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1988-03-18 第112回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月十八日(金曜日)     午後五時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 大島 理森君 理事 太田 誠一君    理事 中川 昭一君 理事 中西 啓介君    理事 中村正三郎君 理事 中村 正男君    理事 宮地 正介君 理事 玉置 一弥君       新井 将敬君    井上 喜一君       江口 一雄君    遠藤 武彦君       金子 一義君    木村 義雄君       小泉純一郎君    笹川  堯君       杉山 憲夫君    高橋 一郎君       月原 茂皓君    戸塚 進也君       葉梨 信行君    堀之内久男君       松田 九郎君    村井  仁君       村上誠一郎君    山中 貞則君       山本 幸雄君    上田 卓三君       沢田  広君    野口 幸一君       早川  勝君    堀  昌雄君       武藤 山治君    橋本 文彦君       日笠 勝之君    森田 景一君       矢追 秀彦君    安倍 基雄君       正森 成二君    矢島 恒夫君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局審議官    長瀬 要石君         大蔵政務次官  平沼 赳夫君         大蔵大臣官房総         務審議官    角谷 正彦君         大蔵省主計局次         長       斎藤 次郎君         大蔵省主税局長 水野  勝君         大蔵省証券局長 藤田 恒郎君         大蔵省銀行局長 平澤 貞昭君         国税庁次長   日向  隆君         資源エネルギー         庁次長     高橋 達直君         資源エネルギー         庁石油部長   内藤 正久君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部生活経済課         長       泉  幸伸君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第二課長   吉田  博君         文部省高等教育         局学生課長   平川 忠男君         建設省住宅局住         宅・都市整備公         団監理官    丸田 哲司君         参  考  人         (住宅都市整備         公団理事)   渡辺  尚君         大蔵委員会調査         室長      矢島錦一郎君     ───────────── 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   今枝 敬雄君     松田 九郎君   鳩山由紀夫君     高橋 一郎君   藤波 孝生君     木村 義雄君   山中 貞則君     月原 茂皓君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     藤波 孝生君   高橋 一郎君     鳩山由紀夫君   月原 茂皓君     山中 貞則君   松田 九郎君     今枝 敬雄君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣提出第五号)      ────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出租税特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  3. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤総理大臣大蔵大臣に昨年十一月に質疑をさせていただいて以来ちょうど四カ月になんなんとしておりますが、大変おなれになっただろうと推察をしております。あの当時は大臣になったばかりでいろいろ実情や実態をまだよく把握していないというふうな意味のことを答えておりましたが、四カ月経過して、副総理並びに大蔵大臣という立場から見て、今内外の諸問題で、これは緊急課題だな、これは不安材料だな、これは少々重要だが難しいな、いろいろ感ずる点があるんじゃなかろうかなと思うのでありますが、その優先順位はいずれとしても、大臣自身が今脳裏の中にかすめている不安材料とか緊急課題とか特に重要な処理案件、そんなのをまとめて何点かちょっとお聞かせいただければありがたいと思います。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財政経済の問題に関してお尋ねであると思いますので、その範囲で申し上げたいと存じますが、いろいろ御示唆もあり御協力もありまして、我が国経済それ自身は比較的順調な展開をいたしつつあると考えております。そこで、今後経済運営よろしきを得まして、昭和六十五年度赤字国債依存体質から脱却をしたいというかねて政府が申しておりますことを何とか実現をいたしたいということを一つ考えております。この点は、NTTの株式の未売り払い分をまだ相当持っておりますので、社会資本整備勘定を通じまして内外の要請であります内需拡大を妨げることなく特例国債依存体質から脱却をしたい、こういうことを考えておるわけでございます。  ただ、昨今我が国経済動向も諸外国に大変な影響を与えますが、その逆もまた真でございますので、我が国だけのことを考えておりましても、外側からどのような不測のことが出てまいるか、これは予測の外でございますので、いわばどういう展開になりましても我が国として迷わない、困らないというような心構えを常に持っておることが大切であると思っておりますが、アメリカの昨年の十月十九日の株式暴落も、当座心配されましたようなその後の余り深刻な後遺症あるいは再発というようなこともなしにここまで推移してまいりまして、うまくいけば余り深刻な傷を残さずに済むのではないか、またそうあってほしいと思っております。また、米国当局者もそのように努力をいたしておるようでございます。  ついでに、アメリカ当局者努力によって財政赤字も不十分ではありますが何とか縮減をしなければならないということだけは理解をされておるようでありますし、貿易赤字はジグザグかもしれませんがやや縮小方向に入ってきたと思われますので、それらは為替にとりましては安定要因であろうかと存じております。ただ、一つ申せば、十一月までアメリカはもう既に選挙に入っておりますので、とかく政策決定選挙ということの前にいわば二義的なものになりやすいということがございますので、この点は米国当局者基軸通貨国としての経済運営について今後とも十分に配意を続けてもらいたいというふうに思っております。  最後に、このような状況におきまして我が国の恐らくこれから国際的に求められますことは、世界経済、殊に対外援助と申しますか発展途上国に対する我が国の貢献、なかんずく累積債務問題等について日本が何を考え、何をしてくれるのかといったようなことがいろいろな機会に論じられることになろうと思っておりますが、これは我が国自身の世論の動向からいいますと、殊に相手がラテンアメリカの国であるということもございまして、国際機関が何かその間に立ってくれまして、その傘のもとで、あるいはそれに対する協力のもとで我が国ができるだけのことをしていくという姿が望ましいのではないかと思っておるのでございますけれども、御承知のようにいろいろ事情がありまして思っているほどテンポは速くございません。しかし、この問題が今後我が国一つの役割を担うべき大きな問題であることは疑いないであろうと考えております。
  5. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤さんが大蔵大臣になった時期は非常に恵まれた大変いい環境のときの大蔵大臣で幸せだなと思うのであります。人間はやはり運のつきというのがいろいろありまして、ついている大蔵大臣と言ってもいいと思うのであります。  きのう企画庁国民所得統計速報を発表いたしました。これを見ると、すばらしい六十二年暦年の経済の様子がありありと報道されているわけでありますが、ついに一人当たりGNPドル換算アメリカを抜いた、スイスに次いで世界第二位という報道であります。国民は、こういう新聞報道を見て、世界スイスの次の国民所得額だ、大変な金持ちで豊かな国民だ、数字の上ではこう思わせるのでありますが、どうも実態はそうでない。その実態がそうでないという最大の原因は、物価の絶対水準、これが非常に高い。年度当たり物価上昇率は非常に低いのでありますが、この絶対水準というのが余りにも高過ぎる。この辺がこういう統計数字国民の感覚の乖難になっているのですね。そういう問題を、政治家としてどうしたらこの絶対水準ヨーロッパ先進国並みアメリカ並み購買力になれるのか。報道によると、アメリカと比較すると食料品などは平均しても大体三〇%ぐらい日本の方が高い。ヨーロッパと比較してもかなりの差がある。だから、私は、これから退治しなければならぬ病気は、この絶対価格水準というものをどうしたらそういう先進国並みにできるのか、その辺について大臣はどんなお考えを持っているでしょうか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国GNPスイスに次ぐ高さになったということも報道されましたが、これはかなり部分為替レートのしたいたずらと申せないこともございませんで、私としましては、GNPの高さそのものもさることながら、かなりGNPの高い国としては国内所得格差が少ない国である、所得格差の少ない社会であるということを大切に考えるべきではないかと思っております。  それはそれといたしまして、まさに武藤委員の言われたようなことがございまして、殊に食料、それから住居費と申しますか、住宅コストと申しますか、これは世界第二の経済大国としてはまことにお恥ずかしい現状であります。ある意味では、供給のコストが、食料の場合にも、住宅、殊に土地の場合にも、アメリカに比べればどうも高い、高からざるを得ないということがあると思うのでございますけれども、それはそれといたしまして、その中でなお工夫の余地があるであろうということは申せることでございます。しかし、食料にしてみますと、もうよくよく御承知のように、我が国農業が持っております非常に難しい問題がたくさんございますから、ただ自由化してしまえばいいというほど事は簡単でない。それに向かってのいろいろな努力を積み重ねていくということと存じます。  それからもう一つは、食料あるいは生活費価格の中で、流通機構の問題があると思うのでございます。これは流通機構簡素化せよといいましても、現実にその流通機構で人が飯を食っておりますうちは、なかなか盲腸を切るような格好にはまいりませんので、やはり雇用状況がよくなりまして、そして流通機構から、今までそこで飯を食っておった人々に他の方へ雇用の道が開けていくということで、結果として流通機構が簡単になっていく。ちょうど昭和四十年代の半ばにいっときございましたような、人手不足から後継者の問題なんかとも絡みまして流通機構というものが簡単にならざるを得なかったというような形でありませんと、なかなか流通機構簡素化が難しいと思います。しかし、これも雇用問題の中で簡素化してまいりましたら、幾らか生活費コストが下がってくるということになるのではないかと考えております。
  7. 武藤山治

    武藤(山)委員 絶対価格水準を下げる方法をこれから政治家としていろいろ検討し、追求しなければいけないというのは私の持論なんです。  例えば日本の米の値段カリフォルニア米よりかなり高い、だから自由化して得するというような議論もありますが、この前大蔵大臣に農家の皆さんを連れて案内したときに、米だけは絶対私は自由化をさせないと明言したのです、私の立ち会っているところで。最近アメリカは米まで含めて包括法案の中でもいろいろ議論を始めたりしているようで、大変厳しい対応が迫られてきているようでありますが、米だけに限っては、自由化についてはあの当時といまだ心境は変わっておりませんか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は所管大臣でございませんのでそれをお断りして申し上げますけれども、私は我が国の米を自由化するということは極めて困難なことだと考えております。また、それをしますことが別にアメリカその他の国にとって特段の利益になるというふうにも思えません。
  9. 武藤山治

    武藤(山)委員 ただいまの答弁、私も全く同感であります。  そこで、米の生産費をもっと下げる方法というのは私はいろいろあると思うのです。きょうは農林省を呼んでないのですが、企画庁でわかりますか。通告しておかなかったから無理かもしれませんが。例えば日本の使っている農薬、それから肥料、この価格アメリカと比較した場合に、どのくらい日本肥料農薬値段が高いかということが一目わかるのですが、数字があればちょっと答えてもらいたいのです。
  10. 長瀬要石

    長瀬政府委員 突然のお尋ねを賜りましたが、今手元に数字は持っておりませんけれども、御指摘のような飼料あるいは肥料に関しまして国際比較をいたしますと我が国の方が水準としては高い、それが我が国農産物価格の原価の面におきましてコスト高にしている一つ要因ではないか、このような指摘がなされていることを承知をいたしております。
  11. 武藤山治

    武藤(山)委員 大臣、私この前資料をざっと調べたら、肥料なんか倍以上ですね。農薬日本のは三倍ぐらい高いですね。農機具アメリカと比較してべらぼうに高いですね。ですから、どうしても米の生産費をできるだけ圧縮させるためには、その辺の流通を、さっきも大臣は、流通にいろいろ問題がある、こうおっしゃっているのですが、この流通にもう少しメスを入れないといけないと私は思うのです。  例えば肥料の場合は肥料価格安定法があります。ああいうもので保護しています。規制がまだきちっとできているのです。だから、ああいうものをそろそろこの段階になったら、財界寄りばかりの政治をやらないで、本当の生産農民の末端の苦労を考えて、これは少し規制緩和をきちっとやったり、もうそういう法律はやめるならやめて、少し国際化の中にさらしてもらう。そういう肥料農薬農機具というようなものに対する流通価格のあり方を政府としてもしっかり検討してもらいたい。  ところが、大蔵大臣財政金融責任者だから、それは農林省だ、こう言うけれども、森羅万象全部財布を預かっているのは大蔵省なのですよ。これは森羅万象なのですよ。日本国全体の経営のキーポイントを握っているのは大蔵大臣なのです。ですから、大蔵大臣がそういう意味で全体のバランスのとれた絶対価格水準を実現しようという意見を閣議の中ででも何でも遠慮なく物を言うべきだと思うのです。やはり日本の役所というのは、縦割り各省別で縄張りでタコつぼの中へ閉じこもって物を考えているから、自分のところだけ侵されるときはもうむきになって抵抗するのです。だから全体のバランスを常に考える大臣がいないと、こういう行政国家官僚国家はなかなか改善ができないのじゃないか。そういう意味で、次の総理を目指すためにこれはマイナスかな、これはだめだなんてちゅうちょしないで、国家国民のためにひとつ思い切ってばんばん発言をしてやってみよう、そんな決意になって今の流通問題についてのメスを入れるような発言をぜひしていただきたいのですが、どうですか、約束できますか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 直接他の省庁のことに触れないという立場で申しますけれども、やはり前内閣からいわゆる開放体制というものはかなり進めてまいりまして、その中心になっておりますのはデレギュレーションと言われるものでございますから、これはこの内閣におきましてもどんどん進めていくという総理の方針でもありますし、ぜひそれはそうしなければならないと思っております。
  13. 武藤山治

