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1988-04-20 第112回国会 衆議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十日(水曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 渡辺 秀央君    理事 甘利  明君 理事 尾身 幸次君    理事 奥田 幹生君 理事 田原  隆君    理事 与謝野 馨君 理事 奥野 一雄君    理事 二見 伸明君 理事 青山  丘君       麻生 太郎君    石渡 照久君       小川  元君    海部 俊樹君       木村 義雄君    古賀 正浩君       佐藤 信二君    島村 宜伸君       玉生 孝久君    中川 秀直君       中山 太郎君    額賀福志郎君       福島 譲二君    穂積 良行君       粟山  明君    森   清君       山崎  拓君    若林 正俊君       井上  泉君    小澤 克介君       緒方 克陽君    上坂  昇君       関山 信之君    水田  稔君       石田幸四郎君    権藤 恒夫君       森本 晃司君    薮仲 義彦君       工藤  晃君    藤原ひろ子君  出席国務大臣         通商産業大臣  田村  元君  出席政府委員         環境庁大気保全         局長      長谷川慧重君         通商産業大臣官         房長      棚橋 祐治君         通商産業大臣官         房総務審議官  山本 幸助君         通商産業大臣官         房審議官    末木凰太郎君         通商産業大臣官         房審議官    野口 昌吾君         通商産業省産業         政策局長    杉山  弘君         通商産業省立地         公害局長    安楽 隆二君         通商産業省基礎         産業局長    鈴木 直道君         通商産業省機械         情報産業局長  児玉 幸治君  委員外出席者         警察庁刑事局保         安部経済調査官 五十嵐忠行君         経済企画庁国民         生活局消費者行         政第二課長   吉田  博君         文部省初等中等         教育局中学校課         長       辻村 哲夫君         気象庁観測部高         層課長     小嶋  修君         自治大臣官房企         画室長     小島 重喜君         商工委員会調査         室長      倉田 雄広君     ───────────── 委員の異動 四月二十日  辞任         補欠選任   牧野 隆守君     木村 義雄君   官下 創平君     若林 正俊君   城地 豊司君     上坂  昇君 同日  辞任         補欠選任   木村 義雄君     牧野 隆守君   若林 正俊君     宮下 創平君   上坂  昇君     城地 豊司君     ───────────── 四月二十日  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号) は委員会許可を得て撤回された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  参考人出頭要求に関する件  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号)  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案上坂昇君外三名提出衆法第六号)の撤回許可に関する件  特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案内閣提出第五八号)      ────◇─────
  2. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより会議を開きます。  内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案及び上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薮仲義彦君。
  3. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、ただいま議題になっております訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に関しまして、大臣並びに関係省庁に何点か質問をさせていただきたいと思います。  最初にお伺いしておきたいのは、近年の経済社会のこういう変動の中で、またさらには、高度情報化社会等が進んでまいりますと、訪問販売にせよ通信販売にせよ、いろいろな意味で利用する消費者ニーズというのは高まりを示してくると思うのです。特に、家庭において、ホームバンキングあるいはホームリザベーションというような形で、家庭内の電話を使ったり、情報通信を通じて予約やあるいは商品購入ということ、あるいはテレビの解像度もハイビジョン等によって進んでまいりますと、こういう通販訪販というものの分野というものは非常に広がりを見せると思うのでございますが、通産省として、今後の経済活動の中で訪販あるいは通販、こういうものをどのように位置づけ、考えておるか、要点だけ簡潔にお答えください。
  4. 末木凰太郎

    末木政府委員 最近の消費生活高度化あるいは多様化に伴いまして小売業も大変多様化しておりますが、その一つ業態といたしまして訪問販売通信販売成長に著しいものがございます。最近の状況では、訪問販売売上高は約二・三兆円、通信販売が一兆円弱、合わせて三兆円でございまして、これは小売業全体の三%を占めております。小売業といいますのは百六十万小売店がございますけれども、それだけの大産業でございますから、その中の三%というのは大変大きな業態だと思っております。これは、消費生活の利便の向上とかあるいは就業機会の提供という意味で非常に重要な産業だと思っておりますし、今後とも、いわば内需型産業典型例でございますので、国民経済上重要な産業一つとして発展していくと思います。
  5. 薮仲義彦

    薮仲委員 産構審答申にもありますけれども、やはり消費者トラブルを未然に防ぐということは非常に重要なこれからの施策の一つであろうかと思うのでございますが、国民のこういう意識といいますか、通産省としては、こういう訪販通販というものに対してどういう努力をしようとしていらっしゃるか、簡単に。
  6. 末木凰太郎

    末木政府委員 ただいま申し上げましたように、経済的には大変重要な機能を担っているわけでございますし、また歴史も長い産業でございますから、消費者のこれに対する評価も、小売業の三%という数字に示されているように少なくないものがあると思いますが、一方においてそのやり方につきまして、これは一部の悪徳業者の問題でございますけれども商売の仕方に不適切なものがあるという声が多発していることは大変残念でございます。  しかし私どもは、しからば消費者方々が、このようなものは禁止してしまえという声であるというふうには理解しておりません。極端な話、百貨店について不満を感じたことがありますかというアンケートを仮にすれば、それは感じたことがあるという答えがかなりの率で返ってくると思いますので、私どもは、不満があることは重々承知しつつ、しかし、それを是正して消費者に喜ばれる産業として育っていただきたいものだと思っております。
  7. 薮仲義彦

    薮仲委員 そこで、もう少し客観性のあるお話を進めさせていただきたいと思うのですが、これは、内閣総理大臣官房広報室がやった「消費者問題に関する世論調査」六十年の二月の調査でございます。これはもう大臣審議官も十分御承知のことだと思いますけれども、この中で「訪問販売に対する考え方」という項目でアンケートをとっております。この答えは、訪問販売を「便利である」と答えた者がわずかに八・八%です。「利用したくない・必要ない」と答えた者が八四・二%です。八四・二%ということは、もうほとんどの人は「利用したくない・必要ない」と。都市規模別に見ると、「利用したくない・必要ない」人は、大都市では八六・七%とふえているのですね。人口十万未満の都市で八五・九%と高いわけです。  そうすると、今審議官は、三%の商圏を持つというのは重要なことだと言いましたけれども、非常にこれは国民の快い理解は受けていない。百貨店アンケートをとって、約九割近い方が不満を申し述べることはないと思うのです。私がなぜ先ほどから聞いているかというと、国民は今おっしゃったような認識とちょっと乖離しています。通販訪販に対して利用したくないという声がこれだけあれば、これはやはり真剣に考えなければならない。  じゃ、なぜ利用したくないのかというと「業者セールスマンが信用できないので利用したくない」三四・四%、「買物は近くの店で十分なので必要ない」三〇%、いわゆる六割以上、六四・四%の方が、近くで間に合うし、業者セールスマンが信用できない。これは、これからの通販訪販考えたときに、通産省としては非常に重要に認識しなければならないと思うのでございます。最後に大臣に聞きますけれども担当審議官として、この数字に対して真剣にこれを努力していくことがないと、法律をつくったって嫌われちゃうよ 私はそう思うのですが、いかがですか。
  8. 末木凰太郎

    末木政府委員 御指摘数字にあらわれていますような消費者の声というのは、深刻に受けとめなければならないと思っております。行政としてもそのようでございますし、それから業界方々も、自分たちは間違ったことをしていないからということではなくて、これだけの批判があるということは、仮にその会社がまじめにやっていても、業界全体がこういう批判を受けているということを、業界の各企業の方にも真剣に受けとめていただくべきものだと思います。
  9. 薮仲義彦

    薮仲委員 これから具体的にさらに論議を詰めますけれども、ここで大臣にちょっと伺っておきたいのです。  今世論調査も出したわけでございますけれども、私は、大臣にお願いといいますか、これは非常に重要だなと思うことでお伺いしたいのは、こういうことになっているということは、やはりこれからの通産行政にとって、取り除いていかなければならない、あるいはむしろこれを改善していって、よりよい経済環境をつくっていくという立場が非常に重要かなと私は思うのです。一つは、よく言われますように消費者教育といいますか、もう一つ業界教育指導、今の問題点はその二つを言っていると思うのです。  大臣通産大臣になられてから絶えず御発言なさっていることを要約すれば、二十一世紀に向かっての日本経済のあるべき姿というのは、いつもおっしゃるように、経済構造調整が大事です、内需主導の景気の回復、経済成長を図っていかなければならない、その根っこにある貿易インバランス内需の拡大によって解消するんだ、しかもそれは持続的に成長しなくてはならないんだという幾つかのファクターを挙げられて、経済構造調整ということをこの委員会でも申されておるわけでございます。私はそのとおりだと思いますし、我が国が今直面しておるのはやはりその課題だと思うのです。これはもう緊急であり、避けて通れない最も大事なものだ。  そうなってまいりますと、経済成長というものは、これからは国民消費がいかにあるかということが非常に重要になってくる。ということは、もっと言うならば、これからの経済社会の発展の主役は、今までのように重厚長大の産業が引っ張るあるいは貿易が引っ張るということではなくて、国民の主体的、積極的な消費活動というものが非常に重要になってくる。しかも、それは単に衣食住というような限られたものではなくて、この間の頭脳立地のときに私ちょっとお話をさせていただきましたけれども、クォリティー・オブ・ライフという、より豊かでより快適な生活の選択があるんだよということを国民の方が知れば知るほど経済活動は活性化してくるんじゃないか、私はこう思うのであります。  そうしますと、今のような傾向に対しては、担当通産大臣となさっても、この解決にはこれから相当の研究と努力と対策を考えていただかなければならない。また同じように、今言ったように業界セールスマンが信用できないということであっては好ましくありませんので、この業者あるいは製造業者に対する通産大臣としての適切な業界育成、これが消費者ニーズに合い、しかも安心して物を買える環境をつくっていただくことが、これからの日本の国の目指す二十一世紀の最も好ましい経済調整であり、経済環境のあるべき姿だと私は思うのでございますが、今の問題を含めまして、消費者並びに業界団体育成に対する大臣の御決意をことでお伺いしたいのでございます。
  10. 田村元

    田村国務大臣 消費者保護ということは当然必要でありますし、保護されてこそ消費活動も活発になる、いわゆる信頼関係も打ち立てられていく、これは当然のことであります。でありますから、法律による規制の充実あるいは業者自主規制と同時に、やはり消費者知識啓蒙というものが必要であろうと思います。  私は、ちょっと役人的な答弁にはならぬかもしれませんけれども訪問販売というものはよほど考えないと嫌われるよという気持ちがあるのです。といいますのは、私の家族なんか訪問販売をやはり毛嫌いしておりますし、それからデパートなんかへ行きまして、あるいは専門店でもそうですけれども、店員がついてきてこれはどうであれはこうでと言って、ほとんど押し売りに近いぐらいのサービス過剰、これは非常に嫌いまして、それでスーパーへ行ったりするというようなところがあるんです。ですから、訪問販売の場合は、サービス過剰とはちょっと趣旨が違いますけれども、昔は割合にサービスを受けることを利用者側が楽しんだ面があったと思いますけれども、どちらかといいますと今の人はその点非常に割り切りがよくなってきて、余計なおせっかいをやかぬでくれ、おれの自由にさしてくれというような風潮が強うございますから、そこいらの社会風潮というものも十分踏まえて、訪問販売業者が単なる自主規制ということをもう一つ超えて十分の自主規制をして、下手をすれば自分たちは嫌われる存在になる可能性がある、よほどしっかりしましょうというふうに努力をすべきだと思います。  ただ、だからといって、いわゆる通信販売でもそうですけれども訪問販売を悪なりと断定することはいかがなものだろう、いいものはいいのですから。ただ、そういうことの基本的な社会風潮があるから十分気をつけた方がいいだろうというふうに思います。
  11. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣のおっしゃること、よくわかります。そういうことで私は、先ほどアンケートもこれからのよき教訓として御尽力、御努力いただきたいということをお願いいたしておきます。  今の問題をもう少し具体的に進めさせていただきたいと思うのですけれども先ほども申し上げましたように産構審答申の中で、今の大臣の御答弁の中にもありましたが、業界自主規制あるいは消費者の啓発といいますか教育、それから法規制の強化、これが当然三本柱になっていると思います。通産省がいろいろ勉強会をおやりになったレポートの中にも、もしも消費者が法的な知識があればトラブルに巻き込まれない、被害を受けなくて済んだであろうという意味報告もこの報告書に出ております。正確に読めば「訪問販売等に係る消費者トラブルの中には、消費者取引に関する法的知識や慎重さがあれば回避できたであろうと考えられる事例も相当数あり、」このとおりだと私は思うのです。  そこで、ここで通産省としてもう一歩踏み込んで考えていただきたいのは、先ほど来言っております経済社会変化ということが、今までとは全く違って、今お話のあったように、古典的な商取引というのはいわゆる店舗現金だと私は思うのです。しかし今は店舗現金から無店舗クレジットというカード社会に変わりつつある、これも非常に大きな一つ変動だと思うのです。もう一つは、家庭の中で財テクをやろうという、いわゆる資産形成考えが最近非常にふえてきている。あるいはまた、さっき大臣の言ったサービスとは意味合いが違いますけれども、物からサービスというように構造も変わりつつある。あるいは預託制だ、会員制だというサービス産業のいろいろな形がわんさわんさ出てくる。古い商慣習の中で生きておった方は、そういう消費の中でしか知らなかった店舗現金という考えを変えていかないと、経済活動は活性化しないと思うのです。カード社会を怖がっていたのでは、あるいはカード社会に順応していかなかったらば、経済活動は活性化してこないかもしれない。あるいはホームバンキングというようなことについても、消費者をもっと啓発して、より積極的にそれに参加して生活の幅を広げて楽しめるようにする。  通産省としては、今までは物をつくり施設をつくりということから、今度は逆に消費者の方の対応も教育といいますか十分考えていかないと、やはり本当意味での経済成長というのは、構造調整ということをにしきの御旗に掲げる以上、その根っこにある消費者教育ということがなおざりになっていて、物をつくったり施設をつくったり、次にやるであろう民活法でいろいろなことをやったところで、根っこにある消費者がそれについていけなくなったら何にもならないので、やはり消費者に対する教育情報判断力、こういうものにしっかりと取り組んでいくといいますか、消費者教育ということをこれからの通産行政の中で大きな柱として考えていかないと、こちら側に幾らハードな面でやったところで、肝心の受け入れてくださる方が対応しないということになってきますとミスマッチになります。  そういう意味で、法律をつくる、あるいは業界を指導する、あるいは体制をこうやってつくっていくと同時に、消費者をぐんぐんレベルアップするということがこれから通産行政に課せられる。どこかの省庁がやってくれるのだろう、そういう時代じゃなくて、これは経済活動の中の大きな重要なファクターであるという認識に立っていただきたいと思うのでございます。消費者教育に対する取り組み、いかがでございますか。
  12. 末木凰太郎

    末木政府委員 消費者教育重要性については私どももかねてから十分自覚していたつもりではございますし、実際にやったことと申しましても、例えば「くらしと契約知識」とか「かしこい消費生活へのしおり」とか、一、二の例を申し上げますといろいろな啓蒙資料をつくって配布したり、テレビで「ご存じですか奥様」というようなタイトルで長年放送していますとか、やってきたつもりではございます。しかし、世の中の進歩、変化が非常に激しいものでございますから、従来やってきたことで足れりということではなくて、法改正を御審議いただいていますこの機会にもう一度全部振り返りまして、抜本的に見直すべきところがないか、もっとやるべきところで抜けているところはないか、基本的に見直すくらいの気構えでさらに強化してまいりたいと思います。
  13. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうかその気構えでしっかりやってもらいたいと思うのですが、特に重ねて申し上げますと、今まで消費者教育というと御婦人に対象が多かったのです。衣食住に関する知識とか商品知識とか、そういうことが主だったわけです。しかし、もうそれだけでは消費者教育というのは事足れりとはならない。契約であるとかクレジットであるとか、そういう商慣習についてこれから通産省にもっといろいろとお考えいただきたい。  と同時に社会教育、同じように重要なのは。訪問販売とか通販の中で出てくるであろう一つ被害として、いわゆる学生あるいは小中学生、こういう子供さんにも被害が及んでくると思うのです。私はやはり学校教育の中で、こういう教育という問題を十分取り上げていただきたいと思うのでございます。文部省お見えだと思うのでございますが、ごく要点だけで結構でございますから、こういう形でこれからの経済社会に対応する教育環境を整備するというお考えがあったら、お答えいただきたいのです。     〔委員長退席尾身委員長代理着席
  14. 辻村哲夫

    辻村説明員 初等中等教育の段階におきましても、消費者としての必要な態度知識を身につけさせるということは重要だ、こういう観点に立ちまして取り組んでいるところでございます。具体的には、社会科とか家庭科におきまして消費生活経済の仕組みや消費者保護というようなテーマを学ばせることによって、消費者としての基礎的な態度知識を身につけさせるということをしているわけでございますけれども、ただいま御指摘がございましたように、最近の取引多様化ということに対応いたしますという観点に立ちますと、例えば契約というようなこと、そうしたものにつきましてもこれからもっと内容を充実させて、学校教育においても教育をしていく必要があるのではないかと考えております。その点では、これからさらに改善を図っていかなければならないと考えております。  昨年の暮れの教育課程審議会答申におきましても、そういった観点に立ちましての御提言があったわけでございますので、文部省といたしましてはこれから答申を踏まえまして学習指導要領改訂作業をし、そしてその趣旨等を各学校等にも十分徹底させて、消費者教育基礎としての学校教育の取り組みに努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  15. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、大変結構なことであり、それをしっかり充実させていただきたいと思うのです。  と同時に、さしあたって教育課程審議会でいわゆる教育指導要領を変えてくる、これは何年間かタイムラグがありますね。私は、教育はそうなければならないと逆に思っておりますけれども。逆に、最近の急速なスピードといいますか、時代社会変化というのは大変なものです。例えば先日もテレビでやっておりましたけれども、都内の一女子大が入学証クレジットカードを出しておりますね。これで校内はもちろん、いろいろなショッピングができます。学生証がもうカードになってくる時代なんですね。しかも、今論議しているこの訪販法の中にもありますようにキャッチセールス、街頭であなたモデルにしてあげます、あなた海外旅行も行けますよというような形で、小さな子供を目指していろいろな形での商売といいますかアタックがあるわけですね。こういうことに関して小さな子供さんがもしも無防備だったら、非常にトラブルに巻き込まれると思うのです。法律では未成年者は無条件で契約は解除できますけれども、そういうことに対して避けるという知識子供さんに与えておいていただきたいなという気がするわけです。  というのは、この五月に入りますと、例えば卑近な例では各旅行業者がホームスティの募集をやるのです。この間私、外務委員会でも問題にしたのですけれども、今旅行業者に行ってホストファミリーの実態はどうですかというと、みんな逃げるんですよ。ホストファミリーについては言われるところに行ってください。オリエンテーションどうだ、向こうに着いてからの本当ホストファミリー家庭状況、ボランティアができるような家庭状況かどうか。文部省のやっている留学生の交換はしっかりしているのです。英語の語学力も調べています。しかし、トラベルエージェンシーのやるツアーは語学力も全く調べませんから、向こうトラブルが起きるという可能性が出てくるのです。これから夏休みに向かってそういう問題も出てくるでしょうし、今言ったモデルになりませんかというようないざないもあるでしょう。こうなってきますと、基本的な問題もさることながら、さしあたって夏休み子供を守ってやらなければならない。  そういうことで、これは読売新聞ですけれども「高校生にも消費者教育 先生みずから副読本づくり」という記事がここにあるわけですが、私はこれも一つやむを得ざる防衛手段ではなかろうかと思うのです。そういうようなことも必要ですけれども、こういうことについて通産省とか専門省庁等、どうすればいいのかというようなことで、小さな子供知識の上から守ってあげるということを御検討いただきたいと思うのでございます。これは決して文部省だけでできることではなく、通産省の協力もあって初めてできることですが、こういうような問題等今できることは何か、教育委員会通産省の間での話し合い等もあるでしょうし、いろいろな形で研究、検討いただきたいと思うのでございますが、このことに関して通産省文部省のお考えをちょっとお話しください。
  16. 末木凰太郎

    末木政府委員 大変御示唆に富む御指摘でございます。先ほどもお答えしましたように、私ども消費者教育につきましては古いタイプの、消費者問題だから消費者団体にやってもらうとか相談するとか情報を流すとかいうことでは足りないと思っておりまして、例えばクレジット関係の企業団体とか広告関係の企業団体とか、最近はそういうところに協力を頼む度合いをふやしてきております。  それから学校教育重要性についても、頭の中では認識しておりますし、研究会報告産構審等でも御指摘いただいておりますけれども、従来を振り返ってみましたときに、消費者団体等との連携に比較しますと、率直に申し上げてそこまで力を入れてやっていたかというと反省すべき点は多々あると思います。今後具体的な点につきまして文部省ともよく相談をし、相談しますというかお願いをする立場だと思いますけれども、やっていきたいと思います。
  17. 辻村哲夫

    辻村説明員 ただいまの御指摘、大変示唆に富んだ御指摘だと思います。ただ、消費者問題となりますと何分にも非常に専門的な知識と申しましょうか、積み重ねの求められるものでございます。そういう意味で、通産省を初めとする関係部局の応援等もいただきながら、これに積極的に対応してまいりたいと思っております。既に幾つかの県におきましては、消費行政部局の支援もいただきながら教育委員会との共同で副読本というふうなものもつくってこれに取り組んでいる例もあるわけでございますので、そうした例も見守りながらこの問題について前向きに努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。     〔尾身委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  18. 薮仲義彦

    薮仲委員 どうか文部省並びに通産省、御協議をいただきまして、小さな子供を嫌な被害から守っていただくことを心から期待しておりますので、よろしくお願いします。  次に、これは大臣に実態を知っていただきたいと思いまして、数字を最初報告を受けますから、最後に大臣にその対応についてお考えをお伺いしたいのでございますけれども、そうは言うものの、消費者被害というのは今まで相当いろいろな形で起きているわけでございます。お話のように訪問販売が悪い、通販が悪いということではなくて、商品にまつわるいろいろな困った問題が数多く発生しておりまして、国民はそれをどうしたらいいのかということを、通産省なり経済企画庁なり自治省なり警察なりといろいろ助けを求めてくるケースがあろうかと思うのでございます。現状をそのとおり言っていただいて認識をさせていただいて、その上でこれを今後どうするかという論議をそちらの方向へむしろ進めるという意味で、私は数字だけお聞かせいただきたいわけでございますが、通産省の苦情処理に対応する全国の体制はどうなっておるのか。窓口は何カ所か、受け付けた件数、五十五年から六十一年まで、総計で結構ですから、何万件、何万件と簡単に件数だけ、それを通産省、経企庁、この二つでちょっとおっしゃっていただけますか。数字だけで結構です。
  19. 末木凰太郎

    末木政府委員 通産省消費者問題の受け付けの体制は、本省及び全国各地の通産局に消費者相談員を配置しておりまして、トータルの数は六十年度以降二十一名でございます。それから、受け付けた相談あるいは苦情の件数は、時間の節約をして六十一年度だけ申し上げますと、訪問販売が千七百一件、通信販売が二百二十五件。ちなみに、トータルの相談件数は七千八百九十八件でございます。
  20. 吉田博

    ○吉田説明員 国民生活センターと消費生活センターにつきましての苦情受け付け件数を申し上げたいと思います。消費生活センターは現在約二百八十カ所でございます。五十五年以降の数字を申し上げますと、五十五年度が約二十万件、五十六年度が二十一万件、五十七年度が二十四万件、五十八年度が二十六万件、五十九年度が三十二万件、六十年度が三十八万件、六十一年度が三十八万件、こういうふうになっております。
  21. 薮仲義彦

    薮仲委員 経企庁さん、全国の消費生活センターと国民生活センターの窓口の合計をちょっと言ってくれますか。
  22. 吉田博

    ○吉田説明員 国民生活センターは、港区の品川に一カ所ございます。それから、都道府県及び政令市あるいは市の段階に消費生活センターというものが置かれておりまして、これを合わせますと合計で約二百八十カ所、こういうふうになっております。
  23. 薮仲義彦

    薮仲委員 経企庁さん、もうちょっとお伺いしたいのですけれども、では一センター当たりの人員は何名張りついているのか。それから、例えば具体的に、私は静岡、大臣は三重ですから、三重と静岡の消費生活センターの数をちょっと言ってください。
  24. 吉田博

    ○吉田説明員 消費生活センターで相談を受け付けております職員の全体数は、これは六十一年度の数字でございますが千九人になっております。一センター当たりで申し上げますと二・三人、こういうふうになっております。  それから、消費生活センターの数でございますが、三重県は二カ所になっております。静岡県は八カ所になっております。
  25. 薮仲義彦

    薮仲委員 これは大臣もお聞き取りいただいたように、困ったなと思って行こうとするのですけれども通産省は全国で本省を入れて九カ所、こういうことですね。これは余り嫌らしいから言いたくはないのですけれども、実際はそういうことで、例えば通産省消費者相談報告書というのが出ているわけでございますけれども通産省がいつもおっしゃる私書箱一号、ここへ何かあったら入れてくださいよ、これは処理件数だけで出ていますから決してどうのこうのと申しませんけれども、数だけちょっと大臣に御認識いただきたいと思います。当然御承知でしょうけれども、五十五年が九十八、五十六年が七十九、五十七年が六十七、五十八年が九十二、五十九年が六十、六十年が五十五、六十一年が三十六なんですね。  ということは、私、先ほど消費者教育とか大事ですよと言うのは、今の通産行政の中でこういうものをやるのですけれども、受け入れ側の消費者に対応する部分について、これからの消費行政の中で十分御検討いただけないか。私も自分の県を振り返りまして、八カ所なんですね。静岡、清水、浜松とか大都市にあるのです。全部の市町村合わせますと静岡は七十五市町村あるわけです。三重県は、もう大臣御承知のように六十九の市町村があるわけです。そこに二カ所ですから、これですべてをカバーできるかできないかということは、いろいろ問題もあろうかと思うわけです。  ただ、ここで問題は、例えば東京へ電話すればいいですよ、こういうことですけれども、例えば消火器で五千円ぐらいのトラブルが起きた。東京へ電話する電話料金を考えますと、電話料金の方が困ったなとだれしもお考えになろうかと思うのです。その上で、このセンターの数、センターのないところはどうするか。では、我々が簡単に相談を受けるところはどこなんだ。きょうは私、その意味で警察庁にもお見えいただいたのです。一一〇番に電話しよう、あるいは最寄りの役場へ行こう、こう思うわけでございますが、実際に自治省の対応はどうなるのか。自治省もお見えだと思いますので、自治省はこういうトラブルに対して、訪問販売とか通販というのは法律的な要件が非常に数多くございます。では、今の対応の中で、自治省さんがこういう町民の相談、これは地方自治法の第二条、言うまでもなく基本的な原則の中で、消費者保護ということがきちんとうたってあるわけです。当然、行政の内容としてあるべきだ、こうは言いますけれども、しかし現実、自治省は地方自治体のそういう窓口の中でこれが対応できるかどうか。自治省さん、いかがでしょうか。
  26. 小島重喜

