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1988-04-19 第112回国会 衆議院 社会労働委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月十九日(火曜日)     午前十時四分開議  出席委員    委員長 稲垣 実男君    理事 高橋 辰夫君 理事 戸井田三郎君    理事 丹羽 雄哉君 理事 野呂 昭彦君    理事 畑 英次郎君 理事 池端 清一君    理事 田中 慶秋君       相沢 英之君    粟屋 敏信君       伊吹 文明君    今井  勇君       小沢 辰男君    大野  明君       大野 功統君    片岡 武司君       木村 義雄君    鴻池 祥肇君       近藤 鉄雄君    佐藤 静雄君       自見庄三郎君    高橋 一郎君       中山 成彬君    鳩山由紀夫君       堀内 光雄君    三原 朝彦君       箕輪  登君    持永 和見君       伊藤 忠治君    川俣健二郎君       関山 信之君    田邊  誠君       永井 孝信君    村山 富市君       新井 彬之君    大橋 敏雄君      平石磨作太郎君    吉井 光照君       塚田 延充君    児玉 健次君       田中美智子君  出席国務大臣         労 働 大 臣 中村 太郎君  出席政府委員         労働大臣官房審         議官      佐藤 仁彦君         労働省労働基準         局長      野見山眞之君         労働省職業安定         局長      岡部 晃三君  委員外出席者         運輸大臣官房国         有鉄道改革推進         部保安課長   百瀬  信君         運輸省国際運         輸・観光局外航         課長      岩村  敬君         運輸省貨物流通         局港湾貨物課長 龍野 孝雄君         労働省職業安定         局特別雇用対策         課長      野寺 康幸君         社会労働委員会         調査室長    石川 正暉君     ───────────── 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   近藤 鉄雄君     鴻池 祥肇君   佐藤 静雄君     鳩山由紀夫君   大原  亨君     関山 信之君   河野  正君     村山 富市君 同日  辞任         補欠選任   鴻池 祥肇君     近藤 鉄雄君   鳩山由紀夫君     佐藤 静雄君   関山 信之君     大原  亨君   村山 富市君     河野  正君     ───────────── 四月十五日  社会福祉・医療事業団法の一部を改正する法律案内閣提出第五四号)(参議院送付)  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)(参議院送付)  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)(参議院送付)  積雪又は寒冷の度が著しく高い地域における建設業等関係労働者通年雇用促進に関する法律案対馬孝且君外六名提出参法第一号)(予) 同月十八日  高齢者就労対策充実に関する請願安藤巖紹介)(第一五六四号)  同(石井郁子紹介)(第一五六五号)  同(岩佐恵美紹介)(第一五六六号)  同(浦井洋紹介)(第一五六七号)  同(岡崎万寿秀紹介)(第一五六八号)  同(金子満広紹介)(第一五六九号)  同(川俣建二郎紹介)(第一五七〇号)  同(経塚幸夫紹介)(第一五七一号)  同(工藤晃紹介)(第一五七二号)  同(児玉健次紹介)(第一五七三号)  同(佐藤祐弘紹介)(第一五七四号)  同(柴田睦夫紹介)(第一五七五号)  同(瀨長亀次郎紹介)(第一五七六号)  同(田中美智子紹介)(第一五七七号)  同(辻第一君紹介)(第一五七八号)  同(寺前巖紹介)(第一五七九号)  同(中路雅弘紹介)(第一五八〇号)  同(中島武敏紹介)(第一五八一号)  同(野間友一紹介)(第一五八二号)  同(東中光雄紹介)(第一五八三号)  同(不破哲三紹介)(第一五八四号)  同(藤田スミ紹介)(第一五八五号)  同(藤原ひろ子紹介)(第一五八六号)  同(正森成二君紹介)(第一五八七号)  同(松本善明紹介)(第一五八八号)  同(村上弘紹介)(第一五八九号)  同(矢島恒夫紹介)(第一五九〇号)  同(山原健二郎紹介)(第一五九一号)  同外一件(細谷治嘉紹介)(第一六一三号)  国民健康保険制度改悪反対等に関する請願児玉健次紹介)(第一五九二号)  同(柴田睦夫紹介)(第一五九三号)  原爆被害者援護法制定に関する請願児玉健次紹介)(第一五九四号)  同(田中美智子紹介)(第一五九五号)  同(寺前巖紹介)(第一五九六号)  同(小沢貞孝紹介)(第一六一五号)  同(田中慶秋紹介)(第一六一六号)  同(塚田延充紹介)(第一六一七号)  国民健康保険法改悪反対に関する請願外九件(池端清一紹介)(第一六一四号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  港湾労働法案内閣提出第三六号)  労働安全衛生法の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)(参議院送付)  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案内閣提出第六八号)(参議院送付)      ────◇─────
  2. 稲垣実男

    稲垣委員長 これより会議を開きます。  内閣提出港湾労働法案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤忠治君。
  3. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾労働法の問題について、順次質問をさせていただきます。  我が国は資源が非常に乏しく、貿易を通じて経済発展を図ってきたと思うわけですが、優秀な労働力と絶えざる技術革新、こういう一連の努力が実りまして、今日の経済大国を築いてきたと思うわけです。まさに我が国貿易立国でありまして、そういう我が国にとって、今後ますます国際化が進行する中で、港湾海陸の物流の結節点として極めて重要な役割を果たしていると考えるわけでございます。そのような港湾において、港湾運送に必要な労働力確保しながら港湾労働者生活雇用の安定を図るということが国民経済発展にとっても極めて重要であると考えるわけですが、冒頭にまずこの点についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 岡部晃三

    岡部政府委員 御指摘のとおりでございまして、海陸輸送結節点であります港湾において必要な労働力確保いたしますとともに、港湾労働者雇用の安定その他福祉の向上を図るということは、国民経済発展にとって極めて重要な課題であると認識をいたしております。
  5. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 その前提に立ちまして、大臣にお伺いをいたしたいと思います。  港湾労働近代化と一口に言いますが、港湾労働改善については、現行港湾労働法施行されてから実に二十二年たっているわけでございます。この間、港湾労働者常用化促進などの成果を上げてきたことは当然でございますが、しかし反面、いまだにやみ雇用手配師介在、そして組織暴力の存在などの問題があると聞いているところでございます。これは極めてゆゆしい問題であると思いますし、放置できない不法行為ではないか、このように私は考えるわけでございます。例えば大阪港の小林組の問題、あるいはテレビで放映をされました横浜湾における関連やみ雇用手配師介在、まだほかにもございます。このような法運用上あってはならない点について、労働省は一体どのように対処なさっているのか。また単に港湾労働法だけではなかなか万全の対処ができない、つまり労働法だけでは港湾労働改善を図れない面があると私は思うわけでございます。したがって、関係省庁とも協力をしながら実効ある行政を進める必要があるのではないか、このように思うわけですが、大臣に御答弁をいただきたいと思います。
  6. 中村太郎

    中村国務大臣 港湾におきましては、御指摘のように、従来からやみ雇用中間搾取等違法就労の問題が指摘をされておるところでございまして、労働省としましては、公共職業安定所及び関係行政機関による合同立入検査実施、あるいは港湾労働法遵守強化旬間等を設定いたしまして、その秩序回復に努めてきたところでございます。今後とも関係行政機関との連携を密にしつつ、これらの措置を十分に講ずることによりまして、従来にも増しての雇用秩序維持に努めてまいりたいと考えております。
  7. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今回政府は改めて新港湾労働法を設定しようとなさっているわけですが、その必要性は一体何か、また現行法で対応できないとするならば、現行法のどこが問題なのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  8. 岡部晃三

    岡部政府委員 近年の港湾における輸送革新進展に伴いまして、港湾運送に必要な労働力というものは、人力により貨物積み込み作業等を行ういわゆる単純労働力から、大型の荷役機械操作等を行う技能労働力へと変化してきたところでございます。今後においても、さらにこのような傾向が強まるものと見込まれているところであります。  このような状況対処いたしますために、従来登録日雇い港湾労働者に対する職業訓練実施してきたわけでございますが、日雇い労働者につきましては、計画的な職業訓練を継続的に実施することができないという問題がございます。日雇い労働者による雇用調整によっては、今後における技能労働力需要増大対処することは困難となってきているわけでございます。したがって、波動性対処するためには、必要な労働力を含め、港湾運送に必要な労働力については、計画的訓練実施によりまして技能向上を図るということがどうしても必要でございます。そのような技能向上を図ることが可能な常用労働者確保するという体制が必要でございます。これが本法案提出した一つの理由でございます。
  9. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ただいま法制定上の必要性、つまり今日まで問題点があった、こういうことの答弁をいただいたわけですが、労働省昭和五十七年二月四日に職発第四十一号の通達を出されまして、新陳代謝促進職業訓練実施などを進めてきたわけでありますが、その成果を上げていない、こういうふうに考えていいのかどうか。私たちはそういうふうに思うわけですが、労働省がこの運用面においてきちっと指導しなければ、たとえ新法制定したにしましても同じような結果になってしまうのではないか、この点大きな危惧を感じているわけでございます。このような心配を払拭する労働省としての積極的かつ前向きな対処方針を持たれなければいけないと思いますし、そういう立場でどのような対処をされようとしているのか、明確にしていただきたい、かように思います。
  10. 岡部晃三

    岡部政府委員 労働省としましては、昭和五十七年から日雇い港湾労働者登録制度の運営の改善を図りますために、まず定数設定適正化、それから職業紹介機能向上新陳代謝促進雇用秩序維持確立等に努めてきたところでございます。しかしながら、日雇い労働者による雇用調整によりましては、近年におけるいわゆる輸送革新進展等港湾労働を取り巻く状況変化に十分対応できないという状況も見受けられるところでございまして、今般港湾運送に必要な労働力常用労働者によって確保する、こういうことにしたわけでございます。労働省といたしましては、このような本法案提出するに至った経緯を踏まえまして、その運用に当たりましては、関係実施機関に対しまして通達等によって的確な指導監督を行いまして、これに基づいて制度の目的が十分達成されるように努めてまいりたいと考えているところでございます。
  11. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今御答弁をいただきましたけれども、ひとつ積極的な対応をお願い申し上げたい、かように思うわけでございます。  次に、中央職業安定審議会の建議におきましても、企業外確保する港湾労働者常用化し、職業訓練を行うことにより技能水準を高めるべきであるという指摘がございます。このとおり港湾労働者雇用安定センター労働者職業訓練は極めて重要であると考えるわけであります。港湾労働者職業訓練についてどのように対処しようとされているのか、伺いたいと思います。
  12. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾運送業務に必要な労働力につきましては、近年の荷役革新進展によりまして、技能労働力需要増大をしておりまして、これに対処するために港湾労働者に対する職業訓練充実していくことが極めて必要であると考えているわけでございます。  このため、まず第一に、港湾労働者に対しまして、港湾運送業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことをまずもってこの港湾運送事業主の責務として明確化すること、第二に、国及び雇用促進事業団は、事業主が行う教育訓練の円滑な実施に資するために、必要な職業訓練の効果的な実施について特別の配慮をすること、第三に、今後設けられます港湾労働者雇用安定センターにおきましても、港湾労働者に対する訓練を行うこと、こういうようなことによりまして、港湾労働者に対する職業訓練充実を図ることとしていきたいということでございます。
  13. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ILOの問題について質問いたします。  ILO第百三十七号条約が、海洋国日本において、先進国を今日自負してはばからない我が国でありながら、いまだに批准をされていないということは、極めて問題であると思うわけであります。我々は早期批准に向けて今日まで強くそのことを求めながら努力してきたわけでありますが、第百一回国会港湾運送事業法の一部改正の附帯決議として、批准に向けて条件整備努力することになっております。この附帯決議に基づいて考えますときに、なぜ現段階で批准ができないのか、これがまず一点。第二点、整備しなければならない条件とは一体何か。第三点、政府批准に向けてどのような努力をしてこられたのか。以上の点について御答弁をいただきたいと思います。
  14. 岡部晃三

    岡部政府委員 労働省といたしましては、ILO第百三十七号条約内容、これは現行港湾労働法によりましておおむね満たされているものであると考えているのでございますが、しかしながら港湾関係者、特に労使間におきまして条約内容理解に大きな隔たりがある部分が一部ございます。  まず、第一点といたしまして、港湾労働者就労生活保障の責任を負うべきものの範囲ということでございますが、労働組合側は、荷主あるいは船主等港湾利用者も含まれるべきである、こういうふうに理解をされますが、使用者側におきましては、それは含まれないというふうに理解をしているというふうな点。それから第二点といたしまして、港湾労働法適用範囲につきまして、労働組合側は、全国港湾にも適用しなければならない、こういうふうに理解をしておるわけでございますが、使用者側は、全国港湾でなくてもいいのではないか、このように理解をしている、そういう隔たりがございます。それから第三に、港湾労働者に対する最低の所得の保障につきまして、就労日数の減少によって支給額が低下する現行雇用調整手当制度、これが十分であるか不十分であるかということにつきましても見解の差がございます。それから第四に、港湾労働者登録につきまして、常用労働者届け出制というふうな形で十分であるかどうか、これは届け出でなくて登録にすべきである、あるいは届け出制で十分だ、こういうふうな点につきましての関係者間の理解がまだ隔絶があるというふうな状況でございます。  このような食い違いを解消することが先生お尋ねの同条約批准するために必要な基礎的な条件であるというふうに考えられるわけでございます。労働省といたしましては、従来から関係審議会場等を通じまして、関係者における共通理解形成、これに努めてきたところでございますが、今後とも努めてまいりたいと考えております。
  15. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大臣にお伺いいたしたいと思います。  ILO第百三十七号条約について、単に批准に向けて努力しているというだけではなくて、今後は大臣として、港湾調整審議会において関係者における共通理解形成を図るために積極的に検討を進めるべきではないか、このように私たちは強く要請を申し上げたいと思いますが、大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  16. 中村太郎

    中村国務大臣 条約批准につきましては、今政府委員から御説明申し上げましたように、法そのもの、今回の港湾労働法そのもの条約内容を満たしておると思っておるわけでございますけれども、今日までできなかったのは、御説明申し上げましたように、関係者共通理解が得られないというところに問題があるわけでございました。しかし、私どもといたしましては、お説のように百一回国会附帯決議等を十分踏まえまして、これからも関係審議会の場を通じ、関係者における共通理解形成に努める等、条約批准に向けてさらに一層条件整備を整えてまいりたいというふうに考えております。
  17. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 ILO港湾労働条約批准港湾労働法全国適用に関する請願全国都道府県議会、これは八つでございますが、さらに市町議会からは三十六採択をされて政府の方にも意見が寄せられている、このように私たち聞いているわけでございます。私の選挙区に四日市港がございますが、その当該市議会からも意見書が出されているわけでございまして、こういうふうな中身になっております。  「港湾労働者雇用生活の安定を図ることは、単に港湾労働者だけの問題ではなく、港湾機能充実我が国経済発展にとっても極めて重要な課題であります。よって、政府におかれては、港湾労働者雇用不安の解消と生活の安定を図るため、」強く下記の点について措置を講じていただきたいという要望になっているわけでありますが、この要望中身は二点でありまして、一点は、ILO第百三十七号条約を速やかに批准をしていただきたい。かつ、条約に基づいて現行港湾労働法を改正していただきたい。二点目は、港湾労働法現行の主要港、六大港のみではなく、全国港湾運送事業法指定港に適用するようにしていただきたい。こういう意見書が届けられているわけであります。  ILO港湾労働条約の趣旨からしましても、全国適用をすべきであると考えますし、現行港湾労働法制定をされましたときも、その他港湾については、適用港湾における法施行実績等を勘案しつつ、必要に応じ逐次指定されることになろう、こういう経緯があったと思うわけでございます。適用港湾につきましては、第二条で「政令指定する」、こうなっているわけでありますが、指定に当たっての基準とはどのようなものなのか、また現在は六大港しか指定されていないわけですが、新法では適用港湾を拡大する考えはないのか、この点についてお伺いをいたします。
  18. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生指摘になりました各議会市町議会等の動きでございますが、港湾が所在する都道府県議会あるいは市議会に対しまして、適用港湾の拡大あるいはILO百三十七号条約批准港湾労働法全国適用等々の請願提出をされまして、その幾つかは既に採択されておるということは承知をしておりますし、私自身もその御陳情に立ち会ったこともございます。  この適用港湾の問題でございますが、港湾荷役量、それから港湾労働者の数等を考慮して、国民経済上に占めるその港湾重要性及び必要労働力確保、その他港湾労働者雇用安定等に関し特別の措置実施する必要性の高さ、こういったような基準港湾政令指定することになるわけでございます。この政令指定に当たりましては、関係労使意向を尊重しながら、関係審議会意見を十分聞いて定める、こういう考えでおります。  制度発足当初は六大港でスタートするというのがこれまでの関係労使意向であると理解をしておるわけでございますが、将来についてのお尋ねの点につきましては、これは港湾環境変化を踏まえまして、必要に応じ適用港湾見直しを行うということにいたしたいと考えております。
  19. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大臣にお伺いをいたします。  港湾労働法適用港湾について今も見解が述べられました。まず第一点、お伺いしたいのは、施行後一年間の状況を見て、労使合意が行われた港湾適用を拡大すること、これがまず第一点。第二点は、適用港湾を定期的に見直すべきであると考えますが、この点について見解をいただきたい。また労使合意がなくても、政府が必要ありと認めた港湾についても適用対象とすることがあるのかどうかについて明らかにしていただきたいと思います。
  20. 中村太郎

    中村国務大臣 労働省といたしましても、お説のように、適用港湾につきましては、法施行後一年間の制度実施状況を見まして、労使合意の行われました港湾については適用することを十分検討いたしたいと考えております。また将来における港湾環境変化を踏まえ、必要に応じて適用港湾見直しを行うということも当然ではないかというように考えているわけであります。
  21. 岡部晃三

    岡部政府委員 後段の御質問にお答えをいたします。  労使合意がない港湾についてのお尋ねでございますが、労使合意かない港湾でありましても、港湾荷役量港湾労働者の数等を考慮いたしまして、国民経済上に占める当該港湾重要性、それから必要労働力確保、その他港湾労働者雇用安定等に関しまして特別の措置実施する必要性が高いそのような港湾につきましては、関係労使意向を配慮しながら、関係審議会意見を十分聞いて適用問題を検討してまいりたい、こういうように考えております。
  22. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今具体的な想定できる問題について答弁をいただきましたが、ぜひとも今の見解に基づいて今後のケースに対処いただきたい、かように考えます。  次に、適用港湾として見直し対象となりそうな港湾においては、港湾労働者就労状況を把握するために、労働者台帳事業主に義務づけるようにしてはどうか、このように考えますが、御答弁をいただきたいと思います。
  23. 岡部晃三

    岡部政府委員 適用港湾として見直し対象となりそうな港湾につきましては、今後関係審議会の御意見を聞きながら、例えば港湾労働者台帳整備など試験的に実施をして、港湾労働者就労実態を把握するというふうなことも考慮してまいりたいと考えております。
  24. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾労働法適用業種について、法第二条第二号において定められているわけですが、そのロで「政令で定めるもの」こうございます。これは現行法において政令で定められている関連及び港湾倉庫作業が含まれる、このように理解してよいのかどうか。また今後技術革新に伴う作業変化に応じて適用範囲を見直すべきではないかと思うわけですが、御答弁をいただきたいと思います。
  25. 岡部晃三

