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1987-11-27 第111回国会 参議院 本会議 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和六十二年十一月二十七日(金曜日)    午前十時二分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第一号   昭和六十二年十一月二十七日    午前十時開議  第一 議席指定  第二 会期の件  第三 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、議員森下泰君逝去につき哀悼の件  一、特別委員会設置の件  一、日程第二  一、国家公務員等任命に関する件  一、日程第三      ——————————
  2. 藤田正明

    議長藤田正明君) これより会議を開きます。  日程第一 議席指定  議長は、本院規則第十四条により、諸君議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。      ——————————
  3. 藤田正明

    議長藤田正明君) 議員森下泰君は、去る十四日逝去されました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  つきましては、この際、院議をもって、同君に対し弔詞をささげることといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  同君に対する弔詞を朗読いたします。     〔総員起立〕  参議院わが国民主政治発展のため力を尽くされさき航空機輸入に関する調査特別委員長エネルギー対策特別委員長の重任にあたられました議員正四位勲二等森下泰君の長逝に対しつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます     —————————————
  5. 藤田正明

    議長藤田正明君) 関口恵造君から発言を求められております。この際、発言を許します。関口恵造君。     〔関口恵造登壇
  6. 関口恵造

    関口恵造君 本院議員森下泰君は、去る十一月十四日、兵庫県西宮市香雪病院において心不全のため逝去されました。  本年八月ごろよりお体の不調を訴えられ、九月末入院されたことを聞き及び、一日も早くお元気な姿を見せていただきたいという私たちの願いや御家族の必死の御看病もむなしく、ついに幽明境を異にせられたのであります。まことに痛惜哀悼の念にたえません。  ここに、私は、皆様の御同意をいただき、議員一同を代表して、正四位勲二等故森下泰君のみたまに対し謹んで哀悼言葉をささげます。  森下君は、大正十年兵庫県芦屋市にお生まれになりました。旧制甲南高校を経て、昭和十八年京都大学経済学部卒業、同時に短期現役海軍主計科士官として軍務に服し、終戦後さらに、向学の意抑えがたく、再び大学生活に戻り、昭和二十四年、東京大学法学部卒業されました。  その間、昭和十八年には、祖父森下博氏の創立されました企業後継者として森下仁丹株式会社社長就任実業の道に進まれていたのであります。したがって、終戦後の一時期は、企業経営大学生活を両立させるという御苦労の多い青年期を過ごされたのであります。  大学卒業後、企業経営に専念された君は、同社発展基礎を築くとともに、草創期青年実業家の拠点としての青年会議所活動熱意を示され、たちまち関西若手財界人中心人物となったのであります。  そうして、昭和二十四年、大阪青年会議所の創立に参画、昭和二十七年には弱冠三十歳にして日本青年会議所の副会頭に、二年在任後、会頭に選任され、二期二年六カ月の任期を全うされたのでございます。  二つの世界の冷たい対立に特徴づけられた一九五〇年代に、君は、このときにこそ、世界青年がこの時代の歴史的、社会的要求にこたえるべき使命を持つと訴え、人類の幸福、世界の平和、社会の安定という命題の実現に、世界青年が手をつなぎ力強く活動することを訴えられました。  そうして、会頭就任と同時に、当時国交の正常化のなされていなかった中国青年との交流を企画したのであります。世界青年が団結協力しなければ、世界平和目的は達成されないと考えたからであります。  君の信念は変わりませんでしたが、この計画は当時の客観情勢から実行は断念されたのであります。三十年経過した今日、日本青年会議所の招きで多くの研修生が中国からも来日しており、友好的に交流が深められていることを考えますと、こういった点にも君のすぐれた先見性を見ることができるのであります。  実業の道にあっては、実業家として一代を築かれた祖父を師と仰ぎ、企業社会的責任の自覚、海外雄飛の進取の精神、自己を厳しく律する明治人の気質を学び取られたのであります。  