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1988-05-11 第112回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年五月十一日(水曜日)     午後一時一分開議  出席委員    委員長 森下 元晴君    理事 石渡 照久君 理事 木村 守男君    理事 笹山 登生君 理事 井上  泉君    理事 橋本 文彦君 理事 滝沢 幸助君       石破  茂君    内海 英男君       加藤 卓二君    佐藤 敬夫君       斉藤斗志二君    桜井  新君       杉浦 正健君    園田 博之君       武部  勤君    虎島 和夫君       宮崎 茂一君    村井  仁君       持永 和見君    粟山  明君       川崎 寛治君    沢藤礼次郎君       城地 豊司君    野坂 浩賢君       山下八洲夫君    武田 一夫君       森本 晃司君    薮仲 義彦君       川端 達夫君    安藤  巖君       藤田 スミ君  出席政府委員         国土庁防災局長 三木 克彦君  委員外出席者         参  考  人         (京都大学防災         研究所教授)  芦田 和男君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     井上  孝君         参  考  人         (東京大学地震         研究所教授)  宇津 徳治君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     山口伊佐夫君         特別委員会第三         調査室長    寺田 晃夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  災害対策に関する件(多様化する現代社会における災害対策)      ────◇─────
  2. 森下元晴

    森下委員長 これより会議を開きます。  災害対策に関する件、特に、多様化する現代社会における災害対策について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として京都大学防災研究所教授芦田和男君、東京大学名誉教授井上孝君、東京大学地震研究所教授宇津徳治君及び東京大学名誉教授山口伊佐夫君、以上四名の方々の御出席をいただき、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 森下元晴

    森下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ─────────────
  4. 森下元晴

    森下委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわりませず本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございます。  多様化する現代社会における災害対策につきまして忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、まず、参考人皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただき、次に委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず芦田参考人にお願いいたします。
  5. 芦田和男

    芦田参考人 芦田でございます。  本日は、多様化する現代社会における防災対策、非常に難しいテーマでございますが、意見を述べる機会を得まして非常に光栄に存じております。  災害の問題といいますのは、言うまでもなく、異常な自然現象社会抵抗力との不均衡によって生ずるものでございますから、災害対策災害特性などを議論する場合には、社会条件それから外力条件、この両面から考える必要があろうと思います。  まず、第一番目の社会的条件でございますけれども我が国社会的条件は、申すまでもなく非常に都市化が進んできておるということでございまして、人口の増大によりまして、低平地を埋め立ててあるいは丘陵地帯を開いて住んでおるという状況でございます。こういう場所というのはもともと災害に弱い場所でございまして、例えば宮城県沖地震とか長崎水害とかあるいは昨今の災害方々で起こっておりますが、そういうところでもやはりこういう弱いところが割合やられておるという状況でございます。特に低平地帯臨海地帯埋め立て地域、こういうところは大きな自然現象というのを今まで経験しておりませんが、ゼロメートル地帯というのは一たび災害が起きますと、その影響というのははかり知れないものがあろうというふうに思います。これが一つ大きな問題点であろうというふうに考えております。  もう一つは、生活機能が以前に比べて非常に変化してきておるということが挙げられております。我々の生活というのは、ガス、電気、水道それから情報通信システム、そういうものに依存しておりますから、一たび災害を受けますと非常に大きな生活機能の障害を受ける、これは以前と比べ物にならないような状況でございますが、そういうことが昨今の災害において問題になってきておるところでございます。  もう一つは、高密度社会といいますか、それを支えておりますのはコンピューターであり通信情報システム、それから車とかこういうものでございますけれども、これは非常に水とか地震とかこういう外力に弱いものでございます。こういうものは、以前においてはそれほど問題なかったような外力に対しても、災害が起こってそれが影響する範囲というのは非常に多うございます。     〔委員長退席笹山委員長代理着席〕 一たび今まで経験したことのないような異常現象を経験しますとどういうことになるか、非常に心配されるところでございます。  こういうような社会的条件に対しまして、一方外力の方の条件はどうかと考えますと、これはちょっと歴史的に考えますと、縄文時代には現在の気温よりかなり温度が高かったということで、海面も三メートルぐらい高うございまして、縄文海進と言われておりますように、海岸線というのが現在の陸地の奥深くに入っておったわけでございます。ところが、弥生時代以降二千年以上になりますと、こういう長い期間におきましては平均的に外力というのはそう変化しておらない。災害の頻発する時期とかあるいは比較的平穏な時期、こういうのが続いておりますけれども、平均的には変わらない。時々巨大な災害が起こるということでございます。  こういうことから考えまして、今後も過去の歴史から見まして非常に大きな現象が起こるということは間違いないと思いますので、こうした都市化社会というのはせいぜい二十年、三十年ぐらいの歴史しかございませんし、かつそう大きな災害の洗礼を受けておりませんが、そういうことで、こういう異常な現象のときにどういうことが起こかということを十分に考えて対策しておくことが必要だろうというように思うわけでございます。  それで、外力は二千年くらい余り変化しないと申しましたけれども、最近、人間活動の結果かなり急激な変化が起こりつつあるということは注目すべきところだと思うのです。よく言われております炭酸ガスとかグリーンハウスガス、いわゆる温室効果を持つガスでございますが、これは人間活動に起因するものでございますけれども、この濃度がどんどん上がってきておるということで、地球上の気温というのがかなり上昇してきて今後も上昇が続くであろうということが予想されております。  これがもう既に十九世紀から始まっておりまして、気温上昇して海面が二十センチぐらい上昇したということが観測によって明らかになっておりますが、今後どうなるかということが非常に問題でございます。いろいろな予測がございまして、今後百年ぐらいの間に、二一〇〇年ぐらいに地球上の海面、これは五十センチぐらい上昇するというものから二メートルくらい上昇するというものまで、五十センチから二メートル、いろいろな幅がございますが、いずれにしてもかなり大幅な上昇が予想されておるわけでございます。  そういうことが起こりますとどうなるか。五十センチ上昇しますと、バングラデシュの陸地というのは一〇%以上水没する。ナイルのデルタは一五%、そのほかアメリカでもそうでございますし、日本は特に海岸地帯、低平地帯都市が発達しております。そういうことから考えますと、縄文海進という六千年も長い間に起こったような現象がせいぜい百年くらいの間に起ころうとしておるということがありまして、そういうような海面上昇したときに高潮とか洪水が来ると、はんらんというのが非常に大きな影響を持つだろうと思います。したがいまして、こういう問題についても十分対策をしておかなければいけないというふうに考えるわけでございます。  そこで、防災対策でございますけれども三つステージがございます。  第一のステージというのは、まず外力を調節しようということでございます。これは、例えば貯水池による洪水調節というのはよく知られておりますけれども地震とか火山噴火というようなものに対しては、外力を調節することはできません。  第二のステージというのは、これは直接防護施設で我々の生活、生産の場を守ろうということでございます。これは行政でも非常に活発にやっておるところでございます。それぞれの災害別基準を設けてやっておるわけでございます。例えば河川などにおきますと、一級河川の主要なところに対しては二百年に一回とか百年に一回というような規模の洪水を想定して治水工事を行っておるとか、あるいは都市中小河川におきましては五十年に一回とか百年に一回、それぞれの基準を設けてやっております。それから、高潮、津波などに対しましては、既往の最大のものをとろうということでやっておりますし、特に大阪湾伊勢湾東京湾といったようなところにつきましては、伊勢湾台風モデル台風としまして、それが最悪コースに来て最悪条件の場合にどうなるかということを考えて設計工事をやっておるということでございます。それから、地震対策につきましては、建物の耐震の問題でございますけれども、これは第一の基準としては、例えばその建物耐用年数内に数回起こるような地震では、これは損傷を受けてはいけない。それから、耐用年数内に一回起こるか起こらぬような激震、こういうものに対しては建物損傷を受けても仕方がないけれども、それが倒れるようなことがあって人命に損傷を来してはいけないということで設計基準が進んでおる、こういうふうなことで対策をそれぞれの分野でやっておるわけでございます。  ところが、先ほど言いましたように、異常な自然現象というのはそういう設計外力を超して起こることがあるわけです。そういうときに大災害が起こるわけで、そういうことに対しても災害を軽減するように考えておかなければいけない。あるいは、先ほども言いましたように、設計基準に向かって努力しているわけでございますけれども、全部がそうなっているわけではございません。災害が起きやすい施設もございます。そういうことで、社会の持っている防災力を上げていく必要があろうと思います。  それにはいろいろなことが考えられますが、一つ現象予知技術というのを進めて、それに対する的確な避難とかそういう体制をとっていくということでございます。予知技術につきましては、学問的な進歩で大分進んではきておりますけれども、例えば地震とか集中豪雨をとりましても、特定の地域についてはある程度できるようになってきておりますが、どこでもできるということではございませんし、まだまだ研究すべきところが多うございます。そういうことをまず進めていかなければいかぬ。  第二の段階につきましては、異常な現象が起こったときにどういう災害が発生するか、もちろん堤防が切れたりすることがありましょうし、そういう場合にどういうふうに災害が発生するか、どういうふうに伝播していくかということをシミュレーションなどをやりまして、日本全体の危険度診断ということをやる必要があろうと思います。これはもちろん都市の、特に東京とかそういう周辺で既にやられておるところでございますけれども災害種類によりまして火山噴火とかあるいは地震洪水高潮、いろいろな災害がございますから、そういうものを対象にして異常なときのシミュレーションをやって、十分前もって危険度を知っておく。これはいろいろな外力を想定してシミュレーションをやる。できる段階には来ております。ところが、正確にそれをやろうと思いますと難しい面もございまして、その裏づけとなる基礎の学問というのも並行してやらなければいかぬ、そういう状況にございます。  もう一つは、社会の持っている防災力というのを上げていこう。例えば町づくりとか何かいろいろな都市の再開発というのがやられておりますが、それと関連して防災空間をつくるとか、いろいろな災害に強い状況をつくっておく。町づくりの中に防災の観点から位置づけて将来を見越した設計をやっていくということが非常に大事じゃないかと思います。  最後災害文化。これは、過去に災害を受けた地域というのは、災害異常現象を予測する技術とかあるいはそういうときどういうふうに対応するかということの伝承がかなり行われておりまして、同じような外力でも、そういうことを経験しないところとは実際に非常な差が出てくるわけでございます。そういうような災害文化というのが以前にはあったわけですね。子供に伝え、代々言い伝えたりしまして、あったわけでございますけれども、現在の都市社会ではそれが非常にできにくくなっておるという状況がございます。それを補うものとしましては、防災教育、特に学童を対象とした防災教育、それから社会人対象とした防災教育、これを積極的にやっていく必要があるのではないか。これにはもちろん、地震洪水火山噴火豪雨、豪雪、そういった災害種類によって非常に違っておりますので、それぞれの地域に起こるようなものを取り上げてやっていくということが非常に必要ではないか。  今言いましたように、災害に、自然に対抗する手段としては三つステージがありますけれども、こういったものを総合して、異常な現象が起こりやすい我が国において、国土と国民の生命財産を守っていくということが非常に大事じゃないかと思うわけでございます。  そこにお配りしております資料がございますが、これはちょっと言わしていただきますと、文部省の科学研究費の補助を受けて災害に関する基礎的な研究をやっておるものでございますが、一年間にこういうことをやりましたということの概要をちょっと書いております。どういうことをやっているかというテーマぐらいごらんいただき、また後ほどお気づきの点がございましたらいろいろ御指導、御鞭撻をお願いしたいと思いまして、お配りした次第でございます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 笹山登生