    岡部政府委員 適用業種につきましては、波動性対処するために特別の労働力需給調整を行う必要がある業種対象とする、こういう観点で見ているわけでございますが、現行適用業種維持することがやはり適当であるというふうに考えておるわけでございます。  将来における問題でございますが、将来の港湾環境変化、やはりあり得ることでございます。必要に応じ適用業種見直しは当然に行うべきことであろうと存ずる次第でございます。
  26. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 現行港湾雇用調整計画がございますが、これと、新法に言うところの港湾雇用安定等計画とはどのような違いがあるのか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  27. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 現行法に基づきます港湾雇用調整計画と、御審議いただいております新法港湾雇用安定等計画とどのような違いがあるかというお尋ねでございますが、まず現行法に基づく港湾雇用調整計画について申し上げますと、現行法におきましては、港湾運送に必要な労働力確保するため、公共職業安定所雇用促進事業団等の公的機関が運営の中心となる日雇い港湾労働者登録制度を設けていることにかんがみまして、それらの公的機関のいわば行政運営指針を示すために、労働大臣港湾雇用調整計画を策定することといたしております。これに対しまして、今後における港湾労働対策は、第一に、事業主による雇用改善に対する取り組みを促進すること、第二に、民間団体である指定法人による雇用管理、能力開発のための措置及び雇用調整実施、この二つが重要な内容となっております。このため改正後におきましては、労働大臣が策定する港湾雇用安定等計画は、事業主及び指定法人における取り組みの運営指針としての性格が強くなるものであるというふうに考えております。
  28. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾雇用調整計画では、当該港湾において必要な港湾労働者の数と、そのうち日雇い港湾労働者をもって充足すべき数を定めることになっております。港湾雇用安定等計画には、港湾において必要が見込まれる常用港湾労働者の数及び港湾労働者雇用安定センターが常時雇用する港湾労働者の数を定めることになるのかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  29. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま御審議いただいております法案に盛り込まれております港湾雇用安定等計画におきましては、法律におきまして「労働力の需給の調整の目標に関する事項」を定めることになっております。この労働力の需給の調整の目標に関する事項といたしまして、各港湾ごとに必要が見込まれる常用港湾労働者の数と港湾労働者雇用安定センターが常時雇用する港湾労働者の数、この二つの数を定めることにいたしたいと考えております。
  30. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 必要労働者数を定めるに当たって、現在では就労実績をもとにいわば機械的に定める嫌いがございます。今後どのような考え方に基づいて労働者数を定められるのか、この点についてお伺いをいたします。
  31. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾雇用安定等計画におきまして必要な港湾労働者数を定めることにいたしておりますが、その必要な港湾労働者数を算定するに当たりまして、就労実績に加えまして、貨物取り扱いの見込みも考慮することにしてまいりたいというふうに考えております。
  32. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾雇用安定等計画は公表すること、こうなっております。また港湾労働者雇用安定センター指定は公示する、こういうことになっております。この「公表」あるいは「公示」というのは告示として官報に掲載をされる、こういう扱いになるのかどうか、この点について御答弁をいただきたいと思います。
  33. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 先生指摘のとおり、港湾雇用安定等計画につきましても、法律上公表するべしということ、また港湾労働者雇用安定センター指定に当たりましても、指定したものについて公示すること、そういう法律上の規定がございますが、これらにつきましては、従来どおり公示と同時に官報に登載ということにより行うことにしたいというふうに考えております。
  34. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾労働者雇用安定センターの性格から見ますと、業務の民主的な運営が極めて必要である、こう思うわけであります。公労使三者による運営の確保をセンター指定条件とすべきである、このように私たち考えます。したがって、労働大臣としては法第十三条の「指定条件」としてどのようなことを考えられているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  35. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターが行う業務の適正な実施ということは極めて重要なことでございます。したがって、これを確保いたしますために、指定に当たりましては、単に法十二条に定める指定基準に適合するだけではなくて、指定後も一定の条件のもとにそれらの業務実施させることが必要な場合もあるということを考えまして、指定に際しまして条件を付することができるというふうに法律上規定をした次第でございます。  さて、具体的にこの「指定条件」でございますが、まず、センターの業務を適正かつ確実に行うための民主的な業務運営体制を講ずること、第二に、港湾労働者に対する職業訓練実施するために必要な一定水準の職業訓練施設を保有すること、こういうようなことを指定条件とするということが当面考えられているところでございます。
  36. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾労働者雇用安定センターとしては、各港湾において財団法人港湾労働安定協会を指定する予定だと聞いておりますが、財団法人港湾労働安定協会は現在各港湾ごとに組織されておりません。港湾労働者雇用安定センターの中央レベルと各港湾レベルの運用との関係はどのようになるのか、これがまず第一点、第二点は、各港湾ごとの労働者意見はどのように反映されるのか、以上二点について御答弁をいただきたいと思います。
  37. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センター指定することに相なるわけでございますが、この雇用安定センターといたしましては、昭和六十年に設立されました財団法人港湾労働安定協会を指定することが適当ではないかと考え、各港湾ごとに指定することを予定いたしております。ただ、先生指摘のような組織の実態でございますので、今後同協会を指定するに当たりましては、同協会において現在支部が置かれていないことにかんがみ、各港湾ごとに支部を設置すること、また労働者派遣業務など同センターの業務を的確に実施するための組織体制の整備充実を図ること、この二点を含め、その整備拡充を図っていくことが必要ではないかと考えております。またセンターにおきます業務の運営に関する方針等の決定は中央の理事会で行い、具体的な業務運営につきましては、各支部において中央からの指示に従って実施していくことになるものと考えております。  また、第二点目として、労働者意見を各港湾ごとにどのように業務実施に当たって反映していくのかというお尋ねでございますが、同センターがその業務実施に当たりましては、関係者意見も十分に踏まえて、その適正な運営を確保していくことが必要であると考えております、このため、港湾ごとの同センターの運営につきましては、従来どおり地区職業安定審議会の場を通じまして、当該港湾関係労使意見も十分に反映させてまいりたい、そのような運営を図ってまいりたいと考えております。
  38. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 労働大臣伺います。  地区職業安定審議会におきましては、港湾雇用安定等計画の策定を行うとともに、当該港湾における同計画の運用並びにセンターの業務について審議することができる、このように確認をしてよいかどうか、お伺いをしたいと思います。
  39. 中村太郎

    中村国務大臣 地区職業安定審議会につきましては、港湾労働法施行に関する重要事項等を都道府県知事の諮問において調査審議するものであり、各港湾について港湾雇用安定等計画の策定及びその運用について審議するとともに、当該港湾における港湾労働者雇用安定センター業務の運営についても審議することができるものでございます。
  40. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 答弁をいただきまして、そのように確認をさせていただきたいと思います。  次に進みたいと思いますが、第二十四条により労働大臣が法人の指定の取り消しあるいは業務の停止を行う場合、労働者の責めによらない事由、例えば港湾運送事業主が故意に派遣を求めないことによってセンター労働者就労が減少したことや労働争議など、つまりこれらのことが業務を適正かつ確実に実施することができないときというこのケースに当てはまるのかどうかについてお伺いをいたします。
  41. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 先生指摘のとおり、御審議いただいております法案の第二十四条で、労働大臣がその指定の取り消し、または期間を定めて業務の全部または一部の停止を命ずることができる事由といたしまして、「業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。」というものを法律上掲げております。私ども、この「業務を適正かつ確実に実施することができない」ときに該当いたすものといたしましては、労働者雇用安定センターがその業務の適正な実施を不当に怠り続けた場合、あるいは港湾運送事業の事業活動の波動性が小さくなったことにより、同センターの労働者派遣に対する需要が減少して、適正な業務運営の確保が困難になった場合などが考えられるものと思っております。  御指摘のケースにつきましては、一般的には、この取り消し事由には該当しないものと言えると考えております。
  42. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 念を押します。私がお伺いをいたしましたそういうケースは、つまり取り消し事由には該当しない、このように理解をしてよろしゅうございますか。
  43. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま申し上げましたように、御指摘になりましたケースにつきましては、一般的には取り消し事由には該当しないものと言えると考えております。
  44. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 港湾労働者雇用安定センターが派遣を行う場合、就労配置員が極めて重要な役割を果たすことになると思います。同センターが派遣を行うということになるわけですが、そのことによって例えば手配師が復活したと言われるような事態が起こるということにでもなれば、大変これは問題だろうと思います。そうならないように、つまり就労配置員については、その資質について基準を定めておく必要があると思うわけですが、こういう考え方に対して御答弁をいただきたいと思います。
  45. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターは、その職員の採用に当たりましては、センターの定める採用基準に基づいて採用を行うことにこれからなるわけでございます。  そこで、お尋ね就労配置の任に当たる職員でございますが、これは労働者派遣業務の適正な運営を確保する上でかなめと申しますか、極めて重要な役割を果たすべき職責でございます。したがいまして、港湾の事情に詳しく、またセンター労働者の信任が厚い人、こういうふうな人が担当することが必要であるというふうに考えているところでございます。
  46. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 第十九条第三項では、「事業計画書には、労働者派遣の対象となる常時雇用する労働者の数を記載しなければならない。」こういうことになっております。事業計画書に記載されるセンターが常時雇用する港湾労働者の数と、港湾雇用安定等計画に定めるセンターが常時雇用する港湾労働者の数とは異なるものなのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  47. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 先生指摘のとおり法案の第十九条第三項では、「事業計画書には、労働者派遣の対象となる常時雇用する労働者の数を記載しなければならない。」と規定されております。また、あわせて同じ条の第二項で、「港湾雇用安定等計画の定めるところに即して」センターは事業計画を作成しなければならない旨の規定がございます。また、このセンターが作成いたします事業計画につきまして労働大臣が認可するという項がございますが、労働大臣の事業計画の認可に当たりましても、そのような観点から認可を行うことになるというふうに考えます。  したがいまして、港湾労働者雇用安定センターが事業計画書に定める労働者の数は、同港湾における波動性対処するために同センターが常時雇用することが適当な数として港湾雇用安定等計画において定める数と基本的に一致するものと考えております。
  48. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 大臣にお伺いをいたします。  港湾労働者雇用安定センターが常時雇用する労働者は、雇用期間の定めのない労働者であると理解をしてよろしいかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  49. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点につきましてはそのとおりでございます。港湾労働者雇用安定センター労働者派遣の対象とする常時雇用する労働者は、雇用期間を定めずセンターに雇用される労働者であるわけでございます。
  50. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いわゆる安定センターの事業計画で定められる港湾労働者数を現実の雇用者数が上回るに至った場合は、上回る数の港湾労働者は解雇されるのかどうか、お答えをいただきたいと思います。
  51. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターが事業計画で定める労働者派遣の対象となる常時雇用する労働者の計画数が減少したことによりまして、現実の雇用労働者の数がこれを上回ることとなった場合であっても、上回る数の労働者を解雇することは適当ではないと考えております。このような場合には、港湾労働者就労状況を見ながら、定年退職者の不補充あるいは任意退職者の募集等によりまして労働者数を事業計画に定める数に近づけ、センターの適正な運営の確保が図られるよう同センターを指導してまいりたいというふうに考えております。
  52. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いわゆるセンター労働者の採用基準や就業規則あるいは労働者派遣規程などについては、法施行日以前にでき上がっていなければならないわけでありまして、厳密に言えば、センターにおける労使関係が成立する前の問題になるわけであります。私は、登録日雇い港湾労働者の多くがセンター労働者となるであろうから、関係労使で事前に交渉が行われるということがセンター発足を円滑にするために極めて必要である、重要である、こう思うわけですが、御答弁をいただきたいと思います。
  53. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターがこの法律の施行日以降円滑に業務を開始するためには、やはりこのセンターに移行する登録日雇い港湾労働者基準及び数の決定あるいはまた労働者派遣規程、事業計画書及び就業規則、こういう作成につきまして関係労使の十分な意見のすり合わせと申しますか、周到な準備が必要であろうと思うのでございます。したがいまして、四角四面に言えば、労使関係が成立以前という形になるのかもしれませんが、しかしながら、そのような場合でありましても、労使関係が成立することが当然法律上予見されるわけでございますので、関係労使間で十分にこれらの点につきまして必要な話し合いの場が持たれるということが望ましいことは明らかであると考えております。
  54. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 いわゆるセンターの採用基準、就業規則、労働者派遣規程は、原則的には全国統一のものが定められる、そしてまたセンター労働者の労働条件は実質的に企業常用と同一水準になるべきものだ、こう思うわけです。この点についてお考えを明らかにしていただきたいと思います。
  55. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 指定されました港湾労働者雇用安定センターがその業務を推進するに当たりまして、御指摘のように、採用基準でありますとか就業規則あるいは労働者派遣規程等を設ける必要がございます。それらの採用基準でありますとか就業規則、労働者派遣規程などにつきまして、御指摘のとおり全国で統一的なものとすることが適当であるというふうに考えております。また港湾労働者雇用安定センター雇用される港湾労働者の労働条件につきましては、事業主雇用される港湾労働者の労働条件と同様、労使間で自主的に決定されるべきものであると考えておりますが、労働省といたしましては、両者の労働条件が基本的には同一であることが望ましいというふうに考えます。
  56. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 今、労働条件が基本的には同一であることが望ましいと言われましたが、これは決して他人事ではございませんで、所管される労働省としてはそうなっていくように最大限の指導をする、こういうふうに理解をさせていただいていいのでしょうか。
  57. 岡部晃三

    岡部政府委員 この労働条件につきましては、それぞれの労使関係において自主的に定められるということが原則でございますので、一々行政指導によって細目まで定めていくというふうな立場に役所はないことは先生御存じのとおりでございます。しかしながら、この港湾労働法全体の精神というものが、各企業における常用労働者というものを通じて、あるいはまた今度設けられますセンターを通じまして、その波動性に対応しよう、こういう考え方でできているものでございますので、全体が言うなれば打って一丸となって港湾労働という非常に公共的な業務を行うということでもございますので、その労働条件というものは、そこにおのずからなる労使間の十分な配慮が行き渡りまして、そこにおいて大体同水準の労働条件が実現をする、こういうことが望ましいということでございます。したがいまして、そのような観点から私どもも関係労使に接してまいりたいというふうに考えております。
  58. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 合理化などの対象となった企業常用については、事業計画で定められたセンター労働者の数の範囲内でセンターに雇用されることが港湾労働者雇用安定の一助になると考えるわけですが、御答弁をいただきたいと思います。
  59. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターは、事業計画書に定められたところに従いまして労働者雇用するものでございます。したがいまして、港湾労働者雇用安定センターは、事業計画書に定めたその労働者数の範囲内で企業を解雇された港湾労働者を雇い入れることができることとなるわけでございまして、そのことは港湾労働者雇用の安定にも資するというふうに考えられるわけでございます。  先生お尋ねは、その企業常用が合理化あるいは人員整理等々によりまして、そこから離職を余儀なくされたという方があった場合に、それはすべてこのセンターで吸収することができないものか、こういうふうな含みを持ったお尋ねであろうかと伺うのでございますが、これはやはり事業計画書に定めたその労働者数の範囲におきましてセンターはこれを雇用するということになるわけでございます。そこにあきがございますれば、そこに雇用をするということはもちろん可能なところでございます。
  60. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 私の持ち時間からしますとまだ余っているわけですが、関連質問関係がございますので、次の関山委員にバトンタッチをさせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。――では、どうもありがとうございました。質問を終わります。
  61. 稲垣実男

  62. 関山信之

    関山委員 伊藤忠治委員に引き続きまして、私からも本港湾労働法につきまして質問をさせていただきたいと存じます。  ただいまもお話がございましたが、この港湾労働法制定をされましたのは一九六五年であります。またこの港湾労働法制定以前に、法制定に向けての運動というのは、一番最初に法制定請願が出されましたのが一九五一年でありますから、実に十五年という長い年月をかけてこの法律が制定をされ、今回二十三年目に大きな改正が行われようとしているわけであります。  ところで、昭和四十年、一九六五年という港湾労働法制定の年の日本のGNPは三十三兆円であります。今日GNPは昨年三百四十四兆八千八百億という実に大変な経済大国を実現しているわけでございます。すさまじい経済成長による経済大国日本の成功は、伊藤委員も触れられましたように、貿易立国を国是とする我が国経済政策によるものでございまして、そのことは同時に、この成功の陰には、日本海運及び港湾運送事業の並々ならぬ貢献があった、こう思うわけです。言いかえれば、港湾労働者あるいは海運労働者の存在を抜きにしてはこの数字は実現をし得ないものであったというふうに申し上げて差し支えないと思います。  しかし、今日、その成功を支えた日本海運、どうでしょうか。みずからが招いた便宜置籍船の投機的な乱造による深刻な不況に陥っておりまして、そこで働く日本船員の人たちは職場を追われ、日本海運そのものの存在さえ危ぶまれる状態に陥っておることは御承知のとおりであります。また、港湾運送事業につきましても、港湾近代化といえば大変美しい言葉でございますけれども、その陰ですさまじい港湾荷役の合理化が進行いたしておりまして、六大港だけを見ましても、昭和四十一年、法施行時におきまして七万二千名を教えた港湾労働者は、昭和六十二年におきましては既に三万六千人と半減をしてしまっているのが現実であります。しかも、激しい運賃料金のダンピング競争によりまして、零細な港運業者とそこで働く労働者が専ら苦汁をなめさせられているという現実がございまして、一方で経済成長が華やかなものであればあるほど、先ほどもお話がございましたような暴力団絡みの手配師の横行など、そのダーティーな前近代的な雇用実態というものが依然として未解決のまま存在をしていることが対照的に浮き上がってくるのが現状なわけでございます。  今次改正される港湾労働法でございますが、こうした現状にございまして、従来の港湾労働法につきましても、私どもからすれば不十分、不完全な法律だというふうに申し上げなければならないのですけれども、しかしそれは、港湾労働者の歴史的な怨念とも言うべきものを背負いながら、彼らにとっては雇用秩序を守る唯一のよりどころとして機能してきた、私はこう思うわけでございます。以上の経過、背景を考えますと、今次改正は、より完全に近代的な労使関係を確立をすること、つまり港から一切の手配師のような存在をなくして、港頭地区における港湾作業は、企業常用とプール労働者以外は就労を認めないという原則をしっかり確立をしていただきたいと思いますし、そのことを基本にしながら、今日の港湾近代化に対応し得る労働力の安定的な需給調整の機能を法律的に保障するものでなければならない、かように考えるわけでございます。  かような立場に立ちまして、以下、雇用秩序の問題についてお尋ねをいたしたいわけでございますが、まず最初に改正法第九条第一項についてお伺いをしたいと思います。  これは事業主がその雇用する労働者について、港湾運送業務に従事させようとする場合は、公共職業安定所届け出なければならないということを定めておるわけでございます。これは現行法でも第十三条に規定をされておることでございますが、この企業常用の届け出、私どもはこれは登録にしなければいかぬ、こう言っておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、この港頭地区における雇用秩序の基本であるわけでございまして、この点につきまして、現行法の場合は、この届け出義務の規定に違反をいたしますと、第七十三条第一号におきまして罰金が科せられるということになっているのに、新法案では、この届け出義務規定の違反に対しまして罰則が設けられておらないわけでございまして、この点についてはどういうことなのか、お答えをいただきたいと存じます。
  63. 岡部晃三

    岡部政府委員 お尋ね港湾労働者雇用に関する届け出義務でございますが、これは日雇い労働者の雇い入れ規制の実効を確保することを直接の目的とするものでございますが、究極的には港湾運送に必要な労働力の迅速かつ的確な需要調整というふうなものを確保するということを目的とするものでございまして、結局これは港湾における日雇い労働者に第三者が介入することを排除しようということでございます。このような手続的な届け出義務につきましては、雇用関係近代化に関する意識というものが事業主に相当浸透してきている状況にあろうと考えておりまして、そのような状況にかんがみれば、その実効を確保するために罰則を科する必要はないのではないか、このように考えて法律を起草したところでございます。
  64. 関山信之

    関山委員 ただいまの御答弁は、一方で第三者が介入することを排除することを目的とするものだ、こうおっしゃいながら、雇用関係近代化に関する意識が事業主に相当浸透してきている状況、こうおっしゃるのですね。しかし、これはいただけないですね。きょうは港湾関係労働者の皆さんもこの委員会に傍聴に見えているのですが、現場を見たらとんでもねえや、こうおっしゃるに違いないと思うのですね。  ところで、どうでしょうか、野寺雇用課長はちょっと席を立たれているようだけれども、やみ雇用の実態はどうですか。やみ雇用、擬装常用、荷役調整、こういった名をかりた相互融通といったような実態があるわけでございますけれども、この種の問題をめぐって通報はどのぐらいありますか。そして、摘発件数はどのくらいあるのでしょうか。そして、労働省の出先安定所の指導官の定数というのは今どのくらいあるのですか、六大港別にお示しをいただきたいと思うのです。
  65. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 突然のお尋ねでございますので、十分な資料を準備してまいりませんでしたが、常用港湾労働者に係る立入件数は、六十一年度で千七百二十五事業所に行っております。そのうち、違反状況が摘発されました事業所は二事業所でございますが、港湾別に数字がただいま手元にございませんので、また後ほどお答えさせていただきたいと思いますが、私ども承知いたしますところ、そうした事件は現在に至りましても見られるわけでございますが、法施行二十二年を経過する中で漸次改善の傾向にあるということは言えると思います。ただ、そうした問題は一つもあってはならないことであり、今後ともそうした事件が起きませんように最大の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。
  66. 関山信之

    関山委員 やみ雇用の現実というものは、私どもの手元にもたくさん資料をいただいております。きょうはそのことでとやかく申し上げるつもりはありませんけれども、雇用関係近代化に関する意識が事業主に相当浸透してきているなんという現実があれば、横浜においても神戸においてもあるいは大阪においても、いろいろと問題になるような事案というものは出てこないわけでありまして、第九条第一項につきましては、何といってもこの法律全体の基本になる部分でありますだけにきちっと、これがまた届け出という段階にとどまっておりますだけに、ぜひともこれは罰則をつけてもらわなければならぬということを私は強く申し上げておきたいと存じます。  ところで、次は第二十六条でございます。ここは「労働者派遣に係る事業主努力義務」という項目でございますが、今次改正案は、要するに、現行登録日雇い港湾労働者について、これを派遣労働者として港湾労働者雇用安定センターに常用雇用の形でプールして行おう、こういうことであります。とすれば、現行制度におきましても、第十九条におきまして、職業安定所は、今日の登録日雇い労働者紹介と、いわゆる日雇い労働者との関係につきまして、きちんと順位を定めておるわけでございます。新制度のもとでも、まずセンターからその雇用する港湾労働者の派遣を受けなければならないこととするのが当然ではないかと思うのでありますけれども、いかがでございましょうか。  また、現行制度におきましては、登録日雇い労働者を非登録日雇い労働者に優先して紹介することになっておることを申し上げましたが、新制度に移行した場合、このままで読みますと、港湾運送事業主がセンターからの労働者派遣を受けずに職業安定所に日雇い労働者紹介を求めることが法律上認められるようなことになるのではないか、そういう危惧も感ずるわけでございまして、そうなりますと、そもそも一体何のための法改正かわけがわからないということになってしまうわけでございます。  したがいまして、私は、この法案の第二十六条について、港湾運送事業主は、まずセンターに労働者派遣を求めることを義務づけるとともに、罰則をもってその実効を確保すべきではないか、こう考えるわけでございますけれども、いかがでしょうか。
  67. 岡部晃三

    岡部政府委員 法制的にいいますと、一般に労働者を雇い入れる場合に、いかなる範囲のものから選ぶかということにつきましては事業主の自由に任されておる、いわゆる雇い入れの自由の原則があるわけでございます。したがいまして、港湾運送事業主についてのみこの港湾労働者雇用安定センターが派遣する労働者を優先的に使用することを罰則づきで強行規定によって義務づけるということにつきましては、一般の雇い入れの自由と均衡を著しく失するということで、憲法上の問題を生じかねないということで適当ではないと考えるわけでございます。しかしながら、労働省といたしましては、港湾労働者雇用安定センター関係につきまして、その優先順位につきましては明確な考え方をとっておるわけでございます。したがいましてその優先順位につきましては、法律第七条第一項の規定による事業主に対する勧告というふうな形によりまして、適切に対処してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  68. 関山信之

