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1988-04-27 第112回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月二十七日(水曜日)     午前九時三十二分開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 田中 直紀君    理事 中山 利生君 理事 浜野  剛君    理事 高沢 寅男君 理事 神崎 武法君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    坂本三十次君       塩谷 一夫君    村上誠一郎君       山口 敏夫君    石橋 政嗣君       岩垂寿喜男君    河上 民雄君       伏屋 修治君    安倍 基雄君       木下敬之助君    田中 慶秋君       岡崎万寿秀君    松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁原子         力局長     松井  隆君         外務大臣官房審         議官      谷野作太郎君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省経済局次         長       内田 勝久君         外務省経済協力         局長      英  正道君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局政策課長  石田 寛人君         科学技術庁原子         力局核燃料課長 結城 章夫君         科学技術庁原子         力安全局防災環         境対策室長   酒井  彰君         科学技術庁原子         力安全局核燃料         規制課核燃料物         質輸送対策室長 大森 勝良君         環境庁自然保護         局野生生物課長 玉川佐久良君         外務大臣官房審         議官      兵藤 長雄君         外務大臣官房外         務参事官    法眼 健作君         水産庁海洋漁業         部遠洋課長   小野登喜雄君         資源エネルギー         庁長官官房国際         原子力企画官  田中 伸男君         資源エネルギー         庁公益事業部開         発課長     小林 盾夫君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  梅沢  泉君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     三角 逸郎君         運輸省航空局技         術部運航課危険         物輸送対策官  金子賢太郎君         消防庁特殊災害         室長      原  純一君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 四月二十七日  辞任         補欠選任   永末 英一君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   田中 慶秋君     安倍 基雄君 同日  辞任         補欠選任   安倍 基雄君     木下敬之助君 同日  辞任         補欠選任   木下敬之助君     永末 英一君     ───────────── 四月二十五日  ジュネーヴ条約追加議定書加入に関する請願大久保直彦紹介)(第一七六四号)  同(松本善明紹介)(第一七六五号) 同月二十六日  ジュネーヴ条約追加議定書加入に関する請願(吉田之久君紹介)(第一八六七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件(条約第六号)(参議院送付)  原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  特に水鳥生息地として国際的に重要な湿地に関する条約第六条及び第七条の改正受諾について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 本条約について最終的には一度大臣の総括的な総論も聞かしていただきますが、具体的な点はそれぞれの担当者の方からひとつお願いしたいと思います。  まず、この条約に基づいて我が国が重要な湿地として指定しているところはどこどこで、またそういう場所はどういうふうに管理をされておるのか、そういうことをまずお尋ねしたいと思います。
  4. 玉川佐久良

    玉川説明員 我が国登録湿地には現在、昭和五十五年に指定されました北海道東部釧路湿原と、それから昭和六十年に指定されました宮城県の伊豆沼内沼の二カ所でございます。  釧路湿原につきましては国設鳥獣保護区が設定されておりまして、その主要な部分は特別保護地区指定されているところでございます。また、文化財保護法に基づきます天然記念物及び自然公園法に基づきます国立公園指定を受けております。  一方、伊豆沼内沼につきましても国設鳥獣保護区が設定され、その全部が特別保護地区指定されているところでございます。また、ここも天然記念物指定を受けております。  これらの措置が相まちまして所要管理運営が行われているところでございますが、特に鳥獣保護区の観点からは必要な施設整備を行いますとともに、毎年作成されております管理計画に基づきまして管理員による巡視、調査等を行っているところでございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 この条約に基づいていわゆる締約国会議というものが開かれるわけですね。今度の第六条、第七条の改正でその点がさらに整備されるということになるかと思いますが、従来我が国がこれに加盟してからそういう締約国会議というものが開かれたケースが何回ぐらいあるのか、そういう場合にどういう人とか機関我が国代表としてそういう締約国会議へ出るのか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  6. 法眼健作

    法眼説明員 ただいままでに締約国会議は三回行われております。そしてこれまでは外務省及び環境庁より代表者が出ておりまして、その第一回及び第二回会合におきましては専門家出席を得ております。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 従来三回あったということですが、それではそこではどんなことが話し合われて、またどんなことが決まったのか、それもひとつ聞きたいと思います。
  8. 法眼健作

    法眼説明員 これまでに第一回締約国会議はイタリアのカリアリで行われました。これにおきましては条約実施状況及び条約強化策についての総合的な検討が行われました。  そして第二回締約国会合オランダのフローニンヘンで行われまして、条約実施に関する締約国のこれまでの経験についていろいろな討議がされました。それから今後の条約実施上の指針となるべきいろいろな行動計画についての討議、それから湿地保全にかかわる諸問題についての検討が行われまして、そしてそこにおきましては幾つかの勧告が採択されております。  それから第三回の締約国会議、これが昨年カナダレジャイナで開催されまして、条約実施進捗状況、それから国際的に重要な湿地基準の策定、それから財政問題にかかわる諸問題についての検討、つまり今度の改正でお願いしている点等を含めて討議が行われた次第でございます。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 今度の六条、七条の改正の問題ですが、改正議定書受諾している国は三十八カ国と聞いておりますが、その三十八カ国の中の三分の二、すなわち二十六カ国の受諾があるとこの六条、七条の改正が発効するというように聞いているわけですが、今のところそういう改正受諾をした国はない、今度我が国がここでやれば恐らく一番トップくらいになるのじゃないか、こんなふうにお聞きしています。  そうすると、この必要な二十六カ国というところがいずれも改正受諾して発効できるというふうになるにはどのくらいの時間がかかるのか、その辺の見通しはどうかということです。
  10. 法眼健作

    法眼説明員 まさに先生言われるとおり、この今の改正受諾国は、現在時点におきましてはまだございません。ございませんわけでございますが、これは締約国会議、この間のレジャイナ会合におきまして全会一致、コンセンサスで採択されたものでございます。したがいまして、これに対する見通しというものはあくまでも手続的なものだと私ども考えております。  ちなみに若干の国の今の状況を申し上げますと、日本はまさに今ここで御審議いただいておりまして、これが成立いたしますとトップバッターになるかもしれません。オランダが五月中に受諾承認を国会に提出すると聞いております。カナダは今受諾手続中、ノルウェーも二、三カ月中に閣議承認のラインで進めておりまして、デンマークも三カ月ぐらいでやるのではないか。それからイギリスは、これはもう受諾をしたという情報もごく最近入っておりまして、今確認中でございます。フィンランドも受諾予定、これも期日はまだ明確にしておりませんが、もう近々受諾、こういう状況と聞いております。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、関係国が次々と受諾するであろう、こういうふうに見ておいて間違いないというふうに今お聞きをしたわけでありますが、そこで今回のこの改正によって条約締約国会議定例化する、それからその権限を拡大する、それからまた分担金制度を導入する、こういう改正内容になっているのですが、こういう会議定例化とかあるいは加盟国分担金とかいうものは今までは一体どんなふうに運営をしていたのか、それをお聞きしたいと思います。
  12. 法眼健作

    法眼説明員 これまではその都度アドホックと申しますか、特別に皆で合意いたしまして、いついつというその日にちは定まっておりませんでした。今回は三年に一遍やるというふうに明確にしたわけでございますが、今まではそういういついつのどれだけの期間をもってやるということは決まっておりませんで、関係国が集まってその都度合意しながらやってきたわけでございます。  それから分担金につきましても、これはだれがどのくらい出すというような明確な基準もございませんで、言ってみれば関係国の任意の拠出に依存していた次第でございます。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 この条約事務局ですが、これは現在今のところは自然及び天然資源保全に関する国際同盟、こういう国際機関があってそれがこの条約事務局を務めている、こういうふうにお聞きするわけでありますが、この国際同盟というのはどういう組織であり、またどういうふうな活動をしているのか、それから我が国はこの国際同盟というものにどういうふうにかかわっているのか、その辺のところをひとつ御説明をお聞きしたいと思います。
  14. 法眼健作

    法眼説明員 まさに先生指摘のとおり、事務局IUCN、これは自然及び天然資源保全に関する国際同盟でございますが、これに依存してまいりました。  これは自然の保護及び天然資源保全に関心を持つ関係者間の協力を図り、これを促進することを目的といたしまして一九四八年に設立された団体でございまして、本部スイスに置かれております。  これは自然保護に関する情報交換調査研究、啓蒙及び各種の提案を行っておりまして、一九八七年十月現在では五十九の国等が参加しておりまして、我が国では環境庁が、これは国でも参加できますし、それから政府機関民間団体、いろいろな形で参加できまして、国としては五十九、政府機関としては百二十五、それから民間団体といたしましては三百八十七が参加しておりまして、我が国におきましては環境庁昭和五十三年に政府機関として加入してございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 今の御説明で、それでは環境庁がこの関係を担当されているということで、では環境庁の方からも所要の御説明を、それからその際、この国際同盟というものが大体どういうふうな年間予算でやっているのか、そういう予算というものを、では我が国はどんなふうに今まで負担してきたのか、そんなことも含めて、ひとつ説明願います。
  16. 玉川佐久良

    玉川説明員 ただいま自然及び天然資源保全に関する国際同盟、私どもIUCNと申しておりますが、その概要について御説明がございましたが、やや詳しく申し上げますと、IUCN本部スイスのグランにございまして、イギリスのケンブリッジほか十カ所程度の都市に職員を配置しておりまして、全体の職員規模が百十名程度というふうに承知しているところでございます。  IUCNには昭和六十二年十一月現在で国家会員として五十九カ国のほかに政府機関会員及び非政府機関会員として百十七カ国の五百九十二の団体が加盟しております。我が国では環境庁政府機関会員として昭和五十三年十月に加入いたしているところでございます。  一九八七年のIUCN予算総額につきましては千八百四十一万スイスフランでございます。これは予算当時の円換算をいたしますと約十八億円でございます。このうち会員一つでございます環境庁拠出金額は約八万スイスフランでございます。約七百八十四万円ということになっているところでございます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 今度のこの改正で、第六条に分担金制度が導入されるということになるわけです。その各国分担率は、今度は、締約国会議通常会合出席しかつ投票する締約国全会一致で採択する、こんなふうになっているわけですが、この全会一致で決めるという決め方は、逆に考えれば、どこか一カ国でも反対と言えばなかなか決まらぬということになるんじゃないか、そんな感じもするのです。  こういう決め方を決めたのはどういうわけか、あるいはまた分担率というふうなものはどういうふうに率を決めるのか、そこら辺のやり方はどうなるのか、説明願います。
  18. 法眼健作

    法眼説明員 分担金決め方全会一致で決めることになってございます。したがって、理論的には一カ国でも反対すればまとまらないということもあり得るわけでございますが、分担の支払いにかかわることでございますから、すべての締約国が納得するということが必要でございまして、そういった観点から全会一致決定ということになったのだと思います。  しかしながら、このラムサール条約関係国は皆今まで突っ込んだ関係と申しますか、非常に協調的にやっておりまして、そして皆納得詰めで進めておりますから、実際の運用の上ではさほどの支障はないことではないかと思われます。ただ、まさに先生指摘のとおり、そういった問題もございますから、関係国締約国が引き続きお互いに努力していくということが大切だと思われます。  それで、分担率でございますが、これは締約国会議で決めるわけでございますけれども分担率については恐らく国際連合分担率基準となるのではないか、私どもは今こういう見通しを持っております。     〔委員長退席田中(直)委員長代理着席
  19. 高沢寅男

    高沢委員 その分担率との関係で、それが今度は投票権の比率に反映されるのか、その辺はどうなんですか。
  20. 法眼健作

    法眼説明員 投票率につきましては一国一票ということが条約上定められております。
  21. 高沢寅男

    高沢委員 それから今度の改正で、第七条に現在は勧告ということがありますが、それに今度は決議とか決定というものが加えられることになりましたが、まず、その決議決定というのはどう違うのか。それから、勧告あるいは決議あるいは決定、それぞれ締約国に対してどういう拘束力を持つのか、その辺のところもひとつ説明願います。
  22. 法眼健作

    法眼説明員 今回の改正によりまして勧告以外に決議及び決定ということが加えられたわけでございますが、これはいずれも湿地及びその動植物の保全のために行われる締約国意思決定の方式でございまして、厳格な区別はないのではないかと思われます。  一般論として申し上げますと、国際機関の採択する勧告決議及び決定締約国に対してどういう効果を持つか、つまり法的拘束力でございますが、これを持つためには明文規定が置かれるのが通例でございますが、この条約においてはかかる明文規定がないものでございますから、法的な縛りがかかるということでは必ずしもない。しかしながら、我が国はこの条約を誠実に実施するという立場にあるわけでございまして、締約国会議でこれらの勧告決議または決定が採択された場合には、その趣旨を十分尊重して対処していきたいと考えております。
  23. 高沢寅男

    高沢委員 先ほどの御説明では、この条約加盟国それぞれ納得ずく運営しているというお話がありましたからそれはわかるのですが、ただ、日本は国際的に見ると環境保全に余り熱心でない、こういう見方をされているということがありますから、こういうところで今度の決議とか決定という形をとって、一種の、日本はけしからぬぞ、こういうような決議や何かをされる心配はないのか。一種日本たたきといいますか、そういう心配はないのか。この辺はどうでしょうか。
  24. 法眼健作

    法眼説明員 日本の最近の環境問題に対する取り組み方と申し上げるべきでございましょうか、この水鳥に限らず、例えば先刻御審議いただきましたオゾン層条約議定書等に対する日本の取り組み方等も含めまして、関係国見方も改善されていると思われます。しかしながら、なおそういう日本たたきにされないようにという観点から、私どもといたしましてもこの条約を誠実に実施し、非難されるような状況をこしらえないよう、なお一層誠実に努力してまいりたいと考えます。
  25. 高沢寅男

    高沢委員 今の点に関連しますが、この条約とは別ですが、絶滅のおそれのある野生動物国際取引を規制するワシントン条約、これは我が国加入していますが、我が国の場合にはまだ随分留保があるのですね。そしてまた一方、明らかに国際的に禁止されているものが日本では実際輸入されているということなどがあったり、今の、たたかれるのじゃないかと心配する事態は現にあるわけです。  そういう点において、このワシントン条約立場から見ても、もっと留保を少なくしていくとか、そうした違法な輸入は厳正に規制していくとか等々、そういう関係の進め方というものが非常に大事じゃないかと思いますが、この辺はいかがですか。
  26. 法眼健作

    法眼説明員 御指摘ワシントン条約でございますが、これの一番最近の会合は昨年の七月にオタワで第六回締約国会議が行われました。そこにおきまして、我が国はサバクオオトカゲ、それからアオウミガメにつきまして会議終了後可及的速やかに撤回手続を行う旨を表明いたしました。そしてまた、ジャコウジカについても二年後に留保を撤回するということを公にしております。  確かに先生のおっしゃられましたとおり我が国留保しておりますのは十二種類あるわけでございます。鯨六種、トカゲ二種、ウミガメ二種、ワニ及びジャコウジカの十二種類でございます。このジャコウジカにつきましてはただいま申し上げましたような段取りで留保を撤回する予定でございますが、なお関係省庁留保しているそれぞれの種類の特性に応じ次のような措置を強化することにより留保種数削減に努力することとしております。  一つには、使用・輸入数量削減についての業界に対する指導、それから人工増殖合成物資利用等代替手段の活用についての業界に対する指導人工増殖等に関する調査及び研究に対する助成、こういった点につきましても努力しておりまして、私どもできるだけワシントン条約趣旨を体して対処していきたいと考えております。
  27. 高沢寅男

    高沢委員 昨年七月のワシントン条約締約国会議で何か日本非難決議が出たとか出かかったとか、それを抑えるために日本皮革業界がその事務局へお金を寄附して、これでまあまあと抑えたとかいうふうなことが新聞の記事にあったり聞いたりするわけですが、その辺の事実関係はどうですか。
  28. 法眼健作

    法眼説明員 あのときの会合の、各国条約実施の改善を求めるための決議が議論されまして、一段階におきましては日本とかオーストリア、フランスなどを含めて名指し決議案検討されたことは確かに事実としてございました。しかしながら最終的には、関係国みんなで討議した結果、どこどこの国がどうだこうだとかいう名指し決議をすることは決して生産的でないということが合意されまして、そしてそういったどこの国がどうだこうだという名指し決議案は取りやめになった次第でございます。  それから先ほどの財政的な問題でございます。これは、ワシントン条約事務局があるわけでございますが、これはどの国際機関事務局もそうでございますが、財政的に今非常に困難な状況にあるわけでございまして、日本だけではなくアメリカとかヨーロッパの国等NGO寄附をしております。したがいまして、そういった寄附は特段おかしいこと、不思議なこととは受けとめられておりません。事務局が財政難に悩んでいるので各国NGO事務局を助ける意味で寄附をしておりまして、我が国NGOもそういった観点から若干の寄附をしたという経緯はあると思いますが、考え方としてはただいま私が申し上げたような線に沿っているものと考えております。
  29. 高沢寅男

    高沢委員 これが最後ですから、外務大臣、総論的に。  環境を守る、あるいは野生生物を守る、国内政策としても大事ですけれども、しかし今や国際化の時代ですから、そういう関係日本がどういうことをやるかということが非常に国際的な注目を集めている。それがいいことならば非常に高く評価される、まずいことをしていると非常に攻撃されるという関係になります。  その辺のところを、大臣外務担当ではございますが、国内政策も含めつつ、こうした環境行政やあるいは野生生物を守るこういう行政における大臣の御決意を総論的にお聞きをして終わりたいと思います。
  30. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 水鳥に関しましていろいろと御審議を煩わしている次第でございますが、要は、環境保全あるいは自然の保護、すべて人の心に存する問題である、かように私たちは考えたいと思う次第でございます。  私もちょっと俳句をかじっておりますが、三陸地方におきましては雁供養というのが昔あった。この言葉は、ガンがシベリアから飛んでくる、木切れをくわえて飛んでくる。日本に着いて、その木切れを落として日本のいろいろな沼沢において冬を過ごす。また帰る。そのとき木切れをくわえてやはり日本海で多少は一服するのでしょうか、そして帰るという伝説がありまして、事実、多くの木が積まれておりますが、それが、来たときと帰るときと数が違うというのは、それだけ殺されたかあるいは病死したからであるというので、その木を集めまして、その地方の猟師さんがガン供養をするという麗しい風習があるということを私たち俳句の季語として覚えたわけでございますが、そういうふうな心というものがやはり自然を保護し、環境をよくしていくのではなかろうか、かように思います。  ましてや、そうしたことのもとに世界とのつながり、国際的な使命を帯びるわけでございますので、やはり日本人は心のきれいな、自然を愛する国民だなということで、さらに私たちはいろいろな方面で国民の方々の御協力と御理解を賜るような施策を今後積極的に講じることが必要である、かように考えております。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 日本人はエコノミックアニマルだというふうな汚名をそそぐためにもお互いに頑張らなければいけませんが、特に今大臣の言われたような方向でまたひとつ大いに頑張っていただくことをお願いをして終わりたいと思います。
  32. 田中直紀

    田中(直)委員長 代理 次に、神崎武法君。
  33. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま高沢委員の方からもお尋ねがございましたけれども、今回の改正点の一つとして、締約国会議定例化するとともに、条約実施を促進するために幅広く勧告または決議を行うことができるようになったわけでございます。  この決議及び勧告拘束力について、どのような拘束力を持っているのかという点と、ワシントン条約に見られますように、我が国にこの条約における決議及び勧告があった場合に、政府としてはどのように対応していく所存であるか、まずこの点についてお尋ねをいたします。
  34. 法眼健作

    法眼説明員 御指摘決議勧告決定、これを日本はどういうふうに受けとめるべきなのかということでございますが、これは一般的な国際機関の決めましたというか採択いたしました勧告決議決定等、その違いは先ほども申し上げたように必ずしも明確ではないわけでございますが、それが加盟国に対してどのような法的義務を発生するのかという点につきましては、一般的に申し上げますと、あくまでも一般的な勧告的性格を有するにとどまり、加盟国に対して何らかの法的義務を発生せしめるものではないと考えております。  したがいまして、今度の第七条2の改正によりまして、いろいろな勧告決定決議等が行われました場合も、これにどのように日本が縛られるかという点につきましては、法的には縛られるものではない。しかしながら、国際法上の原則から申し上げますと、加盟国の大多数の支持を得た決議が採択されるわけでございますから、何らかの形で私どもといたしましてもそれを遵守するというか、それを守るような努力を極力すべきである、そのようなことは確かに言えるのではないか。尊重する道義的責任がある、このようなことではないかと思われます。  そして、具体的にワシントン条約との関連で、では決議だとかそういうものが出たときにはどうするのかということでございますが、この点につきましては、どういった形で決議が出るのかというような具体的なケース・バイ・ケースの判断というものがそのときどきに応じて必要でございましょうし、その決議を十分見た上で関係省庁等と協議して対応するということになるのではないかと思います。
  35. 神崎武法

    ○神崎委員 我が国湿地の登録は現在釧路湿原の一部と宮城県の伊豆沼内沼の二つでありますけれども、昨年の議定書の審議の際にも候補地として議論されました北海道の風蓮湖につきましては、その後地域住民とのコンセンサスづくりがどうなっているのか、この点が第一点。  それから、その他の地域、例えば下北半島の小川原湖あるいは新潟県の瓢湖などは登録のための候補地として検討に十分値すると思いますけれども環境庁としては、第三、第四の候補地としてどういう地域を御検討されているのか、二つお尋ねをいたします。
  36. 玉川佐久良

    玉川説明員 御指摘の風蓮湖についてでございますが、現在風蓮湖につきましては北海道設の鳥獣保護区が設定されているところでございますが、御指摘にもございましたように、昭和五十三年当時地元の反対がございまして、鳥獣保護区の国設化及びラムサール条約登録湿地指定が実現しなかった経緯がございます。しかしながら、環境庁では、その事柄の重要性にかんがみまして現在も風蓮湖を国設鳥獣保護区に移行すべく関係者と鋭意調整しているところでございまして、国設化が実現すればその段階で登録湿地指定についても検討する考えでございます。  次に、新たな登録湿地指定に関しての御質問でございますが、現在我が国で登録されている湿地には国設鳥獣保護区が設定され、また、天然記念物指定され、さらには地元の合意、協力が得られるなど将来にわたって保全が保証されている地域が指定されているところでございます。今後さらに登録湿地指定を行う場合には、既存の登録湿地と同程度保全が図られるために地元との緊密な調整というものが必要であるというふうに考えております。  現在のところ、新たな登録湿地として地元と具体的に調整が進んでいる箇所はございません。しかしながら、私どもといたしましては、現在、国際的な湿地の判定基準というものが締約国会議等で検討が行われておりますので、その動向等も踏まえまして今後国際的な観点から重要な湿地については登録湿地として指定するよう努力してまいりたいというふうに考えております。
  37. 神崎武法

    ○神崎委員 ところで、本条約にはアジアで広大な領土を持っております中国及び東南アジア諸国が締約国になっていないわけでございます。このことはまことに残念なことでございますが、中国及び東南アジア諸国に加盟の動きがあるのかどうか。  我が国としても、加盟をするよう積極的に働きかけをすべきであると考えるが、政府としてどうお考えになっているかという点と、先日、国際鳥類保護会議事務局長でありますクリストフ・インボーデン氏が来日し、アジアで今すぐ保護の手を打たなければ絶滅のおそれがあるものが三百五十種もおり、日本への協力を強く訴えているわけでございます。ところが、日本の反応がいま一つ少なくて残念だという感想を述べております。  パンダやコアラの飼育舎には何千万、何億と金をかけますけれども、こうした地味な自然保護運動への協力我が国が積極的でないというふうに評価されるのは、まことに遺憾でございます。こうした面にも国は力を入れていただきたい。  環境庁の姿勢、取り組み方をお尋ねいたします。
  38. 法眼健作

    法眼説明員 前段の部分を答えさせていただきます。  アジアが少ないではないかという点、これはまさにそのとおりでございますが、これは経緯的に申し上げますと、最初にフランスで開催されました湿地に関する国際会議というところで、これは最初はヨーロッパ中心でスタートしたわけでございまして、その後いろいろな国が入ってきたわけでございますけれども、やはり最初のスタートが欧州及び北アフリカに生息する水鳥及び湿地保全ということに重きが置かれていたのが一つの経緯としてあったと思います。  他方、近年、もちろんそういったことだけではない、全地球的なという関係から、韓国、中国及び東南アジア諸国でも野鳥の保護及びその生息地保全の動きが高まってきておりまして、これらの国でも条約の締結が検討されていると承知しております。我が国といたしましても、これらの国が条約を締結するよう働きかけてまいりたいと思います。  最近の例といたしましては、昨年の十二月にネパールがこの条約加入いたしました。
  39. 玉川佐久良

    玉川説明員 アジア地域等におきます絶滅のおそれのある鳥獣の保護の必要については、環境庁としても十分認識しているところでございます。このため、我が国といたしましては、国連環境計画事務局に対しましてアジア・太平洋地域の渡り鳥等の保護に関するプロジェクトの実施を強く要請しているところでございます。  また、開発途上国の野生生物保全のための調査協力事業を今年度から五カ年間の予定実施することといたしておりますほか、国際協力事業団による野生生物保護のための専門家派遣に協力しているところでございまして、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  40. 神崎武法

    ○神崎委員 終わります。
  41. 田中直紀

    田中(直)委員長 代理 次に、田中慶秋君。
  42. 田中慶秋

    田中(慶)委員 今回の水鳥保護に関連した動物全般にわたる保護の問題について質問をさせていただきたいと思います。  特に、我が国におけるワシントン条約で禁止されている動物の輸入が続発をして、これらについて国際的な非難やひんしゅくを買っていることがときどきマスコミ報道初めこういう形で聞かれるわけでありますけれども、やはり一方においては、経済がこれだけ成長しているから全体的なモラルが低いんではないかとか、あるいはまた、個人の趣味だけを生かして国際条約に対する守る姿勢といいますか、こういう問題について大変欠けているんじゃないか、こんなことをよく聞くわけでありますが、これらに対する実態等々、さらには防止対策について御見解をお伺いしたいと思います。
  43. 法眼健作

    法眼説明員 まず、ワシントン条約で規制されているその種につきましては、輸入に先立ち輸出許可書、つまり先方の輸出許可書の真偽について確認を行いまして、確認されない限り輸入を認めないという措置をとってございます。さらにまた、税関においては、通関に当たってその規制種の識別に努めております。  それから、昨年制定されました国内法でございますが、絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律によりまして、ワシントン条約の附属書Ⅰなどに掲げられておるものにつきまして譲渡が規制されておりまして、仮にこれらの種が密輸入された場合であっても、その法律の規定により国内においては譲渡等が行い得ないようになっております。  このように、我が国におきましては、輸出入管理及び国内法によってワシントン条約実施のため適正な規制を行っている次第でございます。
  44. 田中慶秋

    田中(慶)委員 ワシントン条約で規制を行っていることは承知しております。しかし、現実に密輸入とかいろいろなことを含めて入ってこられて、国内的にいろいろなひんしゅくを買ったり、国際的なひんしゅくを買っていることは事実だと思うのです。  私は、法律の解釈論を申し上げているのではない。そういう点で、これらに対して具体的な、国際的なひんしゅくや批判を買っている、こういう実態にかんがみながらその防止策はどうなのかと僕は聞いているので、今ワシントン条約をあなたから聞かしていただこうと思って質問をしているわけじゃないので、この辺、大臣、もし何か見解がおありでしたら、お伺いしたいと思います。
  45. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まさにおっしゃるとおりであると私は思います。モラルの低下もあるし、あるいはまたペットを飼うという個人的趣味が国際的な配慮に欠ける面があるとか、そういうことでございますから、やはりそうしたことは政府はさらにPRをして、それぞれの国民が国際的な責任も持っていただくような指導をしなくちゃならぬ、かように存じております。
  46. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、一方においてはこれだけ経済が発達し、あるいはまた総理の外交姿勢も、世界に貢献する日本と言われているわけですから、片方においては今言われたペットブームとかなんとかいっても、こんなひんしゅくを買わないような全体的なPR、モラルの向上を、これは政府だけではなく、全体的にそれぞれの行政機関を使ってこういう活動をしなければいかぬのじゃないか、こんなふうに思う次第であります。  そのことはやがて、きょう議題となっております水鳥の生息や保護の問題、こういうことにもつながっていくことでありますから、そういう思想的な背景といいますか、そういうモラルを全体的につくり上げていく必要があろう、こんなふうに思うので、ぜひそのことについて今後とも努力をしていただきたい。これは要望しておきたいと思います。  同様に、例えば象牙などについても、密猟によって得た商品の輸入も後を絶たないということを言われておるわけですね。こういうものについて、やはり一方においては投資的な傾向があるとか、個人的に趣味で集めているうちはいいのですけれども、象牙などが投資的な傾向によってこういう密猟の商品の輸入が後を絶たないと言われているわけです。これらについてはどのような対策を持たれているのか、お伺いしたいと思います。
  47. 法眼健作

    法眼説明員 昨年制定されました絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律、これ等によりまして、密猟等によって輸入されたものにつきましては厳しくチェックして、ワシントン条約実施されるように適正な措置をとるということを引き続きやっていきたいと考えております。
  48. 田中慶秋

    田中(慶)委員 私は、こういう問題でいま少しあなたの答弁が――そんなワシントン条約に基づいてなんていうようなことを質問してないですよ、はっきり申し上げて。  現実に密猟されている象牙等が商品価値にして投資的なものになっている、こういうことを聞かれているんで、こういうものに対する対策をちゃんとしなければいけない、それは、法律の解釈論をそんな形で限られた時間で論議はできませんけれども、ちゃんと申し上げているんですから、いま少し答弁もちゃんとしないと、はっきり申し上げて余りにもお粗末な答弁になってまいりますよ。  大臣もそこで聞いていますけれども、私が申し上げているのは、ワシントン条約の解釈論でその防止策がどうのこうのと聞いているのじゃないわけですから、やはり国内的に現実に密猟された象牙とかそういうものが商品価値としてあるいは投資的なものとして扱われている問題で、これも困ったものですから、一方においては禁止をするといっておきながら、現実に横行しているこの実態を何とかしなければいかぬだろう、こういう前提に立って申し上げているのですから、今のような答弁では納得できませんよ。答弁してください。
  49. 法眼健作