そうして、私たちの世代の者は、明治大正の先達と現代の若者とのかけ橋となって、誇りと自信を持った国際人としての日本人を受け継いでもらうのが私の悲願でもあるとの信念もとに、早くより教育問題に着目し、中央教育審議会委員等を歴任されました。  また、政治の安定なくしては経済の安定なしとし、政治経済一体となって国づくりを進めていかなければならないと考え政界への道に進まれたのであります。  昭和四十九年、参議院全国区に立候補され、見事当選、以後、大阪地方区から五十二年、五十八年と三たび当選を果たされ、参議院議員在職は連続三期十三年四カ月余にわたり、国会で御活躍されることとなりました。その間の御活躍は目覚ましいものがあり、環境政務次官航空機輸入に関する調査特別委員長エネルギー対策特別委員長社会労働委員会理事を歴任され、党にあっては、自由民主党医療基本問題調査会副会長、環境部会長等、重要な党務の衝に当たられました。  君は、議員として、昭和四十九年参議院当選以来、一貫して社会労働委員会に所属し、我が国人口高齢化の進行で安定した制度確立が期待される年金、医療保険、保健、福祉諸制度の改正のための諸案件や五十年代以降の雇用情勢の悪化に対応した各種の雇用対策緊急立法その他の案件審議に参加されました。  同時に、医薬品に関するすぐれた見識をもって、国民医療向上のため不可欠な医薬分業推進にも力を注ぐとともに、薬剤師の社会的地位向上大衆薬振興医薬品の正常な流通にも努めつつ、国民医療向上医薬品業界発展に尽く されました。  また、党環境部会長として、環境行政推進のため、党内の取りまとめに特段の尽力をなされました。  さらに、エネルギー対策特別委員長時代には、二度の石油ショック後の新しいエネルギー源開発と資源利用問題に熱意を示されるとともに、昭和五十六年十月の北炭夕張ガス突出災害に際し、その処理に鋭意努力されたのであります。  君は、企業家としての卓越した手腕もさることながら、日本を思う心においても、民族の文化と伝統を深く愛し、武道としての剣道の達人でもあり、地域におけるその実践を通じて青少年の教育訓練に当たるほか、茶道にも造詣が深く、幅広い活動を行ってこられました。  君は、人情家で義理に厚く、政界財界に限らず各界の人との交流をはぐくみ、また直言の人、実行の人でありました。君がそのたぐいない資質を十分に生かし、政治家としての理想を実現しようとする道半ばにして倒れられたことは、まことに残念でなりません。  今、まさに激動する内外の諸情勢もとで、我が国はいまだかつて経験したことのない厳しい試練に直面し、我々に課せられた責務はいよいよ重大さを加えつつあるのであります。  こういった際に、君のすぐれた識見と行動力に期待するところ多大でありました。この機に君を失ったことは、御遺族のお悲しみ、君がその発展のため力を尽くした大阪関係者の方々の御無念はもとよりのこと、ひとり本院のみにとどまらず、国家社会のためにも痛恨事であると申さなければなりません。  ここに、謹んで君の輝かしい人生と多彩な業績をしのび、院を代表して心から御冥福をお祈り申し上げ、哀悼言葉といたします。      ——————————
  7. 藤田正明

    議長藤田正明君) この際、特別委員会設置についてお諮りいたします。  科学技術振興に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る科学技術特別委員会を、  公害及び環境保全に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る環境特別委員会を、  災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、  選挙制度に関する調査のため、委員二十五名から成る選挙制度に関する特別委員会を、  沖縄及び北方領土に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、  また、土地問題及び国土利用に関する対策樹立に資するため、委員三十名から成る土地問題等に関する特別委員会を、それぞれ設置いたしたいと存じます。  まず、科学技術特別委員会環境特別委員会災害対策特別委員会選挙制度に関する特別委員会並び沖縄及び北方問題に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  以上の五特別委員会設置することに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  よって、科学技術特別委員会外特別委員会設置することに決しました。  次に、土地問題等に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  本特別委員会設置することに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  9. 藤田正明