    武藤(山)委員 宮澤総理のこれからの御努力を御期待を申し上げておきたいと思います。  企画庁、せっかくお呼びをしてありますので。  最近の経済動向が非常によろしい、政府当初見通しあるいは修正見通しの三・七をはるかに超えて、今の状況でいくと一―三月も大変いいだろう、そうなると、年間四%から四・五%ぐらいの実質経済成長になるだろうというのがけさの新聞の報ずるところであります。こういう状況でいくと、六十三年度一年間いっぱいをこう見通してみて、今国会に提出してある予算の基礎である経済見通し三・八をはるかに超えるような状況が生まれてくるだろうか。当初の三・八をはるかに超える場合のはるかは、どの程度までが大体予想されるのか。ごく最近のデータで企画庁見通している数字をちょっと説明してみてください。
  14. 長瀬要石

    長瀬政府委員 お答えいたします。  昨日、六十二年の十月から十二月の国民所得統計速報が発表されたわけでございまして、我が国経済かなり腰の強い自律的な拡大過程にある、このように見られるわけであります。このようなことからいたしまして、六十二年度実績見込みといたしまして三・七%ということで経済見通しが作成されているわけでありますが、六十二年度につきましては十分達成可能である、これを上回る可能性があることは否定できない、このように考えているところでございます。  六十三年度につきましては三・八%という成長率を見込んでいるところでございますけれども、六十三年度に関しましてはまだ年度が始まる前の時点でございまして、もとより御指摘がございましたような統計資料も踏まえることは必要でございますけれども、他面におきまして今後の内外経済動向の情勢を見守りながら考えていくということでございまして、現時点におきまして見通しを改定するということは考えておりません。
  15. 武藤山治

    武藤(山)委員 見通しの改定は考えていないけれども、大体四%を上回ることはやや確実の推量として数字を認識していいんだろうかどうだろうか。恐らく六十三年度も四は超えるだろう。それとも、いやもっと不安材料が幾つもあってそうは見通せない、こういう立場に立つとすれば、企画庁が考えるこれからの不安材料というのは何と何と何が予想されるか、もしあり得るとすれば不安材料はこんなものがある、それをちょっと説明してみてください。
  16. 長瀬要石

    長瀬政府委員 六十二年度に関しましては、仮に六十三年一―三月が前期比ゼロで推移いたしましたと仮定いたしましても四・一%程度という単純計算になるわけでありまして、一―三月がどうなるかによりまして六十二年度成長率が決まってくるわけでございます。  六十三年度に関しましては、ただいま申し上げましたように、今後内外のさまざまな要因があるわけでございまして、年度が始まります前の時点でございますので、それについて具体的に申し上げることはなかなか難しいかと思います。  定性的に申しますと、六十一年度から六十二年度にかけまして民間住宅建設が大変爆発的な増加を示したわけでありますが、これにつきましては、さらに一段これが増加をするという状況はやや考えにくい。むしろ、成長に対して、マイナスにはなりませんけれども、中立的なあたりでいくか、このように見られるわけでございます。あるいは、そのほかの政府関係の支出につきましても、六十二年度ほどに成長を押し上げる要因になるかどうかは議論があるところでございます。  しかしながら、個人消費につきましては、雇用者所得増加が期待できるところでございますし、あるいはまた設備投資につきましても、非製造業に加えまして製造業投資が盛り上がってくる。中小中堅企業に加えまして大企業投資増加傾向を示している。このようなことからいたしまして、個人消費民間設備投資中心といたしまして引き続き六十三年度堅調な経済の推移をたどるのではないか。数字として、こういうことになりますと、私ども、三・八%、こういう成長率を今掲げているところでございます。
  17. 武藤山治

    武藤(山)委員 役人だから三・八以上のことは言えないんでしょうが、まあいいでしょう。なかなか長瀬審議官も歯切れがよくて立派な審議官だなという印象を受けたわけです。歴代企画庁調整局長というのはなかなかすばらしい人で、私の好きな人がいっぱいここから出ているものですから、きょうは首実検ではないけれども、一体企画庁はどんなことを答えるんだろうかという興味を今持っていたのであります。  大臣企画庁、どちらでもいいですが、これからもしあり得るとすれば、不安材料は、こういう状態が景気の過熱まではいかないが、この拡大基調物価にどういう影響が出てくるか。今までは卸売物価はもう全くマイナスで推移するような状態ですが、この一年間を見通したときに、年の十月、十一月ごろから物価問題は心配ないかどうか。これが一つ。  もう一つは、貿易黒字日本アメリカの間では大変好ましい方向に減ってきておりますが、しかし、また貿易黒字が余り減らないという傾向日本経済体質からなっていくのじゃないか。そうなると、また円高ドル安という局面が出てくるのじゃないかという不安を私は一つ持っている。というのは、今までの為替相場をずっと見ていると、大体このラインでやや安定するかなと思ったのが、十円ぐらい円高になる期間が大体八カ月間くらいですね。ここ二年間の統計をずっと見ると、大体八カ月で水準が崩れて十円ぐらい違ってきているんですね。そうすると、百三十円前後のラインが百二十円になるのに八カ月ぐらいの期間でまたなるんじゃないか、私はそういう不安を持っているんですよ。しかし、そういう不安は、これは危惧だ。もし私のそういう不安が何月ごろそういう時期が来るかと見ると、この十一月ごろにはどうも百二十円ということになっちゃうんじゃないのか。アメリカ大統領が十一月にかわって、徹底的な緊縮財政あるいは輸入制限を思い切ってドラスチックにやるような大統領が出れば別でありますが、どうもその辺、まだアメリカの双子の赤字は、そうなかなかは投機家金融筋が思うような形には手当てができないんじゃないか。そう見ると、まだ円高がやってくるなという不安を持っているんです。これが二つの私の不安なんです。  もう一つの私の不安は、後で質問しますが、今回租税特別措置でいろいろ住宅促進のための法律を改正したりつくったりして住宅促進をしようとしていますね、恩恵を与えて。それの積算の根拠は、何万戸ぐらいの住宅がそれでふえるかという積算主税局はしているのか、査定するときに。建設省とどういう打ち合わせをしてこういう法律を出してきたのか、その辺は説明いただきますが、この三つがこれからの一年間を見通したときの私自身不安材料として、やはり報道をいろいろ読んでみて感じるのですね。  大蔵大臣、そういう不安材料心配ない、こう言い切れる状況と判断するのか、どうでしょう。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変私どもも関心を持って、いわばある意味では興味深い話題を御提供いただいておるわけであります。冒頭のこれから不安要因があるとすれば何かというお尋ねは、まさにそこのところを言っていらっしゃるわけで、私自身反復自分で考えてみておる話題でございます。  まず、順序はちょっと違いますが、貿易黒字のお話をなさいました。経済企画庁見通しによりますと、ほぼ百億ドルの貿易収支黒字が減る、九百二十億ドルから八百十億ドルに貿易収支黒字幅が減っていくという、ほぼ百億ドル、これは私はいいところではないかというふうに思っております。私はちょっと武藤委員感じは違いまして、ここでかなり数量的に輸入が伸び、また輸出の伸びが鈍っておるというこの傾向は、国内でもうかなり内需転換も行われておりますので、このままいくのではないかという感じの方を私は強く持っておりまして、したがいまして、貿易収支百億ドルぐらいの黒字幅縮小というものは、この六十三年度の間にまず期待してもいいのではないかという感じを私自身は持っております。  それから物価でございますが、経済企画庁卸売物価で〇・三%、消費者物価で一・三%を見ておりますから、まずまず十分ではなかろうか。卸売物価の点は、これは武藤委員はむしろ円がまたある段階で高くなるとお考えでございますが、そうすると、それは多分今度逆に物価を下げることになってくるかと思いますが、私はそうも思っておりません。そうも思っておりませんから、卸売物価は何がしかプラスになるであろうということは、これはやむを得ない。消費者物価の一・三も、まあまああれこれ落ちついておりますので、よろしくはないかと思います。  残りますと、そうすると住宅というものが残っておりまして、これはもう今年度が非常にようございましたものですから、対前年比としてはもうそれだけの力は望めないと考えるのは、これはどうもほぼ常識的に意見が一致しておるようでございます。  そこで、総じて一言最後に申しますならば、普通、これだけ経済が動き出しますと、一昔前でございますと設備投資がいわば二段ロケットになって引っ張っていってくれた。それが非製造、製造、ぼつぼつございますけれども、かつてのような重厚長大というようなわけにいきませんので、この牽引を何がしていってくれるかということにいわば未知の要素がある、そういうことではないかというふうに思います。
  19. 武藤山治

    武藤(山)委員 きょうは諸般の事情で通告時間を半分くらいに圧縮をするものですから、通告をした質問がかなりできないと思うんで、資源エネルギー庁、企画庁、大変申しわけないと思っていますが、途中でまた飛び出るかもしれないから待っていていただいていいですか。どうしてもというときは退席して結構ですが。時間の制約上詰めてやります。  そこで、主税局長、今回の租税特別措置法で、優良住宅地の造成の特例、それから住宅取得促進税制でとにかく住宅促進に手当てをしよう、こういうことで二つ三つ特例を今度設けるわけですが、これは、建設省との折衝の段階で、恐らく昨年のような住宅建設は、百八十万戸ベースでは、このままでは六十三年はちょっといかないんじゃないか、そこで、できるだけダウンしないように税制でひとつ面倒見てくれ、こういう折衝で、主計局はある程度戸数などもつかんだ上で、じゃそれを認めよう、それで主税局との話し合いでこういう特例ができるんだろう、こう思うんですね、手続的には。一体こういう法律をつくるために住宅建設の推移がどうなるという計算なり計画でこういう特例をつくったのか、その辺の戸数をちょっと言ってみてください。
  20. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいまのお話にもございますように、住宅は六十二年度かなりの伸びでございます。六十三年度民間住宅の見込みは、政府経済見通しでは三%くらいの伸びとなってございます。しかしまた、この中で内訳を見ますと、持ち家と借家の方でございますと、借家の方が割合ウエートを伸ばしている。伸びが大きい。そういうことからいたしますと、住宅取得促進税制は持ち家の方でございますので、現実的に申し上げますと、この住宅取得促進税制の話のときでも、これによりまして持ち家の方が大きく伸びるということには見込んではございません。持ち家を取得する方の初期負担を軽減申し上げる、そういう観点から詰めておりますので、戸数がこれによって伸びるというふうには見ておりません。ただ、持ち家につきましても、六十年度に対しては六十一年度若干の伸びはある、それはこの制度によってというほどには見ておりませんが、そこそこの伸びは見まして、そしてその減収額を計算いたしてございます。
  21. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうすると、住宅取得促進税制という形で、土地税制で居住用財産を譲渡した場合とかいろいろありますが、私が一番住宅建設に力を入れようとしている項目はこれかなと思うのは、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正、特定の民間再開発事業の用に供するための譲渡、こういうような形で特定民間再開発事業、そういうものを取り入れて既成市街地等の新たなる開発に便宜を与えよう。地上四階以上、中高層の耐火建物、一千平米以上。それから第一種市街地再開発事業、それに対しても今回は従来と違った手当てをしよう。これはやはり住宅促進をするための税制なんでしょうね。その場合、これが何戸ぐらいこういうことによってふえるという見込みなり積算をしないで、圧力でこういう法律をどんどんやっちゃうのですか。やはり大蔵省と建設省の間ではある程度そういう積算というのはするのでしょう。どうなんでしょうか。
  22. 水野勝

    ○水野政府委員 先般も御議論をいただきましたが、土地関連の税制につきましては、これによりましてどのくらいの面積のものがふえ、それによる減収額はこういうものであるという定量的なものは御準備は申し上げておりません。あくまで優良な宅地の供給に即するということで定性的にお話をいただき、それでもって処理させていただいておりますので、定量的にこのくらいのものというところになりますと、そこまでのものを申し上げるものは持ってございません。
  23. 武藤山治

