一般番組におきましてももう既に六十三年度予算でかなりの赤字を出しているわけでございますから、これは六十四年度に何らかの措置を講ぜざるを得ない、お願いせざるを得ないというふうに思っておりますし、衛星の料金も、これは普及のために番組充実するのはもちろんでございますけれども、特に御理解いただきたいのは、本放送ということになりますと、ただいまのところは試験放送である、料金も受信者からいただいていないということで、番組を提供していただく場合に非常に安い料金で提供していただいております。はっきり言って値切って交渉して、もう非常に安いお金でもって番組国内でも外国でも提供してもらっておりますけれども、これが本放送になればそれでは済みません。恐らく今の数倍、物によっては十倍近くの権利金を払わなければならなくなると思います。これは単に今の趨勢だけではなくて、これの数倍の経費が必要になってくると思います。  そういうことも勘案しながら、この本放送といいますか、新しい料金のことを考えなければなりませんし、それには、普及の度合いということもありますけれども、私どもとしてはできるだけ早い段階に料金の負担を何らかの形でお願いをしたいというのが率直な気持ちでございます。
  163. 中山正暉

    中山国務大臣 御指摘のように、私も大変心配をいたしております。今、カラー放送を千四十円、口座振替の場合が五十円引きになるようでございますが、沖縄が九百円ということで、その上にまだ白黒が残っておりまして、白黒のテレビが六百八十円、それから口座振替の場合六百三十円。沖縄が五百四十円。まあ白黒というのは余り見ないので、もうカラー一本ぐらいにしていったらどうなんだろうかという気もしますし、これは本当に白黒をつけなきゃいけないという気持ちがするわけでございます。  そんな意味で、安かろう、悪かろうではぐあいが悪うございますので、大変長い、すばらしい公共放送としての組織とかそれから人的資源、すばらしい研究の数々の成果を上げておられる研究員の方々に対する配慮。それから出演者の方にも、これも昔、冗談のように聞こえますが、日本薄謝協会と言ってNHKという略に言われたことがございました。やはり情報提供者にはそれなりの情報に対して報いるという立場をとっていくのが、特殊法人として国費も入っております、そして中身には触れないというNHKに対する配慮。  料金の面でも、先生の御指摘のような方向で、まあ来年度ぐらいになりますか、その辺はいろいろ相談をしなければなりませんが、見てくださる人たちに対しても、情報というものは価値あるものだ、価値ある情報というものは値段が高いということ、日本は昔から水と平和というのはただだと思っている国だなんということを書いた本がありましたが、そういうことではなしに、情報には価値があり、平和、水というものには大変価値があるものだということについてこのごろ認識が高まっておりますので、情報もそのような意味で、NHKの料金体系に対して対応してまいりたいと思います。
  164. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 最後になりますが、一点質問させていただきます。それは、NHK受信料集金体制の問題についてであります。  外務職員が一千名、委託要員が三千七百名ほど働いていらっしゃいます。こういう縁の下の力持ちがあって受信料というものは収入財源として日の目を見ているわけでありまして、日々の仕事を通じて、つまり戸別訪問を通じて人的な信頼関係というのが養われているわけですね。例えば家庭訪問をしまして集金人の方が個人的にも仲よくなり、もしあなたがやめたらもう払わぬぞというようなお宅だってあるわけです。そういう日々の大変な努力があって収入財源というものが確保されているわけでありますし、歴史的に果たしてこられた皆さん方の役割は、地味だけれども非常に大きいと私は思っているわけでございます。  その集金人皆さんの中でも、委託要員の大半の人たちを組織されているのがNHK集金人労組というのですか、N集労と私たち呼んでおりますが、約二千五百名の組合員の皆さんがこれに団結をされているわけでございます。その模様については新聞の方でも特集の記事が載りまして、大々的に報道をされまして、私も読ませていただきましたけれども、こういう皆さんというのは仕事に誇りを持っております。しかし、NHKの職員化を望んでいるわけじゃないのですね。つまり、職員になれば定年制が出る。こういう人たちは、こういう仕事を長く続けていこう、こういうことではきちっと整理をされた労働組合だと私は聞いているわけでございます。  三年に一回の契約更改の日が迫ってまいりました。新営業体制の導入が来年度からですから、六十三年四月一日、こういうことになります。そうすると、皆さん方は、今の具体的な方策が説明をされましたけれども、そういうふうな心構えで、意気込みで、夜間訪問、時間も延びるという中で仕事を続けていかれるということになります。当然これは雇用を守ってほしい、労働条件についてもこれが切り下がるというのじゃなくて、これまでの労働条件というのは、やはりそれは維持させていただきたい、これからももちろん事業全体が伸びていけば、そこで労働条件の向上も図っていただきたいという切実な気持ちがあると思うのですね。更改をめぐりまして当然労使で交渉をなされると思います。その交渉に臨むに当たって、どうかひとつそういう立場でNHK側としても対処していただきたいし、N集労との交渉の場では組合側からさまざまな要求が出ると思いますが、どうかひとつ労使間の交渉、誠意を持って臨まれて、問題の解決をきちっと図っていただきたい、こういうことを私としては心から強く要望申し上げたいと思いますので、どうかひとつ会長の方からの御答弁をいただければありがたい、かように思います。
  165. 松本幸夫

    松本参考人 私が担当でございますので私から答弁させていただきますが、先ほど来お話し申し上げている新営業構想、これは従来の仕事を抜本的に変えるというものでございます。業績の向上と経費率の圧縮を図りたいというように考えているものでございますけれども業務内容の大胆な変革ということは現場で働く人たちに対しても大変大きな影響を与えるというふうに思っております。  私どもといたしましては、日放労でございますけれども職員で組織する組合、あるいは受託者組織とも十分に話し合って、お互いの考え方を十分述べ合って、そして円滑に新しい業務体制に入ってまいりたいと考えております。既にもう一年余りにわたって話し合いを続けておるところでございまして、かなり深く理解もしていただいているというふうに考えております。  それから、営業活動の現場の人たちのモラールといいますかやる気、これは一番大事なことだというふうに考えております。できるだけ具体的な現場の話を聞くということで、九十一局所で延べ二千六百回にわたる職場討議もやって、そういったものを前提にして今度の構想を策定しているところでございます。そういう意味では、私どもとしてできるだけ理解を深めて、ドラスチックな改革であるけれどもマイルドに移行してまいりたいという考え方で話し合いをしておるところでございます。  また、先生強く御指摘の受託者についてでございますけれども、受託者との話し合いも今かなり大詰めに来ているところでございます。契約更新の問題も、話し合いがつきませんと契約の空白期間ができてしまうということがございますので、暫定契約というような形で契約を延長して今話し合いをしているところでございますが、私どもといたしましては、新しい業務のあり方に沿って受託者として本当に責任を果たしていただけるという方々については、その信頼感に報いる、その信頼感に対応し得る態度をとってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  166. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 ぜひともひとつ問題解決のために全力を尽くしていただきたいということを要望申し上げまして、終わりたいと思います。どうもありがとうございます。
  167. 塚原俊平

  168. 木下敬之助

    ○木下委員 まず最初に経営計画についてお伺いしますが、これで去年とことし二年間、経営計画がないままでやられておるようでございます。この経営計画というのはNHKにとって必要ないのか、そして来年の値上げというのは必至なことなのか、そして値上げをすればまた経営計画をつくってやるのか。この点について最初に御質問いたします。     〔委員長退席、田名部委員長代理着席〕
  169. 林乙也

    ○林参考人 事業の運営が長期的な展望に基づいて行われなければならないという御指摘については私どもも十分自覚し、そのように考えておりますことをまず申し上げまして、その上で御説明を申し上げたいと存ずるわけでございますが、六十三年度予算におきましては、五十九年度から六十一年度までの三カ年計画を上回る実績を引き継ぎまして事業収支不足を補てんするということで、現在の受信料を据え置くことといたしておるところでございます。  今後の経営の見通しにつきましてはまことに厳しいものがございまして、協会の現在抱えております経営課題、すなわち、まず何よりも公共放送としての充実した放送を展開していくということを前提に、当面の問題といたしましても、衛星放送国際放送あるいは新営業構想さらには業務体制の見直し等々の問題につきまして、私ども現在時点における経営課題として長期的な展望を求めていろいろ内部的に検討いたしておるところでございます。  しかしながら、これらの策といいますものは、やはり具体的な経費、あるいは財務についての裏づけがないままに単なる施策として成り立つものではございませんで、財務的な一つの裏打ちは必要であるわけでございます。その財務的な検討におきましては、事業収支の均衡というものにつきましてのそれなりの見通しを得るものでなければ、これをいわば計画として外部にお示しするということにはならないのではなかろうかというようなことを考えておりまして、私ども内部的にいろいろ検討はしておりますけれども、六十三年度におきましてこれを長期計画というような形で外部にお示しするところにまで至っておりませんことを御説明申し上げたいというように考えるところでございます。  六十四年度以降の経営見通しにつきましては、財務的にまことに厳しいものがございまして、既に事業収支上において百二十四億、全体的な収支におきましても二百二十億の不足が生ずるわけでございますが、それをさらに百億ないし百五十億程度上回るような結果も一応見通しがあるわけでございますけれども、それに対してどういう形で取り組んでいくかということにつきましては、ただいま申しました経営課題につきましてのぎりぎりの詰めということを行いました上で、六十四年度予算編成時までに一定の結論を得たいというふうに協会としての一つの結論を見出しているというふうに考えておるところでございます。  もちろん、NHK受信料につきましては、予算を国会で御承認いただくことによって受信料額が定められることに相なるわけでございますから、NHKの考え方を取りまとめた上で、政府また国会の御審議をいただく中で今後の経営についての展望を得てまいりたいと考えておるところでございます。
  170. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは衛星放送についてお伺いいいたします。時間も少のうございますので簡潔に御答弁をお願いいたしたいと思います。  まずお伺いしますが、今やっている放送、試験放送ということですが、いつまでも試験放送を続けているわけではなくて、必ず本放送するというのが前提であろうと思いますが、これはいつなさるおつもりでしょう。
  171. 成川富彦

    成川政府委員 先生御案内のとおり、BS2による衛星放送は現在のところ試験放送ということで実施しております。これをいつ本放送にするかということでございますが、それにつきましてはいろいろな要素を考えていかなければいけないと思います。受信機の普及状況であるとかあるいは視聴者の要望、それからBS3への継続性、安定性といいますか、そういうもの等十分勘案してやっていかなければならぬ。それと、NHKの意向等も踏まえまして本放送の免許をしていきたいというふうに考えております。
  172. 木下敬之助

    ○木下委員 今四点ほど言われまして、それについても質問したいところもあるのですが、NHKの意向というのも入っておるようでございます。NHKの方はどのように考えておられますか。
  173. 川原正人

    川原参考人 確かに受信者の数の増加といいますか、普及の程度、速さということに私どもは今非常に関心を持っているところでございますが、この受信者の普及がかなりの速度で進むということを前提としますならば、私どもとしてはできるだけ早い時期に本放送し、ということは、つまり何らかの形での料金を考えまして事業としてそれが独立して成り立つようなことを考えてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  ただし、本放送というには、これは免許の問題もありますので当然そういった関係のところとはお打ち合わせしなければならないと思っております。
  174. 木下敬之助

    ○木下委員 せっかくですから、今普及ということを条件に挙げられましたので、郵政省は大体どのくらい普及するということを本放送のめどと考えておられ、NHKの方はまたどう考えておられるか。まずその点お聞かせください。
  175. 川原正人

    川原参考人 これは、絶対的な数字というのはなかなか難しいわけでございます。実は、私どもが昨年の七月に試験放送を始める段階ではかなりテンポを長く考えまして、六十四年ぐらいには百万台ぐらいには普及を進めたいものだなと思っていたわけでございます。それが一つのめどかなと思っていたわけでございますけれども、百万という数はかなり早い時期にいくのではないかと私は思っております。  ただし、これは全くこれから先の推定になるわけでございます。百万になれば必ずいいのかといったら、それだけの数字で決めるわけにもまいらないと思います。百万というのが日本人の感覚でいう一つのめどとは思っておりますけれども、またその百万の中身、共同受信をしておられる方が多いのか、一軒一軒でパラボラでごらんになっておる方が多いのか、その辺のこともよく見きわめたいし、そのときの趨勢といいますか、受信の勢いみたいなものも十分に考えておかなきゃならぬと思いますけれども、一応今までのところはそういうことを一つのメルクマールとして、判断の時期がその辺にあるのではないかと考えてまいりました。
  176. 成川富彦

    成川政府委員 先ほど申し上げましたようにいろいろな要素を勘案して本放送をいつするかということになるわけでありますけれども受信機の台数が幾らというふうな具体的なめどを持っているわけではございませんで、いろいろな要素を考えた上で、状況の変化といいますか情勢の推移といいますか、そういうものを見定めながら決めていきたいというふうに思っております。
  177. 木下敬之助

    ○木下委員 きょうから試験放送を始めるときはその程度でいいと思いますけれども、現在はもうここまで来ているわけでしょう。一遍は六十四年、百万台というのを設定して、今この勢いで、二月末で五十二万幾らですか、そういう状況を踏まえて早急にやりたいということも今おっしゃられるのですが、これは、あらゆるものを総合して、少なくともいろいろな条件、何万台を突破したころには本放送は入れる普及だと言えるとかいう、焦点を絞って考えられる時期にもう来ているのじゃないですか。もう少し具体的な数字を頭の中にあったらおっしゃっていただきたいのですが。
  178. 川原正人

    川原参考人 数字と本放送というのが自動的には結びつかないということで私、申し上げたのですけれども、私どもの気持ちとしては、あくまで百万台というか、百万世帯への普及というのが一つのメルクマールになり得るであろうということを考えております。そこのときに何らかの判断は当然しなければならないと思っておりますが、結論的にはなるべく早くその時期が来ることを期待もし、願っているわけでございます。
  179. 木下敬之助

    ○木下委員 郵政省にお伺いしたいのですが、先ほどの会長の御答弁の中で料金ということも本放送への条件として言われたようにお聞きいたしました。郵政省の方の百万といった数字に対する御意見と、それから料金というもの、これは免許を許可する郵政省の側としては条件になるのですか。それとも、それをもしNHKが意向として条件とするなら自動的に免許の条件に入ってくる、こういうことですか。
  180. 成川富彦

    成川政府委員 先生のおっしゃった意味が、本放送のときに料金を設定するということが前提かというような御質問かと受け取りましたが、それでよろしゅうございますか。(木下委員「そうです」と呼ぶ)  試験放送の段階では料金は徴収できないということは先生御案内のとおりでございまして、本放送にしないと料金の問題というのは出てこない。本放送になったからといって料金問題にすぐ結びつくわけではございませんが、先ほど来いろいろとお話しございましたように、本放送になりますと経費的にもかなりかかってまいります。まずは、いろいろと経営努力をやっていただいております、経費の節減あるいは収入の確保等々真摯な経営努力をやっていただいているわけでございまして、それによるべきでございますが、将来的には、やはりかなりの経費が必要でございますので、受信料体系全体の中で見直していかなきゃならぬと思っております。それが本放送と同時になるのか、本放送を行った後しばらくしてなるのか、その辺は今のところ見通しが立ちませんが、そのような時期がやがては来るかというふうに思います。(木下委員「百万台についてはどうですか」と呼ぶ)  先ほど会長の方からの話もございましたように、百万台が直、本放送に結びつくものではございませんで、カラーテレビの前例でいきますと百数十万台になったときに本放送になったというような経緯もございます。ですけれども、だから百万とか何かということじゃなくて、百万か二百万か三百万か、そこら辺はわかりませんが、最低百万台を大幅に超えた段階かというふうに考えられるのじゃないかと思います。定かに本放送と結びつくものではございませんので具体的な数字を申し上げられなくてまことに恐縮でございますが、以上でございます。
  181. 木下敬之助

    ○木下委員 郵政省の言われていることもわかります。  それで、郵政省に今お伺いいたしましたように本放送にするかどうかは料金は直接関係していない。これは、条件がそろって本放送にして、本放送になる中でいずれ料金が必要であるようなことは認めておられる、そういうことだと思いますが、NHKの方は、本放送にするのは有料の道がはっきりしてからしか考えていないのですか。それともほかの部分の条件さえ整えば――まず最初にこの衛星放送をやろうと思って試験放送を始めた、そのときから料金というものが考えられておったのなら別ですけれども、そのときは考えていなかったわけですから。当初は難視聴解消で、本放送になれば難視聴の分だけでも収入が上がる、こういう状態だったわけですから。まして、今本放送になったらお金がかかると申されましたが、そのお金がかかる分も、かかるようになったから本放送になったらその上がった分をやっぱりもらわなきゃというのはおかしなことで、本末転倒だと思うのですけれども、どうですか、有料でやるという方針はもう決まっておるのですか。
  182. 林乙也

    ○林参考人 衛星放送の性格でございますけれども衛星放送地上放送に見られない大きな特質と可能性を秘めた将来における主要なメディアに必ず発展する放送だと考えられるわけでございまして、会長の方からもできるだけ速やかに受信者財源の御負担をいただくように考えておることを先ほどお話し申し上げたとおりでございます。  私どもといたしましては、そういった基本的な考えにのっとって具体的にいつどういうふうに中身を詰めていくのかということにつきまして、筋の上からいたしますと本放送の問題と料金の設定の問題とはこれは別個の問題であろうというふうに考えられるところでございますが、現実の問題といたしましては六十三年度、または先ほども申し上げました六十四年度以降の財政状況という問題だとか、あるいは料金の問題というのはいずれにいたしましても現在の受信料体系もあわせました全体の受信料制度の中における体系の問題として検討しなければならぬという、地上の受信料の問題と衛星の受信料の問題の全体の問題の検討というようなことを考えました場合に、やはり来年の予算編成時点、これは先ほどからもお話がありましたように普及もその時点では百万を超えるようなことも状況としては見込まれる、そういったことも含めました状況の中で、六十四年度予算編成時までには私どもとしては将来に向けての考え方を固めていかなければならないだろう。その上で関係の向きにいろいろ御説明もし、また御検討もいただくというようなことが結果としては必要になってくるのではなかろうかというふうに考えております。
  183. 木下敬之助

    ○木下委員 今のお話の中で幾つか聞いてみたいところがあるのですが、一つは、この衛星放送が始まったときは難視聴解消でそれに余分なお金を取るという話は全く聞いておりませんし、その当時、それが本放送になったら、難視聴を解消できたのでこれまで受信料をもらっていなかったところからも取れる、こういう考え方をしていたと私は思います。今言われましたら、何かもう基本的な将来の体系の中で別の番組、新しい番組でやっていくという方向が決まって、それはもう有料でなければできないようなことが基本的には決まっておって、具体的にどうするかがこれからの問題であるように私は今お伺いいたしました。皆さんもそう聞いたと思うのです。そうすると、一体どこで、いつどの機関でそういう変化の決定をなさったのですか。NHKの中でどういう決定がなされたのか、教えていただきたい。
  184. 林乙也