    ○小島(重)説明員 お答え申し上げます。  ただいまの御質問でございますけれども、御指摘のように消費者行政というのは、まさに地方自治法に書いてございますように、市町村あるいは都道府県の固有事務ということになっておりまして、そういうものについて私どもといたしましては基本的に、こさいの業務についてああせい、こうせいということは私どもの立場としては従来から差し控えておりますけれども先ほど先生からお話ございましたように、世の中大変なスピードで変わっておるわけでございます。かつて花形だったものが既に陳腐化するというようなことがございますので、私どもといたしましては、最近、例えば土地問題でございますとか今御指摘のような消費者保護の問題とか、こういうものは自治行政の中でも大変重要な行政であるということは認識いたしております。  ただ、これについて個別に一々、各市町村に対してどうこうということまでは、やはり各地方団体がそれぞれの地域の実情に即して適切に対応すべきものだと私ども基本的な考え方を持っておりますので、これについて例えば交付税で必要なある程度の財政措置といいますか、それはいたしておりますけれども、現在の状況はそういうところでございます。
  27. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣にもう少し心の痛む問題を何点かお話ししますけれども、これは次のための対策として心にとどめておいていただきたいと思うのでございます。  私がこれで御検討いただきたいのは、まずセンターがないということについては、では地方自治体との関連でどうお考えになるのか。それと、少なくとも最寄りの役場が相談場所であってほしい。というのは、例えばこれは著しく法律的にかかわる専門的なこともありますので、弁護士さんに行こうと思っても、山の中のところには弁護士さんは張りついておりませんし、弁護士さんに行きますと、例えば着手料を持ってらっしゃい、五万、十万、二十万という金額を言われると思うのです。そうすると、トラブルになったのが一万円で二十万の弁護士料をかけてやるのは嫌だな、こうやって心を痛めちゃうわけです。そうすると、役場で親切に相談してくれることがいいんじゃないかな。  もう一つ情報ネットワーク、これは、例えばこういう業者が悪いことをやったよというのがばばっと伝われば被害の拡大は防げるのじゃないか、こう思うわけです。と同時に、ではこれも客観的にちょっと数字で私申し上げますけれども、これは総理府の広報室の世論調査でございますが、こういうのが出ているのです。「訪問販売についての苦情の申し出」、申し出をしましたか、しませんでしたかというアンケートなんです。この答えは私は非常に大変な事実だと思うのですけれども、「苦情を申し出なかった」七五%なんです。七五%の人が苦情を申し出ていないのです。あとは泣き寝入りなんです。今、数を聞きましたけれども、これは統計や推計学のいろいろな学問からどうなるかわかりませんが、この世論調査の中では七五%の人が苦情を申し出なかったのです。心へとどめたのです。では、なぜ苦情を申し出なかったのですか。「仕方がないとあきらめた」「面倒だった」「苦情を申し出ても解決しないと思った」「どこに申し出たらよいかわからなかった」これが国民の現状なんです。  私はこの辺のところをさっきから知ってほしい、知ってほしいと言うのは、こういう実態を消費者がみんなぐっとこらえて、訪問販売とか通販を耐えている部分も相当あるのじゃないか。ですから、冒頭に申し上げたアンケートがそのままじゃないと思いますけれども、他のアンケートを見ても同じような状況があるのです。この環境整備はこれから通産省も、今自治省もおっしゃったけれども、市町村の窓口でその対応ができる職員が二、三年で変わっていったら、これは専門的な判断はなかなかしにくいケースでもありますから、できないのじゃないか。  それで、苦情を申し出た人のほかのデータもちょっと出しますと、こういうデータがあるのです。国民生活センターなり消費生活センターに相談しましたかというアンケートなんですが、相談しましたというのは七%なんです。これも私は心にとどめておいていただきたい。そこで、相談したという方について、利用したセンターまでの距離はどうですかというアンケートが出ているのです。一番多いのが「十五分以内で行ける距離」が二六%、「三十分以内で行ける距離」で三一%、「一時間以内で行ける距離」で二二%、ほとんど一時間以内で求めているわけです。今度は利用した人じゃなくて、どのくらいの距離に相談できるところがあったらいいですかというアンケート答えをパーセントで申し上げます。一番多いのが「少なくとも三十分以内で行ける距離」に相談できるところがあってほしいが六三%、「一時間以内で」が一一%です。三十分から一時間の間で、大勢の人はそのくらいの身近なところで相談を受けられないかなと心の底で思っている。センターが足りない、これだけでいいか悪いかという論議は別にして、国民はこういうニーズを持っているんだということを知ってほしいのです。  しかも、もっとあるのです。これも心にとめておいてください。消費生活について相談に乗ってくれる人がいますかというアンケートです。これについて該当者が「いる」「いない」という答えなんですが、「いない」と答えた人が七四%なんです。この実態を知らずして消費者被害とか消費者教育ということを論ずるのは非常に難しいので、きょうは、自分も商工委員の一人ですから、何だという意味で申し上げるのではなくて、これをどうしたらいいのか。先ほど来、私は世論調査をもとにして、国民訪販とか通販に対する考え方、そして被害に遭ったときもこれだけ困っていますよという数字がここに歴然と出ているわけです。これをお役所に聞くと、お役所式の答弁を私は余り好みませんので、大臣にお願いしたいのは、冒頭に申し上げたように、これから消費生活というものは非常に重要であり、しかし非常にトラブっているということがありますけれども、私はそれにあえて挑戦して積極的に乗り越えて改善していかなければならない、それがこれからの政治なのかなと思った意味で申し上げているわけです。  きょうは警察庁にもお見えいただきました。自治省、文部省、経企庁にもお見えいただいたわけですが、やはり私は大臣に、こういう問題の上から何とか関係省庁と連携をとられて実態の上に立った解決の方途を積極的にやっていただかないと、この法律がたとえ通ったところでまたどこかで多くの人が泣いているのじゃないか。これはこの法律をつくった我々も心が痛むし、最も責任ある通産大臣としては、どうなっているかということはいつも心にかかることだと思いますので、この実態を何とかよりよい方向へ直していただきたい。その意味から、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  28. 田村元

    田村国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますというのが私の答えになるわけですが、せっかくこういう法律をつくっていただきます以上は、それに実を伴わなければ何にもならぬわけであります。それともう一つは、今おっしゃったように各省庁に協力を求めて十分の体制をとっていくということが必要でございましょう。  端的に言いまして、この種の法律というのは、私自身が提案理由を読んで御審議願っておる。ところがその私も、恐らく上坂さんもそうだろうと思いますけれども、これでもう絶対大丈夫ですよと言って胸を張るということには正直ためらいを感じる。こういう法律をつくったならばその実を上げるように努力をし、そうして過ちを改むるにはばかるなかれで、試行錯誤というものについて堂々と与野党に協力を求めてよりよきものに改善していく必要があろうかと思います。今、私の郷里のことまで承ったわけでありますが、私がこれから十分に事務当局に対してにらみをきかせながら、少しでも実効あらしめるように努力をいたさせる所存でございます。
  29. 薮仲義彦

    薮仲委員 この問題はこれで終わりますけれども、今大臣の御答弁にありましたように、どうか消費者が守られ、よりよい経済環境消費経済育成されるように、私も重ねて心から期待し望んでおりますので、よろしくお願いします。  いよいよ時間がなくなりましたので、申しわけないのですけれども、これから御答弁本当に駆け足で結構ですから、私は聞きたいことがずっとたくさんありまして、最後までいかなかったら後で書面等でお願いします。  まず、クーリングオフに関して要点を三つほど最初にお伺いしたいのです。  この期間について、社会党さんも八日にすべきだ、それはいろいろな意味から私はわかるのです。建設委員会であさってあたり論議されます宅建業法、これは五日を八日にしようということになっております。これにはいろいろな理由もございますが、私は長ければ長いほどいいということではございませんで、この委員会でずっときのうまで論ぜられた中で八日の必然性というのはいろいろな角度であろうかと思いますので、これについては御検討いただいた方がよろしいかなと思うことが一つ。  それからクーリングオフ、きのうまでの答弁の中で私は非常に心配なことがあるのです。ポストへはがきを入れなさい、こういう御答弁審議官もなさいます。しかし、もしも相手が悪い業者だったならば、はがきが来ないよと破って廃棄したならば法廷維持ができるかどうか。抗弁権といいますか抗弁能力があるかどうか。証拠がないでしょう。あなたはポストに投函したと言うけれども入れた証拠はあるのですかと、これは法廷維持ができないと思うのです。抗弁権は成立しないのじゃないかと思うのです。ですから私は、これはクーリングオフの書面だということについては、少なくとも内容証明とか配達証明つきくらいがぎりぎりかなと思いますけれども、これもちょっと難し過ぎると思うのです。我々は配達証明とか内容証明というのは何となく嫌ですから、自分でも余り出したことがありません。一般の消費者が配達証明とか内容証明郵便で出してくださいと書かれて理解できるかどうか。お年をとられた方だとか、まだそういうことの経験のない方は嫌だと思うのです。ですから、もっと簡便でしかも抗弁権が成立するようなきちっとしたものをどうするか、このお考えがあったらお聞かせいただきたい。  それから、さっき審議官が賢い消費者とおっしゃいましたけれども通産省の手引き書が二つあるのですね。「かしこい消費生活へのしおり」もう一つは「くらしと契約知識」、これの十四ページにこういうことが載っているのです。これは通信販売の適用除外例「割賦販売法の適用を受ける割賦販売、ローン提携販売と割賦購入あっせんに係る販売。」これは適用除外になっていますね。ということは、これはクーリングオフがきかないということなのですか。例えば通販で割賦販売を受けたときにクーリングオフがきかないことになってくると被害者はかわいそうですし、やはり今度の法改正の中できくようにすべきだと思うのですが、まだまだたくさんありますので、さしあたってこの三つ、ちょっと簡単に要点だけお答えください。
  30. 末木凰太郎

    末木政府委員 時間がありませんので簡単にお答えさせていただきますが、クーリングオフの期間につきましては、どうするかいろいろ考えてみました。いろいろな考え方があると思いますが、私どもが分析したところでは、今クーリングオフについてよく寄せられる問題点は、クーリングオフの権利があるのを知らなかったというようなケース、それからクーリングオフの権利を行使するのを業者の方が欺瞞的なやり方で妨げたようなケース、こういったものが多いものですから、その二つを重点的に考えまして今後対処していくということで、期間につきましては現行の維持という御提案をしたわけでございます。しかし、これはいろいろな考え方があることは承知しております。  それから、ポストに入れればということでございますけれども、名の通ったといいますかまじめな企業の場合にはそれで当然受け付けるわけでございますし、極端なことを言えば電話で受け付ける企業だってありますけれども、問題の悪質業者である場合には、それは知らない、受け取っていないと言われると確かに争いようがございません。そこで、何か簡便ないい方法はないかということでいろいろ考えるわけでございますけれども、なかなかいいものに思い至らないわけでございます。したがいまして、今のところは大事をとって、内容証明でお出しいただくことが最も望ましいということを解説書とか指導関係の書類では書いておるわけでございます。  それから、先ほどのパンフレットについてのお尋ねでございますけれども、詳しく申し上げるいとまがございませんけれども通信販売につきましてはクーリングオフの制度がございません。これは通信販売についても認めるという御意見はございますけれども通信販売はそもそもそれがないということでございます。それから、割賦販売で訪問販売する場合には、ちょっと法律が複雑になって、割賦販売法が適用になる場合と訪問販売法が適用になる場合とございますけれども、おおむね訪問販売法で、今度の整理ではクーリングオフができるようになっております。     〔奥田(幹)委員長代理退席、尾身委員長代理着席
  31. 薮仲義彦

    薮仲委員 続けて二点です。  ポストの件ですが、これは審議官、ちょっと検討してください。いわゆる配達証明、内容証明というものが難しければ、通販訪販をやる業者が返信用のはがきをつけなさい、しかもそれは控えの残るカーボン用紙、コピーのとれるもので返信用はがきをつくりなさい、内容証明、配達証明は非常にややこしいので、モデルといいますか、このはがきがつけばいいということで。ただ、これではまだ危ないんです。そこで、郵便局の窓口へ行って日付のスタンプをここにもらいなさい、そうすればこれはクーリングオフの指定要件を満たしましたというふうに、もしも通産省と郵政省の間で話し合いができれば。これは必ず窓口へ持っていって窓口でスタンプを押してもらいなさい、そこではがきも出すし控えはちゃんと持っておきなさい。これはクーリングオフしたいわゆる発信の日付ですから、郵便局でもらうしかないんです。ポストへ入れたのではいつ押されたかわからないのです。窓口へ行って控えの方をもらっておいて、この控えはクーリングオフの証明ですと言うことができれば、抗弁権といいますか対抗要件が整うと私は思うのです。これは一つの案ですから、どうなさるか検討いただきたい。  それからもう一つ現金取引ですけれども、私も一番問題になる消火器を都内のデパートで調べたのです。五千円からあるのですね。デパートによって違いますけれども、標準的には六千円台のものから九千円、一万円台のがあります。五千円ぐらいとかおっしゃっていますけれども、私はこれは、ある意味では低い方がいいかなという考えがあります。高くするよりも低くなさった方がと思いますが、以上二点についてお答えいただきます。
  32. 末木凰太郎

    末木政府委員 クーリングオフの方式につきまして具体的な御提案をいただきまして、大変恐縮でございます。具体的な問題でございますので、大変貴重な御示唆をいただいたと思いますので、早速研究させていただきます。  それから、現金取引に関するすそ切りでございますが、諸外国の例それから取引の実態等を踏まえまして現在検討中でございますが、五千円ないし一万円程度の範囲で今詰めております。
  33. 薮仲義彦

    薮仲委員 大臣、ちょっと民法上の問題が絡みますので、ここで答弁を求めますと法律上どうのこうのとややこしいですから、これは検討をいただきたいということで大臣に御承知おき願いたいのです。  問題になりますのは、いわゆる通販訪販もそうですけれども、これから多く出てくるのは現品がありません、じゃこのカタログで品物を選んでくださいと言われるケースがあろうかと思います。品物が後から送られてくる。訪問販売の場合もそうやってカタログでやる。通信販売の場合は、もちろんカタログとか広告とかテレビ等によって申し込むわけでございますから形態は同じですけれども、これからはそういうケースが非常にふえてくるのじゃないかと思います。  ここで一番困りますのは、これは民法上のややこしい話で甚だ恐縮ですが、民法の五百二十六条にこういうことが書いてあるわけです。「隔地者間の契約の成立時期、意思の実現による契約の成立」ということがありまして、「申込者ノ意思表示又ハ取引上ノ慣習ニ依リ承諾ノ通知ヲ必要トセサル場合ニ於テハ契約ハ承諾ノ意思表示ト認ムヘキ事実アリタル時ニ成立ス」いろいろなことが書いてあるのですけれども、民法の「契約」の条項のところで申し込みと承諾とどういうふうになるかといいますと、購入者による購入の申し出が申し込みである、それから販売業者が届けるのが承諾である。  こういうことになってまいりますと、ここで何が問題かといいますと、購入者が申し込みをしたときが契約のいわゆる開始になるわけです。契約が成立したと認めちゃうわけです。例えば、カタログを見て申し込みました。ところが、クーリングオフが過ぎてから品物が着いた。契約の日時から数えるともう十日たっています。このケースはきょうは時間かないからやめますけれども、新聞の投書の中にも訪問販売の場合が出ておるわけでございますが、通信販売の場合は、もろに品物が着いたか着かないかということになります。良心的な広告は品物到着後同日という表現に特約でなっておりますけれども訪問販売の場合は、クーリングオフは七日間と決まっているわけです。そうしますと、カタログで請求して品物が十日後に着きます、これはクーリングオフの期間が過ぎておるわけです。  そこで、確かに民法上は、契約の申し出があったときが契約の成立という形になっておりますけれども、私は先ほど申し上げたように、通販訪販もこれからは自宅で電話で申し込むような時代になってくると思いますので、この問題は大きなトラブルを起こしかねない要因になりますので、品物が着いてからクーリングオフの期間というふうに御検討をいただきたい。申し込みのときからという民法に基づいていることは私わかりますけれども、遠隔地であるとかいろいろな場合に非常にトラブルの原因になりますので、品物が着いてから何日間というふうに検討していただく。訪販通販も、クーリングオフのスタートは到着後同日でやっていただくことが妥当であろうと思いますので、今急に結論を出してこうだということは申し上げませんが、これは十分検討していただきたいと思いますので、いかがでございますか。
  34. 末木凰太郎

    末木政府委員 時間が限られておりますので、非常に否定的なお答えを申し上げるような感じになったら申しわけないのですけれども、検討課題ということでちょうだいいたしますが、現時点におきましては、カタログ販売の問題点というのは、訪問販売であっても店頭販売であっても共通の問題でございますので、訪問販売の特例ということで扱うのは法律論としてはちょっと問題があるのではないかということが一つございます。  もう一つは、品物の引き渡しをしてから改めてクーリングオフの期間が始まるということですと、非常に簡単な卑近な例を申しますと、衣類のすその寸法を合わせてつくってしまった、それをお届けした、それからクーリングオフというようなことが起きてまいります。そういう場合も覚悟しろというのも一つ考え方でございますけれども、実務上非常にいろいろな問題が出てくる場合がございます。  三つ目に、品物に着眼した制度ではなくて、意思形成の動機、予期しないときにいわば不意打ち的にセールスマンがあらわれたことの消費者側の不利性を是正するという法律論になっております。  この三つの点からなかなか難しい問題があると思いますけれども、短時間でお答えしたものですから否定的な感じのみ申し上げて恐縮ですが、勉強課題であるということで私どもも承っておきます。
  35. 薮仲義彦

    薮仲委員 私は、これは高度情報社会が進めば進むほど、気をつけないと非常に出てくると思うのです。しかも、この法律は現時点はどうやら対処できるかもしれませんけれども、今度高度情報社会になってきて電話機を通じていろいろな取引、さっきから言っているようにホームリザベーションという形で航空券の予約、列車の予約、ホテルの予約、施設の予約等を始めたときに、必ず新しい通販の問題がアクセスする情報業者との間で出てくると思います。この法律の改正は、非常に短期間の間にそういう問題について対応することを十分考えなきゃならない。しかも、今審議官は否定的な御発言をなさいましたけれども、これは私非常にトラブルの原因になると思うのですよ。きょう私、申し上げておきます。これから訪販であるとか通販であるとかの問題点は、この点が非常に大きくなると思うのです。  それから、問題点を列挙いたしますのでちょっと記憶しておいていただきたいのですが、例えば訪販の中で適用除外のケースがあるわけです。相手から請求されて伺ったときにはその適用が除外されるというケースがここにあるわけです。通産省のこの百二ページにクーリングオフのことがございますけれども「第四条から第七条までの規定は次の訪問販売については適用しない。その住居において売買契約の申込みをし又は売買契約を締結することを請求した者に対して行う訪問販売」請求をしたらばクーリングオフは適用しないと書いてあるのです。ところが、例えば私が通販の場合あるいは訪飯の場合でもカタログを請求しました。手紙で訪版会社にカタログを請求した。ところがカタログを請求したのに人間が訪ねてきた、そこで商取引を行ったらこれはクーリングオフができなくなる、法律上からいくと。この点はよく気をつけていただきたい。  それから、もう時間がないですが、信販会社の責任、いわゆる信販会社が業者と結ぶときにもう少しきちっとした審査をやりなさいということ。それからクーリングオフについての連携、あるいはまた信販会社も消費者を守るんだという立場で、これからのカード社会を育てる一員なんだ、被害は知りませんよという態勢ではいかぬということを信販会社にきちっと指導していただく必要があろうかと思うのです。  それから業務停止命令がございますけれども、この業務停止命令などは、いわゆる開業規制をやっておりませんので、どの部分ができるか。例えば別の業態の会社であればどこを縛れるのか。訪問販売という形態、行為しかできないと思うのです。例えば家具屋さん、不動産屋さんが訪販をやっているけれども通産大臣が業務停止命令をできるのはどの部分だ。本業の部分は、通産大臣は開業規制にかかわっておりませんからできないと思うのです。ですから、この業務停止命令も、きょうは本当はもっと詳しくやりたいのですけれども、非常に心配です。  それから、第五条の二の「禁止行為」の二項に威迫、困惑とありますけれども、親切ごかしというのがあるのですよ。豊田商事みたいに肩をもんだり仲よくして、親切困惑の場合はどうなのか。しかも、いわゆる不実、威迫、困惑の三条件があるのです。直罰ですからね。でも、不実、困惑の中で親切困惑というのも十分考えないと、これは、じゃ私は親切にしたのだ、親切にしたから怒られることはないよ、こういうことになってしまうと思うのです。  まだいろいろあることでございますが、問題のある原野商法、士商法等もございますけれども、こういう問題をいろいろ抱えております。これができない部分を私持っているのですけれども、心配な部分もありますが、きょうはやめておきますが、これについては最後に大臣、私いろいろな問題を申し上げましたけれども、何とかうまく成り立つように御努力いただきたいし、警察庁の方としては、法改正によって消費者が守られて悪い人がいなくなるようにきちんとした対応をお願いしたいわけでございますが、最後に大臣と警察庁の御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  36. 田村元

    田村国務大臣 先般来いろいろな御意見がありまして、今もまた薮仲君からのいろいろな示唆に富んだ御進言、御質問というよりむしろ御進言と言った方がよいかもしれません。それをお聞きをいたしまして、もう一回私おさらいをしてみたいと思います。法案そのものの勉強はしましたけれども、この法律案が通りましてからもう一回私自身でおさらいをして、扱いの面で可能な限りの努力をして、おっしゃったようなことが生かされる場合はそれを生かしていく。もし事が大きくてなかなか難しいという場合には、それはまた扱いの面でそれに近づくような努力もするというふうにしたいと思いますから、この法案が通って一段落つきましたら、一遍勉強の機会を与えていただきたいと思います。
  37. 五十嵐忠行

    ○五十嵐説明員 悪質な訪問販売事犯などのいわゆる悪質商法につきましては、消費者保護の立場から被害の未然防止あるいは拡大防止を最重点とした取り締まりを積極的に進めてきたところであります。  今回の改正案を見ますと、従来の政令指定商品に加えて指定役務や指定権利が規制の対象となっていること、あるいはキャッチセールスやマルチまがい商法が規制されているということ、あるいは禁止行為として売買契約等を締結させ、または売買契約等の撤回、解除を妨げるため人を威迫して困惑させてはならない等の規定が新設されていること、書面交付関係について従来の規定を整備したこと、こういったことが盛り込まれておりまして、悪質業者に対して抑止効果が期待できる上に、取り締まりの面でもより効果的な対応が可能になったというふうに考えております。  警察といたしましては、今回の法改正趣旨を踏まえまして、この改正法案の罰則規定を初め各種法令を適用して厳正な取り締まりを行うとともに、関係機関、団体との緊密な連携のもとに効果的な広報、啓発活動を推進し、消費者被害の未然防止、拡大防止に努めてまいる所存であります。
  38. 薮仲義彦

    薮仲委員 終わります。ありがとうございました。
  39. 尾身幸次

    尾身委員長代理 工藤晃君。
  40. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 最初の問題は、商品、役務の指定制についてですが、昨日の通産省答弁を聞いておりますと、役務はともかく商品については問題のあるものはもうみんな指定し切っているというような答弁だったと思いますが、ややこれは自己満足、思い上がりではないかという感じを受けました。仮にカバーし尽くしたということであったとしても、それが敏速に指定してきたのかどうか。それから、実際に消費生活センターなどで相談員の方が苦労されていますが、そういう方が通産省に対してどういう印象を持っているか、この辺を考えていないのではないか。きのう来いろいろ出ておりますのでもう多く申しませんが、例えばシャワーは入るけれども蛇口が入らないのはなぜかというようなことがいまだにあるわけですね。  だから、その問題はこれだけにしますけれども、私は、今度また指定制を続けるというのはかなり大きな問題があるということでひとつ経済企画庁の方に伺いますが、私も御説明を受けましたが、訪問販売に関し国民生活センター等に寄せられた相談件数が、会員権商法で五十九年度、六十年度、六十一年度、六十二年度どうなっているのか。ついでに、SF商法でもその件数だけを述べていただきたいと思います。
  41. 吉田博

    ○吉田説明員 国民生活センターの相談件数でございますが、五十九年度から五千九百三十三、七千百、七千九百十八、こうなっております。そのうち訪問販売にかかわりますものが千五百十五件、二千三百八十一件、二千八十一件となっております。  それからSF商法につきましては、五十九年度から七百六十件、千九百十九件、二千五百八十件、それから六十二年度は、これは現在まで全部集計をいたしておりません。現在まで把握しておりますのは四千九十八件となっております。――失礼申し上げました。SF商法につきましては、国民生活センター及び消費生活センターの情報ネットワークで結んでおりますセンターの数の合計でございます。
  42. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今なぜ会員権とかSF商法について述べていただいたかというのは、昨日も藤原委員の方から御指摘あったと思いますが、国民生活審議会消費者政策部会、これは五十八年十二月九日ですから四年以上たっているんですが、この中で取り上げられている事例というのは、実は今言った会員権にしろSFにしろみんな取り上げられているわけです。それからまた、「販売目的を隠した勧誘が多い」とか「消費者に誤認、誤解を与える勧誘がみられる」とかいろいろあります。そして、特に「現行法規制の対象外の取引に関するトラブルが増加している」ということが挙げられて、そういうことに立って「訪問販売法は、本来販売方法の特殊性に着目して消費者保護を図ろうとする法律であるから、取引対象が何であるかは関係がないこと」と言って、「現に欧米諸国の店舗取引に係る諸法令には、規制の対象を広くすべての商品、役務に及ぼすことを原則」としている、こういう方向に改めるべきだということが出されているわけです。このとき、国民生活審議会というのは総理大臣あるいはまた関係大臣が諮問するというのですが、この答申などはどの大臣に対して答申されたものでしょうか。
  43. 吉田博

    ○吉田説明員 この件につきましては諮問、答申ではございませんで、たしか審議会の報告という格好になっているかと思います。
  44. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 諮問、答申でないとしても、これは重要な報告として出されているわけなのです。それで、その後我が党としても、特に豊田商事などの事件が起こったときに、この問題で訪販法を改正すべきであるということを言ってまいりました。  その内容の一つとして、指定制をやめるべきであるということになっております。企画庁からいただいた資料によりましても、現にアメリカではモデル法案としての統一消費者信用法典、それからヨーロッパ関係ではECの理事会指令案として商品一般、役務一般というふうにしていて、こういう方向がいわば常識になっているというか通例になっている。そういうときに、先ほど指定制でもいいんだと言うけれども、現に四年前こういう重要な報告が出され、それでもう既に、今大変問題になっている会員権だとかSFとかいろいろなやり方が出ていますよ。これに対応しなければいけないということが出されながら、事実上対応できないから、先ほど出された資料のように件数はどんどんふえていったのじゃないかと思うのですね。そういうことから、この指定制の問題というのを改めていく、すべての商品、役務に及ぼすということは非常に重要な課題だと考えます。ちょっと今、大臣いないですから、答弁は後でまた大臣に求めます。  次に、行為規制の問題について質問をしたいと思います。  訪販法のやり方として非常に大事なポイントというのは、悪質な業者に対して無防備な被害者が救済されるということ、と同時に、悪質な行為そのものを規制するということで、行為規制というのは非常に大事な手段だと思うわけです。しかし、この行為規制はどういう行為を規制するのかということが具体的に示されないと効果が上がらないのではないか。そこで、一つ問題点として、消費者の判断に影響を及ぼす。これは法案にあるように「不実のことを告げる」というのは確かに影響を及ぼしますけれども、重要な真実のこと、重要な事実について述べないという行為も当然規制されるべきだと思いますが、その点いかがでしょうか。
  45. 末木凰太郎

    末木政府委員 うそを言ってはいけないということと大事なことを言わなければいけないということとは、私ども並行的に検討いたしました。しかしその結果、いろいろ勉強してみますと、重要なことを言わなければならない、その重要なこととは何か、訪問販売としての重要なことは何かということを詰めていきますと、これは書面交付義務を課しているその書面に書くべきこととされている価格とか引き渡しとか、それがまさに重要なことでありまして、それ以外は店頭で買う場合との関係において、訪問販売におけるがゆえに重要なものというのはないのではないか、こういうことになったわけでございます。  もし仮にそれが何かのケースであったとしてそれを言わないとすれば、それは非常に特殊なケースだと思いますから、今度は不作為による詐欺のケースもあり得る。これは、私どもはそういうケースかたくさんあるとは思いませんけれども、理論的にはそういうこともあり得ると思いますが、通常のケースにおきましては書面交付に書かせていることで足りるという判断をしたわけでございます。
  46. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 では、例えば販売目的を隠して、そして接近して売るということは、これは販売目的を隠すということでは事実を告げない。それは、今度の行為規制ではどういう形で規制されますか。
  47. 末木凰太郎

    末木政府委員 それは現行法にもございますけれども、三条で、氏名、名称とか、どういうものを自分は売りに来たとその取扱商品をまず冒頭に言いなさいということの義務を課しておりますので、この規定で規制ができます。かつ、現行法はこれが訓示規定でございますけれども、今度の改正後、それに違反した場合には行政上の措置の対象になります、指示の対象になりますので、そこの意図を隠して不当なことをやったような場合に、必要とあればやめさせるための指示を出すことになります。
  48. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 大臣、どこに行かれたのですか。大臣いないとちょっと続けられないな。――今、大臣のいない間やろうと思って、いろいろ大臣に聞こうということが飛んでしまいましたから、また後でやります。いや、大臣がおられない間に質問をしていることで、大臣の御答弁を求めたいことがあったのですが、後で求めます。  行為規制のことで今のような答弁があって、販売目的を隠してということは非常に多いケースなんです。これは通産省も知っているでしょう。「月刊消費者」というのです。この中にあるケースで、例えば求人まがい商法。新聞で求人広告を見て応募して、営業担当として採用された。販売活動に入るとき、社員はみずから商品を購入してほしい。それで、健康食品一年分二十八万円購入してしまった。しかし営業成績が上がらないのでやめざるを得ないというので、結局やめたということになっています。これが求人まがい商法。あるいはステンドグラスの講習会商法。これは内職をかたったものだと思いますが、広告で自宅製作ができる、講習会のお金を取られ、ステンドグラス製作用機械二百五十万円を購入しなければならなかった。結局つくったものも買い取られずに損だけ残ったというのです。  こういうものは、一見求人みたいであるし内職の講習みたいであるけれども、明らかにこの業者は販売でもうけようということをねらったものである。だからこそ「ストップ ザ・悪徳商法」の中に載せられたと思うのですが、例えばこういう行為については先ほど言った販売目的をどこで示さなければいけなかったのか。恐らく広告の中でこれだけ内職をやってもうけられますと言ったら、これは不実を告げたということに当たるのかもしれないけれども、ともかくこういう行為はどういう形で行為規制がやられるのか、それを伺いたいと思います。
  49. 末木凰太郎