    法眼説明員 国内的にそれがきちんとされるようにという、先ほど大臣が申されましたように意識の問題もございますが、いずれにいたしましても、そういう実施につきましては国内官庁と十分協議いたしまして万全を期すように努力してまいりたいと思います。
  50. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても、余りにも時間のないところで質疑をしているわけですから、質問に対する通告をしているわけですから、もう少しちゃんとしていただかないと、外務省の姿勢はすべてこうなるのかなというふうに私は疑わざるを得ない。こんな外交姿勢であってはいけないわけであります。  例えば今回も捕鯨の問題が調査捕鯨としており、日本の今までの食生活や文化的なことを含めて長い鯨というものに対する考え方はここで発想を変えなければいけないような状態が来ているのではないかと思うのです。アメリカがこの調査捕鯨に対しても反対をされている。  そうすると、全体の業種や全般的な今までの考え方を変えられる、あるいは対応として考えていかなければいけない、こういう時期に来ているのではないかと思いますけれども、これらについては大臣どうお考えでしょうか。     〔田中(直)委員長代理退席、委員長着席〕
  51. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題は、私ちょうど一月に訪米いたしましたときはっきりとシュルツさんに申し上げたのです。現在の調査捕鯨等々すべてIWCのそうした規制、規約のもとにやっておりますよ、にもかかわらずいろいろと日本だからというのでバッシングがはやっております。しかしこれはきちっとそうしたIWCの規約を守ってやっているということだけはお忘れなきように、このように申し上げておきました。  しかし、環境はおいおい厳しくなっておるということは今おっしゃるとおりでございます。したがいまして、今度の予備調査の結果と、五月にIWCの総会がございますから、この議論を我々といたしましても踏まえまして、どうするか、本当に深刻な問題と思いますので、打つ手があらば早く打たねばならぬ、かように存じます。
  52. 田中慶秋

    田中(慶)委員 いずれにしても外交問題というのは大変な問題だと思います。この水鳥の問題に関連してそんな話をさせていただいたわけでありますけれども、鯨にしてもほかの一連の問題にしても、日本バッシングというかそういうことが非常に随所に見られるものでありますから。しかし、物というのはやはりお互いにコミュニケーションを図りながら先取り政策をし、それぞれの訴えをしていくことによってお互いの理解が始まると思います。その姿勢が外交ではなければいけないのだろう、こんなふうに思っております。  きょうの水鳥の問題についても、自然保護という立場が、日本の全体的なモラルが低下する傾向にあるわけでありますから、こういう点を踏まえて今回の水鳥条約については、保護を前提とした形の中で一日も早く条約が締結をされて、全体的なモラルをより向上させていただけるように要望して、時間が参りましたので、終わります。
  53. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 岡崎万寿秀君。
  54. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 我が国がこの条約に加盟したのは一九八〇年です。大変結構です。ところが、入っているのは釧路湿原伊豆沼二カ所ですね。先進国に比べて著しく少ない。例えばイタリアの場合は四十カ所、デンマークは三十八カ所、イギリスは三十三カ所というぐあいなんです。もっとふやしていく計画はございますか。
  55. 玉川佐久良

    玉川説明員 ただいま先生指摘のように、例えばイタリアの四十とかデンマークの三十八というように二十を超える国が七カ国ございます。しかしながら一方、我が国と同様に一ないし二という国も十八カ国、約四割あるわけでございまして、我が国が一概に少ないとは考えておりませんが、私どもといたしましても条件が整うところについては今後積極的に登録湿地に加えてまいりたい、このように考えております。
  56. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 世界に貢献する日本と言っているじゃありませんか、少ない方を基準にするのではなくて、もっともっと積極的に取り組んでいただきたいと思います。本当は具体的計画を聞きたかったけれども、時間がないから、もうそれ以上聞きません。  今度は予算ですけれども指定を受けた二つの湿地管理委託費ですか、当然ふさわしいものにすべきなんですが、昭和六十二年釧路湿原で百五十五万一千円、伊豆沼で百六十七万五千円、まことに少ない。伊豆沼あたりはその指定を受けるときよりかえって減っていますし、管理人は三人のところを一人しか置けないような状況なんですね。  予算が厳しいというのはわかりますけれども、こんなぐあいではせっかくこの条約に入りながら絵にかいたもちになるのではありませんか、どうです。
  57. 玉川佐久良

    玉川説明員 予算に関連する御質問をいただきましたが、登録湿地一つでございます伊豆沼内沼について申し上げますと、国設鳥獣保護管理等委託費の一般管理費から昭和五十七年度から毎年宮城県に支出しているところでございまして、昭和六十二年度の委託額は百六十七万五千円でございます。また、委託と別に関連施設の整備といたしまして、国設鳥獣保護区の施設整備費から昭和五十七年度に管理棟の整備のために二千二百万円、また六十二年度に観察舎の整備のために五百九十三万六千円を支出したところでございます。
  58. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 さらに努力していただきたいと思います。  私どもの住む東京の近くでは、東京湾の大井埋立地が水鳥生息地として非常に大きな意味を持っているわけです。全国で観察される野鳥の数は大体五百六十種類と言われています。私、ここにリストを持ってきましたけれども、大井埋立地で確認されている水鳥の数は野鳥を含めまして二百十六種類、大変これは貴重な場所だと思いますが、環境庁としてはこれをどういうふうに評価されていますか。
  59. 玉川佐久良

    玉川説明員 大井野鳥公園につきましては、この一帯に設定されております都設の東京港鳥獣保護区に含まれておりまして、大都市における渡り鳥の中継地の一つとして重要な場所であるというふうに考えております。  御指摘のように、ここに渡来する鳥類にはユリカモメだとかオナガガモ、タマシギ、シロチドリ、コサギ等がございまして、多いときには四千羽を記録するというふうに聞いておるところでございまして、貴重な湿地であると理解しております。
  60. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 貴重な場所であるということは言うまでもないわけです。こういうふうに東京湾の中にわずかに残っている野鳥、水鳥の楽園といいますか、これは本当に私たちがこの条約趣旨に沿っても守っていかなくてはならないところだろうと思うわけです。  ところで、東京港の野鳥公園の計画が進んでいますけれども、これはこれとして重要でございますが、そのすぐそばに汐入の池という天然の干潟があるのです。天然でございますから潮の満ち引きによって水鳥等がたくさん集まったりして大変貴重なところなんです。これは東京湾の中に残された非常に貴重な天然の干潟でございますので、これをどう守っていくかということは日本野鳥の会の方々も非常に熱心に努力されていることはあなた方も御存じだと思います。  しかし、最近開発がどんどん進んで埋め立て、運河の計画等が進み、この天然の干潟が、三百メートルの運河ですか、これをつくるためになくなろうとしているわけです。これは東京の行政ではあるでしょうけれども環境庁としても東京湾に残された非常に貴重な野鳥、水鳥の中継の場所でありますし、一度破壊されたらもう復活できませんので、何としても守っていただきたいと思うわけですし、こういう野鳥の会の方々の希望にこたえて環境庁頑張ってもらいたいと思いますけれども、それはどうですか。
  61. 玉川佐久良

    玉川説明員 ただいま御指摘ございましたが、公園の周辺の汐入の池には都が運河の建設を予定しているというふうに聞いておるところでございますが、大井野鳥公園は現在の公園面積三・二ヘクタールから野鳥の愛好家等の意向も受けまして二十四・二ヘクタールに拡張される計画でございまして、野鳥の保護が図られるものと期待しているところでございます。環境庁としても、今後その動向を十分見守ってまいる考えでございます。
  62. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 この野鳥公園自体は、これはこれでいいわけです。しかし、人工湖では天然の干潟とは違うのです。その人工湖をつくるために、またつくるからといってその近くにある天然の干潟を壊してしまうというのはまずいと思うのです。運河だったら少し遠回りしてもいいし、ないしはもっと狭くしてもいいわけなので、努力すればこの天然の干潟を守ることもできるわけです。その方向で環境庁も努力してもらいたい。そういうことを言っているわけです。
  63. 玉川佐久良

    玉川説明員 この問題につきましては東京都の問題でもございまして、直接環境庁が云々すべき立場にございませんが、しかし先生指摘の野鳥の保護の重要性ということについては私どもも十分認識しておりますので、野鳥の保護と利用というものの調整ができるように私ども十分関心を持ってまいりたいというふうに考えております。
  64. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 一般論じゃなくて、この汐入の池の干潟を守れということを言っているのです。そのことについて東京とも相談してしっかりとこういう天然の貴重な水鳥生息地を守っていく、そういうことについて検討してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  65. 玉川佐久良

    玉川説明員 この干潟の問題につきましては、東京都が昭和五十九年八月に海上公園審議会に付議してこの野鳥公園の計画というものを決定したというふうに聞いておるわけでございます。  この野鳥公園につきましては、人工的に野鳥公園をかなりの面積ふやすことになっておりますが、野鳥の生息環境が悪化しないということに配慮が払われているというふうに聞いておりますので、その方向で私どもも十分見守ってまいりたいと考えているところでございます。
  66. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 見守っていきたいというのは、人工の池をつくっても天然の干潟がなくなっては困るわけなので、天然の干潟を守るという方向で見守っていきますか。
  67. 玉川佐久良

    玉川説明員 この問題、先ほども申し上げたわけでございますが、環境庁は直接云々すべき立場にございませんので、野鳥の保護との調整が図られるよう私どもとしても関心を払い努力していきたい、このように考えております。
  68. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 野鳥の会の方々の希望にこたえて関心を払い、大いに努力してもらいたいと思います。  時間が来ましたので、最後に外相、今いろいろと質問があったように、この条約に入って、また今度改定されますが、大変結構なことでございますけれども、必ずしも我が国行政としてはこれにふさわしいものになっていないように思うのです。一層努力される決意を一言。お願いしたいと思うのです。
  69. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この条約の御審議をお願いいたしておりまするゆえんは、生物を含めての自然環境等々の保護並びに保全でございます。したがいまして国際協定を結んだ以上は、政府は先駆けてあらゆることに評価を受けるような体制をしかなければならない、かように存じますので、なお一層国内国民の方々の理解を深めると同時に、そうした面におきましても努力をささげたい、かように思います。
  70. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これで終わります。
  71. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  72. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  73. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕     ─────────────
  75. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 正午から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時三十五分休憩      ────◇─────     午後零時十三分開議
  76. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  77. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 最初に、きょう開票になった韓国の総選挙の結果について外務大臣の所見をお伺いをいたしたいと思います。
  78. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 盧泰愚政権は、本当に民主主義的手段によりまして誕生されました。そして、そのもとにおける総選挙でございますから、私といたしましても、民主主義の最大の行事としてその総選挙がいかなる結果になるか、隣国のことでもございますから非常に関心を持って眺めさせていただいておった次第でございます。  しかし、大方の予想を裏切って、与党の方が過半数に達しなかったということでございます。また、野党の中には非常に健闘された野党もおったということでございますけれども、他国のことでございますから、どうだった、こうだったというふうな批評を私自身が加えることはどうであろうか、こう思いますので、この程度にさせていただきたいと思います。
  79. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大統領選挙の際の支持率とか、それから今度の開票における与党の支持率とかいうふうなものをいろいろせんさくするつもりはございませんが、いずれにしても与党の体制というものが必ずしも強固なものではなかったということは言えると思うのです。  それは、やはり韓国の民衆が、もちろんセマウル容疑の問題や何かがあるにしても、野党の方は一本にまとまることができなかった、そして分裂して選挙に臨まざるを得なかったという状況のもとでさえこれだけの健闘をしたという意味は、韓国における平和や人権や民主主義あるいは平和的、自主的な統一というものに対する願いが込められているように私は思われてなりません。そういう点は外務大臣は大体そんなことだろうというふうに御認識なさっておられますか。
  80. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ある程度認識として申し上げられることは、セマウル運動というものが総選挙前にいろいろと司直の手によりまして糾弾をされておる、こうしたことはあるいは大きな原因であったのではなかろうか、これはそういうふうに申し上げてもいいのじゃないか、私はこう考えます。  民主化に関しましては、今までの政権のことを申し上げるわけじゃありませんが、今回の政権は第六共和国である、ここが一つの大きな見方をしなくてはならないのじゃないか。言うならば共和制というものが何でナンバーがついたんだということを申し上げれば、憲法もその都度変わり、制度も変わるであろう国会も変わるであろう、そうしたことにおいて、言うならば前政権とはつながりがあったかもしれませんが、時としてクーデターなんかによって新しい共和国が誕生する、だからナンバーがついたということも言えるかもしれません。  そうした意味では、今回の第六共和国は本当に真摯な態度で大統領選挙が行われたということは私は評価すべきでございますから、それに対して国民はよい感情を持って眺めておるのではなかろうか。ただ盧泰愚大統領の人気はおいおい上がっておりますが、その人気と今回の投票とは必ずしも一致しなかったという面もあったのではないか、こう見るのが至当であろう、こう考えております。したがいまして、民主主義の云々ということは、今もう今の政権が民主主義になろうと頑張っておる最中に私たちが批評を加える問題ではない、こういうふうに考えております。
  81. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 憲法改正、そして大統領の直接投票、そして今度の総選挙、私も韓国における民主化の第一歩だという評価をすることにやぶさかでございません。  そこで実は、だからこそというふうに申し上げたいわけですが、日本国際化ということを避けて通ることができない、そしてまた、政府もそのことを主張しておられます。そうなりますと、当然のことながら留学生やあるいは外国人労働者というものもどんどんふえてくるだろう、そういう外国人を日本が受け入れていく場合に、その前提としてやはり日本国内で外国人としてお住まいになっていらっしゃる、生活をしていらっしゃるそういう人々の、例えば人権の問題、指紋押捺もその一つですが、あるいは差別の問題あるいは教育の問題ということについて、とりわけ在日韓国人あるいは在日朝鮮人の人権などの問題について一層力を尽くしていかなければいけない。  そうでないと、国際化社会と言ってみたところで、それはやはり閉鎖的な体質を持った日本人というふうに言われても仕方がないと思いますので、その点についての御配慮をぜひ要望しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 おっしゃるとおりだ、私はこう思います。エピソードですが、この間韓国へ行きましたら、若い歌手、趙容弼という方に、何か注文はありませんかと随行の議員の方が言われましたら、イの一番に、日本にいる我々の同胞のことをひとつよろしくお願いします、こういうふうな答えが返ってまいりまして、ああ、この若い人すらそのことに対して関心を持っていらっしゃるな、こういうふうに思った次第でございますから、十二分にこうした点はより一層我々といたしましても配慮をしていかなければならぬと考えております。
  83. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 先ほど選挙の結果について申し上げましたけれども、率直に言って私も統一民主党あるいは平民党が健闘したなという感じを持ちます。票数の上でも恐らく、まだつまびらかでございませんけれども、そういう結果があらわれているのではないだろうかと思うのです。  日本政府として言えば、与党民正党との密接な関係ということを恐らく重視なさるんだろうと思いますが、やはり野党と言われる政党あるいはそういう政治勢力に対して気配りや目配りを十分にしていく必要があると思いますけれども、その点については御異存ございませんか。
  84. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 議員連盟がございますが、この議員連盟におきまして私も所属して久しく副会長等々を務めてまいったのでありますが、その当時は今日ほどたくさん政党がなかったわけでございますけれども、与党とも野党とも日本といたしましてはおつき合いをいたしましょうという姿勢で臨んでおります。  したがいまして、政府といたしましても、政府間の交渉等々はもちろん政府と政府の間の話でございますが、やはり隣国でございますから、野党の方々に対しましても当然政府としての気配りというものは必要である、かように存じます。
  85. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 選挙結果についてはそのくらいにいたしまして、大臣、大変恐縮ですが、奥野発言の問題について質問をいたしたいというふうに思います。  申すまでもありませんけれども日本国憲法は言論や思想、信条の自由というのを認めています。あるいは信仰の自由も同じであります。  しかし閣僚という立場に立ちますと、つまり公人というお立場に立つと、政治家個人の問題とはおのずから趣を異にするというふうに思うのです。まして内閣は連帯して責任を負う、そういう立場から考えるならば、やはりこの問題というのははっきりさせておかなければならぬことがあるなというふうに思いますので、少し細かくなりますけれども、お尋ねをしておきたいというふうに思います。  私は、奥野発言ということの中で最低限四つぐらいの問題が指摘できるのではないだろうかと思います。決算委員会外務大臣が、五月三日に北京で開かれる日中外相会議までの間に、私が行くまでに問題がおさまるようこいねがうという御答弁をなさったそうですが、これは日本政府が何らかの措置をとるということを意味するのか、あるいは黙っていても向こうが何となくおさまってくれることをこいねがうということなのか、いずれなのか、少し御見解を承っておきたいと思います。
  86. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは私もしばしば、奥野発言のその前の一つの政府の考え方としてまずそれを申し上げて、それから奥野発言に触れておるわけでございますが、もちろん日中平和友好条約あるいは共同声明等々にはっきりと、過去の歴史に関しましては日本は反省するときちっと書いておるわけでございます。韓国に対しましても反省すると。それが私たちの気持ちでなければならぬと思います。  そうしたもとに条約が結ばれ、共同声明が発せられ、さらには四原則等々ができ上がっておる次第でございますから、私たち政府といたしましては、この問題の以前の問題として、我々はやはりそうした関係において、今日、日中間はよい関係を構築するに至った、なおかつ、その条約に関しましては永久にこれを継続する、そうしたことにおいてさらにその友情を深め、またお互いの発展を期さなければならぬ、これは不変の政府の姿勢であり、考え方である、私はこういうふうに申しております。  そうした考え方の中から、奥野発言というものが出てまいりまして、そしてそれが中国の新聞において批判を加えられたということは、私は甚だ遺憾なことである、こういうふうに申し上げておるわけでございます。したがいまして、私といたしましては、訪中までに静まってほしいものである、これは一国の外相としてこいねがうことは当然のことでございますので、こちらからああだ、こうだと言う筋合いのものであるかどうか、これも慎重に慎重にお互いに考えていきたいものである、私はそういうような気持ちで、ひたすら鎮静化することをお願いしたいな、こういうふうに思っておる自分の真情をお訴え申し上げました。  だから、竹下総理もきのうの本会議におきまして今私が申し上げましたのと同じような気持ちを、これは基本線ですから、基本線を述べられた。そこまでが現在の段階でございますので、我々といたしましては、それ以上のことに関しましては今日コメントあるいはまた言及することは避けねばならぬ、かように考えております。
  87. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 これは最初の発言ではございませんけれども、奥野さんの今度の事件というか発言に関連して、靖国神社への公式参拝について中国側が誤解しているがというふうにおっしゃっておられます。これは、中国側が靖国神社に対する公式参拝について意見を述べたことがございます。  御存じだと思いますけれども、中国は一般的な戦死者を親族が悼むことを理解できるし、同情もできる、賛成しないのは被害者と加害者を混同することだ、半世紀にわたって中国と敵対し侵略してきた戦争犯罪人を合祀する靖国神社に閣僚が公式に参拝するということになれば、侵略を免罪し侵略戦争を擁護することになる、それぞれの民族の感情を理解しなければいけないというふうに言っていらっしゃるわけですが、これは大臣はそのとおりに受けとめられると思いますが、いかがでしょうか。
  88. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も多くの同窓生が戦没いたしまして靖国神社に祭られておりますから、そうした靖国神社に祭られておる方々に対しましては敬けんな祈りというものは常に抱いておりますが、しかしやはり内閣の一員とし、特に外務大臣という立場から、いろいろと誤解を受けるようなことがあってはならない。特にやはり中国を初めアジアの方々は本当に戦地になったわけですから、そこらの方々の戦争を憎む心というものは戦後四十三年たったとはいえ決してそう簡単に消えるものではない、私はこのように思います。  したがいまして、靖国神社を崇敬する、みたまを崇敬するという気持ちに私は変わりはございませんが、公式参拝ということになると、これはやはりいろいろな問題を近隣諸国に与える。ましてや経済大国、軍事大国になるんじゃないかというふうな危惧の念を表せられる方々もいらっしゃいますから、私といたしましては、公式参拝はいたしません。慎みたい。これが私の気持ちでございます。
  89. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 奥野さんは、昭和六十二年八月十七日の靖国神社に参拝する会ですか、集団参拝をされまして、そのときに記者会見をなさって、要約ですけれども、今の中国を見ていると、中国は日本の伝統に対する挑戦ではないかと思う、外務当局はテーブルをたたき合ってでも話し合ってほしいというふうに述べておられます。この言葉と今回の発言というものを並べてみると、奥野さん、やはり確信犯だな、こんな感じがいたします。  大臣、外務当局がこんなことでテーブルをたたき合うというお気持ちはないでしょうね。いかがですか。
  90. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私はやはりこうした問題は奥野君自体の問題であると考えておりますし、やはり外務省同士がというような話にならないように、私みずからの誠意も、また竹下内閣全体の総意もいろいろな方法によってお伝えしていくということが大切だと考えております。
  91. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 昭和六十一年八月十四日に発表された中曽根内閣の官房長官の談話がございます。これは大臣も御存じのとおりですから、私は言いません。  ただ、ポイントだけ言いますと、「靖国神社がいわゆるA級戦犯を合祀していること等もあって、昨年実施した公式参拝は、過去における我が国の行為により多大の苦痛と損害を蒙った近隣諸国の国民の間に、そのような我が国の行為に責任を有するA級戦犯に対して礼拝したのではないかとの批判を生み、ひいては我が国が様々な機会に表明してきた過般の戦争への反省とその上に立った平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれる恐れがある。」ということを指摘しています。  つまり、近隣諸国の国民感情というものを配慮しなければならぬという立場で、中曽根総理は当時靖国神社への公式参拝をお取りやめになりました。これは御記憶のとおりです。その際に、首相が、これは新聞記者に語った言葉ですけれども、A級戦犯合祀問題への対応についていろいろな改善策を検討中だというふうに述べておられます。  それから、これも昭和六十一年一月なのですが、日本に来られた当時の呉学謙外務大臣、今の副総理に金丸さんが、今の靖国神社のあり方には疑問があるというふうにお話しになって、靖国神社とは別に戦争犠牲者を悼む場を設けることを政府・自民党内で検討しているというふうに伝えられたと報道されています。  政府及び与党の首脳が中国の外務大臣に対してこういうことを公式におっしゃっているわけですが、その後この検討はどうなっていますか。同時に、この総理なり金丸さんの御発言について宇野大臣はどんな御認識を持っていらっしゃいます
  92. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 全く現在の所管外の話でございますので、ああだこうだという話になりまして、またそれが誤り伝わったりしたら大変でございますから、金丸さんの発言は金丸さんの発言であった、かように私は思っておるだけでございますので、それに関しましてもこの場においてコメントするのは差し控えたいと思います。
  93. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 金丸さんの御発言はともかくとして、中曽根さんが、当時の総理大臣がいろいろ対応策を検討中だとおっしゃった言葉については、内閣継続の原則から見て当然のことというふうに考えてよろしゅうございますか。
  94. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 その当時、党内でいろいろ議論がありましたが、その議論の中の一つに、中国が指摘されておるように、戦犯がなぜあそこへ入ったのだということに対しましては、党内におきましても多大の疑念を抱いていた人たちが多かったということは申し上げることはできます。
  95. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 奥野さんは「鄧小平氏の発言に国民みんなが振り回されているのは情けないことだ。」と言っておられます。かつて、鄧小平氏に対して雲の上の人だとか頭がかたくなったというようなことを発言なさった外務省首脳もおられますけれども、それを平易に翻訳して言うと、鄧小平さんが誤解して発言をした、日本国民がそれに振り回されているという意味にしかとれないのです。  一国の指導者に対して竹下内閣の閣僚がこうした非礼な発言をする、あるいは礼儀をわきまえない発言をするということは、外務省首脳の発言などを含めて考えてみると重ね重ねという思いがしないわけでもありませんが、その点では外務大臣はどんなお考えでおられますか。
  96. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 一般論で申し上げて、他国の方々を公式の場、と申すより記者懇談か何かだったのですが、そうしたところにおいてすら誹謗に値する言辞を弄したということは、これは一般論といたしましても当然慎まなければならないことである、かように思います。  したがいまして、中国の新聞はそうしたこと等をも含めまして批判を加えたのではないだろうか、そのことは遺憾だ、こういうふうに申し上げておる次第でございます。
  97. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 奥野さんはさらに「中国とは国柄が違う。占領軍は国柄、国体という言葉も使わせなかった。神道に関することは教科書からも削除したが、神話、伝説をもっと取り上げたらいいと思う。」と述べておられます。  それは個人的なお考えだろうと私は思うのですけれども、それにしても、例えば教科書問題ということを言えば、中国や韓国が教科書の記述についてさまざまな意見を述べているのは、日本は諸外国と違って教科書というものを文部省の考え方に基づいて検定している、そしてそれを採用している。つまり、それは日本政府の考え方を代表するということにならざるを得ない。  だから、歴史の改ざんあるいは中国や韓国に対する間違った記述というものは政府の考え方だと言わざるを得ない、そういう意味で問題を指摘してきたのだということを言っているわけですが、文部大臣を経験なされた奥野さん、百も承知の上でこういうことをおっしゃっている。特に国家神道をこういう形で天皇制と結びつけている。  それを、言ってしまえば、教科書の中でも考えるべきだというふうなことをおっしゃったとすれば、これは中国や韓国のみならず、アジアの人々に対してもその感情を逆なですることにならざるを得ないと思いますけれども大臣、これは余りいいことじゃないですね。いかがですか。
  98. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 歴史観はそれぞれあるだろうと思いますが、少なくとも中国、また韓国に対しましては、基本条約あるいは日中平和友好条約、共同声明等々を通じまして、過去の歴史というものについて我が国は反省しますとはっきり言っておるわけですから、これが我が国全体の当時からの変わらざる、また政府としての変わらざる気持ちでなければならぬ、こう思っております。
  99. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 言葉を並べて言ってしまいますと、全部そうなのですけれども、特に私が問題だと思うのは「白色人種がアジアを植民地にしていた。それが、日本だけが悪いことにされた。だれが侵略国家か。白色人種だ。何が日本が侵略国か、軍国主義か。」こういうふうにおっしゃっておられる。この言葉には日本の戦争責任あるいは植民地支配に対する反省の一かけらもないと私は言わざるを得ない。  歴史をひもとくまでもなく、日清戦争以来、満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争に至る対外的な日本の戦争というのは、そのほとんどが中国領土で戦われてきたわけです。つまり、一方的に日本が中国に攻め込んでいるという歴史的な事実があるわけですね。その間に日本は非常に多くのものを中国から奪ってきたと思うのです。特に日中戦争で言えば死者が一千万人、戦争直後の計算によっても物的損害は五百億ドルと言われている。これだけの犠牲が侵略戦争によるものでなくて何だろうかと問わなければならないと私は思うのです。  だから、この事実を侵略でないとおっしゃるのは歴史の否定だ、歴史の真実を否定するものだと言わざるを得ない。私は、本当にこの言葉は不穏当だと思うのです。特にこの部分。これは宇野さん、お立場がありますけれども、奥野さんに忠告をして、取り消されるべきだと私は思います。それは、総理大臣がいらっしゃるわけじゃございませんので、外務大臣としての宇野さんに友人としても、こういう言葉だけはやはり使ってはならぬ言葉だと私は思いますが、いかがですか。
  100. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間も同様の御質疑がございましたが、衆議院におきましても参議院におきましても今岩垂委員が申されましたような点すべてを含んでやはりこうした議論があったよということは、私としては友人としてお伝えしようと思っております。
  101. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 今さら日中平和友好条約や日中共同声明のことを私はここで申し上げるつもりはございません。ただ、特に日中共同声明の例えば二項あるいは三項あるいは前文というようなぐあいに拾っていきますと、これは文字どおり日清戦争以後の日本と中国との歴史というものの関係というものを総括する、とりわけ戦後のいわゆる国民政府との関係というものも否定的に総括する、そういう性格のものだというふうに私は思います。ぜひこれらの事実を踏まえた上で訪中をなすっていただきたいし、釈迦に説法でございますが、そういうことを念頭に置いていただきたいと思います。  具体的に、若干新聞にも出ていますけれども、例えば光華寮問題あるいはココム規制の問題あるいは中国総領事館への発砲事件など一連の日中友好の上で波風と言うか嵐と言うかは別として、起こっている事態に対してどんな対応で中国とお話をなさるおつもりか、御見解を承りたいと思います。
  102. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私たちといたしましては、一般的には経済協力関係のお話、これが中心になるわけでございますが、光華寮の問題も出るだろう、こういうふうに私は思っております。したがいまして、いろいろと日中間にわだかまりがある問題は出るだろう、こう思いますから、そのときには私たちといたしましても率直な意見の交換を申し上げておくべきである、常に意思は疎通をさせておかなければならぬ、どこかパイプが詰まっておるというようなことであってはいけぬ、こういうふうに私は思っておりますから、本当に誠心誠意先方の首脳と会談を遂げていきたい、かように思う次第であります。  特に、最近の政府間の問題といたしましては、ココムがあるわけであります。これが指摘されましたときにも、外務省といたしましては直ちに事の経緯を中国にお知らせいたしておきました。したがって、こうしたことで日中友好にひびが入らないようにというふうにお伝えいたしておきました。  この問題に関して、伊東総務会長が総理の名代として全人代の新しい役員の誕生の慶賀のためにお行きになったわけでございますが、そのときにいろいろの方々からやはりココムの緩和に関してお話が出ました。今中国も近代化を急ぎ、さらにはまた開放特区等々において新しい試みをしておる最中である、だからココムという問題もそうした私たちの意欲を一部においてはそぐことになる、したがって緩和を頼みたいというふうな言づてを伊東総務会長も事実持って帰ってきておられます。  したがいまして、私が行くときには、やはりそうしたことに対しましても日本といたしましては対応をしなければいけない、これが私の考え方でありまして、具体的にどうこうというふうになるか。しかしながら、やはりこれは参加国の意向もございましょうけれども、一応私が仄聞するところによれば、アメリカも英国も緩和をしなければいかぬ、こういうふうに言っておるわけでございますから、そういう線でむしろ我々が隣の国として十二分にこのことは考えるべきではなかろうか、こういうふうにきのうの共同インタビューで私がちょっとお話をしたことが一斉に報道されておる、そのとおりでございまして、私といたしましてはできる限りのことはしたいものであるな、かように思っております。  そうしたことにおいて双方の信頼関係というものをさらに大きく構築していくことが必要ではなかろうか。大局を見誤ることなく、お互いに大きな立場で、そうした個々の問題も一つ一つ解決をしていくことが大切ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  103. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと横道にそれて恐縮ですが、実はココムというものの運用について、私、素人でわからぬものですから、東芝機械の問題にしても今度の中国の問題にしても、アメリカから指摘されたわけですね。そして日本側がそれを調べてみた、そして事件になった、こうなるわけですね。日本の側で緩和をしたいということをココムのメンバーというか会議なりなんなりの中で主張をして、それが受け入れられて、技術のレベルだとか品物だとか、そういうものを除外していくという手続になるんですか。これは私、全然素人なものですから、その段取りを教えていただきたいのです。
  104. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) ココムの運営につきましては、関係国間で一定の限度以上は公にしないということになっておりますので、その範囲内で答えさせていただきたいと思いますが、ただいまの御質問に関連して二つのことがあるかと存じます。  一つは、ココムの申し合わせによりまして、各国が禁輸の対象とすべきこととされております品目のリストというのがございます。このリストというのは定期的に再検討されまして変更を加えられておりますが、このリストを例えば中国に対しては緩和をすべきであるかどうかという議論がココムで行われておりまして、我が国もその線に沿った主張を従来よりしております。  もう一つは、そのリストに基づきます実際の運用の面におきまして、本来なら禁輸の対象ではあるけれども、この品物を特定の国、例えば中国に輸出したいけれども同意をしてもらえるかということをココムの他の加盟国に諮ることがございます。申し合わせによれば、全会一致でそれが認められれば例外として輸出してもいいということになっておりまして、我が国もこのような例外として輸出を認めてもらうことを要請するということはたびたびあることと承知しております。
  105. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 それは全会一致ということになるとそう簡単にいかないと思うのですが、大臣、それは大体何カ国になって、どういう会議で決められるのかということを教えてください。
  106. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) ココムの加盟国は十六カ国と承知しております。もし違っておりましたら後で訂正させていただきます。  そのような例外輸出の申請がございましたときに、各国はそれぞれの観点から、西側の安全保障が害されないかどうかという見地から検討を加えて、異議がない限りそれが認められるということで、全会一致であるのでなかなか認められないのではないかという御指摘でございますけれども、物によりまして、その具体的な事例によりまして、それが認められるケースというのはかなりの数があるというふうに承知しております。
  107. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 その話に余り深く立ち入るつもりはございませんが、率直に申し上げて今度の事件――事件と言っては大変恐縮ですが、奥野発言をめぐるさまざまな問題がございますね。私はいつも感ずるのですけれども日本政府なり外務省というのは、アメリカに対しては、例えば円高・ドル安の問題でも、今度の牛肉、オレンジのことでも、あるいはいわゆる貿易摩擦の問題全般を含めて、あるいは防衛分担のことを含めてえらい弱腰で、言われっ放しになっているというような感じがしてならない。  それはそれとして、一方、中国だけではなしに、アジア諸国に対する対応の仕方というのは、アメリカとの関係でいえば極めてアンバランスではないか。例えば貿易摩擦の問題や何かのことについて言えば、もうちょっとアメリカ並みに考えてくれたらどうだろうかという気持ちは強くあるだろうと私は思います。ここのところを直していかなければならないと思うし、時に日本人は傲慢だということが言われるようになってきました。中国語で財大気粗というのですか、財政の財に大きい、気が粗いという、金があるのをかさに着てということで訳すそうですが、そういうふうに見られていることも現実にあります。私は、その意味ではもう一遍日中共同声明や日中平和友好条約とその精神を再確認する必要があると思うのです。  その中で、実は大臣は時々かわります。まあ時々と言っちゃ悪いけれども、それほど長いことやっていらっしゃらない。私は外務官僚というふうにあえて申し上げたいのは、その人たちの対応ということが非常に重要な要素を占めているだろうと思うのです。  たまたま私、前の中国大使の中江さんの日中関係見通しについて述べられた関西における講演がございまして、その中から感銘を受ける言葉を見つけました。それは長いお言葉ですけれども、  私は三年あまり大使を務めておりましたが、その間、つくづく感じましたのは、日本と中国がお互いに理解し合うのは大変に難しいということです。まして相互信頼に至ってはまだまだ不十分です。 というお言葉を述べられて、そしてその講演の最後に、それならば  どうしたら相互理解と相互信頼を打ち立てられるか、その方策を考えてみたいと思います。それには、私は青年の交流がいちばん迂遠なようで実は早道だと思います。私たちの世代ではもう遅いのです。いくら言っても残念ながら、間に合いません。次の世代が中国を指導し、日本指導するようになったときに、彼らの間で相互に信頼関係があるかどうかです。という言葉を述べられて、中略いたしますけれども、私が大変感動したというのは、   日中正常化を実現された二十世紀の周恩来、廖承志、郭沫若などはいずれも日本で勉強したことのある人たちです。こういう人たちに当たるような立派な二十一世紀の指導者を中国に期待するのであれば、われわれはもっと寛大に、中国の多くの青少年を日本に迎え入れて勉強してもらい、日本の友人をたくさんつくってもらって、日本の若者たちとの間で相互信頼と相互理解を深めてもらうことが不可欠です。そして中国に帰って、その中から第二の周恩来が生まれれば心強い限りです。 という言葉を述べられて、特に留学生制度の問題について触れておられます。  留学生を受け入れる学校の数も少なく、それに閉鎖的です。留学を終えた後の日本側による就職制度も完全でない。ですから、なるたけ早く、こうしたいろいろな問題を解決していただきたいのはもちろんですが、また同時に、日本人の心の中に、アジアの青年を受け入れられるような、そういう気持ちがもっともっと充満してもらいたいのです。 というふうに語っておられるわけです。中江さんのお言葉でございますが、そういう意味では非常に重要なことを指摘なさっていらっしゃるなというふうに私は思います。  大臣は訪中に当たってもこのことをぜひ念頭に置いていただきたいなと思うし、その辺についての具体的な話し合いをしていただきたいなというふうにも思っております。  翻って、日中の政府関係には、御存じのように最初は三原則というのがありました。これは平和友好、平等互恵、長期安定の三つです。その後、相互信頼というのがつけ加えられたわけです。そういうことを考えれば考えるほど相互信頼というものが重要だなというふうに考えますので、その点について大臣がどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、御答弁をいただきたいと思います。
  108. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 留学生の交流ということは、国会、衆議院におきましても参議院におきましても与野党一致した意見として述べられております。だから早く対応しなくちゃいかぬ。同時にまた、アジア、さらには先進国をも含めてでございますが、二十一世紀までに十万人受け入れましょうということも既に発表されたわけであります。果たして東京のような地価の高いところで高い家賃で大丈夫か、そういう問題もございますし、また地方にも立派な大学があり、立派な教授がいる、そうしたこともございます。いろいろなことを含めて、人材の交流によりまして将来に備えることは大切なことではなかろうか。  今おっしゃる四原則のうちの相互信頼ということはそういうところから芽生えるのであろう、私もそういう感じを強く抱いておりましたから、もう二週間になりましょうか、総理がみずからそうした対応をしようということで閣僚懇談会もできたわけでございます。これは、議会における多くの先生方の意見に早く反応しなければいかぬ、議会が終わってから、そんなことではいかぬ、議会開会中にやるべきである、一日も早い方がいいんだ。留学生の寮を建てるにしてもあるいはまた各会社の寮をお借りするにしても、あるいはホームステイということをもっと奨励するにしても一日も早い方がいい、こういうことで先般やったような次第でございます。  私は、確かに中国におきましては周恩来さんを初め多くの先覚者が日本の留学者であったということは、日本といたしましても大きな成果であった、むしろ明治時代の人の方がこの問題にもっと勇敢に取り組んでおった、こういうふうに考えておりますから、この間も関係閣僚相寄りましてそうした問題を話し合ったばかりでございます。  したがいまして、今岩垂委員が申されましたとおり、相互信頼は若き世代からも生まれるように努力する。もちろん私たちも最善を尽くして信頼関係をなお一層強めるということは忘れてはならぬことだと思います。
  109. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 藤尾さんに続いて奥野発言ということになるわけです。何とかいう人が書いた「懲りない面々」という小説があって、テレビの放映も私見ましたけれども、本当にそのとおりなんですね。私は、もうこんなことを何回か繰り返してやるのは嫌ですよ、本当に。繰り返せば繰り返すほど、相手にとってみれば、何だということで怒りが増幅してきますよ。これは奥野さんの処置の問題を私は細かく言うつもりはございません。我が党は罷免を求めています。そういうことを含めた助言を外務大臣として、中国へ行かれるわけですから、八月に、また竹下さんも行かれるわけでしょう、そういうようなことを含めたきちんとした何らかのけじめをおつけになることが必要だと思いますので、大臣から御決意のほどを承っておきたいと思います。  同僚ですから、やりにくいと思います。しかし、そういう形で発言をしたことが単なる不用意ではなくて、先ほど言いましたように、かなり確信犯の発言としてそれが述べられている以上は、これは黙って見過ごすことはできませんので、御答弁をいただきたいと思います。
  110. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 過般来申し述べておるのが私の気持ちでございます。したがいまして、私は先ほど、内閣の同じ閣僚同士として、奥野さんには議会においてこうした御意見が出ておるよということは当然これをお伝えしましょうと申し上げたとおりでございますので、いろいろな面に関しましてはそれ以上のことを私からここで申し上げることは控えさせていただきたいし、控えなければならない、かように思っております。  それよりも我々全体の姿勢として、総理の気持ちも私の気持ちも十二分にお伝え申し上げるということがまず先決ではなかろうか、かように存じております。
  111. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 ちょっと時間が余りましたので、次に日ソ問題について簡単にお尋ねしておきたいと思います。  十八日に外務大臣は日ソの対話の拡大についてという見解を発表なさったようですが、ソ連側には果たしてあなたの意図がそのとおりに受け取られているのかなということも考えられます。ソ連の外務省情報局の幹部が「これまでになくごうまんで好戦的。無責任としか言いようがない」というふうに論評をされていますが、この点について大臣、どんなお考えを持つでしょうか。
  112. 兵藤長雄

