○
国務大臣(
竹下登君) まず
最初に、
南ア航空機事故、また、
大韓航空機行方不明問題についての御
意見の御開陳がございました。
今日、
大韓航空機行方不明問題については
墜落地点さえ明らかでございませんので、公式に申しますならば、観測の域を出ないというのが実情でございます。したがって、さまざまな想定に基づいて公式コメントする
立場には残念ながらなかろうと言わざるを得ません。しかし、何としても
航空については安全の
確保が何よりも大切でございますだけに、これらの
対策に最大限の
努力を傾注いたしますと同時に、
国際民間航空機関を初めとする諸外国との
協力を通じ、
航空の安全のための施策を推進してまいりたいと、このように
考えておるところでございます。
さて、その後、御
質問に先立ちまして、種々の私に対する御鞭撻のお言葉をちょうだいいたしました。
そこで、
質問にお答えをいたしますが、
税制改革の問題について、時には
国民の信を問うべきだというお
考えも交えての御
質疑でありました。
個別物品税の
不公平感、これも確かに存在しております。したがって、
間接税の問題につきましては、抜本的な
税制改革の一環として、その速やかな
実現を図りたいと
考えております。
税制調査会に対して精力的な御
審議を今日お願いしておるところでございます。
種々
検討を重ねた末先般提出いたしました
売上税法案が、
廃案となったというこの現実的な事実を謙虚に踏まえまして、
竹下内閣といたしましては、
国民の
理解を得られるような
税制の確立を心がけていこうと思っております。そうした観点から、
間接税の問題につきましても、
論議に先立って予見を与えるようなことは避けることといたします。
国会におけるまさに各党各会派の御
意見はもとより、幅広い
国民の
意見を吸い上げながら
成案を得るべく
努力してまいりたいと、このように
考えております。
導入の時期についてでありますが、
税制改革につきましては、重ねて申し上げるようでございますが、開かれた
議論を通じて
国民的合意を形成しながら、
所得そして
消費、
資産、この間で
均衡がとれた安定的な
税体系を構築することが緊要な
課題でありまして、こうした
認識のもとに、
内閣ができまして早々と
税制調査会に諮問いたしまして、まさに
各層の御
意見を十分
伺いながら、可能な限り早期に
成案を得たいものだという
希望を持っております。
さて、
高齢化社会の到来ということにつきまして、
経済の一層の
国際化を推進するという問題とあわせますならば、
抜本的税制改正の
実現は、これは避けて通れない共通の
認識であると思っております。
経済の
活性化に配慮しながら、
長寿福祉社会をより確実なものとして維持していくためには、先ほどの
所得、
消費、
資産等の間で
均衡のとれた安定した
税体系の構築、これが必要であります。
したがって、今
国会はもとよりのこと、まさに
国民各界各層の
議論を聞きながら
成案を得ていくべき
課題であると思います。
不公平税制、
補助金についての御
意見もございました。
税負担の
公平確保は、
税制に対する
国民の
理解と
協力を
確保する上で不可欠の前提であります。毎日毎日、新聞に公平、不公平の
議論がなされておりますことは私どもも十分
理解しております。去る九月の
税制改正におきまして、
有価証券譲渡益課税や
土地譲渡
所得課税等については、
国会の
議論をいただきました上で課税の強化や適正化を図ってきたところであります。
これからも、
税負担の
公平確保、この問題につきましては、各方面の
議論を踏まえて、引き続きたゆまざる
検討が必要であると思っております。
補助金は、政策遂行上重要な機能を担うものでございますが、財政資金の効率的使用を阻害する等の問題がありますため、これはまさに不断の見直しということが、いつも申しておりますが、必要であろうと思っております。そして、御
意見にもございましたように、画一的ではなく、
地方の知恵と情熱を吸い上げて国がこれにこたえていくという
考え方には私も賛成するところでございます。
次に、
地価問題についての一連の御
質問でございます。
土地問題
解決のために、
土地取引の適正化、住宅・宅地
供給の促進、諸機能の
地方分散等を含めた総合的な
対策を講ずることが必要であることは言うをまちません。
そこで、
政府は、
土地対策関係閣僚
会議を
設置しまして、中長期的な
土地対策の
あり方については、また一方、行革審でこれをお願いしておるところでありますが、四党共同
提案、これにつきましては、私も二度にわたって読ましていただきました。多く私どもと意識を同じくする点もございます。したがいまして、まさに特別委員会等が
設置されたということは、
政府がこれらの
対策を立てていくためにも総合的な角度からその環境づくりにお役に立っていただけるものだと評価し、かつ期待をいたしておるところであります。
