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1988-05-11 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十一日(水曜日)     午前九時三十分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       今枝 敬雄君    江口 一雄君       遠藤 武彦君    金子 一義君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    鳩山由紀夫君       堀之内久男君    村井  仁君       村上誠一郎君    沢田  広君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    橋本 文彦君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         内閣法制局第三         部長      津野  修君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       寺村 信行君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         大蔵省国際金融         局長      内海  孚君         国税庁直税部長 伊藤 博行君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第二課長   垣見  隆君         環境庁水質保全         局水質規制課長 平石 尹彦君         法務省刑事局刑         事課長     古川 元晴君         外務大臣官房外         務参事官    田辺 敏明君         参  考  人        (日本銀行理事) 青木  昭君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   井上 喜一君     佐藤 守良君   今枝 敬雄君     亀岡 高夫君   江口 一雄君     渡辺 紘三君   戸塚 進也君     宮崎 茂一君   早川  勝君     井上  泉君   安倍 基雄君     伊藤 英成君 同日  辞任         補欠選任   亀岡 高夫君     今枝 敬雄君   佐藤 守良君     井上 喜一君   宮崎 茂一君     戸塚 進也君   渡辺 紘三君     江口 一雄君   井上  泉君     早川  勝君   伊藤 英成君     安倍 基雄君     ───────────── 四月二十八日  大型間接税導入反対に関する請願外一件(工藤晃紹介)(第二〇五九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二〇六〇号)  同(柴田睦夫紹介)(第二〇六一号)  同(岩佐恵美紹介)(第二一四八号)  同(柴田睦夫紹介)(第二一四九号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二一五〇号)  同(中路雅弘紹介)(第二一五一号)  同(山原健二郎紹介)(第二一五二号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願工藤晃紹介)(第二〇六二号)  新大型間接税導入反対に関する請願清水勇紹介)(第二一四七号) 五月九日  新大型間接税導入反対に関する請願伊藤忠治紹介)(第二二三六号)  同(小谷輝二君紹介)(第二二三七号)  同(坂上富男紹介)(第二二三八号)  同(左近正男紹介)(第二二三九号)  同外一件(春田重昭紹介)(第二三〇〇号)  同(水谷弘紹介)(第二三二五号)  同(渡部行雄紹介)(第二三二六号)  大型間接税導入反対、大幅な所得減税に関する請願安藤巖紹介)(第二三二四号)  大型間接税導入反対に関する請願安藤巖紹介)(第二三二七号)  同(石井郁子紹介)(第二三二八号)  同(岩佐恵美紹介)(第二三二九号)  同(浦井洋紹介)(第二三三〇号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二三三一号)  同(金子満広紹介)(第二三三二号)  同(経塚幸夫紹介)(第二三三三号)  同(工藤晃紹介)(第二三三四号)  同(児玉健次紹介)(第二三三五号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二三三六号)  同(柴田睦夫紹介)(第二三三七号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第二三三八号)  同(田中美智子紹介)(第二三三九号)  同(辻第一君紹介)(第二三四〇号)  同(寺前巖紹介)(第二三四一号)  同(中路雅弘紹介)(第二三四二号)  同(中島武敏紹介)(第二三四三号)  同(野間友一紹介)(第二三四四号)  同(東中光雄紹介)(第二三四五号)  同(不破哲三紹介)(第二三四六号)  同(藤田スミ紹介)(第二三四七号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二三四八号)  同(正森成二君紹介)(第二三四九号)  同(松本善明紹介)(第二三五〇号)  同(村上弘紹介)(第二三五一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三五二号)  同(山原健二郎紹介)(第二三五三号) 同月十日  新大型間接税導入反対に関する請願上田利正紹介)(第二四〇〇号)  同(佐藤徳雄紹介)(第二四〇一号)  同(野坂浩賢紹介)(第二四〇二号)  同(遠藤和良紹介)(第二四六四号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五四五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二五四六号)  同(山原健二郎紹介)(第二五四七号)  大型間接税導入反対に関する請願矢島恒夫紹介)(第二四〇三号)  大型間接税導入反対に関する請願岩佐恵美紹介)(第二四〇四号)  同(浦井洋紹介)(第二四〇五号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第二四〇六号)  同(金子満広紹介)(第二四〇七号)  同(工藤晃紹介)(第二四〇八号)  同(小谷輝二君紹介)(第二四〇九号)  同(児玉健次紹介)(第二四一〇号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二四一一号)  同(柴田睦夫紹介)(第二四一二号)  同(寺前巖紹介)(第二四一三号)  同(中路雅弘紹介)(第二四一四号)  同(中島武敏紹介)(第二四一五号)  同(不破哲三紹介)(第二四一六号)  同(藤原ひろ子紹介)(第二四一七号)  同(松本善明紹介)(第二四一八号)  同(村上弘紹介)(第二四一九号)  同(矢島恒夫紹介)(第二四二〇号)  同(岩佐恵美紹介)(第二四六八号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二四六九号)  同(不破哲三紹介)(第二四七〇号)  同(松本善明紹介)(第二四七一号)  同(経塚幸夫紹介)(第二五四八号)  同(工藤晃紹介)(第二五四九号)  同(佐藤祐弘紹介)(第二五五〇号)  同(辻第一君紹介)(第二五五一号)  同(東中光雄紹介)(第二五五二号)  同(藤田スミ紹介)(第二五五三号)  同(正森成二君紹介)(第二五五四号)  新大型間接税導入反対国民本位税制改革に関する請願佐藤祐弘紹介)(第二四二一号)  土地登記登録免許税増税措置の撤廃に関する請願経塚幸夫紹介)(第二四四一号)  大型間接税導入反対等に関する請願外一件(野口幸一紹介)(第二四六五号)  同(正森成二君紹介)(第二四六六号)  同(矢島恒夫紹介)(第二四六七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出第七九号)  金融先物取引法案内閣提出第八〇号)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出証券取引法の一部を改正する法律案及び金融先物取引法案の両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村正男君。
  3. 中村正男

    中村正男委員 おはようございます。  具体的な質問に入ります前に、宮澤大蔵大臣一つ質問したいと思うのですが、大阪というところにつきまして宮澤大蔵大臣、どんな御感想をお持ちなのか、ちょっとお聞きをしておきたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十分な知識を持ち合わせているわけではございませんが、歴史的に見まして我が国の、いわば我々の民族としての文化国づくり最初に行われた地方の中心になったところであると考えております。また、経済という面につきますと、そういう背景もありまして、最も早く経済近代化というものが進みまして、戦前におきましても我が国紡績業等々を中心近代化の原動力でありましたし、また戦後の復興においてもそうであったというふうに承知をいたしております。  そういう文化経済における我が国先進地域であったわけでございますが、その後東京が首都となり、また、いろいろな意味で政治、経済東京の方にも重点を移してまいりました。大阪の方方はそういう意味で、今後の大阪のいわば存在理由というものをどこに求めるべきかということについて長年御議論がございます。二眼レフというような言葉中心にいろいろ御議論がございました。先般、第四次全国総合開発計画が定められますときにも、大阪役割をどのようにすべきかということはいろいろ議論がございました。結局、大阪大阪なりに、我が国先端技術、あるいは情報、あるいは金融等中心にする取引、殊に取引ということについては、米が最初取引の対象であったということもありまして、大阪最初の先鞭を開いた土地であるということは広く知られておりますが、そういうことを今度は世界的な視野からも、大阪大阪としての国際金融一つ役割を担うべきだというようなことも、四全総においてはいろいろ議論されたというふうに承知をいたしております。
  5. 中村正男

    中村正男委員 極めて常識的な、かつ高い評価をいただきました御答弁をちょうだいいたしました。たんつぼ的な位置づけだという極めて激しい発言をされた元大臣もおられましたけれども大阪というところは、今大臣おっしゃいましたように極めて進取性に富んでおりますし、とりわけ経済に対する敏感なといいますか、そういう反応を持つ特色もございます。さきのその発言の中にも、商売には極めて熱心だ、こういうこともございましたし、この答えにつきましては、また後ほどの質問の中でさらにお尋ねをしていきたいと思います。  さて、具体的なこの法案の中身に入っていきますが、ことしの三月二十五日の毎日新聞の「先物新時代」、こういうコラムの中で、こんな表現といいますか記事が載っておりました。「「また一つ、”公認のギャンブル市場“を作ってしまった」――大蔵省若手官僚は、金融先物市場をそう表現してみせた。「少ないかけ金多額の見返りをねらう富くじ発売(刑法一八七条)、あるいはとばく(同一八五条)違反にならないかどうか、立法にあたって真剣に検討した」という。」こういう内容のものでございまして、とりわけ今回のこの金融先物取引法が制定をされるということによって、一段とマネー世界というものが大きく広がりを見せたというふうに私ども理解をいたしております。  もちろん、今日のように経済成熟化に伴いまして――従来はといいますか、今までの経済の基本というのは、設備や在庫など実物投資中心であったと思うのですが、今日はむしろより高い収益性を求めて、多額の資金が債券や為替などの金融資産へ向かっている。これは、従来実物経済というものを裏から支えていた金融経済の主役になりつつある、こういう私ども見方がされるわけでございまして、このこと自体は、この分野というものが一面、より成長性の高い情報産業でもございますし、こういった金融サービス発展というものが経済の一層の発展に大きく寄与している、このことは私は否定をするものではございません。  ただ、今回こういった金融先物取引法ということで、具体的にこの市場拡大をしていきますと、一方では現金決済ではなしに差額金で巨額の金が動く、こういうことになるわけでして、四年後には株価指数先物取引市場が一千兆円を超えるだろう、こんな観測も出ております。  こういうこれからの広がりを考えますと、ただ手放しでこういう金融市場拡大を喜んでいていいのかなと、率直な疑問がわいてくるわけでございます。具体的には、企業というものが本来の企業活動収益を求めていくというよりも、むしろより収益性の高いこういう金融市場資産運用軸足を大きく移すというところの財テクブームが、さらに拍車がかかるんではないか、こういう見方もされるわけでございまして、そういったマクロ経済の中で、こういう金融市場拡大というものを一体どのように受けとめていいのか、大蔵大臣のお考えをまずお聞きをしておきたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題はこの二十年ぐらいの間、世界的なそのような風潮を果たしてどう考えるべきかということは、実業人ばかりでなく、学者の間においてもいろいろ議論されておるところであると存じます。殊に、アメリカにおいて最近そのような風潮が非常に甚しく、昨年ウォールストリート暴落がありまして、一つ反省期に入ったとも言われるかと存じますけれども、そのようないわゆる我々の言葉で申せばマネーゲームとでも申しますか、それがコンピューターの発達によって、非常に大量に、非常に小さな金額の差まで、そして非常に急速に取引が行われるということになりましたために、たくさんの人材がそっちの方に向かうようになり、また企業家としても、同じ利益を上げるならばそういうようなことが一番利益の確実な、かつ早い取得方法ではないかと考えられるような風潮がありまして、それについてのいろいろ反省議論が起こっておると思います。  それはやはり、物の生産にいたしましてもサービスにいたしましても、一つ価値を生むことに意味があるのであって、価値を生まない金融取引というものに、それは悪いというわけではありませんけれども、非常に大きなエネルギーが注がれ、たくさんの人材がそっちへ向かうということは、果たして健全なことであるかどうかということは、まさに御指摘のようにいろいろに議論をされておるところであると存じます。自分にはそのような議論に答え得る力はございませんけれども、そういう一つ反省が起こっているということは、これはおっしゃるとおり私は確かなことであると考えております。
  7. 中村正男

    中村正男委員 今御答弁ございましたように、確かにこれからこういった市場拡大をしていくことによって、さまざまな社会への影響というものが私は心配されるわけでございまして、そういう意味合いでも、大蔵当局金融あるいは証券といった業界に対する適切な管理、指導というものをぜひ強く要望しておきたいと思います。  そういう前提に立ちまして、今回この株価指数先物取引が本格的に始まるわけでございまして、大阪証券取引所では日経二二五、それから東京証券取引所ではTOPIXというものが登場してまいります。これに一般投資家が広く参加をしていくわけですから、当然投機という性格も色濃く私は出てくると思います。そうなりますと、相場そのものが極めて流動性が高まってくるわけでございまして、そういう面で一般投資家に対する保護措置というものが極めて重要になってこようかと思います。その点についてどのように対処されようとしておるのか、具体的にお聞きをしたいと思いますが、ただ余り専門用語でおっしゃらずに、極めて一般の庶民がわかりやすく理解できるような御答弁を簡潔にお願いをしたいと思います。
  8. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘ございましたように、一般投資家がこういう株価指数先物市場参加して非常に損失を受けるとかいう事態を発生するということは、我々もできるだけ防止しなければならないというふうに思っております。そのための措置といたしまして、いろいろと証券取引法あるいは取引所指導その他によりまして、それからさらに証券会社の中の自主規制、そういったいろいろ措置を設けておるわけでございますけれども、簡単に申し上げますとまず第一は、個人投資家に対しまして証券会社その他が取引を行う場合に、法律上どういうふうな義務を負っているかということでございます。  まず第一に、証券会社取引を行う者に対しまして、顧客に対しまして、その株価指数先物がどういう内容のものであるか、すなわち、価格が変動すればその差額決済をすることになり、損失を受けた場合にはそのリスクを負担しなければいけない、さらには手数料がどういうふうになっておりますとか、それからさらに申し上げますと、証拠金というものがどういうふうになっておって、さらに取引仕組みは、毎日価格がいろいろと変わってまいりますから、価格の変動に応じて証拠金の積み立てる額も変わってまいりますとか、そういう内容を具体的に説明をする、要するにこれは取引危険開示文書と称しておりますけれども、そういうものをお客に交付しなければいけないということになっております。そのほか、取引を行いました都度、当然のことながら取引報告書というのをお客に交付いたしますし、それからさらに勧誘に当たっては、こういうものがもうかりますよとかいうふうな適正でない言辞を弄して勧誘することはいけない、いろいろ細かく法律規定をすることにしております。  それから第二番目は、一般お客がこういうものに参加する場合に、資力のない人は参加できないようにするという仕組みでございます。これは、取引所の規則あるいは業界自主規制等によって行われておるものでございますけれども、その幾つかについて御説明を申し上げますと、まず第一に、お客は、一般投資家は、株価指数先物取引をいたします場合に証拠金を積み増さなければなりません。現在、国債先物については、取引額の三%ということになっております。株価指数につきましてどうするか、現在検討中でございますのではっきりしたことは申し上げられませんけれども、これよりも高いものにしようというふうに思っております。しかも、その場合に最低限度幾らを積み立てなければならないということで、国債先物の場合は六百万円ということなっております。  それからさらに証券会社は、資力のないお客がこういう取引参加することを防止するという意味におきまして、お客証券会社に対します預かり資産一定額以上なければだめだということにしております。これは、証券会社によっていろいろ違いますけれども一般証券会社国債先物につきましては、二千万円以上お客から預かっていなければいけないということにしております。それから四社等大証券は五千万円、この基準をさらに引き上げておるようでございます。そういうこともしております。  それからさらに、お客の買いの残高あるいは売りの残高、建て玉限度と称しておりますけれども、この建て玉につきまして限度を設けておりまして、預かり資産の十倍まで、個人お客の場合は二十億円を超えてはいけないというふうに、国債先物についてでございますけれども、非常に細かく規定をしておるわけでございます。  同時に取引所におきましても、この国債先物について申し上げますと、余り一日の値幅が動くということにつきましては、一般投資家に不測の損失を与えるおそれもあるということで、御承知のように値幅制限というものを設けておりまして、国債につきましては、現在のところ一日の値幅制限二円ということになっておりますけれども株価指数につきましてもやはり同様のことを考えていかなければいけないというふうに思っておるわけでございます。  こういうふうな措置をとっております関係上、国債先物と、あるいは大阪先ほどお話がございました株先五〇と二つ先物のケースがあるわけでございますけれども、いずれも個人投資家参加の比率というのは非常に低うございまして、国債先物につきましては〇・何%、株先五〇につきましてはやや高うございますけれども、それでも二%前後ということでございます。したがいまして、こういう措置がある程度効果を上げて、一般投資家は相当資産を持っている方でないと、これまでのところこの先物参加していないということでございますので、株価指数先物導入に当たりましても私どもとしては、同様な考え方で対処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  9. 中村正男

    中村正男委員 今回の法案によりまして、いわゆる証券業界金融業界の業際問題が一応相乗りという形で決着をしたというふうな理解に立つわけですが、この結果二つ市場が併存することになったわけですけれども、これをこのまま続けていくのか、二年後の見直しということが今回出ておりますが、それは二年後以降はいわゆる総合的な金融先物市場というふうな方向を目指していくのか、その辺をお答えをいただきたいと思います。
  10. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回の法案をお出しする前に、御存じのように証券取引審議会金融制度調査会あるいは外国為替等審議会等々で、この先物市場につきましてどういう仕組みが一番合理的であり、顧客のニーズに適切に対応できるかという点について、随分御議論いただいたわけでございます。御存じのように、諸外国は割合に統一的な市場が多いわけでございます。したがいまして、そういう意味で、統一的な市場がいいという意見もそれぞれの審議会でかなりあったわけでございますが、片方、昨年のブラックマンデーの大暴落以降、欧米諸国におきましても、先物市場現物市場とがやはり一体化した方がいいのではないかという意見もその後出てきておりまして、そういう中で海外においてもいろいろ現在検討が行われておるわけでございます。したがいまして、この法案を出します前に大蔵省内でもいろいろ議論いたしましたし、そういう報告書でも二つ意見が取り上げられたわけでございます。  片方、実際上の問題といたしまして、既に証券取引所において御存じのように国債先物市場が大きく発展しておりまして、そういう事態もあるというようなこと等を勘案しながら、今回提出いたしました法案のように二つ市場を併存させるのが当面いいのではないか、現実的な処理ではないかということになったわけでございます。ただその場合に、先ほど委員も言っておられましたように、証券金融業界がそれぞれの市場に相乗りして、そしてそういう中で仕事をしていっていただくという仕組みをとっておりますので、実際上は個々の顧客にとりましては、そういう意味では問題はほとんどなくなっているわけでございます。ただ、今後いろいろ海外も含めまして諸情勢も変わってまいりますし、環境も変化が予想されますので、そういう中でそういう事態を十分見定めながら、二年後を一応めどといたしまして、先物のあり方についてもう一度見直してみようじゃないかというふうになっているわけでございます。
  11. 中村正男

    中村正男委員 まさに、現実的な処理という形でとりあえず併存という形になったと思うのですが、やはり総合的な金融先物市場という方向が一番いろいろなことを考えますといいのではないかな、これからどういう展開を見せていくかわかりませんが、そんな感想を申し上げておきたいと思います。  そこで、この金融関係という表現の中で、生損保業界、これをどういうふうな位置づけをしておるのか、今回の法案の中では、通貨先物預金金利先物あるいは内外国債先物については、自己勘定による売買はできる、ただ取り次ぎ業務はできない、こういう理解をしておるのですけれども生損保業界については、今度の法案ではどういう位置づけと考え方に立っておられるのか、その辺をお聞きをしておきたいと思います。
  12. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今回の法案におきましては、一定の資格のある法人は取引所の会員となって先物取引ができるというふうになっているわけでございますが、今委員のおっしゃいました生損保の方につきましては、業法上業務のやり得る範囲が決まっておりまして、保険業法でございますけれども、その第一条に「保険事業ハ主務大臣ノ免許ヲ受クルニ非ザレバ之ヲ営ムコトヲ得ズ」、こうなってございます。そして、第五条に「他業の制限」ということがございまして、「保険会社ハ他ノ事業ヲ営ムコトヲ得ズ」、こうなっております。したがいまして、先ほどお話がございましたように、保険事業として保険会社が持っております自己勘定資産、これにつきましては先物の仕事ができるわけでございますけれども、他から委託を受けましてこれを行うことは可能ではない、こういうことでございます。
  13. 中村正男

    中村正男委員 今回のこの措置で、銀行が国債先物外国国債先物、これは取り次ぎ業務も含むわけですが、そういったことにこれから入っていくことができるわけです。そうなりますと、これはかなり変動幅の大きい仕事になってまいります。場合によっては多大な損失を銀行がこうむる場合もあり得る、そうしたときに預金大衆に迷惑をかけることにならないか。今までも為替取引で若干そういった問題が起こりまして、シンガポールですか、第一勧銀の一担当課長ですかが、個人の責任ということで処理されたことを覚えておるわけですが、今度はそういった程度のものでは済まないのじゃないか。そういうことに対して、具体的にリスクマネージメントを当局としてはどう監督指導していくのか、ぜひひとつこれは大臣に基本的な考えをお聞きをしておきたいと思います。
  14. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員のお話にございましたように、先物というものはやはりリスクがあるわけでございます。ただこの先物は、一つの大きな先物の効用といたしまして、逆にリスクヘッジのためにも存在するということであるわけでございます。御存じのように、金融の国際化、自由化がどんどん進んでまいりますと、金融機関の保有する資産等につきまして価格変動が非常に激しくなりますし、それから金融機関の金利も大きく変動するわけでありますから、そういう中でそういう変動リスク等々をヘッジするためどうしてもこの先物市場が必要である、そういう意味では、リスクを前もってなくす役割先物市場は果たすわけでございます。  ところが、そういう観点から離れまして、これを投機的に先物市場でいろいろ商売を行うということまで金融機関等が踏み込んでまいりますと、そこで巨額の危険をこうむるということもあるわけでございます。したがいまして、行政当局といたしましては、既に六十年十月以降内国債先物取引が行われているわけでございますので、これにつきましてはネットポジションをきちっと決めまして、それ以上先物取引を行うことを認めておりません。したがって、今後新しい業務といたしまして、それ以外の金利の先物等々が行われることが可能になるわけでありますので、それにつきましても、従来やっておりますポジションの規制等々を同様に適用することによって、金融機関等の過大なリスクへのエクスポージャー、さらされることを防いでいくということをやっていく必要があると考えている次第でございます。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 世界的に、殊に先進国の間で取引が白田になりまして、金融についてもさようでございますが、自由になるということはそれだけチャンスが大きいということでございますが、チャンスが大きいということはそれだけまたリスクが大きいということでございます。それで、金利が自由になった、あるいは自由化と一緒に国際化が行われますと、今度は為替というものがどうしてもそこへ入ってまいります。金利も為替も自由になりますと変動するということでございますから、したがってその変動に伴うチャンスとともに、今度はリスクをヘッジするということが、今銀行局長が申し上げましたようにどうしても必要になるであろう。そこのところはどうももろ刃の剣でございますけれども、やはりリスクヘッジという場は国際的にも設けられておりますし、我が国もここまで来ますとこれは設けざるを得ない、設けるべきであろうというふうに考えております。  その場合一般論といたしましては、そのリスクヘッジの場がスペキュレーションの場になりませんように、建て玉の制限をしたりあるいは証拠金で抑えたりあるいはまた預かり資産で制約したり、いろんなことをいたしまして、一般的にはスペキュレーションが過度にわたらないようにそういう制約をしておるわけでございますけれども、それがまた金融機関となりますと、もう一つそれより上の公共的な立場がございますから、為替もそうでございますけれども、今度はポジションで規制をいたしまして、余り投機的にならないようにという行政的な監督指導をもう一つする、こういうことであると思います。
  16. 中村正男

    中村正男委員 大阪証券取引所で昨年六月から発足をいたしました株先五〇、先般大蔵委員会で大証の皆さん方と懇談をいたしまして、大変これが好調に展開をしている、こういう報告を受けたわけでございますが、御案内のように、現行証券取引法の範囲の中で、いわば先物のそれこそ先駆けをこれはやってきたと思うのです。現実にことしの二月では、既に現物取引が一日当たり千三百七十七億ですけれども株先五〇はそれを超えまして千六百八十七億、こういう状況でございます。今回株価指数先物等は新たに登場したわけですけれども、いわば株先五〇がその道を開いたと言ってもいいのじゃないかと思うのです。したがって、これからこの二つ、大証と東証で先物が始まるのですが、一体株先五〇はどういう位置づけになっていくのか、これは当然地元の大阪中心にしてそれぞれ関係者の方が考えるべき問題かもわかりませんが、当局としての考え方はどうなのか、それを聞いておきたいと思います。
  17. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 大阪株先五〇につきましては、ただいま御指摘ございましたように、このところ非常に順調に拡大を続けてきておりまして、また取引高だけではなくて、その取引内容とか参加者の範囲とかいうのを見てまいりましても、機関投資家あるいは外国投資家等がリスクヘッジ等に使っておるというふうなことになっておるようでございます。  今後、株価指数先物導入いたしますとこれがどうなるかというお尋ねでございますけれども、御承知のように大阪導入検討しております株価指数先物は、日経平均二百二十五を対象にしております。東証は東証指数ということで、東証上場銘柄千百を対象にしております。大阪株先五〇は五十銘柄のパッケージでございますので、投資家のポートフォリオの組み方と申しましょうか、持っている株式の種類がどのぐらいあるかとか銘柄数がどのぐらいあるかとかいうようなことを考えますと、非常に銘柄数が多岐にわたっておる投資家、機関投資家等は、どちらかというと日経平均指数等を利用する場合もあろうかと思います。しかし、五十銘柄等を保有している、しかもその五十銘柄についてヘッジをしようというふうに考えている投資家も必ずやあろうかと思います。そういったものを引き続き株先五〇を導入したいということになるのではないかというふうに思います。また、取引仕組みも、株先五〇の場合は御承知のように現渡しと申しますか、決済期日が到来した場合に差金で決済しないで現物の受け渡しをするということも可能でございます。  そういうふうに、取引の対象あるいは仕組み、こういったものが違っておりますので、私どもは、株価指数先物導入されますれば当然株先五〇の役割が終わるというふうには考えておりません。もちろん、これは今お話がございましたように、大阪証券取引所中心とした大阪証券業界が考えるべき問題でございますけれども、私ども大阪の方からの要望があれば、これを存続させるという方向で前向きに考えてまいりたいというふうに思っております。
  18. 中村正男

    中村正男委員 時間がなくなりましたので、最後に、具体的な金融先物取引所の問題についてお尋ねをしておきたいと思います。  どこにこれを設置をされるのか、お聞きをしたいのですが、時間がございませんから私の主張を申し述べましてお答えをいただく、こういう形にしたいと思うのです。  過日、多極分散型国土形成法も衆議院を通過をいたしましたし、この国会で成立をいたします。この関係からいたしましても、私は、もうこれ以上過度に東京一極集中ということはどうしても回避をすべきではないか。新たにつくっていくもの、あるいは東京にどうしても必要でないものはむしろ地方に展開をしていく。とりわけ、冒頭大臣がお答えいただきましたように、大阪というのが日本の経済の双眼的な役割を、しかも国際化の中でこれから果たしていくわけでございますから、また江戸時代に、先ほどお話ございましたように、先物の先駆的な役割も果たしている。さらに諸外国を見てみましても、例えばアメリカにおいてもニューヨークとシカゴを比較してみますと、ニューヨークは御案内のようにいわゆる金融センターであります。しかし実際の先物市場は、シカゴの方が圧倒的優位な形で取引が展開されている。これは、意思決定は本店でするけれども取引の執行場所は別なところで十分可能だと立証しておるわけです。そういう三点からいたしましても、私は大阪が最もふさわしいところではないか、こう思うわけですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問の趣旨は十分に承りました。この法案におきましては、先物取引所の設置される場所、あるいは数を一つであるのか複数であるのか等々については、何らの制限は設けられておりません。したがいまして、法律が成立いたしました後、各地域から設置の希望が出てまいりますれば、これを踏まえまして、もろもろの状況を総合的に勘案をいたしまして適切な対応を図りたいと考えております。法律成立後に考えさせていただきたいと思っております。
  20. 中村正男

    中村正男委員 ぜひひとつ、大臣の決断をお願いしたいわけですが、二つの側面をいま一度申し上げておきたいと思うのです。  一つは、ナショナルセキュリティーの問題であります。これは言う必要もないことかと存じますけれども、過度に国際金融機能が東京にどんどん集中してくるということになりますと、災害時に、あるいは情報通信網の混乱というふうな場合に、これはもう本当に全国的なあるいは国際的な機能が麻痺をしてしまう、こういうことが当然考えられます。  それからいま一つは、東京自身の持っている、あるいはまたこれから拡大をしていきます国際金融機能、これを補完していくという役割もやはりどこかで果たさなければならない。それには大阪が、関西新空港も二十四時間体制で開港されるわけですし、そういう意味合いでも大変ふさわしいところではないか、特に東京の場合は、アメリカなり欧州を主要相手国に国際的な金融活動が展開されていきますが、大阪は過去からアジア・太平洋地域との関係が非常に密接な歴史がございます。そういう意味合いからも、東京のそういった国際機能を補完していくという役割大阪にあるのではないか、私は極めて重要な存在だということを申し上げたいと存じます。  もっと大阪の立場を主張したいのですが、時間が参りましたので、これで終わらしていただきます。ありがとうございました。
  21. 越智通雄