    ○兵藤説明員 今先生の仰せの点につきまして、事実関係をちょっと御報告させていただきたいと思います。  御指摘のソ連外務省高官の発言は、恐らく、外務大臣が北方領土を視察いたしましたときに洋上談話というものが伝えられましたが、その中の一部、大臣の御発言は、一日も早くソビエトの不法占拠をやめさせなくてはならないと言われた部分が、ロシア語で全くこれはテクニカルな誤解だったと思いますけれども、ロシア語の誤訳を日本語にいたしますと、ソ連によるこれらの島々の不法占拠の終わりは近い、こういうロシア語になってNHKのラジオ日本海外放送で流れたわけでございます。これで意味が全く異なりまして、これに対してソ連の高官が反発したということでございます。NHKはこの誤訳の重大性を認識いたしまして、翌二十二日、これは誤訳であったということで訂正放送を行っております。  したがいまして、大臣の御発言が全く違った意味で最初放送された、向こうに誤解を招いたということは残念なことであったと考えております。
  113. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 大臣は、日ソ関係改善のためにこの際一歩踏み出すということを述べたかったわけだし、そういう中身を言ったのですか。
  114. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も相当強いアクセントで、ゴルバチョフ書記長になってからは対外政策は非常にダイナミックである、これは、私たちも国益を踏まえながらそうした対応に対しては機敏に対応しなければいかぬ。そのことが日ソ関係の改善である、こう言っております。  ところが、今の部分が、私も後で聞いたのですけれども、そんなことがあったのか言って笑っておりましたが、ソ連も、恐らくそうした誤訳であったということは知っておりますから、それ以上のことは言わないと思います。  きのうも、最高会議の議長もお越しでありまして、いろいろ話しておりましたが、そんな言いわけはする必要ありませんし、誤訳であったのですから、私が一々言う必要ございません。そういうことで、向こうも何も触れられませんし、我々といたしましては、ゴルバチョフさんがペレストロイカ等々においていろいろと変化を見せておられる、それに我が国としても対応すべきは対応すべきである、こういうふうに申し上げております。  以上であります。
  115. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 もう時間ですからやめますが、けさの読売新聞でサッチャー首相が、ゴルバチョフ書記長の評価といいましょうか、非常に希望が持て、大胆で勇敢なことだと思うというふうに語っておられる。これは、もちろんペレストロイカあるいはグラスノスチを含むいわゆるニューアプローチに対する評価というふうに見ていいと私は思うのです。  大臣も同じだということをおっしゃったわけですが、それならば、そういう政策あるいはゴルバチョフ書記長の努力というものが何とか実るように、あるいは成功するように協力をするというのが日本の政府の立場であっておかしくはないのではないか。米ソ首脳会談や何かのことはもう申しませんけれども、そういう国際情勢の中で日本だけが何となく乗りおくれていくというようなことのないように、あるいは日本だけが足を引っ張っているというようなことのないように、ペレストロイカやあるいはグラスノスチに代表されるニューアプローチにできるだけ協力をしたいものだというお気持ちを伺うことはできませんか。
  116. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いつも申し上げることですが、東西というものが今融合したいものであるという、そうしたことが米ソ間においてそれぞれ言うならば態度で示されつつある段階である、これは私たちも率直にこのことを評価していかなければならない、かように思っております。しかも、ソ連は大切な隣国でございます。そうしたことも私たちは忘れてはならないことである、かように思っております。  私たちは、そうした中におきましても、やはり西側陣営だよ、太平洋並びにアジアの一員だよというそのスタンスは忘れるわけにはまいりませんし、この間のINFのグローバル・ゼロもやはり西側陣営が結束したからよかったね、これは欧州も全部言っておるわけであります。特に日本もそうした中において、アジアを代表してサミットでいろいろと発言しておるわけでございますから、最近ヨーロッパのいろいろなお話を聞きますと、ECは今まで日本と遠かったけれども日本といろいろな意味でもっと近くなって、そして三極というそうした関係を結ばなければいけないなというムードが非常に高まっておる、これは私うれしいことだと思うのです。  だから、ECと日本、ECと米国、日本と米国という三角は固めていこうと思いますが、そうした体系の中において、ソ連が非常に柔軟な姿を示しダイナミックな政策を用いられることは、是認すべきは是認すべきであるということが私たち政策であります。方針であります。
  117. 岩垂寿喜男

    ○岩垂委員 時間が参りましたから、これで終わります。ありがとうございました。
  118. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 伏屋修治君。
  119. 伏屋修治

    ○伏屋委員 我が国にとつて四百年にわたる歴史を持つ日本の捕鯨、また、日本人にとりまして重要なたんぱく源である鯨、この問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  最近の新聞によりますと、「わが国固有の食文化を守り、IWC(国際捕鯨委員会)の商業捕鯨全面禁止決議の見直しに向け、調査捕鯨を支援しよう」、こういうような会が、秋山さんとか十返さん、あるいはタレントの武田鉄矢さんとか桂三枝さんが発起人になりまして、この二十六日に鯨類調査推進募金募集委員会というものを設立した、こういうふうに聞いておるわけでございますけれども、最近の調査捕鯨に対する風当たりというものは、何か憤りさえ覚えるようなそういう風当たりではないか、このように私は感ずるわけでございます。  最初に、国際捕鯨取締条約第八条では、調査捕鯨を行う権利は加盟国に与えられており、加盟国は独自の判断で適当と認められる頭数その他の条件を定め捕鯨を行うことができ、この権利はIWC等から一切拘束されることはないことになっていると思うが、この第八条の解釈は私の考えどおりでよいかどうか、お答えいただきたいと思います。
  120. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  国際捕鯨取締条約はいわゆる商業捕鯨につきまして規制を加えるものでございまして、科学的な研究のための鯨の捕獲は同条約の適用から除外されていると考えております。  この意味におきまして、IWC、国際捕鯨取締条約は、加盟国が、先生のおっしゃるといいますか、いわゆる調査捕鯨を行う権利を制約することはできないと考えております。
  121. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そうすると、国際法上条約加盟国というものはみずからが締結した条約を遵守する義務を負うとの確立された原理があると思いますが、条約局長、この辺はそれでよろしいですか。
  122. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 全く御指摘のとおりでございまして、国家は自己が締結した条約を誠実に遵守する義務があるということは国際法上の確立した原則でございます。
  123. 伏屋修治

    ○伏屋委員 もう一点、条約局長にお聞きいたします。  国際捕鯨取締条約加盟国はこの八条に従って他の加盟国調査捕鯨を行う行為を妨げてはならない義務をも含んでいると考えるわけでございますが、そのとおりでよろしいですか。
  124. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 調査捕鯨を行う権利は、これは加盟国に認められた権利でございまして、それを法的にできないようにするという権利は他の加盟国にはないと考えられます。
  125. 伏屋修治

    ○伏屋委員 その取締条約の第六条の勧告の対象には、調査捕鯨の権利を否定するような事項が含まれていないはずである。なぜなら、同じ法の中で、一方で権利を付与して一方でその権利を否定することは法の自己矛盾であると考えますし、法の趣旨、目的からいっても考えられないと思いますが、条約局長の御答弁をいただきたいと思います。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席
  126. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 私もただいま御指摘のとおりに考えております。  一方におきまして加盟国の権利としてはっきり決めておきながら、それを勧告という形で禁止をしようということは明らかに条約趣旨に反するものであると私は考えております。  ただ、この勧告というのが法的に拘束力のあるものではございませんので、あるいは法的な規制を加えようというものではなくて政治的な意図の表明というようなものに限られているとすれば、これを法的な角度から厳密に論じるということは必ずしも実益につながらないことかもしれませんけれども、純粋に法律的な観点から考えれば、調査捕鯨であるということを認めながら、すなわち、調査捕鯨の姿をかりた別のものであるという考えに立つのではなくて、調査捕鯨であるということは認めながらそれを阻止しようということは極めて不適当だというふうに考えられます。
  127. 伏屋修治

    ○伏屋委員 第六条によるIWCの調査捕鯨の権利を否定する勧告、これは加盟各国が負っている、先ほど条約局長がお答えになりました条約の遵守義務に違反しており、違法な決議だと思うわけでございますが、その辺のお考えはどういうお考えを持っておみえですか。また、この勧告我が国は遵守しなければならないのかどうなのか。
  128. 斉藤邦彦

    ○斉藤(邦彦)政府委員外務省) 先ほど申し上げましたとおり、この六条に基づきます調査捕鯨禁止勧告というのは条約上不適当なものと我々考えておりますけれども、法的な拘束力がないものでございますので、その勧告を行うこと自体が不法である、違法であるというところまで言えるかどうかという点については若干疑義があるところでございます。
  129. 伏屋修治

    ○伏屋委員 IWCが昭和五十七年に商業捕鯨の全面禁止決議、モラトリアムに当たって、科学的助言を基礎に遅くとも一九九〇年までに新たな捕獲頭数の設定を検討するということも全面禁止と同時に決めておるわけでございます。IWCはそのために何らかの調査活動を行っておるのかどうなのか。この辺は水産庁でしょうか。
  130. 小野登喜雄

    ○小野説明員 お答え申し上げます。  IWCは一九七五年から国際捕鯨調査ということで、これは一名IDCRと言っておるわけですが、その枠組みのもとにおきまして鯨類の調査をやっておるわけでございます。その一環としまして、南氷洋におきましては一九七八年―七九年漁期から鯨類の目視調査を行っておりまして、その結果、南氷洋にはミンククジラが四十四万頭もいることが明らかになってきたわけでございます。  我が国といたしましては、この南氷洋の目視調査に対しまして、当初から調査船を送り、乗組員を送りまして協力してきたわけでございますが、この南氷洋の調査につきましては、日本協力なくしては調査実施できない、このような状況にあるわけでございます。
  131. 伏屋修治

    ○伏屋委員 そういう四十四万頭というような数字が出てきておりますけれども日本調査捕鯨に当たっては厳しい調査の中止勧告を行っておるわけでございます。  一方では、IWCの中で、鯨類資源の適切な保存と有効利用、こういうことがうたわれておるわけでございますが、こういうような調査捕鯨中止勧告は全く不当な干渉というふうに考えざるを得ないわけでございますし、また、そういう国際会議と言われる場で国際条約を無視したような発言があっていいかどうか、これも大いに疑問である、こういうふうに考えるわけでございますが、そのあたりはどういうふうにお考えでございます
  132. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 我が国といたしましては、鯨の資源の適切な保存と有効利用を図るということを目的といたしました国際捕鯨取締条約趣旨は極めて妥当であり、かつ正しいと思っている次第でございます。したがいまして、その枠組みの中で現実の運用の改善が図られるように今後とも努力していきたいと考えております。  最近のIWCにおける議論が、ともすれば環境論者の観点からする議論に偏りがちであるということは大変残念なことであると考えておりまして、我が国といたしましては、本来のIWCの姿に戻すよう各国に対し今後とも訴え、かつ各国の理解と協力を求めてまいりたい、このように考えている次第でございます。
  133. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今までのIWCの調査活動も余り積極的ではないし、その中止勧告決議に当たりましてもいわゆる捕鯨国と関係のない国等々を入れて決議をした、こういうような経緯から見ましても、今後一九九〇年までに新たな捕獲頭数の設定を検討する、こういうふうに五十七年には言っておるわけでございますが、IWCの今までの会議のあり方、それからいろいろな勧告等々を勘案しますと、どうも商業捕鯨を全面禁止する、もう無期限全面禁止というような動きが底辺にあるのではないか、このように考えるわけでございますが、そのあたりはどうお考えですか。
  134. 小野登喜雄

    ○小野説明員 率直に申し上げまして、IWCの現状から見ますと、モラトリアムの見直しの作業が順調にいくということを予想することは非常に困難な情勢にあることは事実でございます。  しかしながら、IWCが、先生おっしゃったように一九八二年にモラトリアムを決定した際に、附帯事項としまして鯨資源の包括的評価を行うということを決定したわけでございますので、我が国としましては、モラトリアムの見直しが決定したとおり一九九〇年までになされるよう最大限の努力を払ってまいりたい、かように考えているところでございます。
  135. 伏屋修治

    ○伏屋委員 これからもそういうような御努力は積み重ねていってもらわなければならぬと思いますけれども、何となく私の受ける印象としましては、食文化というか、文化の摩擦というものがここに来て非常に顕著になった、こういう感じを受けて仕方がないわけでございます。  そういう観点からすれば異論があり、激論を闘わしても当然なことではございますけれども、その根底には条約というものが必ず存在しなければならない、こういうふうに考えるわけでございますけれども、今までの中止勧告決議案の採択とかいろいろな経緯を見てまいりますと、どうも一方的にアメリカがリーダーシップをとりながら、反捕鯨国の主導権を握り、科学的な調査も拒否する、そういう現状に思えてならないわけでございます。  今後我が国がそういうようなIWCの中におる限りにおいては非捕鯨国の仲間入りをどうしてもせざるを得ないところに追い込まれてしまうのではないか。そうなれば、日本人のいわゆるたんぱく源であり、日本人としてはいわゆる動物とは考えられない、海の幸と考えておる、そういう観点からするならば、やはり商業捕鯨というものを再開し、日本人のたんぱく源としてこの捕鯨に携わる、そういう方向が望ましいと私は考えるわけでございますが、IWCのこのままの行き方でいくならば、非捕鯨国に追い込まれざるを得ない。あるいはまた、それを拒否するならば、IWCから脱退せざるを得ない、こういうような立場に立たされていくのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、外務省はどういうふうにお考えですか。
  136. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、我が国がIWC条約で認められております権利の行使について、アメリカがその国内法に基づいて一方的な措置をとっているということは極めて遺憾なことだと考えておりまして、我が国といたしましては米側に対し立場の再考を強く申し入れているところでございます。  ただ、そのことからして、直ちにIWCから脱退するとかIWCにとどまって非捕鯨国になるとかという結論をすぐに導くということではないのではなかろうかと考えておりまして、先ほど御答弁申し上げましたとおり、基本的にこのIWC条約趣旨は正しいと考えておりますので、各国協力と理解を何とか得つつ、このIWC条約の現実の運用の改善を図るよう、なお我が国といたしましても一層の努力をすべきであると考えている次第でございます。
  137. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今までの流れからいいますと、IWCにとどまる限りにおいては非捕鯨国の方に追い込まれざるを得ないという現状ではないかと私は危惧をするわけでございます。  この後にもお尋ねをいたしますが、アメリカ国内法によるところの日本への商業捕鯨中止勧告、それに沿わないということにおいて、漁業海域におけるところの漁獲量をゼロにするとか、あるいは水産物を輸入しない、こういうような非常に強圧的な姿勢というものを見る限りにおいては、やはりIWCにとどまる限りにおいては非捕鯨国にならざるを得ないのではないか。  先ほども外務大臣の御答弁の中に、やはり日米は相互信頼ということが大事である、こういうふうにおっしゃってみえますけれども、その相互信頼というものはやはり異なる文化というものに足を置き、そしてお互いに激論を交わす中で、国際条約というものが締結されておるならば、その国際条約というものを重視する中でやはり話し合いをし、そこにお互いの信頼、言うべきことは言う、向こうが言ったことは虚心に聞く、そういうような外交姿勢があってこそ相互信頼というものが確立されてくるのではないか、こういうふうに考えるわけでございますが、今までのような強圧的な経緯から考えていきますと、この外交交渉というものはどうも妥結する一致点を見出せないような状況、平行線で終わってしまうのではないか。  そしてまた、日本がそれによって非捕鯨国にならざるを得ないということになれば、これは外交的には全くの全面後退ではないか、このように私は考えるわけでありますが、外務省としてはどう考えておられますか。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 調査捕鯨の問題に関しまして、あるいは捕鯨問題全般に関しまして、米国が環境保護論者の圧力もございまして強い態度に出てきているというのは、先生指摘のとおりでございます。  具体的に申しますと、去る二月、パックウッド・マグナソン修正法及びペリー修正法に基づく措置につきましていわゆる商務長官の署名がございまして、パックウッド・マグナソン法についてはそのまま決定と申しますか措置実施に移され、さらにペリー修正法に基づく措置も、これは日本からの水産物の輸入を禁止するということではございませんで、それを援用いたしまして対日漁獲割り当てを一〇〇%削減するというような措置を決めたということは大変遺憾なことであると考えております。その際にも、松永在米大使からシュルツ国務長官にあてまして遺憾の意を表明いたしますとともに、米側の立場の再考を強く要請した次第でございます。  非常に厳しい状況にはございますけれども、なお一層粘り強く米側に対して働きかけていく必要があろうかと考えている次第でございます。
  139. 伏屋修治

    ○伏屋委員 五十七年のモラトリアムの全面禁止のときに日本が異議を申し立てた、その際にアメリカは、いわゆるアメリカの領海内における漁獲量を削減するというような強い態度に出てきたわけで、日本はやむなく異議を撤回した、こういう経緯があるわけでございますけれども、撤回したにもかかわらず現実にはもう既にアメリカの近海における漁獲量はゼロになっておる。何のための撤回であったのか、こういうような声すらあるわけでございます。  さらに、それに追い打ちをかけるように、いわゆる調査捕鯨に対して中止勧告をしてきた。それに対して、日本調査捕鯨に踏み切ったということに対して、制裁措置として今お話がありましたようなマグナソン・パックウッド法を発動してきた。そしてまた水産加工品の輸入制限をするペリー法の発動すらにおわしているわけでございますが、外務大臣はこういうようなアメリカの強圧的なやり方、これは正しいと考えられるのですか。
  140. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も、はっきり申し上げましてこれは一つのプレッシャーだと考えざるを得ません。したがいまして、たまたま一月十日前後に私が参りましたとき、シュルツ国務長官との会談におきましては当然この問題は我が方から提起した次第でございます。  いやしくも日本調査捕鯨というものはIWCの規約なりあるいは決議に従ってやっておるのである、一歩たりといえどもその枠外で行動しておらぬのである、何がゆえにこれに対していろいろと圧力がかかるのか、私としてもこのことは甚だ遺憾だと思うということをはっきり申し述べ、なおかつアメリカの、せっかく漁業協定ができたにもかかわらず、これは政府よりもむしろ北米漁業委員会の問題であったかもしれませんが、全世界に対して今度はもう入漁を許さない、こういうことに対しても、やはりせっかく日米親善といったからには許してもらわなければいかぬというようなことも強く申し上げている次第でございます。  そうした中におきまして、アメリカ政府として一つ困ったと言っていらっしゃったのは、御承知の北米の、北米というよりも日ソ間のサケ・マスの問題でございますが、アメリカの二百海里の中において捕獲するという問題が残っておりましたが、これがアメリカの動物愛護団体が政府を相手にとって訴訟に及んだ。そして第一審では政府が負けてしまった。商務省が負けた。そういうことにおいて何とかしなくてはいかぬというので、そうした面ではアメリカ政府といたしましてもさらに勝つべく努力をしているというふうなこともございます。  しかしながら、IWCに関しましてはいろいろ問題が多過ぎますので、今度五月に総会がございますから、そうしたときに我々としてはやはりもっとはっきり言うべきことは言わなければいかぬ、かように考えております。特にその中間におきまして、はがきの投票等々がございました。こうしたことも、やはりそれはいろいろな手段があるかもしれませんけれども、一応IWCの規約から申し上げると異常なる手段がとられたとしか解しようがございません。  だから、今おっしゃるとおりのことでございますから、やはり調査捕鯨というものに関しましては今後五月の総会等々を踏まえましてどうするか、我々としても真剣な問題として受けとめていかなければならぬと考えております。
  141. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今の大臣の御答弁で、五月の交渉に向けても我が国は毅然たる態度で臨んでいただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  今お話がありましたように、なりふり構わず商業捕鯨を無期限やらせない、こういうような姿勢がうかがえるわけでございまして、その一つのあらわれが、今おっしゃったような郵送による投票という異常なことまでやっておるわけでございますので、一層の毅然たる態度でこの交渉に臨んでいただきたいということを大臣に強くお願いしたいと思います。  そういうような調査捕鯨に対する中止勧告を行う流れの中で、アイスランドに対しては調査捕鯨を認めておる、ちょっと日本に差別をつけた、こういうようなことに対しまして、外務省はこの状況をどう分析しておられるわけですか。
  142. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 お答え申し上げます。  アイスランドの調査捕鯨につきましては、昨年のIWC年次会議におきまして中止勧告が出されておりますが、アイスランドと米国の協議の結果、米国は、アイスランドの調査捕鯨に対しては米国国内法に基づく制裁は行わないということを決定したものと承知しております。  米国の、我が国に対する対応とアイスランドに対する対応が異なっているということにつきましては、我が国としては納得できるものではございません。そういうことも踏まえまして、我が国に対する制裁につきまして米側に立場の再考を強く求めているものでございます。
  143. 伏屋修治

    ○伏屋委員 アイスランドが調査捕鯨を認められたという背景には、これは私の個人的な推測かもわかりませんけれども、アイスランド側が、アメリカの大国の横暴だ、内政干渉だ、そういうことをやるならば我が国としてもアメリカに対して制裁措置を考えるぞ、アメリカの駐留軍基地の問題に対して制裁措置を加えるぞ、こういうような強硬な姿勢を示した、そういう国際的な防衛問題の流れの中でアメリカが譲歩せざるを得なかったのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。  また、大臣にもお願いを申し上げましたけれども、これからの商業捕鯨全面開始、こういう方向に向けて毅然たる態度で臨んでいただくためにも、いわゆるペリー法がどうなるのかわかりません、推移がどうなるかわかりませんが、そういうようなペリー法を発動することがあるとするならば、日本の水産加工品の対米輸出を禁止するならば、アメリカの対日水産物の輸入も禁止する、それくらいの強硬な姿勢を示さないと、今のアメリカの強圧的な交渉には一歩おくれをとるのではないか、このように考えますが、その辺の決意を伺いたいと思います。
  144. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 先生指摘の、日本もアメリカのペリー法と同じように対抗措置ということを考えたらどうかという御質問かと理解いたしました。  この考え方につきましては、国会の場でも議論があったことは承知している次第でございますが、直接的な対抗措置をとるための、例えば漁業対抗法といった立法を行うことにつきましては、対外関係全体のいろいろな影響ということを考えなければいけないと思われます。そういう意味で、慎重な対応が必要であるというのが政府の立場でございます。  繰り返しになりますが、政府といたしましては、捕鯨の問題はあくまでもIWCの条約の枠の中で合理的な解決が図られるべきであると考え、そのような努力をしていきたいというものでございます。
  145. 伏屋修治