    笹山委員長代理 ありがとうございました。  次に、井上参考人にお願いいたします。
  7. 井上孝

    井上参考人 井上でございます。  多様化する現代社会における災害対策ということで御意見を申し上げなければならないわけでございます。私は、二十年間中央政府職員をいたしまして、二十年間国立大学の教師をいたしまして、ちょうど半々でございますが、もうきょうは最後の御奉公だと思ってまかり出た次第でございます。私は都市計画に関与しておりましたので、主として都市防災の面から私の日ごろ考えていることを申し上げたいと思います。  現在、関東大震災とこれからの地震というものを考えますと、いろいろな点で違った様相、問題がございます。これに対しまして、例えば人口が集中しておる、あるいは市街地の高層化が進んでいる、あるいは自動車交通の増加があるということ、いろいろございますが、私はその根本に、災害の発生するケースが今まで考えていなかったようなことに対応しなければならないということがあろうかと思うのでございます。例えば新しい材料を使うとか、あるいは考えられなかったようなところから過熱して火が出てくるとか、あるいはいわゆる新しいオフィスのいろいろな機器の作動すること、それに対するいろいろな故障あるいは誤作動というようなことがございまして、私はそういうことが都市の中で、殊に都市機能化すればするほど新しい対応、対策が考えられなければならないと思うのであります。そのように、今私ども対策も変わるけれども災害自体が新しい姿で我々に挑戦してきている、殊に都市において、都市生活においてそれが甚だしいということを感ずるのでございます。  私は、時間も短いので、幾つかの例を申し上げまして、これだけは難しいけれどもお考えいただきたいという意味で申し上げたいと思うのでございます。  まず第一は、地下利用の問題でございます。この点につきましては、東京昭和の初めに地下鉄ができまして浅草と上野が結ばれたときから、地下商店街を設けるというようなことがございました。そして、戦後やみ市の盛んなときに、渋谷の例のハチ公の広場でございますが、あそこをきれいにしなければならないということから、そこで生きている人たち地下に移して、そして地下街というものを認めたわけでございます。  しかしながら、地下街の持つ非常に大きな危険性、これは例えば静岡でもそのほかの場所でもいろいろな実例がございますが、どうしても防ぎ切れないような問題もございまして、避難路とかそれからいろいろな防御施設をいたしますが、政府考え方としては、これはよほどのことでない限り認めることはできないという方針が長く続いたわけでございます  しかしながら、ここ数年、この問題につきまして地下利用するという方向へだんだんと考え方が移りつつあるわけでございます。これはもっともなことでございます。高度に土地を利用するには地下を使わなければならない、あるいは鉄道をさらにこれ以上都市中心部へ持ってくるにはどうしても地下に行かざるを得ない。皆様東京駅その他の地下駅をごらんになりますと御理解いただけるわけでございますが、非常に深いところまでそのような利用の仕方というものを今後は認めていこう、もっとやりやすくしようというところへ変わりつつあるわけでございます。  これに対しまして、私はもちろんそういう考え方で進むべきだと思いますが、またそれに対する土木工学的ないろいろな技術は非常に進んでいるわけでございます。従来一本の円柱を通して、そして鉄道をその中へ通していたのが、二つ重ねて眼鏡のような形にして、それを重ね合わせて掘っていくというようなことが現に東京でも行われているわけでございます。その方が経済的でもあり強いということで、技術進歩というものは非常に大きなものでございます。また、変電所地下に入れて上を公園化しようとかいろいろな考えが出ているわけでございます。  私は、これらの企画あるいは計画がそれぞれ単独に進まないで、ある地域に対して総合的に、将来ここには何を入れるということをはっきり確認した上で町づくりをしていかなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。今いろいろな地下施設を見ておりますと、これはそれぞれ早い者勝ちでございまして、人間が一番後に残されて大きな下水道の管の下を私どもがくぐり抜けるとか、あるいは横浜の駅の下の広場商店街広場ごらんになりますと、上がったり下がったりしながら人が歩かなければならないというようなことがございます。全体の地下利用をするならば、地下利用もやはりこれは一つの総合的な構造物として考えていかなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、その次に水害に対しましては、これはもういろいろな対策がございまして、私がここでいろいろ申し上げることではございませんが、私は長崎県に起こりました二つの大きな水害を、一つ行政官の立場として、一つは学校の職員として対応いたしました。長崎諫早で起こりましたときには、これは「眼鏡橋の嘆き」という詩を書いた人がおります。と申しますのは、眼鏡橋は絶対にどんな洪水が来ても壊れない橋でなければならないぞと言われて、諫早ではつくったわけでございます。しかしながら、頑張ったことによって、朝、夜が明けてみたらすべての人がそこで自分に非難の目を向けたということがございまして、結局、眼鏡橋そのもの一つのせきとめになって、そしてそれが大きな水害を呼んで、その後を私ども計画高水量に従って新しい川をつくったわけでございます。それは最近の第二の災害水害のときには、そういう意味諫早には被害がなかったわけでございます。それで、第二の長崎市に起こりました水害の後始末のときには、私は全体の計画取りまとめ役として現在の水害に強い都市というものの計画を提案してお決めいただいたわけでございます。  しかしながら、私は非常に大きな疑問を持っておりますのは、この第二の水害のときに三十時間に五百ミリの雨が降った。五百ミリと申しますのは、東京に降る雨の三分の一が三十時間に降ったということでございます。そして、それだけであればまだあれでございますが、その中に今度は、これはだんだん調べていくとわかるのですが、局所的に非常に大きな集中雨量がある。例えば一時間に二百ミリを超える雨がある部分に降り注ぐ、これに耐え切れないで動き出した土砂が結局あの被害を生んだわけでございます。そのような経験を長崎市は持って、そして河川行政はそういう箇所についていろいろと対策を講じておられるわけでございますけれども、全国的に見て、五百ミリの雨が降り、そこへさらに一時間二百ミリの雨が降って耐え得るような山地の始末ということはなかなか難しいんじゃないか。ということを考えますと、その対策ということは非常に大きな問題になるのではないか。少し早く警報を出せば家は失っても人の命は失わない、これが今の長崎考え方でございます。ということは、観測網をよくしきまして、そして刻々に来る雨量を検査いたしまして避難命令を出す、こういうようなことでございますが、やはりこれを考えていかなければならない、こういうふうに思うわけでございます。  それから、地震の場合で申しますと、いよいよ地震が起こったというときに、初めの一日とかそういう間の対策というものがどうなるだろうか。私自身、今首都高速道路公団の管理委員会委員をやらさせていただいておりますが、首都高速道路というものが一体どんなふうになるだろうか。この上を走っていた自動車が突然とまる。今でもとまると言っておしかりを受けておりますが、とまるわけでございます。それがどこかから下へおりるにしても、これはなかなか難しい問題であろう。道路とそれから鉄道網、これはすぐとまる。鉄道はもっと鋭敏に、ちょっと揺れてもすぐとまるわけでございますから、それだけ安全だと思いますが、なおかつ余震が頻々として起こるときに、その鉄道もまた利用するのが難しいんじゃないか。ということを考えると、私は、どうしてもヘリコプターというもののもう少しきめの細かい利用方法ということを考えておかなければならないんではないか、こういうふうに思うわけでございます。  それらのことを考えますと、ヘリコプターがおりる場所というのは一体どういうところだろうか。今、立川で私ども計画の御相談にも乗っておりますが、あそこに非常に大きな基地ができるということはいいけれども、そこからそれぞれの局部へ行く行く先はどうだろうかということを考えるわけでございます。私はいろいろな会合でいろいろな話をしておりまして感じますのは、やはり今の行き方は、広い公園であるとかそういうものをねらっているわけでございますが、小学校の校庭というものが住民にとっては、小さな子供から大人まで非常に親しみの持てる場所である。そうとするならば、小学校校舎というものを非常に頑丈につくって、例えて申しますと、小学校校舎の上にはヘリコプターもおりられるというような場所をつくって、これを全体の細胞の最小単位にすべきではないかというふうに思うわけでございます。  関東大震災のときには私は大森の山の手の方に住んでおりまして、小学校前でございますから関東大震災を知っている世代の最後だろうと思うのでございますが、父が東京に勤めておりまして、駆け足で帰ってきて家の中へ入ろうとするのを外にいた我々が引きとめたというようなことで、やはり家族が心配であろう。そのときには電話が非常に詰まってくる、こういうことを申しますが、電話の連絡、通信は毎年進んでまいりますので、だんだんそういう心配はなくなるのではないか、むしろ通勤距離が延びているということに対して、一家が一緒にならなくてもそれぞれが安心して災害の後を過ごせる、高齢者も幼年者もそういう形で生き延びる工夫が必要ではないかと私は思うのでございます。  それからもう一つは、高速道路は大丈夫かとか橋は大丈夫かとかいろいろ言われまして、それに対して、南関東に大地震が起きたときにどうなるかということを調査委員会は長年にわたって調査を続けております。さらに、これはニューヨークの下町で起きたことでございますが、五十年前につくった高速道路が落ちて、それを取り除いてその跡を今再開発いたしておりますが、施設が古くなって使えなくなるというような問題がございます。今は丈夫でも年代の変遷とともにこれが変わっていくということも考えなければならないのではないか、私はこういうふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、これは非常に先の話でございますが、本当に災害に強い町というものをつくるならば、市街地は面的整備をしなければならない。面的整備と申しますのは、計画されたような広がりのある町をつくっていくということでございます。  一九六〇年というのは、六〇年安保と申しまして非常に騒がしい年でございましたが、この年に初めて人口集中地区という統計を十月にとって、人が固まって住んでいる地域が一体どれだけあるだろうかということを調べたわけでございます。そのときに、三千八百平方キロの地域に国民の四五%が住んでいる。ということは、四五%の人は全体の国土の一%の中に住んでいるというのがそのときの結果でございまして、私どもは非常に驚いたわけでございます。  それが現在は三倍になりまして、三倍になったかわりに住み方は、これは人口密度と申しますが、ずっと下がってきております。ずっと下がってきておりますが、それほど下がっておりません。やはり固まって町をなしているわけでございます。そして、二十一世紀を迎えるころにはもう一倍、四千平方キロぐらいの市街地をつくらなければならない、こういうことが課せられているわけでございます。  私は、これらの市街地はなるたけ計画的な面的整備を重んずるようなつくり方をしてほしい、こういうふうに思うわけでございます。非常に時間のかかる、お金のかかる大きな問題でございますが、市街地をただ自由に、土地があるからといって家を建てないで、そこに何らかの計画を入れていくということが必要なのではないか、こういうふうに思うわけでございます。  現在、日本の家屋の統計を見てみますと、四メートル以上の道路に面している家屋は全体の四割しかない。二メートル未満あるいは四メートル未満の道路に面した家に住んでいる人は六〇%に及ぶわけでございます。ということは、救急車の問題とかいろいろなことを考えますときに、行動の自由というものは非常に限られておる、そういう点が今のような面的整備をすることによって救われる、少しはよくなるというふうに私は信ずるわけでございます。これは非常に長い問題でございますが、なおかつ、二十一世紀を迎えるこの十何年の間にもう三千平方キロ以上の市街地を我々はつくらなければならない。市街地をつくるときには必ずそういう計画的な配慮が必要であるということを私は強調したいと思うのでございます。  お耳を汚しまして甚だ恐縮でございますが、また、御質問がございましたらお答えいたしたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 笹山登生

    笹山委員長代理 ありがとうございました。  では次に、宇津参考人にお願いいたします。
  9. 宇津徳治

    宇津参考人 宇津でございます。  私は、地震学、その中でも主に地震活動の研究を行っておりますので、過去の地震の発生状況あるいは将来の地震の発生予測、予知というような面で、災害対策に関係のあることを、皆様よく御存じのことが多いかと思いますけれども、概略述べさせていただきたいと思います。立ち入ったことにつきましては、御質問いただければ後ほどお答えしたいと思います。  日本は世界有数の地震国でございまして、過去に多くの地震に見舞われて災害をこうむってまいりました。最近百年間をとりましても、千人以上の死者が出た大震災というのが十回ございます。また死者が二十人以上、多くの家屋が倒壊したという相当の被害地震も含めますと約三十回ございます。軽い被害地震まで含めますと、過去百年間に五百回近く起こっております。ですから、一年に平均五回弱被害地震があるということになります。これらは北海道から沖縄県まで各地に分布しておりますので、そのことを見る限り、日本はどこでも、程度の差はあっても震災の危険があるということになります。  例えば、日本で死者が千人以上の大震災、これは昭和二十三年の福井地震以来四十年間全然起こっておりません。十回あると申しましたけれども、その十回すべて四十年以上前の六十年間に起こっているわけでございまして、このことは防災対策が効果を示したという点もございますけれども、この四十年間大地震人口密集地を避けて起こるなど幸運に恵まれていたということが主な理由でございまして、こういうような状況が長く続くとは見ない方がよろしいかと思います。  この四十年間にも、死者が数十人程度の地震、例えば新潟地震、十勝沖地震、宮城県沖地震、それから伊豆に二回ございました。そして日本海中部地震、長野県西部地震などがございまして、それぞれの地震ごとにいろいろなタイプの災害、例えば地盤の液状化だとかブロック塀の倒壊で死者が出るとか、造成宅地が崩壊したための被害とかライフラインの被害、あるいは津波だとか山崩れだとかが改めて問題になってまいりましたけれども、戦後、日本が高度成長を遂げてきて以来できました構造物あるいは非常にハイテクノロジーのいろいろなシステム等は、本当の意味での大震災の洗礼を受けていないということも事実でございます。こういう大震災を最も警戒しなければならないのはもちろんでございますけれども、数としては中小被害地震というのが圧倒的に多いので、こちらの方も無視することはできないわけでございます。  地震にはいろいろなタイプがございます。震源の深さが浅い地震、深い地震、それからプレート境界の浅いところに起こるマグニチュード八クラスの巨大地震、あるいは潜り込んだプレートの中に起こるやや深い地震、内陸の浅いところに起こる活断層から起こる地震、それぞれ発生の場所、発生の機構によりまして多様でございまして、揺れ方も違ってまいります。それから、地震予知という面から見ますと、前兆のあらわれ方も地震のタイプによって大きく違ってまいります。  地震災害はまたこういった地震そのものの性格によるほか、対象とする地域の自然条件社会的な条件によって、あるいは同じ場所でも季節や時間帯によっても違ってまいります。それで、国あるいは地方の中心になります都市が被災しますと、建物が倒壊するという程度には至らなくても、行政面、通信交通面あるいは医療とかいろいろなところで障害ができまして、国民生活あるいは経済活動が大きな影響を受けるということになりかねませんので、いろいろな場合を想定してきめの細かい対策が必要ではなかろうかと思っております。  ですが、地震対策を全国一様な基準で進めるのは必ずしも効率的ではございませんで、何らかの理由で大きな地震が起こる可能性がほかの地域よりも高いと考えられる地域あるいは国として特に重要な地域は重点的に観測を強化し、研究を進め、防災対策を進める必要がございまして、現にその方向で進んでおると思いますけれども、しかし現在の知識からそのような地震の起こる可能性が高いと考えられる理由が特に見当たらないところでも大地震は起こるわけでございまして、そのような地域の方が面積的に見れば圧倒的に広いわけなので、確率は小さくても面積で稼ぎますから、そういうところに起こる地震もたくさんあるわけでございます。したがって、一部の重点地域だけに集中して対策を立てるわけにもまいらないわけです。  同じ場所で大地震が周期的に発生したり、あるいはこの場所地震が起こると次にはここに起こるといった規則性が非常にはっきりとしておれば、予測が容易なんでございますけれども、なかなかそうはまいりません。ある地方の地震について、ある年代にはそういう規則性がはっきり認められても、必ずしも次にそうなるとは限りませんで、地震の発生というのは、その場所の過去の地震の発生状況だけじゃなくて、いろいろな要素の影響を受けますので、そう非常に規則的に起こるというわけにはいかないわけでございます。  例えば日本ですと、小田原付近がこれまでの何回かの地震の繰り返しの間隔から次の地震が近いということが指摘されております。これで警戒をする必要があることはもちろんでございますけれども、例えば最近伊豆地方に活発な地殻活動が起こっておりまして、これが小田原の地域地震の発生にどういう影響を及ぼしているかというようなことも必ずしもよくわかっておりませんので、非常に規則的に次の地震も起こるかどうかなかなかわかりません。また、予想どおりに起こらなかったからといって安心だというわけにもいきませんので、非常に難しいわけでございます。  それで、地震予知は可能かということは、あるいはもし今できないのならいつになったらできるかということはよく尋ねられることでございますけれども地震予知というのは確率の問題でございまして、現在でも非常に条件がよければある程度のことはできる場合もございますし、学問、技術がさらに進んでもどうしてもできない地震も残るだろうと思います。ただ言えることは、研究を進め対策を立てていけば、予知できる地震の率はふえるだろう、あるいは予報を出した場合にその当たる確率も向上するだろうということは間違いないわけでありまして、地震予知というのは、その問題の性質上、何か新しいことが発見されてあるいは新しい手法が開発されて一挙にできるようになるというようなものではないのではないか、いろいろな現象を詳しく観測して、データを積み重ねていってそれを総合的に判断するということが必要ではないかと思います。  それで、予知の推進のためにはいろいろなタイプの前兆現象観測あるいは測量を充実することが基本的に大切でありますけれども、そういった異常現象というのは観測しますとたびたび見つかるわけでございまして、こういった異常が本当の地震の前兆であるかどうかということを解釈するためにも、あるいは観測自身を効果的に行うためにも、地球の内部の状態とかあるいはそこに起こっている変動現象の基礎的な研究が必要でございまして、そういう基礎的な研究を進めていくことが大切であろうと思っております。  現在、地震予知の関係者は、来年度から第六次の地震予知計画が始まりますが、その計画を作成中でございます。これは関係機関、大学その他関係者が衆知を集めまして、いろいろな条件、例えばマンパワーの限界とかなんかを考慮しまして現在考えられる最善の策を練っておると思いますので、この案ができましたならばそれに沿って必要な措置が講ぜられるように希望しております。  特に最近は、昨年の十二月に千葉県東方沖に地震がありましてかなりの被害がありましたし、それから三月には東京都の直下に地震が起こりました。そういうことがありまして、もっと大きな地震が来るのではないかというようなことを聞かれるわけでございますけれども、そういう地震があったからといって、最近の地震活動その他が特に異常だとは私ども思っておりませんが、首都圏というのは歴史以来非常に多くの地震被害に見舞われております。多数の死者が出るような大震災も、江戸時代になってからの四百年近くの間に八回ございました。この八回の間隔が、一番短いものでも三十二年間、長いものは百九年間でございますが、現在大正十二年の関東大震災から六十五年たっておりまして、もうそろそろ来るのではないかという心配は当然のことでございます。  それで、首都圏に被害をもたらす地震は、これは大正十二年の関東地震のような相模トラフ沿いのプレート境界型地震というようなものもございますが、首都圏の直下あるいは非常に近くに起こる地震もございます。それで、首都圏の地震といいますと漠然と関東大震災の再来を考える向きもありますけれども、こちらの方は六十五年、ある意味ではまだ六十五年しかたっていない、もう少し間隔は長いのではないかという考えが強いので、もちろんもうちょっと小さな地震では今すぐ起こっても不思議ではございません。  関東大地震クラスの非常に巨大な地震ということについては、発生の可能性はまだしばらくは小さいのではないかと思われますけれども、首都圏直下の地震は、規模が小さくとも、例えばマグニチュード七程度でも、特に震源の深さが浅い地震の場合は非常に大きな災害が生じます。例えば安政の江戸地震のように、範囲は狭いですけれども非常に大災害が起こる例がございます。また、関東地方ではやや深い地震が非常に多いわけでございまして、その中で大粒のものが起こります。例えば明治二十七年の東京地震のようなものが起こりますと、これは非常に壊滅的ではないにしろ、相当の被害が生じます。例えば物の落下、転倒あるいはいろいろな事故によって非常に多数の負傷者が出るとか、ライフラインの障害によって混乱が起こるとか、いろいろなことが考えられます。  ですけれども、首都圏の地震の予知というのは非常に難しいと言われております。これは観測環境が非常に悪いということ、それから対象とする地震がいろいろなタイプがございまして、なかなか一筋縄でいかないということがございます。それから、最も発生頻度の高い地震は、先ほど申しましたように深さがやや深いということで、そういうような理由でますます予知が難しいというようなことがございます。  地震の予知、予測というのは、起こる起こらないという白黒をはっきりと断定するような問題ではございません。すべて確率的にしか物が言えないわけでございますけれども、現在の知識をもってしてもある程度のことは確率的ではありますけれども言えるわけでございまして、そういった情報を限界をわきまえた上でいろいろ利用していただくのがいいのではないかと思っております。そういった情報について、往々にしていろいろ誤解を生じて混乱を生ずることがございますので、地震の知識をしっかり身につけていただくということ、国民に対する地震の教育あるいは知識の普及ということが大切ではないかというふうに思っております。  以上、思いつきましたことを幾つか申しました。もう少し立ち入ったことにつきましては、御質問いただければできるだけお答えいたしたいと思っております。どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 笹山登生