さらに、
供給増加策についての御
提言がありました。
地価の
高騰に対処するためには、宅地
供給の拡大を図りますことが必要であります。このため、ことしの十月十六日に閣議決定されました
緊急土地対策要綱にもございますように、都心及び
臨海部の大規模プロジェクトの推進、それから都市再開発の促進を図りますとともに、線引きの見直しなどによる開発適地の拡大と
地方公共団体の開発抑制方針の転換などによって宅地
供給を推進していく所存であります。
臨海部も特に御指摘がありましたが、
大都市の
臨海部における
工業用地で遊休化したもの、確かにおっしゃるとおりであります。その位置、規模及び周辺の
土地利用の動向などを勘案して、住宅用地としての適地につきましては、都市
計画などの変更によりまして
住宅建設を可能とし、あわせて公的住宅等の
住宅建設を積極的に促進してまいる所存であります。
高層人工地盤の問題とか、そういう御
意見につきましてもありがたく拝聴をいたしました。
それから
東京一極集中是正のための権限移譲の問題、バス停の認可をも含めた御
質問でございました。
政府機関の
地方移転につきましては、何としても四全総の趣旨にも照らしまして今後慎重に
検討して進めてまいりたいと思います。
政府としては、従来から臨調、行革審答申を踏まえながら機関委任事務、また国、
地方を通ずる許認可権限等の整理合理化等を進めてきたところでございますが、今後とも国、
地方の
役割分担等につきまして、四全総や臨調、行革審等の
意見をも踏まえまして、これは絶えず進めていくべき
課題であるというふうに
考えております。
雇用情勢につきましては、問題意識としては、私も同じような問題意識を持っております。
最近の
雇用失業情勢は、総じて改善の動きが数字的に見ると確かに見られておりますけれども、業種別、
地域別では依然として厳しい
状態にあることも事実でございます。
しかも、
産業構造の転換、
労働力の
高齢化等が進展する中におきまして、
年齢間等の
労働力需給の不
均衡によるいろいろな複合した
雇用問題が発生しております。
したがって、こうした観点から、適切な
経済運営と相まちまして
雇用対策を積極的に推進していくという基本的
考えをまず申し述べます。
そうして、
労働時間短縮について、勤労者
福祉の向上、また
国際協調はもとより、長期的に見た
雇用機会の
確保等からの観点も重要な
課題であります。
このため、先般
改正していただきました
労働基準法のもとで、一九九〇年代前半にできるだけ速やかに週四十時間
労働制に移行できるよう、週休二日制の普及など
労働時間短縮に努めてまいる所存であります。
高
年齢者の
雇用対策の取り組みにつきまして、
高齢者パート労働法あるいは逆
定年制等の御
意見もございました。
本格的な
高齢者社会を迎えまして、
高齢者の能力を積極的に活用し活力ある
社会を維持していくためには、
高齢者の
雇用の場を
確保していくことが重要な政策
課題であります。
このため、
政府としては、六十歳定年の定着に努めますとともに、さらには六十五歳程度までの継続
雇用の推進、再就職の促進、これらの施策の展開に万全を期したいと
考えております。
円高問題についての御
議論がございました。
このところの
円高、総じて申しますならば、欧州通貨につられた円相場の上昇、こういうことが言えるかと思います。
為替相場の安定のためには、主要国間で積み重ねられてまいりました合意を踏まえて、政策協調と為替市場における
協力を進めていくことが最も重要であります。この関連で、
米国で先般の
財政赤字削減合意を受けて早急にこれの具体的な所要の措置がとられること、これは私も期待しておるところであります。
また、市場の思惑的な動きに対しましては、これは各国との市場における
協力、こういうことが大事であるということは言うをまちません。
それから、
米国の
ドル安容認姿勢についての御言及がありました。
十月下旬から十一月上旬にかけまして、
米国の為替問題に対する
姿勢について、それは
我が国のみならず国際的にもいろいろな疑問が報道されてきてまいりまして、これが相場を不安定にしてきた一つの
要因であろうというふうには私も思います。
しかし、十一月十日のホワイトハウスの声明、これがまずございまして、それからまた、これ以上の
ドル安は望まないという
レーガン大統領の発言、こうした報道によってそれらの懸念というものは明確に否定されました。したがって、為替安定に関して
アメリカが
ルーブル合意堅持の
姿勢を持っておるということは明白でありますので、これに基づく為替市場における
協力というものは、今後とも
我が国を含め確固として守られるべきものであるというふうに思います。
したがって、
我が国としては、
ルーブル合意等を踏まえた政策協調の観点から、緊急
経済対策実施のための