    武藤(山)委員 そうしますと、この特定民間再開発事業、第一種市街地再開発事業、これの今回の法律改正によって適用を受けそうだなという件数というのはどのくらいなんですか。建物や何かは別として、そういう一千平米のものを要請してくるだろうと思われるややの件数は。皆無ならこんな法律改正する必要ない。また、その積算がないのにこんなものを出してきたら承知するわけにいかない。どのくらいあるんですか、そういう件数は。
  24. 水野勝

    ○水野政府委員 ただいま申し上げましたように定量的なものは持ってございません。また、これによりますところの減収額というものも計上はいたしてございません。
  25. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、こういう法律を直してくれとかつくってくれという要望をされている団体はどこですか。どういうところからこういう要求が来て主税局はやったんですか。主税局の自発的な発想で減収になることなんか出すはずがない。
  26. 水野勝

    ○水野政府委員 現在の土地問題の重要性にかんがみまして建設省、国土庁からのお話があり、それを当方と詰めましてこうしたいわば最小限度の、税制上の措置としてはぎりぎりのものとしてここに落ちつかせていただいたということでございます。
  27. 武藤山治

    武藤(山)委員 そのぎりぎりのところとかぎりぎりの問題なんというのは我々にわからぬじゃないですか。何がぎりぎりで何がぎりぎりじゃないんですか。そのぎりぎりというのはどういう意味ですか。
  28. 水野勝

    ○水野政府委員 御要望の筋といたしましては、例えば法人がお持ちになっているものをこの際放出されて宅地開発されるというような場合には、法人につきましては税率の特例とか取得控除ということは余りないわけでございますが、ここはそういうこともひとつ実現をしてもらいたいというような要望もかなり強くございましたが、法人につきましてそうした特例措置を講ずるということが法人の持つ遊休土地の放出につながるのかどうか、法人としては、やはり営利企業でございますので、土地はその営業目的に従いまして保有しあるいは処分をされるということが通常の姿ではないか。でございますから、この際そうしたものまで宅地供給ということに結びつけながら拡充していくことはいかがかということで御勘弁をいただくとか、そういう話し合いをいたしました結果、今回、御指摘のこうした優良住宅地の造成等のための措置の拡充ということで対処させていただくこととし、御提案申し上げたわけでございます。
  29. 武藤山治

    武藤(山)委員 この説明は納得できないですね。しかし、これ以上この問題でやりとりしても仕方ないけれども、少し安易に流れ過ぎている感じだな、今の答弁では。主税局長、これからやめてもっと偉くなる、そんな希望があって圧力に屈服したなんて思われないように、やはりきちっと積算の根拠を出して、国権の最高機関では、どういう詳細なことであっても、こういう効果があります、こういうメリットが国家国民のためにあるのですと自信を持って言えなければだめだ。ぎりぎりのところで、何となしに要求がいっぱいあった中からぎりぎりこれをやりましたなんて、主税局長、決断がいいかげんじゃないですか。少しこれは文句を言っておいて終わりますけれども、そういう態度ではちょっといけないですよ。もっときちっと説明できなければいけない。  それから、企画庁、ちょっとお尋ねしますが、今、春闘の最中で、四月の第二週に大手が決着をつけようとしているわけですが、ことしの雇用者所得の伸びですね。政府経済見通しによりますと、雇用者所得は絶対額で幾らになって、パーセントで何%ぐらい前年よりふえる、どういう見通しを立てているのですか。
  30. 長瀬要石

    長瀬政府委員 お答えいたします。  六十三年度雇用者所得につきましては、前年に対しまして五・二%の増加、このような姿を想定いたしております。
  31. 武藤山治

    武藤(山)委員 経済見通しでは、二百一兆三千億円、前年比五・二%の増、こう見ているわけですね。したがって、前年よりも〇・八ポイントぐらいの伸びになるわけでありますが、例年の例から見て、五・二%を実現するためには、春闘のトップランナー・クラス、いつも毎年やっていますから、企画庁、知っていますね、こういうところが前年より何%ぐらいの率がアップされないとこの数字は実現しないか、逆に考えたときに、どの程度水準が予想されますか。  もう一つは、三・八よりも実質成長率も上がるし、名目成長率も高くなる。そういうことはもうやや確実だ。だから五・二よりも高くなると思うのですよ。しかし、一応この五・二、ベースアップ、収入がふえるという前提に立った場合に、トップランナーの賃上げ率は昨年の何%ぐらい上積みで、どの程度水準になるのが政府見通しにかなう数字だ、そういう数字はどういうことになりますか。
  32. 長瀬要石

    長瀬政府委員 お答えいたします。  経済見通しで掲げられております雇用者所得は、その中にもちろん春闘の対象になります所定内給与を含んでいるわけでございまして、見当で申しますと六割前後、こういうことになるわけでありますが、私ども、政府見通しの策定に当たりましては、雇用者所得全体としてさまざまな経済変数に基づきましてマクロ的に試算をいたしているところでございます。  そういうようなことでございますので、春闘の賃上げ率につきましては、経済見通し策定上直接これを算定するということはいたしておりませんで、春闘における賃金決定につきましては、これは先生御案内のように労使の話し合いのもとにおきまして決められる問題でございまして、具体的にこれを予測するというようなことで政府として申し上げることは適当ではないのではないか、このようなことで御理解を賜りたいと思います。
  33. 武藤山治

    武藤(山)委員 大蔵大臣、今の企画庁経済見通しでは五・二%雇用者所得が伸びる。そういうことでもう年内に新聞報道などでも政府の態度、姿勢が公表されている。にもかかわらず、日経連の大将は定期昇給範囲内が好ましいという談話を何回も出してそういう経済実態なり実情とかけ離れたことを言うなんということは不見識だと思うのですが、大蔵大臣、どう考えますか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 労使間のお話で賃金水準が決まるということが最も望ましいと政府は常に考えておりますので、今のことにつきまして直接にあれこれ申し上げにくうございますが、いろいろ推測をいたしますと、例えば時間短縮の問題もございますでしょうし、あるいは雇用そのものの問題もございますでしょうし、それから、恐らく、日経連の会長のお立場からしましても、これから大きな春闘という山場があるわけでございますから、その一方のいわば、何と申しますか、旗頭という言葉は適当でないかもしれませんが、そういうお立場からいろいろに御発言はあちこちのことを考えながらなすっていらっしゃるのではないか、ただそれだけ私は思いながら拝見をいたしております。
  35. 武藤山治

    武藤(山)委員 あちこちのことを考えて言っている。あちこちでいいですけれども、それにしても、政府が五・二雇用者所得が伸びるとちゃんと経済見通しで発表しているときに、幾ら戦術的というか、あるいは挑戦的というか、賃金を抑えようという意欲の余りか、いずれにしても定期昇給の範囲内が正当だなんという日本の経営者の感覚を私は大変不満に思うのですよ。  これは政府としてもそんなことでは困りますよ。内需拡大をやろうとして、消費をふやそうとして一生懸命政府の公的な資金を六兆円もかけて減税と公共事業とをやっているのですよ。そういうときに、政府見通しよりはるかに低い、定期昇給の範囲内なんてたわ言を言わしておいたら困りますね。それは自由経済だから干渉できない。くちばしを出せない。しかし、それにしてもガイドラインぐらいに考えてもらわぬと困るのですね。余り副総理にそういうことを言うと、政治献金が集まらなくなっちゃうから言えないと言うかもしらぬけれども、これはやはり政治家として、毅然として、そういう整合性のあるものを財界としても主張すべきですよと、そういう注意ぐらいはする。今、兄貴分から注意がありましたが、そうなんですよ、日経連は今まで、生産性原理、そういうことを中心にやっていたのでしょう。だから、生産性がこんなに一生懸命働いて上がるときに、そんな定期昇給の範囲内なんというようなたわ言を言われたのでは我々我慢ならないのであります。何か折があるときは少しおきゅうを据えてください。いいですか。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃいますことはよくわかっております。しかし、もう一言申しますなら、恐らく鈴木さんも、こういう経済動向、それからやがて春闘という大きな山場を控えられて、いわばそういう方の一方の責任者でいらっしゃいますから、ここではいろいろ交渉も行われることでございますし、あれこれをお考えで言っていらっしゃるのではないかと想像いたしております。
  37. 武藤山治

    武藤(山)委員 時間があと十分ぐらいですから、今回の租税特別措置法の改正に関連したことに絞って質問しますが、石油税を六十三年度から特例として、今まで従価税だったのが今度は従量課税ですね。何でこんなことをするのですか。その根拠、理由をまず説明してください。
  38. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 今回、六十三年度の措置といたしまして、従来は従価税でございました石油税につきまして従量化をお願いしているところでございますが、先生御案内のように原油価格が大変不安定な状況で推移しておりまして、六十三年度価格につきましても、ペルシャ湾の情勢いかんによりましてはまた価格が高騰する懸念もあるわけでございます。また一方におきまして、現在市況が軟調でございまして、産油国の安売りあるいは過剰生産によりましては価格が急落する可能性もあるということで、見通しが極めて不透明であるという状況があるわけでございます。  こういう状況にかんがみまして、とりあえず六十三年度におきます石油税負担の安定を図りつつ、財源の安定的確保という観点から、課税方式につきましては暫定的に従量税に改めていただくことが適当であろうというふうに考えたわけでございまして、今回の六十三年度の措置につきまして、例えば従価税で措置するとすれば、原油が高騰いたしますと最終的な負担者である消費者に必要以上の負担をかけることにもなるわけでございますし、また大幅に下落いたしますと所要の税収が確保できないという両方の要因が考えられますので、この際暫定的に従量税でお願いするのが適当だろうというふうに考えたわけでございます。
  39. 武藤山治

    武藤(山)委員 暫定的とは何年間か。
  40. 高橋達直

    高橋(達)政府委員 とりあえず六十三年度の措置としてお願いをしておりまして、六十四年度以降の問題につきましては、今後の税制の抜本見直しの中で検討されることが適当かと考えております。
  41. 武藤山治

    武藤(山)委員 今後の抜本的税制改革の中に、石油税は検討の対象に入っているか入っていないか、主税局長。
  42. 水野勝

    ○水野政府委員 今回の税制改革は抜本的な全体の見直しでございますので、酒の税金もございますが、こういう油の税金も含めまして全体として検討される問題でございます。
  43. 武藤山治

    武藤(山)委員 される問題であるが、税制調査会に既にそういう資料を提出して検討は一回ぐらいでもやったかやらないか。
  44. 水野勝

    ○水野政府委員 税制調査会では、年が明けましてから部会に分かれまして全体の勉強を始めております。現行税制を全部一わたり資料を提出し御審議をいただきました後、それでは今後の方向についてどのようにするかにつきましては八種類の間接税についての考え方があるというところで、そういった問題も一わたり勉強をいただきました。  今後、では基本的な問題であるところの新しいタイプの間接税をどのようにいたしてまいるか、それによりまして既存の間接税制がどうなるか、それが関係してくるわけでございます。したがいまして、今後の問題としては課税ベースの広い間接税の問題に絞って検討される、それによりまして当然既存のもろもろの間接税、個別消費税のあり方も検討されることになろうと思っております。
  45. 武藤山治

    武藤(山)委員 それでは、ガソリン税も石油税も、すべての油に関する間接税全部を税制調査会で検討するのですね。確約していいですね。
  46. 水野勝

    ○水野政府委員 昨年御提案申し上げた税制におきましては、そうした油の関係のものは一応適用外というふうに取りまとめまして御提案をいたしました。そういう経緯はございますが、今回もとにかく全体の個別消費税につきまして検討はされると考えております。
  47. 武藤山治

    武藤(山)委員 私も随分新聞は丁寧に見ているつもりだけれども、先ほどエネ庁が言うように、抜本税制の中でガソリン税や石油税やいろいろな石油関連税法を取り上げている議論というのはまだ聞いていない。あなたはどこからそういうニュースを聞いたのか、説明してください。
  48. 水野勝

    ○水野政府委員 石油税の六十三年度の姿につきましていろいろ検討いたしました段階におきまして、先ほど御答弁がございましたように、六十三年度の税収の安定性、税負担の安定性を考慮して六十三年度について従量税にする、その後の問題につきましては、お話のございました抜本的な税制改正との関連、それから財源需要、こういったものを前提としてその時点で考えるということで両省の間で話し合いがされたところでございます。
  49. 武藤山治