    笹山委員長代理 ありがとうございました。  では次に、山口参考人にお願いいたします。
  11. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 山口でございます。  私、専門が砂防工学と申しまして、行政で申しますと治山、砂防、こういう関係の研究をやっているわけでございます。したがいまして、本席は土砂災害、水災害につきまして少し意見を申し述べさせていただきます。  日本の国土を天然資源あるいは自然災害、こういった観点から見ました場合に、山地と沖積地、当然こういうぐあいに大きく分かれるわけでございますが、山地の場合は非常に貴重な水資源を供給するあるいは森林資源を供給する、これは木材とか環境、こういったようなことで供給してまいりまして、沖積地はそれを享受するという形をとっているわけでございます。それと同時に、山地は自然災害を発生する立場にございまして、これはまた後ほど申し上げますが、好んでするわけではございませんで、位置が高いところにございますので、山で起きた土砂の活動といったようなものが当然沖積地へ波及する、つまり沖積地はそれを受動する、こういったような形になっているわけでございます。  そういったような状況下で国土条件をちょっと申し上げますと、一つは、先ほど来御説明にございましたように、人口問題があるわけでございます。さらにもう一つは、いわゆる高度社会日本の国土の生産性向上、国民の便益、こういったものが便利になればなるほどこういったほかに複雑な現象がまた絡んでくる、こういったような問題が来るわけでございます。  人口問題について申し上げますと、先ほどもちょっと御説明がございましたように、ちょっと古い資料ではございますが、日本人口密度が大体三百十人ぐらい、韓国とかあるいはオランダも多いと申しますが、オランダの場合は三百四十人、こういったような数値が出ております。ただオランダの場合になりますと、全域に均等に人が住むわけでございますが、日本は可住地が大体三〇%ぐらいでございますので、これを可住地面積で補正いたしますと概算して密度が千三十人ぐらいになるわけでございます。これは非常に密度が多いと判断せざるを得ないわけでございますが、先ほど説明がございましたようにいろいろな災害その他生活環境等を考えまして、せめて六百人ぐらいというようなぐあいに考えますと、可住地を約十万平方キロメートル以上さらにふやさないとなかなか難しい、こういったような実態があるわけでございます。  これは海へ求めるか、あるいは山を可住地化するか、こういったようなことになるわけでございますが、かなり山の方へそれが向いていかざるを得ないということが当然考えられるわけでございます。ちなみに、現在いわゆる森林として認められている地域の十年間の統計、林地開発で許可されたものを見ますと、十年間で千平方キロメートルというものが開発されております。毎年百平方キロメートル。これは一ヘクタール以上の申請許可ということになっておりますので、実態としては多少大きな面積となり、これらはかなり山の方へ進んでいっているということは考えられるのではないかと思います。  それからもう一つは、日本の生産性というものが、もう既に第一次産業の生産経済から第二次産業を中心とした生産経済へ移行しているという実態がございます。特に道路網等が拡充してまいりまして、さらに立地的な制約のない第二次産業ということになりますと、これがまた山村の方へ移行していくという実態も予測されるわけでございます。つまり、崩壊とかあるいは土石流とかの発生流下帯へ人間生活圏が拡大されていっているというのが現在の状況ではなかろうかと考えます。したがいまして、日本の国土の気象条件、地質条件あるいは地形条件、こういったようなものを絡み合わせて考えますと、今後土砂災害あるいは水災害災害機会というものが増大していくということは当然考えられます。  配付してございますプリントの中にいろいろ整理した日本の地質条件というようなものを書いてございますが、これは説明を理解しやすいようにするためにかなり無理してつくったもので、かなり例外があるということはもちろんお含みおきいただきたいと思いますが、生産性の高い古い時代の中古生層という地質になりますと非常に断層とか破砕帯が走っておりまして、岩が非常に弱い、崩壊しやすい、こういう条件を持っております。あるいは花岡岩の風化した日本語で言いますマサ、こういった地帯は浅い層の崩壊とかあるいは土石流の発生とかいった要件を持っているわけでございます。さらに、新規の火山性山地といったようなものも、温泉余土化されたり、あるいは岩が固まる時点でできた変朽安山岩、あるいは火山灰の堆積、こういったようなところは表面侵食とかあるいは土石流とか地すべりの発生しやすい要件を備えているということでございます。したがいまして、地質的に見まして、日本の山は何らかのインプットがありますとこういった現象が発生する素因を有していると考えていいのではないかと思います。  さらに次といたしまして、日本の気象条件を見ますと、非常に豪雨の発生する気象要件を持っているということが言えると思います。  ちなみに日本とアメリカの比較をいたしますと、日本の平均が千八百ミリ、山岳地になりますと二千から二千五百ミリぐらいの年間の降水量があるわけでして、さらに豪雨になりますと数日間で三百から五百ぐらいの雨が降る、こういったような実態もございます。一時間に百ミリ以上のものが発生する、こういう条件を持っているわけでございます。アメリカのTVA等で見ますと、年降水量が大体千三百、一日の雨量が百四十ミリといったような状況でございます。そういった意味では、地質要件あるいは気象要件が災害に対して非常に悪い状況を備えていると言えると思います。これは悪い面だけ申し上げたわけですが、こういったものがまた日本の国土の第一次産業の生産性にも今度は逆に大いにプラスしているということももちろん前提として入っているわけでございます。  災害に対する水とか土砂の挙動、こういったようなことを一応整理したものをここにつけておりますが、一つの大きな土体の活動ということを、深層崩壊あるいは地すべり、こういったようなことで分類しております。そのほかに非常に浅い層の小規模な崩壊あるいは土体の活動、こういったものを浅層崩壊あるいは表層崩壊、こういうぐあいに呼んでおりますが、この大規模な土体の活動というものは何らかの兆候がございまして、こういったものに対しては極めて集中的な施工が実施されているという実情がございます。ただ、浅い層の小規模の分散的な崩壊ということになりますと、なかなかそれを集中的に施工するということは難しい面が一方にはあるわけです。特にそれにつきましては非常に突発性を持っている、予見することが非常に難しい、こういったような実態があるわけでございます。  そういったような状況の中で、最近の災害の特性というものをちょっと御紹介いたしますと、最近はいろいろの技術が各省庁でも実施されまして、総合的な災害、土砂災害、水災害、大規模な災害はどちらかといえば減少の傾向にあるのではないかと判断しております。しかし、こういった総合的な水災害、土砂災害、全部合わせまして減少の傾向にございますけれども、その災害の例えば人命被害等で申し上げますと、この全部を集計した中におきます土砂災害といったものの比率が高くなってきているといったような感じがございます。もちろん数値そのものは減ってきておりますが、全部のほかの災害と対比しますと比率がふえてきているという感じがするわけでございます。つまり、被害状況が集中的なものから分散的なものへ変わってきているのではないかというぐあいに考えるわけです。  例を昭和三十四年の災害、これは伊勢湾台風がございましたが、そのときの三重県の災害、それから五十七年の災害、これはやはり三重県がございましたし、また昭和三十四年の山梨県の災害、五十七年の災害、こういったものの状況をちょっと比較してみますと、例を人命被害、人命の事故ということで申し上げますと、山梨県の釜無川では三十四年は八百八十四名という数値が出ております。五十七年は二十九名。三重県の三十四年では五千八百九十八名、これは高潮等による被害も入りますので非常に大きかったわけでございますが、五十七年では五十四人と急激に減っているわけでございます。これは調査いたしましても、災害の内容というものがいわゆる大規模な集中的な災害から、例えば三十四年の釜無川でありますと韮崎付近は一面に被害を受けておりましたが、そういったようなケースは少なくなりまして、いわゆる分散的な一つの崩壊で家が一軒やられて人命が損なわれる、こういったような分散的な災害の形態へ変わってきているというような感じがいたします。  そのほかにいわゆる長崎災害で見ましても、あるいは五十九年の鹿児島災害で見ましても、小さな崩壊が一つ発生して人が一人死ぬ、その崩壊が非常に分散的に発生している、こういったような形態が出てきているわけです。これは先ほど申し述べましたように、いわゆる人間の可住地がどんどん拡大していっている、そういったようなものの問題が多少絡んでいるのではないかというぐあいに考えます。  今後の対策でございますが、これは恐らくもう現在施工中でございますが、先ほど申し述べましたいわゆる恒常的な現象に対しましてはもちろんハードな対策で対応する。特にリスクゾーンと申しますか、被害を受ける側の地域が集合的なものに対してはどうしてもハードな対策で実施する。さらに、現象が突発的で分散的でしかもリスクゾーンも分散的なもの、こういったものはやはり今後ソフトな対策避難、警報、こういったような形で推進していくのが望ましいのではなかろうか、こういうぐあいに考えている次第です。  最後になりましたが、災害対策としての今後の課題ということでやはり私見を申し述べさせていただきますと、現象の発生する地域、ハザードゾーンと申しますが、被害を受ける側の地域、リスクゾーン、こういったハザードマップとリスクマップ、こういったようなものを定期的に把握する必要があるのではないかというぐあいに考えております。このためには一つのリモートセンシング法をさらに開発いたしまして、人工衛星等による、ランドサットとかあるいはSPOT衛星等によって大局的にゾーニングをやりまして、さらに次の段階にはヘリコプターによって地下放射性物質等を検討いたしましてさらにゾーンを縮めていく、それと同時にリスクゾーンも押さえていく、それで絞られた地域に具体的な調査を実施する、こういったようなプロセスでの対応というものが今後望まれるのではなかろうかと思います。  もう一点は、現象等に対するさらなる科学研究の推進ということになるわけですが、これは何しろ土砂災害、水災害になりますと非常に緊急性を要しますので、早急に行って早急に対応し、早急に対策計画を立てる。非常に緊急性を持つわけでございます。それはそれで推進されるわけでございますが、もっと地についた長期的な観点での研究推進ということを申し上げたいと思います。  三番目は、こういったぐあいに高度社会になってまいりますと、それぞれの分担に対応したいろいろの規制をつくらざるを得ない。これは生産性の向上あるいは人間生活の便益ということで、どうしてもそういった規制がそれぞれのセクションで必要になると思うわけですが、ただこういったものが一つ災害といったようなものであらわれてきますと、その規制が足かせになる、制約になる、こういったようなことも考えられるわけでございますが、そういったものがスムーズに緊急性に対して対応できるような体制づくりといったようなものが望ましいのではないかと思います。  大体、申し上げたい意見は以上でございます。(拍手)
  12. 笹山登生

    笹山委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ─────────────
  13. 笹山登生

    笹山委員長代理 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤敬夫君。
  14. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 お許しを得まして、四人の御出席いただきました先生に御質問させていただきたいと思います。時間もございませんし、そしてまた、先ほど十五分ずつお伺いしましたお話の中からあるいは素人っぽい質問になるかもしれませんですが、御勘弁いただきたいというふうに思います。  まず四人の先生の皆さんに、それぞれ関東大震災の経験者であるとのお話をお伺いしました。今は、例えば車の台数が昼間には五百万台、そして高速道あるいは地下には高圧ガスを含めたさまざまな、先ほど芦田先生からお話を聞きましたように、その地下の順序、体系なんかも、人間なんというのは一番粗末になっている。こんな状況の中でいろいろな憶測の話があるわけですね。起きたら一瞬に七万人ぐらいが死ぬとか、あるいは人間が一体どこに行ったらいいのだろうか。想像するのに、例えばああいう高速道の上から、先ほどのお話のようにとまるならいいのでありますが、車が落っこってきたら、五百万台の車というのは皆それぞれガソリンを積んでいるわけであります。地下では高圧ガスのパイプが破れた、引火をする。こんなことは、とても七万人や十万人の人が一瞬に死ぬんだということのような状況での大災害だというふうな考えは少し甘いのではないか。  先ほど、井上先生でございましょうか、南関東に大きな地震災害が起きた場合にどうなるかということは長年にわたって研究をされている。四人の先生、それぞれ専門部署は違うのでありますが、災害に対して長年取り組んできた御体験の中、で、今関東あるいは南関東にそういう大震災が起きて瞬時にそういう混乱が起きた場合には、人命にして大体どのくらいの大きな被害があるものか、これは記録に残さなくても結構でありますから、直観的に感覚的にひとつお答えをいただきたい。四人それぞれ一秒ずつで結構でありますから、お答えをいただきたい。芦田先生、井上先生、宇津先生、山口先生、どうぞそれぞれひとつ。
  15. 芦田和男

    芦田参考人 私、地震の方の専門でございませんので、はっきりした責任あるようなことはちょっと申し上げにくいのでございますけれども、感想としては、素人みたいなことでこざいますけれども、非常に大きなことが起こるのではないかというふうに心配しておるわけでございます。しかしながら、これは予測の時間、予測というのはいつどこでどういう規模のものが起こるかという問題でございますので、その時間が少しでもセーブされることによって大きく変わってくるということで、予測というのは非常に当てにならぬではないかというように思っておるわけでございます。したがいまして、非常に悪い方にいきますとかなり今おっしゃったようなことでは済まないと思いますし、予測の技術とそれからそれに対応するような社会的な素地というようなもの、相当それによって変わってくるということでございますので、そこの方を非常に力を入れなくてはいけないというように思っております。
  16. 井上孝

    井上参考人 的確な数字を申し上げなければならないのですが、作業は、いつ起こるかということで、一番せわしいのは冬の夕方の五時、それから一番あれなのは夜中の二時、そしてもう一つ関東大震災の起きた昼、こういうことでそれぞれいろいろな推計を進められているわけでございます。ただ、これはもちろん当然そうしなければならないことなんですが、幾つぐらい橋が落ちるか、それからどこでどうなるかといういろいろな仮定による強弱についての調査はございますが、その結果は公表されていないわけでございます。  私は、関東大震災を経験した人間の一人として申しますと、子供心にも内外ビルディングというのと丸善が倒れたという写真は何回も見せられた覚えがございます。今同じようなことが、東京に建ったもっと高い、もっと大きい建物の中でどの建物が危ないのかということは、専門家はよくわかっているはずでございますが、そこまでで調査がとまっているというか、あとは政府対策の方へ回っているのだろうと思いますが、そういうことでございます。  それ以上ちょっと申し上げるあれはございませんが、よろしくお願いいたします。
  17. 宇津徳治

    宇津参考人 私は、関東大震災は経験しておりませんけれども東京生まれでございまして、私の父母あるいは姉は経験しております。私のうちは港区の下町でございましたけれども、話によりますと、非常に大きな揺れではあったけれども家には全然被害はなかった、棚に並んでいた瓶が二、三本倒れた程度で、壁が割れることもなく、かわらがずれたこともなく、それから町の中で倒れた家も一軒もなかったということでございました。それで、実際関東大震災というのは、被害は震動ではなくて火災によるものが非常に多かったわけでございます。倒壊家屋は山の手の方では一%程度で、下町の方でも一〇%程度でございまして、実は地震の震動としてよくこの建物関東大震災に耐え得るという話がありまして、関東大震災というのが東京の揺れを想定しているようでございますけれども、それほど強い揺れではなかったので、実際もっと強い揺れというのはほかの地震のときには往々にして経験されるものでございますが、そういう状況でございましたけれども、非常な大災害が出たわけでございます。  それで、先ほど申しましたように、関東大震災と全く同じタイプの地震が近く起こるということは可能性は非常に低いと思いますけれども、違った場所に起こるかなり大きな地震に見舞われるということはございますので、そのときの災害がどうなるかということは、その地震のタイプ、季節、時間帯等によって非常に違うのではないかと思っております。例えばやや遠い非常に巨大な地震ですと、長周期の震動が卓越しましてエレベーターなどは非常にひどくやられるのではないか、しかし木造家屋の倒壊というようなことは余りない。あるいは逆にそうでないようなもの、直下型の比較的小規模な地震ですと、短周期の震動が非常に卓越しまして、そうしますと、ブロック塀の倒壊とか看板が落ちるために非常に多くの人がけがをするとか、そういう現象が起こるけれども、大きな建造物などは全然影響がない。いろいろなことがございまして、災害予測というのはいろいろなところで行われておりますけれども、その条件を選ぶことによって非常に大きく変わります。極端に言いますと、条件をうまく選べばどうにでもなるというような感じもしないわけでもこざいませんが、とにかく首都圏というのは非常に巨大なものですから、九九・九%が安全でも残りの〇・一%に被害がありますと、もとが巨大ですからその〇・一%を掛けただけでも数としては非常に大きなものになりますので、大変心配でございます。  そういうわけでございまして、今関東大震災が起こったらば東京でどうなるかということは予測が大変難しい。私もともと災害の方の専門家ではございませんけれども地震の物理的な面を研究しておりますが、そういうことから見ましても、地震の多様性あるいは災害の多様性ということで、そのときどきに応じてどういうところが強調されてあらわれるかによってタイプが非常に違ってくるのではないかというふうに思っております。  それと、先ほども申しましたけれども関東大震災が考えられる地震東京で考えられるタイプの唯一のものではない、いろいろなものが起こり得るということを強調したいと思います。
  18. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 はっきり申し上げまして、皆目見当がつかないというのが実態でございます。  相当な被害が出るだろうと思いますが、先ほど御説明ございましたように、地震の予見といいますか予知といいますかその時間的な問題とか発生の時刻それから地震の特性、震動特性その他でかなり違ってくると思いますけれども、ただ地震そのものによる大きな被害、それからもう一つは、先ほど来申しておりますような高度化された構造物、こういったものの破壊現象による二次的な問題、それからもう一つは三次的な、情報が早く出過ぎるとかあるいは遅いとかいろいろの関係で混乱、こういった三つ問題点が大きな課題になるのではないかと思うわけです。人間の事故の数ということになりますと、予測もつかない大規模のものだろうという程度しか判断がつきません。
  19. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 実は専門家の方へ聞きますと常に前提条件が前提なので、もう少し百万人くらいとか三百万人くらいとか、場合によったら一千万人みんな死んじゃうのじゃないかぐらいのお話をいただいた方がありがたかったわけでありますが、やはり国というのは、その国に住む人々の生命財産というものをどう保全していくか、そのために時代が変わってきた際にその時代の流れに沿うたシステムや防災体制というものをつくり上げていかなければならぬというのは、これはもう国家の中での一番大きな仕事だというふうに私は感じ取っているわけであります。  その中で、先ほど芦田先生から災害文化というお言葉を実はお聞きいたしました。高密度社会とか高度情報化社会という、そういうものに向いていくシステムにどうしても変えていく必要があるだろう。一方、そういう技術的なものと、もう一つは、例えば東北であれば豪雪に対して、あるいは九州、四国の方であれば台風あるいは水に対して、あるいは関東近郊であればどうしてもこれは地震という問題に対してそれぞれの災害文化というものを教えて、そのことに触れさせて、そしてそれを繰り返していくということでなければならぬ、それを児童と住民に対してやはりしっかりとした体系をつくってやっていかなければ、これはどんなにいい設備をつくっても、それに瞬時に対応する、活用するという知識、知恵がなければいかぬ、こういうお話であったように私は受けとめておるわけであります。  その一番大切な、しかも目立たない部分でありますけれども、そういうことを、例えば小学校建物をもっと堅固にして、そして地震が起きた、大きなものが起きたというたら、もうそこが避難場所なんだということを感覚的に植えつけていくというようなことをどうしてもやはり教育の中で努めていかなければならぬ。ただ、全部を皆さんの希望のとおりやろうとしても、国家の財政にしても限りがあるわけでありますので、どうしてもハイテクとかやはりこの情報化されたさまざまな機能とかあるいは設備の面での活用とか、そういうものをお互いに応用しながら、要するに全体の投資が全部防備体制の中に仕組まれていくのだ、こういう流れが必要だと思うのでありますが、その辺について、お話をされた以外に、防災文化というものはやはりこういうふうにしていかなければならぬし、そしてそういうものを応用しながら新しい時代に向かったシステムをつくり上げていくためにはどうしたらいいのかということについて、もう少し具体的な御見解ございましたら、お話を聞かせていただきたいと思います。
  20. 芦田和男