    越智委員長 次に、橋本文彦君。
  22. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 最初大臣にお尋ねしたいのですが、NTTの株を契機に大変な一般大衆が株式投資に参画し、もはや一億株式投資者というような観を呈しております。金余りあるいは財テクブームという形でもって、いろいろ弊害等も叫ばれております。また、企業そのものが本来の企業内容に頑張らないで、財テクブームに走る傾向もあるやに聞いております。こういうような現在の社会情勢といいますか、これを大蔵大臣としてはどのように見ておられますでしょうか。その御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどもお尋ねがありまして、中村委員に申し上げたことでございますけれども、やはり人間の経済活動というものは、物をつくること、あるいはサービスをすることによってその価値を生むということが、私は大切な部分であろうと思うのでございます。額に汗をして何かの価値をつくっていくということが大事なことだと思うのでございますが、そういう意味ではやはり財テクとかマネーゲームとかいうものは、余りそれが度が過ぎますと、これが経済だというふうに企業家も家計も個人も考えられては、これはどうも困ることではないかという気持ちは、多分そういう観点からのお尋ねであると思いますが、私も橋本委員と同じように思っており、またある意味で懸念もしております。  ただ、現実に我が国に起こっております今の事態、おっしゃいますように金余りでもあるし、金利も低いし、そしていろんな商品が出てきまして、消費者と申しますか投資家への呼びかけも多いということで、大分ここのところ、法人はもとより個人の関心も強いようでございます。今までのところ、それが大して行き過ぎたとは思っておりませんし、機関投資家もアメリカなんかに比べれば、そう警戒をしなきゃならぬようなことをしておられるとは思いませんので、まあまあこの辺でしたらとは思っておりますけれども余りこれがさらにエスカレートするようなことは、やはり注意をして見ている必要があるかなと思っております。
  24. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 企業財テクブームには触れていただけませんでしたけれども、造船業界が非常に不況である。しかし、現実に東証の株を見ておりますと、そういう造船界の株が非常に好調である。これは本来の企業内容を反映しているのではなくて、いわゆる持っている資産の運用によって、それでもってその株の値上がりが激しいときもあるし、これは完璧に本来の事業ではない。そういうようなことを背景にお尋ねしたのですが、いわゆる企業が財テクに走っていくというこの現状はどう見ておられますか。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは企業でございますから、やはり一定の利益を上げて株主に報いなければならないということ、それは理解のできることでありますし、本業が不振なときにいわば営業外利益と申しますか、そういうことで頭張らなきゃいかぬという気持ち、それは私はよくわかることでございますけれども、それはあくまで本業ではないというふうに企業の側に考えておいていただきたいと思います。
  26. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 一般大衆が投資家になっているという現状の中で、あくまでも証券市場の公平性というか、あるいはその信用性というものを保持しなきゃならない、それを高めなければいけないというような考え方が当然背景にあって、今回の証取法の改正になっていると思うのですけれども、聞くところによりますと、いわゆる金融の国際化とか自由化とか言われておりますけれども、本来的には黒船が来たという感じで、いわゆる外圧によって今回の証取法の改正あるいは金融先物取引法の制定というものが叫ばれているんじゃないかと思うのです。  我々、相撲におきましてもあるいは野球の試合におきましても、いわゆる八百長というのがありますと非常に世間では問題にする。大きく取り上げる。また卑近な例では、大学の入試に絡みまして、事前に入試問題を見ておって入学すれば厳しい指弾に遭う。ところが、どういうわけかこの証券界におきましては、そういうような情報を先取りしておって、むしろそれをうまく運用するのがこの業界に生きる道なんだというような、そういう風潮があったように思うし、また世間の方でも、証券界というものはそんなものなんだ、フェアプレーの場所ではないんだというような考え方があって、一般大衆としてみればわけのわからぬ世界、怖い世界というような感覚があるように思っております。  御存じのように、アメリカの証券取引委員会、SECは大変なスタッフを持っておられる。日本では、その人員たるや極めて少ない。そういう中で、国際化という要求の中で、日本にもインサイダー取引規制をしなければならないという。しかも、アメリカの法体系そのものの考え方を我が国導入しようとする。我が国の国情に合ったような法律ではないという見地から、非常に問題があるやに聞いております。我が国の法体系を大別しまして、大陸法系というのと英米法系がございまして、英米法系というのは判例中心の法体系ができております。今回のこの証券取引法のいわゆるインサイダー取引規制あるいはその処罰に関しましても、大変アメリカの考え方を取り入れようということであったようですけれども我が国の罪刑法定主義という見地からすると非常に問題が多い、そんなような議論がたくさんあったと思うのです。  その問題が一つと、それからこのインサイダー取引が急速に高まってきて、わずか二カ月余りの審議でいわゆる案がつくられた。なぜこんなに急がなきゃならなかったのか、その辺の背景をひとつお聞かせください。
  27. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 お尋ねの点は二点あらうかと思います。  まず一つは、今回御審議をお願いしている証券取引法のインサイダー取引に関する規制は、アメリカ法的なのか大陸法的なのかというお尋ね、それからもう一つは、なぜこのインサイダー取引に対してこういうふうに早急に法律改正を行うのかという御質問、これはむしろ外圧とかそういったものがあったのではないかというふうなお尋ねであろうかと思います。  まず、後の方からお答え申し上げた方がよろしいのではないかと思いますけれども、私どもが内部者取引規制の強化を図るべきだというふうに考えました背景というのは、我が国証券市場が非常に国際化してきたということが一つの大きな要素でございました。御承知のように、最近では証券取引というのは、情報手段の発達に伴いまして、どこでも取引ができるということになっております。日本の投資家も随分米国市場には参加しておりますし、米国あるいは欧州の投資家も日本にもどんどん参加してきておる。そういう状況のもとでいわゆる株式市場では、非常に不公正な取引であるというふうな取引についての規制が、どこの国が強いとかどこの国が弱いとかいうようなことになりますと、やはり不正な取引がその弱い国に流れてくるというふうな問題もあろうかというふうに思います。こういう事実をとらまえて、むしろ外圧があったのではないかという御指摘もあるのではないかと思いますけれども、私どもといたしましては、諸外国から要請されてこういう内部者規制の強化を図ろうということを考えたわけでは毛頭ございません。むしろ、今のような事実、国際化の事実を認識して、日本の証券市場自身として明確な規制体制をつくり上げていくという必要があるということを認識したからということでございます。  それから第二の御質問でございます、今回改正をお願いしている法規制の内容というのが判例主義なのか、それとも構成要件を前提として、明確に取り締まり体系を法律上規制していくというやり方なのかという御質問でございますけれども、確かに日本の証券取引法というのは、全般的に見ますと米国の証券取引に関する法律と非常に類似をしております。委員も御承知と思いますけれども、現行法の五十八条の規定、すなわち証券取引に当たっては何人も不正の手段、計画または技巧をなしてはならないという規定は、米国がインサイダー取引の取り締まりの根拠にしておりますSECの規則とほぼ同じ内容でございます。米国ではこの法律、規則を前提にいたしまして、内部者取引を判例で積み重ねていく形によって強化してきたということでございます。  日本の場合は、やはり刑罰法規の適用に当たっては構成要件を非常に明確にしておかないと、まず訴訟の維持が非常に難しい。それからさらには、刑罰法規の適用だけに限らず、取引をする人たち、いわゆる取引者にとっても構成要件が明確になっておりませんと、どういう取引をすれば処罰されるのか、処罰されないのかというのが非常に不明確でございます。取引の安定性を維持するという観点からも、やはり構成要件を明確にしていくという必要があるのではないかというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、今回御審議をお願いをしております内部者取引の規制に関する規定、具体的に申し上げますと、百九十条の二、百九十条の三という規定でございますけれども、これはごらんいただきますとおわかりのように、内部者取引につきまして内部者とは何であるか、さらには内部情報につきましても、具体的にどういうものが内部情報に該当するものであるかというようなことを非常に明確に規定をいたしまして、言いかえれば構成要件を非常にはっきりして、内部者取引の取り締まりの強化を図ろうという考え方でございます。したがいまして、一言で申し上げますと、むしろ米国法的な考え方というよりも大陸法的、さらには日本法的な考え方というふうに申し上げた方がよろしいのではないかというふうに思います。
  28. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 局長のお話ですと、外圧ではなくてむしろ自主的にということを主張しておりましたけれども、それにしても諮問機関の審議期間が非常に短い。わずか二カ月半足らずで結論が出ておるわけですね。その辺がちょっと納得できないわけなんです。もう少しじっくり考えて、本当に我が国の実情に合った規制はどうなのか、今までのこの五十八条ではなぜできなかったのかという反省に基づいて、そういう議論がたくさんあったならばよくわかるのですけれども、そういう議論は全くなしに唐突にしてこれができ上がってきた。それで要するに、外圧からの影響で慌ててつくったんだなと、そういうような感じがしてならないわけでございます。そうでないようでございますので、これ以上言いませんけれども。  きょう、実は警察庁あるいは法務、検察を呼んで、今までのインサイダー取引の実例あるいは捜査の方針あるいは実際の捜査のあり方等々聞きまして、今回の改正に従って今後そういう警察あるいは検察がどういうふうに動くのか、大蔵省がどういうふうに告発するのか、その手順等を聞こうと思ったのですけれども、捜査というか、その手口を事前に知らせることにもなりかねないので、どうしてもそれは困るというようなことがございました。  考えてみればそうかもしれませんので、それはそれとしまして、大蔵省証券局の中で今後どういうふうにこの法律を運用していくのか。例えば、確かに証券局の中のスタッフでは非常に検査官も少ないでしょうし、監視体制もできない。従来も、この五十八条違反で摘発された例は一件もないと言われておる。今回の新しい百九十条ですか、以下の条文をつくりましてどれほど機能するのか、一体どういうふうにこれを摘発して告発していくのか、その場合の公判維持のためにどういうような協力を大蔵省はするのか等々、全くわからぬわけでございます。具体的に現在のスタッフでインサイダー取引規制ができるのかできないのか、それをまずお尋ねいたします。
  29. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 インサイダー取引に対します取り締まりの体制についてのお尋ねでございますけれども、この点につきましては、御指摘ございましたように証券局の、あるいは財務局も含めました全スタッフを動員いたしましても約百六、七十名ということでございますので、SECのインサイダー取引に充てております、六百五十名とか七百名とかいうふうに言われておりますけれども、そういった人員に比べますと非常に見劣りがするというのは御指摘のとおりでございます。  しかし、私ども証券局の役割と申しますのは、SECの役割とはやはりちょっと違ったところがあると私は思っております。言いかえますと、証券局はあくまでも行政機関でございます。SECは単に行政機関にとどまらずに、やや司法的な権限を有しておるいわゆる独立の行政委員会でございます。したがいまして、証券局の守備範囲といたしましては、むしろ罰則の適用についての捜査に当たるということではなくて、証券会社あるいは取引所等あるいは発行体、発行会社、こういったものを指導して、できるだけ内部者取引を発生しないように未然防止体制を整えていくということであろうかというふうに思います。そのためには、私ども証券会社あるいは取引所と相談しながら、できるだけ早く未然防止体制をより充実したものにしていくように、現在準備をしておるところでございますけれども、我々としては、むしろそういう未然防止体制を通じて、取り締まりに全力を尽くすというのが行政機関としての役割であるというふうに思っております。  ただ、行政機関といたしましても、その過程で犯罪があると思料いたしましたときは、刑事訴訟法に基づいて告発をするということになっておりますので、必要な場合にはそういう手続をとりまして、法令の許す範囲において捜査あるいは司法当局とも御協力をしながら、その罰則の適用については円滑な運用を図っていくというのが私どもの考え方でございます。
  30. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回の法案につきましては、大蔵省の方ではもう初めから声を大にして、あくまでもこれは未然防止にあるんだ、未然防止が一番大事なんだ、刑罰は二の次でございますというような主張をしておりますけれども、そこがやはり問題なんですよね。アメリカの方ではあくまでも証券市場の公正さ、それから信用を高めるという意味で、そういう取引を非常に厳しく取り締まってきている、それによって一般大衆の信頼をかち得ている。ところが我が国ではそれはできないわけですね、現在のスタッフでは。その中で一応今回は、インサイダー取引を厳しく規制しますよ、懲役もありますよ、罰金も高いですよ、こう言っておるけれども、実際にはそれが発動するケースは極めてないのではないか。ただ、あくまでもこういうような罰則があるから、いわゆる刑罰の抑止力に期待しまして未然防止なんですと。  だから、そうしますとやっぱりこの法案、ちょっと迫力がないなと思うのですよ。ですから、確かに今おっしゃったように、その構成要件としては完璧ですとおっしゃいましたけれども、私はこれは完璧ではないと思います。聞くところによりますと、今回のこの証取法の改正につきまして、法制局の方ではこの際一挙にインサイダー取引というものを処罰していこうというような方向法案に期待を込めたようですけれども、実際には検察庁の方では、公判維持という観点から非常にそれは困難である、また、日本の罪刑法定主義からしても構成要件の問題で非常に問題がある、そういうようないろんな思惑から、大蔵省が言うように未然防止、ここで落ちつけようというような形ででき上がった妥協の産物ではないのかな、こう思うわけです。果たして局長さんがおっしゃるように、今回のこの改正でいわゆる自主規制じゃなくて未然に防止ができるのかできないのか、どの程度の自信がおありでしょうか。
  31. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 アメリカと日本との違いにつきまして、もう一つ申し上げておきたいのは、証券会社制度と申しますか、この基本的な違いであろうかというふうに思います。米国では、御承知のように全証券会社、約八千社ございまして、日本のように厳しい免許制のもとではなくて、登録をすればできる、もちろん一定の資本金基準とか、こういうものはございますけれども、比較的参入はオープンになっておるというところでございます。したがいまして、そういう状況のもとでは、SECという強力な機関を置きまして、そこがみずから取り締まりに当たるというようなことも、米国のことですから、私がいいとか悪いとか申し上げるわけにはいきませんけれども、そういう土壌というのはあるのではないかというふうに思います。  一方、日本におきましては、証券会社を免許制のもとに置きまして、新規参入も非常に厳格に規制をしておりまして、現在証券会社外国証券会社を合わせましても二百五、六十ということでございます。私どもとしても、この証券会社に対する検査あるいはその他の指導を通じまして、その取引行為については証券会社たるにふさわしいものであるように非常に細かく、あるいは厳しく指導しておりますし、また目も比較的行き届きやすいということを、ちょっと言葉はよくないかもしれませんけれども、そういう状況にあろうかと思います。  私どもが考えました未然防止体制と申しますのは、そういう証券会社制度を前提にして考えておることでございまして、証券会社に対しまして顧客との取引につきまして、内部者登録カードというようなものをつくりまして、内部者に該当いたします発行体の役員、あるいは大株主、あるいはその親族、あるいは幹部職員、こういったもののリストアップをいたしまして、それらの取引を細かく目を行き届かせる。それからさらには、証券会社の中でもいわゆるチャイニーズ・ウオールと申しますか、法人部門の企業情報を得やすい部門と、それから営業部門、顧客との売買取引に当たる部門、これとの間で情報管理を厳格にする。そういう未然防止体制をうまくワークさせるために、売買管理部というところがいろいろと報告を徴収して細かく見ていく。果たして、それがうまくいっているかいっていないかということを、私どもが検査あるいは日常の接触を通じて、いろいろと証券会社の方からその実行状況を見ながら報告を徴収していくというふうなシステムを考えておりますので、私どもとしては、このシステムを通じて、未然防止体制というものが非常にその実を上げるようにこれまでも努力をしてきたつもりでございますけれども、さらに今後一層の努力を傾注して、うまくいくかいかないかということではなくて、うまくいかせなければいけないという覚悟で対処するつもりでございます。
  32. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 局長みずから告白したように、アメリカの方は届け出制である、我が国の方はいわゆる免許制である、だからそこでがっちりと初めから悪いものはいないのだという前提に立っているのですよね。だったら、今回改正する必要はないわけですよ、従来の線があるんだから。今回は、未然防止体制の確立を図るためには、いわゆる証券会社自身の自主規制を高く求めている。おっしゃいましたようにチャイニーズ・ウオールというものも、もっともっと垣根を高くしなければならない、こんなことも期待している。  それから、大蔵省のいわゆる発行会社に対する調査権といいますか、それも今度は権限が付与された、そんな見地からいわゆる未然防止ができるのじゃないか、こういうお考えのようですけれども、今までだって証券会社は全部届け出制じゃございません。だけれども、現実に厳しい大蔵省の監視体制にあっても、こういう不正取引というものがうわさされておりました。わずかこれだけの改正では、全然実効性は上がらないのじゃないかということを危惧するから質問しているわけなんです。うまくいくかいかないかはわかりませんとも言わないし、うまくいくように努力しますという答えでございましたけれども、果たしてうまくいくのだろうか。やはりスタッフが少な過ぎる、しかし財政再建の名のもとに今非常に厳しい、こういう矛盾する問題をどうクリアしていくのか。  要するに私が言いたいことは、いわゆる入試で不正を働くと社会の指弾を受ける。あるいはさっき言ったように、相撲とか野球の八百長があると社会が騒ぐ。だけれども、どういうわけか、この証券界では余り問題になってこない。悪という認識がまだないのじゃないかという気がするのです。どうも、今回いろいろな背景を聞いていますと、現在証券界、証券取引にまつわる不公正というものを、これは犯罪なんだという認識を社会に徐々に広めていくための現在はワンステップにすぎないのだ、もう少し本当に、インサイダー取引というものはけしからぬ、これは立派な犯罪なんだという意識が国民に定着するまでの一つの過程にすぎないのだ、そんなような見地でつくったのかつくっていないのか、その辺いかがでしょうか。
  33. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 インサイダー取引が悪であるかどうかということでございますけれども証券会社の業務につきましては、再三御指摘ございますように、いろいろな情報に基づいて取引が行われるということはこれまでもございます。また、今後もそういうことはあろうかというふうに思います。ただ、一言で情報と申しましても、いろいろな情報があるわけでございます。ここでわざわざ書生っぽい議論をするつもりもございませんけれども、基本的には、アナリスト等が企業内容を公表されたデータをベースにしていろいろ分析して、そして投資家に助言あるいは勧告をする、こういうものが本当の情報であろうかというふうに思います。  私どもがここで取り上げております情報と申しますのは、企業の内部の情報でございまして、具体的には増資の計画だとか、あるいは新技術の企業化の計画とか合併の計画とか、そういったものを取り上げて、その情報を会社の役員とか大株主とか、そういう立場を通じて知り得るもの、これを規制していこうという考え方でございます。したがいまして、そういう情報を通じて、今申し上げましたようないわゆる内部情報と申しますか、こういったものを内部者が使って取引をしていくということにつきまして、これが証券取引市場の公正な発展あるいは公平な取引というものを確保する上において許すべからざる行為であるというようなことは、このところ急速に一般の認識としても、私は高まってきておるのではないかというふうに思います。  先ほど、証取審の議論についてもお話がございました。非常に短期間のうちにやったのではないかという御指摘でございましたけれども、お言葉を返すようで恐縮でございますが、これは十月から二月、約四カ月にわたりまして七回の会合を開いて、参考人の意見聴取だけではなくて、委員の間でも非常に活発な充実した議論が行われた上で、答申をまとめていただきました。その答申の中でも、やはり今申し上げましたように、いろんな情報はあるけれども、その情報の中で内部情報をいわゆる内部者が知りながら取引をするということは、証券市場発展のために許すべからざる行為であるというふうなお考えをいただいたわけでございます。私どもとしては、既にそういう認識が広まりつつある、それを前提に今回の法律改正をお願いをしておるのだというふうに認識をしております。  例えば、諸外国の例で申し上げますと、英国につきましても、一九八〇年の初めごろにインサイダー取引についての法律規制が整備されました。これも英国の市場が国際化され、米国あるいは英国での同一人による取引が非常に自由に行われる、そういった中でやはり内部者取引に対して規制を強化すべきであるという認識が高まってきたことであろうかというふうに思います。  ただ、こういう法規制を整備することによりまして、さらにまた内部者取引が違法なものであるということの認識が高まっていくということも、もちろん期待できるわけでございますけれども、鶏が先か卵が先かの議論でございますけれども、私どもは、基本的には一般の内部者取引が違法であるとの認識が高まって、それを前提に法改正をお願いした、さらに法改正によって一層そうした認識が高まっていくものだというふうに考えておるわけでございます。
  34. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 証取審の中にいわゆる部会をつくりましたよね、今四カ月間の審議と言いましたけれども。この中に、要するに証券会社の代表は入ってなかったんですね。なぜ、現場の第一線の会社が入ってこなかったのか、その辺の理由をお聞かせください。
  35. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 内部者取引の問題を議論いたします場合に、その構成をどういうふうにするかということにつきましては、いろいろ考え方があろうかというふうに思います。当然のことながら、証券会社の方にも入っていただいて議論をしていただくということも一つの考え方ではございますし、むしろ学者、商法学者あるいは刑法学者、さらには学識経験者、こういった方々を中心にして議論をしていただくというのも一つの考え方だろうと思います。ただ、後の考え方をとりました場合においても、証券会社等あるいは証券会社だけではなくて発行体等の意見を全く聞かないでやるというようなことであれば、これは非常に問題であろうという御指摘を受けるのもやむを得ないと思いますけれども、私ども二回にわたりまして、内外の証券会社あるいは発行会社の方から十分インサイダー取引についての御意見を聴取したわけでございます。  それから、委員の中にも、証券会社からの直接の参加者はございませんけれども、学識経験者として証券取引所の副理事長にも入っていただきましたし、また、証券会社にもと勤務されて、証券取引についても非常に知識を持って、現在証券会社の研究所に勤務されている方の御参加もいただきました。そういう意味では、証券会社の方が直接参加されていないからといって、いわゆる内部者取引についての実務、経験、知識に乏しい者が議論をしたということではなくて、内部者取引についてのいろいろな考えられ得る取引の手法だとか、こういったものを十分熟知されている方々にも参加していただいて結論を得たのが、今回の不公正取引特別部会の考え方ということでございます。
  36. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回の改正がいわゆる外圧ではないんだというお答えがありましたので、非常に私の方も追及しにくいんですけれども、本当にそうなんでしょうか。一つにはタテホの問題が一つのきっかけ、それからもう一つはSEC等からの強い要請もあった。特にSECからは、我が国はいわゆるインサイダー天国である、こういう状況では国際的な信用も落とす、むしろ私の方は、そういう国際的な要求の方が強いんじゃないかと思うのですけれどもね。その場合に、SECが問題にしているインサイダー天国という内容は、いわゆる内部者取引云々よりもむしろ株価操作にある、これが不公正であるというような見地から声があったようなんですけれども、今回の証取審ではこれは一応論議していない。この証取法が改正された後に、また証取審でもってその株価操作についてのいわゆる諮問をしようというような動きのようですけれどもむしろ国際的な信用という面からすれば、株価操作についても厳しい規制を盛り込むべきではなかったのか、こう思うのですが、いかがなものでしょうか。
  37. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 たびたび繰り返すようで恐縮でございますけれども、外圧というようなことは私どもがこれまでやってまいりました経緯においても、全くないとはっきり申し上げてよろしいかというふうに思います。御承知のように、ことしの二月にもSECとの定期協議というのを行いまして、新聞等ではその定期協議に間に合わせるようにいろいろやったのではないかという報道がございましたけれども、私どもとしては、これに間に合わせるようにこの審議会の結論を得るとか、そういうふうに勝手に審議会の運営も曲げられるような性格のものではございません。これまでもSECともいろいろと接触はとっておりまして、SECとの間ではお互いに情報交換をやりましょう、より密接にいろいろ連絡をとりながら、株価の問題のみではなくて、この不公正取引等の問題についても情報交換をやりましょうという約束をしておりますけれども、その間におきましてSECの方から、日本がインサイダー天国であるとか株価操縦その他の問題についても非常に手ぬるいとか、そういう指摘があったことは一度もないわけでございます。  それから、株価操作の問題について、なぜ今回の法律で取り上げなかったのかという御質問でございますけれども、株価操作の問題につきましては既に証取法に百二十五条という規定がございまして、実際、私どもこの規定を運用いたしまして、日常の業務を通じて株価操作に該当するようなものにつきましていろいろ注意をしたりしたこともございますし、御承知のように、既にこの百二十五条を発動して摘発した件数も、刑事訴追に持ち込んだケースも四件程度はあるわけでございます。したがいまして、私どもはこの株価操作等の問題につきましては、法律改正の問題というよりもこれから株価操作の取り締まりに当たってどういう考え方をとっていくべきか、すなわち、言いかえますと、日本の株式市場がこれだけ大きくなりまして、国際的な取引も非常にふえてまいりました、従来の株価操作についての考え方というものでそのままやっていけるものかどうか、こういった考え方を議論していただき、そしてその考え方に基づいていろいろと御提言をいただければ、それに沿った執務体制をつくり上げていくということで足りるのではないかというふうに考えております。  したがいまして、今から全く法律改正の必要かないと申し上げるのは少し早過ぎるかもしれませんけれども、この不公正取引部会を設置いたしましたときの私どもの考え方といたしましては、内部者取引については現在の証取法五十八条ではなかなか対応しにくい面がある、したがって早急に法整備を図る必要がある、株価操作等につきましては百二十五条等の規定で十分対応できる、あとは実施の問題であるというふうに考えております。したがいまして、法律改正を行います内部者取引の部分につきましてとりあえず御報告をいただき、そして第二のステップとして株価操作等の問題をいろいろ議論していただくという考え方をとったわけでございます。
  38. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 株価操作に関連して、普通増資があるときに、我々一般大衆が証券会社の窓口に並んでその株を買うという例はないと言われております。なぜないのかというと、あらかじめその株は配分先が決まっておる。どんなに一般大衆があの株欲しいと思っても、買えないとわかっているから行けないのだという声がたくさんあります。本来ならば行列してぜひ買いたい。もっと不思議なことは、増資株が発行されるときに、経済の原則からすれば、供給がふえるわけですから当然値段は下がっていいわけです。ところが、株価安定というような行政指導があるのかどうか知りませんけれども、新株が発行され増資がされても、なおかつ値段が上がっていくという摩訶不思議な現象があるわけです。これなんかも一般投資家から見れば非常にけしからぬ。本来ならば、百円のものがある、それが大量に株が発行されるとなれば九十円になる、八十円になるという期待があるわけです。それが逆に、百円が百五円になってみたり百十円になったりすることもあり得る。これも大きな意味での株価操作であり、証券界が不明朗であり信用が持てないという一因かもしれません。  大蔵省の方は頭から否定していますけれども、例のNTTの株放出に際しましても、大蔵省が行政指導で値段をつり上げておったのではないか。そして、当初の予想した金額で売却できた。売却した瞬間に値段がどんどん下がってきて、現在はその値段にも回復していない。これも、大蔵省証券界の間でそういうようなやりとりがあったのではないかというようなことが一部マスコミで言われましたけれども、それは当然否定いたしますね。そういう意味の株価操作ということが本当はもっともっと大きな不公正だし、信用をなくす元凶であると思うのです。この点いかがですか。
  39. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘の点につきましては、否定されますねというお話でございましたので特に触れる必要はないかと思いますけれども、まず最初にお話のございました増資の際のなかなか実際に一般投資家に増資株は手に入らないとか、さらには新規公開の際に株価が公募価格に比べて非常に上昇するとか、そういったケースにつきましては、このところ一般的な株価の上昇という部分もございますけれども、ややそういう傾向が見られております。これは、私も否定はいたしません。ただこれにつきましては、技術的な点にわたりますのでちょっとここでの御説明は省略いたしますけれども、新規公開株の価格形成の問題に対して、私どももいろいろとそれなりに手を打ってきております。  先般、新規公開株の初値、初めて取引所で形成される値段でございますけれども、これについての仕組みをちょっと改正いたしました。その改めました結果、従来はなかなか株価が形成できなくて、初値がつくまでに二日も三日もかかっておったとか、場合によっては一週間もかかったとか、さらに形成された初値が公募価格の二倍、三倍であったとか、そういうケースが見られたわけでありますけれども、方法を変えて以来、比較的上場当日に株価が形成されておりますし、その形成された株価につきましても、若干公募価格よりは高くなっておりますけれども、二割とか三割増しぐらいな価格で、従来に比べれば割とリーズナブルになってきたのではないかなというふうに思っております。  しかし、いずれにいたしましても株価操作の問題は、御指摘もございますように私どもも非常に重大な問題でございます。インサイダーと並んで不公正取引一つの大きな柱と申しますか、問題点というふうな認識を私ども持っておりまして、これからも不公正取引部会の場だけではなくて、私ども証券局の内部でも積極的に検討していきたいと思っております。
  40. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 インサイダー取引に関しましてはあくまでも未然防止に主眼を置く、そのためにはいろいろな意味でディスクロージャー制度の問題もあるでしょうし、それから証券会社のいわゆる自主規制をもっともっと要求する、情報障壁というものをもっと高くする、こんなことをお願いしているようでございますけれども、この問題につきまして、新聞報道ですから私実際はよくわかりませんけれども証券会社が大変不満を漏らしておる。なぜ、証券会社にばかり厳しく自主規制自主規制と要求してくるのか、むしろ銀行の方が内部情報を知っているじゃないか、銀行の方にはそういうような強い自主規制の声がない、けしからぬ、片手落ちだ、そんなような雰囲気のマスコミ報道があるのですが、その点、銀行さんの方ではいかがですか。
  41. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券会社以外の金融機関あるいは発行体、発行会社の方にも同じような問題がございますけれども、そういう会社につきましては、一般的ではございますけれども東京証券取引所理事長の方から情報の適時開示を行うように強く要請をしていただいております。これは、これらの機関が上場企業であるという点をとらまえて要請をしていただいておるわけでございますけれども、私どももいろいろな機会をとらまえまして、まずこれらの機関の情報の管理体制をちゃんとしていただくようにお願いをしておりますし、またこれからもお願いをしてまいるつもりでございます。既に金融機関等につきまして、いろいろと内部管理のための措置をとるというふうな動きもございますので、これからも私どもその方向で努力をしてまいりたいと思います。
  42. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 今回、証取法の一部改正と金融先物法が出たわけですけれども、その背景にはあくまでも現物と先物の一致というか、統一市場とかそういう問題があるようですね。そして、株に関しては指数で証券取引所が行う、それから通貨、利子に関しては金融先物市場を新しく設置する、そちらの方は銀行ができる、こんなところで妥協の産物というふうに言われておるのです。そして、銀行さんの方では、金融先物取引法は二年後に見直しがある、その見直しを契機にあくまでも統一市場をつくりたい、こんなような意向がここ各紙で報道されておりますけれども、その考え方は銀行局はどのようにとっておるのでしょうか。
  43. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほども答弁申し上げましたが、金融先物証券関係先物、諸外国におきましては統一的な市場で行っているところが多いわけでございます。したがいまして、我が国でこれらについての先物をどう取り扱ったらいいかという点を証取審とか金融制度調査会あるいは外国為替等審議会議論した際にも、統一的にやった方がいいという御意見も非常に強かったわけでございます。ただ、ちょうどその議論をしておりましたときに例のブラックマンデーの問題が起こりまして、海外先物市場現物市場との関係から現先を一体的に考えた方がいいんじゃないかという意見も出てきたわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げました三つの審議会等で議論した際にも、そういう意見報告書等の中で付記されておるところでございます。それとともに我が国におきましては既に内国国債につきまして先物取引が行われておりまして、非常に大きな市場として成長している。それが証券取引所で取り扱われているという一つの現実もあるわけでございまして、そういう中でいろいろ議論いたしました末、今回のような二つ市場でそれぞれ商品を扱ったらどうかという結論になったわけでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、海外におきましても現在いろいろ悩みながら動いているということもございますし、我が国におきましても、市場を動かしてみてどういう問題があるかという点もまだ明らかでないこともあるわけでございますから、そういう中で一応二年たった段階で見直してみて、合理的な国際的に通用する市場というのはその段階でどうあるべきかということを、改めて考えて見直してはどうかということになっているわけでございます。
  44. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いわゆるリスクヘッジ、これは現物と先物先物市場でもって損失をカバーするという感覚から、今回先物を取り上げようという考えのようでございますけれども、いわゆるブラックマンデー、これは先物がかえって下落の度を深めた、こういう見解があるようなんです。まず第一にはコンピューターがけしからぬ、それから先物がけしからなかった、こういうような反省がブラックマンデー後ありました。リスクヘッジの機能が必ずしも十分働かない場合もあるのだなということを、はしなくも見せつけたわけでございますけれども、いわゆる現先一体で今回証券取引所、いわゆる株価指数等がありますけれども我が国でもコンピューターも使うし、ブラックマンデーのような本来の暴落よりも、もっともっと過激な暴落に弾みをつけるようなことは危惧されないのか。その点いかがでしょうか。
  45. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ブラックマンデーの原因につきましては、いろいろな調査報告がたくさん出ておることは委員も御承知のとおりだと思います。その中の幾つかには、確かに先物市場の下落が現物市場に影響をしたのだ。その要因としては、いわゆるポートフォリオ・インシュアランスと申しましょうか、プログラムトレーディングと申しましょうか、そういうコンピューターで取引する仕組みの中で最もリスクヘッジをしやすいものということで、まず先物に売りが集中した。先物が大幅に下落をして、そしてそれに伴ってさらに今度は現物も下落したのだという説明をしておるところもございます。しかし、一方また、そういう理論は必ずしも当てはまらないという反論もあるようでございます。したがいまして、そのところいずれが真実なのかはなかなかわかりかねますが、では、日本でこれはどういうふうになるのだろうかということを当てはめて考えてまいりますと、日本の場合にはまずプログラムトレーディングと申しますか、そういった仕組みはまだ十分発達しておりません。ただ、今後発達する可能性はあろうかというふうに思います。  そしてその場合に、一体先物市場なり現物市場にどういうふうな影響が出るのかということでございますが、日本の場合は米国と違いまして、いわゆる日本独特の制度でございますけれども値幅制限というのがございます。現在、国債先物につきましては二円の値幅制限ということをつけておりますけれども株価指数先物導入いたします際にもそういう考え方をとっていこうというふうに考えておりますし、また一方、現物につきましても御承知のように値幅制限というのがございます。そういう状況のもとでは、米国において言われておりますようないわゆるプログラムトレーディングというようなことは、直ちに値幅制限にひっかかってなかなかうまくいかなくなるというようなこともあろうかと思いますし、そういう意味ではこの値幅制限という仕組みは、プログラムトレーディングによるまるで底なし沼のような株価下落傾向、株価の変動というのを、一時的にではございますけれども防ぐという効果がございますので、私ども株価指数導入されまして、株価指数その他いろいろな先物導入されましても、こういう制度を運用することによりましてかなり適切な対応ができるのではないかというふうに思います。  また、米国でもう一つ指摘されておりますのは、これはもちろん一部のと申しますか、全部の報告書ではございませんけれども、大統領の特別諮問委員会、ブレイディ委員会の報告とかSECの報告等で指摘されておりますのは、現物と先物との管理が一体で行われてなかった、これは株式市場についてでございますけれども、そのために発生したということでございます。  これは具体的に申し上げますと、いわゆるブラックマンデーの当日、現物市場に売りが殺到いたしまして、まだ値がついてないというような状況がございました。その際、シカゴの先物市場の方で、それでは売った方がいい、ヘッジのために売った方がいいということで、シカゴの先物市場に売りが集中いたしました。先物の方は、現物と違いまして先物取引ということもございまして、比較的リクイディティーが高いといいますか流動性が高いものでございますから、そこでどんどん値がついて株が非常に暴落してきたということがあったようでございます。その辺をむしろ現物と先物とを一体的に管理して、まず現物の値段がつかない場合には先物取引につきましても、これは報告書には書いてございませんけれども、一時的にその先物市場をとめておくというようなことがあれば、現物市場の大幅な暴落は招かなかったのではなかろうかなというような指摘が一部にされております。  私どもとしては、もし仮にそういう事態になりましたときには、少なくとも株価指数と株式市場につきましては、証券取引所で一体的な管理を行うということになっておりますので、こういった点も防ぎ得る仕組みだけは少なくともでき上がっておるというふうに考えておるわけでございます。
  46. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほどの金融先物市場につきましては、法律ができ上がってから新たにまた検討したい、その場所ですね、お話がありましたけれども、これも新聞報道ですけれども、もう場所が決まっておりまして、東京、しかも大手町、しかも渋沢栄一の銅像が見えるところ、こういう細かいところまで出ているようなんですが、実際はどうなんでしょうか。
  47. 平澤貞昭

    平澤政府委員 先ほど大臣からもお話がございましたように、まだ法案も御審議中でございますし、そういう段階でそういうことがどうして起こるのかなというふうに思っておるわけでございます。
  48. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 せんだって総理が訪英いたしまして、いわゆる東証会員の枠をもっと、第三次開放も認めてもらいたいという、そういう要請があったようでございます。それに対して大蔵省の方では、買収等で会員権を取得してもらいたい、それを認めるということが報道されておりましたけれども、これは買収以外には考えないのですか。
  49. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券取引所の会員権の問題につきましては、御承知のように東京証券取引所の方で一次、二次にわたって会員権の拡大を行いまして、第二次の拡大によりまして新たに二十二社会員が入ってくるわけでございますけれども、これは会員として業務を開始するのは五月の二十三日からでございます。したがいまして現在の状況では、そういう会員権の拡大に伴いまして新規に会員権を取得するという可能性は全くないと申し上げてよろしいかと思います。ということになりますと、残る方法としては、会員権が市場に売りに出た場合にそれを購入するとか、さらには会員権を持っておる証券会社を買収するとか、そういう方法ということになろうかというふうに思います。
  50. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 時間が来てしまいましたので恐縮ですけれども、最後に大臣一言。  今回の証取法の一部改正で、特にインサイダー規制なんですが、一体だれを保護するのか、その最大の眼目は何でしょうか。要するに、証券界の信用を維持するとか、あるいは公平性を担保する、いろいろあるでしょうけれども、最終目的はいわゆる国民一般大衆、一般投資家を保護するのか、そうじゃなくてもっと違うところにあるのか、その辺のお考えをひとつ。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは端的に申しますれば、やはり投資家を保護するということであると思います。つまり、投資家がいろいろ不正あるいはその他のことによって迷わされないように、投資家として十分に保護を受けておるということが市場というものの信用につながるわけでございますから、基本はそういうことであると存じます。
  52. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 終わります。
  53. 越智通雄

    越智委員長 次に、早川勝君。
  54. 早川勝

    早川委員 証券取引法の一部改正案を中心質問させていただきます。  先ほど来議論がありますけれども、重複するところも多々あると思いますので、問題点を明らかにして、大臣が最後に述べられましたように投資家保護が最大のねらいだという意味で、そういう方向での改正であり行政対応ということで伺わせていただきたいと思います。  最初に、今の五十八条というので、この適用を受けた不公正取引というのは一件もないわけですね。それを踏まえて百九十条あるいはそれに関連した百八十九条だとか百八十八条等が復活しているわけですけれども、改めて現行の五十八条とそして今回のインサイダー取引のためのこの百九十条との関連ですね、簡潔に伺いたいと思います。
  55. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 五十八条と百九十条の二及び三の関係でございますけれども、私どもといたしましては、五十八条の第一号で何人も「有価証券の売買その他の取引について、不正の手段、計画又は技巧をなすこと」を禁止しておりますが、この規定はいわゆる不正取引一般と申しますか、詐欺的な不正な取引一般を規制したものだというふうに考えております。したがいまして、必ずしも内部者取引だけを目的としたものでもございませんし、もっと広い、しかも詐欺的な取引を禁止しているものだというふうに考えております。一方、今回御審議をお願いしております証取法の改正に盛り込みました百九十条の二及び三と申しますのは、詐欺的な取引であるかどうかとかいうものとは関係なくて、発行会社の役員あるいは株主、取引先の銀行、弁護士、さらには引受証券会社、こういった発行会社等一定の情報を知り得るような立場にある者が一定の情報を知った場合において、これが公表される前に取引することを禁止する規定でございます。  もうちょっと詳しく申し上げますと、五十八条は、内部者取引等で不正な手段、詐欺的な手段を使ってやったものをひっくるめまして、証券取引に関します一般的な詐欺的な不正取引を禁止したもの、百九十条の二及び三は、インサイダー取引と申しますのは必ずしも不正の手段を使ってやる場合ではない場合もございます。例えば、会社の役員がその会社の内部情報を知って取引をする、その取引自体には詐欺的な要素というものは特にございません。むしろ、そういう特定の地位にある者が内部情報を知りながら取引をするということを形式的に規定をいたしまして、これを取り締まるということでございます。したがいまして、五十八条と百九十条の二及び三につきましては、内部者取引が非常に詐欺的なものとして行われたような場合には、百九十条の二と五十八条と両方かかってくる場合もあるかと思いますけれども、詐欺的な要素が全くない場合には五十八条の規定は及びませんで、百九十条の二及び三が適用されるということになるわけでございます。
  56. 早川勝

    早川委員 今回のインサイダー取引規制の規定を含めての改正が行われるわけですが、その背景の一つに昨年のタテホ化学工業の事件がございます。この新改正法によれば、阪神相互銀行はインサイダー取引として罰せられることになるわけですか。この点、伺っておきたいと思います。
  57. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 タテホの事件におきます取引先銀行の立場の問題でございますけれども、今回の改正法案によりますと、タテホの国債先物投資におきます失敗から発生した損害というのが、まず会社の業務に関する竜大な事実に該当するかどうか、いわゆる内部情報に該当するかどうかという問題でございます。これは百九十条の二の第二項第二号のイの「災害又は業務に起因する損害」が発生したこと、すなわち先物取引によって失敗いたしましたことも「業務に起因する損害」を発生したことに該当いたしますので、会社の業務に関する重大な事実に当たるわけでございます。しかも阪神相互銀行、取引先銀行等はどういうふうになるかと申しますと、このタテホと契約関係にあるものということになります。と申しますことは、この取引先銀行などが契約の締結あるいは履行に関しまして、タテホの債券先物に伴う失敗による損失が発生したことを知ったということであれば、当然この罰則の適用を受けるということになります。
  58. 早川勝

    早川委員 そこで、若干細かくなりますけれども、百九十条の二の関係につきまして伺いたいと思います。  インサイダー情報とは一体何かというのが大きな問題になると思うのですけれども、その前に、法律の条項の中に一応の定義がありまして、百九十条の二の第二項では、この情報とは、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす重要事実、こういう定義がされておるわけですが、第四号においては若干これと異なりまして「投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」、普通に読みますと、重要な影響より著しいという方が強いのじゃないかなと思うのですね。どうしてこういう表現になったのかというのを、ちょっと聞かせていただきたいと思います。
  59. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 百九十条の二の第二項では、前段におきまして「業務等に関する重要事実とは、次に掲げる事実をいう。」といたしまして、一号、二号、三号、四号ということでいろいろな事実を列挙してございます。その第四号には、今御指摘ございましたように「当該会社の運営、業務又は財産に関する重要な事実であって投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」というふうに書いてございますけれども、これもこの二項の前段に規定いたしております「重要事実」の一つというふうにお考えいただきたいと思います。  ここで御質問は、「投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」ということで、なぜ「著しい影響を及ぼすもの」としたのかということだと思いますけれども、「投資者の投資判断に著しい影響を及ぼすもの」がまさに業務等に関する重要な事実の一つであるという形で、業務等に関する重要な事実の定義を二号、三号、四号以下に規定をしたわけでございます。
  60. 早川勝

    早川委員 この「著しい」というのは、関連する事項でもありますので後でまた伺いますが、その次に同項第一号の情報の中に、新製品、新技術に関する情報について企業化を会社が正式に決定したことが条件になっているわけですけれども、これでは現実に行われているインサイダー取引というのがどうも取り締まれないのではないかなというおそれがあるわけですね。  それで、これは新聞にも出ていたわけですけれども、規制範囲を狭くするということで、新技術、新製品の問題についても、例えば製品化が確実である、それから企業の経営計画などに具体的な売上増を見込めるという、二つの要件を満たすことが必要だというような、これは省令のところで決まっていくのかもしれませんけれども、かなり狭くしてしまえば、それだけ一般投資家の考えているインサイダー取引の規制とずれが生じるのではないかと思うのですけれども、この点について伺いたいのです。
  61. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず一般論から申し上げますと、いわゆる業務に関する重要事実というものを具体的に定義いたします際に、私どもがいろいろ考えましたことは、証券取引を行うに当たりましていろいろな情報に基づいて取引が行われます。その中で、真に刑罰に値するもの、いわゆる罰則をもって取り締まるべきものはどこか、さらに罰則をもって取り締まれないまでも、未然防止としてできるだけ取り締まっていくものは何かということをいろいろと議論をいたしました。証券取引審議会の不公正取引部会の結論でも、いわゆるインサイダー取引が全部この刑罰をもって取り締まれるものは該当するのではなくて、真に処罰をされるものに限るべきである。その真に処罰をされるものとは何かというと、業務に関する重要な事実等を構成要件でもって明確に規定をして、取引者があらかじめ、いかなる取引をすれば処分されるのかということがわかるようにする必要があるということでございました。  そこで、この「新製品又は新技術の企業化」という問題でございますけれども、確かに、新製品あるいは新技術の企業化が行われる段階につきましては、いろいろなプロセスがあろうかと思います。まず、例えば技術者がいろいろ開発の努力をする、大体新製品ができそうだ、その新製品について商品計画を行う、それが売り上げに大体どのくらい影響するかとか、そういう見通しをつけて、最終的に、よし、この製品を売り出すかという決定を行うといういろいろなプロセスがあろうかと思います。それをどの段階から刑罰でもって取り締まるべきものに該当するかということでございますけれども、私どもの考え方といたしましては、まだ研究者が開発をしている段階で、やっと何とか物になりそうだというものであれば、これがどの程度売り上げに寄与するのかどうかということもわかりかねる、いわんや、株価にどういうふうに影響するかということもなかなか予測しがたい。したがって、その段階では、まだ刑罰でもって取り締まるべきものというふうに定めるわけにもまいりませんし、またそういったものまで広く取り込むということになりますと、刑罰構成要件が非常に不明確になってしまうというおそれもあるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、この新製品、新技術の企業化につきましても、まさに新製品の開発が終わって、売り出しあるいは営業にどの程度寄与するかというような一つの目安が立って、それについて業務を執行する機関、これは取締役会に限らず常務会あるいは経営委員会、あるいは権限を委任された場合には取締役も含むわけでございますけれども、こういったものが、これでいこう、売り出そうと決定をした段階から、刑罰でもって取り締まるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、これにつきましてはいろいろと議論があろうか、もっと早くから取り締まったらいいではないかという御議論もあろうかと思いますけれども、やはり刑罰で取り締まるべきものであるということ、それからさらには、その構成要件というのを非常に明確にして、いつの時点でということになりますと、会社の中で決定があったという時点から取り締まるべきものにいたしませんと、構成要件が非常に不明確になってしまうというような配慮から、こういう規定にいたしたわけでございます。
  62. 早川勝