    議長藤田正明君) 過半数と認めます。  よって、本特別委員会設置することに決しました。本院規則第三十条により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。     —————————————    議長の指名した委員は左のとおり ○科学技術特別委員       岡野  裕君    岡部 三郎君       木宮 和彦君    後藤 正夫君       志村 哲良君    高平 公友君       出口 廣光君    成相 善十君       長谷川 信君    林  寛子君       前島英三郎君    最上  進君       稲村 稔夫君    久保田真苗君       高杉 廸忠君    松前 達郎君       飯田 忠雄君    伏見 康治君       佐藤 昭夫君    小西 博行君 ○環境特別委員       青木 幹雄君    石井 道子君       石本  茂君    梶木 又三君       佐藤謙一郎君    関口 恵造君       曽根田郁夫君    原 文兵衛君       松尾 官平君    宮崎 秀樹君       柳川 覺治君    小川 仁一君       田渕 勲二君    丸谷 金保君       渡辺 四郎君    高桑 栄松君       広中和歌子君    沓脱タケ子君       近藤 忠孝君    山田  勇君 ○災害対策特別委員       井上  孝君    岩崎 純三君       上杉 光弘君   大河原太一郎君       下条進一郎君    田代由紀男君       竹山  裕君    永田 良雄君       野沢 太三君    星  長治君       増岡 康治君    本村 和喜君       青木 薪次君    梶原 敬義君       松本 英一君    太田 淳夫君       片上 公人君    下田 京子君       勝木 健司君    秋山  肇君 ○選挙制度に関する特別委員       岩上 二郎君    海江田鶴造君       梶原  清君    金丸 三郎君       久世 公堯君    斎藤栄三郎君       杉山 令肇君    田中 正巳君       中西 一郎君    藤野 賢二君       降矢 敬義君    松浦  功君       村上 正邦君    森田 重郎君       吉村 真事君    上野 雄文君       小山 一平君    佐藤 三吾君       安恒 良一君    猪熊 重二君       多田 省吾君    諌山  博君       山中 郁子君    栗林 卓司君       宇都宮徳馬君 ○沖縄及び北方問題に関する特別委員       伊江 朝雄君    板垣  正君       岩本 政光君    大城 眞順君       大浜 方栄君    岡田  広君       川原新次郎君    北  修二君       志村 愛子君    高木 正明君       矢野俊比古君    菅野 久光君       鈴木 和美君    中村  哲君       及川 順郎君    中野  明君       市川 正一君    井上  計君       喜屋武眞榮君    木本平八郎君 ○土地問題等に関する特別委員       井上  孝君    石井 一二君       小野 清子君    河本嘉久蔵君       久世 公堯君    沓掛 哲男君       古賀雷四郎君    斎藤 文夫君       志村 哲良君    下稲葉耕吉君       下条進一郎君    田辺 哲夫君       永田 良雄君    野沢 太三君       増岡 康治君    水谷  力君       森田 重郎君    稲村 稔夫君       小川 仁一君    志苫  裕君       安恒 良一君    渡辺 四郎君       片上 公人君    馬場  富君       和田 教美君    近藤 忠孝君       内藤  功君    三治 重信君       山田  勇君    野末 陳平君     —————————————
  10. 藤田正明

    議長藤田正明君) これにて午後三時まで休憩いたします。    午前十時十六分休憩      ——————————    午後三時一分開議
  11. 藤田正明

    議長藤田正明君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第二 会期の件  議長は、今期国会会期を十六日間といたしたいと存じます。  会期を十六日間とすることに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  12. 藤田正明

    議長藤田正明君) 総員起立と認めます。  よって、会期全会一致をもって十六日間と決定いたしました。      ——————————
  13. 藤田正明

    議長藤田正明君) この際、国家公務員等任命に関する件についてお諮りいたします。  内閣から、検査官中島隆君を、  公害健康被害補償不服審査会委員島田晋君、出原孝夫君を、  中央更生保護審査会委員野田愛子君、武藤治雄君を、  労働保険審査会委員志賀巖君、仙田明雄君を、  国営企業労働委員会委員青木勇之助君、市原昌三郎君、神代和俊君、舟橋尚道君、堀秀夫君、山口浩一郎君、山口俊夫君を任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。  まず、検査官公害健康被害補償不服審査会委員中央更生保護審査会委員労働保険審査会委員国営企業労働委員会委員のうち青木勇之助君、市原昌三郎君、神代和俊君、舟橋尚道君、堀秀夫君、山口俊夫君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、いずれも同意することに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  14. 藤田正明