    ○伏屋委員 いろいろな問題に配慮しながらやっていかなければならない、これがどちらかというと今までの日本の外交交渉の姿勢ではなかったのか。だから、ここで私が大臣に毅然たる外交交渉姿勢を示していただきたいと要望申し上げたことは、やはり一つのことで日本が毅然たる態度を示していくことによって、ほかのものまでもよい影響が出てくるのではないか。譲歩に次ぐ譲歩、そして最終的には全面的に後退したような交渉の結果になってしまう、こういうような姿勢が今までの外交姿勢ではなかったのか。  そういう面において、一つを突破することによってほかの問題も対等に交渉できる、こういうような外交姿勢というものを堅持してもらいたい、そういうことを強く大臣に要望いたすわけでございますが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  146. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 外交とはやはりそうしたものでありまして、我が国の国益も十二分に考慮して我々は正当な外交というものを展開しなければならない、かように考えております。
  147. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今後にわたる交渉で、日本国の外交姿勢というものを国際的にはっきりと示していただきたい、このように思います。  時間がもうあと四分ばかりしかございませんので、外国人労働者の問題について二、三お聞きしたいと思います。  今、外国人労働者の問題がいろいろ関係各省、いわゆる法務、労働、外務、警察、こういう関係省庁で、外国人労働者の受け皿をつくろうという形で協議に入ったと聞いておるわけでございますが、外国人の不法就労というものが非常に問題になっております。そういう不法就労者がこの五年間でもう六倍にもふえておる、こういうようなことで社会問題まで引き起こしておりますし、犯罪に結びつくものもある。また、その労働者に対する人権無視的な問題も起こっておるわけでございますが、政府はこういう実態をどういうふうにして把握しておるのか。  また、今後この外国人労働者がふえ続ける、せんだってのいわゆる建築業の参入問題等々で話し合いがついた、こういうことで外国企業が建設業に入ってくるとなると、やはり外国人労働者がどんどん入ってくることも考えられるわけでございますので、この傾向に対してどういうふうにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  148. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 原則として単純労働者の入国は拒否したいというのが今の政府の考え方でございます。しかしながら、いろいろの名目で入ってこられて、それが就業をしている、いわゆる不当就業である。どうするのかという問題がまだ残されております。  労働省、法務省ともどもにこの問題に取り組んでおりますが、はっきり申し上げまして、内容においてちょっと食い違っておる面もございます。これは、それぞれの立場から言われると、やはりなるほど雇用主にもっと責任を持たせいという問題もございますし、あるいは入管のときにきちんとすべきであるという問題もございますが、過去の実績等々を踏まえまして、外務省としてはそうした関係省と連絡をとりながら、どのようにするかということを早く決めなくちゃいけないと思うのであります。  今、伏屋議員が御心配なさいましたように、たとえそれが不法就労であっても、テレビ等々で入管の職員が追いかけておる、やはり国法を破ったのでございましょうが、犯人扱いのような調子で送られてくる姿をアジアの方々が見られたら、日本はどんな国だろうか、私たちはそのことも心配しなくちゃならぬと思う。  したがいまして、どこでこの問題というものをけじめをつけていくか、そうしたことに対しましても早急にお答えを出したい、かように思っておる次第であります。
  149. 伏屋修治

    ○伏屋委員 外務大臣の外交方針の中で、世界に開かれた日本でなければならぬし、世界に貢献する日本でなければならない、こういうことをおっしゃってみえるわけでございますので、関係省庁の中でもとりわけ外務省がイニシアチブをとらなければならぬのではないか、同じように並列的に並ぶのではなくて、やはり今後は国際化の時代であるだけに、国内においても外務省が毅然たる態度で関係省庁を引っ張っていく、これがこれから国際化に対応する日本の流れなのだ、こういう姿勢を貫いていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。  最後に、これからの外国人労働者の受け入れにつきまして、今後日本の産業構造も大きく変わってこなければならない、こういう流れの中で、産業のあり方の中で外国人労働者をどう位置づけるか、これに対して外務大臣はどうお考えになっておられるか、最後にお尋ねしたいと思います。
  150. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 現在のところは、ただいま申し上げたのが私たちの原則でございます。しかし、果たして今後そういうことだけでいけるだろうか。もちろん先進国が、EC内におきましても、御承知の国はそういうことで非常にお困りになって、現在はどうするかというふうな話がございますし、我が国の内需振興という問題に関しましても、今後それを持続するという大前提がございます。  半面においては、途上国の人口が先進国よりもはるかなる倍率においてふえておる。年間三千万ふえておるのだ。これがやがて二十年、三十年たてばどうなるかという問題等々もございますから、世界に開かれた日本、貢献する日本といたしましては、やはりそうした面におきましても、現在の原則は、当分の間、対策が立つまでは守らなくてはならないと私は思いますが、永久にその原則でいいのかという問題につきましては、やはりもう少しく私たちも勉強したい問題がたくさんあるという段階であります。
  151. 伏屋修治

    ○伏屋委員 今後とも国際的な非難を受けないように、世界に貢献するような形での外国人労務者の受け入れということに真剣に御努力をお願いしたいと思います。  終わります。
  152. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 安倍基雄君。
  153. 安倍基雄

    安倍(基)委員 何か、私は時間が十八分しかないようでございまして、ちょっとかいつまんでお話ししたいと思います。  大臣、この間の十三日に私がココム問題を取り上げまして、これは大変なことになるかもしれないよ、当時人民大会だからまだ反応がはっきりしないけれどもということをお聞きしましたら、そのときに、私の質問は十三日でございましたけれども、十二日に中国から回答がございました、両国の友好関係を引き続き発展させようというような文書が来ましたということを言われたのですけれども、そのときに、私、原文を取り寄せてこれをよく見ましたら、これは非常に強い調子なんですね。  東芝問題が終わってないときに「本件が起こったことは理解しがたく、これに対し遺憾の意を示さざるを得ない。日本政府が慎重に本件を処理し」と言っているわけです。だから、やはり的中しているわけでしょう。その後、例の伊東総務会長が中国要人に会ったときにそれぞれ厳しいことを言われている。光華寮と並んで言われている。  私は、私自身が昔、三年間くらいオーストラリアに駐在して一等書記官と領事をやっていたことがあるのですよ。外交文書もいろいろ見ましたけれども、最後にはオブラートで包んであるわけですけれども、これは本当に読んでみると厳しい調子ですね。これは光華寮問題とはちょっとまた意味が違うのです。光華寮問題の場合には、要するに、民法の問題でもあるし、裁判所の問題である、三権分立の問題がある。  ところが、このココム規制の問題は、つい最近立法したわけですね。貿易管理令を直したわけです。大臣、これは国内法の問題である、我々は国内法に従っただけだ、こう言って、言い抜けてと言っては変だけれども、主張して可能かどうか。やはりこれは改正せざるを得ない立場になるのじゃないかと私は考えておりますけれども、その辺は改正するおつもりがございますか。あるいは、これは国内法の問題だからという話で話が片づくとお思いですか。いかがです。
  154. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この問題はやはり大問題である、そういうふうな形はとっておらぬわけでありますが、伊東さんがお行きになったときには、それぞれ首脳からこの問題に関するところの我が国の発展との関係という懸念は表明されておりますから、やはり我々といたしましても、大切な隣国でございますし、さような意味合いにおきまして、従来もココムの中におきましてもやはり中国は別扱いと申し上げるとこれは語弊があるかもしれませんが、配慮しておったということでございまして、今後もさらにそうした配慮というものは必要じゃないか。  つまり、一般的には緩和する方向を我々としてもみずから見出してあげることが必要じゃなかろうかというのが今の私の方針であります。
  155. 安倍基雄

    安倍(基)委員 そうすると、法改正をなさるおつもりですか、どうですか。それとも、この案件についてある程度不問に付すと言っては変だけれども、その辺で片づけるおつもりか、あるいは法改正そのものにまで発展するおつもりかどうか。どうですか。
  156. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間、通産省が言うならば指摘をし、司直の手を煩わした件は、昨年のココム規制、東芝事件が起こった後これを強化する前の話であった、こういうことでございますから、したがいまして、法改正と一般的に言われますと非常に難しい問題になると思いますが、これはお互いに貿易管理の問題でございますので、自主的判断によってなし得る面も多々ある、私はこういうふうに考えます。  もちろん、参加十六カ国とのいろいろな話し合いもなすでございましょうが、先ほども条約局長が言われましたように、この件に関しては皆の了解を得ていくという努力もそうした中に含まれる。 事務的なことは、政府委員から話させます。
  157. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私は何も事務的な話を聞いたのじゃなくて、法改正をする気持ちがあるかないかだけを聞いているのです。イエスかノーかですね。時間が短いから、イエスかノーかだけ言ってください。
  158. 内田勝久

    ○内田(勝)政府委員 ただいま大臣から答弁がございましたとおり、この事件自身は旧外為法のもとで行われた事件でございますので、これはそのように、それに従いまして対処されるということでございます。  今後ココムに基づきます外為法の輸出管理体制がこの事件を契機として変更なり改正をするのかどうかという御質問につきましては、先生御案内のとおり、ココムの申し合わせ自身がまず第一にココム参加国の全会一致といいますか、そこでの合意に基づくものでございますので、その国際的な話し合いの中に日本としても積極的に参加していきたい。  そのための中国に対します規制の緩和についてもできるだけ日本としてできることをやっていきたいという気持ちはございますけれども、その先につきましてはただいま何とも申し上げかねることでございまして、ただいまのところ、それ以上申し上げられる立場にございません。  以上でございます。
  159. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では、ほかの国と相談の上、はっきり直せるかどうかわからないということですな。そういうことですな。  私は、この前も話したように、どっちかというとタカ派なんです。だから、つい最近まで中共、中共と呼んでいた方でして、それほどいわゆるシンパではないわけですけれども、中国がこれだけ近代化してきて、ソ連とも離れてきている。もっとも、最近の幹部がモスクワ帰りの連中が多いというので、ちょっとまた中ソ和解が始まり得るかどうかという懸念も持っておるのです。  だけれども、この前もお話ししたように、日本がODAで第一番の援助を中国にしているわけです。そういう状況のもとに、おまえは友達だと言って援助をしておきながら、片方でおまえは敵だと言っていると同じなんですよ、このココムは。だから、私もこの間話したように、日本と中国の関係はほかの国とちょっと立場が違うのですね。でありますから、この問題は恐らくいつまでも向こうは固執しますよ。一体、日本は中国を敵性国家と見ているのかと必ず言うに違いないのですよ。  欧米諸国と中国あるいはアメリカと中国との関係よりももう一つ踏み込んだ関係日本は持っていると言わざるを得ない。だから、光華寮問題でいつまでも頑張ると同じように、基本的にこの問題は、はっきり言いましていつまでも尾を引くと私は思います。  その点で、私は、この問題は、この前ちょっと言ったようにアメリカの国防省の投げたわなにうまくはまったと思っているわけで、この点、大臣の観測が非常に甘いのではないかと思っております。  次に伺いますが、その後ですが、私が十八日の日経を見ましたら、大臣が中国に行かれるときに借款をまたえらいべらぼうにふやすというようなことが書いてございます。日経の報道を見ますと、ココムについて中国側が遺憾の意を伝えてきた、これを踏まえて、中国に対するいわば協力を引き続きやるのだという姿勢を示すためにこの借款をやるのだというぐあいに書いてございますけれども、この点、大臣はそういうおつもりでございますか。
  160. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そういうふうにとられると我々のせっかくの外交努力なりそうしたものが帳消しになってしまうおそれが非常にあります。第二次借款に関しましては中国との間においてその消化を図ってまいりましたが、中国側において原価が非常に安くつきましたから余りましたというような面もございますから、今それを早く消化してしまうというふうな努力を重ねておる次第であります。  第二次の次は第三次ということになりますが、これに関しましては、まだ具体的ないろいろな問題は出ておりません。だから、昨年御承知の二百億ドルという還流資金を準備いたしましたときに、その還流資金の中の一千億円をひとつ中国には還流資金として使っていただこう。これは昨年から言っておるわけでございまして、最近いろいろな問題が起こったからそれとの何か見合わせにというふうなものでは決してない。私たちはやはり援助なり借款なりそうした相手国の要請に従い、またこちらの厳しいそのものについての調査に従ってやっておるわけでございますから、思いつきで出したり引っ込めたりする問題ではないということだけは御理解賜りたいと思います。
  161. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これはまだ積み残しというか未消化の分が随分あるのですね。そこにぽんと乗せるということは、向こうを怒らせたからまた金を出すのだ、実際こう思われても仕方がないのですね。  また話は戻りますけれども、さっき事務方は、ココム規制についてほかの国と相談して、要するに、そう簡単には変えられるかどうかわからないということでございます。大臣はさっきの私のココム規制の法律そのものを――これは光華寮と違ってつい最近つくったものですね。これは随分プリンシプルを重んずる国ですから、ほかのところでいろいろ援助してみてもこの話は必ず改正を要求してくると私は思いますけれども、そのときに本当にどうなさいますか。改正されますか、されませんか。
  162. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 中国に対しましてもいろいろ説明しております。例えば、中国に対しましては金目にして一億ぐらいのものは、それがいろいろありましても許しておりますが、他の共産圏に対しましては、四、五十万程度のものでも許しておらない。品物によってはそれぐらいの大きな差がついておるということは中国政府も十分知っておられるのではなかろうかと思います。  最近においては、IC一つに関しましても、今の最高のものをおれたちは望んでおるわけではないのだ、もっとレベルの低いICでもいいのだという、いろいろありますから、やはり私が行ってみて、私自身が、そういううわさとかいろいろな人の伝聞だけで動くわけにはまいりませんから、具体的にお話があれば十二分にお伺いして帰ってこようというふうに思っておるわけでございます。したがいまして、ついこの間改正をいたしましたのは、言うならばココムの規制を強化するという改正をしたというふうに御理解賜りたいと思います。
  163. 安倍基雄

    安倍(基)委員 残念ながら時間が短いもので、私はこの問題は必ず尾を引くと思っておりますので……。別に私は向こうの肩を持つわけじゃないですけれども。  二番目に、何か新聞報道を見ますと、今度サミットに行くについて外務省は竹下プランみたいなものをつくって、ODAを思い切って増額するというようなことで、大見えを切ると言ったら変だが、お土産にするというぐあいの報道もありますけれども、これは事実ですか。
  164. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 ODAだけには限りません。今まで世界に貢献する、平和に貢献すると言っておるが、一体具体的にはどうなんだという問題が国会におきましてもしばしば議論になっております。特に今回は欧州、ECに行かれるわけでありまして、いっぱい問題のある国もございます。  そうした意味において、もう少しく具体性を持たせてほしいねというのが過般私に対する総理大臣の要請でございました。私もいろいろ考えておりましたから、そうした中において、ではこういう問題もああいう問題もあるという中の一つにODAがある。しかし、ODAをどんと大盤振る舞いしますよというような話ではないのであります。  もちろん、現在は世界で一番大きくなったね、さらに日本に対する要請は強いね、これらに対して言われてからするのではなくて、量並びに質においても考えなければなりません。そういうような具体例をひとつ十二分に我々としては政策として持ちましょうというわけですから、そんなお土産を持っていって振る舞うのだというような話ではない、具体性を持たせたい、かように思っております。  そうして、いずれ、この国会ではなかなか間に合いません。したがいまして来る国会、これはいつかわかりませんが、来る国会においては総理としてもまた我々といたしましても、総くくりのこういう具体的な方策によって世界に貢献しましょう、これが日本の外交方針ですという姿は明らかにしたい、こういうことでございます。
  165. 安倍基雄

    安倍(基)委員 私はもう少し持ち時間が長いものと思ってたくさん質問を出したのですが、残念ながらもうじき質問時間が切れるらしいのですけれども……。  実は過日、大蔵委員会でODA問題をちょっと取り上げたのですよ。そのときに、円建てがいいのかドル建てがいいのか。もちろん伸ばし万ですが、要するにこの前の会議のときにも答えがございましたように、円がいわばどんどん上がったわけですね。だから、八六年でございましたか、五割増しになっている。その次も二割くらいの伸びになっている。これは円が上がったためにべらぼうな伸びなわけです。例えばある病院でも一つつくるとなれば、結局一つのものが二つつくれるくらいになってしまうわけです、現実問題として。ですから、これは円のままでどんどん伸ばしていったら、為替相場の変動で本当にべらぼうなものになってしまうわけです。  この前、大久保書記長が予算の総括のときに、自衛隊の経費の問題で、円高メリットがどうだという話で、本来はもっと防衛費が抑えられるのではないかという話がございましたが、このODAの場合には丸々円高の問題がくるわけですよ。ですから、宮澤大蔵大臣とも、これからの審査については円のみならずドルも考えなければいかぬな、余り伸ばし過ぎだなという話もしたわけです、実際のところ。そういったことに対して宮澤さん御自身が、これからそう考えますと言っておりましたけれども外務大臣は、この点、いかがに考えますか。
  166. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 技術的なことは英局長から答えてもらいたいと思いますが、事実、円借款において借款を受けた方が、極端な円高・ドル安になりまして返済に非常に困っておるということも事実でございまして、それに対処して日本はどうしてくれるという話が来ておることも事実でございます。  したがって、今後ODAをふやす、または二国間借款をふやす、そうした姿勢は我々はやっていきますが、相手方がそれによって本当に利を得るのか、あるいはかえっていろいろなことが起こるのか非常にデリケートな問題がある、かように存じております。
  167. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間がございませんから、私はもうあれです。要するに、これは借款の話もありますよ。それから贈与の話もあるわけですね。でございますから、私がこの間も言いましたように、これは相続税に近いくらいの額の税金を使うわけですから、私の感触としましては、もっと質を考えなくてはいけないので、単に金額さえ渡せばこれでいいんだという話ではないわけですね。  その面で、本当に、二十五、六分あると思っていろいろ質問を用意してたくさんあれしたのですけれども、私ちょっと来てみたら勘違いで十八分しかなかったものですから、この点、ほかの委員会でも取り上げてはきましたけれども、やはりこれからのODAは、要するに我々はこれだけたくさん援助しているんだではなくて、もっと質をよく考えて、しかもそれを毎年毎年円で何%伸びるというような考え方はやめてほしいと思います。  この点、ちょっと宮澤大蔵大臣もそういう話をしていましたけれども、実態的に実質価値は円が倍になっているわけですから、この辺をよくよく検討していただきたいと思います。その点、最後に大臣のお考えを承って、おしまいにしたいと思います。
  168. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろ関係省庁ございますから、御意見を承りつつ検討するということも大切であると思います。
  169. 安倍基雄

    安倍(基)委員 残念ながら時間が短過ぎたもので、大勢呼んだ人の積み残しが大分あるのですけれども、また、いろいろこの問題についてはお聞きしたいと思います。  これで終わります。
  170. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 岡崎万寿秀君。
  171. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は、五月三十一日から始まる第三回国連軍縮特別総会に関連して質問をします。  政府は、昨年四月、第二回の準備委員会にSSDⅢに対する日本政府の見解を提出されています。  昨年四月でございますから、その後大きな情勢の変化もございます。特にINF全廃条約の締結等、核軍縮に向けての大きな世界の流れも生まれているわけでございますが、この見解は特別、内容を修正になりますか、そのままですか。
  172. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 ただいま委員指摘のように、この日本政府見解というのは昨年の四月でございまして、その後軍縮の分野におきましていろいろ重要な進展があったことは事実でございます。したがいまして、当然そういった新しい情勢を踏まえて我が国として包括的な見解を述べるということになりますけれども、同時に、当時私ども日本政府見解として出しました点は依然として有効である、こう考えております。
  173. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 依然として有効、しかし情勢を踏まえて包括的な提案をするということですが、ここに書いてある内容がどうかという点についてお伺いしたいのですけれども、核兵器完全廃絶については「政治的宣言はそれだけで問題の解決を導くことにはならない。」こういうふうに書いてあります。  さらに、SSDⅢの優先的に審議されるべき課題として、核実験の全面禁止、NPT制度を拡大強化、化学兵器の全面禁止条約、こういうことなどが挙げられているわけですが、こういう中身が基調になるのですか。
  174. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 ただいま委員指摘の点につきましては、当然日本政府の立場として今回の特別総会においても主張するということになろうと考えておりますけれども、それがすべてということではないと思いますし、また今度の特別総会の議題は一応決まっておりますけれども、非常に漠然とした概括的なものでございまして、準備委員会そのものが必ずしもはっきりした議題、それから特別総会の方向につきまして合意することなく散会したということもございまして、五月に軍縮会議その他の会議で若干この軍縮特総についての意見交換が行われると思いますけれども、そういった情勢も踏まえて日本としての考え方を述べていきたい、こういうふうに思っております。
  175. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 情勢を踏まえて、それだけではない、何か提案をするような話です。では、どういうものかということなのですね。  今私が挙げた第二回の国連軍縮特別総会の外務省の資料を持ってまいりましたが、ほとんど同じですね。これです。これは八二年の前年に同じように政府見解を出されています。それから、国連特別総会での当時の鈴木総理の討論演説が載っていますが、核実験の全面禁止とか、核拡散防止条約制度の強化の問題とか、化学兵器の禁止の問題とか、ほとんど同じことを言っている。これだけでは何の前進もないわけなのですね。  したがって、唯一の被爆国として、今の世界の情勢がINF全廃条約に見られるような形で大きく核廃絶、軍縮、平和の方向に流れようとしているわけなので、こういう方向をさらに促進するようなSSDⅢにしなければいけないというふうに思うわけです。そういう役割をまた日本の政府は果たすべきだと思いますが、外務大臣、いかがでしょう。決意のほどを。
  176. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 総理みずからも出席をして我が国の軍縮に関する所見を述べたい、こういう意欲を持っていらっしゃいますから、したがいまして、当然今のところは軍備管理、さらには軍縮の促進、そうしたことについての強い我が国の決意というものが表明される。その前に今御指摘のとおりに米ソの会談がございます。そうした国際的な環境等々もございますし、それらも頭に入れて日本としては対処したい、こういう考えであります。
  177. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 軍縮のために取り組むということでございますが、その軍縮も核兵器廃絶ということ、被爆国だけにこれを緊急課題とするような構えがどうしても私は必要だろうというふうに思います。  日本のカトリック中央協議会が呼びかけてカトリック教会のアジア司教会議連盟に加入されている司教の二百五人の方々から、これは日本では一人を除く全司教だそうですが、四月二十一日、デクエヤル国連事務総長あてにSSDⅢに関しての連盟の要請文が出されています。そこの中には、核兵器を廃絶し、特に海洋配備の核兵器を廃棄することを議題に加えてもらいたい、その実行プランをつくることなど具体的な提案をされているわけなのです。  これこそ私どもも言っていますし、またカトリックの司教さんたちも言われている、日本と世界の良識の声だろうと思うし、SSDⅢへの期待だろうというふうに思うのですね。外相、この姿勢で取り組んでいただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  178. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 まず、唯一の核被爆国として核廃絶を当然日本としては国民の悲願として訴えるわけでございますが、究極的に核を廃絶すべきであるということを訴えまして、しかし、そのためにはどうやっていくかということが最も重要な点であろうというふうに考えております。
  179. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 これは政治的な大臣の見解を承りたいのです。
  180. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 これは政府としていつも申し上げておりますとおりに、究極的核廃絶というのが我が国の目標でございます。
  181. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 いつも議論するわけでございますが、究極的というのは今の緊急課題、中心課題という点を棚上げしちゃって遠い将来の問題にするという点では、そしてまた核兵器が世界の平和に役立っている、抑止力という意味で役立っているということでこれを肯定されるという点では、大問題だというふうに思うのです。  私は、アジアのカトリックの司祭さんたちのこの要望書について聞いたわけです。司祭さんでさえも核兵器の全廃、何も究極的と言っていませんよ、全廃、特に海洋配備の核を早く廃してほしい、そのための具体的な実行プランをつくってほしいと言っているわけですね。こういう要望にこたえるべきじゃないかということを政治家としての外務大臣に聞いているわけです。どうでしょうか。
  182. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 いろいろ宗教家は宗教家としての御見識のもとのそうした声明というものもあろうかと思われますが、事実、核というものは究極的に私たちは廃絶をしたいと思いますが、現在は核において抑止力というものも保たれておるということは、これは現実としてそう簡単に無視できないと思うのですよ。  そして、なおかつ我が国は、そうした抑止力の中における日本で、三原則で核は持っておりません、つくりません、持ち込ませませんけれども、アメリカの核の傘のもとにいる、こういうふうに言っておるわけですから、都合のいいところばかりつまみ食いしたようなことを言っておっては、やはり政治ではない。だから、そういう現実を踏まえながら、アメリカといたしましても、ソ連との間においてむだな果てしなき核軍拡というものについてのある程度の反省も、そうしたものがINFのグローバル・ゼロになった、こうやって私たちも解釈しておるわけでございますから、順次そのレベルを下げていただいて、そして究極的にはやはり廃絶である、これが私たち政策でございます。
  183. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ソ連の場合、私どもとの日ソ両党声明ができまして、はっきりと核兵器廃絶を緊急中心課題にするということを位置づけた上でやっているために、こういうINFの廃絶等々に向ける一つの前進がソ連の側からもつくられたように私たちは考えますが、究極的ということで、緊急廃絶という立場にお立ちにならないということは今繰り返し言われていますので、ここでそれ以上議論してもしようがありませんから、非核武装地帯の問題について入っていきます。  SSDⅡの演説で、鈴木元総理はこういうふうに言われています。「核拡散防止の見地から、適切な条件の整っている地域における非核地帯の設置をめざし、国際的努力が続けられることを望むものであります。」とにかく非核武装地帯について努力することを望むということですね。  その後、一九八六年に南太平洋での非核地帯設置条約が発効いたしましたし、また最近では、ASEAN諸国で同じ内容の非核地帯構想の実現を目指す努力が広がっているわけですね。これはSSDⅡにおける鈴木元総理の演説の方向に沿うものでありますし、外務大臣、やはりこの方向は歓迎すべきことだというふうに思いますが、そうお考えになりますか。
  184. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 鈴木総理が第二次の軍縮特別総会で述べられましたように、一般的に言いまして、適切な条件がそろっている場合におきまして、その地域の国々の提唱によりまして非核地帯が設置されるということは特に核拡散の防止に役立つというふうに考えております。
  185. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 私は具体的に聞いたのですよ。その条件がそろっているかどうかについてはその地域の人が決めるわけなんで、南太平洋地域、そしてまたASEAN地域で具体的にこの構想が実り、ないしは実ろうとしている、これは歓迎すべきことじゃないか。鈴木元総理の演説と同じ方向ではないか。そのことを外相に聞いているわけでございますが、いかがでございましょうか。
  186. 遠藤實

    遠藤(實)政府委員 まず、どういうふうなものが適切な条件であるかということは、一義的には当然その国の判断にゆだねるわけでございますけれども、例えばASEAN等につきましては、必ずしも意見が一致しているというふうには承知しておりません。  それから、当然のことながら、これはその地域の安全保障全体にかかわる問題であるというふうに考えております。
  187. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 総理が国連の舞台で演説したことでありながら、具体的にそういう方向で南太平洋、ASEANで起こってくることについて、大いに歓迎すべき方向だという姿勢をおとりにならないというのは、これは今の政府の姿勢としていかがなものかというふうに考えるわけです。  それと同じ中身ですけれども、特にNATO、これは軍事同盟ですが、これに加盟しているデンマークが、御承知だと思いますけれども、国会で核積載艦船の領海立ち入り禁止決議をやった。四月十四日です。このために今解散、総選挙という状況になっているわけです。  この決議を見ましても、特に核積載の有無について問いただすというものじゃなくて、とにかくデンマークというのは三十年間非核の政策をとってきた、そしてこのことを入港する艦船に通告するように求める、この程度のものなんですね。  これは日本の場合とどこが違うんですか。同じアメリカとの軍事同盟関係にある、非核政策をとっている。日本もニュージャージーその他でやりましたね。どこが違うのか、お答え願いたいと思うのです。
  188. 兵藤長雄

    ○兵藤説明員 お尋ねのデンマークの国会決議、デンマークの非核政策につきましては、第三国の、特に今総選挙ということで政治問題になっている問題でございます。日本政府といたしまして、これに対して解釈を下したりあるいはコメントをするということは差し控えるべきであると考えます。
  189. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 第三回国連軍縮特別総会に向けていろいろな動きがありますし、日本政府の方もそれなりの準備をされていると思います。今の、一つは米ソを軸としたINF全廃に見られるような核兵器廃絶の方向、もう一つは、私がここに例に挙げました非核地帯化のいろいろな各地における前進、これはやはり第二回以来の反核平和の世論の、そしてまた各層の努力の成果であろうというふうに思うわけです。  当然、SSDⅢに向けて、日本政府もそういう立場にしっかり立って努力すべきであるというふうに考えますけれども、先ほどから外相にお聞きしていますが、この非核武装地帯構想の非核化の方向の前進ということについては、これはやはり積極的に受けとめて、こういう立場で国連で頑張るというふうにすべきであると思いますけれども、いかがでございましょうか。
  190. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私は、日本というものは非常に大切な場所にいると思います。したがいまして、防衛の面におきましても、防衛そのものは我が国の自主判断に基づいてやっておりますが、極力、核というものが究極的にも廃絶されることは我々の悲願でありますし、また軍縮におきましても、何も大きなレベルの軍縮でなくたって、小さなレベルでも抑止と均衡というものは保たれるじゃないか、我々はそういうような考えにございますから、よその国はよその国としていろいろお考えがございましょうが、今いろいろな立場から申し上げまして、そうしたことがいいんだいいんだという、そうした立場にはないのが日本だ、まず私たちは自分たちの国、この国の平和と安全を祈りつつ、そしてそうしたもとにおいて世界に貢献しようというのが日本でございます。  したがいまして、非核地域の設定というものにつきましては、またその地域地域の事情もございましょうから、我々といたしましても、もう何でもかんでも賛成だというわけにはいかない立場にいるということも御理解賜りたいと思います。
  191. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 意見がありますけれども、時間が来ましたので、終わります。
  192. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 午後三時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後二時二十分休憩      ────◇─────     午後三時三分開議
  193. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  原子力平和的利用に関する協力のための日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席
  194. 河上民雄