    武藤(山)委員 来年のことを言うと鬼が笑うということわざがありますが、いずれにしても通常国会には抜本改革は出てこないわけですから、先の話でわからないと言えばそれっきりですが、大臣、今度の抜本税制改革の中で、ガソリン税、石油税、揮発油税、石油関連税制がいろいろありますね、これの見直しもきちっとやらせますか、やらせませんか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねはもっともなんでございますが、今主税局長の申し上げておりますのは、政府としては何かベースの広い間接税をやがてお願いいたしたいということを考えておるにつきまして、それとの関連は、すべて今の間接税が観念的には関連を持ってまいりますものですから、昨年の場合には結果としてはいじりませんでしたが、やはりそれとの関連では一応そういうものを点検せざるを得ないであろう。実はそれは可能性として観念的に申し上げている部分が多いのでございますけれども、そういう意味のことを申し上げたのだと思います。
  51. 武藤山治

    武藤(山)委員 いずれにしても暫定的特例として六十三年度は従価から従量にする。なぜ従量にするかといえば、増収を図りたいからでしょう。増収を図りたいからということは、エネ庁の思うような予算が使えなくなるから、使えるように増収を図ろうというのでしょう。だから、エネ庁の問題は、その事業の使い方に問題があるのですよ、私が言いたいのは。  例えば、国家備蓄、民間備蓄、いろいろ備蓄の問題にしても、エネ庁が今までの特権と今までの事業量と金額を縮小させたくないから、こういうこそくな、価格が下がってきたら今度は量にぶっかける、量でまずくなったらまた価格にかける。その都度その都度の便宜主義をやられたらかなわぬですよ。車に乗ってやっているのは、ガソリンを使っているのは、今はもう大衆なんだ。庶民階層なんですよ。だから、そういう意味で、輸入される油にあれやこれや税金いっぱいいろいろな形でかけている、そういうものを安易にこういう形に従量税化することには私は賛成できない。  というのは、油はもうだんだん量がふえないように政府の方は方針を立ててやっているのでしょう。あなたの方のエネ庁の長期エネルギー需給見通しを見たって、油はもうふえないのですよ。昭和六十一年度の実績が二億四千六百万キロリットル、七十年も二億四千五百、七十五年も二億四千二百、八十年も二億四千万キロリットルという計画を立ててエネ庁はやっておるわけでしょう。これはもう量はふやさないような方針になっていっているんだね。そうすると、従量税にして、量が伸びないから、支出の方の予算要求はふえてくるから、また何かこれは増収策を考えるという、便宜的に庶民、大衆の使う油の原価の方から税金をこんなに吸い上げるなんていうやり方は賛成できない。  しかも、新聞報道によると、民間備蓄の枠がまだいっぱい余っている。皆さんの方の計画では、全体で一億二千万キロリットルですか、備蓄しよう。しかし、今備蓄しているのは七千何百万キロリットルだね。これはまだ余裕が大分あるんだよ、民間の備蓄施設が。そういうときに、国家備蓄でなければいかぬからといって、石油の税金を上げて国家備蓄の予算に使うのだとか費用に使うのだとかという発想自体がエネ庁はおかしい。  というのは、総理府の総務庁は、国家備蓄はできるだけ民間の施設を使えということを去年の七月ですか新聞に全部報道して、国家備蓄について総理府として意見を述べている。ところが、それに対してエネ庁が反論をまた新聞に出している。総務庁が、ちゃんと六十二年の新聞にあるでしょう、石油の国家備蓄は民間タンク借用が望ましい、そういう勧告をした。ところが、安全保障上国家備蓄基地をさらに進める方針だと言って、エネ庁は総務庁に真っ向から反論を新聞発表している。  しかし、私は政治家の一人として、どちらの考え方がより適切であり、効率的であり、費用を少なくして今の行政改革を進めている財政の苦しい事態の中でどちらを選択するか。この総務庁の方針の方が国民的にかなっている。エネ庁のは横車だ。自分の権益を守らんとするための意識的なこういう要求はいかぬ。こういう官僚がふえたら国家を滅ぼす。私はそういう意味で、この問題については一時間ぐらいみっちり質問しようと思っていろいろな資料を集めてきたのですが、今後抜本改革の中で石油諸税をやるとあなた言ったから、社会党の財政金融政策委員長の私、責任者として、政府に徹底的な改革を申し入れします。これ以上あなたと論争しません。  しかし、大臣、今の民間備蓄の総務庁の考え方とエネ庁の考えが真っ向から対立をして、しかも民間の石油連盟は、ぜひ民間のをうんと使ってくれ、まだ施設がいっぱい余っているんだ、ぜひそうしてくれと政府に要望しているんだよ。そういうようなことについても、副総理大臣としてしかとひとつ実情を調べて、次の私の質問のときにまた聞きますから、ひとつしかと対処していただきたい。以上要望して、ちょうど一時間でありますから質問を終わります。     ─────────────
  52. 越智通雄

    越智委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として住宅都市整備公理事渡辺尚君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────
  54. 越智通雄

    越智委員長 質疑を続行いたします。宮地正介君。
  55. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、租税特別措置法の一部改正案の最後のバッターとして、質問をさせていただきます。  まず、大蔵大臣にお伺いを申し上げたいと思いますが、土光臨調の生命線であります「増税なき財政再建」、これについては大蔵大臣としてどのように考えておられるか、堅持をしていく決意を持たれているかどうか、お伺いをしたいと思います。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような方針が打ち出されまして以来、財政当局もいわゆるゼロシーリングあるいはマイナスシーリングを重ねまして、いわゆる「増税なき財政再建」をやってまいりました。六十五年度には特例公債依存の体質から脱却しようという目標も、やや現実の射程に入ってきたように考えます。今後ともこの努力を続けてまいる決心であります。
  57. 宮地正介

    ○宮地委員 この「増税なき財政再建」のいわゆる土光臨調の中身、「増税なき財政再建」というのはもう御存じのように、「当面の財政再建に当たっては、何よりもまず歳出の徹底的削減によってこれを行うべきであり、全体としての租税負担率の上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、」ということでございます。  まず、この文面について大蔵大臣はどのように理解をされておりますか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり、新しい税を起こすことはもちろんでございますが、税率を上げるとかあるいは税の構造を変えることによって増収を図るというようなことは適当でない、まあその中で、さらに申せば、全体が動かない中での、この中のやりくりということをいかぬとは言っていらっしゃらないのかもしれませんけれども、税制を動かす形で増収を図るということは適当でない、こう言っておられるように解釈しております。
  59. 宮地正介

    ○宮地委員 主税局長、租税負担率は現在どのくらいですか。
  60. 水野勝

    ○水野政府委員 昭和六十三年度の歳入見積もりを前提といたしまして、現在御提案申し上げているものといたしましては、国税、地方税合わせまして二五・五%でございます。
  61. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵大臣、租税負担率二五・五%は、これは上昇をもたらすような税制上の新たな措置を基本的にはとらない、こういうことですね。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、私が先ほど申し上げたところでございますが、国民所得がふえてまいりますと、殊に直接税の場合には累進税率がございますので、、これがきいてくるということは避けられないところであります。結果として、つまり租税制度を改めないにもかかわらず、国民所得対比の負担率がふえるということはあり得ることだと思います。
  63. 宮地正介

    ○宮地委員 租税負担率が高まることは、これはあり得るというふうに今おっしゃいましたが、そうすると、それは土光臨調の基本的精神に反するんじゃないですか。
  64. 水野勝

    ○水野政府委員 五十八年三月十四日の臨調最終答申、先ほど委員が御指摘になった文章になっておるわけでございますが、行革審の最終答申、六十一年六月十日の最終答申でございますが、これは今「増税なき財政再建」の定義として御指摘のような文章をまず繰り返しておられるわけでございます。  で、それに続けまして、「租税負担率を上げない範囲内で税制改革の一環としての税目や税率の新設改廃や見直しまで否定しているものではないことは当然である。また、税の自然増収、不公平の是正等の結果、租税負担率が上昇することも否定されるものではない。もっとも、上述のごとく、中長期的には租税負担率を現状よりも引き上げ得る余地は少ないことに留意すべきである。」このように、いろいろ幅広い観点から最終答申はまとめられておるようでございまして、これがただいままで申し上げているところの意味でございます。
  65. 宮地正介

    ○宮地委員 私は土光臨調の、やはり大先輩の土光会長がこの「増税なき財政再建」というもの、この一つは、租税負担率を現在よりも引き上げることは特にこれは気をつけなさいよ、また新税を導入して大きな政府をつくって、そして水膨れ的なような政府をつくっては将来大変ですよ、活力ある福祉国家はできませんよと。この「増税なき財政再建」というのは、土光さんの遺言にも近い重大な提言ではないか、これは素直に大蔵省が受けとめて、真剣にこれに取り組んでいかなくては将来大変な禍根を残すのではないか、これを私は言いたいわけでございます。  特に、土光さんが会長をおやめになるときにお述べになった最後の談話は、私たちが国会議員としても、また大蔵省の皆さんも篤と受けとめていかなくてはならない重大なことを述べておられると私は思うのであります。   六十一年の六月二十七日をもって、行革審はその任期を終え、解散します。昭和五十六年三月、鈴木内閣によって臨調が設置され、中曽根内閣に引き継がれ、さらに行革審となって、今日まで五年三か月、約二千日になります。この間、国民の皆様方の絶大なご支援を得て、臨調・行革審は、全国民的課題である行政改革の推進に努めてきました。 こういうくだりの中で、特に土光さんは、   わが国の将来にとって、国民の活力を維持・発展させるとともに国際社会の一員として責任を果たすことが何よりも必要であり、それはまさに国家の存立と盛衰にかかわる重大事です。その意味で、臨調は「活力ある福祉社会の建設」と「国際社会に対する積極的貢献」という行政の二大目標を提示したのです。この目標実現の前提として、「増税なき財政再建」の基本方針を厳守し、国民負担率の上昇を極力抑制しつつ、行財政の改革をやり遂げることが不可欠です。  まず、こういうふうに前文でお述べになりまして、   今、ここで行財政の改革をあきらめるならば、これまでの努力は水泡に帰し、行財政は再び肥大化の道をたどり、ようやくほの見えてきた明るい希望も消え去るでしょう。私はこのことが心配でならないのです。 その後ですね。会長は続けて、   行政改革は、二十一世紀を目指した新しい国造りの基礎作業です。私はこれまで老骨に鞭打って、行政改革に全力を挙げて取り組んできました。私自身は二十一世紀の日本を見ることはないでしょう。しかし、新しい世代である私たちの孫やひ孫の時代に、わが国が活力に富んだ明るい社会であり国際的にも立派な国であることを心から願わずにはいられないのです。 こう土光さんはおっしゃっているわけです。  この土光会長の精神、魂というものは、やはりスリムな政府をつくるために行政改革をまずしっかりと断行せよ、そして現在の租税負担率約二五%強、主税局長は二五・五とおっしゃいました。社会保障負担一一%、この三六%前後の国民負担を上昇させるようなことだけはまず行政改革によってさせるのではない、安易に新しい税を導入して水膨れの政府をつくってはならぬぞ。まさに私は、この新しい型の税こそ大型間接税であるということを土光さんは命の中に持っていたと思っております。こういう点について、そのとりでを本当に堅持していくのが大蔵省の皆さんではないか、こう私は考えているわけですが、大臣、この点についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 土光臨調の精神は、ただいま宮地委員が言われましたとおりと考えます。したがいまして、私どももそれに従って、予算編成に当たりましてゼロシーリングあるいはマイナスシーリングということで、各省庁の御協力を得てここまでやってまいりました。特例公債をもうしばらくのところでゼロにできるかというところまで、財政改革も行政改革も進んでまいったわけでございます。  他方で臨調は、将来到来すべき高齢化社会のこともいろいろに考えておられまして、その際に国民負担というものは恐らくある程度上昇せざるを得ないであろう、それがどのぐらいになるかということは明確に言っておられませんが、そういうことについてもいろいろに議論をしておられます。その中で、ただ言っておられることは、先ほど主税局長も申し上げましたように、この際税率を上げるあるいは控除をふやすという、いわゆる税制改正という形によって増税をするということは適当でない、こういうことを考えておられます。こちらの税とこちらの税とのいわば総額をふやさない間での改廃であるとか、あるいは経済成長に伴う累進税率の結果等々で自然増収ということは、これはあえて否定するものではない、しかし、税制改革によるところの増税というのはその精神に合わない、こういうことを言っておられると思っております。
  67. 宮地正介