    末木政府委員 今先生が挙げられた例は解釈の非常に難しい問題でございまして、具体的なケースに即して慎重にお答えしなければいけないものだと思うのですが、一般論で申し上げますと、それがもし買う方にとって商行為、買う方がビジネスをやるのだということの準備行為として、ビジネスのために必要なものを買うんだということになりますと商行為ということになりまして、訪問販売法が適用されないことになります。しかし、そうなりますと、訪問販売法の適用を逃れる手口を教えるような答弁はしたくないわけでございますので、本当にそういうことになるのか、それともそれはあくまで仮装であって、買う人にとって商行為ではないんで、真実はそうじゃないということに構成できれば訪販法の適用がもちろんございます。  そうした適用があった場合に、そのような行為をどうやって規制するかということでございますが、これは商品の品質そのものを偽ることではございませんのでなかなか難しいと思いますけれども、そのようなものについて今度の禁止行為、省令で定める方になると思いますけれども、どんな手当てができるものか、これも工夫してみたいと思いますが、今申し上げたように法律的には非常に微妙な問題があるわけでございます。
  50. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 今の答弁からも重要なことがわかったと思うのですが、通産省がよりによって挙げたその例についても、どうやって今度の法律規制されるかわからないという大変自信のない答弁であったということが一つと、それだけに行為規制というのは、こういう行為をやったらいかぬということをもっともっと具体的にどこかで書き込んでいかなければいけないということを示したのだと思うのです。  それについて、この前も参考人の方に伺いましたけれども、例えば東京都消費者センターが毎月出している「今月の消費者相談」のことしの三月号「若者の消費者トラブル」の中で「最近の傾向として販売会社が消費者に貸金業者の利用をそそのかし、商品代金を一括払いさせるケースが増えている。」こういうこともあります。それからまた「今月の消費者相談」昨年八月号「高齢者の消費者トラブル」を見ますと「高齢で働いていないことを承知で、「ボーナス月払い」を併用した支払い方法がとられていたことについては、販売会社・信販会社の大きな手落ちであると言える。」こういうことがありますけれども、例えば行為規制の中に、お金がないよというときに、そうは言っても定期預金があるでしょうとかいうことで一緒について行っておろさせるというような行為だとか、あるいは高田馬場かどこか知らないけれどもサラ金業者のところへ連れていって、ここで金を借りなさい、こういうことまでやるということで決定的な第一歩が始まるわけなのですが、そういうことも具体的に規制すべきではないか、そのことをごく簡単に答えてください。そういうことをやるのかどうか。
  51. 末木凰太郎

    末木政府委員 好ましくない行為の類型としてはいろいろなことが挙げられておりますし、日本弁護士連合会は二十項目くらい列挙して参考人のときにもおっしゃったわけでございます。私どもは、まさにこれは技術的に詰めなければならない問題でございますので、一つ一つの事項についてこの席上でこれは入れます、これは入れませんというふうにお答えするのはいかがかと思います。心としては、消費者が期待をしていることをできるだけ取り上げたいという心でございますけれども、一般論としまして、ある程度の違法性があるというものでなければいけませんし、それから極めてまれな例ということではなくて一般的に行われ得る一般性がなければいけませんし、それから構成要件が明確でなければならないと思います。その他、他法令との関係等吟味して省令をつくるつもりでございますけれども、心としては、常識で見てこういうものは好ましくないぞというものはできるだけカバーしたいという心でございます。
  52. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 省令をつくるときそういう点でなるべくカバーしたいというのですが、それは真剣に具体的なものをとらえてやらなければいけないと思います。その点、日弁連の案でたしか二十一の類型があるし、これも一つの参考になると思いますし、地方自治体によってはこういう問題でかなり苦労していい内容の消費者保護条例をつくっている例が幾つかあると思います。  その一つとして、埼玉県消費者保護条例の中で不当な取引方法の禁止というものがあり、そして不当な取引方法として一から十一が挙げられていて、その中に例えば「商品等の販売の意図を隠し、又は商品等の販売以外のことを主要な目的であるかのように告げて消費者に接近し、又は消費者を営業所等へ誘引して勧誘すること。」などがありますが、さっき言った「月刊消費者」が挙げたようなものなどはこれでやれるはずだと思うわけです。ぜひこういうものも参考にしていい内容にすべきだというふうな私の意見を申して、次の質問にいきたいと思います。  それで、法の運用についてこの委員会でもいろいろ質問がありました。昨日、藤原委員からも質問がありましたので、私はこの問題について一番重要だと考えていることについて触れてみたいと思います。  先ほど来いろいろ件数が出されておりますから、私はもうここで繰り返すつもりはありませんけれども大臣先ほど伺ったと思うのですがもう一度聞いてほしいのは、六十一年度の通産省への相談件数が七千八百九十八件で、そのうち訪販が千五百九十七件で通信販売が二百十七件、訪販通信販売を合わせると千八百十四件ですが、国民生活センターは六十一年度に受け付け件数が三十七万九千二百八十二件、二けた違うのですね。先ほど通産省の相談件数に比べて四十八倍です。それからもう一つ、特殊販売が十四万二千百二十七件であります。これは先ほどの訪版、通信販売の合計と比べますと七十八倍ですし、特に訪問販売だけについていいますと、通産省が千五百九十七件、国民生活センターが十一万百四十二件ですから六十九倍なのですね。東京都の消費者センターがメコニスというデータバンクを持っておりますが、この六十一年度の相談件数でも四万九千二百六十九件、それから特殊販売が一万七千三百九十五件で、東京都だけでも通産省のデータと比べると一けた上だ、こういう現実があるわけであります。  しかし、このデータは消費者保護の第一線で働いている人のところから東京都でいうとメコニスというデータバンクに入り、国民生活センターのパイオネットに入っていって、そこで、今どの地域でどういう手口がふえているか、どういう業者がどういうことをやっているのか、これがどんどん集められていく。それが、通産省の方は一けた、二けたあるいはもっと少ないということは、大きな情報ギャップといいますか、これからの消費者保護行政に与える影響というのは非常に大きな問題だと私は考えております。第一、通産省の方も、いわゆる早期警戒システムとかいろいろ言われておりますけれども、一けた、二けた、三けたも低いような量でいうと、これではいわばデータバンクとしての価値も余りないのではないか、機動性もないのではないか。そういうことに加えまして、では国民生活センターの方、企画庁の方は、そういうデータが集まってから行政的に手が打てるかというと、これは権限は持ってない。訪販法の権限は通産省が持っている。情報はこちらの系統に集まるけれども権限がない、権限のある通産省には情報が集まらない、このギャップをどうしていくのか、この点でひとつ大臣に伺いたいと思います。これは非常に重要な問題なんです。  そういうことに加えまして、消費者保護会議というのが十八省庁と内閣総理大臣とでやられるというのですが、これがたった年に一回しかやられないというのですね。緊密に協力して進めていきますと言っても、大臣クラスは年に一回しかやられないというようなこの態勢はまことに心細いと思うのですが、このあたりをどうするのか。  それからもう一問、これは、今度大臣の権限を知事におろすということもありますが、具体的にどういう内容の権限を知事に移すのか。  時間もなくなってまいりましたので、以上の点について答えてください。
  53. 末木凰太郎

    末木政府委員 通産省に寄せられる件数が二けた少ないというお話でございますが、私ども、こういう件数で国民生活センターとか消費者センターと競争するという考え方はおかしなものだと思いますし、要は、先生御指摘のように、そういう情報を十分国全体として的確に活用して生かすということだと思います。  先生が言及されました早期警戒システムのことでございますが、今私ども消費者協会のコンピューターにインプットするものとしてまだ検討を始めたばかりでございますので、とりあえず日常的に非常に頻繁に接触している十一団体のデータを入れようということでやっておりますけれども国民生活センター等の情報をこれにどういうふうにつなげていくかということも、同時並行に勉強していきたいと思います。それから、コンピューター化が進まなければやれないのかということではございませんから、もちろんきょうからでもより一層の緊密な連絡をとりたいと思います。  それから、大臣レベルの会合の問題につきましては、これは大臣がお答えになるのが適当かと思いますけれども、私ども事務方といたしましては、日常必要があれば必要な都度開いていただくつもりでおります。  第三点の権限委任でございますが、一番件数が多くなると思われますのは報告徴収とか立入検査でございますが、この辺を中心に、その他何を都道府県にお願いするか、これは一方的にお願いをしても受けないと言われるとできないわけでございますから、自治省を通じましてよく御相談をしてまいりたいと思っております。
  54. 田村元

    田村国務大臣 先ほど薮仲委員のいろいろの御指摘に対してお答えいたしましたように、この問題をあらゆる面から、実行面で一度私自身勉強してみたいと思います。法律案そのものの勉強と、こうして質疑の内容を伺った上での勉強とは、理屈と現実という面でまた違う面が出てきますから、十分勉強いたしたい。そしてまた、事務方にもびしびしと物を言いたいというふうに思っておりますし、それから横の連絡も十分にしていかなければならぬことは当然でございます。特に、訪問販売等被害者が庶民ですから、そこに思いをいたさなければならぬというふうに考えております。  それから、大臣会合といいましても、限られた時間で大臣が物を言う。閣僚会議なんかそうでございますが、その前に十分事務方に詰めを行わしておく。しかも、それも事務方の一方的なことではなしに、その都度中間報告等をどんどんと大臣にして、そしてそれを踏まえて大臣会合に出ていくということが一番正しいことではなかろうかと思います。  いずれにいたしましても、たくさん法律案がございます。どれもこれも皆非常に大切な法律案でございますけれども、この法律案は一層大切なものだと私は考えております。何しろ被害者が庶民ですから、十分の勉強をしてみたいと思っております。
  55. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員 これで質問を終わりますが、先ほど大臣がトイレに行っておられる間、一つ聞いてほしかったことがあります。  それは、四年前の国民生活審議会の一部会の報告として、商品の指定制をやめるべきだという案が既に出ていたことや、アメリカやヨーロッパでは外すのが普通になっている。こういう問題も含めて、大臣にぜひ検討してほしいという私の希望を申し上げまして、これで終わります。
  56. 尾身幸次

    尾身委員長代理 午後零時三十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十七分休憩      ────◇─────     午後零時三十五分開議
  57. 渡辺秀央

    渡辺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上坂昇君。
  58. 上坂昇

    上坂委員 各議員から質問が出尽くしているかもしれませんが、私なりに質問させていただきたいと思います。  前回、訪問販売に関連する悪質な商法の典型として豊田商事事件が発生し、通産省はそのような悪質商法の排除を目的として指定商品の預託に関する法案を提出し、我が社会党は現行訪販法の抜本的改正により悪質な商法排除を織り込んだ訪問取引法案を提出いたしました。この指定商品の預託法と我が党の訪問取引法案の審議の中で、私ども指摘をしてまいりました項目について、できるだけ早い期間に検討を加えることを通産省は約束したのであります。あれから約二年、今日、そのときの指摘条項を数多く取り入れ今回の訪販法改正案を提出をされたことについては、遅きに失した感はあるにいたしましても、一定の評価をしていることを率直に申し上げたいと思います。ただ、その間、悪質な訪問商法が後を絶たず、被害者も年々増加の一途をたどったことも事実であります。  そこで、まずただしたいのは、今回、訪販法の改正に踏み切ったいきさつ及び理由について、簡単に答えていただきたいと思います。
  59. 末木凰太郎

    末木政府委員 六十一年の当委員会での預託法の御審議の過程でいろいろ訪問販売全般について問題が提起され、また社会党の案がお示しになったこと、私もその当時の議事録を詳細に読んでおりますが、これはそのとき以来の一つの宿題というか契機と受けとめておりまして、通産省はそれ以来二年間勉強してまいりました。  いま一つ経済の実体の方から申しますと、これはたびたび申し上げますように、最近の訪問販売をめぐる苦情の実態に即しまして、例えば定義の拡大あるいは行為規制の必要性等を感じたから立案したわけでございます。その間二年かかっておりますけれども、私どもは精いっぱいやってきたつもりでこざいまして、今回御提案しているものについて、今その限りにおいて評価をするというお言葉をいただきまして大変ありがたく思っております。
  60. 上坂昇

    上坂委員 今のお答えでありますが、被害件数が続出して非常にいろいろな問題が提起をされたということが大きな改正の理由になっているとするならば、消費者保護観点がもっと明確に打ち出されるべきではなかったかと私は思うのであります。そういう意味で、私どもはそこを織り込んだ社会党の改正案というものを再び提出をしたのであります。  社会党の案は、開業の場合に届け出することにしておるのでありますが、政府はなぜこれを拒否するのか、その理由を明らかにしていただきたいのであります。この届け出制度は、訪問取引を業として行うものを行政庁が把握し、行為規制等法律上の諸規制の実効性を担保するために導入しようとするものでございますが、これに対してこれを拒否されるのは非常に不可解であると考えざるを得ない、お答えをいただきたい。
  61. 末木凰太郎

    末木政府委員 届け出制につきまして、これを開業規制と言うべきかどうか議論があるかもしれませんが、広義の開業規制として私ども許可制、登録制あるいは届け出制というものについて勉強いたしました。省内でも勉強いたしましたし、研究会、産業構造審議会等でも御議論いただきましたが、結論的にはそのいずれも採用しなかったわけでございます。  その理由は幾つかございますけれども、まず第一に、訪問販売は非常に多数の人が行っている商形態でございます。例えば家庭の主婦が内職的にといいますか、一定の限られた時間で訪問販売をやる場合もありますし、百六十万余の小売店が不定期に時々訪問販売をやるというふうなこともございます。そこで、このような多くのもの全部に網をかぶせるということが適切であるかどうかという点について検討いたしました結果、現在問題になっている悪徳商法をやる業者というのはごく一部でありまして、百万以上にも上る独立の営業者全部に網をかけるのは、それとのバランスにおいて適当ではないのじゃないかということで、それが第一点でございます。  第二の点といたしまして、仮に届け出制という一番緩い制度にした場合でも、行政庁がこれに要する人員といいますか事務コストというのが多大なものになります。届け出の受理をしまして、必要なチェックというのはどうしてもしなければなりませんから、それをやるだけで相当な手間がかかります。一方、苦情とか相談の件数というのはこれに比べればはるかに少ないわけでございますから、限られた人員は、具体的に寄せられた苦情なり相談なり、そこで名前の上がってきた企業のトレース把握あるいは監督指導に充てる方が現体制として効果的であろうということでございます。  第三に、届け出制あるいは登録制をとらなくても、今回行為規制を導入しておりますし、報告徴収、立入検査の規定も新たに入れることになっておりますので、これらの規定を活用してかなりの効果を上げ得ると考えたわけでございます。  さらに強いて申し上げれば、従来間々見られたケースでございますけれども、その悪徳業者といたしますと、届け出にしても登録にしてもその番号などを麗々しく名刺に書いたり会社の書類等に刷り込んだりしまして、いかにもオーソライズされた企業であるかのようなものを使うケースもございます。そのような悪用の問題も、つけ加えて見ればあるかと思います。  以上のような点を総合的に勘案いたしまして、今回の改正においては届け出制を採用しなかったわけでございますけれども、常に実態を把握しておくという趣旨については反対ではございません。これは先ほど申しましたように、具体的に寄せられてくる苦情、相談あるいは問い合わせ等から、私どもはしっかりしたデータベースをつくっていくつもりでございます。
  62. 上坂昇

    上坂委員 今の答弁にあるように、いわゆる行為規制を導入しているからこれは大丈夫である、あるいはまたそうした届け出制をやると行政コストが上がっていくからこれは大変である。もう一つは、それが健全な業界育成にはならない、一部の悪質業者を排除するものであるから。こういうお答えになっているわけでありますが、実を言いますと、今訪販協会にとって一番必要なのは、豊田商事の事件以来非常に低下してきた訪販業界に対する信用の回復ということが今一番大切なことだろうと私は思うのです。それこそが本当業界の健全なる育成であろうと思うのです。したがって、その健全なる育成をするためにはこれから、皆無というわけにはいきませんけれども、悪質業者をできるだけ排除していく、なくしていくということを中心に置かなければならない。  同時に、それによる被害者をできるだけ少なくしていく、あるいはそれを救済していくということが、僕はこれに強く盛られていかなければならないと思うのです。それでないと、全国の被害者に与えた訪販業界への不信というのはなかなか回復できないと私は信じているのであります。そういう意味において、変なことをやる業者に対してはいつでもすぐに実態的に把握できるような体制をとっていくのでなければ、迅速な対応をすることができないだろう。そこで私は、いわゆる登録制であるとか届け出制であるとかといった開業規制の問題が今提起をされている。その中で、登録制というものに非常に多くの問題があるならば、せめて開業の届け出というものでこれを押さえるということをやる方が、行為規制のその規制をより強化することになるし実効あらしめることができる、こう信じたから出したのでありますが、この点についての今のお答えについては非常に不満であります。  同時に、行政コストの面でありますが、この間申し上げましたように、特許庁に行ってどらんなさい。あれだけの人数であれだけのいわゆる願書を受け付けて、それをみんなが審査して、そしてそれに結論を出して一つ一つ処理をしているという実態を見たとき、届け出制でファイルするぐらいのことで行政コストが上がるなんというのは、行政の怠慢だと私は思う。そういう考え方だから本当に悪質業者をつかむという形が出てこない、こういうふうに私は言わざるを得ないのであります。そういうことを私は考えているのでありますが、これについて、そんなことは絶対ない、絶対自信を持って排除してみせる、こう断言できますか、お答えください。     〔委員長退席尾身委員長代理着席
  63. 末木凰太郎

    末木政府委員 先ほど申し上げましたように、私は行政コストの点について、限られた行政体制といいますか能力を効果的にどこにつぎ込むべきかということを最終的に考えたということを申し上げたわけでございまして、人員なり経費なりをこの問題につぎ込むことをためらうとか惜しむという意味ではございません。限られているものを悪質なところに集中的につぎ込むということを申し上げたわけでございます。したがいまして、その体制で全力を尽くしてまいる所存でありまして、私ごときが絶対という表現を使うのはいかがかと思いますけれども、我々いろいろ考えて、先ほど申し上げたような体制で効果を上げ得ると確信をして御提案申し上げているわけでありますし、また、成立後は全力を尽くしたいと思います。
  64. 上坂昇

    上坂委員 したがって絶対に私どもの提案を受け入れることはできない、こういうふうに言うわけですか。
  65. 末木凰太郎

    末木政府委員 考え方について、社会党案の考え万がおかしいということを申し上げているつもりではございませんけれども、今回の制度としては、この時点におきましては原案で御理解いただきたいと思うわけでございます。
  66. 上坂昇

    上坂委員 そこで、先ほどその考え方の一つとして、いわゆる非常に多数の人が行っている、家庭の主婦のパートタイマーであるとか内職であるとかというような営業がそこに存在をしている、したがって届け出をしたりあるいは登録をしたりすることは非常に難しい、ここが私は非常に問題になるところだと思うのです。大体、家庭の主婦のパートタイマーであるとか内職というのは雇用形態としてつかまなければいけないと思うのです。それでないと、実際にそれを業者としてとらえるならば、品物を提供する方はこれは訪問業者でなくなっちゃうのです。訪問業者というのは、あくまでも消費者と直接に取引をする者が訪問業者なんであります。したがって、この品物を提供する方は卸売業者となってしまう。ここのところを整理していかないと、本当訪問販売に対する規制というものが行われないというふうに私は思うのです。  そこで、届け出制の問題ですが、やはりこうしたパートタイマーであるとかそういうものは雇用関係というものに置きかえて、そしてそこで業者として組織的に品物を売っている者、あるいは企業もあるでしょうし個人もあるでしょうが、それを届け出の対象にするということになれば、何十万とか何百万というような主婦の登録あるいは届け出は必要がない。そういう方法がなぜとれないのか。そうすれば行政コストが上がるはずはないのです。要らないわけですよ、数が非常に少なくなるのだから。いわゆる訪問販売協会に入っている業者あるいは通販に入っている業者も数は非常に少なくなるわけです。そういう意味で私たちは、いわゆる雇用関係というものをどういうふうにするのか、そこのところをこれから研究をして、これは本当にはっきりとしたものをつくり出していただかなければならぬと思うのです。それでないと、この訪問販売業のトラブルというのは後を絶たないのではないかという感じがするので、その点についての決意のほどをひとつお伺いをいたしたいと思うのです。
  67. 末木凰太郎

    末木政府委員 この届け出制あるいは登録制の問題の検討の過程におきまして、膨大な数に上るセールスマンと会社との関係は一体どうなっているのかというのを、実例に当たってチェックをいたしました。  いろいろな形態がございますけれども、大きなカテゴリーで分けますと、例えばある会社のケースでは、委託販売先として地区販社というのがある。あるいは一次代理店、二次代理店等があります。そしてその下に主婦等がいまして、それぞれの販社のために契約を締結している。この場合には地区販社が法律上の販売業者だという形でございます。また別のケースで見ますと、会社は単なる卸だけでありまして、消費者との販売の名義人にはなりません。間に立っている主婦である販売員がこの会社から商品を買い取りまして、その販売員つまり主婦自身の名前を用いて、その名で売買契約を締結しておりまして、これは数十万人のケースでございます。そのほかいろいろな組み合わせがございまして、ある会社のケースでは、七千人のセールスマンがいるのですけれども、うち約八割が社員でございまして二割が委託というケースがございます。それからまた、別の会社ではそれが九割、一割というケースもあります。逆に社員が二五%、委託が七五%という会社もございます。それから全部委託だという会社も相当ございます。  その委託のケースにつきまして、契約書によりますとどういう法的地位かというのは、似たような表現でございますけれども、若干表現が変わっておりますが、販売員は独立の事業主でありますとか、あるいは販売員は当社の従業員ではありませんとか、裏から書いたりいろいろな表現をしておりますけれども、結論といたしましては、そうではないだろう、やっぱり売買契約の主体は会社自身ではないかということを決めつけることができるようなことにはなっていない。やはり一応いろいろな書き方はしておりますけれども、その間に委託が入っている場合には、委託を受けた人が消費者と売買契約を結んだという形がとられております。しかしこれを経済の実体から見ました場合に、それは単なる手足にしかすぎないのではないか、決められた枠の中で決められたやり方で売っているだけではないか、法律上の名義人ということだけで実体を判断していいのかという疑問も生じないわけではございません。そういうケースもないとは申しません。しかしこれは非常に難しい問題でございまして、どういうメルクマールで売買としての経済実体、実態的な主体が製造、元売をしている会社であって、中間の人は実質上その従業員にすぎないのではないかというのを、契約書以外のいかなるメルクマールでそういう認定をするか、断定をするかというのは大変困難でございます。  しかし、この問題はいろいろな観点からさらに究明すべき点もあると思いますので、そしてその究明された結果が仮にもしおっしゃるように大方は製造、元売企業が販売主体であるということになれば、おっしゃるように販売業者の数は大変減ってまいりますので、行政的に把握するのに楽になってくることも事実でございます。この辺は千差万別の契約書がございますが、私どもは引き続き研究したいと思います。
  68. 上坂昇

    上坂委員 企業であろうと個人であろうと人を使用して訪問販売の業務を行っている、それがいわゆる買い取り制であろうとあるいは委託であろうとそういうふうな形で組織的に行っている場合には、これをいわゆる訪販業としてつかむという形のものを、私はぜひ研究してもらいたいと思うのです。そういう定義の仕方があると思うのです。これをやらないでほうっておいて、いつまでも何十万いるから登録ができないとか何十万いるから届け出ができないという形だけ言っていたのでは、進歩がないと思うのです。そこのところを研究していただくようにお願いをいたしたいと思います。  そこで、条文の条項に質問を移してまいりますが、まず第一番に、役務を加えた以上は訪問販売というのではなくて訪問取引法というふうに改めるべきだというふうに私は思うのです。私どもの提案をしている法案は、訪問取引法とはっきり出ているわけです。ところが、質問をいろいろやってまいりますと、訪問取引訪問販売等にくくる、こういうふうなことを言う人が通産省でいる。「等」というのは、あるいは通信販売であるとか第三章の連鎖販売、こういう取引を「等」という名前でくくったんだと思うのです。したがって、物の販売を中心にしてきた法律の中で役務というものが新しく取り入れられたとするならば、明らかに販売ではなくて、販売を含めた取引というものに改正するのが妥当であろう、私はそういう見解を持っているわけであります。ところが、それをやっていないというのはどういう理由か、御説明をいただきたい。
  69. 末木凰太郎

    末木政府委員 御指摘の点は、私どもも実はどうすべきかということで検討したわけでございます。しかし結論としましては、他の立法例等にも倣いまして現行の名前を維持したわけでございますが、参考までに似たような法律を見ますと、例えば割賦販売法、この中には前払い式特定取引、冠婚葬祭互助会等のあれでございますが、こういう役務の提供を含むものも入っておりますとか、それから中小企業団体組織法の中でも例えば役務の販売価格という用語があったりしまして、法制的には役務が入ったので、その役務の提供の契約を含めて販売とくくって非常におかしいということはもちろんないわけでございます。  そこで、最終的にどうしたかということでございますが、いろいろ考えましたけれども訪問販売法というのが制定されて十二年、かなり言葉としてなじんできておりますものですから、また役務の販売という言い方も決して間違いでもないし、おかしくもないということもございましたものですから、先生おっしゃるような訪問取引という言葉も十分それはあり得たとは思いますけれども、せっかく十二年なじんできた名前で格別支障がなければこれでいこうというふうに考えたわけでございます。
  70. 上坂昇

    上坂委員 なじんだから取りかえないというのでは何とも方法がないので、それじゃいつまでたったって法律の名称なんて変わる道理はない。なじんだものはそのままずっと続いていって、中身だけちょっとひねっていればいいというのでは納得がなかなかいかない。その点は納得がいきませんが、時間の制約がありますから次に進みます。  第二条の三項の指定商品の定義の中で「日常生活の用に供される物品」これが現行であります。ところが今度は「国民の日常生活に係る取引において販売される物品であって政令で定める」こうなっておるわけでありますが、一体これはどこが違うのか、御説明をいただきたい。
  71. 末木凰太郎

    末木政府委員 現行法の二条の「日常生活の用に供される」というのは、もう恐らくコメンタリーを必要としないくらい明らかだと思いますが、まさに日常生活で実際に使われるものということでございます。改正法案におきましては「主として日常生活の用に供される」という文言を削除いたしまして、そのかわりに「国民の日常生活に係る取引において販売される」という表現に変わっております。その変化は、国民の日常生活、これは解釈を要しないと思いますが、日常生活の場で取引される、つまり職業上の機会、職業上の場で取引されるものではなく日常の場ということでございますから、典型的には家庭でございますし、あるいは散歩、買い物途中の路上のこともあるでしょうし、あるいはいろいろな余暇活動でどこかのクラブの会合に行くこともあるでしょうが、そういう日常生活の場において取引される、販売される物品というふうに変わったわけでございます。  具体的な結果といたしまして何が生ずるかと申しますと、日常生活で使わないけれども家庭あるいは路上等で売られるものを指定し得ることになったわけでありますが、典型的にはこれは貴金属でございますし、それから、従来日常生活の用に供するものであるのかどうかやや疑念があった例えば墓石なども、そういう疑念を一々考える、検討する必要なしに、家庭に売りに来れば当然この要件に該当いたしますから、指定し得ることになりました。ついでに、ついでにというのはなんですけれども「定型的な条件で販売するのに適する」という現行法の規定がございますが、これも何が定型的な条件かというのが非常に紛らわしい概念でございますし、これで特に限定をしなければならないということはないだろう、もっと広く指定していいんじゃないかということでございまして、恐らくこれによって注文品的なものが、従来やや疑問があったかと思われるものも、全く法律上の疑念なしに指定し得ることになると思います。そういう差が生じております。
  72. 上坂昇

    上坂委員 今の日常の生活の場でとらえられる、そういう品物については大体これをつかむことができる、こういうことになりますと、日常の場に関係があって日ごろ使ってなくても構わない、そのことについては指定商品としてできる、こういうふうに考えていいということですね。  それからもう一つは、これからいろんな商品が開発されてくると思うのです。我々が全く予測のつかない商品、製品の開発が行われる。そういうものがどんどん後から出てきて、それがこの訪問販売法の悪質商法の対象になってくるというようなことになってくれば、そこで迷わないようにこれは迅速に指定商品にしてしまうという決意がなければ、これは私は空文化してしまうおそれがあると思うのです。そういうことについて、ずっと先をにらみながら、商品の開発なんかをにらみながら、こういうものが出てくるだろう、こういうものが出てくるだろうということを考えながら行政は対応していく、こういうふうにするという決意をいただきたい。  そのためには、まず一番必要なのは、やはり第一線の消費者センターとか生活センターに働いている人たちが日常接触している問題をよく把握することだと思うのです。そこからいろんな商品、新しい商品が生まれてくるのですね、対象が生まれてくる。だから、これを抜きにしてやっていたのでは、いつまでたっても後追いになってしまうのではないかというふうに私は思うので、その点十分注意をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  73. 末木凰太郎