    早川委員 アメリカで有名なインサイダー取引の事件として、テキサス・ガルフ・サルファー社事件というのがありましたけれども、簡単に言いますと、これは硫黄の生産高では一番の大企業だったのですが、一九六三年十一月十二日に第一号ボーリングで銅、亜鉛の鉱脈を掘り当てた。翌六四年四月七日に第四号ボーリングで完了するわけですが、十一月から翌年の四月まで、五カ月間ありますけれども、その間に周辺の土地を買い占めた、こういうことがまずあります。それから四月十一日になりまして、新聞で掘り当てたということをスクープされるわけですね。四月十六日になりまして、会社が有望な鉱脈を掘り当てたという新聞発表をするわけです。何か午前十時から十五分間ぐらい記者会見で発表した。ダウ・ジョーンズ社の速報テープというのですか、これに流れたのが十時五十四分だ。そこに四十分近い時間があるわけですね。これがSECの摘発で争われまして、裁判で第一審、第二審と争われていくわけですが、こういう中で、一つは第一号ボーリングでこの情報の公開という問題、それから情報というのは一体何かという二つの問題があるわけですね。  第二審の裁判のときに、第一号ボーリングで銅、亜鉛の鉱脈と当たったよということで、これは重要な情報だという裁定というのですか、下ったようです。それから二番目の、では公開の時期は何かということは、四月十六日の新聞発表の時点をもっていうのじゃなくて、一般投資家が広く知り得る、そのテープが流れた十時五十四分だ。つまり、その四十分の間に何か企業関係者の中で株を購入して利益を得たということがあって罰せられるわけですけれども、そうしますと、こういうガルフ・サルファー社事件というのは、日本の新法の、改正された後どの号にいわば該当して罰せられるのか、罰することができるのかできないのか、聞かせていただきたいのです。
  63. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘のございましたテキサス・ガルフ・サルファー社事件でございますけれども、これはまず会社の役員等の取引であること、それから試掘が行われておること、さらに公表後ダウ・ジョーンズ等に載るまでの間の取引であるということ、こう三つ問題があろうかというふうに思います。  まず第一の会社の役職員等につきましては、既に申し上げましたように、百九十条の二の第一項第一号におきまして、役員等がその職務に関し重要な事実を知った場合、これは自社株の場合は禁止することになりますので、これに該当いたします。  それからその次に、有望な鉱脈の試掘ということでございますけれども、この辺につきましては試掘の内容がどの程度のものであったのかどうか、細かいことがわかりませんので、個々のケースといいますか、具体的にもう少し調べてみないとわかりませんけれども、極めて一般論で申し上げますと、この試掘等につきましては百九十条の二の第二項第一号のリというところに、この執行機関の決定するべき事項で増資あるいは配当、合併、その他のところのリのところに、「業務上の提携その他のイからチまでに掲げる事項に準ずる事項として政令で定める事項」というのが規定してございますが、資源の開発というようなものもこのリに規定をする政令で指定をするつもりでございます。したがいまして、この試掘というのがどの程度具体的な、企業の業績につながるような具体性を帯びたものであるかどうかというようなところの判断はあろうかと思いますけれども一般論で申し上げますと、資源の開発に該当いたしますので、本件のように大規模な鉱床の開発が決定をされたような場合には、ここで百九十条の二の第二項で言う重要な事実の決定に該当いたします。  それから三番目の公表とは何かということでございますけれども、私どもは、公表とは新聞発表をもって公表というふうに、これも政令で定めたいというふうに思っておりますが、今御指摘のございましたように、新聞発表した後、ダウ・ジョーンズで流れるまでの間の取引というのがございますが、私どもは、できるだけ新聞発表等は証券取引所の終了した三時以降に行うようにいろいろ指導してまいりたいと思っておりますので、恐らくこの新聞発表の後、ダウ・ジョーンズで流れるまでの間に取引をするというのは、日本ではあり得ないということになろうかというふうに思います。しかし、公表とは、あくまでも私どもといたしましては、新聞発表をもって公表とするというふうに考えたいと思います。
  64. 早川勝

    早川委員 もう一つ、先ほど新製品と新技術のところで答弁もありましたけれども、具体的な売り上げ計画を含めて、そういう見通しを含めての決定が情報だという考え方に立ちますと、このアメリカの事件の場合には、いわゆる投資家中心なんだ、そういう情報を得て、株を売るか買うか、あるいは持ち続けるかという基準、そういう判断基準にその内容が当てはまるということがまさに情報の中身だ、こういう判断をされているわけですね。それと比べますと、先ほど局長答弁されたのは、かなり何かいわゆる経営ベース、企業採算というような展望がはっきりして、そちらにちょっとウエートがあるような感じがするのですが、その点、そういう違いがあるし、それが望ましいんだという判断なのかどうか、重ねて伺いたいのです。
  65. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 これも一般論として、会社の業務に関する重大な事実とは何ぞやという問題でございますけれども、単に会社がどこか鉱脈を掘り当てたらしいというふうな情報市場に流れて、その情報が一体どの程度具体性を帯びているものかどうかわからないという段階で取引をする場合もこれはあろうかと思いますが、やはり刑罰でもって処罰すべき行為といたしましては、大規模な、有望な鉱床が発見されて、試掘に成功して、それが相当その会社の営業利益に貢献するというふうな事実があって、それを取引をする者が十分認識した上で取引した場合、初めて刑罰でもって取り締まるべき内部者取引になるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、このアメリカの事件のケース、私どもも細かいことはつぶさには存じないわけでございますけれども、試掘をして、それが単に、どうも有望な鉱床らしいなという程度のものであれば、私どもの今回の改正法案規定しております重大な事実には該当しない場合もあり得るのではないかというふうに思います。
  66. 早川勝

    早川委員 最初に五十八条と百九十条の二の関連を伺ったわけですけれども、例えば一つのケースなんですけれども、会社外の者がその会社から情報を盗んで、それをもとにして株式の売買をしたというような場合には、五十八条の方に戻るのか、当然この百九十条の二に言う内部者でもなければ準内部者でもないし、情報受領者でもない、当てはまらないと思うのです。一体、こういうケースはどうなるのかという問題が一つ。それからもう一つ、公務員の方が行政指導の過程の中で情報を得た場合、それをもとに株式の売買を行った場合にはどれに当てはまるのか、この二点を伺いたいのです。
  67. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず、会社の外部の者の場合でございますけれども、いわゆる会社関係者の範囲には、先ほどから御説明しておりますように、会社の役員とか株主とかいわゆる会社の内部者、それからさらにその会社と取引関係にある者、あるいは法令上の権限を有する者等のいわゆる準内部者と称しておりますけれども、こういった者のほかに、会社の外部の人であっても、これら会社の内部者から情報の提供を受けて取引をする者も含まれるわけでございます。その場合に情報の提供を受けた者というのは、まず情報を提供してくれた人が会社の内部者等であって、それらが職務等によってそういう重大な事実を知った者であること、それからその重要な事実が法令で規定しているような事実に該当するものであること、それからさらにそれらの事実がまだ公表されていないということ、こういった三つの事実を認識しておることが必要でございます。したがいまして、第三者はだれでもこの情報受領者に該当するというわけではなくて、以上申し上げましたような三つの事実を認識している者に限って、情報受領者として刑罰、処罰の対象になるわけでございます。  それから二番目のお尋ねにございます、公務員が行政指導をやる場合に重要な事実を知ったときにはどういうふうになるのかということでございますけれども、これは百九十条の二の会社関係者の中の第三号に「当該会社に対する法令に基づく権限を有する者」これが「当該権限の行使に関し知つたとき。」というふうに規定をしてございます。したがいまして、公務員が行政指導をやった場合に内部者取引に該当するかどうかということにつきましては、もちろんケース・バイ・ケースに判断をしていくべき問題でございますけれども、極めて一般論で申し上げますと、公務員が行政指導をやる権限を有しておれば、その権限の行使に関して情報を知った場合には、いわゆる会社関係者として処罰の対象になるわけでございます。その場合の「権限の行使に関し」ということでございますので、権限の行使そのものでなくても、権限の行使に関して行政指導を行う、権限を背景にして行政指導を行うというような場合にも、この百九十条の二の一項三号に該当するというふうに考えております。
  68. 早川勝

    早川委員 先ほどの委員質問の中にも期間の問題がちょっと出ていましたけれども、四カ月間審議会を含めて議論して、いわば十分検討した上で法案を提出された、こういうことだったのですが、政省令というのは法案が成立してからというふうになるのでしょうけれども、今答弁を伺いましたように、公表のときの問題だとか、あるいは重要な情報というのは何だ、あるいは投資判断に余り影響を及ぼさない軽微なものは除く、これはすべて省令に規定するというようになっているわけです。それから、百八十九条の会社の役員及び主要株主自己売買における利益の算定の方法についても、やはり省令にゆだねる。一年ちょっと前に売上税のときの反省一つは、政省令にゆだねられている部分が非常に多くてよくわからないよということがたしかありましたね。そういうことを考えますと、政省令の内容というのは既にどの程度具体化されているのか、そしてまたそれを参考資料として法案審議の中で出していただけるものかどうか、ちょっと伺いたいと思います。
  69. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 この証券取引法の改正の中でお願いしております内部者取引の規制の強化に関しましても、いろいろ複雑な経済事象をとらえて規制の対象にするということでございますので、今回私どもとしてもできるだけ、例えば先ほどから御説明しておりますような会社の業務に関する重要な事実ということも法律で書き切るように努力はしたつもりでございますけれども、一部政令にゆだねざるを得なかったという面はございます。その場合にも、単に政令にゆだねるということではなくて、会社の業務提携等その他これに準ずるとして、いろいろと例示を挙げながら政令に委任するというふうにいたしておるわけでございます。もちろんその政省令は、法律の御承認を得ましてから考えるべき問題でございますけれども、当然のことながら私どもも、この審議の過程において必要であるということであれば、政令そのものはもちろんでき上がっておりませんけれども、その政令にどういうものを今書こうとしておるのか、どういうものを考えておるのかということは構想としては持っておりますので、御必要であれば御説明をさせていただきます。
  70. 早川勝

    早川委員 そこで、こういう法律が通って十分調査なり実効を上げられるのかどうかという議論が先ほどありましたけれども、日本とアメリカとは違うから、アメリカのSECに単純に倣えということは不可能だとは思うのですけれども、かといって、十分であるというような答弁も、先ほど来伺っていると出ていないわけですね。未然防止に最善を尽くすというところまでの答弁だったようです。そういうことを考えて、さらに、いわば国際化というのはいろいろな内容があるわけですけれども、もう少し独立性を持たせたらどうか。  今の大蔵省証券局ではなくて、かつて証券取引委員会がございましたけれども、これはある資料を読んでおりますと、実は大臣も、ブレントリンガーさんという方と大臣同席しながら、証券取引委員会ができていたときに話をされたということで、恐らく証券取引委員会そのものの問題でなく、そういう機会があったと思うのですけれども、そういうふうに考えますと、証券取引委員会がなくなりまして、一方証券業というのが登録制から免許制に変わったとか、こういう経緯がありますけれども、ただ、今のままでいいのか。逆に証券局で十分対応できるというふうにはどうも考えにくいんですね。もう少し独立的な機関として進めたらどうかという感じを持つのですけれども、これは大臣に聞いた方がよろしいですか。
  71. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 先に私の方からお答え申し上げますが、証券局から離れて独立の取り締まりをやる、捜査を専門とする機関をつくったらどうかという御指摘かと思いますが、これにはいろいろ問題があろうかというふうに思います。まずそういう捜査、いわゆる司法当局としては検察庁なり、さらに捜査を担当する者としては警察という機構もあるわけでございます。その上に証券取引だけを担当する新たな機関をつくってやることがいいのか悪いのかという問題につきましては、さらに屋上屋を重ねるようなものではないかということから、司法関係当局といろいろと議論をしてみなければいけないような問題もあろうかと思いますし、現にそうしなければ取り締まりの実効は全く上げられないのかということにつきましては、またいろいろと議論もあるのではないかと思います。それからさらにそういう組織をつくりますと、これは当然のことながらかなりの人数を必要といたしますけれども、こういう行政改革を前提としておる中で果たしてそういうことができるのかどうかというようなことについても、重ねて議論をしてみなければいけない問題であろうかと思います。
  72. 早川勝

    早川委員 人数の問題もありますけれども、やはり投資者保護というのが原点なわけですね。そちらの信頼を確保する方がやはり必要でありますし、証券が、あるいは金融全体が国際化されていくときに日本の独自性というのは、今のこういう状況で先ほど言いましたような昭和二十三年とか二十四年当時とは全然違うわけですね。そういう意味でぜひ検討していただきたいと思います。  それから最後になりますけれども、この法案とは関係ございません、ごく簡単なこれは要望になりますけれども御存じのように政府税制調査会の中間答申が出まして議論されているわけです。この中で私がぜひこれからの議論を踏まえて進める、深めるためにも必要だという意味で資料の問題なのですけれども資産課税が不十分だという表現が答申にも書いてありますし、大体これも一般の共通認識になっているわけですね。その中で資産取引の問題について、土地課税についてもさらに検討しなくてはいけないということもまた書かれているわけです。  それで、実はその答申の中に、それにかかわるわけですけれども二つ、これは主税局長に答えていただければいいと思うのですが、一つは中低所得者の所得課税負担の大幅な軽減、つまり減税をやれということですね、これが書いてある。したがって、この際、中低所得者というのは、給与収入で言えば一体幾らぐらいを考えればいいのかということをぜひ出していただきたい。この民間給与の統計を見まして、六十一年度では年収五百万円以下が八〇%を占めるわけですね。一応こういうデータはありますけれども、こういう減税を考える場合、大蔵省として中所得者、低所得者というのはそれぞれ一体幾らぐらいだ。言葉だけで言われていても、サラリーマンとしてはさっぱりわからないものですから、その目安、額を、収入基準を教えていただければと思います。それが第一点です。  それから第二点は、答申にもありまして、土地増価税の問題が議論されて非常に消極的だったという、いわゆる土地の含み益に対して議論したけれども、非常に慎重に対処すべきであるとの見解が多く出されたということがあるのですが、いろんなデータを見ますと、含み益は幾らか、何兆円という数字があるのですけれども、この際勇を鼓して、大蔵省としてこういう前提のもとで何兆円あるというような含み益、出ないものかな。こういう数字を出すことが、議論を深めるのに役立つのじゃないかなと思います。いろいろなものを見ますと、法人の含み益は二千兆円もあるとかあるいは十億円以上は六百兆円ぐらいあるとか、いろいろ出るわけですね。そういうことを踏まえますと、試算として出していただきたいなというこの二つ、いわば数字のかかわる問題ですが、答弁いただきたいと思います。
  73. 水野勝

    ○水野政府委員 第一点につきましては、今回の税制調査会の中間答申、前回の抜本答申と比べての一つの特徴でございます。前回は中堅所得者層につきまして、その負担の軽減・合理化を図るということでございましたが、今回は中低所得者という言葉を用いられて論理を展開しておられる。これは端的には、従前の抜本改革におきましては課税最低限が相当高水準にあるとすれば、一般的に諸控除を上げるという必要性は乏しいというお考えのようだったわけでございますが、その後の経済情勢の変化、それから昭和五十年代以来減税が行われていないことによりますところの課税最低限の相対的な低下といったことも考えられて、基礎的な人的控除につきましても見直しをする。それは結局、下の方から見た場合の所得階層につきましても見直しをしてはいかがかという御提案ではないかと思います。  したがいまして、何百万円までの方々を頭に置いてということではなくて、中堅の所得者の負担軽減も重要でございますけれども、下の方から見た階層の負担水準、負担の軽減・合理化ということを議論されるために中低と、下の方から出発しての御議論ではないかと思います。したがいまして、基本的には課税最低限を上回るところから始まって、下の方の方々の御負担をどうするかという議論ですから、どこまでということはございませんけれども、前回は中堅を中心にしておりましたが、下の方からの御議論もいたしたい。そうしますと、低――低は課税最低限を超えるところです。それからまた少しずつ上がったところの負担水準、したがいましてそれは課税最低限なり基礎控除、人的控除の議論にも入っておる。そういうことですから、定量的なものは恐らく具体的にイメージはないかと思います。  それから第二点といたしましては、これは従来から当委員会でもいろいろ御議論いただいているところでございます。この点につきましての私どもとして含み益といったものを算定いたしておるという作業までは至ってないのでございますけれども、いろいろな数字の中の一つの目安としては、例えば法人企業土地の帳簿価額は、法人企業統計年報、こういったものによりますと五十七兆円ございます。それに対しまして例えば固定資産税の評価額、この中の法人につきましての決定価額を見ますと七十三兆円ございます。そうした意味におきましては、固定資産税評価額まで持ってくるときのものがこの差額の十六兆円と言えるのかどうか、それは極めて粗っぽい議論になりますが、そんな数字が一応ございます。  それからもう一つは、国民経済計算での期末貸借対照表で土地勘定を見ますと三百三十兆円ぐらいある。そうすると、その差額と帳簿価額との差額がそうした御議論の含み益と見得るのかどうか、そこらはいろいろ議論がなおあるところでございます。こうした数字なども、私どもは一応頭に置いて勉強はいたしておりますが、事柄自体につきましては、ここでよく御議論いただいて御答弁申し上げておりますように、さてそうしたものが適切かどうか、その点につきましてはいろいろ議論のあるところでございます。
  74. 早川勝

    早川委員 終わります。
  75. 越智通雄

    越智委員長 次に、玉置一弥君。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
  76. 玉置一弥

    ○玉置委員 先物二法の審議でございますけれども、どうも従来から垣根論争というのがいろいろございまして、特に証券と銀行ですね、この辺いろいろ世間でも取りざたをされております。特に経済、いわゆる証券とかあるいは金融とかの専門誌を見ますと、どうも、何かうまく折り合いがついたというよりも、むしろ妥協的にいろいろな意見を複合的に組み合わせた、こういうふうな評価が非常に高い――評価が高いというと変ですけれども、そういう言い方をしている文献が非常に多いわけでございまして、そういう意味では今回の先物のこの金融並びに株式、この辺が本当にこれから先行きちゃんと成長していくのかな、ちょっとこういう心配がございます。  そこでまずお伺いをいたしたいのでございますが、金融の自由化、国際化というものが今非常に進展をしておりまして、円の方も日米円ドル委員会ができましてから大変積極的にといいますか、特に為替レートの影響もありまして円が非常に強くなってきたということで、国際金融の中でも非常にウエートが高まってきておりまして、従来ですと世界の通貨の中で七〇%ぐらいがドルだったと思いますが、その当時は円が五%弱ぐらいということで、これがだんだん伸びてきて、今円の通貨量が大体一〇%ぐらいになっている、こういうふうなデータがあったと思います。ドルの方が逆に下落をいたしまして六〇%台、こういうことになっているらしいのですけれども、そういう様子を見ておりましても、貿易上の決済についても、円建てがまだ主流になるまではいっていないのですけれども、ぼつぼつとそういう形が出始めてきている。こういうことを考えていきますと、東京中心でございますが、いわゆる日本の金融市場、これが世界にかなり注目されるようになってきたというふうな、我々もそういう感じを持ちます。  しかし、実際に政府として今回先物市場をつくるわけですけれども、まず国際化という面から見て東京市場というのはどういう程度にあるのだろう、その辺をお伺いをしながら、例えばこれは今のところは二年先に見直しをしましょう、こういうことになっているらしいですけれども、実際にこれから二年間でより大きく変わってくるのではないか、こういうようにも思うわけでございまして、金融の国際化という面あるいは自由化という面、そういう面から見て東京市場はどうなんだろう、この辺についてまず政府当局としての評価といいますか根拠はというのもありますから、ちょっと示していただきたいと思います。
  77. 平澤貞昭

    平澤政府委員 大変難しい御質問でもあるわけでございますが、御存じのように、今世界的に金融市場は同質化しつつ単一化してきているということでございます。その原因についてはいろいろあるわけでございますけれども、結局オイルショック以降いろいろの要因がございまして、世界のマーケットの間の金融の流れが非常に激しくなってきているということが大きな原因ではないかと思うわけであります。  そういう中で、我が国金融市場はこれまでかなり閉ざされた市場であったわけでございますが、しかし、世界的にそういう市場になってきたときに我が国市場だけが閉ざされていていいのかということでございまして、これは大変問題がある。そういうことで、ここ数年急速に我が国金融市場中心にいたしまして対外的な垣根を外してきている。しかも、その中で各種金融商品の種類もふやしておりますし、その金融商品の値段である金利等もどんどん自由化を図ってきている。かつまた、これら金融商品を扱う証券会社金融機関等々の規制も今後どういうふうに持っていったらいいかということも検討しつつ、いろいろ措置をとってきているわけでございます。その意味では、かなり国際化、自由化が進んできているというふうに考えておりますけれども、まだまだある意味では諸外国に比べておくれている点もあろうかと存じます。  ただ、委員最初に言っておられました金融証券との関係をどう考えるかということにつきましては、諸外国でも今非常に悩んでおりまして、アメリカは御存じのようにグラス・スティーガル法というのがある。これを少し垣根を低くしてやったらどうかということで、今議論は行われております。御存じのようにヨーロッパ諸国は証券金融一つの機関で扱えるという、いわゆるユニバーサル・バンキングになっているわけです。ただ、いろいろ諸外国議論を見ておりますと、ユニバーサル・バンキングがいいのか、証券金融を分けた方がいいのか、その辺についてはまだまだ議論が煮詰まっていない段階でございまして、我が国におきましても現在金融制度調査会なり証取審等で、そういう問題についても議論し始めているという段階であるわけでございます。
  78. 玉置一弥

    ○玉置委員 国際化が進んでいるけれどもどういうレベルにあるかというのは、今ちょっとお伺いできなかったような気がするわけです。確かに金利の自由化等がかなり進んでいまして、だんだん小口の方まで来ているということがあります。ただ、今もちょっとお触れになりましたけれども、垣根の問題の中で、これはそれぞれの金融恐慌に対するその当時の体験から出発したものだと思いますが、そういう歴史の中で、日本の場合もアメリカにまねて一応金融証券が分業というような形をとっていますけれども、アメリカの場合は、例えば保険と銀行が一緒になったりいろいろなケースもあるわけですね。日本みたいにきれいに分かれているというのは非常に珍しいわけです。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕 ところがヨーロッパに行きますと、両方兼務した銀行と証券が同じ会社でやっているというような形になっているわけです。そういうふうに見ると、確かに今までは垣根、垣根で大蔵省も、これは縦割り行政の最たるもので、隣のことは知らないぐらいあるいは分野争いで非常に有名な話が何回もあるわけですけれども、実際にこういう形になってくると、実態に合わせて連携をとっていかなければいけない、こういうふうに思うわけです。そういう意味から見て、まず国際化というものはどういう条件が整わなければいけないのか、今どういうレベルなのか、こういうお話をお聞きしたかったわけです。  ただ進んでいますというのは、それはよくわかるのです。私がちょっと申し上げましたように、例えば金融の買い付けなりあるいは貸し付け、証券の売買、そういうものに対する手続だとか制度的な問題、それからそれぞれコストの問題がありますね。例えばコストでいきますと、株式のコストなどは逆に言えば、ロンドンなどは非常に早く――早くというか、二年ほど前自由化しまして、手数料の自由化というふうな流れが出てきました。国際化ということは、将来そういう方向に向かって、金利と手数料の両方込みでお互いがその価値を比較しながら売買をするということになると思います。今回も先物商品をつくったということは、日本の場合は非常に閉鎖的で商品も非常に少なかった。ところが、アメリカなどは非常にいろいろな商品が今開発されていまして、そういう商品と競合した場合には日本の商品はメリットが少ない。こういうことであれば海外に流れてしまうから先物市場をつくろうではないか、こういうことだと思います。  これを考えてみた場合に、やはりいろいろな手続上の問題とか制度的な問題とか、あるいは日本の金融機関、証券会社、生保、損保、そういうところが果たして体質的に国際化に十分たえ得るかどうかということも一つは国際化の評価だと思います。そういう面で見た場合に、大蔵当局としてそれぞれをどういうふうに見ているか。あるいは東京は国際市場としてまだまだ未熟なものなのか、あるいはもうほとんど成熟していて、あとは商品さえ集めればロンドンとかあるいはシンガポール、香港、シカゴ、ニューヨーク、そういうところと十分太刀打ちできるのか、こういうことを聞きたかったわけです。
  79. 平澤貞昭

    平澤政府委員 御存じのように、ここのところ我が国は急速に債権国化しておりまして、したがって、毎年数百億ドルの金を世界的に日本からオーバーフローしているわけでございますから、必然的にそういう中で国際化、自由化というのは進めていかざるを得ないわけでございます。  そこで、現段階でどんな状況、どんな段階にあるかということでございますが、金融と申しますのは、先ほどもお話し申し上げましたように金融の流れというのがございます。その場合、単に水が流れるように流れるのではなくて、金融商品という形をとって動いていくということですから、世界的に垣根がなくなってきますと、どうしても諸外国にありますような金融商品も我が国につくっておきませんと、結局海外市場へみんな行っちゃうということになりますから、金融商品の多様化というのは進めていかざるを得ない。それからもう一つは、海外は、そういう金融商品の値段である金利につきましてどんどん自由にしておりますから、我が国としてもそれに伴う摩擦的な問題はありますけれども、金利の自由化を進めていかざるを得ないということでございます。  そこで金利の自由化につきましては、現在貸付金利の方は大体自由になっておりますので、結局資金を集める方の主たるもの、それは主に個人から集めておりますけれども、預金金利の自由化、これを進めてきておるわけでございます。これにつきましては、大口からずっと始めてきておりまして、今小口の預貯金金利の自由化をどう進めるかという段階に来ております。都市銀行等では、現在預金の残高の半分程度がもう既に自由金利預金になっております。したがって、純増額のフローでいきますと一〇〇%以上、どんどん自由金利になってきておりますので、非常に急速に進んできておることもまた事実でございます。それから、金融商品の多様化につきましても、CDをつくりましたりCPをつくりましたり短期の国債をつくりましたり、いろいろなことをやりながら諸外国にあるような商品をつくってきているということであります。  したがって残るところは、先ほど委員がおっしゃいました金融制度の仕組みとして、我が国がずっと専門金融機関制度をとってきておるので、これがいいか悪いかという問題。これにつきましては、金融制度調査会で二年間にわたって議論していただきまして、やはりこれまで申し上げましたような中で専門金融機関制度については見直す必要があるだろうという方向をいただいているわけでございます。特にその中で証券金融との問題、これが先ほど申し上げました諸外国でも問題であるし、我が国でも現在問題でありますが、ただこれにつきましては、海外でも分けておいた方がいいのじゃないかという意見もあるわけでございます。  特に、何でも一つの機関が金融証券もやるということになると活力が失われるという点が一つある。それからまた、企業を相手に証券金融もやるということになると、自然に利益相反の問題も起こってくるのじゃないかというようなこともございまして、まだ諸外国とも具体的に結論が出ている段階ではございませんが、ただ何とはなしの方向としては、どうも専門家相手のマネーマーケットを相手とする部分については、やはりその辺の垣根は外した方がいいのじゃないかというような方向で進んでいるのではないかというふうに考えられておるわけでございます。
  80. 玉置一弥

    ○玉置委員 今までは株式は株式で独立をしたような感じで、債券市場は債券市場、それから一般金融とそういうような感じで、確かに分業化の形が大体通常でもおかしくないような感じだったのですけれども、逆に言えば、証券あるいは債券、そういう市場拡大をされてきたということになってまいりますと、やはり今までと違ったウェートあるいは関連、横のつながり、こういうものが出てくると思います。特に、例えばマネートライアングルという、いわゆる金融指標ですか、こういうものがいつも言われておりますけれども、いわゆる株価と為替レートとそれから金利、こういうものが相関関係にある、その中で資金が移動していく、こういう状況からいきますと、例えば株と為替レート、要するに外為の部分とそれから国内の株式市場、それから一般金融機関のいわゆる商品、金利ですね、これがそれぞれ資金が流動していきますと、ここからここはという形にはなかなかならないのですね。だから、諸外国の場合にはそういうように垣根を越えて資金を動かせる、それに日本が果たして追従していけるのか、こういう心配もあるものでございますから、今ちょっとそういう話をお聞きしたわけです。  これからいわゆる先物市場というのは、世界的にもまだまだ市場が非常に大きくなると思いますけれども、少なくとも証券がいわゆる債券化するとか、何かそういう形もあるようでございまして、そういう意味では本当に垣根が商品の競合状況の中からなくなっていくのではないか、こういうふうに思うわけで、ぜひこれからの中でお考えをいただきたいと思います。  それから、ついでにお聞きするというのは変ですけれども、今度の先物市場外国金融機関の参画を認めよう、こういう話がございますが、そのときに相手方が今のいわゆる証券金融ともにできる形態のものであれば、それはそのまま認めるのかどうか、その辺はどのようにお考えでございますか。
  81. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 取り次ぎのために外国の適格な業者が我が国に入ってくるという場合に、これは我が国におきましては先ほど来御指摘のように、銀行、証券それぞれのファンクションで、基本的にある程度相乗りをしながらもファンクションを分けるわけでございますが、外国の業者の場合に、これまた第一会社、第二会社をつくれというのもちょっと国際的な常識からいかがと思いまして、適格な者であれば両方の機能を持ち得るようにということを先物市場に関連しては考えて、御提案申し上げているわけでございます。
  82. 玉置一弥

    ○玉置委員 これは、話は続きになりますけれども、今申し上げたように外為市場とかあるいは株式市場金融市場、この密接な関係というものがより拡大をされ、またつながりが強くなってくる、こういうふうになりますが、例えば一つ金融政策というのがございます。金融政策というのは本来は、狭い意味での金融政策というと、いわゆる通貨総量規制といいますか、こういうことだと思いますが、これだと多分日銀さんがやられるであろう。ところが、その金融政策全般についていろいろタッチされているのはやはり大蔵省だ、こういうふうに分野があるわけですね。それで、これからどうなるのだろうと非常に心配なのは、例えばこの資金的なつながりといいますか、金融商品等でいろいろ向こうの金融資産がつながってまいりますと、まず、果たして金融政策が今までのような状態のままである程度経済的にでも効果を出していくのかどうかという問題と、それからだれがそういう規制とか運営、経済運営上の指揮をとるのか、この辺をちょっとお伺いしたいと思います。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどからいろいろお尋ねもあり、お答えもしておるわけでございますけれども、確かにここへ来まして、そうでございますね、ここ数年と申し上げていいのでございましょうか、全くその辺の世界とのつながりが本当にもう壁がなくなったような感じになってまいりましたし、二十四時間世界じゅうがどこか動いている、結局みんな動いているということになってまいりました。為替もこういうことになりましたし、我が国も、本当にかなりそういう意味での自由化は進めて、今小口の金利の自由化ぐらいが残っている、そんなようなことになってまいりましたし、そこへ、我が国は大きくなってまいりましたので、またその責任も重くなってきている。そういう意味では、金融政策ばかりでなく、税制とかそういうところまで国際的にいろいろな一つの標準化を求められるような難しいことになってきたと思っております。  そういうことで、しかし例えばG7のようなところでございますね、ああいうところで政策協調をやっておるという意味は、みずから顧みまして、今玉置委員の言われましたようなことをやはり私どもはやっているのだろう、そう思っております。とは申せ、財政なんかにつきましては、やはり各国とも自分の国の予算制度というもので動いておりますから、それもしかし、財政赤字を減らせとかあるいはもっと内需を拡大しろとか、お互いにそういういろいろな政策協調の中での影響は当然に受けておりますけれども片方で、主権国家としての財政政策、金融政策というのは当然のことではございますけれども、結局、各国との協調というものが一つの国益になってきている、私どもはそういうふうに考えてやっておるつもりでございます。
  84. 玉置一弥

    ○玉置委員 確かに、日本だけの問題じゃなくて諸外国絡んだ状況で、なかなか思うように体が動かせない、そういうところもあるかと思いますけれども、今までは大蔵省の縦の見方といいますか、こういうものがありましたけれども、ぜひ横に見ていっていただきたい。  ただ、心配いたしますのは、割賦販売とかリース、それからファイナンス、この辺が非常に今拡大されていまして、大蔵管轄じゃないのですね。通産省になるのですか、そういう意味では通産の分野にかなり金融的なものが入ってきている。これは、割賦販売法についてはこの間の国会で論議されて、規制といいますか、一応改正はされましたけれども、まだまだ割賦販売あるいはリース――特にリースの場合、リースを通じた金融というのがありまして、これはリース権を売買するという形になるそうですけれども、そういう形があります。ですから、逆に言えば、既存の金融機関以外の分野での金融というのが非常に増大をされているということがございます。そういう面では、やはり大蔵省だけじゃなくて通産省の方ともよくコンタクトしていただいて、全体がまさに金融でございますから、そういう分野を的確に把握をしていただいて、ちゃんとした指揮をしていただきたい、こういうふうに思います。これは単に要望だけです。  それで、今回は商品取引所証券取引所並びに先物取引所、こういうふうになるのですね。取引所が三つになるのですね。アメリカは、商品取引所とか全部くるめて一つということで、我々も見てまいりましたけれども、別に不自由していないのですね、三つ一緒にやっていて。何で日本だけこんな分かれてやるのだろうという疑問が非常にございます。  それからもう一つ、株式の取引所、いわゆる証券取引所ですね。この証券取引所が日本に八つございまして、東京が八五%のシェア、大阪が一〇%、残りが五%ぐらい、こういうことなんですね。私が地元のことを言うのも変ですけれども、京都にもあるのですね。大阪に、すぐ近くにありながら何で京都にあるのだろうと、京都の者が言っちゃいけないのですが、思わず言ってしまいたくなるようなシェアらしいのですね。確かに、地場産業を地元の力で育成していこうという趣はわかるのですけれども、非常に時代も変わってまいりまして、日本全国からいろいろな情報が即座に入る、こういうふうな状況でございますから、何も八つにも分かれてやる必要はないのじゃないか。まして、それぞれの取引所が特色あるというものはなかなか出しにくい、むしろそういう時代に来ておりますから、そういう意味では、逆に言えば、悪用されないためにもある程度縮小すべきではないか、こういうように思いますが、いかがでございますか。
  85. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 第一の、アメリカにおきましては商品も金融の商品も同じように一つ取引所、まあ一つと言ってもいろいろあるわけですが、一緒に扱われているではないかという御指摘でございます。これは申すまでもなく、恐らくそういった先物のようなものについての考え方というのは、かなり日本とアメリカと違うと思います。やはりアメリカは国の始まりから、いわゆるベンチャーといいますか、そういう思想が非常に発達しておりましたから、商品の先物というものについての伝統も、またそれについての投機ではないかというような抵抗感も余りなく定着してきた。日本については、やはり投機というものはいろいろ問題があるのじゃないかというところからスタートしておりますから、こういう世界は期待されたような形ではなかなか発達していなかったわけでございます。今回我が国検討するに当たりまして、商品取引所証券取引所といかに日本の場合には違うかということを見ていただくと、先物の場合も、つくるときには一緒にということはなかなか難しいかなという感じもあるいはおわかりいただけるかと思いますので、そうやって自然に、いわばエボリューションのような格好でできてきたところと新しく制度をつくる場合の違いということが、一番基本にはあるのではないかというふうに思っております。
  86. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 全国に証券取引所が八つあるというお話でございます。確かに、委員の御指摘のとおり、取引高で見てまいりましても、東京大阪、名古屋を除きます残りの五つの証券取引所の売買高シェアは、五つ全部で〇・五%ということでございまして、しかも、年を追うに従って減少傾向にあるというような状況でございます。これは、もともとその取引所は、現在のようにコンピューターシステムというものが十分発達する前からの非常に古い歴史と伝統のある分野でございますが、もう少しこの辺を整理等をしたらどうかというふうな声がございますことは、私どもも十分承知しておりますし、また、これも傾聴すべき御意見であろうと思います。  ただ、この取引所の問題は、別に責任を回避するわけではございませんけれども取引所は基本的には証券界が自主的に設立し、しかもその改廃については、証券取引所の方において、地場証券会社あるいは地場企業とも御相談をされながら考えていただく問題であらうかと思います。そして、具体的にそういうふうな問題になりましたときに、やはり地元としては、この取引所がなくなることに対するいろいろと拒否反応もございますし、現に地元企業としては、東京取引所に上場しようとしても規模が小さ過ぎてなかなか上場できないけれども、地場の取引所には上場できる、上場をすることによって、そこで資金調達を行ってさらに成長して、東京なり大阪証券取引所に上場するというようなメリットもあるわけでございます。私たちといたしましては、整理統合したらどうかという御意見を十分念頭に置きながら、しかし、あくまでも取引所というのは自主性を重んずべきであるという点も尊重する必要がございますし、地元の話し合いをよくウオッチしながら、この問題には対応してまいりたいと思っておるわけでございます。
  87. 玉置一弥