    ○林参考人 衛星放送計画につきまして、当初難視聴の解消を主たる目的として計画が取り進められたことについては先生指摘のとおりでございます。その後、難視聴の世帯調査の中で全国で約十万少々というような実態も明らかになってまいりまして、昨年衛星放送の免許方針につきまして郵政省御当局においても改定をいただいたところでございます。それを受けましてNHKといたしましては、衛星放送の一波については普及促進のための独自番組を編成し放送するということが認められたところでございまして、いわば昨年の免許方針の改定というものの中で、また、ただいま申しましたように当初難視解消を主たる目的として発足したものではございますけれども、難視世帯状況などの客観情勢というものの変化の中で昨年の免許方針の改定も見られたのではなかろうか。その時点がやはり一つの、何といいますかターニングポイントというふうに私ども考えておるところでございます。
  185. 木下敬之助

    ○木下委員 既成の事実だけれどもそのときがターニングポイント、何かターニングポイントを通過すると既成事実になって、それが内部決定で、今度あとそれを具体的にどうするかというだけが問題になっているというのは、私は、大変失礼ながらNHK経営の姿勢というのを疑いますね。  郵政省はどうなんですか。そのときの方針が今NHKが言われたようにターニングポイントで、その後は有料であることが既成事実となっていく、こういう点を通過ということで試験放送の許可を出しておるのですか。
  186. 林乙也

    ○林参考人 ちょっと補足して御説明させていただきたいと存じますが、衛星の受信料をどういうようにするかということが定められるのは、あくまでも予算を国会で御審議いただき、御承認をいただいたところで決定を見るわけでございます。したがいまして、私どもとしてはあくまでもそれを前提としてお話を申し上げておるのでございまして、NHKだけがそうすればそうなるというふうなことで御説明を申し上げているわけではございませんことをひとつお許しいただきたいと思います。
  187. 成川富彦

    成川政府委員 NHKからの答弁にもございましたように、当初難視聴解消を主たる目的としてやってまいりましたが、それは一本のチャンネルでまとめてやれるということで、普及発達といいますか普及促進をしてもらいたい、私どももそういう考えを持っておりましたものですから、御承知のとおり衛星放送は画期的なメディアで、いろいろな放送のメディアを乗せることが可能なものですから、普及発達に資したいということでお願いしたわけでございます。  昨年七月四日以来二十四時間独自放送を一チャンネルを使ってやっていただいておる。本放送になりますと難視聴解消の関係の地上放送と同じ料金はちょうだいすることになるわけですが、衛星放送につきまして地上放送とは別の受信料をいただくかどうかといった問題は本放送とは直接結びつくものではございませんが、独自放送をやりますといろいろと経費が必要なわけです。本放送になりますとさらに一層経費を必要とするようなことになるようでございまして、そうなりますと、私どもとしてはそれをできるだけ視聴者負担増加しないという範囲でやっていただきたいということで、先ほど申しましたように経営効率化経営努力によって担っていただきたいとは思うのですが、いずれにいたしましても将来的にはいろいろな要素からそれを受信料体系全体を見直す中で負担していただかなければならない時期が来るのではないかというふうに考えられまして、それを永久に受信料体系を見直さないで試験放送のままずっといくというわけにはなかなかいかないのではないかという感じはしているわけでございます。
  188. 木下敬之助

    ○木下委員 率直に申し上げておきますけれども、確かに国会で承認が要りますから最終的には承認すれば国会にも責任があることになりますが、今のような形で既成事実がどんどん進んでいくと、我々が承認をするときにはもう随分のことができておる。もう皆さんいっぱい買ってかなりいい番組を見ている。そういう状況の中で、ただ承認を既成事実のもとに我々させられるというのも大変おかしなことで、やはり今ターニングポイントを通過したときから公然と、これはちゃんと料金を、それなりの御負担をいただいてそれなりの価値ある番組つくっていくんだという方針みたいなものは明確にされていったらよかろうかと思います。  相当きょう明確にされたと思いますが、既成事実、随分いろいろ積み重ねておるのですが、試験放送ということでいろいろな番組も格安で入っておると思います。ですから、本放送になればかかるようになる、そういうことですが、国民の声をいろいろ聞いてみますと、今の地上波でも宣伝をしております。そうして、見れば、この間のカルガリーのオリンピックでも大変衛星放送も好評でございました。  そういう中で今現在、これが将来それ相応の負担が余分にかかるものなのか、そうでないのかが明確にされないままあれだけ宣伝されて、しかも、もし国会の承認でいうならば、有料にしなかったとするならば、あれだけの立派な質の番組継続することができないわけですね。だから、質もそれだけのものができるかどうかはわからない、有料になるかどうかもわからない状態のものを今最大限サービスして、これは現在の地上波の人の受信料で賄ってそれだけのことをしながら、一生懸命宣伝して普及している。こうして既成事実をつくって後から来るというのは、これは僕は余りフェアな物の売り方ではないのではなかろうか。どんなところで何かを売り込むにしたって、将来金がかかるのか、その品質が保証できるのかぐらいのことは公にしながら宣伝をしていると思いますので、こういったことは十分考えてやっていただきたいと思います。  どうですか、郵政省、今のテレビで宣伝しているのに、もっとこの機会に、いずれそれは料金体系を見直して、衛星放送の料金が別にくっついてくるのか、全体の中で衛星をとらない人が割引になるのか、そういうことは自由でしょうけれども、少なくとも衛星放送負担というものが明確に出てくるということをかなりはっきりときょうの国会でおっしゃられたらどうですか。そういうことを抜きに今のような宣伝されていることをどう思いますか。
  189. 成川富彦

    成川政府委員 衛星放送普及を促進するために、地上放送において衛星放送に関するPRをやっていることは私どもも朝晩テレビを見て承知しております。どのようなPRといいますか放送をするかといった問題につきましてはちょっと言いにくいのですが、放送番組編集の自由というようなことからNHKが自主的に決めるべきことでございまして、私どもといたしましては地上放送を軽視するとかあるいは少し行き過ぎたようなことのないように、誤解を招くことのないように、NHKにおいて十分自主的に考えて配意してやっていただきたいというふうに希望いたします。
  190. 木下敬之助

    ○木下委員 私はやはり有料ということを明確にして、国民理解を得ながらいく時期に来ておると思います。そして、いたずらに特別高級な番組ですごく高いものにして、一般国民から遊離したものが衛星放送になってもらっては困りますけれども、特性を生かして発展的に頑張られることを期待いたします。
  191. 田名部匡省

    ○田名部委員長代理 阿部昭吾君。
  192. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私が最近非常に深い感銘を受けました番組に「二・二六事件」、それから「世界の中の日本・食糧・国家の選択」、こういう番組に非常に大きな感銘を覚えました。その番組NHKの関連会社でつくられたというふうに伺うのですが、そのとおりでしょうか。
  193. 尾西清重

    ○尾西参考人 お答え申し上げます。  今御指摘の二つの番組は、二つとも関連会社だけでつくったものではございません。NHKと関連会社とで共同で……(阿部(昭)委員「関連会社とはどこですか」と呼ぶ)NHKエンタープライズでございます、つくったものでございます。
  194. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 実は今中国の留学生のお世話を私しておるのであります。この留学生が私のところにやってまいりましたのは、NHKがやりましたあの「おしん」のドラマを中国で見た。彼は今私のところにやってきて何と言っておるかというと、今の日本は「おしん」の時代と違う、中国の今はちょうど「おしん」の時代だ、「おしん」の精神に学んで中国の四つの近代化のためにということを彼らはよく言うのである。     〔田名部委員長代理退席、委員長着席〕  確かに、マスメディアというものが今日の日本のために果たしてきた役割は非常に大きい。政治あるいは経済社会全体の中にNHKもまた果たされた役割は非常に大きいというふうに私は評価をしておるのであります。わけても民放公共放送としてのNHKの立場は違うということはあるわけでありますけれども、社会の表面だけを取り上げるということではなしに、主として今の激動する社会の底流というか、そういうものをよく取り上げられておる。私はきのうきょうなんぞは、がん患者に対する告知のあれを見ておりまして、国会に出かけてくるのがちょっとおくれたりしておるのであります。そういう意味で私は非常な評価を持っておる。  しかし、その中でNHKが抱えておる問題も非常に深刻なたくさんの問題があるというように私は思います。きょうの委員審議の中におきましても、国際放送などというのはまさに世界の中の日本として、日本の国家そのものが相当の責任を持たねばならぬ分野だろう。それは国家は負担金だか交付金だか、とにかく一定のものは持つにしても、まだまだ国際放送という分野でもNHKは大きなことをやっていかなければならない。いろんな意味で問題を抱えておる。しかし第二の国鉄になってはいけないという意味でいろんなこともやらなければいかぬ、こういう状況にあると私は思っているわけであります。  そういう中で私は、NHKの最高意思決定機関は経営委員会であると思います。それからもう一つは、放送の内容その他をどのようにするかは、主として番組審議会ということになっております。私は素人ですからよくわかりませんけれどもNHKの中で、経営委員会というのはある意味で言えば、日本の国家で言えば国権の最高機関たる国会のようなものではないか。今NHKが直面しておる問題点を、どのように将来に目標を定めて持っていこうとするのかという意味では、経営委員会の中でいろいろ論議されておる内容等も、国会にも国民の前にも常にもっと明らかにしていく、そして訴えていくというものがあっていいんじゃないか。それから番組審議会の状況等についても、やはりもっと国民の前に知らしていくということが必要なんではないかというふうに実は私は思っておるわけです。私のそういう考え方に対して川原会長さんのお考えをぜひお聞かせを願いたい。
  195. 川原正人

    川原参考人 私も似たような感じは持っております。実は経営委員会の中でも率直にそのような御議論はありますし、たまたま昨日経営委員会がありましたけれども委員会の席上ではございませんでしたけれども、後で経営委員の方々の間でもいろいろ、経営委員会の様子がわかりにくいとか活性化云々ということを言われるけれども、これだけ活発にやっていてなぜそのようなことになるのかなということも率直にお話しになっておられましたし、何らかの形で経営委員会の活動の模様がもう少し外にわかるようなことを経営委員会自身もお考えになっているような節もございます。私どもも御質問等があれば経営委員会の審議の模様は差し支えのない限りはできるだけ率直にお話しできるかと思います。  ただ、経営委員会にしましても番組審議会にしましても、審議の内容すべてをオープンということになりますと、これはまた御発言の内容が、それなりにやはりある種のおもんぱかりがあって制約されることがありますので、この国会の審議のようにすべてを議事録にとってオープンというわけには、委員会なり会議の性質上それはしにくいかと思いますが、およそのことは、私もできる限りのことはお話し申し上げますし、あるいは委員会、審議会の方もそういうお気持ちは十分にあるということをお伝え申し上げておきたいと思います。
  196. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 私がなぜこのことを申し上げるかというと、日本のいわば議会政治なり民主政治がこのように、ある意味でいえばしっかりした発展を遂げてきたのは、これはやっぱりマスメディアの前に日本の政治は完全に一〇〇%さらしてきたからだと私は思うのです。それは、例えば私ども、しばしば我々の活動についてのマスコミの報道等に対してちょっと違うなと思うこともたくさんあります。こういうとらえ方はちょっと違うなと思うこともたくさんあるのですよ。しかし、日本国内におきましては、多様なる価値観というか、見方というか認識というか、そういうものを全部マスメディアを通じて国民の前にはっきりとさらけ出してきたというところに、やっぱり戦後の四十数年間の日本の民主政治の発展というものがあった、こういうふうに私は思っておるわけです。  確かにNHKといえども公共放送をここまで持ってきたその組織としてのNHKには組織としてのいろいろな問題があるには相違ないのであります。しかし、国家だってやっぱりある意味では一つの組織なんですね。そういう意味で、組織というものはできるだけすべてのものを外にさらしていくということがないと生き生きした活力というものを持っていくことはできないのではないか。そういう意味で、例えば会議録のすべてというのはどういうことになるのか、会議録というのはどの程度のものをつくるのかわかりませんけれども経営委員会で都合のいい部分だけじゃなくて、意見の異なる部分があってもそれはそれで、やっぱり国会だって多数意見、少数意見がみんな国民の目の前に出るわけでありますから。  例えば衛星放送の場合、現実にこの間の黒岩選手の放送は生では来なかった。後で出てきたわけです。そうしたらごうごうたる批判がNHKにあった。恐らく、衛星放送をやらなければああいうのは見れないんだぞということにして、ソウルまでの間に物すごく広げておこうということであそこは見せなかったんじゃないかということを新聞には書いてある。私はよくわかりませんよ。しかし、例えばこの料金の問題をどうするかということになると、今のところパラボラアンテナを入れるか、さもなくんばCA化をやるか、どっちかにしなければ直ちには衛星放送というのは受信できない。それが百万になった、今いろんな御議論が出ましたけれども受信現実にできない者に料金を負担していただくという場合に一体どういう考え方をとるのか。そこはやはりなかなかそう一筋縄じゃなかろうと思うのです。そういう議論なども私は国民の目の前に相当さらして、その中からどこへ行くのかということをちゃんと見さしていくということが必要なんではないか。  私が今申し上げました経営委員会の御議論の違いは違い、あるいは番組編成会議ども、さっき言ったとおり、おれの方は武田信玄やらせろ、おれの方は伊達政宗やらせろ、いろんなことが出ると思うのです。あっても、私はそういう議論というもの、経過というものを国民の目の前にはっきりさらしていくというところに近代社会におけるあり方というものがあるのではないか。日本国民の中には今やそれをちゃんとこなしていけるだけの、それだけの認識というか受け皿というものはもうはっきりと育っているのではないかというのが私の実は考え方であります。そういう意味で申し上げました。  それからもう一つは、NHKは営利を目的とすることはやらない、こういう原則を持っていた。しかし、合理化もやらなきゃいかぬし、いろんなこともやらにゃいかぬ。経営の内容もいろいろ節減するところは節減せなきゃならぬというので、関連団体、関連会社というものが相当つくられた。ところが、その関連団体、関連会社の中には、NHKとどういう分担をされたかは知りませんけれども、さっき私が大変感動したと言った「二・二六事件」をつくったり、あるいは「食糧・国家の選択」などという、ああいう我々が本当に感銘を受けるような番組をつくったりする。しかし、これらはみんな株式会社なんですね。確かに十項目ぐらいありまして、NHKの、協会の委託によってという頭はついておるようであります。それから、株式会社である以上はやはり営利を追求しないわけにはいかない、商法団体でありますから。  NHKは営利を追求しない立場、しかしその関連会社あるいはもっとその下にまた三段階目くらいの孫会社ができるかもしれない、これが商法による会社である以上、営利を追求しないなどと言ってもそれは成り立たぬのではないか。したがって、それと民放公共放送NHKとの関係はどのあたりできちっとやっていくのかということもこれからNHKが今のようないろんな多角的な形で事をやらねばならぬときには直面する一つの問題だろうと私は思うのです。そういう問題もやはり国民の前に正確にさらけ出して、第二の国鉄になっちゃいかぬというのであれば、そこはどのあたりでいくのかということもちゃんとしておくべきではないか。  そういう意味で、中身の議論というのは都合のいいところと悪いところは組織ですから確かにあると思う。それは努めて外へ全部さらしていく。ここまで発展してきた近代国家日本の中における中心的な公共放送NHKが率先して打って出ていくべきときではないのかというのが私の気持ちなんであります。もしお答えがありますればお願いいたします。大臣にもぜひひとつ。
  197. 植田豊

    ○植田参考人 先生すべて御理解の上での御発言のようでございます。私どもの気持ちを若干御説明をお許し願いたいと思います。  放送法に基づいて関連会社を郵政大臣の認可を得てやっておりますが、これはまさに先生指摘のとおり、受信料だけで、職員だけで従来ほとんどの仕事NHKはやってまいりましたが、それだけではだめだ、しばしば公的な事業体の経営の独善性が指摘されるわけでございます。私どももまた世の中の風に当たりなさい、いわば放送法がそう命じているというふうに私ども理解するわけでございます。ただし、さはさりながら、営利追求のために何をしてもいいのかということになりますと、これは公共放送の存在理由が問われるわけでございます。私どもとしては、六十年にわたる公共放送事業の蓄積、ノーハウを国民にお返しをする、おのずから公共放送としての基本使命をわきまえた節度のある、公共放送ならではの寄与を我が国の文化にしていかなければいかぬというような覚悟で取り組んでおるつもりでございます。  また、関連会社、孫会社等の御指摘もございましたけれども、これらにつきましても、事前に十分私どもと協議を求めるなどいたしまして、節度のある運営を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
  198. 尾西清重

    ○尾西参考人 先生のおっしゃったこと、大変一一ごもっともなんですけれども、たった一つ、事実認識に誤りがございますので、記録に残ることでございますから訂正させていただきますが、黒岩選手は生で放送いたしました。ただ、定時番組の「おはようジャーナル」という番組の枠の中で二分間だけ生で放送したものですから、もっと見せろということ、あるいはもっと早くから告知をしろということで、大変大きな反響をいただいたことは事実でございますけれども、生で放送したという事実だけは、そのとおりでございます。
  199. 中山正暉

    中山国務大臣 私も、大阪でハイビジョンウィークがありましたときに、昨年でございますが、NHKのコマーシャルというのを初めて見ました。エンタープライズという会社が映しました、ビールの泡がこうこぼれるところなんか、ハイビジョンですから、もう本当にすぐ飲みたくなるような、大変高度な技術を駆使されて、NHKさんが大正十四年以来六十三年の長い歴史の中で築かれてこられたすばらしい画像を商品化されたものを見ました。さっきもお話がございましたが、九十何万の料金を払ってくれない方々がいらっしゃる。私は、こういうNHKのようなすばらしい組織というのは国民がみんなで支え合わなければいけない、大事に持っていかなければいけないものでしょうけれども、それが、例えばスタジオなんかでも立派なスタジオがありますのに、あれを遊ばせておくのがもったいないような、だれか使わせてあげればそれも商売になるなとか、補助的な収入を得る道も、おれは民放しか見てないなんということを言いながら、NHKも見ていながら料金を払っていただけないなんという人、支えてくださらない方々に対して、我々が別の意味で支えるのが、先生のおっしゃった、できる限りある意味で自由な活動、これは郵政大臣の個別認可でございますから、時折郵政省の判断で、そういう個別認可で経営が成り立っていくような――そして私もあの「二・二六事件」の番組を見て感銘を受けました。いろんな歴史的な背景に目の覚めるような思いがいたしたわけでございますが、ああいう番組はさすがNHKだと思うところもありますので、そういうNHKを私どもは行政の面からも大きなはぐくみの心で見ていく必要があるのではないか、かようなことを先生のお話を聞きながら感じた次第でございます。
  200. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 そこで、今も関連会社のお話がありましたけれどもNHKはやはり営利を追求しない。しかし、それなるがゆえに料金の問題も、あるいはまた今国際放送の問題も、いろいろな意味でどういうふうに打開するかということ、切り開いていくのかということについて、こういう国会の場でも積極的な議論をして、将来の進路というものにお互い協力をし合っていかなければいけない。したがって、民間放送NHKの関係ですね、これは基本的な原則は決まっておっても、今のこの関連団体、関連会社、そしてまた孫会社、業務を大いに広げていくという過程では、そこでいろんな矛盾が起こるのではないか。  こういう問題もやはりNHKはどこまでやるのか、どこらあたり一つの基準か。しかし、一方、NHK経営的に非常に容易ならざる事態にある。まだまだこれからもやらねばならぬことはたくさんある。そういう中でどうやっていくのかということは、私はやはり国民の目の前で、開かれた議論を大いにやりながら、NHKの将来の進路というものを国民理解を得られるようにしていく必要があるのではないか、こういうような認識で申し上げたのであります。  それから、認識違いで申しわけありませんでしたが、私は生放送のところを、実は見せなかった、見せなかったと皆が余り言うものでありますから。ソウルのときは、これは生放送、全部ということでいいですね。
  201. 尾西清重