    末木政府委員 指定制をとっておりますのは、規制は必要最小限にという基本理念に基づいているものではございますけれども、できることなら指定はなるべくしたくないんだということでは全くございませんので、御指摘のように、的確な情報に基づきまして機動的に指定制を活用してまいる所存でございます。
  74. 上坂昇

    上坂委員 その的確な情報を得る努力に対して期待をします。  次に、第三条の「訪問販売における氏名等の明示」これは何を明示するのですか。文書で明示するのか、あるいは口頭で明示するのか。
  75. 末木凰太郎

    末木政府委員 これは、基本的には現行規定と同じ義務づけでございますけれども、販売業者訪問販売をしようとするときは、相手方に対してその氏名または名称、それからその取り扱う商品、今度追加されます権利、役務を含みます、がどういうものであるか、これを明らかにしなければならないという規定でございまして、口頭でも書面でもいずれでもよいわけでございます。両方やれば一番いいと思います。  現行法ではこれは訓示規定でございまして、これに違反した場合の制裁がございません。改正法におきましては、これに違反した場合に、直ちに罰則はかかりませんけれども、改正法の五条の三の「指示」の対象にしております。つまり、氏名等の明示をきちんとしていない、それによって消費者の利益が損なわれると認められる場合には、大臣が改善のための指示を発することができる、その指示に従わなければ罰則がかかる、こういうふうに強化をいたしております。
  76. 上坂昇

    上坂委員 文書か口頭かどっちでもいいということではなくて、これは文書でちゃんと明示をするということに政令で決めていただきたいというふうに私は思うのです。というのは、口頭では証拠が残らないのです、一々向こうの言うことをとろうと思ってこれを持っていく人はいないんだから。だから、これは必ず文書でやる。その文書は決して難しいことは要らないと思うのですね。せめて、勧誘は対面でやるわけですから、そのときにどんな商売だって名刺なりなんなり出すのですよ。保険の人だって何だって、名刺を持って歩かない人なんか今どきいないのですよ。だから、名刺に日にちを入れるところを書いておけばいいのですよ。何年の何月の何日に私はあなたを訪問したということがわかれば、これは届け出制をしなくても、それにかわるような効果を持つことができるのです。  これをやらないから、訪問した人と品物を売るときはまた違うのですよ。説明に行く人はまた別の人が行くわけですよ。そういう場合がたくさんあるのですよ。その人と接触しておいて、そしてちょっと呼んで、君が今度やってくれということになって別の人が行って説明をして、そしてそこで買わせてしまう。セールストークの非常にうまい人がいるのですよ。そういうものが日常茶飯車に出てきておるのですよ。ですから必ず、行って人と会って、これは路上であろうと何であろうと、いわゆる自分の意思でもって品物を販売しようあるいは役務を提供するという場合には、名刺か何かを書いてそして渡す。このことによってその人が信用できる。あるいはまた、その人がおかしなことをやれば、これは後で実態を把握することができる。そういうような、本当消費者の立場を考えた、しかも相手に対してコストが絶対かからないのです。名刺を渡すぐらいのコストを営業費の中に入れないで、いい商売ができるでしょうか。できるわけがないのですよ。それを野放しにしておくから悪質商法に利用されてしまうのですよ。だから、悪質商法に利用されないような形を私たちはできるだけとっていかなくちゃいけない。  そのために、私はこの前の法案のときも、いわゆる対面勧誘の場合に必ず相手の人に出しなさい。これは、その次の第四条におけるところのいわゆる書面の交付とは違うのですね、これは契約をした時点で出すものでございますから。何も契約をしなくても「販売をしようとするとき」と、こう書いてありますね。「販売をしようとするとき」とは、私は、販売する意思だと思うのです。意思がある、目的があると思うのですよ。「販売をしようとする」目的があるときにはそういうものを提示することが必要なんです。だから文書でやりなさい、その文書は簡単でいい、これはコストは決してかからない、そういうふうに私は思うのですが、これをどういうふうにお考えになりますか。
  77. 末木凰太郎

    末木政府委員 私も、人を訪問して何かをしようとするときに名刺を出すというのは極めて常識的なことだと思います。仮に、私のところに物を売りにきた人が名刺も出さないで何か話を始めれば、ちょっとこれはおかしいんじゃないかと素直に思います。したがいまして、名刺を義務づけすることが全く不当だとか規制が過ぎるとかいうふうには思わないのでございますけれども、これは内部で細かい法制論をやったときに、仮に名刺を渡すといった場合にどの時点で、観念的な話ですけれども、違反が起きるのかということで、その時点についてなかなかコンセンサスができなかった。つまり常識的には極めて明らかなんでございますけれども、具体的なケースによると、いつが「販売をしようとするとき」に該当するかというのは、いろいろなケースを考えますと、必ずしも法律的には一〇〇%クリアではない。  そういうことで必ずしも文書ということにしなかったわけですけれども、そうすると、じゃ口頭でも同じじゃないかという議論も出てまいります。そこのところは、法律的にはそういう議論もいろいろあったわけでございますけれども、指導といたしましては、現在訪問販売協会のメンバーに対しては統一的な教育登録証を必ず見せるという指導をしておりますけれども、今後はこれに加えましてできるだけ名刺のような形のものを渡すようにという指導について、できるだけ前向きに考えてまいりたいと思います。
  78. 上坂昇

    上坂委員 協会に属している人に対しては、協会が法律にちゃんと明示されて位置づけされるわけでありますから十分な指導もできると思うのですが、その網の目から逃れている者に対しては指導というのはできないのです。だけれども法律ではこういうことが決まっているのだということになればやらざるを得ない。そうすると、網の目から外れようとしている人は、どっちでもいいというならば文書は出さない、口頭でやってしまう。私は、そういう考え方の中に実態をつかんでいないと言わざるを得ないのです。消費者センターなどに聞いてごらんなさい。みんなだれが自分のところへ訪問しにきたんだかわからない、何をあれしているんだかわからないんだけれども、いつのまにか催眠術にかかって買わされてしまうというのが訪問販売の悪質商法の実態なんです。ですから、それを少しでもなくすためには、きちんとしたものにしていかなければいけないのです。幾ら論議したって、実態がわからないで論議しているのでは何にもならないのです。実態から発生してそしてどうするかということを、これからひとつ勉強してもらいたいと私は思うのです。  そこで、先ほどから問題になっていますけれども「販売をしようとするとき」というのはいつなんだ、どういう状態なんだ。訪販者あるいは勧誘員、セールスマンが販売の意思を表明すること、これを意味するのか、あるいはまた販売しようと意思を持ったときがそのときなのか、ここのところをはっきりしないとこれまた空文になってしまう。私は、この第三条が出てきたということは、通産省も大分進歩したなと率直に思っているのですよ。正直言ってそう思っているのですが、そこのところが抜けているわけです。そのときというのはどういうときですか。
  79. 末木凰太郎

    末木政府委員 法律的に非常に用心深くお答えするとかえって消費者保護にならないかもしれないと思うのですが、そういう意味でやや大ざっぱでございますけれども消費者と接触するときにおけるできるだけ早い時点でこれは考えるべき性質の問題だと思います。ですから、常識的な普通のケースで言いますと、こんにちはと言って入っていったときということになるわけでございます。もしはっきりしないという御指摘でございますれば、これは具体的なケースに即しまして、悪いことをするときにはかなり計画的、意図的にマニュアルをつくってまでやるわけですから、そういう典型的なものにつきましては五条の三の「指示」の中で、具体的にこういう時点でこういうふうにやらなければいけないというふうに改善の指示をかけるということで、実効あらしめるものにしたいと思います。
  80. 上坂昇

    上坂委員 自信を持って五条のところでそうして実行できるようなことにするということであるならば、それはそれで私は納得をしたいとは思いますが、これは非常に重要なことでありまして、口頭では絶対証拠は残らない。それから、証拠を必ず残しておくということになれば、一番先に来た人が勧誘をしたんだ、そして説明する人は別な人でも、勧誘した人をつかまえることができるわけですね。これを実態把握することができるということが第一点。  それからもう一つは、名刺なら名刺を渡す、そのときの意思ですね。意思というのは、例えば道路で会ってその人をつかまえた場合に、その人に話しかけていくときにはもう既に意思が働いていると見るべきだと私は思うのです。そうでなければ、何も関係もないのに、あなたなんと言うわけにいかないのだから。そうすると、そこに意思が働いているということなんです。それがここの「しようとするとき」だと私は思うのです。そうすれば、対面をした場合、あるいは家を訪問してがらっとあけてそこへ入っていって、おりますか、私の話を聞いてください、こう言ったときにはもう既に意思を持っているということにそれは考えなければいけないのです。そういうときにはちゃんと名刺を出して、そして自分はこういう者であるということを明らかにするような状態をつくり出していくことが必要であろう。  このことは、私が幾ら言ったってやらないということになればだめなのですが、これはやれるでしょう、こんな簡単なこと。常識的に考えたって、あなたとだれかが会ったときに名刺を出さない人がいますか。皆出すでしょう。そんなものを持って歩けと言っているのです。それを、それはコストがかかるから、業者の手間がかかるからなんて、そのくらいの手間をかけなければ立派な商品は売れないのですよ。カタログはすばらしいものをつくって売っているでしょう。豊田商事のカタログなどを見てごらんなさい、すばらしいカタログだから。ああいうものを持っていって売るのですよ。それに名刺をつくったら、うちには販売員が十万人いるから十万人名刺をつくってやるのが大変だなどという業者は、これはろくな商売ができないと思うのです。ろくな商品は売れないと思うのです。そこのところを十分考えていただきたいと思うのです。ですから、五条で政令できちっと縛るということであるならば、もう一回その意思をきちんと言ってください。
  81. 末木凰太郎

    末木政府委員 繰り返しになりますけれども、私も基本的には、こんにちはと言ってドアをあけて顔を合わせたときがその義務がかかるときだと思います。  それから、先ほど私間違えてあるいは五条と申したかと思いますが、失礼いたしました。もしそうであれば、正確には五条の三でございますけれども、五条の三で、主務大臣は次の場合には必要な措置をとるべきことを指示することができるという規定がございます。この規定に基づいて、悪質な業者が故意に計画的に意図を隠して話しかけて、そうしてお客さんを引きずり込んで実はというふうに持っていくような典型例がございますが、そういうものに対しては、こんにちはと言ってあげたときに氏名を明示しなければならない、名刺を渡さなければいけない、そういう指示を発するという形で悪質なものに対処してまいります。
  82. 上坂昇

    上坂委員 それでは次に移りますが、第四条の書面の交付の問題であります。この書面を交付する場合に、法律に定まっている要件、書かなくてはいけないことの要件を欠いた書面を交付したときは罰則にすることができるかどうかということが第一点。  それからもう一つは、商品の品質等についても必要な内容を入れるべきだと私は思うのですが、その点についてどう思われるか。というのは、通信販売のときにはカタログの中にその商品の性格が書いてあるわけです。そういうものをこの契約書、書面の中に示すということが必要であろう。クーリングオフだけではなくて、自分のところの商品の信用性それから有益性というものをきちんとうたえるものを入れるような形で指導していくことがいい商人を育てることだし、いい商品を開発させることになると私は思うのです。その点で、これはいかがでしょうか。
  83. 末木凰太郎

    末木政府委員 法律の二十三条の一号で「第四条、第五条又は第十四条の規定に違反して、書面を交付せず、又はこれらの規定に規定する事項が記載されていない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付した者」に対しては五十万円以下の罰金がかかることになっております。そういう意味で、第一の御質問に対しては罰則がかかるということでございます。  それから、商品の品質、性能等を記載させるべきではないかという点につきましては、それは好ましいことだと思いますけれども、品質、性能をどこまで書いた場合に義務を満たしたことになるのか、これは一つ一つ商品について大変難しくて、具体的にどの程度欠いたら違反なのかというのは一律には確定しがたいと思います。例えば電気製品で、掃除機について非常に吸い込み力が強いということは麗々しく書いてある、しかし電気代について何も書いてなかった。電気代について書かないのはけしからぬという気がいたしますけれども、何と何を書いたならばいいのかということを一律に法定することが大変困難でございますし、このことは訪問販売だけではなくて店頭で買う場合、この品物はどんな品物でしょうと聞いて買う場合も共通の問題だと思いますので、商品の売り方一般論の問題として、重大なことではございますけれども訪問販売法としてそこまで法律で立ち入るのはいかがかと思うわけでございます。
  84. 上坂昇

    上坂委員 店頭売りと訪問販売の場合は、品物に対する選択性、数の上で随分違うのですよ。店頭に行けばずらっと並んでいるわけですよ。ですから、選択性が非常にあるわけですよ。ところが、訪問販売の場合というのは数が限られているのですよ、そんなに持って歩けるわけがないんだから。通信販売のときだって同じです。ですから、通信販売のときにはちゃんとその品質が書いてあるわけですね。私は、一番その品物にとって特徴的なもの、それから有用性といいますか、そういうもはをやはり明らかにするようなふうにこれはやっていくべきであると思うのです。もしできないならば、それは各業界に対してちゃんと指導していく、新しく出てくる業者に対しても影響のあるように指導していく、こういう形で進めていっていただきたいというふうに思うのです。  そこで、第五条の行為規制の問題でありますが、現在非常に多くこのトラブルが出てきて、各種の苦情が消費者センター等に寄せられている、そういうところからこの規制措置を今度法制化するということになったのだろうと私は思うのです。そこで、今度とったこの規制措置でどの程度防止できるという、自信のほどをお聞かせをいただきたい。
  85. 末木凰太郎

    末木政府委員 もう申し上げるまでもないと思いますが、現行法では消費者保護のための措置として、行政庁が直接介入してこうしろ、ああしろという規定もございませんし、あるいは業者の行為について、一定の行為について罰則がいきなりかかるという規定も書面の交付を除いてはないわけでございますが、今回、行政庁が指示を発したりあるいは業務停止を命令したり、その旨を公表したり、あるいは一定の場合には直接罰則がかかったり、あるいはまた指示違反、業務停止違反に罰則がかかったりという形で制裁措置が加えられることになったわけでございます。これはどんな業者でも、やはり刑罰をもって制裁されるということになれば大変なことでございますから、なおかつ、行政庁が具体的なケースをつかまえて具体的な指示を発するということは、これはまた非常にわかりやすい話でございますし、大変効果のある規定を盛り込んだつもりでございます。  さらに、これらを実効あらしめるために、現在までのところは立入検査、報告徴収の権限がなかったわけでございますけれども、したがいまして、かつていろいろ問題になった悪徳業者の場合にも、来てくださいよということで役所に呼び出して、協力によって話を聞き事実を知っていたようなことでございますが、今度は権限を持って立ち入ることもできますので、そういうすべてのものを有効に活用して、悪徳商法の撲滅のために有効に働かせたいと思います。
  86. 上坂昇

    上坂委員 そこで、警察庁の方にお伺いしますが、今の訪販法の不備の中で、大変苦労をして悪質商法の摘発、排除に努力をしてきたことについては、私も十分認めております。しかし、なかなかあの被害者の側からいくと、いわゆる迅速でなかったとか対応が遅いとか、あるいは本当に摘発してくれたのかどうかというような疑問を持っているということも事実であります。悪質商法をなくすには、悪質な業者に対してはやはり警察権力の摘発が一番効くのですね。ちゃんとした商売をやっていれば、警察なんか全然恐れることはないのですよ。だけれども、悪質業者にとっては、警察権力が介入をしていくということが一番怖いのですね、恐れるところであります。  そこで、その悪質商法をなくすには摘発にまさるものはないというふうに言われておりますが、今後、十分この対応を私は希望したいと思うのですが、今回のこの行為規制の条項で一体どのぐらい網をかけていくことができるか。先ほど薮仲議員に対して答えられたことを聞いておりますけれども、それを含めてもう一度お答えをいただきたいと思います。
  87. 五十嵐忠行

    ○五十嵐説明員 今回の改正案を見ますと、従来の政令指定商品に加えまして指定役務、これはシロアリ商法とかいろいろあったわけですが、指定役務やあるいは指定権利、例えば資格取得講座、こういった悪質商法がございましたが、そういったものが規制の対象になっている。あるいは、キャッチセールスやマルチまがい商法が規制されるようになっている。それから禁止行為といたしまして、売買契約等を締結させ、または売買契約等の撤回、解除を妨げるために「人を威迫して困惑させてはならない。」などの規定が新設されたということ。それから、書面交付関係についていいますと、従来の規定が相当整備されているということがございます。こういったことを見ますと、悪質業者に対して抑止効果が相当期待できる上に、取り締まりの面でもより効果的な対応が可能になったものと考えております。  警察といたしましては、今回の法改正趣旨を踏まえまして、この改正法案の罰則規定を初め各種法令を適用して厳正な取り締まりを行うとともに、関係機関、団体との緊密な連携のもとに、効果的な広報活動あるいは啓発活動を推進いたしまして、消費者被害の未然防止、拡大防止に努めてまいる所存であります。
  88. 上坂昇

    上坂委員 今の話を聞いていると大体大丈夫だなという感じがするけれども、なかなかそうは問屋が卸さないというのが実態だろうと思うのです。  そこで、警察庁として、この法案ではまだまだ不備なんだ、もう少しこういうふうにしなければだめなんだということがあったら、これはひとつ遠慮なく言ってもらいたいのだけれどもね。これが一番大切なんです。それでないと改正する意思がないから、それが証明されて初めてもう一回見直す、こういう格好になるわけだから、これはぜひあなたが、個人的な考え方でもいいから、持っていたら言ってください。
  89. 五十嵐忠行

    ○五十嵐説明員 非常に難しい質問なんですが、先ほど来話が出ていますように、悪質商法というのはいろいろな形態がございまして、社会情勢とかあるいは経済情勢の変化に応じましていろいろな商品も出てきますし、また、販売の態様もいろいろ異なってまいります。  ただ、訪販法を今回の改正案の前の段階と比べてみますと、今まで、現行の訪問販売法で規制の対象外である役務の提供とか権利の売買あるいはキャッチセールス、マルチまがい商法、こういったものにつきましては正面から規制する法律がなかったものですから、警察といたしましては、刑法の詐欺罪とか恐喝罪はもとより、各都道府県の迷惑防止条例あるいは押し売り防止条例、あらゆる法令を適用して検挙活動を行って、消費者被害の未然防止、拡大防止に努めてきたわけでございます。今回の改正案によりますと、先ほども申し上げましたように、相当規制の対象が広がっているということで、有効な取り締まりが行えるものというふうに考えております。
  90. 上坂昇

    上坂委員 通産省にお伺いしますが、クーリングオフについてであります。  政府案は、申し込み書面または契約書面を受領した日から起算をして七日間、こういう格好になっているわけであります。いわゆる発信主義であるから、文書によるものに限るのではないかというふうに私は思うのですが、その点についてのお答えをいただきたいのと、それから、社会党案ではクーリングオフの期間を十日間にする、あるいは最終日が取引業者の休業日のときは営業開始日までこれを延長する、こういう規定を足しているわけであります。したがってもう一つは、起算については商品の引き渡しが完了したとき、いわゆる品物をもらったとき、預かったとき、または役務の提供があったその日から適用する、こういうふうにしているわけでありますが、これがどうしてできないのかということがまた疑問なんです。そこのところの疑問をひとつ解いてください。
  91. 末木凰太郎

    末木政府委員 おっしゃるとおり、政府案の第六条では、法第五条またはその四条もございますが、その書面を受領したときから起算して七日間がクーリングオフの権利を行使する期間だということになっております。起算点について、書面を受領したとき、つまりその書面に今度は、あなたはクーリングオフができますということを書かせるわけでございますから、それを知らされたときということは、物の考え方としては、おおむね契約のときからということにほぼ近いのを実務的に明確にしたわけでございますけれども、それではなぜその起算点について、物の引き渡しがそのとき以降であった場合には引き渡しの時点からということにしないかということでございますが、二つございます。  まず基本的には、これは釈迦に説法でございますけれども訪問販売についていろいろな特則を設けておりますのは、消費者の方の積極的な意思形成によって買売契約が取り結ばれるのではなくて、受け身で売買契約が結ばれる。物を買いに行く場合には、それなりの胸算用をし考えを持って買いに行くわけですから心の用意があるわけですけれども訪問販売のときはその用意かないということに着眼しているわけでありまして、したがって、その品物が気に入るとか入らないとか品物が思ったほどよくないとか、そういった点に着眼した制度ではないわけでございます。そういう観点から、契約時点つまり契約に向けての意思形成が行われた時点に、その意思形成の過程の欠陥といいますか、通常の売買契約における意思形成の過程と比べた場合の消費者側の不利性を補う、そういう意味で、物の引き渡しとか契約の履行の内容とは理論的には関係がないというのがこのクーリングオフの制度の基本的な考え方でございます。  したがって、物の引き渡しという考え方をとっていないわけでございまして、実務的にも、引き渡し期間が例えば契約をしてから一カ月、来月何日にお渡しします、こういうことになった場合、常識的に考えても相当長い期間がその間にあっていろいろ再考する時間が十分あるのに、品物が翌月届いてそこからさらに七日間クーリングオフの権利を設けるというのは、そこまでやる必要があるんだろうかなという感がいたします。あるいは、何ほどかの加工を要するような品物がございます。衣類とかカーテン、じゅうたん、いろいろございますけれども、そういったものについて注文を受けて、つまり契約を結んで若干の加工を加えて、そしてそれを何日後かにお届けをした、そこから起算されて七日間でまた返されるということになりますと、これは今度は売る方にとってはかなり酷なことになりはしないだろうか。現在、私どもが御提案申し上げている形の起算であれば、そういった点については、業者が自分でリスクの判断をいたしまして、これはすそを何センチ切って縫製してお届けしてもクーリングオフされることはないんだと確信したらば、クーリングオフ期間中でも配達してしまえば、その本人の責任での判断の問題でございますし、もし心配ならば、書面を交付してクーリングオフができますよということをお知らせしてから七日間たってそして品物をお届けする、これはもう業者の選択の問題でございます。そういうことがなくなってしまうという問題がございます。  それから、役務の場合につきましては、これは六条の五項でございますけれども、特に今回、クーリングオフをされた場合には、既に役務を提供してしまっている場合でもその役務の対価その他の金銭、それに相当する金銭の支払いを請求することができないということにしております。といいますのは、これはかなり思い切った規定だと思うのですけれども、物の売買の場合には、クーリングオフされた場合でも、先ほどのような加工を加えるものについては業者側の負担が問題ですけれども、通常の品物であればほぼ新品同様の姿で物を返してもらう、そうするとお互いに原状回復するわけです。業者の方は物を返してもらう、それで大きな損害は生じないわけですけれども、役務の場合についていいますと、今度は役務を返すことができないわけですから、返すことができないと、業者の方からすればそれだけ不当利得が消費者の方に生じたじゃないかということで、原状回復で不当利得の返還請求をされてしまいますと、役務を返すから不当利得はないんだということができないものですから、何のことはない、役務はどうしようもない、一たんやってしまったらクーリングオフのしようがないということになるものですから、クーリングオフの規定を生かす意味からこの六条五項というのを置いたわけでございます。  しかし、役務の提供をしてから七日間ということでありますと、この六条五項がある限り、今度は余りにも提供した業者側に酷になりまして、役務を提供すると、消費者がその気になれば全部ただ働きになってしまう可能性が法的には生じてしまいますので、事実上の禁止に追い込むようなことになるのではないか。私どもは、事実上の禁止までするのは行き過ぎだと思っておりますので、特に役務についてはそういう難点がございます。物については先ほど申し上げましたとおりで、起算点についてはそういう考えでございます。  それから、七日間の維持でございますが、これは法律制定以来、幾日がいいかということで大変御議論がございました。先生方の御意見も、社会党案もそうでございますけれども、長ければ長いほどいい、無限に長くしようという御提案ではないことは重々承知をしておりますけれども、わかりやすく申し上げれば、消費者のサイドからすれば長い方がいい、業者の方からすれば短い方がいい。そこで、これは理論的に計算をしてぴったり出る答えではございませんけれども、他の外国の立法例とか、あるいは社会通念といいますか、どのくらいの時間があったらもう一遍考え直すことができるだろうかと考えて七日間と決まっているわけでございますが、最近のクーリングオフをめぐるトラブルにかんがみまして、七日であったために大変ひどい目に遭った、十日だったら救われたんだというケースがどのくらいあるかということを調べてみますと、ないとは申しませんけれども、必ずしもそうじゃなくて、そもそもクーリングオフを知らなかったとか、業者がだましてクーリングオフ権を使えないようにしてしまったとかいうような方が多いものですから、そちらの方を今回は重点的に手当てをして、七日については現行維持ということでお諮りしている次第でございます。
  92. 上坂昇

    上坂委員 審議官の発想は、大体正常な人を対象にして議論をしているのですね。それならば確かにあなたの言うとおりでいいのです。だけれども私は、訪問販売で今まで被害を受けている人というのは、世事に疎くなった人だと思うのです。あるいは現在、世事に疎い人なんです。ここが問題なんですね。年をとって世事に疎くなったら、社会的に余りつき合いもしなくなっちゃって、世の中のことがだんだんわからなくなってくる。あるいは老衰してくる、頭がぼけてくる。これは失礼だからそういうことは言わないけれども、やはり弱ってきたりなんかするとそうなっちゃうわけですね。そういう人がねらい撃ちされるというところにこの訪問販売の悪質業者のはびこる理由があるのです。だから、そういう人を対象にしたときは、文書でクーリングオフを申し込むとか内容証明つきでやらなくちゃいけないとか言ったって、それはできっこないのです。  例えば、一人で住んでいる老人のところへ今は子供が行かない時代なんです。ところがたまに、一年に何回かはおやじのところに行かなくちゃならないというのでたまたま行ってみたら変なものがあった。これはいつ買ったんだ。この間、五日前に買ったんだ。そんなものが一体必要なのか、幾らと聞いたら高い。そしたらあと二日しかないじゃないか。その二日が、これから週休二日制だからね。あなたたちだってこれからは週休二日制になるんだから、土曜日、日曜日は休みになっちゃうのです。さあ大変だ。電話をかけたってこれはだめでしょう。文書をどうして出すか。郵便局は休まないそうだけれども、その郵便局が遠かったら行けないわけだ。そうするとそこに問題が起きちゃうのです。また、いわゆる学生みたいなまだ成人になってない人たちが、教材とかなんかでキャッチセールスにやられているわけですね。そういう世事に疎い人たちがねらい撃ちされるというところに目をつけてくれなければ、本当被害者の救済にならないということなんです。審議官と話していると、あなたが正常だから正常なことばかり言うことになっちゃう。私は余り正常でないから、それでは納得がいかないんだ。これが実態なんです。そこが問題なんで、そういうところを考えていただきたい。  そして今、週休二日制になる時代においては、発信主義だなんて言ってないで、発信する日が休みだったら、できるならば口頭で申し込むことを受け付けられるようにまず業界に指導していただきたい、これが皆さんに対する私の一つのお願いなんです。口頭で申し込まれたときにも、口頭ではだめですよ、クーリングオフの手続というのはこうしてやるんですよと親切に教えてやって、そしてトラブルをなくしていくというところまで指導していかなければならない。その点は、訪問販売協会に入っている人は正常だから、そういう指導を受けられるし、することができる。ですが、被害者の側はなかなかそれがそうではないというところに目をつけて、法の欠陥をなくしてもらいたいということで私は社会党の案を提案をしているということを理解して、できるならば修正に応じていただきたいというのが率直な話なんです。  それから、行為規制違反があった場合、私どもは、取引契約締結日から一年以内の間解除できる、こういうふうにする案を出したわけでありますが、これに対しては一体どういうふうにお考えですか。ここではとれないけれども、将来研究するという余地があるかどうか、そこまで含めてお答えをいただきたい。
  93. 末木凰太郎