    関山委員 納得ができないですね。労働省として優先順位、就労順位をきちっとしていくというお考えであることは、十分その限りではわかるわけですけれども、これをいかに法律的に担保するかということが問題なわけでございまして、先ほど申し上げたような現行法の枠組みできちっとした十九条の規定などとにらみ合わせますと、むしろ現行制度の基本的な枠組みが崩される心配がやはり残るということでございまして、今の御答弁、憲法の立場から一般的、形式的に論ずればそういう立場もわからぬわけじゃありません。しかしそもそも現行制度も、登録日一雇い労働者とその他の非登録日雇い労働者という形で、日雇い港湾労働者の間に差別を持ち込むものだから憲法違反だということにもなりかねないわけでございまして、現行法のような特別法が必要となる特別の事情があるということを踏まえて、今日の現行法でも措置されておるわけでありますし、新法でも措置されるべきであろう。センターも営利を目的とする法人ではございませんし、港湾運送事業に係る労働力需給の公的調整の一翼を担ういわば準公的な機関であるというようなことなども御考慮いただかなきゃならないと思うのですね。  しかも、この法案策定の過程で中央職業安定審議会の建議が行われておりまして、この段階では昨年の十二月二十二日に建議が行われたが、ここでも「事業主がその雇用する常用港湾労働者以外の労働者を使用する必要が生じたときは、指定法人に対し、港湾労働者の派遣を求めなければならないものとする。」これを受けて、今年開かれております中職審の報告の法案大綱におきましても、「事業主がその雇用する常用港湾労働者以外の労働者を使用する必要が生じたときは、港湾労働者雇用安定センターに対し、港湾労働者の派遣を求めなければならないものとすること。」明らかに義務規定になっておるわけでございます。私といたしましては、港湾荷役事業主はまずセンターに労働者派遣を求めることを義務づけるとともに、その実効を確保するためには罰則を設けることも考えるべきではないか、こう思うわけでございまして、この点につきまして大臣の御見解をいただければありがたいと存じます。
  69. 中村太郎

    中村国務大臣 港湾労働者雇用安定センターが行う労働者派遣は、公益的な観点から港湾運送に必要な労働力企業外確保するものであることから、効率的な労働力確保及び確保される労働者雇用の安定を図るために、事業主がその雇用する常用港湾労働者以外の労働者を使用する場合には、センターが雇用する労働者就労機会が優先的に確保されることが適当であると考えておるわけであります。したがいまして私としましては、この趣旨は努力義務でも十分生かされるものと考えますけれども、第二十六条を義務規定とすべきであるとの御指摘につきましては理解できないわけではございません。しかしなお、義務規定とする場合におきましても、罰則をつけることにつきましては、一般の雇い入れの自由との均衡を著しく失することになりはしないかというふうに考えるわけでございまして、まあ罰則をつけない方が適当ではないかというふうに考えておるわけであります。
  70. 関山信之

    関山委員 少なくとも現行努力義務というものにつきまして、きちっと義務規定に改めていただくことを強く要望をしておきたいと存じます。  次は、第十六条のセンターの「労働者派遣の業務方法等」という条項につきましてお伺いをいたしたいと思うのでございますけれども、この第十六条第一項にただし書きが設けられております。つまりセンターが雇用をする常用の労働者で、その労働者のみの派遣によっては労働者派遣の需要に応じられない場合の規定でございますけれども、このただし書きを設けた趣旨について、まず御説明をいただきたいと存じます。
  71. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 改正法案第十六条は、ただいま御指摘がありましたように、「労働者派遣の業務方法等」に関しまして規定したものでございますが、港湾労働者雇用安定センターが行う労働者派遣の対象となる労働者につきましては、センター自身が常時雇用する労働者を原則とするということといたしております。しかしながら、港湾運送事業の事業活動の波動性関係から、なお追加的な技能労働力需要が発生する場合が当然考えられるわけでございますが、そうした場合においても、同センターによる労働者派遣により技能労働力を供給し得るように、同センターが常時雇用する労働者以外の労働者であって労働大臣が定める一定の技能水準以上の者につきましても、同センターが派遣することができることとした、そうした規定でございます。
  72. 関山信之

    関山委員 御説明のような事情はわからぬわけじゃございませんし、センターが発足をいたしましたとしても、発足当初の一定期間は労働者派遣の需要に応じられない場合というケースが起こり得ることは私も認めないわけではない。しかし、この法律が想定している姿といたしましては、ただいま御答弁がありましたように、港湾運送事業に従事する労働者というのは、原則として港湾運送事業主に常時雇用されている港湾運送労働者か、センターに常時雇用されている港湾運送労働者かのどちらかであるということになるわけでございますし、また第三条の港湾雇用安定等計画も、こういうような姿を基本に据えて策定をされるものだろうと思うわけでございます。こういうことからいたしますれば、センターが労働者派遣の需要に応じられない場合が生じることのないように、必要な数の労働者をプール雇用しておくということが本来の建前だと思うわけでございます。  こういうあるべき形、本来の建前からすれば、しかし当面、法施行に当たって一時的にはそういう建前に対応し切れない事態も発生するだろう、そこでただし書きがついたというふうに理解をいたしますと、第十六条第一項ただし書きの部分はあくまでも経過措置として妥当性を持つものでありますから、本則ではなくて附則ぐらいに書くとか、それも一年ないし数年間という期限を限ったものにして措置をされることがここは妥当だと思うのですけれども、いかがでございましょうか。
  73. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生指摘のように、港湾労働業務というのは、企業常用及びセンター常用によってこれを賄う、これが基本的な姿であることはそのとおりでございます。しかしながら、現在の登録日雇い港湾労働者技能労働に係る求人に十分対処できないこと、あるいは港湾運送事業についての波動性関係からなお追加的な技能労働需要が発生する場合が多くあるわけでございまして、これを踏まえまして、センターが常時雇用する労働者以外の労働者につきまして、労働大臣が定める一定の技能水準以上の者であることが必要でございますが、出向し、派遣できる、こういう形になっているわけでございます。現状を見まして、あらかじめ期限をつけるということは適当ではないと考えているところでございます。
  74. 関山信之

    関山委員 どうも期限をつけることには納得のいく御答弁をいただけないのですが、少し角度を変えてお尋ねをしたいと思います。  大臣、この法案によりますれば、従来の職業安定所による登録日雇い港湾労働者紹介制度にかわって、全く新しい指定法人による常時雇用港湾労働者の派遣制度、こういうことになるわけでございますが、新法施行後、これは他の法律の例もございますけれども、一定時期にこの法律を見直してより完全なものにしていくという考え方もあるわけでございます。これに関連して、昨年十月の港湾調整審議会における建議におきましても、「港湾労働対策については、三年ないし五年ごと位にその見直しを行い、所要の措置を講ずべきである」というふうに書かれておるわけでございまして、また先ごろ成立をいたしました労働者派遣法も、三年で見直すことが法律に明記をされております。したがって政府は、この法律も新法施行後三年で見直したらいかがか。見直しということになりますと、いろいろな角度での見直しもあるわけでございますから、当然、ただいま申し上げてまいりました第十六条第一項ただし書きという部分につきましても、港湾労働者技能訓練も三年間という期限があれば、この間相当な進捗があるものと考えられるわけでございますし、ここでひとつそういう際に見直すということをお約束いただけないものか、これは強くお願いを申し上げたいと思います。
  75. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘のとおり、港湾調整審議会の建議におきましても、新制度実施後においても一定時期に制度見直しを行うことが適当である旨の指摘がなされております。また、新法制定または制度の抜本的改正に際しましては、施行後一定期間経過後に見直しを行う旨の規定も随所に設けられる例があるわけでございます。このことにかんがみまして、本法に基づく制度実施後適当な期間を経過したところで、今お話しになりました十六条第一項等の問題も含めて、新法施行に伴い発生する諸問題について検討いたしますことはやぶさかではございません。
  76. 関山信之

    関山委員 ぜひひとつ申し上げた趣旨を御理解の上、対処をお願い申し上げたいと存じます。  ところで、現行港湾労働法もそうなんですけれども、労働者の概念が非常に複雑になっておりまして、私などはいまだにきちっと整理ができない部分もあるのです。この法律におきましても、第九条、第十六条、第二十六条などにかかわって事務職員の問題がございまして、ひとつはっきりさせておきたいと思うわけなんですが、法律第九条は、「事業主は、その雇用する労働者港湾運送業務に従事させようとするときは、」先ほどの届け出云々というのがあります。また第十六条では、センターが行う労働者派遣について、「その常時雇用する労働者を派遣」し、またそれができないときは云々とあるわけですね。それから第二十六条においても、今やりとりいたしました努力義務規定のところにおきまして、事業主がセンターに労働者派遣を求めることについて、「その常時雇用する労働者以外の者を港湾運送業務に従事させようとするときは」云々とある。これらの条文において「その雇用する労働者」あるいは「その常時雇用する労働者」とあるのは、「その雇用する港湾労働者」あるいは「その常時雇用する港湾労働者」ときちっとしていただきますと、いろいろなあいまいさが抜けて、雇用就労順位についてもきちっとなる、また私どもにわかりやすい法律用語となるのではないかと思うのですけれども、そうできない理由というのは一体何かあるのですか。
  77. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 改正法案の第九条に規定する「その雇用する労働者」、さらには第十六条、第二十六条に規定する「その常時雇用する労働者」という言葉について、単に「労働者」と書かずに「港湾労働者」と書いた方が意味が明確になるのではないかという御指摘かと思います。  このことにつきましては、いずれも常時港湾運送業務に従事する港湾労働者を念頭に置いて規定したものであることは御指摘のとおりでございます。ただ、第二条に定義の規定がございますが、それとの関係で用語上は、いまだ港湾運送業務に従事していない段階にある労働者についての規定でございますから、「港湾労働者」と規定することは正確ではない。この法律の定義といいますか、用語の使い方としては「労働者」ということに相なるということでございます。
  78. 関山信之

    関山委員 その常時雇用する労働者は、いずれも常時港湾運送業務に従事する港湾労働者を念頭に置いて規定したものだ、こうおっしゃっていただければそれはそれでいいようなものなんですが、しかし、現実のやみ雇用あるいは偽装常用、荷役調整の名をかりた雇用相互融通という問題は、どうしてもこういう法律用語の穴をくぐる意識、目的意識にあるかどうかは別にしましても、私どもにとってはやはり不安な部分であります。先ほども指摘を申し上げた、港湾運送業務に従事する労働者は、原則としていわゆる企業常用の労働者かセンターの労働者であるはずであることはお認めいただいておるわけでありますし、港湾労働者の定数についても、それを前提として決められるべきものだと思います。したがって、脱法的な行為を防ぎ、雇用秩序を守るためには、やはり今指摘した部分について法律上「港湾労働者」と明示すべきではないかと思うのでございますけれども、しかし、それがただいま御答弁のございましたような法律作業的な部分でのことだというなら、せめてこの法律の趣旨を事業主にも周知徹底をいたしまして、常時港湾運送業務に従事しない者が港湾運送業務に従事するということがないように十分指導監督をいただきたいと思うのですが、この辺は大臣の御配慮をいただきたいと思うのです。
  79. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点はまさにそのとおりでございまして、やはり念には念を入れておかなければならないというふうに考えております。  事業主がその常時雇用する港湾労働者によっては必要な労働力需要を満たし得ない場合、港湾労働者雇用安定センターに常時雇用される労働者就労すべきものであると考えておるわけでございます。したがいまして、事業主または港湾労働者雇用安定センターがその雇用する事務労働者港湾運送業務就労させることは、新法の精神にかんがみまして適当でなく、また事実上ほとんどないものとは考えておりますけれども、仮に就労させる場合には公共職業安定所への届け出を義務づけておるわけでございまして、当該届け出の際などにも御懸念のことのないように十分指導をしてまいりたいと考えております。
  80. 関山信之

    関山委員 続きまして、第十条の「日雇労働者雇用」に関する条項についてお尋ねをいたしたいと思うのでございますけれども、この条項は「事業主は、公共職業安定所紹介を受けて雇い入れた者でなければ、日雇労働者として港湾運送業務に従事させてはならない。」という規定でございます。これは現行法第十六条と全く同趣旨、同内容のものだというふうに理解をいたしておるわけでございますけれども、この意味合いについてまずお聞きをしたいわけでございます。  先ほども申し上げましたように、港湾運送業務に従事する労働者は原則として企業常用かセンター労働者というのを前提にしながら、中職審の建議でも「このような雇用調整システムを設ける場合においては、原則として追加的な労働力需要は不要となる」というふうにされてきているわけでございます。したがって、これまではともかく今後この新法のもとでは、事業主公共職業安定所日雇い労働者の求人の申し込みをすることは原則としてなくなるということが望ましいわけでございまして、中職審の建議の表現を引用すれば「例外的に追加的な労働力需要が生じた場合」に限られることになると思うのですが、とかく今日までも再三申し上げております違法雇用の実態は、現行法でいえば十六条ただし書きがやはり穴になっているというふうに私どもとしては理解をしてきているものでありますから、あらかじめひとつ御見解をいただきたいと存じます。
  81. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 改正法案第十条の第一項の規定の趣旨いかんというお尋ねかと存じます。  第十条は「日雇労働者雇用」に関する規定でございますが、港湾運送業務に必要な労働力につきましては、港湾労働者常用化進展しておりますものの、港湾運送事業の事業活動の波動性により、なお企業外労働力に依存せざるを得ない状況にございます。そうした企業外労働力の円滑な確保を図ることは、ひいては国民経済発展に不可欠なものであるという認識から、これに対処するため迅速かつ的確な労働力の需給調整を図るとともに、手配師など第三者による就労への違法な介入を排除していくことが今後とも必要であるというふうに考えております。  このため、港湾運送事業主日雇い労働者港湾運送業務に従事させようとする場合には、そうした必要が生じた場合には、職業安定所の紹介を受けることを原則とすることによって、港湾運送業務に係る日雇い労働者の求人と求職者とを公共職業安定所に集中させ、迅速かつ的確な需給調整を図るとともに、あわせて手配師等第三者による就労への違法な介入の排除を図ることとしたものでございます。
  82. 関山信之

    関山委員 今ほど申し上げましたように、日雇い港湾労働者というものの求人の申し込みというのは例外的なことだ、いわば追加的な特殊な労働者需要に対応するためのものだ、この日雇い港湾労働者についてさえそういう認識に立ちながら、なおこれにただし書きがつく。現行法第十六条第一項のただし書き、先ほどもちょっと申し上げましたが、このただし書きが一番問題だというふうに言われているわけです。この法律が本来想定している姿を前提とすれば、まさに今回の法改正をもってこのただし書きは切るべきだ、不必要じゃないか、こう私は考えるわけであります。むしろこういう規定があるために、職業安定所に求職の申し込みをしなくても雇い入れられる可能性が生じることから、職業安定所に求職の申し込みをしない労働者も出てくることになるわけでありますし、その結果、ただし書きにあるように、公共職業安定所に求人の申し込みをしたにもかかわらず求職者の紹介を受けることができないというような状態が逆に生まれたりするという心配もあるわけでございます。つまりこの規定では、形式的には合理性があるとしても、実質的にはむしろ直接雇用を正当化するために悪用されかねない、こういう疑義を私どもとしては抱いておるわけでございます。  したがいまして私は、雇用秩序維持確立するためには、この雇用秩序の問題のいわば従来の経験を踏まえた根幹として、このただし書きは削除すべきではないかと思うのでございますけれども、この新法においてもこのような規定を残すこととした理由とあわせて労働省の御見解を承りたいと存じます。
  83. 岡部晃三

    岡部政府委員 この法の精神につきましては、先ほども申し上げましたように、企業常用及びセンター常用をもってこれに対処するということが基本であることは、繰り返す必要のないところでございます。  そこで、この十条一項ただし書きでございますが、日雇い労働者の直接雇用を全面的に禁止するというふうなお説につきましては、やはり事業主が必要な労働力需要を、先ほどのような一連の優先順位を持ちました企業常用それからプール労働者、それから公共職業安定所等々努力を尽くしましても、なおかつ充足し得ないということも理屈上はあるわけでございます。もとよりそのようなことがない形で充足されるということが望ましいわけでございますが、何しろ波動性の非常に高いという状況等によりまして、やはりそのような事態も想定され得るわけでございます。したがいまして、その場合に、憲法上保障されました雇い入れの自由というものの制約になるような規定の仕方は困難であったということでございます。  なお、先生御懸念のような事態に対しましては、日雇い労働者に必要以上に依存することがないようにしなければいけませんので、港湾労働者雇用安定センターにおける労働者数の十分なる確保というふうなことを通じまして、御懸念のようなことが生じないようにという配慮は重々にいたしてまいりたいというふうに考えております。
  84. 関山信之

    関山委員 おっしゃっていることは十分わかるんですが、しかし、このただし書きを使った直接雇用の実態というようなものはやはりかなりあるわけですね。野寺課長、いかがですか、直接雇用の実態の数字をちょっと御説明いただけませんか。
  85. 野寺康幸

    ○野寺説明員 直接雇用でございますが、法律の制定当時と現在では大分事情が変わってきております。六十二年度、昨年度になりますけれども、六十二年度一年間の数で申しますと、五千四百七人日という直接雇用の数が上がっております。
  86. 関山信之

    関山委員 おっしゃるように、これは港湾労働法現行法律が制定された当時から比べれば随分と改善されてきていることは事実でありますけれども、しかし、届け出のあるもの、ないものを含めて、依然としてかなりな数字に上っているという実態が私はあると思うのですね。  そこで、この問題について大臣に、今お話がありましたように、一般的な可能性に備えたものとしては、私も今の御答弁理解できないわけではないわけでございます。しかし実態を見ますと、やはりこの規定があることによって、直接雇用というものがかなり多く行われている実績というものを見るわけでございまして、それだけならいいんですけれども、届け出がなかったり、事後に届けたりするようなケースも間々あるわけでございまして、これではせっかくの雇用秩序というものを新しい法案によって確立しようとしても、ここがしり抜けになっていると言わざるを得ない側面がやはりどうしても残るんですね。したがって、形式上これを削除できないというふうに考えたといたしましても、実質的に公共職業安定所に求人の申し込みをしたにもかかわらず求職者の紹介を受けることができない場合というように限定している法の立法の趣旨が徹底されるような関係事業者に対する十分な御指導、御監督がこの際やはり必要だと思いまして、この点、大臣の御答弁をもって締めくくっていただきたいと思うのです。
  87. 中村太郎

    中村国務大臣 日雇い労働者の直接雇用は、港湾労働者雇用安定センターが派遣する労働者及び公共職業安定所紹介する日雇い労働者によっては必要な労働力需要が充足し得ない例外的な場合に認められるものであることは、御承知のとおりでございます。このため、第十条の、職安求人に当たりセンターに労働者の派遣を求めたか否かを厳正にチェックをするほか、直接雇用については事前届け出を徹底するよう関係事業所に対しまして十分な指導監督を行うとともに、必要に応じましては、第七条第一項の規定による勧告を行うことといたしたいと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、事業主初め関係者にこの趣旨を徹底することは、お説のとおり大切なことであると承知をいたしております。
  88. 関山信之

    関山委員 ありがとうございました。  以上で雇用秩序の問題は一応区切りをつけまして、経過措置と申しましょうか、この法律に移行するに当たって、なお念を押しておきたいことについて御質問を申し上げたいと思います。  現行制度のもとでは、地方公共団体が登録日雇い港湾労働者に対し援助しているが、新制度に移行した場合においても、地方公共団体が同様にセンターに対して援助をするよう国が指導すべきではないか、かように考えますが、いかがでしょうか。
  89. 岡部晃三

    岡部政府委員 法案におきましては、事業主及びその団体が行う港湾労働者の福祉の増進に関する措置につきまして、必要な援助を行うことを地方公共団体の責務として明確にしているところでございます。この事業主の団体には港湾労働者雇用安定センターとして指定する予定の港湾労働安定協会も含まれているというように考えているわけでございます。したがいまして、地方公共団体が本法案の趣旨に沿って、その責務を十分に果たすように的確な指導を行ってまいりたいと考えております。
  90. 関山信之

    関山委員 次に、センター労働者への移行ということになるわけですが、現在の登録日雇い港湾労働者は定年を超えない限り原則として全員移行するようにすべきではないか、かように考えますが、いかがでございましょう。
  91. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターがいかなる労働者雇用するかということは、センターが定める採用基準によって定まるものでございます。今回の法改正の趣旨からいたしますと、御指摘のように、登録日雇い港湾労働者がセンターに移行することが望ましいことは当然でございます。しかしながら、今般の法改正というものが輸送革新進展に伴う技能労働力需要増大に対応するということでございますから、その点からしますと、やはり適性面あるいは体力面の考慮ということもあるわけでございまして、体力的、技能的にその事業に従事することが困難な登録日雇い港湾労働者がこのセンターに移行し得ないという場合も例外的にあることは、やむを得ないものというふうに考えております。
  92. 関山信之

    関山委員 新制度への移行に向けて、当該の登録日雇い労働者の皆さんの心配というのは大変なものがあるわけでございますし、どうぞひとつ前段の趣旨に沿って全員が移行できるような十分な御配慮を賜りたいと思います。  そこで、大臣に御見解をただしておきたいのですが、ただいまの問題も含めまして、これから新制度への移行につきましては、いわゆる経過的な措置といたしまして、定年制をどうするかとか引退時の一時金をどうするか、あるいは厚生年金の問題についてどのような対応をするのか、あるいは中小企業退職金共済の問題などもあったり、さまざま複雑かつ切実な利害関係を伴う交渉事項が残っておりまして、一番直接かかわる労働者にとっては心配な部分でもあるわけですが、長い長い労働省との政労の交渉の経過もございますし、どうぞひとつ労働省におきましても誠意を持って対処をしていただきたいと思っておりまして、この点についての労働大臣の決意をお聞かせいただきたいと存じます。
  93. 中村太郎

    中村国務大臣 新制度への移行に際しましての経過的な措置につきましては、本法案においても、登録日雇い港湾労働者であった者の就職の促進及び生活の安定を図るための措置として、雇用促進事業団が暫定業務を行うことを規定しているところでございます。厚生年金への移行や中小企業退職金共済等の問題については、これらの制度の体系等も十分に考慮しまして対処していく必要があると考えておるところでございます。  いずれにいたしましても、経過措置につきましては、関係者意向を踏まえつつ慎重に検討を行い、登録日雇い港湾労働者であった者の生活の安定に不安が生ずることのないよう十分な措置を講じてまいりたいと考えております。
  94. 関山信之

    関山委員 どうぞひとつよろしくお願いをいたします。  そこで次に、センターの財源問題についてお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。新しく発足をいたします港湾労働者雇用安定センター労働者派遣の業務運営に必要な財源はどのように確保されることになっているのか、また国からの補助はどの程度のものなのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  95. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 お尋ねのございました港湾労働者雇用安定センター労働者派遣の業務運営に必要な財源をどのように確保するかという点でございますが、センターが行います労働者派遣業務の運営に必要な経費につきましては、事業主から徴収する労働者派遣に関する料金をもって充て、国もその費用の一部を補助することといたしております。  このうち労働者派遣に係る料金につきましては、労働者派遣に関する基本契約に基づいて取扱貨物量に応じて徴収する基本料金と、個別の労働者派遣契約に基づきまして派遣いたしました場合に徴収する利用料金との二本立てにしたいというふうに考えております。またセンターの労働者派遣業務の運営に対する国の助成につきましては、国はその業務に要する経費の三分の一を補助するということにいたしたいと考えております。
  96. 関山信之