    ○宮地委員 ここの問題については、予算委員会総括で竹下総理にも私はお伺いしました。竹下総理は、いわゆる所得と資産と消費、この三つの税の均衡的なバランスの中で、例えば所得が所得税のところで減税になる、資産が減税になる、結果として租税負担率が変わらなければ、この土光臨調の精神には反しないというような大変竹下流の御発言がございました。今、宮澤大蔵大臣も同じような趣旨をおっしゃいました。私も、これは所得税や既存の税制の中の不公平感、ひずみ、こういうものの税制改革までは、土光さんは否定していないと思います。  しかし、この土光会長が幾度となくおっしゃっている発言というものをお伺いする限り、例えば一時の痛みのために財政再建と行政改革をあきらめれば、行く行くは大増税と経済社会の停滞を招くことになる、明確に土光さんは将来の大増税時代になってはならぬと命がけでおっしゃっている。これは、まさに安易に大型間接税を導入して水膨れの政府をつくってはならぬ、現状の税のひずみや不公平感を改めることは大いにやりなさい、しかし、それと同時に行政改革をしっかりやってスリムな政府をつくりなさい、安易に大型間接税などを導入して経済社会の停滞を招くような政府をつくってはならぬ、こうおっしゃっているのではないですか。私は、良識のある副総理である宮澤大蔵大臣にこの点について篤とお考えいただきたいと思って、きょうはあえて御質問させていただいたわけです。いかがでしょうか。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだっての予算委員会でも御質問がありまして、総理大臣も答えておられましたが、片方で所得課税、所得税、法人税等々に確かに我が国企業意欲あるいは勤労意欲をそぐほどの重税感があるといったようなときに、これだけ所得水準も上がってまいりました、所得格差も少ない、これから到来すべき高齢化社会についての費用を広く薄く国民に分担をしていただくということはしかるべきことであろう。それはただし、おっしゃいますように、スリムな政府という理念を壊さないようにということを考えながらやるべきであるというふうに考えているわけでございます。
  69. 宮地正介

    ○宮地委員 宮澤大蔵大臣の宏池会の大先輩であり、またお師匠さんに匹敵すべき大平総理が、あの五十四年の十月に総選挙をされました。あの総選挙のとき、大平総理は一般消費税(仮称)を掲げて、財政再建の目玉として選挙されました。中曽根さんと違って大平総理は、今後の財政再建をやるために一般消費税(仮称)、これをやりたいと考えておると事前に国民に示して、解散を打って選挙をやられた。中曽根さんのように大型間接税はやらないと公約して、後からまさに大型間接税である売上税を通常国会に出してきた、政治家の資質としてあなたの大先輩は立派であったと私は思っております。その大先輩がやはりあの総選挙のときに、大変にこの一般消費税(仮称)に対する国民の反撃に遭いまして苦しみました。投票日を直前にして、私たち野党からの問いかけに対して自民党はやむなく回答をせざるを得ない、そういう羽目になりました。大蔵大臣は御存じであろうと思います。  その野党の公開質問状のときに、この財政再建問題に対して自由民主党の見解として昭和五十四年の十月二日に出されたわけであります。その回答の中において、消費税なしで財政再建をやると明確に回答をされたわけであります。「歳入、歳出の見直しを中心として、一般消費税によらない手だてを見いだし、財政再建の契機をつかむよう努力する」、これが回答であります。しかし結果は、御存じのように総選挙は自民党が大敗をいたしました。そして、あの四十日間の政争が始まったわけであります。そして、十二月二十一日にいわゆる財政再建に関する決議、これが出されまして、「財政再建は、一般消費税(仮称)によらず、まず行政改革による経費の節減、歳出の節減合理化、税負担公平の確保、」云々、こういうことでこの決議が国会で全会一致でつくられたわけです。  こういう経緯を見れば、先ほどの土光会長の命がけの御発言、また、あなたの大先輩である大平総理が総選挙まで打って勝負にかけたが、しかし惨敗をした、そしてその後にこの決議ができた、このことを考えますれば、まさにこの一般消費税(仮称)というのは、消費税を間接税という形で導入して国民に大きな税負担、増税をやってはならぬ、この厳粛な事実ではないか。私は、言葉の竹下流とか宮澤流とかという、そうした解釈でこの問題を取り扱うべきではない、むしろこの精神、魂はどこにあるのか、将来の日本をどうするのか、この観点に立ってこの問題は議論すべきである、それができるのは良識ある宮澤大蔵大臣ではないか、こう期待して御質問させていただいているわけです。この点についていかがでしょう。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこで、大平内閣による選挙があり、十二月末に国会の決議がなされまして、以来政府としては、本当に血のにじむような行財政改革の努力をしてまいりました。行政改革も、いろいろな面で具体的に成果を挙げました。財政改革もゼロシーリング、マイナスシーリングということで数年間、いわばスリムな行財政をつくろうということで努力をしてまいりました。その結果として今特例公債も、ひょっとすると六十五年には脱却できるかもしれないというところまで参っておるわけでございます。したがいまして、その行財政改革のために今度新税を設けるといったようなことは考えておりませんで、片方で直接税、所得課税に非常な重税感があるというときに、それとの関連ないし高齢化社会を展望して、この際税制の抜本的な改革を図りたいとは考えておりますけれども、これは財政再建のためにというふうに私ども考えておるわけではございません。
  71. 宮地正介

    ○宮地委員 ですからこれは、財政再建ということになっておりますけれども、今回の竹下内閣が目指す税制抜本改革は、やはり活力ある福祉社会をつくる、国際社会に貢献できる日本をつくる、現在の不公平な税制、不公平感のある税制はこれを変える、この基本的思想はまさに土光臨調の思想じゃないですか。たまたま財政再建というところの問題が薄くなったような感じを与えておりますけれども、私は、本質的にはやはり現在の百五十九兆円の国債残高というものがある日本を見て、財政再建ではないなんというようなことを大蔵大臣がもしもおっしゃるとしたら、これは大蔵省の官僚の皆さん、怒られますよ。そういう点でその思想は同じじゃないですか。土光臨調の精神、竹下内閣のやろうとするところ、二十一世紀に向けての活力ある福祉国家日本をつくるためでしょう、抜本改革というのは。  これ以上議論をしていきますと長くなりますので、私は、きょうは大蔵大臣に、そうした見識と良識を持って、先輩の多くの方々が命がけで今日までつくり上げてきたその精神、魂というものをよく酌んで、言葉じりの議論だけで済まさないでもらいたい、このことを強く訴えたいのであります。ましてやこの財政再建決議というものは、あなたの大先輩の大平内閣のときにつくられた決議であり、この解釈は当然国会、立法府にあるわけですから、行政府にあるわけじゃないのです。私たち立法府が考えているこの一般消費税(仮称)というのは、これは常識的にはそんな小さな角度のものではない、やはり大型の間接税である、こういう認識を持っております。これは後で必ずわかることだと思います。  そういう点で、この大平内閣のときにできた五十四年の財政再建決議、この本当の精神を酌んで今後対応していけるのは何といっても、失礼かもしれませんが、師匠と弟子の関係にあった宮澤さんがやるべきではないか、その魂、精神をやはり本当に酌んで生かしていくのはあなたじゃないか、こう期待を込めて御質問をさせていただいたわけでありますので、どうかその精神というものを酌んで、今後の税制改革においてもよろしくお進めいただければな、こう思っております。御決意を伺いたいと思います。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御趣旨は重々よくわかりまして、土光臨調精神を酌み、また故大平首相の考えておられますことを承継いたしまして、御趣旨のようにスリムな政府のもとに事を進めてまいりたいと思っております。
  73. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、今回の税制改革問題で、予算委員会で竹下総理と各党の委員いろいろ議論をしているのを現場で見させていただきました。今回の財政再建決議の問題、あるいは私どもの矢野委員長、当時書記長が御質問したあの六十年の二月の政府統一見解、これだって会議録にきちっと中曽根総理政府統一見解と明言している。そして、六十一年のあの衆参ダブル選挙のときの中曽根総理のやはり公約問題。あのとき選ばれた現在の国会議員が、竹下内閣という、政権が変わっても同じ国会議員がやっております。皆さん自分の公報では、大型間接税は導入しない、こういう公報を書いてきたのがほとんどです。国民にみんなそう言ってきた。しかし、売上税という、現実的には非課税品目をたくさんつくりましたけれども、穴はあいたといっても本質的にはやはりこれは大型間接税だ、これは廃案になった。  私は、そうした小手先の問題でなくして、やはりこれからの日本の将来を考えたときに、本当に今、国会、また特に政府大蔵省に与えられた責任と使命というものはまことに重大である、単なる言葉じりだけのやりとり、議論で終わってはならない、こう思っておりますので、きょうはそれ以上は進めませんが、ぜひそうした精神を酌んで、先輩の命がけの――大平さんだってあの衆参ダブル選挙後に命を落とされた、やはり相当な御苦労があったと思うのであります。恐らく、先ほど申し上げたように土光会長だって、自分はもう二十一世紀を見ることはないだろう、しかし、日本の将来が心配だから言うべきことは言い、やるべきことはやったのだという御決意でつくられた先輩の命がけの遺言であろうと私は思っておりますので、どうかその点を酌んで、今後の御努力を期待したいと思っております。  それでは次に、過日の衆議院予算委員会の総括質問でも若干御質問させていただきましたが、国債による新手のネズミ講の問題について新たな事態が発生をしてまいりましたので、何点か御質問をさせていただきたいと思います。  まず警察庁にお伺いいたしますが、三月十四日に山形県において国利民福の会に対して告訴告発が行われたと伺っておりますが、その状況について報告していただきたいと思います。
  74. 泉幸伸

    ○泉説明員 お尋ねの事案は、本年三月十四日、山形県警に対して、無限連鎖講の防止に関する法律及び証券取引法違反並びに詐欺罪で告訴告発がなされたものでありまして、山形県警ではこれを受理して、現在所要の捜査を行っているところであります。
  75. 宮地正介

    ○宮地委員 証券取引法違反について新たに問題が出てきたわけでございますが、大蔵省にお伺いしておきますが、証券取引法の二十八条一項、これはどういうような内容でございましょうか。
  76. 藤田恒郎

    ○藤田(恒)政府委員 証券取引法二十八条第一項で、証券業は、大蔵大臣の免許を受けた者でなければ営むことはできないと規定しておりますことは、委員承知のとおりでございます。その場合に、証券業とは何かということでございますけれども、第二条第八項に規定がございまして、有価証券の売買とか有価証券の売買の媒介、取り次ぎ、代理、こういったような行為を営業として行うというふうに規定しております。  したがいまして、まず営業とは何ぞやということになるわけでございますけれども、私どもといたしましては、営業として行うという意味は、営利目的を持って反復継続的に不特定多数の者を相手として行う行為であるというふうに解釈しておりまして、これを総合して申し上げますと、有価証券の売買等を営利目的を持って反復継続的に不特定多数の者を相手にして行うというような場合には、大蔵大臣の免許がなければ営むことができないというふうに解釈しております。
  77. 宮地正介

    ○宮地委員 今回のこの山形県における「告訴告発状」の内容を見てまいりますと、特に「証券取引法違反」のところで、   被告発人鈴木龍一及び同山口新弥は、共謀の上、大蔵大臣の免許を受けないで、昭和六二年一一月頃から現在に至るまで、山形県天童市大字山元中一七番地の五所在の被告発人山口新弥宅において、同人が告発人らほかに対し、二十数回にわたり、額面合計三〇万円の国債を代金三一万円で売り渡し、有価証券の売買を営業とし、もって証券業を営んだものである。 こういう内容の告発でございます。  これについての事実確認がこれから当然警察の手で行われていくと思いますが、警察庁として、今後のこの事実確認に対する捜査の御決意をお伺いしたいと思います。
  78. 泉幸伸

    ○泉説明員 警察といたしましては、証券取引法に関しましても告訴告発を受理しておりますので、必要な捜査を厳正に行ってまいりたいと考えております。
  79. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに国税庁に伺います。  確定申告が終わったばかりですから、これから事務的にお調べになるには時間がかかると思いますが、この国債ネズミ講の幹部、いわゆる国利民福の会の幹部は、大変な不労所得といいますか、そういうものを得ているようでございます。会長などがテレビでいろいろ御発言しているのを見ておりますと、昨年は八千万円国債が入ってきた、こういうような御発言もしているわけですが、こういうものに対しては適正な所得税の対象になるのかならないのか、また、こうした問題を調査していくお考えがあるのかどうか、お伺いしたいと思います。
  80. 日向隆