    芦田参考人 災害文化を育てていかなければいかぬと強調したわけでございますが、特に最近感じますのは、子供たちが自然に触れる機会が非常に少なくなってきておる。自然に触れながら自然の怖さも知っていくというのがごく素朴な自然の理解のあれでございますが、そういう機会がほとんどなくなっておるということでございますので、これを児童教育でどういうふうに植えつけていくかということは非常に簡単ではないと思う。ただ物に書いたものを教えるということではなくて、いろいろな体験をさせていく必要があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。それで、これは子供だけでなくて、我々大人もそういうふうに自然観が大分変わってきておるということもございまして、この点は非常に考えなければいけない問題ではないかというふうに思っております。  災害といいましても、場所によって非常に違うわけでございますね。先ほどおっしゃいましたように、豪雪地帯であるとか火山地帯であるとか地震が非常に起こると予想されている地域であるとか、あるいは高潮とか洪水とか、それぞれ非常に特徴がございますし、それが一つではなくて、同時にいろいろなものが起こる場所もございます。そういう地域の特性を、まず過去においてどういうことが起こったかということを、例えば非常に長い歴史の発掘、災害の発掘なんかが非常に最近行われているわけでございますけれども、例えば浅間山の噴火のときに、二百年ほど前でございますけれども、どういうことが起こったかというようなことは随分調べているわけでありますが、最近はそうゆうものを忘れて、忘れてというか知らずに、あのあたりに何とか軽井沢とかいうようなことで非常にたくさん人家がふえておりますけれども、ああいう場所は、二百年ほど前に浅間山の天明の噴火で非常に大きな災害を受けた、その影響東京まで及んだわけでございますけれども、そういう歴史的、地理的な条件というものを——災害という自然現象はやはり過去に忠実であろうと思うのです。過去に起こったことはやはり起こる。しかし、それが社会条件によって違った形であらわれるということでございますので、まず、過去のそういう異常な現象を含めてその地域の特性を把握するということを、児童の社会教育を中心として特にやっていただきたい、こういうように思っておるわけでございます。  地震防災については比較的よく注目されて、社会科の本でもある程度載っているわけでございますけれども、そのほかのものについては余り載っていないわけですね。津波なんかも、私たちが子供のときに津波の話がございましたね。稲むらの津波の話とかございましたけれども、ああいうようなものもやはり継承しておったわけでございます。そういうものも積極的に、特に小中学校の社会科の教育を通じて、あるいは自然現象を体験させるようなことを通じてやっていただきたい、そういうように思っております。  それから、防災空間というのは非常に大事でございまして、それでやはり小中学校みたいなところを防災空間の拠点にしていく。これは地域どこでもずっと密にあるわけでございますから、そういうところを拠点にして、それを通じてやはり教育もやっていくということはぜひ必要ではないかというふうに思っておる次第でございます。
  21. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 井上先生にお伺いさせてもらいます。  我々よく海外へ出ますが、最近は、東京というと摩天楼のような絵をかく子供さんたちが海外にも多いわけであります。実際には、東京都市というのはまだまだ木造建てやいろいろな古い施設があって、大きな災害に転化していく危険性がある。やはりこういう再開発というのは大変難しい問題で、先ほどのお話で十分その難儀さも理解できるわけでありますが、加えて、その方向の中で、今新しい東京湾埋め立てのような問題が誕生してきておりますね。しかしああいう中では、やはり経済コストの面だけの議論で、そういう新しい埋め立てというものを災害に対する防災機能というものを全然考えずに計画をしているような発想が多いわけでありますが、こういう考え方に対してひとつ先生の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
  22. 井上孝

    井上参考人 お答えいたします。  私、実は東京湾のいろいろなプロジェクト、木更津から横須賀に至るまでそのほとんど一つ一つに関係いたしておりまして、こっちがいいと言えばこっちがだめになるし、こっちがいいと言えばこっちがだめになるというようなことで、甚だ無責任といえば無責任でございますが、私自身は、今の日本の将来の都市災害に対する態度というものは、腰をかがめて頑張るということじゃないか。これを私は、低層高密度の町をつくるべきじゃないか、今は高層高密度でございますが、低層高密度で十分に入るわけでございます。  例えば上野の万年町でございますか、あるいは鳥越町あたりは、戦前から戦後にかけまして一ヘクタール当たり千人、これは一平方キロ当たり十万人の人が住むくらいのところでございますが、結構楽しく住んでいるわけでございます。それを空地をつくってそして快適に市街地にするにはやはり高く上げなければならない、しかし高く上げると、エレベーターがなければこれはどうにもならない、水一つ飲めない、あるいはその上で生活することはほとんどできないということを考えますと、私は、先生も恐らくそういうお考えだろうと思いますが、せめて中高層でこういうところに自分たちは住みたいというような設計をして、そういう方向へ持っていくべきではないか、こういうふうに思うわけでございます。  それともう一つは、私は神奈川県に住んでおりますが、神奈川県防災会議というのがございまして毎年五百ページぐらいのいろいろな考え方を発表しているわけでございますが、それが徹底しない。結局、それぞれの家庭とは全く無縁に防災対策というものが進められているのではないかということを私は非常に恐れるわけでございます。  スウェーデンに参りますとシェルターと称して、これはまた別の目的と思いますが、ふだんは子供たちの遊び場にして、そしていざというときはそこにこもるというような考え方で彼らは一つ対策を進めている。私は、そのシェルターをのぞきますとやはり何となくちょっと暗い感じがするから、むしろ今の小学校を中心とした一つの単位をつくるべきではないか、こういうことを申しているわけでございます。  私の近所で申しますと、逃げる場所はここだ、この緑地であるということがいろいろ指示がございますが、それを調査して、おまえは知っているか、こういうことを聞かれますとほとんどの人が余り関心を持っていない。したがって、膨大な資料とそれから災害に対する住民の受け取り方というものの間にはギャップがある。やはりもう少し小学生からそういうことは改めていかなければならないんじゃないか、こういうふうに感ずる次第でございます。  私、飛行機に乗るたびに思うのですけれども、飛行機に乗ると救命道具のつけ方を教えるわけですが、私は世界じゅうの救命道具、これはどういうふうになるか知りませんが全部同じにして、救命道具のつけ方は子供のときから知っているということで、あれを使って助かった例がどのくらいあるかわかりませんが、それでもそのくらいにすべきじゃないか。ほとんど形式的にやってみせてそれでおしまいということではまずいし、そしてそれがそのまま今の日本の国民の受け取っている防災対策なんではないか、こういうふうに思う次第でございます。
  23. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 もう時間がほとんどございませんので、質問が偏ってしまって恐縮でございましたが、山口先生にちょっとお伺いしたいのですが、災害対策特別委員会なんかで、それぞれ各地にまた災害をもたらす季節になってまいる、昨年もそうでありましたが、やはり土砂、水害というものが委員会の中で数多く議論されても、とりあえず急ぎ復旧をするということになっているわけです。しかし本来から言えば、復旧するのではなくて、できるだけ二度と生じないような形にどうやって早く整えていくかということだと思うのですね。例えばそういう問題を数多く残しながら、常に正面から我々この問題に取り組んでいかなければいかぬわけでありますが、特に東京中心というのですか、高密度なところで、農地を持っていながらどんどん住宅地が傾斜地の方へ移動していくという先ほどのお話、こういう問題というものは、やはり今後例えば農地法の問題なりあるいはさまざまな地域環境の問題なりということが考えられると思うのでありますが、もう少し具体的にこういう方法でやはりこういうことを避けていくべきではないかという御意見がございましたら、時間が三十八分までであと四分ぐらいしかございませんが、最後にひとつ御質問させていただきたいと思います。
  24. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 先ほどちょっと御説明申し上げましたように、三十四年と五十七年の山梨県と三重県の災害で申し上げましたが、三十四年の場合はむしろ後追いの対策施工ということになるわけでございますが、これがある見方をしますと、五十七年には先取りの対策施工というような形で、日本は非常に災害機会の多いところでございますので具体的にはそういった形で進めていっているというぐあいに理解しております。  しかし、実態といたしましてはやはり先取りしていく必要があるということは痛感するわけでございますけれども、それを実際実行するとなりますと非常に難しい要件を備えておりまして、例えば先ほど出ておりましたように予測するという言葉がございますけれども、これも危険地帯をハザードマップを判断するということは技術的にも研究的にもかなり進むわけでございますが、これに時間の要素を入れまして、タイムスケールが危険地帯の発生現象が非常に大きなオーダーでしか判断がつかない。いつ何時ごろ起きるか、こういう問題になりますとなかなか判断が難しいというのが現状でございますので、その辺の問題からまた具体的な解明を進めていく必要があるのではなかろうかと思っております。  それから、農地あるいは住宅地が傾斜面のすぐ下へ移行している。これは五十九年の鹿児島災害で拝見いたしましても、シラス台地の上は住宅地ができて、古い都市の谷部はまた谷部で下からずっとはい上がっていっている。こういう状況がございまして、残されているのは急斜面だけ。こういうことで、一たん小さな崩壊が発生すると家屋の倒壊で人命災害が起こる、こういうのが大体実態として起きております。そういった点では、はっきり申し上げましてしっかりした都市計画を立てるというようなことが必要ではなかろうかと思いますけれども、これも私の意見の中に申し述べましたようにいろいろの規制、ほかの目的での規制事項といったようなものが絡みまして、その辺の問題がもう少しスムーズに動くような体制ができないだろうかというようなことを考えている次第でございます。  以上でこざいます。
  25. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 最後井上先生、御所見で結構でありますが、遷都、分都問題ではなくて、やはりこういう状況から考えますと、二十一世紀に予想されるさまざまな地震災害あるいは高度情報化機能になった複雑な都市災害、そういうものを考えてみますと、どうしても多極分散型国土形成ということがこれからの日本の二十一世紀へ向かう方向だと私は確信をいたしておるのであります。先生からの、この都市防災的なあるいは国土形成的な部分から見ての御所見をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  26. 井上孝

    井上参考人 お答えいたします。  私は、筑波研究学園都市を買収するときにその衝に当たった経験がございます。こういう形が理想的な形だということでそれを示したところ、茨城県知事さんは、もしそういう形で買えなかったときはどうするかと聞かれましたので、私どもは、そうすれば土地収用をかけますと言ったら、それでは協力をお断りいたします。それではどうしたらいいでしょうかと言ったら、県の方でここは買えそうだというところを教えるからそこを買いなさい、こういうことで買ってつくったのが現在の筑波の研究学園都市でございます。これはちょうど羽田空港から東京駅へ行くぐらいの間に点々としていろいろな研究所が散らばる、そういう形の町になったわけでございます。私は、町というものはもっと固まったものでなければならない、それほど離れて町をつくるということはやはりおかしいのじゃないかという気持ちを今でも持っておりますが、そういうことがございます。  それならば本当に必要なところを必要な位置で買おうとしたらどうなるかということをお考えになるには、成田をごらんになればわかります。成田は買えるところだけ買って滑走路をつくるわけにいかない、どうしてもこの土地が要るということでやっているのが、同時に起こった成田のあの問題でございます。  都が移るということをまず決めれば、その次にはどこに移すか、そしてどこに移すかの次には今の同じ問題がやはり起こってくると思います。徳川家康が秀吉に、おまえここを城としろと言われたときに、彼は非常な深慮遠謀で江戸というところを決めたと思います。また、明治新政府は、政権をとるとすぐ皇居もろとも東京へ果敢に進出してきたわけでございます。今、もう一度私どもすべてで今後どうすべきかということを決心するべきときだと私は思います。  私は、分都あるいはその他のことには賛成でございます。しかし、遷都ということは難しい、遷都ということはいたずらにマスコミをにぎわせるだけで益はない、こういうふうに私は考えております。これは私の個人的な見解でございます。いろいろな作業では、私いろいろなものに参加して名前も出しておりますけれども、私自身はそう考えております。
  27. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬夫)委員 どうもありがとうございました。質問時間が参りましたので、終了させていただきます。
  28. 笹山登生

  29. 井上泉

    井上(泉)委員 参考人の先生方、予定の時間は計画によると四時半まで三時間半くぎづけということで、大変御苦労だと思うわけであります。私、できるだけ三十分の時間を一分でも早くやめるようにしたいので、お気持ちを率直に答えていただきたいと思います。  この「自然災害」総合研究班の「自然災害の予測と防災力」、この本をずっとあちこち拾い読みをしたときに、学者の先生本当に熱心に勉強されてやられておる。ところが、それが実際行政の面で取り入れられておると満足しておるのか、その満足度でどうお考えになっておられるのか、芦田先生にその気持ちをお伺いしたいと思います。
  30. 芦田和男

    芦田参考人 文部省の科学研究費でやっております基礎的な研究でございまして、それは防災対策に即役立つというわけにはいかぬかもわからぬわけでございますが、それを目標にして一生懸命やっておるわけでございます。  それで、その成果というのは、例えば公開のシンポジウムなどをやりまして、これはいろいろな人、行政官庁の人ももちろん参加していただいてシンポジウムでいろいろ討論しておる、あるいはこの研究成果を各方面に送って参考にしていただこうとしておるとかいろいろ努力はしておるわけでございますけれども、必ずしも十分ではないというふうに思っております。我々の研究そのものも、もう少し社会に即役に立つような研究をやらなければいかぬという面ももちろんあろうと思いまして、そういう面も自己反省しておるわけでございますが、やはりこうした研究成果をいろいろな先生方が、例えば政府行政官庁の委員会その他に参加されて個人的に発言されていくという面もございますし、いろいろな形で役に立っていると思いますけれども、今仰せのようにさらに活用されるように頑張っていきたいと思っておりまして、今これで十分満足しているわけではございません。
  31. 井上泉

    井上(泉)委員 学問というのは限りのないもので、よく深遠とかいう言葉が使われるわけですけれども、せっかく学者の先生方が苦心惨たんして研究されたそのことが行政の中で生かされる、それはなるほど審議会もたくさんあります。数え切れぬほどあるわけです。  そこで、日本災害が多い。その中でも、地震のような単発的な災害と違って河川災害というものは、私、高知県ですが、高知県あたりになりますというと、海岸から十キロ行けばすぐ山、山地に入るわけです。だから、雨が降るとその雨が一緒に一つの川へ流れ込む、そうするとどうしても川の流れ、勢いが加速してくる、だから堤防が決壊をするあるいは冠水をする。これは日本の地形上から考えても、河川による災害は大変なものだと思うわけです。  それについて、この報告書の中で、自分自身として非常に満足感を味わったのは、先生方が森林関係の問題で非常な研究成果を提言されておるわけです。ところが、それに対する研究費が四百万。今日の状況の中で四百万でこれだけの学者の先生が一生懸命勉強されるということは、大変なことじゃないかと思うわけです。武士は食わねど高ようじで、学者の先生方は銭金のことを言うのは恥ずかしい、与えられた金で一生懸命勉強しようじゃないかということでおやりになっておるかもしれませんけれども、山地のいわゆる傾斜地の崩壊が今日の日本の林業のもたらした結果であるということ、そういう表現は使っていない、学問的な用語でありますけれども、この研究は的を射た調査だと思うわけなので、こういう調査をされた結果が行政の中で積極的に取り入れられてその防災対策がなされなければならぬ。  災害が起こってそれに追われるのじゃなく、河川災害が起こらぬようにする。私は、河川災害は今日では自然災害ではない、自然がもたらした結果であるけれどもこれは防ぐことができる災害である、こう思うわけですけれども河川は専門かどうかは知りませんけれども研究所所長さんに御意見を承りたいと思うのです。
  32. 芦田和男

