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1988-03-23 第112回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十三年三月二十三日(水曜日)     午前九時三十八分開議  出席委員    委員長 糸山英太郎君    理事 甘利  明君 理事 北川 石松君    理事 中山 利生君 理事 浜野  剛君    理事 神崎 武法君 理事 永末 英一君       天野 公義君    石井  一君       大石 正光君    鯨岡 兵輔君       小杉  隆君    椎名 素夫君       塩谷 一夫君    村上誠一郎君       石橋 政嗣君    岩垂寿喜男君       河上 民雄君    伏屋 修治君       渡部 一郎君    岡崎万寿秀君       松本 善明君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宇野 宗佑君  出席政府委員         外務大臣官房領         事移住部長   黒河内久美君         外務省北米局長 有馬 龍夫君         外務省中南米局         長       坂本重太郎君         外務省欧亜局長 長谷川和年君         外務省中近東ア         フリカ局長   恩田  宗君         外務省条約局長 斉藤 邦彦君         外務省国際連合         局長      遠藤  實君  委員外出席者         防衛庁長官官房         防衛審議官   村田 直昭君         法務省入国管理         局入国審査課長 大久保 基君         外務大臣官房文         化交流部長   田島 高志君         文部省学術国際         局国際教育文化         課長      砂子田忠孝君         厚生省保険局保         険課長     澤村  宏君         厚生省年金局年         金課長     松本 省藏君         外務委員会調査         室長      藪  忠綱君     ───────────── 三月二十三日  理事神崎武法君同月十八日委員辞任につき、そ  の補欠として神崎武法君が理事に当選した。     ───────────── 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国際情勢に関する件      ────◇─────
  2. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事神崎武法君を指名いたします。      ────◇─────
  4. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  5. 河上民雄

    河上委員 先般予算委員会でも、我が党の山口書記長質問に端を発しまして、安保条約事前協議の問題、また、その後を受けまして米軍による我が国に対するポンカスの問題等、論議がございました。また一方、国際情勢では、ニカラグアとの緊張状態というものからアメリカホンジュラスに派兵するということを決定し、既にそれが始まっておるような状況でございます。  これらを一貫して考えてみますと、そこに一つ浮かび上がってまいりますのは、やはり一体自衛権とは何かという問題だと思うのでございます。もう既に大臣も御承知だと思うのですけれども、十九世紀、二十世紀前半におきましては、自衛権というものはほとんど無制限でした。特に、我が国もその一例を担うことになるわけですけれども自衛のためにということで侵略的な戦争をさえしたというようなことがあるわけであります。したがって、第二次大戦後は、この自衛権というものは非常に客観的に限定されるようになってまいりまして、自衛権そのもの概念が非常にすぼめられてきているわけですが、一方これを再び膨らまそうという流れもあるわけでして、どうも最近我が国政府の御答弁を伺っておりますと、だんだん膨らます方向に行くというふうに我々としては懸念しているわけでして、このまま推移いたしますと再び戦前の過ちを繰り返す懸念が生じてまいりまして、私どもも非常に憂慮しているわけでございます。  そこできょうは、やや国際法的な問題になりますけれども自衛権というものについて政府はどういうように考えておられるか、もう一度確かめてみたい、こんなふうに思っております。  後でまた大臣に最終的にお答えいただきますが、最初に条約局長に大変失礼ですがちょっと伺ってみたいと思うのです。御案内のとおり、憲法並びに国内法に関しては法制局長官が有権的な解釈を下す立場にありますが、条約に関しては外務省条約局長だ、こんなふうに我々も承知いたしておりますので、伺いたいと思います。  まず条約局長に向いたいのですが、自衛権国際法上の概念というのはどういうものでございますか。
  6. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 一般国際法上、自衛権とは、国家または国民に対する外部からの急迫不正の侵害に対し、これを排除するのにほかに適当な手段がない場合、当該国家必要最小限度実力行使する権利であるというふうに一般的に考えられております。
  7. 河上民雄

    河上委員 その場合、自衛権というのは自国に対する侵害というふうに考えてよろしいのですか、いかがですか。
  8. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま申し上げました自衛権の一般的な定義といたしましてはそのとおりでございます。  他方、これは委員承知のとおりでございますけれども国連憲章におきましては集団的自衛権という権利が各国家固有権利として認められておりますが、この集団的自衛権というものは、自国に対する攻撃ではないけれども自国と密接な関係がある他国に対する攻撃に対しましてその攻撃を排除するために一国が実力行使する場合、これを集団的自衛権というふうに考えております。したがいまして、集団的自衛権についてということでございますれば、これは自国に対する攻撃の場合ではないわけでございます。
  9. 河上民雄

    河上委員 急迫かつ不正の侵害先ほど言われたのでありますが、これはそうだということをだれが認定するのですか。
  10. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) これは第一義的には自衛権行使する国家、すなわち侵害を受けた国家でございます。しかしながら、国連憲章におきましては、自衛権行使した場合は安全保障理事会に報告することになっておりますので、最終的な判断というのは安全保障理事会が行うべきであるという考え方に立っております。
  11. 河上民雄

    河上委員 それでは、例えば戦前のことでありますけれども満州事変の場合、我が国はこれをいわゆる自衛権というふうに主張いたしましたし、当時の国際法学者の中にも自衛権発動だというふうに主張した方がたくさんおられるわけであります。それに対しまして、もちろん横田喜三郎教授のように、当時国際連盟が撤兵を求める勧告をしておるわけですが、その勧告に従うべきだと主張した方もおられるわけですが、残念ながらむしろそちらの方が少数意見であったように思うのであります。  一方、国際連盟ではこれを自衛権とは見なかったわけでして、リットン卿の報告がそういう結論になっておりましたが、こういう過去の経験というものを外務省ではどういうふうにお考えになりますか。例えば満州事変における自衛権発動というものを日本政府主張しましたけれども、それはやはり間違いだったというふうにはっきりお考えでございますか。大臣、いかがでございますか。
  12. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私の小学校のころに満州事変が始まりました。もちろん私たち満州事変シナ事変、太平洋戦争と青春を戦争とともに暮らした年代の者でございます。もちろんそうしたことには関心が非常に高まっておりましたから、戦後幾つもの書籍等を読み、そして私自身も新京に経理学校がありまして学徒出陣でそこに入れられたものですから、満州の実態もよく知っております。  最近の書類等々あらゆるものを私も目を通しておりますが、はっきり申し上げまして、今日の日本戦前日本とはっきり区別をされなければならないものでございます。それはまず憲法であります。しかも憲法第九条であります。そうしたことに基づきましてただいま条約局長が申しましたとおり、自衛権とは申せ、個別的自衛権はあるが、集団的自衛権はないというのが日本でございまして、しかも今日はシビリアンコントロールがきいております。あの当時はシビリアンコントロールがきいておったのかおらなかったのか、高橋蔵相はそのために二・二六で命を落とされた事実もございますが、総合的に判断いたしますと、その当時自衛権があったかなかったか、正しかったかどうか、私といたしましては、今日の時代と全く違いますので判断に苦しんでおります。
  13. 河上民雄

    河上委員 条約局長はどういうふうにお考えですか。
  14. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま大臣が御答弁されたところにつけ加えることはございません。
  15. 河上民雄

    河上委員 それでは局長に伺いますが、現代において、国際法国家自衛権法的根拠はどこにありますか。
  16. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 各国家固有自己を防衛するための権利を保有しておるということは従来の国際法上も当然のことと考えられておりました。戦前におきましては戦争が一般的に非合法とされておりませんでしたので、各国家自衛権は当然のこととして認められておりましたけれども、ある国家武力を伴います行動自衛権行使であるかどうかという点は必ずしも実際上の問題とならなかったわけでございます。すなわち、戦争が合法でありました時代にはあえて自衛権という概念を持ち出して自己の行為を正当化する必要がなかったということでございます。  それが第二次大戦国際連合憲章ができまして、武力行使が一般的に非合法化されるに伴いまして、唯一武力行使が許される状況として自衛権という概念が出てきたわけでございまして、自衛権概念自体は昔からございましたけれども国連憲章のもとで国際法上従来とは比較にならないほどの重要な地位を占めるようになったわけでございます。したがいまして、現在のところ、各国家自衛権というものは一般国際法上も従来より認められておりましたけれども、現在において、直接的には国連憲章におきまして各国家固有の個別的及び集団的自衛権を持っているということが明文規定されているという状況にございます。
  17. 河上民雄

    河上委員 その場合、安保条約前文にも個別的、集団的自衛権というのは書いてありますけれども、これも国際法上における自衛権根拠だ、こんなふうに条約局長考えておられますか。
  18. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 御指摘のとおりだろうと存じます。  ただ、言うまでもないことでございますけれども日本自衛権あるいは米国の自衛権というのは安保条約があるから初めて認められたということではございませんで、先ほど申し上げましたとおり、一般国際法上の権利であり、国連憲章においても各国家に当然の権利として認められているということを安保条約で二国間で改めて確認したという性質のものだと考えております。
  19. 河上民雄

    河上委員 今条約局長国際法上の国家自衛権法的根拠を述べられたのですが、先ほど満州事変に関しては大臣の御答弁のように現在と昔は違うからということで明確な御答弁がないのに対しまして、これに何らつけ加えることはない、こういうふうにおっしゃったのですね。  しかし、条約局長は過去の歴史的な事件について見解を述べる立場にないというふうにお考えになっているのかもしれませんけれども、やはり我々は歴史というものを無視して現在を語ることはできないわけでございまして、特に満州事変における日本自衛権が正しかったかどうかということについては東京裁判ではっきりした一つ結論が出ているわけです。  そうしますと、大臣並びに条約局長東京裁判結論とは違った見解を持っておられるということをこの国会で明らかにされたことになるのですか。
  20. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 決してそうではございません。我々は戦争を否定いたしております。したがいまして、戦前、軍部横暴という一言に尽きるのではないだろうか。しかもそのとき政治が弱かったがためにああしたととがなされたのではなかろうかということを私は申し上げたので、決して満州事変は正当であったということは絶対申し上げません。これはやはり不当な戦いであったと申し上げた万がむしろすっきりすると私は考えております。  同時にまた、河上委員が申されましたとおり、国際連盟を脱退したということも今から申し上げるのならば非常に残念なことであったに違いありません。だから、そういう反省の上に立ちまして、今日では国連中心国連重視、こういう政策をとっておる、こういうことで私たち皆さん方と気持ちは一致しておる、かように存じておる次第でございます。  しかも満州は中国の領土でございましたから、あらゆる反省の上に立ちまして私たち日中平和友好条約を結び、また共同声明をなし、さらには四原則をつくり上げたという間柄でございますから、その間におきまして満州並びシナ事変に対するところの日本反省は十分なされておる、かように存じておる次第でございます。
  21. 河上民雄

    河上委員 その辺ははっきりしていただかないと困ると思いますし、条約局長も、国際法上の一つ自衛権というものの定義という点からいいましても、やはり満州事変における我が国自衛権発動正当性主張というものをここでどう考えておるかということは条約局長としてはっきり言っていただかないと困ると思うのです。今大臣政治家としての一つ見解を述べられたのですが、条約局長、もう一度そこをはっきりしていただけますか。
  22. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま大臣の言われたとおりなのでございますけれども日本主張国際連盟において否定されたということはよく承知しておりますし、それから我が国平和条約におきまして極東裁判裁判を受諾するということを約束しておりますので、我が国法的評価というものもこれらの事実から判断されるべきだというふうに考えております。  なお、先ほどの私の答弁の中で誤解を避けるためにちょっとつけ加えさせていただきますが、我が国を含めまして各国家が個別的及び集団的自衛権を有すると申し上げましたけれども、これは国際法上の側面でございまして、御承知のとおり我が国国際法上は他の国家と同様個別的及び集団的自衛権を有しておりますけれども憲法におきまして、憲法解釈といたしまして集団的自衛権は禁止されているという立場でございます。
  23. 河上民雄

    河上委員 それでは、しばしば出てまいります集団的自衛権、これは国連憲章五十一条にもありますし、それを受けてだと思いますが、日米安保条約前文にもそれがうたわれているわけですが、この集団的自衛権概念というのは国際法的にどういうふうに理解されておりますか。
  24. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 国際法集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利を言うというふうに解されております。
  25. 河上民雄

    河上委員 今条約局長は、一般的には日本を含めて集団的自衛権個別的自衛権を持っておる、しかし日本憲法との関係において集団的自衛権はないと政府考えておる、こういうことでございますけれども日本以外に集団的自衛権がない国家というものは具体的にあるとお考えでしょうか。もしあれば具体例を挙げていただきたい。
  26. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) いい例かどうか自信がございませんけれども、例えば永世中立条約を持っておりますスイスは、他国と結びついて武力自国を防衛するあるいは他国を自分の武力で防衛するということはできないことになっておりますので、このような国家集団的自衛権を放棄していると考えていいのではないかと存じます。     〔委員長退席浜野委員長代理着席
  27. 河上民雄

    河上委員 そのほか、非同盟国家というのがあるわけですね、例がいいかどうかわかりませんが、インドとか。こういう場合はどういうようにお考えになりますか。また中南米コスタリカどもいわゆる非同盟中立国家を標榜しておるのですけれども、こういう場合、これらの国々に集団的自衛権があると考えられるか、ないと考えられますか。
  28. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 非同盟という場合、私の理解は、これは政策の表明でございまして、法的に本来固有集団的自衛権というものを放棄している国が非同盟諸国の中にあるかどうか、申しわけございませんけれども、私、今手元にきちんとした資料がございません。非同盟諸国というのは非常に多数ございまして、いずれも政策として非同盟を標接しているわけでございますけれども、その中にはいわゆる集団的自衛権を定めた協定ないし条約に入っている国もあるのではないかという気がいたします。
  29. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、コスタリカの場合はいかがですか。
  30. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 申しわけございませんが、担当の局長が来ておりませんので、きちんとしたお答えができませんが、コスタリカはエルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラスニカラグアと一緒になりまして米州機構憲章というものに入っております。この憲章の内容、ちょっと私、現在手元にございませんので、申しわけございませんが御説明できません。
  31. 河上民雄

    河上委員 それじゃ、またそれは質問を留保させていただきますが、集団的自衛権というのは、先ほど局長がやや教科書的に読み上げられたのですけれども先ほど来のその前の御説明では、自衛権というのは本来は自国に対する急迫かつ不正の侵害があった場合に、他のとるべき手段がない状況でしかも侵害を阻止するに必要な限度において許されるというふうにいろいろの解釈がなっておるわけですけれども、それから見ますと、集団的自衛権というのは必ずしも自国に対する侵害でなくてもいいということになりますと、これは自衛権というものがやはり拡大したというふうにお考えでございますか。いかがでございますか。
  32. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 従来の国際法上の自衛権という概念自国攻撃されたときにそれを排除する権利というふうに理解されておりましたので、その点からすれば拡大されたと考えることもできるかと存じます。  ただ、現在の国連憲章のもとにおきます自衛権というのは、これは個別的自衛権集団的自衛権、この二つから成り立っておりますので、その観点からいたしますと、拡大されたと考えるよりは現在の国際法のもとにおきましては自衛権という概念そのもの個別的自衛権集団的自衛権が含まれているというふうに考える方がいいのではないかと思います。
  33. 河上民雄