予算、
税制改正措置を既に講ずるなどいたしまして、
我が国に与えられた仕事として、内需の拡大に向けての最大限の
努力を払っておるところであります。
また、各国においても、
ルーブル合意に沿った
努力が続けられておるものと私は承知しております。こうした観点から、今回、先ほども申し上げました
米国の
財政赤字削減措置、これは政策協調の
考え方に沿ったものでありますだけに、重ねて申すようでございますが、早急に所要の措置が具体的にとられることを期待するということであります。
G7開催についての御
意見もございました。これにつきましては、
米国の
財政赤字削減措置の
内容の具体化を見守る必要があるのではないか。現段階では何とも言えませんが、それぞれ各国とも、
ルーブル合意に基づく協調体制を堅持していくという基本的な
考え方に立って
米国のその具体的な措置を見守っておるということではなかろうかというふうに
考えます。
円高差益の問題につきましては、これは累次にわたる
対策によりまして還元策が講ぜられて、かなり浸透してきたということは言えると思います。
電気・
ガス料金につきましては、二度にわたって暫定引き下げが行われたところでありますが、このほどなされました来年一月以降の料金改定の申請に対しても、これは通商
産業省で適切に対処していかれる
課題だというふうに
考えております。
今後とも、為替レートの動向等を踏まえながら、いわゆる
円高差益の一層の還元がなされて、それこそ物価の安定につながっていくということを何よりも心がけなければならないと思います。
農業の将来問題、
食管制度問題については、かねての持論の展開をなさいました。
農業は国のもとであって、その
役割は食糧安定
供給等極めて重要であります。
我が国農業をめぐる内外の厳しい
状況のもとで、今後
農業を
産業として自立させて、担い手が明るい
希望を持てる
農業に取り組めるようにすることが必要であります。
このため、「二十一世紀へ向けての
農政の基本方向」に関する昨年十一月のいわゆる
農政審の報告を尊重してまいりたい、このように
考えております。
十二
品目等の問題につきましては、本日、本院の本
会議が終了しました後、ちょうど宇野外務大臣も
ガットの総会から帰国して報告を受けることになっております。
食管制度の問題につきまして、かねての持論でございますが、
我が国農業の生産性の向上を図って、二十一世紀に向けて効率性が高くて足腰の強い
農業を築くために、
農家の
創意工夫を生かしながら
農政の展開を図ることが必要である。
食管制度については、米を
政府が責任を持って管理することにより、生産者に対してはその再生産を
確保し、また、
消費者に対しては安定的にその
供給責任を果たすという
制度の基本は今後とも堅持して、事情の
変化に即応しながら、適切な運営改善を図る
考えであります。
そうして、
補助金制度につきましては、補助から融資へというお言葉のとおり、今日までも補助から融資への移行を図ってまいりました。そうして、
補助金の整理合理化を進めてきておることでございますが、今後とも、効率化に努めながら、そのような
考え方を踏襲してまいりたいと思っております。
それから、
私学の
役割、
教育問題等についての御言及がございました。
私学は、
我が国の学校
教育において量的に大きな
役割を果たしております。また、質的な面におきましても、それぞれ建学の精神がございましたりして、
個性豊かな
教育研究を行って、学校
教育の普及、進展に大きなそれなりの
役割を果たしたものだと思っております。
こういう
私学の
役割の重要性にかんがみまして、これからも
私学における
個性豊かな特色ある
教育研究の推進、そういうことを念頭に置いて
考えていくべきものであると
考えております。
それから、アジア諸国の
教育面での御
見解を御披露になりました。
私も、この臨時
国会が終了しました後、ASEANの
会議に参加いたします。その際も、この問題がいろいろ議せられるであろうと思います。
従来から、中国及び
東南アジア諸国に対して、留学生、研修生の受け入れ、専門家の派遣、
教育訓練施設の拡充、これらを通じて人づくりに
協力してまいりました。今後とも、各国からの要望を踏まえながら、これには十分
協力していくべき
課題であると思います。
ただ、具体的に
円高に伴って留学生が困っておるじゃないかと、このような御指摘であります。
現在、
我が国では一万八千人余りの留学生を受け入れておりますが、二十一世紀初頭には十万人目標と、こういうことを
考えておりますだけに、諸般の施設の拡充ももちろん必要でございますが、最近の
円高、これにつきましては、ことしの秋から大学におきます授業料の減免措置、これを拡充しました。そうして宿舎の整備と奨学金の
充実、こういうことで
対応すべきであると思っております。
社会保障全体につきましては、今後の