    芦田参考人 ただいまは大変ありがたいお話をお伺いしまして、研究費がこれくらい少なくて頑張ってやっておるという激励をいただきまして、ありがとうございます。  我々がやっておりますことは、今申しましたように、例えば山地災害それから河川災害をどうして軽減するかということで、河川災害にとりましては、非常に広いわけでございますが、先ほど言いましたように、森林の影響といいますか機能というのは非常に重要だと思っております。  それから、洪水災害の軽減の方法としては、例えば雨がこれくらい降るとどれくらい出水があるかとかあるいは土石流がどうして起こるかということはかなりわかってまいりまして、行政の方にも治水対策の上でかなり参考にしていただいておるわけでございますが、さらにそれを、計画を上回る規模のものが発生する可能性もある。これは先ほど意見を言わせていただいたときに三つ段階があると申しましたが、非常に大きな規模のときにどうなるかということもあわせて研究していかなければいかぬと思っております。それで、少なくとも与えられた一応の基準はございますから、その基準の中では破堤したりそういうことがないようにするにはどうしたらいいかという研究を一生懸命やりまして、行政の方に反映させていただきたい。既に反映させていただいている面もかなりあるわけでございますけれども、今後ますますそういう関係を強く持ちまして努力していきたいと思っております。
  33. 井上泉

    井上(泉)委員 ぜひお願いをしたいと思いますのは、前段申し上げましたように私は高知県で、奈半利川の水系です。そのうちには魚梁瀬の千本杉という日本でも有数の森林地域があるわけです。それが昨年の十月の雨でダムが濁ったがために、濁水が絶えず川へ流れる、それが約半年間続いたわけです。そういう状態の中で奈半利川の河川も死んでしまったでないかということで、何回となく調査に行く中で、あなた方の同僚の京大の岩佐先生を団長とする奈半利川の汚水問題調査委員会をつくって何回か調査に来られて、そのときに、奈半利川のダムへ入っておる水がなぜこんなに長期にわたって澄まないのか、汚濁の状態が軽減しないのかということは、その背後地が約八百カ所崩壊しておるから、それで強い雨が降ってくるとその表土が全部ダムへ流れ込んできておる。こういう状態のことが指摘をされ、私自身もそのことを見聞していたわけですが、いみじくも「森林伐採が斜面崩壊に与える影響の評価に関する研究」というのは、私は学者でもないし、そしてまた田舎政治家でありますので、高邁なことはわからぬわけですけれども、この中の文章というものは本当に的確に指摘しておると私は思う。これだけの二ページの報告でありますから、かなり膨大なことを調査されたと思うわけです。  そういう中で、これは最後に言われた山口先生がこの辺の専門じゃないかなと、先生の話を聞く中でこんなように思ったわけですが、河川というものを生かしていくためにも、水源地域というもの、山地というものに対してもっと、この土壌はどうなっておるか、奈半利川の水系の土壌はどうなっておるのか、あるいは四万十川、日本に残された最後の清流と言われておりますけれども、高知県四万十川すら今日清流ではなくなっておるわけであります。昔を知っておる人は清流とは言わない。これは一体どういうところに原因があるかというようなこと、これをやはり研究課題として勉強もされておられると思うわけですが、こういうことについて、防災という面からはなおざりにされるというか、軽視をされておるような傾向を非常に感ずるわけなので、そういう点について、川と水とそして川の流域の山地というものとの相互因果関係とかいうようなものの研究した成果か何かあればお教えを願いたい、こう思うわけです。
  34. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 先ほど御質問していただきました研究業績と行政技術ということの関連でございますが、昔は、我々が研究して計算するのに非常に長時間かかってやっとでき上がる、こういったものをそのまま技術へ敷衍するということは大変な時間と経費を必要としたわけです。ある意味では簡略しなければならないですし、そういった点もあったわけですが、最近では非常に計算機が普及してまいりまして、研究技術との関連性が時間的に割合短く結びつくようになってきている、こういった点は最近のいい面ではなかろうかというぐあいに思っております。ただ、制度的な問題になりますと、これはまた別問題になりまして、非常に難しい要素があって、その辺はほかの課題になっていくのじゃないかというぐあいに解釈するわけです。  それから、森林を正常に活力のある森林を育成しますと、水資源の面でもあるいは土砂の面でも非常に効果的であるということは研究的にもはっきりしているわけでございます。もちろん、担当の林野庁においてもそういう面で非常に努力しておられるということは事実だと思います。ただ、研究成果として、先ほど申し述べましたように、前は研究計算というのが非常に大変なものがあったということ、もう一つは、実態を把握するということで、我々の方では試験流域をセットいたしまして、そこで観測をいたしまして、雨の降り方と水の出方、それからその中に介在する森林の状況といったようなものでいろいろ観測して、すばらしいデータが、世界的にも誇れるようなデータが取得されてきておりますが、そういったものが合理的に計算過程が出てまいりまして、これもシミュレーションモデルができ上がってきておりますし、そういったことも踏まえながら行政の方へ反映させながら推進させていくというようなことで私自身が思っている次第でございます。     〔笹山委員長代理退席、委員長着席〕  さらに、崩壊との関係ということになりますと、これは私の私見でございますが、一遍に森林を伐採するということは山の森林状態をひとつ遮断するという形になりますので、後続的に森林を保持していく、内部にある林木は切られてあるいは新しい世代が出ていく、森林そのものは恒常的に続けていく、こういったようなことで森林系を進めていくということになるわけでございますが、本来ある我々の仕事というのは、コンサーべーションと申しまして、循環をさせながらその外形あるいは内部にあるものを保存していく、こういう保全の方式を理念としておりますので、そういう方向で進めていく。いたずらに老齢過熟林分だけ育成いたしますとまたデメリットも出てまいりますので、若返らせながら活力ある森林をつくっていく、こういったようなことで進めていくということをサゼストしていこうかというぐあいに思っている次第です。  以上です。
  35. 井上泉

    井上(泉)委員 日本は、御承知のような山地が多い我が国土でありますので、その山地をよくするということ、これは国土全体をよくするということに大きくつながるわけです。また、人口がふえればあるいは科学が進歩すれば水が要るわけですから、水が要ればなおさらのこと、山というものを大事にしなければ水は余裕ができなくなるわけです。この「森林伐採が斜面崩壊に与える影響の評価に関する研究」に書かれておる内容というもの、今先生が言われたことも十分含んで、我々にとっては、我々というか私にとっては難しい文章でありますけれども、「樹木根系による斜面強度補強の評価。」とか「統計的にも森林伐採により表層崩壊が多発する」、それでそれに対しては「水平根の分布を推定するためのシミュレーションモデル」とか、これも私にはわからない非常に難しい表現でありますけれども、これはこういうことだな、こういうことだなということはわかる。  学者の先生がこれだけこういうふうに研究されておるというのは、そうしたら今度私は例えば魚梁瀬の岩佐先生にも意見を申し上げたいと思うのですが、そこの森林地域でそんなに八百カ所も崩壊をする、それならその土壌がどうなっておるかというようなことをやはり科学的に分析をするとかいうようなことも、これは防災の大きな一助ではないか、かように思うわけであります。  これはいろいろと意見を申し上げて御質問すれば時間に切りがありませんので多くを申し上げませんが、防災対策の中で森林問題というものは重視をしなければいかぬものでないか、私はこう思うわけなので、研究所の芦田先生、そして一番政府行政機関の中にいろいろな形の委員として参加されておる同姓の井上先生にそれについての御意見をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  36. 芦田和男

    芦田参考人 防災の問題におきまして森林の保護というのは、今先生がおっしゃいましたように非常に重要なことだと思います。  その森林の保護ということを考えます場合に、どれぐらいの豪雨で崩壊するか、森林があるところと草原みたいな森林を伐採したようなところと、どれぐらいの差があるかというような研究につきましても、今までの研究、数少ないわけでございますけれども、かなり蓄積されておりますし、したがいまして森林の防災効果というのは非常に認められているわけでございますから、今後も山地保全ということを防災の中で位置づけていかなければいかぬというふうに考えておりますし、今先生がおっしゃいました研究テーマというのは非常に重要でございますので、さらに頑張って勉強したいというふうに思っております。
  37. 森下元晴

    森下委員長 同姓の井上参考人、何かただいまの御意見に対してお答えがございましたら、お話し願いたいと思います。
  38. 井上泉

    井上(泉)委員 先生は、いろいろな政府行政委員を経験されておられるので……。
  39. 井上孝

    井上参考人 その点につきましては、いろいろな審議会の結論というものは行政に取り上げられまして、先ほども申し上げましたように、それはさらに都道府県にも及び、そして膨大な資料になっているけれども、それが住民にはなかなか結びつかないということを私は考えるわけでございます。  例えば、ごく最近でございますが、私が会長をいたしております都市計画中央審議会が、よい道路のつくり方という勧告案を出しました。政府あるいは東京都はこれに従いまして、虎の門から汐留に至るあの四十メートル道路をもう少し広い範囲でつくってみようというので非常な苦心をしております。これはなかなか難しいことでございますが、私どものいろいろな勧告が行政の方に伝わっているということは確言できると私は思います、全部が全部ではございませんけれども
  40. 井上泉

    井上(泉)委員 非常に勉強になりました。先生方の御苦労に感謝して、私の質問を終わります。
  41. 森下元晴

    森下委員長 橋本文彦君。
  42. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 きょうは、先生方におかれましては大変お忙しいところをありがとうございます。  防災白書が出まして、いわゆる多極分散ということが防災の見地からも望ましいということが今回の特徴でございました。それにまた関連いたしまして、多極分散といいながらも、現実にこの東京周辺では国際化の波あるいは情報化の問題あるいは内需拡大という線に沿いまして、いわゆる臨海部の埋め立て作業がどんどん行われておるし、またさらにその計画もたくさんございます。この相矛盾する多極分散型からいわゆる首都の機能をさらに高めようとする埋立地の問題、これがございます。  その中で今一番心配されておるのは、東京の場合に直下型の地震である。この直下型の地震の場合一番被害の発生が危惧されるのは、いわゆるゼロメートル地帯の下町、あるいは今盛んに行われておるところの臨海部の埋め立て、それが大変危惧されるわけでございますけれども、それぞれ先生方専門分野が違いますが、この臨海部の開発、その上の建造物の問題等々含めて、どのような防災上留意すべき点があるのか、御所見を承りたいと思います。
  43. 芦田和男

    芦田参考人 地震の問題は専門でございませんですが、臨海部の問題としまして予想される災害というのは直下型の地震、それから地震が起こった場合の液状化といいますか、特に砂質地盤の場合がそうでございますけれども、非常に地盤が液体のようになって噴出するというようなことは、新潟地震のときも経験しております。そういう液状化に対して、液状化の発生する条件とか、発生しないようにどうするかとか、いろいろな研究を非常に進めておりまして、対策にも直接適用されつつあるというふうに思っておりますが、なお研究が不十分な面もありまして、我々の研究班でもやっているところでございます。  そういう問題のほかに、高潮の問題とかあるいは波浪の問題、特に先ほども申しましたが、海面が水位が上昇するということになりますと、高潮の問題とか洪水の問題というのは、特にゼロメーター地帯にとりましては非常にシビアな深刻な問題になろうかと思います。そういう問題に対しても十分な検討をして対応するようにしないといけないというふうに思っている次第でございます。
  44. 井上孝

    井上参考人 東京臨海部の再開発あるいは開発につきましては、現在提案が出されている段階でございまして、ただいま先生の御指摘になったような問題、常にやはり議題に上るわけでございます。  さまざまな工法、例えば東京駅の地下何十メートルに新しい駅をつくろうとか、また今後もそれが続くわけでございますが、そのたびに技術的な検討が行われておりますので、必要であればそのような開発は進められると私は思います。しかしながら私自身は、そこまで一体伸ばしていいものかということについては、私はまた別の考え方を持っております。それだけでございます。
  45. 宇津徳治

    宇津参考人 ただいま直下型の地震に対して埋立地等の災害の御質問でございましたけれども東京でも山手の方は下町に比べましては地盤はかなりよろしいと言えるかと思います。ところが、埋立地の地盤というのはもともと悪いところでございまして、そこにさらにやわらかい物を積み上げたわけでございますから、同じ地震の震動が下から参りましても、非常に増幅されて大きな震動になるということが考えられます。それから、先ほどもありましたように、そのために地盤の液状化なども起こりやすい。土木建築の方、私は専門ではございませんけれども、現在いろいろなことを考慮して非常に技術が進んでおりますので、建物自体は被害がなくとも地盤が崩壊して倒れてしまうというようなことも起こり得る可能性もございますし、それからゼロメートル地帯では堤防の決壊によりまして水害が発生するという心配がございます。そういうわけで、埋立地あるいはゼロメートル地帯災害というのは特に危険度を十分考慮した上で進めていかなければいけないわけでございますので、本当でしたらば、東京湾周辺を埋め立ててそこに人が住んだりいろいろな施設をつくったりするのは避けるべきだとは思いますけれども、諸般の事情からやむを得ずやる場合には、地震あるいは高潮等に対して非常に注意をして、十分な対策を講じた上でやらなければいけない、そういうふうに感じております。
  46. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 先ほど言いましたように、都市機能が非常に集中化しているといろいろな弊害がございますので、多極分散ということが今大きく叫ばれているわけですね。しかし、それは言葉では簡単ですけれども、現実にはなかなか難しい。井上先生におかれましては遷都は不可能だから分都しかないとか、こういう御意見もございましたけれども、そういうような声がありながら、なおかつ臨海部まで埋め立てして都市の面積を広げていかなければならないという、これもまた現状でございます。  そこで、先ほどいわゆる東京あるいは南関東地域関東大震災並みの地震が起きた場合にどの程度の死者数が見込まれるかという質問がございましたけれども調査の結果、わかっている先生はわかっているのでしょうが、口外できない、発表できないというような発言がございまして、発表することによって大変大きな影響を与えるのじゃないかということを危惧されておると思います。私は、非常に物騒な手法かもしれませんけれども、この際、こういうケースの場合にはこの程度の被害が出るんだということを大々的に発表する、それによって、東京はだめなんだ、危ないんだという形で遷都あるいは分都論に拍車をかけて、いわゆる多極分散型をスピードアップさせるようなことも今必要なのではないだろうかなどと思っているのですけれども、これはいかがでしょうか。
  47. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 私は、多極分散型というのは非常に困難になるという解釈はしておりません。一時期山村が非常に過疎化するという状況が出てまいりましたけれども、これから先はむしろ人口が山村へ移行していく時期が来るのではないだろうか、こういうような気持ちでいるわけです。  ですから、先ほど地震の問題にいたしましても東京湾周辺部という論議も出ましたけれども、もうちょっと広く、例えば東京と大阪を結ぶルート、高速道路、汽車あるいは通信網、こういったものも含めた形で防災対策を考えていくべきではなかろうかというようなことを考えております。非常に局所的に東京等の沿岸地区ももちろんそうでしょうけれども日本の地質状況を見ますとどうしても静岡糸魚川構造線というもので分断されておりますし、東部と西部は地質条件その他がそういったことで環境等も変わっておりますので、その辺の連携の問題等も総合した形で検討していく必要があるのではなかろうかというぐあいに考えております。  以上でございます。
  48. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 井上先生にお尋ねいたします。  私も首都高速あるいは高速自動車道路の大地震の際のパニック、これをいつも利用するたびに思うのです。首都高速で地震が起きた場合に一体どうなるんだろうか、逃げ場がない、下手すれば衝突でもって火の道ができてしまう、そこから飛びおりれば大変な人が死亡する、そういうことでこの間もこの委員会でいわゆる避難路もない現状を言ったわけですけれども、先生のお話ではニューヨークの例を引かれまして、古くなって倒壊した高速自動車道を新たな視点から建て直しておる。恐らくその場合には防災の上からも大変意味のある道路だと思うのですけれども、現実に現在の首都高が災害時どの程度の被害をもたらすのか、先生はどのようなお考えを持っておられますか。
  49. 井上孝