    河上委員 集団的自衛権というのは、これは無制限なものなんですか、それとも限定された限界というのがあるのですか。
  34. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 御質問の趣旨を理解したかどうか自信がございませんけれども集団的自衛権行使だといって勝手なことをしていいということではもちろんございませんで、現実にある国家に対して急迫不正の侵害があるという条件がなければならないことは当然でございます。  それから、その集団的自衛権行使する国家現実侵害を受けた国家との間に何の関係もないというようなことでは、これは集団的自衛権行使の要件に合致しないということになります。現実には侵害を受けた国の同意もないのに第三国が集団的自衛権だといって武力行使するというようなことは一般的に認められていないというふうに考えられております。
  35. 河上民雄

    河上委員 国連憲章などを読みますと、またあるいはその成立、憲章が確定するまでの経緯を書いたいろいろなものを読みますと、集団的自衛権というのは中南米諸国からの要求にこたえたものだというふうに言われておりますが、そのかわり国連安保理事会決定が下されるまでの間という条件がついているようなんですけれども集団的自衛権にとってそれが必須の条件だというふうに我々としては考えざるを得ないのですが、条約局長としてはいかがお考えでしょうか。
  36. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) その点は委員のおっしゃるとおりであろうと思います。  ただいまおっしゃいました「安全保障理事会国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」というこの規定は、集団的自衛権のみならず個別的自衛権行使についても付された条件でございます。
  37. 河上民雄

    河上委員 それでは、私どもの記憶にいまだに生々しいのでありますが、朝鮮戦争の際、米軍韓国に対して、南朝鮮に対して直ちに出動したわけですけれども、その後、ちょうどソ連がボイコットして欠席している間に安保理事会を開いて国連としての制裁措置といいますかそれを決議として決定をいたしておりますが、今の国連憲章に当てはめてみますと、当初の米軍行動軍事行動というのはどういうように理解したらよいのか、また決議がなされた後の米軍行動というのはどういうように理解したらよいのか、条約局長としてはどういうようにお考えでしょうか。
  38. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 突然のお尋ねでございますので、もし正確を欠く点がございましたら後日訂正させていただきますけれども、当初の米軍行動韓国政府の要請に基づきまして集団的自衛権行使として行われまして、それが安保理事会に報告されまして、安保理事会国連軍の結成と国連軍の派遣という決定が行われまして、それ以降はその安保理事会決定に基づく国連加盟諸国武力行使という形になったというふうに理解しております。
  39. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、現在三十八度線といいますか、いわゆる休戦ライン、三十八度線というのは正確ではありませんが、休戦ライン南北で交渉する場合に、朝鮮民主主義人民共和国側国連軍と交渉するという形になるわけですし、アメリカ国連軍として交渉しているのではないかと思うのでありますが、そのように朝鮮戦争以来の国際法的な位置づけが現在まで続いているというふうにお考えですか、それとも何かその間に変化があったというふうにお考えでしょうか。
  40. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 申しわけございませんが、その点、私つまびらかにいたしませんので、調べた上で御報告させていただきたいと思います。
  41. 河上民雄

    河上委員 では、ぜひその点お願いいたします。  これは過去のそれこそ四十年前の出来事ではなくて、現在も南北会談を行われる場合あるいは南北統一の話が行われる場合あるいは休戦協定の問題を審議する場合に、だれがテーブルに着くかということをめぐって南北で非常に鋭く対立していることでございますので、そこは日本としても正確に把握しておく必要があると思うのです。  そこで、集団的自衛権について今お話がございましたが、それでは我が国になぜ集団的自衛権がないと考えられますか。明文としてそういう言葉はどうもないわけですけれども、どういうふうにお考えになりますか、その根拠をお願いします。
  42. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) これは我が国憲法解釈の問題でございますので、本来であれば法制局の方から御答弁すべき点でございますけれども我が国憲法の第九条におきまして戦争の放棄という規定を持っております。この解釈といたしまして、我が国自衛権実力行使というものは、自国を防衛するための必要最小限に限られるべきであるという解釈に立っておりまして、その解釈から考えまして、集団的自衛権行使というものは日本を防衛するための必要最小限度実力行使の範囲を超えるという考え方から、集団的自衛権行使は禁止されているというのが政府考え方でございます。
  43. 河上民雄

    河上委員 それでは、いわゆる日米安保条約協議の際に、安保条約前文にある条項は、条約日米双方個別的自衛権集団的自衛権があるということを確認しているわけでございますけれども、この明文だけ見ますると、日本にも集団的自衛権があるかのごとき印象を与えるのですけれども、この点はそのときどういうふうに主張し、また、どういう了解になっておったのか、そしてその了解は現在もちゃんと生きておるのか、いかがでございますか。
  44. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 安保条約前文には「両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛固有権利を有していることを確認し、」という規定がございます。これは、先ほど私が御答弁いたしました、いずれの国も国際法上個別的または集団的自衛権国家固有権利として有しているということをあらわしたものでございまして、国際法の面におきましては、我が国集団的自衛権を有しているということは、これは疑いない事実でございまして、この点を確認しているところでございます。  他方、我が国我が国独自の憲法を持っておりまして、その憲法のもとにおきまして集団的自衛権は禁止されているということになっております。その点は第五条の我が国武力攻撃があったときの規定に反映されておりまして、基本的な考え方といたしまして、我が国に対して武力攻撃があった場合に、米国は集団的自衛権行使をしてこれに共同に対処をする、共通の危険に対処する。我が国集団的自衛権はないわけでございますけれども、この安保条約で約束しておりますのは我が国自身が攻撃を受けたときに米国と共通の危険に対処をする、こういうことでございます。  この第五条の第一文の規定をちょっと読ませていただきますが、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」というふうになっております。ここに「自国憲法上の規定」に従ってという文章が入っておりますのは、ただいま問題になっております、我が国集団的自衛権をみずから憲法において持たないということになっている点、これをアメリカ側も十分理解しまして、その日本憲法上の制約をあらわすという趣旨からこのような規定になったわけでございます。
  45. 河上民雄

    河上委員 第五条では確かにそういうことは書いてございますが、日本解釈アメリカがちゃんと認めたのかどうかですね。つまり、それぞれの自国憲法規定に従ってという方も、個別的、集団的自衛権があるという一般法則を認めたのと同じように、それぞれの国がそれぞれの国の憲法に従って行動するということも極めて一般的にそれを認めたにすぎない場合もあり得ると思うのですね。もし前段がそうであるとするなら、後段もそうである、こういうように解釈できる場合もあるわけですね。  特に、日本憲法の特殊性といいますか、日本憲法戦争放棄をしているという点を十分に念頭に置いてその文面が入った、したがってアメリカ日本立場も十分に認めているというふうに理解するにはもう少し裏づけがないといけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  46. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 我が国憲法集団的自衛権行使を禁止されているということはアメリカも十分理解しておりまして、安保条約を交渉いたしましたときに、その点は米国も十分理解した上でただいま読み上げました文章に合意した次第でございます。  その点の一つの証拠と申しますか、根拠考えられますことといたしましては、米国は韓国とかフィリピンとの間で相互安全保障条約を持っておりますけれども、これらの条約におきます類似の規定におきましては、それぞれ自国憲法上の手続に従って対処するというふうになっておりまして、「憲法上の規定」という言葉が入っておりません。この「憲法上の規定」というのをわざわざ入れましたのは、ここで言っているのはその手続のことだけではなくて「憲法上の規定」、すなわち日本にとりましては集団的自衛権が禁止されているという憲法規定、これを背景として対処するということが合意された結果としてこのような特殊な文章になっているわけでございます。
  47. 河上民雄

    河上委員 大臣、そのように理解してよろしゅうございますか。
  48. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私もそうした場面の話のときには必ず日本憲法上の話を申し上げますし、私が言わない場合でも、例えばこの間のアメリカの国会議員、女性でございますが、シュローダーさんは、日本には憲法上の制約がございますねというところから話が始まるということでございますから、アメリカもその点に関しましては十二分に認識をいたしておる、かように考えております。
  49. 河上民雄

    河上委員 条約局長にまた伺いますけれども日米安保条約の第五条では、先ほど局長も読み上げられたとおりでありますけれども、あそこでは自国の、つまり日本の施政権下の地域に対する急迫した攻撃に対応するということになっておりますが、第六条ではそういう武力攻撃という言葉は入っておりません。そして極東における平和と安全ということで警察行動をにおわしているわけですね。その点では、五条と六条では随分意味が違うと私は思うのであります。つまり、第六条の場合は日本に対する武力攻撃がなくてもいいということになりますね。
  50. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 五条は武力攻撃に対する措置を定めたものでございまして、この規定は、御指摘のとおり、日本国の施政のもとにある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が行われた場合について規定したものでございます。他方、六条の方は、米軍我が国が施設、区域を提供すべきことを定めたものでございまして、ここに書いてございますとおり、日本国の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、米国は日本国において施設及び区域を使用することを許されるというのが六条の中心の規定でございます。したがいまして、御質問に答えたかどうかわかりませんけれども、六条は、武力攻撃がなくてもよいというような趣旨の規定ではございませんで、我が国米軍に施設、区域を提供すべきこと、その場合の目的を定めたものが六条でございます。
  51. 河上民雄

    河上委員 それではもう少しお伺いいたしますが、この前我が党の山口書記長予算委員会質問をいたしまして条約局長からも答弁をいただいたわけですけれども事前協議の問題ですね。  これをここで申しておりますと時間がかかりますので、これはさておきまして、いわゆる口頭了解によりまして、我が国から米軍の戦闘作戦行動が行われる場合には事前協議の義務がアメリカにある。日本から申し出る権利があるかどうかということは一応さておきまして、アメリカ側には義務があるわけですね。事前協議をやった場合は、核についてはもちろんノーしかないとおっしゃるわけですが、それ以外についてはイエスもあり、ノーもあるということですね。それは間違いないですね。
  52. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今国会を通じましても明らかにいたしておりまするとおり、核の場合はノーだ、しからざるときにはイエスもあればノーもある。つまり、アメリカが拘束されておるケースでございますから、したがって、拘束を解きたいのだ、解きたいからアメリカに発議の義務があるのだ。それに対して日本はイエスもあればノーもある、核は絶対ノーである、かように申しております。
  53. 河上民雄

    河上委員 では、条約局長に伺いますが、我が国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設、区域の使用について事前協議が行われる。その際、日本政府がイエスと言った場合、日本政府の法的な地位はどうなるのでございましょうか。つまり、この場合、自衛権との関係においてどういう法的地位になるのでしょうか。
  54. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいまの御質問の趣旨が、そのような仮定の場合において日本がイエスと言った場合、それは日本国の集団的自衛権行使に当たるのではないかという趣旨の御質問であるとすれば、従来から政府が御説明しておりますとおり、自衛権概念というのは実力行使にかかわる概念でございますので、日本国の基地から発進することを日本が同意を与えたということのみをもって日本国が集団的自衛権行使したというふうに考えるのは適当でないと考えられます。
  55. 河上民雄

    河上委員 条約局長にもう一度伺いますが、そうすると、いわゆるお座敷を貸しただけだという解釈になっているのですか。
  56. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) その表現が適当かどうかは別といたしまして、米軍我が国の施設、区域を使用いたしまして我が国以外の地域で武力行使するという場合、これは米国そのものないしは米国と密接な関係にあります国家に対しまして武力行使が行われた場合でございます。すなわち、米国といたしましては、個別的または集団的自衛権行使するという場合に限られるわけでございます。  言葉をかえて言いますれば、米軍行動というのは、国際法上正当化されるような行動でございます。それに対しまして、我が国日米安保条約に基づきまして米軍に提供しております施設、区域から米軍が戦闘作戦行動に出かけていくということに対しまして、これは全くもちろん仮定の問題でございますけれども、諸般の考慮からこれに同意を与えたという場合におきましても、これは我が国集団的自衛権行使しているということには当たらないというふうに考えられる次第でございます。
  57. 河上民雄

    河上委員 かなり無理な説明だと思うのでして、一つの戦闘作戦行動というのは、米軍行動日本の協力とが一体になっているというふうに少なくとも外国は理解すると思うのですけれども、いかがでございますか。  例えば、今アメリカホンジュラスに米兵を派遣いたしまして、ホンジュラスが当然地域、区域なりなんなり便宜を供与していると思うのですけれども、それは集団的自衛権ホンジュラスにとって集団的自衛権に当たらないというふうにお考えですか。
  58. 坂本重太郎

    ○坂本(重)政府委員 お答えいたします。  実は、ホンジュラスに関しましては、ホンジュラスの領土内にコントラの基地があるということは一応認めておりません。  ただいまの安全保障権に関しましては、今般の米軍派兵に当たりまして、ホンジュラス外務省は次のようなことを言っております。  ニカラグアホンジュラスの領土内における軍事活動は侵略行為を構成するので、ホンジュラス大統領は、ホンジュラス・米国間にある安全保障特別関係及び集団安全保障協定に基づき、米国政府に対し、ホンジュラスの主権及び領土保全のため、効果的かつ即時必要な援助を要請した。さらに、ホンジュラス外務省ニカラグア政府に対し、国際連合憲章第五十一条に基づき、必要な防衛権を行使する旨述べております。これがただいまの御質問に即、答えておるかどうかわかりませんけれども、事実関係として私から御説明させていただきます。
  59. 河上民雄

    河上委員 では、一言でいいのですが、条約局長、今の経緯から考えて、ホンジュラスにとっては集団的自衛権発動というふうに理解するのか、そうでないというふうに理解されますか、あくまで国際法上の問題として。
  60. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま中南米局長から御答弁申し上げたことを前提としてお答えいたしますが、ホンジュラス自国の領土が侵害されたというふうに考えていて、それに対して何らかの実力行使をしたとすれば、それは個別的自衛権行使に当たると考えられます。
  61. 河上民雄