    末木政府委員 行為規制違反があった場合の消費者取り消し権を認めるべしという議論は、訪販研究会でも産業構造審議会でも議論になった点でございます。消費者保護という観点から、もしそういうことにすれば大いに評価できる制度であると思いますけれども、現在の法体系のもとで検討いたしますと、なかなか難しい問題でございます。御承知のように、例えばその違反の程度が非常に著しくて、詐欺、強迫ぐらいの著しい悪い行為があれば、これは現在でも民法の九十六条で取り消すことができるわけでございますけれども、たしかこれは五年間といったことじゃなかったかと思いますが、訪販法で新しい規定を置くとすれば、詐欺、強迫ほどひどくないけれども悪いことをして、何かの規定に違反している、同条の規定に違反した、それを対象にすることになりますが、一体どこでその線を引くべきかということが、なかなか線が引きにくい。  その次に、実務上の問題として、仮にそういう規定を置いた場合に、相当これは争いになるだろうと思います、自分はそういう違法は犯していない。そこで、結局いずれにしても最後は争うことになれば裁判をせざるを得ないということになりますし、裁判をしたときにどうやって立証するかという問題になりますから、実務上はそこまでいった場合の立証の問題もなかなか難しい。そういう意味で、発想としてはよくわかるのでございますけれども、どの程度の悪質なもの、どの程度の行為を取り消し権の対象とするかという選択、そうしてそれを実効あらしめるためにどういう工夫をあわせて考えたらいいかという点について、実際のところなかなか思い悩んでいるテーマでございまして、うまくやれば効き目があるということはわかるのですけれども、なかなかその処方が難しいということでこざいます。  そういう意味で、実は私ども自身も、これは研究会、審議会から、早々とあきらめてしまわないで、今回は間に合わなかったけれども引き続き勉強しなければいけないという宿題をいただいておりますし、勉強するつもりではおりますが、今回はちょっと非常に難しい問題で結論が間に合わない、この時点ではいきなり法律にするのはいかがかという状態でございます。
  94. 上坂昇

    上坂委員 今の時点では幾ら勉強しても考えが浮かんでこないということになれば、これはどうにもならないので、法律をつくる人がそうなんだからしようがないわけですが、しかしこれから少し勉強して、大体法律というのは四年ぐらいたたないと改正案が出てこないので、今度は二年で出てきたなんというのは本当に珍しいのだから、四年だなんてずっと延ばさないで、いいことがあったら一年でもそれはやはりちゃんと改めるということが私は大切だと思うのですね、そういう心構えが。だから、これから一生懸命勉強して、一年なら一年以内に、やはりここのところはこうすればよかったということになれば、これはまた訪販法の改正案を出していただきたい、こういうふうに思いますが、大臣はいかがでしょうか。
  95. 田村元

    田村国務大臣 今御審議いただいておるときに、先にまたすぐ改正案を出すか、それに対してちょっと私もお答えのしようがないので、率直なことを言って、それに明確に良心的にお答えすればそれでまたおしかりを受けるし、さりとてのらりくらりやってもまたおしかりを受ける、進退これにきわまれりという格好でございますが、率直に言いまして、いつも申しますように、試行錯誤というものは人間社会につきものでございます。でございますから、試行錯誤をみずから発見あるいは反省したときに、強力にそれに対応するというのは、これはもう当然のことだ、私はそう思います。
  96. 上坂昇

    上坂委員 非常に明快な御答弁をいただいて、非常に心強く思うわけでありますが、次に移ります。  通信取引にクーリングオフを適用していない理由というのを、御説明をいただきたいと思います。
  97. 末木凰太郎

    末木政府委員 先ほども申し上げましたように、クーリングオフは、そもそもその取引の成立に至る過程において消費者が受け身であるということに着眼して、受け身であったために本来よく考えれば結ばなかった契約をつい結んでしまうおそれがある、そういう状態に対する補正措置でございますが、これに対して通信販売は、むしろ消費者がじっくり考えることのできる販売形態でございます。カタログが送られてくる、家族でそれを眺めてこれを買おうか、あれを買おうか、やめておこうかという議論をして、その上で申し込むわけでございますから、消費者が十分考えた上で契約が結ばれる。したがいまして、訪問販売とはそこが違うものですから、意思形成における一方的受け身性というものに着眼したクーリングオフは適用していないわけでございます。
  98. 上坂昇

    上坂委員 私は経験がありまして、通信販売でとったんですよ。そうしたら出張になっちゃったんですね。出張になって帰ってきたわけですよ。そして、しばらくたってから使用してみたのです。そうしたらこれが全然だめなんです。そこでクーリングオフというけれども、クーリングオフがないわけですよ。それから、しょうがないからそこの会社に訪ねて行ったんですよ。そしてそれを返したわけです。といって、お金をもらうわけにいかないから、私はこの品物は使えないけれども、あなたの方でこれを使うことができる人あるならば差し上げますからこれを預かってください、しかしお店の信用にかかわるから、これについては十分このものが本当にいいのか悪いのか、普通の人がやって――私は自分でさっき頭がおかしいとは言ったけれども、余りおかしくはないかもしれない。正常のときもあるんだから、その正常なときにやると大丈夫だなと思うのですが、そういうときもあるから、使ってみて、そして品質が悪いということになれば会社の信用にかかわるから、ここのところは改良した方がいいですよ、こういう忠告をしてきた例があるのですね。  そういうことで、選択の自由があるといっても、品物を実際にとらなければ本当にこれはわからないですよ。アメリカなんかではその点は非常に通信販売になれているものだから、商品の改良がどんどん進んできていて、いいものが来ているらしいのですが、日本ではなかなかそこまでまだいっていない。今のシェアでいくと大体全小売業の一%だ、こういうふうに言っていますね。そのぐらいの状況ですから、なかなか商品の提供がないということになるだろうと思うのです。そういうことがあるので、私は、クーリングオフというものをやはり入れるべきではないか、こういうふうに考えたわけであります。その点もひとつ研究課題として、今後十分討議の材料にしていただくことをお願いをいたしたいと思います。  次に、第三章の連鎖販売取引の定義についてお聞きをいたしますが、この受託販売と販売のあっせんを入れた理由というのは、実際よくも入れたとは思うのですね。これは二年前の法案、私どもが出したものには、委託業務については連鎖販売であるとちゃんと入っておったわけです。ところがそのときのお答えは、いや、連鎖販売をやっているときの委託業務でそれを行うとこれは正常でなくなるんですよ、完全な業務委託を締結すれば返品がきくのだからそこのトラブルはなくなるんです、したがってその返品のきくいわゆる販売員というものは、余裕を持って消費者に品物を勧めることができる、それでないと無理に買い取り制でやられたり、返品ができないということになると無理やりに押しつけてきたり、そういう無理が生じてくる、そういうところからトラブルが起こる、こういう問題をなくすためには委託販売にすれば大丈夫なんです、業務委託にすれば大丈夫なんです、こういう私に対する説明だったのです。したがって、私はその説明を受けて、なるほどそれももっともだと思うから、私は業者に対してそういう指導をしてきたのです。したがって、その指導をしてきたために、それを完全に行って成績を上げた業者がいるわけですよ。  ところが、今度は委託というのが入ってきちゃったわけですよ。そうしたら、今度は僕が文句を言われちゃうのです。あなたが指導したのに、今度の訪販法では委託となっている、そうしたら委託なんというのはやはりだめなのか、こういう印象を受けてしまう。それは私たちの営業にとっては非常にマイナスであります、ここのところをどうしてくれるんですかと言われたときに、ちょっと返答ができなかった。ですから私は、今の受託の販売、これは委託ですから、それから販売のあっせんを入れた理由を明瞭にお聞かせいただきたいと思うのです。  それから、時間が迫ってきましたからもう一つ申し上げますが、「特定利益を収受し得ることをもって誘引し、」特定負担をすることを条件とする商品の販売、役務の提供に係る取引をするものをいう、これは一体どういうことを言っているのか。どこまでが特定利益で、どこまでが特定負担というふうに考えておられるのか、その辺を御説明いただきたいと思うのです。
  99. 末木凰太郎

    末木政府委員 まず第一点でございますが、六十一年ごろ問題になったときに、確かに通産省は組織に加盟した参加者に対して、物を売り切りでしてしまうよりも委託方式の方が、もし売れなかった場合の参加者の被害が相対的に少ないものですから、いろいろなケースでどうしたものでしょうかという相談を受けました業者に対して、それではおたくは委託販売の方式に切りかえてやってもらえないかというような指導をした経緯がございます。そういう指導をしているということをあるいは先生に申し上げたことがあるのかもしらぬと思いますが、事情はそういうことでございます。これはもちろん現時点におきましても同じでございまして、参加者にとりましては、全部自分で抱え込んでしまって、組織に入ったはいいけれども、一たん自分が扱うことになった商品の洗剤の山を見て、六畳間にいっぱいになってしまった、これは大変だということに理論的にはならないわけでございますから、委託販売方式の方がいいわけでございます。  しかし、その後の情勢を見ますと、売り切り、買い切りよりも委託の方が参加者の危険が少ないことは事実でございますけれども、そういう意味で売り切り、買い切りだけに着眼した法律をつくりましたところが、今度は委託で脱法するという手口が出てきたわけでございます。これはもう脱法ですから、初めからそういった脱法によって法律の適用を受けない姿にしておいてやりたいようにやるということでございますから、それでは困るということで、今回はその穴をふさぐ意味で、委託方式あるいはあっせん方式も全部売り切り、買い切りと同じように法の対象にせざるを得ないと考えたわけでございます。  ただ、二点申し上げたいのは、前にも通産省自身が業者に指導したのでございますけれども、重ねて申しますように、売り切り、買い切りの再販売方式よりも委託方式の方が相対的には参加者にとっては危険が少ないという点は、今でも同様であると考えております。それからもう一点は、今度委託方式、あっせん方式が法の定義に加えられたからといって、それで直ちに委託方式の仕事ができなくなるということではありません。一応法でカバーされる領域に入ってくるわけでございますけれども、今もお尋ねありましたように、例えば特定負担が法の定義に該当するかどうかという点については業者の方に選択の自由がございますし、仮に定義に該当した場合でももちろん法律上の禁止ではございません。規制がかかるということでございます。これが第一点のお答えでございます。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕  それから第二点につきましては、これは法律の定義にございますように、ちょっと長くて恐縮でございますけれども、要するに、組織に入ろうとする人が組織に納めるお金、これは政令に譲られておるのでございますけれども「「取引料」とは、取引料、加盟料、保証金その他いかなる名義をもつてするかを問わず、取引をするに際し、又は取引条件を変更するに際し提供される金品をいう。」法律の十一条三項でございます。こういう定義になっております。これが取引料の定義でございますから、かつての実態から、名義をいろんな名前を変えて脱法する動きがあったものですから、このように「いかなる名義をもつてするかを問わず」ということで、その参加者がその組織に支払うものをすべて金品をカバーするようになっております。同様に、特定負担についてもこれは政令に譲られて、御承知のように二万円以上の特定負担という定義になっております。
  100. 上坂昇

    上坂委員 さっきの完全委託制度は、やはりこの連鎖販売の取引においては非常に重要なものである、大切なものである。したがって、今後も完全委託方式に持っていく。一部で委託制度的なものをとっておきながら、実は中身を見たら買い取り制だというようなことをさせないように業界を指導する、こういう方向にやっていっていただけるのかどうか、その辺をもう一回答えていただきたいのと、もう一つ、この特定利益というのは本当はこういうことだと思うのです。連鎖販売取引規制というのは、特定利益という、これは一つの見せ金だと思うんですよ。その見せ金を手段にして特定負担をさせるという仕組み、これがマルチの方法で、これを規制するためにあるんだ、こういうふうに私は解釈をしているわけであります。  そこで、この特定負担というものの中で非常に問題になってくるのは保証金の問題なんです。保証金というのは通常の取引では当然行われているものであります。ところが、連鎖販売になるとこの保証金制度というのはとらえることができなくなってしまうんですね。これを特定利益であるとか特定負担であるとかという格好でみなされてしまうわけです。そうしますと、委託販売を例にとったときに、いわゆるその委託するもとの業者が販社に預ける場合、相手に何百万円の品物を預ける場合に、何にもしないでただその人の人間的な信用だけでそれを預けることができるか、こういうことになると、これは非常に難しい問題が発生すると思うんですね。したがって、そこではちゃんと保証金なりなんなりを取るという形式があって初めて向こうの信用状態が出てきて、それは販売を委託することができるようになるだろうと私は思うのです。したがって、その保証金というものを特定利益とか特定負担というふうに解釈することは、非常に営業を阻害するのではないか、それでは健全な営業を育てることにならないのではないかと、私は逆に思うのです。ここまで来ると今度は業者の立場に立つのだけれども、これもやむを得ないですね。被害者の立場に立ったり業者の立場に立ったり忙しいのだけれども、そういうことも考えているわけであります。そこのところをひとつ明快にお答えをいただきたい。
  101. 末木凰太郎

    末木政府委員 第一点の売り切り、買い切りよりも委託の方が望ましいという積極的な指導をするかどうかという点でございますけれども先ほど申し上げましたように、かつて相談を受けたときに、それじゃ委託の方がいいんだけれどもということを言ったことは確かにあるのでございますが、これは当時の情勢のもとで相談を受けたときに望ましい方向としてお答えをしたのでありますが、現時点において売り切り制、買い切り制、それから委託制、あっせん制、いろいろな態様のうちのこの方式にというふうに通産省が積極的に引っ張っていくという形の行政指導までは、ちょっと立ち入り過ぎかと思うのでございます。しかし、どう考えているかということであれば、委託制の方が参加者の危険といいますか負担が少ないというふうに考えてはおりますけれども、積極的にさらに変えさせていくということを今ここでお約束するのは、もう少し考えてみないと今は自信がないのでございます。考え方としては前と変わっておりません。  それから第二点の保証金、保証料でございますが、これは特定負担の一形態と申しますか、特定負担つまり取引料及び商品の購入、その取引料の中に入っているわけでございますけれども、これはおっしゃるようなことはよくわかるのでございますが、一方、本当に悪質な業者考えてみますと、この保証金を仮に外すということであれば、じゃ保証金という名前で取ってやろう。法律的、理論的には保証金はあくまで返さなければならないものでございますから、保護しなくても別に取られちゃっているのではないじゃないかということでございますが、法律論はおっしゃるとおりでございますけれども、相手がもし悪質業者の場合には、そういうことで事実上返せなくなってしまう。そうすると、保証金について今度もしいいんだということになれば、何か問題があれば別の、例えば供託させるとかいうような措置が必要になってしまう。そういうことで、先生、ちょっと私の聞き間違いかもしれませんけれども、保証金は今度の改正でこれも特定負担に入るのではなくて、現行法で既に入っちゃっているわけでございますけれども、それを維持する。今回もそのままで保証金も含めていくということについては、今のようなことを考えた結果、やはりこれも含めておかざるを得ないというふうに考えたわけでございます。おっしゃることはわかりますけれども。ここは現行がいいんじゃないかと私は思っております。
  102. 上坂昇

    上坂委員 今の場合は、正常でない悪質的なものを対象とした場合はそれは保証金が利用される。しからば、今正常に社会的に信用的に認められて堂々と営業している、そういう訪問販売業者が保証金を取るということについてはとやかくは言わない、こういうふうに考えていいかどうか。これはいいか悪いか、どっちか言ってください。
  103. 末木凰太郎

    末木政府委員 あるいは私、誤解したお答えをしたのかもしれませんけれども、保証金を徴することについては問題はございません。
  104. 上坂昇

    上坂委員 経済企画庁にお尋ねをいたします。  年々非常に相談、苦情が多くなってきているわけでありますが、法的にもそれが違反なのかどうか判断がつかない、末端のセンターに所属している相談員の仕事ができない、それで非常に困っている部分がたくさんあるわけですね。そういう第一線に携わっている相談員の皆さんが、一体どうしたらいいんだろう、こうしてもらいたいというような要望を、通産省やあるいは経企庁に今まで何遍も要望書として提出しているわけであります。ところがそれに対して、それはできないとかできるとかという回答をもらったこと、一回もないというわけですね。これではやっぱり意欲をそれがれてしまうと思うのですよ、末端の人たちは。これは通産省にももちろん言えるのでありますが、これに対しては、今はとてもできないとかあるいはこれについてはできるからできる、あるいは努力をするというような、そういう親切な応対を末端の人にしていってもらわないと、末端の人は意欲をなくしてしまいますから、その点はこれからは十分やっていただくようにお願いをしたいと思うのです。これは通産省にも、そういう親切な行政をとってくれることを望みたいというふうに思うのでありますが、いかがでしょう。
  105. 吉田博

    ○吉田説明員 相談員の要望等を我々の方で受け付けまして、関係省庁に協力を依頼するというようなことをやっております。確かに御指摘のように、それについて回答をすべてやっていたということはないわけでございまして、その点につきましては今後きっちり御返事をするというようなことをいたしたい、こういうふうに考えております。
  106. 上坂昇

    上坂委員 通産省どうですか。
  107. 末木凰太郎

    末木政府委員 相談員の方々、その他関係者の方々が意欲を持って、かつ自信を持って仕事をしていただけるように、私どもも誠意ある応接をしてまいりたいと思います。
  108. 上坂昇

    上坂委員 時間が参りましたからこれで質問を終わりますが、最後に大臣に決意のほどをお伺いしたいと思うのです。  私が先ほど申し上げましたように、訪販法でいじめられている消費者というのは、本当に自分で何でも処理することのできる能力がだんだんなくなってきた人たちがねらい撃ちをされている。そういう点が非常に大きな問題である。また、そこまで世間的なものに到達していない人がねらわれる。こういうところから起きている事例が非常に多いわけであります。そこで消費者の苦情というのが出てきまして、通産省の対応が悪いとか警察庁の対応が遅いとかという苦情が出てくるんです。また遅かったために、被害者を救済する措置が幾ら弁護士さんを頼んでもできないというのが実態なんです。そこのところを踏まえていただきまして、この法運用に当たってはそうしたものをできるだけ改良をして、そうして消費者本当に救っていけるようなところへこの法の運用をやっていただけるように、私は希望したいのであります。そのことについて大臣の所信を承って、私の質問を終わります。
  109. 田村元

    田村国務大臣 この訪問販売という制度が悪いものと思いませんけれども、悪用されるおそれが多分にあるということは事実でございましょう。先般、ある年配の方から私にこういう話がありました。訪問販売を新聞で読んだけれども、取り締まると言うが、あれは昔の押し売りのことでしょう、こう言って、要するにゴムひも屋と同じように感じておる年配の人が多いわけですね。こういうような誤解といいますか、そういうものもあるわけです。ダイレクトメールでも、最近は地につきましたけれども情報化の時代でこれからどんどん伸びるでしょうし、いろんな面で我々は十分の対応をしなければいけないと思います。  今出しております法律、私は口が裂けてもこんなものだめだとは言うわけにはいかないわけで、今のところこれが我々としては考え得る、とり得る一番いい方法だろうと思いますとしか答えようがありませんけれども先ほど答弁申し上げましたように、試行錯誤は人間の社会というのにはつきものなんです。でございますから、そういう意味において、我々は今後の対応を十分に厳しくしながらそれに取り組んでいくという決意のほどが必要であろうと思います。そういうように部下を指導しながら、皆様方に御審議のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  110. 上坂昇

    上坂委員 ありがとうございました。終わります。     ─────────────
  111. 渡辺秀央

    渡辺委員長 この際、お諮りいたします。  ただいま審査中の上坂昇君外三名提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提出者全員より撤回の申し出があります。  これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────
  113. 渡辺秀央

    渡辺委員長 内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本案に対する質疑は先刻終了いたしております。  この際、本案に対し、田原隆君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合四派共同提案に係る修正案、また、藤原ひろ子君外一名から、日本共産党・革新共同提出に係る修正案が、それぞれ提出されております。  両修正案について、提出者より順次趣旨の説明を求めます。二見伸明君。     ─────────────  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  114. 二見伸明

    ○二見委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、提出者を代表して、私からその趣旨を御説明申し上げます。  修正案は、お手元に配付されているとおりであります。  修正点は、訪問販売において、無条件で契約の解除等を行い得るいわゆるクーリングオフの期間を、従来の七日間から八日間に延長するものであります。  また、同様に割賦販売におけるクーリングオフの期間につきましても延長するものであります。  修正の趣旨は、クーリングオフの制度が消費者被害の救済に重要な役割を果たしている現状にかんがみ、消費者保護の一層の徹底を図ろうとするものであります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  115. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、藤原ひろ子君。     ─────────────  訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  116. 藤原ひろ子

    ○藤原(ひ)委員 訪問販売等に関する法律の一部改正案に対する修正案につきまして、日本共産党・革新共同を代表し、その提案理由及び要旨を御説明いたします。  今回政府が提出した訪問販売法改正案は、一定の改善策を盛り込んでいることを評価しますが、消費者被害の防止、救済の両面でなお不十分さを残したものとなっています。  日本共産党・革新共同は、この不十分さを是正するとともに、迅速かつ実効ある被害防止と被害者救済が行えるようにするため、本修正案を提出した次第です。  以下、修正案の要旨を御説明いたします。  第一に、指定制を廃止し、すべての商品サービス等を法適用対象にすることです。法適用対象に役務、権利を加えたものの、指定制度を維持しているため、被害が多発し社会問題化して初めて追加指定するという政府改正案の後追い的欠陥を是正するものです。  第二に、クーリングオフ、無条件解約制度の充実です。政府改正案が義務づける書面に加えて業者に対しクーリングオフ権の存在を口頭で告知する義務を負わせ、口頭による通知でも無条件解約できることとし、さらに悪質業者へのクーリングオフを実効あるものにするため、すべての業者に対しクーリングオフ通知用の受取人負担による書留はがきを客に手渡すことを義務づけるとともに、クーリングオフ期間を延長し、通信販売にも同様の制度を新設することとしています。  第三に、悪質な勧誘行為の規制範囲について、勧誘、契約時に重要事項について告げないことについても禁止し、早朝、深夜や長時間にわたるものなど悪質で私生活の平穏を害する勧誘行為も禁止するなど、具体的に示すことです。  第四に、消費者契約解除権及び中途解約権の新設です。訪問販売業者が違反行為を行った場合、消費者契約の日から一年を経過するまでの間契約を解除することができるようにし、継続的な契約についても、消費者は一定の予告期間を置いて中途解約ができるものとします。  第五に、消費者被害救済のため、親事業者に共同責任を負わせることです。詐欺、強迫その他悪質な訪問販売を行っている訪問販売業者や委託販売員等を実質的に支配する親事業者に対し、消費者被害救済の共同責任を負わせることとします。  第六に、消費者は、事業者の違法行為について指示、命令等の必要な措置をとるよう関係省庁及び都道府県知事に申し立てることができるようにします。  以上が、修正案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、ぜひとも御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  117. 渡辺秀央

    渡辺委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  118. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより原案及びこれに対する両修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、藤原ひろ子君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立少数。よって、藤原ひろ子君外一名提出の修正案は否決されました。  次に、田原隆君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  120. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立総員。よって、田原隆君外三名提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  121. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  122. 渡辺秀央

    渡辺委員長 この際、本案に対し、田原隆君外四名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合及び日本共産党・革新共同五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者より趣旨の説明を求めます。奥野一雄君。
  123. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     訪問販売等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、訪問販売等の健全な発展と消費者保護の一層の徹底を図るため、取引実態の把握に努め、必要な施策の検討を行うとともに、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。  一 商品、権利及び役務の指定に当たっては、消費者トラブルの実態に即応して迅速に行うとともに、消費者被害を極力抑止し得るよう配慮すること。  二 商品の継続的な引き渡し、施設の継続的な利用又は役務の継続的な提供を行う取引については、約款の適正化等を通じ、必要な場合、中途解約が合理的な条件で円滑に行われるよう指導すること。  三 クーリング・オフ制度については、その周知徹底に努めるとともに、事業者に対して、契約の際、訪問販売員等が起算日等の口頭説明を行うよう強力に指導すること。  四 連鎖販売取引においては、消費者被害が広範かつ過大になるおそれがあることにかんがみ、本法の厳格な運用を図ること。  五 割賦販売における消費者トラブルの実態を把握し、割賦販売についても早急に役務取引を対象とするよう検討すること。  六 訪問販売員等の販売活動の実態を把握するとともに、関係者に対して、就業上の地位の向上等について所要の改善が行われるよう指導すること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審議の経過及び案文によって御理解いただけると存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  124. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本動議について採決いたします。  田原隆君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  125. 渡辺秀央

    渡辺委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、通商産業大臣から発言を求められております。これを許します。田村通商産業大臣
  126. 田村元

    田村国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重して、本法案の適切な実施に努めてまいる所存でございます。     ─────────────
  127. 渡辺秀央

    渡辺委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  129. 渡辺秀央

    渡辺委員長 次に、内閣提出特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案議題といたします。  この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。  ただいま審査中の本案について、環境委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  また、連合審査会において、参考人から意見を聴取する必要が生じました場合、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 渡辺秀央

    渡辺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。  なお、連合審査会の開会日時につきましては、来る二十七日水曜日午前九時三十分から開会の予定であります。     ─────────────
  132. 渡辺秀央