    関山委員 なお、この問題についてお尋ねをしたいのですけれども、ただいまお話がございましたように、労働者派遣に関する料金のうち基本料金については、センターと事業主との間の労働者派遣に関する基本契約に基づいて徴収するものであるということなんでありますけれども、そうだとすれば、すべての事業主がセンターとの間に労働者派遣に関する基本契約を結ぶことが制度の前提として確立をされておりませんと、この運営が成り立たないわけであることは当然であります。例えばうちの企業は企業常用だけで作業するから派遣は絶対に使わぬということを言い出し始めたら、これはだめなわけでありますから、そういう事業者がいても、必ず労働者派遣に関する基本契約を結んで基本料金を徴収するということでなければならないと思うのですね。しかし、実態は必ずしも従来そうなっていない部分もあるやに私どもは聞くものでありますから、この点非常に心配いたしておりまして、基本契約を結び基本料金を徴収するということについて、重ねて御見解をいただきたいと存じます。
  97. 岡部晃三

    岡部政府委員 事業主がセンターとの間に労働者派遣についての基本契約を結ぶか否かということは、基本的には事業主の自由にゆだねられているものではございます。しかしながら、御指摘のとおり、この基本契約というものはセンターが行う労働者派遣業務の基礎になるわけでございます。したがって、港湾における荷役の波動性を考慮すると、すべての事業主が基本契約を結んでいくという必要があると考えられるわけでございます。その方向でアウトサイダーが出ないようにひとつ港運業界に対して指導を行ってまいりたいと考えております。
  98. 関山信之

    関山委員 運輸省おいでいただいておりますね。お聞き及びのとおりなんですが、このセンターと事業主との契約関係については労働省の指導できちっとやってもらわなければならないのですけれども、一方、これを受ける方はこの港湾運送事業法ということになるわけでございまして、運輸省としても、本制度の財源は、ただいま御説明のように、事業主からも基本料金を取る、この料金は事業者の納付金、それと国の補助金によるものである、こういう御説明があったわけでございますけれども、事業者の納付金は運輸省の所管による料金認可制度によるものでございまして、この料金制度が完全に履行されなくては、今の御答弁もしり抜けになってしまうということになるわけでございまして、今後ともこの認可料金制度の中における港労法付加金制度をきちっと維持されることは当然だと思いますけれども、なお実態は、運賃ダンピングにより実際にユーザーの負担すべきものが事実上事業者にしわ寄せされるといったようなケースも指摘されることもございますだけに、この港労法付加金を制度としてきちっと維持していくのかどうか、そしてまた完全収受に対するきちっとしたお立場を求めたいわけでございますけれども、御見解をいただきたいと存じます。
  99. 龍野孝雄

    ○龍野説明員 先生御承知のとおり現在の港湾労働法関係付加金と申しますのは、港湾労働法に基づく日雇い港湾労働者登録制度の円滑な運営を行うために、利用者理解も得まして、元請取扱量に応じまして一トン当たり一・五円というのを料金に付加して利用者から収受いたしまして港湾運送事業者が拠出している制度でございます。今回新しく港湾労働法制定されるわけですけれども、そうなりますと、今度は港湾労働者雇用安定センターによりまして港湾労働者の派遣業務というのが効率的に行われるものと思われますけれども、やはり同業務の円滑な運営のためには利用者の協力も当然必要であろうというふうに考えておりまして、我々としても、現在と同様の港湾労働法関係付加金制度につきましては、その維持を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。  それから、料金の完全収受の問題でございますが、我々完全収受の問題につきましては、基本的にはやはり事業者自身が自覚を持って取り組んでもらわなければならない問題というふうに思っていますけれども、この港湾運送料金というものが港湾運送事業法に基づく認可料金ということでございます。そこで運輸省におきましても、従来から料金監査等を実施いたしまして、違反事実が認められた事業者に対して警告等を発し、その改善措置を講じるよう指導を徹底してきたところでございまして、今後とも完全収受に向けまして鋭意指導に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  100. 関山信之

    関山委員 どうぞひとつ従来以上強い御指導をもって新しい制度が成功していきますように御配慮いただきたいと思うのです。  なお、もう一つ伺っておきたいのですが、これは杞憂と言われればそれまでなんですが、本法改正に伴って事業法の方で免許基準の引き下げや緩和が行われるのじゃないかといったようなそういう心配もまたあるわけでございますが、この点についてはそういうようなことはないでしょうね。
  101. 龍野孝雄

    ○龍野説明員 今回の港湾労働法制定に伴いまして港湾労働者雇用安定センターというものができるわけでございますけれども、我々としては、このセンターの発足に伴って港湾運送事業法に規定する免許基準を引き下げるということは考えていないわけでございます。
  102. 関山信之

    関山委員 なお、もう少し時間をいただきまして、先ほど雇用秩序に関する法律条文に関する御議論を大分やらせていただきましたが、一、二、お尋ねをしたいと思うのです。  これもまさに懸案となって今日まで続いている課題なんですが、雇用秩序、いわゆる人づきリースや自動車専用船のドライバーの問題なんですね。とかく雇用秩序に関する問題点として指摘をされてきているわけですけれども、新法施行によりこれらの技能労働者すべて企業常用、またセンターの常用になるものというふうに考えたいわけでございますが、よろしゅうございましょうか。
  103. 岡部晃三

    岡部政府委員 人つきリースの問題につきましては、フォークリフト等の荷役機械事業主そのものの自己所有とするか、あるいは人のつかない機械のみの受け入れというふうな形をとっていただきまして、その運転手につきましては、事業主雇用する労働者あるいはセンターが派遣する労働者、こういう通常の形を充ててもらうということで、その人つきリースにつきましては、利用を抑制するように事業主等を指導してまいりたいと考えているところでございます。  それから、自動車専用船のドライバーでございますが、これにつきましても、今申し上げたような企業常用及びセンター常用によって必要な労働者確保されるように、この面も指導してまいりたいと考えております。
  104. 関山信之

    関山委員 それから、もう一つお願いをしたいと思うのですが、いわゆる荷役調整の問題でございます。  昨年十月の港湾調整審議会の建議では「港湾運送事業主が行っている荷役調整は、港湾運送事業法による適切な請負作業である限り差し支えないものとする。」また「港湾労働者関係港湾運送事業主間で相互に融通するような雇用調整は、労働者派遣法により禁止されるものである。」というふうにされておりまして、これは一応妥当な考え方だと思うわけでございます。しかし問題は、先ほど来申し上げておりますように、荷役調整の名のもとに、実際には違法な再下請あるいは港湾労働者の相互融通が行われている場合が多いということなんでございまして、したがって、荷役調整を認めるとしても、この荷役調整の偽装を許さないよう有効な歯どめあるいは客観的な判断基準というものが必要でございまして、少なくとも新法施行までには、こうしたものをきちっと策定すべきではないか、かように考えるわけでありますが、いかがでございましょうか。
  105. 岡部晃三

    岡部政府委員 いわゆる相互融通につきましては、事業主間において労働者を貸し借りするという制度でございますので、これは職業安定法あるいは労働者派遣法に抵触するものでございます。しかし、この荷役調整の方につきましては、事業主間における荷役作業を行う事業主の変更ということでございまして、港湾運送事業法上の適法な請負として行われるものである限り差し支えないものであるというふうに考えられるわけでございます。今後荷役調整と相互融通との区別につきましては、関係審議会意見等を十分にお聞きをいたしまして、元請事業主との請負契約の有無、労働者に対する指揮命令関係等の観点から基準を作成することも含めまして検討してまいりたいと考えております。
  106. 関山信之

    関山委員 本会議関係もあって審議時間を少し詰めてというお話もございますし、私もその点ではいろいろ御答弁をいただいておりますので、最後の締めくくりにしたいと思うのです。  問題の一つは、たとえ立派な法律ができて立派な御答弁をいただいても、これが現実に守られなければ何の有効性も保ち得ないということでございますし、従来も港湾労働法はございまして、それなりの法の規定もあり、労働省のそれなりの通達も指示もあり、指導監督もあるのです。しかし違法行為が絶えず摘発をされたり、一方では行政体制の不十分さや取り締まりの姿勢の弱さというものが指摘をされておるのでございますが、先ほど職業安定所の指導官の体制などについてもちょっとお尋ねをして、これは残念ながらお答えをいただけなかったわけですけれども、決して十分なものだとは言えない。横浜なども港の安定所は三人しか指導官がいないというようなことで、これはとても現状に対応できる体制ではないというようなことを考えますと、こうした問題に対する体制の整備というものを十分にお考えいただかなければならぬのじゃないか。  私、冒頭に申し上げましたように、日本の経済成長はすばらしいものがあって、まさに世界に冠たる経済大国になった。しかしなお貿易摩擦その他いろいろと言われて、経済大国生活三流、四流なんて言われたり、長時間労働が指摘されたりするわけですけれども、港湾労働におけるまさにダーティーな部分と言っていいのでしょう、そういうのを直視をしていただいて、勇気を持ってこれに対処をしていただくことにおいては、この問題をめぐっての労働省の果たす役割というのは、一国内の労働行政に対する域を超えて大変な役割を持っているのじゃないか、私はかように考えておるところでございまして、どうぞひとつ法の十分な運用に御努力、体制の整備をお願い申し上げたいと思うのです。それが一つです。  それからもう一つは、私もこの間政労交渉の経過をそれなりに承知をいたしております。実に精力的に相互の御努力が積み重ねられたことを私十分承知をいたしております。きょう伊藤委員と私との質問で触れられなかった多くの合意事項の確認もあるわけでございます。どうぞひとつこれについては誠意を持ってこの合意を守り育てていただきたい。  この二つの点について、最後に大臣の御答弁をお願い申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  107. 中村太郎

    中村国務大臣 御指摘の点は大変大切であると私も承知をいたしておるわけであります。この法律が施行された場合においては、公共職業安定所の新たな業務として、港湾労働者雇用管理の改善の指導等の業務を行うとともに、需給調整の面においては、日雇い労働者公共職業安定所紹介の原則に加えまして、港湾において新たに労働者派遣が行われることとなるわけでございますので、その雇用秩序確保するために公共職業安定所の組織体制を整備しなければなりませんし、またかてて加えて、港湾運送事業主への立入検査、やみ雇用等の防止のための指導を初めといたしまして、法案成立を機会に労働省としましては決意を新たにいたしまして、真剣に諸般の問題に取り組んでまいる所存であります。
  108. 岡部晃三

    岡部政府委員 最後に先生触れられましたこれまでの政労交渉の積み重ねの成果につきましては、これを十分に尊重してまいる所存でございます。
  109. 関山信之

    関山委員 どうもありがとうございました。
  110. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ────◇─────     午後三時四分開議
  111. 稲垣実男

    稲垣委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。吉井光照君。
  112. 吉井光照

    ○吉井委員 港湾労働法は、港湾運送事業の公益性を考え港湾運送に必要な労働力確保港湾労働者雇用の安定及び福祉の増進を目的として昭和四十年に制定されまして、以来二十三年を経過したわけでございます。  この間に、港湾運送事業は貨物輸送のコンテナ化、荷役作業の機械化、設備の近代化等による輸送改革、省力化が著しく進展したことに伴いまして、港湾労働事業というものが大きく変貌をしたわけでございます。  すなわち、技能労働者需要増大した反面、単純労働者の求人が大幅に減少した、日雇い港湾労働者の余剰化が顕著になりまして、雇用調整手当財政も破綻する等の問題が生じたわけであります。そのために、法改正についてさまざまな経緯はあったものの、今回この法案で、これらの諸問題解決のために総合的かつ抜本的に見直されることになったわけであります。しかし、本案を見ますと、なお若干の問題点が含まれておりますので、午前中の質疑と重複する点があると思いますが、何点か質問をさせていただきたいと思います。  まず、質問に先立ちまして、ちょっと確認をしておきたいことでございますが、この港労法は、先ほど申し上げましたように昭和四十年に制定をされた。ところが四十八年の七十一国会におきまして改正案が提出をされたわけでございます。そして審議未了で廃案になった経過があるわけでございますが、そのときの改正の内容、それから改正案提出必要性、なぜこのときにこの改正案を提出する必要があったのか、またその廃案になった経緯について先にお尋ねをしておきたいと思います。
  113. 野寺康幸

    ○野寺説明員 お答えいたします。  港湾労働法の改正の経過ということでございますが、四十八年に改正案を国会提出いたしたわけでございますが、成立には至らなかったわけでございます。  その中身は、この法律ができました昭和四十年以降、急激に荷役革新進展いたしたわけでございます。当初、登録日雇い港湾労働者就労がこれほど悪くなるとは考えておりませんでしたが、この荷役革新によりまして急激に就労状況が悪化したわけでございます。そういう実情に着目いたしまして、港湾労働者雇用の安定という法律本来の目的から見まして大変好ましくない状況であったということになりまして、時の七十一通常国会登録日雇い港湾労働者雇用機会を確保するために、事業主によります共同雇用体制の確立を図ることを目的とする一部改正案を提出いたしたわけでございますが、最初に申し上げたとおり、国会の中で正式に成立するに至らなかったわけでございます。
  114. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、ILO条約についてお尋ねをいたします。  今や国際化の流れの中で我が国が占める地位、また役割は大変重要であります。この点にかんがみれば、現在二十数カ国が批准しておるところのILO港湾労働条約第百三十七号ですか、これを一刻も早く批准すべきではないかと思うわけですが、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  115. 中村太郎

    中村国務大臣 労働省としましては、ILO第百三十七号条約内容港湾労働法によりおおむね満たされているものと考えております。  湾港労働関係者間に条約内容理解について、例えば港湾労働者就労生活保障の責任を負うべき者の範囲について荷主、船社等の港湾利用者も含まれるか否かという問題、第二には、港湾労働法適用範囲について、六大港以外の港湾にも適用しなければならないかどうか、これらの問題を初め幾多の点におきまして理解の度合いに相違が見られるわけでございまして、このような状況のもとで同条約批准することは適当でないと考えていたわけでございます。  労働省としましては、第百一回国会における港湾運送事業法の改正の際の附帯決議の趣旨を尊重しまして、関係審議会の場を通じ関係者における共通理解形成に努める等条約批准に向けて必要な条件整備をこれからも進めてまいる所存でございます。
  116. 吉井光照

    ○吉井委員 批准できないでいる現在ですが、最も大切なことは、この条約に沿ったところの国内法を整備することではないかと思うわけです。その意味で、今回の改正案がILO条約に基づいた積極的なものであると言えるかどうか、この点はいかがですか。
  117. 岡部晃三

    岡部政府委員 ILO百三十七号条約の精神は、一言で申し上げますと、常用化促進せよ、こういうことであろうと思うのでございます。  今回の法改正におきましては、港湾労働者雇用の安定を図る観点から、港湾労働者雇用改善を図りまして、その常用化促進するというふうなことでILO百三十七号条約の趣旨をさらに反映する、こういう考え方で私ども作業に臨んだところでございます。
  118. 吉井光照

    ○吉井委員 仄聞するところによりますと、ILO条約批准に向けて今後港湾調整審議会で検討をしていく、こういうことですが、昨年十月に労働大臣提出をされた港湾調整審議会意見において、一定時期に制度見直しを行う必要があること、このように言われておることからかんがみれば、本法施行後もこの法律の見直しが必要とのことです。この場合、ある程度の目安というものが必要ではないかと思うのですが、いつごろを考えていらっしゃるのか、お尋ねをしたいと思います。
  119. 岡部晃三

    岡部政府委員 この法律が仮に成立した場合において、法律そのものの見直しについての目安はどうかという御趣旨でございましたならば、これは現時点におけるベストのものとして提案申し上げているということでございますので、その辺は今後の事態の推移に即してということに相なろうかと思うのでございます。  それから、日時的な目安ということで、ILO条約批准に向けての目安というお尋ねでございましたならば、これは関係審議会における検討でございますので、時期的な目安をお示しすることは困難でございますが、これは関係者における共通理解形成され次第というふうなお答えになろうかと思うのでございます。
  120. 吉井光照

    ○吉井委員 では、改革案のねらいについて若干お尋ねをしていきたいと思うのです。  今回の改正案を通して、政府は将来におけるところの港湾労働者のあり方、そして方向性についてどのように考えていらっしゃるのか。これは大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  121. 中村太郎

    中村国務大臣 近年港湾運送荷役革新進展いたしまして、荷役作業内容等については機械化の進展等が著しいが、他方港湾運送事業の事業活動の波動性等の関係では、企業内の常用労働者のみによっては必要な労働力確保し切れない状況は変わっていないわけであります。このような状況のもとで、今後の港湾労働対策としては、港湾運送に必要な労働力を質的かつ量的に確保するためには、港湾労働者雇用の管理の改善を図りつつ適切な雇用調整を行うことが必要であると考えております。  今回の法改正は、このような理解の上に、港湾労働者に対して荷役作業の機械化の進展に対応した技能が習得できるよう職業訓練を的確に行うこと。さらに荷役の波動性に対応するための労働力確保するに当たっては、日雇い労働者を使用するよりも労働者派遣による常用労働者を活用することが適当であることという点を考慮いたしまして、現行港湾労働対策を見直そうとするものでございます。
  122. 吉井光照

    ○吉井委員 政府の言われるところの港湾労働者雇用の安定化を着実に図っていくためには、その基本計画というものが大変重要になってくるわけでして、この点を明確にしておかなければならないと思うわけですが、現行港湾雇用調整計画と今回の港湾雇用安定等計画というのはどこがどう違うのですか。
  123. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 お答え申し上げます。  現行法に基づきます港湾雇用調整計画は、一言で言うならば安定所とか雇用促進事業団というところの行政運営指針であり、今回の法律で考えております港湾雇用安定等計画は、事業主指定法人による業務取り組みの運営指針、そういう民間における業務取り組みの運営指針としての性格が強いということでございます。  詳細に申し上げますならば、現行法においては港湾運送に必要な労働力確保するため公共職業安定所雇用促進事業団等の公的機関が運営の中心となる日雇い港湾労働者登録制度を設けていることから、それらの公的機関のいわば行政運営を示すために労働大臣港湾雇用調整計画を策定することとされております。  これに対しまして、今後における港湾労働対策は、事業主による雇用改善に対する取り組みの促進、二番目に民間団体である指定法人による雇用管理、能力開発のための措置及び雇用調整実施が重要な内容となるものであり、改正後において労働大臣が策定する港湾雇用安定等計画は、事業主及び指定法人における取り組みの運営指針としての性格が強くなるものであると理解いたしております
  124. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、六十二年度におけるところの雇用調整手当等の国庫補助、これは四億五千万円。改正後においても国は財政面でこれに見合った措置を講ずる必要があるわけですが、港湾労働者雇用安定センターに対する補助は六十三年度においてどの程度の金額を予定されていらっしゃるのですか。
  125. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターに対する国庫補助が昭和六十三年度においてどのくらいかというお尋ねでございますが、この法律の施行は法律の附則の最初にございますが、「六十四年一月一日」からとなっております。したがいまして、六十三年度中は第四・四半期、すなわち六十四年の一月から六十四年の三月分までの予算が計上されることになりますが、その経費としては八千八百万円余を予定いたしております。
  126. 吉井光照

    ○吉井委員 常用港湾労働者によるところの雇用調整をねらいとする一方で、登録制度及び雇用調整手当制度の廃止に見られるように、いわゆる人と物と金減らしである行革をねらいとするものではないかと思われるわけです。特に雇用安定センターに対する国の補助金が平年度ベースで三億五千万と聞いておるわけですが、従来の国庫補助四億五千万と比較しますと、一億円の減額になるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  127. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働関係業務を行っております公共職業安定所につきましては、今回の改正によりまして、日雇い港湾労働者登録登録日雇い港湾労働者の職業紹介などの登録制度関係業務が廃止されるわけでございます。その限りにおきまして、この業務が縮小をいたすわけでございますが、一方新たな業務といたしまして、港湾労働者雇用管理の改善の指導等々の業務が追加されるほか、港湾において労働者派遣を実施することに伴う港湾運送事業主への立入検査、やみ雇用等の防止のための指導等を強化する必要があるわけでございます。そのために、これらの業務が円滑に推進されるように、その体制の整備に努めていくことにしておりまして、今後における港湾労働変化に的確に対処しようとする構えをつくっていけるものと私どもとしては考えております。これは単なる人、金、物減らしというようなことではなくて、真に港湾労働における常用化が進むように、こういう観点から進めてまいりたいと考えているところでございます。
  128. 吉井光照

    ○吉井委員 今回の改正で、いわゆる手配師によるところのやみ雇用問題は解決の方向に向かうのかどうか。無論このやみ雇用問題というものは早急に解決をしていかなければならない問題でありますが、この違法雇用の取り締まりをもっと強化すべきではないか、このように思うわけですが、御意見をお伺いしたいと思います。
  129. 中村太郎

