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1988-04-01 第112回国会 衆議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年四月一日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 田中 直紀君 理事 中山 利生君    理事 浜野  剛君 理事 高沢 寅男君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    小川  元君       大石 正光君    小杉  隆君       鴻池 祥肇君    坂本三十次君       椎名 素夫君    村上誠一郎君       山口 敏夫君    石橋 政嗣君       岩垂寿喜男君    岡田 利春君       河上 民雄君    伏屋 修治君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         科学技術庁原子         力安全局次長  緒方謙二郎君         外務大臣官房審         議官      福田  博君         外務大臣官房審         議官      遠藤 哲也君         外務省北米局長 有馬 龍夫君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局政策課長  石田 寛人君         科学技術庁原子         力局核燃料課長 結城 章夫君         環境庁大気保全         局企画課長   奥村 明雄君         環境庁大気保全         局企画課高層大         気保全対策室長 後藤 博俊君         外務大臣官房外         務参事官    法眼 健作君         通商産業省立地         公害局公害防止         指導課長    宇都宮 誠君         通商産業省立地         公害局保安課長 工藤 尚武君         通商産業省基礎         産業局化学製品         課長      阿部巳喜雄君         運輸省運輸政策         局技術安全課長 山本  孝君         海上保安庁警備         救難部警備第二         課長      児玉  毅君         気象庁観測部高         層課長     小嶋  修君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 委員の異動 四月一日  辞任         補欠選任   水野  清君     小川  元君   森  美秀君     鴻池 祥肇君 同日  辞任         補欠選任   小川  元君     水野  清君   鴻池 祥肇君     森  美秀君     ───────────── 三月三十一日  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(条約第七号) は本委員会に付託された。     ───────────── 本日の会議に付した案件  オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件(条約第四号)  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件(条約第七号)  核物質の防護に関する条約締結について承認を求めるの件(条約第五号)      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  オゾン層保護のためのウィーン条約及びオゾン層破壊する物質に関するモントリオール議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩垂寿喜男君。
  3. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 少し手前みその話になるわけですが、去年の八月に衆議院の環境委員会でこの条約関係する外交官会議が開かれる直前に、私、中曽根総理フロンガスの調印、批准について積極的な対応を求めたいということを質問いたしました。  その際、総理からかなり明確に前向きな答弁をいただきまして、その後こういう段取りになったことについて、率直に申しますと、私自身ワシントン条約などを手がけてきた立場から言いますと、割とスピーディーな対応だなというふうに、これは感謝の気持ちを含めて申し上げたいというふうに思いますが、ただ内容について言うといろいろ問題がございます。したがって、その問題などについて問題点をただしてまいりたいというふうに思っているところでございます。  最初に、気象庁お見えでございましょうか。気象庁はたしか昭和三十二年ごろから国内で四カ所、そしてその後南極を含めて五カ所でオゾン層観測を行ってまいりました。これは国際的にも高い評価を得ている調査だと私は思います。継続性の面でも、あるいはまたその調査の結果を国際的に発表してきた実績の上からも高い評価をいただいているわけでございますけれども、その結果、そしてこれからの見通しなどについて気象庁からぜひ見解を明らかにしていただきたい、このように思います。
  4. 小嶋修

    小嶋説明員 お答え申し上げます。  気象庁昭和三十二年の国際地球観測年を契機といたしまして、日本国内の札幌、筑波、鹿児島及び那覇の四カ所並びに南極昭和基地において継続してオゾン層観測を実施しております。  まず国内の四地点の状況について申し上げますと、オゾン層は季節的な変動が大きく、その変動の中で年平均値は不規則な増減を繰り返し、おおむね横ばいの状態にあります。しかし、昨年十二月及び本年一月には例年に比べオゾン量の少ない値が観測されています。一方、南極昭和基地観測によりますと、オゾン量昭和五十五年ころより南極の春に当たる九月から十一月期において顕著な減少があらわれており、この観測南極オゾンホール発見の端緒となったものであります。今後ともさらに注意深く観測してまいりたいと存じます。  今後のオゾン量見通しにつきましては、大気の循環、太陽活動フロン等微量物質影響等が複雑に絡みますので、オゾン量予測をすることは難しいと考えますが、オゾン層濃度減少は極めて重要な問題でありますので、観測及び研究を一層強化し、予測可能性を見出してまいりたいところでございます。
  5. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 去年の十二月の観測結果の中に史上最低の数字、十二月としては史上最低データが検出されたというふうなことも漏れ承っておるのですが、その点についての見解を示していただきたいというふうに思います。
  6. 小嶋修

    小嶋説明員 確かに十二月としてはということでございます。
  7. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 それでは条約あるいは議定書関連をして質問をしてまいります。  今度の条約あるいは議定書というのは、言うまでもございませんけれども、オゾン層破壊するおそれのある物質生産消費、それから取引というものを規制するということになったわけですけれども、この条約及び議定書作成されるに至った経過、特にフロンガスとの因果関係、この辺について日本政府はどのような見解に立って措置をとられたのかということについて、最初環境庁で結構でございますから。
  8. 後藤博俊

    後藤説明員 お答え申し上げます。  この問題につきましては、一九七四年にアメリカカリフォルニア大学ローランド教授フロンガスによるオゾン層破壊メカニズム指摘しまして以来、成層圏オゾン層の生成、消滅に関します大気物理機構など成層圏オゾン層科学分野で過去十年以上にわたりまして精密な調査研究が行われております。  環境庁におきましては、昨年の二月に我が国のこの分野の第一線の専門家から成ります成層圏オゾン層保護に関する検討会を設けまして、既存の科学的知見の整理、評価を行ってきたところでございますが、将来のオゾン層破壊量予測につきましてはさらに精緻な研究が必要とされますものの、フロンガスによるオゾン層破壊メカニズムについては、これらの専門家の間に異論は認められませんでした。したがいまして、定量的にはまだ未解明な点もございますが、定性的には主にフロンガスによって成層圏オゾン層破壊されるということが共通な理解になっていると考えております。
  9. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ローランド教授の名前が出てきたので、ちょっと。  最近のニューヨーク・タイムズで彼がフロンガス規制はもう手おくれではないか、既に消費された数百万トンのフロンガスが目下成層圏に向かって上昇中で、今すぐ使用を中止してもさらに深刻な影響があらわれるのだから、いつまでもこんな議論を続けているわけにはいかないという意味の御発言をなさっていらっしゃいます。もし国際的にもローランド教授因果関係説というものに基礎を置くとするならば、この発言の重さというものも環境庁にはしっかり受けとめていただかなければならぬと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  10. 後藤博俊

    後藤説明員 お答え申し上げます。  この問題につきましてアメリカ環境保護庁EPAでございますが、EPAの報告によれば、モントリオール議定書に沿った規制が今世界的に実施されれば、オゾン全量減少率は最高二%以内にとどまるだろうという予測がされております。こうした科学的な予測を踏まえて国際的にモントリオール議定書は合意されたものと承知しております。しかし、オゾン全量減少予測につきましては、大気中での化学反応地球全体の大気の動きなどを組み込んだ数値モデルによって行われておりますけれども、今後とも科学的知見の進歩に応じて予測モデルや計算を一層精緻なものにしていく必要があると考えております。  こうしたことからモントリオール議定書におきましては、一九九〇年を初年度としまして少なくとも四年ごと締約国間におきまして最新の科学的知見に応じて規制措置見直しを行うという仕組みになっております。このように国際的な合意となった今回のオゾン総合対策では、必要があれば規制の強化も含めました対応も可能な仕組みとなっておりますので、環境庁としましても、こうした仕組みを踏まえて適切に対処してまいりたいと考えております。
  11. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 今御指摘いただいたようにアメリカEPAの二%をめどにしたものであることは私も承知をいたしておりますが、今のローランド教授発言や最近のいろいろな学会における発表などを見ると、どうもこのままでは十分ではないような感じがする、さらに規制措置考えなければいけないのではないか、そうでないとオゾン層破壊を食いとめることはできないのではないだろうか、こういう意見も強く述べられていると思いますが、その点はもちろん承知の上で今回の措置を進めてきたというふうに理解してよろしゅうございますか。
  12. 後藤博俊

    後藤説明員 そのようなことを十分踏まえまして、ただいま申し上げましたように、モントリオール議定書におきまして一九九〇年から少なくとも四年ごと締約国間において見直しが行われる。こういうところを通じまして、環境庁としてもこの仕組みを踏まえて適切に対応してまいりたいと考えております。
  13. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 通産省、いらっしゃいますか。この条約議定書を受けて国内法が今議論をされているわけですが、日本世界に先駆けて独立した法案という形で対応するようになったことに対しては、先ほど私は積極的なその姿勢をそれとして評価をしたわけですが、この条約あるいは議定書作成の過程でいろいろな議論があったことは承知しております。フロンオゾン層破壊との因果関係がはっきりしてないという見解なども、日本政府の筋から述べられてまいりました。  この点では、通産省も似たような見解に立ってかなりネガティブな姿勢を示された経過がございますが、通産省自身は、今環境庁から御指摘をいただいたように、このフロンオゾン層との因果関係についてお認めをなさった上でこの法案作成に、そしてまた国会提案というものに対応しているのかどうか、お尋ねをしておきたいと思います。
  14. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、今回の国会特定物質規制等によるオゾン層保護に関する法律案の御審議お願いしております。本法規規制対象フロン及びハロン世界的規模における放出オゾン層破壊を生じさせる可能性があるものという認識のもとに国際的に条約及び議定書が採択されました。  我が国政府としても、この趣旨をよく理解いたしまして賛同いたしましてこれに参加することとしたところでございます。当省といたしましても、全世界フロンの一五%を生産している我が国が、条約及び議定書に従い、国際的に協力してオゾン層保護を図っていくことが重要であるという認識のもとに本法案を提出したところでございます。
  15. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 因果関係説というものを認めた上でなさったというふうに理解してよろしゅうございますか。
  16. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 オゾン層保護関連いたしまして、フロン放出オゾン層破壊の原因になるおそれがあるということを認識いたしまして本法案をつくったということでございます。
  17. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 おそれという程度ではないということはもう世界的知見がはっきりしているわけです。だから、おそれというところにアクセントを置きますと、フロン規制についてやはり産業活動が大事だとか、今までの製造をしているメーカーにとってどうであるとかということの方が優先してしまうおそれがある。今までのさまざまな公害規制の手だてを振り返ってみてもそのことが言える。だから、ここでやりとりをいたしませんけれども、そういう観点というものだけはきちんと押さえておいていただきたい。このことをお願いをしておきたいと思います。  この条約の一条及び二条で言うオゾン層を変化させた結果として生じるおそれのある悪影響というふうに書いてあるわけですが、これはどのようなものを意味するのか。気象の変化、あるいは気候といっていいのかもしれませんが、そういう悪影響があらわれる危険性というものを、これは気象庁がとらえておられたらお教えいただきたいと思うし、その点について環境庁から答弁をいただき、両方からいただければ大変ありがたいと思います。
  18. 小嶋修

    小嶋説明員 お答えいたします。  気象的には、炭酸ガスなどと同様、温室効果が大きな影響があると思います。
  19. 後藤博俊

    後藤説明員 お答え申し上げます。  ただいま気象庁の方からお答えがありましたように、炭酸ガスの問題とかメタンとか亜酸化窒素におきましても関係があるということを聞いております。
  20. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 フロン以外にオゾン層影響を及ぼす可能性のある物質はどんなものがあるかということについて、我が国独自のデータはお持ちですか。
  21. 後藤博俊

    後藤説明員 お答え申し上げます。  我が国独自というわけではございませんけれども、モントリオール議定書におきまして規制対象とされていますのは、フロンの五種類ハロンの三種類でございます。  このほかにオゾン層影響を及ぼす物質としましては、これは気候変動とも関連をするのですが、メタン亜酸化窒素、二酸化炭素などがございます。これらの物質大気オゾン減少に寄与したり、また逆に増加に寄与するなど、大気オゾン反応に複雑な関与をしていますため、オゾン層の将来予測にはこれらの物質大気中の濃度の推移も十分考慮する必要があると考えております。
  22. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これは去年の三月東京の化学学会で東大の巻出という講師が日本上空観測結果を明らかにしているわけです。フロン11、フロン12は年間増加率四ないし五%で一九八〇年からの六年間に一・三倍であった。規制を受けないフロン113はこの期間中に二・三倍、年間増加率で十数%になっている。これは率直に申し上げてハイテクの製品製造工程フロン113が必要だということは私も否定するものではございません。  ところが、地球レベル環境問題ということを考えるならば、これらのフロン113の使用をそのままにしてよろしいかどうか。これは実は国際的な特定の中には入っていませんけれども、そういう問題について日本政府としては何らかの対応をお考えになっていらっしゃいますか。
  23. 後藤博俊

    後藤説明員 フロンガス成層圏オゾン層破壊するものでございまして、このようなものを大気中に放出することを防がなければならない、そういうことで現在御提案申し上げております法案におきましては排出抑制につきまして重点的にやらなければならぬというふうに考えております。
  24. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これは私、国会で何回か取り上げて規制がかなり厳しくなってきた経過がございますが、トリクロロエチレン、これは最近は余り厳しくなったものですから、それよりも1・1・1トリクロロエタンというものの使用がふえているように言われていますが、これも実は大気圏に及ぼす影響というものを考えなければならぬと思います。この点はどういうようにお考えになっているか、それが一つ。  それからもう一つデュポン、これは後ほど質問をいたしますが、フロン22を代替品ということで開発をしているそうですが、これも分解性が速いということは言えても、なくなるわけじゃないわけであります。それ自身成層圏大気影響を及ぼしていることも事実でございますが、これらについての認識、御見解を承っておきたいというふうに思います。
  25. 後藤博俊

    後藤説明員 お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘の1・1・1トリクロロエタンとかフロン代替品でございますが、このようなものは現在モントリオール議定書対象にされております五種類フロンとか三種類ハロンに比べますと、対流圏における分解が速くて、そしてオゾン層に与える影響は低いというふうに考えておりますけれども、これらの1・1・1トリクロロエタンとか、それからフロン代替品開発並びに使用に当たりましては、環境上の影響も十分に考慮した上で検討されなければならぬと考えております。
  26. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 これらのことを含めて、やはり因果関係についてかなり正しい情報というか、それを公開していくという態度をとっていただきたいということを、これはこの際お願いをしておきたいというふうに思います。  実は、ごく最近の雑誌なんですけれども、これは新聞にも出ていましたけれども、「フロンガス生産量世界一の総合化学メーカーデュポン社が、絶縁体食品包装物など同社製品からフロンガスを「段階的に全面除去する」計画を先週発表した。同社はこれまで、フロンガス地球オゾン層破壊するとの説には証拠がないと終始否定してきただけに、今回の発表は衝撃的な路線転換といえる。」というふうに、ニューズウイークの記事でございますけれども、ございます。  デュポンがこういう態度を決めたということ、そしてその全製品からフロンガスを段階的に全面除去するというのはどういう意味かということをただしたことはございますか。
  27. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  米国デュポンが三月二十四日に発表した内容は、規制対象フロン製造を段階的に秩序ある移行をして削減をしまして、代替品開発を条件に究極的には規制対象品生産中止を目標として掲げるというものであるというふうに承知しております。  当省といたしましても、各製造者議定書に従って生産する量を削減するとともに、中長期的な経営方針として代替品開発に努めることは極めて重要であるというふうに認識しておりまして、そのための政府支援措置等考えている状況にあります。
  28. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 通産省としては、デュポンが恐らく代替品ができたからそういうふうに段階的除去という方向を出したと思うのですが、代替品をどんなふうなものとして考えているのか、あるいはそれがもう実用段階に入っているというふうに見ていいのか、その点についての情報をお聞かせをいただきたいと思います。
  29. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  現在、規制対象となりますのは、フロンの11、12、113、114、115というフロンに関しましては五物質でございます。現在生産されておりまして規制対象となっていないのが、先ほど先生の御指摘にありましたフロン22でございます。これは家庭用クーラー等使用されておりますが、この22というものをほかの例えば11だとか12の一部の用途に使用していくということが一つ考えられるかと思います。  それから、現在全く生産しておりません代替品といたしまして、フロンの123、それからフロンの134aというものがございます。これにつきましては、まだ製品安全性等も確かめられておりませんし、工業的規模での生産方法等についても現在研究中だというふうに承知しております。この安全性研究するためには最低でも三、四年はかかるようでございまして、その安全性の成果が完全に評価されましてコマーシャルベース生産されるには、まだ五、六年はかかるのではなかろうかというふうに承知しております。
  30. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 フロン等規制措置議定書第二条の生産量及び消費量の面から御説明いただいておきたいというふうに思いますが、これは通産省でしょうか、どちらでしょうか。
  31. 法眼健作