高齢化に備えて揺るぎない
社会保障制度を構築することが必要だ、これは
考え方を等しくしております。
そこで、
政府は、壮年期からの健康づくりを目的とした老人保健
制度の創設、医療
保険制度の
改革、診療報酬の合理化などの医療費適正化
対策の推進などを実施してまいりました。
今後とも本格的な
高齢化社会の到来に備えていくために、それこそ今、乱療、乱診、乱投薬、乱検査とかいう趣旨の御発言もございましたが、
国民の皆さん方の
理解を得ながら、
社会保障制度全体の
改革をさらに推進していく
考えであります。
具体的な事例として、
被爆者援護法の御指摘がございました。
これは、特別の犠牲に着目して、広い
意味における国家補償の見地に立って、被害の実態に即した措置を今日講じておるわけでありまして、
被爆者援護法の
制定は、一般戦災者との
均衡上の問題がございますので、現行の原爆二法によって対処すべきであろうと思っております。
さらに、具体的御指摘としてのシベリア抑留者問題でありますが、いわゆる戦後処理問題につきまして、
さきの戦後処理問題懇談会報告の趣旨に沿って、
昭和六十三年度に特別の基金を創設し、
関係者の労苦を慰藉する等の事業を行うことによりすべて終結させること、また、シベリア抑留者の問題については、これまでの経緯等を踏まえ、基金の特別事業として、関係生存者に書状及び慰労の品を、そのうち恩給等を受給していない方々にはさらに慰労金を贈呈するというような一応の方向を
政府・与党間で昨年の
予算編成の際合意しておるところでございます。
次は、軍縮問題についてでありました。
軍縮のための国際
努力に積極的に参加することが、これが
我が国の基本政策として大事であります。同時に、軍縮は、できる限り低いレベルで軍備を
均衡させることによって関係国の安全保障を高めるものでなければなりません。また、その合意が検証可能なものでなければならない、こういう
認識の上に立ちます。このような目標に向かって、
我が国といたしましては、西側の一員として今後とも
努力を継続していく方針であります。こうした
我が国の
立場については、累次米側にもこれは伝えておるというところであります。
世界平和に寄与する
日本、こういうことについての御言及がございました。
世界の平和と繁栄は、
日本の生存と発展の基礎でございます。
我が国は、今や国際秩序の主要な担い手の一人として、軍事大国への道を歩まず、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、
我が国の豊かさと活力を
世界に生かしていくことが肝要である。
このような観点から、平和と軍縮の促進、
世界経済の健全な発展への貢献、開発途上国の安定と発展への
協力などを誠実に進め、それこそ「
世界に貢献する
日本」の
実現を目指したいと思っております。
それから、平和戦略研の目的とか概要についての御
質問がございました。
グローバルな視点から
世界の安定と平和に貢献していくことが肝要であるということは、何人も論をまたないところであります。私が唱えております平和戦略研——本当に私とたびたび
議論をいたしましたのは、
最初は本院議員岩上先生の発意に基づくものでありました。したがって、これらの問題については、具体的なことについてはまさにいまだ
検討中の段階である、このように御
理解を賜りたいと思います。
それから、
政治資金規正法等の
改正案要綱骨子は、これは自民党選挙
制度調査会の
政治資金等に関する小委員会がまとめられたものであります。
これは、私も中身を承知しておりますが、事柄の性質上、また、
政治資金規正法が本院で成立しますときの、たしか附則八条等がございますだけに、十分各党間の
論議を尽くすべき
課題だと思っております。
最後が定数是正の問題でございます。
これは、まず衆議院の場合、抜本
改正を行うという決議が坂田議長のもとでなされております。そこで、この
論議を踏まえて
政府としても重大な関心を持つべき
課題でございますが、土俵づくりの問題でございますので、私も選挙
制度についていささか今日までもかかわり合いを持ってみましたが、まずはそれぞれ党内、そうしてまた、それが
国会そのものの
議論として行われていくのが適切ではないか、こういう
考え方に立っております。
参議院議員の定数是正問題、これも重要な
課題であると
認識しておりますが、半数改選制でございますとか、あるいは
地域代表的性格の問題でございますとか、そういう基本にかかわる問題がございますので、私もたびたび行き来さしていただきましたが、本院にはそれぞれ選挙
制度に関する学識経験
世界一の人がたくさんいらっしゃいますので、そういう方々とこれからも
論議を重ねていくことが必要ではないかな、このように
考えております。
以上でお答えを終わります。(
拍手)
〔
国務大臣越智伊平君
登壇、
拍手〕