    ○河上委員 大臣に最初にお伺いをいたしたいと思いますが、昨日は史上最悪の事故であったチェルノブイリ原発事故からちょうど二周年に当たっておりました。世界各地で、日本もまたその例外ではなかったわけですが、チェルノブイリが今日の原子力発電所にとって、また原発政策にとっていかなる教訓を与えたかが真剣に問われた一日であったと思います。  その被害はソ連が当初予想した以上に広範囲にわたり、かつまた今後も長期に及んでいくことが今日明らかになっているわけでございます。また、正確なる情報を提供しなかったためにかえって無用な不安を与えたということも一つの教訓であろうと思います。そして一番大切なことは、原発問題では自国の利益だけを追求してはいけない、国際的な協力が欠かせないということであったと思うのであります。地球は狭いわけであります。  そこで外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、外務大臣はチェルノブイリから何を教訓として今受け取っておられるか、御所見を最初に承りたい。
  195. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 原子力の平和利用ということは資源の少ない日本にとりまして大切なことでございます。したがいまして、今を去るもう三十年ばかり前から原子力基本法のもとで我が国の開発は進められてまいりました。もちろん我が国は独自の原子炉を持っておるわけでございますが、しかしチェルノブイリのああいうふうな事故が起こりまして、これはやはり常に原子炉というものに対しては、たとえそれが平和利用であっても安全に安全を重ねなさい、こうした大きな一つの教訓を与えたのじゃないか、そう思っていい、こういうふうに私は思っております。
  196. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、実は日本だけではなくて全世界的に近日中に答えを出さなければいかぬ問題だと思いますので、今の外務大臣の御感想もひとつ頭に置きながら、日米原子力協定につきまして質問に入りたいと思います。  日米原子力協定は、大臣の先般の提案理由説明にもありましたように、我が国の戦後の原発政策に一時期を画すものではないかというふうに言われているわけでありますが、我が党といたしましても、これを言いかえればいわば我が国がプルトニウム時代に入っていく一つの関門に立っている、こういう認識に立ちまして、この協定の審議に当たっては、数人の質問者を立てて後に悔いを残さないようにもうあらゆる角度から質問をいたしていきたい、このように考えている次第でございます。  私がきょう第一弾として、後にここにおられます辻さんにもお願いしたい、こう思っておるわけでございますが、まず基礎的な事実を確認したいと思います。したがってやや技術的なことになるかもしれませんけれども、順次お尋ねをいたしますので、的確にお答えをいただきたい、このように思います。  まず第一に、原発の燃料についてでありますが、原発の燃料でありますウランは、我が国はどこの国から買っているか。
  197. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、我が国ではウラン資源はそれほど多く賦存してございませんので、我が国カナダ、オーストラリアあるいはアフリカの諸国等々からウラン資源を購入いたしてございます。
  198. 河上民雄

    ○河上委員 今アフリカというお話がありましたけれども、アフリカの中のどういう国がその中に入っておりますか。
  199. 結城章夫

    ○結城説明員 我が国が海外から輸入するウランでございますが、合計約二十万ショートトンという数字になっております。このうちアフリカ関係は南アフリカでございまして、量的には二万一千ショートトンということになっております。
  200. 河上民雄

    ○河上委員 先般、南アフリカ共和国から買っているのではないかという質問が各委員から何度か出まして、それについては、そういうことはない、ないはずである。ただウランが濃縮されて日本に来た場合に、この部分は南アフリカから来た、この部分はカナダから来た、そういう区別はできない、技術的に不可能であるという御答弁があったはずでありますけれども、今の御答弁とこれまでのお答えとは大きく食い違っているように思いますが、いかがですか。
  201. 結城章夫

    ○結城説明員 先生御質問の件はナミビアからの輸入の問題だと思いますが、ナミビアからは我が国輸入いたしておりません。南アフリカから二万一千ショートトンでございます。  なお、アフリカはこのほかにニジェールがございまして、ニジェールからは二万ショートトンの輸入がございます。
  202. 河上民雄

    ○河上委員 もう一度確かめさせていただきますが、南アフリカと言う場合、その国名で言っていただけますか。
  203. 結城章夫

    ○結城説明員 国名は南アフリカでございます。(河上委員「南アフリカ共和国」と呼ぶ)そういうことでございます。
  204. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、今日までおっしゃっていたこととこれは明らかに食い違っているのでありますけれども、その点はいかがでございますか。もしあれでしたらもう一度そこら辺でよく打ち合わせてから返事してください。  それじゃ、時間が余りないので、次々に質問いたしますけれども、私どももよくわからないので、基礎的なことを伺うわけですが、ウランの原産地から日本がウランを買いまして、そして今度は濃縮をアメリカに頼みますね。その場合、そのウラン鉱石は原産地から日本へ来て、日本からアメリカへ渡すのか、それとも原産地から直接アメリカに渡して、ただ帳簿上処理しているのか、そういう非常に単純なことですけれども、伺いたい。
  205. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  ウランの流れでございますが、基本的には原産地で産出されて何らかの場所で転換されまして、それがアメリカに参ります。したがいまして、我が国に一たん入り、我が国からアメリカに行くという流れは基本的にはございません。
  206. 河上民雄

    ○河上委員 今回の日米原子力協定で明らかなように、ウランという核物質につきましてはアメリカの規制を受けることになっているわけですけれども、その根拠を明らかにしていただきたいのであります。  まず、海外で買ったウランがアメリカで濃縮されますと、アメリカ産濃縮ウランということになりましてアメリカの規制、監視を受ける、こういう形になるわけですか。
  207. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘のように、アメリカで濃縮を受けますと、アメリカのいわゆる国籍がつくということでアメリカの規制を受ける、こういうことになるわけでございます。
  208. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、逆に英国やフランスが取得をいたしましたウラン鉱石を英仏で濃縮いたしました場合には、アメリカの規制を受けることになりますか。
  209. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 日本輸入しております濃縮ウランの大体八割から九割はアメリカでございますが、残りあと一〇%くらいは実はフランスのユーロディフというところで濃縮を受けまして、その場合には、当然フランスの国籍がついてアメリカの国籍はつかないことになっております。
  210. 河上民雄

    ○河上委員 非常に常識的な話になるのですけれども、まず、なぜ日本の使用済み燃料を英仏に持っていかなければならぬのか。そして、それを日本がまた引き取るわけですね。英仏で濃縮したものもアメリカの規制をなぜ受けるのか。この条約上、その辺の関係を明らかにしていただきたいのです。
  211. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点でございますけれども日本―アメリカで普通の流れは、アメリカで濃縮して日本へ持ってきて、日本で原子炉で使う。使った使用済み原料をどこへ持っていくかというと、日本の場合、再処理工場はほとんど東海村の非常に小さな規模しかございませんので、大抵のものはイギリスあるいはアメリカの濃縮工場に持っていく、こういうことになるわけでございます。それを今度、再処理が終わりましたらプルトニウムとして日本に持って帰ってくる。これが一つの流れでございます。  第二の先生の御質問、ちょっと理解できないところがあったのでございますが、恐縮でございますけれども、もう一回おっしゃっていただければ……。
  212. 河上民雄

    ○河上委員 英仏でプルトニウムになったものを、先般来問題になっておりますように、今度は空輸で来るとかいうような問題があるわけですけれども、そのプルトニウムがなおかつアメリカの規制を受けるというのは、そのもとがアメリカ産であるということなんですか。その辺のことがどうもよくはっきりわかりません。
  213. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 どうも失礼いたしました。おっしゃるとおりで、もしアメリカで濃縮を受けますとアメリカの国籍がつく。その国籍は形を変えてずっと来ましてもアメリカの規制権が及んでくる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  214. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、今遠藤さんがお答えになりましたように、全くアメリカを経由しないでフランスで濃縮されたウランが日本へ来て使用済み燃料になってまたフランスで処理される、そしてプルトニウムができた場合、これは条約上アメリカの規制を受けないというふうに判断されます
  215. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  その場合、実は二つのケースがございまして、フランスで濃縮して日本へ持って帰ってきて日本で燃やして出ていく。その場合、燃やす場所、燃やす原子炉がどこかということになろうと思いますけれども、もし日本で燃やす原子炉がアメリカから輸入してきた、つまりアメリカから移転された原子炉の場合にはアメリカの原子炉を通過するものでございますから、アメリカの旗も立つ、フランスの旗も立つ、簡単に言いますとそういうことでございますが、もしそれが全く日本の国産原子炉で燃やした場合には、アメリカとは関係ございません。
  216. 河上民雄

    ○河上委員 その場合には、アメリカにその分についての移動その他について通告する義務はないわけですね。
  217. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 それはございません。
  218. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどお答えの中に、我が国がアメリカから年間三億ドルとおっしゃいましたか、ちょっと間違っているかもしれませんが、濃縮ウランを買っていると言われたのでありますけれども、この三億ドルというのは濃縮代なのか、ウラン鉱石代なのか、そういう区別は全くつかないのか。
  219. 結城章夫

    ○結城説明員 ウラン濃縮の役務でございますけれども我が国は現在アメリカ、フランスから役務を買っております。これまでの累計を申し上げますと、アメリカのエネルギー省、DOEでございますが、ここから約三万五千トンSWUという単位のものを買っております。一方、フランスの方からは七千トンSWUを購入しておるということでございます。  今先生おっしゃいました三億ドルというのはちょっとつまびらかにいたしませんが、恐らく現在アメリカから毎年買っておる濃縮ウラン役務の価格に大体相当するだろうと思われます。
  220. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどのお話ですと、今国内で商業用の原発が三十五基稼働いたしておりますが、アメリカから買っている濃縮ウランの量が、先ほど八割というか九割というか、私ども九割というふうに聞いておったのですけれども、九割といたしますと、残りの一割、不足している分はどういう手当てをしておりますか。
  221. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先ほど先生に申し上げましたように、あと残りの一割か一割付近と申しますのはフランスのユーロディフという会社で濃縮をしてもらっております。
  222. 河上民雄

    ○河上委員 そうすると、その一割、フランスから来ているものの中には、先ほど言いましたように、理論上は、アメリカのコントロールを受けるものとその必要のないものとが含まれている、こういうふうに理解してよろしいわけですね。
  223. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 そのとおりでございます。
  224. 河上民雄

    ○河上委員 それではちょっと伺いますけれども我が国はこれに関してはアメリカの最大のお得意先であるわけでして、我々の方から言えば感謝されてしかるべき顧客だと思うのでありますが、今回、この新協定に当たりまして、アメリカの国会あるいは有識者の間で、包括同意方式になる、そうなると核拡散につながるおそれがあるということがいわば心配の種として非常に強調されておるのでありますが、一体どこが問題点になったわけですか。
  225. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 アメリカの議会での反対というのは二種類あるわけでございますが、一種類はちょっと別にいたしまして、今先生おっしゃいました点につきましては、アメリカの議会の反対というのは、私はこういうことが背景ではなかろうかと思うわけでございます。  一つは、プルトニウムの商業利用というものはやはり核拡散につながるからよくないんではないかということ。それからもう一つは、日本は核不拡散については全然信用しているものだけれども日本に包括同意をもし認めたような場合には、ほかの国にもこれがずんずん広がっていって、ひいては核の拡散につながるのではないか、こういうふうな感じを、あるいは考えを持つ方々がアメリカの議会の一部にいた、こういうふうに承知しております。
  226. 河上民雄

    ○河上委員 アメリカのコントロールという点から見まして、我が国が核物質の平和利用という点について絶対の自信もあり信頼も受けるという立場にあるといたしましたら、今日、使用済み燃料については、再処理はイギリスフランス、特にフランスにですか依頼しているわけですね。もとをもっとフランスから買うということはできるのか。  それから今度は逆に、濃縮ウランをアメリカから買っておるなら、なぜアメリカに再処理を依頼できないのか、どうしてフランスに依頼するのか。
  227. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  ウラン濃縮の技術につきましては、アメリカの事業、具体的にはアメリカのエネルギー省の事業でございますが、これまで非常に歴史もあり、あるいは安定した事業をやってきておるということであるわけでございまして、我が国の電気事業者はそういうことからアメリカと契約をいたしておるわけでございます。  それから、それであるならば使用済み燃料をアメリカに輸送し、アメリカで再処理を依頼できないかということでございますが、これにつきましては、アメリカでも再処理事業につきましてはいろいろな経緯があったわけでございますが、今現在のところアメリカでは商業用の原子力発電所から出てまいります使用済み燃料の再処理はいたしておりませんので、その意味でアメリカはワンススルー、一回きり燃料を使う、そういう政策をとってございます。  それに対しまして、イギリスあるいはフランスでは使用済み燃料を再処理するという政策をとっており、再処理施設も建設、運転――イギリスの場合は商業用再処理施設につきましては現在建設中でございますが、イギリスフランスはそういう政策をとっておりますので、これまでもイギリス及びフランスに使用済み燃料を送り出している、そういうことでございます。  なお、もちろん国内におきましては動力炉・核燃料開発事業団が、規模は小そうございますが独自の再処理工場をつくっており、それからさらに、民間企業であります日本原燃サービス株式会社が青森県の六ケ所村におきまして商業用の国内の再処理工場を建設すべく準備中である、そういう状態でございます。
  228. 河上民雄

    ○河上委員 アメリカが再処理を行っていない、また貯蔵も行っていないということの理由の一つには、ウラン鉱石が豊富にあるので一回一回使い捨てにするということがあるのかもしれませんが、同時に再処理に伴う危険というのがやはり住民の反対を受けているというようなことはないのですか。
  229. 結城章夫

    ○結城説明員 今先生指摘のような、反対のために再処理をやらないということではないというふうに承知をいたしております。
  230. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、世界で原発が稼働している国は何カ国ぐらいありまして、その中でアメリカの規制を条約上大きく受ける核燃料を使用している国が何カ国で、それはどの国であるか。また、逆に核燃料を自国で製造し原発を稼働している国はどこか、お伺いをいたします。
  231. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生の今の御質問、第二の点からまいりますと、例えばカナダなんというのは自前で核燃料を持っておりますし、自分でいわゆる原子炉を持っている、こういう国がございます。もちろんアメリカもそうでございます。  アメリカが主として濃縮ウランを供給している国といいますのは、日本、韓国、それから台湾があろうかと思います。
  232. 河上民雄

    ○河上委員 先ほどチェルノブイリ原発事故についての外務大臣の所見を伺ったのでありますけれども、あの事故が起きました後、アメリカと原子力協定を結んだ国が何カ国ぐらいありますか。
  233. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  実は、アメリカは幾つかの国々と原子力協定を結んでいるのでございますが、ちょっとお答えからそれるかと思いますけれども、そのうち、日本のような意味での包括同意といったような原子力協定を結んだ国というのは、北欧諸国、スウェーデン、フィンランド、ノルウェー等でございます。これはチェルノブイリの前でございまして、チェルノブイリが起こりましたちょうど二年前からは、アメリカは原子力協定をどこの国とも結んでいるとは承知しておりません。
  234. 河上民雄

    ○河上委員 それで、先ほどちょっと質問して、何カ国かということをお答えいただくようにお願いしておりますが。
  235. 梅沢泉

    ○梅沢説明員 お答え申し上げます。  現在原子力発電を行っている国の数ということでございますが、国及び地域を合わせまして二十六でございます。
  236. 河上民雄

    ○河上委員 中国とアメリカとの間の原子力協定は、何年に結ばれて何年に発効いたしましたか。
  237. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  中国とは一九八五年七月に署名されまして、八五年十二月三十日で発効いたしております。
  238. 河上民雄

    ○河上委員 たしか私の記憶では、米中原子力協定では中国はアメリカの干渉を嫌いまして、協定上そういう規定を外したと思っておりますけれども、それはここで確認できますね。
  239. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 ちょっと私自身の記憶が不正確な点があるかと思いますけれども、中国の場合、御承知のとおり核兵器国でございまして、したがいましてアメリカという核兵器国と中国という核兵器国の交渉が行われたわけでございますけれども、結局、査察の件につきましてかなり問題が起こりまして、それで、友好的な訪問、こういったようなことで決着がついたのではないかというふうに記憶いたしておりますが、正確には追って御返事申し上げます。
  240. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、これは一つ質問を後に留保させていただきます。  なお、最初私がお尋ねいたしました、ウラン鉱石を南アフリカ共和国から買っていないという従来のお答えと先ほどのお答えとは違うわけですが、これについて明確なお返事をいただきたい。
  241. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず、南アフリカからは日本はウラン鉱石を買っているのでございまして、買っておりませんのはナミビアでございます。  なお、私、南アフリカの件につきましては、現在までの日本の取引はともかくといたしまして、今後の方針といいますか、あれにつきまして一言御返事というか御説明をさせていただきたいと思うのでございますけれども日本政府といたしましては、ウラン鉱石の輸入も含めまして、昭和六十一年十一月六日付で、アメリカのとりました対南ア経済制裁措置の効果を損なわないようにということを電力業界にも要請してまいったわけでございます。  今後とも南アからのウランの輸入については慎重に見守ってまいりたいと思っておるわけでございますが、我が国の電力会社は、この要請以降、新規の南ア産ウランの購入契約は締結していないと承知いたしております。
  242. 河上民雄

    ○河上委員 そちらの方はよろしいですか。
  243. 松井隆

    ○松井政府委員 御指摘の南アからの購入でございますけれども、確かに五十五年以前には契約が存在しておりまして、それで購入したということはあるようでございますけれども、五十五年以降につきましては新たな契約は一切締結されておらないという状況になっております。
  244. 河上民雄

    ○河上委員 従来の御答弁はその辺がちょっとはっきりいたしませんで、見分けがつかないという御答弁だったと思います。  それで、もしそうであるとするならば、新たな契約はしてないけれども過去の契約に基づいて依然として輸入している、こういうふうに理解するわけですか。  そして、その場合は何年になったら一切輸入しないという形になるか、そこを言明していただきたい。
  245. 松井隆

    ○松井政府委員 私どもの承知しているのは、五十五年以前の契約においては、大部分がもう既にそれでもって日本に入ってきておる、そういうふうに承知しております。それで、五十五年以降はそういう契約は一切してないということになっております。
  246. 河上民雄

    ○河上委員 ちょっともう一度、くどいようですけれども、契約分はもう既に入っておって、契約に基づいてその後入っているという状況はないと断言できるのですか。通関統計上それがまだ計上されているという状態が続いているのかどうかということを私は伺っているのです。
  247. 松井隆

    ○松井政府委員 ちょっとそこのところ、詳しい資料が今手持ちにありませんものですから、調査させていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。お願いいたします。
  248. 河上民雄

    ○河上委員 それではこの点もまた後の機会に確認させていただきまして、きょうは時間がありませんので、先へ移ります。  現在稼働している我が国の原発の年間使用燃料の量はどのくらいでございますか。その点につきましては先日の本会議で、英、仏に再処理を委託している使用済み核燃料のプルトニウム量が二十五トン、現在日本にあるプルトニウムの量が二トン、日本で再処理した場合の量が三ないし四トンと答弁があったように記憶いたしておりますが、確認してよろしゅうございますか。
  249. 結城章夫

    ○結城説明員 お答えいたします。  まず、今我が国原子力発電で使っております天然ウランの量でございますが、昭和六十二年度におきまして年間大体六千ショートトンでございます。  それから、先生、プルトニウムの量をおっしゃったわけでございますが、今我が国が持っておりますのが約二トンという数字は正しゅうございます。  それから、イギリスフランスに再処理を頼んでおりますけれども、その結果回収されますプルトニウムの総量は二十五トン程度でございます。  それからさらに、将来青森県の六ケ所村におきまして日本の商業用再処理工場ができますけれども、この再処理工場が動きますと大体毎年四トン程度のプルトニウムが回収されることになります。
  250. 河上民雄

    ○河上委員 そんなに大量の核燃料が果たして現在の電力需給の見通しからいって必要なのかどうかということは大変疑問があるところでございまして、先日、本会議でもその点を御質問いたしたわけでございますが、高速増殖炉の実用化の見通しはどういうふうに理解したらよろしいのか。  私どもの承知しているところでは、ちょっときょうはもう余り時間がありませんので、数字は申し上げませんけれども、コスト面で大変な負担がかかるほか、使用するナトリウムと水がまじり合った場合大爆発の危険があるということで、従来の原発よりも高速増殖炉というのは経済的には非常に効果はあるわけですけれども、つまり十のものを使用いたしまして使用済み燃料をまた回転させれば十二になる、だんだんふえていくということで、その点だけ言えば非常に効率がいいわけですけれども、そのかわりちょっとしたミスで大爆発が起こる危険があるとか、経済的に大変コストが重いというようなことがあります。  それにもかかわらず高速増殖炉を実用化していくという方針、またその見通しというものは変わらないのか、その点、伺いたい。
  251. 松井隆

    ○松井政府委員 ただいま先生指摘のとおり、高速増殖炉というのは平たく言うと使った燃料以上の新たな燃料が生産されるという非常にすぐれたものでございます。それで世界各国、特にヨーロッパと日本でございますけれども、開発をやっておるわけでございます。  日本におきましては、先生御案内のとおり、こういうものはステップ、ステップで開発を進めていくという方針でございまして、最初日本原子力研究所で核物理の研究を行う臨界実験装置をつくりまして、さらにそれをベースといたしまして今大洗で高速増殖炉の実験炉、常陽と称しますけれども、それが運転しております。これはあくまでも実験炉でございまして、さらにその次の炉をつくるための設計データをとるというようなことでございます。  その成果を踏まえまして、現在敦賀で「もんじゅ」と称する高速増殖炉、原型炉と言っておりますそれをつくっております。これは昭和六十七年に運転開始という計画でございます。  それから、さらに我々といたしましては、そういった幾つかのステップを経て大体二〇二〇年から三〇年ごろ、その辺を目標に置きまして着実に幾つかの炉をつくりながら、もちろん経済性が担保され、かつまた安全性も十分できるという炉を開発すべく、今努力をしておるところでございます。
  252. 河上民雄

    ○河上委員 二十一世紀に向けて原発というものを推進していこう、そういう方針のように承るわけですが、チェルノブイリ以降原発推進政策に対しまして世界各国で、特にヨーロッパでこれに対する反省が起きていることは御承知のとおりでございまして、先般本会議でも私はその点を強調いたしました。  一体、原発はどこまでふやすおつもりなのか。現在、電力のうち原発に依存している部分は大体三〇%台になりまして、外務大臣も近畿の方ですからよく御承知だと思いますが、関電ではもう既に四〇%を超えているわけです。今おっしゃった二十一世紀のころには恐らく六〇%になるのじゃないか、こういうふうに言われているのですが、関係者の間でもちょっと六〇%は多過ぎるのじゃないかという説も非常に強まっております。  一体どこまでふやすのか、ここらでひとつ立ちどまって考える必要があるのじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  253. 松井隆

    ○松井政府委員 原子力をどういうふうにふやすかということにつきまして、昨年の六月になりますけれども、約一年間かけまして原子力委員会で専門部会の方々多数の方をお集めいたしまして検討いたしました。  そこでの結論は、まず二〇〇〇年、昭和七十五年になりますけれども、そこでは大体五千三百万キロワットくらいにしようということは策定されてございます。なお、それから先の話でございますけれども、これは多少まだ不確定要素があると思いますけれども、それにつきましてそれぞれの量から申し上げますと、先生御案内のとおり現在約三〇%近い電力が原子力で賄われておるわけでございますけれども、二〇〇〇年には五千三百万キロワットで約四〇%、それから先ほどの二〇三〇年でいきますと約一億キロワットで約六〇%、こういう考え方をとっております。  なぜそういう考えをとっているかということにつきましてちょっと御説明させていただきますと、電源の開発を進めていくにつきまして幾つかの原子力以外のものがあるわけでございまして、それをどういうふうに考えるかということでございます。  まず火力でございますけれども、石炭による火力は、確かに現在経済性の面では原子力発電に次ぐ電源であるというふうに言われております。ただ御案内のとおり、これは環境保全の問題がございます。ヨーロッパでよく言われている酸性雨の問題とか、あるいはさらに将来的には、たくさんふえる場合には炭酸ガスがふえて、それによるいわゆる地球の温室効果と申しますか、そういう問題があるのじゃないだろうかということで、そういった環境保全に配慮しつつ開発を進めるということが必要かと思っております。  それからLNG火力でございますけれども、これは石炭あるいは石油に比べまして環境影響の少ないエネルギーというふうに考えておりますけれども、発電原価が多少高いという難点があるように思っております。  それから石油でございますけれども、これは先生あるいは御案内かもしれませんが、IEAという場がございまして、そこでの閣僚理事会レベルでの国際的な合意として、建設中のものを除いて原則として新設は行わないようにしようではないか、こういうような合意もございます。  さらに水力につきましては、先生御案内のとおり経済的に見合うような大規模の水力発電施設というのは日本ではもうできません。  そんなようなことを考えまして、あと原子力、そういうもののベストミックスと申しますかそういう形で進めなければならないのではないかというふうに考えているわけでございます。そういう意味合いで原子力発電はやはりベースロードとしては非常にすぐれた能力があるということで、ベースロードを原子力発電が賄うという形で進めるのがよろしいのじゃないか、そういうような考えから大体そういったような規模の計画というものが出てくるわけでございます。
  254. 河上民雄

    ○河上委員 他の電源につきましてはいろいろな難点がある、原子力発電の場合には難点が少ないというようなお話でございますけれども、それは実は原発という施設の外側における莫大な負担と、そしてまた危険というものを計算に入れずにおっしゃっているような気がいたしてならないのであります。  例えばプルトニウムを日本に運んでくる、今度新しい協定では空輸でなければならないということになりますと、私は先般本会議でも質問いたしましたように、アメリカの権威あるところで計算したところでも、年間四十回も飛行機が飛ばなければならぬ、毎週一回そういう危険なものを運ぶというそれが何年も続いた場合に、確率上たった一回飛行機が墜落しても大変なことになるわけです。そういうものはコストの中に入ってないのじゃないか。  それで、きょうの毎日新聞の社説に「プルトニウム空輸を考える」というのがございまして、これだけ住民の反対が強いならば従来どおり海で運んだらどうかという提案がなされておりますが、これは今度の協定上可能な道であるのかどうか。そしてまたその方がいいという、あるいは代案として幾つかあるうちの一つのチョイスとして考える用意があるのかどうか、伺いたい。
  255. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 プルトニウムを英仏から持って帰ります場合に考慮すべき点としましては二つあろうかと思います。一つは、プルトニウムの核ジャックといいますか、いわゆる物質防護の点と、それからもう一つは安全性の点、この二つの点だろうと思います。  そういうことを踏まえまして、現在審議中の協定では、実施取極附属書の五で北極圏等々のルートを通る空輸については包括同意である、こういうふうに書いてありまして、ほかの場合、では、どうかというと、これは別に包括同意ではなくてそれぞれの許可というか話し合いがつけばほかの方法でもいい、したがいまして船によります方法も可能性としてはある、これは個別同意の対象になるわけでございますけれども、あるわけでございます。
  256. 河上民雄

    ○河上委員 理論上そういうことであるということになりました場合に、条約上それも可能である。  それでは、政府としてはその可能性を排除せずに今後考えていくかどうか。これからのことかもしれませんが、それは新協定を結んだ以上排除するというお考えか。
  257. 松井隆

    ○松井政府委員 ただいま外務省から説明があったとおり、プルトニウムの航空輸送の場合には包括同意である、それから、それ以外の方法については個別同意、具体的には海になると思いますけれども、それは個別同意である、こういう仕組みになってございます。  そういう意味では、私ども、もちろん第一義的には確かに核ジャックの問題とかいう問題から航空輸送が望ましいとは考えますけれども、海上輸送につきましてもやはりオプションとしては、選択肢としては持っていたいというふうに考えております。
  258. 河上民雄

    ○河上委員 その点、一つはっきりしたように思います。  危険という点でいいますと、空輸に伴う危険だけではなくて核エネルギーの施設における事故というものも十分考えなければならぬと思うのです。 従来の御説明ですと、原発あるいは原研とかそういう機関が責任を持ってそういうものを防ぐ、また、事故が起きた場合には対応するというように伺っておるのでありますけれども、その施設内で影響がとどまっておればそういうことでいいのかもしれませんが、さらに何十キロと広がった場合、とてもその施設だけではできないということになりますと、これは消防庁の方の関係になるんじゃないかと思います。  消防庁はこういう原発その他核エネルギーの施設に伴う事故についてどういう用意をしておられるのか。万が一の場合に、例えば放射能がありますから、ただ今までの火消しとは違うわけですが、そういう準備をちゃんとしておられるのか、その予算を十分とっておられるのか、その点ちょっと明らかにしていただきたい。
  259. 原純一

    ○原説明員 お答え申し上げます。  原子力発電所等その周辺地域における防災対策につきましては、昭和五十四年三月のスリーマイルアイランドの事故を教訓といたしまして、その後、中央防災会議及び原子力安全委員会決定を踏まえまして、昭和五十五年九月に、災害対策基本法に基づく地域防災計画のうち、原子力災害の防災対策関係についての見直しを図るよう通知いたしまして、現在、関係地方公共団体においてはこれに基づいた地域防災計画が策定されているところでございます。  この地域防災計画におきましては、原子力災害に関する災害予防、それから災害応急対策及び災害復旧についての具体的な計画を定められておりまして、万一の原子力災害時における住民の安全確保に備えているところでございます。  なお、予算関係の御質問がございましたが、原子力災害対策の予算につきましては、各地方公共団体におきましてどの程度予算を組んでおりますか、その状況までは現在把握している状況ではございませんけれども、消防庁関係では、原子力災害の指導等に要する経費といたしまして、六十三年度百七十六万円余りでございます。
  260. 酒井彰