    渡辺委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥野一雄君。     〔委員長退席尾身委員長代理着席
  133. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 科学的な問題ということになりますと余り強い方じゃございませんので、いろいろ勉強させていただきましたけれども、なかなか理解しにくい面がたくさんございます。時間がきょうは制約されておりまして、私の考えていること全部が質問できるかどうか大変疑問に思っているところでございますので、まとめてお伺いをするということも出てまいりますので、御了承いただきたいというふうに思います。  まず最初に、いろんなものを読ませていただいて、なるほどフロンガスとかハロンガスというものがオゾン層を破壊するのかなというように思ったりするわけでございますが、さてそれでは、そのことが一体科学的にどういうように実証されているんだろう、こういうことになると、私はさっぱりわからないわけでございます。それからまた、オゾン層の破壊によって皮膚がんになるとか、あるいは地球上の生態系に影響を及ぼす、こういうことも言われているわけでございますけれども、それらについても実証的にどういうような裏づけが得られているのだろうか。この点まず二つについて、最初はこれは通産の方の関係ということになると思うのでありますけれども、通産の方からお伺いして、それから、実際にこういうことについても扱っておられるのでありますから、通産省の次に環境庁の方からも一緒に御説明いただきたいと思います。
  134. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 オゾン層保護に関しますフロン等の規制のきっかけになりましたのは、先生御存知だと思いますけれども一九七四年、昭和四十九年に米国のカリフォルニア大学のローランド教授とモリナ博士が発表いたしました論文が契機でございます。論文の名称は「環境中のフルオロクロロメタン類」でございまして、これが反響を呼んだわけでございます。その主要点でございますけれども、次のようになっております。  エアゾール製品あるいは冷凍機等に用いられておりますフロンが大気中に放出されますと、対流圏内ではほとんど分解されずそのまま成層圏に達します。対流圏といいますのは地上から約二十キロぐらいまでの範囲内で、二十キロ程度を超しますと成層圏になると言われておりますけれども、その対流圏の中では非常に安定しておりますために、変化しませんで成層圏にまで達してしまう。そこで太陽からの紫外線により分解されまして、フロンに含まれている塩素原子が放出される、それが成層圏の中にございますオゾンを破壊する、しかもそれが連鎖反応的に進行するということでございます。その結果といたしまして、地表に到達する有害な紫外線の量が増加して皮膚がんの発生率が上昇する可能性がある、こういう議論でございました。現実にフロンは成層圏に既にある程度大量に滞留しているようでございまして、このような不必要なフロンの放出を早急に停止しないと将来地球に深刻な影響を及ぼすことになりかねない、こういう御議論だったと存じます。  この論文の発表を契機にいたしまして、米国を中心にフロン規制の動きが大変盛り上がったわけでございますが、今御説明いたしましたように、この問題は成層圏の問題でございますので、結局一国のみの対策では十分な効果がない、少なくとも地球的規模で本件に対して対応しなければならないのじゃないか、こういう認識が高まりまして、その後、国際会議の場等で議論が行われているわけでございます。  その後、国連にございますUNEP、これは国連環境計画という名称でございますが、その場で委員会ができまして具体的な議論に入っていったわけでございますが、そこに提出されたレポートがございます。これは、具体的には一九八六年八月でございますけれども「人間活動のオゾン層及び気候に与える影響について」というレポートがございまして、これがそれ以後のフロン規制に関する国連の場での議論のベースになった、おっしゃったフロンとオゾン層破壊との関係に関するレポートでございます。そのポイントは、特定のフロンは年間トータルで見ると七ないし一〇%増加傾向にある。一方、オゾン層でございますけれども、四十キロ高度の成層圏オゾンについては、一九七八年以降二、三%減少している。特に南極大陸上空のオゾンが一九七〇年以降九月から十月にかけて、これは南極におきます春でございますが特に減少していて、そのときのレポートでは四〇%減少している、こういう報告がございました。ただ、同じ報告の中に、一九七〇年から八四年までの大気中の総オゾン量につきましては、統計解析を行ったところ特に有意な変化は示していないということも付記してございました。  しかし、それ以後の議論の中で、いわゆる成層圏の問題でございますから直接そこにおきます影響というものを把握することは実際ではなかなか難しゅうございますし、大気の中で同じような実験をすることは難しいというようなことから、いろいろ想定される化学反応をすべて導き出しまして、それをベースにコンピューターを利用いたしました数量モデルを使ってシミュレーションをやっているわけでございます。そのシミュレーションモデルによりまして、成層圏においてどのような形でフロンがオゾン層の破壊に寄与しているであろうかということを推測したというのがその後の作業の重要な点でございまして、その主要なレポートが一九八七年四月にUNEPの専門家会合に出されているわけでございます。  そのレポートによりますと、このままフロンが年二ないし四%の量で発生が継続してまいりますとオゾン層の破壊が相当進むということを言いつつ、仮にそれに対して規制を行うならば、実際上それに対応するオゾン層保護を図れる可能性が高いというようなことを具体的に指摘したわけでございまして、それがベースになりまして今回御提案しております条約なり議定書という方向に結びついていったと存じます。  その議定書の前文に、この物の考え方に関する非常に基本的な点が書いてございまして「ある種の物質の世界的規模における放出が、人の健康及び環境に悪影響を及ぼすおそれのある態様でオゾン層の著しい破壊その他の変化を生じさせる可能性のあることを認識し、」このように言っております。この国際会議におきまして、オゾン層の破壊に影響を及ぼすという可能性を共通認識として持ったということでございまして、それをベースに予防的措置をとってオゾン層保護策を講じなくてはならない、こういう結論を導き出しているわけでございます。  すなわち、先ほどの御質問の中の具体的な実証はあるかということでございますが、現在まで国際会議で議論されましたのは成層圏の問題でございますので、直接そこにおける化学的な現象を見て証明するという段階には至っておりませんが、化学者の方々が持っておられます知識、経験というものを総積み上げをいたしまして、それをコンピューター等によりまして推測をし、かつまた具体的に起こっておりますオゾン層変化について地上からの観測あるいはまた人工衛星による観測等によって見ながら、その可能性があるということを見た上で結論を出しているということが今回のベースになっていると存じます。  それから、第二の御質問でございましたがんの発生との関係いかん、こういうことでございますけれども、これにつきましても注目すべきレポートは、一九七九年米国の科学アカデミー、これはNASと言っておりますが、それが発表しているわけでございます。これは現在、私どもの国際的に一応共通の認識になっている基本的なレポートだと存じますけれどもオゾン層と紫外線との関係につきましては、紫外線の中で人体に有害な影響を及ぼす短い紫外線、これはUV―Bと言っているようでございますけれども、これをオゾン層が吸収いたしまして、その結果といたしまして紫外線の量が減る、具体的にはオゾン層の濃度が一%減少いたしますと地表に到達する紫外線の量が平均二%程度増加する、こういう予測をしております。その上で、例えば紫外線の増加が皮膚がんに影響があるかどうかという点でございますが、この点につきましてはマウスによっていろいろ実験をやっているようでございまして、マウスにその有害な短い波長の紫外線を反復照射いたしますと皮膚がんが発生するということが実験的に確かめられているようでございます。  特に皮膚がんの発生状況も、統計的には次のような形になっているようでございます。一つは、外部に露出しやすい部分、これは頭とか首とか腕でございますが、その辺に皮膚がんが発生しやすい。それから、色素が紫外線を吸収する皮膚を持っている人種では皮膚がんは少ない。逆に言いますと、白色系の人種の方々の皮膚がんの発生率は高いということかと存じます。それから、低緯度地域の方が皮膚がんが発生しやすい。低緯度地域というのは赤道に近い方に住んでいる方々、こういうことになると存じますが、そういうような関係が見出されるというようなことでございます。そのようなことから、具体的にこの全米科学アカデミーの試算によりますと、紫外線の量が一%増加いたしますと、皮膚がんの発生率は平均いたしまして約一%増加するというように見込まれているわけでございまして、オゾン層の濃度が一%減少すると、結果として皮膚がんの発生率は平均二%増加するのではないか、かような予測が行われたわけでございます。  以上のような、いろいろな各方面の専門家方のいわゆる科学的な知識の経験の積み上げというようなことで今回の条約及び議定書という形になり、かつまたそれを実施するための法律の提案、かような形になっていると存じます。
  135. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  ただいま先生のお尋ねの件につきましては、通産省の方から御説明がございましたように、一九七四年にアメリカのローランド教授がこの問題を指摘いたしまして、通産省からもお話がございましたような世界的な研究が行われまして、いろいろ文献等の御説明もあったわけでございますが、そのような文献の結果を踏まえまして、現在、このフロンガスとオゾン層の関係につきましては、そういうことで世界的なコンセンサスが得られておるというぐあいに思うわけでございます。環境庁におきましては、このような、先ほど御説明もございましたような各種の文献をもとにいたしまして、我が国におきます第一線の専門家から成ります成層圏オゾン層保護に関する検討会といいますものを六十二年二月に設けたわけでございますが、その中におきまして、御説明のございましたような既存の科学的知見の整理、評価を行ったところでございます。  その結果といたしましては、将来のオゾン層の破壊の予測につきましては、さらに精緻な研究が必要というぐあいに思われるものの、フロンガスによりますオゾン層の破壊のメカニズムあるいは有害紫外線によります環境影響につきましては専門学者の間に異論はない、全く世界のコンセンサスと同じ意見であるということで、日本の学者の方々の御意見も一致いたしたところでございます。したがいまして、このフロンガスによりまして成層圏オゾン層が破壊されることが、我が国におきましても共通の理解というぐあいに受けとめておるところでございます。  それから、健康影響等につきましては、がんの関係につきましてはただいま通産省の方から御説明がございましたので、私の方はそれと別にいたしまして、植物の影響あるいは魚の影響について若干申し上げたいと思うわけでございますが、植物の影響につきましても、日本におきましてはキュウリの栽培実験、それから外国におきましては米の栽培実験等が行われまして、UV―Bの照射を当てますと、やはりこういう植物の一部の作物の収量が減少するというデータが報告されているところでございます。それから、水生システムといいますか魚の関係でございますが、同じように実験の結果から、UV―Bの照射が食物連鎖に欠くことのできない魚類の幼生、幼魚、エビの幼生、カニの幼生等に悪影響を与えるということが実験的に証明されているところでございまして、そういう面では、人間の影響のみならず、植物なり水生動物に対する影響もあるというぐあいに理解いたしておるところでございます。
  136. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今それぞれお答えいただいたのでありますけれども、私もいろいろなものを読ませていただいている中で、皮膚がんやなんかとかあるいはこの地球上の生態系とかというやつだったら、我々も身の回りにあるから実験的なことはできる。しかし、オゾンというような我々の手の届かないようなところにあるものをどうやって実証するのだろうと、全く科学には無知な私のことですから、その辺が全くわからなかったのですね。  学者の中でも何か異論があるというような意味のことを書いているのを二、三拝見しているわけなんですけれども、今のお答えの中では、確かにフロンだとかハロンというものが原因だろうと。これは、ちょっとニュアンスが違うような印象を今私は受けたのですけれども通産省の方のお答えでは、大体そういう可能性がある、私は今、こういうような受け取り方をしたわけなんですよ。しかも、コンピューターなどによるシミュレーション、そういうもので大体推測をして、ほぼこれは可能性があるというような結論。環境庁の方の今のお答えだと、これはもう間違いなくフロンあるいはハロン、これがオゾン層を破壊をしているんだ、こういうふうな受け取り方を私はしたわけなんですけれども、これからこの法律については、お互いの共管というのですか、そんなような形の中で運用されていくものでございますから、ここのところをしっかりしておかないと、認識というものはやはり統一をしておかないというと、これからいろいろな施策をやっていく場合に、いや大したことはない――大したことないよというのは語弊がありますけれども、そんなことはないと思うのでありますけれども、もしもこれからやっていこうとする施策や何かについて差異が生じてきた場合には困る状況になるのではないか、こんなふうに思ったものですから、これはお尋ねをしているとまた時間がなくなってしまいますから、そういう点一つ心配があるということだけ、私は申し上げておきたいと思います。何かのついでのときにお答えいただければ、それで結構だと思います。  次に、せんだってNASA、アメリカの航空宇宙局ですか、そこの方から発表になったのがございます。これによりますというと、高緯度地域の破壊というのが非常に大きい、しかもスピードが急速に進んでいる、こういうのがあったわけでありますけれども、これも私は全く素人なものですから、何かこの原因があるのだろうか。今まで南極大陸の方に、先ほど答えがありましたように、南極の夏に相当する時期にオゾンホールができるというようなことについては伺っていたわけでありますけれども、このNASAの発表によりますというと、日本列島なんか全部入ってしまうわけでありまして、そういうところが非常にオゾンの方の破壊が進んでいる、こういうようなことでありまして、これはもう皆さん方の方も既に御案内のとおりだと思うわけであります。しかもこれは、高緯度になればなるほど破壊される分が大きくなっていく。例えば、北緯三十度から三十九度の地域だと年平均二・三%、四十度から五十二度になると四・七%、五十三度から六十四度になると六・二%、こういうふうになっているのが出ているわけでありますけれども、一体何かその原因があるのだろうかというようなことを、もしわかっておりましたらちょっと教えていただきたいと思うわけであります。
  137. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 ただいま御指摘なさいましたレポートは、本年の三月十五日だったと存じますけれども、アメリカのNASAあるいはまた世界気象機構、WMOと言っているようでございますが、等が協力して組織してございましたオゾントレンドパネルというところが発表いたしましたレポートだと存じます。  このレポートは、これまでいろいろなところで観測されておりますデータを再検討いたしまして、そして分析をし直しているという経緯があるようでございますけれども、同報告書を現在私どもも精緻に読ませていただいております。なかなか専門的で難しいわけでございますけれども、どうも一九六九年から得られておりますWMO、世界気象機構の世界の観測ネットワーク、その観測データと、それから一九七八年から技術開発衛星ニンバス、いわゆるサテライトでございますが、それによって観測されておりますデータ等につきまして詳細を議論しているようでございます。  先ほどの御質問との関連もございますけれどもオゾン層変化、これは減少したり増加したりするその原因といたしましては、従来の自然現象といたしましては太陽活動の強弱、すなわち黒点が出たりするようなことによりまして太陽活動に強弱がございますが、その変化によりましてやはりオゾン層の増加、減少に非常に影響があるようでございますし、あるいはまた今南極の関係でおっしゃいました季節の変動、冬と夏等によりましても、やはりオゾン層に増減の変化があるようでございますし、あるいはまた成層圏の風によりましても変化があるようでございます。すなわち、先ほどちょっと御紹介いたしましたシミュレーションにおきましても、その辺を組み込んでいろいろ予測をしておるわけでございますけれども、このレポートにおきましては、そのような観測データを基礎にしつつ、従来もシミュレーションから出ましたデータとの突き合わせなどを行って、シミュレーションが自然現象として想定しておりますのに加えて仮にオゾン層の減少が出ていれば、これは他の要因によるというようなことで、今議論されておりますフロン等の影響があるのではないか、このような一つの予測をしておるわけでございます。  ポイントといたしまして、私ども拝見しておりますと、先ほど指摘なさいました南極の九月、十月、これは冬が終わった春の初めの段階でございまして、非常に温度が下がっております。今オゾンホールとおっしゃったわけでございますが、かねがねそのオゾンホールというのが人工衛星等でも観測されていたようでございますが、その九月、十月に発生するということでございます。そのオゾンホールの内容が、持続時間がだんだん長くなってきた、九月だけだったのが十月まで延びる、そういうこととか、あるいはまたオゾンのパーセンテージが非常に少なくなってきたという現象があるようでございます。それを見てオゾントレンドパネルは、やはり人工的な塩素化合物、すなわちフロン等が影響している可能性が確からしい、こういうことをレポートの一部で言っております。  一方、今お話のございました北半球でございますけれども、北半球の中高緯度におきますデータの分析をしているようでございまして、そこで長期的なデータとしてはオゾンの減少が見られるということでございます。その場合に、そのオゾンの減少が、例えば太陽の活動が低下することによって減っているのかどうかとか、いろいろな点があるわけでございますけれども、このレポートにおきましては、そういうものも予測した上で、やはりオゾン濃度の低下が何らかの寄与をしているのではないか、こういう予測をしているようでございます。私どもも、その辺はもう少し分析したいと思っております。  そこで、お触れになりましたいろいろなパーセンテージの数字でございますが、これはそのレポートをよく見ますと、先ほどたしか一・七から三とおっしゃったと思いますが、これは年平均の数字ではございませんで、一月から十二月の統計数字をとってそれを平均しておりますので、比較時点は六九年と八六年、二点間におきます比較のようでございます。いずれにしましても、減少はしているという数字があるようでございます。我々も、このレポートをより詳細に研究し、かつまた専門家の御意見も聞きたいと思っているわけでございます。
  138. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 環境庁さんの方は、これに対する御所見がありましたらちょっと。
  139. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ただいま通産省さんの方から御説明ございましたように、オゾントレンドパネルの報告書につきましては、私どももいただきまして内部で検討いたしておるところでございます。  内容等につきましては、ただいま御説明ございましたとおりでございますので省かせていただきたいと思っておりますが、これとは別にいたしまして、我が国におきましては、気象庁が三十年代から日本の四カ所においてオゾン層の観測を行っているところでございます。この気象庁からの情報によりますれば、日本の上空におきましてオゾンが明確に減少しているというぐあいには評価してないというぐあいに聞いておるところでございます。  したがいまして、NASAの報告日本の観測の結果に若干ずれがあるような感じもいたしておるわけでございますが、私どもといたしましては、このNASAの報告書につきまして、あるいは気象庁の観測した結果につきましても、先ほど申し上げましたような環境庁に設けました検討会におきまして十分議論をし、専門家の御意見をいただきたいというぐあいに思っているところでございます。
  140. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 今度の法律案の中では、監視体制とか観測体制というようなことを何かやらなければならないということになるわけでありますけれども、今までも国内では、今お話がありましたように気象庁なんかではやっておられるわけであります。国内での監視体制、これは国立公害研究所ですか、何かこちらの方では大型レーザーレーダーを今度購入して調べる、これは高度五十キロまで届くというようなことでございまして、これも私、全く素人なものですから、五十キロの高度に届くということについてはわかるし、中身についても読ましていただきましたのである程度理解はできるわけでありますけれども、今申し上げましたように、例えば高緯度の地域の破壊が大きい。しかし、日本の国内での観測でいけばちょっと違いがあるような感じもする、そういうお答えのようだったと思うのでありますけれども、これからは、もし本当にフロンガスなりハロンガスというものがオゾン層を破壊していっているんだということになりますと、それは一年や二年でもっていくというものではないことも読ましていただいているからわかるわけであります。  しかし、これからだんだん国民生活実態というものも発展をしていくということになれば、やはりいいものは使おうということになっていくわけですから、そういうことになりますと、監視体制なり観測体制というものは、私が素人的に考えてみて相当強化をしていかなければならないのでないかな、こういうふうに思っているわけでございます。そこで、監視体制の場合に、筑波にあるこれ一カ所だけで十分対応できるんだろうかな、こういう危惧が一つございます。もちろん気象庁の方でそれぞれまたやっておられるということでもありますから、ただ、そっちの方は機械が余り新しくないから曇った日にはだめだとか、夜間ならばだめだとか、こういうようなことだろうと思うのですが、今度国立公害研究所に入るレーザーレーダーの場合だったらいつでも使用できるということになると思うのです。  そういう監視体制なり観測体制ということについて、これは両省庁にまたがっているということになるのですか。これからの監視体制なり観測体制ということについて、現行の状態で果たしてどうなのか。あるいは気象庁の方がやっているようなものについても、この国立公害研究所に入れるようないい機械が、これはいい機械があった方がいいのでないかと思うのでありますけれども、そういうようなものについて、これからどう整備をしていかれようとするのか、そういう監視体制なり観測体制ということについて、ちょっとお考えをお尋ねしておきたいと思うわけであります。
  141. 小嶋修

    ○小嶋(修)説明員 お答えいたします。  気象庁の観測は、昭和三十二年の国際地球観測年を契機として、日本国内の札幌、筑波、鹿児島及び那覇の四カ所並びに南極の昭和基地において継続してオゾン層の観測を実施しております。それから、ただいま先生がおっしゃいましたようなものとして、研究所にレーザーレーダーの小さいのが入りました。
  142. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 ただいま気象庁さんの方からお話がございましたように、気象庁さんにおきましては、昭和三十年代から全国四カ所あるいは南極等におきまして、ドブソン分光光度計を用いまして、大気中のオゾンの量あるいは成層圏のオゾンについての観測を行っておるところでございます。  環境庁といたしましては、ただいま先生からお話がございましたように、国立公害研究所の中にオゾンレーザーレーダー、五十キロまで届くレーダーでございますけれども、それを新しく設置いたしまして、このオゾンレーザーレーダーを用いて高層における高度別のオゾン層状況の精緻な測定を実施いたしたいというぐあいに考えておるところでございます。特に、フロンが成層圏まで上がりまして、大体四十キロの地点で一番フロンが分解されてオゾン層の破壊が行われるというようなことでございますので、四十キロのところを中心に置きまして、その上あるいはその下についてのオゾンの分布の状況を把握してまいりたいと思っておるところでございます。  現在のところ、環境庁におきましてはこの国公研のオゾンレーザーレーダーによります高層におけるオゾン層の分布の状況を把握いたしたいというぐあいに思っておるわけでございますが、このオゾンレーザーレーダーにつきましてはアメリカ、ドイツ、フランスの国においても設置いたして観測、監視等行っておるわけでございますので、この日本を含めた四カ国に設置されておりますオゾンレーザーレーダーによって、北半球におけるオゾン層の精緻な測定のネットワークはつくられるものと思っておるところでございます。そういうことで、これからそういう面での情報交換等も行ってまいりたいと思っておるところでございます。
  143. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これはまた後でもちょっと触れたいと思うのですけれども、これから大事になってくるのは、後で申し上げる生産規制だとかあるいは消費規制だとかということと、もう一つはしっかりした観測体制あるいは監視体制、こういうものになっていくだろうと思うのですね。アメリカから購入した大型のレーザーレーダーというのは三億三千万くらいの値段だというから、私にすれば大金だけれども国にすれば大した金でないという気がしますので、こういうのだったら四カ所、五カ所くらい一遍に入れたって、これは通産省が入れるわけではないでしょうけれども、気象庁は運輸省の方ですから、そのぐらいの金はどんどん使っても体制だけはしっかりしておく必要があるのではないか、こう思うわけであります。  時間的な関係がありますから、次に窒素酸化物の対策についてお尋ねをしたいわけでありますけれども、航空機の排ガスに含まれる窒素酸化物も上昇して分解しオゾン破壊の元凶の一つになっているという話を聞いているわけでございます。それが果たしてどうなのかということですね。そうすると、同じ窒素酸化物ということになると自動車の排ガスということも当然出てくるわけでありまして、事前にいろいろなお話は聞いておりますけれども、この二つについて実際にどうなんだろうということについて教えていただきたいと思うわけです。
  144. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 基本的な点だけちょっと御紹介させていただきますと、今国会で批准をお願いしておりますオゾン層保護のためのウィーン条約に附属書というのがございまして、その中でオゾン層の化学的及び物理的性質を変化させる可能性のあるものというのが掲げてございます。その中に今おっしゃいました窒素関係の物質が出ておりまして、窒素を含む物質ということで二種類、一酸化二窒素と窒素酸化物、いわゆるNOxが入っております。  私ども考えておりますのは、最初の一酸化二窒素につきましてはやはりオゾン層の破壊に関連がある一つの物質ではないか、かように言われておりますけれども、その発生源は一般的には天然でありますし、人工のものも肥料みたいなものでございます。今御指摘がございましたのはむしろ窒素酸化物、NOxの方だと存じますが、この附属書の中ではこのような形になっております。対流圏の中、すなわち地上から約二十キロまでのところでございますが、そこでは逆にNOxはオゾンをふやす効果を持っている。これは、よく夏場にいわゆる光化学スモッグというのがございますが、あの反応でございまして、あの場合にはあの反応でO3すなわちオゾンがつくられて、地上でございますので目が痛くなったりするような問題があるわけでございます。対流圏の中では、光化学によりまして逆にオゾンをつくっている。ところが成層圏におきましては、特にこの文書では成層圏と対流圏の間、境界面におきまして仮におっしゃったような飛行機等によりまして窒素酸化物の注入があれば今後オゾン層変化に直接影響を及ぼす可能性がある、こういう指摘は一応してございます。御指摘ありました点は我々今後の大きな研究課題であり、UNEPにおきましても今後議論されていくと思います。
  145. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 環境庁さん、これはどうですか。
  146. 長谷川慧重

    ○長谷川(慧)政府委員 お答えいたします。  窒素酸化物のうち、ただいまお話ございましたNOxにつきましては、通産省の方から御説明ございましたように、対流圏の中で壊れる、あるいは対流圏の中でほかの物質との反応によりましてオゾンをつくる、あるいはNO2という形であるいは酸性雨の原因になったりするというような形で、自動車等から排出されるNOx等につきましては大体そういう形で処理されるわけでございます。  同じように亜酸化窒素、N2Oでございますが、このN2Oにつきましては、オゾン層に影響を及ぼすおそれのある物質というぐあいに私どもも理解いたしておるところでございます。この亜酸化窒素、N2Oにつきましてはその発生源がいろいろあるわけでございますが、主たるものは天然の発生源でございまして、最近は窒素肥料の使用あるいは燃焼等、人為的なものからも生じてきておるというぐあいに言われておるところでございます。現在の大気中の増加率も年〇・二%の増加ということで、大きな伸びはない状況にございます。N2Oにつきましては、天然由来のものが非常に多くの割合を占めているということが言われているわけでございまして、そういう天然性のものであるということ、あるいは増加率がフロンと比べましてそんなに大きな伸びでないというようなことから、いずれにしましてもこの亜酸化窒素がオゾン層に影響を及ぼすということは、国際的には影響を及ぼしておるということはコンセンサスが得られているところでございますけれども、人為的影響につきましてはフロンよりも小さなものというぐあいに考えられているところでございます。  このN2Oとオゾン層との関係につきましては、先ほど通産省の方から御説明ございましたけれども、予測モデルが設けられておりましていろいろシミュレーション等が行われているわけでございますが、このN2Oの反応速度常数等の精度を高める必要があると思っておるわけでございます。このN2Oとオゾン層との関係につきましては、いまだ世界的にもいろいろな議論等ございまして専門家の間で議論が進められておるわけでございますが、いずれにいたしましても、フロンと比較いたしますとこのN2Oの人為的影響ははるかに小さいというぐあいに思っておるわけでございます。そういう面でこれからも研究等が進められるわけでございますが、N2Oとフロンとの関係を大ざっぱに比較いたしますと、オゾン層に影響を及ぼしているのは、現在のところはフロンが非常に大きな役割を示しているのではなかろうかと思っているわけでございます。  それから、先生のお話の中にございました飛行機等の関係でございますが、SST、超音速旅客機の問題につきましては、アメリカにおきましてこのSSTによりますオゾン層破壊については詳細な調査研究が実施されまして、その結果、その影響は小さいものというような結論が出されておるというぐあいに承知いたしておるところでございます。
  147. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 窒素酸化物が直接的にオゾンを破壊する元凶ではないというふうに受けとめたわけでございます。これは本題ではございませんからきょうはそっちの方には入りませんけれども環境庁さんの方では窒素酸化物の対策を今やられているわけですね。自動車の排ガスや何かについては、低公害車の普及だとか物流対策だとかいろいろなものを考えておられるということでありますが、ただ、窒素酸化物だって大気汚染ということではやはり影響のあるものです。航空機の方も余り影響ないということで、一応安心いたしておるわけでありますけれども、きのうの朝でしたか、NHKの報道をちょっと見ておりましたら、ソビエトでは液体水素と液化天然ガスを燃料にした航空機の飛行実験に成功した、そういう報道も聞いておるわけでありまして、これからはやはり窒素酸化物を出さないようなものも、この法案とは別にして考えることは考えていかなければならないんじゃないか、こう思っているわけであります。  次に、代替品の開発状況についてちょっとお尋ねしておきたいと思うわけであります。代替品の開発の状況について、今世界各国で行われているもの、若干の部分は私承知しておりますけれども、大まかに大体どういうような代替品の開発状況になっているのか、もし御存じでしたら簡単にちょっとお知らせいただきたいと思うのであります。     〔尾身委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  148. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘のように、今後このフロン規制を円滑にかつ的確に実施する最大の条件の一つが代替品の開発だと存じます。これは、民間におきましても現在大変努力をしていると存じますけれども、現在一番有望だと議論されております、世上発表されておりますのがフロン123というのとフロン134a、こういう二品目でございます。いずれにつきましても、今先生の御質問の中にございましたように、この一月に世界の主力化学メーカー十四社共同によりまして毒性試験をする、総額約十億円をかけるようでございますが、その対象になっておりますのが今のフロン123とフロン134aでございまして、いずれも現在最も期待されております代替品でございます。  フロン123といいますのは、現在主に発泡剤に使われておりますフロン11の代替品でございますし、一方フロン134aは主に冷媒に使われておりますフロン12の代替品でございます。これはアメリカ等々の主力化学メーカーはもちろん、我が国の化学メーカーも鋭意開発に努力をしているということでございます。先ほどの世界主力化学メーカーとの共同の毒性試験の期間ででざいますが、一応この一月の発表では六ないし八年という期間を想定しております。なるべく早くその辺も完了して、それが実用化されることを私ども期待しているということでございます。  それ以外についてでございますが、既に開発をされておりまして、しかし今回のフロン規制対象にはなってないフロン関連商品にフロン22というのがございます。これは主にビル空調用の冷媒に使われる、あるいは発泡剤に使われる可能性があるわけでございまして、フロン11ないし12の代替品としての機能を持っているわけで、既にその辺の動きは具体的にスタートしていると存じます。いずれにいたしましても、最初に申し上げましたとおり、私どもといたしましては代替品の開発が非常に重要だと存じておりますし、今回御審議をお願いしております法律におきましても、フロン等の代替品の開発及び利用の促進のための国の努力義務規定がございますので、我々各般の予算措置等によりまして、その辺につきましては最大限の努力をしなくちゃいけない、かように考えているわけでございます。
  149. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これもちょっと次の方にも関連しますが、化粧品、スプレー剤のLPG使用についてということで、報道によりますと、通産省の方でそれを認めるような方向で検討、これに対しては消費者団体の方からはちょっと問題があるんではないか、こういうことを言われているというふうに聞いているわけでございます。これについては、欧米の化粧品会社八社では既に破壊につながらない噴霧剤を使用した製品の開発を完了しているというような報道があるわけでありますけれども、噴霧剤の方にLPGを使うということについての考え方と、もしもう既に世界でLPG以外の代替品ができているんであればそっちを使えばいいんではないかという気がするわけでありますけれども、これはどうでしょうか。
  150. 安楽隆二