    法眼説明員 議定書第二条におきまして規制措置が規定されてございます。  この概略を簡単に申し上げますと、締約国消費及び生産を一九八六年レベルにまず凍結するということが第一点でございまして、それから一九九三年から九八年までは消費量、それから生産量、それぞれ八六年の水準の八割の水準にまで落とす、つまり二〇%カットということでございます。それからさらに九八年以降は八六年の水準のそれぞれ半分、つまり五〇%カットということが決められております。
  32. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もうそのことについて時間をかけるつもりはございませんが、この法案主管する官庁の問題で、私は常識的に言えば、UNEPでの議論の延長線上でもございますし、国際的な環境保全という立場から見るならば、環境庁主管をして各省の協力をいただくということが筋だと思うのです。  ところが、どうも共管という言い方はしているようでございますが、実際は通産サイドがこの法律のいわば主管官庁というふうな位置づけになっているのではないだろうかと思うのです。環境庁は何でそんなに遠慮したのですか。そのことを御答弁いただきたいと思います。
  33. 奥村明雄

    奥村説明員 お答え申し上げます。  現在提案されております法案は、地球環境保全という観点からフロン製造排出抑制を進めようということでございまして、先生指摘のとおり、環境庁通産省共管法案ということで考えておるわけでございます。  具体的な法案取りまとめという点につきましては、この法律案の中に国民の権利義務を最も強く拘束する製造量規制ということがございますので、そうした観点から通産省取りまとめを行うということになっておるわけでございますが、このことによりまして法案趣旨が変わるものではないと理解をしております。  また、法案内容につきましても、モントリオール議定書各国共通義務となりました生産量削減だけではなくて、オゾン層保護のための対策基本的事項を定めて公表いたしますことや、あるいは各国共通義務に加えまして、フロン使用する事業者における排出抑制使用合理化措置を講ずること、また環境科学的な研究の推進、オゾン層の監視などの規定を盛り込んでおりまして、私どもとしては中央公害対策審議会にも御審議いただきました方向に沿った内容になっているというふうに理解をしておるところでございます。
  34. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 余り中公審が期待していた方向とは、そのとおりにはなっていないと思いますが、それはきょうここで一つ一つ議論してみてもどうにもならぬでしょう。ただ問題は、環境庁がもっと積極的に日本環境行政、そして国際的な環境行政への積極的な責任の姿勢というものを示してほしかったという点をこの際申し上げておきたいと思います。  通産省で結構ですが、今後、生産するよりは輸入の制限という問題がこの法律によって問題になるわけですが、企業に対する生産する量あるいは輸入数量の分配をこれからどうなさっていかれるのか、これが一つ。  それから価格について、これは末端の製品価格に転嫁されるということが避けられないだろうということは既に新聞でも報道されています。適正な価格維持のためにどんなメカニズムとどんな指導を具体的になさっていく方針なのか。  三番目は、生産量削減による安定供給の確保をどのような方法でお進めになろうとしていらっしゃるのか。  この三点について通産省から御意見を承りたいと思います。
  35. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  フロン等規制法案に基づき生産及び輸入の規制を行う場合の配分方法についてのお尋ねでございますが、製造数量の許可及び輸入数量の承認に当たっての基本的な考え方につきましては、去る二月十九日、通商産業大臣の諮問機関でございます化学品審議会により、負担の公平性の確保、事業の継続性の確保、安定供給の確保などを図る観点を踏まえ製造者及び輸入者のフロン等製造実績、製造能力、輸入実績、我が国フロン等製造動向、輸出入動向その他の事情を勘案して行うことが妥当である旨の中間答申を受けております。当省といたしましても、化学品審議会の中間答申を踏まえ、製造数量の許可及び輸入数量の承認を行っていくというふうに予定しております。  それから、フロン等の価格が上昇する懸念についてのお尋ねでございますが、フロン等に関しましては、回収、再利用設備の普及や代替品の導入を図る等、使用の合理化施策を講ずることによりまして当面需給に特段の支障は生じないものと認識しております。したがって、フロン等の価格は市場メカニズムによって適正に形成されるものと見込まれますが、万一製造者等の便乗値上げ等による急激かつ大幅な価格の上昇が生じ、また国際的に見て著しい高価格が出現する場合には、製造者等に対して適切な指導を行ってまいる所存でございます。  それから、安定供給確保についての御指摘でございますが、フロン等に関しましては、先ほども御説明いたしましたように回収、再利用設備の普及ということを積極的にやってまいりたいと思っております。また、代替品等の導入を図る等、使用の合理化施策をあわせて講ずることにしておりまして、当面需給等に特段の支障は生じないのではなかろうかというふうに認識しております。したがいまして、フロン等を必要なところには当面支障なく供給されるものと考えております。  ただ、万一流通上の問題により特定の用途においてフロン等の入手が困難になるような場合においては、製造者等に対して適切な指導を行ってまいる所存でございます。
  36. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 五種類特定フロン製造しているところというのは五つですね。その五つの名前は言いませんけれども、企業それぞれ実績があるわけですね。その実績を踏まえてということを今あなたが答弁をなさいましたけれども、実はこの数年間、企業それぞれかなり製造について減らしたり、あるいは駆け込みを考えてふやしたりというような傾向が見られます。そういう既得権みたいな形でそれを許容するということになれば、いろいろ問題が起こってくる心配がございます。  正直者がばかを見るというふうなことにはならないと思うが、そういうことになりかねないことも考えておかなければなりませんが、その点も含めて、要するに企業に対して、つまり各社別の総量を割り当てるという方式でいかれる場合に、その辺のところの配慮というものは十分に生かされると考えてよろしいかどうか。
  37. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 フロンメーカーは、御指摘のとおり現在五社でございます。これが既得権益になる可能性があるかもしれないという御指摘でございますが、また一方では、私どもの方として考えなければいけないのは、ユーザーに対して適切な価格で安定供給がなされるということも重要だということでございます。そういう観点から、先ほど御説明いたしましたように、化学品審議会におきまして、事業の継続性だとか負担の公平性の確保、安定供給の確保を図る観点を踏まえてその割り当てを行えという中間答申をいただいているわけでございます。  また、このフロンにつきまして新たにつくる人たちの余地も残すべきではないかというあるいは御指摘かと思いますけれども、フロンにつきましては、先ほどの御指摘もありましたように、今後、生産を八六年に凍結し、かつ二〇%削減し、五〇%削減していくわけでございます。当然のこととして国内生産設備というのは大変に過剰になってくるわけでございます。そういう中で新たに設備を新増設していくということが経済合理性等の観点から見まして果たして適当であるかどうかということも考慮しなければいかぬだろうというふうに思います。したがいまして、私どもとしては、フロンメーカーが過去の既得権益というふうなことにあぐらをかくようなことなく適切な供給を行っていくように指導してまいる、そういう所存でございます。
  38. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 私が言ったのは新しくつくる余地を残しておけなんて言ったんではないので、そういう受けとめ方をされると大変誤解でございますから。  問題は、既得権だということで目いっぱいつくっていってもいいんだということによって、結果的には代替物質開発などがおくれる可能性もある。同時に、トータルとして減らしていく方向に企業が努力をしなくなるおそれがある。その辺のところを考えた上で、各社割り当てをなさるだろうから、各社割り当てをなさる場合にも会社のそういういわば環境行政に対する姿勢みたいなものも十分配慮して行っていかなければいけないのではないだろうかというふうに申し上げたわけでございますので、誤解のないようにお願いをしたいと思います。  UNEPに最終的に届け出る六十一年度水準生産量というのは数字はどのくらいになりますか。
  39. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  UNEPに届け出る正確な数字につきましては、今回御審議お願いしております法律に基づきまして最終的に確認をする予定でございますので、正確に現在把握はしておりません。しかし、おおむねの数字で申し上げますと、昭和六十一年のフロン生産量は、フロン22、規制対象外の物質も含んでおりますが、十七万六千トンでございます。それから、ハロンにつきましてもおおむねの数字になりますが、生産量は三千数百トンのレベルであろうというふうに推定しております。
  40. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 十七万六千トンから規制対象外のものを抜き出すと、私の計算では大体十三万トンぐらいだというふうに考えてもよろしいですか。
  41. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 十三万トンから十四万トン前後だというふうに私どもも推定しております。
  42. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 実は、環境庁が「頑張ってね、地球のための宇宙服」という大変立派なパンフをお出しになりました。それなりの努力が私なりにもわかるのですが、問題は、製造規制するということも大事だけれども、あるいは取引を規制するということも大事だけれども、ある種の国民的なモラルといいましょうか、国民的に、やはりこれはやってはまずいぞ、あるいはこういうことはお互いに生活の上では便利だけれども自粛しようではないかということを考えていただくことが非常に重要だと私は思うのです。  環境教育というそんな大げさなことを言うつもりはございませんけれども、そういうことをこれから積極的にやっていかなければならないと思いますが、環境庁はその辺で何かお考えを持っていらっしゃるかどうかということをぜひお尋ねしておきたいというふうに思うのです。  私は揚げ足取りをするつもりはないのですけれども、その中でちょっと気になる言葉がある。五ページの一番下に数量がございますでしょう。「オゾン層保護条約議定書に基づく規制よりも厳しい規制を今後とも行わないとした場合の推定排出量」、これは何か言葉としてちょっと正確でない。むしろ、この議定書によって規制をしていったらこの辺だ、もっと素直に言うべきだと思うのです。  もっと厳しくしなければいけないなという気持ちを持って環境庁はこれをやったのだろうと前向きに私は評価しますけれども、日本語としてはちょっとわかりにくいという意味で、これは揚げ足取りをする議論ではございませんが、どういう形でこれからもPRを積極的になさっていかれるのか、あるいはこれから調査研究についてもどんなお取り組みをなさるのか、同時に、今指摘をしたことについての御答弁をいただきたいと思います。
  43. 奥村明雄

    奥村説明員 お答えを申し上げます。  先生指摘のように、オゾン層保護の問題につきましては国民の方々の広い理解と御協力が不可欠であると私どもも考えております。  フロンガスは大変有用な物質でございまして、家庭電器製品やスプレーというような形で日常生活の中に広く使われておるわけでございます。こうした有用性を持っている反面、オゾン層に与える影響というものが考えられるわけでございますが、フロンオゾン層に与える影響というのは大変化学的な問題でございますし、直接人体に影響するという形のものでもございませんので、正確な科学的理解ということについて普及をいたしまして、それに基づいて理解を求めるという必要があろうと考えておるわけでございます。  このため、先生お示しのございましたパンフレットをつくるとか、テレビなどの広報番組などに取り上げていただくとか、そういう努力を進めておるところでございますが、現在国会に提案をさせていただいております法律案におきましても、基本的事項ということで政策の柱といったものを定めることになっておりますが、その中でオゾン層保護の意義ということを明らかにいたしまして、知識の普及をしていくということを二番目の大きな課題として取り上げておるところでございまして、そうした趣旨に沿って積極的に努力してまいりたいと思っておるところでございます。  なお、御指摘のパンフレットの点でございますけれども、確かに回りくどい表現になっておりますが、今後見直しということがあり得るということを踏まえてこんな表現にいたしたところでございまして、趣旨先生のおっしゃるとおりで、現在の議定書の線に沿って当面行われるということを書いた趣旨でございます。  それから、研究開発についてのお尋ねでございます。  先ほど来お話がございましたように、モントリオール議定書というもので約十年間に半分に生産量削減するというような方向づけがされておるわけでございますが、この点については、議定書の中でもUNEPが中心になりまして見直しをしていくということが明記されておるわけでございます。そうした意味から、環境庁といたしましても、科学的な知見を集積いたしましてこれに対処していく必要がございます。  また、オゾン層破壊メカニズムにつきましても、定性的な面では内外の研究所の知見は一致をしておりますが、定量的な面ではより精緻なモデルを開発していくとか推計をしていくという点が残されております。また、オゾン層破壊されました場合の皮膚がんへの影響あるいは生態系への影響など、いろいろな問題点が残されております。また、代替品開発といった点も大きな問題でございます。  こうした問題につきましては、現在提案をさせていただいております法案におきましても、科学研究の促進ということを一つ条文に掲げておるわけでございまして、関係省庁とも連携をとりながら積極的に努力をしていきたいと思っておる次第でございます。     〔委員長退席、浜野委員長代理着席〕
  44. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 今ちょっと揚げ足取りの議論をしたのですが、私は実は揚げ足取りじゃなくて、環境庁からそういう答弁を引き出したかったのです。  というのは、現在のモントリオール議定書に基づくフロン削減だけではオゾン層保護を図るためには不十分だというふうに国際的にも言われている。その流れを環境庁もきちんと受けとめて、もっと厳しくなるだろうということも含めて、ぎりぎりこういう数字の表現をしたのだろうというふうに私は受けとめてまいりたいと思います。特に、新しい物質との因果関係などを含めて、これからなさなければならない問題が山ほどございます。  そういう意味で、大臣さっきからちょっと退屈そうでございますので質問をさせていただきますが、このフロン規制というのはUNEPがかなり積極的にやってくれたことも事実なんですが、どうもアメリカEPAを初め議会、大変議会で積極的な議論をしてくれています。特に議会の公聴会などというのは、まさにアメリカの世論を一つ大きくつくって、そしてアメリカ関連企業数百社と言われる人たちがそれに従うという意思表示までして、その上で今度はデュポンがここまで来ているわけですが、そういう意味ではオゾン層に対する科学的な調査研究というものを我が国としても積極的に推進をする、それに基づいて国際的な提言をしていく、そして地球環境保全のためのイニシアチブをとっていく、こういうふうな積極的な姿勢を示していただきたいと思いますし、これについては中曽根前総理にもそのことを私は申し上げたことがございますが、その点についてひとつ歯切れのいい御答弁をいただきたいと思います。
  45. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 先ほど来いろいろと政府委員から御発言ございまして、私も聞いておりまして、要は、先生方のこうした御協力でこの条約並びに議定書承認いただくことであろうと私は思いますが、その後が大切でございまして、オゾン層における日本としての国際協力でございますから、まず、やはりフロンガス等々逃れないようにすることが大切だし、また生産を減量するということも忘れてはいけません。  廃棄物等々環境問題は日本は得意の分野だろうと私は思いますから、既にもう二十何カ国が承認を終えておられますし、それだけの国際問題でございますので、前内閣からもこのことは、岩垂さん等々の御指摘によりまして本当に努力をしてまいって今日に至ったものでございますので、我が国といたしましても、確かにおっしゃるとおり、国際的なイニシアチブをとる、このことが大切であろうと思いますので、締結後は早速そうした問題に関しましてもどんどんと研究を進める、情報を交換する、さらには観測を強める、いろいろな方途があろうと思いますから、そうしたことで努力をしていきたい、かように思います。
  46. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 もう一つ大臣にお願いをしておきたいのですが、非締約国——つまりこの条約に参加しようとしている国は、世界全体から見るとまだまだ数はそれほど多くございません。その場合に、例えば、国の名前を申し上げて失礼ですが、韓国とか中国とかフィリピンなどなど、関係が非常に密接な、この問題についての責任をある程度担ってもらわなければならない国々に対して議定書に参加するように呼びかけていく、できればそういう地域的なシンポジウムみたいなものを日本考えていくということが必要だと思いますが、その点ではいかがにお考えでございましょうか。
  47. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 最近、特に日本が一〇%、一五%という生産でございますから、当然いわゆる韓国を初めとするNICS等々におきましても相当量が生産されるということにかんがみました場合には、やはり隣国でございますし、お互いのオゾン層でございますから、このことは大切なことだと思います。  私は、この間も韓国の外務大臣とお話ししましたが、NICSそのものについては先進国の仲間として物を申さなければならないことがあるかもしれぬし、同時にまたアジアの一員として先進国に対して物を申さなければならない点があるかもしれぬ、そういうところが日本は一致しておるので、いろいろな問題はあろうけれども、こうした地球環境保全するという問題に関しましては私は先進国もNICSもないというふうに考えますので、確かに御指摘のとおりでございますから、あらゆる機会にそうしたチャンスを我々から求めまして、こうしたことに関しましても率直に私たちから申し上げたい、かように思います。
  48. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 フロン排出規制ということを考えた場合に、フロンを使っている事業者に対してその義務を課していくことは当然必要なことなのですが、実はもう使ってしまっているものをどう抜き取って回収していくかという努力をしないと、それを放置しておいたのではどうにもならないと思うのです。  例えば電気冷蔵庫なんかそのとおりだと思うのですが、フロンを抜き取ってトータルとしてふやさないという努力がやはり必要だと思うが、通産省はそういうところまでは考え方を持ってはいませんか。
  49. 宇都宮誠

    ○宇都宮説明員 お答えいたします。  通産省としては大気中の不必要なフロン放出抑制することは非常に重要だと認識しておりますし、同時に、フロンの有効利用を図る観点から、フロン製品からのフロンの回収、再利用の可能性を検討することが非常に重要だと認識しております。  このため六十三年度より、安全で効率的なフロンの回収、利用を図ることを目的にいたしまして、回収、再利用が容易なフロン使用製品の構造について調査いたし、さらにフロン回収に最適なシステムについての技術的、経済的フィージビリティーの調査等、必要な施策を実施するための調査検討をしていくつもりであります。
  50. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ついでですからお尋ねしますが、最近の新聞で工業用フロンガスを九五%以上回収、再生する画期的な技術の開発が成功したということが言われていますが、そのとおりと受けとめていいですか。特定の企業の宣伝をするわけにはいかないと思うが、技術的にそれは認められるものかどうか、通産省見解を御答弁をいただきたいと思います。
  51. 宇都宮誠