    中村国務大臣 今回の改正は、輸送革新進展に伴い、港湾運送に必要とされる技能労働力の円滑な確保を図ることを目的として行うものでありまして、これによって手配師の存在を必要としない方向に向かうものと考えてはおりますけれども、さらばといって手放しをするわけにはまいりません。港湾においては、従来からやみ雇用中間搾取等違法就労の問題が指摘されてきたところでもあり、労働省としましては、今後とも関係行政機関との連携を密にしながら、合同立入検査実施あるいは港湾労働法遵守強化旬間の設定等により、従来にも増しまして雇用秩序維持に努めてまいらなければいけない、このように考えておるわけであります。
  130. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、雇用管理者についてお尋ねをいたしますが、事業主雇用管理者の選任を義務づけるのはどういうわけなのか、また雇用管理者は具体的に何を行って、そしてどのような責任があるのか、お尋ねをしたいと思います。
  131. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 今後とも輸送革新進展に対応した必要な良質労働力を安定的に確保をいたしますとともに、港湾労働者雇用の安定その他福祉の増進を図ってまいりますためには、やはり事業主がみずからの努力によって雇用管理に関する事項の改善促進していくことが肝要であると考えます。このような雇用管理の改善を進めるに当たりましては、事業主における企業内の雇用管理体制を整備するとともに、雇用管理の実務担当者が雇用管理のために必要とする知識を正しく、深く理解し、持つことが適正な実務処理を行う上で必要でございます。  このため、第一番目として、港湾運送事業主雇用管理者の選任を義務づけますとともに、雇用管理者が処理すべき事項を明確にすることによって雇用管理体制の整備を図ることといたしております。また第二番目に、雇用管理者に対する研修に関しまして必要な措置を講ずることにより、雇用管理者の資質の向上を図っていくこと。この二点によりまして、的確な雇用管理の実施確保してまいりたいと考えているわけでございます。  第二番目の御質問雇用管理者が管理すべき事項としてどのようなものがあるかというお尋ねでございますが、雇用管理者が管理すべき事項としては、当該事業場における雇用管理の改善を計画的に進めるために必要となる、第一に雇用労働者の採用計画、第二に港湾労働者の配置、処遇計画、第三に港湾労働者教育訓練計画の策定等々のほか職業安定所との連絡調整に関することなどがその事項として考えられます。
  132. 吉井光照

    ○吉井委員 今御答弁をいただいた数々の点をいろいろと考え合わせますと、この雇用管理者の役割というものは非常に重要なわけでございます。したがって、その資格について何らかの制限を設けるべきではないかと思うのですが、いかがですか。
  133. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 雇用管理者が管理することとされますこれらの事項につきましては、雇用主として当然に管理しなければならない事項でございまして、これらの事項の管理は、御指摘のように関係法規等の正しい理解の上に立ち、的確に行われる必要があり、その意味において雇用管理に熟達していただかなければならないものでございますが、特段の国家資格は要しないものではないかというふうに考えております。
  134. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、港湾労働者雇用安定センターについてお尋ねをしたいと思います。  労働大臣指定する港湾労働者雇用安定センターは、国が主体で運営するのか、それとも民間が主体で運営するのか。またそれは民間だとしますと、国はこれにどうかかわっていくのか、お尋ねをしたいと思います。
  135. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターは、民法に根拠を持ちます民間団体である公益法人のうちから指定し、この公益法人がセンターの運営に当たることといたしておりますが、御指摘のように、その業務の公益性が極めて強いことから、労働大臣は、センターの適正かつ確実な運営を確保する観点から、必要な指導監督を行うことといたしておりますし、また事業計画の認定でありますとか業務運営に関するいろいろな規定に関しましても一定のかかわりを持って必要な指導監督ができる、そういう体制にいたしております。
  136. 吉井光照

    ○吉井委員 法律上は今おっしゃったように純民間であるということでございますが、国が運営費の一部を補助をし、また指導をしていく方針ですね。ところが今度はこれにトラブルや事故が生じた場合は一体だれか責任をとるのか、お伺いをしたいと思います。またセンターを指導してきた、その場合に国の責任というのはどうなるのか、この点、あわせてお聞きをしたいと思います。
  137. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターの運営に関しましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、指定法人がその運営に当たるわけでございますから、指定法人が運営いたしますセンターみずからがトラブル等が生じないように努力すべきものであることは当然でございます。これに対しまして、労働省としても、そうしたトラブルや事故が生じないよう監督命令あるいは役員の選任、解任の許可等を通じて十分な指導監督をしてまいりたいと考えております。
  138. 吉井光照

    ○吉井委員 今起きないように指導していく、これは当然でございますけれども、将来にわたって事故が絶対起きないとは言い切れないわけで、もしトラブルや事故が起こった場合にはどうされるのですかと聞いているのです。
  139. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 センターの運営主体は指定法人でございますが、センターも一つの人格を持つものでございますから、トラブルあるいは事故が起きましたら、その責任はセンターそれ自体にあるわけでございます。それに対しまして、国として十分な指導監督をし、トラブルあるいは事故があった場合に、必要があれば役員の選任、解任等の措置を講じ、センターの責任を明らかにするとともに、自後そのような事故、トラブルが再発しないような措置を講ずる、そういうことでございます。
  140. 吉井光照

    ○吉井委員 それでは、この港湾労働者雇用安定センターとしてどのような公益法人を指定することを予定しているのか。またそのセンターの役員及び職員についてはどのような人がなるのですか。
  141. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターとしてどのような公益法人を指定するかというお尋ねでございますが、法律の第十二条に規定されておりますように、港湾労働者雇用の安定その他の福祉の増進を図ることを目的として設立された公益法人であって、センターの業務を適正かつ確実に実施できると認められるもののうちから指定するということでございます。具体的には現在センターとして指定されて業務実施する意欲を有し、かつ適確性のある公益法人として、昭和六十年四月に設立されました財団法人港湾労働安定協会がございますので、同協会を指定するのが適当ではないかと考え指定することを予定いたしております。  次に、役員及び職員についてのお尋ねでございますが、この財団法人港湾労働安定協会の役員は、現在ほぼ同数の労使の代表によって構成されております。また派遣等の業務に新たに携わる職員につきましては、港湾労働の実情に詳しい人がそれに当たることが望ましいのではないかというふうに考えております。
  142. 吉井光照

    ○吉井委員 この法改正に伴う労働省と全港湾との交渉経過の中で、政府は再三センターの指定条件として三者構成の諮問的機関の設置を明言している、このように聞いておるわけですが、港湾労働者雇用安定センターの適正な運営を確保するためにぜひとも三者構成の諮問的機関を設置するべきではないかと思います。これについては、先ほどの答弁で触れられたように思いますけれども、もう一度はっきりと御答弁を願いたいと思います。
  143. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センター業務実施に当たりましては、労働大臣が各種の監督規制を行いますほか、関係者意見も十分に踏まえてその適正な運営を確保していくことが必要であると考えております。このため三者構成による諮問的機関の設置につきましては、これを含めて同センターの行う業務について関係者意見を述べる機会を確保する体制が講じられていることを必要に応じてセンターの指定条件としたいというふうに考えております。  なお、ただいま先生の御質問の中に、前問で触れられているように思うがというお言葉がございましたが、現在指定を予定いたしております財団法人の港湾労働安定協会におきましては、役員がほぼ労使同数によって構成されているということを考えますと、そのことによって関係労使意見がセンター運営に十分反映されることになるのではないかと考えております。
  144. 吉井光照

    ○吉井委員 それではセンターですが、職員は何人ぐらいを予定されているのか、またセンターの業務内容についてお伺いをしたいと思います。
  145. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センターの職員は現在全体で四十六名を予定いたしております。またセンターの行う業務の主なものを申し上げますと、第一に、「港湾労働者雇用の安定に関する調査研究を行うこと。」二に、「事業主に対し、港湾労働者雇用管理に関する技術的事項について相談その他の援助を行うこと。」三、「雇用管理者に対する研修を行うこと。」四、「港湾労働者に対する訓練を行うこと。」五、「港湾運送業務に関し、労働者派遣を行うこと。」以上の五項目がセンターの行う業務の主なものでございます。
  146. 吉井光照

    ○吉井委員 今いろいろと安定センターの業務内容を御答弁いただいたわけですが、現在は六大港合わせて六十名の職員で業務が行われているわけです。したがって、今度これが安定センターになりますと、今おっしゃったように、現行より十四名少ない四十六名という員数になるわけですが、これで十分対応ができますか。
  147. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 労働省といたしましては、現在予定しております職員数、組織体制で問題はないものと考えておりますが、いずれにいたしましても、港湾労働者雇用安定センターの適切かつ確実な業務実施に支障を来さないように、法施行に当たりまして指導監督を十分行いますとともに、そういう観点から事業計画の認定を行うなどを通じまして、実施体制面での必要な指導援助を十分に行ってまいりたいと考えております。
  148. 吉井光照

    ○吉井委員 それではセンターが抱えるところの常用労働者の定数、これはどの範囲が適当だと考えていらっしゃるのか。聞くところによりますと、全体で七百名から八百名ではないか、このように聞いておりますが、いかがですか。
  149. 岡部晃三

    岡部政府委員 安定センターがいかなる労働者雇用するかということは、センターが定める採用基準によって決まるわけでございます。その場合、現在の登録日雇い港湾労働者のうち、港湾労働者雇用安定センターに移行することを希望する者であって、技能労働を中心とする荷役作業に体力的な面でも十分に対応できるという一定年齢以下の方々が移行することが適当であると考えるわけでございます。  そこで、一体どれぐらいの数になるかということは、センターがその採用基準に従いまして、今後具体的に決定をされていくものであろうかと思うのでございますが、やはり現在の登録日雇い港湾労働者のすべての方が移行できるかということは、先ほど申し上げたような体力面あるいは技能面からいって若干の方が行けないというふうになるのもやむを得ないことではないのかなと考えているところでございます。
  150. 吉井光照

    ○吉井委員 ちょっと答弁が先に行ったようですが、では現在の登録日雇い港湾労働者港湾労働者雇用安定センターに移行した場合に、その所得はどうなるのですか。
  151. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 現在の登録日雇い港湾労働者港湾労働者雇用安定センターに移行した場合、その所得はどうなるかというお尋ねでございますが、まず平均として申し上げたいと存じますが、登録日雇い港湾労働者昭和六十一年度における平均月収は二十一万五千円となっております。他方、港湾労働者雇用安定センター雇用される港湾労働者の平均月収は、若干ながらこれを上回るものと見込んでおります。
  152. 吉井光照

    ○吉井委員 それでは、この雇用安定センターの常用労働者と企業の常用労働者との所得の格差というものは生じるのですか。
  153. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 港湾労働者雇用安定センター常用労働者と企業の常用労働者との所得格差が生ずるのかというお尋ねでございますが、港湾労働者雇用安定センター雇用される港湾労働者の賃金を初めとする労働条件は、事業主雇用される港湾労働者の労働条件と同様に、労使間で自主的に決定されるべきものであると考えておりますが、労働省としては、両者の労働条件は基本的には同一水準であることが望ましいものと考えております。
  154. 吉井光照

    ○吉井委員 次に、議員修正事項についてお尋ねをしておきたいと思いますが、さきの政府答弁によりますと、労働者派遣に係る事業主努力義務規定を規定する第二十六条を義務規定とする場合であっても、これに罰則をつけることは一般の営業の自由との均衡を失するとのことでありますが、事業主の営業の自由の保障を言うのであるならば、仮に第二十六条を義務規定とした場合には、既に営業の自由というものが規制をされておって罰則をつけても同じではないか、このような考え方もあるわけですが、いかがですか。
  155. 岡部晃三

    岡部政府委員 法制上の問題でございますが、一般に労働者を雇い入れる場合におきまして、いかなる範囲の者を選ぶかということは、事業主の自由に任されておるのが法制上の建前でございます。いわゆる雇い入れの自由と言われているものでございます。したがいまして、港湾運送事業主に対してのみこの港湾労働者雇用安定センターが派遣する労働者を優先的に使用することを罰則をつけた形で強行規定によって義務づけるということにつきましては、一般の雇い入れの自由との均衡を著しく失するということでございまして、憲法上の理念に反するという考え方で、これは法制局等とのすり合わせの結果、その辺の問題を回避するということが必要なことであろうと思うのでございます。  労働省といたしましては、直接公共職業安定所港湾運送業務に従事させるために日雇い労働者の求人を申し込む事業主に対しまして、港湾労働者雇用安定センターに派遣の申し込みを行うように指導いたしますとともに、必要に応じて法七条一項の規定による勧告を行うということで対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  156. 吉井光照

    ○吉井委員 また、第九条第一項の港湾労働者雇用に関する届け出義務に罰則をつけていないのは、第十条第一項の日雇い労働者雇用に関する公共職業安定所紹介の原則に罰則をつけることとの整合性というものが図られていないのではないかと思うのですが、この点はいかがですか。
  157. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用に関する届け出義務でございますが、これは日雇い労働者の雇い入れ規制の実効を確保するということを直接の目的とするものであることは、先生御高承のとおりでございます。究極的には、港湾運送に必要な労働力の迅速かつ的確な需給調整を確保いたしますとともに、港湾における日雇い労働者に第三者が介入することを排除することを目的とするものでございます。このような手続的な届け出義務でございますが、これは港の状況が相当変わってきているという言葉に表現されますように、雇用関係近代化すべきであろうという意識そのものにつきましては、事業主を初め関係者に相当浸透してきているのではないかなと私ども感じているわけでございます。そのような変化状況にかんがみまして、罰則を科する必要はないのではなかろうか、このように感じているわけでございます。
  158. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、プール労働者への移行についてお尋ねをしたいと思います。  仮に今回の改正案が施行されますと、登録日雇い労働者のどれぐらいの人がプール労働者となるのか、またプール労働者となれない人はどのくらいが見込まれるのか、お答えをいただきたいと思います。またどのような登録日雇い労働者がプール労働者となれるのか、この点もあわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  159. 野寺康幸

    ○野寺説明員 先ほど若干採用基準の問題を申し上げました。新しいセンターがどのような人を採用するかはセンターがみずから採用基準を定めて採用するわけでございます。現在の登録日雇いの方が基本的にそちらに移行することが望ましいわけでございますけれども、センターといたしましては、その採用基準の中に、いろいろ体力的な面、適性の面あるいは定年といったようなものも当然そこに入ってくるわけでございます。そういう意味では、その採用基準に合致しない方がプール制度の方に移行できないという事態も生ずるわけでございます。  何人ぐらいが移行できないのか、移行した後のプール制度の規模はどのぐらいになるかというお話につきましては、その採用基準いかんでございますけれども、例えば定年制をしきまして、その定年を六十歳というふうに仮に定めますと、現在登録日雇いの方が六大港で約千人強いらっしゃいます。そのうちおおむね三百人程度が六十歳以上の方でございますので、それを除いた方が基本的にプール制度に移行するのではないかということも考えられるわけでございます。そうしますと、この新しいプール制度の方は約七百人強というような人数になるのではなかろうかというふうに思います。
  160. 吉井光照

    ○吉井委員 今おっしゃったように、年齢というものを基準とするのであるならば、港湾労働が非常に重労働である点を考えると、これは問題があるかもしれません。今後の輸送革新考え合わせて、また高齢者雇用対策とも整合性を図る見地からすると、六十五歳ぐらいが適当ではないかと思うのですが、いかがですか。
  161. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センター雇用する港湾労働者について定年制あるいは制度移行時の年齢制限を設けるか否か、あるいは設ける場合に、具体的に何歳にするかというようなことは、基本的に労使間において自主的に御決定いただくべきものであろうと考えるのでございます。  そこで、労働省としてはどうか、こういうことでございますが、労働省といたしましては、港湾労働者雇用安定センターの適正かつ確実な運営確保を図るための指導を行うという立場から、今後とも労使意見を十分にお伺いいたしますとともに、港湾労働者に関する定年制の一般的な状況、それから高年齢者にかかわる雇用対策、これも労働省も一般的にやっておることでございますが、そういうものとの総合的な整合性、諸状況を十分に踏まえつつ慎重に検討してまいりたいと考えております。
  162. 吉井光照

    ○吉井委員 それでは港湾労働法適用対象港、これは一応第二条第一号で政令事項となっておるわけですが、法律上六大港に限定されているわけですが、この理由は何ですか。
  163. 野寺康幸

    ○野寺説明員 現在の港湾労働法では、政令によりましていわゆる六大港指定しておりまして、そこに港湾労働法適用してございます。  新法におきましても、このスタート時点におきましては、現在と同じ六大港でスタートするというのが労使合意であるというふうに理解しております。  その指定に当たります基本的な考え方でございますけれども、一つは国民経済に与えますその港の持っております重要性、それからその港におきます荷役の状態、果たして労働力関係につきまして特別な法律を適用すべきものであるかどうかといったようなことを総合的に勘案いたしまして、これを指定するわけでございますけれども、指定に当たりましては、もちろん関係審議会の場を通じまして関係者の御意見を十分お聞きいたしまして指定をするわけでございます。
  164. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、将来において本法の適用範囲を拡大または縮小すべき事態が生じた場合は、どのように対処をされるのか。例えば今話題になっておりますところの遷都論あるいは公的機関の地方移転等によって、その地域の活性化が図られていく、また産業の振側が著しく進展をしてきた場合、当然港というものも非常に活況を呈してくるわけですが、こうした場合があったとしても、やはり従来のままの港湾労働法でいくのかどうか、この点はいかがですか。
  165. 野寺康幸

    ○野寺説明員 どのような港湾に新港湾労働法適用するか、基本的な考えにつきましては、先ほども申し上げたとおりでございますが、今後とも港湾を取り巻く環境変化というものが考えられるわけでございます。そういった意味で、そういった環境変化に合わせまして適用すべき港湾見直していく必要というのは当然あるかと思います。先生おっしゃいましたような事情変化も当然そこの考慮されるべき事態であろうというふうに理解しております。
  166. 吉井光照

    ○吉井委員 そこで、六大港の一つでありますところの関門港は、御承知のように、小倉、若松、洞海、門司、下関の各港を含めた非常に広域港と言われておりますが、その中で、現在、下関港で次のような理由でこの六大港指定から除外してほしい、こうした声も上がっているわけです。  まず一つには、下関港の港湾運送ほぼとんど零細企業十四業者で行っているわけですが、最近五年間、五十七年から六十一年の年間平均取り扱い実績は、関門港の合計が四千八百万トンに対して、下関港が百十七万九千トン、いわゆる関門港と言われるうちのわずか二・四%ということでございます。このような弱小経営にもかかわらず、本法の適用を受けているために、労働安定協会への拠出金といいますか納付金といいますか、そういったものも非常に負担が大きい、このような現状のようでございます。  また、二つには、例えば下関と九州は、労働、陸運その他すべての行政面で管轄が分離されているわけですね、片方は福岡県、片方は山口県。こういうことで関門海峡を挟んでいるわけですが、海峡を隔てての距離的問題、こういったものもありますし、円滑、迅速な雇用調整というものが非常に難しい、行われにくいという点がございます。  また、三つ目には、こうした除外が認められなかったならば、恐らくこのセンターというものは門司港に設置されると思いますが、そのセンターまでの往復の時間、それからまた交通費というものは労働者等にとっては非常な負担になるんじゃないか。  また、四つ目には、昭和四十二年に下関漁港の方が指定から外されているという経緯、こういった問題から商港の方も同様にすべきではないかという意見が非常に高まりつつあるわけですが、こうした観点から、関門港の中から下関港というものを、非常に弱小といったものについて外すことができるのかどうか、その点はいかがでしょうか。現にお隣の博多港あたりは一千万トン近くの荷揚げをしておりますし、また同じ山口県でも下関のすぐ隣の宇部港では約七、八百万トン、それに比べて下関は百十八万トン、非常に弱小であります。そういう点から考えて、こういった声も上がってきているんではないかと思いますけれども、この点についての対応はいかがですか。
  167. 野寺康幸

    ○野寺説明員 大変詳しい御事情を御指摘いただいたわけでございます。確かに関門と一口に申しましても、門司、下関間ではその内容に大きな違いがあるというふうに考えることもできるわけでございます。  ただ、一方で港を把握いたします場合に、いろいろな事情で一つの港の労働市場圏というふうに考えるべき場合もあるわけでございまして、関門の場合はそういう考えで関門港というふうにしてとらえているわけでございます。  弱小の企業が多いという地元の御事情に詳しい先生の御指摘でございますが、一方で下関港の方は、最近、韓国関係の輸出入でかなり荷役がふえておりまして、そこにおきます日雇いの就労実績等から見ましても、かなり良好な就労の実態であるように考えることもできるわけでございます。確かに海峡を挟みまして北と南に分かれております関係上、仮に新しい法律で同じように適用するとした場合に、門司の方に行ったり来たりしなければいけない、交通費等の問題もあろうかと思います。そこで、私ども考えておりますのは、仮にここに一つの支部をつくるということにした場合、その本部はいろいろな事情から考えて当然九州側につくるということになりましょうが、山口県側にも支部的な、出張所的なくらいのものを置くことを考えておりまして、御指摘のような不便が生じないように、できるだけ解決したいと思っているわけでございます。  一方、別の点から考えて、先生の御指摘の下関港の方を外すという問題につきましては、従来の経緯から考えまして、少なくとも法律のスタート時点におきましては、現在どおりにスタートするのが適当であろうと考えております。仮に下関港を外すということになりますと、そこで現在就労しております登録日雇いの方等の生活の不安の問題もございますし、とりあえずスタート時点では、現在どおりにスタートすべきであると考えております。
  168. 吉井光照

    ○吉井委員 ちょっとさっきの話と変わるわけですが、さっきのプール労働者の問題について一点聞き落としておりましたので、お尋ねをしておきたいと思うのですが、そのプール労働者になれなかった労働者の皆さん方に対して、生活激変緩和措置考えていらっしゃるのかどうか、また考えていらっしゃるとしたならば、どのような措置なのか、ひとつ具体的に教えていただきたいと思います。
  169. 岡部晃三

    岡部政府委員 今般の法改正に伴う登録制度の廃止を機会といたしまして、登録日雇い港湾労働者の中には、センターに移行し得ないというようなことなどによりまして、職業生活の安定を損なわれるという方々が生ずることが見込まれるわけでございますが、これらの方々の就職の促進、あるいはまた生活の安定を図るための措置といたしまして、雇用促進事業団が暫定業務を行うことといたしております。この措置は、登録日雇い港湾労働者であった方のうち、その就職の促進及び生活の安定を図る必要がある、そういう方々に対しまして、まず第一点は、就職のために必要な知識及び技能を習得していただくための講習、第二点は、職業及び生活に関する相談、第三点は、求職活動の促進生活の安定を図るための給付金の支給、これを行うものでございますが、その具体的な内容及び実施方法につきましては、今後関係者意向を踏まえながら慎重に検討してまいりたいと考えております。
  170. 吉井光照