    河上委員 今の一番最後の質問が実は今後非常に重要なわけでございますので、今の御答弁では甚だ十分ではないと思いますので、また後ほど機会を改めて質問をさせていただきたいと思います。  いずれにせよ、大臣にも先ほども申し上げましたように、自衛権解釈というのは知らず知らずのうちに膨らんでいって、そして非常に不幸な結果になったケースが幾つもあるわけでして、そういう意味で、今我々が行っております国会の質疑応答というのも、単に現時点のただ第何回国会における論議というのではなくて、私どもの先輩が長年にわたって論議をいたしてまいりましたし、またさらにその先輩が戦前、戦中、戦後苦しんだ問題でございますだけに、これはその都度アメリカからの要請にこたえて解釈を拡大するということのないようにぜひ強くお願いをいたしたいと思います。  きょうは時間の関係もありますので、もう一つ伺いたいので、自衛権の問題はこの程度にして、また後日に質問を留保させていただきたいと思います。  最近、大臣も御承知のとおり、日本の経済の伸展、また各分野における国際化に伴い、特に中曽根前内閣のときに留学生十万人受け入れ政策などの表明がありましてから、恐らくそれが背景になっているのだろうと思いますけれども日本で勉学あるいは技術の習得をしたいという外国人が非常に増加の一途をたどっているわけでございます。大学への留学の前段階として日本語教育機関、特に民間の日本語学校へ外国人が入学をしたいということで来日するケースが急にふえているのでありますが、そうした半面いろいろな問題も既に起きております。  最近の例でございますけれども、中国人の留学生、女性の方でありますが、その方が死亡されまして、その肉親の方が彼女の遺骨を引き取りに中国から来られたところ、既にその女性が亡くなったときにでありますけれども、彼女の身元引受人がどこにいるかわからないというような状況でございまして、その肉親の方が遺骨を引き取りに来られたときにもその点で大変当惑をされ、ようやくわかりました身元引受人はその中国人留学生とは全く面識がない。どうも身元引受人を探してくるそういう人が存在するということで、はしなくも中国人留学生に関する身元引受人制度の実態というものが浮き彫りにされたわけでございますが、外務大臣、こうした事件につきましてどういうふうにお考えになりますか。
  62. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今おっしゃった一つの例は大変遺憾なことでございますし、そのほかにも円高・ドル安の影響によって餓死したという留学生もおられたということを聞きまして、私たちは心を痛めております。したがいまして、何とかそういうことのないように努力したいと思っております。  保証人という問題に関しましては私も聞いたことがございますが、留学生に対してはある程度保証人は整っておるらしゅうございますが、今御指摘の日本語学校等々各種学校へのあれは留学生と言わずに、就学生というふうに区別しているわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうような不幸に対しましては、これを未然に防ぐあらゆる方途を講じなくてはならない、かように考えております。  もし、なお詳細なことが必要ならば、政府委員が来ておりますので、政府委員から説明をさせたいと思います。
  63. 河上民雄

    河上委員 今大臣からも非常に遺憾であるという御答弁があったわけでございますが、心を痛めるだけではなくて、早急に今後どうしたらいいかということが問題になると思うのであります。  伝えられるところによりますと、なかなか身元引受人がおらぬ、そこで日本語学校が仲介人になって名前だけ借りてくる、ついては一人五万円の保証金を取っているというような話も伝わっておりまして、しかも、それが名義上の身元引受人には何ら渡っておらない。したがって、突然病気だ何だというときに身元引受人に照会がありますと、青天のへきれきという形になるというようなことがございます。こうした制度というものは一日も早く改善するなり、趣旨が正しければその趣旨を貫徹するように何か手を打つべきではないかと思うのであります。  幾つかのことをちょっと伺いたいと思うのでありますが、あるいは中国だけじゃないかもしれませんが、まず中国だけ身元引受人を必要としているのはどういうわけですか、また、今後それを改善される意思がおありか、あるいは現行のまま何か手を打つというようにお考えでしょうか。
  64. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 お答え申し上げます。  今委員御指摘の身元引受人でございますが、これは、日本に留学する目的を持って来る者の査証申請に当たりましては、国費留学生を除きすべて一般的に身元保証人が必要だという制度になっております。これは中国人に限ったことではございませんで、すべてそういう制度をとっているわけでございますが、我が国に勉学のために来るというその目的を全うするためにもやはり適切な助言や支援が必要ということから、この制度が必要であると考えているわけでございます。  ただ、今委員御指摘のようなケースがあるということは、特に中国人の就学生につきましてなかなか身元保証人を見つけることが難しいということがあって不幸なケースがあるということは私どもも聞いておりまして、大臣が申し上げましたように、私ども対応に大変苦慮しているところでございます。外務省といたしましても、従来から関係者に注意を喚起したりあるいは関係省庁と御相談しながらどういう対応が可能か検討しているところでございます。
  65. 河上民雄

    河上委員 日本語学校というのが問題になってきたのでありますが、これは去年だけで百校新設されたというふうに聞いておるのです。今大臣は外国人留学生と就学生とを分けておっしゃっておりましたが、特に外国人就学生が急増するにつれてそういう日本語学校が必要になってきているのかもしれませんけれども、この日本語学校というのは外国人就学者にとっては日本への最初のドア、門でありまして、ここで受けた印象というのが日本に対する印象の八割方をつくってしまうのではないかと思うのです。  ところが、日本語学校というのがどういう状態になっているか、文部省なり外務省はどういうふうに承知しておられますか。聞くところによりますと、法務省が若干実態をチェックしているというふうに聞いておるのですが、実際はいかがでございますか。
  66. 大久保基

    ○大久保説明員 お答えいたします。  私ども法務省入国管理局の所管事務といたしましては、外国人の受け入れということでございます。したがいまして、外国人の就学生につきましては、外国人の就学先として適当かどうか、そういう観点から審査をしているわけでございます。  先生御指摘のとおり、こと数年、日本日本語またはコンピューターその他の技術を学ぼうとする人が非常にふえてきておりまして、これに対しまして、昭和五十九年十月から今までよりも簡素化されました制度でもってこれらの外国人の就学生を受け入れることにしております。  現在、先ほど申しましたような観点からいたしまして、私どもが外国人の受け入れ機関として適当と思われる学校といたしましては大体二百五十校ぐらいと見ております。ただ、先生も御指摘のとおり、これ以外にも非常にたくさんの学校があるようでございまして、それについては私どもは必ずしも実態を把握しておりません。
  67. 河上民雄

    河上委員 そうすると、文部省や外務省はどういうふうにチェックしておられますか。
  68. 砂子田忠孝

    ○砂子田説明員 お答え申し上げます。  日本語学校は設置形態が多種多様にわたっておりまして、ちょっと数字は古うございますが四百三十七、文化庁の方で六十一年十月一日現在で調べた数字でございます。そのうち、大学、短大、そういった高等教育機関の日本語教育機関あるいは日本語学校と言われているところが二百三十三、それから専修学校、各種学校の数が五十一、それからそのほかに株式会社とか財団、社団あるいは個人立、そういったところが百五十三ございます。総計四百三十七ございます。この数字はちょっと古うございまして、先ほど先生御指摘の、昨年にどれだけの数ができたかということは現在文化庁において調査中でございまして、間もなくその数字が来るのではないかと思っております。  そのように、先ほど申し上げました大学等あるいは専修学校や各種学校となっていない株式会社、そういったその他の日本語学校におきまして、先生御指摘のような例があるやに新聞等において聞いておりますが、こうした問題は基本的には入国管理にかかわる問題と存じますが、文部省におきましては、日本語教育の振興の立場から、日本語教員養成学科等の増設、それから日本語教授法、教材の開発、日本語教育研究協議会の開催、日本語教育能力検定試験の実施など外国人に対する日本語教育の水準を向上させるための施策を進めているところでございます。  文部省は日本語教育の振興という観点から、法務省の方は入国管理という観点から日本語学校に関与しておるわけでございますが、文部省といたしましては法務省との連携を密にしつつ日本語教育の一層の推進を図ってまいりたい、このように考えております。
  69. 河上民雄

    河上委員 今大臣聞いておられてお感じだったと思うのですが、留学生ないしは就学生につきまして所管事務という形で法務省、文部省、外務省、それぞれ分かれておりまして、例えば日本語学校の管轄でも全部オーバーラップしているところはありますけれども、手が回らないところはたくさんあるという状況であります。  イギリスの場合は、戦後ブリティッシュカウンシルという形で統一的に留学生の問題を扱う場をつくったりしておるのですけれども、少なくとも、三省の間でばらばらにやるのではなくて、いやここまではうちの省の責任だけれどもその先は知らないという形でなく、統一的に留学生の問題あるいは就学生の問題を取り扱うような責任のある場所というもの、しかも、イギリスの場合は一応政府から独立した形で時の政府政策に左右されないような機関としてつくったわけですけれども、何かそういうものが必要だと私も考えるのですが、大臣、いかがでございますか。今のお話を聞いておられてどういうふうにお感じでございますか。
  70. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 御指摘のとおり、私も何か政府で一本化した政策並びに対策、そうしたものが必要だと痛感いたしております。この間からずっと衆参両院におきまして留学生問題、与野党とも非常に関心を持っていろいろと議論を賜っております。特に先ほど申されましたとおり、二十一世紀初頭には十万人ということをひとつ実現しよう、九〇年代の初頭には五万人をひとつ実現しよう、それにおいてなおかつまだEC諸国あるいは米国に劣るというような状態であることを考えますと、どういたしましても、まず留学生会館をどうするのだ、住むところをどうするのだ、食うことをどうするのだということから考えていかなければなりません。  したがいまして、留学そのものは文部省の第一義的な所管であるかもしれませんが、今おっしゃるような各種学校あるいは株式会社の日本語学校等々のことを考えますと、やはりまとめていかなければならない、かように思っておりますので、実は先般、外務省において、とりあえず外務省からそういういろいろな問題を検討せよという指示を幹部会に出したところでございます。  ある程度の案がまとまりましたならば、やはり文部大臣、さらには法務大臣、住居等に関しましては建設大臣、そうしたところのトップ会談も必要であろう、私はかように考えております。
  71. 河上民雄

    河上委員 今大臣から文字どおり前向きな御答弁をいただきまして、ひとつそれはぜひ早急にやっていただきたいと思います。できれば、中国だけではございませんけれども、竹下総理の訪中前にそういうものはできていた方がいいのではないかと思うのでありますが、よろしくお願いしたいと思います。  領事移住部長さんがお見えですが、私が聞いたところによりますと、日本語学校という例を出していいかわかりませんが、例えば国立日本語学校なんというのがございます。そうすると、中国では国立の日本語学校だと思って、これは絶対信用できる、こんなふうに思って来てみますと、これは民間の日本語学校であるというような例もあります。これはたまたま名前がそうであったからかもしれませんし、あるいはそれをある程度見込んで命名したのかもしれませんが、よくわかりませんけれども、そういうケースもあるわけですね。  今、日本語学校として大体何校ぐらいは信頼できるというようなお話も法務省の方からありましたけれども、こういうことはどうなんですか、例えば各国における領事館、大使館である程度広報活動をするというようなことも、悲劇を避ける意味で重要なのではないかと思うのです。また、アメリカ留学の場合にはTOEFLというような語学テストの統一的なテストもあるわけですけれども日本語にはそういうものはございませんで、各自の流儀でやっておりますが、こういうものも早くつくる必要があるのではないかというふうに私は思うわけです。  そういう点についてぜひ伺いたいと思いますし、また円高対策、それから医療保障の問題とか非常にたくさんのことがございます。既に自治体では、数は少ないけれども、円高対策で補助金を出すというようなところが幾つか出ておりますけれども、まだ国では、国費留学生の場合はいろいろ配慮があると思いますが、私費留学生の場合は必ずしもそうでございませんので、こういう点につきましてもぜひ御一考いただきたいと思うのでありますが、領事移住部長さんから、その点、外務省の意見としてぜひ伺いたい。
  72. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 今委員御指摘の広報の必要でございますが、私どももそれは十分念頭にございまして、先ほどちょっと文部省からも御説明があったかと思いますけれども、信頼できる学校、適格校リストと申しますか、そういうものは在外公館にも配付いたしまして、周知徹底を図るように努力しているところでございます。
  73. 田島高志

    ○田島説明員 ただいま委員質問の情報の提供の点でございますが、留学前の情報提供は、外務省、在外公館を通じましていろいろな照会がございますので、資料を送ったりしまして鋭意その拡充に努力いたしております。今後もさらに努力を強めてまいりたいと思っております。  それから、日本語の能力のテストにつきましては、能力向上に資するために日本語能力試験を在外で行っております。これは国際交流基金の事業として行っておりますが、現在二十カ国四十都市で行っておりますが、受験者数が二万一千二百四十人という数字が昨年の数字でございます。     〔浜野委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 河上民雄