    ○尾西参考人 ソウルのオリンピックにつきましては、民放連とNHKとで放送権料その他、費用分担をしておりまして、放送の中身も我々と民放でそれぞれ分担をしております。そして、私どもは彼らにもある程度の優先権を与えて、その優先権といいますか、十六日のうち例えば八日間の夜のゴールデンアワーは民放にオリンピック放送を任せるというようなこと、これはロサンゼルスのときもそうしたわけでございますが、そういうときには私どもはやりたくてもできないというような約束になっておりますので、その辺のところは御了承いただきたいと思いますが、当然、できる限りやりたいと思います。
  202. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 時間が参りましたので、最後に希望だけ申し上げたいと思うのであります。  私は、例えば最近、重厚長大の産業構造から大きく転換をした、そこらはいろいろな問題が、かつての重厚長大と言われた地域にはまだたくさんの矛盾がある。都会は都会で肥大化が進んで、そこからまた矛盾が起こっておる。また、農山漁村の方は、ある意味で言えば、従来の農業とか漁業とか、そういう意味で解決のされない、全く違った角度からの、雇用問題という角度から解決をしていかなければならぬような、そういう社会の底流があるわけですね。こういう問題を深く掘り下げた番組放送をやっていただけるのはNHKではないかと私は思っておるのであります。そういう意味での御努力を願いたいということ。  また、経営委員会なり番組審議会の審議内容については、ぜひ広く国民の前には出して、そしてNHKに対する国民理解がもっと草の根まで広がるような、そういう体制にすべきである。どうしても組織というものは、我々を初めみんな組織の中に立てこもって、いいところは宣伝したいが、まずいところ、難しいところはなるべく表に出さぬようにしたがるのが組織の持っておる一つの病弊なんであります。私は、日本の今後を引り張っていくのにマスメディアの持っておる使命というものはまことに大きい。その中でもNHKの果たす役割というものは非常に大きい。そういう意味で、ひとつぜひ情報の公開という方向を大きく発展させてもらいたい、このことを申し上げまして、このことに関する大臣の所見をもう一遍聞いて、私の質問を終わります。     〔委員長退席、牧野委員長代理着席〕
  203. 中山正暉

    中山国務大臣 お話しのように、民放との境目をどうするかという、そういう大きな、いわゆるマスコミ界の混乱を避ける方策をとりながら、先生のお話にもありましたように、NHK経営委員会の方々にもいろいろな面で御努力をいただきながら、今のお話のように情報公開と申しますか、日本は世界に向かって情報を公開しながら、情報というと、昔から暗いイメージがありますが、情報というものを明るく公開していくための海外との国際放送の伸展、それからまた、衛星放送による海外との番組の交流とか、そんなもので使命を果たしてもらいたいという気持ちでおります。
  204. 阿部昭吾

    阿部(昭)委員 終わります。
  205. 牧野隆守

    ○牧野委員長代理 お待たせしました。木内良明君。
  206. 木内良明

    ○木内委員 午前中から長時間に及ぶ審議でございまして、委員長代理から、お待たせしましたということです。参考人皆さんも大変御苦労さまでございます。  初めに、NHKの財政基盤の大宗をなす受信料の問題でありますけれども、五十一年、五十五年、五十九年、それぞれこの改定が行われてまいりました。すなわち、前年度の赤字の体質というものを何とかしなければいかぬという発想のもとで受信料の改定が行われ、新年度予算の中でこの前年度の赤字を吸収し、そうして事業運営が行われ、また赤字が生まれ、そこでまた四年ごとに改定。言ってみれば一定の周期を持って今日的な経緯があり、受信料の改定が行われてきている、こういうことであります。  そこで、昨年十二月の初頭でございましたか、NHK川原会長は記者会見で、六十四年度受信料値上げ改定をお願いせざるを得ない、こう明確な発表をなさっているそうでありますけれども、これについては事実かどうか、まず確認をいたします。     〔牧野委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 川原正人

    川原参考人 そのときの発言の言葉を正確に今は記憶しておりませんけれども、そのような趣旨の発言はしております。  これはたしか、今御審議いただいております六十三年度予算の原案がほぼまとまりかかった段階かと思います。実は私その一年ほど前に、六十三年度はちょうど料金改定四年目になるのだけれども、六十三年度はどうなのかという質問を記者団の方々からいただいていたわけです。そのときに、これは本委員会でも一年前に答弁申し上げたと思いますけれども、六十三年度はどう見ても実質的には赤字になる、したがって、NHKの財政にとっては一つの転換点になるであろうという意味のことをこの委員会でも御答弁申し上げましたし、実は記者諸君にもそういう話をしていたわけです。  一年たって、今度六十三年度予算の基本的な構想ができたようだけれどもどうするんだという御質問がありましたので、六十三年は転換点と思ったけれども、とにかくこれは料金据え置きでやります、やれます。ただし、どうしても赤字が出てきます。したがいまして、このままでいけば六十四年度は現行料金でやることは非常に難しい。料金についての何らかの措置をお願いせざるを得なくなるであろうということは発言いたしております。
  208. 木内良明

    ○木内委員 昨年の予算審議のとき、六十三年度についての料金改定に対する会長の答弁を私はよく覚えております。私もその審議を行った当事者であります。たしかあのときはあうんの呼吸で理解願いたい、こうおっしゃったのです。それで、私は六十三年はないのだ、しからば六十四年はどうなんだ、こう申し上げたところ、これについては明確な答弁がなかった。こうした経緯も私は知悉をしているわけでございまして、この受信料値上げというものは、真剣な経営努力、効率的な事業運営あるいはさまざまな合理化、こうした努力なくして安易に行われるべきではないという持論を私はかねてから申し上げてきているわけであります。したがいまして、国民の共有財産、公共放送としてのNHKの財政基盤のあり方については国民の目の前に中長期的な総合計画というものを提示して、国民皆さん理解をされ納得をし、その上で国会の審議があり、さらに進められていくべきである、こういう点もたびたび私は申し上げてきたところであります。  そこでお聞きするわけでありますけれども、場当たり的な受信料の改定ということではなく、申し上げた中長期の計画というものがいつ策定されるのかという点について、まず確認をいたしたい、こう思うのであります。昨年の会議録で会長はこう答弁されている。「一方支出の方は非常に不分明な点が多い。特にオリンピックの経費につきましては実はかなり膨大な契約をせざるを得なかった。」「本来ならばここで長期の計画を持っているべきでございますけれども計画と言うに足り得るものがまだできないのが率直なところでございます。この点はつきましては、今言ったような不確定な条件を早く見きわめまして先々の計画をつくりたいと今考えておるところでございます。」これに類似した答弁というのは実は毎年会長から行われている。このNHK予算審議というものは決してセレモニーではないと私は思います。その審議が行われたという事実だけで、国会の審議の過程というものが無視されるのであれば国会の審議は必要なくなってしまう。一体、会長が昨年答弁されたような中長期計画というものがいつでき得るのかということをまず会長にお聞きいたします。  昨年私は当時の唐沢郵政大臣にも同じことをお尋ねしておりました。そのときはやはり、「長期的な展望に立った事業運営を行うようにNHKに要請しているところでございます。」これも歴代の大臣が言ってきている。しかしながら、今なおこれが未成熟といいますか策定されていない。国会というのはやはり国権の最高機関であり、国民意見を代弁する、代表する形で我々はこの審議に臨んでいるわけでありまして、審議の経過というものが十二分に尊重されなければならない。この議論というものは機能的に積み重ねられて、そして新しい検討テーマに対する結論が出、あるいは具体的に結実を見るような行政のあり方あるいは事業運営のあり方というものがなければならない、こう思うわけでありまして、この点について、初めに会長それから郵政大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  209. 川原正人

    川原参考人 今までの審議のことは私も重々承知しているつもりでございますし、十分におこたえできてないのはまことに申しわけないと思っております。  ただ、率直に申し上げまして、いろいろ先の予定される事業といいますか支出といいますか、これはある程度そのときどきで見当がつかないことはないのでございますけれども計画というものをつくります場合に最大の問題は、その収入の方をどういうふうに見込み得るか、見込めるかというところが整いませんと長期の事業の収支というものを私ども自信を持ってお示しするものができない。  そこで、今私ども一番頭を痛めておりますのが、やはり現在の料金のままで、このままでは六十四年度以降経営というものは実質的に成り立たない、赤字がますますふえていく。それはもちろん、その赤字分をすべて借金で賄うということが一つ計画だと言えば、それはできないことはありませんけれども、借金だけで、その借金がいつどう返せるかもわからないような事業計画というものはあり得ないと思います。  仮にある年、実質的にはこの六十三年度もう既に債務償還の金は借入金、つまり借りかえで賄うということがこの予算に入っているわけでございますけれども、その程度の話ならよろしいですけれども、これが通常の事業収支までも借金で賄うというような形になってまいりますと、これは健全な経営の財政計画ではなくなってくる。そのときには、当然収入の方はどうするのかというめどを持たないと経営計画はできませんので、まさに料金を六十四年度以降どうするのか。  そして、もう一つ一番大きい問題は、衛星放送を、今試験放送でございますけれども、私どもとしては早くこれを本放送とし、早くこれを事業として独立できるような体制に持っていきたい。つまり、この衛星の事業を賄う収入をどうやって求めていくか。つまり、はっきり言ってNHK受信料以外に収入はないわけでございます。若干の副次収入はありましても、この衛星放送を賄うようなものはとてもありませんので、結論的には受信料を何らかの形で、現行料金とあわせまして新しい衛星の料金体系というものを考えなければなりません。そのめどを早くつけて、その上で経営計画を立てていきたいと考えております。  前置きが長くなりましたが、結論的には、この次の予算を編成するときには当然経営計画がなければならない、そしてその中で料金のことにつきましても私ども一つの決心をして各方面にお願いをしなければならないと考えております。
  210. 中山正暉

    中山国務大臣 六十三年度収支予算の中でも百二十四億円という事業収支不足額が出ておりまして、今会長からも御答弁がございましたが、先立つものは金でございます。これは中期防衛計画みたいに何カ年でどうするということであればかなり将来の計画もお立てになりやすいのではないかと思いますが、合理化しろ、効率化しろということと将来の計画を立てるということが、言葉ではどんなことでも言えますけれども、何か非常に絵にかいたもちになる可能性というものを内部でも大変心配していらっしゃるのじゃないかなと思います。その意味で、先ほど木内先生からお話がありましたように、仮にも国会の権威にかけましても、行政の権威にかけましても、ある程度我我が意を決しなければならないところがあるのではないか。毎年同じ答弁を繰り返しておるということは大変むなしゅうございますので、私の率直な気持ちを申し上げました。
  211. 木内良明

    ○木内委員 本委員会におけるNHK予算審議というものはそれなりの重要な意味を持っているわけでありまして、また一つ一つキーワードとなるような答弁をいただきながら進んでまいらなければいけないと私は思うのです。再三にわたって積年繰り返されてまいりました中長期的な総合計画について、会長の方から衛星放送事業が一定のめどになるであろうという意味の答弁があったと受けとめたい。そういたしますと、この中長期計画というものは来年度予算審議の際にはお出しできますか、そういう答弁だったと思いますが。
  212. 川原正人

    川原参考人 私どもはその努力をしなければならないと思っております。
  213. 木内良明

    ○木内委員 効率化あるいは合理化、さらにまた財政的な安定化という大変に異なった部面のいわば融合というところに経営の安定化というものがあるわけでありますけれども、確かにいろいろなファクターが複合的に隘路を多くしているということもわかります。しかし、何度も申し上げるように、この中長期計画につきましてはぜひ御答弁のとおりにお出しできるように、策定できるように御努力をいただきたい、このことを重ねてまず申し上げておきます。  後に触れようと思ったことでありますけれども衛星放送の問題、今会長から言及がありましたので、何点かにわたってお聞きをいたします。  同僚委員から何点かにわたってこの衛星放送の今後のあり方についての質疑がありました。そこで、当初六十五年を推定しておられたこの衛星放送の本放送実施、またある面では百万台が一定のメルクマールであろうという答弁も何度かありました。そこで改めて確認をいたしますので端的にお答えをいただきたいわけでありますけれども、本放送実施の時期の見通し、これはいつを想定しておられますか。
  214. 成川富彦

    成川政府委員 先ほど来いろいろと答弁させていただいておりますとおり、本放送をいつにするかについては受信機の普及状況あるいは受信者の要望、それから六十五年に打ち上げられますBS3aの継続性といったもの、あるいはNHKの要望、希望というものを総合的に勘案して定めるということでございまして、今いつの時期とかいうことは申し上げられる段階ではございません。
  215. 木内良明

    ○木内委員 NHKの方からの御答弁をお願いします。
  216. 川原正人

    川原参考人 私どもとしては、本放送ということと受信料ということは理論的には別だという御議論もありますけれども、本放送、そのときには受信料の問題、衛星の料金の問題は当然決めてかからなければならないと思いますし、実はNHKの将来の財政、事業計画を見た場合、そして今の衛星に対する私どもの対応を考えた場合、これは国会からも早く普及をするようにという御決議もいただいておりますし、郵政大臣意見書にも衛星の普及、発達ということにも努力せよという御指摘もいただいておりますし、私どもも全くそのような観点で考えておりますので、そういう意味からいえば一日も早く本放送、そしてまた料金の設定ということを考えたいと思っております。  ただ、現実論として、これが年度の途中でそういうことが可能なのかどうかということを考えますと、これは技術的にはそれも不可能とは思いませんが、国会の御承認さえあれば料金の問題は解決できるわけでございますから、国会が年度の途中といえども開かれている段階を考えれば不可能とは思いませんけれども、実際問題としては、年度の途中ということは今ちょっと考えにくいのではないかと思っております。
  217. 木内良明

    ○木内委員 先ほど郵政大臣の御答弁の中に日本人の水と安全に対する考え方についての言及がありました。これは私も読んだ本の一冊でありまして、イザヤ・ベンダサン著の「日本人とユダヤ人」という本の中に出ております。これは地理的、文化的、歴史的要件の違いからくる国民性の差というものを非常に端的にわかりやすく著した本でありまして、何でこんなことを申し上げるかといいますと、今水と安全に大変に価値があるということは我々国民性としてわかっているわけでありますが、情報に対する評価、価値の持ち方というものも大変に大きな時代になってきている。したがって、今会長の答弁にもありましたが、ちょっとグレーゾーンになっている衛星放送実施時期、受信料の問題、国民皆さん衛星放送に対する期待、また思いというものは、いわばただでこれを享受できるとは思っていないという部分もしっかりとしてあるわけであります。  水と安全の話が出ましたので、あえて私は申し上げるのであります。早いところ、この実施のあり方、衛星放送をいかに受信できるか、また国民個々の生活の部面において衛星放送というものが、情報の収集を初め、あるいは文化的な面においていかにこの利点を享受できるかということに大きな関心が集まっているわけであります。その意味から、本委員会では昨年来にわかに衛星放送に対する議論というものが高まってきているわけであります。  そこで、私は川原会長に苦言を呈したいのであります。  年度の途中で受信料云々について言及するのはいかがなものかというお話がありましたけれども、昨年の委員会におきまして林参考人がこういう答弁をされているのです。この発言があったのは昨年の八月二十七日です。「すなわち、来年度事業計画を策定する段階、またその段階におきましては今後の長期的な一つの姿というものを見定めなければならないと思っておりますが、その中には衛星放送に対する財源受信料の問題というものもあわせて結論を見出していかなければならない」、こうはっきりと答弁されているのです。ここで言うところの「来年度事業計画」、今審議しているところの六十三年度予算事業計画の中に昨年答弁された衛星放送に対する財源受信料の問題というものはどこにはっきりしておりますでしょうか。
  218. 林乙也

    ○林参考人 昨年の御質問に当たりまして、ただいま先生の方から御指摘がございましたようなお答えを私申し上げたことを十分自覚いたしておるところでございます。  私どもといたしましても、六十三年度事業計画の策定の中におきましても衛星放送の問題が最大の課題であるというふうに考えつつ、またそれにつきましての一つの長期的な計画見通しというものを得たいというふうにそれなりに努力したつもりではございますけれども、六十三年度事業計画と申しますものは五九―六一までの計画の成果の実績を引き継いだ中で行う、また受信料につきましては現行の料金を維持するという中で、衛星の計画と申しますのは結局全体の財務問題との絡みなしに単独ではなかなか決めがたいという事情もございまして、来年度事業計画におきまして長期的な見通しを私どもとしてはそれなりに検討しつつも、今回御提出いたしておりますような形で衛星放送の長期計画の問題、それは当然受信料についてどういうふうに考えるかというような一つの私どもとしての結論につきましても、いましばらく経過を見る中でやらざるを得ない、またそれが適当ではないかというふうに考えて今回のような計画をお出しいたしたところでございます。
  219. 木内良明

    ○木内委員 大変な御努力をなさっておられるのはよくわかりますが、私が指摘しておりますのは、国会における審議の経過、過程というものを最大限に尊重しなければならないという点の認識であります。同じこの場で来年度事業計画の中に受信料やあるいはこの財源の問題については結論を見出してきます、言ってみればそういう意味の答弁をされていて、なおかつ国会にお出しになっていないというこの事実に対する認識はぜひしっかりしていただかなければならない。その御努力や御苦労は多としながらも、審議の位置づけというもの、これについての率直な御見解を私は改めてお伺いしたい。
  220. 林乙也

    ○林参考人 結果的に昨年お答えしたことによりまして今回計画をとりまとめ得なかったことを、まことに遺憾に存ずる次第でございます。
  221. 木内良明

    ○木内委員 何度も申し上げますように、これは大変なまた難しいテーマでもございますので、林参考人初め関係各位におかれましては、可及的速やかにこの事業計画の中に具体的な問題が盛り込まれるように強く要望いたして個々の問題に移ってまいりたい、こう思います。  これはまず推定で結構でございますけれども、さまざまな、衛星放送の各部面にわたる将来的なあるべき形というものが報道をされ、国会の場ではしっかりとした答弁が行われていないというのが私の率直な印象であります。例えば受信料の規模は大体幾らぐらいになるものか、単純に計算いたしまして衛星放送受信料が、施設費が百五十億かかる、先ほどメルクマールという話がありましたが、仮に百万世帯として計算をいたしますと、単純計算ですけれども世帯当たり一万五千円になる、単純にですよ、これは。そんなにかかるものかと報道記事を見て感じる人もいる、あるいはこれは地上放送一般的な受信料との併存の中で独特の計算方法によって設定されてくるのか、そうすると九百九十円であるとか千四十円であるとかプラス幾らという形になるのか、あるいは独立した料金体系になるのか、この辺への率直な疑問というものを国民各位は持っておられるわけでありまして、想定される範囲で結構でありますので、いかなる形になるのか御答弁をいただきたい。
  222. 川原正人