    ○宇都宮説明員 事実だというふうに承知しております。
  52. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 再利用といいましょうか、回収、再生ということについて、もっと積極的な努力を私たちはしなければいけないのではないだろうかと思いますので、その点についてのインセンティブといいますか税制上の措置がとられたことは大変いいことだと思いますので、そういうことを含めて御努力をいただきたいと思います。  同じように新聞報道によりますと、通産省が例のヘアスプレーなど化粧品の噴霧剤としてこれまでのフロンにかえて液化石油ガス、LPGの使用を解禁するという検討を始められたというふうに出ていますけれども、これは事実かどうか。  もし可燃性の液化石油ガスを人体に吹きかけて、危険でないとは言えないと私は思うのです。危険だというふうな意見があったら、それは個人が負担すべきだという話を通産がしていることも新聞の報道で聞きましたけれども、大気保護とあわせて人体の安全性というものも絶対に考えなければならぬ問題でございますので、液化石油ガスの使用を許可するつもりなのかどうか、許可をするということであるとすれば本当に事故が起こらないという保証をお持ちかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  53. 工藤尚武

    ○工藤説明員 お答え申し上げます。  エアゾール製品につきましては、高圧ガス取締法によりまして、燃焼性の強さに応じた五つの区分が設けられておりまして、それぞれの区分に対応した、火気の付近で使用しないこととか、そういった使用方法の表示がいろいろ義務づけられております。また、先生指摘関係でございますけれども、人体に使用するエアゾールの噴射剤には可燃性ガスを使ってはいけないというようなことになっておるわけでございます。こういった各種の基準の結果といたしまして、現在人体用エアゾールの噴射剤の中にはLPガスは大体十数%既に混入されている状況になっておるわけでございますが、それ以外についてはフロンが使われているわけでございます。  現在のこのような基準につきましては昭和四十一年にできたものでございますけれども、これは当時エアゾールの充てん工場で充てん作業時に非常に事故が多発したというような背景がございましてできたものでございますし、その後二十年以上経過しておりますので、エアゾールの品質管理の向上の問題とか、あるいは先進各国との基準の整合性が強く求められる時代になってきております。それから、このたびのフロン規制の問題もございまして、エアゾールの基準に関する内外の情勢が大きく変わってきているわけでございます。  そういうことでございまして、現行のエアゾールの基準につきまして、噴射剤の今の可燃性ガスの問題も含めて、表示の仕方の問題とか燃焼性の区分の決め方の問題でございますとか、現行基準を全般的に見直す必要が出てきているわけでございますので、現在、高圧ガスの保安に関する専門機関でございます高圧ガス保安協会に対しまして、安全性の確保を大前提としながら、現時点でどんな基準が一番合理的なのかを検討していただきたいということを依頼しているわけでございます。高圧ガス保安協会では、消費者の代表も含めまして専門家による委員会を設けて相当の期間をかけまして検討を行うということになっておりますので、私どもといたしましては、一定の予見を与えずにその専門家の検討を待って対処していきたいというふうに考えております。
  54. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 慎重にお願いをしたいと思います。  時間が参りましたので、大臣、最後に一つだけお願いをしたいと思います。  このモントリオール条約を導き出したUNEPのトルバ事務局長を初めとする努力に対して私はかねがね敬意を表してきたわけですが、当面地球上のいわゆる環境破壊という問題は、オゾンだけではございませんで、例えば熱帯雨林の消失であるとかあるいは砂漠化であるとか、そういうさまざまな問題がございます。これは単に当該国だけが努力をしたのではどうにもならない、非常に国際的な連帯、国際的な取り組みということが必要だと私は思うのです。  だから、国連外交というふうに一口で言いますけれども、UNEPなどに日本が積極的に、例えばお金のことだけではなくて、公害対策のノーハウであるとかあるいはマンパワーであるとか、そういう知見をできるだけ世界に役立てていただく、こういう努力をしていかなければならぬというふうに思っているわけでございます。かねてから私はそのことを主張してきたわけですが、外務大臣、外務省といいましょうか外交の一つの大きな要素として環境外交というものに、とりわけUNEPなどの支援、協力ということを前提にしながらぜひお取り組みをいただきたいと思いますので、御答弁をいただきたいというふうに思います。
  55. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 かねて申すとおり、日本は常に世界に貢献したい、こういう意欲で今外交を続けておりますので、今岩垂委員が申されましたUNEPがこうした問題に対しましていろいろな問題を次から次へと指摘し、また採択されたということが国際環境を浄化に導くということであろうと思いますから、もちろん、我々といたしましてもそうした面における貢献をいたしたい、かように考えております。
  56. 岩垂寿喜男

    岩垂委員 ありがとうございました。
  57. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 永末英一君。
  58. 永末英一

    ○永末委員 オゾン層保護のためのウィーン条約並びにオゾン層破壊する物質に関するモントリオール議定書の件でございますが、オゾンというこの目に見えぬような存在、しかも成層圏という地球のはるかかなた宇宙に存在する物質が人間の生存のために極めて有用な働きをしている、これを人間がつくった物質の中で破壊するものはひとつ制限しようじゃないかということで集まって、そして条約の形に仕立て、それに基づいてそれぞれの国が自国のそれぞれの産業に対して規制を加えよう、すばらしいことですね。  人類を殺りくする兵器をつくって宇宙を汚そうなんというようなことを企てている人々がいる時代に、逆にその宇宙をクリーンに、そして人間、人類の生存のために役立つ状態で維持しようということは、すばらしいことだと思います。したがって、我々民社党といたしましては、これらの条約並びに議定書がつつがなく成立をして、これに基づく日本の国の産業の一つの政策がつくられるということを期待をいたしております。  さて、この条約に基づく国内法の整備が整ったので条約承認を求めておられるようでございますが、その国内法によりますと、年次別、年度を分けての生産制限の方向は定められておりますが、大体この元凶とみなされるフロンは空中に拡散することによってオゾンを破壊するわけでございますので、それを空中に出さなければそういうことは起こらぬと思います。生産制限は法定されようとしておりますけれども、排出規制というのはどういう考えでどういう計画があるか、お伺いしておきたい。
  59. 奥村明雄

    奥村説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、オゾン層保護のためにはその原因となりますフロン等大気中に排出することを抑制していく、これが重要でございます。世界各国で共通の責務ということで、モントリオール議定書では生産量削減をするという形で、共通の形で対応しようということで決められたわけでございますが、私どもが今国会に提案させていただいております法案では、こうした各国の共通の責務を的確に果たすということに加えまして、具体的に排出抑制あるいは使用合理化を進めていこうということで、そのための指針を定めまして指導をするというようなことを考え、条文の案の中に盛り込ませていただいておるところでございます。  なお、これに関連しまして、そうした事業者における努力を促進をする観点から、固定資産税の面での税制上の優遇措置についても盛り込んでございますし、また所得税についても政令上で手当てをしていくということで関係省庁と御相談をしているところでございます。
  60. 永末英一

    ○永末委員 排出抑制あるいはまた使用の合理化とでも申しますか、人間の衛生に対して合理的な規制をしようという意味で合理化という言葉を使いますと合理化でありますけれども、その指針を定めようとしておる。どういう内容ですか。
  61. 奥村明雄

    奥村説明員 お答えを申し上げます。  提案をいたしております法案によりまして、ウィーン条約我が国に対しまして効力を発する日から具体的な指針を定めまして指導が行われることにされておりますので、その段階で具体的な煮詰めをして指針を定めていくことになりますが、現在の段階としては、例えば排出抑制といたしましては、密閉構造にいたしますとか、あるいは吸着装置を使いましてフロンを吸着させるとか、あるいは回収、利用するとか、あるいは使用合理化という観点では代替品といいますか、フロンのより少ない生産構造にいたしますとか、そうしたことを今の段階では考えておるところでございます。
  62. 永末英一

    ○永末委員 指針というものは法律的効果を持つものですか。それに至らない、いわゆる行政指導的なものですか。
  63. 奥村明雄

    奥村説明員 お答えを申し上げます。  現在提案をさせていただいております法律案では、こうした排出抑制使用合理化をすることについて、事業者に対しまして訓示的な規定を置きまして、その具体的な指導をする観点から指針を定めるということでございまして、この指針については直接強制的な規定、罰則というような規定はございませんので、御指摘の点についてお答えを申し上げれば、行政指導的なものというふうに考えることができると思います。
  64. 永末英一

    ○永末委員 生産制限は六十一年ベースでやりまして五〇%ダウンが十年後の目標のようでございますが、ゼロにはしないのですね。
  65. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  モントリオール議定書では五〇%削減までが求められておりまして、ゼロまでは求められておりません。ただし、議定書の二条に、各国がそれ以上の厳しい措置をとるということを妨げるものではないということにはなっております。
  66. 永末英一

    ○永末委員 そのフロン生産量の伸びを見ておりますと、極めて多くなったのはここ二十年来のことで、しかも我々に与えられた参考書類では、成層圏のオゾンが破壊されるのは百年かかるというようなことが書いてあるのですな。  そうしますと、フロンが実験上、オゾン破壊に極めて有害な物質である。なぜ五〇%でとめるのですか。ゼロにすることを目的にするというなら、これがいかぬのであって、生産制限、それをつくっているものはつくるなという法律上の強制力を使ってでもやることはわかりますが、半分ならよろしい、害があるが半分でもよろしいという思想、発想はどこから来ているのですか。
  67. 法眼健作

    法眼説明員 お答え申し上げます。  この条約作成過程におきましては、先生御案内のように、いろいろな国の立場とか、またその置かれた状況等ございまして、どの程度の水準規制するかということにつきましてはいろいろな議論があったわけでございます。その過程で、他方、そのフロンのいろいろな用途と申しますか使途、これにつきましては非常にいろいろな面で便利なものであるという実際のメリットもございまして、そこで、いろいろな形で議論が行われ、一口で申せば、各国の妥協の要素がそこに出てまいりまして、そしてこの結果といたしまして、第二条にありますような段階的規制、そして目途といたしましては、先生おっしゃるように十年後に五〇%の水準にまで下げるということで合意した次第でございます。
  68. 永末英一

    ○永末委員 政治というのは妥協の産物ですよね。しかし、フロンが人体に害がある、生態系を破壊し、オゾンを破壊するんだ、こういうことを言うて、緊急の必要性があるからこの条約議定書締結したと言いながら半分でやめるなんて、そんな中途半端なことでいいのですか。害があるんだったら、ゼロにすることを目的として相談すべきじゃないですか。日本政府立場態度はどうなんですか。
  69. 法眼健作

    法眼説明員 まさに、先生おっしゃられますように、理想的にはでございますが、そういったようなものが完全になくなれば、オゾン層保護という非常に大きな大事な面に立脚いたしますと、先生のおっしゃるとおりだと思います。  他方、実際の人間社会と申しますか、そのような生活の面で条約及び議定書にはこれにかわる代替品開発とか研究、そういったことを一生懸命やるということになっております。したがいまして、そういった状況も踏まえ、この議定書におきましては現在の水準の半分というところに到達したわけでございまして、なおかつ、その点に立脚いたしまして一生懸命その技術開発をするだとか代替品開発に努めるなどというような規定があわせて盛り込まれているわけでございます。
  70. 永末英一

    ○永末委員 フロンが有害であるからこれはやめなければならぬ、そこでこの条約が決められた。しかし十年かかっても半分しかできない、こういう判断だというなら、その代替品考えても、代替品がもし完全にフロンに代替し得るものであるならば、それが十年以内にできるなら別に五〇%残さなくてもいいですわな。  そうすると、代替品は十年以内にはできぬという判断ですか。
  71. 法眼健作

    法眼説明員 いずれにいたしましても、この条約議定書によりましては四年ごとに見直すという規定がございます。したがいまして、そういった点も踏まえて今ここに書いてあることを前提といたしまして、さらに四年ごと締約国がレビューする、見直すという規定があるものでございますから、その点も含めて私どもはこの条約及び議定書フロン規制に役立つもの、このように考えている次第でございます。
  72. 永末英一

    ○永末委員 四年ごとにレビューするなんて言うておりますけれども、これをつくっている生産者の立場に立てば、今から五年後には二〇%ダウン、十年後には五〇%ダウン、生産設備をどうするかという問題があるし、それから代替品をその場合つくろうとするならば、一体それがオゾンに対して無害であると証明されるためには相当な期間がかかるに違いない。  それを、あなたのように四年ごとにレビューしたら何かうまく合理的にいきそうなことを考えているけれども、全然時間が違うのと違いますか。生産をやめろと言われたらそれだけやめなければならぬ、その強制力を持つのが法律である。ところが、代替品の方についてはそのめどが立っているとはっきりあなたは言わない。それでは一体どうせいというのかわからぬですな。  しかも、排出基準は指針であって、こうしたらいいだろうということを言うているのであって、やらなくても罰則はない。そうすれば、フロンを使う物質が有益であるということを使用する国民側がそう思っているならば需要がどんどん減るこはないのであって、減ることがなければそれに見合う製品を出すということになる。そうすると、立派なことを言っておきながら実態はなかなか変わり得ない。  何か代替品をつくるために政府の方は大いに促進をする方針を考えているのですか。
  73. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  代替品につきましては、例えばフロン123ですとか134aというものが現在考えられておりまして、これの製造方法につきましては、各フロンメーカーにおいて現在真剣に研究開発中であるというふうに承知しております。政府といたしましても、こういう努力を支援するために、ことしの予算で代替品の物性等の測定あるいは安全性評価するというための措置を設けまして、そういう努力を促進していきたいというふうに考えております。
  74. 永末英一

    ○永末委員 幾ら計上したのですか。
  75. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 通産省の予算では二千万円強でございます。
  76. 永末英一

    ○永末委員 そこで、外務大臣もお聞き及びのことでございまして、我が国地球環境保全のために努力をしなければならぬわけで、そういうことをやらぬで商売ばかりやっているとエコノミックアニマルなどと言われる、そこで、このことは重要なことだと思います。  この前ここで熱帯樹林のことについても伺いました。したがって、そのためには、資本主義社会でございますから、それぞれ私企業は商品をつくって売り出しておる、需要があればそれはなかなかなくならない。それが別の観点つまり地球環境保全という立場からこれを変えねばならない。片一方は生産を制限する、使用に対しても規制をするということを考えるならば、しかし似たような需要がある。例えば半導体を洗わなくてはならないだろうし、洗剤も要りますし、頭のスプレーも要るかもしれませんし、クーラーも要るし、冷蔵庫も冷やすためのものが要る。その代替品をつくらなければ需要は減らないのであって、したがって、その意味合いでは外交は内政に通じますわな。  だから、政府の役割というのは、そういう新しいフロンにかわる物質生産することを促進するとともに、フロンが有害なら五〇%ではなくてやはりゼロにするという目標を掲げ、その目標に到達するためには国内的にはこれこれの努力を日本はしておる、地位の変換と相まって地球保全のために主張をする、こういう立場でないといかぬと思います。  そしてさらに、四年ごとに見直すなどと言っておりますが、これはまさに全地球的な、全宇宙的なことでございますので、オゾン層保護のための環境保存の国際協力に対して我が国がまさにリーダーシップをとってでもやっていくのだ、こういう決意と準備が必要だと思いますが、いかが思われますか。
  77. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 仰せのとおり、非常に重大な条約並びに議定書の御審議を煩わしておるわけでございますが、先ほどからの質疑応答をいろいろと承っておりますと、もう少しく私たちもこの問題に関しましてはシビアな態度をとっていいのではないか、かような考えもいたしますが、一応条約上、議定書上は見直しということもございますし、先ほど南極観測の結果も私聞いておりまして、ああそうかというふうな感じが実はしました。だから、日本といたしましては、もちろん生産を低目にする、さらにはまた輸出もそれに伴いまして公害をばらまかないように考えていかなくてはならないでございましょうが、やはり必要な面は必要だから代替品と、今仰せの面もこれはおろそかにしてはいけない、こう考えます。  この条約発効後は、そうした面が具体的にどのように行政上指導でき、また実際問題としてその効果が上がるかということは如実に明らかになると思いますので、世界に先駆けてやることも日本一つの貢献だろうと思います。何分にもアメリカ、EC、日本だけでも九割は生産しているという状況でございますから、そうした面の責任はひとしお重いということを痛感しながら、今幾つか御指摘されました点に対しましては、政府といたしましても努力しなくてはいけない、かように考えております。
  78. 永末英一

    ○永末委員 終わります。
  79. 浜野剛

    ○浜野委員長代理 松本善明君。
  80. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣、最初に伺いますが、このオゾン層というのは海面の気圧に直せば三ミリぐらいの非常に弱いもので、これがなくなると生物が死滅するようなものですから、当然のことですが、この条約は一層強化をするというようなことでオゾン層を守るということの努力をしなければならないと思うのですが、一言だけまず決意を伺いたいと思います。
  81. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 当然のことでございます。生産から消費から、あらゆる面における規制ということは必要でございます。
  82. 松本善明