    河上委員 もう時間が余りございませんので、最後にちょっと大臣に伺いたいのでありますが、最近、中国の留学生ないしは就学生の数が非常にふえてまいりまして、この質問に先立ちましていただきました政府からの資料でも、中国の留学生の比重が昨今外国人の留学生の中で一位になったというようなことも聞いておるのでありますが、私はそういう情報に接しますと、どうしても歴史における留学生の問題ということに思い至らざるを得ないわけでございます。  特に日清戦争の直後、中国からの留学生が日本に殺到してまいりましたが、その人たち日本で非常に不愉快な思いをして、中には抗議の自殺をしたというような留学生もおるわけでございます。そして、基本的には日本というものに親近感を感じてはいたのでありましょうけれども、反日的な運動あるいは考え方というものを持って帰国をしたというケースが非常に多いわけでございます。例はいいかどうか知りませんが、周恩来首相も日本で若き日に学んでおられるわけでして、その後帰国してからパリへ留学したというようなお話も聞いておるわけであります。今再び中国人の留学生ないしは就学生が日本へ来る外国人の留学生の中で第一位になったというニュースを聞きますときに、再び同じ過ちをしてはならないということを非常に強く感ずるわけでございます。  もちろん中国だけではありません。東南アジア、その他アジア諸国すべて同じことでありますけれども、例えば東南アジアなどでよく聞きますことは、留学生が帰国いたしましてから東南アジアに進出する日本企業に勤めたくても、あるいは勤めても、その間に非常な対立感情が根強くあるとか、そういう話も嫌というほど聞くわけですね。どうも戦前の苦い経験というのがちっとも生きていないという気がするのでありますが、ぜひこういう点も、ただとりあえずの応急措置を講ずるというだけではなく、留学生問題というものをどう扱うかということをひとつ性根を据えて考えていただきたいと思います。  十万人計画というのが出ましたときに、これはシンガポールの特派員で陸さんという万が言われたのですが、これは非常に結構なことである。しかし国費留学生が一万人ちょっとでございますので、あとは私費留学生である。しかし、もし仮に十万人全部国費留学生でも日本に本当に喜んでそれだけの人が来るだろうかという感想を述べておられます。そういうことをいろいろ考えますときに、ぜひ最後に大臣からこの問題についてお考えを示していただきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  75. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 この間、総理と一緒にASEANでフィリピンへ行きまして、そして一通り行事を終わった後に、かつての日本留学生が集まって感謝の会をやってくれました。こういうふうなことならいいなと私は実は思ったことがございますが、中には留学したためにかえって反日になったという人たちもいるということは今河上委員御指摘のとおりだろうと思います。したがいまして、こちらにおられるときにも、帰られましたときにも、外務省といたしましてはやはり大切に扱わなくてはなりませんから、現在は留学生の同窓会等々に関しましても助成をし、さらにはまたもう一度日本へ来ていただくというような措置を講じておるような次第でございます。  特に中国の方は周恩来先生を初め作家の魯迅、こうした方々も日本に留学をされた体験がございます。そうしたこともいろんな記録によって残されております。  私は十何年前に、ある中国の方が次のような詩をある雑誌に載せておられたのを読みました。河上委員も御承知だろうと思いますが、   山高からず  水深からず   花は香らず  鳥鳴かず   男に義なく  女に情なし これが今日の日本である、こういうふうに書いてありまして、本当に慄然としたものでございます。  戦前には、きょうは試験だから卵一個をサービスするよ、精をつけて頑張りなさいという日本人がいたという思い出を持っている人がいますが、最近では卵一つ、はい、何ぼと言って、すぐに現金に全部計算してしまう。恐らくそういうことをかつての留学生が今日の日本に当てはめた、三言ではございますが一つの詩ではなかろうか。私はこれを読んだときに、本当に今申しましたとおり慄然といたしまして、こういう問題は常にあらゆるところで、例えば講演、演説に用いて、もっと外国に対する思いやりというものを日本は持たなくちゃだめだぞということを申し上げておるような次第でございます。  したがいまして、留学生がかえって日本を侮べつし、さらには日本の敵となるというようなことがあっては大変でございますので、十万人の敵をつくっちゃいけません。十万人は必ず日本をよく理解をしていただく方々を私たちは歓迎したい、こういうことで全力を挙げていかなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  76. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 渡部一郎君。
  77. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 河上先生が留学生問題について御質疑でございますので、私もそれにつけ加えておきたいと存じます。  私は神戸市の出身でございますが、大量の留学生を抱えている地帯に住んでいるわけであります。おられる国籍の方々もおよそ百に近いほどの方がおられますし、外国人を振り返って見るなどという差別的な雰囲気のない町に住んでおりますため、比較的留学生問題は穏当に推移していたと思っていたわけでございますが、最近に至りまして、留学生の中で食事ができないとか家が不足しているとかという基本的問題で新聞にも報道されるようになりましたので、私どもも点検してみたところが、非常にまずい状況になっておる。今大臣は認識を同じくされておられる御様子なので、施策が大事だと思っているわけでありますが、十万人の留学生がおると十万人の反日感情所有者が国へ帰っていくという状況になりかねない状況にある。  その深刻な状況はどこに起因するかといいますと、まず第一は適切な住宅が与えられない。神戸の場合は、神戸市の所有する住宅を約一年ないし二年の間だけ提供しているというやり方をしているわけでございますが、全国的にはこうしたやり方をとっている市町村というのは非常に少のうございますし、特に東京における留学生の居住環境というのは劣悪を通り超しておる。この状況は甚だよくないと思っておるわけであります。したがって、住宅を与えなければならない。  その次にまずいのが食事なのであります。日本の食生活というものは留学生にとってはかなり差がありまして、自国の食事のやり方と日本の食事のやり方とに大きな差があります。日本人は理解しておりませんが、牛の肉を食えないとか豚の肉を食えないとか、あるいはある特定の宗派の僧侶が殺した肉でなければそれを食べないとかという食物上の禁忌を持っている留学生もたくさんあるわけでございますが、それを悪いというわけにはいかぬわけでありまして、こうしたものに対して日本側が非常に無理解で接触をいきなりする。これも非常に大きな問題が生じてきておる。住宅、食い物、こうくるわけですね。  三番目にすごくぐあいが悪いのは、本国からのお金の送金事情が、ここ数年にわたって円高の状況で非常に振れている状況があるため、概してアルバイトをしなければならぬという状況にあるわけであります。ところが、外国留学生のアルバイトが、アルバイト主体で勉強しないで、日本へ留学するのだと称して踏み込んできていかがわしい場所で勤めるというような人たちも現にいるわけでありますし、それとまじめな学生とを分離する方法がない。  特に留学生に対する就職サービスをやるところがない。日本側としても勉強するビザを持って日本に入国しながら相当働くなどということは何事だ、こうなるわけでございますから、公的機関でこれは就職サービスをできない。したがって、居住、それから食物、それからアルバイト、このお世話をする機関が、民間、公営その他構いませんけれども、適切でないと非常にぐあいが悪いことになっておる。  留学生たちは今我慢して頑張っているわけでありますし、明治維新の志士のような将来を見込んで苦難を物ともせず頑張っているたくさんの優秀な青年たちが相当部分いるわけでありますから、これに対してこの状況を見過ごしにしておくというのは日本国としてまずい状況である。ところが、費用を十万円渡してあるからいいではないかとか、私費留学生は自分で勝手に来ているのだという理論では通じない面があるのではないか。したがって、我が国として何かしなければならない。  それから、ボランティア組織を適当なメリットを与えることによって活性化させなければならぬという状況にあるわけであります。  公明党として、実は矢野絢也委員長を本部長にしまして留学生のための緊急街頭募金というものをこの間からやっているわけでございますが、やればやるほど問題が出てくる。小さな募金運動ではもうとても対応できないという状況になり始めているわけであります。これは制度的な対応を必要とするからだ。個人的な善意の段階ではないなという感じがしているわけであります。したがって、ぜひとも何らかの対応をお願いしたい。  これは政府のテーマとして取り上げていただく重大テーマではないか。ほかの委員会で申し上げることも個々ばらばらにはできるわけでございますが、長期的にわたる日本の平和友好外交の基軸としてこれを提起していただくのは外務大臣にお願いするのが一番いいかな、こう思いまして私からもぜひお願いしたいと思うのでございまして、全面的なこの問題に対する取り組み、そして検討をぜひお願いしたい、こう思っているわけでございますが、いかがでございましょうか。
  78. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 適切な御指摘を賜りましてありがとうございます。私もよく言うのですが、私は滋賀県の小さな町ですが、人口五万でございます。一九九〇年初頭にこれだけの人が来るのだよ、受け入れるのだよ、そして二十一世紀になれば倍になるのだよ、こう思ったら早急にしなければなりません。  したがいまして、先ほど関係各省の名を挙げさせていただきましたが、大蔵当局の格段の理解を得ることも必要だろうと思います。なおかつ外務省自体といたしましても、ODA、そうした問題とこの問題はどうなるのだという新しい観点の検討も必要ではないか、かように思っておりますから、いずれにいたしましても、検討検討と言わずに、具体的に、先ほど河上さんにお答えいたしましたように早速着手すべきである、私はこう考えております。
  79. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私が日中国交正常化の前提で中国へ訪問しましたときに、中国側の担当者がおもしろいことを言っていたのを最後につけ加えておきたいと思います。  この人たちは、中国から留学生を我々は山ほどソビエトへ出しておると言いまして、その人たちは中国へ帰ってきて親ソ主義者となって新中国の建設に対して妨害をするのではないかということがある時期非常に心配な時期があったと言うのです。ところが、ソビエトの一番悪いことを知っているのはこの人たちだった。ソビエトに留学した者は何と一番の反ソ主義者というか、ソビエトを批判する人々となった。また同じようなことがどうなっているかと思って調べてみたら、アメリカへ留学した者はアメリカに対する厳しい批判者だった。そして日本への留学生は、日本のやり方に対する最大の批判者になっておった。要するに和魂洋才みたいなことを言っておられるわけでございますが、留学した人たちはその国を愛さない場合があるというのであります。  それで、中国が留学生を大量に受け入れようという方針をつくる直前でございましたけれども、こういうことがないように留学生に対して特段のサービスをすることは国家の基本方針でなければならない、そうしないと将来の外交財産をことごとく失い、平和友好外交を幾ら口で叫んでも大きなマイナスを受けるばかりであると中国の外交官たちは言っておったわけであります。  私は門戸を開く前の中国がこれだけの見識を持っておったということはすばらしいことであったと思います。これは我が国において同様に理解しなければいけないことである。我々は門戸を開いておると思っておりますし、留学生は日本の社会に来て同じように楽しくやっている、こう思っているわけだし、特別いじめていると思ってないわけであります。ところが、踏み込んでみると、なかなかやりにくいという状況にさらしてしまうというのはいかに何でもよろしくない。  日本からの留学生でその地域をめちゃめちゃに褒めている留学生の一団があるのは御存じだと思います。それはフランスなのであります。大正期のフランスは、世界各国からほんの少数でありますが、留学生を迎え、その留学生におよそ三倍から五倍という高いレベルの生活水準を保障し、一流の文化に接触させた有名な歴史的事実があるわけでございまして、お調べいただければすぐわかると思います。川口篤とか辰野隆とか、日本一級のフランス文学のリーダーたちが誕生したのはその時期であります。この人たちは、フランスはすべてすばらしくて、そして大正時代日本の文学をリードし、新劇をリードし、絵画をリードし、音楽をリードしました。派遣されたのは毎年十名程度でありますが、この人たちに対する扱いのすばらしさというものは今日もなおかつ語り伝えられております。  私は人数を今急激にふやしていくことも大事でありますけれども、その質的レベルをうんと上げていくというのは留学生政策にとって非常に必要ではないか。このフランスの例なども考えるべきことがあるのではないか。もっとも、当時の日本の経済事情等もございましたから、特別フランスがすばらしく見えたこともそれはあるのでしょうけれども、また為替レートの問題なんかもございましたから、それも外的要因として加わったと思いますけれども、ある種の配慮というものは、特定の配慮は急がねばならない。  この立て直しは、日本人の感覚の中の平等感覚の中に入れてしまってこっちも学生なら向こうも学生だ、外国人だけをサービスするのは間違いよという感覚ではなくて、やるべき必要があるのではないか。ちょうどお芝居やお能で鉢木というのがございますね。お客をサービスするために、多年にわたって持っていた梅の木をちょん切ってそれをたいてサービスしたというあの日本人のお客に対する気持ち、そのお能であらわされている鉢木式のセンスこそ今留学生問題で大事なのではないか、こんなことまで思うわけでこざいまして、どうぞよろしく緊急にやっていただきたいと思うわけでございます。
  80. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど来申しておりますとおり、緊急に具体策をこしらえていきたい、かように考えております。
  81. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、私は予算委員会におきまして御質問申し上げようと思ったわけでございますが、旅券の問題について触れたいと存じております。  旅券の問題につきまして、実は私は昭和五十四年の十二月十四日、外務委員会において質問いたしたことがあるわけでございます。といいますのは、旅券が大量に発給される状況にございましたし、その旅券の状況を見ておりますと、日本の旅券が在外地において大量に売却されておる、偽造されておる、偽造工場があるというような状況を迎えているのがわかったわけであります。  どれぐらいの代価で売却されているかは、当時の私のうろ覚えで明快ございませんが、当時もう一万円を超しておったと思います。日本のパスポートというのは高く売れるものだなと言っておった人たちとぶつかった思い出があるわけであります。ところが、この旅券の数が、発給件数がふえてくるという状況を迎えますと、どうしても今の旅券というのは古いシステムで、それで、この旅券制度でいいのかということが検討されなければならないと思うわけであります。  現在の状況を今からお尋ねするわけでありますが、私の知っているところでは、どうやら千二百万というような日本国民の十分の一に当たるような膨大な旅券がつくられているそうでございますし、その旅券を見て空港でチェックするチェック機能が日に日にだめになっております。  人間の物事に対する注視能力というのは、この間ビール瓶の中身を検査する工場を見て笑っておったのでありますが、余りたくさんビールが通りますと、中が濁っているのか、ごみが入っているのか、しまいにはわからなくなるそうでありまして、あるレベルがある。そのビール工場の方では何個に一個なら発見できるかというのをチェックしておりまして、スピードアップを余りしますと、目で検査するというのはこれはだめになってくるということを言っておりました。  同じことが旅券担当の方にも言えるようでございまして、旅券を持ってくる人の顔をぱっとにらんで、旅券をぱっとあげて、ぱんぱんと判こを押して、もう一にらみしてぱっと渡すというのが一体旅券制度を有効に運用していることなのかという素人的な疑問にとらわれるわけであります。だから、旅券発給数が多過ぎてきた。  それから偽造が極めてたやすい。特に典型的な例では、日本の今の旅券は、ほかの二つの旅券を持ってきまして中とじのひもを引っぱがして入れかえるというやり方で十分にごまかすことが可能であります。これはもう日本が紙幣印刷技術の最高度を発揮されて印刷されているのはわかりますけれども、中抜きといいまして真ん中を抜いて偽造するのに一番易しい旅券と言われて、世界の偽造業界で愛好されているのが日本旅券なんだそうでございます。  この愛好されている中抜きを妨害するためにはどうしなければならないか。パンチで穴をあげてしまって上から下までみんな穴をあげてしまうか、あるいは中の方も数字を同じく印刷するかなのであります。ところが、当時私がその問題を丁寧に御質問したのでありますが、印刷局に払うお金がかかるというような低次元のお答えでございまして、それをボイコットされたわけでございます。ところが、そのときの御様子と全く状況が変わっておるわけでございます。  一九六八年の五月、ICAOにおいてカードパスポートに対する、つまりマシン・リーディング・パスポートですね、MRPに関して協議が行われ、その方向が決められたのだそうでございます。つまり、私の質問の十一年前、既にICAOにおいてその議論が始まっておったわけでありますが、我が国はその席上には正式なメンバーとしては参加していなかった。ただ、その状況を十分踏んまえて観察をしてこられた。ところが、最近に至りまして、そのMRP、機械読み取り旅券についてどうやら協議が成立された御様子に承っておるわけであります。  私の言いたいことは、もう今全部ひっくるめて一発で申し上げましたが、要するに私の言いたいことは、そういう中抜き旅券の偽造旅券が発生しやすい日本の旅券というものは、我が国の安全にとって感心しない。  それから、旅券がある程度以上多過ぎて機械読み取りの方向へ行かなければ、日本の旅券をチェックする機能は今や形骸化しておる。ただ風に当てているにすぎない。そういうことを言うと御担当者を非常に怒らせるかもしれませんけれども、それでもなおかつ頑張っておられるその御努力に敬意を表するとしても、この機械読み取りの方向でないと対応できない。そして、今千二百万の旅券を持っておる人々が将来さらに二千万になり三千万になることはもう目に見えておる、空港機能も阻害するようになるという状況でありますから、我が国として早急の対策が要るのではないかと私は思っているわけであります。  さて、私がここまで申しましたので、今の旅券の発給状況はどうなっているのか、MRPについて前進する意図がおありなのか否か、そして今後もパスポートの偽造に対して何らかの対策を立てられるや否や、その三点について固めてお答えをいただきたいと存じます。
  82. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 詳細は政府委員から話していただきますが、我々といたしましては、今おっしゃるような指摘、こうしたことがあることは十分認識いたしておりまして、その対策を急いでおります。  ただ、余りあの手この手といいますと、また偽造趣味の方々がそういうことかということになるといけませんので、非常にデリケートな問題でございますが、渡部委員の御趣旨は十分政府といたしましても尊重しなければならぬ、かように思っております。
  83. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 委員御指摘のとおり、昭和五十四年に大変有益な御示唆、御提言をいただきましたことを私ども大変感謝いたしておりまして、いろいろ検討しているところでございます。  まず、先生御指摘の旅券の発給数でございますけれども、ここ数年飛躍的に増加しておることは御指摘のとおりでございまして、特に、昭和六十二年における新規発給は対前年比二四%増という伸びでこぎいまして、発給件数も初めて三百万を超して三百三十万件となっております。また、同年における再発給も対前年比二七%増の一万五千件となっております。これに伴いまして、当然のことながら事務量も大変にふえているところでございます。  それから、今大臣も御答弁ございましたように、新しい旅券導入につきましても目下鋭意検討中でございまして、その間、先生から御指摘のあったいろいろな点も含めて私ども検討しているところでございます。  もしお時間をいただけるようでございましたら、先生御指摘の点について私どもの検討結果を御報告させていただきたいと思います。  たくさんございますけれども、まず、先ほども御指摘ございましたように、日本の旅券は各ページが一枚ずつはがれる仕掛けであって、何らかの形で所持者を明らかにするような印刷あるいは刻印等を押すということが当然検討されるべきであるという点でございますが、まず私ども、昭和五十三年に旅券を新しいものに切りかえたわけでございますけれども、その際、地紋印刷技術を高度にするとともにつづり糸も強化いたしております。また、旅券冊子の各ページも同じものではございません。詳細は先ほど大臣が申し上げたような点もございまして答弁を差し控えさせていただきますけれども、今後ともこの辺を踏まえて改善を図っていきたいと考えております。  それから、五十四年に指摘された第二の点でございますけれども、一次旅券については帰国の際に表紙に穴をあげてボイドすることが必要ではないかという御指摘、もっともでございますが、現在のところは確実にすべての失効旅券を制度的にボイドにする仕組みは残念ながらございませんが、失効旅券の返納につきましては周知徹底するように各都道府県の窓口にて指導しているわけでございます。当然のことながら返納された旅券についてはボイドにする措置がとられております。  第三番目でございますが、旅券法に当時は身元確認の書類を提示あるいは提出と書いてあって大変紛らわしいというお話がございましたのですけれども、これにつきましても提示を求めるだけで済むものと提出を求めるものをはっきり示して通達で指導してございます。その結果、今日では運転免許証、健康保険証は提示すればよいことになっているわけでございます。  それから第四番目の点でございますが、数次旅券面において北朝鮮のみ渡航できないと表示されているけれども、これは北朝鮮へ渡航する旅行者に対して保護をアボイドするような表示であって、これはやめるべきではないかという御指摘でございました。これにつきましては、北朝鮮への旅行者に対する保護をアボイドすることが趣旨ではございませんで、我が国が北朝鮮とは正式国交がないことにかんがみ、渡航者保護の観点からその渡航目的、日程等を事前に承知しておく必要があるということでございまして、北朝鮮への渡航者については事前に渡航趣意書というものを提出させた上で北朝鮮を渡航先とする一往復用旅券を発給しているという状況でございます。
  84. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それからまた御検討いただいていることの中に旅券の期限が一年、三年、五年、十年というふうに小刻みになっているわけでございますが、こうした問題についての御検討は、重ねてでございますが、どんなところになっておりますでしょうか。
  85. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 今御指摘の点につきましても総合的な旅券を改正する観点から検討いたしております。
  86. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それから、アメリカとの間で旅行者が大量に両方で行き来する時代になり始めておりまして、米国政府はイギリス政府との間でビザなしでお互いに入れ合うという協定ができたように伺っておるわけでございまして、大変結構なことだと思うわけでございます。アメリカは近く日本に対してそれをやるというような情報を前に聞いたことがございますが、現在、その進行状況はどうなっておりますでしょうか。日本としては、ビザなしでお互いに入れ合う面は少し拡大していく方向であっていいのではないかと我が国としての立場を持っているわけでございますが、いかがでしょうか。
  87. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 ただいま御指摘の米国との間の査証免除のための取り決めでございますが、二月末に米国側から我が方に対しても正式に申し入れがございました。これはアメリカにとっては初めて査証免除を検討するということで、一応パイロットプログラムということで我が国と英国を対象にして検討したいということだと承知いたしております。  私どもも、当然のことながら、米国への渡航者というのは非常に数が多いわけで、人的交流を促進するという観点、また先生御指摘のような事務の迅速化の観点からも基本的に非常に望ましいということで、目下技術的な観点から関係省とも御相談をしながら検討を進めているところでございます。
  88. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大変画期的な御答弁をいろいろいただきましてありがたく存じておるわけでございます。ますますよろしくお願いしたいと思います。  次は、外国、特に国連を中心にして職員との懇談等の際にも出てきたテーマでございますが、医療保険並びに年金制度の取り扱いにつきましてまとめてお尋ねをしたいと存じます。といいますのは、本日の質問に対して外国における日本人あるいは外国の方で日本におられる方から数度にわたる問い合わせがございまして、質問の方もお答えの方もまとめていただきました次第がございます。  私の質問は、まず医療保険についてであります。  外国に長期滞在している日本人に対する日本政府による医療保険はどうなっているかという問題でございます。また次に、日本に長期滞在している外国人に対する日本政府の医療保険というものはどうなっているか、この二問につき、まずお答えをいただきたいと存じます。
  89. 澤村宏