    ○玉置委員 だんだんと取引の出来高が減ってまいりまして、逆に言えば証券会社だってやっていけないだろうな、こういう心配もあるのです。我々の地元でも、地場の証券会社の方が不祥事を起こしまして、これは結局自分たちが手数料稼ぎでやっていますから、この分だけでは食えないということで余計なことに手を出す。だから余りいいことないのですよ。逆に寄りつきがないことをいいことにして、小さいところでやりますと実績が上がって値段がつきます。値段のついたもので売買をするということに何か利用されているところがありまして、全然いいところがないのです。だから、極力要らないところは廃止するぐらいの気持ちでやっていただきたい。  それから、アメリカでNASDAQというのがありまして、コンピューターによる店頭販売といいますか、こういう制度がございます。日本も似たようなのがあるわけですね。それをもっと拡大をして活性化させれば、今お話にありましたような東京に上場できない企業が、そういう店頭販売という形になればある程度そこで資金調達ができるし、ましてそこで体力をつければ、あるいは信用がつけば、一部上場あるいは東京なり大阪なり大きいところに上場できる、こういう手があるわけでございますから、逆に言えば取引のないところにすがっていくよりも、そこで何か商品開発されればいいですけれども、そうでなかったらこれだけの情報化社会ですから、店頭販売をより拡大をしていくというような方向の方がむしろいいかと思いますが、いかがでございますか。時間もないので簡単にお願いしたいと思うのです。
  88. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘の問題につきましては、証券取引法証券取引所集中主義という形でできておりまして、証券取引法の基本問題にかかわるような問題でもございますが、取引所の最近におきます動き等を勘案しながらこの問題も検討してまいりたいと思います。
  89. 玉置一弥

    ○玉置委員 次に、ヘッジ会計といいますか、国債の場合に銀行等金融機関が評価損を一時大幅に受けまして、そのときに、あれは法律では何もやってないでしょう、通達か何かですか、たしか評価損を認めようということでそういう手続をしたことを覚えておりますけれども、最近の例として、特にブラックマンデーの後株価が非常に下落をいたしまして評価損が発生した。幸いにして、三月までにある程度回復できたからよかったものの、もしこの株価水準が下落したまま、あるいは回復されないままに来たら、三月末の期末には大変な売りが出ただろう、こういうのが何か証券界ではごく通例といいますか、当たり前のことで言われていた。ところが、結果的には回復してよかったなというのが今の感想である、こういうお話を聞くのでございます。  そういう面からいきましていわゆるヘッジ会計、評価損等をある程度認めていくような方向がとれないか。これは株価をより安定させるという意味で一企業の――逆に言えば、ヘッジ会計を認めるというのは一つの粉飾決算ですね。要するに、実際の評価より低い有価証券を持っていながら高い評価を受けるというのは実態と違うわけでありますから、実態に合わせた企業会計を行うという意味では非常にいいのではないか、もう一方では株価安定という面から見て非常にメリットがあるのではないか、こういうふうに思いますが。
  90. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ヘッジ会計の問題でございますけれども、御承知のように我が国企業会計は財務健全性という観点から、少なくとも収益の計上につきましては実現主義を原則としておりまして、未実現利益を計上することのないようにヘッジ会計は導入されておらないわけでございます。確かに、アメリカ等では一部ヘッジ会計が導入されておるように聞いておりますけれども、その場合でも非常に厳格な要件がございまして、例えば証券株価指数先物を行っていた場合に、株価が下落した場合評価益を立てられて、現実の方の評価損をカバーできるではないかという御指摘はごもっともでございますけれども株価指数先物を行っております場合でもまさに現物に結びついておるのか、それとも現物に結びついておらなくて、ある意味では短期の実現益をねらうためのものなのか、投機と言うとちょっと言葉は悪うございますけれどもそういったものなのか、その辺を区分することがなかなか難しいようでございます。ヘッジ会計を認める場合は、そのヘッジが現物と結びついておるということを極めて厳格な要件として行っておるようでございます。私もつぶさには存じませんけれども、そういうふうに聞いております。したがいまして、日本の場合にこれを導入するのがいいのかどうかと申しますと、先ほどの大原則との絡みもございますので、いろいろと検討してまいらなければならないと思います。  他方、御指摘ございましたように、こういう金融先物あるいは証券先物導入されまして、ますますこの問題についていろいろ議論していくべきではないかという声も高まってきております。私どもといたしましては現在、財団法人でございます資本市場研究会の中に金融商品等会計問題研究会を設置いたしまして、この問題について議論を進めてもらっておる段階でございますので、いましばらくこの検討の結果を見守ってまいりたいと思います。
  91. 玉置一弥

    ○玉置委員 五%とか、そのぐらいの変動であればいいと思いますけれども、この間みたいに二〇%を超えたことがありました、日本はまだよかったですけれども。そういう状況だと、例えば百億ぐらい持っておるとすれば八十億ぐらいにしか評価されない。二十億に税金かかるというと変ですがかかるわけですね。そういうことだと思いますので、ぜひ臨機応変に、ましてや国際化ということで制度をなるべく合わせていこうという時代でございますから、当然いい方に合わせていただきたいと思います。  時間があと六分少々しかございませんので、インサイダー取引について若干お伺いをしたいと思います。  非常に簡単な質問でございますが、今回は百九十条ということで、一言で言えばいわゆる刑事罰の構成要件を明確にしよう、こういうことですね。刑事罰の方はわかるのでございますが、今までも民事訴訟の手はあったのですね。インサイダー取引による損害賠償の方法は日本でも可能であったということでございますが、損害の相手とかいろいろな立証ができないということで、実際は何もなかったということでございます。アメリカの例を見ますと、インサイダー取引による損害の相手が、お金をもうけた人という言い方はおかしいのですけれども、上がった場合は、その期間に売った人が損害賠償の対象ということになっております。市場のいわゆる善良な人といいますか、どういうふうにしてこういう人たちの行為を担保するか、こういうことが非常に問題だというふうに思うわけで、そういうことから考えていきますと刑事罰だけではなく、やはり損害賠償という面からこの法案をもっと精査をしていくべきではないか、こういうふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
  92. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 このインサイダー取引を行った場合に、一般投資家が民事上の損害賠償を請求できるかどうかという問題、また請求させるべきではないかという問題は、この内部者取引議論いたしました証券取引審議会の不公正取引部会でも問題になりまして、いろいろな議論がございました。しかし、ただいま御指摘ございましたように、この内部者取引に対する民事賠償につきましては、まずだれが被害者なのか、原告適格と申しますか、こういったものが非常に難しゅうございますし、それから一体損害とは何かという問題につきましても、やはり民事上の民法の原則について特別の制度を設けなければ難しいのではないかということでございます。したがって、どうも一般的な意見といたしましては、これまでの我が国の訴訟制度とは根本的に違う異質な制度をつくらなければならないというふうに思われますので、やはり他の訴訟制度と整合性を合わせながら、ある程度時間をかけて検討すべき問題であろうというのが結論でございました。したがいまして、今回の法律案におきまして、この民事的解決手段については規定を設けておりませんけれども、これからの検討課題の一つとして私ども取り組んでまいりたいというふうに思います。
  93. 玉置一弥

    ○玉置委員 実はアメリカで、判例でかなりいろいろな範囲が決められてきているというのがございまして、先ほどもちょっと言いましたように上がった場合には上がった金額、要するにもうけた人が損した人にその分を補てんをしていこう、そういう一つの例があります。その間に売買をした人というのは非常に広範な範囲ですけれども、アメリカというのはこのくらいまでおおように認めているわけですね。アメリカにできて日本にできないわけはないと思うのですが、これ全部を補償すると逆に大変なことになると思うので、その総額の問題もありますけれども、少なくとも相手はある程度限定できると思うのです。そうすると、要するにインサイダー取引がなかったらどうかという評価、あったらどうかという評価、この辺の差をどうやって見出していくかという問題があります。少なくとも刑事罰はあります。ところがその刑事罰も懲役または五十万で、五十万払えばやってもいいんだというふうになってくると余り効果はない。だから、もうけた以上に損害賠償しなければいけないんだということの方がより大きな効果を持つというふうにも思いますし、逆に言えば、要するに構成要件を明確に、本当にぴしっとしておかないと、うっかり知らなくてやるという場合もあるわけですから、その辺は刑事罰規定余り厳しい場合には非常に問題になる。むしろ民事の部分でございますから、そういう意味では損害賠償等民事の方の強化をして刑事責任の方はなるべく軽減をしていくということがいいんじゃないかな、こういうふうに思うわけです。それについてはいかがでございますか。
  94. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 アメリカの場合に、この内部者取引につきまして損害賠償請求が出されたようなケースもあるようでございますけれども、やはりケースとしては非常に少ないようでございます。日本の場合にそれをどうするかということにつきましては、今御説明いたしましたように、例えばインサイダー取引というのは損失を回避する場合にも使われるわけでございます。実現益が出てない場合もございます。そうした場合、一体どういうふうに扱うのかとか、やはり一番問題なのはだれが原告になるのかというようなことになろうかと思います。私どももアメリカの例を少し勉強しながら、やはり中期的な課題ということになろうかと思いますけれども、勉強してまいります。
  95. 玉置一弥

    ○玉置委員 終わります。     ─────────────
  96. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、明十二日、参考人として東京証券取引所理事長竹内道雄君、日本証券業協会会長田渕節也君、全国銀行協会連合会会長伊夫伎一雄君及び神戸大学名誉教授河本一郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ────◇─────     午後一時四十八分開議
  98. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正森成二君。
  99. 正森成二

    ○正森委員 同僚委員意見もございますので初めに申し上げておきますが、委員会の始まりが二十分近くおくれましたけれども、今後、出席すべき議員に、特に与党は注意をされて、こういう時間のロスのないように気をつけていただきたいと思います。
  100. 越智通雄

    越智委員長 しかと承りました。
  101. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私の方から質問をさせていただきます。  午前中、同僚議員からインサイダー取引とかあるいは先物取引のさまざまな問題について御議論があったわけですけれども、私は最初に、そのそもそも前提になる現物の証券市場が今どういう状況になっているかというところから、これらの問題を改めて考え直してみたいというように思います。  まず最初に事務当局に伺いますが、私があらかじめお願いしておきました投資部門別の株式保有比率、これを最近のものだけで結構ですから、大きく五つないし六つに分けてお答えください。
  102. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 投資部門別の株式の保有比率でございますが、六十一年末でよろしゅうございましょうか。(正森委員「結構です」と呼ぶ)これにつきまして申し上げます。  まず上位から申し上げますと、銀行、信託銀行二〇・五%、生命保険会社一三・三%、事業法人二四・五%、損害保険会社四・四%、一方、個人は二三・九%ということになっております。今申し上げた中で金融機関だけを総計いたしますと、金融機関が四三・五%ということになっております。
  103. 正森成二

    ○正森委員 今大臣もお聞きになったと思いますが、投資部門別の株式保有比率の推移を見ますと、これは単位数ベースですね。実際、余り関係ないようですけれども、ほんのちょっとした誤差ですけれども。政府、地方公共団体等もございますけれども、大きく分けますと、金融機関が四三・五%、事業法人が二四・五%等となっておりまして、個人は六十一年で二三・九となっております。六十年はそれでもまだ二五・二ありました。きのう証券会社にちょっと聞きましたら、六十二年は恐らく二二%台になっておるだろうということであります。  それで、これは「証券」という雑誌です。御承知だと思いますが、この六十一年八月ですから前々年度で古いのですけれども、それを見ますと、株式分布状況調査結果の概要というのをずっと出すようになっているのですが、昭和二十四年度は個人の持ち株比率は六九・一%あったのです。三十三年度に約五〇%になります。四十五年度に四〇%になります。五十五年度にとうとう三〇%を割り込むということになりまして、現在は一応、大蔵省がお答えになったのは去年で二三・九、実際上は二二ぐらいまで下がっているという話であります。これは証取の審議会でも、毎回個人株主の比率を上げなければならない、時には経済外的な効果といいますか、手段によってもそういうことをしなければならないという報告が出たときすらあるわけであります。  それで、こういうように個人の持ち株が少ないということになってまいりますと、政府が今まで言っていることも随分矛盾してくるのです。例えば、法人税制で受取配当益金不算入というのがありますが、これは本来、株式会社というのは株主の集合で、最終的には株主のところへ金がいくのだからそこで税金を取ればいいということになって、中間段階に法人などがある場合には、課税するというのはかえっておかしいという議論なんですけれども、こういうように個人が二十数%で、外国人もございますけれども、法人が、銀行やら事業法人を含めて六十数%、七〇%に近いということになれば、こういう理屈はだんだん通用しなくなってくるのです。今は税制のことを言っているわけではありませんが、なぜこんなに個人が少なくなるのかという問題を考えてみなければならぬと思うのです。  そこで、再度証券局に伺いますが、株式の平均利回りは現在、六十二年だけで結構ですからお答えいただきたいと思います。それからPER、プライス・アーニングス・レシオというのですか株価収益率についても、六十二年だけで結構ですからお答えください。
  104. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 配当を行っております会社の株式の配当の平均利回りでございますけれども、これは六十二年におきましては〇・六三%でございます。  それから二番目の株価収益率、いわゆるPERと言っていますが、これは六十二年で五十八・三倍でございます。
  105. 正森成二

    ○正森委員 今大蔵大臣お聞きになったと思いますけれども、株式の平均利回りが株価に比べて○・六三%です。これは、百万円投資したとして得られる配当は六千三百円であるということなんです、税金を除いて。これがどれぐらいだったかといいますと、四十六年にはとにもかくにも三・四一%、五十年に二・三一%になりまして、五十五年に一・六三%になります。これは大蔵省の資料ですから間違いないと思いますが、以後もうずっと平均して低下してまいりまして、とうとう六十年からは一%を割って現在は〇・六三%である。  それで、株価収益率という概念はアメリカから入ったと思いますけれども、一株当たり収益、それと株価と比べますと五十八・三ということですが、平均ですから、高い会社では七十倍を超えているところが出てきております。つまり、その収益が全部配当に回るわけではないわけですけれども、仮に全部回ったとしてもその元を取り返すのに平均で約六十年、高いところだったら七十、八十とかかるということになれば、一生かかっても元を回収できないということになっておるのですね。  そうしますと、どういうことになるかといえば、これは個人が利潤証券として株を買うなどということは問題にならないということになるわけです。そうすると、なぜこういうことになっているかといえば、法人がどんどん買っているのですね。そして、法人は利潤証券として持っているかというたらそうではなしに、お互いに取引のある企業やらあるいは銀行が相互に持ち合いをしてグループ化、系列化を行い、安定株主と称して相互に株の持ち合いをするということになって法人の持ち株が非常にふえている、こういうことになっておるのです。だから、法人の場合は初めから利潤証券と見ていなくて、そのことによって取引関係を有利にする、あるいは一定の支配をする、あるいは受注が自分のところに来るようにするということですから、ある意味では支配証券として持っているわけなんですね。  そうすると、個人の方は利潤証券としては問題にならないということになりますと、株の値段が上がったときには、いっそのこと株を売ってしまって株式投資から逃げてしまおうか、後で数字がありますけれども、そういうことになり、そして法人がそれをまた買うということになって比率が下がっているのですね。  証券局長、株式の売買回転率というのはおおよそわかりますか。――まだ調べてないですか。委員長、きのうあるいは質問のときに言うてなかったかもしれませんから、ここにありますから私から言います。  これは「証券」の五十三年三月号ですね、部門別株式投資収益率の計測というのを何年に一回かやっているのです。今まで私の知っているところでは三回ぐらいしかやっていないかと思いますが、それを見ますと、たしか五十一年の数字だと思いますが、投資信託の売買回転率というのは一七一・九%と格段に多いのです。その次が個人の七〇・一%で、これも多い。少ないのは事業法人の一六・三%、生損保三・六%、銀行二・八%ということで、ここらは全く売ってないのですね。  さらに、これを見ますと、四十八年から五十一年までの四年間の平均というのが出ておりますが、それを見ますと、これは投資信託が四年平均で八五・五%、個人が五七・二%ということで、少ないのは銀行の二・八%、生損保の二・一%、事業法人の八・五%というようになっております。これは何を意味しているのですか。
  106. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 売買回転率が非常に上がっておるということでございますけれども、いずれにいたしましても、株式市場での取引というのが頻繁に行われ始めておるというような現象を示しておるものだというふうに理解しております。
  107. 正森成二

    ○正森委員 宮澤大蔵大臣、ここで示しておりますのは、金融機関なんかは四十何%持っているのですよ。事業法人もこのごろでは個人よりも多い。大体、全体の七〇%近い部門が実際上は売らないのですね。自分でじっと持っておって、それは支配証券として持っているんだから売らないのです。それ以外の個人だとか、あるいは比率は少ないのですけれども投資信託というのが非常に激しく売買をして、これはキャピタルゲインを稼ぐ。利潤証券としては意味を持たないわけですから、個人が売買に参入する場合は、それは長く持つという意味ではなしに、キャピタルゲインを嫁ぐということのために回転率が非常に高くなっているということ。投資信託は、当然キャピタルゲインを得てそれを顧客に返さなければなりませんから、これは売り買いがどうしても多くなるということで、投資信託自身も長く持っておって配当をもらって、それで契約者に金を渡すということはできなくなっていますから、だからやはりキャピタルゲインを稼ぐというために投資信託の売買回転率が高くなり、個人の回転率が高くなるというのは、ある意味での必然性を持っているのです。そして、事業法人や金融機関は支配証券として持っているんだから、これは売らないということになっているのですね。これは数字の上から明確に出てくることであります。  ここからが大事なんですけれども、どういうことが起こるかといえば、これはいろいろな本にも書いてあるのですけれども、なぜ我が国の株価が高値安定というか高いか。時間の関係で一々証券局長に聞きませんが、ブラックマンデーの後で、ニューヨークでもロンドンでもブラックマンデー以前の株価に対する回復率を見ますとせいぜい八○%か七五%ぐらいで、全部回復していないのですね。ところが我が国の場合は、東証ダウが二万七千円を超えましたか、ブラックマンデーのときが二万六千円台だったと思いますから、一〇〇%をもう超えてしまっているのですね。これは、我が国経済のファンダメンタルズがいいからだなんて言って安心している向きもあるようですけれども、決してそうとばかりは言えない。  その理由は何かといえば、証券取引所の株のうち約七割ぐらいは売買しないで、これは表に出てこないのですね。表に出て売買されるのはわずか二十数%ぐらいの株しかないということですから、需給関係が非常にタイトなんですね。ですから、どこかが買いに出ればそれによって値段が上がるということになって、法人の大量の売りというものを値段に反映させないような仕組み我が国の株式市場にはあり、そして個人等が買った場合には非常に容易に株が上がる、値段が上がるという仕組みがあるからだというように、講学上あるいは研究家なども言っておるわけであります。  証券局長質問通告になかったかもわかりませんが、俗に言われるクロス売買とかあるいは取引所外で行われる売買というのが、大きな法人同士などの売買の場合にはよく行われるでしょう。かつては、その比率が非常に高い比率を占めていたときもあったでしょう。
  108. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 大口のクロス売買と申しますか、相対売買の金額でございますけれども、確かに御指摘のように六十一年ぐらいから非常にふえてきております。計数で申し上げますと、六十一年の大口の相対売買の株数でございますけれども、これが百五十億株。それが六十年では四十六億株でございました。それから、六十二年では百九十八億、約二百億株。総売買高に占めます比率も六十年当時は三・九%、これはむしろ過去の趨勢から比べまして非常に低うございますけれども、六十一年、六十二年は大体七・八%、七・六%というふうな水準になっております。
  109. 正森成二

    ○正森委員 私は株のことはよく知らないのですけれども、クロス売買などというのは、法人の大きな売りが出ました場合に買いを探してきて、そしてクロスで売買させますから、株価には反映しないというやり方ですね。市場外の相対の場合は、もちろん株価には影響しない。その日の株価を参照して、ほぼそれと同値というところで取引をするということになるわけですね。そうしますと、法人が売ろうというような大きな動き、これは当然売りがそのまま出れば株価を下げるわけなんですけれども、それがクロス売買や相対売買で値に反映しない。そして個人が買いに出ますと、これは株が上がる。その基礎にあるのは、七割近くを金融機関や事業法人等が支配証券として持っておって、なかなか売買に出さないという日本の株式事情の基本的構造のもとに、こういうことが行われているということになるわけであります。なぜ、私がこういうことを言うておるかといいますと、それが今度のインサイダー取引だとかいろいろの規制の問題を考える場合に、非常に大きな意味合いを持っているというように考えるからであります。  証券局長、百二十五条三項、これは株の値段を固定させるということはやったらいかぬというようになっておりますが、それには例外があるでしょう。政令の定めるところではよろしいというようになっているようですが、その政令というのは「安定操作取引をすることができる場合」という、証券取引法施行令の二十条以下ですね。
  110. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  111. 正森成二

    ○正森委員 この二十二条を見ますと、「安定操作取引の場所及び期間」となっておりますが、これは有価証券の募集等の場合に、例えば二週間とか二十日とかいう期間は、これは値が余り上がったり下がったりしますといろいろ問題があるというので、安定操作をしてもよろしいということで、あらかじめ一定の届け出をして、そして株の増資あるいは募集とか、そういうことがスムーズにできるようにするという規定ですね。
  112. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 おっしゃるとおりでございまして、増資の場合等株価を決定いたしました後、募集が完了いたします二十日間程度の間その株価の安定を図るために、大蔵省に届け出をした上で安定操作を行うことを認めております。
  113. 正森成二

    ○正森委員 そこで、今度のインサイダー取引の禁止とかなんとかいうのは、株を発行するとか募集をするとかそういう情報を仕入れた者が、日本なんかではファイナンス銘柄などといって株が上がるようになっているのですけれども、一定の期間安定させるということで、この政令がなければもろに百二十五条三項にひっかかる行為なんですね。しかしこれは、新株の発行とかあるいは募集を安定的に行うためにこういう例外を、聞いてみたら昭和四十六年につくったということになっているのです。ところが宮澤大蔵大臣、実際上この安定操作が行われているのは、この法に基づいて省令で許容されている時間だけではないのですよ。それ以前に、証券局から聞き取りをいたしましたが、約三カ月間は株価の推移を見るという期間がありまして、その期間、このごろでは緩和されているようですけれども、ついこの間までは、三〇%以上株価が上下するというような場合にはストップをかけるというようになっていたのですね。このごろは、何かそれがちょっと緩和されているそうですね。  そこでどういうことが起こるかといいますと、この法と省令で許容されている二週間とか二十日間だけでなしに、いよいよ新株の発行をするとかなんとかいうことになりましたら、証券会社が株式を発行する会社などと話し合いをして、しかも、ここが問題なんですが、大蔵大臣、株式の時価発行ができましたからね、額面の発行じゃないですから。時価発行ができた場合には、発行会社としてはなるべく時価発行が高くできれば株式が少なくて、しかも自分の懐に入るお金が多い。しかも、株式が少ないのですから配当は少なくて済む。こういうことのために株価工作をやるわけです。そしてある程度、これぐらいで発行しようというところまで上がりますと、今度はそれを超えて不必要に上がると、発行してから後で下がった下がったと言って新株を引き受けた人に文句が出ますから、高くしなければいけないし、また高く上がり過ぎても困るということになるのですね。ですからそのときは、一般情報を仕入れた個人などが売ってきた場合には冷やし玉と称しまして、それをぶつけることによって、一定のところまで上がったものはそれ以上上がらないようにするということをやっているのですね。  これは、ここに資料なんかがありますけれども、今度のことに絡んで言っているのですけれども、「わが国最大の機関投資家である日本生命は」、こう言っています。これは六十二年十月二十四日の週刊東洋経済に載っている記事ですね。「ファイナンスをやるから冷やし玉を出してくれ、という要請が必ずくる。当方も持ち株を手放すチャンスだから応じる。むろん、買い戻し要請ははねつける」と、ちゃんとこう言っているのです。そうしますと証券局長、これは本来ならインサイダー取引の典型じゃないですか。省令によって二週間とか二十日間は、これは募集を円滑ならしめるためにやってよろしい、しかしその前の三カ月も四カ月も前から、自分らがこれで時価発行したいという値までは上げる、しかしそこからは上がり過ぎたらいかぬ。上げるときの買い工作はいろいろやるけれども、希望するところまで上がったら、今度はそれ以上上がり過ぎないように機関投資家の日本生命などへ行って、今度売りが出たらそれに対応する玉を出してほしい。これは完全な、いわゆるアメリカのSECの十のbの五などというインサイダー取引に該当するわけです。それを我が国証券界やあるいは事業法人は公然とやってきたのじゃないですか。それが今の証券へのさまざまな問題点や、個人株主はそんなことができないから逃げていくというのの大きな原因で、証券業界としてもあるいは資本主義社会としてもよほど考えなきゃならない問題なんですね。  あなた、きょうも同僚議員の質問に対して、安定操作というようなことはないといいますか、百二十五条で対応できるんだということを言っていたけれども、百二十五条でそれはありますよ、一項、二項、三項とある。三項はまさにそのことを決めているのだけれども、それに対する例外として、本来はやってはいかぬ行為なんだけれども、省令で許可されている。その範囲をはるかに超えて、今日本の証券会社やあるいは事業法人はやっているじゃないですか。このインサイダー規制の条文ができたらどうするつもりなんですか。あなた方は、未然防止と刑事罰の二本立てでいくと言っておりますね。未然防止についてはチャイニーズ・ウオールをしっかりやる、つまり情報隔離とか言っているけれども情報隔離なんて今までできもしなかったし、これからもやるのですか。本当にぴしっとやれば、今の株式会社や事業法人はえらいことになるのですよ。これまで株式会社は、法人部門の増資をするという情報を営業部に渡して、ある場合には買いに走らせ、一定の額以上になれば、今度はそういう売買がないように連携を密にしてやってきたのですから。だから、きれいごとを言っていたってだめなんです。本当にどうするのですか。
  114. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいまお話しの点につきまして、幾つか問題があろうかと思いますが、まず安定操作が認められる期間と申しますのは、先ほど御説明いたしましたように公募価格の決定の翌日から公募の終了時までということ、おおむね二十日間程度ということになっております。その間の安定の方法につきましても、公募価格または前日の価格を下回るところまでは安定操作をしてもよろしいということになっておりまして、これは委員もお話ございましたように、公募、増資等を円滑に進める上で必要やむを得ないというところから、百二十五条第三項の例外として大蔵大臣に届けさせた上で認めておるわけでございます。したがいまして、今お話のございましたような安定操作期間終了後、事業法人等が証券会社と結託してやっておるということになりますと、これは百二十五条三項の違反ということになるわけでございまして、私どもも株価審査の過程では、これは厳重にチェックをしておるところでございます。  それからまた、証券会社の未然防止体制の中でも内部者管理カードというものをつくりまして、上場証券会社の役員あるいは職員等についてのリストをつくっておりまして、それらの者がこの期間、株式の売買をするということになりますと、ある意味ではこの未然防止体制の中での情報として上がってくるわけでございますから、証券会社としては売買管理部を通じて、売買を行った者に対して一体いかなる動機でそういう取引をしたのかどうかということをチェックして、それに問題があれば未然防止の中で取引をやめさせるというようなことも可能なわけでございます。私どもとしては、そういう仕組みをつくり上げているわけでございますから、これがうまくいっている、いっていないという御批判はあるのかと思いますけれども、その仕組みを生かしながらこれまでもやってきたつもりでございますし、こういうインサイダー防止体制というのができました以上は、これをもっとうまく運用するように努めていかなければならないというふうに思っております。
  115. 正森成二

    ○正森委員 今お答えになったのは皆建前ですね。建前はまさはそうなっているのです。今の答弁の中で安定操作期間終了後とおっしゃったけれども、終了後に限らないのですよ。安定操作期間の前にいろいろやるということを私は言ったのですから。だからその点は、それは安定操作期間後もあるでしょうけれども、私の言ったのは、安定操作期間前にいろいろやっているということを申し上げたわけです。いいです、時間がありませんから。  それから、今までもやってきたところでございますと言われましたけれども、同僚議員が午前中も質問になりましたけれども、タテホの事件なんかは、あれは日興証券と阪神相互ですね。私が資料を見ますと、日興証券の場合には、大阪証券取引所大蔵省というのですか、証券局がいろいろ調べて、これはそもそも証券会社はシロである。それから阪神相互の場合には、いろいろ調べて、どうやらクロらしいが、五十八条ではどうも無理なので、やらないということになったというように書いてあるところがあるのです。また、新聞などを見ますと、藤田証券局長、あなたの談話みたいなのが載っていますね。これは十月二日の朝日新聞です。こう言っているのです。   大蔵省では、阪神相互銀行のタテホ株売り抜けについて「一日に説明会の内容を聞いた後で売ったのなら、インサイダー取引に相当するが、後藤社長の発言のように、三十一日の「説明会の連絡」で漠然とした経営危機を予想して売ったのなら、インサイダー取引には当たらない」 こういうことを藤田証券局長が言ったと書いているのです。これなんかは巷間報道されているところから見ても余りにも甘いのじゃないですか。  例えば朝日新聞の十月二日の同じ紙面には、   後藤社長らの説明によると、同行はタテホの取引銀行の一つとして、八月三十一日夕、タテホから「一日午後一時に社長がお会いしたい」と連絡を受けた。同行は「従来からの取引関係からみて社長が会いたいというのは異例のこと」と調査を開始。タテホ側の対応ぶりなどから、経営面に重大なことが起きた、と強い懸念を抱き、 云々とあるのです。何も説明会を開きたいということだけでやったなどということは、当時の新聞報道でも言うてないのです。それでおかしいというので「調査を開始。タテホ側の対応ぶりなどから、」というところを見ると、取引銀行としてタテホにいろいろ聞いたのでしょう。そこで得た情報に基づいて、これは危ないというので役員会を開いて全株売るという異例の決定をして、これを見ると一日の午前から午後にかけて全部売り抜けたと書いてあるのです。タテホの取引銀行に対する説明は一日の午後一時に行われているのです。そうすれば、午後のはもちろんインサイダー取引じゃないですか。午前だって、役員会があるから危ないなんてまるで八卦みたいなことでやったのじゃなしに、詳細に調査を開始してタテホにいろいろ聞いているのですから。そんなものがシロだなんて、そういう姿勢では幾ら今度インサイダー取引なんかつくったって、警察がよっぽどびしびしやって逮捕して有無を言わせず供述をとるということでもしなければ、大蔵段階ではしようがないのじゃないですか。余りにも世間常識から反するのじゃないですか。  大体、タテホが二百八十何億もの大損害を受けてやっているというような事実を知ったら、阪神にしろ日興にしろ――日興なんか二百何十万株も九月一日までに売り抜けているのですよ。そんなもの買い手の相手になるところなんてあるはずがないので、だからこそインサイダー取引の禁止というのがあるのですから。それを証券局が調べて両方とも何ともない、日興の社長も阪神相互の社長なんかも詳細に会社内を調べたけれども、そういうことはなかったというようなことを言うて、それでああそうかでは、今の法律のもとでだってこれは重大な問題点があることでね。だけれども、今度法律を変えたとしましても、午前中も同僚議員に、会社の業績に重大な影響があることで、あなた、何か取引関係から情報を得たとすればという条件をつけて、その場合はインサイダー取引に該当します、こう言いましたけれども、それは今度の条文にありますからね。しかし、取引関係から得たとしたらというのは、役員会を開くという報告があったのが取引関係から得た情報だけで、これでは会社が重大な損失を出したかどうかわからないなんということを言えば、それを端緒としていろいろ調べて、取引銀行だからこそタテホに直接聞き調査をしたということは全部無視されてしまうじゃないですか。大蔵省としては、こういう金融機関や証券会社のビヘービアに対してよほどきちっとした態度をとるのでなければ、そんな証券取引の公正さは保たれないのじゃないですか。盛んにうなずいておられるから答弁させるのも気の毒だから、私が言うたままでもいいですけれども
  116. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 タテホの事件について、現行法の五十八条と現在改正をお願いしております百九十条の二の規定がどういうふうに違うかということでございますけれども、五十八条のもとではこの法律の解釈の問題として、これがいわゆる詐欺とか不正の要素のない内部者取引一般にまで及ぼせるのかどうかということについては、解釈上いろいろと疑念がございました。したがいまして、五十八条は何かそこにインサイダー取引を行った場合でも、詐欺性というものがないとなかなかこの適用は難しいのではないかなということを私どもも考えておったわけでございます。したがいまして、このタテホ化学工業に対します取引銀行が、今委員指摘ございましたように銀行団に対する九月一日午後の説明会の前に、タテホの方から説明会を開くので来てほしいという要請があって直ちに全株を売却した、あくまでもこれは説明会の前でございます。一日の午前中に全株を売却しておりまして、説明会があった後には売却しておりませんが、しかし少なくともそういう事実を行った場合に、これがインサイダー取引になるのかならないのかということについて、五十八条をそのまま適用できるかどうか、若干我々も疑問なしではないというふうに考えておったわけでございます。  ところが、今度法律改正を御承知いただきますと、これは明らかに取引先銀行はタテホと融資の契約関係にあるということになりますので、その契約の、私は締結及び履行に関しと申し上げたつもりでございますけれども、まさに契約の締結及び履行に関してタテホ化学から話を聞いたということになるわけでございますので、この場合にタテホ化学が取引先銀行に対しまして話しました内容、これは事実の認定になると思いますけれども、それが単にあした九月一日午後おいでくださいということであったのか、それとももう少し内容があったものなのかどうか、その辺をはっきりと突き詰めまして、まさに一歩踏み出たようなコメントをしておったということであれば、今回は間違いなく百九十条の二違反として摘発ができるわけでございます。したがいまして、調査が不十分だったではないかという御指摘でございますけれども、調査をしても場合によっては五十八条で持ち込めないかもしれないというふうな問題がございましたので、そういういろいろ新聞紙上で書かれたような御批判も若干あるのだと思いますけれども、私ども実態としてはそういうことではなくて、法律そのものについて若干問題があったのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  117. 正森成二

    ○正森委員 まだいろいろ聞きたいことがありますが、ディスクロージャーについてもお伺いするつもりでしたが、時間があと五分だというのが回ってきましたので、全部省略させていただきます。  一つお伺いしたいと思うのですけれども、今度金融機関も一定の範囲で先物取引ができるようになったのですけれども、これは国債外国国債等の先物取引あるいはブローカー業務、取り次ぎも含めて認めるというのは、証券会社と違って金融機関は大衆預金を預かっている組織であります。ですから、これは経営の健全性といいますか、大衆にいやしくも損害を与えてはならないということが重視されなければならないのですが、この点はアメリカでも先物市場への参加は銀行本体ではなく、子会社を通じて取引を行っているのです。この点については蝋山昌一大阪大学教授なども、これは金融機関、特に銀行が本体みずから先物市場の直接参加者となるといった点は、本当に望ましいのだろうかということで別会社をつくるとか、あるいは子会社をつくるとかいうことが必要ではなかろうかという指摘をされているのですけれども、こういう問題点について大蔵省はどう考えているのですか。
  118. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今お話がございましたように、先物取引というのはやはり注意しませんとリスクがあるわけでございます。したがいまして、その点につきましては細かくは申し上げませんが、今度の法令その他の案の中におきましても、きちっとこのリスクを防止する仕組みを考えていきたいと考えているわけでございます。  そこで、子会社方式でやってはどうかというお話でございますが、アメリカの場合も法制上は本体もやれますし、子会社でもやれるという仕組みになっておりまして、実際上は子会社でやっているところが多いわけでございますが、その辺は監督権限等との絡みで銀行側が子会社方式の方が問題がないということでやっている側面もあるわけでございまして、我が国の場合も法律上はどちらでもやれるように今度はなっておりますので、その辺は法案が成立しました後でまた考えていくということになろうかと思います。ちなみにイギリスの場合は、四大銀行のうち二つは子会社方式、二つは銀行本体でやっております。
  119. 正森成二

    ○正森委員 もう時間が参りましたので、最後に大蔵大臣に御所見だけ承りたいと思います。  これは、株式先物調査団報告書といいまして、大阪証券取引所と名古屋証券取引所が派遣した調査団の報告書でございます。六十一年の五月に出ております。その調査団の帰朝報告とは別に、調査団昨参加されました多くの大学教授とか個々の団員の感想あるいは報告が載っております。その中で名古屋大学教授の飯田経夫さんだと思いますが、「株式先物取引等調査団に参加して」ということで書いておられますが、その中で非常に傾聴すべき意見がございますので、ちょっと読んでみたいと思います。こう言っておられるのです。これはもちろん、先物取引というのはリスクヘッジということが大義名分の一つですけれども。   いうまでもなく、リスクを回避したいというヘッジャーのニーズがよく満たされるためには、その反対側に、あえてリスクを引き受けようとするスペキュレーターが、存在しなければならない。 こういうことを言っているのです。つまり、リスクヘッジをするにはその反対側にスペキュレーターがいなければいかぬし、そしてヘッジャーも必ずしもリスクヘッジだけでやるわけではないということで、   ここでのポイントは、市場参加者がヘッジャーとスベキュレーターとの二者に、画然と区別されるわけではない、というところにある。同じ市場参加者が、あるときはヘッジャーになり、あるときはスペキュレーターになるだろう。シカゴでのあるインタビューで、「真にヘッジングの目的を達成しようとすれば、スペキュレーションが必要不可欠となる」という趣旨の発言を、聞いたと記憶している。明らかにスペキュレーションは、それがヘッジングの目的でなされたものであると否とにかかわらず、必ずリスクを含む。ということは、百パーセント確実なヘッジングはありえない、ということにほかならない。 こういうように言われて、その後でこう言っておられるのですね。   ふつう株式先物取引の意義を説明しようとするときには、まずヘッジングから説き起こし、いわば中途でおずおずと(?)スペキュレーションに言及する、という方法が取られる。しかし、以上のように考えると、こうした説明はやや正確さを欠く。ヘッジングとスペキューレーションとは、そういう説明がイメージさせるよりも、もっと密接不可分なのではないか。そして株式先物取引は、もっとスペキュレーションの色彩が濃いものなのではないか。 こういうように言われまして、最後のところで、長いから省略するのですが、   雑誌「ビジネスウィーク」(一九八五年九月)が、近年のアメリカにおける先物取引・オプション取引等の急成長を「カジノ・ソサエティ」と名づけたことは、はなはだ興味深い。 こう言っておられるのです。  午前中に、たしか中村議員だったと思われますが、三月何日かの毎日新聞を引いて「「また一つ、“公認のギャンブル市場”を作ってしまった」――大蔵省若手官僚は、金融先物市場をそう表現してみせた。」こう書いてあるのです。これは本当かどうかわかりません。わかりませんけれども、飯田経夫教授もそういうように言っておられるところを見ますと、ヘッジングのための必要性とかいろいろあるでしょうけれども、よくよく心しないと、それはカジノ何とかになってしまう可能性があるわけで、これはまた金融機関も参加するということになれば、大衆預金いたしました庶民にも重大な影響があるわけで、これらの点について大蔵大臣の御所見と、それから大衆には迷惑をかけないようにするというような御決意でもありましたら承りまして、質問を終わらせていただきます。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 カジノソサエティーになるのではないかということは確かにしばしば言われることでございますから、そういう危険を含んでいるということは私は否定できないと思います。ただ、それならば全然こういうものは認めないかということはなりますと、それは、恐らくこういうニーズはきっといわば必然なのであろうと思われますので、そうであれば、それは一定の規制のもとに置いて、今おっしゃいましたような極端にスペキュラティブにならないように考えるということが、まあまあ現実の対策なのではないかというのが結局結諭になっておるわけでありますが、そのためには、例えば建て玉を制限するとか証拠金を取るとか預かり資産を受け取るとかそういったようなことで、いわば自分の財産をかけて危ない勝負をするようなことは決して起こらないようなことを、制度の上であるいは制度の運営の上で考えていく、それによって、どういうふうに申したらよろしいのでしょうか、極端に射幸的な、射幸というのはスペキュラティブなという意味でございますが、行為を制度及び制度の施行の上で制限する、こういうことではなかろうかと存じます。
  121. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  122. 越智通雄