    ○安楽政府委員 エアゾール製品については、高圧ガス取締法に基づきまして燃焼性の強さに応じて五つの区分を設けまして、その区分に応じて使用方法を表示することを義務づけるとか、それからもう一つ、特に人体に使用するエアゾールの噴射剤でございますけれども、これには可燃性ガスを用いてはならないということに現在なっておるわけでございます。したがいまして、現在人体用エアゾールの噴射剤に含まれているLPGは十数%にとどまっておるわけでございまして、残りはフロンが使用されているということでございますが、このようなところが、現行の規制基準というものは昭和四十一年につくられたものでございまして既に二十年以上経過しているということで、品質管理水準がこの間技術革新で向上したとか、あるいは先進各国における規制と整合性を確保するためにはどういう基準が適当かとか、あるいは今回のフロン規制問題というようなものもあるわけですが、いずれにしましてもこういう大きな環境変化がこの長い間に生じてきておるわけでございます。そういうことで、このエアゾールに関する基準につきまして、噴射剤への可燃性ガスの使用制限の問題も含めまして、全般的な見直しをする必要があるというふうに考えております。  それで、あくまでも安全性の確保ということを大前提としつつ、現時点における合理的な基準のあり方はどうかということで、これは専門的な検討が必要でございますので、高圧ガスの保安に関する専門機関でございます高圧ガス保安協会に依頼しているところでございます。それで、この協会におきましては、先般既に消費者代表等も含めました専門家による委員会を設けまして、本問題について検討を開始いたしましたので、通産省といたしましては、その検討結果を待って適正に対処をしていきたいと考えております。  なお、先生が外国の例で人体用エアゾール、スプレー等に関する代替剤的なことを御指摘になりましたが、私どもとしては、それについては特にまだ聞いたことはございません。
  151. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 これは次の問題にも関連してくるわけでありまして、この前提案説明のときだったですか、何か大臣が言われたことをちょっと記憶して、私の記憶違いかどうかわかりませんけれども、アメリカの方ではLPGを使って、たばこをのみながらそんなものを使うのは使う方が悪いんだというようなことで、何かきちんとけじめがついているということのようですけれども日本の場合はまだそこまでいっていない、やはり可燃性のものについては危険だ、こういうことになっているんだろうと思うのでありますが、これは消費者に対する啓蒙ということだって必要だ。  これは後で、製造数量の規制だとかそういうものについて関連してお尋ねしていくわけでありますけれども、最初に一番、二番でお聞きしたように、フロンガスを使うということによってオゾン層が例えば破壊されていくんだ、それは人体にはもちろんでありますけれども、地球上の生態系に非常に大きな影響を及ぼすんだ、こういうことになれば、原則的にはやはり使わないということが基本だ、私はこう思うのですね。確かに人間だけのことを考えれば、人畜にはまことに無害でいいものだ、こうなるんだけれども。物や自然を破壊していくというものは、我々が生きている間に今目の前ですぐ起きるということであれば、これは大変だ、すぐやめようとなるんだけれども、例えばたばこをのんだら肺がんになるよと言われても、私なんかは死ぬまでならないだろうなんて思って遠慮なくのんだりするわけでありますけれども、あれは一本たばこを吸ったらすぐ肺がんでばたっといくというのであれば、だれものまないということになるのですね。しかしこういうものだと、いつどうなっていくのかがなかなか目に見えないものだから、例えばいいものだからどんどん使う、こういうことになっていって我々の子孫の段階に大きな影響が来たということになりますと、これは我々の責任ということになるわけですね。自然破壊というのはそういうことだと思うのです。だからそういう面からいったら、本当にオゾンを破壊して人体なりあるいは地球の生態系に大きな影響を及ぼすということであれば、くどいようですけれども、本来なら生産をしない方が一番いいんだし、そしてまた使わないのが一番いいということになると思うのです。ただ、これは通産の立場になりますと、そういう一つ産業があってということになるとなかなか難しいということになるのだろうと思うのでありますけれども消費者に対しては、個人消費ももちろんそうでありますし、業者もそうだと思うのでありますけれども、そういう方々に対しましては、今の化粧品ばかりではなくスプレーのこれ、LPGを例えば使おうかと今検討を始めたということでありますけれども、それで例えば使うということになった場合と、それから代替品で可燃性でないものの代替品がつくられればそっちの方がいいということになると思うのでありますけれども、そういう面を含めて消費者に対する啓蒙対策というものはこれからどうやっていかれようとするのか。一定の決まった生産量、これは消費ということにつながっていくのだから、その間であれば野放しにしておいてもいいというふうな対応策ということになるのか。できるだけあるものは使わないでくれというのはなかなか難しいと思うのでありますけれども、それは結局、ある程度生産規制とか再処理とか破壊とかいろいろなものにつながっていくものになると思うのです。その辺のところ、もし見解があったらちょっと聞いておきたいと思います。
  152. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 確かに、フロンの規制の問題を今後円滑に進めるために、一般の方々の御協力を得るということは非常に重要だと思っております。特に今後、生産規制が相当厳しいものでございますので、その結果といたしまして、いろいろな分野で不便が起こる可能性というものもある程度我慢しなければならないという分野があるかもしれません。いずれにいたしましても、現在のフロンそのものの利用形態というのは非常に広うございまして、今お話のございましたエアゾールの噴射剤のみならず、例えば家庭にございます冷蔵庫とかクーラーの冷媒にも使われてございますし、あるいはまた住宅や冷蔵庫に組み込まれております断熱材、さらにはソファー等に用いられておりますウレタンフォームの発泡剤等にも使われておりますので、国民生活に大変浸透しているわけでございます。  現在、フロンは御議論のような形で問題になってきたわけでございますが、従来はむしろフロンは直接の毒性はほとんどない、あるいはまた引火爆発の危険性がない、しかも製品としては大変安定しているというようなことで、非常に使い勝手のいい商品であったと思います。そういう意味で、生活全体に浸透しているわけでございますので、これから大きく方向を転換いたしまして規制という方向に参るわけでございますので、当然使っておられる方に対しましての十分な御理解を得ながら、おっしゃるような方向で削減をしていくということが基本だと思っておるわけでございます。  そのような認識が基本にございまして、今回御提案の法律の第三条に、今後政策を進めるための「基本的事項」というものを掲げまして公表することになっておりますが、その第二番目に、今おっしゃいましたような「オゾン層保護の意義に関する知識の普及その他のオゾン層保護に関する国民の理解及び協力を求めるための施策の実施に関する重要な事項」というものを掲げて公表することにしておりますので、それを基盤といたしまして、国の広報活動、テレビ、新聞、いろいろ手段がございますが、その辺を活用しながらおっしゃるようなことをぜひ推進したいと考えておるわけでございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、尾身委員長代理着席
  153. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 もう、ちょっと時間がなくなってきましたので。  今度の法律案では、実際には生産をする、それから破壊をした部分はまた生産に上積みできる、こういう形になっているわけです。この辺のところはちょっと疑問に思っているわけでありますけれども、いずれは半減というのですか、そういう形に持っていこうということになっているわけですね。それから破壊できたものの分、その部分はさらに生産にプラスしていいですよ、そういう考え方が何か納得いかないというふうになるのですね。いずれは半減をしていこうということになっているのだったら、できるのだったら早い方がいいだろう。それは最初に質問したこととつながっていっているわけでありまして、それは一年、二年でもって影響が出るものでないかもしれないけれども、しかし我々のこれができたのは四十年ころだというのですが、さっきちょっとお答えがございましたけれども、そのころからというからまだまだそれは大丈夫かもしれませんけれども、何年間かかってそれは破壊されていく、そういうことになったら、そういう原因というのはストップさせておくということが一番いい。回収、再処理ということであれば幾らかはいくだろうかもしれませんけれども、大半は回収されるということであればこれは余り影響はないと思うのです。だから、回収をされないということになった場合、日本国内ではそう大した量ではないかもしれないけれども、世界各国ということになると相当な量になるからオゾン層の破壊の原因だ、こう言われるのだろうと思うのです。そうした場合だったら、破壊した部分というものについてはそれでいい、こういうふうにすべきではないのかな、そこのところがなかなか理解できないという点が一つあります。  それと、今実際に日本国内で生産をされて消費をされているわけでありますけれども、大体その内訳ですね。大きな事業体が使うもの、これは回収とか破壊という対応策というのはできると思うのです。しかし我々が家庭で使うものというのは、回収もできないしもちろん破壊もできない。どっちの量が多いかということもあると思うのですね。圧倒的に例えば営業用に使って、家庭用とか個人なんかがスプレーだとかいろいろなもので使っているのはほんのわずかだということであれば、これはまた対応が違ってくるけれども、その割合というのはどのくらいになっておりますか、それをちょっとお尋ねしておきたい。     〔尾身委員長代理退席、奥田(幹)委員長代理着席〕
  154. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 初めに破壊の件でございますが、法律にももちろん破壊の規定を置かしていただきまして、破壊の方法につきましては省令で決めさせていただくことになっておりますが、実は議定書の中で、破壊の方法につきましてはまだ最終的に確定していないという形になっております。すなわち今後締約国会議、すなわちUNEPの国際間の会議におきまして破壊の方法について議論することになっております。なぜかという点でございますが、例えば破壊によりまして有毒ガスが逆に出て、よりマイナスになるかもしれないという問題等があり得るわけでございますので、その辺も含めてだと存じますが、ただ、今破壊したものをさらに製造数量の上乗せにするのはいかがか、こういうお話でございまして、そういうお考えも一部おありとは存じますが、私ども今回の生産数量につきましては、段階的にずんずん削減してまいります。  来年仮に法律を施行させていただくといたしますと、現在の趨勢からいいまして六十一年の水準にするということはやはり三割程度のカットバックになりますし、それ以後四年後にさらに二割カットし、さらにまたその五年後、今からですと十年後でございますが五〇%の削減、こういう段階的な削減を今後十年間で逐次円滑に的確に進めていくということは非常に重要でございますので、私どもは破壊というものが持つ意義というのは確かに空中に放出しないという非常に重要な意義を持っているわけで、それはそれで目的を達せられるではないかという御指摘かもしれませんが、一方におきまして、製造数量の大幅な削減を有効に的確に進めなくちゃならないという課題もあるわけで、これを両立させるために、すなわち段階的削減を円滑に実施させるためにこそ、こういうような考え方をこの議定書ではとったのではないかと思っておりまして、これは我が国だけではなくて各国ともそういう考え方で対応しようとしているわけでございますので、今後破壊の方法につきまして確定した段階で、我々といたしましても今後の対応というものは議論をするということになるかと思いますが、一応その考え方としては上乗せをするということで進めさせていただきたい、かように思っておるわけでございます。  それから、今後の対応につきまして、利用の仕方によって随分違うんではないか。それはおっしゃるとおりでございまして、先ほどお話しいたしました国民生活に密着している部分、またそれ以外に産業用に使われている部分がございます。端的に申し上げますと、我が国の場合は他の国と違いまして洗浄剤として使われている部分が相当ございます。恐らく五割程度だと思います。六十一年あたりの数字ですと四七、八%だったと記憶しておりますけれども、それは恐らくさらに伸びておりますから、半分ぐらいがいわば産業用に使われておると思います。残りが先ほど御説明いたしました発泡剤だとか冷媒だとかいうような分野だと存じますが、それによりましてもちろん今後の対応は違ってくると思います。洗浄用につきましては、これはまさに回収・再利用ということが最大のテーマになると存じますし、発泡剤等につきましては、気体になってしまいますので、これをいかにどこでうまく吸収、回収していくかということが非常に今後の課題になると思いますが、御指摘のように今後の回収・再利用につきましても、利用の形態によりまして我々はきめ細かい指針などは考えていかなくちゃいけない、かように考えているわけで、そのためのガイドラインというものをこの法律でつくらしていただくというふうに考えているわけでございます。
  155. 奥野一雄

    ○奥野(一)委員 もう時間が来ましたのでこれ以上は申し上げられませんけれども、中身は違いますがそれぞれのところで今いろいろ研究を進めていますね。それから、例えばアメリカのデュポン社というのですか、どうもうまく発音ができないけれども、そこでは将来やめるとか、それからアメリカの食品包装材の協会ですか、そういうところももうことしの未あたりではそういうものを使わない、代替品をやるとか、それから使用方法は違いますけれども例えば竹中工務店でも考えたり、あるいは昭和電工も考えたり、それから工業技術院、これは通産の方ですか、北海道の試験所でも窒素酸化物か何かのやつだと思いますけれどもそういうものなんかについてもいろいろ研究している、こういう状況が出てきているわけでありますから、速やかにそういう研究体制というものを確立していただいて、安全な体制をつくっていただく、こういうことが必要だと思います。  本来でありますと大臣からの所見もお伺いをしたいところでございますけれども、時間がないということでございますので、いずれまた二十七日には連合審査とか、我が方で小澤議員の方からも質問いたしますので、その際にお譲りをして、私は終わりたいと思います。
  156. 奥田幹生

    ○奥田(幹)委員長代理 二見伸明君
  157. 二見伸明

    ○二見委員 フロンガスの今度は生産と消費規制されるわけでありますけれども、議論がありましたように、フロンガスというのは非常に多方面に使われております。日本ではフロンは五社ですね。ハロンは三社です。メーカーの数は少ないけれどもユーザーは非常に多いわけでありまして、例えば半導体の基板とかフィルム、精密部品等々に使われる溶剤、洗浄剤、この使用量は約五万一千トン、CFCフロン113がほぼ全部を占めておりますし、これは再生処理装置をつけて再利用ということになるのだと思います。また、冷媒用としては約四万二千トンの使用量があります。これはCFC11が五%で12が四七%、規制対象外の22が四五%であります。これも家庭用クーラーだとか家庭用冷蔵庫の場合には蒸発して回収が不能ですね。ビル冷房の場合には、これは蒸発しますけれども、一部抜き取り回収をして再利用をするという方途もあるようであります。発泡剤は約二万九千トンの使用量で、これはCFC11が六五%、CFC12が三〇%でありますけれども、これも蒸発をするし、部分的には排出抑制装置をつけて再利用ということも行われているんだと思います。エアゾールの場合は約一万二千トンでCFC11が三七%、CFC12が六〇%で、これはいわゆるスプレーでございますから回収は不能であります。  このように、フロンガスというのは非常に用途が多様でございます。今度生産と消費規制されるということになりますと、代替品を早急に開発しなければ大変なことになるわけであります。ところが、代替品をこれから六年ないし十年かけて開発しなければならぬのでしょうけれども一つは、代替品の開発をおくらせるのは技術上、環境上の障害ではなく、価格の高い化学品に対するマーケットが小さいためだという意見がありますね。自動車工業界あるいは冷房工業界専門家の考えでは、CFC134aの価格がCFC12のそれよりも数倍高くても、製品価格に占める冷媒価格の割合が小さいこと、それから冷却装置の大きな改良を必要としない点から、CFC134がCFC12の代替としてCFC22よりは望ましいという意見もあるようであります。  ところで、フロンが一番多く使われる洗浄用の場合ですが、洗浄剤用の代替品として有望視されていたフロン132bが亜急性毒性試験で毒性が確認され、現在本分野での代替品のめどは立っていない、こういう報告があるわけでありますが、特に洗浄剤用のフロンの代替品というのは開発が間に合うのかどうか、この点についてはいかがでしょうか。
  158. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 先生御指摘のとおり、このフロン規制を円滑に進めていく、特にユーザーの方々に対しまして十分に御理解を得ながら進めていくという観点からまいりますと、代替品の開発というのは非常に重要な課題になってきているわけでございます。具体的には、既にお話をしていただきまして全くそのとおりでございます。すなわち、発泡剤用あるいはまた冷媒用につきましては具体的なめどは一応立っておりまして、その毒性試験を今後国際的な形で実施いたしまして、その結果さえよければこれは具体的に実施に移される。ただ、御指摘の中にございましたような経済的な問題、すなわち値段の問題はあるかとは存じますけれども、一応そのめどは立っているわけでございます。  最後に御指摘ございましたように、洗浄剤用のフロンの代替品が現在最大の課題になっておりまして、正直申し上げましてめどは立っておりません。したがいまして、現在私どもが最も努力したいと考えておりますのは、洗浄剤といいますのは液体の形になっておりますので、これをいかに回収・再利用するかというところに当面は最大のポイントを置いて対応したいと考えておるわけでございますが、中長期的にはおっしゃるように代替品の開発が課題でございます。最近たまたま新聞で私ども拝見をしたわけでございますが、米国で一応フロン113の代替品だという形でバイオアクトEC7というような商品名のものが発表されたようでございます。これは天然溶剤でございまして、したがって非常に大量のものが確保できるわけではございませんし、その使用過程でいろいろな問題点が付随しているようでございます。やはりもっといいものの開発が今後の課題だと思っております。  おまえは大丈夫かというような最後の御指摘でございますが、我が国の場合は民間事業者にその開発を強く期待はしているわけでございますけれども、必要によりましては国がそれに対して手を差し伸べるということがあるかもしれません。いずれにいたしましても、大きな課題として今後考えていかなくちゃいけない、かように考えているわけでございます。
  159. 二見伸明

    ○二見委員 排出抑制あるいは代替品の開発促進、これは進めていかなければなりませんけれども、具体的にこういう方向でやっておこうとかあるいは金融面とか税の面とか、いろいろな面でもってこれを促進していかなきゃならぬと思うのですけれども、そういうことについての具体的な方策は、通産省としては既に固まっておりますか。
  160. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 代替品の観点でございますが、今一応私ども努力している一つに、エタノールの活用というのを考えてございます。これはアルコールでございますが、従来アルコールというものを大規模な洗浄剤として活用しているという面はございませんけれども、その持っております洗浄能力というものも非常に高うございます。見方によりましては、洗浄能力はフロン113よりも高いかもしれない、かように言われているわけでございますが、ただ、おわかりのように、引火の問題だとか腐食の問題だとか別の問題がございますので、その辺を何とか解決しながら洗浄剤として活用できないものだろうか。これは直接六十三年度、本年度の予算の中に約三千万計上いたしまして、研究に着手することにしております。それ以外に、一般的な民間の技術開発等につきましては、技術開発に関します各種の私どもの助成制度をできれば活用して、そういう芽がございましたらぜひ育てたい、かように考えておるわけでございます。
  161. 二見伸明

    ○二見委員 今度生産量を凍結し、さらに二割カットとか五割カットするわけですけれども、このカットの仕方、削減の仕方なのですが、フロン排出抑制、再処理することにより需要量を削減することが適切な分野がありますね。それから、フロンを破壊処理できる分野、どうしてもそれができない分野、これがいろいろ分かれるわけですけれども、そうしたことを見きわめた上での生産削減対策というのは可能なのでしょうか。
  162. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘のように、フロンの用途は大変多岐にわたっているわけでございます。したがいまして、多様な用途がございますフロンを仮に用途別に制限をかけていくということになった場合に、もちろん技術的に大変難しいという面もございますし、公平が確保できるかというような問題等々もございます。そういうような観点も考慮しつつ、現在御提案しておりますように、今回の方法は国際的に同一ではございますけれども、生産規制という蛇口規制にしているわけでございますが、この蛇口規制と言われる生産規制をいかに実効あるものにするかという点からまいりますと、今まさに先生御指摘のように、使用形態を見きわめた上できめの細かい手当てが必要ではないか、こういうことになるわけです。  特に、先ほどの代替品の開発が予想される分野とそうでない分野というのは一つ問題点でございますし、特に代替品の開発が難しい洗浄用といいますのは相当ウエートが高いわけでございますから、これをどうするか。これにつきましては、確かに代替品の開発までの間はやはりいかに節約をしていくか、これは私どもは回収・再利用と言っておりますが、そういうようなことを重点として行わなくてはならない分野だろうと思いますし、それ以外に、おっしゃる気体になっている分野も、現在ビル建築の中で行われております冷媒の回収みたいなことを仮に冷蔵庫等につきましても同様に何らかできないかどうかとか、いろいろそれぞれの用途に応じましたきめの細かい指導というのはぜひ必要だと考えております。  このような観点がベースになりまして、今回お願いしております法律の中にも排出抑制・使用合理化指針というものを作成することにしておりますが、まさに御指摘のような、実態に応じた非常に有効な手だてというものを柔軟にとっていただくということを考慮いたしましてそのような指針を設け、個別の指導助言をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  163. 二見伸明

    ○二見委員 今、蛇口の話をしておりましたけれども、いわゆる生産規制、生産数量及び消費数量が規制されますね。そうすると、二割削減のときならばまだ何とか需給問題は起こらないかもしれないけれども、五割削減の段階になりますと需給はかなり逼迫しますね。今度の規定では生産、消費の規定はあるけれども、需要サイドからの規定はありませんね。ですからフロンが、数量にしてもあるいは価格にしても、これは全部市場メカニズムに乗った供給ということになりますね。そうすると、やはり当然価格は上がると思います。それで、代替品がうまくあってくれれば価格が上がることもないだろうし、買い占めということもないのだろうけれども、もし代替品の開発がおくれてきている場合にどうしてもこのギャップが出ますね。そうすれば、その分だけ価格も上がるだろうし、あるいは品不足を見込んでの一部使用事業者による買い占めとか売り惜しみ、そうした事態が出てくるのだろうと思います。そういう事態については、通産省はどういうような見方をされておりますか。
  164. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘のような問題、すなわち今後規制が段階的に進んでいった場合に、需給上いろいろな問題が出てくる、これをその法律上手当てをした方がいいのかどうかというような議論、もちろん私ども審議会で審議をお願いした際にございました。私どもの審議会におきます結論は、やはり自然の神の手といいますか、市場メカニズムがそれに対します一番いい回答ではないか、私どもが限られた能力で下手に介入をしていくということはかえってマイナスではないかというようなことで、基本は市場メカニズムに任すべきであろうということにしておりますが、しかしお話ございましたように、来年の規制の実施段階あるいはまたその先二割削減、五割削減と規制が強化されるに従いまして、やはり過渡的な問題点は予想されないではないと思っております。  この辺につきましては、私ども、個別具体的に対応は覚悟しているわけでございますが、特に価格の点につきましては、やはり急激な価格の上昇というようなことはかえってマイナスでございますし、ユーザーに対して大変御迷惑をかけるわけでございますから、そのような便乗値上げ等の動きがございましたら、当然これに対しましては私ども具体的な手は打たなければいけない。便乗値上げ防止のための価格の監視というのは、その際にぜひ必要だと思っております。  今回の規制のスケジュールを考えた場合に、五割削減という段階が想像するに確かに一番厳しい段階になると存じておりますが、一方UNEPの場でスケジュールを決める際には、五割削減の時期そのものはやはり代替品の開発というものにつきましてのある程度の見通しというものを一応頭に置いた時点というものを選んでいると存じますので、世界各国、もちろん我が国も同様でございますが、代替品の開発という形で将来の五割削減の段階をうまく乗り越えてまいりたいというのが基本ではございますが、具体的な起こった問題に対しましては、個別に私ども行政指導で対応していきたい、かように考えております。
  165. 二見伸明

    ○二見委員 たしか狂乱物価のときに買い占め売り惜しみ法ができましたね。このフロンの価格が急騰したような場合には、そうした法律を念頭に置いた指導というのができるのかどうか。それからまた、価格の問題ではなくて、要するに絶対量が少なくなってくるから中小のところに物がスムーズに行かない、払底してしまっているという場合もありますね。その場合には供給を安定させるためのあっせんとかそういうことも、通産省としては既に最悪の場合を考えた上での、いわゆるそういうことを念頭に置いているのかどうか、その点いかがですか。
  166. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 今回の法律の中に、第三条でございますが、基本的事項というのが書いてございまして、その中で長期的な今後の展望をお示しすることになっているわけです。これの持っている意義は、今まさに御指摘のとおり、今後規制は相当段階的に厳しくなるということを皆さんに周知徹底をするということが非常に重要なポイントでございまして、例としてお示しいただきましたあのような石油危機等、突然予測なしに起こったような際の混乱というのは、確かに法的な措置を背景にやらざるを得ないというケースがあるわけでございますが、現在の私どものフロンの将来の段階的規制はすべて予測されておりますので、当然我々といたしましてはそのスケジュールを念頭に置いて、関係業界につきまして十分準備段階を持って指導はしてまいりたいし、ユーザーにもその御協力もお願いをしたいし、国民の理解を得たいというような意味で第三条を置いてございますので、その辺は万問題なきようにぜひ進めたいと思っておりますが、おっしゃいましたような流通段階の売り惜しみとか買いだめとかこういう問題につきましては、もしその可能性がちらりとでも見えましたら、私どもは当然具体的な行政指導に入るという覚悟はしているわけでございます。
  167. 二見伸明

    ○二見委員 フロンガスによるオゾン層の破壊及び皮膚がん等健康への影響については、今から十四年前の一九七四年にアメリカのローランド博士等が初めて警告を発してから、アメリカやカナダ、スウェーデン、ノルウェーなどが次々とエアゾール等へのフロンの使用禁止措置をとってきたし、ECもフロン11、12の生産能力の凍結、エアゾール製品へのフロン使用の削減措置をとってきたわけでありますし、また米国を中心に成層圏や北極、南極等のオゾン層の観測調査や因果関係の究明など、科学的調査が行われてまいりました。また、日本でも昭和五十五年にフロン11、12の生産能力の凍結を行うなどの措置がとられてきたわけでありますけれども、この間、日本とアメリカ、カナダ等の対応に隔たりがあったということでいろいろと批判があったわけであります。  それはそれといたしまして、今後オゾン層保護への的確な対応というもの、これを可能とするためにはこの問題の科学的な究明というのを、我が国もアメリカやECに匹敵あるいはそれ以上の究明を進めていかなければならないのじゃないかと思います。その点については、通産省としてはどういうような態度といいますか、お考えをお待ちですか。
  168. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 今回、批准をお願いしております条約あるいはまた議定書の中でも、おっしゃいました科学的究明につきまして国際協力をする、あるいはまた関係省庁で御協力いただく観測等につきまして協力をしていくということは当然国際的な責務になっているわけでございまして、この辺につきまして政府内の各般の能力を十分活用しながら、科学的究明等につきましては最善の努力を図ってまいりたい、かように考えておるわけでございますし、今後のその解明の度合いに応じまして、あるいはまたこれまで御質問ございました代替品の開発等々の進展度合いに応じまして、これは一九九〇年以降四年ごとに見直しという規定が条約上ございますので、その際に私どもも意見を述べていくということに相なるかと思っているわけでございます。
  169. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、こういうふうに考えてよろしいですか。条約、議定書に基づく規制内容は、今後定期的に見直しが行われますね。そうすると、国際的な観測、研究等の諸活動あるいは我が国独自の観測、研究、そうしたことから得られる科学的な知見に基づいて、それまで実施されてきた対策に手直しが必要だ、これはいろいろな場合で手直しがありますね。いずれにしても手直しが必要だと判断されるに至った、そのときには我が国としては率先して国際世論を喚起して、必要な手直しの実現を図るように働きかけていくというふうに受け取ってよろしいですか。これは、場合によると規制はより厳しくしなければならぬという結果になるかもしれない。その点についてはいかがですか。
  170. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 今回、条約あるいは議定書の批准をお願いしているということは、まさにオゾン層保護のための今回はフロン等の規制でございますが、我が国政府そのものが基本的には前向きに対応していくということを明白にしているわけでございますし、各国に先駆けてこの法律につきましての国会の御審議をお願いし、仮に御審議を得るとすれば、各国に先駆けて我が国で法律が成立するわけでございますので、これは国際的にその辺の姿勢が明白になると私ども大変期待しているわけでございますけれども、そのような姿勢の将来への形といたしまして、今先生いろいろ御指摘ございましたように、今後の科学的な究明の度合いあるいはまた科学的な知見の度合い、さらには代替品の技術開発動向等々の総合的な集積として、今後の見直しの段階で必要に応じ積極的な姿勢は当然とっていくというふうに考えているわけでございます。
  171. 二見伸明

    ○二見委員 議定書の第二条11には、国際的規制よりも厳しい措置がとれるというふうにありますけれども、これはいわゆる上乗せ規制ですね。上乗せ規制あるいはさらに今度は横にも幅を広げていくということになりますか、そうしたことについては通産省はどういうふうにお考えですか。
  172. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 今回の規制がどのように我が国に対しまして影響を与えるかということをつぶさに考えますと、これはやはり現在の需要そのものがほかの国よりも非常に伸びております。そういう面からまいりますと、他の国よりもやはり実態としては厳しいものが私どももあると思うわけでございますが、基本的にはやはり国際協調というのが基本にございまして、この条約なり議定書が目指しておりますオゾン層保護というものにつきまして我が国が前向きの姿勢を基本的に出すわけでございますので、そういう面で、この条約をまず実施するということに最善の努力を図り、その的確な実施を図りつつ今後の、先ほどいろいろ御指摘ございましたような科学的な知見の変化等に際しましては、さらに見直しの際に私どもとしてはその態度を表明をしていくということで対応したいと考えているわけでございます。
  173. 二見伸明

    ○二見委員 もう一点伺っておきたいのですけれども、奥野先生のところでもたしか質問が出ていたように思いますが、いわゆるフロンによるオゾン層等や健康への影響あるいは温室効果、これはどの程度現在解明されているのか、この点はどうでしょうか。
  174. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 一九七二年に、これは大変有名になりましたけれども、アメリカのカリフォルニア大学のローランド教授、モリナ博士が論文を発表して以来、この考え方をベースに国際レベルでフロンとオゾン層の破壊との関係につきまして活発な議論が進展していると存じます。その議論の過程の中で、例えばUNEPその他に出されました資料等によりますと、実際上オゾン層そのものが七ないし一〇%減少しているというような事実、さらにまた南極の上空にいわゆるオゾンの減少している大きな穴ができている等々の具体的な指摘がなされているわけでございますけれども、この規制そのものがそういうものにどのような影響を与えるのであろうかというようなことにつきましては、アメリカのEPAにおきまして一つの試算をしているようでございます。  それによりますと、現在のまま放置をする、フロンの放出量が年間二ないし四%という水準で今後拡大していくということでそのまま放置するとすれば、二〇五〇年あたりにおきましてはオゾン層が一二・四%減る、しかしながら今回の条約、議定書を各国協力して実施をするということがあり得るとすれば、そのオゾン層の減少は二%以内に二〇五〇年段階でおさまるというような研究等が各方面で行われておりまして、この議定書の前文にもございますように、やはりオゾン層の破壊というものにフロンが影響を与えている、その可能性が高いということを基礎にしつつ、将来を見通した上での予防的な措置で今回の措置を実施しなければいけない、かような考え方が国際的な共通の認識になっていると考えているわけでございます。     〔奥田(幹)委員長代理退席、尾身委員長代理着席
  175. 二見伸明