    井上参考人 お答えいたします。  私は、一度首都高速道路の重い張り出しの下を車で走っておりましたときに、今地震が来たら怖いなと言ったら、一緒に乗っておりました者が、日本じゅうの人が怖いと言ってもおまえは大丈夫だと言わなければならない人間だと。今の管理委員会の四人の委員のうちの一人で、監督しているわけでございますから、そういうことで私は、十分に今の予想される地震に耐え得る構造物となっており、そしてそれがまたさらに工法が進みつつあるというふうに確信しております。  その使われ方につきましては、私は、あの上で渋滞が起こって、今の防災計画を拝見しますと高速道路によって物資の調達その他を考えるあるいは救急車を走らせるということがございますが、そういう点につきましては、先ほど申しましたようにやはり災害の初めの四十八時間とか六十時間というものはヘリコプターによるべきではないか、こういうことを申し上げたわけでございます。私自身、あの上が全部火の海になるということは考えておりません。これはなってみなければわからないことでございますが、構造的にはかっちりつくっておると私は思います。ロサンゼルスとかいろいろなところで同じようなケースがございまして、落ちた場合の詳細な研究というものも行われておりまして、それに対してこうしたらいいという新しい工法は常に取り上げられているわけでございます。したがいまして、全部あれによって火の海になるということは、私としては言いかねることでございます。
  50. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 せんだって、晴海の先に東京ヘリポートがありますね、あそこに行ってまいりました。ヘリコプターの需要は大変多いのですけれども、現実に都内にヘリポートがない。したがって、行動半径が限られてしまうという声が多いのです。今、井上先生の方から災害時にはヘリコプターを大いに利用しなさいという声があったのですが、現段階では非常にヘリポートがないというお粗末さでございます。値段におきましても、安いと言うと語弊がありますけれども、一番安いのが七百万円ですか、一千万円台ぐらいからヘリコプターに乗れる。そして五、六人乗れるような高級なデラックスなヘリコプターが大体三億円ですか、その程度で買えるということなんでして、相当大きな官庁等では利用できるという気がしたのです。ただ問題は、ヘリポートがない。先生のお話のように、小学校校舎を頑丈にしてその屋上に離発着できるような施設をつくればということ、非常に結構だと思うのです。そういう先生方の提案が現実の行政面では現在生かされておりますか。
  51. 井上孝

    井上参考人 ただいまの点につきましては、私、大学紛争の折に安田講堂を取材する新聞社のヘリコプターを見ておりまして、ヘリコプターというものは実にたくさん同じ場所で巧みに運転できるものだということを感じました。そしてただいまお尋ねの時点においてのヘリコプターは、恐らくいろいろな機関が持っておるヘリコプターが全国から一斉に集まってくる、したがって問題は、それをどう運営するかという、その運営する場所がないということを私は御指摘申し上げた次第でございます。もしそういう場所があれば、今小学校の校庭とかいろいろなところがございますが、それから先の全体の作戦というものはできるはずだ、こういうふうに考えております。数のことは私は心配する必要はないのではないかというふうに楽観しているわけでございます。というのは、自衛隊も持っておりますし、新聞社も持っておりますし、またそのほかの援助もあろうかと思いますので、むしろそれをどう活用するかということに、もう少し空に目を向けるべきではなかろうか。今の段階では、立川の防災基地ですらなかなかいろいろな整備が行き届いていないわけでございますからあれですが、晴海だけの問題ではない、こういうふうに考えております。
  52. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 宇津先生にお尋ねいたします。  この間、東京でいわゆる直下型地震がございました。直下型地震については予知が不可能に近いということでございますけれども、この直下型地震についても予知が可能になるという時期、研究の結果予知が可能になるという期待は持ってよろしいわけですか。
  53. 宇津徳治

    宇津参考人 予知というのは、できるできないとはっきりと割り切るのは大変難しい問題でございまして、現在でも直下型地震は、条件が非常に整っておれば、予知というのもいろいろな意味がございますけれども、ある程度できる場合もないわけではないと思います。それから、非常に研究が進みましても、例えばこの前の三月にございました東京の下百キロに起こりましたやや深い地震になりますと、これは非常に難しいのではないかという気もしております。  そういうわけで、ある時期研究が進みますと直下型地震もすべて予知できるようになる、それまではできないということではございませんで、先ほどの説明のときにも申しましたように、いろいろ観測研究を進めていけば徐々に予知のできる地震の率はふえていくだろうというふうに思っておりますので、答えにはならないと思いますけれども、そういう方向で努力していきたいと思っております。  ですが、東京につきましては、ほかの地域の直下型地震あるいは内陸地震に比べて条件が非常に悪い、それは大都会のために観測環境が悪い。それから、東京付近はいろいろなタイプの地震が起こる。つまり、地学的に言いまして太平洋プレート、フィリピン海プレート、アジアプレート、三つのプレートが複雑に交差している場所でございまして、いろいろなタイプの地震が起こる。それから、先ほど申しましたようにやや深い地震が結構多い、その中で大粒のものがかなりの被害を伴う、そういうわけで、ほかの地域の比較的単純な場所での予知よりも一層難しいということは言えるかと思いますが、何度も申しますように、努力を積み重ねていけば予知のできる確率は高くなる、割合はふえていくというふうに思っております。
  54. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 重ねて宇津先生にお願いいたしますが、先生、先ほどのお話の最後地震に対する知識の普及が肝要であると結ばれたのですが、抽象的でわからないのです。地震というものは本当に突発的に来ることが多いし、どういう知識を持っていればその地震から生命が守られるのか、その辺の知識普及が大事という、この辺をもう少し具体的にお願いしたいと思います。
  55. 宇津徳治

    宇津参考人 一つは、地震対策というのはいろいろなレベル、国のレベルあるいは地方自治体その他で行われますけれども、個人的なレベルで、例えば家具の転倒によってけがをしないように補強するとか、水や食料を備蓄するとか、そういうことが必要であるという、そういう教育も一つございます。  それからもう一つは、地震に関して例えばあることがわかりまして、予知とまではまいりませんけれども地震に関する情報などを出した場合に、地震のことについて知識がございませんと、さあ大変だ、大地震が来るというのでパニック状態に陥る、そういうことが心配なために、なかなかはっきりとしたことが情報も出しにくいというようなことがございます。  地震の発生というのはかなり複雑な問題で、理解していただくのはなかなか難しいわけでございますけれども、折に触れてそういう教育をし、知識を普及していけば、例えば気象庁の地震情報を出すに際しても出しやすくなるのではないか、そういうふうに感じております。  例えば天気予報というのは毎日行われておりまして、毎日テレビで天気図が放送されます。台風の進路などは当たるときもあるし、時には外れることもございますけれども、外れた場合も、予想していたよりも台風の速度が速かったら早く来たとか、ここに来る予定だったものが少しおくれてこちらの方に行った、そういう理由がわかるわけでございます。  地震も、最近はテレメーターが普及してまいりまして、小さな地震まで含めると全国で非常にたくさん起こっておりますけれども、発生状況などは、以前ですと一カ月ぐらいかけて調査しないとわからなかったのですが、現在では非常に早くわかるようになっておりますので、そういった小さな地震の発生状況とか、地震というのは起こり方にこういう性質があるというようなことを、毎日の天気予報とまでは申しませんけれども、例えば一月に一回、先月の地震状況はこうであったというようなことの解説などが放送で行われるというようなことも知識の普及に役立つのではないか。そういうふうに、いろいろな意味で知識の普及が大事だということを申し上げたわけでございます。
  56. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 地震に対する知識といいますと、我々は避難場所それから水とか食料とか用意するものあるいは家族との連絡手段の確保、そんなことしか思い浮かばないわけなのですね。先生のお話を聞いていると、地震そのもののメカニズムまで含めた知識が必要である。そこまできますと大変難しいなと思うのですが、例えばいわゆるプレート型の地震の場合はこういうことが起こり得る、直下型地震ではこんなことだ、その場合にはどこどこに避難しなさいという、具体的な地震のタイプによって避難場所とか避難する期間だとか、それが必然的にわかっていくようなものであればよくわかるのですが、地震の場合にはそういうことが全くわからない。ただ知識の普及といっても、用意する食料と水ぐらいしか頭に浮かばない、命からがら逃げ回るのが目いっぱいだという感じしかないのですね。そこで、知識の普及が行われれば我々生活している住民の地震に対する安心感というものがどの程度確保できるのか、そういう思いで質問したのです。いま一歩よくわからないのですけれども、済みません、もう一度重ねて。
  57. 宇津徳治

    宇津参考人 大変難しいことでございまして、私どももいろいろな点で知識の普及に努力をしておりますし、したいと思っておりますけれども、例えばちょっと強い地震がありますと大地震が来るのではないかというようなことが一部のマスコミなどで報道されたり、それも地震の警告をするという意味では結構なのでございますけれども、私どもから見ますと大変おかしな理由で、あるいはほとんど理由もないのにそういうことが言われておる。それでそのときは一時緊張するのかもしれませんけれども、何度も重なりますと余り問題にならなくなるというようなこともございます。  それから、地震のタイプによって対策が違うということも事実でございますが、それを一々、非常にきめの細かい対策を私どもは望ましいと思っておりますけれども、なかなか難しい面もございまして、こうしたらいいということをはっきりと言うのは困難な場合もございますけれども、ただ地震というのは非常に大きな震動が来て怖いものであるという程度の認識ではなくて、もう少しいろいろなことを知った方がよろしいのではないかということでございます。  例えば小さな地震がたくさん起こるということが大きな地震の前ぶれである場合もございますし、そうでなくて心配ない場合もございます。私どもそれがどちらであるかということはいつでも完全にわかるわけではございませんけれども、いろいろな場合があるというようなことも知っておれば、最近の地震活動についてつまらないことで一喜一憂するというようなこともないし、本当に大事なときに本当のことが言えるような環境ができるのではないか、そう思っております。
  58. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 時間がありませんので、最後にもう一度井上先生にお願いいたしますけれども、先生は都市防災という見地から、例えば地下街利用につきましても相当安全性が確保できるというお話でございましたけれども、我々は深くなればなるほど地震に対して非常な不安感を覚える。あるいは火災に対して果たして逃げられるのかというようなことがありますけれども、先生の目から見まして、現在の都市地下街というもの、横浜の場合には上がったり下がったり非常に使いにくい面もございますけれども防災という点、特に地震の問題あるいは火災の問題、そういう点で、都市東京の周辺の地下街というものは現時点で安心できるのかできないのか、率直な御意見をお願いいたしたいと思います。
  59. 井上孝

    井上参考人 私は、地下街は絶対につくるべきでないという時代に建設省におりまして、地下をもっと利用すべきであるというころから学校へ移っていったわけでございます。それで私自身は、今の地下街は非常に防災的には考えられていると思います。静岡のような不幸な例もございますが、むしろ百貨店、これも全く同じものであるにもかかわらず、路面下でないとか公共用地の下でないという理由で、百貨店の下は同じ現象でございますが、その方がもっと危険があるのじゃないか、こういうふうに思っております。そして、これは都市計画決定もしておりますが、いわゆる公共的な計画に従ってつくられた地下街というのは、避難路とかそれから通路のあり方とか換気とか、そういうことについては非常に厳しい制限というか決まりを受けてつくられておりますので、むしろもっと危険なものがほかにもあるのだ、私はこういうふうに思っております。そういう意味では、今の形で認めるべきではないか、こういうふうに考えます。  それから、ほかのいろいろな施設がございます。私、一度申したことがあるのでございますが、原子力発電所まで東京のど真ん中に持ってこられるほど自信があるかと技術担当の諸君に聞いたことがございます。そういう世間騒がせな議論はやめようというのが彼らのあれでございましたが、変電所とか今いろいろと考えられておりますような熱源でございますけれども、これは今の地下街、いわゆる地下商店街、駐車場等よりももっと厳重な配慮あるいは技術でつくられておりますので、もっと安全だ、私はこういうふうに感じております。
  60. 橋本文彦

    ○橋本(文)委員 いろいろありがとうございました。
  61. 森下元晴

    森下委員長 滝沢幸助君。
  62. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 委員長、御苦労さまです。参考人の諸先生、御苦労さまでございます。  不勉強な生徒が先生に質問するような話でありまして恐縮に存じますが、諸先生のお話の中にあるいは端的には出てこなかったことかもしれませんけれども、水につきましてお伺いをしたいと思います。  芦田先生のお話の中で、縄文時代から比較すれば、今は気温上昇しかつ水面が上昇しておるというふうに承ったのでありますが、しかし、一面生活の上からの感じといたしまして、現代は水というものに対して非常に使い方が下手だ、そして水のとうとさというものについての尊厳な態度というものが希薄な時代だ、私はこういうふうに思うのです。  一つは、水田にしても、昔の水田、あの田んぼというものは水を段階的に使いまして、同じ水が何回も何回も何枚かの田んぼに使えるのでありますが、今は一回使って一枚で終わって捨ててしまうのですね。あるいはまたトイレにしてもそのとおりであります。  水面が上がっている、海面が上がっているというのは、地球上に水がふえていることかもしれませんが、しかし私は、一面からいうと今は水不足の時代だと思うのであります。水のこういうことについてどなたかの先生から一言教わりたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  63. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 水の問題につきましては、日本の場合一番消費するのが農業用水ということです、生活用水でもかなり消費しておりますが。ただ、日本の場合は一般的に水はただである。それから外国人に言わせますと、安全と水はただであると日本人は思っているのじゃないかということなのですが、非常に貴重な天然資源でございまして、これは大切に使わなければいけないということでございます。現在やっておりますのは、水の需要が非常にふえてきているというのが一点で、これはダムとその上流部の森林管理ということで十分補うというような方向でいっているわけです。  ただ、何年だったか忘れましたが、福岡県で異常渇水が発生したことがございます。そのときにはダムの水が空になったということでございます。ですけれども、最終的には山から地下水が出てきて、非常に不便は感じさせたけれども事なきを得たという実態がございます。それは何に原因があるかといいますと、一つは節水をしたというのが大きな原因ですし、もう一つは、我が田に水を引くようですが、山の管理が十分であった、こういったことが並列して言えるのではなかろうかというぐあいに思っております。これは森林、林木というだけでなくて、治山事業とか砂防事業とかといった水を保全する施工というものも並列して進められているというような実態があるのではないかと思います。  ただ、先ほど来申し述べますように、日本の一般国民の水の消費量が非常に多いということは確かです。例えば家庭の水洗便所にいたしましても、あれだけの水の量、規格で——規格かどうか知りませんが、つくっております水槽で使っている水の量は、実態としてあれだけは要らないのじゃないか。ところがそういうぐあいになっている。そういったような一般社会生活のすべてを含めた形でそういったものを検討する必要があるのではなかろうかと思います。例えばビール瓶を二、三本、水を入れてタンクの中に入れておく。それだけでも一回分でかなり節約になります。そういった水源供給側の立場と使用する側の立場、両方からいわゆる実体のある充実したものを検討していく必要があるのではなかろうかというぐあいに思います。  もう一つ日本では水不足で起きる現象より、は、むしろ冷害とかあるいは火山灰による日傘効果ですか、そういうことによる被害の非常に大規模なのが多いやに私は承っております。  以上でございます。
  64. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 湯水のようにという言葉もありまして、水はただのものだと思っているのだけれども、ただのものは太陽なんかもただだと思っているけれども、最近は安全保障もただだと思っている向きもありまして、その点は大変日本人は目覚めなければならぬことであります。  どうでしょう。先生方、せっかくの機会でありますから、政府に対するないしは国政に対する提言というような形で、例えば水のことでありましたならば、とにかくダムをもっとつくれというようなぐあいに、何かひとつすぱっとおっしゃってちょうだいするわけにいきませんでしょうか。つまり私が申し上げたいことは、今交通事故交通事故と、大変だということを言っておりますね。しかし、水をもっとよく管理することによって水を交通の手段として相当使えることでもあるしと思うのですよ。あるいはまた植林も大切なことかもしれません。何か政府に対する、国会に対する一つの忠告、提言というような形で、すぱっと一言、水につきましてこうせいとおっしゃることがございましたら承りたいと思います。
  65. 井上孝

    井上参考人 一口で申しますと、現在上水、下水と二つになっているわけでございますが、皆様御承知のように中水道というのがございます。これは一たん一つ場所で使った水をもう一度ろ過して、そして飲めとは言いませんが、それを先ほどのような雑排水に使うというようなことがございますので、ぜひ中水道という——下水道事業は実によく伸びてまいりました。その中で中水道も伸びつつあるわけでございますが、なおかつ中水道ということは、それなりにもう一つ新しい水道のシステムをつくるわけでございますから、なかなか地方公共団体も大変でございますしあれでございますが、ビルの集積その他については私はそういうことをお考えいただく必要があるのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  東京の水がずっと流れてまいりまして芝浦の処理場を出た最後の水をコップに入れまして、おまえ飲めと言われますと、とてもそれは飲めませんと申しますが、先方の言い口は、おまえたちがふだん飲んでいる水はもっと汚い水だぞ、こういうふうに言われるくらいでございます。私は中水道というものをもっと広めて、そして雑排水にこれを利用するということを御認識、御推進いただきたいと思います。  以上でございます。
  66. 芦田和男