    議長藤田正明君) 総員起立と認めます。  よって、全会一致をもっていずれも同意することに決しました。  次に、国営企業労働委員会委員のうち山口浩一郎君の任命について採決をいたします。  内閣申し出のとおり、これに同意することに賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  15. 藤田正明

    議長藤田正明君) 過半数と認めます。  よって、これに同意することに決しました。      ——————————
  16. 藤田正明

    議長藤田正明君) 日程第三 国務大臣演説に関する件  内閣総理大臣から所信に関し、発言を求められております。これより発言を許します。竹下内閣総理大臣。     〔国務大臣竹下登登壇、拍手〕
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私は、さき国会において、内閣総理大臣に指名され、国政を担うことになりました。内外情勢が厳しい中、国民皆様の期待と信頼にこたえるべく、全力を尽くして国政の遂行に当たってまいります。よろしく御支援のほどをお願いする次第であります。  戦後、我が国は、多くの分野で目覚ましい発展を遂げてまいりました。しかし、これまでの発展は、どちらかといえば、物の豊かさを追い求めてきたものではなかったかと思います。  私は、かねてから「ふるさと創生」を唱えてまいりましたが、これは「こころ」の豊かさを重視しながら、日本人日本人としてしっかりとした生活活動の本拠を持つ世の中を築こうどの考えに基づくものであります。私は、すべての人々がそれぞれの地域において豊かで、誇りを持ってみずからの活動を展開することができる幸せ多い社会文化的にも経済的にも真の豊かさを持つ社会を創造することを目指してまいりたいと存じます。  このような日本を実現するため、政治には、「大胆な発想実行」が求められております。もとより政策継続性が大事なことは言うまでもありません。同時に、新しい時代に即応していくためには、大胆で斬新な発想を取り入れていくことが必要であります。  政策実行に当たっては、人々の求めるものがどこにあるのか、その本音を感じ取って、世の中の変化に応じた速度と方法で対応するというきめ細かな配慮を怠ってはなりません。私は、国会における各党、各会派の御理解と御協力を得、かつ、国民的合意を求めながら、政治を進めてまいります。しかし、複雑な経済社会の中で、政府最高責任者として、みずから判断することが必要な際には、国民のため責任を持って決断し、これを誠実に実行してまいる考えであります。  また、清潔な政治と効率的な行政確立を図り、国民皆様信頼を得ることができるよう努めてまいります。  以上の考え方もとで、内政外交重要課題について、私の基本方針を述べ、皆様の御理解と御協力をお願いする次第であります。  私は、これからの我が国は、「世界貢献する日本」との姿勢を確立し、日本の豊かさと活力世界に生かしていかなければならないと考えます。この意味から、私は、外交のこれまでの基本路線を承継し、さらにこれを発展させてまいります。  世界の平和と繁栄日本の生存と発展基礎であり、今や国際秩序の主要な担い手の一人となった我が国としては、平和への寄与と繁栄への国際協力をより積極的に推進していかなければなりません。また、諸外国に対し我が国考え方をはっきりと伝えるとともに、その責務を誠実に実行してまいります。  このような主体性を持った外交を行っていくことこそが、私は、外交基本であり、日本国際社会において信頼を得る道であると信じます。  平和も繁栄我が国自身が懸命に汗を流して追求すべき課題であり、そのためのコストは進んで負担していかなければならないということを国民皆様に御理解いただきたいと考えております。  世界の平和にとり最も大きな影響力を有しているのは、米ソ関係の動向であります。私は、近々開催される予定の米ソ首脳会談において、軍備管理軍備交渉などに一層の進展が見られ、安定的な東西関係が構築されるよう、米国外交努力支援していくとともに、日本としても世界の軍縮に積極的に貢献していきたいと考えます。  日米関係は、我が国外交の基軸であります。私は、日米友好協力関係の基盤を一層強固なものとしていくため、できるだけ早く米国を訪問し、レーガン大統領との間で、胸襟を開いた意見交換を行う考えであります。また、西欧諸国及びカナダとの間で、建設的な協力関係を一層強化するとともに、アジア・太平洋の一員として地域の安定と発展貢献してまいります。特に、韓国、中国ASEAN諸国を初めとする近隣諸国との関係の増進は重要な課題であります。私は、来月マニラに赴き、ASEAN諸国首脳との会議に出席し、ASEAN諸国への積極的協力支援を表明する所存であります。ソ連との間では、最大の懸案である北方領土問題を解決し、平和条約を締結することにより、真の相互理解に基づく安定した関係確立するため努力を続ける考えであります。  