    ○松本(善)委員 それで、ウィーン条約の二条の一項で、オゾン層を変化させ、または変化させるおそれのある人の活動の結果として生じ、または生ずるおそれのある悪影響から人の健康及び環境保護するための適当な措置締結国がとるということが決まっております。これは一般的な義務でありますが、これは条約局長になるのか、答えられる人に聞きたいのですが、先ほどもフロンガスだけでなくて、オゾン層破壊するガスのことが議論になりましたけれども、大気圏の核爆発は当然オゾン層破壊するというふうに思いますが、この点はどう考えていますか。
  83. 法眼健作

    法眼説明員 お答え申し上げます。  大気中における核爆発によって生じる窒素酸化物、これがオゾン層破壊するおそれがあるとの学説があることは承知しております。これが事実であるといたしますと、大気中の核実験は、この条約に言うオゾン層を変化させ、または変化させるおそれのある人の活動に含まれるということは、理論的にはそういうことが言われるのではないかと思います。  他方、地下核実験、これはこの活動に含まれているとは考えられておりません。
  84. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、大気圏の核爆発がこのウィーン条約の範囲に理論的には入るということの答弁でありましたが、そうすると、外務大臣に伺いたいのですが、SDIでレーザー光線で敵のミサイルを迎撃する、空中で核爆発が起こりますと、これはやはりオゾン層破壊する。そういう空中での核爆発を防げる保証はないということをハロルド・ブラウン元アメリカ国防長官も言っているわけです。SDIが実際にやられるということになりますと、実際に使われるということになると、やはりオゾン層破壊する、そういう危険があるのですね。  SDI参加のSDI協定日本アメリカと結びましたけれども、このウィーン条約との関係で、オゾン層破壊を防ぐという観点からするならば、やはりこれは間違いだったということは、あの当時から私は反対をしておりましたけれども、当然ではないか。この核爆発とSDIとの関係オゾン層を守るということについて外務大臣はどのようにお考えですか。
  85. 法眼健作

    法眼説明員 お答え申し上げます。  SDIは、現在研究段階にございまして、いまだ実現されていないものでございます。SDIが今そういう状況にある現段階で、条約及び議定書対象になるか否かという点につきましては、私ども判断する立場にはございません。
  86. 松本善明

    ○松本(善)委員 現在そうであっても、ブラウン元国防長官が言っておりますように、空中で核爆発がSDIによって起こる可能性がある、これは否定できないんじゃないでしょうか。
  87. 法眼健作

    法眼説明員 ただいま申し上げました点と重複する面が多いわけでございますが、SDIがただいまのところ研究段階にございます。そして、実現した場合はどうかという今の質問でございますが、先ほど申し上げましたとおり、今研究段階にございまして、それがどういった形で実現するかという点に立脚いたしました状況につきましてはお答えする立場にはない次第でございます。
  88. 松本善明

    ○松本(善)委員 では、外務大臣に政治家としてお聞きしておきますが、このウィーン条約に調印をした以上、これは人類の死滅にかかわる問題ですから、オゾン層を守るという立場で、フロンガスの問題のみならず努力をする義務があると思うのです。大気圏の核爆発をもたらすおそれのあるSDIにつきましても、これはやはりそういう観点から検討しなければならない。いわゆる核の夏という問題が起こるのです。その問題について政治家として無関心ではいられないはずだと思います。  外務大臣としてこの問題についての関心の程度を伺います。
  89. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 SDIには日本研究段階だけ入りましょうということになっておる次第でございまして、もちろんオゾン層を守らなければならないという今日の条約並びに議定書には当事国である米ソも加盟しておられますから、オゾン層というものに対しましては私たちはそういう気持ちでこの条約に署名をし、また、この条約締結したいという気持ちでございますので、SDIがどうなるかということは仮定の問題で、あくまで、政府委員の言ったことでございましょうが、当事者である米ソもどういうふうに考えるのか、特に研究開発を進めておるアメリカはどう考えるのかということもございましょうから、やはり私は、そうしたものを抜いて、そうしたものとは別にして、オゾン層は人類として守っていく、これは、この条約に加盟した以上はそうした気持ちでいいのではないか、そういうふうに思います。
  90. 松本善明

    ○松本(善)委員 極めて不十分で、本当に人類の生存ということを考えれば、大気圏の核爆発はもちろんのこと、SDIに参加するということは撤回すべきであると思いますが、次に移りたいと思います。  フロンガス規制問題ですけれども、開発途上国に子会社をつくって、そして生産をするということになると、開発途上国につきましては議定書の五条の一項で、この規制を十年おくらせることができるということになっております。子会社を開発途上国につくって、実際上この条約を潜脱することができるということがあり得るのではないか。これは、その規制ができるかどうかという問題、それから日本政府としてはどうするつもりかということを聞きたいと思います。
  91. 法眼健作

    法眼説明員 お答え申し上げます。  第五条におきまして開発途上国に対します特別な事情を認めております。これの第一項、それから第二項におきまして、条約及び条約議定書締約国である開発途上国が議定書第五条に定める特別措置に基づいてフロン等規制物質を新たに国内生産することとした場合には、議定書の規約の範囲内で生産することが認められておるわけでございますが、その特例措置開発途上国の「基礎的な国内需要を満たすため」と明記されておりまして、要するに、ぎりぎり必要最小限な国内需要を満たすため、この限りにおいて認められているものでございます。  そしてまた、開発途上国のうち締約国でないものに対しましては、締約国は、これは議定書第四条にございますが、規制物質生産等には協力しないということになっておるものでございますから、こういった点を勘案いたしますと、ただいま先生指摘されたような心配は、私は大丈夫であるというふうに考えております。
  92. 松本善明

    ○松本(善)委員 心配、大丈夫だというわけにいかないのですよね。例えば、デュポンは三井と一緒になりまして三井・デュポンフロロケミカルというのを日本でもつくっています。アメリカがそういうふうにやったときもそうです。これはアメリカの資本が五〇%でシェアは二六%という状況です。日本の会社がこれと同じようなことを開発途上国でやるという可能性を防げないですね。これについては日本政府規制の問題なんですね。これは通産省、どういうふうに規制をしますか、そういうことをしようとする場合には何らかの規制をしますか。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  議定書上、御指摘のようにLDCである低消費国については一人当たり〇・三キログラムの範囲内で消費を伸ばすことができるわけでございますが、そういう国に我が国フロンメーカーが子会社をつくって製造をするということに関しましては、当該低消費国の必要最小限の需要を満たすという観点で行われる場合においては、議定書違反というふうなことにはならないというふうに理解しております。  また、LDCに対してフロン等の代替技術の移転を促進することが議定書では規定されております。このような規定を設けた議定書の精神に照らせば、日本フロンメーカーがLDCに子会社をつくり製造を行うということは必ずしも好ましいというふうには考えておりません。しかし、当初申し上げましたように、議定書違反ということではなく、また当該LDC、低消費国においての生活水準の向上のために需要を満たすというふうな観点から行われるものについて規制をするというのは、当該消費国にとっての国民福祉という観点から、規制を行うということは好ましくないのではなかろうかというふうに考えております。
  94. 松本善明

    ○松本(善)委員 開発途上国の需要との関係答弁がありましたけれども、代替物質の問題が先ほど来も議論をされていますけれども、デュポン社フロン規制に踏み切ったという背景には、デュポン社が代替物質をつくってそして一手に世界市場の制覇をねらって仕組んだのではないかという見方があるということの指摘通産省にもあるという、そういう報道もあります。私は十分あり得ることだと思うのですね。それで、フロンの方は全部規制をして、代替物質デュポン社がつくって、この機会に世界市場を制圧するということは十分あり得ることだと思うのです。  一体このことについて通産省はどういう情報を持っているかということと、それから代替品ができた場合に、フロン条約規制をする以上は、これは代替品ができたら世界各国に公開をして、どこの国でもどこの企業でも自由につくれるというふうにすべきだと思います。そうすれば、開発途上国でもこの代替品で需要にはこたえられる、そしてフロン規制は厳しくするということが、これが人類の生存のために共通の必要なことではないかというふうに思うのですが、この二点、最初の方は通産省に聞きますが、後の方は外務大臣にお聞きしたいと思います。
  95. 阿部巳喜雄

    阿部説明員 お答え申し上げます。  現在フロン代替品として非常に有望とされておりますのは、フロン123、134aというものでございます。デュポンにおきましてこれらの開発が先行しているのではないかという御指摘でございますが、デュポンでも確かに研究は進めておりまして、昨年一千万ドル以上の研究開発費を投じたというふうに聞いております。しかしイギリスのICI等でもこの代替品開発を進めておりますし、我が国の企業におきましてもこの開発を真剣に進めております。  物質そのものにつきましては昔から知られている物質でございますので、これらをいかにコストを安く製造するかという製造技術にかかわる研究開発競争という状況になっておりまして、これらは世界的な大企業がすべて開発をやっておりますので、適切な競争の結果早くこういうものが開発されるということが望ましいというふうに考えております。
  96. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 国家といたしましては、やはりせっかくの条約に加盟をし発効いたしました以上は、その条約並びに議定書に沿って行動すべきである、かように考えます。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 理事会で割り当てられた時間が十六分という、私はまことにこれは、この質疑で問題提起だけで全然詰まってないのですよ。今の外務大臣の答弁だって、全然問題点理解をしていられない。本当に遺憾きわまりないですよ。この国民を代表する国会での条約審議がこのような形で進むということは極めて遺憾きわまりない。このような運営を改善されることを要求して、私は質問を終わります。
  98. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて本件に対する質疑は終了いたしました。     ─────────────
  99. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより本件に対する討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  100. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     ─────────────     〔報告書は附録に掲載〕      ────◇─────
  102. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件を議題といたします。  政府より提案理由の説明を聴取いたします。外務大臣宇野宗佑君。     ─────────────  日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     ─────────────
  103. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 ただいま議題となりました日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  政府は、日米両国を取り巻く最近の経済情勢の一層の変化により、在日米軍経費が著しく圧迫されている事態にかんがみ、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動を確保するため、日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を改正する議定書締結することにつき、昭和六十三年一月以来、米国政府との間で交渉を行った結果、昭和六十三年三月二日に東京において、我が方本大臣と先方アンダーソン駐日臨時代理大使との間でこの議定書に署名を行うに至った次第であります。  この議定書は、現行の日本国アメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊地位に関する協定第二十四条についての特別の措置に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定の第一条が、在日米軍従業員に支給される調整手当等に要する経費の我が国による負担について当該経費の二分の一に相当する金額を限度とすることと定めているところを、当該経費の全部または一部を負担することに改めることとするものであります。また、この議定書は、前記の協定が効力を存続する期間効力を有することとされております。  この議定書締結は、在日米軍従業員の安定的な雇用の維持及び在日米軍の効果的な活動の確保に資するものであると考えております。  よって、ここに、この議定書締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  104. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ────◇─────
  105. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次に、核物質の防護に関する条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  106. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま提案になっております核物質防護条約について御質問をしたいと思います。  まず最初に外務大臣にお尋ねをしたいと思いますが、私どもは、理由のいかんを問わずハイジャックとかあるいはテロリズムというものは許されないという立場に立っております。そして、そのためには国際的な協力が必要だということもまた事実であろうと思うのであります。  核物質防護に関しましても、その点では変わらないと思っておるわけでございますが、しかし、その半面、この防護条約そのものについて見ますと、その防護の必要上、第六条で秘密の保護ということが非常に強く求められておりまして、細目はここでは触れておらないのでありますけれども、外務大臣も御承知のとおり、原子力基本法におきましては公開の原則がうたわれておるわけでございまして、この公開の原則と防護の必要上の秘密保護ということと矛盾を来すおそれはないだろうか。また、それに伴う処罰がうたわれているわけでございますけれども、これも一般の日本の刑法の体系を超える厳罰が求められる、想定されるおそれはないだろうか。そのほか幾つかございまするけれども、こういうような懸念があるわけでございます。  既に我々は核物質の存在する社会の中で生きておりまして、こうした問題は避けられないのでありますけれども、外務大臣はこれらの点につきましてどのようにお考えですか。
  107. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 外務大臣が御答弁なさいます前にちょっと私が一言、先生の今の御指摘の第六条のいわゆる守秘義務の問題と原子力基本法の問題につきまして御説明申し上げたいと思います。  確かに、先生指摘のとおり、原子力基本法には公開の原則というのがございますが、この公開の原則は、原子力の研究開発及び利用に関する成果の公開によって原子力の平和利用を担保しよう、こういうことであるわけでございます。  他方、この核物質の防護、かつ、その防護を担保しますために、そういう犯罪がもし起こったならばそれに対する処罰を加えるというこのPP条約の思想は、むしろ原子力の平和利用を確保する、核不拡散を実現する、こういうためでございまして、その限りにおきまして、特定情報、その核物質の防護の必要な情報、これを秘密にしていこう、こういうふうなことでございまして、原子力基本法と核物質防護条約とは、つまり公開の原則に全く矛盾しないものであるのみならず、むしろ平和利用という担保においては精神を一にするのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  108. 河上民雄

    ○河上委員 今の御答弁につきましてはまた後でお話をもう少し細かく伺いたいと思うのでありますが、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  109. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 我が国の原子力は、平和利用に限るということで今日相当大きな成果を上げておるのではないかと思います。しかしながら日本は資源有限と言われておりますから、原子力の平和利用ということに関しまして次々と新しい研究をしておかなければなりません。  そういう意味では、例えば使用済み燃料を運ぶとか使用済み燃料からとれましたプルトニウムを運ぶとか、その間におきましては、今河上委員が御指摘されましたようなハイジャックされるというおそれなきにしもあらず。したがいまして、そうした平和利用の過程における問題に対しましては、公開の原則とはまた別の意味の重さを持ったことがあってしかるべきではなかろうかというふうなことがこの条約で示されておるところでございます。
  110. 河上民雄

    ○河上委員 今外務省並びに外務大臣から御答弁ありましたが、当然のことながら原子力基本法については忠実にという政府態度はもちろん変わらないと思うのであります。  ここで一つお伺いしておきたいのでありますけれども、原子力基本法は昭和三十年十二月、そして原子力研究所法は昭和三十一年四月に国会を通るに当たりまして、当時国会がそれぞれ附帯決議をつけておることは御承知だと思うのです。一々申し上げませんが、衆参にわたって附帯決議があるわけでございます。その中に   本法の改廃及附属法、関係法の制定、運用に当っては、本法の趣旨並に提案の経過に鑑み、あくまで超党派性を堅持し、国民的協力態勢を確立すべきである。 ということが強調されております。また、原子力研究所法につきましては、   日本原子力研究所の運営に当っては、原子力基本法の精神に基づき、民主的運営がなされるよう指導監督し、特に研究者の自治性と研究の自由がそこなわれないよう留意するとともに、その研究が十分原子力委員会に反映するよう万全を期すること。 こういうようなことが述べられておるわけです。  外務大臣、こうした附帯決議の精神を踏まえていかれることをここでお約束いただきたいと思います。
  111. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、私どもといたしましては、原子力基本法あるいは日本原子力研究所法の制定時等の御議論も踏まえまして、原子力三原則にのっとり原子力政策を展開しているところでございます。  以上でございます。
  112. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣、一言。
  113. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 私も原子力委員長を務めた体験者でございますから、今科技庁の政府委員から申されましたが、もう私もそのときから国会におけるところの附帯決議、そうしたものはもちろん尊重してまいるという精神でございました。  なおかつ、あえてつけ加えますと、その当時初めて原子力安全委員会も設置したということを私は記憶いたしております。
  114. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、原子力基本法並びに原子力研究所法の国会通過に当たりまして衆参両院における附帯決議の文言及び精神を十分に踏まえていく、こういうふうに御発言があった、こういうふうに理解をいたしたいと思いますが、それではその上で幾つかの点についてお伺いをいたしたいと思います。  今度は外務省並びに科学技術庁の方に御質問させていただきます。  条約第二条に条約の適用範囲が規定されているわけでございますけれども、この条約で言うところの「平和的目的のために使用される核物質」というのはどういう範疇を指しておられるのでしょうか。
  115. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  この条約第二条の第一項の「平和的目的」というのは、非軍事ということでございます。
  116. 河上民雄

    ○河上委員 それでは条約前文七項に「軍事的目的のために使用される核物質の効果的な防護が重要であることを認め」云々というふうに述べられておりますけれども、それはいわゆる核兵器に対するものではないかと思うのでありますが、この条約では、この軍事的目的に使用される核物質を除外している、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。
  117. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 これは採択会議のときに今の先生指摘の点は非常に論争というか、討議の焦点の一つになりました問題でございまして、殊に発展途上国はこの協定の中に、あるいは条約の中に平和的目的、軍事的目的にかかわらず全部の核物質を入れようじゃないか、こういう議論をしたわけでございます。  他方、核兵器国は、この条約対象は非軍事目的に限るべきである、こういうふうな二つの議論があったわけでございます。核兵器国がなぜこの協定対象を非軍事目的に限るべしと言ったのかと申しますと、軍事的な核物質というのは、軍事でございますから、平和的なものよりかはるかに厳重な防護がなされておる、こういうのが一つの表向きの議論であったわけでございますけれども、同時に、やはり軍事的な核物質にかかわります安全保障上の問題ということで二つの意見が対立したわけでございます。  それで結局その妥協といたしまして、この条約それ自体の対象は平和にする、しかしながら軍事的な目的のための核物質についてもやはりちゃんとした防護が必要である、こういうことで軍事的な目的のための核物質につきましてはそれは前文に入った、こういう経緯があるわけでございます。他方、この条約はなるべく多くの国の採択が望ましいということでそういうような妥協がなされたのも一つの背景でございます。
  118. 河上民雄