    ○酒井説明員 原子力防災関係の科学技術庁関係予算につきまして、追加説明させていただきたいと思います。  六十三年度におきましては、科学技術庁関係の防災対策関係予算といたしまして、十五億四千百万円、対前年度一六%増の予算を計上してございまして、この予算におきまして防災対策関連の調査研究実施、緊急時連絡網の整備、それから緊急時対策用資機材の整備、医療体制の整備、防災訓練、教育の実施等を図っております。
  261. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、お聞きになっていておわかりになったと思うのですけれども、まことに微々たる予算でございますし、チェルノブイリの事故についてのソ連側のその後の発表によりましても、こういうことがあるのかどうか知りませんが、日本を初めとするロボットを消火なんかに使ってみたけれども、頭脳部分を放射能によってやられて全く役に立たなかったというような報告もあるわけでして、果たして今のお金で、そういうさらに進んだ核の事故のいわば消火作業というものに対する対応があるとはとても思えないんですね。  原発は安全だ安全だと、こういうことで、実はけさの新聞などここにちょっと持ってきましたけれども、一面こうやって、これは各紙みんなそうです。一面「原子力発電所 私たちが「安全」を守っています。」こういうのがありまして、ちょっとここにはロボットの写真はないですけれども、こういうのを各紙みんな一斉にやっております。  しかも、私が本会議で質問さしていただきましたが、科学技術庁長官が、この国際原子力機関の総会に向かって日本として新たなる提案をする、そういうことを約束しておられるのですけれども、きょうの新聞によりますと、「国際PA(パブリック・アクセプタンス=社会的受容)基金の創設を提案する。」こうなっているのですね。そのために日本は一億円拠出するというんです。  そういう宣伝のために一億円拠出する前に、まず安全対策のためにもっとしっかりとした体制をつくらないと、これはえらいことになるのじゃないか。そういうこともやらずにこういう国際基金を出すというのは、果たしていかがなものだろうか、外務大臣、いかがでございますか。そういうのはやはりちょっと間違いだというふうにお考えになりませんか。
  262. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そうした基金を出すということをまだ私も聞いておりません。
  263. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、この記事は間違いである、またそういう腹案もまだ検討されていない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  264. 松井隆

    ○松井政府委員 その新聞の記事につきましては、私どもも全く承知してございません。  先ほど先生の御指摘で、私ども大臣である伊藤科技庁長官が申したのは、IAEAではなくてOECD・NEA、OECDの原子力機関、そこを言っております。訂正さしていただきます。
  265. 河上民雄

    ○河上委員 それはちょっと私が言い間違えましたけれども、そうすると、こういうPRのための国際基金をつくる考えは全くない、つくらない、少なくとも十月のIAEAにはそういう提案はしないとここではっきりおっしゃっていただけますか。
  266. 田中伸男

    田中説明員 御説明いたします。  基金の構想につきまして新聞記事が出ておりますけれども、私ども通産省の資源エネルギー庁でさまざまな形でのパブリックアクセプタンス向上のための措置をつくったらどうかということでいろいろな検討をしておる次第でございまして、その中の一つとして国際的な理解促進の一環としてそのような計画を考えている段階でございまして、まだまだこれからいろいろな先生方の御意見も聞いた上で、いろいろな側面から検討を進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  267. 河上民雄

    ○河上委員 私が今伺っているうちにまたいろいろ政府の姿勢がくるくる変わってくるような感じでございまして、一体どちらの御答弁を信用していいのかわからないのですが、そういたしますと、この点につきましてははっきりしたお答えをいただけなかったということで、私は次の機会にももう少しはっきりした統一見解を求めたいと思います。今はもうあと五分しかないのでお答えは難しいと思いますが、お願いをしたいと思います。  特に青森県の下北半島では、もう核に関するいろいろな施設が軒並み並ぶような形でございまして、津軽海峡冬景色という歌が一時はやりましたけれども、これでは本当に津軽海峡核の冬、冬景色になりかねないのでして、そういったことがあっては大変なことでございますので、先ほど自治省の方では目下検討中ということでしたが、ひとつ安全対策を一日も早くはっきりとした姿で御報告いただきたいと思います。  まだほかに伺いたいことがありますが、もう時間がありませんので、割愛をいたしまして、最後に外務大臣にお尋ねしたいのでございますが、ことしは国連軍縮特別総会第三回ということでございまして、第二回のときに鈴木総理大臣原子力問題について提案をされておるのでありますが、今回の軍縮特別総会において、原発を含めた核問題について竹下総理大臣から一つの提案なり見解が表明されるのかどうか。また、かつて中曽根総理はサミットで核の事故早期通報についての問題を提起されておったように思うのでありますが、そういう点から見て、カナダ・サミットで竹下総理がそうした何らかの現段階に立っての新しい提案をされるおつもりがあるかどうか、これはひとつ外務大臣から伺いたいと思います。
  268. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 カナダ・サミットのときには、モスクワにおける米ソ会談が大体どういう成果を上げたかというふうなこともございましょう。そうしたことで、西側としては何が最重点事項であるかというふうな話も、そうしたときにまずこれは大体主催国が中心となって議題を決める次第でございますので、したがいまして、いろいろ核の問題あらばそうしたことをも含めた話も出るであろうと私、想像します。  また軍縮におきましては、私たちといたしましては、あくまでも軍備管理の問題、さらには軍縮の問題、そして平和に対する協力の問題、こうしたことを現在日本としては大きな柱としておるわけでございますから、かつて鈴木総理も核の問題を具体的にお話しになったというふうな経緯も踏まえ、また、きょうこうやって河上委員を初め、皆さん方に核物質の防護等々に関する安全、いろいろな問題で御審議を賜っておるわけでございますから、こうした国会論議等も踏まえまして、我々といたしましてはあらゆる検討を加えた後、そうした問題も多分軍縮会議においても私たちの話に加えてもよい問題ではないか、今後いろいろ検討してみたいと思っております。
  269. 河上民雄

    ○河上委員 それでは時間が参りましたので、二、三点積み残しがございますけれども、また後日に譲らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  270. 浜野剛

    ○浜野委員長 代理 神崎武法君。
  271. 神崎武法

    ○神崎委員 日米原子力協定の改定交渉に六年間を要しておるわけでございますが、日本側は核燃料の再処理のための米国の包括的同意を取得するために、またアメリカ側は核の不拡散に最大の関心を有していたように思われるわけでございますけれども、交渉が難航した理由及び問題の中心は一体何なのか、まずこの点からお尋ねをいたします。
  272. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 私自身この交渉の一部に参加いたした者としまして、経験も踏まえまして御説明申し上げたいと思います。  なぜこんなに時間がかかったかという点でございますけれども、まず一つは、今先生指摘の包括同意とアメリカの要求しております規制権、これをどうやって一つの協定の中に盛り込んでいこうかということで、当初は、何とか現行日米協定の範囲で、つまり行政取り決めの範囲で何とかできないかといろいろとお互いに議論し合ったわけでございますが、ある段階から、到底これはだめだ、新しい条約のもとでの処理しか方法はない、こういうことでありまして、前者に大体二年少々かかったやに記憶いたしております。  後者の、いわゆる条約交渉に移りましてからどういうふうなことが問題になったかという点でございますけれども、現行の協定はかなり片務的な協定でございまして、とにかくアメリカの規制権がかかっていて、日本からはアメリカに向かって規制権がかかっていかないという協定であるわけでございますが、それを何とか双務的なものに変えたいというふうな点が一つ。  それから包括同意、これは日本がとりたかった最大の点でございますけれども、包括同意が安定的なものでなくてはいかぬ、どうやったら包括同意の安定性あるいは長期的な予見性を確保できるのかという点が二つ。  それからIAEAの保障措置の点でございますけれども、IAEAの保障措置を第一義的に日本としては盛っていきたい。それではどういうふうにしたらIAEAの保障措置が第一義的なものとして確保できるかというふうな点。  そういったところに実はかなり技術的な点がございまして、それに大体一年半あるいは二年ぐらいかかったかな、こういう感じでございます。
  273. 神崎武法

    ○神崎委員 政府は、核燃料サイクルの確立はエネルギーの安定確保のために必要不可欠である、こういう御主張をなさっておるわけでございますけれども、チェルノブイリ事故後の原発建設停滞でウラン価格は当分安値が続くであろう、大方の専門家はこういうふうに見ておるわけでございます。また、プルトニウムを燃やす高速増殖炉の実用化につきましても、先ほどの御答弁でも二〇二○年から三〇年ごろと相当おくれる見通しであるというふうに見られるわけでございます。  このように我が国の核燃料サイクルを取り巻く内外の環境が必ずしもよくないという状況下で本協定が締結されたわけでございますけれども、その意義をどのようにお考えになっていらっしゃるのか。
  274. 松井隆

    ○松井政府委員 先生指摘のとおり、確かに天然ウランの需給関係につきましても、現在緩和基調であると思います。それで、まだしばらくは安定基調で続くというふうにも考えております。しかし、御案内のとおり、天然ウランについても日本は資源がないという意味では同じでございまして、日本としてはほとんどないというのが現状でございます。そういう意味において、原子力を推進するについても、やはりウランについては海外から輸入しなくちゃいけない、こういう状況であることは間違いないところでございます。  日本としてはそういうことがありますものですから、当初からそういったウラン資源を有効に活用しようという考え方、それで、かつまたそれができればいわゆる供給の安定性も高まる、こういう問題もございまして、使用済み燃料は再処理をする、そこからプルトニウムとウランを取り出す、それを再利用する、リサイクルする、こういう路線は昔からとってきているわけでございます。  それで、今先生FBRの御指摘がございましたけれども、確かにFBRは、今我々の考えているのは二〇二〇年から二〇三〇年、その辺を目標で進めております。しかし、それを進めるについても、やはり我々としてはステップ・バイ・ステップでなるべく自主技術で進めたいというふうに考えてございまして、先ほどちょっと申しましたけれども、臨界実験装置から始まりまして、実験炉、それから原型炉、実証炉、多分これは複数になると思いますけれども、そういったステップを経て初めてちゃんとしたFBRを実用化するという路線をとっております。  やはり原子力というのは話が長いものでございますから、一つのものをつくるためには十年ぐらいのバンドがかかるわけでございます。そういうステップをとっていくためには、やはりどうしてもプルトニウムを取り出すために再処理をしなくちゃいけないということになります。それで、御案内のとおり、再処理につきましては現在動燃の東海村で、小さい規模でございますけれども運営を続けております。さらに、これから日本としては、民間会社が青森県に八百トン規模の再処理工場をつくろう、こういう計画を持っております。  そういう意味では、再処理を進める、あるいはプルトニウムをそういった高速増殖炉等で利用する、そういった体系はやはりつくる必要があるわけでございます。そのためにはやはり現在の日米協定では問題があったわけでございます。これはここにいる宇野大臣がまさにそのときのあれでございまして、昭和五十二年になりますか、当時宇野大臣が科学技術庁長官でおられまして、ちょうど再処理を始めようというやさきにアメリカからストップがかかったわけでございます。  そこで、いろいろと長い交渉がございまして、宇野大臣のおかげで何とか、条件がついたものの日本でも東海村の再処理工場が運転できる、こういうふうになったような次第でございます。  それはどういうことかと申しますと、アメリカ側の同意がなかったらば再処理工場は運転できない、こういうメカニズムだったわけでございますけれども、今回の協定になりますと、そういうものが包括同意という形になりますものですから、事前に一定のルールを決めておけば、そういった再処理につきましてもできますし、それからプルトニウム利用についても可能になってくるということで、それらが包括同意のメリットでございまして、そういうことをすることによって日本としてはこれから着実に原子力開発利用を進めるための重要な一つの枠組みができた、こういうふうに考えている次第でございます。  それから、同時にもう一つの問題は、やはりそういったプルトニウムを利用するについても、世界的に見た場合に、核の不拡散ということに日本は一生懸命努めなければなりません。そういう意味では、今回につきましては従来より新たな規制権が加わったということで、世界、ワールドワイドの核の不拡散体制にも日本協力する、こういった大きな二つの意義があろうか、こういうふうに承知しておる次第でございます。
  275. 神崎武法

    ○神崎委員 核燃料の輸送、再処理などにつきまして、現行の個別同意から、新協定では包括同意方式になって、安定的な我が国の核燃料サイクルが確立されたということになるわけでございますけれども、新協定によりまして米国側から新たな規制を受けたものはないのかどうか、その上で現行協定と新協定との違い、これについて簡単に御説明いただきたい。
  276. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  新協定によりまして、若干というか、アメリカ側のというか、これは双務的でございますから、どちら側とも言いようがないわけでございますけれども日本に関します限り規制権の拡大がございます。     〔浜野委員長代理退席、甘利委員長代理着席〕  若干申し上げますと、一つは、再処理自身は前からも同じだったわけでございますけれども、今度の新協定によりますと、移転されたものばかりではなくて、つまり、例えばアメリカから輸入したあるいはアメリカから移転されました原子炉でもって生産されましたようなものの再処理にも規制権がかかる。  それから貯蔵につきましても、プルトニウムとか高濃縮ウラン等々の貯蔵につきましても規制権が若干拡大されるということ。  それから、これは全く新しい点でございますけれども、ウランの二〇%以上の濃縮、実は日本はウランの二〇%以上の濃縮というのは研究目的以外は全く考えていないわけでございますけれども、いわゆる高濃縮につきましても規制権が拡大される。  それから、最後になりますけれども、管轄外移転、つまり日本の使用済み燃料を外へ持っていくというときも、このいわゆる派生物質につきましても規制がかかる、こういうことになりまして、規制権の拡大はあるわけでございますけれども、他方、松井局長の方から御答弁申し上げましたように、同時にこれらが高濃縮ウランを除きましては包括同意になるということで、規制権の拡大と包括同意とが非常にバランスされた結果の協定であろうかと思っております。
  277. 神崎武法

    ○神崎委員 米国と欧州各国との間の原子力協定にはそれほど厳しい規制はない。今回の本協定と欧米の協定を比較いたしまして、ここに食い違いがあるのかどうか、その点はいかがでしょうか。
  278. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘のヨーロッパでございますけれども、ヨーロッパの場合、二つに分けてお答え申し上げたいと思います。  一つはユーラトム。ユーラトムはユーラトム全体としてアメリカと協定を結んでおります。他方、北欧諸国につきましてはアメリカと個々の協定を結んでおるというふうな状況になっております。  そこで、まず北欧との関係でございますけれども、一九八四年にスウェーデン、ノルウェー、フィンランドの三つの国とアメリカは協定を結びまして、これらの協定につきましてはかなり日本の協定と似ているのでございますけれども、アメリカのというか、規制権は拡大されてきた、しかしながら包括同意がある、そういうようなことで日本と比較的似通っている協定ではないかと思っております。  他方、第二番目のユーラトムでございますけれども、実はユーラトムというのは相当程度原子力サイクルは域内でやられておりまして、アメリカとの関係日本とか北欧諸国ほどは強くないのでございます。いずれにしましてもユーラトムの現在の協定は、日本の協定と比べますとかなり甘いというか、再処理とか形状・内容の変更あるいは高濃縮等々についての規定はございません。  しかしながら、アメリカはユーラトムとの間にも新しい協定を締結したいというふうなことで今話が始まりかかっておる。どういう段階にあるかと申し上げますと、さっき私が申し上げましたような、日本が五年かかった真ん中ぐらいの二年半目ぐらいの状況かなという感じでございまして、むしろユーラトムとしましては、アメリカもでございますけれども、日米間の協定の成り行きを見ていたということでございます。
  279. 神崎武法

    ○神崎委員 我が国の非核三原則は国是でございますし、原子力平和的利用に限定されているところでございます。国際原子力機関の国際査察も積極的に受け入れておりまして、原発所有国の中では優等生である、このように言っても過言ではないと思うわけでございます。  にもかかわらず、今回の協定の米国の議会での審議等見ますと、米国内で核不拡散の立場から相当強力な反対論が起こったということがあるわけですが、これについてどのように認識しておられるのか。  さらにまた、本協定で米国製の濃縮ウランの行方に対して米国が徹底的に監視、管理をする権限を持つということは、米国の原子力政策、核支配に組み込まれるのではないか、この協定の中で我が国の自主性、主体性というものはどのように確立されているのか、その点を含めてお尋ねをしたいと思います。
  280. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず、先生の御質問の第一の点でございますけれども日本は核不拡散の優等生であるにもかかわらず、どうしてアメリカで反対が起こったのだろうか、この点でございますけれども、本件につきまして私の理解は、確かにアメリカ側のこの協定に反対しました方々の中にも、日本は優等生だということは承知しているわけでございますが、他方、アメリカ自身は実はプルトニウムの商業利用ということはしばらく延期しておるわけでございまして、プルトニウムの商業利用というのは反対である、やはりプルトニウムというのは、悪と言ってはあれでございますけれども、非常にそういうものだから商業利用には反対である、こういうこと。したがいまして、日本とかなんとかに関係なしにプルトニウムの商業利用は反対ということ。  もう一つは、もし優等生の日本にそういったような包括同意の権利を渡しますと、ほかの国に対しても、みんな優等生だと当人は思っている国ばかりでございますから、ほかの国に対しても渡さざるを得ない、そういった国への波及効果を恐れる、こういうふうなところから、日本の優等生はさはさりながら、やはりプルトニウムの再処理に対する包括同意はいかぬのだというふうな意見が一部持たれたことは事実だろう、そういうふうに理解しております。  それから第二番目の御質問の、アメリカがぎゅんぎゅん日本を縛ってくる、アメリカのいわゆる原子力政策、核支配に基づくおそれがあるのではないかという点でございますけれども、これはやはり核不拡散そのものという観点から見ていく必要があろうかと思います。  したがいまして、これにつきましてはNPTの思想そのものにつながるのではないかという感じがいたします。しかしながら、同時に今回の協定自身によりまして、包括同意ということで日本の権利も確保されたわけなので、そういう観点からいきますれば、日本の核燃料サイクルはより安定的な基盤に置かれるようになった、こういうことが言えようかと思います。  なお、第二番目の点につけ加えて申し上げますと、日本は豪州とかカナダとかとも原子力協定を結んでおりまして、これらの国からは天燃ウランを買っているということでございますけれども、豪州とかカナダも自分の輸出した天然ウランにつきましては、豪州なりカナダのいわゆる旗が立ってずっと規制権を及ぼしてくる、こういうことで、やはりこれも核不拡散の一環であろうかと思っております。
  281. 神崎武法

    ○神崎委員 この実施取極の方を見ますと、三条二項ですか、「核不拡散又は国家安全保障の見地」からの同意の停止権というものを認めているわけでございます。核不拡散とか国家安全保障という極めて幅の広い概念で一方的にこれを停止されるということが今後考えられるのではないかという点でございます。  また、アメリカの政権交代によりまして核政策が変更した場合に、この国家安全保障という観点から停止するというように、新協定の影響が今後出てくるのではないかというふうに懸念されるのですが、その点はいかがでしょうか。
  282. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生指摘実施取極の第三条二項によりまして、包括同意の停止というのが確かに規定されてございます。しかしながら、この原子力協定を結びました背景といいますのは、やはり日米間の基本的な信頼関係があろうかと思います。したがいまして、そういった信頼関係をまず前提にしているものだということを申し上げたいと思います。そういうようなことから、包括同意が停止されるというようなことは極めて例外というか、非常に万が一のケースでございます。  しかしながら同時に、その万が一のケースにつきましても極めて厳格な条件が付されております。例えば日本がNPTに違反をするとか、NPTから脱退するとか、あるいはIAEAとの保障措置協定、あるいはこの実施取極、あるいは日米の原子力協定そのものに重大な違反をするというような異常なケース、こういったときにはその停止の理由になり得るということでございます。  それから同時に、仮にそういうふうな問題が起こりましたときにも、これは一担当官とか担当局の決定すべきことではなくて、実施取極にも、両国政府の最高レベル、つまりアメリカでは大統領、日本では内閣総理大臣のレベルにおいてそういった決定が行われるというようなことで非常に絞り込んである、こういうことでございます。  アメリカの政権変更ということによって左右されるのではないか、こういうことでございますけれども、それはやはりアメリカと日本との信頼関係を踏まえての非常に厳格な停止要件ということを考えますれば、政権の云々ということは日米原子力協定に関します限りは予見されない、私はこういうふうに思っております。
  283. 神崎武法

    ○神崎委員 新協定の十一条の解釈でいろいろお尋ねをいたしたいと思うわけでございます。  先ほど河上委員に対する御答弁の中で、包括同意に基づくプルトニウムなどの輸送の場合はすべて空輸に限定される。これは別個の取極の中でそのように限定されているわけでございますけれども、十一条の解釈自体は、それ以外の個別合意については空輸に限定されていない、したがって、海上輸送も認められている、そういうことでよろしいわけですね。
  284. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 そのとおりでございます。
  285. 神崎武法

    ○神崎委員 そういたしますと、包括的同意に基づく輸送というものを従来の船から空輸に限定した理由、核ジャックの問題とかいろいろ言われておりますけれども、その点は本当のところは一体どういうところなんですか。
  286. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 ちょうど二年半くらい前になるかと思いますけれども、前回フランスからプルトニウムを日本に持って帰りましたときは、晴新丸という船で持って帰りまして、輸送期間が約四十日かかったわけでございます。これには御承知のとおりアメリカ及びフランスの海軍の軍艦の伴走等々ございまして、非常に厳重な防護のもとに持って帰ってきたわけでございますけれども、これは何のために行われたかといいますと、結局核物質防護、いわゆる核ジャック防止のためでございます。  したがいまして、核ジャック防止という観点からいけばやはり飛行機の方が、これは十数時間あるいは二十時間ぐらいでできるわけで、飛行機の方がいいのではないかということで飛行機を第一番に考えよう。それから飛行機の通過ルートにつきましても、北極圏あるいはその他の、自然災害とかあるいは内乱等々、いろいろな政治的な問題もないところ、そういうところを通ろう。  この点につきましては核物質防護という観点からの考慮でございまして、こういうことでこれは包括同意の対象にしよう、その他はケース・バイ・ケース、いわゆる従来どおり個別で話し合って決めていこう、こういうふうになったわけでございます。
  287. 神崎武法

    ○神崎委員 ただいま空輸ルートについての御答弁もございましたけれども、空輸ルートにつきましては、北極経由無着陸ルート、すなわち英仏からノルウェー海を北上して北極の真上を通って、ベーリング海峡を経由してカムチャッカ半島東側を通って日本に向かう、こういうルートが検討されているというふうに言われておりますけれども、最終的にこういうふうになるのですか。  それから、空輸ルートの決定について新たな日米合意というものがいるのかどうか、あわせてお尋ねいたします。
  288. 松井隆

    ○松井政府委員 先生指摘のとおり、アメリカの政府としては、欧州から日本までいかなる国の上空も通過しないで、つまりフランスとイギリスになりますけれども、そこから日本まで、いかなる国の上空も通過せずにノンストップで飛行が可能な飛行機が近い将来利用可能になる、こういう判断をしてございまして、そういう意味では緊急時を除いては米国上空を通らずに直接来ることが可能ということを表明しているわけでございます。  私どもはそれを受けまして、当面プルトニウムの輸送を担当するのは、先ほど説明いたしました高速増殖炉等のいろいろと燃料を必要とする動力炉・核燃料開発事業団というのがございますが、そこがまず中心になりまして、そのようなルートが可能かどうか今検討を進めているところでございます。  いずれにしろ、その確認が得られれば、今先生の御指摘のアメリカの想定しているルート、イギリスまたはフランスから北極を通過して、ベーリング海峡を南下してノンストップ日本に入ってくる、こういったものをやはり第一プライオリティーとして考える必要があるだろうと考えております。
  289. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今の科技庁からの御答弁につけ加えさせていただきますと、もしそういうふうな具体的なルートが輸送計画として確定した場合、あるいは確定する場合、これは全く附属書五の枠内でございまして、したがいまして、特に新たな日米間の合意は必要とするわけではございません。
  290. 神崎武法

    ○神崎委員 日本の受け入れ空港についてお尋ねをしたいと思うわけでありますけれども、受け入れ空港については、ジェット機が離着陸できるということで三千メートル級の滑走路を有するとかいろいろ言われておりますけれども、基本的にこの受け入れ空港の条件は一体どういうものか。  さらに、既存の空港を予定しているのか、新設の空港を予定しているのか。ジェット機の離着陸可能な三千メートル級の滑走路を持つ国内空港のうち、ただいまの御答弁にあるような北極圏ルートを考え、東日本に限定すると、千歳、三沢、成田、羽田、横田の五カ所と言われておりますけれども、一体この中から選ぶのか、そういう点も含めて御答弁をいただきたい。
  291. 松井隆

    ○松井政府委員 日本の着陸空港でございますけれども、これは今後、まず輸送の当事者となる動燃事業団が中心になりまして関係者ともいろいろと相談しなくてはいけません。また、私どももそういう報告を受けて関係省庁とも十分詰めを行わなくてはいけないという問題でございまして、いずれにしろ今後の課題でございまして、まだ白紙の状態でございます。  それで、私ども科技庁だけの考えでございますけれども、一応空港についての留意すべき条件というのは、恐らく大型貨物機で輸送をすることになるのではないだろうか。そうすると、かなり長い滑走路、例えば三千メートルクラスと申しますか、そのくらいが望ましいのじゃないかとか、あるいは核物質の防護という観点から、十分飛行機が離着陸できるなるべく安全なところがよろしいのではないかとか、あるいは通信網と申しますか、着陸が安全にできるような、そういったようなより安全なところ、そういうような幾つかの留意している条件はございますけれども、いずれにしろこの件につきましてはもう少し私どもも詰めまして、それから関係省庁と相談しなくてはいけないという問題でございます。  しからば、一体どういうところかという先生の今の御指摘がございましたけれども、その辺につきましては、アメリカ政府は先ほど申しましたようにこれから近い将来そういう航空機が開発されるという見通しのもとでおっしゃっている話でございまして、やはりそういうもののできぐあいを見なくてはいけませんし、それからさらに問題の一つは、安全な輸送容器、飛行機が落ちても大丈夫なような輸送容器、そういうものの開発もございます。そういうこともやっておるわけでございますけれども、そういったものも含めて考える事項でございます。  したがって、私どもはそういった中で最もいいところというふうに考えなければいけないものですから、今先生のおっしゃったような特定の空港をまだ限定する必要はないだろうと考えておりますし、また何も既存でなくて今後出てくる空港も含めて幅広く十分これから検討しなければいけない事項であろうと考えている次第でございます。
  292. 神崎武法

    ○神崎委員 この附属書の五によりますと、輸送には武装護衛者が同行するということになっておりますけれども、同行する武装護衛者は警察官をお考えになっておるのか、自衛官をお考えになっておるのか、あるいはその他の者をお考えになっておるのか、その点はいかがでしょうか。
  293. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 もし飛行機に日本の民間航空機を使うと――民間航空機を使うことをもちろん考えているわけでございますけれども日本の民間航空機を使いますときには、ここにあります武装護衛者というのは警察官になるわけでございます。
  294. 神崎武法

    ○神崎委員 それから専用貨物航空機について、この開発のめどをどのくらいに見ているのかということでございます。ボーイング747―400側の貨物改造型機であると言われておりますが、その点はどうなのか。また特別仕様の貨物機は大体一機当たり幾らくらいと予想しているのかという点についてどうでしょうか。
  295. 結城章夫

    ○結城説明員 イギリスフランスから我が国までノンストップで飛んで来れる飛行機ということで考えますと、現時点におきましては、現在、ボーイング社が製造を進めておりますボーイング747―400という飛行機がございます。この貨客型、コンビというものでございますが、こういったもの、あるいはボーイング社が現在開発の検討を進めております747―400の貨物型といったものが想定されるところでございます。  それで、その値段ということでございますが、これはボーイング747―400型の貨客型あるいは貨物型はまだ値段は私ども承知しておりませんけれども、旅客型、いわゆる旅客を運ぶ型でございますけれども、標準価格で一億三千万ドル、日本円にいたしますと大体百七十億円というふうに承知しております。
  296. 神崎武法

    ○神崎委員 この専用機の実質的な運用、管理は一体どこが行うのかという点ですが、その点はどうでしょうか。
  297. 結城章夫

    ○結城説明員 この貨物機の管理ということでございますけれども、当面、動力炉・核燃料開発事業団がプルトニウムの輸送の実施主体になると考えております。また、実際の飛行機の運航は動燃事業団が委託するものが行うことになると思っております。
  298. 神崎武法

    ○神崎委員 空輸の開始の時期と見通し、それからプルトニウムを入れる容器の開発のめどもあわせてお願いします。
  299. 結城章夫

    ○結城説明員 プルトニウム輸送の開始の時期でございますが、我が国のプルトニウムの需要と供給の状況から考えまして、私どもとしては一九九○年代に入ってなるべく早く開始したいと思っております。  そのための輸送容器の開発でございますけれども、現在、動力炉・核燃料開発事業団におきまして、アメリカの原子力規制委員会、NRCの基準、これはNUREG〇三六〇というものでございますが、これを満足することを目標に輸送容器の開発を進めておるところでございまして、これまでアメリカのサンディア国立研究所で二回ほど試験をさせていただいております。その結果、このアメリカの基準を満足し得る輸送容器が開発できるという見通しが大体立ってきたところでございます。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  300. 神崎武法

    ○神崎委員 空輸ということになりますと、人工衛星を通じて専用機を常時監視する特別なセンターを設置する、異常事態に緊急発進できるように各国の空軍などの支援体制をしくとか、我が国の防衛当局の支援体制も検討しなければいけないとか、いろいろ難しい問題も起こってくるのではないかと思いますし、先ほど議論いたしました受け入れ空港の問題、これもまたまた難しい問題であろうかと思いますし、空輸以外に大量輸送の可能な海上輸送ルート、この確保という点もこれは考えておかなければいけないだろうと思いますが、空輸というものを前提としつつ、海上輸送というものをどう考えるのか、その点いかがでしょうか。
  301. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 海上輸送につきましては、実はこれはアメリカの国防省が、いわゆる核物質防護という観点から空輸ルートとあわせまして検討いたしまして、全く理論的な可能性でございますけれども、四つぐらいの可能性を挙げておるわけでございます。  一つはスエズ運河を通る可能性、一つはパナマ運河を通る可能性、一つは南アフリカの先を通る可能性、もう一つは大西洋を通りまして南アメリカを通る可能性、四つを考えているわけでございます。  アメリカのその国防省の調査報告、全く核物質防護という観点だけからでございますけれども、やはり核ジャックという観点からは飛行機の方がいいな、こういうふうなことをアメリカの報告書は言っております。
  302. 神崎武法

    ○神崎委員 政府部内ではその点はどうなんでしょうか。空輸というものを検討しつつ、それが実施が困難だ、そういう場合も想定して海上輸送ルートの確保という点もあわせて検討を進めておられるのかどうか。
  303. 松井隆

    ○松井政府委員 プルトニウムの輸送に関しましては、新日米原子力協力協定の実施取極附属書五に従いまして、航空機によるのが基本というふうには考えておるわけでございます。ただし、先生の御指摘の船舶による輸送も、米国の個別の同意があればできるということで実施可能であります。また、船舶につきまして、昭和五十九年になりますけれども、過去に安全に輸送した実績もあるわけでございまして、いずれにしろ、そういった選択肢も我々としては排除すべきではないというふうに考えております。
  304. 神崎武法