    川原参考人 率直に申し上げましてその辺が私どもも今議論をしている最中で、はっきりしたこうなるであろうというものを持ち得ない段階であります。ただ、私、全くもう独断で申し上げれば、御指摘のとおり今でも百五十五億円の年間経費がかかっております。もし百万の方が、しかも全員きちんと受信料をお払いいただくという前提でございます、そうすると年間で一万五千円、月に千二百円ぐらいになりましょうか。  ただしこの衛星放送は、もし本放送ということになって、しかも何らかの形で受益者に負担をしていただく、つまり料金をちょうだいするとなれば、今は例えば国内放送の再放送なんかの著作権料というものは、普通の放送であればかなりの額を、最初にお払いした額の五〇%ぐらい出すはずでございますけれども衛星放送はまだとにかく試験放送だし無料なんだからと、五%ぐらい、十分の一ぐらいしかお払いしてない、それで了解をいただいている。海外からいただくニュースにしろ、番組にしても、みんな同じように、十分の一ほどでないまでもかなり低額のお金でもってこれを今集めております。したがいまして、本放送になれば百五十億では到底済みません。恐らくその数倍の経費になってくるだろうと思います。仮に五百億かかるともし計算すれば、百万の方で御負担いただくとすれば年間五万円、月に四千円ぐらいのものをちょうだいしませんとその一年の収支は採算が合いません。ただし百万の方が二百万になればその半分近くで済むわけでございます。  そういうことを考えますと、どのくらいに受信者が将来伸びていくであろうかということを推定しながら、そうであれば仮に五千円でなくても、これが三千円ならば、最初の年は赤字だけれどもあるいは二年か三年後に黒字になるかもしれない、二千円ならば何年たつたら採算が合うようになるかもしれない、そういう組み合わせが非常に複雑になってまいりますので、単純に百万という、私ども日本人の感覚で五十万とか百万とか二百万というのがあらゆる意味のメルクマールになると思うのです。百万のときにはある種の決心をしなければならぬと思っています。そのときの普及の趨勢とかあるいは番組にかかるであろうお金とか、それからいま一つ普及の決め手になるのは、私は機械の値段だと思うのです。もう少しメーカーに努力していただいて、流通段階の方にも御努力いただいて、私は、もう少し安くなるはずじゃないのか、それを今期待しつつ、そうなればまたこれで普及のスピードも変わりてまいりますし、その辺のことを確かめませんと、単純に何百億かかるからそれを百万で割ってというふうにはなかなかいかないわけでございます。一番簡単なのは、初年度そういう割り算をして、受信者がふえていけばどんどん値下げをしていくという、そういうやり方もないことはありませんけれども、それはやはり事業一つ経営ではなかろうと思うのです。その辺をこれから後、数カ月の間にはっきり見きわめをつけていきたい。将来のNHKの財政問題、経営問題の一番のキーポイントはまさにそこにあるだろう。  その見きわめを、では幾らぐらいかというのは正直申し上げまして今のところまだつかないというのが正直のところでございます。しかもこれは、別に大勢の議論をして何かまとめたとか経営委員会に諮ったというものではなくて、私、今独断でもって申し上げている数字でございます。
  223. 木内良明

    ○木内委員 今会長受信料の協議、議論は既に行っておられるのではないかと推測をするわけであります。ただ会長が今答弁されましたように、非常にこれは大きな要素、それぞれの問題点が相乗的に鳩合されるわけで難しいと思うのですね。普及台数がどのくらいで、制作費がどのくらいで、受信機の価格がどのくらいでということで、中には、今言われた傾斜式の受信料というものにまで言及されなければならないという難しい問題ではありますけれども、今御答弁の中でいみじくもあったように、年内数カ月以内にこの結論を出さなければならないということでございましょう。かなりもう議論は煮詰まってくるか、あるいは緒についたか、仮にこれは、案として出ている数字ぐらいここではお出しになれませんか。
  224. 川原正人

    川原参考人 文字どおり、私、今独断でお答えしたので、とても案という数字にまで至っておりません。  それからもう一つ申し上げておきたいのは、それでは、その衛星にかかる経費はこのぐらい、だからこのぐらい御負担いただきたい、その場合に、それを全然別個の受信料というふうにするのか。それと、今までの地上の料金、地上のというのもおかしいのですが、今までの放送の料金、これをあわせて両方ごらんになっている方は幾ら、地上の放送だけごらんになっている方は幾ら、多分そのような組み合わせになるんじゃないかなというふうには考えておりますけれども、まだ金額は、とても部内も意見が一致するところまでいっておりません。
  225. 木内良明

    ○木内委員 そこまでの答弁が出ましたので多としたいと思います。  何点かにわたってお聞きしようと思ったわけでありますが、最後に、オリンピックの放送権料の問題についてお尋ねをいたします。  六十三年度予算の中で、特に放送権料、番組制作費六十七億円というものがある。オリンピックの放送権料は、一九八四年のロサンゼルス・オリンピックで千八百五十万ドル、今度のソウルで五千万ドル、七十七億円と高騰し続けてきている。これはかなりの財政負担になっているわけであります  そこで、これは昨年の審議の際にも郵政大臣から答弁をいただいて、政府のスタンスというものについては知っているつもりでありますけれども郵政大臣として、今後の四年ごとに行われるオリンピックに対する放送権料の問題をどう考えていかれるか。これが実は政治的な側面でありますとかさまざまな表に出ない、表に出ないと言うと大変これは不謹慎な言い方になりますけれども、ある段階では確定し得ない要素等があり、この放送権料の契約というものは大変難しい折衝の過程を踏んでいくだろう、こう思われるわけであります。ただ、ロスで四十三億円であった、ソウルで七十七億円だった、一九九二年にはスペインのバルセロナで行われると、こういう幾何級数的といいますか、天井知らずで放送権料が上がっていくということについてはいかがなものであろうかという率直な疑問を私は持つのでありまして、まず郵政大臣から御答弁を承りたい。
  226. 中山正暉

    中山国務大臣 ソウル・オリンピックが今お話のございましたように五千万ドル、これはNHKが八〇%、民放が二〇%、民放の方が十四億六千万円を負担するということでございます。個々のスポーツ等の放送権料の額についてはその関係当事者間の交渉で決定されることでございますけれども、できるならば何とかこれは国際的な話し合い、四年に一度ずつあるわけでございますし、百七十カ国ぐらいの国があります中で、今度は百六十一カ国が来るわけでございます。日本のオリンピックのときは九十四カ国だったと記憶しておりますが、そんな意味で、参加の多いこういうオリンピックの中では、どうしても先進国が負担をいろいろな面で、オリンピック全体の経費の問題が絡んでくるのでそうなるのかもわかりませんが、その辺はひとつ着実に、NHKに大きな負担をかけないようなことを配慮すべきではないかと思います。
  227. 尾西清重

    ○尾西参考人 放送権料がウナギ登りといいますか、天井知らずということで推移してまいりましたのは御指摘のとおりでありますが、その最大の原因は、アメリカの三大ネットワークの競り合いといいますか競争にあろうかと思います。アメリカでのオリンピックをめぐるテレビ戦争がオリンピックはもうかるという意識を関係者に植えつけていることも事実でございまして、アメリカの示す金額がすべての算定基準になって各国放送機関との交渉がスタートしているのが現状でございます。  四年前のロサンゼルス、今回のソウルは、日米間のテレビ界の相違点について、かなり長時間相手を説得しなければならなかったという経緯がございます。今回は日本に対して、日本が経済的に大きな力をつけたということもございますが、アメリカの三分の一という額を強硬にソウルは主張しておりまして、それを最終的には六分の一、五千万ドルで妥結したわけでございます。アメリカにおけるテレビ界の競り合いというのは、ちょっと今のところ鈍化は考えられないという客観情勢がございまして、今後とも、ソウルと同様、あるいはロサンゼルスと同様、粘り強い交渉が必要になってくるのではないかと思っております。  なお、NHKの提言によりまして、次回のバルセロナ以降は、放送権交渉を開催国の組織委員会と行うのではなくて、国際オリンピック委員会と直接行う方向で事態が進んでいることを御報告申し上げておきます。
  228. 木内良明

    ○木内委員 国際オリンピック委員会が窓口になるという、また新しい考え方が明確になりました。  以上で終わります。
  229. 塚原俊平

  230. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 まず、NHKの国会中継の問題に関連してお尋ねいたします。  NHKの国会中継が国政と国民を結ぶ上で非常に重要な役割を果たしているということは共通の認識だろうと思います。政府の施政方針あるいは代表質問、そしてその中で予算委員会は、各党と政府が一問一答形式で問題点を浮き彫りにしていくという点で、政府の政策と各党の主張点、そういうものがいながらにして、国民から見ますとより深く知り得るという重要な場であるというふうに思います。ところが、その予算委員会の中継が、午後六時あるいは午後五時に打ち切られまして、残余の質問の一部あるいはかなりの部分が、非常に視聴が困難な深夜に回されるという事態が続いております。  この問題につきまして我が党はたびたびNHKにも中し入れをいたしました。私も、会長にも直接お目にかかって申し入れたこともございますし、また、昨年の本委員会でもこの問題を取り上げたところでございます。ところが、一向にその基本が改善されないということであります。  それで、また、そういうNHKの姿勢が多くの国民から批判を浴びる事態が起きました。言うまでもなく、去る二月六日の予算委員会で、我が党の正森議員の質問中に、浜田前予算委員長がその質問を遮って暴言を繰り返す、そういう事件があったわけであります。そのときNHKは、予算委員会が大混乱に陥って、テレビを見ている人たちが一体どうなるかというふうに注目をしておった、まさにそのときに、六時で機械的に打ち切った。しかも、その後の七時のニュースでこの大混乱については一切触れない報道しか行われなかったという。これは私は、大失態だというふうに思っております。  それで、まず、こういうやり方に対して視聴者からNHKに抗議の電話が殺到して、放送センターの代表電話がかかりにくい状態になったというふうに報道もされておりますが、この問題をNHににかかった電話はどのぐらいか、その内容はどういうものであったか、これをお聞きいたします。
  231. 尾西清重

    ○尾西参考人 二月六月の予算委員会の六時での打ち切りにつきまして一体どういう反響があったかという御質問でございますが、視聴者から極めて多数の電話反響がございました。大体千六百件ぐらいでございます。  この反響の中身は、当然でございますが、六時で中継を打ち切ったことと、それから七時のニュースで取り上げなかったこと、さらに国会中継の流動的な編成によりまして「武田信玄」の再放送とか「大草原の小さな家」の放送時間の変更とかということについての反響でございます。しかし、最も大きな反響のございましたのは、六時で中継を打ち切ったことに対する反響でございます。特に、これが異常な状況の中で打ち切ったということで反響がございました。
  232. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 もう少し詳しくお話しいただけるといいのですが、私は、NHKからいただいたメモでありますからそれで申し上げますと、「なぜ、大事なところで打ち切ったのか。視聴者の感情として、不満が残ることぐらいわからないか。」こういう声、「十八時で中継を終えることは、一応理解するが、あの場合は延長すべきだったと思う。」あるいは「十八時で終える方針そのものを改めてはどうか。」それ以外もいろいろありますが、七時のニュースの問題でもあります。「”ニュースNHK”と思っていたが……」裏切られた、こういう声ですね。まさにあの日の状態はそのとおりだ、こういう視聴者からの電話のとおりだというふうに私は思うのです。我々のところにも、本部とか正森議員の部屋には相当激励の電話が参りましたし、私のところは逓信委員でありますから、どうしてああいうことになるのだという問い合わせの電話も参りました。  また、新聞にも読者の投書もたくさん載っております。一つの例としまして、これは朝日の二月八日の夕刊、「今日の問題」というコラムでありますが、こういうふうに指摘をしているわけですね。「異様な場面だっただけに、NHKが中継を午後六時で打ち切ったのが残念だった。しかし、視聴者がもっとおかしいと感じたのは、午後七時のニュースでこの事件に全く触れなかったことだ。」「事件の一部始終を中継していたのはNHK自身である。視聴者にしてみれば、何をしているのかといいたくなる。中継打ち切りにしても「もっと大幅に予定を変更して、最後まで流せないのか」と疑問をもつ。」「関係者の中に「慣例どおりに流しておけばいい」といった気分がなかったかどうか。テレビ中継は国会と国民をつなぐ重要な輪である。厳しい責任感をもって、報道に当たってもらいたい。」こういう指摘も論評で行われております。  NHKはこうしたいろいろな指摘視聴者からの抗議の電話も含めまして、こうした批判に対してどうこたえられるのか、まずその点をお聞きしたい。そしてまた、この問題をめぐって内部でどういう検討が行われているか、この二点。
  233. 尾西清重

    ○尾西参考人 国会中継につきましては長い歴史と経緯がございます。先生承知のとおりでございます。ラジオは昭和二十七年、テレビ昭和二十八年からございます。国会における審議のスケジュールというものが大変流動的でございまして、その中で政治的公平を確保するという考え方から私どもはある一定の原則を設けて、昭和五十三年以降この原則に従って放送いたしております。  その原則と申しますのは、本会議での政府演説、代表質問については全部放送いたします。衆参両院の予算委員会の総括質問は、各会派の第一質問者を放送しております。そのほか、重要案件を扱う特別委員会を放送いたしております。放送時間は午前十時から十一時五十五分、午後一時から六時、大相撲がございます場合には五時まででございます。上記の時間に放送ができない部分については、午後十一時台に録画と録音で放送いたしております。それが原則でございます。  二月六日の中継放送のとき、なぜ六時で放送を切ったかという御指摘について申し上げれば、この原則に従ったということでございますが、あの場合、国会中継ではなく突発的に起こったニュースだという考え方から、引き続き伝えるべきであったという考え方もあり得る、またそう言う方がおられるというのは御指摘のとおりでございます。放送時間が終了する直前のことでございましたので、かなり難しい判断を求められたケースであったと我々は思っております。  また、七時のニュース放送しなかった件につきましては、七時過ぎには浜田委員長が記者会見を行うというような話もございまして、現場ではそうした情報も十分取材し、まとめた上で放送すべきだという考え方から、七時のこュースでは取り上げなく、そして事実、八時四十五分ではトップのニュースとして詳しくお伝えしたわけでございます。しかし、視聴者の方々は、御指摘のように七時のニュースはその日一日のニュースをまとめて見せてくれる時間だという期待がございます。また、その期待に沿い得なかったということだけではなくて、NHK報道姿勢というものについて疑問を抱かれたという結果になったわけでございます。このことにつきましては、放送の責任者として私は、大変申しわけない、編集上の判断ミスということだけでは済まないことがあろうかと思っております。同じようなことを二度と繰り返すことがないように、視聴者の期待に的確にこたえる報道は力を尽くすよう今後は努力してまいりたいと思っております。
  234. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 番組の編成権というのはもちろんNHKの自主権でありますから、その前提の上でいろいろ申し上げているわけでありますが、今の御答弁にもありましたように二つ問題があったと思うのです。  一つは、かねがね私たちが申し入れもしておりますし、これは、昨年の衆議院予算委員理事会で各党協議になった問題でありますが、やはり重要な放送だから3チャンネルに切りかえて中継するとか、それから深夜の録画部分をもっと早められないか、これは予算委員理事会の総意としてNHKに申し入れもした経過があるわけなんですが、その立脚点として二つあると私は思う。  一つは、やはり民主政治の発展はとって国民の知る権利を最大限保障していくということは極めて重要だ、その国民の知る権利が事実上制限されるという事態が起きるわけですね、一部深夜に回るということによりまして。この点で非常に重大な問題だと私は思う。それから第二点は、放送法四十四条にあります政治的公平の原則、やはりこれに反するものだというふうに私は考えるわけです。そういう観点からいいますと、五時、六時ということを決めておられるそのやり方そのもの、これをぜひ再検討するべきではないかという提起を前回もしたわけでありますが、同様の問題点が現在に至るもやはり引き続いているという状況だと思うのです。  これは、私はやればできることだというふうに思うのですね。この前も申し上げましたけれども、高校野球の場合にはチャンネルをかえて継続するということがあります。3チャンネルの場合には規定云々というお話もありましたけれども、その点も、以前会長のところへお伺いしたときのお話の中で絶対にできないものではないというお答えもいただいております。ですからそういうことも可能でありますし、つい先日の大阪場所の大相撲のときには1チャンネルでそのまま時間延長したのですよ、たしか時間としては二分でしたかね。しかし、それもしゃくし定規にいいますと六時で打ち切るというふうなことになるわけですが、大相撲の場合は六時を延びても放映を続けたということもあるのですね。ですからこの点は、私はこれだけ視聴者意見もある折ですし、ぜひ再検討をしていただきたいといいますか、そういう提起を重ねてしたいと思うのです。  それからもう一点は、あの問題は、その後の国会にもいろいろ影響が起きると思う、それから国民の大きな関心も呼んだという点で、まさに国政上の非常に注目される出来事だったわけであります。ですから、NHKは七時に放送せずに今御答弁があって八時四十五分からやったということですが、民放はほとんど六時台に放映したわけですね。それだけにニュース価値の評価といいますか、その問題が一つあると思うのですね。その点でどうも軽視があったのではないかといいますか、原則に縛られる余りに、ジャーナリズムとしての感覚まで閉ざされたといいますか発揮されなかったというような問題点を非常に感じるのです。そういう点で私はこの問題で会長に御意見をお伺いしたいのですが、会長もたしか報道畑の出身だというふうに承知しておるのですが、そういうことも含めましてどういうふうに考えておられるか、お聞きしたいと思う。
  235. 川原正人