    ○吉井委員 では次に、教育訓練についてお尋ねをしておきたいと思います。  港湾労働者雇用安定センターは、その常用労働者輸送革新技術革新に対応できるように教育訓練実施していくということですが、具体的にどのような訓練計画に基づいて、どのような訓練実施をし、そして最終的にどのような職種にプール労働者がつけるのかを明らかにしていただきたいと思います。
  171. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者技能向上、能力の開発につきましては、港湾雇用安定等計画において、これを促進するための方策に関しまして定めることになっております。港湾労働者雇用安定センターがその常用労働者に対して行う教育訓練につきましても、この計画に示された方向に沿って計画的に実施されることになるわけでございます。  さて、具体的な内容でございますが、例えばこれは技能労働力需要の動向を見きわめながら行わなければいけませんが、大まかに申し上げまして、必ず必要であると思われますのは、荷役機械の運転技術の習得でございまして、これに最重点を置いて訓練実施いたしまして、機械運転者の養成を図ることが中心になろうかと考える次第であります。     〔委員長退席、畑委員長代理着席〕
  172. 吉井光照

    ○吉井委員 この港湾労働者雇用安定センターに移行される予定の登録日雇い労働者の平均年齢が五十二・九歳と聞いておるわけですが、非常に――非常にと言っては語弊があるけれども、高齢者ですね。しかし、年をとってまいりますと、技能習得という面も若い者のようなわけにはまいりません。自動車の運転一つを見ても、年をとれば非常に習得も困難ということでございますが、高齢者職業訓練についてはどのような対応を考えていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。
  173. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターが行います労働者派遣業務というのは、輸送革新時代における技能労働者需要の拡大に伴った、ニーズに対応するためのものでございまして、必要な技能を身につけていただかなければならないのでございます。そこで、非常に高齢な方が多いのでなかなか技能習得が困難ではないかというお尋ね、これは私どももそのように考えるわけでございますが、最近職業訓練技術もかなりきめ細かくなってきております。年齢特性に応じたところの職業訓練ということは、だんだんにその技法も開発されてきているわけでございます。私どもも、そのような年齢特性に応じた訓練を重点に技能労働者として訓練をしていただく、こういうことでセンターを指導してまいりたいと考えております。
  174. 吉井光照

    ○吉井委員 ちょっと具体的に申し上げますと、月二回の職業訓練で年二十四回、それから一日の訓練時間は、これは個々によって異なるわけでありますが、通常、フォークリフトの免許取得には最低五日、クレーンでは一週間かかると我々は聞いているわけですが、五十歳から五十五歳、六十歳近くになって果たしてこの訓練期間で実際にそういった各免許が取得できるのかどうか、もう一度確認の意味でお尋ねしておきたいと思います。
  175. 野寺康幸

    ○野寺説明員 月二日というお話でございますが、確かに計算上は月二日程度を訓練に当てるということになっております。これは平均でございまして、例えば二月合わせて四日連続で訓練するということも荷役の状況を見ながら可能であると思っております。そういう意味では、先生五日というふうにおっしゃいましたけれども、五日程度二月合わせて訓練するといったようなことも状況によりまして考えていかなければいけないと思っております。  もう一つは、年齢の問題でございますが、そういう意味で新たなセンターが採用基準の中に定年というものを入れるのは、ある意味で必然であるというふうに思っております。そういう意味からだけを申しますと、確かに港湾の荷役というものが、果たして先ほどちょっと一例を申し上げました六十歳定年でいいのかどうかという問題もないわけではございませんけれども、一方で現在の登録日雇いの方を移行するということを考えますと、その辺ある程度のバランスをとらなければいけないというふうに思います。仮にそういうことで一定年齢の方が移行する、その中には五十代の方もいらっしゃるといったような状況になりましても、そういった方に合ったような技術、必ずしも皆が同一の技術を持つ必要はないと思いますので、そういった年齢に合わせた可能な技術を習得するように訓練のカリキュラムを組んでまいりたいと思っております。
  176. 吉井光照

    ○吉井委員 それでは最後にちょっと大臣の御所見を伺っておきたいと思うのです。  まず第一点は、輸送の近代化は今後ますます進んでまいります。そして能力の開発及び向上に必要な技能教育の役割は、雇用改善や安全面等において大変重大となってくると思いますが、こうしたことはその事業主の自助努力だけではなく、こうした転換をスムーズに移行できるように国の積極的な指導というものが必要になってくると思います。この点に対する大臣のお考えをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  177. 中村太郎

    中村国務大臣 港湾運送業務に必要な労働力につきましては、近年の荷役革新進展によりまして技能労働力需要増大しており、これに対処するために港湾労働者に対する職業訓練充実していくことが必要であると考えております。このため、第一は、港湾労働者に対して港湾運送業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことを港湾運送事業主の責務として明確化すること。第二は、国及び雇用促進事業団は、事業主が行う教育訓練の円滑な実施に資するために、必要な職業訓練の効果的な実施について特別の配慮をすること。第三には、港湾労働者雇用安全センターにおいても、港湾労働者に対する訓練を行うこと等によりまして、港湾労働者に対する職業訓練充実を図るようにいたしたいと考えておる次第であります。
  178. 吉井光照

    ○吉井委員 最後に、将来において常用港湾労働者の安定というものが図られてきた場合、先般労働基準法の改正によって国際レベルに向けたいわゆる週四十時間体制づくりが進められることになったわけですが、港湾労働者についても、こうした時短というものが進められていくべきだ、このように考えるわけですが、大臣のお考えをお答え願いたいと思います。
  179. 中村太郎

    中村国務大臣 労働時間の短縮ということは、我が国経済的地位にふさわしい豊かな勤労者生活を実現するためには必要不可欠な課題でございます。港湾労働者を含めまして労働時間短縮を積極的に推進すべきであると考えております。このため、労働省としましては、週四十時間労働制の早期実現に向けて、今月一日から施行された改正労働基準法の円滑な施行に全力を挙げるとともに、労使の自主的な努力に対する指導援助のより一層の推進に努めてまいる所存でございまして、御指摘のような港湾労働という厳しい条件の中にありましても、全力を尽くしまして、所期の目的を達したいと考えておるわけでございます。
  180. 吉井光照

    ○吉井委員 若干時間が残っておりますけれども、これで私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  181. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 田中慶秋君。
  182. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、今回の港湾労働法の改正問題について若干質問をさせていただきたいと思います。  先ほど来質疑でも明らかになってまいりましたけれども、技術革新や社会の変化に伴って荷役量変化あるいは貨物技術革新港湾労働をめぐる職場環境変化等々を含めて最近の著しいこのような変化の中で、港湾労働の実情は大変多くの変化を来していると思いますし、さらにまたこの港を抱える地域差も当然ここにはあるのではないか、こんなふうに思っております。  まず、この点について労働大臣考え方を冒頭にお伺いしたいと思います。
  183. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま港湾労働をめぐる法施行以後の変化、最近の実情はどうなっているかというお尋ねでございますので、私からお答えさせていただきます。  港湾におきましては、コンテナ化の進展を初め大型荷役機械の普及、サイロ施設の増加あるいは革新船の出現など輸送革新が著しく進んでまいりまして、港湾労働をめぐる環境港湾労働法施行当時に比べ大きな変化を遂げているわけであります。  六大港につきまして具体的にどのような変化が生じているか申し上げてみたいと思いますが、まず第一点として、最初にコンテナ化の進展でございます。昭和四十三年にはコンテナ貨物が全体の一%にすぎませんでしたが、昭和六十一年では全体の四一%を占めるに至っております。  次に、荷役機械の保有量を比較してみたいと存じます。昭和四十年にはフォークリフトが二千台であったものが昭和六十二年には一万台になっております。ショベルローダーをとってみますと、四十年には百七十台にすぎなかったものが六十二年には五百二十台と著しい増加を遂げております。  そこで次に、日雇い港湾労働者に対する依存度がどのように変化してきたかという点について見ますと、昭和四十二年当時、全体の港湾労働力のうちに占める日雇い労働者の依存度は一六・八%でございましたが、昭和六十二年の四月から十二月をとってみますと二・三%と大きく低下いたしてきております。
  184. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今のお話でも、貨物近代化あるいは港湾近代化ということは明らかでありますし、また就労状態も、日雇い労働を含めて大変な変化を来している、こういうことのお答えをいただいたわけであります。  そこで、この登録日雇い港湾労働者就労というものが今明らかになったように二・三%程度になってきた。そうしますと、この日雇い就労者の人たちは具体的に何らかの形で次の就労を目指さなければいけない。その就労対策は現実にどうなっているのか明らかにしていただきたい。
  185. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 登録日雇い労働者の職域が狭くなり就労日数が減少してきているということにつきましては、昭和四十年代には就労日数が月平均おおむね十二日から十三日台でございましたが、五十年代後半になりますと九日程度になってまいりまして、六十一年度には月八・五日ということになっております。就労日数確保することが登録日雇いの方々の生活の安定のためにも肝要なことでございますので、私どもは、健康状態がよく、また技術を有する方につきまして十四日以上の就労確保できるようにということに目標を置きまして、就労日数確保に当たっているところでございます。
  186. 田中慶秋

    田中(慶)委員 就労日数確保その他に御努力いただいていることには敬意を表しますけれども、ここ数年来日雇い労働者に対する依存度が先ほど申し上げたように二・三%台まで落ちてきたというこの実態は、日雇い労働者の人たちを何らかの形で救済をしていかなければいけないであろうと思います。それは単なる失業保険の問題で処理することのできる問題ではないと思いますし、具体的な就労の場所の確保、このことに、今お話があったように、十六日程度何とか確保したい、それはその具体的な就労の現場がなければ確保できないわけですし、現実問題として、今まで一五、六%あるいはまた二〇%近い依存度があったものが近代化によって二・三%までダウンをしている。こういうことになってみますと、その差の人たちは何をしているのですか。
  187. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働行政の私どもの最も力点を置いておりますのは、日雇いの方々の常用化でございます。その努力の歴史であったと言っても過言ではないわけでございまして、できるだけ日雇いの方々を安定した職場、常用化していただく、こういうことで、先ほど数字で申し上げましたけれども、多くの方々が常用化を遂げられておる、こういうことであろうかと思います。
  188. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そうすると、今この数字の差の人たちというのは日雇いではなく常用化をされた、こういう認識でいいのですか。
  189. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま職業安定局長からお答え申し上げましたように、港湾労働法施行とともに、労働行政といたしましては日雇い労働者常用化を図ってまいりました。四十年代で約五千名から六千名の方の日雇いから常用化への改善がなされたわけでございますが、五十年前後から始まりました革新輸送に伴いまして、常用労働者自体も、六大港だけとってみましても数が減少してくるということがございましたし、また日雇い労働者が働けるような職域が狭くなってきた。そういうことから、私ども就労日数確保に努めますとともに、日雇い労働者が現在求められている雇用需要としてある技能を身につけるような措置をとる必要があるということで、職業訓練を協会に委託いたしますとかその他の方法を講じて職業能力の向上を図ってまいりました。そういうことから、現在、一千名近くまで日雇い労働者が減少してまいりましたけれども、それらの方々についても平均八日から九日の就労日数確保されているというような現状でございます。ごく最近におきましては、日雇いから常用化という動きは、四十年代に比べますとかなり少なくはなってきております。
  190. 田中慶秋

    田中(慶)委員 世の中の一つの流れとして、技術革新近代化を進めますと、そこには余剰人員が出るのが普通ですね。従来日雇い労働でカバーしていたものが近代化をされていろいろなことをしますと、幾ら常用化が進んでいても、一六%台のものが二%台にダウンをしますと、その余剰人員の人たちは恐らく常用化で救われているのじゃないと思うのです。転職をするかどこかに行って逆に就労を求めていられるのじゃないか。その対策が明示されてない。そうですね、はっきり申し上げて。建築現場へ行っているかもわかりませんし、いろいろな形で次の自分たち就労の場を探しているのではないかと思う。そうでしょう。  今言ったように、常用化がそこまで徹底されてない。例えば横浜へ行ったってそんなにされていませんね。ですから、港湾労働者の余剰分が、極端なことを言えば、朝行ってごらんなさい、建築会社のマイクロバスがぼんと着いて、そしてそこの人たちが乗って建築作業現場に行っていることは事実なんですから。そういう実態を踏まえて、港湾労働という問題を重要視しながら、技術の近代化とかいうことだけじゃない、ペーパーだけではなくして、こういう現場というものを実態として掌握していかないと、せっかくの今回の法案もその趣旨が生かされない状態が出てくるのではないか、こんなことを憂えているのです。  そこで、運輸省来ていますか。――実は、このコンテナ化が進み、近代化が進み、そしてまた今お話しのような流れの中で、全体的に港湾の倉庫や荷役の仕事の内容が大きく変わってきているような気がします。さま変わりしていると思います。そういう点では、運輸省はこれらに対して、貨物革新といいますか技術革新を含めてどのような認識をされて現場というものを掌握されていらっしゃるのか。そして労働省等を含めてそれぞれの連携をとって具体的な行政指導なりあるいは政策として何らかのものが打ち出されてしかるべきだと思うのですけれども、その辺はどうなっておりますか、お伺いしたいと思います。
  191. 龍野孝雄

    ○龍野説明員 先生指摘のとおり、昭和四十年代から本格化いたしましたコンテナ等の荷役革新進展に伴いまして、従来の港湾荷役作業形態というのは大きく変わっておるわけでございまして、コンテナ荷役、サイロ荷役あるいは自動車専用船にかかわる荷役等いわゆる革新荷役の取扱量といいますのは、現在では全国港湾運送取扱量の七割を超えるに至っておるわけでございます。一方、はしけ運送量の割合というのは、現在では三%まで低下しているという状況でございます。  このような荷役革新進展に対応いたしまして、運輸省としては昭和五十九年に港湾運送事業法を改正いたしまして、港湾運送事業者においてもはしけというものを保有しなくても、例えば荷役関係情報システムを備えた近代的施設、そういうものを基盤として港湾運送事業が経営できるというような制度を導入したわけでございます。また一方、港湾運送事業者の経営基盤の安定のために在来荷役にかかわる構造改善対策ということを鋭意進めてまいっているところでございます。  また、こういう荷役革新進展に伴いまして、労働者の方もガントリークレーンとかストラッドルキャリアなど操作の高度な技術が要求されるに至っておるわけでございます。  こういう状況に対応いたすために、昭和六十年度に利用者理解も得まして、港湾労働者訓練施設整備費というものを含めました労働安定基金というものを港湾運送料金として設定することを認めまして、現在これをもとに財団法人港湾労働安定協会の事業として、今豊橋の方で大型荷役機械等に関する技能労働者に付与することを目的とする港湾技能研修センターというのを設立するようになっているわけでございます。
  192. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今運輸省の方からの港湾貨物課長の御答弁でも明らかなように、港湾の現場というのは、そういう点では非常に大きくさま変わりしているわけですね。  一方において、労働省の方では港湾労働者の立場に立った行政という形で職業訓練なりいろいろなことをされる、こういうことで、全体的な港湾の仕組みがもう十年なり十五年前とさま変わりしているわけでありますから、そういう点で、例えば倉庫の管理業務一つとっても、保税倉庫とかいろいろなことを含めて、全体的に従来のパターンと変わっております。  例えば保税倉庫、最近冷凍物が非常に多くなっていますね、ああいう形でも、冷凍の管理資格であるとか、そういう全体的なものも必要になってきている。こういうことを含めて、それぞれ運輸省、労働省の連携をとられた行政の指導なり、あるいは具体的な対策ということが要求されてくると思うのです。  そこで、それらに対する連携度合い、私はたまたま先般も、横浜港でありますけれども、現場を見させていただきました。そういう点では、運輸省がもっともっと港湾の総体的な荷役技術革新といいますか、こういうものに対して、例えば補助事業の拡大とかいうことをやることによって、新たな就労の場所も確保できるのではないか、こんなこともつぶさに現場を見る限りの中で感じてきたわけでありますけれども、一連の連携といいますか、こういうことについて、運輸省と労働省の間でどのような協議をされて行われているのか、お伺いをしたいと思います。
  193. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 運輸省など関係省庁と十分な連携をとらしていただかなければ、法律の目指しているものも実現できないし、また行政の実効も上がらないと思っております。  運輸省なりの関係省庁との正式な意見の調整の場といたしましては、総理府に設けられております港湾調整審議会がございます。その場におきまして、関係者の御意見もちょうだいしながら関係省庁意見を調整し、政府が一体となってこの問題に取り組めるように努力しているところでございます。  また、運輸省とは、私ども常日ごろ十分な接触をとらせていただいておりまして、それぞれのところで講ずる施策にそごを来し、それぞれの行政目的でやっておりますことが十分な効果が上げ得ないということがあってはならないというふうに考えておりまして、例えば最近愛知県に訓練施設をつくっておりますが、その計画の全体につきましても、運輸省の御意見を十分聞きながら、また総合的な施設をつくるということで実施しておるということでございます。
  194. 田中慶秋

    田中(慶)委員 運輸省にお伺いしておきたいのですけれども、港湾整備計画あるいは港湾の構造改善事業等について、現在それぞれ六港の中で具体的に進められていると思いますけれども、それ以外に拡大をする計画はあるのですか。
  195. 龍野孝雄

    ○龍野説明員 現在、我々、事業者に対する指導といたしましては、二つの面からその指導をしておるわけでございます。  一つは、先生指摘の構造改善対策ということでございます。これはやはり港湾運送事業者は中小企業者が多くて経営基盤が脆弱である。また先ほどの革新荷役も進展している。こういった中で、例えばこれまで進めてまいりましたはしけの買い上げとか、そういった在来荷役の構造改善対策を進めてきたわけでございます。現在も港運構造改善促進財団という機構を通じまして、五大港におけるはしけ事業者の転廃業への助成措置、また全国的な在来荷役の構造改善対策というのを進めておるわけでございます。  また、この構造改善対策とは別に、これから港湾運送事業も複合一貫輸送の問題等もございまして、さらに前向きに取り組んでいく必要があるわけで、港湾運送事業の高度化対策という面も今取り組んでおるわけでございます。  この高度化対策といたしましては、港湾運送近代化基金という機構を通じまして、高度化資金制度というのを設けまして、大型物流センターに対する助成あるいは港湾情報事業に対する助成、そういった助成措置を講じていまして、例えば青海の流通センターの整備あるいはシップネッツの整備、そういった方向で今事業が進んでいるというところでございます。
  196. 田中慶秋

    田中(慶)委員 それぞれの構造改善事業を推進する中で、そこには当然従来の日雇い労働からさらに常用という形で変わってくると思いますので、そういうものも含めてお互いに連携をとってやっていただきたい、これは要望しておきます。貨物課長さん、どうもありがとうございました。  そこで、先ほど来ILOの百三十七号条約港湾における新しい荷役方法の社会的影響に関する条約の問題でお話がありました。これは先ほど大臣から吉井先生に対する答弁がありましたので、大体わかりますけれども、ただ日本は、港湾も含めながらあらゆる日本の産業は先進国の中でリーダーシップをとらなければいけない立場なんですから、そういう点では、私は角度を変えながら、ILOの百三十七号条約批准というものは模範を示してやらなければいけないんじゃないかと思うのですね。  ですから、余り批准してない理由がどうのこうのとかいう問題よりも、一方においては総理初め皆さんが、世界に貢献する日本、国際化、こんなことを言っておきながら、片方においてILOの百三十七号条約批准をされないのでは、先進国どころかむしろ逆に後進国の仲間入りみたいなものになってしまうわけですから、そういう点では、こういうILO百三十七号条約批准できるような環境づくりをしていかなければいけないだろう。これは大臣答弁してください。
  197. 中村太郎

    中村国務大臣 百三十七号条約批准につきましては、先ほど御答弁を申し上げたところでございまして、今の法文の形態そのものは百三十七号条約を満たしておると思っておるわけでございますけれども、問題は内容理解の度合いに労使の間で随分と食い違いがあるわけでございます。したがいまして、従来からも審議会場等を通じていろいろ話し合っていただきましたし、御指導もしているのですけれども、まだ合意点に達しないということでございますから、これからも粘り強く両者が合意に達するような努力を払ってまいりたいと考えております。
  198. 田中慶秋

    田中(慶)委員 一面においては先進国だと自負しているわけですから、そんな形で労使がその辺について合意ができないこと自体が日本の労働環境とか働きバチだとかいろいろなことを言われる要因がこういうところに出てくるわけですから、監督官庁、労働大臣として、労使の皆さん方にそういうことを含めてぜひ御理解をいただけるような努力をしていただきたい。これは要望しておきます。  そこで、今回の法の改正によって、現行の職業安定所の日雇い労働者登録制度にかわって港湾労働者雇用安定センターを通じながらの派遣制度になるわけでありますけれども、これについては公共職業安定所の組織体制といいますか、あるいはこういう問題について組織が変化をするのかどうか、変えるのかどうか、この辺をお伺いしておきたいと思います。
  199. 岡部晃三

    岡部政府委員 公共職業安定所、あるものは港湾労働関係業務を専門的に行っている港安定所と言われるものを初めといたしまして、多くの組織ができているわけでございます。今回の改正によりまして、日雇い港湾労働者登録でありますとか労働者の職業紹介などの登録制度関係業務は廃止されるに至るわけでございますが、一方、新法の要請といたしまして、新たな業務として、港湾労働者雇用管理の改善の指導などなどの業務が追加されるわけでございます。またさらに、港湾において労働者派遣を実施することに伴う港湾運送事業主への立入検査あるいはやみ雇用等の防止のための指導等を強化する必要があります。したがいまして、これらの業務が円滑に推進されますように、現在の公共職業安定所の組織につきましては、十分な整備を加えてまいりたいと考えております。
  200. 田中慶秋

    田中(慶)委員 せっかく今度の港湾労働法雇用安定センターという形で新しい業務といいますか、変わるわけですから、そういう点では、法の整備と同時に、職安の中における体制も十分に検討するように、ぜひこの辺もよくしておいていただけるように、これは要望しておきたいと思います。  そこで、港湾労働法適用港でありますが、現在六大港ありますけれども、これは拡大されるのかどうか。
  201. 岡部晃三

    岡部政府委員 適用港湾につきましては、港湾荷役量港湾労働者の数等を考慮いたしまして、国民経済上に占める当該港湾重要性必要労働力確保その他港湾労働者雇用の安定について特別の措置実施する必要性の高い港湾政令指定するということになるわけでございます。  この政令指定に当たりましては、これは関係労使意向を尊重しながら、関係審議会意見を十分聞いた上で定めるということでございますが、制度発足当初は六大港でスタートするというのがきょうまでの関係労使意向の結論であると理解をいたしております。将来における問題でございますが、これは港湾環境変化を十分に踏まえまして、必要に応じ適用港湾見直しを行うこととなることは当然であろうと思います。
  202. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ将来のことも含めて弾力的に運営されるように要望しておきたいと思います。  そこで、港湾雇用安定等計画を策定する目的とその内容はどういうものか、現行港湾雇用調整計画との違いを明らかにしていただきたいし、さらにまた新設される港湾労働者雇用安定センター指定法人とする理由はどういうものか、また公益法人を港湾労働者雇用安定センター指定するのかどうか、こういう問題について、これは審議官で結構ですけれども、答弁をいただきたい。
  203. 岡部晃三