    越智委員長 次に、沢田広君。
  123. 沢田広

    ○沢田委員 まず最初に、この法律の施行は大体いつごろを考えておりますか。
  124. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず証券取引法の方の関係でございますけれども、いろいろとございますが、まず証券先物については、公布の日から半年以内ということを考えております。  それから、内部者取引に関します規定につきましては、未然防止に関します規定は公布の日から半年以内、それから刑罰規定につきましては公布の日から一年以内ということを考えておりますので、その辺を目途に準備を進めたいというふうに思っております。
  125. 沢田広

    ○沢田委員 もう少しわかりやすく言ってくれませんか。その公布の日から一年というのと半年というのと、その公布は大体いつごろを予定しているのですか。あなたの言質をとろうというのじゃないのです。今、大体いつごろを予定しているのか。この国会で成立すると思っているのでしょう。
  126. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず証券先物の方でございますけれども、これは具体的に申しますと、東京証券取引所大阪証券取引所株価指数先物を上場しようということで考えておりますけれども、この辺につきましてはいろいろと準備の関係もございますので、準備が整い次第、できるだけ早くというふうに考えております。したがいまして、半年以内のうちにできるだけ早い時期にということしか現在のところは申し上げられないわけでございます。  それから内部者取引に関します規定は、政省令、さらには未然防止についての証券会社の受ける内部規則の定め方、こういったものはいろいろございますので、できるだけ早くやりたいと思いますが、これも半年以内のうちにできるだけ早くというふうに考えております。  それから刑罰に関します規定は、罰則を科すということでもございますので、一般に周知の期間と申しますか、PR期間というものも必要だと思いますので、ほぼ一年ぐらいかけて十分周知徹底させた上で施行するというふうに現在のところ考えているわけでございます。
  127. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると非常に先のある長い話なんでありまして、今とにかく株は非常な移動をしておるし、それぞれ売買が行われていて、不当な行為も行われているから、速やかにその対応策を考えようというのが本来この法案の趣旨であったと思うのです。ですから、例えば罰則などについて、そういうことをやってはいけないぞというならもっと早く施行をする。それに余裕を置いて、その間にうんと悪いことはやってくれというようなことになったのじゃ、角を矯めて牛を殺すことになる。だから、これはやはり一番先に施行するのは罰則なんじゃないかな、こういう気がするのです。どうも逆さまに考えているんじゃないかと思いますが、いかがですか、その点は。
  128. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 内部者取引に関します規定につきましては、まず私どもとしては未然防止体制をちゃんと整えた上で、そこで漏れてくる者に対して罰則でもって当たるというふうに考えております。したがいまして、まず未然防止体制をとらなければいかぬということから、未然防止体制につきましては半年以内、その後周知徹底期間を置いて罰則の適用というふうに考えておるわけでございます。
  129. 沢田広

    ○沢田委員 未然防止対策をと言われるこの内容を聞こうと思うのですが、おしゃべりを余り長くされちゃうとこっちも迷惑なんです。いわゆる未然防止対策というのはどれを挙げるかわかりませんが、一番簡単に、ここに書いてあるから言っておきます。この法律の中身を、これは竹内さんが答申した内容ですから、言っていいですか。株式発行会社の役員、従業員、大株主、株主、公開買い付けをしようとする会社の役員、従業員、大株主。それから準内部者として取引銀行、引受証券会社、公認会計士、弁護士、公務員、政治家など。「など」の後に何があるのかわかりませんが。それから情報受領者。範囲の限定はない。内部者や準内部者からインサイダー情報を得て株の売買をすればマスコミを含めてすべて規制対象になる、こう解釈していいですか。
  130. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 今御指摘のございました点は、まさに罰則の適用を受ける者の範囲であろうかと思います。それよりも、未然防止体制と申しますのは、もっと対象を広くして、証券会社あるいは取引所あるいは発行体等において内部情報取引が起きないような措置をいろいろ講じていくということでございます。  具体的に申し上げますと、証取法の百五十四条を改正いたしまして、取引所の業務について必要があれば発行体にも大蔵省が資料の提出を求めることができるということにいたしますけれども、そういったものは取引所の未然防止体制がうまくいっているかどうかということをチェックするために必要だということでございますので、その辺は六カ月以内に施行したいというふうに考えております。
  131. 沢田広

    ○沢田委員 それからもう一つは、OBが一年以内とした理由。結論を言えば、一年と限定したのは短過ぎるということを言っているわけです。もとの役員がOBで一年以内。そのやめた日というのも、これもまた不確実な表現ですね。やめた日という表現は、こんなものは内部操作でどうにでもなってしまう。これも極めてあいまいなことなんです。  それから一年未満というのは、普通、主として研究開発とかそういうものをやるのは、新薬にしても新しいいろいろな材料にしても五年とか七年とかかかって皆やるわけです。だから当時の役員でいた者は、具体的な例を挙げても構わないのですが、当然それに参画をし叱咤激励をしながら研究させてきているわけです。バイオの関係にしてもしかり、あるいは制がん剤にしてもしかり、それぞれ皆やっているわけでしょう。一年で区切ったという理由は、かえってこれは底抜けにしてしまった、抜け穴をつくっているようなものになるのじゃないかというふうな気がしますが、いかがですか。
  132. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 もとの内部者の期間をどのくらいにするかということについてでございますけれども外国の法制では、英国では半年ということになっております。日本でなぜ一年以内にしたのかということにつきましては、大体各企業企業の内部情報というものを毎年有価証券報告書という形で継続的に一般投資家に対して開示をするということになっております。したがって、まず企業の内部情報は一年ぐらいたてば大体公表されたものになるであろうということから一年という期間を設けたわけでございます。しかし、一年という期間を過ぎた後全く問題ないのかと申しますと、一年という期間を過ぎましても、今度は情報受領者として処罰の対象になることは当然でございまして、もと勤めていたところから情報を聞いたような場合には、情報受領者として処罰されるということになるわけでございます。
  133. 沢田広

    ○沢田委員 この法律の特に罰則関係の解釈は、幾らあなたがここで言ってみても、いわゆる検察当局からしてみれば何の効果もない。ここで大丈夫ですと言っても保証にはならない。だめですと言ってもこれも保証にはならない。要すれば、この法律を解釈をする検察の人々が、確かにこの罰則に対応するのかどうか。今あなたが、こういう点は取引関係するとかしないとか、そんなことを言ってみたところで、それはへにもならない。結果的には、検察当局がこれはやはりインサイダー取引であると認めれば、それはしなければならぬ。これが一つ。これは検察というか警察の方からひとつお答えをいただきたい。それはそういう事実に基づいて処理されるものである。  それからもう一つは、刑事訴訟法にもあるとおり、公務員は積極的に告発をしなければならないと規定づけがあります。だから、インサイダー取引に係る罰則規定は、当然公務員たるもの、証券局、あなたを含めて全部積極的にこれは告発しなければならぬ義務を負うわけです。このことは認められますかどうか。これは両方からお伺いします。
  134. 垣見隆

    ○垣見説明員 お答えいたします。  警察といたしましては、改正後の証券取引法に違反する事実を把握いたしました場合には、主管官庁の大蔵省とも緊密な連絡をとりながら、厳正に対処してまいる所存でございます。  なお、具体的にいかなるものを取り締まるかどうかについては、法令に基づきましてその時点で個々の事案に応じて判断をしてまいりたいと考えております。
  135. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 今度の内部者取引に関します罰則の規定の制定に当たりましては、私どもも、その解釈あるいは規定の仕方等につきまして、法務省、警察庁含めまして密接に協力しながら、御相談をしながら定めたわけでございます。したがいまして、私がこういうふうに解釈してもだめだ、こうおっしゃるのでございますけれども、その辺は十分協議をしながらやった結果であるというふうにお受け取りいただければありがたいと思います。  それから刑事訴訟法に基づく告発でございますけれども、これは、当然公務員として職務の執行上そういう犯罪の事実がありと思料したような場合には告発をするということになると思います。
  136. 沢田広

    ○沢田委員 これは刑事訴訟法にある言葉ですから、公務員たる者は不正を見たら積極的に告発をしなければならない、こういうふうに法文で書いてあることを確認しているのですから、これはあなたも否認もしようがないのです。だから、これはあなただけの答弁じゃなくて、要するに関係公務員がすべてその義務を負うものだ、こういうことになるということを承知しているかどうか、こういうことだったわけです。あなただけの問題じゃない、そういうことですね。
  137. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まさに、公務員としての職務執行に関している限りは、御指摘のとおりでございます。
  138. 沢田広

    ○沢田委員 だから、これでいろいろ皆さんから意見が出されましたけれども、これは皆仮定の議論にある意味においてはなる。だからといって、大臣、これは政省令を甘くされたら困る。言ってしまうと教えるようなことになってしまうので、だから政省令をなるべくぼかしてつくられるようなことになると警察はなかなか取り締まりしにくくなる。  もう一つ聞きたいことは、これはプライバシーに立ち入るという条件が極めて強いんですよ、この中身というものは。どこから情報を得たか、どういうふうに情報を得たか、どういう手段で情報を得たか。いつ、どこで、だれが、何を、こういう四原則がやはりここで問題になってくるわけですよ。これは警察の方にお伺いするわけですが、そういうものは、政省令の方でどこまでプライバシーというものが守られる保障があるのかというのは、これは政省令をつくる大蔵だ。どこまでプライバシーは守られるのか。警察の方では、この法律の罰則規定を適用するものについて個人のプライバシーがどこまで守り得られるのか。どちらも両方の立場からひとつお答えをいただきたい。
  139. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず、内部者取引関係しておるものは、私ども国家公務員、そのほか証券会社の職員、取引所の職員等があろうかと思いますけれども、公務員につきましては当然守秘義務というものがございますし、それからさらに証券会社取引所については、その契約の取引を他に発表してはならないという、やはりこれも取引についての守秘義務を負うわけでございます。そういう観点から、当然私どもとしてはプライバシーに対しましては十分確保されておるというふうに思っております。
  140. 垣見隆

    ○垣見説明員 犯罪の捜査に当たりましては、関係者の名誉、プライバシーに関することについては支障がないようにというか、そういうものを侵さないように私どもも従来も注意しておるところでございまして、今後ともそのような方針で対応してまいりたいと考えております。
  141. 沢田広

    ○沢田委員 これも言うならばがんのために風邪薬を飲ましているようなもので気休めみたいなものなのでありますが、要すればそう言ってみたところで現実の問題はこれは着々と進行するわけですから、この法律ができれば好むと好まざるとにかかわらずそういうところに行くわけです。  私はあとこの法律の対象者の関係をさっき聞かれましたからお伺いするのですが、要すればインサイダー取引なんかに関係をする株の売買の対象者、これは対象者の方が多いんじゃないかと思うくらいなのですが、これはきょうもらった資料でも、申告所得者の中で、利子配当課税、いわゆる配当をもらっている者は五十万人しかいないのですね。それで、源泉徴収者の中で果たしてどのくらいいるか。あとどのくらいこれを扱っている人がいるか。証券局では国民の中でどのくらいの人数がこの対象者になると見ているのですか。扱っている数でいいです。今のところ売買している人の数。
  142. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 この内部者取引に関与する場合に処罰される対象になる者の人数ということでございますか。そういうことでございますと、証券会社の役職員、あるいは上場企業の役員、それから取引銀行の契約上いろいろと相手の融資先から……(沢田委員「それは資料でわかっている」と呼ぶ)そういうことでございます。それが何人くらいかと言われますと、私どもちょっと見当つきかねますけれども、大体上場企業の役員、非常に目の子勘定で申しますと、やはり数万人単位になるのではないかというふうに思います。
  143. 沢田広

    ○沢田委員 これも憶測でいいんですが、私が言おうとしていることは、今インサイダー取引の対象に、いわゆるブラックリストに載るような人名の数がどうこうということを聞いているわけじゃない。少なくとも五百十二人の国会議員が衆議院にいることは事実です。それ以外に参議院もあるわけですから、そういうことを聞こうと思っているわけではない。いわゆる全体、こういうものに関係する人の総数、国民のうちの大体何割くらいこの法律関係する人がいるだろうか。これは特によく言うのですが、消費者という言葉投資家、言うならば個人投資家はどの程度の国民になりますか、こういうことです。
  144. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 まず株の取引をしている人たちの総数ということでございますと、個人投資家は約一千万というふうに言われておりますけれども、それを上回る程度の数字だろうと思います。ただ、誤解のないように申し上げておきますが、この一千万の人たちがすべてインサイダーの対象になるというわけではございません。委員、当然御承知と思いますけれども
  145. 沢田広

    ○沢田委員 だから、今一億の中で一千万の人たちが対象になっていますよ、この法律のどこかにひっかかる人ですよということだけを私は言いたかったわけです。それ以外は、全然買わない人にはこれは何ら関係のない法律なんですよ。そういう意味において、その人数だけを確認しておきたくて。これだけのメンバーがそろってこれだけの議論をする価値が果たしてあるのかなという気もしないではないのです。要すれば、もっと警察当局がしっかりやっていればこういう法律をつくらなくとも十分に取り締まりは可能なんじゃないのか、極端に言えばそうも言いたくなるような状況なんであります。果たしてどれだけの国民がこれによって例えばごまかされたり詐欺に遭ったりという心配がないのか、またこれによって不当な利益を得て世の中の指弾を受けるというようなこともないのかであります。  続いて次に行きます。時間の関係がありますから、罰則関係について大蔵大臣にお伺いするのですが、急ですから悪いですけれども、今日本のいろいろな、大蔵省を初め各省庁みんな罰則をつくっているんですが、私が一言で言えば、個人の犯罪に対する罰則は極めて重い。表現がいいのかどうか。それで大勢で犯す犯罪の方が甘くなっている。例えば今も第一相銀なんかそうですね。今、株が倍に上がってしまっているそうですが、どこかで乗っ取ろうというのが上げてしまっているのかもわからない。これもインサイダーのうちに入るのでしょうが、とにかくこれは個人ではない。今、取り調べは個人になっているけれども、これは役員なりその他くっついてやっている。大勢でやった犯罪というのは割合軽くなる。個人で傷害罪やっても泥棒やっても、大きく言えば殺人をやっても、割合その方が、個人の方が重くなる。そういう今の傾向は、昔の独法がもとになっているからそういう流れになっているんだろうと思う。アメリカ法がもとになってくると、大勢の犯罪の方が重くなって個人の犯罪の方が軽くなる。これは比較論ですよ。比較論で絶対論ではありませんが、大体そういう傾向がなくはないと思うのです。大臣はそういう経験がないからわからないかもしれませんが、大体そういう感覚をお持ちになったことありませんか。比較したことありませんか。そういうふうなことは金とは関係がないから。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 罰則というのは非常に難しいものでございまして、これこそ本当に法務省の専門の方々の御意見を尊重しませんと、うっかり素人が物を言えない世界のように思いますので、私、何も実は申し上げる資格がありません。
  147. 沢田広

    ○沢田委員 非常に率直で、私はどんどん資格を持って言ってもらいたいと思うのですね。これも世の中の公平、公正を守るための一つの大きな道ですね。罰を受ける者と受けない者との違いですから、社会的な制裁を受ける者と社会的制裁を受けない者との違いですから、これはある意味においては恩恵を受ける者の差よりももっと大きい差が生まれる、こういうことになると思うのです。  そこで、法制局に来ていただいているわけでありますが、今度のインサイダー取引の適用もさることながら、これは極めて不特定な非常に多数に及び、そして警察の調査も、いろんな範囲に警察当局に任務が負荷されるわけですね。そういうことを考えると、株を扱う者は一千万の人のうち何割であるかはわかりませんけれども、極めて私はびびっていく危険性なしとしないと思うのです。そういう意味で、法制局の方としては、今の立法の中で、すべての罰則を言っているわけですが、その罰則に対する価値観、今の社会の中においてどういうものがやはり一番重い罪にならなければならないか、あるいは軽くならなければならないか。例えば今度の「よど号」のあれは旅券法違反、これは罰則からいけば十万円以下の罰金、三年以下の懲役ということですね、旅券法違反だけでいけば。そういうことであれは済まされるものなのかどうか。それも含めて、要すれば罰則の適否、価値観、それについて見解を承りたいと思うのです。
  148. 津野修

    ○津野政府委員 ただいまお尋ねの件につきましては、具体的な話につきましては法務省の方でお答えしていただく方が適当かと思います。  それから、先ほど御質問になりました法律における罰則の価値観というような非常に難しいお話なものでございますから、法制局としてそういうことを公式にお話しするのが適当かどうか必ずしも判然としませんけれども、一応法制局で法律をつくりまして罰則を書く場合にどういうことをやっておるかと申しますと、原則的には、その法律を所管しております各省庁におきまして、その法律の目的、そういうものを踏まえまして、それに応じて必要とされる取り締まりの必要性、その内容、それからその犯罪の類型、そういうようなものを当然考えまして、各省と、それから当然刑事政策全般にかかわる問題でございますから、法務省の刑事局の方にも協議しながら検討しているということでございます。法制局の方といたしましては、主管省の作成いたしましたそういった罰則規定案につきまして、憲法との関係とか、それから先ほど申しましたような法律の目的、そういうものに応ずる取り締まりの必要性、そういう内容をいろいろ検討いたしまして審査を行っているところでございます。
  149. 沢田広

    ○沢田委員 大臣、十分くらいは罰則ばかりのことをやりますから、少しどこかで休んでもいいですよ。  今の法制局の答弁は、私の聞こうとしていることとは違うのです。いわゆる今までの形態を、流れをずっと追っていくという方向なのか、やはり現在の社会構造と産業構造、社会秩序、治安というものを考えながら、生命、財産を守るという基本に立って、新たなる立場というものを考えながら、一つの例を挙げればテロというようなものについてはもっと重くしていかなければならぬだろう、そういうものを考えていわゆる罰則関係を考えていくのか、それとも今までのような形態を続けていこうとしているのか、その辺の方向とか方針ですね。高崎線か東北線かどっちか、また東海道線か東北線でも構いませんが、どっちの方向を向いているのか、その辺くらいは明示してくれないと、今のでは暗中模索、どこへ行くんだかわからない。そのままの惰性なら惰性でいいですよ。それも一つ答弁ですから。だから一応法制局としては私は考えを変える時期じゃないかという立場で物を言っている。陪審制が今度とられようとしているのは、やはり庶民感覚というか、国民感覚を裁判の中に入れようという一つ方向が出ているんだろうと思うんですね。ですから、そういう意味においてひとつお答えいただきたいと思うのです。これから聞くのは罰則のことだけですから。
  150. 津野修

    ○津野政府委員 罰則につきましては、御承知のとおり刑事政策当局でございます法務省におきまして、どういう罰則でいくのかあるいは犯罪類型がどういうふうに変わっていくのかということに対応してそれなりの政策を展開しておられるわけでございまして、法制局といたしまして、特に法務省の方でそれなりの政策を展開されていくということにつきまして、それを受けとめているということでございます。
  151. 沢田広

    ○沢田委員 大体そういうものだということがわかればそれでいいです。  法務省はどうですか。過去の判例の経過、これも罰則を変えていかなければならぬ一つの要素であると思うのですね。それから過去の判例の傾向、これからの法律をつくる場合の方向、法務省としてお答えください。
  152. 古川元晴

    ○古川説明員 議員御質問の点につきましては大変難しい問題でございますけれども、法務省といたしまして罰則における法定刑を制定いたします場合には、一般的に申し上げますと、当該違反行為の重大性の程度、また当該法律内における他の違反行為に対する制裁との均衡、さらに同種の違反行為に対する他の罰則の法定刑との均衡等、罰則全体系の中における位置づけというものを十分吟味した上で個々具体的な法案ごとに当該罰則の法定刑を決めてきておる次第でございます。
  153. 沢田広

    ○沢田委員 これもさっぱりわからない。それが現在の実情なのかなというふうな気もします。だから、要すればこういう質問とかこういうものの回答になれてないというか、そういうことにまだ検討がいってないということだろうと思うのです。ですが、今の一般庶民感覚からそれぞれの刑を見て、これはよかったなとかあるいは悪かったなという世論調査をすればわかると思うのでありますが、必ずしも――例えば、これは我が県に出てきていることですが、シアンが流されましたね。あれでもし東京都の人やその他全部の人が飲めない水になったという場合の刑罰は、一つは十九条にある損害賠償と罰金だけですね。どの程度の刑かということになると、大したことはないのですね。だから、過失であれ何であれ、もし四千万の人間に全然水を供給しないというような事態を起こした。個人が過失傷害になればせいぜい半年は食うでしょうね。執行猶予つこうとつくまいとそのくらいの刑は食う。それがあれだけのものを流して果たしてどれだけの罰を受けるのであろうか。一応言ってみてください。
  154. 平石尹彦

    ○平石説明員 御説明申し上げます。  先生ただいま御指摘になりました水質汚濁防止法の十九条でございます。まずこの点について御説明申し上げますと、この条文はいわゆる無過失責任という条文でございまして、先生先ほどから御質問のいわゆる罰則とは無関係なものでございます。本条文によりまして、いわば特別の民事関係ということでございまして、工場または事業場からの排出によりまして人の生命または身体に対する被害が生じたときに無過失賠償責任が生ずるという規定でございます。  水質汚濁防止法におきます罰則につきまして御説明を申し上げたいと思いますが、水質汚濁防止法に種々規定がございます。したがいまして罰則も種々ございます。今度の場合で申し上げますと、水質汚濁防止法十三条の一項に基づきまして、都道府県知事は、特定事業場と称しますけれども、特定事業場の排水が排水基準に合うように施設の改善命令などを出すことができます。こういう命令に際しまして罰則がございまして、これは三十条でございますが、御質問の量刑のようなことをお話しいたしますと、「一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」、こういう規定でございます。この規定に基づきまして、知事は既に四月二十七日に、特定施設の使用停止命令、それから特定施設の使用及び汚水等の処理の方法の改善命令を出しております。当然事業場の方では従っていただけるものと思いますけれども、万が一これに従わないような場合がございますと、命令に違反いたしますと三十条の罰則が適用になるわけでございます。  さらに、水質汚濁防止法の十二条におきまして、事業場からの排出水につきまして排出基準に適合しなければならないという規定がございます。本件につきましては三十一条に罰則がございまして、過失の場合でございますと三十一条の二項がございまして、過失により排出基準違反が生じますと「三月以下の禁錮又は二十万以下の罰金」という規定がございます。  水質汚濁防止法には、さらに三十四条に、法人それから現場の行為者両方を罰するといういわゆる両罰規定というのがございます。
  155. 沢田広

    ○沢田委員 三千万なり四千万の人命に重大な影響を与えるというものの罰則については、これも命令に従えば起訴はされないのですね。要すれば、改善命令に従いますということを言えば別に処罰は受けるわけではない。個人がけがをさせてひっかき傷をつくると、大臣、診断は治癒までに大体二週間ですよ。これは自動車事故でもその他の事故でも。ちょっとひっかいたなといったら全治まで二週間の診断。免許停止はそれで大体三十日か九十日ぐらいはもう完全に食うことは間違いないですね。それに比べて、四千万の人間の生き死に関係するものは、命令されてすぐ直せばそれでオーライだという。これは価値判断の価値の物差しが違うと言われればそれまでかもしれませんが、それは余りにもそういうものに対して甘くありませんか。  四千万の人間に影響を与えるというもののその過失に対して、今言ったように、改善命令が出されれば、はい、そうですか。あとまた出ないという保証はないのですよ。そういうのが日本国じゅうにたくさん散在しているわけですね。そういうものについては私は政府の責任だと思うのですよ。いわゆる個人のことは警察は目くじらを逆立ててそうやっているけれども、社会的に犯罪を起こす可能性があるという場合に極めて甘い措置が行われている。要すれば、このインサイダー取引も同じなんですよ。より広ければ広いほど薄くなってしまう。水割りみたいなものだ。より多くなれば多くなるほど薄い刑罰になってしまう。そういう形が果たしていいのだろうか。水質汚濁防止法を見て私もそう思ったのです。  今度のシアン事故、別に会社がどうこうということよりも、そういう会社はたくさんある。航空写真の現象をやっているところであれ、印画紙関係をやっているところであれ、あるいはああいうふうなところであれ、皆あるのです。そういうふうなことを考えてみたときに、刑罰に少し差があり過ぎるのではないかということを法務省にも言いたいわけです。過去の判例の実績では、こういう傾向というものは個人の方が重くて大勢の方が軽くなるという。こういう判例集の上でいったらどういう傾向になりますか。――次に行きます。  この法律の第二十三条、他人名義でやって虚偽の申し出をやったときには懲役三年、三百万円以下の罰金、こういう罰則になっています。それからもう一つは、これは先物の方ですが、六十八条の広告規制については罰則がない。これはまたどういう意味なのですか。
  156. 津野修

    ○津野政府委員 六十八条の方からお答えいたしますと、六十八条の規定の違反につきましては、第九十七条第三号におきまして、「第六十八条の規定に違反して、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をした者」、こういう者につきましては「六月以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」という規定がございまして、これにつきましては、六十八条違反が罰則で担保されているということでございます。  それから、もう一つの前の方は、ちょっと聞き漏らしたのですが……。
  157. 沢田広

    ○沢田委員 これはどっちでも同じですが、先物の方で、九十四条の罰則の中に、第一号に、「金融先物取引等の受託等のため、偽計を用い、」こう書いてありますが、その第五号に、「第六十七条の規定に違反して、他人に金融先物取引業を営ませた者」とあります。これも「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金」とある。それから同じく九十五条にありますね。いわゆる業務の制限と類似の取引、これは一年以下の懲役、百万円以下の罰金なんですね。それから四十五条による制限。  私はあえて法制局の方にもこれは言っておきたいのですが、ねばならない、ねばならないと、もっともらしく、ねばならないと書いてあるけれども、公告しなければならないとか何しなければならないとか書いてありながら、その裏づけの罰則はない。そういうのは文章を国民にわかりやすくひとつ書いてもらいたい。公告すべきであるとか、公告することとか、そういうふうにして、ねばならないと義務規定にしたら、それに反したら何かの罰則が伴うのだというふうにわかりやすくしてもらいたいですね。その罰則規定を見ると、また四十五条、そのもとの条項へ戻って見なければならない。こんなわかりにくい法律のままずっと十年間やってきたのだけれども、とにかくもう少しわかりやすくつくったらいいのじゃないか。もし、ねばならないという文字をつくるのなら、これは罰則があるのです、とするというのだったら、それは罰則はないのですとしてほしい。それをわざとわかりにくく、わかりにくく書いてある。  これはもう専門だから何も事前に通告することないと思ったから私も言ってないのだけれども、第九十四条第二号の「類似」の言葉というのはどういうように解釈するのですか。それから「偽計」という言葉を使っている。ギケイというのは義理の兄貴という意味じゃないですよ。偽りのはかりごとと書くのだ。これも新語だなと思ったのですけれども、偽りのはかりごとという意味はどういう意味ですか。
  158. 津野修

    ○津野政府委員 先ほどから御質問になっております、ねばならない、あるいは、しなければならないといった場合に、罰則がないケースがあるのではないかということでございますが、一般的には大体罰則があるケースが多いと思いますけれども、ないケースもございます。ただ、その場合でも、御承知のように他方で法律に違反いたしましたならばそれに対して行政処分がされるという点がございますから、それで当然法的な担保はされているということでございます。  それから偽計でございますけれども、これは初めて見たとおっしゃられたのですが、いろいろな法律にこれは使われておりまして、まさに偽りのはかりごと、あるいは偽りの企てみたいなことをもちましてやることでございまして、いろいろ表現はあろうかと思いますけれども、各法律体系を通じましてこれは割とよく使われる表現でございます。
  159. 沢田広

    ○沢田委員 その辺の見解はまた別として、もっとわかりやすく使ってほしいということを言っているわけです。ほかにあるからそれでいいという意味ではないということを言っている。  それから広告の場合も、著しくという表現があります。広告で著しいというのは、新聞で言えば、一ページ出したものが著しいという意味ですか、それとも半ページが著しいという意味ですか、四分の一が著しいという意味ですか、どういう意味ですか。著しいという意味は、大きさで制限するのですか、数で制限するのですか。
  160. 津野修

    ○津野政府委員 六十八条でございますけれども、「金融先物取引業者は、その行う金融先物取引業に関して広告をするときは、」「大蔵省令で定める事項について、著しく事実に相違する」、まさに著しく事実に相違するということでございまして、そういう表示をしてはならないということでございますから、量的な問題ではございませんで、質的な問題として著しい内容の表示あるいは人に著しい誤認をさせるようなことをしてはいけないという内容でございます。
  161. 沢田広

    ○沢田委員 では、あなたの答弁でいくと、著しいという日本の国会でつくっている言葉はすべてそういう言葉内容を持っているものだ、そのときそのときの使い分けはないと解釈していいですか、著しいというのは。
  162. 津野修

    ○津野政府委員 広告みたいな話になるので恐縮なんですが、著しい量とかなんとかいうときは当然量の話でございましょうし、著しく事実に相違するというような場合には当然それは質的な内容表現しているというふうに理解をすべきだと思います。
  163. 沢田広

    ○沢田委員 大体が著しい量とか、量と言えば数だから、あとは質とか、特に指定したものがあればそれによるが、それ以外はその内容は質的なものである。例えば道路交通法の中には、横断歩道において著しく歩行者を妨げてはならない、こうなっている。この著しいは、数でもなければ量でもない、そうするとこれは全くの質だ、こういうことになりますね、その著しいは。今思いついた著しいを言っただけです。ほかにもたくさんあるのですけれども。その著しいという解釈が勝手気ままに使われたのでは国民はかなわない。やはりそれはきちんとした解釈をあてがってもらいたい。道路交通法にも、酒は飲ませてはならないと書いてある。しかしこれは罰則規定はない。飲酒をさせてはならない、こう書いてある。これは罰則規定はないんです。それと同じように、著しくという言葉の中には、道路交通法だけちょっと挙げても、そういうふうにないんですよ。著しく歩行者の歩行を妨げてはならないと書いてあるけれども、ではそれがどの程度かというのはないんです。今のあなたの解釈でいいわけですか。もう一回答弁してください。
  164. 津野修

    ○津野政府委員 著しいという表現でございますけれども、もちろん質的な場合もあれば量的な場合もあり得ると思いますが、いずれにいたしましても、これらの表現につきましては、その法律の条文の趣旨あるいは法律全体の趣旨、そういったことも踏まえて当然に理解されるべき問題であり、かつ、今後判例等を通じて確立されていく概念の内容であるというふうに考えております。
  165. 沢田広

    ○沢田委員 私がここでこだわっている理由は、こういう言葉で、要すれば、いわゆる行政裁量といいますか、自分たちの行政で適宜に配分が可能になる文章である、非常に不明確であるし、受け取る側は極めて困る文章である、そういう意味で言っているわけです。だから、この程度まで政令、省令で決めるのかもしれませんからそれは任せますけれども、要すれば、法律を新しくつくった場合には、法律を見てわからない。それから政令を見る。政令ではわからない。その規則を見る。規則ではわからない。さて通達を見る。大臣、今の状態は、それまで見なければ一つのものがわからないのです。これは新しい法律をつくりますけれども、恐らく結果はそういうふうになります。これから法律ができます。政令ができます。省令ができます。続いて規則ができます。通達ができます。それで今度は全部それを見ていかなければ、最後に何をという場合にわからないというふうな仕組みになっていることをあえて私はこの新しい法律ができるに当たって申し上げておいて、なるべく国民をごまかすような、わかりにくくして、わかりにくいことでおまえは違反したんだよということで取り締まるという形はやめてもらいたいという願いを込めて実は言っているわけであります。  それで、きょうは銀行さんは、さっきもちょっと出ましたけれども、第一相銀の株がここで二倍も上がったという事実を知っていますか。
  166. 平澤貞昭

    平澤政府委員 理由は存じませんが、上がっている事実は新聞等で承知しております。
  167. 沢田広

    ○沢田委員 こういう法律をつくった建前からでも、調べてみる気はありませんか。
  168. 平澤貞昭

    平澤政府委員 行政当局として関心はありますので、恐らく担当課においては何らかの理由があるのかどうかは調べていると私は考えております。
  169. 沢田広

    ○沢田委員 結果的にはあれだけの、簿外貸し付けも六百から、前にも私は八百と言ったと思っているのですが、とにかくそういう簿外貸し付けが八百億もあるというような状況であったことは前から言われてきていた。さらに、それ以外にもたくさんの傍系ダミー会社をつくってやっていたということも指摘はしてきた。だから調査されているのだろうと思うのですが、今度はこれが株が上がってきたということは、この法律とも極めて密接に関係することなんですよね。だから、ぜひひとつ、なぜつぶれようとしている――つぶれようとしているという言葉は適切ではないかもしれませんが、とにかく相当信用を失墜したことだけは事実ですね。その失墜をした株が二倍にも上がったということは、では、いかなることか。これは想像すればいろいろなことは出てきますが、ひとつ一回内々でもいいですから国民の疑惑を解くという意味で一応調べてみて、それで公に発表しろなんて私は言っていませんからね、内々でもいいですが調査をして、もし万が一でも後に悔いを残すようなことのないように対応してもらいたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  170. 平澤貞昭

    平澤政府委員 お話のような方向で調査させることといたします。
  171. 沢田広

    ○沢田委員 最後に、もう時間の関係で、幾らか集まりが悪かった分を省略して、終わりの時間を節約するという意味で。  通産省においでいただいております。シアンの流出を二度と繰り返さないという、これは何もあそこだけを言っているのではなく、全国的に言ってああいうものを二度と起こさない体制というものはひとつつくってほしいというのが率直な希望なんです。金は、大蔵大臣がここにいるのだから、こういうことが二度と起こったのならこれは大変なことですから、二度と起こらないように融資をするものなら融資をするでしょうし、あるところではある金で対応させる、こういうことにして、一切こういうことは二度と起こらぬ体制をつくってほしい、こう思うのですが、いかがですか。
  172. 越智通雄

    越智委員長 公害防止課長はおりませんか。
  173. 沢田広

    ○沢田委員 じゃ、いいです。大臣、では、それは大臣から言うとまさに雷が落ちたように向こうに響くでしょうから、ひとつ大臣から言ってもらった方がいいと思います。  最後に、「よど号」の旅券の発行について、さっきもちょっと触れましたけれども、これは罰則は三年―十年だと思うのですね。そうだと思うのですが、これは重犯になるのですか。この場合は、偽造、他人名義、あれとどういうふうになるのですか、外務省。
  174. 田辺敏明

    ○田辺説明員 お答えいたします。  この場合には重犯になります。
  175. 沢田広

    ○沢田委員 そうすると、結果的には、他人の名義を使ったり他人のあれで偽造ということもありますから、それも加わるとこれが重犯になって当然起訴される、こういうふうに、これは常識的な意味で、担当じゃないですから、解釈としていいですか。
  176. 田辺敏明

    ○田辺説明員 常識的にはそうなるのじゃないかな、こう思っております。
  177. 沢田広

    ○沢田委員 いずれにしても、言論の自由はたくさんあるのですから、これは大臣にしかられることもあるし、また我々がしかられることもあると思うのです。しかし、こういうことはよくないことですからね。これだけはもうやはり国民挙げて、そういう不安を国民に与えないように、テロがあったりあるいは乗っ取りがあったりなどということでは旅行もできなくなってしまいますから、そういうことだけは絶対これは防止していかなくてはいかぬ。これは与野党を通じて共通の理念だと思うのです。ですから、こういうものについて甘さがあったのじゃいかぬということも、一つは私の出発点なのです。だから、いずれにしても、韓国のオリンピックであれ、近く行われるものでありますから、そういうことによって日本が渦中に巻き込まれたりあるいはそういうことによって国民が被害を受けたりということは極力避けるようにしなければならない。  最後になりましたが、この法律の施行に当たっては、恐らく特定のものが非常に多いと思うのですね。だから、さっき約束したように、公務員は積極的に悪いことがあれば告発をして、我々から言われる前にみずからで発見してもらって告発をしてもらいたい。そういう立場でこの法律が整々と行われるように期待をして、若干短くなったと思いますが、私の質問を終わります。
  178. 越智通雄