安全保障に関しては、日米安全保障体制を堅持するとともに、日本防衛のため何が必要かという観点から防衛力整備計画中心考え平和憲法もと、専守防衛に徹し、非核三原則と文民統 制を堅持し、軍事大国への道を歩まない節度ある防衛力整備を進めていきたいと考えます。  また、開発途上国に対し、我が国としては、国力に見合った貢献を行っていくとともに、国連の活動への支援を初め国際紛争の解決と世界の平和への貢献に積極的に努力してまいります。飢えや紛争に苦しむ人々への思いやり、その悩みをともに感じる心の優しさを持つことによって、私たちは、地球が人類共通ふるさとであるということを身近に実感できるのではなかろうかと考えます。  このような観点から、今後とも、経済協力に重点的に配慮するとともに、累積債務問題にも真剣に取り組んでまいります。  また、ペルシャ湾における自由安全航行確保については、さきに決定した方針に基づき、非軍事的手段による我が国としての積極的貢献を図ってまいります。  対外経済問題の処理は、現下日本が抱える最大課題一つであります。私は、自由貿易体制を維持しつつ、多様で世界に開かれた日本市場を形成していくとともに、我が国経済輸出依存型から内需主導型に転換していくことを基本にこの問題に対処してまいります。世界経済の一割を超える日本経済世界経済と調和のとれたものとしていくため、我が国としては、市場アクセスの改善や金融資本市場自由化経済構造の調整などを積極的に進めていかなければならないと考えます。その意味で、まさに内政外交一体であります。この過程において、時には国民皆様に我慢をお願いせざるを得ないことがあるかもしれません。しかし、日本は、自由貿易から多大の恩恵を受けている国であり、このような改革は、日本経済世界経済に調和させるためだけでなく、日本が今後とも発展していくために避けて通れない道であることを国民皆様に御理解いただきたいと思うものであります。  日本の真の国際化のためには、国と国との外交関係だけでなく、さまざまなレベルでの国際的交流を進めていくことが重要であります。各地方において多様な分野人々が直接外国交流するなどの草の根外交といったものも活発化することが必要と考えます。また、各国との交流は、政治経済分野だけでなく、社会文化などあらゆる面で深めていくことが重要であります。これらの面での外交を強力に推進してまいる考えであります。  現下内政上の最大課題一つは、土地対策であります。私は、先般の組閣において、新たに土地対策担当大臣を設け、また、内閣総理大臣が主宰する土地対策関係閣僚会議設置し、政府としての土地問題への取り組みを強化したところであります。昨今の異常な地価上昇に対処するため、さき政府は、臨時行政改革推進審議会の答申などを踏まえ、国土利用計画法の機動的な運用、金融機関等への指導、住宅宅地開発の促進などを内容とする緊急土地対策要綱を定めたところであり、これを着実に実施してまいります。さらに、良好な都市環境に恵まれた住宅宅地の供給を目指し、中長期的な土地対策について、今後、衆知を集め検討し、実施してまいります。  また、国会において、土地問題等に関する特別委員会設置され、充実した審議が進められていることを高く歓迎するとともに、政府としてもこの委員会での審議が円滑に行われるよう協力してまいります。  地価上昇の原因の一つは、東京への人口や諸機能の一極集中であります。東京への過剰な依存から脱却し、多極分散型の国土を形成していくために、全国的な交通通信網整備を進めるなど第四次全国総合開発計画の着実な推進を図ってまいります。  同時に、私は、第四次全国総合開発計画などによる国土開発に、いわば「こころ」を吹き込み、地域の知恵と情熱を生かし、潤いのある町づくり活力のある村づくり、そして、災害に強く安全な地域づくりを進め、それぞれの地域人々生活活動のしっかりとした本拠としていきたいと考えております。  経済運営については、インフレなき持続的経済成長を図るとともに、日本経済力にふさわしい生活を実現するため、社会資本の整備を着実に進めることを基本に置き、民間の活力を生かし、調和のとれた経済社会を築いてまいります。  為替相場の安定については、基本的に、各国間の政策協調と為替市場における協力が重要であります。我が国は、引き続きルーブル合意の枠組みの中で、各国と協調し、為替相場の安定を図ってまいる考えであります。  財政運営については、次の世代に過剰な負担を残さぬよう一日も早く、財政の対応力を回復していく必要があると考えます。また、行政改革についても引き続きこれを推進していく考えであります。  昭和六十三年度予算編成に当たりましては、これまでの努力と成果を踏まえ、引き続き、財政改革を強力に推進し、歳出面においては、特に経常経費について一層の節減合理化を行ってまいります。同時に、内需の拡大など内外経済情勢に適切に対処してまいります。  税制改革については、国会における税制改革法案審議の際の議論等を通じ、国民の間にも税制改革についての意識が高まってきていると考えます。