    川原参考人 まず第一に、今放送局長お答え申し上げましたけれども、午後七時のニュースで国会の予算委員会のいわば混乱といいますか、いろいろな異常な雰囲気を報道しなかったことは、やはりこれは私どもの失態だと思います。午後七時のニュースはああいう事態というものは当然視聴者に対して報道すべきものであったと思います。  それから、午後六時のところの判断というものは、これはいろいろな形があったと思いますし、あの場に限ってだけ言えば、あるいはしばらく放送を延長することができれば恐らく視聴者の期待には最もこたえ得たと思うのです。その意味ではもう少し何らかの措置がなかったかなという反省はあります。  ただ、国会中継のありようにつきましては、もちろん御指摘のように国会というのは大変重要な場でございますし、とりわけ予算委員会の質疑は各党のお立場と政府の見解がかなり詳細にわかる場でございますので、できるだけ視聴者の方にはお伝えしたいと思います。私どもは先ほど尾西から申しましたような原則に基づいてすべて報道はいたしますけれども、ただ国会の方もいろいろな御事情で時間等も不定期になりますし、あるいは過去においてはかなり遅くまで御審議があったことも私自身も知っております。NHKといたしましては、もちろん国会の報道が重要ではありますけれども、それ以外のいろいろなニュースもございますし、また報道機関としましてはあるいはテレビといたしましては、国民の多様な御要望にこたえていかなきゃなりません。国会のことばかりというわけにはまいりません。例えば、夕方の時間であれば、あるいはその御家庭でニュースその他を御希望になっている向きもあるでありましょうし、大相撲等の中継であればこれを期待されている視聴者もかなりいらっしゃるわけでございますから、やはり一つの原則を持って対処いたしませんと編成上非常に難しい問題が出てまいります。  それから、政治的な公平というものはよくわかりますから、私どもは特定の政党とか特定の議員の方を対象にして時間を切ったり延ばしたりということは絶対にいたしておりません。時間でもって切って、たまたまそこにぶつかられた質問者の方の質疑応答が入らなかった場合に限って、その方がどの政党であるか私ども全く存じません、事前にはわからないわけですから。たまたまそこになった方の場合は、それを夜遅い時間になりますけれどもそこで必ず報道する。午前十時からずっとこの放送をやっておりますので、本当に政治的な公平というのをもし機械的におっしゃられますと、テレビとしてはどのようにやってもある種の不公平感はどうしても残らざるを得ないのです。しかも夜十一時あるいは十一時過ぎの時間というのは、この種の国会の質疑等をごらんいただく場合に私は必ずしもそんなに不公平な時間とも考えません。  確かに高校野球は教育テレビに切りかえてやります。これは、高校野球というのがあらかじめ何月何日にあるということが完全にわかっております。それからもう一つは、これは高校野球でございますから高校の春休みの時期と夏休みの時期にあるわけで、教育テレビにおきましては学校放送等もございません。それから夕方の教育テレビ番組もあらかじめわかっておりますのでいろいろな対応ができますけれども、国会の方は、大変申しわけありませんけれども、こちらであらかじめ承知することができませんので、これはひとつこういう原則で、むしろ原則を守っておきませんとかえって不公平な場合が生じるのではないかというふうに、そのことを私どもは心配いたします。あくまでNHKの編集上の立場からこういう措置をとらせていただいているわけでございます。
  236. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 国会審議が中断したりしますといろいろ編成上御苦労が多いだろうということもわかります。しかし同時に、やはり原則的な点、私どもも申し入れでも申し上げておりますし、前回の議論でも言いましたが、どの党であれそういうことがあってはまずいんだ、公平の原則に反することになる。実態的にはこの十年間をとりましても共産党が回ることが多いのですが、私たちの基本的な立場はそういうことであります。十一時台が必ずしも不公平ではないという会長の御発言はやはりどうにもいただけないと私は思うのですね。実態としては十一時二十五分からでありますし、以前はそれが一時間以上も、つまり午前零時を過ぎて午前一時まで放映されるというような事態もあったわけですから、よほど努力する人でないと、到底普通の視聴者が対応できる時間ではないということになるわけでありますから、それで公平の原則が侵されてないというのは当たらないということは申し上げておかなければならぬと思うのですね。  それから、やはり国会中継に対する国民の関心が高まってきつつあるということを私感じるのです。これはけさの朝日新聞の「声」欄にたまたま載っておりましたが、「もっと見たい国会実況中継」という表題のものなんですね。四十一歳、東京の主婦でありますが、こういうふうに言っておられますね。やはり視聴者の声というのは大事にしなければいけませんので御紹介したいと思います。   私がNHKに望みたいことの一つに、国会会期中の実況中継を大幅に増やしてもらいたいということがある。政治に特に関心を持つでもない主婦の私がこう考え始めた契機は、例の”浜幸事件”であった。   なぜ、あんな醜態が国会で起きるのか。われわれ有権者にも大きな責任があるのではないか。選挙の時だけの公約を信じたり、俗に言うドブ板政治に満足したりで、政治の監視を怠っているのではないか。 云々とありまして、「こんなわけで放送局中一局ぐらいは一日中」つまり終わるまで「国会中継をする局があってもよいと考える。これこそ公共放送としてのNHK役割ではなかろうか。」こういう意見まで出始めておるわけであります。  たしか会長は今の形が未来永劫変わらないというものでもないという答弁もなさっておるわけです。これほど関心が高まり、批判も起きているという状況でありますから、これまでのやり方をかたくなに固執されるのではなくて、今こそ再検討する大事な機会ではないかと私は思います。その点で再度会長に決断を求めたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  237. 川原正人

    川原参考人 番組の編成というものは確かに未来永劫変わらないというものではございません。私ども常に視聴者の方の御意見、反響等々を承りながら、また私ども報道すべき、あるいはお知らせすべきニュースなり教育番組なり、あるいは時に娯楽番組を含めまして、どのようなバランスでどのような時間帯に放送すべきかということは常に検討いたしております。そのような意味ではもちろん未来永劫不変というようなことはあり得ないわけでございますけれども、少なくとも今御指摘の国会中継につきましては、これは長年にわたりまして国会の場においても各委員委員長、政党の方々といろいろお話をした上でようやく今この辺が私どもの編集上の立場からいっても最も妥当なところだというところで編成をしておりますので、今すぐにこれを変えるつもりはございません。
  238. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 非常に残念といいますか遺憾であります。まさに矛盾が非常に明らかになったわけですね、今回の事態でも。なお考えを変えられないといいますか、私はそれは引き続き検討していただくように重ねて要請をしておきたいと思います。  次に、時間が限られておりますので、NHK役員の兼職の問題についてお聞きしたいと思います。  放送法三十条で、会長、副会長理事は営利を目的とする団体の役員となってはならない、営利団体の役員を兼職してはならない、こういうことになっておるわけです。これは公共放送の役員というのは特定の企業なり、そういうものの利益を代弁してはならないということであろうと思います。  NHKは実際、放送の中では、神経質とも言えるほど特定の商品名や企業名が出ないように配慮しておられるわけですね。気を配っておられる。これもやはり公共放送として特定の企業などの利便を図らないようにということであろうと思いますが、役員の問題でありますから、会長はその点どう考えておられますか。最初にお聞きいたします。
  239. 植田豊

    ○植田参考人 人事を担当しておる立場から、本来会長が決めるべきことであるのは御指摘のとおりでございますが、考え方を御報告させていただきます。  先生指摘のとおり、営利を目的とする団体の役員になることができない、これはもう当たり前のことでございます。部外団体役員の就任に当たりましては、その団体のそれぞれの設立の趣旨がございます。それから具体的な活動の状況がございます。これらが公共放送とどういうかかわりがあるかということをまず踏まえて判断をいたしておるわけでございます。  具体的には、協会業務に直接かかわりがあるのかどうかということが一点ございます。それから、協会として協力することが望ましいという場合もございます。これらの団体に就任することによりまして、総合的に見て協会業務の円滑な遂行に寄与するかどうかという点を判断をいたしておるわけでございます。これらを考えた上で、会長のところで役員就任の決定をしておるということでございます。具体的には、それぞれの役員を中心とする部局が検討をいたします。お申し出があった場合に検討をいたしまして会長が決定をするというような手順を踏んでおるところでございます。
  240. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 兼職のリストをいただきました。関連団体、NHK交響楽団その他ですね。と同時に、「部外団体役員就任状況一覧」というのもいただきまして、会長もこれは二十近いいろいろなところの理事とか評議員とかなさっておって大変だなというふうに思いました。同時にしかし、こういう役につかれることは責任のある活動をしなければならぬということでもあろうというふうに思います。  それで、私がちょっと疑問に思いましたのは、島桂次専務理事さんなんですが、東京国際研究クラブというのの理事になっておられます。これは昨年九月三十日に設立された財団法人でありますけれども、どうもこの団体は、この東京国際研究クラブというのは、活動内容などからいって放送法三十条の精神に合わないんじゃないか、それに抵触するんじゃないかという疑問を私は持っておるのですが、この点はどう考えておられるでしょうか。
  241. 植田豊

    ○植田参考人 財団法人東京国際研究クラブという団体でございます。当然のことながら、財団法人でございますので営利を目的とした団体ではございません。  この団体に協会としては、予定されている事業とか活動の内容につきまして、先ほど申し上げましたような基準から賛同をいたしたわけでございます。協会が協力をするという形の中で公共放送としての番組内容の充実も図れるというふうに考えて就任をいたしました。申し上げるまでもなく無報酬でございます。  まず、設立の趣旨でございますが、世界の各国の代表的なシンクタンク、具体的に申し上げますと、アメリカのブルッキングス研究所、イギリスの王立国際問題研究所、フランスのフランス国際問題研究所、西ドイツのIFO経済研究所、それに日本では野村総合研究所でございますが、これらの世界の代表的なシンクタンク、それから学識経験者が組織されまして、産業、通商、金融等々の世界経済の現状を調査分析するということが趣旨でございます。  そうしまして、そのときどきの諸問題の解決のために何をなす必要があるか、国際的視野に立って研究し、その成果を世界に向けて発表をする。発表の形は、昨年十二月に「88TOKYOフォーラム」という形でシンポジウムがございました。世界のトップレベルの研究者あるいは学識経験者がシンポジウムをいたしまして、NHKはこれをことし新年番組といたしまして「一九八八世界と日本」という題で放送もいたしたところでございます。先ほども申し上げましたように、研究の内容からいって非常に公的な、今必要な研究である、それからなおかつ、ここでのシンポジウムがNHK放送としてふさわしいという判断をいたしたところでございます。  ちなみに、この放送には、アメリカの三大ネットワークの一つ、ABCでありますとか、西ドイツの公共放送でありますARDでありますとか、フランスの公共放送でありますアンテナ2という放送局でありますとか、それから英国のチャンネル4というような、世界各国の放送局がこれに協賛し協力をしておるということもございます。
  242. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 長く説明をいただきましたが、そういう趣旨のものであることは承知をしております。一面そういう趣旨であるということですね。  この理事長、評議員会議長はだれで、設立基金は幾らで、それはどこが出したか、この点はいかがですか。
  243. 川原正人

    川原参考人 私も資料をいただいておりますので、私から。  基金のところは私はまだよくわかりませんが、理事長は野村総合研究所社長の中川幸次さんがなっておられます。副理事長には大蔵省顧問の大場さん、それから通産省顧問の小長さん等のお名前が挙がってございます。
  244. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 もう私の方から申し上げますが、今会長から答弁があったように、理事長は野村総研の中川社長です。それから評議員会というのがありまして、評議員会の議長が野村証券の会長です。それから評議員会の副議長は野村証券の副社長であります。  一つ大事な問題は、基金なんであります。これは趣意書なんですが、要するに基本財産十億円、運用財産十億円、合計二十億円、すべてこれは野村証券の出資で行われておるという団体であります。ですから、単なる無色の研究機関というのではないわけです。  事実、こういう「TOKYOフォーラム」の内容も承知をておりますが、特に私がこれは少し疑問があるなと思いましたのは、ことしに入りましてからの日経新聞の野村証券の広告ですね。各地でいろいろな経済講演会というのを開くわけです。これはもちろんお得意さんにいろいろ便宜を図ったりという商売です。商売としてやるわけですが、ここに「88TOKYOフォーラム」のことが一つのポイントとして使われているわけです。第一部ではまさに東京国際研究クラブによります「88TOKYOフォーラム」、これの内容がビデオなどを使って詳しく紹介をされる、そういうことがやられておるわけです。  そこで私はお尋ねをしたいのですが、研究機関といいましても、野村証券が丸々お金を出資して、そしてその内容がNHKテレビでも放映されていることも知っておりますけれども、これが野村証券の商売として広告にまで大々的に使われておるということがあるわけです。そうしますと、当初のNHKの検討ではそういうおそれはないという判断があるいはあったのかもしれませんけれども、こういう事態が現にやられているということであれば、これはやはり抵触するのではないか。公共放送の役員が兼職することがこのように特定の企業によって利用されるということなんですね。こういう点でやはりこの問題は検討し直すべきじゃないかというふうに思うのですが、いかがお考えでしょう。会長の御判断をお聞きしたい。
  245. 川原正人

    川原参考人 私どもが企画をしたりあるいは制作をしましたり報道しました番組が、NHKが今後いろいろな形で収入をふやしていくために、そのようなNHK番組素材とかノーハウが一般の経済市場で活用していただけるならば、むしろ私は、特定の企業だけというわけにはまいりませんけれども、いろいろなところで御活用いただけるならば、仮にどこかの企業であれ、あるいはどこかの団体であれ、その団体が政党であれ宗教団体であれ、私どもの使いました番組がそれなりに御活用いただける、そして私どもが、ある種の関連事業を含めまして一つの市場経済の中での活動の場になるならば、余りそのことを神経質になる必要はない。  ただし、NHK番組の中にこのコマーシャルが入ってくる、これはどんな場合でも神経質にならなければいけない。先ほど佐藤先生指摘ありましたように、多少神経質過ぎるかもしれないけれどもNHK番組の中に特定の商品名とか企業名が入ってくることは――これはやむを得ない場合もあります。野球場の中継をすれば嫌でもコマーシャルは入るのですけれども、それからどこかのインタビューに行っても、会社の帽子をかぶってインタビューに応じられれば、帽子とってくれとまではなかなか言えない場合がありますけれども、それでも私どもは、NHK放送する番組の中に入ってくるものは極力、神経質なくらいに注意をしなければならないと思います。  一度私ども放送した番組がどこかで御活用いただけるということはむしろある程度積極的にやっていきませんと、こういう時代にNHKがより効率的な企業運営をするというわけになかなかいかない。結局親方日の丸の方へ傾いてくる心配がありますので、できるだけNHK番組、ノーハウはいろいろな面で御活用いただいて、むしろ私どもの役に立てていただきたいというふうに思っております。
  246. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 ちょっと違うんですね、会長がおっしゃっているのは。NHKがつくった番組が活用されること、この問題ではないのです、私が言っておりますのは。役員の兼職問題で、一定の企業が丸々二十億円というお金を出して、目的を持って活動しているわけですね。それはそこの企業に不利益になるようなことはやりませんよ。一般的な形式のものであってもその企業の利益追求に有益だということでイベントをやるわけですね。そのことを決定する理事公共放送NHKの役員が参画をしている。そういうものがつくられて、それは一部放映もされるかわかりませんが、特定の企業がみずからの宣伝、営業活動の宣伝にばんばん使っている。これから全国相当な箇所でこれをやっていくわけですね。全国の日程も発表されているわけですよ。だから、客観的にはそこに、特定企業のPR活動に加わっているということになるわけです。  そういう問題としてこれは考えていただかないと、NHKの制作した番組の活用問題ではないのです。「88TOKYOフォーラム」というのはNHKの制作番組ということではありませんから、土台は国際研究クラブというのがあってという問題なんですね。そういう問題の性質はおわかりいただけたんじゃないかと思うのですが、そういうことでありますから、客観的に見てやはり特定企業に役に立つ活動に参画をしておるということにこれはならざるを得ないと思うのですね。これは神経質にならなければ三十条が泣くと思うのですが、どうですか。もう一度検討してもらいたい。
  247. 川原正人

    川原参考人 確かに最近は民間の企業がいわば社会還元といいますか、企業の収益をいろんな形で社会還元していくという形がございます。ですから本当の純粋な意味での社会還元なのか、実はそれは形を変えた広告であるのか、際どい場合はいろいろあろうかと思います。  ただ私ども冒頭に申し上げましたように、特定の営利活動、営利事業そのものに協会の役員が参画することは厳に慎まなければいけないと思いますけれども、財団法人ということで、国際的にかなり高名な研究所を動員した形でのそういう学術検討会といいますか、時事問題に対する会議ということであれば、それは非常に有益な行いであろうし、私ども番組にも役立つという観点から参画しているわけでございますけれども、今後の展開につきましてはなお十分に関心を持って対処してまいりたいと思います。
  248. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私は、ぜひ厳格に三十条も理解していただいて、検討をお願いしたいということを申し上げておきたいと思います。  それで、ちょっと時間が詰まっちゃったのですが、新営業構想について、若干の議論もありましたが、私は一、二の点これはもうぜひお聞きしたいと思っております。  新営業構想では、視聴者情報といいますか、自宅滞在時間帯とかそういうものを的確に把握して集金の効率を高めていくということになっているわけですが、この情報の管理ですね、この情報の管理は今までと比べ物にならないほど重要になると私は思うのですね。厳格さが要求されるんじゃないか。そういう点どう考えておられますか、簡潔にお願いします。
  249. 松本幸夫

    松本参考人 先生指摘のように、視聴者個人の情報を集めて、それを私ども仕事に活用するわけでございますから、情報の管理というものについては適切でなければならぬというふうに考えております。  それで、この新営業構想で集めようとしております情報は、これは視聴者情報の内容という意味でございますけれども、これは三十二条を徹底するということの目的のために必要な最小限のものであるというふうに私どもは考えております。これの扱い等につきましても、法律の専門家等とも十分相談して遺漏のないように配意してまいりたいというように考えているところでございます。
  250. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 必要最小限といいましても相当詳細なんですよ。契約不成立の事由、在宅の有無、それから面接時間帯、訪問回数、その他その他あるのです。何か当初つくられた案の中には、日の丸、君が代についてどういう考えの人かというような設問項目まで、これはその後検討の結果、外されたということでありますが、そういう、まかり間違えば思想、信条をチェックするというような危険なことも途中経過ではあったというように聞いておるのです。そういうこともあるだけに、しかもこれはNHKの職員だけではなくて受託集金の人に渡さなければ役に立たないわけですね。そのあたり情報管理についてはどういうふうにやられるおつもりですか。
  251. 松本幸夫

    松本参考人 これは九十一事業局所があるわけでございますけれども、ここに個人情報管理責任者を置きまして、これを中心にして徹底的にそういった誤りのないようにしてまいりたいというふうに考えております。
  252. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 これはかなり厳格にやりませんと、この家は何時に在宅しているというような情報は、非常に価値のある情報にもなるのですね、市場の論理から言いますと。だから、そういうことのないようにしなければならぬわけですが、売れる情報にもなり得るのですよ。セールスにとっては、これは所番地、氏名だけではなくて、何時はいるんだということまではっきりするわけですからね。そういう点で、非常に情報管理を厳重にしていただく必要があるという問題が一つであります  駆け足になりますが、もう一点、これの集金で、二十三時まで、午後十一時まで活動すべしというような方針になっているようでありますが、これは私は大変問題だというふうに思うのですね。ほかの集金もありますが、通常、大体は九時には終わるというのが普通のようです、公共料金の集金でも。十一時まで集金をやるというのは、時には現金を二十万円くらい持って歩くということもあるそうですし、危険性も伴いますし、あるいは単身世帯へ行きますと、二十三時、そんなおそい時間に行くと、また別のトラブルだって起こりかねないというふうに思うのです。こういう点は、二十三時までというのは労働条件の問題としてもありますし、そういう危険性を内包しているという点でも、これは改めるべきじゃないかというふうに考えておるのですが、どうでしょうか。
  253. 松本幸夫