    ○河上委員 昨年、当委員会におきましてもチェルノブイリの事故を受けまして事故早期通報、それから相互援助の二条約が提案され、また、ここで審議いたしまして満場一致賛成で通過したわけですが、その二条約においては潜水艦など軍事利用も対象にしていたと思うのでありますけれども、今回の条約では、その点が、今のような御議論があったのかもしれませんが、除かれたというふうに理解するほかないように思うのであります。本来であれば、軍事目的の核物質もハイジャックに遭う可能性は十分あるわけでして、その点はいかがでございますか。
  119. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 昨年、当委員会で御審議いただきました原子力事故に関係します二条約の御審議のときに私からも御答弁申し上げたかと思いますけれども、あの条約のもとでは軍事的ないわゆる核兵器等々の事故につきましては任意通報になっているわけでございます。ただし潜水艦の場合の炉につきましては、これは任意通報ではなくて通報義務が入っている、こういうことで、この核物質防護条約の立て方とは少し違うわけでございます。  それから二番目の先生の御質問の、確かに軍事的な核物質だってハイジャックされる危険性はあるではないか、それは可能性としてはそういうことだと思いますが、他方、その採択会議のときは、先ほど申しましたように、軍事的な核物質というのははるかに厳重に防護されておるというのが核兵器国の主張であったわけで、結局両者の妥協ということで前文と第二条にこういうふうに分かれて規定されたということになった背景があるわけでございます。
  120. 河上民雄

    ○河上委員 今のこの点は、今後実際にそういう事態が起きた場合に大変重要なポイントになると私は思うのでございまして、既にこの条約ができておりますので、これを修正ということも難しいかと思いますけれども、重要なポイントであることをまず指摘をしておきたいと思うのであります。  それでは、この条約の範囲というのは平和的目的に使用される核物質であるといたしますならば、医療用、農業用及び工業用のラジオアイソトープまでを含めた条約にする検討はなされなかったのか、また、こうしたラジオアイソトープが除外された理由をお聞かせいただきたいと思います。
  121. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  この条約の適用対象というのは、これは第一条に書いてございまして、したがいまして、先生今おっしゃいました農業用あるいは工業用等々のいわゆるラジオアイソトープにつきましてはこの条約対象にはなっておりません。
  122. 河上民雄

    ○河上委員 その理由をお願いします。
  123. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  今の先生の御指摘につきまして、この条約が起草されましたときは、もし核物質が盗まれたりあるいは不法にだまし取られたりといったようなときに及ぼす影響という観点つまり核分裂反応という観点からとらえたわけでございます。これは附属書にもございますように核分裂反応の難しさ、やすさ、それと核物質の量、こういう観点からとらえたのでございまして、したがいましてラジオアイソトープ等々はこれから除外されているわけでございます。
  124. 河上民雄

    ○河上委員 この条約は非常に簡単なものではあるのですけれども、素人にはなかなかわかりにくいところもたくさんございます。特に附属書に書いてあります核物質の区分表などに基づく防護の水準なんというのが規定されておりますが、これなどもよくわからないので御説明いただきたいと思います。  条約一条に核物質の定義がなされまして、そして附属書Iには附属書IIの核物質の区分表に基づく防護の水準が規定されておるわけでございます。これは、危険性、被害の拡大状況等を想定した科学的な判断基準のもとに作成されているのではないかと思いますけれども、実際、こういう場合どういう事態を想定しているのか、そしてまた科学的判断の基準というのは何か国際的に一つの根拠があるのか、また、第一群、第二群及び第三群という言葉がございますが、これとの関連でどういう影響が出るというふうに想定されておるのか、伺いたいと思います。
  125. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 この点は実はIAEA、国際原子力機関におきまして一九七〇年代の初めから議論されてまいりまして、それがちょうど一九七七年に一つの勧告として出たわけでございまして、このPP条約核物質防護条約はIAEAの勧告を受けておる、こういうことが事実としてあるわけでございます。  そこで、附属書につきましてどういうふうな構成でこういうふうな概念ができ上がっているかといいますと、先ほど申しましたように、もしとられたときあるいはもしハイジャックされたときの人体あるいは社会に及ぼす影響等々、社会と申しますのはそれでもって爆弾をつくるということも含めてでございますけれども、そういうふうな観点から、まず核物質を数量の点と核分裂の反応の起こしやすさ、この二つから分けたわけでございます。つまり、例えば量が少なくても核分裂反応を起こしやすいようなものでしたら大変なことになるわけですし、仮に核分裂反応が起こりにくいものでも量がふえればまたこれは大きな問題を起こすということで、数量と核分裂反応の難易度というものを組み合わせまして附属書のIIをつくったわけでございます。  例えば、核分裂反応の一番起こしやすいものといいますとプルトニウム、これは量に関係なしに非常に少量であっても起こしやすいということで、これは最も注意すべきものということで第一群に入れてあるわけでございます。その次にまいりますのが恐らく高濃縮ウランだろうと思います。これがかなりの部分が第二群に入っておりまして、例えば三%程度の低濃縮ウランでございますと、これは量が相当ないと必ずしも問題を起こさないということで第三群、そういうふうな思想でもって附属書Iと附属書IIをつくりまして、一番危険なものはしっかりした防護をする、第二群についてはその中間ぐらい、第三群は一番低いレベルの防護、こういうふうな思想からこの附属書I、IIを構成しているわけでございます。
  126. 河上民雄

    ○河上委員 これは第何群に入るかあれですが、かつてブラジルで放射性廃棄物の事故が起きまして、口から皮膚から汚染が入り、十年後もがんの可能性があるというので大変な問題になったことがありまして、それに対して管理規制法律なし、こういう状況であるということも報告されておるのでありますが、こういう問題はいかがされるのですか。
  127. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 ブラジルで起きましたようなラジオアイソトープ等々の問題につきましては、この条約の適用対象範囲には入ってないのでございますけれども、しかしながら先生指摘の危険は確かにあるわけでございまして、これにつきましては、若干私見になりますけれども、何らかの国際的な話し合いの必要があろうかと思っております。
  128. 河上民雄

    ○河上委員 それでは続いてお伺いいたしますが、使用済み燃料は条約第二条の適用範囲に該当するのかしないのか。
  129. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 これは条約第二条の範囲に入ります。
  130. 河上民雄

    ○河上委員 全体の時間がございますので次に移りたいと思うのでありますが、先ほど言いましたように、条約第六条に秘密保護の規定がございまして、これについて少し伺いたいと思います。一項に「秘密のものとして受領する情報」という文言がありますけれども、具体的にはどういうものですか。
  131. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 例示で申し上げますと、例えば核物質がどこにあるのかとか、どういう輸送経路を通って国際輸送が行われるのかとか、具体的な輸送の日時あるいはどんなような防護措置がとられておるのか、そういったことがこの第六条にあります秘密にしておくべき情報の例示的なものでございます。
  132. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、核ジャックから核物質を守るためにということでひそかに旅客機とか客船による輸送の心配が起こると思うのでありますが、絶対にあってはならないと思いますけれども、そういう心配と今の御答弁との関係はどうなりましょうか。
  133. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 輸送当事者、それから輸送当事者に関係します両国政府は、今の先生の御指摘のような輸送経路、輸送日時等を承知しているわけでございまして、したがいまして、それを外部に出すということは、核物質防護という観点からは、カウンタープロダクティブと申しますか、むしろ核物質保護し、それを平和目的以外は使われないのだという目的には反するかと思いますので、そういった情報はいわゆる関係者だけにとどめておく、あるいはその関係者には場合によっては国際機関も入ろうかと思いますけれども、その中にとどめておこうというのがこの趣旨でございまして、したがいまして先生御心配のことはないのではないかと思うわけでございます。
  134. 河上民雄

    ○河上委員 少しこだわるようですけれども、例えば飛行士、操縦士、あるいはそういうときにいるのかどうか知りませんが、スチュワーデス、そういうような乗務員、あるいは船の場合でしたら船員などはそういうときに知らされずに作業する可能性もあるのでしょうか。
  135. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 今先生指摘のようなスチュワーデスとかパイロットとか船の船長等々は、これは全く知ることになろうか思います。したがいまして、そういうふうになったときに、知った人間がどういうふうにして外に出さないかということを担保しますためには、輸送に先立って誓約書を取りつける等々によりましてこの六条の担保はできるのではないかと思っております。
  136. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、二項にあります「国内法上伝達が認められていない情報」、これは具体的にはどういうことでございますか。
  137. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  我が国につきましては、この六条の二項に該当しますようなものはないと思っております。
  138. 河上民雄

    ○河上委員 ないというのは、具体的に言うとどういうことですか。例えばアメリカであるのではないかと思いますが、アメリカではどういうものが該当するのですか。
  139. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まことに申しわけございませんけれども、今のところ私は承知しておりませんので、先生には追ってまたお答え申し上げたいと思います。
  140. 河上民雄

    ○河上委員 今の質問は留保さしていただきまして、次に移りたいと思うのです。  今いろいろお話を伺っておりますと、従来、原子力に関しまして安全を保障するための保障措置というのは、これは私の感じで分類するのですけれども、物に対する管理であったような気がするのですが、今回の核物質防護措置というのは、むしろ人に対する管理というふうに受けとれるように思います。  今、作業に従事する人からも誓約書をとるとかいうようなお話もありましたが、要するに物にではなくむしろ人に対する管理という印象が強いのですが、そのように理解してよろしいでしょうか。
  141. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 私、この条約の解釈といたしましては、これはPP条約と申しますのは基本的には物に対する管理で、したがいまして、附属書でもって非常に詳細というか、ある程度詳細な分類をしてあるわけでございまして、したがってこれは物に対して、——ただ、この第六条に関しましては先生指摘のような人に対する管理、したがって両者がこの条約の中には盛り込まれておる、こういうふうに解釈しております。
  142. 河上民雄

    ○河上委員 私は全く専門家でありませんので、専門家の方からいろいろ伺うほかないのでありますけれども、従来そういう情報の管理というのは、大学とかあるいは原子力研究所とか、そういう機関の自主性に任されていた面が非常にあると思うのですが、どうも、今回これは国内法との関係が出てくるのだろうと思いますけれども、そこに国と治安当局というのがぐっと入ってくるような印象が強いわけです。  それは罰則規定などからもそういうふうに判断せざるを得ないわけですけれども、先ほど私はその意味で原子力基本法あるいは原子力研究所法が制定された当時の国会の附帯決議について、これを守る、尊重するかどうかを伺ったわけでございまして、大臣から、また外務省当局からもそれはもちろん当然のこととして尊重するというような御答弁をいただいたわけですが、これはいわば職員の信頼性の確認ということになってきているような気がするのですけれども、その点はいかがでございますか。
  143. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 国内規制の話でございますので、関係省の方からお答えをさせていただきますが、先ほど来お話がありましたように、原子力基本法の精神を踏まえて現在の原子力関係の行政が行われているわけでございますが、今問題になっております条約に加盟いたしました場合に、これを実施するために国内法上の手当てが必要でございます。  この手当てにつきましては、別途いわゆる原子炉規制法の一部改正という形で国会での御審議お願いしているところでございますが、そちらの法案の中身をごらんいただけばおわかりいただけるわけでありますが、この条約に加盟するに当たりまして新たにとります措置というのは、あくまでも先ほど来出ております原子力基本法の公開の原則にのっとりましてその範囲内においてこの条約上求められている核物質の盗取等の防止をするために必要最低限の規制を行っていこう、こういうことで貫かれているわけでございまして、条約に加盟することに伴いまして先生御懸念のような従来の物の管理から人の管理に移行するのではないか、こういうことではないと私どもは考えております。
  144. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、第七条の犯罪行為及び刑罰の点について伺いたいのでありますけれども、その一項で「故意に行う次の行為を処罰すべき犯罪」として犯罪行為が列記されております。そしてさらに二項において「1の犯罪について、その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにする。」とも書いてあるわけでございます。  こうした細目は、今の御答弁では国内法で実施細目というのはまた次に考えるというようなお話でございますけれども、これを見ますときに、殊に法律家の皆さんから懸念されておりますことは、この条約では実際の犯罪行為のほかに、そのおそれがある場合も対象になっておる。また未遂の場合も対象になるのではないか。  特におそれのある場合、また未遂の場合は言葉として核ジャックに限定されていないように思うのですが、そういたしますと、これが例えば今職員の問題、信頼性の確認というようなこともございますけれども、例えば組合運動や反核運動、市民運動などに適用される危険はないか。我々はハイジャックには強く反対をいたすわけでございますけれども、どうもこの第七条からそういうことになりやしないかという心配を持つのでございます。その点はいかがでございますか。
  145. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 お答え申し上げます。  条約の二条で条約の適用範囲が規定してございますが、いわゆる罰則の適用につきましては、先生指摘のようにいわゆる核ジャックの場合にのみ適用するのではなくて、それ以外の場合であっても不法に使用したような場合には刑罰はかけろというのがこの条約の適用の問題でございます。  そこで、先ほど申し上げたこれを実施するために国内法が要るわけでございますが、国内法上どういう手当てになるかと申しますと、罰則の刑罰のことでございますから、例えば核物質を不当に盗取、盗むというようなことは現行の刑法で対処するということになります。これは手当て済みでございます。  ところで、御指摘のありました危険な場合、おそれがあるような場合にまで処罰するようなことになっているのではないかという御指摘でございますが、それは条約の七条の1の(a)のことではないかと思いますけれども、この条約の七条の1の(a)は法律に基づく権限なしにこれこれを起こすおそれがあるものという書き方になってございます。  そこで、先ほど申し上げました、これは現行の刑法ではカバーしていない罪になりますので、今回原子炉規制法の改正の中で、新たに処罰規定を設けるように御提案をしているところでございますが、その提案の書き方はこういう書き方になってございます。「特定核燃料物質をみだりに取り扱うことにより、その原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又はその放射線を発散させて、人の生命、身体又は財産に対する危険を生ぜしめた者は、十年以下の懲役に処する」、こういう構成要件になってございます。  そこで、「みだりに」とか「おそれ」ということが書いてあるわけでございますが、これはどういうことかといいますと、「みだりに取り扱う」というのは、いわゆる社会通念上、正当な理由があるのではない場合、つまり法律に基づく権限なしに」ということを受けたものでございます。  したがいまして、法律に基づく権限がなくて不法行為をしよう、人に危険を生ぜしめようという意思を持って違反をしたような場合、これに限って刑罰を適用するということでございまして、違法に取り扱うという意思、それから核連鎖反応を引き起こし、または放射線を発散させようという意思、そしてそれによって危険を生ぜしめるという意思、この三つの故意が必要な構成要件になってございますので、それが乱用されて御懸念のようなことに使われることはもちろんないわけでございます。  したがいまして、その本人の持っている意図なりなんなりが問題になるのではなくて、あくまでもこの法律に掲げております構成要件、その中に規定されている三つの故意、これの存否というものがこの罰則の適用の対象になるかならないか、こういう判断材料になる仕掛けになっているわけでございます。
  146. 河上民雄

    ○河上委員 なぜそういうことを伺うかといいますると、十年ほど前に原子力研究所で組合員の処分問題が起きまして、それはやはり防護という、あるいは職員の信頼性という問題からでありましたが、後に茨城の地労委の裁定によりましてその処分は取り消されたというような経緯がございます。  そのようなおそれがないということ、おそれがないというより、そういうことはしないということをここで明言をしていただきたい、こんなふうに思います。いかがでございますか。
  147. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 条約の附属書の中で「信頼性の確認」というような言葉があるわけでございますが、御懸念の点は、この信頼性の確認ということで思想あるいは信条までチェックするのではないのか、こういう御懸念ではないかと思いますが、条約が言っております信頼性の確認というのは、私どもは、いわゆる防護区域へ立ち入る必要性があるのかないのか、そこに入る人間の身元が身分証明書等で確かめられるかどうかというような手続によって担保するつもりでございまして、いわゆる通常の事業活動を遂行するのに必要な限度、核物質の取り扱い等の特定の活動を行うことについてその人間が認められているかどうかの確認が行われれば足りるというふうに考えている次第でございます。
  148. 河上民雄

    ○河上委員 この問題は、きょうは余り時間ございませんけれども、非常に重要な問題であるということを指摘しておきたいと思うのであります。恐らくこれは国内法審議の際に非常に焦点になるのではないかと思いますが、万々間違いのないように、原子力基本法審議での国会確認の精神に従って、自主、民主、公開の原則というものを具体的に守っていくように強く希望したいと思います。  私は、昨年五月、先ほどちょっと言及いたしました二条約につきまして当委員会質問をいたしましたときに、ウランの埋蔵量についてお尋ねをいたしましたが、そのとき資源エネルギー庁から、自由世界における確認埋蔵量及び推定埋蔵量の合計は約五百十七万トンウランと見込まれているというような御答弁がございました。この五百十七万トンという数字は原発に利用できる濃縮ウランに換算した数字であるのか、それともいわば原石というような形のものであるのか、伺いたいと思います。
  149. 石田寛人