急速な経済社会の変化に対応していくため、視点を新たにして国際国家にふさわしい、日本経済の活性を高める税制、国民が納得して負担できるような簡素で公平な税制、本格的高齢化社会の到来を控え、安定した歳入基盤を提供し得る税制、これを追求しなければならないと考えます。  その際重要なことは、開かれた議論を通じ、税制改革についての国民的合意を形成していくことであります。さき国会で税制改正法案が成立し、税制改革の第一歩が踏み出されたところでありますが、さらに、広範な議論を通じ、所得、消費、資産等の間で均衡がとれた安定的な税体系の構築に努めてまいります。  このような認識のもと、私は、政権発足後直ちに税制調査会に対し、所得、法人、資産及び消費課税等についてその望ましい税制のあり方につき諮問を行い、精力的な御審議をお願いいたしました。これらの場を通じ、国民各界各層の御意見を十分に伺いながら、望ましい税制の全体についてできる限り早期に成案を取りまとめてまいります。  日本は、戦後大きく発展してまいりましたが、経済的な発展に比較し、国民一人一人が豊かな生活を送っているとの実感に乏しいのも事実であります。私は、経済発展の成果を国民生活に生か し、真の豊かさを実感できる社会の創造を目指してまいります。  このため、産業構造の変化に対応し、また、地域の実情に応じた雇用対策を進めるとともに、高度な技術・知識集約型産業の発展の中で働く場が確保されていくよう努めてまいります。  また、特に労使との対話を深め、理解協力を得て、豊かな勤労者の生活が実現されるよう努めてまいるとともに、労働時間の短縮も推進してまいります。  さらに、経済構造の変化を初め厳しい環境に直面している中小企業が、これに積極的に対応し、健全な発展を遂げられるよう支援してまいります。  農林水産業は、食糧の安定供給、国土・自然環境の保全など基本的かつ多面的な役割を担っております。私は、内外の厳しい環境のもとにある農業について、さきの農政審議会報告を踏まえ、生産性の向上を図りつつ、国民皆様の納得を得られる価格水準で食糧の安定供給が図られるよう、経営規模の拡大や生産基盤の整備など各般の施策を積極的に進めてまいります。  また、二十一世紀初頭には本格的に到来すると予想される高齢化社会に備えるため、医療や年金などの制度改革をさらに進めますとともに、高齢者に適した仕事の場や生活の場を拡大するための技術の開発地域社会の形成に努めてまいります。  婦人の能力を生かす社会環境を整備する一方、母子家庭、障害者など社会的、経済的に弱い立場にある人々に対しては、きめ細かな配慮をしてまいります。  教育の問題については、私は、国際社会の中でたくましく活動できる個性的で心豊かな青少年を育成していくことが何よりも大切であると考えております。このため、創造的で多様な教育の実現を目指し、臨時教育審議会の答申を受けて、引き続き教育改革を進めてまいります。  教育については、学校教育が基礎であることは言うまでもありませんが、教育は、学校の場においてのみ行われるべきものではありません。私は、国民一人一人が生涯にわたって学習できるよう、生涯学習の環境づくりを進めてまいります。また、各地で、地域の特性を生かしたスポーツ、文化活動を盛んにし、さらには、すぐれた伝統文化を尊重しつつ、世界誇り得る文化、芸術活動振興に努めてまいります。  未来を開くかぎの一つは、科学技術の発展であります。科学技術の発展は、人類の進歩向上や産業の新しい展開にとって大きな力となります。また、ロマンと活力に満ちた二十一世紀の日本を築き上げるためにも科学技術の発展は欠かせません。私は、創造的な科学技術の基礎研究を充実するとともに、がん、難病などの克服のための研究も積極的に進めてまいります。  以上、内政外交の重要政策について所信を申し述べました。私の目指す「ふるさと創生」は、単なる国土開発地域振興の問題ではなく、日本国民すべてがより幸せで、楽しい、充実した人生を歩めるような日本列島を創造し、さらに、世界人々の期待にこたえていくことであります。その意味で、これは国政全般にかかわる事柄であります。かけがえのない自由、そして、ふるさとを大事にすることがみずからの国を守る気持につながっていくと信じます。均衡ある国土づくりを進め、日本活力をより大きく発揮させていくことが、日本世界への貢献をさらに高めることになっていくものと信じます。  二十一世紀を目前にして、荒海を未知の世界に向かってこぎ出すような気持ちでありますが、人間の真価は、非常時にこそ最もよく発揮されることを歴史は私たちに示しております。重大な転換期を迎えた世界日本のために、私は、常に国民皆様方の声に耳を傾け、衆知を集め、合意を求めながら、「誠実な実行政治」を目指し、全身全霊を傾けてこの難局に当たる決意であります。  重ねて、国民皆様の御理解と御協力をお願いする次第であります。(拍手)
  18. 藤田正明