    ○澤村説明員 外国に長期滞在する日本人に対します医療保険につきましては、日本国内の事業所から給与の支払いが行われており、また人事管理が国内の事業所により行われている等日本国内の事業所との雇用関係が継続しているような場合には、引き続き健康保険制度が適用になります。こうした者以外につきましては日本の医療保険制度の適用はありませんが、現地に医療保険制度があればその適用を受けることができると考えられます。  なお、日本の健康保険法が適用になっております者につきましては、外国滞在中に外国で受けた医療につきましても療養費の支給が行われることとなっております。  こうした在外の日本人の健康保険制度についての相談につきましては、事業主を通じまして管轄の社会保険事務所や健康保険組合で扱うこととなっております。  次に、日本に長期滞在する外国人に対する医療保険につきましては、給与の支払い、人事管理などの点から見まして日本の企業に雇用されている被用者につきましては国籍を問わずすべて健康保険など被用者保険の適用を受けることとなります。  また、自営業者等を対象といたします国民健康保険におきましても、昭和六十一年四月から、例えば旅行者などの短期滞在者を除きまして、原則といたしまして出入国管理及び難民認定法の規定によりまして一年以上の在留資格を認められている外国人につきましてはすべて適用対象となっております。  なお、こうした場合の健康保険制度についての相談につきましては、事業主を通じまして管轄の社会保険事務所または健康保険組合で、また国民健康保険についての相談は所在地の市町村でそれぞれ扱うこととなっております。
  90. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまよくまとめていただきましたが、もう一度だけ確認のため伺います。  日本国内にある企業との雇用関係が継続している場合には、外国に長期滞在する日本人に対して医療保険が適用になると今おっしゃいましたが、例えば日本の三菱商事なら三菱商事本社がブラジルならブラジルにおいて新しく人を現地で採用した場合はこの医療保険は適用になるのかならないのか、その点の判断はどう考えたらよろしいですか。
  91. 澤村宏

    ○澤村説明員 ただいま御説明いたしましたとおり、例えば給与の支払いあるいは人事管理等が国内の事業所との関係で雇用関係が認められるというような場合におきましては、適用になる。そこが判断の基準となるものと考えております。
  92. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、外国に長期滞在している日本人に対する年金制度の取り扱いはどうなっているか、お示しをいただきたい。
  93. 松本省藏

    松本説明員 お答えを申し上げます。  外国に居住する日本国籍を有している者のうち、被用者、サラリーマンでございますが、日本国内の事業所との間に使用関係が認められる者につきましては、健康保険と同じく厚生年金保険が適用されることになるわけでございます。このような場合につきましての御相談は、健康保険の場合と同様でございますが、事業主を通じ管轄の社会保険事務所で取り扱っているわけでございます。  そのほかの外国に居住いたしております日本国籍を有している者につきましても、先般の年金制度改革におきまして、外国に居住する日本国籍を有する者に国民年金制度の適用の道を開いたところでございます。  具体的には、まず第一に、外国に居住する日本国籍を有する者は、国民年金に任意加入できることとする。そして任意加入しなかった期間についても、年金受給資格期間に、いわゆる空期間として算入する。さらに第二に、先般の改正法の施行日である昭和六十一年四月一日前の海外在住期間についても、国民年金制度ができた昭和三十六年四月一日以降の期間であって二十歳以上六十歳未満の期間については、年金受給資格期間に算入するという取り扱いをしているところでございます。  なお、この場合の任意加入の扱いにつきましては、社団法人日本国民年金協会で手続の代行業務を開いておりまして、その問い合わせにも応じているところでございます。
  94. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、日本に長期滞在している外国人に対する年金制度はどうなっておりますか。これをぜひお願いしたいと存じます。
  95. 松本省藏

    松本説明員 引き続きお答えを申し上げます。  日本に長期滞在をしております外国人のうち、被用者であって日本国内の事業所との間に使用関係が認められる者につきましては、健康保険と同じく厚生年金保険が適用されることとなるわけでございます。このような場合についての御相談は、先ほどと同様でございますが、事業主を通じまして管轄の社会保険事務所で取り扱っているところでございます。  そのほかの日本に長期滞在をいたしております外国人につきましては、昭和五十七年一月から国民年金に加入することとされたところでございます。  さらに、まず一つは、昭和三十六年四月以降の日本に居住し、年金制度に加入できなかった期間であって二十歳以上六十歳未満の期間、さらにもう一つは、昭和三十六年四月以降の海外在住期間であって二十歳以上六十歳未満の期間、この二つの期間につきましては年金受給資格期間、いわゆる空期間でございますが、これに算入することといたしております。  なお、このような制度の手続等についての問い合わせでございますが、住所地の社会保険事務所で受け付けているところでございます。
  96. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 ただいまの御説明に対して追加でもう一つお尋ねいたしますが、旅行者等の一時滞在の外国人につきまして、最近、特にアジア諸国との間で医療保険の相互適用を行う協定を結んでほしい、あるいは医療保障をぜひ行っていただきたいという希望がかなりあるわけでございますが、これに対してはどのような御見解をお持ちでございますか。
  97. 澤村宏

    ○澤村説明員 旅行者などの一時滞在の者につきます医療保険の適用というようなことについてのお尋ねでございますが、国民健康保険について見ますと、市町村に住所を有する者が保険料負担により相互に助け合うことを基本とするものであり、地域住民となっていない旅行者などについての国民健康保険の適用にはなじまないのではないかと考えております。  また、ただいまお尋ねの外国との相互協定締結に当たりましては、医療保障の水準が同じようなレベルであることが前提であるというようなことから難しい問題であるというふうに現在考えております。
  98. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣に、これからお尋ねいたします。  ただいまの応答を聞いておられて、また大臣はお勉強家でおありですから十分御承知のことと存じますが、私はこの間国連へ参りまして職員と懇談したときに、この問題をかなり詳しく聞かれまして、恥ずかしいことですが、応答のできない部分がございました。そしてわかりましたことは、在外の日本の大使館あるいは公館等にメンバーその他特別な情報を持っている方がおられれば別なのですけれども、こうした情報が集積されておらないのであります。  例えば、これは国民年金協会のパンフレットでございますが、外国に居住された方も国民年金に加入することができますと、非常に簡単ではございますが、手続その他書いてございます。こんなものが在外公館にありますと非常に簡単にお話がいくのでないかな、費用も大してかからないのではないかな。しかも、恐らくこれは外務省の費用でなくて厚生省の方がお出しになるのでしょうからお値段も安く、話が早くいくのではないかと思っているわけであります。ところが、今外国に散らばっておられる数十万の日本人の方々は、大体こうしたことを御存じなくて頑張っておられるという方が多いわけでございますから、私はこの問題につきましては、外務省としても海外広報の一環あるいは日本国民の権益擁護のためにもこうした資料、パンフレットの配付等につきまして該当各省ともお打ち合わせをされた上、適切な支援をしていただく道も検討していただけないか、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  99. 黒河内久美