    ○日向政府委員 経済的利益を得た場合、たとえそれが金銭以外のものであっても、その経済的利益を時価で評価し、収入金額を計算して課税することになっていることは、委員承知のとおりだと思います。  今言われております国利民福の会等国債を利用したネズミ講は、私どもが承知しておりますところでは、主として昨年一月ごろからその活動を始めていると聞いておりますので、それによる経済的利益が所得の形で申告されてくるのはこの六十二年分の確定申告に際してである、こう考えております。  私どもといたしましては、会員の増加状況等についての資料、情報を収集する傍ら、六十二年分の確定申告の状況にも注意し、特に、御指摘のその幹部の申告状況をよく見て、必要な場合には実地調査を行い、この問題に関連する課税上の問題を適正に処理してまいりたいと考えております。
  81. 宮地正介

    ○宮地委員 文部省にお伺いしておきたいと思います。  今回のこうした国利民福の会のいろいろな会員の状況を見ておりますと、大変に若い方々が会員になられております。くしくも、ちょうど昭和五十三年に、当時私も物特の委員として、この無限連鎖講防止法、いわゆるネズミ講防止法の議員立法をつくる、そうした立場の一人として、当時経済企画庁長官は宮澤大臣だったということで、当時は大変な社会悪ということで天下一家の会がはびこってまいりまして、特に関西の大学におきまして、学生さんが学生証を持っていってサラ金からお金を借りてくる、そのお金を元に天下一家の会のネズミ講に入る、それが大学内のクラブの先輩から後輩に、こういうことで大変に教育環境が乱れ、学内の秩序が乱れ、大変な問題になりまして、当時関西の大学の学長さんがこぞって国会に陳情に参って、これは大変ゆゆしき問題である、こういうことで、あのネズミ講防止法が議員立法で超党派でつくられた経緯がございました。当時文部省といたしましても、異例の要請を全国の大学に出した経緯があるわけです。  今春休みで、学生さんは郷里に帰っておりますが、また四月から新たに学校に戻ってくるわけでございまして、この国利民福の会は本部が大阪でございますので、また新たなそうした事態が発生しかねない、そういう状況が今できつつあるやに聞いておるわけでございまして、文部省としても重大な関心を持って――あの十年前の天下一家の会が、ネズミ講とサラ金が本当に合体いたしまして、学内秩序のみならず御家族にも大変な悪影響を与えた過去の事例があるわけでございます。今後文部省としても、この問題についてどう対応されていくお考えか、お伺いをしておきたいと思います。
  82. 平川忠男

    ○平川説明員 今回の国債ネズミ講事件に関しましては、現在学生にどの程度被害が生じているか把握してございませんけれども、各大学におきまして学生の被害が広がりませんよう、大学の学生指導を担当する者の会議でございますとかあるいは広報誌等を通じまして、ネズミ講の危険性等について広く学生に周知徹底を図りたいと思っております。なお、あわせて学生の日常生活について、教育上の観点から一層適切な指導が学内で行われるように努めてまいりたいと思っております。
  83. 宮地正介

    ○宮地委員 経済企画庁にお伺いします。  このネズミ講防止法の第四条ですね、この第四条には「国及び地方公共団体は、無限連鎖講の防止に関する調査及び啓もう活動を行うように努めなければならない。」こういうふうになっておるわけですが、今回この国利民福の会がこうして昨年の一月つくられて、まだ一年ちょっとの間にもう一万五千人の会員に増殖されておる。こうした調査啓蒙活動を怠らずにどのようにやってこられたのか、また現在どういうふうに行っているのか、御報告いただきたいと思います。
  84. 吉田博

    ○吉田説明員 種々の方法を通じまして普及啓発を行っております。政府広報で申し上げますと、二月に「今週の日本」で行っておりますし、今月に入りましても、テレビ番組「ホームジャーナル」でネズミ講に入らないように、そういう啓発を行っております。それから国民生活センターでも、各種の雑誌、テレビで行っておりますし、そのほかにも地方の消費生活センターでも普及啓発を行っておりますし、消費者団体にも普及啓発をお願いをいたしております。
  85. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、大蔵大臣に締めくくりとしてお伺いしておきたいと思います。  これは、先日も予算委員会で御質問しまして、大蔵大臣にもお伺いしたので御理解していると思いますが、まず、国のためだ、そして国債を買うことは国家財政のためだ、こういうことのふれ込みです。国債三十万円を買って会員に十五万円ずつ渡す、そういうようなことで、実際にはこれはもうネズミ講の組織というもの、あるいは、そうした対応というものをちょっと勉強した方はおわかりのように、これは一部の方だけが利益を享受して大多数の人が必ず被害者になる、こういうゆゆしき組織でございます。大蔵省としても、これは決して無関心にしておくことはないと思いますし、まして、先ほどは証券取引法の違反のおそれもある、また、所得税の方の問題もある。こうした問題について、特に十年前は経済企画庁長官として、ネズミ講防止法の議員立法のときの大臣でございますので、縁もあるわけでございます。そういう点から大蔵大臣、今後の対応について大臣としての所見を伺っておきたいと思います。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように昭和五十三年でございましたか、御協力を得まして法律をつくらしていただいたことがございます。違った形でまたこういうことが出てまいりました。やはり金が少し余ってまいりますとこういうことはあるのでございましょうか、これはおっしゃいますように、もう何としても法律を動員いたしましてこのようなことは根絶をいたさなければなりませんし、また、それぞれ法に触れますところは厳重にひとつ捜査を願い、また法によって処断をしていただきたいと考えております。
  87. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ政府一体となって、この問題については竹下総理もこの議員立法の改正になじむものである、また、当該大臣である中尾経済企画庁長官も、関係省庁と連携をとってこの問題について厳重に対処する、また、ただいま大蔵大臣も前向きの御答弁があったわけでございますので、ぜひ、政府としてよろしくこの問題の解決のため御努力いただきたいと思います。  次に、昨日住宅都市整備公団が、公団の賃貸住宅の家賃改定ということでマスコミにレクをされたようでございますが、けさの報道によりますと、この三月ごろに建設大臣あてに申請をして、十月一日から公団の家賃の値上げを平均四千七百円、一八%アップ、対象は三十四万戸、七百団地、昭和三十一年から五十四年に供給された団地である、増収が百九十億円を見込んでおる、値上げの理由は新旧家賃の格差の是正である、修繕費が大変に年ごとに上がっておる、この増収分の中で七〇%は維持管理費、三〇%は新規住宅の家賃抑制に使う、こういうようなことが言われておるわけでございますが、事実でございましょうか、お伺いしたいと思います。
  88. 渡辺尚

    ○渡辺参考人 今、先生が新聞を引用されていろいろ述べられました。  住宅都市整備公団といたしましては、御存じのとおり、昭和三十一年から今までに約六十七万戸を超える賃貸住宅を供給してきておるわけでございます。この住宅は、これも御存じだと思いますが、国の財政援助を伴った施策住宅であります。言ってみれば、広く国民の資産であるということが言えると思います。そういうことで、適時適切に家賃の見直しを行って、必要に応じて改定をやらしていただく、それによって公団住宅相互間の家賃の不均衡を是正する、あるいは必要な維持管理経費を確保していく。それからさらに、先ほども御指摘ありましたように、今新旧家賃の是正ということで抑制財源も確保していくということで、我々は必要だと考えておるわけでございます。  したがいまして、実は過去五十三年と五十八年に継続家賃の改定をお願いしたわけですが、五十八年の際に国会で審議があったわけでございます。そのときに、建設委員長の要望事項というのがございまして、その中で、適切な手続に基づく必要なルールづくりというようなことが要望されておったわけです。そこで、総裁の私的諮問機関でございます基本問題懇談会、ここの御意見を聞くということにいたしまして、さらに家賃部会というのを専門につくっていただきまして、そこの御意見を伺ってまいったわけでございます。そして、その報告を十五日にいたしたわけでございます。今後はその考え方に従って、先ほど先生おっしゃいましたように、六十三年度の改定につきまして、三月末には建設大臣に申請を行いたいというふうに考えております。
  89. 宮地正介

    ○宮地委員 公団の家賃及び敷金の変更等につきましては、住宅都市整備公団法施行規則の第五条「公団は、次の各号の一に該当するときは、前条の規定にかかわらず、建設大臣の承認を得て、家賃(敷金を含む。以下この条において同じ。)を変更し、又は家賃を別に定めることができる。」こうなっておりますが、この第五条の何号を適用しようと考えているのですか。
  90. 渡辺尚

    ○渡辺参考人 今お示しのとおり施行規則の第五条で、物価上昇等経済事情の変動それから賃貸住宅相互間の不均衡、こういったものをあわせまして、申請理由として申請いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  91. 宮地正介

    ○宮地委員 この中の第一号は、「物価その他経済事情の変動に伴い必要があると認めるとき。」物価は今超安定ですね。これは理由になりませんね。  それからもう一つは、あなた方がきのうマスコミの方にレクした内容等を見ておりましても、五年に一回家賃の値上げをする、どうも今回はそれを固定資産の評価がえの時期に合わせて三年に一回に周期を短縮する、こういうお考えがあるようですね。ところが、第五条の家賃の値上げのところには、そんな周期なんというのはないわけですね。これはまさに公団の都合によって家賃を値上げしている、こう言わざるを得ないのじゃないですか。どうでしょうか。
  92. 渡辺尚

    ○渡辺参考人 公団の賃貸住宅の家賃の改定につきまして定期的に的確に見直す、その必要につきましては、建設大臣の諮問機関でございます住宅宅地審議会の答申におきましても、再三にわたって指摘されておるところでございます。それからまた、第二次臨時行政調査会の第一次答申においても、新旧家賃格差の是正に努めるようにということが指摘されておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、実は、三十一年から供給を開始したわけでございますが、五十三年と五十八年、この二回改定を行ったわけでございます。そのときに常に、居住者の負担ということもありまして、激変緩和措置をいろいろ講じてきておるわけでございます。例えば、実際に計算してこれが適正な価格ではないかというものについて、現行家賃との差を二分の一にする、その二分の一だけ加えさせていただくとか、あるいはさらに頭打ち限度枠を設けるというようなことでやってきたわけでございます。したがいまして、そういうこともありまして、現在の経済情勢といいますか、から見て、新旧格差も含めてその間の経済上の変動に見合ったものとなっていないというふうに考えておるところでございます。
  93. 宮地正介

    ○宮地委員 五十三年には平均三七%、五十八年には二六%、今回は一八%。私は、住宅都市整備公団は何か五年の周期あるいは三年の周期で、いろいろ理由をつけて家賃の値上げをおやりになるような感じがするわけです。その前にやはり住宅都市整備公団として、もっときちっと経営的な面といいますか、そうした合理的な面でやるべきことがあるのではないか。伺うところによると、相当な遊休地も抱えているような実態でもある。もっともっと内部的にいろいろ精査する、そういうことがなされて、そして国民の、特に入居者の意見なり要望なりというものをもっともっと聞いて、それで民主的に今後の家賃のあり方というものはどうあるべきか、こういう議論がしっかりやられて出てきているのかどうか、非常に疑問なんです。  ただ答申で出ているからとか、そういうことで安易に値上げをするということになれば、これはまさに――今、地価の高騰などでいろいろと異常な高値になってきておる。今マンションにしても、またいろいろと大変な思いに国民が駆られておる。住宅都市整備公団がここで値上げをやれば、今度は県営住宅とか都営住宅とか市営住宅、公営住宅の値上げに連動するのですよ。そういうことの配慮を考えておりますか。
  94. 渡辺尚