    松本参考人 これは、大都市圏におきましては、既に二十三時まで訪問集金実施しているというケースが従来ございます。そういう意味で、私どもはそういった経緯の中で、どういう問題があるのかということも十分知っておるつもりでございます。  それから、安全対策ということで先生今御指摘になられましたけれども、安全対策につきましても、当然のこととして、安全リーダーの指名でございますとか、定期的な防犯講習でございますと、か、各種のそういった研修等も通じまして、防犯ということについての十分な配慮はしてまいりたいというふうに考えております。また、危険な場所ということも、当然大都会の場合はあるわけでございますけれども、そういうところは複数で行くというようなことも検討の対象にしているところでございます。
  254. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 もう終わりますが、今の問題はちょっと時間がなくて十分展開できませんでしたが、本当にいろんな危険な事態、これを回避する策を立てておかないと、集金人の方の安全の問題だけではなくて、される側にとっても、大体九時以降に人が訪ねてくるというのは余り歓迎されないわけですよ。特に単身者の場合、そういう時間帯にこんばんはと言われても、なかなか戸をあけないということがあります。でもNHKがやっているよということで、NHK集金ですと言ってだれかがかたって、戸をあけて何かが起こっちゃうというような危険さえも、私は検討対象としては相当考えなければならぬ問題だと思うのですよ。NHKが十一時まで集金しますよということは知れ渡るわけですから、今度はそれをもっと大いにやれという方針ですから、そうなりますと相当これは問題だと思うのですね。  ですから、この点については再検討して、ぜひ私はそういう非常識な時間帯までやらないで解決できる方途を考えてもらいたいということを要望して、質問を終わります。
  255. 塚原俊平

    塚原委員長 上田利正君。
  256. 上田利正

    ○上田(利)委員 昨日、一般質問がございましたけれども、その中でも出ておりませんでしたけれども、先ほど見ました新聞に非常に重大な問題が出ておりますから、委員長、ちょっとお許しをいただいて、この問題につきまして大臣のお考えを聞きたいと思うのです。  実は、きょうの新聞でございますが、私、けさ、ちょっと朝早く出たものですから見ておりませんでしたが、今入手いたしましたら、「郵政省 NTT分割検討」という、こういう見出しで実は出ておるわけでございまして、電通審答申が十八日に出ましたけれども、それにも全然なかった問題、きのうまでなかった問題が急にきょう、この新聞に掲載をされております。  その内容は、中心の部分だけ申し上げますと、「郵政省はNTT分割の検討を始めた。NTTの独占的状態にある電気通信市場の競争を円滑にし、料金の一層の引き下げとサービス向上をねらう。同省は①まず通信事業と非通信事業とに分割する。」いわゆるデータ関係については、これを分割する。「②さらに通信事業について全国地域程度に分割する」というのです。全国を十に分割をするというのです。「――との二段階分割案を軸に検討する見通し。」そして、五月から郵政省はこの検討に入りまして、電通審などにいわゆる諮問をしながら、一年半を経まして、いわゆるこの法律の見直しと同時はこれをやっていこう、こういう重大な問題であります。  きのうまで全然触れておられなかった問題であります。十八日の答申にもなかった問題ですが、大臣の真意をお聞きしたいと思うのです。
  257. 中山正暉

    中山国務大臣 これは全く私ども関知しないところでございまして、日本経済新聞の記事に三月二十四日の朝刊として出ましたが、郵政省といたしましては、当該記事内容にあるような具体的な検討は入ったという事実関係は全くございません。これは臨調答申の内容をベースに記事にされたものではないかと見ております。全くの観測記事という見方を私どもしておりますので、これはさきの電気通信事業法の見直しの結果、早急に着手すべき課題としてNTTのあり方が指摘されておりまして、三月十八日に電気通信審議会が答申した今後の電気通信産業のあり方についてにおいて、NTTのあり方がその課題として挙げられていることから、記者が特別な関心を持って推測記事を書いたものだ、私どもそう思っておりますので、きのうのきょうということで、私どもはそういう発表をすることはいたしておりませんので、どうぞその辺、御理解いただきたいと思います。
  258. 上田利正

    ○上田(利)委員 大臣の答弁で本当に安心をいたしました。  それでは、本論に入らせていただきます。  きょうも大臣の御答弁、拝聴させていただきましたけれども、非常に御聡明で、人格、識見ともに非常に高く、かつユニークで幅広い御見識を持たれておりまして、本当に敬服をいたしております。  その大臣に最初お尋ねをしたいのでございますけれども、このNHKの六十三年度収支予算事業計画並びに資金計画に対する大臣の御意見が出されておりますが、その中に、収支予算あるいは事業計画及び資金計画は「おおむね適当」であります、こうまず冒頭にあります。これを適当と認める、こうございます。ただ、その後のなお書きに、きょうずっと論議がされておりますいわゆる事業収支をめぐりまして、百二十四億円の繰越金を全部取り崩していく、あるいは債務償還に今まではこの繰越金を充当いたしておりましたけれども、これを全部不足額に充当してしまいますから、借入金百三億円をもってこの債務の償還に充てていこう、こういうことになっておりまして、この点については大臣の御意見は、協会の財政は、六十二年度と比較しても格段の厳しい状況にある、こういう御意見でお認めになっておるのです。盾と矛ではございませんけれども、矛盾しているのではないかと思うのですけれども、はっきりした御見解を示していただきたいと思います。
  259. 中山正暉

    中山国務大臣 国会に御承認を得る必要がありますので、私どももいろいろNHKからお話を伺っておりますが、特にこの大変苦しい事情の中でのNHKの対応に私どもは同意をして、そういう附せんをつけて国会に御提出申し上げたということでございます。  事業計画におきましても、年度内に三百人の要員を純減するということ、それからまた効率的な事業運営に努めるとお誓いをいただいておりますし、厳しい財政事情の中で放送番組充実それから公共放送機関としての役割を遂行しようというような内容になっておりますので、その点を私どもは評価をいたしまして、御承認をいただきたいということで本日御審議をいただいておる次第でございます。
  260. 上田利正

    ○上田(利)委員 続いて、経営計画に関して御質問をいたします。  先ほどからずっと、経営計画問題についてはそれぞれの委員から御質問がなされました。いわゆる従来から実施してまいりました三カ年の経営計画が昨年立てられない。その理由がオリンピックの問題であるとか衛星放送の関連であるとか、もう一つは売上税の関係などもこれありまして、法案が通るか通らないかということもありまして、ちょっとこの三カ年経営計画を立てることができないのです、こういう御答弁がございました。これを五十一年から見てまいりますと、どうもこの三カ年経営計画というのは受信料を改定するときにだけ出してきている。ですから昨年も受信料改定の提起がない。先ほどからお話がございますように本年度受信料の改定がない。そうしますると、三カ年経営計画というのは、いわゆる受信料改定イコール三カ年経営計画、こういう図式になってしまうのです。そんな軽々しい問題であるかどうか、会長の御所見をちょっとお聞きしたいのです。
  261. 川原正人

    川原参考人 経営計画というのは、これはあくまで協会の将来の経営のありようを示すものでございますので、決して軽々に考えられるものではございません。しかし同時に、経営計画と言う以上は、事業の展開はこのようなものがあるし、こう展開する、それに対しましてやはり財政収入としてはこのようなことを考えて、それは事業としてきちんと成り立つようにいたしますというものでなければ、やはり経営計画と言うわけにはまいらないだろう。その点を、むしろ私ども神経質なぐらいに慎重に考えますものですから、ある程度受信料の改定をお願いする、その決心ができたときにはそれなりの計画が成り立つのですけれども、いろいろ不確定な要素がまだ存在する段階で、ある種の展望みたいなものがないことはございませんけれども経営計画という形で整えることが大変難しい状況にある。そのために、昨年もできるだけ早くとお約束しながら、今年度できなかったということはまことに申しわけないと思います。  しかし、どう見ても六十四年度には収入の方も何がしかのめどを立てないことには、経営という形のものはもうこれ以上体をなさなくなってまいると思いますので、ことしは必ずこういうものをつくるべく努力をいたします。
  262. 上田利正

    ○上田(利)委員 会長のお考えがわかりました。  そこで、もう一つあるのでございますけれども、昨年私は本委員会の質問の中で、鳩ケ谷の跡地売却益、約五十八億ぐらいございましたけれども、それと、昨年も財政安定化基金、いわゆる繰越金を百億円ほど取り崩して債務償還にこれは充当された。去年も苦しい予算でございました。土地が来年も売るところがあるのか、こう聞きましたら、もうありません、こういうような御返事もありまして、それならばことしは大変じゃないかということを御質問したことが記憶にあるわけでございますけれども、本年はさらに御案内のように百二十四億円、これを全部安定資金を取り崩して投入して、とうとう繰越金がゼロになっちゃった。もうこれ以上ないのです。使おうとしてもなくなってしまった。そして、債務償還についてはもう充てることはできないから、先ほど申しましたように百三億円の財源に充てるために借入金をする、こういう二重苦になって、私ども見ますると最悪の六十三年度予算になってしまった。私が昨年心配したようなことが事実として出てきてしまった。昨年、ことしの予算をどうするかということを本当に真剣に考えてほしかったと思うのであります。  しかし、こういう形になってしまいまして、来年は、会長も申しておりましたようにこのままではどうにもならないということですから、もう一度確認の意味合いでございますけれども、来年はやはり何らかの形で料金問題に手をつけなければならぬ、こういうことで確認をしておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  263. 川原正人

    川原参考人 このままの状況で進めばもうどうしてもそういう事態にならざるを得ないと思っております。  ただ、私どもとしてはなお今年度予算事業計画の執行の中でいろいろなことを努力はしてみます。特に郵政大臣意見書の中にも幾つかの御指摘がございましたが、経営効率化あるいは衛星放送の普及とか国際放送充実、これはある程度経費を伴うものでございますけれども、いろいろなことを、やるべきこと、それから合理化できること、新たな収入の道を探し得る問題等全部を点検いたしまして、その上で来年度受信料をどのように考えるべきかということを決心しなければならないと思っております。
  264. 上田利正

    ○上田(利)委員 わかりました。  次に、日放労組合員の労働条件に係る問題点について質問をしたいと存じます。  NHKに働く職員の数は、先ほどから御答弁がございましたように毎年毎年削減されまして、本年度も三百名要員減、こういう計画が出されております。一方、御論議のございましたように、衛星放送などで事業が拡大をされてきて、したがって作業量が年々増大をしてきておる。また、先ほど予算でも申し上げましたように、NHKを取り巻く経営環境というのは非常に厳しい状況にあるわけです。  こうした中で、日放労の組合員は歯を食いしばって、公共放送を守り、そして公正な報道と、現在非常に人気になっております大河ドラマ「武田信玄」で象徴されますように豊かで質の高い、視聴者に喜ばれる番組制作のために日夜努力を重ねております。そして、一万五千要員体制につきましても一年繰り上げて、これは海外にいる組合員も本当に協力して繰り上げて、そして少ない要員で番組編成に当たってきております。  そういう状況にあるだけに、昨年質問いたしましたけれども、時間外労働も一人平均で一カ月二十九時間、こういう内容になっておるのであります。年間でこれをざっと算術計算いたしますと、三百五十時間NHKの職員は一人当たり時間外労働、いわゆる残業をやっているということなんです。しかも時代の趨勢となっておったり、それから政府も推進している時間短縮、いわゆる時短の問題でございますが、この方向にも組合としては逆行するけれども、あえてこのようなことで会に協力しながら頑張っておるわけです。  にもかかわらず、本年度予算を見ますと、人件費は前年度対比でわずかの一・八%、昨年も少ない少ないといっても二・八%だったのです。まだそれよりも下がってしまった。これでは定昇がやっとという状況であります。給与についても適切にというようなことがきょうの会長の表明の中にもあるわけでございますけれども、こういう定昇程度という中でいわゆる賃上げは組むことができない。ちまたでは景気はずっと上向いてきているという状況の中で、NHK職員、労働者は賃上げすらも難しいという状況になっております。それで一生懸命報われるために仕事をやっておって、そしてこのような賃金の問題を含める労働条件では報われないという形をとられているわけです。日放労の労働組合員も、毎年毎年のことでございますけれども、もう我慢は限界だと思うのです。  私は昨年、民放各社と日放労の組合員の賃金比較を会側にお尋ねいたしました。そうしたら、明確に答えが返ってまいりました。賞与等を含めて、民放各社と比べて我がNHKの職員の賃金は六十万から七十万少ないです、ここに議事録がございますから間違いないわけでございますが、こういう回答が戻ってまいりました。さらにこれについて川原会長の御見解を尋ねたところ、こういう答えをいただきました。私の責任でできるだけ格差を縮めるよう努力したい、こうおっしゃったわけでございますけれども会長、ちょうど一年たちました。かなり御努力していただいたと思うのでございますけれども、この努力の結果についてお答えを願いたいと思うのです。
  265. 植田豊

    ○植田参考人 NHKの職員の給与が同業の他社と比べて遜色のないものであることが望ましいと私ども考えておるところでございます。現実には、昨年もここで申し上げましたとおり月額で二万円程度、これに賞与の格差がかなり別にございますので、昨年の場合にここで御報告したのが六十万から七十万という差を申し上げました。その後若干の努力もございまして、ことし民放五十五社との平均では六十万円弱の差ぐらいになっておるところではございますが、それほど差が縮まっているとは申し上げられません。  一方、NHKの財政と申しますか、私ども経営努力受信者国民理解と納得が得られなければいけないという側面がございます。そういう意味で、各年度財政状況あるいは民間の賃金水準を総合的に考えながら努力をしてまいりたいと思ってございます。  六十三年度につきましては先生指摘のとおり給与予算の伸びは一・八%ということではございますけれども、三百名の要員効率化分の効果が別にございます。これを合わせまして、予算に基づいて職員の処遇改善に努力してまいりたいと思っておるところでございます。
  266. 上田利正

    ○上田(利)委員 植田参考人から私あてに答弁がございましたけれども公共放送であるから、そして社会的に容認されなければということですが、民放と比べて六十万から七十万でしょう。それで努力したと言うけれども、去年はマクロ的でどっちがどっちかわかりませんけれども、六十万をとれば、ことしを見ても六十万弱ということですから、余り御努力されなかったと思うのであります。三百人の要員減があるからと申しますけれども、ちょっと計算してみましても、植田さん、この予算が昨年度よりも二十一億円くらいでしょう。そうしますと、それを一万五千人で除してみますと、大体年間で見て十二、三万、賞与その他何でも全部ひっくるめましてそういう状況ですから、月にすれば定昇込みで一万円以下になってしまう、これではとても格差解消に充てることはできないと思うのです。だから、余りごまかさなくて、努力が足らなかったら足らなかったと言ってほしいのです。  会長、その点のお考えをひとつ明確に示していただきたいと思うのです。
  267. 川原正人

    川原参考人 格差是正という問題については、ここ数年来、労働組合との間でいろいろな形での話し合いというか協議というか、時にかなり激しい形での相談もあるわけでございます。私どもできるだけそれは差を詰めたいと思って何がしかの努力を重ねてまいりました。それで確かに一昨年から昨年あるいはことしにかけまして、うちの植田理事が申しましたように、その差はわずかではございますが詰まってきておるはずでございます。ただしかし、このところ民放界はまた大変景気がいいという話も聞いておりますので、私どもが今年度において差をどこまで詰め得るか、私どもとしてはもちろん同業他社の比較というものは重要な指標だと思いますけれども、一方で視聴者の中にはいろいろな経済構造の変革等で非常に御苦労になっている方々もございますので、そういう方のお気持ちと申しますか、社会的に認知され得る賃金水準というものがどのようにあるべきか、今非常に苦慮しているところでございます。労働組合との間にも既にかなり厳しい交渉が始まっておりますけれども、私どもできるだけ努力いたしますし、労働組合の理解も得たいと今思っているところでございます。
  268. 上田利正

    ○上田(利)委員 会長自身も今の御答弁で承知をしておられるようでございます。職員が一生懸命努力しているわけですから、そして民放は景気がいいからまたこれで水をあげられるようなことになりましたら、もう普通の人間だったら、まじめな人間だったら、これじゃどうでもいいやというようなことになってしまうと思うのです。ですから、先ほど私は我慢にも限度があると申しましたけれども、ぜひその辺を配慮して、そしてことしの賃金の引き上げについては対処していただきますように強く要望をしておきたいと思います。  もう時間が余りございませんから、はしょって最後の問題だけ御質問させていただきますけれども衛星放送の問題がずっと論議をされてまいりました。大体状況は今までの論議の中で薄明かりが差してきたように見えてまいりました。要すれば、衛星放送は遅くも来年からは本実施をしていかなければならない、その場合でも、どういう料金にするかは別としても、料金有料という形でやっていかなければならない、こういう方向だけは今までの御答弁の中でわかってまいりました。  そこで、一つ問題があるのです。重複しない問題だけちょっと提起したいのですけれども、これが有料ということになりますと、沖縄が本土に復帰したときにこういう問題がございました。あそこは民放しかございませんでした。アメリカの統治下にございましたから当然でございますけれども民放ですから料金の徴収はなかったわけです。受信料はなかったわけです。本土に復帰したときに、これは今まで長い間お金を出さなくて見ておったわけですから抵抗が出てまいります。それで、今日でも本土と沖縄ではそういうものも含めて受信料金に、いわゆる差というとおかしいが違いがある、安くしておる。  私が懸念しますのは、これがもう五十二万になった、どうも夏ごろには百万ぐらいになっていくんじゃないか、こうずっと言われてきておる。ソウル・オリンピックがございますから、大体オリンピックまでに百万ぐらいいっちゃうんじゃないかと思うのです。そしてそういう中で今衛星放送を見ている人たちは、少し高いのでございますけれどもアンテナを買ってつけて、あるいは共同アンテナでやりながら、これはずっと無料だという考え方が強くなっていると思うのです。したがって、これらの問題は早くその方向を決めて有料なら有料ということで、どういうあれにするかは別にしても本実施のときには有料だぞということを早く言っておかないと、沖縄の教訓ではございませんけれども、これはとても集金の人たちが努力してもできないような状態になってくる。  しかも共同アンテナが七〇%を占めているわけですから、共同アンテナの者が、私見ていませんと言ったら、家の中へ入っていってそしておまえ見ているじゃないかと言うことはできないわけです。これはほとんど不可能になってくるわけですから、いわゆる付加料金みたいな形をとったとするならば非常に大変な問題になってくる。結局実施しても受信料は入らない。  川原会長の先ほどのお話では、五百億ぐらいの予算がかかる、そして百万世帯では五万円年間にかかっちゃう。月にして四千円になるんだ、こう言われまして、二百万になると二千円になるけれども、こういうお話でありました。これは今の総合テレビ受信よりも安くはならぬと思うのですね。そうすると、そういう中ではこれは早くそういう方向を出さなければ、私はとても大変な状況になってきてしまうなと思うのが一つなんです。これをどう考えるか。  もう一つは、いよいよ本実施となりますと、今も二十四時間体制をとっておりますけれども、もっと番組を多くしてやります。教育テレビが始まったときには千人の職員を新しく充当したのですね。このままで要員ゼロでやろうと言ったってこれは無理だと思う。やれば総合テレビの方か教育か、今のチャンネルの方の質をうんと落とさなければならないことになる。ですからそういう面では、人の問題も含めて早期に方向を決めていかなければならないと思うのですが、この二点についてお尋ねをしたいと思うのです。
  269. 林乙也