    ○黒河内政府委員 若干事務的な点もあろうかと思いますので、まず私からお答えさせていただきたいと思います。  我が方、外務省からは在外公館に対しまして随時年金、保険関係の情報を提供いたしているつもりでございまして、在外公館では、そういうものに基づいて、必要な情報を提供しているはずでございます。先生、先ほどお示しいただきましたこの資料、「新国民年金の話」というようなものも、私ども、在外公館に一括して送付しているわけでございます。それが不十分であることはままあるかと思いますけれども、今後とも一層充実していくつもりでございますし、また年金等の話も非常に複雑な場合がございまして、なかなか素人で判断できない問題もございますので、御照会がありました都度、本省の方に質問を照会させまして、責任ある当局からのお答えを伝達するようにしているところでございます。
  100. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 今政府委員の答えどおりだろうと思いますが、いずれにいたしましても、国際時代日本ということを考えますと、向こうの方々も日本においてどうされるか、特に我々邦人、これが海外においてどのように保護されておるか、大切なことでございますから、十分気をつけて、なお一層わかるようにそうした仕組みを講じていきたい、かように考えます。
  101. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、国連の問題でございますが、この間から国連の問題を始終お尋ねをいたしているわけでございますが、我が国政治家の間で国連の問題を推進しようとすると、必ず問題になってくる点が二、三点あるわけでございます。  その第一は、日本国の国籍を持つ国際公務員の数がふえないで減る、給与が悪いということと連動させて人数が少ないよというお話が出てくるわけでございます。これは先日の予算委員会においてお尋ねをさしていただきましたが、御努力をいただく旨御答弁をいただいておるわけでございまして、その結果が出るのを楽しみに待っているところであります。ところが、難問でございまして、特に国際公務員の給与面を改善しようということは、もうただごとではない難問であることは十分承知の上で、これはひとつ今後においてお計らいいただきたいとまず申し上げておきます。  第二番目の問題でございますが、それは国連憲章五十三条、百七条において旧敵国条項が存在することであります。我が国といたしましては、従来より対国連協力を重要な外交の柱としてきておるわけでございまして、国連憲章の枠内において国連の機構強化等に積極的にイニシアチブをとっておるわけであります。ところが、国連憲章の中にあります旧敵国条項のように、第二次大戦状況をそのまま反映した条項が残されているということに対して、日本国民の中に釈然としない思いがあることは御承知のとおりであります。  したがって、将来国連憲章改定の機会をつかまえてこうしたことを言わなきゃならぬのはわかっておりますし、今こうしたことを持ち出すことによって国連外交のポジションを傷つけないような配慮をすることは十分必要であるとは存じますけれども、こうした国民的感情のあることを顧慮をしていただくことが必要なのではないか、こう思っておるわけであります。これについて、直ちに取り組めと言っているわけではなくて、明らかによいチャンスを見てと私がくどく申し上げておるのはそれなのでございますが、よいチャンスを見てこうしたものに対して適切な修正あるいは改良が行われるべきだと思いますけれども、いかがでございますか。
  102. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 委員御指摘の第二の点でございますけれども、確かに敵国条項といいますのは、国連創立当時まだもちろん日本戦争中でございまして、したがいまして、当時の状況を踏まえて入ったものでございますが、戦後既に四十年有余を経ましてこの条項がいかにも時代にそぐわないものであるということは、我が国のみならずそのほか敵国条項の対象とされておりますドイツ、イタリー等におきましても同じような感じを持っております。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕  日本といたしましては、かつてこの問題につきまして国連総会等で提起したこともあるわけでございますけれども、これに対しましては、いや、これについてはむしろ当時の記録、歴史の記録として意味があるというふうな反論もあったわけでございます。私どもといたしましては、歴史の記録は記録として、現在既に時代にそぐわなくなっているようなこの条項というのはもちろんできるだけ早急に削除したい、こう考えておりますけれども、一方におきまして、これは現在名存実亡といったふうな状況になっている。これについて、寝た子を起こすのはどうかというふうな議論もあるわけでございます。  この議論に私どもとしては賛成しているわけではございません。賛成しているわけではございませんが、従来この憲章改正の問題を取り上げたときに、この点についても私どもは指摘をいたしましたし、また、今後とも先生御指摘のように、機会を見まして長期的な観点からこの問題について取り組んでいきたいというふうに考えております。
  103. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 敵国条項の問題に関しましては、私たちも甚だ残念な条項があると毎回申しておりました。最近におきましては我が国にはそれは適用されておらないと思っておりますが、しかしながら、やはり適切な機会があるならばそうした条項というものがなくなる方が望ましい、かように考えております。
  104. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣、我々は今や敵国でないよとおっしゃいましたけれども国連憲章の五十三条には、第二次大戦中にこの憲章のいずれかの署名国の敵国であった国に適用される、こう定義がぴしゃっとなっておりまして、一般的敵国じゃないのですね。だから問題になっているので、こういう妙な定義がなければ私どもとしては何の異存もないわけであります。ぜひともこの辺の改良を今後粘り強く御努力いただきたいと重ねてお願いをするわけであります。  第二のポイントは、日本語を準公用語扱いにすることについてであります。  日本国は大量の拠出金を出しているのでありますが、この公用語も旧敵国の扱いと同じことでございまして、現在の公用語というものの中には入っていないわけであります。我が国国連における第二の大口拠出国であるというので、この点からも迫る意見がございますし、また、行政改革及び厳しい財政状況から考えまして下手なことを言えないという状況もございますけれども、西独が行っておりますように、関心を持つ総会場あるいは委員会等に対して自己負担によってそうした準公用語扱いをするということを西独の場合はいたしているわけであります。また、アラビアン諸国は、同じく準公用語扱いになるように進めている様子でございます。  我が国の外交官は大変優秀であって、英語とかフランス語とかあるいはスペイン語とか、場合によっては中国語とかロシア語とか、こうしたものを巧みに駆使して国連外交をやっておられる御様子を見ますと、下手な通訳を介して交渉するよりもむしろ直接原語で聞いた方がいいという積極的な御意見もあることを承知いたしておりますが、日本国民として、国連会議に参加する人だけに任せず、諸外国のようにたくさんの議員が見に行く、あるいは議論にある意味で広義の意味で参画していくという状況我が国に定着しない理由の一つは、この準公用語の問題があるのではないかと思っておるわけであります。  したがって、我が国といたしましても、膨大な対外援助をするということも大事でございますけれども、まず我が国民の中に国連に対する重大な関心を深めさせるためにも、日本語を準公用語化するということについての御研究あるいは一歩前進があっていいのではなかろうかと思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  105. 遠藤實

    ○遠藤(實)政府委員 国連の公用語の問題も、一つはやはり歴史的な経緯に基づくわけでございます。その後、確かにアラビア語等が実際の公用語といいますか、ワーキングランゲージとして追加されてきたわけでございますが、一つには、アラビア語を話す国が非常に多いということもこういったその変化についての一つの理由であったわけでございます。この点につきまして、残念ながら日本語というのは日本一国しか話してない。日本語を話すほかの国の人たちが非常にふえてくればそれについての支持というのもかなり変わってくるのではないかというふうに期待をいたしておりますけれども、これはまだかなり時間がかかることではないかというふうに思っております。  それから、日本の費用で通訳ブースに日本語の通訳を入れるというふうなことは、ごく限られた機会においてはやっておりますけれども、これを普遍化、一般化するということになりますと、これはまだ人的にも、それからまた費用の面でもなかなか難しい問題がございます。しかしながら、今のところは本当に限られた機会に、例えば総理が国連総会で演説なさるときに日本語の通訳を入れるとかそういったことにしか現在はまだやっておりませんけれども、費用、それから人的な制約その他の範囲内でございますけれども、できるだけそういった点についても長期的には考えていきたいというふうに考えております。
  106. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私も過般来そうした御指摘があったことを、それで外務省内でもいろいろ検討もさせておるわけでございますが、今国連局長が申したようなことが現状でございますから、しかし、当然我が国といたしましては、世界に責任を果たす意味合いにおきましてもこの問題は進めていきたい、かように考えております。
  107. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  108. 中山利生

    ○中山(利)委員長代理 永末英一君。
  109. 永末英一

    ○永末委員 ペルシャ湾では昨年十月以来日本の船に対する攻撃はございません。無事故でございますが、去る三月十七日、パナマ籍のマリア2という船がイラクの攻撃を受けて被弾をし、日本の船員が死亡しました。三月二十一日、今度はリベリア籍のFUMIという船がイランの攻撃を受けて被弾をいたしました。人員の被害はございません。  これら二つとも、日本法人が支配をしており、日本船主が運航している便宜置籍船でございまして、いわゆる日本関係船舶であります。この日本関係船舶というのは政府が指導してやっております官民連絡会で確認をしているものであって日本国籍の船である、日本人船員が乗り込む船である、また日本船主が運航する外国籍の船であるなどということを確認をいたしております。  この確認の上に立って、海運労使の安全対策としては、ペルシャ湾に入る船については東経五十四度まで昼間航行でやれ、第二は船団の定時間帯就航による入出湾をやれ、つまり時間を決めて一緒に船団を組んでやれ、第三は入出湾を、通知をちゃんと義務づけて海員組合が連絡してやっていけ、こういうことでやっておるおかげか、昨年十月以来これらの船に対する、日本の船には被害がないのでありますが、今回はこういう被害が出ました。これらの船は今のような海運労使の安全対策と違ったことをやっている、夜間入り込んでいるというようなことでございますが、しかしながら、我が国政府がこれらの船あるいはそれに乗っておる日本人船員に対して責任がないとは言えない。一体、政府はこれらのいわゆる便宜置籍船の安全についてどういう行政指導を行っておられますか。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  110. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 まず、大切な石油エネルギーを運搬をしていただいておる方々に対しまして私は敬意を表したいと思います。また、不幸にして過般被弾をされましてその結果死亡されました船員の方に対しましても深甚の弔意を表したいと思います。  私も昭和五十九年でございますが、オマーン国のヘリコプターでホルムズ海峡の上を飛んだことがあります。すごい船団がずっと並んでおりまして、ほとんどが日本の船だと聞かされまして、なかなかペルシャ湾に入れないで辛抱しておられるというのを聞きまして深い感動に包まれたことがあります。恐らくああいう光景を見たならば、何とかしなくちゃいかぬなという気持ちは起こるわけでございますが、過般も予算委員会におきまして総理大臣が敬意を表されました。  そうした問題に関しましてはどういうふうな具体的に考え方があるか、ひとつ政府委員からも説明をさせたいと思います。
  111. 恩田宗

    ○恩田政府委員 海運会社に関するあるいは日本関係船舶に関する指導についてはあるいは直接運輸省の方からお答えすべきものかと思いますが、現在関係省庁、運輸省、外務省を含めまして、それから海運労使を含めましてペルシャ湾安全対策官民連絡会というのを設けまして、随時開催して、まず関連情報の伝達、それから交換、それから安全対策の協議を行っております。  具体的には、情報連絡体制の整備強化、それから運輸省として日本船主協会等を通じまして日本関係船舶の湾内の動静を把握するとともに、海運労使としても湾内の一定海域についての航行の制限、先ほど先生の御指摘になった問題でございますが、それと、船団を組んでの一定時間の入出湾の実施を行う等安全航行の確保に努めているというふうに承知しております。  もちろん外務省としては、運輸省を通ずる日本関係船舶の関係者、船主協会及び海員組合等の連絡のほかに、直接現地政府に対する働きかけ及び大きくは紛争自体の終結に向けての努力を行っていくということでございます。
  112. 永末英一

    ○永末委員 今の答弁、全然関係ない答弁だ。僕は問題を絞っているでしょう。そういう事故を起こした便宜置籍船に対してどうしているかと聞いているのに、あなたは一般のことを答えている。時間の少ないときに時間のむだはやらぬでください。  こういうことは今後もあるわけだ。今のような政府のやっている仕掛けの中に入ってこない船がおるわけだ。その船をどうしておるのだということを聞いているわけだから、その一点だけお答え願いたい。
  113. 恩田宗

    ○恩田政府委員 先生御指摘のとおり、今まで日本関係船と言われているものについては十八隻の被害がございます。その中には、日本が、日本の船会社が所有する日本の国籍の船というものもございますが、おっしゃいますとおり、第三国の船であって、そうして日本が、日本の船会社が運航している船、そういうものもございまして、運輸省が主宰いたしますペルシャ湾安全対策官民連絡会になかなかつかまり切れないものがございます。というのは、そういう船に日本人がたまたま雇用されて乗っているという事実があった場合はなかなか把握し切れないという状況でございます。運輸省とも相談いたしまして、できるだけ広い範囲での把握、連絡、協議をしていきたいというふうに考えております。
  114. 永末英一

    ○永末委員 そういう船が被害を受け、またそういう船に乗っている我々日本人の一人や数名が命を落としたりするというととは政府がやはり責任を持たなければならぬのだから、今聞くとよくわかっておられるのでありますから、十分にひとつどうするかという方針を決めて、いずれ後の機会で質問いたしますから、研究しておいてください。  この国会では米軍の有事来援に関することについていろいろ質疑が行われました。外務大臣は、去る予算委員会で、いわゆる五十三年にできましたガイドラインの一環であるということで、有事来援の研究を始めることは大いに結構だ、慎重に検討したい、時間をください、こういう答弁でございますが、研究するのに賛成ですか。
  115. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 先ほど答弁は、はっきり申し上げて、政府質問者の間の混乱が生じたことがございました。私たちは有事来援は第五条に基づいてやって、第六条に及ぶものではない、こういうお話をしたのでございますが、いろいろ想定したことを次々申されますと、たとえ仮定の問題でございましても、幾つかの問題が想起される。そういうことでございましたから、私は、いろいろな問題が派生するだろうから、いろいろな問題に対しまして研究しておきましょうということを申し上げたのでありまして、第五条に基づき、また今のガイドラインの一環として有事来援を研究することは大切なことである、こういうふうに思っております。
  116. 永末英一

    ○永末委員 このいわゆるガイドライン、日米防衛協力のための指針というのは、日本アメリカとの間でつくっております日米安全保障協議委員会でやろうじゃないかと決められて、そのもとに防衛協力小委員会が持たれて、それぞれ外務省は関与していますね。そうしてつくり上げた一つの指針を再び協議委員会で認めてそれぞれ日本は閣議にかけておるわけです。  さて、その指針の中の第二項、すなわち日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等というようなことについては、これは防衛庁長官が責任を持ってやるんだということを決めたらしくて、その後日本側は統幕の事務局、アメリカ側は在日米軍の司令部で相談をしておる。シーレーンの研究とか、共同作戦の研究とか、インターオペラビリティーの研究とかやっていると言われている。しかし、今あなたは研究に賛成だと言われたが、どういう機関でやるのですか。
  117. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 研究というのは、今御説明申しましたとおり、当然日米間においては研究はどんどん行われておるわけでございますから、今混乱したこととか、いろいろな問題が派生する、考えなくてもよい問題まで、極言すればそういう問題まで提起されておりましたから、大変議場が混乱いたしました。だから、そうしたことも含めまして、やはり質問者にはきちっとお答えしなければなりませんから、そういう意味で研究、つまり外務省内または防衛庁に関することは外務、防衛の関係でひとつ勉強しますからという意味でございますので、日米間における問題ではない、こういうふうにお考え賜りたい。
  118. 永末英一

    ○永末委員 両軍のいわゆる制服が相談し得ることと、今回有事来援と称して有事におきますサポート、あるいは平和時におけるサポートもございますが、それはいわゆる制服間だけのことではないわけであって、日本国民の通常生活に関係があり、日本国の法制に関係がある、いわばそういう重要なことでございます。したがって外国の例を見ましても、NATO諸国においてはNATOの条約という基本的な条約、それに基づいてアメリカアメリカが駐留している国との、我が国で言えば地位協定的なもの、そしてさらにこれをやろうとするならば、有事来援に関する協定を両国政府で結んでやっているわけです。  今あなたのお話を聞くと、外務省だけで研究する。同じ政府の防衛庁長官は、相手方はアメリカの国防長官と研究しましょうと言ってきたのでしょう。防衛庁と離れて外務省は何をするのですか。外務省アメリカとの間で研究しないでいいと思っているのですか。どっちですか。
  119. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 そうやって混乱してくるわけであります。この間もそういうことを、きちっと原則論を申しましたが、次々とポンカス、これも当然研究の対象になるだろうと私たちは答えております。そして有事法制、このことに関しましても既に防衛庁は自衛隊に関する問題は研究いたしております。ただ、米軍と有事のときの国内の法制、体制はどうするかという問題は外務省の問題だ、こういうふうにお答えしておるのですが、ではどういう問題を研究しているかといろいろと話が混乱しましたから、仕分けをいたしております際でございますので、私はそういう表現を使ったと御認識賜りたいと思います。  もちろん条約に関しましては外務省が最高の責任者として、その解釈をめぐり、また防衛に関しましても防衛庁と常時緊密な連絡をとって協議をいたしております。そういう意味で質問者に対しまして、いろいろあなたの質問されたことの中にはそうした仮定の問題が多いだろうが、一つ一つお答えすると、第五条を離れての話になってしまいましたので、そこは私たちは後ほど勉強させていただきましょう、こう申し上げておるわけでございますから、今回の研究会、この勉強会、有事来援の勉強会は有事法制につながるものではない、直接有事法制をしなければならぬから研究するものではありません、離れて勉強はしております、こういうふうに防衛庁も言っておりますし、私たちも、米軍に関しましては離れては勉強しなければならないでございましょう、当然勉強すべきものである、こういうふうにお話し申したわけであります。
  120. 永末英一