    芦田参考人 先ほどの海水面が上がっているのは、水がふえているのじゃないかということとはちょっと違いまして、海水の温度膨張、熱膨張でふえているわけでございまして、陸水、陸に降る水が必ずしもふえているわけではございません。むしろここ数年、渇水が割合続いておりまして、非常に危険な状態になっておるのじゃないか。過去千年ぐらいの記録をずっと見ましても、割合雨が多い、時期それから非常に少ない時期というのはかなり長く続くようでございます。そういうことから考えて、上水、これは安全度が非常に不足しているのじゃないかと思います。だから安全度をもっと上げていく、しかもおいしい水をつくっていかなければならぬ。水質の問題でございますが、量だけじゃなくて質の問題も含めて安全度を上げていくということが非常に大事じゃないかと思っております。
  67. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変ありがとうございました。中水道の発想、そしてまた水の量、質特に質を高めろとおっしゃったことをひとつ我々は生かしてまいりたいと存じます。ありがとうございました。  そこで、先ほど地下室、地下ごうの問題がありました。ここで私は思うのでありますが、日本は先ほど申し上げましたとおり、安全と防衛はただのものと思っているのでありますが、よその国の例を見ますると、決してそうではありません。そういうような意味で私は、特定の規模の建物には地下ごうを義務づけるというふうに建築基準一つを改正すれば、日本じゅうに相当のものが仮に十年間のうちにできるのじゃないか、こう思うんですよ。そして、東京を初め都市部に発達しておりますあの地下鉄をいわば防空ごうに使えるわけです。こういうものは一つ基準、規格を国が定めることによって、何もこれは北京じゃありませんけれども、人民よ、穴を掘れと言わなくたってできることであると私は思う。そういう意味では安全、防衛という面においての地下室、地下ごうというものについて、建築基準法ないしは公共事業の設計構造という面において一つの提言のようなものがございませんでしょうか。それとも学者の先生方は、そのようなことは日本に必要ない、決して侵略や爆弾はあり得ないということでございましょうか。そこら辺のところを一言どなたかの先生に御教授を賜りたいと思います。
  68. 井上孝

    井上参考人 お答えするのが非常に難しい問題でございます。北京の地下道それから今のスウェーデンの施設等、私みんな知っておりますけれども、私、同行した者に申しましたのは、日本ではこういうことがあり得ないような国でありたいなということでございます。ただ、建物建物をつなぐということにつきましては、これは歩行者でつなぐのをさらに進めまして、地下に駐車場をつくって、そして地下自動車道をつくって、自動車地下で運用するという考え方研究は現在進められておりますが、それ以上のことにつきましては、私ちょっともう一飛躍先生の御指導をいただきませんと、ちょっと飛躍できないように思いますのですが、実例は私もよく承知しております。また、そういう時代が来ない方がいというふうにむしろ私は考えております。失礼いたしました。
  69. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 ありがとうございました。  そこで、建築の構造等についてでありますが、最近、私は雪国におりまして感じておりますのは、もうほとんどのうちといっていいほどに塀をつくるのですね。塀を構えて、まあ中国なんかも町が全部城壁に囲まれておりましたから、これは人間の持って生まれた本性かもしれませんけれども、これが雪害のときに、ないしは交通事故あるいは火災、そういうときに非常に不便なんですよ。やはり隣から隣にどんどんどんと行けた方がいい。我々も戸別訪問にも、裏から裏にぽんぽんぽんと、奥さん、いますかと回った方がいいということがございますが、このようなことについて学者先生という立場に立って、建築の構造—−私はまた一つ思いますのは、今は暖冷房というようなことでありまして、小さい部屋を幾つもつくって冷たくしたり熱くしたりするわけでありますが、昔はそうでありませんでしたな。それこそ唐紙一つを外せば、ぱぱぱっといわば講堂みたいなうちになっちゃうわけです。それで、お葬式があっても結婚式があっても、取り払って使うということでしたな。そして、いざというときには唐紙を踏み外して次の部屋に行って寝ているおばあちゃんを煙の中から救出できる。今はそれがトントントンとたたいてかぎをあけてくださいみたいな話ですから、なかなかそれができぬということで、私は建築構造について、近代化した、大変文明化したと思っているのが意外と逆ではないのか。こういうことが克服できてもとの日本の建築に返ることができるならば、家庭の環境ないしは災害、あらゆる面において大変よろしい、災害等の死者は半減する、私はこう思うのでありますが、このようなことについて御教授いただければありがたいと存じます。
  70. 井上孝

    井上参考人 これは土木建築の問題かと思いますので、私がお答え申し上げます。  ブラジリアというブラジルの首都がございますが、ここは一階は全部吹き抜けあるいは駐車場というような形でつくられておりまして、ここで過ごしますと、非常に便利にできているな、こういうふうに感じるわけでございます。そして、それを日本の住宅・都市整備公団もいろいろな試みをいたしまして、先生方お言いつけになればどこか御案内するのじゃないかと思いますが、ブラジリアほど徹底してスペースをあけているという例は余りないのじゃないか、私はこういうふうに思います。そしてそれをあけない理由は、そこも惜しい、要するに採算性から考えるとやはりそこから使っていきたいということが根本にはあるのじゃないか、こういうふうに思うわけでございます。しかしながら、災害その他のことを考えますと、今申しましたような形式というものは好ましいものではないか、私はこういうふうに思います。  以上でございます。
  71. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変ありがとうございました。今おっしゃっていただきましたようなことを踏まえてどう対処するかが政治であり、我々のことと思いますが、こういうものを一つは法で規制、誘導することと、教育といいますか、そういう面で啓蒙していくことの二つが必要であると私は思うのです。できれば、法で規制せずとも国民の常識としてできることが何事につけこれは理想でありますが、そういうことにいかぬことでありますから、建築基準法を改正するというときに、あるいはまた都市計画というような面において、法で今おっしゃったような理想をいわば盛り込んでいくというようなことはいかがなものでしょうか。
  72. 井上孝

    井上参考人 ただいま私が会長をしております都市計画中央審議会におきましては、これは建設省の御所管でございますが、部会をつくりまして、今おっしゃいましたようなことも含めて、よい市街地をつくるにはどうしたらいいかという御相談、御研究が進んでいると思います。いずれ本審議会でこれはあれすることになろうかと思います。  私は、法律が先か教育が先かということにつきましては、いつでも申しておりますのは、いいものをつくってそれを見せて、そしてこれをつくりたい、この場所に住みたいというふうに持っていくのが行政ではないか、こういうふうに信じております。いいものを見せないでこうつくれと言ったのでは、なかなか納得しないと私は思うのです。あそこへ行ってあれを見てこよう、そしてああいうふうにするにはどこで何を規制したらいいのかというような形で進んでいく。先ほどおっしゃいました法律か教育かということであれば、まず国民に教える、塀のない住宅地はこういうふうなんだということを教えて、そしてそれからだんだんそれが進んでくる。生け垣というようなものが普及したときもそうでございましたし、そのほかそれぞれの地区におきまして協定をしていろいろなことをやりますので、それをもう少し広くそれでは進めようというときに法律の条項になるのではないか、こういうふうに私は思います。そうでないと、法律を破らなければ生きていけないということは実にたくさんございますので、余り厳しくお取り締まりいただくということはまずいのではないか、こういうふうに私は考えております。
  73. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 宇津先生、これはお答えにくいことかもしれません。必ずしも宇津先生でなくたって、学者という立場で同じようにお考えかしれませんが、私が最近つくづく考えておりますることは、学問の自由と国家要求ないしは時代の要求というものについての接点ということであります。  右と左を問わず全体主義の国におきましては、とにかく国がこれこれのものをいついつまでに必要ならば、学者の諸先生に命じるもしくは奨励をして、幾らでも金は出すからいついつまでにこれをつくってくれということになるわけです。  かつて日本が、アメリカに絹を輸出しないことによってアメリカの婦人がストッキングがないことによって音を上げると思いましたら、あに図らんや彼らは、政府が学界を督励してナイロンを発明しました。それが逆に日本の絹の命を取ることになるわけであります。  歴史上初めて、また最後でありたいのだけれども日本に落とされた原爆にしても、あれは自然に学者が発明したというよりは、むしろ国家の指導のもとにつくれと言われたというふうに私は聞き及んでおります。  そのような意味で、日本はまことに自由天国、学者の諸先生がそれぞれ興味に応じ必要に応じて研究なさる、企業がこれに対していわば売らんかな主義においてこれを開発するということを待っているというように私は思うのだけれども、例えば地震、これはがんもそのとおりでありますが、そういうものについては国家的、民族的、人類的願いでありますから、これに対して政府が、学者の先生方に、大学に対しまして一つテーマといいますか目標を申し上げて、これに対してもちろん金は出さなくてはなりませんが、そういうことでやっていくということは、必ずしも学問の自由を侵すというようなことではなくて、非常によろしいことで、しかあるべきものと私は思うのでございますが、いかがでしょう。
  74. 宇津徳治

    宇津参考人 私どもも、私どものやっております学問が社会に十分還元されるべきであるということは重々承知しております。例えば地震の予知というような問題につきましても、これは社会的な要請が非常に強いわけでございまして、私どもも一生懸命取り組んではいるわけでございます。それで、大学関係を初めとしまして関係諸官庁とも密接な連絡をとりまして、先ほども申しましたが、地震予知の計画というのが何次かにわたって立てられて、それに従って予算要求を出しておるわけでございます。地震予知につきましては第六次の計画を今策定中でございまして、これは私ども研究者あるいは行政も含めましていろいろなことを考えた上での案でございまして、そういう方向でやりたいということを申しておるわけでございます。それから、先ほど申しませんでしたが、火山噴火予知につきましても同様に第三次計画を現在策定中と聞いております。  そういうわけで、私ども、単に例えば地震現象がおもしろいから勝手なことを研究しているということではございませんで、地震予知あるいは防災という面を通じて社会に役立つようということは十分配慮してやっておるつもりでございまして、それは例えば研究の自由とかいうようなものと抵触するようなものではないと私どもとしては思っております。  ただ、地震予知というのは、目先のことだけを考えまして単に観測を集中してやればよろしいというわけではございませんで、何か観測の結果があらわれましても、それを解釈するためにはもっと基礎的な、例えば地球の中に関する知識あるいは地球の中に起こっている現象に関する知識というものが必要でございますので、そちらの方の基礎的な研究、両方あわせて進めていかなければならないわけでございます。  そういうわけで、いろいろなことを考慮しつつやるわけでございまして、自由に研究したいという方は基礎的な研究の方で頭あるいは腕を使っていただくというようなことも若干あろうかと思いますけれども、例えば地震研究者の仲間あるいは火山の研究者の仲間では、予知あるいは防災ということが常に念頭にあるというふうに理解していただいてよろしいかと思っております。
  75. 芦田和男

    芦田参考人 ただいま地震予知の問題、火山噴火予知の問題がございましたが、そのほか高潮の問題、洪水の問題、それから地震動の問題、耐震の問題、そういったきょう議論になっているような問題は国家的な問題でございまして、国家的なプロジェクトとして強力に推進していくということが非常に重要ではないか。一方私たちの研究は、そういうプロジェクトに向かって各人の自由な発想が自由に吸収できるような形で、ある程度研究の進め方とかそういうものについては各人の創意工夫というものが高度に生かせるようなシステムが必要かと思いますけれども、おっしゃるように、この目的が非常に実際的な我々の民族の今後を支配するようなものでございますので、国家的なプロジェクトで大いにやっていくということは大学人として当然やらなければいかぬというふうに思っております。
  76. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 ちょっと私、御質問の意味を聞き違えているかわかりませんが、政府が金を出すことが学問の自由を侵すかどうかということでございますでしょうか。政府というのがちょっと理解しにくいのですけれども、現実的に国立大学は全部政府から研究費をいただいて研究しております。ただ、私個人的見解としては、もう少し予算が欲しいという希望を持っていることは確かでございます。  ただ、運営の仕方が、例えば大学で見ますと各学部、各学科というごとで分かれておりますが、こういったそれぞれの部門が総合された形での研究を推進するという大型プロジェクト等の推進というのは今後特に必要になっていくんじゃなかろうかというぐあいに思っております。  以上でございます。
  77. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 いろいろとありがとうございました。実は私が申し上げたいことは、例えば地震にしろがんにしろ、本当に国家的、民族的、世界的要求に対して、いわば朝野を挙げてという言葉がよく昔はありました。国がはっきりと、この研究をいつまでという目標でひとつやってくれということをきちんとお願いをする、これに対して必要な金はおっしゃっていただきまして、こういう人間が必要だとおっしゃっていただきまして、行政が協力すべきことをおっしゃっていただきまして、集中的にこれをするというものが、国にここ十年間のうちにこれというものが常に二つ三つはなくてはならぬのではないか。ところが戦後を見ますると、それがございませんで、ややもすれば研究研究、国はまんべんなく去年の一割増というように各大学に予算を提供するというようなことになって、それが一つの企業なんかが目をつけて開発をしないことにはさっぱり世に出ないというようなことになっているのではないかと思うものですから、今のようなことを申し上げたわけであります。  あと二、三分あるような感じでありますので、なおこれだけこの機会にひとつおっしゃっていただいた方がいいというのがございましたならば、どなたの先生でもひとつ国会に対してこれを言ってやりたいというのがありましたら、お願いします。
  78. 山口伊佐夫

    ○山口参考人 先ほど御質問になられました水の問題でございますが、これはちょっと私見でございますが、最近水の需要の動向が多少変わってきている。それは特に農業用水等でございますが、従来のダムの管理というのは、冬季に水を貯留いたしまして夏季の農業用水を放流して洪水調節容量を確保する、こういう形でやってきていたわけでございますが、最近果菜類、野菜その他ハウス栽培で冬季でもいろいろトマトも出る、キュウリも出る。冬季に栽培して、いわゆるハウス栽培にかん水するというようなことで、冬季の需要も結構これからふえていくのではなかろうか、こういう感じがいたします。そういった意味での一つの管理のあり方ということが、今後の研究課題になるのではないかと思っております。  それからもう一つは、川からの恩恵を受ける地域というのが、日本の場合二つに大きく分かれまして、大河川から集中的に恩恵を受ける地域、これは大都市が中心になるわけでございます。それからもう一つは、中小河川から地域的に恩恵を受ける地域、こういうぐあいに二つに大きく分かれるわけでございます。ところが、大河川になりますと大きな集中管理といったものがやりやすいわけでございますので水のコストが安い、地方都市あるいは山の周辺部にある地方というのは水のコストが高い、こういう傾向がございます。現に三多摩と東京都心というのも多少違うと思いますが、そうなってまいりますと、その周辺部の地方都市が大河川に依存していく、大河川から水を引こう、こういう感じが受けられます。  そうなってきますと、それが全部集中いたしますと、水は大河川では不足し、中小河川等では放流して捨ててしまう、捨てながら水が足りない、こういう異常な事態が出てくるのではなかろうか。これは考え過ぎかもわかりませんが、そういったことを多少懸念しております。そういったもののバランスが十分とれながらコストもなるべく均一になる、そういう運営が進められることを希望するわけでございます。  以上でございます。
  79. 滝沢幸助

    ○滝沢委員 大変ありがとうございました。委員長、ありがとうございました。諸先生、ありがとうございました。御苦労さまでした。
  80. 森下元晴

    森下委員長 安藤巖君。
  81. 安藤巖

    ○安藤委員 諸先生方には長時間にわたりましていろいろ貴重な御意見を拝聴させていただきまして、ありがとうございました。私が最後でございますので、あとしばらくおつき合いをお願いしたいと思います。  最初に芦田先生にお尋ねをしたいと思うのでございますが、先ほど先生の方から冒頭の御発言がございました中に、いわゆる異常な大災害というようなことが起こり得るんだ、まあ絶対ないとはもちろん言えませんけれども、そういう場合に備えて災害を軽減するいろいろな措置が必要だということもおっしゃって、さらには防災力を上げる必要があるというふうにおっしゃったものですから、その関係でお尋ねをしたいと思うのです。  そこで、ごく最近発表されましたいわゆる防災白書、昭和六十一年度のものと、去年の昭和六十年度におけるものを見まして、全部じゃありませんが、例えば「土砂災害危険箇所の整備現況」というのがあるのですが、地すべり危険箇所建設省所管分が去年の発表のものですと、要整備量、まだこれから整備をしなければならぬのが五千七百七十七カ所であったのが、今度発表されました同じ地すべり危険箇所建設省所管分が一万二百八十八カ所、こういうふうにふえているわけですね。それから農林水産省所管分が五千五百四十六カ所であったのが、新しい方は八千七百五十五カ所。ほかにも急傾斜地崩壊危険箇所なんかもぐっとふえておるのです。だから、こいう状況を見ますと、このままでいったら、先ほど先生がおっしゃったような大規模なものが来たときに、これはどえらいことになるのではないかなと非常に強い心配をするわけなんです。  そこでお尋ねしたいと思いますのは、軽減措置、防災力を上げる必要、これは一体どういうふうにして防災力を上げるのか。先生方はいろいろ防災についての研究をし、それに対する提言をしておられると思うのですが、この際、忌憚なくこういうふうにすべきであるというのをお話しいただければありがたいと思います。
  82. 芦田和男