    越智委員長 次に、森田景一君。
  179. 森田景一

    ○森田(景)委員 審議されております金融先物取引法案、それから証取法の改正案、この二つ法案は、証券界と銀行界の鋭い対立があって、それを大蔵省が銀行、証券、それから国際金融、この三局合意でまとめた証魂銀才の法案である、こういうふうに言われているわけでございます。これは御存じかと思うのですが、証券界の精神にのっとりながら銀行界の知恵が盛り込まれているという意味なんだそうです。  この金融先物市場創設につきましては、証券界は現物先物一体論を展開してこられた。そして、証券先物に関しては証取法の改正で対応し、取扱業者は証券会社に限るということを主張してきたのだそうでございますね。銀行界の方は、金融先物は現物とは別の取引であって、金融先物取引を統一的に規制する法律をつくり、総合的な金融先物市場を創設し、市場参加者は金融機関全体を対象にすべきであると主張してきたというふうに聞いております。  結果としては、この法案で出ておりますように、現物市場における銀行、証券分離行政を先物市場にも適用しながら、実際の業務面では銀行、証券の相乗り、こういうふうになったわけでございます。おつくりになった方にこういうことを申し上げては失礼かもしれませんが、具体的に申し上げますと、証券会社金融先物取引所への参加は認めるが、通貨の現物オプションは除く、それから銀行には現在東証で行われている国債先物取引のブローキングと外国国債先物の取り扱いを認める、こういうことにまとまったようでございます。  今までの経過を拝見しますと、証券界は、「証券先物市場の整備」あるいは証券取引審議会が「証券先物市場の整備について」という報告を出すといったように、先手先手と先物市場については指導してきたようでございます。銀行の方は大変おくれておりまして、これではならじということか何か知りませんが、去年の三月ですか、「金融先物市場に対する銀行界の考え方」というリポートを提出した。その後、金融制度調査会外国為替等審議会が、去年の十一月二十六日に「金融先物取引の整備について」という報告書を出している、こういうふうに承知しております。  いずれも同じ大蔵大臣の諮問機関であるわけです。こういう諮問機関でありながら、各審議会が個別に時期をずらせて同一のテーマで審議してきた、こういうところに混乱の原因があったというふうに言われているわけでございます。したがって、今回の金融先物論議は局あって省なし、こういうふうに批判をされているわけでございます。大蔵省の先見性とかあるいは統一性ということが問われた問題だとも言われているわけでございますが、こういうことに対しまして大蔵大臣はどのような考えをお持ちでございましょうか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金融制度調査会証券取引審議会あるいは外国為替等審議会、いろいろな場において銀行、証券業界を初め関係各界各層の方々からいろいろ議論をしていただきました。局あって省なしという批判は、私もかつて大蔵省におりました者としてそういう批判を受けてはいかぬという努力をしなければならないと思ってまいりましたが、今回の結論はよくまとめてもらった、そういう批判にこたえまして、きちんとしたまとまりをいたしまして法案を提出することができまして、私は、関係者の方々あるいは関係局の諸君、よく努力をしてくれたと考えております。
  181. 森田景一

    ○森田(景)委員 大臣のお話をお伺いしますと、局あって省なしというそういう批判もあったかもしれないけれども、今回の法案の取りまとめについては、そういうことではなくして、大臣の統率のもとに三局が力を合わせて立派な法案をつくった、こういう言い方でございますか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 世の中の要請にこういう形でこたえることができたと考えております。
  183. 森田景一

    ○森田(景)委員 海外では先物市場一つですから、業者はそこに上場されている商品は何でも取り扱えることになっているわけですね。ところが、今回の二つ法案、関連があるわけでございますけれども、日本では銀行、証券の兼業は禁止されておりまして、同一業者がすべての金融先物商品を取り扱えないということになっているわけです。ところが、今回の法案では、外国先物専門業者には一法人のまま金融先物証券先物も取り扱いを認めているわけでございます。これは内外業者の逆差別ではないかというふうに言われておるわけでございますが、この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  184. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 海外金融先物業者につきましては、ただいま御指摘のような取り扱いがされることになっております。これらの業者は海外において証券あるいは金融両方の先物について十分な経験を有しているということ、また我が国は、先ほど来御議論がございましたように、銀行、証券それぞれのビジネスの分野というのがあるわけでございますが、これをあくまでも外国に徹底的に適用して第一会社、第二会社というふうに分けるというのも、これもまた国際的な常識からいうといかがかということで、御指摘のような取り扱いをしたわけでございます。  こういう種類のことは必ずしも今回だけではなくて、我が国経済あるいはマーケットがだんだん国際化していく過程におきまして、我が国におけるビジネスの境界、それから国際的なビジネスのやり方との違いの過程でどうしても起こってくる事柄でございまして、そういう場合に、制限的にやるよりもどちらかといえば外国でやっているやり方を差し支えない程度において認めていくという方がやはり全体的な国際化の方向に合致するという判断に基づいているわけでございます。
  185. 森田景一

    ○森田(景)委員 こういう法律のつくり方をしていきますと、例えば日本の証券会社なり銀行なりが外国に子会社といいますかそういうものをつくって向こうで取引業をやる、そうすると、逆にそういう人たちは日本に来て両方扱える、こういうことにもなるわけですね。
  186. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 先ほど日本におけるビジネスの境界、それと外国における一般的な慣行ということで御説明申し上げましたが、日本のビジネスに属するものが外国へ同じような形で出ていきましても、それがまた日本に戻ってくるときに同じルールを適用しなければならないというふうには考えていないわけでございます。
  187. 森田景一

    ○森田(景)委員 いろいろと大臣も三局知恵を絞って立派な法案をつくったと褒めていらっしゃるわけでございますが、こういう点についてもやはり将来検討しなければならない問題だろうと私は思うのです。後でも申し上げるつもりでございますけれども、そういうことも含めて、法案には書いてありませんけれども大蔵省の内部においては、この法案成立後ですか施行後ですか、二年を経過した時点で見直しをするという合意がなされているというふうに言われておるようでございます。その二年後に見直しということについては、恐らく答弁は、まだ法律が成立してないのに二年後の話はできませんということになるのじゃないかと思うのですけれども大臣が言われたように三局が合意した、大臣言葉をかりますと立派な法案ができたのだ、しかし、そのできる段階で二年後には見直しをしようという合意があったというふうに聞いているわけでございます。そういうことで、二年後の見直し、それはこういう問題について見直しをなさるお考えであるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  188. 平澤貞昭

    平澤政府委員 このような先物市場の制度につきましては、一つはそういう制度を利用する人たちのニーズに的確に対応することが必要であるという点がございます。それから、先ほど来お話がありましたように、国際的に通用する仕組みでなければいかぬということもございます。それからさらに、非常に使いでのいい仕組みにしておく必要があるということもあるわけでございますが、今回は、先ほど来御説明申し上げておりますように、金融先物市場証券の方とを一応二本立てにして発足したわけでございます。しかし、世の中の事態はいろいろ急速に変化も遂げてきておりますので、そういう動き等も見ながら、先ほど申し上げましたような観点も念頭に置きながら、取引所発足後二年たった段階で見直そうということになっております。それで必要があれば法改正も考えようということでございます。
  189. 森田景一

    ○森田(景)委員 この法案に限らず法律の改正というのは絶えず行われているわけでございますので、今お話ありましたように、いい方向にぜひ検討を進めていただきたいと思うわけでございます。  この先物取引ということにつきましては、いろいろな意見があるわけでございます。金融界では、先物取引は危険が少なくて済むだけに将来の危険回避策となる一方で、大がかりな投機を誘う要素もはらんでいる、こういう意見もあるようでございます。あるいは、学者の意見によりますと、先物さえやっておけば危険をヘッジできると考えるのは間違いである、十分な知識、技術を伴わないとやけどをする、こういうことをおっしゃっている学者もおられます。それから、先物というのはばくちである、これはそういう風土が日本には長い間あるようでございますね。それから、先ほども紹介ありましたけれども大蔵省若手官僚がおっしゃったということで、全く知りませんけれども新聞に載っておりました。また一つ公認のギャンブル市場をつくってしまった、こういう記事もございました。それから、変動をみずからの頭脳で読み切り変動を先取りする先物取引の手法は、金融証券界に住む者にとって麻薬のような魅力があるのだ、こういう記事もあるわけでございまして、先物というのは我々にとっては大変いい面ばかりでなくて危険な要素も大きくはらんでいる問題じゃないか、こんなふうに思うわけでございます。  今度の法案をつくるきっかけになったのが例のタテホ化学事件と言われておりますが、これも大変な穴をあけてしまったわけでございまして、必ずしも先物取引が危険をヘッジする要素ばかりはない、そういうふうに思うわけでございます。したがって、私の考えでは、投機というのは相当規制しなければいけないのではないかなと思うのですけれども、なかなか投機の規制というのは難しいという話でございますし、また投機もないと金融先物市場の繁盛もないのだなんという話も聞いておりまして、非常に難しい問題だと思うのですね。しかし、先ほども問題になりましたように、いずれにしても投資家保護はきちんとしなければいけない、こういうふうに思うわけでございますが、この投機と投資家保護という点について大臣はどのように考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金融が自由化をした、あるいは国際化をしたということは、金利が常に変動するものであるということでありますし、国際化したということは為替が常に変動するものであるということでございますから、投資家としてはその変動に対してリスクのヘッジをしたいと考えることは無理からぬことでございますが、まさにおっしゃいますとおり、これはもろ刃のやいばであるということと思います。リスクをヘッジするつもりでともすればいろいろなことをスペキュレートしやすいということになるわけでございますから、もろ刃のやいばということで、したがいまして、建て玉を制限するとか、あるいは証拠金を取るとか、資産を預け入れておくとか、いろいろなことでそういういわゆるスペキュレーションに極端に走らないようにといういろいろな安全弁を設けておるということなんでございますけれども、いずれにしても、言ってみればこれはプロの世界のことだと私は思うのでございます。アマチュアが十分な用意なしに入っていく必要のないと申しますか、またそういうリスクヘッジということも普通のアマチュアにはないはずでございますので、そういう人々のために、しかしこれを設けなければ問題はさらにギャンブルあるいはカジノそのものになってしまうという危険がございますから、そうでないためにやはりこれだけの制約を設けた上でこういう場をつくる、こういうことであると思っております。
  191. 森田景一

    ○森田(景)委員 今大臣のお話の中にも、プロの世界である、こういうお話がありました。したがって、アマチュアは参入すべきではない、こういうお話でございました。いわゆるアマチュアといいますか、個人投資家は参入を認めないと法律には書いてないと思います。これは法律では業界自主規制というのがあるようでございまして、自主規制の中で、いわゆる個人投資家といいますかアマチュアの方は参入を認めない、こういうことになるんだろうと思うのですが、これはそういう方向なんでしょうか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと私が俗語を使い過ぎたかもしれませんで、別に法律にはそういうことは書いてないわけでございますけれども、申し上げたかった気持ちは、確かにそういう一面がございますから、本当に必要な方々が御利用されるべきところだろう、こういうことを申し上げようとしたのでございます。
  193. 森田景一

    ○森田(景)委員 その自主規制、これから法律が成立してから業界自主規制をやる、こういうことになるのだと思います。そのときに、個人投資家は入れない、大体方向はこういうことに決まっているんですか。
  194. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今大臣からも御答弁がございましたように、個人は会員として取引はできないように法律はなっております。しかし、取引所の会員に委託いたしまして先物取引参加するということは、法律上これを認めていないわけではないわけでございます。ただ、個人がすべて何でも入ってきて自由にやるということは非常な問題が出てくる可能性がございますので、現在既に行っております国債先物取引等と同様に、最低の取引単位をまず決めます。それから、そのほか委託証拠金というのを預けるわけでございますが、これもかなり大きな額にいたしまして、通例の個人が数百万単位ではやれないようにするということで考えているところでございます。
  195. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでは次に進みまして、今度の証取法の改正の目玉といいますか、これがインサイダー取引規制ということだと私は理解しているわけでございます。証券市場では早耳情報というのがあるそうでございまして、この早耳情報が機先を制し、また巨額の利益を稼ぐ有力な武器になっていると私は聞いております。しかし、企業の内部情報を知り得る立場の人がそうした未公開情報を利用して証券を売買したり、特定の人にだけ流したりすれば、これは明らかに不公正取引であり、犯罪である、こういうことから今回の改正があったのだと思うのです。ただ、先ほどもいろいろとお話がありましたけれども、不公正取引というのは現行の証券取引法でも禁止されているわけですね。証券取引法五十八条は、禁止される不正取引行為として、「有価証券の売買その他の取引について、不正の手段、計画又は技巧をなすこと」と定めているわけです。ところが、法施行以来この五十八条による摘発はまだ一件もないそうですね。日本はインサイダー天国であると外国から批判されているようでございます。インサイダー天国と言われていながら五十八条の適用が一件もない。これは一体どういうふうに考えたらいいかと思うのですが、この点いかがでしょう。
  196. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘のように、これまで確かにインサイダー取引に対しまして五十八条を適用したケースは一件もございません。その理由でございますけれども、五十八条の規定内容は、ただいま御指摘ございましたように、不正な手段、計画または技巧をなすことと書いてございまして、やはり詐欺的な要素というのが必要なのではないかというのがこれまでの解釈でございました。もちろんこれに対しては学説上異論を唱える向きもございまして、アメリカでは同じような規定を適用してインサイダー取引の取り締まりに当たっておるので、日本でもできるのではないかという考え方もございましたけれども一般的にはそういうふうに解釈されておったわけでございます。確かにインサイダー取引と申しますのは、例えば会社の役員がその会社の情報を知りながら取引をするということでございますので、そこに詐欺的な不正な要素があるかといいますと、五十八条で言っているような積極的な詐欺性というのはなかなかないのではないか、したがって五十八条を適用するのは非常に難しい。解釈は若干分かれておりましたけれども、行政府としてはやはりこの際慎重に対応するという考え方をとってきたわけでございます。したがいまして、五十八条を適用したケースは一件もなかった、こういうことになるのではないかと思っております。
  197. 森田景一

    ○森田(景)委員 御説明を聞きますと、五十八条では取り締まりの対象にならなかった、こういうことだと思うのです。ということは、とりもなおさず今までの法律はざる法であったと言われてもしようがないと思うのです。今度新しく改正する法律はざる法になりませんか。大丈夫ですか。
  198. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 これまでの法律も決してざる法というわけではございませんで、そこに詐欺的なものがあればこの法律を十分発動し得る状況にあったと思います。しかし、今回今御審議をお願いしております法律は、インサイダー取引というのを非常に定型化いたしまして、処罰されるべき会社の内部者等に該当する者というのを具体的に書いてございますし、それからそれらの者が知って取引をしてはならない会社の業務に関する重要な事実というのも非常に細かく書いてあるわけでございます。ある意味ではインサイダー取引というのを非常に形式的に規定したということになるかと思いますので、少なくともインサイダー取引に対しまして現行法五十八条よりも非常に発動しやすくなるという形になっております。
  199. 森田景一

    ○森田(景)委員 新しい改正薬はおっしゃるとおりなんですけれども、古い方といいますか、現行法を云々しても始まらないかもしれませんけれども、日本がインサイダー天国である、こういうふうに批判された記事があるのですね。昭和五十九年、ビジネスウィーク誌が東証のインサイダー取引特集というのをやっているようでございますね。それから、昭和六十二年の五月にフォーブス誌という雑誌が日本のインサイダー天国特集というのをやっている。こういうことなんですけれども、日本はインサイダー天国だと局長は思っておられるのですか、おられないのですか。
  200. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 インサイダー天国という場合のインサイダーの定義にもかかっておるのだろうと思いますけれども外国市場から日本市場を見た場合に、やはり日本市場というのは少しわかりにくいところがあるという感じは外国人はやや持っておる。例を申し上げますと、主要証券会社の株式における取り扱いのシェアが非常に高い。そういう意味では四社、主要証券会社等の株式取引についての意向がかなり市場価格形成に反映されているのではないかというふうに見られがちなところはあろうかと思います。したがいまして、外国人から見た場合に日本はそういう意味でインサイダー天国であるとかいろいろなことを申しますけれども、私ども証券市場を預かっておる立場から見てまいりますと、日本の株価の形成というのは必ずしも主要証券会社の意向どおり行われているものでもございませんし、個々の取引につきましてもかなり細かく内部者取引の防止にはこれまでも配慮して自主的に規制をしてきたというところもございますので、あながちインサイダー天国という批判が一〇〇%当たっておるということではないのではないかと信じております。
  201. 森田景一

    ○森田(景)委員 いろいろと見方の違い、見解の相違等あるだろうと思います。私も、余り自慢できる話ではありませんが、株を一株も持っておりませんので、インサイダーの利益を受けるようなこともありませんものですから、天国になっているのかそうでないのかというのはよくわかりませんけれども、そういう批判があるということでお尋ねしたわけであります。もっとも、局長がインサイダー天国でありますと認めたら、摘発が一件もなかったというのと矛盾するわけですから、なかなか答えられない問題だと思いますが、しかし、いろいろとうわさではあるようですね。  それはそれとしまして、今回の法案では未然防止ということで非常に力を入れることになっているわけでございます。大蔵省に上場企業への調査権を付与する。行政当局の比重が非常に大きくなってきていると思うのです。問題は、行政が未然防止や監視体制をどこまで強化できるかということであると思うのです。強化するためには二つ問題があるだろうというふうに言われているようでございます。一つは、人員の人数の点、それからもう一つは、情報管理というのですか、チャイニーズ・ウオールと言われているようでございますが、先ほど申し上げました日本の早耳情報というのをやはりとめなければいけないという、この二つが未然防止の、あるいは監視体制にとってのポイントである、こういうふうに言われているようでございますが、その点についてはどういう見解をお持ちでございましょうか。
  202. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいま委員指摘ございましたように、このインサイダー取り締まりに対しては、未然防止というのが非常に重要であるということを私ども強調してきているところでございます。その行政側の対応ということで人数が不十分なのではないかというお話でございますけれども、この未然防止体制は行政府限りだけでやるものではございませんで、取引所あるいは証券会社等を総動員いたしまして未然防止体制に当たるということでございますので、行政府の職員を大幅に増員しなければその万全、徹底が期せないという性格のものではないというふうに思います。  それから、チャイニーズ・ウオールの件は、未然防止体制の内容にわたる点であろうかと存じますが、証券会社の内部におきまして、法人関係の職員の得た情報を直ちにこれは売買管理部というところで総合的に管理いたしまして、それがいろいろと調査情報等に流れないようにするとか、個人との営業部門の方に流れないようにするとか、そういう体系的な仕組みを今つくり上げていこうということで、証券会社をこれから指導するつもりでございます。既に大体基本的な原案をつくりまして、今細かい詰めをやっておる状況でございますので、御指摘のございました二点につきましても、我々も十分配慮してきておるということを御理解願いたいと思います。
  203. 森田景一

    ○森田(景)委員 この未然防止に関連しまして、タイムリーディスクロージャーというものが必要だ、こういうふうに言われているわけでございます。これはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
  204. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 タイムリーディスクロージャーと申しますのは、上場会社がその業務等に関する重要な事実が発生した場合に、適宜にこれを一般公衆に知らしめるような手段を講ずるということでございます。この点につきましては、まず第一義的には証券取引所が対応するということになっておりまして、証券取引所がこれら上場企業に対しまして適宜、適切に情報を開示するように一般的な要請をまずいたしております。これはしばしばこういう要請をしておりますけれども、最新時点では、昨年の六月に東証の理事長の方から全上場企業に対しまして要請をいたしております。  それからさらには、証券取引所の規則でございますが、上場有価証券管理基準というのがございます。その管理基準に従いまして、上場しておる各企業は重要な事実が発生したような場合には適宜取引所に対して通告をするということになっておりますし、今後この規則をさらに強化いたしまして、取引所の方がもし上場企業がこの通告を怠っておった場合には改善報告書を求めるとか、そういう補完的な措置も講じたいというふうに思っております。  私ども行政府といたしましては、こういうものを取引所が適切に行っておるかどうかをさらに細かく監督指導するという趣旨から、今回証券取引所に対します監督権限を強化させていただくようにお願いをしておりまして、これが御承認いただければ、大蔵省も必要があれば証券取引所がこれら適時開示の業務を適切に行っているかどうか上場会社にまでいろいろと報告を求めて調査ができるようにということにしておるわけでございます。
  205. 森田景一

    ○森田(景)委員 この改正法案では処罰の対象者をはっきりさせたという点がまた特徴であるわけです。御存じのとおり、第百九十条の二です。会社関係者というのがあります。これがいわゆる内部者ということだと思うのですね。それから準内部者、これが三号、四号であろうと思います。三号の「当該会社に対する法令に基づく権限を有する者 当該権限の行使に関し知ったとき。」とありますが、この「法令に基づく権限を有する者」とはどういうことなのですか。どういう対象になるのですか。
  206. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 法令に定める権限を有する者と申しますと、例えば上場会社に対しまして許可とか認可、免許等の権限を有している公務員、さらには上場会社に対して立入検査、質問調査、捜査等を行う権限を有する公務員、こういった者が典型的でございまして、これらは行政府に属する権限に限られるものではなくて、立法権、司法権の権限も含まれるというふうに考えております。
  207. 森田景一

    ○森田(景)委員 許認可権を持つ公務員というお話もございましたけれども、国政調査権を持つ政治家というのは、これはどうなのですか。
  208. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 国政調査椎は立法権に属する権限の例でございますが、国政調査権に基づいて国会議員が情報を知った場合には、この法令上の権限を有する者に該当いたします。
  209. 森田景一

    ○森田(景)委員 それでは四号の「当該会社と契約を締結している者」云々、この方はどういう対象の方になるのですか。
  210. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 「会社と契約を締結している者」と申しますといろいろと範囲は広うございますけれども、例えば融資契約を通じて会社の業務を知り得るような立場にある取引銀行、その役職員、それから引き受け証券会社の役職は、さらには公認会計士とか顧問弁護士、税理士、それからもっと広くいきますと、例えば会社の重要書類の印刷を請け負う者、それから会社の重要会議における通訳をする者、こういった者も含まれるわけでございます。
  211. 森田景一

    ○森田(景)委員 今度は、情報を受けた者、情報受領者ですね、三項ですか、これが情報を受けた者、「重要事実の伝達を受けた者」、こういうふうになっているわけですね。この重要事実というのはどういう内容なのでしょうか。
  212. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 この重要事実というのは、百九十条の二の第二項にいろいろと定義がございます。例えば会社の増資の決定あるいは合併の決定、それから新製品、新技術の企業化というふうに、この百九十条の二第二項の第一号、第二号、第三号、第四号に非常に細かく列記しておるところでございます。
  213. 森田景一

    ○森田(景)委員 じゃ、次に進みます。  この制度の運用についてでございますけれども、こうした規制がしり抜けにならないかという心配があるわけでございます。アメリカではインサイダー取引を判例によって規制しているようでございまして、証券取引委員会が非常に広い範囲で調査権限に基づいて摘発をしている。しかし、この規制も、株主に対する信任義務のない者の取引には適用されないという制約もあるようでございますね。  ただ、日本には証券取引委員会というのは設置されてないわけでございますし、アメリカでは約二千人ぐらいの職員かいて、八百人ぐらいの人が実際この監視に当たっているというふうに聞いているわけでございます。日本の場合には、実際に運用していく場合に、先ほども申し上げましたが人員の点で制約がありまして、なかなか思うようにこの運用がいかないのじゃないだろうか、こういう心配をされているわけでございますね。  これは新聞によりますと、大蔵省証券局流通市場課というのは十七人いらっしゃるそうですね。まあ御存じと思います。検査課が三十人。証券取引所監理官が十一人。地方財務局の証券検査官百二十八人。全部合わせても百八十六人どまり。それで、全部合わせての数ですから、この人が全部担当できるわけじゃないわけでございまして、こういう人数の点について規制がしり抜けになるのじゃないだろうか、こういう心配があるわけでございます。その点についてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  214. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 確かに御指摘のように膨大な組織、人員を擁します米国のSECに比べますと、証券局の人員はただいま大体お前のあった程度の人数でございますので、相当見劣りがするということは否めないと存じます。  ただ、基本的に、アメリカと日本との取り締まり体制というものを職員の数だけで比較するということよりも、やはりその背景にあるいろいろな事実というものをよく考えてみないといけないと思うのでございますけれども、アメリカでは証券会社が約八千ございまして、本当に種々雑多な人と言うとちょっと言葉は行き過ぎかもしれませんけれども取引をしておるわけでございますが、日本の場合は、証券会社、免許制のもとで約二百六十社ということで、非常に限定的に制限をしておるわけでございます。したがいまして、どちらかといいますと日本の方が証券会社を通じていろいろと小人数でも目を光らせやすいというような要素もございますので、私どもは、ただ人数が少ないだけで米国に比べて取り締まり体制に非常に欠陥があるというふうには必ずしも考えてはおりません。  ただ、決して現状の体制で十分だというわけでもございません。私ども大蔵省関係の職員の中で許します限りこれを効率的に配置するように努力をいたしまして、できるだけインサイダー取引の取り締まりを充実させるようにこれからも努力をしてまいりたいというふうに思います。
  215. 森田景一

    ○森田(景)委員 数の違いとか、いろいろとアメリカと日本が違うからということでございます。やはり罰則を設けているわけですから、本来なら違反者は摘発していくというぐらいの強い姿勢があってもいいんじゃないだろうかな、こんなふうに私は思うのですね。アメリカの証券会社と日本の証券会社は数が違うからということならば人数が少なくてもいいなと思いますけれども、日本にもアメリカのSECに匹敵する監督機関をつくるお考えはありませんか。
  216. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 米国のSECは、御承知と思いますけれども、いわゆる行政機能を持っておるだけではなくて、証人の喚問とか一部司法権も有しておる機関でございます。これに匹敵するのを日本でつくるということになりますと、司法当局との業務分野の調整というのはどういうふうになるのか、また行政府としての証券局の中にそういう権限を持つのがいいのか悪いのか、果たしてその権限を持ってもうまく活用できるかどうかとか、いろいろ難しい問題もございます。したがいまして、私どもは現状の体制でできる限りの努力をするというのを現在の基本的な方針としておるわけでございます。
  217. 森田景一

    ○森田(景)委員 つくらなくても十分やっていかれるという自信の表明だろうと思いますけれども、ひとつ頑張っていただきたいと思います。  それで、申し合わせの時間がありますので、予定を少し短縮いたしまして、本当は抜け道がたくさんあるということなものですから、ずっとこういろいろと書き出してきたのですね。これを一つ一つやっていますととても時間が間に合いません。抜け道の一番注意しなければならないのは二次受領者といいますか、情報の二次受領者以降、この辺が非常に問題になるようでございますので、これはまた機会がありましたらお尋ねをしたいと思いますが、いずれにしても、いろいろと対象を限定することによって巨悪を見逃すようなことがあってはならない、こういう意見もあるわけでございますので、十分ひとつ対応をお願いしたいと思います。  もう一つ、こういう記事があるわけです。  「政治資金を作るのに最も証券市場がやりやすい」と考えている政治家に対する規制がない点も問題だ。これまで、政界と証券市場との”黒い噂“が言われていた建設、厚生、運輸議員など業界との関わりが深い議員は、株式投資が野放し状態だ。これまでは「他人が情報を利用して儲けることを知りながら情報を提供した者」は情報提供罪があったが、原則としてこれがなくなった。   しかも、議員秘書が内部情報を受け、議員が売買した場合、議員は情報の第一次受領者でないことで罰せられないことになっている。   情報提供罪がなくなり、しかも第二次以降の情報受領者も罰せられないということでは、事実上政治家のインサイダー取引は、ほとんどが無罪になることを意味している。 こういう記事もあるわけでございます。これは皆さんの側でありませんで我々の立場ですね。何かにつけてやはり議員の姿勢が問題にされるわけでございます。そういう点について、行政の担当の皆さん方が法案をつくるときに遠慮してそういうことになったなんてことになっては国民に対して大変な不信を抱かせることになるわけでございますので、今後運用については十分ひとつ慎重に、公平にやっていただきたいと思うわけでございます。  もう時間がありませんから、最後に大蔵大臣に申し上げておきたいと思います。  規制強化策が実効を上げるためには、一つ法律の抜け道を埋めるということ、二つは監視体制の充実だ、こういうふうに言われているわけでございます。今回の法改正で不正な証券取引は罰せられるという意識が一般投資家を含む証券業界全体に定着することが望まれている、こういうふうに言われているわけでございますが、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう意味では、我が国としては新しい法律によりまして規制をしようと考えておりまして、法律をお認めいただきましたら、ただいま御指摘になりましたような心構えで誠心誠意その施行を図りたいと考えております。
  219. 森田景一

    ○森田(景)委員 終わります。     ─────────────
  220. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事青木昭君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  222. 越智通雄

    越智委員長 質疑を続行いたします。武藤山治君。
  223. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 最初に日本銀行にお尋ねをいたします。  最近のアメリカの金利動向が大変気になる情勢のように感じます。短期市場金利が先週あたり大変値動きが上がってきている。六・七五から六・八五ぐらいの水準で推移していたのが七・一二五と、先週の短期金利の上昇、大変気になる上がり方を示しておるような気がします。さらに三十年物の国債も九・一〇%が九・一五%に上がった。こういう傾向が金利先高感を呼んで、他の証券市場などにもかなり影響を与えるだろうし、さらにドルの値打ちにもいろいろな心理が働くんじゃないか、こんな感じかするので、日銀で見る金融政策のかじ取りを少々変えなければならぬのか、アメリカはまたもとのように安定的に水準が下がると見ているのか。全体的に見た金利動向から見る金融政策のあり方を少々変える必要があるのか、変える必要がない、静観でいいのか、その辺は日銀としてどうとらえているのでしょうか。
  224. 青木昭

    ○青木参考人 青木でございます。  お尋ねの最近のアメリカの金利動向でございますけれども、ずっと見ておりますと、去年の秋株価が急落をいたしまして、その後若干軟化をしたのですけれども、この三月あたりから上昇に転じておりまして、また先週になって少し上がっているというようなことでございます。  短期金利と申しましてもいろいろな金利がございますけれども、短期金利の代表として私どもよく見ておりますTBレート、政府短期証券のレートでございますけれども、これが六・三%ぐらい。長期金利、三十年物長期国債の利回り、これが先ほど御指摘のとおり九・二%ぐらいでございますから、年初来のボトムに比べまして、短期で〇・七%ぐらい、それから長期で〇・九%ぐらい上がっているというような状況でございます。  こういう金利の上昇の背景でありますけれども、まず第一に、米国の景気が、昨年の株価急落直後ごろの予想に反しまして、輸出とかあるいは設備投資がいいとかいうようなことに支えられまして、景気全体がかなりしっかりした足取りをたどっておるということがございます。それから第二には、このような景気情勢のもとで設備の稼働率が上がるとかあるいは失業率が低下をするというようなことで、製品需給、労働需給が次第に引き締まりの方向にあるというようなことがございまして、先行き物価上昇を懸念するような見方も若干ながら出てきておるというようなことでございます。こんなようなことで、連邦準備銀行の金融政策の方も、年初来一時緩和ぎみにやってまいりましたけれども、これを再びもとに戻すというようなことで、やや警戒的な姿勢に転換したのではないか、そういう見方も行われているようなことでございます。  御指摘のとおりまさにアメリカの金利情勢というのは世界の金融経済情勢に影響するところが少なくないわけでありますから、私どもとしましても十分注意してその動向を追っていかなければならぬというふうに思っております。ただ、我が国に直接の影響が、当面我が国金融政策をどうこうしなければならぬかというようなことは必ずしもない。我が国の場合、引き続き今の物価安定のもとでの内需の拡大経済拡大というような大変好ましい情勢にございますので、今の金融政策を続けてまいりたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  225. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 我が国金融政策には動揺はない、このまま続けられるという、日経新聞に青木理事のお話も出ておりまして、今の答弁と同じ説明がなされております。しかし、中尾経企庁長官がFRBのグリーンスパン議長と会ったときに、グリーンスパンさんがこう言ったというのも新聞記事に出ているのですね。それは、実体経済は順調だが、金融面に懸念材料がある。この「金融面に懸念材料がある。」という意味は、何を意味しているのだろうか。彼が考える、実体経済は順調だが金融面に懸念材料があるという懸念の中身は、何を言わんとしているのだと受けとめたらいいのでしょうか。青木さん、こういう記事を読んでどうお感じですか。
  226. 青木昭

    ○青木参考人 そのグリーンスパンの言葉だけではどういうことが具体的に問題なのかよくわからない点もあるわけでございますけれども、アメリカの経済動向、金融動向、アメリカもおおむね物価が安定した状態で経済拡大しているというようなことで、しかも国際収支の赤字幅も、非常にスローテンポかもしれませんけれども改善の方向にあるというようなことで、いい方向にあるわけでございますけれども、いま一つアメリカの経済動向の先行きについてははっきりしない点もあるわけでございまして、やはりアメリカのいわゆる双子の赤字と申しますか、財政の赤字、それから国際収支の赤字というものが縮まっていくということについて、私どもはそういう方向に向かっておると思いますけれども、引き続き市場のコンフィデンスのようなものが得られるかどうか、その辺のところが問題だということをグリーンスパンが言われたのではないかなと私ども想像している次第でございます。
  227. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そんな記事が報道されているそういう時期に、もとの財務次官補ウッドワースさんという人がやはり日経にお話をしているのでありますが、彼は、最近の金利動向から見て、「昨年は金利上昇が過大評価されていた株価の暴落を招いたが、「今回はドルの過大評価が鮮明になる」」、そう言い切って、年末には一ドル百十五円以下に下落すると見通す、こういう新聞記事が日経新聞に出ているのですね。これは今月九日ですから、つい二日ばかり前であります。  こういう水準にまで落ち込んでいくのかな、それとも、そんなことはない、世界協調なり国際会議なり日銀、中央銀行の手当てが、こういう手当てでこうやっていけば、こういう次官補が言うようなことにはならないんだ、そんな中身を少し教えてくれますか。     〔委員長退席、太田委員長代理着席〕
  228. 青木昭

    ○青木参考人 為替相場あるいは為替市場を取り巻く環境という意味では、ことしと去年の年末までとはいろいろな面で相当変わってきているというふうに私ども思っております。  一つには、日本とアメリカ、日本の大幅な黒字、それからアメリカの大幅な貿易赤字、これは両方ともとにもかくにも締まる方向に向かっているということでございます。もう一つは、為替の安定についての各国の協調体制、特にアメリカの姿勢というのが格段に強固なものになっておる。昨年の十二月二十三日の国際間の合意ということもございまして、格段に強固なものになっておる。それだけに為替市場に対する協調的な姿勢というのも強まってきておるような状況でございますから、為替市場を取り巻く環境というものは為替安定の方向にはっきりプラスするような状態になってきておる。私どもとしましては、こういう状態を極力持続させていく、そのために政策努力を怠らず、かつまた協調体制というものをしっかり維持していくことが大切であり、またそういうことを続けていくことによって必ずや為替の安定が得られるものというふうに思っておるわけでございます。アメリカの立場といたしましても、これ以上ドル安が進んでいくということになりますと、アメリカの物価面にも影響を及ぼしてくる。そうなってくると、また金融市場に対してコンフィデンスの欠如、不安感というものが起こりかねないということがあるわけでございますから、アメリカの方もドルの安定ということには格段に熱心に取り組んでおるというふうに確信をしておる次第でございます。
  229. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 通貨の安定の番人である中央銀行としては、今日のように証券化、債券化というのがどんどん拡大をされ巨大な力になってまいりますと、従来のような金融政策の視点だけでは制御できなくなってきた、コントロールできなくなってきた、私はそんな感じがしてならないのでありますが、専門家として見た場合、そういう点はいかがなのでしょうか。
  230. 青木昭

    ○青木参考人 確かに自由化、国際化、それから金融証券化というのが非常に急速に進んできておりまして、その結果、金融政策の方も、例えばこれまでのように規制金利を動かすことによりまして金利水準全体を動かすというようなことがやれなくなってくる、あるいは窓口指導のようないわゆる直接的な規制ということで金融政策を全般的に動かしていくということはなかなか難しくなってきておる、こういう状況にあるわけでございます。  その反面で、私どもがかねがね考えておりますいわゆる金利機能の活用というのですか、私どもとしましては、金融市場の需給関係に、例えばオペレーションをやって金を散布するあるいは資金を吸収するというようなことによって金融市場の資金の需給の状態に影響を与えて、それを金融市場の金利に反映をさせて、それを企業金融の金利といったようなものまで波及をさせていって、企業やそれから消費者の経済活動に影響を与えていくというような形でのいわゆる金利機能の活用という点では、金利が自由化されている方がむしろ効果が出やすい、したがいまして、金利の自由化のもとで金利機能の活用という形での極めて本来の姿であるところの金融政策の効果というのはむしろ確保されやすくなっておる、こんなふうに思っているわけでございます。
  231. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 もう一点だけ日銀側にお尋ねしますが、前年同月比、先月ですか、マネーサプライがかなり高い水準になっている。僕は昭和三十五年から大蔵委員に所属をして金融関係をずっと議論してきたのですが、一一・八%マネーサプライがふえたという事態は、当時ではかなり警戒信号と見たのですね。一〇を超えるような、経済成長率をはるかに超えるマネーサプライの増加ということは、これは物価高にはね返るかもしらぬぞという心配があったのですが、昨今は円高メリットが企業側に吸収をされ、企業経営も非常によくなり、私の感じでは円高差益が物価を鎮静させる作用に働いた。しかし、この企業決算というのは単年度で損益計算書、貸借対照表をつくるわけですから、今度の決算には、為替レートが安定をしている限りそう円高メリットが企業内部に蓄積できない。そうなってくると、物価の方にストレートに今度は通貨の量というものが響くような情勢が徐々につくられてきているのではないか。そういう見方をした場合に、一一・八のマネーサプライ増というのは少々気にかかる数値ではないのかな、こんな気がしてならぬのでありますが、その辺、日銀当局としてはどんな認識でいらっしゃるのでしょうか。
  232. 青木昭