    ○永末委員 あなたはこの国会で衆参両院でいろいろお答えになっていることは承知をしておりますが、そんなことを聞いておるのじゃない。私が聞いておるのは、外務省としては、その責任者である外務大臣としては、防衛庁長官がアメリカに行って、有事来援の研究をしましょうと言ってきた、外務省アメリカとの研究に参加されるのかされないのかと聞いておる。その一言を聞いておるのです。外務省内で研究するのは当たり前のことですよ。研究もせぬで出ていく人がありますか。  したがって、今までこの指針に基づいて日米間でやってきたことは制服間の協議なんです。しかし、有事来援というからには制服だけでは処理でき得ない問題があるではないか。それは他国の例を見てもはっきりしている。したがって外務省アメリカとの防衛庁がやろうという研究に一緒にやるのか、勝手にやらすのか、この一点をお答え願いたい。
  121. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 この研究は、我が国に対する武力攻撃が行われている状況にいかように対処するかということでございますから、防衛庁が第一義的には研究に携わりまして、そして適宜外務省がその内容の報告を受ける、こういうことになります。
  122. 永末英一

    ○永末委員 のんびりした答弁ですね。あなたは、NATO諸国がやっておる地位協定に基づくこれらの緊急時における両国間の協定を御存じだと思う。その中には多分に日本の現在の法制に関係のある問題があるわけなんです。それを、まず一義的には防衛庁にやらせて、それからあなたのところが出ていくで済みますか。  今までの防衛庁のやっている有事法制研究というのは、防衛庁でやれることはこれ。他省庁に関係のあることはこんなものがあります。各省でどれがやるかわからぬのもこんなものがありますと言っただけであって、何一つ有事法制で決着をつけたものはございません。これが自民党政府のやっていることじゃありませんか。したがって私は、こういう重要な問題が提起をされ、国会で議論しておるから、外務省の姿勢がしっかりしておるのかどうか伺いたいので、きょうはこの問題を出しているのです。  第一義的にこんな問題を防衛庁とあっちの国防省だけでやるのですか。重大な問題だからというのであなた方の方は日米安全保障協議委員会には外務大臣が出てやっておるでしょう。そのもとでつくられた指針をつくる原案は北米局長が出ているではありませんか。したがって、この有事来援の研究をアメリカでやろうとする場合にあなた方は参加するのかしないのか。第一義的には防衛庁だけでやらす、この答弁でいいのですか。
  123. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 たびたび申し上げていることでございますけれども、今回行われる研究というのは、我が国に対する武力攻撃が発生した際に、米軍が来援する、それを適切な、円滑な形で確保するということでございますから、その性格からして防衛庁が研究に当たるということでございますけれども、他方、関連いたします国内法制等は、これとはまた別に外務省が中心になって考えていかなければならない問題であるということでございます。  また、今先生が取り上げられましたヨーロッパにおける接受国支援のさまざまな取り決めがございますけれども、それにつきましては、これから行われる研究の内容がいかようになっていくかわかりませんけれども、それを見ながら考えていくということでございますが、結論から申しまして、この研究が法的にも、立法面でも、あるいは財政面でもあるいは行政的措置でも政府を拘束するものではないということも一つ申し上げておきたいと思います。  ただ、外務省は、たびたび申し上げておりますけれども、この研究が進む段階で適切な報告を受ける、こういうことでございます。
  124. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、そんな外務省でいいんですかね、まず防衛庁がやるんだ、それは武力攻撃を受けたときだから。武力攻撃に対する軍事力の問題ではなくて、もしアメリカ軍の来援を受けるとするならば、地位協定にも関係があり、我が国の予算にも関係がある、法律的にもたくさんの問題が生ずる。それはやはり防衛庁だけでは処理できない。これは彼らが有事法制の研究で国民に示したあれではっきりしているではありませんか。そういう問題だから、外務省アメリカの要求をちゃんと日本政府として聞いてどうするか考えてもらわなければできませんよ、これは。今みたいに、防衛庁、やってもらいますでは。これは考えておいてください。  その点で、先ほど外務大臣安保条約五条を申されましたが、大体この五十三年にできました日米防衛協力のための指針の第二項、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動は、みんな限定的小規模な侵略はまず日本が独力でやるんだ、できないときにはアメリカの援助に負うんだ、こういう仕掛けになっている。ところが、日米安保条約の五条は、日本国の施政下にある領域におけるいずれか一方に対する武力攻撃、これに対しては両方がそれぞれの憲法上の規定並びに手続によって行動するのだとストレートに書いてあるわけですね。  そこで伺いたいのは、この指針の研究によって、何らかの武力攻撃が我々に加わったときにはアメリカは何もしない、まず日本が立ち向かうということをあなた方は研究の中で承認しておるんですか。
  125. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 研究はまさにこれから行われるわけでございまして、さまざまなシナリオが考えられると思いますけれども、今先生が御指摘になられたようなことももちろん一つの可能性ではあると思います。
  126. 永末英一

    ○永末委員 何を言っておるかわからないことを言いますね。これは現実の問題として、例えば次期支援戦闘機、FSXだって、かかってきたらまず日本が対処するのだという意味で次期支援戦闘機を考える場合と、アメリカ日本もお互いに日本の領空内に侵略があった場合に一斉に対処するんだとでは全然違いますよ。だから聞いているんですよ。どっちなんですか。  日本は、まず我々が立ち向かって、それでもうあきませんと手を上げてアメリカが参加するんですか。それとも安保条約の五条は双方が双方の判断で一斉に反応するという規定なのか、どっちなんです。
  127. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 研究でございまして、これから始まるわけでございますが、今おっしゃられたいずれの場合も可能性としては私は考えられるのだろうと思います。
  128. 永末英一

    ○永末委員 いずれの場合もあると考えるならば、米軍の有事来援という言葉も、この指針の第二項に書かれておるような思想だけではいかぬではないか、こういう発想もあるわけだ。私は、外務省というのはそういう立場に立って物を考えるべきだと思います。  その具体的あらわれとして、去る十二月九日、INFが調印された日ですが、ソ連の偵察機が沖縄上空を侵犯をいたしました。記録によりますと、侵犯された時間から、それが我が方のレーダーがキャッチした時刻と、それから侵犯機が沖縄の領空を侵犯した間には、約五十分ほど時間がある。我が方のキャッチした情報はアメリカにちゃんと通報してあるんですか。アメリカはあの地域にAWACSを持っておる。アメリカ自体もまた侵犯の事情を知っておると思う。通報したのか、相手方も既に早くからその状況を知っておったか、お答え願いたい。
  129. 長谷川和年

    ○長谷川(和)政府委員 委員御指摘の例の侵犯事件に関しましては、米側からは日本に連絡はございませんでしたが、私たち承知しているところでは、那覇の基地に米国の防空連絡員というのが配置されておりまして、この防空連絡員を通じまして日本側から米側に関連の情報を通報していたと承知しております。
  130. 永末英一

    ○永末委員 私がお聞きしておるのは、この警戒はレーダーサィトが映る時点におきましては我が方が専ら警戒に当たり、対処に当たるということをアメリカ政府とこっちの政府とが話し合ったことがございますが、この事件であらわれるように、アメリカアメリカ独自の判断で対処をしたのか、それとも日本側がまず対処して、その状況アメリカは見守っておったか、これは今の安保条約五条とそれからこの五十三年の指針の第二項にかかわってくる見方の問題なんです。そこで聞いているのです。どっちですか。
  131. 有馬龍夫

    ○有馬政府委員 まず領空侵犯と直接の武力攻撃がなされた場合は異なると思いますが、先生の御質問ということで申しますと、領空侵犯に対する措置の実施に当たって、今般は那覇にございますいわゆる防衛連絡員、先生よく御存じでいらっしゃいますが、防衛連絡員との間で適切な意見の交換、情報の交換を行われたというふうに承知しておりますが、外務省からは外交チャネルを通じまして事実関係は米国政府に伝えております。
  132. 永末英一

    ○永末委員 私が言うているのは、その時期の問題だよ。つまり我が方のレーダーがつかまえた午前十時半ごろから相手方が沖縄の上空に侵犯をした十一時二十四分、この間にそういう日米間の話が頻繁に行われたのですか。
  133. 村田直昭

    ○村田説明員 お答えいたします。  十時半にソ連機、その当時識別不明ということでございましたけれども、発見いたしまして、その時点からADOT、いわゆる防空セクションに勤務しております向こうの要員でございますが、それを通じてアメリカ側に連絡をしておったということでございます。
  134. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣、きょう質問しました中で有事来援に対する研究というのは、今までの指針に基づく制服同士の研究とは違う性格を持っているものです。したがって、その意味合いでは安保条約の五条と密接に関係のある問題。だからこの指針がうたっているような、これは外務省もかかわっておりますからね、あれは一つの想定である、しかし、いよいよ有事来援の支援についてのことを詰めていくとするならば、いろいろなケースが考えられる。私は、外務省は積極的にやはりこの研究に参加をしていくべきだと思います。最後にあなたの御決心を伺います。
  135. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 大変示唆に富んだ御質問でございます。しかし国会内におきましては、INFのグローバル・ゼロ、その直後、非常に世界はデタントである、こういう認識の方もいらっしゃるわけで、そういうサイドの方から申しますと、今なぜ好んで有事来援か、こういうふうな話でございます。また、全然有事というものがあるのかないのか、私たちは現在、INFグローバル・ゼロが終わりましても、またいわゆる太平洋における緊張は解けておらないよということを申し上げておったわけでございますけれども、まずなぜ有事来援が必要なんだ、研究が必要なんだというところから出発されておられる方々もおります。  当然、私たち政府といたしましては、やはり議会が最高のシビリアンコントロールの責任を果たしていただいておる今日でございますから、そういうふうな認識のもとに、外務省が、言うならば今直ちにということに関しましては、私たちは防衛庁の相談を受けましたときに、それは必要だね、備えあれば憂いなしだよということでございますが、ここで今外務省が余りにも先走ってしまいまして、防衛庁においては自衛隊の体制は終わった、ではただいまより直ちに引き続いて米軍の有事来援の際の日本の法制、そこまで行ってしまいましょうということになってしまいますと、これは大変なことになったり、国民にいろいろな迷惑を与えたり、誤解を与えたりいたしますから、私たちといたしましては、やはりそこは勉強は勉強でよし、一般論は一般論としてきちっと分けて今日までやってきたものでございます。  したがいまして、やはり政府全体といたしまして、特に総理大臣シビリアンコントロールの最高の長としていろいろその自分の指針を申されましたが、やはりそれを支えるのは外務省であるという気持ちもございますから、したがいまして、そうした面におきましては、我々もシビリアンコントロールを支える一つの省であると同時に、また安保に関しましても、防衛庁が考えておるところを是としながら、それに対してサポートをしてあげなければならない面もあるであろう、こういうことでございますので、その面に関しましては十二分に、時として慎重、しかしながら、やはり積極的に参加すべき部面においては積極的に参加して、我々の解釈米軍との間においてさらに固めていくという役割もしなくちゃならないだろう、かように考えております。
  136. 永末英一