    ○神崎委員 チェルノブイリ原発事故以降、原発に対します世界の趨勢が変わってきたのじゃないか、方向転換を遂げようとしておるのじゃないか、こういうような面が確かにあるわけでございます。  それと、我が国でも四国電力の伊方原発の出力調整試験に対する抗議行動あるいは東京での原発反対集会に見られますように、日本の反原発運動も市民グループが加わるなど、従来とちょっと違った活発な動きが出てきていることも事実だと思うわけでございます。これは原発事故への不安に加えまして、今まで関係情報を明らかにしようとしなかった政府や原発関係者への不信のあらわれだろうと思うわけでございますけれども、この点についてはどういうふうに認識されておられますか。大臣いかがですか。
  305. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 きのうも閣議で伊藤科技庁長官から今御質疑のような面の話が出ました。これはこの間の日曜日、二万人も擁するという原発反対の大デモンストレーションがあった、特に御婦人方が多かった。恐らく、いろいろ考えられますが、要は政府の原発の安全性に対するPR不足である、したがって、科技庁がもちろん先頭に立ちますが、全閣僚、そうした意味で御支援のほどをこいねがうという意味の発言でございました。  確かにそういう面が私あると思います。チェルノブイリと我が国の原子炉は型式も違います。したがいまして、我々といたしましてもとうの昔に原子力委員会プラス安全委員会というものを設置し、なおかつ安全局というものも科技庁に設置をいたしまして、本当に大事に至らないようにあらゆる手だてをしておるわけであります。  簡単に言えば、そうした日本原子力の安全また平和利用に関しまして、アメリカにはどうしてもまだ不信感が完全に除去されておらない、これがアメリカ国会における数々の反対であった、こう解していただければいいのではないか。というのは、日本はかって戦争を起こした国だ、危ない、こういうことであります。したがいまして、それだけでございますと核保有国の勝手気ままになってしまう。これに対しましても、私たちは、核というのは大切なもので平和利用さえすればよい、そういうような一つのあかしを示さなくちゃならないというのが我が国原子力政策でもございますが、国民の方々にもさらに私はPRをしたい。  今話が出ておりました「もんじゅ」という原子炉の名前は、御承知のとおり「もんじゅ」は文殊菩薩でございまして、獅子の上に乗っておられる。それに対してはまた普賢菩薩があって、これは象の上に乗っておられる。象も獅子もともにモンスター、怪物である。すなわち、それを文殊と普賢の徳と知によってコントロールしておる、こういうふうに時の原子力委員長かあるいは副委員長がおつけになった、こういう気持ちを私はアメリカで訴えたのですよ。あなた方は原爆を持っておるけれども、おれたちは持っていないのだ、おれたちは資源の乏しい国であるからここまでしてやっておるのですよということもカーター時代に申し上げまして、そういうPRは意外と効きました。  したがいまして国民の方々にも、既にして二八%、こうして原子力に依存する率が多うございますから、もう電気冷蔵庫から、恐らく電気製品は全部だと思っていただいたらいいわけでございます。そういうふうなPRもしなければならぬ。PRができておらないから不安を持たれる、これもまた当然だろうと思いますから、あくまで公開、自主、民主、いろいろございますから、そうした線で今後も私たちといたしましては努力をしなければいかぬ、かように思っております。
  306. 神崎武法

    ○神崎委員 終わります。
  307. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 木下敬之助君。
  308. 木下敬之助

    ○木下委員 早速御質問いたします。  まずプルトニウム航空輸送のことでございますが、四月一日の外務委員会におきまして、我が党の永末委員長の方からこの日米原子力協定のもとで行われるプルトニウムの航空輸送における政府の責任、こういったものについて質問されておりますが、そのときの答弁は、動力炉・核燃料開発事業団がその責任を負う、こういった答弁があっただけで政府の責任について余り述べておられませんので、国際輸送に係る政府の責任の所在とその内容を政府としてどのように考えておられるのかということをこの機会に改めてお伺いいたしたいと思います。  まず、日米原子力協定に従ってプルトニウムの航空輸送を実施するに当たり、政府としてはどのように関与することになるのか、また政府部内の責任の分担というのはどのようになるのか、お伺いいたします。
  309. 松井隆

    ○松井政府委員 まず一義的に、プルトニウムを航空輸送する場合に当面の実施責任者は動力炉・核燃料開発事業団というふうに考えてございますから、そこがいろいろな関係者と相談をして、輸送計画と申しますか、そういうものをつくるのは当然でございます。  しかし、それは動燃がつくるだけでなくて、当然我々としても、それにつきまして政府のそれぞれ関係するところがございますものですから、それぞれの所掌に応じまして、例えば必要な安全現制を行うとかあるいは指導監督を行う。安全かつ確実な運送の実施を確保するためにそれぞれの政府の部局が関与するわけでございます。  私ども科技庁といたしましては、原子力政策を全体として推進するという立場がございまして、当面、輸送の実施主体の動燃事業団を指導監督するということはあるわけでございます。もちろんその過程で、私どもとしても、関係団体、あるいは役所で言いますと関係省庁とも密接な連携をとりながら、それぞれのつかさつかさ、所掌に応じまして連携をとりながらプルトニウムの安全かつ着実な輸送ができるような推進を図ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
  310. 木下敬之助

    ○木下委員 附属書五にも、その二番に「輸送計画が作成される。」ということで、この輸送計画というのは動燃の方がつくっていく責任があるということですが、この協定を忠実に実行していく責任というのは当然政府にあるわけです。  そんな中で、動燃が幾らやろうとしてもできないこととかもいっぱいあるでしょうし、当然政府みずからも責任を持ってやらなければならないことがたくさんあるだろうと思います。そういった意味で、具体的に、両方が責任のなすり合いをするようなことのないように、当然両方が積極的にやればいいわけですけれども、ある程度のけじめみたいなものは整理できるところで整理しながら責任を明確にされておった方がよかろうか、このように思います。  そこで、少し具体的に何点か気がついたことを聞かせていただきたいのです。  この2の方の(a)に「武装護衛者が同行する。」こういうことで、武装護衛者というものを想定して、こんなものが必要だ、こういった計画も輸送計画をつくる側がつくらなければならない。しかし、それはおのずと限界があって、政府としての考えがあろうかと思います。  こういったものはつくる責任はあるとしても、どういったものでするんだなんということを決める責任は責任として、積極的に政府の方から決めていく責任があろうかと思います。そういった意味で、政府としてはこれをどう考えておられます
  311. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 輸送計画の策定に当たりまして、もし空輸ということ、かつ、その空輸の場合に日本の国籍の民間機を使う、これは非常に大きい可能性だろうと思いますが、この場合には、附属書五にございます武装護衛者というのは日本の警察官を想定いたしております。
  312. 木下敬之助

    ○木下委員 それで、最初のことに戻るのですが、武装護衛者であるということで、計画をつくる方は動燃であるけれども、その中身としては政府としてそんなものだ。この計画に書いていく場合、どういう手続で警察に要請するのか。  今のような責任上から、ほっておいてもこれは政府としてこれだけのものは派遣して武装護衛していくんだ、こういう判断をなさるのですか。
  313. 結城章夫

    ○結城説明員 武装護衛者の同行のあり方を含めまして具体的な輸送方法等につきましては、輸送の実施主体となると考えております動力炉・核燃料開発事業団においてまず原案をつくります。この原案をもとに関係者関係省庁で相談をしていくということでございまして、さらには関係国との相談も必要であると考えております。  こういう過程を経まして輸送計画がつくられるわけでございまして、その過程におきまして必要がございました場合には、科学技術庁の方から警察庁の方に警察官の同行を要請するということになるのではないかと思っております。
  314. 木下敬之助

    ○木下委員 科学技術庁の方から要請するということは、動燃の方が要請したからではなくて、政府みずからの判断によってしていく、こういうことだと思います。  そういうふうになると、おのずと警察を動燃の方が要請してするわけではないのですから、特別にその費用がどうこうとか、こういった問題は起こらないと思いますけれども、ほかの点でもいろいろと費用がかかると思います。確認のための通信等そういったもの等で、最初のつくり上げていく責任が動燃にある、また政府みずからの責任でやらなければならぬものもありますが、この費用等にも何かお考えが今既にございますか。
  315. 結城章夫

    ○結城説明員 プルトニウムの輸送のために直接的にかかります費用、これは動力炉・核燃料開発事業団が当然負担するわけでございます。  ただ、警察官に同行いただく場合、これは警察官としての職務を遂行するために同行するということになると考えられますので、動燃事業団がそのための費用負担をする必要はないのではないかと考えております。
  316. 木下敬之助

    ○木下委員 警察官のことはわかりました。そのほかの通信等について、また後ほどちょっと聞いてみたいと思います。  同じところの(c)のところに「すべての飛行場において、」ということで「他の武装要員を使って」、こういったこともありますが、この「他の武装要員」というのはどういう者で、またそういう者の要請等はどちらがなさるようになるのでしょうか。
  317. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今先生御質問の(c)のところでございますけれども、「すべての飛行場」と申しますのは、これは実は日本の飛行場ではなくて、フランスなりあるいはイギリスの飛行場から日本に向かって飛んでくるときに、給油するとかあるいは不時着等々も入ると思いますけれども、そういうふうな途中の飛行場のことでございます。  そういうところでは、やはり核物質防護という観点から主として警察に、現地の警察でございますが、その防護をお願いするわけでございますけれども、現地にいろいろとその国の制度があろうかと思います。場合によっては警察ではなくて軍隊のことがあるかもわかりませんし、あるいはまた民間のガードマンでいいということもその国の法令によってあるかもわかりません。したがいまして、そういう可能性も含める意味で「警察を含む関係当局の協力を得て又は他の武装要員」という広い概念、書き方にしてあるわけでございます。
  318. 木下敬之助

    ○木下委員 同じところの(g)のところに「詳細な緊急時計画が事前に作成される。」こういうことも要求されておるわけですが、これをつくる主体となる責任はやはり動燃なんでしょうか。  そのことの確認と、こういったものは動燃で各国と連絡をとったりしてできるわけがないので、実際にそんなものは政府みずからがつくらなければできないものだと思いますが、そういった点はどのように考えておられますか。
  319. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生指摘のとおりで、これをつくります作成主体というのはその輸送者である動燃の場合だろうと思いますけれども、しかしながら、動燃だけでこういう緊急時計画がつくれるわけではなくて、実際上は、むしろ政府と動燃あるいは輸送主体が非常に密接な連絡をとりながら作成することになろうかと思います。
  320. 木下敬之助

    ○木下委員 その次の(h)のところにしても、「密接な連絡を通じて作成した旨の確認が、当該各関係当局から得られる。」こういった確認を得て全体の確認ができるのも動燃だろうと思うのですが、そういったことをするにしても、どこかのルートできちっとしなければならぬ。  そういうことで、先ほど申しました通信とか、それにかかるいろいろな費用があると思うのですが、こういった点、重ねてもう一度確認をしておきたいと思います。
  321. 結城章夫

    ○結城説明員 この確認でございますけれども、輸送の実施主体が各関係当局から確認を得ることになると考えておりますが、もちろん政府といたしましてもこのような確認がきちんとなされたということをチェックしてまいりたいと思っております。
  322. 木下敬之助

    ○木下委員 費用の点についてなかなか御答弁がないのですけれども、またいずれはっきりさせていただきたいと思います。  (d)のところに輸送容器について述べておりますので、ここのところで少し聞いてみたいと思います。  アメリカの国内では、本協定に対し、プルトニウム航空輸送の際の安全性に対する不安から反対があった、このような報道も見ておりますが、プルトニウム輸送の安全性について、特に輸送容器についてお伺いをいたしたいと思います。  このプルトニウム輸送容器は現在開発中と聞いていますが、開発状態についてお伺いいたします。
  323. 結城章夫

    ○結城説明員 我が国におきまして、動力炉・核燃料開発事業団がアメリカの原子力規制委員会、NRCでございますが、ここのNUREGO三六〇と申しております基準を満足することを目標に、米国に既に幾つかこういうプルトニウム航空輸送容器もございますので、そういう設計も参考にしながら、昭和五十九年度から我が国に適したプルトニウムの航空輸送容器の開発を進めておるところでございます。  これまでアメリカのDOEの下部機関でございますサンディア国立研究所におきまして、一九八六年と一九八七年の二回にわたりまして実寸大の模擬の輸送容器を用いました試験を実施いたしました。この結果、衝撃エネルギーの吸収機能その他の数多くの貴重なデータが得られておるわけでございます。  これらの試験の結果、現在のところ万一の航空機事故等におきましてもプルトニウムの収納健全性が維持され、環境安全を確保し得るような輸送容器の開発の見通しが得られたところでございます。
  324. 木下敬之助

    ○木下委員 そういう見通しのもとにでき上がったとしまして、附属書五の(d)のところで「輸送容器は、航空機の墜落の際にもその健全性を維持するように設計され、かつ、認定される。」この「認定される。」とありますが、これは一体どこがどのように認定するということですか。
  325. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 この附属書には確かにだれが認定するのか全く規定してないわけでございますけれども、この認定します主体というものは、いわゆる輸送関係国関係当局ということになろうかと思います。  それでは具体的に輸送関係国関係当局はどこだろうか、こういうことでございますけれども、まず、当然のことながら日本、これは日本に持って帰ってくるわけでございますから、日本関係当局の認定が要る。それからもう一つ考えられますのは、これはフランスあるいはイギリスから出てくるわけでございますから、恐らくイギリスあるいはフランス当局の輸送容器についての確認が要るのではないかなと思われるわけでございます。  さて、次にアメリカでございますけれども、アメリカというか、もしその飛行機が通ってくる場合、どういう経路によるかということが問題なんでございますけれども、その飛行機が飛んでまいりますときに、もしノンストップで全くほかの国の領海を飛ばない場合にはあるいはそういうことは要らないのかもわかりませんけれども、もし領空を通過するような場合には、その国の、領空通過国の関係当局からの認定も必要ではないか、こういうふうに考えております。
  326. 木下敬之助

    ○木下委員 今幾つかの認定ということで、それはどこかがすればいいんじゃなくて、すべてがそろうことが必要で、すべてそろうところだけを通ってくるようなことになろうか、こういうふうに解釈してよろしいのですか。
  327. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 関係者すべての認定が必要でございます。そのとおりでございます。
  328. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは、今のもののうちの一つ、当然であります我が国における輸送容器の安全性の認定、これは我が国のどこの官庁が所管となり、また認定に際してどのような考えで臨むのか、お伺いいたします。
  329. 金子賢太郎

    ○金子説明員 お答え申し上げます。  我が国の場合の法制度を見てみますと、放射性物質の輸送にかかわる安全規制は陸、海、空と申しますか輸送モードごとにそれぞれ法令をもって行われておりまして、プルトニウムももちろん含まれるわけですが、放射性物質一般の空輸の際の安全性につきましては航空法に基づいて所要の規制が行われているわけでございます。  したがいまして、運輸省といたしまして、今後、プルトニウム空輸の安全基準に関して現在原子力安全委員会において検討が行われておるわけでございますけれども、この場における検討成果が得られました後、それを安全規制体系の中に適切に位置づけまして、輸送容器の安全性はもとより、積みつけなどの輸送方法についてもあわせまして輸送前に事前に審査することによって航空輸送の安全を確保してまいりたいと考えております。  なおこの際、プルトニウムの輸送でございますので、特に安全確実を期すべきことは言うまでもございません。したがって、万が一の重大な航空機事故に当該プルトニウム輸送容器が巻き込まれましても、なおかつ安全な容器、健全性が維持される容器、こういったものが開発されるまでプルトニウムの航空輸送が実施されることがあってはならないというのは当然だろうと考えております。
  330. 木下敬之助

    ○木下委員 先ほどのプルトニウム輸送容器の開発状況というのに可能性があるように、その可能性があるという言葉が出てくるということは、一つ基準が漠然とあって、その基準を満たすことが可能だというから可能性があると出てきているのだと思います。  そういった意味で、かなりのものがあるのだろうと思いますけれども、今のお話で、原子力安全委員会というものの一つのそこの判断みたいなものをクリアすればと、こういうことが一つ基準になりつつあるような部分も感じるのですが、そういったものがこの協定の中で、世界の中で一体どういう位置づけになっておるのか、ちょっとお伺いいたしたいと思います。  ということは、先ほどあらゆる関係国がと言いました。それはそれぞれ違う基準をクリアするのか。これは世界の中でいずれそういったものが大体似たような基準、ほとんど同じ基準に今の原子力安全委員会等の考え等も含めてなりつつあるのか、見通しをお伺いいたしたいと思います。
  331. 大森勝良

    ○大森説明員 お答えいたします。  まず、プルトニウム航空輸送に関します原子力安全委員会での検討状況でございますが、原子力安全委員会といたしましては、先ほどからずっと話が出ておりますが、昭和五十九年の時点でございますけれども、晴新丸によるプルトニウム船舶輸送の際に見られましたさまざまな動き、こういうことから今後は航空機によるプルトニウムの輸送ということが一つの有力なものとなっていくであろうというふうな判断に立ちまして、原子力安全委員会の責務であります原子力の安全確保という観点から、プルトニウム航空輸送容器の安全基準の策定を含めて調査検討を進めてまいってきたところでございます。  具体的には、昭和五十九年に同委員会のもとにあります放射性物質安全輸送専門部会の中に、航空機の専門家を含めた各方面の専門家から成る新型輸送分科会を設けて検討を進めてまいりました。  それで調査、審議の内容でございますけれども、まず米国等のプルトニウム航空輸送安全基準調査をやっております。これは先ほど来話が出ておると思いますが、NUREG〇三六〇といったものが既にあるわけでございますが、そういうものも非常に重要な参考資料として調査、審議を進めておるということでございます。  また世界の航空機事故経験の調査、それからさらに進みまして、航空機事故時におきます輸送物に与えられる衝撃でありますとか、そこで発生する応力でありますとか、そういうこと等の輸送物の挙動の分析といったことも踏まえまして、考え方としましては、現在、万が一の航空機事故の際にも輸送物が高度の収納健全性を維持するよう輸送容器に要求すべき技術基準検討を進めておる、こういうところまで至っております。  以上でございます。
  332. 木下敬之助

    ○木下委員 最後に聞いたように、各国がいろいろな基準でばらばらでやるのか、大体同じような基準のもとになりつつあるような情勢にあるのか、お伺いいたしたいと思います。
  333. 大森勝良

    ○大森説明員 先ほど申し上げました米国のNUREGO三六〇といった基準は、世界の中で現在一番厳しいものと思っております。それで、我が国基準はそれを非常に重要な参考として現在検討を進めておるというところでございます。  また、私どもそういった検討を通じましてフランス、イギリス等の状況も承知しておるわけでございますが、フランス、イギリスにつきましても、やはり高度の安全性を付与するといった観点での検討を進めておるといったことは聞いております。
  334. 木下敬之助

    ○木下委員 そういうことで一つ気になるのですが、輸送容器の安全性に関しては、昨年の暮れアメリカで、航空機を実際に墜落させて実験を行うという内容の法案が成立した、こう聞いておるのですが、この概要と、我が国はこの法案に対してどう対応していくのかをお伺いいたします。
  335. 結城章夫

    ○結城説明員 米国におきましては、プルトニウム輸送容器の落下試験等に関しまして、いわゆるマコウスキー修正条項というものを盛り込みました一九八七年包括予算調整法というものが昨年の十二月二十二日に成立いたしておると承知しております。  この内容でございますけれども、このマコウスキー修正条項は、プルトニウムの航空輸送容器の安全性確保のために、現在のアメリカのプルトニウム容器の基準NUREGO三六〇に追加しまして二つの試験を求めておるわけでございます。  まず第一は、実スケールの輸送物の最高巡航高度からの落下試験でございます。  二番目が実スケールの輸送物を積載した貨物機の墜落試験でございます。  ただし、この二番目の飛行機の墜落試験につきましては、アメリカの原子力規制委員会が独立の科学団体との協議の後、容器の開発過程で行った試験のときに容器にかかった応力が、最悪の事故時にかかるであろう応力を超えると決定すれば省略できるということで、省略できるケースも書いてあるということでございます。  この条項に対しまして我が国がどう対応するかということでございますが、現在輸送ルートの検討を進めておるところでございまして、アメリカの国内法でございますこの修正条項が適用があるかどうかということについて、これから検討がなされるわけでございます。もしこの適用があるということであれば、当然これに従って安全性の確保の承認を受けていきたいというふうに考えております。
  336. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、この問題でもう幾つかお伺いいたします。  八四年の海上輸送のときには米艦が護衛を行った、こういうことでございますが、航空輸送のとき、輸送機を別の航空機等で護衛する、こういったことをアメリカに要請するとか、アメリカがするとかいうことがあり得るのか、お伺いいたします。
  337. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 この附属書五に関します限り、それは一切言及されておりません。したがいまして、航空輸送の場合に、日本からアメリカなり何なりに航空輸送専用機の護衛を依頼することは想定されておりません。
  338. 木下敬之助

    ○木下委員 こういったプルトニウムの航空輸送ということは、これまでそうたくさん例はないと思いますけれども、世界におけるプルトニウム空輸実績についてどのように把握されておられるか、お伺いいたします。
  339. 結城章夫

    ○結城説明員 過去十年間くらいを調査いたしました。この間、民生用プルトニウムの航空輸送の実績といたしましては、少量のものは別にいたしまして、イギリスからフランスへ運んでいる例がございます。イギリスからフランスに向けまして、一九八二年から一九八六年までに合計十九回プルトニウムの空輸が行われたと承知しております。
  340. 木下敬之助

    ○木下委員 これからの問題ですが、我が国の場合はプルトニウム空輸はいつごろ開始になるのだろうか。我が国のプルトニウム需給バランスから、いつごろまでには必ず必要となる、こういった点がわかれば教えてください。
  341. 結城章夫

    ○結城説明員 我が国のプルトニウムの需要でございますが、当面は動力炉・核燃料開発事業団の「常陽」「ふげん」及び「もんじゅ」という三つの新型炉によるものが主たるものでございます。  一九九〇年代に入りますと、新型転換炉の実証炉及び高速増殖炉の実証炉、さらには軽水炉でのプルトニウム利用の本格化といった需要が追加されてまいることになります。このため、一九九〇年代前半におきまして国内の再処理工場において回収されるプルトニウムだけでは不足する可能性がございます。一九九〇年代の後半には相当量の不足が生ずるというふうに見ております。  このような見通しに立ちますと、私どもとしては一九九〇年代に入ってなるべく早く海外からのプルトニウムの輸送を開始したいと考えておるところでございます。
  342. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、包括同意方式についてお伺いをいたしたいと思います。  核物質の再処理や第三国への移転につき、今までは個別に同意をアメリカに求めていましたのが、このたびの改正により、これが包括同意方式となることが今回の一つの目玉のように思いますが、この包括同意につきまして、実施取極において包括同意の対象となっているものはどのようなものか、これを具体的にお伺いいたします。
  343. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 実施取極におきまして包括同意になりますのは、いわゆる商業用の原子力発電の全過程が大体包括同意になろうかと思います。  具体的に申しますと、例えば日本国内で再処理をしますとき、これも包括同意の対象になるわけでございます。したがいまして、東海の再処理工場もその包括同意の対象になるわけでございます。それから、いろいろな発電所で使用済みの燃料が出てまいります。これをイギリスとかフランスに再処理に持っていくということ、これも包括同意の対象になるわけでございます。  それから、イギリスなりフランスなりでプルトニウムを抽出、再処理いたしまして、それが日本に返ってくる、これも包括同意の対象になるわけでございまして、冒頭に申し上げましたように、日本原子力活動で中心的なものはほぼ包括同意の対象になるわけでございます。
  344. 木下敬之助

    ○木下委員 ほとんど中心的なものがなるということで、その対象外の話を聞くのもなんですが、現在、包括同意の対象となっていないものを将来この対象とするためにはどのような手続が必要なのか、個別に同意が必要なのかをお伺いいたします。
  345. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 現在、包括同意の対象になってない施設を今後ある段階が来て包括同意の対象にするためには、一定のいわゆる手続だけでこれが完了いたします。  例えば、この施設はこういうふうな能力を持っていて、こうこうこうであって、こういうふうな保障措置がかかっておる。具体的に申し上げますと、例えば今原燃サービスが青森県の下北で建設に着手しようとしております再処理工場でございますけれども、これがやがてできまして、これを包括同意の対象としますときには、これは当たり前でございますが、施設名、場所、それからIAEAとの一定の保障措置ができ上がっているということ、それから核物質防護対策、PP対策がなされておる、こういうようなことを文書でもってアメリカに通知いたしますと、アメリカからその通知を受け取ったということで自動的に包括同意の対象になるということでございます。  これはもう一つ例を挙げますと、今福井県で建設中の「もんじゅ」が完成しました暁にも同様な措置でもって、つまり手続的な要件が整えば包括同意の対象になる、こういうことでございます。
  346. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国の場合、この協定以外に二国間原子力協定でこのような包括同意方式をとっているものはあるのか、またアメリカの場合はどうであるのかをお伺いいたします。
  347. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 まず第一番の、我が国の場合でございますけれども日本が天然ウランを購入しておりますカナダとオーストラリア、非常に大きな国でございますけれども、そのカナダとオーストラリアとの間で包括同意方式、形態としてはかなりアメリカと似ているわけでございますが、包括同意を含んだ協定を結んでおります。  次のお尋ねは、アメリカの場合どうだ、こういうことでございますが、アメリカの場合にはスウェーデンとノルウェーとの間で包括同意を含む協定、これは一九八四年に締結しております。他方、フィンランドとの間にも包括同意を含む協定を署名を了しているわけでございますが、フィンランド側の国内手続でまだ未発効である、こういうふうに承知しております。
  348. 木下敬之助

    ○木下委員 次に、核物質防護についてお伺いしますが、今回の日米原子力協定の改定によって、従来なかった核物質防護についての規定が新たに設けられておりますが、この点について、まず附属書Bの「防護の水準」において、第一群、第二群及び第三群の核物質が使用ないし貯蔵される区域として、これは我が国では具体的にいかなる施設があるのか、お伺いいたします。
  349. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 附属書Bで第一群、第二群、第三群に核物質を区分してあるわけでございますけれども、この区分の基準となりますのは、二つの基準というか考えからこの区分をしてあるわけでございます。  一つは、核分裂性の高さ、つまりプルトニウムとか高濃縮ウランというのは核分裂性が高い、それから使用済み燃料はまあまあそうでもない、こういうふうな核分裂性の強弱。それからもう一つは、その量、つまり大量になれば危ないけれども、少量であったらまあまあ、こういうようなことで、その二つの組み合わせによりましてこの附属書Bで一群、二群、三群と分けてあるわけでございます。  したがいまして、そういうことでまず第一群に入りますのは、当然のことながらというか、高濃縮ウランの加工施設とか再処理施設、それからプルトニウムの加工施設、こういったような高濃縮ウランとかプルトニウムに関係します再処理施設あるいは原子炉等々、この設備、こういうのが第一群に入るわけでございます。  それから、第二群には、普通の発電炉、つまり、軽水炉、PWRであるとか沸騰水型等々の発電炉、いずれにしましても、発電炉等々がこの第二群に入ろうかと思います。  第三群は、比較的少量の核物質を扱う、したがいまして、大学の研究施設であるとか国立研究所の研究開発施設、こういったような研究施設、これが第三群に入ります。  したがいまして、防護の水準も、一はきつく、三は比較的緩やかに、こういうふうなことでございます。
  350. 木下敬之助

    ○木下委員 そこの「防護の水準」の最後のところに「護送者による常時監視の下及び適当な関係当局との緊密な連絡体制が確保される」こういうことですが、「適当な関係当局」というのはどこを指しておるのでございますか。
  351. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 国内輸送につきましては、いわゆる核物質防護についての権限を有しておる関係省庁ということで、日本の場合でございますと、科学技術庁、通産省、運輸省、警察庁、そういったところがここの「適当な関係当局」に入るというふうに理解しております。
  352. 木下敬之助

    ○木下委員 我が国における核物質防護措置はこの附属書Bの「防護の水準」を満たしておると考えておられるのかどうか、お伺いします。
  353. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 日本の核物質防護の水準は最小限これを満たしておりまして、現実にはこれ以上のものであろうと思っております。  他方、アメリカとの間におきましても、合意議事録の6におきまして日本の水準あるいはアメリカの水準は国際原子力機関、IAEAの勧告を十分に考慮したものであって、第七条、つまり防護措置の条項でございますけれども、この水準が要求する水準にあり、またはその水準を超えるものであり、したがって適切であることが確認されておる、こういうふうになっておりまして、日本の防護水準というのは、この附属書B、最低限これであり、現実にはこれ以上のものであるということは合意されております。
  354. 木下敬之助

    ○木下委員 最後に、原子力の平和利用は今後とも拡大していくであろうと考えます。現在、我が国原子力協定を締結している国以外の国との間で協定を締結することについてどのような認識を持っておられるのか、お伺いいたします。
  355. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 今、日本はアメリカ、フランス、それからカナダ、豪州、中国等々、かなりな国との間で原子力協定を結んでおります。今のところ、それではそれ以外のものとの新たな原子力協定という、改正の動きはフランスとの間にはあるわけでございますけれども、しかしながら、新しい協定という意味では今のところ具体的に予定にはございません。  しかしながら、よその国の原子力活動の将来の動き等々もこれあり、そういったような必要が生じた場合には、当然のことながら、日本の場合、平和利用ということに徹してこれを確保するという観点を十分に踏まえながら対処してまいりたいと思っております。
  356. 木下敬之助

    ○木下委員 時間も大体参ったようですので、最後に外務大臣に総括してお伺いしたいと思います。  現在、日本とアメリカの間にはいろいろな懸案がございます。こういう中において、この協定によって原子力分野で日米間の協力関係が強化されるということは歓迎すべきことであると考えますが、この協定についてはアメリカの議会の方が一歩先んじて去る四月二十五日にこの協定を承認しているところでありますが、我が国政府としても早期締結のために努力をされるとともに、締結後は責任を持って協定を実施していくべきであると考えますが、大臣の御所見をお伺いいたします。
  357. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 協定妥結のための交渉におきましては随分とはらはらさせられるような場面もなきにしもあらずといったようなことでございましたが、幸いなるかな、米政府の格段の御努力もございました。そして、議会においてもいろいろ反対する人もあったのでございますが、大方の方がやはり日米間の原子力平和利用、こうしたものに関しましてはさらに相互信頼の上に立っての協定が必要である、こういうことでめでたく終わったことを私たちは非常にうれしく存じます。  したがいまして、本当に会期末こうして御審議を願うことは心苦しいことではあったわけでございますが、いち早くも米国の方がこの問題で今木下さんがおっしゃったような措置をとっていただきましたので、我が国といたしましても速やかに御審議を終了していただくのが日米間における一つの合意事項として非常に大きな成果を生むのではないだろうか、かように考えておる次第でございます。  もちろん、原子力政策に関しましては、どの委員からも御指摘のとおり、安全性というのを唯一の最大の目標として私たちはやっていかなければならない、かように思っておる次第であります。
  358. 木下敬之助