    ○青木参考人 確かに、M2プラスCDの伸び率といたしまして、前年同月比一二%というような数字というのは、実体経済の伸び率と比べまして非常に高過ぎるというふうに思っておるわけでございます。  これまで物価が安定しておりますのは、おっしゃるとおり円高のメリットというのが物価面に出ておりますし、それから過去に比べまして日本経済全体の供給力というのは格段に高くなっておる、あるいは中進国等からの輸入品との競合というのが円高ということとまた別に相当強まっているというようなこともあろうかと思います。そういうこともございますので、ごくさしあたって見た限りにおいては、この物価の安定が直ちに崩れるというような兆候は見当たらない。  しかしながら、そのマネーサプライの伸びが高い状態というのは、経済環境次第では、例えば物の需給が逼迫してまいりますと、逼迫した物に対して買い需要が急に集まるというような形で物価の上昇に火をつける、あるいは加速をしかねないというような面があるわけでございまして、国際協調等の観点からこれまで金融緩和を進めてまいりましたわけでありますけれども、そういうことから金融緩和が行き過ぎてマネーサプライが過大にならないようにこれからも私ども十分注意して見守っていかなきゃならぬ、こういうふうに思っている次第でございます。
  233. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 青木さん、これで結構でございます。ありがとうございました。  次に、大蔵省に数点お尋ねをいたしますが、国際金融局長、円ドル委員会というのが廃止になって名称が変わったようですね。今度は日米金融市場作業部会という名前に変わったのですね。それはどういうわけで変わったのか。もう従来のようなスケジュールを立てて自由化をやるという作業はやや終わった、今度は新たな視点から新たな問題をスケジュールを立ててひとつ処理していこう、そういう大枠の話で名称が変わったのですか。どういうことなんでしょうか。
  234. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 お答え申し上げます。  円ドル委員会という呼称はどこから来たかと申しますと、ちょうど一九八三年、大統領が訪日されるころでございます。そのときに、今とは全く反対で、ドル高がずっと続いておりました。アメリカ側の考え方は、当時一部の議会人やあるいは経済界の人が言っておりましたように、日本がマニピュレーションをしてドル高にしているわけではない、ただ、日本のマーケットは十分自由化が行われていない、それからまた円の国際化というのも進んでいない、そのためにマーケットフォースというものが十分働くに至っていないので、そういうものが十分働くようになればファンダメンタルズをより円ドル関係が反映するだろうということで、実は資本市場金融市場の自由化の問題、これは日本の問題とアメリカの問題両方取り上げることであったのですが、主としてウエートが、やはり日本の金融・資本市場の自由化あるいはアクセスの増加、さらには円の国際化ということにかなりのウエートがあったことは事実でございます。そういう沿革からして円ドル委員会という呼称を当初つけたわけでございます。  今お話しのように、大分いろいろな事情も変わってきました。というのは、単に日本の自由化がかなりの程度進んだということだけではなくて、資本市場あるいは金融市場という問題につきまして、日本とアメリカという自由世界での二つの大きなエコノミー、経済体が、単に日本のことだけでなくて、アメリカのこと、お互いのこと、さらには世界のマーケットのことも腹蔵なく意見を交換し情報も交換しようということになったわけでございまして、これなるがゆえに我が国の自由化はもう終わったというようなことでは必ずしもございません。これからこの流れに従って一層の努力が必要であることは一向変わっておりませんけれども、それはそれとして、またもっと広い角度から話し合いというか意見交換を率直に続けていこうというのがその趣旨でございます。     〔太田委員長代理退席、委員長着席〕
  235. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 先月の二十日ころでしたか、内海さんも出席してこの作業部会をアメリカとやったようですが、これからの作業部会で、スケジュールの近い順に、どういう問題を日本としては処理しなければならないんだ、自由化の中でこういう問題を金融自由化でアメリカとの間で約束した課題があるんだ、これは担当は内海さんの方か銀行局長か、いずれにしても担当の方で、これからの作業部会でやらねばならない課題というのは何かをちょっと列挙してみてください。
  236. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今後、特にアメリカとの間でいろいろ議題、話し合い等になる事項といたしましては、一つが預金金利の自由化、特に小口預金金利の自由化をどう進めていくのかという問題がございます。それから二つ目といたしまして、我が国の短期金融市場でございますけれども、先ほど日銀の青木理事の方からお話がございましたように、今後マーケットを相手に中央銀行等が金融政策を行う上で、短期金融市場が成熟し、深度、深みのある市場であることが必要であるわけでありますけれども、その点について日本はなお十分でないという認識を海外で持っておりますので、その辺も議題になるかと予想されるわけでございます。それから、銀行局の関係ではございませんが、新聞等に出ております国債の引受発行、これを入札制度にしたらどうかとか、そういう問題もあるわけでございます。  あとの証券局絡みの方は証券局長の方から御答弁いたします。
  237. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券局の関係は、これまで東証会員権の問題が非常に大きな問題でございましたけれども、日米間ではほぼ解決、完全に解決したというわけではございませんが、ほぼ解決しております。したがって、証券市場に関する非常に細かい問題、例えば市場の流通性を高めるために国債のショートセールを認めたらどうかとか、そういうふうなところが問題になったわけでございます。
  238. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そこで、昨今の新聞にも報道されておりますが、大蔵省は早速勉強会を始めて、小口金利の自由化、それからCDの五千万から二千万への限度引き下げ、これを検討し、ことしの秋までに答えを出す、こういう新聞報道ですが、この新聞報道が事実だとすれば、秋というのは漠然としておりますが、何月ごろからこの二つの問題の処理をしようと考えているのか、その点を明らかにしてみてください。
  239. 平澤貞昭

    平澤政府委員 預金金利の自由化につきましては、先ほどの円ドル委員会等の話し合いを踏まえまして、ここ三年ほど春、秋、春、秋と順次進めてきておるわけでございます。そして、本年の四月もそういう中で自由化の方向で一歩を進めたわけでございますが、次は、そういたしますと、秋に何をやるのかという点がマスコミ初め各方面の大変御関心のあるところでございます。  ただ、一つ問題がございますのは、この四月一日から利子課税が制度が変わりました。原則としてすべての金融資産につきまして利子に二〇%同一で課税するということになったわけでございますが、その結果として金融資産相互間でどういう影響があるかという点が十分にまだ見きわめ切れない点があるわけでございます。そういう状況の中で、さらにこの新しい小口預金金利の自由化等等含めた問題を決定いたしますと、仮に一定の方向へ資金シフトが起こりつつあるときにそれを加速するということになりますと、これは金融の面で大きな混乱が起こることもあり得るわけでございます。これは可能性としてあるわけでございます。しかし、金融というのは非常に信用秩序、信用の重なり合いの上に成り立っておりますので、可能性があるときにはやはり慎重に対応した方がいいだろうということで、現在その状況を見守っているわけでございます。  そういう中で、先般の円ドル委員会等におきましては、四月、五月等の情勢を見ながら六月くらいには次の秋のステップについて何らかの方向性が出せるのではないかということをアメリカ側との話し合いの際にこちらから申したわけでございます。具体的内容については、まだ決めてないということでございます。
  240. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 銀行協会の会長がやはり日経などでしゃべっているのを見ますと、CDの限度を引き下げるよりもMMCの方を先にやれ、こう銀行協会長は言っているのですね。しかし、今度は中小金融の方から見ると、小口の金利自由化はそう先に急いでやられては困るという見解があると思うのですね。その辺の調整というのは、一体大蔵省としてはそういう対立の場合どんな手順でいつもやるのですか。
  241. 平澤貞昭

    平澤政府委員 今委員がおっしゃいました点は、一番問題があり、微妙なところをおっしゃっているわけでございます。そして、MMCのさらなる小口化というものを進めていきます場合に、幾つか考えなければいけない点があるわけでございまして、一つが、おっしゃいますような中小金融機関に対する影響をどう考えていくか。MMCの金利は、御存じのように現在の規制金利より利回りは高いわけでありますから、急激に進めますと、コストアップになる。コストアップになりますと、そういう金融機関は金利を上げて貸し出ししませんと対応できないという問題、ただし、現在のように金融が非常に緩いときは上げられないから経営上マイナスになる可能性もある、この辺をどう考えるかという問題があります。  それから、MMC等を急激に小口化を図っていきますと、資金の移動が起こってくる。アメリカにおきましても、小口預金金利の自由化を急速に進めました結果、金融機関の間でディスインターミディエーションといって急速な資金の移動が起こりまして、かなりの混乱が起こって、二年間ほど自由化をストップして、そして少しもとへ戻ったような経緯もあるわけでございます。したがって、そういう点も十分考えていかなければいかぬということがございます。  それから、三番目といたしまして、仮に五百万円以下までそういうものを及ぼしていくということになりますと、郵貯が四月から五百万円まで上がりましたので、郵貯との関係で問題を解決しておく必要があるわけであります。仮に小口の五百万円以下のMMCをつくったときに、郵貯は自由になったからMMCの金利は自由につけるということになりまして、民間の金利より仮に高い金利をつけるとしますと、資金シフトがまた急速に起こりますから、そこは、仮にそういうことをやる場合にも民間と同じルールに従ってやってほしいということをきちっと決めておかなければいけないし、それから、定額貯金の商品性の問題も、前前から商品性見直しということで郵貯と話し合っているわけであります。これも解決しておきませんと小口化に入れないということでございます。いずれにしましても、最後の郵貯の問題については、今向こうとも精力的にいろいろ検討を進めているところでございます。
  242. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 私ごとで恐縮ですが、私は郵政事業対策委員長を党の方でやっておる関係で、このMMCの動きがどういう時期にどうなるかということに大変関心を持っておる一人なものですからきょうはこの問題を質問しているわけなんですが、十分その辺を考慮してやっていかないと、やがては財投資金ももう崩壊をして、今の財政投融資制度そのものが維持できなくなるということもあるわけですね、将来展望をすると。ですから、そういう点、銀行局としては十分話し合いの場所をきちっと決めて、時間がかかっても、この秋だということをもうセットしちゃって秋にはこうだというようなことになって混乱を起こしたのでは困るという注文が私の気持ちとして一つありますので、局長もひとつ受けとめておいていただきたいと思うのであります。  それから、先ほど証券局長が、東証の会員権の問題は、アメリカとの間では解決を見た。これは、取引所を建てて新たに立派なものができ、場所もできたから会員がふやせた。そのときに、イギリスの希望というものが入らなかったのですか。というのは、竹下総理大臣とサッチャーさんの会談の中でこれは竹下総理が個人的約束をした、イギリス側はそう受けとめて解釈している。いわゆるイギリスの証券会社が東証の正会員になれるようにもう竹下さんは約束したというのがイギリス側の受けとめ方だと新聞は報じているわけですね。  そこで大蔵大臣、東証会員権拡大の余地がありや否や。どうでしょうか。イギリスの要望を直ちに聞き入れられるような余地が東証にあるのかないのか。もし大蔵大臣認識不足ならば、証券局長でも結構ですが、どうですか。
  243. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 大臣は当然御存じでございますけれども、数の問題でございますので私の方からお答え申し上げます。  前回、東証会員権の第二次拡大を行いまして、二十二社新しく会員に迎えることになりましたけれども、これは外国証券会社が十六社と国内の証券会社六社でございます。その場合に、外国証券会社は二十社が手を挙げまして、日本におきます業務の経験等を判断いたしまして東証の方で十六社を選んだわけでございます。その四社落選した証券会社の中に、二社、英国系も含めまして本証券会社があったわけでございますが、その二社は、いずれも業務を開始後間もなくということもございまして、日本での業務経験が非常に不足しておる。さらには日本での業務執行体制が果たしてどうなるかまだ明確ではないということがあったのではなかろうかと思います。したがって、今般総理が訪英されましたときに、首脳会談でこれら二社につきまして英国側よりできるだけ早く会員権を認めてもらいたいという要請が出たというふうに聞いておりまして、総理もこれに対しまして個人的な関心を持って対処するというふうにお答えになったということだそうでございます。  したがって、問題は東証に会員権を拡充する余地があるのかということでございますが、前回、第二次の拡大は昨年の十二月に決定したわけでございますけれども、新しい会員が業務を開始いたしますのはこの五月二十三日からでございます。そういう段階でさらに第三次の可能性があるのかどうかということを聞かれましても、これは東証の問題でございますけれども、東証としてもなかなか今の時点でこれからやりますということは言えないと思います。ただ、東証理事長が、第二次の決定を行いました際の記者会見等でも、今後東京市場の国際化あるいは東証自身の機械化がどの程度進むか、そういうものを考えながら検討していきたいというふうにおっしゃっておられますので、私どもとしては、今すぐということは非常に難しいと思いますけれども、将来の方向としてはできるだけ東証がその方向で努力をしてくれるものだというふうに期待をしているわけでございます。
  244. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 イギリス側も最近アメリカに手口が似てきたのですね。相互主義条項の繰り上げ発動なんという、相互主義を言い出したのですね。アメリカとそっくりにイギリスも、紳士の国も変わってきて、威圧的であり、アメリカ的などうも気に食わぬやり方が世界にまねされる傾向がある。そして、イギリスは野村証券と大和証券のマーケットメーカー業務を許可しない、先送りだ、こういう決定なんです。ですから、会員権一つ二つの問題だと簡単に考えられる問題が大きく他に波及して、野村証券と大和がマーケットメーカー業務がすぐ認可がとれない、こういう問題に今発展してしまっているわけです。今証券局長は、いや、東証が考えることで、やがて何とかなるだろうと言うけれども、今の入れ物で物理的にできるのですか。将来どこかが二社手を引いて遠慮でもしない限り、物理的に可能なんですか。そこはどうですか。今の入れ物で二社ぐらいなら何とかあと半年か一年たてば認可できるんだという余裕があるのかないのか、その辺はっきりしてください。
  245. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 前回、第二次の拡大の際に東証として最大限の努力を払ったわけでございますけれども、それは東証の中で立ち会い場銘柄をたしか二百五十路柄から百五十銘柄に減らしたと思うのでございますが、その銘柄を減らしますと東証の立ち会い場の中の個々の銘柄の株価を掲示しているボードの数が縮小されますので、その縮小されたところをもって各会員のためのブース、本社との連絡の端末等が置いてある場所でございますが、それの拡充を行ったわけでございます。その際に余裕のあるスペースを全部活用して最大限の努力を払ったと承知しておりますので、今すぐの時点でまたさらに二社ぐらい広げられるのかと申しますと、お答えは非常に難しいのではないかと思っております。
  246. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 竹下総理は、あそこの物理的な面積の問題や何か、ロンドンに行ったときに頭にあったのでしょうか。建物をふやさない限りできないのだと一言サッチャーさんに言うべきだったのですね。個人的に受けとめるといったって、物理的にできないものは何ぼ何言われてもだめなんで、やがてそれを広げようとかどこかの会社の機械をどかさせなければできないのだとか、そういうことをはっきりイギリス方にも知ってもらわないと、日本は怠慢だ、また自由化サボっている、こう言って今言ったほかの業務にまで支障がくる。こういう点、証券局長が総理大臣にレクチャーやるときに少し怠慢じゃないかな。行く前に出るというのはわかっていたんだよ。どういう説明したの。
  247. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 総理の訪英に際しまして事前にいろいろとレクチャー申し上げた際にそういう事情は御説明申し上げました。私どももまだつぶさに話を聞いておりませんけれども、総理も決してお約束になったわけではなくて、個人的関心を持って当たるとおっしゃったというふうに聞いておるわけでございます。
  248. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 時間がだんだんなくなりますから先に進めますが、さっきの国債を入札制にしろ。今はシンジケート団に割り当てで、八〇%ぐらいが銀行とか証券とか皆分けられてしまう。アメリカは、気に食わぬ、オープンにして入札制度にせい、アメリカと同じような制度にしろ、日本の業者はアメリカに来てそういうことで恩恵を受けているじゃないか、こういうやはり相互主義だね。固定シェア制を改善しろと日米の作業部会でも話題に出ている。これはやる気なのか、やる気ないのか。理財局が、国債が売れなかったとき大変だからやれないのだと頑張るのか。局あって省なしと言われる大蔵省、一体どっちの綱引きが強くてできないのか。できなかったら、宮澤大蔵大臣に決裁してもらって、世界の中の日本、世界に貢献する日本というのが現内閣のキャッチフレーズなんだから、その辺はどういうことがネックになっているのかをわかっている三人の中でどなたかひとつ。
  249. 内海孚

    ○内海(孚)政府委員 私からとりあえずアメリカとの関係での状況を御説明申し上げたいと思います。  現在、大統領の手元に送られたばかりだと伝えられる貿易法案の中の金融条項にプライマリーディーラー条項がありまして、この中に、ほかの国がアメリカの業者に対して同じような競争の機会を与えない場合には、つまり内国民待遇の内容としてそういうことを申しまして、そういう場合にはプライマリーディーラーの資格をその国の業者には与えない、もしくは既に与えた者についても特定の条件で剥奪するという条項があるわけでございます。これは基本的には、前に向こう側が言っておりましたようないわゆる相互主義という規定ではなく、ナショナルトリートメント、つまり内国民待遇ですから、その意味では何が同じ競争的機会かという言葉の問題になるわけでございまして、そういうことをめぐって向こう側とこちら側との間に今後ともまたいろいろな形での話し合いが仮に貿易法案ができた場合には出てくるわけでございます。貿易法案自体の成り行きが、これから大統領のビートーの可能性の問題とかそれについての議会の方の対応の問題とかがありますものですから、直ちにということではありませんけれども、そういうことについての十分な関心を持って今後関係者がいろいろ対応を考えていくということであろうと思っております。
  250. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 今後はいつごろまでだかわからぬ、今後検討していく、これが結論ですね。  それから、きょうは時間を少し短縮しないと最後が遅くなるというので少し協力をしようと思っておりますが、先物取引がアメリカで行われたのは一九七二年だと教えられております。そうすると、アメリカで制度的に始まったのは今から十六年前ですね。十六年というのは長いと思うか短いと思うかによって違いますが、アメリカであれだけ日本に同じようなシステムをどんどん自由化しろとかこういうものを入れろと言っている割には、十六年の長い期間のおくれがあるというのはどういうためなのか。日本の慣習なりシステムになじまない、こう思ったために十六年間のおくれがあるのか、それとも世界のイギリスやほかの国国の先物取引の状況というのがかなりおくれてきているので日本もその辺に足並みをそろえざるを得なかったのか、どういうところにこの十六年間という期間が置かれたんでしょうか。それをどう認識していますか。
  251. 平澤貞昭

    平澤政府委員 それにつきましては幾つか理由が考えられるわけでございますが、恐らく一番大きな理由は、アメリカは今から十数年前に金利の自由化をほぼ終わったわけでございます。そして長期の国債等の発行も公募入札等でやっておりますから、自由な市場価格取引されるということになっているわけでございます。したがいまして、そのような自由市場のもとにおきましては、価格が変動いたしますし、それから金利も変動する。したがって、価格変動リスクと金利変動リスク等の問題にどうリスクヘッジをしていくかということが非常に重要な課題になってくるわけでございまして、そういう必要性が背景にあって先物市場が自然発生的に出てきたということだと思います。  我が国の場合は、国債につきまして今から十年ほど前に初めて中期国債が公募入札になったわけでございますが、それ以外の国債については、依然として、市場の実勢には合わせますけれども、発行においてなお引き受け方式等をとっている部分もあるわけであります。ただ、既発債の市場は完全に今自由になっておりますから、その部分についての価格変動に対するリスクヘッジということは必要でありまして、したがって、国債については既にもう御存じのように証券取引所先物市場ができているということでございます。  金利につきましては、先ほど申し上げましたように預金金利の自由化が今急速に進んでおりますから、そういう中で金利についての先物市場もやはり必要だろう。それから為替も、固定相場制から変わりまして今は自由に動いてきますから、こちらも通貨の先物が必要だということで本日御審議願っている、こういうことでございます。
  252. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 そんなわけで、まだ質問項目が十項目あるのですがやめますが、主税局来ていますね。今回の先物取引にかかわる税制面、これはアメリカなんかは全く無税のようですね。日本の主税局はけちっていますから無税じゃなくて幾らか取るのかなという心配があるのですが、国際的にどこの取引所と同じように日本もなるのか。均一化されるのか。日本だけ税金がかかる部面がどことどこに発生するのか。これは主税局でしょうね。銀行局が決めるのかな。違うな、主税局だな。ひとつ今回の先物取引にかかわる税制面はどうなるのかをちょっと答えてください。
  253. 水野勝

    ○水野政府委員 先物取引に関連いたします税制といたしましては、先物取引によりますところの得られた利得、こうしたものに対する課税、それから先物取引自体につきましての流通税的な取引税、こういった二種類のものが考えられようかと思うわけでございます。  これにより得られました利得につきましては、これは所得税、個人でございますれば事業所得あるいは雑所得として通常の課税が行われる。それから法人につきましては、それは法人の益金として課税所得に算入される、そういうことであろうかと思うわけでございます。  それから先物取引自身につきましての課税につきましては、我が国におきましては取引所税法がございまして、差金決済によりますところの取引につきましては、現在、商品、有価証券、そういったものが課税対象になっておるところでございます。取引所税におきましては限定列挙でございますので、今回御審議をいただいております金融先物取引につきましては掲名されてございませんので直ちに税になるというものではございませんが、今もお話のございました国債先物取引につきましては、先般これが実施されましたときにも、その実施を待って、その後の取引状況等も勘案いたしまして、昨年度と申しますか、改正で万分の〇・一ということでお願いをいたしました。今回につきましても、この問題につきましては各方面の御意見を伺いながら検討を加えてまいりたいと考えているところでございまして、先般、四月二十八日にまとめられました税制調査会の中間答申におきましても、この課税範囲のあり方や適用税率のあり方について見直す必要があるという指摘をいただいているところでございますので、その中で検討をさせていただきたい、このように考えておるところでございます。
  254. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 証券局長、今の主税局長説明で、外国と比較して大体均質のものにしなければ、やはり国際競争の中で開放されてやるシステムですから、今の税の問題の考え方で大体いいですか、証券局は。
  255. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 ただいま主税局長答弁申し上げましたように、関係方面といろいろ話し合ってということでございますが、その話し合いの過程では私どもも十分いろいろと意見を言わせていただきたいと思っております。
  256. 武藤山治

    ○武藤(山)委員 国際化で一番おくれているのが主税局なんですね。オフショアの問題にしても何にしても、随分いろいろ注文しても、なかなか取る方ばかり先行しちゃって、世界全体とどうやって仲よくやっていくかという視点が一番欠けておるのは主税局なんですよ。借金が二百何十兆もあるんだから気持ちはわかるけれども、やはり国際情勢の動向というものを踏まえて均一的な体質にお互いの市場がならないと、せっかくつくる意味が、また世界から非難を受ける。そういうことをひとつ主税局長、今回がもう最後の任期のようですが、大英断をもって、目を広く世界に向けて税制を考える、先物取引についてはそのことを強く期待を申し上げて、私の質問を、十分縮めましたから後の人も縮めていただいて終わりを早めたい、こう思ってやめたいと思います。ありがとうございました。
  257. 越智通雄

    越智委員長 次に、安倍基雄君。
  258. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いろいろ同僚議員が聞かれたのでございます。私もたまたま税の問題も取り上げようと思った途端にそんな話も出ていたわけでございますので、できるだけ重複を避けてお話をしたいと思うのです。  今度のいわば金融先物にいたしましても、あるいは証券先物にいたしましても、これがいろいろヘッジの機能があるということは事実でございますし、価格市場において合理的に形成されるということも事実でございますけれども、反面、非常に投機的な要素も持っているわけでございます。こうなりますと、いろいろ聞いてみますと、今までは例えばある人間が先物市場海外へつなぐ、そうやって金を集めてやったあげく大損をさせた、そういうことがあってはかえってまずいのでむしろ東京へ持ってきた方がいいのじゃないか、それで規制をした方がいいのじゃないかというような話も入っているかと聞いております。この先物市場というのはある意味から言うと非常に投機性がある。これは事務方の答弁でいいですから、そういったことについてどうやっていわば投資家を保護するか。一説によるとロットを大きくして大きなものしかやらさせないというような話もあるし、証拠金率をどうするかという問題もあると聞いておりますけれども、この先物市場というものは一面においてそういうプラスの面と逆に大損をしはしないかという危険性もある。その辺の投資家保護についてどういう措置をとろうとなされておられるのか。  それから、例えばそれとの関連で、証拠金率なんかいわば証券先物についてはある程度考えられているようでございますけれども金融先物についてはどういう証拠金率、どういうロットということを考えておられるのか。これはもちろん協会との話し合いの上だと思いますけれども、投資者保護の見地から、零細な人間がそういうことをやって大損しても困る。その辺についての手だてをどう考えていらっしゃるのか、まずお聞きしたいと思います。
  259. 平澤貞昭

    平澤政府委員 金融先物取引につきましては、今委員が御指摘のとおり、リスクヘッジという側面があります反面において、非常に投機的な取引に利用される可能性もゼロではないわけでございます。したがって、このリスクヘッジの側面はできるだけこれを尊重しながら、投機的な取引を助長する点はできるだけ制約、抑えながら、うまく働かす仕組みをつくる必要があるということだと存じます。  そういう意味で、まずこの金融先物取引を行います場合には、必ず金融先物取引所を通じて行うようにいたしておりますし、それから金融先物取引所の会員につきましては、厳重な資格を決めまして信用ある人に会員となって取引をやってもらうということも制度の仕組みの中に入れております。それから、この取引所の会員に委託いたしまして外の投資家先物取引を行う場合には、できるだけそういう人たちが内容、中身を十分に熟知して取引を行うよういろいろのPRあるいは教育を行う仕組みをつくっておりますし、中小零細な人たちがやるということは非常に危険な点もあるわけでございますので、先ほど委員も言っておられましたように、一定の大きさ、金額以上の取引しかできないようにしているというようなこと等々、各般の仕組みをこの法案の中に盛り込んでいるところでございます。
  260. 安倍基雄

    安倍(基)委員 証券先物については一応証拠金率を九ぐらいと考えているというぐあいにも聞いておりますけれども金融先物についての証拠金率はどのぐらい考えていらっしゃるのか。今、証券先物の九%というのは、大体その辺の話で考えていらっしゃるのか。まだ決まっていないものであればそれでも構わないし、その二点をお聞きしたいと思います。
  261. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 先に株価指数先物、いわゆる証券先物についての証拠金率を申し上げますと、現在株先五〇は御承知のように九%ということでやっておりますが、株価指数先物についてこれをどうするかということはまだ最終的には決定はしておりません。しかし、株先五〇と株価指数先物取引の性格はかなり似たようなものでもございますので、これとのバランスを図る必要があるということは認識しておるわけでございます。
  262. 平澤貞昭

    平澤政府委員 この証拠金率を決めます場合に考慮すべきことは、価格の変動の非常に大きいものについては証拠金率を高くしているわけでございます。諸外国の例を見ましても、株等については証拠金率が高いわけでございまして、その次が通貨であります。そしていわゆる預金につきましては非常に低い証拠金率を決めておりますので、金融先物市場におきましてはこの通貨と預金ということになりますので、証拠金率といたしましては株等の率に比べますとかなり低い、特に預金の証拠金率は海外では〇・〇七五とかそういう率もございますので、低い率に決めるということになろうかと存じます。
  263. 安倍基雄

    安倍(基)委員 税金のこともちょっと聞きたいのですが、その前に手数料はどのくらいを考えていらっしゃるのか。証券及び金融先物についてある程度考えていらっしゃるのかどうか。これは私があらかじめ通告してなかった質問でございますのであれでございますけれども、税金について詳しく聞こうと思ったらある程度答えられたものですから、どういうお考えを持っていらっしゃるか。まだ決まってないなら決まってないでも構いません。
  264. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 はっきり申し上げてまだこれを決定するような段階には至っておりません。  ただ、参考までにちょっと一言だけ申し上げますと、国債先物につきましては、海外の水準等をにらみ合わせまして、先般、昨年の秋だったと思いますけれども、大幅な引き下げを行いました。株価指数先物とかこういったものは非常に国際的な商品でもございますので、海外とのバランスを図りながらやっていく必要があるというふうに我々は考えております。
  265. 平澤貞昭

    平澤政府委員 委託の場合の手数料につきましては、まだ具体的に決めておりませんが、考え方といたしましては、諸外国の事例を念頭に置きながら、かつまた、取引所等のコスト等も勘案しながら決めていくことになろうと存じます。
  266. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それから、金融先物の場合には利幅というものが余り大きくないというか、ヘッジが中心でございますから、その面で取引所税あたりもちょっと取られては困るなというような議論もあるようでございますが、この辺、既に同僚議員が税金のことをちょっと聞かれましたけれども、それぞれもう一度その辺の見解がどうなのかということをお聞きしたいと思います。さっきはむしろ株の方でしたかな。いわゆる金融先物の方についての税金関係はどう考えておられるのですか。
  267. 水野勝

    ○水野政府委員 基本的には先ほどの御議論もございましたところでございまして、金融先物、それから証券先物、すべて同じように考えておるところでございまして、今後各方面の御意見を伺いながら検討を加えてまいりたいというところでございます。
  268. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは証券局と主税局のいろいろな問題もありましょうから今の段階でなかなか言えないかと思いますけれども、この点はこれからの検討課題だと思います。  それから、インサイダー取引の関連でございますけれども、これは確かに早くやらなければいかぬという話があったかと思いますが、これはアメリカあたりは判例で積み重ねて非常に範囲が広まっているという感じでございます。日本の場合にはある程度特定したという話でございますけれども、例えば、これはちょっと例があれなんですけれども、インサイダー取引はいろいろあるのです。ある機関投資家がある銘柄にどっと買いに出るというようなものも広い意味ではインサイダー取引と言えないでもない。その情報をキャッチしてわあっとみんなが買う。個々の会社でどういったことがあったなかったということで、新しい装置をどうするかとかある物を開発したとか、そういう種類の個々の会社についてのインサイダー情報とは別に、株式市場におけるインサイダー情報というのもあり得るのです。これは非常にデリケートな話でございますけれども、その辺は今後どういう感じで持っていかれるのか。  ほかの国ではそういった種類のものについてこれはインサイダーとは考えないのか。これは外国においては例えば手張りをやっているという話もございますけれども、それとの絡みもあると聞いておりますけれども、その辺は今後インサイダー取引的な扱いになっていくのか、いやそれは事の性質上違うという話になるのか、非常に難しい問題で、技術的な問題でございますけれども、いかがでございますか。
  269. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 お尋ねの点は、いわゆる市場情報と申しますか、機関投資家が大量に買いに出る、そういった話を聞いた投資家がそれに合わせて株を買って利益を得るというふうなことをどういうふうに規制するのかというお尋ねであろうというふうに思います。  私ども証券取引審議会の不公正取引特別部会の中でこの内部者取引の問題を議論いたしましたときに、情報の範囲をどこまで広げるのかということにつきましてはいろいろ議論もございました。ただ、私どもが考えました内部者取引と申しますのは、会社等の重要な情報を知り得るような特定の立場にある人が、その立場にあるために知り得るような情報を利用して取引をすることだというふうにこれを定義したわけでございます。そういうふうに考えますと、会社の内部の重要情報ということになりまして、先ほど御指摘のございましたようにいわゆる市場情報というものは外れてしまうわけでございます。じゃ、なぜそういう市場情報まで入れなかったのかと申しますと、これを入れ始めると非常に際限なく広がっていくことになりまして、これを構成要件として非常に明確に定義していくことが極めて難しいわけでございます。したがいまして、私どもとしては、法律で処罰する取引の範囲としては、厳格な意味での内部者取引に限定をするということにいたしました。  アメリカ等でどうかということでございますけれども、米国等のケースを見ましても、いわゆる市場情報的なものまで広く取り入れて取り締まっておるかというと、私ども判例を全部見たわけじゃございませんけれども、私どもが知っている限りではそういうものは余りないようでございます。先般SECと大蔵省との間で定期協議をいたしました。その際にも、SECサイドは、今回の日本の法律で、SECが取り締まっているものの九八%程度、もっと上までカバーできるのではないかと思うということを言っておりましたけれども、私どもの考え方で余り大きな違いはないのだなというふうな感じを持っておるわけでございます。  ただ、市場情報の場合でも未然防止体制というものには乗ってまいりますので、今おっしゃったようなケースで、例えば機関投資家が株を買いに出る場合にその機関投資家の役員等が同時に株を買っておったというような場合は、未然防止体制の方には乗ってまいりますので、いろいろと証券会社を通じて注意をするとかそういうようなことは可能であろうかというふうに思います。
  270. 安倍基雄

    安倍(基)委員 おっしゃるように市場情報というのは非常に言い出すと難しい話がありますから、私は何もこれを準インサイダーとしていろいろ規制しろとまで言ってないのですけれども、この辺についてどういう見解を持っておられるかなということを確かめたかったわけでございます。  それから、これは一々そこに出してなかったのですけれども、アメリカのインサイダー取引の場合には得た財産か利益の何倍かを取るというような刑罰があるように聞いておりますけれども、日本の場合には比較的安い、安いといっては変ですけれども、安いか高いかという問題はありますけれども、今の感覚からいえばべらぼうに安いわけです。その辺は、例えば得た利益を没収するとか、あるいはその何倍かを取り上げるというような考え方の方がむしろ正しかったのじゃないかなと私は思います。法務にいるものだから私刑罰とかそういう方に頭がすぐ働くのですけれども、この辺の決め方について、これでいいのだろうか、懲役とかそういったことは別として、少なくとも財産的な利得については何万円以下というのじゃちょっとおかしいのじゃないかという気がしますけれども、その点はいかがですか。
  271. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 その点につきましても、不公正取引特別部会ではいろいろと議論のあったところでございます。ただ、日本の刑罰体系の中に今までそういうケースというのは余りないようでございますし、またこの不公正取引といいますのは必ずしも利得を目的とするということを処罰の対象にしているわけではございません。特定の地位にある人の取引を規制するという考え方でできておるということもございますので、現行の証取法の中の罰則体系全般のバランスをとって、現在六カ月以下の懲役、五十万円以下の罰金ということで適切なのではないかという判断をしたわけでございます。
  272. 安倍基雄