    ○石田説明員 私ども今、昨年の御答弁の数字の内容はつまびらかにはいたしませんが、今先生のおっしゃいました数字でございますと、濃縮ウランの形ではなくて、天然ウランで数えた場合の数量であろうかと推察いたす次第でございます。
  150. 河上民雄

    ○河上委員 一九八五年までに自由世界において生産されたウランの量は約八十一万トンウランという御答弁がありましたが、これは濃縮ウランに換算した数字ですか。
  151. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  その数字も天然ウランの量と推察いたします。
  152. 河上民雄

    ○河上委員 こういう点は我々素人はよくわからない点もありますので、正確に御答弁いただきたいと思うのでありますが、昨年末までに世界で稼働中の原発は四百基であると言われておりますけれども、もし現在建設中のもの、計画中のものが稼働した場合、現在の確認埋蔵量からして何年分の資源となるのか、また日本として一体どれだけの濃縮ウランの量を必要としているのか、お尋ねいたします。
  153. 石田寛人

    ○石田説明員 お答え申し上げます。  全世界で必要な天然ウランの量等につきましては、埋蔵量は先ほどお話がございましたけれども、非常に不確定なところもございまして、現行の確認されております埋蔵量が何年相当になるかということにつきましては、私ども今存じておりません。世界的に申し上げまして天然ウランの需給は非常にグラットでございます。  我が国の場合も同様でございまして、我が国国内にはウラン資源は余り賦存いたしませんけれども、現在、天然ウランの市況は比較的緩和ぎみに推移いたしてございます。そういうことから申しまして、私ども原子力の計画等々を検討いたしますときには、来世紀のかなりのところまでウランにつきましては入手はそれほど困難ではないのではないかという前提で計画を作成しておる次第でございます。
  154. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、日本として現在必要とする濃縮ウランの量は一年でどのくらいでございますか。
  155. 結城章夫

    ○結城説明員 御説明いたします。  昭和六十一年度の数字でございますが、我が国の原子力発電規模は二千六百万キロワットでございます。このときに必要といたしました濃縮ウラン、これは濃縮ウランの作業量でございまして、トンSWUという単位で御説明させていただきますと、三千六百トンSWUでございます。
  156. 河上民雄

    ○河上委員 それは今回の防護条約にすべてかかわってくる量というふうに理解してよろしいわけですか。
  157. 結城章夫

    ○結城説明員 濃縮ウランはただいま御審議中の条約対象でございますから、今まさに対象の数字でございます。
  158. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、我が国の燃料のためのウランの輸入先はどちらですか、また、その量はどうでございますか。どうも日本世界的な買い手国というふうに言われておるのですが、輸入している金額はどのくらいですか。
  159. 結城章夫

    ○結城説明員 大変残念なことですけれども、我が国国内にウラン資源がほとんどございません。そういうことで、我が国が必要とします天然ウランはすべて外国から輸入しております。その輸入先でございますけれども、カナダ、オーストラリア、イギリス、フランスといった国がございます。  その量でございますが、既に我が国の電気事業者が外国の鉱山会社と契約をしておるわけでございますけれども、その総量は大体二十万ショートトン、これは天然ウランの量でございますが、二十万ショートトンという数字になっております。その金額につきましては、ただいま具体的な数字を持ち合わせておりません。
  160. 河上民雄

    ○河上委員 金額については、原子力発電が石油発電、水力発電あるいは石炭発電より安いとか高いとかいう問題になるわけで、全然数字がないというのもちょっと理解しがたい話だと思うのですが、もし答えられなければ質問を留保させていただきますけれども、きょうの毎日新聞に南アのウラン、ナミビア産ウランのコンテナがイギリスのリバプールで港湾労働組合によって荷揚げが拒否されている、こういうふうに書いてございます。  外務大臣も外交演説で特にアパルトヘイトに反対を強調されておったわけでございますが、そういう観点からいって、南アのウランをどんどん取り入れて輸入するというような事態はあってはならないことなのでありますけれども、これについての歯どめというのはどうなりますか。
  161. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 先生指摘のナミビアの件でございますけれども、ちょっと手元に資料を持っておりませんけれども、私の承知します限り、実は国連でナミビア布告というのがございまして、この法的性格はともかくといたしまして、日本としてはこのナミビア布告を尊重しておるという観点から、ナミビアからのウランが輸入されているとは承知いたしておりません。
  162. 河上民雄

    ○河上委員 このウランはアメリカで濃縮処理された後、日本の東京、関西、中部の各電力会社に送られるというふうに伝えられておるのですが、もし今のような御答弁であるならば、そうではないということを立証できますか、言明できますか。
  163. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  現実のウランの輸入の手続等々につきましては通産省の所管でございまして、きょう通産省おりませんのであれですけれども、私申しましたように、ナミビアのウランは輸入されていないというふうに承知しております。
  164. 河上民雄

    ○河上委員 しかし、今そのことはロンドンで大問題になっているわけでして、審議官がそうでないと否定されましても、我々も素人ではありますけれども、濃縮される過程では、要するにどこかから来た原料にまぜてやるというふうに聞いておりますから、これが南アであり、これがどこそこであるというようなことは見たってわからぬわけですね。  したがって、新聞によれば盗品輸入となっておりますが、そういう危険は十分あるというふうに考えて、その上で、そういうことはないようにしますという御答弁ならば我々としても一応納得できますけれども、あるはずないと言うのは余りにも実態から離れているように思いますが、いかがですか。
  165. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 先生、繰り返して恐縮でございますけれども、輸出入の件は通産省の所管でございまして、追って通産省先生の今の御質問趣旨は伝えまして、御連絡、お答え申し上げるようにしたいと思います。
  166. 河上民雄

    ○河上委員 それじゃ、今の外務省の御答弁はそういうことを調査した上でお答えするという意味だというふうに理解いたしますけれども、よろしいですね。
  167. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 そのとおりでございます。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  168. 河上民雄

    ○河上委員 もう予定の時間があと少ししかないのでございますけれども、御案内のように、核開発と原子力発電に象徴されるような核の平和的利用というのは、確かにこれが当初出発したころはかなりバラ色に彩られておったと思うのですけれども、チェルノブイリの事故、その前のスリーマイル島の事故等でそれについてはもうかなりネガティブあるいは慎重に考えなければならぬというふうに、世界の人々あるいは各国政府考え方も、全部ではないですけれども、かなり変わってきているように私は思うのでございます。  例えばオーストリアなどは撤退、中止、西ドイツの社会民主党の新綱領では、これはまだ採択されていませんけれども、撤退方針がうたわれているようなことでございまして、防護条約関連いたしまして、今回この審議に当たって改めて原子力政策と申しますか、原子力にかかわる基本的な政策について大臣のお考えを伺いたいと思います。  日本は、アメリカやソ連、フランスに次いでもう既に原発は四位の三十六基持っておりますし、発電比率はもう既に三〇%を超えているのじゃないかと思うのでございますが、フランスを除きまして、この問題をもう一度見直そうという空気が非常に強くなっておるわけですが、大臣はどのようにお考えになられますか、お伺いしたいと思います。
  169. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 我が国は資源小国であるということを先ほど申し上げました。したがいまして、ウランも少のうございます。石油もやはり有限の資源の一つだろう。石炭もそうだろう。このように考えてまいりますと、やはり原子力平和利用によりましてエネルギーを開発するということは大切なことだろうと思いまして、御指摘のとおり、全国ではもう二八・弱まで原子力発電が行き届いておりますし、河上委員も私も関西でございますが、関西は四七%ぐらいまで既に普及しておる現状でございます。  そこで、私は、あくまでも日本においては原子力の平和利用と同時に核燃料サイクルの確立が必要だ。核燃料サイクルの確立といえば、濃縮ウランをちょうだいして発電して、そして使用済み燃料を本来はみずからプルトニウムに変えてプルトニウムを増殖炉に放り込んで、それで原子力発電をやって資源不足を補っていくようにしたい、これが日本の悲願でございまして、かつてカーター政権当時に、日本にプルトニウムを持たすことは危ない、こういうことで実は日米原子力交渉が行われました。  そのときの担当が私でございましたが、日本における平和利用というものは世界でもさんたるものではないか。また、核の保護に関しまして、防護に関しましても、もう御承知のとおり、国際的なIAEAが来ましても、日本においても本当にきちっと帳簿ができておる、非常に完全に近いほどこれは保護されておる、こういうふうなことでございまして、私たちもより一層平和利用、より一層その安全、これを期さなくちゃならない、かように思っておりますので、今この原子力政策を、何かこう途中で、危ないから見直せというようなものではないと私はかように存ずる次第でございます。  また、チェルノブイリのソ連型と日本の原子炉とはおのずから差もございますから、我々といたしましては、もちろん安全を期してこの平和利用に徹していきたい、かように思っている次第であります。
  170. 河上民雄

    ○河上委員 もう時間が参りましたので、私の質問を終わらなければならないのですが、今の大臣のお答えを伺っておりましても、自信満々と言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、日本の今の経済発展とともに非常に指摘されておりますことは、どうも日本は少しアロガントになっているのではないか、傲慢になっているのではないかという声もあるわけでございますけれども、原子力政策においても同じことがないように私どもは希望いたすわけでございます。  そういう意味で、この防護条約その他の関係法におきましての運営につきましても、どうか大学、研究所等専門家あるいは現場の声を十分に聞きながら進めていくということを私、強く希望いたしまして、時間が参りましたので、きょうの私の質問を終わらせていただきます。
  171. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 神崎武法君。
  172. 神崎武法

    ○神崎委員 核物質の防護に関する条約昭和五十四年十月に国際原子力機関の政府会議で採択されまして、八年たってようやく昨年二月八日に効力を生じたわけでございますが、まず、この点に関して三点まとめてお尋ねをいたします。  条約発効がおくれた理由はどういうことなのかという点、それから我が国対応がおくれた理由はどうしてかという点、それから三点目が、我が国が本条約締結する意義と締約国となることにより我が国が負う義務内容について。
  173. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点のなぜ八年、署名されてから八年ということでございますけれども、この条約の発効要件、実は二十一カ国の締結が必要となっております。特に原子力先進国の多いECでございますけれども、ECの締結が、ユーラトムとそれから各国十二カ国一緒に入ろうということでもってECがおくれておるということでなかなか発効が来なかったわけでございますけれども、幸いにしまして、昨年の二月上旬に二十一カ国がそろいまして、それで発効ということになったわけでございます。したがいまして、そういうことが全体的な意味での発効のおくれということでございます。  それから次に、日本につきましてなぜおくれたのかということでございますけれども、この協定に入りました場合に、国際輸送における防護の義務と、それからもしこの協定に規定しておるような犯罪が起こった場合の処罰、こういう二つの点を国内法に担保するのにかなりな時間がかかりまして、刑法の改正あるいは今御審議いただいております炉規制法の改正等々に時間がかかったわけで、ようやくにしまして、刑法につきましては昨年、炉規制法につきましてはことしということで、国内法体制の準備に時間がかかったということでございます。  三番目に、この意義ということでございますけれども、先ほど大臣が河上委員の御質問答弁いたしましたように、日本は四番目の原子力発電国ということで、当然のことながら、その帰結といたしまして、核物質の輸送の量もふえておる。したがって、いわゆる原子力先進国と言えるかと思います。したがいまして、その原子力先進国として国際的にも核物質の防護をきちんとしているのだということ、それで、今も現実には防護水準は十分だと思うわけでございますけれども、一つの国際的なあかしというか、国際的な体制の中に入っておるのだということを示すためにも意義があるものだと思います。
  174. 神崎武法

    ○神崎委員 次に、この締約国の中には開発途上国あるいは原子力発電所を持たない国も多数含まれておるわけでございますが、こういった国々が積極的にこの条約締結国となった理由をどういうふうに見ておられるのか。  それから、前文では「原子力の平和的応用における国際協力を促進することが必要であることを確信し、」ということがうたわれておるわけでございますけれども、これから原子力の平和利用を計画しようとしている国々への技術協力、例えば防護技術の供与等の規定が本条約には盛られていないわけでございますが、条約作成の過程でこういった論議があったでしょうか。
  175. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まず最初の御質問でございますけれども、発展途上国はたくさんございますけれども、この中を私は幾つか自分なりに分けてみたわけでございます。  一つは、原子力発電を既に持っている国がございます。それからもう一つは、原子力発電を建設中の国もございますし、計画中の国もございます。それが一つの原子力発電に関係します国と、それからもう一つはウラン資源を持っている国が発展途上国にございます。したがいまして、そういった国々につきましては、まず、この核物質を防護するというのは人ごとではなくてまさに自分のことだということで、既に署名というか加入をしております国、例えばフィリピン、韓国、ブラジル、インドネシア等々ございますけれども、そういったかなり多くの国、私が今申し上げましたような国が入っておるわけでございます。  他方、今のところ原子力発電を持っていないあるいは計画もない、あるいは特に今ウラン資源が見つかっていない国もあろうかと思いますけれども、やはり原子力の平和利用をきちっと国際的に守っていくのだ、そのためには国際協力が必要なんだという認識が高まっていることから、必ずしも私が申し上げたようなカテゴリーに入らない国も締約国になっていっているということで、私はこれ自身非常に結構なことであるし、日本が入りました暁にはなるべく多くの発展途上国にも入ってもらいたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  それから二番目の技術協力、殊に核物質防護の技術協力ということにつきましては、確かにおっしゃるとおりに、この協定には入っておりません。他方、この協定審議されました過程におきましても、その点は議論はされておりません。しかしながら、私はやはりこの協定が実を上げるためには、核物質の防護というものの技術協力は必要であろうと思いますし、これは今後IAEAで積極的に検討していくべき課題の一つであろうと思っております。
  176. 神崎武法

    ○神崎委員 条約の第三条で防護の確保のために「国際法に適合する範囲内で適当な措置をとる。」ということで、「国際法」ということが挙げられているわけでございますけれども、具体的にどういう条約協定を念頭に置いておるのか、あるいは国際慣習法というものを念頭に置いておられるのか、この点はいかがでございましょう。
  177. 福田博

    ○福田政府委員 この条約第三条には「国際法に適合する範囲内で」ということが書いてございますが、具体的に核物質にどういう防護の水準を確保するかということは附属書のIに書いてあって、それに基づいて具体的な措置がとられるわけでございますが、これは一般国際法に抵触するようなものであってはならないという意味で書かれております。  少し具体的に御説明をした方がわかりやすいかと思いますので、一例を挙げさせていただきますと、例えば締約国は、この条文によりまして、港へ入るために領海内を無害通航している外国船舶に核物質が積載されているとしますと、それに対しても適切な防護の措置をとるよう規制する義務を負うわけでございますが、例えば無害通航を害するようなやり方でやる、例えば強制的に停船させて臨検するというようなことは、領海条約等においてすべての外国船舶に認められている無害通航権を害することになるので、そういうやり方で措置をとってはならないということを決めたものでございます。
  178. 神崎武法

    ○神崎委員 十七条の関係でございますけれども、この三項で「締約国は、この条約の署名、批准、受諾若しくは承認又はこれへの加入の際に、2に定める紛争解決手続の一方又は双方に拘束されない旨を宣言することができる。」ということで、二項のみについて留保せられるというようになっておるわけでございますけれども、この留保を付している締約国はどういう国があるのか、また留保を付した理由についておわかりならば明らかにしていただきたい。
  179. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まず私の方から留保した国についてお答え申し上げますと、九カ国ございまして、ブルガリア、チェコスロバキア、ドイツ民主共和国、ハンガリー、韓国、モンゴル、ポーランド、トルコ及びソビエト連邦、この九カ国になっております。
  180. 福田博

    ○福田政府委員 ただいま答弁がございましたように、この条約の解釈、それから適用に関する紛争の解決について仲裁または国際司法裁判所に付託する義務につきましては九カ国が留保を行っておりますが、右以外の留保は現在のところはなされていないわけでございます。
  181. 神崎武法

    ○神崎委員 留保を付した理由についておわかりであれば明らかにしていただきたい、そういう質問なんですが。
  182. 福田博

    ○福田政府委員 失礼しました。それについては若干つまびらかにしないので、具体的に今の時点でちょっと申し上げられません。申しわけありません。
  183. 神崎武法