    ○二見委員 先ほど破壊の話がありましたけれども、破壊の方法についてはまだ確立されていないという御答弁がありましたけれども、この破壊というのは、私もよくわからないのですが、具体的にどういうことなんですか。
  176. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 お話のように、今後国際会議の中で具体的な議論が進められることになっておりますが、常識的に考えますと、一番簡単な破壊は燃焼、燃やすことだろうと存じます。ただ、燃やしますと当然ながらそこである程度ガスが発生をいたします。そのガスそのものが有毒性があるかどうかとか、いろいろな問題が別途出てくるわけでございますので、国際的にどういう破壊の方法が望ましいかという点については、やはり今後の議論を待たざるを得ない、かように考えておるわけでございます。
  177. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、実際にこの破壊をする者は、具体的には産廃業者ということになりますか。
  178. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 現在、いわゆる廃フロン、洗浄用に使われて相当汚れたフロンその他が、おっしゃるような廃棄業者その他で燃焼に付されているケースは現実にあるわけでございますけれども、現在お願いしております法律による制度は、破壊をいたしますとその分が、確認の上でございますけれども製造数量に加算ができるという仕組みができますので、そういう仕組みを前提にいたしますと、仮に燃焼が破壊だとした場合に、今後必ずしも従来どおりの形で破壊が進められるかどうかはちょっと予測がつきかねますけれども、少なくとも今はそのような形で、おっしゃったような形で燃焼が進められていると思います。
  179. 二見伸明

    ○二見委員 そうすると、二十九条でフロンの製造業者に対して立入検査をすることができるようになっていますね。今度は破壊された分は製造させていいわけですから、この破壊については立入検査というのは通産省考えるのですか、それともそのままほっておくわけですか。
  180. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 一応この法律で想定しております方法は、破壊が基準に従って行われたか否かの判断は、書面審査に加えまして破壊が行われた施設に対する立入検査をも前提に行うことを予定しております。フロン等を破壊した者が仮に立入検査を拒否すれば、破壊の確認が行われないということになるわけでございます。以上のことから、破壊者に対します立入検査には罰則を定めることなく厳正な破壊の実施が確保できる、かように考えておるということでございます。
  181. 二見伸明

    ○二見委員 それから、第二十四条は「国の援助」ということになっています。私は冒頭に、例えば代替品開発のために具体的措置はどういうことをやるのかということをお尋ねいたしましたけれども、ここでは「資金の確保その他の援助に努めるものとする。」これが代替品開発促進のよりどころとなる条文と解釈してよろしいですか。
  182. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 さようでございます。代替品開発に対します国の支援の責務規定だと存じます。
  183. 二見伸明

    ○二見委員 資金の確保というのはよくわかるのだけれども、その他の援助ということになりますと、これはいろいろありますね。例えば工技院とかどこかの国の機関で代替品開発の研究をするとか、そういうこともあるだろうし、あるいは民間で開発するのに開発しやすいように資金だけではなくて政策減税をやろうとか、いろいろなことがあるわけですわ。いろいろなことが組み合わされるのだと思うのだけれども、その他の援助というのはどんなことが今予想されますか。
  184. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 代替品の開発問題は、正直申しましてこれからでございます。どういう形の政策が最も実効性があるか、今御指摘ございましたような問題も含めまして、より有効な政策というものにつきまして私ども確立いたしましたら、当然ながら来年度要求をしたいと考えておりますけれども、当面は、現在ございます技術開発に関する各般の助成手段をフルに活用したいと考えておるわけでございます。
  185. 二見伸明

    ○二見委員 私の質問時間はあと二十分残っているのでありますけれども、きょうは質問はこの程度に終わらせていただきまして、青山さんにバトンタッチいたします。
  186. 尾身幸次

    尾身委員長代理 青山丘君。
  187. 青山丘

    ○青山委員 大分皆さんお疲れのようですけれども、私からも少し質問させていただきます。若干やえるところがあるということを先ほど来の質疑の中で感じましたが、しかし立場上改めてお聞きすることもありますので、ぜひひとつお聞きとめいただいて答弁をいただきたいと思います。  紫外線の九五%が吸収されているオゾン層がだんだん破壊されつつある、このまま放置すればやがて皮膚がんが多発をし、農産物にも重大な影響が出てくる、こういうようなことからオゾン層保護していかなければいけない、そのためには、オゾン層を破壊する一番の原因がどうもフロンを初めとした特定の物質であるようだということから、この際地球的な規模で規制をしていかなければいけないということでウィーン条約やモントリオール議定書の中で取り決めがなされて、その内容に沿った形でこれから進めていこう、国際的にそういう合意が得られて、それが実施されるための措置がこういう形で法律になって出てきたというふうに私は理解しています。  さて、この条約、議定書の取り決めの内容がこれから実施されてくる、またそのための立法的な措置がなされることによって、さてこれが順調に進んでくればオゾン層保護につながっていくということは、おおむねの合意は得られているのでしょうが、条約、議定書そして各国の立法の措置がなされていけばもうそれでいいのだというふうに見ていってよろしいのかどうか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  188. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 オゾン層保護のためにフロン等の規制をしなくてはならないということが国際的に議論される過程におきまして、御指摘のような、それによってどの程度の成果が上がるかどうかというような議論も同時に並行して行われていたわけでございますが、例えば仮にその辺の科学的な知見が明確に出た段階で規制に入るとなりますと、その間にある程度の時間がなくてはならない、その間に当然取り返しのつかない事態になる可能性もあるということも含めまして議論が行われまして、将来の可能性というものをベースにしながら、予防的な観点というものをベースにこの際規制に入るということになったと存じます。  その際に、御指摘のように、これによって目的とした点が十分に達成されるであろうかどうか、この辺も当然議論になっているわけでございますけれども、この仕組みができた際に、アメリカの環境保護庁が一つの試算をしているわけでございます。その一部を先ほどちょっと御紹介していたわけでございますが、五つのシナリオを書いておりまして、第一に、規制を行わなかった場合、これはフロン及びハロンの今後の需要の伸び率を年平均二ないし四%として想定しているようでございますけれどもオゾン層の減少率につきまして二〇〇〇年で〇・九%、二〇五〇年で一二・四%、さらに二〇七五年におきましては四〇%弱というような非常に大きいオゾンの減少率の推移の可能性がある、こういう見通しをしているわけでございます。  一方、フロンの削減率を五〇%にする、かつまたそれにハロンの凍結をする、こういう五番目のシナリオを前提にいたしますと、先ほど申し上げました二〇五〇年におきましてはオゾン減少率は一・六%、二〇七五年におきましては一・三%と二%以下になる、こういう予測を立てているわけでございまして、そのシナリオはフロン五〇%削減、ハロン凍結という点でございますので、ほぼ今回の規制案に近い水準でございますけれども、いずれにしましてもこのシナリオによりますと、今回の議定書、条約の実施によりましてオゾン層保護につきまして成果は期待し得る、かように国際的には認識しているということでございます。
  189. 青山丘

    ○青山委員 専門家が長い間議論してきて、しかし確固たる見通しを立てたということでは私は必ずしもない、ないけれども、地球的なスケールでオゾン層が破壊されていくのを座して見守っていくわけにはいかない、こういう姿勢も私は率直に評価できると思いますから、それなりに期待をしたいと思います。  ただ、今回この法律案というものは、条約、議定書等のこの取り決めの内容に従って、オゾン層の破壊の主要因のフロン等の生産を規制することによって防止できるであろうという一定の見通しから、そのフロン等の生産規制が盛り込まれてきておるわけです。ただ、条約、議定書の中にありましたその他の規制措置というものは、例えば非締約国に対するフロン等の製造技術の輸出、これに対する抑制、非締約国に対してフロン等の製造を促進するような製品あるいは装置、これらを輸出するための補助金や援助等々の供与の禁止というように、今回この法律で出されておりますフロン等の生産の規制以外に、条約あるいは議定書の中で盛り込まれている他の規制措置についてはどういう形で進めていかれるのか。
  190. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘のように条約、議定書の中で、私どもが今回の法律の中で御提案をしておるのは、生産量及び計算上の消費量の段階的削減ということが具体的な内容になっているわけでございます。それ以外に、お話のように議定書の中では非締約国、すなわちこの条約、議定書に参加されなかった国に対する措置がございます。御指摘のようなフロンを含む製品あるいはまたフロンを用いた製品の貿易制限の問題がございます。これにつきましては、その具体的な内容につきましては今後の課題になっております。スケジュールから申しますと、例えばフロンを含む製品のリストを今後議定書発効後三年以内に定めるということになっておりまして、それが定められますと、それ以降一年以内にその製品の輸入の禁止をする。  例えば、先ほどのフロンを冷媒に使いました冷蔵庫というものがこの協定に参加されない国で生産されていたとする、かつまたそのフロンを持った冷蔵庫そのものがリストに掲載されることについて国際的に合意が三年以内にできた、そうなりますと、それ以降一年以内にその製品の輸入の禁止、こういう義務がかかってくるというのは具体的な例でございますけれども、そのような例につきましても、さらにはまた他に非締約国、条約に参加されてない国に対しますフロンの生産技術等に関します援助等の禁止等の規定もございますが、前者につきましては、私どもはこの法律の中でも対応しておりますけれども貿易の問題につきましては、外国為替及び外国貿易管理法によりまして一元的に対応したいと考えておりますので、例えば先ほどの輸出制限につきましては、具体化する場合にはその法律を活用する、かような形になるかと存じます。  それ以外の分野につきましては具体的な措置、事実上の措置で私ども対応できる、かように考えているわけで、必要に応じましてそのような形で対応したいと考えているわけでございます。
  191. 青山丘

    ○青山委員 国際的には、一つオゾン層が破壊されるとどういう形になっていくのか、その影響について明確にしていくことがフロン等の生産の規制消費規制につながっていくんであろうと思いますね。ここが私は大事なところだと思うのです。それからもう一つは、オゾン層が破壊をされているその最も主要な原因はフロンガスである、フロンガス主因説、必ずしもこれを多くの専門家が認めているわけではないかもしれません。しかし、長い間にわたって専門家が議論してきた、そしてもし手おくれになってはもう取り返しがつかない、そういう点もあって予防措置として今回条約、議定書の取り決め内容に従った形でその原因であるフロン等の生産、消費規制をしていこう、こういうことになってきたわけですね。  したがって、日本もこの国際社会の中では有力な一員でもありますし、またフロン等の消費国としてはアメリカに次いで第二位というほどの大きな消費国でもある。そういう立場からすれば、この条約や議定書の取り決め内容に対しては誠実にこれを遵守していく、日本としてはそういう姿勢が私は必要だと思う。たまたましかし、こういうふうに物を考えるというのは本来いけないのかもしれませんが、日本が国際社会の中で真に信頼を得られるのは、こういうときに――時によって批判を受けてきたことがある。どういうことかといえば、いずれも締約国ではありながら、しかし低い消費国において日本の企業が出かけていって製造を開始するというようなことになってきますと、これは国際間の中ではもう大変な批判日本は受けることになる。もちろん政府はそんなことがあってはいけないということで決意はしておられるし、方策も検討しておられると思うのです。そのあたりの姿勢を聞かしていただきたいと思います。
  192. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 条約には入っていただいた、しかし発展途上国等でフロンの消費量が非常に低い、こういう国につきましては、今回の議定書の中で特別な扱いが行われているわけでございます。一人当たりの消費量が〇・三キログラム以下の場合、日本の場合おおむね一人当たり一キログラムだと存じますので、その三分の一くらいかと存じますけれども、そのような国におきましては、今後生産量及び消費量の規制は十年間に限っておくらせることができる、かような形になっているわけでございます。これは、ある程度フロンそのものが国民生活と関連があるということも配慮し、特に先進国で規制につきましては、生産制限につきましては多くを負担をしようというような考え方が基本にあるかと存じますけれども、一応そういう制度がございます。  今お話しのように、ではそういう国に行って生産をするという議論が仮に起こってきた場合に、日本はどう対応するのかということかと存じますけれども、今回の制度では、仮に日本が輸入をするとした場合、全体の消費規制がございまして、輸入プラス国内向けの生産全体が御存じのとおり抑えられております。したがいまして、仮にほかの国に行きまして生産をして日本国内に輸入しようといたしますと、その分だけ国内向けの生産が当然の結果減らされますから、実際問題としてはそのような事実上のメリットはないということに相なるわけでございまして、その辺は今回、議定書を国際会議で議論する際に十分考慮されて、生産量と計算上の消費量、すなわち生産プラス輸入引く輸出というものが規制対象になったということで、その辺を防ぐという意味も同時にあるかと存じます。  ただ、一人当たりで議論しておりますので、大変人口の多い国というような点につきましては、場合によりましては大きな生産量の可能性があるという議論は当然あるわけでございますけれども、このフロンにかかわる現在の社会的な議論、世論等からいきまして、私どもは、日本の企業がそのような地域にわざわざ行って、日本に対して輸出するために生産をするということはあり得ないと信じておりますけれども、具体的なケースが起これば、それは当然善処をしていくという考え方でございます。
  193. 青山丘

    ○青山委員 考え方としてはよくわかりますけれども、けさほどの訪販の質疑でもいろいろなケースが考えられまして、やはり行政指導の立場からしますと、思考の幅をよほど広げていただいて、あり得る可能性についても検討しておいていただかないと、事態が大きく変化したときに何も対応できなかったということが、これまで行政の場では往々にしてあったわけです。その辺の思考が狭いために、例えば締約国の中で低い消費量の国から、輸入だけならいいのですが、そこからまた第三国へ輸出される。第三国においても、この締約国であればまたそちらの輸入量で規制されてくるというようなことになっていけばいいのですね。いいのですけれども、必ずしもそうばかりとは言い切れない、いろいろな可能性があるということも考えの中にぜひひとつ入れておいていただいて、事態の変化にも対応できる姿勢というものを考えておいていただかなければいけないのではないか。その点で私は、日本行政というのは案外頭がかたいといいますかそういう点があって、いやそれぐらいは当然考えておかなければいけなかったことなのにというのは意外とあったと思うのですよ。  さてそこで、我が国がこうした人類の健康について責任を負っていく、あるいは地球的規模で環境保全を考えていかなければいけないし、その役割を果たしていこう、こういうことになってきますと、いろいろな面で我が国が持っておる力、特に技術の力あるいは経済力、こういうものをひとつ大いに発揮して、例えば今必要である生産と消費規制だけではなくて、フロン等の代替品の研究開発に政府としては積極的に取り組んでいく、先ほど来のやりとりにもそれはありましたけれどもね。それから回収・再利用の技術、これも進めていくというように、相当積極的な取り組みをしていただいて研究開発をしていただいて、その成果というものは広く国際社会の中に貢献していく、こういう姿勢は、私は現時点における我が国の役割としては非常に重要であるというふうに思います。そこで、フロン等の代替品の開発の状況というのはどんな段階に来ておるのか、将来の見通しというのはどのように立てておられるのか、そのあたりはいかがでしょうか。
  194. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 前半で御指摘なさいました代替品の開発、さらには回収・再利用設備の促進のための国の役割、これは大変重要だと思っておりますし、今回お願いいたしました予算の中でも、特に回収・再利用設備に関します特別な税制あるいはまた開銀を活用いたしました融資制度、これは創設をさせていただくようにお願いをしたわけでございます。  代替品の技術開発につきましては、先ほども御答弁いたしましたけれども、技術開発政策の中でぜひ考えたいと思っているわけでございます。現状でございますが、現在最も有望だと言われておりますフロンの代替品は、フロン123という品目とフロン134aという二品目でございます。フロン123はフロン11の代替品でございまして、主に発泡剤に使われるものでございます。フロン134aはフロン12の代替品でございまして、主に冷媒に使われるものでございます。  これにつきましては、実は欧米のメーカーのみならず、我が国のメーカーも大変その開発に努力しているわけでございまして、私どもは大変評価をしているわけでございますが、世界の主力フロンメーカー、これは日本でも三社参加しておりますけれども、十四社が共同で毒性試験を行うということをこの一月に決定しております。総額十億円かかるそうでございますけれども、五年ないし七年かけて毒性試験が必要だというようなことだそうでございまして、これにつきましても、現在のところその見通しは有望だ、かように言われております。現在最も期待しておりますのはこのフロン123とフロン134aでございます。既に、その規制対象外でございまして活用できるフロン22というのがございますけれども、これは今後、恐らく具体的な品目として登場してくると存じます。  問題点は、やはり洗剤用に使われておりますフロン113の代替品の開発でございまして、現在のところ、私どもに届いている情報では、まだ残念ながら芽が出ていないという状況で、今後の課題だと考えております。
  195. 青山丘

    ○青山委員 世界のフロンメーカーのほとんどが代替品の開発に着手をしておるということのようでありますね。アメリカのデュポンという会社では、もうフロンの代替品というのは開発に成功したというようなニュースがありますが、政府としてはどんな情報をつかんでおりますか。
  196. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 私どもが得ております情報によりますと、フロンの代替品として有望と今申し上げましたフロン123及びフロン134aにつきましては、既にデュポン社におきまして製造法の研究は相当進んでいる、かように聞いておりまして、安全性の問題が残されているというようなことで、先ほど御紹介いたしました主力メーカー世界十四社の共同による毒性試験にも、このデュポン社も参加しているようでございます。同社が記者会見等で発表しておりますスケジュール等によりますと、早ければ六年以内に今申し上げました二有力品目につきまして実用化は可能ではないか、このようなことを発表しているようでございます。
  197. 青山丘

    ○青山委員 代替品開発を相当意欲的に進めていこう、この必要性が出てきておる。今回の措置は、少し時期的には時間があることだしというような感じで、余り積極的でないような印象を受けるので、それはまだ時間があるからということなのかもしれませんが、フロン等の代替品の開発というのは、私は将来の需給見通しの中からすると、意欲的に加速的にその開発に取り組んでいかなければいけないんじゃないか。現在考えられておる支援措置だけでは少し弱いような気がするのですが、その点はいかがでしょうか。  それから、回収・再利用の技術それから回収・再利用の装置、こうした技術革新について、政府はどんな見通しをお持ちでしょうか。
  198. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 代替品の開発につきまして余り熱心ではないように見受けられるという御指摘ちょっとございましたが、私どもは決してそうではなく、むしろ今後のフロン規制問題をより的確に進める非常に重要なかぎを握っている、最も握っていると言っても差し支えないと考えているわけでございまして、日本の民間各社も現実には必死にその開発に取り組んでいる、かように私ども理解しております。  政府がその支援策を特別に持ってないのではないか、こういう御指摘でございます。私ども技術開発政策の中で、その政策手段を選びながらそれに対応したいと申し上げておりますけれども、さらにその緊急性にかんがみまして必要な施策が私どもとして考えられれば、当然今後それは追加していかなくちゃいけない、かように考えておるわけでございます。やはり代替品の技術開発は非常に重要だと考えております。  回収・再利用技術及び装置につきましてのお話でございますが、これも当面の対策として非常に重要だと思っております。来年の規制の実施、さらにはまたその四年後に控えております二〇%削減、いずれもその重要な手段はこの回収・再利用技術がいかに適用されるかということでございます。既にある程度の回収・再利用設備は三、四年前から実用化しているように聞いておりますけれども、普及はまだまだの段階でございますし、このような情勢になりましたので、一部の日本のメーカーも新しい、より回収度の高い機器の開発に努力し、その一部が最近発表されてもおります。我々はぜひそれを推進し、支援してまいりたいと思っておるわけでございまして、この回収・再利用設備に関しましては、先ほどちょっと御紹介いたしました本年度からの税制、金融上の措置につきましては手当てをさせていただいているわけでございます。
  199. 青山丘

    ○青山委員 実は、フロン等は我が国の経済社会にとって非常に必要な、そして欠かすことのできない物資でありまして、国民経済国民生活の中にこの需給関係が乱れてくると重要な影響を及ぼすのではないかと私は心配しています。そういう意味では、代替品の開発にはやはり意欲的に取り組んでもらわなければいけないのではないか。そういう点では、先ほども二見委員から質問がありましたように、工業技術院の関連するプロジェクトに組み込んで、官民挙げて取り組んでいくというような姿勢というものを強く打ち出していただかないと、将来的に一体どういう混乱が起きてくるのかということを考えますと、これは大変憂慮するところであります。後で需給見通しだけ、ちょっと一点だけお尋ねしますが、そういう点で政府の姿勢、工業技術院等のプロジェクトに組み込んで、民間の企業だけが、フロンのメーカーだけが頑張る、そのために支援措置もしますよというようなことだけではなくて、官の方もそうした取り組みをしていくのだというようなことが、民間の企業にも同時に活力を与えていくということで重要ではないかと私は思いますが、その辺いかがでしょうか。
  200. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 私どもの工業技術院の試験研究テーマとしてぜひやるべきだ、大変有力なる御意見だと存じます。そういう方向でぜひ検討させていただきたいと存じます。  さらにまた、先ほども別途御紹介いたしましたけれども、洗浄用フロンの代替品としてエタノール、いわゆるアルコールでございますが、これを活用するという点につきましては、私ども本年度予算というものを確保させていただいておりますので、それをぜひ活用してトライをしてみたいと考えておるわけでございます。
  201. 青山丘

    ○青山委員 代替品の開発が仮に順調に進んできた、あるいは回収・再利用の技術が整ってきた、そういう装置も普及してきているというように、開発や普及が順調に進展をしていった場合、我が国のフロン等の需給関係はどんな形になっていくのか、その見通しをどういうふうに立てておられるか、あるいはまた、その根底になる試算というのをどういう形で組み立ててこられたか、その辺はいかがでしょうか。     〔尾身委員長代理退席、委員長着席〕
  202. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 フロンの需要動向でございますけれども、今回の規制の基準になります昭和六十一年以降のトレンドを見ますと、年率一〇%強の拡大傾向にございます。したがいまして、今後その規制というものを実施する段階におきましては、おっしゃいましたような需要の拡大動向というものをにらみながら対応しなくちゃいけないこと、当然そのとおりでございます。  その全体で一〇%強で伸びておりますフロンの中で、特に伸びの高いのはフロン113でございます。これは洗浄剤に使われているものでございまして、主に精密機械、半導体等のいわゆる高度ハイテク製品の洗浄に使われているわけでございますので、この辺の分野の伸びに対応いたしまして、当然ながらこの洗浄剤の需要も伸びているというような現状だと思います。この辺をいかにうまく対応していくかというのが来年の規制の実施段階の一つのポイントだと考えておりまして、これにつきましては、先ほど指摘のございました回収・再利用施設の導入というのが私どもとしては大きなかぎを握っている。現在関係業界とも十分の打ち合わせをしながら、おっしゃるように来年規制が実施された段階で需給が逼迫するということがぜひ起こらないように、特に需要の大きい分野につきまして技術的な指導等をやっていかなくちゃいけない、かように考えておるわけでございます。
  203. 青山丘

    ○青山委員 仮に議定書が順調に発効いたしますと、原則として昭和六十四年七月一日から四年間は昭和六十一年の実績値まで、昭和六十八年七月一日から七十三年六月三十日までの五年間は六十一年実績値の八〇%まで、さらに七十三年七月一日以降は六十一年実績値の五〇%まで、こういう水準でしかフロン等の生産と消費ができなくなってきます。一方、フロン等の生産、消費量は、近年今おっしゃったように年率約一〇%程度伸びております。六十一年水準で規制をされてまいりますと、六十八年六月までということになればいささか混乱は避けられるのではないかと考えられます。例えば、使用の面で合理化が図られていく、あるいは代替品の一定の利用を進めていくことができる、回収・再利用などが進んでいく等々で、一定の混乱は避けられるのではないか。さてしかし、二〇%削減あるいは五〇%削減というような段階になってきますと、事態は相当深刻ではないかと思います。その辺が今から十分考えていくべきことではないかと私は思っているのです。  そこで、フロン全体の長期需給見通しをどういうふうに見ておられるか、あるいはまた、規制対象となっておる特定フロン、特定ハロン等々の長期需給見通しをどういうふうに見ておられるのか、その段階では代替品の開発の状況というのをどういうふうに見通しを立てて組み込んでその辺の需給関係が見通されているのかどうか、いかがでしょうか。
  204. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 六十一年以降の需要の伸び、御指摘のように一〇%程度でございます。私どもは、このまま潜在的な需要の伸びはやはり今後とも一〇%ずつあるということを前提にしながら、しかし具体的な規制は実施していく、そのためには何が必要か、こういう形で本件に対応しようとしております。  したがいまして、先ほどの例えば来年度実施段階でまいりますと、六十一年に比較いたしますと需要の規模は恐らく三〇%ぐらい大きくなっているというのが実情だと思いますので、三割ふえているフロンの総需要をいかにして六十一年の水準にまず下げるか、そのための手段いかん、こういうのを各業種別等につきましてヒアリング等しながら対応しようとしておりますが、政策の基本は、当面について申し上げますと、例えば洗浄用につきましては回収・再利用設備の導入が最大のポイントでございましょう。そのように、個々の用途別あるいはまたフロンの種類別に綿密に各業界別の実情を把握した上で、どういう対策を導入しながら対応していくかということを具体的に、現在綿密に対応しておりまして、我々としては具体的な問題、特に需給の逼迫等によって特定の業界に御迷惑がいくことのないようにぜひ対応したいというような、きめの細かい議論を始めているところでございます。
  205. 青山丘

    ○青山委員 一定の需給見通しをきちっと持っていただいて、途中でチェックしていただくというような、かなり長期のスタンスで物を考えていかないとなかなか難しい。需要が相当今伸びてきておるので、それだけによほどの豊富なデータを集められて、そして規制の実績というものに照らし合わせていく。あるいは、代替品が相当開発されてきてフロン等の生産の規制は成果を挙げてきているというような形になっていかないと、これは日本だけではない、国際社会の中における日本の姿勢についてとやかくまた批判を受けることになってはいけないというふうに私は考えています。  特に私が心配しておりますのは、フロン等のユーザーが大変多様になっておりまして、かなり中小企業が多い、そういうところにどういう影響が出てくるのかということを憂慮しているのです。品目によっては、それほど心配しなくたっていいんだよという点もあるでしょう。しかし品目によっては、将来需給のアンバランスが大変出てくるというものもあります。そのあたりの見通しをきちっと持っていただかないと、中小企業あたりは、急激な対応などと言っても、さあ事業転換と言ってもそうたやすくできるものではありませんので、そのあたりの見通しをきちっと持っていただかないと混乱するばかりではないかと思うのです。そういう点で私は、今後中小企業者が不安におののくというようなことにならないように政府の姿勢を持っていただきたいと思ってお尋ねするのです。いかがでしょうか。
  206. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 御指摘の点は全くごもっともでございまして、実は本件を考える際に、化学品審議会の中に部会を設けて議論させていただきましたが、その委員といたしましては、御指摘の各般の業界の代表者の方全部に参加していただきまして、この規制を実施した場合のみずからの産業への影響というものを考慮しつつ御意見をいただいております。その後、この法案を作成する過程におきましても、業種別にすべてアンケート調査をさせていただきまして、来年の規制段階、さらにおっしゃったような四年後の二〇%カット、さらには五割カットという段階で、その業界の技術的な対応というのが何かできるであろうかというのを、細かに実はお聞きしております。  その中には、先ほど指摘いたしましたように回収・再利用設備の導入というのが中心ではございますが、同時に、当然でございますが代替品の利用というものも主流にしております。例えば、将来五〇%カットを円滑に進めるためには、当然ながら先ほど指摘いただきましたフロン123とか134aというものの開発が非常に重要なかぎを握るようになっているわけでございます。今後の問題につきましては、私ども非常にきめの細かい御協力をお願いすることも前提に、委員会を組織しまして各業界の代表の方も入っていただきまして、おっしゃるような問題が生じないように、ぜひ円滑に本規制が実施できるように私どもとしては十分配慮してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  207. 青山丘

    ○青山委員 時間が来ましたので最後の質問にしたいと思いますが、今後需給のバランスが極端に悪くなる、こういう段階というのはどういうときかというと、やはり品薄といいますか品不足の情報が流れまして消費者が買い占めに走るというようなことになるのが一番愚かなことですし、そうあってはいけない、市場が大変混乱してくる。そういうことがないように、市場の秩序というものがきちっと維持されるようにしていかなければならない。とはいえ、しかし流通というのはやはり市場のメカニズムにゆだねていく以外に手がないという点もありますけれども、政府としては秩序ある流通を確保できるような取り組みといいますか対処方針を持っていただかないといけないのではないか。その御見解をお尋ねして、できれば質問を閉じたいと思います。
  208. 鈴木直道

    ○鈴木(直)政府委員 規制を段階的に強化をしていく際に、そこで混乱をいかに起こさないようにするかというのは非常に重要でございます。基本的には、私ども市場メカニズムを信頼し、それによって本件を解決する。その前提として、長期的な見通しを皆さんにお示しして、あらかじめその準備をしていただくということがポイントだと思いますが、しかし具体的にその規制が実施される年々、それにはやはりある程度の混乱というものを予想した手を事前に打たなくてはいけないというふうには私ども考えております。特に、お話ございましたように流通段階での買い占めとかあるいは便乗値上げ、これが一番問題でございます。我々は事前に十分情報をとりつつも、そういう事態が予想された場合には、それに適宜適切な機動的な手を打っていくということは現在から当然覚悟し、準備もしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  209. 青山丘

    ○青山委員 時間が来ましたから、質問を終わります。
  210. 渡辺秀央

    渡辺委員長 残余の質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十七日水曜日午前九時二十分理事会、午後零時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会