    ○木下委員 それでは最後に、こういった問題につきましては、各国の理解、そしてまた我が国国民の理解というものも大変大事でございますので、そういった意味で、真実をそのまま国民に申し上げて、本当にこれだけ安全に対して努力しておるのだという姿勢をお見せになって御理解をいただいていくということを今後の方針にされることを期待いたしまして、私の質問を終わります。
  359. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 松本善明君。
  360. 松本善明

    松本(善)委員 スリーマイル島の事故、それからチェルノブイルの事故がありましてから、国際的な趨勢はもう原子力発電について見直しという方向が出ているというふうに私は思います。  アメリカでもスリーマイル島の事故のあった一九七九年以降一九八三年までに原発契約のキャンセルが、日本原子力産業会議の調べによりまして五十四基、それからソ連の事故後の一九八六年は三基建設計画がキャンセルをされております。それからソ連は、原発推進路線を変えてはいないのですけれども、事故を起こしたRBMK炉についてチェルノブイルの二基に加えて計画中の七基の建設を中止したと言われております。  中国は二基の無期延期、フィリピンは一基凍結、オランダ、ユーゴスラビアは新規計画を取りやめた。スウェーデンはスリーマイル原発事故を契機とした国民投票の結果二〇一〇年までに既存原発の廃棄を決める、ソ連の事故で必要ならばそれ以前にも廃棄の用意があるとしておりますし、オーストリアは国民投票で凍結を決めておりましたけれども、この事故で解体というふうにも伝えられておる、こういう国際傾向について、まず科学技術庁に聞きますが、この傾向は認めますか。
  361. 松井隆

    ○松井政府委員 主としてチェルノブイル事故の海外における受けとめ方ということかと思いますけれども、確かに御指摘のとおり国情によって違いがございます。例えば私どもの承知しているところでは、アメリカとかフランスとかあるいは英国とか西ドイツ等々、いろいろとその中に議論はあるのは承知しておりますけれども、そういった経済規模の大きな先進諸国においては今後とも原子力発電を推進するという方針には変更がないというふうに承知しております。  確かにさっき先生の御指摘のような幾つかの原子力発電所建設計画の先送りあるいはそういう取り消し等があるのは承知しております。これはやはりチェルノブイル事故の影響もあると見られますけれども、同時に電力需要の低成長、そういった要因もあろうかなというふうに承知しておる次第でございます。
  362. 松本善明

    松本(善)委員 一九八二、三年をピークにしてずっと原発の受注というのは激減をしておるというのはもう争うべからざることなのですね。  外務大臣に伺いますが、人類の立場からも国民立場からも、原子力関係の事故というのは起こった場合にはもう取り返しのつかない重大な影響があるわけですね。大体大丈夫だろうなんということでは済まされない問題であります。  そういうことを考えますと、先ほど宣伝の問題だなんということでございましたけれども、宣伝を一生懸命やるんだというようなお話でございましたけれども、原発政策について、今のチェルノブイルのみならずスリーマイル島の事故もやはり重大でありました。米ソ両国でそういうものがある。今度起こるとしたらフランスと日本だということさえ言われているというような状況であります。  私は、広い視野から見て、原発政策について見直すべきときではないかというふうに思いますが、外務大臣はいかがお考えですか。
  363. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 チェルノブイリ、スリーマイル、それぞれ事故がございました。これは一つの安全性に対する警告である、かように受けとめて、より一層安全性に対しましては慎重でなければならぬ。これは私、外務大臣としてもそういう気持ちを抱いて今日の原子力政策を眺めております。  特に、松本委員も御承知でございましょうが、米ソそれぞれ資源は我が国よりもはるかに豊かな国でございます。我が国は石炭行政すらもうお手上げだというふうな状態であり、また石油のごときはほとんど皆無に等しい、そうしたことからエネルギーということを考えますと、やはり海外に負う場面が多いわけであります。そのエネルギーも資源有限であると私はいつも申し上げておるわけで、無限ではありません。核融合ができれば四面海でございますからあるいは無限という時代を迎えるかもしれませんが、まだほど遠い。  その間どうするかということになりますと、先人が御苦労なさいまして原子力の平和利用でやっていこうということで、本当に平和利用ということを一つの目的としてやられたのであります。その間における国民のいろいろの関係における原子力に対する格別の理解もありましたし、また予算上から申しますと、我々が望むところの核燃料サイクルという再処理工場は、私、カーターさんのときに相当アメリカ政府とやり合ったのですが、アメリカ政府はむしろ日本にとめさせようとした。日本に持たすことは危ないということでとめさせようとしました。  そのとき私は申し上げたのですが、ちょうど我々の国会の容積と東海村の再処理工場の容積は全く同じであります。あれだけ巨大なものを国民の税金によって二十年間つくり上げてきて、そして本当に安全に私たちはそれを運営しているわけであります。したがいまして、今日そういうような意味におきましても、いろいろございましょうけれども、やはりチェルノブイリが起こりました後、フランスもまた英国もこれは大切なものであるということで原子力政策というものは平和的に進められているということを考えますと、私たちもその線に沿いまして国民に不安を与えないようにしていきたい、かように思う次第でございます。  特に、あの石油ショックのときなんか本当に一次、二次乗り越えた、どういうわけで乗り越えられたか。一部においては原子力政策でございました。また、科学技術によるところの新しいいろいろな政策が物を言いましてあのショックを切り抜けたということ等々を考えましても、今後世界にどういうことが起こるかわかりません。イラン、イラクも紛争を早く解決してほしいと心から私は願うわけでありますが、サウジとイランとの間におきましてまた新しい関係を生じた。いろいろ考えますと、やはり我々といたしましては、資源小国として無事、安全、この政策を貫いていきたいというのが今の私の気持ちでございます。
  364. 松本善明

    松本(善)委員 安全の問題について伺ったのですが、これは一層慎重に注意してやらなければいかぬというだけの御答弁で大分別のことをお答えになりましたが、そのこと自身が安全の問題について確信が持てないということの反映ではないかと私は思います。  科学技術庁に聞きますが、やはり起こった場合には、もう取り返しがつかない。一〇〇%の安全というのは保証できるのかどうか。  それから日本原子力関係の今までの事故、故障の合計件数は幾らかという二つを伺いたいと思います。
  365. 松井隆

    ○松井政府委員 もちろん、科学技術的な意味合いから申しますと一〇〇%ということはあり得ないと思います。ただ、我々としては無限にそれに近づくべく努力しているということだけは御承知いただきたいと思います。
  366. 三角逸郎

    ○三角説明員 お尋ねの件でございますが、昭和六十二年度に関しましては、我々がとってございます故障、トラブル等につきます件数につきましては、十九件の報告が上がってございます。  今先生指摘の、今までどういう件数だったかということでございますが、過去十年間の日本原子力発電所、これは商業炉でございますけれども、故障、トラブルといったようなことを調べてございました。過去十年間の全体の数を言いますと、毎年十数件ということで二百三十七件に上っております。  ただ、傾向を若干申し添えれば、基数もふえてございます。そういう意味で、一基当たりのトラブルの件数と申しますのは当初に比べて最近の二、三年では〇・五から〇・六件といったようなことで低下しておりますが、なお一層トラブルを少なくするように努めてまいりたいと思います。  当然でございますけれども、いずれの故障、トラブル等におきましても原子力発電所の周辺関係への放射能の影響は皆無でございました。  以上でございます。
  367. 松本善明

    松本(善)委員 外務大臣、今の答弁でもおわかりのように一〇〇%ということはない、実際に年十数件の事故が起こっているということであります。  そういう状況のもとで、ことしの一月の総理府の原子力に関する世論調査では、八六%の人が不安を感じている。前回を一六%上回っております。事故も後を絶ちませんし、他国の状況についても先ほど私、紹介したとおりであります。やはりこれは安全に気をつけるとか安全性についての宣伝をするというだけでは済まないのではないか。  振り返ってみて原子力政策を見直すことさえも考えないというのは、私はまことに理解のできない態度ですけれども、もう一度簡明に伺いたいと思います。
  368. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今通産省からいろいろデータの報告がありましたが、事故じゃなくてあれはトラブルというのです。言葉だけでごまかすなという御批判があるいはあるかもしれませんが、事故というとこれは大変でございます。  したがいまして、トラブルがある、トラブルとは機械的な故障であったかもしれぬ、そういうようなことでございまして、きのうも通産大臣みずから、時々トラブルとして発表しても事故、事故というふうな調子で載るから非常に不安を駆り立てる、こういう点においても要注意だ。私はかつて科技庁長官もやり原子力委員長もやりましたから、そういう面におきまして、やはり今の通産省の報告はトラブルである。これをどういうふうな表現をした方がもっとわかりやすいか。  だから、ちょっとしたトラブルであっても発表しなさい、これが公開でございますから、こういうことです、ああいうことです、その方がかえって安全である、こういうふうに私たちは理解いたしておるわけであります。  見直せとおっしゃるのは、これは安全ならば毎日毎日見直す必要があろうかと思いますが、かつてそういう意味で我が国といたしましてもちょうどスリーマイルのときに安全委員会をつくり、あるいはまた安全局も新設した、そしていろいろと世論にこたえてやってきておるような次第でございます。  そこら辺もやはり、いろいろと報道されることと内容とが異なるという面もございますので、もちろん、ないにこしたことはございませんが、率直にそうしたわずかなことであっても公表をしておる、そして安全性を保っておる、こういうふうにお考え賜ればいかがかと思う次第であります。
  369. 松本善明

    松本(善)委員 私どもは、今の原子力発電というのが軍事利用から発展したものですから、未成熟というか安全性が確保されてないという現状だというふうに見ているわけです。それが世論にも反映しておると思うのですが、この問題でいつまでもやるわけにもいきません。外務大臣の御説明では、とても世論は納得しないだろう。だからこそ不安はふえているわけです。  そこで、別の観点から伺いますが、ウランの埋蔵量はどのくらいでしょう。それから、現在の世界のウランの使用量からすればどのくらいもつのでしょう。
  370. 田中伸男

    田中説明員 お答えいたします。  ただいまの先生の御質問でございますが、世界のウランの埋蔵量は、一九八六年のOECD・NEA、IAEAの共同報告によりますと、自由世界におきまして採掘して経済性があると言われておりますウランの確認埋蔵量、また推定埋蔵量の合計は約五百十七万トンウランと見込まれております。これに対しまして、現時点での自由世界のウランの年間需要量は約四万トンウランでございますので、したがいましてウランの資源は相当長い期間確保されているということだと思います。
  371. 松本善明

    松本(善)委員 推定を除いて答弁してください。
  372. 田中伸男

    田中説明員 確認埋蔵量は二百三十一万トンウランでございます。
  373. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると何年ですか。
  374. 田中伸男

    田中説明員 したがいまして、二百三十一万トンを四万トンで割ることになります。
  375. 松本善明

    松本(善)委員 五万トンで割れば四十年ぐらいですね。これからもっと使用量がふえていくということになると、やはり四十年はもたないかもしれない、三十数年で終わるかもしれないということにもなるわけであります。  最初の答弁はあくまで推定であります。推定まで答弁をしなければならぬという状態なんですよ。ウランはもう、それじゃそのまま原子力発電をどんどん世界でやっていけばよろしいというような見通しでは決してないと思います。  今の日本の火力発電、それから原子力発電についての発電電力量、これをパーセンテージも含めて言ってください。
  376. 小林盾夫

    ○小林説明員 現在最新のデータでございますが、六十一年度の電源ごとの発電電力量でございますけれども原子力が約二八%、石炭が九・四%、LNGが約二二%、水力が一三%、石油が約二三%等でございます。
  377. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、火力全体を合わせると、五八%くらいですか。
  378. 小林盾夫

    ○小林説明員 約五九%になります。
  379. 松本善明

    松本(善)委員 火力発電の設備利用率はどのくらいですか。
  380. 小林盾夫

    ○小林説明員 現在の火力は、個別になりますけれども、石炭の利用率六三%、LNGが四九%、それから石油が三三%ということでございます。
  381. 松本善明

    松本(善)委員 全体合わせるとどのくらいになりますか。
  382. 小林盾夫

    ○小林説明員 平均を今持っておりませんけれども、大体五〇%程度であろうかと思います。
  383. 松本善明

    松本(善)委員 私の計算では四〇%ぐらいではないかというふうに思いますけれども、まあ半分ぐらいが遊休設備になっているということであります。  そうすると、今の計算でいきますと、これを二〇%ぐらい利用率を高めれば原子力発電がなくとも計算上はやれるということになるのじゃないですか。
  384. 小林盾夫

    ○小林説明員 今お答え申し上げましたのは発電電力量でございまして、先生御承知のように、電力の需要と申しますのはいわゆるキロワットで表現されます電気の力の強さと申しますか、そういった点で瞬間的な電力需要に合わせて設備がつくられているということになっております。  この電力需要は、御承知のように一日のうちでも昼と夜とで変動いたしますし、また一年のうちでも四季によって大きく変動するわけでございます。こういった変動する電力需要に対応いたしまして電気を安定的に供給するというためには、御承知のように電力は貯蔵することができませんので、瞬間的に最大の電力、特に夏の大体八月の平日の午後が多いのでございますけれども、その最大電力需要に合わせまして発電設備を保有するという必要があるわけでございます。逆に、需要がないときには、設備能力に仮に余力がありましても発電するわけにはいかない。言ってみれば遊ばせておくしかない、こういう状況になるわけでございます。  このように瞬間的に電力需要が最大となる時期におきましてどういう状況かと申しますと、大体供給可能なすべての発電所はほぼフルの出力で稼働しているということでございまして、先ほど申し上げました稼働率は年間平均でございますので、冬ですとか、また週末等の電力の需要が少ない場合は、当然そういった稼働しない部分が出てくるという結果、稼働率が低くなるということでございます。
  385. 松本善明

    松本(善)委員 いろんな事情があるけれども、私が言いましたように、計算上はそういうことになりませんか。細かく議論をするだけの時間がありませんからね、計算上そういうことになりませんかということを言っているのです。
  386. 小林盾夫

    ○小林説明員 繰り返しになりまして恐縮でございますけれども先生のおっしゃいました稼働率というのは――電力量、これは電力掛ける時間でございますけれども、電力量で議論いたしますと確かに利用率等は半分程度になっておるということでございますけれども、夏場の瞬間的な電力需要、それに合わせまして電力を供給するためにはほとんど現在ある発電所をフルに稼働しなければ間に合わないという計算になると承知しております。
  387. 松本善明

    松本(善)委員 濃縮ウランの現在の供給状況、それから西暦二〇〇〇年の供給計画ということを説明してください。
  388. 結城章夫

    ○結城説明員 まず、現状でございますが、我が国原子力発電に必要な濃縮ウランにつきましてはアメリカとフランスから濃縮役務の供給を受けておるわけでございます。これまでの累計量で申しますと、アメリカのエネルギー省、DOEからは合計三万五千トンSWUという量を買っております。フランスのユーロディフ社からは約七千トンSWUでございます。合計四万二千トンSWUという数値になっております。これは、毎年度の数値は若干年によって変動がございますが、アメリカからは大体二千トンないし三千トンSWU、ユーロディフからは六百トンないし九百トンSWUという数値になっております。  二〇〇〇年の状況でございますが、二〇〇〇年までに我が国で必要とされます濃縮ウランの累計は約七万九千トンSWUと予測されております。これに対しましてどういうふうに供給するかでございますが、国内におきます濃縮事業者から約一万四千トンSWU、アメリカのエネルギー省から最大で六万トンSWU程度、ユーロディフから約八千トンSWU程度、合計八万トンSWU強の供給が可能であろうと思っております。
  389. 松本善明

    松本(善)委員 原発による二〇〇〇年の発電量の予想は幾らですか。
  390. 梅沢泉

    ○梅沢説明員 昨年の十月に策定いたしました電気事業審議会中間報告によりますと、二〇〇〇年、昭和七十五年におきまして、設備能力として五千三百万キロワット、これは発電電力の設備の中では二五%、それから発電電力量といたしましては三千四百八十億キロワットアワーで四〇%のシェアを占めるという見通しになっております。
  391. 松本善明

    松本(善)委員 五千三百万キロワットを出すには、濃縮ウランはどのくらい要りますか。
  392. 結城章夫

    ○結城説明員 二〇〇〇年までの累計の濃縮ウランの使用量は、先ほど申し上げましたが、七万九千トンSWUと見込まれております。これは単年度で見ますと、一年間の量といたしましては大体七千トンSWUと見ております。
  393. 松本善明

    松本(善)委員 五千三百万キロワットに必要なのは幾らですか。
  394. 結城章夫

    ○結城説明員 二〇〇〇年におきます原子力発電規模を五千三百万キロワットと想定いたしまして、これに必要な濃縮ウランは年間に七千トンSWUでございます。
  395. 松本善明

    松本(善)委員 それはおおむねアメリカからの輸入で間に合うということになりますか。
  396. 結城章夫

    ○結城説明員 この二〇〇〇年におきます年間七千トンSWUをどう賄うかでございますが、国内におきます国産の濃縮事業、これから大体年間二千トンSWU強を考えております。アメリカからは約四千ないし六千トンSWUを考えておりまして、さらにフランスのユーロディフ社から千トン弱の量を考えております。
  397. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、アメリカからほぼ輸入して、足らないところを国産かフランスから、こういうことですね。現在ヨーロッパでは、アメリカ、ソ連、ECから大体三分の一ずつぐらい濃縮ウランの供給を受けていると思います。  現在は、先ほどの答弁ではアメリカが大体八〇%ということですけれども、国産の拡大とかソ連やECからの濃縮ウラン購入ということはアメリカとの協議なく自由にできますか。
  398. 結城章夫

    ○結城説明員 先ほど答弁申し上げました二〇〇〇年時点での供給計画、アメリカが大体全体の六割程度、国産のウラン濃縮によりまして三割程度を賄うという計画でございますが、この計画についてはアメリカも承知しておるわけでございます。
  399. 松本善明

    松本(善)委員 いや、私の言ったこと、今ソ連やECから買うのはアメリカと協議なくできますかと言うのです、国産の拡大も。
  400. 結城章夫

    ○結城説明員 基本的に契約の問題でございますから、アメリカの了承とか同意とかいうことは必要ないと思います。
  401. 松本善明

    松本(善)委員 しかし、既にアメリカ等から受け入れるようになっているということですね。そして、先ほどの数字は低目の方で、あなたが言えば六割ぐらいだけれども、高目の方でいえばほとんどでしょう。七千のうち六千までアメリカから輸入すればほとんどになりますね。私は今の経過を見ますと、濃縮ウラン、燃料についてはアメリカに非常に依存をしておる、そういう状態が今のいろいろな質疑の中で明らかになってきているというふうに思います。今の日本原子力政策が全体としてアメリカ依存、アメリカ従属という状態を私ども厳しく指摘をしておるわけでありますが、今度の協定につきましてもやはりそういうことではないかというふうに思います。  包括同意を中心に提案理由もそれから答弁も説明をしておりますけれども、やはり今度の協定の最大の特徴は、アメリカの核戦略の要求であります核拡散の防止とそれから国家安全保障の利益を明文化して、そしてアメリカの核不拡散法の規定をほとんど取り入れた協定と実施取極を結ぶという状況になっていると思います。  これは、我が国原子力政策を名実ともにアメリカの核戦略に一層深く従属させる、その枠の中に取り込むことになるのだと思います。先ほど来、自主性ということが盛んに答弁の中で出てきておりますけれども、アメリカの核不拡散法、その枠の中での話ということでありますので、そういう点では、いわゆる自主、民主、公開という原則がかなり大きく損なわれるというふうに私は思います。  核拡散の防止ということは、核兵器の保有を禁じながらその国をアメリカの核戦略体制に組み込むということ、先ほど外務大臣の答弁でも核保有国の勝手気ままじゃないという言葉がちょっと出ましたけれども、実際にそうで、核兵器の開発、製造、使用、他国への持ち込みは何一つ核保有国に対しては規制をしていない。むしろ合法化をして野放しにしているというのが現状で、核保有国の核独占と、それからそれによってアメリカが核脅迫政策を世界に展開することを助けているというふうに私は見ております。  この問題に関して一つお聞きしたいのは、この核不拡散法は前文でも「効率的、効果的な規制を実施するための法律」となっていますが、この核不拡散法の重要部分がほとんど協定と実施取極に取り入れられているということではありませんか。
  402. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 先生の今の御質問にお答えする前に一言だけ申し上げたいと思うのでございますけれども、結局、日米原子力交渉のポイントというのは、アメリカとしましては核不拡散の立場から、殊に一九七八年の核不拡散法の要件を二国間協定で満たしたい。これが一つアメリカの要素。他方、日本の方といたしましては、先ほど大臣からも御説明申し上げましたように、一九七七年の東海再処理工場等々の経験を踏まえまして、何とか日本原子力活動を長期安定的に置くために包括同意をとりたい。こういうふうなことからやりました交渉で、結果としましてはお互い立場を入れて調整した形での新協定であるわけでございます。  そこで、お尋ねの一九七八年の核不拡散法の要件が入っているではないかという点でございますけれども、そういうふうな観点から、確かに核不拡散法の要請を満たすという事情があったのはそのとおりでございます。
  403. 松本善明

    松本(善)委員 だから、包括同意の名のもとに核不拡散法の規制のもとに入る、こういう意味であると思います。私はこの問題は、アメリカの科学技術戦略が、日米科学技術協定などでも安全保障条項が設けられて、日本学術会議も批判する声明を出しましたし、それから秘密特許制度問題も大問題になっていますけれども、今度の新協定もやはり日本の科学技術をアメリカの世界戦略に縛りつける問題の一環ということで、安全保障条項も非常に大事だというふうに思っているわけであります。  それで、協定では十一条でごく簡単に「核拡散の防止の目的及びそれぞれの国家安全保障の利益に合致するよう」「別個の取極」をするということになっていますが、この実施取極は国会の承認を要しないという考え方でいるのですか。
  404. 福田博

    ○福田政府委員 実施取極につきましては、もとの協定の中で授権されている範囲内のことを実施するために結ばれているものでございますので、それについて国会の承認を求めるということは必要でないと考えております。
  405. 松本善明

    松本(善)委員 そうすると、国会であれするのは「国家安全保障の利益」ということだけなんですね。もう非常に広範に国会の批准を要しない形で取極ができるようになっている。しかも、今できているものも私はいろいろな心配を持つわけであります。  いわゆる核兵器の不拡散条約、この脱退ということが問題になっていますが、この場合は包括同意の停止ということが起こり得るように規定されていますけれども、先ほど来の質疑の中で外務大臣は――外務大臣だけではありませんが、これは信頼関係が前提だということが盛んに強調されて答弁がされたというふうに思います。  これは、核防条約、いわゆる核拡散防止条約からの脱退とか、あるいはニュージーランドのような非核政策、デンマークのような非核決議、あるいは今フィリピンで問題になっております非核立法が通るというような意味で、日本に核兵器を積載していないということの証明なしに航空機や艦船が寄港できない、そういう政策我が国がとった場合に、この関係はどういうことになるでしょう。
  406. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 私からまず最初にお答え申し上げたいと思いますけれども、包括同意が停止される云々ということでございますけれども、これは先ほど大臣からも御答弁ありましたように、日米原子力協力自身あるいはその協定自身、日米間の信頼関係ということを基礎にしているものでございまして、この包括同意が停止される云々ということはまずほとんど考えられない状況でございます。  しかしながら、万が一ということで、そのような場合にも、非常に厳格な条件というか場合だけにしかそういうことはあり得ないということで厳格な場合を書いてあるわけでございます。これは例示でございますけれども先生おっしゃいましたように、日本がNPTから脱退するとかあるいはNPTの重大な違反をする云々、こういうことでございますけれども、このNPTに対する日本の違反あるいは脱退ということはちょっと日本としては想定できない状況でございまして、こういう事柄はまずあり得ないということを申し上げたいと思います。
  407. 松本善明

    松本(善)委員 あり得ないといっても、この協定の効力期間はこれから後三十年でしょう。それから、その後も主要部分は効力が残るのですよね。半永久的ですよ。将来の主権者である日本国民が非核政策をとるということはもちろんあり得るだろうし、中立になることだって否定することはできませんよ、制度上そういうふうになっておりますから。いつまでも自民党政権が続くというわけでもありません。そういうことを前提に条約の審議なんてできないですよ。将来の日本国民のためにもこの条約の審議をしているのだから、あなたはそんなことは考えられない、自民党政権のもとでは考えられないかもしれませんけれども日本の将来についてはあり得ることなんです。  外務大臣、政治判断として伺いますが、今のような非核政策日本がとった場合、核防条約を脱退した場合、あるいは日本が中立になった場合、こういう場合はあなた方のいわゆる日米間の信頼関係という前提は壊れるのではありませんか。
  408. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 将来ともに自民党が単独政権を持続できるかできないか、これは私たちの努力であり、また一にかかって野党の方々の努力によるところだろうと私、思いますから、やはり今のところは私たちは日米間の信頼関係で今日ただいまこの協定の改定ということに一応合意したわけでございますから、合意して、もちができたときに、このもちの腐ったときどうしようというような話は、私といたしましては責任者としてなかなかお答えできにくい話であります。  したがいまして、今日はもうすべて我々は、原子力平和利用そのものは最初からアメリカの指導のもとにやったということも松本委員は御承知だろうと思いますし、また原子炉がフランスの技術によって大いに指導されたということも御承知でございましょうが、そういう積み重ねの中において、先ほどウランも有限であるという話も出ましたが、そのウランも例えばプルトニウムとなし、さらに核燃料サイクルとするのならば、十本の薪が十一本になる、こういうような原理でぐるぐるとそのサイクルは動くから、私たちはウランにつきましても速やかに核燃料サイクルを打ち立てたい、だから再処理が必要だ、だからプルトニウムの保管は厳重にしておる、IAEAの優等生だ、こうまで言っておるわけでございますので、ひとつ今ぜひともそういうような立場も御理解賜りたいと思う次第であります。
  409. 松本善明

    松本(善)委員 私は今の政府側の答弁というのは事実上答弁拒否だと思うのです。核防条約の脱退というのは実施取極にさえもあることですよ。そのことについてすら、そんなことは考えられませんと言って答弁しない。外務大臣も御答弁されない。それは私は条約審議にならぬと思いますよ。条約は、政府がどういうふうになろうと、国と国との間の規定がどうなるのかということなんですね。そのことを聞いておるのにそれは答えない。自民党政権では考えられないことだ、それはもうとんでもない答弁だと私は思います。  しかも、これは先ほど答弁のとおりに、取極自身は国会に諮ることなしに幾らでも変えられる。ということになってくると、この安全保障条項というのはまことに危険きわまりないものだ。将来の日本国民を拘束する重大な問題だ。これは、後私たちの党の質問の機会もありますから、きょうここでやっても恐らく繰り返しの答弁をするのではないかと思いますので、私はここは終わります。  さて、それでは、包括同意をやめるということになった場合には、日本原子力発電はどういうことになりますか。
  410. 田中伸男

    田中説明員 包括同意が停止されるような事態は起こり得ないという御答弁をしておるわけでございますけれども、法律的な解釈といたしまして、基本的に、濃縮につきまして米国から日本の電力会社がエネルギー省と供給契約をしておるわけでございますけれども、そういう供給契約にのっとりますと、協定に基づきまして核物質の移転が承認される規定が有効である限りは契約も有効である。すなわち協定が成立しております限りは契約が終了することはございません。したがいまして、包括同意取極のみが停止する事態になりましても契約自体は終了することにはなりません。
  411. 松本善明

    松本(善)委員 それはそうでしょうね。だけれども、包括同意が停止になるということになれば個別同意ということになり、個別同意が得られないということになれば再処理その他ができなくなって、日本原子力発電に支障が生ずるというのは当然じゃありませんか。  契約さえあればできますか。ウランの購入契約さえあればできますか。そのことを聞いているのですよ。うまくすり抜ける答弁ではなくて、本当に日本の将来がこの条約になってどうなるのかということを真剣に討議しているのだから、知っていることは全部答弁しなければだめですよ。
  412. 遠藤哲也

    遠藤(哲)政府委員 全く法律的というか理論的なことで申し上げますと、包括同意が万が一停止になりましたときには個別同意に戻る。これは、現在個別同意の状況でございますので、したがって現在の状況に返るということでございます。  しかしながら、次は少し法律論から離れると思いますけれども、新協定のもとで包括同意から個別同意に返るという状況というものは、個別同意の実際上の実施には非常な困難を生ずるであろうということは言えると思います。
  413. 松本善明

    松本(善)委員 二〇三〇年では六〇%を原発に依存するという計画だということが先ほど来の答弁でありましたが、そういう事態になったならば日本の電力事情はどういうことになるのでしょう。
  414. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  二〇三〇年には全体の中での原子力発電の割合が六〇%という想定もあるわけでございますが、私どもといたしましては、自主技術の開発をこれまで一貫して進めてきたところでございます。  例えば先ほど御答弁がありました濃縮役務の契約でございますが、これにつきましても、現在動燃事業団で開発中の技術を日本原燃産業株式会社に技術移転いたしまして、青森県六ケ所村で実用化していくということによりまして自主性を高めていくということもございます。  あるいは使用済み燃料の再処理にいたしましても、現在英仏委託が主流でございますが、それを国内で、六ケ所村の日本原燃サービス株式会社でやれるようにしていく、国内の原子炉の中で発生しましたプルトニウムを転々使っていけるという技術体系も確立していきたいということでございまして、我が国原子力のウエートが高まるにつれまして我が国の自主性も高めていくような技術開発を一貫して努めてやってきたところでございまして、そういうことによりまして、より原子力発電が安定で低廉なエネルギー供給源となり得るということに向かいまして努力しておるということでございます。
  415. 松本善明

    松本(善)委員 汗かきかきの答弁というような形容ができるような答弁で、そういうのはへ理屈というのですね。  先ほどからずっとアメリカの濃縮ウランに依存しているということが言われておったじゃないですか。それは、そういう時点でそういう問題が起これば日本の電力事情は大混乱になりますよ。  私は外務大臣に申し上げておきたいけれども、これは、エネルギーを通じてアメリカに従属をしていく、アメリカの政策と対立することはできないという方向に持っていく役割を果たす協定なんですよ。私は先ほど来なされている答弁は絶対に納得できない。国会の答弁じゃないですよ。自民党政府が続くという前提の答弁など、とんでもない答弁だと思います。  そういう答弁では絶対に納得できないということを申し上げて、時間が来ましたので、この次の機会にさらに私たちの党は徹底的に追及するだろうということを申し上げて、きょうの質問は一応終わります。
  416. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次回は、来る五月十一日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十八分散会