    ○神崎委員 河上委員からもお尋ねがあったわけでございますが、本条約の前文におきまして、「軍事的目的のために使用される核物質の効果的な防護が重要であることを認め、」と規定しておりますけれども、本条約の第二条で平和的目的のために使用される核物質に限定をされているわけでございます。  条約作成の過程におきまして軍事的目的のために使用される核物質も含めるべきだという論議もあったようでございまして、最終的に平和的目的利用に限定をされたわけでございますけれども、先ほどの御答弁でも、軍事的目的のための核物質の防護の方がはるかに厳格である、そういう認識の御答弁がございましたけれども、平和的目的のための核物質の防護水準が軍事的目的のためのそれと比較をいたしまして脆弱であるという認識は大変強いだろうと思うわけでございます。そういう観点から考えますと、果たして本条約のような脆弱な防護水準で防護の目的を達成できるのか。軍事的目的のための防護水準はもっと厳格である、しかし平和的目的の場合はそれよりも低くて、果たして大丈夫なのかという素朴な疑問があるわけでございます。  そこで、軍事的目的のための防護水準がどのように設定されているというふうに見ておられるのか、そして、またそれと比較して平和的目的のための防護水準について問題はないのか、あわせてお尋ねをいたしたい。
  184. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まず第一点の御質問でございますけれども、軍事的な目的のための核物質がどういうふうに保護されているのかという点につきましては、殊に事が事であるだけに核兵器国としてもそれを全く明らかにいたしません。したがいまして、どの程度の水準が、具体的にどういうふうな防護水準がとられているのかはわからないわけでございますが、この会議で核兵器国は、当然のことながら、非常に厳重に防護されておる、こういうことを言っておるわけでございます。  他方、それではそれに比べて、平和目的のための、いわゆる附属書のI及びIIで申します防護水準が十分かどうかということでございますけれども、これは、この条約自身一つのミニマムの防護水準を書いてあるわけであって、これ以上やってはいけないということではございませんし、これを、少なくともこの最低限度を守っていこう、こういうふうな趣旨であるわけでございます。
  185. 神崎武法

    ○神崎委員 そうしますと、ミニマムの防護水準であるから、防護水準を守っていれば安全であるかというと安全ではないような印象を受けますが、それはこの条約以上の防護水準というものを国内法できちんと設定されていると思いますので、またそれはそれで後ほどお尋ねをいたしますけれども、同じくこの条約では、国際核物質輸送中のものについて防護を設定することを義務づけておりますけれども、この条約作成の過程においては、締約国国内における国内輸送及び貯蔵についても条約の中に防護水準を設けるべきだという議論があったやに聞いておりますけれども、これらの議論が後退した理由は何かという点が一つ。  それから、この条約の第十六条によりますと、条約の効力発生の五年後に締約国会議を招集するということになっておるわけでございますけれども、先ほどお尋ねをいたしました軍事的目的のための核物質の防護水準の問題と、ただいまお尋ねいたしております国内輸送等における防護水準の設定の論議が当然また行われると思いますが、我が国としてはどのように対応するおつもりであるのか、あわせてお尋ねをいたします。
  186. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まず先生質問の第一の点の、なぜこの条約対象を国際輸送だけに限ったのかという点についてお答え申し上げますと、やはり作成会議において先生指摘のとおり二つの議論がありまして、主としてインドとかブラジル等発展途上国は、国内における核物質防護というのは各国のいわゆる国内問題だから、それは各国に任せるべきである、国際協力として対象とすべきは国際輸送の面だけでいいのではないか、こういうふうな主張をしたわけでございます。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕  他方、先進国等々、全部でございませんけれども、先進国を中心にしまして、いや、やはり国内の貯蔵とか使用とか輸送も対象にしないといわゆる核防護の全般は規制できないから、やはり国内規制すべきである、こういうふうなことであったわけでございますけれども、やはり二つの考え方の妥協といたしまして、この条約では国際的なものに義務としては限る、しかしながら、やはり国内において使用され、貯蔵され、また輸送される核物質の防護も大切だという趣旨は前文で載せたというのがこの妥協であり、これによってなるべくたくさんの国に条約に入ってもらいたい、こういうことであったわけでございます。  そこで、しかしながら私どもは、やはり核物質の防護は全般であった方がいいのじゃないかと思っておりますし、したがいまして、この条約は去年発効したわけで、五年後でございますから昭和六十七年に再検討の機会が回ってくるわけでございますけれども、そのときには、そのときの状況等々もあるかと思いますけれども、やはり全体にふやした方がいいのじゃないかなという方向で対処を検討いたしたいと思っておるわけでございます。  他方、第二番目の御質問の軍事利用の方というのは、これはこの国内輸送あるいは国内の貯蔵の問題よりかはるかに問題がややこしいというか複雑でございまして、これにどういうふうに対処するか、かつ具体的に軍事的な利用の物質を何か書いても、具体的にはどういうふうにするのだろうかというふうないろいろな問題がございますので、これにつきましては勉強させていただきたい。今の時点ではそういうことで、もうちょっと諸般の事情等々、あるいは方法等々も考えながら検討させていただきたい、こういうのが今の立場でございます。
  187. 神崎武法

    ○神崎委員 じゃ、科学技術庁にお尋ねすることになると思いますけれども、本国会国内法として核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の改正法が提出されていると思いますけれども、先ほど議論をいたしましたように、防護水準ですね、本条約に定める防護水準で十分かという心配が、懸念があるわけでございますけれども、今回の改正案はこの条約が求めている防護水準を当然満たしていると思いますけれども、それ以上の防護水準というものをお考えになっておられるのか、また各国が国内法で設定されております防護水準と比較いたしましてどのように評価をしておられるのか、お尋ねをしたいと思います。
  188. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 先ほど来御指摘がありましたように、この条約核物質防護のための措置が求められておりますのは、国際輸送中の核物質につきまして、その種類と量に応じて、一つは、荷送り人、荷受け人及び運送人の間で事前に取り決めを結ぶなどの措置を講じまして特別な予防措置のもとで輸送をすること、それから第二には、護送者により常時監視をし、かつ当局との間の緊密な連絡体制が確保できる条件を満たすこと、大きく言ってこの二つを規定しているわけでございます。  他方、今回改正をお願いしております原子炉規制法の中で手当てをしようとしております国内の陸上輸送の関係についての規制でございますが、これは昭和五十五年の原子力委員会の中の核物質防護専門部会報告が決めました輸送中の核物質防護の要件というものを具体化しようということで考えておりまして、具体的には次の四点をカバーすることにしております。  第一点は、核物質防護に関する輸送計画の策定ということでございます。二番目には、輸送責任者の付き添い、三番目には、核物質輸送中の連絡通報体制の整備、四番目に、輸送容器等の施錠、封印等の措置、こういう四点を実質上決めるように法律上の根拠を設けよう、こういう考え方でやっております。  これらの要件は、比較していただきますと、条約上要請されている措置を含めまして、さらにそれよりも詳細になっているということでございます。  これはなぜかと申しますと、五十五年の原子力委員会決定というのが、実はIAEAが定めました核物質防護のためのガイドラインというのが別途ございますが、これが広く国際的に使われているわけでございまして、これを日本としても適用すべきではないかということで、日本の原子力委員会がそれを国内的にそういう方向でやろうということを決めたもの、それを実施するわけでございます。  そういうことで、第二の点の御指摘の国際水準を満たしているのかという点については、これをやることによりまして他の諸外国と全く遜色のない国際水準規制が行われるわけでございます。  なお、先ほど、前の御質問で、輸送だけやっているけれども、国内の貯蔵、使用の場合はどうかという御質問がありましたが、今申し上げましたIAEAの核物質防護のためのガイドラインというのは、輸送だけではなくて国内措置についても規定をしてございます。  したがいまして、この五十五年の原子力委員会決定あるいは昨年十二月に原子力委員会が改めて決定をしておりますけれども、このIAEAのガイドラインというものを国内法上もきちっと実施できる体制をとるべきである、こういう考え方が示されておりまして、今回の原子炉規制法の改正はその部分も実施をすることにしておりますので、国際輸送のみならず国内施設で扱っております核物質核物質防護につきましても法律上の手当てが行われる、こういうことでございます。
  189. 神崎武法

    ○神崎委員 国際テロリズムと核に関する会議などで行われている議論を見てみますと、今後の予測といたしまして、従来型のテロのほかに化学兵器、生物兵器を利用したテロが今後起こる可能性があるという一つの見方と、それからもう一つ、核テロリズムの可能性が急速に高まってくるという見方に分かれておりまして、二つの見方があるわけでございます。  本条約は、核ジャック防止のために作成された条約でございますので、核ジャックの危険性が今後高まる、こういう認識のもとにつくられていると思われるわけでございますが、今日まで核ジャックがされた例があるのか、またその危険性があるというふうに認識をされておられるのか、この点についていかがでしょうか。
  190. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 非常に幸いにしまして、今までのところこの条約対象になるような犯罪が行われたということは承知いたしておりません。  ただ、日本ではそういうケースは私は承知しておりませんけれども、諸外国におきましては核物質に関しての脅迫行為が行われたという例はかなり伝えられております。例えばイギリス、アメリカでございますとか、例えばアメリカのニュークリア・レギュラトリー・コミッションという原子力規制委員会でございますか、その調査によりますと、一九七六年から一九八五年にかけての十年間に、原子力施設に爆弾を仕掛けたぞといったようなたぐいの脅迫が四百件以上もあったというふうな報告が出ております。イギリスもそういうふうなおどかしというか脅迫行為があったということは報告されておりますけれども、幸いにして今までのところはございません。  将来どうかということにつきましては、ないことを私、希望するわけでございますけれども、しかしながら他方、原子力活動がふえていく、それに従って核物質の国際輸送もふえていくという事実はあるわけでございますから、そういうことを考えれば、やはり転ばぬ先のつえということで、この協定のもとで、少なくともミニマムであってもしっかりやっていこうということがとるべき措置ではないかと思っております。
  191. 神崎武法

    ○神崎委員 最後にお尋ねをいたしたいわけでございますけれども、西ドイツの雑誌のシュピーゲルによりますと、国際原子力機関の査察体制の不備によって一九八六年に原子爆弾七十個がつくれる量の核物質が行方不明になっている、こういう報道がなされておりますし、国際原子力機関もこれを認めていると報告書に書かれているということが言われておりますが、これは一体事実なのかどうかということと、もう一つ、現在国際原子力機関による二百五十人の査察官では十分な監視体制がとれないという指摘がこの報告書にあるということでございますけれども、この二百五十人の査察官の中に日本人はいるのか。また、今後我が国はこの監視体制強化のために人材の派遣を積極的に進めるべきであると思いますが、この点についても最後にまた大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  192. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 まず最初に私から事務的なお答えを申し上げたいと思いますけれども、シュピーゲルの記事というのは恐らくIAEAの保障措置報告の内容の誤解であろうかと思っております。ちなみにIAEA自身がそういったような記事に接しまして、これではIAEAの保障措置の信頼性に誤解を招くおそれがあると判断して早速にも対外記者発表を行いまして、その中で、一九八六年の保障措置の結果として、IAEAの保障措置に置かれておるもとでの核物質は平和利用が確保されている、適切に計量されておるということを発表いたしまして、そのうわさというものを打ち消しております。  それから、第二番目の御質問のIAEAの中に査察員が二百五十名というお話でございますけれども、実は残念ながら二百五十名もいませんで、これは八七年、去年でございますけれども、百八十四人でございます。ただ、やはり原子力活動の量がふえていくに従いまして、IAEAにおきましても、少しずつではありますけれども査察員の数がふえてきているのは事実でございますが、しかしながら現在では百八十四人でございます。  今後とも増員の必要はあろうかと思いますけれども、必ずしも増員は容易でもないわけで、人とあわせて新しい保障措置研究つまり計量精度の向上とかあるいはオートメ化等々も含めまして効率的な査察が行われるようにIAEAは努力いたしております。  それから、この査察員は百八十四人でございますけれども、邦人職員は十四人でございます。邦人職員につきましてはもっともっとふやしたいということを希望いたしております。  それからなお、国際査察に対します日本協力といいますか取り組み方につきましては、これは科技庁の御答弁の方がいいのかと思いますけれども、私どもも全く積極的でございまして、人材派遣につきましては従来からもやってきておりますし、今後ともこれに努力していきたいと思っております。
  193. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 我が国のIAEAからの査察、現状は先ほど申し上げましたが、優等生であるということでございます。  神崎委員ももう十分御承知でございましょうが、東海村ではこの部屋ぐらいの大きなタンクが何個も並んでおります。あるお方が見られて、このタンクは空っぽかとおっしゃったという話が残っておりますが、プルトニウムはそのタンクのわずかなふちの中に全部入れられておる。恐らく全世界においてもそうした防護がなされておるのじゃなかろうか。したがいまして、よほど大仕掛けなギャングが来るか、大仕掛けな軍隊が来ざる限り国内にあるプルトニウムの強奪はできない、不正使用もできない、こういうふうなことでございますけれども、やはり輸送中のことは私たちといたしましてももっともっと考えなくちゃいけないな、かように思っております。  しかしながら、今日までの経緯からしますとそういうような事故もなかったということでございますが、やはり大切にしなくちゃなりませんので、IAEAに対しまする協力というものを求められれば、幾らでもしようという考え方が我が方の考え方である。先ほどから答弁もしておられる政府委員がおられますが、現に科技庁からも随分査察員で行かれており、その体験者もおられるわけでありますから、そういう体験等々からかんがみまして、御質問に対しましては政府は今後十分考えていきたい、かように考えております。
  194. 神崎武法

    ○神崎委員 終わります。
  195. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 永末英一君。
  196. 永末英一

    ○永末委員 核物質の防護に関する条約承認案件でございますが、これはどうも核物質の国際輸送中における起こるべき事件に対して、その安全を期するため防護をやろうという条約のようでございますが、この第一条の(a)の核物質と称するもの、プルトニウムその他、それから第二の同位元素ウラン235、または233の濃縮ウランと称するもの、別々に書いてございますが、この第一条の(a)に関するものについて、最近の国際輸送の船舶で輸送したものの回数、それから航空機によって輸送したものの回数、さらに(b)項に書いてある物質につきまして、同じく船舶による年間輸送、航空機による年間輸送、現状をお知らせ願いたい。
  197. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 我が国における核物質の国際輸送の数字でございますが、私どもが整理をしております主要な国際輸送はすべて船舶によるものでございまして、昭和六十一年の数字は、新燃料を海外から日本へ持ってくるもの、これが約五十件、それから逆に日本使用済み燃料を海外へ持っていくもの、これが十件でございます。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  198. 永末英一

    ○永末委員 我が国の場合には、この(b)項に該当するものはあるのですか、ないのですか。
  199. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 条約の(b)項はいわゆる濃縮ウランでございまして、(a)項が逆にプルトニウムその他でございますので、新燃料につきましてはすべて(b)項、濃縮ウランの関係でございます。
  200. 永末英一

    ○永末委員 今我が国の回数を知らせていただいたのですが、全世界はどうなっておるのですか。
  201. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 恐縮でございますが、ただいま手元に資料を持ってございません。
  202. 永末英一

    ○永末委員 これは国際条約でございまして、資料によりますと署名国が四十七で、そのうち二十二カ国が締約国になっておりますが、すべてそれぞれ関係があるからこの条約に入っておるわけで、それぞれの国が核物質の輸送をやっているわけで、我が国の資料だけを言われたってわからぬじゃないですか。つまり輸送の態様を知りたいので聞いているのですが、わからぬですか。
  203. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  実は日本の場合は海を隔てての輸送でございますから、比較的多量に、かつ、船というようなことで把握しやすいのでございますが、ヨーロッパの場合、殊に原子力先進国はヨーロッパに多うございまして、ヨーロッパの場合、陸送ということで、したがいまして、私、今手元に資料を持っていないのでございますけれども、現実に把握しますのは非常に難しいのではないかなという感じがいたしております。
  204. 永末英一

    ○永末委員 私が伺っておるのは、我々はウラニウムの原産国でもなければ、いわば原料、濃縮ウランを遠いところから輸入しなければならぬし、再処理のためには遠いところへ持っていかなければならぬ。つまり遠いところでございますから、今までの御答弁によれば船舶だと言うが、今回以降は航空機も使おうという想定になっている。しかしヨーロッパ諸国の核物質を使っておる国々は陸送がどんどん行われておる。問題はその輸送の途次におきます安全を期そうというのだから、一体どんなものがどういう形でこれを妨げに来るか。  この条約の七条におきますと、核物質の窃取及び強取をやるもの、横領及び詐取をやるもの、脅迫なんとかと、いろいろ書いてございますけれども、陸上輸送のものを途中で窃取もしくは強取をやる場合と、船舶に対してそういうことをやる場合と、航空機に対してやる場合と全然違いますわね。違った関係にあるものが集まってこういう条約を結んだが、この条約はすべての国々に妥当していくわけでございますので、一体どういうことをこの条約を結んだ国々が想定をして結んだかを知りたいから態様を聞いておるわけで、我が国我が国の場合だけのことを言っておったって他の国は他の国の観点から物を考えているのだから、そういうことを知らぬでいいのですか。
  205. 緒方謙二郎