    芦田参考人 防災力を上げます手段として、第一にはやはり直接防護施設といいますか、今の土砂災害の場合で考えますと、砂防ダムの整備水準が非常に低うございますのでこれをまず上げていくということはもちろんでございますが、それにしましても今先生がお挙げになりました危険箇所、非常に数が多うございます。これは基準の置き方によってどんどん変わってくるわけでございまして、それともう一つ、宅造とかそういうことが進んでいるという事実もありまして、変わってくるわけでございますが、こういう全部の危険箇所に対応するということはすぐにはできないと思います。仮にできましても、それを上回る規模のものが起こる可能性がある。それで、砂防ダムができたからこれで安心だといってやってしまいますと、かえって危ないことも起こり得るということで絶えず、やはり直接防護施設と並行して、そこに住んでおる住民がどういう危険状態のところにあるのか、逆に言えばどういう安全度のところにあるのかということを認識するということがまず第一だと思います。  そのためには、危険度を科学的な方法で診断しまして、それを的確にそこに住んでおる住民に伝えるといいますか、住民自身が感ずるというようなことを含めまして、一方的に伝えるのではなくて、そこに住んでおられる人が一番よく知っておる面もありますので、そういうのを含めて認識を持っていくということが大事でございます。  それと同時に、今度は社会防災力を上げるということはちょっとした工夫でも可能でございまして、例えば土砂災害の場合ですと、発生する範囲が割合狭い。例えば、斜面側に住んでおって命を落とすことがあっても、反対側の部屋に移っただけで助かるというようなことも多うございますので、災害の特性に応じて住み方といいますか住まいのあり方も変えていく必要があるのではないか。  それから、河川災害の場合を考えましても、堤防をつくって守っておるわけでございますけれども、先ほど言いましたように、堤防はある基準で守っていってどんどん安全度を上げておるわけでございます。この場合でも、それを上回る異常な洪水というのが起こり得るわけでございます。そういうときに堤防をオーバーしても、水がオーバーするけれども堤防が切れてしまうことがないような、例えばスーパー堤防とかというようなこともあり得るわけなんで、その周辺の土地利用とあわせてそういうのを入れていく、それが一例でございます。  そういうものはたくさんあろうと思うのですが、総合的な形で進めていく、全体として社会の持っている防災力を上げていく。それは、そこに住んでいる人間社会に対するあるいは自然に対する認識を上げていくということを含めて総合的な防災力を向上していくということでございまして、参考意見として幾つか挙げたとおりでございます。
  83. 安藤巖

    ○安藤委員 ありがとうございました。  今お話をいただきましたことと関連するのではないかなとお聞きをしておって思ったのですが、最初におっしゃった、そして今もおっしゃったのですが、幾つかお挙げになった。その中に災害に対する知識云々のお話もございましたが、先生は防災教育というふうにおっしゃった。さっきおっしゃった中にもそれが入っておったのだなというふうに理解をさせていただいておるのですが、その関係で、先ほどもちょっとお触れになったかと思うのですが、いざそういう災害が来たときに、例えば堤防の場合でいいますと、水があふれても堤防は大丈夫なんだ、もちろんそういう堤防をつくらなければいけませんけれども、そういうような認識を地域の住民の人たちにしっかり持たせる。あるいはどちらの方向へ逃げたら安全なのかとか、こういうようなことでよく言われておりますのが防災マップといいますか、それを一遍きちっとつくって、一つの大都市全体あるいは一つ行政区あるいは町というふうにそういうものをつくったらどうかというような話があるのを御承知だと思うのですが、その関係につきまして、去年の六月ですか、国土庁が「防災マップのあり方について」という中間報告を出しているわけなんです。まだ、あり方についてが出ただけでございまして、これからどういうものをいつごろまでにきちっと完備していくかというようなことになっていないのですが、そういったものをきちっとつくるというのも、先ほどお伺いしたところによりますと、やはり防災力を上げるという中身の一つになるのだというふうに理解をさせていただいたのです。  この防災マップのつくり方ですね。行政官庁だけでやる、あるいは地方自治体だけでやるという場合もあろうかと思うのですが、どこへ避難したらいいか、どこが安全だというようなことなど、いろいろないい知恵を住民の人たちにも出してもらうということも必要ではないかと思うのです。そういう防災マップのあり方、つくり方について、御意見があればお伺いしたい。  もう一つは、防災マップをつくるのはいいが、危険箇所とか何かあるわけです。そうすると、今の土地の問題じゃありませんが、土地の値が下がってしまうとか、それは下がった方がいい場合ももちろんあるわけですけれども、それから表示と実際の起こったのと違うではないかという非難が出るのではないかとか、いろいろな議論があるのですが、やはり公表されないことには、各人が持っていないことには、あるいはそうした知識としてちゃんと頭の中に入っていなければ無意味だと思います。だから公表はどうしてもつきまとう問題ですが、今申し上げましたような議論もあるのです。そういうことも含めまして、お考えがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  84. 芦田和男

    芦田参考人 社会防災力を向上する上で、防災マップというのは非常に重要だと思います。ただ、防災マップといいましても、起こる外力の規模によって、例えばある規模の外力洪水とか地震、そういう場合だとこういうところが危ない、それがまた規模が大きくなりますと広がってくるということがありまして、そこに住んでおる人たちがよほど十分認識しておかないと、もうここは安全だというように簡単に決めつけてしまってもいけないと思うわけでございます。  それで、防災マップのつくり方としては、過去のその地方の、歴史時代も含めて、もっと古い時代も含めまして、現象が起こったときに、現在は社会状態が非常に変わっておりますから、それでどういうふうな現象が起こるかというシミュレーションどもやりまして、そのシミュレーションの手法などはかなり進んできております。もちろんまだ十分ではございませんけれども、ある程度できるようになってきております。そういうことで、それはもちろん行政官庁がやることでございますけれども、あるいは我々の研究成果もそういうものに使っていただいて、それで皆でやっていく。  そして、それを有効に使うためには、住民の人がそれを十分理解していないといけない。場合によっては、決めたことと違うことが起こってくるのが多いわけです。災害事象を考えますと、あらかじめ決めておいて、こういうことはこういうふうにするぞ、こういうときはこういうふうにするぞと決めておいても、全く違ったことが起こってくることが往々にしてございます。そういうときに判断をしなければいかぬわけです。  それを判断するのはだれかといいますと、結局最終的にはそこに住んでいる住民がやる。そのリーダーがやる場合ももちろんありますけれども、そこに住んでおるそういう人のウエートといいますか、みずからがやるということが重要になってくると思いますので、そういう人たちが危険マップといいますか災害マップを知っておられるだけではなくて、それがうまくいかなかった場合、どこかでそごが生じたというような場合でも、適切に判断できるようなある程度訓練といいますか教育といいますか、そういうのが必要ではないか。かなり高度な知識というか、自分の命を守るということは非常に大事なことでございますので、それは基本的に大事な問題ではないかと思っております。仰せのとおり、災害マップというものをつくってそれを有効に機能するような方法はどういうふうに持っていったらいいかというようなことが非常に大切ではないかと思っております。
  85. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもありがとうございました。  次に、井上先生にお伺いをしたいと思うのです。先ほど来都市開発の問題をいろいろお話を伺いまして、その中で地下の開発ということも強調されておったと思うのですが、地下街の問題についてお伺いをしたいと思うのです。  先ほど来、今の地下街避難路とか通路、換気等々について防災対策上のきちっとした規制が行われているから安全なんだというお話がございましたが、最近、地下街をこれからつくるとかどうとかという問題は別にして、それもちょっと入っておるのだろうと思いますが、今ある地下街について特に出ているようですが、大都市の自治体なんかから、もっとその規制を緩和してほしい、例えば通路、避難路をもう少し狭めてでももっとたくさん店舗を並べたいんだ、そういうようなことで規制緩和の要望が出ているという話も聞いているのです。そうしますと、先ほど先生がおっしゃったような、防災上の規制がちゃんと完備しているのだ、だからそういう点からいってこれは安全、そういう対策が講じられているのだというふうにお伺いしたのですが、緩和をするということになるとそういう防災上の安全対策というものにマイナス面として出てくるのじゃないかというふうに思うのですが、その点いかがお考えでございましょうか。
  86. 井上孝

    井上参考人 その点については私も先生と同感でございまして、今の風潮はどっちかというと、制限を緩めることによって市街地の活性化を図ろう、こういうのが一つの傾向ではないか、こういうふうに思うわけでございます。しかしながら、事は人命に関することでございますから、これはむしろ厳重に、少なくとも現在の規制を守っていくべきだ、こういうふうに私は信じます。  実際に見ておりますと、いろいろな抜け道があるのじゃないかと思うのです。しかしながら、それでは危険なんだという、これも教育の問題ですけれども、やはりそういう点で完備しているのだということが一つのその地下街の、ちょうど駐車場が完備している、何があると同じように、防災的にもここはいいのだということで売り出してほしい、こういうふうに私は思っております。緩和については私も決していいことではない、やるべきでない、こういうふうに思います。
  87. 安藤巖

    ○安藤委員 ありがとうございました。  続きまして、今度は宇津先生にお伺いをしたいと思うのですが、御案内のように、先月の二十五日ですか、中央防災会議地震防災対策強化地域指定専門委員会というのが九年ぶりに開かれたというふうに聞いております。そこで、南関東地域、一都三県ですね、千葉、埼玉、神奈川と東京都になるわけですが、これを大規模地震対策特別措置法に基づく今の地震防災対策強化地域に指定すべきかどうかという議論がなされたそうですが、結局結論は持ち越して、八月にもう一回いろいろ話し合ってやるということになったそうです。  いろいろ物の本を読ませていただきますと、東海沖地震というのであちらの方は強化地域に指定されましていろいろな対策を、緊急整備事業なども港湾あるいは河川ども含めて行われておるわけですね。この南関東地域、このままほかっておいていいのかいな。先回の千葉沖地震もありますし、それから先ほどお話もありましたことしの三月の東京の直下型地震もありますし、それからその少し前は伊豆の三原山の噴火があります。  それから、またちょっと物の本を読ませていただきますと、東海沖地震のああいう強化地域を指定するきっかけになった説をお出しになった石橋先生ですか、あの方の本を読みますと、とにかく今東京集中でいろいろだんだん膨れ上がってこういう都市になっておる、さらには先ほども話がありました臨海部にも人工島をつくって云々というような話があるけれども、これは実に不思議な話だ、東京に大地震が絶対ないということを前提にしているみたいな話で非常に不思議だ、東京にそういうかっての大震災のような地震が起こらないという保証はないし、起こる可能性が非常に強まっているのだというお話も書いておられるのを伺っておるものですから、そうなるとこの南関東地域を強化地域に指定するというようなことはそろそろ考えなければいかぬのじゃないかなと思うのです。  それはこの専門委員会でいろいろお話を今されておられるわけで、八月云々という話もありますけれども、それを飛び越えた話をしていただくのは恐縮でございますけれども、今申し上げましたようなこと。それから、宇津先生がいろいろ研究しておられて、その成果の上にお立ちになられてどうなのだろうか、このまま強化地域に指定しないでほかっておいていいのかという点についての御意見を賜れればありがたいと思います。
  88. 宇津徳治

    宇津参考人 地震対策の強化地域のことでございますが、東海地域が指定されましたのは、あそこに大規模な地震が起こる可能性が非常に強いということがいろいろな理由からはっきりしております。それで、起こった場合にはどういうタイプの地震であるかという、その地震のモデルも推定できます。そういう状況であれば、現在の学問、技術水準をもってしても観測体制を整えておけばかなりの確率をもって直前予知ができるであろう、そういう状況であるのに何もしないのはいけないということで始まったものだと思います。  関東地域につきましては、東海地震に匹敵するようなモデルがちゃんとはっきりとしておりまして、それがしかも切迫している可能性があると思われる地震というものは完全に指摘することはできません。大正十二年の関東大地震が、例えば今から百年くらい先になりますれば、そういった地震が間もなく起こるという可能性がかなり高くなっているというようなことが言えるかもしれませんが、大正十二年からはまだ六十五年しかたっておりませんので東海とは多少状況が違う。しかし首都圏にはいろいろなタイプの地震が起こって、場合によっては大被害を伴う可能性があるけれども、東海と同じような意味で強化地域に指定するためには、こういうタイプの地震がかなりの確率で近年中に起こることがわかっておるという必要があろうかと思います。そういう意味では開東地域は東海とは若干違うように私は感じております。  ただ、想定されている東海地震はマグニチュード八クラスを考えておるわけですけれども、東海地震よりも小さい地震、例えば安政の江戸地震とかそういうようなものが直下に起こりまして大災害が起こった例がございますが、そういうものを対象にした直前予知というのは、現在はまだ非常に難しいということになっております。先ほど申しましたのは、地震の規模が小さいということのほかに、観測環境の条件が非常に悪いとかいろいろなことがございまして、東海地震のように目標を確実に定めてそれに対する観測体制を固めて、それからいろいろな体制を決めまして、異常が出た場合にどういうふうな経過で警戒宣言を出すというようなことをとれる段階では、現在の例えば首都圏に予想される地震に対しては難しいのではないかという気がいたしております。  しかし、そうだからといって何もしない、もちろん今現在でもいろいろ研究観測はしておりますけれどもそれで満足すべきかといいますと、そういうことではございませんので、もし強化地域という方向で考えるのであれば、東海とは違う意味で首都圏というのは非常に大事であるというので特別な措置をとるということは結構かと思いますけれども、全く同じ法律のもとで同じシステムで運営するということは現在では無理ではないか、そう私は思っておるわけでございます。
  89. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもありがとうございました。  何か直前予知、私も専門家ではございませんので、よくはわからないところももちろんたくさんあるわけでございますが、今お話をお伺いしておりますと、東海沖地震のような直前予知が南関東地域においては困難である、そういう関係で、ほかにもいろいろあるだろうと思うのですが、強化地域指定というのはちょっと問題じゃないのかなというふうにお伺いしたのです。しかし、そういう大規模地震対策特別措置法という法律の枠にはまった強化地域の指定ということではなくて、それ以外の、法律をつくるかどうかは別にしまして、ほかっておくということではなくて何らかの対策を講じる必要があるのではないか、こういうふうにお伺いしてよろしゅうございますか。重ねてで恐縮ですが、一言だけ言っていただければ……。
  90. 宇津徳治

    宇津参考人 そういうことでございます。実は地震予知連絡会というのがございまして、そこでは全国に観測強化地域、それから特定観測地域というのを指定しておりまして、ほかの地域よりも念を入れた観測をやっておるわけでございます。もちろん首都圏、南関東は強化地域一つになって、南関東と東海でございますが、そういう意味ではかなり前からほかの地域に比べては念を入れてやっておるわけでございますが、それで十分というわけではございませんので、何かうまい方法があればさらに強化をする必要はあろうかと思います。  日本全体を見回しまして、関東と東海だけが非常に大事で、ほかはほうっておいていいというわけにもいきませんし、私どもの力にも限りがございますのですべてを関東、東海に集中するわけにもいかないし、いろいろなことを考えて最善の方法をやるべきであろうと思っております。
  91. 安藤巖

    ○安藤委員 どうもありがとうございました。  最後に液状化問題について、これは防災研究所の先生でいらっしゃいます芦田先生にお伺いしたいと思うのですが、実は私、昨年暮れの千葉県東方沖地震のときに、あの直後に現場へ行きました。そうしましたら、あれは本当にびっくりしたのですが、小っちゃな火山が爆発したようにざあっと海岸地帯に並んでいるのです。そして、きれいな噴火口ができ上がっておる。砂が噴き出して、ちょうど真ん丸な穴があいて噴火口になっているのですね。どうしてこんなのが出てくるのか、相当な圧力があったのかと言ったら、いや、液状化になってこうやって揺られて、そして水圧で飛び出してきたんだという話を聞きまして、怖いことだなというふうに思ったのですが、例えば東京湾なんかを、これは先ほどもちょっとお話し申し上げたのですが、埋め立てをして人工島をつくる。それから、私は名古屋ですが、名古屋でも南部の方は埋立地がずっと広がっているわけです。  だから、そういうところを公園にするというのならまだわかるのだけれども、そこへ高層ビルを建ててどうこうということになったら、ビルは岩盤まで基礎を打てばいいのかもしらぬけれども、そのビルだけじゃない、道路もできるし、ほかの家もできるだろうと思うのですが、地震が起こった場合にそういうような埋立地、いわゆる人工島というのはえらいことになるのではないかと思うのです。そういうことから考えまして、学者先生の御意見として、そこへそういう高層ビルをつくって都市化するというようなことは好ましいのか好ましくないのか、一遍率直にお伺いしたいと思うのです。
  92. 芦田和男

    芦田参考人 液状化の問題は新潟地震以来非常に注目されておりまして、もう大分長い間でございますが、研究をずっと継続しております。それについてのメカニズム、対策というのはかなりわかってきておりまして、十分安全な設計はできると思うのでございますが、なおいろいろな条件に応じて研究の不足している面もありまして、昨年度も我々の研究班でも液状化の問題を取り上げて研究しているところがございます。そういうことで十分な対策は打てると思います。その面からいきますと大丈夫な設計ができるのではないかと思っております。ただ、軟弱なところに高層の建物をつくるのがいいかどうかということについては、私個人としてはそう好ましいことではないというふうに思っております。  以上でございます。
  93. 安藤巖

    ○安藤委員 どうも長時間にわたりましてありがとうございました。時間が来ましたので、これで終わります。
  94. 森下元晴

    森下委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、長時間にわたり御出席を賜り、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十六分散会