    ○永末委員 安全保障の問題は重要な問題であり、特にアメリカとの交渉は重要です。二つの政府にならぬように慎重に厳粛にやってください。  終わります。
  137. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 岡崎万寿秀君。
  138. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 予算委員会に続きまして日本への核持ち込み、これを日本がただす権利があるのかないのか、はっきりさせたいと思います。  初めに、二月六日、竹下首相は社会党委員質問に対して次のような見解を述べられました。  「第四条に定める随時協議の下では、第六条の交換公文に定める事前協議制度の対象として米側の義務とされている具体的な三つのケース以外の条約の実施に関する問題について、核の問題も含めて、米側と協議を行うことができる。」  ここに書いてある「核の問題も含め」、この「核の問題」というのは何を指すのでしょうか。
  139. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 「具体的な三つのケース以外の条約の実施に関する問題」、「核の問題も含めて、」という答弁があるわけでございますけれども、具体的な三つのケースといいますのは、事前協議の対象になります個別のケースのことでございます。  それ以外の核の問題ということでございますが、これは例えば、日本国民の間に存在いたします核に対する懸念を米側に対して表明するというようなケース、これがこの答弁の際に想定されておりました事前協議の三つのケース以外の問題で核の問題ということの例示でございます。
  140. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 懸念を表明するだけで、船に積んであるかどうか、これを問いただす権利はないわけでございますね。
  141. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) これもことしの予算委員会で累次御答弁申し上げているとおりでございますけれども、具体的なケースの協議というのはこれは安保条約上米側が事前協議の義務を負っている次第でございまして、これを日本側から提起するということは想定されていない。他方、しかしながら日本側は核の問題も含めまして条約の実施全般に関しまして米側に協議を申し入れる権利は当然のことながら認められているということでございます。
  142. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 そうしますと、国民の懸念を表明することはできるけれども、疑惑を問いただす権利はないということですね。もうおっしゃったから、それでいいです。  そこで、これは宇野外務大臣から私に三月十日に答弁がありましたが、こういう竹下内閣の見解と違っておれば、私がたくさんの例を挙げまして紹介しましたけれども、それは間違いだというふうな見解でございました。  ちょっと紹介しますと、事前協議でやれるとするもの、つまり核持ち込みについて日本から問いただす権利を認める発言がたくさんありまして、事前協議でやれるとするもの、もう省きますけれども、大平外相の答弁がございます。それから、事前協議では発議権はないけれども、それを補うものとして随時協議でやれるとするもの、これは藤山外相、三木外相、愛知外相とたくさんございまして、これらの発言等については、この事実はお認めになりました。  そこで、これらの見解が誤ったというふうなことでございますけれども、例えばこの中の一つ、三木外相の答弁はこうなっています。これは六八年三月十七日の衆議院予算委員会でございますけれども、「どうもこれは事前協議にかかるような事態が起こっておると思うから、ひとつ事前協議をやってもらいたい、こういうことを常に四条によって日本が言い出すことはできる」、「どうも積んでおるようで、怪しいからやろうではないかという申し出は、四条によるやはり協議だと私は思います。」どうも怪しい、だからやろうというのは第四条でできるということを三木外相はおっしゃっているわけであります。  宇野さん、これはどこが誤っているのでしょうか。これは宇野さんが私に答弁なさいましたから、宇野外相の答弁としてお答え願いたいと思うのです。
  143. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 速記録にもきちっと私の答弁が出ておりまして、けさほどもう一回確かめてまいりました。したがいまして、ただいま条約局長が申しましたいわゆる竹下答弁、これが現在の私たちのまとめた答弁でございますから、この答弁の中の答弁ならば間違いないでしょう、それ以外のものは解釈を間違えられたのじゃございませんかと、私ははっきりそうやって申し上げているわけで、三木さんに対しましてもそういうお話がございましたから、私はそういうふうにお答えしておるわけでございます。  しかし、間違いがあったとかないとかいうふうなことではなくして、今までの歴代の先輩のことでございますから、私はその前に、岡崎さんの前に、間違えられましたよということを申し上げております。三木さんの場合にもこういろいろ言っておられますから、したがいまして私は三木さんの場合をも踏まえまして——その前を長く読みますと、全然違いますと、四条と六条ははっきり違いますと、こう言っていらっしゃるわけでございますが、先輩のことでございますから、今までのそうした経緯を踏まえまして竹下答弁となったということを御理解ください、こう申し上げておる次第であります。
  144. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 経緯を踏まえて竹下答弁になったと。竹下答弁は、事前協議制ではもとより第四条の随時協議でさえも日本から核持ち込みの疑惑を問いただす権利を、手を封じていらっしゃる、そのことが竹下見解だと思うのですけれども、それ以外のものは正しくない、間違いだということでございまして、これはやはり大問題じゃございませんか。私が今言ったことは違いますか。
  145. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 竹下答弁の中には第六条の三つの場合には当然事前協議がかかりますと。これは米軍に対する拘束でございますから、その拘束を解いてほしいという方から言うならば、解いてくれというので発議をされるから、それは米軍の義務でございます。これだけはもうはっきりしておる。だから、これ以外の問題は、安保全般の運営のために四条の随時協議があるんだから、そこでおっしゃっていただければ結構ですよ、その場合には、あの六条の三つのケースの中の核という問題について以外の核の問題も含めて話しましょう、ではそれ以外の核の問題は何かと一番の御質問があって、今条約局長がお答えしたとおりであります。
  146. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今の答弁でも明らかなように、やはり随時協議でも問いただす権利は否定されている。これはこれまでずっと政府答弁してきた見解をオール否定されることになるわけで、私、ここに持ってきていますけれども、やはり全部どこかで問いただす権利があったのですよ。それが否定されているということは非常に重大でありますし、被爆国日本で、しかも核トマホークとかF16とか核持ち込みの疑惑が大きく懸念されている今日、その疑念さえも、疑惑さえも日本から問いただすことはできなくなる。これは大変な問題であるということを強く指摘しておきたいと思います。
  147. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま岡崎委員がおっしゃいましたことは、我々の了解とは大分違っているわけでございます。宇野外務大臣が先般の予算委員会におきまして、政府側の答弁解釈が間違っていたのではないかと述べられましたのは、これは前後の質問を見ていただければはっきりすると思いますが、これは中川条約局長答弁及び大平外務大臣答弁でございます。それ以外の答弁が念頭にあったわけではございません。  それ以外の場合の政府側の答弁は先般の竹下総理の答弁に集約されているわけでございますけれども、具体的な三つのケースの事前協議の義務を果たすべきなのは、これは米側であるけれども、それ以外の問題については核の問題も含めて日本側から協議を申し入れることができるということをはっきり申し上げているわけでございまして、ただいま御発言にございましたとおり、事前協議権利日本側が放棄した、あるいは核の疑惑を晴らすために事前協議日本側から申し入れるということも今回放棄したということでは全くございません。  先ほどの竹下総理の答弁に明らかなとおり、これは核の問題も含めて、随時協議で米側と協議を行うことができる。ただし、現時点においては、日米間の確固たる信頼関係に鑑み、核の問題について米側に協議を申し出る意思はない。これは意思の問題あるいは方針の問題としては申し上げておりますけれども、随時協議そのものの権利が今回なくなったというようなことでは全くございません。
  148. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 ちょっとここのところは重大ですから、もうちょっと時間をとりますけれども、この三木さんの答弁は随時協議によって核の疑惑を問いただすことができると言っているのですよ。しかし、これは否定なさるわけでしょう。随時協議によって核持ち込みの疑惑を問いただすことはできるのですか。やはりだめだとおっしゃるのでしょう。  ですから、先ほど中川条約局長とか大平外相の場合、これは誤りであったけれども、随時協議でできるということについては否定していないとおっしゃるけれども、この三木さんの答弁についても肯定なさらないでしょう。どうですか。
  149. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) これも繰り返し申し上げていることでございますけれども、個々の艦船の核の持ち込みについてこれを持ち込んでいいかということは、これは米側が義務として事前協議日本側に提起するということでございます。それについてその事前協議の発議権が日本側にあるかどうかというと、これは日本側にはないということを先ほどの中川答弁、大平答弁を例外といたしまして、政府側は終始一貫述べているわけでございます。  核の疑惑をただすことができないということは政府側は一度も申し上げたことはございませんで、例えば当時の安倍大臣がマンスフィールド大使を招致いたしまして、日本国民の間に存在している核に対する懸念、これを改めて伝えたということがございましたけれども、これは四条協議の例であるということは従来より政府側が御答弁申し上げているところでございます。
  150. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 懸念は表明することができるけれども、ここにある三つの事項のケース以外となっているでしょう。だから重要な装備、つまり核持ち込みについては例外になっているわけなんですよ。核持ち込みについては随時協議協議できないことになっているわけでしょう。そこが変わっているというのですよ。それは違いますか。
  151. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) その点は従来と変わっておりません。従来も個々のケースの核の持ち込みについて日本側からこれを事前協議として提起するということはできないということを申し上げてきている次第でございます。
  152. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 違うのですよ。私は先ほど三木外相のを読みましたね。三木外相の場合でも、やはり事前協議の問題で核持ち込み問題を協議できると言っているのです。  それから六九年の愛知外相の答弁もやはりそうなんです。「何らかの必要、あるいはさらに一そうの安心感を求めるために日本側がアメリカに対して積極的に申し入れをするということはもちろん安保条約上できることであります。」随時協議によって核持ち込みの疑惑について問題提起できる、発議権があるということをはっきり言っているのですよ。  竹下見解はこれを三項のケース以外という形で否定しているでしょう。そこがはっきりした違いだと言っているわけです。そうじゃありませんか。
  153. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) ただいま過去の答弁の御引用がございましたけれども、そのうちの一つの愛知大臣答弁でございますけれども、愛知大臣は第六条の事前協議に関しまして、これは法理論の筋からいえばアメリカにしかイニシアチブはないということをはっきり言っております。しかしその後の方で、「これは安保条約全体の運用、ことに第四条というものと合わせた構成になっておりますから、そういう意味で、実体論として日本にはそういう場合にイニシアチブはないかと言われればある」、こういう答弁になっております。  ここでイニシアチブがあると愛知大臣が言っておりますのは、この前後の関係から明らかと存じますけれども、個々の具体的な核の持ち込みのケースということではなくて、核の持ち込みの問題も含めまして条約の実施全般にかかわるいかなる問題についても随時協議という形で日本側から協議を提起するイニシアチブはあるということを申し上げているわけでございます。
  154. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 じゃ、あわせて、三木さんの答弁についてはどこが間違いですか、はっきり言ってください。今、愛知外相について言われましたけれども、三木さんのはどこが間違いですか。
  155. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 三木答弁は間違いだということは一度も申し上げていないわけでございまして……(岡崎委員「どこが竹下見解と違いますか」と呼ぶ)三木答弁は非常に長いわけでございますけれども、これを全体として読みますと、竹下答弁のときの考え方、すなわち現在の考え方と同じ考え方に基づいて答弁されたものというふうに我々は了解しております。  繰り返しになりますけれども、そこの解釈が間違えたのではないかと我々が考えておりますのは、それより前の中川条約局長答弁及び大平外務大臣答弁ということでございます。
  156. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今挙げられている大平外相や中川条約局長のは、事前協議制でできると言ったものなんですよ。私がここで問題にしているのは、それは一応置いて、随時協議でできるのじゃないか、そういう発議権があるのじゃないか、そういう答弁に対してこれも変えるのかということを聞いているわけです。  三木外相の場合は、「どうもこれは事前協議にかかるような事態が起こっておると思うから、ひとつ事前協議をやってもらいたい、こういうことを常に四条によって日本が言い出すことはできる」、「どうも積んでおるようで、怪しいからやろうではないかという申し出は、四条によるやはり協議だと私は思います。」じゃ、このとおり、竹下見解はこれと違いありませんね。どうですか。
  157. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 竹下答弁は、その事前協議の対象となっております三つの具体的なケース以外の問題について、これは四条協議のもとで我が方から提起できると言っているわけでございまして、その点につきまして矛盾はないと考えられます。
  158. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 斉藤さん、ごまかしちゃだめですよ。三木外相は三つのケース以外じゃなくて三つのケース以内、つまり核持ち込みの問題をここで言っているわけなんです。「どうもこれは事前協議にかかるような事態が起こっておると思うから、」でしょう。「ひとつ事前協議をやってもらいたい、」これを四条で提起するというわけですよ。明らかに竹下見解と違うのじゃありませんか。どうですか。
  159. 斉藤邦彦

    斉藤邦彦政府委員外務省) 繰り返しになって恐縮でございますけれども、核の問題につきまして例えば日本国民の間にこういう懸念があるというようなことを随時協議という形で提起することはできるわけでございます。したがいまして、我々といたしましては、この三木大臣答弁というのはそういう思想を背景にしてこういう言い方をしておられるというふうに理解しておりまして、もちろん若干言い方は変わっておりますけれども、この点は先般の竹下総理の御答弁と基本的な食い違いはないというふうに考えております。
  160. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 繰り返しで大変あれですが、では宇野外相も、三木外相が言ったように、どうもこれは事前協議にかかわるような事態が起こっておる、つまり日本への核持ち込みがあるんじゃないか、ひとつ事前協議をやってもらいたい、こういうことを第四条によって日本から言い出すことができる、どうも積んでおるようで怪しいからやろうではないか、こういう申し出が四条でできる、このように確認してよろしゅうございますか。
  161. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 あくまで四条は日米ともに発議をして協議をすることができますが、三つのケースの場合の一つの重要な核に関しましては、こちらから四条でできる問題ではありません。あくまでも六条に基づいてアメリカから言い出すべきことでございます、こう言っておりますから。先ほどの私の答弁もここにございますが、諸先輩のずっと一連のいろいろなことがありました。岡崎さんは三木さんだけの話でございますが。  だからその前にずっと、先ほど問題になりました中川条約局長なり大平外務大臣のお話も検討しまして、私はそれらをもろもろ入れて答えていますが、三木外相並びにいろいろな方々の答弁を私も十分吟味いたしておりますし、読んでおりますが、私をして言わしめるならば、あくまでも第四条は随時協議であって日米双方でできる。三木さんの場合には補完することはできるという表現も用いられておったかもしれませんが、あるいはそういう表現もなし得るかもしれませんけれども、あくまで三つのケースのことは第六条によって脇議はアメリカから発議されるべきものであり、それ以外の問題ならば核を含めて安保条約全般に関する運用は第四条でやってよろしい、こういうことでございますから、私の言った部分に関して、私のただいま申し上げた答弁のとおりならば、その内容と同じ答弁ならばこれは正しい答弁だ、こういうふうに申し上げておきます。これは非常に長い外務大臣諸公の発言を踏まえて、私としてもきちっと答えた所存でございます。
  162. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 宇野外相の答弁と違うのですよ。あなたの言っている範囲内ならばというのは範囲じゃないわけです。三木外相が言っておるのははっきり三つのケース以内のことを言っているのです。三つのケース以内をこちらの方から第四条でできるということを言っているわけです。あなた方は以外でないとできないというわけでしょう。明らかに三木外相の発言と竹下見解とは違うのです。これははっきりしていると思いますよ。どうですか。
  163. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 私は後輩として、先輩のことを具体的な名を挙げて間違いだとかどうだとかいうことははっきり言って極めて言いにくい問題でございます。だから、岡崎さん以外のお方は、歴代外務大臣はではうそをついたのかというような話もありましたから、私がうそをついたということは言えません。しかしながら、条約解釈に間違いがあったのではないかということは言えます。だから今の竹下答弁はそれらの方々のすべての問題を踏まえたきちっとした答弁でございますから、そのように御理解賜りたい、こう何度も言っておりますので、今私が申し上げた部分の範囲ならばよろしいけれども、外れておったら間違いだとおっしゃるならば、岡崎さんもそのようなお気持ちだろうと私は思います。
  164. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 外れておるなら間違いだとおっしゃるように、これはやはり以内なんです。つまり、核持ち込みの問題を第四条でできるとおっしゃっている。しかし、竹下見解は以外でないと核問題について協議できないというふうになっていますので、これは明らかに三木外相あるいは愛知外相等々の随時協議でできるという見解を覆すものだと思うのです。事前協議制で問いただす権利を否定するだけではなくて、補完するものであるということで随時協議でできるといった問いただす権利さえも否定された。これが今度の竹下見解であろうと思うわけです。これは否定なさることはできないと思うのですよ。愛知外相のときはどうのこうのおっしゃったけれども、三木外相の場合、非常にはっきりしていますから、だから今含みを持たせながら宇野外相おっしゃったと思うのです。このことは条約局長、間違いないでしょう。三木外相の答弁は明らかに以内のことを言っているのです。ですから、ごまかしてはいけないと思いますよ。それは宇野外相と同じようにはっきり確認してもらいたいと思います。時間がありませんから、それでいいですか。
  165. 宇野宗佑

    宇野国務大臣 お役人からは答えにくいでしょうね。だから、私は政治家として申し上げますが、私の答弁以外の答弁解釈を間違えられたのでしょう、これが私の解釈でございますから。したがいまして、どなたがこう言ったから、おまえはそれを破ったのかとおっしゃるかもしれませんが、決して破ったのではなくして、解釈の間違いはあったでございましょう、こういうふうに御理解賜ればいいのじゃございませんか。
  166. 岡崎万寿秀

    ○岡崎委員 今はっきりおっしゃったように、解釈を間違えられたのでしょうということで、三木外相の見解さえもただされた。私はこれは非常に重大な問題だと思うのです。  日本から疑惑をただす権利をこれまではいろいろな外相が答弁されている。この疑惑をただす権利を一切手を封じてしまったということ、ここに被爆国日本政府としての大きな責任の問題があると思うのです。しかも、これまで歴代外相その他が言っていたことについてオール否定をなさったということですから、これは大変な問題だということを指摘して、時間が来ましたので、これで終わります。
  167. 糸山英太郎

    ○糸山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十七分散会