    ○渡辺参考人 かつて未入居住宅でありますとか、あるいは未利用地というような問題が指摘されたわけでございます。我々は日夜、役職員ともに努力をしてまいったつもりでございます。その結果、例えば未入居住宅につきましても、もう首都圏においてはほとんどないというような状況にまでなってきている。そういういろいろな経営上の努力をしているということは、ひとつお認めいただきたいと思います。公団といたしましても、ただただ家賃を上げる、それが必要だということだけを考えておるわけじゃありませんで、やはり適切な維持管理でありますとか不均衡是正でありますとか、そういう全体的な観点からやる必要がある。  それから、手続の点についてお触れになりましたが、ちょっと長くなりますので先ほど申し上げませんでしたが、先ほど申しました基本問題懇談会の中に、これは十五名でつくっておりますが、十三名の家賃部会というのをつくっておりまして、この中で家賃改定のあり方について専門的に御意見を伺っていくことにしたわけですが、さらにその下に専門部会というのをつくりまして、六十年の初めから約二年間にわたりまして二十数回の議論を踏まえてきたわけです。そして、それを居住者の代表が二名入っておられる十三人から成ります家賃部会で御意見を伺いまして、約二カ月、四回でありますが、相当の御議論がございました。そういうものを踏まえまして、十五日基本問題懇談会に報告したということでございます。
  95. 宮地正介

    ○宮地委員 公団にはいろいろ自治会の組織もありますね。入居者の代表のそうした組織の方々の意見などは反映しておるのですか。
  96. 渡辺尚

    ○渡辺参考人 先ほど申しましたように、家賃部会は十三名おられますけれども、その中に二人の居住者代表が入っておられまして、その中の一人の方がいわゆる自治協と我々呼んでおりますが、その代表の方である。そこで、それぞれ濶達な御意見を伺ったというふうに考えております。
  97. 宮地正介

    ○宮地委員 建設省、これは最終的には建設省が認可するわけですが、私は、こうした家賃の値上げなどについては慎重に対処していくべきである、こう思います。建設省としての意見を伺っておきたいと思います。
  98. 丸田哲司

    ○丸田説明員 建設省といたしましては、住宅都市整備公団の賃貸住宅の家賃につきましては、賃貸住宅相互間の家賃の均衡を確保しまして、さらに負担の公平を図り、かつ住宅の良好な維持管理を行うために、経済事情の変動等に即しまして定期的に見直すことが基本的に必要であると考えております。この趣旨で、先ほども参考人の方から御答弁がございましたが、五十三年度と五十八年度に五年ごとに改定を行ってきたわけでございます。  今回、昭和六十三年度に公団が予定いたしております賃貸住宅の家賃改定の内容につきましては今御説明がございましたが、公団内部の手続等も終わりまして最終的な取りまとめをやっておると伺っておりますが、追って建設大臣にこの承認申請が出てまいるわけでございます。建設省といたしましては、この申請を受けまして、経済企画庁とも協議をいたしまして十分に検討、審査をいたしまして、適切に対処いたしたいと考えておるわけでございます。
  99. 宮地正介

    ○宮地委員 では、建設大臣の認可に当たりましては入居者の立場というものもよくお考えの上、この問題に対応していただきたいと強く要請をしておきます。  次に、週休二日制の問題でちょっとお伺いをしておきたいと思います。  全国銀行協会連合会の神谷会長、三井銀行の社長でございますが、都市銀行や信託銀行あるいは相互銀行など全民間金融機関と郵便局、それに証券会社、保険会社が、来年の二月一斉に完全週休二日制に移行することがほぼ確実になった、こういうことを記者会見で発表しているわけでございますが、中山郵政相も十五日に、来年二月からの郵便局窓口の土曜全面閉庁方針を明らかにされ、これを受けての御発言と伺っておりますが、銀行局長、この問題についてはどういうふうに事実確認をされておるか、御報告いただきたいと思います。
  100. 平澤貞昭

    ○平澤政府委員 金融機関の週休二日制の問題につきましては、昨年秋以降、民間金融機関におきましてはこの問題を前向きにとらえまして、検討を進めてまいったところでございます。  ただその場合、前にも当委員会でお話し申し上げましたように、まず第一に金融界全体のコンセンサスを得ることが必要でございますが、そういう中でやはり金融機関の一分野を担っておられる郵便局も一緒にやるということが重要であるわけでございまして、そういう意味で先日、今委員もおっしゃいましたように、郵政省が他の金融機関の完全週休二日制の実施にあわせまして、来年二月を目途に郵便局の貯金・保険部門の窓口について、すべての土曜日を閉庁する方向で具体的な検討を進めることを決定なさったわけでございまして、その意味で、全金融機関の完全週休二日制の実施に向けての環境が一段と進んだというふうに理解しているわけでございます。  したがいまして、今後民間金融機関の間では、今回の郵政省の決定を踏まえまして、完全実施に向けてさらに一段と調整を図っていくということになろうかと考えている次第でございます。
  101. 宮地正介

    ○宮地委員 やはり日本人が働きバチということで、こうした方向というものは大変結構だと思います。ただ、中小企業の皆さんなどは、事務的に厳しいとかいろいろな御意見もあろうかと思いますが、やはり世界の流れとして私は、こうした週休二日制という問題、土曜の一斉休みという問題、こういうものは今後非常に推進をしていかなくてはならない。銀行局長の方でも、大蔵省としてこうした問題の推進方、ぜひ御努力をよろしくお願いしたい、御要望だけしておきたいと思います。  これに関連いたしまして、国税庁にお伺いしておきたいと思いますが、「所得税基本通達三六―三〇(課税しない経済的利益……使用者が負担するレクリエーション費用)の運用について」、こういうことで六十一年十二月二十四日に国税庁長官名で国税局長あてに通達を出しているわけでございます。六十二年一月一日以後実施されているわけですが、三項目の中で特に社員の慰安旅行の費用の問題等で、第一項目の「当該旅行に要する期間が二泊三日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。」大体二泊三日で海外に行けるところになりますと、滞在日数は「目的地における」となっていますが、まあ東南アジアといいますか、その辺でおさまってしまうのではないか。  今の若い方々はいろいろなアルバイトをしながら、あるいは賞与を貯金しながら、海外に出かけるとなると大体ヨーロッパとかアメリカなんですね。それが一つの時代の流れになっていると思うのです。せっかく六十二年の一月一日から実施ということで、まだ一年足らずであるわけでございますが、先ほどの週休二日制の問題等も考えまして、時代の流れとして二泊三日というのは少し厳しいのではないかな、もう少し期間を延ばして時代の要請にこたえるべきではないかと思いますが、国税庁としてお考え、また今後検討する用意があるか、お伺いをしておきたいと思います。
  102. 日向隆

    ○日向政府委員 今委員が御指摘になりました本件の取り扱い基準につきましては、実際見ておりますと、企業におきます慰安旅行のほとんどが現在二泊三日以内で実施されている、こういう実態を踏まえまして、それと同程度のものにつきましては、実はそれまでは海外旅行はもうすべて課税という考え方でございましたがこれを改めまして、たとえ旅行先が海外の場合であっても、海外におきます滞在日数が二泊三日程度の場合には、国内旅行とのバランスなども考慮して課税しないということにしたものでございます。  実態面から見まして、現時点でさらにこの基準を拡大することはいかがかというふうに考えておりますが、これにつきましては、今委員もおっしゃいましたが、今後の社会経済情勢の変化によってこの取り扱いが変わってくる性質のものであるというふうにも考えておりますので、私どもとしてはその変化の状況を見きわめつつ、御指摘を踏まえて適宜適切に対応してまいりたいと考えております。
  103. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ、そうした国民のニーズに適宜対応して、検討を進めていっていただきたい。まだたって一年ですから、すぐとはなかなか難しい状況を私は理解をしております。ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。  最後に、主税局長にお伺いしておきたいと思いますが、居住用財産の買いかえの問題につきまして、今後政令で対応するということについてのお考えは文書でお伺いしましたから結構でございますが、この買いかえの特例問題というものは余り評判がよくないというのが私は現状ではないか、この問題は一部に税の不公平感というものを醸し出すおそれがある、そういう点でやはりこの問題は今後十二分に見直しをしていく必要のある問題ではないか、こう思っておるわけでございますが、これについての局長の御答弁をお伺いしておきたいと思います。
  104. 水野勝

    ○水野政府委員 買いかえの特例につきましては、四十四年、五十七年、そして今回御提案している六十三年度改正ということで、その時代の要請に応じましてかなりな変化がもたらされてきているわけでございます。今回は、基本的にはやはりこの制度は問題が多いということで縮減をさせていただきまして、特別の事情のあるときに限り存続をするということでございます。  今回改正させていただきまして、この制度の適用状況、また定着の状況を見るというのが当面の考え方でございますが、もちろん土地住宅税制は、こうした周りからの要請に応ずる場合が多いわけでございますので、その時代時代の要請に応じまして見直しはしていくつもりでございますが、基本的には居住用買いかえ制度というのはやはり問題が多い。これをまた拡充していくということについては、その方向については問題が多いのかなと思いつつ、今後この点を見守ってまいりたいということでございます。
  105. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは金曜日でございますし、地元にお帰りになる先生方も多いわけでございますし、大蔵委員会は夜なべ夜なべで、本当に皆さん頑張ってまいりました。先輩の武藤先生も一時間短縮をされました。これで終わりまして、本日の質問といたしたいと思います。
  106. 越智通雄

    越智委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。  ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  107. 越智通雄

    越智委員長 速記を始めて。  討論に入る前に、委員長から一言申し上げます。  玉置委員の質問時間が五分間留保されておりましたが、ただいま玉置委員より、質問をされない旨お申し出がございましたので、これをもって質疑を終了したことにいたします。     ─────────────
  108. 越智通雄

    越智委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。村上誠一郎君。
  109. 村上誠一郎

    ○村上(誠)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となりました租税特別措置法の一部を改正する法律案につき、賛成の意見を表明するものであります。  今後における高齢化社会の到来及び経済社会の一層の国際化を考えますと、抜本的な税制改革の実現は避けて通れない課題であることは無論であります。本法律案は、このような税制の抜本的改革との関連に留意しつつ、最近の社会経済情勢等に即応して、当面早急に実施すべき措置を講ずる立場から、現在差し迫った課題である土地及び住宅に関する税制について見直しを行う等次のような改正を行おうとするものでありまして、私は、このような政府努力を極めて高く評価するものであります。  以下、具体的に申し上げます。  第一に、土地税制につきましては、優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得について、一律二〇%の税率による分離課税を行うこととするほか、所有期間が十年を超える居住用財産を譲渡した場合の譲渡所得について、買いかえの特例を例外的な場合を除いて廃止し、軽減税率による分離課税を行うこととする等の措置を講ずることとしております。これらの措置は、いずれも当面の緊急を要する土地供給の促進、地価対策等に資するところが極めて大であると考えられ、まことに時宜にかなった適切な措置であり、私は、これを極めて高く評価するものであります。  第二に、住宅取得促進税制につきましては、現行の控除対象限度額二千万円の範囲内で、公的な借入金等に係る控除対象額をその年末残高の二分の一から全額に引き上げることとするほか、適用対象となる借入金等の範囲の拡充、適用対象者の所得要件の緩和等を行い、あわせて適用期限の延長を行うこととしておりますが、これらは国民の持ち家取得をより一層促進する見地、また、広くは内需拡大の要請にも合致するものであり、極めて有意義な措置であります。  第三に、石油税につきましては、昭和六十三年八月一日から昭和六十四年三月三十一日までの間の特例措置として、課税方式を従量税化するとともに、所要の増収措置を講ずることとしておりますが、これは昭和六十三年度における税負担の安定を図りつつ、石油及び石油代替エネルギー対策財源を安定的に確保するため行おうとするものであり、適当な措置であると考えられます。  第四に、企業関係租税特別措置等につきましては、既存の租税特別措置の整理合理化を図る一方、地域産業の活性化、事業分野を異にする中小企業者の知識融合化による新分野の開拓に資するため、新たに所要の措置を講ずる等必要な改正を行うこととしております。  その他、欠損金の繰越控除の一部停止措置等を廃止するほか、たばこ消費税、揮発油税及び地方道路税等の税率の特例措置の適用期限を延長する等の措置を講ずることとしております。  これらの措置は、いずれも最近における社会経済情勢に対処して最大限の努力が払われているものであり、まことに当を得たものと認められます。  最後に、私は、政府が現在もなお厳しい財政事情のもとにおいて、社会経済情勢の著しい変化に弾力的に対応し、経済の活性化に配意しつつ、長寿福祉社会をより確実なものとして維持していくために、今後さらに所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系を構築するための最大限の努力を払うように、切に希望するところであります。  以上申し上げました理由により、本法律案に対し全面的に賛成の意見を表明し、討論を終わります。(拍手)
  110. 越智通雄