    ○緒方政府委員 手元に資料がございませんので、統計的な数字でお答えすることはできないわけでございますが、ただいま科学審議官から御答弁がありましたように、ヨーロッパの域内では地続きでございますし、原子力開発の非常に古い歴史があるわけでございますから、陸上で輸送するのが大宗を占めているわけでございます。そのために、既にこの条約以前から国際原子力機関等において輸送に関する問題が種々議論をされ、その問題点指摘をされて、その議論が集約されてこの条約を生み出す一つの原動力になったものというふうに私どもは理解をしております。  それからなお、先生の御指摘の中で条約はどういう場合を想定しているのか、窃取、強取というような、七条をお引きになったわけでございますが、この条約が若干わかりにくい書き方になっているのでございますが、第二条でこの条約の適用範囲、二つ書いてございます。  御指摘のありました国際輸送中の核物質について防護措置をとるというのが二条の一項のものでございまして、この条約の四条、五条というような国際輸送をするためには、附属書で掲げるような適切な防護措置をとらなければいけないというのが一項。それから、二項で書いてありますのは、その四条、五条の規定を除くほか、国際輸送の場合を除くほか、国内において使用され、貯蔵され、輸送されているものについても適用するということで、いわゆる窃取、強取、犯罪行為を処罰しようと言っているのは、その国際輸送に関連する犯罪を処罰するということを言っているわけではないのでございます。
  206. 永末英一

    ○永末委員 国際行為における犯罪のところを聞いておるのであって、この条約の説明を聞いておるのじゃないですよ。問うたことに答えてください。問うた以外のことを答えてもらったって関係がない。
  207. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問にぴたっと合っているかどうかちょっと自信ございませんけれども、輸送の形態、殊に日本の場合は先ほど申しましたように船であったわけで、これから飛行機という可能性は出てきておるわけでございますけれども、ヨーロッパの場合は陸続き、しかしながらヨーロッパの場合もアメリカから濃縮ウランを持ってくるとか原材料を持ってくる船がありますので、実はこの条約基礎になっておりますIAEAの勧告がございまして、それにはかなり詳しい輸送形態、その一々の輸送形態における、こういうふうに防護しろという勧告があるわけでございます。  そこには航空輸送の場合、陸上輸送の場合、陸上も二つございまして、一つはトラックで運ぶ場合、もう一つは汽車で運ぶ場合、そういうふうなかなり細かい規定がありまして、例えば汽車で運ぶ場合、こういうものについては有蓋貨車で運んで、かつ常にガードマンが乗れとか、こういうふうな非常に細かい規定がありまして、そういうことをヨーロッパの原子力先進国は守っていっている、こういうふうな現状になっております。これで先生のお答えになっておりますかどうかあれでございますけれども……。  それで、その回数等々につきましては、先ほど申しましたように、恐らく把握は非常に難しいのではないかと思うわけでございます。船とかあれでしたらロットが大きくなるわけでございますけれども、トラックあるいは汽車の場合、これの把握が非常に難しいのではないかという感じがするわけでございます。
  208. 永末英一

    ○永末委員 核物質に限って特別の国際条約を結び、それによって国内法をつくってそれぞれの国がいわば国際的義務を負うわけです。しかし、物の輸送というものはいろいろなものが輸送されているわけで、特に陸上輸送というのはよくわからぬ。ばあっと輸送されておるそのうちの一部、一つである。しかし船になると、船というものの数が少ないためにわかりやすい。飛行機ということになれば、一体、輸送機の一部分にやるのか、専属の輸送機をやるのか、これは専属の輸送機のようでございます。  そうしますと、国がこの条約によって義務づけられておるわけでございますが、輸送者というものは一体だれと考えておるのか、その輸送者の義務づけと国の義務との関係を伺いたい。したがって、最初に一体どういう輸送形態かと聞いておるけれども、それがあいまいもことしているので、まあ予算委員会ならとまるところですが、ここはとめるところじゃございませんから進行はいたしますが、そういうことを聞きたいわけなんです。  さてそれならば、我々はトラックは使うことはございませんから、日本国の場合に限って考えていきますが、我々は船と飛行機ですね。船で輸送する場合には、自分のところの国籍の船を使えなどと書いてございますけれども、この船の輸送の一部分ですね、船の容量の一部分に核物質が入る。核物質専用の船はございませんな。
  209. 山本孝

    ○山本説明員 お答えいたします。  船舶で運ぶ場合にございましても、物が物でございますので、ほかの荷物は一切積み合わせませんでプルトニウムを専用で運んだ実績がございます。
  210. 永末英一

    ○永末委員 その船はだれが雇うのですか。
  211. 結城章夫

    ○結城説明員 具体的な例で申し上げたいと思います。  昭和五十九年にフランスから我が国にプルトニウムを持ち帰ったわけでございますが、この場合には船を使いました。この場合は、プルトニウムの量にいたしまして核分裂性プルトニウム百八十九キログラムでございました。このプルトニウムでございますが、動力炉・核燃料開発事業団が日本の電力会社、具体的には関西電力でございますが、関西電力からプルトニウムを購入いたしまして、茨城県の大洗町にございます高速実験炉常陽に使うということで持ち帰ったものでございます。  この場合の輸送につきましては、動力炉・核燃料開発事業団が輸送当事者となりまして、日本籍の貨物船、これは新和海運運航の晴新丸という船でございますけれども、この貨物船を使いまして行ったものでございます。
  212. 永末英一

    ○永末委員 動燃事業団というのは半官半民、官みたいなものですね。そうしますと、これの運航に対して政府は責任がありますか。
  213. 結城章夫

    ○結城説明員 動力炉・核燃料開発事業団が実施主体でございまして、運航の責任をとっております。
  214. 永末英一

    ○永末委員 そういう船から核物質を窃取並びに強取せられるということはどういう場合が考えられますか。
  215. 結城章夫

    ○結城説明員 この昭和五十九年の輸送につきましては、船で大体四十日をかけて無事に日本まで届いたわけでございます。何らの脅威もなかったということでございます。  ただ、将来につきましてどういうことがあり得るかということにつきましては、これは何とも私申し上げられないと思っております。
  216. 永末英一

    ○永末委員 この前送ったことを聞いておるのじゃなくて、これから送る場合に、船ならば大体イギリス並びにフランスからだと四十日ぐらいかかる。それはもう全然どこへも寄港しないでやってくる、こういうことならよそから接近せられるような気配はないけれども、その船が核物質を持っており、それからとってやろうなんていう者がおれば、それをとるべきものを持ってきて、昔でいえば海賊船ですが、そういう武器を積む何らかのものを持ってきて脅迫をして強取するということはあり得るわけです。あり得ると思いませんか。この前安全だったから、今後もずっと安全だと思っておりますか。
  217. 結城章夫

    ○結城説明員 先生指摘のようなことがあり得ると思います。  そういうことで、前回の輸送におきましては、今先生のおっしゃいましたように、フランスから日本まで無寄港で持ってまいりましたし、輸送船と東京との連絡体制を確立する、その他のいろいろな措置を講じさせていただいたわけでございます。
  218. 永末英一

    ○永末委員 その辺があいまいです。四十日かかるわけで、なるほどその船が航行しておる、いつどこを走っておるかはわかるようになっておると思いますが、もしその船に対してそれをとめ、そこから船長等を押し込んで脅迫をしてどこかへ持っていこうというようなことが起こったときに、それを妨げるために、やらせないためにどうするかということを考えておるのですか、考えていないのですか。
  219. 結城章夫

    ○結城説明員 そういう事態を十分考えまして、このときの輸送におきましては、科学技術庁の方から海上保安庁の方に警備その他をよくお願いしてございます。
  220. 永末英一

    ○永末委員 海上保安庁の船がヨーロッパまで行ったのですか。
  221. 児玉毅

    ○児玉説明員 ヨーロッパまでは行っておりません。日本近海だけでございます。
  222. 永末英一

    ○永末委員 日本近海へ来れば、二百マイルの経済水域ぐらいはそれは海上保安庁の巡視船が行きますわな。そのあとの何千海里というところはだれがどうしたのですか。ほっとくのですか。守るのですか、政府は。そこを聞きたい。
  223. 結城章夫

    ○結城説明員 日本といたしましては、我々の講じられる十分な措置を講じたと思っております。  これにつきましては、国際的な水準にも達しておったということでアメリカも認めておりました。  ただ、このプルトニウムの日本への持ち帰りにつきましては、アメリカの同意が要るわけでございまして、アメリカと十分相談したわけでございますが、米国政府としては、我々の講じました措置に上乗せいたしまして、アメリカ政府の独自の判断ということでアメリカの軍艦による護衛ということを行うという通知を我々は受けておりました。
  224. 永末英一

    ○永末委員 アメリカアメリカの判断で、彼らは彼らなりの核物質に対する世界政策を持っているわけで、この船を防護したかもしれません。その前に我々の、日本のやった防護は国際水準で立派であったといっても、アメリカが守ってくれるから何もしなかったのでしょう。  何かしたら、したと言うてください。何もしなかったはずだ。どうやったらその船が守れるか。何かしましたか。
  225. 結城章夫

    ○結城説明員 この輸送の実施に当たりました動燃事業団におきましては、いろいろな対策を講じさせていただいたわけでございます。  幾つか申し上げますと、この輸送船はその一部を特別に改造いたしてございます。これは、具体的にはクレーンを撤去するというようなことで、万一の場合にその輸送容器がとりおろされないような措置を講じたというようなことがございました。さらには、先ほども申し上げましたけれども、フランスから日本まで無寄港で来るというようなことも行いましたし、輸送船との通信連絡体制を整備して、その位置や状況を常時把握できるような措置を講じました。また、輸送船の警備点検のために、原子力の専門家、その他専門家を乗船させるというようなことを行いました。さらに、先ほど申し上げましたように、海上保安庁への要請ということも行った次第でございます。
  226. 永末英一

    ○永末委員 先ほど申し上げたように、海上保安庁は日本の経済水域ぐらいのもんだよ。そのあっち側の空々漠々たる太平洋については海上保安庁は関係ないんだもの。あんたは何でそんなことを二遍も言うの。  それから、あんたの言うておることは核物質安全性を技術的に高めるためのことを言うておるのであって、ここでの議題は、我々が何をやろうとも不法なる連中がやってきてこれを強取しようというたときに対する防護対策を聞いているのだから、全く答弁は的外れですよ。何もやっていないのなら何もやっておらぬ、やれないならやれないということをはっきり言うてください。やろうとしましたができないのか、現在の法令上ではできないならできない、それが問題じゃないですか。答弁
  227. 結城章夫

    ○結城説明員 当時の状況は今申し上げたとおりでございまして、日本といたしましてはとれる措置はすべてとっておりまして、これが国際的に求められております当時の水準に達しておるということで、この点はアメリカ政府も認めていただいております。
  228. 永末英一

    ○永末委員 飛行機はまだ使っていないというのですが、飛行機の場合にはどうなるでしょうか。飛行機が飛んでおる、それに対して強制着陸を求めるような飛行機が飛んできたときに、どういうことになりますか。無視して飛ぶか、言うことを聞くかというようなことになる。  しかし、それを護衛する航空機は我々としてはあるのかないのか、その辺はどうなっておるのですか。
  229. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 先生の御質問は恐らく日米原子力協定の新協定、今後御審議をいただきますこの協定では、飛行機が第一プライオリティーと考えられておるわけでございますけれども、これにつきましては、日米原子力協定にこういう条件が充足されなければだめだという条件がかなり詳しく書いてあるわけでございます。  例えば武装護衛者の同乗。それから輸送関係者が信頼に足る者であるということが確認されること。それから空港、例えば出ます空港は恐らくイギリスかフランスかのいずれかの空港であるわけでございますけれども、そこでその飛行機が隔離されておること。それから輸送容器の安全。さらには万が一のときの緊急計画が作成されておるということ。それから通信設備といたしまして、飛行機が持っておる通信設備とは別に特別な、それ自身の通信設備であって日本のオペレーションセンターとそれだけのために交信できるというようなこと、こういうことが入っておるわけでございます。  したがいまして、それで相当程度は充足できると思うのでございますが、今先生のおっしゃったような、何か国籍不明かなんかの飛行機がやってきて云々ということは可能性としてはもちろんないわけではないと思います。しかしながら、今この協定に書かれておりますような条件が充足されれば、その可能性は非常に小さくなるであろう。それから、かつ緊急計画をつくっておりまして、そういうときにはどうするかという緊急計画、例えば、よくわかりませんけれども、スクランブルとか、あるいは関係諸国が協力して、その不明機にどうやって対処するか、こういうようなことが緊急計画の中に書かれるのだろうと思うわけです。したがいまして、理論的可能性からいえばゼロというわけにはいきませんけれども、今度の日米協定によります輸送方法では相当程度までに安全は確保されるというふうに思っております。
  230. 永末英一

    ○永末委員 この条約によりますと、輸送する場合にはアームドガード、武装警備員を乗せるということが書いてありますな。それは船なら何人乗せるのですか。飛行機なら何人乗せるのですか。
  231. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 日米協定では武装護衛者が何人とは書いてございません。しかし、これは具体的な輸送計画の策定に当たりまして何人が適当かということは関係政府つまり日本アメリカ、フランスあるいはイギリス等々との話し合いの上決まるかと思います。なお、日米原子力協定は船につきましては特に決めておりませんで、これは個別の承認ということになるので、日米間の話し合いということになろうかと思います。  他方、今御審議いただいております核物質防護条約につきましてはそういうふうな詳しい規定はございませんで、これは護送者による常時監視と緊密な連絡体制ということがPP条約の附属書のIに書かれておるわけでございまして、核物質防護条約に関します限りは、数とかあるいは緊密な連絡体制が具体的にどういうものであるかということにつきましては特に明記されておりません。したがいまして……
  232. 永末英一

    ○永末委員 身分を言うてください。それはどういう身分の者が乗るのですか。警備員というものは、我が国の警察官が乗るのですか、自衛隊員が乗るのですか、それとも何でもない人が乗るのですか。
  233. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 飛行機につきましては、日本の飛行機を使いますときには日本の警察官の同乗が予定されております。
  234. 永末英一

    ○永末委員 船は。
  235. 児玉毅

    ○児玉説明員 先ほど、ヨーロッパまでは海上保安庁出向いておりませんとお答えしましたのは船のことでございまして、警備員としては晴新丸に四名海上保安官を乗船させました。
  236. 永末英一

    ○永末委員 それは海上保安庁の職員ですか。
  237. 児玉毅

    ○児玉説明員 海上保安官でございます。
  238. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、もともとこの問題はヨーロッパ諸国、つまり核物質の陸上輸送を頻繁にやっておるところがハイジャックの危険性を感じていろいろ議論があった。我々も核物質を大いに利用していますからそこへ参加してきておる、こういう経緯でできたと思う。したがって、警備員を乗せるなんというような発想は、トラックなり汽車だったら警備員の持つ武装でそれは有効に対抗できるわけです。  しかし、船とか飛行機とかになったら違うのだな。同じ武力でもって守らねばならぬとすれば対応が変わってくる。飛行機自体の航路を守らねばならぬ。それは中に乗っておる者がピストルを持っておったって何ともならぬので、違うわけです。船だって同じことが起こる。したがって、そういうものについてどういうことを考えているかということをはっきりしてもらわなければ、ヨーロッパ用のこの条約日本に適用する場合においては対応は変わってくるわけである。  したがって、その疑念の数点をあなたに申し上げたわけですが、あなたはこの問答を聞いておられまして、今までの例によれば我々がイギリスやフランスから長い距離運んできたわけだから、そういうものに対してそのもの自体の防護は必要と思いますか、いや、しょうがない、先ほどの答弁では国際水準アメリカに求められておるという話ですからね。核物質を安全にする技術的ないろいろな手だては、それはそれです。今の問題は、それを横から不法に何とかしようとかかってくる、それはちょうど陸上輸送のトラック等の車両に向かってかかってくるようには同じ対応はないけれども、形としてはそうです。それを一体防護するのか、そんなものはないと思うのか、そこのところをちょっと答えてください。
  239. 宇野宗佑

    ○宇野国務大臣 決してないとは言えない。そういうために護送中の防御は大切だと思うのです。  しかし、御指摘のとおり、私も先ほど申しましたとおり科技庁長官をやったのですが、船のときにはアメリカが見えつ隠れつ守っておるというような状態でございます。今度の場合も飛行機で大丈夫かと私も言っているのです。ガードマンが乗っておったって、そのまま連れていかれたらしまいじゃないかという問題もございます。したがいまして、我が国内に入った後は、立派に我が国はIAEAの規則を守りまして模範生となるほどいろいろな核物質の保管はいたしておりますが、その点に関しましては今のところ確かに手薄であるということだけは申し上げなくてはなりません。  しかし、自衛隊の海外派兵というのは憲法上制約がございますし、この点に関しまして甚だ難しい問題である、いろいろとまた知恵を絞って考えたいなという問題でございますが、今のところはそうしたことにおきまして我が国も相当量の核物質の輸送がございますので、さような意味でこの条約の速やかなる御承認は必要である、かように存ずる次第でございます。
  240. 永末英一

    ○永末委員 最後に、リビアはこの条約にどういう態度をとっておりますか。
  241. 遠藤哲也

    ○遠藤(哲)政府委員 リビアはこの条約作成会議には出席したのでございますけれども、その後署名もいたしておりませんし、もちろん締約国にもなっておりません。
  242. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、いろいろな国際情勢がございますので、我々が輸送する核物質がいかなる意味でも発火点にならぬように慎重にひとつ御処置を願います。  質問を終わります。
  243. 甘利明

    ○甘利委員長代理 次回は、来る六日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時四十六分散会