    岡部政府委員 まず第一点について申し上げます。  港湾雇用安定等計画を策定する目的、内容でございますが、港湾運送に必要な労働力確保いたしますとともに、港湾労働者雇用の安定その他福祉の増進を図るために、港湾労働者雇用改善並びに能力の開発及び向上に関しまして、国が行う措置事業主及び指定法人が行う措置とが整合を持ち、かつ計画的に実施されますとともに、これらの措置との調和のもとに国及び指定法人が行う労働力の需給の調整が適切に実施される必要があることは申すまでもないところでございます。このために、労働大臣港湾労働者雇用の安定その他福祉の増進に関する港湾雇用安定等計画を策定いたしまして、国はこの計画に定めるところに即して施策を講じますとともに、事業主及び指定法人に対して講ずべき措置の指針を示すものとしたところでございます。  港湾雇用安定等計画におきましては、まず第一点といたしまして、「港湾労働者雇用の動向に関する事項」、第二点といたしまして、「労働力の需給の調整の目標に関する事項」、第三点といたしまして、「港湾労働者雇用改善並びに能力の開発及び向上促進するための方策に関する事項」、これらを定めることといたしております。  第二点、第三点につきましては、審議官から申し上げます。
  204. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 第二点目の御質問は、現行法に基づく港湾雇用調整計画と、ただいま職業安定局長が御説明申し上げました新しい法案考えております港湾雇用安定等計画とはどこが違うのかという御質問かと存じますが、ただいま職業安定局長がお答え申し上げましたように、港湾雇用安定等計画は、事業主それからセンターの運営に当たる指定法人における業務取り組みの運営指針としての性格が強いのに対しまして、現行法に基づく港湾雇用調整計画は、安定所でありますとか雇用促進事業団が行う港湾日雇い労働者登録制度の運営についてのいわば行政運営方針を示すことを目的といたしております。簡単に言いますと、現行法に基づく計画は行政運営方針的性格が強く、新法による計画は事業主指定法人における業務取り組みの運営指針としての性格が強い、そこに基本的な違いがあるというふうに考えております。
  205. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今回の港湾労働者雇用安定センターは、常時雇用されている労働者以外の労働者も派遣することができるものとしているわけでありますけれども、これらについてはどのような場合に派遣ができるのか明確でないと思いますが、その辺について教えていただきたいと思います。
  206. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターが行う労働者派遣の対象となります労働者につきましては、常時雇用する労働者を原則とすることとしているわけでございますが、港湾運送事業の事業活動の波動性、これは避けられないものでございます。その関係からなお追加的な技能労働力需要がある、これはやむを得ないところでございます。そのような場合にもセンターによる労働者派遣によって必要な労働力確保し得るようにしたものでございます。  すなわち、この場合センターが派遣する労働者は、労働大臣が定める一定の技能水準以上にある者として、具体的には、例えば荷役機械の運転についての派遣申し込みが集中してセンターが応じ切れないというふうな場合に、運転資格を有する企業の常用労働者、企業常用の出向を受け入れましてセンターから改めて派遣をする、こういうふうなことができるようにと考え制度が規定されているわけでございます。
  207. 田中慶秋

    田中(慶)委員 一方においては、港湾労働者の能力開発訓練等々を技術の近代化やあるいは荷役作業近代化技術革新によって行うという形をとっているわけであります。一方においては、今のような労働大臣が定めたという形の中で、その補完的な形で常時雇用される労働者以外の人たちも派遣できる。こういうことで、どちらかというと港湾労働者就労の場が狭くなるということも考えられるわけでありますから、そういう点では、日雇い労働者やあるいは常用労働者を含めてでありますけれども、港湾労働者就労の場が狭くならないように配慮する必要があるだろう。私はその辺がちょっと心配だな、こんなふうに考えておりますので、その辺はぜひ十分に配慮をするようにひとつ答弁をいただきたいと思います。
  208. 岡部晃三

    岡部政府委員 このような出向派遣方式によりましてセンターに常時雇用されるプール労働者就労の場が脅かされるのではないか、こういう御指摘でございまして、この辺はこれまでの累次にわたる政労交渉におきましても非常に問題とされた点でございます。この辺につきましては、先生の御懸念のないように、まずもってプール労働者が優先的に雇用されるようにということにつきましては、十分な行政指導に努めてまいりたいと思います。
  209. 田中慶秋

    田中(慶)委員 そこで、こういうことがあってはいけないわけですけれども、企業解雇された港湾労働者も定数の範囲内で港湾労働者雇用安定センターに移行するとすれば、港湾労働者雇用安定を失するということも言われかねないわけでありますので、こういう点についてはどのように対処されているのか、あるいはこの辺についてどのようにお考えになっておるのか、お伺いしたいと思います。
  210. 岡部晃三

    岡部政府委員 港湾労働者雇用安定センターは、事業計画書に定めたところに従いまして労働者雇用するものでございます。そこで、仮にその事業計画書に定めた労働者数と現実に雇われている労働者数との間にすき間があると申しますか、まだ雇い入れる余地があるというふうな状態がありました場合には、不幸にしてある企業の合理化等によって、そこから港湾労働者が解雇されるというふうなお尋ねのようなケースにつきましては、現在あるすき間の範囲内で解雇された港湾労働者を雇い入れることができるわけでございますので、港湾労働者雇用の安定という面におきましては、その辺役立つような仕組みになっておりますし、またそのように運営をしてまいりたいと思います。
  211. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ぜひ今度の法律改正に当たって港湾労働者がそのはざまにならないような形で運用を含めて努力をしていただきたい、こういうふうに思います。  運輸省の外航課長さんいらっしゃいますか。実はこれは今回の法案とは直接関係ありませんが、御案内のように、イランとアメリカとの間でまさしく戦火状態になってきている現状を見たときに、外航をされている、そこに働いている、労働されている人たちが大変身の危険を感じながら今仕事につかれていると思うのです。しかし、あのタンカーそのものは日本の産業のエネルギー、こういうことでありますから、こういう点について、運輸省初め国としてまず安全であるということの努力、さらにはまた危険を冒してこのような仕事をされている皆さん方に政府として具体的に何らかの意思の表明、あるいは具体的な物心両面における措置というものがあってしかるべきじゃないか、こんなふうに思っております。その辺について考え方をお聞かせいただきたいと思います。
  212. 岩村敬

    ○岩村説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、現在ペルシャ湾では米軍とイラン軍の直接衝突というような形にまで発展をしておるわけでございまして、その中で現在日本関係の船舶は十六隻湾内におりますが、その中には日本人の船員が百八十二名現在働いておられるわけでございます。この船舶及びその働いておられる船員の方々の安全の確保というのは、運輸省といたしましても最重要課題の一つと認識をいたしておるところでございます。  運輸省といたしましては、従来からもペルシャ湾内の船舶の航行の安全の確保のためには、情報の収集、それから関係船舶へその情報を伝達する、さらには外交ルートを通じまして安全の確保の要請をする等々の施策を講じてきておるところでございます。今般の事件を契機にいたしまして、関係省庁それから関係の団体から最新の関係情報を集めまして、船主協会を通じまして、先ほど申し上げたように、現在ペルシャ湾内に十六隻の船舶がおりますが、その関係船舶、さらには今後入湾予定の船舶に対しまして、これらの情報を伝えること、それから入出湾につきまして細心の注意を払うよう、万全の注意を払うよう改めて注意を喚起したという対策を講じておるところでございます。  なお、こういう事情でございますので、あすにも関係省庁それから海運労使間で情報交換を図るために連絡会を開こうというようなことを考えておるところでございます。  ちなみに、本日、三隻ほどペルシャ湾に入港いたしましたけれども、現在のところ無事目的地に向けて航行中であるという情報でございます。  それから、第二点目の御指摘の、こういう危険な海域で働いておられる船員に対し何か我々の感謝の気持ちをあらわすべきではないかという御指摘につきましては、これは既に総理それから運輸大臣からも御答弁いたしておりますが、そういうことで何らかのことをするということで、現在運輸省といたしまして検討をいたしておるところでございます。
  213. 田中慶秋

    田中(慶)委員 持ち時間が参りましたので、これで終わりますけれども、いずれにしても、ペルシャ湾内で働いている人たち、やはり幾ら危険な仕事といえ日本のエネルギーを輸送していただいているわけでありますから、安全対策には万全を期するように、さらにまた百八十数名の乗組員の人たち、家族その他のことを考えてみますと大変な心配もあろうと思います。そういう点では、予算委員会でも申し上げましたけれども、物心両面にわたる何らかの措置を一日も早く講ぜられるように、検討しているということでありますから、要望して、私の質問を終わります。ありがとうございました
  214. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 田中美智子君。
  215. 田中美智子

    田中(美)委員 これまでの港湾雇用調整計画は各港湾ごとに毎年登録日雇い労働者と企業常用労働者の定数を決めていました。今回の改正で雇用安定等計画と名前が変わったわけですが、これでは定数を決めるということを法律の中から削除したわけです。削除しないと何か不都合なことがあるから削除したのでしょうか。
  216. 野寺康幸

    ○野寺説明員 今回御提出いたしております法案の中に定数という言葉は出てまいりませんが、国のつくります計画の中に、この定数というものは当然出てくるということになっております。削除するということにつきまして格別の理由があったわけではございません。そういったものも当然入るという前提で現在の法案ができているわけでございます。
  217. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣、私はおかしいと思うのですけれども、特別の理由もないのに、法律で決めていたのに、それを何の理由もないのに削除したというのはやはりおかしいと思われませんか。大臣はどう思われますか。――大臣、理由がないのに削除するというのはおかしいと思いませんか。
  218. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 ただいま特別雇用対策課長からお答え申し上げましたように、新しい港湾雇用安定等計画におきましては、三項目の事項が法律上必須の事項として記載しなければならないものとなっております。その二つ目に「労働力の需給の調整の目標に関する事項」というものがございます。この「調整の目標に関する事項」として何を定めるかという質疑は、きょうの午前中にもございまして、そこで常用港湾労働者の数とセンターが常時雇用する労働者の数を掲げる、それが「調整の目標に関する事項」として必ず盛り込まれなければならない事柄であるという御説明を申し上げているわけでございます。
  219. 田中美智子

    田中(美)委員 法律で決めていたものをわざわざとってしまっているということに私は非常に疑問を感ずるわけですが、新法の七条では職安所長が事業主雇用管理についての改善の勧告を出すことができるというふうになっています。ですから、今言われたようなことをきちっと守らなければ勧告するようになっているということなんでしょうけれども、もしこの勧告に従わずに、この計画をつくらなかったらどうするのでしょうか。
  220. 野寺康幸

    ○野寺説明員 雇用管理に関する勧告でございますけれども、この関係は現在の法案の第七条の中で書いてございます。これはそもそも国がっくります計画に照らしまして事業主雇用管理を行っていただくわけでございますけれども、雇用管理ということの性格上、強制するのでなく、事業主理解し自主的にそれをつくるということが必要でございます。安定所長が行います事業主に対する勧告というのは、その契機でございます。したがいまして、それを罰則をもって強制するといったようなことが果たしてふさわしいのかどうか、雇用管理という性格を考えますと、罰則をもって強制するべきものではないというふうに思っております。  ちなみに、現在お出ししてございます法案全体として、必要な部分については罰則を付してございまして、それ相応の処罰規定もございます。この法律全体として見ますと、必要な部分に十分な罰則がございまして、その中でこの雇用管理という部分につきましては、やはり事業主が自主的に理解してつくるということがふさわしいというふうに考えているわけでございます。
  221. 田中美智子

    田中(美)委員 自主的につくるということは、それは構いませんけれども、つくらない。計画をつくりなさいと勧告してもつくらない。またつくっても紙切れで出してそれを守らない。そういうことがあったときに、きちっとそれを守らせる保障というのがあるんでしょうか。――委員長、ちょっと済みません。大臣局長もいらっしゃるのに、どうしてあなたが出てくるんですか。私は局長大臣質問しているのに、どうしてあなたが出てくるんですか。委員長、その点ちょっと……。
  222. 畑英次郎

    ○畑委員長代理 今実務的な御質問というふうに理解いたしましたので、あしからず課長答弁を聞いてからにしていただきたいと思います。
  223. 野寺康幸

    ○野寺説明員 法律の条文に即してお答えすべきことであるというふうに思いましたので、お答えいたします。  雇用管理の性格は、先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、これが最終的に守られないというようなことがないように行政としては理解を深め、一生懸命指導してまいりたいということでございます。
  224. 田中美智子

    田中(美)委員 大臣伺いますけれども、一生懸命で努力いたしますということだけでは、実際にはなかなか守られない事例がたくさんあるわけです。例えば身障者雇用促進法、これなども何%は障害者を雇わなければならないということを決めていても、これを守らない。大きな企業ほど守ってないじゃないですか。そういうことで、その結果指導します、指導しますと言っても、これを守らない。幾ら指導しても言うことを聞かない。そういうことで、これは法改正しまして、未達成の大きいところは企業名を公表するというふうに法律を変えたんですね。そういう形で一度公表したことがあります。ですから、何らかの、それをすぐ実行せよということではありませんけれども、幾ら言っても言うことを聞かないというときには、やはりその企業名を公表するとかいうことがないと、単なる一生懸命努力して指導しますということでは、実効あるものにはならないのではないかという疑問を私は持ちますが、大臣、いかがでしょうか。
  225. 岡部晃三

    岡部政府委員 労働行政といいますものは、やはり私ども、労使の御理解、御参加を得て進むべき性格のものであるというふうに考えております。したがいまして、この港湾労働行政というものにつきましても、やはり労使の御参加を得て、これまたお互いの十分な意見交換のうちに進められるべきものであるというふうに基本的に理解をいたしておるところでございます。  したがいまして、そのような計画をつくるべきにもかかわらず、あるいはまた雇用管埋を十分にすべきであるにもかかわらず、それが十分でないという場合のお尋ねでございますが、これは私どもといたしましては、十分な行政指導をもって対処して、その気になるように関係者を導くということが、迂遠なようでも一番効果が上がる方法である、このように信じているところでございます。
  226. 田中美智子

    田中(美)委員 信じていられても、実際には今までいろいろな法律で努力義務、均等法にしても、単なる努力義務では言うことを聞かなかったら、そのままになっているという事例がたくさんあるから、私は言っているんです。ですから、せめて企業名を公表するというようなことをつくっておくということは必要だと思います。  次の質問に移ります。  登録日雇い労働者が今度はセンターに移行するわけですけれども、希望者全員が移行できるのでしょうか。
  227. 野寺康幸

    ○野寺説明員 本日の御審議の中で各先生方に何度もお答えしてまいったわけでございますが、このセンターは公益法人でございますが、民間事業体でございます。したがいまして、どういう人間をそこが採用するのか、それはそこのセンター自身が採用基準を定めまして、そしてその採用基準に合ったものを採用するということになるわけでございます。ただ、現在登録日雇い港湾労働者として働いておられる方々は、この採用基準の問題がございますけれども、基本的にはそちらに移行するということが妥当であろうと思います。しかしながら、体力、適性その他の関係、あるいは場合によりましては、定年といったような問題で、そちらに移行できない方もあるということはあり得るわけでございます。
  228. 田中美智子

    田中(美)委員 そうしますと、全員移行するのではなくて、今まで登録していたわけですから既得権があると私は思うのですね。ですから、全員を移行すべきだと私は思います。これが何年もたちまして人が変わっていくということになれば、やはり企業の考え方で人を雇っていくということも自然に出てくるかもしれません。しかし、こういうふうに突然国が法律を変えて、労働者の希望で変わるわけじゃないんですから、国が法律を変えて、そして今まで既得権として働いていた人が一遍に身分が不安定になる、これはやはり納得いかないと私は思うのですね。こういうことをしますと、中高年の方や体が弱いとか女性、それからセンターが何となくお気に召さないとかいうような人たちが排除されていくという可能性が出てくるんではないですか。そこら辺のところはどれぐらいの歯どめを考えていらっしゃるんですか。全く自由に任せて、お好きなように、この中からより取り見取りで採って、あとは要らないよ、こういうことをやろうというふうに考えていらっしゃるんですか。
  229. 野寺康幸

    ○野寺説明員 引き続きお答えいたします。  採用基準がいかなるものになるか、それはわからないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたような適性、体力、定年等が入ってまいるものであるというふうに理解しております。これが妥当であるか否かという問題はあるわけでございまして、これは国の方がこの法人に対します監督権限の中で、この法人のそういった採用基準その他についても不必要あるいは妥当でないようなものが出てまいれば、それを認めないということでございます。したがいまして、必要な指導は十分行ってまいり、先生ただいまちょっと御指摘になりましたような何となく気に入らないから採用しないといったようなことが生じないようにしてまいりたいというふうに思っております。
  230. 田中美智子

    田中(美)委員 今ちょっと私はっきりしなかったのですけれども、体力や適性といっても、今まで体力もあり適性もあるからこそ登録されていたわけでしょう。それがどうして法律が変わると急に体力がなくなったり適性がなくなったりというようなことになるのでしょうか。
  231. 野寺康幸

    ○野寺説明員 今回の法案をお出しいたしております一つの重大なバックグラウンドと申しますか、背景は、港湾におきます荷役の急速な近代化というものがございます。一方で、現在の登録日雇い港湾労働者を眺めてみますと、午前中の御審議あるいは最前の御審議の中にもございましたが、平均年齢五十二・九歳という、一般の例えば製造業に比べますと考えられないくらいの平均年齢でございます。したがいまして、この点から申しましても、現在の輸送革新に十分対応できる技術を身につけるにはちょっと年齢が行き過ぎているという感じがいたすわけでございます。もう一つの問題は、この技能訓練と申しますのは、日雇いという形態の労働者にはなかなかやりにくいという面がございまして、そういう総合的な観点から新しいセンターをつくりまして、そこに常用という形で就職していただきまして、それで十分な訓練を施すという観点でございます。したがいまして、年齢によります技術革新に追いつく限界というものが当然出てまいるわけでございますが、そういった観点が今回の法案の御提出の一つの大きな理由であるというふうに考えたわけでございます。
  232. 田中美智子

    田中(美)委員 今のお話を聞いていますと、非常にはっきりしたわけですけれども、ていのいい首切りではないか、平均年齢が高くなったから、ですから職安をやめてセンターをつくって、そのときにもう今のままでは首を切れないから、そういうためにこの法律をつくったんじゃないか、ていのいい首切り法案ではないかというふうに今のお答えでは私は思います。思わず本心を言われたんだと思いますけれども、年齢が五十二・九歳というのは決して私は高いとは思いませんよ。まだまだ今人生長いわけですから、五十二・九歳で年齢が高いからなんということは言えないと私は思う。平均年齢が高くなったからといって簡単に首を切れないから、この法改正をして、結局はていのいい首切りをしようというふうに考えているのではないか、今のお答えは私はそのように思います。(発言する者あり)そちらも勝手に思っていらっしゃるわけですから、こちらも思います。それは立場が違うのかもしれませんけれども、そういう形で出していらっしゃるので、私としてはどうしたって結果的にそうなるではないかということを言っているわけです。  次の質問に移りますが、一応形の上では日雇い労働者は全員がやめるわけですね。そして新しいセンターに雇われていくという形をとるわけです。そうすると、全員に退職金を支給するのは当然だと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  233. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 今回の法改正に伴いまして登録日雇い制度が廃止されるわけでございますが、センターに移行された方につきましては、これまでの日雇いから常用労働者という形になりまして、雇用の安定に資するところが大きいと思います。一方、登録日雇い労働者の中には港湾労働者雇用安定センターに移行し得ないこと等により職業生活の安定を損なわれるおそれがある者も生ずることが見込まれますことから、これらの者に対しましては、給付金の支給等を図りますとともに、就職の促進など必要な措置を講じてまいりたいというふうに考えております。  なお、その具体的な内容及び実施方法につきましては、関係者の御意向も踏まえつつ今後慎重に検討を行い、登録日雇い港湾労働者であった者の生活の安定に不安が生ずることのないように十分配慮してまいりたいと考えております。     〔畑委員長代理退席、委員長着席〕
  234. 田中美智子

    田中(美)委員 非常に抽象的な言い方ですけれども、次に移行して身分が安定したといったって、普通の会社で私たちがどこかをやめる、やめたらそこで退職金をもらって、次にもっといいところに行くかもしれませんね。次に行ったときに非常に安定するから、この退職金は要らないんだという理屈は成り立たないと思うのですね、全く違うものになるわけですから。これを解散するならば、この人たちにみんなやめてもらうんだったら、まず退職金を出すべきだ。そしてどこに行こうが、どんないいところへ行こうが、どんな悪いところになろうが、退職金をまず全部出す。安定するんだから退職金を出さないなんということは、それはないでしょう。局長にしたって、課長さんにしたって、今やめる、どんな悪いところへ行こうと、次にどんなところへ行こうと、まず退職金をもらってから行くんじゃないですか。次にいいところへ行くから退職金は出さないという理屈は成り立たないと思うのです。時間がありませんので一言で、今のあれでは移行する場合には退職金は出さないということですね。
  235. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 やや言葉が足りなかったのかと存じますが、現行港湾労働法におきましては、中小企業退職金制度に特例として加入できることになっております。したがいまして、その意味では退職金は全員に出るという形になります。一方、移行できなかった方々の生活の安定を図る観点から、私はその措置として一時金を支給することを考えているということを先ほどお答え申し上げたわけでございます。
  236. 田中美智子

    田中(美)委員 これ以上聞いてもあれだと思いますけれども、私は大変おかしいというふうに思います。十分な退職金を全員に出すべきだということを私は強く要求しておきます。  次の質問になりますが、今でさえ手配師による日雇い労働者やみ雇用されてくるということが起きているわけですけれども、今度はセンターの労働者の数も、決めないわけじゃないかもしれませんけれども、企業ですからぎりぎりということになり、企業労働者の数も余りはっきりしないということになりますと、やみ雇用がふえるのではないかと思いますが、簡単にお答えください。
  237. 佐藤仁彦