    議長藤田正明君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 藤田正明

    議長藤田正明君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十七分散会      —————————— 昭和六十二年十一月二十七日(金曜日)    開 会 式  午後零時五十八分 参議院議長、衆議院参議院の副議長、常任委員長、特別委員長、参議院調査会長、衆議院参議院議員内閣総理大臣その他の国務大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長は、式場に入り、所定の位置に着いた。  午後一時 皇太子明仁親王殿下は、衆議院議長の前行で式場に入られ、お席に着かれた。    〔一同敬礼〕  午後一時一分 衆議院議長原健三郎君は、式場の中央に進み、次の式辞を述べた。    式 辞   天皇陛下の御名代として   皇太子明仁親王殿下の御臨席をいただき、第百十一回国会の開会式を行うにあたり、衆議院及び参議院を代表して、式辞を申し述べます。   現下わが国をめぐる諸情勢はきわめて多端であります。   このときにあたり、われわれは、決意を新たにし、当面する内外の諸問題に対処してすみやかに適切な施策を講じ、もって国民生活の安定向上につとめなければなりません。   ここに、開会式にあたり、われわれに負荷された重大な使命にかんがみ、日本国憲法の精神を体し、おのおの最善をつくしてその任務を遂行し、もって国民の委託にこたえようとするものであります。  次いで、天皇陛下から次のおことばを      皇太子明仁親王殿下から賜った。    おことば   本日、第百十一回国会の開会式に当たり、この席に親しく臨めないことを、誠に残念に思います。   国会が、国権の最高機関として、当面する内外課題に対処し、国民生活の安定向上世界の平和と繁栄のため、その使命を遺憾なく果たし、国民信頼にこたえることを切に望みます。    〔一同敬礼〕  衆議院議長は、おことば書をお受けした。  午後一時五分 皇太子明仁親王殿下は、参議院議長の前行で式場を出られた。  次いで、一同は式場を出た。    午後一時六分式を終わる