    安倍(基)委員 けれども、そういう犯罪であればそれで得た利益は没収してもいいはずなんです。刑罰とは別に、それによって得た利得は没収するのですか。
  273. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 没収につきましても、没収の対象というのはあくまでも物であるという考え方になっておりまして、これは罰則の関係でございますので私専門家ではございませんもので責任を持って答弁をいたしかねるわけでございますけれども、これまでの日本の体系の中では、物についての没収という概念はあるけれども利益についての没収という概念はなかなか難しいという考え方のようでございます。したがいまして、得た利益の没収というのは今回の法律の中にも入れておりません。
  274. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは一つ検討課題ではないかと私は思います。この罰金というのは五十万円でしたか、今の感覚からいえばほとんどあってなきがごとしです。アメリカは利得の三倍ですか、その方がよほど合理的じゃないかと私は思いますし、従来の刑罰体系が不十分であればそれなりの考え方を導入してもしかるべきじゃないかと思います。この点はあらかじめ別に大臣に言っておりませんでしたから急に御感想を聞くのもあれですけれども証券局長として今後の検討の課題じゃないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  275. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は私も余りつまびらかではございませんけれども、日本の刑罰の体系というのは非常に全体バランスをとって法務省がいつも考えておられまして、例えばその品物そのものがイリーガルなものである、麻薬とか、どういう例がよろしゅうございましょうか、没収という例はございますが、利得そのものを没収するという刑罰の考え方は多分私は体系の中にないのではないかと思いますが、よくまた研究してもらいます。
  276. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私も法務におりますので、この辺は日本の没収という意味の形が昔的な考えで、利得というものを召し上げるというのも新しい考え方じゃないかと思います。これは別に法務委員会で論議すべき問題かと思いますので、この辺でとどめておきたいと思います。  このほかいろいろ聞くことはあるのですが、実は今度一般質問にほかの者が立ちますので、なかなか一般質問で聞くチャンスがないので、ひとつ念を押す意味大臣にお聞きしたい問題がございます。  というのは、この間実は私はここでODAの問題を取り上げたことがございます。ODAの問題で、ドルベースでいくと、日本のODAは二、三年前から五〇%あるいは二、三〇%の伸び率でどんどんと上ってきている。結局、援助を受ける側は、円が倍になったわけですから、ドル換算でいけば倍くらいにもらえるわけですね。同じものをつくるにしたって一つのものが二つくらいつくれる話になってきている。でありますから、これからはODAを単に円ベースでどんどん伸ばすとかいうのはちょっとむしろ不消化になってしまうし、やり過ぎじゃないか、もう少しドルベースを考えながら伸ばすべきだという話をしたことがあると思います。大臣も、なるほどそれは確かに援助は大事かもしれませんけれども、円ベースとドルベースと両方勘案して考えていくべきじゃないかなという御答弁を得たのです。御記憶かと思いますけれども。  私、実はきょう外務委員会でもその話を出したのですけれども、ちょっといろいろ新聞記事などを見ますと、竹下総理大臣がサミットに行ったときに、ほかの国と同じくらいのGNP比で、ほかの国の平均が〇・三五とかいっていますけれども、それでまた新たな約束をしてくるというような報道もございます。私はODAというものを決して低くしろとは思っていないけれども、少なくとも円がこれだけ上がってきたら、前回も話しましたけれども、公明党の大久保書記長が防衛費のときに円高メリットを勘案してないじゃないかということを予算委員会で強調された。それ以上に、結局ODAがドルベースではもう全く大きくなってきているということを考えまして、これからサミットに行かれてまた景気のいいことを約束してもらい過ぎても困る。  今度の税制国会で我々はタックスペイヤーの目で見てすべてのものを考えなければいかぬ。たまたま私は地元である人に会ったら、我々は脱税をするとすぐ捕まっちゃう、ところが大きなむだ遣いをしたことがあっても一つも罪にならない、これはどういうことですか、こう言うわけですね。何がむだ遣いかむだ遣いじゃないかというのは難しいわけですけれども、それは我々国会がタックスペイヤーの目で支出をチェックするのが使命であるということを話したのでございます。ODA予算というのは決してむだとは言いませんが、ただいろいろ例えば市場開放問題につきましても、ODAをやっているから勘弁してくれと言ったところで勘弁はしてくれない。サッチャーはそれなりに酒税を言うし、ヤイターもいろいろなことを言う。ODAなかなかよくやっていますねという褒め言葉はありますけれども。  そういうことで、たまたま私のこの議論が、二、三日前竹村健一の本を読んだら大体似たようなことが出てきていまして、こういうこともだんだんと考えてきているのだと思いますが、援助というものは一遍上げますとなかなかそれを下げられないわけですね。でございますから、途中から下げちゃうとまた何だということになる。しかも、日本が黒字を持っているといっても、財政は大赤字なんですね。調べてみますと、例えば西独並みといっても、日本の一人当たりの国債は約五千ドル、西独は二千ドル、二倍以上の債務を我々は持っておる。しかもODAの実質額において我我は世界一になってしまっておる。しかもイギリスとかフランスなんというのは、それぞれの旧植民地、そういうところに随分出している。アメリカなどは戦略的にイスラエルとかエジプトあたりに相当部分出しておって、戦略部分を除くとGNP比は〇・二が〇・一くらいになるのですね。そういうところを勘案しますと、日本がかっこいいことばかり言うて、竹下さんがサミットあたりに行って大いにやりますと言ってこられてしまうと、一体何だと、税制でもって国民に、減税を先にするにしても、最終的にはこの秋に新しい税でもって将来を考えるという立場にある、そういうときを前にして――中曽根さんの外交で一番問題となったのは、どんどんと手形を切ってきてしまうのですね。ツケが残ってしまう。まさか竹下さんはそういうことをしないだろうと私は思いますけれども。  大蔵大臣、この間ODAの議論をしたときに、これはなるほど円だけで考えるのはおかしい、円とドルとを勘案して次の六十四年度予算ですか、それも考えましょうという答弁をはっきりいただいているのでございますけれども、それは反面、国際的に大見えを切って私どもこれからこのくらい伸ばしますということを一遍言ってしまうと、これはなかなか後に引き戻せない。でありますから、今度のサミットに行かれるときによほど注意して行かれないとまずいのではないかなと私は考えております。  この点、竹下さんがロンドンで演説したという話もありますけれども、それははっきりとした数字として言っているわけじゃないし、新聞紙上伝えられるところによりますと、諸外国の平均〇・三五を〇・四くらいのめどでもってすごい形で伸ばしていこうという動きがございます。これは我我が非常に注意しなければいけない問題ではないか。これから市場開放に関連して、一つはこの前お話しいたしましたいろいろな国内措置も要るかもしれない。また、今度はアメリカからは軍事費の肩がわりで安全保障の面からいろいろな要素の要求があるかもしれない。そうなると、単に優等生というか、大体これだけやっていますよということだけでなくて、たまたま竹村健一が私の言っていることとほとんど同じことを言っているのですが、援助というものは、それなりにいろいろウエポンとしても使えるくらいの、しかも相手に本当に喜ばれるものでなければいけない。ただ量をふやして未消化になるような、今だったらこれだけ上がっているわけですから、そう消化も十分でないところにどんどんとやって、しかも質というのが、グラントコンテント、贈与部分の引き上げを中心として考えるよりは、もっと向こうに本当に喜ばれるものでなくてはいけない。  そういった面で、今まではODAというとだれも反対しなかったですね。特に我々野党も、軍事費に回すよりはまだいいや、こういう気持ちが強くて、もろ手を挙げてというか、もっとふやせふやせというような動きだったのですけれども、今や事業予算で一兆五千億で、一般会計は七千億ですけれども、出資国債も含めると一兆円近くのものが税金で賄われる状況に立ち至っているわけでございまして、私どもが国会で決議を必要とすべきじゃないかということを言ったのもその背景があるわけでございます。竹下さんがサミットでうっかり大ぶろしきを広げてくると次の税制国会に響きますよ、こういうことを私はちょっと外務委員会で言ってきたばかりなんですけれども、この点についてどうお考えになるか。  もちろん私は国際的責務を果たさなくてもいいとは言っていない。ある意味からいえば、国の安全保障の意味で諸外国の好意を得るということはあり得ますけれども、それは、私は繰り返すようですけれども、ほかの国というのは、フランスにしてもイギリスにしても旧植民地のところへ大部分出しているのですよ。アメリカの場合にはそういうストラテジックなところに出しているのです。でございますから、要するにほかの国と平均的なところで〇・三五、いや〇・四だなんていって日本の伸びたGNPでどんどん伸ばしていきますと、日本の場合には、貿易黒字はありますけれども、国家財政はべらぼうな赤字なんですね。ドイツ並みにしようと思っても、一人当たりの債務というのは日本の場合にはドイツの倍以上あるわけですね。財政再建を言い、新税を討議しようというときに、余り大きな手形を切ってきてもらっては困ると思います。  この点、外務大臣にも言っておきましたけれども大蔵大臣もどうお考えか。非常に重要な問題です。この国会が終わりますと、竹下総理がサミットへ行ってくるんでございましょう。そのときにどういう話をしてくるかということが非常にこれから先に響きますので、この点どういう御認識を持っていらっしゃるか、どういう態度をとられるかということをお聞きしたいと思います。
  277. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国は世界の平和と安全に軍事力をもってはほとんど貢献ができない、またすべきでもないということは国民のコンセンサスがございますから、その場合、これだけの経済力を持てば何かほかの方法で貢献をしなければならないということは、これも私はコンセンサスがあるところだろうと思います。ただ、おっしゃいますように、援助をして本当に相手にそれが役に立って、しかも悪い後味のない、向こうからいいことをしてくれたと思われるような援助の仕方というのは、これはこれで私は非常に難しいものだろうと思います。ただ気前がよく金を出せばそれでいいというような簡単なものではきっとないのでございますから、殊にこういう財政でもあり、また大きな国債費の負担もあるということでございますから、そして、おっしゃいますように、植民地のあった国は、ある意味で国民も、かつての植民地のためではあるのですが、そういうことについての一種の理解というか、それは当然のことだという国民自身の納得があるんでございましょうが、我が国は非常に急に援助が大きくなってまいりましたから、やはりそこで国全体としての理解というものもきっと必要であろうと思います。私は殊に大蔵大臣という立場でございますから、ただいまのようなお話は私もよく心に置きましてこの問題を考えてまいりたいと思っております。
  278. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それとの関連で、フィリピンに百億ドル援助を米国が日本と西独と一緒にやろうというような話を持ち出して、そのシェアは米国が一番少ない。日本と西独だ。その場合に、西独といったら当て馬みたいなもので、日本だって、例えば西独のすぐそばにある国について西独と同じくらいのシェアを持って援助しようなんていったってなかなかうんとは言わないわけでございますから。こういう話がいろいろ伝えられておりますけれども、これは、大臣、お聞き及びでございますか。
  279. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは報道されておりまして、ワシントン・ポストであったかと思いますんですが、正式には何も聞いておりません。  そこで、考え方の背景は、恐らくアキノ政権を何とかしてやはり盛り立てていかなきゃいけないということ、これはよく理解のできるところであります。相当の累積債務もある。それから、きっとアメリカにしてみますと、スビックベイ等々の基地交渉というものが今行われつつあるわけでございますから、これは相当のいわば経済援助と申しますか、援助と結びつくことは恐らく覚悟しなければなるまいといったようなこと等々、これはこの地域の安全に非常に寄与するんではないかといったようないろんなことの物の考え方というものがあるいはあるのかもしれないと思いますけれども、私どもとしては正式に何も聞いておりません。
  280. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いずれにいたしましても、農産物自由化交渉にしてもいろいろの要求もしてくる。私は外務委員会でココムの問題も取り上げたのですけれども、これから我々税制のことを論議しようというときに、単に日本が黒字であるということばかりで、えらい経済力ができたからやらなくちゃいかぬというだけの発想ではまずいんじゃないかな。やはり、黒字ではあっても、要するに、私は外務委員会のときにずっと言ったんですけれども、日本の財政はこれだけ悪くなっている。そうすると、国としては貿易黒字だけれども、ではだれが負担するのか。民間ならまた話は別だけれども、最後は税金じゃないかとなりますと、一つ一つがタックスペイヤーの目で見ていかなくちゃいかぬ。その中でどれにウエートをつけていくのか。  私はODAを問題といたしましたのは、最近の為替変動における異常な伸びですね。でございますから、量をふやしてみても、現実問題としては、実体的な価値は倍増しているわけですから、十分消化し切れないような形でどんどん出ざるを得ない。そうすると、一遍伸ばしたやつはなかなかもとへ戻せない。途中でやめちゃうと、これはまた逆に何だとなる。補助金以上の問題になると思うのですね。それだけに、伸ばすときにはよほど注意しながら、本当にそれが十分の効果を持って、しかも喜ばれている、スピードもそれなりのスピードで考えていくということでないと、一遍伸ばしたやつはもとへ戻せないのですね。  それとともに、今のフィリピンの場合には、経済援助であると同時に軍事的な要素が絡まってくる。そういう要素が絡まってきた援助をこれから要請される可能性もある。それもODAとして考えるのか、ODA以外として考えるのか。ODAはもともと民生が中心ですからODAの範囲とは別と思いますけれども、そういったことは絶対応じていかないのか。そういうことも絡まってきまして、よく我々は行革といって公務員を減らせとかなんとか言いますけれども、それ以上の大きな支出というものが続々と出てくる。公務員を少し減らしたぐらいじゃ追っつかない。むしろ外務省は、ODAをふやすよりも外務省の予算でもふやしてやって、もっとPRした方が同じものを出すのにましじゃないか。単にそういった予算をふやしてグラントコンテントをふやす、それが責任を果たすゆえんだなんて胸を張ってみたところで、現実問題として、いろんな外交交渉で、そんなのは、ああ、いいことをしておりますな、しかし私ども市場開放をやってくださいというのが落ちでございます。私もアメリカに長くおりましたけれども、アメリカ人というのはそういうところは、君はなかなかいいことをやっておる、しかし我々の問題は別だ、市場開放せよ。サッチャーさんもそんなものですからね。ちょっと日本人は気がよ過ぎるんじゃないかなという気がいたします。  私も少し短くしろという話でございますから、まだ大分時間がございますけれども大臣のお返答が私の言うことについて御同感であればこの辺でやめておきますけれども、御同感でなければもう一遍立って聞きますので、いかがでございますか。
  281. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 同感でございます。
  282. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それではこれでやめておきます。
  283. 越智通雄

    越智委員長 次に、矢島恒夫君。
  284. 矢島恒夫

    矢島委員 企業内容開示制度についてまず最初にお伺いしたいのですが、いわゆるディスクロージャー制度ということでございますけれども、今回の証取法の改正を見ますと、手続面の簡素化ということで、発行登録制度、一括登録制度というのを導入しよう、また届出については参照方式を導入しようとしております。さらに、届出書の効力発生期間の短縮、こういうものも出されておると思います。ただし、これは有価証券報告書等の届出義務のある企業のうちで周知性の高い企業について大蔵省令で決める、こういうことだそうですが、省令ではどのような基準をお考えなのか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  285. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 この発行登録制度あるいは参照制度を利用できる企業についての適格性を定めた省令でございますけれども、御承知のように、法律では企業等の内容が既に公衆に広範に提供されているものであるというふうに書いてございますけれども、これを受けまして具体的にどういうふうにするかこれから検討してまいるつもりでございますが、今私どもが考えております案を申し上げますと、企業内容が非常に周知されているものというのは、有価証券市場における取引高も非常に大きいとか、あるいは発行済みの時価総額も非常に高額であるというようなもの、こういったものは投資者が売買の都度有価証券報告書等の内容に触れておるというふうにも思われますし、また、当然のことながらそういった企業は新聞、雑誌等を通じて広く内容が流布されているというふうに考えられますので、基準といたしましては、上場の時価総額が一千億円以上であって、なおかつ最近一年間の流通市場における株式の売買高が一千億円以上というものが一つの考え方かなというふうに思っております。  ちなみに、これで大体どのくらいの会社がこの基準に該当するかと見てまいりますと、約四百社程度がこれに該当するというふうに考えられますので、これは余り厳し過ぎる基準でもないし、甘過ぎる基準でもないのかなということを今念頭に置いているわけでございます。
  286. 矢島恒夫

    矢島委員 そうしますと、省令に該当する企業四百社ぐらい、これは相当メリットがあると思うのですけれども、どういうメリットがあるのでしょうか。
  287. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 メリットといたしましては二つ考えられると思いますが、一つのメリットとしては、発行登録制度を利用することによって極めて迅速な起債、増資ができる、すなわち資金調達ができる。最近のように市場の動向が金利変動も激しいという状況のもとでは、こういったものを利用することによって弾力的な起債、資金調達をしていくということが必要であろうと思いますが、そういう需要にもかなうということが第一点でございます。  第二点といたしましては、そういう資金調達の際にいたします発行開示制度につきまして、いろいろと開示書類を整えなければいけないということになりますと大変手間もかかりますし時間もかかります。そういった発行体の時間、手間、こういったものを節約できるというようなことが考えられるのではないかと思います。
  288. 矢島恒夫

    矢島委員 機動的に資金が調達できるというメリットもあるし、いわゆる手続コストというのも安く済むだろう、こういうことだろうと思うのですけれども、このような改正は、投資者、発行者双方の状況、言うなれば市場環境が整ってきたということだろうと思うわけです。つまり、早い話が今日の財テクブームに対応した措置と考えるわけですが、そう理解してよろしいのでしょうか。
  289. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 財テクブームに対応した措置というふうには必ずしも私ども理解しておりません。むしろ、金利自由化が進んでいく中で金利の変動が激しくなる、こういった金融情勢のもとにおいて、できるだけ有利な条件で資金の調達をし、さらにこれを利用して企業資産内容の強化を図っていく、さらにまた営業活動の強化を図っていく、企業の体質を強化していく、こういったものに役立つものだというふうに考えております。
  290. 矢島恒夫

    矢島委員 このディスクロージャーという制度は、そもそも投資家に投資判断に関して必要な情報を提供すること、同時に、企業の不正行為を抑制するという機能も副次的な機能としてあると思うのです。今回のように非常に簡素化することによって、一つは大衆投資家は不便になるのじゃないか、つまり投資判断に困るのではないかという点と、もう一つは、大蔵省も、有証あるいは届出書等の記載に虚偽がないかどうか、そういうものの判断、チェック、こういう点で問題はないだろうかと思うわけなんですが、その点はいかがですか。
  291. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘の点は確かに相反する矛盾であろうかと思います。簡素化すれば非常に弾力的な資金調達が可能になりますけれども投資家に対する情報の提供として、すなわちこれは発行登録をいたしますと発行の都度企業内容が開示されないわけでございますから、その面についての問題点は出てこようかと思います。したがいまして、こういう観点から、既に企業内容が十分公衆に広範に知られているものだというふうに限ったわけでございますし、またできるだけ期近な情報一般投資家に提供していく必要があるというところから、臨時報告書という制度がございますけれども、この臨時報告書の項目も従来の五項目から十一項目に項目をふやして、できるだけその都度必要な情報一般大衆に開示できるような補完措置を講じつつ、こういう弾力的な資金調達が可能なシステムを導入しよう、こういう考え方に立っておるわけでございます。
  292. 矢島恒夫

    矢島委員 後半の問題なんですが、副次的機能と私言いましたけれども、不正行為抑制機能といいますか、要するに大蔵省のチェックという点でいろいろ問題が起きないだろうか、この点についてはいかがでしょうか。
  293. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 その点につきましても、臨時報告書を提出されますとやはりこのチェックも行うわけでございますし、それから発行登録とか参照制度と申しましても、全く何もないわけではございませんで、参照すべき財務諸表等をその登録書あるいは参照方式の場合の届出書に中に記載をするわけでございますから、その内容が虚偽であるかどうかということを大蔵省がチェックをしていくということについては、特に問題は発生しないのではないかというふうに考えます。
  294. 矢島恒夫

    矢島委員 問題がないということですけれども、このディスクロージャーの手続簡素化というものの恩恵を受けるのは、先ほど一応基準というもので考えていらっしゃる四百社ぐらい、いわゆる大企業だと思うのですね。現在投資家に最も必要な情報というものも公開されてないのじゃないか、こういう観点からですけれども、現在ディスクローズされている情報までさらに簡素化することによって一般国民から見にくくしてしまうのではないか、私はこの点を非常に懸念するわけです。つまり、今情報をディスクローズすべきだとする世論があると思うのです。こういうものに逆行していくのではないか。つまり、大企業の方は非常に簡素化とかあるいは資金調達とか非常によい面が出てくるけれども、実際に投資家にとっては情報そのものが不足してくるというような事態になるのではないか、投資というものを一部の国民の間に閉じ込めてしまうという危険があるのではないか、またそういうねらいもあるのではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  295. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 発行の開示あるいは継続開示と申しますか、こういったディスクロージャーのシステムというのは、もちろん企業内容等を開示いたしまして投資家の保護を図ることになるわけでございますけれども、このシステム自身をうまく使っていく、一般投資家にうまく知らしめていくためには、格付機関とか、そういう基本的な企業情報等を一般にわかりやすく一般投資家に知らしめてそして投資判断を提供するような機関といったものが拡大していくことが必要であろうかと思います。生の情報そのものというのは、一般投資家がごらんになっても、私どもが見てもなかなか難しい内容でございますので、そういったものを加工して企業の信用度等を格付していくという機関の発展が望まれるわけでございますけれども、現在御承知のように日本の格付機関も三社がそれぞれかなりの活動をしております。それからこの分野については外国、米国からの格付機関の参入もしてきております。したがいまして、そういったものと相まつとなりますと、この簡素化が即一般投資家情報判断資料について非常に大きな問題になるのだという御指摘は必ずしも当たらないのではないかなと思うわけでございます。
  296. 矢島恒夫

    矢島委員 いずれにしろ大企業は社会的にも責任があるわけですから、本来広く国民にディスクローズされるべきものだと私は思うわけです。  それからもう一つ、今度はさらに投資家情報を与えるという意味からのセグメントの問題があるかと思うのです。このセグメント情報の充実ということで検討されておると思うのですけれども、このセグメント情報には、いわゆる事業部門別というのと地域別の情報というのが含まれると思うのですが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  297. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 このセグメント情報と申しますのは、御承知のように、日本の企業の経営が多角化してまいりますとかあるいは国際化が進んでまいりますと、企業内容もますます複雑にわたります。いろいろな業務分野が広がっていくということで、できるだけその内容を開示するようにという考え方からこのセグメント情報の問題が議論されておるわけでございます。  では具体的にどういうものを開示するかという議論につきましては、現在企業会計審議会において議論をされておりまして、早ければ五月下旬、遅くとも六月上旬ぐらいまでには何とか取りまとめていただけるのではないかと思っております。したがいまして、まだ最終的に結論が出ておりませんので、ここでどういうものが入るということはお答えいたしかねますけれども、事業の種類別とか親会社、子会社の所在別等について分けまして、売上高とか営業損益とかの財務情報を開示する、こういうふうになろうかと思います。
  298. 矢島恒夫

    矢島委員 このセグメント情報につきましては、発行者の方も、また利用者の方も、何かアンケート等の集約の結果では「望ましい」という結果が出たと聞いておりますが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  299. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 アンケート先の立場によりましていろいろ違いますが、発行体サイドは、セグメント情報ということになりますとまた事務が非常に煩瑣になるとかいう問題もございますので、必ずしも非常に多数が賛成だったというふうには理解しておりませんけれども、その他の利用者サイド、これはほとんどぜひやってもらいたいというふうなお考えであったと思います。
  300. 矢島恒夫

    矢島委員 現在の有価証券報告書でわからない点が多々あるわけですけれども、そういう点で、このセグメント情報の充実というもの、私も必要だと思うわけです。ぜひ前向きの結論を出すよう希望するわけですが、今のお話ですと、企業会計審議会検討中、五月かそのくらいには結論を出すようにということですが、これは実際に報告書が出て実施という段階はどれくらいを目安にしていらっしゃいますか。
  301. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 セグメント情報につきましては、私ども省令の改正で対応できるというふうに思っておりますので、現在御審議をいただいております証取法の改正法案を御承認いただきますと、公布の日から六カ月以内に施行するというふうに考えておりますが、それにタイミングを合わせましてセグメント情報の問題についても処理をしたいという予定でおります。
  302. 矢島恒夫

    矢島委員 宮澤大蔵大臣にいわゆるディスクロージャーの制度の問題で最後にお聞きしたいのですが、やはりこういうディスクロージャー制度というものを国民に開かれたものにしていくということが非常に重要ではないかと私は思うわけなんですが、大臣、この点についてはどうお考えか、一言お願いしたいと思います。
  303. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のとおりであると思います。
  304. 矢島恒夫

    矢島委員 次に、証券行政関連で幾つか質問をしていきたいと思うのですけれども、民間信用調査機関の帝国データバンクが、一昨日、六十二年一月から十二月の法人申告所得のランキングを発表しております。証券会社は銀行とともに財テクブームを反映して大幅に所得を伸ばしているという現状がこのランキングの中ではっきりとあらわれているわけです。昨年十月、ブラックマンデーに端を発した株価大暴落、これによって相当の打撃を受けた。それと同時にまた、株式委託手数料率の引き下げというのもありました。ところが、証券大手四社等はこれを乗り越えて収益を上げているように見えるわけです。全国の金融機関の六十一年度の経常利益のランキング、これを見ましても、一位、二位、三位がいずれも証券会社ですね。野村、大和、日興、四位に銀行が一つ入りますけれども、五番目に山一、こういうふうに一、二、三、五とすべて上位を占めているという状況にあるわけですが、宮澤大蔵大臣に、まずこのような状態をどのように見ていらっしゃるか、一言。
  305. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 確かに証券会社の経営はこのところ非常に順調でございまして、御指摘のように、経常利益でも日本の全企業の中の相当上位を占めておるという状況でございます。ただ、証券会社の業務と申しますのはかなりぶれがございます。と申しますのは、全国平均で申し上げますと、八割から九割の証券会社の収入が顧客との株式等の売買手数料に依存をしております。大手につきましても半分ないしそれを超える程度依存しているわけでございまして、幸いこのところ株式取引が非常にふえたということもございましてこういう結果になったわけでございますけれども、今後は恐らくこの株式委託手数料の引き下げの影響等も出てまいると思いますし、また新たに国際的な業務を展開していくためにはいろいろコストもかかるという点もございますので、私どもももちろん証券会社の経営が非常に順調で投資家の信用を得ていくようにいろいろと指導していかなければいけないと思いますけれども、今のような状態が引き続き未来永劫続いていくものだというふうには理解しておらないわけでございます。
  306. 矢島恒夫

    矢島委員 まさに財テクブームの反映だと思うわけでございますけれども、そういう中で、証券会社では特に投資信託の伸びが非常に著しいわけですね。その投資信託の中でも、公社債を見ますと、五十七年から、特には六十一年から著しく伸びております。株式の方は五十九年から著しい伸びがあらわれております。  大蔵省証券局年報によりますと、「全投信の六十一年末における純資産総額は、対前年比十二兆一千三十一億円増加」、増加率で六〇・六%、前年の伸びが九・二%ですから、これを大きく上回り、「三十二兆七百五十三億円と初の三十兆円台乗せとなった。」こういう記述がございます。どうしてこのようになったかという点につきまして、この大蔵省証券局年報にもその理由が書いてございますけれども、同時に、今局長も御答弁の中に言われたように、いろいろと競争が激化している、またそういう中で、今後の見通しの状況の中に立っても、証券会社も相当無理をしている、つまり、従業員のしりをはたいて業績アップということで激しい競争が行われておる、こういうことの反映もその理由の一つではないかと思うのですが、それはいかがでしょうか。
  307. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 投資信託委託会社の運用資産が非常に増加している、その理由として、労働強化と申しますか、こういった要素があるのではないかというお尋ねでございますけれども、私どもは、この株式投信が非常に膨らみました理由の一つといたしましては、二年前でございますか、この株式投信につきましては、スポット投信と申しておりますけれども、この投信について各社ごとに設定の限度を設けておりまして、これを、やはり自由化という中でいろいろ業務について規制を行うのは適切ではない、できるだけデレギュレーションを図っていくべきではないかというふうな考え方から撤廃をいたしまして、それがまたちょうどこの日本の株式市場の株価の上昇と申しますか、一種のブーム的な傾向ともうまく、うまくと申しますと言葉は悪いのですけれども、合致いたしましてこの株式投信が非常にふえたということではなかろうかと思います。特に、株式投信につきましては、その性格上、専門家がこれを株式を中心に運用するということでございますので、個人金融資産が非常に増加しておりますもとで、個人資産運用のために直接株式運用するよりも専門家の運用してくれる株式投信の方が安全ではないか、有利ではないかという考え方、こういったいろいろな要素が絡まり合いましてこれが著しく増加したものだというふうに思っております。
  308. 矢島恒夫

    矢島委員 いろいろと言われましたが、ひとつ表面だけでなくて深く見ていただきたいと思うのです。といいますのは、今証券業界では、外国証券会社等に対する東証会員権の開放の問題、あるいは大口売買手数料の引き下げに始まるところの全面的な委託手数料の自由化の問題、さらには債券先物市場の開設、あるいは債券先物市場への銀行や外国証券会社等の参入、さらには分離型ワラント債の上場、いろいろと現在の証券市場のいわゆる存立基盤を揺るがすような大変革が進められていると思うのです。そういう中で、証券業界の再編合理化といいますか、国内外での競争が一層激化してきている。  そこで、大手証券中心にしまして、各証券会社の経営トップは、この競争に打ちかっていかなければならない、さらに一層の利益拡大を図っていかなければならないということで、徹底した減量経営、あるいは投資信託など各種商品の無制限な開発をやる、大量な商品を販売消化するための目標管理というものを強めてきているわけです。そして国内外の金融機関との競争とかあるいは業界企業間の競争というものが激化する中で、猛烈な新商品の乱開発あるいは乱売、あるいは新取引制度の導入、あるいは手数料第一主義の収益確保、こういうものが現在図られている。このために、証券会社に働く労働者は非常に過重ノルマ営業というものが、あるいは長時間、超長時間と言ったらいいと思いますが、そういう労働が強いられている状況にあるわけです。同時にまた、少数精鋭化ということで、慢性的に人員不足、労働強化、こういうのが現状だと思うのです。  例えばこのノルマなどを調べてみますと、三年前と比べてノルマは二十倍にもなっているという証券会社がある。労働時間の短縮だとかあるいは週休二日制、こういうものが叫ばれているのが今日の状況の中で、有給休暇もとれずに十二時間を超える長時間労働が常態化している、こういう訴えもあるわけです。まさに働く人たちは、そのために健康はもちろんのこと命まで脅かされる、こういう実態にある。こういう証券業界の従業員の実情をどうお考えですか。
  309. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 証券業界が非常に競争が激化した社会であるということは私どもも聞いておりますが、これは特に証券業界のみならず、やはり一般的に、企業としてこの競争に打ちかっていくために、合理化あるいは機械化、こういった努力をしていくということは、同じような方向で努力をしてきているのだというふうに思います。  ただ、ただいま御指摘のございましたように、証券業界の中に過当なノルマ、こういったものがあって、これが非常に労働問題その他大きな問題を惹起してるいということは、私どもは現在のところは寡聞にして聞いておりませんけれども、もしそういうことがあるとすれば、まずこれは一義的には経営の問題でございますので、経営者と雇用者との間で十分お話し合いになるべき問題ではなかろうかというふうに思います。私どもとして一番の問題は、例えば、もし仮にノルマというものが非常に厳しくて、これが一般投資家の犠牲のもとにおいて行われておるというようなことは私どもとしても決して看過できない問題でございまして、これまでも十分注意をしてきたというふうに思いますけれども、そういう問題とは別に労使の問題ということになりますと、これは私どもが関与する問題というよりも、まず労使の問題として両者の間でよく話し合っていただき、何か改善の方向を打ち立てていただくということではなかろうかなというのが今お話を伺って私の率直な感想でございます。
  310. 矢島恒夫

    矢島委員 ほかの企業でもそういう競争に打ちかついろいろな手だてとおっしゃられましたけれども証券の職場というのはそれが生易しいものではないのですね。そういう点を熟知していないというお話ですけれども、この課せられるノルマというのは、大手ですと月一人当たり二億から三億になるそうです。例えば、できるまで帰るなとか、こういうことでしりたたきが行われている。あるいは見せしめだといって立たせておくとか、こういうのもあるのですね。ノルマの達成率の悪い営業マンに対して、おまえは非国民だ、月給泥棒、課長の資格がないぞ、転勤させるぞという罵声で暴言を吐いて、精神的に詰めて強引にノルマをやらせる。また一方、全体の見せしめとして、業務命令で顧客や仕事を取り上げる。一人机に配置がえをする。暴力まで振るう。人格を無視した労務管理を背景に長時間過密労働が押しつけられている。まさに人権無視の暴言や体罰が横行している。  このことについては、労使間の問題、こういう御答弁でございますけれども大蔵省証券局長名で昭和四十九年十二月の通達が出されていると思うのですね。これは「投資者本位の営業姿勢の徹底について」という題目になっておりまして、主として投資者に対する営業姿勢、態度というものについて述べられているわけですが、その最後の方の五の項目には、「営業に関する成績評価を改善すること」というのがあるわけです。この中で、いわゆる成績評価に当たって取扱高とかあるいは手数料収入高のみを基準とすることはまずいということを言われているわけです。こういうことが過当勧誘等望ましくない営業姿勢につながるおそれが多い。だから、それだけじゃなくて、営業基盤拡充への貢献度とか、あるいは投資勧誘態度、あるいは事務処理の状況というものも成績評価の中に加味せよというようなことまで述べた通達があるわけですね。  こういう点から見ても、既に実態としては大変な事態が起きていることは、熟知してないというお話ではございますけれども、毎日新聞のことしの四月のものですが、この人はある大手の証券会社の営業で課長までしている人です。こういうのがあるのですね。「ある日、同僚の課長が仕事中に脳血栓で倒れ一週間後に死んだ。ショックだった。「仕事、仕事で生きてきた彼の人生は何だったのか」」「家庭でも「もっと子供にかかわって」と言う妻の視線を背中に感じ始めた時期だった。  しかし家庭に時間をとられればノルマ競争に負ける。課長であっても成績が悪ければ関連会社への片道キップの「出向」が待ち受ける。」そして、この人は福岡支店へ転勤されたのですね。つまり、こういうような事態が起きているのは、まさに成績評価というものが通達に反する方向で行われているからこういう事態が起きているのだ、直ちにこういう点について指導すべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  311. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 御指摘のように、四十九年の証券局長通達につきましては、投資者本位の営業姿勢の徹底を図るべきであるという観点から、営業員の成績評価を取扱高とか手数料収入高とかそういったもののみに依存するなという通達は出しております。証券会社を検査いたします際にも、この通達の趣旨が徹底されるかどうかは当然念頭に置いて検査も実施し、必要な指導もしてきておるところでございます。  私がいろいろと聞いたところによりますと、証券会社のこういう営業成績の評価に当たっては、必ずしも取扱高のみを基準としておるわけではなくて、その人の人柄とか全般的な判断力の問題とか、まさにそのポストにふさわしい人材であるかどうかというのを総合的に判断をして決めておるというような話はいろいろなところで聞いております。ただ、御指摘のような点がもしあるとすれば非常に問題だと存じますので、検査等の過程を通じましても、一層この点を念頭に置いた上で検査を実施するように配慮してまいりたいというふうに存じております。
  312. 矢島恒夫

    矢島委員 局長の耳に入るいろいろなところからという、このいろいろなところが非常にあいまいで問題であると思うのです。というのは、より深くいろいろな情報をやはり知っていただきたい。私の取り上げたいろいろな実例というのは、まさにその証券会社で働いている人から直接聞いて得た資料だということですね。ですから、今十分に職場の実態というものもひとつ、こういう通達を出しているわけなんですから、やっていただきたいと思うのです。  この投資信託の問題では、証券会社は、これはまさに戦略商品だ、こういう位置づけをしているのですね。その募集、販売が異常な量で、頻度も多くなってきている。しかも、その販売に当たっては、いわゆる「必達商品」ということで、販売推進の現場では大変な状況になっている。こういう状況というのは、先ほどこれが投資家に影響したらそれは大変なことだと局長答弁された。現場の状況を聞いてみますと、投資家にも影響を与えているのだという声が聞こえてくるわけですね。例えば、大手証券の中小証券が対象としているような中小企業や零細大衆投資家層への食い込みが行われている。あるいは激しい新商品の売りつけが行われている。こういう中で、証券セールスマンの中でも、証券事故が起こるのではないか、あるいはまた強引な販売は投資家保護の精神に反するのではないかとか、さらには額面割れするような商品を売らすなというような声まで出てきているわけなんですね。ですから、ただ単に労使間の問題だというだけにとらえておきますとこれは大変な事態になる。既にいろいろとトラブルも現場では起きているという状況が報告されているわけなんですね。  このことについても、やはり四十九年十二月の通達の中で、これは四十九年のときですけれども、「最近の証券会社の営業姿勢をみると、収益の向上を急ぐあまり投資者の利益を軽視した過当勧誘、過当競争を行い、その結果、投資者の信頼を失う事例がなお見受けられることは誠に遺憾である。」「この際、従来の営業姿勢について真剣に反省し、投資者本位の営業姿勢を一層徹底する必要がある。」ということが前文に書かれている。ところが、この四十九年に出された文書、まさにその事態は今日においても同じように続けられている。こういう通達を出した以上は、実際に先ほど局長も言われたようによく調べて、そうして実際にこの通達が生かされているかどうか、こういう点を点検する必要があるのではないか。いかがでしょうか、こういう実情についてもう一度点検してみる、そういうお気持ちはありますか。
  313. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 先ほどからお答え申し上げておりますように、労働強化というのが投資家に非常に不利に働くとか投資家にダメージを与えるとか、そういった問題は私どもの最大の関心事でございます。したがいまして、四十九年の通達もそういうことを背景にして発出されたものでございます。証券事故あるいはこういう顧客とのトラブルといったものにつきましては、検査の際にそれがどういう理由で発生したのかということもいろいろ調べておるわけでございますし、それからまた、証券業協会の苦情窓口等に寄せられたような場合につきましても、協会が間に立っていろいろと仲裁をする。その場合には当然そのトラブルの背景等も調査するということになっております。私どももそういう点につきましてこれからも十分配慮しながら業務を進めていくということは当然のことだというふうに思っております。
  314. 矢島恒夫

    矢島委員 もう一つ証券取引所の問題についてお聞きしたいのですけれども、私はあらかじめ証券局から全国八カ所の取引所の職員数を伺ってきたわけです。ここ数年の取引所の従業員の数を見ますと、東京を除いてほとんどが同じか、あるいは大体が減っているという状況にあるわけです。これは株式市場の活性化とか成長の中でこれでよいのかなと思うのですが、この点はどういうふうにお考えでしょう。
  315. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 確かに、御指摘のように、取引所の職員の数はほぼ横ばい、あるいは若干減少傾向だろうと思いますが、この間の証券取引所の機械化の進展というのもあわせてこの辺は考えてみないといけないのではないかと思います。私も機械化の状況を具体的に一々存じているわけではございませんけれども取引所の機械化のための設備投資と申しますか、これは相当な金額に上っておりまして、こういったものをあわせて考えますと、この職員の数というのが業務の規模の拡大に比べて必ずしも不適切だとは言えないのではないかと思います。
  316. 矢島恒夫

    矢島委員 今大企業は大証券本位で、いわゆる東京市場集中の証券行政が進められておると思うのですね。各地方取引所市場機能の低下というのが問題になっていると思うのです。大蔵省もこの立場で地方の取引所を整理あるいは合理化し統廃合しようというようなことをしているのではないかという声もあるわけですが、その点はいかがですか。
  317. 藤田恒郎

    藤田(恒)政府委員 地方の証券取引所の問題につきましては、確かに通信手段の発達等によりまして地方証券の存在意義というものが昔ほどではなくなってきている、かなり低下してきているということは否めない事実だろうと思います。しかし、私どもは、基本的には地方証券取引所の問題は地場産業あるいは地場証券会社取引所との間でまず話し合っていただき、その辺のコンセンサスを十分つけていただくという問題であろうかと認識しておりますので、私どもが統合の旗を振るとか、そういうようなことは現在の時点においては考えておりません。
  318. 矢島恒夫

    矢島委員 大阪取引所では新たに職員を採用しないようだし、広島で二、三年前になりますか職員を採用しようとしたら財務局からなぜ採用するのかというクレームがついたという話も聞いております。  時間になりますので、最後に大臣にお聞きしたいのですが、今経済全体が東京一極集中という状況にある、証券もまた東京集中になってきている、こういう状況について大臣どうお考えか、ひとつ最後に。
  319. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 証券もと言われた意味は、証券取引という意味だと思いますので、東京という市場取引中心になるということは、これは国際関係もあわせますとやはり一つの成り行きではないか。ただ、御承知のように、各地に取引所がございまして、それはそれなりにその地方での機能をいたしておりますから、これは私ども、地元で大事にしたいとお考えになられる限り、そうしていただくことがいいと考えております。
  320. 矢島恒夫

    矢島委員 終わります。
  321. 越智通雄

    越智委員長 次回は、明十二日木曜日午前九時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時四十四分散会