    ○林参考人 衛星放送財源につきまして、それを衛星放送受信者からいただくことが基本的には適当じゃないかというふうに私どもが考えておりますことはただいままで御説明申し上げてまいったところでございますが、あくまでもその実施予算の国会承認を受けて実施することではございますけれども、それまでの間にも私どもの御説明申し上げておりますような考えの中で、極力将来に向けて受信者の方々からの誤解あるいは不信感を生じないように、必要な周知あるいは説明というものをいたしてまいりたいというように考えております。  また当然、本放送化いたしますれば衛星の番組につきましても充実を図ってまいらなければなりませんし、その際には現在は比較的安く抑えられております放送権料などの点につきましてもそれなりに手当てをしていかなければならない。当然必要な経費というものが増高することは予想されるところでございますが、同時に極力受信者の方方の負担を軽減するために、現在も行っております外国放送事業者からのニュースあるいはニュースワイドあたり調達あるいは部内での番組制作体制についての効率的な運営ということに努めまして、受信者に御負担をいただくものを極力軽減していくように努力したいと思います。そこらあたりの考え方は努めて早期に確立していかなければならないということについては御指摘のとおりでございまして、そのように今後鋭意取り進めてまいりたいというふうに考えております。
  270. 上田利正

    ○上田(利)委員 衛星放送の本実施放送を早くするということと、料金の問題点についても早く国民周知徹底をしていく、それから番組編成についても、要員の問題を含めて対処していく、こういうことを強くNHKに求めて、終わります。ありがとうございました。
  271. 塚原俊平

  272. 田並胤明

    ○田並委員 それでは、最後質問になりまして大変NHK皆さんもお疲れだと思いますが、ひとつよろしく御辛抱のほどをお願いしたいと思うのです。  そこで、先ほど来質疑を通じて大分明らかになってまいりましたが、NHKを取り巻く大変厳しい財政事情の中で、今日まで労使間で十分な話し合いを進めながら効率化計画を進め、NHK使命であります公共放送の達成であるとかあるいはニューメディアの普及促進であるとか、質の高い放送文化の向上であるとか、こういう課題を担って今日までこられたNHKに対して敬意を表したいと思うのです。  ただ問題は、どうしてもNHK自体が来年受信料値上げをしなければいけない、一層の経営効率化を図らなければいけない、こういう中でことしの事業収支予算を見ますと、幾つかの点についてどうなんだろうかなという疑問点がわいてまいります。ただ単に人減らしをしたりあるいは外郭団体をどんどんつくって下請に出す、そのことだけで果たしてNHK経営というのが今後展望の持てるものになるんだろうかどうか、こういう気がしてならないのですね。いろいろなマスコミによれば、第二の国鉄になるんではないかとか、親方日の丸的な経営なんではないだろうかとか、私どもにとってみますと、一生懸命やっているNHKに対してはかなり失礼な物の言い方が一面ではあるような気もしますし、また一面では、あるいはというように首を縦に振らざるを得ないような場面があるのであります。  先ほどから出ております、NHK受信料値上げのための経営計画という形が今までとられてきておりましたが、少なくとも私は、NHKの十も持っているメディアを、波を十も今持っているわけですから、この十の波に対して国民の期待されるようなNHK公共放送というのは、果たして民放とどのような関連性を持たせながらNHKとしての使命をどう果たすべきか、それに対して国民皆さんにどう協力をいただいているか。先ほど言ったように公共放送徹底的に達成をしていく、新しい放送文化の向上に努めていくあるいはニューメディアの普及改良に努めていく、そのために受信料がこれだけ必要なんだということを、少なくとも長期的にも展望を持った計画というものを早期に立てるべきである。これはもう前のそれぞれの委員の方々から質問がございましたが、いろいろ質問項目がありますが、私は、私の用意をしている最後質問項目を取り上げて、まず会長の方の考え方を聞かせていただきたい、このように思います。
  273. 川原正人

    川原参考人 私どもとしても、NHK一つ国民の期待を担った事業体である以上、国民の皆様方に、NHKは将来何をやるつもりなのか、どういうふうにしてその事業を賄うつもりなのかという、大きなその構想をお示ししなければいけないというふうに思っております。決して私どもは、毎年度年度の何か利潤が上がればいいという、利潤追求という企業ではございません。御指摘のとおり、日本放送文化の質を高めなければならない、そして、ラジオ、テレビというメディアを、本当に国民福祉にとって最大限に活用していかなければいけない。これは単なる娯楽のメディアでもありません。すぐれてジャーナリズムとしてのメディアでもありますけれども、また教育の手段としても大変有効でございます。もちろん、一方で、文芸、娯楽的なメディアとしてもこれはまた大変な力を持っております。そういうものを本当に日本放送文化として育てていく、そのためにはNHKは何をすべきだということを、まずはっきりとビジョンを立てなければいかぬと思っております。  今その場面で現実の問題として一番大きく浮かび上がってきているのが、衛星放送を将来どういうふうに展開していくか、また、御指摘のように、かなりの数のメディアを、それぞれの特性を生かして、本当に国民にとってどういうふうに役に立つメディアとして育てていくか、展開をしていくかというその構想を早くまとめなければいけないと同時に、それを賄うべき企業としての財政基盤をどうやって確立していくかということを、確かにもう早期にまとめなければいけないと思っております。  その場合に、何と申しましても、決して私ども値上げのために長期計画をつくるなんという気持ちはございません。協会がなすべきそういう仕事、果たすべき役割、それに対してどれだけ経費がかかって、それはどういう財源でもって賄うことができるか。しかも、なるべく受信者負担増を少なくして、仮に負担増をお願いするにしてもその幅はできるだけ少なくして、みずからの努力で、もっと通常の市場経済の中で私どものこれまで蓄積したいろいろな財産、ノーハウ、そういうものを十分に御利用いただいて、そういった面からの収入もできるだけ上げて、それで財政を補っていきたい。  そういう展望を持ちたいと思っておりますけれども、やや言いわけのようで申しわけありませんが、一番そのかなめになってくるのは、恐らく、衛星放送をどれだけ普及さすことができるか、つまり受信者がふえていくであろうか。そのためにはまた、実は番組がよくなければこれも伸びないと思いますけれども、そして、その受信者の方にどれだけの負担をお願いできるだろうか。その辺のところのめどが今ちょっとまだ星雲状態で、かなり受信の伸びについては期待もしておりますけれども、月々の変化を見ておりますとかなり波もございますので、その点は十分見きわめて計画を立ててまいりたいと思っております。
  274. 田並胤明

    ○田並委員 今の会長のお話のとおりに、とにかく長期的に、NHKが持っている今の十の波なら波をどのように民放と調整をしながら、しかも国民皆さんの期待にこたえられる公共放送としての使命を果たすかということがはっきりと出てこないと、例えば、来年料金値上げを予定をされているような話がさっきから出ておりますが、受信料を払っている国民にしてみますと、NHKテレビを見ているからその代償として受信料を払っているんだ、当然このように思っていると思うのですよ。  ところが今度の予算を見ますと、例えば衛星放送、これは、今見ていらっしゃる方が五十二万世帯ですか、これにかかる制作費用だとか、これに要する今までかけた五百十億だとか、あるいは番組を制作するための費用も含めて毎年百五十五億もこの維持管理費にかかる。それだけのお金がかかるなんということになりますと、何でそういう費用を私たち衛星放送を見ていない人間が持たなくちゃいけないんだ、こういう単純な国民の不信感というのが出てくると思うのですね。三千万世帯が五十万世帯ぐらいの人たちのために受信料を払って、そのお金がそちらに流されるというのは、単純に言って、衛星放送が具体的にいつの時期から有料で放映が開始をされる、そういう展望がないと、いつまで我々のお金でああいうことをやるんだろう、恐らくことしのソウル・オリンピックでNHKの方としては相当この衛星放送受信世帯がふえるだろう、またふやさなくてはいかぬという目的を持ってやっておるとは思うのですが、NHKの持っているニューメディアの普及、開発促進、こういうことも国民皆さん一人一人に、受信料を払っている方々に理解をしてもらわないと、とてもじゃないけれども、感情として、何でおれたちのお金でおれたちが見ていないものまで払わなくちゃいけないんだということになるわけです。  ざっと見ただけでも、六十二年度衛星放送番組制作費だけで約三十七億かかっているのですね。六十三年度になるとそれが約六十七、八億になる。六十四年度はこれが百五十億程度になっていく。番組制作費が年々こう増大をしていくわけですから、じゃ六十五年度は、倍々でいけば三百億程度になるのかな、このように一般国民の人は理解をするわけですよ。そうすると、その分まで何で私たちが出さなくちゃいけないんだということになる。  大臣、もう前にもこの委員会でも申し上げたのですが、NHKが持っているニューメディアの普及、開発促進のお金というのは莫大なものなんですね。衛星放送一つとらえても、今言ったようにもう五百十億もかかっている。そこへ今度はハイビジョンという新たな高品質のテレビジョンの普及促進のための研究開発をしている。これだって相当莫大な投資をしているだろうと思うのですよ。NHKだけで果たしてそういうのが持ち切れるのだろうかどうだろうかという懸念を、常に私はNHK予算委員会のときには提起をするのですが、かといって、では政府がそれを持つということになりますと、また、公共放送としての使命が果たして守れるのだろうかどうだろうか、ちょっとこういう矛盾にぶつかるものですから、これはどうしても国民皆さんに、放送文化の向上であるとかあるいはニューメディアの普及、開発促進であるとか、こういうのをNHKは持っているんだ、そして皆さん方の期待にこたえた放送文化の向上に一生懸命努めているんだということもますます周知徹底をしてもらわないと、単に料金値上げをぽんと出されたときに、これで果たして国民皆さんが納得するかどうか、これは非常に問題だと思うのですね。したがって、そういう意味で、この衛星放送にかかる諸経費のあり方の問題を含めて、国民皆さんに対しての周知徹底の方法というのを真剣に考えてほしい、このように思うのです。  それとあわせて、衛星放送がいよいよ本格的な放送を始める前段に来ているわけですね。ことしあたりは、この衛星放送にかかる番組制作費というのが六十七、八億でしょうか。そうすると当然、一つの波を新しく始めるということになりますと、そこには要員的な措置というのも必要になってくると思うのですね。例えばNHKエンタープライズに多くの部門をやらせたり、あるいは海外の制作をした番組を買ってきてそれを放映をしたり、それをするにしても、実際に要員措置というのも必要になってくると思うのですよ。ですから、要員の問題と、それから、今申し上げた年々増大をする番組制作費、これに対して国民にどういうふうに理解を求めていくのか、この辺についてひとつお聞かせ願いたいと思うのです。これは時間がないから、余り長く答弁をしてもらわないでいいです。参議院の方は質問時間で決まっているのですが、衆議院の方は往復でちゃんと決められていますから。
  275. 植田豊

    ○植田参考人 一言だけそれでは申し上げます。  衛星放送の要員問題につきましては、地上放送で従来長年私どもがやってまいりましたのとは多少様子を変えまして、例えば関連団体で協業を進める。あるいは海外総支局でございますが、海外総支局から今、日々、ロンドン、ニューヨーク、パリ等から情報が入ってございますが、これらにつきましては外部労働力をかなり使ってございます。もちろん編集権に関しては私どもが責任を持っておりますけれども、現地の外部労働力を大担に使っております。それから、ストック番組の有効活用を図っております。それから、内外の良質なソフト、これは古い白黒映画、名画等が時々出たりいたしますが、これらもその一つでございます。従来の地上同様の人手のかけ方でない新しいチャレンジをしてみたい、そういう中で、NHKならではのサービスの形を追求してみたいと思っております。  ただし、一方、最低限といいますか、一定の体制の整備は必要なわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、ドラスチックな業務の見直しの中で衛星用の要員体制の整備も重要課題として考えてまいりたいと思っております。
  276. 中山正暉

    中山国務大臣 私が国務大臣として、また郵政大臣として感じますことは、なぜ我々が公共放送としてのNHKをしっかりと健全に育成していかなければならないかということは、日本は御承知のように太平洋プレートが下へ潜り込む、この間電波研に行ってまいりましたら、ハワイが一年に九センチずつ日本の方に近づいているというような大変すごいプレートの動きを見ました。どんな大災害があるかもわかりません。どなたかからお話がございましたが、こういうニューメディア、電波放送というものは全く見えません。ここにも電波が行き来しているのだろうと思いますが、見えないものですから、そういう見えない、形のないものに一つ一つ国家としては一本筋を通しておきませんと、地上のケーブルだけでやっておりましたら大災害のときには情報が伝達されないというようなこともございますから、衛星というどこででもパラボラアンテナで受けられるようなものをつくって国民のいざという場合の危機を救うような、一つの大きな使命があると思います。民間放送が百四十九社でございますか、後でまた放送法電波法の一部改正のことで御審議をいただくわけでございますけれども、その中で民放公共放送としてのNHKの両立ということを図っていく必要があり、我々がNHKに対して確固たる意思を持って立派なNHKを運営していただくことを期待する意味はその辺にもあると私は思います。     〔委員長退席、小澤(潔)委員長代理着席〕
  277. 田並胤明

    ○田並委員 いずれにしても、衛星放送が本放送になる前に試験放送で年々経費が増大することは間違いがありませんので、その分を節約しろというのじゃなくて、先ほど言ったように放送文化の普及向上であるとか文化の向上であるとか、そういう意味の内容を国民皆さんに明らかにして理解を求めるということを一層やっていただかないといけないのじゃないか、このように思います。  それと、衛星放送番組制作に当たっての要員措置についてはぜひ労使間で十分協議をされて、先ほど私どもの上田委員が言われたように、もう限界ぎりぎりまで来ているという状態だろうと思うのです。それはもちろん会長なんかよく御存じだと思うのですが、これで優秀な人材が逆にNHKをどんどん離れていくということになりますと、きのうも言ったように企業は人なりでありまして、優秀な人がいなくなってしまうNHKでは国民の期待も大変失うわけでありますから、ぜひひとつ優秀な人材を確保する意味でも、余りにも過酷な労働条件にならないように。前は一つの波をふやすのに千人ぐらい要員措置をしたという話を聞いておりますが、今回は一年早めて一万五千人体制をつくる中で新たな衛星放送番組制作をやっていく、こういうことですから、相当の無理があるような気がしますので、もちろん先ほど言ったように下請のNHKエンタープライズその他に委嘱をする部分もあるのでしょうけれども、その辺を十分配慮して対応してほしい、このことを強く要請しておきたいと思います。  それから、この予算書に出ております副次収入の関係はついてお伺いしたいと思うのです。  これは放送法の改正とも絡みますが、NHKとしては、副次収入、例えば六十二年度では二十五億九千二百万円、事業収入全体に占める割合〇・七四%、六十三年度が二十八億二千三百万円を見込んで事業収入全体に占める割合〇・八%、このようは予算を見積もられておりますが、放送法改正後想定される副次収入の見通しというのをどの程度立てておられるのか。まだ放送法改正になりませんから見通しはちょっと言えないということになるかもしれませんが、少なくも予算を策定する段階でおおよその見通しぐらいは立てていらっしゃるのではないだろうか、このように思いますので、それをまず第一点聞きたいと思います。     〔小澤(潔)委員長代理退席、委員長着席〕  それから二つ目は、公共放送としての原則を守りながら副次収入を上げるという、まさに綱渡りみたいな非常に難しいことをやるわけでありますが、副次収入事業収入全体に占める割合というのをどの程度と考えているのか。今は〇・八%ぐらいですから微々たるものです。NHKホールを貸したり、あるいは場合によれば一部NHK会館の中をどなたかに貸したり、あるいはNHKのスタジオを貸したり、あるいは特集番組をつくるときには、この間の「二・二六事件」の制作の模様というのは余りよく知りませんが、エンタープライズがNHKの方から例えば三億なら三億でやってほしい、それで足らないものだから、今度はある民間の出版会社と契約をして、この内容についてはおたくの会社で出版しても結構です、こういうことで版権を売り渡す、そのお金を例えば五億なら五億入れて総体としてつくり上げた、こんな話も伝わっているわけですよ。ですから、副次収入のあり方を公共放送の原則にどう抵触させないでやっていくのか、非常に難しい問題があると思うのです。  したがって、副次収入を上げてはいけないというのじゃなくて、あくまでも利潤追求ではないということを大原則に放送法ではうたっているわけでありますが、しかし、これは境がないと思うのですよ。例えばこれから新たにNHKがエンタープライズに委託をして、とにかくうちの財政は厳しいから十億かかる仕事を八億でやってくれ、エンタープライズはまさか二億の赤字を出してやるわけにまいりませんから、そうすればどこかの出版会社なら出版会社と、こういう番組をうちが委託を受けて制作する、その場合、放送NHKでするけれども、これらの関係の集大成をした出版物についてはおたくの会社で一手に独占的に出版をしてもいいよ、こういうことだって場合によれば出てくるはずですよ。それが、例えば特定の出版会社の影響力が入ってきて、エンタープライズが制作をするNHKから委託をされた番組に影響を与えないのかどうか、こういう心配も出てくるのですね、心配をすれば。  したがって、副次収入を上げるということと公共放送の原則を守るということとのきちっとした区別といいましょうか、こういうものをどのように考えられておるのか、先ほど言った副次収入の限界をどの程度まで考えられるのか。ことしの予算で当面は〇・八%の見積もりですけれども、これをどの程度まで収入増として見込めるようになるのか等々、あるいはNHKのスタジオを貸したときに、NHK本体がやろうと思ったら既にそこが使われておってNHKの制作に支障が出るとか、こういう心配がないのかどうか、これが一つ。まとめで御答弁願いたいと思います。
  278. 植田豊

    ○植田参考人 今回の放送法の改正によりまして、NHKがこれまでに蓄積してきたノーハウ等の経営資源がさらに積極的に活用できるであろう、社会還元ができるであろうということで、私どもも積極的に取り組んでまいりたいと思っております。ただ、先生指摘のとおり、私どもは基本的に公共放送であります。公共放送としての基本使命がございます。それを逸脱していたずらに利益を求めるということでは国民理解から離れることになろうかと思います。あくまでも公共放送としての節度、抑制、あるいは公共放送ならではの国民福祉、文化への寄与という点に立脚すべきだというふうに考えております。  これは既に先生理解のとおり、需給見通し等を含めましてこれからの検討でございます。現在直ちに今後の増加見通しを申し上げられる段階にございません。ただし、六十三年度予算で二十八億三千万円の予算になってございます。私どもとしては、少なくとも今後五年間でこの倍程度のものは何とかしたいな。この関連団体からの収益というのは、御承知のとおり売り上げのすべてが協会に入ってくるわけではございません。一定の比率、売り上げの数%、一〇%といったものでございますから、これを直ちに巨額にふやすということは非常に困難でございます。これらも含めまして総合的に慎重に考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  279. 尾西清重