    佐藤(仁)政府委員 今回の港湾労働法の改正は、輸送革新進展に伴い、港湾運送に必要とされる技能労働力の質、量にわたる円滑な確保を図ることを目的といたしておりますので、これによりまして、基本的に手配師等の存在を必要としない方向に向かうものと考えております。また港湾におきましては、従来からやみ雇用中間搾取等違法な就労問題が指摘されてきたところでもございますので、労働省といたしましては、今後とも関係行政機関との連携を密にいたしまして、合同立入検査実施を図りますほか、港湾労働法遵守強化旬間を設定するなどによりまして、従来にもまして雇用秩序維持に努めてまいりたいと考えております。
  238. 田中美智子

    田中(美)委員 まるで心のこもっていない、文章をすらすらと読むような、そういうあれでは国会の本当の審議にならないと思うのですよね。お互いに論議をかみ合わせていかないと、ただあれしたものをまるで読み上げていくような、これでは本気ではない。そんなことで、雇用旬間をつくったからやみ雇用がないとか、今のやみ雇用なんていうものはひどいものじゃないですか。  その次に移ります。  私はいろいろなことを心配するわけですけれども、運送業者からすればセンターから人が幾らでも派遣されてくるわけですからね。それだったならば、自分のところの常用労働者というものをなるたけ少なくしようというふうに考えていくのが普通じゃないかと私は思うのですね。そうすると、今まで常用労働者として身分の安定した人が合理化の対象になって、派遣労働者とかえられていく、こういう心配はないのですか。そういう保証はありますか。簡単にお答えください。
  239. 野寺康幸

    ○野寺説明員 企業常用とセンター常用の関係につきましては、国が計画をつくります。その計画の中で両方の労働者の数というものを書くわけでございます。これは先ほど先生にお答え申し上げたとおりでございます。この国のつくります計画は、各港を持っております地区審議会の中で、労使の御意見をいただきながら出てまいったものを積み上げてつくるという形になるわけでございます。最終的には中央にございます港湾調整審議会の御議論を経て決まるというものでございます。したがいまして、この計画の中で、そういったおかしなバランスとか、センター常用を過重に考えるといったようなことは当然チェックされて出てまいるということになるわけでございます。さらにセンターの方は国のつくります計画に即しまして事業計画をつくります。したがって、この事業計画が国の計画にそごを来すようなものでありますならば、これは国の方として認めない、あるいは修正を求めるといったようなことになるわけでございまして、そういった全体を考えますと、数の上でおかしな結果になるということはない。おかしな結果が出てまいれば十分チェックできる、そういうふうに考えておるわけでございます。
  240. 田中美智子

    田中(美)委員 国会論争というのは、お互いに顔を見合いながらやるものです。下を向いてべらべらべらべら。保証があるのかと聞いているのに対してきちっとした回答をしないで、ただべらべらべらべら、下を向いて顔を上げられない。そんな自信のないような法案を出しているのでしょうか。私は常用労働者の身分というものは非常に危険だというふうに思っているのです。ですから、この点は本当にやる気があるならばきっちりとやってもらわなければならないと思います。  その次に、これは重大な問題だと思うことなのですけれども、常用労働者というのは各企業のいわば社員であるわけですね。そうすると、この社員を相互に融通し合うことができるように今度の法案でなる。これは今まで法律で禁止していたわけでしょう。それは身分が不安定になるから禁止していたのだと思うのですね。それが今度は相互に乗り入れできるようになるのだ。それはセンターさえ通せばいいのだということになりますと、極端な言い方をすれば、日立の労働者と東芝の労働者と、港湾じゃないですよ、社員がいると、そのときに勝手に何かセンターというものをつくって、こっちの労働者はこっちへ持ってくる、こっちの労働者はこっちへ持ってくる、こんなことをしたら、常用労働者の身分なんというのは、本当に将棋のこまのように動かされてしまうと私は思うのです。これは港湾運送事業法十六条を形骸化するものだ、非常に危険なところだというふうに思います。  この点は、大臣、おわかりになりますか、一言もおっしゃっておりませんけれども。そういうことになりませんか、ここのところは。大変なことになると思うのですね。全く違う運輸会社の人をこういうふうに勝手に行き来させる。センターさえ通せばいい。形だけセンターに通せば勝手にあっちこっち使える。こんなことでは、センターの労働者の身分だってきちんとしない、運送会社の常用労働者の身分も安定しない、こういうふうになると思うのですけれども、大臣、どう思われますか。
  241. 岡部晃三

    岡部政府委員 先生が今申されましたような、いわゆる相互融通というふうな制度につきましては、今度の新法におきましても厳に戒めておるところでございます。そのような相互融通制度は、職業安定法違反及び労働者派遣法違反を構成するわけでございまして、新法のもとにおきましても、それは禁止されます。しかしながら、港の状況というのは、先生御高承のとおり非常に大きな波動性がございます。これにどのように対処するか。これは従来、日雇いという形で事業主対処したのでございますが、一方において、行政としては、これの常用化を進めるということを労働省として国の施策として進めてきたところでございます。常用化を一方において進める、一方において極端な波動性がある、これをどう調和するかということがまた大問題でございます。  そこで、今御提案申し上げておりますような、各企業常用をセンターに出向せしめまして、これを派遣するという形、これは現行法のどこにも抵触をいたさないわけでございますが、このような形におきまして、業界全体として一つの産業全体が労働者が持てる能力をフル活用できるというふうな形におきまして全体の交流が図られる、こういう道を模索した、こういうふうに申し上げてよろしいかと思うのでございます。
  242. 田中美智子

    田中(美)委員 何となく聞いていますと、そういうことをしないようですけれども、後の方を聞いていますと、出向という形をとれば自由にこれができるということを言っておられるのですね。これが危険だと私は言っているのですよ。机の上ではいかにも人間を最も効率よく使うような言い方ですけれども、これは人間を扱う扱い方と違います。本当に将棋のこまを最も合理的に休ませないで自由自在に動かして、みんな不安定だということになつていくという心配が私は非常にあります。そういう中で、先ほども申しましたが、企業では――企業ですから、今度のセンターは。ですから、たくさんの人を置いておくということはなかなかしないと思うのですね。そうすれば、人数が足らないということになれば、出向という形でもってよそからも採ってくる。今度はセンターがまるで手配師のようなやり方をします。私はこの質問をする前に港を視察してまいりましたので、今の港がどのように変わってきているかというのは大体のところは見てきました。結局手配師のようなことをセンターが結果的にはやるようになるのではないかと私は思うわけです。そういうことはあり得ませんか。
  243. 岡部晃三

    岡部政府委員 手配師というのは、労働のあっせんにかかわりまして不法なる、不当なる利得を得る者でございます。このたびの出向、派遣というシステムは、規定に基づきまして、定まった料金しか徴収しない、こういう形でございまして、不当な利得が生ずる余地はないと存じます。
  244. 田中美智子

    田中(美)委員 現在の手配師がやっているやみ雇用そのままのものが行われると私は言っているのじゃないのです。それに非常に近づくのじゃないかというふうに思うのです。この間、再放送でしたけれども、「地球発23時」というのですか、中村敦夫さんが出ているテレビのビデオを見せていただいたわけですけれども、あれを見ましても、あれはすべてが港湾労働者ではありませんが、ああいう状態をどう解決するかということに、これは全くこたえていないと私は思うのですね。一部の人は、確かにセンターに行けば、ここで安定するという人もほんのわずかはいるかもわかりませんけれども、むしろ非常に広い範囲の人たちの身分が不安定になる。センターが、手配師といいますと、確かにこれは法に違反したことをやるわけですけれども、まあ法に違反していないけれども、それに近いような形で上手にやれる道をつくっているのではないかと私は思います。そういう点で今度の法案にはたくさんの疑問点と不安というのがあります。  以上、述べました点から、今回の法案というのは常用雇用者を不安定にする、それから登録日雇い労働者の身分も不安定にし、首切りされる、やみ雇用とはっきり――今のやみ雇用とはちょっと違うかもしれませんけれども、それに非常に似たようなものをふやしていく可能性がこの法改正によってさらに出てくると思いますので、私たち共産党・革新共同は、この法案の原案については反対です。きょうは反対討論がありませんのではっきり申し上げておきますが、修正案が出されるそうですが、この修正案の部分には私たちは賛成いたしますけれども、原案には絶対反対だということをつけ加えておきます。  それで最後に、緊急の問題が起きておりますので、質問させていただきます。  JRが「走るホテル」と大宣伝し、青函トンネル開業後、上野から札幌の間を走っている直通寝台特急「北斗星」、この食堂車の中の暖房設備の中に発がん物質と言われておりますアスベスト、石綿ですね、これが使われている、それが車内に飛散しているのではないかということが今問題になっています。  暖房装置の中に断熱材として石綿が入っておると言われている車両、これはJR東日本ですが、この車両は東京北区の尾久客車区、ここの所有になっているスシ二四―五〇六という車両です。この車両は、列車に乗りますと座ったところのすぐ横に足が乗せられるように暖房がずっとついているんですね。横から風が入って上へ上がっていく。これはその一つの列車、食堂車の周りにずっと全部あるんですね。その中の一部分ですけれども、この五〇六というところをとりまして調査をしていただいたわけです。これは名古屋大学医学部衛生学教室の分析で、石綿の種類はクリソタイル、白石綿というのですか、であることが明らかになったという分析をいただいております。  これは中を見てみますと、足が乗っかるここのところの上の金属部分のところをはがしますと、これは写真が非常に見にくいかもしれませんけれども、こういうふうにぼろぼろになった石綿が見えるわけなんです、ほかのものも入っているんですけれども。手でこうやりますとぴゅっととれるわけですね。ぼろぼろになっているんですね。上には金属がかぶっていますからわからないのですけれども、外したらそこのところ、横から風が入って上へいくわけですね。ですから、これは非常に車内に飛散しているのではないかと言われています。  これは、私も実はこの汽車には乗りたい、一度出張ででも行かせてくれぬかなと思うぐらいにすてきな、シャワーもついていれば、フルコースのフランス料理を食べさせてくれるとか、シートが物すごい立派だとか、自分で乗るのはちょっと高過ぎるなと思うのですけれども、一遍乗ってみたい。そして青函トンネルをくぐって札幌まで行ってみたい。私はこれがPRされたときに本当にいいものができたなと喜んでいました。そういう意味でいろいろな料理なども載せてPRしているのですけれども、これが食堂車なんですね。ちょっと見たところ非常にきれいで、乗ってみたいなと思います。これは見えないのですけれども、この窓側のところにあるのですね。  どうしてそんな車両があるのかというふうに見ますと、この車両だけ、ちょっとおかしいのですけれども、これは写真がとても小さくて大臣には見えませんけれども、ずっと「北斗星」の車両が並んでいて、その中の食堂車が一つ、屋根が低いのですよ。車両の形が違うのですね。同じ列車がずっと並んでいる中で、この食堂車だけ違うのです。これは調べてみましたら日立製作所でつくったのが昭和四十九年、非常に古いのですね。今ベビーパウダーとか学校の天井だとか壁にアスベストが入っているというので大騒ぎになって、それを取り除く、まだどこか取り除いていないというような形で、特にお母さん方が大変に騒いでいるものですね。これは吹きつけをやったのですけれども、ちょうど昭和三十年から四十年代ですね。この車両は四十九年につくっているのです。そのころにはこれを盛んにやっておったのですね。それをそのまま使っておるのです。ですからほかの車両と違うのですね。六十三年に新津車両所というところで改造しているわけなんです。  ですから、これはどう考えても大至急調査をしていただきたいのです。名古屋大学の分析を担当していただいた久永直見先生という方は、石綿は発がん物質であり、少量でも人体への影響はできるだけ避ける必要がある、すぐにがんになるというものではないにしても、少量でも危ない、JR内の専門家の意見も聞いて、現在の空気の汚染状態がどうなっているか、それがぼろぼろになっているのがどういうふうに出てくるのかというようなことについて適切な対策をとるべきだと分析の結果言われているわけです。  これは今はまだ暖房を使っていませんけれども、車両は非常に暑いそうですので、上がってきて今だって危険なんですね。暖房があるようになったら、そこをどんどん上がってくるわけですから。問題は、石綿の影響のあるところで働いている人は肺がんなどにかかる率が一般の人の五倍だと言われているのですね。よく聞いてください。石綿の影響を受けるところで働いている人がたばこをのみますと、がんになる率は五十倍になるのだそうですよ。そういう意味では、これは何としても大至急やっていただかないと――きょうも走っているわけですからね。それで石綿のちりが舞っているところでフルコース、七千円のフランス料理を楽しんで食べているなんというのは、幾ら何だって許せないことだと思います。ですから、これが本当にそうであるか、私どもや名古屋大学の先生の調査ではそうだということですので、労働省とそれから運輸省、そちらで大至急指導して調査をしていただきたいと思いますが、お答えいただきたいと思います。
  245. 百瀬信

    ○百瀬説明員 先生指摘の寝台特急「北斗星」の食堂車には、石綿と接着のためのセメントを混合いたしまして車体の内壁に吹きつけて断熱材として使用していると聞いております。JR東日本には現在当該車両を含めまして同一形式の車両は三両ございますけれども、さきに当該部位について調査させましたところ、吹きつけの状態は健全であるというふうに報告を受けております。しかし、安全性を高めるために、労働省と連絡を密にいたしまして、環境測定等を含めまして調査するよう指導してまいりたいと考えております。
  246. 田中美智子

    田中(美)委員 調査すると言われましたのであれですけれども、こんなになっておるんですよ。ぼろぼろになっているんですよ。これが風で舞い上がるわけでしょう。それで石綿があるということを認めていらっしゃるわけでしょう。三両食堂車があるということ。ここにはウエートレスやウエーター、それから車掌さんやキッチンの中の労働者、この人たちは一回行くのに十五時間も十六時間もかかるわけですから、ずっとそこにいるのです。客も大変ですね。客もその間いるわけですけれども、客は一回でおりてしまう。しかしそこで働いている労働者というのは、ずっと乗っていって、また戻ってくるわけです。年じゅうそういうことをやっているわけですから。安全だと思うけれども調査する。調査するということはどうしてもしてほしいですけれども、安全ですと言うのは、何を考えて言うのですか。こんなにぼろぼろになっているのを、これはつい最近撮ってきた写真ですから、小さくて見えませんけれども、素人が見たってふっと吹けば舞ってくるんですよ。それで石綿だと認めていながら、それは安全だと言うことはどう考えてもおかしい。それから修理をしたり検査をしたり保安をやっている労働者、こういう人たちの健康だって、これは一日もおろそかにすることはできないのです。ですから、安全だと思うけれども、まあ一応言われたから調査するなどというような態度は真剣じゃないと私は思うのです。人命にかかわることですから大至急これを調査してほしい。第一、こんな四十七年に石綿を吹きつけたようなぼろ車を使うなと言うのです。こんなものは廃棄してしまって新しいのをつくったらいいじゃないですか。たった三両じゃないですか。それでこそ青函トンネルの、何遍も言いますけれども、フルコース七千円、やはりそこで快適に旅行するというイメージをつくるんじゃないですか。こういうけちなことをして、人命にかかわるようなことは許せないと思うのですね。  きょうは残念ながら大臣は一言も物を言われないですね。これは大臣、一体何のためにそこにいらっしゃるのですか。いらっしゃるのなら、こういう重大な問題についてはやはり大臣から一言あるというのが当然じゃないですか。委員会を尊重するなら、大臣はただそこにおひな様のように座っているだけでは大臣としての役割は十分じゃない。大臣からちゃんと答えていただきたいと思います。
  247. 中村太郎

    中村国務大臣 しっかり勉強さしていただいておるわけでございます。今の問題につきましては、運輸省からも御答弁がありましたけれども、労働省といたしましても、運輸省と十分連携をとりながら、実態の把握をしてまいりたいと考えます。
  248. 田中美智子

    田中(美)委員 お勉強していただいたのは結構ですけれども、初めからもっとお勉強していただいて、きっちりと大臣がお答えいただくのが委員会の任務だと私は思いますので、それを要求しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  249. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。     ─────────────
  250. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、高橋辰夫君外三名から修正案が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。高橋辰夫君。     ─────────────  港湾労働法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  251. 高橋辰夫

    高橋(辰)委員 ただいま議題となりました港湾労働法案に対する修正案につきまして、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  修正の要旨は、第一に、事業主が、その常時雇用する労働者以外の者を港湾運送業務に従事させようとするときに、港湾労働者雇用安定センターに対し、労働者派遣を求める「努力義務」を事業主の「義務」に改めること。  第二に、公共職業安定所長に対する港湾労働者雇用の届出義務に違反した事業主等に対し、罰則を科すること。  第三に、政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、必要な措置を講ずること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  252. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。     ─────────────
  253. 稲垣実男

    稲垣委員長 日本共産党・革新共同から討論の申し出がありますが、理事会において協議の結果、御遠慮願うことといたしましたので、さよう御了承願い、直ちに採決に入ります。  港湾労働法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、高橋辰夫君外三名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  254. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  255. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。     ─────────────
  256. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、本案に対し、高橋辰夫君外三名から、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合の四派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。池端清一君。
  257. 池端清一

    池端委員 私は、自由民主党、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議及び民社党・民主連合を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     港湾労働法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 ILO第百三十七号条約批准に向けて、引き続き必要な条件整備に努めること。  二 本法施行後の実績等を勘案し、本法の適用港湾の拡大に努めること。  三 港湾労働者雇用安定センターの運営に必要な財源の確保について、港湾労働法付加金制度充実を含め十分配慮すること。  四 港湾労働者雇用安定センターの運営については、関係労働組合の意見が十分に反映されたものとなるよう指導すること。  五 港湾運送事業主が企業常用労働者及び指定法人雇用労働者以外の労働者を使用しないよう指導等を行うこと。  六 新制度への移行に当たっては、登録日雇港湾労働者雇用生活の安定の確保に十分配慮して、必要な経過措置を講ずること。  七 本法の実効を確保するため、違法雇用の取締りの強化その他必要な定員の確保を含む行政体制の充実強化に努めること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  258. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  高橋辰夫君外三名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  259. 稲垣実男

    稲垣委員長 起立総員。よって、本動議のとおり本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中村労働大臣
  260. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしまして、その御趣旨を尊重いたし、努力する所存でございます。     ─────────────
  261. 稲垣実男

    稲垣委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  262. 稲垣実男

    稲垣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  263. 稲垣実男

    稲垣委員長 この際、内閣提出参議院送付労働安全衛生法の一部を改正する法律案及び勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次趣旨の説明を聴取いたします。中村労働大臣。     ─────────────  労働安全衛生法の一部を改正する法律案  勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  264. 中村太郎

    中村国務大臣 ただいま議題となりました労働安全衛生法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  最近における労働災害の発生状況を見ますと、逐年減少傾向にあるものの、今なお年間八十万人もの人々が被災し、そのうち二千五百人ものとうとい生命が失われております。  これら労働災害の多くは、中小企業において発生しており、中小企業の労働災害発生率は依然として高い水準で推移しております。  また、世界にも例を見ない速さで進行している高齢化社会への移行により、高年齢労働者の労働災害が多く発生しております。  さらに、ストレスによる職場不適応の発生等労働者の心身両面での健康の保持に新たな問題が生じてきております。  このような近年における労働者の安全衛生をめぐる状況にかんがみ、政府としては、社会経済情勢の変化に対応した総合的な安全衛生対策を展開するため、中央労働基準議会の答申を得て、労働安全衛生法の一部を改正する法律案を取りまとめ、提案した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一に、小規模事業場における安全衛生業務を担当する者として安全衛生推進者を選任することとするとともに、安全管理者等に対し職場の安全衛生管理を進めるための新たな知識・技能を付与すること等により、安全衛生管理体制を充実することとしております。  第二に、法令上の要件を具備していない機械等の製造者及び輸入者に対し、その回収または改善を命じる制度を創設することにより機械等に関する安全性の確保充実することとしております。  第三に、労働者に対する健康教育、健康相談の実施促進することとし、このために必要な指針の公表や援助を行うことにより、労働者の健康の保持増進のための措置充実することとしております。  以上のほか、建設業における労働災害を防止するための計画の届け出制度の充実、発注者に対する勧告または要請等につきまして、必要な規定を設けることといたしております。  なお、この法律の施行期日は、原則として、昭和六十三年十月一日といたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要を御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  続きまして、ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  勤労者財産形成促進制度は、勤労者の計画的な財産形成促進して、その生活の安定を図ることを目的としており、現在、勤労者財産形成貯蓄を行う勤労者は千九百万人に達し、その貯蓄額は十二兆円を超えるなど、勤労者生活に広く定着してきております。  しかしながら、勤労者の財産形成をより一層促進するためには、当面次の事項についての改善が急務となっております。  すなわち、一つには、今後の本格的な高齢化社会に対応して、勤労者の老後生活の安定を図るための個人年金資産の着実な蓄積の促進であり、二つには、既存の持ち家についてニーズが高まっている増改築等への対応であり、三つには、勤労者の企業間・事業所間の異動の活発化に対応した継続的な資産形成の方策であります。  政府は、このような状況にかんがみ、勤労者財産形成促進制度につき所要の改善を図ることとし、勤労者財産形成議会の答申をいただいた上で、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。  次に、この法律案内容につきまして、概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成年金貯蓄契約の払い出し制限要件の緩和であります。  勤労者財産形成年金貯蓄の額が、据置期間中の予期しない金利の上昇により非課税限度額を超えることとなる場合には、一定の手続により利子等の額を払い出すことを可能とすることといたしております。  第二は、勤労者財産形成住宅貯蓄契約の使途の拡大であります。  勤労者財産形成住宅貯蓄契約の使途として、一定規模の住宅の増改築等を加えることといたしております。  第三は、勤労者財産形成給付金制度及び勤労者財産形成基金制度の転職時等における継続措置の創設であります。  転勤、出向、転職の際も、勤労者財産形成給付金制度及び勤労者財産形成基金制度の継続を可能とすることといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  以上でございます。
  265. 稲垣実男

    稲垣委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  次回は、来る二十一日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十八分散会