    越智委員長 早川勝君。
  111. 早川勝

    ○早川委員 私は、日本社会党・護憲共同を代表して、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。  税金に対して国民の関心が日一日と高まっていることは、多くの世論調査の結果を見ても明らかでありますが、その反面、不公平感、不信感が増幅されてきていることも否定できない現実であります。言うまでもなく、公平、公正こそ租税の第一の原則であります。しかし、租税特別措置による減免税の項目は現在なお百七十三に上り、それだけ数多くの不公平な制度を認めているのであります。したがって、政策効果を厳しく点検し、その目的を達成した際には速やかに廃止しなければならず、また存続、新設に当たっては、不公平を最小限にとどめる中で最大の効果を期待する方針こそ守られなければならないのであります。  不公平な税制を一日も早くなくし、最近の土地暴騰に伴う不労所得への課税の強化、土地脱税への厳しい対応等こそ政府に求めている国民の声であります。このような観点に立ってみますと、今回の改正は全く不十分と言わざるを得ません。  以下、具体的な反対理由を申し上げます。  第一には、特別措置の整理改廃が徹底されず、例えば、制度導入以来十四年間に適用件数わずか四件といった項目もあり、政策効果以前の問題があります。これは、抜本的税制改革に着手するに当たってのいわば条件整備でなければならないのでありますが、惰性と既得権化を追認しているもので、不公平税制に取り組む政府の姿勢に大きな疑念を抱かざるを得ないのであります。  第二には、土地税制、住宅税制に関して、地価抑制、持ち家取得の政策目的とはいえ、新たな不公平をもたらすおそれのあることであります。土地政策の失敗のツケを税制で処理するには限界があり、しかも税制の頻繁な変更は土地政策上も望ましいものではありません。土地供給のための税率緩和はいわばこれまでの政策の繰り返しでありますが、必ずしも地価抑制につながらなかったのであります。また、いわゆるローン減税の適用対象者の所得要件三千万円への引き上げは、高所得者に対する過当な優遇政策と考えるものであります。  第三には、石油税の引き上げの問題であります。石油業界、とりわけ販売業者間の競争の激しさに加えて、石油関係諸税の負担が重く、その上に今回の課税標準を変えての引き上げは末端販売業者と消費者を圧迫するものとなります。しかも、従価税から従量税に切りかえて来年度末までの特例措置としておりますが、課税方式の転換を特例として行うことは、余りにも便宜的対応で認めがたいのであります。  第四には、たばこ消費税の延長についてであります。一本一円の増税は六十一年度財政措置として、まさに臨時特例の措置とされたにもかかわらず、再三延長することは専売制度改革法案成立時の附帯決議に反し、特別な税負担率を適正な負担率とみなし、新大型間接税負担を先取りするものであって容認できません。景気の上昇に伴い大きな自然増収が確保できている現状を見るとき、特別増税を続ける理由はなくなったのであります。  以上、反対理由を申し述べましたが、今後の我が国税制の抜本的改革に当たっては、公平、特に所得再分配機能を重視するシャウプ税制の公平原則を堅持すること、不公平税制を是正するプログラムを明らかにすること、資産、所得の保有と分布等々資料を作成し公表すること、正確に税収を見積ることなど、広く開かれた審議を深め、国民の納得と信頼を得ることの重要性を指摘いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
  112. 越智通雄

    越智委員長 宮地正介君。
  113. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、公明党・国民会議を代表いたしまして、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行うものであります。  反対の第一の理由は、六十三年度税制改正案は、懸案の相続税減税、酒税改正は見送られ、酒税については改正の基本方針を示すという程度でお茶を濁し、租税特別措置法の手直しを中心としたものとなっているからであります。  これは大型間接税導入を盛り込んだ抜本改革を本年秋までに成立させることを意図しているがためであり、このような政府の姿勢は、政治戦略を優先し、国民生活を全く無視するもので断じて許されるものではありません。  売上税については、紛れもなく大型間接税は導入しないとした選挙公約に違反するものであり、第百八回国会において、廃案となったという厳粛な事実があります。  まさに、国民が拒否したのは大型間接税であり、政府はまず大型間接税の導入ありきという立場ではなく、我が国の税制はいかにあるべきかという根本的な問題に立ち、まず不公平税制の是正ありきに努めるべきであります。  反対の第二の理由は、土地税制と住宅税制についてであります。  今回の改正案では、土地供給の促進、地価対策に資することに余り効果が上がらないということであります。特に、買いかえ特例を原則廃止するものの、相続による居住用財産で三十年にわたって居住していたものは認めるとされる一方、自力で得た居住用財産で三十年居住しているものは、買いかえ特例が認められないという税の不公平感を与えていることであります。  土地税制については、場当たり的な改革が多く、根本的な土地対策については何ら手を打たずに税制で繕おうとする従来の発想を出ていないのであります。このような改革では不公平、矛盾をますます拡大させるだけでなく、税の簡素化という方向にも逆行するのであります。  反対の第三の理由は、たばこ消費税の税率等の特例措置の適用期限の延長問題であります。  最近における税収が好調であるにもかかわらず、たばこ消費税の増税は、今回で三度目の期限引き延ばしを図ろうとしていることであります。また、石油税についても、円高や原油値下がりにより税収が減ったことを理由に従価税から従量税に切りかえるなど、こうした財源あさり的手法は国民の税に対する不信感をますます増幅させているのであります。  さて、税制の抜本改革に当たって、今日的最重要課題は、土光臨調の生命線ともいうべき「増税なき財政再建」の堅持であります。安易な新税導入は、水膨れの行政、肥大化する政府に陥ることが必至であります。米国においても大型間接税導入を見送った理由の一つとして、大きな政府が懸念されていたからであります。大きな政府を招かないためには、行政改革の徹底が是が非でも必要であります。  このことを強く政府に訴え、私の討論を終わります。(拍手)
  114. 越智通雄

    越智委員長 玉置一弥君。
  115. 玉置一弥

    ○玉置委員 私は、民社党・民主連合を代表して、ただいま議題となっております租税特別措置法の一部を改正する法律案に反対の討論を行うものであります。  反対する第一の理由は、本法案が小手先だけの土地税制改革と安易な増収措置等を盛り込んだ中途半端な改革にとどまっている点であります。  近年の異常な地価高騰に対処するには、買いかえ特例の廃止、譲渡益課税の部分的な改革のみでは極めて不十分であります。  土地譲渡益が十五兆円あると言われ、そのうち五兆円だけが課税対象で十兆円が特例による非課税となっておりますが、その特例全般の見直しも行うべきであります。  また、本来一年限りの措置であるたばこ消費税の増税延長を初め、揮発油税、地方道路税、自動車重量税の増税の延長は、深い論議を経ずして惰性的に追認されたものであり、断じて容認できるものではありません。さらに、石油税がなし崩し的に従量税に改められるのも、財源確保の場当たり的政策とのそしりを免れるものではないと考えます。  反対の第二の理由は、国民が切に求める大幅減税、不公平の抜本是正が見送られている点であります。  税制は社会の鏡であり、不公平な税制が放置されれば、世の中が一層不公平になるのは目に見えております。有価証券のキャピタルゲイン課税、法外な土地取引、土地保有に対する課税の強化等は喫緊の課題であります。  また、教育費、住宅ローンに苦しむ中堅サラリーマンに重点を置いた二兆円規模の所得税減税実施を強く求めるものであります。さらに、法人税減税、相続税減税の早期実現をあわせ、今年度中に総額三兆円の減税を断行することを主張いたします。  最後に、抜本税制改革は、不公平税制の是正、高齢化社会の福祉ビジョンの確立、行財政改革の策定等にかかわるものであり、かかる議論を無視して税制改革だけを先行させていたのでは国民の理解は得られません。あくまでも、国民のための税制改革の論議を続けられるように要望し、私の討論を終わります。(拍手)
  116. 越智通雄

    越智委員長 矢島恒夫君。
  117. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、租税特別措置法の一部改正案に対する反対討論を行います。  まず第一に、本案は新大型間接税導入の地ならしであり、そのための布石であって、国民の切実、緊急な要求にこたえるものではないということです。当面早急に実施すべき措置と言うなら、低中所得者層に対する課税最低限の大幅引き上げを中心とする所得税減税の断行であり、緊急を要する相続税減税でなければなりません。しかし、これらはいずれも新大型間接税導入時の人質として先送りされ、石油税やたばこ消費税が新大型間接税の導入を前提として、短期間増税されるほか土地等長期譲渡所得税の税率のフラット化、その他新大型間接税導入に沿う改悪が行われ、当面早急に実施すべき措置とする正当な基準は何ら明確にされていないのであります。  第二に、本案は土地税制を最大の目玉にしていますが、三大都市圏を初め地価高騰地の広大な土地所有者に対する課税を優遇し、地価高騰によって大もうけをした大手不動産会社、デベロッパーなどの都市再開発をさらに促し、多大の恩恵を与え、地価の一層の高騰に手をかすものであります。同時に、今日の狂乱地価の原因と責任を明確にせず、地価引き下げの抜本策も何ら明示しないまま土地供給を進めていることと、居住用財産買いかえ特例を、地価暴騰を都心から周辺地域に及ぼす元凶とする見解にくみし、地価暴騰下で営業と生活が困窮し、あるいは、地上げ屋の圧力等でやむなく居住用財産を売却して転居していかざるを得ない人々を窮地に陥れるものとなることに何ら配慮していないことも指摘しなければなりません。  第三に、大企業に対する特権的減免税措置を温存、拡大する改悪案であるということであります。  地域産業高度化特定事業集積促進法支援策の創設、海外投資等損失準備金制度、特定都市鉄道整備準備金制度などの二年延長等々は、大企業の要望を受け入れ手厚く優遇するものであり、不公平税制を温存、拡大するものであります。また、外国税額控除の縮小、退職給与引当金繰入限度額の適正化などの不公平税制が放置されていることも重大であります。  第四に、不公平税制の最たるものとして指摘されている有価証券のキャピタルゲイン課税に積極性を示さず、大資産家を優遇し、他方、中小企業・農林水産業対策や福祉対策などが極めて不十分であることも指摘するものであります。  最後に、政府の言う直間比率の見直しはすなわち大型間接税の導入であり、いかに言い繕うとも公約違反であり、その画策を直ちにやめることを強く要求します。同時に、増税なしの所得税二兆二千億円、住民税八千億円の大衆減税を断行することを主張するとともに減税財源の検討を名目とした自社公民政策担当者による密室協議は、結局大型間接税導入に道を開くものであり、これは税制協とともに、直ちに解散すべきであり、税制改革問題は、当大蔵委員会もしくは予算委員会などの正規の機関で堂々と議論されることが議会制民主主議の本来の姿であることを強く強く主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)
  118. 越智通雄

    越智委員長 これにて討論は終局いたしました。     ─────────────
  119. 越智通雄

    越智委員長 これより採決に入ります。  租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 越智通雄

    越智委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ─────────────
  121. 越智通雄

    越智委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、中村正三郎君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。中村正男君。
  122. 中村正男

    中村(正男)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について所要の措置を講ずべきである。  一 昭和六十四年度以降の石油税のあり方については、石油価格動向や石油に係る税負担状況、石油及び石油代替エネルギー対策の中長期的展望等に配意しつつ対応するとともに、税制の基本である課税方式の安定性に留意して検討すること。  一 今後のたばこに対する課税のあり方については、現行の負担水準配意し、過度の税負担を求めることのないよう努めるとともに、日本たばこ産業株式会社の経営については、その自主性を尊重しつつ、事業範囲の拡大による経営基盤の強化について適切な配慮を行うこと。  一 変動する納税環境、財政再建・財源確保の緊急性及び業務の複雑化・国際化にかんがみ、高度の専門的知識を要する職務に従事する国税職員については、年齢構成の特殊性等従来の経緯及び税務執行面における負担の公平確保の見地から、処遇の改善はもとより、職務をめぐる環境の充実、中長期的見通しに基づく定員の一層の増加等につき格段の努力をすること。 以上であります。  何とぞ御賛成を賜りますように、よろしくお願い申し上げます。(拍手)
  123. 越智通雄

    越智委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  124. 越智通雄

    越智委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  本附帯決議に対し、政府より発言を求められておりますので、これを許します。宮澤大蔵大臣
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。     ─────────────
  126. 越智通雄

    越智委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  127. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  128. 越智通雄

    越智委員長 次回は、来る二十二日火曜日午前九時四十五分理事会、同九時五十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時三十六分散会