    ○尾西参考人 私ども、出版とか催し物とかをひっくるめたやり方をメディアミックス・メディアが違うものをいかに使って大幅な展開をするかということをそういう言葉で呼んでおりますが、放送総局の中にメディアミックス委員会というのをつくりまして、先生のおっしゃる逸脱というかそういうことのないように、一回一回千差万別でございますので、一回一回について十分慎重に審議した結果決定しておりますので、御心配に至らないと思います。
  280. 田並胤明

    ○田並委員 何事もスタート時点というのは意外ときちっとしているのですね。ところが、年を追うに従って、これもいいんじゃないか、あれもいいんじゃないかということでだんだん境目がなくなってくるというのが常なんで、ぜひひとつ今それぞれ御答弁がありましたように――非常に言いづらいことなんですね。公共放送という使命が一方でありながら、しかも経営というものを考えなくちゃいけない。両方が成り立つのには非常に難しいような今のNHK経営でありますから余り縛っちゃいけないと思うのですが、会長がいつも言うように公共放送としての使命というものを常に念頭に置きながら、それを物差しとして副次収入を上げる努力というものをやっていただくしかないのじゃないか、このように思うので、ぜひそういう方向で一層の御努力をお願いしたいと思います。  そこで最後質問でございます。先ほどもちょっと出ました契約収納費の関係なんです。これは対前年度比十四億四千万円の増加になっていると思うのです。六十二年度が三百六十五億四千百万円で、六十三年度が三百七十九億八千百万円、差し引き十四億四千万円。六十一年度と六十二年度では四億六千四百万円の増加。それが六十三年度予算でいきますと、対前年度比十四億ということで一挙に十億ばかりふえているわけですよ。これはどういうことか。例えば、口座振り込みが年々ふえている、委託集金人の方の取り扱い件数が減っている、そして郵便局の振り込みも減ってきている。こういう中で人件費がその大宗をなすと思うのですが、取り扱い件数が減りながら、しかも十億もふえるというのは何らかの原因があったのだろうと思うのです。この辺の増加をした中身について、これは決して件数が減って人減らしをしたのだから当然減らすのが正しいのだということじゃなくて、この内容が少し理解がつかないものですから、その辺についてお聞かせを願いたいというのが一つです。  それからもう一つは、委託集金人の方の受け持ち区域がかなり拡大をしている。件数が少なくなったのでその分だけ飛び飛びに行かなくちゃならないというので、従来よりも受け持ち区域がかなり拡大をしているという話を聞きます。それに対応する労働条件の改善というのはどのような行われてきているのか、これを二つ目として聞きたいということ。  それから三つ目は、都会地においては午後九時以降十一時までの委託集金人の方の集金があったようでありますが、これを今度新営業構想で全国的に拡大しよう、こういう方向が出されております。もちろん労働組合の方とも十分協議をしながらこういうものについては進められるのでしょうが、先ほども出ましたように犯罪防止、夜十時過ぎぐらいになりますと飲んでいる方が多いものだから、そこへコソコソと入っていってこのやろうというようなことで殴られたり傷つけられたりするようなことがないように十分予防しなければいけませんし、あるいはトラブルが発生するような心配もありますし、あるいは犯罪に巻き込まれてしまう。集金をしている方がいれば当然お金を持っているわけですから、こういう世の中ですからそのお金を強奪されるような事件だってないわけではないと思うのですよ。  私が言いたいのはもっと土曜、日曜を、今でもやっていらっしゃるそうですから、共働きの方も単身赴任の方も土曜、日曜に前もってアポイントをとって、この時間に行きますがどうでしょうかというぐらいのやり方をしながら、余り深夜勤に、お二人で行かれるような話もありましたけれども余り奨励できる内容ではないんじゃないだろうか、こんな気がしますので、その辺もぜひひとつ、組合とも十分協議をされているようでありますが心配でありますので、見解等があれば聞かせていただきたいと思います。  以上の答弁を求めて私は終わります。
  281. 松本幸夫

    松本参考人 六十三年度契約収納費が十四億四千万円ふえているのはどういう理由かということでございますが、確かに今集金区の減などによって効率化を進めているわけでございますけれども契約収納費がふえますのは、先ほど来いろいろ申し上げております新しい営業体制をどうしても確立してまいりたい。この新しい営業体制をバックアップするためにはコンピューターシステムがどうしても必要だ、従来のコンピューターシステムではこれから先の新しい営業活動を的確にバックアップすることができないというふうに考えまして、新システムの開発ということを今進めております。六十三年度にはこの新営業構想のための経費として十二億三千万円ほど投入しております。これが先ほどお話にございました十四億四千万円ふえているということの一番大きな理由でございます。私どもは、この新営業構想のための経費というのは将来へ向かっての先行投資であるというふうに考えております。私どもとしては、これから先、経費率の圧縮、業績の向上ということをこうしたバックアップ体制を整えることによって実現してまいりたいと思っている次第です。  ただ、契約収納費はふえておりますけれども、人件費を含めた契約収納全体の経費は昨年度に比べて一億円ほど減ということが六十三年度予算になっているということでございます。  それからもう一つは、委託集金人の方々の受け持ち地域の拡大と労働条件の問題ということで御質問でございますが、受け持ち地区の拡大というのは、口座利用者がふえることに伴いまして訪問集金が減ってくるということに伴う集金区の再編成という形で行われているわけでございます。六十三年度につきましては、新しい営業構想をやりますために仕事やり方を大幅に変えますので、事務費についても大幅に変えてまいらなければならぬというふうに思っております。そういった点につきましても受託者の組織と十分話し合って決めてまいりたいと考えているところでございます。  それから深夜の訪問の問題で御質問がございましたけれども、面接効率という点で考えますと土、日よりも深夜の方がいいというのが、我々の実験の結果では明らかにそういう結果が出ております。ただ、深夜訪問をしてトラブルが起こりはしないかというお話でございますけれども、これは突然深夜に伺ってNHKだといえばトラブルが起こることも十分あろうかと思いますが、事前の手順を十分に踏んで、NHKが何度も来ている、そしてお目にかかれなかった、そして十一時ということであるならば、これはお許しいただけるのではなかろうか。私ども、モデル店でございますとか幾つかの試行地域でこれも実施しておりますけれども、トラブルの起こる件数というのは極めて少ない、つまり手順を踏んでお目にかかるということによって受信者の方は理解していただけるというふうに我々としては考えているところでございます。
  282. 田並胤明

    ○田並委員 今のお話を聞いて少し安心しましたが、ぜひひとつ十分な研修あるいは労使間の協議を行って万遺漏のないようにやってほしい、このように思います。  来年度の料金値上げがいろいろ想定をされているようでありますが、今日本は超安定物価、物価が安定している世の中ですから、極力経費の節減に努められて、一層の経営努力をされて国民皆さんの期待にこたえられるようにしてほしい、このことを強く要請をして、終わります。どうもありがとうございました。
  283. 塚原俊平

    塚原委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  284. 塚原俊平

    塚原委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。額賀福志郎君。
  285. 額賀福志郎

    ○額賀委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして、これに承認を与えることに賛成の意を表するものであります。  日本放送協会昭和六十三年度収支予算事業計画及び資金計画は、「おおむね適当なものと認める。」との郵政大臣意見が付されて国会に提出されたものであります。  昭和六十三年度事業収支は、事業収入三千五百十一億円、事業支出三千六百三十五億四千万円となっており、その不足額は百二十四億四千万円と、極めて厳しい財政状況にあります。  このような状況にありながら、協会は、その事業計画において、外国電波混信による難視等に対してのテレビジョンとラジオの両放送網の整備、それに視聴者の意向を積極的に受けとめ、ニュース番組刷新を図るなど、放送番組充実に努めることになっております。  また衛星放送につきましては、その特性を生かした番組の開発編成による積極的な普及促進を図ることとしております。  国際放送につきましても、番組充実放送時間の拡充を図ることになっているほか、海外中継について新たに相互交換中継方式を導入し、効率的な受信改善に努めることとしております。これは、国際化時代に対応した、まことに時宜に適した施策と考えるものであります。  さらに、受信料負担の公平を期するため、新営業体制の導入による受信契約増加受信料の確実な収納に努める一方、業務全般の見直しによる要員の削減と経費の節減を図ることとしておりますことは、厳しい経営環境にあってまことに現状に即した施策であると考えます。  本件の審議において、各委員より、協会事業全般にわたって極めて多面的な質疑が行われましたが、これらの質疑協会のあり方に関して有意義な示唆を含んでおり、協会はこの質疑の動向をその事業運営の上に正しく反映されていくよう考慮されることを強く要望しておきます。  さらに協会は、公共放送使命達成のため一層の努力を尽くし、国民の信頼と期待にこたえるよう希望するものであります。  我が党は、かかる観点から、協会の六十三年度収支予算等について、その適正な執行を期待しつつ、これを承認するに賛成する次第であります。
  286. 塚原俊平

  287. 佐藤祐弘

    佐藤(祐)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、いわゆるNHK六十三年度予算案に対して、反対の討論をするものであります。  周知のようにNHKは、国会での政府演説と衆参両院における各党代表質問並びに予算委員会総括質問の各党一巡目の質疑を中継放送し、国政と国民を結ぶ重要な役割を果たしています。特に、予算委員会は国政全般にわたって各党と政府が一問一答形式で論議を闘わせる場であり、主権者である国民にとって政府の政策と各党の主張を、質疑を通じてより深く直接知り得る重要な機会になっています。  言うまでもなく、国民の知る権利は、憲法の主権在民の原則の当然の前提となるものであり、この国民の知る権利が保障されてこそ国民の積極的な国政参加の道が確立されるのであります。  公共放送であるNHKは、この点で重要な責務を負っています。同時にその際、放送法第四十四条第三項も「政治的に公平であること。」を義務づけているように、公平の原則が貫かれなければなりません。ところが実際は、予算委員会の中継は特定の党の質問が午後六時ないし大相撲があるときは午後五時で打ち切られ、深夜の録画放送に回されるという異常な事態が続いています。  我が党は、それがどの党であれ、特定の政党に限ってその視聴が著しく困難な深夜に放送されることは、公平の原則に反するだけでなく、国民の知る権利を事実上大きく制限するとの観点から、再三にわたってNHKに不公正の是正を申し入れてきました。さらに、一昨年には衆議院予算委員理事会でもこのことが問題になり、理事会の総意として予算委員長NHKに対して、教育テレビに切りかえての中継放送継続、録画放送時間帯の繰り上げなど、改善の申し入れを行っています。  しかし、NHKは衆議院予算委員理事会や我が党のたび重なる改善の申し入れにもかかわらず、何らの改善の措置もとろうとしていません。このNHKの不見識な態度がいかに国民の知る権利を妨害しているかを如実に示したのが、さきの予算委員会で浜田前予算委員長が、我が党の正森議員の質問を妨害し暴言を繰り返すという事態の最中に予算委員会の中継を打ち切ってしまった事件であります。  予算委員会で起きた事態が議会制民主主義の根幹にかかわる国政上の重大な問題であったこと、国民の大きな関心を呼び起こしたことは、その後の経過でも明白であります。だからこそ、さきの私の質問NHK自身が答えたように、国民視聴者からもNHKに対して抗議の電話が殺到したのであります。  それにもかかわらず、NHK予算委員会中継の不公正をなお改善しようとしていません。中継放送時間の延長や教育テレビへの切りかえは、その意思さえあれば実行可能なことであることは、高校野球や大相撲などの例を見ても明白であります。  私は、NHKが一日も早く不公正な放送を改めるように強く主張し、このままの状態では六十三年度予算案に賛成できない旨を表明して、反対討論とします。
  288. 塚原俊平

    塚原委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  289. 塚原俊平

    塚原委員長 これより採決に入ります。  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を採決いたします。  本件を承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  290. 塚原俊平

    塚原委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。     ─────────────
  291. 塚原俊平

    塚原委員長 ただいま議決いたしました本件に対しまして、田名部匡省君外三名より、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨説明を聴取いたします。田名部匡省君。
  292. 田名部匡省

    ○田名部委員 ただいま議題となりました放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件に対する附帯決議(案)   政府並びに日本放送協会は、次の各項の実施に努めるべきである。  一 放送の不偏不党と表現の自由を確保すること。  一 協会は、放送番組について視聴者の意向を十分に受けとめ、公共放送使命に徹し、公正な報道と豊かな放送番組の提供に努めること。  一 協会は、一段と厳しい経営の現状とその打開の必要性を深く認識し、営業活動刷新事業効率化等を徹底し、経営の安定を図るための長期的展望に立った具体的計画を速やかに策定すること。  一 衛星放送については、その特性を生かし普及促進に努め、本格的な放送実施に向けて検討を加えるとともに、ハイビジョン放送の開発研究・普及のための諸施策を積極的に推進すること。  一 国際間の相互理解の増進に資するため、国際放送について、交付金の増額、海外中継局の確保等による受信改善及び番組充実に努めるとともに、映像による国際交流の促進を図ること。  一 協会は、地域放送実施に当たっては、各地域の実情に応じた番組を編成する等充実、強化を図ること。 以上のとおりであります。  この附帯決議案は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案に係るものでありまして、案文は、当委員会における質疑の動向等を参酌して作成されたものでありますから、各項目についての説明を省かせていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げる次第であります。  以上であります。
  293. 塚原俊平

    塚原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  294. 塚原俊平

    塚原委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、中山郵政大臣及び川原日本放送協会会長から発言を求められておりますので、これを許します。中山郵政大臣
  295. 中山正暉

    中山国務大臣 日本放送協会昭和六十三年度収支予算等につきましては、慎重なる御審議の上、ただいま御承認をいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。  これまでの御審議に当たりまして各委員の提起されました貴重な御意見並びにただいまの附帯決議につきまして、今後の放送行政を進めるに当たり、御趣旨を十分に尊重してまいりたいと存じます。  お礼を申し上げてごあいさつといたします。(拍手)
  296. 塚原俊平

  297. 川原正人

    川原参考人 日本放送協会昭和六十三年度収支予算事業計画及び資金計画につきまして、ただいま御承認を賜りまして厚く御礼申し上げます。  本予算を執行するに当たりましては、御審議の過程で種々御開陳いただきました御意見並びに郵政大臣意見書の御趣旨を十分生かしてまいりたいと考えております。また、ただいまの附帯決議につきましては、協会経営の根幹をなすものでございますので、これを体しまして、執行の万全を期したいと考えている次第でございます。  まことにありがとうございました。(拍手)     ─────────────
  298. 塚原俊平

    塚原委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 塚原俊平

    塚原委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  300. 塚原俊平

    塚原委員長 放送法及び電波法の一部を改正する法律案議題といたします。  政府より趣旨説明を聴取いたします。中山郵政大臣。     ─────────────  放送法及び電波法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  301. 中山正暉

    中山国務大臣 放送法及び電波法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、放送の健全な発達を図るため、放送計画的普及を目的とする制度を設け、放送番組審議機関に関する規定整備する等放送番組の編集等に関し所要の措置を講じ、日本放送協会が行う業務等に関する規定整備し、有料放送に関する規定を設けるとともに、放送局の免許に関する規定整備する等放送に関する法制の整備を行おうとするものであります。  次に、法律案の概要を申し上げます。  まず、放送法の一部改正の内容でありますが、その第一は、放送普及基本計画に関する事項についてであります。  郵政大臣は、放送計画的な普及及び健全な発達を図るため、放送普及基本計画を定め、これに基づき必要な措置を講ずるものとし、放送普及基本計画には、放送国民に最大限に普及させるための指針等放送計画的な普及及び健全な発達を図るための基本的事項、放送対象地域及び放送対象地域ごとの放送系の数の目標を定めることとしております。  第二は、放送番組に関する事項についてであります。  テレビジョン放送並びに日本放送協会の中波放送及び超短波放送について、放送番組の相互の間の調和を保つようにしなければならないこととしております。また、放送事業者は、放送番組審議機関が答申し、または意見を述べた事項があるときは、その概要を公表しなければならないこと等審議機関に関する規定整備することとするとともに、経済市況、自然事象及びスポーツに関する時事に関する事項その他郵政省令で定める事項のみを放送事項とする放送または臨時かつ一時の目的のための一定の放送を専ら行う放送事業者については、番組基準の制定及び審議機関の設置を要しないこととしております。  第三は、日本放送協会に関する事項についてであります。  日本放送協会目的について、豊かで、かつ、よい放送番組による国内放送を行うほか、放送及びその受信進歩発達に必要な業務及び国際放送を行うことを明らかにするとともに、日本放送協会は、郵政大臣の認可を受けて、その保有する施設または設備一般の利用に供し、または賃貸すること等の業務を行うことができることとし、これらの業務に係る経理については、その他の経理とは区分して整理しなければならないこととしております。また、理事及び監事の任期を二年とし、日本放送協会郵政大臣に提出する毎事業年度業務報告書、財務諸表には、監事の意見書を添えなければならないこととしております。  第四は、有料放送に関する事項についてであります。  有料放送を行う一般放送事業者は、有料放送の役務の料金その他の提供条件について契約約款を定め、郵政大臣の認可を受けなければならないこととしております。また、何人も、契約約款に基づき、有料放送事業者とその有料放送の役務の提供を受ける契約をしなければ、当該有料放送受信してはならないこととするとともに、有料放送事業者は、正当な理由がなければ、その有料放送の役務の提供を拒んではならないこととしております。このほか、郵政大臣は、有料放送の役務の提供条件が社会的、経済的事情の変動により著しく不適当となり、受信者の利益を阻害していると認めるときは、有料放送事業者に対し、契約約款の変更の認可を申請すべきことを命ずることができることとしております。  その他所要の規定整備を行うこととしております。  次に、電波法の一部改正の内容について申し上げます。  第一は、免許の申請の審査に関する事項についてであります。  郵政大臣は、放送局の免許の申請の審査について、郵政大臣が定める放送用周波数使用計画に基づいて、周波数の割り当ての可能性を審査することとするとともに、放送用周波数使用計画は、放送普及基本計画で定める放送系の数の目標の達成に資することとなるように、電波の公平かつ能率的な利用を確保するために必要な事項を勘案して定めることとしております。  第二は、免許の有効期間に関する事項についてであります。  放送局の免許の有効期間について、五年を超えない範囲内において郵政省令で定めることとしております。  その他所要の規定整備を行うこととしております。  なお、この法律は、昭和六十三年十月一日から施行することとしておりますが、日本放送協会理事及び監事の任期に関する改正規定等については、昭和六十三年八月一日より施行することとしております。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  302. 塚原俊平

    塚原委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会